中川順子 審議委員

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中川さんの略歴(日銀Webより)

昭和63年3月 神戸大学文学部卒業
昭和63年4月 野村證券(株)入社
平成16年3月 野村證券(株)退社
平成20年4月 野村ヘルスケア・サポート&アドバイザリー(株)代表取締役社長
平成23年4月 野村ホールディングス(株)執行役 財務統括責任者
平成31年4月 野村アセットマネジメント(株)CEO兼代表取締役社長 野村ホールディングス(株)執行役 アセット・マネジメント部門長
令和3年4月 野村アセットマネジメント(株)取締役会長
令和3年6月30日 日本銀行政策委員会審議委員

(前職:野村アセットマネジメント 代表取締役社長)

詳しくはこちら→https://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_nakagawa.htm

2025/09/02「中川委員金懇補足:CPIの分布の中心が2%になったという言及がありました」
2025/09/01「中川委員会見は24分という前代未聞の短さで結局想定問答棒読みだが「短観」と「ビハインド」の部分に注目しました」
2025/08/29「中川委員山口金懇では7月展望レポート以降の一切の新しいネタがないのが大本営の意図を表すの巻」
2025/04/21「中川委員金懇会見は「今回はトランプショックは昨年8月の時とは対応が違います」という大本営の意図ですね」
2025/04/18「中川委員前橋金懇挨拶は「何のインプリケーションも無い」のがインプリケーション」



2024/09/17「中川委員金懇会見は講演での反応にビビったか「市場が不安定」を連呼するの巻」
2024/09/12「中川委員の金懇は大本営棒読みなんですがハトハト内田講演を中和したい大本営の意思が表れている」

2025/09/02

〇中川委員山口金懇の補足メモ

金曜と昨日ネタにしたのですが少しだけ補足というか漏れていた分が有るので追加します。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250828a1.pdf(金懇挨拶)
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250829a.pdf(金懇会見)


・物価の説明でよく見たらしらっと「2%になっている」という言及がwwwww

金懇挨拶の方で『(3)国内物価の現状』ってのがあるのですが、その説明の中での5ページ(PDFの6枚目)の下から9行目くらいからの部分になりますけれどもこんなのが、

『日本銀行が、継続的に公表しているコア指標をみます(図表10 )。左のグラフは基調的なインフレ率を捕捉するための指標の一部で、日本銀行スタッフが脚注にある通りの試算をしています。右のグラフは消費者物価指数(除く生鮮食品)を構成する各品目の、前年比上昇品目と下落品目の割合です。』

というのはいつもの基調物価ですけれども、よくよく読み直したらどさくさに紛れてこんなのがその直後にしらっとぶっこまれておりましたw

『次の図表(図表11 )の左のグラフは、消費者物価指数(総合)を構成する全品目の前年比価格変動率の分布です。分布の裾は上昇方向に広がり、単純中央値は2%近傍にあります。』

>分布の裾は上昇方向に広がり、単純中央値は2%近傍にあります
>分布の裾は上昇方向に広がり、単純中央値は2%近傍にあります
>分布の裾は上昇方向に広がり、単純中央値は2%近傍にあります

図表11ってのはPDF19枚目になるのですが、よくよくこの図表の小見出しを見てみますと、

『予想物価上昇率』

ってなっていて、<CPIの品目別価格変動率の分布><予想物価上昇率>ってございまして、つまりは図表11の左のグラフってのはこの<CPIの品目別価格変動率の分布>ですわな、説明の通りですが。

ちなみに、7月の展望レポートではどうなっていたかと言いますと、

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507b.pdf(展望レポート全文)

こちらの本文28ページ(PDFだと30枚目)以降が物価の話で、その後BOXの方でも物価の話があるのですが、この<CPIの品目別価格変動率の分布>に相当するグラフって出ていない(刈込平均とかのいつもの奴は出ている)ので、何気にこれしれっと大本営がぶっこんできやがったゾというお話でして、これは何ぞというのを補記させて頂きます、うーんこれはwwwwwwww


・しかし「好循環」言わなくなりましたねえ

会見の方ですが、まあこれ引用していると長くなるから引用しませんけど、今回の質疑応答の特徴としまして、想定棒読みは仕様なのでまあいつものことなんですが、その中で「賃金と物価の好循環」を絶対に言わないという流れになっていたのは味わいが深いのと、基調的物価の話もあんまりしなくなっているし、何なら水準の話してねえな、と思ったのでその点も補記させていただきますw

まあ一応屁理屈変更への布石は着々と埋めている感じはしますね、本当に変更するかどうかは正直謎というかあのハトハトチキンじゃあ厳しかろうとは思うのですが、追い込まれたときでも追い込まれたと言わずに堂々の屁理屈を展開できるように準備に余念がない、というのはさすが大本営と感心するところであります(褒めてないw)。






2025/09/01

〇中川審議委員山口金懇会見より:まあ想定問答なんですが「短観の見方」と「利上げ遅れのリスク」の回答を鑑賞です

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250829a.pdf
中川審議委員記者会見
――2025年8月28日(木)午後2時から約24分
於 下関市

・24分の会見はクソワロタ

上記のようにこの会見、冒頭に燦然と輝く会見時間ですがさすがに30分割れはインパクトがあるのでちょっと最近の金懇会見を確認してみました

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/index.htm
記者会見 2025年

7/24内田副総裁:約35分
7/4高田委員:約40分
6/25田村委員:約40分
5/22野口委員:約30分
4/17中川委員:約30分
3/5内田副総裁:約30分
2/19高田委員:約40分
2/6田村委員:約30分
1/15氷見野副総裁:約30分

一々URL引用したら見苦しいのですがインデックスの方から金懇会見を拾って回りますとこのような感じになると思いますが、通常「約30分」ってのが多くて、高田さんとか田村さんの場合は質問にも熱が入るので40分になったりするのですが、まあだいたい30分プラス10分程度、って感じになっていると思うのですよ。会見後のロジとか存じ上げませんのでこれ自体が何時に締めとかがあるのかがよくわからんのですが、会見のヘッドラインが以前は14時45分くらいから出てくきてたので、会見終ってから解禁みたいな運営だったんですかしら、とは思いました。まあこの14時45分くらいってのはヘッドラインで引け際の値動きを無駄に増幅すると悪態ついてたら最近は14時半くらいからヘッドライン出るようになってこの点は大変に良かったと思います、蛇足ですけど。

とまあそういう次第で、この「24分」ってのは中々やるなと見た瞬間にビビりました(悪い意味で)が、まあそんな訳で鑑賞してみましょう。


・大本営の今の理屈によれば「企業の行動様式が下方屈曲してディスインフレモードに戻らないのを見たい」でしたが・・・・

この会見録、全部で6枚組になりますが、最初の幹事社(ちなみに金懇の場合地元の地方紙さんがやっている筈)によります「今日はどうでしたか&ご当地質問」とその応答、という思いっきり想定問答な物体が1ページ半にわたってございますので実質4ページ半の質疑応答になります。

でですね、これはヘッドラインに出ていて「政策修正のタイミングは短観タイミング」というヘッドラインに見えたので「これは何ぞ」と思っていたのですが、実質最初の質疑応答にこの話がありましてですね、

『(問)二点お伺いしたいと思います。一点目が、本日の挨拶要旨の中で、各国の通商政策の進展の変化をみるために、次回の短観の結果が大変重要というお話がありました。10 月には短観の発表に加えて、支店長会議も控えていると思いますが、こういった利上げを今後判断するうえで、この短観のデータは判断材料として欠かせないものなのでしょうか。(後半割愛)』

という質問があって、そういや短観重要って言ってたわと思ったのですが、

『(答)まず、一点目です。短観は、私どもきわめて大事な調査だというふうに認識はしています。』

ほほう。

『こちらみて頂いた通り、センチメントや設備投資の計画というものを確認することができるものです。』

ほっほーーーーーーーー。

『ただ、常に毎回の決定会合におきましては、その時までに出た、把握できる最大限の情報、特にハードデータをもとにして、私ども判断していきますし、そちらに短観の調査、発表が間に合えば、それも当然織り込んでいくということですので、ご質問の直接のお答えになっているかどうか分かりませんが、短観というものは非常に重要で、その時点において直近の短観の結果というものを十分に読み込んだうえで、決定会合を都度、判断していきたいというふうに考えます。(後半割愛)』

