宮尾龍蔵審議委員
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宮尾さんの略歴(日銀Webより)
昭和39年7月3日生
昭和62年3月 神戸大学経済学部卒業
平成元年3月 神戸大学大学院経済学研究科博士課程前期課程修了
平成元年11月 神戸大学経済経営研究所助手
平成6年11月 ハーバード大学大学院経済学研究科修了 Ph.D
平成7年4月 神戸大学経済経営研究所助教授
平成15年4月 同 教授
平成20年4月 同 所長
平成22年3月26日に日本銀行政策委員会審議委員に就任
(前職:神戸大学経済経営研究所所長)
平成27年3月25日に満期退任となりました。お疲れ様でした。
写真などはこちら→http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_miyao.htm/
2015/03/26「という事で退任となりました宮尾さんに一言」
2015/03/05「大和証券セミナーでの特別講演が赤点再履修レベルの残念な卒論発表だった件」
2014/11/17「長崎金懇での講演はグダグダ、会見は大炎上」
2014/10/20「金融学会での講演はすっかり執行部理論の九官鳥と化しています」
2014/04/14「会見から読めるのは労働市場が強くなったことが強気化の原因らしいが」
2014/04/11「今回の宮尾さんの講演は前回とは一転して思いっきり執行部見解通りに転換」
2013/11/15「会見の説明も「異次元から降りて野党審議委員への道」を感じますな」
2013/11/14「賛成派委員の筈が「黒田緩和の異次元説明」になっていない上に展望レポートとトーンが違う」
2013/05/30「外国特派員協会の講演でもやはりロジックは苦しいですねえ」
2013/04/22「会見では情け容赦ないツッコミを受けていました」
2013/04/19「異次元緩和後最初の講演は内容があまりにも残念」
2012/09/13「今回の会見は割と普通にハト主張である」
2012/09/06「今回の講演はハト派テイストを前面に打ち出しています」
2012/03/30「記者会見は質疑が何か噛み合っていない」
2012/03/29「注目の講演は金融緩和の効果波及経路に自信という感じです」
2011/09/16「宮尾審議委員会見は無難というか執行部代弁人というか」
2011/09/15「宮尾審議委員講演では非伝統的金融政策の論点整理が中心」
2011/03/25「会見では言葉を慎重に選んで発言してますな」
2011/03/24「講演では震災の影響について厳しい評価を」
2010/09/27「記者会見では微妙にサービス発言も」
2010/09/24「宮尾審議委員講演、米国景気の構造問題に言及するもあまりハトではない」
2010/03/30「就任会見はとりあえず無難ですが理屈を逆手に取られる懸念も」
2009/11/20「宮尾先生就任という話から雑感」
2015/03/26
○宮尾審議委員退任→原田審議委員就任ですな
昨日は宮尾審議委員の任期が終了して本日原田先生が審議委員に就任となります。でまあ宮尾さんに関しましては最後の方に来て執行部追認機関状態になってしまった上に、ロジックの整合性がだいぶおかしくなってしまう(最後の講演での「中央銀行の国債買入でのシニョリッジで財政余地」というのは市中の学者が言うならああそうですかで終了ですが中央銀行のボードメンバーが認めるのは良くないでしょ特に財政真っ赤っ赤の日本では)という残念な展開になりましたが、まあ5年間お疲れ様でございましたので今後巻き返して下さい(棒読み)とゆーところで。
原田先生の場合は何せ入口がジンバブエ理論炸裂ですからまあ逆に期待値というのもがゼロというかマイナスですし、非伝統的政策やっている中では金融政策論に深く技術論が絡んでくると思うのですが、技術論について1ミリもご理解がなさそうですので、追加緩和方向や出口における技術面において有効性のある具体的な政策提言が出来るとも思えず、結局の所執行部追認機関になるだけでしょうなあと。
とまあそんな訳で、期待値の高かった執行部追認機関→期待値の無い執行部追認機関という入れ替えになるのでとりあえず今回の審議委員交代での一番の注目材料は皆様もご案内の通りで就任記者会見でございまして、だいたいスケジュール的には辞令が交付されてから日銀に到着して夕方ごろに記者会見という段取りの筈ですが、当然ながら「日銀が国債を買うと統合政府の債務が消滅」というジンバブエも裸足で逃げ出す珍理論について記者の皆様からゴリゴリと突っ込んで頂きませんと、何のための記者会見なのかさっぱりわかりませんし、日銀記者クラブの皆様の存在意義を問われると存じますので一つ宜しくお願い致したく存じます。つーか質問しないんだったらおまいらちょっとその席俺に寄越せと。
しかしどう説明するのかがヒジョーに楽しみでして、唯一合理的な説明が可能なのは「事実上返済しなくて良い中央銀行債務」というアプローチになるのですが、それって銀行券発行残高と所要準備預金部分のことになり、マネーの量によってインフレの制御ができるという立場にあるリフレ派の皆様の理論を敷衍すると、日銀が購入する国債のうち統合政府から消滅させることが出来るのは銀行券発行残高と所要準備預金部分であり、この数値はある程度幅をもって可変な訳ですから、両者の規模を勘案するとリフレ派の皆様が散々罵っておられたいわゆる「銀行券ルール」が実に妥当性のあるルールである、という結論が導出されるという大変に素晴らしいブーメランブーメランになるのですので、まあそこまで会見で突っ込んで頂きたい(つーかロジカルに攻めたらそうなる筈ですけど)次第であります。
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2015/03/05
○宮尾審議委員の卒業論文がどう見ても赤点再履修な件について
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150304a1.pdf
金融政策運営の課題
大和インベストメント・コンファレンス東京2015における特別講演
ということで、審議委員としての最後の晴れ舞台・・・・・・・のはずなのですが、最後の最後にこの講演とは正直失望したというか、日本の経済学者のレベルのアレさに失望というよりは絶望する次第で、今後「専門家を」とか言いながら学者が増えたら政策委員会がスリーピングボードになってしまいますなあという悪寒が漂う内容でございました。
ではどこがどう絶望なのかを鑑賞しましょう。ちなみに今回の講演の内容は最初の所で説明していますが以下のような感じらしい。
『間もなく、日本銀行審議委員としての5 年間の任期を終了することになる。この間、内外の金融経済情勢、金融政策運営の両面で、大変多くの出来事があり、まさに激動の5
年間であった。この間の出来事や経験を踏まえ、本日は、金融政策運営における課題について、いくつかの論点に絞って述べたい。具体的には、次の3つのことを申し上げたい。@長期国債など大規模な資産買入れ政策の効果、A金融政策のコミュニケーション、B2%の物価安定目標へ向けた今後の道筋についてである。こうした議論を踏まえ、最後に、中央銀行による説明責任のあり方に関して若干の私見を述べ、終わりとする。』
・金利政策としての資産買入と政策金利維持の時間軸政策は本質的に同じなのですが・・・・・・・・
最初がまあこの大規模資産買入の効果に関する説明なのだが、資産買入政策と政策金利を低位水準で長期的に維持する時間軸政策の違いについてドヤ顔で説明している所が本質的におかしいという所から参ります。本文1ページのケツ辺りから。
『米国、日本、欧州の資産買入れ措置は、それぞれの詳細は異なるが、共通する特徴は、大規模な買入を実施し、かつ買入の継続期間について「オープンエンド性」を持たせている点である。(中略)これは、あらかじめ期限を区切った資産買入れと比べて、非常に強い緩和措置であり、次の3つの点から、より強力な効果を発揮しうるとみられる。』
はて??
『第1に、資産買入を継続する期間について、あらかじめ限定せず、政策目標にリンクすることで、目標達成に対する強い意志と決意を示している。』
『日本の「量的・質的金融緩和」の場合には、2%目標の実現に強く明確なコミットメントを示すことで、予想インフレ率に働きかけ、同時に大規模な国債買入れによってイールドカーブ全体に低下圧力を加えることで実質金利を低下させ、民間需要を刺激する。』
『一般に、オープンエンド性を付与することで、非伝統的かつ大規模な政策措置を相当な期間継続する姿勢を明確にし、その結果、長期金利や資産価格への働きかけを強めて金融環境を一段と緩和的として、企業収益や雇用・賃金の改善をもたらし、より強力な効果を発揮しうる。』
まあこの時点でツッコミどころもあるのだが先の所での説明で盛大なツッコミどころが登場するのでここは流す。
『第2に、緩和政策へ強力かつより長期にコミットすることで、民間部門の生産的なリスクテイクや「企業家精神」を促して、経済の供給面に好影響を及ぼす可能性がある。』
第1でオープンエンドの緩和政策にコミットという話をしているのに何でここで同じことについてわざわざ第2の分類するのでしょうかね。
『たとえば、@事業構造の転換や新たな需要の掘り起こしなどを後押しする、A新技術を体化した設備投資や研究開発投資などを促す、といった取組みにつながれば、資本ストックを増加させ、全要素生産性を高めることができる。経済の供給サイドが改善し、国全体の恒常所得見通しが改善することで、需要の持続的な増加へとつながることが期待できる。1』
国債買入政策を実施することによってどういうパスでそのようになるんでしょうか定量的な考察を頂きたいものですな。
『第3に、オープンエンドである結果、市場が予想する買入期間は、経済見通しの変化に応じて、変化しうる。仮に経済見通しが下振れても、予想される緩和期間が長期化するため、緩和効果が強まり、その結果、目標達成時期が近づくという安定化メカニズムを内包している。』
経済見通しが下振れたら普通に追加緩和になるんだから別にオープンエンド関係ないだろと思いますし、だいたいからして経済見通しが下振れるような状況下だったら緩和が足りないのだから予想される緩和期間んが長期化されて高まった緩和効果と実際に経済見通しが下振れすることになる背景となった経済への悪影響が相殺されるだけで、別に目標達成時期が近づく訳ないだろいい加減にしろ。
・・・・・などと思いますが、まあそれよりも呆れるというか意味不明なのはこの先の部分です。
『では、大規模な資産買入れとそのオープンエンド・アプローチは、別の非伝統的手段である「政策金利のフォワードガイダンス」、すなわちゼロ金利あるいは超低金利をより長期に継続するとの約束と比較して、どう評価できるだろうか。』
ここでバランスシート政策の資産サイドによる資産価格への影響の話をするとか、MB拡大でインフレ期待が高まるという話をするならまだわかるのですが、宮尾さんの説明はマジでこの人5年間審議委員やってて何を見てきたのかと小一時間問い詰めたくなる内容なのですよ。
『ここでは、2つの観点から議論してみたい。』
『第1 は、金融環境(長期金利や資産価格など)への影響という観点である。』
で、特定のアセットクラスに対する影響とかいうのならまだわかるのですが・・・・・・・・
『大規模な長期国債買入れは、タームプレミアム部分に低下圧力をかけるだけでなく、将来の短期金利の予想経路にも影響を及ぼしうる。』
ということで、金利アプローチで説明をおっぱじめているのですが、金利アプローチという面で言えば、低金利政策のフォワードガイダンス政策による時間軸効果も「将来の短期金利の予想経路に影響を及ぼす」もの(というか政策金利のガイダンスなのだからより直接的)ですし、その結果としてタームプレミアムに低下圧力をかけるのは同様であって、資産買入政策独自の特色ではないのですが大丈夫でしょうか宮尾先生。
『長期国債を大規模かつより長期に保有することで、異例の緩和措置をより長期に継続する――したがって、結果的にゼロ金利や超低金利政策もより長期間続ける――というシグナルと市場が受け止めると、予想短期金利の部分にも下押し圧力がかかる可能性がある(「シグナル効果」)。』
すいません意味がわかりません。目標達成が展望できたら出口政策に入るのは資産買入でも低金利時間軸でも同様なのですが。
『他方、ゼロ金利のフォワードガイダンスでは、将来、政策金利の引上げが望ましい局面になってもゼロ金利を続けると事前に約束することで、短期金利の予想経路を引き下げ、長めの金利に低下圧力を及ぼす。ただし、その約束は、実際に利上げが望ましい局面になると破られるという誘因を持つ(事後的には反故にすることが望ましい)ことから、「時間非整合(time
inconsistency)」の問題を含んでいる。大規模かつオープンエンドの長期国債買入れがもたらす「シグナル効果」は、時間非整合性の誘因を抑えるコミットメント・デバイスとしても機能する可能性がある。以上から、大規模な国債買入れは、緩和的な金融環境を実現する上で、より大きな効果を発揮しうるとみられる。』
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)
あのーすいません、資産買入による量的緩和政策であっても実際に出口政策が望ましい局面になったら出口政策を実施しないと今度は景気の過熱による望ましくないインフレーションや金融市場や資源配分の不均衡をもたらすから、時間的非整合の問題に関してはゼロ金利のフォワードガイダンスと資産買入との間に差異はないんですけれども、何でそこで差が発生すると言えるのかちょっととっくりと教えて頂きたいのですけれどもね。
・言うに事欠いてジンバブエ理論登場とかもうね
でまあその次。
『第2 の観点は、マネタリーベース拡大の含意についてである。長期国債買入れのオープンエンド・アプローチには、負債サイドでマネタリーベース、とりわけ準備預金が大規模かつより長期に拡大するという含意がある。一方、金利のフォワードガイダンスには、このような量的な側面は存在しない。』
で、その量がインフレ期待に直接働きかける的な話をするのであれば、まあマネタリーベース直線一気の置物理論を敷衍しているのでまだ分からないでもないのですが、言うに事欠いてこの人何を言い出すんだというのがその先に来るのだ。
『流通市場から長期国債を買入れて、マネタリーベースとりわけ準備預金が長期的に拡大することは、どのような経済効果がありうるだろうか。最近の学界の研究では、この問題に対して理論的な分析が試みられており、定性的なメカニズムとしては、以下のような効果が考えられる。』
ほう。
『政府の長期負債(長期国債)が中央銀行の短期負債(準備預金)に置き換わる結果、政府と中央銀行から成る政策部門全体でみると利払い費用が減?し、?なくともその意味でシニョリッジ(通貨発行益)が発生する。』
ジンバブエキター!!!
『ここで、政府の将来にわたる財政支出計画を一定とすると、シニョリッジが発生した分、政府の予算制約式において追加的な財政余地(fiscal
space)が生み出される。その生み出された財政余地が、先々の財政支出の増加もしくは減税にまわれば(あるいは、そのように民間が予想すれば)、景気を刺激することができる。2』
えーっとすいません、まあ脚注を見るとそういうの大真面目に論じられているのかもしれませんけど、非伝統的政策による国債買入の拡大によって生み出されたシニョリッジは、その政策を終了させる段階で強制返済の刑になる(返済しなかったら金融緩和の行き過ぎでインフレ高進が止められなくなる)わけで、未来永劫デフレ均衡が続いて大量の国債買入が維持できるというのであれば、その分のシニョリッジを使う事は出来るかもしれませんが、それはそもそも資産買入政策の効果が無いという金融政策無効論に発展しちゃいますし、だいたいからしてバーナンキの背理法が成立して無税国家になってしまうという話でしょという事で。
『このような長期国債と準備預金の交換に基づく潜在的な景気刺激効果は、ゼロ金利政策のフォワードガイダンスには起こりえず、大規模かつ長期のバランスシート政策に固有のものである。』
大体この説明がおかしいのは、長期国債と「準備預金」の交換という説明をしていることであって、大規模国債買入政策で行われているのは、長期国債と「超過準備」の交換であって(額が小さいうちは準備預金かもしれなないが)、超過準備というのは金利誘導政策を実施する際において、資金吸収オペで回収するか、あるいは超過準備預金に対する付利を行う事によって不胎化をしないと、金利誘導政策が実施できない、つまり出口においては長期国債と交換したはずの「超過準備」はただの金利付き負債に化けてしまうのでありますから、ここで発生するシニョリッジはあくまでも見せかけのものであり、それを使うのは出口において逆回転を発生させるだけの「未来からの前借」でしかなく、これを景気刺激効果にカウントするのがそもそもおかしいです。
『もちろん、現実の政策実践においては、生み出された財政余地の利用をきっかけに、政府の財政健全化努力が後退したと市場に疑念をもたれるリスクがあり、注意が必要である。実際、理論分析では、時間を通じた政府の予算制約式が成立しており、財政収支は最終的に均衡することが前提となっている。日本の場合、政府は中長期の財政再建にコミットする姿勢を明確に示しているが、それはこの理論分析においても重要な前提となっている点は強調しておきたい。』
なんか小難しく言ってますが、時間を通じた政府の予算制約式って要するにこのシニョリッジを使うのは未来からの前借って事だと思いますが、あたかもこのシニョリッジを使うことが出来ます的な話をするのって、要するに財政問題ガーと頭を抱えている政治方面に盛大に尻尾を振っていることで、セントラルバンカーとしての任期切れも近いので早速そちらにすり寄る辺り、執行部が変わると見るや謎提案ですり寄った同僚の学者様にも似た行動様式に落涙を禁じ得ない次第で大変に痛み入る次第でございます。
・ということでおかしな結論なのだが最後に出口に言及しているのがまた笑えるというか笑えん
『以上議論してきたように、大規模な資産買入れ政策とそのオープンエンド・アプローチには、実質金利などを通じた伝統的な波及経路に基づく効果や、経済の供給サイドを通じた効果をより強めるという側面に加え、政策金利のフォワードガイダンスに伴う「時間非整合性」を抑制する効果も期待される。さらには、シニョリッジを通じた潜在的な景気刺激効果も、理論的なメカニズムとして示唆される。』
というなんだかなあという結論がこのコーナーからは出てくるのですが・・・・・・・・・
『その政策アプローチが全体としてどの程度の緩和効果を発揮しうるのかという問題は、将来の正常化あるいは引締めの際、それをどのタイミングでどの程度調整すべきかという論点とも密接に関わってくる。』
え???
『マネタリーベース拡大政策に、ここで論じたような多面的な景気浮揚効果が内包されているのであれば、その政策アプローチの調整ならびに転換、あるいはそのガイダンスには、逆の引締め効果が働くことになる。』
えーっとすいません、それこそが時間的非整合性の問題であり、長期国債買入で発生するかのように見えるシニョリッジが単に見せかけのものであるという事を意味するのではないでしょうか今までの説明部分との整合性考えた方がよろしいんじゃないでしょうかねえ。
『目標達成が十分近づいて正常化プロセスを検討する際には、政策金利に関する調整やガイダンスとの組み合わせなども含めて、適切な調整が図られることになろう。』
「適切な調整が図られることになろう」ってあーたそれはつまり自分の任期中に出口政策の問題が発生するわけではないので、今のうちだけであれば出口に関する問題は目をつぶってしまえという無責任極まりない話をしているという事と理解致しましたがそれで宜しいでしょうか???????
・強力なコミットメントとかオープンエンドの時間軸効果的な話をしているのに柔軟性とかもうアホかと馬鹿かと
次がコミュニケーションに関するところだがこれまたクオリティが酷い。
『非伝統的な政策運営を実施するなかで、コミュニケーションの重要性は、近年一段と高まっている。各国の中央銀行は、数値を伴う政策目標の導入、自らの政策アプローチの明確化、先行き経済の見通しの公表など、透明性と説明責任を高める努力を続けてきている。独立性を付与された現代の中央銀行にとって、透明性と説明責任を高めることは、信認を確保するうえで極めて重要である。』
ということでああだこうだと話をしているのですが、まあ途中のお話の部分は割愛して結論らしき部分を本文6ページの所と、そのあとの最後のまとめ的な部分になる本文10ページを鑑賞してみましょう。
まずは本文6ページの後半から。
『実際、日本では量的・質的金融緩和政策の先行きに関するガイダンスについて、「2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで量的・質的金融緩和を継続する。その際、経済物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」という、ブロードなアプローチを採用している。』
ぶ、ぶろーどなあぷろーちですと???
『政策目標という「制約」のもとで総合判断するという政策アプローチは、「制約付の裁量(constrained discretion)」という柔軟なインフレ目標政策のエッセンスそのものである。日本を含む各国は、柔軟なインフレ目標政策の枠組みに依拠した実践をまさに行っており、総合判断のウエイトは今後も高いものになると予想される。』
おいこらちょっと待てという所ですが、これが最後の『5.おわりに』の所で更に強調されます。
『現代の金融政策運営には、経済の基本的な構造変化の可能性を抱えるもとで、新たな政策に挑戦するという大きな使命が課せられている。国民や市場との対話に難度が増すことは避けられない。しかし、今日議論したような論点も含めて、より丁寧な説明を継続し、課題を共有することで、前向きな対話を進めていかなければならない。』
はてそもそもここまでの宮尾さんの説明が意味不明で対話が成立しないと思いますが、などというようなツッコミはさておきこの部分の最後の所である。
『基本的な透明性は確保しつつ、裁量的な総合判断のウエイトを高めることが、これからの中央銀行に望まれる説明責任だと考える。そうした認識が、国民そして市場に、幅広く共有されることを願ってやまない。』
・・・・・・・・・・orzorzorz
えーっとですね、さきほど宮尾さんオープンエンドの資産買入政策の効果が高いという理論的な背景として、時間的非整合性の問題が生じにくいという話をしていましたよね??
で、時間的非整合性の問題が生じる要因に「ただし、その約束は、実際に利上げが望ましい局面になると破られるという誘因を持つ(事後的には反故にすることが望ましい)ことから、「時間非整合(time
inconsistency)」の問題を含んでいる。」(ちょっと上の方で引用した奴の再掲だよ!)ってお話をした訳でして、裁量を高めたら時間非整合の問題を強める話になるでしょ宮尾さん何言ってるんですか、というかあんさん5年間審議委員やってて何を見て何を聞いて何を考えていたのかと小一時間問い詰めたい訳ですよ。
そもそもですね、コミットメントを使った時間軸政策において、時間的非整合性の問題を起こさせ難くするためには、「本来裁量的に総合判断した場合に適切と思われる時点よりも長期に緩和政策を継続するという事前コミットメントをおこない、将来の金融政策発動(緩和終了)により強い制約を課す」ことが必要になるわけでして、オープンエンドの資産買入政策の効果についての話を延々と繰り広げたあとに何でこの結論に達するのか全くもって意味が分からんというか、そもそも論としてしてこの先生時間軸政策のキモの部分を全然理解しないまま5年間審議委員やっていたのかと思いますと、涙も枯れ果ててしまうという所でございます。
確か宮尾さんはそれなりに金融政策論などに詳しいという前評判があったはずで、ボード入りするときにも結構その手の方で期待されていた筈なのですが、最後の最後の卒業試験で赤点再履修モノの講演を出してくるとか何なんでしょうかとしか申し上げようがない次第で、なんちゅう成長力の無い(というかマイナス成長してねえか???)お方だと思う次第。
審議委員の普通のパターンだと最初のうちやらかしてしまうお方が、任期後半以降とか退任直前とかになると盛大にキレッキレ(良い意味で)の情報発信をしてくる(最近の森本さんとか石田さんが好例)というのがよくある話で、普通は経験値とともに成長力というものがあるはず。
つーかあの置物師匠だって日銀ボード入りしてから「例えばオペについても、外部にいたときは簡単だと思っていたが、実務はそのような簡単なものではないとわかった。」(2013年6月24日ロイターとのインタビュー記事)とか、「それが、日本銀行では様々な、膨大な指標が提供されるようになり、予想インフレ率は様々なサーベイデータをみなければならないということがだんだんと分かってきました。」(2015年2月4日金懇での会見)などと、おじいちゃんここ来るまでの70年間何の勉強をしてたのというツッコミをしたくなるものの、置物は置物なりに勉強している訳で、それに対してこの宮尾さんは卒業試験で赤点再履修(宮尾さんが再履修しても迷惑なのでそのまま放校で結構なのですが)講演をするとかワンダホーすぎてもう涙がちょちょぎれてしまいましたとさ、という所です。
・とまあ悪態申し上げましたが追い打ちをかけるとそもそも今の政策との整合性が取れていないのだ
とまあそんな感じでああだこうだと悪態の巻でしたが、更にそもそも論に戻りますとこの講演は今の日銀の金融政策の説明としておかしい点が2つあります。
ではそれは何ですかと申しますと、「マネタリーベースを拡大して国債の大量購入を行ってインフレ期待に直接働きかける」というQQEのメカニズムに関する説明がろくすっぽ無い事がまず一つありまして、だれかお願いですからMB直線一気理論でもマッカラムルールでも結構ですが、大規模なマネタリーベースが期待インフレ率を押し上げることに関するメカニズムの説得性のある説明をしていただきたいと切に願う次第ではございますがそれはともかくとして。
更におかしいのはこの講演では日本のQQEを含めまして「オープンエンド」をメリットとして強調しているのですが、そもそも日本のQQE政策におけるキモは、前述のマネタリーベース直線一気置物理論に加えまして「2年を念頭にできるだけ早期に達成する」という期間に対するコミットメントであり、目標達成の期間に対してコミットを行っている状態であるならば、そもそも論として宮尾さんがここまで説明しているオープンエンド政策だから強力な政策である、というのは日本のQQE政策を論じる際に不適切であるという事になる(引用していないが日米欧の資産買入政策(欧はこれからですが)に関してオープンエンドであることが共通という話をしている)のでして、そもそもこの説明はQQEの建付けに対する説明とは相入れない話だったりするのでして、時間軸政策の本質が分かっていないとか、時間的非整合性についての理解がおかしいとか、そういう以前に今やっている政策の枠組みとか建付けに対する理解も怪しいとかもう何だかねという所です。
つーことでまあこれ読んで日銀のこれまでまたはこれからの金融政策に対する何らかの示唆が得られるかと言いますとものの見事に何もないという日銀ウォッチャー泣かせのゴミ講演なのですが、こうやってツッコミ入れながら悪態をつくという意味では日銀ヲチャー的には大変に素敵な講演でしたとさ、とまあそういう所でございました。
#まあしかし債券金利の世界で「特別」というとトクホンシとかトクテッケンとかトクオオとか微妙なサムシングな香りがする訳でして、今回の講演が「特別講演」というのはそういう事だったのかもしれませんね(白目)
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2014/11/17
○お休み中のネタシリーズでまずは宮尾審議委員ネタ:講演はオッペケペー
12日の長崎金懇ですがまずは講演から
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141112a1.pdf
・基本的に説明は展望レポートの通りだが内容はツッコミ所が多数
ということでまあ展望レポート通りの話が大体展開されていくので、宮尾さんにツッコミを入れているのか展望レポートにツッコミを入れているのか自分でもワカランチ会長ではありますが(^^)。現状の話はまあどうでも良いので先行き見通しから。
まずは『(経済の見通し)』から。
『まず、経済の見通しについては、国内需要が堅調さを維持する中で、輸出も緩やかな増加に向かっていくと見込まれ、家計部門、企業部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムは持続するものとみています。』
でまあこの辺りは展望レポートの通りなので単なるネチネチツッコミになりますが、従来示していた「前向きの循環メカニズム」というのは生産の拡大というのがこの中に入っていまして、最近はその話は華麗にスルーして労働需給がタイト化するから所得が伸びて支出が増えるというそれはサステイナブルなのかという話をしているのですが、そこの説明が見通しの2番目の所にありますので念の為鑑賞してみましょう。
『第2に、経済の供給サイドの改善を背景に、消費の基調的な底堅さも持続するとみています。
足元、耐久財消費などで反動減の影響がやや長引いている点は留意が必要ですが、過去約2
年を振り返ると、従来の景気回復要因である輸出や設備投資の顕著な増加を伴わずに、消費が伸びを高め、景気回復を牽引してきたことは、特筆に価する動きと言えます(図表6)。』
たぶんそれは特筆に価するのではなくてサステイナブルでは無いという事のように思えますが。
『この間、経済の実力である供給サイドの改善がさまざまな形で進んできており、企業・家計が前向きな取組みを進める下で、企業収益や雇用・所得、労働参加などで表される経済の所得形成力が全体として強まってきています(図表7〜9)。』
えーっとすいません展望レポートによりますと直近の潜在成長率が下方修正されていたと思いますが〜と思いつつ図表7〜9を見ると、図表7が法人企業統計の売上高経常利益率で、それは円安の部分があ〜りませんでしょうかとか、図表8が労働参加率で確かに足元で改善しているけど1997年以降からの落ちから見たら全然戻ってませんよねとか、図表9で、潜在成長率の日銀調査統計局の推計値を出しているのですが、直近の推計値って確か低下していると展望レポートで書いてあったのにそう見えないようなグラフの作りになっているのは「本年分が1〜6月の数値」だからなのか、グラフの表題にあるように「一人あたりの潜在成長率」という事で人口減少を捨象した数値にしているからなのかが良く判らんですが、何か誤魔化しの香りがプンプン致しますな。
『その基本的な傾向は今後も続くと見られるため、経済全体の恒常所得の見通しが改善し、あるいは将来への雇用不安や不確実性がさらに後退して、消費の回復基調は維持されるとみています。』
どう見てもサステイナブルじゃないでしょと思いますし、大体からして潜在成長率の推計値が下がっているのに何ゆう取るねんこのオッサン(という程のお歳ではないですが)という所で。
あと、順序が後先になってしまいましたが、メカニズムが持続する理由のうちの輸出の説明もまあアレ。
『こうしたもとで、輸出は、為替相場の動きも下支えとなり、緩やかな増加に向かっていくとみています。』
いままでその見通しは散々外れてますが。
『主要な輸出企業がグローバル・ベースでの生産・調達に向けた取組みを続けていることは、輸出の増加ペースを抑制する要因となります。他方で、高い競争力を維持する財の輸出(資本財や電子部品・デバイスなど)、ならびに訪日外国人数の増加に伴う旅行収支(サービス輸出)の改善は、さらに進んでいくと見ています(図表5)。2』
でまあ脚注2の所でさくらレポートの話があるのですが、では図表5を見てみますと「訪日外国人数と旅行収支」というのがございまして、そこの「旅行収支」の数値を見るとそらまあ足元盛大に増えているのですが、その額たるや受取2兆円とかそういうスケールの話で、実質GDPが500兆円(図表1)で民間消費支出が90兆円(図表6)だのとか言ってる中で殊更にこの話をクローズアップするのって何なんでしょうねという所ではありますな。
・原油価格の下落は経済にプラスとな
まあ何ですな、宮尾さんは良く言えば正直者という事なのでしょうが、何もわざわざこういう話をせんでもよかろうにとしか申し上げようがないのが、上記の続き(つまり今後の経済が順調に回復経路をたどるという根拠の説明部分)にあるのが追加緩和を決めた理由の原油の話とかもうアホかと馬鹿かと。
『第3に、本年夏場以降の原油価格下落については、実体経済には、企業収益、家計の実質所得の両面から、プラスの影響を及ぼすものと考えられます(図表11)。』
だったらそもそも「無理矢理でも短期間に物価を引き上げよう」とするのではなくて、「経済の成長に伴った物価上昇が徐々に起きる事によってインフレ期待が徐々に改善するのが良い」という白川ドクトリンの方が分があるちゅう話じゃないのよという所でしょと思いますが。つまり所得の拡大などが伴わない中で為替要因や原材料価格要因などで物価だけ上昇するのが上記説明の逆の現象でしょという事よ。
『足元までの原油価格の下落には、グローバル需要の鈍化という需要要因と、米国などの増産といった供給要因の両方が影響しているものと思われます。今後の原油価格動向を正確に見通すことは難しいですが、仮に足元の水準を出発点として、世界経済の成長ペースにあわせて緩やかに上昇していく姿を仮定すると、前年比でみた物価上昇率への下押し圧力は当面の間継続する一方で、企業収益や家計所得への下支えを通じたプラス効果は相応に顕現化してくると見込まれます。』
だったらそもそも物価目標を「2年」で達成する意味は何だったのかという話になると思いますけどね。つーか普通はこの話を殊更に持ち出すと色々な面で「2年で2%」政策との整合性という意味で説明がややこしくなるからこの話しないのが常識的な(?)対応だと思うのだが何でこれを入れたんでしょうねセンスないですね宮尾さん。
・物価の見通しの説明もまあ展望レポート通りだがワロタ
これ後で質疑で思いっきり出てきますけどね。
『第1に、マクロ的な需給バランスについてですが、日本銀行による需給ギャップ推計値をみると、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、足元は過去平均並みのゼロ近傍の水準にあります(図表13)。』
この話は展望レポートで出ているのと同じで、足元「ゼロ近傍」とはモノは言い様で、普通は「マイナスにまた戻った」と言わんかね。
『第2に、中長期的な予想物価上昇率はやや長い目でみれば全体として上昇しているとみられ、今般拡大した「量的・質的金融緩和」を進めるもとで、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられます(図表14)。』
ちなみに図表14に当然ながら物価連動国債のBEIなどが全く記載されていないのですが、そもそも「中長期的な予想物価上昇率が上昇している」のであれば何で追加緩和したんでちゅかねえ。
でまあ輸入物価で目先下押しという話はさておきまして結論も展望レポート通り。
『以上の点を総合すると、消費者物価(除く生鮮食品、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の上昇率は、2015
年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いとみられます。』
はあそうですか。
『私としては、主として原油価格下落に伴う下押しが上昇圧力を抑制することにより、2015
年の夏場までは現状程度の前年比1%前後で推移すると見込んでいます。その後は、前年比でみた原油価格下落の影響が剥落するとともに、需給ギャップのプラス幅が一段と拡大することから、2015
年度の後半にかけて伸び率を高め、2015 年度後半頃には物価安定目標である2%程度に達する可能性が高いと予想しています(図表16)。』
なお図表16を見ると何ちゅうかクソワロタという感じの鉛筆舐め舐め感が漂っております。
リスクバランスに関しては・・・・・・・・
『これらのリスクについて、私自身は、経済見通し、物価見通しともに、概ね上下にバランスしているとみています。』
ということで、更に追加緩和の意味が判らなくなりますが、その後に金融政策の説明がありますよん。
・まずは能書きを鑑賞
まあ概ね執行部説明の通りになりますが。
『強力な金融緩和を導入して1 年半余りが経過しましたが、この間の実体経済の回復を金融面から強力にサポートしてきたと見ています。その結果、物価面では「量的・質的金融緩和」を導入する直前の昨年3
月の時点でマイナス0.5%であった消費者物価の前年比が、現在はプラス1%台前半まで改善しました。』
もう1年半も実施したんだからマネタリーベースの定量的な効果はレビューできますよね。
『もっとも、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として作用しており、直近の9
月には前年比+1.0%まで伸び率を縮小しました。需要の一時的な弱さはすでに和らぎ始めているほか、原油価格下落の影響は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用するものです。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがあります。』
さっき予想物価上昇率は全体として上昇と言ってませんでしたっけ???
『わが国は長年にわたってデフレが続いてきており、米国のように予想物価上昇率がすでに2%程度にアンカーされている国とは異なり、国民の物価感そのものを2%程度に引き上げる途上にあります。』
ほうほうそれでそれで???
『そのプロセスにおいて、仮に短期的であっても、実際の物価上昇率の伸び悩みが続けば、これまでの予想物価上昇率の好転のモメンタムを弱めるリスクがあると考えました。』
よくよく考えたら凄まじい説明でして、それはつまり@足元の物価動向にモロに対応した金融政策を実施ということですが、金融政策のタイムラグを考えたらやり過ぎのリスクは無いのか、Aそれに加えてマインド転換の為に強引に物価の数値を上げたいという事だが、生産や所得の持続的拡大を伴わないで無理矢理物価を上げると却って将来のディスインフレ圧力になるだけなんじゃないの、オーバーシュートしないの?というようなツッコミをしたくなりますな。
『日本では、過去のインフレ率の実績が人々のインフレ予想の形成に影響を与えるという「適応的な」予想形成メカニズムが相応に強いとみられる点も留意が必要です。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、このタイミングで「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断しました。』
でまあお伺いしたいのは「じゃあ今回の追加緩和によってやらない場合と比較して何がどう変わるのでしょうか」という話でして、それ即ち政策の定量的な部分のアセスメントとも絡む話ですよね(ニヤニヤ)という所でもあるのですが、それらしいツッコミも会見であったりします。
・政策の効果とコストの説明が中々香ばしい件について
『今回の「量的・質的金融緩和」の拡大に際して、私自身、期待される効果と懸念されるコストやリスクをどう考えたか、述べたいと思います。』
ということで見苦しい説明の上塗りコーナーが実に心温まる内容なので鑑賞するのだ。
『まず効果についてですが、昨年4 月からの「量的・質的金融緩和」は、イールドカーブ全体にさらに低下圧力をかけ、また資産価格にも強力に働きかけることで、金融環境は一段と緩和的となり、企業収益や雇用、賃金の改善を強力に後押ししてきたとみています。企業・家計の所得形成力が高まり、需要の持続的な改善が続くとの見通しが広がる中で、物価上昇圧力も高まってきました。6』
でまあこの脚注6というのが・・・・・・・
『6 これまでの物価上昇圧力の高まりや「量的・質的金融緩和」の効果に関するより詳しい説明については、「日本経済と金融政策」(2014
年10 月18 日、日本金融学会2014 年度秋季大会における特別講演)をご参照ください。』
ということで、ついこの前実施した追加緩和のつの字も無い講演を「ご参照ください」とか書いてしまうというのはわざわざツッコミ所をご提供するという意味で(次にネタにする会見で当然のごとく盛大に炎上しております)もしかして宮尾さんというのは自ら炎上する系のご趣味でもお持ちなのではないかと疑ってしまうような所です。
『所得から支出への景気の前向きな循環メカニズムが今後も維持されるというのがメインシナリオであり、企業の収益力、家計の労働供給などの面で、経済の実力である供給サイドの改善も着実に進むと見込まれます。その中での今回の追加緩和措置は、これまで以上にしっかりとした効果を発揮していくことが期待できます。』
所得から支出だけでサステイナブルなのかとか潜在成長率が下がっている件はスルーですかそうですか。
『すなわち、企業の収益力が高まるなかで、極めて緩和的な金融環境を生かして、前向きな取組みやリスクテイクが促され、景気浮揚効果はより高まります。』
は????という感じですが。
『大規模な国債買入れにより長めの金利に低下圧力がかかり、資産価格にも上昇圧力がかかりますが、企業収益などのファンダメンタルズが同時に改善していれば、資産価格の上昇はより持続可能となり、正当化されやすくなります。』
そういうのを普通「ユーフォリア論」って言いますけどね。
『経済の実力の改善とあいまって、継続的な支出の増加が促されることで、より持続的な政策効果が期待されるのです(前掲図表12)。』
まあここまでは追加緩和あんまり関係ないですよね。さらに続く。
『一方で、今回の措置に伴う潜在的なコストやリスクについては、どのように考えられるでしょうか。』
ほうほう。
『国債買入などの非伝統的な緩和措置の拡大が「一時的な資産価格バブルをもたらすだけで、経済をむしろ不安定化する」とのリスクについては、供給サイドの成長力や競争力の改善が伴っているか、不採算事業の見直しなど先送りされてきた構造転換が進むかどうかがカギであると見ています。』
で??
