野口旭 審議委員
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野口さんの略歴(日銀Webより)
昭和57年3月 東京大学経済学部卒業
昭和63年3月 東京大学大学院経済学研究科第2種博士課程単位取得退学
昭和63年4月 専修大学経済学部講師
平成3年4月 専修大学経済学部助教授
平成9年4月 専修大学経済学部教授
平成15年4月 イェール大学国際地域研究センター客員研究員
令和3年4月1日 日本銀行政策委員会審議委員
詳しくは(もへったくれもなく日銀HPをそのまま貼っているので同じです)こちら→https://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_noguchi.htm
2024/10/16「コミュニケーションの説明がやばいんですが利上げに関する考えは「半年ごとの利上げ」なんだよな〜」
2024/10/09「長崎金懇の輪番の説明が無茶苦茶すぎます(その2)
2024/10/04「長崎金懇挨拶での輪番の説明が驚愕のトンデモ理屈(その1)」
2024/04/23「佐賀金懇だがリフレ派が「賃金上昇を伴う物価上昇」というのは浜田先生の言ってた話と全然違いますがw」
2024/10/16
〇そろそろ安達審議委員の金懇があるので野口審議委員の長崎金懇ネタの残りを成敗
輪番に関する面白理屈を読んで仰天してしまいその後の話をよんでいませんでしたが。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko241003a.htm
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
長崎県金融経済懇談会における挨拶要旨
HTML版から引用します。
・マネタリーベース直線一気理論とは何だったのか(再掲)
金懇の『3.金融政策』の長期国債買入に関する部分の方が長くて、理屈がハイパー謎理屈だったのでそこを重点的にネタにしましたが、まあ長期国債買入の話をせっせとするのはマネタリーベース直線一気理論とは相性が良いのでそれはそれ。
しかし笑ってしまいますのはこの長期国債買入に関しての部分を再掲しますと、『(2)長期国債の買入れ減額とその基本的な考え方』の後半で、
『上述のように、「潤沢な準備預金」を前提とした現在の政策レジームでは、仮に日本銀行のバランスシートが現状のままであったとしても、政策運営には何ら制約や障害は生じません。したがって、バランスシートの縮小は十分な時間をかけて慎重に進めていくことが可能であり、それが市場の安定にとっても望ましいといえます。』
ってなっていましたが、マネタリーベース直線一気理論はどこに逝ったんだというお話をしましたけれども、まあその続きの部分になります。
・コミュニケーションの問題に関する説明ですがこれは大本営のレクを野口さんが解釈しているのかしら
『日本銀行はまた、7月の政策決定会合で、政策金利を0.15%程度引き上げ、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.25%程度で推移するよう促す」ことを決定しました。なお、後述の理由から、私自身はこの決定に反対しました。』
でまあその後の市場変動に関してですが、
『この決定の後に、市場では円高と株安が進行し、その直後に明らかになった米国の雇用状況悪化によって、その動きはさらに加速しました(図表11)。結果としてみると、この7月の政策金利引き上げは、1987年10月に起きたブラックマンデーの再来を思わせる急激な株価下落の要因のひとつとなりました。』
日銀公式が認めているのか野口さんが言っているのかが判然としませんが、まあこんなこと言ってもセーフという辺りが、日銀大本営が8月頭の株安にビビっているというのがよくわかる結果になっているのですが、そもそも論として過大な円安による株高なんだから円安是正すればこうなるの当たり前で、こんなんで一々ビビっていたら正常化進まないし、正常化進まなければ過大な異次元緩和政策の副作用はどんどん蓄積するだけなんですけど、どうもチキン植田総裁は5年間問題を先送りして誤魔化そうとしているのではないか疑惑が漂ってまいりますな。
いやまあ黒田にしたって最後の1年間はどう見たって物価目標達成大勝利宣言と共に出口着手ができるはずだったのですが、あの黒田をしてもいざ出口をやろうとするとビビって後任に丸投げして逃げ切り大作戦を敢行して逃げ切るわ勲章もらうわ私の履歴書を書くわとやっていた訳ですから、黒田よりも腹が据わってなさそうな(個人の偏見です)植田和男大先生が出口とかできるわけがない、と思えば大本営も隙あらば先送りってことになるんでしょうかねえ。いや大本営は今後も続くんだから総裁の逃げ切りに一蓮托生せんでもええじゃろとおもいますけどねえ。
などとこれだけの記述で妄想にすぎるといわれそうですが先に行きまして、