大本営の従来の説明ですと、企業の行動に関しては賃金設定行動と価格設定行動を見たい、という話をしていまして、その理屈ですと年末の賞与設定と年末年始に見えてくる来年度の賃金設定ってのが重要って話になっていたのですが、短観と質問されての回答ではありますが、やたら「短観が重要」という説明をしているのに加え、「設備投資ガー」と言い出している訳でして、しかもこの中川さんの説明の中には「雇用判断」に関する言及は無い(まあ短観の場合雇用判断は最近は常に激強なので使いにくいというのはあるけど)ので、おやちょっと説明変わってないかというか、賃金が前面に出ていたのが設備投資も出すようになったな、と思いました。

でまあ短観で判断、って話になると10月の次は12月会合になるというのが味わいがあるのですがさてどうなんでしょうかねえ・・・・・・


・展望レポート棒読みでしたから短観との関係しか聞きどころが無かった説はあるのですが短観の質問があと2つ

『(問)一点お伺いしたいのが、今日の午前中の挨拶の要旨の中で、先ほどの質問にもあったのですけれど、通商政策の進展の変化をみるために次回の短観結果が大変重要というコメントがあったかと思います。その中で、具体的にどのようなポイントに着目するのか、どのような条件が確認できれば先ほどおっしゃったような利上げに向けたような環境がある程度整った、もしくは進展したと判断できるのか、その辺りもう少し詳しく見方をお伺いしたいです。』

これに対してなんと想定問答には書いてあるのかというのを拝読しますとですな、

『(答)おそらく利上げすることの要素を判断するときの、要素っていうかたちでのご質問かというふうに思います。』

さよですな。

『実際には物価上昇率の基調というものをみていくんだっていうのが、日頃から私どもがお答えしている内容ではあるんですけれども、本日、展望レポートでお示ししている指標のうち、主なものをまた今回、可能な限り足元までデータをアップデートして、今日お示ししたつもりでおります。』

ん??

『こういった中では、一時的な物価変動の影響を受けにくい物価指標というのもいくつかあって、そのうちの一つ、例えばサービス価格もそうなんですが、加えまして人々の物価観というものを示す中長期的な予想物価上昇率、これも重要になりますし、更にはその物価変動の背後にあります、いわゆるマクロ的な需給ギャップ、それから労働需給の環境、それから賃金の上昇率、こういったものは全て物価の方への影響、ないしは物価からまた賃金への影響、そして結果的には経済への影響というものを及ぼしますので、この辺りを総合的にみながら都度判断してまいりたいということでございます。』

ちょwwwwwおまwwwwwwww

短観のどの辺を注目するのか、という質問に対して何ちゅう回答してますのやらwwwwww


次の人はこんな質問を、まあそりゃ聞くわな。

『(問)先ほど、今後の金融政策をみるうえで短観が重要になるというふうにおっしゃっていたんですけれども、逆にいうと、9 月の会合もあると思うんですけれど、短観が出ないうちには利上げがやっぱりまだ待たなきゃいけないというふうにとらえていいのかという点が一つ。(後半割愛)』

『(答)一点目は年内の利上げに関して、年内と限ったときに、これに関してということですが、こちら繰り返しになりますが、決定会合が何回か予定、計画されていますので、その都度、その時点までのデータ、ヒアリングデータも含めたソフトデータ、ハードデータを得て、適切に判断していきたいということに尽きます。』

何ですかこの回答はwwwwまあこの次に、

『短観がないとできませんかという、もし率直なご質問ということであれば、それは直近まで出ている最新の短観のデータをベースにして、そこに各支店の、今日の下関支店もそうですけども、支店から集めてくれるソフトデータをそこに加味することによって、補ったかたちで判断していくということもあり得ると思います。(後半割愛)』

となって、短観が出た直後じゃないと政策動かしませんとは言ってません、という回答になっているのですが、なんだか妙な質疑応答ではありますな。想定棒読みしてたんで聞く方もやる気なくして24分で終了した、という嫌な予感がするのですがさてどうだったのやらw


・政策がビハインドするリスクに関する質疑応答は案の定の想定問答モード

ちなみに質疑応答はほとんどが短観と政策ビハインドで終わっていました。

『(問)(前半割愛)二点目が、これもご挨拶の中で、何度か中長期的な予想物価上昇率について、徐々に上昇しているというお話がありました。1 月に利上げをされてから、4 会合連続で政策金利を据え置いておられると思いますが、アメリカの関税政策の不確実性が続いている中で、利上げが遅れて、今後ビハインド・ザ・カーブに陥るリスクがどれぐらいあるとお考えでしょうか。』

これに対する回答ですが、

『(答)(前半割愛)それから、中長期の物価予想をみて頂いたと思いますけれども、ビハインド・ザ・カーブのリスクについてというご質問だったと思います。こちら今、全体のメカニズムとしては、何度か繰り返しになると思いますけれども、賃金と物価がお互いにみながら、双方がゆっくりと上昇していくというメカニズムが働いていく中にはあると思いますけれども、これが例えばヘッドラインのCPI、つまり物価上昇、それが賃金に影響して、そこからサービス価格にまた影響していくという流れが、こういったものの循環が、非常に動きが大きくなって、結果私どもがみているいわゆる物価、いろんな物価指標が、これらを押し上げる力が加速度的に高く強まってしまうということを、ビハインド・ザ・カーブのリスクというふうにとらえるのであれば、そのリスクは今の時点でそれほど高くはないというふうには思っています。』

なんか勝手にビハインドのリスクを限定してませんかという話で、ここぞとばかりに賃金を持ち出しているのですけれども、それよりもインフレ期待が上振れしてしまう方がリスクじゃろうが、ってなもんでして、このビハインドに関する話は大本営も藁人形論法出さざるを得ない程度には「大丈夫と言い切るのに無理を感じている」状態なのかなと思いました。

『ただ、今申し上げた通り、循環としては賃金と物価がお互いに参照しながら上昇していくというメカニズムが働いているというふうには思っていますので、この辺り、今後この急激に基調的な物価、あらゆる物価の指標に、大きく変えてしまうような変動が起こるかどうか、その可能性にしても十分に注意を払っていかなければいけないとは思っています。』

というわかったようなわからんような回答でした。

先の方でも質問ありまして、

『(問)(前半割愛)もう一つは、日銀としては基調物価がまだ 2%に達していないというふうにみていらっしゃると思うんですけれど、利上げが遅れることによるリスクをどうみていらっしゃるか、この二点お伺いしたいです。』

『(答)(前半割愛)二点目は 2%に向けてということでしたっけ。二人目のご質問に非常に近いと思いますけども、現時点において、賃金が物価を参照しながら少しずつ上がってきているという、このメカニズムというものが、かつてに比べれば働いている状況にはあると思います。その点でいきますと、いい循環といいますか、物価と賃金が相互に連関しながら、賃金は毎年物価に合わせて改定していくものなのだという、そういうものが慣習付いたらいいなというふうに思っていたところが、それがある程度実現しつつあるのかなということにおいては非常に良い傾向だというふうに判断するべきだと思うのですが、』

既に悪い傾向になっているからこそのあの参院選結果なんじゃないですかねえ(個人の感想です)。

『一方で、ビハインド・ザ・カーブをどう定義するかにもよりますけれども、』

藁人形論法キタコレ!

『今私どもがみている指標からしますと、賃金と物価が双方に参照しながら、更にヘッドラインのCPIが賃金に影響するといった先で、サービス価格の方を含めた、こういったものに広がることによって、結果的に物価が急速に上がる力が大きくなる、しかも加速度的に大きくなるというリスクに関しては、私ども引き続き注意深くみていかなければならないというのは認識しておりますけども、今の時点のリスクとしては、それほど大きくないのではないかというふうには思っています。ただ、かつてに比べますとこの循環というもの、メカニズムというものが動くようにはなっていますので、引き続きいろんな指標を慎重にみてまいりたいと思います。』

結局さっきのと全く同じ回答なのでしたwwww

ってな所で今朝はこの辺で。




2025/08/29

〇中川審議委員山口金懇挨拶は「一切の新しいものが無い」のでこれは大本営がメッセージ出す気なしですねえ

ハトハトチキンのジャク穴講演は一旦知らんことにしておいて中川審議委員の金懇から参ります。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250828a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 山口県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
日本銀行政策委員会審議委員
中川 順子

拙駄文で再三申し上げておりますように、中川審議委員って特にエッジが立っているとかそういうことは無くて、というとちょっと綺麗なアタクシって感じのエレガントな呼称になってしまいますが、まあ要するに金融政策の対外発信においては大本営の腹話術人形ムーブを生業としておられる大先生であらされますので、つまりはここにある説明の中で7月展望以降の大本営に対して何か付加情報が有りや無しや、というのが重要なポイントになりますわな。

でまあ小見出しに書かせていただいた通りで、今回は7月展望からの付加情報無し、でまあ以上解散!って感じなのですが、ここで解散されますとアタクシの出る幕が無くなる(出てくるなというツッコミは却下w)ので一応備忘もかねて引用しましょうという企画です。

・・・でもってですな、これ事務方の中の人(政策委員会室か企画局か情報サービス局か知らんけど)の一部のエディタのせいだとおもうのですが、今回の金懇挨拶要旨の原稿をPDFにしたもの(要は上記URL先)を見ますと、今回もまた「半角数字だけ何故かテキストとして認識しない」という謎現象が発生していまして、テキストマイニングに嫌がらせでもしているのかと思ってしまうのですがこれマジで何なんですか???

