増一行 審議委員
トップページに戻る
審議委員一覧に戻る
増さんの略歴(日銀Webより)
昭和34年2月19日大阪府生まれ
昭和57年3月 東京大学法学部卒業
昭和57年4月 三菱商事(株)入社
平成16年4月 三菱商事(株) エネルギー事業グループコントローラー
平成20年3月 三菱商事(株) 業務改革・内部統制推進部長
平成22年4月 三菱商事(株) コーポレート部門管理部長
平成23年4月 三菱商事(株) 生活産業グループ管理部長
平成25年4月 三菱商事(株) 執行役員 主計部長
平成28年4月 三菱商事(株) 常務執行役員 CFO
平成28年6月 三菱商事(株) 代表取締役 常務執行役員 CFO
令和4年6月 三菱商事(株)退任
令和4年7月 日本公認会計士協会 理事
令和4年9月 EY Japan(株) シニアエグゼクティブアドバイザー
令和6年6月 日立Astemo(株) 取締役 監査等委員
令和6年9月 国立大学法人 東京藝術大学 監事
令和7年7月1日 日本銀行政策委員会審議委員
任期:令和7(2025)年7月1日〜から令和12(2030)年6月30日
2025/07/03「増さんの就任会見の詳報見たらベンダー報道が変でしてまあごく無難なスタートですね」
2025/07/02「増さんの就任会見はベンダー報道を見ると微妙感が漂うのですが・・・・」
2025/07/03
お題「増審議委員の就任会見テキストを見たらベンダーヘッドライン見たときの印象とは違いますね〜(まあこれからって感じかと)」
明日は我が身という思いをもってほしいもんですな
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-02/SYS25KDWRGG100
英国資産がトリプル安、財政懸念高まる−リーブス財務相には辞任観測
Greg Ritchie
2025年7月3日 1:20 JST
〇増委員の就任会見録をみましたところベンダーヘッドライン詐欺要素が強かったのでホッとしました
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250702a.pdf
増審議委員就任記者会見
――2025年7月1日(火)午後5時から約30分
・最初の質疑と最後の質疑では「まだ白紙」を強調していましたが・・・・・・
一番最初の質疑が、
『(問)審議委員就任に当たっての率直な気持ちをお聞かせください。また、日銀は現在利上げを進める局面にありますが、ご自身としてはどのような政策スタンスで政策決定に関わるお考えでしょうか。この二点についてお願いします。』
『(答)抱負を聞かれるかと思っていたら率直な感想ということでしたので、率直に申し上げますけども、職業人生の最終盤で、こんなえらい重責が来るとは本当に思ってもいなかったので、率直に言うと、えらいことになったなというのが本音のところですね。ただ、ご指名を頂いたのは本当に名誉なことですので、もう精一杯やるだけだとそう思っております。』
微笑ましい回答(別に茶化してはいません為念)
『それから、政策のスタンスの件ですけど、これはちょっとさすがに具体的には差し控えさせて頂きますけれども、今の日銀のスタンスっていうのは承知しておりますし、今日就任したばかりですから、これから執行部からの説明ですとかデータをみさせて頂いて、それを聞く前にお話しするべきことではないと思いますので、それよく聞いたうえで、自分でよくそしゃくして、責任感を持って議論に参加させて頂くということにさせて頂きたいと思っております。』
となっていて、最後の質疑でもう一度、
『(問)俗にですね、利上げに積極的な人をタカ派、慎重な人をハト派と言います。先ほど、具体的な金融政策運営については、これから日銀の執行部と議論して決めるというようなお話がありましたが、増審議委員は、そもそもの考え方として、ハト派、タカ派、どちらかにシンパシーはあるんでしょうか。』