『この市場攪乱の原因については既にさまざまな議論がありますが、私自身は、問題の根底には「経済の現状に関する日銀自身の見方」と「その日銀の見方についての市場の認識」との間の齟齬があったのではないかと考えています。』
何となく大本営のレクっぽい説明が始まります。
『この7月の政策決定は、私を含む少数の異論はあったものの、日本銀行のこの時点のおよそのコンセンサスが、「経済・物価はこれまで日本銀行が示してきた見通しどおり展開しており、輸入物価が上昇するなかでの物価の上方リスクも考慮すると若干の緩和縮小が適切」というものであったことを意味しています。』
さいですな。
『ちなみに私自身は、「賃金上昇の浸透による経済状況の改善をデータに基づいてより慎重に見極める必要がある」という観点から、この利上げには反対しました。それは私が、物価の基調はまだ2%に届かず、インフレ期待も2%にアンカーされていない以上、日本経済は依然として下方リスクにより脆弱であると考えていたためです。』
アタクシは賛同いたしかねますがこれはまあこれは一つの主張ですので。
『私は他方で、状況は着実に進展しているため、今後のデータ次第では遠からず政策金利の調整が必要になる可能性はあるとも考えていました。』
で、それはさておきこの「齟齬」の話ですけれども、
『その後の市場の混乱は、この日本銀行のコンセンサスが市場には必ずしも十分に浸透してはいなかったことを示唆しています。』
そら大本営がハトハトチキン情報発信ばっかりしてるんだもん。
『市場はおそらく、「日銀は景況をかなり弱めに見ている」と考え、したがって利上げのペースもきわめて慎重なものになると考えていたはずです。』
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お前は何を言ってるんだという話でして、「日銀はビビりなので政策金利を上げられない」と見ていただけのお話だし、ハトハトチキンな説明ばっかりしていたのも日銀というか植田総裁が主でして、3月以降のハトハト情報発信がやりすぎだったということに尽きますわな。
『日本銀行の7月会合での決定とそこでの見通しの提示が市場に材料視されたのは、それがこの「日銀の見方についての市場の認識」とは大きく食い違っていたためと理解されます。』
挙句に7月会合では急に変なもんでも食ったかのように(当初は遂に植田さんが覚醒して真人間に戻ったのかとアタクシも勘違いしそうになりましたがw)強気なことを言い出した「日銀の情報発信の振れ幅の大きさ」によるものでして、市場の認識がどうのこうのとか言ってるのに関しては、そもそも学者先生の野口さんが市場のことなんぞよくわかっている訳もないので(思いっきり個人の偏見です)、大本営のレクを野口さんが消化したらこういう説明になったのと推察されますが、まあ野口さんをしてこういう説明をさせている時点で日銀大本営が自分らの「情報発信の振れ幅の大きさ」について理解していないのか、理解していても引くに引けなくなって意地でも反省の弁を述べないのか、どちらだかわかりませんけれども、まあ反省していないな、というのがわかるかと思います。
『この経験からは、主に二つの課題が浮かび上がってきます。』
反省していない大本営がどういう課題を言っているのか、というのは引かれ者の小唄なので聞いてみましょう。
『その第一は、政策運営に際しては、市場の側が「政策の背後にある日銀の考え方」をどう捉えているのか十分に把握しておくことが必要という点です。』
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
自分たちのブレブレ情報発信(植田時代の悪癖)や次から次へと新しいその場でしか通用しない屁理屈を繰り出して説明のゴールポストを動かしまくる(こっちは黒田末期から今まで)というのを全部棚に上げて「我々高級頭脳が説明してあげているのを理解しない市場の愚民どもが悪い」頂きましたwwwwwwww
まあナメトンノカという話ですが次行きます。
『第二は、経済状況の進展などによって日本銀行のコンセンサスに変化が生じ、市場が把握するそれとの間に大きな齟齬が生じる可能性がある場合には、そのギャップを埋めるべく、日本銀行の側から可能な限り丁寧なコミュニケーションを行う必要があるという点です。』
お前らの説明って全然前と脈絡のない屁理屈繰り出してくるだけじゃん何が丁寧な説明じゃ、というお話ではありますが、まあこんなこと言ってるんですからある日突然過去の説明と整合性がない(あるいは大昔言ってたのにすっかり言わなくなってお蔵入りしてたはずの屁理屈が突如復活して)話をおっぱじめる、というのは全然変わらんぞな、というのが読み取れると思います。
『今後の政策変更が市場の無用な混乱に結びつかないようにするためには、そのようなコミュニケーション上の努力が必要不可欠と考えます。』