まあこちとらコピペしながら原文みて補記しながらとはなりますが備忘もかねて。


・海外経済の説明があっさり過ぎでクソワロタwwwwwwwwwwwww

最初が『2.経済・物価の現状』な訳ですね。でもってその最初が『(1)海外経済の現状』になっているのですが、こちらが、

『海外経済の現状について簡潔に確認します(図表1)。』

は良いんですけど、この先があっさり味過ぎでして、

『先日、日米政府間の関税交渉が合意に至り、各国の通商政策等の交渉・合意についても進展がみられていますが、未だ不確定な要素が多く残る状況が続いています。7月時点での企業のグローバルの景況感は、サービス業では、改善・悪化の分岐点である50 をはっきりと上回っていますが、製造業では50 程度です。先行きについて、IMFによる各国・地域の成長率の見通しをわが国の通関輸出ウェイトで加重平均しますと、2025 年、2026 年は2%台後半に鈍化し、 2027年に3%程度、概ね 1980年以降の平均的な成長率と同じ程度に復するとしています。この、2025 年と 2026年の見通しは、4月時点から7月時点にかけて若干上方修正されています。』

であっさりと終了。しかも先行き見通しの所に先にワープしますと、『3.経済・物価の先行き見通しとリスク』の最初に『(1)企業・家計の経済活動の展望』ってのがあるのですが、そこの海外経済の部分が、

『企業・家計の経済活動の展望についてお話しします。

輸出や鉱工業生産は、当面、米国の関税引き上げに伴う駆け込みの反動減がマイナスに作用するほか、海外経済の減速によって弱めの動きになると見込んでいますが、その後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、回復に向かうと考えています。』

という展望レポート基本的見解の鏡の部分の棒読みだけで深堀一切なし、という恐ろしいまでの追加情報無し無しモードになっておりますし、『(3)経済・物価見通しにおけるリスク』のところでは、

『3点目は、各国の通商政策等の動きと、その貿易活動やコンフィデンスに対する影響です。今回のような広範な関税の引き上げは、世界的な貿易活動に影響を及ぼすほか、通商政策にかかる不確実性の高まりが、各国の企業や家計のコンフィデンス、国際金融資本市場に影響し、海外経済・日本経済を下押しする可能性があります。一方で、これらの可能性に対して、米国・欧州等が独自の経済対策や政治的判断によって財政拡張的な政策を取ることにより、逆に経済が想定よりも上振れる可能性もあります。』

となっていて、展望レポート基本的見解の棒読み、という見事なまでの棒攻撃になっておりまして、7月展望以降この1か月のアップデートは一切無いし、そもそも7月展望の内容を深堀するというムーブもしてくれない、という中々恐ろしいものになっております。


・・・・・でですね、何でアタクシが「海外のアップデートが無い」ってのを先に言うかと申しますと、そもそもこの大本営の皆様は4月の展望で盛大に見通しを下方修正する中において、思いっきりそのファクターに海外要因をぶっこんできまして、関税の影響で米国への輸出が影響食らうだけではなく、グローバルに海外経済が減速あるいは悪化することによって全体に悪影響が来て、その結果折角ここまで(好循環的な文脈で)いい感じで来ている企業(や家計)の行動がまたデフレマインドに戻るんチャイマスカというところから4月の展望で思いっきり下方修正(定量も定性も)してきた訳ですわ。

ということでして、海外経済の今後の動向っていうのは4月展望のときに海外要因で下げたんだからもっと深堀されたものが表に出てきて然るべき(そりゃまあ中では深堀しているでしょうけど)、と政策行動におけるファクターとして説明していたことの継続性から考えたら思うのですが、ここまで海外経済の話をそんなのシランガナ攻撃で流してくる、というのは結構オマエラナメトンノカな所があるわけでござる訳ですよ。

まあつまりは海外経済で説明していると4月にリスクシナリオも含めて思い切り下でみていたものが、ゆうてそこまでなのかどうか問題というのが発生すると、今度は上方修正待ったなし、ってなってしまって政策金利の調整を実施しないという言い訳に使えなくなるもんだからどさくさに紛れてこっそりと引っ込める、といういつものパティーンなんじゃろうなあと思うのですけれども(あくまでも個人の妄想です)、またこれかってなもんです。

でまあそのワシの妄想が正しいのであれば、海外の話をどんどん後ろの方に持って行っているというのは利上げをしない理由に使えないものは引っ込める、すなわち説明の際には利上げをしない理由の方を前に出したい、すなわち利上げをあんまりやりたくない、ということで少なくとも現時点の大本営は利上げをやる気がねえなあ、と解釈することに成ろうかと思いますが、まあなんせ大本営も「お気持ち物価」という切り札があってジャガーチェンジをするのは変幻自在なので、じゃあ年内利上げ無いわと決め打ちするのもこれまた吉ならず、というところかと存じます、はい。


・しかしまあ読みどころがない・・・・・・・・

でまあ本編の国内経済情勢とか物価情勢とかでも引用しようかと思ったのですが、これがまたドイヒーなことにまるで新しい話が無いので困るのですよ。なにせ、『3.経済・物価の先行き見通しとリスク』の先行き見通し部分にあたる『(2)経済・物価見通し』が、

『7月の金融政策決定会合で決定した「政策委員の大勢見通し」についてお話しします(図表13 )。

実質GDP成長率の見通しは、政策委員の中央値で 年度は2025+0.6 %、2026年度は+0.7 %、2027 年度は+1.0 %です。』

ってことで7月展望から1か月も経過しているんだからその部分説明をせっせとする必要があるんかいな(まあどうせそういうと「金懇に参加されている方々は市場の人と違って毎回のリリースをみているわけではないからここから説明するのが当然」と言われるのが落ちなんですけどね)という話ですが、4月との比較云々って説明はさすがにズッコケます。

『こうした見通しは、前回4月展望レポートから概ね不変となっています。各国の通商政策等の影響を受けた海外経済の減速や不確実性の高まりが、わが国の輸出や設備投資の下押しに作用することから、成長ペースは一旦鈍化し、その後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、わが国も成長率を高めていくと見込んでいます。』

と来まして次なんですが、

『生鮮食品を除いたベースの消費者物価の見通しは、政策委員の中央値で、2025年度は+2.7 %、2026 年度は+1.8 %、2027 年度は+2.0 %です。生鮮食品とエネルギーを除いたベースでは、 2025年度は+ 2.8%、2026 年度は+1.9%、 2027年度は+2.0 %です。』

と、展望レポート基本的見解の棒読みの次にもう物価に入っていまして、まあ以下も展望レポート基本的見解の棒読みなので割愛しますというか、下関の経済の重鎮の皆様集めて展望レポートの棒読みをご披露するってどうなのよと思ってしまうんですけどね。


・ということで7月展望からのアップデート報告は一切なし

とまあそんな訳でして、まさかの「7月展望レポート以降のアップデートに関するお話」は一切なしで7月展望の棒読み、というまあそういうテイタラクになるかもとは懸念していましたが、ものの見事にその通りの物件をぶっこんで来やがりましてオマエナメトンノカという内容だったので、もう時間もアレなので今朝はこの辺で勘弁させていただきます。まあ海外のところでも申し上げましたけど、全般的に言ってアップデートすればするほど利上げをしない言い訳が減っていくので、アップデートがろくすっぽないものを腹話術人形に喋らせている、というのはお察しということですわな。個人の偏見ですけど。



