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2025/08/28

お題「3MWIが0.48%だと・・・・/インフレと金融政策へのインプリに関するパウちゃんジャク穴講演」

はて??
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-27/T1NU3QGP493R00
トランプ氏、慈善家ソロス氏を攻撃−「暴力的デモ支援」で訴追要求
Erik Larson
2025年8月28日 3:57 JST

ところでこんなことがあった気がするんだが・・・・・
https://ja.wikipedia.org/wiki/2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件

〇まあWIの値付けだから微妙なんですけど・・・・・(明日入札の3M)

売買参考統計値ちゃん
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(8/27引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.390
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.390
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.390
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.390
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.440
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.460
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.460←3Mカレント
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.480←明日入札実施予定の3M新発WI
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.480

(8/26引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.390
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.390
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.390
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.390
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.440
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.460
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.455
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.460
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.480

相変わらず半期末跨ぎの所でプレミアムがついていて、でもって10月末の所で段差が付いている、という如何にも10月利上げ警戒モードみたいな値付け(まあこの辺りのゾーンの銘柄の場合は流動性が微妙なので実力が読みにくいけど)になってて、というのは同じなのですが、昨日の引けでは11月末と12月頭のところ(カレントとWI)でも段差が付くという面白事態に発展しておられますな。

11月足の引値が単純に2週間ごとに2bpの階段が付いているような値付け(1週間ごとに1bpにならないで2週間ごとに2bpになるのが短国引値の面白っぷりを遺憾なく発揮していますが)になっているようなので、その一環で0.46%の引値が2個並んだ次の銘柄は0.48%って話なのかもしれませんが、こういう値付けを見せられますと金曜日の短国入札が結構楽しみになってまいりました。

昨日ネタにしましたように、火曜日の交付税特会6Mを見ると利上げ警戒タイミング前倒し運動は一服したかのように見える、とは言っても今日も交付税特会借入6Mがあるので今日何ぼになるのか次第でもありますけど、まあそんな感じで利上げの可能性に関しては10月利上げ半信半疑っぽい感じの織り込み(数字上は3分の2くらい織り込んでいますけど特会はレートの上方バイアスがあるので鉛筆を適当に舐めている)しているような感じではあるのですが、明日の3MTDB入札で上記のWIの通りに0.48%だのとかになると、足元のGCやら現先レートとほぼ遜色が無くなってくるのでおーこれはこれは、って結果になりますので本当にこの引けマジモンかいなと思っている次第ではありまする。

いやまあ勿論なのですが、本来は3Mの方が流動性リスクというか投資資金FIXする分だけのリスクプレミアムが乗っていて然るべきなのですが、お家の事情な買いが入りやすいTDBの利回りがコールやGCや現先レート並みになってくるのはうひょーというお話で、それって夢の「3M短国市場の価格形成に先行き金融政策ファクターが遂に入るでござるの巻」となるので、ちょっと正座待機して明日12時半の落札結果を見たいと思います。

などと意気込んでいたら実は今日引けが修正されて0.46になってしまうま、というオチはあるかもしれませんので(1級フラグ建築士なので立てたフラグを事前に回収しておく)その辺は何ともではあるのですが、3Mの短国が0.50%に接近しだしてくると、短い方の金利(CPとか)の形成にも徐々に影響与えるかもしれませんのでそれはそれで興味深い所ではあります。

というマニアな雑感でした。


〇ジャクソンホールパウちゃん講演

昨日時間切れですいませんすいませんすいません

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20250822a.htm
August 22, 2025
Monetary Policy and the Fed’s Framework Review
Chair Jerome H. Powell
At “Labor Markets in Transition: Demographics, Productivity, and Macroeconomic Policy,” an economic symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, Wyoming

物価認識に関しての部分が時間切れになってしまったので続きですさーせん。

・現状認識は「財価格の上昇は抑制的でサービス価格が威勢よく上昇」

『Turning to inflation, higher tariffs have begun to push up prices in some categories of goods. 』

物価のコーナーでは一発目に高率関税が財価格に影響でるじゃろ、としてから物価の現状を説明しているのですが、

『Estimates based on the latest available data indicate that total PCE prices rose 2.6 percent over the 12 months ending in July. Excluding the volatile food and energy categories, core PCE prices rose 2.9 percent, above their level a year ago. Within core, prices of goods increased 1.1 percent over the past 12 months, a notable shift from the modest decline seen over the course of 2024. In contrast, housing services inflation remains on a downward trend, and nonhousing services inflation is still running at a level a bit above what has been historically consistent with 2 percent inflation (figure 4).4』

PCEはヘッドラインもコアも強いんですけど、財価格の上昇は足元では抑制的で、サービス価格が威勢よくあがっていまっせというお話をしておりますわな。


・関税の影響はclearly visibleだそうだがその規模と期間はwith high uncertaintyだそうで

『The effects of tariffs on consumer prices are now clearly visible.』

で、次のパラグラフの冒頭が「関税の消費者物価への影響は今やclearly visibleと仰せで、じゃあお前不確実性は無いんとチャウかと思ってしまいますが続きを読む。

『We expect those effects to accumulate over coming months, with high uncertainty about timing and amounts.』

clearly visibleなんだけどもこれらの影響は今後数か月の期間拡大していきまして、そのタイミングと規模については極めて不確実、ってエイゴムツカシネーと思いましたけど「影響が出ているのは明らか」って意味でいってるのかって感じですけど、be動詞の現在形でnow clearly visibleと言っておいて直後にはwith high uncertaintyってのはレトリックとしてナンノコッチャな気はするけど。

でもってこのパラの続きは早速現世利益コーナーになって金融政策へのインプリケーションとなるのですが、


・金融政策のインプリケーションを述べる早い段階で「インフレ再加速のリスクを計測してマネージしないといけない」

『The question that matters for monetary policy is whether these price increases are likely to materially raise the risk of an ongoing inflation problem.』

ほうほうそうですかそうですかってな話ですが、じゃあ「materially raise the risk of an ongoing inflation problem.」たあどういうことですかということで、

『A reasonable base case is that the effects will be relatively short lived-a one-time shift in the price level. Of course, "one-time" does not mean "all at once." It will continue to take time for tariff increases to work their way through supply chains and distribution networks. Moreover, tariff rates continue to evolve, potentially prolonging the adjustment process.』

リーズナブルなベースラインシナリオでは「タリフの影響はワンタイムで短期的」だそうな。次のパラに進みますが。

『It is also possible, however, that the upward pressure on prices from tariffs could spur a more lasting inflation dynamic, and that is a risk to be assessed and managed.』

ハウエバー、ときたらそこはちゃんと読むのが多分入試の英文読解でもやってる話ですがwハウエバーと来たあとにあるのが物価高がインフレ再加速を招くリスクがありまっせ、ということで「that is a risk to be assessed and managed.」ってゆうてまして、昨日ネタにしましたように、今回のパウちゃん講演出た所で一発目には労働市場の部分での話を受けてヒャッハーという事になっていた訳ですが、しれっと「that is a risk to be assessed and managed.」ということでインフレ再加速リスクへのマネージメントが必要って言ってるわけでして、しかもご案内のように講演後半の金融政策ストラテジーのところでは「メイクアップストラテジー」を明確に誤りと否定しているのとセットで考えれば、パウちゃん引き続きインフレ再加速警戒に軸足を置いているという表明は(労働市場の話の部分で)サービスフレーズを入れながらも行っている、というのがチャーミングな訳ですなこれがまた。

『One possibility is that workers, who see their real incomes decline because of higher prices, demand and get higher wages from employers, setting off adverse wage-price dynamics. Given that the labor market is not particularly tight and faces increasing downside risks, that outcome does not seem likely.』

ただここで賃金物価のスパイラルが起きる可能性については労働市場のタイトさがそこまで無いから大丈夫でしょ、という認識をしめしていまして、主にインフレ期待の上振れ、という鉛筆舐めやすい部分での懸念ってことになるので、そういう点で考えるとアクチュアルの物価が明確に反転する、ってことになると物価大重視になるとは思うのですが、そうじゃない場合はどっちでも言い訳はできそうです。

てなわけで次のパラグラフは「インフレ期待の上振れリスク」についてでして、

『Another possibility is that inflation expectations could move up, dragging actual inflation with them.』

キタコレですが、

『Inflation has been above our target for more than four years and remains a prominent concern for households and businesses. Measures of longer-term inflation expectations, however, as reflected in market- and survey-based measures, appear to remain well anchored and consistent with our longer-run inflation objective of 2 percent.』

アクチュアルのインフレの高さは家計や企業へのprominent concernではありますが、ゆうて長期のインフレ期待はアンカーされています(されてないって認定にするとややこしいことになるのでまあしないですけど)とな。

『Of course, we cannot take the stability of inflation expectations for granted. Come what may, we will not allow a one-time increase in the price level to become an ongoing inflation problem.』

ということで、ワンタイムであってもインフレ期待が上振れるようなことになったらあかんぜよ、という説明になっていますね。


・無事に物価が見通し通り落ち着いてくれれば政策は徐々に中立だよというお話

実質このコーナーの最後のパラになります(最終パラは毎度のオマジナイ文言)。

『Putting the pieces together, what are the implications for monetary policy?』

お。

『In the near term, risks to inflation are tilted to the upside, and risks to employment to the downside-a challenging situation. When our goals are in tension like this, our framework calls for us to balance both sides of our dual mandate. Our policy rate is now 100 basis points closer to neutral than it was a year ago, and the stability of the unemployment rate and other labor market measures allows us to proceed carefully as we consider changes to our policy stance. 』

『Nonetheless, with policy in restrictive territory, the baseline outlook and the shifting balance of risks may warrant adjusting our policy stance.』

これはサービスフレーズでもあるし、まあ当たり前ちゃあ当たり前(ロンガーランの目標に近づけば政策も中立になるんだから)の話でもあります。

でもって最後はオマジナイ文言。

『Monetary policy is not on a preset course. FOMC members will make these decisions, based solely on their assessment of the data and its implications for the economic outlook and the balance of risks. We will never deviate from that approach.』

いつもの「政策はプリセットコースではなく状況に応じてあんじょうようやっときまっせ」という話ですね。


ってな訳で、まあ前半だけ読むと利下げヒャッハーと大喜びしてしまうのは分からんでもないけど、後半の「2020年にぶっこんだ緩和的な方に軸足を置いたストラテジーを猛省したでござるの巻」と合わせて読まないといかんじゃろ、という物件ではあると思いました。

てな訳で今朝はこの辺で勘弁してつかあさい。






2025/08/27

お題「基調的物価/交付税特会6Mの金利上昇一服/ジャクソンホールパウちゃん講演続き」

もりあがってまいりました(?)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/J7TDDXQ5HBKTHFIBXNGAPLWYQ4-2025-08-26/
クックFRB理事、トランプ氏による解任巡り提訴へ 著名弁護士起用
By ロイター編集
2025年8月27日午前 3:33 GMT+9

いいぞもっとやれ(無責任)


〇基調的物価が少し落ち着いたじゃないですか(と言っても最頻値が完全にシフトした感が)

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

足元で見れば今回下がりましたねというのがニュースヘッドラインになるんですけど、ちょっとだんだらを長くとってみますと、

Jul-23  3.3  1.6  3.0
Aug-23  3.3  1.8  3.0
Sep-23  3.4  2.0  2.8
Oct-23  3.0  2.2  2.6
Nov-23  2.7  1.7  2.4
Dec-23  2.6  1.6  2.4
Jan-24  2.6  1.9  2.3
Feb-24  2.3  1.4  2.0
Mar-24  2.2  1.3  1.9
Apr-24  1.8  1.1  1.6
May-24  2.1  1.3  1.5
Jun-24  2.1  1.4  1.6
Jul-24  1.8  1.1  1.5
Aug-24  1.8  0.7  1.3
Sep-24  1.7  0.8  1.4
Oct-24  1.5  0.8  1.3
Nov-24  1.7  0.9  1.1
Dec-24  1.9  1.0  1.1
Jan-25  2.2  1.4  1.3
Feb-25  2.2  1.4  1.2
Mar-25  2.2  1.4  1.4
Apr-25  2.4  1.7  1.8
May-25  2.5  1.7  1.6
Jun-25  2.3  1.4  1.4
Jul-25  2.0  1.1  1.5

左から順に、刈込平均値、加重中央値、最頻値、ですな。

とまあ2年間の数字並べてみて思うんですけど、これって普通に「物価安定目標2%を達成しています」っていうのが表れている(刈込平均で見た場合に何だかんだ言って2%プラマイ0.5%のレンジでずっと推移しているじゃん・・・・)って話でして、そもそも物価安定目標2%ってのは物価指数でみれば総合CPIが2%近辺で多少の上下を伴いながら推移するっていう状態なんですから、刈込でこれなのに物価目標未達とか言ってるのは意味不明ですわな。といってもどうせ「お気持ち物価」のお気持ちを持ち出してくるのですけどね日銀はwww

しかしまあなんですな、一番右の「最頻値」がこれまた1.5%とかになってきまして、この推移をこうやってだらーっと並べられると何がどう物価目標を達成していないのか、というのが意味不明になるのですが、今月頭ですからちょっと前の話になりますが、元日銀理事のヤマケンさんが基調的物価についてこんな
ご指摘をされておられます。

https://www.kyinitiative.jp/column_opinion/2025/08/01/post2928/
混乱招く日銀の「基調的な物価上昇率」
〜「中長期インフレ予想」はどこまで政策判断の材料となるか
2025.08.01

ちなみにヤマケンさんは武士の情けでそこまで触れていないと思うのですが、日銀謹製のこの「合成予想物価上昇率(10年後)」って奴ですけれども、家計の予想物価上昇率の推計に二重のテクニックが仕込んでありまして、(1)生活意識アンケートで集計された家計の予想物価上昇率の定量的な「数値」を使わないで、「かなり上がる」「上がる」というような定性的な選択肢を使っている、(2)定性的な結果を定量化するために定性的な回答を実際の物価推移にバックワードで最適化しているため、かつての長い期間における物価低迷期間に最適化された「家計の予想物価上昇率」が叩き出されているというバイアスがあるし、経済物価の構造に非線形的な変化が生じた場合に変化前の基準で算定された数値しか出してこないので数値が下方または上方(今回のケースでは下方)に過大に出てしまう、というのがあるんで、まあ「統計を使うテクニック(悪い意味)」の最たるもんなんですよね。弊駄文では何回か申し上げておりますが。


〇交付税特会6Mの金利上昇は止まる(というか実質的にはちょい低下)

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result250826.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果(令和7年8月26日入札)

『本日、一時借入金の入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.借入根拠法律及びその条項 
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第15条第1項

2.借入日    令和7年9月3日
3.償還期限  令和8年3月5日
4.償還方法  令和8年3月5日に一括償還
5.借入利率競争入札について  
(1)応募額        4兆2,145億円
(2)募入決定額      1兆500億円
(3)募入最高利率      0.650%
(4)募入最高利率における案分比率     63.7820%
(5)募入平均利率      0.635%』

前回8/21実施の特会6Mが平均0.635%で足切り0.655%だったので、今回アベレージ金利横ばい、ではあるのですが、頭とケツが1週間弱後ろに倒れていますので、途中の利上げ織り込み度合い、という意味では実質的にはこれ金利低下みたいなもんでして、つまりはまあ一旦ここら辺が止まり所という感じなんでしょうか、よくわからんけど。

例によって手前の金利を0.50%にして分けてみますと、10月利上げで仮定した時の後半(4か月)の換算レートが0.698%って計算になっておりまして(一応補足すると複利とかそういうメンドクサイ概念は使っていないので念のため)前回8/21実施の時の0.635%の場合は後半0.706%だったので、織り込み度合い的には1bp程度下がってますわというお話。なお10月利上げでその数字ですからモチのロンですが12月利上げとかは激烈フル織り込みになっているのはいうまでもありません。

まあアレです、めんどいので一々引用しませんが売買参考統計値から見る短国の引値ちゃんをみましても、今週は月曜の引けで金曜入札のあったカレント3Mの引けが5糸強くなった(でもまだ0.4台後半)というのがあったくらいで(昨日は1年カレントが5糸甘でしたっけ)、先週は何か謎ムーブでちょいちょいと動いておりましたが、今週は一旦居所を見つけました的な感じになっているようにお見受けされますので、この辺の周りでの利上げ織り込み度合いの修正(前倒し)ムーブが一服という感じでしょうか、知らんけど。

まあ交付税特会借入のレートは毎度クソ高く出ることを勘案すると、現時点で10月利上げは無くは無いのでその分のリスクプレミアムはのっけておかないといざ利上げ食らったら何やってるんだってことになるわな、というような感じでしょうかね。メインで10月利上げって皆がガチで思ってたらもっとゴリゴリに織り込んだレートになるんですがそこまでではない。ただし12月1月のところまでには利上げするじゃろうってのはコンセンサスになっている感じとお見受けしましたです、はい。


〇パウちゃん講演の前半である(と思ったら途中で時間が無くなったのでインフレの話の手前で労働市場のところがメインです)

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20250822a.htm
August 22, 2025
Monetary Policy and the Fed’s Framework Review
Chair Jerome H. Powell
At “Labor Markets in Transition: Demographics, Productivity, and Macroeconomic Policy,” an economic symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, Wyoming

まあ既にご案内だと思いますしそっちのレポートなら何ぼでもでてるじゃろと思いますので主に俺様備忘録になってしまいますが一気にさらさらと参ります。

『Current Economic Conditions and Near-Term Outlook』って小見出しですね。

・最初の方はここ1年の経済情勢レビュー

『When I appeared at this podium one year ago, the economy was at an inflection point.』

昨年の今頃に米国経済は変曲点にいました、というのから始まりますね。

『Our policy rate had stood at 5-1/4 to 5-1/2 percent for more than a year. That restrictive policy stance was appropriate to help bring down inflation and to foster a sustainable balance between aggregate demand and supply. 』

引き締め的な金融政策で物価抑制をした結果、

『Inflation had moved much closer to our objective, and the labor market had cooled from its formerly overheated state. Upside risks to inflation had diminished. But the unemployment rate had increased by almost a full percentage point, a development that historically has not occurred outside of recessions.1 』

物価は落ち着いてきてこの間失業率は上がったがリセッションというような失業の上昇ではなかった。

『Over the subsequent three Federal Open Market Committee (FOMC) meetings, we recalibrated our policy stance, setting the stage for the labor market to remain in balance near maximum employment over the past year (figure 1).』

でもって利下げを3回実施しました。となりまして次のパラが今年の話ですが当然ながら、

『This year, the economy has faced new challenges.』

今年は新しいチャレンジが起きています、とまあ順当な指摘が入り、

『Significantly higher tariffs across our trading partners are remaking the global trading system. Tighter immigration policy has led to an abrupt slowdown in labor force growth. Over the longer run, changes in tax, spending, and regulatory policies may also have important implications for economic growth and productivity. There is significant uncertainty about where all of these polices will eventually settle and what their lasting effects on the economy will be.』

トラ公が色々とやってくれたせいで「There is significant uncertainty 」であると。

『Changes in trade and immigration policies are affecting both demand and supply. In this environment, distinguishing cyclical developments from trend, or structural, developments is difficult. This distinction is critical because monetary policy can work to stabilize cyclical fluctuations but can do little to alter structural changes.』

でもってここしれっとパウちゃん入れ込んでいるのですが、トラ公の政策が必ずしも一時的ではない可能性ってのをいれているんんですよね。(In this environment, distinguishing cyclical developments from trend, or structural, developments is difficult.)

すなわち、関税の物価への影響はワンタイムだからそんなの気にしなくてよい、と言ってるトラ公の下僕共に対してしれっとぶち込んでいる訳でして、この辺りもまた「9月利下げするにしてもホーキッシュ利下げの可能性」を示唆しているじゃろって話で、この先は利下げヒャッハー話が出てくるのですが、こうやってチョイチョイと連続利下げ牽制(後半のストラテジーレビューがまさにそうですが)を埋め込みながらも利下げヒャッハーサービスもする、というパウちゃんも苦労してますなあ、って感じかなと思いましたがどうですかね。


・労働市場の説明をせっせとやっておりましてまあこの辺が利下げヒャッハーという話ですね

『The labor market is a case in point.』

次のパラグラフがこの一文から始まりまして、まあここで先般の雇用統計もあったしヒャッハーってなったんでしょうねと。

『The July employment report released earlier this month showed that payroll job growth slowed to an average pace of only 35,000 per month over the past three months, down from 168,000 per month during 2024 (figure 2).2 This slowdown is much larger than assessed just a month ago, as the earlier figures for May and June were revised down substantially.3』

7月雇用統計がアイヤーだった説明ですがこれに続き

『But it does not appear that the slowdown in job growth has opened up a large margin of slack in the labor market-an outcome we want to avoid. The unemployment rate, while edging up in July, stands at a historically low level of 4.2 percent and has been broadly stable over the past year. Other indicators of labor market conditions are also little changed or have softened only modestly, including quits, layoffs, the ratio of vacancies to unemployment, and nominal wage growth. Labor supply has softened in line with demand, sharply lowering the "breakeven" rate of job creation needed to hold the unemployment rate constant. Indeed, labor force growth has slowed considerably this year with the sharp falloff in immigration, and the labor force participation rate has edged down in recent months.』

あーでもないこーでもないと説明していますが、要はリセッションとかそういう状況ではないよって現状認識ですね。

『Overall, while the labor market appears to be in balance, it is a curious kind of balance that results from a marked slowing in both the supply of and demand for workers. This unusual situation suggests that downside risks to employment are rising. And if those risks materialize, they can do so quickly in the form of sharply higher layoffs and rising unemployment.』

とは言え、現状はもしダウンサイドリスクが顕在化した場合、労働市場の急速な悪化が起きる可能性がある、っていう説明をしていますから、まあこの辺も利下げヒャッハーとなりますわな。


・成長率に関しては個人消費の下げで大きく下がったと

『At the same time, GDP growth has slowed notably in the first half of this year to a pace of 1.2 percent, roughly half the 2.5 percent pace in 2024 (figure 3). The decline in growth has largely reflected a slowdown in consumer spending. As with the labor market, some of the slowing in GDP likely reflects slower growth of supply or potential output.』

というのがありまして、以下インフレの話になるのですが、甚だ遺憾なことに時間が中途半端に足りなくなってきましたので、続きは明日にします誠に申し訳ございません。

ただまあ先ほども申し上げましたように、こちら利下げヒャッハーと読める部分もあるのですが、ゆうて全般的に見ますと今から中立金利に向けてどんどん利下げ、というのとは程遠い説明がちょいちょいと埋め込まれている、ということでよろしいんじゃないかと思います、個人の感想ですけど。








2025/08/26

お題「ジャクソンホールのパウちゃん講演ですが昨日は逐条英文読みだったので再度整理しつつ続きを」

また碌なことをしない未来が・・・・
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM25ASB0V20C25A8000000/
トランプ氏が金正恩氏との会談に意欲 「年内にも」、米韓首脳会談
北米
2025年8月26日 4:31

この耄碌自己誇大クソジジイが天の怒りに触れて雷(以下自主規制)

〇植田総裁の講演はほぼ読む価値が無いので引き続きパウちゃん講演で昨日(日曜)の続きをば

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20250822a.htm
August 22, 2025
Monetary Policy and the Fed’s Framework Review
Chair Jerome H. Powell
At “Labor Markets in Transition: Demographics, Productivity, and Macroeconomic Policy,” an economic symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, Wyoming

でまあワイ将これ最初は小見出しに(主に前半)って入れてたのですが、全然そっちに行かないまま時間が無くなりそうなので書いてる途中で戻って修正しています。昨日(日曜)は講演の後半部分を逐条読みして、一応注目点(と私が思った部分)は大書したつもりですが、週明けて改めてこの講演読み直したり関連のブツと見たりして再整理というただの2番煎じ3番煎じですいませんすいません。


・案の定前半だけで「ハト派講演」ってレポートばっかりで泣いた

てな訳で昨日はパウちゃん講演関連のコメントとかを見て回ったわけですが、まあ見事なまでに前半の話ばっかりでして、この講演って前半と後半をセットでみないと前半を誤読する物件でありますし、何ならどう見たって後半の方が重要な話をしているとしかアタクシには見えない訳で、個人の偏見で恐縮なのですが、あの講演の前半だけ見てハト派サプライズとかいうのって、まあ脊髄反射で1カイ2ヤリやっているとそうなってしまうのはシャーナシな面はある(私もやってた時期があるので気持ちは分かる)のですけれども、何とかスト名乗ってレポートだしてて前半の所だけでああだこうだ言ってるのは恥ずかしいので看板下ろして義務教育からやり直してきた方が宜しいんじゃないかと存じます次第。

・・・また友達を失くすような事を言ってるわけですが(もともと居ないだろというツッコミは却下)、前半では確かに以前よりも「利下げ」に対しての可能性を高める説明しているので、9月の利下げ自体は(ここから飛んでもなく強い雇用指標か物価指標が出てくれば別ですが)やるかも知れんけど、後半の説明を見ますとまあ利下げしても「ホーキッシュ利下げ」という一瞬何のことだという案件になるんじゃないですかね、というのがアタクシの読み筋。

もちのロンですが今後の経済指標次第でどっちに転ぶかは分からんので決め打ち禁物モードではあるのですが、9月に利下げしたとしても、それが「中立金利に向けた金融引き締め解除サイクルの開始」には(現時点での説明では)なり得ない、という事だと思います。


・ストラテジーレビューで示している「物価重視」を一番強く見せている部分を再確認(再掲ですいません)

と申しますのは、再掲になりますけど、後半の最後の方の2パラグラフがこうなっていたじゃないですか。

『In addition to these changes, there is a great deal of continuity with past statements. The document continues to explain how we interpret the mandate Congress has given us and describes the policy framework that we believe will best promote maximum employment and price stability.』

ここはオマジナイ文言。

『We continue to believe that monetary policy must be forward looking and consider the lags in its effects on the economy. For this reason, our policy actions depend on the economic outlook and the balance of risks to that outlook.』

フォワードルッキングかつ先行き見通しのリスクバランスを考慮して政策を行う(この「リスクバランス」の部分については今回メイクアップストラテジーを撤回して謝罪したことから分かるように従来のような緩和バイアスはもはや無い)と言ってまして、

『We continue to believe that setting a numerical goal for employment is unwise, because the maximum level of employment is not directly measurable and changes over time for reasons unrelated to monetary policy.』

最大雇用に関しては明確な数値的な定義はできません(構造的なファクターもあるので)ので、と来てから返す刀で次のパラグラフに行きまして、

『We also continue to view a longer-run inflation rate of 2 percent as most consistent with our dual-mandate goals. We believe that our commitment to this target is a key factor helping keep longer-term inflation expectations well anchored.』

ロンガータームのインフレ期待が2%でアンカーされていることがデュアル(物価だけではないことが重要だよ)マンデート達成のキーファクターって思いっきり言ってるわけですよこのパラの冒頭で。

『Experience has shown that 2 percent inflation is low enough to ensure that inflation is not a concern in household and business decisionmaking while also providing a central bank with some policy flexibility to provide accommodation during economic downturns.』

でもって「2%インフレは家計や企業が意思決定をする際にインフレ水準を懸念するに至らない水準として十分に低い」として、加えて金融政策の柔軟性を持つことができる(要するに糊代確保)水準ですよ、って喝破しています。

これが何を意味するかといえば、どっからどう見ても「デュアルマンデート達成には物価重視があってこそ」って説明な訳でして、前半部分ではたしかにリップサービスっぽい面もありますし、何ならホワイトハウスのアホウ(と金融界のアホウにも、かも知れませんけど)に対する目くらましをしているのですが、後半が物凄くちゃんとした中銀界隈の話をしていて、しかも「物価2%達成」を強く重要視している訳ですから、物価がこのまま2%に向けて落ち着いて来ればそりゃまあ中立に向けて徐々に引き締めスタンスを変更するとは思いますが、うっかり物価がサガランチ会長だの再加速の兆しなどでようもんならそら利下げどころの話ではありませんですことよ、ってのを堂々と言ってるわけですなこれ。


・意図的な物価上振れ容認ダメ!ゼッタイ!!というのが「メイクアップストラテジー」廃止ですからね(これまた再掲)

日曜の夜に夜なべした時は逐条読みだったのと途中からヘロヘロって来ていたのでこれまた再掲で恐縮ですが、今回はとにかく2020年の「アベレージインフレーションターゲット」とか「メイクアップストラテジー」とか「デビエーションじゃなくてショートフォールに注目」とか「政策金利の名目下限制約は全力で回避」というような感じの(物価がどうせ上がらんわいと高を括っていた結果作ってしまった)緩和バイアス傾向のあるストラテジーを全部撤回して、しかも2020年当時の間違えを反省した、というのが重要なのであって、中々ここまで反省の弁を述べる中銀総裁って居ないし、どこぞの極東の中央銀行はパウちゃんの御真影を政策委員会を行うお部屋に飾って三拝九拝してから政策議論を行うべきだと思いました。

ってな訳でその辺りの一番のポイントはここですね、この部分は日曜(実質昨日)も強調しましたけど。

『As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant. There was nothing intentional or moderate about the inflation that arrived a few months after we announced our 2020 changes to the consensus statement, as I acknowledged publicly in 2021.11』

でもってですね、ここで思い出されるのは2021年のジャクソンホールシンポジウムの式次第でありまして、
https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/macroeconomic-policy-in-an-uneven-economy/

「The Interaction of Fiscal and Monetary Policy」ってお題のパネリストに

Alan Blinder | Remarks
Professor
Princeton University

ってのがあってみたり、『Remarks』ってのに

Speaker:
Donald Kohn | Remarks
Senior Fellow
Brookings Institution

って大物が出ていた時に結構話題になった訳ですが、まあ2021年の夏を迎える時にはさすがにFRBもマズイという認識があった(しかも当時のカンサスシティ連銀総裁のジョージ姐さんはゴリゴリの物価重視タカ派でしたのでなおさらだったかもしれませんね)んだろうなあ、ってまあ思いました。

ということでですね、「意図的かつモデレートな物価上昇を容認する、という考え方は的外れな考えであることが明らかになった(As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant.) 」って言ってるわけでして、そんな考えをする中で物価が想定よりも下がらん状態であれば、中立に向けて利下げサイクルを再開する、という発想にはならないのは後半部分のこの箇所を読めば明白(様子を見ながら引き締め度合いの調整を行う、というどっかで聞いたことのあるような手段にはなり得ますわな、為念)になりますので、まあ前半だけ見て脊髄反射でヒャッハー言いたくなるのは1カイ2ヤリおじさんとしては共感するのではありますが、何とかストコメンタリーまでそればっかり、というのがナンジャソラと思いました。


〇うっかり飛ばしてしまいましたがパウちゃん講演の最後のまとめの部分も見事な蜂の一刺し

蜂の一刺しとか言って榎本三惠子さんの名前が出てくるのは完全な昭和脳です、と思ってちょっとググってみたら「昭和56年」という文字列が出てきて思わず気を失いかけましたwwwwwwwwwwwww

でまあパウちゃんの講演の最後ですが、まとめの所を昨日はネタにする体力が尽きていたのですがこれがまたいい味をだしていまして(この部分は指摘している人がいた気がします)・・・・・・・

という訳で『Conclusion』ですが、

『In closing, I want to thank President Schmid and all his staff who work so diligently to host this outstanding event annually. Counting a couple of virtual appearances during the pandemic, this is the eighth time I have had the honor to speak from this podium. Each year, this symposium offers the opportunity for Federal Reserve leaders to hear ideas from leading economic thinkers and focus on the challenges we face.』

とまあ謝辞を述べているのと、何気に「今回8回目です」って次回は少なくともFRB議長として出てくることは無いでしょうからお別れの挨拶っぽい言い方もしているのですが、最後の最後に、

『The Kansas City Fed was wise to lure Chair Volcker to this national park more than 40 years ago, and I am proud to be part of that tradition.』

ジャクソンホールシンポジウムにボルカー議長を呼んで云々、と思いっきりここでインフレファイターのボルカーさんの名前を出すのがもうねって感じです。ちなみにジャクソンホールシンポジウムの歴史、みたいなコーナーには

https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/jackson-hole-economic-policy-symposium-through-years/
Jackson Hole Economic Policy Symposium: Through the Years
View a timeline highlighting important moment's in the Jackson Hole Economic Symposium's history.

ってのがあって、そこの1982ってのがまさにそれです。


〇ちなみに「メイクアップストラテジー」は別に日銀が育てたわけではない件について

メイクアップストラテジーってその骨子は「インフレが目標よりも下振れしていた期間が長い場合はその分を埋め合わせして多少のインフレ上振れを容認する」という話で、それって結局は「アベレージインフレーションターゲット」であり、「プライスレベルターゲット」であったりしまして、その概念自体は大昔(それこそ20年前とかそういう世界)からアカデミアでは言われていたし、一時はブランシャールがそれを言い出してIMFが推しにしてたりした時期もあったような無かったような。

でまあその時期に私が大好きドン・コーンがこんな講演をしていましてですね。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
March 24, 2010
Homework Assignments for Monetary Policymakers
Vice Chairman Donald L. Kohn
At the Cornelson Distinguished Lecture at Davidson College, Davidson, North Carolina

こちらは当時ワシネタにしたので覚えていますが、この中の『Inflation Objectives』に物価目標をもっと引き上げろとかプライスレベルターゲットだとかいくつかの論点についてドンコーンがバッサバッサとぶった斬りをしている部分があるんですね。でまあプライスレベルターゲット(こちらの最後に近い部分です)についてこのように言ってますのでご参考までに。時間が無いのでベタ引用だけですいませんすいません。

『Another approach to this problem is for central banks to target a gradually rising price level rather than a constant inflation rate. Imagine a plot of the consumer price index (CPI) from today onward increasing 2 percent each year. Central banks would commit to adjusting policy to keep the CPI near that line.』

プライスレベルターゲットはこういうもんですが、と説明しまして、

『The advantage of this approach, in theory at least, is that when a negative shock drives prices below the target level, people will automatically expect the central bank to increase inflation for a while to get back to trend. In principle, that expectation would lower real interest rates without the central bank changing its inflation commitment, even if nominal interest rates were pinned at zero. It could also make it easier for people to make long-term economic decisions because they could anticipate that inflation misses would be reversed over time, reducing uncertainty about the future price level.』

と内容の説明と論者の言う利点を説明した後にぶった斬りコーナーがありまして(長いのでパラグラフ途中で分けます)、

『While I appreciate the elegance of this price-level-targeting idea, I have serious doubts that it would work in practice. Central to the idea is that the Federal Reserve would be committing to hit a price level that was growing at a constant rate from a fixed point in the past. The specific inflation rate that could be expected in the future would change over time, depending on the inflation that had been realized up to that point. You could know what inflation rate to expect only if you knew both the current consumer price index and the Fed's target for the index in the future. 』

『In addition, the inflation rate that you could expect would be different for different horizons. Moreover, central banks are able to control inflation only with a considerable lag and even then only imprecisely, so the process of hitting a target would likely involve frequent overshooting and correction and consequently frequently shifting inflation objectives.』 

でまあ確かに今回思いっきりインフレーションがオーバーシュートしてしまいまして、ドンコーンの指摘(は中銀実務家としては当時も今も当然の指摘なんですが)が正しかったというのがよくわかるわ、という今回の「メイクアップストラテジー完全撤回」だったと思います。

すいません前半部分をやる積りだったのに時間が無くて(滝汗)。








2025/08/25

お題「3M新発短国が0.45%超えの展開とか長期債もじりっと金利上昇続くとかの雑談です(ジャクソンホールネタはその先に)」

ふむふむ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250822/k10014900401000.html
7月の消費者物価指数 3.1%上昇 8か月連続で3%台に
2025年8月22日 14時16分

でもって
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250822/k10014900521000.html
続く物価高 住宅選びや家計見直しの動き広がる
2025年8月22日 19時07分

日銀が過剰な金融緩和政策を継続しているために物価に上昇圧力が掛かりやすいとか、為替市場に円安圧力が掛かりやすいとかそういう指摘がいつからおっぱじまるのかが待ち遠しいのですががががが。

〇ジャクソンホール式次第など(備忘ブックマーク用メモ)

https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/2025/
Jackson Hole Economic Policy Symposium: Labor Markets in Transition - Demographics, Productivity and Macroeconomic Policy
Thursday, August 21, 2025 - Saturday, August 23, 2025
The Federal Reserve Bank of Kansas City hosts central bankers, policymakers, academics and economists at its annual economic policy symposium.

