石田浩二審議委員
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石田審議委員の経歴(日銀HPより)
昭和22年6月22日 神奈川県出身
昭和45年4月 東京大学経済学部卒業
昭和45年5月 住友銀行入行
平成 6年10月 (株)住友銀行 資金為替部長
平成 9年 6月 (株)住友銀行 取締役
平成11年 6月 (株)住友銀行 執行役員
平成13年 1月 (株)住友銀行 常務執行役員 企画部長
平成13年 4月 (株)三井住友銀行 常務執行役員 経営企画部長
平成14年 6月 (株)三井住友銀行 常務執行役員 本店第一営業本部長
平成15年 6月 (株)三井住友フィナンシャルグループ 代表取締役 常務取締役
平成16年 4月 (株)三井住友フィナンシャルグループ 代表取締役 専務取締役
平成17年 6月 (株)三井住友フィナンシャルグループ 常任監査役、(株)三井住友銀行
監査役(非常勤)
平成18年 6月 三井住友銀リース(株)代表取締役社長 兼 最高執行役員
平成19年10月 三井住友ファイナンス&リース(株)代表取締役社長
(直近は三井住友ファイナンス&リース代表取締役社長、三井住友FG専務取締役から就任)
平成23年 6月30日日本銀行政策委員会審議委員に就任
2015/08/06「京都金懇での会見は正論過ぎて大変に素晴らしい内容」
2015/08/04「会見の説明は物価目標をフレキシブルに考える成分が濃厚(メモ)」
2015/07/31「京都金懇は野党成分が強い正論」
2015/03/02「石田審議委員会見は執行部に無慈悲な砲撃」
2015/02/27「横浜での金懇は更に執行部にイヤミ連発の正論な内容」
2014/07/31「石田審議委員会見は更にクリアカットな説明です」
2014/07/30「石田審議委員講演は物価の考え方に関して野党審議委員としての問題提起を更に突っ込んで行う」
2014/02/28「石田審議委員講演続き&会見:物価が単に上がれば良いものでは無いとか帰属家賃除くCPIが2%とか」
2014/02/27「石田審議委員講演は説明ロジックがシマウマ日銀となっていますよ」
2013/09/13「講演テキストは景気に弱めだったのに会見では景気に強めと謎の人です」
2013/09/12「石田審議委員講演はやや景気に慎重な見方っぽく」
2013/03/18「講演と会見は超安全運転で面白味無し」
2013/01/28「12月決定会合議事要旨から石田さんの提案を見ると・・・・・やっぱりダメダメでしたorz」
2012/12/28「11月決定会合議事要旨(英文版)から石田さん提案の背景を更に突っ込んだ形で見る」
2012/12/27「11月決定会合議事要旨を見ると石田さんの付利撤廃へのアイデアは示されていましたという話など」
2012/12/25「為替に働きかけるという石田委員の提案を再考する」
2012/12/21「石田審議委員まさかの付利撤廃提案」
2012/06/25「会見では微妙に自分の見解らしきものを出している部分も」
2012/06/22「講演では執行部見解の説明を行うが、やはり執行部見解は強めである」
2011/12/09「記者会見でも下方リスク強めの警戒モード」
2011/12/08「デビュー講演は欧州警戒モード」
2011/07/04「就任記者会見、基本的に執行部ペースで無難な質疑応答に終始」
2011/05/27「野田審議委員の後任候補にSMBCから石田浩二さんがノミネート」
2015/08/06
○石田審議委員会見です(遅くなりました)
結局GoogleChromeで何とかする作戦に打って出るのでした。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1507d.pdf
・講演では警戒チックな景気への説明でしたが
『(問) 講演の中で、海外経済の下振れや輸出・生産のもたつきが、設備投資、企業の心理に与える影響について発言されていますが、心理面への影響が看過できなくなった場合は、追加緩和の必要がでてくるのでしょうか。一方で、講演の中で、量的・質的金融緩和が金融システム面に与える影響ということも触れられていますので、その辺について付言して頂ければと思います。』
ということでまずは前半の質問に対して。
『(答) ただいまのところ、4〜6月の経済状況が若干足踏み、あるいは少し下振れするのではないかということを見込む向きが多く、それには国内の天候要因もかなり影響しているのではないかと思います。講演で触れましたように、海外の様々な問題、海外経済の若干の低調さによる影響が関係しているのであろうと思います。こうした問題に伴う心理的な影響は、7〜9月期の数字でいろいろなものが戻っていけば、払拭される気がします。』
ということで・・・・・・・・・
『もうすぐ8月に入る時期で、7〜9月期も1か月が経過していますが、天候でいえば、4月と6月は大変悪かったのですが、7月に入りましてかなり暑い日が続いています。また、昨日、7月の財務局長会議が開催されましたが、11
地域中7地域において改善しているということであり、足もとは心強いサインが出始めているのではないかと思います。私自身は、基本的に楽観していますが、海外要因はしっかりとみていかなければならないと思っています。』
という説明になっていまして、基本的には講演テキストから受ける印象よりは景気に対してはそこまでの下振れリスクを懸念している訳ではございませんな。
『もう1つの点につきましては、午前中にも話しましたとおり、現在のところ、インバランスが出ているというようなことは考えていません。長い目でみて、よく注意していきたいと考えています。』
金融不均衡の話はさらっと流す、というかインバランスが起きているとなったらそれは木内さんに賛成になってしまいますからそうではないですわな。
・原油価格の攪乱があるからエネルギーを除いているのですよという話
でまあメインイベントは物価の話ですぞなということで以下物価に関する問答が続く。
『(問) 物価についてお伺いします。午前中の講演では、エネルギー価格を除いたものが、基調判断の上で重要だという趣旨の話をされたと思いますが、一方で生活している人々からみると、エネルギー価格も非常に影響があり、食料品は入れるけれども、エネルギーは除くという、上がっているものだけをカウントするような、良い所取りをしているようにも感じられますが、その点についてお伺いします。』
ふむ。
『(答) 誤解があると大変困るので申し上げますが、基本的に物価目標というのは、総合であって、何かを差し引くということではありません。』
えーっとここはさすがに皆様も誤解が無いとは思いますが、物価安定目標の2%というのは実際には「総合物価指数」であって、コアだのコアコアだのというのは「物価のトレンドを見るための物差し」でありますので、ここからどうせ物価問答になるということもあって石田さんが最初にお話をしたのでございましょうな。
『ただ、今は原油価格が大変大きく変動しており、物価全体をある意味で言うと大きな変動にさらしています。例えば、本行の展望レポートで物価の先行きをみた場合の中心的見通しは、今は原油価格の関係で低いが、年の終わり頃からその影響が薄れるにつれて、かなりのスピードで上がっていくと申し上げています。問題は、今、霧がかかっており、よく分からないけれども、霧が晴れたら山は高いですよという話ですから、その霧のかかっている中で山がどのくらい高くなっていくのかをみていくための手段として、「総合(除くエネルギー)」いう指数を使うのであって、これが高いからもう良いということでは全くありません。』
ということで、とりあえずは「物差しを誤魔化して行ったことにするという話ではありませんよ」という説明をしておりますな。
・そもそも総合物価指数自体についての話になりますが・・・・・・・・・・・・
よりそもそも論のお話。
『(問) 家賃や公共料金などの景気連動性が低いものの特性を勘案する必要があると石田委員は発言されていますが、西村前副総裁は、家賃には、構造的に税制その他で下押し圧力がかかっていて、CPIの2%を目指すのは非常に難しく、短期間にそれを目指そうとすると、他の品目が2%よりずっと高くならなければならず、スパイラル的な物価上昇とか、バブル的な現象が起こる可能性があると仰っています。』
これはネタにしましたな。
『石田委員自身、本日の講演の中で、CPIの図表において、除くエネルギーが
1.2%、エネルギーと持ち家の帰属家賃を除くと 1.5%と、衝撃的なデータを示されています。』
まあ直近ではこの石田さんの講演の影響もあってか、「物価目標に関してコアが2%ヒットしなくても総合的に判断攻撃で曖昧な中で達成あるいはそれに近い認識を示してくるのでは?」というような趣旨のレポートなどが増えてきた希ガス。
『こういう数字になっていれば良いということではない、と仰っていますけれど、非常に下押しのバイアスがあるものも含めて、2%に無理やりもっていこうとした時に、金融面での不均衡なり、何かのリスクが大きくなる可能性があると思いますが、そこはどのようにお考えになっているのか、西村前副総裁の仰っていることにかなり共感をお持ちではないかと思いますが、いかがでしょうか。』
石田さんの回答。
『(答) 物価目標は、もともと「物価安定の目標」を導入した時からフレキシブルなものだから導入した、ということを明言していまして、その後も、物価の基本的な考え方がリバイスされたという話は聞いていません。』
キタコレ!!!!!!
『私が前から申し上げているのは、物価というのは、いろいろと柔軟にみていくべきであって、諸々の見方をもとに、最終的には、日本銀行が責任を持って判断するものだと思っています。』
これはまた置物副総裁とは大きく違う説明をしていまして、まあ常識的に見ても石田さんの説明する「フレキシブルなターゲット」の方がリーズナブルではありますが、これを言い出すとコミットメント達成への気合が伝わらなくなるということでフレキシブルではなくてリジッドな話をするのが今の執行部クオリティ。
『そういう意味から、現実に物価の中に帰属家賃が入っていた場合に、簡単にいえば、今のままで2%を目指すためには、除く帰属家賃で
2.4%上げなければならないわけですが、一般的な物価が2%に達した時に、帰属家賃を含めれば2%に満たず、例えば、1.65%とか、1.7%を若干切り、まだ目標に届かない場合に、どんどん一般物価を上げないといけないというふうに金融政策を推し進めていくべきだということに、私は疑問を持っています。適切に、その時々において、物価の状況がどうなっているのかをみていけば良いと思います。』
『また、帰属家賃が上がらないとは限りません。帰属家賃が上がらなかった場合に、他のものが上がってきて、両者のバランスをみたときに、金融政策としてどうするかは、私としては政策委員会の判断にかかわる事項だと思っています。』
今の帰属家賃の状況であれば2%ヒットしなくても1%台後半ならその辺で超緩和政策の緩和度合いを緩めるべき、とは言ってませんけれども、どこからどう見てもそういう趣旨な訳でして、攪乱要因除くの物価水準が1%台後半に来たら出口かどうかは兎も角として、年間80兆円拡大というこの先どこかで限界にぶつかる政策の軌道修正をしたいというお話であると思います。
でまあこれって実務的に見たら明らかに妥当なお話で、「目標達成が見えていないのにオペの限界が来た」というのが一番間抜けな話なのですから、本来で言えば来年のどこか(基本前半)には広げ過ぎて間もなく破れそうになる大風呂敷の収拾をしないといけないのですから、「名誉ある撤退」が出来る一つの考え方を示しているのだと思われます。
とは言いましても、たぶん置物大先生が2%ヒットに拘っているでしょうし、黒田さんがその辺をどう思っているのかというのは中々見えてこないのですが、2%ヒットに殉じて爆発するのか、現実的な収拾を行うのかというのに残された時間は実はあと半年少々しか残っていないと思います。
・物価の質問はさらに続く
『(問) 講演の中で、「物価動向を総合的に評価していくことが政策運営上必要である」ということを言われており、その前段でインフレ実感のお話があります。現状、家計でみると、確かに食料品が結構上がっていて、物価が上がっていると感じている人が多いと思います。一部では、4月分から給料とかボーナスを含めて家計の所得が上がっているにもかかわらず、消費がパッとしないということが言われていますが、その辺りを絡めて、実際の物価ではなく、家計が受けるインフレ感をもう少し重視すべきというようなことを含めた発言であるのか、その辺をお聞かせください。』
またも「本来の物価の物差し」にかかわる質問ですな。
『(答) とりたてて家計の物価感をよくみて金融政策に直接反映するということではありませんが、例えば、食料品の価格というのは、所得の低い層あるいは年金生活者にとっては、エンゲル係数が全体の平均値より高いはずでありますから、こうした方々には、大変大きな要素だと思っています。』
なるほど。
『一部では「コアコアをみるべきだ」というような議論がありますが、コアコアをみた場合には、そういうものが無視されていく訳でありますから、そういう意味でコアコアをみるべきではない、という意見を私は持っています。そういったことには、ある意味では、家計の物価の実感をみているという面があると、私は考えています。』
さらっと執行部に砲撃していませんですかそれは(^^)。
『賃金につきましては、確かにベースアップ等は4月からでありますが、普通は6、7月にベースアップの遡及支給があり、それからボーナスも支給されます。今春の賃金引き上げの評価については、6、7月の数字をよく精査したうえで確実なことを申し上げたいと思っています。ただ、それは一人当たりの賃金でありますので、全体の景気に与える労働所得をみると、労働者数が増えていますので、所得全体は確実に増えてきているとみています。』
なお毎勤統計はアレでしたな。7月分まで見ないと分からんが。
でまあ石田さんの説明というかこれは政策委員会全体の説明として、所得がズッコケというようなシナリオは無い(まあ普通に民間エコノミストの予想でもそうですが)のですが、「期待してたよりもダメじゃん」となるかどうかというのが目先の関門ではあるなあという感じですかねえ。
・物価と消費について
『(問) 今日の講演において、エネルギーを除いた指数、さらに帰属家賃を除いた指数を示されたのは、やはり生活実感として国民が感じるものを指数が反映しているとお考えなのか、そうであればコアCPIは0%ですが、生活実感としてはやはり物価面から消費に対する下押し圧力というようなものがかかりやすい状況にすでになっているとお考えなのか、この点を教えてください。』
先程ありましたように石田さんは景気シナリオをそこまで厳しく見ていないのでこういう答えになる。
『(答) それは、そうではありません。物価の基調をどうみていくかの問題であって、物価が低いこと自体は消費にはプラスであると思います。物価が低いこの時期に、消費に勢いがついていって欲しいと思っています。』
ですです。
『先ほど申し上げたように、将来、原油の問題が薄れてきたときに物価が本当に上がるのか、上がらないのかというところをみるためにその指数をみていきたいということであります。いろいろな見方がありますが、例えばコアからエネルギーを引けば
0.7%という数字が出ますが、明日の数字をみると 0.9%になったとか、或いはその次に
1.0%になったということになれば、確実に物価の基調は上がっていると考えられ、原油価格の変動の影響が除かれていったときに、現実に表面の物価が上がってくるということです。政策の将来の方向付けに対して正しく経済のベースの部分が動いているかをみるための基調判断の道具として捉えています。』
ということで、「基調判断の際にかく乱要因を除いた数字を見る」ということに尽きるのではないかと思いますが、ただまあこの話って見る数字が多くなればなるほど、市場における先行き金融政策の期待形成という意味ではファジーになっていくというか、まあ訳分からん状態になってきますが、実際問題として考えた場合、ここを徐々にファジーにしていくようにしないと、この先の金融政策の「名誉ある撤退」をする準備すらできない訳で、ファジーにしないままで急に名誉ある撤退をしようとしてもそれはそこで期待の不連続的な変化が起きてしまいますし、そもそも論として「このウソツキヤロー」という話になりますので、まあ石田さんのアプローチは今の暴走機関車政策の暴走機関車を少なくとも止めるためには良いアプローチなんですよね。
#そこで問題になるのはこれが執行部の見解あるいはそれなりに執行部が問題意識を持っているかどうか、という所なのですがね
・何気に達成タイミングもフレキシブルな説明をしているのでこれはローリングターゲットと融合できますね
こんな質疑がありましてね。
『(問) 確認ですが、挨拶要旨の4ページに先行きの見通しで、日本銀行としては、2%程度に達する時期は2016
年度前半頃になると予想していると書かれていますが、石田委員もそうお考えであるのか。また、今、政府で消費者物価指数の見直しを進めていると思いますが、この議論がどう影響するか、しないのかについての考えもお聞かせください。』
『(答) 指数の見直しの話がいろいろと進んでいますが、私としては基本的に前回ほど大きな、断続的な数字になりそうもないので、あまり緊張感はありません。帰属家賃の問題もいろいろ言われているようですが、調整するかしないかは別にして、私は金融政策として判断の材料にすれば良いと思っています。』
指数を直したから金融政策が変わる、というのではなくてあくまでも総合判断ということですな。ただリジッドな目標っぽい説明をしていたQQE当初からの流れ(いまはだいぶファジー化が進んでいますけれども、まあ総裁副総裁は2%ヒットの所を重視している感じの物言いですな)とは相反する話。
『2016 年度前半に2%程度に達するということについては、私は 2015 年度中にといっていた時にも申し上げていますが、時期について細かく議論するのはあまり生産的ではないという気がします。』
キタコレ!!!!!
『2016 年度の上期あるいは 2016 年度の中頃あるいは 2016 年度中と、いろんな意見があると思いますが、いずれにしろ、2%の物価目標が達成されるのであれば、例えば今から1年後ということになります。金融の世界では非常に近い将来の話でありますから、金利の調整とかいろいろなことが起こり始めるかもしれません。そういう意味からすると、その時期が若干ズレようが、問題はそこに必ずいくという確信が出てくるかどうかです。』
佐藤さんの「ローリングターゲット」にも近い概念の話をしていますな。
『私自身としては、達成するタイミングについてある程度の腹積もりがあり、正直に申し上げれば、帰属家賃がそれほど上がらないとすると、その他のものが上がったとしても、表面の物価は若干下がらざるを得ない点があるため、若干低かったとしても、――例えば
0.2%とかの差が――2%物価目標の達成との関係で、どれほど厳密な議論する意味があるのか。』
置物砲撃置物砲撃。
『2%程度で安定するという確信が得られれば、それで良いというのが、そもそものフレキシブル・インフレーション・ターゲティングの運営ではないかと思っています。』
ということですので、佐藤さんの「ローリングターゲット」と話をうまく融合させて、ついでにTapering提案の方を下げさせて木内さんも巻き込みます(ちょっと木内さんは説明が違うので巻き込むのには若干の調整が必要ですな)と政策委員3名が一致して政策の見方を提案するという話になるので中々こうビューティフルな事になるんですけど一つご検討の程をm(__)m
・ということでフレキシブルターゲットを思いっきり主張しています
確認の質問キタコレ。
『(問) 今のお話は、2%をきっちり、厳密にやることにあまり意味がないのではないか、2%程度ということで、かなりの上下というか幅があって然るべきであるという理解で宜しいでしょうか。』
そして石田さん。
『(答) それは、もともとそういうものだというのが私の理解です。』
キターーーーーーーーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
『私が審議委員に就任する前に、日本銀行が「目標」と呼ぶのを避けていたのは、2%とか1%というと、厳密に1%で、0.1%でも欠ければいかないとか、0.1%上げればオーバーだとか、そういうふうにみられやすいということがあったのではないかと思います。2%目標導入時にも、「柔軟な」という言葉が使われていると思いますので、2%にいくいかない、あるいはそれを超えても、その時の経済・金融情勢をみながら運営していくということだと思います。』
『ただ数字だけみるものではない、それがフレキシブル・インフレーション・ターゲティングの根本ではないかと思います。それは前から変わりません。』
なお置物理論での物価目標設定というのは、その手の総合判断を排除してたとえばテイラールール的なルールベースの金融政策を行う事によって期待も安定化される、という話を耳にタコができるほどリフレ派の諸先生方から聞かされて(というか読まされて)おりましたので、実は置物物価目標理論とは全然合致しないお話なのですが、置物大師匠の事ですから「日銀に入って初めて知りました」とかお前はそれでも金融政策の学者かと小一時間肥溜めに漬けて問い詰めたくなるような事を言い出していきなり従来の話を反故にするかも知れませんな、うんうん。
・・・・・・・とまあそういうことで、石田審議委員の質疑応答何気に殆ど引用してしまった感じですが、今回の会見は中々こういい感じで執行部に砲撃しまくってファンキーというか本来は石田さんの説明の方が正しいでしょと思うお話をバンバン炸裂させてくれまして大変にごちそうさまでしたという所です。
まー石田さんの見解をベースに明確な野党審議委員の方々が結集、となりますと今の政策からの名誉ある撤退戦というのもそれなりの現実味を帯びてくる可能性もあるとは思いますがどうでしょうかね。
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2015/08/04
○石田審議委員会見関連メモ雑談
・ファイル不具合回避にはGoogleChromeとのご指摘賜りました
読者様からご教示賜ったのですが(改めてありがとうございます)、石田審議委員会見のファイルをコピペしようとすると謎の連続コピーとなってしまう件についてはブラウザーをGoogleChromeにすると問題が起きないようですが、IE(アタクシの環境はIEです)やFirefoxではコピペの不具合が発生する模様。
いやまあ治して頂きますと誠にありがたく存じますのですが、もしかして石田審議委員の金懇をFOMCの翌日にぶつけている事も勘案しますと、まさかとは思いますがこの不具合状態は利用しにくくする為にわざとやっているのではないかという陰謀脳の妄想全開モードへの道が出来てしまいますががががが。
・本文ご紹介はまた明日にでも行いますが忘れないうちにポイントと雑談
会見要旨紹介(というか貼っておかないと自分が後で見た時に何が何だかワカランチ会長になってしまう)はまた明日にでも行いますが(IE不具合が治ったらやろうと思っていますが今日も治らんようだと何日も置いておくのも何なので明日投下)、読んでいてほえーと思ったあたりを少々申し上げておきます。
まず景気ですけど、景気についての質疑はあまりないのですが、下振れに関してコメントはあるものの基本的には楽観的と発言していて、いわゆるcautiously
optimisticって奴ではないかと思われます。
で、当然話題になっているのが物価なのですが、物価安定目標に関しての話がユニークというか当然と言えば当然のお話をしていまして、「2%物価安定目標というのが実際の物価指標に出る姿というのは柔軟に考えるべき」という説明をしているのが特徴的です。
詳しくは会見要旨を読んでちょ(というか明日貼りますけど)という所ですが、「概念的には総合物価指数」で、概念としては「2%程度の物価上昇が安定的に」ということであっても、それが実際に数値として出た場合に、コアCPIの2%という数値に固執するのが正しいのか、というような問題意識を提案している訳で、何気に「2%の数値に行かないから絶対ダメとかそういう考え方はケシカラン」的なお話をしていまして、「フレキシブル」の中身は「物価安定目標の達成された姿を判断することに対してフレキシブル」という感じですな。
この物価目標達成の姿について明らかに今の枠組みと違う話をしている審議委員って木内さんと佐藤さんがそうですけれども石田さんもまあ違う説明(ご本人たちに言わせると「物価安定の理解」というのは本来こういう事なので今の枠組みと違う話ではなく、本来こう理解すべきものである、と怒られそうですが、笑)をしているなあとは思う物の、三者三様で微妙に違いますな。
木内さんは「2%は中長期に達成すべき」という話をメインにおいていますが、実はその2%について現実の指標を見て判断する場合にどう落とし込むのかという話はあまりしていませんな。まあ判断時期が先なのだから今からその話をする必要もないという所なのでしょうけれども。
でもって佐藤さんと石田さんの場合は「物価安定の目標は柔軟なもの」という点は一致しているのですが、議論のポイントを置く場所が微妙に違っていて、佐藤さんの場合はどの物差しをという話よりも達成時期と判断に関しての話がポイントにあって、「ローリングターゲット」という表現をしていたと思いますが、見通しベースで2%というのを重視して、アクチュアルの数値を合わせに行くよりも中期的な見通しベース(足元がゼロとかで願望ベースで2%安定的というのではないようです、念のため)での判断という話。石田さんの場合は「2%という数値の達成をどう判断するか」という話で、「物差しについて」と「ガチガチに2%の数値に固執するのはイクナイ」という話をしているという感じですな。
とは申しましても、この辺りの話って木内さんの例の政策提案についてはハードル高いのですが、目標達成の考え方についての方は極端に差がある訳ではないので、ある程度見解をまとめると何と審議委員3名になるのであと2名集めれば・・・・・・・・となるのですが、布野さんはまだデビューしたばかりなので良くわからんのですが、原田さんが賛同する可能性はゼロで、白井さんはあのキャラなのでさっぱり分からんですが自分が目立ちたがる人にしか見えないので今からこちらに乗っかってくるというのもちょっと考えにくいのですが、そちらが「勝ち馬」だと思ったら平然と乗って来そうな悪寒もしますな。
まーしかしいずれにしても今の政策を延々と続けるのは物理的に回らないですし、輪番オペが物理的に爆発(というのは札割れ寸前状態になって金利が急速馬鹿低下するとか、なおECBと違って今のままの建付けだと日銀の買入金利は日銀ネットに入力できる桁数までのマイナス金利で入札が可能ですよね)してオペレーションの限界が到達したのに物価目標は達成していない、ということは避けないといけませんから、ナローパスな日銀執行部超楽観シナリオが回るならともかく、そうじゃないときにどう収拾するのかというのは、逆算して考えれば今から半年くらいのタイムスパンで考えないといけないのではないかと思いますがどうなんでしょうかね。
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2015/07/31
○石田審議委員講演である
ちなみに
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NSA3IV6K50Y001.html
石田日銀委員:帰属家賃除くと2.4%必要−2%物価目標達成に
2015/07/30 16:44 JST
会見の発言要旨とかをベンダーで拝見しておりまして、会見がまたいい感じのようなのですけれども、こちらは質疑の要旨が今日になって出てきますのでそちらを楽しみに待ちたいということで今日は講演ネタで参ります。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150730a1.pdf
・先行きの注目は「輸出・生産」「消費・実質所得」「設備投資」でして・・・・・・・
最初の『U.経済・物価情勢』は『1.海外経済の動向』『2.わが国の経済・物価情勢』に関しましては基本日銀のベースラインシナリオ通りの説明をしていまして、そこではあまり変わった話をしている訳ではありませんので割愛しまして、その次の『(3)景気・物価面での注目点』から参ります。
『次に、当面の経済・物価情勢をみていくうえでの注目点についてお話します。』
ということで・・・・・・・・・・
『まず1点目は、輸出・生産動向です。』
てなことで威勢の良くない方の話がキタコレですな。
『実質輸出は、昨年7〜9月以降、3四半期連続で増加しましたが、4〜6月は年前半における海外経済の減速がややラグを伴って影響したことなどから▲3.6%となりました(図表10)。また、鉱工業生産も、そうした輸出の動きに加え、国内における軽自動車の在庫調整や関連する素材産業の下振れなどから、足もとでは鈍さがみられています。』
ですな。
『こうした輸出・生産のもたつきは、来月に公表される4〜6月の実質成長率を下押しする要因となるとみられますが、問題は、夏場以降、そうした踊り場的な状況を脱し、再び緩やかな増加傾向を辿っていくかという点です。』
ということで、まあここは審議委員の与野党(?)を問わずという所でしょうが、足元4-6の所がパッとしないのはさておき、ここから先の回復(需給ギャップのプラス化による物価上昇圧力)や、執行部シナリオの「賃金から物価への内生的な物価上昇メカニズム」が本当にワークするのか、というのがまず最初の日銀ベースラインシナリオの関門という事になりますな。
『今のところ、輸出・生産とも、米国経済のリバウンドや在庫調整の進捗などから、振れを伴いつつも緩やかに増加していくとみていますが、その一方で輸出面では、中国経済の下振れ懸念と新興国への波及、原油安に伴う世界的なエネルギー関連投資の落ち込みが下押しに作用する可能性があるほか、生産面でも、素材産業における在庫調整の進捗ペースにやや不確実性があります。いずれにしても、想定される下振れリスクに留意しつつ、今後の改善ペースをよくみていきたいと考えています。』
とまあそういうことで、下振れリスク意識チックに見えるのですが、会見での発言をベンダーで見たところではそんなに先行き景気を弱めに見ている訳ではない的な発言があったみたいです。
『2点目は、物価に大きな影響を与える個人消費と実質所得の動向です。』
キタコレ!!
