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2025/07/31

お題「だいたい寝起きでFOMC/日銀政策に関する変なニュースは今回は無いようですね」

今朝はFEDで昼から日銀ということで。

〇FOMC声明文:1パラの最初の所をどう解釈するのか・・・・・・

今回
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250730a.htm

6月
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250618a.htm

・第1パラグラフ:景気の基調判断微妙な表現で変化させましたのが無茶苦茶微妙ですね

『Although swings in net exports continue to affect the data, recent indicators suggest that growth of economic activity moderated in the first half of the year.』(今回)
『Although swings in net exports have affected the data, recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace. 』(6月)

最初から中々難解ですなという感じですけど、前回が「経済活動はソリッドペースで拡大」だったのが、今回は「今年前半の経済活動はモデレートになった」になっていまして、前回と今回で評価の時間軸が違う、という微妙な技を繰り出してきやがりました。

でまあ今回のこの評価「モデレーテッド」という評価はついているけれども、それが「エクスパンド」の中のモデレートなのか、それとも既に景気拡大ではないという認識なのかは書いていないという芸をかましているのですが、まあ政策据え置きですし(トランプの犬が2匹ほど反対しておるけど)これは「エクスパンドのペースがモデレート」ってことを表現しているんだとは思われます。

とは言いましても、そもそも論として従来あった「expand」を引っ込めているので、まあこれはタリフの影響で経済減速気味ですよってことで基調判断は(大きくではないですが)気持ち下がっていると読みましたけどどうでしょうかね。

(次のネタ書いている途中でワイ追記)↑と書いてみたのですが、なんせ寝起きで読んで書いているもんで、この後のオープニングリマークの方をその後に見たんですが、景気に関する基本的な表現(一番最初で言う奴)は「経済はソリッドポジション」ってのを表現変えずに使っていて、そっちを見ると景気認識を下げたわけでもない、という結論になるので、解釈に困るややこしい変更するなと思うのですが、建付け上声明文の方がオープニングリマークよりも偉いので、「タリフの影響で拡大ペースはモデレートになっている」ってのはその通りで、ただし「経済のポジションはソリッド」ってゆうとるのか(ややこしくてすいません)とは思いました。

『The unemployment rate remains low, and labor market conditions remain solid. Inflation remains somewhat elevated.』(今回)
『The unemployment rate remains low, and labor market conditions remain solid. Inflation remains somewhat elevated.』(6月)

ここの認識は変わらずですね。


・第2パラグラフ:不確実性の認識度合い(というか何というか)は今回は横ばいって感じなんですね

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(6月)

2パラの頭はいつもの文言。

『Uncertainty about the economic outlook remains elevated. The Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate.』(今回)
『Uncertainty about the economic outlook has diminished but remains elevated. The Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate.』(6月)

不確実性に関する文言ですが、関税交渉で前回FOMC以降直近までの間に日本やらEUやら中国(はただの問題先送りですが)との協議が進展しましたけど、米国的には不確実性について6月対比で減っただの増えただのというような評価はしていないんですね。なるほどなるほど。


・第3パラグラフ:政策金利据え置きで資産縮小も前回踏襲なので文言一致です

『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 4-1/4 to 4-1/2 percent.』(今回)
『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 4-1/4 to 4-1/2 percent.』(6月)

今回は順当に金利据え置き。

『In considering the extent and timing of additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』(今回)

『In considering the extent and timing of additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』(6月)

今後の追加調整にあたっては状況をよく見てあんじょうようやりますわ、といういつもの文言です。ちなみに別に今回だけじゃないですけど一応メモ代わりに書いておくと「additional adjustments」って言ってるので中立まで複数回の利下げがありますよ(そらまあ4%台ですからね)という意味ですね。

『The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities.』(今回)
『The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities.』(6月)

買入資産の縮小の件は変わらず。

『The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.』(6月)

2%目標にコミットしています文言もいつも通りです。

・第4パラグラフ:今後の金融政策運営にあたってはどうのこうのの表現はいつも通りで今回も文言一致

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(6月)

ここは文言一致です、

・第5パラグラフ:ボウマン理事とウォーラー理事が25bp引き下げ主張する&クーグラー理事欠席とか言う大技(?)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Susan M. Collins; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Philip N. Jefferson; Alberto G. Musalem; and Jeffrey R. Schmid.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Susan M. Collins; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; Alberto G. Musalem; Jeffrey R. Schmid; and Christopher J. Waller.』(6月)

前回は全員一致で据え置きでしたが、

『Voting against this action were Michelle W. Bowman and Christopher J. Waller, who preferred to lower the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point at this meeting.』(今回)

ボウマン理事とウォーラー理事が25bpの利下げを主張。

『Absent and not voting was Adriana D. Kugler.』(今回)

クーグラ―理事は欠席で投票せず(地区連銀総裁の場合はここで代打としてオルタナティブメンバーの方が登場するのですけれども理事の場合は代打を出さずに投票権放棄扱いになるんですね)とな。

ということで利下げ提案2名ですけれども、ここはある程度は織り込まれていたんちゃいますかとは思う所です。


・順当ですがディレクティブには変更なし

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250730a1.htm
Implementation Note issued July 30, 2025

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250618a1.htm
Implementation Note issued June 18, 2025

各種常設ファシリティやオペレーションに関しては前回から変更なく、6月の決定がそのまま平行移動された格好になっています、一々引用すると長くなるのでアタクシの目視が間違えていたらゴメンチャイという所ですが。


てな訳で、今回に関しては第1パラグラフの冒頭のところが出オチみたいにメイントピックだったようには見えます(個人の感想です)。



〇オープニングリマークは行けるところまで参りますね、と書いたがあんまり行けていないのでその辺は後日

今回はみんな大好きSEPが無いのでオープニングリマークを
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20250730.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference Opening Statement
July 30, 2025

・冒頭表現で思わず考え込んでしまうでござるの巻

『CHAIR POWELL. Good afternoon. My colleagues and I remain squarely focused on achieving our dual mandate goals of maximum employment and stable prices for the benefit of the American people. Despite elevated uncertainty, the economy is in a solid position..』(今回)

でまあさっき「ワイ追記」ってのがあったと思うのですが、この冒頭部分を見て確認したり追記したりしてたら時間を食ってしまったのですが、これ前回のオープニングリマークを読みますと

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20250618.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
June 18, 2025

『CHAIR POWELL. Good afternoon. My colleagues and I remain squarely focused on achieving our dual-mandate goals of maximum employment and stable prices for the benefit of the American people. Despite elevated uncertainty, the economy is in a solid position.』(6月)

ということでですね、まず先にポイントになる経済のポジションですが、「Despite elevated uncertainty, the economy is in a solid position」ってのが全く変わっていなくて、声明文の方の文言変更はありゃなんじゃろねという話になるわけでさっき分かったような分からんような書き方をしました。なかなかこれは訳わからんですな。

ついでにこのオープニングリマーク第1パラグラフの続きですが、

『The unemployment rate remains low, and the labor market is at or near maximum employment Inflation has been running somewhat above our 2 percent longer-run objective.』(今回)

『The unemployment rate remains low, and the labor market is at or near maximum employment. Inflation has come down a great deal but has been running somewhat above our 2 percent longer-run objective』(6月)

インフレの表現が前回は「すんばらしいことにインフレがだいぶ沈静化してきました」って感じの表現(で良いんですよね)になっていたのですが、今回はそういうのは抜きになって単に「2%目標を幾分かうわまわて推移している」の表現のみに留めていまして、なんかこう「インフレが落ち着きましたなあ」成分を減らしているように見えまして、これオープニングリマークの冒頭部分の方ですと別に下方修正チックなニュアンスは無いし、何なら物価の文言が若干目標達成成分が抜けている、という作品に仕上がっておられる、という何ともムツカシヤな事になっておりましてムツカシヤって感じです。

ただまあ先ほども申し上げましたように、建付け上声明文が一番偉いので、そこは踏まえて考える、ってことになるのかなと思います。

ということで、行けるところまで読んでやろうとかイキっておりましたが、初手で引っかかってしまって時間的に微妙(あるけど中途半端)モードになってしまったのでFOMCネタはこの辺で。


〇日銀は2026年度の物価をどう置いてくるのでしょうかね

でまあ答え合わせはいつもだと書き物終わってからにするのですが、一応日銀ネタで変なもんが出ていないかということでちょっと見たわけですが、日経ちゃんの方を見るとFOMCのお話(会見は利下げ慎重って話だったのですねなるほどなるほど)しかありませんで、公共放送さんではニュースありましたけど、

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250731/k10014879911000.html
日銀 金融政策決定会合 政策金利を据え置く方向で議論の見通し
2025年7月31日 6時05分

『日銀は31日、2日目の金融政策決定会合を開きます。日銀内では、トランプ政権の関税措置をめぐる日米交渉の合意で不確実性は低くなったという受け止めがある一方、企業収益などに与える影響を見極めたいという意見も多く、会合では政策金利を据え置く方向で議論が行われる見通しです。』

途中を飛ばして、

『一方、日銀は今回の会合にあわせて2027年度までの経済と物価の見通しを公表します。

コメをはじめとした物価の高止まりや関税措置をめぐる日米合意などの最新情勢を経済成長率や物価上昇率の見通しに反映しますが、この先の金融政策運営に大きくかかわるだけに、どのような予測を示すかが焦点となります。』(以上上記URL先より)

ということでですね、2025年度よりもアタクシ楽しみにしているのが2026年度でして、前回が2026年度CPIが中央値で+1.7%、コアコアで+1.8%ということで、まあこれをもって物価目標達成時期を1年も後ろ倒しにした訳ですが、普通に考えて2026年度のCPIって2%割れねえんじゃネーノという気はだいぶするんですけれども、そうなると物価目標達成時期がまた引き戻される、という面白現象が発生する(前々回1月展望は2026年度コア中央値+2.0コアコア中央値+2.1で、ここからバサッと下げたので達成時期が1年延びた)ので、政策金利パスの話がドチャクソ変わってしまう、という話にもなりかねない訳ですな。

でまあそうなるのは大本営も先刻ご承知の介でしょうから、2026年度の物価見通しを2%に意地でも乗せないんじゃないかと勝手に妄想しておるわけですけれども、まあここの所をどうするのか、というのが注目されますな。

あとはまあ「お気持ち物価」の内容が未だに分からんし政策委員の金懇とか見ても人によって言及するものが微妙に違うわとか、アクチュアルの物価を外し続けて物価高が遂に政治イシューになって「給付か減税か」とかいう頭が悪いというかコジキ根性丸出しというか、そういうクソ選挙が国政において行われている現状について物価安定の責務を持っている筈の日銀は何か責任を感じないのかとか、そういう辺りに関してはどうなんでしょ、という辺りだと思いますがその辺のアタクシの落語は散々やっているのでまあ今日は出てくるものを拝見して楽しみたいと思います。どうせ金利は据え置きなんだし。








2025/07/30

お題「新浪さんと中曽さんの指摘はいずれも結構「入ってる」指摘だと思うんですけどね/交付税特会6M金利が地味に上昇というメモ」

なんじゃそら
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250729/k10014877311000.html
トランプ大統領 合意ない国の関税率 “15%〜20%の範囲に”
2025年7月29日 5時45分

『この中でトランプ大統領は、各国への関税措置をめぐり事実上の交渉期限としてきた来月1日を前に、複数の国々と協議を行っているとした一方で、そのほかの合意のない国について「われわれは世界のほかの国々に対して基本的な関税を設定することになる。席に着いて200もの合意をすることはできないからだ」と述べました。

そのうえで、関税率について質問されたのに対し「15%から20%の範囲のどこかになるだろう。おそらく、この2つの数字のどちらかだろう」と述べました。』(上記URL先より)

TACOなのかめんどくさくなったのか知らんけどお前ナメトンノカという気しかしませんけれども、TACOとか言われるとまた「さっきの数字は25%に上乗せする数字」とか訳の分からんことを言い出しかねないのがこのクソジジイなのでよくわからんですね。


〇新浪さんに加えて中曽さんも「日銀の政策ビハインド」を指摘していますしツッコミがド直球なのよねこれがまた

ということで金融政策に関して2つの記事がありましたのでクリップクリップ。

・新浪さんは平常運転とは言え「物価高の対応が遅れている」と明確に指摘しているのはポイント

新浪さん
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-29/T05IZUGQ1YV900
日銀はすぐ利上げすべき、経済悪化なら「総裁の責任」−同友会新浪氏
吉田昂
2025年7月29日 18:53 JST

『経済同友会の新浪剛史代表幹事(サントリーホールディングス会長)は29 日の定例会見で、日本銀行はすぐにでも利上げすべきだと主張した。現状は金融政策による経済情勢への対応が遅れているとの見方を示し、さらに後手に回り状況が悪化した場合には「総裁の責任だ」と述べた。』(上記URL先より、以下同様)

「参院選の連立与党敗北は総裁の責任」って言わないだけ抑制していますけど、「金融政策による経済情勢への対応が遅れている」ってのは思いっきりそう言ってるのと大差ないじゃろと思う訳でございますよ。まあボンクラ政治家の皆様とボンクラメディアが全然気が付いていないみたいだから助かっているんですけれども。

『新浪氏は、金利が上がらないことで円安が長引き、日本に輸入される食品などの高騰につながっていると指摘。物価の番人である日銀が、過度にビハインド・ザ・カーブ(後手に回ること)は許されないとの見解も示した。』

イイシテキダナー

『新浪氏は利上げ観測による長期金利の上昇にも言及し、「これだけ一気に上がっていることを考えると、ここで適正な判断が必要だ」と述べた。』

ここの文脈が良くわからんのですが、長期金利上昇が困るみたいな言い方をすると、日銀は「じゃあ利上げしません」になるので、長期金利上昇の話と利上げの話を絡めるのは混ぜるな危険の話になるんですよね。

まあアレです、そういう話をするのであれば「日銀が短期金利を物価情勢に対して不適切な低水準に維持していることから長期金利に上昇圧力が余計に掛かっており、短期政策金利を適正水準に引き上げるようにすれば長期金利の上昇圧力が分散されますので却って市場は落ち着きやすくなる」みたいな理論で説明することになるんでしょうけれども、経済同友会の会見でその話をして伝わるのかというと疑問符が100個くらいつくのでムツカシヤなんじゃないかと思いました。

まあそれは兎も角として、新浪さんは平常運転が日銀の緩和政策正常化論者なので利上げしろ、ということそれ自体ははいはい新浪さん新浪さん、になるのですが、「日銀は物価高の対応が遅れている(まあ物価高放置でもあるのですが)ので怪しからん」というのがこのような立場の方が前面に出して発言する、ということでニュースバリューもある方ですので、このド直球の観点からの正常化要求圧力(別に圧力じゃなくてべき論から言ったらただのド正論なのですけれどもね)が強まってくると、ハトハトチキンと言えどもケツに火が点いてくる訳でして、まあ連中ハトハトチキンだけに焼鳥にはなりたくないので慌てて正常化の方に舵を切りだす、という流れが着々と進んで頂きたいものだと思う次第であります。

だから月曜も弊駄文では「利上げに足りないのは環境ではなく勇気」と申し上げた次第でして、そもそも基調的物価が何なのかを明確に定義できない上に黒田末期にコアコア物価と言い出してから「基調的物価」で示しているものが利上げしないことに都合の良い内容(=2%行ってないものをチェリーピックして「基調的物価」と称するというムーブですね)にコロコロと変化している訳で、何か確固たる基準が示されてその数字が2%行ってないんだからどうのこうのというのではない、ってことでしたらそれはもう「お気持ち物価」なわけですが、お気持ち物価だけにそのお気持ちが変わるような事態、すなわちハトハトチキンの丸焦げ待ったなしという危機感が日銀の緩和政策正常化に向けた強力なドライバーになり得るというもんだ、という事ですな、何か情けない話ですし、お前それ分析でも何でもねえだろと言われると何も言えませんけどwww


・中曽元副総裁のロイターインタビュー

ほうほうこれはこれは
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/RAHGQJMA7JOCVOXOME5QB2SGYI-2025-07-29/
インタビュー:関税巡る不確実性十分に晴れれば利上げ模索か、物価上振れに要警戒=中曽元日銀副総裁
木原麗花
2025年7月29日午後 12:32 GMT+9

28日のインタビューだったようです(記事巻末にあります)

『[東京 29日 ロイター] - 中曽宏・元日銀副総裁(大和総研理事長)は、ロイターのインタビューに応じ、米国の高関税政策を巡る経済・物価の不確実性が十分に晴れ、経済・物価見通しに確信が得られれば、日銀は再利上げを模索するとの見方を示した。』(上記URL先より、以下同様)

まあこれ自体はどうということではなくて、「不確実性が十分に晴れた」というのはこれまた「お気持ち」の世界になりまして、まあこの「不確実性」で一番酷かった説明は昨年の7月にサプライズ気味に利上げした後に米国要因も相まって市場がアイヤーとなった後になって植田総裁が9月の決定会合の会見で「米国の不確実性ガー」と言い出したのは良いんだが、その不確実性は6月辺りから始まっていた、とかじゃあお前何で7月に利上げしたんだよアホなのか、という説明でございました訳でして、この「不確実性」云々も結局のところ取って付けた小理屈になるわけですな。

でまあこのラインで話が展開されるなら無難なおもんないインタビューになりますがその先がさに非ずで、

『その上で、高水準で推移する賃金や、値上げに前向きな企業行動、食品価格の高騰がインフレ予想に影響を与える形での物価の上振れリスクに警戒感を示し、ビハインドザカーブに陥る(後手に回る)ことがないよう政策を運営する必要があると話した。』

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!

ということでして、この「ビハインド警戒」って現在の政策委員会だと明らかに指摘しているのが田村さん、他には高田さんも警戒しているような節がありそうですが、野口さんがビハインド警戒とかいう可能性はゼロですし、中川さんはどうせ大本営腹話術人形ムーブでしょうから(個人の偏見です)あとは直近の新任委員の小枝さん(この前の多角的レビューにおける指定討論やら就任会見を見た感じでは誠に遺憾ながら腹話術人形になりそうな素質を感じます(個人の偏見です))、増さん(現時点では浴わからんですが、以前の三菱商事出身の亀崎委員は中々の抜刀斎だったので、同様に期待をしております)が、この「政策ビハインドのリスク」をどう捉えるのかは注目していきたいと思いますので、どうせ今回は政策据え置きなのは見え見えですから、「主な意見」で「ビハインド警戒」の人が増えるか否か、というのをアタクシ的には注目したいなと思っています(もちろん今回の会合で急にまたタカ的ジャガーチェンジしたら見るまでも無いかもですけどw)

でもって記事の続き。

『中曽氏は、日米関税交渉が合意に達し、自動車を含む米輸入関税が引き下げられたことはポジティブな展開としつつも、日本経済は「米関税による輸出減少だけでなく、世界経済の減速の悪影響を受けるだろう」と述べ、不確実性の高さを勘案すると「日銀がしばらく様子見姿勢を維持する必要性を感じるのも理解できる」と語った。』

暫く、というのがどのくらいの時間軸なのかは、この先にあるように「わからん」との仰せでして、まあそういう意味では「ビハインド警戒」のところはポイントとしては大きいのですが、ゆうてまあ微温的でもあって、山口(廣秀)元副総裁のように危機感持って日銀のチキン状態を叱咤激励しようというほどの勢いではないのはまあ(良くも悪くも)中曽さんだなと。

『一方、そうした不確実性が十分晴れ、「経済・物価が見通し通り推移する」との確信が得られれば、日銀は再利上げを模索すると予想した。再利上げのタイミングなどは「経済・物価の今後の推移に大きく依存する」として明言を避けた。』

だそうなので日銀のケツを叩くには至っていません、為念。

・・・・とはいえ中曽さんのこのインタビューでのポイントは「物価に対して政策がビハインドしないか問題」であって、さすがにロイターさんもこの点に関して字数を割いて記事にしています。

『日銀は5月1日に公表した展望リポートで、2025年度・26年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)の予想を下方修正した上で、物価のリスクバランスについて「下振れリスクの方が大きい」とした。』

はい。

『だが中曽氏は、物価について「上振れリスクもある」とみている。』

そうだそうだ!

『深刻化する人手不足もあって賃金は高水準で推移しており、賃上げは来年も続く見込みであるほか、企業の価格設定行動も変化し、賃金上昇やサプライチェーン(供給網)の寸断、円安などによるコスト上昇を「よりスムーズに転嫁するようになった」と分析した。』

最近の値上げって「乗るしかないこのビックウェーブに」って感じで何か言い訳つけて値上げしてねえかと思わないでもない今日この頃ですが、それもまたインフレ期待のシフトアップと考えられますわな。

『また、物価を見る上で特に注意が必要な点として、予想物価上昇率が各種サーベイや市場指標から見て上昇トレンドにあることを挙げた。』

仰せの通り。

『日本のインフレ予想は足元の物価情勢に影響されやすい性質があるが、「人々が頻繁に購入する食品の価格はヘッドラインのインフレ率よりかなり速いペースで上昇しているため、体感物価は高く、予想物価上昇率がオーバーシュートするリスクがある」と指摘した。』

『日銀は金融政策運営に当たって、これによる物価の上振れリスクにも注意を払いながら「ビハインドザカーブにならないよう運営する必要がある」と述べた。』

というかもうオーバーシュートしてねえかって気がせんでもないのですがまあそこはさておきますが、日銀って黒田緩和を何ぼ継続しても「2年で2%行かなかったら職を辞す覚悟」とか言ってた岩田規久男とかいうクソボケジジイの話を無かったことにするために、その後物価が上がらんことに関して「適合的期待形成の要素が強い我が国においては云々」という説明をしていたわけです、まあ物価には慣性があるという考えもありますのでその考え自体は屁理屈ではなくてちゃんとした理屈とも言える訳ですな。

然るに、物価が上がらんで金融緩和政策を継続していた時に、金融緩和の効果が乏しい(のに何でこんな極端な政策を継続するのか)とか言われている際に「いやいや適合的期待形成というのがありましてなかなか大変なんですよ」と説明していた訳ですので、同じ理屈でアクチュアルの物価が2%を(ずっとディスインフレだった日本としてみたら)大きく上回った状態が3年も継続しているんだったら、適合的期待形成によるインフレ期待の引き上げがむしろ行き過ぎるのではないか、というのは中曽さんの仰る通り、ということになりますわな。

ただまあご案内の通り、「自分たちの政策(今であれば物価情勢対比で飛んでもない規模の金融緩和を維持すること)に都合の悪くなったことの説明はフェードアウトする」という事を大本営が行っておられる訳でございまして、中曽さんのこの「適合的期待形成の観点から期待インフレが上方にオーバーシュートするリスク」という指摘は、過去の日銀の理屈を逆手に取っている点で大変にお洒落、というかまあ中曽さんとしては純粋に指摘しているだけでイヤミで言ってるわけではないんでしょうけれども、結果的には黒田末期以降に顕著になった日銀の「都合が悪くなると過去言ってた理屈を引っ込めて別の理屈を繰り出す」ムーブに対するお灸になっているのが大変に美しい話ですね。


でもって財政の健全運営に関しても発言がありまして、ちょっと飛ばして記事の最後の方になりますが、

『日銀が国債買い入れの減額を進める中、新たな買い手の存在が必要となるが、中曽氏は規制対応上の理由もあり、国内銀行勢は買い入れを大きく増やすことは難しく、海外投資家のプレゼンスが今後も高まっていくだろうと予想した。』

ふむふむ。

『海外投資家は国債保有に高めのプレミアムを求める傾向があり、そうした投資家の信認を確保・維持するためにも、持続可能な財政政策の確立は不可欠との見方を示した。』

なるほどこの説明はアリですね。さらに、

『仮に再度金利が急騰した際の対応については「イールドカーブの特定のゾーンが一時的に急騰するような場合、日銀が持っているツールを使って介入することはあり得る」とする一方で、財政運営に対する信認といった財政構造要因による市場の変動に「日銀ができることはほとんどない」と語った。』

その通りというか、財政構造要因による市場の変動に対して日銀が長期国債買入をおこなったら、それは財政ファイナンスって言われて一段と状況があっかするだけ、という悲惨な結果を招きかねませんので、中曽さんのおっしゃる通りかと存じます。


ということででですね、新浪さんは「物価高に対する対処が遅れているのではないか」という直球だし、中曽さんは「適合的期待形成の観点から期待インフレが上方にオーバーシュートするリスクがある」という日銀がこっそりとお蔵入りさせたロジックをぶっこんで来る、ということで、この2本は割と痛いところをついているんじゃないかと思いましたが、大本営が痛いと思ってるか蛙の面にションベンですわあっはっはと馬耳東風モードなのかは大本営じゃないと分からないので判然とはしませんなw


〇地味に交付税特会6Mの金利が上がっている件について

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/2507.htm
入札カレンダー:令和7年7月

こちらの「借入金」ってところにございます為念。

7月17日入札実施分(つまり選挙結果直前)
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result250717.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果(令和7年7月17日入札)

『1.借入根拠法律及びその条項
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第15条第1項

2.借入日       令和7年7月31日
3.償還期限      令和8年1月30日
4.償還方法   令和8年1月30日に一括償還

5.借入利率競争入札について  
(1)応募額       4兆1,800億円
(2)募入決定額    1兆1,000億円
(3)募入最高利率     0.548%
(4)募入最高利率における案分比率   85.0000%
(5)募入平均利率     0.541%』

これをいつものアホみたいな単純計算で「手前の金利0.50%で分解」しますと足切りの0.548%という水準は「12月利上げなら後半0.726%、10月利上げなら後半0.597%」となっていまして、まあ一応12月利上げくらいは敬意を表しているのですが10月利上げとかシランガナモードな訳ですな。

7月24日入札実施分(選挙結果でたあとの木曜日なので関税交渉合意とかゲル退任意向報道とか込み)
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result250724.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果(令和7年7月24日入札)

『1.借入根拠法律及びその条項
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第15条第1項

2.借入日      令和7年8月5日
3.償還期限     令和8年2月4日
4.償還方法     令和8年2月4日に一括償還

5.借入利率競争入札について  
(1)応募額       3兆9,660億円
(2)募入決定額     1兆500億円
(3)募入最高利率     0.600%
(4)募入最高利率における案分比率   4.1200%
(5)募入平均利率     0.575%』

極薄案分なので0.60%を基準にするのも多少難がありますが、まあそこはネグって頂きまして同じように計算しますと、「12月利上げなら後半0.916%、10月利上げなら後半0.690%」となって、10月利上げをある程度ケアした形になっておりますな。

でもって昨日のですが、
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result250729.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果(令和7年7月29日入札)

『1.借入根拠法律及びその条項
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第15条第1項

2.借入日 令和7年8月7日
3.償還期限 令和8年2月6日
4.償還方法 令和8年2月6日に一括償還

5.借入利率競争入札について  
(1)応募額        3兆8,100億円
(2)募入決定額      1兆500億円
(3)募入最高利率      0.630%
(4)募入最高利率における案分比率   70.0000%
(5)募入平均利率      0.599%』

これまた同じように計算しますと、足が2日しか違わないので3bp上昇が結構効きまして、「12月利上げなら後半1.017%、10月利上げなら後半0.743%」となって、なんと10月利上げがほぼ織り込み、という水準に変化(若干負け水準ですけど)しているという中々の変化ぶりです。

まあゆうて市場の金利観が大きく変わったという訳でもないようには思う(金利観が大きく変わってたら2年入札盛大に強くならんじゃろとは思うので)ので、それよりは「年内利上げねえじゃろモードの後退」程度の物でしょという位の解釈に留めておかないととは思います(なんせ元々特会借入はレートがクソ高く出てくる訳で、同じ政府向け与信のTDBの引けが2/20償還で0.515%だったりする時点でお察し案件なので、水準よりも変化を見るのが吉)けれども、トランプ関税劇場以降大幅に後ろに倒れていた利上げ見通しが、日米通商交渉の合意を受けて引き戻された、ということで宜しいかと思いますしそんなのお前に言われんでもわかっとるわとツッコまれますとぐうの音も出ないのですが、まあ1会合分くらいは市場の見方が前倒しになったかもしれませんね、という一つの傍証位に思っていただければ吉かもしれませんね。


ということで今朝はこの辺で勘弁(ECBはどうしたと言われそうですが明日からFED日銀大会)







2025/07/29

お題「短国の謎引値(謎階段)メモ/ECBは「通商問題なかりせば実に快適な状態」って感じの現状説明ですわな」

とっとと分裂すればって感じですな最早
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250729/k10014877101000.html
石破首相 続投に理解求めるも党内の亀裂 より深まる状況に
2025年7月29日 5時09分


〇短国引値謎の階段が謎に移動ワロタ(備忘メモ)

ナンノコッチャではあるのですが
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(7/28引値)
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.410
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.410
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.439
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.440

(7/25引値)
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.410
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.410
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.410
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.450

ということで、昨日ネタにしましたように新発3Mが入札後足切よりも高い利回りの0.45%で引かされたのですが、昨日は0.45のところは反発して0.44の引けになったのですが、一方で1週前の3M(なので入札は0.40カツカツでやった奴です)がしれっと0.439%にひかされていまして、階段が一銘柄(1週間)手前になる、というよくわからん現象が発生しておりますな。

まあ単に業者間とかで在庫があるから出合いがあるとかそういう世界なんだとは思うのですが、いやお前らそこの3毛の段差は何なのよといういつもの短国市場の面白プレイが発生していて草生えますなwwwwwwwwww

何だかわからんけど若干需給が緩和されましたというだけの話ではあると思うので、別に市場に対する何かのインプリケーション(参加者の利上げ期待が云々みたいなやつ)があるわけでもないとは思うのですけれども、まあナンノコッチャ現象だったので備忘の為にメモしておきました。


〇水曜以降はFED日銀連発なのでECBで先日の政策ステートメントを確認

https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/monetary-policy-statement/2025/html/ecb.is250724~a66e730494.en.html
MONETARY POLICY STATEMENT
PRESS CONFERENCE

Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 24 July 2025

会見とか言ってますがまあとりあえずはその前のステートメント部分を確認しますが。


・物価はマンデート水準、と説明してそれ以外はオマジナイ文言が続く

『The Governing Council today decided to keep the three key ECB interest rates unchanged.』

政策金利据え置き。

『Inflation is currently at our two per cent medium-term target.』

インフレは中期的な目標の2%水準に今まさに居ります。

『The incoming information is broadly in line with our previous assessment of the inflation outlook.』

最近のデータは前回のインフレーションアウトルックに概ね沿ったものである、とまあそうであれば政策は中立的な状況にするのがエエンチャイマスカ、というのがもう最初にありまして。

『Domestic price pressures have continued to ease, with wages growing more slowly. Partly reflecting our past interest rate cuts, the economy has so far proven resilient overall in a challenging global environment. At the same time, the environment remains exceptionally uncertain, especially because of trade disputes.』

インフレ圧力特に賃金インフレの圧力は緩和され、グローバルな環境がチャレンジングな状態にもかかわらず、ワシらの利下げ効果もあって経済はレジリアントだよ。でも通商問題のせいで先行きは異例なほどに不透明だよね。

というのが最初の全体観パラでして、

『We are determined to ensure that inflation stabilises at our two per cent target in the medium term. We will follow a data-dependent and meeting-by-meeting approach to determining the appropriate monetary policy stance. In particular, our interest rate decisions will be based on our assessment of the inflation outlook and the risks surrounding it, in light of the incoming economic and financial data, as well as the dynamics of underlying inflation and the strength of monetary policy transmission. We are not pre-committing to a particular rate path.』

次の2パラ目が上記引用部分ですが、この部分は特に現状判断に関して何か言ってるわけではなくて一般的なオマジナイ文言だけですね。

『The decisions taken today are set out in a press release available on our website.』

『I will now outline in more detail how we see the economy and inflation developing and will then explain our assessment of financial and monetary conditions.』

ということで、冒頭部分は「物価は2%目標に達している」という現状認識を示したのが新しい所ですが、まあこれに関しましては既に先週末拙駄文でネタにしたポンチ絵説明の方でもポンチ絵で示されていましたわな(2%に着陸済みの図)ということで。


・経済のパートは結局「通商問題なかりせば威勢がいい話」に見えますな

次の小見出しが『Economic activity』です。

『In the first quarter the economy grew more strongly than expected. This was partly because firms frontloaded exports ahead of expected tariff hikes. But growth was also bolstered by stronger private consumption and investment.』

1Qの経済は想定よりも強かった、という話から始まりますが。その要因として関税前駆け込み(による仮需要)に加えて、「stronger private consumption and investment」と民間需要と投資が強かったことをあげているのはほうほうそうですかそうですかという話でして、

『Recent surveys point to an overall modest expansion in both the manufacturing and services sectors. At the same time, higher actual and expected tariffs, the stronger euro and persistent geopolitical uncertainty are making firms more hesitant to invest.』

サーベイを見ると全体的にはモデストな拡大を製造業非製造業で見られますが、関税とユーロ高と地政学リスクのせいで企業は投資を抑制気味にしているとな。

『The robust labour market, rising real incomes and solid private sector balance sheets continue to support consumption. Unemployment stood at 6.3 per cent in May, close to its lowest level since the introduction of the euro.』

労働市場がロバストで実質賃金が上昇している(イイハナシダナーと友蔵心の俳句)のと、民間部門のバランスシートがソリッドなので消費がサポートされています、ということで労働市場が強いよというデータの説明もしていますね。

『Easier financing conditions are underpinning domestic demand, including in the housing market. Over time, higher public investment in defence and infrastructure should also support growth.』

借入のコンディションが良いので需要を下支えしていて、この間に政府支出が防衛とインフラ関連でより高水準になっているのも成長をサポートしています、と仰せです。なんか関税以外全部景気良い話をしてるじゃん・・・・・・

でもって経済の最後のパラになりますが、

『More than ever, the Governing Council considers it crucial to urgently strengthen the euro area and its economy in the present geopolitical environment.』

今の政治的な環境下において、ユーロとユーロエリア経済を早急に強くするのが大事ですということでやらせてもろていただいておりますが、から始まりますが、この先の部分は毎度おなじみの構造改革やら成長力強化が大事ですよね、っていう政府部門の取り組みが重要だよ(デジタルユーロの話もあってそれはECBマターですが)という話をしております。

『Fiscal and structural policies should make the economy more productive, competitive and resilient. Governments should prioritise growth-enhancing structural reforms and strategic investment, while ensuring sustainable public finances.

