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(各日付の最初にラベルを「250901」というような形式でつけていますので「URL+#日付(250901形式です)」で該当日の駄文に直リンできます)


2025/09/30

お題「野口審議委員講演が威勢が良いですし5月の金懇の時よりも大幅に利上げに前向きです」

これは当然ですな
https://www.boj.or.jp/about/release_2025/rel250929a.htm
日本銀行職員の給与等の概要について
2025年9月29日
日本銀行

『日本銀行では、日本銀行法第31条に基づき、社会一般の情勢に適合したものとなるよう「日本銀行における職員の給与等の支給の基準」(以下「職員給与の支給基準」という。)を定め、公表しています。「職員給与の支給基準」では、職員給与については、「適切な政策運営及び業務サービスの維持・向上を図るために必要な人材を確保する上で十分競争力のあるものとし、そうした人材の、主要民間金融機関のほか主要民間企業等における処遇の実情をも勘案」して決定することとしています。』

『令和7年度の職員の給与等に関しては、管理職および企画専門職員(以下「管理職等」という。)以外の職員の定例給与を+3.2%改訂(ベア)するとともに、賞与の支給条件について5月賞与および11月賞与の支給率(ベアによる増加分を除く。)を、管理職等以外の職員については2.403か月、管理職等については3.168か月とすることとしました。なお、再雇用者(エキスパート職員)の時間給についても、+2.2%改訂(べア)するとともに、賞与の支給条件について5月賞与および11月賞与の支給率(ベアによる増加分を除く。)を、1.295か月(担当者の補助的・定型的事務を職務とする者は同1.060か月)としました。』

つまりは物価目標達成という話ですが・・・・・・・・


〇野口審議委員札幌講演が10月利上げの露払いキタコレですわな

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250929a1.pdf
世界経済の変貌と金融政策の進展
── 札幌商工会議所における講演 ──
日本銀行政策委員会審議委員
野口 旭

・研究者の視点に多少なりとも立ち戻ると置物リフレマネタリーベース直線一気理論の筈だが・・・・・

『日本銀行の野口です。本日は、講演の機会を賜り誠に有り難く存じます。本講演では、世界金融危機さらにはコロナ禍を経て大きな変貌を遂げた現在の世界経済の状況のもとで、われわれ日本銀行も含む中央銀行が担う金融政策のあり方がこれまでどう変化してきたのかについて、私の個人的観点から整理し直してみたいと思います。私は 2021年4月から、日本銀行の審議委員としてわが国の金融政策運営に携わってきましたが、それ以前は一研究者として、金融政策を含むマクロ経済政策の分析に取り組んできました。本日は、このやや俯瞰した研究者的な視点に多少とも立ち戻って、過去から現在そして将来にわたる金融政策の進展についてお話しさせて頂きたく存じます』

とのことで「このやや俯瞰した研究者的な視点に多少とも立ち戻って」というと置物一派としてリフレとか言いながら白川さんを口汚く罵倒していた視点に立ち戻ってリフレマンセーとかいうのかと思ってしまうのですが・・・・・・・・


・マネタリーベース置物直線一気理論がすっかり無かったことになっている件について

『2008年からの世界金融危機、 2020年からのコロナ禍などを契機として、主要中央銀行の金融政策には、金利を手段とする伝統的政策から、量的緩和などの非伝統的政策への転換という一大変化が生じました。結論をやや先取りしていえば、そこで生じた変化は、かなりの程度まで不可逆的なものです。主要中央銀行の多くは現在、非伝統的政策から伝統的政策に復帰しています。しかし、その政策枠組みは、世界金融危機以前のそれとは大きく異なっています。それは、主要中央銀行の多くが世界金融危機以前とは比較にならないほど大きな準備預金を抱え持っており、それを前提として金融政策運営を行っているという点です。』

あんたらマネタリーベース直線一気理論とか言ってたのすっかり忘れたのですかってな話でして、この次が凄い話をしていましてですね、

『重要なことは、こうした政策手法の転換があったとしても、政策金利の操作を通じた物価の持続的安定という中央銀行の伝統的役割が損なわれることはない、という点です。米欧の中央銀行の多くは、コロナ禍後に生じた世界的な高インフレに対応して、非伝統的政策を停止した上で政策金利の引き上げを積極的に行い、それによってインフレの抑制を概ね成し遂げてきました。それは、物価安定の手段として意味を持つのはやはり金利の調整であり、中央銀行の持つ大きな準備預金はその妨げにはならない、ということを示唆しています。』

>物価安定の手段として意味を持つのはやはり金利の調整であり、中央銀行の持つ大きな準備預金はその妨げにはならない、ということを示唆しています。

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)

おいおいおい、お前らのマネタリーベース直線一気理論はどこにいったんだよwwwwww

ということで、「このやや俯瞰した研究者的な視点に多少とも立ち戻って」みたら当然マネタリーベースと期待インフレの話をする筈なのですが、リフレ派でやってたのはどこに行ったんでしょうか、とまあそんなお話ですが、本来野口さんはこういう理知的な方であって、リフレ派だのマネタリーベースだのというのは何かの邪教に引っかかっただけで日銀で現実を見ることによってすっかり解離することができたとかそういう話でございましょうか、まあ出世のためにリフレやってただけなら何じゃお前はって話になるのですがさすがにだいぶ前からリフレやっててニワカではなかったと存じます(個人の感想です)。


・でもって金融政策の部分でいきなりのかっ飛ばしキタコレでしてですね・・・・・・

でもってその続きですが、ここから日銀の話になりまして、

『日本銀行もまた、 2024年3月の政策決定会合において、非伝統的政策としての「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みおよびマイナス金利政策を見直し、政策金利の操作を主たる政策手段とする伝統的政策に復帰しました。それは日本銀行が、そこにおいてようやく、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至った、と判断したためです。日本銀行はさらに、 2024年7月と 2025年1月にわたって政策金利の引き上げを実行しましたが、それは目標達成の確度がより高まりつつある、と判断したためです。』

まあこれは大本営発表的な説明ではあるのだが問題はこの次。

『わが国経済では長らく、景況の改善にもかかわらず物価や賃金がほとんど上がらない状況が続いていました。しかし、コロナ禍後の世界的インフレの影響は輸入価格上昇という形でわが国にも及び、日本経済は長らく経験することのなかった高いインフレに見舞われました。それにつれて、 1990年代初頭のバブル崩壊以降、低下はしても上昇はしなかった賃金も、バブル期以来の高い伸びを示すようになりました。』

これ「1990年代初頭のバブル崩壊以降」ってのがエライ雑な整理であって、金融機関の不良債権問題がおかしくなりだしたのは1992年辺りからだし、その後の住専問題、貰い事故だけどアジア通貨危機などを経て本当にヤバい奴になったのは1997年の金融危機で、じゃあこの間ベースサラリー上がってなかったのかというとそういう話でもないから、まあこれは雑でしょと思いますがそれはさておきまして、

『それは、コロナ禍前から現れ始めていた人手不足による労働需給逼迫が、コロナ禍後により広範に顕在化したためでもあります。それらの変化は、わが国経済が、物価も賃金も動かないという、きわめて特異なゼロノルム経済から、両者が相互に参照しつつ上昇し続けるような通常の成長する経済に復帰しつつあることを意味しています。』

>両者が相互に参照しつつ上昇し続けるような通常の成長する経済
>両者が相互に参照しつつ上昇し続けるような通常の成長する経済
>両者が相互に参照しつつ上昇し続けるような通常の成長する経済

・・・・・ほほう。

・ここで5月の野口委員の金懇を確認してみましょう

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250522a.htm
わが国の経済・物価情勢と金融政策
宮崎県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 野口 旭
2025年5月22日

こちらを見ますと(以下この部分の引用は直上URL先の5月に実施された宮崎金懇になります)、小見出しに

『(2)着実に強まりつつある「賃金上昇を伴う物価上昇」』
『(5)好循環の実現とそれに向けた政策対応』

ってことで、「賃金上昇を伴う物価上昇」とか「好循環」というワードを使っているのですが、今回はしらっと「両者が相互に参照しつつ上昇し続ける」ということで、従来の「循環」を思わせるような表現や、そのものずばりの「好循環」を説明にいれていない訳です。

しかも5月には野口さんこのようにおっしゃっていまして、

『日本銀行が2%程度で物価が持続的に上昇する状況の実現を目指して政策を運営している理由の一つは、多くの企業がそれと同程度の販売価格引き上げを実行できることで相応の賃上げも可能となると考えられる点にあります。私自身は、その賃上げを通じて人々の実質賃金が生産性上昇を反映して上昇する段階に至れば、そこでようやく「賃金と物価の好循環」が結実したと考えます。』(ちなみにこれは「4.2%の「物価安定の目標」の持続的達成に向けて」の「(1)持続的な物価安定の重要性」の一番最後です)

っていうことで思いっきり「好循環」の話をしてまして、これ5月の金懇テキストで「好循環」ってワード検索すると3つ引っかかってくるのですが、l今回の原稿では引っかかってこない、というのがもう大本営の表現変更をもろに受けてるわ、というのが伝わるわけです。

でまあ伝わったところで思い出して頂きたい訳ですが、5月の宮崎金懇の時も結構な大本営ムーブになっていてビビったわけですよ。5/23と5/24に金懇挨拶と記者会見をネタにしまして、最近心を入れ替えて過去ログ整理を直近のだけはちゃんとやっていて、途中を気力体力に応じて徐々に埋めて行っているので、実は前回の時のログはこっちにもhttps://doramemon7743.sakura.ne.jp/hatsugennoguchi.html載せております。

(こちらは5月金懇挨拶の時に書いた駄文になります)

・言ってることがまんま大本営になっているというのが兎に角ビックリしました

・・・・・ということで引用しますとか言ってるのに初手から結論を申し上げておりますが、アタクシ的に結構なサプライズだったのは「今回の説明が全然リフレ派じゃない」ということでして、野口先生何か変なもんでも食ったのかとも思いましたが、日銀大本営の粘り強い教育が遂に実を結んで邪宗門から離脱して真人間に戻られたというのであれば実に慶賀すべきお話ではあるな、などと思った訳ですが、まあビックリして債券売るほどのもんでもないとは思いますけれども、そうは言いましてもハトハトチキンムーブを増幅するブースターにはならなくなる、というだけでも政策委員会のタカハトバランスには影響する話ではあろうかと思いました。

(この部分5月23日のアタクシの駄文ですが野口審議委員の宮崎金懇挨拶を受けた感想です)

・・・・・とまあそんな訳で、前回の金懇の時も大本営腹話術人形ムーブが見られた訳ですが、今回もしっかりと前回まで言ってた「好循環」を言わなくなっている辺りに大本営腹話術人形ムーブ、あるいは邪宗門からの離脱ムーブが見られるのですが、それこそ最初の部分で野口先生が言及した「このやや俯瞰した研究者的な視点に多少とも立ち戻って」というのは、邪宗門からの離脱が完成しました宣言であって、腹話術人形ムーブではなくまさに真のマクロ経済学者としての動きになった、ということなのかもしれませんね!!!!!!!


・でもってさらにこの「はじめに」の部分でわざわざバランスシートの話をおっぱじめるのも怪しい

そしてその次の段落ですが、

『日本銀行はまた、長期国債買入れの減額に関し、 2024年7月に 2026年3月までの方針を、さらに 2025年6月に 2027年3月までの方針を決定しました。』

と、突然長国買入減額の話を始めまして、

『これは、日本銀行が、市場機能の回復のために、非伝統的政策の遂行によって拡大したバランスシートを今後ゆっくりと縮小していくことを意味します。私自身は、この政策は、市場への攪乱的影響を最小化するために、十分な時間をかけて行われるべきものと考えます。それが可能なのは、上述のように、バランスシートが大きいことそれ自体は、物価安定のための金融政策を遂行する妨げにはならないからです。むしろ、現行の政策枠組みにおいては、金融政策の円滑な運営のためにも、一定規模のバランスシートが必要になると考えます。』

ちなみに「むしろ、現行の政策枠組みにおいては」云々の部分がもう思いっきり大本営に吹き込まれてる藁人形論法だわと思う次第でして、すくなくとも「多少の」超過準備があるレジームとかいう状態になるためにはどのくらいの規模までバランスシートを縮小すべきなのか、という話を考えますと、「むしろ〜」って説明がただの屁理屈であって、そこから比べて宇宙の彼方のイスカンダル星くらいに遠い状態にある日銀のバランスシートが現実としてある、というのを誤魔化す説明になっていますね。

でまあそれはそうとして、これまた「はじめに」の所でわざわざこういう説明を入れているのが、金懇よりも随分とコンパクトな金融政策運営の説明で良く出来過ぎてるじゃんとも思ってしまう訳で、この「はじめに」の書き方が何とも怪しさに溢れているなあとは思いました(個人の感想です)。


・そして問題の部分ですが・・・・・・・

『世界経済はとりわけこの4月以降、米国の関税政策による大きな下方リスクに直面してきました。そのリスクがどの段階でどの程度まで解消されるのかは、現状ではまだ明確ではありません。』

といいつつ、

『他方で、わが国の各種経済指標を確認すると、2%の「物価安定の目標」達成は着実に近づいています。それは、政策金利調整の必要性がこれまで以上に高まりつつあることを意味しています。』

キタコレ!

『つまり現状のわが国経済・物価においては、下方リスクはありつつも、政策判断における上方リスクの重みがより増しているのです。』

>政策判断における上方リスクの重みがより増しているのです
>政策判断における上方リスクの重みがより増しているのです
>政策判断における上方リスクの重みがより増しているのです

これは抜刀斎や高田っちもニッコリ

『その意味で、わが国の金融政策は今、状況の見極めが必要な局面に差し掛かっているといえます。』

!!!!!!!!!!

ということで本文に入るのですが、まあ本文の方は無駄にクソ長いので会見ネタ含めて明日以降ボチボチと成敗する所存(だいたい今日は期末なんでワシにも生業というのがあってだな)ではありますが、金融政策運営に関しては最後まで一気に飛びまして『5.「2%物価のノルム」の定着に向けて』の部分まで飛びます。


・物価のゼロノルムが解消されつつあるという認識が示されます

上記の小見出しの後半から最後の部分を引用しますね。

『そのわが国でも、期待インフレの各種指標は、今回のインフレ局面を通して、2%に徐々に接近してきました(図表 )。』

「そのわが国」ってのはゼロインフレノルムだったわが国、って意味だと前の文脈から判断されますが確認したい方は元テキストで確認してちょ。

『これは、2%超のインフレが長期化する中で、企業や家計が次第にインフレを織り込みつつあることを意味します。』

ほうほうそれでそれで?

『つまり、人々は明らかに、ゼロインフレにはもう戻らないと考えて行動しているように思われます。』

すなわち、

『これまでは、多くの企業経営者が、値上げができないから賃上げもできないと考え、実際にそのように行動してきました。しかし現在は、数多くの企業が、物価目標の2%を大幅に上回るような賃上げの継続を表明しています。2%の物価目標の安定的な実現は、そうした企業の賃金設定行動が、新たなノルムとして定着した時に、ようやく可能になるのです。』

・でもってそれって時間がかかるかもではあるのですが・・・・

次の段落です。

『わが国経済は今、このゼロノルムから2%ノルムへの移行の最中にあります。』

途上だそうな。(そりゃまあノルムが2%なら目標達成ですから)

『そうした中で、これまで長らくインフレを経験することがなかった家計にとっては、最近の物価上昇は大きな負担となっています。家計の負担感がこのように大きいのは、今回のインフレのそもそもの発端が輸入価格上昇によるコストプッシュであり、必然的に賃金上昇を上回る物価上昇が長期化せざるを得なかった、という事情によっています。』

『輸入価格上昇は既に一段落しているため、今後はおそらく、コスト上昇の価格転嫁が一巡することで、企業物価だけでなく消費者物価も落ち着いてくると思われます。』

なんかもっともらしい説明が展開されていますなwww

『とはいえ、賃金上昇から物価上昇を差し引いた実質賃金が基調として低下から上昇に転じるまでには、もう少し時間を要するかもしれません。』

となっていますが・・・・・・・・・・


・とは言え金融政策との関係で言うと別に利上げを渋るわけではなく・・・・・

『私自身は、日本銀行としては、そうした物価の推移を見極めながら、世界経済も含めたその時々の経済情勢に即応した金融政策の調整を柔軟に実行していくことが必要と考えています。』

ちょwwwwwwwwww

『というのは、わが国経済がゼロノルムを克服しつつあるとなれば、物価や経済の安定という観点からは、現状の金融緩和度合いを適切なタイミングで調整していくことがより重要になるからです。』

あらまあ。これは5月の話からだいぶ違いますね!!!!!ということでこの最後に5月金懇挨拶を引用しますのでお楽しみに。

でもってその理由はノルムの変化を確認している(ただし2%ではない)という話でして、

『わが国経済にゼロインフレが続いていた時代には、物価の上振れリスクよりも下振れリスクに配慮し、緩和的な金融環境を維持し続けることが何よりも重要でした。しかし、現状のように労働市場は完全雇用近傍に到達しており、マクロ的な需給ギャップもほぼゼロに達していると思われる状況では、下方リスクのみではなくて上方リスクにも配慮することが必要となります。』

大事なことなのでまた出てきました。「上方リスクにも配慮」

『私自身は、純粋に国内の経済状況という観点だけからみれば、そうした意味での新たな政策視野が必要な段階が近づきつつあると認識しています。』

どうみても利上げコースです本当にありがとうございました。

『その一方で、わが国経済は現在、米国の関税政策による大きな下方リスクに直面していることもあり、当面は、物価の基調を可能な限り慎重に見極める必要があると考えています。』

と最後に締めているので10月利上げ完全決め打ちではないですけれども、こんなの短観強くて決定会合までに米国で余程変なことが起きない限り利上げ容認ジャンとしか言いようが無いですなあ。


で最後に5月の説明を引用しますので今のと比較して考えると吉かと思います。ご参考までに。


・ちなみにこの部分、5月の野口委員はどうだったかというと

再掲
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250522a.htm

以下は5月の野口委員の宮崎金懇挨拶になります。少し長いけれどもニュアンスの違いをみやすくするためにあえてだんだら引用しますね。

『日本銀行は今後も、物価の基調が2%近傍で安定しつつあることを慎重に見極めつつ、政策金利を調整していくことになります。私は、その調整においては、ほふく前進的なアプローチが重要と考えます。それは、「政策金利を一段階引き上げるごとに相応の時間をかけてその経済への影響を確認し、さらにその時々の上下リスクを十分に点検した後に次の利上げを決める」といったやり方です。これは、政策金利の終着点であるターミナルレートを中立金利の推計などから決め打ちするようなやり方はとらないことを意味します。そうした推計は、日本経済が数十年もデフレ的状況にあったことを踏まえると、ターミナルレートのおおまかな目途をつける以上の役には立ちません。政策金利の終着点は、その時点の経済状況とりわけ物価動向から判断する以外にはないのです。』

この引用部分と次の引用部分の間には別の話があるのでここは文章としては繋がっていません、為念。

『このような見通しを踏まえた上での、今後の金融政策運営の基本スタンスとは、「上下リスクを含む経済状況の進展を注意深く確認しつつ、慎重に政策調整を進めていく」というものになるはずです。それは、抽象的な経済モデルの世界とは異なり、様々な摩擦現象やそれに基づく粘着性が存在する現実経済では、仮に経済的因果の力が作用するにしても、それが現実化するまでには相応の時間が必要になるからです。しかし、コロナ禍後のわが国経済の進展は、その力が確実に働いていることを示しています。私はその意味で、今後の金融政策運営に必要なのは、拡大しつつある海外リスクをしっかり見据えつつも、状況の進展を冷静に見極めるような、「慎重な楽観論」ではないかと考えています。』

ということでだいぶ威勢の良さが違うのが分かるかと思います。

てな訳で本当は期末だから期末GCとかのメモもと思ったのですが今朝は時間も無いのでこの辺で勘弁。






2025/09/29

お題「3M入札が流れたり一部に50bpの引値が発生したり/ボウマン理事は「経済重視で中立金利まで利下げしろ」ですね」

そいつはめでてえ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250928/k10014934641000.html
大阪・関西万博の一般入場者数 黒字目安の2200万人を超える
2025年9月28日 13時38分

なんだかんだ言われたけど結局客は入ったのね(→混雑と行列が苦手なのでその手の何とか博には全然行かない人)


〇3M短国流れましたねえ&50の引値が発生とな

金曜の短国ちゃんは年末跨ぎの初回銘柄になるのですが、

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250926.htm
国庫短期証券(第1334回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1334回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号      国庫短期証券(第1334回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日     令和7年9月29日
4.償還期限   令和8年1月7日
5.価格競争入札について
(1)応募額        8兆8,678億円
(2)募入決定額      3兆3,312億円
(3)募入最低価格    99円86銭5厘5毛
(募入最高利回り)     (0.4915%)
(4)募入最低価格における案分比率   29.0000%
(5)募入平均価格     99円87銭4厘6毛
(募入平均利回り)    (0.4582%)』

とまあそういう結果でして、平均0.4582%はさておきまして足切りが0.4915%まで流れまして、3Mで3.5毛くらい流れるのは結構なあばばばばー入札ではあるのですが、売買参考統計値ちゃんの方を拝見しますと、

https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(9/26引値)
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.465
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.480
国庫短期証券1331 2025/12/15 平均値単利 0.465
国庫短期証券1276 2025/12/22 平均値単利 0.500
国庫短期証券1333 2025/12/22 平均値単利 0.500
国庫短期証券1334 2026/01/07 平均値単利 0.460

ちなみに前日の引値が
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.465
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.480
国庫短期証券1331 2025/12/15 平均値単利 0.465
国庫短期証券1276 2025/12/22 平均値単利 0.465
国庫短期証券1333 2025/12/22 平均値単利 0.465
国庫短期証券1334 2026/01/07 平均値単利 0.455

という結果になっていまして、まあ0.455%でWIの値付けになっていたので平均0.4582自体はそんなもんっちゃあそんなもんかも知れませんが、足切り0.50%乗せはありゃまああという結果であったというのがお分かりになるかとは存じます。

でまあそれはそれでいいんですけど金曜は12/22償還の銘柄(3Mと1年の成れの果てがあるからここの償還は2銘柄ある)の引値が堂々の0.50%になっていまして、ホンマカイナという感じはだいぶするのでありますが、ただまあこの銘柄って12/20の償還分の再投資をしない前提であれば別に何の問題もないですけれども、償還再投資をするという観点からしますと、ここは3Mと1Yの新発が同様に折り返しで出てくるとは思うのですが、年末越え最後の入札シリーズ(入札カレンダー的には1Y→3M)になるので、そのタイミングで需給がどっちに転んでいるか分からんのと、ロール空振りすると年末まで新発の発行が無いので、そういう意味では越年運用しないのが分かっている人以外には使い勝手が悪いから、というyのはまあ分かるんですが何も0.50%にしなくたって、という感じはせんでもない。

いやまあ勿論10月利上げだと思った場合にこのレートはどうなのよ問題というのはあるのですが、それをまともに織り込みに行くのは茲許の短国市場ちゃんではあまり期待できないというのが仕様になっているので・・・・・・・・・・

なのでこれは別に短国市場で利上げ織り込みがどうのこうのとは別問題のような気がしますけれども(もちろん利上げ警戒の結果買いの手が引っ込んで、という面が無いとも言えないけれども)どうなることやらですな。

ちなみに昨年は何が起きてたかと言いますと、政策金利は7月に25bpに上がっていたのですが、12月年末跨ぎの短国ニーズが爆裂してしばらくの間3M短国(年末越え)が0.1%どころか0%に近い方に金利低下して、短国市場の玉がすっからかんという恐ろしい市場でしたけれども、今回の年末年始はとりあえず初手金利上昇でござるの巻から始まりました、ってなもんですな。ただまあ本格的なのは今週金曜日(=来月ですよ!)の3Mということになるので、そこの結果が今日並みなのかやっぱり年末越えしか勝たんといって激強(激強の短国を掴んでも満期まで持ち切ると勝ったことにならん説はあるが)になるのかは今週金曜日を乞うご期待ということですかね、知らんけど。


〇ボウマン理事の講演は「経済にフォワードルッキングして対処しろ」ということのようです

ミラン理事の講演ネタの続きはどうしたという説はあるのですが新ネタが出ているのでそっちをさらっとだけ。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bowman20250926a.htm
September 26, 2025
Thoughts on Monetary Policy Decisionmaking and Challenges Ahead
Vice Chair for Supervision Michelle W. Bowman
At the Forecasters Club of New York Luncheon, New York, New York

こちらの講演、最初の小見出し『A Flexible Approach to Policymaking』の所で現時点での金融政策に関するアプローチをどうのこうのという話が集約されていますのでそちらをヘロヘロと拝読。


・初手から「物価重視」のパウちゃんに砲撃である

でまあその「フレキシブルアプローチ」の一発目のパラグラフですが、

『Pursuing the objectives of the dual mandate at the same time means that we generally seek to achieve the maximum level of employment that is consistent with price stability. But the monetary policy objectives are not always complementary.』

『Because our dual mandate places equal weight on both maximum employment and price stability, when these objectives are in tension it is important not to favor one side of the mandate over the other』

デュアルマンデートは必ずしも相互補完的ではなくて逆に動くこともありますがな、から始まるのですが、

『In that circumstance, we should be flexible and direct our focus to the side of the mandate that deviates the most from its goal or that shows the greater risk of persistently departing from it.』

そのような場合は目標からの解離がより大きくて、継続的なリスクが大きい方に対処すべきである、という説明をしていまして、「まずは物価安定が一番大事」というパウエル議長の見解に対して砲撃を加えておられますな。

『Hesitating to address existing or emerging departures from the dual-mandate goals, due to self-limitations stemming from an unwillingness to depart from outdated past policy communication, increases the likelihood that policymakers will need to implement abrupt and large policy corrections.』

でもってそういうアプローチをしないと後程大きな政策調整をしないといけなくなる、という話をしまして次のパラに入りますが・・・・・・・


・ポストパンデミックの金融引き締めの遅れは労働市場を重視しすぎたメイクアップストラテジーのせいと

次のパラに参りますけど。

『As we all remember in 2021, supply and demand imbalances, amplified by extraordinary stimulus from fiscal and monetary policies, led to a sharp rise in inflation over just a few months. By the second half of that year, amid growing inflationary pressures, it became clear that our monetary policy stance was too accommodative and that the FOMC needed to move toward a tighter policy stance. On a 12-month basis, total consumer price index (CPI) inflation rose from about 1-1/2 percent in early 2021 to about 9 percent in mid-2022. We began increasing the policy rate at the March 2022 FOMC meeting, when reported CPI inflation was already at about 8 percent and core personal consumption expenditures inflation was above 5 percent.』

というこのパラグラフはポストパンデミックのあとの物価上昇とそれに対応した金融政策の説明です。では次に参りますが。

『In my view, the accommodative forward guidance the Committee adopted in the September and the December 2020 postmeeting statements, which put more weight on the employment side of our mandate, pushed the mandated goals out of balance and contributed to the delay in the removal of monetary policy accommodation in 2021.2 』

『That forward guidance made it much more difficult for the FOMC to react to new information suggesting that risks and uncertainties had evolved in response to pandemic-related changes in the economy. This ultimately restricted our ability to respond to rising inflationary pressures before seeing any progress on the labor market. Ultimately, delaying taking appropriate action while inflation started to increase left us in a position in which we needed to course correct and catch up by raising the policy rate in large increments over a number of months.

でもってボウマン理事はこの引き締めの遅れについて、物価の上昇に対する警戒よりも雇用の悪化に過度に警戒スタンスを強めたことになる、という指摘をしてますな。

『Recognizing the substantial risk that unacceptably high inflation could persist, and once the conditions in the labor market were moving toward the FOMC's goal of maximum employment, by the end of 2021 I shifted my focus to the inflation side of our mandate and to bringing inflation down toward our 2 percent goal.』

でもったインフレの方がどう見てもヤバいわということで2021年末までにはボウマン理事は物価をフォーカスするべきとのスタンスを示しました、だそうです。

『At the time, I argued in favor of taking prompt and forceful policy action to get inflation under control, which I saw as our primary responsibility at that time, as it had begun to impose a heavy burden on households and businesses.』

だから当時は急速な利上げを主張しましたよ。

『Of course, tightening policy and then maintaining a restrictive stance to lower inflation could have resulted in costs and risks to the labor market, but I saw far greater costs and risks in allowing inflation to persist. And, importantly, maintaining the commitment to restoring price stability is the best course to sustain a strong labor market and an economy that works for everyone.』

利上げはもちろん経済にとってはマイナスなのですが、望ましくない物価高のコストの方が大きいと判断しました、だそうです。


・いまは物価のリスクよりも経済のリスクの方が大きいから政策金利を一段と下げるべきという理屈

でもって話は転じまして、

『As I noted in recent remarks, we are now facing a very different economic environment.3 Over the past several months, I have been pointing to a shift in economic conditions and in the balance of risks to our employment and inflation goals, calling attention to signs of potential labor market fragility. And I have argued that increasing signs of weakening labor market conditions provide a basis for proactively supporting the employment side of our mandate.』

足元の状況は今までとは違ってて、労働市場にリスクが高い上に、

『Recent data show a materially more fragile labor market along with inflation that, excluding tariffs, has continued to hover not far above our target. Given this shift in labor market conditions, at last week's FOMC meeting I supported beginning the process of removing policy restraint and bringing the federal funds rate back to its neutral level.』

物価はマンデートよりも高いには高いけどそこまで乖離している訳ではない、とのことでして・・・・・・

『Up until the July FOMC meeting, even with inflation within range of our target, the Committee has focused primarily on the inflation side of the dual mandate. Now that we have seen many months of deteriorating labor market conditions, it is time for the Committee to act decisively and proactively to address decreasing labor market dynamism and emerging signs of fragility.』

7月までのFOMCは物価フォーカスを当てていたが今こそ労働市場の脆弱性を重視すべきです、というお話をしているので、物価の安定無くして雇用の安定無し、のパウちゃんとは別のアプローチを示している、ということですな。

『In my view, the recent data, including the estimated payroll employment benchmark revisions, show that we are at serious risk of already being behind the curve in addressing deteriorating labor market conditions. Should these conditions continue, I am concerned that we will need to adjust policy at a faster pace and to a larger degree going forward.』

最近のデータを見ても労働市場の脆弱性が明らかですよと。


・でも物価ってまだ2%になってないじゃんという指摘に対して

の説明が次にあって、

『I recognize and appreciate concerns that we have not yet perfectly achieved our inflation goal.』

まだ2%に下がってないじゃん、という主張はその通りではありますが、

『But under a flexible approach to policymaking, it is appropriate to focus on the side of the mandate that is showing signs of deterioration or fragility even though inflation is above but within range of our target. This shift is appropriate now because forecasters widely expect inflation to significantly decline next year, and as further deterioration in labor market conditions would likely lead to more persistent damage to the employment side of the mandate, that would be difficult to address with our tools.』

物価はターゲットよりも高い水準ですけれどもバカ高いわけではないので下方リスクのある労働市場に注目すべきという「フレキシブルアプローチ」を行うべきだと。

『With tariff-related price increases likely being a one-time effect, my view is that inflation will return to 2 percent after these effects dissipate.』

でもって(そりゃ当然そういうでしょうけど)関税の影響はワンタイムだと。

『Because changes in monetary policy take time to work their way through the economy, it is appropriate to look through temporarily elevated inflation readings and therefore remove some policy restraint to avoid weakening in the labor market, provided that long-run inflation expectations remain well anchored.』

金融政策の波及効果のラグも考えてみれば、一時的に上がっている物価に過度にフォーカスしないでフォワードルッキングに労働市場の悪化に対して対処すべき、というお話をしていますな。


・生産性向上云々の話があるがここは何じゃろうかねというお話ではありまして

次のパラですが。

『In addition, putting tariffs aside, the U.S. economy may also be experiencing an extended productivity surge, in large part because of recent technological advances. And productivity growth has likely been higher than reported due to the downward benchmark revisions to payroll gains. These developments reinforce the case for removing policy restraint because monetary policy should accommodate productivity shocks that raise potential output.』

最近のテクノロジー(AIですかね)の発達によって米国経済は生産性の拡大が進んでるように見えまして、しかも先般の雇用統計の改定を見て考えると、生産性の拡大が思ったよりも大きい可能性があり、この場合は金融政策をあまり引き締め的にしない方が良い、と読めたんだがここは正直謎。


・でまあ結論としては「中立金利に向けて利下げを継続すべき」です

『In light of all these considerations, in my view, it was appropriate to begin the process of moving policy toward a more neutral stance at last week's FOMC meeting, and it has been appropriate to do so for several months. Moreover, the rising downside risks to employment and the potential for greater damage to the labor market underscore the need to shift our focus away from overemphasizing the latest data points.』

今後も中立金利に向けて利下げしろ、という話なのでパウちゃんとはトーン違う、ということでまあボウマン理事
なので順当な結果ではあるのですが、そういう説明になっています。

以下、足元のインフレデータに過度に固執するのイクナイって話をしていますがそこはパスします。







2025/09/26

お題「ミラン理事講演補足:そもそも「中立金利が下がる政策」ってアホの所業じゃん/7月会合議事要旨は総じて利上げが遠くないことを示す(ように見える)」

ぐぬぬ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250925/k10014932271000.html
カルビー スナック菓子など 来年2月から値上げや内容量減少へ
2025年9月25日 19時18分

厳しい世の中でございますな・・・・・


〇ミラン理事の講演ですがやっぱり訳わからんですね(ので今日もこちらはメモだけ)

昨日ネタにしたミラン理事の講演
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/miran20250922a.htm
September 22, 2025
Nonmonetary Forces and Appropriate Monetary Policy
Governor Stephen I. Miran
At the Economic Club of New York, New York, New York

ドメドメザパニーズとは言いましても一応ざざっと目を泳がせるとだいたいポイントと趣旨くらい分からんでもないのですが(数をこなせば何とかなると思うので皆さんもぜひAIとか翻訳エンジンとかを使わないのを推奨、というかワシが読みだしたころそんな洒落たもんは無かった(エキサイト翻訳、みたいなのは有ったと思うけど)のですけどね笑)、今回のミランさんのは一読して???だったんですけど、ネタにするとアリガタヤなことに読者の識者さまからも教えていただくもんでとりあえず受け売りクイックメモなんですけど(おい)。

・そもそも論として「Rスターを下げるトラ公の政策」ってそれはもうアホの所業なんじゃないかとw

昨日引用しましたように、ミランさんは講演のお題にもありますように、「直近ではノンマネタリーな要因によって中立金利水準が低下しているので、過去の経験から出した中立金利で考えたら引き締めのし過ぎになる、というかなっているのでとっとと利下げしろ」って理論だったわけですな。再掲になりますけど、

『To sum this all up, first we must adjust r* relative to a baseline based on the factors I've described. A variety of models reviewed by Gianluca Benigno and others arrive at a median real estimate for r* of 1.3 percent, and a range of around 1 to 2 percent.26 Applying Okun's law with a natural unemployment rate of 4 percent, and PCE inflation at 2.6 percent, the standard Taylor rule approach implies the appropriate nominal fed funds rate prior to the forces considered today should be about 3.9 percent. A balanced a pproach suggests 3.6 percent. These are not all that far from where the FOMC has set interest rates!』

従来のモデルで考えたら実は今のFFレートは適正に見えるけど、

『Including the shocks I've considered, I get a new real r* that is 1 to 1.2 percentage points lower, or near zero. That sounds low, but I think it's important to take these models seriously, not literally, and as I've said, I think these models sometimes don't do a great job incorporating policy changes of the type I've discussed at the frequency I need. Instead, I suspect existing backward-looking estimates are too high because they insufficiently account for recent changes to fiscal and border policies that are depressing r*.』

ノンマネタリーなショックによってRスターすなわち実質中立金利水準が1%以上押し下げられておりますがな、というお話な訳ですが、これ個別の項目について「この政策は中立金利を押し上げます」「この政策は中立金利を押し上げます」みたいな足し算引き算をして計算しているのですが、そもそも各項目自体の相関がある場合の考慮をしていないように見えるのと、まあ最も問題なのは「トランプ政権の政策によって中立金利は引きさがります」って言ってるのはトランプは一体全体何のためにMAGAやってるんだよという話になるわけで、中立金利が下がるような政策やってたらダメじゃんというお話で終わるんじゃネーノ、とまあそんなことなので、読んでて????が拭えなかったということかなと思いました。

続きはまた後日。


〇などと書いてたらこんなニュースがありましたのでメモだけでも

https://jp.reuters.com/markets/japan/4NKIF4KX4VO5ZGSJYXW42JBTSM-2025-09-25/
歴代FRB議長ら18人、クック理事解任認めぬよう要請 最高裁に
By ロイター編集
2025年9月26日午前 5:30 GMT

『[25日 ロイター] - 歴代の米連邦準備制度理事会(FRB)議長や財務長官ら18人が25日、トランプ大統領によるクックFRB理事解任を認めないよう連邦最高裁に求めた。』

『18人のグループには、イエレン、バーナンキ、グリーンスパン氏ら元FRB議長や、ポールソン、サマーズ、ルー、ガイトナー、ルービン氏ら元財務長官が名を連ねる。同グループは最高裁に提出した意見書で、訴訟が続く間、クック氏解任を認めれば、FRBの独立性が脅かされ、国民の信頼が損なわれると主張した。』(上記URL先より)

おおおおおお、イエレンバーナンキグリーンスパンも参戦したのか、と思ったので貼っておきましたの巻。



〇7月決定会合議事要旨:田村さん高田さん以外にも緩和度合いの調整の必要を唱える向きがいそうな気が・・・・

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250731.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2025年7月30、31日開催分)


・氷見野さんがこの前釧路金懇で言ってた話(カドラーの最適関税論)がありましたな

まずは『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』ですがこの件は小ネタです。米国経済の部分でこの話がありまして、

『この間、複数の委員は、いわゆる最適関税理論が指摘するように、米国のような大国の場合、関税率をゼロにするより一定の関税を課す方が交易条件を改善させる可能性があるとの見解を示した。』

ってのがあって、これは氷見野副総裁が9月2日の釧路金懇挨拶で言及していたカドラーの最適関税論の話になるわけですが「複数の委員」が指摘していたというのはほほーーと思いました、という小ネタでございますけれどもそれはさておきまして、


・物価に関する議論では「ノルムの転換」の意見の人の扱いが妙に丁寧なのが警視庁抜刀隊的なサムシングを・・・・

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足もとでは3%台前半となっているとの認識で一致した。』

ここは公表文書通りですがこの先が議論パートでして、

『ある委員は、最近の食料品価格上昇は、基本的に食材価格の上昇を受けたコストプッシュによるものと考えられるが、消費者のインフレに対する考え方の変化によって、コスト上昇分の価格転嫁が容易になりつつあることの表れでもあるとの見解を示した。』

容易になっているのか上げないと死んでしまうのかが判然とはしませんが、賃金上がっている分くらいはとりあえず何とかなっているかとは思います。

『一人の委員は、過去1年の消費者物価の上振れ要因の大半は米とその他の食料品で説明できると指摘したうえで、賃金からサービス価格への波及は、底流としてゆっくり進んでいるものの、足もとで加速しているようにはみえないとの認識を示した。』

ほほう。でこの次の人の意見が結構クローズアップされている感じで長くなっているのですが、

『別の一人の委員は、デフレノルムの時代には一時的な物価下落要因の効き目が大きかったが、最近では輸入物価の下落などの下押し方向の要因の影響はあまり広がりがみられず、逆に、一時的な物価上昇要因が大きく効くようになっていると指摘した。そのうえで、この委員は、こうした変化の背景には、人手不足の高まり、賃金・価格の設定や価格転嫁に関する企業や消費者の考え方の変化、インフレ予想の上昇などがある可能性があるとの見解を示した。』

デフレノルムの転換云々は9月会合の利上げの理由に使っていた人が高田さんだからこれは高田さんですかね、それにしてもこの「別の一人の委員」の意見の採り上げられ方が随分と丁寧でいらっしゃる辺り、高田さん田村さんを抜刀隊として斬り込みをさせようという大本営の隠れた思惑の反映だったりすると非常に味わいが深いのですけれどもはてさて実際にはどうなのか、の答え合わせは10月乞うご期待ですね!!!!!!


・予想インフレの認識では「まだ達していない」中でも色々な見解がみられて総じてこれも強気

その次の段落が期待インフレの話でして、

『この間、予想物価上昇率について、委員は、緩やかに上昇しているとの見方で一致した。』

常に最初は公表文の文言通りの話になるのは仕様です。

『ある委員は、予想物価上昇率の各指標は、まだ2%にアンカーされていないとはいえ、着実に2%に接近しているとの認識を示した。』

『別のある委員は、2%を大きく上回る物価上昇が3年以上続く中、予想物価上昇率は2%程度に達しており、これが更に上昇しないか懸念されるとの見方を示した。』

これ後者が田村さん(9月利上げ提案の理由が「物価上振れリスク」だから)なのは分かりますが、もう一人は高田さんじゃない気がする(高田さんは9月利上げ提案が「物価安定目標は概ね達成」なので少なくとも9月段階では「2%にアンカーされている」という認識になっていると考えるのが自然なので)ので、これは警視庁抜刀隊の後ろにはちゃんと鎮台兵士が控えているという風情ではありますなと思いましたがどうでしょうか。

ただまあこの次の人は、

『これに対して、一人の委員は、物価上昇が続く中にあっても予想物価上昇率は比較的抑えられていると指摘したうえで、その背景には、過去のデフレ期の経験や政府の物価高対策に対する期待などが影響している可能性があると の見解を示した。』

と言っているのですが、この委員は返す刀で、

『そのうえで、この委員は、米をはじめとする食料品やガソリンなどは、個人がその価格水準から値上がりを実感しやすく、予想物価上昇率の押し上げにつながる可能性がある点に も留意が必要との認識を示した。』

ということで、やあり予想インフレの上昇の可能性を指摘していますし、

『これに関連して、ある委員は、最近海外では物価の水準自体がインフレ予想に影響を与え得るとの研究もあり、今後、米価格の前年比上昇率が鈍化しても、人々のインフレ実感が低下しない可能性もあると指摘した。』

そこはマジでそうだと思う(じっとスーパーのレシートを見る)のですが、こちらもまた予想インフレが強含みになるんじゃネーノ、というお話です。

今回は米国関税政策の影響ガー部分をすっ飛ばしているのでやたら強気に見える部分を拾ってるのではないかとツッコまれそうですが(汗)、経済の方は兎も角として物価に関してはこのパートを見ますと政策委員会の中でも結構な強気なんだな、というような見え方になっていますなあ、とおもいました。


・先行きの金融政策運営に関する議論パートの分量が6月対比で大増量になっている件について

『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですが先行きの金融政策の話から参ります。

『先行きの金融政策運営について、委員は、経済・物価の中心的な見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくという考え方を共有した。そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性が高い状況が続いていることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要であるとの認識で一致した。』

ってのはいつもの決定事項や展望レポート公表文と同じな訳ですが、このパートの分量が前回対比でほぼ倍くらいあるんですよね。

まあ前回は長期国債買入減額のパートがあって、そこで議論時間を食っていた、という面は有ると思うのですが、先行きの金融政策の議論パートの文字数って6月がだいたい650文字くらいなんですけど、7月は1100文字オーバーとなっていまして、倍とは言いませんがかなりの大部になっている辺りもなんかの示唆をしているように見えましたが考えすぎでしょうか??


