高田創 審議委員


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高田さんの略歴(日銀Webより)

昭和57年3月 東京大学経済学部卒業
昭和57年4月 日本興業銀行(現・みずほ銀行)入行
昭和61年6月 オックスフォード大学開発経済学修士課程修了
平成11年10月 興銀証券(現・みずほ証券) 市場営業グループ投資戦略部長
その後一貫して債券市場をベースにマクロ分析・市場分析のエコノミストとして活躍
平成23年7月 みずほ総合研究所 常務執行役員
令和2年1月 岡三証券 グローバル・リサーチ・センター理事長 エグゼクティブエコノミスト
令和4年7月24日 日本銀行政策委員会審議委員

(前職:岡三証券 グローバル・リサーチ・センター理事長)

詳しくはこちら→https://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_takata.htm

2024/09/09「会見では案の定市場の安定云々の質問ばっかりでした」
2024/09/06「高田審議委員の金懇講演は今後の政策調整に対しての主体性を一切感じず残念なことです」

2024/09/09

〇高田審議委員金懇会見でもまあ市場の安定の話聞かれる聞かれる

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240906a.pdf
高田審議委員記者会見
――2024年9月5日(木)午後2時30分から約35分
於 金沢市

・早速市場の安定不安定について聞かれるの巻

幹事社による「本日はどうでしたか」というのの次の実質的な質問一発目が早速これである。

『(問)高田委員にお伺いしたいんですけれども、今回の講演の中でも株式市場などの大幅な変動についてのお話があったと思いますが、現在、金融資本市場は不安定だという認識でいらっしゃるのかご見解を教えてください。』

ついでにこの人の質問続けて引用しますが、

『また、政策金利の引き上げについてもお伺いしたいです。十分な時間をかけるというご発言もありましたが、具体的なイメージはありますでしょうか。』

『そして、政策金利の引き上げについて、経済・物価や金融の情勢を検証しながら対応するのが現実的だというお話がありました。7 月に利上げしたとき、検証が不足していたという意味、そういった認識はあるのでしょうか。こちらも併せて教えてください。』

最後のはもうちょっと露骨に「その後の市場の反応を見ると検証が不足していたから大きな動きがあったのではないかとお考えでしょうか」とか聞いても良かったんでネーノ。

高田さんの回答。

『(答)不安定ということについてみると、特に 8 月以降ということになりますか、海外なかんずくアメリカ経済のところに対する見通しというんでしょうか、これがグローバルにも随分と意見が分かれたということじゃないかと思うんです。』

って回答をしているんですよね。つまり、

『そうしたところが世界的な市場のボラティリティを高めたわけで、そういう意味からすると月毎に、経済指標が大体出てくるのが主でありますので、今二巡目が始まっているような状況だと思うんです。』

ということで日銀のせいじゃないよと暗に言ってまして、それはそれでそういうのはわかるんですけれども、そういう話をしだすと、じゃあ日銀は海外要因で市場が変動している時に政策変更を躊躇するというお話になってしまう訳でして、いやそうじゃないでしょまずは国内物価の安定に対して問題があるような状況なら政策を変更するでしょというツッコミを入れたくなるわけでして、まあこれ高田さんが悪いんじゃなくて、完全に市場従属ですよってひっくり返ってワンワンと降参のポーズを取った内田副総裁のあの情報発信が悪いんですけど、米国経済に対する市場の思惑で金融市場が動いている時には政策変更しない、ってアホの極みみたいな話になってしまう訳ですよね。

『もちろん 8 月の頭ほどではありませんけれども、ややボラティリティが高まりやすい動きが生じています。同じようなモノの見方というか、アメリカ経済の減速に関していうと、やや 8 月ほど高まっているわけではありませんけれども、それに類する動きが足元も生じているということは確かなんだろうと思っています。そういう意味では多少収まってきているとは言いながらも、少しずつ変動がという動きはあるかと思っています。』

ということなんですが、そもそも論として市場なんて毎度毎度先行きの思惑で大きく動くことなんてあるわけですし、日銀の政策修正の思惑でだって大きく動くこともあるわけで、市場が大きく変動したから本来実施すべき政策を行いません、というのは無茶苦茶にも程がある馬鹿説明でして、その場しのぎにしたって言って良い事と悪いことがあるわけで、そういう最低限守るべきラインを踏み越えた内田副総裁講演は後々どころか早速禍根を残しておる次第。