『It is important to complete the savings and investments union and the banking union, following a clear and ambitious timetable, and to rapidly establish the legislative framework for the potential introduction of a digital euro. 』

『The Governing Council welcomes the Eurogroup’s commitment to improve the effectiveness, quality and composition of public spending and supports the efforts by European authorities to preserve the mutual benefits of global trade.』

なのでまあここもまたオマジナイ文言となっていますが、経済のパートって結局は「通商問題なかりせば基本的に威勢の良い状態」という認識を示している訳ですな。


・インフレは「2%近辺にあって特にインフレ上振れ圧力も無い」ようで結構ですな

次が『Inflation』ですね。

『Annual inflation stood at 2.0 per cent in June, after 1.9 per cent in May.』

はいはい2%2%

『Energy prices went up in June but are still lower than a year ago. Food price inflation eased slightly to 3.1 per cent. Goods inflation edged down to 0.5 per cent in June, whereas services inflation ticked up to 3.3 per cent, from 3.2 per cent in May.』

ここは内訳の話ですね、まあ2%と言っても食品は3.1%あるのね。

『Indicators of underlying inflation are overall consistent with our two per cent medium-term target.』

よってインフレの基調はワシらの目標である2%の水準にありまっせと。

『Labour costs have continued to moderate. Year-on-year growth in compensation per employee slowed to 3.8 per cent in the first quarter, down from 4.1 per cent in the previous quarter. Combined with stronger productivity growth, this led to slower growth in unit labour costs. 』

『Forward-looking indicators, including the ECB’s wage tracker and surveys on wage expectations of firms, consumers and professional forecasters, point to a further decline in wage growth.』

労働コストや生産性などから見て賃金の上昇率は価格を大きく押し上げるものではないし、先行きの賃金設定に関しても賃金の伸びは鈍化する見込み(なのでインフレ圧力にならん)。

『Short-term consumer inflation expectations declined in both May and June, reversing the uptick observed in previous months. Most measures of longer-term inflation expectations continue to stand at around 2 per cent, supporting the stabilisation of inflation around our target.』

インフレ期待についてはロングタームは2%で安定(安定してなかったらヤバいのでまあこれは余程のことがない限り安定というのが仕様ですけど)していて、ショートタームは下がってきている(その前に上がっている)。

ということでインフレのパートも結構結構という内容でして、


・リスクは通商問題、ということですのでこの後に関税合意が一旦入った訳でして・・・・・・

『Risk assessment』が次にあるのでまあそこまで見ておきますけど。

『Risks to economic growth remain tilted to the downside.』

経済のリスクはダウンサイド。

『Among the main risks are a further escalation in global trade tensions and associated uncertainties, which could dampen exports and drag down investment and consumption. 』

案の定ですが通商問題の悪化がリスクと。

『A deterioration in financial market sentiment could lead to tighter financing conditions and greater risk aversion, and make firms and households less willing to invest and consume. Geopolitical tensions, such as Russia’s unjustified war against Ukraine and the tragic conflict in the Middle East, remain a major source of uncertainty.』

『By contrast, if trade and geopolitical tensions were resolved swiftly, this could lift sentiment and spur activity. Higher defence and infrastructure spending, together with productivity-enhancing reforms, would add to growth. An improvement in business confidence would also stimulate private investment.』

あとはまあ順当に金融市場の悪化とか地政学(ウクライナとか中東)などが下振れ要因で、一方で通商問題とか地政学リスクが改善すると、政府による防衛とインフラ整備支出拡大によって経済は上振れじゃろと。

『The outlook for inflation is more uncertain than usual, as a result of the volatile global trade policy environment. 』

物価は従来より不確実です世界貿易の環境ボラタイルなので、というのが物価の方でして、

『A stronger euro could bring inflation down further than expected. Moreover, inflation could turn out to be lower if higher tariffs lead to lower demand for euro area exports and induce countries with overcapacity to reroute their exports to the euro area. Trade tensions could lead to greater volatility and risk aversion in financial markets, which would weigh on domestic demand and would thereby also lower inflation. By contrast, inflation could turn out to be higher if a fragmentation of global supply chains pushed up import prices and added to capacity constraints in the domestic economy. A boost in defence and infrastructure spending could also raise inflation over the medium term. Extreme weather events, and the unfolding climate crisis more broadly, could drive up food prices
by more than expected.』

やたらめったらいろんな要素を挙げていまして、ユーロ高(物価下げ)、高関税によってユーロ圏への販売が増える(物価下げ)、通商問題で金融市場がアイヤーとなる(物価下げ)、グローバルサプライチェーンの毀損(物価上げ)、政府の財政支出(物価上げ)、異常気象要因による食品価格上昇(物価上げ)とかゆうてますな。

まあ結局は通商問題次第ですよ最大のリスクは、というお話なのでした。

でまあ以下もうちょっとあるのですがまあここまででだいたいネタは終っている(あとは記者会見)のですが、ポンチ絵と同様なのですが、「通商問題なかりせば」物価はマンデートに着地しているし、経済は過熱じゃない程度にレジリアントだし、という割と威勢の良い認識になってきた感がありまして、そりゃまあ政策金利据え置きだわな、という内容でした。










2025/07/28

お題「利上げに足りないのは「環境」じゃない説を提唱したいですねえ/新発短国3M金利上昇/CPI備忘メモ/内田副総裁高知金懇(政策パートだがあんまりネタ無し)」

しかし暑いですな全国的に・・・・・・

〇政治がゴニャゴニャしているのでまあ1回パスなんでしょうが金曜の引け近くにはBBGがいつもの謎関係者記事を

・そらまあ日米合意で内閣支持率上がらん方がおかしいのだがさてどうなるのやら

読売新聞くやしいのうくやしいのう
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-27/T012QKGQ7KZU00
石破首相は続投方針を維持、自民内で退陣論拡大でも−あす議員懇
広川高史、古川有希
2025年7月27日 12:08 JST 更新日時 2025年7月27日 17:41 JST

『毎日新聞が26、27両日に実施した全国世論調査によると、石破内閣の支持率は29%で前回の6月調査から5ポイント上昇した。次の首相にふさわしい人のトップは石破首相で20%を占めた。支持政党別の内閣支持率は、自民党支持層が70%、公明党支持層が4割超だった。』(上記URL先より)

まあ毎日新聞がそもそも石破退任の意向ってのを初手に書いているのですが、そっちの落とし前はどうなるのやらという感じですが、さすがに読売の先日の社説の題名は酷かったわ。

https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20250724-OYT1T50293/
石破首相退陣へ 早期の表明で新体制構築急げ
2025/07/25 05:00

なんで社説の題名が「退陣へ」なんだよというお話ですなwwwww


まあそれはそれとしまして、何がどうなるのかさっぱりワカランチ会長ではあるものの、そんなにあてになるとも思えないけどヤフコメとか見ていると「そもそも負けたのって石破だけのせいじゃないし辞任しろって言ってる連中が裏金だの沖縄で暴言だの党の青年局何とか会でダンサー呼んでどうたらこうたらとかやって足引っ張ってただろ方面のツッコミの方が多くなってきている感もあり、なんか知らんけどこうどなじょうほうせんが展開されていて素人にはさっぱりよくわからんし、政治がこれだと日銀もひたすらどっちつかずの話をして今回は1回パスにしてくるんじゃないかと思いますけどどうなんでしょうかね。


・金曜の引け前10分くらいで出ていたのだが利上げに足りないのは「環境」ではなくて「勇気」なんだよな〜(BBG記事関連)

金曜は何となく前日比プラスでウニョウニョと推移していた債券市場ちゃんですが、引け際一閃BBG記事で先物ストンと下げて終了でござるの巻。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-25/SZVT2HGPL3YM00
日銀が年内に利上げできる環境整う可能性、日米関税合意で−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2025年7月25日 14:55 JST 更新日時 2025年7月25日 15:12 JST

→来週の決定会合では政策維持へ、不確実性低下で企業行動が焦点に
→関税率15%は見通しの前提の範囲内、シナリオの構図にも変化なし

とまあそういうことですが、もう引け際狙いすましたタイミングでヘッドラインを打ってくる行為に関しましては(ピー音)ではないのですかと言いたくなる訳ですが、とは言ってもこれまあ題名で反応するのもアホウな話じゃろとは思いました。

まあ先に記事を拝読しますけど、

『日本銀行は、日米関税協議の合意を受けて、企業行動次第では年内に利上げできる環境が整う可能性があるとみている。複数の関係者への取材で分かった。』

『関係者によると、日米合意は日本企業にとって不確実性の低下につながり、2%物価目標の実現確度を高めると日銀はみている。焦点は具体的な企業行動とその影響という次の段階に移る。交渉が長引き、関税政策の行方が不透明だった従来に比べ、ヒアリングやデータに基づき日銀が早めに政策判断できる可能性が高まるという。』(上記URL先より)

って話なんだが、そもそも論としてアクチュアルの物価が2%を思いっきり超えた状態が継続していて、とうとう国政選挙の最大イッシューが「物価高対策」になる(前回の衆院選ではちょっとは言われていたし、正直前回の衆院選だって物価高は効いてたと思うけど)という状況の中、「物価安定に責任がある」はずの日銀は本来もっと早急に金融緩和政策の度合いの修正を実施して然るべき状況にあるわけでして、別に「環境」だったらとっくの昔から利上げできる「環境」にあるものを延々と引っ張っているのが現状な訳ですよ今の日銀って。

じゃあ日銀に何が足りないのかと言えばハトハトチキンと言われますように(誰が言ってるのかwwww)足りないのは日銀執行部の「勇気」だったり「胆力」だったりするわけでして、何なら物価高対策がこれだけ社会問題になっているんだから、それだったら今回の決定会合で金融緩和の度合いを調整して然るべき(引き締め水準まで利上げしろとは言っていないので念のため申し添えます、いやもしかしたら引き締めしないといけない位にビハインドしている可能性も否定できないとは思うけど)位の話であって、「年内に利上げできる環境が整う」とか言ってるのが寝言は寝て言えというお話でしょ、とまあ言いたくなるわけですよ、アーコリャコリャ。

とは言いましても、ハトハトチキンが直ぐに治るわけもないというか多分不治の病なので、つまりは「日銀のケツに火が点く状態」になるかならないか、というのが次回利上げがいつになりますか問題のポイントになるんですが、それ以外にはまあさすがにここまで繰り返している「企業の価格や賃金設定行動が下方屈曲しないかどうか」というのを確認できる時期、すなわち年末から来年頭に掛けて(12月会合から1月会合の間に短観、冬季賞与、来年度の賃金設定に関する動きが見えてくるわけですな)のところではさすがに何か判断せざるを得んじゃろ、というお話になるので、あとは9月10月の決定会合に利上げをする胆力がありまっせ的な情報発信が今回あるかどうか、というようなお話で、それが出るならまたなんか急に変なものを食ったのかというようなジャガーチェンジ利上げが、昨年7月や今年1月のように見られるかもしれません、って所でしょうか、知らんけど。

ただまあ何ですな、ちょっと政権がどうなるかとか分からん状況では、この7月会合のタイミングで9月10月に向けた頭出しをするのっていうのはリスクがある、とハトハト先生たちは思うんじゃネーノってなもんでして、そう考えますと今回の決定会合はどっちつかずの鵺みたいな情報発信でお茶を濁してくるようにも思いましたが、そうじゃなかった場合はさすがにちょっとビビるというか変な物食ったモードになるという所ですか、ちなみに決定会合2日目は土用の二の丑の日だそうですので鰻食って急に勇気と胆力が出て頂いても宜しいんですけどねwwwwwww


〇新発3MTDBがよーわからんけど金利上昇

金曜の短国3M
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250725.htm
国庫短期証券(第1321回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1321回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号   国庫短期証券(第1321回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日     令和7年7月28日
4.償還期限    令和7年10月27日
5.価格競争入札について
(1)応募額          10兆2,882億円
(2)募入決定額     3兆2,534億6,000万円
(3)募入最低価格     99円89銭0厘5毛
(募入最高利回り)    (0.4396%)
(4)募入最低価格における案分比率    47.3315%
(5)募入平均価格     99円89銭3厘7毛
(募入平均利回り)    (0.4268%)』

ということで、木曜の引けがWIで急に利回り上がりましたなとか言ってたらちゃっかりと入札の方が足切り0.44%寸止めまで流れまして、でもって引値の方も、

売買参考統計値ちゃん
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(7/25引値)
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.410
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.410
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.410
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.450

って結果になっておりまして、新発の引値0.45%ということで入札足切りよりも弱い引けとかいう中々のしょんぼり引値になっておりますのもさることながら、新発の所でいきなり4毛段差って何だよそれと思う次第で、これ償還日北米とか休みだったっけとか思いましたがそうでもなさそうだし、何ですのこれはという引値になっておりますが何でですかねえ。

いやまあ短国自体はGCとか現先とかの金利考えたら0.40台前半ってそこそこ逆ザヤになるので、そんなレートになってしまいますとマーケットメーカーだって在庫にしにくいし、短期の純粋な資金運用にしたって他の短期運用対比で期間リスクがあるのに金利が低いとかいう謎現象が発生してしまうものなので、国債という付加価値以外に間尺に合わないので0.45%でも全然問題ないというか7月は兎も角9月利上げワンチャンと思えばそのレートでも何なのよとは思います(けどそれ言い出したら新発の手前で段差が付くのがおかしいw)けど、まあ単純にこの銘柄に金利低くても必要というニーズが無かったとかそういう話なんでしょうけれども、中々謎の入札ではございました。


〇東京都区部CPIとか日銀基調物価とか

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf
2020年基準 消 費 者 物 価 指 数
東京都区部 2025年(令和7年)7月分(中旬速報値)

『◎ 概 況
(1) 総合指数は2020年を100として111.0
前年同月比は2.9%の上昇 前月と同水準(季節調整値)

(2) 生鮮食品を除く総合指数は110.5
前年同月比は2.9%の上昇 前月と同水準(季節調整値)

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は109.7
前年同月比は3.1%の上昇 前月と同水準(季節調整値)』

てな訳ですが、まあ最近は「前月比」の方が気になるのですが、3指数とも2か月連続で前月比横ばいとなっておりますな、と言っても前年同月比は相変わらず3%近辺なんで給料上がらんと困るがな状態なのは変わらんのですけど。

でまあ日銀謹製の方ですけれどもこの前の6月全国を受けて先日出ていまして、

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm

例によって刈込平均、加重中央、最頻、の順ですが、

Jan-24 2.6 1.9 2.3
Feb-24 2.3 1.4 2.0
Mar-24 2.2 1.3 1.9
Apr-24 1.8 1.1 1.6
May-24 2.1 1.3 1.5
Jun-24 2.1 1.4 1.6
Jul-24 1.8 1.1 1.5
Aug-24 1.8 0.7 1.3
Sep-24 1.7 0.8 1.4
Oct-24 1.5 0.8 1.3
Nov-24 1.7 0.9 1.1
Dec-24 1.9 1.0 1.1
Jan-25 2.2 1.4 1.3
Feb-25 2.2 1.4 1.2
Mar-25 2.2 1.4 1.4
Apr-25 2.4 1.7 1.8
May-25 2.5 1.7 1.6
Jun-25 2.3 1.4 1.4

まあこれで加重中央とか最頻がまだ1%台前半だからとか言い出しそうではあるのですが、そもそもこの辺の数字が2%にまともに乗っているとCPIの実数自体ってもっと上なんじゃネーノって感じもする次第で、もう普通に物価上昇が定着してるし、やっぱりインフレ期待の上振れの方がまずくないか(しつこいが今回の参議院選挙の結果はまさに消費者のインフレ期待の上振れによる現政権への不満が(それだけじゃないでしょうけど)反映されていると思いますしおすし)とは思うのですが、今回の展望レポートではその辺についての日銀の現状認識を知りたいなあとは思います。ゆうて政治方面からケツ叩かれているとは思えないので何も変わらずノホホンと「基調的物価は2%に達していません」になりそうな悪寒しかしませんけど。

ちなみに上昇品目下落品目は

Jan-24 83.9 10.7 73.2
Feb-24 81.8 12.8 69.0
Mar-24 79.5 15.1 64.4
Apr-24 80.8 14.0 66.9
May-24 79.3 15.5 63.8
Jun-24 78.7 16.1 62.6
Jul-24 75.7 18.8 56.9
Aug-24 74.7 19.9 54.8
Sep-24 76.1 18.2 57.9
Oct-24 75.1 19.5 55.6
Nov-24 75.5 19.3 56.1
Dec-24 75.7 19.0 56.7
Jan-25 77.0 17.2 59.8
Feb-25 78.7 15.7 63.0
Mar-25 80.5 14.2 66.3
Apr-25 80.3 14.2 66.1
May-25 81.6 13.2 68.4
Jun-25 80.5 13.6 66.9

もう「8割の品目が値上げ」っての完全定着じゃろ、と思う訳でこの辺からもインフレ期待はもう結構上昇だろという話になると思うんですよね。



〇内田副総裁高知金懇講演:金融政策パートから

HTML版が出ていますので引用はHTML版から参ります

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250723a.htm
【挨拶】
最近の金融経済情勢と金融政策運営
高知県金融経済懇談会における挨拶
日本銀行副総裁 内田 眞一
2025年7月23日

・実は今回の講演のキモは経済物価の話の方だった(のもあって後回しにしました)訳でして・・・・・

『3.日本銀行の金融政策運営』ですが、いきなり『先行きの金融政策運営』からおっぱじまります。まあ余計な前振りないのはシンプルでよろしい。

『続いて、日本銀行の金融政策運営についてお話しします。』

へい。

『ここまでご説明してきましたとおり、先行きのわが国経済は、海外経済が減速するもとで、成長ペースが鈍化し、基調的な物価上昇率はいったん伸び悩む姿が想定されます。』

ホンマカイナとは思いますが何せ基調的物価はお気持ちなのでつまりは「お気持ちが盛り上がりません」ってな話ですがそれは環境の改善ではなくて勇気が起きるかどうかの話、というのは先ほど悪態をついた通りですwww

『また、各国の通商政策やその内外経済への影響を巡る不確実性は、極めて高い状況が続いており、経済・物価ともに下振れリスクが大きいと考えられます。こうした点を踏まえますと、まずは、緩和的な金融環境を維持し、経済活動をしっかりと支えていくことが大切です。』

まあこれは日米通商交渉合意を踏まえていないのですが、

『日本銀行は、先月の金融政策決定会合において、0.5%の政策金利を据え置きました。図表12をご覧ください。左グラフのとおり、名目の金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利は、足もと大幅なマイナスとなっています。また、右グラフの金融機関の貸出スタンスは、短観の結果をみても引き続き積極的であり、社債等の発行環境も総じて良好な状態が維持されています。わが国の金融環境は緩和した状態にあります。』

大幅な緩和というのは物価押上げ策なんですが、と言いたいのですが、日銀の理屈によるとアクチュアルの物価はこの後下がるので無問題、ということになっています。

『先行きの金融政策運営については、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえますと、これまでご説明したような経済・物価のメインシナリオが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。』

ということで4月展望と同じ説明ですし、

『そのうえで、そうした見通しが実現していくかどうかについて、予断を持たずに判断していく方針です。まず何よりも、ご説明してきたとおり、通商政策に関する各国の交渉の帰趨に加え、そのもとで内外の経済・物価や国際金融資本市場がどういう方向に向かうのか、現在までの各国の経済データからはっきりとはわかりません。不確実性は極めて高く、内外経済は大きな岐路にあるように思えますので、注視していきたいと思います。』

日米通商合意があったのがまさにこの日の朝なのですが、「内外経済は大きな岐路」っていう原稿がそのまま採用されている、という時点でお察しというか「今回は下手な決め打ちはしないで4月の判断のままで行く」ってのが見え見えな訳です。

金曜日にネタにしましたように、会見では当然ながら何度も「日米合意を受けてこの不確実性が晴れたんじゃないでしょうか」という質問が飛んでいましたけれども、それに対して内田さんは基本的にすんげえ慎重な物言いに終始していましたし、大体からして原稿にしたってその気になれば朝一の日米合意を受けた文言を挿入することだって不可能ではない(可能かというと色々面倒かもしれないけど)訳ですが、そーゆーのを一切入れずに日米通商合意前の話を押し出してきている、という時点でお察しなんですよね。

つまり、

『これらの要因はわが国の物価に対しても、押し下げリスクとして働くと考えられます。』

ってことで通商問題が物価押し下げリスク、って認識を示していますが、

『一方で、食料品価格を中心にコストプッシュ面からの押上げ圧力が働いています。』

と言って、

『これら両面の動きが、企業の賃金・価格設定行動などを通じて、先行きの物価見通しにどのような影響を及ぼすか、注目していきます。』


・リスクマネジメントアプローチは植田総裁の好きなお言葉ですね

次の段落ですが、

『経済・物価の先行きには常に不確実性がありますので、金融政策においては、そのことを前提としたうえで、経済・物価の安定の観点から、上振れ・下振れ双方向のリスクに対して最も中立的な立ち位置に調整していく必要があります。この考え方は「リスク・マネージメント・アプローチ」と呼ばれていますが、不確実性が極めて大きい現在であるからこそ、こうしたオーソドックスで、頑健な政策運営を心掛けていきたいと思います。』

って言ってるんですが、まあ日銀大本営としてはそういう理屈なんですけど、そもそも「きわめて緩和的な政策」を継続することのリスクとしてインフレ期待が上放れしてしまうというリスクについては相変わらずのどスルー振りなのは把握しましたけど、インフレ期待が2%で都合よく止まらないで上振れするのって「リスクマネジメントアプローチ」の中でも重要な点じゃないのか、というのが最近の欧米での金融政策ストラテジーの話の中での主流だと思うのですけど何でそう堂々と無視できるんだかとは思います。まあ無視しているというよりはそれを言い出すと利上げしないと行けなくなるのですがそういう胆力が無いから屁理屈捏ねて問題の先送りしているだけだと思いますけど(個人の偏見です)。


・長期国債買入の減額では日銀の適正なバランスシートの規模の問題を切り口にするのは毎度のように回避ですねえ

次が『長期国債買入れの減額計画』ですがこれは途中から引用します。

『先ほど申し上げたとおり、日本銀行では、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、これをさらに進めるためには、国債買入れの減額を継続していくことが望ましいと考えています。一方で、今後の減額ペースが速すぎると、市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性もあります。』

ということでそもそも論としての日銀の適正なバランスシートという話はしませんな。まあ内田副総裁は先般の金融学会での講演で堂々と「ひとつは、金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。」(2025年6月7日の日本金融学会での内田副総裁講演より)という説明をしていますので、その理屈からすると「日銀の適正なバランスシート規模」という発想にならんのですよ。

勿論ですがその内田さんの説明って盛大なインチキでして、「金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められる」のであれば、初手から国債を全部日銀が購入しても何の問題も無い、というバーナンキの背理法も裸足で逃げ出す無税国家が発生することになりますが、そうなる訳ないのですから(その時にインフレが上振れた場合には中央銀行は当座預金付利によって飛んでも無い額の統合政府による財政支出を余儀なくされるし、その財政支出が経済を刺激したらインフレが止められなくなりますがな)バランスシートの規模の切り口で説明していない時点でインチキにも程が有るわけですし、


・どう見ても財政ファイナンスです本当にありがとうございました

『特に減額が進むにしたがって、フローやストックの面で市場参加者が購入・保有する国債の額は大きくなりますので、市場参加者の見方も伺ったうえで、減額ペースの縮小が適当と判断しました。』

市場配慮と称していますが、この説明は「これまで日銀が財政ファイナンスを行っていましたので本来市場が許容できない規模の国債発行が可能でした」と言っているのと同義なんですよね。でまあその先はクソどうでもいいですが、

『このほか、今回決定した計画は、これまで同様、国債市場の安定に配慮するために必要な柔軟性を備えたものとなっています。すなわち、今後、長期金利が急激に上昇するといった例外的な状況が生じた場合には、機動的に、国債買入れの増額等を実施し得るとしているほか、来年6月の決定会合では、国債市場の動向や機能度を点検しつつ、新たな減額計画の中間評価を行い、必要があれば、適宜、計画に修正を加えることとしています。』

まあ結局この辺りの話も「スムージング」の名目になっていますが、日銀が財政ファイナンスをして国債発行を支えているのがビルトインされているから簡単に戻せない、という話ですし・・・・・


・デフレ脱却に国債買入が効果があったんだったらインフレ抑制のためには新規の国債買入を最低でもゼロにしないといけないのでは??

次の段落ではこういう説明しているんですけど、

『2013年からの大規模な金融緩和は、政府の施策などと相まって、デフレ経済の根底にあった雇用の余剰を解消し、現在、人手不足は企業行動や経済構造を変える原動力(ドライビングフォース)となっています。私は、これは日本経済にとって必要な政策であったと思っています。』

だったら国債買入は強力に物価押上げ効果があるという話になりますので、

『一方で、何事もフリーランチはなく、この政策の最終的な得失は、出口を完了するまで確定しません。出口を成功させてはじめて、この政策が日本経済にプラスの効果をもたらしたといえると思っています。』

って言ってるんですが、期待インフレが上振れしたりすることを回避するためには「強力な緩和」は要らない訳で、現状の金利水準が「強力な緩和」ってさっき言ってたじゃんと思いまするに、なんか色々と矛盾しているんだよなと思う訳です、これが政策金利が1.5%位に乗っているならまだ様子見の大義名分あると思うのですが・・・・・・

ということで、長期国債買入のところは一部の引用とさせていただきました(時間の関係というのもありますがw)









2025/07/25

お題「ECBのポンチ絵今回は中々難解w/3MWIの値付けが金利上昇とな/内田さん会見はかなり慎重な物言いにしていますね(通商合意に対して)」

ほうほう
https://jp.reuters.com/world/us/LYJM6FQXZNI6TETI7SBNCLH3JA-2025-07-24/
日本、短期財政再建計画必要 刺激策は的絞ったものに=IMF
ロイター編集
2025年7月25日午前 2:29 GMT+9

『[ワシントン 24日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)のコザック報道官は24日、日本の次期政権は短期的な財政再建計画を明確に示す必要があるとの見方を示した。また、経済ショックに対する財政刺激策は一時的なものとし、最も脆弱な世帯や企業に的を絞ったものにすべきだと述べた。

コザック氏は、IMFは依然として日本の財政余地は限定的だと見ていると言及。「日本は依然として高水準の公的債務を抱えている」ことから、利払いの増加や高齢化に伴う関連支出の圧力を相殺する明確な財政健全化計画を策定することを日本に提言すると述べた。』(上記URL先より)

ほうほうそうですかそうですか

〇ECBはいつものポンチ絵をとりあえず見ておくあるね

今回
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2025/html/mopo_statement_explained_july.en.html
Our monetary policy statement at a glance - July 2025

ちなみに前回
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2025/html/mopo_statement_explained_june.en.html


・金利据え置きに関しての理由は「物価がOKなのでOK」のあっさり味

1番目のイラスト。

『We kept our key interest rates unchanged』(今回)
『We cut our key interest rates by 0.25 percentage points』(前回6月)

前回までは利下げで今回は横なのでここが違うのは当然ですが、説明文は、

『We did this because inflation is set to stabilise at our 2% target.』(今回)
『We did this because inflation is settling at around our 2% target, while the economy is facing headwinds.』(前回6月)

って説明になっていて、「物価が2%で安定しているから」となっていますが、前回は「2%近くに来ているから」だったので「物価が安定したから」で済ませているのがほほうと思いました。でもって前回は「経済に向かい風があるから」利下げだったのですがその表現が無いので・・・・・・

・経済のイラストが中々意味不明なものにwwwwww

2番目のイラストが過去イチ意味不明なものになっておりましてですねw

『The economy has been resilient』(今回)
『What is happening in the world is holding the economy back』(前回6月)

上述のように前回は「経済はヘッドウインドを受けている」ということで利下げしたのに対して今回は利下げしていないのですから、その理由として今回の認識が「経済がレジリアント」っていうのはまあ分かるのですが、(貼り付けスキルが無いので貼り付けをしませんけど)イラストの方が、大雨の中で落雷っぽいのもあるようなイラストの中、傘に守られている、という絵になっていて、どこがどうレジリアントなのか小一時間問い詰めたい意味不明なイラストになっています。これはドイヒー。

説明文の方を見ますと、

『It grew more strongly than expected over the first months of the year. But the global environment remains exceptionally uncertain, especially because of trade disputes.』(今回)

年初数か月考えていたよりは経済はモアーストロングリーでしたが、グローバルな環境は異例なまでにアンサータンで特に貿易の悪化が不明である。

・・・・うーんこの(訳が下手くそなのは勘弁してもろていただいて)という感じで、何なら6月のイラストよりもどう見ても絵柄が暗い訳で、これはさすがに何を言いたいのか分からんという世界です。

まあとりあえず政策金利が中立的な水準になったから様子見とかそういう理屈なんでしょうけれども、2番目のイラスト比較だけで言ったら利下げしてもおかしくないじゃろという話だが説明文だと利下げしなくても良い、という面白状態・・・・・・

前回の説明文は

『Global uncertainties and trade tensions are weighing on the economy. How these are resolved will have an impact on how fast the economy can grow.』(前回6月)

絵柄は右行けば天気明朗の道、左に行けば大雨の道、さてどっちにいくのやら、というような絵柄で、そこから今回大雨の中に突っ込んでいるんだから、経済の現状認識だけを定性的に勘案すれば何でそれで利下げ止めますのん、という話になる訳ですな、もちろん物価の方が「2%近傍にいるから(キリッ)」ってのはありますが。


・通商問題は前回よりもちょっとだけ絵柄が明るい

まあそれが利下げ停止で様子見モードの理由の一つなんでしょうけど。

『Firms are still holding back』(今回)
『The economy has gained some strength to deal with these global problems』(前回6月)

になっているのですが、イラスト的には明るい話と暗い話の並列だった前回に対してなんか秤に乗ってる未来が明るい方が重くなっている今回の方がちょっと明るくなっていまして、

『Tariffs and global uncertainty are making them cautious to invest. The stronger euro means that firms’ exports are more expensive in the rest of the world. But governments are planning to spend more money, especially on defence and infrastructure, which should support the economy.』(今回)

『Firms are still cautious about investing because of uncertainty. But lots of people are in work and have higher incomes to spend. Governments are also spending more on infrastructure and defence, which helps the economy.』(前回6月)

今回「ユーロ高が企業行動にマイナス」というのが入りましたね。いまいち説明文とイラストが微妙なのはこれもさっきのと同じかなと思いました。


・利下げをしてきた効果をアピる説明が今回挿入される

基本的に四半期のスタッフ見通しの会合とそうじゃないときはこのポンチ絵の構成が違ってて、見通し会合じゃないときは絵の数が多いのですが、

『Most people’s finances are in good shape』(今回)
『Borrowing money has become less expensive』(今回)

って2つのイラストが入っていまして、その説明文ですが、

「多くの人の財務ポジションは良好です」というのの説明がこちらで、
『Many people are in jobs and their wages are growing at a good pace. This allows them to spend on goods and services, like holidays, and to invest in buying a home.』(今回)

「借入金のコストが下がっている」というのの説明が
『Firms are demanding slightly more credit. At the same time, banks are cautious about lending because of global uncertainty and trade tensions.』(今回)

ってなっていまして、2番目の方が借入のコスト下がった話でこれまでの利下げ効果をアピールしているのかね、とは思いました。


・物価は2%に着陸したそうです

ホンマカイナというのはさておきまして、

『Inflation is where we want it to be: at 2%.』(今回)
『Inflation is settling at our 2% target』(前回6月)

何この達成感満々の小見出しは、という所ですが、イラストの方でも2%と書いてある滑走路に着陸しています、という状態になっていて何かエライ勢いで大勝利モードになっているのですな。

『We expect it to stabilise around our 2% target in the period ahead.』(今回)
『Lower energy prices are helping to keep inflation down. Wages are growing more slowly. A stronger euro means that goods and services from the rest of the world are cheaper for us.』(前回6月)

どう見ても大勝利モードです本当にありがとうございました、ということなんだがホンマカイナという気はせんでもないですが、まあそういう話になっておるということですね。なので政策金利は中立水準ならOKとかそういう理屈なんだと思いますけど。

まあ詳しくは会見読まないといけないのですが内田副総裁ネタがあるのでECBネタはこの辺で勘弁。


〇ところで入札前に新発3MWIの値付けがいきなり甘くされているのですがこれは何ぞ?