『この点は、私自身は、再三強調しているように、この間日本経済の実力を高めるような前向きな取組みは着実に進展してきており、今後もその傾向が続くと見ていることから、このリスクは抑制されていると判断しています。』
ナメトンノカという所で、だったら展望レポートで「足元の潜在成長率がやや下方修正されている」件との整合性はどうなっているんだと小一時間問い詰めたい、ってこっちもさっきから同じ事言ってるけど。
『いま述べたように、ファンダメンタルズの改善が伴うことで資産価格上昇がより持続的となり、正当化されやすくなることで、金融面の不均衡の蓄積という潜在的な副作用は抑制されやすくなると考えます。』
そう言ってバブルが正当化されるんですけどねえ・・・・・・・・・・・・
なおその後のコストの説明は最早ワケがワカランので引用もしません。
・出口の見通しはいいから今回の措置でどう変わったかの説明を早よ!!
『(3)「出口」の見通し』という所ですが。
『今回の「量的・質的金融緩和」の拡大によって、緩和策からの「出口」を見通すことがより難しくなったという指摘があります。しかし、この点について、私は必ずしもそのようには考えていません。』
????????????????
『今回の拡大措置のもたらす重要なポイントは、従前の緩和策を遂行している場合に比べて、2%目標に到達する時期がより早まり、その実現可能性も増すと見られる点です。』
はあああ??????????
えーっとですね、潜在成長率が下がっていると見られる中で何で急いがないといけないのですかねえというのはさて置くとしても、よーし時期が早まるというのだったら追加緩和しなかった場合とした場合の差分を計算できるんですなという事で、その数値を具体的に示せやゴルァと思いますし、大体からしてその数値が出せないのだったら「やり過ぎてインフレが望ましい水準以上に上昇するリスク」の方への対処ができんとちゃいますかと思いますがどうでしょうかねえ。
『今回の措置の結果、私自身は、企業収益や雇用・賃金の改善を伴うバランスの取れた形での2%目標の実現は、2015
年度後半の時期に十分可能であるとみています。実際、来年夏場以降の物価上昇率は、原油価格下落の前年の裏がはける形で、上昇ペースが速まっていくとみています(前掲図表16)。』
というのはさっきもあった通りです。
でまあその後に急に出口の話があるのですが・・・・・・・・・・・・
『そうなれば、2015 年度下期の時点で、先行きの2%目標の安定的な達成が相応の確からしさを持って見通せるようになります。したがって、今回の措置が実行されることで、私としては、具体的な出口戦略の議論―たとえば、米国の中央銀行にあたるFRBがこの間歩んできたように、どういうペースで資産買入れのアクセルを緩めるのか、どういうステップで金利政策に移行していくかといった検討―も、2%目標の実現が可能とみている2015
年度後半の時期には開始できる可能性が高いと考えているのです。』
ということで、結局の所「今回の追加緩和は兎に角効くんだから2%物価目標達成時期が早まるんですよだから出口を見通すのが難しくなったという指摘はおかしい」というだけの話をしているにすぎませんで、そもそも論としてこれまでの緩和および追加緩和に関する定量的な政策効果や政策波及メカニズムの説明も碌すっぽ無い(概念的な話しか1年半たってもされていません罠)という中で「私が効くというから効くのであって、政策が効果を出したら出口の話になるでしょそれは」という話をするだけというのは最早説明にも何にもなっていないという大変に見苦しい話。
じゃあこれだけ積み上げてしまった国債買入やETF買入などをどう軟着陸させる&残高落としていくのかという話があるかと思いますとまあそんな話は1ミリもないですし、大体からしてこのオッサンもう直ぐ任期切れですから具体的な話をする気もないでしょうし、そもそもその手の金融市場に関する知識がまるでなさそうなのは見え見えなのでもうねという所です。
・最後に執行部に代わりまして増税のお願いですかそうですか
最後に『(4)政府と日銀の「共同声明」の意義』というのがある。
『ここで改めて、昨年1 月に公表した、政府との「共同声明」の意義を確認しておきたいと思います。その骨子を改めて示すと、』
でまあそこの紙の内容は割愛しまして、
『こういった日本銀行と政府双方の取組みが、共同声明には明記されています。日本銀行による今回の追加緩和措置は、この共同声明に沿って、デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的成長の実現を目指して、一段と強い決意のもとで、決定されたものです。政府の取組みについても、この共同声明に沿って、強力かつ着実な進展が図られることを、改めて強く期待します。』
つまり追加緩和の食い逃げはしないでね(はあと)という所ですが空しい結果になりそうなのはご案内の通り。
○続きまして宮尾さん会見ネタだがどう見ても大炎上です本当にありがとうございました
これはクソワロタとしか申し上げようがない。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1411b.pdf
最初から3ページまでは普通の会話なのですが、4ページ目の質疑から大変に面白い事になっております。
・何で追加緩和に賛成したのかという質問
『(問) 2 つございます。10 月31 日の追加緩和ですけれども、何が最大の理由で賛成されたのか、簡単にお願いします。5
対4 ということは薄氷の決定だったと思います。今日の懇談会をみても、やはり基調として経済はそんなに弱くない、というか、やはりタイトな労働市場をベースにそれなりに物価がアンカーされているようにもお見受けするのですが、もしギリギリの決断であったとすれば、どこを重視して賛成されたのかを教えて下さい。(以下割愛)』
ですなあ。なお2番目の質問はあまり面白くないので割愛。
『(答) まず、第1 点目ですが、今回、私自身、追加緩和が適切であると判断したわけですが、何が最大の理由か、どこを重視したのかというご質問でした。まず、懇談会でも申し上げていますが、これまでの「量的・質的金融緩和」の効果がしっかりあった、具体的には、これまでの「量的・質的金融緩和」は実体経済の回復を金融面から強力にサポートしてきたことで、企業収益や雇用・賃金の回復・改善をしっかりと後押ししてきたと私自身思っており、それに伴って、物価上昇圧力も高めてきたと考えております。同時に、中長期の予想インフレ率も全体としては、この間上昇してきており、デフレマインドの転換も着実に進んできたと考えています。』
で何で追加緩和するんでちゅかねえ〜。
『そうした中で、このひと月、ふた月ですが、原油価格の下落がより顕著になってきた影響、あるいは増税後の需要面の弱めの動き──いずれも一時的な要因とみられるわけですけれども──、それらは物価の下押し要因として作用してきており、これまで順調に進んできたデフレマインドの転換が後戻りするリスクがあると考えました。』
( ゚д゚)ポカーン
『実際、経済・物価見通しを10 月31 日の会合で点検したわけですが、私自身の見通しとしては、物価の見通しが下振れし、リスクバランスも経済・物価とも下方にやや厚いという判断になりました。』
さっき講演で「リスクはバランス」と言ったのは追加緩和実施後にリスクがバランスという話みたいですけどナンジャソラという感じではありますな。
『こうした状況のもとで、やはりデフレマインドの転換が後戻りするリスクを未然に防ぐ、好転している期待形成のモメンタムを維持するということは極めて重要であると考えましたし、また、まだ崩れていない景気の前向きな循環メカニズムが維持される中で現在の回復をさらに強力に後押しすることで、より大きなまた持続的な政策効果も期待できると考え、そういった予想される政策のベネフィットと懸念されるコストやリスクを慎重に比較考量した結果、追加緩和が適切であると判断した次第です。(以下割愛)』
・そんな説明では許してもらえないようで・・・・・・・・・・
『(問) 前回決定会合の2 週間前の講演では、かなり物価について強気な見通しを示されております。いくつか挙げますけれども、「消費需要を中心に景気回復が持続してきた背景には、いくつかの側面で、経済の実力である供給サイドの改善が進んできたことが考えられる」、「経済の供給サイドの改善によって物価上昇圧力が高まる可能性がある」、「供給サイドの改善というのは人々の中長期的なインフレ予想を高めるというメカニズムも考えられる。実際、中長期の予想インフレ率は徐々に高まっている」、「このようなメカニズムが作用する中で消費者物価インフレ率への上昇圧力は高まっている」、最後にしますけれども、「一段と緩和的な金融環境に後押しされて、供給サイドの改善と景気の持続的な回復の基調、そして予想インフレ率の緩やかな上昇基調は今後も維持されるとみている。雇用や賃金、企業収益の改善などを伴いながら、バランスの取れた形で、2%目標へ向けた道筋を歩んでいくだろう」。追加緩和に踏み切った10月31
日の決定会合の2 週間前にこれほど強気な見通しを示しております。』
無慈悲な砲撃クソワロタ。
『今日の懇談会の中では、原油安や一時的な需要の弱さで、短期的とはいっても現在の物価下押し圧力が残存する場合には、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがあると、180
度違うことをおっしゃっているわけです。』
(;∀;)イイハナシダナー
『因みに、10 月31 日の原油相場、そして、その2 週間前に講演が行われた時点での原油相場──日本に中東から送られてくる原油の指標となるドバイ原油──は、大体80〜85
ドル/バレルで同じ水準で推移しています。原油価格自体が変わらないのに、2
週間でなぜこれほど見方が変わるのかと、この2 つの講演を見比べてみれば、今回の追加緩和でなぜこのように急に見方が変わったのか、人々は理解できないのではないかと思います。』
素晴らしい質問過ぎて腹筋崩壊不可避(^^)。
『つまり、宮尾先生ご自身、どこまで主体的にこの決定に賛成されたのか、執行部の提案に対して唯々諾々と従ったのではないかという印象を受けるのではないかと思います。この2
週間で何が急にそれほど見通しが変わったのか、見方が変わったのか教えて下さい。』
これは無慈悲な砲撃にも程があるとしか申し上げようがない。
うっかり質問の鑑賞にふけってしまいましたがお答えは・・・・・・・・
『(答) 先程、なぜ追加緩和が適切であると判断したのかという理由を申し上げましたが、やはり一時的とはいえ、原油価格の下落の影響というのがあります。』
しかし原油価格下落が中長期的に見て景気に良い話なのに追加緩和ねえ・・・・・・
『先程、ドバイ原油の価格の言及がありましたけれども、10 月初めがおそらく90
ドルくらい、元々7 月頃が100 ドル前後であったと思いますけれども、10月初めで10%くらい下がった後、10
月半ばに85 ドル、10 月末には80 ドルと10 月ひと月でもさらに10%下がるということで、私が10
月初めの段階で思っていた以上に原油価格の下落のスピードが早かったというのが1
つあります。』
はあそうですかという所ですが直後に無慈悲な砲撃が追加されます。。
『それに加えて増税後の需要面の弱めの動きも引き続き懸念材料です。この反動減の影響が長期化しないかどうかに一定の留意が必要であると10
月半ばの講演で指摘していたかと思いますけれども、そのリスクは引き続き留意しなければいけない。』
ちなみに前回の講演テキストで「原油」でキーワード検索を掛けても何もかかりませんけどね!!!!
『そういった状況も踏まえて、元々これまでの「量的・質的金融緩和」の効果というのは、実体経済ならびに物価上昇圧力を高めるという面でしっかりと効果を果たしてきていますし、今後も経済の実力、供給面の改善が着実に進むというのが、私自身の経済・物価見通しの重要な前提、背景として考えていますので、そういった意味で景気の前向きな循環メカニズムは崩れていない。ただし、足許、急激に進んだ原油価格の下落の影響というものが実際に物価の下押し要因となり、10
月31 日に、経済・物価見通しを入念に点検した結果、私自身の物価見通しが下振れたということで、これは「物価の安定目標」である2%を達成する時期が後ずれするリスク、可能性が高まってきたと考えました。』
全然説明になってない・・・・・・・・・・・
『良いメカニズムは維持されているけれども、せっかくここまで順調にデフレマインドの転換が進んできた中で、それを後戻りさせるというリスクは未然に防ぐ必要があると判断して、追加緩和を行うことが適切であり、当然、コスト、リスク等々も慎重に比較考量した結果、より大きな政策効果も期待されると判断して、追加緩和が適切であると考えた次第です。』
ということですが無慈悲砲撃は更に続く。
・無慈悲砲撃の追い打ちキタコレ
『(問) 繰り返しになりますけれども、10 月18 日の講演をされた時点で10 月16
日のドバイ原油は81.79 ドル/バレルでした。この81.79 ドル/バレルは10 月31
日の会合が行われた当日の83.24 ドル/バレルより安かったのです。つまり、講演を行った時点では原油については一言も触れられていません。講演のときには、全く感じていなかったリスクを2
週間後には突然感じたということでしょうか。』
実に無慈悲な追い打ちですな。
『原油自体は講演されていた時点にそこまで下がっていたわけです。だけど、そのときは全く心配なかったのが、2
週間後、水準は少し上がっているのだけども、やはり大きいとお感じなったということでしょうか。』
どうみても「執行部の言いなりになったんだろオラオラオラ」という質問ですが・・・・・・・・
『(答) 政策判断は、毎回の決定会合当日まで、それまでに利用可能な情報をできるだけ丹念に精査して、先々の経済・物価見通しと照らし合わせて、どういった政策が適切かということをしっかりと検討し、政策の必要性について考えます。そういう姿勢は、これまでもずっとそうでしたし、10
月31 日の決定会合の時もそうでした。とりわけ、10 月31 日の決定会合は、経済・物価見通しの新しい見通しを公表する、自分自身も入念に点検するという機会でしたので、しっかりと当日までの動きを反映して、適切に判断を行ったということです。』
どう見ても火の海で焼け野原です本当にありがとうございました。つーかこれだけボコボコにされて最早言い訳にすらなっていない説明しか出来ないとか本当にお前は学者なのかと小一時間問い詰めたい。
・出口がどうのこうのに関する質疑
『(問) 2 点お伺いします。1 つは出口に関してですが、これまで10 月31 日の追加緩和の時も含めて、総裁も出口についての議論は時期尚早であるという発言を繰り返されていたと思いますが、今日の懇談会の中で、見通しで2015
年度後半には開始できる可能性が高いと言及されています。この言及の意図と、どういった方法が考えられるのかについてお聞きしたい。(後半割愛)』
まあ講演の文脈を見ますと何かわざわざ出口がどうのこうのという話をせんでも良かったように見えますからこういう質問も来るわなあと思います。
『(答) まず、第1 点目は、出口に関してですが、出口の具体的な議論を、早い段階から、たとえば今の段階で、具体的なイメージを持ってお話しするということは適切ではないと、私自身、そう思っております。具体的な出口のあり方につきましては、当然、出口を議論するときの経済・物価情勢や市場の状況などによって変わり得るわけですので、早い段階から具体的なイメージをもってお話しすることは却って混乱を招く恐れがあるので、それは適切ではないと考えております。』
・・・・・・えーっとですね、これ毎度毎度しょうもない話になっているので非常に遺憾なのですが、実際問題として重要なのは「出口で何をするか」という話では無くて「出口を判断するのはどのような基準で行うのか」という話であって、それは2%の物価安定目標の位置づけに関わる話なので、そっちの話をして頂きたい(予想インフレが2%でアンカーとかフィリップスカーブのY切片が2%だとかそういう概念的な話はもうさんざん聞いているのでそうではなくて具体的な話)と思うのだが。
『本日の懇談会では、2%の物価安定目標に到達する時期が2015 年度を中心とする時期であり、私自身は、その2%目標を達成し、先行き安定的に2%目標を実現する展望を十分持つことができる状況になるのが2015
年度後半というのが一番蓋然性の高いシナリオだと考えており、そういった状況になれば、出口の具体的な話というのが当然できる状況になるということを申し上げました。』
だったら別に何時に出口とかそういう話しなくて良かろうに・・・・・・・・
『出口で具体的に用いる様々な調節手段について、今ここでこれを使うということを申し上げるつもりは、もちろんありません。具体的な調節手段については、様々な各種の市場調節手段を日本銀行は有しています。たとえば、保有国債の償還を行うとか、各種の資金吸収オペレーション、あるいは付利金利の引き上げ等です。具体的な出口で用いる市場調節手段を有しておりますので、出口を具体的に検討することになったときに、しっかりと議論すべきことであると考えています。(以下割愛)』
保有国債の償還を「行う」というのは何か主体的にやるような表現なのであまり適切ではないと思うのですが、会見要旨作る事務方がその辺分かっていない訳は無いと思うので、まあ本人がそういう発言をしたんだろうなあと思うのですが、「保有国債の償還を行う」という説明が意味不明にも程がある訳で(財務省に買入消却をさせるのは国債発行計画との絡みがあるので日銀だけの考えでは出来ないし、単なる償還だったら「償還を行う」は表現として変)、4年半審議委員やっていてこの表現を使うという時点でこのオッサン今まで何をしてたんだと小一時間。
・物価目標達成時期に関して
最後の質疑も中々素敵。
『(問) 懇談会の内容についてお伺いしたいのですが、10 月31 日の追加緩和の前ですと、2015
年度を中心とするということを言われていたかと思います。10月31 日の追加緩和によって、今日の懇談会の中で2%目標に達成する時期がより早まるということも言われていますが、一方で宮尾委員は、その2%の実現を2015
年度後半の時期にと言われていて、そのタイミングのところがよく分かりません。』
(;∀;)イイシテキダナー
『宮尾委員が言われているのは、追加緩和をして早まって、2015 年度の後半ということです。最初には、3
年間の見通し期間の中頃──2015 年度──ということを言われていたと思うのですけれど、ここで2015
年度の後半ということになると、時期が遅れているような感じがします。(後半割愛)』
さてそのお答えは。
『(答) まず、2%目標が達成される可能性が最も高いタイミングに関してですが、懇談会で達成する時期がより早まった、あるいはより確実なものになったと申し上げているのは、追加緩和を決定する前の経済・物価見通しと比べてより早まった、あるいはより確実なものになったという趣旨です。』
ワロタ。
『従って、追加緩和を決定する前の経済・物価見通し、私自身の経済・物価見通しはそれ以前の、7
月の中間評価見通しと比べて、下振れたあるいはその達成時期が後ずれする可能性が高いと判断して、その後、追加緩和が決定され、それによって、後ずれした達成時期がまた前に戻ってきてより早まったという
主旨です。(後半割愛)』
何ちゅうかもう説明がグダグダ過ぎで、要するに本来の意味での見通しとかと違う所で追加緩和をしたんですねえとかまあそういう話なんでしょうな。ナムナム。
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2014/04/20
○宮尾審議委員謎の特別講演をやたらネチネチ読んでみましたよ!!!!(以下やたら長いのでご注意)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141018a1.pdf
日本経済と金融政策
── 日本金融学会2014年度秋季大会における特別講演 ──
土曜日に何故かこんなのがアップされていまして、「特別」講演とか言われまして何が特別ですねんと言いますか、だいたい「特別」と名がついているものに碌な物無しというのが金利絡みの世界では良くありまして、一般債ディーラー(や投資家)でちょっと年寄りを捕まえて「トクホンシ」だの「トクオオ」だのという言葉を振ると大抵やられ自慢の武勇伝が聞かれると思いますのでお試しあれ。
ということでまあその「特別」講演ですけどね。
・置物理論が使い物にならないので新たな大本営理論の構築が進んでいる可能性も否定できません
最初の『1.はじめに』ですけどね。
『早いもので、日本銀行の審議委員に就任して4年半が経過しました。』
良く良く考えたら宮尾審議委員って来年の3月25日までの任期でして、普通は日銀の政策委員というのは内部昇格の場合は別ですけれども、一般的にクビが近くなると思いっ切りはっちゃけて暴れだすのが仕様になっているのですが、まあ今回の講演に関しては大本営理論を伝達する九官鳥振りを遺憾なく発揮しておられるという感を深くするものでありまして、本来ならQQEの「2年」結果前に勝ち(勝っていないような気がしますが)逃げ(逃げる方は任期到来ですから)が可能という大変に素敵なポジションにいますので、それこそ暴れて頂きたい所なのですが、九官鳥審議委員振りを遺憾なく発揮されているという事はさてはおじさん再任でも狙ってるんでしょうかという所です。
まあ置物みたいなのが来る位なら鳥の方がマシなのかも知れませんが、しかしまあ学者3名が置物に九官鳥にオガクズとか日本の学界とは何なんでしょ(まあ置物理論が世間的に幅を利かせる時点でお察しなのですが)という所ではありますが、まあ以下をツッコみながら鑑賞すると大本営理論の萌芽にも見えて味わいがあるというものです。
『これらの取組みに対して、学界でもさまざまな見方やご意見があり、活発な議論や研究が行われていると承知しています。私も、学界出身の一人として、以下のようなさまざまなことを自問自答してきました。』
ほうほう。
『@2 年ほど前からわが国経済は「消費主導」による回復が続いているが、なぜいま「消費主導」なのか。その原動力は何か。それは持続するのか。』
ふーん。
『A世の中の多くの予想に反して、消費者物価は、昨年来順調に伸びを高めてきたが、その原動力は何か。企業はコストを販売価格に転嫁する動きを強めてきているが、なぜいま可能なのか。』
太鼓持ちキター!
『B国債買入れなどの非伝統的な金融政策の効果については、学界でも見方が分かれているが、効果を疑問視する声――「平時にはそもそも効果はなく、マーケットが誤解しているだけ」、「一時的な資産価格バブルをもたらすだけで、経済をむしろ不安定化する」など――にはどう答えるのか。』
バブルの前に市場機能が崩壊して金融政策のトランスミッションメカニズムが喪失する事を心配して下さい。
『これらの問いに対して自分なりに回答を模索してきましたが、それらはいずれも、経済の潜在的な成長力や収益力、所得形成力といった供給サイドの「実力」をどう捉えるかに密接に関わっています。言うまでもありませんが、景気回復のメカニズムや持続性、そして政策の効果や課題を議論するには、経済の供給面の状況を正しく把握することが重要です。』
キター!!!!
・・・・・・・・えーっとですね、何がキタコレなのかと申しますと、従来の置物理論およびそれを波及させた日銀異次元理論によりますと、長期国債の大規模な買入によるマネタリーベースの拡大でインフレ期待が低下して実質金利が下がるので全て上手く行くし、物価に関しては日銀の金融政策で決められるし、経済の状況云々とは別に物価目標2%が絶対的に正しいので、それに向けて日銀が適切な政策を打てば良い、という話だった訳で、特に上記Bの金融政策の効果に関する部分に関連して「供給サイドの実力」という話が出てくるのは異次元理論的には新展開という話なのですな。
#野党審議委員の方からは既に「2年で2%」の定義についてとか妥当性についてとか見解が出ていますが
・日本経済への認識が何ちゅうか大本営発表である
でその次。
『そのような問題意識のもと、私は、これまで講演などで、現在の日本経済の回復の大きな特徴は、従来の「輸出主導」ではなく「消費・非製造業主導」であること、そしてその背景となる原動力としては、いくつかの側面から供給サイドの実力が高まっていることを強調してきました。1』
供給サイドの天井論という話をしている佐藤さんや木内さんとはマッコウクジラですねわかります。
『すなわち、@企業部門では内外さまざまな前向きな取組みが進展し、非製造業の収益力やグローバル化を加速する製造業の「稼ぐ力」が高まっていること、』
そ、そうなのか????
『A企業の労働需要は基調的に高まり雇用・所得環境の改善は続いていること、』
供給制約が厳しくなっているからではないかという気もするのだが。
『B女性や高齢者などの自発的な労働参加が促され家計の労働供給も増加してきていること、などです。』
この自発的というのが曲者で、パーヘッドの実質賃金が低下している中での「自発的な労働参加」ってそれ要するに家計単位の実質賃金低下を埋める為に労働参加が促されているという可能性についてはどうお考えなのかというのと、そもそもそういう状況での「自発的な労働参加」って単にそれ国民厚生的には人民を実質ベースで貧乏化させることによって働かせるように仕向けているって話にならないかねとか、まあそんな事を思ったりしますががががが。
・ということで「経済の実力」という異次元理論の収拾に向けた動きの萌芽かもしれない件
現在の異次元緩和の異次元理論だととにかく金融政策単独で物価目標は達成できるのだから経済の実力とか関係ないし、2%の物価目標水準は経済の実力云々とは別として正しい数値だし、そもそもこれまでの日本経済の問題は長期のデフレによって発生したのだからデフレを脱却すればそれらの問題が解決に向かうのでデフレ脱却で困るという話は無い、とまあそんな理論でしたな。
でまあ昨今は異次元緩和を投下した時の理論の肝心の部分である「2年で2%達成」の期限が近くなってきた中で、残念ながら来年の4月時点でアクチュアルなCPIが2%というのは無理がありそうな水準になりそうですよねとなっている訳で、そうなると@2年に関しては範囲の世界で誤魔化す、A2年の達成期限を下げて中長期的な話にする、という選択肢の他にBそもそも政府の政策によるサポートが重要という話を持ち出して日銀だけのせいではないと責任転嫁する、という作戦がありまして、どうも以下の話を見るといざとなったら責任転嫁モードに入る準備をしているのではないかと思われる節が。
さっきの続き。
『日本銀行は、現在、2%の物価安定目標を掲げて、「量的・質的金融緩和」を遂行しています。後ほど詳しく述べるように、経済の実力が高まれば、2%の物価安定目標も、持続的な景気回復を伴ってバランス良く、よりスムーズに達成され、安定的に持続することができます。』
しらっと話をしていますが、そもそも物価については金融政策の範疇であり、金融政策だけで達成するというのが従来の理論構成だった筈で、これは「2%物価目標達成が若干遅延しているのは経済の実力が高まっていないからで、実力を高める第三の矢が効果を出すまで少々お待ちください」という2年での達成が出来ない場合の新手の言い訳の伏線を張っていると解釈するのが妥当かと思われます。
『経済の実力が高まれば、政策の効果は発揮されやすくなり、金融面の不均衡など潜在的な副作用は抑制されやすくなると考えられます。経済の実力が高まるなかで、思い切った政策がより高い効果を発揮すれば、企業や家計の前向きな取組みや構造転換が一層後押しされ、経済の実力がさらに高まるといった好循環も期待できます。』
ということで、この辺り来年春の「2年で2%」が行かない事に関して早速予防線を張り出して、それについて便利なスポークスマン(九官鳥はあまりにもアレなので格好良く直してみた^^)としての講演であると思いますと中々味わいがある訳ですな。
#いかん「はじめに」でこんなに悪態をついてしまった
・経済動向に関する説明が大本営発表クオリティな件を盛大に鑑賞
では次の『2.わが国の経済物価動向と供給サイドの改善』をば鑑賞ですが、大本営クオリティの極みでありまして、正副総裁がこういう話をするのは当然ですけれども宮尾さんがこういう説明するのはねえという感じはしますが。
最初の小見出しが『(1)緩やかな回復を続ける日本経済』ですな。
『わが国の景気は、消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられていますが、基調的には緩やかな回復を続けています。本年4〜6月の実質GDPは前期比年率−7.1%と大幅なマイナス成長となりましたが、これは1〜3月が同+6.0%と駆け込み需要から大きくプラスとなった後の反動とみられます(図表1)。こうした振れを均して、1〜3月と4〜6月を合わせて、その前の半年間である昨年7〜12
月と比較すると、年率+1.0%の成長となります。このように均してみれば、潜在成長率を上回る成長を続けており、回復の基調は維持されています。』
この均す理論は毎度の説明ですな。
『国内経済の需給バランスをみても、改善傾向は続いています。日本銀行による需給ギャップ推計値は1〜3月時点でプラスに転じ、4〜6月もゼロ近傍であり、需給ギャップは概ね解消された状態にあります。短観の設備判断DI
と雇用人員判断DI を加重平均した指数でみても、同様の動きが確認できます(図表2)。』
ということで図表2というのが上記URL先の巻末にありますが、ご覧になれば判るように4-6の需給ギャップの推計値は「わずかにマイナス」になる筈で、普通にフラットに評価するなら「4〜6月は若干のマイナスに転じましたがこれは前述と同様の反動とみられます」という話をするのが妥当だと考えられるのですが、マイナスに戻ったという言い方をしたがらない表現が日銀文学クオリティというものです。
物価の所ですけどね。
『次に物価動向ですが、消費者物価(除く生鮮食品、消費税率引上げの直接的な影響を除いたベース)の前年比は、昨年から上昇傾向を強め、最近では1%台前半まで改善しています。』
普通は「最近は改善傾向が横ばい」と表現するのがフラットな表現だと思うのですがこうなるのは日銀文学。
『食料・エネルギーを除いた指数でみても、同様の傾向が確認できます(図表3)。こうした動きの背景には、先に確認した需給ギャップの改善傾向とともに、予想インフレ率の改善があります。』
ほえ??
『たとえば、コンセンサス・フォーキャストによる中長期の予想インフレ率は、昨年から上昇基調に転じています(図表4)。』
で、この図表4というのが曲者で、ここで出ている数値はコンセンサスフォーキャストの7月とESPフォーキャストの6月が直近の数値であって、4−6の落ち込みに加え7−9の立ち上がりの弱さを充分に反映していないデータを使っている訳でして、「説明する時に都合の良い数値をピックアップして引っ張ってくる」という辺りは「アリューシャン列島での大戦果はミッドウェイ方面で敵軍を牽制した効果である(キリッ)」というのを彷彿させてくれて実に味わいが深い。
『最近の景気回復の大きな特徴である「消費・非製造業主導の回復」の傾向も引き続き確認できます(図表5)。従来の「輸出主導」の景気回復パターンは、2002-08
年の拡張局面に顕著に表れていますが、その後輸出は、やや長い目でみれば横這い圏内で推移しています。企業設備投資は、振れを伴いつつ緩やかに増加してきましたが、2000
年代半ばの拡張局面と比べるとペースは緩やかとなっています。一方、消費は、様々な影響を受けつつも一貫して増加基調をたどり、2012
年入り後は伸びを一段と高めてきました。今年4〜6月の消費支出は、駆け込み需要の反動減の影響を受け、前期比年率−19%と大きく落ち込みましたが、振れを均してみると、今年の1〜6月の消費支出は昨年の7〜12
月対比−0.8%と小幅の減少にとどまっています。』
ふーん。
『足許の個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は、ばらつきを伴いつつも全体として和らいできています。過去約2
年にわたり、従来の景気回復要因である輸出や設備投資の顕著な増加を伴わずに、消費が一段と伸びを高め、景気回復を牽引してきたことは、特筆に価する動きと言えます。』
それは判ったが消費ドライブでも賃金上がらないでサステイナブルなのかねとは思いますがねえ。
・供給サイドが改善しているという話でもオモシロ部分が
『(2)供給サイドの改善』って所に参りますが。
『消費需要を中心に、景気回復が持続してきた背景には、いくつかの側面で、経済の実力である供給サイドの改善が進んできたことが考えられます。』
お、おう・・・・・・・・・・
『まず企業部門では、内外さまざまな前向きな取組みが進み、収益力が一段と高まってきています(図表7)。製造業企業は、海外需要地での生産・調達・設備投資、人員の現地化など、グローバル・ベースでの最適化へ向けた取組みを一段と加速してきています。』
でもって最近の大本営理論ではこの企業収益がトリクルダウンしてくるという話になっているのですが、そんなものに期待して碌な事にならないのはご案内の通りですし、大体からして企業の海外展開はその分国内の投資を減らす要因じゃろという話はスルーして都合の良い部分で改善ですかそうですか。
『非製造業企業では、潜在的な需要を喚起する新しい取組みがさまざまな分野で進展してきており、国内では、高度な物流センターの増設、宅配サービスやネット通販、コンビニやショッピングセンターの積極出店などが引き続き進展してきています。また、海外でも小売・卸売業やサービス業などのグローバル展開、企業買収など、現地での需要を取り込んで成長力を強化する動きが活発に行われています。』
何ちゅうか思いっきり個別企業の話じゃんそれ。
『労働・雇用環境でも、改善基調が継続しています。企業は前向きな取組みを進める下で、労働需要を高め、雇用スタンスを積極化させています(図表8)。この1
年をみると、非製造業の雇用不足感はさらに強まってきていますが、製造業でも労働需給のタイト化が進み、直近では不足超に転じています。』
ところでこの図表8のグラフを見ますと直近のグラフの線がお辞儀をしておられるように見えますけれどもそこの話はスルーというのが大本営クオリティ。
・労働参加率の拡大で潜在成長率が今後高まるんですってよ奥様!!!
でもってこの続きの部分では「潜在成長率が労働参加率の上昇によって高まる」という説明で潜在成長率が高まっているという話をしているようで、直近の労働供給が高まっている事に触れつつこんな説明をしています。
『こうした労働参加率の改善の動きが、主として景気回復による一時的・循環的なものか、それとも持続的・構造的な変化なのかは、いましばらくデータの蓄積を待って判断する必要があります。もし後者の部分が少なからず含まれているのなら、潜在的な労働投入量が下げ止まり、その分潜在成長率は上向くことになります。』
ほう。
『労働参加率のトレンド推計値を図表11で確認すると、この1〜2年は低下しています。ただ、先ほど申し上げたような労働参加の動きが持続的・構造的なものであれば、振り返ってみると労働参加率の真のトレンドは下げ止まり、その結果、潜在成長率が上方に修正される可能性は小さくないとみられます。この点、十分な留意が必要です。3』
・ということで経済の実力が高まっているという結論になるそうな
『以上、企業収益、労働需要や雇用・賃金、そして労働供給といった側面から、経済の供給サイドの改善の様子を改めて確認してきました。いずれの面も、2012
年ごろから改善の動きが明確化してきているという点で共通しています。』
ふーん。
『つまり、企業・家計の前向きな取組みを背景に、企業収益や雇用者所得、労働参加などで表される経済の所得形成力が全体として強まってきた姿が浮かび上がります。その結果、経済全体の恒常所得の見通しが改善し、あるいはそれに加えて将来への雇用不安や不確実性が大きく後退して、消費主導の回復につながってきたとする見方をサポートします。』
直近の生活意識アンケートや景気ウォッチャー調査などを丸無視している辺りが大変に豪気。
『すなわち、2012 年ごろから、経済の供給面という「実力」の改善が原動力となり、消費需要を中心とした内需の持続的な回復がもたらされてきたと解釈できるのです。』
ということで大本営的結論。
『以上の議論を踏まえ、潜在成長率の推計値を確認しておきましょう(図表13)。人口一人当たりでみた潜在成長率は、2010
年頃に下げ止まり、それ以降概ね横ばい圏内で推移しているように窺われます。潜在成長率の推計値は幅を持ってみなければなりませんが、少なくとも上記の留意点からは、過去1〜2年の潜在成長率は、数年後に振り返ると、より上方に修正される可能性があります。経済の供給面の状況、とくに足許にかけての動きを把握するには、潜在成長率の推計値だけに依拠するのではなく、企業や家計の実態と総合してみることが重要と考えられます。』
・・・・・・てな訳で何と「潜在成長率がここもと高まっている」という結論になっているのですが、これは潜在成長率がここもと高まっている事によって物価上昇率改善の勢いが一服しているという理屈にも繋がるのでこの辺りからも2年で2%間に合わない言い訳に使えるのですけれども、潜在成長率が高まっているという話ですと「物価目標の2%は経済の実力からみたら短期的に目指す必要な無い」という言い訳がしにくくなるという点で諸刃の剣のようにも思えますがどうでしょうかね。
・ネチネチと読んでいたらクソ長くなっておりますが物価に関して
次の小見出しが『(3)物価上昇圧力の高まり』である。
『経済の供給サイドの改善により、消費需要を中心に内需が持続的に増加すると、物価上昇圧力は高まる可能性があります。このことを理論的な観点から考えると、次のような3
つの点を指摘できます。』
ほう。
『第1 に、標準的な「総需要・総供給曲線」分析で考えれば、供給面の改善は、それ自体は、総供給曲線(あるいはフィリップス曲線)を右下方へシフトさせるため、景気は改善する一方で、物価上昇を弱める要因となります。しかし、同時に、総需要が持続的に増加すると、総需要曲線は右上方へシフトして、物価上昇圧力が強まります。どちらの要因が勝るかは優れて実証的な問題ですが、わが国のデータを用いて全要素生産性の上昇(生産性ショック)の影響を検証した実証分析によれば、後者の需要増による物価上昇圧力がより上回って、供給サイドの改善が需給ギャップの改善と小幅の物価上昇をもたらすという結果が得られています。4』
潜在成長率の上昇は短期的には需給ギャップの下方修正要因なので物価上昇圧力を弱めるけれども、経済の実力が高まるからより長い目で見れば物価上昇がサステイナブルになるという話でして、つまり足元での物価上昇率改善の足踏みについて潜在成長率の上昇による「よい足踏み」という話にしているんですなこれ。
『第2 に、財サービスの差別化や高付加価値化を伴って売上が持続的に増加する場合、企業の価格設定行動がより前向きになることも考えられます。すなわち、需要の増加が持続すると予想される中で、企業がより高いマークアップ(利幅)を設定したり、生産コストをよりストレートに販売価格に転嫁させることが可能となります。そうした動きが構造的なものであれば、フィリップス曲線の傾きがより急になり、これも物価上昇圧力を高めることになります。』
何かエライ微妙な説明だと思うのだが、個別企業のミクロレベルで差別化や高付加価値化による動きというのは判るが、そもそも世の中の財やサービスが全てコモディティーじゃなくなるって世界があるのかねと思いますし、大体からして格差拡大する中では多くの財やサービスがコモディティー化しねえかと思うのだがよく判らん。
『第3 に、供給サイドの改善は、人々の中長期的なインフレ予想を高めるというメカニズムも考えられます。人々が将来も景気や売上が持続的に良くなると予想すると、たとえば将来のフィリップス曲線の関係から、人々は将来の物価上昇率も高まると予想するでしょう(New
Keynesian の「フォワードルッキングな」インフレ予想のメカニズム)。つまりそれは、人々のやや長い目でみた予想インフレ率を上昇させるので、フィリップス曲線の切片は上方にシフトすることになります。』
まあ信じる者は救われるのかもしれませんがそれはどこの国の話でしょうか????
