黒田東彦総裁
(2014年度下期)


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2015/03/25「外国特派員協会講演の続き」
2015/03/24「外国特派員協会での講演は説明が相当雑でクオリティが低い」
2015/03/20「定例記者会見続き:基本的に質問に対して質問の論点を外した答えが多い」
2015/03/19「3月定例会合会見は質疑が妙に長いがツッコミがイマイチかな(その1)」
2015/03/02「日本記者クラブでの講演は2%達成のやる気を示す&政府の梯子外しに暗に不満」
2015/02/20「2月定例会見は想定問答のオンパレードでした」
2015/02/03「国会での発言は追加緩和の可能性を更に遠ざける内容」
2015/01/28「MPM会見ではロジック整合性の説明がだいぶイカサマ」
2015/01/23「MPM会見ではインチキロジックを駆使するも2年で2%を聞かれてキレるの巻」
2014/12/26「経団連での「2%への招待状」講演は題名も内容もナメトンノカという大本営発表の厚顔無恥講演」
2014/12/25「12月MPM定例会見では原油価格下落と追加緩和を切り離すロジックで10月との整合性が皆無な件」
2014/12/04「名古屋講演での会見は精彩に欠けます」
2014/12/03「名古屋講演および決済関連の講演は内容が乏しいですな」
2014/11/21「総裁定例経験はいつもの意気軒昂さは全く見られない&質疑が全然噛み合わない」
2014/11/20「黒田総裁の定例記者会見は質疑が噛み合わない&想定問答確認が矢鱈多かった件(イントロ)」
2014/11/06「きさらぎ会での講演もかなり説明が苦しい」
2014/11/05「追加金融緩和の総裁会見は説明が説明になっていない件」
2014/10/14「総裁定例会見ネタ続き」
2014/10/10「NYエコノミッククラブでの講演はイカサマ説明の連発で日銀文学的には素晴らしい往生際の悪さ」
2014/10/09「総裁定例会見だが質問のレベルが低いのが残念無念」

2015/03/25

○黒田総裁講演ネタの続きである

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150320a1.pdf

・追加緩和に関する屁理屈は完全にこの流れですね

でまあ昨日の続きですが、QQEがこんな効果を出しましたという話が延々とある中で追加緩和に関する説明が何とも。

『さらに、こうしたデフレマインド転換のモメンタムは、原油価格の下落の影響によって、消費者物価上昇率が低下する中でも、維持されています。インフレ予想に関する指標のうち、ブレーク・イーブン・インフレ率などの市場指標は、欧米と同様にひと頃よりも低下していますが、エコノミストや家計などを対象とする各種のアンケート調査では、中長期の予想インフレ率は、上昇傾向が維持されています。これは、原油価格の下落がインフレ予想の低下を通じて、賃金交渉や価格設定行動などへ影響を及ぼすリスクに対して、昨年10 月に「量的・質的金融緩和」を拡大して予防的(preemptive)に対応したことが成果を発揮しているからだと考えています。』

・・・・・・・・・・結局「インフレ予想」について都合の良い数値を捕まえてきて下がっていないから効果という話なのですが、そもそもサーベイベースの数値は家計のとかはもとより高いでしょと思いますし、エコノミストと名がついている人が中長期予想をするときに足元の原油価格下落をそのまま中長期のインフレ予想に跳ねさせるアホウはおらんだろと思うのだが。

『このように、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、「理論の上でも、実践の上でも、しっかりとワークしている(QQE works both in theory and practice)」と言ってよいでしょう。』

ねえねえ理論って何の理論???置物MB直線一気理論はとっくの昔に棄却されてませんですか????

『この先も「量的・質的金融緩和」を着実に推進していくことで、2%の「物価安定の目標」を実現することができると考えています。』

理論的にワークしているんだったら2%物価目標の達成時期について「このくらいの規模の緩和が行われた時点で」というのは示せるんじゃないですかねえ(ゲス顔)。


・2%目標との関連では完全に「足元の物価は知らんがな、基調だよ基調」という説明に

でまあ経済物価情勢の説明パートになるんですけどそこでの物価の話がワロス。

『以上の経済情勢のもとで、経済のスラックを示す需給ギャップは、労働市場を中心に大幅に改善しており、概ね過去平均並みのゼロ%程度となっています。先行き、日本経済がゼロ%台前半ないし半ば程度と推計される潜在成長率を上回る成長を続けていくもとで、需給ギャップはさらに改善するとみられます。』

まあそもそもそんな低い潜在成長率をちょっと上回ったから需給ギャップが改善とか言われましても本来的に言えばそれって物価の振れが激しくなる要素じゃネーノという感じではありますが。

『加えて、先程述べたように、中長期のインフレ予想は上昇傾向を維持しています。物価の基調を規定する2つの要素である需給ギャップとインフレ予想が好転していますので、基調的な物価動向については改善していると考えられます。』

という説明になっておりますので・・・・・・・・・

『もっとも、実際の物価は、生鮮食品を除く消費者物価の前年比でみると、昨年夏以降、主として原油価格の大幅な下落から伸び率が鈍化し、今年の1月は消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースで+0.2%となりました(図表8)。先行き、エネルギー価格下落の影響からゼロ%程度となり、当面そうした状況が続く可能性があります。』

という事象が発生したとしても・・・・・・・

『しかし、基調的な物価上昇率は今後もしっかりと高まっていくと予想されますので、前年比でみた原油価格下落の影響(base effect)が剥落するにつれて、消費者物価上昇率は高まり、2%達成が見込めるようになります。』

とまあお馴染みの説明になっているのですが、10月の追加緩和時よりも物価が下がっていて、しかも2%達成時期に関して事実上の先送りのような説明をした上に政府の方からは更に早期達成についての要請が弱まっているという状態になったおり、そういう意味では10月に示した「姿勢」というものについてそのコミットメントがまた弱まっていると見なされてインフレ期待が下がるというリスクは無いんですかねえ(ニヤニヤ)。

『原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2015 年度を中心とする期間に2%に達すると考えています(前掲図表7)。』

ほうほうそれでそれで??

『その時期は、原油価格の動向によって多?前後する可能性はありますが、エネルギー価格の寄与に伴うものであることがはっきりしているのであれば、base effect がなくなることは容易に見通せるはずなので、市場参加者がそこに政策的な意味合いを見出すことはないと思います。』

いやー昨年の原油価格低下の時も「base effect がなくなることは容易に見通せるはずなので、市場参加者がそこに政策的な意味合いを見出すことはない」ということで騙し討ち追加緩和になったのですけれども、自分たちの騙し討ちプレイを差し置いて何を言ってるのでしょうか。

『もちろん、こうした物価の基調的な動き、とりわけインフレ予想の動向、に変化が生じ、「物価安定の目標」の早期実現のために必要になれば、躊躇なく調整を行う方針に変わりありません。』

でしたら原油価格が見通し通りに上がらなかったら追加緩和しろよと思うのですがねえ。


・原因と結果を逆に説明していたりする話

次の『4.成長戦略と金融政策』という所ですけどね。

『そのうえで強調したいのは、デフレから脱却すること自体が、日本経済の成長力の強化に資するということです。』

ほえ??

『成長力の源泉は、あくまでも民間企業の投資であり、イノベーションです。政府の成長戦略の役割は、企業がビジネスチャンスを十分に活かせるような環境を整備することです。デフレから脱却し、経済主体が2%の物価上昇を前提に行動するような経済・社会を実現することは、企業や家計の失われたアニマルスピリットを復活させることになります。そうなれば、リスクをとった積極的な投資が行われるようになり、各種のイノベーションも生じやすくなります。』

実質金利が低下すると自動的に消費や投資が活発化するという置物風が吹けば桶屋が儲かる理論によりますとそうなのかもしれませんが、そもそも論として2%物価上昇目標が安定的に達成できる時点では潜在成長率も上がっているべきものでしょうし、大体からしてその時点では企業の投資行動も活発化していないといかん筈の話で、これって「企業行動が活発化したら企業行動が活発化する」という同義反復の説明だろと。

成長期待が高まって企業活動が活発になって生産の拡大を伴って投資や消費が拡大するから物価が安定してプラスで推移できる環境になるという順序であって、足元までの流れっていうのは「コストプッシュで物価を強引に上げてみたものの、物価あげたら実質所得の低下から消費が落ち(消費税ガーという方々も多いのだが、消費税ガーの連中ってその前の駆け込み需要については金融緩和の効果で片付けるという非対称的な説明をするので信用ならん)、持続的な物価上昇というのはコストプッシュだけだと難しいんじゃないですかねという話だと思うのですよねえ。

#そういう意味では「これ以上の円安イラネ」という政府の方がリーズナブルなのだが今更何を言うという気も


・最後の部分の説明が微妙に弱気感を漂わせますな

『5.おわりに』の途中から。

『そのうえで、不幸にしてデフレに陥ったとしても、政策面でのイノベーションによって、そこから脱却することは可能だということです。日本銀行は、「量的・質的金融緩和」によってデフレからの脱却を果たすことで、リーディング・ケースを示したいと思います。』

あれ??デフレからの脱却だけでは足りないのでは?????

『一旦デフレに陥っても、そこから脱却する金融政策手段があることが明らかになれば、中央銀行が物価安定目標を実現する能力に対する人々の信認が高まり、インフレ予想がアンカーされる力を強めます。その結果、そもそも経済がデフレに落ち込むのを防ぐことに役立つのです。』

こういう問題が起きても対応するツールがあるから大丈夫!と思われるとそもそも問題が起きない、というのはその通りではあるので、この説明そのものはその通りではあるのですが・・・・・・・・

『その点で、日本銀行の「量的・質的金融緩和」が成功することは、日本経済だけでなく、世界の金融政策の歴史においても、重要な意味を持つと考えています。』

え???「必要な施策は全て投入した」って自信満々に言ってた訳で、「成功することは」じゃなくてそもそも失敗しないことが前提になっていた政策なんじゃないですか????漸進主義の政策なら効果見ながら微調整のしようはあるけど、こんな極端な政策やって「てきとうにやったら失敗しちゃいましたテペヘロ」で済むと思ってるの??????

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2015/03/24

○黒田総裁外国特派員協会での講演ネタ

こっちが本ちゃんですが・・・・・・
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2015/data/ko150320a1.pdf
Quantitative and Qualitative Monetary Easing:Theory and Practice
Speech at the Foreign Correspondents' Club of Japan
March 20, 2015
Haruhiko Kuroda
Governor of the Bank of Japan

手抜きでこちらをば(汗)。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150320a1.pdf(邦訳)
「量的・質的金融緩和」の理論と実践


・出オチで読む気を無くす講演なのだが

もうこの講演最初の所で読む気を盛大に無くすんですよね。

『ECBが資産買入れ策を導入した結果、現在、FRBやイングランド銀行(BOE)を含め、世界の主要中央銀行の多くが量的緩和(QE)を採用しています。私の尊敬する友人である伊藤隆敏教授の言葉を借りれば、“We are all QE-sians now”と言えるでしょう。』

もうね、ここでげんなりですが気を取り直して読んでみましょう。


・QEの説明がだいぶ雑なので更にげんなり

ということで何でQEになったかという話だが整理が雑なのが非常に気になる。

『今、“We are all QE-sians now”と申し上げましたが、こうした状況にいたったきっかけは、2008 年のグローバル金融危機です。欧米諸国では、グローバル金融危機によって、景気が大きく悪化し、失業率が大幅に上昇しました。そこで、中央銀行は、金融緩和によって経済を刺激する必要に迫られました。当初、欧米の中央銀行は、伝統的な政策手段である短期金利の引き下げによって対応しましたが、景気の悪化があまりにも大きかったため、短期金利は直ぐにゼロ%のフロアに直面してしまいました(図表1)。ゼロ金利制約のもとでさらに金融緩和を進めるにはどうすればよいか。FRBやBOEは、その答えとして量的緩和を導入しました。量的緩和は、中央銀行が国債などの債券を多額に買い入れることによって、なお引き下げ余地のある長期金利を低下させることで、景気を刺激することを主たる目的とするものです。』

・・・・・・・・・いやお前その説明雑にも程があるだろという話で、ゼロ金利制約だからどうのこうのの話の前に「危機対応のために実施した各種政策」というのがあって、米国のQE1だって基本は「信用危機などの問題で市場の価格発見機能が喪失し、取引が蒸発してしまったために中央銀行が市場のマーケットメーカー機能(実際は買うだけだが)を果たすことによって市場の価格発見機能を復活させる」というものであって、単純な金利引き下げとかMB拡大という話ではないでしょと思うのですよね。

でまあその「市場の崩壊に対応するための施策」というのは細部の作り込みが重要で、たとえば米国で言えばdiscount window利用に対するstigma問題のように、せっかく流動性ファシリティを新設しても使われないのでは意味がない、というような問題が生じる(日本でも規模は小さいけど作り込みに問題があって短期オープン金利の高止まりから利下げしているのにCP発行利回り上昇とか起きた訳で)わけで、そういう細かい話には黒田さんどう見ても全く興味ないだろうなとは思うものの、このQEの説明はあまりにも雑すぎで、まあご本人の趣味的にそういう話はしない(これがどこぞの麿なら信用緩和と量的緩和の違いの説明を延々とするに違いないと思います)のでしょうが、まあこの総裁だからこそ市場を叩き壊しても知らんがなというオペレーションをしてくるのでしょうなあと思うと、冒頭に出てきた誰かさんの名前でげんなりした所にげんなりの上塗りになるというものです。


・なおQQEメカニズムの説明は相変わらず何で期待インフレが上がるのかの説明が皆無

でまあ気を取り直してちょっと先に飛びましてQQEのメカニズムの話を鑑賞。

『「量的・質的金融緩和」の考え方は、以下のとおりです。まず、短期金利がゼロまで低下していることを踏まえ、FRBやBOEのように、多額の国債買入れによって、長期金利に低下圧力を加えることとしました。この点は、既にお話したとおりです。』

別にQE使わなくても長期金利の低下圧力はかけられるのですが・・・・・・・・・

『そのうえで、経済活動に影響を与えるのは、名目ではなく実質金利、すなわち、名目金利から予想インフレ率を差し引いた金利の水準であるという点に着目しました。』

実質金利が吹けば桶屋が儲かる木久扇副総裁理論キター。

『この点、日本では予想インフレ率が2%の物価安定目標に比べて低すぎる状態にあったことが、ブレークスルーとなりました。つまり、予想インフレ率を引き上げることができれば、実質金利を低下させ、企業や家計の経済活動を刺激することができるのです。』

で??

『その意味で予想インフレ率の引き上げは、デフレ脱却というこの政策の目的そのものであると同時に、この政策の波及経路の出発点でもあるのです。』

ふーん。

『では、どうすれば人々のデフレマインドを変え、インフレ予想を引き上げられるのか。デフレマインドが蔓延していた企業や家計が「これからは、毎年2%程度物価が上がることを前提に行動しよう」と思うようになるためには、何よりも、中央銀行が2%の物価上昇の実現に強くコミットすることが必要です。』

コミットすれば期待が飴細工のように変わるとな。

『こうした観点から、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を、2年程度を念頭に置いてできるだけ早期に実現し、かつ、これを安定的に持続することをコミットし、そのための手段として「量的・質的金融緩和」という大規模な緩和措置を導入しました。』

ではQQEのような政策をするとどのような形でインフレ予想が上がって、その定量的な効果はどうなのかという話ですが、さっきマクラの所で話題になっていたどこかの先生のような謎の直線一気一次関数理論が提唱されるのかと思えばさに非ずでして・・・・・・・・・・・

『このようにして、実質金利が低下すれば、設備投資、個人消費、住宅投資といった民間需要が刺激されます。』

QQEを実施するとインフレ予想が上がるのは所与らしいですが、そんな簡単にインフレ予想が自由自在に操作できるんだったら苦労せんわとしか申し上げようがないこの雑な「理論と実践」で講演の題名が泣くわ。

『民間需要が高まれば、需給ギャップ、すなわち経済全体としてのスラックが縮小し、物価に上昇圧力がかかります。人々が実際に物価上昇を経験すれば、中央銀行のコミットメントに対する信頼性が高まるため、人々のインフレ予想はさらに上昇し、こうした一連のプロセスがさらに強まっていくという好循環が働きます。「量的・質的金融緩和」は、このようなメカニズムによって現実と予想の物価上昇率を、2%に引き上げることを狙いとしたものです。』

もはや何も申すまいという所ですが、一応この次に『3.「量的・質的金融緩和」の実践』というのがありましてその冒頭で・・・・・・・・・

『ここまで「量的・質的金融緩和」の理論について述べてきましたが、この政策は実際どの程度効果を発揮しているのでしょうか。』

というのがあるのですが、元より定量的にこれだけMB出すとこれだけインフレ予想に効くとか、実質金利がこれだけ下がるとこの程度の効果が上がるかというような考察が無いというか、そもそも定性的にどういうルートで効くのかという考察も曖昧というか雑な為に、以下の部分では「ここまでこのようになりましたよ」という話はあるものの、実際にどれだけの政策をやってどういう効果になった的なレビューは無い訳で、一応FRBとかでもQE2やった時とかインチキでも「これだけの量のQEでこれだけ金利が下がってこれだけ雇用が創出された」的な説明をどう見てもイカサマ説明でしたがやっていた訳で、その手の説明皆無のままオペの限界に突き進む黒田日銀って何なんでしょと思うのでありました。

なお続きは明日やるかもしれませんがやらないかもしれません。

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2015/03/20

○黒田総裁会見続きである

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1503c.pdf

・債券市場の流動性

『(問) 日銀が市場関係者を対象に先般実施した「債券市場サーベイ」で、債券市場の機能度がさほど高くない、あるいは低いとの回答が全体で9割以上を占め、3か月前より機能が低下したとの回答が7割位を占めています。総裁はかねて、市場関係者とは色々な形で対話して、オペレーションがスムーズにいくようにしているし、これまでのところ何か重大な問題が起こっているとは考えていないとお答えになっていますが、今回のサーベイを踏まえた上でも問題がないとお考えか、また、今後さらに市場機能が低下するリスクについてどのようにお考えか、お伺いします。(後半割愛)』

ちなみに昨日は国債投資家懇談会の後の財務省説明の中で「市場参加者から国債市場の流動性の低下への懸念が聞かれる」という説明と共にリオープン発行をする条件を更に緩和するとか流動性向上に関する施策が出てきていたのですが・・・・・

『(答) まず1点目の「債券市場サーベイ」は、今回新たに実施したものであり、サーベイの癖などについてまだ十分に把握していませんので、その結果については、ある程度幅を持ってみる必要があるだろうと思っています。何度か繰り返しているうちに、次第にその癖もはっきりしてくると思います。そうした前提付きではありますが、今回のサーベイの特徴をいくつか申し上げると、確かにご指摘のように債券市場の機能度について、3か月前と比べた変化では「低下した」という回答が多かったです。』

とはいうものの・・・・・・

『もっともこれには、今回の調査期間にかけて、ご案内のように長期金利の動きがやや大きかったことも影響した可能性があると思います。』

これは酷い。流動性が低かったからあのような動きなんだし、足元の債券市場の超長期大暴れとかどうみてもそうじゃんと思うのだが、「値動きが大きかったから低下したと誤認している」と言わんばかりの説明。

でまあ黒田さんが信念持ってそういう話をしているのならまだアチャー程度で済む話なのですが、これ一番困るのって日銀の中の人たちの企画だの市場局だののスタッフのレベルで「なあにこのくらいなら問題ない」と思っている可能性があることでして、短国マイナス金利だって色々な面での弊害が出て大騒ぎになるまで結局放置状態になっていたという実績を踏まえますと実に心もとないですな。

『また一方で、債券取引の執行という意味では、意図した価格や取引金額で「取引ができていない」とする先は?なく、債券市場の流動性について、現時点で大きな問題は生じていないと思われます。これは、他の様々な統計や色々な市場関係者からの意見も踏まえての判断です。』

あのサーベイを見てどうしてそういう答えになるんだ・・・・・・・・・・・・・普通は「さほどできていない」と「できていない」が流動性低下に問題があるという状態だろと思うのだが。

ちなみにこちらね→http://www.boj.or.jp/paym/bond/bond1502.pdf

『ただ、債券市場の動向は引き続き注意深くみていく必要がありますし、市場関係者との対話も今後とも続けていきたいと思っています。』

どう見てもアリバイ臭がプンプンしますがね!!!!


・バーゼル3の国債リスクがどうのこうの

『(問)(前半割愛)関連してもう1点、国債のリスクについてお伺いします。バーゼル委員会で、銀行のバンキングアカウントで保有する資産の金利リスクについて規制強化の議論が進んでいると思います。同時に別の枠組みで今、国債の信用リスクについても議論が始まっているようです。こうした規制強化が進んだ場合、国債をたくさん抱えている日本の銀行の経営にも影響は大きいと思うのですが、国債を持つことがリスキーとならないためにはどうするべきか、総裁のお考えを改めてお伺いしたいと思います。』

これは財政再建発言をさせようという誘導尋問。

『(答)(前半割愛)2番目の国債のリスク云々の話については、ご指摘の通り、バーゼル委員会では、以前から、銀行が保有する国債の金利リスクについて議論されています。国債に限らず、銀行勘定で保有する様々な資産について、あるいは負債も含めた全体について、金利リスクを含めた議論が行われていますが、まだ現時点では色々な議論が行われていて、特定の方向性についてコメントできるような状況ではないように思います。』

『日本銀行としては、邦銀が抱える金利リスクの実態を十分把握して、規制の影響も見極めて、バーゼル委員会での議論にしっかりと貢献していきたいと思っています。一方、もう1点ご指摘になったソブリンリスクに関する検討については、まだ始まっていません。バーゼル委員会の、今後の検討項目の一つとしてレビューをすることが公表されており、しかもそのレビューについては、「慎重に、包括的な視点から、ゆっくりと進める」という方針が示されており、特定の方向での議論が前提になっているわけではないと承知しています。日本銀行としては、こうした方針のもとで、邦銀への影響にとどまらず、金融仲介活動あるいは市場機能、ひいてはマクロ経済への影響などを十分に配慮した、適切な検討作業となるように、バーゼル委員会でしっかりと議論に貢献していきたいと思っています。』

ということで普通にバーゼルの話でスルーの巻。


・丁寧にイヤミな質問

『(問) 就任から2年という先程の質問に関連した質問です。コアCPIの前年比がほぼ0%に近いため、市場からは2年程度で2%という目標に関してかなり厳しい見方が上がっていると思います。先程、総裁はチャレンジングな試みだったと言われましたが、やはり物価を上げるのは難しかったとお感じでしょうか。総裁にとって、2年間で最大の一番の想定外は何だったと感じていますか。また、2年程度で2%という物価目標は、追加緩和なしに達成が可能なのでしょうか。』

丁寧にききながら後半が辛辣。

『(答) 足許で、物価上昇率が消費税の影響を除いて0.2%程度の上昇になっていることは事実です。1月の中間評価の時に申し上げましたが、このところの大幅な物価上昇率の低下は、基本的に原油価格の大幅な低下が効いていると思います。それは、米国や欧州をみても分かり、これらの国もヘッドライン・インフレーションの率はマイナスあるいはゼロに非常に近くなっています。』

全部原油のせいになっていますが日本のコアコアも弱いように思えますけどね!!!!

『その意味で、原油価格の5割の下落は足許の物価上昇率を引き下げていますが、需給ギャップがほぼゼロになっていますし、中長期的な予想物価上昇率は比較的維持されていますので、賃金、企業・家計の物価観まで含めてみた物価の基調は着実に改善していると思っており、物価安定の目標の達成が日本において特に難しくなったわけではないと思います。』

まあこういうしかないのだが屁理屈モード。

『ただ、欧米の場合は、物価上昇期待が、物価安定の目標の辺りに比較的アンカーされていますのでよいのですが、日本の場合は、0%近傍にアンカーされているのを?しずつ上げてきている途上ですので、よりチャレンジングであることは変わりないと思います。ただ、足許の物価上昇率の低下は、ほとんど原油価格の下落で説明できますので、何か従来に比べて困難さが増したということではないと思います。』

追加緩和全くないと思われても困るが追加緩和は想定にはないというのがこの答えの屁理屈の前提にあるようにしか見えませんな。

『想定外のことと言いますと、一番大きかったのは、原油価格の大幅な下落は、おそらく世界中でほとんどの人が予想していなかったと思います。3年くらい100ドル台で続いたものが、半年足らずで半分くらいになったのですから、非常に大幅で急速な原油価格の下落であり、日本経済のみならず世界経済にも様々な影響があります。もちろん、成長率については世界経済にとってプラスですが、足許の物価上昇率を世界的に押し下げているという意味でも大きな影響を与えており、ここは非常に大きな想定外だったと言えると思います。』

ほほう。

さてここで師匠の就任記者会見での発言を確認してみましょう。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf

5ページ目に師匠のお言葉がございます。

『(岩田副総裁発言の途中から)私は、2%のインフレを達成するため、あるいはデフレを脱却するためには、2 つの条件が必要だと思っています。1 つは、2%のインフレ目標を大体いつ頃までに責任をもって達成するのかということに日本銀行がコミットするということです。これにコミットすることが、非常に大事なことです。(途中割愛)2 つ目は、そういう意味で、2 年くらいで責任をもって達成するとコミットしているわけですが、達成できなかった時に、「自分達のせいではない。他の要因によるものだ」と、あまり言い訳をしないということです。そういう立場に立っていないと、市場が、その金融政策を信用しないということになってしまいます。市場が金融政策を信用しない状況で、いくら金利を下げたり、量的緩和をしても、あまり効き目がないというのが私の立場です。(以下割愛)』

・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー


・基調判断ってそれ裁量だからリジッドなターゲッティング政策じゃなくね??という話

『(問) 最近の日銀の政策委員の方々の講演、会見などを聞きますと、物価の基調が大事であって、その基調は総合的に判断するということを多くの方がおっしゃっています。中曽副総裁も会見でおっしゃっていました。まさかこの総合判断という言葉を黒田総裁がお使いになるとは思わなかったですけれども、先程も、総合的にみると物価の基調は着実に改善しているとおっしゃっています。』

とここまでがマクラ。

『物価の基調と総合判断という言葉は、?しでも日銀を長くみている人間からすると、すごく感慨深いものがあります。特定のコミットメントをしていない時は、物価の基調をみて総合的に判断するというのが政策判断だったわけです。それが裁量的過ぎるということでルールを入れようという長い論争があった上で、黒田総裁が、総裁になる?し前にインフレターゲットが入った。それに基づいて2年前にQQEを導入したわけです。』

その通りで、師匠一派はインフレ目標政策は中央銀行の裁量を減らしていくから効果が出るとか、例えば冷暖房の自動運転みたいなのにたとえていましたわな。

『それが、原油が下がっているということで、それを除いて考えた方がよいということのようですけれども、それであれば2年前に原油を除く指数を日銀が総務省と相談して作るなりして、それを目標にすれば良かったわけです。それをしないのは、おそらくビールが下がるとか、ケチャップが下がるとか、そういうものを除いていたら物価に意味がないということで、それはしないということだったと思います。』

(・∀・)ニヤニヤ

『自身が総裁になられて、デフレの理由が何であっても、止めるのが中央銀行の責任であるとおっしゃっています。それが、2%の期限である2年が経って、物価は2%どころかゼロに近づいている。そういうタイミングで物価の基調が大事で、総合判断と言う。何と言うか先祖返りと言うか、非常に皮肉な感じがするのですけれども、今、どういうふうにお考えなのかをお聞きします。』

これは良いイヤミ。


『(答) 今おっしゃったことは、そういうことをおっしゃる方がおられますけれども、私からみると全く間違っていると思っています。』

さすがにこれはイヤミたらたらなのが分かりますよね!!!

『これは日本だけではなく、欧米の中央銀行もそうですが、物価安定目標、インフレターゲットというもの自体は、ほとんどの国が総合物価指数でみています。これは、家計からみれば、総合物価指数が一番重要であろうということで、それをターゲットにしているわけです。』

話がそれていますが・・・・・・・・・

『ただ、物価安定目標、インフレターゲットというのは、ある一瞬到達すればよいということではなく、安定的にそれが持続できるようにすることが目標です。当然、足許で物価がどっちの方に向かっているかということを判断する際には、総合指標の場合は色々な短期的なノイズとか、影響する要素が入ってきます。それぞれの国で、その国の経済に即して動向を判断する時に、どういった指標でみるかは、色々なものをみているわけです。米国の場合は、ご承知のように、GDPの消費デフレーターのコアのようなものでみようと、日本の場合は、従来から、生鮮食品を除く消費者物価指数でみようと、欧州は欧州で、それぞれあるわけです。それらもその時々で、経済状況に応じて様々な指標を合わせてみているわけです。米国の場合もそういったGDPの消費デフレーターのコアのようなものを基礎としながらも、雇用状況とか、賃金の上昇率、さらにはその他の色々な状況をみながら、まさに物価安定目標、インフレターゲットに向けてどのように進んでいるか、進んでいないか、それに合わせて金融政策を運用することになっています。』

総合判断であるという話を延々と他国の話を持ち出して更に論点をずらしております。

『わが国の場合も、従来から、見通しや、足許でどういう方向に進んでいるかという時は、生鮮食品を除く消費者物価でみていたわけであり、今もそれが重要な指標であることは変わりなく、その予測等も示しているわけです。』

と、すっかり話をそらしていますが、そもそも「リジッドな目標設定を行っていたのに変わったですなあ」というのに対して「世界は目標達成に対する部分で裁量的にやっているのがスタンダードである」という返事をしているのがもう完全に論点ずらし。

『前々回の公表文にありましたように、足許で原油価格が非常に大きく動いていると、それは今後とも何年もずっと下がっていくというものでなければ、いずれ剥げ落ちるわけですので、そういった要因も合わせて物価安定目標に向けてどのように進んでいるということを判断する必要があるということです。その意味では、2%の「物価安定の目標」を設定し、それに向けて強いコミットメントをし、「量的・質的金融緩和」を導入し、それをさらに昨年10月に拡大しました。そのもとで、様々な指標をみて、物価安定目標を達成し、安定的にそれを持続できるようになるまで続けると言っているわけですから、まさにそういった状況になるのを、今あるいは2年前から、常にみている、それを何れにせよ総合判断して、金融政策に役立てる、つまり、もし仮に上下双方向のリスクを点検して、必要があればまさにそれを踏まえて金融政策の調整を行うということです。』

長い説明というのは大体苦しい時と決まっていますよね皆さん???(吐血)

『おっしゃっていることを言う方もいますが、私自身は一貫していますし、日本銀行として、2013年1月に2%の「物価安定の目標」を設定して以来、物価安定目標自体は、非常にはっきりしており、全く揺るぎないと思っています。』

まあどう見てもなし崩し的に漂白されているけどな!!!!!