『(答)きわめて正直に申し上げて、頭の中、そこは真っ白でして、どちらとも今、何かの定見を持って持ち込むというようなところにいたわけでもありませんので、きわめて私は白紙だと思いますので、どうしても図表上にプロットをされたい場合は、是非図の一番真ん中にぽっと置いておいて頂ければいいかなと思います。』
って話をしていますし、途中でも「そこはこれから考えます」って説明がちょいちょいと出てきていましたので、まあこの「一番真ん中に置いてくれ」ってのは本音なんだと思いました。
・とは言えお気持ち物価に関しては早速丸め込まれておいでのようですわorzorz
『(問)二点お伺いします。物価への見方をお伺いしたいと思います。日銀は、基調的な物価が
2%に届いていないというふうにしていますが、足元は食品価格の上昇もあり3%超えの物価が続いています。企業実務に携わっていたお立場から、足元のインフレが加速するリスクをどのようにみていらっしゃいますでしょうか。(後半割愛、というか次に)』
『(答)物価についてはですね、特に輸入、エネルギーの問題ですとか、今、米の問題がありますので、そういう意味で日銀が大事にしている、その基調的な物価というところが
2%に行ってないって話は説明も聞いたんですけど、それに違和感は今のところ持ってはないですね。その辺が落ち着いたときにどうなってるかが非常に大切なので、それをみてから十分に考えていく必要があるかなと思っているところです。(後半割愛)』
>その基調的な物価というところが 2%に行ってないって話は説明も聞いたんですけど、それに違和感は今のところ持ってはないですね。
Oh・・・・・・早速大本営に丸め込まれておられるようで甚だ残念。でまあ再三再四申し上げておりますが、この「アクチュアルの物価はこれから下がるはず」が延々と外れ続けていることに関して全然危機感が無いというのが大本営のアレなところで、昨日ネタにしましたラガルドはんのスピーチに見られる欧州の問題意識、日本の場合はさらに現状で「ゼロインフレ期待のアンカーを外して2%に持っていこうとして不安定化させている」という状況なのですから、欧州の指摘以上にインフレ期待が上振れしてしまうリスクが高いというか、雇用賃金の行動みたらインフレ期待上振れしてねえか疑惑しか感じないんですが、何であんなに平気でいられるのかがマジで分からん。
でまあそうやって丸め込まれているのは分かりましたが・・・・・・・・
・企業の価格設定行動(構造的に見て)
質問の後半はこれでして、
『(問)(前半割愛)また、企業の価格設定行動の変化は不可逆なものだとお考えかも、併せてお伺いできたらと思います。』
『(答)(前半割愛)企業の価格設定が不可逆かというご質問ですよね。これは非常に難しいご質問なんですけど、不可逆かということは値下げができないのかというご質問と取ればいいですか。』
質問する方ももうちょっと丁寧に質問して差し上げてください。
『(問)例えば、企業の人件費とか原材料コストの上昇分を価格に転嫁する動きが加速してきたかと思うんですけれども、こうしたその企業の価格設定行動の変化が、長い目でみてデフレ期のような状態に戻らないというふうにお考えかどうかっていうことです。』
よすよす。
『(答)流れという点ですね。今、率直に思うところは、ちょうど端境期にいる感じがするんですね。だからどっちに行くかっていうと、これちょっと感覚でしかないんですけど、そういう流れに向いてるなと思う部分もあります。特に消費者に一番影響が出る食品なんかそういう流れが出ちゃってますよね。』
ふむふむ、まあそうですね。
『ただ、他がみんなできるかどうかというと、まだまだ分からないというか、だいぶ変わってきたとはいえ、日本企業はまだまだ終身雇用で、長い期間雇うという意味で簡単に給与を上げにくいというところもありますのでね、それが日本全体に伝わってるかというと、そういう動きが出た部分と、まだまだかなという部分と分かれてる、ちょうど真ん中辺にいるんじゃないかなという気がします。』