さて先ほどの質問の後半2つに関してですが、

『それから政策金利の引き上げのところについては、十分な時間ということで申し上げましたけれども、この十分というところに関しては、別に特定の時間を指しているわけではございません。』

じゃあ「十分な時間をかける」って言う必要ないじゃん。

『私が今日の金融経済懇談会のところで申し上げたのは、政策金利、特に中立金利と言われているところに例えば目標みたいなものがあってそこにポンというようなことではなくて、やはり毎回毎回の経済の状況をみながら対応していくということに尽きるということだと思っておりますので、そういう意味で十分な時間をと申し上げたということです。』

毎回毎回検討するのと「十分な時間を」というのではずいぶん言ってることが違いやせんですかねえ。ということで3番目ですがまあこれは比較的どうでもよくて、

『検証をしながらというような状況であるとすれば、7 月にも私どもは調整したわけでありますけれども、そこの段階でも当然のことながら様々な検証をしながら調整を行ったということであります。決して検証が不足していたということではありません。当然のことながら今後に関しても毎回毎回、検証活動をしながら、最善を尽くして対応していきたいと思っているところであります。』

まあこれはこう回答するわな。


・市場が動いていると利上げはしないのかという露骨質問来ますよね〜

次の人。

『(問)先ほどの質問にも関連するのですが、8 月前半に大きなマーケットの変動が生じた影響を当面は見極める必要があるということですが、確認なんですけれども、やっぱり市場が不安定な間は再利上げっていうのは更なるボラティリティを生じてしまうので難しい、っていうことなのかという点が一点目です。』

露骨プレイキタコレですな。

これ従来(7月利上げ前)であれば、「諸外国と異なって日本は物価が大きく上振れするリスクが小さく、基調的物価は徐々に2%に向かって上昇している段階なので、政策調整する際に急いで実施する必要がなく、したがって内外金融市場が不安定な時に敢えて政策調整をする必要はない」でよかったのですが、7月利上げの際には為替を意識したんでしょうけど、為替とそれに伴う物価上振れリスクに思いっきり言及しているので、本来は物価上振れリスクがあるというのであれば、状況によっては金融市場がどうであれ対応しないといけないタイミングがある、ということになるんですよね。

でまあこの質問の後半、そのあたりを念頭に置いてるんだったら中々お洒落なのですが、物価の上振れリスクについて聞いています。

『二点目は、こうした市場変動はやはり経済には下振れリスクになると思われますが、一方で、ご講演では値上げの波がまた再燃して、今年度の下期には、そちらが到来するのではと、どちらかというと、物価の上振れリスクになり得る点についても述べられています。政策運営上、どちらが、より今大きいリスクというふうに認識されているのか、ご見解をお願いします。』

物価上振れがリスクとして大きいんだったら「市場が不安定」云々って説明はおかしいということになる、という諸葛孔明の罠みたいな質問ですね。


高田さんの回答。

『(答)こういう変動が 8 月以降生じたという中で言えば、今日の文言の中でも申し上げたんですけれども、きわめて高い緊張感を持って注視していくということに尽きると思うんです。』

結局これである。

『ですから、当然のことながら、基本的な考え方としては、物価それから経済の見通しが実現していくということであれば、金融緩和の度合いをその時々に応じて調節していくというのが基本姿勢であることは間違いないです。』

とは言ってますが、

『ただ一方で、金融とか資本市場の動向というものが、当然その前提である大目的である物価それから経済の見通しのリスク等に及ぼす影響が生じるということであるとすれば、当然、そこのところを考えざるを得ないということになるわけです。』

はいはいチキンチキン。

『あくまでも、基本的な姿勢としてわれわれは考えているわけでありますが、条件付きであるということはもう間違いないというふうに思っていますので、そういう意味で毎回毎回検証していくということになると思っています。』

「条件付きであるということはもう間違いない」とはこれまたヘイヘイピッチャービビってるよビビってるよというやつですな、南無三。

リスクに関してはこんな回答をしていまして、

『それから当然のことながら、いろんなリスクがあるわけでありまして、例えば、物価においても、4 月とか 10 月のタイミングにおいて値上げがあるということは、当然のことながらリスクであります。』

節子、それはリスクちゃう、好循環や。

という筈なんですけど、それをリスクとか言ってしまっている時点でナンジャソラというか、まあ2%物価安定目標を標榜しているのに肝心の脳の方がそっちに順応してないんじゃないのかね、とこの部分を見て思ってしまいました。

『また、われわれもいろいろヒアリング等をしておりますと、10 月のところにいろんな品目の値上げがもう既に予定されているとか、これも完全に決まったわけではないんでしょうけれども、ある程度こうしたものがあるというのはリストとして上がっているのは確かであります。』

で?

