黒田東彦総裁(2015年度上期)

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2015/09/30「大阪での会見も質疑は無理矢理感のある強気で質疑は全然かみ合っていない」
2015/09/29「大阪での経済界向け講演は強気姿勢維持」
2015/09/17「9月決定会合定例会見は無理矢理感漂う順調の強調」
2015/08/28「ジャパンソサエティの今年の講演は相当の出来の悪さ」
2015/08/11「8月決定会合会見も暖簾に腕押し攻撃ですな」
2015/07/24「アジア開発経済に関する総裁講演は黒田さんの構造改革論者っぷりが良く分かります」
2015/07/17「展望レポート中間レビューの黒田会見は相変わらずの強気モード」
2015/06/30「BISでの講演は益々ファンタジー状態に」
2015/06/23「定例記者会見は案の定為替がらみが多いがつまらん質疑応答」
2015/06/17「参院半期報告で10日の答弁を訂正」
2015/06/11「国会答弁で円安けん制っぽい発言をして市場が大騒ぎ」
2015/06/05「金懇コンファランスでの挨拶で遂に金融政策にピーターパンの譬えを持ち出す」
2015/05/26「定例記者会見は質問がパッとしないので面白くないです」
2015/05/19「読売懇話会での講演は内容の劣化が見えますな(その2)」
2015/05/18「講演で実質金利の効果を利下げ10回分とかだんだん説明がイカサマになっていますな」
2015/05/07「展望レポートの定例会見はただの俺様ロジック発表会だった件」
2015/04/24「国会でオモシロ質疑があったようなので2月の大門VS黒田のサプライズ緩和問答を鑑賞」
2015/04/21「米国での黒田総裁講演の内容があまりにもひどすぎるクオリティでお笑い以外の何物でもありません」
2015/04/16「信託大会での挨拶は総括でもなんでもなく今更何の話ですかまだ原則の話ですかという感じで」
2015/04/10「定例会見は質問に対して全然正面から答えず説明が苦しい事を示唆しますな」
2015/04/02「入行式の挨拶が自爆ギャグにも程がある件について」

2015/09/30

○総裁会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1509d.pdf

・また見事に会話になっていない質疑ワロタ

個人消費について質問が来たのですが・・・・・・・・・・

『(問) 関西経済の現状についてですが、特に大阪商工会議所会頭からは、個人消費については順調とは言い難いとの厳しい見方が示されましたけれども、これは全体の日本経済について、総裁が最近示された個人消費が底堅く推移しているという見方とは若干違うと思うのですけれども、その点についてはどう思われますか。』

その答えがもうね。

『(答) ご案内の通り、関西経済の景気は、以前は、全国、特に関東、中部の景気よりもやや遅れ気味だったわけですけれども、それを完全に克服して、現時点では全国平均よりも少し良いというような状況だと思います。従って、関西地域の景気は回復していると判断しています。』

まあ質問の方が「関西経済の現状についてですが」と入っているのはそうなのですが、どう見ても質問の趣旨は「個人消費が底堅いという日銀の見解は大丈夫か」という話なのですよねえ。

『輸出と生産は、中国をはじめとする新興国経済の減速の影響がみられているわけですが、そうした中でも、この関西地域では緩やかな増加傾向が続いております。また、国内需要の面では、企業部門で、やはり全国と同様に、あるいはそれ以上に収益が好調ということで、設備投資が増加しています。それから、家計部門については、何人かの方も言っておられたように、雇用の改善が続き、所得も改善する中で、四半期ごとの振れ等はありますけれども、やはり個人消費が堅調に推移しているということは全国と変わりないと思いますし、住宅投資も下げ止まっているということだと思います。このように、関西経済は回復しているわけですけれども、最近の動きについて特徴的な点を言うとすれば 2 つあると思います。』

大商の会頭から個人消費について指摘を受けているのに「やはり個人消費が堅調に推移しているということは全国と変わりないと思いますし」で済ませるのなら何で大阪まで出かけて会合する意味があるのかと小一時間問い詰めたい。

『まず第 1 は、企業収益が好調に推移する中で、関西の製造業の設備投資が非常に積極化しているということです。(以下割愛)』

『それから第 2 に、先程も触れましたけれども、関西を訪れる外国人観光客が急増しており、その恩恵を受ける領域が広がってきているということです。(以下割愛)』

と全然質問と関係ない方に話を進めていくというこの攻撃なのですが、まあ経済見通しのメカニズムに対する質問を受けてこういう風にまともな答えをしない、というのは最近の総裁会見の傾向ではあるのですが、この手の質問にまともに答えないというのの根底にあるのは要するに「まともに答えるとマズー」というのがあるからでしょとは思います。

『先行きにつきましては、関西経済は回復を続けていくとみておりますけれども、海外経済の動向というものは、関西経済のみならず、日本経済をみる上でも重要なポイントですので、引き続き注意深く点検して参りたいと考えています。』

ということで前回MPM声明文でもこの時の講演要旨(昨日ネタにした奴)でもそうでしたが、国内の循環メカニズムは回っているけど海外ガーという話になっていますな。


・物価に関しての質問が多いのですが最初に1.1%キタコレ

まあ当然ではありますが。

『(問) (前半割愛)2 つ目は物価ですが、コアコアが非常に順調に上昇している一方、コアはマイナスになっています。油の先物などをみますと、コアは暫く上がらないとの見方もあるようですが、それが期待インフレ率に影響する可能性を心配しておられるのかどうか。また、心配な場合、躊躇なく調整を入れることはあり得るのでしょうか。』

『(答)(前半割愛)2 番目の点については、ご指摘の通り、生鮮食品を除く消費者物価の前年比はこのところ 0%程度で推移しており、直近でマイナス 0.1%になっているわけですが、当面 0%程度で推移するとみております。懇談会での冒頭の発言でも申し上げた通り、生鮮食品とエネルギーを除いた物価上昇率でみると――要は物価の1つの基調を示すものですが――、それは引き続き上昇してきており、プラス 1.1%まできています。』

+1.1%キタコレ。

『従いまして、物価の基調はしっかりと改善してきており、今後、原油価格がどんどん下がっていくことがあれば別ですが、原油価格がここで一定になっても、12 か月経てば完全にマイナスの影響は剥落しますし、先物の価格をみると、緩やかに上昇していくようになっていますので、基本的なメインシナリオでは、エネルギー価格の下押し圧力というのはいずれ剥落してなくなっていくわけです。』

はいはい原油のせい原油のせい。

『このように物価の基調は改善していますので、今の時点で何か大きな問題があるということは思っていません。いずれにしても、予想物価上昇率というのは物価安定目標を安定的に達成するためには非常に重要な要素ですので、今のところ概ね安定的に維持されていますけれども、その動向については今後とも引き続きよく注視をしていきます。もとより、物価の基調に変化が生じて必要になれば、躊躇なく金融政策の調整を行うという姿勢に全く変わりありません。』

という毎度の説明。


・物価指標は色々と都合の良いものを見るとな

という上記の質疑のすぐ後にこんなのが。

『(問) 今の発言に関連して、確認ですけれども、物価の基調をみる上では、コアのCPIよりも最近出されている生鮮・エネルギーを除くCPIの方が、より基調を表しているというご判断でよろしいのでしょうか。また、それに関連して、2%の達成時期は来年度前半とされていますが、原油次第では前後するとおっしゃっていますが、仮にコアのCPIが少し後ろになってしまった場合でも、エネルギー・生鮮を除くCPIで 2%の安定が展望できるような状況であれば、それは2%の目標は達成されたと判断することになると考えてよろしいでしょうか。』

その答え。

『(答) 物価安定目標自体は、ご承知のように、消費者物価の総合指数です。しかし、その消費者物価のトレンドを判断する上では、生鮮食品というのは天候その他によって大きく振れますので、それを除いたものがひとつの重要な指標であることには違いはありません。もっとも、このところの展望レポートでも示しております通り、原油価格が大幅に下落する中で、トレンドをみる上では原油価格、エネルギー価格の変動部分を考慮しないと物価の基調がみづらい面もありますので、それを除いたもの、あるいはいわゆるコアコアという食品とエネルギーを除いた部分など様々な指標をみていく必要があります。』

はいはい。

『また、物価の基調という意味では、本日の懇談会の中でも申し上げた通り、企業や家計の物価観について、賃金の動向であるとか企業の価格設定行動もみていく必要があります。』

物価観攻撃・・・・・・・・・・

『そういう面では、賃金はベースアップが 2 年続きで実施され、今年のベースアップは去年よりも高くなっていますし、しかも産業、企業で拡がりをみせています。』

その水準が2%に対して思いっきり力不足なのはスルー。

『それから、企業の価格設定行動の 1 つの指標として、POSデータ等からみた東大あるいは一橋の価格指数の動向をみますと、昨年と違って今年は 4 月以降かなり上昇してきています。あるいは、600 品目ぐらいある消費者物価指数のそれぞれの品目の中で上昇している部分と、下落している部分との差をみたところでも、上昇しているものが下落しているものをさらに大きく上回ってきているようにみえます。』

だから物価観が強いという事のようです。だったら消費がというのは昨日も申しあげたので割愛。

『このように、特定の指標だけで判断するというものではなく、やはりその時々の状況に応じて、様々な重要な指標をみていくということになると思います』

その時々の状況に応じて適当に都合の良い指標を繰り出すということですね分かります。


・マインドセットについてのイヤミな質問に対して

『(問) 先程の質問と重複するところはあるのですけれども、最後の重要なポイントのところで、マインドセットの転換に時間がかかっているとの指摘がありましたが、QQEは最終的にはマインドセットの転換を図ることを目的としていると思いますが、2 年半続けていて今の政策を継続、コミットメントし続けることでその転換が実現できるというお考えでいらっしゃるのでしょうか。』

(;∀;)イイシテキダナー

『もう 1 点それに関連してですが、昨年 10 月に追加緩和をした時にはデフレマインドの転換が遅れるということを懸念されていたと思うのですが、実際にマインドセットが遅れている、転換が遅れているという懸念が今、顕在化した状況ではないかとも思えるのですが、その際に政策の判断などは必要ではないのでしょうか。』

国内経済の前向き循環メカニズムが回っている、という説明をしているのですが、実際問題として設備投資と労働分配の方は伸びていないですよねとかツッコミを受けると講演にあるように「それは企業のマインドセットがまだ進んでいない面がある」とか答えざるを得ない訳でして、そう説明した点に関してのツッコミとは中々イヤミで宜しいですな。

『(答) マインドセットには、狭い意味でのいわゆる物価上昇予想の話と、それを含めた企業の経営とか、あるいは賃上げの動向という広い意味での話など、色々な意味があると思います。』

ああいえばこう言うキター!!!

『去年 10 月 31 日に「量的・質的金融緩和」の拡大を決定した際には、原油価格はどんどん下がってきており、しかも当面それが続きそうだという中で、物価上昇率自体もどんどん下がっていくことが予想されました。それが予想物価上昇率にマイナスの影響を与えてしまい、デフレからの脱却が遅れてしまうということを懸念して、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定したわけです。』

ほうほうそれでそれで?

『幸いに、その後の状況をみますと、予想物価上昇率自体は概ね維持されています。これは「量的・質的金融緩和」の拡大の効果があった面もあると思いますし、あるいは家計や企業の物価についての見方において、足許でエネルギー価格の下落を背景に物価上昇率が下がっていっても、物価の基調はそれほど変わっていないと考えられたのかもしれません。いずれにせよ、幸いに予想物価上昇率はそれほど下がらずに概ね維持されたということです。』

そもそもその予想物価上昇率をピンポイントで正確に把握することが出来ないということは日銀も認めている筈なのですが、こうやって言われてしまうと結局「やりたい政策が先にあって予想物価上昇率のように計測不能なものを持ってくるのはその理屈付けじゃネーノ」という風にツッコミをしたくなりますが。

『そうした中で、講演で申し上げたような企業や家計のマインドセットというのは、今後の賃金の動向、賃金の決定についての企業や家計の考え方、あるいは設備投資などを含めたもう少し広い意味です。』

そもそも置物リフレ理論によりますと予想物価上昇率が上がって実質金利が下がると消費や投資が活発化するという理屈になっていた筈なのですが・・・・・・・・・・・

『実際には企業収益は大きく改善し、雇用情勢も完全雇用に近い状態になっているにも関わらず、まだ必ずしもそれを反映したように賃金の上昇が起こっていない理由として、企業や家計のマインドセットの転換に時間がかかっている可能性もあると言っているわけです。』

現実問題としてそこに時間がかかるんだったらそもそも論として何で「2年で達成」とか言ったのでしょうかねえと思いますし、そういう状態なのだったらそれこそ「色々な指標を見て総合的に判断」する予想物価上昇率は上がっていないという認識をした方が良いと思うのですが、要は現時点で追加緩和をやりたくないから「予想物価上昇率」と「マインドセット」を使い分けているんでしょとしか申し上げようがありません。

『裏を返せば、ある程度時間を経れば、そういった意味での企業や家計のマインドセットも自ずと変わっていくとは思いますけれども、色々な努力の中で――これは企業側の努力もあるでしょうし、家計側の対応もあると思いますけれども――、そういったマインドセットがより早く転換してくれることは、マクロ的にもより望ましいと思いますし、それをここで申し上げているわけです。』

マインドセットに時間がかかるんでしたらそもそも2年で達成という枠組みを放棄して中長期的に達成すべきものであるでしょうし、要はマインドセットって成長期待な訳ですから、それは成長力強化の取り組みが必要という話ですよね、と言い出すと白川ドクトリン成分が高くなってしまうので、白川ドクトリンをケチョンケチョンに言って総裁副総裁になられた方々の面目玉が丸潰れになってしまいますからそこにはまだ踏み込んできませんよねという事で。


・GDPがマイナス転継続しても物価の基調は更に強くなるとな

『(問) 先日の定例会見で、7〜9 月のGDPについておそらくプラスになるのではないかとしていたと思います。GDPもそうなのですが、生産についても 7〜9月はプラスに戻るとお考えなのかをまずお聞きします。』

ふむ。

『もし、GDP、生産が 2 期連続でマイナスになると、これは普通、景気後退と世界的にはそういう評価を受けることになると思います。もともと物価の基調と言うときに予想インフレと需給ギャップが重要だと常々おっしゃっておられますが、2 期連続の減産、そしてGDPがマイナスということになると、これは明らかにGDPギャップということでいえば逆方向にいくわけです。』

うむ。

『2%の物価目標の 16 年度前半達成も、原油だけで後ずれするのであれば、それほど問題はないのかもしれませんが、需給ギャップという面でそういう一時的な停滞ではない若干長めの停滞ということになると、これは明らかに物価の基調は停滞していると言わざるを得ないのではないかと思います。そういったときに、やはり早期の物価目標実現のためにはできることは何でもやるとおっしゃっている黒田総裁ですので、これは何もしないというわけにはいかないのではないかと思うのですが如何でしょうか。』

逃げ場を塞ぎながらの質問ですがその答えはと言いますと・・・・・・・・・・・


『(答) GDPの成長率が 2 期連続でマイナスになったときには、米国の定義ではリセッションというのだと思います。7〜9 月のGDPがどういう数字になるかは、まだ 7〜9 月の月次のデータも揃っていませんので、これはまだよくみていかなければいけないと思っていますが、これまでのデータをみる限りでは、必ずしも 7〜9 月のGDPがマイナスになると言うことも難しいと思っています。』

この前の定例会見では、

『7〜9 月は、9 月のデータはまだ出ていないわけですし、8 月のデータも全て出ているわけではありませんので、7〜9 月のGDPを予測することは難しいわけですが、先程申し上げたようなことからプラスに戻ってもおかしくないと思います。7〜9 月はマイナスを予測するエコノミストもいるようですが、私はおそらくプラスになるのではないかと思っています。』(9月15日の定例記者会見より)

と言っていましたのがややトーンダウンしている感も無きにしも非ず。


『いずれにしましても、雇用状況やGDPギャップの数字をみても、ギャップ自体が非常に小さなものになっていることは事実です。4〜6 月のGDPはマイナスになっているわけですが、その場合に需給ギャップの改善が止まるということはメカニカルにはその通りだと思いますが、需給ギャップの水準が非常に小さいというかプラスの水準であるということであれば、あるいは雇用状況が完全雇用の状況にあるということであれば、物価や賃金は上がっていってもおかしくはないわけです。』

お、おぅ・・・・・・・・・

『いずれにしても、私どもとしては常に景気の状況、さらには物価の基調、特に従来からいっているような需給ギャップ、予想物価上昇率、あるいは賃金、企業の価格設定行動といった様々な物価の基調を十分に点検し、必要があれば躊躇なく政策の調整を行うということには全く変わりはありません。』

ということですが、躊躇なく政策の調整という話はしているものの、この理屈展開ですと追加緩和をやる気がサラサラないという感じにしか見えませんぞなとは思いますし、この理屈を翻して追加緩和する理屈をどう捻りだすのかと考えるとかなり難しいようには思えるのですが、まー昨年の死んだふり追加緩和もありますので何をしでかすかワカランチ会長ではありますけどね!!!

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2015/09/29

○黒田総裁の講演だが何をどうするとそんなに景気強気になるのか&気になる表現があるのですが・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150928a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 大阪経済4団体共催懇談会における挨拶 ──

・経済に関しては相変わらず「前向きの循環メカニズム」だそうで

最初の日本経済に関するまとめ部分だけ見ておきます。『(日本経済の現状と先行き)』という所ですな。

『まず、日本経済の現状と先行きについてご説明します。わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環が働くもとで、緩やかな回復を続けています。』

前向きの循環?????

『すなわち、企業部門では、収益が過去最高水準となっており、企業の設備投資に対するスタンスは前向きです。』

でもそんなに出ていないんじゃなかったでしたっけ。

『また、家計部門では、失業率が「完全雇用」に近い水準まで低下するもとで、2年連続でベースアップが実現するなど賃金が増加し、個人消費も底堅く推移しています。』

実質賃金ェ・・・・・・・・・・・

『なお、4〜6月の実質GDP成長率は、前期比で−0.3%と、3四半期振りのマイナスとなりました(図表1)。これは、このところの新興国経済の減速の影響などによる輸出の鈍さと、天候不順もあって個人消費がややもたついたことによるものです。輸出につきましては、新興国経済の減速の影響から、当面横ばい圏内の動きを続ける可能性があります。もっとも、その後は、新興国経済が減速した状態から脱していくにつれて、輸出も緩やかに増加していくとみています。そのうえで、先行きのわが国経済については、企業・家計の両部門における所得から支出への前向きの循環メカニズムが働き続けるもとで、緩やかな回復を続けていくとみています。以下では、わが国の経済情勢をみるうえでのポイントを2点お話ししたいと思います。』

ということで、そもそも論として実質賃金が伸びなくて消費がダメじゃないですかとか、企業の収益は伸びても成長期待が中々盛り上がらない中では設備投資が出ても限定的ですよね、というような点については華麗にスルーして国内の前向き循環メカニズムが働くという事になっているのが毎度のクオリティではあります。

なお七面倒なので「ポイントを2点」の所はスルーして物価の方に参ります。


・物価の説明で「+1.1%」がまたも登場とな

『3.わが国の物価情勢』まで飛びます。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、「量的・質的金融緩和」導入直前の−0.5%から、昨年4月には消費税率の引き上げの影響を除くベースで+1.5%まで高まりました。しかし、消費税率引き上げ後、個人消費の弱めの動6きが続いた中で、昨年夏以降、原油価格の大幅下落が生じた結果、消費者物価の前年比上昇率は低下し、本年入り後は0%程度で推移しています(図表6)。』

まあ+1.5%まで上昇して大勝利モードでニヨニヨしていたようですが、今にして思えばこれって消費増税絡みの便乗とかがあった分があったんじゃネーノと思うのですけれども、相変わらずその辺の考察はスルーして「+1.5%まで上昇した」と緒戦の大戦果を強調するのはいつもの話。

『ヘッドラインの物価が上昇していないのは、エネルギー価格が消費者物価の下押しに寄与しているためです。その影響により、消費者物価の前年比は最近では−1%ポイント程度押し下げられています。しかし、原油価格が下落を続けるのでない限り、先行きエネルギー価格が消費者物価の前年比に与えるマイナスの影響は、いずれ剥落していきます。単純な計算ですが、この影響がなくなるだけで、消費者物価の前年比は、現在と比べて1%ポイント程度高まることになります。』

いつもの話。

『また、エネルギー価格下落の影響により見えにくくなっていますが、この間も、物価の基調は着実に改善しています。たとえば、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価の前年比は、2013 年 10 月以来 23 か月連続でプラスとなっており、直近8月は+1.1%まで上昇しています。』

ということで、先般の安倍首相との会談後の黒田総裁コメント報道でも出ていましたが、除く生鮮エネルギーで+1.1%という数字を出していますが、この「+1.1」というのは結構意味がある話で、デフレ脱却がどうのこうのというような話をする際に出してくる物価の数値としては「+1%」に乗っていないとさすがにデフレ脱却の文脈での勝利宣言をするのは無理がある訳でして、とにかく1%を超えている数字を持ち出す必要があるので、そういう意味からしますとこの「+1.1%」を最近連発しているのは実に怪しいとしか申し上げようがありません。

『物価の基調が着実に改善している背景としては、企業や家計の物価観が変化していることがあると考えています。』

「物価の基調」攻撃もさることながら、「物価観の変化」という話をしているのもアレでして、「2%の物価上昇が安定的に推移」という状態については実際の物価推移で言えば「景気サイクルの中で平均的に物価上昇率が2%である」という事でもありますが、別の観点からしますと「経済主体における中長期の予想物価上昇率が2%であって、経済主体の行動の中にその2%物価上昇期待がビルトインされている状態」である、というのもこれまた物価目標2%の安定的な達成、という話になるのですな。

ということですからして、1%台の数字を強調するというのがデフレ脱却アピール攻撃の香りがするのに加えまして、経済主体の物価観がどうのこうのという説明は物価目標達成アピール(さすがに今の状態で達成とするのは無茶ですけど)へ持ち出す理屈の準備ということで詳しく説明しているのではないかとゆー怪しげな香りがする訳ですよね。以下引用します。

『企業や家計の物価観の変化は、賃金改定や価格設定の動きとして現れています。』

はて?

『まず、賃金改定については、昨年春の労使交渉で約 20 年振りにベースアップが復活し、本年も多くの企業で昨年を上回るベースアップが実現しています(前掲図表4)。ベースアップを行う企業は昨年よりも増加しているほか、業種や企業規模にも拡がりがみられています。』

おう図表4を見たけどベア1%も逝ってないし雇用者所得1%も逝ってないじゃねえかよどういう事やと思いますし、何で雇用者所得とベースアップをわざわざ別目盛にするのかも良く分からんわ。

『また、価格設定の動きをみると、仕入価格や人件費の上昇を販売価格に転嫁する企業が増えてきています。家計の側でも、賃金の上昇あるいはその期待を背景に、そうした価格転嫁の動きを受け入れ始めているようにみられます。』

受入れているなら消費がもっと伸びてしかるべきではないでしょうか。

『実際、今年度に入ってからは、価格改定の動きに拡がりと持続性がみられています。例えば、消費者物価(除く生鮮食品)を構成する品目のうち、上昇した品目数から下落した品目数を差し引いた指標をみると、本年度入り後の上昇が顕著であり、最近では 2000 年以降で最も高い水準となっています(図表7)。さらに、東大や一橋大が食品や日用品の価格を集計して作っている価格指数をみると、4月以降、前年比ではっきりとしたプラスに転じており、その後もプラス幅の拡大傾向が続いています。』

単にコストプッシュが効いてきただけの可能性もあるような気がしますけどねえ。

『昨年も、多くの企業が新年度に価格改定を試みましたが、消費税率引き上げ後の需要低迷を受けて、ほどなく撤回を余儀なくされました。今年は、それとは対照的な動きとなっています。』

牛丼ェ・・・・・・・・・・・・・

『このように、ベースアップと価格改定の動きとが軌を一にして本格化していることは、わが国においても、雇用・賃金の増加を伴いながら、物価上昇率が緩やかに高まっていくという循環メカニズムが作用していることを示すものであると捉えています。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・・・・


・金融政策運営の所に「デフレ脱却にコミット」という謎文言が登場

『4.金融政策運営についての考え方』以下ですけどね。

『日本銀行としては、今後も、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していきます。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、仮に何らかのリスク要因によって物価の基調的な動きに変化が生じ、「物価安定の目標」の早期実現のために必要と判断すれば、躊躇なく調整を行っていく方針に変わりはありません。』

2年程度を念頭においてできるだけ早期にというのが無くなっているのは今に始まった事ではないのでそれはまあ良いのですけど、その次の『5.おわりに』ですけどね。

『だからこそ、日本銀行は、デフレからの脱却と2%の「物価安定の目標」の実現に強くコミットし続けます。』

という文言がこれまたアレ。

・・・・・・つまりですね、そもそも日銀がコミットしているのは「2%の物価安定目標」であるからして、物価安定目標が達成されれば自動的にデフレから脱却している訳で、元々QQE導入以降の説明だと「デフレ脱却は2%目標達成への単なる通過点なのでデフレ脱却したかどうかの判定をするとかはそもそも副次的なお話です(キリッ)」という建付けになっていた筈でして、わざわざ今回デフレからの脱却にコミットと言い出すのは、新三本の矢で旧第一の矢になった金融政策における「2%」への拘り度合いの低下(看板として下げる訳ではないが)と呼応している、あるいは政府でのそういう流れを意識して「デフレ脱却」の文言を入れてみた、という風に読むということも出来ない訳ではないですよねとか思うと実にアレ。


ちなみに直近の講演ですと
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150917a.htm/
金融システムの現状と証券業界への期待
平成27年全国証券大会における挨拶
日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年9月17日

↑こちらではデフレ脱却云々という話はしておりません。


http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150827a.htm/
日本経済の変貌と量的・質的金融緩和
ジャパン・ソサエティNYにおける講演の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年8月26日

↑こちらでは『日本銀行としては、「量的・質的金融緩和」によって、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成し、デフレマインドを払拭することで、成長力の強化に貢献したいと考えています。』(上記URLより)というような形で「デフレマインド」に関する話を色々としていましてデフレ脱却に向けた姿勢のアピールをしていたりするのですが、デフレ脱却にコミットというような表現ではないので今回ちょっと「デフレ脱却アピール」に向けた踏み込みが入ったとも見えるのが中々怪しげではありますな。政府が「デフレ脱却宣言」をした時にそれに乗って「デフレからの完全脱却が出来てQQEは所期の効果を上げたのでこれからはアベノミクス同様に緩和政策も第2ステージに入ります(キリッ)」とか言い出して政策枠組みの変更の香りが・・・・・・・・


なお、先ほど引用したデフレ脱却コミット云々の前後を引用しますね。

『企業は今や史上最高益を享受し、労働市場は完全雇用の状態にあります。これが、将来の経済成長と賃金・物価の上昇に繋がっていく道筋は、経済のメカニズムからみて当然のことですし、私もそう考えています。』

ふーん。

『ただ、程度の問題として「これだけの収益水準の割には設備投資や賃金の伸びが鈍い」と言われることもまた事実です。その背景には、長く続いたデフレのもとで、企業や家計のマインドセットの転換に時間がかかっているということがあると考えられます。』

さっきは物価観に変化があるから基調の物価が強いという話をしていましたがががが。

『だからこそ、日本銀行は、デフレからの脱却と2%の「物価安定の目標」の実現に強くコミットし続けます。そして、別の機会に何度か申し述べたとおり、2%が安定的に実現した世界では、当然、これほどの低金利環境は続きませんし、人手の確保はより困難になるはずです。』

低金利は分かるけど今が完全雇用とさっき言ったばかりなのに安定的な状態になって人手確保がより困難になるというのは意味プー。

『現在の収益を使って将来のための行動に移るタイミングには早い者勝ちの面があり、おそらく皆様方の間でもいち早くそうした行動を起こされている方々がおられることでしょう。経済のメカニズムは必ず貫徹しますし、その中で日本銀行は役割をきっちりと果たす、とお約束して私からの話を終えたいと思います。』

まあそのお約束が信頼されていないから笛吹けど踊らずなんじゃないですかねえという所ですが、期待に働きかける言いましても成長力が上がるとかそういう話が無いとねえという所で。

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2015/09/17

○総裁会見は順調さを強調するが説明の中身はかなり無理矢理感が漂う

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1509c.pdf

なお今回の質疑ですが、追加緩和示唆のような発言は(ベンダー報道の通り)特に無く、メカニズムは回っていますよ大丈夫ですよというトーンになっているのはご案内の通りです。でも説明がだいぶ無理矢理な感じがするのでその辺を簡単に鑑賞しませうなのです。

・予想物価上昇率が上昇しているとはどういう事やという質問

ちなみに金融経済月報でも例によって1行コメントでして、図表を見るとどこからどう見ても上昇しているように見えないというお洒落な予想物価上昇率なのですが月報鑑賞が時間の都合上間に合わなくなった(自分の段取りが悪いからですすいませんすいません)ので興味のある方は昨日出た金融経済月報の図表30をご覧になると吉かと。

『(問) 冒頭のご発言で、予想物価上昇率は長い目でみれば全体として上昇していると言われましたが、新興国の景気減速や資源価格の下落もあって、日本だけでなく欧米も含めてブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は低下傾向にあると思います。BEIだけで予想物価上昇率を測れるものではないのは承知していますが、現状程度のBEIの低下は許容できる範囲なのか、これ以上低下した場合にはインフレ期待全体に与える影響が出てくるのか、ご見解をお聞かせ下さい。』

BEIの質問に絞っているのが惜しい。どうせ質問するなら「全体として上昇しているとのことですが、ではどこで観測される予想物価上昇率が上昇しているのかを具体的に呈示して頂きたい」とすべき。

『(答) 物価の基調を判断する上では、需給ギャップやその他色々なデータとともに、予想物価上昇率の動きが非常に重要な要素であることはその通りです。』

予想物価上昇率が本当に上昇しているのかという質問なのに物価の基調の話をおっぱじめている時点で既にインチキの香りが漂って参ります。

『予想物価上昇率を把握するための指標としては、ご指摘のBEIのほか、各種のアンケート調査やその他色々なものがあります。そうした諸指標をみますと、足もとBEIのように弱含んでいるものもありますが、総じてみると概ね横ばいです。』

全体として上昇していないじゃないですか!!!!

『BEI自体は──資源価格の下落傾向を反映したものかは市場関係者に聞かないと分かりませんが──欧米とともに若干下振れているものの、予想物価上昇率を把握するための色々な指標全体としてみると、概ね横ばいの状況ではないかと思っています。』

BEI低下のインプリケーションを「市場関係者に聞かないと分かりませんが」って強含みの時にはあれだけ鬼の首を取ったようにBEI上昇をアピールしていた(置物副総裁の方がその傾向が強かったけど)のに何じゃその言いぐさはとしか申し上げようがない。

『また、そうしたもとで、企業の価格設定行動も非常に重要です。企業は将来の物価動向などを考えながら価格設定をしているわけですが、』

今後の物価動向を考えて価格設定???????????