というのはまあこれは感覚の問題になるから何ともいわく言い難いところではあるのでしが、そもそも論として「日本企業はまだまだ終身雇用で、長い期間雇うという意味で簡単に給与を上げにくいというところもありますのでね、」ってところが本当にそうなのか、という辺りはヒジョーに気になる所ではございます。
・物価よりも景気の方に完全に目線が行ってますね、というのは把握した
次にこんな質疑がありました。
『(問)トランプ関税の影響につきまして、今日の短観なんかでも、一部業種にとどまってる状況ですけども、委員は今後どういった時期にですね、そういったものが顕在化して、具体的に内外経済に、いわゆる物価についてどのような影響が出てくるとお考えか。』
『また、影響が出てくる前にですね、日銀が、物価が上振れたからといって利上げをするということには慎重であるべきか、影響が出る前の政策、利上げとか、そういうのに慎重であるべきかどうか、その辺のお考えはどうでしょうか。二点お願いします。』
この回答ですが、前半については
『(答)トランプ関税は、実は、非常に難しいご質問なので、今日までに解決していることを祈ってたんですけど、大変残念ながら全くこの状態ですので。そうですね、企業の受け止め方は、今日短観でしっかりした数字が出てたということをみると、悲観論が減ってきてるということは確かだと思う。それは悪いことではないと思うんですけど、これ、まだまだ交渉が終わってませんから、交渉中ですから、これは絶対見守っていかなきゃいけないことですし、それから、おそらく自動車が引っかかってるんだとすると、自動車は対米輸出の中核ですので、ここをちゃんとまとまらないとどうなるかというところ、もう本当予断を許さない状態が続いてるかなと思います。』
ということで、自動車関税の話に全集中という感じでして物価への影響という質問にはそもそも回答すらしていないでござるの巻。
まあアレです、さっきの基調的物価うんぬんの部分を見ますと、あの「お気持ち物価」に対して既に大本営によりますイニシエーションもといブリーフィングが十分に行われておられる、というのはまあ普通に想定できちゃったりする訳ですよね。でもって上記の質問に対して(この後の後半部分も含めましてそうですしさっきの質疑もそうですが)物価上振れの問題について特に大きな問題意識を表明していない、っていうのは、これすなわち今の日銀大本営様におかれましては、物価上振れが長期化している問題に関して(田村抜刀斎とたぶんもう一人か二人の審議委員以外)こんなんどうせ下がるぜ楽勝楽勝、と楽観視しているということを示唆しているんですわな、というのがよくわかる部分だな、とアタクシは思った訳で、いやもうちょっと物価上振れに関して危機意識持てよとは思うのですけどね。
後半の所がヘッドラインになっていましたが、
『その中で、つながったご質問だと思うんですけど、利上げとか金融政策をどうするかという点は、ここをよくみてからじゃないとやはりできないと思いますので、これをみながらという、今そういうスタンスで日銀自体はいると思うので、それについては私も、聞いていて違和感を持ってるところはないです。』
ということでして、物価高なんぞは知らんがな一過性のコストプッシュだから下がるわ、というのは相変わらずです、っていう大本営のスタンスはよく伝わったと思いますが、この部分も妙にハトハトチキンっぽいヘッドラインにされていましたな(いやまあ大本営の口伝なのでハトハトチキンはハトハトチキンなんですけど)。
・ヘッドラインほどヤバイ発言ではなかったのは安心しましたが・・・・・・・・・・
この質疑応答の発言が結構ヤバイ感じのヘッドラインになっていたので実はこの会見録をネタにするときに「この想定を書いたのは誰だ(ガラッ)」と突発性海原雄山を発症する予定だったのですが、ヘッドライン詐欺成分の方が強かったのには安心しました。
というのは上記質疑の次になるんですけど、
『(問)二点お願いします。一点目が、大規模金融緩和を、当時、企業経営者の
1 人として、どういうふうにみていたり、評価していたのかというのが一点目。(後半割愛)』