・個別の委員の意見の中で「中立に向けて引き上げていくべき」が複数名いるんだが

でもって個別意見ですが、

『ある委員は、通商政策の影響が具体的にどう出てくるのか、各国のデータでなお確認できていないほか、米国の消費者物価と労働市場の動向によって、米国の金融政策や為替相場の方向性が大きく変化する可能性があり、もう少しデータを得たうえで政策判断すべきであるとの見解を示した。』

ほほう。

『 一人の委員は、足もと、物価は強めで推移し、需給ギャップがゼロ近傍となっている中、政策金利は中立金利を下回っているが、こうした状況では、その時々の金融・経済環境に配慮しつつも、政策金利をなるべく中立金利に向けて戻していくことが、意図しない経済の歪みを抑制するうえでも、望ましい方向であるとの認識を示した。』

『別のある委員も、米欧と異なってわが国の政策金利は中立金利を下回っているとみられるため、今後も可能なタイミングで利上げを進めていくべきであると述べた。そのうえで、この委員は、日米関税交渉の妥結に対して株式市場がポジティブな受け止め方をしている中、過度に慎重になって、利上げのタイミングを逸することにならないよう、留意する必要があると 指摘した。』

中立金利へ近づけるべき、という理由で利上げ提案したのが田村さんなのでこのうちのどちらかが田村さんですけれども、物価安定目標が概ね達成できた、と9月会合で主張した高田さんならこの部分での見解がもうちょっと違うんじゃなかろうか、と思いましたので、これはまさかの3人目かとちょっとワクワクして参りました。いやまあ高田っちかもしれませんけど。


・総じて10月では無いにせよ早期の利上げの声が多いのよね

『一人の委員は、米国の関税政策による影響の見極めには、少なくとも今後2〜3か月は必要であると指摘したうえで、仮に、米国経済が想像以上に持ちこたえるようであれば、日本経済への下押しの影響も軽微なものにとどまり、早ければ年内にも現状の様子見モードが解除できるかもしれないとの認識を示した。』

7月末の時点で「早ければ年内にも」なのでその後認識がどうなったのかは知りませんけど、別に全然利上げしないわけではないですよね。

『ある委員は、物価上振れへの対応が遅れて急速な利上げを余儀なくされると、わが国経済に大きなダメージを与えるため、適時に利上げを進めることが、中央銀行のリスク・マネジメント上、重要であると指摘した。』

中央銀行のリスクマネジメント上、ってのは味わいのある言葉です。

『この間、一人の委員は、先行き、インフレ率がいったん低下するという中心的な見通しを前提とすれば、利上げの判断は注意深く行う必要がある一方、需要の価格弾力性が低い必需品や、人手不足による供給制約の強い品目が価格上昇の主役となり、物価上昇率が2%を上回る状況が長引くようであれば、時機を失することなく緩和度合いの調整を進めることが適当であると指摘した。』

ということでこの段落は終っておりまして、

『以上のような議論を受けて、議長は、執行部に対し、「展望レポート」で、先行きの金融政策運営についてどのように記述することが考えられるか、案を示すよう指示した。』

という話になるのですが、抜刀隊2名以外にも「中立金利に向けて利上げすべき」がいる上に、慎重に見極めると言っている人も別に早期の利上げを排除しない、となっているのは結構味わいがあるな、と思いましたが如何かしら。

あとバランスシートの議論が最後にあるけどめんどいのでパス。







2025/09/25

お題「日銀謹製基調インフレ/PD懇/「賃金と物価の好循環」という幻想の弊害が・・・/ミラン理事講演(その1)」

いつかみた風景
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1715B0X10C25A9000000/
中古マンションに株高波及、都心で1.7億円超え 新築は供給細る
マーケットニュース
2025年9月24日 11:26 [会員限定記事]

ワシが学生とか新社会人とかそういう頃はこういうニュースを指をくわえて眺めてたもんじゃのう・・・・・・・・(老人の思い出話ウザイですねすいません)

〇しかしこれ見て何で2%達成してないって話になるのかということでして・・・・・

いつもの基調インフレ
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm

真面目な話、20年基準での数字がある昨年1月からの数字で見てこれなんですよね。

Jan-24 2.6 1.9 2.3
Feb-24 2.3 1.4 2.0
Mar-24 2.2 1.3 1.9
Apr-24 1.8 1.1 1.6
May-24 2.1 1.3 1.5
Jun-24 2.1 1.4 1.6
Jul-24 1.8 1.1 1.5
Aug-24 1.8 0.7 1.3
Sep-24 1.7 0.8 1.4
Oct-24 1.5 0.8 1.3
Nov-24 1.7 0.9 1.1
Dec-24 1.9 1.0 1.1
Jan-25 2.2 1.4 1.3
Feb-25 2.2 1.4 1.2
Mar-25 2.2 1.4 1.4
Apr-25 2.4 1.7 1.8
May-25 2.5 1.7 1.6
Jun-25 2.3 1.4 1.4
Jul-25 2.0 1.1 1.5
Aug-25 2.0 1.1 1.9

刈込平均って結局2%近辺で延々と推移している訳で、最頻値もまた上がってきていますけど、いずれにしましても1%はずーっと超えた状態になっていて、CPIって日銀の希望的観測だと「これから下がって2%割れます」だったんですけれども、大体からして日銀だってずっと「基調的物価は徐々に上昇する、たまには足踏みするかもしれないけど」って話を延々としている訳で、これで今年度物価が下がることが無かった場合(除く特殊要因)ってそれはもう基調的物価がそもそも2%近辺にいるから物価が2%をそんなに割り込むこともありませんなあ(除く特殊要因)って事なんじゃないですかねえ、と思うのですが、なにせ日銀ちゃんアクチュアルの物価の話を碌にしないで基調的物価ばっかりいうのでもう意味くじわからんという所ではありますわな。

でまあそんな訳ですけれども、10月20日に高田審議委員の講演が予定されていまして、高田っちにおかれましては「なぜ物価目標がおおむね達成されたと判断したのか」という判断根拠をできるだけ具体的な経済データも含めて説明していただきますと、日銀大本営の言っている説明との対比ができまして、さてどっちの方が確からしい説明をしていますか、というのが見やすくなって、益々日銀大本営の説明が苦しくなってくる(まあ苦しくなると別の屁理屈を持ち出してくるんだが)のでぜひよろしくお願いしたいものです。


〇PD懇の資料が先行して出てきましたのでご案内とは存じますが備忘メモ

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/index.html
国債市場特別参加者会合(議事要旨等)

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/250924pd115.pdf
国債市場特別参加者会合(第115回)
理財局説明資料

『目次

1.令和7年10−12月期における物価連動債の発行額等について
2.令和7年10−12月期における流動性供給入札の実施額等について』

ということで物国と流動性供給ですけれども、結論は物国は次の四半期も2500発行の200×3の買入消却、

『令和7年10−12月期における物価連動債の発行額等(案)』

『・ 令和7年11月発行の入札予定額:2,500億円

・ 令和7年10-12月期における買入消却の入札予定
買入対象銘柄:21回債から30回債まで

令和7年10月 200億円程度
令和7年11月 200億円程度
令和7年12月 200億円程度
合計       600億円程度』

ということですが、なにせ物国ちゃんは発行再開以降の銘柄が順次償還になる上に、コロナショック以降発行を絞ってしまっている、という経緯によってここもとは大幅な償還超過だし、物国のインデックス見ると残存1年未満の銘柄がインデックス落ちしているのに平均残存5年切ってるというチャーミングな残存構成で、その上買入が四半期で2100億円あるという市場。

てな訳でこの物価高かつ物価目標達成しそうとかいう話もあるというのに市場規模が縮小するわ流動性がアレ(昨年8月の世界的株価下がった事案の際の物国は瞬間的にエライコッチャでした、まあその後普通に戻ったけど)だわということで、こちらの市場は本来は発行増やして市場を育成する方向でいかないと、市場規模が小さく流動性に難があるので新規の投資が手控えられやすい→発行を増やしにくい→過去の文の償還は容赦なくやってくる→市場規模が拡大しない、という残念な流れというのはご案内の通りではありますが、まあ残念なところではありますな。


流動性供給については

『令和7年10−12月期における流動性供給入札の実施額等(案)』

流動性供給入札は超長期15年超が1回3500→2500になって、短期5年以下が1回6000→7000になっているということですが、なんか5−15を増発するのはダメだったのかしらとは思いました、まあその辺詳しいわけじゃないから良いですけど。


ちなみに前回6月の時の資料だと
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/250620pd114.pdf
国債市場特別参加者会合(第114回)
理財局説明資料

この時って、

『1.令和7年度国債発行計画の変更について
2.令和7年7−9月期における流動性供給入札の実施額等について
3.令和7年7−9月期における物価連動債の発行額等について』

この時って超長期減額と2年と短国の増額(と個人国と第U非価格の上振れ)を実施した時の会合ではありますが、この時ってお題の順番が上記のように「流動性供給入札」→「物価連動国債」だったのですが、今回この資料を見た限りでは言ってること前回と変わらん気もするのですが、なにゆえ今回お題の順序が先になったのかがちょっとだけ謎(意味なく順序を入れ替えることは無いと思うんですよね〜)なのですけれどもこれは何ぞという感想isある。

まあ実を言えば通常運転の場合(3月とか12月のPD懇資料を見ればわかりますが)お題の順序は「物国」→「流動性供給」(そりゃまあ新発なのは物国だから物国が先になるじゃろ)になっているので、単に平常運転に戻した、というだけなのかもしれませんが、ゆうて今回も流動性供給入札は市場動向を鑑みて動かしているので、順序的には前回と同様に流動性供給→物価連動でも良かったようには思えます。

まあアレです。物価安定目標達成を視野に入れる、どころか「おおむね達成」とか言ってしまう政策委員も出る、というご時世の中で本邦の物価連動国債市場が縮小の一途をたどる、というのは甚だ怪しからんお話であるので市場を育成したい、という心意気があるので平常運転に戻して、ちゃんと物価連動国債に関しては市場育成を視野に入れているんですよという意味かと思ってしまうのは考え過ぎですかそうですか(^^)。


〇自民党総裁選やっておりますが・・・・・・・

・高市さんがまあ目立ちますけど・・・・・・

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-23/T2TDKYGOT0K400
自民・高市氏、赤字国債発行も「やむを得ない」−物価高対策で
谷口崇子、香月夏子
2025年9月23日 13:03 JST

『自民党の高市早苗前経済安全保障担当相は23日、物価高対策の財源について現在の税収の余剰分を充てつつも、「どうしてもというときには、国債の発行もやむ得ない」との考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)

ってのは一応ネタになったりならなかったりという風情だったと思いますが。

『高市氏は従来から「責任ある積極財政」で経済成長を目指す姿勢を示していた。総裁選の争点である物価高対策で赤字国債の増発も辞さない方針を明言し、自身の立場を鮮明にさせた。』

高圧経済キタコレではあるのですが、まあよくよく見ますと・・・・・・・

『林氏は会見で「赤字国債の増発は原則として慎まなければならない」と発言。小泉農相は、税収が増えている分野の活用や歳出改革など含めて柔軟に検討するとしつつ、「経済あっての財政」との見方を示した。』

進次郎の言ってる「経済あっての財政」ってのも結構怪しげで、税収増えたからヒャッハー使うぞーって言ってるんですけど、そもそも名目物価が上がって名目の歳入増えているんですけど、それこそ中野サンプラザの再開発事業が一頓挫しているとかしてないかとか言うような案件に見られますように、これから経常支出部分での歳出も名目物価が上がっているんだから増えざるを得ないんだし、バッファ取ってると言っても利払いは増えるんだし、そう簡単な話でもない筈なんで、実は進次郎でも普通に財政ポジションは悪くなる話に見えてきますし、高市さんみたいに旗幟鮮明じゃなくてズルズルとなし崩し的に悪化しそうなので却ってたちが悪いんじゃないかというのが杞憂民の杞憂。


まあしかし高市さんは前回威勢よくやり過ぎたせいで
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-24/T32S4HGOYMTL00
自民・高市氏、財政・金融政策の方向性決める責任は政府-手段は日銀に
梅川崇
2025年9月24日 13:54 JST 更新日時 2025年9月24日 16:27 JST

方向性をお前が決めるんだったらトラ公と一緒じゃん・・・・・・・・

『日本記者クラブの総裁選立候補者による討論会で、昨年9月の総裁選時に「金利を今、上げるのはあほやと思う」と発言したことについて自身の考えを説明した。高市氏は政策金利が急激に上がった場合、企業が投資に「お金を回せるのか」、住宅ローン金利に支払いで「若い方がお困りになるのではないか」との懸念を示した。』(上記URL先より、以下同様)

なるほどわからん。

『積極財政路線を掲げる自身の政策がインフレを加速させるかとの指摘に対しては、「家計支援と供給力投資、これを同時に行うということで、賃金主導の緩やかなインフレに移行させる」と説明した。』

なるほどわからん。


・しかしこの「賃金と物価の好循環」という幻想を振り撒いた日銀は・・・・・・

この高市さんの発言でも「賃金主導の緩やかなインフレ」とかいう寝言が飛び出すんですが、高市さんだけじゃなくて・・・・・・・・

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250922/k10014927651000.html
自民総裁選 告示 5人が立候補 本格的な論戦始まる
2025年9月22日 17時07分

林官房長官の発言部分から引用しますと、

『また、物価高対策をはじめとする経済政策などについては「実質賃金を1%ずつ上昇させ、定着させることをぜひやらせてほしい。低・中所得者に給付を中心に支援するイギリスの『ユニバーサル・クレジット』の日本版の設計をしっかりと行い分厚い中間層を取り戻したい」と述べました。』

って話をしていまして、一番変な事言わなさそうな林官房長官ですらこの「賃金と物価の好循環」のレトリックを使っている訳ですが、小林さんも「手取り増やす」方向の話をしている(引用しませんけど)って感じですし、なんかこれ黒田日銀の末期に政策修正を渋る言い訳につかったその場しのぎのレトリックの「賃金と物価の好循環」っていう夢のようなキーワードがどんどん一人歩きして大いなるモンスターに成長しているとしかおもえない訳でして、「賃金と物価の好循環」を信じて政治が動いていく中ですとまあ行き着く先は碌でもないなとしか思えないし、そんなことを言い出した日銀の罪は万死に値するって指弾されるときが来そうなもんですけどさてどうなるのやら・・・・・・・


〇ミラン理事の大幅利下げ主張の根拠についてのお話がありましたがとりあえずちょっとだけ(その1)

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/miran20250922a.htm
September 22, 2025
Nonmonetary Forces and Appropriate Monetary Policy
Governor Stephen I. Miran
At the Economic Club of New York, New York, New York

『I'd like to thank the Economic Club of New York for the invitation to speak today.1 This is my first time speaking in my new capacity as a member of the Federal Reserve Board. As such, I would like to be transparent on my thinking. Subsequent to last week's meeting of the Federal Open Market Committee (FOMC), it should be clear that my view of appropriate monetary policy diverges from those of other FOMC members; I view policy as very restrictive, believe it poses material risks to the Fed's employment mandate, and would like to explain why.』

ということでワシは大幅に今の政策が引き締め的ですがな、という話をしましょうということですが、

『There's no perfect means for determining appropriate monetary policy at any given time. That said, rules of a Taylor type are a useful way to gauge where the federal funds rate should be set based on the prevailing macroeconomic conditions and outlook. Let me first say that I find these types of policy rules to be useful as indications, but I am not slavishly devoted to them.』

別に妄信するわけではないですが、と断りを入れているのですが、テイラールールをベースにして最適金融政策を考えるというアプローチから入っているようですな。

『The Taylor rule suggests policymakers ought to think about three key variables in determining the appropriate fed funds rate: inflation, the neutral rate of interest, and the output gap. As one might expect, changes in inflation and employment-one way of framing the output gap-receive due attention from Fed officials. However, changes in the neutral rate, or the policy rate that would be neither expansionary nor contractionary when the economy is at full employment, are often underappreciated.』

なので物価、中立金利、需給ギャップから算出しまっせというお話になりまして、中立金利と需給ギャップに関しては当然ながら推計値になるので、そのあたりの考察とかが入るんですけど、今日は手抜きでその辺を全部かっ飛ばして先に「何で大幅利下げ主張しますねん」の結論まで強引にワープしますと、『Adding It All Up』って小見出しに飛ぶわけですな。

『To sum this all up, first we must adjust r* relative to a baseline based on the factors I've described. A variety of models reviewed by Gianluca Benigno and others arrive at a median real estimate for r* of 1.3 percent, and a range of around 1 to 2 percent.26 Applying Okun's law with a natural unemployment rate of 4 percent, and PCE inflation at 2.6 percent, the standard Taylor rule approach implies the appropriate nominal fed funds rate prior to the forces considered today should be about 3.9 percent. A balanced approach suggests 3.6 percent. These are not all that far from where the FOMC has set interest rates!』

ということで、最初は「従来のモデルで考えたら実は今のFFレートは適正に見えるけど」というのから入るのですが、

『Including the shocks I've considered, I get a new real r* that is 1 to 1.2 percentage points lower, or near zero. That sounds low, but I think it's important to take these models seriously, not literally, and as I've said, I think these models sometimes don't do a great job incorporating policy changes of the type I've discussed at the frequency I need. Instead, I suspect existing backward-looking estimates are too high because they insufficiently account for recent changes to fiscal and border policies that are depressing r*.』

ただし、「Including the shocks I've considered,」なので途中すっ飛ばした話を考慮すると、なのですっ飛ばした話の方を後日成敗していこうとは思うのですが、途中の小見出しにあったのが、

Policies Impacting Inflation
 Rents

Policies Affecting r*
 Population growth
 Increases in national saving from trade policy
 Increases in national saving from tax policy
 Effect of deregulation and energy on r*

Policies Impacting the Output Gap
 Tax policy
 Regulatory and energy policies

っていう流れになっていまして、これらの要因によって中立金利水準が押し下げられているので、政策金利水準はもっと低くあるべきだ、ってお話をしているんですな。うーんそうなのかという話はボチボチ後程という感じですけど。

でもってその他の考察もあるのですが時間の関係とアタクシの能力の関係でいったん飛ばしてもろていただきまして、最後の一文を見ますと、

『The upshot is that monetary policy is well into restrictive territory. Leaving short-term interest rates roughly 2 percentage points too tight risks unnecessary layoffs and higher unemployment. Thank you for this opportunity to share how I think about monetary policy at the moment; I'd be happy to take some questions.』

ということで、だいたい今の政策金利は中立金利からみて2%程度は高い水準にあるという認識になっておりまして、ホンマカイナ感は満載オブ満載なのですが、まあそういう説明になっていますので明日以降ボチボチと成敗出来たらと思います。






2025/09/24

お題「パウエル講演は物価重視を明確に/月曜も金利上がってたので備忘メモ」

ということで今朝はパウちゃん講演を寝起きで拝読の巻です。

〇パウちゃんの講演は「物価重視」を引き続き明確に打ち出す形で利下げ要請を華麗にスルーの巻

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20250923a.htm
September 23, 2025
Economic Outlook
Chair Jerome H. Powell
At the Greater Providence Chamber of Commerce 2025 Economic Outlook Luncheon, Warwick, Rhode Island

・マクラの部分で早速何かが見えたw

最初のマクラの部分、経済の見通しに関する導入部分となりますところのマクラの最後がこうなっていまして、

『Turning to the present day, the U.S. economy is showing resilience in the midst of substantial changes in trade and immigration policies, as well as in fiscal, regulatory and geopolitical arenas. These policies are still emerging, and their longer-term implications will take some time to be seen.』

関税政策その他諸々のトラ公政策に関しては未だに進行しておりましてこれらの長期的な米国への影響に関しては徐々に出てくる、ということになるでしょう。とのっけから中々いい感じでトラ公に対して含むところありまっせという感じが漂っているのがチャーミング。


・経済の全般の話は穏当

『Economic Outlook』である。

『Recent data show that the pace of economic growth has moderated. The unemployment rate is low but has edged up. Job gains have slowed, and the downside risks to employment have risen. At the same time, inflation has risen recently and remains somewhat elevated. In recent months, it has become clear that the balance of risks has shifted, prompting us to move our policy stance closer to neutral at our meeting last week.』

冒頭のパラグラフは(FOMC直後だから当たり前だけど)FOMC声明文で示しているような説明になっていまして、今回の利下げは「move our policy stance closer to neutral」ですがその背景にあるのは 「the balance of risks has shifted」ですよ、という説明ですね。

『GDP rose at a pace of around one and a half percent in the first half of the year, down from 2.5 percent growth last year. The moderation in growth largely reflects a slowdown in consumer spending. Activity in the housing sector remains weak, but business investment in equipment and intangibles has picked up from last year's pace.』

今年前半の成長率は+1.5%程度ですが、個人消費の減速が効いています。住宅投資は相変わらず弱いですが企業はしっかりしています。

『As noted in the September Beige Book, a report that gathers qualitative information from across the Fed System, businesses continue to say that uncertainty is weighing on their outlook.』

でたな不確実性。

『Measures of consumer and business sentiment declined sharply in the spring; they have since moved up but remain low relative to the start of the year.』

センチメントは春に一回大きく下がった後回復しつつあるが強くは無い。


・労働市場に関しては「an unusual and challenging development」ですとな

次のパラが労働市場です。

『In the labor market, there has been a marked slowing in both the supply of and demand for workers-an unusual and challenging development.』

労働市場に関しては「a marked slowing in both the supply of and demand for workers」で「an unusual and challenging development」とヤヤコシヤな状況、という認識を示しています。

『In this less dynamic and somewhat softer labor market, the downside risks to employment have risen.』

なのでダウンサイドリスクが起きてきていると。

『The unemployment rate edged up to 4.3 percent in August but has remained relatively stable at a low level over the past year. Payroll job gains slowed sharply over the summer months, as employers added an average of just 29,000 per month over the past three months. The recent pace of job creation appears to be running below the "breakeven" rate needed to hold the unemployment rate constant. But a number of other labor market indicators remain broadly stable. For example, the ratio of job openings to unemployment remains near 1. And multiple measures of job openings have been moving roughly sideways, as have initial claims for unemployment insurance.』

労働市場の説明がありますが、今回も「The recent pace of job creation appears to be running below the "breakeven" rate needed to hold the unemployment rate constant.」という説明をしていまして労働市場が適正状態ではなくてやや弱し、って感じのお話になっております。


・物価に関しては財価格に関税の影響が出てきているとの認識

次が物価。

『Inflation has eased significantly from its highs of 2022 but remains somewhat elevated relative to our 2 percent longer-run goal. The latest available data indicate that total PCE prices rose 2.7 percent over the 12 months ending in August, up from 2.3 percent in August 2024. Excluding the volatile food and energy categories, core PCE prices rose 2.9 percent last month, also higher than the year-ago level.』

物価は以前のクソ高状態からは顕著に落ち着きましたが2%から見たらまだお高い、とはいつもの認識。

『Goods prices, after falling last year, are driving the pickup in inflation. Incoming data and surveys suggest that those price increases largely reflect higher tariffs rather than broader price pressures. Disinflation for services continues, including for housing.』

下がっていた財価格が関税の影響で上がりだしているそうです。住宅を含めてサービス価格はディスインフレと。

『Near-term measures of inflation expectations have moved up, on balance, over the course of this year on news about tariffs. Beyond the next year or so, however, most measures of longer-term expectations remain consistent with our 2 percent inflation goal.』

インフレ期待はニアータームが上昇(中長期インフレ期待は基本的に安定としか言わない)。


・先行き見通し含めて物価の部分で3パラグラフ(全体6パラグラフ中の半分)を使っていますねえ

さらに先行き見通しで関税等の影響は・・・・・・・

『The overall economic effects of the significant changes in trade, immigration, fiscal and regulatory policy remain to be seen. A reasonable base case is that the tariff-related effects on inflation will be relatively short lived-a one-time shift in the price level. A "one-time" increase does not mean "all at once." Tariff increases will likely take some time to work their way through supply chains. As a result, this one-time increase in the price level will likely be spread over several quarters and show up as somewhat higher inflation during that period.』

関税とかその他諸々の政策の影響は徐々に見えてはいるものの、今後時間かかるでしょう。基本的には一時的なものとは言え、数四半期にわたって価格レベルを押し上げることになるでしょうな、ときまして最後のパラになりますけど、

『But uncertainty around the path of inflation remains high. We will carefully assess and manage the risk of higher and more persistent inflation. We will make sure that this one-time increase in prices does not become an ongoing inflation problem.』

ワンタイムというのがメインシナリオだけど持続的なインフレになる可能性はありますので注意しないといけない、ということで説明の分量を思いっきり物価の方に割いていまして、物価重視である、というのを示すことによってトラ公の利下げ強要モードに対して対抗してまっせというのが伝わりますな、イイハナシダナー。


・金融政策も物価重視の説明で利下げ云々は華麗にスルー

でもって後半がみんな大好き現世利益の『Monetary Policy』ですが、こちらは3パラグラフ構成で(FOMC直後ってのもあるでしょうけれども)できておりますのでさっきの「エコノミックアウトルック」の方が分量が明らかに多いし、何ならインフレの部分が多い、ということになっていますわな。

『Near-term risks to inflation are tilted to the upside and risks to employment to the downside-a challenging situation.』

いつもの認識で(そりゃそうだ)ニアータームのリスクはインフレは上振れ、雇用は下振れでa challenging situationってのもいつも通り。

『Two-sided risks mean that there is no risk-free path.』

これ会見でも言ってたのを先行してネタにしました(後続はどうしたというツッコミはあるかと思いますが明日以降に)が、上下のリスクがある、ということはリスクフリーのパスは無いってことです、ということですが、どこぞの日銀とかいう所は上下のリスクがあるというのを動かない言い訳にしか使っていないように見える訳で甚だ遺憾の極みですな。

『If we ease too aggressively, we could leave the inflation job unfinished and need to reverse course later to fully restore 2 percent inflation. If we maintain restrictive policy too long, the labor market could soften unnecessarily. When our goals are in tension like this, our framework calls for us to balance both sides of our dual mandate.』

まあこりゃ辺りまえの話で緩和のし過ぎではインフレブースト、引き締め維持のし過ぎでは経済が悪化しますという話をしまして次のパラグラフに進みますと、

『The increased downside risks to employment have shifted the balance of risks to achieving our goals. We therefore judged it appropriate at our last meeting to take another step toward a more neutral policy stance, lowering the target range for the federal funds rate by 25 basis points to 4 to 4-1/4 percent. This policy stance, which I see as still modestly restrictive, leaves us well positioned to respond to potential economic developments.』

「The increased downside risks to employment have shifted the balance of risks to achieving our goals. 」なので利下げしましたが、現在の金融政策水準は「modestly restrictive」(モデレートリーではない)というお話になっています。

『Our policy is not on a preset course. We will continue to determine the appropriate stance based on the incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks. We remain committed to supporting maximum employment and bringing inflation sustainably to our 2 percent goal. Our success in delivering on these goals matters to all Americans. We understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country.

Thank you again for having me here. I look forward to our discussion.』

これは月曜にネタにしましたように、物価の安定によって雇用の安定ももたらされる、という会見での説明を合わせて考えますと、やはりここでも物価安定重視という姿勢でいるので、トラ公の利下げ要請に関しては華麗にスルーという説明になっていますな、ということかと存じます。



〇なんかまた金利が上がっていたので備忘メモ

一応メモだけ
https://jp.reuters.com/markets/japan/JC3YPKCARNJMRGTE5KD4Z4GD4E-2025-09-22/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、長期金利一時17年ぶり1.665% 日銀利上げ観測などで
By ロイター編集
2025年9月22日午後 3:37 GMT+9

『[東京 22日 ロイター] - <15:12> 国債先物は続落、長期金利一時17年ぶり1.665% 日銀利上げ観測などで

国債先物中心限月12月限は、前営業日比21銭安の135円89銭と続落して取引を終えた。米金利上昇や日銀の利上げ観測を背景に、国債先物は売りが優勢となった。新発10年国債利回り(長期金利)は一時1.665%と、2008年7月以来の高水準を付けた後、同1.0ベーシスポイント(bp)上昇の1.650%。新発2年債は0.930%と08年6月以来の高水準を更新したほか、新発5年債も一時1.235%と08年7月以来の水準まで上昇した。』(上記URL先より、以下同様)

ということで、金曜は華麗なツイストフラットをしていましたけれども月曜に関しましては、

『2年債は前営業日比1.5bp上昇の0.930%、5年債は同3.0bp上昇の1.230%、20年債は同1.5bp上昇の2.645%、30年債は同3.0bp上昇の3.180%。40年債は同1.5bp上昇の3.390%。』

あらあらという所ではありますが、

『   OFFER  BID   前日比
2年  0.924  0.93    0.014  14:57
5年  1.223  1.229   0.029  15:02
10年  1.649  1.655  0.016  15:02
20年  2.639  2.649  0.02   15:10
30年  3.166  3.181  0.03   15:10
40年  3.394  3.411  0.045  15:08』

ってな感じでして、まあ利上げ見通しが変わる中期は(それまでが利上げあんまり見てねえだろレートだったので)しゃーないないという面はありますが超長期ねえという所ですが1日だけならただのその日のアヤかもしれないので判断保留。

ちなみに短国ちゃんの売参引っ張るのめんどいので今日は割愛しますが、このようなご時世の中短国様に置かれましては堂々の脳死引けで確か全ゾーン引け変わらずとかいうような状態だったと思われまして、3Mとか金利上がらんのかよと思ってしまう今日この頃ではありましたとさ。




2025/09/23

お題「総裁記者会見を取り急ぎ読んでみますという祝日企画」

それはそうとしまして全然話は違うのですが
https://www.sankei.com/article/20250920-M3LNSHWZBBNRFO3AQQ4WRR42OM/
<産経抄>カーク氏暗殺で嘲笑者解雇相次ぐ 米国の明快さがうらやましい
2025/9/20 05:00

報道機関がそれを言うのって大リーグ級の馬鹿と申しますか、お前がそうやって称賛する刃が自分に向けられるという想像が全くついていないのは余程人生無邪気に生きてきたんですねえとしか申し上げようがありません。

まあ「お前が今称賛している刃は将来自分に向けられる可能性があるんだぞ」ってのに気が付かない能天気な人間はそこかしこにおるわけですが、報道機関を名乗っている会社が社の主張として言ってしまうってのは凄まじいとしか言いようが無いんだが、まあ産経はそもそも報道機関じゃないと思えばそういうことなのかも知れませんな、ガハハ

〇経済に関してはチキンさんが基本、ETF売却100年計画に関してはまあ多少忸怩たるところはあるんでしょうけど・・・・・・

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250922a.pdf
総裁記者会見
――2025年9月19日(金)午後3時30分から約65分

・7月から1か月半も経過しているのに状況のアップデートをしないあたりがチキンさん満載

最初の幹事社質問で、

『(問)幹事社からは二問質問があります。一問目は追加利上げに向けた判断材料についてです。アメリカの関税政策や金融政策、アメリカの金融政策がアメリカや世界経済に与える影響、それに伴う日本経済・物価への下押しの影響やその不確実性について、前回 7 月時点と比べてどのように変化したのかを教えてください。日本経済の先行きについては、円安の影響もあって大きな減速に陥る可能性は低いという見方もありますが、この点も踏まえてどのようにお考えかを教えてください。(後半割愛)』

円安云々の部分は意味不明にもほどがあるんですが、今回の幹事社さんはなんせアベノミクス万歳だわゲル退任の誤報号外を飛ばすわなので高圧経済大好きなんでしょうね。まあそれはさておき植田さんの回答ですが、

『(答)まず、一問目ですけれども、7 月会合以降の状況を確認致しますと、まずアメリカ経済についてですが、雇用、消費の一部に弱めの動きがみられていますが、これまでのところ、消費者物価への関税転嫁の動きは緩やかなものにとどまっています。こうした中、一昨日のFRBによる利下げは、米国経済を下支えする方向で作用するとみています。そのうえで、世界経済については、各国の通商政策等の影響を受けていったん減速するものの、その後は緩やかな成長経路に復していくという見通しは変わっていません。』

見通しが変わったかどうかではなくて7月対比のアップデートを聞きたいというか、つまりはお前らが最近得意技にしている「不確実性ガー」がどの程度変化したのか、という話が欲しいわけですが、まあ当然そこは分かっていてすっとぼけているんでしょうけれども、7月以降不確実性がおうなったかという話はしていませんねえ。

でもって海外経済の認識を受けまして日本はどうですか、という部分が続きますが、

『次に、わが国に対する影響ですが、米国の関税政策は、製造業中心に収益面でマイナスの影響を及ぼしているものの、これまでのところ、設備投資や雇用・賃金動向を含め、経済全体に波及している様子は窺われません。』

というのをどう評価するのか、というのが突っ込みたい部分ってのは声明文ネタにした時にも申し上げたと思いますが、この点について「米国の関税政策の影響がさほど大きくなさそうであるという兆候が見られている」とポジティブに評価しているのか、「米国の関税政策の影響が出てきましたのでこれから一段と広がるかもしれないので思いっきり警戒しています」というネガティブ評価になっているのか、というのがこの説明だと分からんのよね。

『こうしたもとで、消費者物価の基調的な上昇率は、引き続き 2%に向けて緩やかに上昇しているとみています。』

基調的物価、と言わないで「消費者物価の基調的な上昇率」と言い換えるようになっているのが目につきますが、これは「消費者物価」であればお気持ち物価と言われるようなことも無いというさすが屁理屈大王だけのことはあると相変わらず感心してしまいます(褒めてない)。

まあしかし何ですな、急に今回高田っちが「物価安定目標は概ね達成」に一気にワープしたように、そもそも論として期待インフレ率のシフトアップを伴って(複数均衡論を前提にした場合に)均衡を変化させようという政策を実施しているのであれば、本来は基調的インフレって緩やかに上昇ではなくて、どこかでステージの変化がノンリニアに起こるって考えた方が自然のように思えますけれどもねえ(白川さんの時はそれを良しとしないから0から1に上げて、そのあと1から2に上げるって話を当初はしていましたな、最後安倍ちゃんに押し切られましたが)。

『この間、米国との交渉の結果、自動車等の関税率が決まったことは、わが国経済を巡る不確実性の低下につながると認識していますし、7月の展望レポートでお示しした経済・物価の中心的な見通しも、現時点で修正する必要はないと判断しています。』

中心的な見通しよりも今はその「見通しの不確実性」の話で金融政策が地蔵になっているのですから「不確実性の低下」がどのくらいの物なのかってのを聞きたい所ですが、結局この質疑ではこの箇所でしか不確実性の話に言及していませんな。つまり以下は、

『つまり、わが国経済は、関税政策による下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、基調的な物価上昇率もいったん伸び悩む局面はあるものの、その後は 2%に向けて徐々に高まっていくと考えています。』

『もっとも、米中間の関税交渉は現在も継続していますし、各国の通商政策等が金融・為替市場やわが国の経済・物価に及ぼす影響についても、なお不確実性が高い状況が続いていることには十分な留意が必要です。』

『こうした点を踏まえ、今回の関税に関する合意を受けた企業等の対応を含め、今後明らかとなるデータやヒアリング情報を丁寧に確認し、経済・物価情勢を点検してまいりたいと思っています。(後半割愛)』

うーんこのチキンムーブ。

これがですね、「田村さんや高田さんも利上げ提案しておりますが、まあ大勢意見はもうちょっと待ちたいと思っている」ってな感じで言いだすと予告ホームランになるのですが、予告ホームランは回避した、と捉えて良いのか、やっぱりハトハトチキンなのか、というのはまあ微妙なんですけど、ただまあ以下の全体のニュアンスから言ったらまーだハトハトチキンな香りもするところではありますすくなくともこの会見では。


・ここまでの中間ラップをどのように評価するのかという質問にも初手は音無し回答

でまあ以下の質疑の中で米国の関税の影響の現時点での走りをどう評価するのか、という質問が先の方にありまして(途中にも経済の質問があったんですが全般的に今日銀大本営が利上げを渋っている政策反応関数(あるいは屁理屈)の「関税の影響の不確実性」ではない部分の質問ばっかりでしたし、全般的に今回の質疑応答は質問のキレが悪かった引用で不満が残る会見ではありましたな)、一気に10ページ(正確には9ページのケツ)にまで飛ぶんですけどね

『(問)二点質問させてください。まず、一点目ですが、米国の関税の影響について伺います。これまで植田総裁は、ハードデータがどうなってくるか、どのように出てくるかというところを確認していく考えを示されておりますが、現時点で今、日本経済への影響をどのように出ているとみてらっしゃいますでしょうか。』

いやこれよこれ、何でこの質問が10ページにならんと出てこんのよ。

『影響が出るのは後ずれしていくとの指摘もありますけれども、このハードデータに出てくる影響というのは、どのくらいまで確認する時間をかけていく方針でいらっしゃいますでしょうか。(後半割愛)』

ということでこの質問に対する回答ですが、

『(答)関税の日本経済への影響を現在どうみていて、今後どういうふうに確認できるかというご質問だったと思いますが、先ほどちょっと申し上げましたように、これまでのところ、例えば、8 月ですか、日本の米国向け輸出はかなりはっきりと減少しています。』

ほうほう。

『その少なくとも一部は、申し上げたように、それまでの駆け込みの輸出と、それがなくなってきたという反動のところが大きく出ていると思います。』

ふむふむ。

『ただ、関税率が上がったことによって、例えば、それが日本の輸出数量に大きなマイナスの影響を及ぼし始めているというところには、まだ来ていないというふうにみています。』

でもって・・・・・

『そうなるケースとしては、先ほど質疑がやはりありましたように、関税がアメリカの消費者物価に転嫁されて、それでアメリカの消費、例えばですが、が減少して、それで日本の輸出が低下するということが典型的なケースとして考えられますが、まだそこには至っていないというふうにみています。』

『今後そうなるかもしれないですし、出てくるにしてもあまり大したことはなくて済むかもしれない。そこはちょっとみてみないと分からないということでございます。(後半割愛)』

でもってその「ちょっとみて」がどの程度の期間なんだよという話は無回答。まあ回答しにくいというのも分からんではないけれども、それにしても結局こういう言い方ですと無限とは言わないけれども結構な期間このネタで「不確実性ガー」を引っ張れますし、逆にあるタイミングで突然「関税の影響が日本経済にさほど大きくないことが分かって来て不確実性が晴れた」とジャガーチェンジをすることも可能なので非常に困るんですよね。

なお、先般ネタにしました通りですが、先日の金研国際コンファランスでポルトガル中銀のセンテノ総裁は、

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/25-J-07.pdf
「金融政策の新たな課題」
2025年国際コンファランスの模様

『センテノは、中央銀行は、シンプルで一貫性のある枠組みをベースに金融政策判断を行うことが望ましいと主張したうえで、世界経済を巡る不確実性が高い状況においては、最新の情報を踏まえて政策会合ごとに判断を更新していくといった柔軟性も合わせて求められると述べた。そのうえで、政策当局者が政策判断において経済の不確実性を強調しすぎると、不確実性の高まりを助長し責務を果たしていないと受けとられる可能性もあり、市場と丁寧にコミュニケーションしていくことの重要性は増していると指摘した。特に、金融政策に関する情報発信が経済主体の消費・投資行動に及ぼす影響にかんがみると、金融政策判断の根拠やそれに対する確信の度合いを丁寧に説明することがきわめて重要であると強調した。さらに、優れた政策判断には、良質なデータや、豊富な経済に関する知見、予期しない展開への備えも欠かせないと述べたうえで、新たなデータの取得やさまざまな角度からの調査・分析の重要性を指摘した。』(この部分だけ直上URL先金研国際コンファランスレポートより引用)

と喝破しておられまして、不確実性なら不確実性で結構なのですが、「金融政策判断の根拠やそれに対する確信の度合いを丁寧に説明することがきわめて重要」なのであって、今の日銀大本営の説明って「じゃあ不確実性は何がどう不確実なのか、それを見るにはどのような点を見ればよいのか」というのを丁寧に説明してくれてないんですよね。

例えばの話、企業の賃金価格設定行動が下方屈曲するのが心配なんだったらその状況やら度合いを何を見て判断するのか、というのを常に説明する、みたいな話でして、会見では難しいかもしれないけど来月頭の講演ではちゃんと説明して頂きたいですよね。まあ会見の質問がもうちょいマシだったらそういう話にもなってくれると思うのですが・・・・・


・より具体的に質問されたら「予想して、われわれ動かざる”を得ない”」というポロリが出ましてですね

てな訳で12ページに行きますと「じゃあ何を見るんだよ」という質問がありましてですね、

『(問)アメリカの関税の国内外の経済・物価に対する影響を見極めるうえで、例えば 10 月の決定会合までには日銀短観ですとか支店長会議などがある。それから 10 月会合の段階で影響を見極められないとしても、その後アメリカのクリスマス商戦の影響というのが、12 月会合もしくは 1 月会合の段階で見極められるようになってくるということで、10 月会合から来年 1 月会合にかけてっていうのが、日銀の次の利上げっていうのを判断するうえで重要な会合になってくるのではないかなと思うんですけれども、この点についてお考えをお聞かせください。』

って質問されるわけですが、その回答はと言いますと、

『(答)アメリカの関税のアメリカ経済への影響を判断するのにどういうデータがどういうタイミングで重要かということですけれども、これは次々といろんなデータが出てきますし、消費者物価への関税の転嫁、ゆっくりですので、どこまでみれば大丈夫かということもなかなかはっきりしないと思います。』

永久に分からんのかよ、と言いたくなりますが・・・・・

『ただ、最後までみなければ分からないというわけではなくて、逐次入ってくる情報に基づいて、全体の姿がどういうふうになりつつあるかということを予想して、われわれ動かざるを得ないんだと思います。』

この「予想して動かざるを得ない」っていうのが色々と味わいがあるなと解釈した訳ですが、まずそもそも論からして、金融政策というのは発現効果にラグがあるものですし、経済や物価ってある程度の慣性がついているものですし、それに金融政策ってのは経済のアップダウンをスムージングするのが本来の役割の一つである訳ですからして、「予想して、動く」ってのは本来当たり前の話な訳なんですよ。最後まで見てから動いていたらそれは常に金融政策対応がビハインドしてしまうので、むしろ経済の振幅を無用に大きくするダメダメ金融政策なんですから、植田先生ともあろうお方が「を得ない」って言ってしまうの何ちゅうことやと思ってしまう訳ですわ。

でまあそういうそもそも論を植田さんが分かっていない訳も無いのですが、一方でハトハトチキンの面目躍如という勢いで金融緩和度合いの修正を渋っている、というのもあるわけですが、本人にその認識が無いならばここで「予想して動かざるを得ない」とかいう言い方にならないんじゃないかな、と思うのですよ。まああくまでもアタクシの妄想の世界ですけどもね。

つまり、「そうは言っても全部見極めるとか言ってると政策が本当にビハインドするんじゃなかろうか」という意識があるからこそ「を得ない」になってしまう、と考えますと植田さんも背中さえ押されれば利上げOKとなるでしょうな、とも思われる訳ですよ。問題は何が植田さんの背中を押すか、なんですけど、まあここまでも結局のところなんかに背中を押されて政策修正していたので同じっちゃあ同じかもしれませんけど笑、「動かざるを得ない」と言っている辺りに「そろそろマズイかな」という自覚はあるんだなと思ったのですがどうでしょうかねえ(^^)。

でもって回答の続きですが、

『そういう予想にある程度確度、そういう言葉をいつも使って恐縮ですが、が持てれば、大体関税の影響はこれくらいだということを頭に置いて、その他の日本経済の動向とか政策の判断をしていけるということだと思います。』

結局のところこの「予想」とやらが「お気持ち」の世界とあんまり変わらんじゃんという風にしか見えないのがセンテノ総裁もガッカリと言った所ですが、

『例えばクリスマス商戦でも、日本からの船便の荷動きですか、こういうのをみることでもある程度情報が分かるわけでして、それで十分と言ってるわけではないですけれども、いろんな情報が次々に入ってくるということではあります。』

ナンジャコリャという感じですが、要するになんかもう何ぼでもこじつけて「不確実性が後退したので緩和修正します」ってのは言えるというお話をしているのに等しくて、つまりは繰り返しになりますが、ハトハトチキンの背中さえ押されれば、というお話でもあるのかなあとは思いました。


・最後の質疑で利上げの距離の要因として「物価」に対しても言及

最後の質疑の前半部分になりますので14ページになるんですけどね。

『(問)もう少し利上げまでの距離ということについてお伺いしたいんですけれども、もちろん不確実性というのは依然存在するわけですが、前回会合の後でもその確度っていうのは少しずつ高まっていると、見通し通り来ているっていうのを、ここ数回の会合でも日銀は確認されてきてます。そういう意味では、利上げまで少しずつ日銀は前進していると考えていいのかどうか。』

そうですよね。日銀どうせ利上げの時にジャガーチェンジするのが仕様ではあるのですが、ゆうてこの点はちゃんと確認して頂かないといかん訳でして、

『というのも、今日お二人の審議委員の方も政策維持、金利維持に反対されています。そういったことも含めてお願いしたい。(後半割愛)』

『(答)利上げの判断ですけれども、これは今日お話してきたことの繰り返しになりますけれども、関税政策の、特に下振れ方向での日本の景気・物価へのリスクがどれくらい顕在化するかということ、それから逆方向では食料品価格インフレが見通し通り収まっていくかどうか、こういうことを丹念に点検していくということになるかと思います。(後半割愛)』

まあ元々物価の質疑が少なかったのもあるにはあるんですけど、今回の利上げ提案した人たちは「不確実性云々」ではなくて、「物価目標がおおむね達成(高田さん)」、「物価上振れリスクが高まっている(田村さん)」で提案している訳ですので、実は大本営屁理屈部の屁理屈とは別口の物価という王道理屈を出してきているんですよ。

なので、利上げの距離に関して言えば、高田田村両委員の利上げ理由からすれば物価上振れリスクも利上げの距離に影響するんですから、これは質問がナイスだったと思いますけれども、植田さんもさすがにちゃんと回答してるじゃん、と思いました。


・ETFに関する質疑はグダグダでして100年計画とかいうのがそもそもアレという話ではありますな

一方で今回ETF売却計画に関してもああだこうだと質問されていましたが、

『(問)(前半割愛)二問目は、ETFとJ−REITの売却方針についてお伺いします。株式市場では日経平均が最高値を連日更新している状況にあります。このタイミングで売却を決めた理由を教えてください。また、ETF、J−REITをこのペースで売却した場合、全てを売却するまでにそれぞれ何年かかるのでしょうか。この点も踏まえて、日銀が金融政策の一環としてETF、J−REITというリスク性資産を大量に買い入れたことの是非について、どのようにお考えでしょうか。』

これは良くまとまった質問です、ちなみに幹事社質問ね。

『(答)(前半割愛)それからETF等の売却方針についてですが、これについては、まず昨年 3 月に新規買入れの終了を決定した後、処分のあり方について検討してまいりました。』

とのことですが、この質疑の回答および後の方の質疑で言ってたETF買入の意義からしたらもっと前に買入の停止が出来たはずなんですが、その話のツッコミは結局無かったのは残念ですね。

『この間、今年の 7 月に、金融機関から買い入れた株式の処分が完了しましたが、その過程でETF等の売却を進めるうえでの有益な知見が蓄積されたほか、』

先日も書いた通りで、「その過程」って随分前からやっているものなので、すなわち黒田総裁になってからの2倍2倍を皮切りに調子に乗って買入規模を馬鹿みたいに拡大した時点で、「この調子で残高を拡大させたら出口が50年100年掛かることになってしまう」ってのを分かって黒田は悪乗りにも程がある買入拡大を実施した、ということになるとしか言いようが無いのですが、この点について植田総裁からなんか一言欲しいですよね。

『それを踏まえた実務的な検討にもめどがついたことから、このタイミングでETF等の処分の開始を決定することが適当であると判断致しました。』

金融機関保有株式の買入と同じペースでしか売却できないということなので金融機関保有株式買入分の売却が完了するまで開始できなかった、と言いたいんでしょうけれども本当にそうなのかという話だし、それが分かっているんだったら黒田のETF買入の野放図な拡大は以下同文という所ではあります。

まあペースがこれじゃないと売れない、というのであれば

『特定の株価水準等を念頭に置いての判断ではございません。』

ということかも知れませんが、だったらそういう風に説明した方が分かりやすいじゃろという話で、「金融機関保有株式の買い取り分の売却と同規模で実施したいから売却完了まで待ちました」で良かったと思うのですけどね。

『それから売却に要する期間ですが、今回決定した売却ペースで売却するとした場合、ETF、J−REITともに、単純に計算すれば100 年以上かかることになります。』

これをシラフかつ真顔で言うのってどんな気持ちなんでしょうかねえ・・・・・・・・・・・

『買入れの評価ですけれども、ETF等の買入れは、市場のリスク・プレミアムへの働きかけを通じて、市場の不安定な動きが企業や家計のコンフィデンス悪化につながることを防止し、経済・物価にプラスの影響を及ぼすことを目的としたものです。』

だったら何で株価がバンバン上がってからも継続していたんでしょうか?????