いつもの売参
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(7/24引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.410
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.400
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.400
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.400
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.440←今日入札の新発WI
国庫短期証券1304 2025/11/10 平均値単利 0.440

(7/23引値)
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.410
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.400
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.400
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.395
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.405
国庫短期証券1304 2025/11/10 平均値単利 0.415

まあここもと中短期の金利上昇しているので短国に関しても1年に近い所とかは昨日ですと1年短国カレントの引けが0.66%とかになっているのですが、3Mの辺りって入札前にそんなに弱くするもんかなと眉に唾をつけながら見るのですが、まあ値付け上だけでは入札前に甘くされていますね、というのだけメモっておきます。実際に3M入札がどうなるのかは知らんですし、ちなみに10/27足だと10月利上げは無関係銘柄であることは念のため付言しておきましょう。


〇内田副総裁高知金懇ですが金懇挨拶の続きの前に先に記者会見ですが通商合意を受けたコメントはかなり慎重ですね

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250724a.pdf
内田副総裁記者会見
――2025年7月23日(水)午後2時から約35分
於 高知市

まあ今回注目されるのはこの日の朝に出てきた通商合意に対する評価、となるわけですが・・・・・・・・

・さすがに「不確実性の低下」だが「不確実性は依然として高い」だそうでまあ手堅いというか慎重というか

『(問)日米交渉が今朝合意しましたけれども、その受け止めとですね、午前の講演の中で関税措置を巡って不確実はきわめて高いと指摘されていましたけれども、今回の合意でその不確実性というのは一定程度緩和されたことになるのか、お考えをお願いしたいのが一点目です。』

一発目の質問が当然これである。でもって内田さん2番目も含めて一気に回答しているので後半も引用しますが、

『二点目は、講演の中で関税措置を受けた企業の対応はこれからだと指摘されてましたが、この企業の影響がある程度データだったりヒアリングで出てこないと、次の利上げの判断はできないということなのか、この二点お願いします。』

てな質問ですが、会見録見れば一目瞭然なのですが回答が長くて、まあこの時点で「ああでもないこうでもないと説明をして煙に巻く攻撃モード」に入っているのが読み取れますな。本来だったら1点目なんて「一定程度緩和されましたが、今後の情勢を見たい」で終わりだと思うのですが、まあその部分の回答だけでこの長さなんですよね、ということで引用しますが、

『(答)午前中でしょうか、石破総理が、日米間の関税交渉が合意に至ったと発表されたことは承知しております。この間、関税交渉にあたられた政府関係者の皆さまには、心より敬意を表したいというふうに思います。今回の合意、大変大きな前進であるというふうに思います。日本経済にとって関税政策を巡る不確実性の低下につながるというふうに考えております。』

『経済・物価への影響ということに関しましては、合意の内容を精査したうえでしっかりと分析していきたいというふうに思いますし、来週決定会合で展望レポートを公表することにしておりますので、その中にも反映していきたいというふうに思っております。』

「一定程度緩和されましたね」の部分だけでこんなに長く説明している辺りが、「下手に決め打ち文言を入れないようにしながら全方位にヘッジ」という今回の内田さんの金懇挨拶を踏襲しているな、と思いました。

『もちろん、今回、特に日米間、それから日本の企業にとっての不確実性が低下するということで、大きな前進と申し上げましたが、当然のことですが、各国の交渉、米中とか米欧とか、こういったものは残っているわけですし、それから関税の影響というものが、これは内外というべきでしょうが、国内あるいは海外、世界経済に対してどういう影響があるのかということは、他の国の例をみましてもなかなかハードデータで確認しづらいとか、ちょっとどのぐらいの期間かかるのかがあまりはっきりしないということが、今日の講演でも申し上げましたけれども、出ています。』

『そういう意味で当然ながら不確実性は残っているということだろうと思います。』

結論までが長いwwww

『まとめますが、非常に大きな前進であり日本企業にとっては不確実性が低下したということではありますが、世界経済全体、日本経済全体にとっての不確実性は引き続き高いというふうに思います。』

はい「不確実性は高い」頂きました。

『そういう意味ではですね、その点を含めて今日の金融政策のパートで申し上げましたけれども、常に先行きというのの不確実性はあるわけでありまして、その不確実性がある中で一番良いところにポジショニングするというのが基本的な金融政策の考え方、リスク・マネジメント・アプローチということですので、そういった考え方に沿って、政策は運営していきたいというふうに思います。』

ちなみにこの「リスク・マネジメント・アプローチ」ってのは就任直後の内外情勢調査会(2023/5/19)で植田総裁が思いっきり言ってた理屈でして、これを前面に出していく説明に切り替えてきているな、というのは(ちょっと飛ばしていますが内田さんの金懇挨拶の金融政策パートでもこの話がありましたのでそれは後日)思いました。


でまあそのリスクマネジメントアプローチですけれども、次の質問で、

『(問)先ほどの発言の中でもリスク・マネジメント・アプローチという言い方をされましたけど、今回のその合意を受けて、上振れ方向のリスクをより意識していくことになるのか、まだまだ上下双方向意識していくのか、その辺りについてお願いします。』

いやちょっと待て4月展望は物価も経済も下振れリスクなんだから「まだまだ上下双方向意識していくのか」じゃねえだろちゃんと質問してくれと思いましたがその回答。

『(答)当然これは上下双方向をみていく必要があるということだと思います。まず一般的に、当然、上方向・下方向のリスクというのは常にあるわけで、前回の展望レポートにおいては、経済・物価ともにダウンサイドリスクが大きいという判断をしたわけです。』

内田さんに補足されているのはクソワロタwwwwww

『これはやはり、関税を巡る、これは日米だけではなくて、各国の交渉というのがあるわけであり、かつ、そのことがどういう経済・物価への影響が出てくるのかというところに不確実性が高い、その結果として物価にも影響するであろうということで、4 月の時点では判断したわけであり、少なくとも大きな構図においては、それが続いているというふうに思います。』

>大きな構図においては、それが続いているというふうに思います
>大きな構図においては、それが続いているというふうに思います
>大きな構図においては、それが続いているというふうに思います

エライ慎重な物言いになっていまして、

『もちろん今回の合意ということは、大きな前進だと一番最初に申し上げました通り、特に日本企業にとってですね、不確実性の低下にはつながるというふうに思いますけれども、引き続きこのダウンサイドリスクもみないといけないということだろうと思います。』

という回答になっておりまして、今回の通商合意を受けて別に威勢の良い事を言っても罰は当たらんとは思うのですけれども、変に威勢の良い事を言った結果市場が変な着火でもしたら面倒、というのもあるし、ゲルの進退問題→高圧経済とかいう馬鹿理論を唱える馬鹿が後継になる、というリスクも考えた場合、あんまり威勢の良い事言って利上げ路線を強く出すようなことをすると後で引っ込みがつかなくなる、というのを懸念したってのもあるんじゃなかろうかとは思ったのですが、まあそんなこんなで今回の会見って通商合意を受けた威勢の良い発言がそんなに威勢が良くない、という事になっているのが特徴だと思います。


でまあ以下延々と通商合意の話で、そのほかに参院選受けた財政拡張ネタがあったのですが・・・・・・


・うーんなんで「物価高対策」が最大の政治イシューになっていることは質問しないんだろう

これがとにかく不可解なんですけど、例えばこの質問。

『(問)(前半割愛)すみません、ちょっと話が変わるんですが、先般の参院選で与党が敗北してですね、野党が選挙期間中に消費税の減税などを訴えたこともあって、今後の財政について拡張的なですね、思惑というのが広がってる部分があると思います。今後そうしたですね、物価高対策を巡って、財政が拡張的な動きになった場合、いわゆる物価が上振れてしまう、インフレ期待が上がってしまう、財政拡張によるそういう物価の上振れリスク、インフレ期待が上昇してしまうリスクについて、副総裁、今どのようにお考えか。この二点お願いします。』

この質問が「物価高対策」問題に言及はしていたので一番マシな質問だと思ったのですが、でもまあゆうてこの質問も「財政拡大に対して」の質問で、そっちは日銀直接的にどうこうできる話じゃないし、下手なこと言ってゲル政権飛んだあとにエライ目にあうのも嫌でしょうから余計なことは言わんじゃろと思う訳で、それよりも弊駄文で再三再四申し上げておりますように、物価の安定を責務とする中央銀行が「これから物価は下がる」と言い続けながらアクチュアルの物価見通しを外して、結果的に物価高が政治の大きなイシューになってしまっている、という事に関してどういう所感なんですか、ってのを質問しないのって何なん???と思う訳ですが、弊駄文ではたぶんこのことを1万回くらいは申し上げておりますので耳タコですねすいませんすいません。


とまあそんな訳で金懇挨拶の続きはまた後日参りますね(会見はまあさっきの「慎重ですね」で終わりかなと思います)。






2025/07/24

お題「関税合意とゲル退任報道で債券アイヤー(備忘メモ)/内田副総裁金懇講演は「全方位にヘッジ」と「基調的物価の扱いの変化(か?)」がポイントかなと」

おおおおおおおおお
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-23/SZUR0QGQ7L5200
LIBOR事件、首謀者とされた元トレーダーの有罪破棄−名誉回復へ
Lucca De Paoli、Hillary Boye Doku
2025年7月23日 23:00 JST

金利市場老人会には懐かしの大事件でしたが・・・・・・


〇関税15%とかゲルが退任なのか退任じゃないのかとか(ニュースクリップ)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250723/k10014871861000.html
日米で合意 相互関税15% 自動車関税も15%【詳しく】
2025年7月23日 23時13分

『アメリカのトランプ大統領は22日、関税措置をめぐる交渉で日本と大規模な合意を締結したと明らかにしました。日本がアメリカに巨額の投資をする一方、アメリカは8月1日から発動するとしていた日本への25%の関税を15%に引き下げるとしています。また、自動車関税についても既存の関税率とあわせて15%とすることで合意したということです。』(上記URL先より)

選挙期間中に出してやれよとは思いましたし、そもそも向こうがゴロツキみたいにゆすりたかりをしているのに対してびた一文負けないべきとかいうべき論はさておきましても、現実解としては誠に結構な落としどころだし、それが証拠に

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/UAB5QJGYE5JZBFDWSAZYRO2YZI-2025-07-23/
米自動車業界団体、日本との貿易合意に懸念表明 「悪いディール」
David Shepardson
2025年7月23日午後 1:32 GMT+9

米国自動車業界ざまあwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

ということでですな、まあこれは良い花道という格好がつくのでむしろ退任しやすくなるんじゃねえのとかいう話をしてたら毎日が、

https://mainichi.jp/articles/20250723/k00/00m/010/057000c
石破首相、退陣へ 8月末までに表明 参院選総括踏まえ
スクープ
政治 速報 政局 国政選挙
毎日新聞
2025/7/23 11:16(最終更新 7/24 00:59)

ってのをぶっこんできて、読売(と産経はずっとゲル憎しモードなので)が大喜びで新聞号外まで
配って回っておりましたが、夕方近くになって、

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250723/k10014872251000.html
石破首相 続投の意向 重ねて示す 3人の首相経験者と会談
2025年7月23日 19時37分

ということで結局どっちですねんという話ですが、まあ花道引退して後任が高市大先生にでもなろうもんなら高圧経済で物価も円安も高圧ってなお話になるし、なんなら高市と玉木と神谷の悪魔合体とかいうのも出ようもんならそらもうトラスショックも裸足で逃げ出す破壊力、てなもんで円債は日米合意のグッドディールとゲル退任報道のダブルパンチで結局アカンタレとなっておりましたわな。


債券市場ちゃん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/ECGDF7IRL5OHHKWOMZMKVU77DE-2025-07-23/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は急反落、長期金利一時約17年ぶり1.6% 日米関税交渉合意で
ロイター編集
2025年7月23日午後 3:20 GMT+9

『[東京 23日 ロイター] - <15:09> 国債先物は急反落、長期金利一時約17年ぶり1.6% 日米関税交渉合意で

国債先物中心限月9月限は、前営業日比98銭安の137円62銭と急反落して取引を終えた。日米関税交渉合意を背景としたリスクオンの流れや日銀の利上げ観測を背景に円債は売り圧力が強まった。財政拡張懸念も引き続き相場の重しとなった。新発10年国債利回り(長期金利)は一時1.600%と2008年10月以来の水準まで上昇した後、同9.0bp上昇の1.590%。』(上記URL先より、以下同様)

ということでまあ売られたわけですが、前場は超長期よりも中期や先物や長期の方が弱かったと思いますし、前場引け後で入札入れる前、という絶妙なタイミングでゲルの退任報道が出て40年国債入札自体は弱めちゃあ弱めの結果なんですが、そもそも論としてヘッジをした後に売り材料の方でのネタが出ている分って当然ながらヘッジがワークしやすくなるので、多少弱くてもまあそんなもんじゃろ、だと思った(のだがどうですかしら)のですが、後場中盤以降に結局超長期弱くなってきて(ノ∀`)アチャーって感じになりました、ってなもんですな。

結局のところ、

『現物市場では新発債利回りは総じて上昇。2年債は前営業日比8.0bp上昇の0.830%と4月初旬以来の水準まで上昇。5年債は同10.0bp上昇の1.120%と3月末以来の高水準。20年債は同7.0bp上昇の2.600%、30年債は同5.0bp上昇の3.130%、40年債は同8.0bp上昇の3.455%。』

ということで、

『    OFFER  BID   前日比 
2年   0.822  0.829   0.076  15:07
5年   1.111  1.119    0.1   15:06
10年  1.589  1.595   0.092  15:01
20年  2.592   2.6    0.067  15:06
30年  3.132  3.141   0.058  15:06
40年  3.452  3.466   0.086  15:04』

ということで結局並みに全般売られたでござる(なぜか30年が確りなのですが)の巻って感じではございますけれども、この後ゲルが退任をひっくり返し(と言ってもまあ単に時間調整なのかも知れませんが)てきたりしているので何がどうなるやらわかりませんな。

まあしかし花道退陣だったら政権の中で汗かいた人の方が後釜になるってのが従来的なイメージになるので林芳正さんなんか良いんじゃないのと思うのですが、そういう穏健路線になれるのか、高市とかの自爆路線になるのか、まあさっぱりわからんですので素人があまり考えるのも止めておきますw


〇内田副総裁高知金懇挨拶は「全方面にヘッジを掛けた」ってのがワシの第一印象ですな

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250723a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 高知県金融経済懇談会における挨拶 ──

日本銀行副総裁 内田 眞一

ちなみに今回のこの金懇挨拶テキストのPDFですが、ここ数回発生していた「半角英数がテキストデータとして認識されない(のでコピペすると該当部分が消えてします)という怪奇現象が解消されていまして、エディターを変えていただいた(元に戻したのかもですが)ようなので誠に結構なことだと思いましたので先に申し上げます。

でまあそれは兎も角としまして、

・見通しの前提はさすがに朝一では差し替え出来なかったか

『2.経済・物価の現状と先行き』ですけれども、

『はじめに、経済・物価情勢です。図表1をご覧ください。わが国経済は、一部に弱めの動きもみられますが、緩やかに回復しています。先行きは、各国の通商政策等の影響を受けて成長ペースは鈍化すると考えられますが、その後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれます。』

『もっとも、各国の通商政策等の今後の展開やその内外経済・物価に及ぼす影響に関する不確実性は極めて高い状況にあります。』

『こうした見通しは、各国間の交渉がある程度進展することや、グローバルなサプライチェーンが大きく毀損するような状況は回避されることなどを前提にしたものです。』

ということですので、さすがに朝一の日米合意は踏まえていない内容になっていますが、まあ逆に日米合意がもうちょっと前に出ていたら話の前提を変えないと行けなかったからこの方が「手札」を出さずにすんでいて内田さん的にはラッキーって感じではありますな(いやまあ会見の方で質問は出ていますけど)。

『そこで、今後の経済を展望するうえで、大きなポイントとなる、@各国の通商政策とその世界経済への影響、Aわが国経済への影響、そして、B食料品など消費者物価の上昇と個人消費の動向の3点について、順にご説明したいと思います。』

ということで、3点のポイントが出ていますが、主にその見通しについて(物価についてはもうちょっと詳しく)確認して行ければと思います。


・通商政策の各国への影響:米国の話が殆どですが結論は「決め打ちできない」でして4月展望の前提は・・・・

『図表2をご覧ください。本年春先以降、米国が打ち出した一連の関税政策により、内外の金融経済を取り巻く環境は大きく変化しています。国際機関の経済見通しは、大きく下方修正されました。もっとも、今のところは、各国の経済指標の悪化は、マインド面などのソフトデータが中心で、成長率や雇用などのハードデータは、米国の関税引き上げに伴う駆け込みなどもあって、それほど悪化していません。』

とあってその後個別の説明があるのですが、ここで味わいが深いのは「国際機関の経済見通しは、大きく下方修正されました」という一節を入れていることでして、4月展望で日銀が突出してメインシナリオの下方修正というのを行って大変に目立つ結果になった訳ですが、「僕だけじゃないもん隣の家のIMF君のところだってやってるもん」という説明に余念がないのがさすが日銀大本営(褒めてない)という所ではありますwww

でまあ個別の話はかっ飛ばして先行きに関してですが、

米国について

『先行きは、メインシナリオとしては、労働需要の緩やかな減速と労働供給の減速がおおむね見合うようなかたちで、タイト感がゆっくりと緩和していく方向にあるとみられます。そうであれば、賃金の上昇を介した二次的なインフレ率の高まりには繋がりにくいということになります。一方で、関税の影響で消費者物価が大きく上昇し、かつ、労働市場のタイト感が強い状況が続く場合には、インフレ方向のリスクを意識せざるを得なくなります。逆に、労働市場が大きく悪化する場合には、経済の減速を意識した政策対応になると予想されます。このように、今後数か月の消費者物価と労働市場の動向は、米国経済やFRBの政策運営をみるうえで重要であり、それは為替市場をはじめとした国際金融資本市場にも影響を与えると考えられます。』

まあ景気悪化が先に来るのかインフレ再燃が先に来るのか、というのはよくわからんし対応も変わって来るだろうから決め打ちできません、というのはその通りだと思いますし、つまりこれは米国は利下げで来る、という決め打ちもしていない、ということでして、それはそれで日銀の緩和調整方向への可能性を高めている、ということになりますわな。

中国について

『この間、中国経済は、耐久消費財の買替え補助などの政策効果や駆け込み輸出などの影響で、高めの成長を維持しています。もっとも、今後はこれらの反動が予想されるほか、不動産市場の低迷や高い若年失業率などの問題も根強く残っています。また、もともと構造的な生産過剰を抱えている中で、わが国企業からは、中国からの輸出によって、素材を中心にアジア市場などの市況が悪化することを懸念する声があります。』

欧州について

『欧州の景気は、消費者マインドが悪化している中で、駆け込み輸出の反動もみられ、弱めに推移しています。この間、強めの動きとしては、AI関連を中心にグローバルなIT需要は回復しています。非AI部門は、駆け込みとみられる動きが一服しており、関税の帰趨にもよりますが、やや慎重な見方が増えているように窺えます。』

中国と欧州の話はまああっさりと流されていまして結論は、

『このように、足元までの世界経済は、関税の影響がマインド面でははっきり出ている一方で、駆け込みのタイミングや反動などによって、ハードデータの評価が難しくなっています。先行きについては、貿易を通じた直接的な影響に加えて、マインドの悪化が設備投資や個人消費にどんな影響を与えるか、注視していく必要があると思います。』

という結論になっているのですが、ここで4月展望レポートを思い出していただければと存じますけれども、4月展望では鏡(概要)の一発目の説明が、

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf

『●先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(この部分だけ直上URL先の4月展望レポート基本的見解概要より)

となっていまして、4月展望レポートでは見通し前提の初手として「海外経済が減速する」というのが決め打ちされていて(だからこそ経済のみならず物価のメインシナリオも下方修正になった訳ですが)おった訳で、内田副総裁のこの説明だと海外経済が減速しそうという認識は変わらん(そりゃそうだ)にしても、4月展望の鏡に書かれている表現対比でみたら上方修正っぽい(少なくとも4月展望を下方修正するものではない)ものになっている訳ですな。

しかもですね、これって今回の日米合意の結果を踏まえていない訳で、まあ日米合意自体は日米の話ですけれども、今後の欧州や足元仮置き合意みたいな中国との交渉が進展するかもしれないですし、そうなるとさらに上方修正への道ができてくるんですわな、と思いましたが、ただまあ別に下方修正はしていないけど先行きは全然決め打ちしておらず、結局どっちに転んでも良いような説明で方向感を出していない、というのは確かなんじゃないかなと思いましたがどうでしょうか。


・通商問題の日本経済への影響について:これまた日米合意は前提になっていないが企業行動の下方屈折懸念は同じく

『次に、日本経済への影響についてお話しします。図表4をご覧ください。今月1日に公表しました、私どもの短観の結果をみますと、企業の業況感は、米国の関税政策の影響などから製造業の一部で悪化していますが、全体としては良好な水準を維持しています。』

以下延々と現状の説明が続くのですがこれまたかっ飛ばしまして、

『もっとも、問題は先行きです。』

そらそうよ。

『各国の関税交渉の帰趨はなお不確実であり、企業の対応はこれからです。日本経済全体としても、@メインシナリオとしては、冒頭で申し上げたとおり、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、成長ペースはいったん鈍化する、Aそのうえで、不確実性は大きく、リスクはダウンサイドにある、と考えています。』

はい。

『まず、企業にとって、米国の関税引き上げの直接的な影響は、関税によるコスト増加分を現地の販売価格に転嫁するかどうかによって、輸出採算あるいは輸出数量に表れると考えられます。』

この点は先般の支店長会議における報告で色々とアネクが出ていましたね。

『図表8をご覧ください。例えば、輸出物価、特に北米向け乗用車の輸出物価は、4月以降はっきりと下落しています。ただ、この段階では、国内の親会社と米国の販売子会社との取引が中心とみられますので、子会社が実際どういった価格で販売するかは、今後の米国市場の競争環境にもよるでしょう。』

『こうした点を含め、企業がどういった輸出・販売戦略を採るか、その結果収益にどの程度影響するかは、関税率の具体的な水準や、それを受けた各国企業の対応などによって、変わってくると思われます』

でまあ日米合意に関してはこの金懇では織り込んでいない(当たり前だが)訳です。


『そのうえで、各国間の関税交渉がある程度進展するという前提に立つのであれば、仮に輸出企業の収益が相応に下押しされたとしても、企業部門全体としては、高水準の収益が維持される、というのが先ほど述べた短観の見通しです。』

ふむふむ。

『賃金設定についても、今後も人手不足感が強い状況が続くと見込まれるため、近年の積極的な賃金・価格設定行動の流れは途切れないというのがメインシナリオです。』

これに日米合意が乗っかるのですから・・・・・・・・^^

『もっとも、関税政策の負のインパクトが予想以上に大きくなったり、長引いたりした場合には、例えば、輸出産業の国内サプライチェーンの中で、原価低減圧力が強まったり、個人消費を通じて非製造業の業況に影響するなどの形で、ここ数年の賃上げの流れが弱まることが懸念されます。』

『世界経済や国際金融資本市場の動きを巡る不確実性が極めて大きいことを踏まえますと、わが国経済・物価に対するこうしたダウンサイドリスクを注視していく必要があります。』

賃金設定に関しては生活給の概念がここ数年のインフレで広がっている(と思われる)ことや、構造的な人材不足問題などもあるので、そう簡単にデフレ脳に戻るとはあんまりアタクシ的には思わない所ではあるのですが、ゆうて企業経営層はデフレ脳から脱却していない可能性もあって(高級スーパーや高級デリバリーなどで生活される経営クラスの高給を取っておられるような皆さんは生活物価が上昇とか言っても実はピンとこないじゃろというのは最近感じないわけではないwww)、やたら企業の賃金設定行動気にするのはまあそういうのもあるのかね、とは思いますがこちとらよくワカランチ会長でござるorzorz

まあいずれにしましても、今後の賃金設定や価格設定スタンスが下方屈曲しないかどうか、というのを懸念しています、という説明に関しては4月展望以降一貫しておりまして、その点から言ったら今回の日米合意しかも思ったほど悪い結果にはならなかった、というのは企業スタンスの下方屈曲懸念を大きく緩和するものになったって話になると思いますけどね、普通に考えれば。

でまあその企業行動に関しては、

『さらに、これらの点は、業種や企業、地域によっても事情は異なり、マクロのデータだけでは十分な情報は入手できません。特に不確実性が企業の投資などの判断にどう影響するかは、企業経営者の皆様方との対話を通じて、タイムリーかつ丁寧に把握していきたいと思っております。私どもの支店を通じたヒアリングなどにご協力いただきますよう、引き続きよろしくお願い申し上げます。』

とアネクドータルなデータを重視していく、というのも従来通りの説明になっていまして、まあこれは次回の支店長会議(さくらレポート)で企業行動スタンスの下方屈曲が無いことを確認できた、となれば何なら10月にだって利上げできるじゃろ(なお政局)という話になっても別に理屈としては全然おかしくない、ということにもなります。

とは言いましても、そもそも論としてそんな勇気があるんだったらもっと早期から正常化路線は組めて居たわけで、それをモタモタしているからアクチュアルの物価が上昇して人心が荒廃してこのクソ参院選になった次第な訳ですから、ハトハトチキンの皆さんにその勇気があるのか無いのか次第(ってか冷静に考えたら今回利上げしたっていいじゃないかという話だし政局が変になるまえに駆け込んだ方がエエエンチャウノという説まであるわwww)ですぞなという話になりますわな。

ということで、従来は「待ちの姿勢一辺倒」でしたが、ここいらの説明を見ますに、今回は全方位にヘッジを掛けた説明になっていて、まあ自由度を高めた、と言えば聞こえが良いですが、単に4月展望でアホみたいに下方修正して超地蔵モードになってしまった決め打ちのケツ拭きをして元に戻しにかかっている、というのがまあ正しいんですけど、いずれにしましても政策修正の余地をだいぶ広げたには広げた(政策修正するとは言っていない)ってことかと存じますがどうでしょうか。


・物価に関して:「基調的物価」が前面から後退しているのは味わいが深い

次が物価の話でして、

『続いて、3つ目の論点、物価情勢と個人消費の動向についてお話しします。』

『図表9をご覧ください。米などの食料品価格の上昇や関税政策を巡る不確実性などを背景に、左グラフの消費者マインドは、このところ悪化した状態にあります。右グラフは、実質ベースの個人消費の動向です。食料品価格の上昇などに伴い、消費者の節約志向が強まるもとで、緑の点線の食料品を含む非耐久財の消費は減少傾向が続いていますが、赤い線の消費全体としてみれば、雇用・所得環境の改善に支えられて、緩やかな増加基調を維持しています。先行きについては、先ほどご説明したとおり、賃金の上昇は続くと見込まれますので、物価上昇との相対的な関係が重要になります。』

この辺は「賃金と物価の好循環」の話ですが、最近はこの「好循環」を表にださなくなって来ているのはご案内の通りかと存じます。

『図表 10 をご覧ください。赤い線の生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、直近の6月は3%台前半となっています。近年の物価上昇の主因は、水色の棒で示した「食料品」の動きです。一度目は、22 年から 23 年にかけて、輸入物価の上昇によるものでした。これが昨年前半に一服したのち、昨年後半からは、米価格の上昇を主因に再び食料品価格が上昇しています。』

なお、ここに見られますように、「コストプッシュによる物価の上昇はいずれ下がる」とのスタンスは相変わらず崩しておりません、まあそこを変えてしまうと正常化を急がないといけなくなるので旗は下げられないのですけれどもw

『この間、ピンクの「サービス」の伸び率は 23 年にかけて上昇したのち、横ばい圏内で推移しています。賃金上昇がサービス価格を緩やかに押し上げる動きは、加速はしていませんが、底流として続いています』

好循環とは言わなくなりましたねえ。でもって先行きですが、先ほど申し上げましたように、

『先行きについては、米価格の上昇などコストプッシュ的な要因の影響は、政府による各種対応もあって、いずれ減衰していくとみています。』

政府による各種対応って備蓄米放出以外は基本的に財政支出なんで物価は押し上げられるんですが、とか突っ込みたくなりますが、まあ相変わらず「コストプッシュは一時的」のスタンスは変えて居ない訳で、昨日ネタにしたECBのストラテジーレビュー読めと言いたくなりますな。

『一方、コストプッシュ要因を除いてみた場合の物価の基調的な動きは、経済全体としての労働や設備の稼働状況を表す「需給ギャップ」と、少し長い目で見た企業や家計の物価の見方である「中長期的な予想物価上昇率」に規定されます。』

という説明は昔から展望レポートでも行われていて、需給ギャップと期待インフレがどうのこうの、というお話なのですが、

『図表 11 をご覧ください。』

とありますけど、物価に関しては図表10(PDFファイルの19枚目の下半分)が『図表10 物価 CPI』ってもので、図表11(PDFファイルの20枚目の上半分)が『図表11 需給ギャップと予想物価上昇率』となっている訳です。

でまあこれは何の変哲もないように見えるのですが、実は6月に行われた植田総裁の内外情勢調査会における講演では物価についてどういう話をしていたかと言いますと、

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a1.pdf
6月3日の植田総裁の「内外情勢調査会」(時事通信社主催)講演

講演本文5ページ(PDFの6枚目)の前後は物価の説明をしているのですが、この時の植田総裁は。

『そのため、2%の物価安定を実現していくにあたっては、コストプッシュの直接的な影響を除いた基調的な物価上昇率の動きをみていくことが重要となります。』(この部分だけ直上URL先の2025年6月3日内外情勢調査会での植田総裁講演テキストより引用)

ってなっていまして、その説明についても、図表編のPDF16枚目の下半分に『図表6 物価上昇率』というのがあって、17枚目の上半分には『基調的な物価上昇率に関連する指標』となっていまして、「基調的な物価」に対して数字を見せようっていうことも含めて前面に出して説明していたんですな。


然るに、今回の内田さんの金懇挨拶では、物価の説明において「基調的物価」を前面にださないで、物価のトレンドを作る、という文脈で「基調」を使っている、というのが中々味わいが深い訳です。

でまあこれナンデジャロと愚考しますに(以下個人の妄想なのであくまでもアタクシの与太だと思ってくんなまし)、やはり「基調的物価はまだ低いので引き上げ」みたいな話をするのに無理があるし、大体からして物価高が最大の政治イッシューになっているというのが今回の参院選で思いっきり明確になっている中で、日銀が訳の分からん「基調的物価」を振りかざして物価はまだ低いので金融緩和の調整は時期尚早みたいなことを言っていると十字砲火が日銀に向かって火達磨になるリスクをさすがに感じて、徐々にこの「基調的物価が2%行ってない」を前面から撤退させていこうとしてるんじゃネーノ、とまあ妄想したのと、あとはそもそも数値を出しに行っても基調的物価が強くなっていて、2%近くなってきたから説明上都合が悪い、という方なのかも知れませんが、いずれにしましても「基調的物価」を最前線から半歩位(なぜ半歩かはこの後)下げたな、という風に思いました、合ってるかどうかは知らんけど。


でまあその先の説明ですが、ここにも味わいがありまして、

『図表 11 をご覧ください。この点、まず左グラフの赤い線の需給ギャップは、現在ゼロ%近傍ですが、当面は、概ね潜在成長率並みの成長が予想されていますので、現状程度の水準で推移すると考えられます。その後は、成長率が高まるにしたがって、再び改善すると予想しています。』

『また、これまで労働供給を支えてきた女性や高齢者の労働参加の増加ペースが鈍化していることもあって、人手不足の状況は、厳しさを増しています。当地でも見られていることかと思いますが、宿泊・飲食など非製造業を中心に、設備が余っていても人手不足で稼働率を上げられないケースも目立っています。』

『その意味では、マクロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価に上昇圧力がかかる可能性があります。』

図表11云々は再掲で恐縮ですが、まず需給ギャップの説明をしているのですが、後半では1月展望レポートの時(つまりやる気満々モードに見えたとき)にしめされた「クロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価に上昇圧力がかかる可能性があります」が思いっきり戻って来ているんですよね。

でもって期待インフレ率ですが、

『また、右上グラフのとおり、中長期的な予想物価上昇率は、ここ数年、企業の賃金・価格設定行動が積極化している中で、緩やかに上昇しています。今後もこの動きは続くと思われますが、そのペースは、成長率の鈍化によって伸び悩んだのち、再度上昇するという経過をたどると思われます。』

まあ以前からこういう説明をしている訳なんですが、この点昨日ネタにしたECBのストラテジックレビューにあるように、インフレ期待ってノンリニアに上下にブレる(かつて大きく人口に膾炙したセントルイス連銀ブラード総裁(当時)の複数均衡論も同じような考えに基づく筈です)可能性がある(特に上)ので、本当にこういうような都合のいい話になるのか、というのは問い続けて行きたいと思うのですよね。だいたいからして日銀だって元々「インフレ期待のシフトアップ」って言ってQQE開始したんだし、そんなにリニアでスムーズな動きをするものとはチャウんじゃないのインフレ期待って。

それは兎も角として、

『もっとも、今年度入り後の値上げの動きは、米以外の食料品にも広がっており、消費者物価は、私どもや市場の予想よりも強めで推移しています。』

さっきの「国際機関」云々もそうですが、ここでも「市場の」とか入れて「僕だけが見通しを外しているわけじゃないもんお隣の市場何とかストちゃんだって外しているもん」と言い訳をするのは大本営の往生際の悪さが幼児並みにしか見えない見苦しい行為なので止めて頂きたいものですwwwww

『このことは、少なくとも食料品価格に関しては、企業の価格設定行動が、従来の考え方から有意に変化していることを意味しているように思います。同様の動きは、外食など周辺分野でも見られますので、その広がりを確認していきたいと思います。』

というか日銀がまだデフレ脳から抜けてないんじゃなかろうかという気がするんだがまあいいです。

『実際、食料品は、日々の生活に直結し、購入の頻度が高いため、人々の物価に関する見方に影響する度合いは大きいと考えられます。中長期的な予想物価上昇率は直接観察することが難しい指標ですが、ここ数年は大きな変革期にありますので、こうした点を含めたミクロの企業行動の変化などを、丁寧に把握していきたいと思っています。』

その割には堂々の決め打ちをしているように見えますがまあいいです先に行きまして、

『右下の表をご覧ください。以上を踏まえ、先行きの物価情勢を展望しますと、食料品価格の上昇の影響は減衰していくほか、基調的な物価上昇率も、各国の通商政策の影響により経済の成長ペースが鈍化することなどから、いったんは伸び悩むと考えられます。』

ということで、ここでやっと「基調的な物価上昇率」が出てきたんですが、じゃあそれについては、図表11の右下の表になるんですけど、そこの表の見出しは『政策委員見通しの中央値』でして、そこにあるのは(展望レポートの数字だから当たり前なのですが)『消費者物価(除く生鮮食品)』と『(参考)除く生鮮食品・エネルギー』になっていまして、コアコア物価が基調的な物価であるかのような説明に本家帰り(2022年4月の展望レポートからコアコアの話を思いっきり出すようになった)していまして、色々と頑張って「基調的物価」を計測するという感じだった6月の植田さんの講演テキストとはだいぶ扱いが違っているのが分かるかと思います。

今日は時間が足りないので明日に回しますが、金融政策の説明の所では相変わらず「基調的物価が2%行ってない」を出して説明しているので、「基調的物価」自体を全部抹消している訳ではないのですが、ただまあ物価の説明の中での扱いが明らかに前線から後退させられている、というのが見えたのが非常に味わいが深いな、と思いました、というお話なのですな、うんうん。

『来年度にかけては、消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率が2%を下回る局面もあるとみています。その後は、成長率の上昇につれて、労働需給の引き締まりが明確になり、積極的な企業の賃金・価格設定行動が広がる中で、現実の物価上昇率と基調的な物価上昇率はともに、徐々に高まっていくと考えています。そして、私どもが公表している「展望レポート」の見通しの期間の後半(来年度後半から 27 年度にかけての期間)のどこかの時点で、2%の「物価安定の目標」を実現する姿を展望しています。』

ここは4月展望レポートの説明を踏襲しておりまして、ここまでが経済物価情勢の話になりますが、時間の関係で以下の金融政策ネタは明日続きということで勘弁していただきとう存じます。