『ただ、こういう動きというのは、われわれもずっと考えておりましたけれども、為替のところが円安に振れている中で、上振れしやすい部分もあったと思いますから、そういう面でコストプッシュの要因で、下期に向けてもというところもあったと思います。為替のところもこの 1 か月間で変動もしておりますから、そういう面も受けた中で、どういう方向になるのかというところに関しては、また新たな目で見る必要も出てくるんだろうなと思っています。』

この高田っちの言い方ですと、全然好循環の存在を意識していないような説明になっていまして、いやそれって違うんじゃないのと思ってしまいます。

『ですから、物価ですとか、リスク要因とか、その辺のところについては、必ずしも上か下かという、白か黒かというものではないと思うんですけれども、多少この 1 か月間で変動があった部分、もしくは環境の変化があった部分もあるので、その部分をもう一回見極めながら考えていきたいと思っているところです。』

まあさっきからずっとそうなんですが、高田っちってハト派とかタカ派とかいう以前にチキン派という方が適切なんじゃねえのって感じでして、節目節目の説明がチキンで、しかもここまでの質問でも結局方向性を持った回答は全然していない訳でして、うーん何なんですかねえって感じです。


・という訳で好循環に関して質問されるのだが

こんなんありました(この質問の後半部分は次に)

『(問)二つ伺いたいと思います。一つは、7 月会合時点と比べた賃金と物価の好循環の強まり度合いは、今、いかがでしょうか。そして、今後それを確認するために、どういう指標をご覧になるのか伺えたらと思います。(後半割愛)』

なるほど。では高田さんどう回答しましたかと言いますと、

『(答)7 月会合の時の物価と賃金の好循環というところに関しては、今日私の金融経済懇談会の中での議論というんでしょうか、そこのところも企業のバランスシートですとか、それから損益計算書、こうしたところの好循環、もしくは前向きな動きというふうに言ってもいいかもしれませんね、そうしたところを中心に申し上げましたので、そういう点で、私はあまり変化があるとも思っていません。』

進展してないのかよ、と思ったら

『そういう意味では、着実にそういう前向きな動きになってきているんじゃないかなと思っているところであります。』

うーん結局何が言いたいんだろう、と思いますが高田さん返す刀で、

『ただ、先ほど頂いた質問の中の議論の繰り返しにはなってしまうんですけれども、こういう中で物価、それから経済の見通しというところに関して、当然、様々なリスク要因が与える影響も出てまいります。』

うへーやる気ねえな。

『先ほど申し上げた損益計算書、バランスシートというところにも出てまいりますので、その辺のところについては予断なくというか、丹念にみていきたい。特に、こういう変化の時期においては、高い緊張感を持って注視していきたいなと思うところであります。(後半割愛)』

何ちゅうか結局なんも答えてないのよね高田さん・・・・・・・


・中立金利は案の定質問されるの巻

氷見野さんの金懇で中立金利についての愚劣な質疑に悪態をついたのが聞こえたのかどうか知らんですけど今回中立金利の質問これとあと1個だけでしたなwwwwwwwwww

『(問)(前半割愛)二点目は、今朝の講演で、まだ緩和的な金融環境はなお継続しているとおっしゃったんですけれども、高田さんがお考えの中立金利の水準は、数値として、今どれくらいでしょうか。』

中立金利に達しているだの達していないだのというのを講演でお話をしたんならそら質問するよね、というお話ですがこの回答は・・・・・・

『(答)(前半割愛)二番目のご質問ですけれども、緩和的な状況ということで今日の懇談会の中でも、実質金利が相当低いというような話をさせて頂きましたし、また一方で、中立金利という概念を考えた場合に低いのではないかということを申し上げました。』