無用の混乱の原因は9割9分までお前らのクソコミュニケーションだがな、という所で、この辺りの部分ですが、先般の田村審議委員による真摯な反省とはまるで違っていますけれども、まあこれは普通に考えて大本営が野口さんに対してレクをするとこういう説明になっている、ということを示している訳でして、お前ら外では立派なこと言っても所詮はこれかよ、という中々悲しいことが判明するという意味では中々有意義な金懇挨拶ではなかったかと思います、アイヤー。
なお、この部分は妄想成分で構想されている個人の意見部分がありますこと念のため申し添えます。
・ということで会見ですが利上げに関する考え方はハトハトなのかというと・・・・・
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk241004a.pdf
野口審議委員記者会見
――2024年10月3日(木)午後2時30分から約30分
於 長崎市
まあこちらはおまけなんですけど、ちょっと目に付いたのは「利上げには本質的に反対している訳ではない」って所ですね。
『(問)一点目は、ご講演の中でもおっしゃっていた、今の粘り強く緩和的な環境を維持するべきだ、ということなんですが、実質金利が今、非常に低い中、短期金利を数回引き上げても、緩和的な環境を維持できていると言えなくはないんですけれども、野口委員の考えでは、利上げそのものがやはり今は拙速であるということ、そういう理解でよろしいでしょうか、というのが一点目です。(後半割愛)』
この回答がやけに長いのですが、
『(答)まず最初の問題でありますけれども、私も基本的には、現在の金融環境というのは、まだまだ十分緩和的であるというふうに考えますけれども、緩和的だからもう少し調整していけばいいという考え方ももちろん理解はできます。ですから、もう少し調整の余地はあるというのも可能性としては否定できないというふうに考えますが、』
とまあ以下滅茶苦茶くどいのですが、要は利上げに本質的には反対していないという話になっていまして、
『ただ、なかなか難しいのは、そうしますと、要するに緩和的かどうかというのはあくまでも中立金利とですね、つまり、長期的に適正な金利とはどこなのか、ということの対比で考えなければいけないわけであります。けれども、その中立金利、あるいは、それを実質化して言えば自然利子率というもの、これはですね、あくまでも仮想的な概念でありますので、実際にこれを確認するということはできないわけですね。』
『いろいろなシミュレーションを日銀でも行っておりますけれども、結局のところは、それである程度の範囲でこのぐらいだろうということしか言えないというのが現状であります。そういう意味では、実際に中立金利というのは、事前に決め打ちすることはできないと。ということであれば、一段階利上げしたら様子をみて、その影響というのを確認しながら、これなら大丈夫だという段階でまたやっていくというような、非常にほふく前進的と言うんでしょうかね、そういうやり方で利上げをせざるを得ないというのが現実ですので、そういうことになるんではないかというふうに思います。(後半割愛)』
この説明ですと利上げして半年くらい様子見て大丈夫だったら利上げする(金融政策の波及のラグを考えて)というのに整合するんですよね。
もちろん半年間オントラックである、というコンディショナルな話ではあるのですが、この野口さんの説明を敷衍しますと、7月利上げして様子見てオントラックなの確認出来たら1月(半年後)の展望レポートのタイミングの点検作業の結果利上げする、というの全然おかしくない理屈になっていまして、つまりは野口さんであっても別に追加利上げダメゼッタイとかいう話ではない、というのは気をつけておく必要があるんじゃないのかね(こっちは大本営レクじゃなくてどう見ても野口さんの独自見解でしょうから)と思うのでした、というのが野口さんの金懇ネタ最終成敗なのでした。
2024/10/09
〇野口審議委員金懇ネタ遅くなりました(なお今日でも終わらん模様)
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko241003a.htm
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
長崎県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 野口 旭
金懇挨拶の中の長期国債買入に関する謎にもほどがある説明のところで中断しておりましたので再開します。
・アホみたいな買入を継続しておいて何が「長期金利の形成は市場に委ねる」じゃ
『3.金融政策』の『(2)長期国債の買入れ減額とその基本的な考え方』ですな。その前の部分で驚愕の『つまり、この政策手段の観点からは、大規模金融緩和からの出口は既に終了しているといえるのです。』という説明があった直後からになります。
『日本銀行は7月の政策決定会合で、市場参加者との意見交換も踏まえ、2026年3月までの長期国債買入れ減額計画を決定しました(図表10)。その基本理念は、「予見可能性と柔軟性の両立」にあります。』