『ご承知のように、消費者物価指数を構成する色々な品目のうち、上昇している品目から下落している品目を引いた数ははっきりと拡大しており、幅広い品目で価格が上がってきています。日次や週次の日用品、食料などの価格指数を見ても、特に 4 月以降、前年比プラス幅が拡大しています。』

特に日常品に関しては円安によるコストプッシュがラグを持って効いてきているという要因があるようにしか思えんのですがねえ。ディマンドプルだったら消費がこんなに弱くないだろと小一時間。

『こうした企業の価格設定行動も、予想物価上昇率を知る上での 1 つの手がかりになるのではないかと思います。さらに、昨年、今年とベアを含む賃上げが続いています。』

ということで予想物価上昇率も「基調」攻撃になっておりましてもう鉛筆なめなめですよ。

『企業の賃上げは、労働市場が非常にタイトになっていることや、企業収益が過去最高水準にあることも反映していると思いますが、企業としては、今後の物価がどのように動くかということも勘案しながら賃上げを認めているわけです。』

今後の物価動向を勘案して賃上げするとは斬新な説明。

『そうした点からみても、全体としての予想物価上昇率の動きは、長い目で見れば上昇していると言っていいのではないかと思っています。』

何ちゅうかもう無理矢理な説明ですな。「予想物価上昇率は足元横ばいで推移」とは言えないというのだけは良く分かりましたが(−−;


・一般物価と個別物価とか物価上昇が消費にマイナスになるのではという話とかに関連して

『(問) 今の物価の話と関連しますが、先日、安倍総理が、携帯電話料金の値下げを進めるべきだというお考えを示されました。政府の方では、物価の上昇が消費全体を弱めているのではないか、あるいは、物価の上昇に賃金が必ずしもついてきていないのではないか、という認識もあるようですが、これが、今お話があった総裁の考えと齟齬をきたしていることはないのか、物価と消費、賃金の関係をどうみているのか、改めてお考えをお聞かせ下さい。』

昨日ネタにした部分の質問ですが改めて。

『(答) 全く齟齬をきたしているということはないと思います。』

『携帯電話の料金が、消費者物価指数の中で占める割合が上昇していることは事実です。一方、電話料金は、かつての電電公社の 1 社独占の時代から変わってきて競争が導入されていることは事実ですが、極めて少ない会社の寡占状態にあります。そのもとで決まってくる携帯電話料金について、おそらく色々な形で競争を刺激して、消費者にとってより使い易い料金体系になることは、消費者の選択の余地を広げ、電話料金が下がることによって実質所得を引き上げ、その他の様々な消費支出を増やしてくれるという面もあります。』

昨日ネタにしましたが、これは一般物価と個別物価の話を混同してはいけません(キリッ)という話なのですけれども、では原油価格の下落で物価目標達成時期を先送りしているという状態とこの説明との整合性はどうなっているのかと小一時間というのは昨日申し上げた通り。

『私どもが狙っている 2%の「物価安定の目標」の早期達成という場合には──当然、需要・供給様々な要因の中で物価が決まってくるわけですが──、主として、金融政策を通じた需要の刺激、需給ギャップの縮小、さらには明確な物価安定目標へのコミットメントを通じて、予想物価上昇率を底上げしていくことにより、経済の好循環のもとで物価が上がっていくことを目標としています。個々の物やサービスの価格について、より生産性の向上を図るとか競争条件を整備する等によって引き下げ、消費者の選択の余地を拡大し、実質所得を増やすことは、長い目でみて、物価を好循環のもとで 2%に向けて引き上げていく面でもプラスになると思っています。』

というこの説明もこの説明単体でみれば話の筋は通っているのですが、ここまでの日銀の説明やらロジックやらとの整合性という点で考えた場合に、今申し上げたように原油価格の下落で目標達成時期を先送りしている件との整合性はどうなっているのかというのがありますし、更に言えば最近すっかりだんまり状態になっていますが、「インフレ期待の形成には実際の物価動向によるアダプティブな要因があって日本の場合はその傾向がまだ強い」(ので物価がとにかく上がるのは期待インフレの引き上げに良い話)という説明との整合性はどうなっているのかというお話で、個別物価の低下によって即座にその分の需要がシフトして他の個別物価が即時に上昇する訳ではないのですから、その間に個別物価の積み上げによる物価指数というのは現実問題として低下圧力が掛かる訳で、それがアダプティブな物価上昇期待の形成に悪影響を与えるという話をしない、というのならまだ大人の事情として理解するのですが、2%目標達成に「プラスになると思っています」とまで言うのは図々しいにも程がありますな。


ちょっと先の方ではこんな質疑も。

『(問) 日用品や食料品など色々な物の値段が上がっていますが、そのほとんどが円安による輸入インフレで、賃金上昇によるインフレにはなかなかなっていないのではないかと思います。今、為替は 1 ドル 120 円近傍で昨年 12 月とほぼ同水準になり、前年比が剥落してくると、物の値段は、輸入インフレが多い中で上がりにくくなるのではないかと思います。そうした場合、総裁の言う物価の基調は、高まってくるというよりは弱まってくるのではないかと考えますが、如何でしょうか。』

うむ。

『(答) 物価の基調を考える場合に、重要なポイントはいくつかあると思いますが、1 つ目は需給ギャップです。これはご承知のように、雇用状況がどんどんタイトになってきていますし、色々な指標でみてもこのところ基本的には需給ギャップが縮まってきて、計算の仕方によっては、もはやマイナスでなくてプラスになっていることもあり得るということですので、需給ギャップの面から言えば、物価の基調の判断についてはポジティブだと思います。』

質問で「物価の基調」と言ったのが惜しい訳で、もっと単純に「コストプッシュで物価が上がることは将来の物価低下要因ではないでしょうか」という聞き方の方がよかったと思う。

『それから 2つ目が予想物価上昇率です。これは先程申し上げたように、足許、若干弱含んでいるBEIのような指標もありますが、そうではなくしっかりした動きを示す指標もありますし、全体として長い目でみれば、予想物価上昇率は上昇してきていることに変わりはないと思います。』

何と図々しい。

『3 つ目は、そのようなことを反映して賃金がどうなるかですが――賃金の動きを表す統計には、ご承知のように毎月勤労統計調査や家計調査など色々な統計がありますが――、1 人当たり賃金と雇用とを掛け合わせた雇用者所得はこのところ 2〜3%ぐらいで伸びてきています。これは、雇用の伸びによる分もありますが、所定内賃金が上がっており、1 人当たり賃金自体も基本的な趨勢として上がってきていると思います。』

ものは言いよう。

『そして 4 つ目には、先程申し上げたことを反映して、企業の価格設定行動がどうなっているかということです。これも、特にこの 4 月以降、明確に企業の価格設定行動がはっきりと価格の引き上げの方にきています。』

だからそれがコストプッシュだと質問しているのですけどねえ。

『物価の基調は今言ったような要因を全体として反映していますので、為替レートが物価に一定の影響を与えることは事実ですが、為替レートが円安になったら必ず物価が上がるかどうかは、また別の問題です。要するに、輸入品のコストだけ上がり、他のものに対する消費が減ってしまえば、他の価格が下がるわけです。また一定の期間をとれば、どんどん円安になるとか、どんどん円高になるということはあまりないわけでして、やはり、先程申し上げたような需給ギャップ、予想インフレ率、賃金、企業の価格設定行動等々が、物価の基調をみる上で重要だと思います。』

『今、為替レートが 120 円程度ですけれども、仮にこれで変わらないとしたらもう物価が上がらなくなってしまうということにはならないと思っています。』

という辺りを見ますと「為替を強引に円安に持って行く」というスキームはもう使えないのではないかと思うのですがどうでしょうかね。


・7−9GDPについて

『(問)(前半割愛)もう 1 点は、4〜6 月期に続いて、仮に、7〜9 月期もGDPがマイナスになりますと景気後退ということになってしまうのですが、総裁はこのリスクについてどうご覧になっているのか、また、そうした状況になると日銀のシナリオに何らかの影響がでないのか、見解をお聞かせ下さい。』

『(答)(前半割愛)4〜6 月の成長率は──年率マイナス 1.2%だったと思いますが──下落しているわけですが、ご承知のように、1〜3 月が年率 4.5%のプラスだったということとの関連でみる必要もあると思います。また、4〜6 月のマイナスの中には、輸出がかなりマイナスになったということもありますし、消費が 4 月とか 6 月の天候不順等の影響もあって、若干マイナスになったということもありますので、基本的には一時的な要因が多いと思います。』

へえへえそうですか。

『7〜9 月は、9 月のデータはまだ出ていないわけですし、8 月のデータも全て出ているわけではありませんので、7〜9 月のGDPを予測することは難しいわけですが、先程申し上げたようなことからプラスに戻ってもおかしくないと思います。7〜9 月はマイナスを予測するエコノミストもいるようですが、私はおそらくプラスになるのではないかと思っています。』

これはまた大きく出ましたなという所で、ここに関しては7−9マイナス待ったなしという事になりますと、追加緩和大合唱が始まるのは間違いないですし、日銀も追い込まれやすくなる(一時的ですと言い逃れをする可能性もありますが)と思います。


・二つほど無駄な質問があるのですが・・・・・・・・・・・・・・・

ネタが何もない会見だったらこういうヒマネタみたいな質問をするというのもアリかもしれませんけれども(そういえば福井総裁に阪神タイガースの快進撃について質問した記者が今や国会議員様という辺りにいやまあ何でもありません)、経済物価情勢が微妙な状況にある中で金融政策に関するインプリケーションが皆無の質問だわ中身がヨイショっぽいわという質問をするアホウを晒しておく。


『(問) 総裁は 10 年程前に「元切り上げ」という本をお書きになられていますが、中国のこの 1 か月間の金融の舵取り、切り下げと介入による維持について、ご所見をお伺いできればと思います。特に、外貨準備を潤沢に使って維持されていまして、これの国際金融市場へのインプリケーション等、どういう覚悟が必要なのかお願いします。』

お前は何を言ってるんだ。

『(問) 通貨についてお伺いします。IMFは、人民元をSDRの構成通貨に入れるかどうかの結論を年内に出すと言っています。元建ての貿易決済は世界的にみると円建て決済に迫っていて、とりわけアジアでの比率は高いようです。交換性の観点からまだ課題はあるようですが、人民元のSDR構成通貨入りについて、ご所見をお伺いしたいというのが 1 点です。もう 1 点ですが、総裁は財務官でいらっしゃった時に、アジアを舞台にした円の国際化を推進されていました。12 年前に書かれた著書で――また本を出してきて申し訳ないですが、――「通貨外交―財務官の 1300 日」という本を読ませて頂いたのですが、究極の為替政策は円の国際化だと主張されていらっしゃいました。大変重視されていたようなのですが、円の国際化は最近めっきり聞かれなくなっています。元の国際化がアジアで進む中で、円の国際化の現状評価と今後の展望について、ご所見をお聞かせ下さい。』

円の国際化の話は日銀の政策課題としてもあるからまだ分からんでもないが、人民元のSDRどうのとか全然関係ないだろいい加減にしろ。

このネタってそもそも論として日銀総裁がどうのこうのいう話ではないネタな訳でございまして、足元の経済物価情勢を踏まえればこのような重要な時期の会見のリソースを消費する価値のあるネタとは到底思えない質問をする意味について小一時間問い詰めたい次第ではあります

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2015/08/28

○黒田総裁のNY講演だが説明が「いいとこどりのつぎはぎ」感が益々強まっているようで

面倒なので邦訳の方から参ります。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150827a1.pdf
日本経済の変貌と量的・質的金融緩和
ジャパン・ソサエティNYにおける講演の邦訳

・雑な説明が益々雑になりました

まあ丁寧に説明するとそもそも論として「2年で達成」と豪語していた物価目標が全然達成できないまま2年半になろうとしている訳でして、そらまあボロがボロボロ出てくるというのは分かるのですが、従来の日銀というのはインチキ俊ちゃんであってもそういうのは誤魔化しには掛からない(俊ちゃんの政策の説明は目くらまし芸にも程がありましたが)というのが中央銀行としてのプライドだったと思うのですが、まあ黒田日銀になってからというもの、最初のうちは置物リフレ理論に関してもドヤ顔で説明していましたし、今にして思えば消費増税駆け込みで盛大に下駄を履いていた時に大勝利宣言しながら説明はしていたものの、その後は思うように行かないのを自分に都合の良い話を手を替え品を替え説明して都合の悪い話はスルーする、というスタンスになっておりまして、今も物価がこの有様で「インフレ目標の達成で全てが好循環になる」というリフレ理論とは何だったのかという状態になっているせいでまあ誤魔化す誤魔化すという所ですな。

ということで鑑賞。


・都合がよければ自分の成果で悪いのは消費増税のせいですかそうですか

冒頭からこれ。

『日本銀行が2%の「物価安定の目標」を掲げ、「量的・質的金融緩和」を導入してから2年あまりが経過しました。この2年間を振り返りますと、1年目の日本経済の改善は、成長率・物価上昇率の両面で、非常に impressiveなものでした。2013 年度は2%を超える実質成長となり、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比も、「量的・質的金融緩和」導入直前の−0.5%から、2014年4月には+1.5%まで高まりました(図表1)。


消費増税駆け込みとか増税前の各種財政を盛大にスルーしてQQEの成果に帰着させるという図々しさよ。

『一方、2年目にあたる 2014 年度のパフォーマンスについては、冴えないものであったことは否めません。4月の消費税率引き上げの影響は、事前の予想を上回るものでした。駆け込み需要の反動減に加え、実質所得減少を通じた影響もあって、個人消費は、自動車などの耐久消費財を中心に弱めの動きが続きました。』

下がったのは増税のせいで済ませていますが、物価が上昇して実質所得が減少して消費が落ちた分は無視して全部消費税のせいですかそうですか。

『原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与えるものですが、短期的にはガソリン価格や電気代といったエネルギー価格の低下を通じて、物価を押し下げます。この結果、消費者物価の前年比上昇率は急速に低下し、本年入り後は0%程度で推移しています。


と、ここでは物価の話だけで済ませているのがまた説明のインチキな所で、原油価格の下落で物価が下がってくる中で消費が戻ってこないという状況が生じているのはスルーしているというのが何とも。

まあ円安コストプッシュで物価を引き上げても所得の上昇がおいつかず、円安分の嵩上げも含めて企業収益を引き上げてもそれが個人所得に流れるルートが微妙で、円安の効果がトータルで所得の海外漏出になっているんだったら、円安頼みで物価を上げる過程で円安に振り過ぎたんじゃないですかねえとか色々と思うのですけれどもそういう検討は当然ながらこの講演にある訳はない。



・今の状況は一時的といういつもの説明と物は言いようの大本営発表

『こうした状況を眺めて、日本銀行の2%の「物価安定の目標」の実現可能性について懐疑的な声が少なからず聞かれています。デフレ脱却に向けた動きはストップしてしまったのでしょうか。決してそんなことはありません。』

ほうほう、つーかまだ脱却してないという認識なの?????

『何より強調したいのは、昨年来、物価上昇率の低下に働いた2つの要因──「消費税率引き上げ」と「原油価格の大幅下落」──の影響は、いずれも一時的なものだということです。確かに、成長率や物価上昇率といった表面上の数字は、こうした要因に大きく影響されて低下しましたが、その底流では、デフレ期にはみられなかった大きな変化が着実に進行しているのです。


ふーん。

『ここでは、まず、2つの事実を指摘しておきます。第1に、日本企業は、過去最高の収益をあげており、設備投資に積極的になっていることです。』

確かに短観とかその他でみられる「スタンス」は積極化しているので「積極的になっていること」というのは事実ですがすが実際の投資が言うほど出ていましたっけ????

『第2に、労働需給が逼迫し、過去の求人と求職の関係に照らして両者のミスマッチに起因した失業のみが残る水準と見做せる「完全雇用」が実現するもとで、賃金が約 20 年振りにはっきりと上昇していることです。


確かに名目の賃金は上昇していますから「はっきり上昇」しているのはその通りですが、一方で名目が上がっても物価上昇に追いつかないと意味がないですし、日銀は今後2%の物価安定目標を達成すると言ってるんですから賃金もそれに追いつくような勢いで上昇してくれないとただの雇用所得者の生活水準実質切り下げになるのですけれどもねえ。

ということで、確かに指摘された事実は事実なのですが、その説明は無いだろというティンカーベルの粉を振りまくった説明になっている辺りに卓越した作文能力の高さを感じざるをません。


でまあこの後に、

『本日は、「量的・質的金融緩和」の2年間において日本経済に生じた変化をご説明したうえで、「量的・質的金融緩和」の理論と波及メカニズムについて改めて振り返ってみたいと思います。講演を聴き終える頃には、日本経済の先行きについて、私どもの見方を共有して頂けるものと思います。


とあって、『2.日本経済の変貌』という小見出しがあるのですが大体スルーしておきますけど一応ちょっとだけ。

『企業収益は、先行きも高水準を維持する見込みです。短観の6月調査で企業の収益計画をみると、2014 年度の実績が上振れて着地するとともに、2015年度の見通しについても高水準を維持しています。このような良好な収益環境のもとで、企業は先行きに対して自信を強めつつあり、設備投資の回復が明確になってきました。特に、過度な円高が是正され、国内における投資を積極化する動きがみられることは、ここ数年間、海外投資を優先してきた日本企業にとって大きな変化といえます。』

・・・・・・って結局設備投資まだ「いよいよこれからです」状態ですなあと思いますが、まあ物は言いよう。


・メカニズムが本当にワークしているのかはこれからじゃないのと思うのに何という自信満々

さっきの小見出し後半の賃金と物価の話ですが。

『日本経済におけるもうひとつの大きな変化は、完全雇用状態が実現するもとで、約 20 年振りに賃金が上昇し、賃金上昇と物価上昇の好循環が生じていることです。この点は、デフレ脱却という観点からみて非常に重要なポイントですので、詳しくご説明したいと思います。


物価は上がっていませんけどね。でまあ過去は長期に物価が上がらなかったからインフレ期待がどうのこうのといういつもの話をしているのでそこは割愛して最近の話の部分へ。

『まず、昨年の春闘において「ベースアップ」が約 20 年振りに復活しました。さらに、本年春の賃金交渉では、2年続けてベースアップが実現し、多くの企業で昨年を上回る伸びとなりました。また、ベースアップを行う企業の数が増えるとともに、業種や企業規模にも拡がりがみられています。』

『新年度の価格改定も、今年度に入って本格的に復活してきたようです。例えば、消費者物価指数(除く生鮮食品)を構成する品目のうち、上昇した品目数から下落した品目数を差し引いた指標をみると、本年度入り後上昇が顕著であり、2000 年代入り以降でもっとも高くなっています(図表4)。さらに、食品や日用品の価格を集計し、速報している東大日次物価指数やSRI一橋大学消費者購買価格指数をみると、4月以降、前年比ではっきりとしたプラスに転じており、直近までプラス幅の拡大傾向が続いています。』

しかしまあ日次物価指数関連って昨年途中から失速していた時は質問されてもスルーしていたのにいざ上昇を始めるとこの話ばっかりするとか説明の非対称性が何とも。

『昨年も、多くの企業が新年度の価格改定を試みたのですが、消費税率引き上げと時期が重なったため、その後の需要低迷を受けて、ほどなく撤回を余儀なくされました。今年の動きは、昨年とは対照的なものといえます。』

ということで今の動きは価格を上げても需要がついてきているので価格が維持できている、という説明になっているのですが、そもそも実質消費は足元までは弱い(7月移行の数値は一応期待されてますけど)ですし、大体からして「総合」の物価が弱いから日常品に対する需要が底割れしないで済んでいる可能性もありますし、そもそも論として日常品の価格上昇って需要云々ではなくて円安進行によるコストプッシュがラグを持って川下に波及していて、「下げるに下げられない」状態なのかもしれないという辺りを全部スルーしているようにしか見えない説明をしている時点で危ういなあと思います。ここから原油の影響が剥落してきて実際に総合の物価が上昇してきた所で真価が問われるんだと思うのですけどねえ。


・うまいことを言ったつもりだろうがこれはアカンヤツや

で、その次にこんなことを。

『ちなみに、ケチャップは、今年4月、25 年振りに値上げされました──日本銀行が買ったわけではありませんが。


米国での講演なだけにケチャップベンをもじって上手い事言ったつもりなのでしょうなあとは思うのですが、一般ピープル的には「生活日常品の価格がまた上がった」というニュースを四半期の毎に定例で聞かされるのが仕様となっていて、実際問題として足元までの実質消費が弱いという中で生活品の価格上昇を捕まえてドヤ顔をするというのは、「国民経済の健全な発展に資する」という日銀法第二条の精神からしてどうなのかねという思いますがねえ。

もちろん消費も良くて実質賃金も盛大に伸びていて経済成長バンバンしているなかでの適度な物価上昇をドヤるのでしたらそれは結構なのですが、4-6のGDPはマイナス成長で直近の消費は弱いという中で「ケチャップの価格が上がりました(ドヤァ)」はねえだろ貴族の方は仰ることが違いますなあという所でございます。


・なお後半にQQEの話があるが・・・・・・・・

次に『3.量的・質的金融緩和のメカニズム』というのがあるのだがまあいつもの話だが、この結論は酷い。

『バーナンキ前FRB議長は「量的緩和の問題点は、現実には効果が認められるが、理論的には効果が説明できないことである」と語ったと伝えられます。量的緩和の効果は、その前提となる経済状況や金融構造によって異なると考えられますし、学会においても、まだ結論が得られているわけではありません。もっとも、日本に関する限り、「量的・質的金融緩和」は、理論的に効果を説明でき、現実にも効果を認めることができる政策であったと評価されると考えています。


この前もどこかでこんなことを言っていたが、そんな寝言はインフレ目標を達成してから言えよそうしたらこっちも土下座して平伏するわと思う訳で、目標全然達成しないでドンドン後ずれさせる中でドンドン正常化を困難にする勢いで資産規模を拡大して終わりも見えないのに何を言うとしか申し上げようがありません。


・・・・・・・・とまあ悪態モードになってしまいましたが、大口叩いて戦線散々拡大して最早引っ込みもつかない中でどういう風に大本営発表をするのか、と問われればまあこういう説明になるんでしょうなあと思いますし、逆に先行きに相当の自信があるなら「都合の良い所だけ繋げた説明」だけではない説明ができるんでしょうなあと思いますと、まあこういう講演にしかできませんなあとは思うのでそういう点での同情は禁じ得ないとは申し上げておきたいと存じますです、はい。

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2015/08/11

○黒田総裁記者会見は暖簾に腕押し糠に釘とな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1508a.pdf


・最初の質問からこんな感じで今回は見事に押し問答というか暖簾に腕押し会見なのだ

最初の説明の後の確か幹事社の質問。

『(問) 生産や輸出、個人消費が振るわない中、4〜6 月のGDPはマイナス成長になるとの見方が強まっています。先程、生産等の低迷は一時的とのご説明でしたが、中国経済の減速など、海外経済に不透明感が漂う中、景気の落ち込みが長期化するリスクがないのでしょうか。また、そういったことによって、物価への影響等は懸念されないのでしょうか。』

ということでですね、4-6の数値がイマイチなのもありますが、海外経済の見通しもちょっと怪しげなのではという状態な訳ですし、特殊要因があるみたいなのでまだ分からんとは言え先般出た6月の実質賃金はマイナスですしという状態な訳ですから、そもそも論として「日銀の言うメカニズムが変調を来していないのでしょうか、それに関する問題意識はありますか」という質問が飛んでくるのは自明なのですよね。

然るに、今回の総裁記者会見の説明ってまあ見事なまでに「我々の見通しが正しければこのように推移するので問題ありません(キリッ)」という「俺様の話を聞いておけば宜しいお前らの話なんぞ知らんがな」な塩対応の印象が強いのでして、まあその状況を鑑賞してみましょう。

『(答) 海外経済については、先程も申し上げた通り、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復していると考えています。米国経済は、家計支出に支えられて回復しており、最近出た 4〜6 月のGDPも成長軌道に復帰していることを示しています。またユーロ圏経済も、好調な輸出や堅調な個人消費に支えられて、緩やかな回復を続けています。この間、中国経済については、成長モメンタムが鈍化していることは確かであり、その他の新興国経済も、このところやや弱含んでいるわけですが、先進国経済が堅調な回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及するとみられる中で、海外経済は緩やかな回復を続けると考えています。』

月報(後でネタにします)やら声明文やら展望レポートの現状認識ですなこれは。

『こうした海外経済の見通しのもとで、輸出と生産にみられるこのところの鈍い動きは、一時的なものと考えています。』

楽観キタコレ。

『先行き、輸出は、海外経済の回復あるいは既往の円安による下支え効果などを背景として、ある程度振れは伴いつつも、緩やかに増加していくと考えています。』

「ある程度振れは伴いつつも」とヘッジクローズを入れているので、少々伸び悩みになっても「これはある程度の振れです(キリッ)」と言い逃れは出来るのでしょうが、7-9に全然伸びないということになりますとそもそものシナリオの再構築を迫られるかもしれない(他が良くてここを華麗にスルーという荒業を使う余地はある)ですな。

『また、生産も、こうした輸出の増加、あるいは一部業種にみられる在庫調整の進捗に伴って、振れを伴いつつも、緩やかに増加していくとみています。6 月短観でも、企業の業況感が総じて良好な水準で推移していましたし、生産の予測指数が先行きの増加を示しているといったことも、こうした見方に沿うものではないかと思っています。』

という願望。

『従って、物価についても、エネルギー価格の下落の影響から 0%程度で当面推移すると思いますが、その影響がだんだんと減少していくにつれて、基調としての物価上昇が顕在化してきて、年度の後半から物価上昇率は次第に加速して、2%の「物価安定の目標」に向けて動いていくと思います。』

これ1%近辺までは上がるという衆目の見立てだと思うのですが、そこから加速するという絵が描きにくいと思われる次第で、これ上昇傾向頭打ちになってある程度安定しちゃったら2%をどうするのよという問題があるのですが、もしかしてホイホイ上昇して1%台に乗せた辺りで「このように加速しているから2%に向かいます(キリッ)」とか言い出して政策達成したことにするとかいうイカサマ攻撃が出るのでしょうかねえ。(さすがに無理矢理感があるので厳しいですかね)

『2%が達成される時期については、前から申し上げているように、原油価格の動向にも左右されますが、原油価格が緩やかに上昇していくという前提に立つと、来年度の前半頃には 2%程度に達する可能性が高いとみています。』

なお後の質疑で出るがすでにヘッジクローズが入っているのがお洒落。


・原油やら商品価格の下落に関して

途中を飛ばしてこの辺の質問に。

『(問) 物価に関連して、足許で原油価格の下げがかなり目立っています。この原因をどのように分析されていて、一時的とみているのか、あるいは長引くとみていらっしゃるのか、お考えをお聞かせ下さい。』

うむ。

『今の日銀の 2%の達成時期である 2016 年度前半頃というのは、緩やかな原油価格の上昇が前提だと思うのですが、この前提が多少崩れた場合には、2016 年度前半頃という時期が前後しても、それは致し方ないというか、問題ないと考えていらっしゃるのかどうか、お考えをお願いします。』

しらっと念押し。

『(答) 原油価格が昨年の夏以来大幅に下落し、このところ若干戻してきていたのですが、それがまたごく最近になって下落しています。原油価格の動向については、需要要因と供給要因の両方あり得るとは思います。新興国の成長のモメンタム──新興国は比較的エネルギー多消費型の経済なのですが──が若干弱まっているのではないか、という需要面の要因が影響している可能性があると同時に、他方で、ご承知のようにシェールオイルその他、色々な供給面の要因というものもあったのだろうと、IMFも含めて、多くのエコノミストが思っています。そのどちらがどのくらいのウエイトがあったのかというのは、IMF自体も若干見方を変えたりしていますので、かなり難しい判断になると思いますが、いずれにせよ両面あったということは事実だと思います。』

さすがに需要面での問題がある可能性については認めています。

『日本の場合は、100%原油を輸入していますので、特に供給面の要因から原油価格が下がってくるということであれば、全く問題ないというかプラスばかりなわけですが、新興国の成長のモメンタムの弱まりというようなことが 1 つの原因であるとすると、特にアジアの新興国は日本の輸出市場として非常に大きなものですので、そちらの影響も考えなければならないことにはなると思います。』

聞かれもしないのに日本への影響を説明していますが・・・・・・・・・・・

『ただ、これまでのところ、原油価格の下落は、日本経済にとっては、全体として、かなりのプラスだっただろうと思っています。』

これはまた酷いイカサマ説明でして、先行きの経済物価見通しの蓋然性について考えるためには、「これまで」どうだったのかという話ではなく、「今後はどうなのか」という話をすべきであって、需要要因によって原油価格が上がらんというのであれば、当然先ほど大丈夫大丈夫と言ってる輸出の見通しが外れるという話になる訳ですから、そういう考察はどうなのよという話が必要なのでしょうが、そこらに触れるとパンドラの箱状態になってしまうので地雷は避けて「今までかなりのプラス」という説明でスルーしていますな。

つーかそんな事よりも「かなりのプラス」であったはずの原油下落を受けても成長は加速しないし、物価はそのエネルギー抜きコアで見てもQQEから2年経過しているはずの直近で精々0.7%とか0.8%とかそういうレベルにしか達していないというのはどういう事なのでしょうかと小一時間問い詰めたい。

『次に、最近、原油価格がまた若干下がっているということを受けて、2016 年度前半頃という 2%程度に達する時期についての判断が変わるかということですが、何度も申し上げていますように、原油価格については、私どもが独自の見通しを立てているわけではなく、市場における先物価格等を参考にして、見通しの前提として置いているわけです。』

原油価格が変わったら見通しが変わるとな。

『従って、市場における先物価格等が変わっていけば、その前提は変わっていくことになると思いますが、今のところ、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくという先物価格の状況を前提にして考えますと、2%の目標の達成時期というのは 2016 年度前半頃になるとみています。』

今のところ、と連呼しておりますように・・・・・・・・・・・

『ただ、今後、原油価格の動向、特に先物価格が変わってきますと、達成時期が若干前後することはあり得ると思います。』

早くも足元の原油価格動向に対してヘッジキター!!!!!

『金融政策の運営上重要なことは、物価の基調的な動きですので、原油価格の動きについても、それが予想物価上昇率等に影響して、物価の基調的な動きに影響するということになれば、それは政策の調整ということを検討することになると思います。今のところそういったことにはなっていませんので、引き続き原油価格の動向を注視し、物価の基調的な動きにどのような影響を与えるかを、よくみていくということに尽きると思います。』

で、その予想物価上昇率ってリアルタイムで正確な数値を把握するのは困難ときていますので、もうこれは何が何だか分かりませんねというお話です。


ところで折角ですのでここで岩田大副総裁様の就任記者会見での説明を改めて確認してみましょう。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf

こちらの5ページになります。

『2 つ目は、そういう意味で、2 年くらいで責任をもって達成するとコミットしているわけですが、達成できなかった時に、「自分達のせいではない。他の要因によるものだ」と、あまり言い訳をしないということです。そういう立場に立っていないと、市場が、その金融政策を信用しないということになってしまいます。市場が金融政策を信用しない状況で、いくら金利を下げたり、量的緩和をしても、あまり効き目がないというのが私の立場です。 』(上記URL先の2013年3月21日会見の岩田副総裁発言より)

(;∀;)イイハナシダナー


・さらにこういう質問もありましたが

『(問) 2 点お伺いします。1 点目は物価ですが、基調としては非常にしっかり上がっているようには、お見受けするのですが、いわゆる普通のコアは、ここから先は若干のマイナスはあるかもしれないという覚悟でいた方がいいのか、あまりそこは心配しなくてよくなったのか、お伺いします。』

確認ですな。

『2 点目は商品市況です。CRB指数が 12 年振りの低い水準になっていて少し気味の悪さを感じるのですが、これは米国金融政策の出口によるリバランスとか、供給要因という割と明るい理屈なのか、それとも石油メジャーとかが設備投資を減らしておりまして、実体経済にとってもそれなりに悪い話なのか、現時点での見解をお願いします。』

需要要因によるものという質問の方が良いような気がしますがさておきまして。

『(答) 公表文でも申し上げている通り、当分の間は原油価格の下落の影響を受けて、コア指数の前年比は 0%程度で推移するとみていますので、その「程度」の中にはマイナスということもあるかもしれません。ただ、これは今のところ全く分かりません。』

ということでマイナスになっても知らんがなということで。

『2 点目ですが、原油のみならず、様々な鉱物資源などの商品市況が低いということは事実であり、その背景は原油の場合と同じように、今、需要の要因と供給の要因と両方考えてみる必要があるとは思います。需要要因としては、やはり大きいのは新興国、途上国などの成長が若干もたついているといったことであるとか、あるいは──中国経済の成長率は 7%で安定的に推移していますが──、中国経済自体の産業構造などが外需依存型から内需型に変わってきていますので、かつて程、原材料とか部品とかを大量に輸入するという体質でなくなってきている可能性もあります。』

『いずれにせよ、需要要因があると同時に、それぞれの商品、1 次産品について、供給要因もあろうかと思います。それから市場でよく言われていますのは、多くの商品についての価格がドル表示になっているわけですけれども、他通貨に対してドル高になると、ドル表示の商品価格が若干下がる傾向が従来からあるということで、そういう単なる表示上の話かもしれませんし、なかなか難しいとは思うのですが、基本的にはやはり需要側の要因と供給側の要因とが重なっているのであろうと思っています。』

まあ質問する方も微妙にずれているからこういう答えで煙に巻いている感はあるのですが、需要側によるものなのでしたらそもそも論として価格が戻らないし、需要が弱いのだったら輸出のシナリオも崩れるでしょという話は見事に避けて通りますな。

ちょっと前ですと「輸出が思ったほど伸びていませんが国内の前向き循環メカニズムが働いているので少々輸出がパッとしなくてもヘーキヘーキ」という説明を堂々としていたのですが、消費も微妙に伸びが怪しいし、実質賃金は特殊要因込みとはいえあの数字を出されているということで、まあなんちゅうか説明が苦しくなっているからこその暖簾に腕押し糠に釘な説明になっているのではないか、と思ってしまうんですけどどうでしょうかねえ。


・どっちもどっちの感はあるのだが

『(問) 本日の会見の中で、様々な方々から、エネルギー価格や商品価格についてのご質問が出ていて、それについてのお答えがエネルギー価格の最近の下落が示している世界経済全体に対するサインのようなものを少し軽く見過ぎておられるのではないかという気がしないでもないです。』

さよですな。

『前回の会見でもエネルギー価格の下落についてはご質問させて頂いていますけど、需給両面があるのは当然ですけれども、足許の動きについて言えば、明らかにこれは新興国の需要減退に伴うものだということは誰の目からみても明らかだと思います。』

公的機関でこういうレポートも出ていますが、という説明で攻めないと後で言われるように「あなたの意見でしたら会見場で話さないでチラシの裏にでも書いておけ」となってしまう(正直これ聞いていてアタクシは「貴方の意見開陳してもしょうがねえだろ」と思いましたよ)のですが。

『4〜6 月の日本のGDPについて、マイナス成長という見方が大勢になっていますけれども、この中身も、結局のところ、まあ消費も相当弱いのですけれども、春先のベアに失敗したのだと思うのですが、同時に外需の弱さも相当影響していると思います。』

ベアが余計。というかその部分も聞いてて違和感があったわ。

『そういう意味では、エネルギー価格の下落が示しているものは、日本経済そのものについても、相当弱い兆候であるとみるべきだと私は思います。けれども、今日の景況感については、そういったものを一切無視して現状維持しておられるということで、このこと自体が市場に対して日銀が楽観的過ぎるのではないかと誤ったサインを与える可能性が非常に高いと思います。』

「日銀が楽観的すぎるサイン」はすでにとっくの昔に出ている訳で、質問するなら「市場との見方に相当の差がある」という話と、それ以外に新興国とかの需要減退を懸念するようなレポート的なものを持ち出して説明して、「市場が必ずしも正しい訳ではないでしょうが、日銀との見方に乖離が相当大きくなっているのは如何なものか」というような聞き方をすれば良いのにと思う。つーかこれ聞いている記者さん毎度毎度というか最近特に質問が要領を得なさすぎなのでもうちょっとポイント絞ってくれ。


『(答) ご質問は非常に多岐にわたっていますので、1 つ 1 つお答えできないかもしれませんが、私どもは、常に客観的に経済の現状がどうなっているのか、先行きがどうなっていくのかということを議論し、その上で金融政策の決定を行っています。その結論は、この公表文で示していますし、議論の概要は、議事要旨で次回の金融政策決定会合での承認を得て、公表するという形になっていますので、それをご覧になって頂ければ分かると思います。』

とは言え(黒田さんが当該記者うぜえとか思っていそうな点を割り引いても)この説明は何ぼ何でも塩対応オブ塩対応で、公表文書読めやゴルァでは記者会見をやる意味が無いんですがそれは。

#まあ質問する方が「〜と思います」ばっかりだからというのはあるが

『なお、足許の原油価格の下落要因について、色々な議論があることは事実ですが、一方的に需要要因だけであるというように決めつけることもできないと思います。これは、先程申し上げたように、IMF調査局が原油価格の下落について、色々な考え方を示しています。』

記者がこれを出して質問する話なのに総裁に説明されとるwwwww

『確かに、初めは大半が供給要因であると言っていましたが、その後、需要要因もかなりあったと言っています。ただ、そうした中で、ここ数週間というか、何か月かの原油価格の下落について、IMFも含めて全て需要要因だというように言ってはいないと思います。従って、ご意見はご意見として伺いますが、それについて、私はそのように考えておりません。』

これもだいぶイカサマチックで過去の話ではなくて問題は今後に影響する話ですよね、と思ったら食い下がる。

『(問) 私がお伺いしたのは、この 2 週間ばかりのことなのですよ。』

まあこの論点はそうなのだがこの質問者は態度が悪い。

『(答) あなたのご意見を開陳されるのは結構ですが、私どもがどう考えているか、あるいは金融政策決定会合でどういう議論を行ったかということについては、公表文で出ている部分が基本的な金融政策の決定に至る経済の見方であり、議論の経緯は議事要旨でご覧になって頂きたいと言っているわけです。』