『こうした施策は、2%の物価安定の目標を実現するための大規模な金融緩和の一環として、必要なものであったと認識しています。』

当初は必要だったがやりすぎだったとか死んでも言わないのは日銀の一番悪いところ、というかジャパニーズ組織全般に言える一番悪い所でして、FEDみたいに「メイクアップストラテジーは間違いでした」ってきちんと言う(しかもパウちゃん自分の時にやった話ですよね)ことができないもんだから黒田の無茶苦茶政策を全部是とした前提で動くという事になるわけで、そうやって多角的レビューもやっているもんだから結局前の政策のスクラップをできなくてグロテスクなものが残り続けるという結果になっているんですよね。

『また、リスク・プレミアムに働きかける効果を十分に高めるためには、相応の規模のETF等を買い入れる必要があったと考えています。』

それは当初だけじゃないですか??

『他方で、こうした施策を終了し、ETF等を売却する局面では、市場に対する攪乱的な影響を極力回避するよう、少しずつ処分を進めていくことが適切であると考えています。』

と言ってますが、そもそも中央銀行がETFを購入するという形で上場企業への優遇政策をとる、ということ自体が資源配分に対する恣意的な介入を行っていることでありますが、そっちの方の問題点について触れないで株価を下げたくないでござるから100年かけて売却しますとかいう一読しただけ遼東半島租借もビックリの措置を打ち出すのは何のギャグなのかというお話ではあります。


・100年かけて売却って無責任にもほどがあるだろという質問は良かったですがもう一つ踏み込んだ更問が求められましたな笑

ETFに関する質問でこれまた最初の方の質問で4ページになりますけど。

『(問)(前半割愛)二点目はですね、またETFなんですけれども、単純計算、同じペースで売却していくと、100 年以上かかりますと。今回政策を決められた当事者としてですね、まさにもういらっしゃらないということなんですけども、どういうふうな政策決定の責任を負うのかっていうところについて、そういった意味では、100 年かけて売っていくのか、どちらかというとペースを速められるんであればもうちょっと短くしていきたいというお気持ちなのか、その点を教えてください。』

まあ売却決めないで次代に先送りするよりはマシなのですが、ゆうて100年計画は無責任だわな、と思いますので「どういうふうな政策決定の責任を負うのかっていうところについて」は良いツッコミな訳ですな。

『(答)(前半割愛)それから、私どもの現在のボードメンバーの任期を越えて、非常に長い期間がかかる政策についてどういうふうに責任を負うのかというご質問だったと思いますが、もちろん文字通り最後まで見届けるということはできないような内容ではあるわけですが、こういう意思決定に至った経緯、それから、どういう基本方針でやっていくのか、そういう考え方をきちっと残しておくことによって、後を引き継ぐ新しいボードメンバーが次々にこの提案を実行していってくださるというふうに考えています。』

まあ決めただけはマシなのですが次代に丸投げする気満々という感じですけど、せめて植田さんの任期中にペースを4倍速くらいまでは上げろよ(4倍速してざっくり30年くらいの筈ですが、それならまだ一世代の間に解決するってイメージになるけど、100年は遼東半島租借状態じゃろというお話な訳ですから)とは思います。

しかしまあ何ですな。本件って結局は黒田の残した飛んでも無い聳え立つ糞便の山な訳でして、むしろ「このような途方もない期間にわたらないと売却が完了しないような資産を積み上げてしまった黒田総裁に対して何か言いたいことは無いのか」と質問して欲しいですね。植田さんが何と回答するのか見てみたいですけどガハハハハハ。


・とは言えさすがに植田さんも「この施策はイカンっすよ」と思っているのが伝わる質疑応答がありまして

『(問)私からも二点ありまして、一点目はETFの売却、100 年以上かかるということなんですが、その間にですね、金融緩和がおそらく必要になる局面というのは必ず訪れると思うんですけども、その際に売却をしているETF、J−REITを再び緩和手段として活用するということが、普通に考えれば難しいと思うんですけども、そういうことも考えられるのか、ETF売却(引用者注:ここは発言ママですけど購入の積りで言ったんだと思います)の緩和手段としての有効性も含めてお願いします。(後半割愛)』

『(答)将来のどこかで、金融政策上の観点から、ETFの購入ペースを変更する可能性があるかというご質問だったと思いますが、前半は。それは現時点では考えていません。(後半割愛)』

まあこれ「売却」って言ってたからそういう回答になってしまったのですが、質問者が訂正を入れまして、

『(問)すいません。一点目なんですが、今後緩和が必要になった場合に、ETFをまた再び買うという選択肢はあるのかということをお伺いしたかったんですが。

『(答)現状では、それは視野に入れていません。』

まあETF購入自体は麿の時におっぱじめた政策で、あれもどうかとは思うものの、クレジットスプレッドが理不尽に拡大した時に「バジョット・ルール」の精神で社債やCPの購入を行う(リーマンショックの後に行われた社債やCPの購入は「クレジットスプレッドがノーマルな状態に戻った時には日銀に売却する意味がなくなるような仕組み」で設定されていたので時限措置で済んだ訳です、その後のCP社債買入は別ですので念のため申し添えます)のと同じように、あくまでもバジョット・ルールに準じたような仕組みであれば、何ならエクイティの方がシクリカルには中銀財務に負担をかけにくい可能性すらある(ただしバジョット・ルールではない不良物件を買ったらアカンのだが)という考えは無くは無いので、まったく買わないと明言することも無い気もせんではないのですが、まあ今回の100年計画とかいうのを出している中で「将来買入を再度使うかもしれない」というのはさすがに言いにくいのでしょうな。

とは思いましたが、さらにアタクシが妄想をたくましくしながら思ったのは、やはり植田さんこの「100年計画」を出すにあたってはさすがに忸怩たるものがあって、それがゆえに「買入の再開は視野に入れてません」ってスパッと言ってしまったのかと思うと味わいがあるなと。


・そもそも後始末に100年掛かるような政策が適切なのかという質疑

これは最後の方になりますけど。

『(問)ETF、J−REITで、売却をするのに 100 年以上かかるということですけれども、国債はもしかすると 100 年かけても処理できないかもしれません。こういうその何世代もかけて後始末をしなければいけないような金融政策っていうのは果たして中央銀行に許されるんでしょうか。』

まあ国債は一番長いので40年だから何も買わなければ40年後には無くなりますけどそれは兎も角。

『(答)これは、そういういろんな問題を抱えているということは十分に認識したうえで、私どもは今日、例えばETF等の処分を開始するという決定をさせて頂いたところであります。全体像の評価は、先ほども申し上げましたが、処分がある程度進んで、当初のメリットと、処分していく過程がどれくらいスムーズにいったか、というようなことをまとめて総合的に評価するということにならざるを得ないのかなというふうに思います。』

「処分していく過程がどれくらいスムーズにいったか」じゃなくてそもそも持っていることによる弊害でしょ、と思ったら・・・・

『(問)これからのことではなくて、過去十数年ですね、異次元緩和全体として、こういう後始末をしなければいけないことをやったことは、中央銀行に許されたんでしょうか。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『(答)許されたかどうかということは、私が判断できることではないと思うんですけれども、』

いやそれはお前判断しろよと思いますがチキンさんですからねえ、というのは兎も角として

『その政策全体の評価ということは、繰り返しになりますけれども、これから出てくるかもしれない副作用を含めて評価して頂くしかないということだと思います。』

「これから出てくるかもしれない副作用」って言ってるのは言う方が当然ではあるのですが、ただまあちゃんと言えましたね、って感じでして、これ最初の回答の「処分していく過程がどれくらいスムーズにいったか」とかいう舐め腐った回答が大本営の想定問答で、「これから出てくるかもしれない副作用」というのが植田さんの本来の思いなんじゃなかろうか、とこれまた妄想をかなりたくましくしておりますが、そんな妄想もしてしまいましたとさ。

ということでもうお昼になりますがネタが渋滞気味なので祝日ですが更新させていただきましたとさ。








2025/09/22

お題「MPMの市場の反応メモ/FOMC記者会見で「物価安定重視」を明確に示した象徴的な発言などをちょっとだけ引用」

日本テレビ=読売の調査なだけにここで進次郎優勢と来るとなりますと・・・・
https://news.ntv.co.jp/category/politics/ad5d880cdfd640aeb9c7d05b95108255
【独自】小泉進次郎氏が32%で1位 “党員・党友”電話調査 自民党総裁選
日本テレビ放送網
2025年9月21日 18:27

その進次郎は物価高対策で補正予算だの税収上がった分で成長戦略だの言ってるのがアレ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-20/T2PW74GOYMTC00
小泉農相、物価高対策で補正予算- 政府・日銀は成長へ共同歩調を
伊藤純夫、梅川崇
2025年9月20日 10:14 JST 更新日時 2025年9月20日 13:04 JST

税収上がったからどうのこうのってみんな言ってるんだが、税収の方は先行して増えるけど一方で予算執行に関する経費(ついでに予算執行じゃないけど国債利払い費用とか)も上がるっていうのお前ら忘れてるんじゃネーノって思う訳ですがインフレ対応ができてない連中だわとしか。


〇利上げ待ったなし(どう見たってこれで最大引っ張っても来年の1月でしょ)ということで債券ちゃんは・・・・・

てな訳で決定会合に関しては会見が例の如くで、「利上げしない理由」とか「先行きの不確実性」に関しての説明が植田さん妙に流暢なのですが、利上げに関する話になると説明の威勢が悪くなるように聞こえていたので、それが相変わらずのハトハトチキンだわという話ですが、ゆうてこのどさくさに紛れて(100年プランは真面目にやる気あるのかレベルにしても)ETFの売却の話を突っ込みに行ったり、2名が堂々の利上げ提案を出してくるという流れになってみたり、な訳でしてこんなんどう見たって利上げは最大で引っ張っても来年の1月だし、そこまで引っ張れないと考えるのがまあ順当、と感覚的には思う訳ですな。

てな訳で債券市場の動きを備忘メモ、と言ってもいつものようにロイターさんの市況記事引用になってしまうんでロイターさん毎度ありがとうございます(平伏)。

https://jp.reuters.com/markets/japan/GB5D5LKP5FM37AUUKKMGIEI3BQ-2025-09-19/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、長期金利1.64%・中期金利は17年ぶり水準に上昇
By ロイター編集
2025年9月19日午後 3:32 GMT+9

『[東京 19日 ロイター] - <15:10> 国債先物は続落、長期金利1.64%・中期金利は17年ぶり水準に上昇

国債先物中心限月12月限は、前営業日比46銭安の136円10銭と大幅続落して取引を終えた。日銀は政策決定会合で政策金利を据え置いたが、2人が反対したことを受けて早期の利上げ観測が高まり、相場を圧迫した。新発10年国債利回り(長期金利)は同4.5ベーシスポイント(bp)上昇の1.640%。』(上記URL先より、以下同様)

ってな訳でして、

『きょうの国債先物は、前日の海外市場で米金利が上昇した流れが重しとなり、売り先行でスタート。また後場に入ると、日銀が18─19日の日程で開催した金融政策決定会合で政策金利を据え置いたものの、2人の政策委員が利上げを主張して反対票を投じたことが判明 もっと見る したことがサプライズと受け止められ、売り圧力が強まった。』

ってなことですが、「利上げ提案」が「2名」いたことに加え、いままで割と音無しモードのハトハトおじさんだった高田っち(とは言えここ数回の主な意見や議事要旨では抜刀斎以外にも抜刀モードになっている人がいるのが示されていたので高田っちそろそろハトハトチキン妖術から解脱したんじゃないかというのもあったりしてた訳ですけれども)が利上げを主張した上に、抜刀斎が孤軍奮闘して抜刀しているのの助太刀どころか「物価安定目標は概ね達成したでござる」とかガソリン背中に背負って松明持って突撃してきた、というジャガーチェンジっぷりが「キマシタ」感を強くしたのですな。

あと今回引用していませんが、高市さんが財政規律の話をしてたりして(今回は本命に近いだけにさすがに言ってることが前回対比穏当になっているし、何なら出す予定だった高市ブックも出てこないしなのだが、経済ブレーンとかいうのがアレとかアレとかなのでねえ)、なんか首相変わってトラスショックとかにならないんじゃ無いのというのもあるらしく(ワイは信じてないし何なら進次郎でも財政ポピュリズムやらかすリスクはありそうと思うけど個人の偏見ですので念のため申し添えます)、イールドカーブがとてもお洒落なことになっておりました。

『TRADEWEB  
      OFFER  BID   前日比 時間
2年    0.911  0.918    0.038 15:12
5年    1.193   1.2    0.048  15:12
10年   1.634  1.642    0.042  15:15
20年   2.623  2.63      0   15:13
30年   3.151  3.165    -0.029 15:14
40年   3.372  3.384   -0.057  15:16』

見事なツイストフラットでして、2年やっと90bpまで来てくれましたか、ってなもんや三度笠な訳ですけれども、超長期の後ろ強いのもクソワロタという感じではあります。

まあアレですよね。要は日銀が利上げを(物価情勢対比で)やたら渋った上に、先行きの利上げパスも全然示さないで(中立金利水準が分からんという意味で示せないのは分かるんだが今の金利が低すぎなのは明確なので「徐々に利上げしながら中立金利水準と思われるものを探っていく」という説明でもすればよかったのですがそれすらしないですからね)本来物価安定目標達成したら政策金利幾らになる、みたいなことから考えられる短期金利が想定できないもんだから中短期の金利が馬鹿低いままになって売り圧力が超長期に掛かっていたのが、「正常な金融政策への前進」を見てすこし是正された(今後も是正されるとは言ってない)というお話なんでしょうな。


なおここで短国ちゃん3Mカレントあたりの引値水準を確認してみましょう

https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(9/19引値)
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.445
国庫短期証券1331 2025/12/15 平均値単利 0.445
国庫短期証券1333 2025/12/22 平均値単利 0.455←カレント3M
国庫短期証券1334 2026/01/07 平均値単利 0.450←金曜日入札の新発WI

(9/18引値)
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.445
国庫短期証券1331 2025/12/15 平均値単利 0.445
国庫短期証券1333 2025/12/22 平均値単利 0.455

・・・・・・・変わっていないですなハーコリャコリャという所でして、さすがは貫録の短国という感じですし、(そういやすいません金曜の新発は年末越えでしたね)WIでの値段なので追い風参考記録とは言え(そもそも短国の引値自体が参考記録とかいう説は大有りだがw)年内償還の新発よりも引値は強くしているのがチャーミング(年末越えなのでプレミアムが付くのはあるんですが足が2週間以上長くなるので利上げ織り込むんならそれを本当は考えないといけませんがな)となっていますし、大体からして10月利上げになったら後半丸々新金利じゃろというようなこともなく、決定会合前と決定会合後で同じ引値とかいうのはナンデスカコレという感じですな。

まあいつもの避難民ムーブなのか、単純に流動性が無いとか流通玉が乏しいのかよくわからんですが、相変わらずのお値段になっているなあ、というのは把握しました。


〇パウちゃんのFOMC会見ですが今朝はワシのお時間の関係上イイハナシダナーなのを2つだけ引用します

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20250917.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
September 17, 2025


・二度使っている「no risk-free path」

最初は11ページのSTEVE LIESMAN記者の更問に対する回答の中にありまして、

『CHAIR POWELL. You know, it is such an unusual situation. Ordinarily when the labor market is weak, inflation is low; and when the labor market is really strong, that's when you got to be careful about inflation. So we have a situation where we have two-sided risk, and that means there's no risk-free path. And so it's quite a difficult situation for policymakers.(以下略)』

次は20ページのCLAIRE JONES記者の質問に対する回答の中にありまして、

『CHAIR POWELL. (こちらは回答の最後部分です、前の部分割愛)But from a policy standpoint, the standpoint of what we're trying to accomplish, it'schallenging to know what to do. There as - as I mentioned earlier, there are no risk-free paths now. It's not incredibly obvious what to do. So we have to keep our eye on inflation. At the same time, we cannot ignore and must keep our eye on maximum employment, which is - those are our two equal goals. And you will see that there are just a range of views on what to do. Nonetheless, we came together today at the meeting and acted with a high degree of unity.』

物価上振れと雇用下振れ(=景気下振れ)リスクのある中で、リスクフリーな政策パスは無い、って言ってる訳でして、トラ公たちが能天気に利下げ利下げと喚いているけど物価高のリスクだってあるじゃろ、というお話を思いっきりしている訳でして、なるほど会見でバンバン利下げには慎重という見方されるわな、とは思いましたし、なんか様子見地蔵しているだけで基調的物価が2%じゃないからヨシ!(現場猫イラスト割愛w)みたいなどっかの誰かさんはよくよく考えて頂きたいものだ、と思ってしまいました。まあ今回会見がイマイチとは言え、この後大阪講演もあるのでそこでの植田さんの良いジャガーチェンジに期待したいとは思っているけど。


・物価安定が長期金利の安定や最大雇用の実現にとって重要という説明

23ページになりますがJENNIFER SCHONBERGER記者がミラン理事の「長期金利の安定もマンデートじゃ」と言っていることに対してどう思うかという質問がありましてこの回答がこれまた秀逸でして、

『CHAIR POWELL. So we always think of it as the dual mandate, maximum employment and price stability, for a long time, because we think moderate, long-term interest rates are something that will result from stable inflation - low and stable inflation and maximum employment.』

イイハナシダナー(;∀;)

こちらは短答なので以下の部分も引用しますが、

『 So we don't - we don't haven't - we haven't thought about that for a very long time as a third mandate that requires independent action. So that's where that is. And there's no thought of - as far as I'm concerned - there's no thought of considering that - you know, considering that we somehow incorporate that in as something in a different way.』

ということで、物価の安定がとにかく一番で、それが達成できなければ長期金利の安定だって雇用の安定だってうまく行きませんよ、って話をしている訳でして、特に長期金利に関しては別にこのために独立した手段を取る必要なし、とド正論パンチをかましておりまして大変に立派だと思いました。

てな訳で今朝の方は簡単ですいませんすいません。










2025/09/20

お題「これは面白決定会合でしたので土曜の昼に更新させていただきます(こりゃ10月利上げかいな)」

政策金利の件とETFの件と一方は面白いし一方はナンジャソラが行き過ぎてるので土曜日の朝じゃなくてもう昼ですけど更新させていただきますです、はい。

〇政策金利引き上げ提案が2名から出て高田っちが真人間に戻ったのはめでたい

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250919a.pdf
当面の金融政策運営について

まあアレです。昨日の決定会合って12時半過ぎても終わらなくて、展望会合でもないのにこれだけ盛り上がるとは田村抜刀斎の抜刀が始まって大立回りが始まって暴れん坊将軍の殺陣のテーマが脳内に流れていたのですが(嘘)、まさかの2名が反対どころか利上げ提案までぶっこむというムーブ(反対するのと提案出すのは出す方の手間が違う)が入っていた訳でございまして・・・・・・・・

・いきなり物価目標達成に向けた認識をワープした高田っちは突然真人間に戻られた模様ですw

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成7反対2)(注)。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。』

『(注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、野口委員、中川委員、小枝委員、増委員。
反対:高田委員、田村委員。』

田村さんと高田さんが反対とな、ということですな。

ちなみに声明文で表記される政策委員の名前の順序は総裁副総裁審議委員の順、かつ着任順、で着任が同時の場合は年齢(生年月日)順に表記されますが、日銀HPの組織紹介の政策委員会のところの順序は政策委員会議長の代行順位になっているのがヤヤコシヤw

なので先に高田っちの理由が出てきますが・・・・・・

『高田委員は、物価が上がらないノルムが転換し、「物価安定の目標」の実現が概ね達成されたとして、』

ちょwwwwwwwwww高田っちwwwwwwwwwwwww急に真人間ムーブwwwwwwwww

とは言いましてもまあ抜刀斎以外に物価目標達成が近いという意見は主な意見や議事要旨で見られていましたので、まあそれを言い出すなら高田さんしかいない(野口さんはリフレ残党だし中川さんは腹話術人形だし小枝さんも残念ながら案山子っぽい)というところではありましたけれども・・・・・

『田村委員は、物価上振れリスクが膨らんでいる中、中立金利にもう少し近づけるためとして、』

でもってお二方ともにただの反対ではなく、

『無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.75%程度で推移するよう促すとする議案を提出し、反対多数で否決された。』

ということで利上げ提案までぶっこんできまして、利上げ提案を突っ込んでくるというのはただの反対よりも一段重みが違いますので、これはキマシタなというお話です。

でまあ田村抜刀斎の提案理由は「物価上振れリスクが膨らんでいる中、中立金利にもう少し近づけるためとして」なので従来抜刀斎堂々主張の通りの展開ではあるのですが、こちらはあくまでも「物価上振れリスク対応のために中立金利に近づける」という話で、ベースとして緩和的な状態の中での緩和度合いの調整、になっていますので、その点では従来のご主張の線ではありまして、10月の展望レポートの時に現状維持だったら抜刀しそうだなとは思われるところでした次第。

そして高田さんの理由の方がびっくらポンでして、「物価が上がらないノルムが転換し、「物価安定の目標」の実現が概ね達成された」な訳でして、「物価安定目標が達成された」にいきなりワープしましたわというお話でありますので、高田さんの場合は「物価安定目標達成=中立金利までの利上げ」という話なので、そもそも高田っち0.25%の利上げじゃ足りないんじゃネーノという位の理由になっているのでいきなり高田っち何を食ったのかという真人間への良いジャガーチェンジを行った訳で(遅ればせながらではあるが)慶祝慶祝だし、高田さんの理由で有れば最低でも1%〜1.5%程度、まあ普通に考えたら名目物価が2%で安定推移する前提だったら潜在成長率0.5%だとしても中立金利は2.5%って話になる訳で、1.5%ですら出来上がりの金利としては低いわの世界を展望しているので、いきなり後から出てきた抜刀斎を追い抜くぶっ飛びっぷりを示しておられる訳ですな、なんたるジャガーチェンジ。


・7月会合主な意見を改めて確認しますが「物価目標達成の実現」云々の意見が高田さんだったのね

ここで7月会合主な意見を改めて確認しますと、
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2025/opi250731.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2025 年 7 月 30、31 日開催分)1

『U.金融政策運営に関する意見』を改めて拝読しますと、

『・ 米欧と異なってわが国の政策金利は中立金利を下回っているとみられるため、今後も可能なタイミングで利上げを進めていくべきである。日米関税交渉の妥結に対して株式市場がポジティブな受け止め方をしている中、過度に慎重になって、利上げのタイミングを逸することにならないよう、留意する必要もある。』

って意見の他に、

『・既に物価が上がらないノルムが転換し、中長期のインフレ期待も引き上がる中、物価上昇の二次的影響が生じやすく、基調的な物価の上昇が生じている。インフレに伴い家計の生活実感が下押しされ、物価の上振れリスクを重視せざるを得ない局面にある中、今や、物価目標の実現を見据えたコミュニケーションも念頭に置く段階に入ったと考える。』

ってのがあって、どう見てもこれは(字数的に)1名の意見じゃなくて2名の意見ですよね、という感じだし、1名は田村さんだとしたら残り1名って消去法で考えてみたら高田さんか増さんしかいないのですが、着任直後の増さんがいきなりここまでギア上げてぶっこんでくるとは思えず(ぶっこんでくるなら就任記者会見がもっと派手なものになっていた筈)となるとどっちかが高田さんですなあ、とまあそういう感じだったと思うのですよ。

・・・・でまあ物価目標の実現ってのを今回ぶち込んできたのが高田さんな訳でして、提案の趣旨もそういうお話なので、どうみても上記2本中後者が高田さんだった、ということで確定の赤ランプが点灯する訳でございます。

てな話なので、あとはこれまでのキャリアを勘案した時に発言の重みがやっぱり増さんが一番重くなるわなと考えますと、これはもう審議委員的に言えば増さんがこのお二方に賛同すれば執行部にとってもかなり重い反対および利上げ提案になる、という話になろうかとは存じます。まあ増さんが何をお考えかは知る由もありませんけれども、主な意見(と7月会合議事要旨)が注目される所です。

しかしまあ何ですな、高田さん物価目標達成が視野に入ったとか確信度がどうのこうのとかいうのを盛大にかっ飛ばして「概ね」付とは言え、「物価目標の達成」という途中すっ飛ばしていきなりゴールインといううのをぶち込んできましたなと思いますけど、まあ冷静に考えてみれば「ゼロ近辺で均衡していた期待インフレを2%近辺にシフトアップする」っていうのはそんなにチンタラとリニアにうごくようなものではなく、一旦インフレ期待を不安定化させてからシフトアップする、という過程を経る(というのはブラードの複数均衡論みたいな話になるのでもちろん見解の分かれる所ではありますが)となりますと、一気にシフトアップするような類のもんだから、急速な”ノルム”の変化が起きるのでそら急に達成って話になりますわな、ということなんでしょうかね、この一見ジャガーチェンジにしか見えない高田さんのムーブをちょっと真面目に類推した場合の高田さんのロジックとしては(ということで来月の講演を期待しています)。


・10月にやたらめったら講演がぶちこまれているのもむべなるかなということですかねえ(陰謀論)

先般ネタにしましたご案内の通り、

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・記者会見・談話

今後の講演・挨拶等の予定
    日程        講演者等        講演内容等
2025年 9月29日   野口審議委員   札幌商工会議所における講演
2025年10月 2日    内田副総裁   全国証券大会における挨拶
2025年10月 3日    植田総裁    大阪経済4団体共催懇談会における挨拶
2025年10月16日  田村審議委員   沖縄県金融経済懇談会における挨拶
2025年10月17日   内田副総裁    全国信用組合大会における挨拶
2025年10月20日  高田審議委員    中国経済連合会における講演

に加えて10/8辺りにパリ・ユーロフォーラム(という名前だが会場は東京)での植田総裁挨拶ってのも入るという報道があったのですが、高田さんと田村さんの講演ってのがもう思いっきり「私は如何にして心配するのを止めて利上げを主張するようになったか」というお話になる訳ですが、そういう日程がぶっこまれているのにも味わいがありますなとは思いますな、という陰謀論ですなw

まあそれはそれとしまして、利上げには慎重な野口さんの講演が29日にあるので、野口さんが物価安定目標の達成についてどの程度の認識を示すのか、というのも注目されますし、もちろん2日の植田総裁の講演は思いっきり注目される、ということになりますな。まあその前に昨日の会見も大事ですけどw


〇現状維持だけに今回経済物価の現状認識あんまり変わらんのだが「関税の影響」への言及あり

今回声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250919a.pdf

7月展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507a.pdf

『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(7月展望)

ということで比較してみます。

・現状認識:「関税の影響」の言及が加わりました

『海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みとその反動の動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。』(今回)

『海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みとその反動の動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。』(7月展望)

同じですなあ。

『企業収益は、製造業において関税による下押しの影響がみられるが、全体としては高水準を維持している。設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(今回)
『企業収益は改善傾向にあり、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(7月展望)

この企業収益の部分が微妙で「製造業の関税の下押しが見られる」ってのが入っているのですが、一方で「改善傾向」の文言が「高水準を維持」になっていますので、これはまあ読み方次第になりますが、「関税の影響がみられる」というネガ要素と、「でも高水準を維持」というポジ要素があって、これは「関税の影響が出てきたものの大したことないという判断」だと思って読むと結構なポジコメントにも読めますが、この辺は(月曜に会見録出るのでまたやりますけど多分火曜にw)会見ではそんなにポジっている説明では無かったなあというのが感想です。

『個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(7月展望)

同じですね。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(7月展望)

これも同じ。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足もとでは2%台後半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価格上昇の影響等から、足もとでは3%台前半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(7月展望)

ここは実数字以外の表現に変化なし。ということで現状認識に関しては企業のところの関税の影響の言及部分です、本来はポジのような気がしますが会見での植田さんの感じはそういう感じでもなかったかなとは思うのですがそこは会見録見て改めて。


・先行き見通し、リスク要因:

『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。』(今回)

『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。』(7月展望)

順当に全文一致ですな。

『その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(今回)
『その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、わが国経済も成長率を高めていくと見込まれる。』(7月展望)

全文一致みたいなもんですね。

『消費者物価(除く生鮮食品)については、このところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(今回)

『このところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(7月展望)

ということで物価見通しの最初も同じですし、

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回)

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むことが見込まれる。もっとも、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持され、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、基調的な物価上昇率は徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(7月展望)

ここですけど、この中にある「賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持され」に関しては展望レポート基本的見解の本文だとこの記載があるのですが、「概要」(いわゆる鏡)ではこの記載がないので、ここは別にメカニズムがどうなったとかいう記述を削除したという訳でもないとは思うのですが、紛らわしいから本文と平仄取って欲しかったところですな。

でまあその部分を除くとやはり7月展望と実質全文一致みたいなもんですね。


『リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は高い状況が続いており、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。』(今回)

『リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は高い状況が続いており、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。』(7月展望)

この部分に関しては7月展望の鏡(概要)との比較になるんですけれども(本文のリスク要因の説明は長い)、こちらも全文一致。

ということで関税の影響について「まあ大したことないっす今のところ」というのが加わっただけですね、現状維持だからそうなるのはそうなるんでしょうけど、7月会合から1か月半経過してるんだからもうちょっとアップデートというのは無いのかと小一時間問い詰めたいところではありました。


〇100年計画とか遼東半島かよというETF処分計画

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250919a.pdf

『2.日本銀行が保有するETFおよびJ−REITについて、市場に攪乱的な影響を与えることを回避する等の基本方針を踏まえ、「金融機関から買入れた株式」の売却1と同程度の規模で、市場への売却を行うことを決定した(全員一致) 2 (別紙参照)。』

最初「売却する」と出たからおおおおおお!と思ったのですが、その規模がご案内の通りでして、なんだよこの100年計画って話だし、まあ色々とツッコミどころは多い計画ではあります。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250919b.pdf
ETF等の処分に関する決定(2025年9月金融政策決定会合)


・「必要な政策を遂行する際に日銀の財務に配慮してその遂行ができないという事は無い」じゃなかったんでしたっけ

『処分の基本方針』の2番目ですけどね、

『日本銀行の損失発生を極力回避する』

って何ですかって話でして、いやまあ別にわざわざ爆安価格で売らなくても良いと言ってしまえばそらそうではあるのですが、そもそもおまいら国債残高が莫大な事によって今後日銀当座預金の付利との逆ザヤが発生する件については「必要な政策の遂行のために日銀の財務に配慮して行わないことはない」だったのに何でこっちは急に「損失発生を極力回避」になるんだよダブスタにも程があるだろ、と思いました。


・「金融機関から買入れた株式」の処分の経験」を踏まえて売却するんだったら黒田の野郎が買いすぎにも程があったんじゃないですかねえ

100年以上かかるとかいうギャグなのかというような売却計画になっていまして、これはどこの遼東半島租借ですかと関東都督府もビックリの展開になっている訳ですが、この部分のポンチ絵を見ますと、

『金融システムの安定確保のために買入れた株式を、市場に大きな影響を与えることなく、本年7月に処分を完了』

したので今回のような計画になった、という説明になっているのですが、この処分って延々と昔から実施しているものなのですが、その経験と同じように売却する、ってのが最初から分かっているんだったら、何で黒田時代に馬鹿みたいに買入を増やしたのかという話で、黒田のヤローは100年間も残るような無責任極まりない買入拡大を確信犯で行っていた、ということになるんですよねこの理屈だと。

まあそれに手を付けているの植田さんなので先送りしないだけマシではあるのですが、これつまりは黒田緩和の後世に聳え立つクソの山ということだし、黒田は無責任極まりない買入拡大をしていました、って宣言しているような宣言をしているんだったらまあそれはそれで褒めて遣わすんだが、そこはまたウニャウニャとしているのがどうにも歯切れが悪いですね〜。


・まあさすがにこのまま100年計画ってことは無いと信じたいんですけど

てかね、100年ってお前TOPIX構成企業も入れ替わるしJ-REITの物件なんか全部耐用年数オーバーじゃろというお話なので、とりあえず初手だから100年とか言ってるけど、普通に考えて1桁おかしいわという話で、何ぼ何でもこの後売却は加速されると信じたいんですがさてどうなるやら・・・・・・・


・一応妄想というか陰謀論的に考えますと・・・・・・・

この100年計画とかいうどう見ても悪い冗談にしか見えない計画ですが・・・・・

アタクシの無い頭を捻って考えてみたのですが、まあこれは「日銀保有のETFを財源に無駄遣いするぞヒャッハー」と言ってる主に永田町方面およびその取り巻きの屑野郎連中を黙らせる施策、と思えばそうなのかな、とも思ってしまったのでただの陰謀脳ですが読み筋をば。

つまりですね、ETFを政府が召し上げて財源にして、みたいな話を突っ込んでくる馬鹿どもがさらに今後増えそうな中、というのを考えた場合に、「処分していく」という方針を出すことによってそういう馬鹿のあてを外すことができるという素晴らしいメリットがありますし、しかもこの100年計画とかいうギャグのような計画を立てることによって、「一気に売却して売却益を財源に」というような夢も見れません、という意味で、これは日銀保有ETFに対する泥棒連中への機先を制するために(やや早そうにも見える)この時期にぶっこんできた(今ならまだゲル総理だからその辺も通りやすそうだし)ということなのかなあ、とちょっとだけ思いましたが、あくまでもそれはアタクシの脳内陰謀論なのでただのジジイの妄想だと思ってくださいwwwwwwwwwww

ということで、関東都督府もビックリの100年計画に関してはもうちょっと頭捻って考えてみます。

#てな訳でとりあえずこの辺で、もう昼にも程がありますがw








2025/09/19

お題「決定会合で何を言い出すかの注目点は4つほどかなあ/FOMCオープニングリマークやはり「リスクバランスで政策変更」ですが」

これはひどい
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025091800707&g=pol
物価高対策、減税論が7割超 給付派は15%―時事世論調査
時事通信 編集局2025年09月18日21時33分配信

『時事通信が12〜15日に行った世論調査で、物価高対策として何を実施すべきだと思うか聞いたところ、消費税減税が45.8%で最多だった。次いで所得税・住民税減税の28.0%が多く、減税論は合わせて7割を超えた。給付金支給は15.4%。「対策の必要はない」は4.5%にとどまった。』(上記URL先より)

さいしょこの「減税7割超」で義務教育の敗北ですわと思ったのだが、そもそも時事通信の設問がおかしいだろこんなの「円安阻止」っていう選択肢が無いのが初手から間違っとる訳でおどれら真面目に報道する気あるのかと小一時間問い詰めたい。


〇今回はお漏らしの仕様もないのでお漏らしは無いようですね(決定会合プレビュー)

日経さん
https://www.nikkei.com/

公共放送ニュースさん
https://www3.nhk.or.jp/news/

ロイターとかブルームバーグにも特になんも無いのですが、まあ今回なんかやったら日銀もたいしたもんよのうという話になるのですが、どっからどう見ても動く訳が無いので、今回の決定会合は皆様も既に同じことを言ってるとは存じますが、声明文、あるいは会見で「今後の緩和政策の調整をどうやっていくのか」というデザインがどの程度示されるのか、ということになるかという感じですよね。

でまあどうなんでしょう、結局はいつもの「政策据え置きの場合は政策据え置きの理由をこれでもかと説明した結果ハトハトチキンになってしまう」になるんでネーノという懸念をする向きの方が多いような気がしまして、たぶん円債市場の中の人の皆様の多くが考えるべき論で言ったら何でこんなクソ低金利状態にいるじゃ、という話なんでしょうけれども、ハトハトチキンのハトハト音頭を2年半にわたって見せられているので、べき論はさておいてどうせ現実はハトハト音頭じゃろ、ってことなんかねとは思うのです。

最近日銀ネタの観測記事だかお漏らし記事だか知らんけど出たときの反応見てて思いますのは、為替とかの方面だと普段から別にハトハトチキンのハトハト踊りを見ている訳ではないので、ちょっとホーキッシュなのが出てきてもホイホイと反応するのですけれども、円債ちゃんの方って「あーはいはい円安牽制のブラフね」という扱いになって来てイマイチ反応が悪い気がしますので、ハトハトチキンが市場の中の皆様のコンセンサスとなったということではなかろうかと。


ってな悪態はさておきまして、あと他に確認しておきたい(会見でその話でも出てくれないと確認の仕様は無くて今後の金懇などで説明があるかを期待したいのですが)のが幾つかあるわけでして・・・・・・

(1)「賃金と価格の好循環」というワードをいつまで使うのか、直近では段々この「好循環」を言わないように引っ込めているのですが、(これは別の流れでネタにする予定でしたけど)直近では自民党総裁選の某候補者の政策の中で「成長と分配の好循環」とかいうワードがあったやに聞いておりますが、成長と分配の循環ってなんだよという話だし、しかも「好循環」ってのにもうアホかと思った訳ですが、何でも「好循環」と行っておけば世の中上手く回りだすかのような説明に使われるようになってしまった訳ですけど、これ元はといえばマイナス金利解除や大規模金融緩和の修正を行うことに対してビビりまくった日銀が、やるべきことを先送りするために「賃金と物価の”好”循環」というありもしない幻想を振り撒いてしまった訳ですが、この「好循環」というファンタジーな言葉によって「なんか安直に物事が解決できるんだ」という安易な話になり、だからこそ隙あらば減税と交付金の話しかでてこないようなゴミクズの集団が永田町に大量発生することになっていると考えますと、この「好循環」を言い出した日銀の罪は万死に値するレベルといっても過言ではない、とまあ話が勝手に脱線転覆しましたが、完全に引っ込みがつかなくなって最近は言わなくして無かったことにする作戦のようですが、この「好循環」言ってるうちは悪循環スパイラルの懸念が高まるのですけどいつまで使うんでしょうか・・・・・・

(2)「基調的物価」の説明について、これも最近は「基調的物価」という言い方を「物価の基調」という言い方に極力置き換えようとしているように見受けられますが、先日来ネタにしました金研国際コンファランスでの議論を読むまでもなく、そもそも中央銀行が物価安定目標としているのは「ヘッドラインの総合物価が安定的に推移すること」であって、物価動向を判断する際にノイズになる個別品目の需要供給ショックや、季節性の一過性要因である供給ショックによるノイズを外してみたい、ってのでコア指数とかコアコア指数とかそういうのがあるわけですが、なぜかそことはまったく遠い所で「基調的物価とはこういうもので」とかお手盛りをおっぱじめているのが日銀ちゃんですが、この説明も「物価高対策が求められる中でなぜ日銀は物価を押し上げる政策をしているんですか」とド直球で質問されて捏ねる小理屈を聞いてみたいですな。

(3)リスクバランスについて(特に政策が遅れるリスク)、でまあどうせ1と2は蒟蒻問答しか返してこないんですけど、政策ビハインドに関するリスク認識に変化が無いのかどうか、ということについては確認したいですよね。なんかずーっと就任直後の内外情勢調査会での植田総裁の「待つことのリスクは大きくない」がそのまま引っ張られている感は強いので。