・大演説質問とその答え

まあこれは鑑賞用。

『(問) 2%程度を達成する時期について、「2015年度を中心とする期間」というのは2016年度の初めの方まで含むものだとマーケットは理解していると思います。ということは3年以上経ったところを目標時期に置いていることになると思いますが、2年程度を3年以上と読み替えるのは普通の日本語ではなく、これはいくら何でも強弁ではないかと私は思います。』

ワロタ。

『だからアベノミクスがだめだとかクロダノミクスが成果を上げていないというつもりはありませんが、少なくとも物価安定目標については、当初の目標を達成できなかったのだということをはっきり認めて──これから半年以内に2%にいくということは考えられないわけですから──、その上で、この政策が正しいんだということを素直に説明するべきではないでしょうか。3年以上を2年程度というのは非常に分かり難く、はっきり言って日本語ではないと思います。その点、強弁ではないのかという点について、総裁は、今、どうお答えになるのか聞きたいというのが1点目です。』


『2点目は、総裁は、就任の時そうはおっしゃいませんでしたが、岩田副総裁は、2年で達成できなかったら辞めると言っています。辞めるべきかどうかについてはよく分かりませんが、地位に恋々とする方ではないのだから辞めればいいのではないかと思いますが、誰か行内に引きとめるような人がいるのでしょうか。それとも本人が翻意したのでしょうか。公約違反なのだから、本来、本人が出てきてしゃべるべきことですが、代弁するおつもりがあるのであれば、総裁の口から、なぜ岩田さんは辞めないのかを説明して欲しいと思います。』

金懇で出てきたときに聞いてください。

『3点目は、物価上昇の基調は変わっていないと繰り返しおっしゃっていますが、疑問があります。現在、エネルギー価格を除いたコアコアでも0.5%であり、2%には程遠いです。これが上がり始めているのであればいいですが──原油が主因であることも事実ですが──、やはり物価の基調だって決して強くはないです。それを証明するかのように10年物の長期金利は、総裁が就任した時よりも僅かだが低いわけです。それは、国債を大量に買っているからこうなっていると言うのではなく、物価の基調を反映しているからではないでしょうか。』

3点目はまあ良い論点。


で、その答え。

『(答) まず、1点目ですが、物価上昇率の政策委員見通しの中央値について、最新の見通しでは、2015年度が1.0%、2016年度が2.2%となっています。足許、原油価格の下落で0.2%程度の上昇に止まっていますが、原油価格は、昨年の夏以降に下がってきており、その影響がまだ続いています。しかし、その影響は、おそらく今年の秋以降はだんだん剥げてくると思いますので、そういった意味で、1.0%という年度の見通しを出しているのだと思います。もちろん、年度内の物価見通しについては、委員は示しておりませんので、何とも言えませんが、年度の前半は──今年の4月から年度の前半になるわけですが──、やはり当面0%程度の上昇になると申し上げているので、逆に言うと、年度の後半でかなり物価上昇率が上昇していくことになります。それは需給ギャップが縮んでいくということと、予想物価上昇率が比較的維持されているもとで原油価格の影響が剥げ落ちていくということで、年度後半には物価上昇率が上がっていくということにより、全体として1.0%が達成できるとみています。そういう意味で、2015年度を中心とする期間に2%に達する可能性が高いということを引き続き申し上げているわけです。』

見事な無回答。途中で質問者がそんな話は聞いていないとか不規則発言してたのここでしたっけ??

『2点目は、私がとやかく申し上げる立場にありません。』

まあ仕方ない。

『3点目は、コアコアと言いましても、石油価格が下がるとエネルギー価格そのものだけでなく、運送費やその他コアコアに入っているものにも影響があり、実は、欧米でもコアコアは若干下がっています。従って、原油価格の低下は、直接的にはコアコアに大きく影響するものではないとしても、それなりの影響は出てくるということはあり得ると思います。逆に言うと、原油価格の影響が剥げ落ちた場合、そういった下押し自体は?なくなってくると思います。その一方で、需給ギャップが改善しているということ、さらには物価上昇期待が比較的維持されているというもとで、企業の賃金あるいは価格設定行動、家計の物価観といったものを含めた物価の基調というものは改善をしていると思いますし、今後も改善していくと思っています。』

これはまた随分な言い逃れですな・・・・・・

ということで、まあ物価に関する質疑は基本的にまともに答えないで「基調」の話に持ち込んで誤魔化すというのが延々と続いたので、質問者がイカって質問が長引いたのと、答える方がそもそも質問の論点を外しながら答えるから答えが長くなる、というコンボによっていつもより長い会見になったようですね!!!!!

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2015/03/19

○総裁会見であるがやたら長い割には内容の充実度に欠ける会見

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1503c.pdf


・やはり「2年で2%」の手形が1号不渡になりそうな件についての質問が多い訳で

実質最初の質問がさっそく2年前の手形に関してですが今ですと期日未到来呈示ですから0号扱いですね!!!

『(問) 総裁就任から間もなく2年を迎え、4月には「量的・質的金融緩和」のスタートからちょうど2年を迎えると思います。改めて緩和策の効果についてお伺いします。同時に、2%の物価目標の到達時期に関して、4月には丸2年が過ぎてしまいますが、過ぎた後もやはり「2年程度」という言葉を使うのかどうか、お伺いします。』

(・∀・)ニヤニヤ

『(答) 「量的・質的金融緩和」という2013年4月に始めた金融緩和は、所期の効果を発揮していると考えています。』

はあそうですか、でどういうルートで効果を出したのでしょうか???

『まず、景気については、先程申し上げた通り、企業部門・家計部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムが作用しており、緩やかな回復基調を続けています。そうしたもとで、物価の基調は着実に改善しています。すなわち、需給ギャップは、概ね過去平均並みの0%程度まで改善しています。』

基調キタコレ。

『予想物価上昇率は、原油価格の下落にもかかわらず、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられます。また、昨年春の賃金改定交渉において約20年振りのベースアップが実現し、本年も賃上げの方向が労使双方から示されるなど、家計や企業の実感としても、物価を巡る状況は大きく変化していると思います。』

サーベイの数字ってそんなに大きく変化してましたっけ???

『このように、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するという方針に全く変わりはありません。』

ということで、結局「2年たったのにまだ2年という積りですかずうずうしいですねえ」という質問に対しては全く答えないという所が実にチャーミングでして、最初がこれだったせいもあるのかも知れませんが、その後も「おいこら2年で2%はどうしたんだ」系の質問が多くてワロタとしか申し上げようが無いのが今回の会見。


・物価がマイ転しても即追加緩和ではないという説明

その次の質問。

『(問) 2点お伺いします。まず1点目ですが、足許で原油価格が再び下落しています。今後も原油価格の動向次第では、短期的にコアCPIがマイナスになるという可能性も排除できないと思うのですが、物価がマイナスに転じた場合、実際の物価の見通しと、物価の基調やインフレ期待に与える影響を現時点でどのようにお考えでしょうか。(後半割愛)』

『(答) 先程も申し上げた通り、物価の先行きについては、エネルギー価格下落の影響が足許出てきている一方で、需給ギャップとか、中長期的な予想物価上昇率に規定される物価の基調は着実に改善していると考えられますので、いわば、この両者の引っ張り合いのような状況になっているわけです。』

また基調である。

『こうしたもとで、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、当面0%程度で推移する可能性が高いと申し上げたわけですが、もちろん、エネルギー価格等の動向によっては、若干のマイナスになるという可能性も排除はできないとは思います。今のところは、まだその辺りは、はっきり分かりません。』

ここはヘッドラインになっていました。

『需給ギャップあるいは中長期的な予想物価上昇率、もう?し広く言えば、物価を巡る家計や企業の見方といったものを総合的に見ていると、物価の基調は着実に改善していると思われますので、仮に生鮮食品を除く消費者物価の前年比が一時的にマイナスになるようなことがあったとしても、物価の基調がどうなっているかということにかかっており、物価の基調は今のところ変化するような状況にはありませんので、そういった一時的な動きによって、どうこうといったことはないと思います。』

一文で基調を3回連呼キタコレですが、基調が強いので一時的な動きは知らんがなだそうですわよ奥様!

『ただ、物価の基調に関し、今申し上げた需給ギャップ、中長期的な予想物価上昇率、更には企業や家計の物価観といったものは、今後とも十分注視していく必要があると思っています。(後半割愛)』

ということで、前回は原油価格が下がって期待インフレに悪影響と言いながら緩和したのですから一段の原油下げの場合に期待インフレに悪影響はないのでしょうかという質問をしているはずなのですけれども、その部分に関しては論点をそらして全く答えになっていない回答ですな。


・論点をずらす回答が多い事よ

さっきの質問の後半。

『(問)(前半割愛)もう1点です。今年の春闘で、先程もお話がありましたが、昨年を上回るベアの実績が伝えられています。現在、ご覧になって、今のベアについての具体的な動きというのが、物価2%達成に向けて十分な内容と考えておられるか、お伺いします。』

(;∀;)イイシテキダナー

『(答)(前半割愛)そうした中で、もちろん賃金の動きも非常に重要であり、私どもも注視しているわけですが、ベースアップ、あるいはボーナスを含めた給与全体の具体的な水準については、現在労使間で交渉されているわけですので、私から何か感想めいたことも申し上げるのは差し控えたいと思います。これも以前から申し上げていることでありますが、日本銀行は、「量的・質的金融緩和」によって、企業収益あるいは雇用・賃金の増加を伴いながら、物価上昇率が次第に高まっていくという好循環を作り出していくことを目指しており、この点、企業収益が過去最高水準まで上昇している、さらには、失業率が構造失業率に近い3%台半ばまで低下しているといったことで、労働需給も引き締まっています。こうした良好な収益環境、あるいはタイトな雇用情勢等を踏まえますと、ベースアップやボーナス等のかたちで、賃金の上昇が実現する環境が整っていると考えています。』

いやあの労使交渉の水準の是非について聞いているんじゃなくて2%達成に必要な水準かどうかについての質問なのですから差し控えるとかそういう話じゃないと思いますし、2%が安定的に維持できるためには名目賃金がどのくらい上昇するのが望ましいとか賃金版フィリップスカーブを持ち出せば済む話ではないでしょうかと思いますが、そこをゴリゴリと詰めると「威勢の良い報道で浮かれたくなるけどまだ足りん」という話になるのでお答えしないというのが実際の所なんじゃないですかね。


・答えが無いものだからだんだん質問が辛辣に

その次の質問が中々よろしい。

『(問) 2点お伺いします。まず1点目です。先程のお話にあったように、物価がマイナスに転落する可能性が排除できないとのことですが、これが人々のインフレ期待を損ねるような懸念はないのでしょうか。その懸念はないとお考えなら、その理屈を教えて頂ければと思います。』

さっき完全に論点をそらして答えなかったので再質問キタコレ!!

『もう1点は、総裁任期5年の中でこれから3年目を迎え、折り返し地点に入るわけですが、その中で「2年を念頭に、できるだけ早期に」というコミットメントは、さすがに3年目は実現ができないとやや信認が揺らいでくる時期に差し掛かってきます。』

(;∀;)イイシテキダナー

『2月下旬の講演では、長らくデフレが続いた日本で物価を2%にアンカーするためには、速度と勢いが必要だというお話をされました。その中でも、この3年目は大規模な「量的・質的金融緩和」が成功するかどうかの分かれ目になる年かと思いますが、総裁は、この3年目という新たに迎える1年間を、ご自身の異次元緩和の中でどのように位置付けていらっしゃるか、お伺いします。』

速度と勢いがないし1年間手形をジャンプとかダメだろという質問ですねわかります。

『(答) インフレ期待が様々な要素によって影響されることは事実ですし、足許の物価上昇率がどんどん下がっていくと、インフレ期待に影響するのではないかという懸念があり得るのも事実です。昨年10月31日に「量的・質的金融緩和」の拡大を決定した一番大きな理由は原油価格が下がったことではなく、原油価格が下がる、さらにはその当時消費は弱めの状況が続いていくという中で、消費者物価の上昇率がどんどん下がっていき、それが物価上昇期待を押し下げ、賃金決定あるいは企業の価格設定に影響が出てくるという可能性、懸念を払拭するために、いわば英語で言うところのpreemptiveに「量的・質的金融緩和」の拡大を決定したわけです。』

この辺の屁理屈の整理はかなりきれいにまとまるようになりましたな。

『その後の状況をみると、中長期的な物価上昇期待は概ね維持されており、幸いにそうした懸念は払拭されていると思っています。』

この前は懸念があったわけで、そこから物価が下がっているのに懸念が浮上しないとはこれ如何にということで、「基調」だの「総合判断」だの自由自在だなオイという所です。

『従って、今のところ、そうした懸念があるわけではないし、出てくるとも思っていませんが、先程も申し上げた通り、物価の基調に最も大きな影響を与える需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率を今後とも十分みていきますし、企業や家計の物価観――その中には当然、賃金の上昇率あるいは企業の価格設定行動等々も入ってきますが――をよく注視、モニターしていくことに変わりありません。』

どう見ても春闘でドヤ顔です本当にありがとうございました。

『今のところ、仮に足許の物価上昇率が原油価格の大幅な下落を反映してマイナスになったとしても、直ちに物価の基調に影響が出るような状況ではないと思っています。』

何故??

『ただ、何度も申し上げますが、その辺りは十分注視していくつもりです。』

そして後半の質問に対する答え。

『それから、私が総裁に就任して2年ということですが、特に2年ということで意識することはありません。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

すいませんQQEは2年じゃなかったでしたっけという所で、こういう辺りに巧まずして本音が飛び出す訳だ。

『毎年毎年、その時その時の課題をきちんと果たしていくことが重要だと思います。現時点では、2%の「物価安定の目標」を、2年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に実現することが最も大事だと思っていますので、それに向けて引き続き最大限の努力を払って参りたいと思っています。』

意識してないジャン。

『日本経済は、1990年代の後半頃から2012年まで15年程度の期間ずっとデフレだったわけでして、そのデフレのもとで物価上昇期待も非常に低位――ゼロかその近傍――に落ちていたので、2%の「物価安定の目標」を実現し、それを安定的に持続することから言いますと、物価上昇期待自身も2%程度のところにアンカーしていく必要があると思います。』

デフレではなくてディスインフレだったのではないかという気もしますけどね。別にスパイラル的に一般物価が下がったわけではないでしょうと。90年代の資産デフレというか不良債権や過剰投資の積みあがりによる巨大なスラックというのはあったでしょうが。

『欧米のように、物価上昇期待が目標近傍に比較的アンカーされている国とは違って、よりチャレンジングであることは前から繰り返している通りです。その意味では、速度と勢いは非常に重要であり、だからこそ2013年4月に強いコミットメントとともに「量的・質的金融緩和」を導入し、さらに昨年10月に拡大したわけですので、引き続きその実現に向けて邁進していきたいと思っています。』

でも2年ということで特に意識しないんですよね!!!!!


以下続くのですが時間と量の関係上(というかやりだすと量がかなりあるのでここまで前夜に珍しく準備したのだが寝坊回避の為にここで断念というのが正直なところです、笑)続きは明日。

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2015/03/02

○総裁の日本記者クラブでの講演は「おめーら梯子外すんじゃねえよ」という執行部の叫びですねわかります

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150227a1.pdf
原油価格と物価安定
── 日本記者クラブにおける講演 ──

題名がナンジャソラという感じですががが。

・もう最初にいきなりこれですよ

最初の『1.はじめに』から。

『現在、日本銀行は、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現するため、「量的・質的金融緩和」を推進しています。そのもとで、わが国経済は基調的に緩やかな回復を続けており、物価は企業収益や雇用者所得の増加を伴いながら上昇しています。もっとも、昨年夏以降の原油価格の大幅下落に伴い、このところ消費者物価の前年比プラス幅は縮小しています。』

ほうほうそれで?

『こうした中、「2%の達成にはある程度時間をかけるべきではないか」、「そもそも2%を目指すことは困難ではないか」、といった意見も聞かれています。』

野党審議委員disキターでもあるのですが、良く良く考えてみると本田先生や浜田先生に対して「人を屋根まで持ち上げておいていきなり梯子外したあどういう事だ」と言っているようにも見えますな。

『そこで、本日は、まず、日本経済の現状と先行きについてお話したのち、「物価安定の目標」の考え方と原油価格下落への対応を中心に、最近の金融政策運営を説明します。』

ということで・・・・・・・・・


・政策フレームの説明パートに参りますね!!!

経済の説明に関しては足元の輸出の戻りを過大視していないかとか、消費って本当に底堅いのかよとかツッコミどころはありますがそこは華麗にスルーして『3.「物価安定の目標」と「量的・質的金融緩和」』に飛ぶのだ。

『3.「物価安定の目標」と「量的・質的金融緩和」』の『(1)物価安定目標の考え方』から。


『日本銀行を含む多くの中央銀行は、「2%」程度の物価上昇率を目標に、金融政策運営を行っています(図表6)。』

出たな。

『具体的には、日本、英国、カナダ、ニュージーランドなどでは「2%」をターゲット(Target)として掲げているほか、米国でも「2%」を長期的なゴール(Longer-run goal)としています。また、ユーロ圏では、物価安定の数値的な定義(Quantitative definition)を示すというかたちで目標を示しており、その値を「2%未満かつ2%近傍」としています。』

はあそうですか。

『このように、表現の仕方は様々ですが、「2%」程度の物価上昇率を目標にして金融政策運営を行うことは、グローバル・スタンダードだといえます。』

またグローバル・スタンダードか!!!

なお、「2年で頑張って達成」としているのはグローバルスタンダードではないんですけどね、という部分の説明は一応後にある。

では2%の概念はと言いますと・・・・・・・

『そのもとで、各国の消費者物価の動きをみると、2%程度で安定しているといわれる米国や英国でさえ、その時々ではかなり広いレンジで推移しています(図表7)。「ある程度期間を均してみれば2%を中心とした動きとなっている」というのが実態です。すなわち、実際の物価上昇率は景気のような循環的な要因や商品市況の変動などによって上下に振れますが、各中央銀行は、中期的に――「景気循環の波を通じて(over the cycle)」と呼ばれることが多いのですが――平均して目標とする水準を達成するように金融政策を運営しているということです。』

ということで、まあこれは概念的にはこうなる。


・インフレ目標をリアンカーさせようとしているので・・・・・・・・・

で、その続き。

『このように、各国では「景気循環の波を通じて」、「平均して」2%の物価上昇率を実現するという考え方が採られています。その際、各中央銀行が政策運営にあたって重視しているのが中長期的な予想物価上昇率の動向です。』

キタコレ。

『なぜなら、中長期的な予想物価上昇率が2%程度でアンカーされていれば、言い換えれば、「物価がだいたい2%くらい上がる」ことを前提に企業や家計が行動していれば、景気の循環や一時的な要因により実際の物価上昇率が目標とする水準から離れたとしても、中期的、平均的には目標を達成できる可能性が高いと考えられるからです。』

ということで、ちょっと飛ばして(なおこの途中の部分もポイントではあるのですが、インフレ期待がアンカーされているのかいないのかの違いという話のマクラ部分なので引用飛ばすけどその理屈に詳しくない方は講演テキスト5ページの後ろから6ページを読むべし)『(2)2%の早期実現を目指す理由』まで飛びます。

『以上が、物価安定目標の標準的な考え方です。日本銀行の「物価安定の目標」も、基本的には同様の考え方に基づいています。』

うむ。

『しかしながら、日本の場合は、出発点となる状況が米国や欧州とは大きく異なります。すなわち、米欧では、従来から2%程度にアンカーされてきた予想物価上昇率をどのように維持するかということが課題となっているのに対し、日本では、長年にわたるデフレのもとで予想物価上昇率は2%よりもかなり低い水準にあり、これを政策的に引き上げるという課題に挑戦しているところです。』

キターーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーー!!

『そこで、日本の置かれた状況を確認すると、1990 年代後半以降、わが国の消費者物価の前年比は、マイナスないし小幅のプラスでの推移、すなわち、「景気循環の波を通じて」、「平均して」みると、ゼロ%近傍での動きとなっていました。』

うむ。

『このように長きにわたってデフレが続くもとで、中長期的な予想物価上昇率も低下し、人々に「物価は上がらない」という感覚が定着してしまいました。そうした世界では、現金や預金を保有することが相対的に有利な投資戦略となるため、設備や研究開発に投資して新たな挑戦を行う意欲が削がれます。この結果、日本経済の活力は奪われ、これがデフレからの脱却を一段と難しくするという悪循環が発生しました。』

いわゆるデフレ均衡論ですけれども、成長期待ってデフレだけで止まってしまうものではない訳でして、実際問題としては成長力の引き上げのための経済政策というのもあってしかるべきだったんじゃないですかねえという気はだいぶしますが、いちおうこれはこれで理屈。

『こうした状況から抜け出るためには、企業や家計の「物価は上がらない」という感覚を、早期かつ抜本的に転換する政策が必要となります。そのための処方箋として導入したのが、「量的・質的金融緩和」です。この政策は、中長期的な予想物価上昇率を2%程度まで引き上げ、そこでアンカーし直し、米国や欧州のように物価が平均的にみて2%程度上昇する経済状況を作り出すことを目指しています。』

まあ問題は物価が上昇しても消費が落ちてしまったという石田審議委員の指摘だったりするんですけどね!!!


・早期達成が重要という主張を力説するのは「リアンカーのため」であるという話

でまあその続き。

『「量的・質的金融緩和」は、第1 に明確なコミットメントとそれを裏打ちする大規模な金融緩和によって予想物価上昇率を引き上げるとともに、第2に巨額の国債買入れによって名目金利に低下圧力を加えることにより、実質金利を低下させ、設備投資など民間需要を刺激するというメカニズムを想定しています。』

ワークしていないような気がしますが気合に免じてスルーしておく。

『すなわち、波及メカニズムの出発点として、まず予想物価上昇率に点火しようとしたのです。「人々のデフレマインドを転換して、予想物価上昇率を引き上げることができるかどうか」、それはデフレ脱却という目的そのものであると同時に、「量的・質的金融緩和」の成否を握るカギになっています。』

点火したかも知れんがその結果消費が抑制されているような気がするがスルーしておく。

とまあそういうことで・・・・・・・・・・

『このような日本経済の置かれた特殊な状況とその処方箋においては、各国の物価安定目標よりも、「期限」という要素が重要になってきます。』

ほう。

『日本銀行が「いつかは2%にするので、それを信じて行動を変えて欲しい」と言ったとして、長らくデフレのもとにあった企業や家計が行動を変えたでしょうか。疑問です。』

2年で2%とか無茶な事言ってタコ踊りをしているんだからお前ら梯子を外すんじゃねえという事ですねわかります。

『日本銀行が、「2年程度の期間を念頭に、できるだけ早期に」という期限を示し、「そのために必要なことは何でもやる」と明確にコミットしたことで、企業や家計の物価観が変化し始め、「量的・質的金融緩和」のメカニズムが動き出したのです。』

本当に動いているのかは微妙な気がしますが。

『日本銀行が2%の「早期の」実現にこだわるのは、こうした理由によるものです。米国のように2%にアンカーされた後には、もう?し鷹揚に構えてゆっくりと目指せばよいのかもしれません。しかし、2%に持っていくまでは、人々の期待を変えるだけの「速度と勢い」が必要なのです。』

屋上に上がって置物タコ踊りを始めた手前引くに引けない・・・・・というとちょっと酷いかも知れんが、まあ「期待をリアンカーさせようとしている」という手前、期待がリアンカーされるまで引くに引けないという理屈になっているのは把握した。

『デフレ均衡はひとつの安定的な状態ですので、そこに向けて引力が働きます。だからこそ、景気の循環的な振幅や金融・財政面の刺激策にもかかわらず、15 年も続いてしまったのです。そこから脱出するためには、ロケットが強力な地球の引力圏から離れる時のように、大きな推進力が必要となります。すでに安定軌道を回っている人工衛星とは違うのです。』

セントルイス連銀ブラード総裁のいう複数均衡に乗ってますな。

『そして、他国の衛星より低い、例えば高度1%の軌道まで辿り着けば十分ということではありません。低い軌道では、また引力に引き戻される惧れがあるからです。』

麿disキタコレなのだが、目先は1%程度でも良いみたいなすっかり腰の引けた政策ブレーン様たちに向けて「梯子外すんじゃねえよコノヤロー」という日銀執行部心の叫びであると理解しました!!!!

『2%の高度は、各国が採用しているグローバル・スタンダードですが、そこには、上昇率が高めに出るという消費者物価指数の「上方バイアス」とデフレに陥らないための「のりしろ」、この2つのグローバルな経験知が込められていると思います。』

・・・・・しかし「グローバルな経験知」なのでしたらやはりそこにはローカライズするという発想も必要なのではないでしょうか(ニヤニヤ)。

『話をまとめますと、日本銀行の「物価安定の目標」は、枠組みとしては他国の物価安定目標と変わるところはありません。ただ、「デフレ均衡からの脱出」という局面においては、通常よりも強力な手段を使う必要があります。2%の早期実現のコミットメントと異次元の規模の緩和措置によって、予想物価上昇率の引き上げ(あるいはデフレマインドの転換)を、十分な「速度と勢い」で実現していくというのが、「量的・質的金融緩和」の核心なのです。』

とまあそういう事で、昨今2年で2%が明らかに無理になったところで腰がすっかり引けてきている官邸ブレーンに向けた盛大な叱咤が黒田総裁から入ったということですな!!!!!!


・追加緩和に関する説明ワロタ

最後に『(4)物価見通しと金融政策運営』から。

『こうした中、日本銀行は、昨年10 月、「量的・質的金融緩和」の拡大(いわゆる追加緩和)を決定しました。これは、原油価格の下落そのものに対応したものではありません。原油価格の下落が、現実の物価上昇率の伸び悩みを通じて予想物価上昇率に影響し、デフレマインドの転換が遅延するリスクを危惧したものです。』

はあそうですか。

『先ほど述べたとおり、予想物価上昇率の上昇は「量的・質的金融緩和」のメカニズムの起点であり、その成否を握るカギです。日本銀行が、2%の早期実現に本気ではないと思われてしまったら、せっかく順調に働いてきた「量的・質的金融緩和」は機能しなくなってしまいます。実際、緩和後に各種の市場が大きく反応したところをみると、それ以前に本気度を疑われていた部分があったのかもしれません。しかし、いずれにせよ緩和後にはその疑いは晴れたということでしょう。』

疑いが晴れたどころか「こいつら物価が下がってヤケクソ緩和打ち込みやがった」という認識になって、追加緩和がドンドンくるんじゃネーカという話になって1月追加緩和という話にもなってきたわけですけれどもね。

なお、1月2月の決定会合にてすっかりその話が無かったことになっているように見えますがががが。

『昨年10 月以降も原油価格はさらに下がっていますが、デフレマインドの転換は着実に進んでいるとみています。予想物価上昇率に関する指標のうち、ブレーク・イーブン・インフレ率などの市場指標は米欧と同様に下落していますが、エコノミストなどに対するアンケート調査では中長期的な予想物価上昇率は維持されています。企業行動の面でも、昨年に続き今春も、労使双方で賃上げに向けた動きが進展しており、2年連続の賃上げが実現しそうです。10 月の緩和措置によって、デフレマインドの転換が遅れるリスクは、ひとまず予防できたと考えています。』

はあそうですかというか追加緩和関係あったのかという気がしますがまあそういう事で。

なお、理屈は分かったのだが実績は??????というツッコミは武士の情けでスルーしておきますね!!!!!!

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2015/02/20

○総裁会見は想定問答のオンパレードでしたな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1502d.pdf

・原油安でCPIがマイナス転した場合はどうなるという質疑

そらまあ聞くのがお作法ではあるのですが、203高地に銃剣突撃しに逝くようなものでしてそれは普通に想定問答で返されますがな。ということで質問の引用はあほらしいのでパスして答えを引用。

『(答) 従来から申し上げている通り、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現することにコミットすると同時に、2%を「安定的」に実現することを目指しています。』

2年程度が3年になっていますけどね!!!!