これもまあ元はと言えば日銀大本営が最初のマイナス解除の時に「金融政策は緩和的な状況が続く」ってのを(長期金利上昇が怖いから)積極的にアピールしてしまった(その結果ドル円が160円に飛んで行ったわけですが)のが「やり過ぎコミュニケーション」であり、その後円安是正の意味もありつつ政策調整を行う際に、当初の「緩和的な状況云々」との説明との整合性を取るために持ち出して来ているのがこの中立金利だの実質金利だのの話でして、本来はもっとフワッとした形で「そうは言ってもまだ緩和的ですよね、今の状況見て引き締め的とは思わないよね」くらいの定性的な話にすればよかったのに、実質金利は大幅なマイナス、みたいな定量的な物言いをするもんだから、毎度毎度皆さんがこうやって質問される羽目になっている訳ですよ。

ということで高田っちも、

『ただ、この議論は、いろんな方からご質問を頂くことになるんですが、』

とイヤミの一つもぶっこみたくなるわけですなw

『中立金利という概念にはなかなか幅があって、ピンポイントでということでもないんです。』

はい。

『今日の私の資料の中にも、これだけの幅みたいなところでの議論はありますけれども、逆に言えば、相当幅があるんだよということを皆さんに申し上げたかったというところが趣旨でありまして、』

んだんだ。

『あまり明確に水準といいましょうか、それから私もこの半世紀ぐらい市場をみておりますが、正直申し上げて、この中立金利という概念をこれまで議論してきて、理論的にはある概念ではあるんですが、実務的にはなかなか難しい概念だなというのも実感しているところであります。』

これは仰る通りなのでして、つまりはこの中立金利だの実質金利だのを前面に押し出して説明をしまくっている大本営に問題が大有りなんですよね。

『ですから特に日本のように、今日の私の懇談会の中でのテーマでもあるのですが、過去という中でこの 30 年間ぐらいの[金利が]もうほとんどゼロもしくはマイナスのような状況の中で、いろんな試算をしてもですね、パッとした議論というのになかなかなりにくいというのが現実の問題です。』

『海外のように比較的アップダウンというか、シクリカルに変動がある状況であれば、一定の水準というところにある程度、この 10 年、20 年の中で線を引くことも、一つの対応としてはあり得るということかもしれませんが、』

ということでして、海外のようにもともとが経済のサイクルが通常ベースで回る中で、物価安定目標近辺でインフレ期待が安定しており、実際の物価もサイクル描きながら推移している、という時点でやっと中立金利の話が実務的にできないわけでもない、という世界になるわけで、これからそれをしようという日本では中立金利の話を持ち出してくるのに無理がある、ってお話ですわな。つまり、

『残念ながら日本の場合は、今申し上げたような 30 年間、こうした状況の中での対応ということからしますと、その水準というのは相当慎重に、もしくは幅を持って考えていかないといけない概念であるし、実務的にこれということにはなかなかなりづらいというのが一つの考え方なんではないかと思っております。今のお答えのところもそれが趣旨だということで申し上げればというふうに思っています。』

まあさすがにここの説明は高田さん分かりやすく説明していますよね、という感じでした。金融政策運営に関わりそうな部分では回答を華麗に逃げているようなムーブでしたがさすがにこっちはね。





2024/09/06

〇高田審議委員の金懇講演は今後の政策調整に対しての主体性を一切感じず残念なことです

HTML版
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240905a.htm

PDF版
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240905a1.pdf

でまあ今回HTML版とPDF版が同時公表されていまして、コピペにはHTMLの方が便利なので
引用はHTML版から行います。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240905a.htm
【挨拶】わが国の経済・物価情勢と金融政策
石川県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 高田 創
2024年9月5日


・案の定ではあるが今後の政策調整を主体的に進めようという意思は見られません

前回の高田さんの金懇は2/29に実施されていまして、2/29と言えば1月決定会合で予告ホームランチックなものが打ち出されていた後、ということでして、それまで高田さん何で守りに入っているのかさっぱり意味不明ながらまるっきり踏み込んだ発言とかオリジナリティある発言とかしなくて、債券市場のマーケットエコノミスト出身者というカテゴリー(過去は水野温氏さん、佐藤健裕さんという寄らば斬るぞというファンキー(褒めてる)な方々でしたな)なのに何ですかこれはというテイタラクでございましたが、2月の金懇少しだけ踏み込んでいたのでまとめでこんなこと書いたんですよね。