こんなん「アリガタヤ」って回答させる誘導質問じゃろという感じですが増さんの回答は、
『(答)まず、金融緩和をどうみていたか、これが、今、その時期私が自分は何をしてたかというのをちょっと思い出しているんですけれども、そうですね、やっぱり企業としてこうあってほしいというものっていうのは、やっぱり、あったのはあったと思うんですね、』
『その時期って。大きな流れがですね、少しこのままでは良くない、特に総合商社なんかにいますと、デフレというものがですね、企業経営にどうなるかっていうと、総合商社ってどんなとこでも泳いでいくところがあるので、ちょっと今お答えに詰まっちゃったのはそこなんですけど。』
増さん、この質問が大いなるトラップなのはちゃんと把握していて、その結果「ちょっと今お答えに詰まっちゃったのはそこなんですけど」って回答している、とお見受けしました。ということでまあアタクシの妄想かもしれませんがこの辺りの部分は何気にワシの中での好感度が高いです。
『商社としてどうだったかというと、どんな方向でも何か対応して生きていこうとする集団なので、そのときどうしてたかというと、それに合わせて今度はやっていくしかないなというかたちで生きてたのは事実なんです。』
でまあここからが本論(?)で、
『ただ、経済全体がデフレっていうのがいいわけはないので、その中で、デフレ対策として大規模な金融政策を打っていくということは、国民みんなが期待していたことも事実ですので、それについて期待する施策だったなというのは確かだと思いますね。(後半割愛)』
この部分、まあ確かに説明の方法は微妙ですけれども、会見のヘッドラインベースだと増さんが如何にも「黒田緩和は国民が求めた政策」と発言したかのような書かれ方をしていまして、まあ普通にそういう書かれ方するのは良いわけないですよね。
「国民が求めた政策だから実施」っていうのはこれ日銀(の大本営)が責任回避するときによく使う言い訳の一つなんですけど、そんなこと言ったらパウエルだって(国民の負託を受けた)大統領様が2%利下げしろって言ったら利下げするんですか、って話に発展する訳で、中央銀行が何で独立した存在として管理通貨制度における通貨価値の維持をしているのか、という根本を崩す話になってしまう訳で、「国民が求めた政策だから実施します」で済むなら独立した政策委員会なんぞ要らんわというお話に繋がる話だとアタクシは強く思う訳です。
でまあそんな次第なのでヘッドライン見たときにかなりビビって、昨日はちょっと大丈夫かみたいなトーンで書いたと思うのですが、まあこの説明を見ますと「デフレ脱却のために大規模金融緩和を行ったのですからそりゃまあそういうもんじゃろ」というのが主文で、国民云々はおまけっぽいように見えますので、そこまでドイヒーな発言でもなかったかと杞憂民安心するの巻ではございましたが、ただまあ「国民が期待してた政策云々」という説明は、日銀大本営の屁理屈シリーズの中でも結構なタチの悪い開き直り屁理屈を捏ねている時に使われる奴なので、ちょっとこの理屈展開をされてしまうのは不安が無いわけではないですな、とワイは根が杞憂民なのでそう思いました。
・質問に無い地政学というか事業のリスク分散の話があったので折角だから引用します
次の質疑ですけど、
『(問)二点お願いしたいんですけれども、一点目は、産業界ご出身ということで、企業の観点から、最近の地政学リスクやトランプ関税といった、企業活動にとって大きな逆風ですけれども、これが今後の企業の景況感や設備投資にどの程度の悪影響を及ぼし得るのか、ご感触を伺いたいというのが一点目です。(後半割愛、というか次でやります)』
というのに対しまして、
『(答)地政学はちょっと日銀とは関係ないと思うんですけど、逆にいうとお答えしやすいのでお答えしちゃいますけども、この話題って特に商社がよく聞かれるんですけど、特にカントリーリスクって一番難しいんですね。商社が対面するリスクの中で一番難しい。』