Agenda

ということでお品書きとリンクがでていますが、今回は中銀理事クラスのお話タイムが最後のパネルディスカッションの所しか無かったなあという感じでして、まあゆうて前回もそんな感じでパネルがあったのとベイリーBOE総裁の講演があったのの2本だけだったのですが、(パウちゃんのは別として)そんなこんなで各国集まって政策論議する、という感じでは無かったですかなとは思いましたがどうでしょうか。

2021年のジャクソンホールがやたら豪華メンバー(ブラインダーがいたりドン・コーンがいたり)で、この時はまさに物価が上がりだす中でこのままでエエんかいなという感じの会合だった訳ですが、まあ今回とかはそこから見たらほんわかしてたんじゃないでしょうか。知らんけど。

でもってパウちゃんの講演に関してはこの下に8/24バージョンというのがありまして、そちらにああでもないこうでもないと記載(なお目先の金融政策パートの方はどうせ皆様見てたり誰かのレポートとか見るでしょうから一旦割愛しまして政策枠組みの見直しの方をネタにしております)しておりますので今日のだんだらの下の方をご覧ください。


〇新発3M短国が0.45%を超えて金利上昇という10月利上げを織り込みに行くようなムーブが継続しています

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250822.htm
国庫短期証券(第1327回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1327回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号     国庫短期証券(第1327回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日     令和7年8月25日
4.償還期限    令和7年11月25日

5.価格競争入札について
(1)応募額         9兆2,659億円
(2)募入決定額     3兆3,233億5,000万円
(3)募入最低価格    99円88銭4厘0毛
(募入最高利回り)     (0.4607%)
(4)募入最低価格における案分比率     72.3550%
(5)募入平均価格    99円88銭6厘5毛
(募入平均利回り)     (0.4508%)』

ありゃまという感じですが、平均が0.4508%と0.45%に堂々乗ってしまった上に足切りは0.4607%ということで明確に0.4%台後半に突っ込んでまいりました。

売買参考統計値を見ますと
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(8/22引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.390
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.390
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.390
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.390
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.440
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.460
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.460←3M新発
国庫短期証券1328 2025/12/01 平均値単利 0.460←今週金曜の新発WI


(8/21引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.390
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.390
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.390
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.390
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.440
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.440←先週のカレント3M銘柄
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.440←3M新発WI

とまあそういう引値になっておりまして、新発と前週の3Mカレント、というカレント2銘柄が入札結果の足切りの方にサヤ寄せされてレート上昇の図となっておりまして、一方で10月足は相変わらず0.39%と0.40割れになっておるわけですが、これは期末越えプレミアムが乗った形のままで変わらず、という結果でして、10月と11月に段差があるのですから、これはもうどう見ても10月利上げ織り込み値付けです本当にありがとうございましたというお話ではありますな。

ちなみに本当に皆が10月利上げを織り込んでいる結果この値付けになっているのか、というとこれまたその辺は謎でして、なんせ短国は新発出てしばらくすると買うべき人は買ってしまって既発ゾーンになると限界的な部分で動いている相場になるので、値付けがこうだからと言って別に皆が10月利上げ確信ニキではないとは思うのですが、そうは言いましてもこうやって表に出てくる引値がだいぶ露骨に10月末の所で階段できるようになったのは感慨深い。

・・・・というかですね、政策決定会合とか関係ない所で謎の段差があったり、同じ償還なのにレートが全然違ったり、とかいう今までのへなちょこ引値の方が何だったのという感じですが、まあ新発3Mが0.45%の節目(というほどの意味があるのかはさておきまして)を抜けて金利が上昇した、というのは久々に目立つ事案ですがな(なんせ1327回新発って水曜から0.435%→0.44%とWIの気配甘くなった挙句に0.45%を抜けましたので)ということなので、こりゃまあ記念カキコという感じです。

でもって今日以降の注目はこの0.4%台後半という結構な金利(まあ冷静に考えればこれでもまだコールやGCよりも金利低いのですが)になった所で買いが来るや来ざるやという話でして、新発が捌ききれないまま今週末の入札を迎えることになるかどうか、ってのを注意してみていければと思います。

あと、
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/2508.htm
入札カレンダー:令和7年8月

『(3)借入金』を見ればお分かりのように、今週は火曜木曜に交付税特会借入6Mの入札があって、ここもと利上げ織り込み度合いを上げてきている特会借入についても味わいのある結果が出るのかどうかというのがこれまた楽しみです。


〇長い方はこれまた利回り更新の巻ですが引き続きワッショイ感はイマイチさんですかしら

これまた備忘メモ
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/GZ56GOQUXBMVBEZQJYHC3MJAUY-2025-08-22/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反落、長期金利17年ぶり1.615% 30年債利回りは過去最高水準
By ロイター編集
2025年8月22日午後 3:39 GMT+9

『[東京 22日 ロイター] - <15:17> 国債先物は小反落、長期金利17年ぶり1.615% 30年債利回りは過去最高水準

国債先物中心限月9月限は、前営業日比1銭安の137円55銭と小反落した。国債先物は売りが先行した後に買い戻しの動きが入り、底堅く推移した。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.0bp上昇の1.615%と、2008年10月以来、約17年ぶりの高水準を更新。新発30年債利回りは同3.0bp上昇の3.210%と、過去最高水準を付けた。』(上記URL先より、以下同様)

ということで何かチンタラと上昇しているのですが、

『現物市場で超長期ゾーンの金利上昇が目立った。「オフ・ザ・ラン(既発債)の25年ゾーンの金利上昇の動きに引っ張られている状況。市場参加者による投げが加速している」(国内証券債券セールス担当)という。一方、「2年債や10年債など金利上昇局面では押し目買いが入っている。ただ、散発的な状態だ」(同)との声が聞かれた。』

まあアレですよ。株が上がって損出しを実施する余力が出てくると損出しムーブが起きるって奴ですな。

『新発債利回りはまちまち。2年債は前営業日比と変わらずの0.855%、5年債は同0.5bp上昇の1.155%。20年債は一時2.665%と1999年11月以来の高水準を更新した後、同2.0bp上昇の2.660%。40年債は同1.5bp上昇の3.440%。』

まあしかしゆうて10年1.6%ちょいって物価安定目標が2%でアクチュアルの物価が3%台なのに対してその水準はどうなのよ、ってな話でもあるのでして、日銀のアホみたいな規模の輪番がいかんよねーとは毎度思いますが、ゆうて金利の方は結局何をメインのネタにしているのかが良くわからん(利上げなのか財政なのかただの超長期の損出しムーブなのかが良くわからん)のですが上昇しまして、ジャクソンホールありましたがイブニングの先物は10銭高ですかそうですかってな感じで。

『    OFFER  BID   前日比 
2年   0.858  0.864   0.012 15:04
5年   1.149  1.155   0.005 14:24
10年   1.609  1.615   0.007 15:05
20年   2.654  2.661   0.02  15:11
30年   3.199  3.209   0.028 15:12
40年   3.426  3.436   0.012 15:11』

ということで超長期が弱いという結果ではあったのですが、短期の方は上記のように10月利上げを連想させるような値付けが強化されているのに、こっちはそういうムーブかよ(まあ一応2年の金利が上がっているので無視している訳でもなさそうだが)ということで微妙に????という感じの全般的に整合性がよくわからん値動きでした。

・・・・・てなわけで、昨晩夜なべをしてしまったので他のネタは時間の都合で割愛(というかジャク穴の植田講演ネタとか他の中銀総裁ネタとか日銀の出してきたスタッフペーパーとかになってしまって一々全部重いので成敗しているリソースが足りん)しますですが、以下の部分が8/24とかいう日付になっておりまして、ジャク穴でのパウちゃん講演、ただし目先の政策じゃない方のパート、というのをネタにしておりますのでそちらを読んでつかあさい。





2025/08/24

お題「ジャクソンホールのパウちゃん講演のロンガーランストラテジー部分:メイクアップストラテジーは不適切であったという自己批判が素晴らしい」

まあこっそりと日曜の夜にアップしている物件なので実質月曜の朝と変わらんのですが朝は朝で別途書くのでこっちの日付は24日にしておきます。

〇パウエル講演は目先の政策の話よりもストラテジーレビューの方が本当は重要なのよ

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20250822a.htm
August 22, 2025
Monetary Policy and the Fed’s Framework Review
Chair Jerome H. Powell
At “Labor Markets in Transition: Demographics, Productivity, and Macroeconomic Policy,” an economic symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, Wyoming

でまあ金融政策の話はどうせあちこちで記事になっていますけれども、ワイ的には結局のところ9月のFOMCまでに出てくるデータ次第なので、今回は若干リップサービス入っているけど、それでワッショイワッショイとかお前らどんだけ利下げ脳なん、と思ってしまいましたので、そっちよりも先にストラテジーレビューの方をネタにする、というヒネクレ者である。

てな訳でどうせおまいら後半読んでねえじゃろと思うのだが今回のパウちゃんの講演(というかまあ要はストラテジーレビューそのものが、なのですが)の読むべきポイントは後半のみであるといっても過言ではあってアタクシの偏見バイアスが掛かりまくって居ますが、まあそんなこんなで後半をちょろっとネタにして日曜の夜のうちに投下(その他諸々は明日以降)ということですぬー。


ということで講演の後半ですが、小見出しが『Evolution of Monetary Policy Framework』ってのと、『Elements of the Revised Consensus Statement』ってのがありますが、とにかく今回のフレームワークの変更において重要なのは「2020年の見直しはインフレリスクを軽視していた」というのを素直に認めている結果になっていて(2020年ってコロナでいったん下がっているのですが、パンデミックによるサプライチェーンの毀損から食品価格が前半の途中から急上昇開始したりしてて微妙でしたし、ここから半年もしないうちに米国物価は急上昇して2021年5月にはコアCPIで3%乗せてきたという流れでした)、でまあご案内の通り、「一時的だと思っていたインフレがスパイクするわ長期化するわ」だったのですな、うんうん。

ということで『Evolution of Monetary Policy Framework』からはじまります。最初の方はオマジナイ文言になりまして、

『Turning to my second topic, our monetary policy framework is built on the unchanging foundation of our mandate from Congress to foster maximum employment and stable prices for the American people. We remain fully committed to fulfilling our statutory mandate, and the revisions to our framework will support that mission across a broad range of economic conditions. Our revised Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy, which we refer to as our consensus statement, describes how we pursue our dual-mandate goals. It is designed to give the public a clear sense of how we think about monetary policy, and that understanding is important both for transparency and accountability, and for making monetary policy more effective.』

最初のパラグラフは「我々はデュアルマンデートの達成のためにロンガーランストラテジーアンドゴールってのを作ってますがなとか、物価安定と雇用最大化ダイジダイジネーとかいう枕詞の世界なのでサラサラと次へ。

『The changes we made in this review are a natural progression, grounded in our ever-evolving understanding of our economy. We continue to build upon the initial consensus statement adopted in 2012 under Chair Ben Bernanke's leadership. Today's revised statement is the outcome of the second public review of our framework, which we conduct at five-year intervals.- This year's review included three elements: Fed Listens events at Reserve Banks around the country, a flagship research conference, and policymaker discussions and deliberations, supported by staff analysis, at a series of FOMC meetings.5』

このストラテジーに関しては2012年に逆さ絵のオヤジの主導で始まりまして、その後途中から5年おきに見直していく、となりまして今般見直しの巻でんがな、とこの辺も一般的な話。


・幅広い色々な状況に対処できるようなストラテジーが必要とな

『In approaching this year's review, a key objective has been to make sure that our framework is suitable across a broad range of economic conditions.』

ってのが3番目のパラグラフの書き出しでして、今回のレビューにおいては「我々のおニューフレームワークは幅広く様々な経済状況においてぴったりするものでなくてはならんぞな」という話をしていますが、この点は前々からお話があったので、まあ新しく言ったわけではないが、実際にこのフレーズが何の意味を持つのか、というのは後の方で伏線が回収されます。まあお察しの回収ですけど。

『At the same time, the framework needs to evolve with changes in the structure of the economy and our understanding of those changes. The Great Depression presented different challenges from those of the Great Inflation and the Great Moderation, which in turn are different from the ones we face today.6』

リーマンショック以降の状況や、グレートモデレーションの状況、グレートインフレーションの時の状況など、局面の変化に応じることのできる枠組み構造を今回は考えました、ちゅうことで。


・前回のレビュー時においては政策金利がゼロ制約にあり物価が低くてしかも金融政策に対する反応が弱かったのだが

『At the time of the last review, we were living in a new normal, characterized by the proximity of interest rates to the effective lower bound (ELB), along with low growth, low inflation, and a very flat Phillips curve-meaning that inflation was not very responsive to slack in the economy.7』

次のパラグラフになりますが、前回の見直しの際には「政策金利の名目下限制約、低成長、低インフレ、フィリップスカーブのフラット化(によってインフレが経済のスラックに対してあんまり反応しない状況に過去対比でなっている)を勘案してあのようなものを作りました、ということなのですが、これ2020年の時のパウちゃん講演に関しては一応ネタにしたのでこの辺にその時の駄文が残っております。
https://doramemon7743.sakura.ne.jp/doramemon2008.html#200828

『To me, a statistic that captures that era is that our policy rate was stuck at the ELB for seven long years following the onset of the Global Financial Crisis (GFC) in late 2008. Many here will recall the sluggish growth and painfully slow recovery of that era. It appeared highly likely that if the economy experienced even a mild downturn, our policy rate would be back at the ELB very quickly, probably for another extended period.』

リーマンショック以降の経済はスラギッシュな成長で怪しからん程に低調な成長しかしなかったし、ちょっとマイルドな後退がおきたとしても直ぐに政策金利の下限制約に到達する(米国は2016年から利上げ着手してちんたらと2018年末時点で一旦2.5%まで上げたものの、コロナショックで0-0.25%に下げたわけですな)状態でした。

『Inflation and inflation expectations could then decline in a weak economy, raising real interest rates as nominal rates were pinned near zero. Higher real rates would further weigh on job growth and reinforce the downward pressure on inflation and inflation expectations, triggering an adverse dynamic.』

インフレとインフレ期待は弱い経済成長の中で低調に推移しており、政策金利の名目下限の為に実質金利は上昇し、雇用の成長に対して悪影響与えたり、インフレの伸び悩みやインフレ期待の低下のフィードバックが起きやすくなるという弊害がありました。


ということで次のパラに行きますけど。

『The economic conditions that brought the policy rate to the ELB and drove the 2020 framework changes were thought to be rooted in slow-moving global factors that would persist for an extended period-and might well have done so, if not for the pandemic.8』

2020時点での名目下限制約に到達した政策金利の状況を受けて2020に導入した政策フレームワーク(ちなみにアベレージターゲットインフレーションとメイクアップストラテジーが一番目立つ施策でしたがその辺は後で出てきます)については、パンデミック云々を差し置いてみても上記のような状況が長期化しやすいという考えがベースラインにありまして、

『The 2020 consensus statement included several features that addressed the ELB-related risks that had become increasingly prominent over the preceding two decades.』

でもって(特にリーマン以降の)名目政策金利が下限制約にいた時点が長かった、ということを踏まえて「政策金利の下限制約到達に関するリスク」への対甥が多かったということです、と説明しまして、

『We emphasized the importance of anchored longer-term inflation expectations to support both our price-stability and maximum-employment goals. Drawing on an extensive literature on strategies to mitigate risks associated with the ELB, we adopted flexible average inflation targeting-a "makeup" strategy to ensure that inflation expectations would remain well anchored even with the ELB constraint.9 』

でもってここにありますように「flexible average inflation targeting」「a "makeup" strategy」が出てきたというお話。

『In particular, we said that, following periods when inflation had been running persistently below 2 percent, appropriate monetary policy would likely aim to achieve inflation moderately above 2 percent for some time.』

でもってこの時には「インフレがモデレートリーかつ一時的(for some time)に2%を上回るような政策運営」をするっていう建付けにした訳ですな。


・ところがインフレの持続性を読み間違えましたと

次のパラグラフに行きます。

『In the event, rather than low inflation and the ELB, the post-pandemic reopening brought the highest inflation in 40 years to economies around the world. Like most other central banks and private-sector analysts, through year-end 2021 we thought that inflation would subside fairly quickly without a sharp tightening in our policy stance (figure 5).10 』

コロナ後の経済リオープンからの動きで物価が盛大にあがりましたが、他国の中央銀行や民間調査機関などと同じように(という辺りが往生際が悪いのですが、「Like most other central banks and private-sector analysts」です)我々も今般の物価上昇は一時的で比較的早くに鎮静化し、それには金融政策の強力な引き締めを必要にしないで行けるじゃろ、と思っておりました時期が私たちにもありました。からの、

『When it became clear that this was not the case, we responded forcefully, raising our policy rate by 5.25 percentage points over 16 months.』

物価の動きがどうもそうじゃない、というのが明らかになってから16か月で政策金利を5.25%まで引き上げるというような対応を取らざるを得ませんでしたなあと。

『That action, combined with the unwinding of pandemic supply disruptions, contributed to inflation moving much closer to our target without the painful rise in unemployment that has accompanied previous efforts to counter high inflation.』

でもってその利上げによって物価が沈静化していきましたし、その間に失業の大きな上昇にも伝わることなくそれができましたよ、としらっとそんなのも織り交ぜながら最初の小見出し『Evolution of Monetary Policy Framework』は終了します。


・大きなショックに対して物価が反応しやすくなっている、というECBも言っている件について

でもって次が『Elements of the Revised Consensus Statement』です、最初のパラから順に参ります。

『This year's review considered how economic conditions have evolved over the past five years.』

過去5年間での経済の構造変化などについて考慮したそうな。

『During this period, we saw that the inflation situation can change rapidly in the face of large shocks. In addition, interest rates are now substantially higher than was the case during the era between the GFC and the pandemic.』

でもってこの「ラージショックに対して物価が反応しやすくなった」というのは先般のシントラのECBフォーラムおよびそれに関連するストラテジーレビューにおいてECBラガルド総裁も指摘していた話ですね。未だに「供給要因の物価高は一時的、としか言ってないどこぞの中央銀行はこの辺りのインフレーションダイナミクスをどう見ているのでしょうか、と思ってしまいます。


・パウちゃん今の政策金利は「モデストリーリストリクティブ」だそうです

まだこのコーナーの第一パラグラフの途中ですが小見出しを変えましたw

『With inflation above target, our policy rate is restrictive-modestly so, in my view.』

パウちゃんとしては今の政策金利は「restrictive-modestly so, in my view」とシレっと言っているので、モデレートリーではなくてモデストリーだから、ここからトラ公の言うような2.5%水準まで政策金利を下げつるというようなビューにはなっておらんわ、と思います。


・名目中立金利の水準が以前よりも上昇しているのではないかとも仰せです

さらに続きますが、

『We cannot say for certain where rates will settle out over the longer run, but their neutral level may now be higher than during the 2010s, reflecting changes in productivity, demographics, fiscal policy, and other factors that affect the balance between saving and investment (figure 6).』

ロンガーラン(要は中立金利)の水準がどこかというのは判然とはしないけど、生産性、人口動態、財政政策、貯蓄投資バランスなどを勘案すると、名目中立金利は2010年代よりも上昇しておりますとな。


・てなことから2020年のストラテジーは高インフレに対する備えが足りなかったと

『During the review, we discussed how the 2020 statement's focus on the ELB may have complicated communications about our response to high inflation. We concluded that the emphasis on an overly specific set of economic conditions may have led to some confusion, and, as a result, we made several important changes to the consensus statement to reflect that insight.』

第1パラグラフを思いっきりここまでぶつ切りにしましたが、2020年のレビューの時のパウちゃん講演の駄文を読み直して思いましたが、2020年のレビューって引用部分で触れているように「一部の状況(=ディスインフレやデフレ)に対して過度に重きを置いている内容だったのでその後の政策運営に混乱(=要は政策がビハインドした)を招いた」と思いっきりいってますし、その当時の説明も前提として「2%超える場合でもどうせそんなに物価は上がらんじゃろ」という認識が思いっきりあった、ってのがあって、それについて反省しておるわけでして・・・・・・・・


・変更点その1:政策金利の名目下限制約自体は論点であることには変わりないが過度な重視は行わない

次のパラグラフから具体的な変更点に関しての説明と背景説明になりますが実にイイハナシダナー(;∀;)という物件でありましてですね。

『First, we removed language indicating that the ELB was a defining feature of the economic landscape. Instead, we noted that our "monetary policy strategy is designed to promote maximum employment and stable prices across a broad range of economic conditions." 』

政策金利の名目下限制約に関する問題に過度にフォーカスするのではなくて、普通に「様々な経済状況に応じながらデュアルマンデートを達成するように運営します」という話にした(戻した)そうな。

『The difficulty of operating near the ELB remains a potential concern, but it is not our primary focus. The revised statement reiterates that the Committee is prepared to use its full range of tools to achieve its maximum-employment and price-stability goals, particularly if the federal funds rate is constrained by the ELB.』

名目下限金利に到達した時の政策運営の困難性が変わったわけではないが、名目下限金利の到達を回避することが我々のプライマリーなフォーカスではないですよ、だそうです。


・変更点その2:メイクアップストラテジーの取り下げと取り下げに際して強烈な自己批判を行っているのが素晴らしい

これは「メイクアップストラテジーはワシが育てた」とかこのジャクソンホールの後に日銀(というか黒田さんとか雨宮さんあたりでしたわな)が浅ましい事を言い出したんですが、まああんまり大口は叩くもんじゃないってお話ではありますな。

『Second, we returned to a framework of flexible inflation targeting and eliminated the "makeup" strategy.』

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!

でもってこの次の文章が(2021年に既に申し上げておりますが、とパウちゃんは言ってますけど)実にすんばらしい。

『As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant. 』

>As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant.
>As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant.
>As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant.
>As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant.
>As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant.

(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー

>「意図的なモデレートなインフレーションのオーバーシュート」という考え方は的外れであったということが明らかになりました。
>「意図的なモデレートなインフレーションのオーバーシュート」という考え方は的外れであったということが明らかになりました。
>「意図的なモデレートなインフレーションのオーバーシュート」という考え方は的外れであったということが明らかになりました。

・・・ということな訳でして、物価が既に上振れとなっている中で、2023年5月に植田総裁が内外情勢調査会における講演で「逆方向の、政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまうリスクもありますが、こうした2%の定着を十分に見極めるまで基調的なインフレ率の上昇を「待つことのコスト」は、前者に比べれば大きくないと思われます。(2023年5月19日の内外情勢調査会における植田総裁の講演テキストより)って思いっきり発言しておった訳ですが、当時は期待インフレが(2%にアンカーされている米国とは違って)低い水準だったとかまあ言い訳は色々とできるというのもありますが、物価高が長期化して期待インフレだって2%近辺にあるんじゃないの説(何なら上振れだって)が取られてもおかしくないし、大体からして大本営だって期待インフレ1%前半とかさすがに思ってないだろ、というような状況になっている状況に近いのではないか、となりますと、まさにこのパウちゃんの説明「As it turned out, the idea of an intentional, moderate inflation overshoot had proved irrelevant. 」を日銀は真剣に受け止めて頂きたいと思う訳です。

でもってこの部分の続きですが、

『There was nothing intentional or moderate about the inflation that arrived a few months after we announced our 2020 changes to the consensus statement, as I acknowledged publicly in 2021.11』

まあホンマにこれ間が悪かったのですが、2020年8月終わりのストラテジーレビューでメイクアップストラテジーだのアベレージインフレーションターゲットだの言い出して数か月後から物価が上がりだしたのですが、これは意図的でもないしモデレートでもなかったわ、というお話。

更にこのメイクアップストラテジー云々は次のパラグラフに続いていまして、

『Well-anchored inflation expectations were critical to our success in bringing down inflation without a sharp increase in unemployment. Anchored expectations promote the return of inflation to target when adverse shocks drive inflation higher, and limit the risk of deflation when the economy weakens.12』

次のパラグラフは「インフレ期待が十分にアンカーされていることによって(その後の引き締めで)失業の急拡大を招くことなくインフレが抑制できました」とインフレ期待がアンカーされているのが重要というお話になります。

『Further, they allow monetary policy to support maximum employment in economic downturns without compromising price stability. Our revised statement emphasizes our commitment to act forcefully to ensure that longer-term inflation expectations remain well anchored, to the benefit of both sides of our dual mandate. It also notes that "price stability is essential for a sound and stable economy and supports the well-being of all Americans."』

てな訳で、インフレ期待のアンカリングがしっかりされていることが重要、ということと、「price stability is essential for a sound and stable economy and supports the well-being of all Americans」ということで、物価安定が重要(意図的な物価の上振れ容認とかそういうのはアカンという事やな)というのを強調し、

『This theme came through loud and clear at our Fed Listens events.13 The past five years have been a painful reminder of the hardship that high inflation imposes, especially on those least able to meet the higher costs of necessities.』

この点はフェドリッスンズで何度も話題になったことで、過剰な物価高は特に生活必需品の高騰を通じて経済的弱者に厳しいものになる、というご教訓を得たそうなんですけど、日銀ちゃんも今回の参院選結果を見てちったあ反省したらどうなんでしょうかねえとしか言いようが無い(隙あらば日銀に話のケツを回す)。


・変更点その3:これまたインフレ上振れを無視していた「最大雇用からの「不足」を重視」を撤回しましたな

次が3番目ですが、これはメイクアップストラテジーとまあ根っこは同じ話でして、

『Third, our 2020 statement said that we would mitigate "shortfalls," rather than "deviations," from maximum employment. 』

2020年に最大雇用からの「乖離」を見ながら政策運営する、を「不足」に変えてきましたけどこれを撤回。

『The use of "shortfalls" reflected the insight that our real-time assessments of the natural rate of unemployment-and hence of "maximum employment"-are highly uncertain.14 The later years of the post-GFC recovery featured employment running for an extended period above mainstream estimates of its sustainable level, along with inflation running persistently below our 2 percent target. In the absence of inflationary pressures, it might not be necessary to tighten policy based solely on uncertain real-time estimates of the natural rate of unemployment.15』

特にリーマンショック以降の割と長めの期間物価が2%行かないわ雇用が中々伸びないわ、というのがあったので、要は物価上がらんことを前提に雇用「不足」に対して重視する、ってので2020年の文言が入ってきたのですが、

『We still have that view, but our use of the term "shortfalls" was not always interpreted as intended, raising communications challenges. In particular, the use of "shortfalls" was not intended as a commitment to permanently forswear preemption or to ignore labor market tightness. Accordingly, we removed "shortfalls" from our statement.』

まあこの辺はカマトトぶってコノヤローとは思いますが、当時から雇用の過熱にだって目配りしてたとかいうのはお前は何を言ってるんだという感じですが、まああの文言はどう見ても「雇用が多少過熱したってどうせ物価はたいして上がらんじゃろ」と高を括っていたからああなったとしか言いようが無いのですが、この点も反省して今回ショートフォールは削除。

『Instead, the revised document now states more precisely that "the Committee recognizes that employment may at times run above real-time assessments of maximum employment without necessarily creating risks to price stability." Of course, preemptive action would likely be warranted if tightness in the labor market or other factors pose risks to price stability.』

でまあその文言をもっとフワッと「"the Committee recognizes that employment may at times run above real-time assessments of maximum employment without necessarily creating risks to price stability."」ってしましたよと。

次のパラもこの件です。

『The revised statement also notes that maximum employment is "the highest level of employment that can be achieved on a sustained basis in a context of price stability." This focus on promoting a strong labor market underscores the principle that "durably achieving maximum employment fosters broad-based economic opportunities and benefits for all Americans."』

『The feedback we received at Fed Listens events reinforced the value of a strong labor market for American households, employers, and communities.』

最大雇用は物価安定の元でこそ達成できる、というのも加えているということですな。この辺りは以前から頭出しはされていましたね。


・変更点その4:雇用と物価のコンフリクトが起きる場合には「総合的に判断」だが数値的には「2%物価」の達成のようですね

『Fourth, consistent with the removal of "shortfalls," we made changes to clarify our approach in periods when our employment and inflation objectives are not complementary. 』

ショートフォール関連の続きですが別の論点でデュアルマンデートの間でコンフリクトが起きた場合の話、というまさに今の話になりますけれども。

『In those circumstances, we will follow a balanced approach in promoting them.』

双方のバランスを考えて政策をします、とここは玉虫色。

『The revised statement now more closely aligns with the original 2012 language. We take into account the extent of departures from our goals and the potentially different time horizons over which each is projected to return to a level consistent with our dual mandate. These principles guide our policy decisions today, as they did over the 2022-24 period, when the departure from our 2 percent inflation target was the overriding concern.』

2012年当時の文言に先祖返りした文言になりました、とな。

『In addition to these changes, there is a great deal of continuity with past statements.』

でまあ過去との整合性についてですが、

『The document continues to explain how we interpret the mandate Congress has given us and describes the policy framework that we believe will best promote maximum employment and price stability.』

マンデートに対してどのような政策枠組みで運営するのが目標達成に対して良いかという観点で考えておりまっせ。

『We continue to believe that monetary policy must be forward looking and consider the lags in its effects on the economy.』

政策はフォワードルッキングであるべきであり政策波及のラグも考慮に入れる必要がある。

『For this reason, our policy actions depend on the economic outlook and the balance of risks to that outlook. We continue to believe that setting a numerical goal for employment is unwise, because the maximum level of employment is not directly measurable and changes over time for reasons unrelated to monetary policy.』

よって政策は経済物価情勢の先行き見通しとリスク認識に基づいて運営しますが、最大雇用に関しては数値で示すのは無理があるので引き続きだしませんよと。

『We also continue to view a longer-run inflation rate of 2 percent as most consistent with our dual-mandate goals. We believe that our commitment to this target is a key factor helping keep longer-term inflation expectations well anchored. Experience has shown that 2 percent inflation is low enough to ensure that inflation is not a concern in household and business decisionmaking while also providing a central bank with some policy flexibility to provide accommodation during economic downturns.』

でもって次のパラでは先ほど雇用の方は数値で出せませんが、といった後を受けて物価2%目標ダイジダイジネーという話をしておりますので、結局コンフリクトになった場合って余程経済が明確にダメだったら別でしょうが、インフレ上振れを抑制する方になりそうな気もします。


・次回は5年後にまた見直します

最後はそういうお話でこのコーナーが締まります。

『Finally, the revised consensus statement retained our commitment to conduct a public review roughly every five years. There is nothing magic about a five-year pace. That frequency allows policymakers to reassess structural features of the economy and to engage with the public, practitioners, and academics on the performance of our framework. It is also consistent with several global peers.』





2025/08/22

お題「あんまり盛り上がらず10年金利上昇と10月利上げ警戒の気配値は出ている短期回り/ジャクソンホール前の高官発言クリップ」

今晩はジャクソンホールのパウちゃん講演ですわな。

〇10年金利ピーク更新とか交付税特会6Mとかのメモ

・なんか特に盛り上がらんのだが10年金利ピーク更新(瞬間芸ですが)

まあメモという感じですが
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/TRRAFPAP7FLSFOTCT4NCNNLI6Y-2025-08-21/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は9日ぶり小反発、長期金利一時1.61% 17年ぶり高水準
By ロイター編集
2025年8月21日午後 3:23 GMT+9

『[東京 21日 ロイター] - <15:10> 国債先物は9日ぶり小反発、長期金利一時1.61% 17年ぶり高水準

国債先物中心限月9月限は、前営業日比4銭高の137円56銭と9営業日ぶりに小反発して取引を終えた。米金利低下や自律反発が相場を支援したが上値は重かった。現物市場では新発10年国債利回り(長期金利)が同横ばいの1.605%。一時、2008年10月以来、約17年ぶり高水準の1.610%をつける時間帯もあった。』(上記URL先より、以下同様)

昨日は流動性供給入札があって後場寄りでいきなり先物がギャップダウンしてありゃーと思いましたがまあそこから追撃ワッショイとかそういう感じでもなかったようには思えますが、途中でしれっと10年1.61%になっておった訳で。

『現物市場では10年物以外の新発国債利回りは横ばいか小幅上昇。2年債は前営業日比変わらずの0.850%。5年債は同0.5ベーシスポイント(bp)上昇の1.150%。20年債は同0.5bp上昇の2.640%。午前には一時2.655%と、1999年11月以来、約26年ぶりの高水準をつけた。30年債は同0.5bp上昇の3.180%、40年債は同0.5bp上昇の3.425%。』

なんか今回に関しては別に明確なネタ(財政アイヤーとか利上げ待ったなしとか)で売り込んでいるというよりはとりあえず自然に自重でズルズルと行ってるという風情ですし、まあ7月末の所でハトハトチキン情報発信して金利下げたのと、米国雇用統計ネタで金利下げたのが余計だったということかもしれませんね、知らんけど。

『TRADEWEB
     OFFER  BID    前日比 時間
2年   0.848  0.854    0.004  15:07
5年   1.145  1.153    0.003  15:09
10年  1.602  1.608    -0.002  15:08
20年  2.633   2.64    0.002  15:09
30年  3.175  3.184    0.003  15:05
40年  3.422  3.434     0   15:06』

ここもとの金利上げって先物が50銭とか1円とか下げるような盛り上がり(というか盛り下がりというか)がなくて金利上がるの巻とは言えますが、まあゆうてだいたい「ありゃま金利下がるじゃんネタ(例えばハトハトチキン音頭をハトハトチキンおじさんが踊りだすとか)」が来ると急にカバーが入って大反発となっているので、元々物価水準とか経済状況(景気後退とかどう見てもしてねえじゃろ)に対して長期金利が低い、というか短期金利水準の設定がおかしいので本来あるべき姿に収斂しようとするんだけど、金融政策要素を考えるとこいつらハトハトチキンで利上げせんからのう、というのがあって、でもって利上げしない絶好の理由ができたり、利上げしない音頭が踊られたりするとその収斂の動きの逆パンチが刺さるってことかいな、よくわからん(わからんなら書くなというツッコミはしないように)。


・昨日は交付税特会借入6Mがあったんですけど実質的にはやや上昇って感じですかね

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result250821.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果(令和7年8月21日入札)

『本日、一時借入金の入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.借入根拠法律及びその条項
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第15条第1項

2.借入日       令和7年8月29日
3.償還期限      令和8年2月27日
4.償還方法     令和8年2月27日に一括償還

5.借入利率競争入札について  
(1)応募額          4兆4,697億円
(2)募入決定額       1兆500億円
(3)募入最高利率       0.655%
(4)募入最高利率における案分比率  0.0317%
(5)募入平均利率       0.635%』

ということでですね、前回8/5入札の交付税特会6Mが0.605%/0.625%だったのですが、前回の交付税6Mは8/14-2/13となっていて半月近く期ズレをしているのでそこを勘案しないといけない訳です。

でもって前回の特会借入のレートを手前0.50%にして分解すると、平均の0.605%って12月利上げは完璧に織り込んでいて(後半0.863%)、10月利上げだと半分ちょい織り込んでいる(後半0.683%)という数値になっておりますわな、というのを何故か入札の1週間くらい後に書いた次第ですな。

でもって今回のを同じように何も考えない単純分解しますと、アベレージの0.635%は12月会合で分けると後半0.867%になりましてこれまた12月利上げ完璧織り込みレート、10月で見た場合ですが、こちらは後半0.706%になっているので、前回8/5の入札時よりも10月利上げ織り込み度合いが高まった、という計算になります。

毎度申し上げておりますように、これが市場の利上げ織り込みかというと市場の特殊性を勘案しないと行けないので、12月利上げ100%以上織り込みレートのこれが短期市場の織り込みとはチャイマスガナではあるのですけれども、ただまあこの2週間で定性的に見て10月辺りに利上げが来ることも考えてレートにプレミアムを要求する、という動きになっている、ということは明らかに言えることでありますので、まあそういうことやぞということでしょうな、知らんけど(なんでも知らんけどと言っておけば良いものではない)。


・月曜に急に9末越えが弱くなっていた短国ちゃん結局その辺戻ってるじゃねえかよ&この引値の階段はまだわからんでもない

いつもの売参
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

今日は手抜きで3MTDBで発行された銘柄の引値を並べます

(8/21引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.390
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.390
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.390
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.390
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.440
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.440←カレント3M銘柄
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.440←今日入札の3M新発WI

(8/20引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.400
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.400
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.400
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.390
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.415
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.410
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.435
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.435

1315(9/29)と1316(10/6)の間に段差があるのは半期末越えのプレミアムが乗っかるのがだいたい仕様になっている(もちろん時と場合によりますが金利がついてからのプレミアムは昨年の年末越えが一番きつかったですねえ)のでこれはまあ分かるのですが、前日比で見た場合1321(10/27)までが金利低下、1322(11/4)以降が金利上昇とはなんの判じ物かという引値になっておりますし、大体からして今週火曜にネタにした10月足の短国の引値がカレント3M側にサヤ寄せされたのは一体全体何だったのかと小一時間問い詰めたい所ではありまする。

でもって今日は毎度のように3Mの入札がありまして、今回の足は11/25になる(ので次回の3Mは9月発行12月エンドでして3M短国見ていると季節感が狂いますわw)訳ですが、この銘柄も含めてカレント近辺の方は前日比甘、ってまあカレントは5糸ですけど、これまで10月足と概ね引値が並んでいた11月の前の方の足の銘柄の引値が昨日は調整されまして、10月跨ぐ所で階段という形になりましたわな。

・・・・・まあ短国の引値自体が(短国って持ち切り兄さん姉さんが多いから仕方ないんですけど)既発銘柄についてはセカンダリーの市場がそんなにない(短国なので売りに行って売れないということは無いと思うのですが、この償還の物を買いたい、といってもモチキラーの皆様のところに鎮座したまま償還までおじぞうさんなのが多いので買いの方に自由度が乏しい)ので、この「10月末段差」が活発に取引できるのかというと謎(というかたぶんできない)なのですけど、値付け上こういう形で明確に「10月末」の所で切ってきたのは茲許で言えば昨日の引けが初出だと思うのですよ。

でまあこれが何を意味する値付けかといえば申すまでもなく10月の政策金利調整(10月に利上げした場合当座預金付利金利の適用は決定会合翌営業日の10/31からと見込まれるから)を意識した値付けということになりましたので、これ即ち短国市場でずら10月利上げの可能性を意識した値付けになってきましたという風にこじつけるのは可能(実際どうなのかは市場の中の人に聞いて回るしかないです、悪しからずご了承下さい)なので、まあそういうことやぞ、というお話ですわな。

そうなりますと今日の新発3Mって11/25足でして、10月利上げをそれなりに意識したばあい、3Mのうち1M近くが10月決定会合の向こう側にあるということを意識した弱め推移になるのか、はたまた普通に堅調になるのか(前々回の入札からこのかた、カレント3Mの方には買いが来て盛り上がるような感じは見受けられませんけど(個人の感想です)とは思うのでそんなに強くは無いじゃろという気はします。

ここの所の3M以内の短国ちゃん(除く償還銘柄)って0.40%を割れると急速に需要が無くなって、0.44〜0.45%あたりになると買いが来て金利上げ止まる、というのが仕様になっている感じですので、10月足(期末越えのニーズが来やすい)のこの水準がどこまで値持ちするかというのは注目で、10月足が0.4%割れで値持ちするようですと、それは何らかのお家の事情的な買い(その場合一番ありそうなのは「期末残高は積んでおきたいけれども10月会合跨ぎをもって利上げを食らいたくないおじさんおばさん」の存在ということになる)が入って来ているというお話になりますな、まあ誰も注目しないと思いますが精々注目させていただきますwww


〇ジャクソンホール始まる前にFED高官発言

議事要旨ネタの続きは時間の関係でできなくて申し訳ないのですが、要人発言の記事だけ備忘の為に拾っておきます。

・クリーブランド連銀ハマック総裁

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/25TZGQ7WZVOE5OOD762K4PEGJQ-2025-08-21/
訂正 米利下げ、差し迫っていない 現在のデータは根拠示さず=クリーブランド連銀総裁
By ロイター編集
2025年8月22日午前 2:35 GMT+9

『[ニューヨーク 21日 ロイター] - 米クリーブランド地区連銀のハマック総裁は21日、足元の経済情勢を踏まえると、連邦準備理事会(FRB)が利下げに踏み出す時期ではないという認識を示した。

ハマック総裁は年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」の合間にヤフー・ファイナンスのインタビューで、「私はどの会合にもオープンな姿勢で臨んでいる」としつつも、「現在手元にあるデータや情報を踏まえると、もし会合が明日開かれれば、利下げの根拠は見いだせないだろう」と語った。』(上記URL先より)