そもそも基本理念が頭おかしくて、基本理念は「長期国債の大量買入れを止める」だろうがアホなのかとしか言いようが無いんですよね。次。
『この予見可能性は、「月間の長期国債の買入れ予定額を原則として毎四半期4千億円程度ずつ減額する」という計画そのものに具現化されています。』
この後が酷くて、
『これは、長期金利の形成が市場に委ねられた以上、今後は政策的な意図による国債買入れの増減は生じないことを意味します。』
そもそもが長期金利をゼロ近傍(最後の時点では許容上限が1%くらいだしストリクトな上限ではない、になっていましたが)にするために実施していた長期国債の買入の規模を碌すっぽ減らさないのに「長期金利の形成が市場に委ねられた」ってのが理屈としてちゃんちゃらおかしいわけでして、往年のロシア帝国の農奴解放みたいなお題目だけで実態が伴わない(むしろ状況が悪化する)ことしてるんじゃねえよというお話。まあ減額すると大変だ―とかのたまう政策依存ジャンキーが市場にそれなりにいるのも問題なんですけどね。
『他方で、市場急変時には買入れ額を機動的に変更するといった部分では、その計画には一定の柔軟性も担保されています。それは、市場の回復が重要とはいっても、それがむしろ市場の攪乱を助長あるいは放置する結果になっては無意味だからです。』
固定相場から変動相場に移行する際にはリプライシングが起こるのが当たり前なのですが、そらまあ馬鹿みたいに急落されたら困るとかいうのは気分としてはわかるのですが、結局日銀のやってることは馬鹿みたいな急落を危惧しているといいつつガリガリの市場抑圧を継続しているのでして、もうねって感じなのですが、この先もなんか酷くて・・・・・
・バランスシートの減額に時間がかかるから大規模国債買入は長期化するという無茶苦茶な説明いただきました
『今回の計画のもう一つの注意点は、その暫定性にあります。』
とりあえず買入の減額がそこまで積極的ではないけどこれは暫定的、とでもいうのかと思えばさにあらずで以下驚愕の説明が展開されます。
『それは、わが国における中央銀行バランスシートの最適な規模を現時点で確定することが困難なためです。』
で??
『その規模がどの程度であれ、わが国の場合には、2026年3月までにそこに到達する可能性はほぼありません。』
そら今まで買った長期国債の満期到来時期を考えたらそうなるわな(また集計しないと)、という話なのですが、この次にすさまじく謎な理屈が繰り出されてきます。
『そのため、今回の計画は必然的に、それ以降の延長を視野に入れた暫定的なのものとなります。』
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)
いやちょっと待てなんだよその理屈。
そもそも論として適正なバランスシートの規模に縮小するのに今の時点で時間がかなりかかるという認識だったら、バランスシート縮小をドチャクソ遅らせる大量の長期国債買入は早急に是正されるべきなのに、何で2年後にもさらに延長する気満々の説明になるんだよという話で、野口さんオリジナルなのか大本営謹製屁理屈なのか、大本営の説明を聞いて野口さんが生兵法振り回しているのか分からんですけど、説明が根本的に意味不明でして、いやそういう人たちに長期国債買入の決定とかさせているのかと思うと頭痛いわけです。
でまあそういう話なので、
『上述のように、「潤沢な準備預金」を前提とした現在の政策レジームでは、仮に日本銀行のバランスシートが現状のままであったとしても、政策運営には何ら制約や障害は生じません。』
しとるわヴォケというのは散々悪態をついております通りですが、同じように長期国債を大量に買い入れているのに、方やYCCでござるだったのが急に市場の金利形成が自由に進むとか言ってるのもう無茶苦茶なんですが、
『したがって、バランスシートの縮小は十分な時間をかけて慎重に進めていくことが可能であり、それが市場の安定にとっても望ましいといえます。』
という意味くじわからん説明で長期国債買入の話が締められているのですが、いやまじめな話こんな理屈を繰り広げる人と政策決定するのってワイならその場で物投げて暴れだしそうですわ(だからお前は出世しないという声が大向こうからかかって来そうですが聞かなかったことにするwww)いやマジでなんなのこの理屈・・・・・
ということで本当は今日でシリーズ終わる予定が全然終わらず延長戦に突入でござる(話の展開上時間がどう見ても足りなくなりそうなので今朝はこの部分だけとか簡単で恐縮ですが勘弁してつかあさい)
2024/10/04
〇野口審議委員の金懇がありましたので他のネタはまたも後回しになる先入先出法
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko241003a.htm
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko241003a1.pdf