『消費者物価指数は、当面、エネルギー価格の下落を反映して、前年比プラス幅を縮小していくとみられますが、2%の物価目標を「安定的」に実現するためには、物価の基調的な動きが重要だと思います。』

基調キターーーーー!!というか想定問答キタコレ。

『この点、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率に規定される物価の基調は改善傾向を辿るとみています。』

で、その基調というのが「需給ギャップ」と「中長期的な予想物価上昇率」であり、かつそのうちBEIが使い物にならないという認識は前回の会見で堂々示されていた訳ですから、つまりどちらも正確な数値がリアルタイムで分からない、即ち鉛筆の舐めようによってかなりのところまで恣意的に言い張ることが出来るものをベースに「基調ガー」となる訳ですから、こらもうどこからどう見ても「基調」を言い訳にのらりくらりと逃げる気満々というのがこの想定問答通りのご説明。

『原油価格の下落については、原油価格そのものというより、それが予想物価上昇率をはじめとする物価の基調にどのような影響を与えるかという点がやはり重要だと思います。』

予想物価上昇率と基調を持ち出しておりまして、完全にアクチュアルの物価動向の話を切り離しておりますのでどういう説明になりますかと申しますと・・・・・・・・・

『従って、仮に物価の基調的な動きに変化が生じ、「物価安定の目標」の早期実現のために必要になれば、躊躇なく調整を行う方針には変わりはありません。』

となりまして、実際の物価がマイナス転したからと言っても知らんがなという事になるというのが結論になります。


・したがって「追加緩和は今しません」となる

ということで、2か所で「今は追加緩和の必要なし」という説明がありますのが、そのうち先に出た方だけ鑑賞しておきましょう。

『(問)(前半割愛)もう1点は、効果についてです。先程も言及がありましたが、原油安のもとでは消費者物価は当面プラス幅が縮小していくと思います。その中で、今の原油相場の水準が続いたとすると、今年の後半からは、その影響は剥落していきますが、それまでの間に物価の基調が変化した場合、原油安の影響が続いている中では、追加の緩和をしても効果は限定的ではないか、という声も一部にはあります。この期間に追加緩和をして、実際に物価の基調を変えることができるのか、効果について総裁のご所見をお伺いしたいと思います。』

『(答)(前半割愛)2番目の点ですが、先程、昨年10月31日の決定について申し上げたように、原油安そのものというよりも、物価の基調がどのような影響を受けるかということが重要です。』

えーっとすいません10月31日の時は「原油安で物価が下がるとバックワードで形成されるインフレ期待の部分に悪影響がある恐れがあるから追加緩和」とは説明していましたが、基調の物価がどうのこうのという言い方にはなっていなかったはずですけど、という所で既にこういう辺りにイカサマ説明(なお「これはイカサマではないか」と質問した場合の答えは「基調というのにはインフレ期待が含まれますから10月31日の説明と変わりませんですが何か?」と回答できる、という中々憎たらしいロジックが組んであるのに直ぐ気が付いてしまう位には日銀文学および企画屁理屈の鑑賞は習熟しています)な訳ですが。

『ご指摘のように原油価格がいつまでも下がっていくことはなく、私どもの見通しの前提のように、緩やかに――ごく緩やかですが――、上昇していくもとでは、原油価格の下落が物価に与えるマイナスの影響もいずれ剥落していきますし、一方で、原油価格の下落による経済成長へのプラスの効果も出てきます。拡大された「量的・質的金融緩和」は累積的な効果を持ってくると思います。』

『今のところ、物価の基調に変化が生じているとは全く思っていませんので、直ちに追加的なことを考える必要はないですが、今後、仮に物価の基調に変化が生じるようなことがあれば、躊躇なく金融政策を調整するという意志に変わりはありませんし、そうした場合にも、それに応じた効果が十分あると思います。今の時点で、物価に関する基調は変化していませんので、何か追加的なことを今すぐ検討する必要はないと思っていますが、常に上下双方向のリスクを点検し、必要があれば躊躇なく調整するということに尽きると思います。』

ということで、追加の必要なしを連呼するのですが、必ずそれと同時に「しかし必要と判断した場合には躊躇なく調整(キリッ)」と入れて期待だけは残しておくという毎度の説明。


・もうちょっとこっちをゴリゴリ突っ込んでほしかった件

為替の質問と足元の物価の質問については答えが出来上がっているし、だいたいからして先月の時点で勝負付けがついているものですので、それよりも「そもそものメカニズムがワークしていると本当に言えるのか、そこまで言うなら確信度はどのくらいなのか」というのをもっとゴリゴリと突っ込んでほしかったのですが、その関連の質疑はこんな所に。

『(問) 「量的・質的金融緩和」の波及のメカニズムについて、お伺いします。総裁は、常々、実質金利を押し下げ、設備投資、個人消費を押し上げて、物価を上げていくという道筋を描いていると思うのですが、先程も所期の効果を発揮しているというお話がありました。一方で、設備投資は、事業計画でみるとかなり強い数字でしたが、先日発表があった10〜12月のGDPをみると、プラスになったとはいえ、かなり小幅です。実質金利も物価の伸びがかなり鈍化していく一方で、長期金利がこのところかなりボラタイルになっていて、やや不透明感が増しています。そういう意味では、実質金利がどんどん下がっていくという状況でもなくなってきていますが、その中で、「量的・質的金融緩和」の波及メカニズムは、今まで通り、想定通り作用しているといえるのかどうか、改めてお尋ねします。』

この質問の惜しいのは「実質金利」を攻めるのに市場金利の動向の方で逝っている事でして、市場金利がボラタイルになっている件はメカニズムのほうではなくてオペレーションの限界や技術的な弊害論の角度から攻めるべきであり、実質金利で攻めるのはQQE理論の王道である「インフレ期待」の方から攻めないと。

つまり「期待インフレは本当に上昇しているのか」とまずは質問するとそらまあ「上昇している」と答えられると思いますが、そうなると今度は「日銀の言うとおりに期待インフレが上昇しているのであれば、少なくとも大幅なマイナスの実質金利が少なく見積もっても1年は続いているという事になるはずだが、それだけのタイムラグを持っても設備投資や個人消費の押し上げは増税駆け込み程度のものしか起きていない訳で、それはそもそものQQEが想定するメカニズムが間違っていたということではないか」と2段構え(あるいは2名の共同)で質問すべきだと思うのよね。


でまあ総裁のお答えはこちら。

『(答) その点については、波及メカニズムは作用していると思っています。従来から申し上げているように、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために、大規模な資産買入れを行うことによって、金利のイールドカーブ全体を押し下げるとともに、物価上昇期待を引き上げていくということです。「量的・質的金融緩和」を導入した2013年4月の直前、3月の状況をみると、物価はかなり下がっていましたし、色々な指標でみても、物価上昇期待は非常に低かったわけですが、その後、物価上昇期待は上がってきていますし、物価自体も上昇してきました。昨夏あるいは秋以来の原油価格の大幅な下落は、足許で確かに物価上昇率を引き下げていますが、先程申し上げたように、物価上昇期待自身は比較的維持されていますので、やはり実質金利は、低い状況、おそらくマイナスの状況にあると思いますし、それが経済──投資、消費──にプラスの影響を与えていることは事実だと思います。』

そのプラスの影響があったのに今の状況では全然効きが悪いにも程があるんじゃないですか、と質問したいですね。

『なお、そういった形で直接的に金利を下げる、押し下げるということの他に、ポートフォリオ・リバランスという形で貸出やその他のリスク資産に投資していくという動きも実際に出ていますので、それも一定の影響を持っていると思います。』

もはや話が相当横道に逸れている。

『設備投資については、10〜12月のGDP1次速報値をみると、実態よりも若干弱めに出ているのかなと思っています。各種の指標をみる限り、設備投資は緩やかに回復してきていると思われますし、先行きさらに堅調になっていくと思っています。そういった意味で「量的・質的金融緩和」は、昨年10月31日の拡大を含めて、所期の効果を発揮していると思っています。』

設備投資の出る出る詐欺は聞き飽きたんですけどねえ・・・・・・・・・・


・ブルームバーグの記事に対して黒田総裁が粉砕したとのおめでたい誤解があるようですが・・・・・・・・

もうちょっと早めの所に例のブルームバーグの記事に関する質疑があるよ。

『(問) 2点お伺いします。先般、通信社の報道で、現時点で一段の追加緩和を行うことは逆効果であるという声が日銀の中から出ている、というものがありました。それをきっかけに為替相場も大きく動いたということがあります。現時点で、総裁はどの程度逆効果とお考えかお伺いします。(後半割愛、強調部分は引用者による)』

でまあこれ質疑のかなり早い方で来まして、さっそくキターと中継放送聞いている方は盛り上がったのですが、出てきた回答を聞いてナンジャソラと盛大にずっこけていたのですが、どうも選択制難聴の症状をお持ちの方が多数おいでのようでブルームバーグ記事粉砕と盛り上がっている向きもあるようなのが微笑ましい限りです。

『(答) まず前段の点について、昨年10月31日の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」の拡大が決定されましたが、私はそれで逆効果があったとは全く思っていません。』(強調部分は引用者による)

前段の点、というのが上記の質問ですが、上記の質問でもそうですし、ブルームバーグニュースの記事でもそうですが、問題になっていたのは「これ以上の追加緩和は逆効果ではないか」という話なのであって、前回の追加金融緩和が逆効果であったかというのは質問のすり替えにも程があるイカサマですが、想定問答がこれだとしたら大狸にも程があるわ問答作成担当。

でまあ以下説明は続くのですが・・・・・・・・

『実際、あの決定の時には、消費を中心に需要がかなり弱めの状況が続いており、消費者物価の上昇率も次第に下がってきていました。そこへ原油の大幅な下落が起こり、消費者物価の上昇率がさらに下がっていくと見込まれる状況にありましたが、そうしたことが物価上昇期待、さらにはそれを踏まえた賃金決定、その他様々な物価の基調に影響を与え、デフレマインドの払拭に向けて進んできたモメンタムが逆流し、弱まってしまうということを止めるために、日本銀行として強い意志を示したわけです。その後の状況をみますと、幸い、原油価格の下落により消費者物価の上昇率が徐々に縮小してきているもとでも、物価上昇期待は比較的保たれており、そういう意味でも効果があったと思っていますし、今後とも、拡大された「量的・質的金融緩和」の政策を続けることによって、累積的に経済・物価に対してプラスの効果を持っていくと思っています。』

この辺はどうでもよいというか聞き飽きた説明です。

『為替相場については、特に私からコメントすることはありません。』

まあここにきて先ほどのブルームバーグ記事に関する質問の答えの一部は示されている格好(ブルームバーグの記事は追加緩和の弊害としてこれ以上の円安が日本経済にマイナスだから、というロジックになっていたわけですから)にはなっておりまして・・・・・・・・・・

『前から申し上げていますように、為替相場の変動の影響は、産業、企業その他色々な状況によって異なり、プラスの影響が出てくる部分とマイナスの影響が出てくる部分とがありますが、為替相場が経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移している限り、経済にマイナスになることはないと思います。(後半割愛)』

ということで、円安が望ましいというような言い方もしない(円高が望ましいとは口が裂けても言わないのは自明としまして)のが中々チャーミングでして、つまりは物価を早期に押し上げるために少々無理筋でも円安に振ってしまえばこっちのもの的な話しっぷりがすっかり無くなっていますなという所ではありますが、一方でご案内のように師匠の金懇講演でもそうですし、最近の政府方面からの情報発信からも「早期に物価を押し上げろ」的なものがなくなっている訳ですから、まあそういう意味での押し上げ介入的な流れは無いですよね、という話になるので、つまりはブルームバーグ記事については特段の回答をしていない、というのが今回の会見内容だと思うのですが、何かこう鬼の首を取ったかのようにブルームバーグ撃墜みたいな盛り上がり方をしているのはこらまたおめでたいにも程がありますなという所ではございます。


・今回の会見で誰か質問して欲しかったテーマが実はもう一つありましたな

今回の会見は要旨見てもそうですし、中継画像見てもそうでしたがまあ盛り上がりに欠ける会見で、そらまあ基本的に想定問答にずっぽり嵌るような質問ネタしかないという所があったから仕方がないというのもあるのですけど・・・・・・・・・・・・・

こういう質問があったらどういう答えをしてくれたのでしょうか???

「(仮の質問)日本銀行による国債買入についてお伺いいたします。最近「日本銀行が国債を購入すると政府の債務負担がその分軽減される」という根拠をもって、日本銀行による国債の購入余地は十分にあるとの説明をする向きがありますが、この「日本銀行が国債を購入すると政府の債務負担が軽減される」という理論は日本銀行として受け入れられるロジックなのでしょうか?日本銀行あるいは黒田総裁としての見解のいずれでも結構ですがご教授頂きたくご質問いたします。」

ということで、まあとあるどこかのジンバブエさんの名前を出すと現時点でのお答えは控えさせて頂きますで逃げられるので、「こういうロジックは正しいでしょうか」と聞くわけですが、もしかして最終兵器として「そのような説明があるとは承知しておりませんし、当行はそのような説明をしている訳ではございませんので、特定の学説の当否について申し上げることは差し控えさせていただきます」という技を使ってきそうな予感もしますね!!!!!

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2015/02/03

○追加緩和にさらにトーンダウンとな

黒田総裁が国会に呼ばれていまして全然発言でないなとか思ってたら最後の方に出てきました。
http://jp.reuters.com/article/JPbusinessmarket/idJPKBN0L60EY20150202
首相・日銀総裁が円安めぐり慎重発言、デメリットにも配慮
2015年 02月 2日 15:54 JST

『[東京 2日 ロイター] - 安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁はいずれも2日の参院予算委員会で円安についてメリットとデメリットの双方について指摘した。あくまで一般論だが黒田総裁は昨年「円安は全体として日本経済にプラス」と繰り返し発信しており、円安の負の面に対する配慮も感じられる。』

『総裁も「輸入コストの上昇、あるいはその価格転嫁を通じて、中小企業、非製造業の収益、家計の実質所得に対する押し下げ圧力として、作用する面があるのも事実」と指摘。「現時点で為替レートが今の水準にあることで日本経済全体に大きなマイナスになっていることはない」としつつ、「円安の影響は産業・地域・企業規模で異なる面があるので、十分注視したい」と警戒した。』(以上上記URL先より)

とまあそういうことで、追加緩和で円安に振って物価上昇を促すルートに関してこの前は政府から追加緩和不要とかいう謎の情報発信らしきものがニュースベンダーに出ておりましたけれども、黒田総裁もトーンダウンで益々追加緩和の方向が見えにくくなってきましたなという状況ですな。

#その割に最近マイナス金利政策が追加緩和でみたいな話が妙に出てくるのは何なんでしょうかね

たぶん足元では統一地方選挙も近い中で物価上昇で生活がしんどい系のアレがあるのでその中で円安に振ってコストプッシュで物価あげても仕方ないでしょという話になっていて、一連のイベントが片付いた後にどうなるのかというのもまた微妙な気もしますけれども、まあこんな感じで追加緩和がトーンダウンの流れになっているのは味わいがあるというものですな。


しかしまあ何ですな。
http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0L60F020150202
出口での金利・バランスシート取扱い、具体論は時期尚早=日銀総裁
2015年 02月 2日 15:55 JST

『総裁は「金利あるいは日銀のバランスシートの取り扱いについてどういったかたちのことを考えるかは、そのときの経済あるいは金融市場の状況に応じてもっとも適切な対応を取る」と回答。「今から具体的にご指摘のような(再投資見送り、テーパリング)ことをするかどうか、かえって市場に混乱をもたらすことあり、今の時点で具体的な話をするのは時期尚早」と述べた。』(上記URLより)

えーっとすいませんできるだけ早期に物価安定目標を達成するんだったら当然検討していないとまずいんじゃないでしょうか実は早期に達成する気ないでしょというツッコミはさておきまして、出口議論に関しては逆に「全く出口関係ないやろ!」という状況の時にある程度のイメージを出しておいた方が市場が反応しないで意識を持たせることが出来るのではとも思いますので、今のように春に向けてCPIゼロ近傍までの低下待ったなしとか言われているタイミングの時に出口後の本来あるべき姿についてお話をしておくというのも一つの作戦のように思えますけどね。

ともうしますのは、本当に出口が意識されるようなところになってからですと、出口政策の話をするのが時すでにお寿司状態になっており、下手にトークをするだけで市場がヒャッハーとかなると思われますので、その前にある程度イメージを持たせておけば、実際に経済物価情勢が改善する中でよりスムーズに出口の織り込みが進むように思えるのですけどね。まあ理想論かもしれないけどご一考をば。

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2015/01/28

○総裁定例会見ネタの積み残し部分について少々

ネタの積み残しが多くてどうもすいませんすいません。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1501a.pdf

先般は2年で2%の件を聞かれてブチ切れのところと、原油価格は経済にプラスです(キリッ)の部分をPC慣らし運転しながら(って今もまだ慣熟運転中だが)あわてて引用しましたがそれ以外について少々。

・10月ロジックとの整合性について

質問が大演説状態でほほえましい。

『(問) 昨年10月に追加緩和をされた時、「実際の物価上昇率の伸び悩みが続けばそれがどのような理由によるものであれ、予想物価上昇率の好転のモメンタムが弱まる可能性がある。そうなれば、せっかくここまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅れてしまうリスクがあります」とおっしゃっています。「どのような理由によるものであれ」という場合、10月は、消費増税による影響と、より大きなものとして原油価格の下落があったと思いますが、今回の決定会合における局面においては、「どのような理由によるもの」という中から、原油は除外するという理解だったのでしょうか。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『先程、ドバイで1バレル55ドル、いずれ70ドルという想定のもとでも、なお「2015年度を中心とする期間」に2%程度を達成することは可能であるとおっしゃいましたが、一方で原油価格次第では多?前後する可能性があるのも事実とおっしゃっています。もともと「2015年度を中心という期間」に、先程おっしゃったように多?幅があって、そこからまた多?前後するということであれば、原油価格次第で、例えば2016年度の半ば、後半になったとしてもそれは構わないと、追加緩和をするような状況ではないとお考えなのかどうかまずお伺いします。(以下割愛、というか次に)』

そらそうよ、で後半の質問が関連して(割と関連している)続くのですがそれは次に。

『(答) いずれも私が従来から申し上げている通りです。』

さっそくムッとしていますね!!!!

『まず1点目の原油の問題については、昨年10月31日に「量的・質的金融緩和」を拡大した時に詳しく申し上げたように、消費の弱めの状況とか原油価格が下落したということで、消費者物価の上昇率がだんだん下がってきていました。どういった理由であれ、それが期待インフレ率にマイナスの影響を与え、将来の賃金上昇にも影響を与えることになれば、物価に影響が出てくるということであり、そういう懸念があったので、懸念を払拭し、転換しつつあるデフレマインドが戻らないようにするために、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定したわけです。』

前回は期待インフレが下がるリスクがあったが今回はそのリスクがないとはどういう事でしょうか??

『これまでの状況をみますと、BEIは別として、企業や家計の予想物価上昇率、あるいは先程申し上げたように賃上げの交渉に向けた動きをみても、デフレマインドにまた戻ってしまうという懸念は、現在のところは、幸いに払拭されていて、生じていないということです。』

低下しているBEIは期待インフレの低下リスクを示しているものではないとかもう勝手極まる話ですけど、FRBのBEIの低下を捕まえて「市場のリスク認識の変化であってインフレ期待の変化ではない(キリッ)」とか言い出すし、一方でECBはBEIの低下に言及してソブリンAPP投下ということで、もうカオスですなカオス。

『今後とも、原油であれ何であれ、物価上昇率の動きを十分注視して、そうした中で予想物価上昇率の様々な指標、動きを検証して、それが将来の賃金や物価の上昇率に大きく影響して、2%の「物価安定の目標」の達成が難しくなるというような状況になれば、当然、躊躇なく金融政策を調整すると言っていることは、従来の言い方と全く変わりません。(後半割愛)』

どう見てもやりたいことに合わせて都合の良い数字を持ち出しているだけにしか見えないのですけどね。


・賃上げに関して

さっきの続きね。

『(問)(前半割愛)2点目は、昨年末以来、黒田総裁を始め、日本銀行の皆様はとにかく賃上げ一点張りというか、金融政策の目標が賃上げになったのではないかと思われるような状況ですが、先程具体的な数字については、おっしゃいませんでした。ただ、日銀の色々な方と話をしていると、この1年間の物価上昇率ぐらいは、やはり賃上げ、ベアがあるのが望ましいということを言っています。具体的数字はともかくとして、望ましいというか、あるべき賃上げが行われなかった場合には、やはり10月の追加緩和にもかかわらず期待インフレは下がっているということで、追加緩和をしなければいけないということになるのでしょうか。』

これまたオモローな質問ですな。

『(答)(前半割愛)2点目の賃上げについても、一貫して、物価だけ上がって賃金が上がらないとか、賃金だけ上がって物価が上がらないというようなことは長続きしないのであって、過去の何十年かのデータをみても、物価が若干先行したり、賃金が若干先行したりすることもありますけど、基本的に物価上昇と賃金上昇というのは、全く同時でないにしても、同じような動きをしているということからしても、やはり賃金の上昇というものは、物価の上昇を持続可能なものにする非常に重要な要素です。』

ふむ。

『当然、物価が上がっていく中で賃金も上がっていく、賃金が上がっていく中で物価も上がっていくという好循環が望ましいし、かつ実際問題として両者は相まって動いていますので、当然賃上げの状況については十分注視します。』

ということでしたら、そもそも論としてそれを2年とか時間を区切って強引に進める意味is何処??

『そういうことから言って、先程申し上げたような予想物価上昇率、企業や家計の物価観までも含めたところで、2%の「物価安定の目標」に向けて着実に進んでいる状況であれば、別に追加的な措置はいらないでしょうが、そうでないと進んでいかない、というような状況になれば、当然、躊躇なく調整するということに全く変わりはありません。』

はあそうですかという所ですな。


・緩和やりすぎの弊害は予想通りの知らんがな状態

『(問) 一連の金融政策が、特に債券市場を中心として市場の価格機能を歪めていないかということについて、ご見解をお聞きしたいと思います。』

待ってました!!

『昨日は、5年物国債が流通市場で初めてマイナスになりました。また、落札では0%での落札がありました。そういう影響があって、本日、5年物の個人向け国債の募集を取りやめることが起きています。市場関係者、あるいは私は、金融政策の影響で価格機能が歪んでいる、あるいは弊害が大きくなっているのではないか、と感じています。質問は2点です。』

うむ。

『1点目は、弊害が生じていると感じておられるかということ。2点目は、もし弊害やコストを?しは感じておられるのであれば、それをはるかに上回るメリットがこの金融政策にあるということなのか、お聞きしたいと思います。』

でまあ答えですけどね。

『(答) そもそも「量的・質的金融緩和」という政策は、イールドカーブ全体に働きかけて、実質金利を押し下げていくものです。実質金利を押し下げる面では、名目金利の押し下げと予想物価上昇率が上がっていく両面があると思います。その意味では、名目金利が下がっていくことは政策の効果であって、弊害ではないと思っています。』

ゼロ回答キタコレ!!!

・・・・・・・ということでまあ予想通りなのでそれ自体は驚かないのですが、本来QQEで目指すのは物価安定目標であって、そのために必要なのは「インフレ期待が2%水準でアンカーされる状態を作ること」なのであって、実質金利を押し下げるときにインフレ期待が下がらないで名目金利が下がっているのを捕まえて「政策の効果」というのはそもそも本末転倒にも程があると思いますが。あくまでも「中期や長期の金利がインフレ期待およびリスクプレミアムから考えて適正と思われる水準よりも低い状態にする」というのが国債買入による実質金利押し下げという話で、リスクプレミアムを圧縮するのはそういう意味では買入効果として適切ですが、そのリスクプレミアムをマイナス方向に持って行ってどんどん深堀していくという状況を捕まえて「政策効果です(キリッ)」とかもうアホかと。

でまあ名目プラス金利を下げることとマイナス金利を深堀することの政策効果には非対称性があるという話は昨日申し上げたので繰り返しませんが、まあ結局置物理論のベースがハチャメチャで、戦略として適切でない(MBを増やすと何とかの置物理論とかマッカラムルールとかの通りに動いていましたっけ)から戦術レベル(短国買入や輪番)で何をやっているのかという状態になっているという所なのでしょうな。

『現実問題として、「量的・質的金融緩和」が始まって以来、市場関係者とは色々な形で意見交換、対話をし、オペレーションがスムースにいくようにしていますし、これまでのところ何か重大な問題が起こっているとは考えていません。』

オペレーションがスムースに行く事しか念頭になくて、オペさえ回っていれば弊害などないというような認識というのがもう机上の空論っぽくて大変に頭の下がる思いでございまして、机上の空論の弊害は元が机上の空論だけにそもそも存在しません(キリッ)という所なんでしょうなあ。

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2015/01/23

○日銀決定会合レビューで総裁会見ネタである

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1501a.pdf

まあ何ですな。会見の中継見てたのですが、特に冒頭はグダグダだったしとある質問では急にぶちきれ状態になるしと、非常にアレな会見でございましたが・・・・・・・・

・原油価格はプラスです(キリッ)

冒頭の質疑。

『(問) 前回会合以降、一段の原油価格の下落が続いています。これを受けて、世界の金融市場ではリスク回避の面から長期金利の一段の低下や株価の下落といった不安定な動きがみられています。原油安が当面の世界経済に与える影響をどのようにみているか、また、日本経済にとっての影響をどのようにみているかをお聞かせ下さい。』

『(答) 原油価格の下落が世界経済に与える影響をみると、全体として原油消費国では実質購買力の上昇から経済にプラスに働く一方、産油国では原油収入の減?からマイナスに働くと思いますが、世界経済全体としてみると成長率を押し上げる方向に働くとみています。』

ほう。

『また、わが国は原油の輸入国です――ほとんどの原油を輸入しています――から、原油価格の下落は、企業収益の改善や家計の実質購買力の上昇につながるため、わが国経済にとってプラスに働くと考えています。物価面では、エネルギー価格の低下を通じて目先は物価の押し下げ要因として働く一方、やや長い目でみると、経済活動の改善を通じて物価の押し上げ要因として働くと考えています。』

それはそうですが、10月の追加緩和のときにはその原油価格下落による影響を問題視して追加緩和しましたわけで、「やや長い目で見て物価の押し上げ要因」なのに何で追加緩和を実施したと言われたら、そらまあ世の中的には「日銀は足元の物価に対応して追加緩和をしました」という解釈になるし、じゃあ何で今回追加は無いのとなるわけで・・・・・・・


・「2年で2%」に関連する質疑が2つありましてこれがオモロイ

次の質問。

『(問) 原油価格に関連して伺います。先程も総裁は、原油価格の下落は、やや長い目でみて、物価を押し上げる要因になる、との見解を示されています。先程の話では、原油価格が上昇するとの見通しでしたが、このまま反転しなくても、2年程度での物価目標達成が可能だと考えているか、判断の根拠も含めてお聞かせ下さい。また、2年程度とは「2015年度を中心とする期間」と説明していたと思いますが、2016年度に入っても2年程度と言えるのかどうか改めて確認させて下さい。』

でまあこの答えが会見ライブを聞いていると何を言ってるのかわからんというか、酔っ払いの説明のような状態になっていて、聞いている人たちがそろいもそろって「大丈夫か総裁」となったのですが、事務方はその答えをどう綺麗にまとめたでしょう。

『(答) 先程申し上げたように、消費者物価の見通しは、昨年10月の展望レポートと比べると、原油価格の大幅な下落の影響から、2015年度にかけて下振れています。もっとも、需給ギャップや中長期の予想物価上昇率に規定される物価の基調的な動きについての見通しに変化はありません。また、原油価格の下落については、前年比でみた影響はいずれ剥落する性質のものですし、経済活動に好影響を与えて、やや長い目でみれば物価の上昇要因になると考えています。』

基調的な見通しに変化が無いので大丈夫という10月の説明is何処?状態。

『物価の基調的な動きを規定する要因についてみると、従来から申し上げているように、需給ギャップと予想物価上昇率が大きな要因になるわけですが、需給ギャップは、潜在成長率を上回る成長が続くもとで、改善傾向を辿ると考えられます。今回の中間見通しでも、成長率は上振れています。』

そうそう成長率見通し上方修正してるのよね。原油が下がったのがプラスとかいう話なのでしょうが。

『また、予想物価上昇率については、市場のブレーク・イーブン・インフレ率は、各国とも低下している中でわが国でも低下していますが、家計・企業・エコノミストなどのサーベイ調査でみた中長期的な予想物価上昇率は総じて維持されていると思います。』

BEIが上昇したときはBEIの上昇を捕まえて説明していませんでしたっけ???

『また、企業・家計の物価観やそのもとでの行動の変化をみても、今春の賃金交渉に向けて、連合では2%以上のベースアップを要求するという方針を示しているほか、先月公表された政労使の取り組みにおいても、「経済界は、賃金の引き上げに向けた最大限の努力を図る」という方針が明記されています。』

お賃金キター!

『このように、人々のデフレマインドの転換は引き続き着実に進んでいるのではないかと考えています。』

なんという手前味噌。

『こうしたもとで、基調的な物価の上昇率は今後着実に高まっていくと見込まれており、その上で、原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに ――1バレル55ドルくらいから見通し期間の最終時点にかけて70ドルくらいまで――上昇していくとの前提にたつと、消費者物価の前年比は、原油価格下落の影響が剥落するに伴って伸び率を高めていき、「2015年度を中心とする期間」に2%に達するとみているわけです。』

QQE投下時点では「2年程度を念頭にできるだけ早期」だったのですがどう見ても後ずれです本当にありがとうございました。

『ただ、何度も申し上げます通り、原油価格はこのところ大幅に変動しており、消費者物価指数が2%に達する時期が原油価格の動向によって多?前後する可能性があるのは事実だと思います。』

「すべて原油のせいだ」とは昨シーズンのどこぞの鉄道会社のスキーツアー宣伝のようですね!!!!!