・カンサスシティ連銀シュミッド総裁

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/ZQVHM4CEJ5O7JCAMN4ZKJ6MAWI-2025-08-21/
利下げ急がず、物価懸念が雇用巡るリスクを上回る=米カンザスシティー連銀総裁
By ロイター編集
2025年8月22日午前 12:36 GMT+9

『[ジャクソンホール(米ワイオミング州)/ニューヨーク 21日 ロイター] - カンザスシティー地区連銀のシュミッド総裁は21日、インフレ率が連邦準備理事会(FRB)が目標とする2%をなお上回り、労働市場が堅調なことを踏まえると、利下げを急ぐ必要はないと述べた。また、現時点ではインフレを巡るリスクが労働市場が悪化するリスクを上回っているとの見方も示した。

シュミッド総裁はCNBCのインタビューに対し「われわれは極めて良好なポジションにある。現時点で政策を変更するにはかなり明確なデータが必要になる」と述べた。その上で、インフレ率を目標水準に戻す過程で最終段階が困難になるとし、「利下げがインフレを巡る心理に及ぼす影響について慎重にならなければならない」と指摘。このところの雇用統計の弱さにもかかわらず企業関係者の間で楽観的な見方が広がっているとの印象を受けているとし、政策金利が現在4.25─4.50%に設定されていることで経済がそれほど圧迫されているとは考えていないと述べた。』(上記URL先より)

7月FOMC議事要旨でインフレ上振れ懸念とかインフレ期待の懸念とか利下げによるインフレ再加速のリスクとか指摘がありましたが、シュミッドさんもその中の一人って感じですかね。


・アトランタ連銀ボスティック総裁

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/MDMPPFTLORKRJGBNK2RUJNZ2H4-2025-08-21/
アトランタ連銀総裁、年内1回利下げの見方を維持 不確実性も強調
By Michael S. Derby
2025年8月22日午前 1:25 GMT+9

『[ニューヨーク 21日 ロイター] - 米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は21日、米連邦準備理事会(FRB)が今年1回金利目標を引き下げることは可能だと依然として考えていると述べた。ただ経済が大きく変化しているため、その見方には不確実性が大きいとも指摘した。メトロ・アトランタ商工会議所で講演した。同総裁は今年初めに示した1回の利下げ見通しは「ほぼ今も変わらない」と述べた。しかし、「今日の世界では、あらゆる推計値や予測には広いレンジがあるため、私は何にも固執していない」とした。』(上記URL先より)

アトランタ連銀のサイトを見に行きましたが、甚だ遺憾なことに講演テキスト出てないように見受けられました。調べ方悪いだけかもしれないけど。

ということで、地区連銀総裁揃いも揃って利下げ直ぐにしねえよって話を連呼しているように見受けられますがさて・・・・・・


あと、今回に関してはロンガーランストラテジーが多分パウちゃん講演の直後くらいに公表されるんじゃないかと思いますのでアタクシはその辺も確認したいし、気力体力があればなんか書けるかもしれません(期待はしないでください汗)。

ということで今朝はこの辺で勘弁してつかあさい。






2025/08/21

お題「7月FOMC議事要旨:利下げしませんというメッセージというか自我というかが強い気がしますけどね」

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/ZKDR4DPMKVNLDICYYA3RLL3KKA-2025-08-20/
トランプ氏、クックFRB理事の辞任要求 住宅ローン契約疑惑で
By Howard Schneider
2025年8月21日午前 4:29 GMT+9

とこのように人に言ってるトラ公ですが
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-20/T19QJYGOYMTC00
トランプ氏、就任後に債券150億円超購入−政策の影響受けた米社債も
Bill Allison
2025年8月20日 12:02 JST

なんなんですかねえ・・・・・・


〇FOMC議事要旨:利下げしませんアピール成分が強いんじゃないですかねえ

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20250730.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
July 29-30, 2025
A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, July 29, 2025, at 9:00 a.m. and continued on Wednesday, July 30, 2025, at 9:00 a.m.1

若干寝坊気味なのですがいつもの手抜き速読パティーンで例によって『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の政策部分から順にみていくことにしますが、今回は利下げ入れた人もいるので『Committee Policy Actions』も少し読んでから経済物価情勢の認識の方を読む時間があれば読むということでご勘弁。政策の部分は8パラ〜11パラになります。

・「ほとんどすべての参加者」が政策金利の維持が適切と主張というのは中々主張の強い書きっぷりだとオモタ

まずは8パラ。

『In their consideration of monetary policy at this meeting, participants noted that inflation remained somewhat elevated. Participants also observed that recent indicators suggested that the growth of economic activity had moderated in the first half of the year, although swings in net exports and inventories had affected the measurement and interpretation of the data. Participants further noted that the unemployment rate remained at a low level and that the labor market was at or near maximum employment. Participants judged that uncertainty about the economic outlook remained elevated. 』

今回の政策判断における現状認識ってのは基本的に声明文の第1パラグラフとかの辺りに記載されていることと同じなのでまあこの辺りまではさらさらと流しておいてだいたい良い(間違って声明文と別の記載があったらビビるけど大丈夫かな)。

でもってこの次の文章がFRBのスタッフの皆様なのか執行部なのか知らないけど主張つええええええと思ったんですよ。

というのも・・・・・

『Almost all participants viewed it as appropriate to maintain the target range for the federal funds rate at 4-1/4 to 4-1/2 percent at this meeting.』

理事2人が利下げをぶっこんで来たのはご案内の通りなのですが、そういうのがあったのにも関わらず堂々と「Almost all participants」が現状維持は適切との見解を示した、って書いて有るわけでして、理事2名が反対したのにオールモーストオールっていうのは主張強いわってアタクシは思いましたわさ。

まあつまり地区連銀総裁(議事要旨では投票権のある人をメンバー、無い人を含めた全体をパーティシパントと使い分けている)のたぶん全員が現状維持に賛成したんじゃろ、というようなことが示唆される書き方だと思うのですよね。まあさすがに「除く2名のオール」とは書いていないけど、まあそういうことだから察するように、というお告げだと理解しましたが違ってたらゴメンチャイ。

なお、資産買入の方は全員のパーティシパントが今の調子で継続に賛成しています。

『All participants judged it appropriate to continue the process of reducing the Federal Reserve's securities holdings.』

ということで次ですが、

・先行きの政策の話でも「早期利下げはインフレ再加速のリスクがある」方面の主張成分が強めになっておられるようで

でもって今後についての9パラ。

『In considering the outlook for monetary policy, almost all participants agreed that, with the labor market still solid and current monetary policy moderately or modestly restrictive, the Committee was well positioned to respond in a timely way to potential economic developments.』

これまた例の2名を除いて、ということで今の政策はモデレートリーかモデストリーに引き締め的(ってここはグラデーションあるんですね)なので変化に対応するのにウェルポジションド、といつもの地蔵容認な認識を示していまして、

『Participants agreed that monetary policy would be informed by a wide range of incoming data, the economic outlook, and the balance of risks.』

多くの情報を見て状況に適切に対応すべき、とかいうのはただのオマジナイ文言なので次に行きます。

『Participants assessed that the effects of higher tariffs had become more apparent in the prices of some goods but that their overall effects on economic activity and inflation remained to be seen. They also noted that it would take time to have more clarity on the magnitude and persistence of higher tariffs' effects on inflation.』

タリフの影響は徐々に出てきているが、まだまだ全体的な影響(という中でわざわざ一文を割いて高関税のインフレへの影響、って入れてますね)がわかるまではお時間がかかるじゃろ。

『Even so, some participants emphasized that a great deal could be learned in coming months from incoming data, helping to inform their assessment of the balance of risks and the appropriate setting of the federal funds rate; at the same time, some noted that it would not be feasible or appropriate to wait for complete clarity on the tariffs' effects on inflation before adjusting the stance of monetary policy. 』

頭に「Even so」と来るからちょっと身構えてしまいましたが、こちらは「状況が完全に分かるまで地蔵」(後半部分)、というのと、「徐々に影響は見えてきたじゃろ」(前半部分)という人の話ではあるのですが、じゃあその見えてきた影響とかリスクバランスとかどうじゃろ、という記載はないですのう。

『Some participants stressed that the issue of the persistence of tariff effects on inflation would depend importantly on the stance of monetary policy.』

数名の意見ではあるのですが、ここでしれっと「関税のインフレへの影響の持続性は金融政策のスタンスによっても大きく影響されるんでネーノ」という意見が紹介されていまして、これってモチのロンでどっちにも取れるのですが、まあ普通にこの手前までの文脈を読めば「うっかり早期利下げをすると関税のインフレへの望ましくない影響が加速するじゃろ」という指摘をしているように読めますよね(個人の感想です)。

さらに、

『Several participants commented that the current target range for the federal funds rate may not be far above its neutral level; among the considerations cited in support of this assessment was the likelihood that broader financial conditions were either neutral or supportive of stronger economic activity.』

これまた何人かの意見ではありますが、今の政策金利水準が中立金利からそう遠くない、って認識を示している人たちもいまして、この点については「今のファイナンrシャルコンディションがより強い経済活動にとってニュートラルあるいはサポート的(!)」という指摘をしておりまして、まあこれも数名の意見とは言え、ファイナンシャルコンディション的には物価上振れでもおかしくないってな指摘しているんですからこれまたタカタカモードですな。

でまあこのパラはここで締めになっていまして、こりゃもう利下げ主張した2名を公開処刑しているような書きっぷりになっておりまして、そう簡単にお前の言いなりにならんわこのクソボケめ、というトラ公へのメッセージじゃないですかいいぞもっとやれ、と思いましたがそれは面白読みのし過ぎかもしれませんので念のためご注意ください。


・リスクバランスアプローチは順当な説明をしているのですが行間からにじみ出る高インフレ阻止への思いw

第10パラも先行きの金融政策ですが「リスクマネジメントの観点から」ということなのでこれまたダイジダイジネーな部分ですけれども。

『In discussing risk-management considerations that could bear on the outlook for monetary policy, participants generally agreed that the upside risk to inflation and the downside risk to employment remained elevated.』

インフレのアップサイドリスクと雇用のダウンサイドリスクは依然として高い、はまあベースの話ですが、

『Participants noted that, if this year's higher tariffs were to generate a larger-than-expected or a more-persistent-than-anticipated increase in inflation, or if medium- or longer-term inflation expectations were to increase notably, then it would be appropriate to maintain a more restrictive stance of monetary policy than would otherwise be the case, especially if labor market conditions remained solid.』

仮に(以下全部仮定法過去形になっています)関税の物価への影響が想定よりも大きかったり、想定よりも長引いた場合、あるいは中期や長期のインフレ期待が顕著に上昇した場合には、他の条件に変化が無く、特に労働市場がソリッドな状況を維持しているのであれば、追加的な金融引き締めが必要になるかもしれません( ー`дー´)キリッってのが一発目にぶちかまされております。

でもってそれに対して、ってことで

『By contrast, if labor market conditions were to weaken materially or if inflation were to come down further and inflation expectations remained well anchored, then it would be appropriate to establish a less restrictive stance of monetary policy than would otherwise be the case.』

仮に(こっちも仮定法過去形)労働市場が顕著に弱まったり、インフレの一段の鈍化が示されたり、インフレ期待が十分にアンカーされていたりという状況であれば、他の条件に変化が無ければ金融引き締め度合いをより減らすことが適切になるでしょう、と来ています。

まあこの対比自体は順当と言ってしまえば順当ですが、先に「引き締めをやっぱりおかわり君」ってのが来るのがこれまた主張あるわ〜と思ってしまいました、知らんけど。

でもってその先ですが、

『Participants noted that the Committee might face difficult tradeoffs if elevated inflation proved to be more persistent while the outlook for the labor market weakened. Participants agreed that, if that situation were to occur, they would consider each variable's distance from the Committee's goal and the potentially different time horizons over which those respective gaps would be anticipated to close. Participants noted that, in this context, it was especially important to ensure that longer-term inflation expectations remained well anchored.』

問題はこのコンフリクトが同時に起きたときにどうするかですがな、という話になっているのですが、これはインフレと雇用のどっちの方が目標からの乖離が大きいのかというのを見ながら判断する、ということになる。ってあるのですが、最後にこれまたしれっと「インフレ期待が十分にアンカーされていることを確認するのがダイジダイジネー」とぶっこんでおりまして、高インフレと高失業率のコンフリクトの時にインフレ期待のアンカーが外れていないかどうか見るのが重要って言えばそらもうインフレ重視の方になるのは明らかですので、この辺りもいい感じでぶちかましているように見えました。いやまあそのスタンスが当然なのであって、FEDは当然のことを言っているに過ぎなくて、ホワイトハウスのチンプラゴロツキが飛んでも無い事言っているだけの話なんだが、まあ普通にぶちかましているのは流石ですと思いました(個人の感想です)。


・バランスシートに関しての話は現状まだバランスシート縮小を続けるけど・・・・って話のようで

最終パラはバランスシートに関してです。

『Several participants remarked on issues related to the Federal Reserve's balance sheet.』

はい。

『Of those who commented, participants observed that balance sheet reduction had been proceeding smoothly thus far and that various indicators pointed to reserves being abundant. 』

最近では過去行われていたようなトン調節に近いイメージ(そもそもFEDやECBは昔の日銀みたいな精密調節はしていかったし参加者の方も準備預金の積数の進捗管理を精密に実施みたいなことしていなかった筈なので日銀的な奴とは違うと思いますが)が「スケアスリザーブ」でクッソ量的緩和している状態が「アバンダントリザーブ」で若干リザーブ余った状態のままで預金ファシリティなどの常設ファシリティまたは常設オペ(ONRRPとか)で市場金利を誘導する方式を「アンプルリザーブ」って感じで表現しているのが一般的ではあります。

でもって今はまだアバンダントということですから、そりゃまあバランスシート縮小は続きますわな。

『They agreed that, with reserves projected to decline amid the rebuilding of the TGA balance following the resolution of the debt limit situation, it was important to monitor money market conditions closely and to continue to evaluate how close reserves were to their ample level. A few participants also assessed that, in this environment, abrupt further declines in reserves could occur on key reporting and payment flow days. They noted that, if such events created pressures in money markets, the Federal Reserve's existing tools would help supply additional reserves and keep the effective federal funds rate within the target range. A couple of participants highlighted the role of the SRF in monetary policy implementation-as reflected in increased usage at the June quarter-end-and expressed support for further study of the possibility of central clearing of the SRF to enhance its effectiveness.』

この辺の話はまあテクニカルちゃあテクニカルですが、インターバンクの資金不足が大きくなる日だったり、参加者のバランスシート制約によって資金放出が減るような四半期末だったり、という状況においては、資金の偏在によって準備不足が一部に発生するような例もある、って現象の話をしているのですが、その中でSRF(特別レポファシリティ)の活用って話があるようですわな。


・ところで利下げ主張の2名ですが究極的には「高関税への物価への影響はそんなでも無いし一時的だから」ですな

『Committee Policy Actions』の第2パラグラフになります。

『In support of the Committee's goals, almost all members agreed to maintain the target range for the federal funds rate at 4-1/4 to 4-1/2 percent.』

メンバーの方でも2名除く全員、を「almost all members」としているのはチャーミング。

『A couple of members preferred to lower the target range for the federal funds rate by 25 basis points at this meeting.』

はい。

『These members judged that, excluding tariff effects, inflation was running close to the Committee's 2 percent objective and that higher tariffs were unlikely to have persistent effects on inflation. Furthermore, they assessed that downside risk to employment had meaningfully increased with the slowing of the growth of economic activity and consumer spending, and that some incoming data pointed to a weakening of labor market conditions, including low levels of private payroll gains and the concentration of payroll gains in a narrow set of industries that were less affected by the business cycle.』

2名の主張ですけど、「関税の影響を除けば物価は2%近辺」「高関税はインフレに持続的な効果を与えないでしょう」「雇用のダウンサイドリスクは眼に見えた拡大しており、経済活動や消費が弱まっていて、一部のデータは今後の労働市場の軟化を示している、例えば民間雇用者の増加が景気サイクルと関係ない産業に偏っているとかである」というお話ですね。

『Members agreed that in considering the extent and timing of additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee would carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』

『All members agreed that the postmeeting statement should affirm their strong commitment both to supporting maximum employment and to returning inflation to the Committee's 2 percent objective.

この辺はまあオマジナイ文言。


ということで、本当はここから物価認識のパートに戻って読み込みを進めるべきなのですが、誠に遺憾ながら時間の関係でこの辺で勘弁させていただきとう存じます。続きは他に面白ネタが無ければ明日にでも。





2025/08/20

お題「短国1年がパッとしない一方で10月償還が1日にして値を戻すという謎の短国/ジャクソンホールの事前確認メモ雑記」

Oh・・・・・・
https://www.agrinews.co.jp/jukyu
トップカテゴリ ニッポンの米

2025年08月20日
[ニッポンの米]新潟の概算金3万円 青森、富山は2・6万円 有料会員記事

の左にあるサムネをみるとですなあ・・・・・・・・・

〇市場全体にどういうインプリケーションがあるのかは分からんが謎短国続くの巻

昨日は1年短国入札だったんですけどね
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250819.htm
国庫短期証券(第1326回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1326回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号   国庫短期証券(第1326回)
2.発行根拠法律及びその条項 特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第46条第1項

3.発行日     令和7年8月20日
4.償還期限   令和8年8月20日
5.価格競争入札について
(1)応募額       8兆5,751億円
(2)募入決定額   2兆5,470億8,000万円
(3)募入最低価格     99円30銭0厘
(募入最高利回り)    (0.7049%)
(4)募入最低価格における案分比率     73.4234%
(5)募入平均価格     99円31銭1厘
(募入平均利回り)    (0.6937%)』

でまあ1年どころって月曜の売買参考統計値が、
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(8/18引値)
国庫短期証券1319 2026/07/21 平均値単利 0.640
国庫短期証券1326 2026/08/20 平均値単利 0.660←新発WI

だったのですが(これでも月曜日は入札前ですこし利回り水準が調整されている)、節目の0.70%まで流れた入札になっていまして、あらまあそうなんですかってな結果になりまして、昨日の引値の方は一応

(8/19引値)
国庫短期証券1313 2026/06/22 平均値単利 0.610
国庫短期証券1319 2026/07/21 平均値単利 0.645
国庫短期証券1326 2026/08/20 平均値単利 0.695←新発

ついでに1個前も並べてみましたが、9か月と12か月で8.5毛もスティープしているとかいう面白引値になっておりまして、0.7%の利回りってまあゆうて1回利上げになってもどうせ今の環境では日銀当座預金パワーによって短国の利回りって付利よりも低いってことになるんでしょうから、0.70%なら一応1回分の利上げには耐えているのですが、ゆうて2回目の利上げには耐えられん訳で、残存1年ともなると3Mの4倍はBPVあるんだから(雑計算です)あんまりこれを好んで入れるって訳にも行かん、とかいうことなんでしょうかねえ、知らんけど。

でまあそういう結果でしたので、これまた一部の人しか参加しない市場(市場と呼ぶのかも怪しいが)なのでその結果を過大に受け止める必要はないとは思うのですが、明日はちょうど交付税特会の6Mの入札がありますもんで、この結果が前回対比でどうなったのよというのは見ておきたいなと思います。

1年短国の方に話を戻しますと、7月17日に行われた前回の1年短国の入札ってのが、
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250717.htm

平均0.6164%、足切り0.6306%なので、今回って結構ビビットにレートが上がったという印象でして、今月入って2回目3回目の3Mの新発の水準も新発だけは微妙に重そうなレートになっていたりしています(1回目は8/1の入札なのでたぶんハトハトチキン植田総裁会見の余波の方が大きかったと思うのですが、その後色々とネタがポロポロ出てきているのが昨今の情勢)し、そんなこんなを見ると、次回利上げに関して年内絶対無し無しノーマークでエエじゃろ、というご時世ではなくなっている、ということになっているのでしょうか、とは思いました。


まあさらに訳わからんのが昨日の短国の短い方の引値で

(8/19引値)
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.400
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.400
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.415
国庫短期証券1304 2025/11/10 平均値単利 0.410
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.410
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.435
国庫短期証券1270 2025/11/20 平均値単利 0.435
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.435

(8/18引値)
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.430
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.430
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.435
国庫短期証券1304 2025/11/10 平均値単利 0.430
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.430
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.435←新発3M
国庫短期証券1270 2025/11/20 平均値単利 0.435
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.435←今週金曜入札の新発WI

昨日弊駄文で9月末跨ぎの短国のレートが新発3Mの方にサヤ寄せされて甘くなって結果として引値の謎階段(カレント2銘柄だけいきなりレートが飛ぶ)が解消されたじゃないですか、とかネタにしたらフラグにでもなったのが1日にしてまたレートが戻ってしまうまという更に謎は深まる展開。

まあその前のカレント2銘柄以外0.40でそこから0.435%に飛ぶとかいうのから見たら何となく階段チックになっているだけマシはマシなのですが、おまいら何をしとるんじゃという楽しい引値でして、金曜か月曜に玉が出てきたものの火曜日には吸収されてしまいましたとかいう現象でも発生したと思わないと辻褄の合わない引値の1日変化に?????ではありまする。

まあクソ真面目に後講釈する必要があるかどうか問題はさておきまして勝手に後講釈すれば、まさか9月会合利上げってのも7月会合の植田総裁チキチキチキン会見からするとジャガーチェンジにも程があるので10月利上げあるで、と思った場合には10月足なら食らわないし、だいたいからして最近の日銀って決定会合の数週間前になると謎のお漏らしが出てきて織り込みが始まるという悪癖がある(このお漏らし問題は非常に宜しくないと思うので老人用おむつを皆さん着用して頂きたいものだと切に願ってやまないのですがその話はまたお漏らしでもあったら)ので、10月足拾っておくと利上げをある程度織り込んだ場合には順調にロールできる説があって、しかも9月の半期末を抜けているので使い勝手が割と良い説はあったりしますので、選考されるってのはあるかもしれません。

とは言え11月足対比でそこまで差がつくもんなのかよというのも謎(なお10-12月償還に関しては3Mの次のロールが驚異の年末越えになってこの年末越えは年によってはクソ強くなることがあるのでロール前提の人にとっては足の置き方がムツカシイと思われます)なのですが、まあ半期末越えの使い勝手が良さそうなところには残高取りの買いがある、ってのと1年短国入札の結果を合わせ技で読んでみれば、これまでは割と「利上げなんぼのもんじゃい」という感じだったのとは少し様子が違うっていう結論を捻りだすのは可能かなと思いましたが、アタクシが寝ぼけマナコで捻りだしている結論なので話半分に聞いていただければと存じます(無責任マン)。



〇ジャクソンホール開催ですよのリリースが出ると夏も終わりますなと思ってしまうのは変態ですかそうですか

URLがクソ長いのでハイパーリンクは全部の文字列に掛けておりません、悪しからず
https://www.kansascityfed.org/newsroom/2025-news-releases/kansas-city-fed-to-host-annual-jackson-hole-economic-policy-symposium-2025/
Federal Reserve Bank of Kansas City to Host Annual Jackson Hole Economic Policy Symposium Aug. 21-23
This year’s theme to explore Labor Markets in Transition: Demographics, Productivity and Macroeconomic Policy.

August 19, 2025
Jackson Hole Economic Policy Symposium

ということで出てまいりました。まあ既に皆様ご案内の通りですが、今年のお題は『Labor Markets in Transition: Demographics, Productivity and Macroeconomic Policy.』ということなので、これは日銀もニッコリというお題になっております、というか人口動態による労働市場の構造変化によって、これまで頑強なまでのディスインフレ状態だった日本でも遂にインフレ―ショナリーな賃金構造(と言っておいて自分の給与明細を見ると悲しくなる今日この頃ですが)に変化している、ってんですからもうこれは多角的レビューの成果を堂々と発表してドヤ顔になるタイミングですな!!!!!

・・・・って日銀から誰が行くのか存じませんが(NY駐在が行くのは間違いないけど日本から誰が行くねん)、まあそんなお題ですなあという事で。

能書きを見ますと、

『KANSAS CITY, Mo. ? The Federal Reserve Bank of Kansas City will convene its annual Economic Policy Symposium Aug. 21-23 in Jackson Hole, Wyoming. The 2025 event, which marks the symposium’s 48th year, will focus on the theme “Labor Markets in Transition: Demographics, Productivity, and Macroeconomic Policy."』

この「労働市場の遷移:人口動態・生産性・マクロ政策」ってのはそういう訳で日本にも大きなネタではあるのですけれども、まあ幸か不幸かこの前の雇用統計があばばばば―だったのでそういう目先の話でパウちゃんの講演が注目されるんじゃろうな、そういう話よりも構造問題の話を聞きたいけど。

でまあその説明文ですけど、

『Labor markets are undergoing structural change. Some drivers of this change reflect the acceleration of pre-existing trends, such as declining birth rates, an aging labor force, and reduced labor mobility.』

労働市場の構造変化、ちゅうことで要因として示されているのが出生率の低下とレーバーフォースの高齢化と雇用のモビリティーの低下ってなっていて3番目のネタがまあアメリカンだなと思います。

『There have also been new developments like the spread and maturation of artificial intelligence, which could potentially change the economic role and value of labor.』

AIの普及による変化、ってのも指摘されております。相変わらずスプレッドシート見ながら1毛5糸甘とか言いながらFOMCの声明文を印刷して2枚重ねて透かし読みしながら差分確認しているワシ涙目orz

『How these factors will affect labor markets over the coming years and how those developments will interact with fiscal and monetary policy will be among the questions Symposium participants explore.』

でまあこれらの労働市場の構造変化がマクロ政策、金融政策にどげな影響を与えるじゃろというのを考察して見ましょうというお話のようですな。

『The full agenda will be available at External Linkkansascityfed.org on Thursday, Aug. 21, at 8 p.m. EDT/6 p.m. MDT. Federal Reserve Chair Jerome Powell’s remarks will be streamed on the Kansas City Fed’s YouTube channel, External Linkwww.youtube.com/kansascityfed, on Friday, Aug. 22, at 10 a.m. EDT/8 a.m. MDT.』

米国山岳部時間(夏時間)で22日の朝8時にパウちゃんの講演があるのだが時差が15時間の筈なので例によってジャパンの金曜の夜中なのでした。カンサスシティ連銀のよつべチャンネルで見れるそうですが内容よりも同接がどの位あるのかみたいですね(ナンジャソラ)

『Papers and other materials will be posted on the Kansas City Fed’s website as they are presented during the event.』

でまあ以下はジャクソンホールシンポジウムの宣伝ですが、ECBのシントラみたいに歴史と伝統の景勝地であり観光地とは違って、ダボスとかジャクソンホールとかって観光地は観光地ですけどイベントおっぱじめて著名になったんじゃなかったでしたっけ、って世界地理知らんのに勝手に言ってますけど。

『Since 1978, the Federal Reserve Bank of Kansas City has sponsored a symposium on an important economic issue facing the U.S. and world economies. Beginning in 1982, the symposium has been hosted at the Jackson Lake Lodge at Grand Teton National Park, which is located in Wyoming-one of the seven states served by the Tenth Federal Reserve District.』

『Each year, the event provides a venue for international central bankers, Federal Reserve officials, other policymakers and academics to discuss issues of mutual concern. Visit External Linkkansascityfed.org to read more about the symposium's decades-long history』.

『As the regional headquarters of the nation’s central bank, the Kansas City Fed and its branch offices in Denver, Oklahoma City and Omaha serve the seven states of the Tenth District: Colorado, Kansas, Nebraska, Oklahoma, Wyoming, northern New Mexico and western Missouri.』

最後はカンサスシティ連銀の宣伝になっておりますが、それはそうと過去のお題をここで振り返っておきますと、

https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/economic-symposium-conference-proceedings/
Economic Symposium Proceedings

2024 ""Reassessing the Effectiveness and Transmission of Monetary Policy"
2023 "Structural Shifts in the Global Economy"
2022 "Reassessing Constraints on the Economy and Policy"
2021 "Macroeconomic Policy in an Uneven Economy"
2020 "Navigating the Decade Ahead: Implications for Monetary Policy"
2019 "Challenges for Monetary Policy"
2018 "Changing Market Structures and Implications for Monetary Policy"

コロ助のちょっと前以降から引用(リンク先には1978年からのテーマが並んでいます)のですが、ゆうてここもとは「構造変化」の話が多くなっている訳でして、なんかもうすっかりそういう流れになったから忘れがちではあるのですけれども、グローバル化の巻き戻し、ってのがベースにあって、それに加えて経済を構成する各種パーツの構造変化というのが起きてまっせという話だし、何ならこのトラ公の関税政策がまたグローバルの構造を変化というか退化させるとか考えますと、来年あたりのお題にはまた「世界経済の構造変化」ってのが出てくるのか、あるいは「インフレーションダイナミクス」の話が出てくるのか、それとも「財政政策との関係」当たりの話になるのか、という興味は尽きないので今後も楽しみではありますな。

1つ前の能書き書いている方にリンクが一応はってありますが、アタクシのメモ用にリンクを貼っておきますと

カンサスシティ連銀のよつべちゃんねる(直リンはしません)
https://www.youtube.com/kansascityfed

大体この辺見ておけば始まるとリンクがついてくる
https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/

ということで皆様ご案内の案件を何を今さら祐天寺という雑談で誠に申し訳ございませんした(土下座)

・・・・・ところでおまけでどうでもいいのだが
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/ATTJHUJF65L3PAXC264SAZKAXQ-2025-08-19/
S&P、米信用格付けを据え置き 関税歳入が財政打撃を相殺
By ロイター編集
2025年8月20日午前 5:57 GMT+9

お前らアジア通貨危機(30年近く前の話ですが何か?)の時に散々アジア諸国をケチョンケチョンに貶めておいてアメリカ様にはこれかよ、とは当時を思い出すと腸煮えくり返るんですよね(あくまでも個人の感想です)。


でもって今朝はこの辺で勘弁(滝汗)










2025/08/19

お題「短国の需給がタイトじゃないとな/10月に「経済も」理由に利上げする可能性について愚考/FED関連便利ページご紹介」

うむ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250819/k10014897171000.html
自民党 臨時総裁選の是非判断する手続きの議論 開始へ
2025年8月19日 4時30分

さてどうなりますやら・・・・・

〇短国は結局新発の方にサヤ寄せされたようですな

いつもの売買参考統計値
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(8/18引値)
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.430
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.430
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.435
国庫短期証券1304 2025/11/10 平均値単利 0.430
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.430
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.435←新発3M
国庫短期証券1270 2025/11/20 平均値単利 0.435
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.435←今週金曜入札の新発WI


(8/15引値)
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.400
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.400
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.400
国庫短期証券1304 2025/11/10 平均値単利 0.400
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.435←新発3M
国庫短期証券1270 2025/11/20 平均値単利 0.435
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.435←今週金曜入札の新発WI

・・・・・・・・(^^)

とまあそんな訳で、9月末跨ぎ要因と新発の需給がイマイチさんのどっちがマジなのかと思っていたら新発3Mの方に引値がサヤ寄せされる結果になっています。こちら引用するとクッソ長くなるので割愛していますが、金曜までの引値では9月足の引値が0.42%(昨日もこちらは0.42%)になっていて、10月足のところから0.40%になっていまして、毎度おなじみの期末(短国の場合は年末要因もあるので実質四半期末)越えにプレミアム、という現象が珍しく解消されている格好になっています。

まあ四半期末パワーに関しては12月末>3月末>9月末>>>6月末って感じでプレミアム付きやすいってイメージ(あくまでも個人の感想です)があるのですが、まあゆうて昨年の場合は9月末の所も結構プレミアムあったというか玉不足になっていましたので、この段階で3M短国が普通に順イールド(というほどの曲率は無いけど)になっているのは割と珍しいかなと思っていますが、じゃあこれが何を意味するのかは正直分からんです。

アレですな、期末(年末)プレミアムって基本的にはドル円ベーシスがワークするか、期末残高ニーズで物確保をしたい人のお家の事情買いのどちらか(あるいは合わせ技)によって発生しますので、担保繰り状況の変化(後先考えずに日銀が打ち込んだ各種オペの期落ち)によって変化しているのか、ただ単純に日銀の利上げ観測がそんなに差し迫っていないので短国に短期化兄さん姉さんが来ないのか、その辺は大人じゃないとわからん世界っすけど、まあ現象として足元ではそんなもんが発生している、ということでメモっておくのでありました。



〇しれっと出てきた展望レポートハイライトの怪しげなポンチ絵もあったので一応整理しておくと

ということでまあ雑談で恐縮なのですが。

・日銀の今までの説明を真に受けると・・・・・・・

日銀の次回利上げはいつになるでしょうか、ってお話になるのですが、そりゃまあこの先なんかとんでもない天変地異でもあれば話は全然別になるのでシランガナになるのでそういうのはさておきまして、今までの日銀の説明を真に受けるとどういうことになりますか、ってのを整理しておきますとこんな感じじゃないですかねえ。

「賃金と物価のいわゆる好循環(最近は日銀自ら「好循環」をしらっと引っ込めているのでいわゆるをつけておく)確認利上げなら来年1月の展望レポート」だし、「物価上振れの可能性が高まってきたので政策金利を調整しますなら10月の展望レポート」って感じでしょ、とまあ誰でも思いつきそうな話ですが、日銀の理屈を真に受けるとそうなるわけですな、知らんけど。

でまあこの好循環の方は分かりやすくて、今年1月の追加利上げがまさに「好循環が進んでいることが確認できたので政策調整を1歩進めました」という形になって、その根拠は大手企業の冬季賞与と来年度の賃金改定に向けた動きが無事に進捗している、という形で、変な事起きて賃上げどころじゃねーよという話になっていなければ、むしろ1月の時点で追加利上げがまだだったら利上げしていない方が理屈に合わない、というお話だと思うので、無事に進捗すればどこからどう見ても1月には利上げじゃろうというのがまあ本線の理屈になるんじゃないですかね、あくまでも個人の感想ですが。

でもって10月利上げする場合は、昨年の7月パターンの理屈で、「物価上振れのリスクが高まった」になるんですが、昨年7月に関してはまあどう見たって円安対策で利上げしたじゃろという利上げではあったのですが、表面上の理屈はあくまでも「物価上振れのリスクが高まったので、金融緩和度合いを微調整することによって、物価上振れのリスクに対応しました」って理屈でして、でまあ今回の展望レポート基本的見解で物価上振れのリスクを詳しく説明しているので、10月展望の時にこの上振れのリスクが高まってきたので金融緩和度合いを微調整」というので行くと思うのですよね。


https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507a.pdf
経済・物価情勢の展望(2025 年7月)
【基本的見解】

こちらの中身の方の前回比較とかうっかりさぼってしまったらもう半月以上たって時効になった感があります(こちらもショパンの事情でまとまった時間が中々取れなくてすいませんまあ週末にこそっと作ってこそっとログの方に入れる感じですかね)けれども、一応当初もネタにしたと思うのですが、どっからどう見ても今回の展望の重要ポイントってここでして、

(物価のリスク要因)
『第1に、企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響である。企業の賃金・価格設定行動は、従来よりも積極化しており、中心的な見通しでは、成長ペースが鈍化し、物価に対する下押し圧力として作用するもとでも、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持されると想定している。もっとも、今後の各国の通商政策等を巡り不透明感が高い状況が続くことがあれば、コスト削減に注力する傾向が強まる可能性がある。こうしたもと、物価上昇を賃金に反映する動きが弱まることも考えられる。一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性もある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。』

というのは前回4月も同じ認識でしたが、
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf(前回4月展望)

以下の部分がどう見たって今回の展望のポイントで、

『この間、このところの米などの食料品価格上昇については、天候要因等の影響が大きく、消費者物価の押し上げ寄与は次第に縮小していくと想定している。もっとも、最近の価格上昇には、人件費や物流費を販売価格に転嫁する動きも相応に影響しており、企業の賃金・価格設定行動次第では、価格上昇が想定以上に長引く可能性もある。食料品は消費者の購入頻度が高いものであるだけに、価格上昇が長期化した場合には、家計のコンフィデンスや予想物価上昇率の変化を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼしうる点にも留意が必要である。』(こちらが7月展望)

『この間、このところの米などの食料品価格上昇については、それ自体は天候要因等を背景とするものだとしても、家計のコンフィデンスや予想物価上昇率の変化を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼしうる点にも留意が必要である。』(こちらが4月展望)

4月展望と7月展望を比較した時に、7月の方が説明が丁寧、というのもそうなんですが、よくよくみますと、「もっとも、最近の価格上昇には、人件費や物流費を販売価格に転嫁する動きも相応に影響しており、」ってのがあって、つまりはコストプッシュが原因ではあるが転嫁が進むことによる持続的な価格上昇継続の可能性がある、っていうのがあるうえに、「企業の賃金・価格設定行動次第では、価格上昇が想定以上に長引く可能性もある。」ってあるのは、ベースラインとして企業の行動が変化していることをここで思いっきり認定している、という形なので、これはリスク要因で説明している文言ではあるのですが、物価のメインシナリオにおける認識を一段進めているんですよね。ただまあメインのところでこれを書いてしまうと刺激的だから書いていないって話。

でまあ家計のコンフィデンス云々の部分は同じですので、追加されたのはコスト転嫁の広がりと企業の価格設定行動の変化についての認識な訳で、実際はかなり強気化している、と読むのが妥当ということになりますわな。


ただ、7月展望では「関税政策の影響がこれから出るはずなので不透明」ということで景気の方の判断を変えない(最悪の可能性は回避されたんじゃなかろうかという認識を示しただけで済ませている)という形にしてた訳ですが、昨日ネタにしましたように、今回出てきた展望レポートハイライトのポンチ絵が、

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202507.htm
展望レポート・ハイライト(2025年7月)
経済・物価情勢の展望

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202504.htm(4月ハイライト)