2025/07/23

お題「結局動かんのは変わらんようだがヘッジは入れだしてるように見える日銀ちゃん/ECBのストラテジーレビューから(たぶんその1)」

いやさあ・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250722/k10014870561000.html
石破首相 続投表明も自民党内に責任問う声 結束図れるか課題に
2025年7月22日 5時29分

今の物価高ってアベノミクスの後始末だし、しかも後始末しないといけないステージなのに「基調的物価」とか言い出して後始末をビビって中々進めないでいる「物価に責任のある中央銀行」がハトハトチキンになっているのは何ですねんという話だし、不可解なのは今の今になってもメディアがなんも指摘しないことなんですけどね〜。

まあ今回の結果の後のあれこれ見た愚感想はやっぱり「人心の荒廃」だと思うんですよね(あくまでも個人の勝手な感想です)。

〇BBGの毎度おなじみ「関係者」記事(今日は内田副総裁の高知金懇ですね)

ああそういえばクソどうでもいいんですけど、選挙結果の講釈記事を色々と見て回りましたけれども、ロイターとブルームバーグの記事が一番無茶苦茶で、お前ら日本に居ないで勝手に妄想でこたつ記事書いてるんじゃねえのと言いたくなるレベルなのですけれども、それが海外に発信されると思うと頭が痛いなあと思いました(あくまでも個人の勝手な感想です)。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-22/SZKSNBGQ1YXQ00
日銀は与党敗北でも利上げ路線堅持、目標実現シナリオも維持−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2025年7月22日 15:43 JST
→経済・物価が見通し沿った動きなら、利上げで緩和度合い調整の方針
→財政の大幅な拡大が一段の物価上昇につながる可能性を警戒する声も

『日本銀行は、参院選での与党敗北を受けても、現在の物価目標実現シナリオと利上げ継続路線を変更する必要性は大きくないとみている。今後の財政政策による経済・物価への影響を注視する。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。』(上記URL先より、以下同様)

ということで毎度おなじみの謎の「関係者」記事が出てきている訳ですが、

『日銀は30、31日の金融政策決定会合で、新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)について議論する。関係者によると、2027年度までの見通し期間の後半に、基調的な物価上昇率が2%程度で推移するとのシナリオは維持できると日銀はみている。経済・物価が日銀の見通しに沿った動きとなれば、その改善に応じて利上げを続け、金融緩和の度合いを調整していく方針も変わらない公算が大きい。』

「物価高対策」が大きなテーマとなった(この前の衆院選でも実はその問題が大きかったと思うのだがメディアは政治とカネの話ばっかりしていましたのでそこまで目立ちませんでしたが)という国政選挙があって、現状に対する大いなる不満が結果として突き付けられるという状況を踏まえても、物価安定が責務の中央銀行としては知らんふりですかそうですかそうですか、という感じのこのノホホンとした認識で大丈夫なのかよと思いますが、まあそんなことよりも見通しどうなるか、という話なんですけれども・・・・・・

『会合後に公表する最新の経済・物価見通しは、コメを中心とした食料品価格の上昇を反映し、25年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)見通しの上方修正を検討する見込みだ。5月1日に公表した前回の展望リポートでは、同年度のコアCPI見通しを前年比2.2%上昇とした。』

ということで、この感じですと2025年度の物価見通しを引き上げて、2026年度については無修正コースで、「2025年度を引き上げたのでテクニカルにこうなります」の修正だとむしろ反動減という数字を出すことになって、さすがにそれはやべえ見通しになるじゃろ、と考えると単純に2025年度を引き上げて「供給要因だから一時的」で済ませるんだろうなあって感じですかね。

でまあそういう見通しを出すとなりますと、甚だ遺憾ではありますが、次回利上げが前倒しになる、ということにはならんと思うのですが・・・・・・・・

『関係者によると、経済見通しは、日米関税交渉の長期化などで関税による下押し圧力の顕在化が後ずれする形となっているが、前回の展望リポートから大きな変化はない見込みだ。仮に日本に25%の関税が適用されても、潜在成長率を明確に下回るような大きなマイナスの影響にはならないと日銀はみているという。』

おいこらちょっと待て「仮に日本に25%の関税が適用されても、潜在成長率を明確に下回るような大きなマイナスの影響にはならないと日銀はみている」ってなんだそりゃという話で、4月展望レポートの時には関税政策導入されてもそこまでの規模じゃないのを前提にした上でドチャクソ下方修正をしてきたのに一律25%関税でも一段下方修正は無いのかよというお話でして、結局これ4月の展望レポートでドチャクソ下方修正をした時に「前提となる米国の通商政策」ってのを置いて作ったことになっているのですが、その置きがどうなっているのかが非公表のままでここまで来ている(フワッとした言い方しかしていない)のの本領が早速発揮されてきた、という所だと思うのですよね。

つまりですね、これって「米国の通商政策の影響は想定の範囲内」と何が出てきても堂々と言いだして利上げを継続なんなら前倒しする、という日銀のいつもの屁理屈を繰り出すことができるように、その屁理屈の地均しというか頭出しをしている、と読み取れる訳でして、物価高批判の矛先が来そうになったらすかさず対処できるような出口を用意している、ということですがな。


とまあそんな訳ですので、結局は今日の内田副総裁の高知金懇で何を言い出すのかというのが注目される訳ですが、なんか色々な方向にヘッジを打ちまくっておいて、なんとでもなるような説明をするので、ベンダー的に「おいしい」のが利上げ前倒し方向の話でしょうから、そっちだけがやたらヘッドラインになるリスクはあるかな、とは見ております、まあどうなるかはさっぱり分からんけど。


〇海外金融政策決定ネタが始まるので多分出遅れにもほどがあるのですがECBのストラテジーレビュー関連

https://www.ecb.europa.eu/mopo/strategy/strategy-review/ecb.strategyreview202506_strategy_statement.en.html
The ECB’s monetary policy strategy statement

ってのがステートメントで、

https://www.ecb.europa.eu/mopo/strategy/strategy-review/ecb.strategyreview202506_strategy_overview.en.html
Strategy review

ってのが背景説明になっています。でもってとりあえずステートメントの方から参りますけれども・・・・・
https://www.ecb.europa.eu/mopo/strategy/strategy-review/ecb.strategyreview202506_strategy_statement.en.html
The ECB’s monetary policy strategy statement


・冒頭から「物価に関する環境はメジャーチェンジした」と仰せなんですよね

項番1です

『The low-inflation period and the post-pandemic inflation surge underscore the importance of a monetary policy strategy that enables the Governing Council to respond effectively to major changes in the inflation environment.』

項番1の最初がこれで、「major changes in the inflation environment」っていうのが前提にある訳でございまして、従来の延長線上だけでは話ができない、と言っているんですよね。

まあこれに関しては日銀に対して悪態をついた場合「この前の多角的レビューで構造変化について色々と考察していて、我々も構造変化が起きているのは認識している」という話をするでしょうし、それこそ1月展望レポートでの説明では「賃金が景気循環と関係ない所で構造的に上がりやすくなっている」という考察を示しているので、そういう意味で別に日銀だってその認識が無いわけではない、ということではあるのですが、折角そういう認識を示しているのに政策行動がデフレ脳のままになっていて緩和緩和緩和なのが甚だ遺憾の極みですけれどもじゃあECBちゃん何言ってますかしらということで。。。。。。

『Ongoing structural shifts related to geopolitics, digitalisation, artificial intelligence, demography, the threat to environmental sustainability and changes in the international financial system suggest that the inflation environment will remain uncertain and potentially more volatile, with larger target deviations in both directions, posing challenges for the conduct of monetary policy.』

地政学、デジタル化、AI技術、人口動態、環境問題、国際金融システムの変化などによる構造的な変化が、物価環境を以前よりも不確実かつボラタイルにしていますよ物価の上げ下げ両方向において、ということで、

『A more resilient financial architecture - supported by progress on the savings and investments union, the completion of banking union and the introduction of a digital euro - would also support the effectiveness of monetary policy in this evolving environment.』

ここはホンマカイナとは思いますが、貯蓄投資同盟(って言うんですかね)、銀行同盟、デジタルユーロの導入が金融政策の有効性を高めるそうな、何となく嘘っぽいが。


・ゼロ金利制約に関してはまあ従来通りだし糊代が必要なので2%物価目標は適切と

ちょっと飛ばして項番4ですが、

『An inflation buffer above zero per cent provides monetary policy with space for interest rate cuts in the event of adverse developments and a safety margin against the risk of deflation through its positive impact on the trend level of nominal interest rates. In particular, the effective lower bound on nominal interest rates constrains the conduct of monetary policy in the event of significant disinflationary shocks.』

デフレ入りしないよためにはインフレバッファーがあった方がよろしいし、金融政策の名目金利ゼロ制約があるからディスインフレ対応(つまり利下げ)のバッファーが必要ですよ、という話をしていまして、ここはちょっと味わいあると思ったのはてめえらマイナス金利やってたじゃんと思うのですが、「いざとなったらマイナス金利が出来ますよ」という話をする前に(実はその後の項番8で手段として示しています)名目ゼロ金利制約の話をするのは、まあ要するにマイナス金利になるのは好ましくない、って言っている訳ですな、そりゃそうだ。

『The facilitation of macroeconomic and intersectoral adjustment within the euro area, downward nominal rigidities and measurement bias also warrant an inflation buffer.』

「The facilitation of macroeconomic and intersectoral adjustment」って綺麗な言い方しているけど、「マクロ的な調整の容易さ」って要するに「名目錯覚を利用した実質ベースの切り下げが容易にできる」という話でして、まあこれは欧州とかだとこれまでもそうなのでそこまで言われないかもしれないけど、ジャパンなんてまさにこのディスインフレからの転換によって俄かに発生した「実質所得マイナス祭り」で大騒ぎになっているので、日銀ってこの「The facilitation of macroeconomic and intersectoral adjustment」を堂々と口に出しにくいだろうなあと思いました、なおハマコー先生はアベノミクス初期にその点を大いに指摘していたのですがそのダイヤモンドオンラインの記事は惜しくもアーカイブになってしまって有料会員じゃないと読めません、残念無念。


・需給ショックとか供給ショックとかを分けませんですなあ&政策対応は上下ともに大きめになるんでしょうね

項番6に飛びまして、

『To maintain the symmetry of its inflation target, the Governing Council recognises the importance of appropriately forceful or persistent monetary policy action in response to large, sustained deviations of inflation from the target in either direction, to avoid deviations becoming entrenched through de-anchored inflation expectations.』

「large, sustained deviations of inflation from the target in either direction」に対して「appropriately forceful or persistent monetary policy action」の対応を行うことが重要で、それはインフレ期待のアンカーが外れることを防ぐためです、と言っている訳でして、需要ショックだから供給ショックだから、という話をしていないのが重要、というか欧米ともにこれはもはや常識じゃろという話で、未だに「供給要因だから一時的なので金融政策の対応不要」で全部押し通している日銀の方がおかしいだろという話ではあります。この話をシントラ行って聞いてきている筈の植田和男先生の感想を聞きたいですね。

『In the event of significant disinflationary shocks, the effective lower bound on nominal interest rates needs to be taken into account. In the event of significant inflationary shocks, possible non-linearities in price and wage setting need to be taken into account.』

大きなディスインフレショックの時には名目金利の下限制約、大きなインフレショックの時には非線形的な価格設定や賃金設定の変化を考慮に入れるべき、という話でして、大きな下方ショックにはまあたぶん早期かつ大幅な緩和を先制攻撃しますよって話だし、上方ショックの時にはノンリニアだからこれもできれば早期対応ってことになるんでしょうかね、そう世の中上手くできるとは思わんけど心はそういうスタンスですよと。

ということで、これ項番10個あるので他にもネタがあるにはあって、リスク認識の話とかマクロプルーデンスに絡めた話もあるのですが、まあ直接的に物価と政策という意味では上記の部分かな、と思いましたが、ここから見ていると日銀の対応って今のままでいいんですかねえとなるんじゃないかと思いますがどうでございましょうか、ということで今朝はこの辺で勘弁。





2025/07/22

お題「参院選もっと酷いかと思っていましたので・・・・・/短国3Mは0.40%割れまでは進まずかな/金研国際コンファランスの要旨出ました」

はて?
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK167L70W5A710C2000000/
物価高対策、与野党で解を 財政規律維持は政治の責務
検証・日本の針路(1)

参議院選挙2025
2025年7月22日 2:00 [会員限定記事]

・・・・・・「財政規律維持は政治の責務」ってのはよくわかるのですが、「物価高対策、与野党で解を」ってのが何を祐天寺という感じでして、日銀が相変わらずアホのように続けている大金融緩和の縮小をもっとちゃっちゃと行えって言えば良いだけなんだと思うのですが、何でメディアってそっちの話をしないのかが良くわからんです。


〇参院選の評価はよーわからんがもっとクソ大敗の可能性まで懸念してた割には・・・・・

まあゆうて民主党にぼろ負けした時とは違って比例代表得票は1位ですわな
https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/00/hsm12.html
比例代表 党派別得票・獲得議席

ということで思ったほどボロ負けしないで結構でしたがまあ有象無象に票が入っておりますなあと呆れる次第ですが、某再生の道みたいに次はまた別のおもちゃが出てくることになるかどうかは今後をお楽しみにということで。

でまあそういう訳で、
https://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/20250721-OYT1T50089/
石丸伸二氏率いる地域政党「再生の道」、議席獲得ならず…立花孝志党首の「NHK党」当選なし
2025/07/21 09:23

比例で取ってる票数が東京都知事選挙の石丸票のほぼ3分の1でN国にも負けているというのがもう凄まじいとしか言いようが無くて、今の情勢にしたって次回の国政選挙で何がどうなるかなんてまあ分からんもんよのう、と思いました(石丸よりも神谷玉木の方がタマが断然マシだと思うのでここまでの事にはならんと思うんだがさすがに)。

でまあそういう訳ですので、まあ次の国政選挙までの間に何が起こるのかも訳わからん世界でありまして、野党がバラバラになったので少数与党とは言え何か色々と工夫のしようはあるんじゃないかなあとは思いました。

てかさ、物価高対策ってこれ結局のところアベノミクスの後始末な訳でして、そこで散々足引っ張られているのに対して安倍ちゃんの残党辺りがギャースカ文句言うのってふざけた話だわとは思うのでありました。

https://jp.reuters.com/markets/quote/USDJPY=X/
US Dollar / Japanese Yen FX Spot Rate

直近の取引
147.38 JPY
変化 -1.38
変化% -0.93%
2025年7月22日の時点。値は少なくとも15分遅れで表示しています

ということですので、トリプル安だの財政懸念でヒャッハーだのというお話は目先は無い(と言っても少数与党なので財政出せ出せ攻撃が来るのは見え見えではあるが)ということになったようで、こちとら参院選の結果次第では祝日どころじゃねえとかいう説も無くも無かった(まあどうせ東京市場やってないんだから泣こうが喚こうが何もできませんけどw)のですが、そこまででもなくて誠に結構でございました、と思うけど実際今日以降どうなるかは分からんですからね。


〇3M短国は堅調な結果だけど0.40%割れは積極的に買い進まれたわけでもなさそうですな

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250718.htm
国庫短期証券(第1320回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1320回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号            国庫短期証券(第1320回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日      令和7年7月22日
4.償還期限     令和7年10月20日
5.価格競争入札について
(1)応募額        11兆2,298億5,000万円
(2)募入決定額      3兆2,728億4,000万円
(3)募入最低価格      99円89銭9厘5毛
(募入最高利回り)     (0.4079%)
(4)募入最低価格における案分比率     2.9322%
(5)募入平均価格      99円90銭1厘3毛
(募入平均利回り)     (0.4006%)』

ということでして、前週よりも更に金利水準低下して平均落札が0.40%カツカツの水準になったのですが、引けの売参値を見ますと、

いつもの売参
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(7/18引値)
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.400
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.400
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.400←新発3M
国庫短期証券1321 2025/10/27 平均値単利 0.400←金曜日入札予定の新発WI

って結果になっておりまして、一応0.40%割れに積極的に突っ込んでいくのかショートカバーで突っ込んでいくのかは兎も角として、0.40%割れを突っ込んでいくようなその後の展開ではなかったっぽい状態。ただし、3Mが9月末越えになってから3Mってこれで3回目の入札になりましたが、1回目は入札直後からショートカバーで強くなって翌週になると一時0.35%水準の引値とか付けるという展開になったし、2回目は入札直後のカバー祭りは無かったように見受けられますが、やっぱり翌週に0.375%とかの引けまで持っていかれ、週末の新発の辺りで0.400%の引けに何故か回帰する、という面白展開を示しておるわけでして、なんですかその面白展開はとは思うのですが、まあ多分なんですけど、世の中的に短国の流通在庫がそんなに多いわけではないので、新発のタイミングを外すと玉がだんだんなくなって来てニーズがどこからか出てくると強くなってしまう、的な感じになっているのかねえとは思いました、よー知らんけど。

あと、先週とか先々週とかそうですけど、長い所が不安定になってくると「とりあえず短国集落に避難してくる」方がおいでになっているのではないかと思われる節がありまして、長いところが不安定化→リスク取りにくい→とりあえず短期化短期化→そうだ短国3Mなら5毛食らっても1銭ちょいしかやられない、の人がどうもいるんだろうなあとは思いますので、週末の参院選結果を受けて長い所の投資家様のリスクに対するスタンスがどうなっていくのかも少しはこっちの方から見えてくるかもしれませんししないかも知れません。


〇全国CPIはコアコアが威勢よく上昇していまして財布の紐を締めようとしてもシマランチ会長

うむ
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消費者物価指数
全 国 2025年(令和7年)6月分

『◎ 概 況

(1) 総合指数は2020年を100として111.7
前年同月比は3.3%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の上昇

(2) 生鮮食品を除く総合指数は111.4
前年同月比は3.3%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は110.3
前年同月比は3.4%の上昇 前月比(季節調整値)は0.4%の上昇』

でまあ指数の数字自体で言えばコアの111.4って前月と同じなのですけれども、何気にコアコアが最近ははえげつなくて、

『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)

を見ますと、コアコアの季節調整済み前月比って今年に入ってから、

+0.3→ + 0.2→ + 0.3→ + 0.2→ + 0.3→ + 0.4

となっていて、原数値で言えば昨年12月が「 108.4 」なのですが、6月の全国コアコアCPIって「 110.3」で、2%物価目標をほぼ半年でやっているようなもんな訳でして、いやそりゃ物価高で人心が荒廃してあんな選挙結果に成る罠とは思いっきり納得してしまう状態。

・・・・・・とまあそんな訳でありまして、来週が展望レポートなのですが、「基調的物価」とか言ってそれこそウクライナ侵攻初期にはコアコア物価が基調的物価であるような説明をしていた話はどこに逝ったという話で、ちょっと屁理屈じゃない説明を植田先生にはしていただきたいし、会見の皆様も利上げ時期がどうのこうのとか言う話は正直どうでもよいので、基調的物価に関する説明を納得がいくまで行っていただきたいものだ、と斯様に思うのでありました。


〇金研国際コンファランスの概要が出ましたよ(なお動画の方はしばらく前に出ていますが見てません汗)

https://www.boj.or.jp/about/release_2025/rel250718a.htm
(金研ニュースレター)2025年国際コンファランス
2025年7月18日
日本銀行金融研究所

金研ニュースレター「2025年国際コンファランス」(金融研究所ホームページにリンク)

『日本銀行金融研究所では、5月27日〜28日に2025年国際コンファランスを開催しました。1983年に第1回を開催して以降、今回で30回目を迎えました。各国中央銀行、国際機関、学界等から約90名が参加し、「金融政策の新たな課題」をテーマに、講演、論文報告、特別対談、パネル討論が行われ、政策運営から経済分析まで幅広く議論されました。』

ということでそのリンク先ですが、
https://www.imes.boj.or.jp/jp/newsletter/nl202507j1/nl202507j1.html
2025年国際コンファランス

ハイライト
1. 開会挨拶
2. 前川講演
3. 基調講演
4. 特別対談
5. 論文報告セッション
6. 政策パネル討論

でもって開会挨拶に関してはネタにしましたけれども、金研ではどういうまとめしているのかと思って拝読しましたら、

『1. 開会挨拶』

『植田和男総裁(日本銀行)は、わが国の金融政策が直面している課題について、講演しました。最初に、日本の物価上昇率の現状について、説明しました。2021年以降、日本の物価上昇率は米欧に遅れて高まったのち、足もとでは食料品価格の上昇につれて、再び上昇している、と述べました。 次に、日本の政策金利は日米欧経済のなかで最も低くなっていると述べました。』

はい。

『そうしたもとで、「実際の物価上昇率が 2%を上回って3年以上推移しているにも関わらず、なぜ日本銀行はそのような緩和的なスタンスを維持しているのか」と問題提起したうえで、基調的な物価上昇率がなお2%を下回っているためと答えました。』

という理屈はいつもの話ではありますが、

『続いて、基調的な物価上昇率を捉える完璧なデータは存在しないと述べたうえで、』

そもそも存在しないのになぜ「2%を下回っている」とピンポイントでいえるのか、という話でして、例えばアクチュアルの物価上昇率が数年間にわたってゼロ近傍で推移しているとかならば、計測誤差はあれどもさすがにその状態で基調的物価が2%とはだれも思わないでしょ、というのは分かるんですが、計測誤差が多分にある概念であれば、少なくとも2%に近い範囲にその基調的物価上昇率とやらが存在すれば、もはやピンポイントで2%に達していません1%台半ばです、みたいな言い方って普通出来ないと思うのですよね。でまあこの先も先日の講演の時にネタにしましたが、

『基調的な物価上昇率を評価するために注意深くモニターしている指標のひとつとして、予想物価上昇率を挙げました。』

でもってこれがまた幅のある概念だというのに、

『日本の予想物価上昇率は、1.5%から 2.0%の間にあり、2%の目標水準を下回っていると述べました。』

そもそも1.5%から2%の間にあるとかいうのがピンポイントで分からんじゃろと思いますし、その近辺にいるならインフレ期待は2%って言っても別に何らおかしくない筈なんですよね、まあその計測自体がお手盛りなんですけどwwwwwwww

『それを2%にアンカーするために、緩和的な政策スタンスを維持し続けている、と説明しました。』

この点でウィリアムズ砲が出ているのは後程。

『また、この政策スタンスのコミュニケーションは容易ではないと指摘しました。』

そら屁理屈捏ねてるんだから容易じゃないわなwwwwwwwwwwwwwww

『その理由として、人々が注目する総合ベースでみた物価上昇率と、中央銀行が注目する基調的な物価上昇率との間に大きな乖離があることを挙げました。』

でもってその基調的な物価上昇率って何だよというのをちゃんと屏風の中から出して頂きたいんですが将軍様。

『サプライショックが頻繁に生じるようになるにつれて、こうした乖離は、多くの中央銀行にとって主な焦点であり続けると考えられる、と述べました。』

でまあこの件に関してはECBの政策ストラテジーレビュー(すいませんそういやストラテジーの中身やってませんが夏休み企画用に準備しておきます)でラガルドさんがシントラでお話をしていたように、「サプライショックだから対応しなくて良い」という考え方は妥当性を欠く、ということを喝破していた訳でして、日銀だけですがなその「供給ショック起因だから対応しなくてヨシ!(現場猫画像割愛w)」理論堂々と述べてるのは、と思いました、まる。

『 最後に、本コンファランスの議論が、基調的な物価上昇率と予想物価上昇率の計測、それらに支えられた金融政策についてのコミュニケーションのあり方、頻繁に生じるサプライショックのもとでの金融政策運営などの極めて重要な問題に光を当て、世界の中央銀行コミュニティに貴重な知見がもたらされることを祈念すると述べ、開会挨拶を結びました。』

まあシントラで知見がもたらされているんですけどねwwwwwww


でもってウィリアムズ砲も確認しますけど、

『4. 特別対談』

『特別対談の司会を務める氷見野良三副総裁(日本銀行)が、ジョン・ウィリアムズ総裁(ニューヨーク連邦準備銀行)をゲストとして迎えて、対話のなかでいくつかの問いを投げかけました。』

『それらに対して、最初に、ウィリアムズ総裁は不確実性が高いもとでの金融政策運営について論じ、ある経済モデルにおいて最適な政策が、別のモデルでは非常にパフォーマンスが悪くなることがある、と指摘しました。したがって、高い不確実性に直面するもとでは、最適解を見つけるのではなく、複数のシナリオ下でうまく機能するアプローチを考える方がよい、と述べました。』

この点についてもラガルドさんも似たような話をしていた筈でして、「基調的物価が1.5%から2.0%の間」とかいうのに一点張りするような政策運営が本当にアプローチとして適切なのか、という点についてウィリアムズさん悪意無く砲撃しているのが味わい深い。

『次に、インフレ予想について議論しました。』

キタコレ!

『コロナ禍以前を振り返り、それまでの数十年間、米国のインフレ率が低位で安定していたことが、インフレ予想の形成に大きな影響を与えた、と論じました。』

ふむふむ。

『そのうえで、コロナ禍以降の5年間で、インフレに対する人々の認識が変化し、以前に低インフレを経験した世代のインフレ予想の分布が上方向にシフトした、と指摘しました。』

ふむふむふむ(ちなみにアタクシですが設定上第一次石油ショックの記憶があることにしています、為念)。

『これらを踏まえ、インフレ予想は望ましくない方向に変化する可能性があり、インフレ予想がしっかりとアンカーされていることを当然視すべきではない、と注意を喚起しました。』

ということでですね、インフレ予想ってアンカー外れたら上振れ(あるいは下振れ)するリスクってある上に、弊駄文では再三再四申し上げているように日本の場合は一旦ゼロ近傍にいたインフレ期待を不安定化させてから2%に安定化させる、という器用な事をしないといけないので、さらに「インフレ期待」に関しては不確実性が高い訳で、すなわち前段でウィリアムズが言っている「最適解を見つけるのではなく、複数のシナリオ下でうまく機能するアプローチを考える方がよい」が必要なのに、何でお前らそんなにいつまでも政策金利は上げないわ長期国債買入はガンガン継続するわってやってるの、って話ですよね。

『次に、自然利子率に議論を転じ、グローバルな要因が自然利子率に与え得る影響について論じました。』

ほう。

『AIの普及等は生産性の伸びを押し上げるため、自然利子率を押し上げる可能性がある一方、貿易政策の変化といったその他の要因は自然利子率を押し下げ得ると考えられるものの、どちらの影響が大きいかを予測することは困難だ、と説明しました。』

要するに分からんとw

『最後に、2025年4月に生じた資産価格のボラティリティの急激な高まりを振り返り、通商政策をめぐる発表が米国市場に大きなショックを与えたとしながらも、市場は機能不全には陥らなかったと述べました。そして、「現金への逃避(dash for cash)」がみられた2020年3月とは大きく状況が異なっていたと述べ、レポ市場でも無担保コール市場でも特に問題は生じなかったと指摘しました。』

ってな話をしております。

でですね、こちら実際の模様は
https://www.imes.boj.or.jp/en/conference/2025confsppa.html
2025 BOJ-IMES Conference
New Challenges for Monetary Policy
May 27-28, 2025
Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan

こちらの各お品書きにあるサムネが日銀ユーチューブチャンネルの埋め込み画像になっていますので、こちらを踏みに行くと視聴可能(ただし英語です)になっております。夏休みのおともにどうぞ。

#ということで今朝はこの辺で





2025/07/18

お題「気候変動オペとか交付税特会とか短国とかのメモ/決定会合議事録鑑賞会:2015年6月会合から」

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-17/SZJ34BGPWCJS00
S&P、日本製鉄を「BBB」に格下げ−見通しは「ネガティブ」
沢和世
2025年7月17日 14:41 JST

このヘッドラインをみて「日本国債」と一瞬空目して「S&P攻めるじゃん」と思ったのが昨日のアタクシのハイライト。

まあ1秒もしないで我に返りましたがwwwwww


〇うーん気候変動オペ・・・・・

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/mpr250717a.pdf
気候変動対応を支援するための資金供給オペレーションの実施結果

『1.概要
貸付実施の通知日時   2025年7月17日(午前9時30分)
貸付日            2025年7月18日
返済期日           2026年7月21日

2.貸付予定総額(注1)
貸付予定総額          101,594億円
(参考)貸付残高(注2)     171,298億円

(注2)2025年7月18日時点の貸付残高の見込み。』

ということでいやまあ気候変動対応向けの融資を促すってのがダメとは言わないんですけれども、このオペは基本的に「1年固定金利」なので金融緩和縮小局面や引き締め局面においてはそれに反する金融緩和的な施策になる訳で、これまた日銀バランスシート拡大要因になっている訳ですし、現に今回の実施で日銀のバランスシート10兆円拡大する訳ですから本来バランスシートを適正な規模まで縮小していかないと、今後の「普通の経済」における金融政策運営に支障を来すことになるちゅうのにホイホイと日銀のオペ残が10兆円も増えてしまうのは如何なものかと。

てかね、この気候変動オペって、
https://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo105.htm
気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション基本要領

『附則

この基本要領は、本日から実施し、金融調節上の支障がない限り2031年3月31日まで継続し、同日をもって廃止する。ただし、同日以前の日を貸付日とする貸付けの取扱いについては、なお従前の例による。』

ってことで、まあ最初にこれ突っ込まれたのは2021年9月なんですけど、とにかく黒田緩和って途中のQQE2以降が全部そうなんですけど、ETFの買入拡大みたいに緩和脳のノリで後先考えずに馬鹿みたいな拡大路線を取っていた訳で、この気候変動オペもなんかもうノリで2031年とかとんでもない先の話を決めていましたし、それを言い出すと2年共担とか5年共担とかもそうで(2年共担は期日来ましたが)、とにかくお前ら後先考えずにその場のノリでバナナのたたき売りみたいなことするんじゃねえと思う訳ですよマッタクモウ。

まあ一方で貸増が今後残高無くなるとは言え、多少の規模ならまだしもあっという間に20兆円近くとかになってしまっているこのお買い得オペっていうのは、やっぱり資源配分への介入であって、そういうのは政府のやることであって中央銀行がやることじゃないんだよな、と思いますが、成長基盤強化とかやりだしたのは麿なのでこの点に関しては麿も反省というか猛省すべきだと思います、

ま、とりあえずはこれが担保繰りにどう影響しますのん、とかそういう話が現世利益ではあるのですが、将来的に見た場合に日銀のバランスシート(というか当座預金残高というか超過準備の水準)を短期金融市場のアンプルリザーブレジーム(にどうせなるんだと思います)を作る際に余計な変数として作用してしまう点についても問題になるかとは思います、その時がいつなのかはさておきますけど。


〇そういや交付税特会借入とか新発1年短国とか

最近利上げ観測が先の方に行ってしまって目先どうという話でもなくなってしまったのでうっかりスルーしていましたがw

今月は特会借入祭り(6月は交付税6mとエネ特12m各1本だけ)なんですよね。

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result250708.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果(令和7年7月8日入札)

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result250715.html
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果(令和7年7月15日入札)
※なぜかこのページだけhtmlになってる

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result250717.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果(令和7年7月17日入札)

他にエネ特12mもあるのですが交付税6の方で。

7/8分:7/11〜1/16 平均0.538%最高0.549%
7/15分:7/24〜1/23 平均0.536%最高0.547%
7/17分:7/31〜1/30 平均0.541%最高0.548%

とまあそういう結果な訳ですが、これ高い方の足切りで見たとしても・・・・・・

7/8分:10/31〜で0.620%、12/22〜で0.870%
7/15分:10/31〜で0.602%、12/22〜で0.769%
7/17分:10/31〜で0.597%、12/22〜で0.725%

だし、何なら平均で計算した場合

7/8分:10/31〜で0.593%、12/22〜で0.787%
7/15分:10/31〜で0.578%、12/22〜で0.706%
7/17分:10/31〜で0.582%、12/22〜で0.692%

ってなっていまして、もともとが高めに出てくる交付税特会の金利でこのテイタラクということでございますので、10月利上げなんぞはまるで織り込まないで、まあ辛うじて12月ならワンチャン有るかもしれませんかねえって感じになっている、というのがだいたい読み取れるかなとは思う訳です。


ただまあ昨日の新発1年は
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250717.htm
国庫短期証券(第1319回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1319回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号      国庫短期証券(第1319回)
2.発行根拠法律及びその条項
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第46条第1項

3.発行日      令和7年7月22日
4.償還期限    令和8年7月21日
5.価格競争入札について
(1)応募額         6兆8,899億7,000万円
(2)募入決定額      2兆5,239億5,000万円
(3)募入最低価格      99円37銭5厘
(募入最高利回り)      (0.6306%)
(4)募入最低価格における案分比率      88.1336%
(5)募入平均価格      99円38銭9厘
(募入平均利回り)      (0.6164%)』

ということですが、前日の売参ベースのWI(が本当にあてになるのかはさておきますけれども参考にならんという訳でもないでしょうから)が0.59%水準でして、そこから見たら流れたジャンという結果になっていまして、売参見ますとこちらの昨日の引けが0.625%になっておられました。

https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(7/17引値)
国庫短期証券1319 2026/07/21 平均値単利 0.625

(7/16引値)
国庫短期証券1319 2026/07/21 平均値単利 0.590

平均0.615%相当なので入札後買い進んで云々、という流れにはなっておりませんで、いやまあそもそもこの金利水準ってどうなのよという話(ちなみにあんまり意味は無いと思いますが前半後半を12月決定会合で切って手前を50bpにすると後ろは71.6bpなのですが短国そのものが手前40とかいう金利なのでまあアレだし2回利上げとかそういうのは全く無視されているでござるの巻)な訳でございますけれども、まあさすがに0.5%台ではニーズ集まらなかったですかそうですかという事で。

ちなみに3mの辺りも微妙ちゃあ微妙で、

(7/17引値)
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.410
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.410
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.400
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.375
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.410←今日入札の新発WI

9末越え一発目だった1316回は入札後にカバーだと思うのですが強くなって翌週水曜に0.35とかいうトンチキ引値になったのですが、結局その後はカバー一巡とか次のカレントが出るだのということで0.40%水準の引値に収まっているのですが、先週入札のあった1318がちゃっかり0.375%まで引値が進んでいまして(こっちの銘柄は入札直後にショートカバー祭り、みたいなのは発生していない筈です)、はてさて今日の入札(もそうですけどその後のセカンダリー)はどこに逝く、ってお話でございます。担保繰りなのか長期債からの避難なのかよくわからんけど、そういうニーズがどこまで短国方面に入ってくるのかというのを占えるかなあとは思いますがどうでしょうかね。