・・・・・・でまあもうちょっと後のほうでの質疑を見ましょう。

『(問) 先程複数の方が質問されて総裁がお答えになってない部分ですが、これまでCPIの2%上昇という目標について言ってきた2年程度もしくは「2015年度を中心とした期間」という中に、2016年度が含まれるのかどうか、これについて明確にお答えを頂きたいと思います。』

ニヤニヤ(ここに複数とあるように途中でもあったのですがそこは割愛しました)。

『(答)「2015年度を中心とする期間」と言っていますので、その前後に若干はみ出る部分はあることは、「2015年度を中心とする期間」という言い方が始まって以来、その通りだと思いますが、何か月はみ出るのかとかそうしたことは、当面や当分と同じように、常識的に判断して頂くしかないと思います。』

そらまあ常識的に判断したらそうでしょうが、そもそも「2年を念頭にできるだけ早期に達成」という日銀の最初の声名はなんだったのかとか、そもそも置物副総裁におかれましては「2年で達成するのが当然」というような発言を繰り返して、それによって前の執行部を石持て追い出して副総裁に座ったはずなのですが、そちらに関しては「常識的に判断」した場合にどういう解釈になるのかという点について小一時間問い詰めたいのですが、それについてはちょっと後のほうに今回の会見の白眉部分がございますのでお楽しみに。というか会見ライブ見た人たちがおそらく全員のけぞっている場面ね。

『(問) 2016年度に多?はみ出ることはあり得る、という受け止め方でよろしいのでしょうか。』

『(答) それは、「2015年度を中心とする期間」と言っており、「2015年度中に」とは言っていませんので、若干の余地はあると思いますが、わざわざ2016年度に入りますということを言っているわけでもありません。「2015年度を中心とする期間」に2%程度に達する可能性が高いと言っています。』

屁理屈キター!!

『ただ、今回も強調していますが、原油価格の動向がどうなるかは今のところ分かりません――先程申し上げた共通の前提は、色々な状況からみて可能な前提だとは思いますが、その通りにいくかどうか分かりません――ので、ある程度、前後の幅があり得ることは申し上げておきます。』

つまり「やる気はあるのですが原油価格のせいで上手くいかないかもしれません(キリッ)」ということで、営業マン&ウーマンが営業会議で上席を激怒させそうな説明に感心することしきりというものです!!!


でまあもうちょっと後のところで今回の会見での白眉が登場しますよ!!!!!!

『(問) 2013年4月4日に日銀が「量的・質的金融緩和」を導入した時に、大きな衝撃がマーケットに走ったと思うのですが、その1つの理由として、今までとは違って2年に拘ったというところがあります。』

全くでございますし、置物とか置物一派の皆さん皆で言ってましたよね〜!!!

『その後も総裁は講演で2年に拘ったということをおっしゃっていたと思うのですが、先程の発言をお伺いすると、2016年度にかかっても仕方がない、要するに3年かかるということになると思います。』

(;∀;)イイシテキダナー

『そうすると、日銀のコミットメントというのは、2013年4月に発表したときよりも弱まっているのか、それとも始めからそういう意図だったのか、その点についてお伺いします。』

実に当然な質問ですが、これに対する黒田総裁の答弁が今回の会見での白眉ですよ!!!!

『(答) それは始めから、そう申し上げていました。』

逆ギレヒャッハー!!!!

『2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の物価安定目標を達成する、そのために必要なことをするということですし、その後の展望レポートで、一貫して、「2015年度を中心とする期間」に2%に達する可能性が高いという見通しも申し上げていましたので、全く変更はありません。』

えーっと常識的に判断すると「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の物価安定目標を達成する」といわれたら「Two years or sooner」だと思いますが、どうみてもヤケクソの開き直りです本当にありがとうございました。

『2013年4月に導入したので、2015年4月に2%になるとか、ならないといけないと言ったことは全くありません。』

これは酷いとしか申し上げようがありませんが、まあそもそもこの理論的背景は置物副総裁様でいらっしゃいますので、本日もどこぞで講演があるようですし、2月4日には宮城で金懇があるようですので、詳しい申し開きと白川さんの前で焼き土下座ショーの実施が挙行されるものと楽しみにお待ちしたいと存じます。


しかしまあ何ですな、これ会見放送聞いていましたが、最初のほうの説明は変な葉っぱでもキメながら酒でも飲んだんじゃねえかというような説明ぶりで正直何言ってるのかわからん状態(事務方は良くまとめた!感動した!!)でしたし、ここの白眉部分は明確にぶちきれ状態になっていましたということで、まあ「2年で2%の落とし前はどうなっているんだ」というのは聞かれると一番困る点である、というのは把握いたしましたので、日銀記者クラブの皆様に置かれましては今後とも「2年で2%の落とし前マダー」と粘着して質問されると大変に吉(ただし不毛かもしれませんが・・・・・)かと存じますので宜しくお願い申し上げたいですな。特に与党審議委員や置物さんあたりには(野党のかたがたがどう説明するのかも面白いかもしれませんが)。


・・・・ということで会見ネタはもうちょっとあるのですがECBで時間食ったのとPC慣らし運転中につき本日はこの白眉部分で勘弁してちょという所です。

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2014/12/26

○ここまでくると孔明の空城の計なのではないかと思いたくなる総裁講演

えーっとですね、昨年の総裁のこの手の講演ってQQEの考え方とかデフレ均衡からの脱却とかその手の事に関してそれなりに心の入った講演だったのですけれども、追加緩和実施以降はすっかりヤケクソにでもなったかのような会見応答などをしていましたが、講演も随分とヤケクソ屁理屈状態になっているなあと思いますよ。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141225a1.pdf

・そもそもお題がナメトンノカとしか申し上げようがない

大体からして講演のお題がこれですよこれ。

『「2%」への招待状── 日本経済団体連合会審議員会における講演 ──』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

おい招待するのは良いけど肝心のパーティーやってねえだろいつになったら始まるんだこちとら1年半前から招待状が来てるんだぞ待ってる間にドンドン市場が焼け野原になってるんだぞお前達成できてもいないのに招待状とかナメトンノカこのスットコドッコイがああああ!!!

てな所ではございますが、いやまあ2年で2%が今の時点で思いっきり見えていて、物価安定目標達成の大勝利宣言としての講演のお題で「招待状」というのなら分かりますが、達成の見込みがドンドン後ずれしているのに招待状とか、講演の題名誰が考えたのか知りませんが、遂に物価目標2年で達成が不可能になったので現実逃避で大本営発表を真実と思って幻想の世界に逝ってしまわれたのではないかと精神の方を心配したくなるレベル。

でまあ理屈についても以前の「大規模緩和でデフレ均衡から脱出し、期待と気合、および物価上昇によるアダプティブな期待インフレの上昇と需給ギャップの改善で均衡を遷移させる」的な、出来る出来ないは兎も角として話としては一本筋が通っていたのですけどねえ・・・・・・・・・


・最初の所もまあ微妙にツッコミ所があるというか何というか

ロジック展開がダメダメ化しているなあと思うのは、ここの『はじめに』での説明にも表れているのですけれども、兎に角前提条件が全部決めつけ状態になっていて、いやそうじゃない可能性はあるだろという政策担当者として考慮しないといけない筈の点を思いっきり捨てた感じになっている事です。

まあ「この道しかない(キリッ)」とかいうトップに合わせているのかなあとは思うのですが、そもそも新しい事をしようとしている中ですから道進むにしても前提条件とか状況判断とかが必ずしも常に正しい認識できる訳ではないのですから、状況をよく見ながら適宜調整をしながら進んで行かないと、間違った道の方に行った日にはハーメルンの笛吹き男に連れられるおんどれら(というネタは金融クラスタの一部しか通じませんかそうですか)という事になってしまうので、道を進む強い意志を持つのは良い事なのですが、意志だけで特攻しないでちゃんとPDCAサイクル回して欲しい所ではありますなと存じますですよ、はい。

てなわけで最初の所から少々。

『このように、日本経済は、長年続いたデフレから脱却し、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、着実に歩みを進めています。』

まあその前の説明で「は?」という手前味噌モードがありますが一々突っ込んでいると長くなりすぎるので割愛してこの辺りから参ります。

『とはいえ、「景気の回復が実感できない」という声が少なからず聞かれることも事実です。特に、「『量的・質的金融緩和』のメリットを受けているのは、大企業と金融資産を保有している富裕層だけで、全体に拡がっていないのではないか」、「デフレ脱却とはいっても、物価が上昇する一方、賃金がそれに見合って上昇しなければ、生活はかえって苦しくなるのではないか」といった意見を耳にします。』

『日本経済は、現在、デフレのもとでの「縮小均衡」から、2%の物価上昇のもとでの「拡大均衡」への移行過程の真っ只中にあります。』

拡大均衡するそうですが、コストプッシュで物価が上がるだけで終了しますと拡大均衡しないと思いますがその点についての考察は如何???と言いたいのですが、以下の話を見れば判りますが、兎に角この講演にはスタグフレーション的な状況という点に関する考察は1ミリも無い(そもそもリフレ派の辞書にスタグフレーションという概念は無くて物価が上がればアプリオリに良い事とされているので仕方ない)のがもう何だかねと。

『こうした大きな変化が相応のスピードで生じる過程においては、業種や企業規模、所得環境などによって、影響が異なった形で現れることは、避けがたい面があります。』

だからその「避けがたい面があります(キリッ)」で済ませて良いのかという話で、実質賃金が当初下がるのは当然と浜田先生がかつて仰っていたように、途中で起きる問題というのがあるのですから、その部分は再分配とかで工夫すればと思うのですが、ど〜見ても出てくる施策が逆ですから、そのスピード差が消費などに悪影響を与えるレベルになるかどうかという点を良く考えながらリフレ政策を打ち込むべきという話だったのではないでしょうかねえ。

とは言いましても、そもそもリフレ論者の皆様におかれましては兎に角リフレ政策を断行して2%物価目標達成したら世の中はバラ色だという話を盛大にしていて、安倍ちゃんもすっかりその気になっている訳ですから、あの時点で再分配がどうのこうのとか言うのは八百屋で魚を求めるようなもん。

『しかしながら、日本経済が良い方向に向かっていることに疑問の余地はありません。景気の現状に満足されていない方の中でも、「デフレの頃の方が良かった」と思っておられる方は、まずいらっしゃらないのではないでしょうか。』

いやね、それこそ金融資産持ってなくて年金生活しているような人だったら普通に「デフレの頃の方が物価も上がらなくて今みたいに生活が苦しくならなくて済んだのに」って感じてるんじゃないかと思うのだが、これまた随分豪快な言い切りですなあと。


・ご招待しておられる2%の世界の説明がまたアレ

そもそもご招待も蜂の頭もパーティーの開催時刻まであと6か月の筈ですが当初の招待状によりますと、という話は兎も角として、この講演は上記の後にデフレ経済が何で良くないかの毎度の話をしているのですけれどもいつもの置物理論なので割愛して、その後の『3.2%の「物価安定の目標」の実現と日本経済の転換』です。

まあ最初から色々と面白いのですけどね。

『そこで「量的・質的金融緩和」についてお話しします。「量的・質的金融緩和」のメカニズムは、日本銀行が2%の「物価安定の目標」の早期実現に向けて強く明確なコミットメントを示し、人々のデフレマインドを変えることを起点としています。同時に、巨額の国債買入れによって、長期金利を含めてイールドカーブ全体に低下圧力を加え、名目金利をさらに低下させました。』

マネタリーベースの量に関しての話がありませんが・・・・・・・・・・・・

『その結果、実質金利が低下し、名目だけでなく、実質でみても、「金融が緩和している」と感じて頂ける状況が生まれているはずです。』

正直ここの実質金利で企業の投資行動が活発化の話も眉唾だと思う訳で、金利が下がったから設備投資をするのではなくて、あくまでも設備投資というのは(特に新規に行う場合)その投資によって生産される商品がきちんと売り上げを出して収益を生むかというのが最初にあって、その後に投資採算性を考えるという段になって金利というのが意味を出して来るのであって、金利が下がったらよーしパパ工場増設しちゃうぞーとは普通に考えてならんだろと思いますし、金利が下がったら投資しちゃうぞーとなるのは設備投資では無くて金融資産のような投資対象物件そのものの流動性や換金性の高い物になるだろとしか思えないのですよね。

と考えますと、そもそもダブルデジットレベルのデフレならまあ判りますが、QQE投入前だってゼロ近傍の物価水準に居る中で長期金利は1%台で延々と推移していた状態で、金融機関も資本制約で貸出が出来ないとかそういう話でも無い状況で、金融環境ってとうの昔から緩和的だったと思うのですけどねえ。

『その金融環境のもとで、他の政策などとも相まって、民間需要が高まり、経済全体としての需給ギャップが改善し、現実の物価も上昇しました。』

ダウト。

『企業や家計が実際に物価上昇を経験すれば、「物価は上がるものだ」という実感が生まれるため、予想物価上昇率は、さらに上昇することが期待できます。』

まあここしか頼る話は無いですなインフレ期待に関しては。

『この流れを推し進めて2%の「物価安定の目標」が実現した経済においては、企業・家計にとって合理的な行動は、現預金を保有することではなく、投資・消費を行うことになるはずです。』

それはディマンドプルで物価が上昇するならそうですがただのコストプッシュだったらならないですし、ディマンドプルで物価が上昇する形で達成する状態が「物価安定の目標が実現した経済」というのであれば前段と後段はただの同義反復でしかありませんな。

『物価が緩やかに上昇するもとでは、現金保有の実質収益率はマイナスになります。コストカットで内部留保を積み上げ、それを現預金として保有しているだけでは、企業価値を毀損してしまいます。企業は、生産体制の整備・効率化や研究開発、人材の確保や開発などを戦略的に進めることが必要になります。さらに、配当や自社株買いなどの資本政策も重要になります。』

経済にはサイクルというものがありまして、常に拡大政策するのが正しい訳ではないのですけどねえ。

『要するに、「資本コストを上回る投資・収益機会を見出し、企業固有の付加価値を生み出していく」ことが経営課題である通常の経済環境に戻るということです。』

えーっとすいません、それ物価水準と関係ない話だと思うのですけど。資本コストって物価水準で決まるんですか????

『このように企業のスタンスが前向きなものに変化することは、中長期的にみた日本経済の成長率を高めることにもつながると考えられます。』

どうも話が逆のような気がする訳で、中長期的な成長期待があるからこそ継続的な設備投資や業容拡大政策が行われるのではないかと。てかまあ経団連の皆さんも企業経営経験無い方からエラソーに投資しないのがケシカラン的に言われてどうなんでしょうかね、


・2%に関する説明は毎度のグローバルスタンダードですが・・・・・・・・・・・

『なお、デフレから脱却すべきなのはわかるが、なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか、という疑問をよく聞きます。一言でいえば、先進国のほとんどが、毎年2%程度の物価上昇を「物価が安定している状態」と捉えているということです(図表7)。』

中長期的に目指すのと、短期的に無理やり達成させようとして為替を思いっきり振るのとは全く別の話で、グローバルスタンダード(キリッ)って言うのだったらそれこそ先進国の殆どが物価目標水準に達する時期を2年よりも長い期間で見ながら運営しているという状況になっている点について、日本の「2年で2%」と比較考察して頂きたい物です。

そしてこの次がアレ。

『15 年にわたるデフレ期(1998 年度〜2012 年度)における消費者物価の前年比の平均は、いくらくらいだと思われるでしょうか。正解は、わずかマイナス0.3%です。多くの方は、「物やサービスの値段は、もっと大きく下がっていたはずだ」と感じられるのではないでしょうか。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

http://www.boj.or.jp/research/o_survey/index.htm/#p02
生活意識に関するアンケート調査 時系列データ

えーっとですね、この時系列見ますと、「1年前と比べて物価が何%上昇/下落したと思いますか」という質問がありますが、第26回予備調査(2006年6月)以降のデータを見ると2010年3月の時だけしか前年比マイナスの数字無いんですけど生活意識アンケートの結果とかインフレ期待を見るのに重要(キリッ)的な事を言っておいてこの説明とは情けない。

ちなみにその前の時系列データ(第26回以前)だと数字でのアンケートが無くて、「上がった/下がった/変わらない」の三択になっているのですが、この間に「下がった」が多かったのは2000年から2004年までの4年間でして、しかもこの間って物価が下がったことに関して「好ましい事だ」が圧勝(まあいつも圧勝ですけど)になっているんですよね。

・・・・・・という事を踏まえて以下を読むと味わいが違ってくる。

『時間の制約から詳細な議論は割愛しますが、消費者物価指数には、物価上昇率を高めに表わすといった上方バイアスがあるため、消費者物価指数の前年比がゼロ%程度というのは、実感としては、かなりデフレ的な状況なのです。』

はいはいボスキンバイアスボスキンバイアス。

『逆に言えば、消費者物価が安定的に2%上昇するという状況は、決して「物価が大きく上がっている」ような状況ではありません。むしろ、実感としては、「物価は、全体として概ね横這いか、ごく緩やかに上昇している」といった状態に近いと思います。』

いやー1%の時にあれだけ物価上昇の話が出るわガソリン下がって大喜びだわ(また最近円安で価格上昇ネタが出ているようだが)の報道見てるとそういう実感には全くならないと思うのだが、日銀の中の人たちはどんだけ王侯貴族の世界にお住みになっておられるのかと小一時間問い詰めいたいですなあ(棒読み)。


でまあ2%だと為替ガーの話もあるがだんだん面倒になってきたので割愛。


・デフレマインドの転換がどうのこうのの話

次が『4.デフレ経済からの転換にあたって』である。

『それでは、今日本経済は、デフレ下の「縮小均衡」から、2%の物価上昇のもとでの「拡大均衡」への移行過程のどの辺りにいるのでしょうか。ここで改めて、わが国経済の現状を整理しておきたいと思います。』

以下のハードデータっぽい部分は手前味噌の話が続くので割愛しまして・・・・・・・・

『また、デフレマインドの転換は、着実に進んでいます。』

ほう。

『今春の賃金交渉において物価上昇を意識した賃上げ要求が行われ、』

要求したの政府だけどな。

『10 数年振りにベースアップが復活したほか、企業がデフレのもとでの低価格戦略を転換し、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる動きがみられるなど、企業の賃金設定や価格戦略にも影響を与えています。さらに、来春にかけての賃金交渉においては、いくつかの労働組合が2%程度のベースアップを要求することを決定しています。』

はあそうですか。

『中央銀行が設定する物価安定目標が労使間の賃金交渉において意識されているという点で、注目すべき動きと言えます。』

盛大にコーヒー吹いたわ。

『日本銀行としても、強い関心をもって、今後の交渉の帰趨を見守っていきたいと考えています。』

いやだからそれって政労使会議で政府が思いっきり要望とかどこの満sy(以下自粛)。

・・・・・・・というのは兎も角として、まあ完全に「賃金上昇に期待」モードになっているというのが分かりますが、昨日も申し上げたように恐らくは株が下がるか円高に振れると泡を吹いて追加緩和に追い込まれるに100バーナンキ。


この後に今般の追加緩和に関する説明があるのですが、先日の会見での屁理屈と同じなので引用を割愛して最後の所を。



・最後の賃上げお願いが途中から謎理論になっていて面白い件

でまあ最後の所で経団連が相手なので思いっきり賃上げお願い攻撃ですが、賃上げしてくれないとどうしようもなくなるのでそらまあお願いする罠とは思う物の、何かこう統制経済っぽくてどうもねという感じだが官僚出身的にはファミリアーなのですかねえ。

『もっとも、移行途上にある現時点においては、「パイ」の拡大のメリットが、グローバルに展開する企業や金融資産を保有する人などに偏在していることは否定できません。もとより、中小企業の収益や家計の所得も、デフレ期に比べれば増加しており、多くの人が何らかのメリットを受けているのですが、その程度には、企業規模や業種、家計の所得階層などによってばらつきがあります。』

で?

『この事実は、単に「パイの分配」の問題に留まらず、次の循環を作るうえで重要なポイントです。すなわち、多くの「パイ」を獲得した主体の支出性向が低い場合、次の循環が働かなくなるからです。高い収益を挙げている企業が積極的に「収益を使っていく」ことが求められています。』

お願いキタコレ!!

『ここで強調しておきたいのは、企業がこのように「収益を使っていく」ことは、日本経済に好影響を及ぼすのはもちろんですが、その企業自身にとっても直接的なメリットをもたらすという点です。』

何か凄いお為ごかしな説明が始まりました。

『2%の「物価安定の目標」が実現すると考える人々にとっては、現在の実質金利は極めて低く、実物投資の採算は良いはずです。逆にデフレ脱却を信じない人にとっては、引き続き実質金利は高く、積極的な行動は抑制されます。』

おい何でデフレと2%目標達成しか選択肢が無いんだよwwwww

『デフレを脱却したあとは、こうした人々も参入してきますので、例えば人手の確保の競争は激しくなるでしょう。また、当然のことですが、2%の物価上昇が安定的に実現すれば、金融環境もやがて経済に中立的なものになっていきます。』

いやだからデフレ脱却しても成長力が上がらなかったらかつての英国病みたいな感じになるだろうよ。

『要するに今の過渡期的な状況を利用するかどうかは、早い者勝ちの面があるということです。』

まあ仰せのような動きになればな。

『デフレのもとでの「縮小均衡」の経済と、2%の物価上昇のもとでの「拡大均衡」の経済とでは、企業を取り巻く環境は全く異なります。企業経営のルールブックが変わるということです。進化論を唱えたダーウィンは、「生き残るのは、強い生き物ではなく、変化に対応できる生き物だ」と言ったと伝えられています。いち早く環境変化を先取りし、「拡大均衡」の経済に対応できた企業こそが競争の「勝者」となり、新しい時代における繁栄を享受できることになるのだと思います。』

えーっと、国債市場の情勢変化に対応しないでマネタリーベース直線理論で国債買入を拡大して市場を盛大に破壊している方に言われたくないわと思いながら悪態を締めさせて頂きます。

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2014/12/25

お題「総裁会見ネタである」

インフルウィルス放出装置状態の懸念がまだあるので無駄に外に出れないので今日は2年国債入札のマイナスというおそロシアなものをライブで見れないとは残念。

#なお更新時間がいつもよりも遅くなりまして恐縮

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1412b.pdf

○原油価格の下落と追加緩和のリンクを切ろうとするロジックすり替え攻撃

でまあこのロジックに関する質疑の中で「確認ですが」という質問が無駄に多くてやたら話が同じところをグルグルしているのが甚だ遺憾な会見だったのですが、まあこのロジックすり替えの辺りに関して確認しましょう。

『(問) 原油に関する質問を2点お伺いします。10月末に追加緩和された時は、原油価格の下落で期待インフレ率とかデフレマインドの転換が遅れそうだということでなさったわけです。原油価格は、その頃から約3割落ちている状況ですが、先程総裁のご発言の中にもありました通り、期待インフレ率については長い目で見れば上昇基調にあり、当面はCPIも現状程度のプラス幅という見立てをされています。』

ですな。

『1点目として、どうしてこういう判断ができるのかということをお伺いします。ブレークダウンして教えて頂けますでしょうか。』

(・∀・)ニヤニヤ

『2点目は、もし原油価格に関係なく、いわゆるコアコアのようなものでみると、需給がひっ迫して物価が上がっていく、ということがこうした判断の理由なのであれば、今回現状維持として追加の金融緩和をすることは見送られているわけですから、今後も少々原油価格が下がろうが上がろうが、そこに引っ掛けて金融政策を行うのではないのだと、つまり前回とはちょっと違うのだということであれば、そこをきっちりご説明頂いた方がいいかなと思いますが、如何でしょうか。』

全くですが、では答えはと言いますと・・・・・・・・・・・・・・・

『(答) 先般10月31日に「量的・質的金融緩和」の拡大を決定しましたが、これは、その当時の需要面の弱めの動き、あるいは原油価格の下落による短期的な物価上昇率の伸び悩みが、デフレマインドの転換を遅らせるリスクがあり、そのリスクが顕現化するのを未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために実施したわけです。原油価格そのものに対応したというよりも、物価の基調的な要因、とりわけ、広い意味での予想物価上昇率をみて、その予想物価上昇率に対する影響を考慮したものです。』

BEIは一段下がっているけどな!!!というのに関する言い訳はこの後段に出てくるのに加え、基調的な要因という話をしているのは今回の経済物価情勢の現状および先行き見通しの謎の上方修正がリンクしていまして、要するに「原油が一段下がっても追加緩和はしませんよ」というアリバイの為に今回という謎タイミングで経済物価の現状評価と先行き見通しが妙に上方修正されたのではないかという大本営発表疑惑がががががが。

『また予想物価上昇率を評価する上では、市場の指標やエコノミストなどの調査をみていくのはもちろん必要ですが、それだけではなくて、企業や家計の物価観やそのもとでの行動の変化を捉えることが重要であると思っています。』

BEIが上昇している時にお宅の置物副総裁が自信満々に(しかも単に消費増税織り込み度合いが高い残存が短い旧タイプのBEIを捕まえて)BEIの話を連呼していたのは何だったのかと。

『この点、「量的・質的金融緩和」の拡大後の動きをみますと、金融市場は大きく反応しており、日本銀行の2%の「物価安定の目標」実現に向けた決意は、しっかりと伝わったように窺えます。』

BEIは逆に反応していると思いますが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『また、来春の賃金交渉に向けて、連合では2%以上のベースアップを要求する方針を示しているほか、先日公表された「政労使の取り組み」においても、「経済界は、賃金の引き上げに向けて最大限の努力を図る」という方針が明記されています。』

それ日銀の追加緩和関係ないと思いますし、政府肝入りにも程がある話なので既定路線でしょ。

『市場のブレーク・イーブン・インフレ率は、世界的な下落の中で若干低下していますが、家計・企業・エコノミストなどのサーベイ調査では中長期的な予想物価上昇率は総じて維持されています。』

どう見ても手前味噌です本当にありがとうございました。

『また、12月短観では、企業は引き続き先行きの物価上昇率の高まりを予想しているようです。』

2%に届かない状態で横ばいだけどね!!!!

『このように、人々のデフレマインドの転換は引き続き着実に進んでいるように思われます。』

どう見ても大本営発表です本当にありがとうございました。つーか2%は???

『そういうことであれば、原油価格の下落が経済活動や物価を基調的に押し上げる効果が次第に発揮されて、短期的な物価押し下げ効果が減衰するにしたがって、現実の物価上昇率も上昇していくことになると思われます。』

「そういうことであれば」というのがそもそも手前味噌にも程があるのですが、そこはさて置きますと、10月追加緩和の時には「インフレ期待が改善しないリスクに対応」と言って行っておいて、今回の説明では「インフレ期待の改善が進んでいるので原油価格の下落は経済へのプラス効果でウハウハですよ」となっているようで実にこうインチキにも程がある説明になっております。

そんなに簡単にインフレ期待の改善が進むのでしたら「2年で2%」の方だって簡単に達成して然るべきだと思うのですが、そちらの方はドンドン見通しが後ろ寄せになるわ大口叩いた置物副総裁は一向に辞職どころか反省の弁すら出てこないわというのは何なんでちゅかねえ(−−;

『いずれにしても、今後とも、原油価格の動向の影響も含め、デフレマインドの転換がどのように進んでいくか、十分注視していきたいと思っています。先程申し上げたように、何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じて、物価安定の目標を実現するために必要になれば、躊躇なく調整を行うという方針に変わりはありません。』

ということで、今回まあ好意的に書きますと「ロジックの立て直しをして、需給ギャップと期待インフレの話に持ち込みなおした」という事になるのですが、10月31日のロジック飛躍の追加緩和を実施された後にこのような話をされますと、そもそも需給ギャップにしても事後的にしか判らない上に計測誤差がある概念ですし、期待インフレに関しても同様に非常にフワフワした概念でかなり恣意的に数字を拾って説明に使う事が可能な概念ということで、つまり今回のロジックすり替えは一旦「原油価格下落即追加緩和ではない」とはしているものの、まあ有体に言えば株価が下がって皆が浮足立つと追加緩和を実施してくるんでしょという何見て金融政策やってるんだかねえと溜息をつきたくなるような状況である、というのを明確に示してくれましたなあという所ではないかと思われますがどうでしょうかねえ。


などと質疑一発で悪態を並べてしまいましたが、関連質疑が確認みたいなのを含めてやたらあるので、その中からまあ代表的なものをあと2つ。

『(問) 今の話とも関連するのですが、本日、今年最後の会見ということで、来年の物価見通しについて改めて伺います。先程の冒頭の発言の中でも、2015年度を中心とする時期に2%を達成する可能性が高いと、今までの判断を維持されたわけですが、一方でこの激しい原油安の影響でその達成はかなり厳しいのではないかという声が増えています。来年について原油安、円安、需給ギャップ、賃上げの動き等々、物価を左右する要因として大きなものがいくつかあると思うのですが、どのポイントを重視されているのか、またどういう道筋で2%に達すると見ていらっしゃるのかをお聞かせ下さい。』

物価見通しの達成となるポイントがどの要因なのか説明しろやということですな。

『(答) 原油価格が大幅に下がっているということは事実で、これは石油をほとんど100%輸入している日本にとっては、経済を押し上げる効果を強く持つわけです。』

経済を強く押し上げる効果があるのに追加緩和をしたとはこれはまたイカサマにも程があるというか、反対した4人の審議委員が頭から湯気立てるレベルのイカサマ説明でしょこれ。

『一方で、足許の物価上昇率には押し下げ要因として、特に短期的には働いてくるわけです。原油価格の下落は、足許短期的に物価の押し下げ要因となるわけですが、前年比で見た影響はいずれ剥落していく性質のものであり、先程申し上げたように経済活動には好影響を与えていくということで、基調的に物価を押し上げる要因になり得るわけです。従って、もちろん原油価格の動向によって不確実な面はありますが、やや長い目で見ると、原油価格の下落は、物価を押し上げる方向に作用するだろうと考えています。』

これは酷い。というか物価押し上げに作用する件を捕まえて追加緩和とか、そもそも毎度の『見通しに変化が生じて、物価安定の目標を実現するために必要になれば、躊躇なく調整を行う』というのと思いっきり矛盾してるだろと思いますが、まあ追加緩和以降のこの人に政策ロジックの整合性とか一貫性とか求めるというのは詐欺師に誠実さを求めるような物なのでしょうなあ(別に今の日銀執行部が詐欺師だと言っている訳ではないので念の為申し添えます(棒))とは思うが、何ぼ何でも2か月弱でここまでドテンするのはちょっと恥ずかしくないかと思うのだが。

『こうしたもとで、消費者物価は、展望レポートの見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に、物価安定の目標である2%程度に達する可能性が高いとみています。ただ、足許、原油価格は下がっておりますので、来年の前半に物価上昇率が加速していくということは考えにくいかもしれません。これも原油価格、為替、需給ギャップ、そして何よりも重要な賃金の動向といったことにも左右されますので、もう少し様子を見てみないといけないと思いますが、基本的な物価の見通し、つまり2015年度を中心とする期間に2%の「物価安定の目標」に達する可能性が高いという見通しには変わりがありません。』

ということで、結局の所ここにある「賃金の動向」というのが重要というロジックを持ち出してきておりまして、従いまして今回のロジックを使えば春闘の結果が出るころまでは時間稼ぎができますなという話でありまする。


でまあ確認みたいな質問が沢山出た後に噛み付き系の質問が登場。

『(問) 先程、随分、原油が安くなっているにもかかわらず、追加緩和をしない理由として、企業、家計、エコノミストのサーベイ調査で中長期的なインフレ予想は総じて維持されているとおっしゃいました。それはそうかもしれませんが、10月31日に追加緩和する前も、それは全くそうではなかったのかと思います。』

(・∀・)ニヤニヤ

『あの時点とこの時点で違うのは、BEIがその前も下がっていて、今も下がっています。今はむしろもっと下がっているという状況でいえば、予想インフレ率が変わっていないということを現状維持の理由にするのは、ちょっと理由としては薄弱ではないかと思います。』

(;∀;)イイシテキダナー

『10月31日の追加緩和について、先程、日銀の決意とおっしゃいました。やはり2年という期間にこだわるという強い決意があったのだろうと私たちは理解していますし、世の中全般にそう受け止めていると思います。そういう意味でいえば、15年度を中心とする期間に2%に達する可能性が高いという見通しは、中央値で1.7%ということで、ぎりぎりそういう言い方もできると思いますが、1月の中間評価で、1.7%から、例えば1.5%、1.4%、1.3%となっていくと、15年度を中心とする期間に2%を達成する可能性が高いとは、なかなか言えなくなってくるのではないかと思います。もしそうなった場合は、追加緩和するのでしょうか。やはり2年というのは難しいので、もうちょっと先にするのでしょうか。』

こういう仮定の前提での追加緩和云々という質問はあまり筋が良く無くて、それよりも単に達成期間に関する遅れについての所感を聞いた方が良い気がする。

『11月5日の講演で、物価の下振れリスクが大きくなったのであれば、追加的な措置を行うことは当然の論理的帰結だとおっしゃっています。そういうことからすれば、見通しが下がれば追加緩和をするというのが筋ではないかと思いますが、如何でしょうか。』

多分目先下がる件は織り込み済みという話になっているから1月の中間レビューでどうのこうのという聞き方はあまり上手くないと思うのだが。前半だけで良かった気がします。

なおそれに対する答えがまた凄い。

『(答) まず前半については、そういうご意見はあるかもしれませんが、私どもは全くそういうふうには考えておりません。』

問答無用キタコレ!!!!