以下この話が続くのですが、金融政策に直接の関係は無いとは言え、話が面白いのと実は金融政策運営を考えるにあたっての示唆もあるんじゃないのと思いながら読んだので引用します。こういう話を思いっきりする自我がでてるのは、大本営に変に丸め込まれないのであれば良い流れになって欲しいなと。まあだいたい新法以降の過去において大手商社出身の政策委員の方々は必ずしも大本営に丸め込まれないムーブを示していたので増さんにもそこは期待しているというのもあります。
ということで増さんのお話に戻りますが、
『というのは要するに予測がつかないので、短期間だったら予測がつくかもしれませんけど、やってる事業によっては非常に長いもの、特に商社は長いものが多いですから、長い期間で安全かどうかって測るってやっぱり本当難しいんですよ。』
そらそうですね。
『そうすると、今起きてることをみてどう判断するってなかなかしにくい。』
金融政策判断の考え方にもつながりそうな気がします。なんせ今の日銀大本営は緩和政策の調整(つまり利上げ)を先送りしようとしてとっかえひっかえ目先の現象を捕まえて屁理屈を繰り出すというのを黒田末期以来連発しているんですからwwwww
『具体的な例で言いますと、私がまだかなり若い時期にあのイラクの問題が起きて、実は三菱商事は非常に大きな与信がイラクにあったんですけど、これがまさかですね焦げ付くっていうふうには思ってもいなかったことがいっぱい起きてしまうと、これが地政学リスクなので、予測不能のことに対して、どう対応するかっていうのをいちいち考えてると何もできなくなってしまうのも事実ですから、この辺をどう上手にやるかというのは各社の工夫だと思うんですね。』
>予測不能のことに対して、どう対応するかっていうのをいちいち考えてると何もできなくなってしまうのも事実ですから
別に他意は無いと思うのですが昨年来隙あらば不透明要因ガーばっかり持ち出すチキンさんに対する巧まざる砲撃になっているのはチャーミング^^
『特に商社がやってたのは、できるだけ特定の国に偏らないようにしていくということ、分散させていくっていうことが、そういうことをやれる業態なので、分散をもうあれ以降は気をつけてやってるということが事実かなと思います。ですから、これをみて特定の地域は危ないからとかいう話には、なかなか探していくと、どこにも出すとこがなくなってしまうので、アメリカが一番安全なんて言ってて本当にそうかってことも起きますから、そういうふうに対応するのが地政学かなとは思っています。(後半割愛)』
ということで政策論議とはまあちょっと違いますが面白かったので引用してみますた。
・利上げを急ぐ必要が無い発言ですがそもそもこれ質疑応答が噛み合っていないですねwww
さっきの後半ですけど
『(問)(前半割愛)あと二点目なんですけれども、利上げをいつするとかそういったタイミングは、まだなかなかこれから執行部の方との議論というふうにお話しになってましたが、日本の実質金利はかなりマイナスであると、他の国に比べても日本の、日銀の政策金利は非常に低いんですが、今の日本の金利はやっぱり低過ぎるとお考えなのか、そろそろこの超緩和的な政策の出口をもう少しスピードアップすべきなのか、今の日本の企業や経済にとってこの金利水準、緩和水準についてどういうふうにお考えになっているか、お聞かせください。』
ということで「今の金融緩和状態の水準」について質問しているのですが、増さんの回答は、
『(答)(前半割愛)それから実質金利がマイナスというのは、これはもう事実なわけですから。でもご質問はスピードのお話だと思いますけど、スピードに関しては今の情勢、特に昨今の経済情勢をみると、急いでいい状態とも言えなくなってるわけなので、こういうのをみながら決めていくっていう、総裁からも発信されてるコメントっていうのには全く違和感がありませんので。』
そもそも質問と回答が噛み合っていませんでしたw
ただまあ何ですな、この後に
『ゆっくりがいいという意味ではありませんよ。慎重に考えながら、実質金利がマイナスだから急いだ方がいいというふうには思っていないと。よく話を聞いてデータをみてこれから考えていきたい、一番そういう部分ではないかなと思ってます。』