最初の絵、すなわち景気認識の絵がまるっきり異なってエライ勢いで明るい絵柄になっている訳でして、の差分について問い詰めると、大本営はどうせこの絵の差分には意味がないとか何とか言い逃れをしてくるとは思うのですが、「わかりやすく説明する」という趣旨で作成されている展望レポートハイライトのこのお絵かきが滅茶苦茶明るいトーンに変貌している、という時点で絵師さんの方にはそういうインプットをしているじゃろ、としか言いようが無いわけで、たぶんあんまり皆さんネタにしないようには思いますが、こちらのイラストって後から見ればやっぱりそんな意味か(しばらく前にネタにした「好循環のグルグル6回転巻きコイル(2023年10月展望)」が好循環を何度も確認するというのチキン植田を示唆していたのが一例)ってのがあった訳でして、今回何のお断りもなく、物価ではなくて景気の方のイラストをジャガーチェンジさせたのは、もしかしたら10月展望の時点でもっと威勢の良い言い方で政策調整をする(つまり物価上振れ対応だけではない説明)ことができるような布石を打ったんじゃないか、と見るのがまあ妥当でしょと思う訳です。

てな訳でして、実は10月展望で経済物価情勢が2%達成に向けて進んでいることが確認できたから政策調整の実施、という事もできる訳でして、しかもこの方式のメリットは「賃金と物価の循環」という今になってみると却って日銀の首を締めている可能性もある(だって物価が高止まりして実質賃金がマイナスで推移してたら日銀何のために政策してるんだって突っ込まれる隙を作るわけだし、7月展望の記者会見ってだんだんそのトーンが強くなってきているし新浪さんにも言われてるしエトセトラ)ものを一々エビデンス付きで確認しなくても利上げができるようになって、一々賃金言わなくて済むようになることですな。もちろん賃金がこけたら家計の消費能力が減るからこけたら何もできないのは変わらんのだが、一々賃金に紐付けて利上げ判断をしなくて良くなるので日銀の自由度が高まる、という意味でもそう思ってしまいます。

まあゆうて植田さんがしょうもないハトハトチキンおじさんでケツが重すぎ、ってのがあるので、このメソッドを採用するのか、と言われますとハトハトチキンのケツを政策委員の皆様が叩きに行くか、内田氷見野の両氏が寝首を掻きに行くのかのどっちかが必要とされますので、そういう意味ではこの後中川さん(大本営九官鳥組)と氷見野さんの金懇が来週再来週と控えていますので、ここでどういうトーンの話がでてくるのやらって感じではありますが、すくなくとも7月会合直後のハトハトチキン総裁会見のハトハトチキン成分の打ち消し(火消し?)が結構な勢いでおこなわれている、という点は無視しえないと思います、あくまでも個人の感想ですが。


〇そういえばこんな身も蓋も無い分析が(米国の消費が単に二極化していてマクロ的に堅調なんじゃないかという話)というただのメモ

以前はFOMCSpeakっていうFED高官の発言へのリンク集(FOXとかCNBCなどのニュースへのリンクも含まれる)をセントルイス連銀が出していたのですが、今はこちらって感じでして、(ちなみにこちらもセントルイス連銀謹製の筈)

https://fedinprint.org/
Fed in Print
Explore research and publications from across the U.S. Federal Reserve System

ご覧になればわかりますが、地区連銀のスタッフペーパーレベルまで最近出てきたものへのリンクをじゃんじゃんと貼っているので、油断しているとドンドン過去ログに埋もれている(検索窓があるので著者で検索するのは可能)という物件ですが、気が付いたらチェックしてみて題名で面白そうなのがあったら見るのもよろしいかと思います、ってそういうのはお盆前に出せって言われそうですがwww

でまあこちらの直近アイテム、からは早速埋もれてしまっているのですが、先週までは確かこれがトップにありましてですね、

https://fedinprint.org/item/fedbcq/101425
Report
Why Has Consumer Spending Remained So Resilient? Evidence from Credit Card Data

『Abstract: Credit card data indicate that since 2022, spending by higher-income consumers has remained resilient and has been driving the growth in aggregate spending. By contrast, spending growth of low-income consumers has not been as strong.』

まあこのアブストラクト見た時点でお察し案件なのですが、ボストン連銀のエコノミストが「何で消費がレジリアントなままなのですか、というのをクレジットカードデータで分析しました」ってのがあって結論が上の通りとwww

https://www.bostonfed.org/publications/current-policy-perspectives/2025/why-has-consumer-spending-remained-resilient.aspx
Why Has Consumer Spending Remained So Resilient? Evidence from Credit Card Data
By Rees Hagler and Dhiren Patki
August 13, 2025

でまあお察しの内容ではあるのですが、こういう身も蓋も無い分析を出してくるロックなのが良いなあと思ってURL貼ってみたものの内容のご紹介している時間が気が付いたら無くなってしまったので貼っただけということでご勘弁くださいませ。まあ便利ページのご紹介(以前もご紹介しましたけれども最近の読者様がいるかもしれないので改めて紹介)ということでご勘弁くださいませ。






2025/08/18

お題「また金利上昇&短国がまだ謎(市場備忘メモ)/展望レポートハイライトは「経済」のイラストのジャガーチェンジに驚愕するなど」

いやー暑いですなあ(月並みな事しか言えない)

〇米国PPIとGDPで債券ちゃん弱かったり短国が相変わらず謎だったり

いつもの
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/32OYUWPZDBPMZBNJR62OXBBOZQ-2025-08-15/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は5日続落、米金利高や株高が重し 長期金利1.56%に上昇
By ロイター編集
2025年8月15日午後 3:23 GMT+9

『[東京 15日 ロイター] - <15:10> 国債先物は5日続落、米金利高や株高が重し 長期金利1.56%に上昇

国債先物中心限月9月限は、前営業日比6銭安の137円91銭と5営業日続落して取引を終えた。米金利上昇や国内株高が相場の重しとなった。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.0ベーシスポイント(bp)上昇の1.560%。』(上記URL先より、以下同様)

とまあそういう訳で、

『きょうの国債先物は、予想を上回る米卸売物価指数(PPI)を受けて9月の大幅利下げ観測が後退し米国債が売られた(金利は上昇)流れが逆風となり、売り先行でスタート。内閣府が朝方発表した4─6月期の国内総生産(GDP)速報値は、5四半期連続のプラスとなり市場予想も上回ったものの債券市場の反応は薄く、米金利上昇を受けた売りが一巡した後の国債先物は、前日終値近辺でもみ合い推移となった。』

っていうことですが一応インパクトあったような気もせんでもないが。

『現物市場では10年物以外の新発国債利回りも総じて上昇。2年債は前営業日比1.0bp上昇の0.825%、5年債は同0.5bp上昇の1.110%、20年債は同1.0bp上昇の2.560%、30年債は同1.0bp上昇の3.095%、40年債は同3.0bp上昇の3.320%。』

ということで2年の金利も上がっていますからねえ。というか今の日銀が利上げを渋る理由って「米国関税政策の影響ガー」しかない訳で、物価だけ見たら寧ろ明日短期政策金利を1%以上には上げておかないとおかしいじゃろという世界(日銀は「これから下がる」ということにしているが)なので、経済が堅調というのは「利上げを渋る言い訳が潰される」ということでもありますからぬー。

『TRADEWEB
    OFFER  BID    前日比 時間
2年   0.819  0.825    0.011 15:10
5年   1.105  1.11    0.007  15:05
10年  1.558  1.564    0.015 15:03
20年  2.562  2.569    0.019 15:11
30年  3.095  3.104    0.02  15:11
40年  3.322  3.334    0.044 15:10』

ということで短い所もそこそこ金利上がっているなあというお話ですけれども、まあ日銀大本営はゆうて自発的に利上げするという感じではなさそうで、物価高批判の矛先が日銀に向かわない限りは利上げせんじゃろ、っていうのもあるのでこの先の読み筋は中々ムツカシヤというところではあろうかと存じます。


・短国ちゃん強いのか弱いのか結局よくわからん

3M新発
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250815.htm
国庫短期証券(第1325回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1325回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号     国庫短期証券(第1325回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日     令和7年8月18日
4.償還期限   令和7年11月17日

5.価格競争入札について
(1)応募額         10兆5,396億円
(2)募入決定額    3兆3,253億7,000万円
(3)募入最低価格    99円88銭9厘0毛
(募入最高利回り)    (0.4457%)
(4)募入最低価格における案分比率    53.3154%
(5)募入平均価格     99円89銭1厘9毛
(募入平均利回り)     (0.4340%)』

先日来ネタにしておりましたように、短国ちゃんって3Mに近い所まで(9月末越えから)引値は0.400%で並んでいるのですが、カレント3Mと新発WIだけ突如0.44%レベルの引値になる、という面白現象というか怪奇現象が起きていたのですが、落札結果は上記の通りなので、まあこの面白引値の方が正しいという結果になっておられました。

でもって金曜の引けですけれども、

(8/15引値)
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.400
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.400
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.400
国庫短期証券1304 2025/11/10 平均値単利 0.400
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.440
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.435←新発3M
国庫短期証券1270 2025/11/20 平均値単利 0.435
国庫短期証券1327 2025/11/25 平均値単利 0.435←今週金曜入札の新発WI

(8/14引値)
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.400
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.400
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.400
国庫短期証券1304 2025/11/10 平均値単利 0.400
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.439←木曜時点のカレント3M
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.439←15日入札の新発WI
国庫短期証券1270 2025/11/20 平均値単利 0.435
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.445

ということで、相変わらず同償還の1304と1324の引けが4毛違うとかいうのもナンジャソラですけど、1322までが0.40%で1324がいきなり0.44%にワープするという訳わからん階段はそのままで、新発はまあ上記の落札結果だからそんなに馬鹿強になるわけもなく、一応入札平均レベル位の0.435%で引かせてはいますけど、1個前の銘柄が0.440%ってのがもうねって感じで、相変わらず強いのか弱いのかがさっぱり分からんという不思議マーケットになっております。

まあ新発はさておいてもその1個前の回号がいまいちさんなのですから、短国ゾーンに利上げを見込んで短期化が入っている、って感じでもないんじゃネーノとは思うのだが、イマイチこの新発のレートと手前の引値とのアンマッチが気持ち悪いわなと思うのでした、まあそれだけの局地的な話ですけど。


〇展望レポートのポンチ絵だが経済の見通しはおおむね前回と同様だったはずなんですけど何すかこのイラストwwwww

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202507.htm
展望レポート・ハイライト(2025年7月)
経済・物価情勢の展望

4月はこちら
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202504.htm

1月はこちら
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202501.htm


・お前ら経済の見通しはおおむね横ばいじゃなかったのかよ絵が全然違うゾ

最初が経済見通しですが、経済の見通しに関しては一応4月のところでトラ公の関税大会が始まりましたので、1月と4月の間には断絶あり、ってな訳で4月と比較しますけど・・・・・・

『日本経済は成長ペースが鈍化する』(7月)
『日本経済は成長ペースが鈍化する』(4月)

って書いていることは同じでして、

『日本経済は、各国の通商政策等の影響を受けた海外経済の減速により下押しされ、成長ペースが鈍化します。その後は、海外経済とともに、成長率を高めていきます。』(7月)

『日本経済は、各国の通商政策等の影響を受けた海外経済の減速により下押しされ、成長ペースが鈍化します。その後は、海外経済とともに、成長率を高めていきます。』(4月)

っていうことで書いているお題と説明文は全く同じなのですが、描いてある絵が全然違うという斬新な手法を今回導入されておられて感服するしかありません。

でまあアタクシこちらに絵を磔刑にするスキルは持ち合わせておりません(という設定でいかせてもろてます)ので説明しますと、4月のイラストってまさに上記説明文のように、地球儀(世界経済を示しているんでしょうね)と大型貨物船(関税による世界貿易の悪化を示しているんでしょうな)を引いて重いコンダラ試練の道をって感じの背広着たおじさんがヒーコラ言ってて背景の色もダークな色になっていますわな。

ところがですね、今回のイラストって空は明るい中で車がスイスイと前に向かって進んでいて、ただまあその道に若干のアップダウンがある(一旦下押しの判じ物でしょうね)のと、晴れている筈なのになぜか車がヘッドライトをつけている(関税問題で霧がかかっているという判じ物なんでしょうね)という状態ですが、伊豆スカイラインハイウェイみたいな舗装道路の向こうはお日様が輝いて居たりしていまして、イラストのイメージが全然違うんですが何ですかこれはwwwwww

まあ何ですな、一応「4月展望レポ―トの時よりは不確実性が晴れてきた」ってのを言いたいんだと思うのは分かるのですが、それにしても絵柄が極端に違いすぎでして、4月の見通しとして出していたポンチ絵が過剰に悲観的だったのか、それとも今回実は経済の見通しが定性的に見たら本当はクソ強気転換しているのかのどちらかでした、と言われないと絵柄の大変化の理由が付かない訳ですな。

ちなみに1月の時のこの経済のポンチ絵ですけれども、見通しの良い雪の疎林がぽつぽつとある光景の中、2026(見通し期間)に向かって平坦な道がまっすぐあって、そこに向けてクロスカントリースキー(ラングラウフ)で進んでいくスキーヤー、って感じでして、まあ季節柄クロカンにしたのかねって感じですが順調感満載の絵でしたが、今回はそれよりも風景自体は明るいものになっていて、霧が掛かっているような演出効果が無ければ威勢の良さは(利上げをした)1月並みかそれ以上って絵になっているのはナンデスカコレというお話になろうかと思います。

今って前述のように「経済」の方が利上げを渋る理由になっている訳ですが、展望レポートハイライトのこのポンチ絵見ますと、説明文は同じなのに全然絵が違って威勢がよくなっている訳で、こんな辺りからも日銀大本営が「やるかどうかは兎も角として利上げをした時にそれを正当化できるような仕掛けを埋め込んでいる」というプレイに打って出ている、というのが示されているのではないか、とまあアタクシは斯様に読み取るわけですが、この点はあくまでもアタクシ個人の感想ですの世界なのでそのように読み取るかどうかはお任せいたします(^^)。


・物価見通しのイラストは逆に見通し引き上げでリスクバランスも引き上げなのに同じというプレイ

ということで今回の主な点は最初のイラストなのですが次の物価の話も何じゃそれでして、

『物価は減速したあと2%程度に向かう』(7月)
『物価は減速したあと2%程度に向かう』(4月)
『物価は2%程度に向かう』(1月)

こちらは前回と同じイラストになっていますが、4月のポンチ絵の時にご紹介したように1月は基調的な物価が上がってアクチュアルの物価が下がる、というようなイラストだったのが、4月と今回はアクチュアルの物価が2%割れた後に2%に戻る、の絵のままです。

つまり説明文の方は、

『消費者物価の前年比は、食料品価格上昇などの影響が弱まり、経済の成長ペースも鈍化するため、来年度に1%台後半まで減速しますが、再来年度は2%程度となります。』(7月)

『消費者物価の前年比は、食料品価格上昇などの影響が弱まり、経済の成長ペースも鈍化するため、来年度に1%台後半まで減速しますが、再来年度は2%程度となります。』(4月)

と同じ説明文になっていまして、いやいやお前ら7月展望で物価の見通し上方修正した上にリスクバランスも変更しただろ何でこっちのイラストは変わらない(7月は2024年度終わっているのでその分の表記が無くなっている点は違うけどそこは関係ないので)んだよどうなっているのというお話。


・不透明がやや後退した、という絵はまあ言いたいことは分かる

『通商政策等の影響を巡る不確実性は高い状況が続いている』(7月)
『通商政策等の展開や影響を巡る不確実性はきわめて高い』(4月)

というのは今回変更しているからその通りに変更になっていますが、

『日米間の交渉が合意に至るなど、前向きな動きもみられていますが、各国の通商政策等の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は、高い状況が続いています。金融・為替市場や日本経済・物価への影響にも、十分注意を払う必要があります。』(7月)

『各国の通商政策等の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は、きわめて高い状況です。金融・為替市場や日本経済・物価への影響にも、十分注意を払う必要があります。』(4月)

不確実性を意味すると思われるものを見ている人の図、というのがあって、そのブツが4月対比で今回は少し遠くなりました、という判じ物になっていまして、まあこれは(微妙な絵を描きやがるとは思いますが)言いたいことは分かる。


・最後の政策運営の絵は本文ともども同じ

『2%目標のもとで金融政策を運営していく』(7月)
『2%目標のもとで金融政策を運営していく』(4月)

『金融政策運営については、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、こうした見通しが実現していくか、丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要です。』(7月)

『金融政策運営については、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、こうした見通しが実現していくか、丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要です。』(4月)

そして謎の3本の温度計イラストも同じで、何を見ているのかはさっぱり分からないのですが(1月の方が意味のある絵になっていた)まあ色々と見て判断してますよ、って言いたいんだろうなあ(でも何が政策反応関数なのかはさっぱり分からん)という絵のままでした。

ということで最初の2つの絵が何ですかこれは、という謎のハイライトではありましたとさ、ということで今朝はこの辺で勘弁していただきとう存じます。








2025/08/15

お題「ベッセント追加発言/円債ベッセント砲被弾の巻(メモ)/3M短国は強いのか弱いのかがマジで分からん・・・・」

ワロタ
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025081400572&g=pol
「次期首相」高市氏トップ 自民支持層では石破氏―時事世論調査
時事通信 編集局2025年08月14日17時44分配信

『時事通信が8〜11日に実施した8月の世論調査で次の首相に誰がふさわしいかを尋ねたところ、自民党の高市早苗前経済安全保障担当相が15.9%でトップだった。2位は小泉進次郎農林水産相で14.6%、3位は石破茂首相で11.3%だった。自民支持層に限ると、石破氏が逆転して首位となった。』

>自民支持層に限ると、石破氏が逆転して首位となった
>自民支持層に限ると、石破氏が逆転して首位となった
>自民支持層に限ると、石破氏が逆転して首位となった

高市新党でも作ったら如何でしょうかねえ(鼻ホジホジ)。

〇ベッセント火消しているのかと思うと火消している訳でもないですな&PPIとかのメモ

・BBGに続いてFOXでやや長めのインタビューがあったようで

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-14/T0ZHJFGP493A00
ベッセント財務長官、「FRBに指図していない」−利下げ要求を否定
Daniel Flatley
2025年8月14日 21:45 JST 更新日時 2025年8月14日 23:25 JST

→中立水準は現行金利より150bp低いと指摘しただけ−ベッセント氏
→9月の50bp利下げ「恐らく適切だろう」とあらためて発言

とは言っても結局言ってること同じなんですが、ベッセントもトランプの手下として言わざるを得ないってことなのかもしれませんが、9月利下げしてインフレが再燃したらこれ普通にトランプ政権のせい、っていう話になる訳でして、ついでにこれを言ったベッセントも地獄の業火に焼かれることになると思うのですけれどもはてさて大丈夫なんでしょうか、という感じです。

ベッセントさんって非常に常識人であるというお話はよく聞くわけですが、それをもってもこの有様なんで、まあ馬鹿をトップに選んじゃダメというのと、権力機構というものには抑制機能をどこかにつけておかないと、うっかり馬鹿に権力を与えると飛んでも無いことが起きる、というのが分かるわけで、反面教師として学ぶべきところだろとは思いましたので内閣人事局(内務省検閲により削除されました)。

『前日のブルームバーグテレビジョンでの発言について、ベッセント長官は「FRBに指図したわけではない」とFOXビジネスとのインタビューで説明した。』(上記URL先より、以下同様)

という事ですが結局

『「私が言ったのは、金利を中立水準にするには推定150ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の引き下げになるということだ」とベッセント氏。 「その水準にするよう要求はしていない」と話した。』

まあ当然ながらツッコミは入っている訳で、

『元FRBエコノミストで、マクロポリシー・パースペクティブズを創業したジュリア・コロナド氏は、中立金利水準について「意見を述べるのは本来、財務長官の役割ではない」と指摘。「政権内で最高位の経済閣僚がこうした発言を公にした事実は、FRBに要望を直接的かつ公然に圧力をかけたことになる」と述べた。』

そらそうよ。

『ベッセント長官は14日、弱い雇用統計と何カ月も利下げを見送っている事実を踏まえ、「9月の50bp引き下げは恐らく適切だろう」とあらためて述べた。マクロポリシーのコロナド氏は「経済的な論点を述べているだけだという主張は不誠実だ」として、「そのような主張をすること自体、本来の立場ではふさわしくない」と述べた。』

まあ結局のところ、同じ話をしただけって感じではありますわな。

でまあちょっとFOXみたんですけど、FEDがらみのベッセントのQAは
https://www.foxbusiness.com/video/6376910492112
Mornings With Maria
August 14, 2025 25:05
Bessent outlines Trump administration plans for tariffs, housing crisis and Fed chairman selection

『U.S. Treasury Secretary Scott Bessent, in a wide-ranging interview on 'Mornings with Maria,' weighs in on President Donald Trump's meeting with Vladimir Putin, updates U.S.-China trade talks and housing affordability crisis solutions.』

こちらの16分40秒くらいにあって、最初がFed chairman selectionの話がちょっとあるのですが、その後が政策金利がどうのこうのの話で、「利下げしろといったわけではない」、というのは17分くらいのところにあるのですけれども、同時点のニュース画面のヘッドラインを見ますと、結局「BESSENT CALLS FOR STEEP RATE CUTS」ってされていて、まあ本人がどう取り繕っても「利下げ要求」というのは変わっていないように見えますわな。

なおニュースの方は掛け流しで聞いているだけなのですが、直接的な金融政策の話は16分40秒くらいから19分00秒くらいの辺りになると思いますので見れる方はご参考までに。

ああそれからこれ16分40秒ちょっと回ったあたりでFEDの次期議長候補の下馬評としてFOXが並べているのが写真入りで画面に出ているのでそれもまた便利かもしれません(各局で出しているの微妙に差異があるので色々と拾っておいた方が良いかと思いますので)。



まあ一方でPPIの方が
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/6UAFIZVDDVLVFI2ZW2T2J3Z7VM-2025-08-14/
米7月卸売物価指数、前月比0.9%上昇と約3年ぶりの大幅な伸び インフレ加速示唆
By ロイター編集
2025年8月15日午前 3:16 GMT+9

『[ワシントン 14日 ロイター] - 米労働省労働統計局(BLS)が14日発表した7月の卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は前月比0.9%上昇した。サービスと財(モノ)の価格が共に急上昇し、2022年6月以来、約3年ぶりの大幅な伸びとなった。今後数カ月間でインフレが広範に加速する可能性が示唆され、連邦準備理事会(FRB)は金融政策運営で難しい舵取りを迫られる。ロイターがまとめたエコノミスト予想は0.2%上昇。6月は横ばいだった。』(上記URL先より、以下同様)

>2022年6月以来、約3年ぶりの大幅な伸びとなった。
>2022年6月以来、約3年ぶりの大幅な伸びとなった。
>2022年6月以来、約3年ぶりの大幅な伸びとなった。

ということでこれは盛り上がってまいりましたとしか申し上げようがないですが、

『エコノミストの間では、トランプ政権の関税措置でモノの価格が上昇する中、サービス価格の上昇は緩やかになり、全体のインフレへの影響は緩和されるとの見方が出ていた。ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのチーフエコノミスト、カール・ワインバーグ氏は「関税措置で国内価格は影響を受けないと考えていた人にとって大きな打撃だった」とし、「FRBの様子見姿勢が強く裏付けられた」と述べた。』

とのことでございまして、まあ普通に考えたらどこからどう見てもこの結果は9月は様子見地蔵になるべきというのを強く支持する内容になって来たと思うのですが、なんせ9月FOMCまではまだ1か月あるのでこの先何が出てくるのか次第としか申し上げようがないですな。


ムサレム総裁(ブラードの後釜の人)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-14/T0ZNIWGP493500
セントルイス連銀総裁、9月利下げの是非巡る判断下すのは時期尚早
Catarina Saraiva
2025年8月15日 0:28 JST

『米セントルイス連銀のムサレム総裁は、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利下げを実施するかどうか判断するのは時期尚早だとの見解を示した。ムサレム氏は14日、米経済専門局CNBCのインタビューで、9月の会合で「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」と語った。9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問には、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」と語った。』(上記URL先より)

ということで、まあ結局はここから9月FOMCまでに出てくるデータ(直前にCPIが出るんですね)次第、ってことになるしかなさそうな流れですな、うんうん。でまあワシは米国エコノミストでも何でもないのでその辺はノーアイデアにもほどがあって出たとこ勝負(勝負するわけではないがw)ですな。


〇ベッセント砲がちゃっかりダメージを与えた円債ちゃんというニュースクリップメモをば

皆様先刻ご承知の介な話で恐縮ですが後日備忘用記念クリップ
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/HAQIWMAOEZI5JE2LQJKPIW7MUM-2025-08-14/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、米財務長官発言や弱いオペ結果で 長期金利1.55%
By ロイター編集
2025年8月14日午後 3:18 GMT+9

『[東京 14日 ロイター] - <15:10> 国債先物は続落、米財務長官発言や弱いオペ結果で 長期金利1.55%

国債先物中心限月9月限は、前営業日比39銭安の137円97銭と4営業日続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同3.5ベーシスポイント(bp)上昇の1.550%。米財務長官の発言や日銀の買いオペの弱い結果が中長期ゾーンの金利を押し上げた。』(上記URL先より、以下同様)

昨日申し上げましたように、ベッセント砲来たと思ったらイブニングの先物(なので東京の朝6時がクローズ)が碌すっぽ反応していなくて、前日日中引値対比でプラスで推移してたのでナンジャソラと思ったのですが、こういう「日銀に圧が掛かる」系の記事には日本人の方が盛大に反応するんだな、という知見が今回は得られた気がします。気のせいかもしれませんけどwww

『きょうの国債先物は、海外取引時間の債券高地合いを引き継ぎ、買い先行でスタート。買い一巡後は、ベセント米財務長官がブルームバーグとのインタビューで日銀の金融政策について「私の意見では、ビハインド・ザ・カーブに陥っている」と述べたことが材料視され、先物相場はマイナス圏に沈んだ。』

でまあ結構下がったうえに、

『日銀が実施した中長期・超長期ゾーン対象の国債買いオペが概ね弱い結果と受け止められたことも後場の取引で追加的な売り手掛かりとなり、国債先物は終盤にかけて下げ幅を拡大した。』

長期輪番で必殺応札(業界用語では輪番封鎖)が入って安い所で決まってしまったとかそういうことで。

『TRADEWEB
      OFFER  BID   前日比 時間
2年    0.808  0.814    0.03  15:02
5年     1.1  1.108    0.042  15:06
10年   1.545  1.553    0.033  15:06
20年   2.548  2.555    0.029  15:07
30年   3.074  3.084    0.002  15:00
40年   3.279   3.29   0.003  15:07』

ということで、取引終盤まで今日はツイストかと思わせていたりもしたのですが、一応ベアフラットという形になった訳ですが、先物中期が弱くて2年も地味に弱くて、まあ普通の普通に日銀の外堀が埋まってきた認識、という相場ちゃんになった次第ですが、実際に市場がどう思っているのかという話は長期債の入札が無いとイマイチ分りかねる所でもあるので来週以降に注目することになろうかとは存じますが、一応今日は10年物国と3か月短国の入札というのもあるので以下雑メモ。


〇3M短国が強いんだか弱いんだか良くわからん件について

そんな訳で今日は物国の入札もあるんですが、物国ちゃんって新方式になって発行再開された17回以降が順次償還になってきている(次は来年3月10日に20回が償還)のに対して新規発行分が輪番とバイバックに対してほんのちょっとしか多くないので、このインフレ環境下において発行総額の数字で言えば減少しちゃうとかいう債券なので華麗にスルーしまして(おい)いつもの短国ちゃん。

売参見ますとですね、
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(いつもは3Mで発行された銘柄の引値だけ並べますが今日はそれ以外も並べます)
8/14引値
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.400
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.400
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.400
国庫短期証券1304 2025/11/10 平均値単利 0.400
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.439←カレント3M
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.439←今日入札の新発WI
国庫短期証券1270 2025/11/20 平均値単利 0.435
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.445

8/13引値
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.400
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.400
国庫短期証券1322 2025/11/04 平均値単利 0.400
国庫短期証券1304 2025/11/10 平均値単利 0.400
国庫短期証券1324 2025/11/10 平均値単利 0.415←カレント3M
国庫短期証券1325 2025/11/17 平均値単利 0.415←今日入札の新発WI
国庫短期証券1270 2025/11/20 平均値単利 0.435
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.445

ということでですね、なんか知らんけどカレント3Mと今日入札のWIだけ引値が前日対比甘くなっていて、手前の銘柄と段差ついている、というのも中々のアレでして、償還が1週間違うだけで(期末跨ぎとかいう要因も無いのに)3毛9糸も階段がついている、ということでいやまあ1億歩譲れば10月決定会合跨ぎだから(10月会合で利上げが決まった場合、新金利適用は10/31金曜日からなので11/4償還のTDBは実質ノーダメージに近い上に償還再投資が早速新金利でできるという利便性がある、まで言える)というのはあるのですが・・・・・・

よくよく見ればなんという事でしょう同じ償還の1304回(6Mで発行された銘柄の成れの果て)とも3毛9糸も引値が違うじゃないですが何ですかこれっていう面白引値になっていまして(まあ8/13のを見ればお分かりの通りで実はその前から面白引値になっていたんですけど)、まあとりあえず先週の3M(つまりカレント)入札は平均は0.4083%だったんですが足切りが0.4242%という語呂のわるいレート(それは関係ないですけどwwww)に流れて、応札もその前の銘柄が12兆あったのに対して9兆円台だったので、新発だけは微妙に重いとかそういう事情でもあるのかね、という風情ではあるのですが、その影響だか何だかわからんですが、新発WIとカレント3Mだけ引けが調整されて入札を迎える、という流れになりました。

ということで需給が良いんだか悪いんだかわからん(需給が本当に悪いんだったら手前の銘柄の0.400%はちょっと強すぎで、もうちょっとレートが乗っている筈なのです)という摩訶不思議ちゃんな状態のままで入札を迎えることになりそうです、というあんまり現世利益の無い入札事前雑談ではありましたとさ。









2025/08/14

お題「ベッセントさんしれっと日銀利上げ話に言及とな/5年国入札とか最近の超短い所とかだが利上げ観測は動いたのか動いてないのか・・・・」

ほほう
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250812/k10014892511000.html
石破首相 イージス艦事故遺族を弔問 総理大臣就任後は初めて
2025年8月12日 15時56分

『当時防衛大臣を務めていた石破総理大臣は、12日昼前、佳子夫人とともに親子が住んでいた千葉県勝浦市の遺族宅に弔問に訪れ、線香を上げたあと、清めの塩と酒を海にまいて手を合わせました。続いて、勝浦市内の飲食店でおよそ1時間半、遺族らと交流しました。遺族によりますと石破総理大臣は事故以降、コロナ禍を除いて毎年この時期に弔問に訪れていて総理大臣就任後は今回が初めてだということです。』(上記URL先より)

別に総理になったから急に訪問したわけではないので、この題名の書き方はミスリードにも程があると思うんだが。しかも2008年当時の事故以降毎年行ってるんですからね。


〇中立金利まで利下げしろっていうことなんですが物価は大丈夫なんですかねえ(ベッセント発言)

こんなん出てました
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-13/T0XLLMGPWCKG00
米財務長官、150bp以上の利下げ求める−日本はインフレ抑制を
Daniel Flatley、Jonathan Ferro、Annmarie Hordern
2025年8月13日 22:11 JST 更新日時 2025年8月14日 2:34 JST

→米政策金利、150−175bp低い水準にあるべき−9月から利下げを
→「日銀は後手に回っており、利上げするだろう」、植田総裁と話す

これわwwwwww

『ベッセント米財務長官は13日、政策金利は少なくとも今より1.5ポイント低くあるべきだとの考えを示し、これまでで最も明確に米金融政策当局に利下げサイクルに踏み切るよう訴えかけた。日本については、インフレ抑制に取り組む必要があるとの認識を示した。』

『ベッセント氏はブルームバーグのテレビインタビューで、「9月の0.5ポイント利下げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている」と述べ、「どのモデルで見ても」金利は「おそらく150、175ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い水準にあるべきだろう」とも語った。』(上記URL先より、以下同様)

ということですのでBBGTV見れば多分どっかにインタビューが転がっていると思うので見れたら見たいとは思いますけれども、とりあええずは記事から参りますと、

『ベッセント氏は、米連邦準備制度理事会(FRB)当局者らがFOMC会合の2日後に公表された米雇用統計での改定値を事前に把握していれば、「6月と7月に利下げが可能だったのではないか」と述べた。労働統計局は1日発表の雇用統計で、5月と6月分合わせて雇用者数の伸びを25万8000人下方修正した。』

結局のところ関税自爆攻撃で経済が落ち込んで需要落ちた結果物価が上がりにくくなってくれれば引き締め的な政策って不要になるから中立になるべき、ってのはまあ話の上では分からんのではないのですけれども、一方でアメリカン株式って利下げ期待で連日ウヒョーと上昇している訳でして、そっちを見ると何で利下げして資産価格を刺激しないとアカンのですかそれ後になってバブル崩壊しまっせ、と思ってしまいます次第なのですが、まあ当然後者は丸無視する訳で。

『財務長官は通常、米政策金利について具体的な発言は避けている。ベッセント氏もしばらくは、過去の政策決定についてのみコメントするとしてきた。トランプ米大統領は、利下げを見送るパウエルFRB議長を繰り返し批判するが、パウエル議長や多くの当局者は、トランプ氏の関税引き上げがインフレに及ぼす影響について、さらなる兆候を見極めたいと述べている。』

まあ結局のところ出てくるデータ次第で経済が落ち込んできて物価が沈静化してたら引き締めを減らすのはあるでしょうし、物価が上振れしようもんなら地蔵にならざるを得ませんって話だと思うのですけれどもさてどうなるやら。

『ベッセント氏は、来年5月で任期を満了するパウエルFRB議長の後任探しについても言及。候補として10、11人を検討していることを明らかにした。トランプ氏はその後、候補を3−4人に絞り込んだと語った。米CNBCが報じたところによれば、トランプ氏は次期FRB理事候補として、ジェフリーズのチーフ・マーケット・ストラテジスト、デービッド・ザーボス氏、元FRB理事のラリー・リンゼー氏、ブラックロックのグローバル債券担当最高投資責任者(CIO)、リック・リーダー氏も検討している。』

別口の候補が増えましたな。でまあこの記事の味わいのあるところはジャパン的にはこちらになりましてですね・・・・・・・・

『ベッセント氏はまた、米国債利回りは日本やドイツといった外国の金利動向の影響を受けていると指摘した。』

からの

『「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」と発言。日本銀行の植田和男総裁と話したと明らかにしたうえで、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」と語った。』

wwwwwwwwwwwwwwwww

まあアレです、ベッセントさんと言えば財務長官就任直後にも
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN063IT0W5A200C2000000/
ベッセント米財務長官、日銀の植田和男総裁と電話協議
2025年2月6日 13:15 (2025年2月6日 17:50更新)

ってのがありまして、今年の2月の頭と言えば時期的には日銀様が前年12月決定会合で利上げはまだですよ何なら3月利上げも怪しいですなあ、というハトハトチキンな情報発信をしていた所から年始になっていきなりのジャガーチェンジをして強引な地均しをしたあと1月会合で利上げを実施、というタイミングだった訳ですな。

でまあ今回このような話が出てきた訳ですが、いやまあ他国の財務長官に言われて利上げしてたらもうお前総裁も学者も辞めちまえって話ではあるのですが、しかしながら今の日銀って主体的に利上げするようなタマでもなさそうなのが見え見えなのが残念なところなので、外圧キタコレというお話になるのかねとはちょっと思いましたけれども、債券先物ちゃんのイブニングを見る分には全然なっていない模様ではありますwwwwwwww

ただまあしれっと日銀利上げの話をぶっこんで来ているのは(ドル高是正したいってのもあるでしょうし)あんまり無視しない方がエエンチャイマスカとは思いましたので備忘でネタにしておきましたです、はい。


〇お盆の最中に設定されたからなのか何気に利上げ見通しの変化なのか(5年国入札関連と短いところ)

昨日の債券ですけど
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/E5ROCUI4TNJ7VA3BI3SYVXXGBE-2025-08-13/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は3日続落、株高や弱い入札結果が重し 長期金利1.515%
By ロイター編集
2025年8月13日午後 3:18 GMT+9

『[東京 13日 ロイター] - <15:10> 国債先物は3日続落、株高や弱い入札結果が重し 長期金利1.515%

国債先物中心限月9月限は、前営業日比20銭安の138円36銭と3営業日続落して取引を終えた。海外金利上昇に加え、国内株高や国債入札の弱い結果が相場の重しとなった。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.5ベーシスポイント(bp)上昇の1.515%。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、

『きょうの国債先物は、海外取引時間の債券安地合いを引き継ぎ、売り先行でスタート。米10年国債利回りがアジア時間序盤の取引で4.3%台に上昇したことや、東京市場で日経平均株価(.N225),とTOPIX(.TOPX)が連日で史上高値を更新するなど投資家がリスク選好を強めたことも、円債相場の重しだった。』

って最近そんなに株式市場見て反応してはいないと思うのでこれはまあ後付けの話だとは思いますし、何なら株が上がる→アセットアロケーション上株のウェイトがバランス的に多くなる→アロケーション調整で下がった債券のバランスを復元する→債券買われる、というムーブメントをネタにした動きだって起きる昨今の風潮なので、こういう上げ方では債券売りにならんと思う(ただのイメージだけど)。大暴落でもしたら債券買われるけど株が上がったから債券売りっていうのは正直しっくりこない。

『財務省が実施した5年利付国債入札は、最低落札価格が市場予想を下回ったほか応札倍率が5年ぶり低水準となり、「弱め」の結果と受け止められた。市場では事前に「無難」な入札結果を見込む向きが多かったこともあり、後場の取引で追加的な売り圧力となった。』

てな訳で、先物下がったりして昨日はそこそこ事前調整をしていたとは思うのですが、それでも応札がパッとしない(応札の多い方は案分狙いの札が入ったとか、入ればラッキー札が入ったとかで増えることがあるので必ずしもあてにならないが少ない方は明らかにニーズが少ない事を意味する)状況だったので入札はあまりよろしくなかった、という結果ですわな。

そんな訳で、

『TRADEWEB
     OFFER   BID   前日比 時間
2年   0.778   0.784    0.014 15:02
5年   1.061   1.068    0.028 15:03
10年  1.513    1.52    0.021 15:03
20年  2.523    2.53    0.01  15:07
30年  3.073   3.082   -0.014  15:04
40年  3.287   3.295   -0.013  15:07』

ツイストフラットとはなんの判じ物って感じですけれども、ゲル政権がコケて高圧経済だのリフレだのというような物価高の上塗りと財政ジンバブエまっしぐらの馬鹿政権が爆誕するというリスクが少なくなった(ように見える)ことと、7月会合記者会見でのハトハトチキン音頭による利上げ見込み時期がここもと少し手前に戻ってきた、というのの合わせ技で、5年の1%そこそこって金利買ってて良いんですかという話にまたなってきました、という所なんでしょうか、よくわかりませんが。