2025/04/21


〇中川審議委員金懇会見は「大本営のスタンスが昨年8月とはちょっと違うかも」を示していますね(知らんけど)

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250418a.pdf
中川審議委員記者会見
――2025年4月17日(木)午後2時30分から約30分
於 前橋市

まあ金懇自体がどうでもよいというか、今回の金懇では「一切新しいネタが無かった」というのがインプリケーション、という中川さんの金懇だった訳ですが、会見は「想定問答はどういうつくりになっているのか」というのが良くわかると思うのでそういう見方で見れば楽しみもあるというものです。

と言いましても最初の方が「今日はどうでしたか」というのとご当地質問(前橋市での金懇だけに自動車企業に対するトランプ関税の影響がどうのこうのって質問でした)で7ページ半の質疑のうち丸々2ページを費やしているのでその残りになりますけどwwwwwww

・関税政策とか為替に関してのクッソ長い想定問答をご覧あれ

『(問)二点お伺い致します。まず赤澤経済再生担当相とアメリカ当局との会談についてですけれども、関税交渉で為替の話題は出なかったということですが、次回への協議の予定も今月予定されているということですけども、今後どういったところを注視していくかというのを一つお伺いしたいと思います。』

いつもだと後半部分割愛しますが、話の流れからいって後半も引用しておいた方が良いのでこの質問の後半ですけれども、

『それからもう一点なんですけれども、5 月 1 日に発表する展望レポートに関してですが、成長率の下方修正の可能性があるという報道もなされていますが、関税交渉の影響なども受けて、どのように考えられているか教えて頂けたらと思います。』

どっちもシランガナで返してもよさそうですがまずは「為替」という所にバッチリ反応しまして、

『(答)為替についてということですが、おそらく関税政策とも関わると思うんですけれども、為替に関して今の水準を含めて、交渉の状況も含めて、全く私は今のところ情報が報道されていること以上には存じ上げておりませんので、その点はお答えを差し控えさせて頂きますが、』

で話を切ってしまっても良いんじゃないかと思うのですが、この後の説明がクッソ長い。

『広く言いますと、わが国の経済・物価への関税政策の影響というのは、為替のみならず、あらゆるところに多岐にいろんな経路を介して影響を及ぼし得るというふうに考えています。』

ということでまあ関税交渉について聞かれているのと、質問の後半部分で先行き見通しと関税交渉の関係について聞かれているからこういう説明がおっぱじまるのはしゃあないのですが、この後がまた飛んでも無く長いのよ。

『日本の経済・物価に影響を及ぼすことをとってみますと、これも様々なものが当然考えられますので、現時点で為替も含めまして、その影響を一概に評価することは非常に難しいです。』

質問の後半で展望レポートの見通しに対して「関税交渉の影響も含めどう考えますか」って言ってるのでその部分に対する答えが混じっていますけど、この後の説明が・・・・・・

『まず関税の導入自体、グローバルな貿易活動に影響を及ぼすという直接の影響もありますし、これは国の輸出、それから輸出の関連企業の収益の下押し、もしくは関税を含む政策の不確実性の高まり自体が企業の収益の下押しになる可能性と、また、企業や家計のコンフィデンスに影響することによってその行動、例えば消費ですとか企業の設備投資ですとかそういったものに影響するということもありますし、その後、また直近もありましたけれども、国際金融資本市場に影響を及ぼす可能性もあります。』

説明が長い、もうちょっと整理してくれって感じなのですが、これ想定問答が箇条書きになっているのを全部順に読んでるだろと言いたくなる。

『結果的にこうしたルートを通じて為替の市場も含めて、わが国の経済を下押しするという方向に働く要因になるとは考えられます。』

経済には下向きに働きやすい、以上、で良いと思うのですがここまでクドクドと説明するのは、想定問答でそういう風に細かく書いているからだとは思うのですけれども(個人の妄想です)、それにしてもまあ足元の状況を受けてちょっと「リアゲコワイヨー」のいつものアレが大本営の中で始まっているかも知れないなとひじょーにいやーな予感がせんでもないところではあります。

ただまあ半期報絡みで国会方面で色々と答弁させられる中で今回はハトハトチキンをできるだけ出さないようにしている(ように見える)、というのもありますので、ビビりつつも日銀が率先してハトハトチキンをやってしまうと(12月から1月のジャガーチェンジのように)後でそれをひっくり返すのに無駄なエネルギーを使って市場との対話を訳わからなくするという問題点がある、というのを学んだので、決め打ち回避をしている、というのも実際にそうでしょと思われるので、まあどっちなんでしょうねというのは展望レポートでてからニュアンスを見に行くって感じですかねえ。来週木曜か(ってか大型連休もうすぐじゃねえかアイヤー)。

でまあ中川さんの能書きはさらに続きまして、

『では、物価面ということに関して言いますと、』

なげえよw

『今申し上げた経済の下押しが、押し下げ方向に作用するとすれば、こちらの方は経済の方からの影響として物価が下がる方向には作用すると思いますが、一方でグローバルサプライチェーンなど、これも取り沙汰されていますけども、供給サイドからの影響というもので、輸入物価の上昇などを通じて上押し方向に働く可能性も考えられます。』

単純にグローバルなインフレ要因です、という訳でもない(日本が関税上乗せとかしなっけりゃまあこのあたりの話は米国とは違いますからね)ですな。

『この辺りも踏まえますと、輸入物価の上昇を通じて、加えて国際商品市況や完成品の価格設定、それから金融市場等の影響も踏まえますと、為替市場への影響というものもまた想定しにくいもので、全体として不透明であり不確実性が高まっているというお答えになります。』

何かわかったようなわからんような説明で、もうちょっとシンプルに回答すれば、とは思うのですが、冒頭からこの質問までの回答がクッソ長くて、尺稼ぎしてるじゃろと思う位に説明が長いの作戦かしらと思ったのですが、記者の皆様の方もこのクソ長い回答で気が付いたのか(^^)、全体的な説明を必要とするような網羅的な質問をすると想定問答を延々と読みだすというのに気が付いて、短答形式で短答しかできないような質問に切り替えている(ので後半は短答形式になる)のが面白いところですwwwwwwwww

なお、これで終わりではなくて質問の「展望レポートについて」の話があるんだが、今までのところで回答しとるじゃろって感じですわな。

『二点目の 5 月の展望レポートに向けて、成長率に関してのご質問でした。その件の記事に関しましては詳細をちょっと拝見していないので、お答えは直接には差し控えさせて頂きますけれども、5 月の展望レポートに関しましては皆様ご承知の通り、見通し期間が 1 期延びることにもなります。ですので、次回の金融政策決定会合では、その時点での関税政策の影響も含めまして、国内外の経済・物価情勢、金融市場の動向などを丁寧に確認しまして、経済・物価の見通し、そしてそのリスク、そして見通しが実現する確度を点検しましたうえで、展望レポートでお示ししたいというふうに考えています。もちろんその際には、どうすれば皆様に分かりやすく伝えることができるかということも意識したうえで会議の前に準備をし、会合で議論していきたいというふうに思っています。』

何も回答していないのと同じなんですが長すぎワロリンチョw


・昨年8月9月のキーワード「金融市場が不安定な時は」云々について聞かれるも・・・・・・・・

でまあこの先は基本短答になっています。

『(問)関税政策も含めまして、昨今非常に金融資本市場がですね、上下に大きく激しく動いております。まず一点目として、現状、中川審議委員はこの金融資本市場、現在非常に不安定な状況という理解でいいのでしょうか。』

まあこうやって切った方が良い、というのがさっきの質疑で読めた、って感じの質問の間合いがとても良い^^;

『(答)金融市場に関しては、直接の評価としては私の方から差し控えさせて頂きますけれども、現時点におきましては非常に不確実で不透明であるというふうに[思っており]、そういったものを反映して現状の状況になっているというふうに評価しています。』

ここ面白くて、上記質疑の続きで、

『(問)もう一点はですね、今、詳細は控えるということだったんですけれども、金融資本市場が不安定なときにはですね、利上げはするべきではないと去年総裁も国会などで答弁されておりますけれども、そういった総裁のお考え含めてですね、審議委員もその点はお変わりないというか、どういったお考えでいるのかお聞かせください。』

と追及されているのですが、

『(答)現時点におきましては先ほどの繰り返しになりますけれども、その時その時点での経済・物価情勢、それから金融市場の動向を丁寧に確認したうえで適切な判断をしていきたいというふうに考えています。』