『あの時点で、「量的・質的金融緩和」の拡大を行わなかった場合、どうなったのかということとの比較で考えないといけないわけです。』

これしか言い訳の仕様が無いのは判るが、再現実験が出来ない社会事象において「行わなかった場合にもっと悪かったに違いない」というのは究極の開きなおり最強言い訳ですな。

『消費を中心として内需が弱い状況が続き、物価上昇率が次第に下がってきており、その上、原油も大幅に下がって、これがさらに物価上昇率を下げる可能性がある中で、予想物価上昇率が下がっていく、あるいはデフレマインドからの転換、よいモメンタムが逆戻りしてしまうという懸念があったので、そういったことにならないように「量的・質的金融緩和」の拡大を行ったということです。』

だそうです。

『そうしたもとで、今のところ、中長期的な予想物価上昇率は維持されていて、目立った低下はしていないということです。ブレーク・イーブン・インフレーション・レートについては、「量的・質的金融緩和」の拡大を行った後、上昇しましたが、その後の世界的な原油価格の下落等のもとで、また下がってきていることは事実です。しかし、最初に申し上げた通り、予想物価上昇率というのは、ブレーク・イーブン・インフレーション・レートだけでなく、様々な指標でみていく必要があります。』

はいはい手前味噌手前味噌。

『こういった議論は、米国等でも行われていますが、何度も申し上げた通り、賃金の上昇率も、非常に重要なファクターであり、そういったところからみて、「量的・質的金融緩和」を拡大した後、その効果もあって、広い意味での予想物価上昇率が上がったところで維持されていると思っています。この動向については、企業や家計の物価観といったことまで含めて、総合的にみていく必要があります。それについて、10月31日の時点で低下する懸念があったので「量的・質的金融緩和」を拡大し、拡大した後、幸いに、そういった懸念が顕在化することは防がれていると思いますが、今後、そういった広い意味での予想物価上昇率の動き、企業や家計の物価観をよくみていく必要があると思います。』

何ちゅうかもう屁理屈が凄い。

『2%の「物価安定の目標」について何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じて、2%の「物価安定の目標」を実現するために必要ということになれば、前から申し上げている通り、躊躇なく調整を行うということに変わりはありません。』

しかも恐らく質問した方としては後半の追加緩和のことについて何か喋らせようとしていたと思われるのですけれども、追加緩和絡みの質問は見事にスルーの巻ですな。



○質疑が噛み合っていない例を2件ほど

どうも資産買入政策をそもそもどういう目的、というか「買入によってどのような結果をもたらすので、その結果がこのように政策目標達成に資する」という話なのですが、何で実施してるんですか的な質問が債券と株の両方について質問があった訳ですが、答えが全然噛み合って無くてワロタので鑑賞。

『(問) 国債買入れに関して伺います、2%の「物価安定の目標」の達成のため相当な量を買われています。15年末には280兆円になるかと思うのですが、現状では市中発行分の25%を超えており、現状の枠組みからいくと、2%の「物価安定の目標」を狙って、さらなる増額も考え得るかと思います。残存期限を7〜10年とするように買っていて、出口のタイミングははっきり分かりませんが、償還を待ってもなかなか残高が減らず、景気回復して物価が上昇すれば金利も上昇して、日銀にもロスが生じるかと思います。中央銀行の総裁として、これだけ国債を買って先行きどうなるか、リスクや懸念を現状でどのようにみていらっしゃるのかお伺いします。一方、米国ではティーパーティーが政府の財政政策や中央銀行の緩和政策を批判しています。日本の場合には、政府でも民間でもなかなか見当たらないのですが、中央銀行がここまでの国債を買い続けて、異常な政策なのではないでしょうか――異次元緩和といわれるのはわかりますが――。この辺りのところを総裁がどの程度深刻に考えていらっしゃるのかお伺いしたいと思います。』

この質問は「一方」以下が余計ですな。しかし答えは質問の遥か斜め上を行くのでした。

『(答) 中央銀行は、どこの国でも通常、一定の利益を出し、それを政府に納付することになっています。中央銀行の利益あるいは財務について、全く意味がないとか考慮する必要がないとは思いませんので、当然、中央銀行として収益がどのように動いていくのか――特に収益を極大化するように行動しているわけではありませんが――、あるいは財務状況がどうなっていくか、には関心がありますが、中央銀行としての目標、役割はあくまでも物価の安定と金融システムの安定です。現状、金融システムは安定していますが、物価が安定していない、2%の「物価安定の目標」への途半ばというところですので、2%の「物価安定の目標」を達成するために、必要なことは何でもやっていくということに尽きると思います。』

・・・・・・・・・・・・・これだけ全然答えになっていない答えも珍しいので、まあ聞かれたら困る質問なんでしょうね。


株について。

『(問) ETFの買入れ政策について3点お伺いします。今、株式市場関係者は、日銀がETFの買入れをしたのかどうかを、夕方、固唾を飲んで見守っているという状況です。今日は買ってくれなかったとか、あるいは今年の分は終わってしまったのか、というようなことで毎日騒いでいるわけです。1点目の質問は、もうこの時点で株価形成を歪めている懸念があるのではないかと思いますが、総裁はそう思われないでしょうか。2点目は、改めてですが、この政策の意図は何であって、日銀の本来の意図の通り今機能しているのでしょうか。3点目は、この政策について弊害があるとしたら何が考えられるでしょうか。』

中々良いツッコミなのだが答えが斜め上。

『(答) ETFの買入れについては、日本銀行の買入れ残高が年間約3兆円に相当するペースで増加するように行うということを、政策委員会で決定し、それに沿って執行部が運営しているわけですが、実際の買入れというのは、市場の状況に応じて、日本銀行が定める基準に従って、受託者である信託銀行が行っているわけです。その基準の具体的な内容は、市場に不測の影響を与えることがないように、明らかにしない扱いとしています。』

そんな事は質問していない。

『これまでのところ、 ETFの買入れは、リスクプレミアムの低下を促すという所期の効果を発揮してきていると思います。中央銀行が国債以外のものを買入れるというのは、やや異例ではありますが、ご承知の通り、リーマンショック後は、欧米の中央銀行も、それぞれの経済、金融市場の動向に合わせて、国債以外の様々な金融資産の買入れ等を行っており、わが国の場合は、今申し上げたリスクプレミアムの低下を促すという観点からETFの買入れを行っています。』

リスクプレミアムの低下を促すという観点とかいってますが、現時点で株式市場のどこにリスクプレミアムが存在するのか小一時間問い詰めたい。

『なお、マーケットの価格に影響が出るのではないかということですが、リスクプレミアムの低下を促すという意味で影響が出るということは、まさに政策の効果であり、国債を買った場合に、国債の価格に影響が出て、緩和という形であれば金利を押し下げるということがあるわけで、それは、そういうことがない場合に決まってくる価格と比べると、違ったものになるのは当然であって、これは金融政策が金融市場において、金融資産の売買を通じて政策を行っている以上、ある意味で当然のことであると思っています。』

という答えですが、国債の場合はリスクプレミアムの低下じゃなくて露骨に金利押し下げ政策をしている訳で、一方のETFはリスクプレミアムの低下、といっている訳で、もしその建付けを維持するならリスクプレミアムがどうなっているのかという話をしないといけないんじゃないですかねえ。

とまあそういう所で、どうもこう資産買入政策そのものがどういう波及経路で効果を出すのかという話についての説明や副作用の話とかになると説明が斜め上になるのはいつものことではありますが、今回の会見での説明は(追加緩和をした結果としてそうなったのでしょうが)更に酷くなっているなあと思うのでありました。


#てなわけで総裁会見ネタを今さらで恐縮至極

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2014/12/04

○今更の名古屋講演での総裁会見ネタで恐縮至極(しかもメモ程度で恐縮)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1411d.pdf

・為替の質問はお察し状態

『(問) 円安についてです。懇談会でも質問がありましたが、輸入資材が上昇するなどの影響が出ている、地元企業からそういう声が聞かれる、という話でした。最近の円安が日本経済に与える影響、とりわけ輸出産業が中心の東海地方への影響についてお聞かせ下さい。』

『(答) いつも申し上げていますが、為替相場の水準とか日々の動きについて、私の立場から、具体的なコメントを申し上げるのは差し控えたいと思います。その上で、一般論として申し上げると、円安は、輸出の増加あるいはグローバルに展開している企業の収益の改善、さらには株価の上昇といったプラス効果を持っています。』

>その上で、一般論として申し上げると

麿キター(違)。

『また、ものづくりの観点からは、今年度は国内での設備投資ウェイトを高めるという動きも出ております。もちろん、海外に移転した企業あるいは工場が戻ってくるというよりも、これまでのようなペースでどんどん海外に出ていくのではなく、むしろ国内の設備投資を強化しようという動きもみられています。』

『一方で、輸入コストの上昇やその価格転嫁を通じ、中小企業や非製造業の収益あるいは家計の実質所得に対する押し下げ圧力として作用するという面もあることも事実です。』

ふむ。

『このように、円安の影響は、経済主体によって様々に異なり得ると思っています。いずれにしましても、為替相場は経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいと思っていますので、今後とも、為替相場の動きを含め、金融資本市場の動向については、それが実体経済に及ぼす影響を含めて、引き続き、注意深くみていきたいと思っています。』


てな感じで以下為替の質疑が無駄に続くのですけど、これだけ引用しておきましょう。

『(問) 為替について、これまで黒田総裁は、経済実態を反映した動きであれば、日本経済に対しては、プラスの方がマイナスの影響よりも大きいということを繰り返しおっしゃっていましたが、今日はその発言を封印されていらっしゃるようです。その理由というのはやはり118円くらい120円近くになってきて、もうそろそろいいところにきたからとお考えだからなのか、それとも引き続きファンダメンタルズを反映した動きであれば円安の影響は日本経済に対してプラスだとお考えなのかどうか。まずこれが1点目の質問です。(以下割愛)』

まあこれだけ聞けば良いような気がするんだがこの回の質疑はやたら為替の質問が多くてちょっと食傷。

『(答) 為替レートについては、特に考え方が変わったということはありません。ただ、いずれにしても先程申し上げたように、為替レート、為替相場というのは、経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいわけです。日本銀行としては、あくまでも物価の安定を目標に金融政策を運営していますので、その過程で当然、金融資本市場の様々な状況、さらには雇用情勢、所得環境、成長といったこと、ありとあらゆる経済指標をみながら、金融政策の運営を適切に図っていきますが、あくまでも金融政策としては、物価安定の目標をできるだけ早期に着実に達成していくということに尽きると思います。(以下割愛)』

とまあ想定問答棒読みチックな回答になっていますが、11月MPM後の定例会見も含めまして最近の黒田総裁会見では「余計な事を言って無駄な波風を立てないようにしよう」という雰囲気がプンプン漂っている辺りに味わいがあるなあとは思います。


・追加緩和の効果に関して

この質疑は中々。

『(問) その議事要旨における反対意見について、ちょっとお伺いしたいのですが、主な反対意見として、追加緩和による効果は、それに伴うコストや副作用に見合わないとか、あるいは昨年4月の「量的・質的金融緩和」の導入時に比べて、10月31日の拡大については追加緩和の効果はかなり限定的ではないか、というような見方が出ていたと思います。10月31日の決定会合後に、政府は消費税の税率引き上げを先送りして、前提が変わったのですが、現在そういう状況を踏まえて、今日の時点で、追加緩和の効果についてどのようにお考えでしょうか。』

まあ無いとは言わないのは明らかですけど説明を鑑賞しませう。

『(答) 追加緩和の効果自体は、私は十分あると思っています。』

おぼちゃんキタコレ(違)。

『この拡大された「量的・質的金融緩和」を続けることについては、「量的・質的金融緩和」の拡大を決めた時の政策委員会で、同時に展望レポートを示していますけれども、そこでもあります通り、こうした追加的な金融緩和もあって、2015年度を中心とする期間に2%の「物価安定の目標」を達成する可能性が高いということになっています。』

定量的な効果についての説明マダー? (・∀・ )っ/凵⌒☆

『消費税云々というのは、当然、前回の展望レポートの見通しを示した時には、財政とか税制につきましては、政府で決まっているものを前提にしていますので、来年の10月に消費税率がさらに2%引き上げられるということを前提に見通しを立てているわけです。その後、政府がこれを18か月延期するということを発表されましたので、それを踏まえて、次の展望レポート、あるいは中間評価のところで、当然のことながら、政策委員の方々の経済見通しを集め、その際には、それぞれの方がそういったことの変更によって、経済や物価の見通しを必要があれば調整されると思います。』

ほうほう(・∀・)。

『今の時点で、9人の方々がどういった調整をされるかということを申し述べるということは、僭越でありますので、差し控えます。いずれにしても、展望レポートを半年に1回、出すわけですが、その見通し、あるいは中間評価等におきましては、それまでの様々な経済指標等を十分勘案して、適切な見通しを立てるということになっていますので、今後、そういった機会に、委員の方々が見通しについて述べられる、ということになると思います。』

ということで政策効果の質問に対して後半の消費増税先送りの件に対して経済見通しについて説明するという技を使って華麗にスルーという感じになっていまして、まあ効果に関する話については「効果はありまぁす(キリッ)」としか答えようがないというのは相変わらずですし、消費増税先送りで日銀盛大に梯子を外されるの巻については答えたくないという所でしょうなというのは把握しました。


#諸般の事情で今朝はこの程度で勘弁

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2014/12/03

○黒田総裁講演ネタである:先入先出で決済機能がどうのこうのの講演からメモ

まずは先入先出で昨日の講演。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141202a.pdf
決済システム発展の潮流と中央銀行の役割
── FISC創立30周年記念講演会 ──

まあ何ちゅうか講演の最後に(棒読み)と入れた方が良さそうな風情の講演ですがそれはそれとして少々ツッコミを。

なお、理念的な話の部分とかは基本的な今の方向性について説明しているので、テキストとして見る分には興味深いですが、この手の話は何回か出ていまして特に新しい話が加わっているという訳でも無いのでスルーします。というか黒田総裁の思いみたいなのが行間から全然伝わってこない(興味無いでしょうし)ので読んでいるこっちもイマイチ面白くないのが残念な所。

#なお決済システム関連はアタクシも割と好きな話なのは念の為申し添えます

・円と国債のグローバル化とな

『4.日本銀行の現在および今後の取組み』の『(1)新日銀ネットの構築と稼動時間拡大』から。

『新日銀ネットの稼動時間延長に関する主要金融機関や業界団体との協議会では、日銀ネットが21時まで延長された場合、アジアの夕刻あるいは欧州の午前中の時間帯に行われた取引の決済を、日本時間の夜間に日銀ネット上で行うことなどが議論されています。例えば、取引先企業のアジア拠点と国内拠点間の当日中の資金の集中や配分、海外の清算機関への日本国債の担保差し入れ、欧州市場における日本国債を担保としたクロスカレンシーレポといった取引への活用が期待されます。』

という事は前からよく言われていまして、特に日銀ネットの稼働時間をユーロクリアの時間帯まで延長する事によって国債をよりグローバルに使いやすくして、その結果として国債の国際化(ダジャレではない)をするというのは昔から日銀の決済系の皆様的に思い入れが強い所。

・・・・・・ではあるのですが、誠に遺憾な事に日本国債格下げ食らってバーゼル3の標準的手法的な観点からしますと日本国債にリスクウェイトやらヘアカットやらが掛かって、折角インフラを整えても肝心のブツの方が国際的な意味で劣化しているのが誠に痛恨としか申し上げようがありませんですな。

でまあその続きの『(2)クロスボーダー決済改善の検討』ですけどね。

『さらなる将来に向かっては、アクセス利便性が向上した新日銀ネットを活用しながら、日銀ネットを海外の中央銀行等が運営する資金・証券決済システムと国境を跨いで接続するなどし、円資金や日本国債をいつでもどこでも受け渡しできるインフラの整備を図っていく方針です。』

ということで、これは確か「円と国債のユビキタス化」ということでこれまた決済系の大いなる課題であり目標であるのですが、肝心の国債の格付けが以下同文というのが誠に惜しい。

なお、この項の最後にこのように記述があって、過不足なく説明されているのでご紹介。

『こうしたクロスボーダーの資金・証券決済システムの接続が実現すれば、例えば、自国国債を担保とした外貨調達(クロスカレンシー・レポ)の決済を、安全資産である中央銀行の当座預金を用いながら、DVP方式により行うことが可能となります。そして、こうした円滑かつ安全なクロスボーダー決済の実現が、円資金や日本国債の使い勝手や担保効率の向上、ひいては民間金融機関の収益力の向上等にも繋がっていくものと期待されます。』

『円資金や日本国債をいつでもどこでも受け渡しできるインフラを整備することは、わが国の長年の課題である「円の国際化」を決済の面からサポートするものでもあります。日本銀行としては、新日銀ネットの新たな機能を活用しながら、決済サービスの高度化を図り、わが国経済の中長期的な成長を決済の面からもしっかりと支えていきたいと考えております。』

ということで、かつてはヘルシュタットリスクガーとかいうような話をしていたのが隔世の感という話ではございますが、肝心の国債格付けが以下同文という事になりますと、やはり「日本国債は国内消化されているのだから無問題」とか能天気に言っているだけで良いのでしょうかという気はだいぶするのですがどうでしょうかねえ。


・リテール決済に関して

『(3)リテール決済高度化プラン策定の支援』ですが、日銀ネット稼働時間の延長で振り込みの時間がどうのこうのというのは最近のニュースでも出ていましたが、もう一つのネタの方が興味深いので引用。

『(金融EDIの活用)』という奴で。

『次に、金融EDIの活用についてです。企業間では、多くの場合、商品等の代金決済に銀行振込を用いていますが、決済を商品の受渡し時点ではなく、将来の期日にまとめて行うこと(掛売り)が多いため、振込まれた売掛金と請求書とをいちいち手作業で突合させる作業、すなわち売掛金の消込み作業を行っています。特に受発注の多い業界の企業などでは、これが相当の作業負担を伴うものとなっています。こうした問題を改善するものとして注目されているのが、「金融EDI」です。』

ふむふむ。

『EDIとは、Electronic Data Interchangeの略語で、商流情報、すなわち企業間の取引に関する受発注・請求データ等の商取引情報を、通信ネットワークを通じて交換することを指し示す言葉です。交換する商流情報は、必ずしも一様ではないことから、その記述に当たっては、現在の画一的な方式に比べて柔軟性と拡張性のあるデータ記述方式であるXML16を用いることが効果的であり、産業界ではXMLを用いたEDIの利用が進んでいます。』

ということで具体的にはどういう現象になるかと言いますと・・・・・・・・・

『さらに、商流情報を支払指図等の資金決済に関する情報(決済情報)に添付する仕組みができれば、先ほどお話した売掛金の消込み作業をコンピュータによる自動処理で行うことができるようになり、企業における決済関連作業の効率性を向上させる余地は大きいといえます。このように決済情報と商流情報を併せて授受する仕組みのことを金融EDIといいます。』

ということで、従来は決済情報は決済情報、取引情報(アタクシが小僧の時代には「商流」という言葉を聞いた事がなかったのと、どうも日本語っぽくない語感なのでどうも使うのに躊躇する)は取引情報でという形になっていたものを、一括管理できますよという話で、それを標準化しますと水平展開できるので皆さんの利便性が高まるよという話。

『この点、欧州では、単一通貨ユーロのメリットを最大限発揮させたいという明確な戦略の下、XML電文を統一フォーマットとして採用し、金融EDIの活用に向けた取組みを行っています。この取組みは、銀行界・産業界を含む関係機関が十年以上に亘り取組んでいるプロジェクトで、現在、銀行が統一フォーマット対応を終え、取引先企業が従来のフォーマットを使用していても、それを統一フォーマットに変換するような金融サービスを提供するなどしながら、その浸透を図っています。』

ほほう。

『わが国では、先月、全銀協を中心とする銀行界および金融EDIの活用に関心の高い流通業界において、金融EDIに関する実証システム実験を行っています。このように、全銀協を中心とする銀行界と産業界は今後も連携しつつ、銀行振込における商取引情報の活用の実現に向けた具体的な検討を進められるものと思います。日本銀行としては、こうした取組みについても、積極的に支援していきたいと考えています。』

ということでありまして市場的には馴染みの無い話ではありますが、興味を持っておくのも吉かと存じましてご紹介。


・ところで国債決済T+1はですなあ・・・・・・・・・・・

次が『(4)国債決済期間短縮化の推進支援』。

『日本銀行では、これまで、日本国債の取引にかかる決済期間の短縮化に向けた市場参加者の取組みについても支援してきました。』

「市場参加者の取組みを支援」ですかそうですか(−−;

でまあこれまでの流れの説明があって今後の話。

『日本国債の決済については、2012年4月に15年ぶりにT+2決済に移行していますが、現在、さらなる短縮化、すなわちT+1化に向けた取組みが進んでいます。先月、日本証券業協会の下に設けられたワーキンググループが「国債取引の決済期間の短縮(T+1)化に向けたグランドデザイン」という形で、T+1化に向けた課題と対応方針を公表したことは、時宜を得たものと考えています。』

市場機能がどう見ても死につつある状況において市場にストレスを掛けてどうするとしか思えないので、別に趣旨には反対しないがQQE政策が出口になって、出口政策が円滑に進んでいるのを見届けてから実施すれば良いんじゃないですかとしか申し上げようがないですし、日銀様の理論によれば2015年度半ばには2%到達が見えてきてその後安定的に推移するって話ですから2016年度のどこかでQQE出口に向かえるということでしょうからねえ。

でまあその後も説明があるのですが、何ちゅうかこう講演テキストは良くできているのですが、黒田さんがこれに何か思い入れを込めて話をしているかというとそういう感じが全く伝わらないというのが極めて残念にも程がある訳で、折角良い素材で良いテキストなのに引き込まれるような感が無いのが実に惜しい所です。

ちなみに同じ決済システムの話でしたら中曽副総裁が先日講演をしていまして、そっちのテキストの方が引き込まれる感があるのですが、惜しい事に英文だけなのでお暇な方はどうぞという所です。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko141125b1.pdf
Toward Innovative Payment and Settlement Systems
Keynote Speech at the 9th Asia Banking CEO Round Table

『The plan of my talk is summarized on slide 1. First, I will consider where we currently stand and what we can expect for the future. Next, I will elaborate on four major areas in which we are exerting efforts toward better payment and settlement systems. After that, I will briefly touch on recent developments in Japan’s economy and the conduct of monetary policy under the quantitative and qualitative monetary easing. Lastly, I will make my concluding remarks.』

まあ最後の金融政策の話の所だけしかニュースヘッドラインに出ていませんでしたが、本当に面白いのは前半の所で、ユビキタス化についてもちゃんと「ユビキタス」とか言っているので中々。


○先週の名古屋での総裁講演は途中まで全然面白くなかった件について(これまたメモ)

ということですいませんすいません。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141125a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 名古屋での経済界代表者との懇談における挨拶 ──

・全体的には展望レポートの説明とか11月MPM会見での説明とかと同じ

経済物価情勢に関する説明部分ですが、まあ時期が時期というのもありますし、追加緩和の梯子を盛大に外されてあばばばばーというのもありますしということで、11月MPM会見での想定問答集読みまくり攻撃を彷彿させるような展開。

つまりですな、もう思いっ切り今回は公式見解をなぞった説明になっていまして、余計な事を言って波風立てないようにというのが良く判る講演でありましたということで、特に本論部分で引用するようなお話はありません。ただまあその「引用するようなお話はありません」というのがインプリケーションという所でして、以前のように消費税増税ガーとか財政再建ガーとか言わないというのが、黒田さんと政治との間合いの微妙な変化を示しているのではないかと思うのは考え過ぎじゃないとは思うのですけどね。


・ということで最後の部分だけ引用

『5.おわりに』の所は意志が見える部分なのでここをネタに。

『今回の「量的・質的金融緩和」の拡大によって、最も分かって頂きたいことは、日本銀行が2%の「物価安定の目標」を、できるだけ早期に、そして安定的に実現すると強くお約束しているということです。』

白井さん聞いてますか〜(・∀・)

というのは兎も角として、ここでの説明でも「実際に2%ないしそこに極めて近い数字を付けに行かないと物価安定目標の達成を宣言するわけには行かない」というのが伝わってくる訳で、しかも期間を短くと言っているのですから、「当面」現状程度としてもその後(当面というのは数か月のタームで半年とかでは無いと言うのが日銀文学用語)に物価上昇傾向が強まらないとどう見ても追加緩和でして、その判断時期となりますと1月の中間レビューだとまだ「当面」の範囲内だけど4月の展望レポートでは「当面」の範囲を越えているから判断時期ですよね!!!