(3月1日に書いた駄文より引用開始)
「しかしまあ何ですな、この前の金懇でも高田さん歴史的な話をしてた割に別に面白い話があった訳でもなくて、多角的レビューということで25年レビューの話をしているのですが、あーたの25年はナンダッタノカと小一時間問い詰めたくなるのをまあ我慢しておるというような状態ですわwwwwwwww

あ、あと会見でも微妙に踏み込み気味の言い方になっていまして、これはまあ「緩和的な環境が続く」というのが効きすぎて特に他市場がヒャッハーヒャッハー言ってるのに対してちょっと水を差しておく必要があるんじゃないか、という人形使いの意志らしきものを感じたのはアタクシの超個人的偏った感想ですが一応そういう読み筋ですというのを申し上げておきます(この前の植田さんの国会答弁も然りで)」
(ここまで3月1日に書いた駄文)

・・・・踏み込んではいるもののご自身の意思というよりは腹話術人形遣いの意図とかアタクシも大概にボロカス申しておりますが、まあ高田さんへの期待値の高さがあったからこうなっておるわけでございますな。

でまあそんなこんなで、今回もそんなに期待してはいなかった(むしろ今回の金懇で踏み込みが出るのを期待している市場の一部の方が健忘症にも程がある)のですが、案の定今回も小見出しの通りで、「主体的に金融緩和の修正を推進しようという意思を全く感じない」という素敵な金懇挨拶(会見もそうですがそちらは会見録でましたら週明けにでも)になっておりました。


ということでまとめを先に出オチにしてしまいましたが中身を鑑賞鑑賞。

・輪番に関しては公式説明をしたあと積極的な話をするかと思えば全然しないのが高田っちクオリティ

てな訳で『2.経済・物価情勢』はかっ飛ばして『3.最近の金融政策運営』の部分から参ります。このコーナーを最初から引用しますが、

『次に、金融政策運営に対する考えをお話しします。日本銀行は、今年3月の金融政策決定会合で、「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、金融政策の枠組みの見直しを行いました。イールドカーブ・コントロールの枠組みおよびマイナス金利政策といった大規模な金融緩和はその役割を果たしたことから撤廃し、短期金利の操作を主たる政策手段として、「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現に向けて、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営することにしています。』

ってのはまあどうでも良いのですがこの次に輪番の話があって、

『更に、7月の金融政策決定会合で、市場参加者の意見も参考にしつつ、2026年3月までの国債買入れの減額計画を決定しました(図表8)。長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、国債買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切との考え方に基づき、相応の規模となる減額計画を策定したところです。』

とは言ってるんですが、この次がもう腰が砕けるわけでして、

『ただし、日本銀行のバランスシート規模は大きく、今後もかなりの期間にわたってバランスシートの縮小を続けることが予測されるため、現時点では、最終的な国債保有残高やバランスシートをどこまで縮小するのが望ましいかを議論することは難しい点も指摘したいと思います。海外中央銀行が既に保有債券額の削減を進めてきており、こうした事例も参考にしていく必要があります。』

なんすかこのやる気のない説明は、というところでして、いやそもそも論として通常の金融政策運営を行うにあたっては、成長通貨供給に必要な残高+短期金融市場のオペレーションの都合上必要な当座預金残高の底だまり部分以上に長期国債を買う意味は一切存在しないのですから、債券市場とかマネーマーケットとか見てたという触れ込みの人だったら初手はその原則論をぶち上げて、その後に現実論としまして黒田とかいうスカポンタンが日銀当座預金のうんこタワーを積み上げてしまったので、これを一気に崩すとそこら中にうんこが飛び散って悲惨なことになるからそういう訳にはいかなくて、という話をしろよ(うんこタワーとか金懇で言ったら事故だけどwww)という流れで話をするもんだろというところでして、初手でべき論を言わない時点で腰の引け方が半端ないのがよくわかりますね。


・政策金利の調整に関しても腰の引け方が半端ないのだがその前に実質金利論があったので雑感

とまあ輪番減額に対して「ワイが主体的に減額の議論をリードする」とかいうような気概を1ミクロンも感じない残念なコメントの次に政策金利の方の話になるのですが、

『加えて、主な政策手段である短期金利については、0.25%程度への引き上げを決定しました(図表9)。これまで示してきた経済・物価見通しに概ね沿って推移する一方、物価上振れのリスクに注意する必要がある状況を踏まえ、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現との観点から、金融緩和の度合いを調整することが適当と判断しました。』