と回答を回避していまして、まあ回避自体はそうじゃろうなと思いますけれども、直前の回答をよく見ますと、金融市場に対して「非常に不確実で不透明」とは言っているけれども「不安定」とは言っていない、というのがポイント高いところでして、うっかり「不安定」とか言ってしまうと昨年の内田副総裁土下座金懇の亡霊が甦ってきてしまいますので、それは避けようという大本営御一同の意思があるな、って思いました(まあ折角そうやっても植田さんがうっかり「不安定」とか言いそうですけどw)がどうでしょうかね。


・先行きの金融政策運営に関して「後ろ倒しになった」という説明すら回避するという徹底姿勢

でもってこの質疑の次にこんなのがありましたが中々これも味わいがありました。

『(問)本日の講演で、日銀の見通しに沿って推移すれば引き続き利上げをしていくと、そういうお考えを示されましたが、確認なんですけれども、足元までの経済・物価は見通し通りとの認識でよろしいのか、そのうえで米関税政策を踏まえてですね、見通しが実現する確度、これは低下しているのかとか今の現時点での中川委員のお考えをお願いします。』

ついでに後半ですが、

『あともう一点、アメリカの関税措置につきまして、上乗せ関税が 90 日間停止されている状況ですけれども、少なくともですね、この帰趨が明らかになるまではですね、政策金利を引き上げる、政策判断を変更判断するというのはなかなか難しい状況だと思われるのか、その二点お願い致します。』

でまあこれに対してですけど、

『(答)これも申し訳ありません。繰り返しにはなりますけれども、次回会合まであと 2 週間ほどございます。また関税の交渉といいますか、そういったことも今まだ私自身も情報としてはそう多いものを持っておりません。こういったものを次回会合までに丹念に確認したうえで、その時点で最良の判断をしたいというふうに思っております。』

『あと確度に関しましても、今の判断というのは非常に難しいです。ですので、こういったものも踏まえて、ここから 2 週間、それまでに出てくるデータ、情報、経済情報もありますし、それだけではなくて、いわゆるソフト情報、企業からのヒアリング情報なども踏まえて適切に情報収集をしたうえで判断したいというふうに思っています。』

からの、

『それから、[上乗せ関税が 90 日間]停止をされている状況で政策判断の変更がしづらいだろうかというご質問だったと思いますけれども、こちらも重ねて同じ回答にはなってしまいます。その時点で、物価・経済情勢を踏まえて、適切に政策判断をしていくということに変わりはございません。』

ということで、昨年の12月には(別に中川さんが言ったわけではないですが総裁の定例会見で)日銀は「米国新政権の経済政策の影響ガー」とか言って政策維持の理由を説明していたのですから、そういうことであれば「交渉がどうなるか次第でもありますねえ」みたいな回答をしても別に罰は当たらんという感じの筈なんですが、そういう説明すらしないでひたすらなんも回答しない、というのは中々面白いところでして、これもまた昨年8月とは全然違うなあ、と思うのでありました。


以下短答形式で政策に関する質問があるのですが、全部「繰り返しになりますが今の時点では何とも」の繰り返し、ということになっていまして、この辺り昨年8月の相場変動の時とは全然違うんだな、というのを垣間見た感じがしました。

ということで時間の都合上この辺で勘弁していただきとう存じます。




















2024/09/17

〇中川審議委員金懇会見:「市場が非常に不安定」ってあんさん証券会社で以下略

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240912a.pdf
中川審議委員記者会見
――2024年9月11日(水)午後2時から約30分
於 秋田市

まあ基本的にこちらの先生は何を言うでもなく、大本営の用意した想定問答を読んでるだけの話ですが、想定問答に何が書いてあるのかというのを見るために確認というステータスであるwww

・中立金利云々に関しては早速理屈の立て方が面倒になっていますわな

中立金利だの実質金利だのというのは弊駄文で何度も申し上げておりますが、どうせ「見えない」ものであって、これは説明の際の屁理屈だと思って聞くべき話なのですが、数字を置くと金融政策が見える、みたいな魔法の効果があるので、ついうっかり何とかストの皆さんですらこの中立金利を真面目に計算したくなってしまうのですが、そんなの計算するだけ時間と労力の無駄だから計算してレポート出している何とかストを見たらネタ切れで暇なのか恐ろしくナイーブなのかのどっちかだと思っておくのをお勧めしたいと思います(個人の偏見です)。

でまあ今回もまた質問されていたわけですが、

『(問)二点伺いたいと思います。まず今朝の講演で実質金利は大幅なマイナスっていうふうにおっしゃったんですけれども、中川さんが今お考えの中立金利の水準は今数値としてどれぐらいでしょうか。(後半割愛)』

そんなもん中川さんがお考えとは思えませんのでじゃあ想定問答はどうなのかと言いますと、

『(答)まず繰り返しになるようなお答えで本当に恐縮なんですが、中立金利というものは推計値でありまして、またそのレンジというのはきわめて幅が広い状態です。』

そもそも「きわめて幅が広い」のに「(実質金利が)大幅なマイナス」と決め打ちができるという説明に題があって、中立金利が極めて幅が広いのに実質金利が大幅なマイナスということであれば、もしかしたら大幅なマイナスどころの騒ぎではない極めて大幅なマイナスである、という可能性だってありますので、そもそも論として今の金融政策スタンスが超ウルトラハイパー緩和状態にあって、物価の安定に対して却ってマイナスになっているのではないか、そんなにハイパー緩和をしているなら政策の調整を急がないといけないのではないか、というツッコミが成立するわけですよ。

その割には政策の調整は急がないって大本営は言っている訳ですから、そうなのであれば、そもそもの「実質金利が大幅なマイナス」と植田総裁をして言わしめた大本営の屁理屈がちゃんちゃらおかしいということになります。

これは結局のところ、3月のマイナス金利の解除の際に、金利全体の急上昇をして欲しくないもんだから声明文に「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」と入れてみたり、4月の展望レポートでも同文言を入れて円安ぶっ飛びを誘発してしまってしまい、7月に利上げに追い込まれたんですが、円安阻止のために今度は「政策金利の調整を行う」を前面に出すために「実質金利論」を前面に出してきた、というように屁理屈をちゃんと整理して伝えないのと、一々強い言葉を使ってしまう(植田総裁に「実質金利は大幅なマイナス」とか「複数回の利上げ」を言わせるとか、内田副総裁に一転してベタ降り発言をさせるとか)のが悪いのでありまして、というのは30回くらい申し上げていますが大事なことなのでしつこく指摘しておきます。

なのでこの説明はそもそも理屈に無理があるんですが、以下鑑賞しておきましょう。

『ですので、今ピンポイントでこのくらいと、「くらい」をつけてもお示しするのはすごく難しいというふうに理解しています。』

じゃあ何で7月会合の会見の時に植田さんに「大幅なマイナス」って言わせたんだよそれが尾を引いて説明が訳わからんことになっているんだよ、と大本営を小一時間問い詰めたいですわな。

『もちろん金融政策の運営において、中立金利というのはきわめて大事なものということは承知をしています。』

「運営において」中立金利は極めて大事??

『ですので、日本銀行としては、4 月の展望レポートはみて頂けたかと思うんですけども、実質ベースの中立金利という、いわゆる自然利子率というかたちで、スタッフによるいくつかの推計値はお示ししています。』

(ノ∀`)アチャー

『直近の値というのが▲1%から+0.5[%]、足元でそれを少し超えるところもモデル次第ではあったかと思いますが、この個々の推計値は非常にそれぞれ幅があるものです。8 月末には多角的レビューの一環で、自然利子率の計測というワーキングペーパーも公表した次第で、こうしたものも新しいデータが追加されると過去の値が大きく変わるというような課題の指摘も一方でなされています。』

あーあーあー。

『こういったものと、また加えて申し上げると、推計値のパラメータとしてはちょっと違うのではないかという指摘を受けるかもしれませんが、実際の政策運営に当たりましては、やはり短期金利を引き上げた経験が長らくありませんので、こうした短期金利の変化に対して、経済・物価がどのように反応をするかも今後点検していくことも重要で、その中で水準を探ることになるというのではないか、というふうに思っています。(後半割愛)』