〇とは言え超短い方を見ていると別に足元で何か見方が変更されたというムーブではなくむしろ・・・・

でまあよくわからん時は短い方(を見たとてこの市場も利回りよりもお家の事情ムーブがそこそこあるので単純に割り切れませんけど)を見るわけですが最近の交付税特会からみてみまひょか。

8/5なのでだいぶ前になってしまいますが直近の交付税6M
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result250805.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果(令和7年8月5日入札)

『1.借入根拠法律及びその条項
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第15条第1項

2.借入日       令和7年8月14日
3.償還期限     令和8年2月13日
4.償還方法     令和8年2月13日に一括償還

5.借入利率競争入札について
 
(1)応募額        4兆2,761億円
(2)募入決定額      1兆500億円
(3)募入最高利率      0.625%
(4)募入最高利率における案分比率     56.5720%
(5)募入平均利率      0.605%』

例によってこのレートを手前0.50%にして分解すると、平均の0.605%って12月利上げは完璧に織り込んでいて(後半0.863%)、10月利上げだと半分ちょい織り込んでいる(後半0.683%)という数値になっておりますわな。


その前の決定会合直前になりますが7/29に実施された交付税6Mが
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result250729.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果(令和7年7月29日入札)

『1.借入根拠法律及びその条項
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第15条第1項

2.借入日    令和7年8月7日
3.償還期限   令和8年2月6日
4.償還方法   令和8年2月6日に一括償還

5.借入利率競争入札について  
(1)応募額        3兆8,100億円
(2)募入決定額      1兆500億円
(3)募入最高利率      0.630%
(4)募入最高利率における案分比率   70.0000%
(5)募入平均利率      0.599%』

となっていまして、これを同様に分解すると、10月利上げのところで平均の0.599%を分解すると後半が0.685%、12月の所で分解すると後半0.894%となりまして、実は決定会合前後で特会6Mのレートって動いていない(なんなら事実上若干下がっているくらいの話)という結果になっておらっしゃられまして、まあその前に一回利上げ時期を若干手前に手繰り寄せたからもうそれで先に織り込んだ、と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、そういう意味で言えば7月決定会合でそんなに特会借入の皆さんの頭の中にある利上げ確率の分布って変わっていない、と見るのが妥当だと思うのですよね。

先週金曜の「主な意見」(についてはこの特会6M入札の後なので直接これには影響しませんけれども)も含めて今回の金融政策決定会合の結果って、「物価上振れリスク」を割と真面目に記述した(そういえば展望レポート基本的見解の中身をやっていなかったが時すでにお寿司)という点では相当な前進が見られた、というのは言えるのですけれども、一方でメインシナリオの方は変わっていないし経済に関する見方については様子見地蔵の方が多うございましたので、その辺りを諸々勘案すると、まあ早期利上げ観測を唱える人にとっても、年内利上げ無しで今後の利上げも慎重を期すじゃろという見立てを唱える人にとってもいずれも好都合、という玉虫色の決着になっていた、というのが7月金融政策決定会合および展望レポートからのインプリケーションだと思いますので、参加者的にはどっちの立場からも「今回の会合で私たちの見立てを見直さなければいけないような動きは特になかった」という発想になるんじゃないかと思います(個人の感想です)ので、そんなこんなで決定会合跨いでも動いてないんだろうなとは思います。

なお次の特会借入6Mの入札は26日に実施されまして、そこから26日28日と怒涛の特会祭りになりますが、そこで金利がどう動くか、特会借入の場合は利上げを綺麗に織り込むし、何ならやや利上げ織り込みが前のめりになっている場合が散見されますので、単純に前回比較で金利見ても間違えのもとですので注意しましょうw


あとすいません、先週の3M短国ですが
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250808.htm
国庫短期証券(第1324回)の入札結果

『1.名称及び記号     国庫短期証券(第1324回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日      令和7年8月12日
4.償還期限     令和7年11月10日

5.価格競争入札について
(1)応募額        9兆7,873億円
(2)募入決定額     3兆3,253億7,000万円
(3)募入最低価格    99円89銭5厘5毛
(募入最高利回り)    (0.4242%)
(4)募入最低価格における案分比率   62.4900%
(5)募入平均価格    99円89銭9厘4毛
(募入平均利回り)    (0.4083%)』

ということで、平均が0.4083%で足切りが0.4242%なので多少流れた結果になっていましたし、応札額も10兆円割れとなっていまして、その前の週の8/1に入札のあった3M短国が平均0.4321%で足切0.4368%とそんなに長くないテールで応札が12兆円あったのに対してどうなのよという結果。

こちらはネタにする時間が無かったのですが、8月に入って、というよりはその前からだと思うのですが、東京レポレートのトモネで末初のレートが馬鹿下がり(前日のトモネが0.486%→0.451%と低下したのもさることながら、31日のオーバーナイトT+0が0.488%→0.364%と急低下しました)したりしてたように、レポとか現先の需給がタイト気味に推移しているようなイメージがあって、それでも8/1は金利水準が0.43%レベルだったので(入札の数日前に謎の引値階段ができたのはネタにしたと思いますが)応札が来ましたが、先週はレートが低かったので札が引いてしまったということなんでしょうかね。

まあそれだけじゃなくてなんかお家の事情の買いがあったりなかったりするだけで短国アウトライトの金利は平気で動いてしまうので何とも言えませんけれども、ただまあゆうて短国の引値も3Mカレントで0.415%ですし、10月償還辺りで0.400%となっている(時間の都合上一々引値を貼りませんすいません)訳でして、まあ短国アウトライト普通に堅調じゃろという感じになっておりますですな、はい。

短国の場合は政策金利の先高観が出たときにデュレーション短期化という大義名分のもとでお家の事情的な買いがドバっと入ってしまうという事があり、短国の金利そのものが時と場合によっては全然先行きの政策金利予想を反映しない場合が多々あるのですが、3Mカレントで0.45に近づくと買いが増えてきて0.40に近づくと買いが減ってくる、という平常運転をしている感じとお見受けしました(ただし個人の感想です)ので、その点からも市場の政策金利見通しって今回は「変わった」というよりも「皆さん自分の考えていることを補強できたと思ってる」というムーブになっているんじゃないかなと思いました。知らんけど。

#そういや明日は物国新発入札ですかね









2025/08/13

お題「FED関連も色々と話題は多いので一旦メモっておきます:でまあ結局は「これからのデータ次第」としか言いようが無い気がします」

バッテリー内蔵製品をホイホイと作り過ぎという気もします
https://www.asahi.com/articles/AST8D04LYT8DULFA001M.html
モバイルバッテリーやスマホ、回収・リサイクル義務化へ 発火多発で
新田哲史 2025年8月12日 10時00分


〇パウちゃんの後任とか利下げとかその他のメモ

・後任をだれにするのかというお話のようですが

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-11/T0UD6EGOYMTC00
次期FRB議長候補に両副議長ら、ベッセント氏人選拡大−当局者
Saleha Mohsin
2025年8月12日 3:51 JST 更新日時 2025年8月12日 7:52 JST

→ボウマン、ジェファーソン両副議長とダラス連銀総裁も候補者に
→ベッセント氏、今後数週間以内に追加の候補者と面談−当局者

ということで人選が行われているというネタがここもと続いておるわけですが、まあこんなクソ大統領に尻尾降ってでもFRB議長になりたいって何なんでしょうかねえとは思ったりはしますけど、冷静に考えたら輪転機ぐるぐるとか言ってた人の元で中央銀行の総裁の人選が行われた、とかいう事例がほんの12年半前くらいにどっかの国でもあったので、他の国を笑っている場合ではないのですな。

『来年に任期満了を迎える米連邦準備制度理事会(FRB)議長の後任候補として、ボウマン、ジェファーソン両副議長とダラス連銀のローガン総裁が検討されていると、匿名の政権当局者2人が明らかにした。』(上記URL先より、以下同様)

へいへいそうだっか。

『選考プロセスを主導しているベッセント財務長官は、今後数週間以内に追加の候補者との面談を行う予定だという。トランプ大統領は秋に後任議長人事を発表する見通しだと当局者は語った。』

秋までは変な議長が選ばれましたエライコッチャの儀は行われないのですねわかります。

『関係者によれば、この他の後任候補には、ハセット米国家経済会議(NEC)委員長、ウォラーFRB理事、経済学者のマーク・サマリン氏、ウォーシュ元FRB理事、ブラード前セントルイス連銀総裁らの名前が挙がっている。』

『トランプ氏は先週、クーグラーFRB理事の後任として、ホワイトハウスのミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を指名した。ミラン氏が就任するには、上院の承認が必要となるが、トランプ氏はミラン氏がクーグラー理事の残りの任期を務める見通しを示した。任期は来年1月末までとなる。』

ってなことでしらっと変態仮面のお名前も出ているのですが、ローガンさんって思いっきりNY連銀の市場調節担当だった人だったり、基本が物価重視おじさんの変態仮面が出ていたりとなっていまして、どっかの国みたいに「日銀当座預金が. 10%増えると予想インフレ率が 0.44%上昇する」とかいう妄言(実際に日銀当座預金が10%増えても予想インフレ率が0.44%上昇しなかったのはご案内の通り)を吐くような学者モドキが候補(しかもほぼ本命筋)に挙がっていなさそうに見えるだけまだマシなのではないか、と思ってしまいますな。

すなわち記事を見ますと、

『黒人で初の議長になる可能性があるジェファーソン氏は今年、金利据え置きの判断を一貫して支持している。』

『ローガン氏は22年にダラス連銀総裁に選ばれた。以前はニューヨーク連銀で、連邦準備制度の証券ポートフォリオ運用を担当していた。同氏も今年、金利据え置きを支持し、関税によるインフレに警戒する必要性を頻繁に指摘している。』

『ハセット氏は議長人事についてトランプ氏と既に協議している。ウォーシュ氏は17年に議長候補として検討されたが、最終的にパウエル氏が選ばれた。昨年11月にはトランプ氏が財務長官候補として検討した。』

『ウォラー氏はトランプ陣営と面会しており、ブルームバーグ・ニュースの先週の報道によれば、予測に基づいて政策判断を下そうとする姿勢や、連邦準備制度全体に深い知見があることが高く評価されている。』

ということですが、ウォラーはドテンドテンしそうなのでこのオッサンは怪しいわと思うのですが、他ってどこかの国の学者モドキと比べてみたらそこまで無茶苦茶な人選ではないかもとは思ったり思わなかったりする次第でして、でまあ今朝見たら変態仮面も面接はあったようで。


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-12/T0VUJKGOYMTC00
前セントルイス連銀総裁、FRB議長就任に前向き−独立性尊重が条件
Maria Luiza Rabello
2025年8月12日 22:38 JST

『前セントルイス連銀総裁のジェームズ・ブラード氏は、連邦準備制度理事会(FRB)の独立性が尊重されるのであれば、FRB議長就任の提案を受け入れるだろうと語った。

ブラード氏はCNBCに対し、11日にベッセント財務長官と話したことを認め、「短い会話をした。選考過程はまだ固まっていないようだが、ベッセント氏側の望む通りに進めてもらって自分は構わないと伝えた」と述べた。』(上記URL先より)

ということでまさかの変態仮面かよと思いましたが、この人は「ロンガーランの政策金利をピンポイントで示すというのは愚の骨頂」ということでSEPのドットプロットでロンガーランに票を入れない(だからブラードいたときにはロンガーランだけ1票少なかった)とか、「金融政策運営において見るべきインフレはあくまでも総合であって(ここまでは理念的にその通り)国民厚生を考えた場合コアで見るのは腐っている」(この時はエネルギー価格とかが上昇していて、米国コアって除く生鮮エネなのですが、国民厚生を考えたら持続的なエネルギー価格上昇を無視するのはアカンじゃろ、って話だった)とか言ったりと、まあメッチャ分かりやすく分類すると「物価重視派」の人なんですよね。

てな感じで、どっかの国の中央銀行(なにせガクシャモドキが副総裁になった後の2期目には当時の某スイス大使が候補にあがったりあがらなかったりしていたというテイタラク)から見たらまあマシなんじゃないのとか思いましたが、実際問題どこまでトラ公が干渉してきて、それをヘイコラと請けるのかしれっという事聞かないのか、というのは就任後になってみないとワカランチ会長。


・でもって米国CPI

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-12/T0VS8RGP9VD100
米CPI、サービスのけん引でコア指数が加速−財は緩やかな上昇
Mark Niquette
2025年8月12日 21:46 JST 更新日時 2025年8月13日 0:55 JST

→7月はコア指数が前月比0.3%上昇−前年同月比では3.1%上昇
→エネルギー除くサービスは前月比0.4%上昇−1月以来の大幅な伸び

『7月の米消費者物価指数(CPI)は、食品とエネルギーを除くコア指数の伸びが加速。前月比では1月以来の大幅上昇となった。一方で財の価格は緩やかな伸びにとどまり、関税による物価上昇圧力への懸念は和らいだ。』(上記URL先より、以下同様)

関税の影響がさほどでもなかったですね、でじゃあ利下げとなるのかというのも中々難しくて、サービス価格が強いのは期待インフレの少なくとも短期的なインフレ期待の上振れ傾向があるからではなかろうかってな評価もできないですかねえ、とか思ったら同記事でも、

『サービス価格上昇の再加速は、インフレ抑制が依然として困難なことを浮き彫りにしている。エコノミストや政策当局者はこれまで、トランプ大統領の関税政策に伴う財価格上昇を主に懸念してきたが、消費者需要はサービス分野のインフレを押し上げるリスクがある。』

『米連邦準備制度理事会(FRB)当局者は関税が財の分野に持続的なインフレ圧力をもたらすかどうかを議論しており、サービス価格が持続的に上昇すれば、当局者は新たな難題に直面することになる。』

ですよねー。

『CPI統計の発表後、トランプ大統領はパウエルFRB議長に改めて利下げを要求した。』

もう思いっきり利下げして物価が上振れして中間選挙でトランプが死に体になればエエんちゃいますかねえ(鼻ホジホジ)。

・・・・・まあ何ですな、幸か不幸か9月FOMCまでに雇用統計とCPIは各1回あるので、そこで文句ない(?)物価上昇の落ち着きと経済の弱さが出てくりゃ利下げでしょうし、そうじゃなかったら利下げしにくくてパウちゃんも大変ですわ(どうせ経済状況がどうなろうともトラ公は利下げ要求しかしないし)なと思うのですが、よくよく考えてみると去年も8月に出てきた米国雇用統計がクソのように悪かったのに後になったらそれは無かったかのような堅調維持に化けていたので、単純に雇用統計自体が(たぶんコロナの季節調整がおかしくなったのが後々まで響いているせいで)7月辺りの数字で変なのが出てくる仕様なんじゃないか疑惑が拭えないので、まあ経済指標次第でしょうよね、という愚感想しか思い浮かびません。


でまあそのCPIちゃんですが、ロイターさんから
https://jp.reuters.com/economy/inflation/7S2NDYB26RJCJHIVP4E4A37IHM-2025-08-11/
アングル:統計局長解任で高まる米CPIの注目度、TIPS市場に打撃も
By Anirban Sen, Carolina Mandl
2025年8月12日午前 8:03 GMT+9

これは確かにそうじゃなとオモタ訳でして、

『[ニューヨーク 11日 ロイター] - トランプ米大統領が7月雇用統計の発表後、労働省労働統計局の局長を解任した影響で、同局が12日に発表する7月消費者物価指数(CPI)への注目度が一段と高まっている。

7月の非農業雇用者が予想外に低調だった上に、過去2カ月分の雇用者数が大幅に下方修正されたことに不満を強めたトランプ氏は、労働統計局長だったエリカ・マッケンターファー氏の解任を1日に命令。後任がデータに政治的な要素が加わるのでないかと投資家に疑念を抱かせる人事になれば、CPIの信頼性を巡る懸念が強まり、インフレ連動国債(TIPS)市場に打撃を与えかねない。』(上記URL先より、以下同様)

基準年改定に伴うサンプル入れ替え(および推計方法の改定、だったか忘れましたが)によって飛んでも無いショックが起きる、というようなことがジャパンでも大昔(リーマンショックよりも前だわさ)にあったり無かったりしましたなあ(遠い目)。

『アナリストの見立てでは、投資家が不安を感じればTIPSに要求するプレミアムが上昇し、連邦政府の資金調達コストを直撃する。TIPSは通常の米国債に比べて流動性が低いため、利回り上昇が増幅される恐れもある。』

『モルガン・スタンレーのアナリストチームは6日のノートで「労働統計局が発表するCPIを巡る不透明感のせいでTIPSがインフレヘッジ機能を提供できなくなる状況では、全般的な需要が減少し始めるのではないか」との見方を示した。』

というお話でして、CPIがポンコツ指標になってしまいますと、そもそも色々なものがおかしくなってしまう訳で、大丈夫かこいつらとしか申し上げようがないですが、そうですよねインフレスワップとかTIPSとかの値付けも難しくなる罠、ってな話ですが、まあCPIがポンコツ指標にならなければセーフということで・・・・・・・



・FED高官発言のクリップ

バーキンさん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/5SGMIJAW3BO3VEI7BJ32SHRCEU-2025-08-12/
消費者動向が今後のインフレと雇用の鍵=米リッチモンド連銀総裁
By ロイター編集
2025年8月13日午前 1:56 GMT+9

『[ワシントン  12日 ロイター] - 米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は12日、関税を見越した消費行動などが物価上昇の影響を和らげている可能性があるが、今後需要が減り失業率が悪化する恐れもあるとの見方を示した。一方、今のところ家計支出が堅調に推移していることから、失業率の急速な悪化は回避できるとの楽観的な見方を示した。』(上記URL先より)

本チャンはこちら
https://www.richmondfed.org/press_room/speeches/thomas_i_barkin/2025/barkin_speech_20250812
Why the Consumer Matters
Aug. 12, 2025
Tom Barkin
President, Federal Reserve Bank of Richmond
The Health Management Academy
Four Seasons Hotel Chicago
Chicago, Ill.

でもって時間も無いので本編は読めていませんが、こちらハイライトというのがあるのでそれを読んで読んだ気になるの図というのをしますが、

『Highlights:』

『・Over the last several months, I’ve been saying “It’s really hard to drive when it’s foggy.” In the context of high uncertainty about the implications of government policy changes, businesses have been on pause. But the fog is lifting.』

霧の中での運転は大変だが霧は上がってきている、ときまして

『・Recently, in the context of high uncertainty, we have seen consumer spending soften.』

消費者支出が弱まっているという現象が見られます、だそうで

『・But I take comfort in the underlying dynamics. Unemployment is low. Real wages are up. Asset values are high. It’s hard to envision a sustained consumer pullback in such an environment.』

失業率が低く、実質賃金が上昇しており、資産価格が高い、という状況の中において、個人消費が持続的に弱まっていくというのは考えにくい、との見立てになっていまして、

『・So, what does a solid, but stretched consumer mean, in the context of the road ahead? I anticipate the ride will be bumpy, but bearable.』

今後の政策運営の相変わらずデコボコ道を走るような状態ではあるが、別に耐えられないようなデコボコな訳ではないでしょう。

というのがハイライトで、今ものすごい勢いで斜めよみしましたけど、じゃあ金融政策どうするのよという話はスルーして経済の見通しだけで話をしている模様ですので、そこは何ともという感じかなと思いました。


シュミッド総裁
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/S6Z7UOKIOJPGLMZDUW5BIYGA2U-2025-08-12/
現行策維持が適切、関税の物価への影響は限定=米カンザスシティー連銀総裁
By ロイター編集
2025年8月13日午前 3:56 GMT+9

『[12日 ロイター] - 米カンザスシティー地区連銀のシュミッド総裁は12日、関税措置による物価への影響がこれまでのところ限定されていることは、現行の「控えめに引き締め的」な金融政策スタンスを維持する根拠になるとの考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)

『シュミッド総裁はオクラホマ州で開催の経済開発会議での講演原稿で「経済が勢いを維持し、企業の楽観的な見方が高まり、インフレ率がFRBの目標を上回る水準で高止まりする中、当面は控えめに引き締め的な金融政策スタンスを維持することが適切になる」と指摘。「関税措置のインフレへの影響は限定されているように見えるが、政策スタンスを緩和する機会ではなく、政策を据え置く根拠になると捉えている」と述べた。』

ってな話で本チャンはこちらですが
https://www.kansascityfed.org/speeches/the-federal-reserve-and-outlook-for-the-economy-and-monetary-policy/
The Federal Reserve and Outlook for the Economy and Monetary Policy
Delivered at the Southern Economic Development Council Annual Conference in Oklahoma City, Oklahoma.
August 12, 2025

ざっと目を泳がせた程度ですが、最後のパラグラフに、

『Instead of puzzling over potential tariff effects, I intend to remain data dependent. In my view, and in discussion with my contacts, growth remains solid, inflation remains too high, and therefore policy should remain modestly restrictive. That said, as I stated earlier, inflation is determined by the balance of supply and demand, and if I see indications that demand growth is weakening significantly, I will adjust my views accordingly.』

ってありまして、現状インフレが高止まりしているのでモデストリーに引き締め的な政策が適切、って話をしていまして、その前の方では「“wait-and-see.” 」とか言ってますんで、まあ結局はこのあと出てくるデータ次第でやっぱり物価が沈静化して景気が弱めなら利下げはするじゃろうし、いまのままの感じでウダウダしているとちょっと動く大義名分に乏しい、って感じで、これを綺麗に言えば「データディペンデント」だろうなと思いました、月並みな感想ですが。


あと、みんな注目ボウマンさんが講演をしていますな
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bowman20250809a.htm
August 09, 2025
Thoughts on the Economy and Community Bank Capital
Vice Chair for Supervision Michelle W. Bowman
At the Kansas Bankers Association 2025 CEO & Senior Management Summit, Colorado Springs, Colorado

でまあ他の要人の皆様も色々とお話をしているのですが、なんか謎に時間が無くて追いかけてられませんけれども、折角のお盆時期なので何とかして追いついていこうかと思います(というか金融政策ネタが渋滞しているんですよねすいません)







2025/08/12

お題「7月会合主な意見である」

なんか最近は土用越えると梅雨末期みたいなことになりますな・・・・・

〇7月会合主な意見を見ると経済がチキンで物価が強気なのでどっちを注目するかって話ですかねえ

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2025/opi250731.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2025 年 7 月 30、31 日開催分)1

まずは『T.金融経済情勢に関する意見』から(というか今回は基本的に全部読む予定)

『・ わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。先行きは、各国の通商政策等の影響を受けて成長ペースは鈍化するものの、その後は海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくとみられる。』

という最初のははいはい大本営なので次に行きますが、

・おいこらちょっと待てお前ら前回物価目標達成時期を1年後ろ倒ししてるじゃろが

『・ 日米間の関税交渉の合意は、大変大きな前進であり、日本経済にとって、不確実性の低下につながる。前回の展望レポートのメインシナリオを書き換えるものではないが、これが実現する確度は高まった。』

という話なんだが、そもそも前回ってメインシナリオを引き下げていたという認識の筈なので、「実現する確度は高まった」ってのもおかしな話でして、いやお前ら前回4月の展望で物価目標の達成見通し時期を思いっきり1年後ろ倒しにして下方修正しているじゃろという話で、寧ろこの度の合意は「物価目標達成時期を1年後ろ倒しにしたが引き戻るかもしれない」という話になるはずなので、「実現する確度は高まった」じゃねえだろと思う訳です。

まあだいたい経験則的に最初の2つとか3つとかって大本営のコメントが多いという傾向にあるようですが、大本営におかれましてはどさくさに紛れて4月展望で思いっきり引き下げた見通しが「米国関税の不透明要因剥落」でもメインシナリオ引き下げっぱなしでOKという説明になるのかよ、と思いました。

つまりまあ大本営がハトハトチキンな気配があるのですな。

・関税の影響はこれから出る「はずだ」という謎の決め打ちをするというハトハトチキン風潮

次に行きますと、

『・ 日本からの対米輸出が多い業種は輸送用機器や大型機械などであるが、短観等において関税の影響が大きく広がっていない理由としては、非製造業など関税の直接的な影響が少ない業種が調査対象として広くカバーされていることが影響している可能性がある。』

ってこれは何ぞという話ですが、短観は1社1票だから非製造業なども入るので短観見ても関税の影響が大きく広がっていない、ように見えると言いたいんでしょうけど、そもそも論として本当に大きく広がっていない可能性もある訳で、この前の植田総裁の会見でもそうでしたが、「これから関税の影響が出るはずなのでハトハトチキン」という説明に終始しているのは心配性というよりもハトハトチキンの言い訳になっているだけのような気がします。この意見も3番目になるので大本営の可能性が高そうだし。

『・ 通商政策については、これまで発生してきた駆け込み輸出の影響が今後剥落し、さらに関税の負の影響が出てくる局面に入りつつあることに注意が必要である。』

4番目も「これから影響が出るはずだ」になっています。

『・ 米国の関税政策の基本的な内容は固まったが、今後は、米国経済において、関税によるインフレがどの程度進んでいくのか、米国の消費者がそのインフレに直面して消費をどの程度減らしていくのか、様々な角度からの分析・調査が必要である。』

『・世界経済が米国の関税政策の影響を吸収している力には、目をみはるものがある。ただ、世の中の捉え方がやや楽観的に過ぎないか、もう少し経過をみる必要がある。』

まあ確かに関税云々は米国における巨大な自爆なので今後大丈夫か問題はあるのですが、それにしても最初から6個まで全部この調子で「これから悪くなるはずだ」という決め打ちをしている訳で、経済認識のパートを見ると弱気というかチキンに見えますね。


・最後に来てやっと強気が出てくるんですね

『・ 関税を中心として経済成長にマイナスに働く政策が先行したが、日米関税交渉の合意や米国減税法案の可決など、局面が変化した。』

7個目にしてやっとこれが来たわけですが。

『・ 感染症拡大期と同様、今次局面でも世界的な危機意識から欧米・中国・新興国が揃って財政金融両面で緩和策に傾く中、経済押し上げ・インフレ圧力が生じ、世界経済が予想以上に上振れる可能性がある。』

イイシテキダナーということで、2名が関税交渉を巡る問題に関しては強気化しているのが読み取れますね。


・賃金設定行動に関しては来年を待つ必要なく判断できるという指摘があるのは何気に大きい話

経済の最後の意見ですが(今回丁度9個ですね)、

『・賃上げは、春季労使交渉における賃金改定を重視しているが、それ以外の多面的な動きにも注目したい。最低賃金の引き上げ幅や、企業収益を踏まえた冬の賞与、また転職を通じた賃金改善の状況等もみていく必要がある。』

これは地味ですし、まあゆうて1名の意見なので全員の意見ではないですけれども、この説明って4月展望の時に示されていた「企業の賃金設定行動の下方屈曲が無いかどうかの確認」に必ずしも来年の賃金改定まで待たなくても判断できますよって話なので地味に大きな話ではあります。もちろんこれがコンセンサスなのかというとそういう訳でもないとは思いますが。

しかしまあ何ですな、9個の意見中6個がハトハトチキンだった訳で、そりゃまあ今回物価見通しを引き上げたのにメインシナリオ上方修正しないという割とへんちくりんな事をしているのもむべなるかなという感じではありまする。


では物価に参りますが、物価の意見は7個ありました。例によって1個目ははいはい大本営なので(正直この意見って無駄だから大本営(というか総裁かな)も別の事書いて欲しいんだが)引用だけしますけど。

『・消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』

で、はいはい大本営の後ですね問題は。


・基調的な物価とは??って感じですが

『・基調的な物価上昇率の評価にあたっては、様々な情報を丁寧にみたうえで総合的に判断していく必要がある。足もとまでの動きを踏まえると、基調的な物価上昇率は、2%に向けて緩やかに上昇しているものの、なお2%には至っていないと考えられる。』

2番目がこれでしてまあこれも大本営なんでしょうけれども(今回の決定会合では「基調的物価が2%行ってないので政策調整不要」という理屈になっているから)。

でまあこちらなんですけど、「基調的物価は総合判断」というのが第一文にあるのですが、第二文になると基調的な物価がピンポイントで評価できるような言い方になっているのは何なんでしょうかねという感じではあります。

先般来拙駄文で申し上げたいますが、基調的物価うんぬんっていうのはそういう物があるわけではない概念の世界ってのをもうちょっとはっきりと説明すべきだと思うんですが、まあそれをやってしまうと従来の説明が三百代言ムーブだったことがバレてしまうのでさてどうするのやら。


・米価の影響と異常気象の影響について

『・米価格は引き続き高めで推移するとみているほか、その他の食料品についても、価格転嫁の広がりによって上昇圧力が続くとみている。足もとの猛暑や水不足の影響については、食料品の供給制約となる一方、財・サービス需要の低下や、生産性への影響なども考え得るため、物価に対して上下双方向に作用するリスクがある。』

うーん。後半の異常気象関連ですが、物価高を通じた需要減によって基調的な物価に悪影響とかいう説明なら話は分かるのですけれどもそうなるか??という感じではあります。


・基調的な物価が2%にいるならば0.5%の政策金利はガンガン調整しないといけないような気がするんですが・・・・

『・物価水準がインフレ予想に影響し得るとの研究もあり、今後、米価格の前年比上昇率が鈍化しても、インフレ実感が低下しない可能性もある。基調的な物価上昇率は、推計誤差等も踏まえると足もと2%ぐらいとみているが、物価の下振れリスクもある中、今後この水準で定着するかみていく必要がある。』

なんかしらっと「基調物価が2%位」という話をしているのだが、それでしたら政策金利0.5%ってどう見てもおかしくないかという話で、むしろ低すぎる政策金利水準によって基調物価が上振れするしかあり得んのだが、なぜそこで「物価の下振れリスクもある中、今後この水準で定着するかみていく必要がある」という結論になるのかが謎ではありますけど、基調的物価2%ってのが思いっきり出ているのはちょっとビビりますね。

しかしそもそも論として基調的物価が定着するもクソも一種の前提が基調的物価の定義だと思うので、なんかこの説明も微妙な気はする(本来物価安定目標が達成されている世界では基調物価は物価安定目標の数値に等しいので)訳で、マジックワードで便利使いしていた「基調物価」も実際に物価が上振れして物価高批判まで起きるようなご時世になった時には説明が混乱しているわなと思うのでありました。


・ディスインフレ状態からマイルドインフレ状態に明確に転換したという見方も表明されています

次の意見ですけど、

『・デフレノルムの時代には、一時的な物価下落要因の効き目が大きかったが、最近では輸入物価の下落などの下押し方向の要因の影響はあまり広がりがみられず、逆に、一時的な物価上昇要因が大きく効くようになっている。こうした変化の背景には、人手不足の高まり、価格・賃金の設定や価格転嫁に関する企業や消費者の考え方の変化、インフレ予想の上昇などがある可能性がある。』

これはそうですよねって思いますし、こういう状況になっているのであれば超緩和を引っ張るのはリスクがあるよねって話になる訳で、「待つことのリスクは大きくない」とか2023年5月に植田総裁が内外情勢調査会で言ってたハトハト大宣言は今や過去の話ってことになるんですが、はてさて植田さんはこの「待つことのリスク」をどう考えているのでしょうかね。

この点は2023年に言ってたのをひっくり返すのはまあ可能な話なんで、逆にちゃんとひっくり返して頂きたい所ではあるのですがそういう勇気がありやなしや。


・やっと来ました「物価上振れリスク」

どう見ても抜刀斎です本当にありがとうございました。

『・@日米交渉合意、A企業の前向きな賃金・価格設定行動の維持、B物価上振れを踏まえれば、見通し期間前半に物価目標実現と判断できる可能性は、4月時点対比、高まった。2%を大きく上回るインフレが3年以上続く中、予想物価上昇率は2%程度に達しており、これが更に上昇しないか懸念される。』

でまあこれがどう見ても抜刀斎ですは良いんですけど、何気にここで重要なのはこの前に2つの意見があったことでして、これすなわち物価に関しては強気な人が3人はいる(誰かが2個書いていない限り)ということで、大本営は大本営なのでそう考えますと6打数3安打で物価に関して強い見方が入っている、ということになるのですな。


・ついでに財政からの押上げの指摘も

最後はこれです。

『・今後の財政政策が、物価押し上げに繋がらないかには、十分注意する必要がある。』

消費税率引き下げの場合は統計上のCPIは下げますけどこれまた強烈に物価の基調を引き上げますな。


次が『U.金融政策運営に関する意見』になります。

・最初の方は大本営なのでノーコメントで

『・経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる。そのうえで、こうした見通しが実現していくかは、不確実性が高い状況が続いていることを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要である。』

「これから関税の影響が出てくるはずだ」ってのも一種の予断ではないか説がありますが。

『・日米の関税合意によっても、「成長ペースが鈍化し、基調的な物価上昇率の改善がいったんは足踏みする」というメインシナリオは不変であり、通商政策やその影響を巡る不透明性は引き続き大きい。今は、現在の金利水準で緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりと支えるべきである。』

って言ってるんだが緩和的な金融環境を維持→円安に進みやすい→輸入中心のコストプッシュ→経済にマイナス、という説があるんじゃネーノと。

『・通商政策の影響が具体的にどう出てくるのか、各国のデータでなお確認できていないほか、米国の消費者物価と労働市場の動向によって、米国の金融政策や為替相場の方向性が大きく変化する可能性があり、もう少しデータを得たうえで政策判断すべきである。』

データを見たい、という話は分かるんだが「影響が出るはず」と言っていつまでも様子見して良いのは政策く金利が最低でも1%以上ある時に言えと思います(まあ普通に言って1.5%以上なら)。


・早ければ年内にもということはメインは来年なんだよな〜

4つ目の意見がヘッドラインになっていましたが。

『・米国関税政策の影響の見極めには、少なくとも今後2〜3か月は必要である。仮に、米国経済が想像以上に持ちこたえるようであれば、日本経済への下押しの影響も軽微なものにとどまると思われる。その場合、早ければ年内にも現状の様子見モードが解除できるかもしれない。』

影響の見極めが7月末起算で2〜3か月だったら別に「早ければ」ではなくても年内だと思うので、これ実はハトハトかはさておいてもチキンな意見ですよね。まあヘッドライン的には年内云々の方でネタにされていた気がします。


・そもそも今の日本の金利水準はクソ低いという極めて真っ当な指摘キタコレ

5つ目は実にいい指摘でして、

『・米欧と異なってわが国の政策金利は中立金利を下回っているとみられるため、今後も可能なタイミングで利上げを進めていくべきである。日米関税交渉の妥結に対して株式市場がポジティブな受け止め方をしている中、過度に慎重になって、利上げのタイミングを逸することにならないよう、留意する必要もある。』

これは仰せの通りで、今の政策金利が1%とか1.5%とかなら様子見引っ張るのも分かるんだが、国債買入も含めて強烈な緩和している、という点から考えないといけない、という大変に真っ当な指摘ですね。

次の意見は字数不足で何言ってるのか判然としませんが、

『・急速な利上げは日本経済に大きなダメージを与えるため、適時に利上げを進めることが、リスク・マネジメント上、重要である。』

後になって急速な利上げを強いられるリスクがある、って直球を書いた方が良いと思います、言いたいことはそういうことですよね。


・予想物価上昇率上振れリスクの指摘

『・金融政策運営を考えるうえでは、予想物価上昇率の今後が重要である。過去と異なり、今回の局面では企業業績と賃金の上昇を伴う形で物価と予想物価上昇率の上昇が続いている。米をはじめとする食料品やガソリンなどは、個人が価格水準を意識しやすく、値上がりを実感しやすいことから、予想物価上昇率を押し上げやすいと考えている。』

これまたその通りですわな。


・基調物価の説明をフェードアウトする布石キタコレ

これで8つ目に9つ目になりますね。

『・基調的なインフレ率が2%を大きく下回っている間は、政策判断にあたって実際のインフレ率よりも基調を重視することになるが、基調が2%に近付くにつれ、実際のインフレ率も重視する度合いが徐々に高まっていく。』

『・物価動向に関する対外コミュニケーションの中心を、「基調的な物価上昇率」から、「物価の実績と見通し、需給ギャップや予想物価上昇率」に変えていくべき局面である。』

つまりは基調物価はお気持ちだったということでワロスワロス。

『・基調的な物価上昇率は、特定の数値として示すことは難しいが、中央銀行が金融政策を運営するうえで、大事な概念である。』

ってのが10個目ということで頭数を上回ってしまいました(なおこの後も続く)のですが、基調物価に関する論議も行われていたのねという感じですが、このトーンは「基調的物価という説明が苦しくなった」というのを如実に示していて味わいがある。


・さらに踏み込んで物価目標達成来てねえかという指摘

抜刀斎だと思いますが抜刀斎じゃなかったらこれはエライコッチャ。

『・既に物価が上がらないノルムが転換し、中長期のインフレ期待も引き上がる中、物価上昇の二次的影響が生じやすく、基調的な物価の上昇が生じている。インフレに伴い家計の生活実感が下押しされ、物価の上振れリスクを重視せざるを得ない局面にある中、今や、物価目標の実現を見据えたコミュニケーションも念頭に置く段階に入ったと考える。』

まあここまで強気だと抜刀斎だとは思いますけどこれは威勢が良い。


・最後の方は債券市場に関してですが

『・10 年物国債利回りは足もと1%台半ばとなっている。経済・物価動向などを踏まえると、金融環境は依然緩和的であるとみている。』

『・日本銀行のバランスシートに関しては、短期金利のコントロールに支障をきたさないという観点から、その最適な規模とそこへの経路などを考える必要がある。』

後者って重要な話で、長期金利のコントロールの為に長期国債買っている訳ではないのだからこういう話になるはずなのですが、6月会合の感じは思いっきり市場配慮の話ばっかりだったのでなんかまあ政策委員会の方でも認識が混乱しているな、と思いました。

政府の方の意見はパスします。







2025/08/08

お題「今更総裁会見ですやはり政策に関する質問する方の全体のトーンが様変わりしていますよね」

なんか意味わからんが
https://www.47news.jp/12983823.html
自民政治改革実務者が辞表 献金巡る首相指示に反発か
2025年08月07日 19時25分共同通信

『石破茂首相が、企業・団体献金の受け皿限定を求める立憲民主党の呼びかけに応じ、政党支部の実態把握を自民幹部に指示したことへの反発が背景にある。関係者が明らかにした。』(上記URL先より、以下同様)