という説明をしているのが人間味溢れる(意味深)部分でして、これアタクシの妄想なんですけど、増さん前半部分の説明をして、「これじゃあハトハトチキンの極みっていう事になりそうだから中和しないと」と思って「ゆっくりがいいという意味ではありません」以下を入れたって事だという風に理解しましたので、これまたベンダーヘッドラインの印象操作作用恐るべしと言った所なのではないかと思いました。
まあどこからどこまでが大本営丸め込み要素が入っているのかは謎ではありますが、もしこの「ゆっくりがいいという意味ではありません」という部分が実は大本営の意思を反映しているのであれば、それはそれで一段と面白いことも想定されますが、その辺りはまあ適当に深読みするネタとして使えるんじゃないかなと思いました笑。
・企業にとっては円安は基本的に(゚д゚)ウマーと言いつつも色々と留保しているのは味わい深い
ちょっと飛んで先の方に行きますが為替水準に関する質疑がありました。
『(問)二点お伺いしたいんですけれども、為替レートなんですけども、今 1
ドル 143 円台というところで、この為替水準というのは、日本経済への影響という点では、いい円安なのか悪いのかっていう点、ご認識をお伺いしたいというのが一点目。(後半割愛)』
この部分はまあ下手な回答するとちょっとした事故になるのでさすがに慎重な回答をしていまして、
『(答)為替のご質問ですけど、今の 140 円がいいのか悪いのかっていう。これは、業界によって皆さん違ったりするんですよね。私のいた会社は、円安の方がいいというのはご承知の通りで。』
と最初に断りを入れておきつつ、
『かなりの会社が、それによって業績が上振れしていることは間違いないんですけど、悪い影響が出てる会社も当然ありますし、悪い影響は特に消費者側に出ますので、物価というかたちで。これをいいのか悪いのかっていうと、やっぱり両方出てくると思うんです。』
まあ模範解答。
『ただ良い面の方の分析だけ先に言っちゃってしまいますと、良い良いと言っても、例えば最近は、輸出がたくさん円安でできるから儲かるという形態じゃないやつが多いじゃないですか。』
ほうほう。
『これ商社なんかが典型でして、それから製造業さんもそうですよね。既に拠点を外へ出してる企業さんが多いので、そこで上がった利益が円安になると評価として大きくなると。評価として大きくなっていることが本当にいい業績になってるかっていうと、必ずしも多分、誰も実感はないと思うんです。いい業績になってるという実感を企業側が持ってないのが、この状態かなと。』
それはそうですよね。
『というのは、上がった利益を日本まで引いてくれば、ちゃんとした日本円で利益になりますけど、置いてあるままになってるケースが結構多いと思うので。これってまだ評価益ですから、この後円高になったらこの部分が減ってしまう。置いといていいのか、でも全部引いていいのかと、こういう悩みが出てくる中で、言い方を変えますと、円安になったから、業績が良くなってるから、これは良い為替だと企業側も思っていないと思うんですね。』
おおおおおおおおお!!!!!!
『少なくとも物価に関しては、輸入物価に影響するという意味では、必ずしも良くないインパクトを与えてますので、やっぱりいつでも両面あって、立ってる場所ですとかによって相当違うものかなと思います。(後半割愛)』
ということで円安上等スタンスは取らなさそうなので結構なことだと思いました。
・日銀保有のETFに関する問題を多分狙っていたわけではないけど結果的に喝破しているのはチャーミング
最後から2番目の質問になります(最後のは冒頭に引用したタカハトプロット)。
『(問)委員は民間企業ご出身で、なおかつコーポレート・ファイナンスの分野にもお詳しいということで、あえてお聞きしますが、日本銀行は、中央銀行としてはかなり異例なことに、巨額の事実上の株式を保有しております。ETFというかたちで、東証プライム市場のおよそ
7%ぐらいの株を持っている状況にあります。』
キタコレ!