『個人消費については、足もとの指標は天候要因もありやや弱めのものがみられますが、今春のベアの反映や夏のボーナスの増加など所得面の下支えが期待されることから、当面は底堅く推移していくとみています。』
実際問題としてこれって少なくとも7-9の所はベアとか賞与とかの所があるから堅調に推移する筈という認識は日銀のみならず市場でもしていると思いますので、ここがいきなり出オチ状態になると吉本新喜劇もビックリのズッコケモードになってしまうのですよね。さてどうなりますやら。
『ただし、下期以降、物価の本格的な上昇が見込まれるなかで個人消費の底堅さが持続していくためには、実質賃金の改善が重要なポイントになってくると考えています(図表11)。』
順当ですが当然の指摘。なお執行部はここの部分に対して「去年とは傾向が違うので大丈夫です(キリッ)」としか説明しないのは先般ネタにした中曽副総裁の質問に全然正面から答えない熊本金懇での質疑応答を見れば一目瞭然。
『昨年度の経験を振り返ってみると、消費税率引き上げの影響もあって表面上の物価が大幅に上昇するもとで賃金の改善が追い付かず、実質賃金は大幅なマイナスの状態が続きました。それが消費者の家計防衛的な行動に繋がり、個人消費のもたつきをもたらすとともに、積極化しつつあった販売サイドの価格設定スタンスを弱気化させたとみております。』
仰せのとおり。
『今年度入り後の物価動向をみると、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は0%程度で推移していますが、日用品や食料品を中心に構成される日経・東大日次物価指数は強めの動きとなっており、今のところ物価上昇トレンドが昨年のように腰折れる兆しはみられません(図表12)。このこと自体は、販売現場における価格設定スタンスの強さを示しており、消費が底堅いことの証左でもあるとみています。』
つーことですのでこの辺では別に弱めの話はしていない。
『もっとも、消費の持続性に大きく影響する実質賃金は、足もと急速に改善しているとは言え、やっと水面付近に達したところです。今後、実質賃金がどのようなペースで改善していくか、注目していきたいと考えています。』
ということですが、名目賃金ってそう簡単にホイホイ毎月のように上がってくれないと思うので(一回上がれば前年比ベースでは上昇しますけど)どうなることやら。
『また、個人消費の動向をみていくうえでは、年金受給者の動向にも留意する必要があります。』
なるほど。
『高齢化の進展ともに、年金受給者は4,000 万人近くに達しており、個人消費全体に及ぼす影響も大きくなってきています(図表13)。年金受給者の消費を巡っては、やや長い目でみると、マクロ経済スライドなどによる実質の年金給付額の減少が消費を下押しする可能性もあり、これまで以上によくみていく必要があると考えています。』
ということで基本はベースラインシナリオに乗ってはいるものの留保付きという感じに見えます。
『最後3点目は、設備投資の動向です。設備投資については、昨年中は、駆け込み需要の反動や為替相場・原油価格の動向を巡る不確実性の高まりなどの影響もあって、収益水準や事業計画との対比でみて伸び悩む局面もみられましたが、今年1〜3月の実質GDPでははっきりと増加に転じました。その後も、6月短観では製造業・大企業を中心に強めの計画となっているほか、機械投資の先行指標である機械受注も増加しており、企業の投資スタンスは明確に改善してきているとみられます。』
ここまではベースラインシナリオと同じ説明なので強い。
『先行きの設備投資については、企業収益の改善や緩和的な金融環境、為替相場の動向を眺めた製造業による国内投資の積極化などを背景に、緩やかな増加を続けるとみています。しかしながら、このところの海外経済の下振れとそれに伴う輸出・生産のもたつきが、攻めに転じつつある企業の心理を弱気化させるリスクもあると考えています。』
キタコレ。
『景気が緩やかな回復を続けていくなかで、企業が内外需要の先行きに対し、どの程度の自信・確信を持てるかが、当面の設備投資の増加ペースを左右していくものとみています。』
てな訳で、この講演テキスト見ただけの印象では結構下振れ警戒しているなあという感じなのですが、先ほど申し上げた通りで、会見の発言要旨がベンダーから出てきていて、そちらを見ると(ちなみにベンダーの方では景気よりも物価目標に関する話の方が盛大に注目されていますけど)景気先行きには基本的に楽観的な趣旨の発言が出ていたようですので(詳しくは本日出てくる会見要旨を見て確認したいと思います)、ここでの字面ほどの下振れ警戒ではなくて「留保付きの楽観シナリオ」という程度の感じなのかなあとも思われます。ここは今日の会見録で判断したいと思います。
・まあ石田さんと言えばメインイベントは物価の考え方ですよね!!!!!!
ということで『V.日本銀行の金融政策』ですけれども、最初の政策の説明部分は割愛して『2.物価の基調的な動きについての見方』を正座して鑑賞したいと思います。
『物価の基調をみていく際、私自身としては、昨年来のエネルギー品目の変動が消費者物価全体に大きな影響を及ぼしている状況を踏まえると、当面はエネルギーを除いた総合指数もみていくことが適当と考えています(図表16)。』
キタコレ!!
『類似の指標として、「食料およびエネルギー除く総合指数」があり、これをみていくべきだという意見もありますが、わが国は家計の消費支出に占める食料費の割合が全体の4分の1を占めており、先進諸国の中でも非常に大きくなっております。家計に与える影響度を考えると、食料品を除くことは適当ではないと考えています。』
でまあご案内のように食料品に関しては絶賛上昇中でありますので、図表16を見ますと(上記URL先から見てちょ)総合除くエネは直近+1.2%という数値になっています。なおこの前の金融経済月報でも出てきて話題のコア除くエネは+0.7%ですね。
『また、基調評価に当たっては、わが国の消費者物価指数の構成品目の特性も勘案する必要があると考えています。』
さあ盛り上がってまいりました!!!!!
『たとえば、わが国の公共サービスや家賃の価格は粘着的であり、米国と比べて景気との連動性が低いという特性があります。それに加え、持ち家の帰属家賃については、家計の現実の支出との関連がなく、また、指数自体が住宅の質の劣化を反映していないことなどによるバイアスが存在するとの指摘もあります(図表17)。』
図表17というのが日米比較の帰属家賃の推移(だいたい10年分)なのですが確かにご指摘の通りです。
『個々の物価統計が真の「物価」の姿を捉えることには限界があることを踏まえつつ、構成品目の特性や家計の現実の支出項目、インフレ実感などとの関係を意識しながら物価動向を総合的に評価していくことが政策運営上必要であると考えています。』
(;∀;)イイシテキダナー
なお講演テキストにはないですが、図表を見ると「除く帰属家賃」は+1.5%というウヒョーな数値になっているのですよ先生!!!!!!さすがにちょっと目立つからそこまではコメントをしなかったということでしょうけれどもお察しですかそうですか。
ということで、この項はここで終了しておりましてシンプルな説明になっているのですが、この問題というのは物価安定目標の理念的な部分をどう現実の判断に落とし込むか、という意味における物価安定目標の定義というか考え方に関わる非常に重要な論点でありまして、どこぞの置物リフレ理論みたいに「CPI2%達成すれば何もかもハッピーで当然皆さんの生活は向上しますよ」的な単純な話ではない「そもそも物価安定目標で目指すものって何なんですか」的な所にまで波及する話でもあったりしますな。
つーかまあ本当の本当に出口を意識するような事になった場合って、この「物価安定の判断を実際問題としてどういう所を考えて行うのか」というのが、まあ相変わらず何が何だか示されていないですし、そもそも論として、明らかにそうでしょと思うのは、置物リフレ理論的な連中とそうじゃない人の間には大きな差がある訳でして(そもそも置物一派のいう「インフレターゲット」って「恣意性を排したルールベースの金融政策判断によって物価を安定化させる」という考えがベースにあって、ジャッジメンタルな部分を排除するというのが肝になっている筈だったんですよねえ)、一方で出てくる政策というのは当然一つになる訳ですから、ここの見解についてもっと各政策委員の考え方を示して頂かないと、マジで物価がホイホイ上昇した場合に金融政策の先行き期待が不連続的に変化するような不安定な状態になるのを懸念するんですけどね。
いやまあ理念的には「景気循環サイクルの中で平均的に2%程度の物価」であって「社会の皆さんの経済活動の中に2%程度の物価上昇という前提が安定的にビルトインされている」というのが物価安定目標の意味するところである(ただし置物一派の説明だと単にCPIがどう動くかというリジットな話だったりするかもしれませんけどね)。というのは分かるのですが、それだけを確認するためには物凄い後付にならないと分からないですし、金融政策の波及効果のタイムラグに加え、今行っている非伝統的政策が異例も異例の政策であることを考えると、前述した理念的な部分だけで判断できた頃には時既にお寿司なインフレ期待や実際のインフレの好ましくない上方シフトが発生しているリスクがある訳ですから、じゃあどう判断するのかという事についての考え方って無いのかねと毎度思うのですよね、となぜかいつものアタクシの雑談になってすいませんすいません。
・金融政策の波及効果の中で第二の柱ネタ投下キタコレですな
気を取り直して(汗)続きである。
『金融政策に関するお話の最後として、「金融政策の波及効果と金融システムの安定」という点について、少しだけ触れておきたいと思います。』
これは!
『現在、日本銀行が実施している「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指して行っていますが、その過程では、当然のことながら、企業金融や金融市場、各種資産市場に諸々の波及効果を生じさせています。』
ですね。
『金融機関は、国債の保有額を減少させる一方、外貨資産を含めた各種リスク資産を増やす、いわゆる「ポートフォリオ・リバランス」を進めています。また、強力な緩和効果により、長期金利は極めて低位に安定していますが、それによって金融機関の資金運用利回りは低下する一方、企業の資金調達コストが大きく低下しています。さらに、実体経済や企業収益の改善を通じて、株価が上昇しているほか、不動産取引も活発化してきています。』
QQEでポートフォリオリバランスなのかというのは少々もにょるのですががががが。
『これらは、いずれも「量的・質的金融緩和」の導入時に想定していたメカニズムのもとで発現した効果であり、基本的には前向きに捉えることができると考えています。物価安定のもとでの持続的な成長を実現する観点からしっかりと点検すべき金融面の大きな不均衡や過熱感についても、今までのところみられていないと判断しています。』
まあ見られているとか警戒レベルという事になるとそれは木内審議委員モードになりますのでこうなるわな。
『もっとも、「量的・質的金融緩和」のもとで金融システムの安定を図るという観点からは、これら金融活動の活発化や実体経済の活性化が行き過ぎることで、先行き金融システムにリスクが蓄積していくことはないか、より長期的な視点を踏まえつつ、予断を持たずしっかりとみていく必要があると考えています。』
キタコレと申しますか、まあこれは一応執行部の説明というか展望レポートでも同様に書いてある話ではあるのですが、何せ金融政策決定会合議事要旨を見るとどこのアホウか知りませんが「QQEの副作用は理論的にも無い(キリッ)」とか言い出すオッペケペーはいるわ、この手の話を自分からは絶対にしてこない黒田総裁(というか執行部)はいるわという状況でございますので、良く良く考えれば極めてノーマルな石田さんのこの説明部分も「おー」と思って受け止めてしまう所が今の政策のあばばばばーな所ではないかなどと思ったりするのでありました。
以下は京都経済に関する話とかなので華麗にスルーします。
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2015/03/02
○石田審議委員会見はトーンは穏やかだが内容は無慈悲な執行部砲撃になっている件について
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1502e.pdf
執行部を火の海にしておりますなという所ですがでは鑑賞を。
・まずは総裁disである
2つ目の質問(最初のは所感をお願いしますなので実質最初)である。
『(問) 本日の懇談会における石田委員の発言についてお伺いします。石田委員は、先行きの金融政策運営方針で示されている「必要な調整」について、持続的な経済成長の実現が損なわれるリスクが大きくなった場合に対応して行うものであり、2%の「物価安定の目標」の達成時期やそのペースに対応して行うものではないと理解している、という発言をされたと聞いています。』
ふむふむ。
『しかしながら、普段から黒田総裁は「2015年度を中心とする期間に2%に達する」ということで、2015年度を中心とする期間を意識して政策運営をされているようにみえます。本日の石田委員の発言では、この「物価安定の目標」の達成時期の後ズレを容認するような発言と受け止められるのですが、この点の真意をお聞かせ願います。』
さてどうでしょうか???
『(答) 2013年1月に政府・日銀の共同声明が出され、日本銀行は「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指すとしています。それを踏まえて私も発言しており、とくに齟齬があるとは思っていません。』
ちなみに共同声明はこれ。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122c.pdf
出来るだけ早期にとは言っているのですが、その時期について2年とは書いていない(そもそも2013年1月ですからQQEの前ですし)わけで、この共同声明を持ってくる辺りが小太刀の冴えという所です。
『より長期的な視点とは、例えば、足許で物価が2%を下回る水準にあっても、先行き2%を超えて上昇スピードが増していく可能性が高い場合、あるいは逆に2%を上回る水準であっても、先行き低下トレンドに転換する可能性が高い場合など、やや長い目でみて経済・物価のトレンドの変化を見極めながら、調整の要否を判断していくということです。』
ごもっとも。
『目標の実現時期が若干前後するとか、一時的に物価が一定の水準を割り込むといった短期的な動きに対して調整を行うものではないと思っています。要は、振れに対していちいち対応するのではなく、基調をみて対応していくという意味ですから、その点については総裁とそれほど意見が異なっているとは思っていません。』
10月緩和に対するイヤミ(石田さん反対してますからね)キタコレですな(^^)。
・次の質疑では師匠に無慈悲な砲撃が
『(問) 午前中の講演の中で、委員は「家計や企業の中長期的な予想物価上昇率は、各種サーベイをみる限り安定的に推移しているなかで、今後、消費者物価が2%程度に向けて再び上昇していく道筋が見えているのであれば、政策運営上、とくに問題になることはないと考えています」と述べていますが、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率が下がる場合というのは、2%を見通せる道筋が見えなくなる状況なのか、そのまま見えている状況と判断されるのか、その点についてはどのようにお考えでしょうか。』
質問の後半が妙だがまあそれはそれとして。
『(答) 中長期の予想インフレ率については、家計を対象にした「生活意識に関するアンケート調査」では2%程度、企業を対象にした「短観」では1.7%程度で安定している一方、エコノミストに対するサーベイ、例えばESPフォーキャストの12月調査における長期予測では1.5%程度となっています。また、物価連動債から導かれるブレークイーブンインフレ率は足許0.9%程度です。』
とまあこれは良いとしまして。
『予想インフレ率は、経済学の概念としては明確なのですが、実際にどう把握して、それをどのように実務に使っていくかというところに困難があると思います。』
無慈悲砲撃キタコレ!!
『またその他にも、賃金の設定や企業の価格設定行動に表れる企業や個人の物価観も見ていく必要があろうかと思います。ところがこれらは、方向性はある程度分かるとしても、水準を捉えることはなかなか難しいと言えます。』
>水準を捉えることはなかなか難しいと言えます
>水準を捉えることはなかなか難しいと言えます
>水準を捉えることはなかなか難しいと言えます
素敵な砲撃ですな。
『私としては、経済主体たる企業・家計に対するサーベイの結果を重視しつつも、足許における賃金・物価の動向、あるいはそれに対する対応等々をみて、総合的に判断していかざるを得ないのではないかと考えています。』
インフレターゲットというのは自動運転のようなもので恣意性を排除するのが良いという宣伝をしていたリフレ派の皆さんのご見解をば。
・物価が安定してるかはジャッジメンタルである
ということで上記に関連して先の方にこんな質問が。
『(問) 物価目標については、様々な指標を総合的に判断せざるを得ないというなかで、石田委員が冒頭引用された2013年1月の共同声明でも、基本はヘッドライン、総合指数であるとしています。一方で日銀は、見通しベースではコアCPIを用いています。石田委員のこれまでの発言を勘案すると、必ずしも総合指数あるいはコアCPIが2%にタッチしなくても、基本的にそういう方向に安定して向かっていくと判断すれば、2%に達する以前に方向転換をする、アクセルを緩めるようなこともあり得る、という理解でよろしいでしょうか。』
『(答) あくまで物価指標は最終的にはヘッドラインCPIということですが、それが実際に全ての基調を表しているわけではないので、基調についてはコアCPIをみていくということになっていたと理解しています。今、原油価格が動いていますので、しばらくの間は、原油価格がどの程度影響を与えるのかみていこうということです。』
うむ。
『しかし、ヘッドラインCPIが安定しているかどうかは、最後は判断になります。』
(;∀;)イイシテキダナー
『経済指標は毎月変化していきますし、公表されるまでにはタイムラグもあります。また、金融政策についても効果の発現までにタイムラグがあります。そのように様々な限界がある中で、日本銀行としては最大の注意、努力を払って、基調的なインフレ率が2%に安定しているか、すなわち、総合で2%に安定しているかを判断する必要があります。総合指数自体が月々振れることは避けられず、現実の数字をみながら判断していくことに難しさはありますが、やはり日本銀行として責任を持って判断し、決めていかなければならない、というのが私の理解です。』
全く同意である。
・資産買入政策は市場にストレスを掛けているのは事実であるという指摘は重要
『(問) 現時点で日銀が相当額の国債等の資産を買うことによって、国債市場も副作用が大きくなっているとの声も聞かれますが、ここまで量的・質的金融緩和を継続する中での副作用という点について、改めて現時点でどう評価されているのでしょうか。』
この答えが素晴らしいので正座して読むべし。
『(答) 現在の「量的・質的金融緩和」は、いわゆる非伝統的政策と呼ばれるもので、今までやってきていない政策です。もともと伝統的な金融政策については、例えばマーケットに直接介入しないようにとか、様々な原理・原則、注意事項等があったかと思います。しかしながら、非伝統的政策、とくに「量的・質的金融緩和」は、各種資産を買い入れることを通じて、その他の資産を含めて、資産価格に直接・間接的に働きかけている政策であり、いわゆる一般的な需要と供給がバランスしてマーケットメカニズムが働いていく世界とは?し違っています。市場への介入、もっと言えば、市場を歪めることは、もともと避けられない政策であり、私はこういう政策をとる以上は、何らかの副作用はもとより避けられない、という覚悟であります。』
『私としては、大規模な非伝統的政策を推進している以上、市場の状況に十二分の注意を払い、異常な兆候を看過しないよう、最大限努めていく必要があると考えています。』
能天気にマイナス金利は効果とか言い出す執行部は爪の垢を煎じて飲むべきだと思います。
・付利金利引き下げについてはまあ否定
以前付利金利引き下げの提案をしたときにはケチョンケチョンに悪態をついた覚えがありますが(汗)、この素晴らしい金懇挨拶と会見要旨を拝読しますとその節はケチョンケチョンに申し上げて誠に恐れ入りますという所でありますが、その付利金利ネタ。
『(問) 石田委員はちょうど2年ほど前に、日銀当座預金の超過準備にかかる付利の引き下げを主張されました。それ以来、その主張はされていないのですが、直近の1月の会合の前に市場でそういった期待というか、観測が高まりました。改めてこの付利の引下げについて、どのようにお考えなのか、ご意見をお聞かせ下さい。』
『(答) 将来の金融政策について、仮定の話を色々と申し上げるのは差し控えたいと思います。ただし、2012年12月に付利の撤廃を提案した際の金融政策の枠組みは、いわゆる「包括緩和」と呼ばれるものであり、現在の「量的・質的金融緩和」とはコンセプトが異なっています。』
マネタリーベースで勝負という建付けに変わりましたからね!!!
『またこの間、経済の状況、例えば円相場等も大きく変わっていますので、今の段階では必ずしも同列に考えられるものではないということだけ申し上げておきます。』
たとえば円相場とかしらっと言ってるのがチャーミングで、円安誘導を否定してたりもしますがこの後にまたその話があるのよね。
・追加緩和の効果に関する質疑以降が無慈悲に執行部を火の海にしている件
『(問) 先程の質問に関して、追加緩和して4か月経って、追加緩和の効果が出ているか出ていないかとか、そういった評価について改めて伺いたいと思います。』
『(答) それは難しい問題です。』
ヒャッハー!!!
『量的緩和政策を実施していない海外の中央銀行総裁も言っていますが、効果が出ているのか出ていないのかと問われても、その政策を実施した場合と実施していない場合を現実に比べることができません。ですから、それについての答えは分からないということしか申し上げられません。』
これわwwww
『ただし、買入れのボリュームなどは増えていることから、当然ながらマーケットに対する影響、例えばイールドカーブにおける特にロングエンドに与える影響は強くなっていると思います。』
追加緩和でインフレ期待の低下リスクが回避された(キリッ)という宣伝に無慈悲砲撃ですな。
・物価だけ上げても効果ないでしょという説明が更に追い打ち砲撃
その次の質問、というか今回の会見は質問している方と答える方が実に綺麗に進行していて見ていて素敵。
『(問) 講演の中で、消費の弱さについて、実質賃金の下落が大きく影響していると指摘されていました。経済の先行きをみる上でのポイントとして、実質賃金の動向が非常に重要だというご指摘を前提に考えた場合、物価と賃金のペースについてどうお考えか教えて下さい。やはり物価の上昇というのは、賃金とか景気に歩調を合わせるのが望ましいとお考えなのか、あるいは物価が先行するような状況というのは、日本経済全体にとってよろしくないとお考えなのでしょうか。』
『(答) 良いか良くないかは別にして、昨年4月から起こったことは、物価は上がったが、所得がそれについてこなかったということです。』
(;∀;)イイシテキダナー
『よく言われるのは、物価が上がれば将来モノが高くなるから先に買う、デフレで将来モノが安くなるから今買うのは差し控える、それによって経済の循環がプラスになったり、マイナスになったりするということですが、現実に起こったことは――マグニチュードが大きかったせいかもしれませんが――、物価は上がったが、消費は冷えたということではないかと思います。』
どう見ても置物リフレ理論盛大に火の海です本当にありがとうございました。
『やはり物価が上がって賃金が上がらなければ、家計の購買力は低下しますので、消費には下押し圧力が出てきます。あるいは、賃金だけ上がって物価が下がったら、今度は企業収益が圧迫されて色々と問題が出てきます。このように、物価安定の下での持続的な経済成長というものは、なかなか難しいものだと思います。やはり2%の物価安定のためには、物価が相応に上がるもとで、相応の賃金上昇が必要だと考えています。』
まあそうですなということで。
・為替に関しては「いいから安定しておけ」とな
『(問) 講演の中で「円安環境のもとで経済の好環境を生み出す動きは着実にみられ始めており、為替相場が安定していけば…」と述べていますが、これだけをみると、現状程度の為替水準であればということが前提で、ここからさらに円安が進むことにはならない、という理解で良いのでしょうか。』
ということで・・・・・・
『(答) 私が申し上げたかったのは、このところの為替円安は、かなりスピードがあったということです。それに対し、企業などの経済主体からは、先行きの計画がなかなか立てにくいというお話を伺うことが多くあります。要するに、どこかの時点で落ち着けば、企業としての将来の計画が立てやすくなり、防衛するなり、攻めるなり、方向性を定めて戦略を策定することができるということです。』
なるほど。
『為替相場が大きく動いている状況では、将来どのような条件になるか分かりにくいため、明確な方向性を打ち出しにくくなります。一般論としてそういうことが言えるので、為替相場が安定すれば――水準ではなく、安定したということだけで――企業部門にはプラスになるのではないかということです。とくに工場設備の設置・更新や立地戦略を策定するとなると、ある程度先をみないと判断できないと思います。』
これ以上の円安誘導には否定的と、メモメモ。
ということで、中々こういい感じの会見でございました。
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2015/02/27
○石田審議委員の金懇は最後に思いっきり皮肉というか爆弾投下というか(^^)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150226a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 神奈川県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
経済物価見通しのところまでは基本的に展望レポートに則した話をしておりますのでその辺りはスルーしましてその後の『(3)景気・物価面での注目点』から。
・原油価格下落の背景と影響についての辛口指摘
『@原油価格下落の影響』という小見出しが最初である。
『まず1点目は原油価格下落の影響です。原油価格の推移をみると、足もとは?し戻していますが、昨年6月頃のピーク水準からは大幅に下落した状態にあります(図表10)。この間の大幅下落の背景については、米国のシェール・オイルの生産などが増加するもとでの産油国における減産合意の見送りといった供給要因のほか、新興国や欧州の景気減速による需要減など、様々な要因が指摘されていますが、それらが複合的に影響してきたと考えられます。』
うむ。
『原油価格の下落がわが国経済に与える影響については、種々言われているとおり、景気面では、企業収益の改善や家計の実質購買力の上昇を通じて全体としてプラスの効果をもたらすとともに、物価面では、エネルギー価格の下落により短期的には下押し圧力がかかるものの、やや長い目でみれば、需給ギャップの改善を通じて押し上げ要因になる、ということだと思います。つまり、時間の経過とともに、景気・物価の両面でプラスの効果が出てくるというのが基本シナリオだと思いますが、その一方で、個別には留意すべき点もあるとみています。』
留意すべき点とな。
『先ほど、IMFの世界経済見通しが調査回ごとに下方修正されている点に触れましたが、そのこと自体は、世界的な回復トレンドの中にも脆弱な部分が存在しているとみられます。そうした状況のもとで、原油価格の下落により、世界の資本投資支出の4割程度を占めると言われるエネルギー・資源セクターの資本投資支出に調整圧力がかかってくるとみられ、わが国が競争力を有する資本財の受注・生産・輸出に下押し圧力が働く可能性もある点は、注意してみていく必要があると考えています。』
キタコレ!!ということで執行部のバラ色シナリオに対してピリリと辛口の指摘ですな。
・実質賃金に関してもチクチク執行部にイヤミかも
次が『A実質賃金の動向』である。
『2点目は実質賃金の動向です。今年度入り後の実質賃金の動向をみると、消費税率の引き上げの影響を含む消費者物価の伸び率が大幅に上昇していることもあって、前年比マイナスで推移しています(図表11)。』
実質賃金キタコレ。
『この間、消費については、駆け込み需要の反動からの戻りがやや弱い状態が続いてきましたが、これには天候不順の影響に加えて、実質賃金の下落が大きく影響していることは否定できないと考えています。』
>実質賃金の下落が大きく影響していることは否定できないと考えています
(;∀;)イイシテキダナー
『このため、来年度以降、個人消費の持ち直しが明確になり、緩やかながらも増加基調を維持していくためには、名目賃金がしっかりと上昇し、物価上昇率を加味した実質賃金のベースでプラスになっていくことが必要と考えています。』
つーことで実質賃金の下落という中には消費税の影響もありますけれども、「物価上昇率を加味した実質賃金のベースで」としらっと指摘しており、物価だけ無理やりコストプッシュで引き上げても意味がないんじゃと「とにかく物価を上げないといかん」というQQEの執行部理論に対してイヤミがチクチクでもありますな、うんうん。
『この点、足もとの日本経済をみると、企業収益は、為替円安の恩恵を受ける輸出関連企業と逆風にさらされる内需関連企業で業績にやや違いがみられるものの、全体としては増益傾向が続いています。また、雇用情勢が引き続きタイトな状況にあることや物価の状況なども踏まえると、ベースアップやボーナスなどのかたちで賃金が上昇していく環境は整ってきています。家計所得を巡っては、来年度から適用される年金のマクロ経済スライド等の影響にも留意する必要がありますが、今春の賃金交渉において、実質賃金の上昇に繋がるような賃金改善が実現できれば、来年度以降の家計部門における前向きな循環をサポートする大きな原動力になるとみています。』
ということでまあここは順当な指摘。
・輸出の話は概ね執行部と平仄があっていますが一層の円安を求めなさそうな説明にニヤリ
『B輸出動向』についてですが、まあそもそも執行部の方が「輸出出る出る詐欺」モードをさすがにマイルドにしてきていますから概ねここは執行部の話に近いようには見えますが・・・・・・
『3点目は、輸出動向です。「量的・質的金融緩和」の導入以降、為替相場は大幅に円安方向に変化してきましたが、その間、実質輸出については、伸び悩みが続いてきました。Jカーブ効果がなかなか現れてこなかったことについては、新興国経済のもたつきなどの循環要因のほか、製造業における海外生産移管の拡大といった構造要因など様々な要因が指摘されてきました。そうしたなかで、円安環境にあっても輸出が以前のような景気の力強い牽引役となることはなかなか難しくなっています。』
うむ。
『もっとも、足もとの状況をみると、実質輸出ははっきりと増加に転じています(前掲図表7)。また、一部には国内生産回帰や輸入代替を進める動きがみられるなど、先行きの国内事業の拡大方針を示す企業も増えてきています。円安環境のもとで経済の好循環を生み出す動きは着実にみられ始めており、為替相場が安定していけば、今後もそうした動きは徐々に強まっていくものとみています。生産・輸出動向の先行きを見通すうえでは、こうした企業行動の変化にも注目していく必要があると考えています。』
>為替相場が安定していけば
>為替相場が安定していけば
>為替相場が安定していけば
・・・・・・・・・(^^)。
つまり「強引に円安に持っていくのではなく、為替水準をこの辺で安定させた方がよろしいのではないでしょうか」という事を暗に表明しているのではとも読み取れる説明でありまして、これまた実に味わいが深い講演テキストになっておりますな、うんうん。
・金融政策に関して:物価指標に関して
『4.今後の金融政策運営について』の『(1)原油価格の下落と金融政策運営』に飛びます。
『次に、今後の金融政策運営について、2点お話したいと思います。まず1点目は、原油価格の下落と金融政策運営の関係です。』
『1月の展望レポートの中間評価では、消費者物価の見通しが2015 年度にかけて下方修正されましたが、その主因である原油価格の下落は、やや長い目でみれば、景気刺激効果を通じて物価に対する基調的な押し上げ要因になります。家計や企業の中長期的な予想物価上昇率は、各種サーベイをみる限り安定的に推移しているなかで(図表16)、今後、消費者物価が2%程度に向けて再び上昇していく道筋がみえているのであれば、政策運営上、特に問題になることはないと考えています。』
そもそも10月緩和に反対していますしこういう説明になるのは当然。
『また、物価動向の把握という観点からは、原油価格の大幅な変動により、消費者物価の基調的な動きが見極めにくくなっている状況にあります。消費者物価の基調的な動きについては、生鮮食品を除く総合指数を中心に様々な指標を点検しながら総合的に評価することが基本ですが、足もとの状況に鑑みると、当面は、エネルギー価格の寄与度を踏まえつつ、評価していくことが適当と考えられます(図表17)。今回、日本銀行が2016
年度までの物価見通しに当たって、エネルギー価格の寄与度の試算を公表したのは、こうした考え方によるものと言えます。』
まあここは良いとしまして。
『この点、食料・エネルギーを除いた物価指数、いわゆるコアコア指数を中心にみていくという考え方がありますが、私自身としては、わが国は家計支出に占める食料費の割合は米国などと比べても大きく、また、昨年来、生活必需品の値上がりが消費者マインドを圧迫してきたことを考えると、物価の基調的な動きを捉える際に、食料品を含めた指数をみていくことも大切だと考えています。』
消費バスケットを考えた場合、本来は総合をみるのが筋でしょという話で、これはきわめて重要な論点ですし、石田審議委員の指摘が妥当と考えます。
『また、その際、擬制的な支出であり、実質賃金算出の際にも控除される「持ち家の帰属家賃」も除いた指数も重視しています。「持ち家の帰属家賃」は長期にわたり下落基調を続けていますが、今後もそうしたトレンドが続く場合、特に財・サービスの価格が上昇率を高めていく局面では、物価全体に対する大きな下押し要因になると考えられます。その場合、家計の実感との乖離、あるいは賃金上昇率との関係という点から、諸々の問題が生じる可能性があるとみています(前掲図表17
の<参考>)。』
以前より石田さんが指摘している論点ですが今回も登場していますね。
・そして最後(金懇は最後にご当地経済の話をするので本当の最後ではないが)にこの金懇講演の白眉が!!!