ただまあどうなんでしょうね、今時点でインフレが高止まりしているのが日銀の物価押上げ、円安推進政策によって助長されています、ってコンセンサスができない(どころか未だに「高圧経済」とか「円安は善」くらいの話が飛び交う訳ですからゲンナリにも程がある)という状態ですと、折角日銀がほんの少しの勇気(あるいは正気)を出して利上げ着手しましてもそのことは全然評価されず、その後景気がコケたら日銀のせいだって十字砲火される、となるならば、「べき論」のことをやりたくない、ってのも心情はわかる(公僕としての態度ではないと思うが)訳で、結局のところは「日銀様おねげえでごぜえます物価高対策に金融引き締めをしていただけませんでしょうか」って朝野から澎湃と声が涌きあがって来た時に千両役者としてさっそうと登場、という未来を夢見てるんじゃないですか、っていうのが(かなりアタクシの妄想とバイアスを掛け倒しておりますが)まあ今の日銀の心象風景なんじゃないのかね、と思うのです。

てな訳で、結局その「おねげえでごぜえます」になるか、その前に政治方面からケツを引っぱたかれるか、のどちらかは分からんですが、まああんまり日銀が主体的に局面を打開しにくるとは期待していません。いやまあ田村さんや高田さん(たぶん)あたりが全員の脳を乗っ取ってしまえば話は別だがw



〇FOMCオープニングリマークより少々

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20250917.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
September 17, 2025

会見文字起こしも出ていますが、オープニングリマークから少々・・・・と言っても今回のオープニングリマークはほぼ声明文の内容で来ていますので簡単に。

・政策変更は「リスクバランスの変化」による

『CHAIR POWELL. Good afternoon. My colleagues and I remain squarely focused on achieving our dual mandate goals of maximum employment and stable prices for the benefit of the American people. While the unemployment rate remains low, it has edged up, job gains have slowed, and downside risks to employment have risen. At the same time, inflation has risen recently and remains somewhat elevated. 』

ってのから始まりますが、

『In support of our goals, and in light of the shift in the balance of risks, today the Federal Open Market Committee decided to lower our policy interest rate by 1/4 percentage point. We also decided to continue to reduce our securities holdings. I will have more to say about monetary policy after briefly reviewing economic developments.』

声明文の方でも書いてありましたのでただの強調ではあるのですが、SEPでもそうでしたけれども、今回って経済物価見通しは清々しいくらいに「不変」モードになっていまして、今回から示している2028年の数値って、2027年の数値とほぼ同じで、しかもこの2027、2028年の数値ってのがロンガーランの数値にほぼ同じ、ということですので、元々FEDは「ここから先経済物価情勢は中立に向けて進んでいく」という図を描いていて、そこにどう着地させるか、という観点で物価がちと高いからやや引き締め的に運営していますよという話をしている訳ですわな。

でもって現状ですと物価がちと高いんでやや引き締め的なスタンスを維持していますが、経済(雇用)にダウンサイドリスクもある(とは言ってもメインシナリオは不変)こともあるので引き締めを多少緩めることにしますか、ってなもんですな。


・よって経済物価見通しは概ね不変

なのでその次に来る経済物価情勢の話も、

『Recent indicators suggest that growth of economic activity has moderated. GDP rose at a pace of around one and a half percent in the first half of the year, down from 2.5 percent last year. The moderation in growth largely reflects a slowdown in consumer spending. In contrast, business investment in equipment and intangibles has picked up from last year’s pace. Activity in the housing sector remains weak. In our Summary of Economic Projections, the median participant projects GDP to rise 1.6 percent this year and 1.8 percent next year, a touch stronger than projected in June.』

数字でも出ていましたが、消費がちと弱いけど企業部門が堅調で経済成長自体はOKOKって認識ですな。

労働市場に関しては、

『In the labor market, the unemployment rate edged up to 4.3 percent in August but remains little changed over the past year at a relatively low level. Payroll job gains have slowed significantly to a pace of just 29 thousand per month over the past three months. A good part of the slowing likely reflects a decline in the growth of the labor force, due to lower immigration and lower labor force participation. Even so, labor demand has softened and the recent pace of job creation appears to be running below the “breakeven” rate needed to hold the unemployment rate constant. 』

インフレの前半の所は、こういう数字があったけどこういう要因があって、みたいな話が出ていますけど、話のポイントは、「Even so」以下の部分でして、Even so, labor demand has softened and the recent pace of job creation appears to be running below the “breakeven” rate needed to hold the unemployment rate constant.って言ってて労働需要の方が弱ってきていて、この調子だと新規雇用が失職に追いつかない感じになってくるかも、というのがポイントだと思います。

『In addition, wage growth has continued to moderate while still outpacing inflation. Overall, the marked slowing in both the supply of and demand for workers is unusual. In this less dynamic and somewhat softer labor market, the downside risks to employment appear to have risen. In our SEP, the median projection for the unemployment rate is 4.5 percent at the end of this year and edges down thereafter.』

お賃金に関しては特に懸念は無い(インフレスパイラルの懸念なし)


『Inflation has eased significantly from its highs in mid-2022 but remains somewhat elevated relative to our 2 percent longer-run goal. 』

物価が若干上振れ、も従来通りの説明でして、以下の説明も基本的な流れは従来通りの物価観を示していますです、はい。

『Estimates based on the Consumer Price Index and other data indicate that total PCE prices rose 2.7 percent over the 12 months ending in August and that, excluding the volatile food and energy categories, core PCE prices rose 2.9 percent. These readings are higher than earlier in the year as inflation for goods has picked up. In contrast, disinflation appears to be continuing for services. Near-term measures of inflation expectations have moved up, on balance, over the course of this year on news about tariffs, as reflected in both market- and survey-based measures. Beyond the next year or so, however, most measures of longer-term expectations remain consistent with our 2 percent inflation goal. The median projection in the SEP for total PCE inflation is 3.0 percent this year and falls to 2.6 percent in 2026 and to 2.1 percent in 2027.』

でまああと言えばタリフの話はそんなにしていない、って所ですかね。

・・・・・ということで今日は日銀だしFOMCの成敗もあるので週末ちょっと頑張れれば頑張りたいと思います。







2025/09/18

お題「FOMCである」

寝起きかつ答え合わせ(市場の反応を見る)しないのでよろしゅうおすえ。しかも今朝は時間の都合(ただ単に寝起きが悪かっただけ)上いつもの「紙に打ち出して逐語比較」を経ないで一発比較に走りやした。

〇声明文:25bp利下げして次回以降も「検討」ではあるのですが利下げの理由は「リスクバランスのシフト」ですね

今回
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250917a.htm

7月
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250730a.htm


・第1パラグラフ:現状認識は当然下がっているのですがアタクシの印象ではあんまり下げてないなと思いました

『Recent indicators suggest that growth of economic activity moderated in the first half of the year.』(今回)
『Although swings in net exports continue to affect the data, recent indicators suggest that growth of economic activity moderated in the first half of the year. 』(7月)

経済の状況についての言及文言は「growth of economic activity moderated in the first half of the year」で、これ自体は7月から変わっていなくて、ただその状況に関して7月は「データがインディケートしている」だったのが、今回は「データがサジェストしている」なのでより景気減速の確信度が強まった、という表現になっていますが、ここはもっと弱く書くという手もあったと思うのですが、そこまで下方屈曲している訳ではないよという意思表示に
なっているのかしら。

『Job gains have slowed, and the unemployment rate has edged up but remains low. Inflation has moved up and remains somewhat elevated.』(今回)
『The unemployment rate remains low, and labor market conditions remain solid. Inflation remains somewhat elevated.』(7月)

雇用に関する文言を「ジョブゲインがスローになって、失業率は依然低水準ながらも若干上昇」という表現に変更していて、変更するのはそらまあそうでしょというお話ではあるのですが、ここもアタクシが何となく事前に考えていたほど表現を弱くはしていないなあと思いましたが、なんせ今回は一旦全文を読んで比較してからおもむろに書き出すのではなくてガチで読んだ順にキーボード叩いているので、あとになってこの理由が別に分かるかもしれません。

でまあ1パラ初見で比較した感想は(どうせ利下げしているのに)そこまで現状認識の表現を下げていないんだな、という所です、まあここから中立金利に向かって一直線とか、何なら中立よりも金利を下げる、って話ならもうちょっと弱そうな話になるのでそうじゃないのね、とは何となく思いました。


・第2パラグラフ:「経済の下方リスクが高まったと判断」という認識を示しているので「下方リスク対応で引き締め度合いの調整」ですかね

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(7月)

これはいつもの開経偈。

『Uncertainty about the economic outlook remains elevated. The Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate and judges that downside risks to employment have risen.』(今回)

『Uncertainty about the economic outlook remains elevated. The Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate.』(7月)

and judges that downside risks to employment have risenが新たに入ってまあここは分かりやすい。マンデートベースなので
雇用って書いているけど要するに経済の下方リスクが高まってきているという認識をしましましたので・・・・・


・第3パラグラフ:「リスクバランスがシフトしたので」0.25%利下げで次回以降の「追加調整」も示唆はしていますな

『In support of its goals and in light of the shift in the balance of risks, the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point to 4 to 4-1/4 percent.』(今回)

『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 4-1/4 to 4-1/2 percent.』(7月)

わーいあかり大当たりぃ〜、とかギャグを言うまでもなく、今回の利下げは「in light of the shift in the balance of risks」となっています。モチのロンですがこの先にはリセッションとかそういうリスクもあるからあ利下げが打ち止めになるわけではないところではあるのですが、ただまあゆうてこれ「経済がアジャパーなので利下げ」ではないので、この後物価がホイホイと上昇しだしたときにまた「リスクバランスがシフトしたので利下げ一旦停止」はできるような形になっている、とは思いましたので、ここまで見る段階では声明文自体は中立金利やそれ以下までの利下げを現時点では示唆していない、という書きっぷりに見えます。

まあ声明文の書きっぷりとSEPと議長会見に温度差があって使い分けているケースもあるので、これ見ただけでは市場の反応がどっちに転んだのかはよくわからんですけどね(ガチで見ていない)。

でまあガチで見ていないので次の文章に行って「ああなるほど」とは思いましたがそのなるほどとは、

『In considering additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』(今回)

『In considering the extent and timing of additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』(7月)

この先の話なんですが、前回は「the extent and timing of additional adjustments」の考慮にあたって、だったのが今回は「In considering additional adjustments 」になっているので、一応この表現が「次回の追加調整(ただし利下げと決め打ちした表現にしていない)を検討する際には」って感じでして、前回にはtimingってのがあったのですけれども、今回はそのtimingが無くなっているので、一応次回以降も「追加の調整(利下げとは明言していない)」については検討課題でっせ、ということで次回以降の利下げも検討に乗っていますよというメッセージの意味合いを持たせた表現をした(ただし正確には利下げ決め打ちではないという諸葛孔明の罠は用意している)のかなと。

『The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities.』(今回)
『The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities.』(7月)

バランスシート縮小は継続。

『The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.』(7月)

3パラの最後は2パラの頭の対句です。


・第4パラグラフ:ここは全文一致

今後はあんじょうよう見て運営していきまっせ、の文言は毎度の全文一致なのでパラをまるっと引用して並べます、

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(7月)


・第5パラグラフ:ミラン(マイラン?)理事早速登場して50bp利下げ主張ですが他は25利下げで一致か

しかしまあ政府の役職兼務で(期間限定とはいえ)理事に任命とか最早独立性も糞もあったもんじゃなくて、制度ハッキングで独裁モードとかこんなの米国4軍が以下自粛もんではないのか、と合衆国の理念も糞もあったもんじゃねえなとは思う訳ですので、短期的には横車通せても中長期的には碌なもんじゃねえなとしか思えない訳ですが票決。

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Susan M. Collins; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Philip N. Jefferson; Alberto G. Musalem; Jeffrey R. Schmid; and Christopher J. Waller.

Voting against this action was Stephen I. Miran, who preferred to lower the target range for the federal funds rate by 1/2 percentage point at this meeting.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Susan M. Collins; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Philip N. Jefferson; Alberto G. Musalem; and Jeffrey R. Schmid.

Voting against this action were Michelle W. Bowman and Christopher J. Waller, who preferred to lower the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point at this meeting. Absent and not voting was Adriana D. Kugler.』(7月)

前回25bpの利下げを主張したボウマンとウォラーですが、今回ミランの50bpに乗っかってくることは無かったようですな。だれか政策金利据え置き主張したらおもろかったのに。

とまあそんな訳で声明文自体初見での感想は追加利下げの示唆はしているものの、今回経済のシナリオ変更で利下げしているのではなくてリスクバランスのシフトで利下げしているので、そこは(この後インフレの方が上に跳ねた時のことも考えて)一応ヘッジは効かせているので、じゃかじゃか連続利下げが決め打ちなのかは微妙に見える声明文なのですが、まあこの後の物件でまた別のもんが出てくる可能性もあるので何んともかんとも笑。


・ディレクティブ:各種オペレーションやファシリティは金利フルスライド対応、取引限度額などに変更は無し

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250917a1.htm(今回)
Implementation Note issued September 17, 2025

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250730a1.htm(7月)
Implementation Note issued July 30, 2025

こちら一々引用していると時間が無くなるので引用は飛ばしますが、アタクシがざっと見た所今回どさくさに紛れてなんかいじられているかというような事案は無かったように見受けられます。



〇SEPは経済物価見通しを変えなかったですな&追加利下げは一応あと2回って話だけど物価がどう出るか・・・・・

ではみんな大好きSEPに参りましてこれまた初見です(寝起きが悪いのが悪い)

PDF
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20250917.pdf(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20250618.pdf(6月)

HTML
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20250917.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20250618.htm(6月)

引用はHTMLの方からやったりします。


・リスク認識のシフトに対応した利下げだから経済物価見通しは不変と来ましたね

『Table 1. Economic projections of Federal Reserve Board members and Federal Reserve Bank presidents, under their individual assumptions of projected appropriate monetary policy, September 2025』

成長率見通しですがメディアンを見ますと・・・・・・

              2025  2026  2027  2028  ロンガーラン
Change in real GDP  1.6    1.8     1.9     1.8      1.8
June projection     1.4    1.6     1.8   (前回無)    1.8
 
ちょwwwwおまwwwww見通し上げてるのかよwwwwwwww

ということで普段はめんどいのでかっ飛ばすCentral Tendencyを見ますと

              2025  2026  2027  2028  ロンガーラン
Change in real GDP 1.4-1.7   1.7-2.1 1.8-2.0  1.7-2.0  1.7-2.0
June projection    1.2-1.5   1.5-1.8 1.7-2.0 (前回無) 1.7-2.0   

こちらもレンジ切りあがっていましたw


失業率ちゃんですけどメディアンでこれでしてむしろ改善しているくらいの勢い(先の改善は政策金利引き下げるからその効果って理屈は有ると思いますけど)

              2025  2026  2027  2028  ロンガーラン
Change in real GDP   4.5    4.4    4.3     4.2     4.2
June projection      4.5    4.5    4.4   (前回無)   4.2   

Central Tendency見ますとまあ不変って評価ですよね

              2025  2026  2027  2028  ロンガーラン
Change in real GDP  4.4-4.5  4.4-4.5  4.2-4.4  4.0-4.3  4.0-4.3
June projection     4.4-4.5  4.3-4.6  4.2-4.6 (前回無)  4.0-4.3   


物価ですけどPCEヘッドラインのメディアンで

              2025  2026  2027  2028  ロンガーラン
Change in real GDP   3.0    2.6    2.1     2.0     2.0
June projection      3.0    2.4    2.1   (前回無)   2.0

とこれまた不変(2026が若干上がっている)ですが、ただまあここのCentral Tendencyを見ますと手前(2025)の物価見通し数値の上限レンジが少し切り下がっているのはほほーと思いました(下限も切りあがっていますけど・・・)。

              2025  2026  2027  2028  ロンガーラン
Change in real GDP  2.9-3.0  2.4-2.7  2.0-2.2   2.0    2.0
June projection     2.8-3.2  2.3-2.6  2.0-2.2 (前回無)  2.0

ただまあゆうて2026の方は上方シフトしているんですけどね。


・みんな大好きドットプロットですが

Figure 2. FOMC participants' assessments of appropriate monetary policy:
Midpoint of target range or target level for the federal funds rate 
Number of participants with projected midpoint of target range or target level

を引用してもいいんですがミッドポイントを見るのはイマイチなのでこれはPDFの方から見に行きますけど、

6月時点では
据え置き:7人
1回利下げ:2人
2回利下げ:8人
3回利下げ:2人

でしたが、今回は
そもそも利下げ反対じゃヴォケ:1人
追加利下げ無し:6人
追加利下げあと1回:2人
追加利下げあと2回:9人
中立金利であるところの2.75-3.00まで下げろやヴォケ:1人(どう見てもミランです)

という分布になっていますので、追加利下げ2回ってのがまあ一般的な解釈になるとおもうのですが、ここからインフレが上振れして頂くと大変に面白いことになるので是非その方向でアメリカン経済には頑張って(何を?)頂きたいものだと思います。

あと、今回はロンガーランの分布が変化していてこれが面白そうではあるのですが、その辺りは(アタクシの時間の都合で)明日以降にさせていただきたく存じます。

ということで今朝はこの辺で勘弁。






2025/09/17

お題「政策委委員の情報発信の日程がどうしてこうアレなのか/金研国際コンファランスネタ引っ張りましたが最終回」

金融市場(特にやらかすのはアメリカン金融市場だが)ってなんでこうアホの極みなのかと
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-11/T2FIULGP493800
自動車版サブプライム破綻、ウォール街に衝撃拡大−証券化市場に火種
Carmen Arroyo、Bella Farr、Scott Carpenter
2025年9月12日 2:41 JST

→低所得者向けローン会社、原資借り入れ担保重複の疑いで検察捜査
→「炭鉱のカナリア」ではないかという疑問、無視できないとの指摘も

『トライカラーは2007年に創業。主にテキサス州やカリフォルニア州、ネバダ州の低所得ヒスパニック系コミュニティーで、事業を展開してきた。借り手の3分の2以上が、社会保障番号を持たない不法移民と推定されるとしていた。』

『多くのサブプライム自動車ローン会社と同様、トライカラーが顧客に提供する自動車ローンの原資は、ウェアハウスファシリティーと呼ばれる与信枠を通じて銀行などが短期で融資。自動車ローン債権を束ねたABSは投資家に販売された。』

『トライカラーは複数のウェアハウス信用枠に同一担保を重複して差し入れた可能性が疑われていると、関係者らは語った。マンハッタンのニューヨーク州南部地区連邦地検が捜査を進めている。』(以上上記URL先より)

まあアレです。アメリカのこういう所業で毎度迷惑がかかる(主に規制強化)のですが、そういう規制が何でできたのか、というそもそも論を理解しないで(あるいは意図的に無視して)規制の字面の抜け穴使っておなじことやって同じように破綻するっての見るのがワイ的には3周回目か4周回目くらいに入ってきたような気がします。アメリカンは馬鹿とか言ってる場合じゃなくて金融正常化の進む日本でも起きる可能性はあるかも知れませんしおすし。


〇金懇の日程の組み方が意味不明な件について

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・記者会見・談話

『今後の講演・挨拶等の予定』

日程            講演者等         講演内容等
2025年 9月29日   野口審議委員   札幌商工会議所における講演
2025年10月 2日    内田副総裁    全国証券大会における挨拶
2025年10月 3日    植田総裁    大阪経済4団体共催懇談会における挨拶
2025年10月16日  田村審議委員    沖縄県金融経済懇談会における挨拶
2025年10月20日  高田審議委員    中国経済連合会における講演

・・・・・(゚д゚)

なんですかこの日程はという感じでして、9月から10月って1か月半しか間が無くて、展望レポートが出るのは10月会合だというのに金懇2本入っていて、大阪の奴はまあ毎度この時期にやる奴だし、内田さんの証券大会挨拶はまあどうせ3行コメントみたいな挨拶だと思うのですが、なんでまた野口さん田村さん高田さんって3発ありますのやらというお話で、田村さんの金懇という日程が最近入ってきたのですが、これがまた何で10/16とかいうタイミングになるんだよ高田さんとの日程が詰まりすぎじゃろと小一時間問い詰めたい。

いやまあ先様の都合とかもある、っていうのは分からんでもないのですけれども、だったら政策委員の皆様が少なくとも3か月に1回以上のペースでホイホイとお話をしてくれる、ってんだったらまあ良いんですけど、審議委員の場合金懇が半期に1回のペースなので、そのタイミングをもっとばらけさせて欲しい(植田総裁の大阪講演は10月の頭で固定なのでそこに近い所にわざわざ他の委員の講演機会を入れるの止めたまえとおもうんですよね、まあ証券大会は中見無い筈なのでどうでもいいけど)んですけど、どうしてちょっと目を離しているとこういう「審議委員の情報発信を極力無効化するような日程編成」を組んでしまうのが日銀大本営クオリティで困ったもんです。

という悪態なだけなんですが、逆に「これだけの勢いで政策委員の情報発信が組まれているんだったら、9月会合は政策変更なしとしても、10月の展望レポート会合に向けて利上げ実施のための地ならしを行う機会を考えているんじゃないか」と勘繰られてしまう、という変化もある訳でございまして(現にそういう意見はちょくちょく聞かれますよね)何とかならんのかねとは思ってしまいます。

まあ一番手っ取り早いのは審議委員の金懇、が日程調整大変なのなら何らかの講演会みたいなのをもっとホイホイとやっていって数を増やしてしまえば1回1回の注目度が薄まってくるという希釈化大作戦だとは思いますけどね。


〇金研国際コンファランス関連ですが最後に補足とオマケを少々

何とかFOMC前に成敗できそうで(汗)

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/25-J-07.pdf
「金融政策の新たな課題」
2025年国際コンファランスの模様
Discussion Paper No. 2025-J-7

英語版
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/english/25-E-10.pdf
New Challenges for Monetary Policy
Summary of the 2025 BOJ-IMES Conference
Wataru Hagio, Daisuke Ikeda, and Yojiro Ito
Discussion Paper No. 2025-E-10


・しかしよくよく考えたらこの論文は諸葛孔明の罠というか石兵八陣にも程がある

『6. 論文報告セッション』の『(4) Mind the Gap When Exiting Low-for-long(長期にわたる低金利からの出口と金融政策への示唆)』の補足ですけど。

『池田は、長期にわたる低金利政策が経済主体の認識や実体経済に与える影響について、理論と実証の両面で論じた8。まず、低金利を長期間維持する政策は、インフレ率が低いレジームにおいて経済を下支えすると述べた。しかし、低金利が長期にわたると、経済主体が、中央銀行が意図するよりも長く低金利が続くと認識してしまい、金融政策に対する経済主体の認識と実際の金融政策との間にギャップ(認識ギャップ)が生じる可能性があると主張した。さらに、認識ギャップがある中で金利が引上げられると、経済主体はそれを予期しない金融引締めと受けとめることになると述べた。政策は即座に変更しうるが、経済主体の認識もすぐに変わるとは限らないことから、その際に経済のボラティリティが高まる可能性があると強調した。』

ってのは昨日の再掲ですが、こちらの話って、(論文本体をまだ見つけられてないから)「経済のボラが高まる可能性がある」、という結論がどのような政策インプリケーションになっているのかが分からんのですが、昨日申し上げた通りで、「経済のボラが高まる可能性があるから日銀がチンタラと緩和修正を行うのは正しい」という話にされてしまうとそれはそれでおかしな話になるんですよね。

そもそも論として「低金利を長期間維持する政策は、インフレ率が低いレジームにおいて経済を下支えする」っての元々てめえらのやりだした話だし、出口において不整合が発生するのは元から織り込んで政策を実施していないとおかしいので、そのギャップはお前が作っているものなのに、ギャップがあるから出口に注意しましょう、ってのは結局のところ@経済学的にも自明なことを導入時に考えていない、のかA単に出口政策を渋るための屁理屈を捏ねている、のどちらかですよねってお話。

しかしまあこのネタは食いつきが良くて、フロアの質疑応答で、

『フロアから、ウィリアムズは、物価水準目標政策ルール等の新たな戦略を導入すると、認識ギャップの問題に対応できるか質問した。』(以下回答は全部割愛して質問だけ並べる)

『新谷元嗣(東京大学)は、いわゆる FG パズルに対処する手段として、FG への不完全な信認と将来の追加的な認知的割引のどちらがより重要であるかを尋ねた。』

『ロイは、コロナ禍のデータを実証分析でどう扱っているか尋ねた。』

『ゴロドニチェンコは、1 年以上先に関する FG は人々の認識や意思決定にあまり影響しないとの結果が得られた RCT に関する論文に触れ、実際の FG への信認度合いは低いであろうと述べた。』

・・・・以下延々と続く(あと5つある)のですが、結局のところフォワードガイダンス使った政策には必ず動学的不整合の問題が出口で発生する(どこかの時点でフォワードガイダンス破りをしないと政策がビハインド・ザ・カーブになってインフレ進行が望ましくない状態になる訳で、まさにUSがそれをやらかした結果として今回の政策枠組み見直しによってメイクアップストラテジー的なものを全面的に排除することになった訳です)のであって、この動学的不整合の問題って当たり前ですが解決できるのであれば、政策実務者や実務の研究者にとってはオイチイ話ではありますが、まあ世の中そううまい話はあるわけではないってお話になっていると思います。

なので、結局の問題は「Mind the Gap」以前の問題、つまりは「When Exiting Low-for-long」によって発生しうるインフレーションに対してギャップが何ぼのもんじゃいと言って適切な措置をフォワードルッキングで行うべきなのか、それともインフレ進行を許容すべきなのか、という話になりますし、もっと言ってしまえば今回のジャクソンホールのタイミングで行ったFEDのストラテジー見直しってのは、メイクアップストラテジーや平均物価目標、プライスレベルターゲットのような埋め合わせ戦略は埋め合わせの行きすぎで好ましくないインフレを招来するので良くない、という話になっていることからしたら、 Exiting Low-for-longの政策をやるべきなのかどうか、という方が本来論じられるべきお話なんじゃないのってことになろうかと。

ただまあこの「When Exiting Low-for-long」の出口問題というのはついこの前欧米で色々とワチャワチャとやって、政策ストラテジーの見直しがECBにしろFRBにしろ行われていただけに、先ほどご紹介したようにフロアから「Exiting Low-for-long」の出口の工夫の仕方(ウィリアムズの質問にあるような)の方向に話が進んでしまうのは止む無しという感じですが、そっちの本質論に話が行かないというのが石兵八陣みたいな風情があるなあと思いました。


・不確実性の元での金融政策というお題でのパネルですが・・・・・・

『7. 政策パネル討論 1』

『政策パネル討論 1 では、星が座長を務め、センテノ、ハウザー、カシュカリ、コーゼの 4 名のパネリストが、「不確実な経済における金融政策の課題」をテーマに議論を行った。』

Policy Panel Discussion 1: Monetary Policy Challenges in an Uncertain Economy
Moderator: Takeo Hoshi, The University of Tokyo
Panelists:
Mario Centeno, Banco de Portugal
Andrew Hauser, Reserve Bank of Australia
Neel Kashkari, Federal Reserve Bank of Minneapolis
M. Ayhan Kose, The World Bank Group

というメンバーです。

『(1) 座長およびパネリストによる発言』

『星は、最初に、世界経済を巡る不確実性は、時代を問わず常に近くにあったと述べたうえで、近年、不確実性が物価変動への影響を通じて金融政策に甚大な影響を及ぼしてきたと指摘した。当セッションを、現在直面している不確実性は過去と比べてどのような違いがあるか、政策当局者はいかに金融政策運営を行うべきかについて考える機会としたいと述べて、各パネリストへの発言へと進行を進めた。』

星先生、「世界経済を巡る不確実性は、時代を問わず常に近くにあったと述べたうえで」とかしれっと入れているのは当然の指摘だが日銀の「不確実性ガー」連呼へのイヤミになっているのがチャーミング。

『センテノは、中央銀行は、シンプルで一貫性のある枠組みをベースに金融政策判断を行うことが望ましいと主張したうえで、世界経済を巡る不確実性が高い状況においては、最新の情報を踏まえて政策会合ごとに判断を更新していくといった柔軟性も合わせて求められると述べた。』

>シンプルで一貫性の枠組みをベースに

『そのうえで、政策当局者が政策判断において経済の不確実性を強調しすぎると、不確実性の高まりを助長し責務を果たしていないと受けとられる可能性もあり、市場と丁寧にコミュニケーションしていくことの重要性は増していると指摘した。』

>政策当局者が政策判断において経済の不確実性を強調しすぎると、不確実性の高まりを助長し責務を果たしていないと受けとられる可能性もあり

『特に、金融政策に関する情報発信が経済主体の消費・投資行動に及ぼす影響にかんがみると、金融政策判断の根拠やそれに対する確信の度合いを丁寧に説明することがきわめて重要であると強調した。さらに、優れた政策判断には、良質なデータや、豊富な経済に関する知見、予期しない展開への備えも欠かせないと述べたうえで、新たなデータの取得やさまざまな角度からの調査・分析の重要性を指摘した。』

と、日銀に対して砲撃を加えている訳ではないのでしょうけれども砲撃になっているのがお茶目。

『ハウザーは、まず、経済の不確実性は、情報収集、経済・物価見通しの作成、金融政策の判断、コミュニケーション等、政策運営のさまざまな段階に影響すると述べた。また、不確実性と政策判断との関係を理解することは、コミュニケーションにとって不可欠であると説明したうえで、不確実性が金融政策運営に及ぼす影響を、整理して順番に考察していくことが重要だと指摘した。』

『不確実性が経済・物価見通しに及ぼす影響に関しては、より精緻に把握できるようになってきたものの、グローバル・サプライチェーン等の供給要因を巡る不確実性が及ぼす影響については、十分には理解できていないという課題にも言及した。』

ほうほう。

『コミュニケーションに関しては、政策当局者が不確実性という文言を使えば使うほど、人々は政策当局者の意図を解釈することが困難になることから、明確かつわかりやすくメッセージを伝えることが重要だと強調した。』

>政策当局者が不確実性という文言を使えば使うほど、人々は政策当局者の意図を解釈することが困難になる

・・・・・・・・(^^)

まあ日本の場合は少なくとも円債方面では「不確実性=緩和修正を渋るための言い訳」という認識になっているので「意図は解釈」できているという説は無いわけでもないwwwwwwwwww

『カシュカリは、過去 20 年間を振り返り、世界経済に大きな影響を及ぼしたショックと、その経験から得られた教訓について論じた10。』

『10 詳細は、Kashkari [2025]を参照。』ってなっていますorz

『まず、大きなショックが生じたときは、その影響と金融政策を巡る不確実性が両方とも高まると指摘し、政策当局者は、ショックの影響を分析する力や適切な政策判断力を磨いておく必要があると強調した。』

『また、ショック時において、何が適切な政策対応なのか不明瞭な状況下では、事後的にやや後手に回ったとみなされる可能性があっても、慎重な政策判断が正当化されうると論じた。』

これは日銀もニッコリ、と言いたいのですがよく考えてみると今の物価高問題って別に「大きなショック」でも何でも無いんですよねwww

『さらに、ショック時において、ショックの特性等を考慮しないシンプルな金融政策ルールに従うと、誤った政策対応を講じてしまう可能性について言及したうえで、政策当局者は、シンプルな金融政策ルールに依存することなく、最新の情報を踏まえながら柔軟に政策判断をしていくことが重要だと主張した。』


供給ショックだから金融政策では対応しない、と言い続けている日銀ェ・・・・・・

『コーゼは、政策金利の引上げ局面を分析した研究を参照しつつ、経済の不確実性が高いもとでの金融政策について得られた教訓を紹介した。』

はい。

『はじめに、最近の利上げ局面では、失業率の目立った悪化を伴わずにインフレ率を低下させたという点において、金融政策運営は成功とみなせるが、利上げ開始の遅れとその後の急激な金利上昇が、実体経済と金融システムに負の影響を与えたと指摘した。』

そらそうよ。

『具体的には、利上げ開始の遅れにより物価水準が大きく切り上がったことに加えて、急激な政策金利の引上げにより、金融システムの安定にかかるリスクが高まったと説明した。』

この点はSVB破綻があったからこういう話になるんだけど本当にそうなのかというのは謎。とは言え今日のマクラに書いたサブプライム自動車ローン(まああれは不正がらみなので一般化できるかというとそこは留保が付くけど)問題みたいなのがこれから出るのかもしれず、そこは何ともなんでしょうね。

『続けて、人々は物価水準の変化に敏感に反応する傾向にあると述べ、物価水準が大幅に切り上がると、インフレ予想のアンカリングに影響を及ぼしうると指摘した。』

>物価水準が大幅に切り上がると、インフレ予想のアンカリングに影響を及ぼしうる

まさにこの点、日銀は元々ゼロ近辺でアンカリングされていたインフレ予想を引きあげることを意図しているので、初手でアンカリングが外れるのは所期の効果ちゃあ所期の効果なのですが、その後のインフレ期待が何故か「徐々に上昇」という判断を延々と続けているのですが、アンカリングが一旦外れたら動きやすくなるのではないでしょうか、という点に関してわざと目をつぶっているだけなんだと思いますけど、如何にも無頓着な感じになっていて、でまあ結果として政権一つ潰してしまったようなもんじゃろと思うんですけど表だって言いにくいのは分かるんだが肚ではどう思っているのやらというのはハラワタ掻っ捌いて調べてみたいところではあります。

『最後に、これらの考察を踏まえ、インフレ率だけでなく物価水準にも注視すること、予防的な政策対応により金融システムの安定を確保すること、市場とのコミュニケーションを通じてインフレ予想のアンカーを維持することは、政策当局者にとってきわめて重要であると強調した。』

日銀ェ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

という感じですな。でもってこの後も延々とあっておもろい話も続く(政策パネル討論1、とあるように本当は2もあってそっちもウケる)のですが、フロアの質疑・議論の中でこんなのがあったというのをネタにして明日以降は中銀祭りという感じでしょうか。

『(2) パネリストやフロア参加者での討議』ですが、フロア参加者での討議、に該当します。

『オルファニデスは、不確実性下における慎重な政策が、インフレ率の変動にもかかわらず政策金利を据え置くことを意味しているのであれば、それは、何もしないのではなく、政策判断を行っているとみなされるべきだと論じた。』

いきなり茶を吹いてしまいました勘弁してください(絶賛している)。

『これに対して、センテノは、「何もしない」という対応は、明確な政策判断であると強調した。』

はい。

『コーゼも、センテノと同様に、「何もしない」という対応は政策判断であると述べた。そのうえで、慎重な政策判断を続けている場合でも、政策当局者は、政策判断を変更するタイミング等に関する考え方を示すことが重要であると主張した。』

『ウォラーは、従前より述べているように、慎重な政策アプローチは、何もしないのではなく、インフレ率や失業率が上昇するリスクを回避するための熟考された対応である、と明確に伝えることが重要だと述べた。』

米国を念頭に置いた話をしているような感じでもありますが、しかしこれは日銀に対して巧まざるイヤミで割と火力が高くてクソ笑いました。


・日本もゆうて為替レート重要だと思うんですよねえ

あと折角なので政策パネル討論2からちょっとだけ。

『8. 政策パネル討論 2』

『政策パネル討論 2 では、ウォラーが座長を務め、グランシャ、ラーフェン、ロンバルデッリ、レモロナ、内田の 5 名のパネリストが、「グローバル経済における金融政策」をテーマに議論を行った。』

Policy Panel Discussion 2: Monetary Policy in a Global Economy
Moderator: Christopher Waller, Federal Reserve Board
Panelists:
Pierre-Olivier Gourinchas, International Monetary Fund
Luc Laeven, European Central Bank
Clare Lombardelli, Bank of England
Eli M. Remolona, Jr., Bangko Sentral ng Pilipinas
Shinichi Uchida, Bank of Japan

こちらは簡単にちょっとつまみ食い引用しますが、

『レモロナは、新興国の経済・物価動向に焦点を当てつつ、為替レートが果たす役割の重要性について論じた。まず、世界各国のインフレを分析した研究を参照しつつ、新興国においては、コモディティ価格よりも為替レートがインフレに及ぼす影響が大きいと述べた。そのうえで、自国通貨の減価は、インフレ率やインフレ予想の上昇に寄与する一方、自国通貨の増価は、それらにほとんど影響を及ぼさないと説明した。』

次にありますがフィリピン中銀の方なのでフィリピン経済を念頭に置いた話になっています。

『次に、フィリピンの特徴として、株式市場や債券市場と比べて為替市場の規模が大きい、また、外国に出稼ぎに出ている労働者からの送金額がマクロでみて大きいという点を挙げ、フィリピンにおいては、とりわけ為替レートがインフレに及ぼす影響がきわめて大きいと指摘した。』

これはまあ日本には適用できない話ではありますけれどもなるほどなるほどと。

『最後に、これらの点を踏まえて、為替レートが長期にわたり減価を続けると、インフレ率やインフレ予想が大きく上昇してしまうため、そうした場合には、為替介入も政策ツールの 1 つとして考えられるだろうと主張した。』

そりゃそうですね。でまあ世界貿易だのその手の話が多いのですが最後にフロアからの討論としてこんなのがありまして、『(2) パネリストやフロア参加者での討議』の最後から2番目の段落になりますが、

『コーゼは、中央銀行のインフレ目標にレンジを持たせることや、ヘッドラインインフレではなくコアインフレに重点を置くことに関して、パネリストに見解を問うた。』

キタコレ。

『ロンバルデッリは、中央銀行がインフレ目標を変更すると、人々に目標の達成が難しいという誤解を与えてしまう可能性があり、とりわけインフレが続いている現時点で、インフレ目標を変更することは望ましくないと応じた。また、人々は実際に支払う価格に関心が高いことから、中央銀行はヘッドラインのインフレをより重視すべきであると回答した。』

『ラーフェンも、ヘッドラインのインフレの方が、人々が理解しやすく、中央銀行のコミュニケーション上もメリットが大きいと指摘した。』

・・・・・・・基調的物価wwwwwww







2025/09/16

お題「短国6M激強に対して3Mはまあ普通の結果/利下げしろのトランプがブラード選ぶとも思えんが・・・・/金研国際コンファランスから」

非常事態はお前の頭だよ
https://jp.reuters.com/world/us/AF7JOZM6JVISVGQRCAEZSTZRBM-2025-09-15/
トランプ氏、首都ワシントンに国家非常事態宣言と表明 連邦化も
By ロイター編集
2025年9月15日午後 3:55 GMT+9

『[15日 ロイター] - トランプ米大統領は15日、首都ワシントンの警察が移民・税関捜査局(ICE)に協力しないとバウザー市長が発言したことを受け、国家非常事態を宣言し、連邦化すると表明した。問題となっているのは米国に不法滞在・入国している個人に関する情報提供だ。トランプ氏の警告は、2000人以上の兵士が市内を巡回するなど、連邦政府の越権行為と批判されている動きをさらに強めるものとなる。』(上記URL先より)

何でそれが国家非常事態宣言になるんだよ・・・・・・

〇短国3Mは結局0.43%平均の0.45%台足切りで引けは0.445%か・・・・

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250912.htm
国庫短期証券(第1331回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1331回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号   国庫短期証券(第1331回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日    令和7年9月16日
4.償還期限  令和7年12月15日
5.価格競争入札について
(1)応募額         10兆3,231億円
(2)募入決定額     3兆3,213億4,000万円
(3)募入最低価格    99円88銭9厘0毛
(募入最高利回り)     (0.4506%)
(4)募入最低価格における案分比率    40.5664%
(5)募入平均価格    99円89銭2厘8毛
(募入平均利回り)     (0.4352%)

先週火曜に行われた6M短国の入札が0.5135%/0.5195%になったあと、引値は0.48%とかいうやたらめったら堅調な展開になっていたのですが、こっちの3Mの方が0.4352%/0.4506%と0.4台後半にはなりませんでしたが0.4台半ばまで流れておりまして、6Mがまるで来年の3月位まで利上げが無さそうな値付けになっているのに何ですかこれという感じです。いやまあ確かに来年3月まで利上げ無いんだったらその値付けが正当化されるのですが・・・・・

でまあ一方でこうやっている間に円債ちゃんって連日ツイストフラットとかしていて、何が何やらという感じではあるのですが、この3Mの売買参考統計値を拝見しますと、

https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(9/12引値)
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.444
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.444
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.444
国庫短期証券1331 2025/12/15 平均値単利 0.445←新発3M
国庫短期証券1333 2025/12/22 平均値単利 0.445←今週木曜(金曜はMPM2日目なので)入札の3MWI

(9/11引値)
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.430
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.430
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.430
国庫短期証券1331 2025/12/15 平均値単利 0.430
国庫短期証券1333 2025/12/22 平均値単利 0.430

ということで、引値は平均の0.435%のほうではなくて足切りの0.450%の方に寄った水準になっていまして、火曜日の6M短国は何だったのか(まあ担保ニーズとかそういうのでちょうど良かった(12月末と3月末を両方跨ぐというメリットがあるのは確かにそうです)とかいうお家の事情ニーズだったんだろうなあという所ではありますが)というお話になるのですけれども、まあ利上げしてこの方しばらくの間は3M短国が0.40%割れがずっと続いていたことを踏まえますと(利上げ観測で下駄はいているのにこれかよという話もあるけどそこに目をつぶれば)0.4%台半ば程度まで来ただけマシ、という話ですが、そうは言いましてもタームプレミアムもへったくれもあったもんじゃないというこの利回りは何とかならんのかねとは思います。発行が増えるしかないんですけどね。


〇インフレ重視派をトラ公が選ぶとも思えんのだが・・・・・

ところで変態仮面のこんなニュースが来てたんだが
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/4GVBCIH3VJNZNHU6QWMN2ZUVO4-2025-09-15/
前セントルイス連銀総裁、FRB議長就任に「強い関心」 財務長官と先週協議
By ロイター編集
2025年9月16日午前 5:20 GMT+9

『[15日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の次期議長候補の一人に名前が挙がっているジェームズ・ブラード前セントルイス地区連銀総裁は15日、ベセント財務長官と先週、協議したと明らかにし、適切な条件が整えば次期議長に就任することに「強い関心」があると語った。

ブラード氏はロイターのインタビューに対し、10日にベセント氏とFRB議長のポストなどについて協議したと述べた。また、FRBは独立性を確保すると同時に、米ドルを防衛し、低インフレを維持しなければならないと語った。』(上記URL先より)

ブラードってガチガチの物価重視派で、ついでに言えば物価に関しては「そもそも物価安定の目的を考えればコア指数を目標であるかのように重視するのも良くない」というのをかなり昔(これはエネルギー価格が上がっていたときだったかな)に書いていたりしましたな。

ちなみについこの前までセントルイス連銀のサイトには「ブラード総裁のお部屋」が残っていてブラ―ドのいろんなペーパーへのリンクがバシバシとあったのですが、先般サイトをアップデートしてFRASERの方にだいたいアーカイブされてしまったのですが。2011年にこんなの書いててネタにした覚えがあります。

https://fraser.stlouisfed.org/files/docs/publications/frbslreview/rev_stls_2011_v93_no4.pdf
Measuring Inflation: The Core Is Rotten

FEDERAL RESERVE BANK OF ST. LOUIS REVIEW

とまあそういう人なんで、物価が低いうちはハト派に見えて物価が上がりだしてからはタカ派に見えたというお方なんですけど、要するにゴリゴリの物価重視派だというお方なので利下げしろとか言われましても物価が上振れている状況下で中立以下に金利下げる訳は無いし、中立にだって下げるかどうか怪しいですな。なお、変態仮面ブラード総裁はSEPのドットプロットにおいて「ロンガーランの政策金利水準を示すのは無意味」としてロンガーランのプロットに投票しなかったというおじさん(なのでブラードがいた頃のドットプロットはロンガーランが1票少ない)でした。

アタクシ的にはブラード追っかけ(推しとは言っていない)してたのでオモロイなとは思いますけどさて・・・・・


〇中銀ウィークなのですがECB話ではなくて金研国際コンファランスネタのまたも続きで勘弁

しつこくてすいません。

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/25-J-07.pdf
「金融政策の新たな課題」
2025年国際コンファランスの模様
Discussion Paper No. 2025-J-7

英語版
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/english/25-E-10.pdf
New Challenges for Monetary Policy
Summary of the 2025 BOJ-IMES Conference
Wataru Hagio, Daisuke Ikeda, and Yojiro Ito
Discussion Paper No. 2025-E-10

・小洒落たお題設定ですが中身の理屈が日銀屁理屈っぽいのがなんだかなあという印象はある

『6. 論文報告セッション』の『(3) The Causal Effects of Inflation Uncertainty on Households' Beliefs and Actions(インフレの不確実性が家計の予想と行動に及ぼす因果効果の推計)』はかっ飛ばしましてその次。

『(4) Mind the Gap When Exiting Low-for-long(長期にわたる低金利からの出口と金融政策への示唆)』

これはまた題名がお洒落ですね。

『池田は、長期にわたる低金利政策が経済主体の認識や実体経済に与える影響について、理論と実証の両面で論じた8。まず、低金利を長期間維持する政策は、インフレ率が低いレジームにおいて経済を下支えすると述べた。しかし、低金利が長期にわたると、経済主体が、中央銀行が意図するよりも長く低金利が続くと認識してしまい、金融政策に対する経済主体の認識と実際の金融政策との間にギャップ(認識ギャップ)が生じる可能性があると主張した。』

池田さんは日銀の人です。(Paper Presenter: Daisuke Ikeda, Bank of Japan)

『さらに、認識ギャップがある中で金利が引上げられると、経済主体はそれを予期しない金融引締めと受けとめることになると述べた。政策は即座に変更しうるが、経済主体の認識もすぐに変わるとは限らないことから、その際に経済のボラティリティが高まる可能性があると強調した。』

・・・・うーん、なんかこの理屈って使いようによっては「認識ギャップがある中での利上げは慎重に行わないと意図せざる引き締め効果があるので、利上げを慎重に行うのは正しい」という屁理屈に思いっきり使えそうな話ですね。でまあ途中の分析経過の話をかっ飛ばして結論に行きますと、

『続いて、3 つの主要結果を紹介した。』

『第 1 に、長期にわたる低金利政策は、低金利下において緩和的な効果を生む一方、出口の際に引締め的な効果を生む可能性があると述べた。』

だからと言って今の日銀のような正常化ビビリンチョをして実質的な緩和拡大を行うのが正しいとはならんはずだが。

『具体的には、低金利が長引くにつれ、経済主体は、金融政策ルールに含まれる名目中立金利 i*が低いと認識し、低金利の長期化を予想するようになると説明した。』

からの、

『こうした予想は景気を刺激する効果を持つが、出口の際にはこの認識ギャップが修正され、金融引締めと受けとられることで景気を下押しすると述べた。』

だから利上げを遅くするって言わんばかりのこの結論が何んともかんとも。

『第 2 に、FG に対する信認が低いと、こうした景気の振幅が大きくなると述べた。』

FGとはフォワードガイダンスなのですが、FGパズルあるいは時間的不整合のことを考えたら信認が高すぎる方が弊害なんじゃないのかね、と思うのだが高度な分析の結果そういうことになっているらしいです、正直意味わからんけど所詮こちとら無学なのでああそうですかと言っておく。

『第 3 に、日本における i*に関する認識をデータから推計し、モデルと整合的な性質を持つと論じた。』

ホンマカイナ。

『具体的には、推計された i*に関する認識は、金融政策ショックに対して正の反応を示し、そうした現象は学習のないモデルでは起こりえないと述べた。したがって、認識ギャップを通じた波及経路は、実際の政策にも関連しうると述べた。』

ということですが、これすなわち「認識ギャップがあるから低金利政策からの出口はゆっくりやらないと強い引き締め効果をもたらす」っていう話をしている訳で、日銀の屁理屈オンパレードにしか読めなかったのですが何なんですかね。


・シカゴ連銀の方が(ジャクソンホールの前に)アベレージターゲットなどは机上の空論という話をしてますね

でもって指定討論者のお話。

『討論者のスペンサー・クレイン(シカゴ連邦準備銀行)は、一般的に、完全情報と合理的期待の下では、平均インフレ目標等の埋め合わせを伴う金融政策はうまく機能すると指摘した。しかし、現実世界はそうした環境とかけ離れており、経済主体は新たな政策について学習する必要があると強調した。』

しらっと(ジャクソンホールでの政策枠組み見直し公表の前から)既に言われていたことではありますが、メイクアップストラテジー的な埋め合わせ戦略は理屈の上でワークしそうに見えても現実世界では机上の空論、と仰せですな、まあジャクソンホールを待つまでもなくコンセンサス状態ではありましたが。

『さらに、このモデルから得られる重要なメッセージは、市場や人々が政策を理解し、それが信頼に足るものだとみなせば、政策の有効性が高まる点だと述べた。』

理解不能の小理屈を手を変え品を変え繰り出してその場限りの説明をしているどっかの中央銀行大本営見てるかイェーイ!