『中央銀行がこのように大株主であるという状況についてどのようにお考えなのか、やはりこういうものは手放した方がいいというふうにお考えなのか、あるいはすぐに手放すのが難しいとしても、何らかの企業統治の工夫が必要になるのか、その辺りについてご所見をお聞かせください。』
ということですが、
『(答)株式なりETF、株式はだいぶ減っていて、個別銘柄で銀行から出たやつは、もうだいぶ減ってると思うんですけど、』
うへー懐かしい(なんせ銀行が持ってる個別株とかいうのって始まった時はまだワイ国債のマーケットメイクしてた時代じゃ)。
『ETFで持っている部分について、大きな数字になってることは承知してます。』
はい。
『こう整理した方がいいですね。最初に銀行から出た株を一度日銀が買って、マーケットへ出ないようにして、今日までゆっくりさばいて頂いた、これは企業として非常にありがたいことだったわけで、あの段階でマーケットに出ていたら、株価にすごいインパクトがあったわけですから、これは非常にありがたいことだったと思います。』
まああれは銀行の財務リスク減らすという大義名分で実施した訳ですからね。
『ETFは、これは入り方が多分違うルートから入ってますので、』
ちゃんと整理されていて偉いです。
『これをもって企業側としてですね、日銀に株を持たれてるという意識はあまり持ってないですね。』
でまあこの部分から以下の説明が大変に滋味のある話でして、これ日銀が「金融政策として」とか言ってETFを調子にのって買い続けた弊害について別に増さん自体は弊害の指摘みたいな意図は無く説明をしていると思うのですが、しれっと問題点の大指摘になっているんですよね。
つまり上記のように「日銀に株を持たれている意識はあまり持っていない」という持たれ方をされているのが株主によるガバナンスという文脈からしたらアチャーという部分でして、さらに追い打ちをかけるように(増さんは追い打ちかけている気は無いと思うのですが、知らんぷりしながらしれっと問題点を指摘しているんだったら中々の狸です)、
『ETFってかたちを通ってる。もちろん、ETFだって議決権は出そうと思えば出せますし、全く影響がないとは言えませんけれども、企業側から意識をしてみているということはないと。』
これは見事な追い打ちwwwwww
『そういう意味では、統治の話になると、ちょっと私もピンとこないところもあるんですけど。』
ということでピンとこないと言っていますがおとぼけで言ってるんだったら狸又にも程がありますw
『これはどうしていくかというと、今の状態がいいということは、もうもちろん誰も思ってないことなので、どこかで圧縮はしていかなきゃいけないと思うんですが、これは当然株式市場全体にすごく影響のある話ですから、すごく時間をかけて、きわめて慎重にやっていって頂くということが企業としては望ましいこと。それから日銀としても、そうやる必要があることかなと思っております。』
まあこの点はそういうしか言いようが無いでしょうな。うんうん(今のままETF形式で持っている必要があるのか問題とか色々とこのETFには問題が山積である)。
ということで今朝は増さんのネタだけで勘弁してもろていただいてということで。
2025/07/02
〇増さん就任会見(の詳細は会見録出てからですが)と中村さんお疲れさまでした
https://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/pb250701a.htm
審議委員の発令について
2025年7月1日
日本銀行政策委員会室
『次のとおり発令がありました。
増 一行
日本銀行政策委員会審議委員に任命する
令和7年7月1日
内閣
なお、中村 豊明 政策委員会審議委員は、6月30日任期満了により退任しました。』
ということで中村委員はしょっぱなから「給料が上がらないなら株や投資信託を買えばいいじゃないか」というような感じで、いやまあそれ全く間違いという話ではないのですが、基本的にマッチョ理論で来てて、そらまあ社会の構成員の皆さんがマッチョになってバリバリと頑張れば社会の生産性も高まるし成長もしますし、というのは仰せの通りなんですけど、うーんそうじゃないんだよなあ感はずっとありましたな、というお方ではありました。
なんちゅうかですね、マッチョになれない人の方が世のなかの多数だと思う訳でして、そういうのを前提としながらも、社会全体はがっちり成長できる、みたいなシステム構築というのはできないものなのか、というのを思う次第でして、まあその辺は最後まで疑問ではあったのですが、ただまあ主張そのものは考え方として一つの考え方ではあったので教義の違いはあれどもオモロイ方ではあったかなと。