これ途中が全部余計というかマイナスの説明になっていて、最後のこの引用部分だけ説明すればいい話なのに、この中川さんの言い方、というか大本営の想定問答だと、まるで「中立金利」というのがリアルタイムで明確にあって、その数字を見極めるべく努力しますみたいな説明が「もちろん金融政策の運営において」以降の中でしているのですが、いやだからそうじゃないでしょというかそんなの計算しようとしたって事後的にしか分からん(しかも事後でも推計値)話だし、自然利子率とか中立金利って推計モデルのパラメーターちょっといじれば何とでもなる数字なので、あくまでも「概念としては有効」であるけれども「運営にとって極めて大事」というのは言ってることがちゃんちゃらおかしくて、生兵法は怪我の元にも程がある説明になっています。

まあ中川さんがそもそも論として金融政策運営の理論と実践についてお詳しくないんでしょうなあと思いますが、普通は審議委員の方々って金融政策の専門家じゃ無くてもしばらくすればこういう辺りは理解するもん(以下の記述は内務省検閲によって削除されました)。


・金融市場が「非常に不安定な状況がいまだ続いている」ってあんさんなにゆうてますのん

はいきました金融市場が不安定云々質問なのですが回答のアレさに全米が泣いた。

『(問)今日の講演の中でお話があったように、政策変更後の市場の動向を振り返りつつ、金融市場の変化が経済・物価の見通しに及ぼす影響を丁寧に比較してみていくとおっしゃったと思いますが、7 月の追加利上げをしてからですけれども、今の状態というのを、更なる利上げをすることによって市場のボラティリティを高めてしまうというリスクっていうのは、どのようにみていらっしゃるのか。(後半割愛)』

こんなの「そもそも今は7月の利上げの波及効果を確認していく段階なので、今の状態と利上げ云々という質問をされましても回答の仕様がありませんが(嘲笑)」って回答する位にファンキーな方を審議委員にしていただきたいところですが、そういうファンキーな人は基本的に出世できませんのでノミネートされることはありませんwwwwwwwwwwww

ということで想定問答もとい回答を見てみますと、

『(答)7 月の決定会合と言って頂きました。ただ、7 月の末でしたので、実質今はまだ 1 か月という経過になります。その間に出てきた統計数値自体は、あまりマイナスというよりはプラスというか、オントラックを示すデータでした、ということは申し上げられると思いますが、』

ちょwww想定問答を読むページが違いますよwwwww

『市場環境を丁寧にみていくということに関しては、今も、今日もおそらくそういうふうに表現しようと思えばできるかもしれませんけれども、金融市場自体の変動というのは 8 月の頭は急激なものでしたけども、』

あ、ページが直りましたねw

『それ以降も非常に不安定な状況がいまだ続いているというふうに思います。』

は?????

8月の頭は急激な変動をしてそれ以降も「非常に不安定な状況がいまだ続いている」ってどんだけビビりなんだよ、というかあーたヘトヘト證券に長年いたんだったら8月頭はさておいて、その後の市場まで「非常に不安定」って言ってたら一生何もできないわ、と思いますし、そもそも論として市場を不安定にしているのお前らの過剰な金融緩和とその大風呂敷を畳む上で説明が二転三転して不安定なコミュニケーションしてるからだろ、と思うのですが、いずれにしましても証券会社出身の方が直近程度の値動きで「非常に」不安定というのはさすがに見識どうなっているんですかと苦言を呈したい。せいぜい言うなら「8月の頭に極めて大きな変動があったので、その影響が残っている面があるかもしれません」くらいだろと思う訳ですが、先週水曜日の時点で「非常に不安定」と言わしめる想定問答を書いている時点で大本営どんだけビビりなんだよと思いました。

以下続くので一応引用しますが、

『今日も確か、株価も為替も少し動いたというような評価が、確かネット上でも皆さんの報道も含めて上がっていたようにも思いますし、また内外の金融市場の動向が、結果的にその経済・物価の見通し、それから実現する確度に当然影響を及ぼし得るということを思っていますので、その影響をしっかりと見極めたいというふうに思います。』

これ金懇講演で相場が動いた、って言われていた(別に債券市場は丸無視というか寧ろ別に何も新しいこと言わないのねと金利低下方向でしたけど)のを本人が気にしてこのようなビビりんちょを言っている可能性はあるのですが、この程度でビビるなら審議委員辞めた方が精神衛生によろしいんじゃないですかねえと思ってしまいました(個人の超偏見です)。

でもって最後に、

『ですので、利上げといいますか、前回変更した金融政策の修正の影響度合いが、今引き続き、金融市場動向とともに見極めている最中ということです。(後半割愛)』

って言ってるんですが、途中の説明全部不要でこれだけ言ってこの線で敷衍して説明すりゃいいのに何ですかこの「市場は非常に不安定」とかいうビビりんちょは、というお話でございました。

あとの質疑はクソどうでもよくて読む意味を感じませんので割愛します。


2025/04/18

〇中川審議委員金懇は「なんもインプリケーションが無い」のがインプリケーションではある

存在感は無いのですが、この局面では大本営の伝書鳩としての機能が期待されますので、さてどういうのが出るかと思いましたが・・・・・・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250417a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 群馬県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
日本銀行政策委員会審議委員
中川 順子

・経済物価情勢の現状認識はどうみても展望レポートのコピペです本当にありがとうございました

『2.経済・物価の現状』というのがあるのですが、その頭のところで『(1)海外経済の現状』ってのがありまして、

『はじめに、海外経済の現状について確認します(図表1)。3月の時点での企業のグローバルな景況感は、製造業では、改善・悪化の分岐点である 程度、サービス業では引き続き改善しています。IMFの成長率の見通しは、1月時点では、2025年、2026年ともに3%台前半で、これは、概ね 1980年以降の平均的な成長率と同じ程度です。こちらは、今月に四半期毎のアップデートを控えており、各国の通商政策やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡るシナリオが注目されます。』

ちなみにクソどうでも良いのかもしれませんが、なぜかこのテキスト、2025とか2026とか1980ってある数字が多分画像データになっていてコピペができないという珍現象が生じていまして(他はテキストデータになっているのでコピペができます)、なんか物凄い器用なことでもしているのかと???と思いながら読んでおりましたがそれは兎も角。

足元「海外経済」って気になる話だと思うのですが、関税政策云々の話に関して、先の方で当然ながら先行きのリスクには加えていますが、そちらの説明でも特にハトハトチキン感を出しておりませんし、こちらでは「IMFの見通しが出るのでそれでも見まひょ」という話にとどまっているという落ち着きっぷりな表現になっているし、上記の一段落だけで海外経済の現状を終わりにしているのは無茶苦茶あっさり味じゃないですか。

でまあこれなんですけど、ワシなりのインプリケーションは小見出しにした通りで、今回のこの部分が示すものは「昨今の関税政策をめぐる状況に関して、現時点では決め打ちインプリケーションを出さない」というのがインプリケーションですよ、ってことだと思うのですよね。


でまあ以下の国内経済、物価の現状の話に関しては別にみるべきことも無いので全部かっ飛ばして先行きリスクの話になります。


・先行きリスクのところで通商問題に触れているものの「通り一遍」感が大変に強い作りですね

『3.経済・物価の先行き見通しとリスク』ってのがあるのですが、これがまた展望レポートの棒読みって感じの作品になっているのと、数値が全て画像データになっているという意味不明な作品になっていまして、いや勘弁してくださいって感じです。

先行きリスクの話になります、ってさっき言いましたがそれだと尺が稼げないので(笑)確認のために見通しで何を言ってるのかを引用しますね。

『(1)経済・物価の先行き見通し』って小見出しの方は、

『日本銀行の国内の経済・物価見通しについて、まず、1月の金融政策決定会合で決定した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)に沿ってお話しします(図表 )。』

沿ってお話するのは良いんだけどそこから3か月近く経過しているんだからアップデートは無いのか、と思うのが普通ですがこれがですな・・・・・・・・

『実質GDP成長率の見通しは、政策委員の中央値で2024年度は+0.5 %、2025年度は+1.1 %、 2026年度は+1.0 %です。

この背景として、国内経済は、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えています。』

『生鮮食品を除いたベースの消費者物価の見通しは、政策委員の中央値で、2024年度は+2.7 %、2025年度は+2.4 %、2026年度は+2.0 %です。生鮮食品とエネルギーを除いたベースでは、 2024年度は+2.2 %、2025 年度、2026年度は+2.1 %です。』

『これらの背景としては、 年度にかけては、米価格が高水準で推移すると見込まれることや、これまでの政府による施策の反動が一部で生じることが押し上げ方向に作用することを想定しています。今後も、労働需給が引き締まった状態が続くもと、マクロ的な需給ギャップの改善と、賃金と物価の上昇が続き、中長期的な予想物価上昇率も上昇していくことから、見通し期間の後半、すなわち 2026年度末にかけて、「物価安定の目標」と概ね整合的な2%程度の水準で推移するとの考えです。』