〇金融政策議事録鑑賞会シリーズ:木内VSジンバブエ

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2015/gjrk150619a.pdf
政策委員会・金融政策決定会合議事録
開催日時:2015年6月18日(14:00〜16:22)
             6月19日( 9:00〜11:59)

・木内さんはこのころ「MBや長期国債買入の拡大ペースを緩めるべき」という提案をしていましたが・・・・・・

83ページの議案説明、例によって合いの手はあんまり入れませんけれども10年後に読んでみると色々と味わいがあると思うのですよね。

『木内委員

次回会合までの金融市場調節および資産買入方針、並びに今後の金融政策運営方針については、前回までの自身の提案が引き続き妥当と考えており、同様のものを後に提出したいと思う。』

『既に繰り返し申し上げてきた点だが、金融政策は、効果のみを追求するのではなく、効果と副作用のバランスを最適にすることを目指すことが非常に重要である。昨年前半までを中心にした実質金利の低下に基づく累積的な政策効果は相応に大きく、足もとの雇用・所得環境、国内民間需要などへもプラスの波及効果を十分にもたらしていると考えている。資産買入れの残高を減少させない限り、このように既に経済活動に十分に定着した累積効果は損なわれにくいと考えている。』

『しかし、一方で限界的な効果と副作用に注目すると、資産買入れを着実に進める中でも、追加的な効果は明確に逓減する一方、追加的な副作用は逓減しておらず、両者のバランスは既に悪化していると、私は考えている。』

>追加的な効果は明確に逓減する一方、追加的な副作用は逓減しておらず
>追加的な効果は明確に逓減する一方、追加的な副作用は逓減しておらず
>追加的な効果は明確に逓減する一方、追加的な副作用は逓減しておらず

『政策効果の主な源泉は実質金利の低下にあると考えているが、その余地が限られてきたことが、追加的な効果の逓減に繋がっている。10 年国債利回りは、昨年までの低下基調は年初で一巡し、前回会合以降も上昇傾向にある。こうした名目金利の動きは、欧米など海外での金利の動きに強く影響されているとはいえ、例えば、近年の日本国債のタームプレミアムの著しい低下が既に限界に近いといった、国内要因に根差した側面もあると思う。』

『また、中長期の予想物価上昇率は、各種指標でみて足もとで大きな変化はなく、2%の物価安定と整合的な水準には依然大きな隔たりがあるもとで、比較的安定した状態を続けている。』

・・・・・・・・・・(^^)

『中長期の予想物価上昇率は、原油価格下落による物価上昇率の顕著な低下を受けても目立って下振れする兆しはない一方、今後前年の原油価格下落の反動で消費者物価上昇率が高まっても、それと連動して顕著に高まっていくことも期待しにくいと考えている。』

『原油価格の小幅反転の影響もあり、ユーロ圏ではデフレ懸念が後退しているが、成長が加速感を欠き、また商品市況が総じて低迷を続ける中、ディスインフレ観測はグローバルに依然根強い状況である。こうした環境のもとでは、国内の中長期予想物価上昇率を継続的に高めていくことは難しいとみている。』

ということで、

『こうした点を踏まえ、資産買入額を減額することで、追加的な効果と副作用のバランスを改善させ、先行きのリスク顕現化の可能性を低下させることが、安定した経済・物価情勢を持続させる鍵であると考えている。また、そうした緩やかでも息の長い景気回復の実現を支えることを通じて、実質所得拡大に貢献する生産性向上や潜在成長率上昇に向けた政府や企業の取組みを支援することができると考えている。そして、こうした取組みを金融面から粘り強くサポートしていくことこそが、2%の物価安定達成の近道になるというのが、私自身の提案の底流にある考え方である点は、従来から申し上げてきたとおりである。』

実際問題YCC導入って(最後の方で悲惨なバランスシート急拡大に繋がりましたが)YCCの美名の元にマネタリーベース拡大政策ですと限界が起きるので、MBの紐付けを外して長期戦にする、という政策だったのですから結果的には木内さん先取りしてた訳です。

『金融緩和の効果としては、円安、株高を通じた間接的な経路も考慮する必要があると思うが、昨年来の動きをみると、それらが実体経済に与えた影響は明確ではない。また、やや長い目でみると、為替・株式市場のボラティリティの上昇が経済活動を阻害する可能性があることに加え、為替については、円安傾向が消費者の当面の価格上昇観測を通じて防衛的な消費行動を招く可能性に、従来以上に留意する必要があると考えている。』

『量的・質的金融緩和の導入当初は、政策の影響を受けて実質金利が低下を続ける一方、所得制約要因となる先行きの実質所得見通しには大きな変化が生じなかったため、将来の消費を前借りする金融緩和効果が一時的に生じたと考えている。』

『しかし、現局面では、緩和効果を発揮する実質金利の低下が一巡していること、賃金上昇率が物価上昇率に簡単には追いつかないとの見方が広まっているように見受けられることから、円安の影響などを受けてガソリン価格、電気料金、各種日用品の当面の値上げ観測が広がれば、当面の実質所得見通しが悪化し、消費活動がより抑制的になる可能性がある。』

『今後、値上げ観測が個人消費に悪影響を与えていることが確認された場合には、2%の物価安定目標の達成を短期間で目指すのが果して妥当なのか、それが「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という金融政策の最終目標に適っているのかといった点が、改めて深く問われることになるのではないかと考えている。』

!!!!!!

『最後に、会合制度の見直しについては、執行部案に賛成である。具体的には後でコメントさせて頂く。以上である。』

とまあこういう説明をしているのですが・・・・・・・


・このジジイ人の説明を全然聞かないで勝手に藁人形論法とレッテル貼りで反論してるの酷くないかという話

ジンバブエ原田ってのは人の話を全然聞かないで藁人形論法で木内さんに突っかかっているんですよね。まあ読んで味噌ということで本文90ページ。

『原田委員

木内委員に質問したい。効果と副作用のバランスをみるべきであるということは、一般論としては全く正しいが、具体的に3点考える必要があると思う。』


『1点目は、木内委員は、残高を低下させない限り金融緩和の効果があるとおっしゃったが、残高を増やさないということは、日本銀行の物価安定へのコミットメントを弱めることであるため、当然、将来のデフレ脱却を不確実にする。しかも、そのような政策を行うことによって、直接的には急激な円高や株価の急落を招く可能性がある。このことについてどのようにお考えか、お聞きしたい。』

残高増やさないという提案をしていないんだが(MB45兆円、長期国債45兆円という提案です)いる訳でもないのに何言ってるんだこいつ???

『2点目は副作用についてである。副作用ということを何度もおっしゃっており、私はこれまで何度もお聞きしているが、副作用についての合理的な根拠は示されていない。これまで、国債市場の機能低下、財政の信認の問題についての潜在的リスクがあるという説明であったが、潜在的リスクとは何か、この潜在的リスクはどのような指標でみることができるのかについて、ご説明頂いていない。前回会合では、「感性で判断していく」というお言葉を頂いたが、感性とは何かについてもご説明を頂いていない。』

10年経過してみればどれだけアホウなことをこのジンバブエが言ってたのかが良くわかりますね。そもそも指標で見れたらそれは副作用が顕在化している訳で、その前の時点で配慮すべき話だわさ。

『3点目は、木内委員の経済に対する見方は、この場の議論の主流の見方に比べて弱いと思うが、経済の見方が弱い中で金融政策を引締め方向に転換することの根拠は何か。以上3点、質問したい。』

別に引き締めろとはさっきの部分を見ても一言も言ってないんですが。

ということで木内さんが回答していますが、まあそちらは見てくださいって思いますし、この藁人形質問に対する木内さんの回答に対して無茶苦茶な回答を出しておられますのでまあ見てくんなまし。





2025/07/17

お題「超長期クソ戻りキタコレ/FSBがNBFIに関するペーパーをだしてます、など/2015年4月30日議事録より」

ほうほう
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16DI50W5A710C2000000/
FRB議長解任報道でドル急落 トランプ氏「可能性低い」と軌道修正
トランプ政権
2025年7月17日 0:58 (2025年7月17日 1:47更新) [会員限定記事]

『【ワシントン=高見浩輔】米CBSテレビは16日、トランプ米大統領が与党・共和党議員との会合で米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の解任に言及したと報じた。金融市場ではドルが急落し、その後記者団の質問に答えたトランプ氏は解任について「非常に可能性は低い」と軌道修正した。』(上記URL先より)

〇超長期クソ戻りワロリンチョというメモ

連日のこのクソボラティリティは何なんですかねえ。
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/WVBBJMFGDVKXXAX2NVEIVLZRJE-2025-07-16/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反発、長期金利1.57% 超長期債の金利低下が波及
ロイター編集
2025年7月16日午後 3:27 GMT+9

『[東京 16日 ロイター] -    <15:15> 国債先物は小反発、長期金利1.57% 超長期債の金利低下が波及 

国債先物中心限月9月限は、前営業日比4銭高の137円96銭と小反発して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.5bp低下の1.570%。ポジションの巻き戻しの動きから、現物市場で超長期ゾーンは金利低下し、その流れが国債先物にも波及し、プラス圏に転じた。』(上記URL先より、以下同様)

というかですね、朝から40年とかの気配が強かったし、しかも前場の途中からは値がすっ飛んで強くなるという流れで、ポジションの巻き戻しにしても何やってるんですかという値の飛び方をしておられました次第。

『現物市場では新発債利回りは金利低下。中期ゾーンは金利上昇局面では押し目買いがみられたという指摘があった一方、国債増発への根強い警戒感から上値の重さが意識された。
     
2年債は同0.5bp低下の0.780%、5年債は同横ばいの1.080%。30年債は同10.0bp低下の3.060%、40年債は同10.0bp低下の3.380%。20年債は出合いなし。』

引けでは30年と40年って割と揃っているけど途中までは40年が目立ってぶっ飛んでいたようには見うけられましたがどうなんでしょうかね。まあとりあえず、

『    OFFER  BID    前日比 
2年   0.779  0.785     0    14:59
5年   1.074  1.08    -0.001  15:11
10年  1.564  1.57     -0.02  15:03
20年  2.565  2.575   -0.056   15:09
30年   3.06  3.069   -0.109   15:11
40年   3.366 3.384   -0.119   15:11』

ってことで大フラットニングしていまして、底打ちなのかただの騙しなのかさっぱりワカランチ会長だし、大体からして今週末の参院選結果見ないと何ともかんともなので評価不能なのですが、まあ凄かったですねえというのを後日備忘の為にメモメモ。

いやまあ金利の上昇一服なら一服で良いのですが、一服するにしたってこんな威勢よく動かれてしまいますとそれはそれで手を出せんわ(だってこの値動きだとある程度以上のポジション作ったり閉じたりしようとしたら自分で値を相当ぶっ飛ばす覚悟無いとできんじゃろ)という話になりますので、まあ落ち着けという所ですが落ち着かんじゃろうのー。何というか「定例的にコツコツ買ってラダーポート作る」的な人がいないと相場って安定してくれんのよね、とは個人の感想ですけれども。


〇FSBがNBFIに関する何かを出しているようです(備忘用メモ)

https://www.boj.or.jp/intl_finance/meeting/group/gro250716b.htm
金融安定理事会による「ノンバンク金融仲介(NBFI)の強靭性向上:進捗報告書」の公表について
2025年7月16日
日本銀行

『金融安定理事会(FSB)は、7月9日、「ノンバンク金融仲介(NBFI)の強靭性向上:進捗報告書」(原題 : Enhancing the Resilience of Nonbank Financial Intermediation: Progress Report)を公表しました。』

ほう。

『本文書は、2020年11月にFSBが公表した「2020年3月の市場の混乱についての包括的レビュー(原題 : Holistic Review of the March Market Turmoil)」において、ノンバンク金融仲介(NBFI)の脆弱性が指摘されたことを踏まえたものです。FSBや基準設定主体等における、作業についての進捗報告のほか、NBFIの強靭性向上に向けた今後の作業計画を示しています。

詳細につきましては、以下をご覧ください。』

ということですが、本件って直近の金融システムレポートでもNBFIの内包するシステミックリスクについての考察があったわけですが、以下をご覧になろうかとも思ったのですが、

https://www.fsb.org/2025/07/enhancing-the-resilience-of-nonbank-financial-intermediation-progress-report/
Enhancing the Resilience of Nonbank Financial Intermediation: Progress report
9 July 2025 | PDF full text (628 KB)

(URLがクソ長いのでハイパーリンクは途中の文字列までに貼りました)
https://www.fsb.org/2025/07/fsb-publishes-recommendations-to-address-financial-stability-risks-created-by-leverage-in-nonbank-financial-intermediation/
FSB publishes recommendations to address financial stability risks created by leverage in nonbank financial intermediation
9 July 2025

でもって原文は直上URL先にありますが
https://www.fsb.org/uploads/P090725-2.pdf
Enhancing the Resilience of Nonbank Financial
Intermediation
Progress report

だいたい本文5ページ(PDFで9枚目)の『2. Assessing and addressing systemic risk in NBFI』って所から読むと良さそう(目を泳がせただけでまだちゃんと読んでいない)ですが、基本的に今回ってNBFIのマチュリティートランスフォーメーション(はMMFについてです)とレバレッジについての話をしていまして、まあ仰る趣旨は分からんでもないのですが、そもそも近代の金融って満期変換機能と信用リスクとマネー発行の二重構造を使ったレバレッジがその基本的機能な訳でして、そこをゴリゴリ言われましても、とは毎度思うのでした。

あと、そんなに問題視してるんだったらアメリカ方面で流動性の碌にないものをETF仕立てにして流動性のあるようにしているってのを今でもバカスカやっている件はどうなのよとは思うのですけれどもまあいいです。


もう一丁あって
https://www.boj.or.jp/intl_finance/meeting/group/gro250716a.htm
金融安定理事会による最終報告書「ノンバンク金融仲介(NBFI)におけるレバレッジ」の公表について
2025年7月16日
日本銀行

『金融安定理事会(FSB)は、7月9日、「ノンバンク金融仲介(NBFI)におけるレバレッジ」(原題 : Leverage in Nonbank Financial Intermediation - Final report)と題する報告書を公表しました。』

こちらの報告書は、

『FSBでは、ノンバンク金融仲介(NBFI)のレバレッジの動向や脆弱性等について分析を実施し、2023年9月に「ノンバンク金融仲介(NBFI)におけるレバレッジの金融安定上のインプリケーション」を公表しました。』

はい。

『こうした分析の成果を踏まえ、FSBは、2024年12月、NBFIにおけるレバレッジから発生する金融安定上のリスクをモニタリングし、対処するための政策勧告を提案する市中協議を実施しました。本報告書は、市中協議の結果等を踏まえて最終化された報告書です。

詳細につきましては、以下をご覧ください。』

ってありますので、NBFIに対する規制監督の話になりまして、要は全文レポートの方をみることになりますが、

https://www.fsb.org/uploads/P090725-1.pdf
Leverage in Nonbank Financial Intermediation
Final report

PDFの4枚目『Table of Contents』ってのがあって(ちなみに章のところはリンクになっている)

『3. Policy measures: scope and terminology』ってのと『4. FSB recommendations』の辺りが今後のNBFIに対するモニタリングとか規制とかのテーマになると思いますので、ご興味のある方やら関係各位は一読しておいた方がよろしいんじゃなかろうか、とは思いました(まあ関係各位は既にご案内かとは思いますが、汗)。


〇バー理事が金融規制緩和の流れに一石を投じた模様

でまあ今のFSBの話とは別ですが今朝はこんな話もありましたな。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-16/SZHX7SGPWCJC00
バーFRB理事、銀行規制緩和に警鐘−バブル助長と崩壊の土台築く
Katanga Johnson
2025年7月17日 2:33 JST

→規制緩めると好況期にリスクテーク助長し、銀行の脆弱性を高める
→その後のバブル崩壊がより痛みを伴うものになると主張

『米連邦準備制度理事会(FRB)のバー理事は、金融システムの動向に応じて規制も進化する必要があると強調した。トランプ政権に合わせて、大手銀行に対する規制緩和やより緩やかなアプローチへの転換を模索する動きに警鐘を鳴らした。』(上記URL先より、以下同様)

イイシテキダナーという話ですが、

『バー理事は16日、ブルッキングス研究所でのイベントで講演。「金融セクターの発展に規制環境がついていけないなど、好景気の際に規制が緩み、それが後のバブル崩壊の土台を築くといったパターンが際立って見受けられる」と述べた。』

全く仰せの通りって話なのですが、本チャンは当然まだ読んでいないのでこれまた備忘でURL貼っておきます。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/barr20250716a.htm
July 16, 2025
Booms and Busts and the Regulatory Cycle
Governor Michael S. Barr
At The Brookings Institution, Washington, D.C.


〇当時の岩菊VS木内の雰囲気が如何に険悪だったのかという話(ただの長文コピペになりますさーせん)

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2015/gjrk.htm
金融政策決定会合議事録等(2015年1月〜6月開催分)
2025年7月16日
日本銀行

本日、以下の資料を公表しました。
金融政策決定会合議事録等(2015年1月〜6月開催分)

ということで、

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2015/index.htm
金融政策決定会合議事録 2015年
議事録一覧

『金融政策決定会合議事録等の公表にあたっては、「金融政策決定会合議事録等公表要領」の規定に基づき、原則として、以下に掲げる非公表とすべき情報が含まれる箇所を除き、全て公表しています。

イ.個人に関する情報
ロ.法人に関する情報*
ハ.外国中央銀行、外国政府及び国際機関等に関する情報であって公表することにより当該外国中央銀行等との信頼関係が損なわれるおそれのある情報

*集計され、個々の法人のデータが特定されないもの(金融機関等から入手したデータを集計したものなど)については、基本的に非公表情報には該当しない扱いとしています。』

ってなもんですが、この時期というのはQQEぶっこんで2年で2%とか言ってみたものの、その2年がやってきましたがさてどうなりましたっけ、という時代であり、ご案内のようにこのあと25年の12月からのドタバタが始まるのでまあ色々と歴史の審判が下される系の案件な訳ですよ。

しかしまあ何ですな、司馬遼太郎史観みたいな言い方であれですけれども、日本ってこの「歴史の審判」に対してまあ無頓着ですよねって思う訳で、歴史が審判しとるじゃろと思うのにまだ堂々と金融政策について言及して平然としているアタクシから見たら人外みたいなのが存在して、そういうのを普通に表にだしてくる日本って何なのよ、とは思う訳ですよ。だってこの「議事録公表」ってのは「10年後にお前ら審判下されるんだからちゃんと物事考えて政策について考えろ」ってことじゃないですか・・・・・・・・

量がクソ多い(不肖このアタクシ一応生業というのものもあるし)からこれまた全然読めてはいないのではありますが、今朝はその中で2015年4月30日の議事録の本文66ページ(PDFも66ページ)先5ページくらいのところを引用します。

なお今回は引用するだけで基本的に合いの手はいれません(文章が長いから適当に改行はいれます)のでただの手抜きコピペを鑑賞していただければと思います。

URLはこちらです
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2015/gjrk150430a.pdf
政策委員会・金融政策決定会合議事録
開催日時:2015年4月30日(9:00〜12:59)

でははじまりはじまり。

『岩田副総裁

これまであまり言わなかったが、いつも気になっていたのは、木内委員は「物価が実力と関係する」という意見だが、物価を決めるのに実力──そもそも、何が実力なのかをお聞きしたいが──は、関係ないと思う。』

『生産性を上げるには民間の実力、すなわち革新力のようなものが関係するとは思うが、物価は実力で決まっているのではないと思う。例えば、供給能力が不足するような経済では物価は非常に高くなるが、それでは物価上昇率が 20%や 30%にもなる経済に実力があるのかといえば、実力はない。そのような問題ではなく、私は、潜在成長力が物価を決めるという考えは基本的におかしいと思っている。』

『それでは「なぜ2%か」については、先進国では 10%近い高い物価上昇率を経験してきたが、そのもとで物価が変動すると投資計画や貯蓄計画を非常に立てにくくなり、経済が非常に変動したので、物価上昇率が高いとそのコストが非常に高くなるので良くないということになった。逆に、日本が経験したようにデフレに陥ってしまうと、簡単な金融政策ではなかなか脱却できなくなってしまう。』

『日本では 2000 年に生産年齢人口が減り始めているので、普通の経済政策のもとでは失業率は低下し、労働市場は売り手市場になり、賃金は上がって良いはずなのに、逆のことが起こった。』

『このように、デフレになってしまうと、生産年齢人口が減っているにもかかわらず失業者が増えたり、有効求人倍率が下がったり、企業収益が上がらないという変な状況になってしまい、企業までもが投資をするよりも現預金を持った方が有利というような状況に陥ってしまう。こうなると、生産する機会、富を生み出す機会がなくなってしまう。このように、一旦デフレに陥ってしまうと大変なことになってしまい、なかなか脱却できなくなる。』

『デフレからの脱却のために、日本銀行は、ゼロ金利、量的緩和、包括緩和と色々とやってきたが脱却できなかった。その意味で、デフレになってしまうと金融政策でも脱却が難しく、デフレ均衡は実体経済にとってろくなことはない。』

『デフレに陥るリスクを小さくしながら、高インフレ率を避けるとすると、どの程度のインフレ率が1番良いかと言うと、インフレ・ターゲットを導入している国の目標は大体2%程度で、20 年程度は非常に上手くいった。リーマン・ショックがあったが、リーマン・ショックを引き起こした張本人の米国は、実はインフレ・ターゲットを導入していない国であった。』

『今までインフレ・ターゲットを導入した国で世界的な危機を引き起こした国はない。要するに、2%程度を目標にしている国は大体上手くいっていた。』そして、上手くいくと、中央銀行に対するクレディビリティができてくるため、中央銀行があまり大したことをしなくても2%を維持できるようになる。つまり、経済が悪化してきた時には中央銀行はきっと2%で安定させるだろうという予想のもとに、物価上昇率は2%で安定する。』

『今の米国の人々は、日本銀行が言っているような「何年で2%を達成する」というようなことは全然考えず、中期的には2%だと思っている。そのような状態を作りたいということである。そうすると、2%であればデフレからは遠くのりしろがあるのでデフレにはなりにくい。』

『もう1つは、世界的に2%を目指している中央銀行が圧倒的に多くなった場合、日本も2%を目指さなければ──1%を目指したりデフレの状態であれば──、物価上昇率の差のために長期的には円高傾向がとまらなくなる。』

『実際に、変動相場制になって以降、1ドル 300 円程度から 100 円を切るまで円高になっているが、これは日米の消費者物価上昇率の差ではっきり説明できてしまう。』

『従って、円とドルの購買力に、両国のインフレ率格差によって大きな差をつけるのは、製造業に対して「長期的に円高に対応しろ」と言っているようなもので、これでは日本の製造業は海外にどんどん出て行ってしまう。実際、空洞化はとまらなくなった。実際、われわれが2%の量的・質的金融緩和を開始し、円安になっても、2013 年も直接投資はむしろ増えている。なぜなら、一旦円高が定着してしまうと、空洞化は簡単にはとまらないからである。』

『従って、世界の多くの中央銀行の目標が2%の中で日本は0%程度で良いとするのは、「日本経済においては、製造業はどんどん空洞化しろ」と言っているようなものである。このようなことから、経験上、2%が1番適当で、利益がありコストは小さい。主要先進国で2%を目指すのは、世界の中央銀行としては常識だと思う。だから、2%を目指しているということである。』


(次が木内委員、と思いきや実は違うのですが敢えてそこは割愛しますので是非上記URL先に飛んでいただいて誰が置物師匠の尻馬に乗ったかを鑑賞してみてください、何なら鑑賞前に誰だかを予想すると楽しいですよ)


ということで1名分の意見を飛ばしまして木内さんの発言に参ります。


『木内委員

私は、物価の基調は、金融政策が決めるものでも、マネーが決めるものでもないと思っている。日本のヒストリカルなデータや、現時点のクロスカントリーで比較した場合、潜在成長率あるいは生産性上昇率と物価の基調にはそれなりに関係があると思っている。国によって状況が違うというのが 2013 年時点での分析であったと記憶しているが、とりわけ日本では、この関係が比較的みられている。理論的に検証した訳ではないが、私は、賃金のフレキシビリティが関係しているのではないかと思っている。理論として証明されている訳ではないが、私自身は、考え方としてはそれがフィットするのでそれに基づいて議論している。』

『さらに、2013 年1月の政府と日銀の共同声明で、われわれは2%の物価安定の目標を目指すと宣言したが、各主体による成長力強化の取組みが進捗することが前提であるという認識であったことは強く記憶しており、私自身はその考えを継承している。』

『物価に関しては、デフレについては様々な考え方があるが、私は、結果という面が大きいと思っており、物価の基調や人々の中長期的な予想物価上昇率を政策的にコントロールするのはなかなか難しいという意味で、実力が関係していると申し上げた。』

『先程の岩田副総裁から、海外が2%で日本が1%であれば云々、という話があったが、比喩的な言い方をすれば、中長期的な予想物価上昇率や物価の基調は、基礎体温のようなものである。』

『物価が体温だとすると中長期の予想物価上昇率は基礎体温で、個人差があるのではないかと思っているので、海外が2%だから日本も2%でなければならないという訳でもないと思う。例えば、海外が2%で日本が1%であれば為替レートへの影響があるとおっしゃったが、差が1%ということであれば購買力平価からすると名目値が1年間で僅か1%動くということであり、それは僅か1円の話である。それ自身が日本に非常に深刻な影響を与えるのだろうかということを考えると、やや疑問であると思っている。』

『岩田副総裁

木内委員は、「物価の基調を決めるのは、金融政策でもマネーでもなく、潜在成長率である」、しかも「潜在成長率は金融政策では動かせない」とおっしゃっている。物価は潜在成長率で決まり、その潜在成長率を金融政策では動かせないとすると、「木内委員は、一体、ここに何をしにいらっしゃったのか」ということになる。』

『金融政策では物価の基調を決めることができず、物価の基調を決めるのは潜在成長率で、潜在成長率を決めるのは政府の成長戦略などということになると、金融政策で物価の安定を達成できないことになる。この会合は政府の成長戦略を決める会合ではないので、「一体何のためにここにいらっしゃっているのか」ということになってくる。』

(ここで黒田議長さすがに話を止める)

『黒田議長
この点は色々議論があろうかと思うが・・・。

岩田副総裁
前々から思っていたので申し上げた。

木内委員
経済政策にはそれぞれ適した役割があり、金融政策は金融政策がやれることをやれば良いと思う。

黒田議長
この点は引き続き議論をしたいとは思うが、時間も迫っているのでこの辺りにして、ここで政府からの出席者の方々にご発言頂く。まず、宮下一郎財務副大臣からお願いする。』






2025/07/16

お題「早川元理事BBGインタビュー/相変わらず財政ネタだか何だかなので市場備忘メモ雑感」

これ最初聞いた時に「ロシアに100%関税」なのかと思ったら、
https://www.asahi.com/articles/AST7G5R1VT7GSFVU36XM.html
トランプ氏「50日以内に停戦なしならロシア取引国に関税100%」
有料記事
ワシントン=下司佳代子2025年7月15日 2時18分(2025年7月15日 12時52分更新)

『中国やインドなどを念頭に、ロシアから原油を購入する国に厳しい関税をかけてロシア経済を締めつけ、継戦を困難にさせる狙いだ。日本はロシアから液化天然ガス(LNG)を輸入しており、対象となる可能性もある。』(上記URL先より)

って話だった訳ですが、ここまで底なしのアホウだとまともに交渉するの時間の無駄としか思えませんし、トラ公ってそのうち「痔には関税が効く」とか言い出しそうな勢いですね(それは違う)


〇早川元理事のBBGインタビューが端的に目先の論点について説明(とぶった斬り)をしていましたので

昨日はこんなん出てました、まあ別に市場が反応したわけではないけど。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-14/SZD5TODWX2PS00
日銀は最速で10月にも利上げ、今月会合で物価見通し上げ−早川元理事
伊藤純夫、藤岡徹
2025年7月15日 8:30 JST

→物価フォーカスなら早期利上げも、米関税で景気の先行きに不確実性
→「基調的な物価上昇率」は根拠不明、上昇鈍い品目重視の護送船団か

『元日本銀行理事の早川英男氏は、トランプ関税を巡る日米交渉が決着して経済・物価を巡る不確実性が後退すれば、日銀は最速で10月にも追加利上げを行う可能性があるとの見解を示した。』(上記URL先より、以下同様)

ということで早川さんですが、

『早川氏は14日のインタビューで、先行きも物価が2%程度で推移することが見込まれる中、「物価にフォーカスするなら、日銀は早めに利上げした方がいい」と指摘。米関税は市場の想定ほど日本経済に「影響しない可能性がある」とした上で、追加利上げは「霧が晴れれば年内にあってもおかしくない。10月でもいい」と語った。』

ってことですが、まあ要するに関税交渉が今は政策に紐付けてしまっている説明で4月展望レポートを作りこんでしまったので、7月展望レポートでここをどう扱うか、次第なんじゃないかなと思います、元々が「基調的物価」という「お気持ち物価」をベースにお話をしているので、あとは「お気持ち」の問題ですわな。

ただ、以下で早川さんが指摘しているように、

『しかし、足元までの物価は強めで推移しているものの、米関税政策を受けて「景気の先行きが不確実な中で、物価だけで今利上げするのは厳しい状況だ」ともみている。追加利上げ後に景気が失速すれば、日銀のせいで景気が悪くなったとの批判が必ず出るとし、「植田和男総裁は何度も経験しているだけに、それは避けたいだろう」と述べた。』

>>追加利上げ後に景気が失速すれば、日銀のせいで景気が悪くなったとの批判が必ず出るとし、「植田和男総裁は何度も経験しているだけに、それは避けたいだろう」

ってのは端的に分かりやすい解説ですし、まあそういうことでしょというお話なのでありまして、日銀のお立場からしたら、インフレ下なのに高圧経済とかいう頭狂った政策を継続せざるを得ないのは、メディアにしろ政治にしろ馬鹿共が金融緩和を求めて金利上昇に直ぐに文句つける風潮になっていて、その一方で物価高放置批判の矛先が日銀に向かないからであって、これが一転して物価高対策に大規模金融緩和を調整して欲しいって声の方が大きく成ったら大手を振って日銀は利上げするのはまあ間違いないという言い切る自信はワイにはあるわけで、市場の片隅でクダ巻いててもこればっかりはどうしようもないですよね、悲しい。

いやまあ日銀が率先して「我々は物価高を継続した方がインフレ期待が上がると思って過度な金融緩和をしていますサーセン」って言えばいいんですけどそんなこと言う訳無いじゃないですかヤダー。


でまあそれはそうとしまして、展望レポートなんですけれども、

『早川氏は、コアCPIの見通しについて、25年度が控えめに見て前年比2.5%−2.6%、26年度が1.8%−1.9%に上方修正されると予想。26年度は市場の早期利上げ観測を高めないためにも、2%に達しない水準になると見込む。前回の5月1日に公表した展望リポートでは、それぞれ2.2%上昇、1.7%上昇だった。』

7月展望の物価見通し上方修正に関してですが、今回注目すべきは「2026年度の物価見通しをどの程度いじる/いじらないか」ですよね、とアタクシは考えております。

もちろん27年度の見通しが引きあがったらそれはそれでビビりますが、どうせそこはいじって来ない筈(27年度を上げ下げしたら政策インプリケーションがモロに出るので)ですし、25年度の見通しは引き上げる、という観測のオンパレードなのでこれは引きあがるという前提で(お恥ずかしいにも程があるから上げない可能性はデギンドス副総裁の頭髪程度は有ると思います)考えた場合、どうせ25年度に関しては「コストプッシュ要因ガー」になるのですが、26年度を引き上げる場合、まあ事実上4月展望レポートでの物価見通しの大きな(幅がそこまで大きいわけではないけれども1月から比べて質的に大きく下げている)下方修正を「無かったことにする」効果になる、すなわち1月展望の時点に戻る、ということになりますので、まあ今回の展望は物価見通しをどういう数字で出して、シナリオをどういじってくる/いじってこないのかが大いに重要になろうかと思います。

しかしまあ何ですな、こちらの記事最後にイイハナシダナーな指摘がありましたわ。

『3年以上も日銀目標の2%を上回る消費者物価の上昇が続く中で、植田総裁が基調的な物価は2%に達していないと繰り返していることは「根拠が不明」と早川氏は指摘。』

>基調的な物価は2%に達していないと繰り返していることは「根拠が不明」

wwwwwww

『その上で、帰属家賃や公共料金など動きの鈍いグループを重視しているのではないかとし、「それは基調ではなく、護送船団方式だ」と語った。』

>「それは基調ではなく、護送船団方式だ」

これはまた一刀両断でさすがですが、「基調的物価はお気持ち物価」というお話もだいぶ人口に膾炙しているようですし、今回の展望レポートは「物価」に関する説明をもっときちんと行って整理していただく、という回になることを希望しますが、まあいつもの詭弁学園で済ませるのかもしれませんしおすし。


〇しかしまあ今更になって市場大反応モードですなあ・・・・・・・という備忘メモ

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB15D9X0V10C25A7000000/
円、3カ月ぶり1ドル149円台に下落 参院選に警戒感
グローバルマーケット
2025年7月16日 0:42 [会員限定記事]

『15日のニューヨーク外国為替市場で円が対ドルで下落し、一時1ドル=149円台を付けた。149円台は4月3日以来およそ3カ月ぶり。20日投開票の日本の参院選で与党が過半数を確保できるかが微妙な情勢となり、財政拡張を訴える野党との協調が必要になるとの見方から幅広い通貨に対して円売りが膨らんでいる。』(上記URL先より)

だそうで円全面安ワッショイという所ですが、昨日の円債ちゃんもなんかしらんけど

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-15/SZF9MBDWLU6800
日本国債に「トラスショック」懸念、参院選後の財政リスクに市場動揺
近藤雅岐
2025年7月15日 15:07 JST