『そのうえで、ELB 下では、政策金利が下限に張り付き動かないため、経済主体による学習が難しいと述べ、2 点コメントした。第 1 に、中央銀行の政策ルールに、経済主体が認識する i*とは異なりうる時間を通じて変化する i*を追加した場合の結果について尋ねた。第 2 に、FG の信認度合いはモデルでは固定されているが、内生的に変化する可能性があり、したがって FG の有効性に影響を及ぼしうると指摘した。』

ふむふむ。

『池田は、コメントに同意しつつ、中央銀行の政策ルールには、i*が含まれているが、それは定数として固定されていると返答した。また、FG の信認度合いは内生化できるが、それに上限があり、信認が不完全である限り、本モデルの主要結果は変わらないだろうと述べた。』

以下が質疑応答なのですが、元論文を読まないと論点がよくわからんのだが、読んでて引っかかったのがこのところでして、

『白塚は、長期の予想物価上昇率をモデルでどう扱ったか質問した。池田は、長期の予想物価上昇率は目標水準の 2%でアンカーされていると答えた。』

ん???日本の場合アンカーされてないんじゃなかったでしたっけ・・・・・・・

でもって元論文探してたら時間が無くなってしまった上に元論文見つからなかったので(探し方が悪いんだと思います、汗)今朝はこの辺で時間も無いので勘弁して頂きたく存じます。






2025/09/12

お題「ECBのポンチ絵はエライ勢いで絵柄のトーンが強くなる/2つのサーベイから(ロイター企業調査とBBGの何とかストサーベイ)/金研コンファランス昨日の補足ネタ」

えらいこっちゃでございましたな
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250911/k10014919101000.html
東京や神奈川で100ミリ超の猛烈な雨 川の氾濫や浸水被害相次ぐ
2025年9月11日 23時57分


〇ECBはいつものようにポンチ絵読みで勘弁

URLがクソ長くて画面表示すると画面が乱れると思うので一部の文字列にだけリンク入れてます。
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2025/html/mopo_statement_explained_september.en.html
Our monetary policy statement at a glance - September 2025

7月はこちら
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2025/html/mopo_statement_explained_july.en.html

一応6月
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2025/html/mopo_statement_explained_june.en.html


どこかの中銀とは違って本家は基本的に前回からの継続性が認められます。

・政策金利据え置きは「物価は2%”近辺”で推移するので」という説明

『We kept our key interest rates unchanged』(今回)
『We kept our key interest rates unchanged』(前回)

金利据え置きは同じでして、

『We did this because inflation is set to stabilise at around our 2% target.』(今回)
『We did this because inflation is set to stabilise at our 2% target.』(前回)

今回「around」が入っていまして、このポンチ絵の下の方に四半期恒例のスタッフ見通し改定があって、2025年2.1%→2026年1.7%→2027年1.9%、という見通しになっていて、2026年が1.7だからアラウンドってつけているのかいなとか思いましたが、何はともあれ通常この程度では「2%アラウンド」というって話な訳で、期待インフレが1.5〜2.0の間で徐々に上昇している、とか言ってたらそれって2%アラウンドなんじゃないのかね、とか日銀に言いたくなってしまいますねw

なおポンチ絵は同じです(階段降りた後の水平部分が1会合分相当長くなっているだけ)。


・文章を見ると状況が悪化しているように見えるのだが絵柄を見るとそうでもないという判じ物

『The economy is navigating difficulties coming especially from abroad…』(今回)
『The economy has been resilient』(前回)

こちらですが、前回ネタにした時に「ナンジャコリャ」と珍しく思ったイラストで、経済がレジリアントって言ってる癖に絵柄が滅茶苦茶暗いというECBの従来のポンチ絵から見たら異彩を放つインチキイラストのなっていたんですな。

なので、上記の文言だけ見ると経済の認識が下振れしているようにしか読めないのですが、イラストを見ますと前回が暗い絵柄の中で雨がドシャドシャ降っている、というものだったのが今回は世界経済の見通しが良くわからんですわみたいな感じ(ただし色調はダークな青なので暗いのは暗い)になっておりますがな、ということで前回の土砂降りよりはマシな絵になっている訳ですな。

『Higher tariffs, a stronger euro and competition from other countries weigh on businesses - even if recent trade agreements have reduced uncertainty somewhat.』(今回)

『It grew more strongly than expected over the first months of the year. But the global environment remains exceptionally uncertain, especially because of trade disputes.』(前回)

でもって書いてある説明文言的にも前回はIt grew more strongly than expected over the first months of the yearなどと言ってたのでなんか今回の方が威勢が悪く見えるのですが、ここは訳わからん所ですけど、まあさすがにちゃんとした説明が会見のオープニングリマークなどであるじゃろとは思います。


・「現状はアレでも見通しの方が明るくなっている」ということなんでしょうかね

でもって今回はさっきの3点リーダーからの受けの文章が次にありまして、

『…but there is momentum for stronger growth ahead』(今回)

『Lots of people are in work and many have had pay rises. This allows them to spend more, which lifts economic growth. Governments spending more on infrastructure and defence will also support the economy.』(今回)

ということでユーロ印の気球がこれから上がるために火なんだかガス何だかよくわからんけど気球がこれから上がろうという準備をしています、って絵になっていて、その充填作業のガスボンベみたいなのが雇用印と消費印と政府支出印のボンベになっている、という威勢の良い話になっています。

これに対応するのが前回は(基本的に四半期スタッフ見通し更新時とそれ以外では絵の構成が違うので比較するのが微妙なんですが)、

『Firms are still holding back』(前回)

『Tariffs and global uncertainty are making them cautious to invest. The stronger euro means that firms’ exports are more expensive in the rest of the world. But governments are planning to spend more money, especially on defence and infrastructure, which should support the economy.』(前回)

世界経済がマイナスになるが政府支出のプラスの方が大きいでっせ、という天秤の図になっていまして、

『Most people’s finances are in good shape』(前回)

『Many people are in jobs and their wages are growing at a good pace. This allows them to spend on goods and services, like holidays, and to invest in buying a home.』(前回)

なんか豚の貯金箱に空からユーロが降ってきたり家作っていたりと謎の明るいイラストw

『Borrowing money has become less expensive』(前回)

『Firms are demanding slightly more credit. At the same time, banks are cautious about lending because of global uncertainty and trade tensions.』(前回)

世界経済の不透明はあるけど金利低いからお金借りようかと考えている企業経営者ネキのイラスト。

って感じで微妙に留保条件付きの明るい絵だったのですが、今回のポンチ絵はもうユーロ圏経済の熱気球はこれから大空に向かって上がるべく準備中です、という威勢の良い話にしているので、とにかく絵柄が前回対比でエライ勢いよく景気が良くなっているのが観察されます。


・物価の表現はさっきのところと同じ変化

『Inflation is close to our 2% target』(今回)

『Food prices have been rising more slowly and energy prices are lower than a year ago. Wages are no longer going up so much. All of this helps inflation to stabilise around 2%.』(今回)

『Inflation is where we want it to be: at 2%.』(今回)

『We expect it to stabilise around our 2% target in the period ahead.』(前回)

前回は2%の滑走路だか何だかに着陸でもしているイメージで潔いまでの2%達成宣言でしたが、今回は温度計方式になっているのでまあブレは置きますというのを暗喩していますねwwwwwww


でまあ以下は今回についてはスタッフ見通し四半期改定のコーナーになるのでパスしますが、「経済の見通しが無茶苦茶明るいというか景気の宜しいイラストになっている」というのが今回のメッセージですかね。まあこの辺りで中立水準だから動かん、という話なのかどうかは(たぶんそうなんでしょうけど)ちゃんと会見を確認したいと思います。



〇二つのサーベイに関するニュースをクリップしつつ雑感(ロイター企業調査とBBGの何とかストサーベイ)

・普段はスルーしているのですが目に留まったのでロイターさんの企業調査なのですが・・・・・

https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/TLELD2BPQJPTLFR7BXTXRNNDIY-2025-09-11/
ロイター9月企業調査:植田日銀総裁、「評価しない」が3割に増加 下期業績は3割超で下振れも
By 浦中美穂
2025年9月11日午後 12:43 GMT+9

『[東京 11日 ロイター] - 9月のロイター企業調査で、就任から2年半の折り返しを迎えた日銀の植田和男総裁の金融政策運営について、「あまり評価しない」「評価しない」と答えた割合が30%と、昨年12月時点から6ポイント増えた。』(上記URL先より、以下同様)

とは言いましても評価する、の方が47%いらっしゃるのでそっちの方が多いには多いのですがw

『マイナス金利の解除を評価する声がある一方で、金利正常化のペースは「遅すぎる」との指摘も目立った。一方、下期の業績見通しについては、回答企業の3割超が下振れの可能性を示した。調査期間は8月27日─9月5日。497社に質問し、238社が回答した。』

でまあですな、

『植田総裁の金融政策運営について「大いに評価する」と答えた企業はなかった。「評価する」は51%から47%に減少し、「あまり評価しない」は20%から27%に増加した。「評価しない」は4%から3%にわずかに減った一方で、「分からない」との回答は23%だった。』

とのことですが、評価しないの理由が中々素晴らしいんですよね。

『一方で、あまり評価しないと答えた企業からは「利上げのタイミングが遅すぎる」(化学)、「金利の適正化が遅い」(窯業)といった金利正常化のスピードを問題視する声が目立った。「どういう理由で誰のために何をしたいのか政策がわかりづらい」(食品)といった回答もみられた。』

>どういう理由で誰のために何をしたいのか政策がわかりづらい」
>どういう理由で誰のために何をしたいのか政策がわかりづらい」
>どういう理由で誰のために何をしたいのか政策がわかりづらい」
>どういう理由で誰のために何をしたいのか政策がわかりづらい」
>どういう理由で誰のために何をしたいのか政策がわかりづらい」

・・・・・・・・・(;∀;)イイシテキダナー
・・・・・・・・・(;∀;)イイシテキダナー
・・・・・・・・・(;∀;)イイシテキダナー

いやこれは素晴らしいご指摘でして、そりゃそうよ日銀って政策据え置きをするためにその時に説明がしやすい理屈を繰り出してきているだけで、「前回言ってたあの数字だともう2%達成していることになりませんかねえ」という話を無かったことするんですし。

でまあ誰のために何をしたいのか、ってのはマジでアタクシも良くわからんのですがwwwまあ何のかんの言いましても昨年7月の利上げにしろ今年の1月の利上げにしろジャガーチェンジでいきなり利上げ(昨年7月は輪番減額計画だけ出す会合じゃないの説も結構あった中で利上げするわいきなりやる気満々になるわのサプライズ攻撃でしたし、今年の1月は12月まで散々やる気が無さそうにしていたのに年明けて松の内(関東バージョン)開けるか開けないかという時に突如ジャガーチェンジして利上げに舵を切ったので利上げ単体で見ればサプライズにならなかったけどその前の段階の地均しが強引にもほどがあった)をしている訳で、何らかのフォースが働くと急にジャガーチェンジをするというムーブな訳で、そりゃ分からんですわなというお話。

ということでまあイイシテキダナーというお話な訳ですけれども、市場に棲息する日銀ヲタだけではなくて、ちゃんと企業経営者の中でもこういう指摘が飛んできているということは日銀はちゃんと受け止めて頂きたいものだ、と思いました。


・BBGの何とかストサーベイだと10月の方が多いのか・・・・・・・・

ほうほうそうですかそうですか
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-10/T2CS26GOT0JO00
日銀の年内利上げ予想は6割に増加、10月会合が36%で最多−サーベイ
伊藤純夫、Cynthia Li
2025年9月11日 6:00 JST

→来年1月までに利上げ88%、順調な実体経済と根強いインフレ圧力
→政治混迷と米経済が利上げの障害に、米年末商戦確認後との見方も

まあ何とかストサーベイも基本的にヌルーなのですがロイターさんの企業サーベイネタにしたのでついでにこっちもネタにしようかと思いまして笑。

『日本銀行による追加利上げのタイミングについて、年内を予想するエコノミストが約6割に増加した。最多の4割近くが10月の金融政策決定会合と見込んでいる。』(上記URL先より、以下同様)

へーへーへー

『ブルームバーグがエコノミスト50人を対象に3−10日に行った調査によると、日銀の次の利上げ予想は10月が36%と前回の8月調査の42%からは減少したものの、引き続き最多となった。一方、12月が11%から22%に拡大し、年内は53%から58%に増加。来年1月は30%でそれまでの利上げを88%が想定している。』

それはそれは、って話なのですが・・・・・・・

『10月会合での利上げを予想するエコノミストが重視しているのが、順調な実体経済と根強いインフレ圧力だ。米関税政策を巡り、トランプ大統領が4日に日米合意を履行する大統領令に署名したことも、不確実性が一段と低下する要素とみられている。』

ってお話なんですが、そもそも論として実体経済、というよりインフレの状況を見たら今頃は政策金利が1%以上になっていて然るべきな訳でして、一方で日銀の政策金利はまだ0.5%、というやる気無し無しモードなのですから、もとより「根強いインフレ圧力」如きで利上げするタマではない(べき論から言ったら無茶苦茶な話ではあるが)と考えるのが予想屋としての筋なんじゃないかと思うのですけどね。

しかし中々素敵な回答はこの質問回答でして、

『日銀の金融政策が後手に回るリスクが高まっていると思うかとの質問には、40%が「はい」と回答し、「いいえ」が50%だった。ベッセント米財務長官は8月のブルームバーグのテレビインタビューで、日銀は「既にビハインド・ザ・カーブに陥っているとみられる」との見方を示した。』

おおおおおお、40%も「ビハインドのリスク高まる」という回答になったのかと感無量でして、だいたい日銀って見通しの下振れについて突っ込まれるとすかさずESPフォーキャストを出してきて「民間エコノミストの見通しよりも我々の見通しは強かったんですがそれをも上振れしたのは想定外の一過性の供給ショックがありまして」みたいな感じで民間エコノミストを矢防ぎの盾にするというプレイをしていたんですね(現実問題としてESPフォーキャスト方面のインフレ見通しとか何であんなに低いのよ、まあ過去のデータに引き摺られているんでしょうけど)。

ESPフォーキャストとこのBBGのサーベイは母集団が違いますとは言え、こうやって日銀の政策ビハインドリスクの指摘が増えていく中で、日銀は「ビハインドのリスクは小さい」とかノホホンとしてられる場合なのか、というお話になってきてませんかねえと思うのでした。

まあべき論で言えば何なら今日利上げしろよといいたくなる世界ではあるのですが、何のかんのと現状維持をする言い訳を繰り返し、そしてある時突然ジャガーチェンジをするという行動なので、結局のところジャガーチェンジのトリガーが何になって、それがいつ飛び出すのか、を予想するしかないので、ロジカルに予想しにくいんですよね。


〇金研国際コンファランスネタをちょっとだけ

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/25-J-07.pdf
「金融政策の新たな課題」
2025年国際コンファランスの模様
Discussion Paper No. 2025-J-7

英語版はこちら
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/english/25-E-10.pdf
New Challenges for Monetary Policy
Summary of the 2025 BOJ-IMES Conference
Wataru Hagio, Daisuke Ikeda, and Yojiro Ito
Discussion Paper No. 2025-E-10

『6. 論文報告セッション』の『(2) Monetary Policy and Inflation Scares(金融政策とインフレ懸念)』の中で植田総裁の「お前は何を言ってるんだ」質問をネタにしたいためにかっ飛ばしてしまった指定討論者の韓国中銀李総裁のパートを鑑賞します。

『討論者のイ・ジェウォン(韓国銀行)は、大規模で持続的な供給ショックが経済を直撃し金融引締めが遅れれば、インフレ率が急上昇するというのが主なナラティブだと述べた。』

はい。

『そして、物価・賃金スライドが加わり、さらに急勾配な非線形フィリップス曲線の影響により、インフレ率はより高く持続的になると付け加えた。そして、以下のコメントを述べた。』

>物価・賃金スライドが加わり、さらに急勾配な非線形フィリップス曲線の影響により、インフレ率はより高く持続的になる
>物価・賃金スライドが加わり、さらに急勾配な非線形フィリップス曲線の影響により、インフレ率はより高く持続的になる
>物価・賃金スライドが加わり、さらに急勾配な非線形フィリップス曲線の影響により、インフレ率はより高く持続的になる

・・・・・・(;∀;)イイシテキダナー

ということですが、これを「賃金と物価の好循環」とか堂々と言い出す中央銀行がいるんですよねwwwwwwwwwww


さて李総裁のコメントですが、

『第 1 に、過去の実績に連動した(backward-looking)物価・賃金スライドが論文の結果にとって重要だと指摘した。そして、実証的なエビデンスはまちまちだと主張した。賃金スライドについては、いくつかの研究により、その多くは将来見通しに連動する(forward-looking)ことが示されているほか、インフレ率に紐づいた賃金スライドは近年あまりみられなくなっていると述べた。』

ほうほう。フォワードルッキングな賃金設定なんですか。まあジャパンの場合はバックワードルッキングのスライドすら始まった(再開した)ばかりのような気がしますけど(労働分配率とか見てますと・・・)

『また、米国の研究によれば、企業による賃金提示(wage posting)が支配的であり、賃金を提示する企業にとって、生産性に影響を与えることなく労働者の生活費を上昇させる「純粋な」供給ショックに対応して賃金を変更するインセンティブはほとんどないと指摘した。』

カナシイネー

『物価スライドに関しては、2022 年に価格改定の頻度を高めたのは、多くが状態依存型価格設定企業だったことを示す英国の研究に言及した。そのような価格設定行動はインフレ率の急速かつ大幅な上昇を説明できるが、その迅速な価格調整はインフレの持続性を低下させる可能性があると付け加えた。』

でもって、

『さらに、大規模な財政刺激策と、それがもたらすインフレ圧力に関する中央銀行の誤認識も、パンデミック後のインフレの一因になった可能性があると指摘した。そして、需要サイドと比べて供給サイドのストーリーがどの程度重要なのかを尋ねた。』

ほうほう。でもってこれはエルセグさんの回答コーナーになりますが、

『エルセグは、コメントに同意し、過去実績に連動するスライドのパラメータは 0.5 以下に設定され、1970 年代のデータで推計された持続性より低いと述べ、それにもかかわらず、モデルは供給ショックの強力な波及を説明することができると付け加えた。また、論文では主に供給ショックに焦点を当てたが、景気循環にとって需要ショックは重要だと付言した。』

供給ショックの強力な波及が起きたわけですけれども、供給要因だから一時的とか抜かして物価が下がるを連呼している中銀がいましたなあ。

という討論の後に、フロアからの質疑で、

『フロアから、植田は、この論文は、供給ショックがインフレ率に持続的な影響を及ぼしたとみられる日本の経験によく合致していると述べた。』

という昨日ご紹介した驚愕のコメントがった訳で、「供給ショックがインフレ率に持続的な影響を及ぼしたとみられる」って言ってるのにお前ら普段は「供給要因だから先行きこの影響は減衰する」って前提で物価見通しを出しているのはありゃペテンか何かか、と小一時間問い詰めたくなるような話をしらっと打ち込まれていました。という流れだったのでした。ということですいません昨日の補足なだけですが今朝はこの辺で勘弁。







2025/09/11

お題「金研国際コンファランスネタの続きですが今日の白眉は「植田さんそんなノンビリしたこと言ってる場合なの」ですw」

そらそうじゃろうなあ(なお記事の中身は有料会員向けなので詳しくは分からん)
https://www.agrinews.co.jp/economy/index/331426
2025年9月11日
[ニッポンの米価]新米相場は堅調
| ビジネス| 米価| 主要記事| ニッポンの米


〇FOMCと決定会合(と自民党総裁選)待ちになってしまったので引き続き金研国際コンファランスの要旨から参ります

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/25-J-07.pdf
「金融政策の新たな課題」
2025年国際コンファランスの模様
Discussion Paper No. 2025-J-7

ある意味本チャンはこちらになります(コンファランスは英語)
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/english/25-E-10.pdf
New Challenges for Monetary Policy
Summary of the 2025 BOJ-IMES Conference
Wataru Hagio, Daisuke Ikeda, and Yojiro Ito
Discussion Paper No. 2025-E-10

・そのまえに「基調的物価」云々に関して補足でも

昨日は開会講演の植田さんの能書きと質疑を見てほうほうほうと申し上げた後前川講演の話をしましたが、植田さんの講演に関する部分で、

『また、この政策スタンスのコミュニケーションは容易ではないと指摘した。その理由として、人々が注目する総合ベースでみた物価上昇率と、中央銀行が注目する基調的な物価上昇率との間に大きな乖離があることを挙げた。こうした乖離は、ある程度は常に存在するが、最近の乖離の大きさとその継続期間が日本において特に問題となっていると付言した。』

ってのがあって、日銀法2条(「第二条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」)を持ち出して悪態ついた訳ですが、読者様の識者様からそもそも論という事で「そういやそうじゃん!」というのを頂きましたので補足します。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2013/k130122c.pdf
デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)

『日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。』

『日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』(以上の部分直上URL先の2013年1月22日の政府・日銀の共同声明より)

ってなっている訳で、そもそも共同声明で言っているのは「ヘッドラインの消費者物価」なのですから、もちろんそのヘッドラインが季節要因や偶々発生するワンオフの価格ショックによって上振れするのに一々対応する必要はないのは当然としても、基調的物価というお気持ち物価を出してきてヘッドラインの物価高止まりを放置した挙句に「最近の乖離の大きさとその継続期間が日本において特に問題となっている」とか言ってるのそもそも論として共同声明違反じゃねえの、ってなお話でもあったりしませんかねえと。

あとですね、もう一つそもそも論でこれまた読者様の識者の方からのウケウリーで甚だ恐縮ではありますが受け売りおじさんとなって申し上げますと、消費者物価指数自体は「現実の数値を統計したもの」でございますが、一方で「基調的物価」としているものは消費者物価やらその他諸々のいろんなのを集計加工しているものな訳でして、物価指数という「現実」といろんなものを加工処理した「基調的物価」が「長期にわたって大幅に乖離している」という状態になっているのであれば、そもそも論としてその集計加工方法に問題があるのではないか、と考える方が自然な態度であって、君たちが加工したものの加工方法が正しいという前提に立って消費者物価指数という現実を否定する説明は根本的に何か変じゃないんですか、というツッコミもあったりするなあ、というのを捕捉させていただきまして昨日の続きをボチボチと参りましょうず。


・ウィリアムズNY連銀総裁と氷見野さんの特別対談である

次が『4. 基調講演:Challenges for Monetary Policy and Its Communication(金融政策とそのコミュニケーションに関する課題) 』なのですが、これはむしろFEDのコミュニケーション(SEPのあり方など)に関する話が多かったので、話自体はおもろそうですけど丸々すっ飛ばしまして。

『5. 特別対談 』に参ります。先日の氷見野副総裁の釧路金懇でこの特別対談をネタにして氷見野さんがお話をしていましたが、ウィリアムズ(いうまでもありませんがNY連銀総裁)の言葉を引用したイタコ話法を氷見野さんがしていた、ということはつまり氷見野さんが「我が意を得たり」だった訳でしょうけれども、何のお話をしていたのか、というのが始まります。

『特別対談の司会を務めた氷見野は、ウィリアムズをゲストとして迎えて、対話の中でいくつかの問いを投げかけた。』

で、ここで氷見野さんが金懇挨拶で引用したウィリアムズの答えが返ってきます。

『それらの問いに対して、最初に、ウィリアムズは不確実性が高いもとでの金融政策運営について論じ、ある経済モデルにおいて最適な政策が、別のモデルでは非常にパフォーマンスが悪くなることがあると指摘した。』

どう見てもQQEです本当にありがとうございました。

『したがって、高い不確実性に直面するもとでは、最適解をみつけるのではなく、複数のシナリオ下でうまく機能するアプローチを考える方がよいと述べた。』

という部分を思いっきり引用したのがこの前の金懇の「ウィリアムズ総裁のお返事は、私の理解したところでは、だいたい以下のようなことだったと思います。すなわち、金融政策はいつだって不確実性に直面してきた。不確実性が高いからゆっくり進めたらいいとか、迅速に進めたらいいとか、小刻みにやった方がいいとか、大きなステップを取った方がいいとか、そんなことはいえない。ただ、特定のシナリオを前提に厳密な最適解を求めようとするのではなく、むしろいろんなシナリオを想定してもちゃんと機能するような作戦を見つけるようにした方がいい。――こんな感じのお返事ではなかったかと思います5。」って部分ですね。

ちなみに脚注5に日銀よつべチャンネルのURLが記載(直リンはしていない)されていて、
https://www.youtube.com/watch?v=1XLWWSoB_Ok
の冒頭部分との由

とまあそういうお話がありましたがさらにお話はありましてですね、

『次に、インフレ予想について議論した。』

ほう。

『コロナ禍以前を振り返り、それまでの数十年間、米国のインフレ率が低位で安定していたことが、インフレ予想の形成に大きな影響を与えたと論じた。そのうえで、コロナ禍以降の 5 年間で、インフレに対する人々の認識が変化し、以前に低インフレを経験した世代のインフレ予想の分布が上方向にシフトしたと指摘した。』

なるほどなるほど(ちなみにアタクシは毎年ホイホイと国鉄やら市電やらの運賃が上がるインフレを知らんわけではないという設定でやらせてもろて頂いておりますので一応高インフレの記憶はある人)。

『これらを踏まえて、インフレ予想は望ましくない方向に変化する可能性があり、インフレ予想がしっかりとアンカーされていることを当然視すべきではないと注意を喚起した。』

ということですが、一方で今の日銀の説明ってインフレ期待を2%にアンカーさせようという政策をしている、としていますけど、インフレ期待自体が徐々に上がっていくので2%になった所でアンカーしてそこで止まる、かのような虫のいい説明をしていまして、ウィリアムズのこの指摘とはだいぶ違う認識になっていますよね、と思う訳です。

でもって以下は自然利子率と2025年4月のトランプ関税ショック相場の話なのでまあとりあえずかっ飛ばしまして質疑応答に参ります。

『フロアとの質疑で、カルステンスは、中央銀行の自主性は不確実性の高まりに対応するうえできわめて重要であると強調し、中央銀行の自主性を確保するうえで制度設計が重要であると付言した。』

『ウィリアムズは、そのコメントに同意し、中央銀行の独立性がうまく機能して物価の安定が強力に推し進められてきたからこそ、多くの国に独立した中央銀行が存在すると答えた。』

でまあ今は言われてないから良いようなものの、物価高を放置した日銀、って批判が飛んでくるようになりますと独立性(まあ現時点でも大概にアレだがwww)に関して大丈夫かよという話になるじゃろと懸念(杞憂)するところではありまする。

『インドラジット・ロイ(インド準備銀行)は、新興国の自然利子率を推計する際に、為替レートの変動を考慮することの是非を問うた。』

ほうほう。

『ウィリアムズは、モデルを新興国に適用するのであれば、為替レート等を十分に考慮する必要があると答えた。』

まあ正直日本も新興国モデルで考えた方がエエンチャイマスカねえ、と思いました。なお質疑応答が主に自然利子率とかそっちの方になっているので以下割愛。


・アフターコロナの物価レジームにおける金融政策の部分での質疑応答が中々の物件なんですよ

この次が『6. 論文報告セッション』なのですが、最初の『(1) Reserve Demand, Interest Rate Control, and Quantitative Tightening(準備預金需要、金利コントロール、量的引締め)』は適切なリザーブ水準の置き方とかそういう話なので今の日銀的にはそのだいぶ前段階でありますので、内容自体はまあオモロイにはオモロイのですが特に今時点でネタにするような話でもないということで全編かっ飛ばしまして、

次の『(2) Monetary Policy and Inflation Scares(金融政策とインフレ懸念)』に参ります。

『エルセグは、パンデミック後のインフレ高騰を説明する動学的確率的一般均衡(DSGE)モデルを構築し、そのようなショックに直面するもとでの金融政策運営について新たな見方を提供した6。』

エルセグってのは Christopher J. Erceg, International Monetary Fund になります。

『当時を振り返り、インフレが当初、一過性のものであり、二次的な波及効果は最小限であるとみなされていたことに触れ、このため主要な中央銀行は初期の上昇を静観する(look through)ことになったと述べた。』

さいですな。

『そのうえで、2 つの問いを取り上げた。近年のインフレ高騰の背景にあるメカニズムは何か。供給ショックが、地政学的リスクや貿易不確実性等によって、より頻繁に発生する経済において、金融政策はどのように運営されるべきか。』

でもって、

『これらの問いに答えるため、DSGE モデルに、供給ショックの持続性に関する経済主体の誤認識(misperceptions)、インフレ予測に基づくテイラー・ルール、非線形フィリップス曲線、内生的な物価・賃金スライド(indexation)を取り入れた。』

アタクシ頭悪いからよくわからんのですけど、複数均衡みたいな話とか非線形要素入れてモデル作るのにDSGEなのって気はしましたけどまあそういうのはさっぱり分からんからこの前提がどういうものなのかを詳しく見ないと何んともかんとも。

でまあそれは良いとしまして結果ですが、

『このモデルでは、インフレ率が目標を持続的に上回った場合、物価・賃金スライドが内生的に強まると説明した。』

wwwwwwwww

何か結果から後付けして条件制御しているんじゃネーノ疑惑はありますが、これは「賃金と物価の好循環」を標榜する日銀ニッコリですね(皮肉で言ってますので念のため申し添えます)

『続いて、主な結果を紹介した。』

『第 1 に、供給ショックの波及効果は、経済の状態に依存すると述べた。インフレ率がすでに高い状態でコストを高めるような供給ショック(コストショック)が生じると、インフレ率が大きく持続的に上昇すると述べた。一方、インフレ率が目標水準に近いときに生じる同じコストショックは、一過性の影響しか及ぼさないと説明した。』

『第 2 に、予測に基づくルールのもとで、ショックが一過性と誤認識された場合、コストショックは実質 GDP を短期的に押上げ、インフレ率はこぶ状(hump-shaped)の反応を示しうると述べた。線形化された標準的な DSGE モデルでは、このような動きを説明できないこと、非線形性と誤認識が組み合わさるとコストショックの波及が変化しうることを指摘した。』

如何にも「それっぽい」結果なので若干眉唾気味に読んでいるアタクシがいるw

とは言え・・・・・・

『政策への含意については、インフレ率が目標に近く、ショックの規模が小さく一過性のものである可能性が高い場合、供給ショックを静観するという標準的な対応は総じて妥当であると指摘した。』

『しかし、大きなショックに直面した場合、特にショックの持続性が不確実な場合やインフレ率が目標を大きく上回っている場合には、このような対応は問題になりうると付け加えた。また、インフレ率が当初目標を上回っている場合、インフレ率の確率分布は上方にゆがみ、インフレ率は望ましくない供給ショックに対してより脆弱になると強調した。』

ちょwwww日本の事例wwwwwwww

と思うじゃないですか。実はこの後韓国中銀の李総裁による討論があってそっちも重要な話があるのですが、本日のメインイベントであります所のこの論文に対するフロアからの質疑応答に飛びますとこの冒頭に衝撃あるいは笑劇の質問がありましてですね・・・・・・・

『フロアから、植田は、この論文は、供給ショックがインフレ率に持続的な影響を及ぼしたとみられる日本の経験によく合致していると述べた。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)

ちょっと待てお前は何を言ってるんだ!!!!!!!!

・・・・・あのさあ、そう思ってるんだったら何で「緩和修正がビハインドするリスクは小さい」とかいう現実認識になるんだよという話でして、これはもしかしたら植田総裁がアカデミックな議論を目の前で見て聞いているうちに本来の植田和男教授という真人間を取り戻すというレナードの朝状態になって覚醒したのか、と思ってしまいましたが、いやマジでお前何言ってるんだよとこの件を読んで衝撃を受けたのでネタにしました次第なわけです。

ちなみにエルセグさん、「だったら何でお前の国は実質金利を大幅マイナスにしたまま放置してるのか」などとはさすがに聞かずに、

『エルセグは、それは論文にとって有益な情報だと返答した。』

とお答えしておりますwwwww


なお、その後の質疑にも日本の政策に含意ありありな話が続いていまして、まずは為替レートについてですが、

『カルステンスは、新興市場経済では為替レートが価格形成メカニズムに影響を与えることが多いことに触れ、モデルをこうした方向に拡張するのは興味深いと述べた。』

これに対して、

『エルセグは、新興市場経済にとって重要な為替レートと外部ショックがもたらすリスクを検討したいと答え、通貨安は、経済の状態に依存してインフレ率に持続的な影響を与える可能性があると付言した。』

(;∀;)イイシテキダナー

次に「持続的なショックが重要」という話でして、

『コーゼは、高インフレ、経済の過熱、持続的なショックのうちどれが主な結果にとって最も重要なのかを尋ねた。』

コーゼさんは M. Ayhan Kose The World Bank Group です。

『ウィリアムズは、この間米国では物価と賃金の調整がはるかに早かったというエビデンスが多くあり、賃金から物価へのパススルーははるかに高かったと述べた。そして、どのメカニズムが本当に重要で、実証的に関連があるのか問うた。』

と来ましてエルセグさんの見解ですが、

『エルセグは、一過性のショックであれば主要な結果は得られないため、持続的なショックが非常に重要な要素だと答えた。また、供給ショックの持続性に関する誤認識も重要であり、もし中央銀行が早期かつ急速に金利を引上げた場合、ショックの影響は小さくなると付け加えた。』

>供給ショックの持続性に関する誤認識も重要

思いっきり日本への含意が、という感じですな。以下この環境に関する最適金融政策の話になっているのですが、この点に関してはエルセグさんとしてはまだ結論を出していないというお話なので割愛します。

・・・・・ということで、まあ論文自体が何となく結果から後付けしてねえか疑惑はあるものの、結局このコーナーのエルセグ論文の言ってることってアフターパンデミックにおける物価ダイナミズムに関して欧米から得られたご教訓(と政策インプリケーションなのかな??)を記載している訳でして、それを見た植田さん、のんびりと「日本の経験によく合致している」とか言いながら今の政策維持しててエエンですかと小一時間問い詰めたい、と思いました。

続きは多分明日もあるかと(なおECBもあるのですが)









2025/09/10

お題「短国6M新発がお強い/またBBGでお漏らし/河野先生いいぞもっと言え/金研国際コンファランスから」

またカレーライス物価指数(でしたっけ)があがるのか・・・・
https://www.agrinews.co.jp/economy/index/331138
2025年9月10日
ジャガ・タマ上げ基調 果菜類も続伸 野菜小売価格

ちなみに玉ねぎに関しましては
https://www.agrinews.co.jp/economy/index/330878
2025年9月9日
タマネギが5割高 高温干ばつ 北海道産入荷少なく
| ビジネス| 主要記事

ってのもありますわ。


〇短国6Mが利上げが何ぼのもんじゃいという威勢の良さを示していますがさて・・・・

昨日は6Mの入札だったんですけど
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250909.htm
国庫短期証券(第1330回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1330回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号     国庫短期証券(第1330回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日     令和7年9月10日
4.償還期限    令和8年3月10日
5.価格競争入札について
(1)応募額          10兆8,122億円
(2)募入決定額     2兆7,069億9,000万円
(3)募入最低価格      99円74銭3厘
(募入最高利回り)     (0.5195%)
(4)募入最低価格における案分比率    16.3333%
(5)募入平均価格     99円74銭6厘
(募入平均利回り)     (0.5135%)』

とまあこういう結果だったのですが、売参ちゃんを確認しますと
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

前日の引値が・・・・・

(9/8引値)
国庫短期証券1288 2026/02/20 平均値単利 0.515
国庫短期証券1330 2026/03/10 平均値単利 0.540←新発6MWI
国庫短期証券1330 2026/03/10 平均値単利 0.540

だったのですが、昨日の引けは何と

(9/9引値)
国庫短期証券1288 2026/02/20 平均値単利 0.480
国庫短期証券1330 2026/03/10 平均値単利 0.480←新発6M
国庫短期証券1294 2026/03/23 平均値単利 0.500

とかいうオシャンティーなことになっておりまして、これそもそも論として月曜のWIもちょっと強くなっていた所だったのですが、そんな水準なんぞ知らんわというような勢いでぶち抜けた入札結果になって、さらに引けはそこから3毛以上強い引けになっているというこの恐ろしきムーブメント。

でもってこの前の3M(先々週から先週に掛けての前回債3Mカレント)ムーブと違うのは周辺銘柄(1年短国の成れの果て)も一緒に激強になっていることでして、ちょっとちょっとお兄さんお兄さんこの銘柄償還来年の3月でっせ利上げ観測はどうなっているのという値付けになっておりますが、まあ6Mって経験的には需給が強いときと弱いときの差が極端な銘柄(理由は3Mという毎週発行の使い勝手の良い短国があるのに対してこっちは月一発行だから使い勝手が限定されてしまうので使いたい人が出てくる時と出てこないときの差が大きいから)なので、というのはあるのですけれども、いやさすがに世の中1月くらいまでの利上げは想定しとるじゃろ、と思うのでナンジャコリャ感が拭えない結果となりましたが、いったい全体なんの判じ物なのかはよくわかりませんけど、10月か12月か1月か利上げが分からんけど、確実に利上げになるまでは短国で逃げよう、と思ったら確かに今のカレント3Mって12月足だから12月利上げ前に償還来ちゃうし、12月の後半に足を置くと年末前に償還分の再投資を考えないといけないから、だったら3月まで足を伸ばすか、という位しか思い当たるニーズが無いのですが、まあこれはお買い求めになられておられる方にしか分からん話なのかどうなのか。ってな訳で相変わらず謎話ばっかりで恐縮ではございますが昨日の怪奇現象としてメモっておきましたというお話です。


〇またなんかお漏らし芸をしているのかいいかげんにしなさい(BBGからお漏らしキタコレ)

はいはいお漏らしお漏らし
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-09/T23HZJGOYMTT00
日銀は政治混迷でも年内利上げ排除せず、今月は政策維持へ−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2025年9月9日 17:15 JST 更新日時 2025年9月9日 17:40 JST

→経済・物価はシナリオ沿った動き、関税の米大統領令で不確実性低下
→米経済動向に警戒感強める、政策対応が遅れるリスクは大きくない

『事情に詳しい複数の関係者によると、日銀は新政権の政策を巡る思惑で神経質な市場の動向を注視している。経済・物価情勢は7月の最新シナリオに沿った動きと判断しており、年内に環境が整う可能性も引き続き視野に入れている。』(上記URL先より、以下同様)

でたなまた「事情に詳しい複数の関係者」ってことでもう定例のお漏らしタイムと化していまして成人用おむつの販売も捗りますなあとしか申し上げようがなくて呆れてしまいますが、そもそも論として「年内に環境が整う」とかお前らとんでもない実質金利ドマイナス政策やっててなーーーにが「環境が整う」だよ今すぐ臨時会合開いて政策金利50上げてももしかしたらビハインドかもしれんじゃろ何をゆうとるんじゃおどれらは、とまあそんな話なんですけどね。

でまあ相変わらずビハインドのリスクは大きくない、とのことで、同記事中にも、

『政策対応が後手に回るリスクは大きくないとの認識にも変化はない。米関税政策の影響や新政権による経済政策、米国を中心とした海外経済の動向などを見極めながら、追加利上げのタイミングを急がずに探っていける状況にあるという。』