・・・・でまあこのコーナー、なんとここまでで終了の巻となっていまして、展望レポートからのアップデートも無いままの棒読みという恐ろしいものになっていまして、期初のスタートダッシュでお忙しい群馬県の経済界の皆様を集めてこんなのにお付き合いさせられるとか何なんですかというお話ではございますけれども、まあ通商政策のつの字もありませんね。


でもってその次に『(2)経済・物価見通しにおけるリスク』を見ますが、

『こうした経済・物価の先行きの見通しには高い不確実性があります。私が注目する経済・物価見通しにおけるリスクについて3点お話しさせて頂きます。』

というからもしかして自我が発露されるかと期待するのですが・・・・・・・・

『リスクの1点目は、米国の関税政策を含む政策と、海外経済と国際金融資本市場の動向を巡る不確実性の高まりです。関税政策は、その大きな一つで、様々な経路を介して日本経済に影響を及ぼす可能性があります。グローバルな貿易活動や、わが国企業の輸出・生産・販売・設備投資、そして、業績への直接的な影響に加えて、関税を含む政策の不確実性の高まりが、国内・海外の企業・家計のコンフィデンスに影響し、わが国の実体経済や物価に影響を及ぼす可能性もあります。資源価格や国際金融資本市場の過度な変動や調整によって、経済への下押し圧力がさらに増幅される可能性もあります。影響の程度は、関税政策の今後の帰趨に大きく依存しますので、動向を高い緊張感をもって注視していく必要があります。』

・・・・・なんですかこの棒読み感は、という話ですがその次に行きますと、

『2点目は、企業による賃金・価格設定行動です。これまでの持続的な物価上昇は、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率の上昇をもたらしてきており、企業の賃金・価格設定行動には、従来よりも積極的な動きがみられています。先ほど申し上げたように、1点目の通商政策の影響とは別に、既往の物価上昇に対応した価格改定の動きはまだその過程にあるとみているのですが、労働需給が引き締まった状況が維持されるもとで賃金の上昇圧力がさらに強まる可能性や、それらを販売価格に反映する動きが想定以上に強まっていく可能性があります。』

ほうほうそうですか(棒読み)

『3点目は、消費者マインドの悪化が、所得から支出への前向きな循環を阻害するリスクです。前述の通り、所得環境が改善していることや、政府によるこれまでの物価高対策の効果もあって、個人消費は緩やかな増加基調にあると判断していますが、食料品など身近な品目の価格上昇率の高まりもあり、マインドの改善は一進一退の状況です。関税政策を巡る不確実性や、雇用・所得環境や国内経済の不透明感、物価上昇による生活防衛意識の今後の一層の高まりなどが、消費者マインドのさらなる重しとなって、実体経済を下押しする可能性があります。』

でまあこの消費者マインドのところは最新ネタって感がややする(ゆうて前から生活物価の上昇がマイナスにって懸念は大本営では示しているけど)のですが、とりあえずベンダーヘッドラインを拾って読んでいるだけですと、割とこう通商政策の悪影響に関して注目をしているようなヘッドラインの打たれ方をしていますが、それはベンダーの方がそっちじゃないと面白くないからそういう風に打つ訳でして(確かに言及していることなんだからベンダーも別にウソ言ってるわけではない)、ほうほうそうですか警戒的ですか、となるのですが、こうやってテキスト読んでみると「ただの棒読み」感が強い上に、米国通商政策の今後の影響に関して、そこまで大きな懸念っぽい雰囲気というかハトハト感を出さないようにしている、というのが何となく伝わってくると思うのです。


・政策に関しても余計なことは全然言わないというスタンス

群馬県経済の話コーナーが最後にありますが、その前の金融政策関連コーナーの最後は『4.日本銀行の金融政策運営』になりますが、その冒頭は

『日本銀行の本年1月および3月の金融政策決定会合での決定内容について、振り返ります。』

ということから始まってただの説明。でもってこのコーナー最後のパラが先行きの金融政策運営に関するお話になっていますけれども、

『今後の金融政策運営は、現在の実質金利の水準を踏まえると、先行きの経済・物価・金融情勢次第ではありますが、日本銀行の経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。』

といういつもの奴から始まり、

『今月末から開催される金融政策決定会合では、新たに 2027年度の見通しの公表を控えています。関税政策の影響を含め、不透明感が一層高まっている状況と考えていますので、内外の経済・物価情勢、金融市場の動向を、予断を持たず、丁寧に確認し、適切に政策を判断してまいります。』

・・・・・・・・・・ノー決め打ちというか何かの示唆もなし、ということでして、まあそもそも論として「事前地均し」っての大概にせえと思っているので別に事前地均ししなくて良いのですが、今回は地均し云々以前の話として、何らかの方向性をだすことも一切しない、というのが徹底されていると思いました。


この点に関しては昨日も半期報で植田総裁国会答弁していましたけれども、国会などでの一連の説明の中で、従来だったら出ていてもおかしくないハトハトチキン音頭が全然出てきていない(米国通商政策の先行きが不透明なのだから先行き不透明ですよというのが入るのは当然の話ですけど、そこからハトハトチキンに踏み込む昨年8月のようなプレイが一切見られない)のがインプリケーション、という話だと思うんですよね、個人の感想ですけれども。










2024/09/12

〇中川委員の金懇は特になんも言っていないのだが内田講演を中和したい大本営の意思は把握した

しかしまあ何ですな。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-11/SJMMH7T0AFB400
【日本市況】円8カ月半ぶり高値、日米金利差の縮小観測−株式は続落
船曳三郎、佐野日出之、山中英典
2024年9月11日 14:14 JST 更新日時 2024年9月11日 16:01 JST

なぜかこういう後講釈ばっかり出ていたんですけど、昨日の市場って米国長期金利の低下と米国株式市場の下落(どっちも時間外取引)がドライブしてて、それが円高ドル安にもなっていたんだし、中川さんの金懇は前場一瞬反応したけど後場は強いて言えば米国大統領選挙討論会だし、あれだって要は「トランプトレードでリスクオンの巻き戻し」じゃろという話ですよね。

だって「中川審議委員講演で日米金利差の縮小観測」って言うなら債券は売られないとおかしいのに、昨日の円債市場って限月交代した12月限の横綱がどすこいどすこいと電車道相撲を示して(しかも後場に入って一段と)1日にして限月交代のカレンダースプレッド分戻す勢いで上昇しているのですから、中川審議委員講演で日米金利差云々とか言ってるのはちゃんちゃらおかしい後講釈でこたつ記事でも書いてるのかと思ってしまいました。

なお、ちゃんと後場米国金融市場が引っ張って大きく動きましたって記事にしていたのはワシの見つけた限りでは金融ファクシミリ新聞さんだけだったりしまして、ベンダーさんも頑張ってほしいもんだとおもいました、まる。

なお、これたまたまBBGさんをネタにしましたが、他のニュースでも上記のような感じで報道されていて、いやーそれは違うじゃろと思いました。


てな話はさておきまして金懇挨拶。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240911a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
秋田県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 中川 順子
2024年9月11日

・経済物価のリスクのところから拝見しましょう

まあ基本的にこの中川さん、特になんか主義主張あるわけでもなさそうですし、基本は大本営が道具箱に用意しているホーンスピーカーかウォーキートーキーってな風情を強く醸し出しておられるというカカシ先生なので、別に議論をリードするようなお話が見れるわけでもないのですが、九官鳥は九官鳥としての意味もありまして、なんか大本営が変わったこと言い出しているか、ということに関する観測にはもってこいなのであります。

でまあ最初に申し上げましたように、別に新しい情報があったわけでもない(から債券市場は中川講演で別にたいして反応してなかったし何なら債券先物上がっていたので為替市場とは別反応をしていた)ので、経済物価情勢の話とかそのあたりは全部かっ飛ばして無問題ですが、先行きのリスク要因のところだけは読んでみましょう。

『3.経済・物価の先行き見通しとリスク』の後半になりまして、講演テキストの6ページ(PDFだと7枚目)のケツのところからになります。

『(2)経済・物価見通しにおけるリスク

これまでお話しした通り、わが国の経済は、高水準の企業収益に支えられ、賃金と物価の好循環が展望できる状況にあると考えています。もちろん、こうした経済・物価の先行きの見通しについては、様々な不確実性が存在します。以下では、私が特に注目する経済・物価見通しにおけるリスクについて3点お話しさせていただきます。』

なるほど大本営はどういう点を指摘したいのでしょうかね。

『リスクの1点目は、物価の上振れリスクです。』

は??