でまあ増さんですが、初手の会見のニュースヘッドラインを見ますと・・・・・・
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-01/SYNLH6T1UM0W00
増日銀委員、利上げ急いでよい経済状況にない−米関税の影響を見極め
伊藤純夫
2025年7月1日 11:07 JST 更新日時 2025年7月1日 19:25 JST
どういう質疑応答をしたら「利上げ急いでよい経済状況にない」という回答になるのかが良くわからんのですが、利上げ急いで「よい」ってナンジャソラということで・・・・・・
→実質金利がマイナスだから利上げを急いだ方がいいとは思わない
→悲観論は減っているが予断許さない状況、よくみていく必要−米関税
ということですが、いや実質金利がマイナスってのは飛んでも無い緩和状態な訳で、その上物価は2%台後半から3%台前半というのを延々と続けている状態なんですから、本来は「実質金利のマイナス状態とかいう飛んでも無い緩和状態を継続して良いのかどうかをよくよく見極めないといけない時間帯」の筈なんでございますが・・・・・・・
『日本銀行の増一行審議委員は1日の就任記者会見で、金融政策運営に関して、利上げを急いでよい経済状況にはないとの見解を示した。』(上記URL先より、以下同様)
また出てきましたな。まあ先を読んでみますと、
『増委員は、利上げについて「昨今の経済情勢をみると急いでいい状態とは言えなくなっており、こういうことを見ながら決めていくという総裁の発信に全く違和感ない」と指摘。その上で「ゆっくりがいいという意味ではなく、慎重に考えながら、実質金利がマイナスだから急いだ方がいいとは思っていない」と語った。』
うーんなんでしょうこの説明は、というかそもそもこの「利上げを急いで「良い」状態」ってのが良くわからない表現でございまして、この表現に「藁人形論法」っぽいのを感じるのですよね。だって利上げを急ぐか急がないかってのはべき論の話であって良い悪いみたいな表現使うのが妙なのですが、植田日銀になってから植田さんが(最近は言わないけど「拙速な利上げ」とかそもそも「拙速」という言葉自体に良い悪いみたいな意味合いが(この場合は悪い、ですけど)含まれる表現を使っていまして、いやだからそうじゃなくて経済物価情勢を鑑みて今の政策金利水準が適正なのかどうか、って話がまずあるじゃんと思うのですが、その話を華麗にスルーして価値判断みたいな言い方に逃げるのっていう辺りがもう植田日銀大本営なものを感じるわけですな、南無三。
しかも「急いでよい状況にない」って言ってるのに「ゆっくりがいいという意味ではなく、慎重に考えながら、実質金利がマイナスだから急いだ方がいいとは思っていない」とまで言われるとナンノコッチャにも程がある訳で、急いでよい状況にないんだったらそれはゆっくりが良いって事になるじゃろと思うので、何ですかこの謎説明はという感じですが、まあ会見録を読んでこの辺は何をどうしたいのかという話を見ていきたいと存じます。
『トランプ米政権の関税政策の影響については、1日公表の6月日銀短観がしっかりした内容になったことを踏まえ、「企業の受け止め方として悲観論が減っていることは確かだ」と説明。一方で関税を巡る日米交渉などの行方を見極める重要性を指摘し、「予断を許さない状態が続いている。その中で金融政策をどうするかは、そこをよく見ていかなければいけない」と述べた。』
単純に「関税交渉の結末がどうなるかがまだ不明な状況にあるので様子見」って言えばよかっただけの話だと思うのですが・・・・・・・・・・
とは言いましても、わざわざこういう説明をした(あるいは大本営謹製想定問答にこういう説明がぶち込まれた)というのに無理やり意味づけをしますと、日銀大本営におかれましても、先般の田村委員による抜刀、すなわち「そもそも物価が高止まりしており、世の中の予想物価上昇率が2%に既に達しているかもしれないという状況の中において、先行き不透明だからと言って緩和政策の調整を渋っていると、インフレ期待が2%を超えて上振れてしまい、日銀の「物価の番人」としての責務が果たせなくなる恐れがあるんじゃないか」という問題提起になる訳ですが、この点につきましてはハトハトチキン植田総裁と言えども流石に植田和男先生という真人間に戻って考えた場合に思う所があって、でまあその結果こういう話になるのかな、とも思ったり思わなかったりする訳ですが個人の妄想なのであくまでも妄想語りということで。
とまあそういうことで、物価とインフレ期待の動向を鑑みるに大丈夫なのか問題、というのがさすがに無視できなくなってきたのではないか、という事になっていれば結構な傾向かなとは思うのですがどうなんだか・・・・・