『そのもとで、企業の皆様が、実際に、2%の物価上昇を前提として意思決定や経済活動を行って頂けることを期待しています。さきほどお話しした「デフレマインドの転換」とか「予想物価上昇率の上昇」というのは、市場のブレーク・イーブン・インフレ率とか、エコノミストなどのサーベイの数値が上がるかどうか、ということだけを意味するのではありません。むしろ、それらは、企業経営者の皆様の「頭の中」にあり、実際の意思決定や行動として表れる、と考えるべきだと思います。』

BEIを重視している置物さん聞いてますか〜(・∀・)

『長年のデフレの後、今それが変わりつつあることは、皆様が一番よくお感じになっているのではないでしょうか。皆様の頭の中にある企業の価格戦略や雇用・賃金の運営は、2年前とは確実に違っているはずです。今春の賃金交渉で久方ぶりにベースアップが実現したことは、そのひとつの証拠だと思います。』

ということで・・・・・・・・・・

『その意味で、来春にかけての賃金や価格設定の動向に、大きな期待とともに関心を寄せているところです。』

まあ需給ギャップの改善で物価上昇というパスが労働市場の需給改善で賃金ガーの一本足打法ですからこうなりますという皮肉は兎も角として、賃金動向にやたら注目しているというのは示されていると思いますので、物価統計と共に勤労統計などのデータ重要と。

『また、「デフレマインド」が転換していく過程では、「現預金を持って何もしない」ことのコストが高くなります。企業の戦略として、例えば設備投資や人材への投資、あるいは下請け企業を含めた生産体制全体の整備などに、積極的に「収益を使っていく」ことが求められるということです。同時にそれは、円高の修正やデフレ脱却の果実を広く経済全体に均霑するプロセスにもなります。歩みをここで止めてはなりません。日本銀行は、物価安定の目標の実現のため、これまでも「行動」してきましたし、これからも「行動」を続けます。最後に、企業の皆様のデフレ脱却後を見据えた「行動」をお願いして、ご挨拶としたいと思います。』

とは言いましても成長期待(別にマクロの成長期待ではなくてその企業的なミクロの成長期待で良いのですけど)が無い中で実質金利がマイナスだからよーしパパ設備投資しちゃうぞとは成らない訳で、まあ中々難しい罠とは思うのですが、実際問題こうやってアジ演説する位しか中央銀行が出来る事って無い筈なのですよね。まあインフレ期待が高まって実質金利が下がると自動的に消費や投資が出るという謎理論を唱えている置物直線一気理論という訳にはいかないでしょうなあという事で。

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2014/11/21

○総裁会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1411c.pdf

まあ今回の会見ですけど、昨日ちょっと申し上げましたように会見の出来が全般的に宜しくなく、総裁は想定問答集を見ながら質問に対して的を外した答えに終始し、一方で質問する方は同じ質問が多くて、結果として質疑が同じところで話が噛み合わない中でグルグルするという内容になっていて遺憾にも程がある状態でございました。

・「一般論として申し上げると」ワロタ

質問に対して回答できないけど一般論として申し上げる攻撃で微妙に「それはその通りだが言うと地雷」という説明をするのはどこぞの麿総裁の得意技ではございましたが、黒田さんがこのフレーズを炸裂させるとな。

『(問) 安倍総理大臣が昨日、消費税率の10%への引き上げを1年半先送りすることを表明致しました。国内景気への影響や財政の信認の観点からの影響について、あらためて総裁のご所見をお伺いします。』


『(答) 以前から申し上げている通り、消費税率の引き上げについては、政府・国会において、経済状況等を総合的に勘案して判断されるものと認識しています。』

ここで止めるのではなくて・・・・・・・・・・

『その上で、一般論として申し上げれば、国全体として財政運営に対する信認をしっかりと確保することが重要です。』

キタコレ!!!

まあ何ですな、麿先生の場合って「公式見解としては大人の事情もあるからこう答えないといけないのだが本来はこういうもんじゃろ」という話をしたい時に「一般論として申し上げれば」攻撃が出ていたのですが、黒田さんも似たような感じだなあと思われる次第でして、増税先送りでハラワタが煮えているのが示されている物と推察致します(^^)。

『この点、政府は、「中期財政計画」において、数値目標とその達成に向けた取り組みを明確に示しておられます。税制や歳出のあり方など財政運営の内容について私の立場からコメントすることは差し控えますが、こうした計画に沿って持続可能な財政構造を確立するための取り組みが着実に進められていくことを期待しています。』

ってことで要するに財政再建ちゃんと実施しろゴルァ!!と言いたいのでしょうが、ただまあ総裁会見の映像見た感じですと今回の黒田さんは弱っている感が強くて、麿先生の(後日ベースなら以前から会見映像はベンダーで見れましたので念の為)「一般論として申し上げれば」よりもだいぶパッとしないなあという風には思います。

つーかまあ黒田さん的には増税サポートという事も考えて追加緩和に舵切ったのではないかという所だったのに、それに対して増税先送りもさることながら、「デフレ脱却に向けた取り組みを続ける」というような返しを政治サイドから打ち込まれていまして、それって「日銀の取り組みがまだ足りない」と言われているようなもんですから、黒田さんからしてみれば追撃追加緩和して以前の共同声明に則って政府の財政健全化と成長力強化政策推進しろという球を打ち込んだつもりが10倍返し位の勢いで叱責が飛んできているという流れと推察しますので、この一般論云々も何か「政治に向けた強いメッセージ」というよりは「引かれ者の小唄」っぽく感じるのはアタクシの目が偏っていますかそうですか。


・ということで共同声明に関する質疑

上記質疑の次がこれ。

『(問) 先程の質問に関連して、政府と日銀の共同声明の有効性についてお伺いしたいと思います。消費増税の先送りが昨日首相により表明され、10%への引き上げが1年半先送りされることが決まるわけですが、日銀は追加緩和をし、一方で政府は先延ばしするということは財政規律が失われているということにならないのでしょうか。』

(・∀・)ニヤニヤ

『いわゆる共同声明が空文化しているのではないかという指摘もあろうかと思います。かねて総裁は、財政再建が大事だとおっしゃっていたわけですが、2020年度のプライマリー・バランスについて、何ら裏打ちがない状態の中でも財政規律が保たれているとお考えなのかお尋ねしたいと思います。また、もし財政規律が失われた場合、金融政策の有効性が問われる状況になろうかと思いますが、そういったご懸念は一切ないのでしょうか。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『(答) ご指摘の共同声明は、昨年1月に政府と日本銀行が示した共同声明ですが、その中で、日本銀行、政府は、お互いの役割を明確に認識した上で、それぞれが取り組むべきことをはっきりと示しております。そのもとで、日本銀行は2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指し、ご案内のように最大限の努力をしています。政府も機動的な財政政策や、成長力・競争力強化とともに、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進するとした上で、中期財政計画を策定し、財政健全化に向けた数値目標と、その達成に向けた取り組みを明確に示しておられます。』

そんな事は今更説明されんでも分かっとるわ。

『日本銀行としては、こうした計画に沿って、持続可能な財政構造を確立するための取り組みが着実に進められていくことを期待している次第です。』

「期待する」んじゃなくて取り組みが進まないと思うのなら財政ファイナンスと見られるような緩和は継続できないちゅう話なんじゃないですかねえ。

『また、後段で述べられた財政規律の問題というのは、極めて重要な点であります。』

そんな事は今更(以下同文)。

『この点については、今申し上げたような共同声明、さらに中期財政計画に沿って持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に進めるということが、財政規律を保つために極めて重要であると考えています。』

思いっ切り話が循環しているだけで、結局共同声明の内容を読み上げたのと全然変わらない答えをしていまして、懸念がどうのこうの的な話を全然答えていないのですな。

でまあこの質疑っちゅうのが冒頭説明に続く3つ目の質疑となっているのですが、これ以降の質疑応答が延々とこんな感じで推移しているのが今回の会見の特徴ではあります。


・ところで前提が変わったのですが見通しは変わらないのですかという質問

ちょっと先に行きまして。

『(問) 総裁はかねてから、消費税率が予定通り引き上げられることを前提に政策運営を進めておられるというご説明をされていたかと思うのですが、今回、総理が先送りを表明されたことで、今実施している金融緩和の効果に変化が出るのか、または日銀の経済・物価見通しに変化が生じるのか、についてどうお考えかということと、本日そうした議論がなされたのかどうか教えて下さい。』

当然の質問。

『(答) ご承知のように、展望レポートの経済・物価見通しは、一昨年の夏に成立した法律に基づいて、2015年10月に消費税率を2%引き上げることを前提に作成しています。またそうした見通しを踏まえて、2%の「物価安定の目標」の達成を確かなものとするために、「量的・質的金融緩和」の拡大を先般決定しました。』

そんな事は今更・・・・ですけど、まあこういう感じで説明しているのが多い訳よ。

『従って、今回の追加緩和は、あくまでも「物価安定の目標」を達成するために必要な調整として決定したものであり、消費税率の引き上げについては、先程申し上げた通り、政府・国会において議論し、決定されるものと認識しています。なお、今後の展望レポートあるいは中間評価については、当然のことながら、今後の経済動向、さらには政府・国会の決定等を適切に反映して、必要に応じて調整されていきます。あくまでも、経済動向をみてやっていくことになると思います。』

えーっとすいません、金融政策決定会合の度に政策判断をしている訳ですから、その度に情勢の変化に応じて調整する筈ですけど、何で「展望レポートあるいは中間評価」という話になるんでしょうかと思います。

つーかですね、会見冒頭で説明している声明文に含まれる見通しが前回対比でどうなったかという話をすれば、それが「消費税率予定通り引上げを前提にした時点との違い」になるので(それですとまあ微妙な差異はあるけれども昨日ネタにしたように展望レポート基本的見解と特段の変化はない)、「大きな変化はありません」ってな話になりますし、従来からの説明を敷衍すると「消費税率の引き上げは短期的には駆け込みと反動がツーペーなので中立、中長期的には実質可処分所得への影響とか財政健全化期待によるコンフィデンスの改善などの影響を総合的に勘案」という話になる筈。

ただまあそういう説明では無くて、何か想定問答の別のページ読みながら答えたような微妙に質疑が噛み合わない説明をするのって、よーするに黒田さんとしては増税先送りが想定外のショックな上に、政府にタマを投げたつもりが全力で打ち返されてさて困ったという感じなんでしょ。

あとついでに申し上げますと、毎月の会合で点検している件じゃなくて「展望レポートおよび中間評価」という言葉が出てくる辺りが微妙に味わいがある訳で、これは先行きの追加緩和をしないといけなくなるという意識がどこかにあるんじゃないですかねえと思うのは深読みのし過ぎですかそうですか。


・財政健全化に関する質疑が続くのですが財政へのコンフィデンスについては知らんがなという話から

まあこんな感じで「今回の消費増税見送りって追加緩和の梯子外しですよね」VS「知らんがな」という質疑が続いてしまって残念なのですが、その中からこんな質疑を。

『(問) 先程の幾つかの質問と関連しますが、増税が先送りされた場合のリスクについて、政府・日銀とも対応のしようがないということになりかねないと、確率は非常に低いとおっしゃっていますが、その影響は甚大なものになる可能性があるという意味ではリスクが大きいとおっしゃっています。』

うむ。

『今回ともかく増税が先送りされたことで、リスクはやはり出てくるのではないかと思います。日銀が追加緩和に踏み切ったことで、年間に発行されている国債の発行量のほぼ全額を日銀が買い取ることになり、その結果、増税が先送りされても長期金利は引き続き低い水準にとどまっています。結局、長期金利の低さが財政の規律を弛緩させているという指摘は結構強くあります。』

うむ。

『もし、対応不可能になるようなリスクが顕在化した場合には、黒田総裁、そして日銀はどのような責任をお取りになるつもりなのか、まずそれをお聞きします。(後半割愛というか次に)』

(・∀・)ニヤニヤ

『(答)(前半が後半の質問への答えなので次に)なお、財政規律の問題については、政府・国会の責任であり、中央銀行が責任を取るといった問題ではありません。あくまでも中央銀行としては、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することが課せられた課題であり、それに向けて着実に前進するということが何よりも重要であると思っています。』

まあこれはこう言っておかないと全て日銀(というよりは黒田岩田コンビ)のせいになるという話でございますのでそうですなとは思いますが、そもそも論として国債を馬鹿買いすることによって金利を押し下げる事によって「財政規律に関して市場が早期警戒を示すという機能を喪失させていますよね」という論点に関して責任が無いというのは図々しいのではないでしょうかねえ。


・マイナス成長で物価が上がるのかという質疑だが追加緩和の逐次投入あるで!!という答えを見た

上記の質疑はもう一つのネタがありまして。

『(問)(前半割愛)もう1点、これも先程質問がありましたが、今年度の成長率はマイナスになる可能性が高いとの見方が専らです。日銀が次回の中間評価で下方修正すると5回目になります。』

(・∀・)ニヤニヤ

『昨年4月4日に黒田総裁は、2年で2%の物価目標を達成するために必要な措置は全て決定したと高らかに宣言されましたが、つい最近10月31日には追加緩和に踏み切りました。結局、QQEは円安をもたらして物価をその面から押し上げる効果があったとしても、景気を良くする力はほとんどなかったということ、これはお認めになった方が良いのではないかと思うのですが、如何でしょうか。』

そら認めないでしょう・・・・・・・

『(答) 後段のご質問については、全くそのように考えていません。公表文や展望レポート等で政策委員会の支持を得て示されている通り、「量的・質的金融緩和」は、景気あるいは物価に対して所期の効果を発揮していると思います。』

「公表文や展望レポート等で政策委員会の支持を得て示されている通り」って言ってる辺りが微妙な味わいもありますが。

『もとより、世界経済の回復がもたついていたとか、あるいは最近時点では、商品市況、特に原油価格がかなり大幅な下落をしているなど様々な要因が景気や物価に影響していることは事実ですが、経済見通しはその時点でのあらゆる情報を総合して、そしてその時点で最適と思われる政策をとり、その後、結果がどのように出るかに応じて、上下双方向のリスクを点検して、必要があれば躊躇なく政策を調整するということでやってきています。「量的・質的金融緩和」が所期の効果を発揮していることは間違いないと思っています。』

まあこう答えるしかないのでしょうが、そもそもの置物直線一気理論だとマネタリーベースを必要なだけ出せば期待インフレが適切な水準に向かって調整されるので、それによって内生的に需要が発生するというメカニズムを説明していた訳で、金融ショックのような要因なら兎も角、上記説明のレベル程度の要因で一々調整しなきゃいけないような話では無かった筈なので、その辺に関しまして置物副総裁の置物理論を小一時間問い詰めたいのですが。

まあ悪態は兎も角としまして、上記の説明からしますと「必要があれば躊躇なく調整」というのが、これまでの説明では「必要があれば調整するけどそもそも必要な措置は全部打ってますし見通し通り推移していますよ(キリッ)」というニュアンスとでしたが、追加緩和実施以降のこの文言は(発言の字面は同じですけど^^)、「躊躇なく調整」の方に思いっきり力点が置かれていまして、そもそも足元の物価と短期的な物価見通しを基に追加緩和実施しているというのを勘案しますと、声明文で示された「当面」に相当する期間以降も物価が1%辺りでウロウロしていると追加緩和待ったなしと考えるのが妥当でありまして(まあ今回みたいにまた豹変するかも知れないけど)、少なくとも市場の方が(債券市場的にはもうお腹一杯でお腹破裂しそうな状態なので勘弁なのですが)追加緩和マダーと催促してくる展開になるんでしょうなあという所です。


・答えが噛み合っていないものの白川ドクトリンを全否定したいのが判る質疑

小見出しが長いですかそうですか。

『(問)(前半割愛)2つ目は原油価格下落の影響についてです。総裁が着任されたばかりの頃に、中国のスローダウンなどで一次産品が下落しても「物価安定の目標」達成は大丈夫ですか、と質問させて頂いた時に、日本は世界から孤立して15年間デフレだったので、世界の商品市況の動きとは割と独立に、デフレ脱却し2%を達成できる、というような解説をされたかに記憶するのですが、それと現在との整合性をお願いします。』

インフレは貨幣的現象なのだから適切な貨幣を供給すればインフレを制御できるし、それができるのは中央銀行だけなので中央銀行の責務として物価安定目標がある、という話ですが何で足元の動きで反応したんですかねえという質問でもあるとは思いますが。

『(答)(前半割愛)それから、以前にどういうことを申し上げたか、今のご質問では必ずしもはっきりしませんが、私が従来から申し上げていたのは、中国から安いものが入ってくるとか、あるいは日本が少子高齢化しているとか、そういったことが原因でデフレになっており、金融政策では如何ともしがたいといったような議論がかつてありましたが、それはおかしいのではないかということです。』

まあ白川ドクトリンにしても別に「如何ともし難い」という話をしているのではなくて、それよりも「経済の実力に見合った物価水準というのがあるので、2%を短期的にアプリオリに目指すものではない」という考えのもとで「金融政策で時間を稼ぎつつ成長力の強化をして適正な物価水準を徐々に押し上げていく」というような話であって、別に「金融政策では如何ともしがたい」という話をしている訳ではないのですが、どうも日銀批判サイドが白川さんの発言を針小棒大に宣伝するのが効いていた面はあるなあ(そういう意味では「期待に働きかける政策をしろ」とか言いながら白川さんを批判していた向きが一番その「期待形成」の邪魔をしていたんですけどねえ)とは思うのですけどまあこの話をああだこうだ言い出すと話が発散するのでこの辺で。

『中国から物をたくさん買っているのは日本だけではなく、米国あるいは欧州、アジア諸国もそうです。それから少子高齢化となっている国は、日本だけではなく、欧州にもたくさんありますし、実はアジアにも他にあります。そうした中で、世界で唯一15年続く日本のデフレを、今言ったような国際化あるいは少子高齢化とかで、説明するのは無理なのではないかということです。様々な事情で、物価押し上げ圧力あるいは押し下げ圧力は色々あると思いますが、そうしたもとで、やはり物価を安定させる責務が、中央銀行にあるのではないかということです。その点は、今でもそのように思っており、そうした観点から「量的・質的金融緩和」を導入し、拡大をしたと、私自身も理解しております。』

ここのこだわりが強いのは分かるし、まあ言ってる事はわかるのですけど、だからと言って「短期間で2%を達成」というのが本当に適切なのかというのは別のような気がしますし、そらまあ均衡を破る為にやや極端な動きをする必要があるのも判るのですが、適当な時期に勝ち逃げを検討した方が良かったような気がします。

ただ残念なことに、足元で官邸サイドからまだデフレみたいな言い方をされてしまっていますので、ちょっと「勝ち逃げ」が難しくなってしまったのもありまして、いやこれは黒田さん相当追い込まれていますなあとか言ってますが、黒田さんが追い込まれると債券市場に再度追加緩和のおかわりが打ち込まれて来ますので、そういう意味では債券市場も追い込まれるのですけどね(吐血)。

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2014/11/20

○決定会合レビュー:総裁会見に関してのファーストインプレッション

まあ会見テキストが出てからという感じではありますが、今回の会見の中継をベンダーで見ていたのでその感想だけ先にメモを置いておきます。

・質疑応答が全然噛み合っていなかったので話が循環していた件

今回の会見ですが、前回以上に黒田さんが悄然としていた感じが強くなっておりまして、質問に対する答えが全然噛み合っていなくて、ひたすら「QQEは所期の効果を上げています」みたいな話を繰り広げるという誠に残念な状態になっていました。

従ってこれ会見をテキストに起こす事務方涙目という感じだと思うのですが、どう作っても今回の会見は質問と答えが全然繋がらないような会見要旨に仕上がるしか無いと見られますので、その出来上がりを鑑賞したいという所です。

当然ながら「質問に対して全然答えていない」という動きになっていますので、質問する方がややお怒りモードで同じような質問を繰り返し、それに対して答えになっていない答えを繰り返すという感じで会見がひたすらループしていまして、聞いている方が途中で辛くなるという状況になっていて、会見放送を開始したばかりの時の自信満々の黒田さんは何処へ???という誠に残念な感じになっていました。


・やたらめったら想定問答を見ていた件

あと、今回の会見中継をベンダーで見ていて物凄く印象が強かったのは、質疑応答の間に黒田さんが手元にある想定問答集(しかし見てましたが結構な量ですなあ^^)を何度も繰りながら話をしていた所でして、これまた会見放送を開始したばかりの時に市場の皆さんビックリした自信満々モードの時には想定問答を何度も繰るなどという光景は無かったので、物凄く強い印象を受けましたですよ。

まあ何ですな、もともと「追加緩和」自体が黒田さんロジック(だか置物理論だか知らんが)的に崩壊気味の所へ来て「消費増税延期」というショックまであって黒田さんの中でもはやロジック崩壊状態になっているので想定問答をきっちり読んでいかないと説明が付かんという状態になっているのではないかなどという甚だ遺憾な状況を想定してしまったのですが、それは杞憂であることを願いたいものでございます。

いやまあ従来も想定問答を繰る場面などあったのですけど、今回は会見の最初から最後まで想定問答をピラピラめくりながら行ったり来たりしていたという感じで、今までにない状態だったのが凄まじく気になりまして、これは黒田さん弱ってますなあという風に映ってしまうので何かどうだったのかと思いますよ。

なお、仮に政策ロジックが崩壊(というか分裂というか)で、足元の物価にフォーカスした動きに思いっ切りシフトしているという事は即ち従来の「全部投入」も反故になっているという事になりますので、兵力の逐次投入が今後も割と抵抗なくホイホイと行われるという事を意味するので、今後の物価動向次第ではあります(円安が神風になるといいですね棒読み)けれども、物価がアガランチ会長ならばホイホイ追加緩和が飛び出す事になるでしょう。何をするのかを想像すると頭がクラクラしますが。

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2014/11/06

○きさらぎ会キタコレ

いやー今回の政策決定がアタクシ(だけではないですが)が妄想するようにあまり練って無くて一気に決まったとしたらこの講演テキスト作るのも大変だったんじゃないですかねえとは同情。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141105a1.pdf
2%の「物価安定の目標」の実現を確かなものに
── きさらぎ会における講演 ──

昨年のきさらぎ会ではQQEに関して「デフレ均衡からの遷移を狙う」というような話を強調したり、その他にも色々と理念的な部分の説明がありましたが、それから1年経過してどうなったでしょうか。


・追加緩和はありていに言えば足元の物価対応という説明がより明確に

『2.「量的・質的金融緩和」および今般の拡大の意義』から。

『はじめに、「量的・質的金融緩和」の目的と効果について、振り返っておきます。日本銀行は、昨年の4月に、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するために、「量的・質的金融緩和」を導入しました。「量的・質的金融緩和」は、次のような基本方針に基づいて設計されたものです。』

『第1に、長年にわたって日本経済を劣化させてきたデフレから脱却するために、「できることは何でもやる」ということです。第2に、日本銀行が「物価安定の目標を責任をもって実現する」と強く明確にコミットするということです。第3に、こうしたコミットメントを裏打ちする量的にも質的にも従来とは次元の異なる金融緩和を行うということです。』

えーっと確かその出来ることは何でもやるというのに則って必要な施策を全部打ち出したのではなかったでしたっけ???

『15 年にわたるデフレの間に、人々の間には、「物価が上がらない」あるいは「物価が緩やかに低下する」という考え方が定着してしまいました。これが「デフレマインド」や「デフレ期待」と呼ばれるものです。デフレマインドが定着すると、企業や個人はそれを前提に行動するため、デフレと景気の低迷が自己実現的に長期化することになります。このような悪循環から脱却するためには、従来とは全く次元の異なる金融緩和によって、人々の間に染みついたデフレマインドを抜本的に転換する必要があります。「量的・質的金融緩和」は、まさにこうした効果を狙ったものです。』

なんちゅうかね、それは判るのだがではなぜ潜在成長率が足元で低下する中で2%という実際の数値を短期にヒットしにいけないのかが良く判らんのですが、これはもしかして「キリッ」としながら実は「チラッ」と助け船(浜田先生スキーム的なの)を待っているのかも知れませんね(違うか)。

『もっとも、消費税率引き上げ後の反動減は、自動車などの耐久消費財を中心にやや長引いています。また、このところ原油価格が大幅に下落しています。こうした需要面の弱めの動きや原油価格の下落は、物価の下押し要因として作用しています。』

『生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、昨年末から1%台前半で推移してきましたが、9月には+1.0%まで伸び率を縮小しました。もとより、消費税率引き上げに伴う需要面の弱さは既に和らぎはじめていますし、原油価格の下落は、やや長い目でみれば、日本経済に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用すると考えられます。ただ、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできた「デフレマインド」の転換が遅延するリスクもあると考えられます。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、ここで「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断しました。』

ということでこの辺は会見での説明と同じで・・・・・・・

『以下では、今回の決定の前提となった経済・物価情勢について、ご説明します。』

とありますが、基本的に展望レポートの(微妙な)説明と会見での説明と、従来からの説明とのミックスで特段新しい話は無いのですが、物価の辺りでこんな話があるのがほほうという感じ。

『月々の物価は様々な要因で変動しますが、物価の基調的な動きは、経済全体としての需給ギャップと予想物価上昇率によって規定されると考えられます。「量的・質的金融緩和」導入以降の物価情勢の改善は、需給ギャップの改善と予想物価上昇率の上昇を背景とするものです。』

だそうですよ円安コストプッシュも消費税増税便乗も無い(それらは個別要因という括りになっているので)とのことで。

でまあ需給ギャップは改善していますという話があって、問題はインフレ予想だという話ですな。

『こうした経済活動の変化は、企業や家計の将来の物価に対する見方が変わり、予想物価上昇率が徐々に高まってきていることを示唆するものと考えられます。問題は、こうした変化が今後も継続するかどうかという点です。後程詳しく申し上げるように、このところ、消費税率引き上げ後の需要面の弱めの動きや原油価格の大幅な下落が物価の下押し要因として働いており、こうした下押し圧力が残存する場合、予想物価上昇率の改善が遅延するリスクがあります。今般の「量的・質的金融緩和」の拡大は、このようなリスクを未然に防ぐことを狙いとしています。』

ということで、予想物価上昇率の改善が遅れるリスクと言っていますが、その背景にあるのが実際の物価上昇率の改善が遅延している事であるという説明をしておりまして、これは結局のところ「足もとの物価上昇率改善足踏みを受けた追加金融緩和です」という話になっていますので、今後も物価上昇率の改善が足踏みすると追加緩和クレクレになるでしょうし、同じ理屈で追加緩和をしないと許してくれないという流れになるんじゃないですかねえ。


・中長期的に望ましい物価下落なのに何故追加緩和をするのかという話

これまた会見でも説明していましたがここでは少し詳しいので引用しておきます。

『この点、原油価格のような一時的な要因によって実際の物価上昇率が多少変化しても、中長期的な予想物価上昇率はあまり影響を受けないというのが基本的な考え方です。たとえば、米国では、原油価格の下落にもかかわらず、中長期的な予想物価上昇率を示す指標は、さほど変化していません(図表11)。ただ、米国の場合には、長年にわたって予想物価上昇率が中央銀行の設定する目標近傍にアンカーされている一方で、わが国は、「量的・質的金融緩和」によってデフレマインドを抜本的に転換しようとしている最中にあります。わが国では、米国などに比べれば、実際の物価上昇率の変化が予想物価上昇率の形成にも相応の影響をもたらす可能性があると考えておくべきだと思います。』

ということなので物価を上げる為に追加緩和するという話。以下続きますがめんどいので引用割愛します。まあその追加緩和がどういう効果で物価に波及するかのメカニズムの説明はこの講演でもろくすっぽ無いのですけどね!!


・2%を目指す意味についての説明がありますよ

最後の方に『2%の「物価安定の目標」を実現することの意義』ってのがありまして。

『日本銀行は、「量的・質的金融緩和」の導入当初から、2%の「物価安定の目標」の早期実現に強くコミットしています。物価の下振れリスクが大きくなったのであれば、追加的な措置を行うことは当然の論理的帰結です。その意味で、今般の措置は、我々の揺るぎないコミットメントを示すものに他なりません。』

屁理屈キター!!!!!

『もっとも、こうした日本銀行の方針に対しては、「成長率が高まらないもとで、物価だけが上昇するのは望ましくないのではないか」とか、「必ずしも2%にこだわる必要はないのではないか」といった意見も聞かれているところです。消費税率引き上げにより物価上昇が強く実感されることが、こうした見方を後押ししている面があります。』

これ超イカサマ説明にも程があるのですが、木内さんの提案とか佐藤さんや石田さんの講演とかを見ても、別に2%そのものに反対している訳では無くて、木内さんで言えば「中長期的に目指すべきではないか(という白川ドクトリン)」だし、佐藤さんや石田さんは「フォーキャストターゲットやより幅広い物価指標を総合的に見ながら柔軟に判断すべきで、単に足元のCPIの数値を2%ヒットさせに行くような政策運営を取るのは如何なものか」という話をしている(佐藤さんと石田さんの話を適当に混ぜてしまったのでご両人の真意と異なっていたらスイマセン)という話をしている(森本さんは前触れが無かったので判らんが佐藤さん石田さんに近いんでしょ)訳で、反論の筋を外して説明する辺りはまあ要するに説明が苦しいという事なんでしょうな。

『我々は、「物価が上がりさえすればよい」と思っている訳ではありません。しかし、緩やかな物価上昇を実現することは、悪い「デフレ均衡」から脱却するための必要条件です。』

だから何故短期に2%ヒットさせに行こうとする???

『デフレのもとでは、企業や家計がリスクテイクを消極化する中で、価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落という悪循環が続きます。こうした「デフレ均衡」から抜け出すためには、人々の期待を変化させ、経済主体が「緩やかに物価が上昇する」ことを前提に行動する状況を作り出す必要があります。そのような状況になれば、デフレ下での悪循環とはちょうど逆の循環が作用します。つまり、価格の緩やかな上昇を起点として、売上・収益の増加、賃金の上昇、消費の活性化、価格の緩やかな上昇というかたちでの経済の好循環が実現するということです。2%の「物価安定の目標」を達成することの意義は、「デフレ均衡」という「縮小均衡」を脱却して、国民生活がより豊かになる状況のもとで物価も緩やかに上昇する「拡大均衡」への転換を実現することにあります。』

と、「短期的にCPI2%ヒットさせに行くのがどうなのか」というのと別の理念的な話をするのはもう聞き飽きたのですが。 なおこの後も話が続くが飛ばしてその先。

『また、「2%の物価上昇率にこだわる必要はなく、1%程度でも十分ではないか」との意見も聞かれるところです。この点については、諸外国の例をみても明らかなように、物価上昇率は、景気変動に伴って、ある程度の幅をもって上下に変化するものであることを理解しておく必要があります。ある時点の物価上昇率が1%程度であるからといって、将来にわたってその水準で安定するという訳ではありません。「2%」の物価上昇率を目標とすることがグローバル・スタンダードとなっているのは、景気変動に伴って物価上昇率が変化することを勘案した上で、デフレに陥らないための「経験知」と言えます。』

「ある時点の物価上昇率が1%程度であるからといって、将来にわたってその水準で安定するという訳ではありません。」って何か凄い理屈を展開しているのだが、それだったらお前2%の物価安定目標をどういう風に判断するんだよオイオイオイとしか申し上げようが無くて、昨日引用した会見質疑応答での謎の「過去の見通しがおかしい」発言同様、白川ドクトリンに対する異常なまでの敵意が起きているようにしか見えませんで、まあ何ちゅうか置物ドクトリンが相当苦しくなって余裕がなくなったんだなあと思います。

ということで、潜在成長率が下がっているけどその中で早期に2%をヒットさせにいくのが国民厚生上良いのかという話は残念ながら今のドクトリンでは期待できず(反対派の審議委員はその問題意識がありそうですが)、あくまでも潜在成長とか関係なく2%を「早期に」達成するという話になっています。

ただですよ、フレキシブルターゲットの考えからすると経済情勢に応じてマンデート水準への着地への期間は適宜調整する、という考えでBOEとかFRBとかも運営している訳で、そんな中で何で早期にやる必要あるのよ?とは思うのですけれども、それに対しては前段の方にあった「インフレ目標がアンカーされていない」という理屈で返してくるのだと思います。


・たとえ話は程々に

で決め台詞だが。

『本日、ご説明したように、「量的・質的金融緩和」のもとでデフレマインドの転換は着実に進んできています。今、この歩みを止めてはなりません。デフレという慢性疾患を完全に克服するためには、薬は最後までしっかりと飲み切る必要があるのです。中途半端な治療は、かえって病状を拗らせるだけです。』

そもそも処方している薬が間違っていないか、正しいにしても使っている量が適切なのかという事を検討しないと、一時的には薬が効いて良くなったとしても飲み続けている内に副作用の方が大きくなって却って疾患が悪化しませんでしょうかとか、そもそも論として慢性疾患だったら体質改善も大事じゃないですか直ぐに治そうとするのは無茶じゃないですか、などとツッコまれるので、上手い話をしたつもりでしょうが多分ツッコミ所を提供するだけだと思います。

まあここにツッコミ所を作っておいて他の所をツッコませないという諸葛孔明の罠の可能性はありますけどね!!!!!