どう見てもブチ切れです本当にありがとうございましたという所ですが、まあ聞く方ももうちょっと何とかならんのかと思いますが、答える方も塩対応オブ塩対応になっていまして、これもうちょっと丁寧に論点を絞って質問したらもうちょっと別の答えになったかも知れませんなと思う所です。

というのはですね、今回の説明の流れって、質問者が最初に指摘しているように「足元の状況に関して一時的で済ませていて、特に声明文では懸念なども加わらずに見通しも変わらないけれども実は根本的なところでの変化を見逃している可能性は無いのか、全然懸念していないとかどういうことなの」という事に対して全くの無回答な訳ですよ。でまあ従来の黒田総裁の会見での説明って自信満々モードのときはそういうのに対して「ご指摘のような懸念もあるかもしれませんがこうこうなのでその懸念は大きな問題にはならないと思われます」って感じでドヤ顔を交えながら説明していたのに、今回の会見(最近概ねそうですし先日の中曽副総裁の金懇会見もそうでしたが)ではそういう説明をするよりも「執行部様の見通し通りにいくんだから問題ない」という感じで聞く耳持たずモードになっているような印象が強いのでして、ということは裏を返せば先行きに対してそこまで自信満々じゃないんでしょ雲掛かっているんでしょとかいう妄想を強くするこの会見なのでしたとゆーところです。


・なお物価の判断に関しては相当な曖昧化が進行しています

こんな質疑が。

『(問) 先程、もし原油価格の下落が物価の基調に影響をきたすようならば、政策の調整をするということをおっしゃいました。今後を考える上で、今これだけ原油価格が物価に下押し圧力を与えている状況であれば、物価指標を色々みていかれるとは思うのですが、日本でいうコアコアと、最近月報に載った生鮮食品とエネルギーを除いたものの 2 つというのは、基調を示している指標として、大きな 2 つだと思うのです。その 2 つがなかなか上がってこないとか、下がり出すというと、やはり物価の基調がおかしいということになり得るのでしょうか。』

そらまあ政策の判断する指標がドンドン曖昧になっていますからこういう質問も出ますがな。

『(答) それはある意味でそうだとも言えますし、その 2 つだけで判断しているわけではありませんので、そういう意味ではそうだとは言えないと思います。』

キタコレ。

『というのは、これまで申し上げているように、ターゲットは総合指数ですし、総合指数の先行きの動きをみる上で、従来、一番重要なものと考えられてきていて、しかも現在でも展望レポートの見通しで示しているのは生鮮食品を除く指数です。ただ、その上で、昨年の夏以降の大幅な原油価格の下落という事態を踏まえて、原油価格の見通しについて、市場の先物価格の動きを勘案した一定の前提を共通にして、政策委員の見通しを作っています。原油価格の動きも相当足許の物価に影響しているわけですから、物価の基調をみるときには、足許のコアだけでなく、原油価格の動向を、特にそれがどれほどコア指数なり総合指数を引き下げているかということをよく踏まえて、みていく必要があるということです。新しくお示しするようになった生鮮食品とエネルギー品目を除いた指数も、今言ったような考え方の中で 1 つの指標としてお示ししているということはその通りです。』

『ただ、何回も申し上げますが、特定の指標だけで先行きを判断することはできないわけでして、特に物価の基調を決定する需給ギャップであるとか、予想物価上昇率も引き続き重要ですし、賃金と物価というのは、基本的には賃金が上がる時には物価も上がる、物価が上がる時は賃金も上がるという関係にありますので、賃金の動向も重要な指標になります。従って、そういった各種の指標を総合的に勘案して物価の先行きの動向を判断するということになろうかと思っています。』

インフレターゲットの導入で恣意的な金融政策判断を排除してインフレ期待を安定化させるという昔の置物一派の主張は一体全体なんだったのかと小一時間問い詰めたい。

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2015/07/24

○やっぱり面白いので黒田総裁の先般の講演から少々

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150721a1.pdf
アジアの経済成長をいかに持続させるか
Amartya Sen Lectureにおける講演の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年7月21日

これなんですが、アジアの成長に関する話をしながら実は日本の課題について言いたいんだろうなあと思いながら読んでいたのでそういう風に思うのかもしれませんけどどうですかね(^^)。

まずは最初の方から。

『経済成長をいかに持続させるかという問題は、学術関係者、政策担当者にとって、近年ますます関心の的になっています。先進国の「長期停滞論」に関する議論は、その典型例かと思います2。個別国の経済成長率は世界の平均値に回帰する傾向があることを考えると、今は高い成長率を謳歌している新興国も、いつかは同じような課題に直面するかもしれません3。』

うむ。

『そうしたことを踏まえると、アジアがこの先数十年間にわたって本当にしっかりとした成長を続けられるのだろうかという話は、決して心躍るような明るいものにはならないかもしれませんが、一考に値する問題だと思います。以下では、アジアにおける経済成長に関する定型化されたファクトを確認した後で、そうした経済成長をいかに持続させるかということを議論したいと思います。』

ということですが、これアジアの成長持続の話ではあるのですが、日本の成長をどう進めていくのか(そもそもそうならないと2%物価上昇が安定的に持続できないでしょ)という点を念頭に入れたお話なのかなあとか思いながら読んでしまった次第なのです。


でまあファクトの方は飛ばしまして課題の方に参ります。『3.経済成長の3つの罠』という小見出しから。


・成長の天井論に関して

『いったい、アジアはこの先も高い経済成長率を維持していくことができるのでしょうか。過去のパターンに従えば、アジアにはまた別の先導役が現れることを期待できるかもしれません。しかし、実際にそうなるとの保証はありませんし、仮にそうなったとしても、先導役一国に頼りきりになる訳にはいかないでしょう。アジア全体としての繁栄を維持していくためには、比較的所得水準の高いアジア諸国が、ある程度高い成長率を維持していくことが必要です。』

うむ。

『私は、アジアが成長を持続していくためには、避けなければならない罠が3つあると常々考えています。既に指摘したとおり、アジアには各国間での様々な違いがありますが、これら3つの罠は、各国の置かれた状況によって程度の差こそあれ、多くの国に当てはまるものと思っています。』

ということで・・・・・・・・・・・

『1つ目の罠は、「中所得の罠(middle-income trap)」です6。歴史を振り返ると、多くの国が中所得国から高所得国の段階に移行する過程で困難に直面しました。外国から入ってきた技術や農村部で得られた余剰労働力が提供してくれる成長機会を使い果たしたところで、いわゆる「ルイスの転換点」が訪れます。』

『この転換点に達するまでは、各種の成長会計分析によると、速いスピードでの資本蓄積、高い全要素生産性の伸び、労働投入の持続的な増加によって高い成長率が実現するのが一般的です。しかし、転換点に達したところで、成長が鈍化する可能性が高まります。もっとも、ルイスの転換点に直面した国でも、技術革新と新市場開拓によって、若干の減速はあるものの、成長を続けていくことが可能だと思います。』

ふむ。

『アジアでは、日本とNIEsはこの罠を乗り越えて、1970 年代と1990 年代にそれぞれ高所得国の仲間入りを果たしました(図表4の右パネル)。中国のほか、タイを含むいくつかのASEAN加盟国は、中所得国の中でも上位に位置しており、ある程度の確度で中所得の罠を回避して、高所得国に移行することができるのではないかと思われます。アジアのそれ以外の国の多くは、中所得国の中でもなお比較的低めの所得水準です。この先も高い成長を続けていく潜在能力があるということではないでしょうか。』

ということですが・・・・・・・・・・

『次に、2つ目の罠として、「人口動態の罠(demographic trap)」があります。』

キタコレ。

『平均余命の上昇に出生率の低下が重なるかたちで、高所得国はもとより、中所得国のうち上位に位置する国々も含め、多くのアジア諸国では高齢化が既に進展しつつあるか、近々進展することになると考えられます。』

ですなあ。

『「生活水準」を示す重要な指標である「1人あたり国民所得」の成長率に決定的な影響を及ぼすのは、総人口に占める生産年齢人口の割合です。高齢化の進展は、この割合の趨勢的な低下、すなわち、退職した高齢者が増える一方で、働き手である生産年齢人口が相対的に減っていくことを通じて、国民1人あたりの所得の伸びを抑制します。この場合、それぞれの働き手は、自らの稼いだ所得のより多くの部分を退職者の生活を支えるのに充てる必要が出てきます。』

『図表5は、既にアジアのいくつかの国は以上のメカニズムを通じて人口動態の変化が深刻な影響を及ぼすフェーズに至っていることも含めて、アジア各国で人口動態の変化にどの程度違いがあるのかをみようとしたものです。このグラフにおいて、横軸は生産年齢人口の変化率、縦軸は総人口に占める生産年齢人口の割合を表しています。後者の割合が上昇することを「人口ボーナス」、低下することを「人口オーナス」と呼ぶことが多々あります。グラフにおけるそれぞれの輪の大きさは、生産年齢人口の絶対数と比例するように描かれています。』

『これを見れば明らかなとおり、非常にゆっくりとした動きをする人口動態であっても、長い目でみると大きな変化をとげます。日本は、人口オーナス期に既に深く入っており、生産年齢人口の絶対数も目立ったペースで減少しています。NIEsや中国、いくつかのASEAN加盟国も、そう遠くない将来にこうした日本の動きに続く見込みです。』

これなんですよねえ。

『この間、インドと他のアジア各国は、少なくとも今世紀半ばまでは、人口動態的にはより有利な条件に恵まれることが予想されます。』

うむ。

『最後に、3つ目の罠として、「マルサスの罠(Malthusian trap)」があります。マルサスの元々の研究は、限りのある資源(マルサスの場合は土地)の存在により、成長が抑制されるというものでした。例えば原油などの天然資源をとってみても、その供給に限度がある場合は、長期的には世界経済の成長の足かせになると考えられます。我々日本人は無尽蔵と考えがちな水資源も例外ではありません。世界経済を見渡すと、水不足が工業化や農業開発の深刻な制約となっている例は多々あります。こうした観点からすると、近年における資源多消費型の新興国の成長鈍化も、自動安定化装置――あるいは、資源制約を踏まえた適切な政策対応――によって成長が実際に抑制されたことを示唆しているとも考えられます。地球温暖化を含む環境問題も、マルサスの罠の一形態として解釈できると思います。』

普段日本の場合は成長の天井論の話って避けて通っている感がある黒田総裁なのですが、成長の天井論についての話をするというのはやはり最初の方に(先日引用しましたが)『しばらくの間――英語では中央銀行総裁としての帽子を脱ぐと言いますが――中央銀行総裁という立場は忘れさせていただき、今晩は、「非伝統的金融政策」や「量的・質的金融緩和」ということは一切口にしませんので、悪しからずご了承ください。』と言っただけに、日銀総裁としてピーターパンだの魔法の粉で空を飛ぶだのと言わない場合はこういう話になるのねという所であります。


・で、生産性向上が重要という話になる

『4.生産性の向上』という小見出しに入ります。

『以上3つの罠を乗り越えていくうえで鍵となるのは、生産性の向上、より厳密には全要素生産性の向上であることは、広く認識されているとおりです。イエレンFRB議長も最近の講演で、「より高い生活水準を持続するうえで最も重要な要素は、生産性の向上である」と発言されました7。私も全くその通りだと思います。』

キタコレ。

『例えば、「マルサスの罠」については、「土地資源の制約から成長ひいては人口の伸びも抑えられる」というマルサスの不吉な予言が結局実現しなかったのは、18 世紀に農業部門の生産性の伸びが著しく高まり、膨大な人口に見合うだけの食糧供給が可能になったためです。一例をあげますと、中南米原産のジャガイモがアイルランドに伝えられると、同じ面積の畑から、従来収穫していた穀物に比べて2倍あるいは3倍の人々をまかなうに足る食糧生産が可能となりました。この場合、ジャガイモの導入により、アイルランドの農業部門の生産性が大きく高まったことになります。』

どうでも良いのですが食えなくなってその時期以降も移民を新世界に大量輩出していたアイルランドを例に出すのってどうなのよという気がするが(それからモンスーンアジアの場合はそもそも論として米作のカロリー効率が高いんじゃなかったでしたっけ)。

『現代においても、生産性が向上すると、以前より少ない生産年齢人口での経済成長が可能になり、「人口動態の罠」を克服できるようになります。外国から入ってきた技術や農村部で得られた余剰労働力のメリットを使い果たした後でも、ある程度の水準の生産性の伸びを維持できれば、「中所得の罠」から抜け出ることができます。』

アジアの話をしているが暗に日本の話をしているようにも見える。

『全要素生産性の帰趨が成長の重要な要素であることは、アジアの奇跡の幻想に関する議論を例にとってみても明らかです。1997 年から1998 年のアジア通貨危機のはるか以前に、クルーグマン教授は、NIEsあるいはアジアの「4匹の虎」の高成長は全要素生産性の高まりによって十分に支えられたものではないため、持続不可能であると主張しました8。結果からすると、この主張は正しかったと考えられます。アジア通貨危機には、持続的かつバランスのとれた成長にシフトしていくうえで避けられないものであったという側面もあると思われます。』

でまあこの間の事実についての説明部分は引用していると長くなるので割愛してその先ですが。

『そこで次に問題になるのは、どのようにして全要素生産性の伸びを高めていくのかという点です。仮に生産性の伸びがもっぱら外生的な要因で決まるとすると、この問いに対する答えは悲観的なものになります。この場合、我々としてできることは、何らかの外生的なショックや時の運によって生産性が高まるのを期待することだけです。都市経済学の研究者であるモレッティ教授によって指摘されているとおり、都市の繁栄の歴史を紐解けば、そうした見方にも全く根拠がない訳ではありません9。』

『例えば、ワシントン州シアトルがハイテク産業の集積地となったことには、シアトルがマイクロソフト社の創業者達が生まれ育った土地であり、彼らが馴染みのある場所に会社を移したいと考えたということが大きく影響しています。米国のそれ以外のハイテク都市についても、多少なりとも同じような話が聞かれます。生産性の向上についても同じような考え方が当てはまるのであれば、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズのような天才が我々の国に生まれるのをただ待つしかない、ということになります。』

『しかしながら、幸いにも、経済学はこの点についてもっと前向きな見方も示してくれています。生産性は内生的に決定されるところが大きいという見方です。』

ということで次の『5.いかに生産性を引き上げるか』である。

『生産性の伸びを高めるのは何か、経済学の研究では、既にその候補となる生産性の決定要因に関して長いリストが用意されています。しかし、ここではそれらを網羅的にみていくことはせず、私自身が重要と考えるポイントを3つだけ挙げたいと思います。』


『1つ目は人的資本です。どのように人的資本を計測するかは難しい問題ですが、よく用いられる簡便的な指標は教育年数です。図表7では、教育年数の長い国ほど緑色が濃くなるように各国を色分けしています。このうちアジアに注目すると、日本、韓国、スリランカといった国が濃い緑色になっています。実は香港とシンガポールも同じグループに属するのですが、この地図では見えづらいと思います。アジア全体としてみると、北米や欧州と比べると色が薄く、南米と同じような感じに見えるかもしれません。このことは、アジアには人的資本蓄積の余地がまだかなり残っていることを示唆しています。』

以下説明が続くのを割愛しますが、まあそうですなと思うのだが日本の成長力は何故上がらんとか思う。

『生産性を引き上げていくための2つ目の鍵は、マーケット・フレンドリーな(市場メカニズムに即した)ビジネス環境です。例えば、市場経済の礎となる「財産権の保護」、あるいはより一般に「法の支配」は、イノベーションが活発に生まれるためには欠かせない要素であり、生産性向上の土台となるものです。』

どこぞの国をdisってますね(たぶんそういう意味ではない)。

『私は、多くのエコノミストと同じように、健全な競争と適切なインセンティブ付けが市場メカニズムを十分に機能させるうえで必須であり、これがあってこそ持続可能かつ頑健な成長が実現すると考えています。この点、様々な分野における規制緩和は強く奨励されます。できることはまだたくさん残っていますが、アジア経済はこの点で着実に前に進んでいると思います。』

どうもアジアに仮託して日本の話をしているように見えてしまう。またまた途中を割愛して3つ目。

『生産性を高めるうえで重要な役割を果たす3つ目の要素は、しっかりとした金融部門です。創造的破壊こそが生産性向上の源泉であるという見方に、私自身異論はまったくありません16。』

ほー。

『シュンペーターが指摘したとおり、金融仲介には、革新の精神に溢れた企業家や、より広く価値の創造者をサポートするという重要な役割があります。現代でこれに該当する例は、成長志向の企業に対して金融面のサポートだけでなく経営面でのアドバイスも行うベンチャー・キャピタルです。もちろん、金融仲介の役割は起業者をサポートすることに限定されません。イノベーション主導の経済成長を実現するうえでは、ビジネスの発展段階にあわせて広範な金融機能が切れ目なく提供されることが求められます。』

日本の金融機関向けの話にも見えてくる・・・・・・・・・


でまあ金融の話も端折りまして最後の所ですけど。

『本日のお話では、アジアがしっかりとした経済成長を持続していくためには、生産性の向上が鍵となるという点を強調しました。私自身の考えでは、持続的な人的資本の蓄積、市場機能を尊重した制度設計、しっかりとした金融部門の3つが、生産性向上に重要な役割を果たします。アジアでは、これらの分野で望ましい方向での進捗がみられますが、まだ課題はたくさん残っています。』

うむ。

『本日私がお話しした内容は、広い意味では構造改革の一部に分類されるものです。一般的にみて、既得権益の存在等の理由により、構造改革の実施はいついかなる場合でも困難を伴うものです。また、景気の循環局面によっては、改革を先延ばしにしようという誘因が強く働きます。これは、構造改革の実施によって経済が短期的に下押しされることへの懸念があるためです。』

『しかし、こうしたマイナス面を勘案したとしても、私は必要な改革を実行するのは今しかないと考えています。構造改革には短期的に負の影響があるという点は誇張されるきらいがあります。これを改革に着手しない言い訳として使うことは避けなければなりません。構造改革がうまくデザインされたものであれば、企業の先行きの収益見通し、さらには家計の恒常所得を改善させ、現在の需要を減らすどころか、むしろこれを増やす方向に働くはずです19。』

ということで、確かにアジアの話ではあるのだが、日本の話をしているようにも見えますし、黒田さんの本質的な部分では構造改革論者であって、それって一歩間違えるとただのシバキアゲになるんだよなあとか思いながら読んでしまいました。


で、引用大増量企画になりまして誠に恐縮至極です。

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2015/07/17

○総裁会見レビューが思いのほか長くなってしまった・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1507b.pdf

・展望レポート中間レビューの説明部分

冒頭説明の中から展望レポート中間レビューの説明部分を念のため引用しますが、昨日ネタにした声明文と同様に物価の2016年度見通し中心値が2.0→1.9になったものの、見通しは不変ということのようで。

『経済・物価の先行きについては、今回の会合で中間評価を行いました。4月の展望レポートで示した見通しと比較しますと、成長率は、2015年度について、このところの輸出の鈍さなどから、幾分下振れる一方、2016年度、2017年度については概ね不変です。消費者物価は、概ね見通しに沿って推移すると見込んでいます。』

『すなわち、わが国経済は、2016年度にかけて潜在成長率を上回る成長を続けると予想されます。2017年度は、消費税率引き上げの影響などから、減速するとみられますが、プラス成長を維持すると予想されます。物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられますが、物価の基調が着実に高まり、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。』

ほほうそうですか。

『2%程度に達する時期は、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度前半頃になると予想されます。ただし、一部の委員が、物価の見通しについて、より慎重な見方をされました。』

しかしまあ何ですな、原油価格が上がらなければ2%程度に達さなくても知らんがなという話になるのかどうかというのが相変わらずファジーな訳でして、昨年の追加緩和の時は「原油価格低下で期待の低下懸念」という話だったのに、今はアダプティブな期待形成的な問題はなくて基調は確りという説明になっていまして、まあ何ちゅうか一つ一つの話自体はそれ単体だと説得力があるのですが、過去との整合性を考えるとどうもこう「その時にやりたい政策に対して適合的な理屈をこねてくる」という印象の方が強い訳ですよ。

でまあ当面は原油価格の影響による下押し効果がどうのこうの的な部分で話が先送りされているから良いようなものの、「その時にやりたい政策に対して適合的な理屈が飛び出す攻撃」を念頭に入れますと、じゃあ今度原油価格のマイナスが剥落して物価がホイホイ上昇したら(するのかどうか知らんが概ね1%近辺まではという見方が平均的な筈)別の適合的な理屈が飛んでくるのではないか的な懸念が出て市場の期待が不連続的に変化する可能性だってあるんじゃネーノとまあ思うのですがねえ。


・中国経済とギリシャの質疑は結構あったのだが正直それは聞くだけ無駄だと思う

冒頭説明の次の質疑は中国でその次がギリシャですが・・・・・・・・・・・・

『(問) 中国経済についてお尋ねします。最近中国の株式市場では、株価が不安定な状況が続いています。今日発表されたGDPの伸び率も7%と横ばいになりました。今後、中国経済の減速が続いていくという見方が大勢ですけれども、これが日本経済、世界経済に与える影響について、総裁はどのようにみていらっしゃいますでしょうか。』

『(答) 中国経済については、ご指摘のように、本日公表された中国の4〜6月期のGDPが前年比で+7.0%ということからも確認されたように、総じて安定した成長を維持しているとみています。』

目標値に何故か着地する中国の統計いや何でもないです。

『先行きについても、当局が金融・経済面の両面から景気下支えに向けた施策を相次いで講じていることもあり、中国経済は、成長ペースを幾分切り下げながらも、概ね安定した成長経路を辿ると考えています。今後とも、中国経済の動向については、注意深くみていきたいと思っています。』

という答えしか返ってこないのでこの先でも中国の質問有ったけど基本的に暖簾に腕押し糠に釘。

『なお、上海の株価については、ご案内の通り、昨年後半以降かなり大幅な上昇を続けた後、6月半ばから下落しました。その背景としては、そもそも株価が昨年後半の2倍以上に上昇するもとで、市場参加者の間で高値警戒感が拡がっていたことに加えて、信用取引が巻き戻されたことなどが影響しているとみられますが、引き続き注視をしていきたいと思っています。』

全部注意してみる攻撃ですわな。


ではギリシャ。

『(問) ギリシャを巡る一連の情勢についてお伺いします。先日のユーロ圏首脳会議で合意された内容については、ギリシャ議会が15日までに支援の条件とされている構造改革案を承認することが必要になってきますが、仮に承認された場合、ギリシャを巡る危機というのは、これで回避されたとみていいのでしょうか。また、今回の一連のギリシャの財政を巡る問題は、多額の債務を抱えている日本の財政問題について、どのような示唆があると総裁はお考えでしょうか。』

後半の質問は一ひねりしていますが・・・・・・・・・・

『(答) ご承知の通り、先般のユーロ圏首脳会議で、ギリシャ政府が付加価値税の見直し、あるいは年金改革について所要の立法措置を行うことを条件に、ESM(欧州安定化メカニズム)による金融支援の協議を開始することが合意されました。日本銀行としては、ギリシャの債務問題が、関係諸機関や欧州各国の協力のもとで、解決に向けて着実に進展していくことを強く期待しています。まずはギリシャ政府が所要の措置を講ずるということが必要ですし、その上でESMによる金融支援の詳細等が固まり、それを着実に実行していくということを通じて、問題の解決に向けて着実に前進することを強く期待しています。』

まあそうしか言いようがない罠。

『後段のご質問については、ギリシャと日本の財政状況を単純に比較することはできないと思いますし、また、財政運営についてはあくまでも、政府・国会の責任において行われるものであって、具体的なコメントは差し控えたいと思います。』

と言いつつも・・・・・・・・・

『その上で、一般論として申し上げますと、』

一般論キタコレ。

『いつも繰り返しているように、国全体として財政運営に関する信頼をしっかりと確保することは非常に重要であると思います。この点、政府は、経済の再生と財政の健全化を同時に進めていくという方針を示した上で、いわゆる基礎的財政収支を「2020年度までに黒字化」するという財政健全化目標の達成に向けて「経済・財政再生計画」というものを定めたところです。政府による財政健全化に向けた取り組みが、着実に実行されることを強く期待しています。』

しかし最近の総裁会見での説明ってこの語尾の決め方が定型文っぽくて「想定問答通り」って感じなのが多くなってきましたな。良く言えば慣れてきたとかいう事なのかもしれませんけど悪く言えば2年で2%がドンドン先送りされる中であまり威勢の良い話ばかりしていると総ツッコミになるから抑えないとという意識なのかもしれませんなとか思ってしまうのですがどうなんでしょ。


・1.9%も2%キタコレ

ちょっと先に行ってまあこの質問が来るわなという話。

『(問) 物価の見通しについてお伺いします。2016年度の物価見通しの委員の中央値が若干下振れして1.9%になりました。先程総裁のお話しで2016年度前半頃に2%というのは変えないとおっしゃいました。2016年度前半頃に2%に達するということと、2016年度の物価見通しが1.9%ということの整合性が分かりにくい部分があるので、ご説明頂けますでしょうか。この1.9%というのは、2%程度の「程度」の中に入っていて、必ずしも2%にこだわらないというお考えなのか、教えて下さい。』

そらまあそういう質問になりますがな。

『(答) 2%程度という時に、1.9%も2%程度に入るとは思いますが、』

出たな。

『「物価安定の目標」自体は、ヘッドライン(総合)の消費者物価指数で2%を目標にしています。ただ、物価の基調をみていく必要がありますので、その際には、展望レポートあるいは中間評価にもある、生鮮食品を除く消費者物価指数──生鮮食品は非常に変動しますので、それを除いた消費者物価指数──の対前年比で基調をみています。』

さっきも申しあげましたが、この辺りの説明がやりたい政策(今だったらに現状維持ですけど)に対して適合的な説明攻撃に見える訳でして、じゃあ2%目標というのは「出てくる経済指標などから見てどういう状態なのか」という部分に解釈の幅が相当出てきそうに見えるわけで、そうなると市場の先行き金融政策に対する期待というか予想がどこかでいきなりジャンプする可能性もあるよねと思うのですが、物価がホイホイ上昇してくる時にこの辺りは日銀のコミュニケーションの真価が問われるところになりそうな気もするし杞憂のような気もします。

『それに加えて大きな原油価格の下落が昨年の秋から起こり、その動きを除いた指標やその他様々な指標をみながら、当然この金融政策は運営していくということになると思います。』

金融経済月報の方でコアCPIをエネルギー要因と除くエネルギー要因に分解したのが図表として出ていたのですが、基調ガーの話を強調している訳ですけれども、あまりここをフォーカスするとそもそも物価目標の指数として何が適切なの的な話に発展してカオスになりそうな希ガス。

『この2016年度の生鮮食品を除く消費者物価の上昇率が1.9%というのは、あくまでも年度全体の数字ですので、一定の時点で2%を超えることがあるかもしれませんし、それ以下のこともあるかもしれませんが、平均的にみて2016年度が1.9%ということだと思います。先程申し上げたように、委員の多数意見では2016年度前半頃に2%程度に達する可能性が高いという見通しは変わっていません。』

元々QQE投下した時は2%へのリジットなターゲットみたいな話になっていて、その後2014年度に入って伸びがパッとしなくなってくるとしばらく鳴りを潜めていたと思ったら10月追加緩和でまたリジットなターゲットみたいな話をして、最近は基調ガーという話になっている、と言う風にまあ外野的には見えてしまうだろうなあと思う訳でして、2%物価目標の達成とは何ぞやという問題を説明ろくすっぽしないままでどこまで通るのかは見ものではあります。



・海外要因はリスクだが一時的ですよ問題ありませんよという話

『(問) 支店長会議や短観の結果を踏まえ、また色々とお話を聞いていると、概ね日銀の予想している通りに事が進んでいるように思います。一方で今、海外は非常に減速しているということもあるのですが、今の日銀の一番の懸案事項は、海外要因、海外経済になるのでしょうか。』

うむ。

『(答) 足許の動きをみると、国内要因よりも海外要因の下振れが輸出や生産に影響し、成長率にも影響する可能性が高くなっています。ただ、それは先程申し上げたように基本的には一時的なものであり、米国経済も欧州経済も、元の成長軌道に戻ってきていますので、先進国を中心に世界経済全体が回復していくという見通し自体は、IMFの見通しもそうですが、基本的には変わっていません。』

はあそうですか。

『このところの弱めの輸出や生産に、海外要因がかなり大きく効いていることは事実だと思いますし、今後のリスク要因についても公表文で述べている通り、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどを挙げているところであり、その意味では全くご指摘の通りだと思います。』

輸出や生産を声明文でもあるように現状認識下げたものの、結局展望レポート中間評価の方では先行きの見通し下げてませんがなという辺りに、リスクとしては気にするけれどもシナリオ的には知らんがなというのが表れておりますな。


・基調ガーと言ってるがインフレ期待はどうなのかというツッコミ

『(問) 物価の見通しについて伺います。先日の短観で、企業の景況感は改善したにもかかわらず、1年後の物価見通しはなかなか上向いてきません。さらに、日銀が調べている期待インフレ率も、昨年一時期1%を超えましたが、足許0.7%くらいで推移しています。なかなかデフレマインドは根強いなと思うのですが、こうした期待インフレ率の動きは、これまでは日銀の想定内の動きなのでしょうか。現状分析とその背景、将来はまた上向いていくのかどうかの見通しについて、総裁のお考えをお聞かせ下さい。』

BEIが上がったりしていた時には期待インフレがどうのこうのという話を前面に出しておきながら都合が悪くなると基調ガーの方向に行くとはどういう事やという質問ですね!

『(答) 短観でも色々な民間の調査でも、景況感が上向いている、あるいは景気が緩やかな回復過程にあることは、ほぼ一致していると思います。その上で物価については、生鮮食品を除く消費者物価が、前年比0%程度で推移していることは事実で、そこには中間評価の注3にもある通り、エネルギー価格の下落が相当大きく効いています。』

で?

『ただ、物価上昇率が昨年秋頃の1%くらいのところから足許0%程度まで下がってきたわけですが、そのもとでも期待インフレ率自体は、昨年10月の「量的・質的金融緩和」の拡大もあり、比較的維持されているとみています。』

そもそもサーベイベースの数値ってそうホイホイ上がったり下がったりしてましたっけという疑問を持ってはいけません。

『期待インフレ率は色々な要素で決まっていますが、日本の場合は、実際に物価が上がってくると期待インフレ率も上がるという傾向――バックワード・ルッキングな傾向――はまだあるようにも思われます。先程申し上げたように、エネルギー価格の下落の影響が次第に剥落していく、そして来年度前半頃には全くなくなることから言いますと、実際の物価上昇率は年度後半、秋口以降、かなりのテンポで上昇していく可能性がありますので、そうしたもとでは期待インフレ率自体も次第に上昇していくのではないかと思っています。』

ということですので、秋口以降に物価が上がると期待インフレが上がるとの仰せですが、それによって消費マインドがコケたら元の木阿弥になってしまいますけれども、そちらの説明は華麗にスルーするのはまあある意味お約束みたいなもん(これが麿だと丁寧に説明した挙句に「なんだ期待インフレが上がらないと思っているのか」という話になって進軍ラッパモードにならないんでしょうな)ですが、実際の物価が上がって期待インフレがどう上がるのかを正座して待機したいと思います(棒)。

『なお、期待インフレ率は、そのままでは見えないので、アンケート調査のような形で見るか、ブレーク・イーブン・インフレーションレートなどのように、物価連動国債から逆算して、物価連動国債市場の参加者のインフレ期待を計算するなどでしか分かりませんが、アンケート調査も、消費者、生産者、そしてエコノミストと色々あり、それぞれに色々な数字が出ていますし、それぞれのバイアスもあると思います。』

期待インフレがそのままでは見えないのに期待インフレを2%にリアンカーという中々禅問答的な話になっておりますが、まあ実際問題としてはそうでしょうなと思いますけど、QQE導入当初の単純な説明は何だったのかと小一時間。

『また、ブレーク・イーブン・インフレーションレートも、物価連動国債市場が非常に小さくて参加者も少ない、流動性も低いということもあって、完全に市場参加者の真のインフレ期待を反映しているかも議論のあるところです。』

置物師匠・・・・・・・・・・

『従って、期待インフレ率、期待物価上昇率については、そうしたアンケート調査あるいは市場の指標などを総合的に勘案してみていくしかないと思います。』

まあ総合的に勘案するしかないというのは分かりますが、しつこく申し上げるとこのあたりの話が「総合判断」に傾いてくると出口を意識するようになった時に(そうなるのかはかなり知らんがなという感じですけど)ここのファジーさが仇になりそうな悪寒。

『全体としてみると、昨年秋以降、エネルギー価格の下落を反映して消費者物価上昇率自体はどんどん下がってきたわけですが、期待物価上昇率はあまり下がらずに、比較的よく維持されていると思いますし、先程申し上げたように、今後実際に上がっていく過程では期待物価上昇率も上がっていくのではないかと思っています。』

てな事で、結局の所次に日銀がしょんぼりするのは秋口以降の物価推移とその時にインフレ期待が上がるのかを見た結果見込み違いだった場合という事になるので、これ下手したら10月展望レポートも「いよいよこれからです」で粘ってくるかも知れませんな。その前に輪番が爆発したらアレですが。


・ネタ質問ですけどね

『(問) 2点お伺いします。1点目は、最近、総裁は、世界各国の著名なエコノミストの方達との交流について執筆されています。今でも交流されているということだと思いますが、総裁ご自身は、一般に言うリフレ派に属するとお考えでしょうか。』

ワロタ。

『2点目は、総裁は2013年に就任前の国会でのヒアリングで、金融政策で2%の物価安定は達成可能だということを、はっきりおっしゃっていますが、原油で色々な影響があったにせよ、そのお考えに今でも変わりはないのでしょうか。』

微妙にイヤミな質問ですな。

『(答) 前者は、日本で、リフレ派と言われる人達の主張がどういうものなのかという確たる定義があるとも思われませんし、私自身リフレ派の一員であると宣言したこともありませんので、何ともお答えしかねるということかと思います。』

置物師匠とジンバブエ先生涙目。

『後者は、私は、今でも、そうであると思っています。』

ここはぶれませんな、麿ドクトリンとは思いっきりここで違いを見せてきます。

『と申しますのは、その際も、あるいは、その後も常に申し上げていましたが、物価上昇率を決める要素は色々あるわけです──最近で言いますと、原油価格が下落すると物価上昇率が下がるとか、あるいは、円安になると物価上昇率にプラスの圧力がかかるとか、色々な要素があることは事実なのです──が、長い目で見て、そういった色々な要素がある中で、金融政策としては、物価安定目標──日本の場合、多くの中央銀行と同じく2%という物価安定目標を掲げているわけですが──に向けて、様々な要因を踏まえた上で2%に持っていく責務があるし、持っていくことができると考えています。』

ここの説明はぶれない。

『ちなみに、それ以外のことでは、理論的に考えて、先程申し上げたように原油価格とか、為替とか、色々なことが影響するとは思いますが、そういったものは基本的には金融政策が動かせるというよりも別な要素で動いています。金融政策は、金融市場に対する働きかけを通じて、実質金利、期待インフレ率などに影響を与えて、需給ギャップを縮小し、予想インフレ率の上昇をもたらすことを通じて、物価安定目標を達成することに尽き、どこの国でも物価安定を達成する責務を負っているのは中央銀行であるということには変わりはないと思います。』

一方リフレ派の置物師匠副総裁は「2年で2%になっていない理由」などという言い訳を講演でしたりしておりましてですなあ(ニヤニヤ)。



・出口に関してどこまでこれで通せるのでしょうかねえ

『(問) 先程、金融政策で2%の物価が達成可能だと言われていましたが、やはり金融政策の効果が出るには1年とか2年とか時間がかかると思います。総裁も就任された時に「2年程度で2%」と言われたと思うのですが、結局、2年程度ぐらい見ていたのが、結果として2016年度ということになると、3年以上かかっていることになると思います。』

とまずイヤミを打ち込んで・・・・・・・・・

『一方で、2016年度の前半に2%の物価が実現されるということになると、現状から見て1年なのですが、金融政策の効果に時間がかかることからみると、2016年度前半に2%にいくことに自信を持っているのであれば、先行きの政策のことをもう少し言及されてもよろしいかと思います。』

日銀の「強力な金融緩和」が本当に強力に効くのであればそうなんですよねえ。まあ直感的には効き方がリニアや対数的なのではなくて、どこかでいきなりジャンプするような効き方をしそうな悪寒もありますが。

『やはり安定的に2%ということは、先行きではなく現実に足許が2%にいってからでないと、先行きの出口や政策論といった辺りは、なかなかお話しできないのかなと思うのですが、その辺りに関してお伺いします。』

たぶん市場は足元が2%まで待たずに先行きの政策を考えて動くと思います。まあ物価が1%割れで延々とうだうだしていたら別に今のままだと思います(輪番オペの技術的限界の話はさておきまして)けど。

『(答) 何度も申し上げている通り、原油価格の前提を踏まえると、原油価格下落の物価上昇率に対するマイナスの影響はだんだんと小さくなっていき、来年度の前半にはゼロになります。これは、金融政策とは関係なくそうなるので、中間評価の注3にもあるように、物価上昇率に対するかなり大きなマイナス要因が消えてしまう、そして他方で、潜在成長率を上回る成長が今年度、来年度と続くことで需給ギャップも縮んでいき、さらにプラスになっていくので、来年度の前半頃に2%程度に達する可能性が高いと、私あるいは政策委員会の多数はみています。』

さいですな。

『そのことと、出口の議論を具体的にすることは別の話です。』

ほえ???