で、その結論。
『実際、中長期の予想インフレ率は、徐々に高まってきています(前掲図表4)。』
図表4というのは直近の状況を必ずしも反映していない奴な。
『中長期の予想インフレ率の動きは、先にみた一人当たり潜在成長率の動きとも、直近の時期を除けば概ね相関しているように窺われます(前掲図表13)。』
「直近の時期を除けば」に吹いた。
『このようなメカニズムが総合して作用する中で、図表3の実績からも示唆されるように、消費者物価インフレ率への上昇圧力は高まってきていると解釈することができます。すなわち、@需給ギャップの持続的な改善ならびにその将来見通しの強まり、A企業の価格転嫁力の高まり、B中長期的な予想物価上昇率の上昇、といったメカニズムを通じて、全体の物価上昇圧力を高める方向に作用してきているとみられます。』
大本営理論ワロタ。
・「供給の天井論」に対してはマッコウクジラで一刀両断だが刀の振り方は微妙
野党審議委員の方々が持ちだして来る供給の天井論というのはつまり2%の物価目標は中長期的にはともかく短期的に経済の実力を超えるので、下手に目指そうとすると却って中長期的な物価安定を阻害するという話なのですが、どうも大本営理論はその真逆に向かおうとしているようですね。
『なお、物価上昇を説明する別のロジックとして、「供給面の低迷が制約となって物価が上昇してきた」とする議論がありますが、それはどう考えるべきでしょうか。』
キタコレ!
『この点については、実際に供給面の実力が高まっているかどうかが重要だと考えています。つまり供給面の改善を伴わない物価の上昇は、結局のところ需要の伸びを制約し、経済活動の拡大を妨げることになります。』
さいですな。
『しかし、ここ1〜2年の状況は、全く逆に供給面の改善を示唆する動きが明確になっており、実際、需要も持続的に伸びています。』
ポカーン。
『すなわち、財・サービスへの需要や労働に対する需要が供給の改善幅を上回って持続的に増加しており、財・サービスの生産や雇用の改善が進み、物価や賃金も緩やかに上昇しています。これらの点を踏まえると、最近の物価の上昇を供給面の低迷や制約で説明することは難しいと思われます。』
・・・・・・・ということで、どうも執行部理論によりますと「供給の天井論」は全くとらない所かそれに対してマッコウクジラで一刀両断(ただし理屈が何だかなではあるが)となっていまして、どちらかと言えば「2%は2年という短期間で目指す必要はなくて、将来的に目指せば良いではないか」というそれこそ浜田先生ですらそういう趣旨の話をする日銀絶好の退却路理論として供給力の天井論は使える話だと思うのですが、それを言い出すと白川ドクトリンに戻ってしまうという事を気にしていると思われるのですが、それを言うと死んでしまうという認識なのではないかという勢いで否定していて、異次元政策の逃げ口上の退路にある橋を盛大に焼き払っているのが非常に気になる所です。
さて、引用も含めて超クソ長くなっておりますがあと少しですのでお付き合いいただければ幸いです。
・金融政策運営の説明がこれまた微妙
今回の講演では以上の経済物価情勢に関する説明がメイン(講演本文11ページ中ほぼ8ページ)なのですけれども、最後に『3.金融政策運営』というのがありましてですな。
『以上述べてきた最近のマクロ経済状況は、非伝統的な金融政策を遂行するうえでも、望ましい環境を提供すると考えます。以下で述べるように、経済の実力が高まれば、2%の物価安定目標も、持続的な景気回復を伴ってバランス良く、よりスムーズに達成され、安定的に持続することができます。経済の実力が高まれば、政策の効果は発揮されやすくなり、金融面の不均衡など潜在的な副作用は抑制されやすくなります。』
ワロタという所で、ここではさっきも申しあげた「経済の実力が足りないと政策効果が出ない」という言いわけの伏線(ここまでの引用にありましたように足元での大本営理論は「経済の実力が高まっているので政策効果が出ていますよウェーハッハッハ」となっておりますので念の為)となっているのがワロタなのですが、笑えないのは前半の短国買入ネタにありますようにそもそも市場を壊した場合には金融政策のトランスミッションメカニズムが壊れるように思えますがね。
・2年で2%はアプリオリに正しくてグローバルスタンダードではなかったのかと小一時間
『(1)2%の物価安定目標』の所の説明が微妙に怪しい。
『昨年1 月、日本銀行は、政府との「共同声明」を発表し、消費者物価上昇率2%という物価安定目標を導入して、その早期実現を約束しました。』
「2年で2%」というのを投下したのだから、共同声明自体は生きているにせよ、その目指すべきタイムホライズンが大きく変わっているのであって、そういう意味では白川ドクトリンが残っている(出した時は白川総裁)共同声明の話をするというのも変なのですけどね。でまあちょっと飛ばしまして。
『国民の望む「物価の安定」とは、単に物価が上昇するだけでなはなく、雇用、賃金、企業収益の改善などを伴いながら、経済がバランス良く持続的に改善し、その結果として、物価の緩やかな上昇が実現する状態を指します。その目標を、消費者物価上昇率で「2%」としたのは、経済の成長力や競争力強化へ向けた幅広い主体の取組みが進展し、持続可能な「物価の安定」と整合的な物価上昇率は上昇していくという認識に基づいています。』
それは白川ドクトリンの説明であって、今のQQEの説明になっていないのですが、これは逃げの準備ですか???
・・・・・・とは申しましても、何せ宮尾さんの説明は「経済の実力が高まってきている(キリッ)」というものでありますので、結論はこんな威勢の良い話になります。
『そして、実際、この間の日本経済は、「量的・質的金融緩和」による金融面からの強力なサポートにも後押しされて、成長力強化・供給サイドの改善に向けた幅広い取組みが着実に進展してきているとみられます。まさに、雇用、賃金、企業収益などが持続的に改善するなかで、経済もバランス良く改善を続け、2%目標に向かって、物価上昇率が緩やかに高まってきているのです。』
はあそうですか。
・QQEに関しては執行部が達成期間を誤魔化す気が満々なのは把握した
次の小見出しが『(2)「量的・質的金融緩和」の役割』である。
『「量的・質的金融緩和」は、@マネタリーベースの大幅な拡大(年間約60〜70
兆円に相当するペース)、A長期国債の大規模な買入れ(年間約50 兆円に相当するペース)と年限長期化(平均7
年程度)、Bリスク性資産買入れの拡大、という要素で構成されています。そして、これほど大規模な金融緩和策を政策目標にリンクさせて継続するというオープンエンドの要素を持たせています。』
オープンエンド????
『つまり期間や量を予め限定せずに、「2%目標を安定的に持続するために必要な時点まで継続する」ことにコミットし、約束しているのです。』
>期間や量を予め限定せずに
>期間や量を予め限定せずに
>期間や量を予め限定せずに
えーっと2年で達成するんじゃなかったでしたっけという話ですが、この2年で達成という話に対して「政策の継続期間」という点でのオープンエンドを前面に出すことによって、「2年で物価目標達成」の方を誤魔化そうという気が満々なのが見て取れると思います。
『この約束は、将来の政策を予想するそれぞれのマーケットに対して強力に働きかけ、一段と緩和的な金融環境を作り出しているとみられます。』
まあ強力に働きかけた結果市場が壊れているけどな。
・政策効果が経済の実力によって高まる理論再び
『「量的・質的金融緩和」の効果は、経済の実力が高まれば、より発揮されやすくなると考えられます。企業の収益力が高まると、極めて緩和的な金融環境を生かして、前向きな取組みやリスクテイクが促され、景気浮揚効果はより高まります。大規模な国債買入れにより長めの金利に低下圧力がかかり、資産価格にも上昇圧力がかかりますが、企業収益などのファンダメンタルズが同時に改善していれば、資産価格の上昇はより持続可能となり、正当化されやすくなります。その結果、金融面の不均衡の蓄積など潜在的な副作用も抑制されやすくなると考えられます。』
なんじゃこの屁理屈。
『さらに付言すると、経済の実力が高まるなかで、思い切った政策がより高い効果を発揮すれば、企業や家計の前向きな取組みや設備投資、構造転換などが一層後押しされ、経済の実力そして政策の効果がさらに高まるという好循環も期待できます。』
ひょっとしてそれはバブルというものではないでしょうか???
『わが国では、もともと企業収益が改善基調にあり、昨年の政策発動によって、収益力など経済の実力がさらに高まり、景気回復の持続性が強まってきた可能性があります。日本でも、あるいは米国でも、強力な金融緩和が実施され、株価が上昇基調を維持するなかで、企業収益が改善しています。収益向上へ向けた前向きな取組みが、一段と緩和的な金融環境によってさらに後押しされている可能性が窺われます(図表14)。』
株価が上昇すると収益が改善となという所ですが、何かどこの別世界かというような説明になっていますな。
・ということで纏め
『4.おわりに〜今後の経済物価動向について〜』ですけれども。
『先行きのわが国経済は、基調的には緩やかな回復を続け、駆け込み需要の反動などの影響も次第に和らいでいくとみられます。一段と緩和的な金融環境に後押しされ、供給サイドの改善と景気の持続的な回復の基調、そして予想インフレ率の緩やかな上昇基調は今後も維持されるとみています。雇用や賃金、企業収益の改善などを伴いながら、バランスの取れた形で、2%目標へ向けた道筋を歩んでいくでしょう。』
はいはい大本営大本営。
『一方で、個人消費については、耐久財消費の反動減などの影響がやや長引いており、先行きの回復ペースについて一定の留意が必要と認識しています。』
あら?
『景気や物価の改善が今後も幅広く継続するためには、企業収益の増加というプラス効果が、賃金・雇用の増加あるいは納入価格の引き上げなどを通じて、家計や中小企業など経済の隅々まで行き渡り、支出の持続的な増加へとつながっていくことが重要です。』
何か微妙に人のせい的な逃げが最後に入っているのは何でしょうかねえ。
・・・・・・とまあそういう事で、何か土曜日に出たせいでついうっかりネチネチと粘着して読んでしまったので超クソ長くなってしまいましたが、何ちゅうか全般的に???感の漂う講演であると共に、経済の実力云々とか微妙な責任転嫁への萌芽も見られるなあと思うのでありました。
#長くなってどうもすいませんでした
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2014/04/14
○宮尾審議委員会見だがやたら景気に強気になったのは雇用状況のようです
金曜は何となくケチョンケチョンにしたような気がする宮尾審議委員講演ですが、では会見ではどうだったでしょうかという話。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1404b.pdf
・最初の説明部分からして強い
最初の質問は実質的に「じゃあ説明してちょ」という奴ですが、今回の宮尾さんの話ではこんなのがありました。
『まず、当地の景気については、堅調な内外需を背景に、自動車や鉄鋼を中心とした製造業が高操業を続けています。また、公共投資や住宅投資の増加から建設業でも繁忙度が高まってきています。更には、消費者マインドが改善するもとで、個人消費についても堅調に推移しています。このため、「全体としては緩やかに回復している」という意見が聞かれました。』
ほほう。
『こうした基調的な変化に加えて、業種、あるいは時期のばらつきはみられますが、消費税率引き上げ前の駆け込み需要により、3
月末にかけて売上が大きく増加したという声が多く寄せられました。この点、4
月に入ってからは、予想された売上の反動減がみられているという指摘が聞かれました。』
ふむ。
『もっとも、その程度については、「確かに反動減は出ているものの、駆け込みの強さから考えればさほど落ち込んでいない」とか「反動減は限定的なのではないか」など、今のところ予想していたよりも小さいという声が、住宅、耐久消費財、小売、サービスなどについて聞かれました。先行きについて、反動減が終息する時期は、夏場以降ではないかという事前の予想に対して、「もう少し早く終息するのではないか」という声も聞かれました。』
ということで、何か既に懇談会での話が威勢が良いというのがありまして、まあこの先の会見での話も基本的に威勢が良いのですよね。
・見通しに対する自信が強まっているとな
ででもって次の質問。
『(問) 2 点あります。1 点目は、本日の講演要旨を読ませて頂くと、非製造業と消費中心の今回の景気回復の持続性に自信をお持ちであるようにお見受けしますが、このシナリオ通りだと、現在の異次元緩和についても、ビルトインスタビライザー的な効果もあって、このまま自然に物価上昇率2%を安定的に達成するというシナリオが、以前に増して確度が高まっていると発信されたいのかということを確認させて頂きたいと思います。(以下割愛)』
で、この質問に対する答えですけどこれがまた長いのだが強い強い。
『(答) まず、1 点目ですが、講演では、消費あるいは非製造業を中心とした、景気回復の持続性に関して、メカニズムとして、次のような点が重要であると申し上げました。すなわち、まず、供給面では、非製造業を中心に様々な潜在的需要の掘り起こしが進み、成長力あるいは収益力が高まってきています。
『それから、労働面、雇用・所得面では、企業は、持続的に新しい取り組みを進めるうえで、沢山人を雇わなければならないということで、労働需要が増える一方、家計も、より主体的な理由も含めて、積極的な労働供給を増やしています。そういった中で、労働市場はタイト化して、賃金は上昇し、雇用者数も増え、雇用者所得もしっかりと増えてきているということで、雇用・所得環境が持続的に改善してきています。』
『最後に需要面としては、新しい需要の掘り起こしが進み、雇用・所得環境が持続的に改善する中で、消費支出が基調的に高まっています。このように、供給、雇用・所得あるいは労働、そして需要といった3つの面から、景気回復の持続性が高まっており、メカニズムとして働いてきているのではないかといったことを申し上げました。』
というのは金曜にご紹介したけど小見出しだけ並べて中身はスルーした辺りです。小見出し見ただけで強いですなあという話でしたが実際にもこんな感じでまあ強い強い。
『こういった私の説明が、先々の経済・物価見通しに与える影響については、前回の、昨年秋の金融経済懇談会でも述べていますが、私どもが描いている、2%の「物価安定の目標」に向けて、着実に近づいていくという経済・物価の見通しに対して、確度を高める1
つの要因になるのではないかと考えています。』
まあ強いですねという感じですが、前回対比で今回妙に強くなっている筈でして、「前回述べていますが」とわざわざ言っているのはご本人的には前回対比妙に強くなっている点についての自覚はあるんでしょうなと思わずここ見て笑ってしまいました。
『そう申し上げたうえで、毎回の金融政策決定会合では、そういった中心的なシナリオあるいはリスク要因について点検していきます。特に、今月末には、新しい展望レポートをお示ししますので、先行きの経済・物価情勢、メインシナリオとリスクバランスについて、しっかりと点検していきたいと思っています。その際に、今申し上げたようなメカニズムを踏まえたうえで、どういった評価になるのか、分析・点検していきたいと思います。』
今申し上げたようなメカニズムを踏まえたらアホみたいに強い見通しになると思います。
・何で強くなったのかという点はどうも雇用情勢のようですな
『(問) 本日の講演の中で、「リスクは概ねバランスしているとみています」とおっしゃいましたが、昨年11
月の時点では、若干、下方向のリスクを意識されている発言だったと思います。先ほどの、消費ですとか非製造業の動向というのも1
つの理由だと思いますが、なぜリスクがバランスしているとみられているのか、もう少しご説明頂けますでしょうか。』
これは良い質問。
『(答) リスクバランスについて、大きく海外要因と国内要因に分けて考えると、まず海外要因は、講演でも、新興国・資源国の動向、欧州債務問題の動向、そして米国経済の回復ペース、といった項目を挙げています。』
ほうほうそれでそれで?
『そうした中で、特に先進国で一番重要な国である米国では、この間、財政を巡る不確実性は大きく後退してきました。また、金融政策面でも資産買入の減額をスタートしました。こういった動きは、昨年秋、11
月の半ばには、まだみられなかった状況であり、財政をめぐる不確実性が大きく後退し、また金融政策の運営面で、資産買入の減額をスタートしたことからも、海外要因の不確実性、リスク要因は相応に低下してきたのではないかと思います。』
何でTaperingが始まるとリスク要因が低下するのか謎だがそうらしいです。
『一方、国内経済要因では、足もとの駆け込み需要とその反動減の大きさをどうみるかという問題がある一方、本日の講演でも強調したように、労働需給が一段とタイト化する中で、雇用・所得環境は想定よりも上振れて推移する可能性も考えられます。』
まあここが主因のようですな。
『こうした海外要因、国内経済要因を総合して、現時点の判断としては、リスクは概ねバランスしていると評価しています。ただ、これに関しても、繰り返しですが、4
月の展望レポートでしっかりと点検していきたいと思います。』
・2013年度GDP成長見通しが下振れそうなのですが・・・・・・という質問が2種類の論点から
『(問) 2 点伺います。1 点目は、本日の講演の中で、2014 年度、2015 年度に関して実質成長率も物価も想定通りとおっしゃっていますが、昨年度に関して言うと、成長率の見通しが+2.7%ということですので、これはどう考えても下振れるかなと思います。一方で、昨年度の物価見通しの+0.7%というのは確実に達成されるかと思いますが、昨年度の景気の下振れが、2014
年度、2015 年度の成長率の見通しにどう影響するのでしょうか。』
ふむ。
『もう1 点は、昨年度に関して、成長率は下振れているけれども物価はオントラックという点についてです。日本銀行では、物価を説明する要因として、需給ギャップと期待インフレ率と輸入物価を挙げていますが、そうした要因との関係で、どういった分析、または理解をされているのか、お伺いします。』
イイシツモンダナー、で宮尾さんの答え。
『(答) まず、1 点目の、2013 年度の実質GDP成長率が仕上がりとして下振れた場合に、その後の2014
年度、2015 年度の経済・物価見通しにどういう影響を及ぼすのかという点です。』
興味津々。
『そこはまさに、今月末の次回展望レポートでしっかりと考えていきたいと思います。』
何という出オチ。
『今のところ私自身は、この講演で強調したような「景気回復の持続性」といった観点から、消費や非製造業主導の景気回復のメカニズムが働くということを盛り込んだうえで、どうなるのかということを考えていきたいと思います。』
どう見ても強気見通し確実です本当にありがとうございました。
『最終的な経済・物価見通しの値がどうなるのかということは、9 人の政策委員の中央値という形で出てきますので、事前に数値について申し上げることは不可能ですが、やはりメカニズムが重要だと思っています。景気回復の持続性、内需を中心とした前向きな循環メカニズムが今後もしっかりと働いていくのかどうかということを、点検していきたいと思います。』
強い見通しを出すと言いきっているのに等しいな。で、成長下ブレなのに物価が上の件ですが・・・・・・
『2 点目の、2013 年度の成長率がやや下振れる一方で、物価はオントラックだということをどう考え方として整理するのか、ということについてです。』
ふむ。
『物価を説明する要因としては、需給ギャップ、予想インフレ率、それから輸入物価という3
つの主だった経路があります。』
ほうほうそれでそれで?
『内需主導、消費主導の回復のもとで、特に生産要素の稼働状況から推計される需給ギャップは順調に改善を続けており、日本銀行の推計値では、ゼロという水準に近付いているという結果も得られています。』
需給ギャップゼロ攻撃キタコレ!
『もちろん需給ギャップの推計値は幅をもって理解されるべきですが、方向としては改善の方向が、少なくとも生産要素の稼働状況という観点からは見受けられます。そういったところが起点となって、景気回復が持続するという見通しが徐々に広がる中で、企業も、生産コスト等を販売価格によりストレートに反映させる形で、価格設定行動を前向きに変化させているという兆し、可能性も窺われるということかと思います。』
前向きの循環メカニズムとな。
『いずれにしても、2013 年度のGDP成長率と物価については、次回の展望レポートで考え、あるいは数値等でお示ししますが、メカニズムとしてはそういった理解が可能ではないかと思います。』
結局有耶無耶のうちに前向きの循環メカニズムで通してしまい、質問への答えになっていないのが味わいがあるというか何というか。まあ展望レポートでどんだけ威勢の良い話が出てくるでしょうねえ。
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2014/04/11
○宮尾審議委員講演は正直おもんないわだが読みどころはちょっとだけ
宮尾審議委員の講演がございましてですな
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140410a1.pdf
前回の講演が昨年の11月13日に長野県での金懇(なお長野市ではなく松本市ですよ)で行われた訳ですが、この時には異次元成分の足りない物価上昇メカニズムの説明と、消費増税に対するリスクの強調というのをしていまして、会見でも何か弱気っぽい話をしていた方なので今回はさてどうなることやらと思っていた訳です。何せ会見をネタにした時には「宮尾審議委員の会見ですがこれは野党審議委員への道ですわという憶測ががががが」などと申し上げていた次第。
ちなみにこの辺りが過去駄文です。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/hatsugenmiyao.html#miyao131115
そんなわけで今回の講演でどうなったのかと思っていたのですが、まあ今回は執行部見解のまんまという話を展開しておりまして、前回の講演で見せた野党の香りはどこに逝ったのかという感じがする訳でございますが、まるで上がれば強気のコメントをして下がれば弱気のコメントをするヘタクソ何とかストみたいなこの日和っぷりでして、いやまあ前からそういうのは思ってるんですけど、この人自分の主張の核になるような物が全然無くて何かこうフラフラしているようにしか外野から見ると見えないという残念なお方(執行部ベースで一貫するならまだ判るのだが時々ぶれるというのがマジでわけわからん訳でどこの小早川秀秋だとか思うのよね)で、学者系政策委員って置物といい不思議おばちゃんといいこの方と何でこうアレなのしかおらんねんという所で、良く良く考えたら軸がぶれていないという意味では置物先生の方がマシじゃん(ただし軸の位置がお花畑にあるのだが)という感じであります。
ということで正直この講演おもんねーわとしか申し上げようがないのですが備忘メモでもあるので忘れないように少々引用。
・景気回復の持続性には個人消費と非製造業とな
まあ何ですな、今回の講演は執行部見解の口伝みたいな感じなので、逆に執行部的理屈がどう展開されているのかを(もちろん総裁会見などでも確認できていますが)確認する回という所で。
経済の先行きに関しての話でこんなのがありまして・・・・・・・・
『なお、景気回復の持続性の観点からは、特に個人消費・非製造業の動向が重要とみております。この点は後ほどやや詳しくご説明致します。』
でまあその後で『(2)景気回復の持続性』というのがあってですね・・・・・・
『現在の景気回復の大きな特徴は、従来の「輸出主導」ではなく、「消費・非製造業主導」という点です。消費の回復は、株高による好調な高額消費だけが要因ではありません。その底流では、身近な消費・非製造業関連の分野で、潜在的な需要を喚起する取組みが幅広く進展してきています。企業の収益力も高まってきており、それが雇用・所得環境の改善基調を支えているとみられます。』
ということで、この先の章立てがこうなっています。
『(イ)消費・非製造業主導による景気回復の現状
(ロ)需要を喚起する新しい取組みの進展
(ハ)変容する労働・雇用環境
(ニ)消費主導の景気回復の持続性』
でまあ内容は一々引用しませんが、イ〜ハの題名からして内容はお察しの通りで強気の威勢の良い話が並んでいるという事で、おまえ11月の講演は何だったんだと小一時間問い詰めたい訳ですが、どうせ問い詰めても想定問答集を棒読みされるだけだと存じますのでまあ良いのですけど。
で、ニの持続性の所から少々。
『これまでの議論をまとめますと、まず経済の供給面では、非製造業を中心に消費需要を喚起する新しい取組みが進捗し、より高い付加価値が生み出され、設備投資も活発化しています。それらは企業の収益力・生産性向上の基調を支え、経済の成長力を高めます。』
はあそうですか。
『労働面、雇用・所得面では、企業の労働需要は幅広く増加する一方、女性の自主的な労働参加が促され、家計の労働供給が増加しています。労働に対する需要の増加に供給の改善が伴うことで、雇用者数は大きく増加し、賃金も緩やかに伸び、雇用者所得は基調的に改善します。』
はあそうですか。
『需要面では、より高い付加価値が生み出され、家計の雇用・所得見通しが改善する結果、消費支出は基調的に高まります。企業が海外で稼ぐ力を高めることも、国民全体の貯蓄や純資産を増やし、息長く消費活動をサポートします。』
こらまた随分と威勢の良い話で日本経済死角なしですね!!!!!(棒読み)
『このように3 つの側面を総合して考えると、消費・非製造業主導による自律的な景気回復メカニズムは持続するとみられます。こうしたもとで、消費税率引き上げによる成長率の一時的な振れや家計の可処分所得への影響などがあるとしても、基調としては潜在成長率を上回る成長を続けていくとみております。』
ということで、威勢の良い話をしているのですが、従来は確か持続的な経済成長をするには(財政で下駄を履いている)内需や非製造業から輸出から来る景気の拡大に需要がバトンタッチされていくというような話をしていた筈(少なくとも円高修正している中ではそういう話をしていましたよね)でございまして、どうも思ったより輸出が伸びないという残念な事態になっている中で経済拡大の持続性について輸出の話を綺麗にスルーするという新たな理屈を前面に出すようになってきやがりましたなという所で、まあ今回の講演ではここのロジックが唯一の見所かなあと思うのであります。
いやまあ経済の状況に応じて見方が変わるのはそらそうなのですが、何かすっかりまた都合の良い方のロジックに七色の変化球の如く各種の変化球を投げ込んでくる辺りに深い味わいを感じるというものでございまして、今後はこのロジックで行くんですなあ(まあ昨日ネタにしたように総裁講演の説明も雇用状況が改善して賃金上昇して物価が上昇してという一点突破の話でしたもんね)という感じであります。
・物価は強気ですなあ
前回は腰の引けた説明をしていたのですがどうしたんでしょうかねえ(棒読み)。
『(3)高まる物価上昇圧力』
はあそうですか。
『消費主導の景気回復が持続するなかで、物価上昇圧力も高まっています(図表14)。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は+1.3%となり、エネルギー関連だけでなく幅広い品目で改善しています。食料・エネルギーを除いてみた場合の消費者物価の前年比も+0.8%にまで回復してきました。先行きについても、消費税率引き上げの直接的な影響を除いた消費者物価上昇率(除く生鮮食品)は、しばらくの間、+1%台前半で推移するとみています。』
はあそうですか。
『その背景としては、財・サービスへの需要が持続的に増える状況のなかで、企業がより高めのマークアップを設定したり、コストをよりストレートに価格に反映させるなど、前向きな価格設定を実施し始めた点を指摘することができます。これは、同じ需要の増加に対して、物価がより大きく上昇する(つまり、フィリップス曲線の傾きがより急になる)ことを意味します(図表15)。とりわけサービスと耐久財に対する消費需要は持続的に増加してきており(図表5、6)、それが全体の物価上昇圧力を高める方向で作用しているとみられます。』
コストプッシュではないというようですよ、わーすごいですねえ(棒)。
『こうした動きは、実際、様々な品目でみられ始めています。消費者物価を構成する品目を子細にみると、前年比で物価が上昇した品目数は着実に増加する一方、物価が下落した品目数は着実に減少してきています(図表16)。今後も消費主導による自律的・持続的な景気回復が続くなかで、物価上昇圧力は幅広く高まっていく可能性が高いとみています。中長期の予想物価上昇率も高まっていくとみています。』
エライ強気ですなあ。
・オープンエンドでフォワードガイダンスでの話がわけわかんない件
金融政策の説明とかだいぶどうでも良いのですが。
『将来の政策に関するガイダンスとしては、「2 年程度の期間を念頭に」という決意のもと、「目標を安定的に持続するために必要な時点まで」として将来の政策の継続を政策目標にリンクさせ、オープンエンドの要素を持たせています。経済物価情勢次第で対応が決まるという点では、state
dependent なガイダンスです。』
そもそも2年程度で達成するという決意を示しているんですからその時点でstate
dependentとか言ってしまうと気合成分が足りなくなると思うのですが。
『また、オープンエンドの要素を持たせることで、経済・物価の見通しが目標への経路から下振れると人々が予想すれば、緩和の長期化すなわち緩和の強化が予想され、それが新たな経済・物価の見通しに織り込まれて目標に近づくという安定化メカニズムが働くことも期待できます。』
えーっとですね、今やっている政策は「期待の転換」を伴わないといけないという建付けに(今のところは)なっている訳で、そもそも目標の経路から下振れると予想される時点で負けなのではないかと思うので、安定化メカニズムが働く事は期待しちゃだめだと思うのですけど。
という事で、どうもこの辺の説明はワケワカランぞなもしという話ですが、まあそもそもが2年で達成と言っているのにオープンエンドというのが話として矛盾しているのですから、説明しようとすると絶対ツッコミ所が出てくるので下手に触らない方が身のためだと思います。
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2013/11/15
○宮尾審議委員の会見ですがこれは野党審議委員への道ですわという憶測ががががが
つーことで宮尾さんの会見。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1311c.pdf
・そらそういう質問が出るわな
実質最初となる2番目の質問(最初の質問は必ず「今日の懇談会どんな感じでしたか」ですので)はそらそういう質問が出るわなという物件。
『(問) 本日の講演の中で、「下振れリスクを意識している」とコメントされた点について伺います。先日の展望レポートでは、「リスクは上下にバランスしている」という評価があり、総裁の記者会見では、1
人の委員が下振れリスクを心配しているとか、2 人の委員が2%達成は難しいと言っているということをおっしゃっていました。それからあまり時間がたっていませんが、今回の講演で「下振れリスクを意識している」と言われた理由はどういうことか、また、前回の展望レポートで宮尾委員がなぜ下振れリスクを重視しているということを言われなかったのか、お伺いします。』
こらまあ昨日あたくしも悪態を申し上げましたが同じ文脈でございまして、展望レポートにも決定会合にも賛成していますし、これまででも特に何らかの対案を出している訳でも無い宮尾審議委員ですので、当然ながら金懇での講演でも執行部ベースでの主張が普通に展開されるものと想定して講演テキストを見ますし、つまりは宮尾さんの説明はまあ執行部ベースの話に近い話と見なされる可能性が当然高くなる(これがそもそもから反対している木内さんや佐藤さんの講演だと「私の主張」をしてもなるほどですなという事になる訳ですから)のであります。
然るに、質問の方が仰せのように「MPM直後」のこのタイミングで「展望レポートのリスク認識と全然違う話」を「賛成している審議委員」が言い出すというのはそもそもコミュニケーションポリシー的に言えば混乱の元にしかならん訳ですな。しかも総裁会見を除くと今回展望レポート出た後の最初の講演が特段の反対をしていない宮尾さんという事ですから、これって単に宮尾さんがコミュニケーションポリシーというかQQEの「断固たる意志表明」の重要さを理解していないだけで単純にエコノミスト的な(って宮尾さんエコノミストちゃいますが)見通しを述べただけなのか、それとも賛成派の振りして後ろから銃撃を加えているのかがさっぱりワカランチ会長ではありますが、前者だったらあまりにも悲しいので後者なんですかねえという推測になる訳で。
つーか宮尾さんって今に至っても何かこうキャラ設定(^^)が出来ていなくて、執行部ベースの話をしているかと思えば急に今回みたいに変な物食ったのかという位に違う話をおっぱじめたりとか、どうもよー判らんお方でありますなという所でその辺小一時間お伺いしたいものではございますな(−−;
と、思わず質問の所で悪態が長くなりましたが宮尾さんの答えを読めばわかるかも^^;
『(答) 1 点目の、私自身のリスク評価についてですが、講演でも申し上げたように、上下双方向の不確実性がある訳ですが、私自身は、全体としてみれば、やや下振れリスクを意識しているということです。具体的なリスクとして、講演では4
点ほど挙げています。(以下その話はどうでも良いのだが講演で説明した4点を改めて説明しているが途中割愛)以上の4
点をみると、上下双方向にリスクがバランスしている項目もありますが、全体としては、やや下振れリスクを意識すべきと思っています。』
『次に、2 点目の、前回の展望レポートにおけるリスクバランスの評価との関係についてです。私自身は今申し上げたように、やや下振れリスクを意識していますが、展望レポートでお示ししているのは、政策委員全体のリスクバランスに関する見通し分布チャートです。政策委員の様々な見通しがそこに集計されていますが、見通し分布チャートの散らばり具合をご覧いただくと、景気に関しては、上下にバランスしています。また、物価に関しては、2015
年度はやや下方に厚いようにも窺われますが、2014 年度は上下にバランスしており、全体として概ね上下にバランスしているという表現になっています。私自身としては、9
人全員のリスクバランスの表現としては、展望レポートの表現で違和感はないということです。』
・・・・・・・・うーむ。何ちゅうかこのQQEで断固たる日銀の物価目標達成への意志を示すという点への顧慮が無いというか(昨日悪態つきましたように講演で「フィリップスカーブが上方シフトするかどうかがポイントだと思います」とか他人事満載の言い方をする時点でそれは把握しましたけれども)というのもありますが、「いやそう思うなら具体的に票決行動などで示してよ」という問いに対する答えになっていないのが残念というか無頓着というか。
つまりですな、白川総裁時代の「包括緩和」と今回の「質的・量的緩和」の違いっていうのは物理的に量がすげえええとかいうのも勿論ありますが、ベースに「(無理繰りであっても)期待に直接働きかけて期待の転換を行う」というのが前面に強烈に出ているのかどうかという違いがあるのですが、どうもこう宮尾さんの説明って従来の白川総裁的包括緩和によるグラデュアリズム的な枠組みに留まっているように見えるんですよねえと思う所。
でまあそれを宮尾さんが意識して「いややっぱり期待に直接転換とか無茶だからそれよりも徐々に積み上げて行けば良いじゃないか」という発想で今回の講演の話をしているのかというのがど〜もこの会見見ててイマイチ見えないのがアレです罠という所なんですよね。
・物価の説明を見ると腰が引けているのは分かりますな
昨日講演をネタにした時に申し上げたのを再確認する感じですけど。
『(問) 今の質問(引用者追記:直上で引用した質問のことです)とも関連しますが、2
点お聞きします。景気については、やや下振れリスクを意識しているということですが、物価については、今おっしゃったことからすると、下振れリスクは意識してないのかどうか、あるいは物価についても下振れリスクを意識されているのかどうか、これが第1
点です。(2点目はその後続の質問と共に正直意味不明なので引用割愛)』
『(答) 1 点目ですが、講演で、やや下振れリスクを意識していると申し上げたのは、経済・物価見通しに対するリスクということです。先程、経済に対してやや下振れリスクがあると申し上げましたが、当然、それが原因となって、物価に対してもやや下振れリスクがあるということです。』
キタコレ。
『一方、中長期的な予想インフレ率に関しては、本日の講演で、景気の持続的な改善期待が浸透していけば、フォワードルッキングな予想形成がより強く働き、中長期的な予想インフレ率が高まっていく、そういうメカニズムが働く可能性は相応にあると申し上げました。景気動向による下振れリスクは、物価に対しても下振れリスクになりますが、中長期の予想インフレ率に関しては、当然、上手く働かないリスクと、私が申し上げたように割としっかり働く可能性と、両方の可能性があるとみています。(以下割愛)』
ということでして、どうも実際の物価が上昇して自己実現的にインフレ期待が高まるというパスは採用しておられない(展望レポートには今回物価がプラスになったのをいい事にその旨の記述がしらっと入っておりますので念の為申し添えます^^)という訳でして、物価上昇および期待インフレの上昇パスに関しては宮尾さんやや弱気であるというのが伝わって参ります。
・追加緩和に関する質問ですが
『(問) 先程、リスク要因としていくつか挙げておられましたが、例えば、海外要因とか賃上げ動向というのは、日銀では、はっきり言ってどうにもできない部分があると思うのですが、こうしたリスクによって、例えば、予想インフレ率が思うように高まらない、そういう状況が発生したような場合は、日銀の金融政策でそれを押し上げるという対応は可能なのかという点と、その場合、具体的にどういった政策展開が考えられるのかという点について、仮定の話ですが教えて下さい。』
まあこういう質問は飛ぶ罠。
『(答) 1 点目ですが、私どもの現在のメインシナリオでは、今後、消費税増税等々下振れリスクもある中で、実体経済は、基調的には潜在成長率を上回る成長を続け、物価に関しては、2%目標に向けた道筋を順調に辿っていくとみています。その前提として、中長期的な予想インフレ率も、徐々にではありますが、立ち上がっていくという姿を考えています。今後、そういった見通しに変化が生じた場合には――例えば、中長期的な予想インフレ率が思うように立ち上がらないということも含めてですが――、かねてから明確にしているように、必要な調整を行っていくということです。従って、海外経済や賃金動向の下振れリスクについても、それによって我々の見通しに変化が生じる場合には、必要な調整を行っていくということです。』
まあそうなんですけどもうちょっと「まあそもそも行くんですよウェーハッハッハ」というような気合が欲しい所で、これはまあフォワードルッキングにプリエンティブに追加緩和クルーと盛り上げる人たちに絶好のエサ提供の巻ですよね。うんうん。
『2 点目は、その必要な調整を行う際の具体的な手段ということかと思いますが、それは、発動するその時々の経済・物価情勢あるいは市場の動向などによって変わり得るものですので、事前に申し上げるのは適切ではなく、ここではコメントを差し控えたいと思います。ただ、これはいつも申し上げていることですが、何らかの政策対応、政策判断をする場合には、予め何か特定の手段を排除するということではなく、それぞれの手段を、効果、コスト、リスクなどを総合的に勘案して、最も適切な手段を選択していきたいと思っています。』
たぶんこう丁寧に答えちゃうから気合や根性や大和魂が伝わらない(というか多分先ほど申し上げたように宮尾さんがそういうのに乗って一緒にヒャッハーというのを好まないから白川イズムに段々戻ってきているんじゃないかと思いますけど。まあ宮尾さんそもそもアカデミズムの人だから気合根性論でウヒョーというのは・・・・・ってのもあるでしょうし)のであって、こういう「異次元緩和の枠組みに悖る質問」にはもっとあっさり味で答えないと異次元緩和の異次元振りが伝わらず、ひいては期待に直接働きかける事が難しくなると思うのですがどうでしょうかね。
○次回展望レポートがかなり(観客席的な意味で)楽しみになって参りました!!!