『(2)「量的・質的金融緩和」の継続』という所ですけどね。
『2点目は、「量的・質的金融緩和」の継続についてです。「量的・質的金融緩和」を導入してから、今年4月で丸2年となります。これまで、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続するとしています。また、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うこととしています。』
さよですな。
『物価見通しについて、現状、2015 年度は原油価格の大幅下落により1.0%にとどまりますが、2016
年度は2.2%となっています(前掲図表9)。今後、経済・物価情勢が想定どおり展開していけば、時間の経過とともに2%の「物価安定の目標」の実現が近づいてくるということになります。』
ふむふむ。
『現時点で出口に関する議論は時期尚早ですが、そうした見通しのもとで先行き物価が上昇スピードを増していけば、現在力いっぱい踏み込んでいる「量的・質的金融緩和」のアクセルを徐々に緩めていくことも、いずれ必要になってくるものと考えています。』
早期に達成する!と言いながら早期に達成するなら必要になるはずの出口政策の話になると時期尚早と言い出す執行部に対するイヤミですね!!!!
『その観点からも、今後4月、10 月の展望レポートの作成、7月、1月の各々の中間評価において、足もとの景気動向や物価の基調的な動きをしっかりと把握・判断し、先行きについて見極めていくことが一段と重要になってくると考えています。』
そしてこの次に盛大な爆弾投下が来ますよ。
『なお、先行きの金融政策運営方針で示している「必要な調整」については、経済・金融面での不均衡が生じた場合など、より長期的な視点から、物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現が損なわれるリスクが大きくなった場合に対応して行うものであり、2%の「物価安定の目標」の達成の時期やそのペースに対応して行うものではないと、私は理解しています。』
>2%の「物価安定の目標」の達成の時期やそのペースに対応して行うものではないと、私は理解しています
>2%の「物価安定の目標」の達成の時期やそのペースに対応して行うものではないと、私は理解しています
>2%の「物価安定の目標」の達成の時期やそのペースに対応して行うものではないと、私は理解しています
>2%の「物価安定の目標」の達成の時期やそのペースに対応して行うものではないと、私は理解しています
>2%の「物価安定の目標」の達成の時期やそのペースに対応して行うものではないと、私は理解しています
これはまた石田さん見事な砲撃で参りました。
会見の方も素敵だったようですので会見テキストを楽しみに待ちたいと思いますが、しかしまあこういう審議委員の中にジンバブエ理論の先生が投下される訳で、どういう議論が展開されるのか、それともそもそも会話が成立しないのか、という辺り決定会合をライブで見たいのですがそれは叶わぬ願いですな(−−;
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2014/07/31
○石田審議委員会見
さて昨日熟読した石田審議員金懇挨拶の会見である。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1407c.pdf
・企業の価格転嫁行動について
この先出てくる物価目標ネタの質疑が多いのだがそれはそれとしてこの質疑はほほうと思ったので引用。
『(問) 講演の中で、注目するポイントとして企業の価格設定行動を挙げていますが、このコスト高を転嫁する動きというのは、想定よりも早いペースで拡がりをもって出てきているということなのでしょうか。また、デフレマインドが払拭されていることが背景にあると言えるのか、まだその辺りの見極めは少し難しいのか、
お伺いします。』
ふむふむ。
『(答) 本日の挨拶でも触れましたが、仕入価格判断DIは依然として非常に高い水準にあり、企業にとって仕入価格の上昇が続いています。デフレの時代はそういう状況でも販売価格への転嫁がなかなか進まなかったわけですが、今月初に公表された6月短観では、販売価格DIの面でもピックアップがみられており、プラスの圏内に変わってきています。言ってみれば、企業の価格設定行動が少しずつ積極化しているのだろうと思います。』
なるほど。
『先程申し上げましたように、仕入価格の上昇圧力がまだありますから、このまま推移すると、徐々に価格設定行動が積極化してくると思います。それを支えるのは景気が底堅く推移していくことであり――我々は「展望レポート」の考え方ではそういう方向で進むとみているわけですが――、これが万一弱くなると、企業の価格設定行動にも影響するということで注意深くみていきたいということを申し上げた次第です。』
イイシテキダナーという所で、需給ギャップが改善する中で予想インフレ率が上がっているのだから当然の如く企業の価格設定も強くなる的な執行部ベースのやたら強気説明とは微妙に距離を感じる説明ですな。
・輸出と設備投資について
こいつも引用。
『(問) 輸出と設備投資の関係についてお伺いしたいのですが、過去のパターンでは、輸出が盛り上がると設備投資も盛り上がっていくというパターンがありましたが、今回は、この間の議事要旨にも触れられていましたが、その関係が弱まっている、デカップリングになっているのではないかという見方があります。石田審議委員はその点どのようにご覧になっていますか。』
まあ先日の黒田総裁の定例会見や中曽副総裁の講演などでは更新投資とか省力化投資での設備が出ます(キリッ)という話をしていましたが、それって「先に繋がるサイクル」ではない一時的な話のような気もしますよねとは思いましたがさて石田さんの答えは。
『(答) いわゆる能力増強投資については、最近は過去に比べると非常に少なくなっているという気がします。殊に、輸出企業関係の能力増強投資よりも、省力化投資や耐久期間の過ぎた設備を入れ替える更新投資が大きくなっているのではないかと思います。ですから、輸出が増えた時に輸出産業が能力増強投資を実施する――例えば、自動車などの新しいラインを作る――かというと、どうもそういうことではないような時期になってきているのかなと思います。』
と、穏当にここで説明が終了していますが、ここに文言を付け加えると「生産拡大によって設備投資が拡大するという前向きのサイクルが効きにくい時期とも言えます」という事になる筈ですので(^^)、これまたしらっと執行部ベースのヒャッハー見通しからの微妙な間合いが垣間見れる次第であります。
・物価安定目標に関する考え方について
当然だがこの質疑がやたらと多い。
『(問) 講演の中で2%の物価目標に関して詳しく言及されていましたが、去年の4月に日銀で「2年で2%」ということをコミットメントし、市場はやはりコアのCPIを重視しているのですが、本日の石田審議委員の講演をお伺いすると、決してコアのCPIのみで判断されない、様々な物価動向をみるということですが、そうするとコアのCPIが2%というのは、あくまでも十分条件ではなく、一つの必要条件であって総合的に判断されるということを言われているかと思います。』
講演では必要条件とも説明していないと思うのだが・・・・・・・・・
『そうするとやはり市場としても、金融政策の透明性とか、先行きの政策をみる上で少し市場の変動が大きくなるようなことも考え得るかなと思うのですが、この点に関してもう少しお伺いしたいと思います。』
で、それに対して石田さん。
『(答) そもそも物価の安定という概念はなかなか難しいところがあります。例えば、何かの指標が3か月間2%を続けたらそれでOKなのかと言えば、そういう基準では判断できません。経済統計の数字は絶えず動いており、みているうちに来月はどうなるのかということになってきます。』
仰せのとおり。
『このため、やはり日本銀行が責任をもって判断するということだと思います。何か一つの指標が自動的に一つの予め決まった基準にいくから透明性があるというようには考えていません。』
インフレ目標は総合判断的なものではないので金融政策がよりルールベースで行われて結構というような方々が沢山いらっしゃると存じます、というかそもそも置物副総裁様がそのような言説を盛大に披露しておられたと思いますが、この石田審議委員のご説明について置物大先生の見解を小一時間ほどお伺いしたいものでありますがどうでしょうか(^^)。
『様々なものを判断していく際に、納得性があるのかどうかということが重要だと思います。政策委員会が様々な側面から検討を加えて認定するということであれば、それは外からみても納得性のいくようなものであって、決して不透明とか、漠然としているとか、よく分からないとか、そういうことにはならないと思います。』
あたしゃやはり「総合判断」だと思いますが、まあそれだと分かりにくいという話から始まっているのがインフレ目標2%で日銀の政策裁量余地を無くして云々みたいな話でしたから置物師匠の反論マダー。
続いて別の人と思われますが追加質問。
『(問) 2%の物価安定の実現を判断する際、あるいは安定的に持続しているかどうかを判断する際に、コアCPIだけで判断するのは適当ではないとの質問がありましたが、私もこの点について一つお聞きします。』
ほいな。
『安定的に実現、持続するかどうかという点については、もともと物価安定目標というのは消費者物価の総合で示すということはもちろんよく理解できるのですが、基本的にほかのボードメンバーのこれまでのご発言などから考えると、展望レポートや黒田総裁などは、15年度を中心とする期間に物価目標である2%に達する可能性が高いという言い方をしているわけですが、これについてはコアCPIを指しているというのが一般的な認識ではないかと思います。』
まあそうですな。
『石田審議委員の講演でのご指摘というのは、そのコンセンサスとはやや違うのではないかという印象を受けました。』
そのコンセンサスというのが意味するのが文字にすると分かりにくくなっておりますが、要するに「コア2%を念頭に置いているとは必ずしも言っていないという意味ですよね」と言いたいようには読めました。
『そのうえで、もしコアCPIではなく、色々な指標で判断されると、その中にもちろん総合もあり、ここで指摘されている帰属家賃を除く消費者物価指数も判断材料とされるのであれば――前提としてこれらの指数がコアCPIよりもかなり高いと講演の中でも指摘されていますが――、帰属家賃を除く指数についていえば、もうほぼ2%近傍で既に推移しているということを考えると、石田審議委員ご自身は市場が思っているよりも、あるいは日銀のボードメンバーのコンセンサスで認識されているよりも早い段階でこの2%に達成したと、あるいは安定的に持続していると判断される可能性が十分にあるのではないかと思います。この点についてのご意見をお聞かせ下さい。』
つまりコアが2%行ってなくても総合的な判断をした場合には目標行ってますと言えるという事を意味するのですか??という質問のようですな。
で、石田さんの答え。
『(答) 日本銀行がコア指数を使用しているのは、トレンドをみるのに良いということが理由であり、以前からのことです。総合指数とコア指数では、総合指数のほうが高い時もありますが、これは上がったり下がったりするものです。ただ、総合指数の方が生鮮食品を含むために、上げ下げの幅が大きい、変動が大きいということがあるので、足許でのトレンドをコア指数でみているというだけです。コア指数で全てを測っていると本行が発表したことは、過去の資料のどこにもないと私は思っています。』
これは仰せのとおりなのですが、特に置物先生などはよりリジットな物価目標の設定を学者時代に提唱していただけに、少なくとも最近の日銀の執行部方面からの情報発信がコア重視になっているとか、もっと前の話をすると前回の量的緩和政策の時の継続期間コミットメントにおいてコアCPIで決め打ちしていたという実績が効いていると思います。
『それから、安定的に達成していくということを判断することも非常に難しいと思います。言葉で言うのは簡単ですが。経済指標は毎月動きますから、安定的に達成している状態を何かの基準で表していくことはなかなか難しいと思います。従って、それはやはり判断の問題となります。』
確かに。
『判断の問題になるのであれば、様々なことを考えたうえで総合的に判断することがやはり必要だというのが私の考えであって、何か高めにいくとか低めにいくとか、そういうことではないと思っています。』
ということで、まあ微妙に質疑が噛み合っていないような気もしますが、そらまあ総合的に判断するのだから早いとか遅いとか先の事について話はできませんぞなもしという所なんでしょうね。
・帰属家賃除く総合の話について更に
さらに質問者が食い下がる。
『(問) その点についてもう一つ追加でお聞きしたいのですが、講演では、持家の帰属家賃を除く総合について、コアよりも1%以上高いと、すでに2%近傍の水準でこのところ推移していると指摘されています。この文脈を考えると、こうした持家の帰属家賃を除く総合が高すぎるということ自体が、実際の家計の支出行動に対して良からぬ影響を与えているというような認識ではないかと思います。この色々なCPIの中で、コアCPIだけではなくて総合、そしてコアコア、そしてこの持家の帰属家賃を除く総合、色々なものを総合して、2%の達成あるいは安定的に持続ということを判断されるということですけれども、この持家の帰属家賃を除く総合――これが実質賃金を計る際には使われる指数ですが――、これはあまり高いとやはりよろしくないと――今既に2%なわけですが、これがそのコアCPIがあと1%ぐらい2%にいくには必要なわけですけれども――、この持家の帰属家賃を除く総合が今2%なのが3%近くまで上がる状況というのは望ましいといえるのかどうか、ご見解をお聞かせ願えますか。』
うーん質問の前半の筋は判るのだが後半が妙な質問になってますな。
『(答) 多くの方は、コアCPIを消費者物価の上昇率としてみているわけですが、一方で、所得や消費支出については、実質ベースの数字――新聞の中で例えばマイナス3.6%とか、マイナス8%とか――が出ています。ですから、そこで使われる物価指数がコアCPIと違うということも明らかにしておく必要があろうと思います。』
ほほう。
『コアCPIで物価上昇を語りながら賃金について実質ベースで語ると、その間で実質化に使われている物価指数はコアCPIだと思われている方が多いのではないかと思うのです。そうではなく、やはりこういう基準の物価指数が使われていて、足もと6月の伸び率が4.4%となっており、――コアCPIであれば3.3%ですが――実質化の際に大きな影響が出ているということは、私としてはやはり言っておく意味があるのではないかと思ったわけです。』
なるほど。
『従って、そこに何か別の思惑などがあると考えて頂くのは、私の本日の真意ではございません。』
ということで帰属家賃除く総合が2%だから目標達成ヒャッハーという話ではないと言いたいようですが、しかし総合判断の中でこの数字出している時点でまあお察しという所だと思います。ただまあ暴れて物議を醸すタイミングとしては早いという事じゃないでしょうかねえ(ニヤニヤ)。
・リジットな指数紐付け目標では無いとあるいは置物先生の反論をお伺いしたい件について
さっきの質問にあったのが繰り返されるの巻。
『(問) CPIのコア指数の2%は、結局、物価安定目標の実現の判断の必要条件なのでしょうか。』
まあ想定通りの回答が来ます。
『(答) 必要条件というように、何々が何々という状態にならなければならないと条件を決めつけることが適当だと私は考えていません。例えば、ある指標がここに到達していなければいけないとか、この水準以上でなければならないとか、予めそのように個別のインデックスを扱っていくのではなく、全体としてみた時に――殊に、ある程度の時間帯をもって総合中心にみていくわけですが――コアCPIの2%は一つの重要な要素ではありますが、どうしても一定の水準が必要であると私は考えていません。』
まあ総合判断ですからこう来ますなという所ですが、ただこれはかつて日銀をケチョンケチョンにけなしておられた置物副総裁の提唱する形でのインフレ目標導入しろ説明とはだいぶ違いますよね・・・・・・・・
『2%の物価安定目標を導入した時――これは前執行部の時ですが――、それまで日本銀行が「目標」という言葉を使わなかったのは、日本の場合、どうしても「目標」とすると非常にリジッドなものとして取り扱われる恐れがあり、そのことが金融政策の柔軟性を妨げるのではないかという懸念が強くあったからだと思います。』
・・・・・・・・・と思ったらしらっと素敵な説明が入っていますよ!!!!白日銀キタコレ!!!!!
『そういう状況が諸外国のインフレーションターゲットの運営の過程を通じて、わが国でもある程度の柔軟な運営ができるのだろうと判断し、「目標」という言葉――その前は「目途」と言っていたはずですが――を使うようにしたと私は思っています。』
(;∀;)イイハナシダナー
ということで白い話が更に続く。
『何々が何々でなければならないという非常に堅い条件を設定すること、例えばある特定の指標で2%の状態が3か月間続く必要があるとか、ワンタッチしたらいいとか、そのように考えるのではなく、2%の物価という問題について、それが適切なレベルまで来ているかどうか、それは判断することだと思います。必要条件ということは、判断の際にそれが達成していなければならないということです。場合によっては、コアCPIが2%を超えても判断しない時があるかもしれませんし、あるいは、そのほかの色々な条件を考えて、2%に若干足りなくても判断する時があるかもしれません。』
全く仰せのとおりだと思いますが置物師匠の反論を小一時間お願いしたい。
『この点については、政策委員会で議論が行われますので、その段階で多数の意見が収束するところで、最もふさわしい判断が出ると私は思っています。』
という実にその通りという説明が盛大に展開されていますが、これだと黒日銀というよりはだいぶ漂白されているように見える所が現状の執行部の説明とだいぶトーンが違っておりまして、いやまあ現実問題として石田さんの説明が物価安定目標の落とし所あるいは大風呂敷の畳み所だと思うのですが、まあ盛大に風呂敷を広げて拳を挙げてしまった上にそもそも置物師匠が理論的背景(笑)として鎮座ましますので、中々そうはいかないでしょうなあと思うのでありました。
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2014/07/30
お題「石田審議委員講演は(予想通りだが)物価目標に対する論点を再び提示」
ということでろくに他のネタも無い(先物の昨日の値幅ェ・・・・・)ので石田審議委員の講演を詳しく読んでみるのですが、昨日の相場が相場なので皆様におかれましても石田審議委員の講演を熟読されたのではないかと存じます(白目)。
山口県での金懇である。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140729a1.pdf
○経済の現状および先行きに関しては一部を除いて基本的に展望レポートベース
・海外経済
『1.海外経済の動向』から。
『まず、海外経済については、「一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している」とみています。わが国の通関輸出ウエイトで加重平均した主要国・地域合計の実質成長率をみると、昨年後半まで4%を上回る成長を続けていましたが、今年の1〜3月には1%台まで大幅に減速しました(図表1)。』
『4〜6月の成長率については、明日夜に米国が発表されるほか、今後順次明らかになっていくと思いますが、4月以降の経済指標は米国など先進国を中心に改善しているものが多く、また、その好影響が新興国の一部にも輸出チャネルなどを通じて波及している様子も窺われることから、全体としてみれば成長率は緩やかに高まっているとみています。以下、国・地域ごとに少し詳しくみていきたいと思います。』
ということですが米国の見通しが回復について一番強めの表現になっていて、欧州・中国もまずまずという中でアジア新興国については他地域が立ち上がって引っ張ってくれるでしょう的な表現になっておりまして、まあこの辺は特段変わった話をしている訳ではありません。
『今月発表されたIMFの世界経済見通しをみると、今年の世界経済全体の成長率は1〜3月減速の影響で幾分下方修正されていますが、2015
年にかけて成長率が高まっていく姿は変わっていません(図表5)。日本銀行としても、先行きの世界経済については、中国が成長率を僅かに切り下げながらも安定成長を続けるなかで、先進国の堅調な景気回復が新興国にも徐々に波及していくことなどから、緩やかに成長率を高めていくとみています。』
てなことで中国の経済についてはやや日銀は以前に比べると安心感を持っているんじゃないですかね。
・国内景気
『景気の現状については、「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている」と判断しています。』
とまあ海外に続いて国内景気に関する説明も基本的に執行部ペースの話。
『4月以降の個人消費の動向をみると、駆け込み需要の反動がみられていますが、企業などでは概ね事前の想定内との受け止め方が多く、マインド面でも、このところ弱めの動きとなっていた消費者態度指数は2か月連続で改善しています。もっとも、住宅着工や自動車販売の一部で調整がやや長引く懸念があることや、実質賃金の減少が消費全体にじわじわと影響してくる可能性もあることから、これからも各種指標を引き続き注視していく必要があると考えています(図表6)。』
ということで一応慎重な話も入れています。ここから個別項目になりますが、設備投資の話は執行部ペースですなと思う。
『設備投資については、機械投資の一部指標に1〜3月の大幅増の反動がみられていますが、今月初に発表された短観の設備投資計画はしっかりとしており、企業の前向きな姿勢は維持されています。基調としては緩やかな増加を続けているとみています。』
はあそうですかという風情ですが、これは執行部の説明をちょっと丁寧に行っていまして、つまりハードデータに怪しいのはあるけどマインド系は強いのですよという毎度の執行部の微妙な話に沿っていますが、こうやって丁寧に説明されると大本営発表のテイストがより判りやすくなるので誠に味わいが深いものがあります。
まあ何ですな、物価推移という面で言えば予想インフレ率の上昇でフィリップスカーブガーの日銀気合理論が効を奏しているように今の所見えている(ホンマカイナというのはあるがそれはさておき)ので、同様に「マインドが良くなっているから少々のハードデータの変調はヘーキヘーキ」という感じで経済の見方も気合理論になっているのではないかと疑問がふつふつと沸いてくる今日この頃ではあります。
輸出については慎重派です。
『この間、輸出については、引き続き横ばい圏内の動きとなっており、依然として勢いに欠ける状態が続いています(図表7)。背景としては、第1四半期の米国の成長率がマイナスとなったことや、わが国経済と結び付きが強いASEANなどの新興国経済のもたつきが大きく影響していますが、現地調達の拡大を伴う海外生産移管の進展などの構造的な要因も効いている可能性が高いとみています。』
ということで背景の説明部分では執行部的な語順の逆になっていまして(執行部は基本的にシクリカルな要因です(キリッ)という締めになっている)慎重派ですなという所です。
とはいえ結論に関しては基本的に大勢見解通りになっています。
『来月に発表予定の4〜6月の成長率は、駆け込み需要の反動の影響などから相応のマイナスになるとみていますが、景気の前向きな循環メカニズムは雇用・所得環境の明確な改善を伴いながらしっかりと作用し続けており、わが国の経済は、基調的には緩やかな回復を続けているとみています。』
・物価の現状説明が(ここでは)恐ろしくあっさり味
でまあ物価の話ですけどこれがまた超あっさり。
『物価面では、生鮮食品を除く消費者物価、いわゆるコア指数の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、直近6月は+1.3%となりました(図表8)。このところ、エネルギー関連の押し上げ効果の減衰と、それ以外の品目の改善効果が概ね相殺されるかたちで、1%台前半で推移しています。』
ちなみに物価に関する話は後の方でもっと出てきます。
・先行きの話は基本的に展望レポート通り
ということで先行きも・・・・・・
『わが国経済の先行きについては、国内需要が堅調さを維持するなかで、輸出も緩やかに増加していくと見込まれ、生産・所得・支出の好循環は持続すると考えられます。このため、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられます。また、消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどるとみています。』
で、以下の部分は展望レポートの数値の説明になっています。
とまあここまでは前振りでしてこの先が色々と面白い訳で。
○まずは先行きの注目点に注目である
・個人消費の動向、と言いつつ物価の論点キタコレ!!
『(3)当面の注目点』という部分から。
『当面の経済・物価情勢をみていくうえで、私自身としては、次のような点に注目しています。』
私自身キタコレ!
『まず1点目は、個人消費の動向です。』
ほいな。
『これまで景気を牽引してきた個人消費が、駆け込み需要の反動の影響を乗り越えて、7〜9月以降に想定どおり再び持ち直し軌道に乗っていくか、当面の大きな注目点になると考えています。』
ですなあ。
『家計の実際の消費支出に対応し、賃金などの実質化に使用される物価指標である「持家の帰属家賃を除く総合」指数の動きをみると、足もと6月の伸び率は+4.4%とコア指数よりも1%以上高い水準にあり、それが最近の実質賃金の大幅減少につながっています。』
「帰属家賃を除く総合」キターーーーーー(・∀・)ーーーーーーー!!!!!
ということで、実質賃金が大幅減少しているということですが、アタクシ思いますに先般出ていた日経あんどテレ東の調査で出ておりましたように、今般のどさくさに紛れて実質可処分所得にも打撃が来ている世代の内閣支持率の低下とか見ると実質賃金に加えて実質可処分所得の問題も更にあるような。
『また、このところの推移をみると、昨年11 月の時点で1.9%に達したあと、直近6月までの間、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースでみて、2%近傍の水準で推移しています(図表10)。』
「帰属家賃を除く総合が2%」キターーーーーー(・∀・)ーーーーーーー!!!!!
ということで、この話は石田審議委員におかれましては2月の埼玉での金懇でも示していまして、今回は図表10というのが示されていまして、これがまた味わいがあります。
つまりですね、今回の図表に書いてあるのは『家計が直面する物価』という素敵な小見出しになった上に、コアと帰属家賃を除く総合の二つが出ていまして、かつこの帰属家賃を除く総合が思いっきり目立つような表記になっていまして、「このように家計ベースで見たら既に2%の物価上昇になっているんです」というのがひじょーに良く判るようなプレゼンになっているのですな。ついでに言えばコアの押し下げ要因として帰属家賃が機能しているというのも分かりやすい図になっています。
しかもこの2%なんですが、足元では綺麗に安定的に2%になってきているというのがまたお洒落でありまして、家計ベースで見たら2%の安定物価上昇になりつつあるという図ですにゃ。
ちなみに前回埼玉での金懇では『様々な消費者物価指数』という小見出しになっていて、総合だのコアだの刈込平均だのというようなものの中に帰属家賃を除く総合の話をしていまして、帰属家賃除く総合が2%に達したという図にはなっているのですが、それほど目立っていない上に、ちょうど達しました的な感じになっているので、今回の図表の方が盛大にインパクトある感じになっております。
なお埼玉での金懇の講演テキスト及び図表はこちらでして、今申し上げた物価に関する図表はPDFファイルの31ページ目になる(図表18)となっています。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140226a1.pdf
ちなみにご丁寧にも帰属家賃云々の説明が脚注になっていまして・・・・・・・
『1 「持家の帰属家賃」とは、実際には家賃の受払いを伴わない自己所有住宅(持ち家住宅)についても、通常の借家や借間と同様のサービスが生産され、消費されるものと仮定して、それを一般市場価格で評価した概念的なもの。国際比較を行う際などで、持ち家率の違いにより住居費が異なる点を補うために大変有効な考え方ですが、実際に家賃の支払いを行うものではなく、家計にとって現実の支出ではありません。』
>家計にとって現実の支出ではありません
>家計にとって現実の支出ではありません
>家計にとって現実の支出ではありません
(;∀;)イイシテキダナー
・・・・・・・ということで消費の先行きに関しては労働需給というか賃金が重要という話が以下続きます。
『このような状況下で、個人消費が底堅く推移していくためには、先行きの所得に対する改善期待が高まることが何よりも重要と考えられます。足もとでは夏季賞与の増加などが下支えすることを期待していますが、先行きは、労働需給の動向がポイントになると思います。』
ふむ。
『労働需給関連指標をみると、完全失業率は3%台半ばまで低下しているほか、有効求人倍率も1倍を超えて改善傾向が続いています(図表11)。このまま労働需給の引き締まり傾向が続けば、ジョブ・セキュリティ面での安心感と賃金への上昇期待を通じて消費の下支えにつながっていくと考えられるほか、中長期的には、省力化投資など人手不足のもとでの生産性向上に向けた取り組みを通じ、成長力の強化につながっていくと考えられます。今後、生産性の向上を伴う賃金上昇が実現していくことが期待されるところです。また、労働需給の指標は、企業の先行きに対するコンフィデンスを表す有力な指標でもあり、そうした点からも求人の動向など毎月の変化を注視していきたいと考えています。』
まあここの所はホンマカイナという感じもする訳で、所定内給与ってそんなに上がってないでしょとか思いますし、今上がっているのって非正規の所とかで、そらまあアグリゲートしたら世帯収入とか上昇しているという話だけど、別にそんなにベアが大盤振る舞いされている訳でもなく、単に円安ボーナスを一時金で還元している程度の話だとしたら賃金の継続的な上昇期待とかジョブセキュリティのコンフィデンス強化とかになるのかねという疑問は相当あるように感じるのですけどねえ。
・そのほかは企業の価格設定行動と輸出動向
次が企業の価格設定行動についての話。
『2点目は、企業の価格設定行動です。6月短観では、販売価格判断DIの改善が確認され、特に中小・非製造業では1991
年以来の「上昇」超となるなど、既往のコスト高を転嫁する動きは着実に拡がってきています。また、仕入価格判断DIをみても、引き続き大幅な「上昇」超水準にあり、まだまだパイプラインの中には相応の値上げ圧力が存在しているとみられます(図表12)。』
つまりコストプッシュですねわかります。
『今後、それが販売価格の引き上げとして顕現化してくるかどうかは、景気動向次第の面があります。駆け込み需要の反動の影響を乗り越えて、企業の価格設定行動が一段と積極化していくのか、注目してみていきたいと考えています。』
ただまあ何ちゅうか企業の行動にしても例えば全然Jカーブ効果が出てこないとかいうような価格設定行動(これは輸出の話だが)を見ていると、今回はとりあえず消費税増税のどさくさと政府の作り上げた雰囲気で目先価格引き上げてみました的な場当たり的な感じもするので、継続的に価格設定行動が積極化するのかよという気はするのですが、つーかそれならもっとベアが(白目)。
でもって輸出。
『3点目は、輸出の動向です(前掲図表7)。世界経済が先進国を中心に回復していくなかで、輸出を取り巻く環境は先行き次第に改善していきますが、その一方で、海外生産移管などの構造的要因は引き続き抑制方向に作用していくと考えられます。』
ふむ。
『また、既往の為替相場の下落の効果が輸出数量の拡大にどこまで及ぶのか、不確実な面もあります。』
効果が出るならとっくの昔に出ていると思います。数量じゃなくて円安ボーナスをそのままボーナスにしてるでしょ。
『中長期的には、国内で新たな高付加価値品の開発・供給が進み、それらが輸出を牽引していくことを期待していますが、当面は海外経済の回復等に伴い緩やかな増加に転じていくか、注目しているところです。』
とのことで。
○物価安定目標に関しての論点キタコレ!!