・短期的に達成しようとする件についての説明は説明になっていない件

『さらに、「2%を目指すにしても、2年程度という期間にこだわることはないのではないか」という意見もあります。この点、日本銀行は、昨年4月、「物価安定の目標」を「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に」実現すると宣言して、「量的・質的金融緩和」を導入しました。同じ月に公表した「展望レポート」では、2015 年度の消費者物価上昇率の見通しを政策委員の中央値で1.9%と公表しました。その後、この見通しは、最新の展望レポートでは幾分下振れていますが、引き続き、「2015 年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高い」と予想しています。2%の「物価安定の目標」を2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するという方針に変わりはありません。』

全然説明になってませんが。

『今回の原油価格の下落でもわかるように、実際の消費者物価の計数は、需給ギャップや予想物価上昇率のような基本的な要因のほかにも様々な要因の影響を受けます。2年ちょうどで2.0%にできる中央銀行は世界中にありません。』

置物先生の説明責任を願いたい。

『だからといって、「いつかは2%にする」というのでは、デフレマインドが蔓延していた企業や家計が「これからは2%を前提として行動しよう」とは思わないでしょう。デフレ期待を払しょくし、人々の気持ちの中に2%を根付かせるには、それなりの速度と勢いが必要なのです。これが、日本銀行が2%の達成時期にこだわる理由です。同時にそれは、今回の措置によって期待形成のモメンタムを維持することを重視した理由でもあります。』

結局気合の話だけでMBの量的な話とか買入資産の定量効果とかそういうレビューは無いのね。


・どうみてもこれは・・・・・・・・・

『最後に昨年4月に言ったことをもう一度繰り返します。「物価安定の目標」を早期に実現するため「できることは何でもやる」。ご清聴ありがとうございました。』

何ちゅうかもうねという所ですが、こんなヘッドラインがあって債券市場関係者一同(かどうか知らんが)のけぞるの巻。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NEJRTP6S972I01.html
日銀総裁:国債買い入れ含め「限りがあるとは思ってない」
更新日時: 2014/11/05 13:00 JST

『11月5日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁はさらなる緩和の手段について、長期国債の買い入れを含めて、「限りがあるとは思ってない」と述べた。5日昼、都内で講演後の質疑応答で述べた。』(上記URL先より)

いやー何ゆうてますねんという感じなのですが、この一連の動きを見ておりますと、まあ比較するのが不穏当のような気が思いっきりしますが、昭和の帝国陸海軍が負け戦を延々と続けて行った理由の一端を垣間見たような気がする訳で、強引に無理のある施策をおっぱじめた時に負け戦になった場合に全然止まるという事なく却ってドンドン突き進むという組織(日本的なのか世界もそうなのか知らんが)の恐ろしさというのを見せられているような気がして実にこうアレですな。

いやまあこれがそこらの民間企業だったら勝手にコケるだけの話なのですが、政策当局なもんでねえと思いますし、まあこういうの見ますと強引に何かやって突き進むという事の恐ろしさというのを見ているような気がしますがこれはきっと敗戦思想に毒された考えだからただの杞憂にも程があるんですね(白目)!!!!

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2014/11/05

○総裁会見だが文章に落としたのを見ると「質問に答えていない」のが多いですなあ

いやね、この総裁会見はさすがにベンダーさん提供の中継放送を見たのですが、黒田さんの表情って説明の時にはまあいつもの感じではあったのですが質疑応答が始まると段々表情が険しくなったり目が泳いでいたりと、今年前半の自信満々モードはどこへやらという辺りに今回の決定の背景が垣間見れるような気がするのは気のせいですかそうですか。

でまあさすがに会見をじとーっと見ているだけの余裕は無かったので半分流して聞いていましたが、途中から「何か質疑が噛み合っていないような気がするのだが」と思って音を聞かないで画像だけ見てましたがやはり文章を見るとそうでしたなという感じです。

これはつまりどういう事かと申しますと、今回の決定は確かに騙し討ち的な意味では効果的ではあったのですが、別に狙った訳でも何でも無く事前に練り込んだ訳でないんでしょうなあという印象でありまして(まあ日経あたりがどうせ迫真とか言ってみてきたような自主規制を書いているんでしょうけど読んでないから知らん)そもそも練り込んでいるなら反対4票も出ませんし、質疑応答がここまでグダグダになることも無かろうと思うのですがどうでしょうかねえ。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1411a.pdf

○冒頭説明では「2%の達成」への拘りを示すがこれは「足元物価にリンクした政策運営化」を意味しますな

冒頭説明(形式上は最初の質問に対する答え)から。

この辺から声明文の項番2にある今回の追加緩和理由の説明になります。

『「量的・質的金融緩和」の導入以降、1年半が経過しましたが、これまでのところ、所期の効果を発揮しています。すなわち、わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けています。物価面では「量的・質的金融緩和」を導入する直前の昨年3月の時点でマイナス0.5%であった消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、プラス1%台前半まで改善しました。』

所期の効果を発揮というのは声明文では図々しいと思ったのか外して居ましたが、展望レポート基本的見解の最後の所にも入っていましたし、こちらでもその説明。でも所期の効果というのをQQE導入前と比較する時点でだいぶ大本営発表の香りがしますが、まあここまでは追加緩和の理由ではありませんな。

『もっとも、消費税率引き上げの後の反動減は、自動車などの耐久消費財を中心にやや長引いています。また、このところ原油価格が大幅に下落しています。こうした需要面の弱めの動きや原油価格の下落は、物価の下押し要因として作用しています。消費者物価の前年比は、9月には+1.0%まで伸び率を縮小しました。もとより、消費税引き上げに伴う需要面の弱さは既に和らぎ始めていますし、原油価格の下落は、やや長い目でみれば、日本経済に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用すると考えられます。ただ、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクもあると考えられます。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、ここで「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断しました。』

これは声明文の項番2で書いてあった「しかし」以下をもうちょっと詳しく説明しています。でまあ以下の部分が今回の声明で(キリッ)とやりたい部分ですな。

『「量的・質的金融緩和」は、人々のデフレマインドを払拭し、予想物価上昇率を引き上げることを狙った政策です。予想物価上昇率がどのようなメカニズムで形成されるかについては様々な議論がありますが、長年にわたってデフレが続いたわが国では、米国のように予想物価上昇率が既に2%程度にアンカーされている国とは異なり、実際の物価上昇率の変化が予想物価上昇率の形成に大きな影響を与えていると考えられます。実際の物価上昇率の伸び悩みが続けば、それがどのような理由によるものであれ、予想物価上昇率の好転のモメンタムが弱まる可能性があります。そうなれば、せっかくここまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅れてしまうリスクがあります。その意味では、わが国経済は、デフレ脱却に向けたプロセスにおいて、今まさに正念場、critical momentにあると言えます。今回、追加緩和を決定したのは、こうした考え方に基づくものです。』

今はインフレ期待を上げようという中なので、バックワードルッキングによるアダプティブなインフレ期待形成を重視して物価上昇のモメンタムを与えたい、という理屈は理屈として判るのですが、ではなぜMB拡大ペースを10兆円ほど増やすと物価上昇のモメンタムが付くのか、という点についての定量的な説明が無い訳ですし、そもそも論としてここまでの物価上昇におけるMB拡大の効果が定量的にどの程度あって、どういうメカニズムで作用したのか、というレビューも無い状況で「これまでの政策が所期の効果を発揮したから更に兵力を投入すれば効果を発揮するに違いない」というようなノリだけで突っ込まれても丸腰輸送船で戦地に送られる兵隊の方としては全く納得いきませんが、という話は昨日申し上げた通り。

『今回の措置はデフレ脱却に向けた日本銀行の揺るぎない決意を改めて表明するものです。デフレのもとでは、価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落という悪循環が続きました。』

デフレだと好循環が起き難いというのはまあそうですな。

『「量的・質的金融緩和」によって、デフレマインドの転換が実現すれば、価格の緩やかな上昇を起点として、売上・収益の増加、賃金の上昇、消費の活性化、価格の緩やかな上昇というかたちで経済の好循環が実現することになります。』

でも「デフレだと好循環が起き難い」から「何でもいいから物価が上がれば好循環が起きる」というのは別問題ではないかと思われますし、(後の方の質疑できっちり突っ込んでいる優秀な方がいますが)今回の展望レポートで足元の潜在成長率推計を引き下げているような経済状態の中で短期的に強引に物価を上昇させる(そもそもMB拡大で物価が都合よい所に上げられるんですかねえ上がるにしてもハチャメチャな事になりませんかねえという話は一旦措く)のって本当に好循環の達成に繋がるんですかねえと思うのですが、そういう検証や点検は無く「最初にこう決めたのがアプリオリに正しい」という無反省理論で特攻するのが今回の追加緩和の本質であるというのが良く判ります。

『この春の労使間の賃金交渉で物価上昇率の高まりが意識され、多くの企業でベースアップが実施されました。企業の価格設定行動も変化の途上です。』

消費増税とかコストプッシュとかまあいいです。

『いま、この歩みを止めてはなりません。「物価安定の目標」が人々の気持ちの中にしっかりと根付き、これからは2%の物価上昇を前提として行動しようと思うためには、日本銀行がその早期実現に強くコミットし、これを実現していくことが何よりも大切です。昨年4月に申し上げた通り、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の早期実現のためには、できることは何でもやる方針です。』

とまあそういうことで、結局の所追加緩和がどういうメカニズムで効果を発揮するかとか、その定量的な意味は何かという話はこの政策おっぱじめて1年半も経過しているというのに何が何だか判らんというまま特攻が続くという戦争末期状態で、気合だけは十分ということでありまして、それはもしかしたら物価は上がるのかもしれないけれども国民厚生的にどうなんでしょうかねという話っすな。

『今後も日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続します。何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、「物価安定の目標」を実現するために必要になれば、躊躇なく調整を行うという方針にも変わりはありません。』

ということですが、まあこれを見て明確なのは「今後も足元の物価次第で政策がフラフラする」という話でありますので、目先は当分物価上がらんでしょという事ですから追加緩和クレクレがそのうち始まるでしょうし、将来間違って円安効果で物価が上に振れてくると今度は急に雰囲気が変わる可能性も微粒子レベルでは存在するかなとも思われますしという所っすかねえ、よー知らんが。


・急に決まりましたねえという質問

幹事社の実質最初の質問。

『(問) 2点目の質問ですが、今回の提案というのは総裁の提案という理解でよろしいのでしょうか。また、先程critical moment というご説明がありましたけれども、総裁がその辺のことを胸に抱いたタイミングというのがいつ頃だったのかをお聞かせ下さい。』

『(答) 金融政策決定会合における議論については、議事要旨という形で公表されることになっていますので、具体的に申し上げることは避けたいと思います。』

まあこれは良いとしまして。

『展望レポートが議論される中で、金融政策について、ここで、追加的な緩和──「量的・質的金融緩和」の拡大──を検討すべきだという意見が委員の方々から出され、それを踏まえて執行部に案を作ってもらい、それを巡って議論し、「量的・質的金融緩和」のかなり思い切った拡大を決めたわけです。』

まあ執行部も「政策委員」ですから委員の方々からというのは貴殿の事ではないでしょうかと思いますけれども、展望レポートを議論しているんだったら潜在成長率が下がっている中で追加緩和をして2%の物価目標に短期的に強引に近づけようというのは必ずしも正しいかどうか判らんという話になると思うのですけれども何で追加緩和を検討すべきかという話になるんでしょうかねえ。

つーか景気回復と物価上昇のメカニズムが労働需給一点張りになっていますが、でしたらまあ追加緩和が需給ギャップにどのような影響を与えるのかという説明を頂きたいのですが、この先の質疑でも残念ながらそのような説明は無く、単なる「決意」とか「3」とかの話しかない訳でして、そらまあ初回の昨年4月は気合も判るのですが1年半継続して結局また気合かよという所ですな。

『その理由は、先程申し上げた通りであり、また、この点は「量的・質的金融緩和」の拡大についての公表文でも触れている通り、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがあるということから、日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を思い切って拡大するべきであるという結論に至ったわけです。』

こうやって無駄に繰り返しをするのは好意的に見れば気合を強調したいという事ですが、悪意を持って見ますと他に話すことが無いので同じ話を繰り返して時間を稼いでいるという事でもあります。

『私自身も色々な指標を見て、感じるところもありましたし、政策委員の方々も色々とお考えだったと思いますが、より具体的には、政策委員の経済見通しが出され、議論する中で、「量的・質的金融緩和」の拡大が必要であるという意見が出され、今申し上げたような決定に至ったということです。』

ほうそうですか(白目)。


・量的な説明皆無キタコレ!!!

これは直球質問。

『(問) 2点お尋ねします。まず、なぜ10〜20兆円の拡大をしたのかという理由です。もう1点は、日銀はこれまでも大規模な金融緩和を続け、所期の効果を発揮しているとおっしゃっていましたが、今回、10〜20兆円増やすことによって、人々のインフレ期待が急激に変わるのか、その効果についてもう少し詳しく教えて下さい。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『(答) マネタリーベースの増額ペースを約60〜70兆円から約80兆円に拡大する際に、資産の内容として、長期国債の保有残高の増加幅を更に30兆円拡大するなどの措置を講じました。これは先程申し上げた通り、足許の消費の弱さや、特に原油価格のかなり大幅な下落によって、物価上昇率が、やや下がってきており、そうしたことが続くと物価上昇期待自体も下がってきてしまいます。そうなると、例えば、将来の賃金や価格の設定についても下がってくる恐れがあります。そうなると、せっかく実現しつつあるデフレマインドからの転換が大幅に遅れてしまう懸念があり、そうしたリスクを未然に防ぐ観点から、必要十分な拡大をしたということです。』

全然答えになってNEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!

『また、今回の政策により、どのような効果が期待されるかという点については、それぞれの委員がそれぞれの考えで経済見通しを出し、今回の展望レポートに添付されています。それを見て頂いてもわかりますように、物価面を中心に、それなりの効果が出るのではないかと思います。』

もうお前ナメトンノカという答えですが、要するにそういう答えしか出来ないということですので、ここは一発木久扇師匠の木久扇モデルとやらがある筈(以前山本幸三先生がモデルを使って必要なMBについて説明していたから無いとは言わせない)なので、師匠のご登場を切にお願いしたいと思いますし、2年で2%に届かない場合の説明責任を果たすと仰っていたのですから今こそ説明をお願いいたしたく存じますのではよ出てこいやオラオラオラ!!!!


・2年で2%は諦めたんでしょうかとか何で見通し下がっているのかという件

『(問) 今回の追加緩和を受けても、昨年4月の導入時におっしゃられた、2年程度で物価2%を目指すという考えは、今の時点でもお変わりないでしょうか。また、今回の追加緩和を織り込んでも、展望レポートの政策委員の物価見通しをみると下振れていますが、これは政策委員の中で緩和効果に疑問を持っている人がいるということなのでしょうか。追加緩和をしても物価見通しが下振れている理由について、総裁のお考えをお聞かせ下さい。』

そらまあこの調子でゴリゴリやられたら目が泳ぐわなとは思います(・∀・)

『(答) 第1点目については、全く変わっておりません。2年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に物価安定の目標を実現するという、そもそもこの「量的・質的金融緩和」の目的がそういったものでありまして、この考え方は全く変わっておりません。』

ほほう。

『もちろん、2年程度というのはもともとある程度幅を持たせた表現であり、そのうえで、昨年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した直後の展望レポートでは、2014年度、2015年度の見通し期間の後半にかけて2%程度に達する可能性が高いとしていました。その後、本年4月の展望レポートでは、見通し期間が2016年度まで延長されましたので、2014年度から2016年度までの見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高いとしていました。』

言い逃れキタコレ。

『今回の展望レポートも全く同様に、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いとみており、そういった見通しに変化はありません。いずれにせよ、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現するという考えに変わりはありません。』

ということで「追加緩和をしているのに見通しが下がっていているとはナメトンノカ」という質問に対しては全く答えていませんな。


・円安進行は国民厚生上問題があるのではないかという質問だが・・・・・・・・・

『(問) 総裁は、本日の会合より前も、原油価格が下がり、ガソリン価格が下がるという現状がある中で、基本的に需給ギャップの縮まり等を通して物価が上がるモメンタムは変わっていないというご説明をされていました。それがうまくいっていると言っていて、国会でもそういった答弁をされていたと思います。それがこの2、3日で急に変ったような唐突感を覚えるのですが、物価上昇の基本的なメカニズムというものが変わっていないのかをお伺いしたいと思います。』

これ前段の質問なのですが最後の聞き方が非常に残念で、コミュニケーションポリシーの方で質問すれば良いのにとしか思えん。

『また、既に円安も進んで、地方を中心として円安によるコストプッシュインフレみたいなものを非常に気にされている声もたくさんあり、かえって消費の減退を招くのではないかというリスクも懸念されてきたわけです。あえてここで追加緩和により、さらにリスクを高めるとも言えると思うのですが、そこについてはどのようなご見解でしょうか。』

なので質問するならコミュニケーションで質問するか円安のインフレが目指す姿なのかのどちらかを聞けばよかったと思う。なぜなら答えですけど・・・・・・・・・

『(答) 「量的・質的金融緩和」の基本的なメカニズムは、全く変わっていませんし、その好循環のメカニズムがなくなってしまったということはないと思います。』

と逃げた挙句に以下繰り返しの説明を延々と展開されるのですが、まあ誤魔化しの見本として引用しておきますね。

『基本的に、非常に明確な形で、2%の「物価安定の目標」に強くコミットし、それを裏打ちするために大規模な量的・質的な金融緩和を行うもとで、イールドカーブ全体、名目金利全体を押し下げることを行い、さらにはリスク資産も買い入れて、リスクプレミアムを圧縮しています。同時に、物価上昇期待を引き上げて、実質的な金利、あるいは実質的なリスクプレミアムを圧縮することを通じて投資や消費を刺激し、経済全体を成長させることによって、いわゆるGDPギャップを縮小し、賃金、物価の上昇圧力を作っていきます。そして、またそれを物価上昇期待でさらに押し上げていくという基本的なメカニズムは、変わっていませんし、それはこれまで予期していた効果を発揮してきたと思います。』

『ただ、先程申し上げたように、このところ消費税の駆け込みの反動減の影響が自動車等でやや長引いています。そうしたもとで、ごく最近ですが石油価格が大幅に下落し、そういったことから現に消費者物価の上昇率も少しずつ縮小してきているといったことが起こって、それが今後さらに続くとすれば、やはり物価上昇期待に対する影響も懸念されますし、そもそも好循環にマイナスの影響を与えるリスクがあります。そういったリスクに未然に対処するために、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定したということです。』

クドクドと同じ話を繰り返す攻撃キタコレ!!!

『なお、この緩和措置というのは、あくまでも今申し上げたようなことを通じて物価安定目標の早期達成をより確実にするために行うわけであり、為替相場等に対する影響を目的としたものではありません。』

ということで、前半のクドクド説明は肝心の「円安の国民厚生」という質問に対して全然答えないで逃げるための前振りでして、これは同じ話をクドクドとされると聞いている方も疲れてきて肝心の所を答えて居ない事にその場では気が付かない可能性が高まる、というこの手の会における基本的なテクニックの一つであります。


・どう見ても戦力の逐次投入ですが

『(問) これは、いわゆる戦力の逐次投入という指摘は当たらないのでしょうか。』

剛速球質問キタコレ。

『(答) 全く当たらないと思います。』

クソワロタ。

『というのは、先程申し上げたように、基本的に「量的・質的金融緩和」の効果は予期した通りの成果を上げてきています。ただ、様々な要因があって――原油価格の大幅な下落も1つですが、消費税の反動減がやや長引いていることや、あるいは世界経済の見通しが、最近のIMFの見通しでも、さらに若干引き下げられたことなど、様々な要因がある中で――、ここで示したリスクが出てきているのです。これが実際に顕在化し、せっかくデフレマインドを転換させてきている途中で、またデフレマインドの方に戻ってしまっては、これまでの成果が減ってしまいますので、そういったことにならないように、こういう対応をしました。』

『様々な要因からリスクが出てきたので、それに対応したということで、戦力の逐次投入にもなりませんし、逆に言えば、これでは不十分でこういったリスクに対応できないとは全く思っていません。これだけのことをやれば、こういったリスクに十分対応できると思っています。』

いやシナリオ通りに行ってて効果を発揮しているのに追加緩和だからどう見ても逐次投入だろ。


・質問が長いが面白いかつ辛辣ですが答えは完全に逃げです

『(問) 昨年4月4日に異次元緩和を実施されて1年半が経ちました。金融政策は、大体1年から1年半ぐらいで効果を現すということですが、今がちょうどそういう時期になっています。』

師匠もそう言ってますな。

『新たに示された経済見通しをみると、今年度の成長率は0.5%に引き下げられて、物価見通しは1.2%に若干引き下げています。これを黒田総裁が就任される前の、2013年1月の白川前総裁の最後の見通しと比べると、当時の2014年度の見通しは、コアCPIが0.9%、成長率が0.8%でした。つまり、物価については、まだ辛うじて上回っていると言えますが、成長率については当時の見通しすら下回っています。』

(;∀;)イイシテキダナー

『つまり、物価はどうにか上がっても成長率は上がらないということを端的に示していると思います。今日の展望レポートでも、こっそりとまでは言いませんが、潜在成長率の評価を引き下げられています。つまり、日本経済は一段と成長しないという姿になっています。』

(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー

『先程、「量的・質的金融緩和」は、予期していた効果を発揮してきたとおっしゃいました。ただ、結果としては、物価がちょっと上がったけれども成長率は一向に上がらない、むしろ下がったという姿になっています。』

(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー

『日銀法では、物価の安定を通じて健全な経済発展に資することを理念とすると書いています。この理念にすら反していると思うのですが、このQQEというのは本当に効果があったのか、これからあるのか大いに疑問があるのですが、如何でしょうか。』

(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー

『(答) その点は、私は全く意見が違いまして、今おっしゃったことは単にかつての見通しが甘かったということを語っているというふうに思います。』

まずこの時点で全然違うだろおいという事ですし、言うに事欠いて前任者の見通しが甘かったので今の見通しが前と対比して弱く見えているだけですとかもうヤケクソですな。

『私どもは、昨年4月4日に「量的・質的金融緩和」を導入して以来、経済の実態を常に慎重、冷静に点検し、金融政策として必要かつ十分なものかどうかというのを毎回の政策決定会合で議論をして参りました。そうした中で、先程申し上げたような消費税の駆け込みの反動減が耐久消費財でやや長引いているとか、世界経済の見通しが全体としてやや下振れているとか、そうしたもとで原油価格がかなり大幅に下がったといった現状を踏まえて、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成するために、デフレマインドの転換が遅延するリスクを未然に防ぐという観点から、「量的・質的金融緩和」を拡大したということです。』

またこれです。

『実質成長率は、色々な要因で様々に振れています。そうした中で、中長期的にみた潜在成長率は、常に申し上げている通り、基本的には金融政策でどうこうするというよりも、構造政策、成長戦略に係わるものだと思います。ただ、その中でも、デフレ下では、どうしてもイノベーションが行われない、リスクテイクが行われない、十分な投資が行われないということになりがちです。』

『そこで、2%の「物価安定の目標」を安定的に持続できる形になれば、企業や家計が緩やかな物価上昇を前提にして、賃金とか価格あるいは投資その他を決める、ということで、より望ましい経済成長になるということであり、この点、私どもの考えは現在も全く変わっていません。』

デフレが良くない、という話と「短期間で2%の物価目標を目指す」というのは別次元の話で、デフレが良くないのであればデフレ脱却に向けた動きをすれば良い話で、そのための方便で短期間で2%の物価目標を目指すと言いましたが潜在成長率が中々上がらないので2%目標は急いで目指すものでは無くてもうちょっとだけ長めのスパンで目指した方がプレッシャーかからないですよね的な現実路線に転向する(浜田先生とかそういう話をしてますよね)のかと思いきや足元では潜在成長率が下がっているのにより過激に特攻するという流れになっているという答えになっていますな、オソロシス。


・1.7%だが後半大きく伸びるという見通しのようで

『(問) 今回の緩和は必要かつ十分な緩和とおっしゃいましたが、2015年度のCPI見通しを見ると、中央値で1.7%、かつ分布チャートを見ますと下振れリスクがあるような形です。これで本当に必要かつ十分なのかと疑念の余地もあるわけですが、必要かつ十分だと言い切れるその理由をもう少しご説明頂けますでしょうか。』

そらそうなるわな。

『(答) これはもちろん、政策委員の方々に年度で見通しを出して頂いており、半年とか四半期とかそういうものでは全然ありませんので、何とも申し上げられませんが、基本的に、2015年度の前半は、原油価格の下落が物価の下押し要因として働いていきます。そして、年度の後半にかけて、こうした下押し要因が剥落するもとで、需給ギャップの改善や予想物価上昇率の上昇を背景にして、消費者物価の前年比は伸びを高めていくとみられます。従いまして、引き続き2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いと思います。つまり、2015年度の消費者物価の見通しが幾分下振れたのは、1.9%という中央値から、1.7%に落ちたわけですが、それは主として原油を初めとする国際商品市況の下落によるものであり、そういったものは先程申し上げたように、年度後半に剥落しますので、十分この1.7%という見通しの中央値のもとでも、2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いと、そのように考えられるからこそ、展望レポートにそのように書いてあるわけです。』

つまり見通しが低い委員がいるから下振れリスクが高くなり、1.7%になっているのは手前が落ちたから年度平均の数字が下がっただけで後半の見通しは同じですという言い訳になっている訳ですな、うんうん。

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2014/10/14

○総裁会見ネタの続き

木曜に投下した後金曜にはNYでのオモシロ講演があってついスルーの巻なりましたが続きをば。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1410a.pdf

・2年で2%を下げるのかという質問なのだが・・・・・・・・

『(問) 先程の質問にも関係しますが、足許、景気がややもたついており、マーケットを中心に、追加の金融緩和に対する期待が依然あると思います。その一方で、足許の円安について、中小企業や地方から懸念が出ています。これは、コストや資材価格が上昇することが、中小企業の収益や家計の下押しになるのではないか、つまり景気の下押し要因になるのではないかという面から、円安への懸念が出ているかと思います。その上で、追加の金融緩和をすると、円安をさらに助長してしまいます。その点に関してどのようにお考えなのかということと、あくまでそういう状況があるにもかかわらず、2年で2%という最初の目標通り、2年程度で物価目標の達成を目指すということなのか、それとももう少し時間をかけて2%を目指すという考えもあるのか、ということについてお伺いします。』

この質問者は2つの質問をしているのですが、2つの質問をするなら独立した聞き方にしないと回答者にはぐらかされてしまうのでありまして、2番目の質問が「円安になると景気が下押しになる」というのがアプリオリになった状態になっているので、質問がヘボにも程があるのですが、それはそれとして回答。

『(答) 冒頭申し上げました通り、私どもの「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しています。』

結局「円安は良くない」の部分が否定されるとそこで話が進まなくなるのよ。

『今後とも、2%の「物価安定の目標」の実現を目指して、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続する、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行っていくということですので、当然、上下双方向ですから、必要があれば追加緩和についても検討することになると思います。今のところは所期の効果を発揮しており、「物価安定の目標」に向けての道筋を着実に辿っているということです。』

いつもの棒読みで答えられるのでした。質問するなら「円安は本当に良いのか」「2年で目指すよりも少し時間を掛けた方が良いという意見があるがそれについてはどう思うか」という風に聞かないと。

『金融政策としては、あくまでも物価安定が第1の目標ですので、為替について何か特定の水準や変化率を目的にして行うものではありません。上下双方向の調整というものは、為替を考慮してではなく、あくまでも「物価安定の目標」との関係で、必要があれば上下双方向の調整を行うということです。』

まあつまり特段何かをする気はないと。ただしこの次の部分については微妙な表現が炸裂する次第で、為替に関しては(この質問以外にも)アホのように質問がありましたが、正直そっちの話はどうでも良くて、「2年で2%」の期限があと半年なのだからそれを質問しやがれと。

『なお、2年で2%という点については、昨年4月4日に「量的・質的金融緩和」を導入した際にも申し上げましたが、2%の「物価安定の目標」を2年程度の期間を念頭において、できるだけ早期に実現するために、「量的・質的金融緩和」を導入したわけで、そうした意図には変わりはありません。ただその上で、4月4日以来ずっと申し上げていますし、今回の金融政策決定会合後の公表文にも書いてある通り、「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続するということです。』

ほうほうそれでそれで??