『物価安定目標の達成で何よりも重要なのは、それが安定的に持続できるようになっているかどうかであり、やはりその判断のもとで、その時点での金融経済情勢を踏まえて、具体的な出口を探っていくことになると思いますので、今の時点で、出口について具体的に議論するのはやはり時期尚早であると思っています。』

いやだから金融政策の効果のタイムラグがある上に期待を変化させるような超強力な金融政策を実施しているんですから、期待をリアンカーさせるとか言ってもデフレ均衡からのシフトアップが2%で止まる保証ってどこにも無いでしょというツッコミをしていると思うのですが、華麗にこの答えで通すという辺りに、そもそも達成に対する確信度があるのかよとかツッコミをしたくなってしまいますがな。



・これまたイヤミ質問ですが・・・・・・・・

『(問) 中間評価について、改めてお伺いします。今年度の物価見通しが、前回に比べると、0.1%程度下がって、概ね横ばいということですが、過去から累計してみると、例えば昨年10月から4回連続で下がっていたり、1月から比べると0.3%下がっている、あるいは、GDPにしても、昨年度の成長率は6回下方修正されています。』

(・∀・)ニヤニヤ

『こういうトラックレコードをみると、この先大丈夫だとおっしゃっていても、本当にそうなるのかな、という疑問を若干感じてしまうのですが、つまり日銀の見通しに対する説明責任や、あるいはクレディビリティというところは、傷はつかないのでしょうか。』

まあ日銀の見通し通りに行くと金利の市場が全員確信していたらそろそろ出口政策の心配をしている筈なんですけどねえ。

『(答) 見通しは当たらないといけないということは、その通りだと思うのですが、昨年来申し上げているように、いくつか予想外のことがあったことは、日本銀行に限らず、政府にしても民間のエコノミスト達にしても同じだと思います。』

出たな。

『1つは、消費税増税後の反動減がやや長引き、成長率に対して、おそらく予想外に、特に4〜6月、7〜9月に影響が出たことは事実だと思います。』

そうじゃなくて増税前の駆け込み部分を過小評価したんじゃないですかねえというのと、物価上昇による実質所得の低下の影響を過小評価したんじゃないですかねえと思うのだが、それを原油市場の動向と同列にして(この次に出ます)天変地異扱いするのはちょっと・・・・・・・・・・・

『それから、原油価格の大幅な下落──5割以上の下落──は、ほとんど誰も予想できなかったことであり、そういった様々な要因で、成長率や物価見通しが、その通りにならなかったということではないかと思っています。』

まあこれはこれとして。

『経済見通しですので、どうしても予測の誤差というか、そういうものはありますが、まさにおっしゃったように、それがどういった要因でそういうことになったのかということは、十分分析して、明らかにしていく必要はあると思っており、従来からそのようにしています。各国政府やIMF、OECD等の国際機関も含めて、経済見通しの正確化については、色々な努力はしていますが、上振れ、下振れということが、ある程度起こりうるということは、予測技術の進展にもかかわらず、様々な予測しがたい事態が起こるために避けられないことですので、それだけで予測に対する信頼性が損なわれたということにはならないと思います。』

言いたいことは分かるが見苦しい言い訳に見えてしまうような気がするんだが。

『ただ、予測は当たるに越したことはないことは事実です。今後とも、見通しの正確化については引き続き努力していきたいと思います。』

いやだからそういう状態でどうやって「2%の物価安定目標を達成した」という判断が出来るのかが良くわからんとイヤミを申し上げて思いのほか長くなってしまった総裁会見ネタはこの辺で。

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2015/06/30

○総裁がBISで講演をしているのだが言っている事が益々ファンタジーの世界に旅立たれている件について

小見出しが長いですかそうですか。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150629a.pdf
【発言要旨】非伝統的金融政策の波及経路 ―理論と実践―
BIS(国際決済銀行)年次総会のパネルディスカッションにおける冒頭発言の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦 2015年6月28日

ということでめんどいので邦訳の方を見てしまうのですが、全編においてツッコミどころががががが。


・消費増税前の影響とかは無視して効果を騙るとな

『日本銀行は、2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入しました。その後の2年余りの経験を経てひとまずわかったこととして、私たち中央銀行が自らの使命の達成に強く明確にコミットし、適切な非伝統的政策手段を用いれば、ゼロ金利制約は克服できるということが挙げられるかと思います。』

そういうのは政策の目標を達成してゼロ金利制約の軛を逃れたところで堂々と宣言するものであり、出口政策どころか目標達成のメドがドンドン後ずれしているような状況なのに「ゼロ金利制約は克服」とか何を寝言を言っているのでしょうか。

『例えば日本では、「量的・質的金融緩和」導入以降に、完全失業率は0.8%ポイント低下し、消費者物価指数の前年比は1%ポイントほど上昇しています。』

消費者物価指数に関しては消費増税の駆け込み需要などの影響で上がった分というのがあった筈で、その後原油ガーという言い訳はあるにせよ下がって今0.1%なのに「前年比は1%ポイントほど上昇」というのは単に緒戦の消費税神風補正付きの戦果であって、今の状況を話さないでこういう表現をするのは詐欺じゃないですかねえ。

なお、後の方でその手の言い訳は出ているのですが最初の時点ではこういう話をしているのが二枚舌っぽくてそれもまた素敵です。

『他の中央銀行も同様に、非伝統的金融政策によって需要を刺激することに成功しています。』

だそうなのですが、経済が恒常的に供給不足の時って金利とか貸出の枠みたいなので供給力の創出のコントロールをしやすいと思うのだが、経済にスラックがある中で金融政策で有効需要って恒常的に刺激できるもんなの???という気は昔からしているのですが、何せ不肖このアタクシ無学なもんでその辺の理屈構成が良くわからん。


・「効果はありまぁす」と割烹着を着て登場するわアプローチの説明が自爆だわ

で、次。

『非伝統的金融政策の効果については、学界には引き続き懐疑的な見方も残っているようですが、少なくとも中央銀行の間では、現実に政策効果があったという共通理解が醸成されています。』

お、おぅ・・・・・・・・・・

『バーナンキ前FRB議長が「量的緩和の問題点は、現実には効果が認められるのだけれども、理論的には効果が説明できないことである」と語ったことは良く知られていますが、まさに言い得て妙だと思います。』

で?

『こうした状況を踏まえますと、非伝統的金融政策について残されている謎は、効果があるかどうかではなく、なぜ効果があるのか、だと言えます。』

何ですかこのおぼちゃん状態は・・・・・・・・・・・・・・

でまあ別に「アプリオリに効果がありまぁす」を1兆歩譲ってスルーするにしましても、「なぜ効果があるのかが謎」とか言うのはQQEに関して言えば非常に危なっかしい話でありまして、こらまた盛大な自爆モードですなあと思うのですよ。

つまりですね、この前もMPMでどこかの阿呆が「副作用の理論的根拠なし」とか脳味噌が溶解しているような発言をしていたようですが、本来的に言えば伝統非伝統を問わず何らかの効果のある政策というのにはその裏側に副作用というのがあって、全体を勘案した場合に効果>副作用だから政策を実施する、という話な訳ですよ。

然るに、「非伝統的金融政策について残されている謎は、効果があるかどうかではなく、なぜ効果があるのか、だと言えます。」というのはQQE導入時のコンセプトを考えると自爆ブーメランにも程がある認識でございまして、当時は「必要な措置は全て投入した(キリッ)」とか言って逐次投入を全否定してスタートした政策でしたが、今回の黒田さんの発言を踏まえると2年前に行った逐次投入をしないというコンセプトそのものが間違えだったという話になってしまうんじゃないですかねえ。

つまりですよ、非伝統的金融政策は実践の知見が少ないから、現実に何故効果があるのかが謎、というのは恐らく正しいと思うのですが、そういう政策であれば当然ながら政策の副作用についてもどのような出方をするのかというのが謎な訳で、そういう形でどういう結果になってくるのか皆目見当のつかない政策を実施するのであれば、「走りながら考える」という形で政策を遂行していかないと、副作用が思わぬ大きさになっているのに気が付かないとか、そもそも政策効果に対して投下している政策が(方向性などが間違っているために)効率の非常に悪いことをしているのではないか、などというような点に気が付かないままで政策を継続するという事になりませんですかねってことですよ。


まあ「期待に働きかける」政策だから自信満々の姿勢を崩したくない、という理屈も分からんではないのですけれども、そもそもこれだけのマネタリーベースを投下したり長期国債を買ったりする必要が本当にあるのか、もっと効率よく政策を投下する事はできなかったのか、などというような点検が全くないままで当初のマネタリーベース直線一気理論や実質金利を下げれば何でも宜しい理論やらで打ち込んだ政策の拡大再生産だけを継続している訳で、そんな中で自分らの政策について「非伝統的金融政策について残されている謎は、効果があるかどうかではなく、なぜ効果があるのか、だと言えます。」とか無責任にも程がありませんかねえという事ですよ。MPM議事要旨見たって政策の有効性に関してとかもっと効率よくやる方法無いのかとかまともに点検しているようには見えないし。

『そこで、以下では、この論点に対して、理論的観点と実践的観点の両面から焦点を当ててみたいと思います。』

悪態が長くなりましたがでは個別論点。


・タームプレミアムの説明は時間的整合性の論点をスルーしていますなあ

『第1に、タームプレミアムについてお話しします。』

さいですか。

『中央銀行による大規模な資産買入れがタームプレミアムを縮小させるかどうかは、「市場分断(preferred habitat)仮説1」が成り立つかどうかと密接に関係します2。有力な学者の中には、「中央銀行によるマーケット・オペレーションを通じた資金供給・吸収は、将来の金融政策に関する期待を変えられない限り、余り効果がない3」として、タームプレミアムを縮小させる効果を否定する方もいます。恐らく、バーナンキ前議長が「量的緩和は、理論的には効果が説明できない」と語った際には、こうした議論が念頭にあったのだろうと思います。』

えーっとですね、まあ欧州のあの状態でもそうですし、日本のQQEの最初の時もそうなのですが、最初の買入で金利が低下して資産市場が強くなったところで、「政策が効いているから出口についても何となく意識されますなあ」となると結局の所ボラが上がってしまうのでタームプレミアムが縮小するかというとそこは微妙なのではないでしょうかねえ。

つまり政策の時間的整合性の問題に帰着される訳で、日本の場合は物価が2%で安定するという日銀の目標および見通しが行くと市場の人たちが全然思っていないから長期金利が低位安定(というか低位不安定)するのであって、日銀の経済物価見通し通りだったら2016年度から2017年度に掛けては年平均で2%近辺で物価が推移するという事になるのだから今の金利の訳はないのですがそれは。

『しかし、中央銀行の間では、長期債を大規模に買入れて需給に影響を与えることを通じて、タームプレミアムを実際に縮小させることができるという理解が、次第に広がってきています4。加えて、これまでの経験により──ジェームス・トービン教授の「資産市場の一般均衡分析」が示唆する通り──長期金利の低下がポートフォリオ・リバランスを通じて、株や民間債務といった他の金融資産の価格に影響を及ぼす、ということも分かってきています5。最近、エコノミストの間では、タームプレミアムの縮小という量的緩和の波及経路を明示的に取り込めるよう、この「市場分断」のメカニズムを自らのマクロ経済モデルの中に組み入れる動きも出てきています6。』

どう見ても????が百万個くらい飛び交う話であって、それ単に現時点を切り取ってそういう風に見えているというだけの話であって、日本だけじゃなくて他の主要国だって成長期待の低下で物価が上がりにくくなっているという認識が強いからゴルディロックスっぽくなっている訳で、金融政策の効果で物価が早期に上がって非伝統的政策も長く続かないという認識になったらその限りじゃないだろうと小一時間。



・フォワードガイダンスの説明もかなり雑で大丈夫かよおいおいという感じです

『第2に、非伝統的金融政策の大事な要素の一つであるフォワード・ガイダンスについて、触れておきたいと思います。』

はあそうですか。

『フォワード・ガイダンスが効果的であることは、理論的にも実践的にも広く支持されています。理論的には、フォワード・ガイダンスは、中央銀行の政策反応関数を明らかにすることによって、先行きの政策金利のパスに関する民間予測を収斂させ、それによって金融市場のボラティリティを小さくすることができると考えられています。』

えーっとすいません、政策反応関数を明らかにして先行きの政策金利パスの予測が収斂しちゃったらその政策反応関数に直結する何らかのもの(普通は特定の経済指標だと思うが)に変化が起きたらその時点で収斂している政策金利パスの予想が不連続に遷移するから金融市場のボラティリティって中期的に見たら将来に大きく不安定化するリスクを高めるのですが、おっちゃんトレーダーじゃなくて政策担当者だと思うのですけれどももしかして超目先の事しか考えてないの???????????

『実際に、フォワード・ガイダンスは、政策目標に対する強いコミットメントとともに、様々な国・地域における様々な政策の枠組みの中で用いられており、その効果が認められています。』

米国は出口政策に向けてガイダンスを徐々に形骸化していって廃止しましたがその間にいわゆるバーナンキショックのようなものが起きた訳ですし、しかもそれは出口着手がだいぶ具体化する1年以上前の話であることを考えると、フォワードガイダンスの効果よりも、ガイダンス政策は出口政策における障害になる為にそこでの期待のコントロールを難しくするという性格を持つ「行きはよいよい帰りは怖い」の典型的なモノなんじゃないですかねえ。



・量の効果とか長期国債買入と財政ファイナンスの説明だがMB直線一気理論は無視ですかそうですか

『第3に、量的緩和の「量」の側面について取り上げたいと思います。』

置物MB直線一気理論キターーーーー!!!!

『果たして、中央銀行のバランスシートの大きさ自体には、意味があるのでしょうか?また、もし意味があるのだとしたら、なぜ意味があるのでしょうか?』

ほうほう。

『この点、経済理論家の中には、量的緩和は「通貨創造による政府財政のファイナンス(monetary financing of the government budget)」の観点から有効なのである、と論ずる方もいます。』

宮尾先生が講演でこの理論に関する話をしてアタクシの血圧を急上昇させたという事案がございましたな。

『しかし、これに関しては、先ほどご紹介したバーナンキ前議長の言葉とは正反対のこと、即ち、「理論的には効果が認められるが、実際にそうすることはできない」と言わざるを得ません。財政のファイナンスを行うということは、中央銀行の信認を崩壊させ、潜在的にリスク・プレミアムを(引き下げるのではなく)引き上げるリスクを冒す行為と考えられています。』

ここはこの講演にしては珍しく同意(^^)。

『また、最近の米国および英国における経験からは、非伝統的金融政策は、本格的な財政再建に取り組んでいるもとでも効果を持つことが示されています。』

>非伝統的金融政策は、本格的な財政再建に取り組んでいるもとでも効果を持つことが示されています
>非伝統的金融政策は、本格的な財政再建に取り組んでいるもとでも効果を持つことが示されています
>非伝統的金融政策は、本格的な財政再建に取り組んでいるもとでも効果を持つことが示されています

・・・・・・・・・・・・えーっとあのそのすいません日本(銃声)

『日本の場合、2013年1月に公表した政府との共同声明において、日本銀行が2%の物価安定の目標を追求すること、そして、政府は公的債務の長期的な持続可能性を確保することにコミットすることが明記されています。従って、「量的・質的金融緩和」に関して言えば、財政の拡大を容易にするといった意図は、もとより全くありません。』

金融政策に関して言えば「コミットメントを裏付ける大規模な金融緩和政策」を実施していますが、財政政策に関して「コミットメントを裏付ける政策」を(内務省検閲)。


『このように、財政のファイナンスは全く我々の念頭にはありませんが、それとは別の理由で、中央銀行のバランスシートの大きさは重要だと考えています。』

というころで・・・・・・・・

『インフレは究極的には貨幣的な現象である、ということは広く認識されていますので、巨額の通貨供給を行うことは、中央銀行のデフレ克服に向けたコミットメントを表す強いシグナルとなることでしょう。』

久々にフリードマンキタコレと思ったのですが、「コミットメントを表す強いシグナル」とか言っていまして、置物マネタリーベース直線一気理論はすっかり無かったことになっていますがイエーイ置物先生見てる〜って感じでして置物副総裁の所感をお伺いしたい。

『こうした意味で、過去に例のない規模でのマネタリーベースの拡大は、「量的・質的金融緩和」において、重要な役割を担っています。』

ただのコミットメントを表す強いシグナルというので年間80兆円も拡大する必要あるのかよ・・・・・・・・・・


・期待キタコレだがただの宗教状態ですな

『第4に、そして最後に、非伝統的金融政策の波及チャネルとして、私がとても重要だと考えている期待のチャネルについてお話ししたいと思います。』

信じる者は粉を振り掛けると空中浮遊するんですねわかります。

『これは、私がたった今お話しした「『量』が持つシグナル効果」と重なる部分があります7。問題となり得るのは、期待のチャネルについては、理論的な基礎が十分に確立されていないことです。』

そら貴方様がピーターパンとか言う位じゃあねえ。

『標準的な理論では、単に、合理的な期待形成が自ずと成り立つことが想定されていますが、では、企業や家計の期待形成のあり方に変化をもたらすものが何なのか、という点については、多くの場合、何も語られていません。しかし、私は、@政策目標に対する強いコミットメント、A明確で一貫した情報発信、そしてBコミットメントを実現するための断固たる行動、この三者が一体となれば、民間の各経済主体のインフレ期待、ひいてはその行動に対して、大きな影響を与えることができると確信しています。』

確信するのは良いのですが期待インフレも2%で安定していませんし、そもそもお約束だった2年での達成もできていませんのでとてもその通りに行っているとは思えませんけどねえ。

『この期待のチャネルは、長期間にわたってしっかりと根付いてしまったデフレ・マインドを払拭しなければならない日本において、特に重要なのです。』

それは分かったが結局何がどうなっているのかの説明が無いというのは説明すると墓穴を掘るからだというのは理解致しますが言及碌にしないというのは不誠実じゃないですかねえ。


・最後の所もまあ何だかなあと

『さて、本日の話を終える前に、ケネディ、ジョンソン両大統領のもとで経済顧問を務めたウォルター・ヘラー氏の言葉をご紹介したいと思います。「エコノミストとは、現実に何か効果のあるものをみつけると、それが理論的にも当てはまるかどうかを考えてしまうものである。」もしもこの言葉が真実であるならば、非伝統的金融政策に残された謎についても、今後、理論的な理解が一層深まることが期待できるものと考えています。』

経済現象は再現性が無いから仕方ない面はあるのですが、それによって作られた「理論」が前提条件が違ったら全然通用しないような脆弱な「理論」だと邪魔にも程があるんですよね。マネタリーベース直線一気理論とかマッカラムルールとかまさにそんな感じですけれども。なお国債買うと債務消滅のジンバブエ理論は理論以前の問題ですけどね。

『同時に、中央銀行の実務家としては、それで満足している訳にはいきません。例えば、日本銀行について言えば、原油価格下落の一時的な影響が一因とは言え、物価上昇率は依然として目標には遠く及んでいません。物価上昇率は、2016年度前半頃には2%程度に達する可能性が高いとみていますが、こうしたシナリオに対するリスクは看過できません。』

2年で達成しなかったことに関する言い訳はしないで2年というのを徐々にフェードアウトしているように見えますが「じゃあ時間を特に区切らないで達成するんですね」と聞くとそれは違うとかいう話を始めるというのが日銀執行部の謎な所ではあります。

『地政学的要因を含め、世界経済にかかる不確実性が非常に高い中にあっては、特にそうです。そのように申し上げた上で、改めて、2%の物価安定の目標の実現に向けた我々のコミットメントは、決して揺るがないということを強調しておきたいと思います。こうした断固たる姿勢を保つことにより、我々は必ず目標を達成できるものと確信しています。』

ということでただの気合の話で締めていますが、その中でしらっと「地政学的要因を含め、世界経済にかかる不確実性が非常に高い」と仰せなのは、次に2016年度前半の2%というのを後ズレさせるための布石か何かを打っているのでしょうかという疑惑も湧き上がるのでありましたとさ。


ということで結局講演殆ど引用してしまいましたが、政策に関して効果の話ばかりで副作用の話が無いとか、2年で達成のコミットメント未達に関する説明は全然ないとかいうのもアレですし、全般的に益々話が雑になっている感がありまして、最近のMPM議事要旨に垣間見られる議論レベルの劣化と共に何かこう大丈夫かおいおいというのを感じる総裁講演なのでありましたとさ。

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2015/06/23

○総裁記者会見だが長い割に質疑応答が下らん

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150622a.pdf

今回は延々17ページもあるのですが、皆様予想の通りでこの前の為替に関する質問が無駄に多いのと、決定会合見直しに関する質問もあったのですが、どうもこうツッコミがダメダメなのと答えも暖簾に腕押し系だったりして、ダラダラ長いのに全然締まらないという牛の涎のような会見でありましたなという所です。

ということで牛のよだれだけにネタにする部分もあまりないのですが一応少々。


・運営の見直しに関してだが最初の答弁はいただけませんでしたな

冒頭説明の後に幹事社から。

『(問) 今おっしゃった後段の運営の見直しについてお聞きします。グローバル・スタンダードとのことですが、これまでのやり方に具体的に何か問題があったのか、例えば、議論の形骸化が起こっていたとか、マーケットの誤解を招くことがあったとか、あるいは職員の負担の問題なのか、具体的な不都合として、どういうものがあったのかお伺いします。併せて、日銀の独立性というのは、政策決定の透明性や説明責任と裏腹なものだと思いますが、今回、会合を減らして、総裁の会見の回数も減ることで、そういったものが脅かされることはないのかどうか、ご認識をお伺いします。』

これは直球(^^)。

『(答) 先程申し上げました通り、今回の運営の見直しは、金融政策に関する審議と情報発信の一層の充実を図るために実施するものです。』

ほうほう。

『まず第1に、展望レポートを年4回公表するということ、(以下延々と直前に説明したばかりの新施策の内容についての朗読が始まるので割愛)』

ということで、理由の説明の前に延々と今しがた説明したばかりで文書も出ている件についてうだらうだらと説明をしている辺りが牛の涎的な説明なのですが、相手もちゃんと理解している分かりきった話を延々蒸し返して説明するのは基本的に時間を稼いでいる間に論点を誤魔化そうという時の基本テクニックなので・・・・・・・・・

『先程申し上げたように、四半期毎に、経済・物価見通しを公表した上で、その中間の会合を含めて、金融政策を決定する会合を年8回開催して、会合終了後は速やかに情報発信を行うという枠組みは、近年、主要中央銀行で主流になってきているものです。』

全然質問に答えていませんね。

『この見直しによって、年8回の決定会合のもとで、金融経済情勢の変化に対応しながら、経済・物価見通しをベースに充実した議論が行われると考えています。主要中央銀行において、年8回、金融政策決定会合を実施するのが、一種のグローバル・スタンダードとなってきているのも、こうした認識が前提となっていると思います。』

グローバルスタンダード以外に説明できないのかよ!!!!

『金融政策決定会合の回数とその内容については、適切な回数というのが一番望ましいと思います。回数が多ければ多いほどいいというわけでもないし、少なければ少ないほどいい、というわけでもありません。』

と思ったらちょっと説得的な話が出てきましたね!!

『適切な経済情報に基づいて、委員の方々が経済見通しを議論し、またこれを公表するということを踏まえて、金融政策についての掘り下げた議論・決定を行うということかと思います。これまで何か重大な問題があったということではないと思いますけれども、今申し上げたような改善をすることによって、より情報発信が積極化し、金融政策に関する審議も一層深まったものになると考えています。従って、説明責任という意味では、一層高度なものになると考えています。』

・・・・・・・・仰っている事の意味がさっぱり分かりません。

『なお、先程も申し上げましたが、金融経済情勢が急激に変化した場合には、これまでと同様に、臨時の金融政策決定会合を開催して機動的に対応するということになると思います。これは諸外国の場合も同じです。』

最後の一言が余計です。何で貴方がたは説明の際に一々「グローバルスタンダード(キリッ)」を入れるんですかねえ。


でまあ後の方でもう少しましマシな質疑応答が。

『(問) 決定会合の運営の見直しについて伺います。そもそも、平成10年に施行された新日銀法と施行令は、日銀の政策の透明性、もちろん独立性もですが、情報公開の徹底を図るという狙いがあったはずと思います。施行令に原則月2回、決定会合を開くとあるのは、まさに情報公開の徹底という趣旨に沿ったものだと思います。14回からいきなり8回、特に総裁会見の回数が8回になってしまうことは日銀の情報公開の姿勢が後退したと捉えられるのではないかと思うのですが、この点について総裁はどうお考えでしょうか。』

で、こっちの答えの方が遥かにましなのですよ。

『(答) 私どもは、そのようには考えていません。ご指摘のように、現行の日銀法は1998年に施行され、その際、一定期間毎の定例日に開催することが適当との考えのもとで、ブンデスバンク等当時の海外中央銀行の例を参考にしながら、開催頻度が定められたと理解しています。そのもとで、当初は年20回程度の頻度で金融政策決定会合を開催しました。もっとも、年20回程度となると、2〜3週間程度で1回になりますが、基本的には2〜3週間程度で金融経済情勢に大きな変化が生じることは少ないですし、金融経済情勢の変化に適切に対応するとともに、毎回の会合を実質的な意思決定を伴う充実したものとする等の観点から、頻度をだんだんと減少させて、近年では年14回となっています。この間も、金融経済情勢が大きく変化した場合には、臨時会合を開催して機動的に対応してきました。』

ということで、月に2回も実施するとなるとその間に殆ど変化がないのにMPMって話でそれもどうかって事でして、いやまあそれはリーズナブルな説明なのでして何でこっちの話を先にしないのかと小一時間。

『この点、ご指摘の日銀法施行令、政令では、月に2回開催することを「常例としなければならない」と定められていますが、これは訓示的な規定であるため、こうした運営が問題だったとは考えていません。また、その趣旨についても、透明性あるいはアカウンタビリティ等の面で、むしろ充実してきたと思っています。』

別に14回が施行令的にケシカランという質問はしていないのでこの答えは余計ではないかと思いますが、まあ先ほどのナンジャソラな答えと言い、こちらでの説明と言い、黒田さんこの辺の説明が云々の所にそんなに興味ないんだろうなあと思わせてくれる塩対応な説明ではありますなという感じを受けましたがどうでしょうかね。


・為替云々の質疑も一応引用

まあつまらんので一つだけ。

『(問) 先日国会で実質実効レートについて、「さらに円安になることはありそうにない」と発言されて、マーケットがかなり大きく動く場面がありましたが、その真意について今一度お聞きしたいと思います。また、その発言をなさった時に、「どんどん円安が進めば経済にプラスになるわけでもない」という趣旨のこともおっしゃっていたと思います。円安が日本経済に与える影響、働きかけるメカニズムのようなものが、過度な円高の修正局面と足許の局面とで、何か変化してきているのか。その辺りについてお伺いできればと思います。』

『(答) 先日の国会質疑では、実質実効為替レートについて質問がありました。それに対して私からは、実質実効為替レートは、確かに1980年代半ばと同程度の水準になっているとの事実を申し上げました。このところの名目為替レートの水準や先行きについて何か申し上げたものではなく、そういった趣旨は、国会答弁でも明確にしたところです。』

どう見ても誤認を誘発する説明でそもそも実質実効などという話を国会問答みたいなところですべきではないように思えます。

『為替レートが円安に振れた場合の影響については、経済のセクターや企業規模、その他の色々な状況によってプラスの影響を受ける部分と、マイナスの影響を受ける部分と色々あるわけですが、何よりも重要なことは、為替レートが、経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいということであり、そうであれば、経済に全体として悪い影響を及ぼすことはない、そうした考え方に変わりはありません。』

「為替は経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい」というのは例の国会答弁と同時に流れていた金懇会見での佐藤審議委員のコメントそのままでありまして(^^)、黒田さんも最初からこう言っておけば良いだけの話。

『現状の為替の水準や、これがどちらに向くか、あるいは円安に向いた時の効果等について、具体的に申し上げることは差し控えたいと思いますが、基本的に為替レートについては従来から申し上げている通りです。実質実効為替レートの議論はこれまであまり出たことがなかったのですが、国会でご質問がありましたのでお答えしました。』

だからそういうの答えるの注意しろというのと、そもそも為替は日銀の所轄じゃないのだからコメントを避けるという手もあるだろうと思うのだが、本人が元財務官だけにドヤ顔で喋りたくなるんでしょうな。

『ご承知のように、実質実効為替レートというのは2国間の名目為替レートの動きと、多国間の貿易関係、さらには物価上昇率の差を勘案した非常に複雑な概念であり、複雑な計算に基づく数字でありますので、その解釈は必ずしも容易でありませんし、何よりも、これによって名目為替レートの今後の動きを占うことはできないと思います。』

だったら何で不規則発言したのかねえと思います。まあ以下為替の質疑が延々と続いて、延々と上記のような説明が続くという不毛にも程があっておまえら毛生え薬でも塗っておけと言いたくなる会見が続くのですが為替の話は割愛。


・消費について

『(問) 消費について、総裁の考えをお聞きしたいと思います。消費については、日銀では、底堅く推移しているとしています。私が取材していると、実際に数字も指標もそれなりに出ているというところもあるのですが、ただ現場の関係者を含めて、消費関連の業者、業界の方に聞くと、方向感としては、確かに数字は出ているけれども、決してこれが上昇基調にのっていくというような状況ではない、非常に安定はしていない、というようなことを話している方が多いと思います。総裁は、この消費の現状をどう捉えていらっしゃるのでしょうか。そしてやはり数字ではないところの話も色々聞いていらっしゃると思いますが、今後の見通し含めて考えを教えて下さい。』

モメンタムとして本当に強いのかよという正統派ツッコミですが説明を鑑賞しましょう。

『(答) 消費はGDPの中で1番大きな項目ですし、消費行動を決定しているのは、極めて数の多い日本の家計ですので、その動向を知るのは極めて重要であると同時に、そう簡単なことではないと思いますが、いくつかの指標をみる限り、消費は、やはり底堅く推移していると言っていいと思います。』

ふむ。

『第1に、先日出たGDPの2次速報をみても、消費は3四半期連続で前期比プラスになっていました。それから、各種の販売統計をみると、ややばらつきはあるのですが、百貨店の売上高などを中心に増加傾向が続いていると思います。3つ目には、消費者態度指数とか、消費者のマインドについての色々なアンケート調査等があります。これらも昨年の秋にかけて悪化していたわけですが、昨年の暮れ頃から、かなりはっきりと改善してきています。高い水準にあるものの、足許ではやや足踏みというか、どんどん改善していくという感じには、まだなっていないというところもあります。ただ、消費者マインドも、先程申し上げたように、昨年の暮れ以降かなり改善したということは言えると思います。』

マインドの説明が長いですな。

『4番目には、最も重要な要素として、家計にとって重要な雇用・所得環境が引き続き着実に改善しています。有効求人倍率もさらに上昇しましたし、失業率もさらに低下したという中で、今年の春闘が昨年を上回るベースアップになってきていることもあります。名目賃金も上昇し、実質賃金も、消費税引き上げの影響が4月にはまだ少し残っていますけれども、5月には完全になくなりますので、はっきりしたプラスになっていくと思います。何よりも雇用と賃金と両方合わせた雇用者所得という面、家計の所得という面では、かなり順調に伸びているということがあります。春闘のベースアップの影響が具体的に出てくるのは、6月頃からだと思いますが、いずれにせよ雇用・所得環境が着実に改善していっており、今後も改善していく見通しであるということは、やはり家計の消費を支えるもっとも大きな要素ではないでしょうか。』

賃金の話を強調しているのだが、実質賃金の話をするのは墓穴議論であって、物価が見通し通りにホイホイ上昇したらまた実質賃金マイナス転してマインドとか実際の消費とか落ちるんじゃネーノという話になるので実質賃金を強調するのはお勧めできない。というかあまり実質の話をしていないのはその辺り理解しているからでしょうが(^^)。