公式見解通り。

『政策金利を引き上げましたが、金融緩和度合いを評価するうえでは、実質金利と比較する対象となる自然利子率の把握が重要となります。』

『もっとも、自然利子率は、現実の世界で直接観察できるデータではなく、様々な手法で推計した結果をみても大きなばらつきがあり、足もとの水準をピンポイントで把握することは極めて困難です(図表10)。』

自然利子率の把握って金融政策運営の実務的観点から言えばそれ無理って話で、金融政策を実施していく中でその波及状況と、経済への影響を見ながら今の政策が緩和的なのか中立的なのか引き締め的なのかを結果から逆算して判断していく(ので自然利子率の把握に無駄に拘ろうとすると政策が常にビハインドになってしまうリスクがある)しかないですし、インフレ期待がインフレ目標近辺で長期にわたってアンカーされていて、実際のインフレ率もインフレ目標近辺でサイクルをもって回っている、というような一種の定常状態だったら自然利子率が何となく推計できるかもしれないけど、今の日本の場合はインフレ期待を変化させようとしている(もうしちゃってるんじゃないか説もあるがそこらはさておきまして)という政策をしているんですから、そもそも論として自然利子率云々の話を持ち出すのは話がややこしくなるだけだからあんまりこれ言い出さない方が良いと思うのです。

では何で大本営はこういう話をするのかといえば(っていつの間にか高田っちじゃなくて主語が人形遣いになっていますが気にしない気にしない)、以下にありますように、

『ただし、こうした様々な試算結果と比べても、足もとの実質金利は自然利子率を下回っており、政策金利引き上げ後も、緩和的な金融環境はなお継続しているとみています(図表11)。』

結局ですね、大本営が実質金利の話を持ち出しているのって、マイナス金利解除直前から続いている複雑骨折コミュニケーション、すなわち「マイナス金利を解除しても緩和的な金融環境を続けます」⇒「今後見通し達成が進展してきたら利上げを継続します」っていう流れ、これ初手で「緩和的な環境を続けます」を強く言いすぎたのが元凶で、3月は兎も角4月展望で軌道修正しないといけなかったのに、4月展望でさらに緩和アピールを加速させてしまったようなコミュニケーションをしたのがすべての間違いのもとなんですけど、まあこの複雑骨折コミュニケーションの帳尻を合わせに行くため(と政治方面からうっとおしい蠅が飛んでこないようにするため)に「利上げしても緩和的な状態は続いている」アピールをすることになってしまい、そこで実質金利の話を出すことになってしまったので、結果的に中立金利はいくらか、というデギンドス副総裁の頭髪並みの不毛な質疑応答が繰り返され、このような説明が行われることになっているんですよね。

とまあそういう訳ですので、政策調整の過程において実質金利がどうのこうのって話はこれからも説明で使うんでしょうけれども、あくまでも金融政策アクションという結果から後付けして説明している道具に過ぎないのであって、日銀が実質金利の話をしているからと言ってクソ真面目に実質金利あるいは中立金利水準の推計をしようとかいう作業を下々の市場の中の人たちが行うのは、カシュカリ総裁の頭髪並みに不毛な作業になると思うの。まあ目くらましの説明に便利なのはその通りなんで、あくまでも目くらましだと思って使うんだったらそれはそれでアリだと思いますけどね、と身も蓋もない中立金利雑談でした。


・追加の金融政策調整(利上げ)に関しては腰が引けてる引けてる

すいません脱線しました話戻って高田っちの金懇挨拶のこの先に参りますと、

『8月前半に株式・為替相場の大幅な変動が生じその影響が残存するだけに、当面はその動向を注視し影響を見極める必要があります。そのうえで、緩和的な金融環境が続くもと、私自身としては、先行きについても、物価が概ね見通しに沿って推移するもとで、堅調な設備投資や賃上げ、価格転嫁の継続など「前向きな企業行動」の持続性が確認されていけば、その都度、もう一段のギアシフト――金融緩和度合いの更なる調整――を進め、言わば「金利のある世界」にしていくことは必要だと考えています。』