まあ何ですな、現在のQQEにおける2年で2%達成安定的にという為には、通常の需給ギャップのプラス転換での物価上昇だけではなく、期待に直接働きかけて気合と根性と大和魂でフィリップスカーブを無理繰りでも良いからシフトアップさせて、実際に物価上昇したら期待だって変わるかもしれませんよヒャッハー!!というまあ従来の日銀とは違う無茶振りモードをしておるわけです訳ですが、どうも今回の宮尾さんの講演あんど会見読んでて思ったのですが、ヒャッハー成分が足りないというのはつまりちょっと冷静になって考えたらヒャッハーじゃねえだろと薄々(なのか盛大になのか)考えているのではないかと推察させて頂く次第であります。
でまあ実は展望レポート時点でもご本人は下振れリスクを意識していたけれども、まあアグリゲートしたらバランスと言う事でシャーナイ罠と思って賛成しました(と先ほどの質疑を素直に読むとそうなりますが)って所だと思われますぞなもし。
・・・・・・・となりますと、実際には事実上展望レポートでのメインシナリオに対して下を見ている人が審議委員の6名中4名という素敵な状況になりつつあるという事ではないかとこれまたあたくしの妄想ではございますがなっている、ってな事を勘案しますと、2016年度の経済物価見通しの数値を出すことになり、かつ「2年で2%」の中間地点に到達し、消費税も上がる来年4月末の展望レポートが観客席で見ている分にはさあ盛り上がって参りました!!!という感じであります。
いやまあ別に票決5対4でもそら多数決だから決定はできるのですけれども、執行部以外の審議委員の賛否が2対4になってしまうとなりますとちょっとそれは如何なものかという話になって参りまして、そうなりますと色々な意味で外野観客席的には盛り上がるのですが、どう見ても日銀的にマズーという話ですから、さてどうするんでしょうねえと勝手に(通常の何とかストの皆様の関心とは論点がだいぶずれていますが)盛り上がってしまうアタクシなのでありましたとさ。
#新法になってから今まで5対4というような際どい票決は無かった筈です
(後日追記:一回「4対4で最終的に議長によって執行部案採択」という凄まじいのがあったのを失念していました。2008年10月31日(2回目)の会合で、0.50%→0.30%に利下げをした時に審議委員5人(1名欠員)中4名が0.25%に投票したという事案です。この時はリーマンショックの余波でえらいことになっているのに執行部提案の下げ幅が微妙に少ない点が問題にされていましたな)
○会見ネタおまけ:オモシロ質疑鑑賞
その1はお前が言うなという話。
『(問)(前半部分割愛)また、宮尾委員は、今回の講演で、FRBのコミュニケーション戦略について言及されていますが、これは、はっきり言って、「次は、もうちょっと上手くやって欲しい」という気持ちを込めておっしゃったのかどうか、お伺いしたいと思います。』
『(答)(前半部分割愛)2 点目の、FRBのコミュニケーションについては、私の立場で良いとか悪いとか、評価したりコメントしたりするのは差し控えたいと思います。従来から、各国の中央銀行は、様々な形で、より良い情報発信、より透明性を高める政策運営の努力を続けてきていると思います。FRBも、その1
つとして、将来の政策のガイダンスという形で工夫を凝らし、より良い政策やより良いコミュニケーション、情報発信のあり方を追求していると考えています。』
えーっとですからMPMに賛成した政策委員の方が直後に展望レポートと違うベースの話をするわ、異次元緩和の腰の入れ方から見たら盛大に腰の引けた期待インフレ率見通しのメカニズムの話をするわという先生こそですなあ・・・・・・・・・・・・
その2
これは質疑共にオモシロである。
『(問) 2 つ目の質問です。(引用者追記:2つの質問を途中で切った形になっているのでこれはこれで合っています)本日の講演の中で、コミュニケーションについて言及されており、最後に「日本銀行としては、引き続きより良いコミュニケーションを心掛けてまいりたい」とおっしゃっていて、素晴らしいことだと思います。ただ、実態としては、私は日銀の記者発表に時々出るのですが、極めて難解な言葉が多く、一般の方々が理解するのはかなり難しいというのが率直な印象です。今回、良い機会なので、宮尾審議委員が、例えば、日銀は今後、むやみに英語を使わないとか、分かりやすくするような方針転換を宣言していただけないでしょうか。』
日常語を使うと解釈に幅が出てしまう可能性がより高くなるので正確を期そうとすると却って説明がややこしくなると思いますし、その用語について噛み砕いて説明するというのもメディアの機能だと思うのですけれども(それをしないなら普通に公表文並べておけば良いだけです罠)、大体からして「方針転換を宣言」っていち政策委員で勝手に出来ないと存じますが、会見要旨作った人ちょっと意地が悪くね??
『(答) コミュニケーションのあり方に関しては、まだまだ工夫、改善の余地があると私自身も感じています。いま頂いたようなご意見も含めて、より分かりやすい情報発信を、これからもしっかりと心掛けてまいりたいと思います。その1つの試みとして、展望レポートの記述の仕方に関しても、より良く国民に伝わるような形にならないかということを念頭に置いて、できるだけ簡潔に、以前よりは短めで平易な言葉を使うように心掛けてまいりました。そうは言っても、いまコメント頂いたような、さらなる改善の余地がないか、探ってまいりたいと思います。』
そういや以前白井審議委員も公表文書の言葉づかいがどうのこうのみたいな話をしていたように思えるのですが、そらまあ一から百まで超専門用語使って阿呆陀羅経みたいになったら困りますけれども、言葉づかいがどうのこうのとか言う前に、それ以前に今回散々悪態をつかさせて頂きましたように、「説明の混乱」が起きてますぞなみたいな方がよっぽど問題だと思いますし、大体からしてそういう政策の本質論と関係ない所で努力するとかどうなんですかねと思うのですが、これって学者先生の仕様なんでしょうかねえ・・・・・・・・・・・
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2013/11/14
お題「これは惜しくも異次元成分が足りない宮尾審議委員講演」
また某モーサテが中銀預金ファシリティーをマイナスにすると企業融資が増えるという説明をしているのだが市中銀行が預金ファシリティーのマイナスを避けたかったら超過準備を中央銀行にお返しするしか無くて企業融資をしても超過準備は減らないんですが。つーか今日のゲスト解説のセンセイは金利ストラテジストなんですから(段取りに無くても)ちゃんとこういう時に説明入れろよと思うのだが。
ということで(どういうことだ)展望レポートネタの続きをやらずに宮尾審議委員講演ネタですがまあ異次元成分がまるで足りませんぞなもし。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131113a1.pdf
○何という異次元不足の講演
えーっとまず全体を拝読して思ったのですが、今回の講演なのですが「異次元成分がまるで足りません」という事で、端的に申し上げると先般の展望レポートやら既往の決定会合で賛成している「与党審議委員」としてはどう見てもこれ赤点再履修モノの講演テキストとしか申し上げようがございませんし、会見のヘッドラインみたら更にのけぞったのですが、共同のヘッドラインに出ていた文言が無いなあと思って検索掛けたらあまり好まないのですが産経ビズのヘッドラインがあったので引用。
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/131114/mca1311140501002-n1.htm
「消費増税、想像以上のリスク」 日銀、宮尾龍蔵審議委員
2013.11.14 05:00
『日銀の宮尾龍蔵審議委員は13日、長野県松本市で記者会見し、来年4月の消費税率引き上げの影響について「私たちが考えている以上に景気を下押しするリスクはある」と懸念を示した。』(上記URLより)
えーそもそもですな、今日銀がやっている異次元緩和で2年で2%という政策ってえのは最終形の「安定的に2%」というのがワンタイムの2%ではなくて(直接観測はできないけれども理念的に言えば)需給ギャップがゼロ近傍の時に2%のインフレ率が達成できるような状況である、と総裁が9月のきさらぎ会での講演で説明している訳で、それを達成するには従来の金融緩和で景気浮揚して需給ギャップがプラスに転じて云々だけでは足りないので異次元政策とコミットメントを実施することによって期待に直接働きかけてフィリップスカーブの上方シフトを起こさせますという事です罠。
然るに宮尾さんの講演って一応その話の言及はあるのですが、話の流れが思いっきり従来の金融政策で景気が改善してどうのこうのの話がほとんどである上に、会見では上記URLのような話をしておられるという事であれば(詳しくは今日会見テキスト出るからそれを見ないといけませんが)なんちゅう「普通の金融政策」の話をしているのかと小一時間な訳ですよ。
だいたいですな、宮尾審議委員はつい2週間前に出た展望レポートに対して反対とかしておらず、しかも消費税増税に関しては4月の展望レポートから消費税増税2回予定通りを織り込んでいる(異次元緩和時点でもそもそも織り込んでいるのだが)訳で、わずか2週間で何でこういう腰の入っていない話をするのかと言う事で、与党審議委員(^^)であるのであれば、足元のQQEの異次元政策に対してもっと日銀としての強い意志を示すような情報発信をしないといかんでしょと。与党審議委員としては「何を言ってるんですか必要な政策全部打っているし物価だってインフレ期待だってご覧のように強含みになって当初の私たちの見通しに沿って進んでいるじゃないですか2年で2%行くんですよあっはっは」という異次元な説明をしないといかんと思うのですよね。
つまりですな、直近でホイホイと追加緩和観測が出て来るというのはどういう事かと申しますと、だいたい言っている何とかストとかの話を見ますと、どうせ2%行かないのだから(という部分は経済物価見通しだから人それぞれ意見があるでしょうけれども)日銀はフォワードルッキングでプリエンティブに対応するというのが説明の筋になっている訳ですけれども、そもそも論として異次元緩和政策というものが普通の従来型なフォワードルッキングでプリエンティブな金融政策を超越した所にある訳でして、そこの認識に相変わらず齟齬がある(2年オペ実施の追加策がどうのこうのという思惑が出た時にも齟齬があった訳ですがそれを黒田総裁は綺麗に撃破しましたのですがねえ)という状況にある中でして、決定会合とか展望レポートとかに反対している審議委員が反対の理由として筋を通した話をするなら兎も角、与党審議委員状態になっている宮尾さんが何でまた従来型の金融政策話をして、しかも先行き見通しに弱腰発言するんだかと存じます次第でして、そんなに消費税増税が下振れリスクなら何か提案するなり反対するなりしろよと小一時間ですな。
ということで、与党審議委員としては赤点再履修ということで、きさらぎ会での総裁講演を20回音読してテキストを作り直される事をお勧め致します。
なお、このように黒田総裁の回し者のような説明をしておりますワタクシでございますが、これはきさらぎ会その他の黒田総裁の講演や会見の説明などを読んで「現在の黒田総裁、というか日銀執行部サイドがどのようにQQEを位置づけて金融政策のデザインを行っているのか」ということを考えた結果としてこうでしょうなあという事について申し上げているのでありまして、じゃあ本当に2%行くと思ってるのかとか、コストプッシュで2%行って世の中ハッピーなのかとか、そもそも国債を大量に買ってMB増やすとインフレ期待がシフトアップ出来るのかよおいおい、などという論点についてはまた別問題だったりしますので念のため申し添えます(台無し)。
が、QQEやっている中の人の与党構成員だったら黒田総裁の説明に沿ってガツンと異次元な説明をしないとダメでしょと思いますし、それとだいぶズレた話をするならMPMの議決で態度を明らかにして欲しいですなという所ではございます。
・・・・・・・・・うむ、講演テキストの前の悪態が長くなってしまった。
○物価の上昇メカニズムの説明に異次元成分が足りない件について
講演テキスト2ページから。
『こうした見方は、4 月の岐阜県金融経済懇談会の際にお示しした2%物価安定への道筋と今のところは概ね整合的とみています。4
月には、2%の目標を達成する道筋として、@世界経済の回復、A資産価格や為替レートを含む金融環境の緩和、B企業の設備投資や構造改革などを伴う潜在成長率の緩やかな上昇、C堅調な家計消費支出のもとでの需給ギャップの改善、Dインフレ予想の緩やかな上昇というメカニズムを示し、その下で2014
年度中に消費者物価が1%程度を超えて高まっていくことが重要であること、その後も@〜Dの好循環が持続し、中長期的なトレンド・インフレ率も2%へ向けて高まっていけば、実際の物価上昇率も2%の目標に近づいていくことが期待できることをお伝えしました。』
ほほう。
『その後、@の世界経済の回復はやや後ずれしている一方、Cの家計消費支出がやや強いといった状況が生じていますが、総じてオントラックと判断して良いとみています。特に、個人消費や非製造業関連中心の回復は、波及する経済の裾野が広いだけに、物価上昇を幅広く支えていく可能性があります。』
ま、宮尾さん的にアンラッキーなのは(今にして思えばですけど)4月の講演の時点ではそもそも日銀の説明もあまり異次元ではなくて、一生懸命金融政策の波及効果の話をして、どちらかと言えば需給ギャップを解消してプラスにする中で物価も上昇していくのでインフレ期待が上がります的な波及メカニズムの話をしたいた訳ですが、昨日ご紹介したように(しまった!展望レポートネタがあるんだったorz)展望レポートの説明でも堂々の金融政策波及メカニズムの説明盛大に割愛というプレイが炸裂しておりますように、当初の説明よりも現在の説明の方がより「期待に直接働きかけてインフレ期待をシフトアップ」という方向を強調しているので、そーゆー意味では真っ先に金懇に駆り出されて講演する破目になり、そこでの発言の整合性も考えながら今回の金懇テキストを作ることになったという点では宮尾さんも貧乏くじ引いている部分はあるんですけどね!!!
#とさっき散々悪態ついた分のフォロー^^;
んでもって講演テキスト6ページにインフレ期待に関する話があるのですけどね。『(ロ)人々のインフレ予想について:フォワードルッキングな予想形成』という部分。
『人々の予想インフレ率は、全体として上昇してきています。例えば、今年度あるいは今後1
年間といった短期のインフレ予想をみると、家計、エコノミスト、市場参加者によるサーベイ調査など、多くの指標で徐々に高まってきています。また5
年先や10 年先といった中長期的なインフレ予想についても、エコノミストのサーベイ調査などで上昇してきています(図表14)。』
まあ消費税増税分が加味されてますけどね!!
『将来のインフレ率に対して、人々はどのように予想を形成するでしょうか。一般に、将来の経済変数に対する予想には、大きく2
つの考え方があります。1 つは過去の実績を将来予想として直接用いるという考え方です(バックワードルッキングな予想形成)。例えば、単純に前期のインフレ率を予想インフレ率とみなすという考え方が典型的です。この場合、将来に対する予想は、過去のインフレ率の実績といった形で固定化されます。』
『もう1 つは先々の経済の変動メカニズムに沿って将来のインフレ率を予想するという考え方(フォワードルッキングな予想形成)です。例えば、いま単純に「景気が良くなると物価が上昇する」というフィリップス曲線の関係に沿って考えてみます。』
ほうほう。
『この場合、成長力強化の取り組みや政策効果の浸透などによって、先行き景気の持続的な改善が続くという見通しが広まれば、将来時点の景気と物価の関係から、人々は将来物価が上昇すると予想する、つまりインフレ予想は高まることになります。この時企業サイドでは、先々の景気や売上見通しの改善を受けて、値下げ競争を緩和したり、コスト上昇を販売価格に上乗せしたりすることが可能となるでしょう。その結果、今期の物価に上昇圧力がかかりやすくなり、観察されるフィリップス曲線が上方にシフトする、あるいは傾きがより急になる、という効果が考えられます。』
ふむふむ。
『実際のインフレ予想の形成には、バックワードルッキングとフォワードルッキングの両方の側面が混在しているものとみられます(ハイブリッド型の予想形成)。』
そらまそうじゃろうな。
『日本では、経験的に、バックワードルッキングの側面が強いことが知られています。その一方で、政府と中央銀行は、現在、フォワードルッキングな予想に働きかける政策を強力に推進しています。』
『政府は、財政出動とともに規制・制度改革などを推進して、成長期待を高めようとしています。日本銀行は、2%の物価安定目標を掲げ、その早期実現を目指して大規模な金融緩和を実施しており、景気回復が持続するよう金融面から強力な後押しを続けています。』
うーむこのという所なのですが、もっとこの部分を講演の中で強調すりゃいいのに、前半部分でこれに関連する話をしていないで、需給ギャップが改善して物価が上昇すると次第に期待インフレが高まるというような話をしているのが残念というか腰の弱い所。
『また企業部門でも、先に述べた非製造業のイノベーションや設備投資などが継続すれば、労働生産性は更に高まり、所得見通しの改善が続く可能性があります。』
ちなみに労働生産性の論点はここの前の部分で説明が有りますが引用割愛。
『これらを合わせて考えると、景気の持続的な改善が続くとの見通しのもとで、フォワードルッキングな予想形成を指向する人々の割合が増える可能性があります。』
『もちろん、それぞれの企業・家計を取り巻く環境は引き続き厳しい中で、今後このロジックが示すように進むかどうか不確実性はあります。しかしその一方で、消費や所得の持続的な改善を示唆するマクロデータやヒアリング情報、足もとの中長期的な予想インフレ率の緩やかな高まりは、この方向で日本経済全体が徐々に動き出していることを示唆しているようにもみえます。このメカニズムからも中長期的なインフレ予想が高まっていく可能性が相応にあると私自身はみています。』
ここの説明が正直弱いと思うのですが、実際問題として物価がちったあ上昇している点がバックワード的にインフレ期待を高めているかもしれませんという話を織り込んだ方が良いと思うのですよね。成長戦略の結果として成長期待が高まるとか、設備投資が今後伸びたらとか、そういう先の話をするのも勿論良いのですけれども、折角足元で(たとえコストプッシュであっても)実際の物価が上昇に転じだしている事をもっと強調して「それ見たことか(ドヤッ)」と言う説明をしないとやっぱり腰が弱い感じが否めない訳でございますよ。
○ついでに金融緩和政策に関する説明も腰が引けている件について
でまあ宮尾さんの講演ですが、更に金融政策の説明パートがありまして本文9ページのケツの辺りからこのような話が有ります。
『なお、「量的・質的金融緩和」の実体経済・物価への効果の最終的な評価は、政策終了後まで待つ必要がありますが、2000
年代の日本の量的緩和政策について私自身で実証的な分析を試みました。』
ほうほう。
『その結果、暫定的ながら、景気(生産)に対しては相応の効果があり、その際、株価や為替レートなど資産価格を通じた波及ルートが機能していたとの実証結果が得られました。一方、物価に対する効果は、景気への効果ほど明確ではありませんでした。』
あばばばばー。
『これは、1つの可能性として、政策による景気の改善に対して、物価の反応はそれほど大きくはない、つまり当時のフィリップス曲線の傾きがより緩やかだったと解釈できます。』
ほうほうそれでそれで??
『このため、私自身は、前節で述べたようなメカニズムで、今回の「量的・質的金融緩和」によってフィリップス曲線の傾きがこれまでよりも急なものになるかどうか、あるいはフィリップス曲線自体が上方にシフトするかどうかがポイントだと思っています。』
いやあのフィリップスカーブの上方シフトをを強力に推進するのがQQEなのでして「ポイントだと思っています」とか他人事のように言わないで欲しいんですけどマジ勘弁。
『今回の消費主導を中心とした景気回復において、フォワードルッキングなインフレ予想形成の力は、これまでよりも強く働く可能性があるとみています。政府や企業部門の前向きな取り組みも、景気が持続的に改善するとの見通しをより強めて、その力をサポートするでしょう。各経済主体の取り組みとともに、フィリップス曲線の傾きの変化や上方シフトが進んでいくかどうか、今後の動向をしっかり点検していきたいと思います。』
いやだから実際の物価上昇というバックワードルッキング(というか同時進行の自己実現という方が近いかも知れませんけど)なパスの話を何でしない(ポリティカルにはマズーだけど本当は「消費増税で物価が上昇する所で自己実現サイクル発生したらそれはそれでもウッシッシ」の筈なんですけどね、するためには名目所得の上昇が必要ですけど)んじゃと思うのでどうもねえという感じです。
どうせ説明するなら「前回のは物価に効かなかったという結果になりましたが、今回は何せ期待に直接働きかける政策を政府と協力して実施しているんですから前回と違ってフィリップス曲線の上方シフトが期待され、物価に対しても効果を発揮するものと確信しています(キリッ)」位の気合を入れた説明をして欲しい物でありますな、与党審議委員と致しましては(−−;
○なお景気には下振れリスク意識ですが消費税の影響ェ・・・・・・・・
一応本文3ページまで戻って『(2)経済・物価見通しに対するリスク』というのを引用します。
『第1 に、海外経済の動向に関する不確実性があります。特に中国以外の新興国・資源国については、一部の国が経常収支赤字など構造的な問題を抱えており、下振れリスクがあります。また、米国の財政問題の帰趨によっては米国および世界経済の回復が後ずれする可能性がある点にも注意が必要と認識しています。』
『第2 に、家計の雇用・所得動向です。先行きも国内需要が堅調さを維持していくためには、雇用・所得環境が消費を支えるという前向きな循環が持続していくかどうかがポイントです。この点、下振れリスクはある一方で、次節で述べるような上振れ方向のメカニズムが働く可能性もあるとみています。』
まあこの辺は順当としまして。
『第3 に、消費税率引き上げの影響です。税率の引き上げは家計の実質可処分所得にマイナスの影響を及ぼしますが、政府における各種の経済対策などである程度は減殺されると思います。そのうえで、想定以上に経済を下振れさせるかどうかは、その時々の雇用・所得環境や物価動向によって変化するため注意が必要と認識しています。』
他の話は「起きるか起きないか判らない件」なのですが、消費税引き上げに関しては確実に起きる件なので、その点についてわざわざ項目を作っちゃうのが腰が引けている感を出してしまう訳で、そもそも宮尾さんその後で「想定以上に下振れするかはその時々の動向で変化する」と言っているんですから、だったらこの項目はその前の第2の雇用所得動向の中に含めまれる概念であり、わざわざ話さないのが吉という話で、この項目を作るのがプレゼンとしては弱気感を出すのではないかと思いますが如何なもんでしょうかね。
#特に消費税に関しては他の項目と違いまして以前より総裁が「何を仰る兎さん当然織り込んだ結果の見通しですよ(キリッ)」とやっているだけにここで急に出てくるとちょっとねえと思います
『第4 に、企業や家計の中長期的な成長期待に不確実性があります。企業による需要の掘り起こしを伴うイノベーションや、規制・制度改革、税制改正の今後の展開などによって、上下双方向に変化する可能性があります。』
まあこの第3の部分が弱気感を出しちゃってるなという所でありますが、まー結局の所宮尾さん自体が腰引け気味なんでしょうなあと思いますと、何か今後の金融政策に関する日銀からの情報発信も少々分裂気味なのが拡大モードとかになるのかも知れませんね!!!
なお念の為再度申し上げますと、このように黒田総裁の回し者のような根性論を展開しておりますワタクシでございますが(以下同文^^)。
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2013/05/30
○宮尾審議委員講演(質疑応答のテキストは無かったですすいませんすいません)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130528a1.pdf
質疑応答に関しては(そもそも有ったのか知らんがたぶん外国特派員協会だったらあるにはあるでしょう)テキストが特にありませんでした(そもそもこの場合は無いのが仕様でした)ので講演から少々。
・2%達成のステップとな
本文2ページより。
『以上の全体感を踏まえて、2%の目標を達成する具体的な道筋として、私自身は、次の6つのステップに整理して考えています(図表2)。』
ということで図表2というのも参考に(貼りつけスキルは無いので皆さんで見てちょ)して頂ければと思うのですが。
『まず、@海外経済の持ち直しは、わが国の輸出・生産の回復基調を後押しし、企業収益を高めます。』
何かもういきなり出オチの悪寒がしますがまあ海外経済が順調に持ち直すという事にしましょう。
『基調的なリスクオン(リスクに対して前向きな状態)の継続と米国長期金利の緩やかな上昇により、さらには日本銀行の強力な緩和策により、資産価格などを含む金融環境は緩和した状態が強まっていきます。』
米国金利が上昇するのに緩和した状態が強まるとはどういう事ぞと思うのですが、図表2の方を見ますと「米国長期金利の上昇→資産価格・為替レートなど金融環境面でプラス」ってな記述になっているのですが、普通に考えて米国長期金利が上昇したら日本円の長期金利にも影響があると思うのだがそれはネグって為替レートの話だけするとかどんだけ自分に都合の良い話をしているのかと小一時間問い詰めたい。
『Bそれらは企業の設備投資や構造変革など前向きな動きを後押しし、潜在成長率の緩やかな上昇をもたらします。』
潜在成長率がそんなに簡単に上昇するならだれも苦労しないと思うのだが。
『C持続的な景気回復期待のもと、家計の消費支出も堅調に推移し、需給ギャップの改善を伴いつつ物価は徐々に上昇します。』
景気回復期待というフワフワしたものだけではなくて、雇用や所得の持続的な拡大が期待できないと家計の消費支出の拡大はサステイナブルでは無いでしょうにと思いますけど、つーかその論点は先日ネタにした4月末の金融政策決定会合でも指摘されていたと思いますし、米国でもその議論してるんですけど随分とこらまた楽観的な見通しで。
『Dこの間、人々のインフレ予想も徐々に高まり、こうしたもとで、2014 年度には1%を上回る物価上昇率を実現します。』
ほうほうそれはそれは(棒)。
『Eその後も、@からDの好循環メカニズムが維持される下で景気回復は持続し、人々のインフレ予想と中長期的なトレンド・インフレ率(アンカー)は2%へ向けて徐々に高まっていきます。以上の結果、実際の物価上昇率も上昇を続け、2%の物価安定目標に近づいていくとみられます。』
この回転が維持されるとな(棒)。
・2%目標はフレキシブルターゲットという部分について
ちょっと話題になっているっぽいのでその部分引用。異次元緩和の説明部分から。
『今回の新たな枠組みには大きな特徴があります。第1 に、バランスシートの量と質の両面から、相当に踏み込んだということです。第2
に、戦力の逐次投入はせず、デフレ脱却に必要な施策をすべて講じました。そして、第3に、量的・質的金融緩和の継続について、2%の物価安定目標を安定的に持続するために必要な時点まで継続することとし、政策目標と関連づける形で強力な量的・質的緩和の継続を約束しています。』
という説明の次に当該部分があります。
『付言すれば、それは柔軟なインフレ目標政策の枠組みのもとで実施されるという点です。インフレ目標を掲げる他の多くの中央銀行がそうであるように、物価安定目標は、景気回復を伴ってバランス良く実現されるものであり、どんな犠牲を払っても2%のインフレ率だけを達成すれば良いといった硬直的な政策運営を行う枠組みではありません。また、「2%」と目標をピンポイントで示していますが、ここから少しのずれも許容しないということではなく、平均的かつ安定的に維持されるよう運営されるべきものです。』
「どんな犠牲を払っても2%のインフレ率だけを達成すれば良いといった硬直的な政策運営を行う枠組みではありません」というのはまあ仰ることは分かるのですが、やや言い方に問題があって、「2%のインフレ率を達成したとしてもそれが所謂コストプッシュ型のような景気回復にプラスにならないようなものではいけません」みたいな言い方をした方が良いと思う訳ですな。
まあここのテキストを読む限りでは別に目標達成に対して日和ったというような表現ではないとは思われるのですが、これがまた丁度間が悪い事に同じ日に浜田大大大先生様のブルームバーグインタビューでの「経済が良ければ物価目標に行かなくてもいいじゃないかにんげんだもの」とか何とかいうのが出てしまっているので、まあヘッドラインを見て受け止める方としてはその浜田先生の発言と宮尾さんの「2%目標は柔軟な運営で」をオーバーラップして受け止めてしまうのは止むを得ない面がありまして、その結果「宮尾審議委員が目標達成に対して日和った発言をしている」という解釈をしている人が出てるっぽいという事象に発展しているというのが実にチャーミングとしか申し上げようがありません。
でまあそれは兎も角として、ここでの2%なんですけれども、やはりアクチュアルの数値の話を念頭に置いているのか、フォーキャストの話を念頭に置いているのかという論点が残る所ではありまして、どうも宮尾さんの話を見ていると「アクチュアルの数値が平均的に2%で推移するように」というイメージを持っていそうには読めますけれども、この論点に関しては今後ややこしい事になりそうな悪寒。
・長期金利の経路という説明があるのだが
『量的・質的金融緩和は、長めの金利および資産価格へ働きかけること、ポートフォリオ調整やインフレ予想に働きかけることを重要な波及経路として考えています(図表3)。』
図表3の方には「イールドカーブ全体への低下圧力」と書いてありますがこちらでは「働きかけること」ということですかそうですか、あ、「圧力」だから他の要因で上昇する力が圧力よりも強かったら上昇することもあるんですかそうですか・・・・・・・・・・
ということでその先を鑑賞する。
『ここで今回の措置がもたらす長期金利への影響について、改めて整理しておきましょう。まず第1
に、長期国債買入れにより、市場で流通している国債を吸収することから、先行きの国債金利にはタームプレミアム部分に下落圧力がかかり続けます。第2
に、上記の道筋で示したように、今後、景気回復期待ならびにインフレ予想が高まってくることで、長期金利のベースとなる予想短期金利の部分(将来の短期金利の予想経路)が徐々に高まってきます。米国など海外経済の順調な回復と海外の長期金利上昇の影響を受けて、わが国の長期金利に上昇圧力がかかることも、同じく予想短期金利部分の上昇と解釈できます。』
ということで、足元のボラ上昇によるリスクプレミアムの拡大という意識が無いという債券市場から見たら盛大に梯子を外してるんじゃねえよこのヴォケという論点は華麗にスルーしているのは把握した。
#まあ「認めたら負け」と思ってるのかも知らんけど
『今後の長期金利の経路には、政策措置とその効果により、また外部環境の変化により、上下両方向の力が加わりながら推移していくものとみられます。そこでのポイントは、景気回復期待などから長期金利に上昇圧力がかかる局面でもなお、金融政策の面から金利に下押し圧力をかけ続けることで、景気回復をさらに強力にサポートしていくという点です。』
圧力を掛けると簡単におっしゃいますが、「景気回復期待ならびにインフレ予想が高まってくることで、長期金利のベースとなる予想短期金利の部分が徐々に高まってきます」って状況下で金利に低下圧力を掛け続けるのは、低下できないか圧力の反動でインフレがスパークするのかのどっちかになるんじゃないかと思うのですけどねえ。まあいいけどさ。
『景気回復期待やインフレ期待が着実に高まってくるもとで、量的・質的緩和を継続すれば景気刺激効果はさらに高まっていくため、その効果を十分念頭におく必要があります。』
ふ、ふくさようは???