しかしまあ何ですな、いったん生活防衛的になった家計って所得が上がったからよーしパパ消費しちゃうぞーという風に本当になるんかいなと思う訳で、そのまま貯蓄コースになるんじゃないかという気もするのであって、その辺って高度成長脳とかバブル脳とかのジジイとそういうの知らん若い衆とではマインドセットが違うような気もしたりしなかったり。

『先程申し上げた幾つかの指標、さらには雇用・所得環境の改善ということからいって、足許の消費は底堅いし、今後も消費は回復していく、伸びていくというようにみています。』

ということで、主にマインド面と雇用所得の面で底堅い、とまあそういう見立てになっていますね。


・設備と輸出について

『(問) 2点お伺いします。1点目は、法人企業統計などをみると、設備投資が、非製造業を中心に非常に盛り上がっています。非製造業が景気の牽引役になり得る可能性をどうご覧になっているのか、お伺いします。2点目は、逆の話ですが、輸出が非常に弱くなっており、中国の輸入などをみますと、今後、日本で輸出の調子が悪くなって、景気全体も下押しをされるようなリスクはないのか、ご所見をお願いします。』

ということで・・・・・・・・・

『(答) 足許、特に5月の実質輸出がかなり弱かったことは、一時的な要因もかなり含まれているようですので、もう少しみないといけないと思いますが、その上で、輸出がどのように動くかということは、十分注視して参りたいと思います。IMFその他の見方でも、それから私どもの見方でも、世界経済は緩やかに回復していくというのが、ベースライン・シナリオだと思いますので、そういうことを踏まえると、輸出は、振れを伴いつつも、やはり緩やかに増加していくということであろうと思っています。』

ということで先ほどネタにした金融経済月報にもありました内容がこちらで示されていまして、輸出に関してはコケるリスクをそれなりに見ているという事でしょうな、うんうん。

『そうしたもとで、非製造業と製造業の設備投資ですが、確かに、非製造業の設備投資が伸びてきているということは、内需主導の経済成長と平仄があっているとは思うのですが、他方で製造業の方も設備投資計画をみると、かなり強いものになっていますので、非製造業の設備投資は伸びるけれども、製造業の設備投資は伸びない、と決めつけることはできないのではないかと思っています。』

いや別に質問者は製造業の設備投資が伸びないと質問した訳ではないのですがという所で、なんかこう為替の質疑が影響しているのか知らんですけれども、質問に対して聞かれもしないことについてツッコミというか非難を食らったと思って斜め上の返答をしているというのがさっきもありましたが、なんちゅうか今回の質疑ではそういうのが見受けられるのが気になる点ではありました。なんか気にしている事でもあるのかなあとか警戒モードが強くなっているのかなあとかそんな感じです。

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2015/06/17

○国会答弁で色々と

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150616a.htm
通貨及び金融の調節に関する報告書
参議院財政金融委員会における概要説明

昨日は毎度おなじみの国会半期報告があったのですが、そちらで色々とお話ががががが。

・黒田総裁の為替レート云々

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQ0LDT6S972901.html
日銀総裁:「金融政策に深い意味はない」−実質実効レートで
2015/06/16 13:08 JST

もうちょっとこの記事の題名何とかならんのかと思うのですがそれはともかくとして。

『(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は16日、為替相場を動かした10日の発言について国会で聞かれ、「このところの名目為替レートについての評価や予測として申し上げたわけではない」と述べるとともに、実質実効為替レートは「金融政策に非常に深い意味はない」と語った。こうした発言を受けてドル円相場は円が値下がりしている。』(上記URL先より、以下同様)

ということで国会で問い詰められて説明しているのですが・・・・・・・・・

『黒田総裁は参院財政金融委員会で、10日の発言について「あくまで理論的な説明をした」とした上で、「2国間の名目為替レートの水準や動きについて、先行きを占ったり、評価するものではない」と発言。「名目ベースでの円安を望んでないとか、円安にならないだろうと申し上げたわけではない」と述べた。 』

という説明なのですが、ブルームバーグニュースはその先がイヤミでワロタ。

『黒田総裁は10日の衆院財務金融委員会で、「実質実効為替レートでみると円安になっているのは事実」と指摘。実質実効レートでは「ここからさらに円安はありそうにない」などと述べた。これを受けて、それまで124円台半ばで推移していた円相場は直後に一時122円台まで円高が進んだ。』

参議院インターネット中継だと質疑の過去ログも一定期間は見れる筈なのですが、何かこう説明しているのですが何が何やらという感じでの話をしている感はありまして、結局何を言いたかったのかとゆーと「先日の発言は円安けん制ではありません」ということだったのではないかというのだけは把握できましたが・・・・・・・・・

『黒田総裁はまた、無所属クラブの中西健治氏の実質実効為替レートの評価について聞かれ、「実質実効レートが最初に開発されたのは国際通貨基金(IMF)で、私はその当時IMFに勤務していたので、それをめぐる議論やその論文等を読んだことがある」と述べた。』

『その上で、「その後40年くらい経って、これから何かを読み取るのは非常に難しいものであり、金融政策にはすぐには役に立たない。非常に迂遠(うえん)なものだ。為替の動きを占う面でも、直接的に含意がはっきりしているものではない」と指摘。』

『「この理論を開発した人を私はたまたま知っているので、全く無意味だ、一顧だにするな、と言われると、そこまで言う必要はないと思うが、金融政策にこれが非常に深い意味や縁はないということには全く同意見だ」と語った。』

しかしまあ何ですな、これ説明すれば説明するほどドツボに嵌るというか、わけがわからなくなって来るので、単純に「具体的な為替レートには言及しない」「経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい」という説明を一貫して行えばよいだけだと思うのですけどねえ。

ということで実質実効為替レートの話はやっちまいましたなというだけの話でしたという所で、まー10日は前原さんの質問に答えようとして、自分の得意分野だという認識があるから余計な話をして口を滑らせた、というだけの話だったという評価でよろしいんじゃないですかね。もちろん背景として円安誘導ばっかりしてケシカランとか、そもそも円安コストプッシュで物価あげても誰得じゃネーノというような批判が外交方面や政治方面から飛んできているのはあるんでしょうが。


・それより色々とやばかったのは師匠なのですが・・・・・・・・・・・・

とまあそれはそれで良いのですが、昨日の参院財金での質疑ではニュースネタにあまりなっていない、と言うかニュースネタにするのもヤバいというのが置物大師匠の答弁。

民主党・新緑風会の風間委員(だったと記憶しているが間違っていたらすいません)からの質問が置物大師匠に飛ばされまして、質問の趣旨は日銀が剰余金を多めに留保したこの前の決算から始まり、「緩和政策によって大量に買入を行った資産について出口政策などで多額の損失が出た場合に通貨の信認という意味で大丈夫なのかという点について置物副総裁の認識如何」という話だったのですけれども、質問されたことと全然違う説明をおっぱじめたり、答弁の途中で「ところで何の質問でしたっけ」とか言い出したりで、まあそんなに国会マニアじゃないから委員会質疑を熱心に見る訳ではないアタクシなのですが、いちいち速記が止められてしまうという凄まじい展開になっておりまして、マジで大丈夫かという感じでしたので、中継録画見るなら最初の方が実はオヌヌメだったりします。

でまあその答弁の中で財政ファイナンス云々に関してかなりやばそうな言い間違えをして質問した民主党の方がびっくりして大塚耕平さんが立ち上がって理事席に行って議事止めるというこれまた珍現象が発生しておりまして、いやあの置物師匠大丈夫かという所でございましたですよ。

詳しくは会議録が出たらという所ですが、速記が何度も止まっているので様子を見るなら会議録よりも録画映像を見た方が良いかもしれません。

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2015/06/11

○黒田総裁の国会答弁があばばばばー

俺様メモなので皆様ご案内のニュースですがこいつを。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPPOPA6JIJUY01.html
日銀総裁:「ここからさらに円安はありそうにない」−実効レートで (2)
2015/06/10 15:21 JST

昨日は半期報告だったのですが、午前の時点でも微妙にアレな発言をしているなあとか思ったのですが、あちゃーとなったのは午後の部での答弁(なお場所は衆院財務金融委員会)でして、ヘッドラインで言いますと反応したのはこの辺りだと思われます。引用はブルームバーグからですが他のベンダーも同様に出していて、さすがに今回は一部切り取り系のヘッドラインではなくて普通のヘッドラインになっていました(国会の委員会質疑は秘密会じゃなければ基本的にインターネット生中継されるから恣意的なヘッドラインは出てこないのが普通)。

BFW 06/10 13:12 *日銀総裁:実質実効為替レートでみると円安になっているのは事実
BFW 06/10 13:14 *日銀総裁:ここからさらに円安はありそうにない−実行為替レートで

でまあこれが出て為替が124.50辺りから4円割れて3円後半とかになったのですが、日本語ヘッドライン出て振れて英語ヘッドライン出てまた振れるみたいな動きになっていたのですが・・・・・・・・・

BFW 06/10 13:48 *日銀総裁:永久的な量的・質的緩和は考えていない
BFW 06/10 13:52 *日銀総裁:付利金利の引き下げは検討していない
BFW 06/10 14:00 *日銀総裁:日銀券ルール一時的停止、量的・質的緩和終了時点で復活

(以上ブルームバーグニュースヘッドラインより、当然ですが関連ヘッドラインの一部です)

まあこちらの方は当然の発言ではありまして、そらまあ永久にQQEするのだったらそもそもQQEの効果が無いちゅう話ですから当たり前ですし、付利金利に関してはMB積み上げを建付けにしているので難しく(MB理論から離れれば別だが今更変えられないでしょ)という所。

いわゆる銀行券ルールに関しては色々と言われますが、実際問題として一番重要なのは調節技術上の問題(短期市場金利の誘導政策を実施する際に長期での資金供給をし過ぎると短期で吸収しながら調節しないといけないので難しい&逆鞘発生の恐れがある)だったりするのですけれども、「QQE終了時点で日銀券ルール復活」はちょっと口が滑り過ぎで、それを額面通り受け止めると「QQE終了時点では日銀保有国債の残高は市中売却によって減らす予定ですが何か?」と言っているように見えてしまう(実際問題としてそのような乱暴なことは難しいけど)ので、それはマズイだろという発言だったりしますが、まあこれ単体で市場が反応した訳ではなくて、上記のようなヘッドラインが五月雨式に出てきて、さらに海外勢が目を覚ました順に為替市場に登場して反応という図だったのかなという感じではありました。


でですね、ついこの前タカ&トシ先生が同じように実効為替レートで歴史的円安という話をしていたり、もうちょっと前にはジンバブエ審議委員が円安はいいところまで来ている的な話をしていたりという一連の発言がありーの、本当か飛ばしか良くわからんオバマさんの為替がらみ発言報道を巡る一連のドタバタがあったばかりでしたので、そらまあ普段「為替水準については言及しない(キリッ)」と言ってた黒田さんがこのオモシロ発言をすれば、「これは何かあったのでは」となって盛大に反応するわこりゃという所でしょうな。


全般的な雰囲気としては一段の円安誘導をしても誰得という感じはしますし、G7だかに行ってきたばかりでその時も何か言われたりはしてるだろうなあという想像はありますので、そういうベースがある中でつい言ってしまった的なお話なのでしょうが、そもそも日銀の経済物価見通し的に言えば円安が今後ドンドン進むかというのは兎も角としても、少なくとも円安修正起きて円高モードになってくるみたいなことになると、期待の輸出や国内設備投資回帰にも悪影響を与える可能性がある話であって、そうなりますと物価の基調がコケるという事になりかねませんので、日銀執行部としては基本的に円高に振るような事は歓迎しないとなる筈(そうじゃないなら今までの話の整合性が取れない)ですから、まー今回はやっちまったなあおいという話だと思うのですが、先般のピーターパン発言と言い、ちょっと足元で黒田さんネジが外れてきているのではないかとそちらの方が懸念されるところではあります。


しかしまあ何ですな、円安けん制みたいな発言をしてきちんと円高に振れるというのは別の考え方をすれば「まだ当局者の介入が市場に効いている」という事ですから結構なお話でもある訳で(^^)、これが「円安はケシカラン」と言っているのを材料に更に円安一段の進行とかになりますと、それはもう為替市場が糸の切れた凧状態かつ虐殺モードに入っていることを意味する訳でございますので、当局の威光がまだまだ強く反映するというのは結構な事ですよ、などとおバカな事をいってポジティブに考えてみる(笑)。

・・・・・・・てのは半分冗談ですが、まーこの前のドラギのボラ上等発言といい、昨日の黒田さんのこの発言といい、中銀総裁の市場への言及が市場のボラを高めて大変動をさせてしまうとか迷惑千万にも程があるので可及的速やかにご両者に恵方巻きを献上したいと存じますです。しかもドラギのおっちゃんは金利の話だからまだしも、日本の場合為替は中銀が口出すものではないので更にマズーとしか。


しかしまあ何ですな、為替と株があばばばばーなのは分かるが、あばばばばーを見てちょっと戻るかと思った債券の戻りが弱いと思ったら結局先物叩き売りというのがお洒落ですが、これはこれで別の要因なのかなという所ではありますな、うんうん。

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2015/06/05

○黒田総裁の金研挨拶はキャッチーな部分の破壊力が凄まじくて他の部分がどうでもよくなっている

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150604a.pdf
日本銀行金融研究所主催2015年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳

『昨年のコンファランスでは、「金融危機後の金融政策」をテーマに、先般の金融危機後の緩やかな経済成長のもとでの金融政策を巡る基本的な問題に関して、活発な議論が行われました。昨年のコンファランス以降、学界・中銀サークルでは、非伝統的金融政策の効果に関する研究が一段と進展しているほか、長期停滞論に代表されるような金融危機後の緩慢な景気回復を巡る新たな議論が注目を集めています。こうしたもとで、昨年に引き続き金融政策を中心に据えつつも、実際の金融政策運営への含意をより意識する観点から、今年のコンファランスのテーマとして、「金融政策:効果と実践」を選びました。先ほど申し上げた研究面の進展や最近の世界経済の変化を踏まえ、我々中央銀行が直面している金融政策面の課題について、率直かつ活発な議論が行われることを期待します。私からは、コンファランスのキックオフとして、そのような課題に関する論点をいくつか提示したいと思います。』

ということで幾つかの論点があるのですが、そんなことよりもとにかく最後のうまい事言ったつもりの部分があまりにも破壊力があって他の全てを押し流す力がありました、というのはニュースヘッドラインなどでも出ていましたので皆様ご案内の通りかと存じます。

最後の『4.結び』の最後の部分ね。

『皆様が、子供のころから親しんできたピーターパンの物語に、「飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう(The moment you doubt whether you can fly, you cease forever to be able to do it)」という言葉があります。大切なことは、前向きな姿勢と確信です。』

・・・・・(;゚д゚)

なお本チャンの英文テキストもせっかくなので引用しませう。

『I trust that many of you are familiar with the story of Peter Pan, in which it says, "the moment you doubt whether you can fly, you cease forever to be able to do it." Yes, what we need is a positive attitude and conviction.』

いやーすいません不肖このアタクシはすっかりオトナになってしまっておりまして濁世にまみれてすっかり心も濁っておりますのでピーターパンとかティンカーベルとか見る事ができない訳でございますが、QQEの効果がお伽の国の世界であると言われてしまいますと最早アタクシのような平々凡々なオトナといたしましては心が純真じゃなくてQQEの効果を知見出来る能力が欠如しておりまして誠に申し訳ございませんと深々と頭を下げる以外にすることなしという所でございますな。

『実際、これまで中央銀行は、様々な課題に直面する度に、新たな知恵を出して、その課題を克服してきました。』

どうも心の目が濁っているので物価目標が達成できていなくて課題が克服できていないようにしか見えないのですがピーターパンの方におかれましては物価安定目標が達成できているという姿が見えるのでしょうな(棒読み)。

『我々の経験と知見に裏打ちされた課題克服への確信を参加者の皆様と共有し、これから始まる議論への心の準備ができたところで、私の挨拶を締めくくりたいと思います。』

>我々の経験と知見に裏打ちされた課題克服への確信
>我々の経験と知見に裏打ちされた課題克服への確信
>我々の経験と知見に裏打ちされた課題克服への確信

・・・・・(゚д゚)

えーっとあのそのQQEって「経験に裏打ち」されているのでしょうかそれから「知見」ってもしかして置物MB直線一気理論なのでしょうかなどと思ってしまうのはオトナになって心の目が濁っている人のたわごとなのですね!!!!!!

まあしかしそれだけの「心の準備」が必要な議論とはこらまたどういう議論だよという話で、もう参りました降参ですとしか申し上げようが・・・・・・・・・・・・・・


なお、いわゆる「ピーターパン症候群」というのがありますが、とりあえずWikipedeiaへのリンクでも張っておきますが症状例を見て誰か具体的な方のお顔が目に浮かんだりするのは心の目が(以下同文)。

ピーターパン症候群(Wikipedeia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%B3%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4
(リンクは途中の所までですが間違えてなければ当該ページに飛ぶはずです)


しかしまあ何ですな、自分の所の金融政策を「信じれば空も飛べます」とかそこまで開き直るかという所でございまして、そこまで開き直って矢でも鉄砲でも持ってこい状態になるとは黒田日銀どこに逝くってなもんですが、ピーターパンではない一般凡下のワタクシのような者から致しますと、「さあ信じれば空も飛べるんだ今すぐそこから飛んでみろ」とか言われましても困るのですが信心の足りないものは墜落しろということなのでしょうか(涙)。

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2015/05/26

○総裁記者会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1505c.pdf

昨日申し上げましたように今回の会見ってマジで超つまらん会見という感じではあったのですが、そうは言っても一応ネタにするのだが。

・日銀としてはシナリオ通りに進んでいますよウェーハッハッハという所です

最初の説明の次の幹事社質問。

『(問) 国内景気認識を少し詳しく伺います。前回会合の後、1〜3月期の GDPが発表され、実質成長率が+0.6%と市場予測を上回る水準であり、今回の声明では、個人消費や住宅投資の表現振りを前向きな方向に修正されています。1〜3月期のGDPの数字の評価を含めて、この個人消費や住宅投資、内需のあたりを、総裁はどのようにとらえていらっしゃるのでしょうか。また、今回文言を変更したことが、今後の金融政策のシナリオに変化を及ぼすものなのか、お考えをお聞かせ下さい。』

ちなみに今回の質疑応答なのですが、総裁の説明が全般的にクソ長いという最近の傾向が継続されていまして、想定問答の朗読タイムを長くすることによって話が誤魔化されるという効用もあるのですが、そもそも論として今回の会見はこの質問の後GDPのコンポーネントに関する質問が延々と続くという意味のない質疑が続いておりまして、記者連中時間の無駄だからそんな質問するなよと思うのでした。

いやね、これが麿だと色々と有意義な説明してくれる可能性もあるのですが、経済のコンポーネントに関する計数的な質問したって黒田さんがそんなのに細かく興味持って自分の言葉で細かい話をしてくれるわけはない(なお俊ちゃんの場合は興味はあるけれども口八丁手八丁で誤魔化されると思う)のですから想定問答の朗読会が展開されるの火を見るより明らかじゃんとか思うのですけどね。

ということでまあこの幹事社質問に対する回答を引用しておけば以下4ページ分ほどは読む必要なし。

『(答) ご案内の通り、1〜3月期の実質GDPは、前期比年率+2.4%となりました。需要項目別にみると、個人消費が、3四半期連続のプラスとなり底堅さを増しているとみられるほか、住宅投資についても、4四半期ぶりのプラスに転じました。また、輸出は、持ち直しの動きが続いており、設備投資も増加しました。このようなGDPの内容は、雇用・所得環境の着実な改善が続き、企業収益も改善する中で、家計部門・企業部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと作用し続けていることを示していると思います。』

所得から支出への前向きな循環メカニズムとはどこのパラレルワールドなのでしょうかと思いますがまあ日銀がそう思っているということで。

『すなわち、わが国の景気が緩やかな回復を続けているという見方に沿ったものであると思っています。GDP統計は、四半期毎にしか出ませんし、全体をアグリゲートした統計ですが、他方で、経済全体の動きを総括して示す意味では極めて重要な統計であり、従来からの経済についての見方が確認されたということだと思います。』

シナリオ通りのアピールキタコレ。

『そうした中で、ご指摘のように、消費が底堅さを増している、住宅投資が回復してきていること等を踏まえて、景気判断を若干前進させたということです。』

だそうです。何でここで上げるかねえと思いますが自信満々と言いたいらしい。

『今後とも、毎月毎月の様々な統計、さらには短観や支店長会議における議論、その他の様々なデータを十分に踏まえて、経済・物価動向についてフォローしていきたいと思っています。』

はあそうですか。

『私どもの考えていた線に沿って経済・物価が動いていますので、当面、金融政策について何か特別に変わったことになるとは思っていません。先程申し上げた通り、「量的・質的金融緩和」を継続すること、また、金融政策決定会合毎に上下双方向のリスク要因を点検して、必要があれば調整を行うということにも、全く変わりありません。』

ということで追加緩和無いという話だがそらまあさっき引用した金融経済月報でしらっと物価の部分を事実上判断引き上げているんですから自信満々度が高まっているという事でしょうな。


・潜在成長率に関しての質疑がありましてこれが微妙にアレ

いきなり9ページ目までワープするのですが。

『(問) 潜在成長率に関してお伺いします。先日のIMFのWorld Economic Outlookは、世界経済の成長率は、今年の1月とはそれほど変わっていませんが、表面上は変わっていなくても、その後のレポートでは、先進国も新興国も潜在成長率がなかなか上がらないということが指摘されています。日銀としても、数年前から、展望レポートでは、見通し期間の終盤にかけて潜在成長率が──現状だとまだ0%から0.5%と言われていると思いますが──上がっていくということを何回も言われています。』

「何回も言われています」という中に「結局上がっていないですよね」という嫌味が含まれています。

『潜在成長率は、基本的に資本と労働の供給と生産性の伸びで決まり、先日の展望レポートでも、物価上昇と賃金上昇の好循環メカニズムが強まるとありました。潜在成長率が上がっていく道筋というかパスについては、労働人口が減っていくと設備投資は必要なのでしょうが、企業収益がいいとは言いつつ、先行きの需要がなければ投資もしないと思います。その辺も絡めて、日本の潜在成長率を上げていくことに関して、どういうふうにみていらっしゃるかお伺いします。』

どうせなら「以前からずっと潜在成長率が上がる上がる言って全然上がらないですよね」とか「潜在成長率が上がらない中で、中長期的な目標として掲げるのは理解できますが、物価上昇率2%を短期間で安定的に達成する事は可能なのでしょうか」とか質問すると面白いのかも知れませんが、論点が拡散するので潜在成長一本に絞っていますね!!!!!

『(答) 私どものスタッフの見方では、潜在成長率はリーマンショック前までは1%強程度にありましたが、リーマンショック後に低下し、足許では0%台半ばに落ちてきているわけです。その主たる理由は、いわゆる生産性というかTotal Factor Productivityの上昇率が大きく下がったということではなくて、まず資本の寄与が、リーマンショック前はプラスだったのが、その後設備投資が大きく落ち込んだためにマイナスになっていたこと、それから労働力の寄与は、マイナスがだんだん大きくなってきていたことだと思います。』

ほほう。

『ただ、資本の寄与は、これから設備投資が行われていきますので、プラスになっていくと思いますし、労働力の寄与も、近年女性の就業率が大幅に上がってきていますので、プラスになるかどうかは分かりませんが、少なくとも大きなマイナスにはならない、ゼロ近傍になっていくということになれば、潜在成長率はそれほど時間がかからずに1%台に戻る可能性は高いと思います。』

>潜在成長率はそれほど時間がかからずに1%台に戻る可能性は高いと思います
>潜在成長率はそれほど時間がかからずに1%台に戻る可能性は高いと思います
>潜在成長率はそれほど時間がかからずに1%台に戻る可能性は高いと思います

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいません、潜在成長率ってそんなにホイホイ動くものじゃないと思うのですが・・・・・・・・・・・

『ただ、2%にするというのは──中期的な潜在成長率を2%にするというのは政府の成長戦略の重要な目標ですが──、これはそう簡単なことではないと思います。他方で、不可能ということでもないだろうと思っています。』

何で1%にはホイホイ戻るのに2%はすぐに戻らないのでしょうかよくわかりません><

・・・・・というかそれ物価も同じことなのではないでしょうかねえ(ゲス顔)

『政府は、成長戦略、色々な規制緩和であるとか、構造改革であるとか、その他各種の努力によって、潜在成長率を全体として2%に持っていくということを目標として考えておられます。これは容易であるとは思いませんが、不可能であるということでもなくて、しっかりした成長戦略を着実に実施していけば、2%に達することは十分期待できるだろうと思っています。』

要するにただの大和魂ですね分かります。

『なお、諸外国、特に米国あるいは英国などは、リーマンショック前の中長期的な潜在成長率はかなり高かったわけです。英国の場合は大きく落ちてきているとか、米国の場合も落ちて、それがまだ元になかなか戻りにくい状況にあるとか、そういったことを踏まえて色々なことを言っておられるわけですが、日本の場合は、リーマンショック前に既に1%台まで落ちていまして、その後の落ち方が欧米のように大きく落ちているということではなくて、先程言ったような状況ですので、若干事情は違うのかなと思っています。』

ということは普通粘着した状態にある訳だからそんな簡単に上がらないようにしか思えませんが。



・もう一つの今回のオモシロ問答はインフレ期待に関してである

なお質問がクソ長いのですがしょうがないので質問から引用。

『(問) 先程もお話に出ていましたが、「『量的・質的金融緩和』:2年間の効果の検証」が話題になっています。一番の反応は、この中で、日銀の「量的・質的金融緩和」の一番の柱、大きな旗になっているマネタリーベースについて一言も触れられていない、日銀は、結局、マネタリーベースでは何とも効果を挙げることはできないとして、実質金利を取り上げざるを得なかったのではないかと。』

ということでマネタリーベース直線一気理論の質問ならそれでも良かったと思いますが。

『政策委員会の中には、就任前に、マネタリーベースをいくら増やしたらどれだけ物価が上昇する等と言われていた副総裁もいらっしゃるわけですが、今となってはもう、マネタリーベースという言葉すらもこの検証の中に出て来ない、あまり物価を上げる効果はなかったのではないか、というのがまず大きな反応でした。』

クソワロタが質問の筋は別なのでマクラは余計な気がする。まあイヤミ言いたかったんでしょうけど。

『私は、少し違う観点から質問させて頂きます。』

ほうほうそれでそれで?

『実質金利が1%くらい下がったことによって物価が0.6%動くであろうと思っていたところ、株価とか為替が望外に動いたので、それを勘案すれば1%ぐらい動くであろうというのが、この検証の中身の筋だと思いますが、期待インフレについては――これもその大きな柱だと思いますが――、この2年間で0.5%上がったと書かれています。ただ、総裁は、常々、2%まで引き上げることが目標である、2%の「物価安定の目標」を安定的、持続的に達成するためには、やはり2%のインフレ期待がないといけないと言われていますが、2年間で実は0.5%でした。』

ふむ。

『結局、この検証は、2年間で「量的・質的金融緩和」は足りなかったのではないか、力が及ばなかったのではないかということを認めているという理解でよいのでしょうか。これがまず第1点の質問です。』

これは挑発。

『また、あと1年ほどで2%に達して、それからできるだけ早い時期に安定軌道に乗せていくのが日銀の目標だと思いますが、この足りなかった量的緩和をこのまま1年やそこら続けていくだけで、足許で0.5%の期待インフレ率がこれから2%に到達するのかどうかも、民間のエコノミストをはじめ市場関係者が大いに疑問に思っているところです。2年間でこれだけしか効果がなかったものをこのまま続けていくだけで、2%という期待インフレ率に達するのかどうか、よく分からないというのが多くの人の感想だと思うので、どうやってそこに持っていくのか、教えて下さい。』

これまた更に挑発、というか同じ質問で、QQEがインフレ期待にどのように定量的に効いたのかと考えると今の実績じゃあ足りないよね、という質問ですので、「単純にQQEの量とインフレ期待が1対1で対応する訳ではなくて、インフレ期待のシフトアップが起きるところではある種の不連続な変化が生じえる」みたいな説明をした方が良いのですが、現実問題としてこの質問者が指摘するように何となく量的にリニアな説明をペーパーとして出してしまったのでこういうツッコミも来ます罠という所で。

つーか話が脱線しますが、あの検証ペーパー出したタイミングが「MPMやって展望レポート基本的見解を出した翌日」というのが喧嘩売っとるのか的なタイミング(全然その意図はなかったと思いますし展望レポートの背景説明に織り込んだのだから同時に出したと言いたいのでしょうが)でして、あれを定例記者会見の翌日に出されると、定例会見が炎上しないためにわざと翌日に出したと思われてしまう(あの日の会見でもメカニズムとか効果の質問があって、後付で見たら企画のペーパー見れば質問しなくても良かった質疑があった次第)のでして、もうちょっとそこのロジは考えた方がよかったんじゃないですかねえ、とは思う(4月1回目のMPMの後に出しておくとか)。

でまあ話戻って総裁の答えですがね。

『(答) まず1点目ですが、「量的・質的金融緩和」の波及メカニズムに関する考え方は、導入当初から変わっていません。』

「マネタリーベース2倍」と思いっきり説明していましたがマネタリーベースの効果is何処?

『「量的・質的金融緩和」は、2%をできるだけ早期に実現するという明確なコミットメントをしたうえで、それを裏打ちする、量と質の両面で次元の異なる金融緩和を行う政策です。量の面では、金融市場調節の操作目標を従来の金利からマネタリーベースという量に変更し、これを大幅に増加させることとした上で、その供給のために、長期国債などの資産買入れを大幅に増やしています。また、質の面では、買入れ国債の平均残存期間を延長し、ETFやJ−REITの買入れ額を増加させています。』

ここはもうどうでもよい。

『「量的・質的金融緩和」では、こうした量と質の両面の大幅な緩和によって、長めの期間も含めてイールドカーブ全体にわたって名目金利に下押し圧力をかけ、それと同時に、デフレマインドを転換して人々の予想物価上昇率を引き上げることで、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利を引き下げています。こうしたことによって、民間需要を刺激して経済の好転をもたらして需給ギャップを改善させ、そして実際の物価を押し上げていき、実際の物価が上昇すると予想物価上昇率もさらに上昇していくといった一連のプロセスを波及メカニズムとして想定しており、基本的にそうした「量的・質的金融緩和」のメカニズムは働いてきたと思っています。』

実質金利が下がった以降がダウトですがまあここまではどうでもよい。

『予想物価上昇率についても、様々な計測の仕方がありますので一概に言えませんが、現時点で1%台の半ばあるいは1%台の前半といったような数字が様々な形で出ています。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいませんそんな数字言って大丈夫なんでしょうか、というか1%台半ばだったらもうほとんど達成に近いのですけれども、ニュースヘッドラインに出なかったせいか特段ここに関する市場の反応が無かったと思うのですけど、あたしゃこれ聞いて席から落ちそうになったのですけど。

『おそらく、1.5%とか1%台前半へと予想物価上昇率が引き上がった分の全部が「量的・質的金融緩和」によって引き上げられたということではないと思いますが、予想物価上昇率の引き上げにも貢献していることは間違いないと思います。足許で潜在成長率をかなり上回る成長が続いており、さらに今年、来年と続き、需給ギャップが縮小して、いずれプラスになっていくと思います。そして予想物価上昇率も長い目で見れば上昇しており、特に、昨年の夏以降の原油価格の大幅な下落によって、足許の消費者物価上昇率がだんだん下がり現在0%程度になっているにもかかわらず、予想物価上昇率は低下していません。』

『こうした需給ギャップの動きと予想物価上昇率の動きから、私どもは2016年度前半頃には2%程度の物価上昇率に達するであろうとみています。』

そら予想物価上昇率がそんなに現時点で高いならそういう見通しになるわな。

『先程申し上げた通り、2016年度全体で+2.0%、2017年度全体で+1.9%といった消費者物価の上昇率を見込んでいます。そうした状況のもとでは当然ですが、予想物価上昇率も、2%に向けて収斂していくであろうと考えています。』

えーという感じですが、実際問題として昨年発生した事象は現実の物価が上昇する中で実質消費が手控えられて来ていたというお話であって、内生的な物価上昇メカニズムとは大きく異なる事態だったと思うのですが、何でこう自信満々なのかと不思議としか申し上げようがありませんが、まあ今回はこのインフレ期待の部分と先ほどの潜在成長率に関する質疑応答が面白問答だったのでそこだけは良かったですね。


しかし今回はダメ質問が散見されたので晒し上げしようかと思ったが馬鹿馬鹿しくなったので割愛します(−−;

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2015/05/19

○黒田総裁のアレな講演ネタの続き

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150515a1.pdf
「量的・質的金融緩和」の2年
── 読売国際経済懇話会における講演 ──
日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年5月15日

『以上のような金融・経済・物価の動きは、定性的に言えば、「実質金利の低下」「株高・円安」「企業収益の改善」「労働市場のタイト化」「雇用者所得の増加」「消費者物価の上昇」と、いずれも「量的・質的金融緩和」で想定したメカニズムに概ね沿ったものでした。』

というような自画自賛満載なのに物価が何で上昇していないんですかねえという講演の残り部分。

『もっとも、現在は、エネルギー価格下落の影響によって消費者物価の前年比は0%程度まで伸び率が縮小しています。2%の「物価安定の目標」を安定的に実現するためには、予想物価上昇率がさらに上昇する中で、現実の消費者物価も高まっていく必要があります。』

という話なのですが、展望レポートでの見通し(ここでもこの先に言及されます)だと安定的実現は2016年度に入ると達成という絵になっているのは何なんでしょとしか申し上げようがない。

『先ほど述べた通り、予想物価上昇率は、昨年10 月の「量的・質的金融緩和」拡大の効果もあって、原油価格の下落にもかかわらず、やや長い目でみれば全体として上昇しています。引き続き、現実の消費者物価上昇率が低下している中でも、予想物価上昇率の上昇傾向が続くかどうか、確認していく必要があると考えています。』

図表2のインフレ期待の部分を見ると足元でじりじり低下しているようにしか見えませんが。

『そこで以下では、経済・物価の先行きについてお話しします。』

ということで・・・・・・・・・・


・輸出と設備と消費が全部強いという見通しですががががが

『わが国経済の先行きを展望すると、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが働いている中で、原油安という好環境も加わっていますので、回復基調が持続すると考えられます。』

足元の話はともかく、先行きは原油が徐々に上昇するという見通しになっているので原油安をサポートというのは話に無理がないでしょうかねえ。

『まず、輸出についてみると、海外経済が先進国を中心に回復するもとで、これまでの為替相場の動きも下支えに働くことから、緩やかに増加すると見込まれます。』

出る出る詐欺状態だった輸出が最近やっと上向きになってきたので最近はすっかり見通しの中で輸出の所を強調するようになりました。

『国内需要に目を転じると、設備投資は、企業収益の改善や金融緩和効果が引き続き押し上げに作用する中、国内生産強化の動きなどもあって、しっかりと増加するとみられます。』

この国内生産強化の話だが、そんなに言うほど一般化されている話かよと思いますし、設備投資に関しては出る出る詐欺状態なのは相変わらずなのでは?