だそうで、何を寝言言ってるんだよとは思うのですが、弊駄文では何度か申し上げておりますように、今のハトハトチキン体制におきましては兎に角ケツを叩かれないと動かないので、じゃあ何が日銀のケツを叩くのか、というのを考えるという話でして、その点で言えば昨日も申し上げましたが、新政権が出来て劈頭でデフレ脱却宣言して経済のレジームチェンジを高らかに宣言したら日銀は利上げをせざるを得なくなってくるし、何なら中立金利に向けた利上げを視野に入れないといけなくなるので、まあそういう感じのケツの叩かれ方か、為替円安か、誰かが上手に犬笛を吹いて物価高の責任が日銀に回ってくる事態が発生するか、な訳ですな。

ただまあ上記のように日銀が(一部の政策委員はそうじゃないと指摘していますけど)政策ビハインドに陥るリスクは小さいので追加利上げを急がない、というスタンスでいるわけですが、あんまりそっちの方で見方が固まってしまうと当然なのですが為替円安になって日銀に怒られが発生するリスクが有るので、こうやって適当なお漏らしをすることによって円安ぶっ飛びを回避しよう、という小賢しいプレイをしておかないとまーた日銀がケツ叩かれる事態になるので叩かれたくないからお漏らしプレイに走る、とまあこのように考えておけばよろしいのではないかと思います、あくまでもアタクシの超個人的偏見ですけどね。

てかさ、この「決定会合前にお漏らし」ってのマジで止めてくれませんかねえ、経済物価情勢などをみながら(GDP2次速報だって強かったんだがそういうのを見ても直接的にしゃあないというのが悲しすぎる)政策予想をする、ってのが一生定着しないんですけど・・・・・・・・


〇もはや弾幕として全然意味が無いかも知れませんが河野太郎先生がいいこと言ったわw

この人も誰かさんと同じで責任ある地位につけないで犬笛番長の方が良いのかもしれませんね
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-09/T2AQ9HGP9VD000
自民・河野氏、円安是正へ日銀は利上げを-対応遅らせればインフレ継続
Shery Ahn、氏兼敬子
2025年9月9日 10:45 JST 更新日時 2025年9月9日 12:19 JST

→利上げ先送りなら輸入品価格はさらに上昇へ、円相場の安定が重要
→現金給付や消費税減税、財政赤字の拡大につながると否定的な見方

『自民党の河野太郎前デジタル相は9日、インフレの抑制には円安の是正が不可欠だとし、政策金利の引き上が必要だとの見解を示した。ブルームバーグテレビジョンのインタビューに英語で応じた。』(上記URL先より、以下同様)

英語で答えたんだ〜

『河野氏は、日銀の利上げ先送りは「インフレが続くことを意味する。輸入するもの全ての価格が今より上がることになる」と指摘。円相場の安定の重要性を強調した上で、「そのためには、日銀が金利を引き上げる必要がある」と語った。』

『河野氏は、現金給付は「単に財政赤字を拡大させるだけ」であり、効果は乏しいと指摘。消費税減税についても財政赤字拡大につながるとして否定的な見方を示した。』

まあ自民党の政調のメンバーにでもなってもろていただいて過度な円安の是正に向けた取り組みをしていただきたいものですが、こうやって犬笛を吹いてくれる方がいないといつまでたっても「物価高対策」とか言いながら結局物価の上がる施策をバンバン打ち続け、一方で日銀は「基調物価ガー」というお気持ち物価を持ち出して超越大緩和政策を継続して物価押上げに寄与する、というアホの極みみたいな政策が続くかと存じますのでまあね。


〇今回の金研国際コンファランスのお話が中々面白かった件について(1回では終わらないのでシリーズものの見込み)

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/25-J-07.pdf
「金融政策の新たな課題」
2025年国際コンファランスの模様
Discussion Paper No. 2025-J-7

ある意味本チャンはこちらになります(コンファランスは英語の筈なので、見たことないから知らんけど)
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/english/25-E-10.pdf
New Challenges for Monetary Policy
Summary of the 2025 BOJ-IMES Conference
Wataru Hagio, Daisuke Ikeda, and Yojiro Ito
Discussion Paper No. 2025-E-10

これ日本語版読んでるだけでも中々味わいが深くて、今回のコンファランスまとめは中々の作品に仕上がっていると
思いますが、結構な分量なのでチョイチョイとネタにしていこうかと存じます。


・植田さんの開会挨拶自体は既にネタにしましたがまとめられたのを見るとやっぱり重大なツッコミどころが2点ですな

本文2ページ(PDFの4枚目)が『2. 開会挨拶』になります。

この挨拶自体は
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250527a.htm
日本銀行金融研究所主催2025年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳
日本銀行総裁 植田 和男
2025年5月27日

本チャンはこちら
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2025/ko250527a.htm
Opening Remarks at the 2025 BOJ-IMES Conference Hosted by the Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan
UEDA Kazuo
Governor of the Bank of Japan
May 27, 2025

にありましてネタにしたので重複ちゃあ重複ですが再掲のノリでw

『植田は、わが国の金融政策が直面している課題について、自身の見方を共有した2。最初に日本の物価上昇率について説明した。2021 年以降、日本の物価上昇率は米欧に遅れて高まったのち、足もとでは米価格といった食料品価格の上昇を主因として、再び上昇していると述べた。』

『次に日本の政策金利は日米欧経済の中で最も低くなっていると述べた。そうしたもとで、「実際の物価上昇率が 2%を上回って 3 年以上推移しているにもかかわらず、なぜ日本銀行はそのような緩和的なスタンスを維持しているのか」と問題提起したうえで、基調的な物価上昇率(一時的な変動要因を除いた物価上昇率)がなお2%を下回っているためと答えた。』

はいはいお気持ち物価お気持ち物価。

『続いて、基調的な物価上昇率を捉える完璧なデータは存在しないと述べたうえで、基調的な物価上昇率を評価するために注意深くモニターしている指標の 1 つとして、予想物価上昇率を挙げた。日本の予想物価上昇率は、1.5%から 2.0%の間にあり、この 30 年間で最も高い水準にあるものの 2%の目標水準を下回っていると述べた。それを 2%にアンカーするために、緩和的な政策スタンスを維持し続けていると説明した。』

などと仰せになっていたのはご案内の通りですが、ここで先日行われた氷見野副総裁の記者会見での基調的物価についてのコメントを確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250903a.pdf
氷見野副総裁記者会見 (9/2)

『かなり、と言ったかどうかあれですが、近づきつつあると言ったときに水準はどれくらいかということですけれども、これが、結局、推計方法によっていろいろですし、そもそも概念として、予想インフレ率の中長期的なものでみていくのか、あるいは一時的なものを外していくのか、一時的なものを外すといったときに何を一時的とみるかというようなことで、必ずしもピンポイントで特定できるものではありませんので、近づいているという方向は申し上げられますが、何か更にゾーンを狭める表現をあえて申し上げるのは、ちょっと差し控えさせて頂ければと思います。』(この部分だけ直上URL先の2025年9月2日氷見野副総裁記者会見3pより)

とまあそういう訳でして、そもそも基調的物価だのインフレ期待だのに関して植田さんの言うような狭いレンジで示されるものではないし、大体からして1.5〜2.0って言うならそれもう目標達成みたいなもんだろ計測誤差考えたら、という話な訳で、何でこんな講演をしてたんですかねえってなもんな訳です。

でもって本編に戻りますが、

『また、この政策スタンスのコミュニケーションは容易ではないと指摘した。その理由として、人々が注目する総合ベースでみた物価上昇率と、中央銀行が注目する基調的な物価上昇率との間に大きな乖離があることを挙げた。』

というのも講演で言ってましたが、そもそも論として日銀法2条には「第二条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」とあって、基調的物価上昇率とやらが政策のゴールなのではなくて、政策のゴールはあくまでも「国民経済の健全な発展」なのですから、本来は「コア指数だけ見てて良いのか」という位の話をするべき、というか昔からその話は有るわけでして、ヘッドラインでもコアでもない「基調的物価」で政策がどうのこうのとか言ってる時点でお前は何をいってるんだというお話ですな。

『こうした乖離は、ある程度は常に存在するが、最近の乖離の大きさとその継続期間が日本において特に問題となっていると付言した。』

おどれが勝手に作っているだけじゃろうがw

『世界的にみて、供給ショックが頻繁に生じるようになるにつれて、こうした乖離は、多くの中央銀行にとって主な焦点であり続けると考えられると述べた。』

でもって

『最後に、本コンファランスの議論が、基調的な物価上昇率と予想物価上昇率の計測、それらに支えられた金融政策についてのコミュニケーションのあり方、頻繁に生じる供給ショックのもとでの金融政策運営等のきわめて重要な問題に光を当て、世界の中央銀行コミュニティに貴重な知見がもたらされることを祈念すると述べ、開会挨拶を結んだ。』

ってな話になっていますが、まあこの先のお話自体は中々面白いんですよね。


・最初の前川講演は質疑応答の方がオモロイ

『3. 前川講演:Trust and Macroeconomic Stability: a Virtuous Circle(信頼とマクロ経済の安定:好循環)』ってのが次のコーナーですが、講演しているのは Agustin Carstens, Bank for International Settlementsです。

『カルステンスは、数多くの経済・金融危機に対峙してきた経験をもとに、公共政策に対する信頼(trust)の重要性に関する講演を行った3。まず、数多くの危機から得られた 2 つの重要な教訓を挙げた。』

でもってこの教訓自体は、

『第 1 に、危機の代償は大きいため回避することが最善であると述べた。』

緩和政策の修正がビハインドになると危機にになる恐れもあると思うのですが日銀ちゃんったら・・・・・・・

『第 2 に、経済と金融市場は常に変化するため、現在適切と思われる政策や枠組みも、最終的にはおそらく急速に変わる必要があると述べた。』

ですわなあ、ということですが、この後の話は主に現在の一般的な通貨制度(通貨発行の二重構造に基づく今の状況)に対する信認を維持するためにはどういう観点が必要かというような話になっているのでかっ飛ばして質疑応答の方を見ますとですね・・・・・・・


・お漏らしという意味では予測可能ですがwwwwwwwww

『フロアとの質疑で、オルファニデスは、信頼の定義には公的機関が予測可能な行動をとるという考え方が含まれているものの、実際の政策運営においてはシステマティックなルールに基づく政策よりも裁量が優先されることが多いとコメントし、この点についての対応策を問うた。』

質問者は Athanasios Orphanides Massachusetts Institute of Technology です。

『カルステンスは、金融政策の枠組みは、予測可能性を高めるための確固たる基盤を提供すべきであり、中央銀行が裁量を行使する場合は、丁寧な説明を行い、行動を最終的な目的に結びつけるべきだと述べた。』

wwwwwwwwww

それこそ政策判断基準の説明するのにコアコア物価出してみたり賃金出してみたりサービス価格出してみたり賃金と物価の好循環とか言い出したりしながら基調的物価とか言ってると思ったらインフレ予想とか言い出す、という中央銀行がいるような気がしますなw


・これはベッセント財務長官もニッコリ(とはちと違うかもだが)

続いて塩路先生。

『塩路悦朗(中央大学)は、非伝統的金融政策の実施期間中、中央銀行はさまざまな資産を購入したが、その結果、中央銀行により大きな役割を求める世論の圧力が高まったのではないかと指摘し、このような過度な期待を抑えて正常な状態に戻る方法について尋ねた。』

ですよねー。

『カルステンスは、世界金融危機(Global Financial Crisis: GFC)以降、中央銀行が唯一の選択肢だと認識され、金融政策は副作用がなく多くの目標を成し遂げられる万能なツールだという期待が高まったと指摘した。中央銀行ができることとできないことの境界線を引くにあたって、もう少し慎重さが必要であったと付言した。』

然り。


・全然向き合っていない人がいるような気がしますが・・・・・・

『ゴロドニチェンコは、政治的圧力が高まる中、中央銀行への信頼をどのように維持できるのかと尋ねた。』

質問者は Yuriy Gorodnichenko University of California, Berkeley です。

『カルステンスは、中央銀行の独立性を維持するために、中央銀行と政府との間で摩擦が生じることはやむを得ず、それが結果として中央銀行の信頼性を高めることになると答えた。』

摩擦を絶対にしないように心がけておられるとしか思えない中央銀行があった気がしますが気のせいでしょうかw

『また、中央銀行は、そういった摩擦に必要なタイミングで向き合うことが責務の一部であると心に留めておく必要があると述べた。』

イエーイハトハトチキン見てるか〜(ってコンファランスにいたでしょうから見てるんですけどね)。


・でまあどうせ日銀ちゃんは他人事だと思ってるでしょうけど

質疑パート(元のURL先見て頂ければ分かりますが適当に飛ばして引用していますので念のため)の最後にはこんなのがありまして、

『ハウザーは、中央銀行は、信頼の低下という社会的トレンドにどのように対処し、信頼を守ることができるのかと問いかけた。』

質問者は Andrew Hauser Reserve Bank of Australia です。

でまあ日銀の場合は幸か不幸か物価に責任があるというのが人口に膾炙していないので物価高批判が日銀に飛んでこない、という大変に素敵な状態にあるわけですが、この状況とていつまで続くか分からんと思うのだが、まあどうせ日銀は他人事だと思ってるでしょwwwwwww

『カルステンスは、過去 20〜30 年間、金融・財政政策が経済の安定と成長の実現に非常に有効だと広く信じられてきたが、実際にはそうではなかったと述べ、中央銀行は、特に物価安定以外の目標を追い求める際は、積極的なアプローチをとることにより抑制的であるべきだろうと答えた。』

まあ日銀にいわせりゃ黒田緩和は全部「物価安定目標のため」なので積極的なアプローチをとりましたって言うでしょうけれども、お前ホンマにそれでエエんか、というのは自問して頂きたいものです。


ということでこのネタは明日以降に続きますが中々今回のは面白いので一読推奨しておきます。たしか日銀のよつべチャンネルに録画があるはずです。








2025/09/09

お題「超長期がアレだったので備忘メモ/ジャクソンホールの植田総裁の講演ってなんか色々とヤバい奴でしたな」

そう言えば自民党総裁選フルスペックということですが、ここで日本農業新聞の論説を見てみましょう。なお今朝の時点では会員じゃなくても全文公開しているので皆さんに読んで欲しいんとチャイマスカね。

https://www.agrinews.co.jp/opinion/index/330880
2025年9月9日
[論説]石破首相の辞任 生産現場重視の農政を
| 主張| 論説| 主要記事

『党勢回復の“切り札”として起用した小泉進次郎農相の言動も、賛否が相次いだ。失言で大きな批判を浴びた江藤氏の後任として、知名度と持ち前の発信力で党の支持を一時的に回復させたが、随意契約による安値での放出に踏み切り、長年、低米価に苦しんできた農家からは不安や怒りが渦巻いた。また、備蓄米放出を安価な輸入米の流入を防ぐための策と主張しつつ、緊急輸入に言及。米の市場流通を「じゃぶじゃぶ」にするとの発言が、農業関係者らの反発を招き、参院選での苦戦につながった。次期政権には、消費者だけでなく、食を支える生産現場の声をより重視した農政を求めたい。』(この部分だけ直上URL先日本農業新聞記事より)


〇案の定超長期がアカンタレだったので俺様備忘メモ

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/2NEA5T75LBO2XFMF5YUXBQ6YO4-2025-09-08/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、長期金利1.57% 早期の日銀利上げ観測後退
By ロイター編集
2025年9月8日午後 3:26 GMT+9

まあ皆様ご案内の所だし特に付け加える能書きも無いのですけれども記事を引用するという安直備忘おじさんのアタクシ。

『[東京 8日 ロイター] - <15:14> 国債先物は続伸、長期金利1.57% 早期の日銀利上げ観測後退 

国債先物中心限月9月限は、前営業日比8銭高の138円04銭と続伸して取引を終えた。米金利低下や早期の日銀利上げ観測の後退を背景に国債先物は買いが優勢となった。新発10年国債利回り(長期金利)は同横ばいの1.570%。』(上記URL先より、以下同様)

これしかし「早期の利上げ観測後退」って言ってますけど、10月か1月かでそこまで重大な違いがあるのかね(1月もできなくて当分0.5%だって言うなら話は別だけど)とは思うのですが、大体からして「早期利上げ観測の後退」ってそれ他が同条件なら円安を誘発しやすいし物価を押し上げやすいんですから、先に行ったら実はインフレが加速して日銀が各方面からシバキ倒されながら利上げを急がないといけなくなるかもしれない訳で、インフレ加速しようもんなら利上げの最終着地点が上方シフトしたっておかしくないんですが、まあそういうややこしいことは考えずに脊髄反射するのはいつもの事。

『現物債市場で新発債利回りは超長期ゾーンの金利上昇が目立った。財政拡大懸念がくすぶる中、「全体的に様子見姿勢が強い。(石破首相の退陣表明後となる)今晩の欧米勢の動向に市場の関心が集まる」(石田氏)との声が聞かれた。5年債は前営業日比1.0bp低下の1.095%。一方、20年債は同3.5bp上昇の2.670%、30年債は同6.0bp上昇の3.285%。2年債と40年債は出合いなし。』

はいはいスティープニングスティープニングというところでして

『    OFFER  BID   前日比 
2年   0.816  0.823   -0.015 15:02
5年   1.091  1.098   -0.012 15:02
10年  1.561  1.568   -0.007 15:02
20年  2.663  2.673   0.033 15:13
30年  3.279  3.292   0.061 15:11
40年  3.515  3.54    0.069 15:13』

てなスティープになっています。ということですが、ではまあ実際問題次が誰になるのかという話だと、たぶん高圧経済とか今の状況で言うのは正常な知能が存在するのかお前というような事を言い出す人じゃなかったらそう極端な話にはならんとは思うので(個人の感想です)すし、自民党総裁選って10月4日には片が付いている訳で、新政権の劈頭に「デフレ経済からは脱却したので新しい経済に相応しい成長型経済政策を実施する」とか言ってデフレ脱却宣言を出して日銀には金融政策の正常化を促す、っていうような景気づけするような施策が来たって別におかしくねえじゃろと(かなり妄想に寄ってますが)思ったりもするわけです。

まあ勿論大分妄想には寄っていますが、ただまあ今の日銀の緩和政策修正スタンスってアタクシ思いまするに(=個人の感想ですよ!!)、ああだこうだと小理屈はつけるものの、一貫しているのは「自分たちから率先して緩和政策の正常化を推進した後で難癖つけられ無いよう我が身大事の石橋を叩いて渡らない大作戦」にしか見えない訳で、石破氏もとい石橋を叩いて渡らないためにああでもないこうでもないと手を変え品を変えて利上げしない小理屈をこねくり回している訳なので(個人の偏見です)、今までのように金融政策に基本的に放置プレイだったゲル政権から新しいのに変わり、高インフレを助長するような大規模緩和政策イクナイ!っていうのに気が付く人に変わったら変わった途端に日銀ケツ叩かれて中立金利とは言わないにしても、政策金利1%くらいまではホイホイと人が変わったように利上げしてくるようになるかもしれず、とは思うので、ゲル政権がダラダラ続くよりは日銀が決断を迫られる可能性は高まった(ただし人によっては利上げできなくなる)とも思うんですけどどうなんでしょうかね。


〇ベッセントが米国の量的緩和(というか大規模資産買入)を今更批判しておられるのですがこれはwww

ほうほう
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-05/T24JDPGOT0JM00
ベッセント長官、金融政策含むFRB調査を要求−量的緩和を批判
アンスティー・クリストファー
2025年9月6日 2:39 JST 更新日時 2025年9月6日 10:09 JST

→WSJに寄稿、FRBは「責務逸脱」で自らの独立性脅かすと主張
→金融危機対策が格差生んだと指摘、トランプ政権時の施策は批判せず

『米連邦準備制度理事会(FRB)は「責務から逸脱」することで自らの独立性を脅かしていると、ベッセント米財務長官が批判。金融政策を含め、FRBに対する独立した調査を行うよう求めた。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほうそうですかそうですか。

『ベッセント長官は5日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)に掲載されたコラムで「独立性の核を成すのは、信頼性と政治的な正当性だ」と主張。「いずれもFRBが自らの責務を超えて行動することによって、危機にさらされている」と述べた。』

「自らの責務を超えて行動する」とは何ぞという話ですが、

『ベッセント氏は常々主張してきたFRBによる「金融政策の機能強化型実験」への批判をコラムで展開。中でも2007ー09年の金融危機対応としてFRBが実施した量的緩和(QE)は、過剰な刺激を経済に与えたと指摘。さらには銀行システムに対し行き過ぎた規制を敷いたとも述べた。「量的緩和のような非常手段は真の緊急時に限り、連邦政府全体との連携のもとで行われるべきだ」とベッセント氏は述べた。』

これわwwwwwww

真の緊急時どころか緊急でも何でもないのに莫大な量的緩和を相変わらず碌に縮小出来ていない中央銀行がこっちの方にあるんですがベッセントさんちょっと日本の財務大臣でもやって貰えませんですかねえ(ギャグで言ってるので念のためw)

・・・・・まあこの「中央銀行の則」の件については実はこの前の日銀の金研国際コンファランスの中でちょろっと言及されていた話(ベッセントの話とは別文脈ですけど勿論)でして、その辺の金研国際コンファランスに関するレポートがこの前金研から出ていたのでいずれネタにしますが、中央銀行が危機対応を名目にして危機対応以上の「資源配分に対する恣意的な介入」を行ってしまったのではないか、ということはまあ問われるべきではないかと思います。ベッセントの場合は単に難癖付けるために言っているだけの可能性があるので何んともかんともではありますが。

ただまあ

『規制の在り方については、連邦預金保険公社(FDIC)と通貨監督庁(OCC)の権限を強めて「銀行監督を主導させ、FRBはマクロ監視と最後の貸し手としての流動性、金融政策に専念する」よう、「より一貫性のある枠組み」を訴えた。』

というのは考え方としてはアリだと思うのですが、別個にやるのが本当に効果的なのかというのもまた一つ難しい所がありますな。いや何でと言われると説明が上手くできないんですけど。

でまあそれはそれとしまして、

『新型コロナ禍当時のFRBによる対応は、具体的に批判しなかった。パウエルFRB議長は信用市場の崩壊を防ぐために、第1次トランプ政権当時のムニューシン財務長官と連携して施策に取り組んだ。』

に言及しないのですが次の部分は・・・・・

『ベッセント氏はただ、2008年より後に実施された一連の量的緩和について「資産保有者に事実上の保証措置」を与えたも同然であり、格差拡大の一因となったと指摘。大企業は低金利で安価に借り入れでき、住宅保有者は資産価値の上昇という恩恵を享受したと述べた。』

『「その一方で若年層や保有資産が少ない世帯は、資産形成から締め出され、インフレの打撃が集中し、資産価値上昇の恩恵にもあずかれなかった」とベッセント氏は述べた。』

Oh・・・・・・・・・・

これはまあ仰せの通りとしか言いようがありませんけれども、米国のあの資産買入でこの言われっぷりだとしますと日本の資産買入は何なんでしょうとベッセントさんにご意見をお伺いしたい所ではありますし、その所感を是非植田さんにお伝えいただければと思います、実現性ゼロだけどwwwwwwww


〇今更ネタですがジャクソンホールでの植田総裁講演

本チャン講演は英語
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2025/ko250824a.htm
Japan's Labor Market under Demographic Decline: Evolving Dynamics and Macroeconomic Implications
Remarks at the Panel on "The Policy Implications of Labor Market Transition" at the Jackson Hole Economic Policy Symposium Hosted by the Federal Reserve Bank of Kansas City

日本語訳なのですが昨日ネタにしたように日本語訳が微妙なところがある日本語訳
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250824a.htm


・「QQEが効いた」って話を自画自賛するのは逆に自分の首を締めるリスクがあるんだが

昨日引用したのの再掲からですが、まずは『2.人口動態のトレンド』の第3パラグラフの最後の部分、

(邦訳)『労働需給は、人口の減少にもかかわらず、緩和した状態が続き、2010年代半ばに大規模な金融緩和が実施されるもとで、ようやくタイト化の動きが始まりました。』

まあ邦訳の時点で怪しいわけでして、「労働市場の構造変化が起きたから」という理由で最近の説明が行われているのに、黒田のヤローに弱みでも握られているんだか何だか存じませんが、こういうときに一々「黒田緩和のお蔭で労働市場がタイト化した」って説明するのが意味不明で、植田さんって黒田さんに何の義理があるんだよ(高校が一緒とかそういうのはさておき)と思う訳で、この言い方が毎度お前らは何を守ろうとしているのか、というお話なんですが、昨日の再掲になりますが英文即ちジャクソンホールでドヤ顔(かどうか知らんが)で説明している本編の方が酷いんですよね。

(本編)『Only with the large-scale monetary easing of the mid-2010s did conditions begin to tighten.』

これじゃあ「LSAPが行われたから労働市場がタイト化した」、って説明にしか見えない(と思うのだがどうでしょうかアタシャドメドメザパニーズなんで良くわからんけど)訳でして、そこまでして黒田緩和を正当化したいのも意味わからんのだが、もっとアカンのは労働市場に関しては日銀って多角的レビューからこの方「労働市場の構造変化が起きている」という説明をメインに置いている話と整合性が取れていないことなんですよね。

つまりですね、労働市場から来るインフレ圧力に対しては、循環要因によるものではなく構造要因である、としておけばアクチュアルのインフレ高止まりに対して金融政策はあんまり効かない、って説明をする際に有力な説明方法になるんですが、上記のような「黒田緩和が効いて労働市場がタイト化した、しかも黒田緩和がOnly with」って言い方をしちゃいますと、循環要因でインフレ圧力が起きているなら金融政策で対処すべき、って話になるので(今はそうじゃないけど)将来的にインフレ放置批判に日銀が晒される際に、労働市場からのインフレ圧力に対して金融政策によって対応しないといけない、という形になってしまう(構造要因なら逃げられる)ので、まあどうなのよと思うのですよね。


同じことではあるのですが、『1.はじめに』の部分でも植田さんは

(邦訳)『2013年以降の日本銀行による大規模な金融緩和は、コロナ禍後の世界的なインフレの進行と相まって、わが国の物価上昇率をプラス領域へと押し上げました。』

っていってるのの本編が、

(本編)『The large-scale monetary easing since 2013, together with post-COVID-19 global inflation, has finally pushed inflation into positive territory. 』

という説明をしていまして、まあこちらはそこまで極端に言ってることは差が無いですが、ただまあ英文の方が主語が分かりやすくて、やっぱり「黒田緩和が物価に効いた」という話をしていまして、じゃあ今まさにインフレが高止まりしていて、その結果として「物価高対策」というのが政治イシューになって選挙では与党が負けている、という状況な訳なんですから、だったらこの「The large-scale monetary easing」で物価をこれ以上押し上げる必要があるんですか、というお話になるわけで、黒田緩和の効果を強調すればするほど、「だったら今の方が物価が上がっているだけ更に緩和度合いは拡大しているんだから、もっと早くに緩和規模を縮小しないと物価が更にあがるんじゃないですか」と言われたらどうするのってお話になるわけです。

なお、こっちに関してはご案内の通り基調的物価とかいう「お気持ち物価」であり「お手盛り物価」を持ち出して、これをさらに上げるためにThe large-scale monetary easingが必要、という奇妙な理屈を繰り出してくると思います。為念。

しかしまあ何ですな、いずれにしましても今回のこのジャクソンホール講演で相変わらず植田日銀は「黒田緩和のお蔭で物価が上がった」という金融政策の効果発現のタイムラグが9年もあるという大変に斬新な理論と共に、黒田緩和が歴史的な意義を終えたみたいな説明をしやがらねえなというのがよくわかる説明を繰り広げておりまして、まあその流れだとインフレや円安が取り返しのつかないようなことになってこないと(というか参院選の結果と最近の世論調査結果の地獄のような結果を見るとだいぶ取り返しがつかない領域に入りつつあると思うんだが)「言われないと動かない」スタンスも含めてまあ動きは常にビハインド、って感じになるだろうなあとゲッソリしてしまいました。


・この話って「大規模緩和をしているのに労働市場がタイト化しなかったのはこの要因のせい」で使うんうじゃなかったの??

あと気になった点ですけど『3.女性とシニア層の労働参加の高まり』ってところですね。めんどくさいから邦訳の方でネタにしますけど。

『この間、労働力率の高まりは、人口動態の変化が労働供給に及ぼす影響を緩和する方向に作用してきました。』

というのですが、これはさっき引用した2章の最後の一文、『労働需給は、人口の減少にもかかわらず、緩和した状態が続き、2010年代半ばに大規模な金融緩和が実施されるもとで、ようやくタイト化の動きが始まりました。』の続きなんですね。

でまあつまりは日銀のいつもの理屈からすると、「大規模緩和が直ぐに労働市場の引き締まりにつながらなかったのはこのような構造要因があったから」という説明でして、以下の部分は・・・・・

『女性やシニア層の労働力率は、2010年代初め以降、はっきりと上昇しており、生産年齢人口の減少を十分に補ってきました(図表3)。15〜から64歳の女性の労働力率をみると、2000年代初めは60%程度でしたが、2025年6月時点では78%に達しています。』

でもって、

『各種の調査によれば、こうした労働力率の高まりは、政策面の対応と社会的な変化の双方に起因しています。例えば、短時間労働者に対する社会保険の適用拡大や育児・学童保育の拡充のほか、女性の雇用を支援する社会慣行の広がりが挙げられます。シニア層に関して言えば、これまでの法整備によって、企業は、65歳までの雇用機会確保を義務付けられているほか、70歳までの就業機会確保に関する努力義務も課せられています。』

単純に生活費足りないから労働市場に出ざるを得なかっただけのような気もしますがまあ先に行きますと、

『もっとも、労働力率の更なる引き上げ余地は限られています。』

この辺から話の筋がおかしくなっていきまして、

『実際、現在の女性の労働力率をみると、既に北欧諸国と遜色ない水準となっています。65歳以上のシニア層の労働力率も、2024年時点で25%を超える水準まで上昇しており、OECD諸国のなかでは、韓国に次いで二番目に高い水準となっています。』

でもって従来の日銀の説明だと「このように労働参加率の上昇余地は限られているので構造的に労働市場がタイトになりやすい」って話をしていたのですが、ここで何か変なもんでも食ったのか日銀が急に労働政策の話をおっぱじめておりまして、

『以下の2つの領域では、依然として労働供給に拡大余地がありますが、いずれも相応の政策的な取り組みが必要になります。』

政策的な取り組みは別にお前らの考えることじゃねえだろと思いますし、そもそも労働可能な国民を全員労働市場にぶち込むのが本当に国民の社会厚生上必要なのかは金融政策とは別レベルの価値判断の問題じゃろうが、と思うのですがこの先が何故か堂々とこんな論説を言い出していて、

『第1に、現状、女性の正社員比率が50%程度と男性の80%程度と比べて低いことを踏まえると、この比率を引き上げ、労働時間を増やすことが考えられます。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)

『これを実現するためには、例えば、学童保育を一段と拡充するなどの施策が必要になるでしょう。』

これ海外での講演だし時期的に自民党総裁がどうのこうのばっかりの時期だから話題にならなかったようなもので、それは中央銀行が口出しする話じゃなくて国民の総意で形成される立法府が決める話だろお前は何を言ってるんだと思いましたし、そんなことに口出ししている前にアクチュアルのインフレ何とかしろとか中長期的な財政健全化の話をしろとしか言いようが無い。

『第2に、外国人労働者に関してです。労働力人口に占める外国人労働者の比率は3%程度にとどまっていますが、2023年から2024年にかけての労働力人口の増加率に対する外国人労働者の寄与度は、50%を超えています。外国人労働者をさらに増やしていくかについては、より幅広い議論が必要になるでしょう。』

いやマジで何でこんな話をしたのか意味が分からんというか中銀総裁が喋って百害あって一利ない話を何でしたのよ、と思いますが一々蒸し返して寝た子を起こすお前何やってるんだと言われますとまあ(・∀・)ニヤニヤということでご勘弁いただければと存じます。

一応本編の方も引用しておきます。段落分けはさっきの引用と同じようにしています^^;

『Rising labor force participation rates have mitigated the impact of demographics on labor supply.』

『Labor force participation among women and seniors has increased sharply since the early 2010s, more than compensating for the fall in the working-age population (Chart 3). The participation rate of women aged 15-64 reached 78 percent in June 2025 -- up from around 60 percent in the early 2000s.』

『Research attributes this to both policy and social changes: expansion of social insurance coverage to part-time workers, greater childcare and after-school care capacity, and a gradual shift in norms toward supporting women's employment. For seniors, as a result of legal reforms made so far, firms are required to ensure employment until age 65 and to make efforts to ensure employment opportunities until age 70.』

『That said, the scope for further increases is limited.』

『The current female labor force participation rate is already comparable to Northern European economies. The labor force participation rate for people aged 65 and over was above 25 percent in 2024, which was the second highest among OECD countries, after South Korea.』

でもって問題(じゃねえのとワイが懸念する)部分は、

『Two areas could still expand labor supply, though both would require significant policy effort.』

『First, increasing the share of full-time work among women and extending working hours: Currently, only around 50 percent of women workers are regular employees, compared with around 80 percent for men.』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)

『This would require measures such as further expanding after-school care capacity.』

からの、

『Second, foreign labor: Although foreign workers account for only around 3 percent of the labor force, their contribution to labor force growth from 2023 to 2024 exceeded 50 percent.1 Further increases would require a broader discussion.』

ってな話をしておりましたが、まあどうせ日銀の事だから別に人々を皆労働市場に追い立てようとかそういうような発想で言ってるんじゃなくて、もっと無邪気にレーバーフォースを拡大するにはこんな施策があるんじゃないかなーっての邪念なく言ってるだけだと思うのですけれども、まああんまりこういうの無邪気に言わない方が良いと思うのですけどねえ、と思いましたという感想でした。













2025/09/08

お題「これは地蔵モード突入ですね(ゲル辞任)/短国結局0.4台半ばになるの巻/植田総裁のジャク穴講演ネタを今更ですが」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA17AX70X10C25A7000000/
石破茂首相、示せなかった「安倍時代の次」 1年で政権に幕
石破首相辞任へ
2025年9月8日 2:00 [会員限定記事]

まあ何ですな、就任時には「旧弊を変えてくれる」と期待されていたと思うのですが、あちらこちらに中途半端な配慮をして回った結果、自分のカラーが打ち出せないままに石持て追われてしまう、という極めて残念な流れになった訳ですな。

でまあまあこのゲルの末路に関してはどこぞの中央銀行総裁が反面教師として見習っていただきたいものなんですが、はてさて自分に投影することができるのでございましょうかというお話でもあったりしますな。

なおアタクシ的には林さんとか何なら赤沢さんでも良いんじゃないかとか思う所ですが、どうせ進次郎か高市かってことになるんでしょこれは碌でもないって所ではあります。

〇自民党総裁選爆誕で様子見地蔵に拍車がかかる&あるいは日銀的な見方の比較対照

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250907/k10014915981000.html
【Q&A】石破首相 辞任を表明 なぜ今?今後どうなる?
2025年9月7日 20時02分

へいへいそうだっかという感じで、本来は別に自民党総裁選挙やってようと必要な施策は実施する、というのが当たり前のあり方なので、クソみたいな過剰緩和政策はとっとと修正してもろて頂いて、という感じなのですが、これまでが兎に角ハトハトチキンな上に、そのハトハトの理屈は言うたびにコロコロ変わり、要するにお前ら緩和政策の修正をしない言い訳探しを一生懸命行っているだけなのね、という所ではあるのですが、そういう日銀が9月は元々あるとは思えませんでしたけど9月に急に変なもん食ったかのように蛮勇振るう訳もなし、というお話ではありますな。

ただまあどうなんですかね、10月決定会合の場合さすがに次期自民党総裁も決まっていますでしょうから、物価高対策で過剰な金融緩和による不必要な物価の上昇を緩和するためとか言われたら面白いとは思うのですが、まあそんなこと言い出すタマがいるかというと微妙な話で、(そんな知恵があるんだったらとっくの昔に日銀批判が高まっている筈なので)まあ難しいんじゃないですかねえとなると、9月10月ってタイミングは厳しくて次の12月1月ってタイミングになるのかしらとか思ったり思わなかったり(フラグ建築ではありません)。

まあいずれにせよ政治空白期間中も新政権発足直後も地蔵モードっていうことになるんでネーノとは思うのですが、日本版トラスショック懸念で円安がじゃんじゃかと進行した場合にはその限りに非ず、というのがワンチャン10月利上げに至るパスなんでしょうかね、知らんけど。


でまあ先週末BBGのこんな記事があったのを思い出しまして、別に関根さんを晒し上げるとか論難するとかそういう意図があるわけではないのですが、比較対比すると面白いなあと思ったのがあったので箸休めに(初手から箸休めすんなw)。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-05/T21QJ8GP9VCX00
日銀の10月利上げは難しい、米関税の影響見極めに時間−関根元局長
伊藤純夫、藤岡徹
2025年9月5日 12:30 JST 更新日時 2025年9月5日 13:50 JST

→市場の見方は楽観的、そう簡単に霧は晴れないことへの理解が必要
→日本企業の関税対応が賃上げ含め見通せれば12月にも利上げの可能性

日銀の元調査統計局長の関根さんのBBGインタビュー記事で、記事中にもありますが、先週木曜のインタビューだったとのことなので、自民党の両院議員総会と氷見野さんの金懇が終わっていてゲル辞任の話はさてどうなるんでしょう状態のタイミングです。

『元日本銀行調査統計局長の関根敏隆一橋大学国際・公共政策大学院教授は、日銀が米関税政策の影響を見極めるのには時間がかかるとし、市場が有力な時期の一つとみている10月の追加利上げは難しいとの見解を示した。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほうそうですかそうですか。

『関根氏は4日のインタビューで、仮に現職の調査統計局長として米関税の影響を10月までに見極めてくれと言われれば「ノーと言わざるを得ない」と述べた。実体経済面から10月利上げは困難としつつ、為替や政治などの動向も踏まえた市場の織り込みを「間違っているというつもりもない」とも語った。』

日銀は一義的に物価安定目標を掲げていたと思うのですが物価の話はどこに???っていう気はしますが、

『米関税政策の影響の見極めに相応の時間がかかるとみる理由について、トランプ政権では合意事項ですら先行きどうなるか分からないと説明。その意味で市場は楽観的とし、「そう簡単に霧は晴れないことをマーケットも理解してほしい」と述べた。』

>そう簡単に霧は晴れないことをマーケットも理解してほしい
>そう簡単に霧は晴れないことをマーケットも理解してほしい
>そう簡単に霧は晴れないことをマーケットも理解してほしい

ということな訳ですが、記事のこの先の小見出しに思いっきり『不確実性』ってあったりしまして、そういう事やぞ、というお話ではあるのですが、まあこの手の見立てって日銀出身で大本営方面にもそれなりに近かった皆様の多くが上記URL記事にある関根さんの見立てと同じような感じで見て行っているなあ、と最近色々見たり聞いたりしていると思うのです(個人の感想です)。


でまあ然るに、って話なんですがついこの前氷見野副総裁は金懇挨拶の中で、

9/2氷見野副総裁釧路金懇挨拶
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250902a1.pdf

『私たちの前からリスクや不確実性がなくなることはありませんので、上方向のリスクと下方向のリスクのバランスを評価して、メイン・シナリオから離れた時にもあまり困ったことにならないよう、適時適切に対応してまいりたいと思います。』(直上URL先9/2氷見野副総裁釧路金懇挨拶本文11ページ)

>私たちの前からリスクや不確実性がなくなることはありませんので
>私たちの前からリスクや不確実性がなくなることはありませんので
>私たちの前からリスクや不確実性がなくなることはありませんので

って仰せでして、まあそういう事を言っちゃあ何なのですが、この差ですよこの差、って言いたくなってしまう訳でございまして、後はアタクシが何を言いたいのかは読者諸兄のご賢察にお任せ致しますけれども、まあこういう辺りだぞって感じはしてしまいますな。この先書き散らかすと碌な事書かなさそうな気がするのでこの辺で(正確には書いたけど読み直して消したんだがwwwwwww)



〇最近短国ネタばっかりで恐縮ですが3M短国入札w

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250905.htm
国庫短期証券(第1329回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1329回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号     国庫短期証券(第1329回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日     令和7年9月8日
4.償還期限   令和7年12月8日
5.価格競争入札について
(1)応募額         10兆1,094億円
(2)募入決定額    3兆3,503億6,000万円
(3)募入最低価格    99円88銭4厘5毛
(募入最高利回り)    (0.4638%)
(4)募入最低価格における案分比率    47.2346%
(5)募入平均価格    99円88銭7厘4毛
(募入平均利回り)    (0.4521%)』

ということで0.4521/0.4638となって、結局木曜のWI引けの0.45%、しかも前日の引けから1毛わざわざ甘くして引かせた0.45%の方が思いっきり正当化される入札結果となりました。

じゃあお前月末にやった3Mカレントの0.40%とかいう謎引値何なんだよというお話ですが売参ちゃんを見ますと、

https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(9/5引値)
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.455
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.455
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.455←金曜までカレントだった3Mの前回債
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.455←金曜の新発3M(つまり今のカレント3<)
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.455
国庫短期証券1331 2025/12/15 平均値単利 0.455←今週入札の3MWI

(9/4引値)
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.440
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.440
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.400←金曜始まる時点でのカレント3M
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.450←金曜に入札のあった3MのWI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.455

これわwwwwwwwwwwww

ということで、何のことは無い新発が出てきたらやっぱり0.4台半ばとかじゃないとニーズは無い模様でして、その結果たぶんショート銘柄になっていたんだとは思われるのですが、カレント3Mの方も新発の方にサヤ寄せされて一気に5毛5糸水準調整してしまいまして、しかも新発の方も平均よりは若干甘めに引かされていますので、まあ1328回に関しては入札前に過剰に気配弱くしたら買いがドバっときてしまったのでショートカバーでアイヤーとなったものの、新発が出たら本来の居所に戻った、という感じにはなったんですかね、知らんけど。

とは言いましても、(さすがに9月は無いにしても)10月利上げへの一定の警戒感がある、というのが前提の値付けなのであれば、3Mって回号が出るたびに1週間期ズレしてくることになりますので、10月会合の後の期間というのが長くなっていく、つまり織り込み度合いというのを見ると後ろの償還と手前の償還が並びになっているのは実際問題として話はどうなのよというのもありまして、まあそういうの反映してこの前まで謎の階段が付いていたと思いますけれども、さてどうなるのやらという感じですな。

あとですね、今週の3M新発って12/15償還になりますけれども、年末年始って一時的に発行償還の端境期になってきますので、後の銘柄になってくると(今月の3M入札はあと3回)償還が年末に接近してきまして、年末というのは短国市場ちゃんにとっては割と鬼門というのが特にマイナス金利解除以降、って要するに去年の年末越えですが、こちらは何かもう謎の価格形成になってしまうでござるとなっていましたので、そのタイミングで償還金使う予定が有れば問題ないのですが、ロールするということになると年末越えの阿鼻叫喚に巻き込まれるリスクもありまして、中々めんどいゾーンに突入してきますな、とは思います。ついでに言えば12月15日償還であれば12月会合前ですがその次の銘柄からは12月会合も跨ぐでござるの巻になるんですかね。


〇すっかり忘れておりましたがジャクソンホールの植田総裁講演ネタ予告編

単に今朝は時間が足りないので予告編とか言っておいて自分で明日のネタを強制しているだけなんですけど。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250824a.htm
【講演】
人口減少下における日本の労働市場:ダイナミクスの変化とマクロ経済へのインプリケーション
カンザスシティ連邦準備銀行主催シンポジウムパネルセッション「転換期の労働市場の政策的含意」 における講演の抄訳
(於・米国ワイオミング州ジャクソンホール)

日本銀行総裁 植田 和男
2025年8月23日


本チャンはこちら
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2025/ko250824a.htm
[Speech]
Japan's Labor Market under Demographic Decline: Evolving Dynamics and Macroeconomic Implications
Remarks at the Panel on "The Policy Implications of Labor Market Transition" at the Jackson Hole Economic Policy Symposium Hosted by the Federal Reserve Bank of Kansas City

UEDA Kazuo
Governor of the Bank of Japan
August 23, 2025


まあ大したことないとか言ってスルーしておりましたが、これ読んでてクソワロタのは小見出しの『2.人口動態のトレンド』のところでして・・・・・・・・

『図表2は、短観の雇用人員判断DIを示しています。1980年代後半から1990年代初頭にかけては、経済が過熱し、資産価格が大きく上昇するもとで、労働需給が短期的に引き締まる局面がみられました。こうした労働需給の引き締まりには、生産年齢人口が減少に転じるタイミングが近づくなか、企業がより多くの労働者の確保に努めていたことも影響しています。もっとも、バブル崩壊とその後の金融不安は、長期にわたる経済の停滞をもたらし、その後のグローバル金融危機も経済を一段と下押ししました。労働需給は、人口の減少にもかかわらず、緩和した状態が続き、2010年代半ばに大規模な金融緩和が実施されるもとで、ようやくタイト化の動きが始まりました。』(邦訳バージョン)

ってなっているのですけれども、この部分を英文の本チャンを見ますとですね・・・・・・・

『Chart 2 shows the Tankan (Short-Term Economic Survey of Enterprises in Japan) diffusion index for employment conditions. There was a brief period of tightness in the late 1980s to early 1990s, driven by an overheated economy and asset price inflation.』

図表2は、短観の雇用人員判断DIを示しています。1980年代後半から1990年代初頭にかけては、経済が過熱し、資産価格が大きく上昇するもとで、労働需給が短期的に引き締まる局面がみられました。

『The approaching decline in the working-age population also prompted firms to hire more workers.