と、一瞬高田っちに自我が芽生えたかとおもってこれはイプセンもニッコリという話になるのですが返す刀で、

『ただし、自然利子率のピンポイントでの把握が困難なもと、「物価安定の目標」実現の時期に向けて一定の中立金利の水準を念頭に政策金利を引き上げていく訳ではなく、十分な時間をかけつつ、その都度、政策金利引き上げの経済・物価・金融情勢への影響を検証しながら対応するというアプローチが現実的ではないかと考えています。』

お、おぅ・・・・・・・・

これね、まあ結局のところ大本営の説明と同じことになるんだけど、大本営理論というか今回の高田っちの説明でも、直前のところで「ただし、こうした様々な試算結果と比べても、足もとの実質金利は自然利子率を下回っており、政策金利引き上げ後も、緩和的な金融環境はなお継続しているとみています」って仰せな訳でして、図表11とかいうのを見ると(PDFバージョンでみてちょんまげ)雑な目の子でみても実質短期金利▲1.7%くらいだし、実質長期(10年)金利は▲0.6%くらいなんですが、図表10の日本の自然利子率、ってのが▲1.0%〜+0.5%のレンジになって居ますから、少なくとも途中までの政策金利調整は高田っちのいう「慎重なアプローチ」をしなくても良い筈だし、逆に慎重にやりすぎて政策がビハインドするリスクがあるから今回利上げしたんじゃなかったっけ、というお話になるわけですな。

ということですので、この高田っちの慎重アプローチ、っての実は大本営理論とは今の金利水準から暫くの間の調整に関しては相性悪いんですよ。高田っちが今の政策金利水準は中立金利にかなり近いところにあって今の政策は実はかなり中立に近い、という認識であれば慎重アプローチで良いんですけど・・・・・・・・・

とまあそういう訳ですので、残念ながら高田っちにおかれましては政策調整に関して及び腰という感じでして、少なくとも利上げについて積極的に主導するということはなさそうだな、というのがアタクシの勝手な結論になるわけですな。まあゆうてなんか明確な理屈をもって慎重派という話でもないので、大本営が政策調整するぞと言えばイエッサーってなるでしょ(あくまでも個人の感想です)というところで。

さらに、

『振り返ると、1970年代の変動相場制への移行後、先進国の金融政策スタンスとそれに対応する景気サイクルは概ね連動していましたが、足もと、内外の景気サイクルは異なります。』

単に日本の政策がクッソビハインドしているだけのような気がしますがそれはさておきまして、

『米欧では利下げに向けた動きが生じていますが、これまでの利上げが急だっただけにその影響が時間を経て生じる場合、わが国の経済を下押しするリスクがあり、同時に、金融政策スタンスの違いから金融市場に変動が生じる可能性もあるだけに、当面は内外の動向を慎重に見守る必要があります。』

と金融政策運営のコーナーをこのように締めておりまして、フォワードルッキングに政策を運営して行きましょう、というスタンスは残念ながら感じられず、言ってることが全部リアクティブというのが誠に残念無念といったところですが、何でこんなにチキンちゃんなんでしょ高田っちは・・・・・・・


・おじいちゃん満州の話はさっきもしたでしょ

ちなみに次のコーナーの小見出しが『4.バブル崩壊からの「過去・現在・未来」』となっていて、過去の金懇で毎回この話題をしておりまして、いやまあ確かに金懇は毎回別会場でやるから聞いてる人は別なんで同じ話をしちゃあいかんという法は無いので別に良いんですけど、さすがに毎回この話を読まされますと読んでる方としてははいはいおじいちゃん満州のお話はさっきもしたでしょお昼ごはんの時間ですよって申し訳ないがなってしまいますな。
なお、その話の中で思いっきり、

『私としては、ノルムの転換には1つの世代を形成する10年単位の時間が必要な可能性を踏まえると、日本銀行が長年にわたって粘り強い緩和姿勢を続け、資産価格の改善や極端な円高からの反転を支えたことが、バブル崩壊からの歴史的な変化となるノルム転換の変曲点を迎える「下地」となったと捉えています。』

ということで、異次元緩和を思いっきり肯定しているので(ノ∀`)アチャーって感じで読んでおりましたが、全体のお話自体はいつもの奴なので割愛します。

あと、最後のところに長期国債買入の話があるのですが、お前は何を言ってるんだという話ではあるのですが時間も無くなりましたし、どうせ主体的に減らそうという話ではない(読めばわかりますが無茶苦茶腰が引けている)ので引用割愛します。

とまあそういうことで。