『V.日本銀行の金融政策』の所ですが、QQEがどうのこうのの話は盛大にスルーしまして・・・・・・・・
『3.「物価安定の目標」について』の所から参りますね。
『こうした政策のもと、日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋をたどっているとみていますが、最近、“「物価安定の目標」の実現”や、“安定的に持続する”と判断する際の基準や考え方について聞かれることがあります。折角の機会ですので、これらの点に関して、私自身がどのように考えているかについて、若干の説明をさせていただきます。』
いよっ!!待ってました!!!
『「物価安定の目標」において対象としている物価は、昨年1月の目標導入時の発表にもあるように、「消費者物価の前年比上昇率」としています。』
これ未だにコアと勘違いしている人がいるようですが「総合指数のトレンド」なのですよ。
『この消費者物価については、国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを包括的にカバーした指標として、総合指数がまず重要であることは言うまでもありません。』
>国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを包括的にカバーした指標
>国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを包括的にカバーした指標
>国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを包括的にカバーした指標
>国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを包括的にカバーした指標
>国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを包括的にカバーした指標
・・・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー
『一方で、総合指数には、生鮮食品など一時的に大きく振れる品目が含まれているため、それだけをみていたのでは、本来捉えるべき基調的な動きを見誤る可能性があります。この点、生鮮食品を除く総合指数、いわゆるコア指数は、総合指数のトレンドを捉えるうえで最も有用な指数とされています。』
ということで・・・・・・・
『日本銀行としても、先行きの金融政策運営の考え方などを整理した展望レポートにおいて、物価見通しとしてコア指数の前年比上昇率の見通しを使用しているところです。』
てな話ですので、基本的に日銀が展望レポートで「コア」の見通しを出しているのは、コアの数字を当てに行っているのではなく、「総合指数のトレンドとしてのコア」を意味しているのですなという事で。
『消費者物価の基調的な変動を表す指標としては、このほかにも「食料およびエネルギーを除く総合」や「10%刈込平均値」などがあります。これらの指数は、いずれも一部品目を除外することにより、消費者物価全体の基調的な変動を捉えようとしたものですが、その一方で、家計が一定割合消費している品目を除外するため、家計の消費構造を包括的に反映した物価指標という位置付けから乖離してしまうという側面があります。』
なるほど。
『例えば、わが国は家計の消費支出に占める食料費の割合は他国と比べて大きいため、「食料およびエネルギーを除く総合」指数のカバレッジは、米国の77%に対し、わが国はそれより10
ポイント弱低い68%まで低下します。』
コアdis(というとオーバーだが)キタコレ!!
『また、実体経済への影響という観点からは、先ほど紹介したように、家計の消費支出に対応し、賃金などの実質化に使用される「持家の帰属家賃を除く総合」指数の動きをみていくことも必要と言えます。』
さあ盛り上がって参りました!!!!!!
『このように、一つ一つの物価指数は、消費者物価全体の基調的な動きや実体経済への影響を捉えるうえで必ずしも完全なものとは言えません。このため、例えばコア指数のみをもって、“「物価安定の目標」の実現”を判断することは適当ではないことをご理解いただけると思います。』
キタコレ!!!!
『「物価安定の目標」の実現について、私は、あくまで消費者物価全体の基調的な変化を、総合指数やコア指数をはじめとする様々な物価関連指標で捉え、総合的に判断されるべきものであると考えています。』
いやこの考えって非常に重要な論点だと思うのですが、何故か総裁副総裁辺りからの説明ではそういう話が全然出てこないですなあという所で、MPMの議事要旨でもチラリズムでは記述があるもののあまりこの話が出てきてませんで、少なくとも従来からの講演などでの趣旨を見ると石田さんと佐藤さんはこの主張を盛大にしている筈なのですがとは思う所です。
『“安定的に持続”しているかどうかの判断に当たっても、基本的には同じです。そうした状態を判断する何らかの定量的基準や特定の指標がある訳ではありません。様々な物価関連指標の動きを精査し、経済・物価情勢の現状および先行きを十分検討・吟味して、総合的に判断していくべきものであると考えています。』
というのも仰せのとおりだとは思うのですが、まあ良く良く考えてみますとそもそも置物の方の副総裁であらされる所の木久扇師匠におかれましては、日銀の政策判断について「総合的な判断」というのが「恣意的な判断の錦の御旗に使われている」という趣旨の批判をして、そのあたりについての(置物言わせると)恣意的な判断を排除する為に明示的なインフレ目標政策を導入しろみたいな主張を繰り返しておられた訳で、その点を鑑みますと置物大先生的におかれましては、そのような「総合的な判断」の導入を支持するというのは、日銀副総裁になる前の主張が単なる机上の空論であったという事を身を持って示すという素敵な事に繋がりまして、置物先生のの置物理論は学者としてナンダッタンダという話になるので、そう簡単に「総合判断」の方向に舵は切れないんですよねと思うのであります。
勿論置物師匠の首を差し出せばスキームを変えるのは容易なのですが、そうなるとそもそも論として第一の柱あるいは「私の金融政策」とはナンダッタンダという話になり兼ねないですから話は難しいですし、置物云々をさておくにしても、目先「2年で2%」を思いっきりぶち上げてしまった手前、ここの段階で「いや2%と言っても色々の見方があって総合判断」というのは「ターゲット達成に対する意志の揺らぎ」という取り方をされ兼ねないという反対の方が(現実問題はさておき)惜しくも理屈の上では分があるので、まあやはりそう簡単に「総合判断」方向には舵が切れないというのが残念な所。
ま、毎度申し上げておりますように、振り上げた拳あるいは広げ過ぎた風呂敷をどう畳んで行く(あるいは行かないで馬鹿買いを継続する)のかという話がこれから来年に向けての金融政策の焦点(って何かしょうもない焦点のような気もせんでもないが仕方ない)とも言えたり言えなかったりという事ですな。
#いやまあ総合とかコアが消費税除くで2%ヒット(なので4%ですか)というのを年内(または来年の頭)にとっととやって貰えればそのような事で悩むことも無いのですけど・・・・・・・・・・・・・
ということで石田審議委員講演の鑑賞会でありましたとさ。
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2014/02/28
○石田審議委員講演ネタと会見ネタである
まずは講演ネタの続きですけど。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140226a1.pdf
昨日は前半の金融政策に関するシマウマ説明部分に気を取られてしまい、改めて石田審議委員の講演を見たら最後の物価に関する説明部分が色々な意味でインプリケーションがあるという事に改めて気が付いた(鈍くてスイマセン)のでその辺りから。
・物価安定の定義に関して今後大きな論点になりそうという話
最後の『2.「物価安定の目標」と物価指数』の所ですが、ここでの説明が講演の最初の所にあった「白日銀時代の共同文書」にある本来の考え方に則した話になっているのですよね。
『日本銀行では、この「物価安定の目標」に対応する物価指数としては、国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを包括的にカバーした指標が基本と考えており、消費者物価指数の総合指数が重要であると考えています。ただし、消費者物価の総合指数は、一部品目の一時的な変動の影響を受けることから、変動の激しい生鮮食品を除いた総合指数を用いて、基調的な動きを把握するようにしています。』
まあ総合が重要なのはこれ世界的にみて普通の話でございます。ちなみにFRBのロンガーランゴールの2%というのもPCE総合物価上昇率ですからね。
『また、消費者物価の基調的な動きを把握するため、「除く食料・エネルギー」指数や「ラスパイレス連鎖指数(除く生鮮食品)」、「10%刈込平均値」なども参考指標として点検しています。その他の物価指数としては、家計の消費支出に関する統計などにおいて、名目値を実質化する際に「除く持家の帰属家賃」指数が使われていますが、これは持家の家賃支払いは実際に発生しないことを踏まえ、現実の家計の消費支出に最も対応する物価指数として、採用されていると考えられます。』
という物価統計の話をしていまして・・・・・・・・・・
『それぞれの物価指数は、やや長い目でみれば総合指数と同じ動きになると考えられますが、その時々では一時的な変動要因により異なった動きとなることがあります。例えば、昨年12
月の前年比伸び率をみると、「除く生鮮食品」指数と「除く食料・エネルギー」指数は、先ほど述べたようにそれぞれ+1.3%、+0.7%ですが、「総合指数」は+1.6%、「ラスパイレス連鎖指数(除く生鮮食品)」は+1.2%、「10%刈込平均値」は+0.8%、「除く持家の帰属家賃」指数は+2.0%となっています(図表18)。』
>「除く持家の帰属家賃」指数は+2.0%となっています
>「除く持家の帰属家賃」指数は+2.0%となっています
>「除く持家の帰属家賃」指数は+2.0%となっています
で、その「除く持家の帰属家賃」は先ほどの所にありましたように「現実の家計の消費支出に最も対応する物価指数」という話をしておりますので、つまり現実の家計の消費支出として見た場合の物価上昇率は既に2%に達していますという話をしている訳でして、しらっと結構重要な指摘をしていますなという話をうっかりスルーしておりましたすいませんすいません。
つまりですね、これって物価目標の建付けに関する論点に関わる話で、そもそも物価目標の達成は達成すりゃ良いってもんじゃなくて、国民厚生の向上の為のツールとしての物価安定目標であって、何でもいいからとにかく2%にすりゃ良いもんじゃねえだろという話に繋がる説明でありまして、まあそら正論なのですが黒日銀というか置物理論ではその辺りを軽視しているような感じ(まあ重視したら従来の白日銀のままで異次元じゃないから期待の転換できませんからねえ)でしたので、この辺りからも風呂敷畳みモードというのが垣間見えてくるという所ですな。
まあこの辺の説明って今までの日銀の説明では突っ込んでいなかった話なので、石田さんの主張という所なのかも知れませんが、これは中々重要な論点キタコレという話なのでネタにした次第です。
でまあここの部分の最後は昨日引用したようにこうなっています。
『私どもとしては、これら様々な物価指標を幅広く点検していくことを通じて、物価情勢について総合的に判断していく必要があると考えています。そうして「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成し、これを安定的に持続させていくことにより、日銀法が定める「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という理念を果たしていきたいと考えています。』
というのだけ引用して黒日銀の色落ち現象が見られますなあとか申し上げたような気もしますが、実は前段の方も併せて読むとそもそもの物価上昇に関する論点を呈示している重要な所でございましたです。
・会見では割と穏当な話をしつつも・・・・・・・・
講演で論点を示しながら会見では割と穏当に説明するというのは中々斬新なパターンかも。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1402e.pdf
この質疑応答が一番典型的だと思うの。
『(問) 石田委員は、昨年、ボードとしての決定事項に関しては尊重するべきだが、一人の審議委員として自らの考えを主張すべきだと話されていましたが、本日の講演の中でも、先行きの景気に関し、消費税率の引き上げ、海外経済・輸出動向、雇用・所得動向の3つを懸念材料として挙げられていました。現状として、景気・物価の上振れリスクと下振れリスクをみた場合、バランスしているのか、それとも下振れリスクの方が大きいのか、また下振れリスクが顕在化するような場合の政策対応について教えて下さい。』
『(答) 私どもがリスクとして挙げているものは、どちらかというと下振れリスクが多いわけですが、リスクは顕現化しないと全く何にもならないものです。要するに、若干心配している程度の場合と、本当にリスクとして真剣に考えなければならない場合とがあります。今の段階で、私どもが展望レポートで示している経路について、真剣に下振れを心配しているかというと、私はそうでないと思います。ただ、考えられるリスクを挙げたうえで、それについては慎重に着実に注意を怠りなくみていこうという意味です。』
『本日の懇談会でも3つ留意点を挙げましたが、必ずしも心配しているということではなく、場合によっては足を引っ張る可能性があるため、注意してみていくとのニュアンスで申し上げたつもりです。』
うーむこの微妙な表現という所ですが、会見での説明は割と日銀の中心的な見解に沿った話をするというのもほほーという感じではあります。
でまあ輸出の件については色々とお話をしているので引用。
『(答) 懇談会でも申し上げましたが、輸出については、足許やや勢いを欠いた状況であるのは確かだと思います。これについては、循環的・構造的に色々と議論があるところですが、基本的には海外経済が回復するにつれて伸びていくとの展望レポートのシナリオは崩れていないとみています。そのうえで個人的には色々な要因があると考えています。』
ということで説明。
『一つには、今回の海外経済の回復過程で設備投資が非常に弱く──設備投資がなぜ出てこないのかということは欧米でよく言われていますが──、お金が貯まっている割には資本投資をしないということです。それが、ある意味で日本のお家芸である資本財・その他部品の輸出が伸びない理由かもしれません。もう一つは、世界経済が回復しつつあるとは言え、日本の主要マーケットであるASEAN等の景気が今一つであることも、輸出が今一つ伸びない理由かもしれません。そのほかにも、国内需要が強いことから、一部業種で国内向けを優先している動き、すなわち本来は輸出しているものについて国内に回しているということがあるのかもしれません。』
『さらには輸出物価です。数量が伸びないと言われていますが、輸出物価の変動幅は円相場の変動幅に比べかなり小さいのではないかとみています。例えば、ブンデスバンクの論文にも紹介されていましたが、米国の対日輸入価格の変化をみると、為替相場が大きく円安に振れた割には、日本からの輸入価格はあまり下がっていません。一部の企業では、マージン確保を第一にして、数量確保を第二にしている場合があるのではないかとも思います。すなわち、円相場要因をドルベースの価格引き下げに利用していないのではないかということだと思います。そうした傾向があることから、所謂Jカーブ効果がなかなか出にくい環境にあるのではないかという気がしています。』
これ確か前回の円安局面でもそういう傾向があって、ただその時は海外経済が事後的に見たら信用バブルでヒャッハーだったのでそっちの効果で輸出数量が伸びたという話でしたよね。
『そうであれば、循環要因として、海外の景気が良くなり、それに均霑してASEANも回復してくること、あるいは海外の設備投資も盛り上がってくること、が求められます。』
ですな。
『また、日本国内は駆け込みの動きもあって内需が強いわけですが、この強さが弱くなったときに、輸出ドライブがかかってくることも考えられます。それらを勘案すると、特に1月の指標については、内外ともに季節要因もありますので、それをもって基調変化とみるのは難しいと思っております。ただ、弱いのは事実だと認識しています。』
という所ですが、金融政策運営の論点という意味ではシマウマ化の兆候はこんな所にもございます。
『(問) 物価についてですが、今後半年程度は1%台前半で推移を続けて、その後再び上昇するという見方をしていると思われるのですが、物価が再び上昇に向かうもとで、先程3点今後の留意点を挙げられていましたが、最も重要なことは何だと考えられていますか。この半年以内に、1%台前半を下回るような物価情勢になった場合、日銀のシナリオも下振れたということになってくるのでしょうか。』
『(答) 先行きの留意点として3点申し上げましたが、何れにせよ、一番重要なのは景気全般の勢いが失われないことであり、そのために注目する要因として3つあるということです。』
期待の転換でインフレ期待が上昇してフィリップスカーブを上方シフトさせて目標達成!!!という話を前面に押し出している黒日銀的な話からすると(こっちの方が王道だと思うが)一番重要なのは持続的な景気回復という話を最初に持って行く辺りが白い訳ですよ。
『物価については、円安方向での為替要因がなくなれば、その分物価の上昇圧力が弱まるというのはその通りだと思います。もっとも、このところそれ以外の分野でも販売価格の引き上げが少しずつ受け入れられてきているようです。これから需給ギャップがさらに縮小していけば、さらに物価の底上げに作用してくると思っています。』
『短観をみると、仕入価格判断DIと販売価格判断DIの差が非常に大きく、仕入価格が上がっても販売価格が上がらない姿となっています。この点は、逆に言えば、今後販売価格が上がっていく方向への圧力が大きいというようにも考えられます。仕入価格が上がる中で、企業が様々な努力によって販売価格を上げていかなければ自らの収益が出ません。そういう企業行動がこれから続いていくと思っています。また、それによって予想物価上昇率も何がしか上がってくると思います。そうしたことがまた現実の価格設定行動や消費者の購買行動を変えていきます。こういうことでプラスの回転が効いてくるとみています。』
『1%を切った場合にどうするのか、という話ですが、先程申し上げた通り、私どもとしては絶えず情勢を判断して、上下両方向のリスクを判断して、必要とあれば調整するということですので、予め何らかの仮定に基づいて、こうなったらどうするということを議論もしておりませんし、考えてもいないということです。』
まあ後段では割といつもの黒い話をしているのですが、ただまあバックワードルッキングでのインフレ上昇期待みたいな話を持ち出さないあたりは白い話も微妙に混在という事で。
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2014/02/27
○石田審議委員講演:風呂敷畳みモードへの流れに見えてしまうのは深読みのし過ぎですかそうですか
埼玉での金懇。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140226a1.pdf
・金融政策手段の説明部分の章立てに反応するアタクシ
『本日は、まず私の方から、日本銀行の金融政策と経済・物価情勢についてお話させていただき、その後、皆様から当地の実情に即したお話やご意見などを拝聴させていただきたいと思っております。』
ということで講演が始まるのですが、『U.日本銀行の金融政策』の章立てを見て反応してしまうこのアタクシでありまして・・・・・・・・・
『U.日本銀行の金融政策』なのですが、章立てがこうなっております。
『1.「物価安定の目標」の導入と政府・日本銀行の共同声明
2.量的・質的金融緩和
3.貸出支援基金
4.金融環境・金融市場の状況』
ということで、一番「おー」と思ったのは最初に「共同声明」の話が思いっきり出ている事でございまして、これはご案内の通り麿時代の最後に突っ込んだ物でして、共同声明では政府が成長戦略を実行して中長期的な財政健全化を目指すという話が思いっきり書いてあるという代物でありますが、そーゆー意味で「政府の取り組みはどうなっとるんじゃ」というメッセージを送りたいというのが伝わってくる次第でして、そっちの取り組みの方は財政をホイホイ出す話ばかりで成長戦略の方は遅々として進まないのに消費税増税の影響ガーとか言ってクレクレだけ言いやがってコノヤローというのを言外に示しているんでしょうなというのは把握しました。
でまあそういう意識はあるんでしょというのは判るのですが、それはそれとして注目したというかえーと思ったのはこの説明部分の分量でして、分量を見ますと、ざっくりと見て共同声明が2分の1ページ分程度、貸出支援基金が3分の2ページ分程度、QQEが1ページ分程度という分量になっていまして、従来金融政策の説明という中では「異次元QQEで異次元の政策をして皆さんの期待を転換してインフレ目標達成」というのを思いっ切りフレームアップしてアピールする、というのが通常のパターンでございましたので、この「3本建て構成に見える」というのはちょっと新鮮な感じがしますです。
つまりですな、黒日銀モードで従来とは異次元にQQEですよ!という話をしていた筈なのですが、共同声明の方ですと日銀の部分ってこういう文章になっているんですよね。
『2. 日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として金融政策を運営するとともに、金融システムの安定確保を図る責務を負っている。その際、物価は短期的には様々な要因から影響を受けることを踏まえ、持続可能な物価の安定の実現を目指している。
日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。
日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』
まあその後QQEで「2年で2%」という話にはなったのですが、元々この共同文書は麿時代(の最後)に作られたもので、この時の書きっぷりは「成長力強化によって持続可能な物価安定水準が高まっていく」という麿時代の包括緩和と成長基盤強化施策のセット販売時代の色合いを踏襲した物でありまして、「期待を転換して物価安定目標を達成」という建付けの話にはなっていない訳でして、そういう意味でこの章立てっていうのは1番と3番が白日銀時代の成長力強化で実力ベースの中立物価水準を引き上げようという話を踏襲し、2番が黒日銀での気合で期待の転換で物価水準を引き上げよういう話を踏襲しているという事で、あたかもシマウマ日銀状態になっているという章立てになっている訳ですよね。
でまあ今回は石田審議委員の講演(挨拶)ですので、石田審議委員の個人的見解を強く反映させている部分と、金懇ということで日銀政策委員会が全体として決定した事項を総意として説明させている部分というのが混在している可能性がありまして、どこからどこまでが石田審議委員の意向を強く反映しているのかがワカランチ会長なのが非常に残念なのですが、石田審議委員個人の意向として政策ロジックのシマウマ化を意識しているとしても、まあ流れとしてそういうのがあるのかもねとか思ってしまった次第でございますし、これが政策委員会の総意に近くて全般的にロジックが期待の転換で物価目標達成一本槍からの脱却への布石ならなおの事という所でしょうなと思うのです。
つまり、異次元金融緩和と言っておっぴろげて見た大風呂敷なのですが、実際問題として事態が進行する中でそろそろ風呂敷を微妙に畳んで行ってもう少し調整しようというような話なんじゃネーノと
まあ思うのでありました。
#内容は基本的にあっさり味なので長くなるのを避ける為に(実はただの手抜き)引用割愛します
・景気認識に関して
というのだけで終わりにしてしまうと章立てだけで講演ネタ終了となって余りと言えば余りですが、経済物価情勢に関する所の方が説明が多めなので(前半はあっさり味でした)そちらから少々。
新興国関連
『このように、先進国には改善の動きがみられる一方で、新興国・資源国はバラつきがみられます。まず、中国については、昨年10〜12
月の成長率は前年比7%台後半を維持しており、一頃に比べ低めではありますが安定した成長を続けています(図表11)。製造業PMIは足もとやや弱めの動きとなっていますが、基本的には政府によるコントロールの下で現状程度の安定した成長が続くものとみられます。その他の新興国・資源国については、NIEsは先進国の景気回復が波及するかたちで輸出を中心に上向きとなっている一方、ASEANはそれらを取り込む力が相対的に弱いことなどから、成長の勢いが鈍化した状態が続いています。とくに一部の国では政治情勢が不安定になっており、わが国との貿易面などへの影響が心配されます。これら新興国・資源国については、米国FRBによる資産買入れの減額が進むなかで、経常収支赤字などの構造面での脆弱性を抱える一部の国において神経質な動きがみられた局面も一時期ありましたが、このところそうした動きは落ち着いてきています(図表12)。』
ということで、まあいわゆるフラジャイルファイブとかその辺に関連する話は今の所リスクとして強く意識するほどのもんでもねえと言うお話のようですな。
駆け込み需要が予想以上なのに対して輸出がががが
『先週公表された昨年10〜12 月の実質GDPは前期比+0.3%と、4四半期連続のプラス成長となりました(図表13)。内訳をみると、個人消費や設備投資など民間需要の伸び率が7〜9月と比べて加速しています。個人消費については、冬のボーナスが増加するなど雇用・所得環境が改善するもとで、消費税率引き上げ前の駆け込み需要もあって耐久財などが増加しています。』
『設備投資も、これまで企業の年度計画や収益の改善傾向と比べて勢いを欠く状態が続いてきましたが、10〜12
月にようやくはっきりと増加しました。』
と、ここまではキタコレですが・・・・・・・・・
『これに対し、輸出については、先進国を中心とした海外経済の回復傾向や為替相場の動向にもかかわらず、これまでのところ勢いを欠く状態が続いています。輸入が大幅に増加したことから、純輸出としては7〜9月に引き続き大幅なマイナス寄与となりました』
で、直近に関してもこういう指摘が。
『本年入り後の動きを示す経済指標は多くありませんが、消費関連では、1月の新車登録台数が季調済前月比+6.9%とかなり強めの動きとなっており、駆け込み需要が強まっている可能性があります(図表14)。一方、1月の実質輸出は、中国向けが減少したとみられることなどから、全体で同▲2.3%の減少となりました。これら内外需要の動きを受けた1月の鉱工業生産は明後日に公表される予定ですが、先月の製造工業生産予測調査における1月の予測値は、内需向けの生産に牽引され比較的強めの伸びとなっています。』
先行き見通し
『このように、今後のわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみていますが、当面は次のような点に注目しています。』
ということで並んでいるのが、
『@消費税率引き上げの影響』、『A海外経済に関するリスクと輸出動向』、『B雇用・所得動向』となっていまして、雇用所得の話はまあ普通、消費税に関しては基本的には大きく懸念していないという話ですが、慎重に見る必要があるという話をしているのと共に、先ほどの部分にありますように足元の駆け込みが想定以上に大きい可能性を指摘しているので、その分の落ちこみの可能性という話になる訳ですから微妙に慎重ですよねという感じです。
で、海外経済と輸出に関しては、
『輸出については、4月以降の消費税率引き上げによる一時的な落ち込みをカバーし、伝統的な景気循環の起点としての役割を果たすようになることが期待されますが、足もとやや勢いを欠いた状態にあります。この原因については、海外経済の回復テンポや製造業の海外生産シフトなど循環・構造的な問題の両面で様々な論点があります。輸出については、設備投資への波及も大きいことから、期待どおり来年度以降の景気の牽引役となれるか、注目するところです。』
と割と慎重でして、全体的には中心的な見方よりやや慎重ではないかと思われます。
・まあ最後おまけに
最後の所でも物価目標達成に関してこういう話を
『私どもとしては、これら様々な物価指標を幅広く点検していくことを通じて、物価情勢について総合的に判断していく必要があると考えています。そうして「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成し、これを安定的に持続させていくことにより、日銀法が定める「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という理念を果たしていきたいと考えています。』
>日銀法が定める「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」
>日銀法が定める「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」
>日銀法が定める「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」
・・・・・・・・従来はとにかくまずは期待の転換みたいな話をして、期待が転換するのに(コストプッシュでも良いから、とまでは明言しませんが)バックワードルッキングのルートもあるでよという話を盛大にしていたのにまとめにこういうのが出てくるのもちょっとトーンの変化というのを感じる所ではございますという感じっすな。
#ま、アタクシが気にし過ぎなのかもしれませんけどね
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2013/09/13
○石田審議委員会見
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1309b.pdf
・講演では弱そうな話をしているのに会見では威勢が良いとはワケワカラン
石田さんの会見なのですが、海外経済を注視していて、その海外経済に関しては基本的に回復を見ているものの新興国中心に下振れ注意、という講演をしていた筈なのですが、何故か会見ではトーンが違っているというのが謎である。
いやあの逆のパターンというのは良く見る(講演テキストは執行部ベースのものなのだが会見でフリーダム状態炸裂というパターンですね)のですが、講演テキストが何となく執行部ベースより弱めのものを出しておきながら会見で火消しというのは中々見ないパターンで、かつての付利下げ提案関連もそうでしたけれども、中々こう謎な人である。
『(問) 米国の資産買入れ縮小の話との関連でいうと、新興国への影響はネットプラスかマイナスかという言及があったかと思いますが、プラスとマイナスのどちらが大きいとみているのかということと、ネガティブなインパクトがあった場合にはどれくらいの規模であるとお考えでしょうか。(後半の質問割愛)』
『(答) 新興国に対する影響については、金利が上昇する時に先にネガティブな影響が出てくると思います。というのは、実体経済よりも金融の方が反応が早いですから、新興国では、既に6月頃から資金が流出しています。やはり先にネガティブな影響が出て、その後に、米国経済が復活するのであれば、貿易面を中心にプラスの影響が出てくるのだろうと思います。』
『ネガティブなマグニチュードについては、今のところはコントロールされているようです。一部の人は、外貨準備や海外からの短期借入依存度など、いくつかの指標について、健全性のレベルがアジア危機の時とは格段に高くなっているということを言っていますが、私自身もマグニチュードは世の中がひっくり返るほど大きなものにならないのではないかと思います。挨拶要旨には「注目していきたい」と書いていますが、最終的にはプラスになると思っています。』
え?と記者の人も思ったんでしょう後半の質問の答えを聞く前に合いの手が入ります。
『(問) 新興国でもプラスになるということですか。』
そら入る罠。
『(答) 個別にみればマイナスの影響が出る国もあるかもしれませんが、全ての影響を足し合わせてみれば、プラスと思います。日本にとっても全ての影響を足し合わせてみれば、プラスになるのではないかと思います。(以下最初の質問の後半部分の答えになるので割愛)』
でまあひとしきり質疑があって改めて質問。
『(問) 輸出に関してですが、持ち直しが必要であり、海外経済の動向がカギを握ると考えられている新興国に関して、金融面など様々な面から下押し圧力が働いているということですが、日銀の正式な見解ですと、輸出に関しては「持ち直し傾向」といった表現を使われています。欧州に関しては底打ち感があったり、中国がそれほど大きく下がるような兆候もなくなったりと思いますが、肝心要の新興国が成長率が鈍い中で、輸出の増加の期待がちょっと難しいという感じもしますが、その辺のところを先行き含めてリスクなどをどのように思っていますか。』
と、新興国を絡めて質問しているのですが・・・・・・・・・・・
『(答) 実質輸出の四半期の数字の動きは、配布資料の9ページにあるように、グラフの右端が上を向いています。これを見て回復傾向にあると判断しているわけですが、今日私が申し上げたのは、そうは言っても2011年、2012年のレベルからすればまだ下にあるため、これを超えていかなければならないだろうという意味であり、水準の問題として申し上げているわけです。今は消費や住宅・公共投資が牽引していますが、先行きの持続性を考えると輸出のレベルがもう少し高くなれば、我々としても非常に安心だろうという意味です。』
これは日本経済の見通しの話ですが。
『新興国については、金融的な面でマイナスの影響を受けていますが、貿易の面では、やはりこれまで欧州や中国が悪かった影響を受けてきましたから、足もと欧州で持ち直しの動きがあり、中国も安定してくることであれば、新興国については底上げの可能性が出てくるとみています。少し言葉が足りなかったかもしれませんが、私としてはそのようにみています。』
ということで、講演テキストで受けた印象よりも割と強気な見方じゃねえかという中々の謎質疑応答ではございましたとさ。
・消費税増税で名目的な意味でのシフトアップという話
賃金と物価の話の質疑。
『(問) 講演の中で、来年のベアの重要性について指摘されてましたが、実際どうなるかは来年の春闘次第だとは思いますが、予定通りであれば消費税率が来年4月に上がるわけです。日銀では物価上昇による影響を2%程度見ているということだと思いますが、消費税の増税分も含めて物価上昇分をカバーできるような所得の増加、賃上げが実現しなければ、日銀が想定するような2014、2015年度の経済成長とかデフレ脱却は困難になるとお考えなのかどうか教えてください。』
『(答) そこまでカバーするのは無理だと思います。時間をかけて徐々に行かざるを得ないだろうと思います。』
まあそうでしょうけれども(−−)
『2000年代に入ってからずっとベースアップは見送られてきました。ベースアップはなくなったという人もいるくらいです。物価が上がれば給料が上がるというシグナル効果が非常に重要だと思います。それがデフレマインドを変えていくきっかけになるのではないかと思います。』
これはアタクシもそう思うのでして、マインドの変化というか、物価と賃金の関係に関する「レジームチェンジ」をするのに消費税の引き上げというのは、たとえそれが名目の話であって実質に関係ないという状況であっても、良いきっかけになる可能性があり、そーゆー意味からして何で「物価目標2%で世の中ハッピー」とゆうとる人たちが間接税の引き上げにあそこまで反対論陣を張るのかが良く判らんわと思っていましたが、真正マネタリストの山本幸三先生が消費税賛成の話をしたのでちょっとほっとしましたが。
・・・・・・・すいません話が逸れました。まだ続きます。
『いわゆるフィリップスカーブとの関係では、傾きが緩いから労働需給の改善で給料を上げたり物価を上げたりするには大きなGDPのプラスギャップを積み上げが必要だという意見があります。』
『ただ、それはあくまでもデフレマインドの下での話であって、もし日本銀行が言っているような2%の物価上昇を達成していくのであれば、どこかの段階で物価は上がるけど給料も上がるということで、将来に対する信頼感が個人に出てきて、それで企業の価格設定行動にも大きく影響し、幅広い品目で適切な物価上昇が起こってくるのだろうと思います。』
そのきっかけが消費税増税であったとしても、それによってレジームシフトが起きればという話ですな。
『ただ、その時に、個人は必ずしも実質所得の変化だけで行動するのではなく、将来に対する安心感があるために従来よりも使うということもありますので、消費税が増税されたことによる将来の財政への安心感が高まるということから消費が出てくるということもあります。消費増税分まで所得は上がらないとしても、実質経済成長のある程度の部分が所得として還元され、しかも、物価が上がっていく中で、それが安定的なもので保全されれば、心理的にも非常に経済に対して有効だろうということです。』
将来の財政の安心感云々はちょっと取ってつけたような話に見えますけれども、まあでもこの石田さんの説明の趣旨は辛うじてインフレ時代(例えば国鉄の運賃が毎年上昇するとか、ちなみに国鉄時代って子供運賃の5円以下端数って切り捨て(私鉄は切り上げ)だったんですよ)の記憶があるあたくし的にもそうですなあと思う(歳がばれますかそうですか)ところですが、デフレ時代の申し子の皆様が結構増えているのでこの辺って実際に起きてみないと判らないかもしれないし、逆に言えば起きてみるといきなりマインドセットが変わるかもしれませんね、とこの辺りの石田さんの話を見ていてふと思ったのでありました。
・実際の数値が2%に行かなくっていいじゃないか好景気だもの理論に対する説明
これは良い質問。
『(問) (前半割愛)2問目ですが、量的・質的金融緩和についての説明が講演の中でされていますが、2%というインフレが安定的に持続するということの定義について、石田さんはどう思われているのか。例えば、景気の回復に支えられて物価が2%にいかなくて1.5%程度でもよいと考えるのか、今後2%まで上がると判断できた時点で、緩和を停止することを検討すべきなのか、そのあたりについて考えをお聞かせください。』
2%に行かなくっていいじゃないか好景気だものという話になっていくでしょどう考えても、という指摘はまあジャパンの金融政策をニヤニヤと見物する人の多くが手ぐすね引いて待っている所なのですけれども(^^)。
『(答)(前半割愛)それから2%については、今、消費者物価上昇率が除く生鮮食品でやっと+0.7%となった段階で、これから長い道のりがあると思っています。その間に、経済の情勢も変わっていくと思いますから、今の段階で具体的な状況変化がないまま判断することは難しいと思います。同時に、そういう時点になったら今おっしゃたような意見も含めて色々な意見を集約していく形になりますから、今の段階で方向性を申し上げるのは難しいと思います。』
まあ平場で質問されたらこうこう応えざるを得ませんわなという話ですが、ただまあ一方で「そういう時点になったら色々と集約」というコメントをしている辺り、石田さん的には「アクチュアルに2年、というか1年半後にCPI2%(ただし間接税の影響抜きベース)というのはどうなんでしょ」という意識があるのかなあとは思われる節も無くは無い、という所ですかね。
いやまあ確かに後半とは言え0%台の段階で「2%行かなくったっていいじゃないか好景気だもの」と言うのはちょっと強引過ぎるので、せめて1%台を明確に乗せた状態になってからという話になるとは思いますが、今しばらく時間が経過した辺りではこの議論が出てくるんでしょうなあというのは把握致しました。
で、そのあいだみつを状態をニヤニヤしながら眺めるだけではただの趣味の世界になりますが、市場の中の人としては、実際にそういう話になった時に金融政策のデザインがどうなるか、ということを今から色々と考えておくのは無駄では無いと思いますけどどうですかね。
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2013/09/12
○石田審議委員は中心的な見方よりもちょっと景気に慎重なんじゃないかと思われます
石田審議委員講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130911a1.pdf
・貸出支援基金の扱い方に微妙な味わいが
最初の『U.日本銀行の金融政策』の小見出しは以下のような構成になっています。
『1.「物価安定の目標」の導入と政府・日本銀行の共同声明
2.量的・質的金融緩和
3.貸出支援基金
4.金融市場の状況』
ほほう貸出支援基金という所ですが、さすがに潜在成長率云々の話を思いっきり出すのはイクナイとゆー話になったのか、それとも石田さん的にんなこたあねえと思っておられるのかどうか知りませんが、貸出支援基金の説明の冒頭には、
『こうした「量的・質的金融緩和」に加えて、日本銀行では、強力な金融緩和の効果を一段と浸透させることを目指して「貸出支援基金」を設定・運営しています(図表4)。』
ということで、この前のジャクソンホールでの話はナンダッタンダという感じでのトーンダウンの巻でござるとなっているのが味わいのある所ですが、しかしながらわざわざ項目を設けて貸出支援基金というのを置いている所を見ると、これを重要施策扱いしてフィリップスカーブの無理矢理上方シフト理論をトーンダウンさせる気は満々なのではないか(まあそもそもその理論自体無理矢理感がないかと思っている審議委員の方が居ても不思議ではないが^^)という所で、この味わいが何ともであります。
・金融政策の効果に関して
買入効果に関してはこのように説明しておりまして、この点については誠に仰せの通りと認めざるを得ません。
『さらに、5月中旬以降は、米国における量的緩和政策の変更への思惑が米国長期金利を上昇させ、わが国の長期金利にも上方への強い圧力を与えてきています。現在、わが国の10
年物国債の金利は0.7%台で推移しており、絶対水準としては4月初の緩和前に比べて上昇しています。しかしながら、米国金利の上昇がドイツや英国の金利を押し上げているのに対し、わが国の金利は足もと横ばい圏内で低位に止まっており、日本銀行による強力な金融緩和が長期金利の上昇圧力を強く抑え込んでいることが分かります(図表6)。』
まあ日本よりも景気がうんこそうな欧州金利の上昇と比較されますとそうですねと言う所ではあります。もちろん日本の債券市場の皆様におかれましては「そうは言っても2年(つーかあと1年半)で2%なんて行くかよヴォケ」と思っている方が殆どだという事情もあると思いますけれどもね。
しかしこのあとははあそうですかという感じですが引用だけ。
『このような極めて緩和的な金融環境のもとで、振れを伴いながらも為替は円安方向で推移し、株価も基調的に上昇してきています。銀行貸出も、大手行の貸出姿勢が積極化してきているなかで、残高の前年比増加率も月を追って拡大してきています(図表7)。』
預金も伸びてますがね。
『また、昨日公表された8月のマネーストックをみると、広義流動性の前年比伸び率が+3.5%と、2007
年3月以来の高い伸びとなっており、特に今年度入り後は、金銭の信託や投資信託の伸びが加速しています。経済主体におけるポートフォリオリバランスの動きはまだ緒に就いたばかりですが、これまでの緩和効果がじわじわと染み出し始めてきている姿もうかがわれ、今後の動向に注目していきたいと考えています。』
ほうほう。
・経済物価情勢に「前向きの循環メカニズム」連呼無しとな!!!