『先ほど、海外のこれまでの大幅なインフレと円安による輸入物価上昇の影響は徐々に減衰していくとの見通しをご説明しました。もっとも、先ほど申し上げたいくつかの要因などにより、今後、輸入物価が再び上昇に転じる場合には、価格転嫁が積極化する可能性があります。また、労働需給のひっ迫の影響で賃金が上振れる可能性もあり、賃金や物価が「物価安定の目標」を超えて上昇するリスクには注意が必要です。』

ちょwwwwおまwwwwwwそう思ってるなら何で内田さんあんな全面降伏ベタ降り講演したんだよあんなこと言ったら物価上振れリスクを高めるじゃんwwwwwww

『一方で、2点目は、海外経済の下振れリスクです。』

こっちは普通に言いそうな話だ。

『高水準であった米欧の物価上昇率は、このところ着実に低下してきていますが、既往の利上げの影響が、時間をかけて実体経済や金融面にどのように及ぶかには不確実性があります。また、先月初には、米国経済の減速の可能性を示唆するデータをきっかけとして、急激な景気後退――ハードランディング――を意識した市場の動きがありましたが、こうした海外経済の減速懸念を背景にした金融市場の過度な動きや調整が続き、それが海外経済をさらに下押し、わが国経済に波及するリスクにも注意が必要です。』

この部分、どさくさに紛れて8月頭の市場混乱は米国のせいであってうちらのせいではない、という話を混ぜ込んでいるのがいかにも大本営らしいチャーミングさを示しているのはほほえましいですなw

『3点目は、消費者マインドの改善の遅れが、所得から支出への前向きな循環を阻害するリスクです。』

おwwwwwwいwwwwwwwww

だったら何で内田さんあんな全面降伏以下同文。

『これまで、食料品、日用品など身近な品目の価格上昇率が相対的に高かったことや、実質所得の伸びがマイナスとなったことなどから、家計部門では生活防衛的な動きがみられています。足もとで実質賃金の前年比がプラスに転じるなど、所得環境が改善していることや、企業努力、政府による様々な施策の効果もあり、個人消費には底堅さがみられますが、これまで実質所得のマイナスが長期化したことが今後の消費者マインドの改善の重しとなる可能性もあり、丁寧に確認していく必要があると考えています。』

いやお前ら黒田末期から物価上振れを「一時的」って言いながら放置してた結果こうなってるんだろ何を言ってるんだというお話な訳ですが、まあこの3点を総計しますと、何気に「物価上振れ良くないですよね〜」って話になっていて、そうなりますと日銀の政策調整全然足りてませんですよ、って説明になっております。

これすなわちどういうことかといえば、うっちーのポツダム宣言受諾株式市場軍への全面降伏文書をしらっと上書きしようとしているの巻となっているという話なのですけれども、時すでにお寿司感は拭えませんな。


・8月頭の市場ムーブメントはうちのせいじゃないもんアピールが他の箇所でもwww

次の小見出しが『4.日本銀行の金融政策運営』ですが、これまた大本営腹話術人形として腹話術を披露しているだけの話なので基本どうでも良いのですけれども、最後の部分にこんな記述がありましてクソ笑いました。

『7月の決定会合後、8月初旬に公表された米国の雇用統計において失業率の上昇などがみられたことをきっかけとして、米国の景気減速懸念から、世界的に急速なドル安と株価の下落が生じました。』

wwwwwwwwwwwwwww

ということで、まあ大本営としては「オラのせいじゃないですゾ」という話で、確かにまあ全部日銀のせいみたいになって国会招致とか吹きあがっていた大馬鹿の所業には呆れるしかなかったですけれども、そもそも論として160円までの円安を招いたのって日銀がマイナス金利解除からこの方どっち付かずの説明を繰り返した結果、中銀文学に詳しくない他市場の方々を中心に日銀のゼロ金利政策はずっと続くから円キャリー取引はフリーランチで丸儲け、みたいな投機ポジション積みあがったのがかなり効いていたと思われるわけで、その投機筋を焼き尽くしに行ったらあんなムーブになったのですから、利上げがどうのこうのの前にその前のコミュニケーションにだいぶ問題があったのでやっぱり日銀のせいであるという面は残念ながらあるんですよね。たとえそれが望ましい方向でのポジション解消によるものだったにしても。

まあでも大本営はとにかくほとぼりが冷めたあたりから上記の宣伝を行うことによって、日銀ショックだの植田ショックだのと言われていたことを上書きしていこう、という浅ましいムーブをしている、ということが示されていると思いましたのでメモっておきました。


・まあ今回の金懇挨拶の一番のポイントはこのパラグラフです

でもって上記部分は何で出てきたかというと、今から引用するこの次のパラグラフのマクラ(にかこつけて植田ショックとかそういうのを上書きしようというムーブをしていますけど)でして、

『先ほど申し上げた通り、わが国企業の収益は歴史的な高水準にあるなど、この間、わが国経済のファンダメンタルズに大きな変化は無いと考えていますが、』

というのはさておきましてこの次ですポイントは。

『先行き、金融緩和の度合いの更なる調整を検討するに当たっては、7月の政策変更後の市場の動向を振り返りつつ、金融市場の変化が経済・物価の見通しに及ぼす影響――例えば、市場機能や企業の資金調達行動の変化が見通しの実現する確度やスピードに与える影響――について、これまでと同様に、丁寧に評価を行い、判断をしていく必要があると考えています。』

なにがこれまでと同様じゃ、というような無粋なツッコミはさておきましてwwwww

「例えば、市場機能や企業の資金調達行動の変化が見通しの実現する確度やスピードに与える影響」

というのがチェックポイントだと言ってますね。でまあ『4.日本銀行の金融政策運営』の前半部分って引用しませんでしたが、こちらは実施したことの説明が延々とあった上に、「見通し通りに推移していけば先行き緩和度合いの調整を行う」という本来の説明をしております。

そして上記の記述になるのですが、ここでチェックポイントで示されたのは「市場の安定性、不安定性」なのではなくて、あくまでも「企業行動や経済への影響」という話をしている訳ですね。

そして引用かっ飛ばした前半部分でも「市場の安定性、不安定性」の話は行っていなくて、上記で引用を行った「7月の決定会合後」から始まるパラグラフのところで市場に対する言及があり、上記の最後の部分のチェックポイントへと話が繋がるのであります。

ということはですね、まあ中川さんの金懇挨拶テキストがどう見ても大本営腹話術人形でしょというのを勘案すれば明確になりますが、大本営としては内田さんの「金融市場が不安定なら政策を修正するわけなし」というベタ降り発言に関しては、その場しのぎで言ったにしても後々延々と「では今の市場は安定的ですか不安定ですか」って聞かれ倒して政策運営が株式市場(や金融市場)に従属するとかいう中央銀行の風上にも風下にも置けないようなアホアホ政策プリンシパルになってしまうのを回避しようとして、ウッチーの全面降伏発言を上書きしようとしている、ということを示している、とアタクシは見て取りましたが如何でございましょうか???

いやまああのベタ降り発言はやっちまったって感じなので上書きした方が良いとは思うのですが、結局はウッチーが自分で「あれはちょっと強く言い過ぎましたテヘペロ」って上書きしないとだめで、テキストは今日出てきますけど金懇後の会見で中川さんも今の金融市場が安定的か不安定か、って質問されてて、中川さんもそれに回答しちゃったりしている訳ですな。残念無念。

まあ何ですな、ワイ思うに市場が安定している不安定だ云々の質問にはもう一々回答しないでいかないと何時までたってもこの話を蒸し返されて。その結果として「日銀の政策は金融市場従属」っていう認識を金融市場に与えるしそれを強化していくプロセスに入ってしまっているんじゃないかと懸念しているんですが、まあ何度もやってると市場従属色を濃くするだけなので、漫然と回答してるのではなく回答をもっと練った方が良いと思います。

ということで、大本営としては金融市場従属みたいに取られる(というかああいったらそうなるわな)内田講演を上書きしようとして手を変え品を変え説明しようとしている、というのが今回の中川さんの講演テキストから読み取れるお話なんだとアタクシは思いました、異論は認める(^^)。