『個人消費については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響が収束しつつあり、このところ消費者マインドが改善してきていることも踏まえると、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、先行き伸びを高めていくと予想されます。』

その消費者マインドって物価が下がったことではないか疑惑がありますし、物価が上がったらあの程度のベアだと実質賃金あっという間にマイナス転するんですけどねえ。


・・・・・・で、この後が計数の話になりますので、要するに輸出が出て設備が出て消費も出るというのが見通しになっているのですが、先日来申し上げておりますようにこれ一つ一つのコンポーネント的にはシナリオの中で一番強く振れたらそうかもしれませんね的な見通しなのですが、結局の所すべての需要項目について最大の強気シナリオを見ているので、それを全部合わせると無茶苦茶ナローパスな見通しになるという形になっている訳ですが、まるで大本営発表の見通しみたいで実に味わいがある。

でまあ結果は展望レポートの通りだが一応引用しておく。

『以上を踏まえ、この先3年間の日本経済を展望すると、2015 年度から2016年度にかけては、潜在成長率を上回る成長を続けるとみています。そのもとで需給ギャップはプラスに転じ、その後プラス幅を拡大していくと考えられます。具体的に展望レポートにおける政策委員の成長率見通しの中央値で申し上げると、2015 年度は+2.0%、2016 年度は+1.5%になるとの見通しです(図表6)。その後、2017 年度にかけては、同年4月に予定されている消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響を受けるとともに、景気の循環的な動きを反映して、潜在成長率を幾分下回る程度に減速しますが、プラス成長を維持すると考えています。政策委員の見通しの中央値で申し上げると、2017 年度は+0.2%になるとの見通しです。』


・物価見通しですがそう言い切ったら目標達成じゃないでしょうかねえ(ゲス顔)

『次に、物価の展望についてお話しします。先行きも、需給ギャップの改善と予想物価上昇率の上昇が続くと予想されますので、物価の基調は着実に高まっていくと考えています。また、エネルギー価格下落の下押し圧力は次第に剥落していく性質のものです。したがって、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面は0%程度で推移するとみられますが、エネルギー価格下落の寄与が縮小に転じる今年度後半には上昇率を高め、2%に向かっていくと考えられます。』

さてどうなんでしょうね。

『消費者物価の前年比が2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されますが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格下落の寄与が概ねゼロとなる2016 年度前半頃になると予想されます。』

そしてですね、

『その後については、消費者物価は月々様々な要因によって変動しますが、平均的にみて2%程度で推移すると見込まれます。』

ちょwwwwww

えーっとすいませんそれですと物価安定の目標思いっきり達成していることになるのですが。

・・・・・ということでですね、2年で2%達成というタイムコミットメントみたいなのが入っている点の弊害が思いっきりその2年が接近して発生している訳でして、タイムコミットメントのような話をしている以上上記のような威勢の良い話をしておかないと「追加緩和が必要ではないか」という批判にも耐えられないですし、そもそも論として「必要な措置は全部打った」という最初の大見得に対する批判も出てくる訳でして、威勢の良い話をするという事になるんでしょうが、これって明らかにコミュニケーションを訳分からなくしている元凶です罠と思います。

だって「平均的に見て2%で推移」というのであれば2016年度前半には物価目標達成している訳で、金融政策の効果のタイムラグを考えると当然その前に出口政策を検討しないと物価が望ましくないオーバーシュートをすることになるのですが、展望レポートで前提にしている金融政策運営というのは現在の政策金利水準が見通し期間中(つまり2017年度中まで)継続という事になっているのでして、どう見ても話がおかしい。

逆に言うと「平均的に見て2%程度で推移」というのがQQEの継続が前提なのであれば、そもそもQQEという超強力な金融緩和のサポートによってしか2%を維持できないという時点で物価安定目標の設定がおかしくないですかと思いますし、もっと言えばこれだけの超強力な金融緩和を2%の物価水準に到達してから1年間継続しても物価が安定的に推移するというのであれば、実は金融緩和に物価を押し上げる力が無いんでしょうかと言いたくなる訳です。

数字の話はまあ展望レポートの数字をだしているだけなので割愛しまして。


・金融政策の実際の実施スタンスが「time-dependent」なのか「state-contingent」なのかが訳分からん件について

次の『4.金融政策運営』から。

『以上のように、「量的・質的金融緩和」は所期の効果をしっかりと発揮しています。また、先行きも経済・物価情勢の好転は続き、消費者物価の前年比は、2016 年度の前半頃に「物価安定の目標」である2%程度に達する見通しです。金融政策の面では、従来通り、2%の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していく方針です。』

でまあここは日銀のペテンな所なのですが、「QQEを継続する」とは言っているものの、その規模についての説明はどこにもないので、QQEの枠組みの中で買入ペースを落とすとか、極端に言えば緩和度合いを緩める(資産規模の縮小をする)とかでも「依然として緩和効果が」とか言う事は可能という建付けになっている筈で(前者はともかく後者の場合はさすがに出口政策とは言わないでQQEの範囲内での調整と言い切れるか難しいですが)、市場の方としては普通に今後も年間80兆円ペースの長期国債買入とその他諸々の買入が継続するというのが前提で展望レポートの見通しが出来ていると思っていますから、ここの辺りの認識のズレもまたコミュニケーション的に訳の分からん所なんですよね。

つーことでですね、そもそも見通しで「安定的に推移」とまで言っているのに出口論になると「時期尚早」というのがおかしい訳で、ここがこの政策の建付けを訳分からなくしている所でしょうなと思います。まあこの点は当初は先の話だったので有耶無耶のまま進めましたけれども。


『この点に関して、2%程度に達する時期が「2016 年度前半頃」に後ずれしたことと、「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に」というコミットメントとの関係はどうなっているのかとの声も聞かれます。』

まあこの言い訳はこの前の会見と同様に「スタンスはスタンス、見通しは見通し」でありますが・・・・・・・・

『私どもの考え方を申し上げますと、日本銀行が2%の「物価安定の目標」の早期実現にコミットすることで人々のデフレマインドを転換し、予想物価上昇率を引き上げることは、デフレ脱却という目的そのものであると同時に、「量的・質的金融緩和」の政策効果の起点となるものです。すなわち、日本銀行が「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に」という期限を示し、「そのために必要なことは何でもやる」と明確にコミットしたことで、企業や家計の物価観が大きく変化してきたのです。』

『もちろん、実際の物価は様々な要因で変化します。昨年夏以降、物価上昇率が低下しているのは、諸外国と同様、主として原油価格の下落によるものです。昨年夏以降の原油価格の下落は、半年程度の間に約6割にも達する非常に大きなものでした。こうした大幅な原油価格の変化など国際商品市況の影響で、実際の物価が「物価安定の目標」から乖離する期間が生じることは、各国の中央銀行においても、いわば当然のこととされています。』

ということで、政策スタンスとしての気合は気合だが実際には気合通りに逝かない場合もあるからテペヘロという説明になっています。

『実際、消費者物価(総合)の前年比は、米国、英国、ユーロエリアなどにおいて、ゼロないし小幅のマイナスとなっており、2%に戻るのは2〜3年先と予想されています。』

米国の場合は除くエネルギーは比較的確りですが日本のコアコアはあまり強くないと思いますが(ゲス顔)。それにユーロ圏の場合は物価の基調「も」弱いから追加緩和をしているのであって、ユーロエリアと比較するんだったら追加緩和を実施しないと話がおかしいと思いますが。

『本日ご説明したように、わが国の物価の基調は着実に改善しており、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、消費者物価の前年比は2%の「物価安定の目標」に向けて上昇率を高めていくとみています。こうした動きは、「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に」というコミットメントに沿った動きとなっていると判断しています。もとより、物価の基調が変化し、2%の実現のために必要となれば、躊躇なく調整を行う方針です。』

そもそも日銀の言う「物価の基調」というのが需給ギャップに期待インフレとなっているので恣意的に変化しうるものですよねというのは毎度突っ込んでおります通り。

でですね、この「2年で」を掲げ続ける意味というのが最早まったく分からないとしか申し上げようがないところでして、スタンスとしての気合で「2年」と期限を区切るというお気持ちは分かるのですが、実際問題として肝心の2年は超過してしまった訳でして、その達成期間については「2年程度を念頭に出来るだけ早期に」→「2015年度を中心とする期間」→「2016年度前半頃」(ちなみに「頃」とあるので更に後ずれ可能)とドンドン後ズレする結果になっている訳で、そうやって結果が出ない状態で気合だ気合だと連呼しましても、それは政策達成に対する日銀の信認を徐々に削っていく結果になるとしか見えません。

しかもですね、昨年10月の場合は物価が下がる中で追加緩和をしたから「time-dependent」であるという強いメッセージが出ましたが、その後に関しては見通しだけズルズル後ずれさせる中で気合だ気合だ基調だ基調だという空手形にしか見えない動きになっている訳でして、「time-dependent」であるという期待はドンドン低下していませんかねえそれはという状況な訳ですよ。

いやね、今の日銀の説明だと「物価の基調は以前よりも強くなっているのだから、足元の原油安に過度に対応して無理にアクチュアルの物価を上げようという金融政策を実施するのは却ってイクナイ」という話になっている訳で、過度に足元の物価にstickした金融政策を実施している訳ではない、という話になっていて、その方がスタンスとして普通(物価の基調が本当に強いのかよというツッコミ所は大いにあるが)だと思う訳ですが、それであれば過度に「time-dependent」ではない、というのが実際の政策でして、気合とかスタンスとかはともかくとして実際にやっているのは「state-contingent」でしょと思う訳ですよ。

でまあ期間を切る→やっぱり行かないで言い訳をする、というのだって限界というのがあって、これをもう1回か2回やるようだったら最早信認も蜂の頭も無い訳でございまして、そうなるのを避けるには「出来るだけ早期に」という形で期限を区切らないけれども気合だけは満々ですよ頑張りますよやりますよ、という風に説明を持って行った方が日銀の将来のクレディビリティが落ちるリスクが軽減されるんじゃネーノとは思うのですが、なぜかこの「2年で」を下げないというのがもう自爆特攻しているようにしか思えない訳で、日銀の将来の為に惜しむという所ではあります。


・最後の所から少々

『本日は、「量的・質的金融緩和」導入後の2年間を振り返りながら、経済・物価情勢と金融政策運営についてお話ししてまいりました。最後に、私自身の感想を付け加えさせて頂き、講演を終えたいと思います。』

『経済政策では、思った通りのこと、想定外のこと、いろいろと起こります。』

えーっとすいません、QQE導入時に「必要な政策は全部打った」と堂々と説明していたのは何なんでしょ。

『「量的・質的金融緩和」導入からの2年を振り返ってみても、いくつかの「思い通り」や「想定外」がありました。1年目の2013 年度は、経済が好転し、物価上昇率も着実に高まる中で、多くのことは「思い通り」か「予想以上」でしたが、輸出の伸び悩みは予想を下回る動きと言えました。過度な円高の中で進んでいた企業の海外移転の影響は予想以上に大きく、輸出が好転したのはようやく最近のことです。』

企業の海外移転の影響だけなんでちゅかねえ。

『2年目の2014 年度は、個人消費の動きが予想よりも弱かったと言えます。これには、消費税率引き上げの影響がやや長引いたことや夏場の天候不順などが影響しました。消費者にとっては当然のことながら消費税込みの物価が意識されますので、それには賃金の上昇は追い付かず、個人消費を下押したと考えられます。このこと自体は消費者が負担する税である以上予想されたことですが、その影響がやや大きかったということです。』

賃金上昇の前にコストプッシュの物価上昇も来ましたからねえ。ああそれから2%に物価が上昇したらまた実質賃金マイナスだしそこに2017年の消費増税が来るんですけど大丈夫ですかねえ。

『そして、最大の「想定外」は、半年で6割にも及ぶ原油価格の下落です。この結果、現実の消費者物価上昇率は+1.5%から0%程度まで低下しました。このことは、「量的・質的金融緩和」のメカニズム、とりわけ、予想物価上昇率の形成にリスクをもたらし、日本銀行は「量的・質的金融緩和」の拡大を決断しました。』

はいはい原油価格原油価格。また時間が無くて(すいません)続きが出来ない木曜のドラギ総裁講演ですと欧州の場合は「物価の基調も弱い」という話をしていましたが日本の場合はひたすら原油のせいですね。

『もっとも、こうした「想定外」にもかかわらず、「量的・質的金融緩和」のメカニズムはしっかりと働き続けています。この2年間で、政府の様々な施策と合わせて、デフレ下で凍りついていた人々のマインドセットは明らかに変化しました。このまま経済の好転が続き、デフレ脱却が実現すれば、経済政策によるレジームシフトを実現した稀有な成功例になるのではないかと思います。』

スタグフレーションになってきてるような気がしますがまあいいです。

『私は、いくつかの「想定外」より、むしろ、大きな構図が「思い通り」であることに、確かな手ごたえを感じています。日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」の早期実現に向け、引き続き「量的・質的金融緩和」を着実に推進してまいります。ご清聴ありがとうございました。』

つーことでまあ基本的に想定通りの連呼でして、何ちゅうかまさかドラギのおっちゃんの方が謙虚な説明に見えるようになるとは日銀も変わりましたなあ(ただし悪い方に)という感想なのですが、肝心のドラギのおっちゃんの講演ネタの続きをやる時間が(こっちのネタに粘着しすぎで)なくなってしまいましたすいません。

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2015/05/18

○黒田総裁講演がまた行われていましたが「実質長期金利の低下は利下げ10回分」とかキャッチー狙いも段々劣化ですなあ

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150515a1.pdf
「量的・質的金融緩和」の2年
── 読売国際経済懇話会における講演 ──
日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年5月15日

『前回、本席でお話しさせて頂いたのは、一昨年の4月、「量的・質的金融緩和」を導入した直後でした。それから2年が経ちましたが、「量的・質的金融緩和」を進めていくもとで、わが国の経済・物価情勢は大きく改善しています。昨年夏以降の原油価格の大幅な下落の影響などから、消費者物価の前年比上昇率は低下し、最近では0%程度となっていますが、後ほど詳しくご説明するように、物価の基調は着実に改善しています。』

物価は2年での目標を達成できなかった上に0%だけれども基調は改善しているとは毎度の言い訳。

『本日は、まず、この2年間の経済・物価の動きを振り返り、「量的・質的金融緩和」がどのような効果を発揮してきたかご説明したいと思います。そのうえで、経済・物価の先行きと金融政策運営について、先日公表した展望レポートにも触れながら、お話しします。』


で、ここにありますように

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130412a1.pdf
量的・質的金融緩和
── 読売国際経済懇話会における講演 ──
日本銀行総裁 黒田 東彦
2013年4月12日

というのが2年前に実施されていますので、ここの図表を比較すると味わいがあったりします。

でまあ更に申し上げますと

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a1.pdf
「量的・質的金融緩和」のトランスミッション・メカニズム ―「第一の矢」の考え方―
京都商工会議所における講演
日本銀行副総裁 岩田 規久男
2013年8月28日

辺りと比較するとなおヨロシ。では講演に戻ります。


・政策のトランスミッションメカニズムの説明部分にスタンスとしての傲慢さを感じますな

『2年前「量的・質的金融緩和」を導入した際、日本銀行は、主として次のような波及メカニズムを想定しました(図表1)。すなわち、第1に2%の「物価安定の目標」に対する強く明確なコミットメントとこれを裏打ちする大規模な金融緩和によって予想物価上昇率を引き上げる、第2に巨額の国債買入れによってイールドカーブ全体に下押し圧力を加える、第3にこの2つによって実質金利を引き下げる、これが政策効果波及の起点です。』

でまあこの図表1というのは図表貼り付けスキルがないからつけられませんが、PDFの12枚目にありますように「大規模な長期国債買入れ」と「2%の「物価安定の目標」への強く明確なコミットメント」があって実質金利が低下すると経済がアプリオリに良くなって、その結果物価上昇率が上昇するので内生的なサイクルが働くような絵になっています。

2年前の黒田講演ではこんなこと書いてありました。図表というかフリップの最後の部分になりますけどね。

『「量的・質的金融緩和」の効果
長めの金利や資産価格のプレミアムへの働きかけ
リスク資産運用や貸出を増やすポートフォリオリバランス効果
市場経済主体期待の抜本的転換』(2013年4月12日総裁講演より)


師匠に関しては上記の講演の図表6(PDFの22枚目)で『2%インフレ目標コミットメント』と『マネタリーベース増加』によって全てが効果出てくるという話をしておりまして、前の説明と微妙に違うじゃねえかと思うのに、なぜか「2年前「量的・質的金融緩和」を導入した際、日本銀行は、主として次のような波及メカニズムを想定しました(キリッ)」と言い出すのが何ともアレ。

金曜に速読でネタにしましたドラギ総裁のIMFでの講演でもそうですが、普通の中央銀行というのは「非伝統的手段というのは政策に関する経験がすくない領域の政策だから、その効果や副作用に関しても考え通りに進まない場合もある」という発言をする筈(ちなみにドラギ講演の内容は速読じゃなくて精読したらかなり面白いので今日は間に合わないのですいませんが明日にでもネタ投下の所存ですが一読推奨)なのですが、最初の説明とちと違う話をしているのに平気で「最初からこう考えていましたので考えた通りに機能しています(キリッ)」と言い出すのは謙虚さの欠片もない傲慢な発想にも程があると思いますがどうでしょうかねえ。



・実質金利が下がった話が微妙にアレな件

でまあ毎度の説明部分は割愛しまして実際に効果がありましたという話。

『実際の成果はどうだったでしょうか。まず、「量的・質的金融緩和」のメカニズムの起点である実質金利の低下について見ていきたいと思います。』

で??

『長期金利は、「量的・質的金融緩和」以前に既に歴史的な低水準にありましたが、日本銀行の大量の国債買入れによって、さらに低下しました。10 年債利回りで言えば、▲0.3%ポイント程度の低下です。』

途中で上昇したけどな!

『この間、予想物価上昇率は上昇しています。皆様の実感としても、「物価がどの程度上がると思うか」と聞かれて、2年前と今では違う答えになるのではないでしょうか。「デフレ」という言葉も「デフレ脱却」という文脈以外ではあまり聞かれなくなりました。』

いやあの「デフレ脱却がまだ」という話は何度も聞かれますけどしかも貴殿のお好きなリフレ派の皆様から。

『企業の価格や賃金設定行動も変化しており、10 数年来途絶えていたベースアップが、昨年、今年と2年続けて実現しました。こうした事実がある以上、予想物価上昇率が上昇したこと自体は、疑いようがありません。』

そら円安コストプッシュに消費増税がありましたからねえ。問題はそれが実際に経済が持続的に強くなるためのパスに繋がっているかという話じゃないですか?????????

『ただ、これを数値で示そうと思うと、人々の頭の中のデータであるだけに、なかなかひとつの値には決まりません。家計や企業やエコノミストなど様々な主体へのアンケートや、市場で取引される物価連動国債から計算する値などからは、かなり幅を持った数字が出てきます。』

ほう。

『とりあえず、数値での回答が得られるエコノミストや市場参加者の中長期の予想物価上昇率は+0.5%ポイント程度上昇しています。これらを使うのであれば、実質金利の低下幅は、先ほどの名目長期金利の低下幅と合計して、▲1%ポイント弱程度となります(図表2)。』

おいこら。ちなみに図表2を見ますと脚注に『2. 予想物価上昇率はQUICK調査の値。QUICK調査は、2013/9月調査から、消費税率引き上げの影響を含む計数を回答するよう質問項目に明記。』とありまして、それ以前の数値については消費税込みなのか抜きなのかが回答者によって違うという物体なのでそもそもデータの連続性としてどうなのかというものでして、それをそのまま使う(しかも起点が消費増税の話がまだ全然なかった2012年1月から)というのがインチキ臭くて大変に結構でございます(棒読み)。


・利下げ10回分ネタはこちら

でまあそんなことで実質長期金利を1%ほど下げたという話(企画局の先日のレビューでもまあそんな感じのが出ていましたけど)をしているのですが、その結果が例の利下げ10回分。

『なお、欧米の研究などによれば、経済・物価に対して長期金利の低下は短期金利の低下の数倍の政策効果を持つとされています。また、「量的・質的金融緩和」がイールドカーブ全体を下押ししている効果について実証分析を行ったところ、同じ効果を短期金利の引き下げのみで得ようとすれば、2%程度の引き下げが必要になるという結果が出ました。』

うーんこれは・・・・・・・・

えーっとですね、
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/rev15j08.htm/
「量的・質的金融緩和」:2年間の効果の検証
2015年5月1日
企画局

だと『計測の結果、(1)「量的・質的金融緩和」は、実質金利を▲1%ポイント弱押し下げた、』という説明がありまして、これって企画局が出しているペーパーですからこっちを元に説明する分にはそうですなという話になるのですけれども、政策金利2%押し下げ云々というのは、

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab15j03.htm/
均衡イールドカーブの概念と推移
今久保圭、小島治樹、中島上智(日本銀行)
Research LAB No.15-J-3, 2015年5月1日

の中の最後の所に『均衡イールドカーブ・モデルを用いた試算によると、こうした量的・質的金融緩和の効果は、短期金利コントロール(イールドカーブのスティープ化)のもとで翌日物金利を190bps程度引き下げた場合の効果に相当する規模となっている。』ってある話の引用になっていて、いやあのすいません日銀レビュー関連っていうのはどこかの部局名で出しているもの以外には『本稿の内容と意見は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではありません。』ってありますので、これだと総裁がペーパーのヘッジクローズを否定しているような話になってしまいますので、説明するのにこの話をしない方がよかったんじゃないでしょうかねえと思うのですが(というような試算もあります、程度にしておけばよかったのではないかと思う)。

『こうした分析は、各国の状況や様々な前提にも依存しますので、十分幅を持ってみる必要はありますが、伝統的な短期金利誘導による金利政策が通常は1回0.25%ずつ行われることを踏まえると、「量的・質的金融緩和」は、10 回近くの利下げを同時に行ったのと同等の政策効果を持っているとも言えると思います。』

なお別に25ずつ下げるのがスタンダードな訳ではありませんが10回というのを強調したかったんですね下手な落語だなあ。

つーかそれだったらMBに焦点を当てるのではなくて最初から長期金利ターゲット(という下品な)政策を実施していた方が早かったんじゃないですかねえというかもっと市場にストレスをかけないで長期金利を下げる方法はあるんじゃないですかねえと思うのですがそれは。

『この間、「量的・質的金融緩和」の導入に、金融市場は比較的早く反応し、株価は大きく上昇し、為替市場では円高の修正が起こりました。また、貸出も緩やかに増加方向に動き、現在は中小企業向けを含めて、2%台後半の伸び率になっています。これらは、実質金利の低下による金融環境をさらに緩和的なものとしました。』

ということで結局資産価格ルートかよ!という所ですな。


・結果の説明に日銀文学キタコレ!!!

でまあ『「量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価の動き』という小見出しに行く。

『こうした「量的・質的金融緩和」の緩和効果のもとで、企業・家計の両部門で所得から支出へという前向きな循環メカニズムが働き、経済は大きく好転しました。』

前向きな循環メカニズムが働いているのに何で消費や設備投資が伸びないんでしょうかねえ。

『まず、企業部門をみると、収益は、過去最高の水準まで改善しており、設備投資も緩やかな増加基調にあります(図表3)。この間、わが国の輸出は円高が修正された割には伸び悩んできましたが、昨年7〜9月期以降は3四半期連続で増加するなど、ようやく持ち直しが明確になってきました(図表4)。』

図表3を見ると資本財総供給は2005年の水準に届きませんし、図表4で出ているの実質輸出ですから為替調整による数量部分はどうなっているでちゅかねえ的なアレを感じる。

家計の部分はパスして物価の部分。

『こうした経済の好転を受けて、物価の基調も着実に高まってきました。失業率の低下にみられるように労働や設備の需給は引き締まってきており、需給ギャップは、既に過去の平均であるゼロ%程度まで改善しています。先ほど述べた通り、予想物価上昇率も上昇しています。この結果、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、「量的・質的金融緩和」導入前は▲0.5%程度でしたが、昨年4月には、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで、+1.5%まで改善しました。』

>昨年4月には、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで、+1.5%まで改善しました。
>昨年4月には、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで、+1.5%まで改善しました。
>昨年4月には、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで、+1.5%まで改善しました。

直近のゼロ近傍の話をしないで昨年4月の話をする辺りが日銀クオリティ。

『その後、消費税率引き上げ後の需要面の弱めの動きや、昨年夏場以降、原油価格が大幅に下落したことを背景に、消費者物価の伸び率が鈍化しました。』

>消費者物価の伸び率が鈍化しました
>消費者物価の伸び率が鈍化しました
>消費者物価の伸び率が鈍化しました

ゼロとは言わないところがもう日銀文学っぽくて素敵です!


・そんなに効果があるのに何で実際の物価は行かないんでちゅかねえ

でまあその後追加緩和をしましたという話の続きですがね。

『その後の予想物価上昇率の動きをみると、マーケット指標や各種アンケート調査などは、原油価格の下落にもかかわらず、下落していません。また、今年の春闘では、多くの企業で昨年を上回るベースアップを含めた賃上げが実現する見込みです。』

2%物価上昇したら実施賃金マイナスになるレベル程度のベアだけどな!!!

『企業の価格設定行動をみても、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる動きが拡がりつつあります。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇していると判断できます。』

『以上のような金融・経済・物価の動きは、定性的に言えば、「実質金利の低下」「株高・円安」「企業収益の改善」「労働市場のタイト化」「雇用者所得の増加」「消費者物価の上昇」と、いずれも「量的・質的金融緩和」で想定したメカニズムに概ね沿ったものでした。』

概ね沿っているのに何で実際の物価は(以下同文)ですが定量の話も一応していて・・・・・・・・

『この点、定量的にみるとどうでしょうか。この2年間──正確には四半期のデータが揃っている昨年末までですが──実際に生じた変化は、実体経済の面では、需給ギャップでみて+2%ポイント、金額にして約10 兆円の改善、物価の面では、消費者物価前年比が+1.0%ポイントの上昇です。一方、先ほど述べた▲1%弱の実質金利の低下の影響を、マクロ計量モデルでシミュレーションしますと、株価や為替相場の変化をどの程度「量的・質的金融緩和」によるものと考えるかによって幅が生じますが、需給ギャップが+1〜+3%ポイントの改善、消費者物価前年比は+0.6〜+1.0%ポイントの上昇との試算が得られます。このように「量的・質的金融緩和」の効果について、モデルによる試算と実際の経済・物価の変化は、概ね同じ大きさとなっています。』

ということで実質金利が下がったから需給ギャップが改善したという話になっていますが。

『もちろん、この2年間には、「量的・質的金融緩和」以外にも、大規模な公共投資など政府の様々な政策、消費税率の引き上げ、株価や為替相場、原油価格の変動など、多くのことが起こり、経済や物価に上下双方向の影響を及ぼしました。しかし、全体としてみれば、実際の経済・物価は、定量的に見ても、概ね「量的・質的金融緩和」が想定したメカニズムに沿った動きになっていると評価できると思います。』

だったら何故この物価水準なんだかねえ。


という感じの講演でまあイヤミたらたらで鑑賞する素材なのですが、時間配分をミスって(というかそれなら土日あるんだから下書きしておけよお前というツッコミはお受けいたしますすいませんすいません)今日は途中ですがこの辺で。ドラギのおっちゃんネタと合わせて明日に続きをば(大汗)。

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2015/05/07

○総裁記者会見は想定問答というか俺様ロジックの説明会だった件

こういうのを暖簾に腕押し糠に釘というのでしょうな。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1505a.pdf

お休み中にネタにした(本日分の続きに掲載しています)展望レポート基本的見解の前回対比の確認でもそうでしたが、展望レポート基本的見解と同様に今回は「堅牢な屁理屈で城を築いて立て籠もっているので何を聞いても屁理屈城から出てこない」というのが特色となっておりまして、まあ読んでて目立つのは「質問に対して全然正面から答えない(これは質問する方がもうちょっと考えてほしい面はある)」のと、「ツッコミに対してはまず全否定から入って後は俺様ワールド」という所で、実にこう見ていてナンジャソラ的な残念感が致します。


・展望レポートの反対に関して

冒頭説明の所から。

『なお、展望レポートについては、消費者物価が2%程度に達する時期に関し、白井委員から「2016年度を中心とする期間に」とする案が、また、佐藤・木内両委員からは、見通し期間中には2%程度に達しないことを前提とする記述の案が提出され、それぞれ否決されました。また、金融政策運営について、木内委員から前回決定会合と同様の提案があり、否決されました。詳細については、議事要旨をご覧下さい。』

ということで、展望レポートについては3名が反対ってナンジャソラという話は展望レポートネタでもやりましたが一応つけておきます。

ただ、白井さんが何を考えてこういう謎の反対をしているのかがよくワカランチ会長な所で、佐藤さんと木内さんに関してはそもそもの2年で2%というアクチュアルな物価に対するタイムコミットメント的な政策の枠組みに反対しているというのが分かる反対なのですが、白井さんの場合は単に目立ちたがりというか後になって「ほらアタシが見通していた通りじゃない」という後だしジャンケンをしたいだけじゃネーノ疑惑は有る訳で、木内さんのように中長期的に目指すとか、佐藤さんのようにフォーキャストターゲットの考え方で柔軟に考えろというような主張を前面に出しているのかというと白井さんって別にそういう話はしていないので、他の2名はともかくとして白井さんは何故追加緩和の提案をしないのかの方が不思議ではありますが、まあ白井さんクオリティですからねえ・・・・・・・・・・・とは思ったりもします。

とはいえ、そもそも展望レポートの基本的見解が執行部以外の審議委員6人中で3対3ってそらどういう事やという所で。


・基本的屁理屈については最初の質疑で集約されています

つーことで鑑賞。

『(問) 展望レポートで、物価上昇率が2%程度に達する時期の見通しが、従来の「2015年度を中心とする期間」から「2016年度前半頃」と変更されました。物価安定目標の達成時期が遅れる可能性が高まっているということなのかご見解をお願い致します。』

うむ。

『また、この見通しに基づきますと、物価安定目標の達成には、日銀が念頭に置いている「2年程度」よりも1年以上長い期間を要するということになりますけれども、「2年程度」の目標は降ろさないのか、また、追加の政策対応は必要ないのか、お尋ねします。』

まあ普通にそう聞きますな。

『(答) 物価の基調については、着実に改善していると考えており、今回の展望レポートにおいてもこうした見方に変わりはありません。』

いきなり基調の話で誤魔化す攻撃キタコレ!!!

『すなわち、需給ギャップは、概ね過去平均並みの0%程度まで回復、あるいは改善していますし、今後更に改善していくと見込まれます。また、中長期の予想物価上昇率は、昨年10月に「量的・質的金融緩和」を拡大した効果もあり、原油価格の下落にもかかわらず、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられます。』

『さらに、今年の春の賃金改定交渉では、多くの企業で昨年を上回るベースアップを含む賃上げが実現する見込みです。企業の価格設定行動をみても、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる動きがみられています。』

ホンマカイナという感じですがそのようにくどくどと説明しまして・・・・・・・・

『このように、良好な企業収益の状況や労働需給の引き締まりを背景として、賃金の上昇を伴いながら緩やかに物価上昇率が高まっていくというメカニズムは作用し続けていると思います。』

こういうと内生的な物価上昇メカニズムという話になるのだが、実は展望レポートの背景説明(たぶんそこまで今日は手が回らない、つーかだったら休み中に投下しろよと言われそうですがそこはまあ勘弁ということで)まで読むと先行きの成長メカニズムが輸出と設備投資主体の輸出企業主導のトリクルダウンっぽい話になっているんですよね。まあそれとは別に内生的に物価が上がるという話をしているのでしょうが。

『確かに、「2015年度を中心とする期間」というところから、「2016年度前半頃」ということで、若干2%程度に達する見込みが後ずれしているということは事実ですが、今申し上げたように、物価の基調は着実に改善していますし、今後とも改善が続く見通しですので、今の段階で何か追加的な緩和を行う必要はないと考えています。』

屁理屈キター!!!