以降が経済物価情勢の話なのですが、見通しの辺りではこんな話を。
『以上が経済・物価情勢の現状ですが、当面の見通しについて見てみますと、まず、景気については、国内需要の底堅さと海外経済の持ち直しを背景に、緩やかな回復を続けていくとみられます。』
9月会合の声明文で従来この背景部分をカットしているのですが、石田さんの説明は8月までの声明文と同じ言い方になっているのがチャーミングではないかと思う訳で、つまり声明文や月報でしめされ、会見で総裁が連呼しまくった「前向きの循環メカニズム」を強調しませんよねというお話ではないかと勝手に邪推しましたが他意は無かったりするかもしれません(^^)。
ちなみに、前向きの循環メカニズム云々については最後から2番目の章の『W.デフレ脱却に向けて』の中で登場しています。
『わが国の経済は、ようやく緩やかに回復しているという状況であり、景気の前向きな循環メカニズムが働き始めている極めて重要な時期にあります。』
ということで、まあ恐らくは9月決定会合後の会見で黒田総裁が示した進軍ラッパ吹きまくりモードと比較して慎重なんじゃないの、とは思ったのですけどどうでしょうかね。
・先行きには輸出の押し上げが必要という認識
先行きに関する話でもこれはほほうという感じでして、どちらかと言うと現在の中心的なビューって進軍ラッパモードで国内の前向き循環メカニズムでヒャッハーですよみたいな感じになっているので、この石田さんのビューはちょっと新鮮でございましたぞな。
『わが国経済がこうした見通しのとおり展開していくためには、生産の水準がしっかりと上昇していくかどうかが課題になるとみています。』
なるなる。
『足もとでは、鉱工業生産のレベルは、依然として前年上期の水準を下回っています。これは、輸出の増加ペースが鈍いことによるとみられますが、その結果として、設備投資の増加に弾みがつきにくく、これがまた生産の伸びを抑えるという構図となっています。』
んだんだ。
『従来、わが国経済の回復は輸出が牽引役となるパターンがほとんどでした。今回の回復局面では、内需に対応する個人消費や住宅投資、公共投資が引っ張っていますが、そろそろ輸出がしっかりと牽引役になる必要があります。』
キタコレ。
『足もと輸出の改善ペースが鈍い背景として、一部業種における競争力の低下や震災以降加速した海外生産移管、部品の現地調達の拡充などの構造要因が影響している面もあると考えられます。しかしながら、今後、わが国経済が安定した回復経路に復していくためには、輸出の持ち直しが必要であり、その点から海外経済の動向がカギになると考えています。』
ということで、その肝心の海外に関しては先行き見通しは兎も角、ここまでは若干下振れて推移しているということで、その海外をこうやって持ち出している辺り、まあ石田さんはやや景気に慎重なんでしょうなあという事になるかと思います。つーかそもそも日銀の見通しがカンカンの強気なのですけれども。
・デフレ脱却に向けてという説明部分が今回の石田さんの一番の強調ポイントと見ましたと
期待でフィリップスカーブが云々という話をしておりませんで、まあ極めて現実的な話をしているのが印象的でございます。この講演の中の『W.デフレ脱却に向けて』の『2.デフレ脱却に向けて』が実にいい感じなのでこの部分全部引用。
『このように、日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を実現するため、強力な金融緩和政策を行っているところですが、政府・日銀の共同声明にもあるとおり、それにより物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現していかなければなりません。』
というマクラはさておきまして、
『多くの人々は、デフレから脱却することによって景気が良くなる、暮らしが楽になると考えています。しかしながら、デフレ脱却を目指し、物価が上がっていった時、所得がこれに見合って増えていかなければ、一時的に経済が成長するとしても持続することはできません。家計の実質購買力が低下することで消費が落ち込み、景気は悪くなってしまいます。これではデフレ脱却を目指す意味がありません。』
全くもってその通りでございますが、何かデフレ脱却=景気回復=全て幸せみたいなプロパガンダがありますよねえ。
『わが国の経済は、ようやく緩やかに回復しているという状況であり、景気の前向きな循環メカニズムが働き始めている極めて重要な時期にあります。』
これは先ほど引用した部分です。
『そうしたなか、先行き2014 年度からは消費者物価の上昇幅が大きくなることが見込まれており、足もとの景気回復を安定的な成長軌道に乗せていくためには、名目所得がしっかりと増加していく必要があります(図表16)。』
(;∀;)イイハナシダナー
『それが可能となるためには、まずは、景気の前向きな勢いを保つとともに、企業収益の水準が全体として十分高まっていくことが前提となります。そのうえで、わが国経済の将来に対する懸念を払拭し、成長期待を確保する必要があります。そのためには、共同声明にあるように、日本銀行がしっかりと強力な金融緩和を実施し、「物価安定の目標」の達成を目指す一方、政府においては、機動的な財政出動と成長戦略の確実な実行、財政に対する信認の確保が極めて重要です。』
何せ今回は日銀やることやってる(というか市場壊滅状態で悲鳴状態になりつつある位の勢いだが)ので政府に言う事言わないといけませんね。
『消費支出が安定的に拡大するためには、所得増加の源泉は、元々変動する特別給与よりも、名目賃金の4分の3を占め、変動が少なく安定的とされる所定内賃金の増加がより効果的であり、望ましいと言えます。この観点から、21
世紀に入ってからほとんど実施されなかったベースアップが2014 年度からできる限り幅広く復活・実施されることが極めて意味あるものと考えます。』
是非石田委員の出身母体であります所の金融業界にそれをお願いしたいところですな(^^)。
『わが国では、長年にわたり所得の停滞が続き、物価が上がらないという状況のもとで、デフレマインドが定着してきたのだと思います。この先、経済が成長し、物価が上昇し、それに対して所得がしっかり増加していくという実績が出てくれば、人々のデフレマインドが転換し、真のデフレ脱却に大きく近づくものと考えております。』
つーことで名目の所定内賃金上昇という意味からも消費税上がった方が「消費税上がったんだからベースアップしましょうよ」という話になるので(ただの両建てではあるが)はないかと思いますけどどうなんでしょうか(期待し過ぎ??)。
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2013/03/18
○いまさらですが石田審議委員講演と会見
講演なのですが表紙と図表も含めて36枚もある(本文は14ページ)という量だけは沢山あるのですけれども正直言って殆どネタがNEEEEEEEEEEEE!!!!!
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130311a1.pdf
・講演から:経済物価情勢の所でまあ重箱の隅をつついてみる
経済物価情勢の話はひたすら普通の話(=金融経済月報や展望レポートで示されている執行部中心見解)が続いておりましてはあそうですかとしか申し上げようがございませんが、ここの表現は正直いただけないと思ったのが2か所あるのですが、まあ重箱の隅と言えば重箱の隅。
1か所目が米国経済の見通しについての所です。
『これらの問題(引用者追記:米国財政赤字削減関連)は、最終的には何らかの妥協が成立するとみていますが、いずれにせよ、本年前半については増税、歳出削減という財政面からの圧迫要因もあり、成長が抑制されることは避けられないと考えています。しかしながら、その影響が軽減される年央以降、米国経済の成長スピードが次第に上がっていくとみています。また、そうなった場合は、米国長期金利が次第に上昇していく可能性があり、わが国の長期金利あるいは円ドル相場にも影響を与えることも考えられるため、注視していく必要があります。』
いやあの米景気が拡大して日本の金利が上昇するんだったら別に何の問題も無い話でありますし、その場合ドル円は米金利上昇でドル高になるのですから別に注視もへったくれも無いと思いますが、何でこういう表現を入れるのかがさっぱりワカランチ会長でして、この講演の内容がほぼ執行部見解通りであるという事を踏まえますと、これじゃあ日銀執行部が景気拡大に伴う自然な金利上昇を懸念しているかのような印象を与え、ひいては日銀は景気が良くなることを望んでいないというような陰謀論が発生する要素にもなる訳で、まあ重箱の隅にも程があってどこの小姑だと言われるかもしれませんが、こういう細かい所の配慮が欠けているのが日銀のKYたる所以ではあるなあと思いっきり読んでていて引っ掛かったのでいちゃいもんを付けて見る次第であります。
いやね、こんも「注視していく」ってのは最後の部分だけではなく全体の話を全て踏まえての「注視」なのかもしれないですけれども、この書き方だと最初に読むと「景気加速に伴う米国長期金利の上昇を注視」と言っていると印象を受けるのが普通だと思いますし、そこで「注視」とか「ネガティブな事にならないかどうか点検する」というニュアンスが含まれている文言使うのってダメだろとしか申し上げようがございません。少なくとも米国長期金利云々の部分削除しなはれと思いますけど。
でまあもう1か所目が最近の日本の動向なのですがね。
『図表11をご覧ください。このところ株価の上昇と円安の進展が続いています。』
でこの後の文章構成が実に香ばしいというか執行部くやしいのうくやしいのうという所ですかそうですか。
『こうした背景として、欧州債務危機の一応の収束や米国の「財政の崖」の脅威の軽減による国際金融資本市場の緊張の緩和、米国や中国経済の先行きに対する期待、あるいは、わが国の貿易収支の赤字拡大と経常黒字の急速な減少など、様々な要因が指摘されるところですが、政府・日銀の政策運営に対する期待の高まりが影響しているところも大きいとみています。また、こうしたもとで、企業や家計のマインドも大きく改善しています。』
いやあんさんそれ語順普通逆にしとけよと思う訳で、「政府・日銀の政策運営に対する期待の高まり」を最初に出さないでどうすんのと思う訳でして、こういう所でしょうもない意地の張り方をしている(ようにしか見えないですがどうなんでしょうかねえ)からもう何だかねいう所です。
・・・・・・・・ええ重箱の隅をつつく小姑クオリティですが何か??
・講演から:2%目標に関して
はあそうですかとしか申し上げようがございませんが。
『デフレから脱却していくためには、このマイナスのサイクルを反転させていくことが必要であり、構造変化に適切に対応し、企業・家計の成長期待を高めていくことが必要です。2%の目標はこれまでの長年に亘る物価の状況からすると大変高いものではありますが、今後、世の中の成長期待が高まっていき、実際に物価上昇率が上がっていけば、人々の予想物価上昇率も上昇していくと考えられます。』
はあそうですか(棒読み)。
『日本銀行が強力な金融緩和を推進するとともに、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みが進展していけば、私は十分展望できると考えています。』
ふーん(棒読み)。
正直言ってこの位しかネタがない講演でして、時期的にちょうど執行部が変わるからこういう時にこそご自身の主張をこれでもかとばかりに打ち込んで頂きたかったのですが、まあ会見の方は比較的オモロイというか論点整理ができていますので、そっちを見ろと言う事ですねわかります。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303c.pdf
こちらの方が少々面白いです。
・会見より:付利撤廃について
ここの説明が長いのですがまあほほうという感じですので引用。
『(答) 付利撤廃については、最初にその提案の理由を申し上げます。私は、包括緩和における資産買入れ等の基金の目的は、実質ゼロ金利の下で、ターム・プレミアムやリスク・プレミアムの低下を促すということにあると理解しています。わが国の資金調達構造をみると、期間3年以下の貸出の割合が高いということから、残存3年以下の国債を買い入れ、対応する金利の低下を促すことにより貸出レートを下げて、企業・個人の借入れ負担を軽減して、景気を刺激すると考えています。』
ふむ。
『しかしながら、当時は既に、3年以下の国債の金利が0.1%に貼り付いていました。基金では、買入れの継続や買入れ枠の増額によって金融緩和の強化を図ってきましたが、強化を図ってもそれ以上金利が下がらなければ、目的を果たしていないのではないかということから、金利の下限を構成している付利を撤廃してはどうかと考えました。』
まあその後金利が下がりましたぞなという所ですが。
『もう1つは、当時は国際金融市場にストレスがかかっていました。国際金融市場では、ストレスがかかると、安全とみられる国の通貨や国債が選好されるため、スイスやデンマーク、ドイツの国債の短期の金利が、すぐにマイナス圏に入っていたというのは、よくご存知かと思います。一方、日本の場合は付利0.1%があるので、短期国債の金利が0.1%であれば、そういう退避資産として、退避資金の入りやすさが、普通の自然体と比べて、もっと入ってくる可能性がある、買われやすい情勢を作っていたのではないか。そういう意味では、自然なマーケットの動きを反映するように、付利0.1%が廃止されれば、短期国債の金利も自由に動いて低くなり、資金がより多く入ってくるということも妨げられるのではないかと考えました。』
そ、そうなのか???
『こういう2点から、付利撤廃を提案しましたが、ご案内のように1対8で否決されました。本件はそこで一旦結論が出ていますので、結果が出たものを何度も出すのは如何なものかと思い、その後は出していないということです。』
折角前段で説明したのですから「日銀の資産買入効果で付利金利0.10%を維持したままでも市場金利が低下しているのでその必要性が薄れた」という話をするのかと思えばそこの話をしないのが微妙っちゃあ微妙なんですけど。
『もともと、付利0.1%というものは、個別独立的なものではなく、先程申し上げたように、金融緩和の全体の枠組みの中で考えるものだと思います。そのため、金融政策の先行きについてのコメントはできませんが、今後、何らかの検討を行う時があれば、全体の枠組みの中で、目的や手段といった形でみていくべきではないかと思います。』
まあここはどうでも良い話だが。でもって別の質問でこんなのがありまして・・・・・・
『(問) 先程の付利撤廃に関するお答えについて、提案された理由の背景は、為替相場に働き掛けることを狙いとしたものであるのか、教えて下さい。加えて、今の状況においても、これから先においても、為替相場に働き掛けるような金融政策が重要であるとお考えなのか、教えて下さい。』
まあ提案した時にはそういう触れ込みでしたけどね。
『(答) 誤解されると大変困るのですが、為替相場を誘導する、といった意味は、全くありません。私は、付利0.1%があって、日本の短期金利が、非常に信用力の高い諸外国の短期金利に比べて高くなっているがゆえに、逆に本来あるべき水準と違う水準に相場がなる可能性がある、それを自然の形に戻すという意味で、あの措置が必要であったと考えたわけです。』
G20のルール違反言われると困るのでこう答えないといけないんですね、わかります。
『従って、相場を誘導するということではなく、付利が本来の相場をゆがめている要因となっているのではないか、それを除外すべきではないか、と考えたわけです。』
もうね、資産買入で散々っぱら中短期債券市場を「本来の相場」から程遠い所に持って行っているのにそこで何で「付利が本来の相場をゆがめている」という話を持ち出すんだかと思わず笑ってしまいましたぞな。
・会見より:オープンエンドを前倒ししなくても十分に買入はしてるんですよね
という説明をしている部分は全く仰せの通りでして。
『(答) この件については、白井委員の提案に対して発言することは差し控えますが、私自身がどのように考えているのかについてお答えします。期限の定めのない買入れが2014年から行われるというのは、形式的にはその通りであり、日本銀行もそのように発表していますが、私自身としては、実際には、2013年から、既に実態がそうなっていると思っています。なぜならば、2013年末までに101兆円まで買い入れることを約束しています。それは2013年12月末までですが、2013年6月末にも一定の数字が決まっています。そうすると、必ずしも正確には言っていませんが、だいたい毎月一定額を買い入れていくことが前提となっており、それが積み上がっていくということです。ですから、毎月一定額を買い入れ、そして2014年1月からまた毎月13兆円買うので、前倒しをどのように考えるかは別にして、私自身としては、実態は同じではないかと前から思っています。』
『(問) 実態は同じではないかと思っているということは、つまり、13年からもう既にオープンエンドを始めているようなものだという意味合いでしょうか。』
『(答) そうですね、足もとでも毎月買い上げていて、それをずっと続けているのですが、2013年末までの目標が出ていますので、それが今までは、期限の定めのある買入れと言われていました。しかし、その後まで続いているわけですから、言ってみれば、それはずっと期限の定めがない──日本銀行は、正式に期限の定めのない買入れを13年から始めているとは言っておりませんが――ということで、私個人としては、それは始まっているのと実態的には同じと思っています。』
まあこの質疑応答は仰せの通りでして、この辺の説明を丁寧にするのも結構な話ですけれども、まあ「オープンエンド前倒し」というのを追加緩和のように見せかけるというカブキ金融緩和を実施する際には却って自分の首を絞める可能性がある点については留意が必要ですお、おっおっお(^^)。
・会見より:物価目標の責任分担について
『(問) 午前中の講演の内容に関連しますが、石田委員は2%の物価目標について、大変高い目標である、ただそれは日銀の積極的な金融緩和と成長力強化のための各主体の取り組みがあれば展望できる、という話をされたのですが、2%の物価目標の責任の所在について、これは日銀が全て負うべきなのか、それとも日銀と共に政府や様々な主体の取り組みが合わさってということで、日銀だけの責任ではないと理解すればよいのか、確認させて下さい。』
ここの答えが非常に微妙で何とでも取れる表現にしているのが石田さんさすがとしか(^^)。
『(答) これは共同声明と絡むと思いますが、共同声明では、政府・日本銀行が政策連携を強化して、一体となって取り組むことを明確にしたわけです。その記載をみると、それぞれの相手の取り組みを条件とするものではなく、それぞれが自らの役割を明確に認識して取り組むことを明らかにしたものです。そうした双方の取り組みが相俟って、デフレからの早期脱却と物価安定の下での経済の持続的成長の実現をもたらすと考えております。』
何という玉虫色回答(^^)。いやこれはマジで感心しました(皮肉でも何でも無く^^)。
・会見より:APPの買入年限長期化に関して
付利の質問の中でAPPの買入年限長期化に関する質問がありまして、その部分を引用します。
『(答)(前半は先ほど引用した付利の話なので割愛)第2の質問の、より長期の国債を買うことに対する考え方については、先程の質問にお答えする時に少し触れましたが、これまで3年以下の国債を買っていることには、それなりの理由があったということです。3年超の国債を買うべきとの議論はありますが、一方で、今までの考え方では、3年以下の国債を買っていけば、その目的を果たせるほか、イールド・カーブがつながっているため、当然それ以上長いところの金利が低下していく効果も見込んで行っていたものです。従って、より長い期間の国債を買うというのであれば、その方が金融政策としての効果が大きいのかについて、当然ながらプラス、マイナスを評価した上で、決めるべき問題だと思っています。』
>これまで3年以下の国債を買っていることには、それなりの理由があったということです
ふむ。つまり理屈の整合性どう取るんでしょうかという問題があるのでそう簡単にホイホイと決められません罠という話ですね。
・会見より:銀行券ルールに関して
『(問)(前半割愛)また、銀行券ルールについても、日銀総裁候補の黒田氏は、撤廃も検討対象にすべきという趣旨の発言をされていますが、そうなると財政規律についてのルールも必要になってくるかと思いますが、銀行券ルールの存続、存在についてお考えを教えて下さい。』
『(答)(前半割愛)銀行券ルールについては、私の解釈ですが、ルールと言っていますが、やっていることは日本銀行の銀行券発行量に応じて長期国債を買うというだけのことです。』
いやもう全くおっしゃる通りでして、この辺はさすがに銀行の資金証券部門の親分やっておられただけの事はありますなという話。
『簡単に言えば、銀行券見合いの国債購入ということであって、ただ、それが国債を大量に買うということから変な誤解を招かないように、当然ながら買うのは発行銀行券の残高まで、というのをルールと称したのだと思います。財政ファイナンスと誤解されないように、ということだと思います。』
さいですな。
『そういう意味では、銀行券見合いの買入れを他の政策手段として使うのであれば、枠組みの変更になりますから、先程申し上げたような枠組み変更に伴う諸点についての検討がなされるものと思います。』
ということで、まあそもそも銀行券ルール自体は調節技術上の問題で、それに財政ファイナンス懸念を起こさせないという担保をつけてみました、というものでありますよねという話は仰る通りであります。
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2013/01/28
○意気込みはまあ判ったが提案内容とその背景認識がやはり無茶苦茶だった石田審議委員の付利撤廃提案
んでまあ基金増額の話は上記の先も少々あるのですがそこはスルーしまして付利撤廃提案部分。
『補完当座預金制度の適用利率について、一人の委員は、@超過準備への付利は、資産買入等の基金の買入れ対象である3年以下のタームの国債金利を、現行の付利金利の水準である0.1%以下に低下させない働きをしており、基金による国債買入れの緩和効果を減殺しているため付利を撤廃すべきとの見解を示したうえで、A付利の撤廃は、退避通貨としての円の魅力を減じておくうえでも望ましいと述べた。』
えーっと、実際は買入をドカドカ行えば金利下がりますし、2番目の理由は言いたい事は判るがそれを行う時のデメリットは???
『また、この委員は、付利を撤廃したとしても、現行の金融市場調節方針のもとで市場機能は維持されるとの考えを述べ、付利を撤廃する際には、資産買入等の基金や貸出支援基金にかかる貸付利率の見直しを行うことが適当であるとの見解を併せて示した。』
>付利を撤廃したとしても、現行の金融市場調節方針のもとで市場機能は維持される
>付利を撤廃したとしても、現行の金融市場調節方針のもとで市場機能は維持される
>付利を撤廃したとしても、現行の金融市場調節方針のもとで市場機能は維持される
・・・・・・・・・・・・・・・・????????????????????????????