・足元の状況に関して
『この間、長期金利は、米欧長期金利の上昇や本邦株価の上昇などを背景に上昇する局面もみられていますが、日本銀行としては、債券市場の動きを丹念に点検し、市場参加者と密接な意見交換を行いつつ、必要に応じて、買入れ頻度やペース、買入れ対象の調整をするなど、政策効果の浸透を促すため、弾力的なオペ運用を行っているところです。』
・・・・・・・・まあ何だ、弾力的なオペ運用がどうのこうのとか言ってるから流動性低下によるリスクプレミアム拡大要因を認識していない訳では無いんだろうなというのだけは把握した(^^)。
・好循環メカニズムは好循環メカニズムでしたけど・・・・・・
でまあ量的緩和政策の効果分析に関する部分についてはおじちゃん頭が悪いからどこをどう突っ込んで良いのかワカランチ会長なのだが、直観的に怪しげというか手前味噌っぽい気がするという風に思うのですがそこは割愛致しまして(大汗)最後の所に飛ぶ。
『(3)量的・質的金融緩和への意味合い』という所から。
『以上の暫定的な分析結果を踏まえ、わが国の量的緩和政策の経験は、今般実施した量的・質的金融緩和のパフォーマンスに対して、どのような意味合いを持つでしょうか。』
『量的緩和政策当時の経済情勢を振り返ると、後半期にかけて(2003 年以降)、次のような好循環が実現しました。すなわち、この時期、銀行の不良債権問題、金融システム不安に概ね目途がつく中、海外経済の力強い回復という追い風を受け、企業の「3
つの過剰(雇用、設備、債務)」の解消へ向けた調整、構造変革や新規の投資支出などの取組みが進みました。』
ふむ。
『その動きを、当時の量的緩和政策や為替政策が金融面から強力にサポートして、景気は息長く回復し、需給ギャップもプラスへと浮上しました。物価上昇率は徐々にマイナス幅を縮小し、中長期的なトレンド・インフレ率も明確に上昇しました。すなわち、海外経済の回復、強力な金融緩和、構造改革の進展と潜在成長率の高まり、持続的な景気回復、中長期的なインフレ見通しの上昇などの好循環メカニズムを2003
年-2006 年の時期に経験したのです(図表4〜図表6、実線囲み部分)。』
>好循環メカニズムを2003 年-2006 年の時期に経験したのです
>好循環メカニズムを2003 年-2006 年の時期に経験したのです
>好循環メカニズムを2003 年-2006 年の時期に経験したのです
・・・・・・・・・・・・それは結果から見たら単に海外の信用バブルに乗っていただけの話ではないかというツッコミに対してはどのようなお答えをするのかを是非ともお伺いしたい所なのですが。
『量的・質的金融緩和は、量的緩和政策と比べても、量・質の両面においてはるかに大規模かつドラスティックな緩和措置です。また、回復に向かう内外の経済情勢とその好循環メカニズムの展望について、当時と重なる部分も多いとみられます。したがって、現在の量的・質的緩和には、包括緩和期からの累積的な効果とともに、今後の経済・物価見通しで想定されている中心シナリオ――すなわち、2003−2006
年の時期にみられたのと同様の好循環メカニズムのもとで物価安定目標を達成していく道筋――を金融面から一層強力にサポートすると考えられます。』
>2003−2006 年の時期にみられたのと同様の好循環メカニズムのもとで物価安定目標を達成していく道筋
>2003−2006 年の時期にみられたのと同様の好循環メカニズムのもとで物価安定目標を達成していく道筋
>2003−2006 年の時期にみられたのと同様の好循環メカニズムのもとで物価安定目標を達成していく道筋
>2003−2006 年の時期にみられたのと同様の好循環メカニズムのもとで物価安定目標を達成していく道筋
>2003−2006 年の時期にみられたのと同様の好循環メカニズムのもとで物価安定目標を達成していく道筋
さすがの米国も今度は資産バブルヒャッハーというのはマズーだろというご認識をお持ちの中で結果から見たら資産バブルの嵩上げによって海外経済が堅調推移するという起点から始まった好循環メカニズムと同様の好循環メカニズムが起きるというのはかなりのナローパスじゃございませんかねえという印象を受けるこのくだりなのでありました。
#まあジャパンで資産バブルでも起こそうっつーのなら話は別ですかそうですか(迫真)
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2013/04/22
○宮尾審議委員会見は盛大にツッコミが飛んでいます(^^)
岐阜まで盛大にツッコミをしに行く人たちが中々容赦ないツッコミで大変に素晴らしい質疑であると思いました。では質疑に対する応答の方はと申しますと、これは講演と同様という感じでございまして、金曜にあたくしの駄文を読んだ読者様が「宮尾講演を楽しみに読み始めたのに途中からハナクソほじりながら読んでた感じ」と評して頂きました(えーハナクソはほじっていませんが言われて確かにそんな感じだわというのが絶妙過ぎてツボに入りました)ように応答の方が誠にこうアレであります。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1304b.pdf
でまあ質問は「物価シリーズ」と「政策判断ジャガーチェンジシリーズ」に大別されるのですが、質問が中々容赦ないので観賞用には大変面白いです。政策インプリケーションは無いけど(−−:
・物価見通しについて
まあ何ですな、今回は当然ながら物価目標本当に行くんですかそのメカニズムは何ですかということに関して、異次元緩和打ち込み後の最初の総裁以外の講演になる訳で、学者先生であらせられる宮尾先生におかれましては黒田さんの気合のみの話では無いサムシングニューを打ち込んで頂ける、とまあそう期待しつつ質問が飛んでくるのでありまして・・・・・・・・
まず物価に対する最初のツッコミ。
『(問) 2 点伺います。まず、金融経済懇談会における挨拶の中では、消費者物価の上昇率の見通しについて、「2014
年度中に1%程度を超えて高まっていく」と述べています。これは展望レポートで出されている中央値を上回っている訳ですが、宮尾審議委員としては、2014
年度中に1%を超えた後、物価の目標である2%が、具体的にはいつ頃達成できるとお考えなのか、教えて下さい。』
2点目の質問の前に早速宮尾さんの回答とな。
『(答) この点は、次回の金融政策決定会合で経済・物価見通しに関する展望レポートを作成する際に、今回の「量的・質的金融緩和」の政策効果も含めた形で、先行きの経済・物価見通しが議論されることになります。講演で示した、「2014
年度中に消費者物価上昇率が1%程度を超えて高まっていく」という見通しのベースは、1
月の中間評価時点での政策委員による2014 年度見通しの中央値である0.9%という数値です。2014
年度の平均が0.9%ですから、2014 年度中には0.9%を超える、つまり、1%程度を超えて高まっていくとみているということです。講演で示したのは、あくまでも中間評価で示した見通しに基づくものです。』
ほほう。
『今回、「量的・質的金融緩和」という政策を実施しましたので、その効果を含めた先行きの経済・物価見通しは、次回の会合で、メインシナリオおよびリスクの評価とともに、しっかりと点検していきたいと思います。』
「その効果を含めた先行きの経済・物価見通し」キタコレという所ですが、つまり「政策効果」という名目のもとに鉛筆を舐め舐めする気満々という事ですねわかります。
そして更にツッコミは続く。
『(問) 関連でもう1 点伺いますが、2%の目標を達成する道筋をきちんと示していくことが大事という問題意識があると思いますが、今の展望レポートは年度平均で数値を示していますので、2013
年度と2014 年度の平均しか出ない訳で、2%という数字が出るかというと、今のままだと難しいのではないかと思います。そのことに対する問題意識、つまり、もっと先まで示したり、2%という数字が入るように何か今の展望レポートの数値の出し方を変えるといったことについて、問題意識はあるのでしょうか。』
2%への道筋どうなってるのもっと長い期間にしないと鉛筆舐められないんじゃないですかとな。
『(答) 展望レポートの表現、あるいは将来の経済・物価見通しをどのような形で示すかについては、今回、2
年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%目標を達成できるよう必要な政策を決定したということですので、その政策効果を織り込んだ形でどのように見通しを示すのが望ましいのか、現在の示し方に何らかの工夫や改善の余地があるのかどうか、そういった点も次回の金融政策決定会合の論点の一つとなりうると思います。いずれにしても、先行きの経済・物価の見通し、メインシナリオ、並びにリスクについてはしっかりと議論していきたいと思います。』
えーっと、しっかりと議論と仰せですが2%を早期実施する為の政策を打ったのだからその政策効果を織り込んだ形での展望レポート見通しを出すとか、もうあからさまに大本営発表をしますよと言わんばかりのこの回答で、ここまでくると開き直りですかそうですかという所ですが・・・・・・
でまあそのちょっと後の質問ではこんなのが。
『(問) 3 点質問します。1 つ目は、2 年程度を念頭に置いて、2%の物価目標を達成するために必要なことを全て「量的・質的金融緩和」に盛り込んだということですが、2年程度で2%の目標達成は可能だとお考えなのか教えて下さい。先程も似たような質問に対して、次回決定会合で議論するとおっしゃった訳ですが、黒田総裁、岩田副総裁も、様々な場所で総裁個人の、あるいは副総裁個人の考えとして、「実現は可能である」という見方を既に示していますので、宮尾審議委員が個人としてどのようにお考えなのか、教えて下さい。(以下割愛、というか後で)』
『(答) まず1 点目ですが、今回の政策で物価安定の目標が2 年で達成可能なのかどうか、これは先程と同じ質問と思います。今回、私どもは2
年程度の期間を念頭において、2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために今回の「量的・質的金融緩和」というパッケージを決定し、実行に移したということです。次回の展望レポートで、その政策効果も含めた形で、将来の経済・物価の見通しとリスクについて点検し、皆さんにお示しする考えです。(以下割愛、というか後で)』
はいはい根拠レス根拠レスという所ですが、この後政策ジャガーチェンジシリーズの質疑が続いた後に更に追撃質問が飛んでいるのでして。
『(問) 再度お聞きします。黒田総裁も岩田副総裁も2%の目標は2 年程度で達成できると個人の考えを述べています。宮尾審議委員が何故ここでご自身の考えを述べないのか、よく分かりません。それは、今は分からないということなのかどうか――今は答えられないということは分からないと受け止めざるを得ませんが――、そこを含めて、再度、達成できるとお考えなのかどうか、教えて下さい。(以下割愛、というか後で)』
後半の部分は後で引用している政策判断の継続性に関する部分での質問の追撃なので後で引用します。
『(答) 1 点目については、繰り返しになって恐縮ですが、私どもが今回決定した政策判断は、できるだけ早期に2%目標を実現する、その際、2
年程度の期間を念頭に置き、そのために必要な政策は何かを考えて実施したということです。それを踏まえて、次回の展望レポートに向けてそれぞれの委員が経済・物価の見通しを作成するということになります。(以下割愛)』
結局もう答えようが無いのだがそこは学者先生につき「根拠は無いけど気合です」とは言い切ることができないというところなんでしょうかねえ(ニヤニヤ)。
・政策判断の継続性に関する容赦ないツッコミシリーズ
まずは白井さんの3月提案否決との整合性に関して質問が。
『(問) 決定のプロセスに関して伺います。1 月の金融政策決定会合で2%の目標を決め、3
月の会合では1 人の委員が政策変更を提案されて、残りの方は全員反対しました。その後、前回の4
月の会合では、全員一致で新しい政策を決められた訳です。宮尾審議委員も、講演の中で、新体制で実施した方が効果的だと述べられていますが、その政策判断の連続性について、どのようにお考えでしょうか。』
この部分引用しなかったですけれども、そらまあこういうツッコミされる罠。
『新体制であろうと旧体制であろうと、必要であると思えば実施すべきと思いますが、3
月時点の提案に反対されたことが分かりません。1 か月の間で変わったことといえば、総裁をはじめ執行部の3
人が替わったくらいで、経済も順調に進んでいたと思います。そうした中で、何故1
か月の間でこれだけ大きな変更に賛成したのか、政策判断の連続性という観点でお答え下さい。』
ニヤニヤ。
『(答) 只今のご質問は、3 月の会合で白井委員の提案に反対し、なぜ翌月、つまり4月の会合で同様の提案に賛成したのかとの趣旨だと思います。』
まあこの部分に限定すれば回答は可能なのですよね、以下鑑賞。
『まず、白井委員の提案、あるいはそれを巡る議論に関しては、既に公表されている議事要旨に示されている通りです。その提案は、従来あった基金の枠組みに、輪番オペの長期国債買入れを組み入れるという内容で、一つのオプションとして会合で検討された訳ですが、議事要旨にもある通り、いくつかの論点について更なる検討の余地があるといった意見もあり、その会合では賛成多数とはなりませんでした。』
『一方、今回の提案は、量的にも質的にも相当踏み込んだ、新しい金融緩和の枠組みであり、前回の提案とは、枠組み自体が更に大きく変わっており、新しく組み立てられたものです。従って、3
月の提案の採否と4 月の政策判断とは直接は関係ないと考えており、私の中では、2
回の会合の連続性は維持されていると思っています。』
先日3月議事要旨が出た時にご紹介したのと同じ話になるのですが、要するに白井さんの提案自体が「他の重要な論点はともかくとして輪番と基金を統合しましょうよ」とかいうようなお前真面目に金融政策提案してるのかというレベルのうんこにも劣る提案であって、そもそも討議の価値もないというような思いつきレベルの話を持ち出したので反対したということを露骨に言わないと宮尾さんの回答になりますという所でしょう。
でまあこの前も悪態つきましたが大事な事なので何度も悪態をつく訳ですが、議事要旨内容とか普通の人は事細かに読まないのでありまして、結局の所「白井さんが輪番と基金の統合を提案したが否決され、その翌月には同じ提案が何故か全員一致で採用された」という印象を後に残す結果になる訳でございまして、わざわざコミュニケーションの障害を起こすために提案したとしか思えない白井さんの3月提案に関しては猛省を促したいと思うのでありました。
話は戻りまして、この次の質問がさっき引用した3点の質問でして、残りの2点の質問が中々の容赦なさでワロタ。
『(問)(前半割愛)2 つ目は、1 つ前の質問とも若干似ていますが、何故このような次元の違う金融緩和が白川総裁のもとではできず、黒田総裁が就任されて2
週間経つか経たないかという時期に実行できたのかという点です。』
あいやー。
『黒田総裁自身は、総裁就任前から白川総裁の5 年間を振り返って、あるいはそれよりずっと前から、日銀の金融政策が不十分であると断言されています。つまり、宮尾審議委員が在任の間も含めて不十分であったと断定されています。このことを宮尾審議委員ご自身も認めるのかどうか、つまり、今までご自身が賛成されてきた金融政策運営がやはり不十分であったと認識しているのかどうか、教えて下さい。』
まさにロジカルハラスメント質問(^^)。
『第3 点として、何故今回、白川総裁が退任して、黒田総裁になったばかりのタイミングでこのような次元の違う政策が実行されたのか。白川総裁のもとでの金融政策運営については、宮尾審議委員もほぼ賛成されてきたと思います。それが、手のひらを返したように、黒田総裁になったということで、ほぼ皆さんが次元の違う金融緩和に賛同された訳ですが、これを外からみて、「執行部が提案したものには盲目的に賛成されている方が多いのではないか」という印象を持たれる方も多いと思います。』
これは痛烈・・・・・・
『今後、執行部が提案することが、もし仮に間違っていた場合、審議委員の方々がきちんとした判断で、違うものは違う、おかしいものはおかしいと、そういう判断がされるのかどうかということに、多くの人が危惧を抱いているのではないかと思います。この点について、何故、黒田総裁が就任して2
週間経ったばかりのタイミングでこの政策が行われたのか、何故、白川総裁のもとでは行われなかったのか、教えて下さい。』
まあ正直この辺については佐藤さんと木内さんに期待するしかと思いますけれども、宮尾大大先生の答弁やいかに。
『(答)(前半割愛)2 点目と3 点目は、併せてお答えしたいと思います。私は過去2
年半、包括緩和という枠組みのもとで、政策判断を行ってきました。包括緩和という枠組みは、ご承知の通り、非伝統的な緩和手段のメニューを揃え、政策の進め方としてはその効果を見極めながら緩和を強化していく、そういうアプローチで実施してきました。これにより景気の下支えに寄与してきたと私自身は考えていますが、残念ながらデフレの脱却には至らなかった点も事実です。』
『私自身は、そういった包括緩和での経験があったからこそ、今回の「量的・質的金融緩和」に踏み出すことができたと考えています。異例の規模の国債買入れでもあり、この政策には相応のリスクが伴うことは事実ですが、それを上回る効果が期待できると考えています。また私自身は、この会合に至る以前から――具体的には1
月以降――、追加緩和の提案もしてきています。そういった意味で、それまでの政策判断と今回の4
月の政策判断との連続性は維持されていると考えています。』
いやもう答えられないというのは判ったが、この後更に波状攻撃質問がありまして、前半部分は物価の説明が無いぞゴルァというので先ほど引用したのですが、追撃でこんな質問とか容赦ないにも程がある(^^)。
『(問)(前半割愛)また、黒田総裁は、総裁就任前から、宮尾委員の2 年半も含めて日銀の政策は不十分であると断言されています。それについて同意されるのかどうか、教えて下さい。』
『(答)(前半割愛)2 点目ですが、私自身は、先程申し上げたように、包括緩和は適切と判断して、景気の下支えに寄与してきたのではないかとみていますが、一方で、デフレの脱却には至らなかったというのも重たい事実だったと認識しています。』
いやーあっはっは。答弁が苦しかったでしょうなあというのは把握しましたが、記者の皆様におかれましては今後とも容赦ないツッコミをよろしくお願い申し上げたい物だとゆー所で、今回の記者会見は政策インプリケーション自体はともかくとして、宮尾さんが泡を吹きながら答える破目になったんだろうなあと思うと同情は若干禁じ得ませんがそもそもご自身の政策決定に関するツッコミですからまあ自業自得でもあったりするのであまり同情はしないあたくしがいるのでありましたとさ。
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2013/04/19
○宮尾審議委員講演だが結局メカニズムが意味不明
MPM後初の総裁以外の講演である。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130418a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 岐阜県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
・2%達成の道筋とな
経済の見立てと見通しの所でまずこの『(3)2%物価安定目標への道筋』というのがありましてですな。
『そこで、以下では、2%の物価安定目標へ向けた道筋について、いくつかの点を具体的にしつつ、中心シナリオを示してみたいと思います。先行きのシナリオを描く上では、さまざまな状況を考慮する必要がありますが、特に次のような点が重要と考えています。』
ほほう。
『第1 に、世界経済が安定化し、来年にかけて成長率が高まっていくとみられることです。最新のIMF(国際通貨基金)の見通しによれば、世界経済は、2014年にかけて4%程度へと成長率が徐々に高まっていきます。欧州経済は、2013年は小幅なマイナス成長と慎重な見方が維持されている一方で、米国やアジア新興国などでは堅調な回復が見込まれています。』
アジア新興国で堅調な回復ですと??
『第2 に、米国などを中心に世界経済が着実に回復するもとで、基調としてはリスクに対して前向きな状態(リスクオン)が続き、米国長期金利は先行き緩やかに上昇していくとみられることです。それはリスク資産への需要をサポートするとともに、為替レートに対してもドル高・円安方向への力として作用することになります。』
はあそうですか(棒読み)。
『第3 に、世界経済が正常化へ向けた歩みを進めるなかで、不確実性は低下し、手控えられてきたわが国の設備投資需要が顕在化するとみられることです。昨年末以降の企業マインドの好転ならびに企業収益の改善見通しは、後述する日本銀行の金融緩和策の効果とも相まって、企業の前向きな取り組みを後押しするでしょう。』
そ、そうなのか??
『第4 に、わが国の潜在成長率が緩やかに上昇していくとみられることです。』
ほっほー。
『設備投資が実施され、老朽化した設備や工場が新技術を取り入れたものに更新されれば、生産性は向上します。加えて、農業、エネルギー、医療分野などにおける制度・規制改革、積極的な通商政策などを通じて、成長力と競争力強化の取り組みが進展することを展望すれば、現状0%台前半とみられる潜在成長率が緩やかに上昇しても不思議ではありません。』
ふむ。
『第5 に、人々のインフレ予想が徐々に高まっていくとみられることです。人々のインフレ予想は、インフレ率の実績と中長期的なインフレ率のトレンド、そして将来の景気回復見通しから影響を受けます。2%の物価安定目標のもと、後述する新しい金融緩和措置の効果も相まって、デフレ心理から脱却し、実際の物価も上昇し、また景気回復も持続するという見通しも浸透していけば、人々のインフレ予想が高まるとの想定は決して非現実的なものではありません。』
これ辛うじて5番目だけ日本の金融政策と関係あるけど他は全部外部要因頼みのような気がする上に、5番目についても気合ルートじゃねえかなどとツッコミたくなるのですが気のせいですね!!!
『以上をまとめると、2%の目標を達成する道筋として、まず、@海外経済の正常化は、わが国の輸出・生産の回復基調を後押しし、企業収益を高めます。A基調的なリスクオンの継続と米国長期金利の緩やかな上昇により、さらには日本銀行の強力な緩和策により、資産価格や為替レートを含む金融環境は緩和した状態がサポートされます。Bそれらは企業の設備投資や構造変革など前向きな動きを後押しし、潜在成長率の緩やかな上昇をもたらします。C持続的な景気回復期待のもと、家計の消費支出も堅調に推移し、需給ギャップの改善を伴いつつ物価は徐々に上昇します。Dこの間、人々のインフレ予想も徐々に高まり、こうしたもとで、2014
年度中には消費者物価上昇率は1%程度を超えて高まっていきます(本年1 月時点での、日本銀行政策委員による2014
年度の見通しの中央値は0.9%)。Eその後も、@からDの好循環メカニズムが維持される下で景気回復は持続し、人々のインフレ予想と中長期的なトレンド・インフレ率は2%へ向けてさらに高まります。』
『以上の結果、実際の物価上昇率も上昇を続け、2%の物価安定目標に近づいていくとみられます。このように、2%の目標は、持続的な景気回復を伴いながらバランス良く物価が上昇していくという形で達成されると考えられるのです(図表6)。』
・・・・・・・・・・・・・・・いやあそうなると良いですね(棒)。
でまあその続きがあるのがちょっとお洒落。
『ちなみにわが国は、いま述べた道筋と同様の好循環のメカニズムを、2003-2006 年の時期に経験しました。』
ほうほうほう(^^)。
『この時期、銀行の不良債権問題に概ね目途がつく中、海外経済の回復を追い風に、企業の「3
つの過剰(雇用、設備、債務)」の解消へ向けた調整、構造変革や新規の投資支出などの取り組みが進みました。その動きを、当時の思い切った金融緩和政策(量的緩和政策)が金融面から強力にサポートし、中長期的なトレンド・インフレ率も上昇しました(図1から図5、実線囲み部分)。』
『すなわち、海外経済の回復、強力な金融緩和、構造改革の進展と潜在成長率の高まり、中長期的なインフレ見通しの上昇などの好循環を2003
年-2006 年の時期に経験したのです。』
えーっと、そうでしたっけ・・・・・・・
『当時、物価面では、過剰雇用の調整(労働費用の削減)の影響に加え、安価な輸入品の流入などから物価に下押し圧力がかかり、十分な物価上昇には至りませんでした。今回は、当時のような強い負の価格ショックは追加的には生じないとみられるため、先ほど述べた好循環のメカニズムが作動すれば、物価の上昇に弾みがつきやすいと考えています。』
だそうですがどうもホンナマイナという気が思いっきりするぞな。
・でもって金融政策の波及ルートの説明は予想通り残念無念
この後の部分で金融政策の説明がありまして、まあやった措置に関してとかの話は普通に決定事項に沿った説明で先般の総裁による会見などでの話と同じですからその辺は割愛しまして、波及ルートの説明部分を読むわけです。『(どのような波及ルートを想定しているのか)』という所から。
『「量的・質的金融緩和」のもとでの金融緩和の波及経路については、次のようなものを想定しています。まず長期国債の大規模購入により、@イールドカーブ全体に働きかけるルート、A株価や不動産価格などの資産価格に働きかけるルート、B銀行や機関投資家などのポートフォリオ調整(貸出やリスク資産への需要の増加など)に働きかけるルート、そしてCインフレ期待に働きかけるルートなどがあり、それらは密接に関わっています。(たとえば@を起点にA、Bへ波及する、AとBは相互に強め合うなど。波及ルートを整理した概念図は、図表10
を参照)。』
『そして、上記の波及ルートを通じた主な動きとしては、@を通じて企業・家計の借入負担が低下する、Aを通じて企業の資本調達や設備投資が増加するほか、家計の消費や純輸出が増える、Bを通じて国債投資から銀行信用やリスク資産への投資にシフトする、Cを通じて実質金利が低下し経済の支出活動が下支えされる、などが期待されます。それらの結果、最終的に景気・物価動向に対して好影響が及ぶと見ています。』
という説明ですが、資産価格が上がると設備投資が増えて家計消費が増えて純輸出が増えるってナンジャソラという辺りとか、だからポートフォリオリバランス効果は観測できんじゃろとかその辺は相変わらずという所でございますな。
つーかね、日本の場合って欧米と違って過剰債務問題が消費投資行動の足を引っ張っているようには到底思えない訳でして、そういう中で資産価格ルートで〜って話をしても何かその効果って米国などでの期待されているようなものと違うように思えるんですけど・・・・・・といつも思うのですがどうっすかねえ。いやまあ塩漬け株が復活してウェーハッハッハとかそういうのは分かるけど。
・「期待」の説明がございますな
次に『(「期待」とは何を意味するのか)』というのがあるのでワクテカしつつ読み進める。
『上記波及効果とも関連するのですが、今回の措置は「期待」への働きかけを重視しています。ここで、何の「期待」を意味しているのかについて、以下大きく3
つに分けて整理できます。』
ほう!
『第1 は、「将来の金融政策に対する期待」です。今回の措置では、先行きのマネタリーベースや長期国債の拡大ペースの見通し、さらに継続期間についても示すことにより、将来の政策の予測可能性を高め、上記の波及ルートの効果全体を高めることができます。』
まあこれはどう見ても変でして、「2年間で2%達成します」というのが本当に金利市場が全員信用したら金融緩和政策自体の時間軸は短期化する(しないのは金利市場の人たちがタカを括っているから)はずですし、大体からして国債買入残高170兆円とかフィージビリティー大丈夫かという金融政策を行っている中で「政策の予測可能性」が上がるかよという所でして、この説明は全くもって意味不明。
確かに「これから実施します」という事を示すという意味での将来の政策の予測可能性は高まったかもしれんが、「その後」の事が何が何だかさっぱり判らないのであって、しかも予想される経済パスと金融政策の整合性に関する説明もスルー状態になっている(展望レポートで少し示される事を期待するが)のに「将来の政策の予測可能性を高め」って何だかなあというかです。
『第2 は、上記の波及ルートで指摘した「インフレ予想(期待)」を指す見方です。』
まあこれはそれによってインフレ期待が上がるという話をしているのではあそうですねと言う所。
『第3 は、上記の波及ルートを通じた動きが顕在化することにより、先行きの持続的な景気回復と物価上昇の好循環が実現するという期待です(「好循環の期待」)。』
はあそうですか。
『この講演の前半部分で示したように、2%の消費者物価上昇率を目指すシナリオが道筋に沿って徐々に実現していくと、それを人々が実感して先行きの見通しに対する信頼を強めます。その結果、所得増加期待が高まることで支出が増え、インフレ率、インフレ予想ともに上昇し、経済全体の好循環を支えて強めていく効果がありうるでしょう。以上の3
点いずれの意味からも、「期待」への働きかけが重要と考えています。』
えーっと、確かに先ほどございましたシナリオですと「景気が良くなって物価も上昇する」という大変な素敵なシナリオなだけに物価上昇予想が高まると所得増加期待が高まるのかも知れませんけれども、かの浜田大大大大先生も仰せだったように、初期段階では物価上昇の方が先に来るのが自然であって大体からしてそうやって実質賃金下がらないと雇用が改善しないでしょというようなお話を勘案しますとこれまたホンマカイナ的な気がするのですが、まあそう言ってるんですからそういう事なんでしょうね!!!
・とは言いつつも時間軸の説明が
『(今回の枠組みはいつまで継続するのか)』という所の説明も中々。
『日本銀行は、新しい物価安定目標のもと、「できるだけ早期に2%の物価上昇率を実現する」ことにコミットしています。「物価安定の目標」とは、単にある時点において目標値を達成すれば良いということではなく、それを安定的に持続する必要があるものです。従って、その趣旨を明確にするため、今回の枠組みは、「2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する」というコミットメントを示しています。』
その通りですな。
『その意味は、ある時点で2%になっていても、それを安定的に持続するために必要であると判断すれば「量的・質的金融緩和」を続けることもあるし、その逆もあり得るということです。そう申し上げたうえで、日本銀行としては、2
年程度の期間を念頭において、2%の「物価安定の目標」の早期実現を目指す決意であり、今回はそのために必要な施策をすべて決定したと考えています。』
ということなのですが、これが「ゼロ近傍の均衡状態から1%」だったらばまだしも、「ゼロ近傍の均衡状態から2%」を「2年で」というような結構な変化を伴う物価押し上げをしようという事を標榜しながらさっきの話の「将来の政策の予測可能性を高め」というのはやはり話に無理があるとしか申し上げようがございませんな。
ということで、ツッコミに対する答えの説明みたいな所を本当は全部引用する方が良いのかもしれませんけれども、時間と量の関係上今日はこんな所で勘弁。会見ネタと共に続きをするかもしれませんししないかもしれません。
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2012/09/13
○後回しになっておりました(汗)宮尾審議委員会見より
先週のネタを今さらで申し訳ございません
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1209a.pdf
・今回の最大の特徴は「会見が割と普通に進んでいる事」ですな^^;
会見テキストを読んで最初に受けたのが上記の事。まああたくしの駄文の過去ログでも当たって頂ければ判ると思うのですが、前回の宮尾審議委員の記者会見って妙に質問する記者の皆さんが喧嘩腰モードになっていて、宮尾さんの答えの方も微妙に話が噛み合っていないという感じ(だから会見が進むうちに益々喧嘩腰モードになって行ったのですけれども)で、まあコミュニケーションがちゃんと取れていないなあという印象を強く受けた訳ですよ。
でまあそんな宮尾審議委員の会見だったので、今回の会見はどうなるのやらとか思って会見テキストを見たのですが、今回はまあ普通に普通の進行になっているという印象でございます。まあ今回も割と建前論っぽい答えも目に付くのですが、前回の会見での宮尾さんの応答が全力で建前論的な感じでして、その辺がちょっとマイルドになっていると申しますか、講演にあるハト風味あるいは下振れ警戒メッセージを会見でもニュアンスとして伝えよう、という感じになっている分だけ前回とは違うなと思いましたでございます。
・長期金利の低下に関する評価
まあこの質問はツッコミとしては微妙ではあるが(1点目は割愛)。
『(問)2点目は、本日の挨拶の中で、従来、金融緩和によって長めの金利を低下させることでポートフォリオ・バランス効果を狙ってきたが、投資家のリスク回避姿勢による長期金利の異例の低下によって「向かい風」になっているというご指摘がありましたが、「向かい風」になっているということは「長めの金利を低下させることによる刺激効果は当面期待できない」というご見解なのか、そうだとすると、講演の中で指摘された景気・物価の下振れリスクについて、宮尾委員個人として意識しておられる処方箋があるのか、手詰まりだということなのか、この点についてのご見解をお伺いします。』
政策の手詰まり云々というよりは「足元の長期金利の低下をどう評価するか」という質問をした方が良いのでは??と思ってここを読んだら宮尾さんがそういう答えを展開していたのでニヤリという感じです。
『(答)2点目ですが、日本銀行では、包括緩和、資産買入等を含めて金融緩和を強化してきたわけですが、その効果についてどう考えているのかというご質問であったかと思います。本日の講演で触れているように、長めの金利の低下あるいは各種のリスクプレミアムの低下を通じて、幅広く金融環境の改善を促すことで、例えば、投資家や企業、家計のコンフィデンスが改善し、最終的には景気・物価を下支えるという効果が期待されるなど、これまでの累次の資産買入、金融緩和によって効果が発揮されてきていると認識しています。』
というのはまあ良いとして。
『その上で、足もと、投資家のリスク回避あるいはリスクに対する慎重姿勢、安全志向が、政策効果への「向かい風」になっていると申し上げているわけですが、これは政策効果がないという意味ではなく、政策効果が基調として働いている一方、それを上回る逆風、向かい風というものが作用していて、政策効果を全体として見えにくくしているということを申し上げています。従って、政策効果がない、あるいは手詰まりであると認識しているわけではありません。そうしたリスク回避の動きが今後終息に向かうのか、引き続き重石となっていくのか、あるいはさらに増大していくのかという点については、引き続き十分に状況を注視していきたいと考えています。』
ということなので、今の長期金利の低下状況が必ずしも政策効果で金利低下だヒャッハーという話では無い、という指摘をしているのはまあ当然ちゃあ当然なのですが良い論点ですな。
・経済見通しもそうだが物価見通しの所に注目
『(問) 景気と物価の見通しに対する認識について、本日の冒頭挨拶の中でも、全体として改善方向にあるが気懸かりな要素が増えつつあるといった発言もされていますし、下振れリスクを意識して3点挙げられていますが、そうすると、今後、日銀の対応として追加の金融緩和の必要性をどう考えていくのか、現段階での見解を教えていただきたいと思います。あわせて、物価については、10月に公表予定の展望レポートに向けて、今後、どのような点をチェックしていく必要があるのか教えて下さい。』
まあ直球質問。
『(答) 1点目ですが、景気の現状認識、先行きのメインシナリオ、あるいはリスクの評価という点について、ご質問があったとおり、足もとまでは、外需の減速を堅調な内需がカバーしており、全体としては緩やかに持ち直しつつある、という回復のシナリオは変えていません。一方、ごく直近では、幾つかの懸念材料があるということで、3点指摘していますが、「輸出・生産の減速が続き一部で在庫の積み上がりもみられる」、「設備投資の先行きに関して機械受注に弱めの動きがみられる」、「幾つかのマインド指標に鈍化の兆しが窺われる」などの懸念材料がみられるため、こうした動きが一時的なものかどうか注意深くみていく必要があると認識しています。』
ということで、まあ明らかにこれは講演での話と同様で先行きの見方を慎重にしていると言うか、先行き見通しの引き下げの可能性を示唆という所でありますのでハト風味強し。
『先行きのリスクに関しても3点、「海外経済が一段と減速するリスク」、「円高が進行するリスク」、「輸出・生産の回復がさらに後ずれして、内需から外需へのバトンタッチが上手くいかないといったリスク」があると認識しています。こうした先行きの見通しとそれに伴うリスクの評価について、毎回の決定会合でも点検していますが、特にこれから10月にかけてしっかりと点検して参りたいと思います。』
さっきと同じと言う感じですな。
『そのうえで、金融緩和の必要性についてですが、これはいつも繰り返し申し上げているとおり、景気・物価の先行き見通しを入念に点検し、必要と判断される場合にはしっかりと対応する、細心かつ果断に措置を講じるという姿勢でいます。そういう意味で、今後も適切な金融政策運営に努めていきたいと考えています。』
ここの所は建前論になるのが宮尾さんクオリティ。
『展望レポート作成に向けて、物価の見通しについても同様です。今日の冒頭挨拶でも触れていますが、景気に対する下振れリスクを意識していることから、物価の見通しに対してもやや下振れリスクを意識しています。そういう点も含めて、しっかりと今後の見通しとリスク評価について入念な点検を行っていきたいと思います。』
・・・・・・・・でまあ当然ながら現在の金融政策の枠組みとして「中長期的な物価安定の目途」というのがある訳ですからして、この目途に対して物価の下振れリスクを意識という発言をするというのは、追加の金融緩和の必要性を検討、という意味によりダイレクトに繋がるロジックですので、まあ宮尾さんもそのへん意識して発言しているとは思いますが、意味合いとしては物価見通しについての下振れリスク意識表明というのは追加緩和の必要性を示唆という話になりますので、その点では「経済見通し」だけではなく「物価見通し」に言及しているのはネタとしては重要だと思います。
・内需の持続性について
『(問) 外需を堅調な内需が補ってシナリオ通りという話だと思いますが、一方で、内需をみていると、個人消費を中心に最近やや弱めの数字もちらほら出ているかと思いますが、内需の持続性をどのようにみているのか教えていただけますでしょうか。』
『(答) 内需の持続性については、基本的な回復のメカニズムとして、例えば個人消費に関しては、まず、堅調な企業収益を背景として、雇用所得環境が緩やかに改善し、賃金も下げ止まる中で、個人消費が支えられていくというメカニズムがポイントの一つになろうかと思います。』
『あわせて、内需でもう一つの重要な項目である設備投資に関しても、やはり企業収益が出発点になると思います。短観等でもみられるように、今年度は非常にしっかりとした投資計画が示されており、足もとまでは設備投資は緩やかな増加基調を続けていますが、先行きに関しては、先程申し上げたように、機械受注の動きなど、懸念材料が散見されますので、そういった設備投資や個人消費の両面から、内需の持続性についてより入念に点検して参りたいと考えています。』
ということで、まあ企業収益に注目という所ですが、足元ご覧の通りの有様という事で、まあ展望レポートは兎も角としてその前に宮尾さんがどういう見方を示してくるのか注目です。
・基本的な見方の変更はあるのですかという質問に対して
『(問) 講演を聞きますと、内外需、世界経済の回復に対して随分慎重な見方をされていると思いますが、そうした中で日銀が言われている今年度の上期の回復への復帰ということですが、現状まではシナリオ通りに来ているけれども、先行きのリスクが多いということで、中国にせよヨーロッパにせよ、この先すぐに回復が早まることは考えづらいかと思います。一方で、内需も先程言われていた懸念材料がある中で、日銀が想定していた日本経済が緩やかな景気回復に復する時期が多少後ずれしているような印象もあります。1カ月、2カ月遅れても、その回復のメカニズムが壊れていなければ問題ないかと思うのですが、こうした点についてお伺いします』
まあこういうツッコミもありますわな。
『(答) 先程のご質問への回答とやや重複しますが、回復のメインシナリオは変えていませんが、一方でリスクには注意が必要だと思います。』
まあメインシナリオ変えたら追加金融緩和提案しないと整合性取れませんからね。
『回復が後ずれするという点に関しては、先行きのリスクで申し上げた3番目――輸出・生産の回復が更に後ずれし、内需から外需へのバトンタッチがうまくいかないといったリスクに注意していかなければならないという認識です。基本のメカニズムに関しては、先程企業収益を起点としたメカニズムをご説明申しましたが、そういったメカニズムは引き続き期待できるのではないかと考えています。』
とは言っているものの企業収益ェ・・・・・という所ではあるのですが、まあ企業収益ガーという話ではございますので、その辺の動向が宮尾さんの見通しの変化や金融政策決定会合での追加緩和提案などの動きとどうリンクしていくのかというのを今後は注目したいと思います。
まあ総じていえば下振れ警戒のメッセージをかなり強めに出しているという感じで、先般の山口副総裁の広島での講演&会見でも割と下振れ警戒の話が出ていましたが、宮尾さんの方がより下振れ警戒に対するメッセージが強いなとは思いました。
でまあ普通こういうのが政策委員サイドからポロポロ出てくる(その前に西村副総裁は中国経済に関して不動産バブル崩壊の警告をしていましたがな)と一般的には「景気見通し下方修正の示唆」であり「追加金融緩和政策実施方向を示した」という評価になる筈なのですが、何せ日本銀行におかれましては総裁であらさられます麿様におかれまして相変わらずの麿クオリティを炸裂させておられる所が実にアレでございまして、麿が今日も元気だ麿節だという風になっておられるので、どーしても他の政策委員の発言が霞んでしまうのが遺憾にも程がある所です。
まあ趣味のヲチャー的には政策委員の皆様がそうは言っても麿節に全て巻き込まれている訳ではないという動きをしているのはそれはそれでメッセージとして受け止めるのではございますが、ただまあ市場一般的に見た場合には麿の出すメッセージが強いのでそっちの印象が強くなってしまうという所ではないかと思います。つまり麿もうちょっと自制しろと思うのですが、残り半年の任期中にちゃんと言うべきことは言っておきたいというモードになっておられるので難しいだろうなあ(まあそのお気持ちも判りますし)とは思われる所でございます。
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2012/09/06
○宮尾審議委員講演はハトのテイストが強いですな
宮尾審議委員講演である。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120905a1.pdf
・米国経済と中国経済に下振れ警戒
海外経済に関する説明部分ですが、欧州はまあスルーしまして経済見通しに関わると言えば米国と中国の話ですのでそちらから。
『米国経済は、緩和的な金融環境などに支えられ、緩やかな回復を続けていますが、そのペースが幾分減速しつつあるように窺われます。本年4-6
月期の実質GDP 成長率(季調済前期比年率)は+1.7%に止まり、個人消費、設備投資、住宅投資といった内需の伸びが鈍化しました。7
月以降の経済指標は強弱まちまちですが、これまで家計部門の回復を支えてきた堅調な企業部門に翳りが窺われる点が気がかりです。』
ということで懸念を示していますな。
『今のところ、企業収益や設備投資などは底堅く、家計部門が総じて堅調な点も踏まえると、企業部門を起点とした回復のメカニズムはなお崩れてはいないとみられますが、コンフィデンスの一段の悪化を通じて雇用や設備投資などが手控えられ、景気失速に繋がらないか注意が必要と認識しています。』
『米国経済を巡る今後のリスクとしては、欧州や中国の景気回復の後ずれのほか、いわゆる「財政の崖(fiscal
cliff)」の問題を指摘しておきたいと思います。財政支出の削減や減税措置の終了は景気下振れ要因ですが、対象や規模など現時点では不確実性が非常に高く、民間調査機関の米国経済成長見通しへの織込み度合いもまちまちです。一部には、本問題を巡る不透明感によって、既に企業が投資や新規採用の決定を先送りしているといった指摘もあり、今後状況を見極めていく必要があります。』
ということで、まあ下振れ懸念モードという感じですの。んでもってアジアですが。
『アジア新興国経済については、足もと欧州向け輸出の減速もあり、成長ペースが鈍化した状態がやや長引いていますが、先行きについては、中国が牽引する形で成長ペースを回復していくとみています。ただし、その時期については秋以降へと一段と後ずれする可能性もあるため注意が必要です。』
『中国経済については、新規貸出額の増加や住宅価格の下げ止まりなど、当局による各種政策対応の効果もみられ始めていますが、欧州経済の停滞が貿易ルートを通じて中国経済に波及する動きや、在庫積み上がりの懸念も払拭されていないため、今後の経済指標などを良く確認していく必要があります。』
『NIEs・ASEAN 諸国については、内需は堅調に推移しておりますが、足もと韓国や台湾などで輸出や生産関連の指標が低迷ないし悪化している点が気がかりです。今後は、中国の成長ペースが回復し、輸出が持ち直すかどうかがポイントとみております。』
ということで、まあ普通に下振れ警戒でして、麿の見通しが妙に楽観というかサガランチ会長な中で、審議委員の方からは(つーかまあ山口副総裁や西村副総裁も普通に下振れ懸念を表明していますけど)下振れ懸念を示すようになっているというこのギャップは誠にアレという感じでございまして、展望レポートを待たずして今後の展開にワクテカではございます。
・日本経済に関して、下振れリスク警戒キタコレ
日本経済の話はまあ前半は公式見解ベースの見通しなのですが、その後にしらっとこういう話が入ります。
『ただし、懸念材料もみられています。』
キタコレ。
『輸出、生産の減速が続くなかで、一部に在庫の積み上がりが見られる点や、設備投資の先行指標である機械受注に弱めの動きがみられること、景気動向指数(一致指数)が「改善」から「足踏み」の動きを示していること、マインド指標に鈍化の兆しが窺われていることなどです。経済全体としては改善方向なのですが、気がかりな要素が増えつつあるように思います。』
ふむふむ。
『先行きについては、内需が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。そのイメージを、政策委員の大勢見通し(中央値:7
月時点)で確認しますと、実質GDP 成長率は、2012 年度が+2.2%、2013 年度は+1.7%ということになります(図表6)。』
というのは公式見解ですが・・・・・・・
『こうした見通しに対しては、上下双方向のリスクがありますが、以下の3 点を中心に私自身はどちらかと言えば下振れリスクを意識しています。』
キタコレ。
『第一に、海外経済が一段と減速するリスクです。既に申し上げたように、欧米アジアいずれの地域でも経済の減速が長期化するリスクがやや高まってきていますが、実際に長期化すれば、わが国の輸出・生産から所得・支出へとつながる自律回復の動きを弱めることになります。』
まあそうですな。
『第二に、円高が一段と進行するリスクです。円高にはメリットもある一方で、行き過ぎた円高は、輸出企業の競争力や収益を再び悪化させ、企業に対する逆風となります。また、円高基調とともに、株安の傾向が強まれば、企業や家計のコンフィデンスが悪化して、足もと堅調な設備投資計画や個人消費などを抑制し、わが国の景気回復にとって重石となります。』
円高警戒キター!!