だそうなんだが、

『斎藤、長谷川両氏は、政治改革本部で、政治資金の透明性向上を図る制度設計の実務を担った。先の通常国会では、衆院政治改革特別委員会の理事として、企業・団体献金の禁止を主張する野党に対し「禁止よりも公開」を掲げて反対する論陣を張った。』

禁止より公開なのに実態把握には反発とは中々難しい・・・・・・


〇色々と渋滞していて恐縮ですが総裁記者会見の中では「何で利上げしないのか」が増えましたわな

まあアレです。
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250801a.pdf
総裁記者会見
――2025年7月31日(木)午後3時30分から約70分


・「物価の基調」が政策反応関数ならばそもそも物価そのものの見通し数値出すことに意味があるんでしょうか

弊駄文でも「どうせ2025年度の物価が上方修正されても26年度27年度が上がらんと意味ない」とか申し上げていた気がしますが、当然会見の割と早い段階でこれは質問されますわな。まあこの記者さんは回答がそうなるのを分かっていてわざと質問しているんだろうな、とは思いましたが。

『(問)(前半割愛)あともう一点、今回の展望レポートについてなんですけれども、25 年度の物価は上方修正されまして、26、27 年度は概ね同じとはいえ小幅に引き上がっているという状況であると思います。こうした物価の状況を踏まえまして、総裁としましては利上げの環境というのは整いつつあるというふうにお考えでしょうか。』

日銀大本営の屁理屈合戦をいつも見ていますと、まあどうせこういう見通し出してこういう屁理屈(=基調物価はまだ2じゃないから云々)を捏ねてくるというのはある意味自明なのですが、ソウジャイカンよというのがこの質問でありまして、現にこの日って展望の数字出た瞬間(はジャパン債券市場お昼休みだったので)為替市場が盛大に反応した訳で、日銀のコミュニケーションの中で一種の「日銀がお出しするヘッドライン」の物価見通し中央値というのを素直に受け止めればこうなりますわな。

でもって、当然ながら基調物価ガーという回答をする、というのが様式美ではあるのですが、まあ冷静に考えて見れば、「物価見通し」として出している物以外に「ザ・基調的物価」というのがあって、その数字を見ながら政策反応しています、ってんだったら、各委員が考える「ザ・基調的物価」を出してもらわんとダメじゃんだし、CPIの見通しを出すのはコミュニケーションを訳わからん状態にするだけだから止めたら、って話になるわけですな。

まあ当然ながら今のは極論というか大本営の屁理屈への上げ足取りでして、本来はこの「ザ・基調的物価」みたいな本来は「総合的判断」であり「経済主体の行動なども含めた状況を概念として言語化したもの」をあたかも計測可能な「ザ・基調的物価」があるかのようにして政策行動(要は利上げを渋る)を正当化するような屁理屈(しかも実際の物価が上昇してくると綻びが出てくるという詰めの甘い屁理屈)をこねている方がダメダメなので、コアやコアコアCPI予想出すのがダメって言う訳ではないんですけどねwwwwwwww

でまあこの質問に対するハトハト大先生の回答ですが、

『(答)どちらも今後出てくるデータを、予断を持たずに丁寧にみていきたいというお答えになりますけれども、(質問前半への回答部分割愛)それから、26 年度と 27 年度のインフレ、私どものインフレ率見通しが、少し 26 年、25 から 27(注 1: 会見では「25 と 26」と発言しましたが、正しくは「25 から 27」です。)ですね、上方修正になっている点に関するご質問だったと思いますけれども、25 年度分はかなり大きく上方修正になっていますが、これはほとんど、米を含みます食料品価格のここまでの上昇を反映したものでございます。これが若干の時間がかかるかもしれませんが、今後インフレ率としては低下に向かうというふうに予想していますので、このインフレ率の上方修正だけをもって、金融政策がどっち側に左右されるというような種類のものではないというふうに考えています。』

という説明になっているのだが、そもそも日銀ってこの3年ほどの間、アクチュアルの物価上昇に関して「供給要因だから/コストプッシュ要因だから」「今後は伸び率が低下する」と説明するも、次から次へとその供給要因あるいはコストプッシュ要因が手を変え品を変え続いて物価の伸び率が高止まっている訳でして、現実の物価見通し外しまくっていて、しかもインフレーションターゲットをやっている筈なのに、政策対応は不要です、って屁理屈こくのはやっぱりおかしいんじゃないですか、というお話で、インフレ率の上昇修正をしているのに政策に影響ないってのはさすがに酷いかと。

いやまあこれがせめて「おおむね横ばいとは言え前回引き下げた見通しが若干引き上げられており、従来よりも下振れリスクが低下(本当は今回は「上振れリスクが上昇した結果バランスになった」というのが正しい)しています。ただし現状ではまだ政策調整をするのが適切という判断に至らなかったということです」位にしておけばいいのに、「金融政策がどっち側に左右されるというような種類のものではないというふうに考えています」ってのはハトハトチキン音頭の大盆踊り大会にしか聞こえない訳で、特に今回の総裁会見はハトハトチキン音頭が過ぎるわ、とリアタイで聞いてて思いましたわな。


・ビハインドに関する懸念はそりゃまあ今回据え置きだから「今のところないです」になるのはしゃあないのだが

政策ビハインドに関する質疑です。最初のは先日(火曜日)にもネタにしたのを出すのでそこは再掲になります、出た順に引用しますが。

『(問)二点お伺いします。物価の見通しのところで 25 年を大きく上方修正されたと。ただ、食品価格の上昇については、徐々に減衰していくという見通しを示されています。これまでと同様に一時的要因が大きいということですけども、一時的ではない可能性については、従来よりも高まっているというふうにお考えでしょうか。その場合、日銀の対応が後手に回る可能性があると思うんですけども、その辺はどのようにお考えかというところも併せてお願いします。(後半割愛)』

食料品価格上昇の二次的波及効果、の面でこの質疑ネタにしていますので再掲ですが、回答はこうなっていまして、

『(答)まず、食料品価格の上昇について、一時的と判断してよいかどうかというご質問だったと思いますが、申し上げましたように、インフレ率という意味では、今後低下していくというふうに考えています。そういう意味では一時的である。ただし、ここまでかなりの上昇がみられ、消費者心理にも、これはどっちに影響するか難しいところでございますが、消費者心理を悪化させる方向に働くというケースもあるでしょうし、インフレという面ではインフレが長く続いてしまうという方向に働く可能性もありますが、消費者心理あるいは予想物価上昇率に影響して、そこから例えば基調的なところにも影響するというリスクについては、常に意識しながらデータをみていきたいと思っております。(後半割愛)』

ということで、二次的波及の話は回答しているのですが、政策ビハインドに関する回答はしていない(「意識しながらデータを見ていく」しか言ってない)訳ですな。でもってちょっと先の方になりますけど、


『(問)(前半割愛)二点目はビハインド・ザ・カーブについてです。先日、経済同友会の新浪代表から、トゥーマッチビハインドになることは良くないという声が上がりました。長らくデフレに浸かってきた国がそれなりの率のインフレを経験すると、米国や欧州など諸外国より、その上昇率の幅が小さくても、そうなったときに経済に与える打撃が大きくなるという可能性は考えられないでしょうか。現状のご認識と、ビハインド状態になることを防ぐために、不確実性が完全に晴れない中でも利上げするという判断があり得るのかどうかもお伺いできればと思います。』

これに対して、今はビハインドと考えていない(そりゃビハインドだと考えてたら中立金利まで必死こいて利上げしないと時すでにお寿司になってしまうから「ビハインドです」とは言わないけど)のは当然なのですが、じゃあどう回答したかという話でして、

『(答)(前半割愛)それから、二番目は、ビハインド・ザ・カーブになるリスク等に関するご質問ですが、まず、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、賃金が物価に影響し、物価が賃金に影響するというメカニズムは続いていますけれども、その中で、例えば、賃金がサービス価格に影響するという基調的物価をどんどん押し上げていくときにコアになるような部分が続いていますけれども、すごい加速しているというふうにはみていません。そういうことはビハインド・ザ・カーブに必ずしも陥ってないということの一つの大きなポイントかなというふうに思います。』

ということで物価上昇が加速するとは見ていないからセーフ、って言っておりまして、それ自体は理屈としてはわかるのですが、一方で欧米とはそもそも発射台が違うんだから欧米のようなインフレにならなくても、問題が生じてしまうのではないか、というのが質問の「長らくデフレに浸かってきた国がそれなりの率のインフレを経験すると、米国や欧州など諸外国より、その上昇率の幅が小さくても、そうなったときに経済に与える打撃が大きくなるという可能性は考えられないでしょうか」という話なんですが、じゃあその件に回答しているか、と言えば1ミリも回答していない訳ですな。

でもってこの回答はさらに続くのですが、日本の場合は物価上昇耐性が低いんじゃないの問題は華麗にスルーして次の論点の回答をしているんですけど、

『ただ、基調的物価が以前よりも 2%に近づいてきている中で、あるいは同時に予想物価上昇率もある程度高まっている中で、ヘッドラインといいますか、消費者物価総合の動きが、先ほどもちょっと申し上げたかもしれませんが、基調的物価に、あるいは予想物価上昇率に影響を及ぼしてしまうという可能性は、以前よりも注意してみていかないといけないのかなというふうに思っています。そういうことにも配慮しつつ、政策を決めていければなと思います。』

この点って今回の展望レポートをよく読むと(前述したように)物価のリスクは「中立に戻った」というよりも「上振れリスクの要素も強まったのでアグリゲートすると差し引きバランス」って事なのは明らかなのですが、なんか知らんけど総裁会見の説明ってこの「アクチュアルの物価が高止まりすることによる基調的インフレの上振れリスク」っていうのを明示的に説明しないんですよね。だからハトハトチキン音頭に聞こえてしまう訳ですけど。


とまあそういう訳でこの新浪さんの指摘ネタですがその後にも質問ありまして、

『(問)経済界からの声と利上げについてお伺いします。経済同友会の新浪代表幹事が一昨日、物価が非常に高い状況にあり、利上げしない理由が分からないと発言するなど、経済界からも利上げを求める声が上がっています。こうした声も踏まえて早期の利上げ、年内の利上げがあるのかどうかお伺いしたいと思います。』

質問の後半が残念感あるがそれはさておきまして、

『(答)これは先ほど来、いろいろご質問があってお答えしている点と重なりますけれども、現状は私どもが重視しています基調的な物価の動きは強くなってきてるけど、まだ2%には届いていないというふうにみています。従って、緩和的な金融環境を維持しているということであります。』

とあるように、ビハインドというのが露骨に出ている訳でもないが、「日銀の利上げ判断が遅れて物価が上振れするリスクはどう考える:的なテーマを練りこんだ質問は結構ありまして、でまあその結果として上記のように「これは先ほど来、いろいろご質問があって」になっております。

なので、今回の記者会見って全体の質問のトーンが「ところで何で利上げしないの」という感じになっていたのは結構違っていて、従来だと「利上げで住宅ローン金利ガー」とか「利上げで中小企業ガー」みたいな感じの質問って結構あったのですが、今回はその方向でのトーンが見受けれず、流石に参院選のインパクトがあった罠というのも印象にありました。

では続き。

『それに対する懸念としては、そんなことをしていると、どこか近い将来でビハインド・ザ・カーブになるんではないかという懸念だと思いますけれども、それもいくつかご質問があってお答えしたように、今のところそのリスクはそれほど高くないというふうにみているということでございます。』

ではそのリスクが高くない理由と、どういう状況になったらビハインドのリスクが高まるから、その点を注意したいという例示、というのが出てこないのが日銀大本営のいつものパティーンですが、この回答だともう「大丈夫なんだから大丈夫です」にしか見えませんな。

とは言いましても、先般来悪態ついておりますように、今の日銀の政策説明って「基調的物価」という何だかよくわからないものを政策反応関数にしている、という時点でまあクリアカットに説明する気は無いわけでして、いやまあ別に全部クリアカットに説明できるか、っていうと世の中そんな単純な話でも無いのは分かるんですけれども、「ザ・基調物価」が政策反応関数という闇鍋政策反応関数状態というのはさすがに如何なものかという感じがしますな。


・物価高がイシューになっているのに能天気に「基調物価」を振りかざしている場合なのか問題

という話に対して、物価高がイシューになっていますが云々という質疑も結構ありましたが、特に最後の方では「物価高がイシューになる中で「基調物価は2%に行ってない」って説明で世の中通ると思ってるのか」という火の玉ストレートが飛んできておりました。

『(問)先の参院選でもですね、物価高対策っていうのが最大の焦点だったわけですね。与野党からは給付金や消費税減税・廃止という話も出てると。しかしそういう政策っていうのは、むしろ景気刺激的であって、物価を上げるような、むしろ矛盾した政策なわけですけれども、本来であれば、一番物価高対策になる日銀の利上げというのが、あまり焦点にならないのはどうしてなのかということをお伺いしたんですけど。』

ですよねーーーーーーー

『まず先ほど同友会の新浪さんが利上げをとおっしゃったことに対して、総裁が先ほどご回答がありましたけれども、賃金と物価の好循環論とか、あるいは基調的インフレ率がまだ 2%を下回ってるっていうそういう説明と、今、世間で言われている物価高に対する何らかの対策をということの話に、非常に矛盾というか噛み合っていないご説明のように聞こえるんですけれども、そこはどういうふうにうまく整合性を持って説明されるんでしょうか。』

火の玉ストレートキタコレ。でもって回答ですが、

『(答)物価高対策として金融引き締めがストレートにきれいに当てはまるケースというのはちょっと図式的に申し上げますが、需要サイドからの強い圧力で物価が上がっているという場合だと思います。そうしますと、金利を上げることによって、過熱する景気を冷やしつつ物価を下げるということになるということだと思います。』

はい藁人形論法。

別に利上げしろというのは「引き締めをしろ」と言ってるのではなくて、「過剰な緩和による物価押上げ力をもう少し是正しろ」であるし、「過剰な緩和による通貨安からのコストプッシュ圧力を是正しろ」って話なのであって、利上げで需要を減らせと言うのは政策調整急げと言ってる人の中だってほぼ居ないじゃろというお話ですよね。ちなみにこの説明に触発されたというかその前の段階でもあったのですが、当然ながら円安に関する質疑あったし、何ならこの会見中に円安に飛んでいた訳で、もうこの藁人形論法な回答を初手に持って来ている時点でまともな答えにならないのですが以下読み進めますと、

『これに対して、現在の物価高のかなりの部分が供給サイドの要因によっている。このときに利上げで対応しようとしますと、どういうことになるかというと、必ずしも景気がものすごい過熱しているわけではないのに、景気を利上げで冷やして所得が減るから、例えば食料品に対する支出が減って食料品価格も下がるというルートになります。これは本当に望ましいかどうかということについて、皆さん、考え込んでしまうというところがあるのかなというふうに思っています。』

しねーよ、そんな利上げ今求めてないわこの藁人形論法野郎、ということですが、逆に言えば藁人形論法でしか回答ができない、という状態に陥っている(上記の質問に「基調的物価ガー」と回答しても回答にならんわなそりゃ)のは自覚しているから藁人形論法で逃げるしか無かったんでしょうな。


でまあ関連してもっと鬼質問で火の玉ストレートに石直球をミックスしたような質問が最後の方にありましてですね・・・・・・

『(問)ちょっと感覚的なお話で恐縮なんですが、日本銀行は国民の目にどのように映っていると思われますか。』

とは何ぞ、と思ったら・・・・・・

『というのも、参院選に象徴されるように、国民は物価がだんだん上がることを困ったことだと受け止めていますが、日本銀行は 2%インフレを目指していて、未だそこに届いてはいないと言っている。』

ときましたが質問のこの次の部分でリアタイで聞いてたので不覚にも大爆笑の発作が起きてしまいましたが。

『幸か不幸か、日銀のスタンスというのは国民にあまり認識されてないようにも思うんですけれども、』

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwこれはまさに鬼畜の指摘(絶賛していますので念のため申し添えます^^)

『どう映っているのか、どう映りたいのかというところに、思いを伺えればなと思います。』


もうこれは質問だけで立派な物件で回答の方は最早おまけなのですが引用だけしておきますね。

『(答)どう映ってるかという点、必ずしも的確に把握できてるかどうか分かりませんが、大まかにゼロインフレくらいのときから現在の状態になる中で、インフレ率と賃金上昇率、両方上がってるということは、必ずしも大きなマイナスであるというふうには考えられてないと思うんですが、しかし、両者を比較してみると、物価の方が大きめに上がっている。その要因としては、サプライショックの影響が大きかったということだと思いますが、そうした中でデフレの克服あるいは 2%インフレへの動きが続いているということが、国民への説明あるいはコミュニケーション、非常に難しくしてるということは、常に意識しております。』

とまあそういう訳で、アタクシがチェリーピッキングしていません、とまではさすがに自信は無いのですが、ゆうてまあ今回の質疑応答って全体的に見ますと「何で利上げしないんですか」のトーンが従来以上に強くて、やはり物価高批判の流れは強まっているなあという印象ですし、なんだかんだ言ってそこらを意識しだすとまたもジャガーチェンジする可能性もありますし、何ならそのジャガーチェンジする言い訳は今回基調物価の上振れリスクを丁寧に説明している展望レポート基本的見解の本文内に埋め込んでありますので、その辺りが今後どう作用して埋設地雷が火を吹くや吹かざるや、というのが注目される所ではありますな。

てなわけで今朝はこの辺で勘弁してもろていただいて。








2025/08/07

お題「6月議事要旨のバランスシートに関して多少の雑談です」

なんじゃこりゃ・・・・・・
https://www.asahi.com/articles/AST852V2HT85UTFK01DM.html
WHO脱退、脱炭素やDEIの廃止… 参政・神谷氏の主張に首相は
有料記事
安倍龍太郎2025年8月5日 18時50分

ここの所「時間の都合でこの辺で」を連発したので今日はそのケツ拭きで勘弁してもろて頂いてということで。


〇6月決定会合議事要旨から長期国債買入とかバランスシートのお話の補足

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250617.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2025年6月16、17日開催分)

『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の長期国債買入に関する話ですけどね。

長期国債買入に関する議論の部分の最後の段落が時間切れでできなかったのでそこから参ります。

『この間、一人の委員は、今後、国債買入れ額の着地点をどう設定するのかについては、日本銀行のバランスシート縮小の行方と 併せて、長期的な視点で検討する必要があると述べた。』

でまあ昨日(だけじゃなくて拙駄文の方では何回か)申し上げておりますように、QQEとかYCC政策というような大規模金融緩和措置を必要としない状況になった以上は、本来は債券市場の安定化がどうのこうのとかいう話をしていること自体が本末転倒であって、本来はこっちの話をしてから、ではそれに対して変なショックを与えないためにはどう移行すべきか、という話からもっていかないといけないんですよこの話って。

『別の一人の委員は、現状、超過準備はきわめて潤沢な状況にあるため、国債買入れの減額を粛々と進めて日本銀行のバランスシートを正常化させていくことが必要であると指摘した。』

とは言えアホみたいな額があるからどこまで減らすのかというのが皆目見当つかんけどまあ兎に角減らせっていう話になるのも仕方ないのだが、そもそも論としてバランスシートをどうするのかというのは短期金融市場における金利誘導をどのように実施するのか、という手段に影響しますので、市場における金利形成(つまりコールとか短期国債とかレポとかCPとかの金利体系や取引の形)に影響してくる話なので、そういうデザインはちゃんと考えて頂きたいんですよね。

『ある委員は、将来的に超過準備はある程度減少するにせよ、発行銀行券の残高と合わせると、長期国債を含め、それらに見合う相応の規模の資産が必要になるとの見解を示した。』

別に資産って短期の資金供給オペでも良いのですけれども、例えばの話日銀の資産サイドが全部短期の資金供給だとすると、調節技術上やたら高頻度のオペレーションをしないといけなくなるので、発行銀行券とかいう要求性払いだけど実際には長期滞留するコア預金みたいなものの見合いには長期国債でもよかろうという話なんですが、量的緩和長くなってしまってもはやその時の知見の継承がだいぶ怪しくなっているんじゃないかという気はしてまいりました。

『これに対し、別のある委員は、国債の買入れだけではなく、中長期の資金を市場に供給することも検討すべきであると述べた。』

中長期ってどのくらいの期間の話をしているのかが謎というか嫌な予感しかしませんが、そんなのどんなに長くたって3M以内くらいじゃろとしか言いようが無いのだが、もしかして2年とか5年とか考えているんだったらちょっとそれは緩和脳にも程があるとしか言いようが無い。

でまあ最後のところでは、

『そのうえで、この委員を含む何人かの委員は、中央銀行のバランスシートは、資産・負債の両面からわが国の金融経済に影響を及ぼし得るため、最適なバランスシートの規模や構成については、今後、多面的に検討していく必要があるとの認識を示した。』

という話になっておりまして、まあそれはそれで良いんだけど、資産の面から影響を及ぼし得るのであれば、中央銀行としては短期政策金利を必要な水準に誘導する、以外の目的でバランスシートを使うのは市場メカニズムを通じた資源配分の最適化に対して恣意的な介入を実施することに他ならないので、きわめて抑制的に対処しないとアカンじゃろ、という話になると思うんですよね。まあ過激派と言われればそうなんですけどワシ。

でまあ昨日出てたBBGの記事
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-05/SYSND8DWLU6800
日銀の金融機関への付利負担が急増、年内利上げ観測で財務悪化に注目
青木勝、氏兼敬子
2025年8月6日 6:00 JST

『日本銀行の金融政策運営で政策金利を操作する役割を担う付利制度。日米関税交渉の合意などを受けて年内利上げ観測が広がる中、金融機関への支払利息の急増で日銀財務が悪化する副作用に注目が集まる可能性がある。』(上記URL先BBG記事より、以下同様)

ってまあこの件ですけれども、単年度で日銀の期間損益が赤字だから云々って話をしているのはまあ比較的しょうもない話(なのであんまり読まなくてもよい)ではありまして、まあ日銀の期間損益が赤字だから日銀の財務が云々というのはそんなに問題じゃないと思うのですが、そうは言いましても物には程度というものがありまして、日銀が期間損益赤字ってことは統合政府で見れば財政を出しているのと同じ話なので、その額がまあ屁のようなもん(どの規模を屁と言うのかという議論はありますけど)なら大した話じゃないですけど、その額がそれこそ何兆円とかの規模になってきたときに、実は金融緩和とかしている場合じゃない状態になっていた、となるとその何兆円ってのの緩和効果が本来行うべき金融政策とコンフリクト起きる可能性ってあるじゃろ、っていうのは結構気になっております今日この頃。

でまあそういうのっていつややこしいことになるかと言えば。それこそ基調的なインフレが目標をオーバーシュートして上振れしてしまって引き締めしないといけませんぜとなった時な訳で、いやまあ欧米はバランスシート抱えながらガンガン利上げしてとりあえずインフレの方は収拾できたっぽく見えますが、日本のバランスシートって欧米の比じゃないので同じことできるのかというのと、まあこれは当然指摘されるのは「日銀財務の問題」がクローズアップされることで必要な政策ができなくなるんじゃないかという信認(つまり財務が問題なのではなくて財務のせいで適切な政策運営を行わない方での信認)問題の方が先にあるんですけど、まあそういうもろもろ考えたら「基調的物価が上振れするリスク」というのを再度ちゃんとリスク要因とは言え明示的に7月展望でパラフレーズしながら出してきた訳ですし、もうちょっと考えて頂きたいものだとは思いますし、その点から言っても「6月の時点で来年4月以降1年間の長期国債買入計画を決めてしまう」ってのはよろしくないとおもうんですよね〜。

でもってその財務の件って日銀は毎度こういう説明をしているんですけど、というのが記事にありまして、

『米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など多くの中央銀行が量的緩和の際に付利制度を導入している。購入する国債の利回りは通常、付利金利を上回るため、保有国債が増えれば中央銀行の収益は拡大する。一方、利上げ局面では金融機関への支払利息が増えて収益を圧迫する。

日銀が昨年12月に公表した試算では、政策金利2%など厳しい仮定を置いた場合、一時的に赤字が発生する可能性はあるが、債務超過にはならない。植田和男総裁は5月の国会答弁で、利上げ過程で赤字が発生する可能性に言及。長期的には保有国債が金利の高いものに入れ替わるため「収益が戻ってくる」と説明した。』(ここまで直上URL先BBG記事より)

毎度「長期的には保有国債が金利の高いものに入れ替わるため「収益が戻ってくる」」でだいたい済ませているんですけれども、逆にこの点を気にしているから長期国債の買入の減額を渋っているのではないか疑惑とか、大体からして基調的なインフレがオーバーシュートするようなときは「政策金利2%など厳しい仮定」とか言ってるけど1ミリも厳しくない過程だろ(だいたいからして本当の本当に物価安定目標が達成されていて経済成長が持続的安定的に続く社会だったら名目の中立金利ってどう見たって2%あるいはそれ以上じゃろ)という話でして、まあこの辺の話って現時点で思いっきり表だって言いにくい、というのも分からんでもないのだが、だからと言ってとりあえず微温的なスタンスで問題先送り、ってのやってると基調的インフレがオーバーシュートした場合に大変な惨状になるじゃろ、という方が机上の空論とも言い難くなっていませんか、と申し上げたい訳ですな、うんうん。


しかし日銀バランスシートに関してはここでまた面倒な論点があって、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250607a.htm
【講演】
業務からみた日本銀行
日本金融学会2025年度春季大会における講演
日本銀行副総裁 内田 眞一
2025年6月7日

先般の内田さんの講演の中で、まあこれ出たときにナンジャコリャとか言いながらネタにしましたけど、

『当座預金への付利とそのインプリケーション』ってところの第2パラフラフ以降になるんですけど、

『このことは、その後、技術的な金利操作の手段という意味合いを超えて、大きなインプリケーションを持つようになりました。ひとつは、金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。』(直上URL先の2025/6/7内田副総裁講演より、以下しばらく同様)

って話をしているのですが・・・・・・

『非伝統的金融政策の中心手段のひとつは、いわゆる「量的緩和」すなわち、国債の買入れによって長期金利を押し下げることですが、これを実行するのには、バランスシートの大きさとは無関係に短期金利をコントロールできることが前提になります。この点、量的緩和を実行している間は、割り切ってしまえば、金利をコントロールできなくても、ゼロ金利でもよいと考えることもできなくはありません。』

『しかし、量的緩和からの出口プロセスに時間がかかることはあらかじめわかっているので、その時に、大きなバランスシートを抱えながら、短期金利をコントロールできることが保証されていないと、こうした手段は採用できません。』(ここまで2025/6/7内田副総裁講演より)

という説明をおっぱじめていまして、単純に短期金利のコントロールだけみたらそうかもしれんですけれども、結局のところバランスシート政策を行った中銀は結構な勢いでバランスシートの縮小をしている訳で、「金利操作と切り離して」云々というのは通常のプラスインフレ状態で中立的な金利、すなわちプラスの金利を中心にした金利操作を行う際には他の問題が発生するじゃろ、って話なのですが、その論点をこの講演華麗にスルーしていまして、いやまあその辺は分かっているけどすっとぼけてスルーしているだけだとは思うのですが、巨大なバランスシート抱えながら通常の金利誘導の政策に移行できんじゃろという意識があんまり無いようにも思える所でして、うーん大丈夫なのか(特に基調物価が上振れるような局面において)と思うのでした。


でまあ話を戻して議事要旨に戻りますと政府の方面からの発言ってので引っかかるのがありまして、

財務省からの発言の中で、

『・国債買入れの減額は、債券市場の安定等に十分に配慮し、必要があれば状況に応じた柔軟な対応をすることを含め、適切に行われることを期待する。』

ってあるんですが、債券市場の安定等に十分に配慮っていうのはこれ読みようによっては政府が国債市場への買い支えを要請しているかのようにも読めるわけで、ちょっとどうなのよとは思いました。

ちなみに内閣府の方は、

『・日本銀行には、政府と緊密に連携し、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を期待する。国債買入れの減額は、市場との適切なコミュニケーションの下、状況に応じて、必要があれば柔軟な対応をお願いする。』

という言い方なのでまあこれは普通に無難にまとめているのですが、逆に考えてみれば財務省がちょっとアレな領域に踏み込んでしまっているような言い方(まあこれ自体は議論というよりも事務方謹製のステートメントの口伝みたいなもんでしょうから)をしている、というのは、4月以降の長期(というか超長期)金利の暴れっぷりに対して懸念しているということだし、まあそれだからこそ国債の市中発行の組み換えという通常ベースではあんまりやらんことを期初3か月しか経ってないのに実施した、ってお話ではあると思うのですが、この上財政出せ出せ音頭になるとどうなるんでしょうかねえとは思う所ですな、南無三。









2025/08/06

お題「6月決定会合議事要旨より少々」

今朝の日本農業新聞Webより
https://www.agrinews.co.jp/news/index/323934
2025年8月6日
[ニッポンの米]随契米キャンセル2・9万トン 農水省

随意契約米もさることながら高温被害に関しての方がアレでして、
https://www.agrinews.co.jp/news/index/323937
2025年8月6日
[農家の特報班]高温・渇水アンケート 8割弱が「生産量減る」

『日本農業新聞「農家の特報班」が高温・渇水の影響についてアンケートしたところ、全回答者の8割に当たる84人が「生産量が減る」と回答した。うち半数は「大幅減」としており今後、米や野菜、果樹、畜産、酪農と幅広い品目の供給量に影響が出る可能性がある。まとまった雨量を求める声が多く寄せられた。』(上記URL先より)

でもってこういうことのようです
https://www.agrinews.co.jp/news/index/323905
2025年8月6日
[農家の特報班]高温・渇水影響アンケート 産地打撃容赦なく 【読者提供写真 多数掲載】

うーん・・・・・・(涙)

とにもかくにも食料品価格云々がホットイシューの昨今ですので見つけたら弊駄文でも引き続きマクラのネタにはしていこうかとは存じます。


〇6月会合議事要旨にはいくつか味わいがある部分があったので少々鑑賞をば

総裁会見の続きとかそもそも展望レポート鏡しか見てねえだろとか色々なツッコミはあるのですが、何はともあれ来たものを捌くジジイなので。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250617.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2025年6月16、17日開催分)

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』からぼちぼちと味わいのある部分を鑑賞していこうかと思います。

・長期金利動向に関する議論があるのだが本邦問題が本丸じゃないのと思ってしまうのだが

『1.経済・物価情勢』の冒頭部分が国際金融資本市場なのですが、

『国際金融資本市場について、委員は、世界経済の先行きを巡る不確実性が引き続き意識されつつも、通商政策に関する各国間の交渉の進展や米国の堅調な経済指標等を背景に、市場センチメントは改善しているとの見方を共有した。』

6月中旬の話であることに留意しながら読みますけれど、この先の部分がですね、

『一人の委員は、注意を要する最近の動きとして、主要国における超長期金利の大幅な上昇を挙げた。』

ほうほうほう!と思ったのですが、

『こうした動きの背景として、この委員は、コロナ禍後に、多くの国でほぼ完全雇用のもとでの高インフレが続いてきたことから、財政の拡張が民間部門の投資をクラウディングアウトし、金利上昇につながりやすくなっている可能性を指摘した。』

うーんそういう経路での金利上昇ってもちろんあり得ない話ではないのですが、それってもっと大昔の時代のようにマネーがそんなに膨張しない世界での話なんじゃないかと思うのですよね。

『別の一人の委員は、国際会議等でも各国の国債市場の状況が議論の焦点となっており、海外市場における不測の動きが国内市場に波及する可能性にも注意を払わなければならない局面に入っているとの見方を示した。』

うーんなんと申しますか、海外発の云々よりもドメスティックな要因の方を気にしてよって話だし、ご案内の通りこのあと7月には参院選の情勢評価の報道を受けて超長期金利があがるわ3年辺りの物国BEIがピンポイントで急縮小するわというのがあった訳で、海外が―とかいう場合ではない気もするのよね。と思って国内の方でどういう話をしてますねんと思いますと、これがまた国内パートの方では、

『2.金融面の動向

わが国の金融環境について、委員は、緩和した状態にあるとの認識で一致した。ある委員は、わが国の金融システムは引き続き安定性を維持しているほか、市場センチメントも改善していると指摘した。』

ってあっさり味で終わっていて、まあこの会合では輪番減額計画の議論があるからそこで市場の話をしているというのはあるにしましても、過度な財政拡張懸念による国内長期金利の上昇についてイシューにならんのかね、とは思ってしまいました。まあ今回の会合ではどういう話になっていたのかは主な意見・・・では出なさそうな気もしますがどうなっているのやら。


・6月の国内経済の話は「まだ判断保留」ってのが多いのはそらそうよという感じですな

でもって海外経済の方はすっ飛ばして国内経済の話を見ますが、

『わが国の景気について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しているとの見方を共有した。多くの委員は、前回会合以降の経済動向は、4月の「展望レポート」の見通しに概ね沿ったものであるとの認識を示した。』

『米国の関税政策の実体経済への影響について、何人かの委員は、マインド指標は弱めの動きとなっているが、関税引き上げ前の駆け込み輸出の影響などもあって、これまでのところハードデータは底堅い動きを示していると指摘した。このうちの一人の委員は、4〜5月のハードデータは比較的しっかりしたものが多かったが、関税政策の影響はこれから顕在化すると考えられると付け加えた。ある委員は、米国の関税政策の直接的な影響はまだ表れていないものの、食料品価格の高止まりや関税政策によるマインド悪化などを背景に、わが国経済は、やや足踏み状態にあるとの認識を示した。』

まあこの辺の現状認識はそんなもんじゃろという話で、

『景気の先行きについて、委員は、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化するとみられるが、その後は海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくとみられるとの認識を共有した。』

6月会合は4月展望の見通しを継承しています、というかまあ7月展望もメインは4月展望の継承ですけどね。

『ある委員は、米国の関税政策の影響について、中小企業を含む幅広い業種へのヒアリング結果をみると、先行きの方向性を見出す材料が乏しい中で、判断を留保する先が散見されると指摘した。そのうえで、この委員は、こうした状況がセンチメントの下押し圧力になることは間違いないが、実体経済への影響の大きさについては、今しばらく時間をかけてみていかざるを得ないとの見解を示した。』

この辺は6月時点の話なのでまさにそうですなとしか言いようが無いですにゃ。

『複数の委員は、不確実性は依然として高いものの、米国の関税政策に伴う経済の減速圧力は、前回会合時点で想定していたほど強くない可能性があるとの見方を示した。』

お、6月時点で既に「複数の委員」が4月展望ほど悪くないのでは説を提唱。

『このうちの一人の委員は、自動車・鉄鋼業界等への影響は注視する必要があるものの、米国向け輸出ウエイトの低下や高付加価値製品への転換の動き等を踏まえると、産業全般への波及度合いは、これまでの想定よりも限定的となる可能性があると指摘した。』

この指摘も何回か出ていますな。ただまあ日銀大本営が急に憑依して考えた場合に、この自動車産業に関しては特に大手自動車メーカーさんの賃金設定ってのが賃金設定行動の中で影響力が結構あるので、そういう意味では直接的な影響だけではない形での企業行動への影響というのがあるんでネーノ、ってまあそんな話をしてくると思います。

『一方で、ある委員は、法人企業統計をみると、企業の稼ぐ力と賃上げ余力は改善しているが、中小企業に限ると賃上げと設備投資の両立が難しい様子が窺われると述べたうえで、日本経済は「賃上げと投資が牽引する成長型経済」へ移行できるか、スタグフレーションに陥るかの分岐点にあるとの見方を示した。』

この会合が最終回だった中村委員の発言の香りがだいぶするのですが、中村委員の「大企業だけではなく中小企業の生産性が向上して収益力上がらんと持続的な物価上昇と賃金上昇が進まん(ので緩和を継続して中小企業の生産性向上を支援する)」って理屈も分からんではないのですが、そもそも論として「2%の招待状」にあるように、2%物価上昇による原材料価格上昇に対して価格転嫁できないような競争力の無い企業とか、2%物価上昇による生活給支給のための賃金引上げができないような生産性の低い企業とかが不景気などの経済全般にかかわるような痛みを伴わずに自然に淘汰されていく(ので労働者の移動が大きな痛みを伴わずに進むことが期待される)、ってのが2%物価上昇の世界じゃろ、っていう話でもあったはずなんで、そこを1から10までケアしていくと過剰に拡張的な金融政策にならんのかね、とは思うんですよね。

いやまあこの件自体は目先の現世利益的にはあまり関係ない話かもしれませんけど、中村委員にこのあたりのバランスをどう考えるのか、というのを一度お伺いしてみたい気がします。


・個別項目:設備投資・個人消費・雇用所得環境

個別項目のポイントはまあこの3点でしょうから6月時点での評価を確認しておきましょう。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善傾向にあるもとで、緩やかな増加傾向にあるとの認識で一致した。』

でもって、

『複数の委員は、人手不足を補う投資などは今後も堅調を維持するとみられるが、関税政策を巡る不確実性に伴う投資マインドの悪化は注視していく必要があるとの見解を示した。』

『このうちの一人の委員は、この点に関連し、これまでのところ、とりあえず様子見という先はあるものの、設備投資の取り止めを決定したという話はあまり聞かれていないと述べたうえで、今後、状況が急変することもあり得るので、ミクロ情報を丁寧に捕捉することが重要であるとの認識を示した。』

『別の一人の委員は、企業のヒアリング情報では、米国の関税政策を受けても、@DXや効率化投資など、高水準の設備投資は継続的に実施する、A株主の期待に応えるため、収益増強のためには投資をしっかりと行っていく、とする企業が多いと指摘した。』

今後どうなるかはワカランチ会長、ってのはそらそうよという感じですが、トーンとしては暗くは無いですね。

『個人消費について、委員は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持しているとの認識で一致した。』

ということで消費ですが、

『ある委員は、消費者の節約志向がみられる中でも、マクロ統計からみた消費が腰折れしていない理由としては、政府の施策や賃上げへの期待、堅調なインバウンド消費などに支えられている面も大きいとの見解を示した。また、この委員は、今後、関税政策に伴う企業業績の下振れに関する報道が増えてくると思われるので、これが個人のセンチメントにどのような影響を及ぼすのか、みていきたいと述べた。』