んでもって貸付利率の見直しは良いのですが、後で出てきますがその金利が何故か0.03%でして、それはどこからどう見ても基金固定金利オペに加えて成長基盤オペなどの各種成長支援貸出が全部応札ゼロになってしまってまあ固定金利オペはどうでも良いですけれども、各種の成長支援制度に関しては日銀の重点施策という位置づけになっている筈でして何なんでしょうかという所なのですが。
『これに対して、大方の委員は、現状においては、超過準備への付利を維持することが適当との考えを示した。この点に関連して、何人かの委員は、@金利がゼロとなると、短期資金市場の流動性が著しく低下し、市場参加者が必要な時に市場から資金調達できるという安心感を損なう惧れがあること、A金融機関収益へ悪影響を与えること、B「資産買入等の基金」の円滑な積み上げを困難にし、基金運営の不確実性を増加させる可能性があること、C為替相場への影響も一時的にとどまるとみられること、などから、結果として、金融面から経済に働きかける力がかえって低下する可能性があると述べた。』
まあそうですな。
『一人の委員は、付利の撤廃に伴うベネフィットとコストについては引き続き検討していくことが重要であるが、付利の撤廃は現在の金融緩和の枠組みの変更を招来する可能性が高いことから、時期尚早と判断していると述べた。』
というか今の枠組みを変えないと付利の撤廃は出来ませんがな。
『別の一人の委員は、付利の撤廃は本来技術的な議論であって、まず、政策金利、即ち誘導目標金利を下げるべきかどうかを議論することが必要であると述べた。』
これまた仰る通りで。何かこの部分だけヘッドラインになっていてくやしいのうくやしいのうというベンダーもいましたが、恐らく金先が買われているのはこれとは別でTIBORがここの所低下しているのが原因だと思われます。
つーかね、これだけケチョンケチョンにされているという状況がもっと早くに示されていたら市場の値動き(短期の実弾投資においては最終兵器「コール金利対比逆鞘じゃなかったら取りあえず間違って金利低下した時のヘッジをしておく」という動きがある上に、短期物で大きく食らうのは「何かあった時に何の備えもしていなかった」という時なので、短期以外の市場の人から見ると「誰も信じていないのに市場は織り込んでいるかのような動きをする」という現象が起きる事もあるのです)にすっかり釣られて直前になって付利下げの予想をして決定会合後にすっかりだんまりになられた何とかストの方々続出という実に香ばしい光景がここまで見られずに済んだかもしれませんね!!!!
採決の部分から石田さんの提案を引用しておきます。
『2.「『共通担保資金供給オペレーション基本要領』等の特則に関する件」等の一部改正に関する件
石田委員からは、金融緩和効果の一段の浸透を図る観点から、補完当座預金制度における適用利率をゼロ%とするとともに、固定金利オペ、被災地金融機関支援オペ、成長基盤強化支援資金供給および貸出増加支援資金供給における貸付利率を年0.03%とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』
石田さん以外全員反対ですが、0.03%じゃあ上記各種オペがワークしないんですから賛成する方がちょっとアレとしか申し上げようが無く、残り全員反対したのはまあ当然ですな。
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2012/12/28
お題「昨日の続きの積りで書いたら昨日の追補版になってしましましたぞなもし」
モーサテ今年の締めは吉崎さんとな(^^)。
うむ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121228/k10014490381000.html
NY市場 1ドル86円台に 12月28日 0時27分
『27日のニューヨーク外国為替市場は、安倍内閣が発足し、日銀が一段の金融緩和に踏み切るのではないかという見方から、円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場はおよそ2年4か月ぶりに1ドル=86円台をつけました。』(上記URLより)
これね、何でこういう時に日銀の名前が受動的になっているのかと思うのですけれども・・・・・って何でもへったくれもなくていわゆるコメントする人たちとそれを受けて報道する人たちのレベルを反映しているだけではあるのですが、昨日ああだこうだ書きましたように、11月の日銀金融政策決定会合議事要旨に示されているように「11月の時点から日銀は円安を促して物価を上昇させようという姿勢が強まっている」という事が明確になった(だから議事要旨の出たタイミングで為替が84円台から85円台に上昇した)訳でして、未だに「安倍さんの圧力ガー」とか言っている方は以下悪態。
ということで、大ネタが最後に出た上に今週は月曜が休みだったので金曜日気分ですらない年末週末でございます(あたくしだけですかそうですか^^)ので今日も平壌運転のこのあたくしで昨日の続きで11月決定会合議事要旨ネタです。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g121120.pdf
そして実はマニア向け(ではありませんので念の為^^)にはこのようなものも出ているのでして・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g121120.pdf
○しつこく昨日と同じ部分を今度は英文議事要旨を踏まえながら再確認してみる
ということで昨日は『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分を引用してああだこうだ書きましたが、「為替市場への働きかけ」云々の部分を改めて英文版で読みますとこれが更に味わいがあります。ちなみにその部分は『III.
Summary of Discussions on Monetary Policy for the Immediate Future』です(以下議事要旨の引用部分ですが、基本的に日本文は日本語版、英文は英語版からの引用となります)。
『Some members raised the point that it might be necessary for the Bank
to improve its policy measures further to enhance the influence of monetary
policy on foreign exchange rates. 』
>policy measures further to enhance the influence of monetary policy on foreign exchange rates.
ふむこっちの方が判りやすいですなという所ですが、まあマニアと申しましてもこのあたくし、マニアレベルから言えばまだまだカルトレベルに全然達していない(世の中の一番の中銀カルトは多分麿だと思われます^^)あたくしでございますので普段の英文書き振りに慣れていないのでございますが、この先の文章を見ると・・・・・・・
『A few of these members expressed the recognition that misunderstanding
and suspicions about the Bank's monetary easing stance existed in, for
example, the foreign exchange market.』
ということで(当たり前ですが)a fewとsomeを使い分けておりまして、昨日引用した時には明らかに文章の流れと12月会合の石田さんの提案から勘案するに3名が為替の働きかけという話をしましたが、もしかしたら3名だけではないかもしれませんな。つーかまあ日本語の方の議事要旨でもあれだけああだこうだ書いてあったという所から勘案すると相当の議論があったはずで、3名だけの話だとここまでああだこうだ書かないという事も実は想定されるので、想定の話かもしれないですけど3名超なのかもとか思いつつ。
ただし、日銀の場合はFRBのミニッツと違うので、たぶん「2名の」という表記を英語ではしていない(日本語で2名という記述をしていないので英文表記でも避ける筈)ので、まあa
fewが2名でsomeが3名の可能性もあるんですけどね。
でまあそれはそれと致しまして。
『In view of the need to dispel such misunderstanding and suspicions, thereby
encouraging further permeation of monetary easing effects, as well as to
influence market expectations, these members then raised the issue, as
in the previous meeting, of whether it would be effective to change the
current wording of the Bank's policy commitment -- namely, that the Bank
aimed to achieve its goal of 1 percent for the time being in terms of the
year-on-year rate of increase in the CPI through the pursuit of powerful
monetary easing, conducting its virtually zero interest rate policy and
implementing the Program mainly through the purchase of financial assets,
and would continue with this powerful easing until it judged the 1 percent
goal to be in sight.』
一文がなげえよと思いますが、こちらはコミットメント文言の変更というか明確化の話で、10月30日の会合で佐藤さんが提案して木内さんが賛成した件です。
○オープンエンドの部分に関して
『One of these members said that an option for the Bank would be to clearly
present in the statement, which was to be released immediately after the
meeting, that it would continue powerful monetary easing mainly through
the virtually zero interest rate policy and the purchase of financial assets,
without setting any timeframe, until it achieved a CPI inflation rate of
1 percent.』
『このうちの一人の委員は、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置を通じた強力な金融緩和について、消費者物価の前年比上昇率1%を達成するまでオープン・エンドとすることを対外公表文に明記することが考えられると述べた。』
ということで日本文(ちなみに日本文がMPMの承認を経た正本で英文は日本文を底本に日銀スタッフが作成したものですので念の為)で「消費者物価の前年比上昇率1%を達成するまでオープン・エンド」とありますが、英文の方がより判りやすくなっているのがチャーミングでして「時間的なフレームを設定しないで」となっている訳で、まあつまり(APPの枠組みを変更しない事を前提に考えた場合)APPについて「2013年12月まで幾らの達成」に上乗せするとすれば、「その後についても一定額の購入を行い、基金買入の償還分については再投資を行う」というような言い方になるのかねとゆー所でしょうかね。
で、ここは英文を読んでいてもあまり確信できなかったのですが、「消費者物価の1%を達成」という所が現在の物価安定の目途に示されている「見通し」ベースのものなのか、「実際に達成すべき数値」なのかがワカランチ会長なのですが、何となくこの書き方のニュアンスは実績ベースのような希ガス。
まあ勝手に想像しますと、実績ベースで1%達成するまで緩和継続という言い方ですと、これは失業率を低下させようとしてロンガーランの5.2-6.0%ゴールの手前である「実績値6.5%」の所に閾値を置いてガイダンス文言を設定したFRBに似たフレームでもあるなあとか思った訳ですけれどもどうでしょうかね(^^)。
○石田さん失礼しましたすいませんでもあの見せ方をされますと・・・・・・・・・
でまあその後の多くの委員の指摘とそれに対するツッコミの部分はスルーしまして、石田審議委員と思われる方の付利撤廃に関する指摘。
『One member -- noting that the shorter-end government bond yields in some
countries with high creditworthiness were in negative territory -- said
that, although the abolishment of the payment of interest on excess reserve
balances at the Bank would pose various problems, such as a decline in
the functioning of financial markets, if such abolishment could bring down
yields further on T-Bills in Japan, this might reduce the attractiveness
of the yen as a safe-haven currency and exert influence on foreign exchange
rates.』
『一人の委員は、信用力の高い一部の国の短めの国債利回りがマイナス圏にあることを指摘したうえで、超過準備への付利の廃止には金融市場の機能低下等の様々な問題があるものの、これによりわが国の短期国債の利回りを一段と引き下げることができれば、退避通貨としての円の魅力を減ずることになり、為替相場にも働きかける可能性があると述べた。』
ということで、こちらも英文の説明の方がニュアンスが伝わりやすい(まあ日本文でも判るちゃあ判るのですが)訳で、石田審議委員としては「付利撤廃を行う事によって短期市場金利がゼロ(下手したら国債の金利などはマイナス)になって短期市場が壊滅状態になったとしても、市場金利の低下で為替市場の円安誘導が図れるのであればそれも止む無し」という認識を示しているというのが英語の方がより判りやすいのですが、つまりはそれだけの危機意識を認識として示したうえで付利金利の撤廃の議論を11月の時点から行っていて、その結果が12月の提案として出た、とまあそういう事だった訳ですよね。
まあ何ですな、そういう背景とかが予め判っていれば12月会合の時に一部市場関係者の間に衝撃と共にブーイングが巻き起こる事も少なかったと思われる次第で、石田さん向けに言い訳を致しますと、何も前振り無しであの提案だけポコッと出され、その理由についての声明文注釈が「為替市場により働きかけるため」だけですとナンジャソラと思うのが市場の中の人的に普通の反応になるのですよ。まあ麿の会見では「金利の引き下げで為替市場に働きかける」という話だけあったのですが、これだけでもやはりポコッと出た感を受けて思いつきっぽく見えてしまうので、そういう反応になって(二日酔いの勢いもありますが^^)しまう訳ですなうんうん。
然るに、実は前振りとしてこのような背景がありましたと言う事ですと、石田さんの提案の背景に対する外野のワタクシ達の認識が全然違ってくる訳で、実務家出身者として大きなデメリットも認識した上で、そのデメリットを背負ってまでも為替市場をどげんとせんといかんとゆーお話をしているってえ事ですので、そらまあ悪態をつくような話とは違いますがなって所ですぞなもしという所で。
ただし、付利撤廃という事になればAPPの残高積み上げは実務上困難(はっきり言って現時点では目標があるからオペ参加者も超過準備積み上げながら対応している面があって、超過準備を積むメリットが無くなって単にバランスシートが拡大(対日銀だからリスク資産は拡大しないと思いますけど)するだけの超過準備をそんなに積む人は居なくなりますし、超過準備持っているよりも国債の形で持っていた方がバランスシート的に美しいからそんなにホイホイと買入オペ(単なる資金供給オペでは無い点に注意)に札入れてこないでしょう)になるでしょうし、そもそも成長基盤強化やら今回の貸出増加支援策などのフレームワークに参加する意味が無くなる(上に従来の固定金利貸出が全部やられになってしまうので、参加した分馬鹿を見た格好になりますので金融機関的にはナンジャソラ状態)ので、それらの枠組みを全面的に入れ替えないといけないという事で、その辺の制度再設計も含めてガラガラポンしないといかんぞなもしというのは連日申し上げている通り。つーかだいたいこういう流れを見て思うのだが、日銀はこの手の仕組みを緻密というか堅牢に作り過ぎで、その後の変化に対応しにくくて現場のオペレーション担当が複雑骨折状態になりながら対応するという残念な事案が良く見られるぞなと思いますので、もうちょっとこの辺の設計をラフにするというのも(FRBなんて前後矛盾をモノともせずにホイホイ変えていまして、あれはあれでいい加減過ぎると思いますが)考慮されたいと思いますけどね。
ちと話が逸れましたが、まあそういう事で、今回の石田さんの提案に関して実は既に前回の会合から問題提起があって、その辺りの議論を経て今回石田さんの提案に至った、というような話が全然伝わらないでいきなり結果だけ出されたのはコミュニケーションポリシーとして実に残念でありまして、まあ連続緩和した翌月だったからあまりその手の話をして市場を煽りたく無かったのだろうなあとは想像できるのですが、11月会見で特に為替市場への働きかけについて様々な議論があったというような話が全然なかったですし、12月会見での石田審議委員の提案に関する説明も金利を下げて為替に影響というだけのあっさり味説明でして、何と申しますか非常に勿体ない話で、別に安倍さんだけじゃなくて日銀だって既に強い問題意識を持って取り組んでいるという部分をアピールできたんじゃないのと思うのですよね。
そのアピール足りないから85円乗せからの円安に関しても未だに一般的な報道が安倍内閣発足云々の方で安倍さんが完全に主体のようになっているように認知されてしまい、日銀の取り組みがアピールされないとか、これはもう見せ方が残念にも程があるとしか申し上げようがございません訳ですな。
#まあ議事要旨のニュアンスを見ると為替云々については執行部サイドじゃなくて審議委員サイド(特に民間企業出身の4名と思われますが)が主導しているので麿的にアレなのかもしれませんけれども
なお、金利市場の中の人的に申し上げると付利撤廃で金利ゼロとかになるとやはり色々な面でのデメリットがありまして、それをするなら「絶対に」円安と株高に持って行って頂かないと、中期ゾーン以下大体短期からやや長めの短期の金利を扱う人間にとっては金利という糧食が無くなってしまってアラカン山脈白骨街道状態になるだけでありまして、従来のオペ拡大の無駄打ちとはレベルの違う何やってるんだ状態になる訳でございますので、それなりの覚悟と用意を持って頂かないとまさに金利のインパール作戦となるという点は全力で指摘させていただきたいと思います。
○やはり短国買入については「確信犯で金利押し下げ」の狙いがあった訳で
さて話が全力で逸れましたが先ほどの続きが残っておりますのでちと引用します。
『On this point, a different member commented that another measure to encourage
a decline in yields on T-Bills would be to increase the Bank's outright
purchases of T-Bills while continuing with the payment of interest on excess
reserve balances.』
『この点に関し、別の一人の委員は、短期国債利回りの低下を図る手法として、現状の超過準備への付利を維持したまま、短期国債買入れを増額することも考えられるとコメントした。』
まあここは日本文で読んでも判りますが、「安全通貨としての円の魅力を下げる」という観点であれば、付利撤廃で短期市場壊滅させなくてもそもそもTBの金利を下げてしまえば良かろうという論点で、これはこれでまあ有り得る話ですし、この手段で確信犯で短国金利を押し下げるというのであればTBの買入枠をもっと増やせますがなという話にはなりますな。
しかしこの点に関しても声明文や会見での説明ではスルーしておりまして、この部分だって「市場金利の一段の低下を促す為に短期国債も含めて買入を拡大する」というような見せ方をしてくれれば、MPMの当日に為替市場がちゃんと反応してくれていた可能性がある訳で、これも見せ方が勿体ないにも程があるわと思うのですが。
ちなみに今回の声明文ではこんな書き方になっていたのですが・・・・・・
『「資産買入等の基金」を91 兆円程度から101 兆円程度に10 兆円程度増額する。基金増額の対象については、別紙2のとおり、短期国債を5兆円程度、長期国債を5兆円程度とする。「資産買入等の基金」を通じた今後1年間の追加的な資産買入れ額は、既に決定したものと合わせ、36
兆円程度となる。このほかに、日本銀行は、年間21.6 兆円の長期国債の買入れを行っている。』(12月決定会合声明文より)
『以上の景気・物価情勢を踏まえ、日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく軌道を踏みはずさないようにするため、日本銀行は、金融緩和を一段と強化することが適当と判断した。』(12月決定会合声明文より)
この辺りのどこにもその辺のニュアンスが出ていないというのが残念で、まあ現状で「為替市場へのより積極的な働きかけ」というのが全員の認識になるまで至っていないという事の反映(だから先ほども昨日も書きましたように、12月の決定は「審議委員からの積極的な」という感を受けた訳ですが)なのかも知れないので、そういう出し方をしていない、と言ってしまえばそれまでかも知れませんけど、まあ一事が万事で結果として行っている「オペレーション」そのものはそれこそびた1ユーロたりともOMT買入を実行していないECBと比べたら飛んでも無い勢いで行っているというのに「見劣りがする」だの「緩和が足りない」だの言われる訳ですな。実に残念。
まあ今さら麿がどうのこうの言ってもシャーナイのですが、金融危機における国際協調とか対応とかに関しては麿大活躍(まあ大活躍は麿一人だけではないですが)なのですし、例えば成長基盤強化に類するものをBOEがやっているとかのように、金融政策のあるべき枠組みとか方向性を示す制度設計とかに関しても麿(というか日銀全体)の技量って卓越していると思うのですけれども、ドラギの大爆笑先生のような「ハッタリかまして宝刀見せるけど抜かずに済まして実はタダ」的な非伝統的政策とか、逆さ絵おじさんのように「ストックビューで始めた筈の資産買入の説明がいつの間にかフロービューになっている」というようなインチキ成分が悲しいほど欠如しておられるのがこの辺りの残念な見せ方に反映されているんでしょうなあとは思う所でございます、はい。
・・・・・・・えーっと、何か昨日の繰り返しで景気の現状認識と見通しがエライ弱いという話はどこに逝ったんだというツッコミが聞こえそうな気がしますが、まあ年末ですのでそういう事はツッコまない方向でよろしくお願いいたします。
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2012/12/27
ということで本日の大ネタは昨日公表になった11月会合議事要旨であることは皆様ご案内の通りでありまする。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g121120.pdf
○11月会合で思いっ切り追加緩和やら為替市場への働きかけやらの話があったのですね
つーかね、不思議でしょうがないのですけれども、昨日の為替市場で朝9時ちょっと前にドル円が85円台に乗ったのに対して(さっきのモーサテのコメントもそうですけど)「安倍内閣への期待が云々」という後講釈が見られるのですけれども、それよりもこの時間帯にあった材料というのはどー見てもこちらの議事要旨だと思うのですよね。
で、この議事要旨が出たタイミングでは中身にあった「為替により強く働き掛ける工夫が必要」「付利撤廃の検討も」「オープンエンド方式の資産買入の検討も」「コミットメント文言の変更も」など、これは(追加緩和決定の)12月決定会合議事要旨ですかと思ってしまうような政策委員の論点が次々にヘッドラインとして出て参りまして、まあ11月会合後の会見では麿の金融政策に関する丁寧な説明(がメディアによって無駄に「安倍VS白川」みたいにフレームアップされた結果として日銀にとっては災難な事になった訳でメディアは全く困ったもんだと思いますがそれは兎も角)の方ばかりになっていまして、この手の論議があったという事はスルー(まあ議事要旨で公表される訳ですから質問されなきゃ答えなくても良いのですけど・・・・・・)という状況だったので、正直これは金融政策動向に注目する人たち的にはかなりのサプライズな内容だったと思うのですよね。
もちろん他の理由もあったとは思いますが、タイミング的に昨日為替がどどーんと動いた時にあった材料はこの議事要旨であって、しかも議事要旨の内容が実は日銀が既に「チェンジ」をしつつあることを示唆するのではないかという物である、という評価になると思う(以下で説明しますけど)のでありまして、普段日銀の姿勢ガーとか言いながらエエカゲンにも程がある講釈をしておられる一部の為替系何とかストやコメンテーターの皆様がこの議事要旨に言及しないのが不思議で仕方ありませんなあという所ではございます。
つーかですな、毎度思うのですけれども、決定会合の議事要旨内容について決定会合での承認事項になっているという今の日銀法の作りってこういう時に非常に残念な事態を招くのでありまして、もしこの議事要旨がもう少し早く出ていたら、まるで1から10まで総選挙と安倍総裁発言(というか殆ど恫喝モード)を受けたかのように報道される12月決定会合の結果も、実は11月の時点で既に政策委員(たぶん執行部系では無くて審議委員の皆さんでしょと思いますけど)の間では「日銀のチェンジが必要である」という議論が醸成されてきていて、その結果として12月の決定があったという事もあったのではないか(即ち実は追加緩和の流れは既に始まっていた)、とまあそういう認識になると思うのですよね。
BOEとかFRBとか、ポリシーミーティングのミニッツを公開している所では次回の決定会合の前にミニッツを公開しておりまして、正直日本の場合MPMのペースが早いのでロジ的にしんどい(特に2回会合の時と盆暮れが絡む時)というのもあるのですが、政策決定関数についての考察をしやすくするという点から言えば、ミニッツは次回のMPMの前に出した方が吉であって、コミュニケーションポリシー上も有益ではないかと思う所でありまして、日銀法改正するならその手のテクニカルな問題点についても改善の余地があると思いますので何卒よろしく。
・・・・・・・・うむ、話が逸れましたな。
○『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』を読むべしということですな
ということですが、最初の方はまあいつもの話なのですけどね。
『当面の金融政策運営について、委員は、日本経済がデフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると確認したうえで、この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しがあいまって実現されていくものであるとの認識を共有した。こうした認識のもとで、金融機関による成長基盤強化の取り組みおよび貸出の増加を支援するとともに、実質的なゼロ金利政策と資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて、強力な金融緩和を間断なく推進していくとの方針で一致した。そのうえで、委員は、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していくとの方針を共有した。』
まあいつもの話である。
『前回会合における金融緩和の強化について、委員は、景気・物価見通しの下振れと先行きのリスクを踏まえて果断に対応したことは、オーソドックスな政策運営として受け止められたのではないかとの認識を共有した。』
それはどちらかというと9月の話で10月は前原・・・・いや何でも無いです。
『そのうえで、何人かの委員は、今後も適切な情報発信を通じ、日本銀行の政策に対する信認を確保していくことは、金融政策の波及効果を高めるうえで、きわめて重要であるとの認識を改めて示した。』
ということでこの辺から論点が面白くなってまいります!
『何人かの委員は、景気や物価の見通しが更に下振れたり、見通しを巡るリスクが大きく高まるような場合には、様々な選択肢をあらかじめ排除することなく、その効果とリスクを十分検討したうえで、適切な措置を果断に講じていく必要があると述べた。』
ほほう。
・為替市場への働きかけ:コミュニケーションポリシー
『何人かの委員は、金融政策による為替相場への働きかけを強める観点から、一段の工夫が必要ではないかとの問題意識を示した。』
何人かの委員キターーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーー!!