てな感じでの煽り記事まで登場する有様ですが昨日の市場も例によってロイターさんから記念備忘メモを

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/5W7QRUAWPVJQPOJWQGBADNXQPA-2025-07-15/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、長期金利17年ぶり・30年金利は過去最高水準に上昇
ロイター編集
2025年7月15日午後 3:41 GMT+9

『[東京 15日 ロイター] - <15:19> 国債先物は続落、長期金利17年ぶり・30年金利は過去最高水準に上昇

国債先物中心限月9月限は、前営業日比14銭安の137円92銭と3営業日続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.5ベーシスポイント(bp)上昇の1.585%。一時は2008年10月以来約17年ぶり高水準の1.595%に上昇したほか、30年金利は過去最高水準をつけた。』(上記URL先より、以下同様)

まあ17年ぶりって言いますけどそもそもCPIの水準がとっくの昔に17年ぶりどころの騒ぎじゃないのですから、長期金利がそこまで上がって何がおかしい、と言ってしまえばそれまでという説は大いにあるのですがまあそれは兎も角。

『きょうの国債先物は、前日に続き財政悪化懸念や海外金利上昇が相場を圧迫し、軟調な展開となった。参院選の投開票を20日に控え、与党が苦戦しているとの情勢が伝わる中、消費税減税に関連した財政拡張への懸念が長期・超長期債売りにつながった。』

って話にはなっておりますけれども、問題なのは選挙後に出るうんたらかんたらというだけではなくて、物価高対策に金融緩和と財政拡張のセットをすることが頭狂っているにも程があるという認識がジャパンの皆様に全然共有されていない(そもそも認識されていない)という義務教育の敗北レベルの馬鹿集団にジャパンが成り下がっている、ということが最近の風潮で一層アカラサマになったということだと思うので、つまりは馬鹿は(自主規制)という諺がありますように、根の深い問題なのではないかと杞憂民としては杞憂している訳ですな。

『現物市場では10年物以外の新発国債利回りも総じて上昇。2年債は前営業日比1.0bp上昇の0.785%、5年債は同1.0bp上昇の1.080%。』

『20年債は同1.5bp上昇の2.620%。1999年11月以来約25年ぶりの高水準となる2.650%をつけた時間帯もあった。30年債は同3.0bp上昇の3.185%、過去最高水準の3.200%をつける場面もあった。40年債は同2.0bp上昇の3.510%。』

てなわけで、

『TRADEWEB
    OFFER  BID   前日比 時間
2年   0.779  0.785   0.005 14:44
5年   1.074  1.081   0.011 15:11
10年  1.584   1.59   0.02  15:06
20年  2.624   2.63  0.034  15:14
30年  3.158  3.171  0.019  15:16
40年  3.483   3.51  0.049  15:13』

さすがに中長期も金利上昇、ってところですが、まあこれ選挙終わって色々と動き出すまでは手を出しにくいでしょうからちょっと売買来るとバカスカ値段が飛びそうな悪寒しかしませんな。


ところで昨日消費減税ムーブ????をしていた物国ちゃんですが、

売買参考統計値
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(7/15引値)
物価連動国債 21 2026/03/10 平均値単価 101.75 前日比 +10
物価連動国債 22 2027/03/10 平均値単価 103.50 前日比 +40
物価連動国債 23 2028/03/10 平均値単価 102.70 前日比 +45
物価連動国債 24 2029/03/10 平均値単価 103.35 前日比 +65
物価連動国債 25 2030/03/10 平均値単価 108.40 前日比 0
物価連動国債 26 2031/03/10 平均値単価 106.80 前日比 -55
物価連動国債 27 2032/03/10 平均値単価 104.90 前日比 0
物価連動国債 28 2033/03/10 平均値単価 103.40 前日比 -5
物価連動国債 29 2034/03/10 平均値単価 101.90 前日比 -5
物価連動国債 30 2035/03/10 平均値単価 100.65 前日比 -5

ってなっていて、月曜に手前の銘柄がアホみたいに値段が下がった分を半分くらいお返しになられていて月曜の引値は何だったのかと小一時間な訳ですが、長い方が月曜の引けと同様に表の10年利付の利回り上昇ほどの価格低下していない(つまりBEI拡大)しているので、まあ一応財政拡大で物価に長い目で見ればプラスですがなモードだとは思うのですが、何だったんですかねえあの値付けは、まるでよくわからんですけど・・・・・

なおどさくさに紛れて何故か26回だけ消費減税ムーブが1日遅れで出ているようですが、需給がエライ勢いでタイトな25回はこの間引け変わらずって相変わらずのナンノコッチャではありました、まあ謎ですわ。


でもってですね、何気にこの間に短国ちゃんが・・・・・・

(7/15引値)
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.410
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.410
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.400
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.380
国庫短期証券1263 2025/10/20 平均値単利 0.410
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.410

1318が先週金曜に入札をやったカレント3Mで1320は今週金曜入札の新発WIになりますけれども、3M(1263だけ1Yの成れの果て)の銘柄を並べてみますとお分かりのように、9月末越えの2銘柄がちょろとお金利下がっておりまして、1318は入札時は0.40割れてなくて、その日の引けも別に強くなったわけではない(入札結果を追認するような引けであってショートカバーでいきなり強くなった1316のような動きではなかった)のですが、月曜火曜としれっと引値が強くなっていて火曜の引けは明確に0.40%割れということになっています。

でまあ長いところが金利上昇モードで手を出しにくいので様子見モード、とかになってくると長期ゾーンからの避難民がとりあえず短国にやってくるムーブメント、というのが時折散見されるのですが、もしかしてここに来てのカレント3Mの引値の強さはそういう流れでの強さなのかなあと思わんでもないのですが、実際のところどうなんでしょうかねえ・・・・・・・

今週は1年と3Mの入札が明日明後日に行われる訳ですが、1年は短国と言えどもそこそこ足が長いし、金利水準(1年カレント銘柄の昨日の引けが0.57%)がちょっとどうなんですか問題とかもあるし、どういうニーズ集めるのかは謎な銘柄ですけれども、新発3Mにいつもと違うニーズが来るのか来ないのかというのが少しでも分かるとエエデスノウと思うのでした。


という辺りで今朝は時間が無くなってしまいましたので雑談で勘弁ということですいませんすいません。





2025/07/15

お題「財政懸念とか消費減税懸念とかムーブキタコレですかしら/生活意識アンケート結果は物価高継続の弊害の顕在化じゃないのかしら」

競輪か競馬の実況中継かよw
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2043166
鈴木抜け出す 塩村・吉良・さや・川村先行、牛田やや優勢 
武見・奥村政佳が競り合う 
東京選挙区中盤情勢【参議院選挙2025】
TBSテレビ
2025年7月14日(月) 05:02

32頭立てで7着入線でが入賞となっておりますw


〇財政懸念で反応というお話ですが10年も甘いし消費減税懸念っぽい謎ムーブもあったし

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/DLWP3SKIZVOBDKN4CJRRBWBXN4-2025-07-14/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落、長期金利7週ぶり高水準の1.57% 財政懸念で
ロイター編集
2025年7月14日午後 3:33 GMT+9

『[東京 14日 ロイター] - <15:12> 国債先物は大幅続落、長期金利7週ぶり高水準の1.57% 財政懸念で

国債先物中心限月9月限は、前営業日比51銭安の138円06銭と大幅続落して取引を終えた。財政悪化懸念や海外金利上昇が相場を圧迫した。新発10年国債利回り(長期金利)は同7.0ベーシスポイント(bp)上昇の1.570%。5月23日以来7週ぶり高水準をつけた。』(上記URL先より、以下同様)

ということで米国金利が上昇したせいもあるんですけど(既に金曜の夜間の時点で先物は35銭とか下がっていたので)、週末の参院選情勢報道で与党大苦戦というのが出てきて一段のアカンタレになったという感じなので、

『きょうの国債先物は、前週末の海外市場で欧米国債が売られた(金利は上昇)流れが逆風となり、売り先行でスタート。また参院選の投開票を週末20日に控え、与党が想定以上に苦戦している情勢が伝えられたことが消費税減税に関連した財政悪化懸念につながり、長期・超長期債相場を一段と圧迫した。』

このように説明のある通り、って感じですが、

『現物市場では10年物以外の新発国債利回りも総じて上昇。2年債は前営業日比1.5bp上昇の0.775%、5年債は同4.0bp上昇の1.070%。20年債は同12.0bp上昇の2.620%と2000年10月以来約25年ぶりの高水準をつけたほか、30年債は同12.5bp上昇の3.165%、40年債は同17.0bp上昇の3.495%と、超長期金利の上昇が顕著だった。』

『TRADEWEB
     OFFER  BID   前日比 時間
2年   0.773  0.78    0.015  15:03
5年   1.063  1.07    0.042  15:10
10年  1.568  1.574   0.075  15:04
20年  2.607  2.623   0.123  15:13
30年  3.159  3.172   0.126  15:13
40年  3.485  3.498   0.162  15:13』

先週月曜も参院選序盤情勢を受けて連立与党過半数微妙ですよねってなもんで超長期売り、ってなっていまして、その時も財政懸念って言ってたのですが、ゆうて先週月曜(7/7)の場合は超長期は確かに爆発炎上してたのですけれども、先物は前日比変わらずとかで、10年も引け変わらずの引けでして、20年が5.5甘の30年10甘、という感じで、財政懸念とか言ってるけど中期堅調だし木曜に20年国債入札あるからその前にホイホイ売ってるってのもあるんじゃネーノ、ってまあそんな感じだったと思うのですよね。

然るに、昨日の場合は10年7甘とかそっちまで金利が上昇している訳で、超長期の金利上昇もかなり碌なもんじゃないのですが(特に40年の既発とか単価見ると泣ける)10年まで金利が上がってきたというのは中々威勢の良い(悪い)流れになっておりますなあと思ったんですがどうですかねえとは思います(個人の感想です)。

とは言いましても、本来2%の物価安定目標が達成されている世の中だったら金利の居場所ってこんなんで良かったんでしたっけって考えますと、もとはと言えばお気持ち物価を盾にして短期金利を上げないわ市場配慮とか言って長期国債買入の減額を渋るわとやっていることによってイールドカーブの長期以下に無駄な金利低下効果を出している日銀とか言うのが市場の金利上昇エネルギーを無駄にため込ませてこういうときに動く、ってのを演出しているとも言えまして、まあ黒田緩和の後始末をビビって渋るからこうなるんだよ、とも思うのでした。

しかしまあ何ですな、

売参ちゃん
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(7/14引値)
物価連動国債 21 2026/03/10 平均値単価 101.65 前日比 -30
物価連動国債 22 2027/03/10 平均値単価 103.10 前日比  -80
物価連動国債 23 2028/03/10 平均値単価 102.25 前日比  -125
物価連動国債 24 2029/03/10 平均値単価 102.70 前日比  -150
物価連動国債 25 2030/03/10 平均値単価 108.40 前日比  0
物価連動国債 26 2031/03/10 平均値単価 107.35 前日比  -5
物価連動国債 27 2032/03/10 平均値単価 104.90 前日比 -15
物価連動国債 28 2033/03/10 平均値単価 103.45 前日比 -20
物価連動国債 29 2034/03/10 平均値単価 101.95 前日比 -25
物価連動国債 30 2035/03/10 平均値単価 100.70 前日比 -30

突如柄にもなく物国ちゃんを出してきました(前回ネタにしたのは多分去年の8月の利上げ後の世界的なアイヤー相場の時だった気が)訳ですが、売参見ても複利が分からん(利回りが非表示(償還と利払いが不定だからシャーナイですよね、一般的には固定利付の100円償還で換算利回り計算はしますがあれは実際の投資利回りではないですしおすし)のでBEIもこれだけだと分からんのでアレですが、まあ前日比単価比較をみると残存1年半と2年半と3年半が盛大に食らっている(25回は極端に需給がタイトな銘柄なので極端な差が出るようですな、知らんけど)という結果だし、何なら30回の30銭安って表の10年よりも値下がりが少ないのでつまりはBEI的にはプラス、という結果になっておりまする。

まあこれは参院選後に消費減税がマジで決まって、でまあ来年あたりのどこかで始まるのでその瞬間にCPIの水準訂正が起きますよって話なのと、やるなら1年とか2年の時限措置じゃネーノってのと、まあそうは言っても盛大な減税政策なんだから需要は喚起されるから中長期的に見たら物価にはプラスじゃろ(何なら財政懸念で円安になれば更に物価には上振れ圧力になりますしおすし)ということから後ろの方の価格は表の金利上昇対比でそんなに売られないということな、と無理やり解釈するとそうなるのですけれども、物国ちゃんの場合残存4年半になる25回債(と26回もそれっぽいですけど)が極端に需給がタイトなので、その関係で極端な値付けになるという面もあるみたいですので、そのストーリーはこじつけのような気もします。

まあ昨年の8月とか今年の4月とかみたいに流動性無し無し相場が起こると物国が言われも無く売り込まれるでござるの巻(特に昨年8月はとんでもない逆行安しましたな、その後猛然と戻りましたけど)という事象はたまに起きるのですが、ゆうて今回の場合は全部が叩き売られるわけではなくて選択制で叩き売られている、というような引値になっていて、消費減税懸念というストーリー(物国の場合はそもそも市場の流動性が碌に無いとのことなので活発な売買を伴って気配が形成されているかどうかはかなり怪しいのだが・・・・・・)にはなっているな、という所ではあります。知らんけど。


〇生活意識アンケート:物価高止まりの弊害が顕在化してきているように見えるのは気のせいでしょうか

概要
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki2507.htm

全体版
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki2507.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第102回<2025年6月調査>)の結果

以下全体版から引用しますけど、

『【調査概要】
・ 調査実施期間 :2025年5月1日(木)〜6月3日(火)
・ 調査対象 :全国の満20歳以上の個人
・ 標本数 :4,000人(有効回答者数2,016人<有効回答率50.4%>)
・ 抽出方法 :層化二段無作為抽出法
・ 調査方法 :郵送調査法
(回答方式は、郵送回答又はインターネット回答の選択式)』

ということなので主に5月の回答かな、とは思いますが、


・景況感悪化ですが物価のせいなのかトラ公のせいなのか

『1-1. 景況感等』の『1-1-1. 景況感』ですが、

『景況感のうち、現在(1年前対比)については、「良くなった」との回答が減少し、「悪くなった」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。先行き(1年後)については、「良くなる」との回答が減少し、「悪くなる」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。』

『現在の景気水準は、『良い』(注1)との回答が減少し、『悪い』(注2)との回答が増加した。』

これ『(図表1)景況感〔Q1、4〕』の図表を見るとかなりどよよーんとしてきますし、その下の長期時系列を見ますと、この1年半くらいの間につるべ落としみたいになっていまして、直近はトラ公のせいだとしましても、これって結局「物価高」が問題になっていて、つまりは「物価と賃金の好循環」などというのは幻想皇帝だったというお話(まあさすがに大本営もアホじゃないので最近は好循環を言わなくなっていますがw)なのではなかろうか、とまあ斯様に思うのでありました、知らんけど。


ただまあアレです、

『1-1-2. 景況判断の根拠

景況判断の根拠については、「自分や家族の収入の状況から」との回答が最も多く、次いで「マスコミ報道を通じて」、「勤め先や自分の店の経営状況から」といった回答が多かった。』

なのですが、『(図表3)景況判断の根拠(2つまでの複数回答)〔Q2〕』を見ますと、『自分や家族の収入の状況から』、『勤め先や自分の店の経営状況から』ってのは回答の中では減っていて、『マスコミ報道を通じて』ってのが絶賛増えているので、やっぱりトラ公のせいなのかとも思ってしまいますわな、というかメディアはクソの役にも立たんなあいつら。


・賃金と物価の好循環とは何だったのかという暮らし向きDI

『1-2. 暮らし向き、消費意識』になりますが、

『1-2-1. 現在の暮らし向き

現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりがなくなってきた」との回答が増加したことから、暮らし向きD.I.は悪化した。』

『(図表5)現在の暮らし向き〔Q6〕』の長期時系列の方を見ますとこれまた着実に下がっていますし、何ならロシアのウクライナ侵攻(2022/02)の半年前くらいがピークで、そこからずるずると下がっている訳でして、どう見ても物価高要因です本当にありがとうございました。


『1-2-2. 収入・支出

収入については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が減少し、「減った」との回答が増加したことから、現在の収入D.I.は悪化した。先行き(1年後)については、「増える」との回答も、「減る」との回答も横ばいだったことから、1年後の収入D.I.は横ばいとなった。』

これ調査期間が概ね5月なんで夏季賞与の前、というのもあると思うのですが、収入DI悪化するなよと思いましたorzorz

ただまあ例によって図表の長期時系列みたら水準は高水準というか好水準というかなので、そこまで気にしなくてもよさそうには思いました。

『支出については、実績(1年前対比)は、「減った」との回答が増加したものの、「増えた」との回答も増加したことから、現在の支出D.I.はプラス幅が小幅に拡大した。先行き(1年後)は、「増やす」との回答が減少し、「減らす」との回答が増加したことから、1年後の支出D.I.はマイナス幅が拡大した。』

意図的に減らさない限り支出は増えるじゃろと思うので「減った」が増加しながら全体は支出増加で、先行きは「減らそう」と思っている人が多いってのは整合的ですよね。まあそうじゃろそうじゃろ。

『今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視することは、「今後の物価の動向」との回答が最も多く、次いで「収入の増減」、「余暇・休暇の増減」といった回答が多かった。

商品やサービスを選ぶ際に特に重視することは、「価格が安い」との回答が最も多く、次いで「安全性が高い」、「信頼性が高い」、「長く使える」といった回答が多かった。』

後半の『(図表9)今後1年間、商品やサービスを選ぶ際に特に重視すること(3つまでの複数回答)〔Q11(3)〕』って上位の順位は基本不動なんですけど、「価格が安い」が増えているときは貧乏モードというのが大体の今までの仕様だったと思います。


・収入DIもそうですけど雇用のDIも悪化しているのは引っかかりますね

『1-2-3. 雇用環境

1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「あまり感じない」との回答が減少し、「かなり感じる」との回答が増加したことから、雇用環境D.I.は悪化した。』

長期時系列見るとちょっと下がりかけにも見えますし、ただのダマシかもしれないので判断保留ですけれども、気分のいいグラフではありません。


・みんな大好きインフレ期待はひたすら堅調である

みんな大好き『1-3. 物価に対する実感』に参りますが、

『1-3-1. 現在の物価

現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)と回答した人の割合が9割台後半となった。』

そらそうよ。

『1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+19.5%(前回:+19.1%)、中央値は+15.0%(前回:+15.0%)となった。』

はいはいダブルデジットダブルデジット、というか2割ですよ2割。

『(図表11)現在の物価に対する実感〔Q12、13〕』の<1年前に比べ現在の物価は 何%程度変化したと思うか>をみますと泣けますな。

       平均値  中央値
24/12月  +17.0 %  +12.5 %
25/ 3月  +19.1 %  +15.0 %
25/ 6月  +19.5 %  +15.0 %

『(注)1. 極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。なお、全サンプルの単純平均値は、+20.2% (前回調査<2025/3月実施>:+19.8%)。』

2割キタコレですわということで、そりゃあ選挙で与党が大苦戦するわという話で、欧米で起きたことがやっとジャパンでも発生と思えばそりゃしゃあないわという所ですが、ジャパンの場合は何故か金融政策で対応という話が出ない上に財政を出す話になるという義務教育の敗北が発生しているのがもうねという所ですがそんな与太話はさておきインフレ期待は・・・・・・


『1-3-2. 1年後の物価

1年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が8割台半ばとなった。

1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+12.8%(前回:+12.2%)、中央値は+10.0%(前回:+10.0%)となった。』

平均値どんどん上がってますやんということで、『なお、全サンプルの単純平均値は、+13.5% (前回調査<2025/3月実施>:+12.7%)。』とも言われておりますナムナム。


『1-3-3. 5年後の物価

5年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が8割台前半となった。

これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+9.9%(前回:+9.6%)、中央値は+5.0%(前回:+5.0%)となった。』

<5年後の物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うか>

       平均値    中央値
24/12月  + 9.2 %   + 5.0 %
25/ 3月  + 9.6 %   + 5.0 %
25/ 6月  + 9.9 %   + 5.0 %

ですし、『なお、全サンプルの単純平均値は、+10.5% (前回調査<2025/3月実施>:+10.4%)。』となっておりまして、もちろん絶対値としての数字自体はこれ常に高め高めにでるので絶対値云々ではないのですけれども、普通にインフレ期待大定着状態だと思うのですが、何でこれで「基調的物価は2%行ってない」って話になるのか、7月の展望レポートでもっとまじめに示して頂きたい、と思いました。

とまあそんな所でしょうか、今朝はこの辺で勘弁。





2025/07/14

お題「短国は6Mまで0.40髭水準ですなあ/6月FOMC議事要旨の「コミュニケーションの改善」に関する議論から」

この件
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250713/k10014862111000.html
「スーパーマンは移民だ」監督が説明 人気映画も論争の的に
2025年7月13日 19時24分

『滅亡の危機にひんした惑星クリプトンから乳児の時に地球に来て、アメリカ中西部カンザス州の夫婦のもとで育てられ、超人的な能力でヒーローとして活躍する一方、ふだんは正体を隠し、新聞記者クラーク・ケントとして働いているという設定です。

こうした設定は原作者の2人の親がヨーロッパからアメリカに逃れたユダヤ人移民だったことも反映されているとも言われています。』(上記URL先より)

そういやそうだった(すっかり設定忘れてた)。

〇3Mは0.4%台は割らずに済んだのかしら

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250711.htm
国庫短期証券(第1318回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1318回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号   国庫短期証券(第1318回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日     令和7年7月14日
4.償還期限    令和7年10月14日
5.価格競争入札について
(1)応募額         12兆3,068億円
(2)募入決定額    3兆2,709億4,000万円
(3)募入最低価格    99円89銭5厘5毛
(募入最高利回り)    (0.4150%)
(4)募入最低価格における案分比率     94.7453%
(5)募入平均価格     99円89銭7厘9毛
(募入平均利回り)    (0.4054%)』

売参
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(7/11引値)
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.410
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.410
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.400
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.405←新発3M
国庫短期証券1320 2025/10/20 平均値単利 0.410←今週金曜入札3MのWI
国庫短期証券1304 2025/11/10 平均値単利 0.410

(7/10引値)
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.410
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.410
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.350
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.410
国庫短期証券1304 2025/11/10 平均値単利 0.410

てな次第で、前週は入札の後ショートカバーだか何だかで1316って0.40%(その後0.35%とかいう謎のレートにもなっていましたが)に低下しましたけど、今回の入札に関しては平均落札水準の引けに収まっていまして、前回みたいに誰かがゴッソリ買っていってショートになった、というようなことも無かったように見受けられますし、ショートカバー以外では今のところ0.40%割れの水準ではよー買われんというのが一応確認できたのかな、とは思いました、知らんけど。

なお、先週の6Mで見られましたように、短国自体は堅調というか利上げが何ぼのもんじゃいレートになっておりますのは継続しているので、

(7/11引値)
国庫短期証券1270 2025/11/20 平均値単利 0.410
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.420
国庫短期証券1276 2025/12/22 平均値単利 0.420
国庫短期証券1317 2026/01/13 平均値単利 0.420←先週入札のあった6Mカレント
国庫短期証券1281 2026/01/20 平均値単利 0.440
国庫短期証券1288 2026/02/20 平均値単利 0.470

ということで、6Mカレントの所まで0.42%とかいうレートになっていまして、その先は(単に板が無いからこういう値付けになるんだとは思いますが)1年に向けてちょっとだけレートに階段がついて行く、という価格形成になっていまして、まあご案内の通りこの短国って需給>>>金利観なので市場の中の人たちの金利観がどこまで反映されているのかは謎ではありますが、まあゆうて3Mまでが0.41で6Mまでが0.42という価格形成になっているのが容認されているのは、7月は当然としても9月10月の利上げもシランガナ状態ということは少なくとも示されているかと思いますがどうでしょうかね。

ま、今回の展望レポートで余程の強気になれば別なんですけれども、先般出ていたさくらレポートって企業の行動という定性的に注目すべき部分はクッソ強気だった、という点で7月会合の時点で何か威勢の良い事言い出す可能性はあるのですが、一方で今回って「全地域ともに全くの横ばい」な総括判断が示されているのですから、順当に考えると「全地域共に全くの横ばい」なのに上方修正をする(経済は上げないでしょうけれども物価は上方修正待ったなしみたいなのが小枝審議委員のBBGインタビューでも出ていたので物価上方修正すると思われます)というのも意味不明な話でございまして、4月展望での物価見通し引き下げ(しかもリスクバランスを上から下にドテンしたのですからこれはかなりの勢いでの下げ)をしたのは何だったのか、というツッコミにはどういう回答を用意するのか今から楽しみですが、まあそんな訳で7月展望で9月10月の利上げ観測が高まるような面白情報発信をしてくるかどうかが楽しみな展開ではありますな。


〇6月FOMCからストラテジーレビューに関して

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20250618.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20250618.pdf

Minutes of the Federal Open Market Committee
June 17-18, 2025
A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, June 17, 2025,at 9:00 a.m. and continued on Wednesday, June 18, 2025, at 9:00 a.m.1

冒頭に『Review of Monetary Policy Strategy, Tools, and Communications』ってのがあるので確認をしてみる訳ですが、

・きわめて不確実な時代において「リスク」と「不確実性」をどう計測してどうコミュニケーションをするのかという論点

『Committee participants continued their discussions related to their review of the Federal Reserve's monetary policy framework, with a focus on issues related to assessing the risks and uncertainty that are relevant for monetary policy and the potential implications of these issues for the FOMC's policy strategy and communications.』

金融政策運営のフレームワークに関する不確実性とリスクに関連したお話をしているようですね。

『The staff reviewed qualitative and quantitative tools that are commonly used to measure uncertainty about the economic outlook and the balance of risks, drawing on U.S. and international experience. The staff then discussed monetary policy strategies that aim to be robust to a variety of economic environments and ways in which risk-management considerations can be incorporated into monetary policy analysis and decisionmaking. The staff also considered the role of scenario analysis as a tool to communicate to the public risks and uncertainty around the economic outlook and their implications for monetary policy.』

でもってスタッフによる報告になっていますが、経済の先行きやリスクバランスを測るために一般的に使われている量的および質的なツールについてのレビューが諸外国および米国の経験を元に、ということで行われまして、その後は「様々な環境変化に対してロバストな金融政策ストラテジー」に対しての議論が行われまして、政策分析や政策意思決定におけるリスクマネジメント的な考えをどうやっていくのかという議論もしました、となって最後はそれらの一般に向けた示し方をどうすれば良いのかという話を考えました、ときました。


でもって次のパラグラフが皆様の議論でして、

『Participants noted that risks and uncertainty are important factors affecting their decisionmaking and emphasized the need for a policy strategy that aims to achieve the Committee's maximum-employment and price-stability objectives across a wide range of highly uncertain developments.』

リスクと不確実性に関しては金融政策決定に重要なファクターで、この点を考慮したストラテジー構築が必要ですよ。

『Participants acknowledged that risks and uncertainty about the economy are pervasive and pose challenges to both the design and communication of monetary policy. They remarked that measuring and assessing risks and uncertainty are difficult and that the Committee has been well served by relying on a wide range of indicators, as well as information from business and community contacts, to gauge evolving risks, especially during periods of heightened uncertainty.』

でもってリスクや不確実性というのは計測するのがムツカシイので(そりゃそうだ)幅広い範囲の色々な動向を見ていく必要がありますよね、特に不確実性が高まっている時には、というお話をしていまして、これって先般来ネタにしているけど終わっていないECBのストラテジーレビューでも出ている話で、ラガルドはんの講演でも「見通しのオルタナティブシナリオを示す」っていうような説明があった次第でして、メインシナリオをホイホイ変更するよりも不確実性の大きさとかそういうのをもっと示すようにした方が日銀もええんでねえのという感じはして来ますわな(日銀の場合はコレクティブビューを展望レポートの形で一本にしちゃっていますからねえ)。

でもって次のパラグラフ。


・SEPにおける「オルタナティブシナリオ」の提示などに関する議論のキックオフがあったようですね

『Participants remarked that effective communications about risks and uncertainty help the public understand the Committee's decisions and enhance the transparency, accountability, and effectiveness of monetary policy decisions.』

リスクや不確実性に関する有効なコミュニケーションは一般の皆様が金融政策決定の背景を理解し、金融政策の透明性や説明性を高め、金融政策決定に対しても有効に働きます、とは言ってるけどじゃあ何が有効なコミュニケーションなんでしょうって話な訳でして、

『Participants had a preliminary discussion about a range of issues related to enhancing the Committee's suite of communication tools, including possible changes to the Summary of Economic Projections (SEP) and a potential broader use of alternative scenarios. 』

でもってコミュニケーションツールの改善に向けたキックオフの議論が行われまして、その中にはSEPにおいてオルタナティブシナリオを幅広に使う、ということも含まれている、というお話でして、SEPの見せ方が9月FOMC(新しいストラテジーの公表はジャクソンホールにぶつけるので)以降変化するんじゃないのかということが示唆されています。

『Participants highlighted, however, the challenges associated with adjustments to these tools and noted that any revisions to the Committee's communication policies would need to be considered carefully and receive broad support across participants.』

なお、このSEPなどの見せ方の変更、というのは重要な問題なので、いつもの多数決ドーンじゃなくて、十分に熟慮して、FOMCパーティシパントの幅広い理解を必要とするでしょう、ということになっていますので、場合によってはSEPの見せ方見直しは無いのかもしれませんが、まあさすがにこれは見せ方が変わる方が有力だと思います。

ということで4パラ目は「今後も議論しますジャクソンホールを乞うご期待」になります。

『Participants agreed to continue their discussions of ways to enhance the Committee's communication tools and practices once they completed their review of their Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy. Participants expected that they would complete that review by late summer.』

正確にはジャクソンホールで公表するのではなくて、ジャクソンホールやっている時にワシントンのFRB本部が公表するものなのですけれども、基本的に日程をそこにぶつけてくるのが仕様っぽくなっています。

ということでして、この「オルタナティブシナリオを幅広に示す」ってのがECBもFEDもやって来そうな話でして、今の日銀の出し方に関しても今後は工夫しないと世界的な潮流から違ってくるんじゃないのか、と思いました(個人の感想です)。

特に日銀の場合、展望レポートの鏡で出している「リスクバランス」の文言が、リスクバランスチャーとの上向き三角と下向き三角のどっちが多いかで機械的にだしていると思うのですが、あの辺りはもうちょっと今の方にデジタルではなくて、グラデーションをつけて表現できないもんかな、とは目先は思います(1月→4月の物価の見通しの変化はあれは何ぼなんでもデジタルすぎでこれで7月に戻そうもんならお前ら何やってるんだって話に成り兼ねませんがな)。

と言ったところで今朝は甚だ簡単で恐縮でしたがこの辺で。




2025/07/11

お題「さくらレポートってこれ強気に見えるんだが/6月FOMC議事要旨(その2)」

ほうほう
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-10/SZ71BKT0G1KW00
ウォラー理事、FRBバランスシートは5.8兆ドルに縮小可能
Catarina Saraiva、Alex Harris
2025年7月11日 2:39 JST 更新日時 2025年7月11日 4:15 JST

本件ですが、
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20250710a.htm
July 10, 2025
Demystifying the Federal Reserve's Balance Sheet
Governor Christopher J. Waller
At the Federal Reserve Bank of Dallas, Dallas, Texas

になるんでござんすが、寝起きで読んでいる余裕は無いので備忘で貼っておきます。


〇さくらレポートはまあ普通に強気に見えるんだが(特に企業行動)

概要
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer250710.htm

本文
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer250710.pdf


・全体は「全地域横ばい」ですが関税込みで横ばいなのでまあハトハトチキンではない

まずは概要から引用しますが、

『(1)各地域の景気の総括判断

一部に弱めの動きもみられるが、すべての地域で、景気は「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。』

ということで『▽各地域の景気の総括判断と前回との比較』を見ますと、ってまともに引用しているとめんどいのですが、要するに今回は全部不変、ということでして4月と変わらん、ということなので、関税でアイヤーと言っていた4月の段階とそんなに変わらん、という結果な訳でして、まあこれはトラ公の関税の影響ってそんなに出てないんじゃね、ってお話になるわけですが・・・・・・・


・関税の設備投資への影響は「直接的に来そうな人には来ている」と読める編集ですね

今回どこからどう見ても注目すべきなのはさくらレポート本文の方で『(3)企業等の主な声(トピック別)※』のところでしょということでまあこれを見るわけですよね。

『@各国の通商政策の影響』

まずは『【設備投資】』

『・ 各国の通商政策を巡る不確実性の強まりを受けた取引先の投資計画先送りから、当社も能力増強投資を半年程度延期させる方針(前橋[電気機械])。』

『・ 米国の追加関税の影響で収益環境の悪化が見込まれることから、不要不急の設備投資を見直すなど、コスト削減を進めていく方針(広島[自動車関連])。』

ということで影響出てるわな、というひともあれば、

『・ 足もとにおける不確実性の高まりは気がかりであるものの、半導体関連製品や環境対応等の成長分野は、中長期的な事業ポートフォリオの転換に不可欠であるため、今後も計画通りに設備投資を行う方針(下関[化学])。』

『・ 省人化投資やソフトウェア投資を中心に積極的な投資スタンスを維持しており、設備投資額・研究開発投資額は高水準で推移している(横浜[はん用機械])。』

という方もおいで、となっていて「まちまちです」という印象を与える編集になっています。まあこれに関しては直接的に影響が出る人とそうじゃない人いるからそういう話なんでしょうけれども。


・関税の価格設定の影響は何か強気に見えるのですが実際どうなんでしょ&まあどっちにも結論付けれますからねえ

次が注目の『【価格設定】』

『・ 当社製品は競争優位性が高いため、関税の引き上げに伴う値上げが米国の取引先に受け入れられており、輸出数量への影響は限定的(新潟[生産用機械])。』

冒頭から威勢の良い話。技術立国日本はこうじゃなければいけませんですな!