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
長崎県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 野口 旭
2024年10月3日
HTML版が出ているので引用はHTML版から行います。
・国債買入の説明がなんか驚愕の説明をしているんですが・・・・・・・・
まあ最初の経済物価情勢の話はどうでもよいので、『3.金融政策』のパートを鑑賞するのですが・・・・・・・
『(1)大規模金融緩和政策の転換とその意義』ってのがあって最初の能書きはまあどうでもよいうのでこれまた飛ばしますが、長期国債買入に関する説明が色々とイミフ。
『大規模金融緩和の転換には、もう一つ副次的な効果があります。それは、その政策によって大きな制約を受けていた金融市場の自由度を、市場の混乱を招かない形で回復させることです。』
まずね、「市場の混乱を招かない形で」っていうのは大本営も言ってるからこれどうせ大本営の受け売りなんでしょうけれども、そもそもこの発想が一見もっともに見えるけどやっぱりおかしいんですよね。と申しますのは、
『日本銀行はこれまで、量的・質的金融緩和、マイナス金利、長短金利操作といった政策によって、国債市場への関与を強めてきました。それは、本来の政策金利である短期市場金利がほぼその下限に達する中で、金融環境に影響を及ぼす経路を主として長期金利に求めてきたためです。』
これはその通りですが、
『その結果、日本銀行はそのバランスシートの資産側に多額の国債を抱え持つことになりました。』
となっている状態な訳で、つまりは現在の状態がオカシイのであっておかしい状態にあることこそが「市場の混乱」でもあるわけですよ。だって市場が機能していないという意味では混乱よりもたちが悪い状態なんですから。
でもってまあこれも大本営の受け売りなんでしょうけれども、
『3月の政策転換以降、長期金利およびイールドカーブの形成は、もっぱら市場に委ねられています。したがって日本銀行としては、その市場の国債取引が多くの参加者によって十分な厚みをもって行われていくように、国債買入れを徐々にではあれ減らしていく必要があります。』
まあこの発想もおかしくて、国債市場が日銀の大量国債買入で常態ではないことになっており、リスクに見合ったリターンが期待できないという状況では「多くの参加者」が参入するわけもないですし、そういう状態ではあれば国債市場の厚みとか流動性が低いんですから、流動性が低い上にリスクリワードもおかしい市場に参加者は増えない訳で、つまりは市場機能を戻したいのであれば国債買入の削減(本来なら売りオペしろと言いたいがまあそこまでは言わない)を急がないと行けないのであって、それをチンタラやっていたら、いつまでたっても市場の流動性が戻らず、参加者も増えない訳です。
でまあ減額を大きくすると金利が急騰するのが怪しからんので、という発想を当局ってすぐするのですけれども、そもそもそれは今までの日銀の買入がYCCが不要になったという経済物価情勢の下では不適切に過大だったというだけの話で、その過大を修正する間に金利が上がると困るから日銀は買入の減額をゆっくりすべき、というのはただの財政マネタイゼーション、というのは弊駄文では300回くらい申し上げている悪態。
・・・・・とまあここまででもツッコミどころが満載な長期国債買入のお話なのですが、さらに凄いのがこの次の理屈です。これ大本営なのか野口さんオリジナルなのかちょっとわかり兼ねますが。
『重要なことは、こうして行われる国債買入れの減額は、あくまでも市場の厚みの回復が目的であり、バランスシート縮小それ自体のためでも、金融緩和調整のためでもない、という点です。』
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これ野口さんが国債買入減額強烈推進論者なら話は分かるのですが、この後の章で出てくる「国債買入減額はゆっくりと」の説明とマッコウクジラで対立する話になるのわかっているんでしょうかしら。
つまりですね、そもそも論として今行っている日銀の大規模な長期国債買入っていうのは、野口さんも直前の部分で『本来の政策金利である短期市場金利がほぼその下限に達する中で、金融環境に影響を及ぼす経路を主として長期金利に求めてきたためです』って言っていて、それに則って長期国債の大量買入れをしていたものが継続されている訳ですよね。
であるならば、今行っている長期国債の大量買入れも「長期金利に影響を及ぼす」ために実施していることは変わりない(形式的なガワを変えたってやっている中身が同じなら経済効果は同じでしょ)のでありまして、それはすなわち「市場の厚みの回復」という目的に対して盛大に反しているわけですわな。