まあ関税政策一発で急にマインドが腰折れするというよりは生活品価格の上昇の方が効くじゃろと自分の財布を見ながら思う訳ですが、「マクロ統計からみた消費が腰折れしていない」ってのは確かに謎(じっと財布を見る)でして、7月展望の時にどういう話になっていたのか気になりますな。

『雇用・所得環境について、委員は、緩やかに改善しているとの見方を共有した。』

でもって、

『複数の委員は、米国の関税政策の影響は、今年の春季労使交渉の妥結結果にはみられていないと指摘したうえで、今後影響が表れるとすれば冬季賞与からであろうとの見方を示した。』

ということで、米国の関税の影響が企業行動を下方屈曲させるか否かを見極めるためには冬季賞与と来年の賃金改定の動きを見たい、という理屈になるわけですな、まあここは順当ですが明示的に書かれたという点でほほーと思いました。

『この点に関連して、別の複数の委員は、企業のヒアリング情報では、人手不足に直面する中、米国の関税政策を受けても、引き続き賃上げに取り組むとする先が多いと指摘した。』

『一方、ある委員は、2025 年度の中小企業の賃上げ実施割合が前年から幾分低下したとの調査もあり、中小企業の賃上げ余力の低下が懸念されるとの見解を示した。』

『この間、一人の委員は、一人当たり実質賃金の前年比は足もとマイナスとなっているが、働き方改革が進んで労働時間が減少する中、時間当たりの実質賃金が上昇していることも、併せて評価する必要があると指摘した。そのうえで、この委員は、@労働生産性の改善が実質賃金にどの程度反映されているか、A生産性の高い企業への労働移動がどの程度生じているのか、といった観点から、労働市場の動向を注視していくことが必要との見解を示した。』

時間当たりの実質賃金上昇したとて別に仕事掛け持ちできるわけでもないので意味ないんですが、というのは無粋なツッコミですが(涙)、後半の注目すべき観点の話はまあそうですねと思いました。


・6月半ばの時点で現状様子見地蔵はまあそうじゃろという話ですが・・・・・・・

『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に飛びまして、

『以上のような金融経済情勢に関する認識 と長期国債買入れの減額計画に関する執行部説明を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。』

『まず、委員は、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について議論し、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す」という方針を維持することが適当であるとの見解で一致した。多くの委員は、物価がやや上振れているとはいえ、先行きの不確実性は高く、米国の関税政策や中東情勢に伴う景気下振れリスクがあることを踏まえると、経済情勢を見極めることが必要であり、現状の金融政策運営を維持することが適当であるとの見方を示した。』

そりゃまあそうじゃろという話ですが、

『ある委員は、@先行き、中心的な見通しに沿ったとしても、成長ペースが鈍化し、基調的な物価上昇率の改善がいったんは足踏みする姿を想定していること、A通商政策を巡る米国と各国の交渉は始まったばかりであり、大きな不透明性やダウンサイドリスクがあることから、今は、現在の金利水準で緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりと支えるべきであるとの見解を示した。』

この意見、Aの方はさておきまして、@って確かにそういう理屈が成り立つんですよね。メインシナリオでは基調物価が足踏みするって言ってるんだから。

ただし、これ毎度思うのですが、この理屈って実質的な金融緩和度合いが(名目の金融政策を維持する中で)どう変化しているのか、って話を抜きにして考えるのもこれまたおかしい話で、一方で基調的な物価が上昇を続けているという認識なのであれば、名目の政策金利を不変にしているというのは「金融緩和の追加措置」をしているのと同義ってことになるので、本当に現時点で最適金融政策になっているのか(据え置きによって過剰緩和になっていないか)、っていうツッコミをしたくなる訳ですよ。

まあ結局のところ、基調的物価と中立金利を足元の政策運営の説明に使って最適金融政策みたいな説明をおっぱじめると理屈がだんだん苦しくなってくる(大幅に前の時のように物価が精々1%の時ならこの説明はクソ便利だったのだが)訳でして、まあこの辺の説明はいちどリセットして組みなおした方がエエンチャウとしか申し上げようがないですな。

『別のある委員は、現在は、1月に決定した政策金利引き上げの経済・物価に対する影響を見守る局面であるとの認識を示した。』

結局「まあわからんからとりあえず様子見しますわ」というこの理屈で行く方が(頭悪そうに見えるからあんまりやりたくないかもしれないけど)まだ分かりやすいと思うんですけどね。

まあそれはさておき先行き政策。

『先行きの金融政策運営について、委員は、経済・物価の中心的な見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくという考え方を共有した。』

はい。

『そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要であるとの認識で一致した。』

これはまあ6月中旬だからこういう話になるのは順当で、7月会合でどういう話になったのかは注目したいので、「主な意見」で何出ますかねってな所ではあります。

『複数の委員は、堅調な賃金や若干上振れ気味の物価を念頭に置くと、通商問題が穏当なかたちで推移する見通しになってくれば、現在の様子見モードから脱却し、利上げプロセスの再開を考えることになるとの見方を示した。』

若干上振れ気味どころか見通しがこの1か月後に+0.5%も上がっていますがwwwwというのはさておきまして、複数の委員がこう言いました、ってのが6月時点で出てきている時点でまあ7月決定会合における総裁会見程のハトハトチキンではないというのが伝わる部分ですね。

『一人の委員は、不確実性の高さを踏まえると、利上げの動きは当面休止する局面と考えられるが、米国の政策動向によって再び利上げ局面へ回帰する柔軟かつ機動的な対応も求められるとの認識を示した。』

あら休止とか言ってる人もこうなんですね。

『ある委員は、インフレが想定対比、上振れて推移する中、たとえ不確実性が高い状況にあっても、金融緩和度合いの調整を果断に進めるべき局面もあり得ると述べた。』

物価が上がっているんだから緩和度合いが高まっている筈なのでその分の調整をするのが妥当、という理屈で攻めると大本営はどういう顔をするんでしょうか、ってのは見たい気がします笑。

『これに対して別のある委員は、わが国の経済については先行きの不確実性が非常に高く、下方リスクの厚い状況が続いていると指摘したうえで、企業業績や日米通商交渉の方向性がみえてくるのはまだ先であり、政策金利は当面、現状の水準を維持することが適当であるとの認識を示した。』

でまあ企業業績はさておき日米交渉がまあカツアゲトラ公対応としては穏当な線にとどまったのでさてこの方は7月にどういう見解になっているのか、というのも見てみたいですね(中々わからんと思うが)。


・長期国債買入減額は市場云々よりも本来は日銀バランスシートの問題

長期国債買入の件がこの会合ではあったわけですが。

『次に、委員は、長期国債買入れの減額計画について議論した。』

『委員は、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による長期国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切であるとの認識で一致した。そのうえで、委員は、先行きの予見可能性に配慮する観点から、減額方針を示す期間を 2026 年度末まで1年延長することが適当であるとの認識を共有した。』

そんな先まで決めうちする必要があったのか問題というのがあって、それこそ2%目標が前倒しで達成出来て、何なら物価のオーバーシュートが懸念されるようになった時に、長期国債を月額何兆円とか能天気に買っていていいのか問題が生じるようなことだってあり得るのですから、これはフォワードガイダンス政策の時間的不整合と同じ問題を起こす可能性がある、という点をもう少し皆さん考えた方が良いんじゃないの、と思います。

『また、柔軟性を確保する観点から、@来年6月の決定会合において、国債市場の動向や機能度を点検し、新たな減額計画の中間評価を行うこと、A従来同様、長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に買入れ額の増額や指値オペ等を実施し得ると すること、B必要な場合には、決定会合において減額計画を見直すこともあり得ること、を明らかにすることが適切であるとの認識で一致した。』

クソどうでもいいのだが何で金融政策決定会合の来年度の予定が7月会合なのに長期国債買入の来年度の予定が6月会合で決められるんだよと思いました笑。

でまあこうやって市場配慮の話ばっかりしているのですが、途中飛ばして抜刀斎の意見を見ますとなんと実は同調者がいたようで・・・・・・


・実は抜刀斎にちょっとだけだけど同調者がいた件について

『これらの議論に対し、ある委員は、2026 年4月以降も、原則として毎四半期 4,000 億円程度ずつ減額していくことが適切であるとの意見を述べた。』

議案出ていたのでこれは抜刀斎であることは明白。

『その理由として、この委員は、長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであり、可能な限り早く、日本銀行の国債保有残高の水準を正常化することが必要としたうえで、この点は、金融市場のショック吸収力を一刻も早く高める観点からも重要である との見解を示した。』

ふむふむ。

『また、この委員は、金融機関の金利リスクテイク余力の観点からは、国債の発行年限や変動利付債の発行規模が、将来的にどうなるかという点が大事であると指摘したうえで、日本銀行の国債買入れに対する市場の期待を高めるべきではないと述べた。』

本来長期国債買入は成長通貨見合いの長期資産を持っておくのが通常の短期市場金利の調節技術上便利だから行う物であって、それ以上のものを中央銀行の長期国債買入に求める、というのが財政ファイナンスの第一歩になる、というお話な訳ですよ。まあそれを忘れたアホウ議論が先の方にありますけど。

『これに加え、この委員は、国債保有残高を早めに減らしておくことにより、市場機能に悪影響を与えない範囲で、相応のインパクトがある規模の量的緩和(QE)を実施し得る余地を確保しておくことも重要であると付け加えた。』

これに対してなんと抜刀斎の同調者がいて、

『この委員の意見に関して、一人の委員は、市場の機能度はなお回復途上であるため、買入れ額を可能な限り早めに減らしておくという考えのもと、4,000 億円の減額ペースを維持することにも妥当性はあるとの見解を示したうえで、』

というのは一人いたのですが、まあ結論は

『市場への配慮やタイミングを考えれば、来年3月までは 4,000 億円の減額ペースを維持し、その後に2,000 億円に緩める案を支持したいと述べた。』

なので結局抜刀斎一人旅ではあるのですが、一応いたのねという話。


・だから中央銀行の国債買入を非常時以外の市場安定策に使うなと小一時間問い詰めたい

途中飛ばしてちょっと先に行きますが、

『このほか、委員は、先行きの目指すべき国債買入れ額などについても議論した。』

という話だが、

『何人かの委員は、市場参加者の中には、国債買入れの着地点は月間1〜2兆円とする声が多いと指摘したうえで、最終的な買入れ額を検討するにあたっては、様々な論点があるため、来年6月の中間評価に向けてしっかり考えていきたいと述べた。』

根本的に言ってることが間違っていて、中銀の国債買入を市場安定策に平常時に使うというのがダメダメなんですけれども、

『この点に関連して、一人の委員は、市場の安定性を確保する観点から、ある程度の額の国債買入れは続けていくべきであり、そうした安定性を犠牲にしてまで買入れ額を急いで減らす必要はないとの見方を示した。』

いやもうこれは突発性海原雄山になって「この意見を言ったのは誰だあ!(ガラッ)」ってなる話。単純にそれは財政ファイナンスです何言ってるんですかこの人は。

『これに対して、別の一人の委員は、1年後に改めて議論すべきであるが、国債買入れ額はゼロまで段階的に減額していくことが望ましいとの 考えを示した。』

んだんだ。

『一方、ある委員は、今後、例えば月間の国債買入れ額が1兆円程度にまで減少すれば、日本銀行の国債買入れが市場で話題になることもなくなると思われるため、買入れ額をゼロにすることに強く拘る必要はないのではないか、との見解を示した。』

それ今の国債残高を見てから言って欲しいんだよな〜。

成長通貨見合いとか、短期金融市場調節の観点からバランスシート構成を決めて、そこから考えるとだいたいこの程度の買入を行っていくと適切なバランススート構成になる、という観点からデザインすべき話ってのがもうすっかりどこかに行ってるな(一部のちゃんとした方を除く)って感じです。

『このほか、別のある委員は、この1年間を振り返ると、超長期債市場における需給バランス等、市場構造が変化した面もあり、1年後に改めて中間評価を行い、先行きの買入れについて検討する必要がある との認識を示した。』

という発想が既に財政ファイナンスなんですよね。別に売れとかそういう話している訳ではないのですが、それこそインフレ期待や基調物価が上振れしてガチの金融引き締めをしないといけないときにこの長期国債残高は大変な重荷になるんだから減らせるもんは減らせよと思うのですよね。従来はそこをいうのは杞憂民にも程があったかもしれませんがさすがにだんだんただの杞憂とは言い難くなっているように思えるのですが・・・・・(個人の感想です)

それに関連して今日はこんなのもしらっと出ていましたね
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-05/SYSND8DWLU6800
日銀の金融機関への付利負担が急増、年内利上げ観測で財務悪化に注目
青木勝、氏兼敬子
2025年8月6日 6:00 JST

ということで、バランスシートの話はちょっと明日に続くかもしれません。今朝は時間の都合上この辺で勘弁。










2025/08/05

お題「のんびりと総裁記者会見ですがベースはハトハトチキンな説明なんですけど・・・・・・」

まあこれがインフレ目標達成の世界じゃろという話で
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250804/k10014884421000.html
最低賃金 過去最大63円引き上げへ 全都道府県で1000円超に
2025年8月5日 0時58分

実際のCPIが前年比2%どころか3%超で推移していますし、食料品とかもっと盛大に上昇している訳でして、最賃の上げはちょっと威勢良すぎのような気もだいぶする(と言っても元々が低すぎたのを是正しているという事なんでしょうけれども・・・・)けど、まあ何はともあれ生活給の観点でのベースアップをきょうびできないような企業はまあ(ピー音)ってのが「2%への招待状」の内容なのですよ、ってな話なんじゃないかね、とは思う訳ですが・・・・・・・・・


〇総裁記者会見:これがまあハトハトチキン会見という受け止めになりましたけど・・・・

今回は政策変更も無かったのでぼちぼちとやっていきますが(汗)

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250801a.pdf
総裁記者会見
――2025年7月31日(木)午後3時30分から約70分

ご案内の通りでハトハトチキンという評価からこの日は円安ドル高が進行して海外時間になったら150円まで乗せやがりましてアイヤーって感じでしたが、先週末の雇用統計とトランプの発狂(トランプとしては通常運転)のせいで円安反転して良かったですねの世界になっておるわけですが。

・見極めたいとされる関税の影響に関して「わからないけどこれから出てくるはず」ではハトハトチキン解釈だわさ

今回の会見って金利に関して変更は無いですし国債買入は前回やった後なので話題無し、ということになりますと関税の影響と基調的物価の話になるのはまあ順当ではあったのですが、その関税の影響に関する質疑が前半多かった感じでして、最初の幹事社からの質問のうち一つは関税の影響云々なのでそこから始まります。

『(問)幹事社から二点質問させて頂きます。一つ目は、日米の関税交渉がまとまり、日本経済にとって不確実性が低下したと、総裁も大きな前進という発言ありましたが、関税措置が不確実性が低下した一方で、関税措置が日本経済に与える影響がなかなかみえない状況です。次の利上げに向けて重視して確認したい点はどういった点でしょうか。(後半割愛)』

この回答ですけれども、

『(答)まず関税措置の影響のところのご質問ですが、ご指摘頂いた通り、先日の日米間の関税交渉の合意は、わが国経済を巡る不確実性の低下につながると考えています。それでも、いったん成長ペースが今後鈍化し、基調的な物価上昇率が伸び悩むという私どもの中心的な見通しに大きな変化はありません。』

メインシナリオは4月に下げたものをそのまま踏襲していますからね。

『また、これまでより低下したとはいえ、各国の通商政策等の影響に関する不確実性はなお高い状況が続いています。』

では何を重視して確認するのかと言えば、

『こうした中、私どもとしましては、これまで同様、経済・物価情勢が改善し、基調的な物価上昇率が高まっていくという見通しの確度やリスクを確認しながら、先行きの利上げの是非やタイミングを、毎回の決定会合において適切に判断していく方針です。』

言われんでもわかっとるわという話なんですが、利上げ云々ってのを入れておかないとハトハト音頭感が強まるから、ということで入れてるんだろうなあとは思うのでして、この続きが、

『その際、通商政策等の影響が各国の経済や国際金融資本市場にどのように表れてくるか、また、そのもとでわが国企業の賃金・価格設定行動における積極的な動きが途切れることがないかどうかといった点をはじめ、内外の経済・物価・金融情勢を幅広く丁寧に確認してまいりたいと考えています。(後半割愛)』

なんか碌すっぽ回答になっていないのですが、結局のところ「わが国企業の賃金・価格設定行動における積極的な動きが途切れることがないかどうかといった点」というのを見極める、という話になりますと、それは賃金について言えば冬季賞与と来年度の賃金設定、というエライ先の話なりますな。

でもって「じゃあ時期はいつなんだ」と次の方が質問するわけでして、

『(問)アメリカの関税政策の日本経済への影響について伺いたいんですけれども、こちら今後見極めていく場合にですね、大体どのくらいの期間を要するというふうに総裁はお考えでいらっしゃいますでしょうか。大体これ 3 か月くらいで分かるものなのか、それとも半年、1 年くらい要するものなのか。あとですね、影響を見極めている間につきましては、こちら利上げだと金融政策変更の決断というのは難しいということになるのかどうかということでご認識を伺います。(後半割愛)』

その回答。

『(答)どちらも今後出てくるデータを、予断を持たずに丁寧にみていきたいというお答えになりますけれども、アメリカの関税政策の影響につきましては、もう少し詳しく申し上げれば、これまでのところ特に駆け込みとその反動の動きが何回にもわたって続くということが起こって、非常にデータがみにくくなっているかと思います。』

これを言い出すと結局やろうと思えば無限に引っ張れるし、逆にその気になれば無事なのが直ぐにも確認できる、という話になってしまう世界なんですけど・・・・・・・

『ようやく、少なくとも関税率のある程度の部分が落ち着きどころがみえてきたという点もありますので、今後ははっきりした影響が少しずつ出てくるという局面に入るかと思います。』

影響がたいして出なかった場合は「これから影響が出るはず」と言って引っ張れてしまう訳で、文字に起こすとまあ若干中和されますけれども、会見聞いていた印象ではこの調子で「これから影響が出るはず」となんかもう影響が出るのを待ち望んでいるかのような説明っぷりに聞こえましたし、まあそういう感じを会見場の皆様も受けたんだろうなという感じで、ハトハトっぽいヘッドラインが割と流れていた感じがしましたがどうでしたですかしら。

『それがどれくらいの期間、どの指標をみないと分からないのかという点については、現時点ではなかなか確定的なことを申し上げにくいなと思います。早めに大きな影響が出て、それでなかなか大変だというふうに判断がつく場合もあるでしょうし、なかなか影響は出ない、しかし本当に出ないかどうか時間をかけてみるっていう場合もあるでしょうし、そこは予断を持たずに丁寧にみていきたいと思っております。(後半割愛)』

でもってこの「なかなか影響は出ない、しかし本当に出ないかどうか時間をかけてみるっていう場合もある」ってのがまさにハトハトチキン音頭キタコレという感じで、これが会見質疑の実質2発目に出てきたのでそりゃハトハトチキン音頭キタコレとなってしまう訳でして、折角展望レポート基本的見解で全体のメインシナリオ自体は変えてないけど、従来「足もとの物価上昇はコストプッシュでワンオフだから対応しない」の一点張りだった足元の物価上昇へのスタンスを「二次的効果による上振れリスク、メインじゃないけどリスクだよ」という形で一歩としては小さな一歩ですが、アクチュアルの物価上昇をネグっている訳ではない、というスタンスを見せた(「コストプッシュは一時的」で切り捨てていたのだからそこそこ重大な転換である)というのを全部台無しにする勢いでハトハトチキン音頭を踊りだしてしまいました、って話な訳ですわよ。

いやさあ、せめて企業の賃金設定行動について言えば「来年度に向けた賃金設定が今年度同様に続くのか」でもいいですし、もうちょっと積極的に言うなら「来年度だけではなく、中途採用市場やパートタイム従業員への賃金設定状況なども含め幅広く確認する」みたいな感じで説明できんのかと思うわけですな。

まあアレです、「なかなか影響は出ない、しかし本当に出ないかどうか時間をかけてみるっていう場合もある」ってのは賭博黙示録カイジ(でしたっけ)の利根川幸雄の名言(迷言)「つまり我々がその気になれば金の受渡は10年後、20年後ということも可能だろう・・・・」をアスキーアートと共に思い出してしまうという程度にはワシの頭はネットミームに毒されているもんで、益々そう思ってしまうのかも知れませんけどねwwwwwwww


とまあそういう訳で冒頭の2発でハトハトチキン音頭キタコレだった訳ですが。


・基調的物価に関しては色々と聞かれているのですが、そもそも「基調的物価」とは何ぞやという整理が必要ですわな

幹事社のもう一つの質問は基調的物価、ということでまあ今回のテーマを網羅している訳ですな。

『(問)(前半割愛)二点目は、基調的な物価について伺います。足元のインフレ率は 3%を超え、この展望レポートでも、物価見通しを引き上げたかたちです。参議院選挙でも物価高対策が焦点となる中、前回と比べて基調的な物価は高まっていると考えているでしょうか。』

この回答がクソ長いんですよ。

『(答)(前半割愛)次に、基調的な物価についてですが、これの評価に当たっては、いつも申し上げていることですが、各種の物価指標や人々の物価観を示す中長期的な予想物価上昇率、更には物価変動の背後にあるマクロ的な需給ギャップや労働需給、賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報をみたうえで総合的に判断していく必要があります。』

という事なのであれば、それっていうのは何らかの計測可能な数値なのではなくて、「経済物価情勢を全般としてみた場合に今世の中が考えている物価上昇率の定常状態がどの程度の水準にあるのか」すなわち中長期の期待インフレ率とほぼ同義に近い、という話になる(実際問題として内外情勢調査会での総裁の説明では後半で中長期合成期待インフレ率を基調インフレとした説明をしていました)ので、まさに「総合判断」の話であって、なんかの数値をアグリゲートして加工してどうのこうの、という物ではない筈なんですよ。然るに植田総裁の説明ってここからがイミフでして、

『より具体的に少し申し上げますと、一時的な変動の影響を受けにくい物価指標、例えば加重中央値やサービス価格のトレンドあるいは家計や企業、エコノミスト等の予想物価上昇率に関する指標等をみますと、なお 2%を下回っています。しかし、緩やかな上昇傾向を辿っています。』

という風に具体的な経済指標やらサーベイ指標やら、というようなものを挙げていて、この説明だとまさしく計測可能な「ザ・基調物価」みたいなのがあるかのような説明になってしまう訳ですよ。

でまあそういう説明を従来からしているから(それこそ黒田末期に登場したコアコアCPI見通しを出したのも「ザ・基調物価」の一環みたいなもんでした)、今回はまあそこまででもないですけど、毎度毎度「基調物価はどの水準にあるんですか」というような話をする訳ですし、そもそも論として植田さんも基調物価を精緻に計測しようみたいなニュアンスの話をしたがるので、どうしてもその「ザ・基調物価」の方に話がいきやすくなるわけですよ。

でも、「日本経済のアクターの皆さんの経済活動のベースになっている物価観がどの程度か、というのが実際の物価やら企業行動やらサーベイやらを見て行って2%辺りで安定しているんじゃないかなあと判断できる経済物価状況」が基調物価2%だというのであれば、話がだいぶ違ってくる訳で、結局お前らどっちなんですねん(普通に考えたら総合判断だが)というお話なんすな。まあこの辺をもうちょっと整理して頂きたいもんです、とはおもいました。

というアタクシの能書きはさておきまして続きに行きますと、

『また、労働需給は引き締まった状態が続いており、こうしたもとで、賃金上昇を販売価格に転嫁する動きも継続しています。こうした点を踏まえまして、基調的な物価上昇率は引き続き 2%に向けて緩やかに上昇しているというふうに判断しています。』

という説明をしている訳で、基調物価って総合判断だと思うのですよね。まあその総合判断に緩和政策の調整が紐づいているのが現状な訳ですが、そうなりますと今度は展望レポートでコアCPIとコアコアCPIの見通しを出していること自体に何の意味がありますねんという話にもなろうかと思いますが、その件に関してはまたなんかの機会に考えたいなとは思います。


でもって先行きですが、

『先行きについては、経済の成長ペース鈍化などの影響を受けて、基調的な物価上昇率はいったん伸び悩むことが見込まれます。』

ほーん。

『しかし、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムは維持され、その後は、成長率が高まるもとで、人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、基調的な物価上昇率は、2%に向けて徐々に高まり、見通し期間後半には物価安定目標と概ね整合的な水準で推移すると考えています。』

ということで、まあ質問に対する答えがクッソ長い次第なのでした。


・とは言え基調物価が総合判断だと腹を括っていないのでこういう説明になるのよね

ちょっと先の質疑になりますが基調的物価に関しては質問が多い訳で。

『(問)一点目はですね、基調的物価についてお伺いします。伸び悩んだ後にまた回復する見通しということですけれども、今現状、総裁の認識としては既に伸び悩んでるような状況なのか。次のですね、利上げの判断をするときは伸び悩んでる状況であっても回復に向かうと確信ができれば利上げをするのか、それとも 2%にですね、持続的・安定的にアンカーすると確信を持てたら次の利上げに踏み切るのか、その考えについて教えてください。(後半割愛)』

まあ質問の方にも微妙に突っ込みたくなりますがそこは割愛して回答を見てみますとですね、

『(答)まず前段ですけれども、基調的物価の現状ですけれども、まだ関税の影響を受けて足踏みするという局面には入ってなくて、ごくゆっくりですけれども上昇が続いているというふうに思っております。』

ここの説明もまあ謎説明でして、もし「総合判断」なのであれば、そもそも4月の展望の時点で経済の見通しを引き下げてリスクを下方にティルトしているんですから、その時点で基調的な物価には下方圧力が掛かるという話になるんですが、一方で基調的物価は上昇が続いている、という判断になっているのはじゃあ何でですかってのを要因分解して頂きたいわけですわ。

まあその回答を出すとなると多分日銀的理屈を捻れば「インフレ期待が徐々に上がっているから経済の不透明要素を打ち消している」というのと「実際にはまだ経済が落ちていないので(ただし消費の判断は今回の展望で引き下げになっている)問題ない」という話になるのか、その合わせ技なのか、って話になると思うのですけどね。

『それから、基調的物価と今後の政策との関係ということでは、本当にそれが 2[%]に定着するまで待って動くというのではなくて、2[%]に到達していくという道筋、今でもそういう見通しを持っているわけですけれども、それの確度が上がるとか、見通しに自信が持てるということになるかどうかという、それもいろんな段階がありますが、ことの方がポイントになるかと思います。』

って話をしているのだが、これも結局のところ「基調的物価が2%に達している」という状況の定義がフワフワしている(ように見える)からこういう話になるのであって、「基調的物価が2%で安定している」という状態は「物価安定目標が達成できている」というのを同義であって、物価安定目標が達成出来ている段階では短期政策金利は中立金利(モチのロンだがこの数値にも幅があるけど普通に考えたらトレンドインフレが2%なら政策金利も2%じゃろというお話)に達していないと過剰緩和による好ましくないインフレ上振れを招くことになるんだから、「2%に定着するまで待ってから利上げ」はどこからどう見たってあり得ない話で、そういう質問が飛んでくること自体がナンジャソラになるんですよね。

でもこういう質問が飛んでくる、というのは結局のところ「基調的物価」という一種の計測可能な物価指数のようなものがあって、その数値と2%物価目標達成は必ずしもイコールではない、というような認識になっている、というかそういう説明を日銀がしているからこういう質問が飛んでくる訳でして、もうちょっとこの「基調的物価」の概念をきちんと整理しないといけないと思うのでした。

まあ2%なんてとてもとても、という状態ならばその辺フワッとしたままでもよかったのでしょうけれども、実際問題として物価目標2%だってもう達成してるんじゃないか(ワシはそっちの説を取りたいがまあそれは少数派オブ少数派だという自認はしてます笑)という考えだってできないことはないというような状態で、少なくとも物価目標達成は近いという状態になる中、この「ザ・基調的物価」はコミュニケーションをややこしくするだけのことにしかなっていないような気がします(個人の感想です)。

ただまあ一方で最後の方の質疑では、

『(問)今の質問と重複するのですが、基調的な物価上昇率につきましては、今後関税の影響でいったん伸び悩んだ後に徐々に高まっていくというふうに言っておられまして、外からみえない基調というものがですね、今後複雑な動きをしていくという局面に入るということだと思うんですけれども、総裁はこの基調的な物価上昇について、そういった局面ではより丁寧にですね、より具体的にもっと分かりやすく説明しなきゃいけないというふうにお考えなのか、その必要性をどのように感じておられるかお願いします。』

「外からみえない基調というものがですね」という辺りがいい感じのイヤミになっていますな^^。

『(答)基調的物価上昇率という概念、大事なんですけれども、なかなか分かりにくいし、データでなかなかきちんとみることができない中で、説明を工夫しないといけないなということはずっと思っておりまして、従って今日の冒頭のご説明でも、やや具体的に基調的物価上昇率の、そのものではないですが、それに近いインフレ率と思われる変数いくつかの動きについてご説明したりしました。こういうことは一段の工夫を重ねつつ続けていきたいと思っております。』

って説明になっていて、まあ経済学者というかエコノミストというか、そっちの系統だとどうしても「総合判断です」って話にならないで計測を精緻化しようというような方向に話を持っていきがちなんだよなーって思うのでした。



・食料品価格上昇の今後と二次的影響について

この点も質疑が幾つかありまして、

『(問)二点お伺いします。物価の見通しのところで 25 年を大きく上方修正されたと。ただ、食品価格の上昇については、徐々に減衰していくという見通しを示されています。これまでと同様に一時的要因が大きいということですけども、一時的ではない可能性については、従来よりも高まっているというふうにお考えでしょうか。その場合、日銀の対応が後手に回る可能性があると思うんですけども、その辺はどのようにお考えかというところも併せてお願いします。(後半割愛)』

しれっと「政策がビハインド」の質問をちりばめているのが芸が細かい(^^)。

『(答)まず、食料品価格の上昇について、一時的と判断してよいかどうかというご質問だったと思いますが、申し上げましたように、インフレ率という意味では、今後低下していくというふうに考えています。そういう意味では一時的である。』

ほう、というかまあそれがメインシナリオですね(なお「コストプッシュだから一時的」という阿保陀羅経を唱え続けて外しているんですけど)。

『ただし、ここまでかなりの上昇がみられ、消費者心理にも、これはどっちに影響するか難しいところでございますが、消費者心理を悪化させる方向に働くというケースもあるでしょうし、インフレという面ではインフレが長く続いてしまうという方向に働く可能性もありますが、消費者心理あるいは予想物価上昇率に影響して、そこから例えば基調的なところにも影響するというリスクについては、常に意識しながらデータをみていきたいと思っております。(後半割愛)』

とありましたが、後半でこのような良い質疑がありまして、

『(問)基調的物価の部分で先ほどですね、ヘッドラインの部分が基調的物価にこれからどういう影響を及ぼしていくかっていうところを、より一層注意してご覧になっていくというお話がありましたが、現状はですね、今の段階ではヘッドライン、消費者物価という部分がですね、いわゆる二次的な影響というかたちで、基調的な物価に影響を与えるっていう状況にはないというふうにお考えでしょうか。今の現状のとらえ方を教えてください。』

これは良い質問。

『(答)例えばここ 3 年くらいを振り返ってみますと、一つのメカニズムを申し上げれば、ヘッドラインのインフレ率が高いことがある年に、その次の年の賃金上昇率に影響を与えて、そうするとまたサービス価格に跳ねるというかたちで、だんだん基調的物価にも影響する、そういうメカニズムはあったと思います。』

というのを素直に認定している訳ですが、これだと「コストプッシュだから一時的」って話を連呼していたし、今でもメインシナリオでは連呼しているんだが、その説明との整合性は何ですかってなもんでして、大体からして「適合的期待形成」について以前は散々言っていたのですから、コストプッシュによる物価上昇が適合的期待形成を通じて二次的効果をもたらす、って話をすっかりネグって延々と「この物価上昇はコストプッシュだからネグって良い」という話にしていたのは何だったんですかと小一時間問い詰めたくなるわけです。

まあ日銀とてアホウじゃないので初手からそういうことは承知のうえで「コストプッシュはワンオフだから」の屁理屈を捏ねていたんだとは思いますが、その屁理屈だけではマズイ(つまり物価上昇が実は定着していて何ならインフレ期待の上振れリスクもあるんじゃねえかというのを真剣に考えないといけない、という可能性について無視できない、ということね)というのはさすがに認識しているからこういう説明のトーンに変化したんじゃないか、とまあそう考えることも可能(あくまでも可能、ということであって実際に大本営が何考えているのかは大本営じゃないと分からんし、関税の影響の話がひたすら利根川幸雄状態だったのでハトハト音頭にしか聞こえなかったし、というのもあるのですよね。まあムツカシイです判断は)というお話になったりする訳です。

よって、この続きですが、

『従って、ヘッドラインのインフレが高いという状態が長く続くという場合にはある程度注意しないといけないと、基調的物価への影響について注意しないといけないということだと思います。』

となっていまして、まあ2%台前半とかなら2%でんがなみたいな話だとは思うのですが、なにせ全国CPI総合ベースで言えば前年同月比3%台(しかも殆ど3%台後半)のインフレが昨年12月から本年6月まで延々と継続している(1月は4%)訳でして、さすがにこれはネグれないって話になっているのかね、って感じで更問があったのですが、

『(問)そうすると今、足元の食料品価格を起因とするものっていうのも、大なり小なり、基調的物価の影響というところを与えているんでしょうか。』

『(答)それはですから、今後見通し通りに食料品価格が落ち着いてくるかどうかというところに大きく左右されるように思います。』

これ微妙に答えが噛み合っていないのだが、本来であれば「今後見通し通りに食料品価格が落ち着いて来たとしても全体の物価がさほど下がらない場合は基調的物価の高まりを意味するのか」って話になるのかな、とは思いました。


・ハトハト音頭なのですゴリゴリ問い詰められるとハトが飛んで逃げていくという面白い質疑

質疑のどちらかというと前半だったのですがこんなのがありました。

『(問)一点目は、ちょっとややこれまでの質問の繰り返しになってしまうかもしれないんですが、関税を巡る不確実性についてやや後退して、きわめて不確実性が高いというところからは、不確実性が高い状態が続いているという表現に変わっています。また、物価についても、25 年度、大幅に上方修正して、物価のリスクバランスも下振れリスクが強いというところから中立的にしていると。全体でみると、基調インフレが持続的・安定的 2%を達成する蓋然性は、前回展望レポート時よりは高まったと言えるのかどうか、そこをまず確認したいと思います。』

『二点目については、物価のリスクの部分で、食品価格の上昇が長引いて、予想インフレや基調インフレに二次的波及の影響を及ぼす可能性について、やや詳細に展望レポートでは記述がありますけれども、これはやはり物価の上振れリスクに、以前よりは意識が高まっているということでいいのか。その場合、経済の下振れリスクとそうした物価の上振れリスクの両方をみるということだと思うんですけれども、そのバランスというのは、前回の展望レポート対比で変化しているのか、その辺りをお願い致します。』

中々明快な質問である。非常にいいですね。では回答ですが、

『(答)一番目のご質問について申し上げれば、特に、関税を巡る不確実性が、最初に申し上げた日米交渉が合意に至ったこと、あるいはアメリカとその他の国との交渉がいくつか合意に至りつつある、至ったということ等を通じて、そこの部分の不確実性がある程度低下し、端的に申し上げれば、私ども、4 月と今回 7 月、展望レポートの見通しをそんなに変えていない、今年度のインフレ率のところ除きますと、あまり変えてないんですが、その見通し実現の確度のようなものは少し高まったというふうに考えています。』

見通しは変えてないが見通し達成(2%物価安定目標達成)の確度は少し高まったと。

『それから二番目のご質問は、物価と経済のリスクのバランスというお話だったと思いますけれども、経済の方は下振れリスクが続いてる、つまり、関税の行き着く先はある程度みえてきた部分があるけれども、その影響についてはまだこれから確認しないといけないということで下振れリスクに配慮しているということですが、物価についてですが、いったん 25 年度の物価見通し、中心的な見通しをかなり大きく引き上げましたので、そこからは物価の上下見通しはバランスしているという姿になっているということだと思います。ちょっと答えになってるかどうか。』

とまあこういう言われ方すれば更問はこうなりますよね。

『(問)そうなるとやはり、経済の下振れリスクの方が政策運営上は重視すべきという理解でよろしいでしょうか。』

ってこれは誰でもそういう質問をするわ。

『(答)いえ。金融政策上どっちのリスクをということですけれども、当然、物価の上振れリスクは、先ほど来申し上げてますように、見通しで基調的物価上昇率がだんだん2[%]に収束していくというところから更に上振れるリスクのことを意味してるわけですから、それは重視して考えたいと思いますし、』

あら〜重視して考えちゃうんだwww

『経済の下振れリスクの方は、物価にも影響しますけれども、ここから経済あるいは物価が多少下振れた場合に、やはり私どもの立ち位置としましては、政策金利が 0.5[%]の低い水準であるということは意識していないといけないかなということだと思います。』

しかも経済下振れを意識するのは当然だが「政策金利が 0.5[%]の低い水準であるということは意識していないといけないかなということだと思います」っていうのは金融政策が飛んでもなく緩和的であるという事を意識するって話だからやっぱり政策調整ジャン、という話になるわけでして、植田総裁の中でハトハトチキンが降臨したり隠れたりしてますなあ、とは思いました。


あとは物価高批判の話とかビハインドリスクとかの方面の質疑もあってそれはそれでおもろいのですが今朝は時間の関係でこの辺で勘弁してつかあさい。





2025/08/04

お題「展望レポートBOXも「メインは年末年始までの動きを見る」だけど「リスクは物価高止まり」という構成ですな」

ここまで来ると狂気の沙汰としか思えないんだが
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-01/T0BUSIGQ1YUJ00
トランプ氏、労働統計局長を解任−雇用統計を「政治操作」と非難
Skylar Woodhouse
2025年8月2日 4:05 JST 更新日時 2025年8月3日 16:22 JST
→雇用急減速示す雇用統計発表から数時間後、SNSに投稿
→政策に政治が介入するとの不安が市場に広がるとストラテジスト

ワイ昭和脳だからこういうのが滅茶苦茶危ないっていうのは感覚的に思いっきり思いますけれども、どう言語化すれば良いのかと思ったら厭債害債さんが言語化してくださいましたのでとりあえずそちらをご紹介しておきますわ。

https://ensaigaisai.seesaa.net/article/517281212.html
2025年08月02日
反知性を体現する大統領

なおワシが言語化すると「非理法権天」を持ち出して「トラ公は天道によって裁きを受けるべき」とか言い出すか、あるいは(該当する記述は自主規制によって削除されました)と言い出すか、という感じで言語化能力の低さに泣くorzorz