こうした労働需給の引き締まりには、生産年齢人口が減少に転じるタイミングが近づくなか、企業がより多くの労働者の確保に努めていたことも影響しています。

『However, the bubble's collapse and subsequent financial instability ushered in prolonged stagnation, compounded by the Global Financial Crisis.』

もっとも、バブル崩壊とその後の金融不安は、長期にわたる経済の停滞をもたらし、その後のグローバル金融危機も経済を一段と下押ししました。

『Labor markets remained loose despite demographic decline.』

労働需給は、人口の減少にもかかわらず、緩和した状態が続き、

・・・・・とまあここまで比較してみましたが、本チャン講演の方が雑じゃないのかね(「こうした労働需給の引き締まりには〜」の辺り)とか思いますが、最後のこの部分がワロタんですががががが

『Only with the large-scale monetary easing of the mid-2010s did conditions begin to tighten.』

2010年代半ばに大規模な金融緩和が実施されるもとで、ようやくタイト化の動きが始まりました

>Only with the
>Only with the
>Only with the

・・・・・・・・・英文の方だと如何にも「LSAPによって労働市場がタイト化しました」と自慢たらたらしているように読めてしまうのでございますが、なんか日本語とニュアンス違くね????と思ってしまったのはアタクシの英語力のせいでしょうかよくわかりません><;

とまあそれが予告編だが実は本編もこんなもん説はややあるw







2025/09/05

お題「市場雑談備忘メモ/氷見野副総裁金懇会見での基調的物価の応答が味わい深い」

へー
https://www.agrinews.co.jp/news/index/330134
2025年9月5日
ケーキの主役もシャイン 旬を迎え各社が提案強化

記事のサムネにあるタルト、1ピースが記事によると1296円だそうですがホールを何ピース取りしてるんじゃろ(と思ってちょっと検索したら10ピース取りみたいな答えが返ってきた)


〇30年入札確りで一旦フラットしたものの&今日は短国3M入札ですが

・30年国債でソイヤソイヤとなったんだが終盤結局イマイチさんですかそうですか

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/B4KJJ5CXFZJA7JAOQRH2ASROZI-2025-09-04/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発、海外金利高一服と入札無難で 長期金利1.605%
By ロイター編集
2025年9月4日午後 3:16 GMT+9

『[東京 4日 ロイター] - <15:10> 国債先物は反発、海外金利高一服と入札無難で 長期金利1.605%

国債先物中心限月9月限は、前営業日比34銭高の137円63銭と大幅反発して取引を終えた。海外で超長期金利上昇が一服したことや事前に警戒感があった30年債入札を波乱なくこなしたことが相場を支援した。新発10年国債利回り(長期金利)は同2.5ベーシスポイント(bp)低下の1.605%。』(上記URL先より、以下同様)

ちょうどうまいことに昨日は海外がJOLTSとかのせいで金利下がって帰ってきたし、今週はなんか超長期に親でもぬっころがされたのかというような超長期の叩き売りが行われておりましたので、事前調整の結果無事な結果となって確かそのあとそこそこフラットニングしてたはずなんですが、結局終わってみればそんなにフラットしてないとはこれ如何に(どうせ戻ったら叩きが出たんでしょうけど)という感じで。

『TRADEWEB
      OFFER  BID    前日比 時間
2年    0.845   0.854   -0.011 15:02
5年    1.131   1.138   -0.02 15:08
10年   1.599   1.605   -0.025 15:02
20年   2.653   2.661   -0.023 15:04
30年   3.248   3.258   -0.031 15:09
40年   3.487   3.501   -0.029 15:08』

何か普通の戻りになっておりましたが、ただまあこの数日の上げ下げって何気に中短期の方も結構な上下をしていまして、超長期が派手だったり新値更新だったりするからそっちがニュースネタになるんですけど、これ結局財政ネタというよりも日銀の利上げに関する思惑の方が微妙に動いていて(氷見野さんの金懇あり自民党の情勢あり石破植田会談ありと実際問題ネタにする要素はうじゃうじゃあるので)財政云々はまあ後付けなんでネーノという気がするのと、あとは単純に中短期から長期までの動きと超長期が別で、超長期だけ海外勢とかのファストマネーが財政がどうのこうので売ってるとかなんですかね、まあさっぱりわからんので知ってる人教えてジェネラル!

ま、いずれにしましても30年入札こけて阿鼻叫喚とはならなかったので良かったのかどうかは兎も角として、一旦足元までの相場は一勝負終わって次の一勝負ネタ待ちという風情ではなかろうかと相場のリズム的には思うのでありました、知らんけど。


・短国3Mはカレント銘柄の強い引値が特殊要因なのか実はこっちが正しいのかがわからんのだが

でまあ今日は一部の人しか興味の無い3M新発入札ちゃんですが、

https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(9/4引値)
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.440
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.440
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.400←カレント3M
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.450←今日入札のWI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.455

(9/3引値)
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.439
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.439
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.400←カレント3M
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.440←今日入札のWI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.455

・・・・・まあWIの値付けなので、というのはあるんですけど昨日は新発WIを1毛甘に値付けしていまして、カレントの手前は引き続き0.44%だし、これはカレントの0.40%がマジなのか、単純にこの銘柄だけショート銘柄になってしまっているだけでそういう大人の事情を外せばやっぱり短国3Mの居場所は(10月利上げの可能性を勘案して)ちゃんとレートが付くのか、って10月利上げだと思った時にこの水準でリスクプレミアム合ってるのか問題はあるのですが10月利上げが無いと次は12月3週になるので新発1329は利上げ無し無し銘柄になるというこのデジタルっぷりが短期のターム物の醍醐味ですwwwwww

まあアレです、やっぱりこういう引値の謎の歪みとか見ちゃいますと、短国って発行量足りないよねと思いますし、これ今は政策金利が0.5%だからまだ顕在化してこないんですけど、政策金利が1%か1.5%か2%かどこになるかは正直謎ですけど、どっかに多分閾値があって、その閾値を超えると「この水準なら別にクレジットリスクとか期間リスクとかを取らなくても短期(または中短期)の国債投資で十分な絶対収益が出るんじゃないの」っていうムーブが出てくる(主にリテール資金からの)とアタクシは思っております次第でして(正直根拠は無いけどこちとら人生半世紀は生きているのでお年玉を預貯金したら見える数字の利息が入る時代を知っとるので・・・)のではなかろうか、と思う訳でして、その時に短期国債の利回りが3Mあるのにコールよりも全然低い、とかいうような利回りになっているのはあんまりよろしくないんじゃないかと思うんですよね〜、ということでいつもの話だが短国増えてちょんまげと思うのでありましたという毎度の話ですいませんすいません。



〇氷見野副総裁釧路金懇記者会見の続き

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250903a.pdf
氷見野副総裁記者会見
――2025年9月2日(火)午後2時から約35分
於 釧路市

例の「供給要因だから政策対応しないとか言ってるのは間違い」という氷見野さんの説明、すなわち今や主要中央銀行では当たり前の話で需要要因供給要因ではなくて波及効果、持続性を見極めて対応の有無を考えるって話になっているので供給要因なのでーと言い続けているハトハトチキン中央銀行がインチキなだけ、ってのを言外に喝破した質疑応答が今回の白眉でしたが、他にも白眉級のがあってこれは馬氏の五常もニッコリという所です。

・基調的インフレの質疑応答が大変に素敵でした

『(問)基調的なインフレ率についてお伺いします。午前の講演で、関税の影響で足踏みしても、いずれ 2%と概ね整合的な水準で推移するというふうに見方を示されました。この基調がですね、足踏みから再び上昇に向かう確からしさにつきまして、副総裁、現時点でどのように考えておられるのか、そこにですね、確信が持てなければ、再上昇にですね、追加利上げは難しいとお考えなのかをお願い致します。』

というのが前半で、

『その基調的な物価上昇につきまして、講演では 2%にかなり近づきつつあるというふうに発言されまして、ご発言からするとですね、少なくとも、副総裁、1%後半ぐらいをイメージしておっしゃっているのかなという印象を受けたのですが、大まかで結構なのですが水準のイメージについてもうちょっと教えて頂ければと思います。二点よろしくお願いします。』

というのが後半ですね。まあ前半は基調的物価というよりも単純に利上げ判断云々の話になっておりますが。

『(答)一つ目ですが、これも表現が少し違うかもしれませんけれども、7 月の展望レポートで、この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受け伸び悩むものの、その後は上がっていって、見通し期間後半には物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移すると考えられる、というふうに言っているのと特に言っている趣旨は変わりません。』

まあ確かにあの辺りの部分は大本営の説明をするパートになっていましたな。

『それで、ではそうなっていく確からしさはどうか、確信が持てなければ利上げはないのかということですけれども、これは、そうなる見通しの確度および上下双方向のリスクをみていくということだと思います。その確度がある程度高まっていく、更にその確度、メインシナリオ通りにいかないといったときに、これ上振れするリスクと下振れするリスクどっちがどうなのかというのをみて判断していくということになりますので、何か確度だけみてというよりは、メインシナリオの確度と上下双方向のリスクをみながら判断していくということではないかというふうに私は思っております。』

まあしれっと「何か確度だけみてというよりは」とか入れている辺りがこれもお洒落でして、毎度「確度」だけで説明してごまかし続けている(でもって昨年7月のように急に「上振れリスク」とか言い出して利上げする)というのに対して「もっとちゃんと説明しろ」と大本営に対してイヤミを言ってるんでネーノと思いましたが勝手な裏読みをしているだけの個人の感想ではあります(汗)。


でもって後半の回答ですけど・・・・・

『かなり、と言ったかどうかあれですが、近づきつつあると言ったときに水準はどれくらいかということですけれども、これが、結局、推計方法によっていろいろですし、そもそも概念として、予想インフレ率の中長期的なものでみていくのか、あるいは一時的なものを外していくのか、一時的なものを外すといったときに何を一時的とみるかというようなことで、必ずしもピンポイントで特定できるものではありませんので、近づいているという方向は申し上げられますが、何か更にゾーンを狭める表現をあえて申し上げるのは、ちょっと差し控えさせて頂ければと思います。』

>何か更にゾーンを狭める表現をあえて申し上げるのは、ちょっと差し控えさせて頂ければと思います
>何か更にゾーンを狭める表現をあえて申し上げるのは、ちょっと差し控えさせて頂ければと思います
>何か更にゾーンを狭める表現をあえて申し上げるのは、ちょっと差し控えさせて頂ければと思います

ちょwwwwwwおまwwwwwwww

直前の金懇挨拶でご案内の通りですが、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250902a1.pdf

『直近の消費者物価の統計に即して申し上げますと(図表5)、7月の消費者物価上昇率は 3.1%と、2%を大きく上回っています。これは、ガソリン補助金などによる引き下げ効果があった上での数字ですが、そうした効果は、上昇率の面では一時的な変動と考えることができます。他方、この 3.1%という消費者物価上昇率には、食料価格の上昇が 2.1パーセントポイント寄与しています。これについても、米価格の急上昇が起点となって起きた一時的な変動の面がかなりある、とみることができます。こうした上下の要因を除いて基調をみるために、例えば食料とエネルギーを除いた品目の上昇率でみると、 1.6%であり、まだ2%には達していません。』(この部分直上URL先の同日実施された金懇挨拶より、以下同様)

って思いっきり数字を出していたのは何だったのかというお話になるのですが、確かに氷見野さんこの挨拶でも、上記のように説明した直後に返す刀で、

『実際には、何が一時的で何が基調的な変化か、何を除いて何を含めて考えたらよいか、の判断は簡単ではありません。』

と喝破した後に、

『そのため、日本銀行では、変動の大きな品目を除いて考える、というやり方のほかに、経済構造をモデル化して基調を推計する方法や、家計や企業や市場参加者などが中長期的なインフレ率についてどのような予想を持っているかを計測する方法など、さまざまな手法を用いて分析を行っています。』

『そうした分析を総合すると、「基調的なインフレ率は 年代には0%と1%の間あたりにあったと思われるが、最近では2%にかなり近づいてきている。ただ、2%に達しているとまではまだ言えないのではないか」といった結果になっています。』

『そこで、「現実のインフレ率は高いが、一時的な要因の影響が収まるにつれ、いずれ落ち着いていく」というシナリオをメインに置いているわけです。』

という展開になっていた訳ですが、これはあくまでも大本営としてはこう言っているけど実際問題として基調的物価をそんなナローレンジで出してリアタイの政策判断に使えるかヴォケ、というのが氷見野さんのご指摘、とお見受けしましたがどうでしょうか????

というのも昨日のネタにしたかったのですが時間が無くて今日に回してしまいましたが、まあこの基調物価の話と、需要要因供給要因の話、という今の政策説明の根幹部分での質疑応答のこの2本が今回本来は読むべき部分だと思いましたが如何ですかね。

ということで今朝は台風らしいのでこの辺で勘弁(台風関係ないじゃろ説は却下wwwww)





2025/09/04

お題「30年入札ですなあとか短国とか/謎の植田石破会談/氷見野副総裁釧路金懇関連」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN020C30S5A900C2000000/
忍び寄る70年代「大インフレ」の悪夢 FRBとドルの信認危うく
激震FRB 中銀独立の行方
国際
2025年9月4日 4:00 [会員限定記事]

まあ日経無課金(というか別に日経以外にも課金している訳ではないというロクデナシ)なので記事は読めませんがグローバルにそういうことやぞというのは描きやすいストーリーになってきましたわな。


〇短国3Mカレントだけガンガンズンズンお値段上昇しているのは何ぞこれ

という話の前に昨日も昨日とてだったので長い方のロイターさんの記事

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/OYYY2R3XDNJGVB2P5HBJUETLFA-2025-09-03/
国債先物反落、30年金利が最高水準更新 財政懸念が相場圧迫
By ロイター編集
2025年9月3日午後 3:48 GMT+9

『[東京 3日 ロイター] - 国債先物中心限月9月限は、前営業日比23銭安の137円29銭と反落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同3.0ベーシスポイント(bp)上昇の1.630%。財政懸念を背景に超長期ゾーンの金利上昇幅が大きくなり、新発30年国債利回りは過去最高水準を更新した。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、まあそもそも今日30年国債入札あるから事前調整入るし、海外の金利もFED利下げヒャッハーネタでの低下が一巡したら結局じり高だし、というような諸々が有るわけで、少し長めのストーリー(例えばさっきの「70年代の再来」みたいなお話)であれば財政懸念というよりも構造的な高インフレレジーム転換への懸念とかそういう壮大な話になるのですが、まあ財政云々はとりあえずネタって面も多々あるとは思うのですが、とりあえずは今日の入札どっちに転ぶかによりけりかなと思います、知らんけど。

『TRADEWEB
     OFFER  BID   前日比 時間
2年   0.858  0.865   -0.003 15:02
5年   1.152  1.159    0.009 15:03
10年  1.624  1.63     0.03 15:12
20年   2.68  2.687   0.058 15:08
30年  3.279  3.288   0.083 15:12
40年  3.523  3.534   0.085 15:09』

まあエライスティープしましたなという所ですが、事前に調整したから入札何とかなるんじゃネーノというのが一般的には順当な見方になると思うのですがはてさてどうなるやら。


・・・・・という中で短国カレント3Mちゃんがですね、
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(9/3引値)
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.439
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.439
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.400←カレント3M
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.440←今週金曜入札のWI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.455

(9/2引値)
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.436
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.436
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.420←カレント3M
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.440←今週金曜入札のWI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.455

とまあ謎のカレント銘柄だけレート低下の巻となっていまして、まあ銘柄指定で持っていかれてしまったショートカバー要因とかそういうことなんでしょうけれども、こっちはこっちで先週金曜の入札前は0.48%だの何だの(実際は入札もっと弱いんじゃないのって見方もあったみたいでございますな)とか言っててニーズ無し無し君かと思わせておいてからのムーブで、推しからの反転アンチがコメント欄で大暴れみたいな風情になっているのは何ぞこれという感じですな。

また長期方面から避難民が来たのか、ただの変な特殊現象なのかがよくわからんですが、こちらは明日3Mの入札があってWIの方は一応0.440%の値付けが維持されているのですがはてさて何がどうなるやら・・・・・


〇植田さんと石破さんの会談がありましたのでメモ

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-03/T1ZSUEGOYMTF00
植田日銀総裁、利上げは予断を持たず判断する−石破首相と会談
照喜納明美、梅川崇
2025年9月3日 13:18 JST 更新日時 2025年9月3日 14:02 JST

→経済・物価見通し実現すれば、利上げしてくスタンスに変わりはない
→為替はファンダメンタルズ沿い安定的推移望ましい、政府とモニター

『会談に関しては、経済・物価や市場の動向などについて意見交換したと説明。その中で為替の話も出たが、具体的内容は差し控えるとした上で、「ファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが望ましい」と語った。政府と連絡を取りつつモニターしていくとも述べた。』

『両者の会談は石破首相の就任直後の昨年10月2日と今年2月に続いて、3回目となる。』(以上上記URL先より)

こんな感じで記事になるとイマイチインパクト無いんですけど、リアタイでは「為替の話があった」ってヘッドラインが出てきて為替ちゃんの方が反応したりしてて、「為替」だの「利上げ」だのについての言及がノーコメントじゃなく能動的に出たんじゃないかって印象を与えてくれたので、ご時世柄ほほーと思った訳です。

まあどうせならゲルが植田さんとっ捕まえて「おどれが物価高なんもせんから選挙に負けてエライことになっとるんじゃ」と暴れ散らかしていたら面白いのですが(そんなことは起き得ないのでご安心ください)現状機能しているのかどうかも怪しいゲル政権と会談して何の話をするんだか、とは思うのですが、ここまで不人気のゲルさん、乾坤一擲の勝負で金融政策に活路を見出そうとして呼んだんだったらちょっとオモロイなとは感じました。まあしかしゲルって正直ここまで不人気である必要はないと思うのですがテレビは見ない新聞も碌に読まないワイなのでなんで不人気なのかがイマイチ体感的に理解できていくて政治ネタはワカランチ会長モードでありまする。

一応時期的には金融政策の方向性に絡んだりすることもあったりなかったりという感じなので、ちょっと気にはなりますが、まあいずれにしましても9月会合までは時間なさすぎですし、10月会合の時には世の中どうなっているのか分からんですし、今から決め打ちで何か出来るかというとそんな勇気は無いでしょうからここからの情勢に流されていくしかないんじゃないでしょうかね日銀も。



〇氷見野副総裁釧路金懇講演の続きと会見ですがやはり氷見野節が随所に埋め込まれていますね

金懇挨拶
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250902a1.pdf

昨日ネタにしましたように、一番味わいのあったのはウィリアムズを引き合いに出したイタコ話法による「ハトハトチキン見てるイェーイ!!!」の部分な訳ですが、この次のパートの日銀の長期国債買入に関する記載も中々の味わいでしたのでそちらから参ります。

『3.日本銀行の金融政策運営』の『(国債買入れの減額計画)』という本文11ページ、PDF12枚目の後半部分から始まるところですが、最初は現象面の話をしているので割愛しまして途中から参ります。


『中央銀行のバランスシートは、資産・負債の両面から経済の諸側面に影響を及ぼし得るものですので、国債買入れの減額の問題も、様々な視点からみることができます。』

この時点で既に先般の金融学会で内田副総裁が「短期金利操作と無関係に中央銀行はバランスシート政策を行うことができる」というお前それ何ぼ何でもレトリックに問題ねえかという説明に対してのイヤミになっている気がしますが先に行きまして、

『以下では、昨年3月や7月、本年6月の決定に参加するにあたって、私なりに考えたことのうちいくつかを紹介させていただければと思います。それぞれの政策委員ごとに視点がありますので、あくまでも私個人の考え方です。』

ワクワクテカテカ

・マネタリーベース直線一気理論を唱えていた連中は脳が1970年代辺りで止まっていた模様ってことですなこりゃw

『第一に、物価への直接的な影響という視点があります。日本銀行の負債の規模は、日本銀行券の発行残高と金融機関から日本銀行への預け金との合計に概ね一致します。これをマネタリー・ベースと呼びます。』

マネタリーベースキタコレ!

『日本銀行が国債保有を減らしてバランスシートの資産サイドを小さくすると、バランスシートの負債サイドであるマネタリー・ベースも小さくなります。』

『米国がインフレに苦しんだ 年代末に一世を風靡したマネタリストの考え方では、このマネタリー・ベースが増減すれば、民間金融機関が受け入れる総預金額であるマネー・ストックが増減し、それが物価を左右する、とされていました。』

「、とされていました」という時点で以下お察しの通りで、

『しかし、この三者の間に安定的な関係がないらしいことは、FRBがマネタリー・ターゲットを採用して間もなく明らかになる、という展開となりました。』

ボルカーのインフレ絶賛大成敗なマネタリーターゲットって高金利政策をとるのを高金利政策と言わずにぶっこむ方便みたいな面もあったかということで、まあ単純に事実を述べているだけに過ぎないのですが、こう言いながら「日銀当座預金が10%増えると予想インフレ率が 0.44%上昇する」などという寝言をほざいていた人を「とっくの昔に決着がついている話をしていた人ですね」と間接的に指摘しているのが実に美しいですね(まあそこまでの意図があったかは別として、笑)


『ただ、国際決済銀行のボリオらは、 32か国の 70年間にわたるデータを分析し、インフレ率が5%以下の低インフレ・レジームにある間はマネー・ストックとインフレの間に関係は見られないが、高インフレ・レジームになると急に関係が高まる、と論じています6 。』

『6 Claudio Borio, Boris Hofmann, and Egon Zakrajsek, "Does Money Growth Help Explain the Recent Inflation Surge?," BIS Bulletin, no. 67, 26 January 2023.』

これはまたとんでもないオタクなもんをリファーしてきましたな(絶賛している)という感じで、マジかこれ読まないといけないじゃん(今度の連休辺りに)と思いました。さすが氷見野さんとしか申し上げようがありません。

『ボリオら自身、だからといって単純に因果関係を結論付けるべきではないと述べていますが、物価が安定していた時期の先進国だけの経験をもとに、過大な水準のマネーを不必要に放置しておくことにはリスクもあるのではないかと思います。』

>物価が安定していた時期の先進国だけの経験をもとに、過大な水準のマネーを不必要に放置しておくことにはリスクもあるのではないかと思います

ってこれバランスシートの話をしていますけど、日銀の今の話にも通じるものがあって、過去の長期ディスインフレ期の経験を元に物価が上がらんと言い続けて過剰な金融緩和を不必要に放置しておくリスクも同根な訳でして、しらっとぶっこんでいるように見えるのは気のせいでしょうか・・・・・・


・ストック効果の話については長期金利の実体経済への影響が云々で済ませていますが・・・・

『第二に、経済活動への影響の視点があります。日本銀行の保有国債の規模は、いわゆるストック効果を通じて長期金利の水準に影響を与えます。他方、私どもの分析では、実体経済に与える影響は短期金利が中期・長期に比べてはるかに大きく、超長期の金利の影響はごくわずかである、という結果になっています 7。』

脚注7は『7 日本銀行「『量的・質的金融緩和』導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証」2016 年 9 月』ですけど、ここでも昨日ネタにしたのと同じくで、日銀大本営発表の物件に対して「という結果になっています」とわざわざつけることによって突き放したような表現になっているのが味わいが深くて、

『したがって、短期の政策金利を上下に操作できる状況においては、緩和や引き締めは政策金利の操作を主な手段とすれば足り、国債の購入額を緩和や引き締めの手段として位置付ける必要はない、と考えます。』

って言ってますが、MBとの関係の問題だってあるかもしれない、って言っている中でここだけこういう風に言ってるのは裏読みのし過ぎかも知れませんが、「お宅のお嬢ちゃん最近ピアノがお上手にならはりましたなあ(はんなり)」というぶぶ漬け話法を想起してしまうのはアタクシがネットミームに漬かり過ぎですかそうですかwwww


・減額スピードをどうするのかという話はまあ結局「急にやってしまうのはアカン」になってしまうわな

『第三に、市場機能の回復の視点があります。私どもが昨年末に公表した「多角的レビュー」の分析では、@日本銀行の銘柄ごとの国債保有比率が5割を超えると、国債市場において売り手が求めるレートと買い手が求めるレートの格差が非線形的に拡大していく、A7割を超えると、日本銀行による買入れ額の増額は、市場の取引高をむしろ減少させる方向に作用する、という結果になっています(図表11 左、中)。現在、日本銀行の国債保有比率はかなりの銘柄でこうした水準を超えています(図表11 右)』

となっていまして、

『ですので、市場機能回復の観点からは保有比率を引き下げることが望ましいですし、日本銀行の新規購入が少ないほど保有比率引き下げのスピードは速くなります。ただ、スピードを優先した結果、長期金利が急激に上昇し、臨時に買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施することになれば、市場機能には却ってマイナスとなります。』

『FRBが 年に市場の混乱を受けてバランスシートの縮小を一旦停止せざるを得なくなった経験にもかんがみれば、「市場機能の回復」と「市場の安定」のバランスをとった減額スピードが適切ではないかと考えます。』

という理屈になってしまうのですが、なまじこんなの指値とかできるようにしておくからこういう理屈になっておっかなびっくりで結局バランスシートの縮小が進まんのじゃという事を言うと過激派扱いされますので用法容量を注意して主張しましょうってな感じですけど、まあこういうのも当局が介入しすぎなんだよなーという思いはやはり20世紀から市場の空気を吸って生きておりましたジジイとしては思ってしまいますが、当局的にはこうなってしまうんでしょうねえとは思います。


・適正なリザーブの水準問題に関してはまあ結局先の話ですので

『第四に、銀行システムの機能と安定性への影響です。日本銀行が市場から国債を購入すると、その代金は金融機関が日本銀行に対して持つ預け金の形で支払われます。こうやって一旦日銀預け金が供給されてしまうと、保有主体は移り変わっても、銀行システム全体としての日銀預け金保有高は金融機関側の意思では変えられません。』

さいざんす。

『現在、日銀預け金が金融機関の資産の部の5分の1程度を占めていますが、全体としてはおそらく金融機関が必要とする水準をかなり上回っているのではないかと思います。』

『他方、金融機関は流動性管理のために一定の日銀預け金を必要としていますので、FRBがしばしば強調するように、日銀預け金の供給を過剰に減らすと金融システム・金融市場の安定にマイナスに働く可能性もあります。ストックはフローよりゆっくり動くので、残高ベースで日本銀行がこの問題に直面するのはまだ先だと思いますが、適切な残高と整合的な月間購入額の定常的な水準がどの程度なのか、という問題は、考えながら進めていく必要があるだろうと思います。』

リザーブ水準をアバンダントかアンプルかスケアスかって話ですが、これ短期市場デザインの問題にもなるのですが、日銀の場合はそんな論議を四の五の言う前に長期国債のストック減らせやという話なのでまあこれは論点説明だけで終わるのはしゃあなしw


・日銀財務の問題は財務そのものが問題になるというよりも政策遂行の障害になると「人々が思う」かですよね

『第五に日本銀行の財務との関係があります。日本銀行の財務についての考慮が政策判断の主要因となるべきではありませんが、バランスシートが大きくなればなるほど財務の変動は激しくなります。現状のバランスシートでも債務超過に陥る可能性が大きいとは思いませんし、また、仮にそうなっても直接政策遂行に問題が生じるわけではありませんが、日本銀行に対する信認の低下につながり得るリスクを抑制する観点からは、バランスシート規模は縮小していくことが望ましいと考えます。』

さらっと流していますがこれだけでもかなり重い話題になりますのでいつかはこの辺りの話もお願いします。


ということでまあその3以降はちょっとオマケチックではあるのですが、ここにもしらっと氷見野節が出てましたな、という感想でした。


〇会見ネタをやる時間がだいぶ無くなってしまったので(無計画ですいません)とりあえず白眉な質疑をご紹介

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250903a.pdf
氷見野副総裁記者会見
――2025年9月2日(火)午後2時から約35分
於 釧路市

今回の質疑応答の白眉ともいえる問答が一番最後にありましたので、ちょっと時間が足りなくなったのですいません今朝はとりあえずこれだけネタにさせてくださいゴメンチャイ。

一番最後の質疑の後半の質疑なんですけどね・・・・・・・・

・「供給要因による物価上昇だから一時的なので対応不要」というハトハトチキン理論を華麗に粉砕の巻

『(問)(前半割愛)二点目なんですけれども、7 月の決定会合の際に、植田総裁が、供給サイドからのインフレ圧力が高まっているときに利上げで対応しようとすることが望ましいのかちょっと考え込んでしまうというご発言をされていたかと思います。需要サイド、供給サイドといったインフレの要因によって金融政策の対応が変わり得るのかどうか、お考えをお伺いできれば幸いです。』

これは良い質問過ぎます。素晴らしいんですけどさて氷見野さんの回答はと言いますと、

『(答)(前半割愛)供給ショックの場合と需要ショックの場合で金融政策の対応にどう違いがあるかという点で、私は植田総裁のようにエコノミストではありませんので、あまり明快に講義できる自信はないのですけれども、』

これは学会発表で大先生が挙手して急に「私この分野良くわからないので教えて欲しいんですけど」と言い出して発表者がションベンちびる展開ですね!!!!!!!!と申しますのも返す刀で・・・・・

『これは需要ショックか供給ショックかということだけで機械的に決まるものではなくて、例えば、その要因が一時的なものか持続的なものか、更に、起きた環境において、例えば中長期のインフレ予想がある程度アンカーされているのかそうでないのか、更には中長期の予想が 2%からどの程度ずれていると考えるのかとか、更にそこを総合して考えたときに、そうしたショックが物価安定にとって一時的なものにとどまるのか、持続的な影響があるのかといったところを評価して、対応するということになると思います。』

ど正論、というかこれが常識であって「供給ショックだから対応しない」と言い張り続ける極東の某島国の某ハトハトチキン中央銀行の言ってることの方がおかしいわけですが、その点をきっちりと喝破して頂く氷見野さん流石です。

『ただ、金融政策が直接効くのは、需要に対してまず効果が表れるわけですので、どちらかというと需要ショックのときの方が金融政策どうしたらいいかというのは判断しやすいというのはおっしゃる通りだというふうに思います。供給ショックのときは、結局は、需要ショックのときより更に悩んで、だから何もしないということにはならんわけですけれども、様々な政策変更の影響も考えて、悩んで判断していくということになるだろうというふうに思います。』

別にハトハトチキンヨイショじゃなくて言ってることは至極ご尤もなフォローは入れているのですが、その中にもしれっと「だから何もしないということにはならんわけですけれども」ときっちりぶっこんでおられまして、この質疑応答が一番良かったな、と思いましたので、今回の釧路金懇を見て「ハト的」とか言ってしまうのは、大本営代弁部分だけを読んだ場合の感想であって、読み込みが足りませんなと思う訳です。いやまあ当初のベンダーヘッドラインで脊髄反射するのはしゃあない面が多々ある(自分もそういう事してた時期あったし笑)のですが・・・・・・・・

ということで時間の都合でこの辺で勘弁していただきとう存じます






2025/09/03

お題「色々と動いたので市場備忘メモ/氷見野副総裁金懇挨拶」

ほほうこれはこれは
https://www.sankei.com/article/20250901-V6THMEGCSJEWDDRNXJ7PEMA76U/
「日本は移民国家」参政党・神谷宗幣氏、将来的な外国人受け入れ比に言及「上限は10%」
2025/9/1 09:15
政治 政局

トータル1200万人受け入れるのか(特別永住者含め在留外国人は昨年末で377万人です)、こいつは豪気じゃねえかwww


〇氷見野さんの金懇で買われたと思ったらイブニングで森山氏幹事長辞任で下げるとな&短国ェ・・・・・

ということでオモロカッタのでメモメモ
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/XTRAZSTSPBME7COOZ5OB36EKKI-2025-09-02/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発、長期金利1.6% 強い10年債入札や日銀副総裁の慎重姿勢で
By ロイター編集
2025年9月2日午後 3:24 GMT+9

でまあ昨日はアタクシ「これで氷見野さんの金懇が普通にいや別に利上げそんなに前のめりになる必要ないじゃろ不確実性高いんだし、とかいう肩透かしを食らった場合の方がちょっとアヒャヒャ相場になるんですかねえ、知らんけど」と万能ヘッジクローズ(ではありませんので使用にはご注意をw)の知らんけどを入れてみましたが、まあそんな展開になって珍しいワシがフラグを立てないとはこれ如何に、と思って他のですが、引け後にご案内のように自民党幹事長どころか党四役全員辞任とかで、これが昭和の時代だと「進退伺を出す」という形にして党長老が出てきて「まあまあこれは一旦預かりということで」とかいう腹芸あるいは茶番劇というのがあったのですが、何せ時代は平成どころか令和ですのでそうもいかず、ということでイブニングに入ってゲル政権オワ終わり待ったなし→トラスショックも夢ではない→ベアスティープだわ円安だわ、という早速の阿鼻叫喚になっておられましたようで、さっき先物ちゃんをみたら、


https://port.jpx.co.jp/jpxhp/main/index.aspx?F=future&disptype=day_through

長期国債先物

限月:25年9月限
取引日:09/03
始値: 137.50 (09/02) (15:30)
高値: 137.53 (09/02) (15:46)
安値: 137.25 (09/02) (21:34)
現在値: 137.30 (09/03) (05:15)
前日比: -0.22
取引高: 11,364

とかいうオシャンティーな展開になっていて草も生えませんwwwwwww


でまあその氷見野さんの金懇挨拶に関してはこれ本当にハト派と捉えて良いのか問題という重要な論点があるのですがそれは後程にするとしまして昨日の債券市場ちゃん。

(URL再掲)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/XTRAZSTSPBME7COOZ5OB36EKKI-2025-09-02/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発、長期金利1.6% 強い10年債入札や日銀副総裁の慎重姿勢で
By ロイター編集
2025年9月2日午後 3:24 GMT+9

『[東京 2日 ロイター] -   <15:17> 国債先物は反発、長期金利1.6% 強い10年債入札や日銀副総裁の慎重姿勢で』(上記URL先より、以下同様)

ってな訳で、

『日銀の氷見野良三副総裁による金融経済懇談会でのあいさつでは、10月会合に向けて利上げを強く示唆するような発言が出なかったとし「市場想定対比ではそこまでタカ派的ではなかった」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア債券ストラテジスト、鶴田啓介氏)という。

後場に入り、国債先物は上げ幅を拡大。この日実施された10年債入札は強い結果と受け止められた。「1.6%台の利回り水準への実需のニーズが確認できた」(国内証券債券セールス担当)とし「一部の投資家や業者のショートカバーに支えられた印象だ」(同)との声が出ている。』

だそうでそうなんですかあ。。。とは思いますがそれはさておき、

『現物債市場で新発債利回りはまちまち。2年債は同1.5bp低下の0.865%、5年債は同1.5bp低下の1.150%、20年債は同1.0bp低下の2.620%。一方、30年債は同1.0bp上昇の3.200%、40年債は同2.0bp上昇の3.445%。』

入札強かった10年は兎も角として、中短期がガッツリ堅調になっているのがまあ利上げ思惑ヒャッハーの反転アヒャヒャヒャヒャって感じではあるのかもしれませんな。

『    OFFER  BID   前日比 
2年   0.858  0.866   -0.014  15:09
5年   1.141  1.148   -0.02  15:07
10年  1.597  1.603   -0.021 15:08
20年  2.619  2.631     0  15:13
30年  3.202  3.21    0.02  15:08
40年  3.438  3.451   0.027  15:13』

ということでツイストしていましたが、その後は自民党両院議員総会で最初は何か皆さん無事にそのままという展開になるのかと思いきや森山幹事長辞意表明ってことで、夕方には

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/D3Y4GQVI7RPODIIHQVTICUD3DI-2025-09-02/
〔マーケットアイ〕外為:ドル148円半ばに上昇、森山自民幹事長が辞意表明と伝わる
By ロイター編集
2025年9月2日午後 4:50 GMT+9

『[東京 2日 ロイター] - <16:40> ドル148円半ばに上昇、森山自民幹事長が辞意表明と伝わる

ドルは現在、148円半ばに上昇している。自民党の森山裕幹事長が辞意を表明したと伝わった。日銀の氷見野良三副総裁の発言などで円売りが進み、森山氏の辞意が伝わる前には148円台までドル高/円安が進んでいた。』

『<15:10> 午後3時のドル147円後半、買い戻し優勢 日銀副総裁発言で円売りも

午後3時のドル/円は147円後半と、前日東京時間午後5時時点と比べドル高/円安の水準で推移している。日銀の氷見野良三副総裁の発言が予想ほどタカ派的ではないとして、円売りが一部で出た。ドルが全般的に買い戻されたとの声もある。』

『<12:08> 午前のドルは147円後半へじり高、日銀副総裁発言で円安

午前のドルは147円前半から後半へじり高となった。日銀の氷見野良三副総裁の発言が期待ほどタカ派的でなかったとの見方から、円売り圧力が強まったという。副総裁は2日午前、各国の通商政策の影響は「いずれ顕在化する」とした上で、当面は影響が「大きくなる可能性の方により注意が必要ではないか」などと述べた。』(以上上記URL先より)

ってな感じで、金懇挨拶見てやや円安→会見終わって欧州タイムでさらに円安→森山幹事長辞任表明報道で一段と円安、というのが昨日の夕方までの流れという感じだと思います。

とまあそういう訳で、はやくもトラスショックinジャパンを見越すようなムーブメントが発生しだしていて大変に味わいのある展開を見せたりしている訳ですが、さて今後はどうなるのかというお話ではありますが、政治の方はまあ良くわからんので何がどうなるとかあんまり考えないようにしますwww


それはそうと昨日の短国ちゃんなのですが
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

ちょっとだんだら引値をだすのも何なので3Mカレント近辺だけにしておきますが、

(9/2引値)
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.436
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.436
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.420←カレント3M
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.440←今週金曜入札のWI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.455

(9/1引値)
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.440
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.440
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.440←カレント3M
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.440←今週金曜入札のWI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.455

ということで先週金曜に入札のあったカレント3Mの1328回の引けがなんと0.42%に低下していまして、まあ新発銘柄だからということで誰かが買いに来てしまってショートカバーが入ったとかそういう世界線なのですかねえ、とは思いますけど金曜日に0.47%〜0.48%で入札をやったとは思えない展開になっておる訳でして、この3日くらいで短国の3M近辺急に強くなっているのもナンノコッチャ感がありまして、まあ何がどうなっているのか分からんですけど、色々な思惑だったりお家の事情だったりが飛び交っているのかなあ、とは思いました。


〇氷見野副総裁釧路金懇挨拶:執行部として大本営の代弁をしている中に氷見野節がチョイチョイ見れるんですよね〜

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250902a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 道東地域金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 氷見野 良三

・大本営の代弁コーナーを見るとハトハト講演と思ってしまうのですが読みどころはそこではないと思うの

ということで挨拶がおっぱじまるわけですが、最初の『2.経済と物価の見通し』では、

『さて、まず、わが国の経済と物価の見通しについて申し上げたいと思いますが、それを大きく左右しかねないのが米国の新政権の考え方です。』

と来まして最初のコーナーが『(米国新政権の思想と政策)』でして、この部分が最初の読みどころになる訳でして、単に大本営の話をホーンスピーカーの如く棒読みしているだけの挨拶ではないわけです。ということで最初のこの部分ですけどね。

『これについては、政権発足後8か月を経て、分かるようになったことも増えてきたように思いますが、予想を超えるようなニュースも日々続いており、分からないことも増え続けているような気がします。』

なるほど。

『そのうえで、分からないながらも現時点での個人的な感想を申し上げますと、新政権の考え方の大きな特徴としては、』

ということで、

『第一に、政治と経済と文化、内政と外交を、垣根なく一体的にとらえていること、』

『第二に、状況に応じて方法を変えるとか、一旦退却してから再度前進するといった「戦術」のレベルでは極めて柔軟だが、最終的に何を達成しようとするのか、といった「戦略」のレベルでは頑強であること、』

『第三に、昔からの通説や定石だけで物事を考えずに、力の所在と源泉に関する事実に立ち返って様々な可能性を追求すること、』

『の三つが挙げられるのではないかと思います。』

なるほど確かに!!


・通商政策を例にとりながらより深堀りをしたお話が聞けるのは氷見野さんの金懇ならではなのです

でまあそういう話から以下発展していくのですよ。

『例えば、通商政策について我々が教科書でまず習うのは、自由貿易体制をなぜ守っていかなければならないか、という理由です。』

ふむふむ。

『「比較優位の原則に基づき、各国が最も得意な分野に特化して生産を行い、国際的な分業を進めることで、経済全体の効率性と成長を高めることができ、それは、全ての国にとってメリットをもたらす。だから、世界全体で力を合わせてポジティブ・サム・ゲームを追求していこう」というワシントン・コンセンサス的な考え方で、私もこの考え方には多くの真実が含まれていると思います。』

でまあこういうことしてないんだからこりゃまあ経済全体の効率が下がるわなとかそういう話に進むのではなく、さらにこの話を深堀りするのが氷見野節な訳でして、、

『他方、これで物事のすべての側面を捉えきれているかというと、必ずしもそうとは限りません。』

からの、

『超大国の場合には、自らの対応によって輸入価格を左右できるほどの市場規模があり、しかも、貿易相手国の対抗関税を抑止できるだけの影響力もあるので、いわゆる最適関税理論によれば、関税をゼロにするより一定の関税を課す方が交易条件が改善して有利になる、といわれます 。1』

Oh・・・・・・

でもってここの脚注1なんですが、リファーされているのが、

『1 Nicholas Kaldor, "A Note on Tariffs and the Terms of Trade," Economica 7, no.28,(1940):377-80』

ということで(アタクシ経済学徒じゃないから詳しくないんで恐縮ですが)マクロ経済学の基礎を打ち立てたカルドア卿の1940年の論文を引用していましてまあ唸らされます。


『また、現在の地政学的な状況に鑑みれば、自国の戦略的自律性と戦略的不可欠性の確保を目指す経済安全保障の考え方の重要性は増大していかざるを得ません。』

『さらに、「最も効率的な経済体制が公正や分配の面で必ずしも理想的な結果をもたらすとは限らず、しかも政府の再分配機能には限界がある」という議論も、社会的・経済的な分断が深まるにつれ、重みを増します。』

なるほどこれは重い指摘。

『すなわち、関税だけをとってみても、交易条件という経済的な面、経済安全保障という外交的な面、公正や分配を巡る政治的な面がないまぜになっているような気がします。』

『「知的エスタブリッシュメントは、極端に格差が拡大するような新自由主義的な経済体制を、経済効率を根拠に弁護してきたのではないか」という批判も含まれているとすれば、彼らに対する文化闘争の面すらあるかもしれません。』

おーーーーーーーーーー。

『関税は経済・外交・政治・文化を横断した大きな運動の一つの表れと捉えることができるのではないかと思います。』

!!!!!!!!