『このうち複数の委員は、為替市場などでは日本銀行の金融緩和姿勢に誤解や疑念が存在するとの認識を示したうえで、それらを払拭し、金融緩和効果の一層の浸透を図る観点から、「当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」とのコミットメントの文言を変更することが市場の予想に働きかけるうえで有効ではないかと、前回会合と同様の問題提起を行った。』
佐藤委員と木内委員ですねわかります。
『このうちの一人の委員は、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置を通じた強力な金融緩和について、消費者物価の前年比上昇率1%を達成するまでオープン・エンドとすることを対外公表文に明記することが考えられると述べた。』
オープンエンドキタコレという所ですが、まあそもそも物価安定の目途についてはその性質は本来目標達成するまでオープンエンドとなる物でございまして、何でオープンエンドの書き方になっていないかと言うと資産買入等基金という「ストックの量で勝負」をしているから、そのストックの額について幾らですよという話をする為には「何時何時までに幾らの残高にする」という見せ方を採用しているというだけの話ではあるのですが、確かに金融政策が非伝統的な領域に入っているという事を考えますと、さきほどの複数の委員による指摘にありますように、金融政策効果の浸透という意味では「市場の予想(=期待)に働きかける」ための「見せ方」について、金融政策を普段から見ていてそういう点でミスコミュニケーションが発生しにくい金利市場(の一部の・・・・)人に伝わればそれで十分という訳にはいかないのではないか、という論点がここでは提示されていると読みましたが、確かにこれは重要ではあります。
『これに対して、多くの委員は、仮に日本銀行の金融緩和姿勢に誤解や疑念が存在しているのであれば、それは丁寧な説明を通じて解消していくべきものであると指摘した。』
そらまあ本来はそうなのですが、とにかくメディアがあの有様で、他市場から見た場合にどうですねんという話は同様に蒟蒻問答化しやすくなるというややこしい説明になっている上に、これはまあそう言われても麿的に酷な話ではあるものの、一々全部丁寧に説明を尽くした結果としてベースの知識が不足している人たちにとっては却って判りにくくなってしまってませんかという現状も踏まえるべきではないかというのはあたくしも思うのでございまする。
『このうちの複数の委員は、イールドカーブが現状きわめて低位で安定していることを踏まえると、たとえコミットメントの文言を変更しても追加的な長めの金利の低下効果は殆ど期待できないとみられ、そうした意味では日本銀行の金融緩和姿勢は金融市場にしっかりと浸透している、との見解を表明した。』
でまあこの辺が一面では仰る通りなのですが、最初にこの話をした委員からしたら、金利市場の方よりもより幅広い市場の期待に対する働きかけという話をしているのですから、お前それは違うだろというか何を今さら寝ぼけた話してるんだとかそういう言い合いになっていたら非常に面白いのですがそれはさすがに無いですかそうですか(^^)。
『別の一人の委員は、長期金利の低下には、@コミットメント政策により実質的なゼロ金利の予想継続期間が長期化する場合と、A景気・物価見通しの悪化により実質的なゼロ金利の予想継続期間が長期化する場合の2種類あり、両者を明確に識別することは難しいため、注意深く議論していく必要があるとコメントした。』
イイシテキダナー(;∀;)
・為替市場への働きかけ:短期市場金利の低位誘導方策
で、ここで付利撤廃の話が出るのでした。
『一人の委員は、信用力の高い一部の国の短めの国債利回りがマイナス圏にあることを指摘したうえで、超過準備への付利の廃止には金融市場の機能低下等の様々な問題があるものの、これによりわが国の短期国債の利回りを一段と引き下げることができれば、退避通貨としての円の魅力を減ずることになり、為替相場にも働きかける可能性があると述べた。』
石田委員キタコレ(・∀・)という所ですが、先月からこの話をしているのであるならば、直近会合での超過準備付利撤廃提案の際には現在のAPPの枠組みとの整合性を取った形での提案をして頂きたかった訳で、市場機能低下云々以前にそもそも技術論的に整合性の取れない提案を出したのは誠に残念としか申し上げようが無く、あれが出た時にそこらじゅうで「何を考えているんだ」という声が続出して、一部の二日酔い駄文書きからアホだの馬鹿だのという発言が飛び出したのはご案内の通りであります。
『この点に関し、別の一人の委員は、短期国債利回りの低下を図る手法として、現状の超過準備への付利を維持したまま、短期国債買入れを増額することも考えられるとコメントした。』
これも地味だけど重要な話で、直近の追加緩和の際に長期国債の買入5兆円拡大が来年の前半と後半に2.5兆円ずつ割り振られているのですが、短期国債買入の5兆円は来年の前半に全部突っ込まれている、というのはこの「別の一人の委員」の論点を反映したものではないかとゆー話でございます。
・最後の所はまあそらそうなのですがという話
でまあここまで盛り上がったの所で最後の論点ははあそうですかという話ですがせっかく引用しているので一応引用しておく。
『ある委員は、日本を含めた主要先進国では、きわめて積極的な金融緩和政策が講じられているにもかかわらず、各国の景気が本格的な回復に至っていない背景をどのように考えるべきかとの論点提示を行った。この委員は、@米欧経済はバブル崩壊後のわが国と同様、バランスシート調整過程にあり、過剰債務を抱えた経済主体の金利感応度は低下していること、A将来の支出を現在に繰り上げるという低金利の需要創出効果は、低金利の長期化に伴い次第に低減してくること、などを指摘した。』
そらそうなのですが、まあそこは丁寧に説明する所では無い、というのが逆さ絵先生とか俊ちゃんとかの行動を見ると判るような気がするんですけどね。
○安倍さんの押し込みだけではなくて「審議委員の押し込み」もあったのではないかという件
・・・・・・・という事で今日は今回の議事要旨に関して思いっきり1つのコーナーを重点的に攻めて(?)みましたが、少なくとも「為替に積極的に働きかけるべき」という論点について、当初一番強く主張していた佐藤審議委員だけでは無く、少なくともこの議事要旨では(前回展望レポートに反対した)木内さんに加えて石田さんも11月会合の時点で加勢している、というのが明らかになったというのが今回の議事要旨の興味深いというか重要な点。
つまりですな、この会合11月19〜20日の実施ですので、安倍さんの一連の発言第一弾が出た所ではありましたので安倍さん発言の影響も勿論あるのでしょうし、「より物価上昇に強く働き掛けるルートについて積極的にならないといけない」というこの辺の審議委員の皆さんの危機意識が強く示されている、という意味でも見所のある議事要旨であったと思うのですよ。
安倍さんなどによる圧力チックな話がどうもフレームアップされやすいのですけれども、11月会合での(少なくとも3名の)審議委員による危機意識表明というのが12月会合での追加緩和実施の伏線にあるというのはまあ見やすい所でありまして、そう考えますと安倍さん云々だけでは無い意味で、審議委員の方からの日本銀行の「チェンジ」の可能性というのが実はあるんじゃネーノと思わせるのが11月の決定会合議事要旨の金融政策論議に関する部分から読み取れるのでありまして、そういう意味ではこの議事要旨は非常に面白かったと思いますです、はい。
なお、この議事要旨ですけれども、他に景気見通しなどが結構弱いじゃネーノとかそういうのもあったりしますので、それはネタが無ければ明日続きを投入の所存でございます。
ということで11月決定会合議事要旨ネタはここまでね。
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2012/12/25
○為替により働きかけるという論点の雑談を少々
金曜日はその提案があまりにも唐突だったという衝撃および前日都内某所で摂取したスペインワインが抜けていなかった勢いで一部不穏当な表現で石田審議委員の提案について評価致しまして、一部の不穏当な表現については遺憾の意を表明致しますが、まあ趣旨的に「実務家出身というカテゴリーで役割期待されている審議委員が実務上(オペレーション技術上)のフィージビリティー丸無視の政策提案をするというのは如何なものかと思われるので出すならもっとフィージビリティーを練り込んで頂きたい」という事でございまして、それに衝撃の怒り成分と二日酔い成分を入れるとあんな感じになるという事で一つご勘弁願いたい所でございます。
・・・・・・・と、とりあえず詫び証文を入れた訳ですがそれは兎も角として石田さんの提案についてトサカ成分を排して愚考するとこれはこれで重要かもしれない論点を含んでいるとは思います。
つまりですね、総裁会見の中にあるのですが、『石田委員は、金利水準の一段の低下を促すとともに、それを通じて為替相場に働き掛ける観点から、補完当座預金制度における適用利率をゼロ%とする議案を提出しました。詳細は、議事要旨を参照して頂ければと思います。』という風にございますので、為替市場に働き掛ける為に短期市場金利の低下を促すという論点はある訳ですよ。
#ただし現在のAPPおよび成長基盤強化、貸出増加支援制度などの枠組みと付利撤廃がマッコウクジラで矛盾するので制度設計という観点からして付利撤廃がダメダメ提案であるというのは金曜の悪態の通り
そもそも「為替により直接的に働きかけよう」という話が政策委員会的に堂々と出るようになったのは佐藤審議委員の就任会見での外債購入云々発言からと存じますが、暫く前に出ていた10月議事要旨でも為替市場への働きかけがどうのこうのとございますし、そーゆー意味では「為替市場に働きかける」という金融政策の波及ルートについてより直接的な方策は無いか、という観点からの話が佐藤さんだけでは無く他の審議委員からも出ている、という事の表れであると今回の提案を解釈するとまあほほうという所でもございます。
つまりですね、金曜は実務上のフィージビリティーの解説というよりは先ほどの詫び証文のようなもの(遺憾の意だけしか表明しておりませんけどね)にありますように悪態説明をしておりましたが、より物価に強く働き掛ける金融政策のルートというのを考えたら為替コースか資産価格コースという事になる(財政インフレは国民厚生的に誰得インフレなので除外)訳でして、今後アコードだインフレ目標だという話を持ち込まれるという事を考えますと、麿会見では麿が『また、金融政策と並んで、政府の果たすべき役割についても深い議論が必要と考えています。』などと仰せでございましたが、それよりも「高い目標張るならもっと強力なツールを寄越しやがれコノヤロー」という論点もあって然るべきですし、まあ金利ルートからの金融緩和がろくすっぽ効きませんぞなもしという状況下において、金融政策の有効な波及効果は何ぞやという事を考えれば、こういう話になって行きますぞなもしという話。
ただまあここでその道具寄越せという問題につきまして、日銀法の話が出てくるとゆーのはお馴染みの話ではありますが、この際俺様備忘録としてこちらに書いて置きますぞなという事で。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09HO089.html
日本銀行法(平成九年六月十八日法律第八十九号)
『(他業の禁止)
第四十三条 日本銀行は、この法律の規定により日本銀行の業務とされた業務以外の業務を行ってはならない。ただし、この法律に規定する日本銀行の目的達成上必要がある場合において、財務大臣及び内閣総理大臣の認可を受けたときは、この限りでない。』
でまあこの43条認可で為替市場の操作を目的にする取引が出来るのかという論点について、白川総裁はどこかの会見で40条2項の条文を引き合いに出しまして、こちらが上位規定になるだろ常識的に考えて、という説明をしておられますにゃ。
『(外国為替の売買)
第四十条 (前項の引用割愛)
2 日本銀行は、その行う外国為替の売買であって本邦通貨の外国為替相場の安定を目的とするものについては、第三十六条第一項の規定により国の事務の取扱いをする者として行うものとする。』
ということでございます(36条は日銀が通貨および金融に関する国の事務の取り扱いを行うという規定)ので、外国為替平衡操作をするのは財務省であって、日銀はその事務取扱いを行うという解釈になっていますし、まあ当然ながら財務省との調整という問題が有る上に通貨外交をするのが中銀なのかトレジャリーなのかという話とかありますし、今の状況に日銀の為替操作を入れるとそもそも通貨外交が二元外交にならないかとか、まあ色々とネックがあるのは確かなのですが、それはそれとしてこの40条2項と43条との関係に関しては何か法解釈の問題(なので現行法上でも43条認可で行けそうな気がするんだが)のような気もせんでもないのですがどうでしょうかねえ。
2%目標というのを作れだの、より拘束力のある目標を作れだのという話をされるならば、そらまあ日銀の方でも「じゃあもっと強力な政策ツールを寄越せ」というのは自然な話でございますので、今後は為替市場に対するツールをどうしましょうか的な話が更に議論を深めていく事を想定するこのあたくしなのでございました。
・・・・・まあそういう文脈で考えた場合、今回の会見で(他のネタが重かったので)すっかりスルーされていましたが、もう一つのツール足りえる資産価格ルートのETFが月末時点での目標に未達となりそうな件って「ツール使ってねえじゃねーか」と逆ねじくらわされる原因になる訳でして、やはり目標未達如何なものかと思いますが、どう見ても未達間違いなし状態ではございますなとまあそういうことで。
ということでまあ要するに今後高めの目標をどうするかという話になった場合、「より直接的に物価に影響を与えるツールをどう考えるか」というのが重要な論点になるんじゃネーノとまあそういうお話を悪態を交えずに書いてみたのでございましたという事です。
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2012/12/21
○付利金利撤廃提案とかアホかと馬鹿かというか出身母体まで心配になるわという悪態
(後日(1/3)追記:実はこの後11月議事要旨が出まして、石田審議委員の提案がポッと出でも何でも無く、以前からの問題意識および危機意識を表したものであった、という事が判明したのですが、この時はその手の情報が無かったので悪口大会になってしまいました)
ということで声明文。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121220a.pdf
さてまあご案内の通り今回は資産買入拡大が決まりまして、あたくしと致しましてはAPP拡大は次回の決定会合、即ち新政権の経済対策および補正予算策定にぶつける形でインフレ目標のようなものの設定に加えて追加緩和打ち込みというような形で次回会合で出来るだけたくさんのメニューを並べて「チェンジ」的な雰囲気を出した方が見せ方としてビューテホーではないかと思ってましたし、まあ今でもその方が良かったとは思いますが、資産買入拡大が打ち込まれたのは予想を外してこりゃ失礼いたしましたとゆー所ですが、何せ昨日の決定会合で金利市場の中で金融政策にそれなりに認識のある一部の皆様の間で話題沸騰になったのは声明文の本文における資産買入等基金拡大でも貸出促進制度の決定でも物価安定の理解見直し指示でもなく、1ページ目の脚注なのでありました。
『(注)これらとは別に、石田委員より、補完当座預金制度における適用利率をゼロ%とする議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:石田委員、反対:白川委員、山口委員、西村委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、佐藤委員、木内委員)。』
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)
どの位衝撃だったかと言いますと、この提案の提案者がまさか銀行出身の方とは思わず、このような感じの会話があたくしとお友達の間で展開される次第。
人:えーっと、(他の人の名前)さんって何でこんな提案するの実務知らないんじゃないの?
私:いやあのアタクシも信じがたいが提案してるのSMBC出身の石田さんぞな
人:・・・・・・・・・・・・・・・(;゚д゚)
何せこういう会話が1例だけではなく複数例発生したという状況でして、恐らく市場のあちこちで似たような会話が展開されていたと勘案しますと、金融政策をきちんと理解している人と申しますかマニア筋と申しますか綺麗に言えば玄人筋と申しますか、まあその手の人たちでは余りと言えば余りの事案発生に最早10兆円とか2%検討指示とかどうでも良いという状態で騒ぎになっておったのですが、その割には昨日の債券市場や金利先物市場が反応しないのを見ての感想。
人:ユーロ円金先も中期債も反応しませんなあ
私:付利撤廃提案って衝撃の提案なんだけどねえ
人:もしかして私たちって市場の超マイナー筋だったの???
私:・・・・・・・・・・・・・・orz
まあ「8対1で否決されたから関係ないじゃん」ということなのかも知れませんが、何はともあれこの提案をしたのが市場の素人衆ではなく、住友銀行資金為替部長や企画部長を歴任された銀行出身の方というのが一部の市場関係者の間で腰を激しく抜かすというか椅子から転げ落ちそうになった事案でございまして、簡単に申し上げますと「何アホウな提案しているんだこのオッサン何考えているんだおいおいおい」という所でございまして、「このオッサン資金為替部長や企画部長やってて何も理解してないとか大丈夫か」という話でもあり、更には「緑の銀行ってこんなのが役員やってるのか大丈夫か」とそこまで話が及ぶ次第でございまして(もはやただのコジツケの域ですかそうですか)、もう皆さん(ただし一部の人々ですが)大騒ぎですよ奥様という所でございます。
えーっとですな、何回かこちらの駄文で申し上げておりますが再度申し上げますと、資産買入の積み上げを行うという事は、その買入に対応して当座預金残高が積みあがるという形になる訳でございまして、その結果として超過準備預金額も積みあがる、とまあそのような形になりますがな(もちろん経済が絶賛急拡大した結果として所要準備額が急拡大すれば積みあがりませんが、どこからどう見ても資産買入基金の増え方がそんなチンケな話を超越する勢いなのは皆様ご案内の通り)という話。
即ち、資産買入等基金(めんどいのでAPPの略称使いますが)の大幅な積み上げにおいては超過準備の大幅な拡大がセットで付いてくる訳でございまして、その超過準備の付利金利をゼロに下げるという事は、超過準備が積みあがりにくくなるという事を意味している訳で、短期市場の金利は下がるかも知れない(というか下がる)のですが、超過準備が積みあがりにくくなるような措置を取るというのは資産買入等基金の残高を積み上げて行くという現在の金融緩和政策のフレームワークに真っ向から矛盾する話でございます。
更に申し上げますと、今回の声明文の5ページになりますが、(別紙3)に『貸出増加を支援するための資金供給の概要』にございますように、今回決定された貸出増加促進スキームにおいて、
『5.貸付利率
貸付けの通知日における無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標水準(現在は、年0.1%とする)。』
ということで、この貸出金利が現状では0.10%の固定金利になっているのですが、付利金利が下がるというような話になれば市場金利がその水準まで低下(だから撤廃したら金利がゼロになる)することが想定される訳でして、そんな事が想定される状況下でどこの誰が0.10%などという高金利固定金利での1年とか2年とか3年とかのファンディングをするのだという話になる訳で、貸出増加促進スキームもワークしませんですし、既に実施している成長基盤強化貸出とか、被災地金融機関支援貸出も1年固定金利での貸出を行っている訳でして、これらの貸出がワークしなくなるというのは即ち日銀が重視する成長基盤強化の取り組みを否定するとか、まあそういう話になる訳ですよ。
もちろん、これら貸出制度の枠組みを変更するとか、APPの枠組みを変更して買入残高で勝負するの止めて毎月の買入オファー額だけコミットするとか(市場金利がゼロになってしまうと資産買入だって応じる人が減るのは自明で一定以上の残高積み上げは困難になる)、その辺りの枠組みを全面的に入れ替えるというのとセットであれば付利金利撤廃というのも話としてはアリエール(ただしそれは量的引き締めをもたらしますし、ただでなくさえ開店休業の短期金融市場がどう見ても閉店です本当にありがとうございましたとなるのでそもそも完全ゼロ金利自体が有り得ないとは思いますが)ではあるのですが、このおじちゃん今回の決定においてAPP拡大とか貸出増加支援制度については賛成票を投じている訳で、つまり金融政策運営における提案内容が支離滅裂であるとまあそういう話になりますぞなもしという話。
市場に関して全くのど素人の方が良く判らずに提案しているのなら兎も角、この石田審議委員様におかれましては住友銀行の資金為替部長や企画部長、三井住友銀行でも経営企画部長など歴任されている方でして、いわゆるマーケット出身のカテゴリとは違いますけれども、当然ながら市場のメカニズムなどは熟知されているお方であると理解しておりましたが、石田審議委員におかれましてはもしかして貴殿は馬鹿でいらっしゃいますかとお問い合わせ申し上げたい次第でございまして、今回の提案で市場(ただし一部の金利関係の玄人筋^^)の方々から呆れ果てられたという事はご報告申し上げたい所であります。
つーかですな、こんな提案して付利金利引き下げあるいは撤廃の可能性について本当に可能性が論じられるようになりますと、APPにおける固定金利オペに応札する人がゼロ名に接近してくる(将来の市場金利低下の可能性があるのに0.10%での5か月だの6か月だのの固定金利オペの資金供給に応じる人はいないという意味)のでありまして、早速年明けからの固定金利オペの応札動向が注目されるとまあそういう話になりますぞなもしという所でございます。
#いかん悪態が長くなってしまった
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2012/06/25
○石田審議委員会見から少々
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1206b.pdf
・執行部ベースの説明をしつつもちょっと違う面も
『(問) 本日の挨拶では、やはり欧州の問題が引き続き最大のリスクだということになっており、これがもし、例えば、4月の展望レポート時より、もう少し深刻になっていて、外需の復元が遅れ、年度前半での景気回復というメインシナリオに影響がどれぐらいあるのか、ご所見を伺います。』
という中盤での質問に関しては・・・・・・
『(答) ご案内の通り、日本銀行が、展望レポート自体の見方を正式にもう一度見直すのは7月になります。その時には、また足許とは違う色々な資料が出ていることが考えられますが、今の段階で言えば――本日の挨拶要旨にも書いてありますが――、外需の出足が思っていたより弱い一方、内需の方は思っていたより若干強いと、それをオール・イン・オールで言えば、当初思っていたラインとは、それほど大きく変わっていないということであり、今の段階で言えば、取りあえずオンラインにきているということです。』
ということで展望レポートの回復軌道にオンラインですという話をしていますが、最後の質疑ではこんな話を。
『(問) 経済の方は、日本銀行のみているように、だいたい見通しの通り、オンラインできているということですが、7月に、更なる何らかの行動、金融緩和をする必要性について、どうご覧になっていますか。』
『(答) 最初に、どういう意味でオンラインかを申し上げます。私どもが認識する経済指標にはタイムラグがあり、今は4、5月の数字をみているということです。7月になってみることができる数字は、修正値等も含めると、随分変わってくることはあり得ます。従って、今、オンラインだから政策を見直さない可能性が非常に強いとは言い切れないと思います。もともと、中央銀行は、世界中で、それぞれの国が置かれた経済金融情勢を綿密に点検し、必要であれば金融政策はやると、果断に実施してきているものです。これは日本銀行でもそうです。やはり、ぎりぎりのところまで情報を集め、やるべきものはやる。もともと、できればやらないとか、やりたくないとか、そういうことはありません。7月になって、全く予断なく各種の情報を集めてみて、議論の上、金融政策を考えていきたいと思います。』
>今、オンラインだから政策を見直さない可能性が非常に強いとは言い切れないと思います
>今、オンラインだから政策を見直さない可能性が非常に強いとは言い切れないと思います
>今、オンラインだから政策を見直さない可能性が非常に強いとは言い切れないと思います
>もともと、できればやらないとか、やりたくないとか、そういうことはありません
>もともと、できればやらないとか、やりたくないとか、そういうことはありません
>もともと、できればやらないとか、やりたくないとか、そういうことはありません
・・・・・・・・うむ、これは良い質疑応答である(^^)。まあ何だかんだと言いましても、歴代の銀行出身の審議委員の皆さんって(新法以降は武富さん、中原(伸)さん、野田さん)そらまあ大手銀行の上級役員にまでなられる方だから当たり前っちゃあ当たり前ですが、大体揃いも揃ってカミソリで銀行員だけに日銀のロジックとかにも直ぐに詳しくなり、かつそれに必ずしも全部が全部同意しないような感じの話をするという所でして、いやまあ世間様的に言うと「銀行だの事業会社だのの出身が審議委員って何なのよ」とか言われやすいのですけれども、やはり金融実務だの実業だのに立脚している人がボードに居るというのは良い傾向だと思うのですけどにゃあ。
・これは質問する方がヘタクソ
『(問) 先程の審議委員人事に関連してですが、お二人とも、先月の時点では、日本銀行の持っている物価見通しよりも低い予想をされていました。来月、中間評価がありますが、午前中の挨拶の中でも、1%を目指して強力に緩和を進めていくとされていますが、石田審議委員は、もし、中間評価において、2013年度の物価見通しが、+0.7%から下がるようであれば、緩和すべきとお考えですか。』
『(答) +0.7%というものは、ある意味で中心的な数値です。各委員の持っている予想値というのは――展望レポートにも出ていますが――、一定の幅の中に散らばっていたわけです。私の見通しがどこにあるかは言えませんが、必ずしも+0.7%かどうかは確かではないということであり、1つには、+0.7%が変わるかどうかによって、私の意見が直ちに変わるわけではないということです。』
そらまあそうや。
『もう1つは、インフレ率についてみていく場合、例えば、原油あるいは他のモノで、今年は価格が上がり来年は下がる、あるいは今年価格が下がって来年は上がるようなことがあったとすると、やはり均してみていった場合にどうなのか、ということになると思います。来年の+0.7%が下がったとしても、その次の年にどう跳ねるのかがまた議論になるわけです。
+0.7%は、+1%と関係はしていますが、リンクしているかといえば、直接のリンクはしていないというものだと私は理解しています。』
そらそうですな。
『少し説明が分かり難いかもしれません。要するに、+0.7%の後、翌年はどこへ行くのか、+0.7%が下がった時に、物価のモメンタムが下を向いていたら評価は変わってくると思いますが、数値は少し下がっても、引き続きモメンタムは上を向いている、力強いところがあるということならば、評価は変わらないかもしれないという意味で、+0.7%という数値自体が変わるかどうかということと、その評価は、直接はリンクしないと思います。その評価は、その後の見通しがどういうものになるか、ということになると思います。』
で、惜しい事にここで追加の質問が無いのですが、つまり本来的に質問すべき事は、展望レポートで示された「遠からず1%に達する」という方に関しての見通しが変わった場合にどうなりますかという質問であるという事でして、日銀的ロジックを理解しておきますと、確かにまあ展望レポートの数字が重要なのは間違いないのですが、そこは前回の展望レポートで日銀がまあ言ってしまえば姑息なプレーに出ておりまして、「展望レポートの見通し期間中は兎も角として中長期的には」1%の物価安定の目途を達成する可能性が高いという見通しを掲げている方がポイントっぽい見せ方になっているのがオソロシスな所ではあります。
つーか回答者にフォローされてどうするんじゃという感じですな。まあさっき引用した最後の質疑の部分を見ますと、石田審議委員は基本的に執行部の見解の説明をしながらもちょっと違ったニュアンスで
話をしてりしているなあと思いましたです、はい。
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2012/06/22
○石田審議委員講演はまあ普通でした
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120621a1.pdf
・金融経済情勢に関しては月報などの基本線通りの説明
『2.わが国の経済・物価動向』から少々引用。
『次に、海外経済について申し上げますと(図表3)、まず米国経済については、堅調な企業収益などを背景に設備投資が増加基調を維持しているほか、個人消費も緩やかに増加しております。雇用面について、記録的な暖冬によって生じた雇用増加分の剥落の影響ともみられる動きがみられますが、これまでのところは、全体としてみれば、緩やかな回復を続けているとみています。』
『一方、欧州経済については、輸出に持ち直しの動きがみられるものの、周縁国の厳しい金融環境などを背景とする内需の低迷が足かせとなって停滞しています。また、この間、各国間の景況の格差が拡がっています。例えば、失業率については、ドイツでは4月は5.4%と東西統合後の最低水準を記録したのに対して、スペインでは全体では2割を超え、25歳以下に限ってみれば5割超に達しています。』
『新興国・資源国については、全体として高めの成長を続けていますが、成長ペースは幾分鈍化しています。中国経済は、なお高めの成長を続けていますが、輸出に欧州経済停滞の影響がみられるほか、これまでの不動産取引抑制策や金融引き締めの影響もあって、耐久財消費や民間不動産投資を中心に成長ペースが幾分鈍化しています。一方、NIEs・ASEAN経済については、個人消費や設備投資が底堅く推移する下で、タイの洪水からの復旧もあって、持ち直しつつあります。』
『このように、世界経済は、全体としてはなお減速した状態から脱していませんが、米国や新興国の一部では緩やかながら改善の動きもみられている状況にあります。』
とまあそういう説明でして、新興国が「高めの成長を続けていますが」とか、「米国や新興国の一部では緩やかながら改善の動きもみられている状況」とか、海外の中央銀行の皆様との温度差がすげええええと存じます、つーかその米国の方がFOMC声明文で弱気モードになっているというのにその自信満々モードはどこから来るのか日本銀行。
先行き見通しですけれども。
『わが国の景気について現時点でみますと、4月展望レポート時に比べて、海外経済の足取りが思っていたよりも弱い一方で、内需は想定よりやや強めとなっており、これまでのところ、全体としては当初見通しに近い処できているものと見ております。』
>4月展望レポート時に比べて(略)全体としては当初見通しに近い処できているものと見ております
>4月展望レポート時に比べて(略)全体としては当初見通しに近い処できているものと見ております
>4月展望レポート時に比べて(略)全体としては当初見通しに近い処できているものと見ております
>4月展望レポート時に比べて(略)全体としては当初見通しに近い処できているものと見ております
>4月展望レポート時に比べて(略)全体としては当初見通しに近い処できているものと見ております
・・・・・・・・・・・・orz
まあこの辺の話は既に総裁会見の方でも出されていたのでこういう話になるのは予想される所ではございますけれども、そもそも4月の展望レポートって「欧州問題の顕在化が抑えられ、新興国・資源国が海外経済の成長を牽引し、日本経済のドライバーになる」って話だった筈で、主要国の皆様が経済見通しを下げる中で日銀そんなに強いのかという所っすわな。
つーかね、展望レポートの見通しがオントラックという話だと、展望レポート中間レビューでの下方修正が無くて、経済見通しだけで言えば追加緩和が無いですよとかそういう話になるんですけど大丈夫かねと。まあ4月の追加緩和だってそういう意味では経済見通し的には追加緩和の理屈が変だったのですが、その4月よりも更に経済の現状が強くなっていますよいう事ですからねえ。
・不確実性について
『(3)先行き見通しについての不確実性』の所から。
『以上申し上げた見通しは、相対的に蓋然性が高いと判断される中心的な見通しです。4月の展望レポートでは、この見通しに対するリスク要因として、まず第一に欧州債務問題を中心とした海外経済の動向を挙げ、それに続いて復興関連需要を巡る不確実性、生産拠点の海外シフトや電力需給を巡る問題に伴う企業や家計の中長期的な成長期待が変化する可能性、さらには、財政の持続可能性を巡る問題などを、留意を要する事項として挙げております』
ということでまあ展望レポート通りの説明になっていますが、基本的に一番の懸念はこちらにあるように欧州問題という話をしているのですけど、その辺の話はスルーして。
『わが国経済に関するメインシナリオのポイントは、内需が景気を下支えしているうちに外需が強まり、復興需要が減衰に転じるまでに、生産・所得・消費という成長サイクルが働き出していくということにあります。』
・・・・・・・・・・・・・はあそうですか。
『米国が緩やかながらも成長を続け、新興国・資源国の中心である中国について、各種抑制策の微調整が行われ景気減速にブレーキがかかり回復方向に向かうとみておりますので、欧州が悪いなりにも底割れしなければ、方向感としてはメインシナリオに沿った推移になる可能性が高いと思っております。』
という見通しになっていると中間レビューで見通しが下振れないなあ(ただし後述のように審議委員が2名加わるのでそこの要因が加わる)というイメージなんですけどにゃ。
『しかしながら、欧州経済、米国経済が不安定化すれば、新興国・資源国経済にも大きな下押し要因になり、日本に与える負の影響は大変大きくなりますので、今後も欧米諸国の動向には十分な注意が必要であると考えています。』
とのことです。
・成長戦略云々からちょっとヒマネタでも^^
んでまあその後は金融政策運営の説明になりますがそこは華麗に全部スルーしまして、成長戦略に関連する話の所から少々。
『わが国の就業者 1 人当たりの実質GDP成長率をみると諸外国対比でかなり良い処にあるのですが、高齢化の進展とともに人口に対する就業者の割合が落ちてくることから、現状を放置すれば、国民1人当たりの実質GDP成長率が落ちてくることになります。国民1人当たりの実質GDPは言わば豊かさの指標ですから、我々が営々と築いてきた現在の生活水準・豊かさを我々の子供たち、孫たちに引き継げなくなるおそれがあります。この様な事態はなんとしても避けなければなりません。そのためには、就業者
1 人当たりの労働生産性を上げていくことと、人口減少の下でも就業者の減少を食い止めることが必要です。』
『労働生産性を引上げるという点については、新技術・新商品・新サービスなどの開発、ITの高度利用や生産性の低い分野・企業からより生産性の高い分野・企業への資源の再配分、産業の新陳代謝の促進等を実行・実現していくことが必要と言われております。しかしこれはこれで大変大きな話ですので、本日は省きまして、もう
1 つのポイント、就業者の減少を食い止めていくことについてお話しをさせていただきます。』
ということで、成長戦略の中で石田審議委員は今回労働市場に関連する部分にフォーカスした話をしておりまして、まあこれ自体は金融政策に対して特段のインプリケーションがある話では無いですけれども少々引用。
『人口が減少していく下で(これは当面の間厳然たる事実であって避けられないものであります)、就業者の減少を防ぐためには、兼ねてから言われていることですが、女性の労働参加を高めることと高齢者の就労機会の増大がポイントとなります。』
でまあオサーンのあたくしは後半のネタに思わず食いつく(^^)。
『高齢者については、65歳を超えると就業を望む人の割合が急速に低下します。2011年の平均の労働力率は(前掲図表11)、50〜59歳が78%であるのに対して、60〜64歳が60%、65〜69歳は38%、70〜74歳は23%まで落ち込みます。これは60歳から厚生年金が給付されてきたことに加え、65歳以上は高齢者として定義され、社会的にも、高齢者は働かないもの、或いは働かなくても良いものといった意識があるからなのかもしれません。』
でまあ途中割愛して。
『直ちに出来ることではありませんが、高齢者に対する認識や定義を見直す必要があるのではないでしょうか。例えば、仮に69歳までを生産年齢人口と捉え直すと、足もとの生産年齢人口は8百万人弱増加します。また、現在の64歳までの生産年齢人口は82百万人で今後減少していきますが、69歳まで拡げて考えれば生産年齢人口がこの水準にもう一度減少していくまで約10年の余裕ができることとなります(図表15)。』
おお!何か物凄い別の意味で「生涯現役」時代になるのかorzorzorz
『こうした考え方が定着するためには、社会の諸制度・システムを大きく変えていかなければなりません。少子高齢化社会へ急速に転換しているわが国にとって、高齢になっても働きたい人々が喜んで働ける、また働いてもらうような世の中の仕組み、システムを作り上げていくことがこれから避けられないことだと思います。』
あ、あたくしの年金ジジイ生活は何処へ行くのでしょうか????????