『第三に、第一・第二の点とも関連しますが、輸出・生産の回復時期が後ずれし、内需から外需へのバトンタッチが上手くいかないというリスクです。』
まあリスクというより現実の気がしますが(−−)
『エコカー補助金もすでに相当程度予算を消化したようですし、復興需要の伸びも年度後半以降鈍化していくとみられるなか、内需の減速を補う形で外需が回復するかどうか注視していく必要があります。併せて、意欲的な設備投資計画がしっかりと実行されていくかどうか、雇用・所得環境の緩やかな改善傾向は維持されていくかどうかなどにも注意が必要と認識しています。』
そして最後に物価の話をしていますが、そこでもこのように下振れ警戒モード。
『物価面についても上下双方向のリスクがありますが、私自身は、景気見通しに対する懸念が強まっている点や、2012
年度前半の商品市況の下落が当面の物価下落圧力として作用してくる点など、下振れリスクをより意識しています。また、短期的なインフレ予想が引き続き低い水準にあることが先行きの物価動向に及ぼす影響にも注意しなくてはなりません。』
これは結構頑張って下振れ警戒の話をしてますなという所でして、物価に関しては何せ「物価安定の目途」というのがあって景気見通し以上に金融政策運営に直結する話でございますので、まあこれだけ警戒してくれたら次回会合で何か提案してくれませんかねえとか思っちゃうレベルですが、麿があの調子なので他の政策委員がフォローしないと浮世離れした状態になってしまうのでそれに対応してハト風味を強めているのかもしれませんが。下振れリスク対応だけだと提案理由として弱いのかもしれないけど・・・・・
・「金融政策と長期金利の関係」というテーマで長期国債買入の効果について考察
金融政策に関する話ですが、金融政策の説明部分はまあどうでも良いのでスルーしましてその次に『(2)金融政策と長期金利の関係』というのがあるので引用。
『次に、上記の金融緩和効果を考えるうえで、金融政策と長期金利の関係を改めて整理しておきたいと思います。先進国の長期金利は、足もと、歴史的な低水準で推移しており、その背景を理解するためにも重要です。』
ほうほう。
『まず長期金利の決まり方について振り返ってみます。長期金利は、大きく2つの要因、すなわち「@将来の短期金利の予想」と「A長期債投資に伴うリスクに対して要求される上乗せ部分」から決まると考えられます。まず前者の「短期金利の予想」ですが、たとえば将来の成長率あるいはインフレ率が高まると予想されると、それに応じて短期金利の将来経路も上昇し、短期債に繰り返し投資する方がより高いリターンが期待されます。その結果、長期債への投資が減り、長期債の価格は下落、長期金利は上昇します。また、後者の「リスクに対する上乗せ部分」ですが、長期債での運用には、途中で換金が必要となる可能性や、換金する際の売却価格に不確実性があるなどのリスクが伴います。それらのリスクを引き受ける対価として上乗せ利回り(リスクプレミアムもしくはタームプレミアムと呼ばれる)が要求され、その分、長期金利は上昇します。』
というのはまあ教科書の話ですが話の流れ上引用しておく。
『以上のメカニズムをベースに、中央銀行による資産買入れ、具体的には長期国債の買入れが及ぼす効果を、2
つに分けて整理します。』
これは(^^)。
『1 つ目は、資産市場の需給に着目した、上記Aのプレミアム部分を通じる効果です。これは「ポートフォリオ・バランス経路」と呼ばれる効果ですが、中央銀行が国債市場で買入れを行って、その流通量を吸収すると、価格は上昇、金利が下落します。この場合、需給要因による価格変化であるため、上記Aの上乗せ金利部分が低下して、長期金利、あるいは長めの金利が全般に低下しうると考えられます。』
この話はバーナンキのジャクソンホール講演でもバランスシート政策の波及経路の説明の冒頭部分で紹介されていた経路です。
『2 つ目は、リスクとは中立な、上記@の「短期金利の予想」を通じる効果です。資産買入れという非伝統的な政策行動やその発表が、中央銀行の景気・物価見通しがより悪化したというシグナルと解釈される場合には、たとえば予想されるゼロ金利期間が長期化するなど、短期金利の将来経路が低下し、中短期ゾーンを中心に長期金利が低下します。あるいは資産買入れが、中央銀行の今後の政策姿勢が変化したシグナル(たとえば景気・物価への政策反応のあり方がより積極化する、あるいは政策目標のウエイトが変化するなど)と受け止められる場合にも、短期金利の予想経路が低下し、中短期ゾーンを中心に長期金利が低下すると考えられます。』
ちなみにジャクソンホール講演ではこの短期金利予想に関する説明も当然あったのですけれども、宮尾さんが説明している中で前半部分に関する説明は華麗にスルーしていまして、後半の「金融政策の予想パス」という部分の説明しかしていませんでしたが、そらまあ逆さ絵クオリティですからネガティブな話はせんわなとか思うのです(^^)。
『これら2 つの効果は、ともに「長めの金利の低下」を促します。しかし、さらに重要なのは、こうした「長めの金利の低下」が、より広範囲な金融環境の改善へとつながり、それが支出の増加を通じて、最終的に景気・物価を刺激することに繋がるかということです。そしてこうした効果波及メカニズムが発現していくことが予想されれば、長期金利には、上記@とAの部分ともに上昇圧力がかかることになります。』
全くその通りですが、当然ながらそんな話は逆さ絵おじさんは行わないのでありまして、ここからの説明はジャクソンホールの話とはだいぶ違ってくる訳で(^^)。
『この点をもう少し敷衍しましょう。国債買入れにより長めの金利が低下すると、その1つの効果として、投資家や企業・家計のコンフィデンスが改善し、国債などの安全資産からより広範囲なリスク性資産(社債や株式、海外資産など)への投資を促して、それら資産のリスクプレミアム低下と資産価格の上昇を促す効果が期待されます。』
『これは、より広義に捉えたポートフォリオ・バランス効果と言え、広範囲な金融環境の改善を意味します。そのもとでは国債への需要は減少することから、国債のタームプレミアムには、むしろ上昇圧力がかかることになります(上記Aの上昇)。さらに、より長い可変的なラグを伴って支出が増え、景気や物価を刺激すると予想されると、短期金利の予想経路が上方にシフトすることにより、イールドカーブをスティープ化させ、長期金利に上昇圧力がかかることになります(上記@の上昇)。長めの金利低下を促しながら、やがては長期金利の上昇を期待するというのは、一見矛盾しているようですが、決してそうではありません。』
まあそうなんですけど、「長期金利の低下」を思いっきり効果として出して、LSAPは長期金利を押し下げましたのでこうかはばつぐんだ(キリッ)という説明をしているFRBはこの辺を華麗にスルーするのが仕様となっていまして、この辺りは雨人クオリティとジャパンクオリティの違いですな、うんうん。
・主要国の長期金利低下の要因は???
で、続きの部分は長期金利に関する考察。
『では、このところ先進国の長期金利が歴史的な低水準で推移していることは、どのように理解すればよいでしょうか。各国の長期金利の低下基調には、資産買入れなどの強力な金融緩和の効果が含まれていると考えられます。』
まあそうですが・・・・・・
『しかし、より足もとでは、世界経済の減速懸念、欧州債務問題などを背景としたリスク回避の流れが長期金利の低下を一段と促しているように窺われます。』
キタコレ。
『米欧の10 年債金利が1%台というのは、長期的な潜在成長力とインフレ予想の一般的な認識から見て、かなり低い水準であるといった声も聞かれます。また米国では、長期的に実現する政策金利の水準は4%程度と見込まれています(FOMC
メンバーによる長期見通し)。これらの見方が正しければ、国債市場におけるリスクへの慎重姿勢、安全志向はそれだけ強い状態で維持されていると解釈できます。そしてそれは、さきほどお話しした、より広義に捉えたポートフォリオ・バランス効果を通じて景気・物価を刺激するという効果波及メカニズムへの向い風として働いている可能性があります。』
ふむふむ。
『世界経済の減速や欧州債務問題といった懸念材料が今後収束に向うのか、それとも引き続き重石となりさらに増大するのか、一層の注意が必要と認識しています。』
と締めておりまして、まあ先行き警戒を強く示した講演になっておりました。
ちなみに、話はワープしますが、長期金利の考察という話ではだいぶ前になりますがこんな日銀レビューシリーズもございましたので(ネタにはしなかったと思う)ご覧あれ。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/rev12j01.htm/
安全資産の需給と国債の希少性プレミアム
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j01.pdf
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2012/03/30
○今一歩話が噛み合っていない質疑応答でしたな
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1203d.pdf
・どうも質問者の中におそらく1名だと思うのだが湯気立ててるのがいる
まあ宮尾さんの答え方も微妙なのですけどね。
まあこんな質問が最初の方にあったのですけどね。
『(問) 2点お伺いします。本日の冒頭挨拶で、金融緩和について、円高修正と株高にかなり効果があったと言及されていますが、前回3月の金融政策決定会合で、委員は追加緩和を提案されています。改めて、提案された理由をご説明下さい。(2点目割愛)』
『(答) 1つ目は、3月の金融政策決定会合での基金増額の提案理由に関するご質問です。私自身は、そのタイミングで基金の増額を実施することが適切であると判断して提案しました。その提案理由や議論の詳細については、議事要旨あるいは議事録の形で国民に公表されることになっていますので、来月公表される議事要旨をご覧頂きたいと思います。(2点目割愛)』
まあこの辺の質疑は良いとしまして、この後の方ではこんな質疑が。
『(問) 先程も質問がありましたが、3月の決定会合の中身は、この場では申し上げられないということですが、本日、委員が述べられている景気判断は――日本および海外の動向ですが――、3月に委員が考えられていたものと変化があるのかないのか、お伺いしたいと思います。』
『(答) 繰り返しになりますが、3月の金融政策決定会合の議論に関わってくるため、議事要旨をご覧頂ければと思います。』
・・・・・まあこの答えでどうも質問者が湯気ポッポ―になったような気がする次第で、この人と思われる方が続いて質問を。
『(問) 前回会合からまだ1ヶ月も経っておらず、その間、日本を含め、海外の経済動向に大きな変化があったように見受けられない気がします。本日公表されたものは、委員の正式な景気判断であると思いますが、そうすると、前回の会合で追加緩和を提案された理由がはっきりしません。先程から「議事要旨の公表を待って下さい」とおっしゃっていますが、ご自分の発言であれば、ある程度はお話しできる範囲でお話し頂くのが、それぞれの委員のアカウンタビリティだと思いますが、如何ですか。』
決定会合議事要旨で公表する前に勝手に公表するのはダメですって言ってるのにドヤ顔でアカウンタビリティとか言われましてもねえというか、大体からして良い答え欲しいんだったら「お前のアカウンタビリティー」とか喧嘩売ってどないしましねんと思うのですけれども、それだけ湯気ポッポ―にでもなられたのでしょうかねえ。
『(答) 繰り返しになりますが、金融政策決定会合の議論の内容に関わってくることですので、詳細については、議事要旨をお待ち頂ければと思います。』
・・・・・・・・・・・えーっとですな、まあ宮尾さんの答えにも微妙にどうかと思われる面があって、追加緩和提案の理由に関しては議事要旨見て下さいとなるのはまあ当然ちゃあ当然なのですが、景気見通しが3月から(どうせ質問するなら2月の追加緩和以降で、と聞くべきだと思います(=そうすると3月に追加緩和提案をした背景がある程度読める)けれども・・・・・)変わったかという質問に対しても「議事要旨読め」というのが何か微妙ですよね。
でまあ単にそれは宮尾さんの慣れの問題なのかも知れませんけれども、そもそも議事要旨見たって個別の委員の景気見通しについては分からないのでありまして、その分について議事要旨読めというのはちょっと異様な感じがするのですよ。
つまりですな、こんなの妄想の世界ではあるのですが、3月の決定会合が妙に時間が長く、決定事項が多いためのロジ問題だけでそこまで遅くなるわけがない(あれだけの大玉を打ち込んだ2月会合だって13時前に終了している)と言う事を考えますと、追加金融緩和に対する部分で揉めたのか、景気認識の部分で揉めたのか、何か揉めた背景があるのではないか、などと妄想するのでございました。まあ完全に妄想ですけれども。
でですね、昨日ネタにした宮尾さんの講演テキストを読みますと、ネタにした通りで景気に対する認識も金融緩和の波及効果に関してもやや強気なイメージになっていまして、その景気認識と追加金融緩和提案というロジックが確かに繋がらないわと思う(からまあ「講演だと追加緩和提案の背景が判らない」という質問をしたのも判らんでもないのですが、あれはもうちょっと聞き方を工夫して欲しかった)のですが、その辺りに関して何かがあったのかなあとか思うのでありましたです。それにしてもそれだけで14時回るのかとは思うけど。
・ちなみに足元の景気はシナリオ通りという話
さっき引用した最初の質問の後半ではこんな話をしてたのよ。
『(問)(前半は3月会合での追加緩和提案理由についてです)次に、景気に関する認識について――本日の挨拶でも触れられていますが――、米国もかなり景気が戻ってきているというご認識だと思いますが、今の国内景気については、横ばい圏内で推移し、2012年度前半から持ち直すとされています。この回復スピードは、日銀の想定よりも多少早くなっているのかどうか、ご認識をお聞かせ下さい。』
『(答)(前半割愛)2つ目の景気認識については、基本的に、これまで想定していたメインシナリオに概ね沿った動きであると認識していますが、冒頭挨拶でも触れた通り、いくつか変化点もあります。まず、欧州債務問題に伴う深刻な金融システム不安といったテールリスクが後退していること、2番目は、米国経済の改善に底堅さが窺われること、3番目に、わが国の金融環境の改善がみられること、といった変化点があります。一方、注意しなければならない点として、欧州経済の停滞がやや長期化するリスク、2番目は原油価格の動向、最後に、中国経済の足許における減速の動きが今後どうなるか、といった点があります。いずれにしても、大きな意味で、今のところメインシナリオに概ね沿った動きとみていますが、この点については、4月の展望レポートでしっかりと点検していきたいと思います。』
まあこの辺は3月の金融経済月報で示された認識と同じですな。
・物価安定の目途に関して
こういう質問の仕方は中々。
『(問) 2点お伺いします。まず、2月の決定会合の議事要旨をみると、「物価安定の目途」について、1%ではなく、もう少し高めの数字が議論されていた様子が窺われます。委員としては――どのような意見を出されたかは公表できないと思いますが――、1%よりも上の目標を掲げることのメリットとデメリットについて、どのようにお考えか、教えて下さい。公式見解としては、余り高い数字を掲げると、長期金利が上昇するリスクがあるということと思いますが、政府の方では、その点は、デフレ脱却できれば余り問題ではない、あるいは名目成長率が高くなればさほど問題ではないとして圧力を高めていると思いますが、この点についてご説明下さい。(2点目割愛)』
最後の政府云々が余計な気がするが。
『(答) まず1点目の「物価安定の目途」としての1%の妥当性についてですが、「物価安定の目途」を検討するに当たり、いくつかの検討項目があります。最初に、消費者物価指数の計測誤差、2つ目には、物価下落と景気悪化の悪循環が生じるリスクに備えた「のりしろ」、3番目に、家計や企業など国民の物価観、という3つの観点を踏まえて検討してきました。このうち、3番目の物価観に関してみると、わが国ではデフレに陥る前から海外主要国に比べて一貫してインフレ率は低い水準にあるため、そうした物価観から一気に高い物価上昇率を目指すという場合には、家計や企業が却って大きな不確実性に直面する可能性があるほか、長期金利の上昇が生じるリスクも考えられます。こうした事情を勘案して、政策委員会の決定として、当面、消費者物価上昇率でみて1%を目指すという決定をしました。これが未来永劫1%なのかというと、「物価安定の目途」については、今後、日本経済の構造変化がどのように進むかということも影響してきますので、そうした構造変化の進展等を見極めつつ、原則として、ほぼ1年ごとに点検していく方針です。』
ということで、この辺はまあ変わった話をしているというイメージ無し。
・基金国債買入と財政ファイナンス
まあ今回その質疑もやや多かったですけど、最後の方の質疑から。
『(問) まず、3月の決定会合で資産買入れ基金の増額を提案されていますが、間もなく4月上旬にも次の決定会合が開催されます。どのように臨まれるのかを教えて下さい。2点目として、先程、財政赤字をファイナンスすることが目的ではないとおっしゃった国債買入れの件ですが、基金の枠組みは、導入以来拡大の一途を辿っています。その意味で、何らかの歯止めが必要ではないか、という点についてお聞かせ下さい。』
『(答) まず、次回以降の金融政策決定会合に対しての構えですが、私どもが金融政策決定会合に臨む一貫した構えとして、将来の政策判断について、事前にコメントしたり、詳細を申し上げることは適当ではないと思っており、この点についてはコメントを差し控えさせて頂きたいと思います。毎回の金融政策決定会合では、それまでに利用可能となった経済物価情勢や金融環境など様々な情報を点検して、適切な判断を行っていくということで、次回会合以降も、そうした姿勢で臨んでいきたいと思います。』
まあこれはシャーナイとして。
『次に、基金での国債購入が拡大してきた中で歯止めが必要ないのかというご質問です。私どもの国債購入は、まず、資産買入れ等の基金を通じた国債の買入れは、現在、総額19兆円となっています。これは、デフレ脱却に向けた金融政策として実施するものです。これとは別に、経済成長に合わせて現金通貨を市場に供給する目的で実施している国債購入は年間21.6兆円です。これは、金融政策目的ではなく、満期まで保有するものであり、「日銀券ルール」という歯止めをしっかりかけて、それに基づいて管理しています。前者は金融政策目的で、後者は成長に合わせた現金通貨の供給のための国債購入であり、両者は異なる目的で区別して管理・決定されているものであることをご理解頂きたいと思います。』
これはこれでまあその通りなのですが、そういう説明をすると「じゃあ今まで何で輪番オペの拡大を金融政策決定会合で議決していたのか」というツッコミが来た時にどうするんでしょという気は少々します。もし銀行券云々という話であればそれは金融政策決定会合で決めるのではなく調節技術上の問題になりませんかねえとかいう話になるのですが、まあそうなったらなったで債券市場的には輪番が不定期不定額になると市場の攪乱要因に思いっきりなってしまうというデメリットが大きく、まああまりゴリゴリここのロジックを詰めない方が正しいのですけどね(ニヤニヤ)。
それよりも「デフレ脱却を確実にするまでの時限的措置」という説明を明確にした方が判りやすい(ドラギみたいな感じですわな)のではないかと思いますけどね。当然ながらこういう質問が続く。
『(問) 追加で質問します。冒頭挨拶では、財政赤字のファイナンスは基金についての言及でしたので、後者の成長通貨供給オペではなく、基金の歯止めをかける必要がないのかという点についてお答え頂きたい。』
『(答) 繰り返しになりますが、基金については金融政策として実施しています。成長通貨の供給目的で行う国債買入れは日銀券ルールに基づいて管理しているということです。』
ということで、これだと如何にも判りにくいので「物価安定の目途を達成するまでの時限的措置」という話で押した方が良いような気がするんですが、そう書きながらあたくしもじゃあそういう説明でどういうツッコミを受けるのかとか考えながら書いていて、ちょっとこの説明にも落とし穴がありそうな気がそこはかとなくする(予感だけ)。
・オモシロヘッドラインの背景
『(問) いくつか出た質問に関して、追加で2つ伺います。まず、先程、別の方の質問にもありましたが、「基金の歯止め」についてです。輪番オペで買っている国債には日銀券ルールがあることは分かりますが、基金についても歯止めが必要ではないかというのが質問の趣旨だと思います。輪番オペと基金の分を合わせると――基金は別ということですが――、結果的に、日銀券ルールの額に達してしまう可能性がある訳で、長期金利に影響する可能性はゼロではないと思います。基金の額について歯止めが必要ないのか、改めて確認させて下さい。(以下割愛)』
『(答) 繰り返しになりますが、1点目の基金による国債買入れは、金融政策です。金融政策ということは、最後まで持たない可能性も当然あるわけですので、状況に応じてフレキシブルに対応し得るものと思います。一方、経済成長に合わせて現金通貨を市場に供給する目的での国債購入は、満期まで保有する固定的なものです。これは、日銀券ルールに基づいて管理するという区分けをしています。(以下割愛)』
・・・・・・うーむ、これは宮尾さんも若干説明が雑で、一般論としてその通りだけれども、現在の金融経済情勢だと「今現に購入している分」が売却されるというのは中々考えにくいですよというのを付け加えないと、昨日ネタにしたようなブルームバーグのオモシロヘッドラインを打ち込まれるリスクがある罠と思いますけど、まあはっきり言ってこれはブルームバーグのヘッドラインの打ち方が恣意的というかミスリードを誘うような書き方だなあと思いました。
まあ他にもありましたが、こんな所で・・・・・・と言いつつ次の悪態ネタに質疑を一本残して置く。
○今さらソロスチャートかよ!!!!
ということで先ほどの宮尾審議委員会見ですが、その中で馬鹿質問が1件。
『(問) 2点お伺いします。(まあ前半の質問は良いのですけれども割愛しちゃいます)また、マネタリーベースが、3月にかけて、伸び率が急激に下がっています。こういう数字をもって、日銀が強力な金融緩和を推進してくれると期待している市場参加者その他は、「日銀はやる気が余りないのではないか」と思う可能性があります。この点についてご説明下さい。』
いやあのそんなの普通に金融調節とか資金需給とか判っている人は「やる気が余りない」とか言いませんからねえと思う次第。
『(答) (前半割愛)2点目は、マネタリーベースの変化についてのご質問ですが、この2月、3月では、当座預金の変動に伴った動きが一つの要因として考えられます。財政資金の変動等によって、当座預金が比較的大きく変動したので、その結果がマネタリーベースの短期的な動きに現れた可能性があると思います。いずれにせよ、そうした動きの要因も含め、マネタリーベースの動き、マネー指標の動きについても、注意深く点検していきたいと思います。』
大体からしてソロスチャートと言われるものって貨幣乗数が安定している時に成立する話で、予備的資金需要やらによる超過準備とか、量的緩和して超過準備が資金需給によってぶれるような状態になっている時には当然ながら当てはまり悪いだろと思う訳でして、まあソロスチャート持ち出しますと4月は当座預金残高が今の数値(ちなみに今日は34.4兆円の残高になる予定だが)から更に増えそう(お蔭で基金固定金利オペ6Mがまた札減ってカツカツの応札になっているのですが^^)な勢いでございますので、「日銀は4月は強力な金融緩和を推進してる」とか言うのかねと思うのでありますがどうなんでしょうかねえ(ニヤニヤ)。
まあ資金需給の事も理解しないで「4月になったら当座預金残高は15兆円水準、もしかしたら8兆円(=ほぼ所要準備並み)近くまで低下するかもしれない」(キリッ)とか馬鹿レポートを出すのが債券の何とかストだったりするので、まあそういう意味では「市場関係者」のうちその手の話をちゃんと把握していない人も多いとは思いますけどね。
と申しますのは、最近もどこぞのレポートで見たのですが、「株式市場や外為市場を牛耳り、大抵がソロスチャートの信奉者である大多数の外国人投資家から理解を得られるようにしないといけない」とか何とか抜かしている馬鹿レポートがあって腰を抜かす訳ですが、お前はそもそもソロスチャートで短期売買している投資家がいるのかと小一時間問い詰めたい訳で、単月の資金需給の振れによる動きで一々「緩和が足りない」とか言うとか頭大丈夫かというかお前ら早く引退して後進に道を譲れやドアホと思いますけどね。
まあ本職の何とかストでもそういう手合いが存在する、というくらいまあ金融政策ネタを実務のレベルまで落とした場合にアジビラ並みのへんてこレポートが横行するのは別に日本だけもなさそう(海外金融政策ネタを書いている海外レポートはたまにしか見ないですけれども、一部やはり変なのを見かける訳で)ではございますが、まーマニアックにも程がある世界なので理解されませんわなあとか思うのでございました。
#いかん変な悪態になってしまった
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2012/03/29
まずは宮尾審議委員講演から。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120328a1.pdf
○海外経済に関してはまあ普通の話
まあ欧州問題に関しては特段変わった話をしている訳でも無く、まとめのまとめはこんな感じです。
『また、より根本的には、欧州には、財政再建と同時に構造改革を進め、成長力を高めなければならないという重要な課題が残されています。財政再建を短期的にも進めざるを得ない中、これが景気をさらに悪化させるリスクを回避しつつ、如何にして民間活力を引き出し、経済成長を促していくか、難しい舵取りが続きます。全体として欧州経済はこれからしばらく停滞が続き、その後緩やかな回復軌道に戻っていくと見られますが、足もとユーロ圏諸国の間で競争力に格差が目立ち始めていることに鑑みると(図表4)、回復ペースは極めて緩慢なものになる可能性があります。経済の停滞が慢性化・長期化するリスクには、引き続き十分な注意が必要と認識しています』
リスクは急性から慢性になりましたということですね。
米国に関してはそんなに弱気では無さそう。
『米国経済については、足もと良好な経済指標が相次ぐなど、緩やかに回復しており、物価動向も消費者物価指数(除く食料・エネルギー)前年比でみて2%程度と安定しています(図表5、6)。米国経済については、家計のバランスシート調整が経済の重石となる状況が続いている一方、企業部門を起点とする景気回復のメカニズムが途切れることなく続いており、緩やかな改善のモメンタムは維持されている、というのが基本的な構図です。』
ほほう。
『今後の米国経済については、民間の調査機関等では2%台の緩やかな成長は実現可能との見方が多いようです。雇用が堅調に拡大し、家計の負債の対可処分所得比率も徐々に低下してきている中で(図表11)、住宅建設・販売件数が底打ち感を見せ始めていること等も勘案すると、家計のバランスシート調整の重石は、全体としては、徐々に軽くなってきており、景気下振れへの耐性も備わってきているように窺われます。』
ほうほうほう。
『そう申し上げた上で、米国経済を巡る足もとのリスクとして、原油価格の上昇に伴うガソリン価格の高騰を指摘しておきたいと思います(図表12、13)。今のところイラン情勢等の供給側の要因が大きく、価格高騰は一時的とみなされているようですし、米国においてはシェールガス開発の進展などによる天然ガス価格の低下などもみられているため、過度に心配する必要はないかもしれません。一方で、現状1
ガロン3.8ドル程度のガソリン価格が4ドルを超えてくれば、中低所得層の生活を中心に経済活動への悪影響が顕著となる可能性が相応にあり、状況を注視していく必要があります。』
ということで、バランスシート調整が長引くからfalse dawnですよ的な話が無いのがへーへーへーという感じでございます。
んでもって新興国。
『アジア新興国経済は、世界経済の牽引車であり、堅調な内需に支えられて今後徐々に回復していくことをメインシナリオとしていますが、一方で、欧州系金融機関の信用収縮の動きが貿易信用などへも波及し、足もとの減速を長引かせる可能性には注意が必要です。また、より長い目でみた世界経済の健全な発展の観点からは、経済成長と物価安定のバランスをいかに維持していくかが重要となります。』
ほう。
『この点、中国が、2012年の経済成長率の目標を2011年の8.0%から7.5%に引き下げたことは、短期的には景気刺激効果を弱めるとしても、経済のソフトランディングに向けた好ましい対応であると理解しています。いずれにせよ、今年は、中国指導部の新体制移行に伴う不確実性や経済政策の変化等にも注意深く目配りしていくことが必要と認識しております。』
まあ地方政府の目標をトータルすると二桁になるとかチャイナクオリティはありますけど(−−)、そんなに大きなリスク認識をしているような感じでは無かったりする。
○日本経済についてなのですが・・・・・・
読んでて「へ?」と思った部分がありましてですな。
『先行きのわが国経済については、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まり、また震災復興関連の需要が徐々に高まって行くにつれて、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかに回復していくという姿をメインシナリオとしています。その際、出来るだけ持続性を伴った改善であることが望まれます。』
まあこの辺は普通の話なのですが・・・・・・
『翻って、国内の民間設備投資の動向を確認しますと、リーマンショック後に大幅に落ち込んだ後、回復ペースは極めて緩やかでした。加えて、昨年後半の海外経済の減速や為替円高などが、製造業の設備投資をさらに下押しした可能性があります(図表22)。もっとも、内閣府の「平成23年度企業行動に関するアンケート調査」によれば、企業は今後3年間のわが国の実質成長率を1.5%程度、設備投資の伸びを4%程度とみており、全体としてみれば、企業の中長期の成長期待は維持されており、投資意欲も下振れていない様子が窺われます。』
はあそうですかという感じなのですが、成長力強化しましょう的な政策を打っている中で「成長期待は維持されており」とか言われると何か違和感が。
『また、同調査では、海外生産の比率も、足もと18%程度、5 年後の見通しでも22%程度となっており、国内と海外の生産比率のバランスも維持されております。さらに、リーマンショック後に投資が減価償却を下回る水準まで圧縮されたため更新投資が行われやすい環境にあるほか、震災で毀損した設備の建替えや耐震強化工事などの投資支出が加わることも期待できます。』
ほほう。
『このような状況を踏まえますと、企業のキャッシュフロー対比、あるいは減価償却費対比でみた国内設備投資は、本来もっと顕現化しても不思議ではなく、潜在的な需要は相応に蓄積されてきていると思われます。企業の投資意欲が失われていないにも拘らず実際の設備投資が手控えられてきたとすれば、おそらくそれは、株価低迷や為替円高、欧州債務問題等に起因する世界経済の減速、およびそれらに伴う先行きの不透明感等から、投資の意思決定が先送りされてきたためではないかと推察されます。』
『繰り返しになりますが、企業が付加価値を高める事業へ前向きに投資することは、経済の成長力を高め生産性を向上させる重要な原動力であり、デフレ脱却にも寄与します。この点、企業による投資支出が、成長期待に見合うペースで、国内外でバランス良く着実に増加していくかどうかが、わが国経済の持続的成長とデフレ脱却にとって極めて重要なポイントであることを指摘しておきたいと思います。』
となると、メインになるのは成長基盤強化よりも金融緩和の推進という話になるような気がしますが、まあそういう点で言えば宮尾審議委員は3月に資産買入基金の拡大を提案してるのだから講演の趣旨に沿っているちゃあ沿っているのですけれども、この後に出てくる金融緩和の政策メカニズムという観点からすると、成長基盤強化の施策を打っている背景説明と微妙に違いますなあと思うのでありました。
つまりですな、成長基盤強化を打ち込んでいる理由の中に「金融緩和して金融環境は改善できるけれども、企業や家計の成長期待が落ち込んでいることも要因の一つとなって、金融緩和効果が実体経済に中々波及しにくくなっている」「だから成長基盤強化の施策によって金融緩和効果の実体経済への波及メカニズムを強化しますお」という理屈があると存じますが、宮尾さんの説明のトーンはその辺りの波及経路に関しては執行部対比楽観的にみているような感じだなあと思いましたです。
・金融緩和強化に関してはまあ姿勢は積極的に見えます(当たり前だが)
『次に、上記決定に伴って、どのような経路でデフレ脱却がもたらされうるのか、その効果波及経路について考えてみたいと思います。』
つーことでその件ね。
『まずゼロ金利下における非伝統的な金融政策の効果波及経路については、実質的なゼロ金利を将来も続ける、あるいは資産購入を増額するなどにより一段の金融緩和が実施されると、金利を通じる経路やポートフォリオ調整を通じる経路の両面から、長めの金利やリスクプレミアムの低下をもたらします。そして、それが借入コスト、株価・為替レートを含む様々な資産価格、銀行貸出などに働きかけ、企業・家計の支出に影響を及ぼして、最終的には景気・物価にプラスの効果を及ぼしていくという経路が考えられます。』
でまあ先ほども申し上げましたように、執行部的な説明だとこの流れを「金融政策が金融環境に働きかける」→「金融環境が実体経済に働きかける」という風に考えて、その2番目のパスが中々効果的に回らないのはバブル崩壊以降の日本経済において成長基盤が弱まってしまっているから成長基盤強化をしないといけませんよというのというのと、そのように波及経路が毀損しているので、金融政策をじゃんじゃんやっても金融政策単体だと中々実体経済の働きかけが進んでいきませんですお困りましたおという話になる訳ですが、宮尾委員的にはその辺りをあまり主張しないという感じに見えましたですということです。繰り返しになりましたけど。
『こういった整理を踏まえて、2月の決定後の状況を振り返りますと、今後の積極的な金融政策運営に対する見通し(根拠を伴って形成される予想)を通じて、長めの金利や人々のリスクテイク意欲に働きかける形で、2年債金利の低下と円高の修正および株価上昇がみられました(図表24)。』
>今後の積極的な金融政策運営
キタコレという感じですが、2年債金利って0.12%が0.11%になっただけのような気もしますがまあいっか。
『当時の状況としては、政策決定の前から、グローバルなリスク回避姿勢の緩和や米国経済の改善、貿易収支の赤字等を背景に、円高修正・株高の流れが形成されてはいましたが、2月の決定もそういった動きを形成する一因になったとみられます。』
ほう。麿とはちと違いますの。
『明確化された強力な緩和姿勢と思い切った政策行動が、強いコミットメント・時間軸効果を速やかに発揮して、5年債金利などさらに長めのゾーンの金利低下にも波及し、また人々のリスクテイク意欲も高め(その結果、要求されるリスクプレミアムも低下し)、金融環境を改善する効果を高めた可能性が窺われます。』
>明確化された強力な緩和姿勢と思い切った政策行動が、強いコミットメント・時間軸効果を速やかに発揮
>明確化された強力な緩和姿勢と思い切った政策行動が、強いコミットメント・時間軸効果を速やかに発揮
>明確化された強力な緩和姿勢と思い切った政策行動が、強いコミットメント・時間軸効果を速やかに発揮
(;∀;)イイハナシダナー
ということで、まあ3月会合でも基金拡大を提案するのですからそらまあそうなのですけれども、この辺りに関しては緩和に関して強いトーンで話をしているという感じではございます。まあ5年の金利は一回下がったけど米国様の金利上昇をネタにして上昇した結果元に戻っちゃいましたけどね!!!