『もっとも、物価の基調が変わってくることがあれば、躊躇なく政策の調整を行うという考え方に変わりありません。』

ということで、その基調というのは日銀の説明的に言いますと需給ギャップと予想物価上昇率であって、どちらもリアルタイムで正確な数値を掴むのは難しい代物ですので、要するに日銀が鉛筆なめ放題というものですから、結局の所黒田さんが急に食当たりでも起こして追加緩和病に罹患すると追加緩和だしそうじゃないならやる気なし、というのが展望レポート基本的見解を見ると(下に置いてますが、計数については下振れしているのに経済物価を構成するコンポーネントに関しては見通しをやたら強くしているという内容になっています)読み取れます。

『また、2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現するというコミットメントについては、変更する考えはありません。』

ぽかーん。

『何といっても、日本銀行が、2%の「物価安定の目標」の早期実現にコミットすることで、人々のデフレマインドを転換し、予想物価上昇率を引き上げるということが、デフレ脱却という目的そのものであると同時に、「量的・質的金融緩和」の政策効果の起点でもあるわけです。実際、そのもとで、企業や家計の物価観等は大きく変化をしてきています。』

数字は行っていないし達成は遅れるけれども数字の早期実現のコミットメントは変わらんということで、実績は実績でコミットはコミットとかずいぶんとお気楽なコミットメントですなあ(笑)と存じます次第。

『もとより、実際の物価が様々な要因で変化し得ること、特に、例えば、原油価格が昨年の夏から半年くらいの間に5割以上下落するといった、国際商品市況の大きな変化で「物価安定の目標」からかい離する期間が生じるということは、各国の中央銀行でも当然のこととされています。』

物価はマネーの量で決まって他国ガーというのは関係ないしそういう言い訳をしてはいけないという置物副総裁の見解をお伺いしたい。

『現状、物価の基調は着実に高まってきていることから、原油価格の影響が剥落するに従って2%を実現していくとみており、「2年程度の期間を念頭にできるだけ早期に」というコミットメントに沿った動きになっていると考えています。』

ということでして、つまり「原油が戻ると物価が上がるのでお待ちください」という足元で検証が出来ない説明を持ってきているのが最強の屁理屈城であると言える訳ですな。

つまり、「大体からしてコアコアとか東大物価指数みたいなのが弱い訳で原油が戻っても物価があがらないんじゃネーノ」というツッコミやら、「原油が戻ってその分で物価が戻ったとしても、昨年の動きに見られたように名目物価が上昇することによって実質賃金に悪影響を与えた結果消費が再度落ち込んで景気回復のメカニズム自体がコケるんじゃネーノ」というツッコミをしようとしましても、ツッコミ入れる方だって100%の確信持って言える訳ではないのですから、結局の所結果が出てくるまでは「戻るのだから戻るのです」という説明で押し通せるというのが難攻不落の日銀企画屁理屈城のオソロシスな所ではございます。


・・・・・・とまあそういうことでして、「QQEの効果で物価の基調が強まっている」「そしてここもと物価の基調は更に強まっている筈」「したがって原油価格下落の影響の裏が出てくる時期には物価は上昇傾向を強める筈」という理屈を繰り出してきまして、「そのように効果は出ているのだから2年で2%のコミットメントに違背している訳ではない、単に原油価格が攪乱しているだけなのでコミットメントに変化はない」というようなロジックで以下延々と質疑というか何というかが展開されておりますが少々鑑賞してみましょう。


・今回の質疑応答の中で一番イイシツモンダナーと思ったのはこいつ

幹事社の次に質問した人だった希ガス。

『(問) 物価に関して2点お伺いできればと思います。1点目ですけれども、今回、やや後ずれということなのですが、先程の総裁のご説明だと、物価の基調は特に大きく変わっていないとのことです。』

ですなあ。

『今回の展望レポートの前提になっている原油価格をみても、前回出された時と想定は大きく変わっていません。しかも足許の原油価格をみると、ブレントなども特にそうですけれども、上がり気味になっています。ということは、原油価格の想定はあまり変わっていないのに、見通しだけ後ずれし、でも基調は変わっていないことになります。なぜ後ずれしたのか、ちょっと分かりにくいので、そこをブレークダウンして教えて頂ければと思います。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『その「前半頃」というのもかなり幅を持った見方ではあると思うのですが、これは普通に考えれば、9月ぐらいまで、その前後、というようにも読めると思うのですが、どうみていらっしゃるのでしょうか。』

『2点目ですが、これまで総裁のご発言の中では、今年の秋以降に物価の上昇がかなり加速していくと、「かなり」という言葉もつけて、おっしゃっていたかと思うのですが、今回、全体が若干後ずれするということは、物価がもう1回上がってくる、秋頃かなり加速するとおっしゃっていたのも、後にずれるというイメージでよろしいのでしょうか。』

ということで屁理屈を鑑賞。

『(答) まず、1点目のご質問ですが、確かに原油価格の前提については、実際の価格は前提とほぼ変わらない動きをしています。55ドルぐらいから2016年度末にかけて70ドルぐらいに緩やかに上昇していくだろうという前提に、概ね沿った動きになっています。その一方で、物価の見通しが若干下方修正されて、2%程度に達する時期が少し後ずれしたということの背景には、各委員毎に、それぞれ色々なお考えがあろうと思いますが、個人消費の一部で改善の動きに若干鈍さがみられ、需給ギャップの改善がやや後ずれしているのではないか、というようなことを指摘する声も聞かれましたので、そういったことを反映して、おそらく物価について若干ですが、やや下方修正になったのではないかとみています。』

おいこらさっきその説明なかったぞ(ちなみに展望レポート基本的見解でもその辺は微妙にぼかしている)という所ですが、そういう状況で基調が強いis何?という気がしますし、そもそも論として消費の改善が遅れている背景に消費増税を含む名目物価の上昇があるのであれば、年度後半にかけて物価が上昇した日には同じことが起きて消費が落ち込んで景気回復のメカニズム自体が頓挫しねえかと小一時間問い詰めたい。

『物価上昇率については当面0%程度であろうと思いますが、年度後半には物価上昇率は加速していくとみています。そういう意味では従来申し上げてきたことと、物価上昇率が上昇を始める時期については、変わっていません。と申しますのは、原油価格下落の影響が当面むしろ大きくなっていくわけですが、年度後半から、原油価格下落の下押し圧力が小さくなっていくことが見込まれており、そういう意味では、今年度の後半にかけて物価上昇率が再び上昇していくとみている点では変わりはありません。』

ということで、まあ物価がどこかで上がりださないと他の言い訳を見つけないとロジックが盛大に崩壊するという大変に素敵な事態になるのですが、この場合は景気の方はたぶん持ってしまうので(アタクシ的には物価が再上昇して景気がコケる方がリスクだと思うのだ)、何だかんだと言っててきとうな言い訳をひねり出してきて「景気が良いのだからいいじゃないかにんげんだもの」という作戦に出る可能性もあったりすると思う。


・相変わらず出口は検討していないという説明なのだがもっと言い方はないのか

『(問) 今回の展望レポートでは、物価について、2016年度、2017年度と2年連続で目標とする2%程度で推移するとの数字を示しました。見通しの上では、2017年度までのどこかの段階で「量的・質的金融緩和」からの出口に入っていてもおかしくないような数字だと思うのですが、本日の会合ではこうした点について議論があったのか、またそういうことに触れられる委員はいらしたのか、可能な範囲で教えて下さい。その関連で、2年連続で物価が2%程度で推移する状況とは、2%が安定的に持続している状態と理解してよいのか、この点について教えて下さい。』

きわめて順当な質問。

『(答) 今ご指摘のような出口についての議論があったかと言われますと、そういう議論はありませんでした。今回の政策委員会での議論は、次回の決定会合以降に議事要旨が公表されますので、それをご覧頂きたいと思います。』

木内さんェ・・・・・・・・・

『2点目は、様々な指標や経済・物価の動きをみて総合的に判断することだと思いますが、確かに2016年度、2017年度にかけて2%程度の物価上昇になる見込みであることは非常に好ましいと思います。何度も申し上げてきた通り、現在の「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続することになっており、その判断はその時点までの物価上昇率の実績だけではなく、予想物価上昇率の動向やその先の経済・物価見通しがどうなっていくか等々を見極める必要があります。その上で、2%の「物価安定の目標」を安定的に持続するような政策運営を具体的に検討することになると思いますので、今の時点の見通しで出口の時期を特定できるものではないと思います。』

別に出口の時期を特定しろという質問をしている訳ではないのだが話をすり替えて説明していますね!!!!!

『いずれにしても、現在は2%の「物価安定の目標」に向けて最大限の努力を払っている最中であり、出口のあり方や出口の時期について議論するのはやはり時期尚早であろうと思います。』

時期はともかくあり方については考えるだろ、というか「異例の規模となる強力な金融政策」という政策を実行するのに最終形と最後の風呂敷の畳み方について考えない政策とか無責任にも程があるだろおいこらという所で。


・後ずれさせているのに追加緩和しないのはコミュニケーション的にダメなのでは?という質問だが

これは質問のやり方がうまくないとしか言いようがない。

『(問) 本日、株価がかなり下がっています。2年で2%という目標を掲げ続けているにもかかわらず、物価が2%となる見通しを後ずれさせて、追加緩和という行動を採らないことが、もしかすると、マーケットとのコミュニケーションを上手くいかなくしているのではないか、2年で2%を掲げ続ける副作用のようなものが見え始めているのではないかという気もするのですが、この点についてのお考えは如何でしょうか。』

これ2年で2%の副作用とか言い出すから訳分からなくなるのであって、もっと単純に「2年で2%達成にコミットしているのに目標達成時期が遅れる中で追加緩和をしないから株価が下がるような形でマーケットとのミスコミュニケーションが起きてませんか」と聞いた方が良いと思う。

『(答) 私どもはそのようなことは全く考えていません。』

ちなみに今回の総裁会見では「質問」→「開口一番に全否定」というのが4回もあります。

『「量的・質的金融緩和」が所期の効果を上げていることは、従来から縷々申し上げている通りです。先程も申し上げたところです。株価の日々の動きについてコメントはしませんが、色々な報道でも、日本銀行の決定が本日の株価に大きな影響を与えたという報道はなかったと思います。』

ほうほうそうですか。

『ただ、いずれにせよ、株価の日々の動きについて申し上げるのは差し控えたいと思っていますが、その意味で、市場とのコミュニケーションについて何か問題が生じているとは思っていません。』

これは酷い。

『日本銀行として、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するという強いコミットメントを持って金融政策を遂行してきましたし、今後とも遂行していくつもりです。他方で、物価の実際の動きは色々な要因で影響されますが、中でもこれほど大幅な原油価格の下落は誰も予想していなかったわけであり、しかも下落自体は経済にとってはプラスになり、中長期的には物価の押し上げ要因として効いてくるはずですので、足許で物価上昇率が0%になり、当面0%程度で推移することはありますが、これが物価安定の目標の達成に向けた日本銀行の強いコミットメントと矛盾するものではないと考えています。』

ということでさっきから展開されている屁理屈の説明をしております。


・実際にそんなに物価は強いのでしょうかという質問について

でまあその後も延々と後ずれの質問が出て上記のような日銀企画屁理屈城に籠城した回答が返ってくるという流れが続くのでめんどいからその辺は割愛しまして。

『(問) 先程、2年程度でできるだけ早期に達成するコミットメントの重要性を説かれていましたが、総裁のお考えとして、できるだけ早く2年程度で達成するというコミットメントを持ち続けることが重要であって、2%に届くタイミングというのはそれほど重要でないとお考えになっているのかどうか、その点について1つお伺いします。』

これも良い質問(^^)。

『もう1つは、最近の物価指標をみると、物価の基調が改善しているようにはみえないです。確かに賃金とか、雇用、労働市場は、タイト化していますが、実際に物価を表す指標は改善がみられない中で、物価の基調がよくなっているというのは、少し苦しい面もあるのかなと感じるのですが、その点如何でしょうか。』

ですなあ。

『(答) 最初の点については、先程来申し上げている通り、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を達成するというコミットメントは、極めて重要であると思っています。』

で?

『他方、具体的な物価の動きは、色々な要因によって影響されます。その影響が物価の基調を変えるようなものであれば、それは金融政策の調整が必要になると思いますが、今の状況をみますと、昨年の「量的・質的金融緩和」の拡大によって、懸念されたデフレマインドからの転換が遅れる惧れは一応払拭されて、中長期的な予想物価上昇率は、概ね維持されています。』

『そうしたもとで、需給ギャップも着実に縮小してきていますし、2015年度、2016年度と、潜在成長率を相当上回る経済成長が続く見通しであり、需給ギャップがさらに縮んで、プラスになっていくように見込まれます。先程申し上げた2年続きのベースアップを含めて、賃金の上昇が続いていること等々、物価の基調は着実に高まってきているということは言えると思います。』

またこれか。

『そういう意味で、生鮮食品を除く消費者物価の対前年同月比が足許ゼロになっており、当面その近傍で推移するといったこと等、足許の物価が原油価格の大幅な下落等の影響を受けて、低迷していることは事実なのですが、その背後にある需給ギャップ、予想物価上昇率、さらには賃金あるいは企業の価格設定行動等々、物価の基調を決定する要因をみるに、引き続き改善していますし、さらに改善していくという見込みにあるということは言えると思っています。』

何という説明、と思ったらちょっと後に更にツッコミが。

『(問) 前回も聞いていますし、他の方々も何人も聞いていますが、あえて伺うと、やはりCPIのコアコアが非常に弱いのは、前回、それはエネルギー価格の下落も影響するのだというご説明をして下さったのですが、それでは説明しきれないほど弱いのでないかと私は思うので、あえてもう一度お伺いします。』

『(答) コアコアが弱いのではないかというのは、確かに米国などと比べると弱いわけですが、先程申し上げたように、エネルギー価格の下落が輸送費その他を通じて、コアコアの指標にも影響を与えていることは事実です。同様な状況は、実は欧州でも出ており、あちらでもエネルギー価格等を除いた指標でみても、やはり下がっており、それは彼らもエネルギー価格の下落の影響が交通費その他、輸送費その他を通じてそちらに影響している面もかなりあるということを指摘しています。』

ちょwwww欧州と同じって不味いだろと思ったらさすがにこれは同じ人(だと思った)がツッコミを。

『(問) だからこそ欧州はデフレだと言われているわけで、もし欧州と同じだと言ってしまったら、日本はデフレなのだということになってしまうのではないでしょうか。』

(・∀・)ニヤニヤ

『(答) それは全く違います。欧州の場合は、従来は物価上昇率がマイナスでなかったわけです。そうした中で、最近になって──ここ数か月ですが──、特に、原油価格が下落して以降、マイナスに転じています。』

それだからデフレ懸念があって追加緩和を矢継ぎ早に行っているのではないでしょうか。

『日本の場合は、2013年まで平均を取るとマイナスということで、15年続きのデフレにありました。そうしたところから、プラスに転化してきていたわけですが、足許では、米国や欧州と同じく石油価格の影響によって物価上昇率が下がってきて、足許でコアでゼロ、コアコアではまだプラスではありますが、そういう状況になっているということです。』

などと意味不明な供述を繰り返しており・・・・・・・・・・

『従って、米国、欧州、日本とそれぞれに状況は少しずつ違いますが、それぞれにヘッドライン・インフレーションの率が下がってきて、そしてコアというか、コアコアというか、いわゆるエネルギー価格を除くものであっても、やはり下がってきているということには変わりはないと思います。』

もうなんか無茶苦茶ですが、要するにまともに答えるとマズーな結果になるから答えないという事ですな。


・オペの限界は当然認めないのですけれども・・・・・・・・・

『(問) 本日の見通しに沿うと、2016年度に入ってからも大規模な緩和を続ける可能性が高いかと思いますが、市場では2016年度に入ると国債の買入れが難しくなるのではないか、札割れが出るのではないかという懸念も高まっています。総裁はかねて、買入れには問題ないとおっしゃっていますが、2016年度以降を見渡しても国債の買入れには何ら問題ないというお考えなのか、また、本日の政策決定会合で他の委員からその点について懸念はなかったのか、お伺いします。』

まあその前に札割れとかになりそうですけどね。

『(答) 2016年度といいますか、むしろこれからの金融政策につきましては、今日の決定会合での決定とその公表文に示されていますし、また従来申し上げている通りであり、2%の「物価安定の目標」を達成し、それを安定的に持続できるようになるまで、現在の「量的・質的金融緩和」は継続すると申し上げています。そうしたもとで、2016年度にどうなるかを今から何か申し上げるのは適切でないと思いますので、それを前提に云々することも適切でないと思いますが、国債買入れについて何か現在問題が生じているとか、あるいは今後ご指摘のような問題が生ずるとは考えていません。』

これは酷いというか。いやまあオペの限界があるとは言えないのは分かるのですけれども、物価が2%に達する時期が16年度前半であって、そこから時間をかけて2%を安定維持するパスに乗るという見通しだったら16年度に入ってもQQE継続となるだろ何言ってるんだこのオッサンはという感じで、まあ今回の質疑応答は全般的に「質問に正面から答えない」「ひたすら展望レポート基本的見解の堅牢な屁理屈を繰り返す」という内容になっていまして、まあそういう意味では(まともに答えないという確信犯で対処しているから)今回の総裁の説明って説明にはなっていないのですが余裕はある感じ(そらまあ説明しないんだから楽だわな)という所ではございましたとさ。

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2015/04/24

○何か国会で面白い問答が行われた居たようなので過去の素敵な質疑応答をご紹介してみましょう

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150423a.htm/
【概要説明】
通貨及び金融の調節に関する報告書
参議院財政金融委員会における概要説明
日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年4月23日

ということで昨日は参議院の財金で黒田総裁と置物師匠が呼ばれてああでもないこうでもないとやっていたようですが、オモシロヘッドラインが流れておりまして、ついでに質疑応答もかなりのオモシロプレイだったようですので後日会議録のアップを楽しみにしたい訳ですがとりあえずロイター記事から。

http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0NE0BY20150423
物価2%達成の遅れは原油安、説明責任果たしている=岩田日銀副総裁
2015年 04月 23日 13:41 JST

『[東京 23日 ロイター] - 岩田規久男日銀副総裁は23日午前の参議院財政金融委員会で、量的・質的金融緩和(QQE)は労働市場を中心に実体経済に好影響を及ぼしており、現行政策の継続によって物価2%目標への基調は維持できるとの考えを示した。また、就任前に目標が達成できなければ辞任すると表明したことに関して、現在の物価低迷は想定できなかった原油価格の急落が要因だとし、「説明責任は果たしている」と語った。』(上記URLより)

参議院ホームページ
http://www.sangiin.go.jp/

こちらの真ん中あたりにある「参議院審議中継」というのをクリックしてカレンダーの昨日の日付をクリックして財政金融委員会を選択すると録画が見れる(IEだとアドビのフラッシュプレーヤーが必要です)のでまあ超お暇なら鑑賞ありたい訳ですが、質問者は「私たちが辞任しろといっていた訳ではなくてもともと岩田副総裁自らが言ってたのにどういうことですか」と素敵なツッコミをしておりましたし、そもそも論として「リーマンショックガー的な言い訳は許さん」というのが置物リフレ理論の決意であり、さらに言えば「安価な輸入品との競合ガー」という話に対して「個別物価の話と一般物価は別(キリッ)」としていたのが置物リフレ理論の真髄だった筈なのですが、どうも日銀に入ってすっかりお頭の方がお花畑のハッピーモードなのか過去の主張がなかったかのような「説明責任」とはヘソが茶を沸かしますな。


なお黒田総裁の答弁ですが、

http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0NE0AD20150423
金融政策は円安あてにせず、原油安が期待に影響すれば対応=日銀総裁
2015年 04月 23日 12:38 JST

こちらの記事ではあまりその辺の話が無いのですが、2%の達成時期について2016年度の頭みたいな話が出ていて達成時期どうなっているのよ的な答弁があったり、詳細未確認ですが「物価以外達成している」というような斬新にも程がある答弁があった(いやあの目標達成しなかったからと言って後付で勝手に目標変えて達成とか詐欺師かよと小一時間)りとか、中々素敵な質疑応答が展開されていたようなので後日の会議録を楽しみに。

#しかし「物価の基調が強くて足元は原油によるもの」+「物価以外達成」を組み合わせるとQQEはもう目的を達成しているのだから出口政策をはじめないといけないという理屈になるはずなんですけどねえ(棒読み)


・・・・・・・・というのはマクラでして(^^)

国会会議録検索システム
http://kokkai.ndl.go.jp/

こちらから2月26日の参議院財政金融委員会の会議録を鑑賞する訳です。

[001/001] 189 - 参 - 財政金融委員会 - 2号 平成27年02月26日

さっきのURL先から「簡易検索」→「開会日付と院名と会議名を選択」→「検索」とやると当該会議が出てくると思います。

でまあ他の質疑応答も面白いのですが、毎度おなじみ大門実紀史委員の金融政策に関するツッコミが実に見ごたえがあるので国会ネタついでに鑑賞しませう。

以下引用は平成27年02月26日参議院財政金融委員会会議録からとなります。発言番号の94番以降が該当箇所になります。

『○大門実紀史君 大門でございます。

 私は、もう一貫して日銀の異次元緩和は間違いだと。だから、今までは良かったじゃなくて、最初から良くなかったと思っておりますし、良かったと思う分のツケは必ず来ると、そういう政策だと思っております。

 後々、先ほど出口戦略もありましたけれども、大変な事態になるということの懸念を示してきたわけでありますけれども、今日はその議論の前に、ちょっと本題に入る前に、この日銀報告と国会質疑との関係について疑問に思うことがありますので先にただしておきたいと思うんですけれども。』

ということで始まるのだ。

『 前回の参議院の財政金融委員会の日銀質疑というのが十月の二十八日でございました。その三日後に、先ほどから議論になっております追加の金融緩和を発表されたわけですね。二十八日で、三十一日に発表されたわけであります。あのときの審議は私も参加しましたので覚えておりますけれども、その審議の中身、答弁と三日後の発表された中身が余りにも乖離があると、あのときの日銀の審議は何だったのかと、国会の審議って何なのかということを、三日後ということもありましたから大変驚いたわけでありますので、その点ちょっとただしておきたいと思うんですけれども。』

(・∀・)!!!

『  議事録に基づいて言いますけれども、二十八日のこの委員会で、例えば民主党の大久保さんに対する答弁などでは、総裁はこうおっしゃっているんですね。要するに、この量的緩和は所期の効果を発揮している、日本経済は二%の物価安定の目標の実現に向けた道筋を順調にたどっております云々とありまして、今後も継続していきますと。ただし、仮に何らかのリスク要因によってこうした見通しに下振れ、変化が生じたら、必要になればちゅうちょなく調整を行っていく方針ですということは加えられておりますけれども、二十八日時点の国会答弁としての現状認識としては、道筋を順調にたどっておりますと、二%に対してですね。』

『 ならば、なぜその三日後にあんな大胆な追加緩和策を出されたのか、ちょっと説明をしてほしいんですけれども。』

(;∀;)イイシテキダナー

つーことで以下質疑応答が続きます。最初途中まで引用しようと思いましたが結局大門委員のパートを全部以下引用します。って手抜き引用企画とか突っ込まないように(^^)。

『○参考人(黒田東彦君) 御指摘の量的・質的金融緩和の拡大、これは昨年の十月三十一日の金融政策決定会合においてその実施を決定したものでありますけれども、この会合におきましては、それまでに入手した金融経済情勢についての情報を総点検いたしまして、二〇一六年度までの経済、物価の見通しを展望レポートとして取りまとめたわけでございます。

 そうした経済、物価の現状及び見通しを基にしまして、金融政策運営について政策委員会で委員の間でかなり掘り下げた議論をいたしまして、先ほど申し上げたような量的・質的金融緩和の拡大を決定したわけでございます。』


『○大門実紀史君 総裁、それはおかしいんじゃないですか。

 議論したのは、むしろ総裁が提案されたことに反対の人が多かったから議論になったわけで、総裁はこの国会で、この委員会で自分の考えを述べておられないんですよね。決定会合で述べて反対が多くて、おっしゃったように、いろんな議論になったというのは承知しておりますけれども。

 だから、僅か三日で総裁の認識変わるとは到底思えませんから、二十八日にここに出られたときに、やっぱり追加緩和の必要性があると。もちろん、何やるかということは、さすが国会でもそういうことを求めませんし、言えないと思いますよね。しかし、国会ですから、遊びでやっているわけじゃありませんので、わざわざ来てもらっているわけだから、現状認識ぐらいきちっとおっしゃるべきじゃなかったのかと思うんですよね。

 今言ったことは後の話でしょう。思っていらっしゃったことを、決定会合で総裁が提案された現状認識をなぜここでは一切言われなくて、順調に推移しておりますということになったんですかということを聞いているんです。簡潔にお願いします。』

これは!!!

『○参考人(黒田東彦君) この点は、実は合議制で金融政策を決定しております、日本だけでなくて米国や欧州もそうでございますけれども。

 あくまでも政策委員会の議長としての役割としては、政策委員会で経済の見方を議論し、政策を決め、そしてそれを公表しているわけでございます。日本の場合は、年に十四回政策決定会合をやっております。そういう中で、その間でいろいろな議論に参加する場合に、やはり個人的な意見をいろいろ申し上げるのは適切でないと思います。と申しますのは、やはりあくまでも政策決定は政策委員会で行われます。それも合議制で行って、多数決で決めるということでございます。したがいまして、政策委員会の議論を先取りして何か申し上げるということはやはり適切でないと思います。

 なお、十月三十一日の政策委員会での議事の概要は公表されておりますけれども、委員も指摘されたとおり、議論の中でいろんな意見が出、そしてその中でああいった拡大ということが、これももちろん多数決ですけれども、決まったということでございます。』

ふーん(ニヤニヤ)。

『○大門実紀史君 大事なことなので、国会審議に関わりますので、同じことを繰り返さないでほしいんですよね。

 手段として何をやるかと、何兆円やるかなんということをここで言えないのは分かります、幾ら国会審議でも。そんなことを求めているわけではございません。情勢認識として日銀がやっていらした枠の金融緩和策が順調にいっておりますと、だったら追加する必要ないんですよ。このまま進めればいいと。このまま進めますという答弁もおっしゃっているわけですね。

 もっと言えば、その前の記者会見、十月のをずっと見ますと、ずっと追加の緩和の必要性はありませんというようなことまで記者会見でおっしゃって、国会では慎重におっしゃっていますけれども、少なくとも追加があるなんて誰も思わないような、うまくいっている、推移していますという答弁をされている。』

(・∀・)さすが大門先生。

『  この現状認識について申し上げているわけで、その中に難しい議論があるとか総裁が思ったとおりみんな賛成してくれなかったとか、そういうことを言っているんじゃないんです。総裁のお考えを聞くために呼んでいるわけだから、来てもらっているわけだから、総裁として、なかなかこのままいくと難しいものもあるかも分かりませんとか、それぐらい言われないと、国会でせっかく来てもらっても、何も言えない前提で来られているんだったらば、この日銀報告の質疑をやる意味が、ないとは申し上げませんけれど、相当、何のためにみんなこうやってやっているのかとなると思うんですよね。

 情勢認識ぐらいもう少しきちっと報告されるべきじゃないかと思うんですけれど、国会に対する対応のことを聞いているんです。いかがですか。』

国会軽視というのは厳しいツッコミどころですな。報告義務あるんですから。


『○参考人(黒田東彦君) 委員の御趣旨はよく分かります。

 私も十分努力してまいりたいと思いますけれども、何度も申し上げますが、現状認識といいましても、それが政策の変更を示唆するようなことを申し上げるというわけにはいきませんので、その点は是非御理解いただきたいというふうに思います。』

さすがに言い逃れが出来なくなって参りました。

『○大門実紀史君 なぜこれを申し上げますかというと、FRBのことを御存じですよね。バーナンキ・ショックと言われまして、バーナンキさんが量的緩和の第三弾のときの縮小のときに中途半端なことを言われたものだから、どうするのか分からないようなことを言われたものだから乱高下するというようなことがありましたですよね。それで、FRBは反省して市場との対話ということを非常に力を入れたわけですよね。

 それはサプライズを狙うとかそういうことではなくて、そうしないと、何といいますか、中央銀行が本当に大事なことを発信したときに信用してもらえないと。サプライズばっかり狙っている、私は、そもそもこのアベノミクス、量的緩和は最初からサプライズ狙いだなと、これは危ないなと思うんですよね。サプライズは、もうみんな慣れてくると驚かなくなりますから、更にサプライズを求められるようになっちゃいますよね。これがこの間の経過だと私は見ているんですけれども、そういうことをやっていくと、結局、日銀が一番重要なことを発信したときに、あのオオカミ少年じゃありませんけれども、市場もどこも耳を傾けてくれないというか信用しない、違うことを考えているんじゃないかと、こうなることがあるんですよね。』

共産党国会議員にサプライズ狙いの弊害や市場との対話を問われる中央銀行総裁とな!!

『  そういう点で、この国会に、当たり前のことなんですけれども、言えない部分はあるかも分かりませんけれども、少なくとも、大丈夫ですと言っておいて違うことをやるみたいな、手のひら返すような情勢認識の報告というのは、私は間違いだと思うんですよね、国会対応として。その点、もう一度ちょっと一言、反省していただきたいなと私は思っているんですけれど、いかがですか。』


『○参考人(黒田東彦君) 委員の御趣旨はよく分かります。

 ただ、また繰り返しになって申し訳ないんですが、合議制の委員会で金融政策が決定されるという形、しかも年に十四回やっているという形、そして毎回、公表文書で経済金融の見方、そして金融政策についてかなり詳細なステートメントを出していますので、その間にそれと違うことを申し上げるというのはかえって混乱を市場に招くおそれがあるということも御理解いただきたいと思います。

 ただ、委員の御意見はよく分かりました。』

委員のご意見は分かりました的なのが3回も出てくるとは中々の圧巻。

『○大門実紀史君 本題に入ろうと思うんですけれども、なかなか入れないんですけれども。

 私思うんですけれども、そうじゃないんじゃないかと。結局、黒田さんは、やっぱりサプライズ、やっぱりあれだけ市場が反応したというのは驚きましたよね。誰も追加緩和をやると思っていないときにやったものだから、慌てる、慌てふためいて急激な反応でしたよね。おかげで株高になったかも分かりませんけれど、円安になったかも分かりませんけれど。

 やっぱりそういうサプライズ効果を狙って国会でも黙っている、記者会見はもちろん黙っていると。決定会合でちょっと反対が出たのでちょっと驚かれたかも分からないけれども、元々サプライズ狙いだから、そういう経過で黙っておられたということではないんですか。それ以外考えられないんですけれど。』

(:∀:)イイシテキダナー

『○参考人(黒田東彦君) サプライズを狙って何かやるということは、中央銀行としてはございません。あくまでも、その時々の経済金融情勢を十分点検して、適切な政策を合議制で決めるということに尽きると思います。』

>サプライズを狙って何かやるということは、中央銀行としてはございません
>サプライズを狙って何かやるということは、中央銀行としてはございません
>サプライズを狙って何かやるということは、中央銀行としてはございません

という話を国会でしてしまった後にまたサプライズ政策対応をするというのはさすがに色々とマズーではあるというお話ではあるのですよね〜。思いっきり国会会議録に残ってしまいましたし。

『○大門実紀史君 もう時間がないので本題は次回に譲りますけれども、やっぱりFRBのあのときのバーナンキ・ショックのことを日銀はよく考えられた方がいいと思うんですよね。後々、先ほど申し上げましたけれども、本当に、サプライズ狙いじゃないと言ってもみんなサプライズだったわけだから、効果としてはサプライズ効果になったわけですよね。これは人々をやっぱり惑わせますし、いざ日銀が大事なことを言ったときに信用されないということを自らつくっておられるという点は重々肝に銘じられたらどうかと思うんですね、今後のことも含めて。

 今日はもう時間ないので、このことを指摘して質問を終わります。  以上です。』

ということで一連の質疑応答を引用するという引用手抜き企画恐縮至極ですが、ここで「サプライズはしません」と思いっきり言ってしまっているのは中々こう微妙なところでして、昨日の国会であの調子で答弁しているとさすがに来週の追加緩和というのは難しいでしょうなあとは思いますがどうでしょうかね。いやもちろん屁理屈のつけようは幾らでもありますし、どうせ追加緩和に追い込まれるのであれば早めに行った方がまだマシという考えであれば4月でも5月でも追加緩和すれば(その場合は国債買入ペースを10兆円拡大でしょ)とは思いますけど、経済物価情勢の説明がそうなっていないですからね。

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2015/04/21

○黒田総裁がなんかオモシロ講演をしていた件について

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2015/data/ko150420a1.pdf
What We Know and What We Do Not Know about Inflation Expectations
Luncheon Speech at the Economic Club of Minnesota

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150420a1.pdf
インフレ予想に対する我々の理解はどこまで進んだか?
Economic Club of Minnesotaにおける講演の邦訳

ということですので上の方が本チャンで下の方が邦訳です。

・最初から大きく出ていますな

最初の所から。

『本日は、日本からの良いニュースとして、日本銀行による「量的・質的金融緩和」(QQE)政策が所期の効果を発揮しており、日本経済はデフレの制圧に向けた道筋を順調にたどっているということをお知らせしたいと思います。』

あれ?2%物価目標達成じゃないの???なお英文。

『The good news from Japan is that quantitative and qualitative monetary easing (QQE) implemented by the Bank of Japan is having the intended effects and the economy is making steady progress on its way to conquering deflation.』

2%ゴールに向けて、ではないのか・・・・・・・・・・

『「量的・質的金融緩和」は、「物価安定の目標」を達成するとの強く明確なコミットメントと、それを裏打ちする大規模な金融緩和策により、低下してしまった家計や企業のインフレ予想を2%に再びアンカーすることを狙いとする政策です。世界金融危機の後、各国の中央銀行が様々な非伝統的金融政策を採用しましたが、その中でも、「量的・質的金融緩和」の設計は、革新的と言ってよいかと思います。日本銀行の「量的・質的金融緩和」によって、日本経済がデフレからの脱却を果たすことで、革新的な金融政策がデフレを克服することができるというリーディング・ケースを示したいと考えています。』

置物理論によると「世界標準の政策」だったと思うのですがいつの間に革新的な政策になっているのでしょうか(まあ海外では毎度そういっていますけど)?????大体からしてインフレ期待の低下懸念に対してQE実施ってFEDのQE2でも持ち出しているロジックだと思いますが。なお英文。

『QQE aims at affecting firms' and households' inflation expectations and re-anchoring them at 2 percent through the Bank's strong and clear commitment to achieving the price stability target and large-scale monetary easing to underpin the commitment.』

まあそもそもそれによって何でインフレ期待が上昇するのかのメカニズムが怪しげにも程があるのですが、後の方でそれらしい話はあるのでお楽しみに。

『In the aftermath of the global financial crisis, central banks around the world adopted a variety of non-traditional monetary policy measures. Yet, it could be said that even among these, the configuration of QQE is quite innovative. I hope that by succeeding in getting the economy out of deflation through QQE, the Bank can provide a case in point that it is possible to overcome deflation through innovative monetary policy.』

ということで「innovative」を連発している辺りにドヤ顔が浮かびますなあという所で。


・昨年の企画局謹製日銀レビューネタ再来とな

『2.インフレ予想を巡る3つの論点』の『(インフレ予想をどのように計測するか)』ですが、面倒なので日本語の引用でサラサラ流しますね。

『インフレ予想について考える時、まず思い浮かぶのは、どのように計測するのかという問題です。インフレ予想自体は、そもそも観察不可能なものですが、多くの関連指標を活用することは可能です。インフレ予想に関する指標は、大きくは2種類に分かれます。すなわち、マーケット指標とサーベイ指標です。』

ということで話の展開がここで読めてまいりますね!!