・・・・・と、まあどうでも良いヒマネタではございましたがそんなのに食いついたあたくしでした(−−;
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2011/12/09
○石田審議委員講演はやはり下振れリスク警戒姿勢
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1112c.pdf
・この質問はマニアック(^^)
しまったこの部分あたくしとしたことが昨日ネタにしてなかった(大汗)。
『(問) 本日のスピーチの中で今後の日本経済の見通しについて言及された部分ですが、「わが国経済は、海外経済の減速や円高の影響などから当面減速するものの、その後は海外経済の成長率が新興国・資源国に牽引されて再び高まり、震災復興関連の需要が徐々に顕現化していくことから、緩やかな回復経路に復していける」という表現をされています。一方、11月の金融政策決定会合のポリシーステートメントでは、「当面、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響を受けるとみられる」となっており、「減速」という表現を使っていなかったほか、「回復経路に復していける」という表現は使っていなかったと思います。こうした違う表現を使われているのは、リスク認識の違いが出てきているということなのかお聞かせ下さい。(以下割愛)』
・・・・・・これはマニアだわ^^;
『(答) 言葉の使い方については、言葉自体が若干違っているとしても、含むところは同じです。言葉が違ったことによって、判断に変更があったということではありません。』
ほほう。で、他の質疑の中でもこういう話をしていますので、基本的なシナリオと言いますか基本的な認識の部分でそんなに違うという訳では無いという事なのでしょうなあとは思いました。
『(答) 下振れリスクについては、従来から申し上げているものと大きく変わっているとは思いません。欧州に非常に大きなイベントリスクが発生しない限り、今までみていた範囲内で動いていくとみています。ただ、色々な数字の月毎の動きは、ある程度均してみていかなければいけないと思いますので、10月の数字だけで判断するわけにはいかないと思います。』
でもまあ下振れリスクへの警戒という意味ではやや強い言い方をしていまして・・・・
『(答) それ(引用者注:日銀は下振れに注意しないいけないという点)は従来から変わっていないと思います。やはり、今のような経済の状況では、下振れリスクについて非常に警戒すべきところがあると私は考えています。』
非常に警戒キタコレという事で、まあ認識としてはそういうことでしょうな。
・ドルオペに関連して
ドルオペに関連する質疑についてもいくつか。石田審議委員は銀行およびリース会社にいたということで、この手のオペレーションとか短期金融市場のインターバンクとかオープンとかに関する政策についての今後の活躍を期待したい所です。
『(問) 先日、日米欧の6中銀で外貨融通を強化する協調策を打ち出し、昨日、実際に日本銀行のドル資金供給オペに対して2,500万ドルの応札がありましたが、協調策の効果について、どのようにみているのか教えて頂ければと思います。』
『(答) 昨日の入札では、落札が2,500万ドルで1週間物と聞いていますが、基本的には、オペレーションについての試行ということではないかと思います。もう一つ、今回は、レート自体が0.5%下がったため、マーケットにおける金利上昇に対する一つのバックストップになるように働くのではないかと思います。』
これはまあ同意であります。
『(問) 先程、ドルオペについて、オペレーションの「試行」と言われましたが、
応札側が、テスト的に行ったものということですか。』
というまあどうでも良い質問に対する答えが銀行出身の方っぽく実務面からの答えとなっているのが中々。
『(答) 「試行」の意味ですが、オペレーションというのは、基本的に、いざという時に色々な手続きが必要ですから、手続き・実務――伝票も作成します――を一回やっておくという意味で「試行」という言葉を使いました。』
いやまあ市場の中の人的には普通の感覚なのですが、実務に近い所にいた経験がないとすらっとこういう発言が出てこないんじゃないかなと思うのです(^^)。
『(問) 挨拶の中で、「欧州金融機関では、ドル資産を圧縮する動き――いわゆるデレバレッジング――もみられており」と言われていますが、こうした動きの背景と、これがドルオペによってどれくらい緩和できるものか教えて下さい。』
『(答) ボリュームは分かりませんが、よく言われていますのは、欧州金融機関のドル調達については、なかなか環境が厳しくなっているということです。一方、全体的にみて、金融機関の自己資本比率を引き上げていくなど、欧州がそうした方向にありますから、まず本国よりも海外でのドル資産を落としていく動きがマーケットにあり、それをリファーしました。』
ふむふむ。
『(問) ドルオペで状況を緩和するのは難しいのでしょうか。』
『(答) 全ての資金調達をドルオペで行うわけではないとみられますし、調達環境の厳しいものについて、資産面あるいは調達面への圧力を少なくしていきたいというのは自然な姿と思います。』
つーことで、まあドルオペというのはファンディングのサポートにはなりますが、資産圧縮だの何だのという話は別問題ですよという質疑なんでしょうが、話が微妙にかみ合っていない気も。
・リーマンショックでCP市場がエライコッチャになりましたので
『(問) 日本の金融環境は今のところ安定しており、金融システムも特に問題ないと言われています。また、今のところ、欧州の債務問題経由のショックが日本の市場を直撃することも起こっていませんが、マネーマーケット経由でそうしたストレスがかかるとしたら、どういう経路があるのか教えて下さい。』
『(答) 金融機関同士の資金の流れが非常に円滑を欠くという状態は、例えばリーマンショック時においても、日本経済には最初は影響がないと考えた人も多かったのですが、金融環境が急速に引き締まったこと、また実体経済でも、海外の経済が混乱することによって輸出が急速に減少したという2つのルートでわが国に大きな影響が出ました。』
まあリース会社的にはCPレート上がって大変でしたからねえ。
『こうしたことから、海外の国際金融マーケットが混乱すれば、日本の金融にかなりの影響があると思います。また、そういうことがあっても、ショックあるいは悪影響が少しでも軽減されるような金融政策が必要と思います。』
ということですな。
・次の日銀の政策はどうなんでしょうかね
『(問) 静岡県経済について、先程、持ち直してはきているものの、先行きは不透明で、今後も注視していくほか、日本銀行としてもサポートしていくとのことでしたが、本日の金融経済懇談会では、具体的にどのような要望が出たのか、それに対して具体的にどういったサポートをしていこうと考えているのか教えて下さい。』
『(答) 日本銀行は、やはり金融面でしっかりと支えを続けて欲しいというご意見が一番多かったと思います。その他にも、情報発信に関するものなど、色々なご意見がありましたが、一番多かったのは、金融面でしっかり支えてほしいということであり、それをしっかりやっていきたいと思います。』
ほほう。
『(問) 金融面での「支え」というと、具体的にはどういうことですか。』
『(答) 金融環境の緩和的な状況を全国ベースで維持するとともに、例えば静岡県の金融機関の健全性の維持や、金融機関が資金を産業部門に回す時に問題のないような環境の整備といったことと思います。
<秋山静岡支店長>ただ今、審議委員から申し上げた通りであり、やはり金融面でしっかりと支えるということです。経済の先行き不透明感が強まっている中で、何とか経済全体を支えていく役割を担ってほしいというご意見が一番多く聞かれました。静岡支店としても、地域経済の実情を今後とも調査し、本部に情報を繋ぐことで、政策の誤りなきを期したいと思っています。』
・・・・・・・何かまあ企業金融関連の方が念頭にあるんですかねえというニュアンスですなあ。
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2011/12/08
○石田審議委員講演は欧州問題の警戒モード、というのはまあ普通ですかな
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko111207a.pdf
でまあ経済状況に関する話の前半部分はまんま展望レポートの話ですので、その辺は華麗にスルー致しまして『(5)先行きについての不確実性』の所から。
・欧州債務問題に関して:日本への影響
『もっとも、こうした見方については、様々な不確実性・リスクが存在します。10月の展望レポートでは、欧州債務問題を中心とする国際金融資本市場の動向に加え、海外経済の動向などを指摘していますが、ここでは足もとの最大のリスクといえる欧州債務問題に絞ってお話いたします。』
で、債務問題の状況に関する説明もスルーしましてその先から。
『欧州債務問題は、発生当初から、国債価格の下落が、こうした国債を多く保有する欧州金融機関の財務状況を悪化させ、これが貸出の抑制へ繋がり、企業・家計の経済活動を下押しし、実体経済を悪化させるとともに、財政赤字をさらに増加させ、一段の国債価格の低下を招くという「負の相乗効果」に繋がることが懸念されていました。夏場以降、こうしたリスクが急速に高まり、既に一部では顕現化しています。』
キタコレ。
『欧州経済の減速の強まりは、既に新興国の輸出に影響が出始めるなど、貿易取引を通じてグローバルに波及し始めています。また、金融市場の不安感が高まるなかで、グローバルな投資家の安全資産選好が強まっており、株式市場の下落を招いたり、相対的に安全とみられる資産に資金が集まることになっています。こうしたもとで、外国為替市場では円が買われているということであります。』
どう見ても相乗効果です本当にありがとうございました。
『さらに、先行き国際金融資本市場において、投資家のリスク回避姿勢が一段と強まることがあれば、新興国からの資金流出に繋がる可能性もあります。また、欧州金融機関では、ドル資産を圧縮する動き─いわゆるデレバレッジング─もみられており、先行き、新興国向けの貸出が抑制され、貿易金融などに影響が及ぶことも懸念されます。』
この点に関しては先日の西村副総裁の講演でも指摘されていますし、まあ大体からしてそうでしょという感じなのですが、先般の白川総裁の講演では微妙にスルーされていた論点(中欧や東欧には影響があるでしょうが他はどうでしょうかねというような話をして華麗にスルーモードになっていましたよね)でして、この部分の取り扱いってどうかなと思って講演テキストを読んだ訳ですが、順当に指摘していましてまあそうっすなという所です。
ただまあデレバレッジ云々は(流動性の極めて高い有価証券を売るというのはまだ残っているかもしれませんが)基本的には欧州の決算期末だし、クリスマスシーズンになるし、まあ今月急にドタバタとという話にはならんでしょとは思いますので、そー考えますと来年になってまたおっぱじまるとかいう話になるんですかね、よー知らんが。
『わが国の輸出に占めるユーロ圏向けの輸出は1割弱ですが、わが国の主たる貿易の相手国である米国、新興諸国のユーロ圏への輸出比率は高く、これらの国の景気の減速がわが国の輸出に与える影響が懸念されます。また、円高は、企業収益を下押ししますし、企業や家計のマインドを悪化させます。さらに、欧州債務問題が拡大し、国際的な金融市場の混乱に繋がれば、わが国も大変大きな影響を免れません。』
ということで、西村副総裁の講演ほど下振れ警戒トーンの全開っぷりではないなあとは思いますが、欧州債務問題の日本に対する悪影響についてはあれこれ言及していますので、まあやや下振れ警戒ちゅう所ではないかと思います。ただニュースベンダーのヘッドラインを見てますと、会見でのトーンが弱そうに感じられましたので、最終的にどうなのという所はとりあえず判断保留。
・欧州債務問題:問題解決には時間が掛かるという話
まあ最近は市場ちゃんもそういう認識になってきましたが、逆に言いますとそういう認識になってくると(決算期末モードというのもありますし)意外に市場ちゃんの方が目先の材料に食傷モードになって暴れなくなってくれないかなとか思うのですけれども、今朝の米債の上げ(金利低下)とか見てても中々そうはならないようですな。
『問題の本質は、財政状態や経済力の格差が大きな国々が単一の通貨を利用しているにも拘わらず、財政政策は統合されていないという構造にありますので、抜本的な解決には相当な時間を要すると思われます。抜本的な解決に向かうための時間をつくるうえでも、ひとつひとつの問題に対する処方箋を実行していくことが望まれます。』
財政統合がどのくらいまで行くのかという話は欧州人の戦争回避に対する意識がどうなっているのよとかいうような部分への理解が無いとどうも感覚的に判りにくい所があるなあとか思うのでありまして、この辺については単純に「んなもん時間掛かるでしょ」という感覚をつい日本人的には考えてしまいます(地理的要因が大陸欧州国家と違いますもんね〜)が、実際にはどうなのというのはまた考察の課題なのかなとか思うのであります。と石田さんの話と関係ない俺様感想ですが。
・欧州債務問題:そして日本の財政問題へのインプリケーション
もうキタコレというか最近の日銀の皆様の講演のお約束のような展開になっていますけれども、まあ最近の財政問題、というか社会保障とか復興財源とかの話に関する政治家連中の能天気さに関しては、民主党のインチキマニフェストのツケでも大概に血圧が上がってしまう訳ですが、最近は自民党がすっかり野党慣れしてかつての民主党化して「俺たちがやると言った消費税引き上げは良い消費税上げで民主党がやろうとするのは悪い消費税上げ」みたいな態度になってきているのについては絶望しか感じないのはあたくしが悲観的だからですかそうですか。
まあメディアのアホウどもが裏付けも何もない景気の良さそうな声のデカイ議論をクローズアップするから選挙に向けたメディア受け狙いのアホウどもが騒いで更に話をややこしくしやがるのでしょうなあとか思いますが。
・・・・・・うむ、石田さんの講演ネタのはずなのにいつの間にか全然関係ない悪態を書いておりまして誠に申し訳なし。
『現在、ギリシャなどの各国の国債に非常に高い金利がついています。しかし、つい3年ほど前にはギリシャをはじめこれらの国々の金利は一番信用の高いドイツの金利とほぼ同程度でありました。一旦、国の信用が失われれば、如何に大きな打撃を受けるのかということが分かります。』
ほほう。
『翻ってわが国をみますと、政府債務残高の対名目GDP比は先進国では突出しています。現在、日本の国債金利が極めて低水準を保っている背景としては、大幅な経常黒字国であること、国債の国内消化率が高いこと、などが指摘されていますが、今後とも低水準の金利が続く確たる保証があるわけではありません。信認をしっかりと確保していくことが大変重要であると考えます。』
まあ何だ、これについては市場の資金フローがどうなるかというのが一番最初にやってくるんでしょうなあとは思います。
・金融政策について、宣伝はしているのですがなかなか伝わってくれないだろうなあと
金融政策運営に関する説明はまあ普通の説明をしていますが、現在の金融政策は『強力な金融緩和の推進』『金融市場の安定確保』『成長基盤強化の支援』の3本柱ですよという点について整理しているので、まあご存知の方にとっては華麗にスルーして宜しいかと存じますが、整理には良いので読んで味噌。
で、そこはスルーして『わが国の金融環境の現状』の所で日本の金融環境が絶賛緩和的であることを宣伝するのでありました。これは先般の白川総裁の講演でも連発して宣伝しています。
んでもってここから先はあたくしの妄想モードになるのですが、いやまあ従来からも「日本の金融環境は諸外国と比較しても緩和的ですよ」という宣伝はしていましたけれども、最近の審議委員などの講演でこの話についての言及がより細かくなっているなあと思うのでありまして、つまりまあ(今に始まった事ではないですが)最近はその辺の宣伝を熱心にしないとメディアやらその他がやかましくてかなわんという事なんでしょう。そらまあ金融政策決定会合の度に「追加緩和見送り」とかヘッドラインを打つバカスケメディアがあちこちにいるという現状からしますと(悪態が聞こえたのか知らんが共同がこの前普通に「現状維持」とヘッドラインを打ったのにはちょっとホッとしましたが、笑)、シャーナイナイという所でしょうか。
とか書いたがこの辺はあたくしの脳内妄想ですので念の為。
『次に、こうした金融政策運営のもとでの金融環境の現状について申し上げます。各種の市場を点検してみますと、先ほど、金融市場の安定が大変重要であると申し上げましたが、わが国の金融環境は、国際金融資本市場の緊張が続くもとでも、安定度の高い状況にあると評価しています。』
ということで宣伝キタコレ。
『わが国では、企業の資金調達において、銀行借入のウエイトが高いことから、金融機関行動を巡る動向は、金融環境を評価するうえで、きわめて重要です。企業が実感する金融機関の貸出姿勢の緩和・引き締まり度合いを示すサーベイ調査は、リーマンショック以降、震災直後を含めて一貫して改善の動きが続いています。また、金融機関自身の貸出運営態度に関するサーベイ調査をみましても、欧州では貸出スタンスが慎重化している一方、わが国では積極的なスタンスが維持されていることを確認できます。』
とまずは銀行貸出について。
『銀行の貸出金利については、米欧に比べて低い水準にあり、傾向として緩やかに低下しています。また、貸出金利に大きな影響を及ぼす短期金融市場の動きをみますと、銀行間の短期資金取引金利と国債金利とのスプレッド(LIBOR3か月物―短期国債3か月物利回り)は、ユーロで大幅に上昇しているほか、ドルでも足もとやや上昇しているのに対し、円はきわめて低水準で安定的に推移しています。』
短期市場金利の話ですかそうですか。
『なお、皆様もご承知のとおり、企業は、国債金利などのリスクフリー・レートで資金を調達しているわけではありません。銀行間取引金利に信用スプレッド、或いは銀行の利鞘が加算されたものが、民間経済主体の調達金利となるわけです。統計の制約から、貸出のスプレッドを国際的に比較することは難しいのですが、社債のスプレッドを日米欧で比較してみますと、米欧のスプレッドが急速に拡大しているのに対して、わが国のスプレッドは低位で安定しています。』
クレジットスプレッドも低位安定と。
『ちなみに、量的指標で現在の金融環境の緩和度合いを測ることは適切ではありませんが、しばしば量的にみた日本銀行の取り組みが足りないのではないかといったご指摘を受けることがありますので、あくまで参考として付言しておきますと、日本銀行が供給している通貨(マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」)の対名目GDP比率は、リーマンショック後に大幅に上昇したといわれている米欧の水準を大きく上回っており、足もとも上昇傾向にあります。』
対名目GDP比率の説明キタコレ。まあこう説明しても「問題は変化率だろゴルァ」とか言われるので中々残念な所ではありますし、大体からして金融市場の構造だって日米欧で違いが色々ある訳で、その辺を全部捨象して単純比較というのもどうかなという気もするのですが、ただまあ政策の「見せ方」の面で日銀の場合弱いっつーのもありますし、よりそもそも論で言えば、マネタリーベースの名目GDP比率だけで説明するのもまあ弱いですわな(日本が高いのは元々現金の使用が多いのでベースとしてマネタリーベースの対名目GDP比率が高いのではないかとか切り返されるとどう説明するんでしょ、ニヤニヤ)と思う次第で。
・でもって今後ですがどうも成長基盤強化のようで
今更何をどう強化するのかという気もしますが・・・・・・
『(3)今後の課題』って所ですが、最初がいきなりこれです。
『この様に、わが国の金融環境は緩和の動きが着実に続いているわけですが、これが投資や消費などの実体経済の活性化に必ずしも繋がっておりません。わが国の成長率が趨勢的に低下し、物価も長く低迷するなか、企業・個人ともに将来の成長・所得の増加の見通しが低下し、これが現在の投資・消費を抑制しているのだと思います。さらに、少子高齢化の進展とともに、すでに就業者は減少に転じていることも、成長期待が高まりにくい要因になっていると思います。』
ということで、成長基盤強化の毎度おなじみの話になるのですが、内容的には「既存の資源の最大活用」という話が最初に来て、そこでは「中小企業の活性化」という話をしてまして、その次には「労働生産性の向上」という話をしていますので、次の成長基盤強化関連の施策に関するヒントになるのかもしれませんが、金融市場的に何か影響あるかというとまあ無い話なので華麗にスルーして本日はこの辺で。
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2011/07/04
○石田審議委員就任記者会見、まあ無難でしょうかな
石田審議委員就任会見である。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1107a.pdf
・景気認識に関して
基本的な部分は日銀の中心的な見方に平仄を合わせていますな。
『(答) 今年の1月、2月頃は、年初から全体に緊張がほぐれるというか、良い方向に向かっているという感じがしました。今年は良い年になるかと思っていたところに、3月11日の大震災で全く様相が一変しました。大変な被害が出たのですが、全体での生産の落ち込みは、どちらかといえば供給面の制約から出てきたものです。需要は一部下押しされまししたが、全体としては需要は残っていると思います。各方面の関係者の方々が必死の努力をされ、隘路となっているサプライチェーンの問題等については、前倒しで成果が出ていると感じており、これから夏場にかけてかなり戻していくと思っています。』
『また、夏場の電力問題については、当初考えられていたよりは、各方面の対策、節電、あるいは自家発電の投入等があり、一定程度軽減されてくるという気がします。また、一部の業種では生産が落ち込む過程で、在庫が非常に圧縮されており、内外で適正在庫水準への復元が起きると、生産は他の制約がなければ反動として上がってくると思います。』
どう見ても日銀の中心的な見方です本当にありがとうございました。
『問題はその先で、2つの大きな問題があると思います。』
ほほう。
『1つ目は、今回の震災で起きたサプライチェーンの問題、分散化の影響がどういうかたちで出てくるのかです。国内での分散化であれば良いですが、海外に出て行った場合にどうなるのか。また、それに伴い一時的に真空状態になったサプライチェーンの基幹部品について、新興国等が参入してきた場合に、復元して元通りになるのかという問題があります。2つ目は、それを加速する可能性がある来年度の電力の問題です。もともと新興国の経済の発展に伴い、わが国企業の海外での生産比率が高まっている環境のもとで、いわゆる空洞化が起こってきた場合に、それを埋めるものが何なのか、これから先、非常に難しい問題になってくると思います。』
まあ要するに空洞化懸念という事ですが、まあこの辺に関しても日銀の中心的な見方ベースのお話ですな。
んでもって海外の部分ですが。
『(答) 年初みていたよりも、海外の経済の見通しが非常に不透明というか、曇りが出てきているような感じがします。例えば、中国では金融引き締めが行われていますが、今まで大変売れていたような機器でも急速な減速が起こっており、その一部はやはり震災の影響による品不足が原因のようです。
もっとも、日本を大きく上回る成長率が海外で続いている限り、非常に高い水準から少し下押しがあったとしても、基本的には日本経済への影響はプラスかなと思っています。ただ、年初思っていたよりは、米国でも少し陰りが出てきているように感じます。それが長続きするものなのかどうかは、今のところ分かりません。』
という事でこちらもそんなに変わった話はしていませんな。まあそんなもんちゃあそんなもんではございますけれども、銀行だけではなくリース会社(ちなみに三井住友ファイナンス&リースは住商リースと三井住銀リースが合併しているので商社系のテイストもある筈だから普通の銀行直系リース会社よりも幅が広そうな気がする)にいらした事でもございますので、「リース会社の状況から見た最近の景気動向は〜」みたいな話をして欲しかったなあとは思う訳で、もうちょっとやんちゃな発言が出ても良かったのに(住友銀行出身ですし^^)とは存じますが、まあ石田審議委員におかれましては銀行時代にマーケット部門の企画担当の偉い人とかもやっておられたと聞いておりますので、今後の展開に期待はしておこうかなあとは思っております。
・とは言えABL関連の話はこれまたアレでございまして
ABL関連オペに関する質問に対して。
『(答) ABLの中でも、特に売掛金を担保とした貸出しは、これはなかなか技術的に色々困難な点があって今まで伸びていないのですが、今回のような形で非常に低利な資金が供給されることになると、場合によっては個別の金融機関の工夫次第でかなり新しい形の金融として育つ可能性はあると思っており、非常に楽しみにみています。』
まあ何ですな、無難なご説明ではございますなという感じですが、ABLに関しては銀行というよりはノンバンクとかリース会社がやった方がエエンチャイマスカ(んでもってそれが儲かるし担保保全とかも銀行でも可能ですねっちゅう話になったら銀行がえっちらおっちら参入してくるがな)とか、低利融資出たって今の金融絶賛大緩和状態で金イラネ状態の時にやるかヴォケなどという素敵な発言が出ると大変にビューテホーなのでございますが、そのような無茶発言が出る訳でもなく無難にまとめておられます。
まあ何ですな、この発言の中で「場合によっては」というのが入っているのが微妙にアレなのかも知れませんけれども、まあよーわからん。
『本日審議委員に就任したばかりですので、今申し上げたことは、今まで自分が民間にいた時の考えです。』
ほうほうそうですか。
・国債引受議論に関して
『(答) 両面の議論があろうかと思いますが、私自身は今まで検討する立場になかったので深い考えはありません。ただ、長年に亘り実務の世界にいると、今までやっていなかった日銀引受けをした場合に、どのようにマーケットは捉えるだろうかという事については考えられます。
マーケットには、非常に微妙なところ、保守的なところがあります。諸外国でも日本でも今までやっていなかったことが起こると認識した場合、マーケットはネガティブに反応する可能性が強いと思います。』
まあこういう説明だと判る人は判るのでしょうけれども、どうせ日銀批判をする向きに掛かりますと「高橋是清もやっていたし、今でも短期国債の日銀乗換で引受をやっているでしょ」という反論(まあ反論にならない反論ではあるのですが)が出てきて不毛な罵り合いになるのが日本の金融政策議論クオリティでもありますので、丁寧に説明した方がエエンチャウノといつもながら思うのですけれどもねえ。
『また、格付機関等もネガティブな反応をするだろうと思います。そうすると、例えば国債の格付けが下がると、それにつれて日本の主要企業の格付けも下がる可能性が高い。この前そのようなことが起きました。そうすると日本の企業の国際競争力にも問題が生じます。そういう意味では、避けるべきことかなというのが実務的にみた場合の反応です。』
まあ実利的な話ではそうなのですが、「お前らは格付会社という民間の一企業の評価で金融政策判断をするのか」とかこれまた不毛な言葉尻攻撃が出ますし、そもそもこういう言い方はヘッドラインに使われやすいのでございまして、とにかくインパクトのあるヘッドラインを打つ事に余念が無く、発言の一部でもインパクトのある部分を探そうというのが仕様になっている(のであたくしは極力こちらの駄文で引用するのを避けているのですが)ロイター日本語版様ではこのようにヘッドラインを打たれています。
http://jp.reuters.com/article/jp_quake/idJPJAPAN-21975420110630
国債の日銀引き受け、格下げにつながり避けるべき=石田日銀審議委員
2011年 06月 30日 19:02 JST
どう見ても石田審議委員の発言の趣旨は「格下げになるからケシカラン」ではなくて、「一般的に先進国と言われる国で露骨な財政マネタイズ政策を行う事を避けている中で、日本が財政マネタイズを実施した場合に、市場が強いネガティブな反応をする恐れが高いので財政マネタイズ政策は避けるべき」という趣旨なのですけれども、何せマーケット関連情報に関して特に優位性を持つと一般的に認識されているメディアですらこの有様(ちなみに念の為申し上げますと、実際の市場関係者的にはこの会社の送り出すヘッドラインがすっかり「ウケ狙い」になっているのが著名になっているので以下自粛な認識になっているように見えるんですけどね^^)でございますので、まあこの手の発言は説明を丁寧にすべきかと存じます。
・で総合的な印象
いやね、まあ何か景気認識に関してもABL関連オペに関する話に関しても中々いい感じで日銀の中心的な見解ベースのお話を展開しておられまして何ともアレな味わいを感じるのでございますが、今後どういう話をしていくのかは決定会合での投票とか、講演や会見などでのお話とかを楽しみにしようかとは思っております。前回の銀行出身の野田審議委員は時に独自色を出して、まあ基本的には「筋を通す」というのが確りしていた人だなあと思いました。まあ銀行出身の人ってあまり無茶振りはしてこないですが、その一方で必ずしも日銀見解一辺倒ではないという感じの方が続いていました(新法初代審議委員の武富さんはかなりマニア成分もありましたな^^)が、石田さんがこれからどーゆー感じになるのかは生温かく推移を見るという感じでございます。住友銀行系から審議委員が出るの(少なくとも新法になってから)初めてなので期待すると共に、最初なので無茶しない人選になっているんだったら何だかな感はありますけれども(まあメガバンクの役員やるような人が素直に日銀見解一辺倒になる訳は無いですけどね^^)どうなんでしょうか?????
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2011/05/27
○野田審議委員の後任候補にSMBCからSMBC元専務取締役の石田さん
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a6eIFmH5b.yU
政府:三井住友ファイナンス&リース石田社長提示−日銀委員(2)
『5月26日(ブルームバーグ):政府は26日午後、議院運営委員会両院合同代表者会議で、6月中旬に任期切れとなる日本銀行の野田忠男審議委員の後任として、三井住友ファイナンス&リース社長の石田浩二氏(63)を起用する国会同意人事を提示した。衆院議院運営委員会で配布された資料で明らかになった。国会で同意を得られれば、同社社長を辞職する6月下旬に任命の予定。任期は5年。』(上記URLより)
ということで今回は住友銀行昭和45年入行の石田さんがノミネートされましたです。でまあどのようなお方かというのは住友銀行の中の人に聞いてみないとワカランチ会長ですのでとりあえず誰か教えて下さいとゆー所ですが、昭和45年入行ですと昭和最後とか平成の頭に入行した人が新人の頃に既に支店長クラスとかのような気が。
でまあ野田審議委員の場合は企画とか営業とかのお方で特に市場系の方では無かったようですけれども、金融政策に関しては「筋を通す」方という感じで、また米国の不良債権問題が景気に与える悪影響に関しては早いうちから懸念を表明していたなど特徴のある見解を示してくれましたので、石田さんにも期待という事で。
ちなみに、かなりどうでもいいですが今回「へ〜」と思ったのはSMBCの住友の方から審議委員候補が出た事でして(^^)、上記ブルームバーグ記事にありますように、新法になってからは武富さん(興銀)→中原さん(東銀)→野田さん(第一勧銀)と旧特殊銀行の流れで来て(野田さんは第一入行なので特銀(は勧銀)ではないが)まして、商銀系から来るのか(まあSMBCから出すとなると商銀系しかないけど)というのと、もうちょっと遡って過去の総裁を見ると民間銀行からの総裁就任って三菱の宇佐美総裁で、戦前に遡ると第一(渋沢敬三)と三井(池田成彬)と微妙だが安田(結城豊太郎)と関東系財閥から着てまして、関西系初ですなあとかいうかなりどうでも良い事に「ほほー」と思うのはアホですかそうですか。
歴代総裁はこちら(^^)→http://www.boj.or.jp/about/outline/history/pre_gov/index.htm/
#なお、戦後のスリーピングボード時代の政策委員についてはさすがに知らんので、その間に関西系から政策委員が出ていた可能性はありますけど・・・・
不良債権処理問題に関する経験値の高い人が来るというのは野田審議委員を見てまして悪くは無かったかなあとは思いますが、個人的にはオペレーションとかの細かい話が得意な人が入ってくれると、執行部ペースになりがちなオペ技術の問題とかの議論が深まって実際にフィットしやすくなると思う訳でございます。まあ金利が何せこの有様ですと、オペレーションの細かい所が結構重要になっております次第ですので、そーゆー意味では武富さんみたいなマニアが候補になると良いのですけど(^^)。
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