『先ほど、わが国では、株価低迷や円高の進行、世界経済の減速等によって、企業の投資支出が手控えられてきた可能性があることを指摘しました。今後、足もとまでの金融環境の改善傾向が、海外経済の改善等とともに続いていけば、それが起点となって、企業収益あるいは慎重な企業経営者のマインドも好転し、前向きな投資支出等が増え、同時に成長力・付加価値創造力が高まることが期待されます。』
まあこういう話の方が威勢が良いのでこれはこれで大事なのかも知れませんなあとか思いつつも、執行部的な説明とはちとトーンが違うなという印象なのは先ほどから同様でございまする。
『円高修正や株高の動きは、消費者心理の改善や外国人観光客の増加などにもつながり、国内需要を一層刺激する可能性もあります。そして、こうした動きは景気の持続的回復と物価の緩やかな上昇をもたらす方向に働くでしょう。先行きの不確実性についてはなお慎重にみる見方もあり、向かい風は続きますが、それでもいま申し上げた議論は、強力な金融緩和がデフレ脱却につながりうる1つの経路と考えられます。』
ほう。
『このように、強力な金融緩和がもたらす改善の波及経路が筋道をもって予想され、見通されるものだとすれば、足もとまでの金融環境の改善は決して短命に終わるものではなく、基礎的条件に沿った基調的・持続的な動きを反映している可能性があります。実際に観察される金融指標の動きには、さまざまな短期的要因と基調的要因の影響が混在しており、それらを明確に区別することは困難ですが、一段の緩和の強化が、望ましい基調的な動きを後押ししている可能性は排除できないと考えます。』
ということで、この辺に関しては麿理論とちょっと違うなあと思うのでありました。
・見せ方には注意が必要という話^^
『2月の政策決定では、1%の物価上昇率を目指し、それが見通せるようになるまで金融緩和を強力に推進するという形でコミットメント(約束)をより明確にしました。コミットメントをより明確化することは、金融政策運営に対する見通しの不確実性を低め、信認を一段と高めるという重要なメリットがあります。しかしだからといって「どんな犠牲を払っても1%の物価上昇だけを達成すればよい」といった政策運営をすれば、それはあまりに硬直的な運営であり、国民経済の健全な発展にとって望ましいものではないでしょう。デフレ脱却は最重要の課題であり、金融面からの後押しが必要ですが、そのためにも信認と柔軟性の両方を兼ね備えた政策運営が必要です。』
ほう。
『今後、積極的な金融緩和を推進していくなかで、必要となってくる柔軟性の一つは、潜在的な副作用に対する適切な目配りです。』
第二の柱キタコレBISビューキタコレ!とか思ってしまう訳ですが・・・・・・
『現在の「資産買入等の基金」の枠組みのもとで実施している国債購入は、デフレ脱却のために必要と判断して実施された金融政策であり、財政赤字をファイナンスする目的で行っているものではありません。一方で、巨額の財政赤字や政府債務残高の存在は、財政リスクを高めかねない大きな懸念材料です。景気回復や株価の上昇を伴わず、国債に対するリスクプレミアムだけが高まって金利が上昇することは、悪い金利上昇と言えます。こういった財政リスクの顕現化は何としても回避しなければなりません。』
ほうほうなるほど。
『そのため、まず、中長期的な財政規律を確保する必要があります。デフレ脱却に向けて中央銀行が積極的な資産購入・国債購入を実施しても、大元である財政規律が担保されていなければ、財政リスクの顕現化という「意図せざる帰結」の蓋然性を高めてしまうことになりかねません。』
ああその話ですかそうですかという事で、要するに「財政の中長期的なサステイナビリティ確保へ向けた動きをしないと金融緩和強化がどこかで中銀による財政ファイナンス扱いされて財政インフレになったら元も子もない」という極めて真っ当なお話をしているのですというのは把握しましたが、「潜在的な副作用に対する適切な目配り」とか言われるとちょうど先日の麿によるBISビューキタコレな講演(あれは海外向けにはイイハナシダナーではありますが、どう見てもお前それ日本の状況に合ってねえだろという感じで、風俗営業系のお店に行って嬢にこんな所で働いてちゃダメだとか説教するクソジジイかお前はと思ったのですがその辺の悪態ネタはまた整理して明日にでも^^)を真っ先に思い出す訳で、ちとここの部分は物の言い方を工夫した方が良かったんじゃないかと思います。
まあ幸いにして講演ヘッドラインではあまりこの部分が強調された感じでは無かったようですが、会見の方では見事に誘導尋問に引っかかったのかどうか知りませんが、ブルームバーグにこんなヘッドラインを打たれていましたな。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1IVTG0D9L3501.html
宮尾日銀委員:満期到来前に売却の可能性も−買い入れた長期国債(2)
更新日時: 2012/03/28 15:35 JST
『3月28日(ブルームバーグ):日本銀行の宮尾龍蔵審議委員は28日午後、千葉市内で会見し、日銀が資産買い入れ等基金の枠組みで買い入れた長期国債について「最後まで持たない可能性も当然ある」と述べ、満期が到来する前に売却する可能性に言及した。』(上記URLより)
とは言ったって基金で買った長期国債の償還は2年以内に来る訳ですからして、普通に考えて満期まで持つだろそれという話ですし、そもそもあんさん追加緩和提案しているのですから、タイムフレーム考えたら償還まで持ち切りになるだろ(基金で10年物とか20年物とか買ってる訳じゃないんだから・・・・・)と思うのでありまして、こういう時は「物価安定の目途が予想以上に早期に達成できるような状況ならば理屈の上では売却の可能性もあるが、現在の経済状況では満期まで保有することになるのではないか、そもそも私は追加で基金の拡大を提案しているのですし」とか何とか言って、上記のようなオモシロヘッドラインを打たれないように工夫することをお勧め致したい所でございます。
つーかブルームバーグも何考えてこういうヘッドライン打つんだかという感じですけどね。
あと講演は少々ありますが、まあそんなにこれという話は無いと思ったのでスルー。
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2011/09/16
○宮尾審議委員講演では円高のリスクは示すも早急な対応は消極的とな
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1109c.pdf
講演が基本的に金融政策に関する話で、かつ論点整理っぽい話が主眼だったせいかあまり突っ込みの入れようも無かったようで、質疑に関しては講演内で経済の先行きリスクに関する話をしていた事からその辺への質問が来ましたという感じで。
円高定着のリスクに関しての質問から。
『円高定着のリスク、それがまた企業マインドのさらなる悪化に繋がっているのか、現状どうみるのかということですが、今進行中の円高の背景としては、懇談の中で申し上げていますが、米欧経済の減速の懸念、先行きに対する不確実性の高まり、あるいは特に欧州債務問題を巡るリスクの拡大といったものが市場のリスク回避姿勢を強める結果になって、相対的にリスクの小さい円が買われ、円高になっているのではないか、ドル安、ユーロ安の裏側として円高になっているのではないかと思っています。』
ふむふむ。
『これが企業マインドに及ぼす影響が気になるところですが、とりあえず今、データとして確認できる企業マインドの指標について申し上げると、懇談会の資料の中で少し触れましたが、今のデータから窺われる範囲では、まだ大きくは崩れていないというのが私自身の理解です。7月、8月の企業マインドの指標では、大企業と中小企業を含め、一部足踏みしているところもありますが、総じて改善していると判断できるのではないかと考えています。』
ほうほうそれでそれで?
『しかし、これは8月半ば、部分的に8月下旬の回答もありますが、今月に入ってそうしたリスクがさらに拡大しているのかどうかという点について、これからより注意してみていかなければならないし、企業の経営者の皆様にマインド面で与える影響を、慎重にみていかなければならないと考えています。』
ということですので、まだ様子見ですかそうですかという感じです。更に円高のメリットデメリットの話が講演にあったので、その点について「現在どちらの方が大きいのか」(当然ながら質問する方は「デメリットが大きい」という答えを期待していたと思いますが)という質問と、スイスの為替対策のようなものなどを含めた政策対応はどうよという質問がありまして・・・・・・
『円高に対して第1点目、良い面と悪い面と、総合してどう考えているのかということですが、懇談会でも述べましたように、プラス面は輸入原材料のコストが低下して、それが企業、家計に幅広くメリットになる。特に今、震災から立ち直る現状において輸入が増えていますので、そうした足許短期的に輸入が必要な状況下においては、このメリットは相対的に大きいだろうと思っています。また、海外企業買収によって成長力を強化する、これはやや長い目でみてもプラスの側面があります。』
『一方で、マイナス面としては、輸出企業の収益、あるいは輸出量の減少、企業マインドの悪化ということが懸念されるわけです。そしてやや長い目でみた懸念として産業空洞化があり、特に基幹工場、あるいは研究開発拠点の海外シフトが本格化すると、悪い産業空洞化という形で日本経済の成長力が損なわれ、長い目でみて大きな懸念材料に繋がりかねないと考えています。』
『今申し上げたところを総合的に判断して、足許の評価、あるいは少し長い目で見た評価、双方ありますので、それをしっかりと点検して今後の政策判断に反映させていきたいと考えています。』
・・・・・・・・・・うーむゼロ回答。
『2点目、日銀の政策対応として、例えばスイス中銀の為替政策などをどうみるかという質問だったかと思います。ボードメンバーである私の立場から他国の金融政策に関して評価することは差し控えたいと思います。そう申し上げた上で、各国の中央銀行は恐らくその国々の与えられた制度的な枠組みや金融経済情勢の下で最適な政策を追求していると理解しています。そのことは私どもも一緒です。従って、円高に対する構えとしては、先程来申し上げているとおり、そのプラス面、マイナス面、両方を総合的に勘案して、必要と判断される場合には適切な措置を講じていきたいと考えています。』
・・・・・・・・・・・うーむゼロ回答。
ちなみに、この次に「米国が追加緩和を実施して超過準備への付利金利を引き下げた場合に日銀はどうするのですか」という質問がありまして、それに対しても見事なまでにゼロ回答をしているのですが、まあ付利金利の方は兎も角として、為替円高に関する部分でもゼロ回答せんでもよいのではとか思うのですが、なんちゅうか宮尾審議委員ってよく言えば無難で慎重なのですが、悪く言うとこの講演にこの質疑応答だと日銀公表文書の説明腹話術人形みたい(いやまあそれを作っている人たちの1人だからそうなるのですよと言ってしまえばそれまでですが)ですなあという感じです。まあ日銀執行部のロジックの論点整理にはなっています罠という所ではあるのですが、特に新しい話は無いですな。
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2011/09/15
お題「宮尾審議委員講演は経済見通しの話よりも金融政策の話ですな」
ということで昨日は宮尾審議委員の講演があった訳ですが、何か特段こうオモシロな話があるわけではなく淡々としてましたが、金融政策に関する話でのいわゆる非伝統的政策に関するところはちょっと面白かったような感じですな。景気に関する部分は特段の特徴は無かった感じです。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110914a1.pdf(本文)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110914a2.pdf(関連図表)
○経済の先行きリスクに関して
海外経済、国内経済に関する部分はまあ極めて普通っちゅうか日銀の中心的な見解と同じような話を延々と展開しているのでめんどいので引用しませんが、まあ読みたい場合はどうぞという所でして、リスク認識のところから先をネタにしようとゆーことでいきなり本文6ページ目までワープする(^^)。
『先行きは、供給制約が解消したのち、生産・輸出面を起点とした緩やかな回復が続いていくとみています。そう申し上げた上で、先行きの回復シナリオに対しては、以下に述べるような懸念があり、注意が怠れません。』
ということで下振れ警戒のようで。
『懸念の第一は、既に概観したように、欧米先進国の景気回復が鈍化する中で、海外需要が当初想定していたよりも減少する可能性があり、それが景気回復を下振れさせるおそれがあります。』
『懸念の第二は、円高の定着です。米国債格下げや米ゼロ金利の2013年半ばまでの条件付き維持、欧州債務問題の再燃などを受け、ドル安・ユーロ安が長引き円高が定着すると、国内産業空洞化の懸念が強まります。』
話の本筋とは違いますが、FOMCの先般のガイダンス文言の変更を「2013年半ばまでの条件付き」としているのがチャーミングだったりしますが、まあそれはそれとして、下振れ要因の円高に関しては少々詳しく説明がありまして、メリットデメリットの部分は割愛しますけれども・・・・・・
『この際留意すべき点は、アジア新興国や米国といった輸出先の国では様々な財・サービスの価格(物価)がこれまで着実に上昇しているのですが、自動車や電気機械などに限ってみれば、競合メーカーとの競争が激しい、もしくは価格が著しく下落しているという点です。従って、こうした製品・部品を輸出しているわが国の企業にとっては、円高の影響を輸出先の国の物価上昇で緩和することができないために、相当厳しい競争を強いられることになります。』
ほほう。
『輸出の動向は国内生産とリンクしており、わが国の経済に大きな影響を及ぼしますので、円高による下押し効果は強く出ます。また、基幹工場や研究開発拠点の流出といった動きにつながれば、潜在的な成長力に対する影響も懸念されます。』
『こうしたことを考慮すると、政府が、円高に伴う痛みを緩和し、産業空洞化を防ぐべく、製造業の根幹をなす研究開発部門や中小下請け企業への支援を検討しているのは大変意義のあることだと考えております。』
なるほど。
『懸念の第三は、電力コストの上昇です。』
これは^^;
『本年夏場は、企業の工夫・負担や個人の節電努力などにより、生産水準などには特段の影響が出ませんでした。しかし、長期的にみて原子力から代替エネルギーへシフトしていく可能性が高い中にあって、代替エネルギーの輸入など電力コストが上昇していけば、企業収益を持続的に圧迫し、場合によっては海外シフトしていく可能性も否定出来ません。』
仰るとおりですが、今の「性急な脱原発」ブームを軽くdisっているのがお洒落。
『懸念の第四は、デフレ予想の長期化です。』
ほほう。
『本年8月、CPIが2010年基準へ改定されました。その結果、旧基準(2005年基準)に比べ月々のCPI(除く生鮮食品)前年比の下方改定幅が▲0.5%〜▲0.8%ポイントとなり、新基準では、4月▲0.2%→5月▲0.1%→6月▲0.2%→7月+0.1%となりました(図表27)。もともと民間調査機関では、この基準改定により、CPI(除く生鮮食品)前年比がそれまでの+0.6%辺りから0%近傍まで下落するとみておりましたし、私どももそう思っていたため、おおむね予想の範囲内ではありましたが、物価安定の実現までは、なお時間がかかることが確認されました。』
ということで、例によって例の如くの「物価安定の実現には時間が掛かる」であります。
『このように、物価安定の実現までになお時間がかかるもとで、ゼロ金利の継続予想が長期化すれば、人々のデフレ予想が自己実現的に強まってしまうリスクがあります。万が一、デフレ予想が根雪のように固定化してしまうと、委縮しがちな人々の行動に働きかけることが難しくなり、支出が先送りされるなどして成長期待も高まらず、「デフレと低成長のわな」とも言うべき状態からなかなか抜け出せないといったおそれがあります。』
まあ各種サーベイを見ると物価予想は一応プラスはプラスですけれども、現実問題として「物価は上がらん」予想の方が多いんじゃないかと思うので、そーゆー意味では既に「デフレ予想が根雪のように固定化」もへったくれも無いような気もするんだが・・・・・
『現時点では、基準改定後も、需給ギャップが縮小するもとでデフレ脱却の方向に向かっていること自体は変わらないと考えていますが、今後、人々の予想物価上昇率に変化がみられないか、注意深く確認していく必要があります。』
元々実際のCPI上昇率よりも上に振れている予想物価上昇率(普通に一般ピープルが物価上昇がどうのこうのと言う時にヘドニックなんて考慮に入らないでしょうから)がゼロ近傍に落ちたら試合終了のような気がします。
○金融政策に関して:米国の金融政策に関して
まあ日本の金融政策に関する話ははあはあそうですか状態なのですけれども米国に関して。
『米国の非伝統的政策についても、特に、2010年11月から本年6月まで実施された大量の国債購入プログラム(いわゆる量的緩和第2弾)を中心に、政策効果を巡り賛否が議論されています。その効果を評価する賛成意見としては、デフレ懸念を払拭したこと、株価が上昇したこと、消費マインドが改善したこと、ドル安により輸出が促進されたこと、株価上昇で公的資金が早期に回収できたこと等が指摘されています。一方、否定的な意見としては、雇用等の経済指標に顕著な改善が見られていないこと、株のミニバブルを発生させそれを崩壊させたこと、国際商品市況(原油・ガソリン価格)の高騰を招いたこと、資産価格高騰の恩恵を受けにくい低所得層の実質所得を低下させたこと、新興国へインフレを輸出したこと等が指摘されています。』
ほほう。
『おしなべて、プラスの効果を前向きに評価する向きと、効果を疑問視する、あるいは予期せぬ副作用が大きすぎたと批判する向きが交錯している印象を受けます。ここから汲みとれることは、金融政策の効果の大きさやその現れ方を把握し、また事前に予見することが、いかに難しいかということだと思います。』
まあ中央銀行同士で刺し合いしてもしょーが無いという事で、これ以上の論評はしないのが大人の対応なのでしょうけれども、実際問題として宮尾審議委員がこの件に関してどのような見解を持っているのかという点はお伺いしたいものでございます。
○金融政策に関して:非伝統的金融政策に関して
『金融政策の効果およびその波及経路については、伝統的政策と非伝統的政策で、大きな違いがあるのでしょうか。』
ということですが・・・・・・
『伝統的な金融政策においては、金利を通じる経路、(またそれにも付随する)ポートフォリオ調整を通じる経路の両面から、借入コストや株価・為替レートを含む様々な資産価格、銀行信用量などに働きかけ、それが企業・家計の支出行動に影響を及ぼして、最終的な景気・物価に影響を及ぼす、といった波及のメカニズムが期待されます。』
『これらの伝統的政策の波及メカニズムは、ロジックとしては、非伝統的な政策にも当てはまるものです。長めの金利や各種リスクプレミアムへの働きかけは、上記の金利経路、ならびにポートフォリオ調整・資産価格を通じた経路に他なりません。上記の米国の政策効果をめぐる議論でも、そのほとんどすべてが、伝統的な波及経路で説明できるものです。』
さよですな。
『一方で、定性的なメカニズムは同じでも、非伝統的政策において特に指摘すべき議論も存在します。』
ほほう。
『第一に、金融システム・金融市場安定化効果についてです。これは、金融機関に流動性を大量に供給することで金融システム不安を鎮める効果、もしくはマーケットが過度にリスク回避的となり市場機能が低下してリスクプレミアムが急上昇した時に、中央銀行の介入によって金融市場を安定化させる効果です。金融不安やマーケットの底抜けを防ぐことで、実体経済への悪影響を防ぐことができます。』
いわゆる信用緩和政策ですな。
『第二に、国際スピルオーバー効果です。これは、ゼロ金利の長期化予想に伴い、グローバルな投資家が利回りを追求(キャリートレード・リスクテイクを積極化)し、資本が高金利国・資源国へ流れ、それが海外新興国の景気を拡大させたり株価を押し上げたりする結果、自国からの輸出拡大やグローバル企業の収益改善を通じて、景気・物価へ波及していくという効果です。』
時間軸のようなものによって低金利期待が長期化した場合に、投資家の利回り追求(サーチ・フォー・イールド)行動を通じてスピルオーバーするって話なのですが、別にこれって非伝統的政策じゃなくても、伝統的政策の下でも時間軸のようなものが発生したら同じ事のような気が。それこそ米国の信用バブル発生の前の低金利期待長期化がその典型で、あの時は別に非伝統的政策じゃなかったような気が(まあそもそも時間軸も無かった(声明文文言みたいなのはあったかな)けど)するんですが。
『第三に、予想インフレ率を通じた効果です。これは、需要に働きかける従来の経路に加え、中央銀行のバランスシートが長期にわたり拡大するとの期待を持たせることにより、予想インフレ率を上昇させ、実質金利を低下させることを通じて景気・物価へ波及する効果です。』
これが何故か効かないのが日本クオリティorz
『このような効果波及のメカニズムが考えられる一方で、金融緩和が行き過ぎると副作用も懸念されます。』
で、どうせベンダーのヘッドラインではここを切り取ってネタにするのがいるに1ルーブル。
『第一の効果には、中央銀行が過剰に介入して、リスクプレミアムを過度に抑え込むと、リスクに応じて価格付けがなされるという市場本来の機能までつぶしてしまうことになります。また金融機関の収益も圧迫する可能性があります。』
『第二の効果には、過度なリスクテイクを助長することで、資本流入国の景気過熱や信用バブルをもたらし、その後の深刻な景気後退を招く可能性があります。』
『第三の効果には、行き過ぎたバランスシート拡大を続けると、予期せぬタイミングで予想インフレ率が上昇したり、無規律な貨幣拡大もしくは政府債務の貨幣化と市場に認識されて国債利回りが急騰するといった可能性も考えられます。』
とまあ一般的というか普通の話をしていますが、まー日本に関して言えばバランスシートの拡大継続と財政のダラダラ出血を続けるとどこかでいきなり来るかもしれないし来ないかもしれないでしょうな。3年後なのか100年後なのかは判りませんが・・・・
○非伝統的金融政策についての留意点という部分が中々
『以上のような整理を行ったうえで、強調すべき留意点がいくつかあります。』
という部分が中々チャーミングなので引用するだよ。
『第一に、これらの効果波及の経路は、それぞれ重複したり相互に関わるものであり、個別の経路を区別して識別したり、またその定量的な効果を測定したりすることは、不可能ではないにしても、大変困難であるという点です。』
そらそうですな。
『とりわけ、非伝統的政策の効果や副作用については実際の経験が乏しく、またそれが実施されるような経済状況は、企業や家計が過剰な債務を抱えるなど、金融危機後の深刻かつ長期の景気停滞の渦中である場合が多く、それだけ通常の波及経路が機能しにくい経済環境にあることも予想されます。』
確かに。
『経験が乏しい領域であることに加え、そのような経済状況であることを考慮すると、過去の政策の経験を参考にしつつも、予期せぬ副作用についても十分な目配りを必要とする、総合的かつ慎重な判断が重要だと考えられます。』
ということで、まあ慎重スタンスという話が結論ですな、賛否はありそうですけど。
『第二に、こうした金融政策の効果が、もし仮に好ましい形で波及した後の金融・経済情勢下では、良い意味で金利は上昇しているという点です。』
これは仰るとおりで、それだからこそ外野のあたくしどものようなニポーンの皆様的に言うと米国が実施の検討を行なっていると思われる「ツイストオペで長期金利低下を促す」という政策って本質的に矛盾を孕んでいますよねという雑談をしている訳ですな。
途中の説明を割愛しまして・・・・・
『結局、政策の効果が徐々に現れ、経済が着実に成長していくという経路のもとでは、より長めの金利は、当初低下したのち、やがて上昇に転じていくのが自然ということです。逆に、長めの金利が低水準のままということは、(インフレ期待を一定とすると)低成長のままということを意味します。』
という事になりますわなという事で。
『なお、補足ですが、金利が好ましい形で上昇していく場合の経済への影響には注意が必要です。例えば、財政再建の問題を考えると、前提としていた金利水準が上昇すれば、財政の金利負担が増すということになります。しかし、一方で成長が高まることで税収増も期待できますので、そうした双方の効果を踏まえて財政再建を議論することが肝要となります。』
ふむふむ。
『第三に、金融政策だけでは望ましい成長力強化は図れないということです。』
キタコレ(・∀・)
『そもそも経済の成長力強化は、一義的には民間部門の構造変革努力、そして、それを支援する政府の成長戦略などにより推進されるものと理解されます。しかし、そう申し上げたうえで、金融政策にも、短期的・循環的な景気の振れを抑えるという効果に加えて、中長期的な効果を経済に及ぼす可能性があります。』
まあ基本的に金融政策は経済の循環的な上げ下げを均すのが役割ですからね。
『望ましい形では、金融緩和が良質な設備投資や研究開発投資を促進することを通じて、生産性や成長力強化に寄与する可能性が考えられます。一方で、望ましくない可能性としては、金融緩和が過度のリスクテイクや過剰な設備投資を促すことで、中長期的に景気の振幅を拡大したり、無規律な金融緩和が予期せぬタイミングで通貨に対する信認を喪失させたり金利高騰を招くという懸念が考えられます。このように、金融政策が潜在的に持ちうる効果は、中長期的な成長にとってプラス・マイナス両面ありうると認識しておくことは重要です。』
つまり何でも良いからドンドンやれといわれても困りますがなということですね、わかります。
で、以下成長基盤オペの話とか、日銀は今後の動向も踏まえて適切な対応を引き続き行ないますよというような普通の話をしていますが、以下引用割愛である。
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2011/03/25
○宮尾さんの会見はかなり言葉を注意して慎重ですな
宮尾審議委員の記者会見。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1103d.pdf
35分の会見の割には6ページしかないというのはかなり言葉に注意したということですかな、よく判らんが。
・大分県における今般の震災の影響について
『今回の震災の影響を受けて、短期的には生産活動が低下することが懸念されますが、ここ大分県でも大手の出先工場が多く立地しており、そうした先、あるいは地場下請け企業を含めて同様に生産活動が低下する可能性が高いといった声や、足許そうした動きが既にみられているといったご意見が聞かれました。あるいは、観光業で相当数のキャンセルが出ているといった話や、今後復興需要が見込まれる建設資材について、既に当地においても逼迫が若干みられるといった声が聞かれました。』
ほうほうなるほど。まあよく指摘されていますが、サプライチェーンの毀損が結構大きな問題になっているという問題と、マインドの悪化という話ですな。
・供給ショックに関して
『(問) 2点お伺いします。1点目は、今回の震災の影響で物流インフラがかなり打撃を受けたほか、東京電力の原子力発電所も今後使えなくなるのではないかとの懸念もあります。電力供給が経済活動のボトルネックになり、当面経済の下押しが危惧されることや、物資が逼迫することで、場合によっては企業・家計のインフレ期待が高まる可能性があるかどうか、ご所見をお伺いします。(2点目は後ほど引用します)』
『(答) 電力供給に関する懸念に関しましては、現在、関係各位が最善の努力を続けて復旧に当たっておられるところです。もちろん、被災地域を含め、広範囲で電力供給に対する懸念はあるわけですが、それが経済活動に悪い影響をもたらさないように最善の措置が鋭意検討され、対応が進めていかれると認識しています。
物資の逼迫については、先程の金融経済懇談会の中で、大分県においても既に建設資材の逼迫が若干観察されるとの指摘があったことを紹介しましたが、その影響についても細心の注意をもって点検していきたいと思います。』
という感じで、まあ確かに足元の状態で決め打ち出来ないですから「慎重に点検していく」っつー答えしかできませんわなという所ですが、今回の会見はこんな感じで「影響については注意深く点検します」系の応答が多かったので、そういう意味ではネタなし会見という感じでありましたorz
・今回の追加緩和に関して、更に今後の施策に関して
『(問) 再び震災関連の質問ですが、先行き1〜2か月ですと震災の影響が含まれない経済指標が多く、実際に震災の影響を含んだ経済指標が発表されるまでには暫く時間がかかると思います。一方で本日の挨拶の中でも述べられたとおり、景気の下振れや下押し、マインドの慎重化といった影響が懸念されます。こういう状況であればこそ、中央銀行として積極的な行動──資産の買入れの実施等──により、マインドの悪化を防ぐことができると指摘しておられますが、こうした中央銀行による早めの対応、政策の発動の必要性に関して、現状ではどのようにお考えでしょうか。』
『(答) ご質問にありますように、まさに中央銀行による早めの対応が必要であると考え、先週の金融政策決定会合では、通常の2日間の日程を1日に短縮して、5兆円の基金の増額を決定しました。企業や家計のマインド悪化が懸念され、短期的に生産活動の低下が見込まれる中で、人々のマインド悪化やリスク回避姿勢の高まりが経済に悪影響を及ぼすことを未然に防ぐという観点から、より一段の金融緩和の強化を決定したところです。こうした姿勢を示すことはきわめて重要かつ適切であると判断し、今回の措置を決定した次第です。』
では基金買入の社債とCPをバンバン実行してください、今日でも月曜でも良いですが、受渡ベースで期内に間に合う買入を前倒しで実施すると大変に宜しいかと思いますけど。
という悪態は兎も角として(^^)、これは中々良い質問。
『(問) 2点お伺いします。1つ目に、阪神・淡路大震災の際には、日本銀行が被災地の銀行に政策金利で貸出を行うという事例があったのですが、今後、同様の措置を実施する可能性があるのかという点についてお伺いします。(2点目は割愛)』
・・・・・これはまたマニアックな、と思って日銀のページを調べていたらこんなコーナーが。
http://www.boj.or.jp/finsys/msfs/
信用秩序維持に資するための資金供給
で、その一番下の辺りに復興支援貸出に関わるリリースがありますが、何故か肝心の当初の復興支援貸出に関するリリースはないのですが、こんなんありました(^^)。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_1996/giji96003.htm/
阪神・淡路大震災復興支援貸出の実行状況
『(答) まず1点目ですが、阪神・淡路大震災の際は、被災地の復興を目的に融資を行う民間金融機関の活動を支援するために、被災地域に営業店を有する金融機関のうち、希望する先に対して通常の日本銀行貸出とは別の枠組みを設けて貸出を実施しました。その措置は、被災地域の復興活動を着実に進めていくために、民間金融機関から復興資金の供給が円滑に行われることが重要となる局面におきまして、金融機関などからの要望を踏まえ、実施したものです。今回の東北地方太平洋沖地震におきましては、現在、金融機関の現金手当への対応などを含めて、金融機能の維持、あるいは資金決済の円滑の確保を図ることに全力を挙げて取り組んでいる最中です。今後、被災地域の復興活動を着実に進める観点から、とり得る政策対応についても真剣に検討していきたいと考えています。先行きの経済・物価動向に関して注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適切な措置をとっていきたいと考えています。』
まあ現状では復興云々の前に被災地における現送等の業務や、資金繰りの間接支援という話になるかと思いますが、確かに今後は復興支援貸出形式での金融機関向け貸出という話もありかも知れませんな。なるほどなるほど。
・国債引受に関して
さっき引用した質問の続きの所から。
『(問) (前半割愛)もう1点は、将来の復興財源に関して、日本銀行による国債引受けを巡る議論もありますが、これに対するご意見をお伺いします。』
『(答)2点目の、復興国債が発行された際の日本銀行の対応に関しましては、私からのコメントは差し控えたいと思います。そのうえで、中央銀行による国債引受けに関する一般論としてお答えしますと、この点の法的な取り扱いとして、欧州では明示的に禁止されているほか、新興国を含め世界の多くの国で、中央銀行による国債引受けは認められていません。わが国でも、財政法5条本則で、日本銀行による国債引受けを禁じています。これは、一旦中央銀行による国債引受けが始まると、初めは問題なくともやがて通貨増発に歯止めが効かなくなり、激しいインフレを招き、国民生活や経済活動に大きな打撃を与えるとの過去の歴史の教訓を踏まえたものと認識しています。』
さよですな。
『こうした基本原則が世界的に確立されている中で、日本銀行による国債引受けが万が一行われるということになると、通貨への信認自体を毀損することになります。通貨への信認は、わが国の金融経済にとってきわめて重要なインフラの一角をなすものと考えていますので、今後とも、国際的にも国内的にも、通貨への信認を維持して、金融面からのインフラをしっかりと維持することがきわめて重要だと考えています。』
まあそういう答えになりますかな。で、後の方で更に突っ込まれたときの答えがこれまた慎重なのは何とも(^^)。
『(問) 先程、万一、日本銀行によって国債の引受けが行われると、通貨の信認が毀損されるおそれがあるというお話をお伺いしました。一般論で結構なのですが、日本銀行による国債の引受けは財政法5条で禁止されていますが、同じ財政法の条項には、但し書きとして「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない」と明記されています。それを踏まえた上で、先程国債引受けは通貨の信認が毀損されるとおっしゃったわけですが、それは宮尾審議委員が国債引受けについては明確に反対されているという理解でよいのでしょうか。』
『(答) 復興国債に関するコメント、あるいは日本銀行による国債の引受けに関するコメントにつきましては、先程申し上げた通り、差し控えたいと考えております。あくまでも一般論として、財政法の本則で国債引受けが禁じられていることは、やはり重要な点かと思います。中央銀行として、通貨の信認を維持していくということはきわめて重要であると考えていることを重ねて申し上げたいと思います。』
まあ答えを避けましたということですね、わかります。
・ちょっとだけ脱線
で、ここは宮尾審議委員の質疑応答を読むコーナーなのであたくしの愚意見など余計だと仰せになるかもしれませんが敢えてあたくしの愚見を申し上げますと、先日も申し上げましたように、現在の市場環境で「単発10兆円の国債増発」が捌けないという状況では全くございません(多少金利が上昇するかも知れませんが)ので、そのような状況下で敢えて日銀引受を行うという必然性は無く、うっかり日銀引受やって海外勢辺りに絶好のアタックチャンスを与えて財政破綻シナリオを提供するリスクをわざわざ取る必要は乏しいのではないか、(ただでなくさえ財政のサステイナビリティがといわれる中でシンボリックな意味も大きい中央銀行引受を実施したら、市場金利が急上昇していくリスクがありますわなという話ですな)というのが市場の片隅でおこぼれを頂戴しながら生きておりますあたくしの市場参加者目線(だとあたくが勝手に思っているだけならスイマセン)な見方でありまする。
国債発行市場で大きな問題なく消化が可能と見られるものをわざわざ日銀引受で発行せよという議論に関しては、まあ率直に申し上げて論者の方々の目的が国債発行じゃなくて日銀に国債引受をやらせる事なんじゃないですかと反問させていただきたくなる訳ですよ。
増税で対応というのも復興前に景気が腰折れしちゃうリスクを背負ってまで勝負する意味が今の環境下であるとも思えませんから、復興財源に関しては予算の組み替えなども一部入れるも、とりあえずは赤字国債で出して、復興が軌道に乗って来た所から財政健全化に向けた取り組みをどうしましょ、という流れで対応するのが現実的な所なんじゃないですかねえと思うのでして、今すぐの増税も復興国債日銀引受もちょっとどうなのよと思う所ではございます(子ども手当てとか高校無償化とか何とか削減できないのかねえとも思いますが)。
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2011/03/24
○宮尾審議委員講演から
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110323a1.pdf
講演の頭の方から適当にピックアップしてみますね。
・震災の影響について(金融システム・金融市場)
『日本銀行も、地震発生直後に「災害対策本部」を立ち上げて日銀ネットの正常稼働を確認するなど、日本銀行自身の業務継続体制の確保を図っています。支店等を通じて、土日を問わず、被災地への現金供給を行うなどの対応を図ったほか(東北地方の支店・事務所を通じた関係地域への現金供給額は12(土)・13
日(日)が550 億円、14〜18 日が2,560 億円)、その後の電力供給を巡る計画停電に対しても、一部支店では自家発電を利用して業務を継続するなど、決済が滞ることのないよう万全を期しています。』
日銀が何で地方支店持っているんだとかいうような批判を時々見たりするのでありますけれども、日銀って別に金融政策やるだけが仕事なのではなく、それよりも何よりも決済システムや現送などの公共インフラ維持を行っている方に多くのリソースを割いている訳ですよね。つーか金融政策だの金融調節だのというような事をしている人の方がマイナーなんじゃないかという気がするんですけど。
『また、日銀ネットは、日本の決済の根幹をなすインフラとして、電力の安定供給の対象として頂いています。被災地においては、現金需要が見込まれるほか、傷んだ通貨の引き換えなど、さまざまな金融上のニーズが出てくるものと思いますので、日本銀行として、被災地の支援には全力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。こうした積極的な対応により、今後も、日銀ネットの運行や現金の供給体制を引き続き確実なものとし、わが国決済システム全体の安定に全力を尽くして参りたいと考えています。』
という事でまあインフラ産業としての日銀の話はさておきまして、金融市場に関する説明はこんな感じです。
『この間、金融市場の動向をみると、短期金融市場は、週明けの14 日(月)朝から資金の出し手が資金放出を控える動きが広がり、コール市場での取引が成立しない状況がみられたことから、昨年(2010
年)5 月以来の即日オペに踏み切るとともに、』
と、まあここまでは良いのですが・・・・・
『1 週間で82.4 兆円もの資金をオファーし(14 日:21.8 兆円、15日:20.0 兆円、16
日:13.8 兆円、17 日:15.6 兆円、18 日:11.15 兆円)、そのうち57.8 兆円を市場に供給しました(14
日:15.1 兆円、15 日:14.95 兆円、16 日:8.7 兆円、17 日:10.3 兆円、18
日:8.7 兆円)。』
いやあのそれ即日オペの分は累積カウントしたら過大評価になっちゃうから。
まあ「沢山供給しました」というのをアピールしたいのは判りますし、当座預金残高推移とかの話をしても説明しにくいと言うのは判るのですけれども、毎日のオファー額に関してその期間を無視して一緒くたに説明するのって説明としてはペテンの香りが漂うものでありまして、やはりメディアの方々を初めとして一般ピープルに説明する時に、そういうインパクト重視で説明がペテン的になるのはあまり宜しくないのではないかと存じますけどどうでしょうかねえ。
要はですな、ペテン説明で煙に巻く攻撃をやっていると、メディアなど受け手のリテラシーが向上しないので、肝心なときにミスリードな報道をされてしまって盛大なブーメランになるという惧れがある訳でございまして、やはりそこはあまりペテン成分にハッタリをかましたような話の持って行き方は避けたほうが無難ではないかと思いますけどねえ。
『この結果、オーバーナイト・コール市場は足元では比較的落ち着いて推移しています。』
まあここはさすがに素人さん向きだからこういう説明になるのかなあとはおもいますが、本当は追加緩和をCE的に実施したのですから、この先の市場に関連する話を市場動向として詳しく説明して、「これに対処するように追加緩和を行ったんです」という話をするのが吉のような気もせんでもない(相手によっては)。
『これに対し、CPや社債市場では、投資家のリスク回避姿勢が強く、CP・社債を引き受ける動きが細り、発行されたレートが大幅に上昇するなどの動きがみられました。足元でも、発行金利は高めで推移しておりますが、この背景として、地震の影響に加え、長引く被災原発の問題が少なからず影響しているとみられます。』
この後で株式市場などの動向の説明があって、その後に震災の経済に与える影響についての説明が入り、その次に今回の追加緩和の説明があるのですけれども、あたくしの理解では今回の追加緩和はより「信用緩和」の意味合いを持った政策対応と思っていまして、そういう意味では文脈として「震災によって起きている市場の動揺を抑制する」というのをもう少しアピールした方がより判り易いですし、そういう説明をすれば決定会合後の総裁会見で質問が出たような「規模がしょぼい」的な質問もあまり出ない(QEとして見たら5兆追加だとしょぼく見えるけれども、今回はCEなのですから、という事ね)のではなかったか何てこの辺を読んでいて思いました。
ということで最初から順番にといいつつあっさり順不同になりますが、今回の政策対応に関する説明部分から。
『以上のような状況を踏まえ、日本銀行としては、今回の地震が当面のわが国の経済・金融情勢に与える影響を点検し、金融政策運営方針を速やかに公表していくことが、国民心理の安定や金融資本市場の安定を確保する上で重要であると認識しました。(一部割愛)特に、企業マインドの悪化や金融市場におけるリスク回避姿勢の高まりが実体経済に悪影響を与えることを未然に防止することが、現在、最も適切な政策対応と考えられることから、リスク性資産を中心に資産買入れ等基金を5