そりゃまあ日銀保有国債の売却、という話になるとまた違ってきますけれども、市場の厚みを回復させたいのであれば、長期金利に影響を及ぼすために行っていた長期国債の買入について、新規の買入は即座に停止するくらい、まあそうじゃないにしても「長期金利の押し下げ効果を出さない程度」までは買入を即座に減らすのが筋って話になるわけでして、今やってる「2年間かけてもまだまだ長期金利押し下げ効果がバンバン出てしまうような買入を継続する」という計画自体がこの野口さんの標榜する目的と背馳している訳で、お前は何を言ってるんだとしか申し上げようがない。
まあ何ですな、野口さんオリジナルなのかもしれないけれども、オリジナルだったら今アタクシの書いたくらいのツッコミを普通考えると思うので、これは大本営のいつもの詭弁を生煮えのまま受け売りしているんじゃなかろうか疑惑も否定できません(個人の感想です)。
でまあその次の詭弁もひどくて。
『まず、短期市場金利がもっぱら金融調節運営を通じて誘導・維持されていた世界金融危機以前の「希少な準備預金」の時代とは異なり、現在は短期金利が中央銀行当座預金への付利を通じてコントロールされており、政策運営は基本的にバランスシートからは独立しています。』
政策金利と関係ないんだったらバランスシートをバンバン減らしても問題ないじゃないですかヤダー
『また、仮に国債買入れ減額の多寡によってある程度の金融引き締めや緩和効果が生じたとしても、その影響は最終的には短期市場金利の調整によって吸収されます。つまり、この政策手段の観点からは、大規模金融緩和からの出口は既に終了しているといえるのです。』
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(゚д゚)
お前は何を言ってるんだにもほどがあるのですが、国債買入の減額によってある程度の引き締めが生じても短期市場の調整で調整されるんだったら、益々長期国債買入を継続している意味はないのだから、長期金利に直接関与するためとして実施している極めて大量の長期国債買入は可及的速やかに是正しないとダメだろ、という話にしか帰着しないと思うのですが、あんさん自分で言ってることの意味わかっておられるの???と申し上げたいし、某抜刀斎様におかれましてはちょっとこの金懇テキストをもって野口委員の執務室に「この説明でなぜ長期国債買入を大規模に維持し続ける意味があるのか」と抜刀していただくことをぜひお願いしたいところであります。
まあ何となくですけどね、これ長期国債買入減額を政策マターから切り離したい、という大本営の思惑が物凄い勢いで衣の下から鎧どころか全身装甲アーマー状態で感じてしまうのですが、金利の上げ下げマターと別口で、という話をするにしたって、この説明じゃあ「じゃあ何で超大量の長期国債買入を維持し続けるんですか」という問いに対する回答になっていない訳でして、屁理屈捏ねるにしてももうちょっとマシな屁理屈をこねて頂きたい訳ですので、長期国債買入をなぜ今でも馬鹿みたいに行っているのか、なぜその必要があるのか、本来は不要な買入規模なのではないか、ということをきちんと示していただきたい訳ですよね。なにが2年で半減じゃという話で、半減したってアホみたいな買入規模なんじゃヴォケってお話な訳です。
・・・・・などとつい朝から血圧をあげてたら時間が無くなってしまいましたが、いうまでもないことですが野口さんのこの先の部分で『(2)長期国債の買入れ減額とその基本的な考え方』とあるのですが、そこでもしょうもない小理屈を捏ねていまして、
・経過措置として調整するのはまあ一理あるけど本来不要なものをなぜ2年たっても継続するのか
『(2)長期国債の買入れ減額とその基本的な考え方』ってところですが、
『日本銀行は7月の政策決定会合で、市場参加者との意見交換も踏まえ、2026年3月までの長期国債買入れ減額計画を決定しました(図表10)。その基本理念は、「予見可能性と柔軟性の両立」にあります。この予見可能性は、「月間の長期国債の買入れ予定額を原則として毎四半期4千億円程度ずつ減額する」という計画そのものに具現化されています。これは、長期金利の形成が市場に委ねられた以上、今後は政策的な意図による国債買入れの増減は生じないことを意味します。他方で、市場急変時には買入れ額を機動的に変更するといった部分では、その計画には一定の柔軟性も担保されています。』
ここはどうでもよい公式見解ですが、
『それは、市場の回復が重要とはいっても、それがむしろ市場の攪乱を助長あるいは放置する結果になっては無意味だからです。』
そもそも「異常な状態」である日銀の国債大量買入れを是正するにあたりまして、ソ連邦の計画経済のように市場は動いてくれませんので、正常な状態に戻る過程のリプライシングというのは不可避な訳ですが、この「市場の攪乱」というのを当局が言い出す時ってだいたいソ連邦計画経済ムーブの発想になっておりまして(個人の見解です^^)市場に価格形成をさせてリプライシングの過程で一時的な動きはある、というのに耐えられないので、そもそもこういう発想を表に出す時点で市場に対してソ連邦計画経済マインドで対峙しようという気が満々なんですよね(個人の偏見です)。