『マーケット指標は、市場参加者の集約された見方を示すものです。よく知られたものとして、物価連動国債の利回りから計算される、ブレーク・イーブン・インフレ率があります。こうしたマーケット指標は、高い頻度で観察可能なこともあり、有益な情報を提供してくれるものです。他方、サーベイ指標についても、独自の強みがあります。例えば、サーベイ指標では、個別の回答が分かるため、その分布の変化を時間を追って調べることができます。予想が大きく変化しているような時期には、金融政策の運営上、こうした情報は非常に重要になってきます。』

ということでサーベイ指標が使えるという話でして・・・・・・・・・

『この点に関連して、いわゆる「ボルカー・ディスインフレ」を思い出して頂ければと思います。グレゴリー・マンキューらは、インフレ予想を問うミシガン大学のサーベイに対する回答を分析したうえで、ボルカー・ディスインフレの間、それぞれの家計が、必ずしも一様に予想を変化させていた訳ではないと指摘しています。』

という小難しいマクラがありますが先に行きまして、

『新しい政策レジームが公表された1979 年以前は、同サーベイのインフレ予想の分布は、単峰型(釣鐘型)の形状でした。強力な金融引き締めが開始された後、インフレ予想の分布は全体に左方向にシフトしつつ、ばらつきが増していきました。つまり、インフレ予想についての回答者の見方が割れるようになったのです。当時の政策レジームの移行期間には、インフレ予想の分布は、一時的に双峰型(双コブ型)の形状を示したことも、マンキューらの研究では指摘されています。これは、政策のレジームの変化を信じる人々と信じない人々という2つのグループの異なる予想を反映したものと考えられています。その後、時間の経過とともに、インフレ予想の分布は、ボルカー議長による新たな政策レジームの導入以前と比べて最頻値が低下する格好で、新しい単峰型の形状に収束しました。』

昨年日銀企画局謹製で出てきたペーパー攻撃キタコレと反応するのが正しい日銀ヲチ道(ウォッチではない)の嗜みというものです(http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j01.htm/)。

『では、日本の過去2年間において、家計を対象としたサーベイ調査からどのようなことが分かるか、興味をお持ちになるかも知れません。日本の家計のサーベイ調査(「生活意識に関するアンケート調査」)の動きから分かったことは、過去2年間、回答者のインフレ予想のばらつきは、徐々に小さくなってきたということです。日本の家計は、むしろ、将来的に物価は毎年2%上昇するだろうという見方で一致する傾向が強まっています(図表1)。』

これがまた憎たらしい事にこちらの図表1と昨年のペーパーで示されている図表のスケールが違うのでイマイチ昨年ペーパーとの対比がしにくいというのが惜しいのですが、まあこの理屈って去年も同じこと言ってましたが実際の物価ってゼロ近傍ですよねどうしてでちゅかねえとは思うのですけどね。ちなみに本文図表1の脚注に昨年のペーパーが参考資料として名前出ていますので日銀ヲチ道に勤しんでなくても別に分かりますかそうですか。

・・・・・・まあそういうことで、置物大師匠が副総裁就任直後にドヤ顔で説明していたBEIの推移(なお置物師匠が指摘していたのは消費増税がモロに跳ねる旧物国のBEIを特に指摘していたという事案がありましたがhttp://jp.reuters.com/article/idJPL4N0ML1BN20140324)などはスルーの方向のようですが、恐らくまたBEIが拡大しだすと急にその話をしだすものと思われます。


・そもそも何でMB増やすとインフレ期待が高まるのかという話

『(インフレ予想の形成メカニズム)』という所ですがね。

『企業や家計は、様々な情報に基づいてインフレ予想を形成します。その中には、中央銀行が設定したインフレ目標のほか、現在や過去の実際のインフレ率などが含まれます。不思議にも思えることですが、インフレ予想がどのように形成されるのか、そのメカニズムについて、十分に研究されているとは言い難い状況です。金融政策を適切に立案していくためには、期待形成のメカニズムについてのより深い理解が必要です。』

より深い理解????????気合じゃなかったの????????

『興味深い話題をひとつ紹介したいと思います。ボストン連銀のジェフリー・ファーラーは、米国の時系列データを用いた最近の研究において、先行き4四半期のインフレ予想の変化のうち、およそ40%は、過去の実際のインフレ率の動きで説明できると述べています。ファーラーの研究と類似の誘導型の回帰分析を、日本のデータに適用すると、過去のインフレ率のインフレ予想の変化に対する説明力は、米国よりも高いという結果が得られやすいことが分かっています。』

ちょっと待てそもそもそのインフレ予想はどうやって出しているのだとか突っ込みたい部分はいくらでもあるが。

『日米間の対照的な結果は、米国において、インフレ予想が、よりしっかりとアンカーされている、すなわち、過去のインフレ率の影響を受けにくいということを示唆していると考えられます。』

『ファーラーの分析結果の示唆として、人々は、自らのインフレ予想を現実のインフレ率を観察しながらアップデートして行くということが言えます。』

ややこしい言い方してるが、要は日本のインフレ予想はバックワードルッキング的な要素が強いということだが、日本でもこの前(リーマンショック前な)の円安原油高局面で物価上がったけどな。あとそれからバックワードルッキングのインフレ予想に与える影響が大きいんだったら今すぐ追加緩和しないといけないんじゃないですかねえ。

『インフレ予想の動学特性をより良く理解するため、人々がどのようにインフレ予想を更新していくか調べる際、「ベイズの定理」や「ベイズ更新」の考え方を適用してみることが有用かもしれません。ベイジアンの方法論を用いれば、中央銀行が設定したインフレ目標――日本銀行や主要先進国の中央銀行が設定している2%がその好例です――が、人々の間で、どの程度、信認を得ているか、その信認の度合いを調べることができます。』

また大きく出たな。

『日本の経験に照らして申し上げると、「量的・質的金融緩和」の導入以来、様々な予想物価上昇率の指標が、実際の消費者物価(CPI)とともに上昇してきました。』

?????????そんなに上昇してるか????一般向けサーベイの物価数値とかもともと高くて、さっきの説明の図だと単に分散しているのが収束してきたようにしか見えない図になっているんだがどこの何が上がっているのか小一時間問い詰めたい。

『こうしたインフレ予想と実際のインフレの動きの背景で、典型的なベイズ更新が働いてきたと解釈することができます。』

働いてねえだろ。

『平たく言えば、日本銀行による前例の無い2%の「物価安定の目標」に対する強いコミットメントが、その初期の時期において、目標インフレ率に対する信認をある程度高めたということになります。』

前例のない強いコミットメント??????まあコミットしてるけど2年たったら反故になってるけどな!!!!!

『これをベイズ統計論の用語で言い換えますと、コミットメントが、長期的なインフレ率に関する「事前の信念(prior beliefs)」の形成に影響を与えたということになります。その後、実際のCPIインフレ率が持続的に上昇するもとで、人々の長期的なインフレ率に対する信念は、より強まりました。これは、「長期的なインフレ率は2%である」ということのもっともらしさ――尤度(likelihood)――が高いと認識されてきたことを意味します。尤度が高まるということは、すなわち、当初の認識と比べれば、日本銀行が2%のインフレ率を達成する確率が高まったと考えるようになったという意味で、人々が予想を変化させたということにほかなりません。ベイズ統計論の用語で言えば、こうした変化を「事後の信念(posterior beliefs)」が更新されたと表現します(図表2)。』

おいこら本当にそうなってると思ってるのかとしか申し上げようがありません。

『今述べたような、「事前の信念」、「尤度」、「事後の信念」という3者の間でのフィードバックは、ベイズ更新の基本的なメカニズムです。「量的・質的金融緩和」の波及経路に即して言えば、まず、強いコミットメントが2%の目標に対する人々の事前の信念を高め、その後、実際のインフレ率の上昇が観察されるにつれ、次第にインフレ予想も更新されていったということが言えます。』

2年で達成のコミットメントはすっかり反故になりましたし、実際の物価の方も足元絶賛前年比ゼロ水準に低下しているのにどこがどいうベイズ更新になっているのか小一時間問い詰めたい。

『このように、ベイズ更新のプロセスは、日本におけるインフレ予想と実際のインフレ率について、現実に起きていることをよく説明することができます。「量的・質的金融緩和」のメカニクスは、ある種の学習過程(learning-by-doing process)として解釈すると上手く理解することができると言ってもいいでしょう。今後、こうした方向性で、さらに研究が進んで行くことを期待したいと思います。』

ぽかーん。


ということですが、まあMB直線一気理論についても実質金利引き下げで投資が出る話についてもこちらではございませんが、一応その先に説明はある。


・MB直線一気理論の説明コーナー

『3.「量的・質的金融緩和」の理論と実践』というコーナー

何を実施した云々の所はうっとおしいので割愛しようと思ったが話の流れがつかみにくくなるので最初からここは引用しておこう。

『冒頭で述べたように、日本では、過去約20 年間にわたってデフレが続く中、デフレマインドが定着してしまいました。』

まあそもそもこれが本来的に言うデフレなのかというと微妙な気もするんですけどね、その間に景気サイクルだってあったんだし。まあそれはともかくとして。

『こうした状況を打開し、2%の「物価安定の目標」を実現するために、日本銀行は、「量的・質的金融緩和」政策の実行に踏み切りました。この政策は2本の柱から成り立っています。第一に、2%の「物価安定の目標」に対する明確なコミットメントです。すなわち、(a)2年程度の期間を念頭に置いて、消費者物価の前年比でみた2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する、さらに、(b)「物価安定の目標」を安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続するというものです。政策の第二の柱は、こうしたコミットメントを裏打ちする大規模な金融緩和です。』

『具体的には、日本銀行は巨額の国債買入れを行うことで、イールドカーブ全体の金利低下を促しています。実際、日本銀行による資産買入れの規模は、米国のLSAP(Large-scale asset purchases)と比べても、これを大きく凌駕するものです。米国のマネタリーベース対GDP比は20%程度になっていますが、日本では同比率は、既に約55%にまで達しています。』

『インフレ予想が上昇することに伴って、実質金利が一段と低下する余地が生じました。このことは、名目金利のゼロ制約は、中央銀行が金融政策を通じて実質金利に影響を及ぼすという能力にとって、乗り越えられない制約条件ではないということを意味しています。』

・・・・・・・・ということでここまで段落わけはしていますが割愛しないで引用しましたが、QQEを実施することによって何でインフレ予想が上昇するのかというメカニズムについては何も触れずに「コミットメントするからアプリオリにインフレ期待が上昇する」というある意味中央銀行全能論というか計画経済チックというかなお話にしかなっていないという所で、もう2年もやっているんだからもうちょっと説得力のあるルートでのインフレ期待が上昇する為の波及メカニズムをご提示いただきたいものですな(−−;

『このことは、名目金利のゼロ制約は、中央銀行が金融政策を通じて実質金利に影響を及ぼすという能力にとって、乗り越えられない制約条件ではないということを意味しています。』

いやそれはインフレ期待を上げるからそうなのであって、インフレ期待が上げられない中ではそういう話にならんだろとか思うのですが、この説明を真に受けたのか何だか知らんがどこぞのドラギさんは市場に徹底介入して市場金利を叩き潰して短期はマイナスのペナルティー金利を徴収してまでマイナスにするという無茶振りを始めてしまった訳で、迷惑理論にも程がある。

『低下した実質金利は、個人消費や設備投資など民間需要を刺激しています。さらに、こうした民間需要の増大は、マクロ的な需給ギャップの改善と、現実のインフレ率の高まりをもたらしました。』

円安と消費税のコストプッシュだったのではないでしょうか???つーか言うほど消費や投資出てるかよ??

『インフレ率の上昇を実際に経験した人々は、日本銀行が2%の物価安定目標を達成するだろうとの見込みについての確信度合いを高めました。』

飲んでた茶を返せ。

『「量的・質的金融緩和」政策の導入後の2年間、こうした前向きの好循環が働いてきたのです。』

どこの世界でしょうか??????


・おたかさんキターと思ったら日本語訳が調子に乗っているだけでした

でまあ最後の所ですけど『4.おわりに』のところから。

『最近の労働市場での動きは、20 年にわたる日本のデフレが終わりつつあることを示すひとつの証左です。「量的・質的金融緩和」によって、まさに「山が動く」瞬間を、我々は目撃しつつあります。』

おたかさんキターという所ですが、後にして思えばあの時が社会党の最後の光芒だったりした訳でして、どう見ても死亡フラグにしか思えませんが、英文はどうなっているのか興味津々で拝読。

『These recent labor market developments provide evidence that Japan's almost two decades of deflation are about to come to an end. QQE is starting to achieve what some may have thought impossible.』

QQEはデフレ脱却に向けた動きという不可能とも思われていたことを可能にするように動いてきています、ってな感じの英文で、まあややヒャッハー感があるような書き方ではあるのかも知れませんが、これは日本文の方が先にあるのでしたら英文作るサイドが翻訳に困った姿が目に浮かびますし、英文の方が先にあるのでしたらそこまでの文章も含めてこれ総裁講演日本語訳作る方が余りと言えばあまりの大本営発表状態で調子に乗り過ぎというか根拠レス空元気にも程があるのだが大丈夫かという風情ですな。

とまあそんなところで。もうちょっと英文日本文対比しようと思いましたが時間と量の関係で結局日本文のツッコミ主体になりましたとさ。

しかしまあ何ですな、さっきのベイズなんとかからしたら「2年という期間が原油要因という不可抗力があるとはいえ全然達成できていない」、「足元の物価指数も徐々に前年比ゼロになってきてしばらくはゼロ近傍で推移」というのであれば、どこからどう見てもインフレ期待のリアンカーに対してのマイナス要因というかベイズなんちゃらが回っていないという図になるのですから、だったら4月30日に追加緩和するというのがロジック的に正しいという話になるのですが、逆にこれで緩和しない(おそらく基調で突っ張って来るでしょうから)というのはロジックもう無茶苦茶としか言いようがないが、そもそも10月追加緩和の時点でロジックが崩壊しているので今更悪態ついても意味なし芳一ではありまする。

ま、お題でも書きましたが、上記ロジック展開する中での現状認識説明部分が全部「全て順調」という事になっているという大本営発表台湾沖航空戦大戦果状態になっているので、そもそも論としてさきほどのベイズなんとかがワークしていない、という現状認識になっていない時点で追加緩和無しという事なのでしょうけれどもなんだかねえという感じです。

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2015/04/16

○黒田総裁の毎度の挨拶は毎度の内容ですが・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150415a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150415a.pdf

まあどうでもよいのですけど『金融政策運営と経済・物価情勢』の所から。

『「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現に対する強く明確なコミットメントと、それを裏打ちする大規模な金融緩和によって、予想物価上昇率を引き上げるとともに、名目金利に低下圧力を加え、実質金利を低下させることを主な波及経路として想定しています。実質金利が低下すれば、民間需要が刺激され、経済全体の需給ギャップが縮小し、物価に上昇圧力がかかります。』

すいません2年たったら達成する筈なのですが今更「主な波及経路として想定しています」ので物価に上昇圧力がかかりますって掛かってないじゃん。

『わが国経済の動きをみると、「量的・質的金融緩和」は、所期の効果を発揮していると考えています。景気は、企業・家計の両部門で所得から支出への前向きな循環メカニズムが作用しており、緩やかな回復基調を続けています。』

実質賃金がマイナスを続けていて消費もぱっとしないのに「消費から支出への前向きな循環メカニズムが作用」とな。

『企業部門では、収益が過去最高水準となっており、設備投資も緩やかな増加基調にあります。家計部門では、雇用・所得環境の改善が続くもとで、個人消費は底堅く推移しており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も収束しつつあります。』

声明文や金融経済月報、今般のさくらレポートでも消費税引き上げの駆け込み反動の影響の話は削除されていましたので最後の文言を入れたのはミスじゃないですかねえ。

『物価面をみると、エネルギー価格下落の影響から、消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて0%程度まで低下していますが、物価の基調は着実に改善しています。』

ワロタ。

『需給ギャップは、概ね過去平均並みの0%程度まで改善しているほか、予想物価上昇率は全体として上昇しており、企業の賃金や価格設定行動にも変化がみられています。したがって、原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに上昇していくとの前提にたてば、消費者物価の前年比は、原油価格下落の影響が剥落するに伴って伸び率を高め、2015年度を中心とする期間に2%に達する可能性が高いとみています。』

この黒田東彦物価目標については虚偽は一切言わぬ・・・・・2015年度を中心とする期間に2%に達成する!・・・・・達成すると言っているが今はその期間の幅については指定していない・・・・・つまり我々がその気になれば達成時期は3年先でも5年先でも可能ということだ(AA略)

・・・・・・・・こうですかわかりません><;

しかし2015年度始まったばかりで既に2015年度を「中心とする期間」と言ってのける時点でもう次回の展望レポートでは基調で誤魔化すじゃなかった説明する気が満々なのが分かりますね!!!!!!

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2015/04/10

○今回の総裁会見はまさに暖簾に腕押し糠に釘でワロタがワロエナイ

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1504a.pdf

今回の会見、一応中継も聞いたには聞いたのですが、とにかく質問に対してまともに答えているのが殆ど無くて、延々と話の筋を外して回答をダラダラとして時間を稼ぐというかなーりタチの悪い内容になっておりまして、文字に落としたのを見ると再度その感を強くするという所です。

・とにかく一番酷いのは「賃金上昇に関するアセスメント」の質疑である

こんな質問がありましてね。

『(問) 先程、総裁が言及されたように、物価が基調的に上がっていくために、賃金がちゃんと上がっていくかどうかというのは、非常に大事なポイントだと思うのですが、それに絡んでお尋ねします。先般、厚労省が発表した毎月勤労統計の改訂では、2014年の所定内給与の伸びが、前年比0%からマイナス0.4%の減少と下方修正されました。昨年ベアが実施されたにもかかわらず、所定内給与が伸びないということが、何らかの形で、足許の消費──底堅いとおっしゃいましたけれども──の伸び悩みの原因になっているのではないかという見方はあろうかと思います。また一方で、今春闘のベアも今の状況ですと、去年よりは高いと言われながら、0.6%とか0.7%程度というような格好になっています。賃金の増加傾向が続いているとは言っても、日銀を含めて、一般的な見立て・想定よりはちょっと低い──ベアも低いだろうし、所定内給与も思ったほど伸びなかった──という状況です。こういう状況は、日銀の今のシナリオに結構大きく影響するのではないかと思うのですけれども、この辺りの見立てをお伺いできないでしょうか。』

という質問で「賃上げ進んでいるゆうとるが2%物価目標達成に足りるだけの賃上げかよ」というツッコミなのですが・・・・・・・・・・・

『(答) いくつかの論点があると思います。まず最初に毎勤統計の所定内給与の動きですが、これはご承知のように、統計を3年程遡って修正するという、やや異例の修正の仕方なのです。そういう形でレベル自体を修正してしまうので、伸び率のところに、やや大幅な変動が出てしまうのですが、実態は、レベルは変わっても伸び率がそんなに変わることはないはずです。従って、やや異例の統計の修正の仕方──これは前からやっておられるようですけれども ──によるところがあるので、実際の所定内給与の伸び率が大きく下がっているということではないと思います。』

でも実際問題としてサンプル入れ替えたら所得数値自体が下がっているのですから、実態はそんなに強くないという事を示しているんじゃないのでしょうかねえという所ですが、まずこういう説明を延々とする時点で糠に釘とする気満々。

『今春闘のベアは、まだ春闘が最終段階になっておりませんので分かりませんが、去年の0.4%弱からみると、これまでのところ0.7%程度で、倍までは行きませんが、去年をかなり上回るベアになっています。昨年のベアも約15年振りだったわけですが、それを上回る伸びになっており、しかも今年は中小企業・中堅企業までかなり広く及んでいるようです。』

だがそれでは足りないという質問をしているのだが。

『例えば賃金交渉に関する連合の途中集計を見ますと、大企業だけでなく、組合員数300人未満の企業でもベースアップを含めて昨年を上回る回答になっているようですし、また非正規労働者についても、これまでのところ、昨年を上回る賃上げの回答が出ているということですので、着実に雇用者所得は伸びている、あるいは今後さらに伸びていくと思います。』

だからそれで2%物価上昇に足りるのかよおいこら早く説明しろよ。

『一方、消費者物価の上昇率については、昨年4月に消費税率を3%引き上げたことの影響が概ね2%ぐらいあったわけで、消費税込みの消費者物価上昇率で割り引くと、実質雇用者所得がマイナスになる月もあったと思います。けれども、消費税の影響は、この4月から基本的になくなります。』

実質賃金の話にしようとしていますが・・・・・・・・

『先程申し上げたように、雇用者所得の伸びは比較的順調に続いており、しかも加速しているわけで、そうしたもとで、消費者物価のヘッドラインのインフレーション率は2%分が剥げ落ちますので、実質賃金あるいは実質雇用者所得は伸びがかなり高まると思っています。』

おいこら「かなり高まる」ってベアが0.7%程度でこれからお前らの見立てだと物価が上昇するんじゃねえのかよどこがどうかなり高まるんだよ説明しろよ。

『そうした意味で、今年の春闘、その先の企業収益、あるいは雇用情勢をみても、先行き基本的には順調に伸びていくのではないかと思っています。』

と、まあ見事に定性的な想定問答の話に持ち込んでいるのですが、最後にまた質問が飛んでいましてね。


『(問) 先程も、春闘について質問がありましたけれども、私はストレートにお答えになっていないような印象を持ちました。思ったより増えていないことについて、労働市場全体の話をされたり、去年より多いという言い方をされましたが、この水準で、CPIが2%に行くのかどうかを、どう判断するのかということだと思います。』

その通り。

『企業は、非常に低めの水準を出していて、最後の瞬間上げてきましたので、メディアに載った春闘結果は非常によく出たような印象は出ているし、確かに中小にも広がっているのは事実ですけれども、やはり先程の方の質問のように、連合が一次集計で去年よりも広い範囲で取った形でも0.7%前後で、確かそんな数字だったかと思いますが、1%に行っていない。多分、御行の中でも、あのトヨタでも1%ちょっとしかいっていないという分析をされていると思います。この数字からみたら、いくら原油の前年比効果が剥げていった場合でも、年度内とかに2%に行くというのは、常識的には考えにくいと、私は思います。極めて厳しく物価分析をされております調統局は、たくさんの人を使って分析していると思うんですけれども、果たして2%に行けるようなシナリオが書ける春闘だったのでしょうか。』

と、ここら辺りで質問を止めればよいのにこの記者はいちいち余計なことを付け加えるのが残念。

『私は、この春闘の結果を分析すれば、量的緩和をさらに追加、強化してもおかしくない内容だったと思うんですけれども、今それをされなかった。総裁は、事前には春闘でこれは非常に重要だと繰返しおっしゃられた。ある種、プレッシャーをかけられたんだけれども、私は、これは厳しく言えば失敗したと思うんですけれども、
如何でしょうか。』

最後が余計。

『(答) 私は、中央銀行として、春闘に圧力をかけるとか、そういうつもりも全くございませんし、そういう立場にもありません。失敗とか、どうこう言われる筋合いもないと言っていいと思います。』

まあそういうので余計な質問はせんでよろしい。

『その上で、物価の上昇率には、色々な要素が働くことは事実です。一次産品の価格も影響するし、為替も影響するし、それから需給ギャップ――それは、失業率、雇用の情勢で賃金を通じて影響するものもあるし、財・サービス自体の需給ギャップで価格に影響が出るものもあるし、色々な要素がある――も影響する。その上で、持続的に物価が上がっていくためには、賃金が持続的に上がっていくことが必要です。』

早くも質問の筋を外しにかかっております。

『それは中期的にみると、賃金の上昇がある時に物価が上昇し、物価が上昇する時に賃金も上がっているので、そういった意味では賃金の上昇が極めて重要であることは間違いないと思います。今回の春闘で、今のところ0.7%程度で、昨年の0.4%弱に比べると倍近いというところに来ているのは事実であり、これは物価の上昇にとっても、プラスに効いてくるであろうと思います。ただ、賃金が上がって、物価が上がるという要素はあるが、やはり需要が増えて、物価が上がりやすい状況になるということも極めて重要ですから、物価の上昇については様々な要因を分析してみていく必要があると思います。』

なんだよこの阿呆陀羅経みたいな説明。

『そういった意味で、需給ギャップが、私どもの推計では0%に近いところになっており、予想物価上昇率が、長い目でみれば上昇しています。そうしたもとで、春闘も昨年を上回る上昇になってきているといったことを踏まえると、足許でエネルギー価格の下落から、消費者物価上昇率が0%程度になって、当面その程度で続くと思うが、エネルギー価格の下落が剥落するとともに、今申し上げた基調的な需給ギャップの改善、長い目でみた予想物価上昇率の上昇といったことを踏まえると、おそらく今年の秋以降、物価上昇率はかなり加速していくだろうと思っています。』

だったら実質賃金との関係はどうなるんだよ前のほうでも質問の答えはどうしたよ。

『従って、本日の金融政策決定会合でも議論されたし、そのもとでの公表文にもある通り、2%の「物価安定の目標」実現を目指して、これが安定的に持続できるようになるまで「量的・質的金融緩和」を継続するという金融政策、調節方針を決定したところです。』


ということで、質問した方も言ってましたけど、あれだけ「春闘ガー」「賃上げガー」という話をしていたのに、実際の春闘ベアの数値が出てきて「ところでこの数値で2%物価安定目標達成に十分な数値なのでしょうか」という質問が来ると今度は「需給ギャップガー」とか「基調ガー」とか言い出して質問に対して正面から回答しないというこの暖簾に腕押し糠に釘状態で、これではオートリバースのカセットテープ相手に質問しているようなもんですわという所ですな。

・・・・・・まあしかし何ですな、他の質疑でもそうなのですが「物価上昇のメカニズム」とか「景気の前向き循環メカニズム」に関して質問を飛ばすと思いっきり斜め上の方から説明が始まって、延々とダラダラと説明した上に全然答えになっていない答えが返ってくるという仕様になっているのが先ほども申しあげたような今回の会見の特色。

ちょうど総裁会見生中継が始まったのが1年前で、あの時は物価も調子よく上昇していましたし、経済状況も(今にして思えば消費増税前の駆け込みとその前の財政で盛大に下駄をはいていただけだったのですが)好調ということで、総裁会見でも自信満々という感じでしたが、最近どんどん会見が劣化してきて、今回の惨状に至るということで、単純にこれって景気も物価も見通し通りに進行していないし、先行きの見通しにも自信が全然ないからそもそも説明ができないので、質問をはぐらかすしかない、という状況になっているだけだという事ですな、ナムナム。



・その他質疑ですとまずはインフレ期待低下リスクに関して

『(問) 物価と景気は改善基調にあるというお話でした。一方で、昨年10月に追加緩和した際には、経済・物価情勢は概ね今と近い状況かと思いますが、デフレマインドの転換が遅延するリスク、足許の物価上昇率が鈍化することでそういうリスクが起こり得る、それを未然に防ぐために手を打ったというロジックだったかと思います。今もちょうど、足許の物価が下がってきていますが、今の経済情勢では昨年10月に指摘されたロジックでのリスクはあまり大きくない、昨年10月よりも低い状況にあると理解して良いのでしょうか。』

『答) その通りだと思います。あの時は、消費税増税後の反動減の影響がやや長引いたり、夏場の天候不順その他もあって、消費が相当弱い状況で続いていたところに加えて、夏場から原油価格が大幅に下落し、毎月毎月、消費者物価の上昇率が低下していく状況にあったわけです。他の国と違って日本の場合は、いわば15年続いたデフレのもとでインフレ期待が0%近傍にアンカーされていたものを、2%程度に向けて徐々に引き上げていかなければならないという状況のもとで、そうしたことがあって、デフレからの転換が遅れる、あるいはそれまで起こっていたものが逆流する懸念があり得たので、10月31日の時点で、思い切った「量的・質的金融緩和」の拡大を決定しました。』

ちなみにこの質疑は割とまともに答えている方です。

『その後の状況をみますと、様々な予想物価上昇率の動きをみてもほぼ水準は維持されている―─ものによっては上昇しているものもありますが──ことからいいますと、昨年10月末に考えたようなリスクは今のところ解消されていると思います。』

この後に質問があるのですが、予想物価上昇率で上昇しているのは(その前に下がった後に足元で戻ったというだけで絶対水準は10年カレントで110bpとかの)BEIなんですけどね!!!!

『ただ、今後とも、需給ギャップや予想物価上昇率の動き、さらには賃金、企業の価格設定行動など、物価の基調は十分注視しモニターしていくつもりです。先程申し上げた通り、そうした物価の基調に変化が生じ、物価安定の目標の早期達成が難しくなるようなことがあれば、躊躇なく政策を調整するというスタンスに変わりありません。』


ということですので、これはつまり「追加緩和をする気はないですよウヘヘヘヘ」という話なのですが、この辺りを捕まえて「黒田日銀は追加緩和の時にはサプライズ狙いをするから今回はこうやって追加緩和期待をいったん抑えておいて闇討ち緩和を実施するからやっぱり30日に追加緩和待ったなし!!」という主張をする人が出てくるに1万ドラクマ。



・予想物価上昇率に関する我田引水説明&無駄な長広舌

『(問) 物価についてお尋ねします。冒頭、足許で物価は横這いであるが、物価の予想上昇率はやや長い目でみれば上昇しているというご説明がありました。この予想上昇率に関しては、ブレーク・イーブン・インフレ率や色々な指標があり、日本銀行としても調査されていると思います。どの辺りを特に重視されているか、また、昨年来、原油価格が下落する中で予想上昇率がどう推移してきたと認識されているか、お伺いします。』

どうせ聞くなら「ところでどの数字が上昇しているのでしょうか」と聞いた方が面白かったとは思いますが。

『(答) 予想物価上昇率を直接的にみることはできませんので、手法としては、ご指摘のあったブレーク・イーブン・インフレ率を計算する─―物価連動国債の金利と通常の国債の金利との差から、マーケットの人たちの予想物価上昇率を逆算する─―こともできますし、スワップレートから計算することもできます。市場の様々な指標から、市場関係者の予想物価上昇率を逆算でき、公表もされています。』

このあたりの説明が実際にはもっとクドクドとしていて、そんな説明はせんでもよろしという内容をのっけからダラダラと話をしている時点で煙に巻く気満々感を受けました。

『欧米でも、日本でも、原油価格の下落が始まり、結局5割くらい下落する過程でブレーク・イーブン・インフレ率等、市場の予想インフレ率が若干下がったことは事実ですが、このところまた上がってきています。』

何という図々しい説明。

『一方、もう少し幅広い調査指標としては、様々な人――家計、企業やエコノミスト等――を対象にアンケート調査をして――日銀短観も含めて――、予想物価上昇率をみる手法もあります。こうした指標をみると、昨年の夏場以降、特に中長期の予想物価上昇率は比較的維持されています。』

維持されているのは分かったがそれをもって何で「全体として上昇」になるのかと小一時間。

『ごく短期の予想は、もちろん足許で原油価格がどんどん下落すると影響されますが、その意味では、予想物価上昇率は、足許の物価下落にもかかわらずかなりしっかりしていますし、より長い目でみれば上昇していると思います。』

・・・・・(゚д゚)

『今後とも様々な指標をみて、予想物価上昇率を判断していく必要があると思いますし、物価の基調という意味では、先程申し上げたように、そうしたことも踏まえて賃金がどのように動くか、あるいは企業の価格設定行動がどのように変化していくかも重要だと思いますので、幅広くみていく必要があると思っています。その意味で幅広くみた限りでは、足許の消費者物価上昇率の下落にもかかわらず、物価の基調はこのところ変わっていない、むしろよりしっかりしてきている、最近の賃金等の状況をみてもしっかりしてきているとみています。』

インフレ期待の質問をしているのに最後は物価の基調の説明をしているとかもう何だかという所で、要は説明不能な件に関する質問の答えがこうなっているという事なのですが、見通しがドンドン外れて期待されたメカニズムが働いていない、という中でその説明不能部分が増えてしまっているというのが背景にある、というのは非常に良く理解できましたな、うははははは。

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2015/04/02

○入行式の総裁挨拶に妙な味わいがある件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/nyukou15.htm/
平成27年度入行式における黒田総裁挨拶

とまあそういう訳で黒田総裁の入行式挨拶な訳ですが、最後のまとめにご教訓っぽいのがあって・・・・・・・・・

『これから皆さんの長きにわたる社会人生活が始まります。色々なことがあると思いますが、是非、本日お話しした3つのことを念頭において、自分を律しながら、日本銀行を支える存在になれるように努力を続けて欲しいと思います。』

ふむふむ。

『中国の春秋時代、衛の国にきょ伯玉(注)という名高い重臣がいました。この人を評した言葉に「年五十にして四十九年の非を知る」また「六十にして六十化す」というものがあります。』

・・・・・( ゚д゚)

『50歳になって、それまでの49年間の誤りを知り、60歳になっても、60歳になっただけ変化した、という意味です。』

・・・・・(;゚д゚)

これは何ですか、ここの部分で吹いたりしそうになった新入行員を裏でチェーカーがチェックしてマークするための孔明の罠か何かですかねえと思ってしまう次第でして、いやまあこうやって公開された出来上がりのテキストを読みながら画面に向かって爆笑の発作を起こすのですとお気楽なもんですけれども、これクソ真面目な式典で聞かされたらその場で悶死する自信があるわ。

まあ70歳になってそれまでの誤りを知って置物化しておられる同僚に対して高度なDisりを入れるとかどんな自爆ギャグなのかと、ボケツッコミを忘れない日本銀行の芸人魂に感動しました。

『人間は、幾つになっても直すべきところはあり、より良くなっていかなければならない、ということを示唆しています。皆さんが、いつまでも変化し、成長し続けてくれることを期待しています。』

これはつまり「マネタリーベースを増やせば物価が上がり、物価が上がれば景気が良くなる。それはマネタリーベースを増やせばいいだけの話なので2年で2%が達成できます」という置物理論についても変化して成長する余地があるという事を意味しているのですね!!!!!!!!!


・・・・・・・・などと思っていた訳ですが、ここで昨年の入行式挨拶を確認しましょう。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/nyukou14.htm/
平成26年度入行式における黒田総裁挨拶

『三つ目は、社会人としての「自己管理力」を養って欲しい、ということです。』

ほほう。

『社会人として、「スケジュールを守る」ことは、基本中の基本です。』

ほー、基本中の基本ですかそうですか・・・・・・・・・・・・・

などというのがありますが、昨日はクイックさんの所のNQNニュースで思いっきり「『スケジュールを守る』が消えた今年の総裁あいさつ」とかいうようなヘッドラインで記事が掲載されておりまして(NQNでフィルターして昨日の昼位のを探してちょ)、もうクイックさんったらそんな昔の話を引っ張り出してネチネチとイヤミの記事を書くなんて意地と性格が悪いですねえ面白いからもっとやれという所でございます。

しかしまあ何ですな、昨年の入行式時点と言えば物価もいい感じで上昇してきていて、日銀の鼻息が一番荒くて、総裁やら日銀の情報発信やらでは「市場のBEIとかインフレ期待なんぞは反応が遅い」とか「エコノミストの物価見通しは低すぎたぜ日銀の見通し大当たりで大勝利」というような感じになっていた頃でありまして、だからこそ『社会人として、「スケジュールを守る」ことは、基本中の基本です。』とドヤ顔が炸裂したんでしょうなあと思うと感慨の深いものがありまして、そこと合わせて先ほどの『人間は、幾つになっても直すべきところはあり、より良くなっていかなければならない、ということを示唆しています。』というのを見ますと、これは遂に白旗降参を『いつまでも変化し、成長し続けてくれること』として誤魔化す気満々という事を示唆しているのではないか、などと穿った見方をしたくなってまいりますな、うんうん。

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