兆円程度増額し、40 兆円程度とすることとしました。』
まあそうなんですが、この辺の説明はもうちょっとCEというのを前面に出すのも一つのやり方だったかも知れないな、と後講釈ながら思いましたです。
・震災の影響について(実体経済)
前後しますが震災の実体経済への影響に関しては、まあ当然ながらかなり厳しい認識を示しています。
『こうした中で、今後の影響について考えてみると、定性的ながら3点程度指摘することができると思います。』
『第一に、当面は、生産設備など供給面への被害の影響が大きく現われ、生産活動や物流を中心に、経済活動にマイナスの影響が及ぶとみられます。被災地域には自動車や電子デバイス関連などの部品・部材メーカーが数多く存在するため、一時的とはいえ、国内外のサプライチェーンの寸断が余儀なくされています。』
『第二に、先行きの不透明感が、家計や企業のマインド悪化を通じて、経済活動を下押しする惧れがあります。』
『そして第三に、中期的には、復興に向けた様々な需要が出てくるとみられますが、タイミングやどの程度の規模となるかは現時点で不確実であり、見通しにくいという点です。』
ということで、まあ厳しい見方です。
『現時点で、今回の地震の影響を定量的に把握することは困難ですが、巨大な津波を伴った過去最大規模の地震であり、ライフラインや物流インフラの復旧に時間を要しているのが実情です。そういった点を鑑みると、少なくとも供給面から経済活動が下押しされる程度は、たとえば16
年前の阪神・淡路大震災時に比べても大きく、場合によっては長期化する可能性には、十分注意しておく必要があると考えています。』
ちなみに、この後に震災前での情勢判断を中心に、ということで経済物価情勢と金融政策に関する説明があるのですが、その頭の部分で再度地震の影響についてこのようにコメントしています。
『わが国経済は、足元の踊り場から脱却し、やや長い目で見れば緩やかな回復を続けていくと判断してきました。一方で、今般の地震が日本経済へ及ぼす影響は、少なくとも短期的には、決して小さくないと予想されます。当初想定していた景気・物価見通しにどのような影響を及ぼすかについては、従来から指摘してきたリスク要因とともに、細心の注意をもって点検していく必要があります。』
ま、こんな感じですので先行き景気に関してはかなり厳しく見てます罠、という所ではないかと思います。
『以下では、主に震災前に検討を進めてきた情勢判断であることをお断りしたうえで、海外経済から順に見ていきたいと思います。』
ということでその辺から幾つかピックアップするだよ。
・国際商品価格の上昇の米国経済への影響、およびその持続性について
『そうした中、最近の国際商品市況の上昇が米国経済に及ぼす影響について、注意してみていく必要があります。マーケットが認識するインフレ期待は、昨年秋から上昇基調にあります。また、家計のインフレ期待も今年に入って上昇し、消費者コンフィデンスの直近の指標は下落に転じています。』
『国際商品市況は、もともと新興国による実需が旺盛な下、投機的な資金流入や中東情勢の混乱もあって、上昇ペースが加速してきました。今回の震災を契機に、世界的なリスク回避が強まっており、足元では軟調に推移していますが、一方で、新興国の高成長を背景とする実需がベースにあるとすれば、これまでの基調的な上昇・高止まり傾向の一部は持続する可能性もあると考えられます。商品市況の今後の動向と、それが米国はじめ世界のインフレ期待にどのように影響を及ぼしていくのか、注視していきたいと思います。』
ということで、引用したものの結局宮尾さんは「インフレの米国経済への下押し圧力」を気にしているのか「グローバルインフレによるインフレ期待の高まり」を気にしているのかが良く判らんのでまあここの文およびお暇な方は前後を読んでちょという所でありまする(なんという丸投げ)。
・新興国の金融引き締めの遅れは経済下方リスクとな
『こうした中で、アジア・新興国では、旺盛な内需に国際商品市況の上昇も加わり、インフレ懸念が強まりつつあります。加えて、内需拡大を持続させる観点では、物価上昇に見合った賃金の引き上げは不可欠であるため、これがさらにインフレ圧力を高める可能性があります。このため、各国では、高成長を持続するための環境を整えるべく、徐々に政策金利の引き上げを進めてきています。これまでの緩和的な政策運営―いわゆる「ビハインド・ザ・カーブ」―が長期化して高インフレが定着する場合には、景気にマイナスとなることから、未然に回避するためにも早め早めの対応が重要です。』
ということで、新興国のバブルは結局のところ下方リスクになるでしょう、という認識ですな。
・日本の場合は前向きの循環メカニズムが働きにくいのではという話
日本の(震災前までの)経済状況の説明をしている部分があるのですが、その最後の部分あたりから参ります。
『米国のように、企業部門の好調さが家計部門に波及していく経路がやや弱いように窺われます。』
ほうほう。
『その背景には、仮に輸出主導の景気回復を実現しても、国際商品市況の上昇等により輸入コストが上昇していれば、交易条件の悪化によって実質所得は流出する、その結果、GDP
は増えても国内総所得はそれほど増えない、というメカニズムが考えられます。』
具体的な数値部分は割愛しまして・・・・・
『このことは、マクロ経済的にみれば、経済のどこかの部門がこの損失を負担していることを意味します。2000
年代の景気回復期において、企業は、賃金を抑制して総労働費用を抑えてきました。賃金費用の削減は、企業部門の懸命な構造転換・スリム化の取組みを表すものであり、生産費用の削減は供給面から景気を上向かせる役割を果たし、物価上昇を抑制します。一方で、総労働費用・賃金の減少は家計所得の減少となることから、内需への波及を弱めることになります。したがって、この間の交易損失は、企業部門のスリム化を通じて、家計部門にしわ寄せをもたらすものと見ることができます。』
なるほど。
『輸出・生産を起点とした景気回復の背後に、以上のようなメカニズムが考えられるとすると、この傾向は、リーマン危機後の回復局面でも継続している様子が窺われます。』
つまり輸出主導で景気回復をしても家計に恩恵があまり回ってこないという事ですね(涙)。
『企業は、より厳しさを増すグローバルな競争環境や円高を背景に、生産の海外シフトを加速するなど、構造転換・成長力強化の取り組みをさらに進めており、その成果である企業収益を、国内での設備投資や雇用・賃金の形で振りむけることに慎重なスタンスを維持しているように見受けられます。足元までの国際商品市況の上昇基調が国内所得を抑制する下で、このようなメカニズムが引き続き働いている可能性が考えられます。』
何と言う希望のない話(家計部門的に)なのでございませうか。
という事で、宮尾さんの今回の講演であたくしが「ほほー」と思ったのはこの辺りの部分でございまして、いわゆる前向きの循環メカニズムが日本経済において効き難くなっているのではないか、という論点の説明はほうほうと思うと共に、つまり内需主導のような形で進まないと中々前向きの循環が回りにくい、という事にもつながるのでしょうなあという残念な結論になってくる話かと存じますです、はい。
・米国の金融緩和の効果に関して(日本の説明は普通なのでネタにしません)
金融政策に関する説明部分から。
『米国でも、リーマン危機以降、昨年11 月の大規模な資産購入プログラム(いわゆる量的緩和第2
段)まで、合計4 回にわたる非伝統的な金融緩和政策が実施されてきました。特に昨年11
月の6000 億ドルに及ぶ長期国債購入は、長期金利・借入コスト低下を通じた効果だけでなく、昨夏以降市場で見られた米国経済に対する過度に悲観的な見方、行き過ぎたリスク回避の傾向を是正し、市場参加者が要求するリスクプレミアムに持続的に働きかけて株価を上昇させる効果もあったのではと見られます。』
『また米国の場合には、ドルは世界の基軸通貨であることから、別のグローバルな効果波及経路も考えられます。すなわち、リーマン危機後の政策対応として、FRB
が事実上のゼロ金利政策にコミットした結果、新興国や資源国などドルと連動性の高い経済では米国の金融緩和を輸入することになり、それは海外での景気拡大をもたらすことになります。』
『米国のグローバル企業は、もともと製造業、非製造業問わず広く世界で事業を展開していることから、ドルと連動性の高い地域の景気拡大は、米企業の収益・成長期待を高め、それが米国の株価上昇をもたらし、個人消費の回復にもつながります。したがって、過去2
年以上続く米国の強力な金融緩和政策には、海外景気の拡大を経由した米国株価上昇によって自国景気を刺激する「国際的なスピルオーバー効果」も考えられるのです。』
ほほう。それからもう一つの政策波及ルートについて宮尾さんは指摘しています。
『以上、最近の日米の金融政策とその効果について考察してみましたが、共通して浮かび上がってくるのは、市場のマインドやコンフィデンスが過度に悲観方向に振れた際に、中央銀行の積極的なアクション・資産購入がそれを是正し、リスクプレミアムに持続的に働きかける効果があるのではという点です。』
まあどうなんでしょうかね、今後の研究課題っつー所なのでしょうか・・・・・
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2010/09/27
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1009c.pdf
○だから当座預金残高とリンクさせた質問をするなと
非不胎化介入がどうのこうのって質問を延々としているアホウが一匹(なのかどうか知らんが)おりましてですな、「非不胎化介入」というのが「自国通貨売り介入+金融緩和のセット」という意味で言うのならともかく、当座預金残高と直接にリンクする議論は1ミリも意味が無い訳で(ある程度以上の超過準備を恒常的に放置した場合には、銀行間翌日物金利は預金ファシリティ金利まで低下するので、政策誘導目標金利と預金ファシリティ金利の間に差がある場合は金利政策のディレクティブ違反になるという理屈です、何度も書いてるけど)すが、先般の介入後の非不胎化がどうのこうのという話ってどこからどう見ても当座預金残高に直接リンクさせた話が非常に多く、一般的にはそういう理解に相変わらずなっていますなという所でして、今回もこんなアホウな質問がありますので晒し上げ。
『(問) 今月15日に政府が円売り介入をしました。その後、日銀の金融政策も随分注目されたわけですが、当座預金の残高は15〜16日は15兆円程度でしたが、介入が行われた2日後の17日には17兆円、昨日21日は19.4兆円と顕著に増加しています。まず、1点目ですが、これは介入で放出された資金を日銀が吸収せずに放置する、いわゆる非不胎化を行っているのかどうかということです。』
いきなりこれですよorz
『2点目は、その質問へのお答え如何でもありますが、いま日銀が行っていることは、白川総裁も本日掲載の新聞のインタビューで「国民に対するメッセージ」というようなことを述べていますが、足もとで当座預金残高が増えているということは、事実上の金融緩和なのでしょうか。』
つまり例えば期末だとか大量税揚げな、インターバンクやレポ市場の資金需給が逼迫しやすい時に当座預金残高を増やすのは全部金融緩和だと仰りたい訳ですね。
『最後に3点目ですが、今後政府が再び介入する可能性は十分あると思われますが、介入が仮に行われた場合に、今回同様日銀はさらに当預残高を増やしていく考えがあるのでしょうか。』
まあ何というか頭の悪い質問ですが、宮尾さんの答え。
『(答) まず第1点目、為替介入後の動きですが、ご承知のとおり金融市場では、銀行券の受け払い、また様々な財政資金の動きを反映して、日々膨大な額の資金が供給されたり引き揚げられたりしています。為替介入によって供給された資金の動きも、こうした市場全体における資金の流れの一部をなすということになります。日本銀行がこれまで行っていることは、政策金利を0.1%まで引き下げているということ、つい先日の8月末に6か月物の固定金利オペを新たに導入して資金供給を大幅に拡大するといったことを通じて、強力な金融緩和を推進しているということです。その中で、介入資金も含む様々な資金の流れも利用しながら、金融市場に潤沢な資金供給を行っていく方針だということです。これをお答えとさせて頂きます。』
この「介入資金を利用しながら」というのはまあリップサービスなお答えですが、まあこうとでも答えるしか無いですわな。本当に言うなら「金融政策決定会合のディレクティブを百万回読んで資金需給と金融調節に関する実務的な部分の勉強をしてから出直してこい」という所でしょうが。
『2点目のご質問に関しても同様ですが、今申し上げたような政策を強力に推進していくことを通じて潤沢な資金供給を行っていく、そういうメッセージが総裁からも発せられているかと思いますが、そのようにご理解頂ければと思います。』
『3点目の今後政府の為替介入があればどうなるのかという点に関しましても、金融市場に潤沢な資金供給を行っていく、現在推進している強力な金融緩和を引き続き行っていくということです。』
質問者の頭が甚だ悪いので答えようが無いというのは判りますが、質問者は更に頭の悪い質問をするので引用は続く。
『(問) すみませんが、全くお答え頂いていないというふうに受け止めています。端的に、ここ数日当座預金残高が増えているのは日銀が非不胎化を行っているのかどうかという質問に改めてお答え頂きたいと思います。非不胎化か不胎化か分からないということも含めて、これはYESかNOかでお答え頂ける問題だと思います。また、もう1つの事実上の金融緩和の強化なのかどうかという点についても、市場がはっきり知りたがっているわけなので、明確にお答え頂きたいと思います。』
まあ介入直後だったら別ですが、一巡した時点でまだこんな質問をしているのは何というかもう勘弁してという感じですが、審議委員の記者会見というリソースをこのような下らない質問で浪費するのは大きく言えば国民的損失でもありますので、この手のアホウを排除する意味でも日銀記者クラブおよび日銀広報様におかれましては、BOE会見に倣いまして会見要旨に質問者の名前を入れた方が宜しいのではないかと斯様思うのですがどうでしょうかねえ。
『(答) 繰り返しのお答えになって恐縮ですが、私どもの政策決定として行っているのは、潤沢な資金供給を行っていくということであり、先月には6か月物の固定金利オペを新たに導入して金融緩和を一段と強化したわけです。そういうことですので、不胎化かあるいは非不胎化かということに関しては、先ほど申し上げましたとおり介入資金も含めた様々な資金の流れがある中で、それも利用しながら潤沢な資金供給、強力な金融緩和を推進していくということです。』
本当は「だから当座預金残高の一時的な増減で不胎化とか非不胎化とか議論するのは意味が無いから質問するなアホウ」と言いたい所でしょうが、まあ敢えてその辺は非不胎化介入っぽい演技をしている面もあるので話をきっちり出来ないというのもあるのが質疑応答に微妙なテイストを醸し出しております。
『(問) 今の1点目の質問に対するお答えについてですが、非不胎化か不胎化かは言えないということだと受け取ってよろしいのでしょうか。』
『(答) 私が申し上げているのは、非不胎化か不胎化かというような論点で私どもは考えているのではなく、強力な金融緩和を推進して市場に潤沢な資金供給を行っていくことに尽きる、ということです。』
当座預金残高推移と直接リンクした形で非不胎化とか不胎化という話をするのは論点としてずれとるという事で、もしこの質問者が質問をするのであれば、「円売り介入の効果を高める為に追加金融緩和を行い、政府・日銀が一体となって円高対策を行ってデフレ脱却を推進するという用意はあるのでしょうか」とでも質問すべきであって、日々のブレの範囲内にある当座預金残高を捕まえて緩和だ引き締めだとか言うのはとりあえずてめえは勉強してから会見に参加しやがれという感じで、可及的速やかに義務教育からやり直して頂きたく存じます次第です。
○米国経済の下振れリスク顕在化の判断は?
以下はまともな質問の引用を。
『(問) 本日の懇談会での挨拶でも、米国経済の低成長が長期化することを下振れリスクとして注視する必要があるという話がありましたが、どのような場面でリスクの顕在化を判断していくことになるのでしょうか。(後半割愛)』
『(答) 米国経済の、やや長い目で見た低成長のリスクをどのような場面で判断するかという質問ですが、足もと、今回お示したような指標等を分析した上で、こうしたリスクが高まっているという判断をしています。このリスクがどのような局面で顕在化するのかについては、今、事前にこのタイミングで申し上げることはできません。今後、入ってくる情報に基づいて、適切なかたちで判断していくということに尽きます。(後半割愛)』
まあここは特に答えが無いのはちょっと残念。雇用なのか物価なのかそれとも他の指標なのか何でも良いのですが、何かあるかなあと期待するところですけれども。
○量的緩和政策に関して
『(問) 今の質問とも関連します。必要な状況になれば適時適切に判断をするということですが、宮尾委員の就任記者会見で、量的緩和についての評価は明確になっていないというコメントがあったと思います。また、以前から言われている金融システム、流動性不安がある時には量的緩和やゼロ金利は効果があったということもお認めになっていたかと思いますが、委員の、政策オプションとしての量的緩和政策に対する評価、また先行きの選択肢に量的緩和政策が入るのか入らないのかについてお伺いいたします。』
『(答) 先行きの政策の選択肢に関する質問なので、今申し上げられることは、あらゆる手段を排除することなく選択肢に入れて、その効果・副作用を入念に点検していくということです。効果・副作用は、その時々の経済・物価の情勢によって変わってくるので、量的緩和政策に関する評価についても、かつての評価と現時点における評価は当然変わり得るものであると考えています。いずれにせよ、経済・物価情勢に応じて、効果・副作用を入念に精査・検討して金融政策を実施したいと考えています。』
「効果・副作用を入念に精査・検討」ってのが(実は他のところでもこのフレーズがあるのですが)まあ何ですが、「量的緩和政策に関する評価についても、かつての評価と現時点における評価は当然変わり得るものである」ということで、政策オプションとして別に排除する訳ではないという事ですな。
○長期国債買入増額に関して
『(問) 海江田経財相の就任会見で、日銀法改正と、長期国債買い入れ増額──これは銀行券ルールにつながる話でもありますが──について、前向きとも受け取れる発言がありましたが、この点について日銀としてどう対応すべきかについて委員の見解をお聞かせ下さい。』
まあ銀行券ルールは抵触しそうになったらまた考えれば良いという話のような気がせんでもないですが、まあそれはそれとして宮尾さんの答え。
『(答)(前半割愛)長期国債の買い入れ増額についても、おそらく今議論されている将来の政策の選択肢の一つかと思われますが、繰り返しになりますけれども、将来の政策オプションについては、予めどれかを排除する、あるいはどれかを念頭に置くということはせずに、全ての選択肢について効果・副作用を入念に検討した上で、適切に判断していくということになると思います。』
ということで、政策オプションとして無い訳ではないというのは判ります。
○全体的にはあんまりハトな話をしている訳でもなく中立的なのですが・・・・
宮尾さんの会見ですけれども、講演内容もそうなのですが、会見でも景気に関する見方は下振れリスク意識と言いつつもそんなに下を見ている感じもしないというイメージです。ただまあ量的緩和政策や長期国債買入増額に関しても排除しないというだけではなく、量的緩和に関しては「評価は変わり得る」というような言い方で、まあ含みを持たせるような言い方をしてまして、その辺りに関してはサービスなんだかやる気があるんだか知りませんが、木で鼻をくくったような対応はしていないのですなあという感じです。
つーことで、宮尾さんの場合はヘッドラインだけ見てタカかハトかとか考えてるとちょっと判断間違えるかもしれないなあという気がする人だというのは把握しました(^^)。
#質問まで引用したら長くなってしまってどうもすいません。
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2010/09/24
お題「宮尾審議委員講演」
期末らしく色々なペーパーが出てたりしてますし、おまけに総裁や西村副総裁の講演も積み残している訳ですが(汗)、とりあえず宮尾さんの金融経済懇談会デビューなのでそちらから。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1009e.pdf
○海外経済に関して
現状認識の部分はスルー致しまして先行きの部分から。
『次に海外経済の先行きについて簡単に纏めますと、中国を中心とした新興国経済の景気減速が暫く続くとみられるほか、米国経済についても、そうした新興国経済の動きを背景とした輸出の減速や、財政による景気刺激効果の減衰から、足もとの減速傾向が続くものとみています。その後、2011年以降は、新興国経済の成長率が足もとの減速から再び高まるものとみられ、それに支えられる形で米欧経済も緩やかな回復が続くものとみています。』
というのはまあ展望レポートなどの話と同じですな。
『しかしながら、ここへ来て、下振れリスクに、より注意をしなければならない状況になってきていると考えています。その主な要因は、米国経済がやや長期の低成長に陥るリスクが高まっているということです。』
ほほう、米国が長期の低成長に陥るとな。で、具体的な説明は割愛してその結論部分。
『こうした一連の経済指標をみますと、米国の家計部門においては、住宅バブルの中で住宅を購入した人々が債務の返済に追われ、また失業者はなかなか職に就けず、その結果として消費に対して非常に慎重になっている姿が窺われます。また、こうした状況を眺め、企業部門も先行きの景気拡大に確信が持てないため、収益が改善しているにも拘らず雇用や更なる設備投資に踏み切れないでいる様子がみてとれます。そして、これが更に家計部門の消費行動の回復を遅らせるリスクが高まっているとみています。』
バランスシート調整と労働市場の調整によって低成長化するリスクとな。
『さらに、これまで米国経済の強みとされてきた部分にも変化が出てきている可能性があります。あまり注目されない指標かもしれませんが、私は米国の労働生産性の推移に着目しています。』
で、またその説明部分は割愛しますが、結論部分はこうなっています。
『これまで米国経済の強みは技術革新を生み出す力と、それを背景とした生産性の高さにあると認識されてきましたが、実際には、2009年の一時期を除くと、ここ数年にわたり、やや長い目でみた成長力が伸び悩んでいる可能性があるということです。こうした中で、8月の半ばには米国債の10年物金利が2%台半ばまで低下しましたが、これも一時的な景気減速を織り込んだというよりも、やや長い目でみた低成長とそれに伴う低インフレを織り込んだ動きという側面もあるのかもしれません。』
つーことで、構造的に米国経済が低成長型に陥るリスクがありますよというお話で、宮尾さんはこの米国経済の過剰調整の長期化リスクと構造変化のリスクの話を強調しています(というか先行きリスクの説明の部分は全部米国の話)というのが特徴的でございますな。
○日本経済に関して
『市場では、米国経済の先行きや欧州各国の財政・経済情勢を巡る懸念などを背景として、リスク回避的に円を買う動きが進んでいるほか、それを材料の一つとして、良好な企業収益見通しにもかかわらず株価が軟調な地合いにあります。こうした市場環境が継続すれば企業収益やマインド面に与える影響が小さくないわけで、その影響が懸念されるわけでありますが、現時点では、自律的回復のメカニズムは途切れていないものと判断されるところです。』
ほほう自律的回復のメカニズムとな。割とこの辺りに関しては(さっきの海外もそうですけど)展望レポートのベースを普通に話してますなあという感じで(まあ当たり前っちゃあ当たり前ですが)無難に纏めてますにゃ。
で、先行きですけれどもね。
『最後に、わが国の景気の先行きについてですが、先ほど申し上げた海外経済の一時的な減速と、国内の需要刺激策の効果の減衰などから一時的に改善の動きが弱まるものの、その後は、中国をはじめとする新興国経済の高成長を背景とした輸出の拡大、及び企業収益の改善を起点とした設備投資や個人消費の回復などを通じて自律的な回復過程を進んでいくものと思われます。』
ということで自律的な回復とな、という感じですがリスク要因に関してですが。
『こうしたシナリオの修正を余儀なくされるような下振れリスクとしては、先ほども申し上げた通り、米国経済が、やや長い目でみた低成長に陥るリスクが高まっている点が挙げられます。このリスクが顕在化した場合には、グローバル化が進展しているもとで世界経済全体の見通しが下振れし、それが輸出の減少などの形でわが国経済にも波及してくることになります。』
ほほう。
『こうした動きの中ではリスク回避志向が高まり易くなり、その結果として、企業の設備投資や新規事業に対する意欲、家計の消費意欲が抑制されるという、いわゆるマインドの悪化が起こり、経済の停滞が続くという状況に陥る可能性があります。』
という話をしているのですが、新興国に関しては結構楽観っぽいです。
『こうした下振れリスクの一方で、新興国経済が持つ成長力の力強さには目を見張るものがあります。足もとは中国経済の減速を主因に、周辺国にも景気減速感が一部で出てきていますが、その結果として、急激な経済の過熱がかえって成長の持続性を失わせることになるリスクが遠のいているとみることもできます。むしろ一定期間のスピード調整を経て、高めの成長がより長期間、安定して継続する可能性があります。』
その結果ですな。
『このことはアジアとの結びつきを強める日本経済の先行き見通しにとって上振れ要因となり、米国経済の低成長リスクが顕現化した場合でも、その影響を軽減してくれる可能性があります。』
という事のようなのですが、この辺りは結構楽観的ジャネーノとあたくし的には思う次第でして、米国がコケるような時に新興国が無事に順調成長っていうのもちと虫の良い話で、そーゆーデカップリングみたいなのは難しいんジャネーノと思うのですけどどうでしょうかねえ。
ということで、景気認識に関しては「下振れリスク」を意識しつつも、日本経済よりも米国の下振れの方がクローズアップされている感じで、何となく微妙っちゃあ微妙なテイストを醸し出しています。
とは言いましても、この講演(挨拶)の構成を見ると前半で延々と米国の下振れに関して構造的な面への考察を加えながら説明しているので、最後にしらっと「自律的回復でアジアと共にデカップリングですよ」という話をしてもあまり印象として目立たない(ベンダーのヘッドラインでもそんな感じだったかなあと思います)という感じでして、まあ見せ方を工夫してますなあと思うのでした(^^)。
○円高の影響に関する項目を設置しているのですが・・・・
経済見通しなどに関する部分で『(4)為替相場のわが国経済への影響』ってわざわざ項目を作っているのがチャーミングというものです。
『円高の影響については、改めて言うまでもありませんが、輸出企業を中心に収益の圧迫要因となり、現在も厳しい経営を余儀なくされている企業も少なくないものと思われます。また、こうした状況は、株価にも影響を与えていることから、わが国経済の下振れリスクの一つとして、実体経済への影響を注視しているところです。』
ほほう。
『一方、輸入企業にとってみれば、円高の進行は収益の押し上げ要因となります。また、海外企業の買収を通じて事業拡大などを考えている企業にとっては追い風となります。そうした意味では、バランスよくみることも重要ではないでしょうか。』
おや?
『ここで、「バランス」の観点から一つの事例をご紹介します。貿易に使用される決済通貨について通関統計を基に調べると、10年前の2000年下期と足もとの2010年上期とでは、輸出決済に使用されるドルのウェイトは52.4%から48.6%に小幅低下している一方、輸入決済については70%強で殆ど変化がありません。しかしながら、ドル建て決済の貿易額をみると、ネット輸入超額が大幅に拡大しています。これは、輸出額の大きい米国との取引が減少する一方、成長著しいアジアとの取引は輸出入ともに増加、中東地域等との間では輸入取引が大幅に増加しているためです。』
ほうほう。
『このようにドル建て輸入超額が拡大していることにより、以前と比べると円高によるマイナスの影響を受け難い決済・貿易構造になってきている可能性があります。』
ということで、項目を設置している割には実は「円高の影響は皆様が鉦や太鼓で大騒ぎするほどそんなに大きくないんですよ」という話になっているのが微妙なテイストを醸し出しております。円高のマインドに与える影響の話がしらーっとスルー気味なのが少々気になるのですけれどもねえ。
○金融政策に関してとあたくしの感想
金融政策に関しては基本的にそんなに変わった話をしている訳でもないので、まあ無難な内容です。
『もっとも、米国経済を中心に先行きを巡る不確実性が高まっている中で、わが国経済の下振れリスクに対する警戒を解くことは出来ません。日本銀行としては、わが国経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識しています。そうした認識のもと、これまでも強力な金融緩和の推進等を進めてきたわけでありますが、引続き先行きの経済・物価動向をより注意深く点検し、
必要と判断される場合には適時適切に対応して行く所存です。』
まあこうとしか言いようがありませんわな。で、成長基盤強化支援の資金供給に関する説明をしていますが、まあその辺は割愛と言う事で。
てな感じで読んでみたのですが、下振れ意識している割にはどちらかと言えばその下振れはフローの問題よりも構造問題に関して意識しているという感じでして、結論としてハトとかタカとか色をつけにくい感じがしますなあというのがあたくし的な印象でございましたです。
#積み残しネタだらけで恐縮ですが本日はまあサラサラとこんな感じで
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2010/03/30
まずは宮尾審議委員就任会見。最初ですのであっさり味。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1003d.pdf
○超過準備の効果は定量的ではなく定性的な側面で
過去の量的緩和政策に関する評価についての質問に対して。
『(答) まず、過去の量的緩和政策の評価に関しては、私自身、過去の論文等で少し触れたことがあります。私自身がどのように考えているかというと、流動性危機あるいは金融システム対策としては効果があったのだろうと考えています。一方で、最終的な景気・物価に与える影響がどれだけあったかということについては、まだ結論が出ていないのではないかと思っています。』
つまり超過準備の存在が金融市場の流動性問題を解消するという面についての効果ですが、ではその超過準備が景気や物価にどういう効果を与えたかは微妙ですという話ですな。
昨日ちょっと引用しましたが、現在のバーナンキのFRBでは資産買入に伴って生じた超過準備がMBSなどのスプレッドを縮小させ、金利の引き下げによって効果を与えたという理屈を展開しています。実際問題として本当にそうなのかという点はツッコミどころ満載だと思うのですが。
『当時の日本経済の場合は、銀行部門が傷んでいましたので、その意味では効果が限定的ではなかったかという評価が大勢ではないかと思います。ただし、これについては現在、学術的な実証研究・検証が進行中です。このため、今、私が申し上げた評価というのは最終的な結論ではありませんので、その点は是非ご注意いただきたいと思います。私自身、今後の研究の進展を注目していきたいと思っています。』
そういう意味で米国と比較した場合、米国の場合は個人部門のローンなどでもMBSとかの金利が貸出に跳ねる部分があるので、金融市場の機能回復をするのが実体経済により跳ねやすいというイメージ的な話はできますけれども、恐らく実証研究したらそう簡単な話でもないんでしょうなあと思うのですが、何せ米国の個人借入がどうのこうのなんて向こうに何年か住んで生活しないとよー判らん類の話ですので、ドメドメのあたくしが知る由も無しとな(涙)。
○今回の新型オペ増額に関して
で、同じ質問の中で新型オペに関する見解も聞かれましたが。
『次に、3月17 日に決定された新型オペの拡充については、これまで外部から新聞の論調等を見て様々な議論があるということを承知しています。その評価や政策効果については、本日着任したばかりですので、具体的にコメントすることは差し控えたいと思っています。』
何だつまらんと思ったらその後に今回の措置に関しての見解が。
『ただし、きわめて一般的な考え方ということで申し上げると、今回は、景気判断として、ある程度景気が持ち直すという局面で追加緩和を行ったということですが、景気が持ち直す局面で金利をわずかでも低下させる、あるいはきわめて低い金利を維持するということは、考え方としては実体経済に対してより刺激的な効果を持ち得る可能性があるということは指摘しておきたいと思います。』
そらそうです。押し上げ介入みたいなもんですわな。
『この点は特に、景気の持ち直しが持続的かどうかということに関わってきます。例えば、経済に対して中立的な金利水準というものがあるわけですが、企業の収益力が持続的に向上して、経済に対する中立的な金利水準が上昇する場合に、効果を持ち得る可能性があると言えます。』
中立金利論に関しては以前福井の俊ちゃん時代にその手の議論が出て、まあ正直言ってあたくしの個人的にはですが、量的緩和の出口戦略の方便として使われていたようなイメージが甚だ強くてどうなんでしょという気がする。いやまあ概念としてそういう話はアリなのですが、結局のところその「中立金利水準」というのが明確に算定できる類の物でも無いと思われる(経済指標の数値などが全部確定した後付けでは算定できるのかもしれないですけれども)ので、結果後付けの理屈に使いやすそうな希ガス。まあいいけど。
『ただ、今申し上げたことは、現在の景気回復がどれだけ持続的であり、中立的な金利水準が上昇しているのかということが大きな論点でもありますので、今後、注意深く検証していく必要があると思います。いずれにしても、そのような可能性を含め、様々なデータをよく分析して今般の政策効果を見極めていきたいと考えています。』
さよですか。
○本質的な問題は金融政策単体では解決しないと
これはまた見事なツッコミ。
『(問) かつての著書を拝見すると、日本経済の長期的な停滞の原因として生産性の低下を挙げています。言い換えれば、金融政策で総需要を調整することについてはどちらかといえば懐疑的であり、おそらく、日銀の仕事ではない構造調整の方をむしろ重視している立場であると思ったのですが、その基本的なスタンスに変わりがないか教えて下さい。』
すいません著書一冊買ったのですが、あたくしは何せハクション大魔王(歳がばれますかそうですか^^)ですので数式が山ほど並んでいるのを見ると卒倒しそうになる為にまだ読了してません(涙)。
『(答) 私がこれまでの色々な著作あるいは論文等で申し上げてきたことは、1990
年代末から2000 年代初頭にかけての、日本が本当に苦しく、いわゆるデフレスパイラルと言われたような、あるいは資産デフレが非常に深刻であったり、不良債権問題の解決の出口がみえない、そういった時の評価です。その当時は、金融政策で何かするというよりも、問題の根源は例えば不良債権問題であったり、様々な構造調整が重要であるというように認識していました。その当時の経済状況のもとではそうした評価をしていたということには変わりありません。』
『ただし、これからまた同じかというと、その前提がもしかして違うかもしれません。具体的に申し上げると、例えば金融システムの問題に関しては、欧米先進各国は現在、かつての日本のように非常に傷んでいるようですが、日本は、相対的にはそれほど問題が深刻ではないと思います。このように、議論の前提が変わってきているということは言えると思いますので、そういうことも踏まえ、今後は政策効果について、データや情報の収集等を通じて見極めていきたいと思っています。』
何かシロウト考えにも程がありますが、あたしゃ金融システムが傷んでいる時の方が非伝統的な金融政策が効くような気がする(まあ金利操作じゃなくて個別市場への介入を金融政策と言うのかという論点はありますが)のですが。つーか金融システム問題やら企業部門の過剰債務問題がかなり解消されている状態で金融政策の効果がという話になると、早速「ではデフレ脱却の為に金融緩和をもっとやらないか」というツッコミが飛んで来るような気がするんだが(^^)。
最後にもこんな質問(^^)。
『(問) これまでお書きになっている様々な論文や著書を拝見すると、金融政策の力に対して懐疑的と思われ、それならばなぜ審議委員に就かれたのかというところが、率直に言うと疑問でした。こうした我々の理解は一方的であり、委員としては、これまでのご所見にとらわれずに柔軟に考えていく用意があるということなのでしょうか。』
(;∀;)イイシツモンダナー
『(答) ご質問にあったとおり、金融政策に対するかつての私の評価は、非常に懐疑的、あるいは慎重な見解だったかもしれません。ただし、それは先程申し上げたように、本質的な問題が金融政策で解決されないということが主要な理由であったので、その意味では、前提は少し違っているということは申し上げられると思います。』
まあ今後の展開を楽しみにしております。
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2009/11/20
○水野審議委員の後任に宮尾龍蔵先生というネタから微妙に話が拡散します
まあ色々と雑感を。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-12549020091119
http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt37/20091119AT2C1900Y19112009.html
水野さんの後任だったら証券系の人になるのかと思ったのですが、どマクロの先生で金融政策に関しても詳しいというお方ですので、実質的には西村さんの後任みたいなイメージですね。日経の記事にもありますように、まあマクロ分析に関しては大変に優れた方のようで、オーソドックス(というか無難というか)な方で良かったですねという感じですか。
というのは良いのですが、国立大学(とは今は言わないのでしたっけ?)の先生というのはそうホイホイと簡単に辞める訳にはいかないようで、来年の3月以降の就任という事でしたら西村さんの(前の)任期が来年4月なんだから水野さんの後任じゃなくて西村さんの後任にしとけば良いじゃんと思うのですけど(証券系だったら指名されたらホイホイ就任するでしょ^^)、そうなりますと12月から来年3月までは欠員2名とかいう豪快な話になってしまう次第で、民主党は何考えとるんじゃヴォケという感じでございます。
#そもそも欠員が出たのも民主党が池尾先生の就任に反対したからですし
んでもって欠員話は兎も角として、依然として海外の金融システムは怪しげな部分もありそうですし、日本でも金融株とか絶賛下落(希薄化のせいですけど)してるとか、必ずしも平時モードでは無いという状況において金融市場の細けぇ話にも詳しい水野さんの後任がどマクロの学者先生というのも微妙にアレな所がございまして、いやまあ世の中が平常モードでしたら学者さんだらけでも問題ないのかも知れませんけれども、こーゆー状況においてはちょっと不安感も。というか目先2名欠員ですが。
何でそーゆー話をするかと申しますと、またも人のふんどしですが本石町日記さんがちょうどNRIの「金融市場パネル」のエントリーをしていたからでして。
http://hongokucho.exblog.jp/12343005/
「金融市場パネル」より、討議の簡単な紹介=徐々にマニアック化
ちなみに議事概要はNRIのサイトにございます。
http://www.nri.co.jp/opinion/r_report/pdf/200910kinyushijo.pdf
宮尾先生の発言じゃないからまあ別なのですけれども、本石町日記さんが紹介した中での最後の部分は別の意味で唸ってしまいましたんですよね。
『福田氏:
・日銀による企業金融支援特別オペについては、今となっては、本当に企業金融を「支援」しているとは思えないし、金融機関にとっては、このオペがなくなっても、プレミアムを払えばロンバート貸出を利用できる。
→かなりマニアック。正直、福田先生からこの意見が聞かれるとは予想外であった。 』
本石町日記さんはマニアックということで誉めてるんだか誉めてないんだかよく判らんのですが(^^)、福田先生のこの指摘は(議事概要でも同じ書き方でしたけど実際の所はどういう文脈で話していたのか良く判らんのですが、一応文字通りに受け止めますと)あたくし的には「何ちゅう乱暴な」というイメージの方が先に立ちますわな。
つまりですな、確かに「金が取れるか取れないかで生きるか死ぬか」というような状態だったら0.1%でも0.3%でも細けぇこたあいいんだよ!となりますけれども、短期市場ちゅうのはそれこそGCが0.13で3MTBが0.155で1YTBが0.185でというような細かい世界で勝負している訳でして、0.1%と0.3%というのはとんでもない違いなのですけど、ここに出てくる書き方だとその辺への肌感覚が全然ないんですねという風にしか読み取れなくて残念感が先に立つんですけどね。
まあそれ以外の問題として考えますと、ロンバートを毎日ロールするのと特オペに参加するのとでは事務的な手間暇も調達した資金の流動性問題も全然違いますというようなこれまた先生様的には細けえことかもしれませんけど、実際問題として政策を回す時に実務的な論点は(まあ本職の政策担当でも市場参加者でも無い人にそんなことまで理解しろというのも無茶なのは承知してますけれども)非常に重要なのでありまして、その辺への斟酌が無いとワークするものもワークしなくなると思うのであります。
まあちょっとイチャモン成分が強いっすけど何かそんな事を思ったのでありました。まー宮尾先生はこれからそういう細かい所も是非ご理解を深めて頂きたく存じます。
あと、色々と反対意見を言う水野さんが抜けてしまうのは政策委員会が(ヲチャー的に)つまらなくなる懸念が思いっきりするのでありまして、ここは民間出身の中村さんと亀崎さん、割と反対意見が出たりする銀行出身の野田さんに期待致したいと存じます(^^)。
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