『今回の計画のもう一つの注意点は、その暫定性にあります。それは、わが国における中央銀行バランスシートの最適な規模を現時点で確定することが困難なためです。その規模がどの程度であれ、わが国の場合には、2026年3月までにそこに到達する可能性はほぼありません。そのため、今回の計画は必然的に、それ以降の延長を視野に入れた暫定的なのものとなります。上述のように、「潤沢な準備預金」を前提とした現在の政策レジームでは、仮に日本銀行のバランスシートが現状のままであったとしても、政策運営には何ら制約や障害は生じません。したがって、バランスシートの縮小は十分な時間をかけて慎重に進めていくことが可能であり、それが市場の安定にとっても望ましいといえます。』
なんかもっともらしい事いってるんですが、おっちゃんさっき「国債買入れの減額は、あくまでも市場の厚みの回復が目的であり、バランスシート縮小それ自体のためでも、金融緩和調整のためでもない、」とか、「国債買入れ減額の多寡によってある程度の金融引き締めや緩和効果が生じたとしても、その影響は最終的には短期市場金利の調整によって吸収されます。」っていうことで、切り離しまくった説明してたのに、何で急にバランスシート規模の問題になるのかという話だし、バランスシート規模がイッシューになるんだったら、「この政策手段の観点からは、大規模金融緩和からの出口は既に終了しているといえるのです」って全然終了してないだろお前は何を言ってるんだ、というお話ではあります。
まあ何ですな、何ぼ何でもこれ説明がインチキすぎるので、野口さんというよりは大本営(ここで回線が切れる)。
・・・・・てな訳で金利の部分の話は今日出てくる会見録と共に後日お送りします。
2024/04/23
〇そうは言いましても野口審議委員の佐賀金懇ネタで
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240418a.htm
挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
佐賀県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 野口 旭
2024年4月18日
・まあしかし置物一派がこれを言い出すのはさすがにヘソが茶を沸かす
目先の金融政策のところだけネタにするのも何ですのでその先を少々、ということで次の小見出しになりますが、この小見出しだけで笑えるわけでして曰く、
『4.賃金上昇を伴う「物価安定の目標」実現への展望』
『(1)「物価安定の目標」実現の必要条件としての賃金上昇』
・・・・・・・・・いやー必要条件ですってよ。ここで皆様にはかつての浜田宏一大先生の主張を確認して頂きたい、と思うのですが、ダイヤモンドオンラインがアーカイブ化してしまってこのページは有料会員じゃないと読めなくなってしまったんですけど(URL見れば分かるように6ページ目になるのですけれども1ページ目でしたら読めます)。
https://diamond.jp/articles/amp/30804?page=6
2013.1.20
浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー
「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換
インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」
この6ページの小見出しに『名目賃金は上がらないほうがよい その理由はあまり理解されていない』とあった(こんな貴重な証拠物件なんだから公開しろよと思うけどダイヤモンドオンラインがアーカイブにしてて会員じゃないと読めないという極めて遺憾な状態ですしつこく言いますが)んですけれども、すっかりこういう話をしていたのはなかったことになって「賃金上昇が物価目標実現の「必要条件」」とまで言い出すようになっているのがもうお前ら何言ってるのという話で、もともとお前らは(そういや「リフレ派バナー」って見なくなったなあ)物価目標を達成すれば世の中が好転して賃金だって上がるようになる、って主張だっただろいい加減にしろとしか言いようがないので、ちょっと次の金懇の時に誰か聞いてくれませんですかねえと思うのですけど。
でまあこの内容とか次の小見出し『(2)賃金と物価の上昇を阻んできたゼロノルム』の内容とか別になんか読むべき話をしている訳ではないので正直どうでもよいのでパスしますが、その次の小見出しに参りますと、
『(3)「賃金と物価の好循環」確認のための二つの注目点』というのがありますので何に注目しているのやらと思って読みますと、
『現時点の日本経済で最も重要なのは、いうまでもなく、物価・賃金のゼロノルムを払拭し、「賃金と物価の好循環」を可能な限り早く実現することです。そのためには、少なくとも以下の二点の確認が必要です。第一は、サービス価格が着実に上昇し続ける状態が復活することです。第二は、製造業でもとりわけ中小企業において、賃上げの販売価格への転嫁がスムーズに進展していくことです。』