『・ 現在、米国現地の取引先と関税の負担割合について交渉を進めている。なお、米国への生産拠点の移管についても検討したが、部品調達網の構築負担が大きいことなどから、現実的ではないとの結論に至り、見送った(高松[生産用機械])。』

こちらは交渉中、現地化はそりゃ無理じゃろうよと思いました。

『・ 当社部品の納入先では、関税の引き上げに直面しているものの、今のところ、当社の原材料費等の上昇分に対する価格転嫁要請の受け入れ姿勢に、大きな変化はみられていない(前橋[輸送用機械])。』

ほうほうほう。

『・ 収益を確保する観点から、米国向け製品の関税引き上げに伴うコスト上昇分は原則全て販売価格に転嫁する方針。もっとも、米国における一部の取引先は難色を示しており、価格交渉が難航している(仙台[生産用機械])。』

とのことですが、ゆうてまあ威勢が良いじゃん、と思うのですが、実際問題として輸出価格どうなっているの問題というのもあるわけですので、これはまあ通関統計とかと併用して考えないと、って感じでしょうか。

ただまあこのさくらレポートの「見せ方」はどっからどう見ても「トランプ関税による国内企業の販売価格下押し圧力はさほど大きいものではない」という「見せ方」になっています。まあこれを「よって4月に見込んでいた経済物価への先行き下押し圧力はそこまででもありませんねえあっはっは」と楽観の文脈に持ち込むのか、それとも「関税の影響はまだ出ていないのだが今後どうなるかは予断を許さないので警戒を怠れませんですねアイヤー」とハトハトチキンの文脈に持ち込むのかは、正直これはハトハトチキン執行部(ただし氷見野さんはハトハトチキンではない可能性がオオアリクイ)次第であろうかとは存じます。


・輸出・生産の本命部分は「これから影響が出てくるんじゃなかろうか」ネタのオンパレードですね

次が『【輸出・生産】』ですね。

『・ 半導体関連製品への分野別関税発動の可能性を踏まえ、中国や台湾、韓国の取引先から駆け込み需要がみられており、輸出は高水準で推移(広島[電気機械])。』

ということで「まだ駆け込みがある」という話なのでこれはハトハトチキン的には「それみたことか悪影響はこれからじゃ」となりそうなお話キタコレです。

『・ 各国の通商政策を巡る不確実性の高まりを背景に、米国における取引先の投資スタンスが後退し、当社製品への需要が鈍化しており、売上が下押しされている。こうしたもと、通期の生産計画を下方修正した(大阪[生産用機械])。』

下振れキタコレ。

『・ 各国の通商政策を意識した取引先の生産移管などから、一部メーカーの受注が下振れており、生産は7月頃から前年を幾分下回る見通し(本店[輸送用機械])。』

まさに「これから影響が出てきます」モード。

『・ 海外需要は、各国の通商政策の影響を受けて一時的な変動がみられるものの、基調としては堅調に推移しており、輸出は増加傾向にある。なお、海外での販売価格について、関税を受けた値上げは実施しない方針(名古屋[輸送用機械])。』

威勢の良い話だと一瞬思ったが、最後の「海外での販売価格について、関税を受けた値上げは実施しない方針」ってのが悲しいわけでして、さっきの「当社製品は競争優位性が高いため、関税の引き上げに伴う値上げが米国の取引先に受け入れられており、輸出数量への影響は限定的(新潟[生産用機械])」という威勢の良いお方と比較して悲しさが伝わってまいりますわな、南無三。

『・ 関税引き上げの影響から、先行き、当社納入先の米国向け輸出が減少し、当社への発注が減少することを懸念(北九州[鉄鋼])。』

これまた「これから影響」ですね。

『・ 多くの中小企業は、自社製品の用途や最終製品化までの商流が詳細に分からないため、関税の引き上げによる影響の経路や時期を予測できない。現時点で具体的な影響はみられないものの、先行きへの懸念が広がっている(大阪[経済団体])。』

ほうほう。

『・ 各国の通商政策の影響を受けて一部原材料の調達が滞っており、先行き自動車向け部品は減産の可能性がある(新潟[輸送用機械])。』

最後はまさかの供給制約の方の話でした。

・・・・・・というわけで、こちらが経済見通しに関するアネクの本命ともいえそうな部分ですが、並べているのを見ますと「関税の影響が顕在化するのはこれからです」って話のオンパレードになっておりまして、ここだけで言えば「まずは様子見地蔵」という説明を正当化する内容になっているかと思います。ただまあこれってあくまでも関税の影響に焦点絞った話なので、今回の短観で非製造業がバチクソ強かった話とかそういう総合的な話になると別問題とも言えますけど。


・みんな大好きおちんぎんは堅調と(留保は付いているけど)

関税の影響コーナーの最後が『【賃金設定】』ですが、

『・ 競合他社との人材獲得競争が激化する中、2025 年度は、ねん出可能な上限額である9%の賃上げを実施(高松[建設])。』

まあ素敵。

『・ 深刻な人手不足に伴い売上の増加が追求しにくくなったため、データに基づく分析を行って利益率の高い分野へ経営資源を集中させた結果、営業利益率は既往ピークを更新。3年連続となる5%強の賃上げを実現した(金沢[生産用機械])。』

ほう・・・・(選択と集中は用法容量に要注意)

『・ 全体としてみれば、地域の企業でも人手不足が深刻化するもと、賃上げの動きが強まっている。大企業が賃上げを実施する中、中小企業も人手確保のため追随して賃上げしている(大阪[経済団体])。』

ほほう。

『・ 夏季賞与は、昨年度の好調な業績を踏まえ、高水準の支給額とした。先行き、各国の通商政策の影響により海上荷動きが鈍化して業績が下振れた場合は、冬季賞与を減額する可能性がある(大阪[運輸])。』

やはり「今後の変化は冬季賞与から来年の賃金改定」という話になりますね。

『・ 今後、各国の通商政策の影響から、当社部品の納入先が価格交渉スタンスを慎重化させる可能性もあり、来年度も継続的に賃上げできるか懸念している(本店[輸送用機械])。』

ふむふむなるほど。

『・ 各国の通商政策の影響を受けて、当社部品の納入先が価格交渉スタンスを厳格化させた場合でも、人材の確保に向けてベアを実施していく方針(本店[輸送用機械])。』

ということで最初と最後を威勢よくまとめて何となく強い感じにしていますね。


・より全般的な価格設定についての話が小売と飲食と食料品並べているのはナンナンデスカネー

と、これまでが関税の影響の話(なので製造業の話ばっかり)でしたが、次がより全般的な文脈での価格設定のお話、の筈なのですが・・・・・・・

『A価格設定』からですな。

『・ 原材料費は市況の下落や為替円高により抑制できている一方、人件費や輸送費などが継続的に上昇しているため、値上げを行った(本店[食料品])。』

はい。

『・ 米価の高騰から、これまで価格を据え置いてきた弁当やおにぎりなどの商品の価格維持が困難となっており、今後段階的に値上げを行う方針(水戸[小売])。』

アイヤー

『・ 物価の上昇が続くもとで、ここ数年間当社も複数回の値上げを行っており、都市部以外の店舗では、中高年層の顧客の来店頻度が低下している(本店[飲食])。』

そらそうじゃろとは思いますが値上げが続く話ですし、

『・ 高騰が続く米などの仕入コストを転嫁するため、さらなる値上げを予定。その際は、顧客離れを防ぐために、既存商品の値上げを段階的に行うほか、新たに低価格商品の開発も強化する(秋田[飲食])。』

ってな話をしていますが、これよく見ると「コストプッシュ要因の上昇はワンタイム」とか能天気なこと言っている場合じゃなくて、普通にコストプッシュが起点になって物価上がるじゃと、という話ではあるのですが、ただまあこれ「食料品、小売、飲食、飲食」って並べていて、ここでの「見せ方」があまりにも業種偏り過ぎてないですか、とは思いましたので逆に編集に何かの意図でもあるのかと疑ってしまいますわな・・・・


・個人消費のコーナーはこれでもかという位に威勢が良すぎてむしろビビるレベルかと

でもって個人消費とインバウンド様ということで『B個人消費(インバウンド需要を含む)』ですが。

『・ 国内富裕層の消費意欲は堅調。インバウンド客の来店客数は増加しているものの、為替円高の影響等もあって、売れ筋が高額品から化粧品や日本製の生活雑貨にシフトし、客単価は低下している(神戸[百貨店]<京都、大阪>)。』

ほうほうそうですかと思いますが、安い単価のインバウンドとか要らんわなどと言ったらいけませんですかそうですか。

『・ 備蓄米が流通する前は米の買い控えがみられた。米を含む食料品の価格に対する顧客の目線は厳しく、当社のセール実施時にはスーパー等の顧客が流入してくるため、売上が顕著に増加している(札幌[ドラッグストア])。』

ほえーーーーー

『・ 大阪・関西万博の開幕以降、客室単価を引き上げても、国内外から宿泊者が増えており、売上は想定を上回って推移している(大阪[宿泊])。』

イイハナシダナー

『・ 人件費や原材料費などのコスト増加分の6割程度をゴルフ場利用料に転嫁しているが、来客数は県外観光客を中心に堅調(青森[対個人サービス])。』

まあさっきの「国内富裕層の消費意欲は堅調」もそうですけど払える人は払うっちゅうことですかねえ、知らんけど。

『・ 4月に食料品の値上げが相次いだため、節約志向の強まりを懸念したが、買い上げ点数は想定ほど落ち込まず、消費者の支出スタンスは底堅い(松本[スーパー])。』

おおおおおおおおお

『・ 割安なメニューの販売好調が続く一方、入学式などハレの日関連の利用も増加しており、メリハリ消費の強まりを感じる(名古屋[飲食])。』

なるほど、とは思いますがこの手の「ハレ消費」だの「メリハリ消費」だの言ってるのの後ってあんまり良い思い出が無いのですけどね・・・・・・・・・

ということで、この個人消費のところはまあ威勢の良い話がひたすら並んでおりまして、やはり今回のさくらレポートの全体観としては「なんかエライ堅調なんですけど」という印象になるんじゃないかと思ったのですがどうなんでしょうかねえ・・・・・・・・


〇FOMC議事要旨ネタの続き

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20250618.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20250618.pdf

Minutes of the Federal Open Market Committee
June 17-18, 2025
A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, June 17, 2025,at 9:00 a.m. and continued on Wednesday, June 18, 2025, at 9:00 a.m.1

今日はいつもどおりに『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の金融政策のパートを読みます。9パラ〜12パラですね。

・「政策金利維持しました」の説明部分は声明文で既に示されている内容の繰り返しです

『In their consideration of monetary policy at this meeting, participants noted that inflation remained somewhat elevated. Participants also observed that recent indicators suggested that economic activity had continued to expand at a solid pace, although swings in net exports and inventories had affected the measurement and interpretation of the data. Participants further noted that the unemployment rate remained at a low level and that labor market conditions had remained solid. Participants observed that uncertainty about the economic outlook had diminished amid a reduction in announced and expected tariffs, which appeared to peak in April and had subsequently declined, but that overall uncertainty continued to be elevated. All participants viewed it as appropriate to maintain the target range for the federal funds rate at 4-1/4 to 4-1/2 percent. Participants judged it appropriate to continue the process of reducing the Federal Reserve's securities holdings.』

めんどくさくなって思わず第9パラグラフ一気に引用しましたが、背景説明に関しては先般のFOMC声明文で示されているお話の通りなので、現状維持ですよ、の1行コメントでもよかろうって感じです。一応は「5月からみたら不確実性がやや晴れてきたが未だに訳わからん」という説明ではあります。


では10パラで先行きの金融政策運営というみんなの好物の部分ですが、ここはいくつか論点が示されていて・・・・・。

・そもそも今の金融政策が「どの程度引き締め的なのか」という点については意見が分かれている模様

『In considering the outlook for monetary policy, participants generally agreed that, with economic growth and the labor market still solid and current monetary policy moderately or modestly restrictive, the Committee was well positioned to wait for more clarity on the outlook for inflation and economic activity.』

いまはwell positionedだから様子見地蔵、なのですが、今の金融引き締め状態に関する認識が、「current monetary policy moderately or modestly restrictive」となっていて、モデレートなのかモデストなのか、というのはそこ中立金利までの距離の問題だから結構重い話なのですが、さらっとこういう流し方をしていまして、今の金利水準がどの程度引き締め的なのか、という事に関しては意見が割れているようですね。

『Participants noted that monetary policy would be informed by a wide range of incoming data, the economic outlook, and the balance of risks.』

これは「状況よく見てやっていきます」なのでただの汎用文言ですが、その次ですね。


・年内の幾分かの利下げが適切(ただし留保条件がゴテゴテとデコレーションされています)

『Most participants assessed that some reduction in the target range for the federal funds rate this year would likely be appropriate, noting that upward pressure on inflation from tariffs may be temporary or modest, that medium- and longer-term inflation expectations had remained well anchored, or that some weakening of economic activity and labor market conditions could occur.』

小見出しに書いた通りですが、noting that 以下の「関税の物価への影響がテンポラリーあるいはモデスト」「中長期のインフレ期待がアンカーされていること」「幾分かの経済減速がみられること」あたりが確認できれば利下げも、という話になっているので、つまりはそれが逆に行ってる時に利下げに踏み切るまでは全員そうなっている訳でもない、というお話ではあろうかと。


・とは言え時期に関しては早めという人もいます

でもって個別の意見としては、

『A couple of participants noted that, if the data evolve in line with their expectations, they would be open to considering a reduction in the target range for the policy rate as soon as at the next meeting.』

2名は「見通し通りに推移するなら次回利下げでええんじゃ」ですね。でもその一方で、


・アクチュアルの物価が上振れを続ける中では中長期のインフレ期待が上振れるリスクが高まるという話

『Some participants saw the most likely appropriate path of monetary policy as involving no reductions in the target range for the federal funds rate this year, noting that recent inflation readings had continued to exceed the Committee's 2 percent goal, that upside risks to inflation remained meaningful in light of factors such as elevated short-term inflation expectations of businesses and households, or that they expected that the economy would remain resilient. 』

数名の参加者は小見出しに書いたようなお話をしていまして、これは昨日アタクシが「こっちが重要じゃねえのか」と(あんまり賛同されませんしたが、笑)申し上げたインフレ期待の上振れの話なので政策論的には結構強力な意見の部類になります。


・そもそも今の政策スタンスの「抑制的」の度合いってそんなに大きくないんじゃネーノという重要な論点キタコレ

でもってこのコーナーの最後は

『Several participants commented that the current target range for the federal funds rate may not be far above its neutral level.』

とさらっと書いてありますが、これはこのパラの最初の方にあった、「current monetary policy moderately or modestly restrictive」の部分の対句みたいなもんでして、これもこれで重要な論点ですわなと思いますし、何人かの参加者が「今の政策金利って別にニュートラルからそんなに離れていないんじゃネーノ」って言ってるのはすなわちそんなに利下げせんでもええじゃろという話をしている訳なので、さらっと入れているけどこれまた重要な論点の指摘になっています。



・今後起こりうる「政策対応のコンフリクト」の可能性

次がリスクの話。

『Various participants discussed risks that, if realized, would have the potential to affect the appropriate path of monetary policy.』

メインシナリオ以外の金融政策への影響の起きるリスクに関するお話、ということでリスクマネジメントアプローチとはちょっと違った話になっていましてこの点も面白いです(リスクマネジメントアプローチを連呼するハトハトチキンの梯子が外れると面白いんですけどねwww)。

『Regarding upside risks to inflation, participants noted that, if the imposition of tariffs were to generate a larger-than-expected increase in inflation, if such an increase in inflation were to be more persistent than anticipated, or if a notable increase in medium- or longer-term inflation expectations were to occur, then it would be appropriate to maintain a more restrictive stance of monetary policy than would otherwise be the case, especially if labor market conditions and economic activity remained solid. 』

関税の物価の上振れが中長期のインフレ期待の上昇をもたらすリスクとなるならば引き締めが必要ですよ。とくに経済がソリッドに推移している場合はなおさら必要ですね。

『By contrast, if labor market conditions or economic activity were to weaken materially, or if inflation were to continue to come down and inflation expectations remained well anchored, then it would be appropriate to establish a less restrictive stance of monetary policy than would otherwise be the case. 』

関税が経済の顕著な下押しをもたらし、物価上昇が引き続き鈍化する場合は、より中立に近い政策スタンスが適正(緩和とは言ってないのは面白い)とのこと。

『Participants noted that the Committee might face difficult tradeoffs if elevated inflation proved to be more persistent while the outlook for employment weakened. If that were to occur, participants agreed that they would consider how far the economy is from each goal and the potentially different time horizons over which those respective gaps would be anticipated to close.』

でもってこれはコンフリクトを伴う形で起きるかもしれないし大変ですがな、ということでその場合はどっちの方がヤバいのかというのを見極めながら相反する事象への対応をせんといかんよね、ってお話をしております。


・経済の下押しと物価の上振れのどちらのリスクを見るかという話からの「ケアフルアプローチがダイジダイジネー」

引き続きリスクの話から繋がる話ですね。

『In considering the likelihood of various scenarios, participants agreed that the risks of higher inflation and weaker labor market conditions had diminished but remained elevated, citing a lower expected path of tariffs, encouraging recent readings on inflation and inflation expectations, resilience in consumer and business spending, or improvements in some measures of consumer or business sentiment.』

「higher inflation and weaker labor market conditions」のリスクは、関税がそこまでひどくならなさそうなこと、最近の物価指標やインフレ期待を示す指標、企業や家計の投資や消費がレジリアントで、センチメントも改善していることなどを受けて以前よりも弱くなった、とは言え十分にあるんですけど、からの、

『Some participants commented that they saw the risk of elevated inflation as remaining more prominent, or as having diminished by less, than risks to employment.』

『A few participants saw risks to the labor market as having become predominant. They noted some recent signs of weakening in real activity or the labor market, or commented that conditions could weaken in the future, particularly if policy were to remain restrictive. 』

物価の高止まりのリスクを主張する数人というのと、経済の下押しのリスクを主張する何人かの人、ってのが対比されています。

『Participants agreed that although uncertainty about inflation and the economic outlook had decreased, it remained appropriate to take a careful approach in adjusting monetary policy. 』

「a careful approach in adjusting monetary policy」キタコレ。

『Participants emphasized the importance of ensuring that longer-term inflation expectations remained well anchored and agreed that the current stance of monetary policy positioned the Committee well to respond in a timely way to potential economic developments.』

で最後はまたも「中長期インフレ期待の安定に努める」で締められていました。

てな訳で証文の出し遅れにもほどがありますがそんなことで。






2025/07/10

お題「短国強いですなあ/6月FOMC議事要旨(その1)今日はインフレ期待に関する記述でお〜と思ったのでそちらから」

トランプにまともな思考を求めてはいけないのだが・・・・・・
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025070900256&g=int
トランプ氏「敗戦と同じ」 ドル、基軸通貨の地位喪失なら
時事通信 外経部2025年07月09日07時53分配信

いやこれマジで言ってるんだったらさすがに医師の診断を受けた方が良いのではなかろうか(やってることがまるで逆じゃろという意味で)と思うんですが・・・・・・・


〇短国がここに来てやたら堅調な件について(6MTDBなど)

昨日の6M
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250709.htm
国庫短期証券(第1317回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1317回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号    国庫短期証券(第1317回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日    令和7年7月10日
4.償還期限   令和8年1月13日
5.価格競争入札について
(1)応募額         10兆245億円
(2)募入決定額     2兆6,724億7,000万円
(3)募入最低価格    99円77銭4厘
(募入最高利回り)    (0.4421%)
(4)募入最低価格における案分比率     65.2112%
(5)募入平均価格    99円78銭1厘
(募入平均利回り)    (0.4283%)』

ということで、3Mなのか6Mなのかよくわからん結果、という結果になっておりますが、6Mってニーズがある時は3Mに引っ張られるしニーズが無いときは1Yに引っ張られるという物件なのでニーズ状況の雰囲気見るのにはちょうど良い債券、ではありますが1/13償還だからたぶん1月利上げでは利上げが1ミリも関係ないと思われるし、12月利上げでも最後の所はまあネグリジアブルな期間だし、そもそも年末越えのニーズってのがあるからまあ仮に12月に利上げ食らったとて別にまあって感じになりそうな所なので、9月10月の利上げ無しだと思えばこのレートでも、となるんでしょうかね、うーんよくわからんが。

ちなみに6月頭に入札のあった12月償還の6Mは0.4938/0.5058でしたし、5月債の6M(よって11月償還)の6Mは0.4381/0.4462でして、強いときと弱いときの差が大きいというのが伝わるかなとは思います。でもって今回の入札は強いときの方のレートということで、引値ちゃんの方を見ますと、

いつもの売参
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(7/9引値の6Mカレント周り)
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.420
国庫短期証券1276 2025/12/22 平均値単利 0.420
国庫短期証券1317 2026/01/13 平均値単利 0.420←新発6M
国庫短期証券1281 2026/01/20 平均値単利 0.435

(7/8引値の6Mカレント周り)
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.450
国庫短期証券1276 2025/12/22 平均値単利 0.449
国庫短期証券1317 2026/01/13 平均値単利 0.449
国庫短期証券1281 2026/01/20 平均値単利 0.450

そもそも入札前の引値って0.45水準でして、まあWIの引値をどこまで信用して良いのか問題というのはありますし、この辺の既発TDBの流動性の問題(売りに行けば普通にビットは立つけどマーケットメーカーの在庫はあったりなかったりなので買おうと思ってもピンポイントで買えるものでもない、という代物なので)があって、売買無いので引値が変わってないだけ説はあるのですが、まあ何はともあれWIで0.449とか言ってたのに入札は0.4283/0.4421で、引値は(先週金曜の3Mみたいな)アイヤーショートカバーなレートにはなっていませんが、まあゆうて0.420%で引かせているので入札の平均よりもお強い形になっておりまして、それすなわち世の中にニーズがあるって話じゃろうな、とは思いました。


あと、先週金曜の新発3Mとかその辺りも変調でして、

(7/9引値の3Mカレント周り)
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.410
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.410
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.350←先週入札の新発3M
国庫短期証券1298 2025/10/10 平均値単利 0.410
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.410
国庫短期証券1263 2025/10/20 平均値単利 0.405

(7/8引値の3Mカレント周り)
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.420
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.420
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.400
国庫短期証券1298 2025/10/10 平均値単利 0.410
国庫短期証券1318 2025/10/14 平均値単利 0.410
国庫短期証券1263 2025/10/20 平均値単利 0.410

1316の0.35%ってのはショートカバーが残っていたってことなんでしょうけれど、微妙に周辺銘柄も影響されたりしてたりしてて(一々引用するとエライことになるのでパスしますが短い所の引けも強い)、昨日っていつもの超長期アイヤー相場じゃなくて、2年2毛甘とか中短期が弱い相場だったというのに、短国ちゃんったら逆行高になっておりまして、まあ短国は別世界なのでありがちな話なのですが、利付と整合性が取れんというか寧ろ逆行する動きやってますなあ、と思いました。

とは言いましてもついこの前も短国急に強くなったと思ったら急に弱くなる、というような面白現象が発生していたこともありましたので、明日の3M新発入札を見てみないと何とも言えないところではありますけれども、なんかの拍子にまた金利リスク削減民の皆さんがやってきたのかどうか、うーんどうなんでしょうかね。


〇6月FOMC議事要旨を例によってインスタントで確認だがいつもと違って「インフレ」の方を先に見ます

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20250618.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20250618.pdf

Minutes of the Federal Open Market Committee
June 17-18, 2025
A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal
Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, June 17, 2025,at 9:00 a.m. and continued on Wednesday, June 18, 2025, at 9:00 a.m.1

引用はHTMLバージョンの方から行います。手抜き読みなので『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の中でもいつもだと金融政策の部分から参りますが、この部分ざっくりと目を通せば一発で分かると思いますが、今回はインフレーションに関するパラグラフになります3パラ(現状認識)、4パラ(先行き見通し、特に長い)、5パラ(インフレ期待に関して)も長いのですよね。

なお、前回2025/05のFOMC議事要旨では、このインフレーションに関するパラグラフは同じコーナーの第2パラグラフに現状認識、見通し、インフレについてまとめて記載されていましたので、今回って明らかに物価に関する議論を重視していますよ感を出そうという構成になっているんです。

とまあそういうわけでして、インスタント読みとか書いてますが今回は柄にもなくクソ真面目に3回位このコーナーを読み直しまして、確かに「利下げもそろそろ適切じゃないの」みたいなのが政策のところに記述されているのではあるのですが、でも実は今回の議事要旨って「インフレ期待のアンカーが(上に)外れるリスクの認識」の方が大事な話で、ただまあそれを超前面に出すとホワイトハウスのチンパンジーが騒ぎ出してやかましい(チンパンジーって凶暴なんですよね)ので微妙なオブラートを掛けているなとは思いましたけど、アタクシ的には「こっちの話の方が重要」と読みました、まあ異論はあるかと思いますのであくまでもアタクシの個人的解釈ではあるのですが。

ということでインフレに関する部分、と言いたいのですが手抜きしないで読みふけってしまったので時間が足りなくなっているので、一番大事だとアタクシが勝手に思ったインフレ期待の部分についてだけ今日はネタにしまして続きは明日でご勘弁くだせえ(すいませんすいません)

#というかいつものように書こうと思って書きかけて「でもやっぱり今回はインフレ期待だよなラガルドはんもそういう話をしているんだし」と思い直して読み直したら「うーんこれは」となって読み読みとかしてたので時間がかかったというお話ではあります、アセアセ


・「上昇している短期インフレ期待のスピルオーバーに注意」

でまあ今回わざわざパラグラフを独立させてまでぶっこんできたインフレ期待の部分となります第5パラグラフを見ますと・・・・・・

『Participants noted that longer-term inflation expectations continued to be well anchored and that it was important they remain so. Several participants commented that shorter-term inflation expectations had been elevated and that this development had the potential to spill over into longer-term expectations or to affect price and wage setting in the near term.』

「短期のインフレ期待は上昇しているが中長期のインフレ期待はウェルアンカード」ってのが毎度の認識なのですが、今回は一発目から数名( Several )の参加者が「短期のインフレ期待が中長期のインフレ期待にスピルオーバーする可能性があるじゃろ」と指摘してます、ってのが出てきまして、


・関税の影響はワンタイムに留まらない可能性を示す参加者の方が殆どです

『While a few participants noted that tariffs would lead to a one-time increase in prices and would not affect longer-term inflation expectations, most participants noted the risk that tariffs could have more persistent effects on inflation, and some highlighted the fact that such persistence could also affect inflation expectations.』

タリフは物価のワンタイムインクリーズにとどまってインフレ期待には影響を与えない、という意見の参加者は「a few」である、という記述の次に、殆ど(most)の参加者は物価に対してモアーパーシステントでしょという意見を表明している、という時点でこれもう関税が今後ローンチされてきたら物価上振れしかもワンタイムじゃないよ、っていってるようなもんでありまして、こういう認識なのに金融政策の所でそろそろ利下げ、と言ってる人がそこそこいるっぽい記載になっているのはナンジャソラと思いますがその辺は明日引き続き読んでまいりましょう。

でもってですね、数人(some、ちなみにa fewよりは多い人数の筈)の参加者は「such persistence could also affect inflation expectations」であるという「the fact」ということで、コンサーンでもリスクでもなくてファクト、を強調しました、って言ってて、この辺結構エゲツナイ勢いでインフレ期待の上振れリスクを強調しているんですよね。


・「物価上振れを放置すると中長期のインフレ期待のアンカーが(上に)外れるリスクが高まる」

更にこの続きが、

『Some participants observed that because inflation has been elevated for some time, there was a heightened risk of longer-term inflation expectations becoming unanchored if there is a long-lasting rise in inflation.』

っていうことで、これまた数名(Some)の参加者ですけれども、「アクチュアルのインフレーションがしばらくの間高止まりして、インフレが長期間にわたって持続した場合、インフレ期待のアンカーが(上に)外れてしまうリスクが高まる」って思いっきり指摘している、ということでインフレ期待に関するこの第5パラは終了するんですが、それこそ先般来ネタにしておりますECBのストラテジーレビューで強烈に指摘されている「供給ショックであろうとも高インフレが持続することによって発生する長期インフレ期待デアンカリングのリスク」と話の平仄が取れている訳で、ジャパンとか言う極東の変態国家を除けばもはや中銀界隈でもコモンセンスになってきているんじゃなかろうか、という話をこれでもかと記載している訳でして、この部分ってワシ的には重要だと思いましたが、まあ個人の見解なので解釈はお任せです。


ちなみに5月FOMCでは長期インフレ期待の不安定化の話はインフレに関する議論の本編部分にあるのではなくて、最後の「リスクマネジメントコンシダレーション」のところに、

『Participants emphasized the importance of ensuring that longer-term inflation expectations remained well anchored, with some noting that expectations might be particularly sensitive because inflation had been above the Committee's target for an extended period. 』(この部分だけは5月FOMC議事要旨より引用しています)

って記載になっていたので、5月FOMC議事要旨と比較しても「長期インフレ期待がアンカーを(上に)外してしまうリスクへの懸念」が以前よりもかなり強調されている、という風に思いましたのでいつもと別の構成で参りました。

とか何とか書いてたら時間が無くなったので続きは明日で勘弁してつかあさい。







2025/07/09

お題「超長期なおもスティープ(メモ)/小枝審議委員インタビュー:政策がビハインドにならないようにという指摘は誠に結構ですな」

おまえがいうなwww
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08DPP0Y5A700C2000000/
トランプ氏「プーチンはでたらめばかり」 ロシア追加制裁を本格検討
ウクライナ侵略
2025年7月9日 4:11 [会員限定記事]

〇なんか超長期が調子に乗ってスティープしておりますな(備忘メモ)

皆様先刻ご承知の介だと思いますのでまあ備忘メモで恐縮ですが
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/QQVPXY74UNP3TMELQTFUOQJ7F4-2025-07-08/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は下落、財政懸念背景に超長期金利が連日の大幅上昇
ロイター編集
2025年7月8日午後 3:21 GMT+9

『[東京 8日 ロイター] - <15:10> 国債先物は下落、財政懸念背景に超長期金利が連日の大幅上昇

国債先物中心限月9月限は、前営業日比16銭安の138円96銭と下落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同3.0ベーシスポイント(bp)上昇の1.485%。前日に続き、財政悪化懸念を背景に超長期金利が大幅上昇した。』(上記URL先より)

ということで5年国入札の方は順調だったのですが、昨日も超長期朝から弱めだったし日中親の仇みたいに気配甘くされておりまして、

『現物市場では新発国債利回りが超長期ゾーン主導で上昇。2年債は前営業日比横ばいの0.730%、5年債は同1.0bp上昇の0.980%、20年債は同7.5bp上昇の2.500%、30年債は同9.5bp上昇の3.060%、40年債は同12.0bp上昇の3.365%。イールドカーブはベアスティープ化した。』

ってなっておるわけですが、まあゆうて30年3%乗ってて財政懸念ガーって言いましても米国の30年って5%近く有るわけで、物価の方が2%で同じで潜在成長率が向こうが2%割れくらいでこっちが0.5%ちょい位だったら実はリスクプレミアム乗っているの米国じゃネーノって話なのですけれども、というのは昨日も申し上げたのですが、単に木曜に20年国債の入札あるからちょうど良いので叩き売って水準訂正してから入札迎えようって話じゃねえのと思いながら鼻ホジホジって感じでおりますがどうなんでしょうかねえ(個人の感想です)。

まあ円債市場ってまだまだデフレ脳から抜けてない感は強いんですよね、とは思います(基本アタクシは人間が極端にできているのでデフレとか何の話でしたっけだし基調的物価とやらも2%になってるしなんなら上に突き抜けるリスクが高まっているというインフレ脳にマインドセットが転換しているんですけどねw)し、大体からして超長期の金利だけ上がっても別に企業金融が急に困るわけでもないじゃろ(超長期の社債発行とかレアものですからぬー)とも思いますし、まあ困るのは新発の利払い費が上がる政府だけじゃネーノってなところですけど。

『TRADEWEB
   OFFER  BID    前日比 時間
2年  0.728  0.735      0   14:58
5年  0.977  0.983    0.009  15:09
10年 1.479  1.486    0.032  15:09
20年 2.498  2.506    0.078  15:10
30年 3.056  3.065    0.099  15:09
40年 3.362  3.371    0.12   15:10』

ということですが、これ明日の20年国債入札が滑った挙句に更に売られるとかになるとありゃありゃまあまあって感じではありますが、金利さえ調整すれば止まるところで止まるじゃろって話だとはさすがに今のところは思います。もちろん今の政治状況だと財政支出に対してガバガバな話しか出てこないし、物価高対策とか言って財政バンバン出して更に物価が上がるじゃろ、という話すら通じない義務教育の敗北(一応中学校の公民でやったと思うのだがそのくらい、高校の政経では間違いなくやっている)状態なので、そっちの方で中期的な懸念はアタクシ滅茶苦茶大きいと思っていますが・・・・・


〇小枝審議委員の初インタビューが行われていたようですので拝見しておりますが・・・・・・

これはタイムスタンプ的に夜中に出たのでまあ朝のニュース扱いになるんですかしら。しらんけど。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-08/SZ2147T0AFB400
小枝日銀委員、食料価格が想定よりも上振れ−基調物価への影響を注視
伊藤純夫、藤岡徹
2025年7月9日 0:00 JST

→金融政策は変化逃さず判断、米関税政策で経済・物価に下方リスクも
→7月会合で新たな見通しを議論、3%台続く物価は上方修正が視野に

>3%台続く物価は上方修正が視野に
>3%台続く物価は上方修正が視野に
>3%台続く物価は上方修正が視野に

・・・・・・クソワロタ

小枝さんは安達さんの後任だから4月に就任したばっかりで4月の展望レポートを迎えた、という訳で若干同情の余地はあるのですが、しかし1月展望の時からみたら4月展望って物価見通しを思いっきり下げてきてベースラインシナリオを下方修正した、という結果だったのですが、その舌の根も乾かぬうちに7月展望で物価見通しをまた上方修正ってお前ら揃いも揃って(なお田村抜刀斎は免責確定でもしかしたら高田っちも免責かもしれませんね、小枝さん4月どっち派だったのか分からんけど)渡辺努かと小一時間問い詰めたくなる展開が見られそうで、これは7月展望レポートで何を抜かしやがるのかが今から楽しみとしか言いようがありませんねwwwwwwwwwww

いやまあ関税の影響があるだろうからニアータームの経済見通しを下方修正、というのは話は分かるのですけれども、あの時点で既に「関税の影響で世界経済が下押しするから物価も下押し」「マインド面に悪影響があるから物価も下押し」と決め打ちして物価にクッソ弱気な見通しを出す必要があったのかというのはさすがに反省すべきだしちょっと植田さん頭丸めて出てこいってところですな。