『ですので、米国の新政権の政策の影響を関税の問題だけに限って論じるのでは話を矮小化し過ぎであり、わが国の経済や物価の中長期的な展望を語るためにはもっと広い視点の議論が必要だと思います。』

ここまでの説明をお伺いしてここに至りますと首がもげるくらいに頷いてしまう訳ですが。

『ただ、それでは私の能力を超えてしまいますので、以下では関税政策の当面の影響に絞って議論させていただければと思います。』

どう見てもそれは氷見野さんの能力の中で十分に含蓄の深い話をしていただけると存じますが、まあ金懇なので大本営の伝言係をやらないといかんという企画でもあるので、この先が伝言係モードに切り替わるのですが、その中でもちょいちょいと氷見野節は出てくるって感じではありますな。というかこのお題に関しての氷見野副総裁の考察と見解をお聞きする機会があるなら木戸銭払っても聞きたいとマジで思います。



・米国関税の影響が日本経済にどうなるか問題の説明部分に飛びまして

次の小見出しが『(関税政策の影響)』ですが、この説明部分も非常に丁寧に説明されていてまあ読めって感じなのですが引用していると量も時間もオワランチ会長になってしまいますので、会見ネタと共に明日続きをするかもしれませんけれども、途中すっ飛ばして結論部分に参ります。

『想定される4つの主な経路と、それらの経路を通じた影響が思ったより大きくなる可能性と小さくなる可能性とについて申し上げてきました。では、これらの経路を通じた影響は、日本の側にはどのように表れているでしょうか。』

はい。

『日本から米国への自動車の輸出価格は大きく下落しましたし、日本銀行が行っている企業へのアンケート調査「短観」でも、一部の業種では業況や収益見通しの悪化が見られます。企業へのヒアリングを行うと、今後についての不安を口にされる経営者は少なくありません。』

『ただ、経済全体としてみれば、現地通貨建ての輸出価格は横ばい、輸出数量は駆け込みとその反動があるので評価しにくいですが、史上最高に近い水準で概ね横ばい、鉱工業生産も横ばいです。企業の業況感や収益計画・設備投資計画の水準は引き続き高く(図表4)、本年度分の賃上げや夏のボーナスには顕著な影響は見られていません。個人消費も底堅く推移しています。』

なるほど。

『関税政策の影響がこれまでのところ思ったほどには顕在化していないことについては、影響が出るまでに時間がかかっているだけであり、影響はこれから及んでくる、というのが基本的な見方だろうと思います。』

「基本的な見方だろうと思います」って形で言い切っていないのが味わいがあります。つまり、

『ただ、既に述べたような理由で、そもそも関税政策の影響が思ったほどは大きくない可能性も考えられます。他方、思ったより大きい可能性も、米国新政権から我々が想定していないような政策が新たに打ち出される可能性も考えられます。いずれも頭の隅にはおいておいた方がよいのではないかと思います。』

ってのはさらっと流して読んでしまいそうな部分ですが、これ実は対句になる部分が金融政策運営のところに埋設地雷のように入れ込まれている、という事をここで気にしておいてください。

『いろいろ申し上げましたが、今後についてのメイン・シナリオとしては、各国の通商政策の影響はいずれ顕在化し、海外経済が減速、わが国の企業の収益も下押しされるだろうと見ています。その場合、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、日本経済の成長ペースは鈍化するものと考えられます。』

『ただ、影響が思ったより小さくなる可能性も、大きくなる可能性も、両方考えられるところで、当面は大きくなる可能性の方により注意が必要ではないかと考えています。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、日本経済も成長率を高めていくと見込んでいます。』

というのが伝言モードで、この「大きくなる可能性の方により注意が必要」であら早期利上げモードじゃないのね、ってなってアヒャヒャヒャヒャな10年入札になったという感じでしょうね。


・基調的インフレの説明部分www

次のコーナーが『(物価の見通し)』です。

『さて、次は物価についてです。現時点でメイン・シナリオと考えているのは、「現実のインフレ率はお米の値上がりとその波及を主因に物価安定目標の2%を大きく上回っているが、いずれ落ち着いていく。他方、基調的なインフレ率は2%より低いが、賃金と物価の相互参照のメカニズムが働いて2%にかなり近づきつつあり、足踏みはあっても、いずれ2%に達する」といったものです。』

といったものです、ってのが味わいがある。

『こうした「基調的なインフレ率はまだ2%を下回っている」という見方については、現実のインフレ率が既に3年余りの間2%を上回っており、しかも3%を上回る期間が多くなっていることから、分かりにくいといったご意見や、その適切性についてのご疑問をいただくことが少なくありません。』

wwwwwwwwwwwwwwww

『基調的なインフレ率というのは、一時的な変動を除いたインフレ率のことです。一時的なショックの影響がなくなった後の落ち着き先のインフレ率、ということもできます。』

ほうほう、というかそういう理屈だとそもそも論として「基調的なインフレ率」ってのは後付けにならないと分からないということになるので、基調的インフレ率を現在進行形で把握して政策判断のメルクマールにするのって、金融政策の波及効果にラグがあることを勘案したら政策反応関数に使うの無理じゃんという話になりそうですが、そういう話は華麗にスルーして基調的インフレの説明がおっぱじまります、ナンノコッチャ。

『直近の消費者物価の統計に即して申し上げますと(図表5)、7月の消費者物価上昇率は3.1 %と、2%を大きく上回っています。これは、ガソリン補助金などによる引き下げ効果があった上での数字ですが、そうした効果は、上昇率の面では一時的な変動と考えることができます。他方、この 3.1%という消費者物価上昇率には、食料価格の上昇が 2.1パーセントポイント寄与しています。これについても、米価格の急上昇が起点となって起きた一時的な変動の面がかなりある、とみることができます。こうした上下の要因を除いて基調をみるために、例えば食料とエネルギーを除いた品目の上昇率でみると、1.6 %であり、まだ2%には達していません。』

こwwwwれwwwwwわwwwwwww

さては次回の決定会合での総裁会見ではこの屁理屈を新たに繰り出しますよ宣言ですかそうですかと笑ってしまいました。というのはこの先で氷見野さん、

『実際には、何が一時的で何が基調的な変化か、何を除いて何を含めて考えたらよいか、の判断は簡単ではありません。』

って今言ってた1.6%云々ってのもある種のイリュージョンあるいはフィクションです、って言ってるようなもんじゃんと思ったのでw

『そのため、日本銀行では、変動の大きな品目を除いて考える、というやり方のほかに、経済構造をモデル化して基調を推計する方法や、家計や企業や市場参加者などが中長期的なインフレ率についてどのような予想を持っているかを計測する方法など、さまざまな手法を用いて分析を行っています。』

はい。

『そうした分析を総合すると、「基調的なインフレ率は 年代には0%と1%の間あたりにあったと思われるが、最近では2%にかなり近づいてきている。ただ、2%に達しているとまではまだ言えないのではないか」といった結果になっています。』

この辺り、さっきからずっと「といった結果になっています」とか決め打ちを避けた説明になっているのは、知的誠実のある説明ではあるのですが、なんか突き放したっぽくも見えて読んでて滋味深いなと思います(個人の感想です)。

『そこで、「現実のインフレ率は高いが、一時的な要因の影響が収まるにつれ、いずれ落ち着いていく」というシナリオをメインに置いているわけです。』

ってのも面白くて、アクチュアルのインフレが落ち着くという見通しは基調的インフレが2%行ってないから、というのが今の日銀大本営のロジックの背景説明ということになりまして、そうなりますとインフレが落ち着くという見通しそのものの背景がお気持ち物価から来ているという話であって、個別価格の見通しのアグリゲートではありません、という話をしている訳ですなこりゃまた。

いやまあ物価の見通しってのをマクロ的に考えれば仰せの通りという話ではあるのですが、現実にアクチュアルな物価は(以下でも話があるけど)個別価格におけるショックが波及していくのが手を変え品を変え出てきているということがあるわけですから、個別物価の積み上げベースで少なくともニアータームの物価見通しを考えないといかんのじゃないのかねとも思う訳で、その辺今の日銀大本営は何をどう考えているんだろう、と思ってしまいました。


・一時的ショックだから基調に向かって落ち着く・・・・とならん背景について

話は続きまして、

『振り返ってみますと、 2021年からは原油や小麦などの国際商品市況、次いで円安の進行を要因として輸入物価の上昇が起こりました。 2023年以降は、輸入物価指数は下落に転じたものの、今度は国内の生鮮食品、次いで米、と、新たな供給ショックが物価を引き上げてきました。』

『2021年以降を通してみれば、一時的な要因は次々に消えていくものの、次々に新しい要因が登場するというパターンになっているわけです。』

はい。

『しかし、これについては、上向きの一時要因が続いているのはたまたまにすぎず、次は下向きのショックが来るかもしれない、いや、米国関税政策という形ですでに来ている、という風に考えることができます。』

これが大本営ね。

『他方、あえて別の見方を考えてみますと、二つぐらい挙げられるかと思います。』

ほいな。

『第一は、日本の国内事情に関するもので、「デフレ・ノルムの時代には、一時的な物価下押し要因の効き目が大きかったが、最近は、輸入物価の下落などの下押し要因が生じても影響に広がりはみられず、逆に、一時的な物価上押し要因が大きく効くようになってきている。これは、人手不足、価格設定や転嫁に関する企業や消費者の考え方の変化、インフレ予想の上昇などが下地にあるからだ。」という仮説です。』

この点に関しては先般シントラフォーラムの時に公表されたECBのストラテジー見直しと、その時に行われたラガルド総裁の示した認識も(デフレノルム云々の部分は違えども)この手のレジームシフトを前提にした話なので、実は日本だけの話のかというと必ずしもそうではないとおもうのですが、そっちの話はさておかれまして、国内の人手不足云々の話になります。

『今、下地として申し上げた三つのうち、人手不足の影響について見てみたいと思います。』

ということですが、以下の部分は展望レポート1月の基本的見解に一部と、その詳しい背景説明が全文の方にありました話の説明部分となっているので引用をすっ飛ばしまして第二の要因の方に参ります。

『物価を上押しするような一時的な要因の継続に関する第二の解釈としては、グローバルな環境が、 2010年代までのデフレ的なものから、 2020年代にはインフレ的なものに変わってきているためだ、という見方が考えられます。』

うむ。

『これも、「地政学的な理由からグローバル化の巻き戻しが始まっており、国際分業によるコスト最小化が行いにくくなっているから」とか、「人口動態の変化により世界全体が人手不足の時代に入っているから」とか、「気候変動及びその対策のコストが増加しているから」とか、いろいろな議論があります 。』

ただこれはこれでそうじゃろというか大本営も言ってますよね、言うと都合の良い時だけ限定ですがw

『もっとも、これらの議論はかなり長い時間軸での話であり、それをどの程度足もとの情勢判断と結びつけてよいのかの見極めはやはり難しいです。』

まあそりゃそうだ。


・上振れの話は構造的な面が強いのだが下振れの方は・・・・・

『以上のような議論は、いずれも上振れ方向のリスクを示すものですが、他方、下振れ方向のリスクも考えられるところです。』

・・・・でもって下振れの方ですが、

『まず、各国通商政策を起点として、先ほど申し上げたような経路で日本経済の下押しが始まれば、それが日本の物価や賃金にも下押し方向に効きます。』

『輸出企業が「関税分は輸出価格を引き下げたい」と考え、仮にそれをきっかけにコスト削減を優先する傾向が復活するようなことになれば、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇するメカニズムが停滞する可能性もあります。』

これは4月にやたら大本営が強調していた話。

『また、世界経済が停滞すれば、原油をはじめとした国際商品相場には下押し方向に効きます。更に、既に過剰生産能力を抱えた国もある中で、米国という輸出先を失った国々が、日本を含めた他の輸出先での売り上げ拡大を狙って輸出価格の引き下げを行うならば、これも物価への下押し圧力となります。』

これはコストプッシュの逆なんだから経済にプラスで需要が強まるからそんなにマイナスにならんとチャウのという気が。

『これまでのところ、こうした経路では目立った影響は観察できませんが、いずれ顕在化する可能性も否定できません。』

だそうです。


・金融政策運営の部分でイタコ話法を使って氷見野節が炸裂しているんですよね〜

ということで次が『3.日本銀行の金融政策運営』ですけど、

『日本の経済と物価に関する以上のような「メイン・シナリオ」と「上下双方向のリスク」を踏まえ、当面の金融政策運営についてはどのように考えていけばよいでしょうか。』

となりまして最初が金利政策の運営、次がバランスシート運営の話になるのですが、バランスシートの方で実はかなり面白いなあと思うところがあるのですが、惜しくも時間が足りなくなりそうですのでその手前の部分で寸止めとなるのですけど、まあ今回読んでて一番「おおおおお」と思ったのがアタクシが小見出ししたイタコ論法部分。

小見出し『(当面の金融政策運営)』に参りますが、最初の金融政策運営の話はまあ超あっさりと流していまして、

『経済や物価への影響が大きいのは、名目金利からインフレ率についての見通しを差し引いた実質金利ですが、これは、これまで3回政策金利を引き上げてきたにもかかわらず、インフレ率が上振れしてきたこともあり、依然きわめて低い水準にあります。』

『このため、これまでご説明したような経済・物価のメイン・シナリオが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適切だろうと考えています(図表9)。』

『ただ、既に申し上げた通り、経済も物価も様々な要因から上下双方向のリスクが考えられます。メイン・シナリオが本当に実現していくかどうかについては、予断を持たずにみていきたいと思います。』

とまあドチャクソあっさり味で終わっているのですが、実はこの分けた中の3番目の対句でもあり、さっき言ってた対句部分でもあるお話がこの先にありまして本日の白眉になります。


『先日、私どもの金融研究所が主催している国際コンファレンスに、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が参加されました。この方は高名な研究者でもあり、「不確実性の下での金融政策」を研究テーマの一つとしてこられました。』

ほう。

『せっかくの機会なので、「こういう不確実性の高い環境では、どういう作戦で金融政策を運営していったらいいと思うか」と尋ねてみました。』

ほうほう。

『ウィリアムズ総裁のお返事は、私の理解したところでは、だいたい以下のようなことだったと思います。』

ほうほうほう。

『すなわち、金融政策はいつだって不確実性に直面してきた。不確実性が高いからゆっくり進めたらいいとか、迅速に進めたらいいとか、小刻みにやった方がいいとか、大きなステップを取った方がいいとか、そんなことはいえない。ただ、特定のシナリオを前提に厳密な最適解を求めようとするのではなく、むしろいろんなシナリオを想定してもちゃんと機能するような作戦を見つけるようにした方がいい。――こんな感じのお返事ではなかったかと思います 。5』

(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー

『私たちの前からリスクや不確実性がなくなることはありませんので、上方向のリスクと下方向のリスクのバランスを評価して、メイン・シナリオから離れた時にもあまり困ったことにならないよう、適時適切に対応してまいりたいと思います。』

>私たちの前からリスクや不確実性がなくなることはありませんので
>私たちの前からリスクや不確実性がなくなることはありませんので
>私たちの前からリスクや不確実性がなくなることはありませんので

ハトハトチキン見てるかイェーーーーイ!

>メイン・シナリオから離れた時にもあまり困ったことにならないよう、適時適切に対応してまいりたいと思います
>メイン・シナリオから離れた時にもあまり困ったことにならないよう、適時適切に対応してまいりたいと思います
>メイン・シナリオから離れた時にもあまり困ったことにならないよう、適時適切に対応してまいりたいと思います

ですよねーーーーーーー。でまあそう考えると今の0.5%という金利が本当に適正水準なのかって話な訳で、これが1%台前半とかにいるなら話は違ってくるかもしれんが、まあそういうことやぞ、ということだし、経済物価の見通しの中でも上下のリスクを強調していることの対句になっている訳でした。

ということで続きは明日にでも。





2025/09/02

お題「長期弱くて3Mカレント強いとな/債券市場サーベイ雑感/中川さん金懇関連補足」

Oh・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250901/k10014908961000.html
関東内陸部 あす気温40度に迫るおそれ 熱中症対策の徹底を
2025年9月1日 21時42分

〇氷見野副総裁金懇挨拶を前に長期債ちゃんは弱いわ3Mの短国は堅調だわ

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・記者会見・談話

『今後の講演・挨拶等の予定

2025年 9月 2日  氷見野副総裁  道東地域金融経済懇談会における挨拶』

ということで氷見野さんの釧路金懇というイベントを10年国債入札日にぶつけるなよって感じでして、まあ金懇テキスト自体は応札前の前場に出てくるからまだしもなのですが、会見がどうせ14時からで解禁時間がどうせ14時半とかになるということで、まあ入札やりにくいわ、というのもあって長期債ちゃんが弱くなるの巻。

いやまあ金懇自体が出席する偉い人とかの都合があるから日程をそう自由に設定できない、というのは分かるにはわかるんですけど、月初第2営業日って基本的に10年国債の入札があるんだから、副総裁とか総裁クラスの講演は数日前か後ろにずらした日程的配慮をして頂きたいのですが、日銀って伝統芸能のようにこの辺の日程への配慮が無いんですけど。

そんな訳なのかどうか知らんけど昨日も債券ちゃんなんか売られていましたなということで、

いつものロイターさん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/PMNLTL7YKBO45GRG2RVOGOJ4OM-2025-09-01/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落、日銀副総裁発言や入札控え警戒感 長期金利1.625%
By ロイター編集
2025年9月1日午後 3:20 GMT+9

『[東京 1日 ロイター] - <15:10> 国債先物は反落、日銀副総裁発言や入札控え警戒感 長期金利1.625%

国債先物中心限月9月限は、前営業日比24銭安の137円30銭と反落して取引を終えた。明日の日銀副総裁の発言や10年利付国債入札に対する警戒感が相場を圧迫した。新発10年国債利回り(長期金利)は同2.5ベーシスポイント(bp)上昇の1.625%。』

『TRADEWEB
     OFFER  BID   前日比 時間
2年   0.873  0.88    0.005  15:02
5年   1.161  1.169   0.017  15:06
10年  1.618  1.624   0.016  15:02
20年  2.622  2.632   0.017  15:08
30年  3.183  3.191   0.005  15:06
40年  3.418  3.426   0.002  15:03』
(以上上記URL先より)


ということでして、翌日に氷見野さんの金懇とかいうもし9月やら10月に利上げする気が満々ならば、地均しイベントが発動するのが然るべき姿、というイベントがあるのでそりゃまあここから利下げってのはあり得ないし、この物価情勢でこのまま0.5%の政策金利はあり得んじゃろという点も踏まえますと、まあヘッジの方をしたくなるということで入札前に失速しちゃうのしゃあないですよね。

ああちなみに念のため申し添えますが、9月ってのはさすがにここから地均しするの無茶じゃろと思うしそれならば何ぼ何でも大本営九官鳥に少しは露払いさせるじゃろとしか思えんので9月ぶっこんできたらビビるのですが、その一方で記者会見の質疑応答にもありましたように、妙に「短観を確認」っていう新しいワードがクローズアップされたこともありまして、じゃあ短観を確認して決定会合となれば10月か12月会合になるので、なんと年内2回の利上げチャンスがある、とも取れる説明を大本営九官鳥が行っていた、というのも踏まえますと、正直12月は1月と事実上は(短期の人以外にとって)で何も違わんじゃろとは思うのだが、10月だとその先の利上げタイミングが元のペースに戻る(つまりその次が3月くらいになるし、何なら1月にもう一発行って年2回ペースに引き戻してくるだって無いわけではない)可能性が出てくるので、そりゃまあ4月のハトハトチキン大会はどこに逝ったのという話になりますので、10月の可能性についてもっと強い話をおっぱじめるかどうかが注目じゃろうな、って話だと思うの。

しかもさっきの予定表見ますと、9月末に野口審議委員の金懇あるけど、野口さんは申すまでもなく置物一派の残滓なので積極的な利上げとかいう可能性は極めて低く(突如野口さんが邪宗門からの解離に成功した結果として人間本来の善性を取り戻されて利上げの必要性とか言い出したらそれはそれで一気に10月利上げの機運が高まりますのは諸葛孔明の罠として注意しておく必要はありますが)、10月20日の高田っちの金懇挨拶はちょっと期待したくなるけど何ぼ何でも直前過ぎてそこから地均しスタートにはならんじゃろ(その前の時点で勝負ついてて高田っちのはリコンファーム扱い)と思うので、まあ10月やりたきゃ今回なんか威勢の良いのが出てくるというのがありそうな話(大穴では上記のように野口さんまさかの地均しというのがあるが・・・・)

って冷静に考えたら地均しとか予告ホームランみたいなのをなんでするんじゃという話ではありまして、そんなのしなくたって政策反応関数がロジカルに示されていたら、経済物価情勢を勘案して市場が勝手に利上げを織り込みに行くのですが、何せ「お気持ち物価」で政策判断をしておられるわけですし、展望レポートの経済情勢の見通しが「基本的に前回から不変」なのに「展望レポートハイライト」では全然トーンの違う絵を出してくるという位に訳の分からん方々なので、結局のところ予告ホームランだか予告三振だかわからんものをあてにするしかない、という困ったコミュニケーションになっている次第でありまする。


でもってこれに連動しているのかどうかは分からんのですが短国ちゃんが味わいの深い引値になっていまして・・・・・

売参
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(9/1引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.410
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.410
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.410
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.410
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.440
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.440
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.440
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.440←カレント3M
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.440←今週金曜入札のWI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.455

(8/29引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.410
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.410
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.410
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.410
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.410
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.440
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.460
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.460
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.460←新発3Mの引け
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.460←今週金曜入札の新発WI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.480

ということで(昨日に関しては3Mカレントゾーンだけ出してればよい説はあるのでだんだら長くてすいませんすいません)長い方が氷見野さん講演やら自民党総裁選で高市高圧経済政権爆誕リスクの懸念(って昔ほどは無いと思いますが)とかもあって弱っちいのですが、一方で3Mのカレント周りが堅調で、0.47だの0.48だのとか言って入札やってた金曜の新発3Mが0.46⇒0.44と(短期目線いえば)利回り盛大なる低下でワッショイワッショイという流れになっておりまして、先週入札に向けてよわよわにしてたのは一体全体何だったのかと小一時間問い詰めたくなるような世界。

でもって一方で長い方が上記のようにションボリーヌとなっているのと合わせ技で考えれば、長期債投資している方面から金利リスク一旦降りました組が避難民となって短国市場にやってきて、でもってロット捌けそうなところで金利リスクも小さい、となると3Mカレントとかたぶんその手前の銘柄辺りが買われやすいじゃろ、となるので11月の頭の償還辺りと並に同じ水準(10月償還はどうせ利上げ前と思われるのと半期末越えのプレミアムが乗りやすいのでレートが低めになるのはしゃあなし)まで引値を強くされました、ってなもんじゃろと思いましたが、引値と長期債動向見て勝手に妄想しているだけなので間違ってたらゴメンチャイ。

という割と味わいのあるムーブが発生した訳ですが、これで氷見野さんの金懇が普通にいや別に利上げそんなに前のめりになる必要ないじゃろ不確実性高いんだし、とかいう肩透かしを食らった場合の方がちょっとアヒャヒャ相場になるんですかねえ、知らんけど。



〇さすがに5月対比では改善しちょるじゃろというサーベイですが今日は別の話で雑談

https://www.boj.or.jp/paym/bond/bond_list/bond2508.pdf
債券市場サーベイ
<2025年8月調査>

回答期間:2025年8月1日〜8月7日
調査対象先数:75先
(「調査対象先数」は、国債売買オペ対象先のうち調査協力を得られた先、および大手機関投資家<生命保険会社、損害保険会社、投資信託委託会社等>)

ということでさすがに5月よりは数値改善しているのですが、そもそも論としてこれ回答期間が決定会合の直後(しかも展望会合)にぶつかる設定になっているの如何な物なのかと今更ながらに思う(2月だけは直後ではないけど5月8月11月の第一週ってどこからどう見ても展望会合直後なんですよね)のですが、これ調査タイミング2週間くらい後ろに倒した方が良いんじゃないかと思います。

まああと調査項目に関しても、QQE+YCCやっていた時と同じ項目ってのも微妙なところがあって、いやまあQQE+YCC政策からの解脱がどの程度進んでいるか、っていうのを見たいという面から言えば同じ項目でも良いのかもしれませんけれども、もう少し視点を変えますと、アスクビットスプレッドとか板の厚さとかの問題よりも、もっと本源的に「債券市場の価格形成が日銀の長期国債買入によって歪んでいないか」というのを見ていくのが大事なんじゃないかと思うんですよね。

と申しますのは、YCCってのはその政策手段の性格上、長期債市場に対して強力な介入を行う、すなわち意地悪な言い方をすれば価格形成を歪ませることによって、金融緩和政策の所期の目的を達成しよう、という物なのですから、まあ価格形成が歪むのって政策運営上やむを得ないというかそういう物だったんですな。ただその価格形成が歪むのも程度問題というのがあって、アスクビットスプレッドが無茶苦茶開くとか板がスッカスカだ、ということになると国債の安定消化に支障を来すという盛大な副作用に結びつくことになるから、そこまでにならないようにアスクビットスプレッドや板の厚みを気にする、ってのはまあ分かるんですな。

然るに、現状ってYCCやっている訳ではなくて、盛大に買ってしまった長期国債を本来はバランスシートかどうやって落としていくか(って財務省にバイバックさせない限り自然減しかできないんですけど)という中で、これまで馬鹿みたいな額の買入をしていたから経過措置で買入減額をチンタラとやっている、という状況な訳ですから、問題にすべきは今申し上げた通りで、「日銀の長期国債買入が市場の価格形成を歪めているか否か」が問われるべき段階に入っている筈なんですよ。

ということでして、YCCやってる時と同じ調査を継続するのが本当にそれでエエノカという問題提起を突如ぶっこんで見ました。まあやってる方としてはこれだけデータが揃っている調査なので急に項目変えたくないとか無くしたくない、って気持ちは良くわかるのですが、まあご検討頂きたいものだと思う次第でありまする。


〇中川委員山口金懇の補足メモ

金曜と昨日ネタにしたのですが少しだけ補足というか漏れていた分が有るので追加します。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250828a1.pdf(金懇挨拶)
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250829a.pdf(金懇会見)


・物価の説明でよく見たらしらっと「2%になっている」という言及がwwwww

金懇挨拶の方で『(3)国内物価の現状』ってのがあるのですが、その説明の中での5ページ(PDFの6枚目)の下から9行目くらいからの部分になりますけれどもこんなのが、

『日本銀行が、継続的に公表しているコア指標をみます(図表10 )。左のグラフは基調的なインフレ率を捕捉するための指標の一部で、日本銀行スタッフが脚注にある通りの試算をしています。右のグラフは消費者物価指数(除く生鮮食品)を構成する各品目の、前年比上昇品目と下落品目の割合です。』

というのはいつもの基調物価ですけれども、よくよく読み直したらどさくさに紛れてこんなのがその直後にしらっとぶっこまれておりましたw

『次の図表(図表11 )の左のグラフは、消費者物価指数(総合)を構成する全品目の前年比価格変動率の分布です。分布の裾は上昇方向に広がり、単純中央値は2%近傍にあります。』

>分布の裾は上昇方向に広がり、単純中央値は2%近傍にあります
>分布の裾は上昇方向に広がり、単純中央値は2%近傍にあります
>分布の裾は上昇方向に広がり、単純中央値は2%近傍にあります

図表11ってのはPDF19枚目になるのですが、よくよくこの図表の小見出しを見てみますと、

『予想物価上昇率』

ってなっていて、<CPIの品目別価格変動率の分布><予想物価上昇率>ってございまして、つまりは図表11の左のグラフってのはこの<CPIの品目別価格変動率の分布>ですわな、説明の通りですが。

ちなみに、7月の展望レポートではどうなっていたかと言いますと、

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507b.pdf(展望レポート全文)

こちらの本文28ページ(PDFだと30枚目)以降が物価の話で、その後BOXの方でも物価の話があるのですが、この<CPIの品目別価格変動率の分布>に相当するグラフって出ていない(刈込平均とかのいつもの奴は出ている)ので、何気にこれしれっと大本営がぶっこんできやがったゾというお話でして、これは何ぞというのを補記させて頂きます、うーんこれはwwwwwwww


・しかし「好循環」言わなくなりましたねえ

会見の方ですが、まあこれ引用していると長くなるから引用しませんけど、今回の質疑応答の特徴としまして、想定棒読みは仕様なのでまあいつものことなんですが、その中で「賃金と物価の好循環」を絶対に言わないという流れになっていたのは味わいが深いのと、基調的物価の話もあんまりしなくなっているし、何なら水準の話してねえな、と思ったのでその点も補記させていただきますw

まあ一応屁理屈変更への布石は着々と埋めている感じはしますね、本当に変更するかどうかは正直謎というかあのハトハトチキンじゃあ厳しかろうとは思うのですが、追い込まれたときでも追い込まれたと言わずに堂々の屁理屈を展開できるように準備に余念がない、というのはさすが大本営と感心するところであります(褒めてないw)。







2025/09/01

お題「3M短国レート上昇一旦休止とな/中川審議委員金懇会見より」

いやーちょっと暑すぎてなんかもう思考も行動も停止しますわ月末月初だというのにorz

〇短国ちゃんは結局金利上がったら買いがあったのかしら知らんけど

金曜の短国ちゃん
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250829.htm
国庫短期証券(第1328回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1328回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号    国庫短期証券(第1328回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日     令和7年9月1日
4.償還期限   令和7年12月1日

5.価格競争入札について
(1)応募額      11兆5,881億5,000万円
(2)募入決定額   3兆3,580億8,000万円
(3)募入最低価格  99円88銭0厘0毛
(募入最高利回り)  (0.4818%)
(4)募入最低価格における案分比率 93.3338%
(5)募入平均価格  99円88銭1厘9毛
(募入平均利回り)  (0.4742%)』

ということでですね、足切りはWIの0.48%というのに見事に乗ったのですが、平均0.4742%でして、でまあどうなりましたのやらと思ったら売参ちゃん見ますと、

売買参考統計値
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(8/29引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.410
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.410
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.410
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.410
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.410
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.440
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.460
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.460
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.460←新発3Mの引け
国庫短期証券1329 2025/12/08 平均値単利 0.460←今週金曜入札の新発WI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.480


(8/28引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.410
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.410
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.410
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.410
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.440
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.460
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.455←木曜時点での3Mカレント
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.480←3M新発WI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.480

ってな訳で手前の方の引けは変わらんのですが新発周りはWI0.48%に対して結局既発の3Mの0.46%の方にサヤ寄せされて引けということになったので、まあ50に近い所は買う人がいましたってなもんなんでしょうけれども、短国ちゃんって毎週のように新発が出てきて足が常に1週間ずれてくるので、9月利上げは言うまでもなく、10月利上げだと思った場合の「後半」がだんだん長くなってきますのですが、まあ足元との関係で言えばずっと付利金利よりは10ちょっと強いというレートで推移してきた3M短国となっているので、その点では今の水準自体は魅力はあるものの、ゆうて利上げになったら付利金利が25bp吹っ飛ぶのですから、その瞬間結構な逆ザヤになってしまう問題というのは大いにありますが、その一方で今月は関係ないですけど10月になると3Mが年末越えになるんですけど、この年末越えに関しては昨年ですと1月償還(つまり10月に入札のあった物件群)が飛んでも無く低いレートで推移していて、年末跨ぎプレミアム怪しからんでござる状態になっておった訳ですが、はてさて今年は利上げリスクの勘案と年末跨ぎプレミアムの関係はどうなるのやらというのも今から勝手に盛り上がって注目しております、はい。

まあいずれにしましても、0.50%よりもそこそこ手前(2毛からそこそこ手前的な感覚ですがそれはアタクシの主観なのは為念)で買いが入って反転でござるの巻になった結果の0.46%引けだと思いますので、既に交付税特会のレートは実質的に10月利上げの織り込み度合いを若干剥がしに来ている推移になっていました、というのは先週の特会借入のレート推移を捕まえて拙駄文で申し上げておりましたが、まあ短国に関しても(短国の方は引けが0.46%だと結局前週の3Mと同じ水準の引けではあります)一旦は利上げ見通しの水準訂正ムーブ一段落(一段落と言っても金利が下がっている訳ではないですけど)ということですかね、知らんけど。


〇中川審議委員山口金懇会見より:まあ想定問答なんですが「短観の見方」と「利上げ遅れのリスク」の回答を鑑賞です

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250829a.pdf
中川審議委員記者会見
――2025年8月28日(木)午後2時から約24分
於 下関市

・24分の会見はクソワロタ

上記のようにこの会見、冒頭に燦然と輝く会見時間ですがさすがに30分割れはインパクトがあるのでちょっと最近の金懇会見を確認してみました

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/index.htm
記者会見 2025年

7/24内田副総裁:約35分
7/4高田委員:約40分
6/25田村委員:約40分
5/22野口委員:約30分
4/17中川委員:約30分
3/5内田副総裁:約30分
2/19高田委員:約40分
2/6田村委員:約30分
1/15氷見野副総裁:約30分

一々URL引用したら見苦しいのですがインデックスの方から金懇会見を拾って回りますとこのような感じになると思いますが、通常「約30分」ってのが多くて、高田さんとか田村さんの場合は質問にも熱が入るので40分になったりするのですが、まあだいたい30分プラス10分程度、って感じになっていると思うのですよ。会見後のロジとか存じ上げませんのでこれ自体が何時に締めとかがあるのかがよくわからんのですが、会見のヘッドラインが以前は14時45分くらいから出てくきてたので、会見終ってから解禁みたいな運営だったんですかしら、とは思いました。まあこの14時45分くらいってのはヘッドラインで引け際の値動きを無駄に増幅すると悪態ついてたら最近は14時半くらいからヘッドライン出るようになってこの点は大変に良かったと思います、蛇足ですけど。

とまあそういう次第で、この「24分」ってのは中々やるなと見た瞬間にビビりました(悪い意味で)が、まあそんな訳で鑑賞してみましょう。


・大本営の今の理屈によれば「企業の行動様式が下方屈曲してディスインフレモードに戻らないのを見たい」でしたが・・・・

この会見録、全部で6枚組になりますが、最初の幹事社(ちなみに金懇の場合地元の地方紙さんがやっている筈)によります「今日はどうでしたか&ご当地質問」とその応答、という思いっきり想定問答な物体が1ページ半にわたってございますので実質4ページ半の質疑応答になります。

でですね、これはヘッドラインに出ていて「政策修正のタイミングは短観タイミング」というヘッドラインに見えたので「これは何ぞ」と思っていたのですが、実質最初の質疑応答にこの話がありましてですね、

『(問)二点お伺いしたいと思います。一点目が、本日の挨拶要旨の中で、各国の通商政策の進展の変化をみるために、次回の短観の結果が大変重要というお話がありました。10 月には短観の発表に加えて、支店長会議も控えていると思いますが、こういった利上げを今後判断するうえで、この短観のデータは判断材料として欠かせないものなのでしょうか。(後半割愛)』

という質問があって、そういや短観重要って言ってたわと思ったのですが、

『(答)まず、一点目です。短観は、私どもきわめて大事な調査だというふうに認識はしています。』

ほほう。

『こちらみて頂いた通り、センチメントや設備投資の計画というものを確認することができるものです。』

ほっほーーーーーーーー。

『ただ、常に毎回の決定会合におきましては、その時までに出た、把握できる最大限の情報、特にハードデータをもとにして、私ども判断していきますし、そちらに短観の調査、発表が間に合えば、それも当然織り込んでいくということですので、ご質問の直接のお答えになっているかどうか分かりませんが、短観というものは非常に重要で、その時点において直近の短観の結果というものを十分に読み込んだうえで、決定会合を都度、判断していきたいというふうに考えます。(後半割愛)』

大本営の従来の説明ですと、企業の行動に関しては賃金設定行動と価格設定行動を見たい、という話をしていまして、その理屈ですと年末の賞与設定と年末年始に見えてくる来年度の賃金設定ってのが重要って話になっていたのですが、短観と質問されての回答ではありますが、やたら「短観が重要」という説明をしているのに加え、「設備投資ガー」と言い出している訳でして、しかもこの中川さんの説明の中には「雇用判断」に関する言及は無い(まあ短観の場合雇用判断は最近は常に激強なので使いにくいというのはあるけど)ので、おやちょっと説明変わってないかというか、賃金が前面に出ていたのが設備投資も出すようになったな、と思いました。

でまあ短観で判断、って話になると10月の次は12月会合になるというのが味わいがあるのですがさてどうなんでしょうかねえ・・・・・・


・展望レポート棒読みでしたから短観との関係しか聞きどころが無かった説はあるのですが短観の質問があと2つ

『(問)一点お伺いしたいのが、今日の午前中の挨拶の要旨の中で、先ほどの質問にもあったのですけれど、通商政策の進展の変化をみるために次回の短観結果が大変重要というコメントがあったかと思います。その中で、具体的にどのようなポイントに着目するのか、どのような条件が確認できれば先ほどおっしゃったような利上げに向けたような環境がある程度整った、もしくは進展したと判断できるのか、その辺りもう少し詳しく見方をお伺いしたいです。』

これに対してなんと想定問答には書いてあるのかというのを拝読しますとですな、

『(答)おそらく利上げすることの要素を判断するときの、要素っていうかたちでのご質問かというふうに思います。』

さよですな。

『実際には物価上昇率の基調というものをみていくんだっていうのが、日頃から私どもがお答えしている内容ではあるんですけれども、本日、展望レポートでお示ししている指標のうち、主なものをまた今回、可能な限り足元までデータをアップデートして、今日お示ししたつもりでおります。』

ん??

『こういった中では、一時的な物価変動の影響を受けにくい物価指標というのもいくつかあって、そのうちの一つ、例えばサービス価格もそうなんですが、加えまして人々の物価観というものを示す中長期的な予想物価上昇率、これも重要になりますし、更にはその物価変動の背後にあります、いわゆるマクロ的な需給ギャップ、それから労働需給の環境、それから賃金の上昇率、こういったものは全て物価の方への影響、ないしは物価からまた賃金への影響、そして結果的には経済への影響というものを及ぼしますので、この辺りを総合的にみながら都度判断してまいりたいということでございます。』

ちょwwwwwおまwwwwwwww

短観のどの辺を注目するのか、という質問に対して何ちゅう回答してますのやらwwwwww


次の人はこんな質問を、まあそりゃ聞くわな。

『(問)先ほど、今後の金融政策をみるうえで短観が重要になるというふうにおっしゃっていたんですけれども、逆にいうと、9 月の会合もあると思うんですけれど、短観が出ないうちには利上げがやっぱりまだ待たなきゃいけないというふうにとらえていいのかという点が一つ。(後半割愛)』

『(答)一点目は年内の利上げに関して、年内と限ったときに、これに関してということですが、こちら繰り返しになりますが、決定会合が何回か予定、計画されていますので、その都度、その時点までのデータ、ヒアリングデータも含めたソフトデータ、ハードデータを得て、適切に判断していきたいということに尽きます。』

何ですかこの回答はwwwwまあこの次に、

『短観がないとできませんかという、もし率直なご質問ということであれば、それは直近まで出ている最新の短観のデータをベースにして、そこに各支店の、今日の下関支店もそうですけども、支店から集めてくれるソフトデータをそこに加味することによって、補ったかたちで判断していくということもあり得ると思います。(後半割愛)』

となって、短観が出た直後じゃないと政策動かしませんとは言ってません、という回答になっているのですが、なんだか妙な質疑応答ではありますな。想定棒読みしてたんで聞く方もやる気なくして24分で終了した、という嫌な予感がするのですがさてどうだったのやらw


・政策がビハインドするリスクに関する質疑応答は案の定の想定問答モード

ちなみに質疑応答はほとんどが短観と政策ビハインドで終わっていました。

『(問)(前半割愛)二点目が、これもご挨拶の中で、何度か中長期的な予想物価上昇率について、徐々に上昇しているというお話がありました。1 月に利上げをされてから、4 会合連続で政策金利を据え置いておられると思いますが、アメリカの関税政策の不確実性が続いている中で、利上げが遅れて、今後ビハインド・ザ・カーブに陥るリスクがどれぐらいあるとお考えでしょうか。』

これに対する回答ですが、

『(答)(前半割愛)それから、中長期の物価予想をみて頂いたと思いますけれども、ビハインド・ザ・カーブのリスクについてというご質問だったと思います。こちら今、全体のメカニズムとしては、何度か繰り返しになると思いますけれども、賃金と物価がお互いにみながら、双方がゆっくりと上昇していくというメカニズムが働いていく中にはあると思いますけれども、これが例えばヘッドラインのCPI、つまり物価上昇、それが賃金に影響して、そこからサービス価格にまた影響していくという流れが、こういったものの循環が、非常に動きが大きくなって、結果私どもがみているいわゆる物価、いろんな物価指標が、これらを押し上げる力が加速度的に高く強まってしまうということを、ビハインド・ザ・カーブのリスクというふうにとらえるのであれば、そのリスクは今の時点でそれほど高くはないというふうには思っています。』

なんか勝手にビハインドのリスクを限定してませんかという話で、ここぞとばかりに賃金を持ち出しているのですけれども、それよりもインフレ期待が上振れしてしまう方がリスクじゃろうが、ってなもんでして、このビハインドに関する話は大本営も藁人形論法出さざるを得ない程度には「大丈夫と言い切るのに無理を感じている」状態なのかなと思いました。

『ただ、今申し上げた通り、循環としては賃金と物価がお互いに参照しながら上昇していくというメカニズムが働いているというふうには思っていますので、この辺り、今後この急激に基調的な物価、あらゆる物価の指標に、大きく変えてしまうような変動が起こるかどうか、その可能性にしても十分に注意を払っていかなければいけないとは思っています。』

というわかったようなわからんような回答でした。

先の方でも質問ありまして、

『(問)(前半割愛)もう一つは、日銀としては基調物価がまだ 2%に達していないというふうにみていらっしゃると思うんですけれど、利上げが遅れることによるリスクをどうみていらっしゃるか、この二点お伺いしたいです。』

『(答)(前半割愛)二点目は 2%に向けてということでしたっけ。二人目のご質問に非常に近いと思いますけども、現時点において、賃金が物価を参照しながら少しずつ上がってきているという、このメカニズムというものが、かつてに比べれば働いている状況にはあると思います。その点でいきますと、いい循環といいますか、物価と賃金が相互に連関しながら、賃金は毎年物価に合わせて改定していくものなのだという、そういうものが慣習付いたらいいなというふうに思っていたところが、それがある程度実現しつつあるのかなということにおいては非常に良い傾向だというふうに判断するべきだと思うのですが、』

既に悪い傾向になっているからこそのあの参院選結果なんじゃないですかねえ(個人の感想です)。

『一方で、ビハインド・ザ・カーブをどう定義するかにもよりますけれども、』

藁人形論法キタコレ!

『今私どもがみている指標からしますと、賃金と物価が双方に参照しながら、更にヘッドラインのCPIが賃金に影響するといった先で、サービス価格の方を含めた、こういったものに広がることによって、結果的に物価が急速に上がる力が大きくなる、しかも加速度的に大きくなるというリスクに関しては、私ども引き続き注意深くみていかなければならないというのは認識しておりますけども、今の時点のリスクとしては、それほど大きくないのではないかというふうには思っています。ただ、かつてに比べますとこの循環というもの、メカニズムというものが動くようにはなっていますので、引き続きいろんな指標を慎重にみてまいりたいと思います。』

結局さっきのと全く同じ回答なのでしたwwww

ってな所で今朝はこの辺で。