マネタリーベースとかそういうのは見なくて良いんですねわかります。でまあ以下説明があるのですけれども、だいたい内田副総裁とかの金懇での説明と大差ない説明になっていまして、リフレ派とかいう異端の経済学やってるんだから何かもっと面白い事言え(某ジンバブエ先生みたいな方向で面白い事を言われてもそれはそれで困る説はありますが)と思うんですが、上記のようにまあつまらん話しかございませんで、言ってること基本同じなのに何で3月反対したんだよという話ですわな。
・そもそも「金融緩和を継続しないと物価安定が達成しない」というのが理屈として矛盾しているんですけどね
という疑問にお答えしているのが上記の次の小見出しになりまして、
『(4)今後も重要な緩和的金融政策の継続』
ときましたが、
『日本ではこれまで、デフレ期以降に定着した「物価も賃金も上がらない」というゼロノルムが企業や家計に根強く残っていたこともあって、大規模金融緩和を通じた労働需給の大幅な改善にもかかわらず名目賃金は十分に上昇せず、そのため物価上昇率が2%近傍で安定することもありませんでした。しかしながら、昨年の春季労使交渉を契機として、足もとではかつてない賃上げの波が生じ始めています。それは、半ば岩盤化していた物価と賃金のゼロノルムがようやく崩れ去りつつあることを示唆しています。』
これが置物理論の大勝利だ、と言ったらその面の皮の厚さに敬意を表するところですが惜しくも野口先生そこまで図々しくなくて(置物とか若田部とかジンバブエなら堂々と置物理論大勝利というと思うけど)、
『このゼロノルム払拭の契機となったのは明らかに、「第一の力」すなわちコロナ禍後の世界的インフレという外的ショックでした。』
っていうのはちょっとだけ謙虚で好感しようと思ったのですが・・・・・・・・
『しかし、それが「第二の力」すなわち広範な賃上げの波として引き継がれてきた背後には、これまでの粘り強い大規模金融緩和を通じた労働需給の改善という「下地」があったということを忘れてはなりません。』
>大規模金融緩和を通じた労働需給の改善
>大規模金融緩和を通じた労働需給の改善
>大規模金融緩和を通じた労働需給の改善
・・・・・・・・??????????????????????????????
やはりこう来たかという所ですが、ということは何ですか人口動態の変化による労働需給の構造変化も大規模金融緩和の効果なんでしたら大規模金融緩和止めると少子高齢化が解決に向かうって事ですかとか無茶苦茶な言いがかりをこっちも付けたくなるわという所ですなキャハハ。
『それは、各種調査において、賃上げの理由として多くの企業が第一に掲げるのが「人材の確保」であるという点からも明らかです。』
それは「労働需給のタイト化が賃金上昇圧欲になった」ことの背景説明にはなっていますが、大規模金融緩和が労働需給改善の主因であったことの説明にはつながらないので「明らか」ではないですが何か???
でですね、最後が特にひどくて、
『その意味では、日本銀行が今後も緩和的な金融政策を継続することを通じて労働需給の適切なバランスを保ち続けることこそが、2%の「物価安定の目標」の達成のための必須の要件であると考えます。』
と言ってるんだが、そもそも論として「物価安定の達成」というのは「景気が通常のサイクルで1サイクル回っている感に物価が目標値(2%)付近で平均的に推移し、その間経済主体の行動は物価目標(2%)近辺での物価変動を前提にした行動を行っている(=インフレ期待がアンカーされている」)」という状況なのですから、「金融緩和が継続していないと物価安定目標が達成できない」というのがそもそも定義として間違っているお話でして、金融緩和による人為的支えが無くても物価が安定推移しているのが物価目標の達成なんですから、「達成の必須の条件」というのはおかしい。
ということでして、これなんか大本営でもうっかりこういう言い方に近い事言うケースがあるんですが、物価目標達成という状態になっている時には本来は金融緩和は必要が無くて、ただまあ経済サイクルのなかで足元では緩和状態が必要、というのであればそれはまあ金融緩和政策を実施することはあっても、それは目標達成云々とは別次元の問題、ということになる訳です。
もちろんピンポイントで「今まさに達成されました」というのがリアタイで分かる訳がないので、前からの流れから見て緩和政策が目標達成したと思われる時点でも継続している、というのが現実にあるとは思いますけど、それは目標をオーバーシュートするリスクを抱えている状態な訳で、そう安易に「目標達成までバシバシ緩和しておく」みたいな情報発信をするのはアカンヤロというかそもそもバイデフェニションでおかしかろう、と思うのですがどうしてこうなるんですかねえ、学者先生だというのに(まあリフレ派という時点で学者いや何でもありません)
でまあ結局会見はクソどうでもいいのでパスします。