・・・・そういえばこんなのがあるのですが
https://www.boj.or.jp/about/organization/notice/orgnot250801a.htm
日本銀行の元役員の関与を装った不審な動画広告にご注意ください

AI作成だか何だかで著名人が語っているように見せかけるインチキ広告がよつべ君を見ているとホイホイ出てくるので実に怪しからん訳ですが、日銀ってのはまだお会いしたことないですね。


〇展望レポート基本的見解を一旦すっ飛ばして背景説明のBOXを鑑賞しますと政策金利調整時期は基本来年頭だがリスクは・・・・

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507b.pdf
経済・物価情勢の展望
2025 年7月

いつものようにとりあえずBOXを見ますが、お題は以下の通り。

(BOX1)各国の通商政策の動きとその影響:アップデート
(BOX2)不確実性と設備投資
(BOX3)最近の食料品価格上昇の背景とその影響


・米国の関税効果に関して:賃金設定への影響をみたいです、といういつもの結論になっております

まずは『(BOX1)各国の通商政策の動きとその影響:アップデート』 から参ります。最初の方の状況の説明部分は飛ばしまして途中から参りますと、

『米国の関税引き上げは、様々なチャネルを通じて、わが国経済に影響を及ぼす。前回4月の展望レポートで整理したとおり、具体的な波及経路としては、主として、@関税コスト負担の直接効果、A世界の貿易活動の縮小を通じた間接効果、B不確実性の高まり、という3つの経路が考えられる(図表 B1-2)。』

でもって、

『以下では、これらのうち、@直接効果とA間接効果について、足もとまでに利用可能となっているデータから、生じている変化を整理する21。』

とのことです。

『まず、直接効果については、輸出企業が関税によるコスト増加をどの程度、米国での販売価格に転嫁するかによって、負担の主体や割合は変わってくる。』

はい。

『すなわち、関税コストの増加分が、販売価格に完全に転嫁されれば、米国国内の消費者や企業が関税分を全て負担することになる(ただし、この場合、米国で競合する財がある場合、輸出企業の価格競争力は低下する)。一方、わが国を含む海外の輸出企業が、現地販売価格を変えず関税負担を輸出価格の引き下げで全て吸収すれば、輸出国に負担が発生することになる。当然のことながら、これら両者の中間的なケースもありうる。』

さいですな。

『この点、既に 25%の関税引き上げに直面している日本から米国向けの自動車輸出の価格動向をみると、(関税分を含まない)輸出単価や契約通貨建ての輸出物価は、4月以降、2割程度も下落した(図表 B1-3)。』

(ノ∀`)アチャー

『こうした動きは、日本の自動車メーカーは、現地の販売価格上昇による数量減を回避する一方で、輸出採算の悪化というかたちで収益を悪化させていることを示唆している。』

まあそうなんですけれども、さくらレポートだと「うちの製品は競争力あるから関税分は基本的に価格転嫁」とか言ってる企業の声みたいなのが上がっていたのに対して自動車メーカー関税モロ負担かよと思ってしまいました。

実際にはこの収益減によって賃金上げないだの部品メーカーに対して納入価格引き下げ圧力が掛かるだのという話になるとまさに日銀が懸念している、ということになっている「企業行動の後戻り」になってしまうのですが、ゆうて単純に販売価格下げっぱなしなのかねという点はどうなんでしょうかね、とは思いました。知らんけど。


『次に、間接効果は、関税引き上げによる世界貿易量の減少や企業の生産活動の停滞を通じて、わが国の輸出にも下押し圧力が及ぶ効果である(前掲図表5、図表 B1-4)。』

これが何で問題になるかというと、

『わが国の輸出は、資本財や自動車関連、情報関連など世界貿易量への感応度の比較的高い財が多いため、世界貿易活動のアップダウンは、わが国実質輸出の変動につながりやすいとみられる(図表 B1-5)。』

だそうで、

『このため、先行き、世界貿易量が、駆け込みの反動減の影響を受けながら減少していくとすれば、日本の輸出への下押し圧力も明確になっていくと予想される。さらに、各国一律の「相互関税」に加えて、今後、半導体等の分野別関税や高関税率となっているアジア各国への「相互関税」の上乗せ分の多くが発動されれば、わが国とサプライチェーンの結びつきが強い東アジア地域の貿易活動やITサイクルへの悪影響を通じて、情報関連を中心にわが国の輸出が一段と下押しされるリスクにも注意する必要がある。』

ということですが、「相互関税」がカッコつきになっているのが味わいあるなと思いました。だって別に日本から米国に関税上乗せしている訳でもないのに何が「相互」関税じゃヴォケと兼ねてよりワシも思っていたのですが、このカッコ付ってそういう意味ですよねwwwwww

でもってその結論ですが、

『以上のような米国の関税引き上げによる直接・間接の影響により、今年度のわが国企業収益は減益となる可能性が高まっている22。実際、2025 年6 月短観で今年度の経常利益計画をみると、非製造業は底堅く推移する一方、製造業は、加工業種を中心に減益計画となっている(図表 B1-6)。』

からの、

『このような見通しが実現する場合には、先行きの賞与やベースアップなど企業による賃金設定行動にも影響を与えうるだけに、今後の動向を注意してみていく必要がある。』

ということで、これ以前からの説明と同じではあるのですが、賃金設定行動の見極めが必要。といういつもの理屈になりますので、そうなると今年度入り後の業績を反映した冬季賞与の設定と、来年度の賃金設定に向けた動きを確認したい、という理屈になるので、そうなりますとまあ最速で12月ですが、まあ普通に考えて1月か3月の政策調整、というお話になるわけですな、うんうん。


・設備投資への影響は短観をあと1回か2回確認するという話になりますなあ

2番目の『(BOX2)不確実性と設備投資 』に参ります。

『本BOXでは、各国の通商政策に伴う不確実性の高まりが、設備投資に与える影響を点検する。』

ちなみにこの点、直近の支店長会議では
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rera250710.htm
各地域からみた景気の現状(2025年7月支店長会議における報告)

『各国の通商政策の影響に関して(注)、現時点では、設備投資について、不確実性の高まりを背景に投資の先送りや見直しを検討・実施する動きがみられるとの報告があった一方、IT関連需要の拡大期待に基づく能力増強投資や、人手不足対応や生産性向上を目的とした省力化・デジタル化投資などで積極的な投資スタンスが維持されているとの報告もあった。』(この部分のみ直上URL先の2025年7月支店長会議報告より)

となっています。

『まず、不確実性の高さを示す各種指標をみると、米国の関税引き上げの発表直後は、VIX指数(Volatility Index)が急激に上昇するなど、金融市場で不安定な動きがみられたが、足もとでは落ち着きを取り戻しつつある(図表 B2-1)。一方、わが国の新聞の関連報道等から作成した通商政策不確実性指数をみると、4月のピークから低下しているとはいえ、歴史的には依然として高い水準となっており、企業が支出行動を意思決定するに当たり、不透明感の強い状態が続いてきたことが示唆される。』

『7月 23 日(日本時間)の日米合意を受け、不確実性は一定程度低下するとみられるが、米国との通商交渉がなお妥結していない国も存在しているほか、米国における関税の価格転嫁の動向も含めた関税の経済的影響についても、不確実性は残っている。』

この辺は前提の話ですので次行きますと、

『次に、こうした通商政策を始めとする政策面の不確実性の高まりが企業の設備投資に与える影響をみるため、簡単なVARモデルを推計すると、政策不確実性指数の高まりは、金融変数の影響をコントロールした場合、多少の時間をかけて設備投資の下押し圧力となっていくことが実証的に確認できる(図表 B2-2)。』

ってことで『図表B2-2:不確実性の設備投資への影響(水準への効果、GDP寄与度、%ポイント)』ってのがあるのですが、脚注を見ると、

『(注)政策不確実性指数、VIX指数、実質GDP、実質個人消費、実質設備投資、総実労働時間、GDPデフレーター、無担保コールO/N金利(無担保コールO/N金利以外は対数値)からなるVARモデルを推計し、政策不確実性指数+1σショックに対する実質設備投資のインパルス応答を算出。推計期間は、1994/1Q〜2024/4Q。シャドーは、95%信頼区間。』

ということで分析しているんだが、1994年から期間取っているのは何でじゃ(いわゆる「3つの過剰」が段々大きな問題と認識されてきた時期からスタートしているってのが気になるんですよねワシとしては)とか微妙によくわからんところではありますが、まあよくわからん。

ちなみにネタにしませんでしたが、5月の終わりにこんなのが出ていまして、
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2025/wp25j04.htm
わが国における設備投資の金利感応度
― パネルLP-IVを用いた検証 ―

全文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2025/data/wp25j04.pdf
わが国における設備投資の金利感応度
― パネル LP-IV を用いた検証 ―

なお詳しく読んでいないのでこちらに関してはこういうのありますよというご紹介のみです。

でもって話を戻すと、

『この点、短観で今年度の設備投資計画をみると、3月調査から6月調査にかけて概ね例年のパターンに沿って上方修正されており、これまでのところ変調の兆しは窺われていない(前掲図表 19)。』

『この結果は、製造業大企業を中心にはっきりとした減益が予想されるなかでも、中期経営計画等で決定した案件を中心に、人手不足対応のDX投資や成長分野への研究開発投資などを積極的に実施するスタンスを変更していないことを示唆しているとの見方も可能である。』

可能である、という結びになっている時点で次の展開がお察しですけれども、

『もっとも、大企業の設備投資計画について、負のショックで減益等となった年度の修正の足取りを確認すると(図表 B2-3)、その時々のショック発生のタイミングにもよるが、総じてみれば、設備投資計画が6月調査時点で腰折れすることはまれで、年度後半にかけて下方修正されていくケースの方が多いことが分かる。』

キタコレ!!!!!!!!!!!

ということでございますので・・・・・・・・

『こうした過去のパターンを踏まえると、企業が、各国の通商政策や貿易交渉の今後の展開を睨みながら、現時点では設備投資に関する意思決定を先送りしている可能性も否定できない。』

ほうほう。

『こうした可能性も念頭に置いて、企業の投資スタンスの短期的な変化が表れれやすい各種の先行指標をみると、@工作機械受注・内需は、自動車関連メーカーからの発注減を主因に足もとで弱めの動きとなっているほか、A設備投資意欲DIも、このところ輸送用機械を中心に幾分低下している点には留意する必要がある(図表 B2-4)。』

ほう。

『また、本年7月の「地域経済報告(さくらレポート)」でも紹介されているとおり、企業ヒアリングでは、積極的な投資スタンスを維持するとの声が聞かれている一方、通商政策を巡る不確実性の高さから、設備投資計画の見直しを検討しているとの声や、実際に一部の能増投資を先送りしたとの声も聞かれている。』

さっき引用した部分が簡単なまとめですね。

『通商政策を巡る不確実性の高まりが設備投資に与える影響については、時間をかけて顕在化してくる可能性もあるため、今後のデータやヒアリング情報を丹念に点検していく必要がある。』

という結論でして、まあこれ自体はご尤もなお話なんですけれども、総裁会見(今日はそこまでネタにしている時間がないですがどうせ今回は急ぐ話でもないのでボチボチと成敗して参ります)では「通商政策の影響はこれから出てくる」という話を連呼するもんだから「こいつ政策調整やる気ないハトハトだわ」という話になってしまう訳でして、なんちゅうかコマッタモンダよなとは思います。

でもってですね、じゃあ本件に関してはどうですねんという話ですが、『図表B2-3:負のショック時の設備投資計画』という図に、

『(注)1. 短観ベース(全産業大企業)。2003/12月調査以前は、金融機関を含まない。
2. ソフトウェア投資額・研究開発投資額を含み、土地投資額は含まない(2016/12月調査以前は、研究開発投資額を含まない。また、2003/12月調査以前は、ソフトウェア投資額を含まず、土地投資額を含む)。
3. 過去の年度は、1997年度:アジア通貨危機、2000年度:ITバブルの崩壊、2008年度:リーマン・ショック、2019年度:米中貿易摩擦、2020年度:コロナ禍。』

ってのがあります次第でして、このグラフを見ますと9月短観と12月短観を見て判断(9月時点でコケれば9月で判断)って感じですので、これまた12月短観結果が出てくるのが12月決定会合の直前になるので、つまりは12月か1月には関税政策が設備投資行動に与える影響については分かります、ってお話になろうかとは思います。


ということでここまでのBOXは9月10月の政策調整を示唆しない内容なのですが・・・・・・・・・


・物価上振れリスクについて:

最後が『(BOX3)最近の食料品価格上昇の背景とその影響 』です。

『過去1年間の物価動向を振り返ると、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、昨年7月の+1.9%をボトムに本年6月の+3.4%へと、+1.5%ポイント、プラス幅を拡大してきた(図表 B3-1)。』

ちなみにこの間の日銀様の想定ですが、展望レポート・ハイライトを見ますとご案内の通りで、

2024年7月展望レポート
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202407.htm
物価は来年度以降2%程度で推移する

2024年10月展望レポート
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202410.htm
物価は来年度以降2%程度で推移する

2%に向けてダッシュ(2024/07)してみたりパラグライダーで着陸(2024/10)してみたりということで、物価安定目標を標榜しているのに全然お前の見通しに沿ってないじゃん何が物価安定じゃヴォケといったところですが、

『この間、米などの食料品価格の前年比は+2.7%(除く生鮮食品・エネルギーに対する寄与度+0.7%ポイント)から、+8.4%(同+2.2%ポイント)と大幅に上昇しており、ここ1年間の物価上昇率加速の大半は、食料品価格の上昇によって説明できることがわかる23。』

でもって脚注23なのですが、

『23 ここでの食料品価格は、消費者物価(食料除く生鮮食品・酒類)を指す』

ってことなので生鮮を除くベースの話をしているので。

『他方、消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比は、+1%台半ばで安定的に推移している。』

という話になっているのですが、そもそも生鮮の場合は天候要因のワンオフって説明をするのはまあ良いんですけど、食料品価格の上昇って言った場合にはそらワンオフなのかって話になると思うのですが先に進みまして、

『本BOXでは、最近の物価上昇をけん引している食料品価格上昇の背景とその影響について、考察する。』

ということで始まり始まり。

『品目別にみて、この1年間の食料品価格上昇に最も大きく寄与しているのは、米価格である。』

で??

『米価格は、消費者物価総合に対するウエイトでみて0.6%(1万分の 62)に過ぎないが、足もとでは前年比+100%近い上昇率となっており、本年6月の除く生鮮食品・エネルギーの前年比に対する寄与度は+0.7%ポイントと、大きな押し上げ要因となっている。』

だから2025年度見通しを+0.5も上方修正した、と言いたいんでしょうけれども別に4-6で急に前年同月比2倍になった訳ではなくてその前から問題になっていたと思うのですが・・・・・・・・・

『こうした米価格の上昇には、天候要因による供給量の減少と昨年夏の南海トラフ地震臨時情報に伴う需要拡大が重なって発生した超過需要が、直接的な起点となったことが指摘されている24。』

逆に言えばその時点で米価格のある程度の上昇を見通しに何で織り込んでなかったのあんさんら。

『やや長い目でみると、2022 年以降、輸入物価が大幅に上昇するなかでも、@肥料代や燃料費などの農業生産コストの転嫁があまり進んでいなかったことに加えて、Aパンや麺類など他の食料品価格と比較した相対価格が大幅に低下していたことも、最近の米価格上昇の背景にあるとみられる。』

日本農業新聞を読むと吉(日本農業新聞社の回し者ではありません)

『米以外の食料品でも、菓子類や調理食品など幅広い品目の価格が上昇している。』

さいですな。

『その背景を定量的に把握するため、輸入物価(飲食料品)、消費者物価(米類)、消費者物価(食料除く米類)、失業率ギャップ、中長期インフレ予想からなる5変数VARモデルを推計した。』

ナンジャソラと思いますがまあさて先に進みますと、

『ヒストリカル分解の結果をみると、米以外の食料品の価格上昇には、@米価格上昇の波及効果(具体的には、おにぎりや無菌包装米飯、すし弁当等の価格上昇)に加え、A輸入食料品の価格上昇も、チョコレートやコーヒーの価格上昇というかたちで大きく寄与してきたことが確認できる(図表 B3-2)25。』

『図表B3-2:米類を除く食料品価格の動向』ってのを鑑賞してみてください。

『後者の輸入食料品価格上昇の背景を詳しくみるため、主要な食料品の国際商品市況の動向を振り返ると、小麦や大豆の価格は、ロシアのウクライナ侵攻後に大幅に上昇したあと、足もとでは落ち着きを取り戻している。一方、コーヒーやカカオ等の価格は、気候変動による天候不順の影響もあってか、2023 年以降、急激かつ大幅に上昇している。』

『これらの国際商品市況の上昇を受けて、円建ての輸入食料品価格の前年比は、為替要因が下押しに作用するもとでも上昇傾向にあり、輸入物価全体とはやや異なる動きを示している(図表B3-3、前掲図表 43)。』

問題はこれがワンオフなのか不可逆なのかという話になるんですけど・・・・・・

『米価格や輸入食料品価格の上昇の価格転嫁が進んでいる背景には、食料品メーカーが価格設定スタンスを積極化させている点も影響しているとみられる。』

キタコレ!

『実際、短観の物価全般の見通しをみても、食料品製造業のインフレ予想は、2014 年の調査開始以降、全産業と概ね同様の動きを続けてきたが、2022 年以降は、企業が直面するコスト上昇を背景に、全産業をはっきりと上回るペースで上昇している(図表 B3-4)。』

『図表B3-4:物価見通し(短観・5年後)』ってのは面白いです。さらに・・・・・・

『また、食料品は、ガソリン等と並んで、消費者の購入頻度が高く、人々の注目度も高いため、食料品価格の上昇は、この間の短期的なインフレ予想の高まりにも寄与してきた可能性がある。』

思いっきり寄与してるだろ(何なら中長期インフレ期待にだって寄与していると思うが)。

『実際、景気ウォッチャー調査のコメントから機械学習の手法を用いて作成される「物価センチメント指数(PSI)」26には、』

『26 PSIの詳細は、日本銀行ワーキングペーパー「機械学習による景気分析―『景気ウォッチャー調査』のテキストマイニング―」(No.18-J-8)を参照。』

これはだいぶ前のですが
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2018/wp18j08.htm
機械学習による景気分析
―「景気ウォッチャー調査」のテキストマイニング―

(全文)
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2018/data/wp18j08.pdf

になります。これはちゃんと読んだ覚えがあんまりない(汗)。

『ガソリン価格と並んで、食料品価格も有意な影響を及ぼしていることが統計的に確認できる(図表 B3-5)。』

だそうで、

『PSIは、1四半期程度先の消費者物価に対して予測力を有することから27、この間の食料品価格の上昇・高止まりは、短期インフレ予想の上昇を通じて、小売店舗の価格形成にも何らかのインパクトを及ぼしてきた可能性が高いとみられる。』

まあそうじゃろって体感的には思いますが、これって要するに「食品価格の上昇は供給ショックによるワンオフなだけではなくて、短期インフレ期待の上昇を背景にした面がある」という指摘でして、

『こうした食料品価格の上昇が相応の持続性を持って進行してきた重要な要因としては、この間の個人消費の底堅さも指摘できる。』

しらっと「供給要因だけじゃない」という話の続きでド直球の「需要要因」の指摘が来ます!!

『一般に、食料品価格の上昇による実質所得の減少は、個人消費にマイナスの影響を及ぼす。』

『もっとも、2024 年以降の実質可処分所得の動きをみると、春季労使交渉を反映した賃上げと雇用者数の増加により雇用者所得がはっきりと改善してきたことが、食料品価格上昇による下押し効果を相殺している(図表B3-6)。』

キタコレですな。

『雇用者数の増加は、女性を中心とした労働力率の上昇によってもたらされている(前掲図表 22)。この点を詳しくみるため、労働力フローの分析を行ってみると、2020 年代以降は、非労働力だった人々が新規に労働市場に参入したことが労働力率の上昇につながっていることが窺われる(図表B3-7@)。一方、2010 年代の労働力率の上昇は、定年延長や再雇用制度によって、既存の労働力が非労働力化する動きが抑制されてきたことも影響している(図表 B3-7A)。』

からの、

『今回の展望レポートの中心的な見通しでは、食料品価格の上昇は本年度後半にかけて一巡していくと想定しているが、食料品は消費者の購入頻度が高いものであるだけに、それが家計のコンフィデンスやインフレ予想、および個人消費に与える影響には、引き続き注意していく必要がある。』

という結論になっていまして、これすなわちアクチュアルの物価が日銀想定のように下がらない場合に、インフレ期待の上昇を通じるのが多分メインだと思うのですが、物価上振れの可能性があるってのが基本的見解のリスク要因にもありましたし、結構今回ちゃんと考察している訳でして、まあこれが前面に出てくるには物価が上振れくらいしないとって話だとは思いますが、別の要因(物価高放置批判とか円安振れて対応求められるとか)によって政策金利調整を前倒しするときの「美しい言い訳」に使う準備は出来ている、という感じなんじゃないかと思いました。メインシナリオではないと思いますけど・・・・・・・






2025/08/01

お題「決定会合レビュー」

あらあらまあまあ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-31/SVYRELDWX2PT00
円が対ドルで150円台後半に下落、3月来の安値−日米金利差意識
清原真里
2025年7月31日 19:57 JST 更新日時 2025年7月31日 23:47 JST

『円は一時0.8%安の150円63銭まで下落した。日本銀行の植田和男総裁の会見で、期待されたほど利上げに積極的な姿勢が示されず、円売りが優勢となった。米国ではパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を受けて利下げ期待が後退し、日米金利差はすぐには縮まらないとの見方が広がっている。』(上記URL先より)

・・・・昨日は展望レポートの数字が出た所で円高債券安になりましたが内容を読んでいるうちに徐々に戻って記者会見がハトハトチキン音頭になった所で円安アイヤーとなった、とまあそんな展開でしてハトハトチキン音頭は近所の盆踊りでやってくれと思いました、まる。

てなわけで。

〇政策は据え置きなのだが抜刀が無かったですなあ

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250731a.pdf
当 面 の 金 融 政 策 運 営 に つ い て

『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した。』

『無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。』

>(全員一致)
>(全員一致)
>(全員一致)

・・・・・・あらま抜刀斎が抜刀するかもとちょっとだけ思ったりもしたのですが、全員一致で抜刀無しですかそうですかという所でして、まあここの「全員一致で据え置き」は何だ関税合意を受けても盛り上がりに欠けるのか、とまずは思う訳ですな。


〇展望レポート基本的見解:メインシナリオ部分はハト転4月から基本は同じなのだが物価周りの記述がドテンしておりまして・・・・・

以下は展望からの引用になります
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507a.pdf
経済・物価情勢の展望(2025 年7月)
【基本的見解】


・見通し数値を見て初期反応が特に為替に出たのはまあ話としてはわかる希ガス

いつももだと鏡から参りますが今朝は数字の方から。

2025 年度
GDP: +0.5 〜 +0.7 中央値<+0.6>
4月時点の見通し +0.4 〜 +0.6 中央値<+0.5>

コアCPI:+2.7 〜 +2.8 中央値<+2.7>
4月時点の見通し +2.0 〜 +2.3 中央値<+2.2>

コアコアCPI:+2.8 〜 +3.0 中央値<+2.8>
4月時点の見通し +2.2 〜 +2.4 中央値<+2.3>

ということで2025年度のCPIをドチャクソ上げてきまして、そりゃまあこの数字見たら特に海外投資家とか反応する罠、という話でして、展望レポートのこの数字が出たときに為替ちゃんが割とビビッドに反応しました(円債市場はお休み時間だったのもあるけど円債はそこまで後場寄りで盛大に下がったわけでは無いし何なら引けにかけて横綱のがぶり寄りモードで値を戻しておられた)。

・・・・・とは言いましても、アタクシ拙駄文で申し上げていましたが、2025年の数値を上方修正したとて、「これはコストプッシュで一時的」と言ってしまうと結局大本営屁理屈的な政策インプリケーションが無い、ということになってしまうので2026年度2027年度はどないですねんというのを見るわけでして、こちらご案内の通りですが、

2026 年度
GDP:+0.7 〜 +0.9 中央値 <+0.7>
4月時点の見通し: +0.6 〜 +0.8 中央値 <+0.7>

コアCPI:+1.6 〜 +2.0 中央値 <+1.8>
4月時点の見通し:+1.6 〜 +1.8 中央値 <+1.7>

コアコアCPI:+1.7 〜 +2.1 中央値 <+1.9>
4月時点の見通し:+1.7 〜 +2.0 中央値 <+1.8>

うーんこのという感じで、まあ予想通りに+2.0に行かない数字を出してきているのがポイントでして、これは4月に堂々1年延長した目標達成時期が引き戻されることはない、というメッセージになっている、と考えるのが妥当なんですが、ゆうて数字だけ見ると+0.1こちらも中央値ベースで上がっているので、先ほどの+0.5と合わせて海外投資家方面は「おー」と反応するだろうな、と思う訳ですよ。

2027 年度
GDP: +0.9 〜 +1.0 中央値 <+1.0>
4月時点の見通し:+0.8 〜 +1.0 中央値<+1.0>

コアCPI:+1.8 〜 +2.0 中央値 <+2.0>
4月時点の見通し:+1.8 〜 +2.0 中央値 <+1.9>

コアコアCPI:+2.0 〜 +2.1 中央値 <+2.0>
4月時点の見通し:+1.9 〜 +2.1 中央値 <+2.0>

ってここの数字はゆうてみれば物価安定目標達成した時の定常状態の数字みたいなもんが出てくるのが今のところの仕様であえいまして、先の方では達成するから大緩和状態の調整を進めていきます、という建付けになっているのでこれもまあ従来通り、となるのですな。


・・・・・でですね、アタクシ先ほど「2025年度の物価を何ぼ上げたとて、コストプッシュで一時的音頭を踊りながら説明する分には政策インプリケーション無し」と申し上げましたが、実はそうではない、というのが今回の展望レポートにおける割とポイントになり得る部分になっている、というのが味わいがあるという能書きを後の方で行いたいと思います。では鏡に参ります。


今回展望(再掲)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2507a.pdf

6月声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250617a.pdf

前回展望
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf

鏡の部分は前回展望と比較します。

・経済メインシナリオは4月のハトハト転換で出てきた「海外経済が減速」をそのまま踏襲して変化なし

『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(今回展望)

『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(6月声明文)

『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(前回展望)

数字をさらっと見た後は当然ながら鏡の比較をするのですが、物価の方がドテンドテンの連発で手前の数字を上方修正させるわリスクアセスメントを改善させるわ、というプレイをしているのですけれども、このようにメインシナリオの方が相変わらず「トラ公のせいで海外経済が減速して本邦企業の収益が下押しされる」というのを前提に置いた説明になっていますので、これすなわち2025年度の物価上方修正の意味ねえじゃん、とまあここを素直に読むとそういう発想になる訳ですな、うんうん。

基本的にはそういうことではあるのですが、一方で今回別の仕掛けがある件については先ほども申し上げましたが後述。


・物価のメインシナリオもこれまた全然変わっていないんですよね

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2025 年度に2%台後半となったあと、2026 年度は1%台後半、2027 年度は2%程度となると予想される。このところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(今回展望)

『消費者物価(除く生鮮食品)については、これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(6月声明文)

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2025 年度に2%台前半となったあと、2026 年度は1%台後半、2027 年度は2%程度となると予想される。これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。(前回展望)

まずはアクチュアルの物価に関してですが、数字の方はまあ数字の通りですって話でまあいいんですけど、基本的な見通しは「アクチュアルな物価は主にコメを起点とする物価上昇はコストプッシュで一時的」って説明になっていますわな。前回は輸入物価上昇があったが足元輸入物価上昇は一服しているので記載削除されているのも順当。

・・・でまあその見通しはその見通しでそういう思想ですよね、というお話ではあるのですが、おまいら「食料品価格上昇の影響が減衰する」も含めて4月展望で「物価の先行きリスクは下にティルト」って説明しておいて、その食料品価格の影響の上下を読み間違える(この間に大きな供給ショックでも起きているのなら弁解の余地はあるがそんなものは無かったですわなこの3か月)というすさまじいプレイをした挙句の+0.5%とかいう大きな上方修正している訳で、おまいらのアクチュアル物価見通し今回も大外れやん、と言いつつ例の基調の方に行きますと、


『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回展望)

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(6月声明文)

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回展望)

ということで「基調的な上昇率(基調的な物価、ではない)」の表現も同じです。

ちなみに展望の鏡の方で「消費者物価の基調的な上昇率」という説明を載せるようになったのは2023年10月の展望レポートからです。

でまあこの「基調的な上昇率」ってをパラフレーズしてみれば「トレンドとしての物価上昇の状況」って話になるのですが、これを「基調的物価」って言い方をして説明しているから話がややこしくなる訳で、何らかの定義があって「まさにこれが基調的物価」みたいなのがあり、それが1.5%から2.0%の間、みたいな多少のレンジをもってスペシファイできるもの、みたいな感じで(特に植田総裁は)説明したがる訳ですな。

しかもその「ザ・基調的物価」が政策判断に直結しているかのような説明を植田さんが特にしている傾向に見える、ってのがありまして、だったら展望レポートのコミュニケーションでコアCPIとかコアコアCPIとか出さないで「基調的物価の想定値」ってのを出せやと悪態をつきたくなるわけですよ、アクチュアルの物価の見通しを+0.5%とかいう大幅修正しておいて政策何も動かん、となったら益々そういう疑問って湧きおこるじゃろと。

・・・・とつい謎演説をしてしまいましたが、上記のように物価って手前の見通し数値をドテン倍返しの勢いで上方修正する、という割と凄い事をしている(ので為替が初手で円高に振れた次第)のにも関わらず、見通し全然変えていない訳でナンジャコリャ感が満載になるわけですね。


・しかしたった3か月の食料品価格要因だけで+0.5%も上がるのかよ

『前回の見通しと比べると、成長率については概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2025 年度は、食料品価格上昇の影響を主因に上振れているが、2026 年度と2027 年度は概ね不変である。』(今回展望)

『2026 年度までの見通しを前回の見通しと比べると、成長率については、2024 年度は幾分上振れているが、2025 年度と 2026 年度は、各国の通商政策等の影響を受けて、下振れている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2025 年度と2026 年度は、原油価格の下落や今後の成長ペース下振れの影響などから、下振れている。』(前回展望)

中央値ベースで一応0.1上がってるじゃん説はあるが「概ね不変」になっていまして、これまた前回同様でっせということなのですなわち4月のハトハトチキン音頭が変わらん、というように見える(必ずしもそうではないのですがそれはしつこいようですが後述)次第。


・リスク要因は引き続き通商問題ですがさすがに「きわめて」は削除

『リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は高い状況が続いており、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。』(今回展望)

『リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。』(6月声明文)

『リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。』(前回展望)

皆様ご案内の通りで、「きわめて高い」が「高い状況」と若干格下げされましたが、そりゃまあ日米とか米欧とかが合意しましたからそうなりますよねって話。


・物価のリスクバランスがドテンドテンですが・・・・・・

『リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、概ね上下にバランスしている。』(今回展望)

『リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについても、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。』(前回展望)

『リスクバランスをみると、経済の見通しについては概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2024 年度と2025 年度は上振れリスクの方が大きい。』(前々回1月展望)

この凄まじいまでの物価リスク認識のドテン振りを見よ、って感じでして、「下振れリスクが大きい」と豪語しておきながらその3か月後に+0.5%も上方修正するとか恥ずかしくないのかお前らというお話ですが、問題はこの「物価の見通し上下にバランス」の内訳なんですよ・・・・・・・・・



・ということで一気にワープするんですが「物価のリスク要因」の記述の変化に注目すべき

基本的見解本文中の『(2)物価のリスク要因 』の中に見逃せない記述がありましてですね。

『第1に、企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響である。』(今回展望)
『第1に、企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響である。』(前回展望)

の部分なのですが、

『企業の賃金・価格設定行動は、従来よりも積極化しており、中心的な見通しでは、成長ペースが鈍化し、物価に対する下押し圧力として作用するもとでも、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持されると想定している。』(今回展望)

『企業の賃金・価格設定行動は、従来よりも積極化しており、中心的な見通しでは、成長ペースが鈍化するもとでも、こうした傾向は維持されると想定している。』(前回展望)

しれっと今回「賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズム」って文言が入ったのですが、これって先般の内外情勢調査会での植田総裁の講演の中で使わていまして、

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a1.pdf
最近の経済・物価情勢と金融政策運営
―― 内外情勢調査会における講演 ――
日本銀行総裁 植田 和男


(以下2025年6月4日にアタクシが書いた駄文を再掲します)

・好循環は遂にお蔵入り(か????)

先ほどの部分を再掲しますが、

『もっとも、現時点で日本銀行としては、わが国経済は、こうした下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムも途切れることはないと見込んでいます。』

>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)

なんですかこれはという感じですが、まあさすがに「好循環」って言ってると今は政治ばかりが叩かれているので日銀セーフ(寧ろ利上げするなとか言われていて金融リテラシー無し無しムーブなのが悲しいですが)という図になっていますが、どこかでうっかり犬笛を吹かれたらどうみたって「好循環」って炎上要素ですから、そらまあ好循環はお蔵入りさせろというのはあったのですが、今回しれっとお蔵入りですかね、まあ今後も確認したいですけど。

(ここまで2025年6月4日に書きました拙駄文の再掲です)

ってな訳で「好循環」がお蔵入りしまして、装いも新たに「賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズム」に変わりました。

・・・・でまあ変わったのはいいんですけど、それってメカニズムが加速したら普通に「インフレスパイラル」になるってお話になりますので、加速しないかどうかを見ないといけませんよね、とも思うのですがその辺どうなんでしょ。


では続きですが、

『もっとも、今後の各国の通商政策等を巡り不透明感が高い状況が続くことがあれば、コスト削減に注力する傾向が強まる可能性がある。こうしたもと、物価上昇を賃金に反映する動きが弱まることも考えられる。』(今回展望)

『もっとも、今後の各国の通商政策等を巡り不透明感が高い状況が続くことがあれば、コスト削減に注力する傾向が強まる可能性がある。こうしたもと、物価上昇を賃金に反映する動きが弱まることも考えられる。』(前回展望)

ここは従来通りの企業行動下方屈曲懸念を特に賃金面で指摘の図です。


『一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性もある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。』(今回展望)

『一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性もある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。』(前回展望)

ここから上振れの話になりまして、最初の部分は同じなのですが次が今回のハイライトの一つとなりますわな。


『この間、このところの米などの食料品価格上昇については、天候要因等の影響が大きく、消費者物価の押し上げ寄与は次第に縮小していくと想定している。もっとも最近の価格上昇には、人件費や物流費を販売価格に転嫁する動きも相応に影響しており、企業の賃金・価格設定行動次第では、価格上昇が想定以上に長引く可能性もある。食料品は消費者の購入頻度が高いものであるだけに、価格上昇が長期化した場合には、家計のコンフィデンスや予想物価上昇率の変化を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼしうる点にも留意が必要である。』(今回展望)

『この間、このところの米などの食料品価格上昇については、それ自体は天候要因等を背景とするものだとしても、家計のコンフィデンスや予想物価上昇率の変化を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼしうる点にも留意が必要である。』(前回展望)

・・・・・いやーこの説明がクソ長くなりましたね。という話なのですが、特に今回詳しく述べている中で「もっとも最近の価格上昇には、人件費や物流費を販売価格に転嫁する動きも相応に影響しており」という部分が、足元の物価上振れの要因が必ずしもワンタイムのコストプッシュとは言い切れない(人件費や物流費の転嫁だからコストプッシュはコストプッシュだけど天候要因のようなワンタイムではなく持続的な要素が含まれている面が相応にある、というお話)と言っており、しかもその後に「価格上昇が長期化した場合には」二次的な影響を及ぼし得る、と「価格上昇が長期化した場合のリスクがある可能性」をスペシファイして指摘しているのもポイントになります。

つまりですね、従来日銀の説明って「コストプッシュだからいずれ下がるので政策対応せんんでヨロシ」で通していたのですが、「コストプッシュと言えども持続的になる可能性がある(政策対応云々は言ってないけど)」というのを前面に出してきた(もちろん日銀だってアホじゃないから認識は前からしてたでしょうけどこうやって表に出すのは今回を嚆矢とする訳で)、というのと「物価が高止まりした場合にトレンドインフレやインフレ期待に上方圧力を掛ける」すなわち「2%で止まらないリスク」についてより明確に説明した事、というのが地味に重要、ということですな。

特に後者に関して言えば、そもそも論として日銀のメインシナリオは「コストプッシュだからワンタイムが剥落すれば物価が下がる」と言いつつ手前の見通し常に外している訳でして、今回もその流れでやっぱり手前の見通し外すんじゃねえか説は濃厚な訳で(個人の感想です)、そうなりますと従来あまり言ってなかった「物価が上にオーバーシュートのリスク(あくまでもリスクであってメインは変更ないハトハトですけど)」を突っ込んできた、という訳ですので、そうなると「上振れリスクにも目配りして今の大幅な緩和状態の幅を小さくする調整が必要」ってのが早期に打ち込まれる(もちろんその時に物価上昇が鈍化したり通商問題が爆発してたらメインシナリオはハトハトなんだからハトハトのままでしょうけれども)という可能性が無いとは言えない、という事かと思います。


〇記者会見雑感メモ(本当にメモだけ)

時間も無いのと会見要旨出てから、ではあるのですが、会見の植田さんの説明が相変わらずのハトハト音頭でナンジャソラとなって円安になったのはご案内の通りですが、今回おーと思ったのは従来「住宅ローン金利ガー」とか「借入金利上昇で中小企業ガー」とかいう感じで利上げするな見たいな質問が散見されていた会見が、今回は「この物価上昇の中何で利上げしないんですか」の方向に一気に傾いたことだな、と思いました。

まあよく考えたら当たり前というか、アタクシ的には前回の衆院選だって前面には出てなかったけど物価高は与党のダメージになっていたと思っていましたから反応が遅いわとは思いますが、まあ遂にそうなったか、というのは感慨深く会見を眺めておりました、ということで本日はこの辺で勘弁。