『この政策自体は、あくまでも、米国で言うカレンダーベースではなくアウトカムベースと言いますか、まさに「物価安定の目標」との関係で、それが実現し、安定的に持続されるまで続けるというものです。』

これはまあ「QQEの継続期間はカレンダーベースで2年と切っている訳では無くてオープンエンドですよ」と言う趣旨で発言した、とまあ普通に解釈すれば解釈できますが、一方で穿った見方を思いっきりして邪推モード全開になりますと、「2年」という期日について強調することは、「来年の4月」という時間切れを強く認識させることに繋がり、既に物価見通し自体が今回の声明文においては「暫くの間」「1%台前半で推移」ということで、暫くの間means6か月程度というのは1月の声明文でこの文言を投下した時点で総裁自らが説明している訳でもあり、そうなりますと2年の期日に物価安定目標という名前の手形が支払呈示される事を勘案するとゴリゴリ突っ込まれると往生しまっせ〜という意識が日銀執行部の皆様にあるので、殊更「2年」と言わないようにしている(エコノミッククラブでの講演でもそうでしたし)というのはあるのでは???と思わせてくれますな。


・・・・・・・と思ったら別の方が無慈悲なツッコミをして実に素敵。ちょっと後の方の質問から。

『(問) 先程、目標達成期限について、カレンダーベースではなく、2%が安定して持続できるまで「量的・質的金融緩和」を続けるとご説明されました。2年程度で達成を目指してはいるが、現在、展望レポートで示している目標達成の見通し――見通し期間の中盤頃、大体2015年度だと思うのですが――、そういったシナリオが崩れないで続く限りは、2年という期限にあまり拘らないという理解でよろしいでしょうか。』

(・∀・)ニヤニヤ

『(答) 先程申し上げた通り、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現するため、「量的・質的金融緩和」を導入しました。』

「念頭に置いて」とかヘッジクローズを入れた上で「導入しました」ということで、過去の一時点での話に持ち込んでいるあたりが日銀文学で、確か当初は「強力なコミットメント」とか言ってましたし、大体からして理論的支柱(なお柱は虫食いでスカスカの可能性もあります)であります所の岩田副総裁様におかれましては副総裁就任前から「可能」だの「最高の責任の取り方は辞職」だの仰せでしたが、その時の強力なコミットはどちらへ????

『そのもとで、半年ごとに新しい展望レポートを示し、その中間時点での見直しも示していますが、過去1年半近くを見ても、ほとんど物価上昇率見通しの中央値は変わっていません。2015年度は1.9%、2016年度は2.1%の見通しで従来から変わっていません。従って、物価上昇率についての考え方、見通しも変わっていません。』

2015「年度」だとQQE導入から2年でしたっけ????

『まさに、2年程度の期間を念頭に置いて、「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成するために行っている「量的・質的金融緩和」は、所期の効果を発揮しており、目標達成に向けて着実に進んでいるということだと思います。』

どう見ても目標達成時期後ズレなのですが認めない辺りが昔陸軍以下自粛。


・言質を取りに行っている質問キタコレ

木曜にネタにした時にも最初の質疑で『景気がもたつきが一時的という根拠は』と言質を取りに行っている質問がありましたが、こちらの質問もまあ言質を取るような質問ですな。

この手の言質取り質問というのは、本当は国会質疑みたいに周りから言質取って固めてから最後にゴリゴリと突っ込むという形で運営すると「こうかはばつぐんだ」となる(この前の国会では蓮舫さんが非常にお上手にやってたみたいですな)ので、基本1回しか質問が出来ない記者会見の場合、本当は言葉尻をすかさず捉える追撃質問(上記のようなの)があると美しいのですが、まあそうではない場合は次回の会見でまた「前回このように仰っていましたが」と突っ込むしか無いと思います。

そういう点ではFOMCとかECB定例理事会後の会見でのツッコミは中々見ごたえがありますので、日銀の会見もそういう風になって頂きたい物ですが、と話は逸れましたが質問を。

『(問) 先程、2年程度での「物価安定の目標」の達成について、所期の効果を発揮しているということは、総裁が去年4月の段階で考えていたことと、現状には全く相違がないということでよろしいのでしょうか。また、審議委員の方々を含めてそういう考えでしょうか。』

(・∀・)

『また、追加緩和について、会見でのお話を色々とお聞きすると年内を含めて、今の状況であれば、考えていないとも感じ取れるのですが、どうでしょうか。』

うむ。

『(答) まず1点目については、その通りであります。展望レポートや毎月の金融政策決定会合後のステートメントを見て頂くと分かりますように、成長率は振れていますが、基本的に物価についての見通しはほとんど変っていません。』

成長率が振れるのに物価の見通しが変わらないとな(@∀@)という所ですが、見通しが変わっていないんですってよまあ2年で2%達成ですね素敵ですわ奥様!!!

『2点目の追加緩和については、2%の「物価安定の目標」との関連で必要があれば、必要な調整を行うということは、何度も申し上げています。1年に14回も金融政策決定会合がありますので、何時でもそういった調整は可能であるということです。今の時点で、そういった調整が必要かどうかは、経済・物価動向がどのように展開していくかによるので、順調に経済・物価動向が展開して、見通し期間の中盤頃である来年度を中心とした時期に2%の「物価安定の目標」が達成されるという状況であれば、特別に調整を行う必要はないでしょうし、そうでないようであれば調整を行うということだと思います。』

2年で2%と「来年度を中心とした時期」に2%というのは既にその時点で話が違っているのですけれども、まあその辺への無慈悲なツッコミは恐らく展望レポートが出た所でゴリゴリくる物と期待しておりますので記者の皆様のご活躍を祈念したいと思います。

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2014/10/10

○エコノミッククラブNYでの黒田総裁の講演とな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141009a.pdf
日本経済:慎重論に答える
エコノミック・クラブNYにおける講演の邦訳

本チャンはこちら
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko141009a.pdf
Japan's Economy: Responding to Cautious Views
Speech at the Economic Club of New York

ということですが、珍しくも英文を鑑賞しつつ日本語も鑑賞しつつという感じで参ろうかと思うのですが、7ページしかないから読む気になったとか、どうせ内容が判り切っているので読む気になったとかそういう説はだいぶあります。

・でまあ一番気になったのは「海外講演でもついに2年が削除される」という点ですな

最初に『I. QQE and the Recovery of Japan's Economy』(『2.「量的・質的金融緩和」と日本経済の回復』)なんてえのがあるのですが、そこの冒頭に『The Mechanism of QQE』(『(「量的・質的金融緩和」のメカニズム)』)というのがあるのですけれどもね・・・・・・・・・

『QQE consists of two pillars. One is a strong and clear commitment to achieve the price stability target of 2 percent at the earliest possible time and the other is a large-scale monetary easing to underpin the commitment.』

ということで冒頭でQQEの2つの柱というのに触れていまして、コミットメントがどうのこうのとありますが、ここで昨年10月に米国(ただしこちらはブレトンウッズ委員会インターナショナルカウンシル)での講演におけるQQEの説明を見てみましょう。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2013/ko131011a.htm/

ここの『Uniqueness of the QQE』という所にこんな記述があります。

『Specifically, the policy comprised two features. First, to show the BoJ's determination that it would overcome deflation at the earliest possible time through a strong and clear statement. Therefore, the period in which the BoJ would achieve the target was clearly specified as "about two years." The second feature, for the purpose of underpinning such determination, was to launch massive monetary easing that clearly differed from the past policies.』(上記URLにある昨年10月11日に行われた米国での黒田総裁講演から)

>achieve the target was clearly specified as "about two years."
>achieve the target was clearly specified as "about two years."
>achieve the target was clearly specified as "about two years."

・・・・・・・・・ということで、まあ一々3回も繰り返すまでも無く(^^)、今回の米国での講演においては物価安定目標達成期限の「2年間」という数値を外す流れになっておりまして、QQEを投下した時には「2」を無暗矢鱈と強調して「2%」はまあ良いとしてMBを「2倍」にするとか言って短国市場が崩壊するような馬鹿買いを実施(本来年末260兆円のMBでも良い筈なのだが270兆円じゃないと「2倍」にならないのだ)しており、長期国債の保有について「2倍」はまだしも平均残存年限を「2倍」にするとか言って妙な買入の調整をして市場を混乱させたり、年限ごとの需給を盛大に歪めたりと、「2」に拘るせいで市場方面は色々と残念な状態になっているのですが、一番重要な「2年」を何の落とし前も無く取り下げるとはどういう事やおいこら説明してみろやというお話でありますな、うんうん。

と悪態を付きますとどういう想定問答が待っているかと言いますと、「別に2年で達成するという旗を降ろした訳ではないが、そもそも2年というのがきっちり2年ではないでしょ」と言う答えが返ってくるというのが日銀クオリティなのですけれども、まあ置物師匠位はちゃんと落とし前を付けてくれるでしょうねえ(棒読み)。


・なおメカニズムの説明は相変わらず「実質金利が下がると投資や消費が促進される」という説明

さてつい悪態モードになってしまいましたが心を鎮めて(^^)QQEの説明の続きを鑑賞。

『As a result, real interest rates will decline, thereby stimulating private demand such as business fixed investment, private consumption, and housing investment.』

相変わらずの実質金利理論なのですが、恒常的に投資不足の経済でも無いのに成長期待が無い中で実質金利だけで需要が伸びるんですかというのは毎度のツッコミ。つまり投資を阻害する要因として金利が高いとなると(金利商品以外への)投資が抑制されますねというのはその通りだと思いますが、それはあくまでも投資抑制要因の一つなのであって、一つの要因だけを取り除いたら投資が活発になるというのは余りにも議論が単純過ぎなのですが、単純すぎた挙句に「エルピーダを潰したのは日銀」とか言い出すのが置物理論クオリティなので致し方なし。

『There will be upward pressure on prices if private demand increases and the output gap, in other words the slack of the economy as a whole, narrows. If actual inflation rates accelerate, expected inflation rates will rise and the aforementioned series of processes will be reinforced.』

で、とにかく最初の部分がそういう前提なので、その後は上手く行くような話が続くという毎度の理論ではありますな。


・この物価動向の理屈で追加緩和があるとは思えませんが・・・・・・・・・・・・・

めんどうになってきたので(^^)日本語バージョンの方から引用しますが(根性なし)物価に関する説明部分。

『続いて、日本の物価情勢についてお話します。基調的な物価動向は、経済全体としての需給ギャップと予想物価上昇率によって決まると考えられます。このうち、需給ギャップについては、先程ご説明したように、労働市場のタイト化が進むなど、スラックがほぼなくなった状態となっています。また、予想物価上昇率も、月々の振れはありますが、「量的・質的金融緩和」導入後の変化をみると、全体として上昇しています。こうしたもとで、昨年4月に−0.4%であった消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、最近では+1.1%まで改善しています。』

スラックが無くなって予想物価上昇率が上昇しているんだったら何で前年比での上昇ペースが落ちているのでしょうかとツッコみたくなるのですが、当然ながらその答えを用意していない日銀の訳がございません。

『もっとも、消費者物価の前年比は、本年入り後、8か月にわたって1%台前半の狭いレンジで概ね横ばいで推移しています。こうした物価上昇率の伸び悩みについて、「昨年は勢いよく上がった消費者物価の上昇モメンタムが失われているのではないか」との見方が聞かれます。』

ほら来た。

『しかし、消費者物価の前年比が概ね横ばいとなっているのは、前年の同時期に、円安やエネルギー価格の上昇に伴って消費者物価が上昇した要因、すなわちbase effectが剥落していることによるものです。一方、基調的な物価は、着実に上昇を続けています。こうした消費者物価前年比の推移は、概ね我々が事前に予想していた通りです。Base effectの剥落にもかかわらず、消費者物価前年比がさほど低下せず、底堅く推移していることは、需給ギャップの改善や予想物価上昇率の上昇が、基調的な物価上昇圧力として作用していることを示唆しています。』

なるほどこういう説明で来るかという話ですが、それだとしますと昨年の物価上昇におけるベース効果はどれだけあったのかという話をして頂きたい訳でして、確か今年の3月辺りのカザフスタンでの総裁講演とか、日銀企画局のペーパーとかでは「民間エコノミストの予想は大敗北で俺様大勝利(超意訳)」と勝ち誇っておられたと存じますが、実はその勝ち誇り部分にベース効果で下駄を履いた分がありましたよねという話だとしますと、あの大勝利宣言は何だったのかと小一時間問い詰めたい所ではありますな。

『需給ギャップと予想物価上昇率の改善は、今後も続くと見込まれます。一方、base effectの剥落は一巡することから、消費者物価の前年比は、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、2015年度を中心とする期間に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみています。』

という説明をしておりまして、まあ2年間はどうしたという話はさておきましても、こういう説明をしているだけに、少なくとも10月全国CPIが出る11月末(まあその前に10月末に東京都区部の10月分が出るが)の時点やその次の12月末(その時には11月東京都区部CPIまで出ていますからねえ)の時点で物価が上昇する気配が無いとなった場合にどういう話になるのかを正座して待ちたいと存じますが、まあコストプッシュの方は相変わらず続いているようにも見えますのでどうなんでしょうね。

ただまあ2015年度の方は兎も角として、本年度後半というのは思いっきり突入している時間軸であって、まあ足元の物価動向分析に関しては日本のどこの機関よりも精密な結果を出せる日銀が、この時間帯の予想をこれだけ自信満々に行っているのですから、ここからCPIって上昇するんでしょうけどね!!

#その割には声明文の記述が相変わらず「暫くの間1%台前半」というのは何なんでしょうね


・追加緩和がどうのこうのの件でコミットメントがどうのこうのの部分が微妙

『このように、日本経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調にたどっています。ただし、「物価安定の目標」を実現するためには、実際や予想の物価上昇率を2%に向けてさらに引き上げていく必要があり、なお途半ばといえます。日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。また、仮に、何らかのリスク要因によってこうした見通しが下振れ、「物価安定の目標」の実現のために必要になれば、躊躇なく調整を行っていく方針です。』

ここまではどう見てもいつも通りの話で、これを見て追加緩和ヒャッハーというのは(さっきの物価の屁理屈と合わせ技で読めば)幾らなんでも都合の良すぎる切り取り方だと思うのよ。

『In this way, Japan's economy has been on a path suggesting that the 2 percent price stability target will be achieved as expected. Yet, we need to raise inflation rates and inflation expectations further toward 2 percent and thus we are only halfway there. The Bank will continue with QQE, aiming to achieve the price stability target of 2 percent, as long as it is necessary for maintaining that target in a stable manner. If the outlook changes due to the manifestation of risk factors and it is judged necessary for achieving the price stability target, the Bank will make adjustments without hesitation.』

でまあその次の部分ですけどね。

『我々は2%の「物価安定の目標」実現という結果にコミットしていますので、それを実現するように「量的・質的金融緩和」を継続しますし、必要であれば調整を行って、実現するようにします。』

日本文ではこうなっていまして英文はと言いますと・・・・・・・・・

『Let me emphasize that our commitment is result-oriented. It means that the Bank will continue with QQE to achieve the target, and the Bank will make adjustments if necessary so that the target will be achieved.』

これ日本語で見ると単に景気づけっぽい言いかたなのですが、英文の方だと「our commitment is result-oriented」というのが「アクチュアルに2%の物価に到達する事が重要」という風な言い方に読めそうな所で、いわゆるインフレ期待がアンカーされるとか、中期的に見て物価がマンデート水準で安定しているというようなフレキシブルインフレーションターゲットじゃないリジットなインフレーションターゲットをしているような言い方に見えるんじゃネーノという疑問が少々あるのですが、アタクシがそう思うのと一般的にこれを英語圏の人が見てどう思うのかはよく判らんので英語圏の人教えてジェネラル!!


・デフレが原因理論ですかそうですか

でまあ今の所が『3.日本銀行の金融政策運営と日本経済の成長力』という小見出しでしたが、では成長力をどうやって引き上げるのかという話。

『中長期的な経済の成長力は基本的にはサプライサイドの問題ですので、金融政策は主役ではありませんが、重要な貢献ができると考えています。それはデフレマインドの払しょくです。』

ほうほう。

『デフレマインドが蔓延するもとでは、現金保有や現状維持が合理的になり、リスクを取って前向きの行動をしてもそれに見合うリターンが得られません。実際、長年にわたるデフレのもとで、企業は設備投資や研究開発などリスクをとることに消極的になり、その結果、潜在成長率は低下してきました。』

デフレを原因とするとそうなりますが、そもそも成長期待や収益期待が無ければデフレでもインフレでも投資はせんじゃろと思いますけどね。

『デフレマインドを払しょくし、民間主体が2%の物価上昇を前提に行動を行うことが可能な経済・社会を作ることは、企業の失われたアニマルスピリットを復活させ、成長力の強化につながります。このことは、昨年来物価情勢が好転する中で、企業に前向きな動きが拡がってきたことをみても明らかです。』

成長期待いやまあどうでもいいですし、昨年の動きは消費増税の駆け込みとか消費増税対策の財政支出とかもありませんでしたっけねえという事は言ってはいけないらしいので黙っておきましょう。

『日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成することを通じて、こうした前向きな動きをしっかりとサポートしていきます。』

ということで英文引用はめんどいのでパス。


・最後の野党審議委員に対する果たし状部分に日銀文学の高いクオリティを読み取り感銘を受けるのだ

最後にこんな説明があって執行部あるいは某局からの木内審議委員や佐藤審議委員に対する果たし状キタコレ。

『「潜在成長率が低い状況で、物価を上げることが望ましいのか」といった見方もあるようですが、私の答えは明確に「YES」です。』

英文の方が面白い。

『While some question whether it will be desirable to increase prices when the potential growth rate is low, my answer will be a clear "yes." 』

何とかクリニックのCMを思い出したのはアタクシだけではありますまい。

しかしこれ果たし状ではあるのですが、果たし状を突き付けつつも退路を用意している辺りが日銀文学のハイクオリティ振りを示しているものでありまして、「2%が望ましい」とはこのセンテンスでは一言も言っていないので、「短期的に2%を目指すのは潜在成長力が低い状況の中では望ましくないのではないか」という指摘や「潜在成長力が低い状況の中で物価を上げ過ぎると却って成長の阻害要因になるのでないか」というような指摘などに対して正面から答えていないので、今のような質問に対しては以下のように言い逃れが可能というハイクオリティな果たし状になっているのがオソロシス。

『デフレからの脱却と潜在成長率の引き上げは、いずれかが優先するといったものではなく、前者は後者を実現するための重要な前提です。』
『Overcoming deflation and raising growth potential is not an issue of which comes first. Overcoming deflation is an important prerequisite for raising growth potential.』

「引き上げるにしても短期的に適正な物価水準と中長期的に目指す適正な物価水準は別なのではないか」という指摘に対する疑問に対しての果たし状の筈が、「いやデフレ脱却が重要だろう」という答えをして本質を外した反論不能の説明に持ち込むという高度な日銀文学の昇華が観察されまして、ここの部分の作文テラ有能(日銀文学的に)。

そしてこういう風に話の筋を外して置いてから再び軌道を戻すという実に高度すぎる文学。

『我々は2%の物価安定を実現します。そして、そのもとで、日本経済がより高い潜在成長率を実現できると信じています。』
『The Bank will achieve the price stability target of 2 percent. In that situation, I am convinced that Japan's economy will achieve a higher potential growth rate.』

「デフレ脱却が重要なのは判るが2%というのは短期的には日本経済の実力対比で高過ぎなのでそれは中長期的に粘り強く目指していけばよいのではないか」という意見に対する何の反論にもなっていないのですけれども、上記のような日銀文学の粋を尽くした説明を経ますとあら不思議、2%物価目標を短期的に達成することが潜在成長率の上昇に資するという話をしているのが説得力があるように見えるという実に優秀な文学作品に仕上がっておりまして、いやマジで頭が下がりますわこの説明文書と思うアタクシなのでありました。

#意外に鑑賞が長引いたなおい

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2014/10/09

○黒田総裁記者会見ネタである

うむ。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1410a.pdf

・大本営発表を確認する質疑

最初の質問は幹事社からだったように記憶しているが。

『(問) 景気の先行きについて、もう少し詳しくお尋ね致します。本日発表があった内閣府の景気動向指数で、景気について下方向への局面変化という判断がなされました。景気が後退方向へ入っているのではないかと言う指摘もだんだん出てきているわけですが、一方で今の総裁のご説明だと緩やかな回復基調を続けるということで、景気のもたつきは一時的だというご説明だと思います。景気のもたつきが一時的だという判断の根拠を改めてお尋ねします。』

まあ答えは判り切っていますが答えさせて記録に残すのも必要な手順。

『また、安倍首相は年内に7〜9月の景気の戻りを見て消費税の最終判断をされるとおっしゃっていますが、消費増税に耐えうるような経済環境が、今のままでも達成できるのか、あるいは政府・日銀による追加的な対応が何か必要と見ていらっしゃるのか、その点をお伺いします。』

後半は無駄な質問のように見えるが。

『(答) 先程申し上げた通り、わが国の景気は、足許、確かに消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動、あるいは天候不順等の影響から生産面を中心に弱めの動きがみられていますが、基調的には緩やかな回復を続けているとみています。その背景としては、これも先程申し上げた通り、家計部門・企業部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと維持されているということがあります。』

しっかりと維持されているんですかそうですか(棒読み)。

『企業部門については、高い収益を維持していますし、家計部門についても、雇用・所得環境は改善を続けています。そのもとで、企業については、設備投資を緩やかながら増加させています。家計については、確かに消費税率引き上げ、あるいは天候不順等の影響が足許みられましたが、徐々にそうした影響も和らぎつつあります。』

実質所得の低下については消費税を抜くとプラスなので言及しないのが仕様になっています。

『基本的に企業部門・家計部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムはしっかりと維持されていると考えています。』

まあ「基本的に」とか言ってる辺りが若干ヘッジクローズ入ってますが。

『なお、ご指摘の景気動向指数の中身をご覧になって頂くと分かりますように、生産面の諸指標がかなり多く含まれており、先程申し上げたように、鉱工業生産指数で弱めの数字が続いていることを反映したものだと思います。』

「そもそも集計方法が悪い」とは斬新な反論だが、ただの見苦しい言い訳にしか聞こえないから想定問答の作り方を再考した方が良いとおもいます。

『ただ、鉱工業生産指数についても、先行きの見通しは、プラスになっていると聞いています。7〜9月の成長率は、先にならないと出てきませんので、今の段階で何か申し上げることは避けたいと思いますが、基本的には、4〜6月のマイナスから、7〜9月にはプラスに転じるだろうと思っています。』

鉱工業生産指数の予測指数が未達状態が連発している点はスルーですかそうですか。

『消費税率引き上げの判断は、あくまでも政府および国会でお決めになることですので、私から何か申し上げることはございません。』

まあ消費税はこういう話をしますわなという所で、この後の質疑で消費増税の話が出なかったのでこれ以上のコメントが出なかったのはちょっと惜しいのですが、ここだけ切り取って読むと従来よりも消費増税先送り的な話が出てきている件などに配慮しているようにも見えてしまうのが微妙ですが、たぶんそんな配慮とかはしないと思います。


・為替の質問関連

幹事社の次の質問が為替でこの後為替質問が結構多いのだがこれと最後の方の質問だけネタにしておく。

『(問) 為替についてお伺いします。今日、国会で、総裁は、今まで起こった円安が日本経済全体にとってマイナスということはないと思うといったご発言をされています。また、ファンダメンタルズを反映した形の円安なら全体としてみて、景気にはプラスというお話でした。日米の金融政策の差というのは、これからどんどん拡がっていく可能性があると思います。そういう意味では、このところ一時1ドル110円まで円安になりましたが、総裁のお考えでは、まだまだ円安の余地があるという理解で宜しいでしょうか。』

うむ。

『(答) 為替レートの現在の水準や先行きについて、何か申し上げるということは差し控えたいと思います。そう申し上げた上で、ご指摘のように、このところの為替の動向の背景には、日本が「量的・質的金融緩和」という大規模な金融緩和を続けている一方で、FRBの政策スタンスに注目が集まっていることがあります。雇用など米国経済の回復が著しく、そうしたことに注目が集まっていることは事実だと思いますが、為替レートは様々な要因で変化します。私どもとしては、為替動向も含め、金融資本市場の状況については、実体経済に及ぼす影響を含めて、引き続き、注意深くみていきたいと思っています。』

という説明でして、まあトーンとしては若干従来よりも円安強調スタンスを緩和している感じで、さすがにこれは円安批判が日銀に掛かって火達磨になるのを避けたという感じではないでしょうか。

でまあこれで十分だと思うのですがああでもないこうでもないという質問が続いて誠に遺憾なのですけれども、この質問だけは面白かった。

『(問) 本日午前の参議院予算委員会での為替についての発言ですが、総裁からは経済や金融のファンダメンタルズを反映した形の円安は、全体として景気にプラスとありました。現在の為替水準は、ファンダメンタルズを十分に反映しているのかどうかという点について、どう考えていらっしゃるのか、もし十分に反映されておらず、さらに円安となる余地もあるのか、その判断を教えて下さい。』

これは引っ掛け質問としては比較的良くできていますな。

『(答) それは、現在の水準が適正な水準かどうかということをお聞きになっていることと同じだと思います。水準について、何か判断めいたことを申し上げるのは差し控えさせて頂きたいと思います。』

残念無念(^^)。

『従来から申し上げている通り、実体経済や金融といったファンダメンタルズに即した方向での為替の変動は、マイナスにならない、むしろプラスであろうと思います。ただファンダメンタルズ自体も動きますので、どのようにみるのかというのが、重要なポイントになると思います。日本、欧米各国や新興国などの成長率、物価上昇率あるいは金融政策その他様々な要因が絡んでいますので、事前にこちらが正しいとか、あるいはこういった水準が適切であるということは非常に難しいと思います。これまでのところをみる限りは、行き過ぎた円高が是正され、最近時点で言えば、各国の金融政策の違いにマーケットの注目が集まっているという中で、ある意味で言うと、自然な為替の変動かなと思っていますけれども、水準とか変化のスピードについて、具体的なことを申し上げるのは差し控えたいと思います。』

黒田総裁の従来からの説明は実は「ファンダメンタルズに整合的な為替市場の形成が望ましい」というトーンではあるのですが、従来はそれよりも「円安ヒャッハー」というトーンの方が前面に出る形でして、この辺りの説明トーン(と要旨での纏め方)も昨今の円安批判を受けて「円安ヒャッハー」的なヘッドライン餌を与えないように注意しているようには見えますな。うんうん。


・MPM中断ネタについて

『(問) 本日の決定会合中に参議院予算委員会に出席するために、1時間超にわたって決定会合を中断するということがあり、1998年以来16年振りのかなり異例な事態だと思います。決定会合は、国内外の金融市場からもかなり注目を集めているものですので、その決定・判断がこういう国会出席のために遅れる事態について、総裁はどのようなお考えを持っておられるのかご見解を伺えればと思います。』

まあ福山哲郎大大大先生の見解もお伺いしたい所ですが、参議院予算委員会の運営サイドもMPM2日目なの分かってるんだったらお止めして差し上げろよと思うのですけどねえ。

『(答) 国会への出席自体は、日銀法に規定されていることですので、それに従って出席したということです。一方、ご指摘のように、金融政策決定会合は、わが国の金融政策を決定する重要な会合であり、十分な時間をとって審議・決定を行う必要がある会議です。また、内外の金融市場を含めて、決定に関する関心、注目は非常に高いと思います。従って、こうした点については、引き続き関係各位のご理解を頂きたいと思っています。』

国会のボケナス野郎が呼んだのでこちらとしてはどうしようも無いのですよという無念感が行間からも伝わる大変結構な回答になっておりますな。



・この質問をしたのは誰だあ(ガラッ)

・・・・・・・というかまあ中継画像を見ますと誰だかわかりますが。

『(問) 地政学リスクについてお伺いします。地政学リスクが散見されているにもかかわらず、金融市場は全く反応していません。普通に考えると地政学リスクが生じると原油が上がったり、商品価格が上がったり、景気に下押しとなりますが、全くそうなっておらず、インフレ懸念も高まっていません。中国も成長していると言いつつ弱い状況に見えます。新興国、特に中国が本当に成長しているのであれば、商品価格が上昇したりすると思います。そのような状況がみられないのは、均衡しているからとみるのか、世界経済の成長と商品価格の下落に関して、どのようにお考えなのかお伺いします。』

前半までは「これは景気が弱いという事を示しており日銀の景気認識が甘いのではないでしょうか」という質問をしているのかと思ったのですが、後半になると商品市場についての質問になっている訳で、頼むからちゃんと整理してくれという所です。

『(答) 世界経済の動向については、各種の国際機関が最新の経済見通しを発表してきており、足許、若干下方修正されているようですが、成長率が少しずつでも年々高まっていくという方向性は変わっていないように思います。その一方で、石油、原油、あるいは穀物といった商品の相場がこのところ下落して弱いのはなぜか、ということですが、商品市況ですから色々な要素があると思います。(以下省略)』

上記の要旨だと少し丸まっているのですが、まあこういう風に総裁が答えていますように実際の質問の後半はどう見ても商品市場の解説を総裁に求めたような聞き方になっておりまして、貴重な時間の無駄遣いにも程があるので質問者の猛省を促したいと思います。


#なお他には2年で2%ネタなどもあるので続きは明日(時間が無い)

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