ということで記事を拝見しますと、

『日本銀行の小枝淳子審議委員は、足元の消費者物価についてコメを中心とした食料品価格が想定よりも強いとし、日銀が政策判断で重視する基調的な物価上昇率に影響しないか注視していく考えを示した。7日に3月の就任後、初のインタビューに応じた。』(上記URL先より、以下同様)

ということで7日のインタビューなのでかなりの出来立てホヤホヤ。

・食料品価格が4月展望の想定よりも強いから云々という言い訳は下手糞にも程があるのでもっとマシな屁理屈考えてください

『小枝氏は、日銀の2%目標を上回る3%台で推移する消費者物価について、5月に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)の想定よりも「コメと食料品関連が強く出ている」と分析。主食であるコメ価格の動向が「わが国のインフレ実感や家計の予想インフレ率、ひいては基調的なインフレ率に与える二次的な影響の可能性を注視している」と語った。』

とのことですが、コメ価格とか食料品価格の動向って関税と全然関係ない話だし、しかも水稲なんて収穫時期は年間の限定的な時期なんだから、次の収穫時期までの供給が(外米をアホみたいに輸入しない限り)変化はおきない(4月展望のあと政府備蓄米の放出イベントはありましたけど)もので、「コメを中心とした食料品価格が想定よりも強い」ってさすがに馬鹿なんじゃネーノとしか言いようが無いので、言い訳にするにしたって酷いんじゃないですかと思います。

せめて「米国関税政策による経済の下押しが想定よりも小さくて、懸念していた物価下押しに繋がらなかったので物価が上振れているようです」位の屁理屈にしておけって話だと思うんですけどねえ・・・・・・・

『その上で、金融政策運営は「その時点で得られるデータや情報、経済・物価情勢や市場の動向を丁寧にみて、変化の兆しを見逃さず、状況判断していきたい」と説明。トランプ米政権の関税政策に伴う不確実性が大きい中で、追加利上げに関して「具体的な時期に言及することは適切ではない」との認識を示した。』

でまあこの部分見て思ったのですが、この「変化の兆しを見逃さず、状況判断していきたい」ってのがまさに先日ネタにした渡辺努ムーブ、すなわち5月の頭には「トランプ関税がもたらすデフ逆戻りのリスクを踏まえて利下げしろ」と言ってたのに直近では「物価上方修正は必至で関税次第で年末に利上げも」となってしまうという面白ムーブになっているんじゃないのって思いました、まる。


・一応ご参考ですがインタビューは昨日の25%砲の前ですわな

記事にもありますように、

『インタビューは、トランプ大統領が7日に日本からの輸入品に対して25%の関税を課すと表明する前に行われた。関税の発効日は8月1日で、当初の期限だった今月9日から3週間ほどの猶予期間が与えられた。』

日本時間の7日のインタビューなのでシャーナイナイのですが、

『小枝氏は、米関税政策を巡る不確実性は引き続き高く、先行きの経済減速リスクは相応にあるとしつつ、「グローバル経済が深刻に悪化する可能性は低い」とみる。国内物価面では、海外経済の減速に伴う下方リスクを注視する一方、関税政策による供給制約の強まりを受けたコストプッシュ圧力にも注意が必要とした。』

だそうですが、25%砲が出たのでこの辺がどうなるんでしょうかね・・・・・・・


・しらっと書いてあるけどビハインド警戒しているのはポイント高いかもです

でもって記事の続きですが、

『政策対応が遅れるビハインド・ザ・カーブに陥らないためにも、基調的物価がどの水準にあるかを議論していく必要があると主張。』

という「ビハインド警戒」というのはなかなか良い事言ってるじゃん、と思うのですが・・・・・・・・・


・お気持ち物価がお気持ち物価過ぎてこれはなかなか楽しい

別に小枝さんが悪いとかそういう話ではないのですが、この次はワロタ

『基調を示すハードデータの一つで、重視している日銀公表の加重中央値が「まだ2%になっていない」とした上で、物価関連指標だけではなく、企業の価格転嫁や賃上げの実態なども踏まえて判断していく考えを示した。』

>基調を示すハードデータの一つで、重視している日銀公表の加重中央値が「まだ2%になっていない」とした上で
>基調を示すハードデータの一つで、重視している日銀公表の加重中央値が「まだ2%になっていない」とした上で
>基調を示すハードデータの一つで、重視している日銀公表の加重中央値が「まだ2%になっていない」とした上で

・・・・・・・えーっとすいません、最近さすがにこの基調的物価とやらが「お気持ち物価」じゃネーノというツッコミを意識してきたのかどうか知りませんけど、お気持ち物価に関して「こういうデータがどうのこうの」という説明を政策委員の皆様からも聞くようになったのですが、皆さんが例示するデータが一人一人言ってることが違っている訳でして、却って「基調的物価はただのお気持ち物価」というのが白日の下に晒されてきているように見えるのですがwwwwwwwwwwwwwwww

などと悪態をついている訳ですが、まあこの調子だと7月の展望レポートの背景説明(いわゆる全文)の時に基調的物価に関して何かの説明を出さない訳にもいかなくなってきたかなと楽しみにしております(というかどうせ政策が地蔵なのでその辺しか楽しみが無い)ので正座して待機したいと思います。

でもって国債買入の方はなぜか一問一答記事の方が詳しいので一問一答記事に行きますと(なおどうでも良いけど上記記事中に「一問一答はこちら」ってあるのだがリンクが無かったですよBBGさん)・・・・・


・日銀バランスシートに関する考察がお前大丈夫か状態な件について

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-08/SZ0JART0G1KW00
国債減額は着地点近づく、適正残高の議論必要−小枝日銀委員一問一答
伊藤純夫、藤岡徹
2025年7月9日 0:00 JST

『日本銀行の小枝淳子審議委員は、7日のブルームバーグとのインタビューで、米関税政策の影響を踏まえた経済・物価見通しや金融政策運営、国債買い入れとバランスシートのあり方などについて語った。詳細は以下の通り。』(ここから直上URL先のインタビュー記事より、以下同様)

ということで、まあ前半はさっきの記事にあるので割愛しますが、長期国債買入に関しての説明はどうなのかと思います。

『−適正な国債買い入れとバランスシート

「国債買い入れは、予見可能な形で、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、減額していくことが適切との考え方に変わりはない。その上で、国債の減額ペースとは別に、適切なバランスシートの大きさと整合的な国債買い入れの着地点があるとみている。』

というのはまあ原則論なので良いんですけど。

『来年に入る頃には月額の国債買い入れ額は3兆円を切る予定であり、着地点に近づいていく。』

??????????????????????????????????

いやあのすいません、日銀保有の国債残高勘違いしていませんか大丈夫ですかとしか言いようが無い認識で、なるほど学者先生の認識ってこんなもんなのかと思いますと、植田和男先生もそんな認識だからあんな長期国債買入計画になるのか、と思いました。

『イメージとしては、自動操縦されたヘリコプターが次第に高度を下げていき、最後は環境を確認しながら緩やかに着地していく感覚だ」』

全然着地するような水準じゃないんですけど・・・・・・・

『「拡大したバランスシートや国債保有残高をどこまで縮小させるか議論していくことは重要だ。本行のバランスシートの規模は、国内総生産(GDP)比でみても欧米を大きく上回っており、かなりの期間にわたって縮小が続くことが予想される。今後の買い入れ減額のあり方にも影響する問題であり、資産・負債両面からみた将来の望ましいバランスシートの規模について、先行する海外での議論も見ながらしっかり検討していきたい」』

適正水準考えたら本当は売れと言いたい位だが、少なくとも新規の買入は原則ゼロで償還が多すぎの時だけペース調整で買入をする、というFED方式にしろよと思いますし、そのFEDは日銀と比較したらそこまで巨大な国債ポートフォリオを持っていなかったのにそうやってバランスシート縮小しているんだから、「本行のバランスシートの規模は、国内総生産(GDP)比でみても欧米を大きく上回っており、」って言ってるのに月額3兆円の買入が「着地点に近づいていく」は言ってることが矛盾にも程があるし、どういう現状認識しているのか疑いたくなるレベルの説明なんですが大丈夫ですかね。

いやあのですね、

『−市場が不安定化した場合の対応

「長期金利は金融市場で形成されることが基本であり、経済・物価情勢に対する市場の見方や海外金利の変化などを反映してある程度変動する。ただ、通常の市場の動きと異なる形で急激に上昇するなど例外的な状況が起きた場合は、市場における安定的な金利形成を促す観点から、必要に応じて機動的に国債買い入れの増額や他のオペなどを実施することが適切だと考えている」』

とまあ普通の回答をしておりますけれども、だったら益々何で「月額3兆円が着地点に近い」のかが訳わからん。

「金利があまり上がらないように買入ペースを落とすには慎重に」みたいな説明するならば(その理屈の是非はさておいて)まだ話としては意味が繋がるのですが、日銀のバランスシートが極めて大きい、市場の価格形成には介入しないのが基本、って言ってるのに、月額3兆円の国債買入が「着地点に近い」って言っちゃうとお前は何を言ってるんだという話になるわけでありまして、うーんこれはハトハトチキン大本営に丸め込まれているのか何だか知らんけど、さっきのコメ価格云々もそうなんですが、屁理屈捏ねるにしてももうちょっとマシな屁理屈を捏ねて欲しいなと思いました。

とまあそんな感じで初インタビューで噛みついてみましたが、ゆうてまあ初手段階では大本営に丸め込まれてしまっていて、その後徐々に自我を取り戻す、というムーブもこれまたアリエールな話でして、例えばこの記事中にありましたように「政策修正がビハインドになるのを回避しないといけない」という認識を(まあ学者なんだから当然持っていないとおかしいが)持っている、というのが見えておりますので、お気持ち物価などの屁理屈や市場へのハトハトチキンムーブに惑わされることなく判断をしていっていただければ、ということで今後には期待しておる次第でございます。

などと柄にもなく美しくまとめてみましたwwwwwwwwwwwwww猫かぶるなとか言われそうだが







2025/07/08

お題「関税とか超長期とかの雑談メモ/ECBのニューストラテジーに関するラガルドはんの説明より少々(その2)」

ほうほうそうですかそうですか
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN07BY80X00C25A7000000/
「トランプ・ゴールドカード」実現に壁 永住権販売、議会承認が必須か
トランプ政権
2025年7月8日 5:29

『【ワシントン=赤木俊介】トランプ米政権が500万ドル(約7億3000万円)の支払いで米国の永住資格が取得できると説明する「トランプ・ゴールドカード」の実現を疑問視する声が広がっている。移民制度を改正する権限は米議会にあり、議会の承認が必要になるとみられるためだ。トランプ米大統領は2月、既存の投資家向けビザ(査証)「EB‐5」を廃止し、ゴールドカードを導入すると表明した。米政府は6月にゴールドカードの申請者を募るホームページを開設し、7万人近くが事前登録をしたという。』(上記URL先より)

ここでナウル共和国、って思ったらまた市民権の販売やってるのか・・・・
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-20/SRWRETT1UM0W00
2120万円でパスポート販売、海面上昇に苦しむ島国が対策費工面へ
Chanyaporn Chanjaroen、Ishika Mookerjee、Bernadette Toh
2025年2月20日 11:39 JST

この国大昔にパスポート乱発販売してテロリストなどに使われたってことで大変なことになったんですよね・・・・・・


〇関税25%ですかそうですか・・・・・

ゴロツキキタコレ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-07/SZ1JYFT0G1KW00
トランプ氏が日韓に25%関税通知、交渉期限を延期−回避手段にも言及
Josh Wingrove、Catherine Lucey
2025年7月8日 4:52 JST

→セクター別関税は別と説明、報復ならその分25%関税に上乗せと警告
→市場開放や米国での生産拡大を通じて発動を回避する手段も明記

『トランプ氏の発表を受けて、米国株式市場は下落。S&P500種株価指数は約1%下落、
ナスダック100指数は0.8%下落した。シカゴ・オプション取引所のVIX指数は18.10前後で推移。テクノロジー株の予想変動率を示す指標は2週間ぶりの高水準となった。

円は対ドルで146円台に下落。一時は1.2%安の146円23銭付近と、日中としては6月23日以来の安値をつけた。』(上記URL先より)

つまらん妥協はせんでもろていただいて、とは個人の感想です的には思いますし、米国の物価が上がってトランプざまあという展開からのTACOちゃんじゃろとは思うのですけれどもさてどうなるのやらという感じですな。

ただまあどうなんでしょうかね、これ結局自動車とかは別に上乗せとか言い出すんでしょうからこれで終わりって感じでもないんでしょうから、「関税交渉の先行き不透明ガー」という話になる、と考えますと、日銀大本営の現在の屁理屈からしますと、関税問題の先行きが不透明でありますので政策は地蔵です(キリッ)って事になるわけで、もちろん7月利上げとかありえないのですけれども、7月展望レポートの段階で先行きの政策に関して9月10月に向けた前向き示唆ってのも出しにくくなったかなあ、とは思うのでありますがどうでしょうかね。

まあその前に参院選というネタもあるので7月会合でどのようなトーンになるのかを今から考えても時間の無駄っぽい気もしますけれども、


〇また超長期の金利が上がっている訳だが(財政懸念ネタで)という備忘メモ

月曜の債券市場ちゃん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/QU7IYDOBQZJR3HFPTWADHU43AQ-2025-07-07/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は横ばい、長期金利1.455% 財政懸念で超長期債は金利上昇
ロイター編集
2025年7月7日午後 3:30 GMT+9

『[東京 7日 ロイター] - <15:22> 国債先物は横ばい、長期金利1.455% 財政懸念で超長期債は金利上昇

国債先物中心限月9月限は、前営業日と横ばいの139円12銭で取引を終えた。手掛かり材料に乏しい中、全体的に動意薄だった。新発10年国債利回り(長期金利)は同2.0bp上昇の1.455%。現物市場では財政拡張懸念から超長期ゾーンに金利上昇圧力がかかった。』(上記URL先より、以下同様)

まあ超長期は盛大に動意があったという話でもありますがorz

『現物市場では、新発債利回りはまちまち。2年債は同0.5ベーシスポイント(bp)低下の0.730%、5年債は同横ばいの0.970%。一方、20年債は同5.5bp上昇の2.425%と6月4日以来の高水準。30年債は同10.5bp上昇の2.970%と、5月30日以来の水準まで上昇した。40年債は出合いなし。』

挙句にイブニングで30年一段安やってた気はしますわな。

・・・・・ということでとりあえず参院選序盤情勢ということで連立与党で50議席確保が微妙な線とかいう話になっていたというのがネタになって売られている、というのはまあそうなんですけれども、よくよく考えて見ますと物価が2%水準で推移するっての考えたら別に30年金利3%ってクソ高い水準でも何でもなくねえか???って話は有るわけでして、そもそも論として物価の長期均衡水準が何ぼですかと考えた場合に、そこにタームプレミアム乗っけた水準に対して日銀の長期国債買入とかいうクソイベントが継続していて、しかもお気持ち物価を持ち出して政策金利水準を無駄に低い水準に置いているから国債を買おうって人が何時まで経っても増えてくれないってだけの話ではなかろうか、などと3%という水準を見ながら思う訳で(個人の暴言ですwwww)ジャパンの場合は債券自警団復活みたいなカッコいい話ではなかろう(だいたいからして自警団なら当局にクレクレ大合唱してるんじゃねえよって話な訳で自警団を名乗るのが烏滸がましいにも程があるwwwwwwww)という所ですが、まあ超長期の金利が上昇してくれれば馬鹿政治家へのシグナルくらいにはなるでしょうから、この調子で警鐘を鳴らして頂きたいものだと思います。

ただまあアレですよね、こんなタイミングからベアスティープニング(というか2年対比ではツイストだがw)していますと、肝心の参院選の結果が出る前にスティープニング疲れするんじゃないかという感じ(2週間はさすがに長いじゃろ)ですし、まあそれ以前に関税の話が狂犬から放たれましたので、今日はそっちの話になるんですかね、知らんけど。

でまあロイターさん記事のTRADEWEBの気配ですけれども、

    OFFER  BID   前日比 
2年  0.725  0.734     0   15:20
5年  0.966  0.973   -0.002  15:19
10年 1.448  1.455    0.02  15:20
20年 2.418  2.431   0.062  15:20
30年 2.963  2.977   0.113  15:20
40年 3.218  3.251   0.116  15:20

とのことで超長期ドイヒーという結果になっておりますが、なんかまあ折角発行減額の決定をしてもダメなもんはダメという結果なのは残念ですが、ニーズが無いのもあるにせよ金利水準が足りないからというお話なので、やはり国債買入の額が多すぎだし、いまとなっては長期国債の買入をしている意味って「昔威勢よく買っていたのを急にゼロにできないので徐々に調整」という意味しかない筈なのに、買入縮小ペースを上げるどころか下げる決定しているのは何とかならんのかと思う訳で、結局当局プットみたいな信仰が円債市場にあるもんだから健全な調整が進まないでちょっとプットが入って反発→冷静に考えたら水準がダメだろとなってやっぱり売られる、みたいな無駄なボラを生み出しているというのが個人の極論です。


〇また実質賃金が下がっている訳だが(じっと財布を見る)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-06/SYSQ9NT1UM0W00
5月の実質賃金は2.9%減、20カ月ぶりの減少率−基本給は堅調維持
氏兼敬子
2025年7月7日 8:30 JST 更新日時 2025年7月7日 10:05 JST

→実質賃金5カ月連続マイナス−名目1.0%増、賞与減で伸び鈍化
→基本給は2.1%増とモメンタム持続、高水準の春闘結果を反映

『物価変動を反映させた実質賃金は5月に20カ月ぶりの大幅な減少率となった。物価の上昇が続く中、名目賃金の伸びの鈍化が響いた。所得の改善を実感しにくい状況が続く中、参院選に向けて物価高への対応を求める声が一層強まりそうだ。』(上記URL先より、以下同様)

ということで物価上昇対策ってのが今回は参院選の争点にとうとうなってしまった訳ですけれども(前回の衆院選は政治と金とかそっちで物価はその次位って感じでしたからね)。

『厚生労働省が7日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、「持ち家の帰属家賃を除く」消費者物価指数で算出した実質賃金は前年同月比2.9%減と、2023年9月以来の低水準となった。市場予想は1.7%減だった。名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は1.0%増と、市場予想(2.4%増)を大きく下回った。賞与など特別に支払われた給与が18.7%減少したことが影響した。』

ふむふむ。

『実質賃金のマイナスは5カ月連続。コメなど食料品をはじめとする物価の上昇に賃金の伸びが追いついていない状況が続いている。20日投開票の参院選では、物価高対策として給付や減税が争点となる中で、石破茂首相は「何よりも賃上げ」と強調した。今回の結果は石破政権にとって逆風となる可能性がある。』

いやマジのマジでこの情勢で未だに「基調的物価は2%行ってないから金融緩和が必要」って言ってるの何なのという話で、まあさすがに「基調的物価を引き上げる」みたいな「物価を上げる」という表現を使うと日銀に十字砲火の矛先が一気に向く、という事くらいは分かっているようでその言い方だけはしていない(「経済を支える」としか言わない)のですけれども、選挙終わったらどういう方向になるにせよ財政拡張の話になるわけで、またまたインフレ押上げ要因がやって来て、「これから実際の物価は下がる」という日銀の大本営願望予想が外れる方向になるはずですが、政治的に大丈夫ですかねえとは思います。とは言え高圧経済とか未だに妄言吐いている人たちも政治方面にはいるので、もう日銀もシランガナとなって政策調整を知らんぷりする可能性もあり、これまた今後はどうなるんでしょうねって感じで、選挙の後どうなるかは(自分の生活防衛的にも)色々と考えないといけませんなと思うのであります。

まあ実質賃金がまたマイナス、では日銀は(内心どう思うかはさておき)それ自体には全然反応しないでしょうし、なんなら「企業の賃金設定行動を支えるためにも金融緩和政策の継続が必要」と言い出しそうなので、残念ながらこれで政策調整が早まるとは思えません、というかこれで早まるようなタマだったらとっくの昔に短期政策金利は1%台になっていますwwwwwwwww


〇先週ネタにしたECBの政策ストラテジー見直しに関するラガルドはんの講演ネタ続きを参ります

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2025/html/ecb.sp250630_1~ba0ef03e6f.en.html
SPEECH
Strategy assessment: lessons learned
Introductory speech by Christine Lagarde, President of the ECB, at the opening reception of the ECB Forum on Central Banking 2025 "Adapting to change: macroeconomic shifts and policy responses"Sintra, 30 June 2025

・ボラタイルな経済の中でよりロバストな経済のアセスメントをするのには何をする必要があるのかという話

前回引用したのは「インフレがボラタイルになっており、供給ショックでも一時的じゃない場合が増えているので対応しないとインフレ期待がアップサイドにアンカー外れるよ」って話だったのですが、その続きですな。

『Assessing the distribution of risks』って小見出しのところからになります。

『The next question that follows is: if the economic environment becomes more volatile, how can we make our economic assessment more robust?』

ということで小見出しにこの訳を書きましたw

『Large shocks can trigger feedback loops and non-linear effects that inherently give rise to a broader range of possible outcomes. In a world of higher uncertainty, it is all the more important to augment the baseline with alternative risk scenarios.』

大きなショックはフィードバックループや非線形的な変化をもたらす可能性があるので、オルタナティブリスクシナリオを議論することが重要、という話なんですが日銀の場合のオルタナシナリオって基本的に「金融政策から逆算したシナリオ」なんだよな〜(個人の偏見です)。

『This is why the second key conclusion of our assessment is the need for monetary policy to take into account risks and uncertainty, using a systematic but context-specific approach.』

『The ECB has used both scenario and sensitivity analysis for many years - deploying internal scenarios since the global financial crisis and publishing them for the first time during the pandemic.』

『But our experience in recent years has underscored the particular strength of scenario analysis in times of elevated uncertainty.』

昔から内々ではリスクシナリオを作って分析していましたが、不確実性が高まるにしたがってさらに重要になったですよ、ということで、

『A clear example is Russia’s invasion of Ukraine and the resulting energy price shock. In that case, scenarios provided insights that neither our baseline projections nor standard sensitivity analyses around the baseline could fully capture.』

実際にロシアのウクライナ侵攻とその結果としてのエネルギー価格ショックに関しては、ベースライン見通しや標準的な感応度での分析(ようはモデルとか使ったリニアな分析ってことですよね)は当てはまりませんでした、ということでして。

『For instance, in March 2022 ? just a few weeks after the invasion ? our baseline projected inflation at around 5% for that year, based on market-implied energy futures. The sensitivity analysis suggested a slightly higher figure of about 5.5%. In contrast, the Ukraine war scenario already pointed to inflation exceeding 7% ? close to the final annual figure of over 8%.』

2022年3月での(ウクライナ侵攻直前の)分析では(既にその前から上がりだしていた)エネルギー価格の上昇によってインフレの見通しが標準で5%、感応度加えても5.5%の物価見通しになりましたが、ウクライナ戦争発生するというシナリオでは7%という見通しになりましたし、実際には8%超えのインフレになりました。

『At the same time, there were moments when - in hindsight - publishing scenarios could have supported both our policymaking and our communication.』

『One example was the high uncertainty in 2021 about the speed of vaccine rollout and the nature of post-pandemic reopening, including the sectoral shifts in supply and demand across goods and services sectors, both in the euro area and globally.[4]』

『Scenario analysis could have helped in illustrating that the range of possible inflation outcomes was unusually wide - and reduced the risk of projecting false certainty to the public.』

『This is why our updated strategy commits to ensuring that our policy decisions account not only for the most likely path of inflation and the economy, but also for the surrounding risks and uncertainty - including through the appropriate use of scenario and sensitivity analyses.』

でもって後半ではポストパンデミックの時の話で、これは提示したリオープンシナリオの通りに動きましたって例の話をしていますが、(よく考えたら新ストラテジーの方をご紹介していないのですが汗)ECBの新ストラテジーにおいてメインシナリオだけではなくリスクや確実性について適切なシナリオ提示や不確実性の説明を行いますよ、ってお話をしております。

まあこれ自体は今の日銀の展望レポートの出し方とは違っていますし、出し方次第では展望レポートだって同じような出し方ができない訳でもないとは思うのですが、ただまあ日銀の場合はオルタナティブシナリオになった、とは死んでも言わないままに物価上振れを放置している感があるので、もっとその辺は何とかならんのかとは思います。別に植田日銀だけは無くて昔からそうでして、一つの見通しにやたら固執して屁理屈を散々捏ねた挙句に最後の最後にポッキリ折れて大転換、ってのが日銀の仕様なんですよね・・・・・

ということで時間が無くなってしまいましたすいませんすいません続きはボチボチやっていきます。







2025/07/07

お題「高田さん金懇会見が結構なタカというか真人間モードで大変に結構/3M短国とかツトムとか」

朝のひとことみたいなコーナーネタではあるが小見出しをつけてみました↓

〇日銀はいつまでこのオッサンを有難がって何とかコンファランスとかで喋らせる気なのかと

これはひど過ぎる・・・・・・
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-04/SYTI2XDWLU6800
日銀の物価見通し上方修正は確実、関税次第で年末に利上げも−渡辺氏
伊藤純夫、藤岡徹
2025年7月4日 17:10 JST
→物価はそれなりの危険水域、日銀見通しに比べてすでにかなり上振れ
→政策対応が遅れるリスクが高まっている、基調物価は「魔法の言葉」

えーっとですね、オッサンついこの前何言ってましたかって話で、
https://diamond.jp/articles/-/364394
日本銀行は利下げへ転換せよ、トランプ関税下の利上げ路線が招く「デフレ逆戻り」のリスク
渡辺 努: ナウキャスト創業者・取締役、東京大学名誉教授
政策・マーケット渡辺努 物価の教室
2025年5月8日 8:30 会員限定

いやマジでこのオッサンの言うように金融政策運営したら4月会合は利下げで7月会合は倍返しで利上げですかって無茶苦茶な話になるわけでして、まーこの人の金融政策の話ってど素人レベルの話を堂々とする訳で、日銀と東大と日本の経済学という学問のレピュテーションを纏めて投げ捨てるというのは凄まじいとしか言いようが無いですわな(あくまでも個人の感想です)。

ってまあ朝のひとことのつもりで書いたのだが小見出しつけてみましたwww


〇9月末越え一発目の3M入札は引値がガッツリ強くなっている件について

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250704.htm
国庫短期証券(第1316回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1316回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号     国庫短期証券(第1316回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日      令和7年7月7日
4.償還期限     令和7年10月6日
5.価格競争入札について
(1)応募額         13兆3,736億円
(2)募入決定額      3兆2,728億5,000万円
(3)募入最低価格      99円89銭1厘5毛
(募入最高利回り)     (0.4356%)
(4)募入最低価格における案分比率      10.6465%
(5)募入平均価格      99円89銭3厘8毛
(募入平均利回り)     (0.4264%)』

7月になったから当たり前っちゃあ当たり前ですが、先週金曜の3Mから足が9月末跨ぎになりまして、金曜はその1発目の入札となった訳ですな。前週の3Mは9月末の1営前に足が来るという使い勝手が基本的にはあまりよろしくない物体だったのですが、0.4215%/0.4396%でしたので、平均は前週よりも金利上昇していますが足切りは金利低下、ということなので、前回よりもテールの短い入札になった訳ですが・・・・・・・

売買参考統計値
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(7/4引値)
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.430
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.430
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.430
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.400
国庫短期証券1298 2025/10/10 平均値単利 0.420
国庫短期証券1263 2025/10/20 平均値単利 0.420

(7/3引値)
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.430
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.430
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.435
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.430
国庫短期証券1298 2025/10/10 平均値単利 0.435
国庫短期証券1263 2025/10/20 平均値単利 0.445

ということで、売買参考統計値ベースの引値を見ますと、新発債だけ0.400%とかいう入札から見たらエライコッチャなレートになっていまして、手前の銘柄は0.43で変わらずになっているのですが、10月償還の6Mと1Yの成れの果て銘柄の1298と1263の引けもちゃっかりと強くなって9月償還とイールド逆転という
結果になっておられますな、うんうん。

1316新発3Mに関しては(そんな無茶苦茶強い所で切られた感じじゃないような気もするんですが)これ入札が空振りをしたのか入札後に買いでも来たのか知らんですけれども0.40%水準っていうのはまあ踏みレートじゃろとは思いますが、10月償還の既発も強くなっているので、まあやっぱり9月末越えのニーズってのも世の中にあるじゃろうというのが判明した、と思いました、知らんけど。

まあ今週は6Mと3Mの新発がありますので、どのくらい短国ニーズありますかってのを確認ですな。ちなみに3Mって7月発行分から1回の発行額が4.4兆円→4.3兆円に減額になっていますが、その1000億円にどの程度のインパクトがあったのかはよくワカランチ会長です。


〇高田審議委員金懇会見である

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250704a.pdf
高田審議委員記者会見
――2025年7月3日(木)午後2時から約40分
於 津市

・4月展望の下方修正は「計画運休」みたいなもんという譬えを頂きました

最初の説明はさておきましてその次から。

『(問)まず今日講演の中でお話しされていました、利上げいったん休止局面で、一定期間の様子見の後、再びギアシフトという点について、少し詳しく聞かせて頂きたいと思っています。関税措置の中でも堅調な企業の賃上げですとか、価格設定行動について述べられていまして、90 年前後と比較しても賃金抑制のような縮小均衡につながりにくいとも話されていました。』

90年前後云々というのは金懇挨拶の中でめんどくさいから割愛した部分の話ですね(汗)。

『この一定期間の様子見とは、この一時停止している米国の相互関税の再延長ですとか、日米交渉の妥結などが達すれば、この様子見の期間というのは達成するというふうな見方なのか、それともそうではないのか、まず教えて頂けたらと思います。』

ということですが高田さんやたら説明が長いというか何というかでして、

『(答)様子見というふうなことで申し上げたんですけれども、これまでを考えてまいりますと、1970 年代以降の変動相場制への移行後ですね、これまで過去 5 回の利上げ局面があるんですけれども、これまでアメリカの利下げの後に、日本も利下げに転ずるという状況でありました。』

はい。

『ただし今回の状況というのは、私自身は従来のようなアメリカの深刻な景気の後退が想定されるという状況ではないというふうに思っておりますので、そういう意味では、2000 年のITバブル崩壊や、2000 年代後半の世界の金融危機とは異なって、足元はあくまでも利上げのいったんの休止局面であって、一定の様子見期間の後、再びギアシフトを行える状況だと私は思っています。』

まあそもそも論として今の米国って「引き締め状態から中立に戻すかどうか」の局面であって、金融緩和をしようとして利下げしている訳じゃないですから比較するのがおかしいわなという事で。

『アメリカでは相互関税賦課に伴って、インフレ率が反転する観測なんかも一部にはあるということもありますし、そういう意味ではちょうどこれからの夏場の状況というんでしょうか、この辺についてはよくわれわれもみていきたいなというふうに思います。』

とりあえず答えているようで別に答えていない尺稼ぎですな。

『それから、一時停止というような状況ではございますけれども、これなかなかどのくらいの期間かというところを予断を持って申し上げられるような状況でもないというふうに思ってます。』

まあこれはこう答えるじゃろという話なんですが、ただまあ「関税交渉の帰趨が見えてきたら判断できるんじゃないのか」という話ではあると思うのですが、その説明はこの次に出てくるんですけど・・・・・

『ただ今回、私どもも 4 月の展望レポートも含めて、見通しを下方修正させてきたわけなんですけれども、私どもだけじゃなくて、この春からみると、IMFなどいろんな各市場参加者、各研究機関というんでしょうか、足元の見通しを下げているわけなんでありますけれども、』

寧ろお前らIMF見て下げたじゃろって説が大有り。

『いずれも現在の経済状況は大きく悪化はしてなくてもですね、これから経済の下押しがあるんじゃないかというような観測のもとで対応するというんでしょうか。』

でもってそれは「計画運休」なんですよという話が次に来まして、

『ですから、私は懇談会でも申し上げたんですけれども、ある面でいうと、公共交通機関における「計画運休」のようにですね、いわば「相互関税台風」が到来するんだというような見込みに対して、事前に見通しの引き下げを行ったというような状況でもあるので、』

ワロタwwwww

『そういう意味からしますと、この事前の想定なり、ある面ではその「相互関税台風」の天気予報が変わるということであれば、おのずと経済の見通しも変わってくるということになりますので、そういう意味では今後のその辺の動向をよく見守っていきたいなというふうに思います。』

ほうほうそうですかそうですか。

『これも日々変わる状況でもありますし、またこの7 月というのは、非常にそういう意味では非常にそういうところが押し迫っているといいましょうか、いろんなメニューが揃ってるというところでもありますので、この辺をみていきたいとは思っておりますけれども、ただ目先のそういうアナウンスメントだけに引きずられることなく、いろんな意味で、実際の海外の経済状況とか、こうしたものなんかを見極めていきたいなというふうに思っているところであります。』

関税の先行きガーでどこまでも引っ張りそうな勢いだし、なんかの理由で急に利上げってなったらその「関税の先行きガー」をジャガーチェンジさせる、というのが今から見え見えな訳でして、つまりは日銀が何をしでかすのかはロジカルに考えても多分よくわからなくて、それよりも「こいつら突然ジャガーチェンジする」という認識でいるのがよろしいのかな、とこの辺りの高田さんの説明見てて思いました。

説明はさらに続きまして、

『特に米国なんかにつきましては、先ほども申し上げたところと重なる部分もあるんですけれども、経済の状況の見込みが、最初の関税のところから、場合によっては、これまで、これからあり得るというんでしょうか、減税でありますとか、こうしたものも含めたところにも、最近も関心も移ってきておりますので、そうしたものなど両面を踏まえたうえで、みていきたいなというふうに思っているところであります。』

この上振れもあるでよ、というのはいざとなった時のジャガーチェンジの為のヘッジクローズと考えたら大本営もこういう発想なのか、それともハトハトチキン総裁はやっぱりハトハトチキンで、精々田村さんと高田さんだけなのかというのは中々興味深い所ではあります。


・中立金利は「虹のようなもの」で「近づいてくるとよくわからなくなってしまう」ってのもなんかの伏線かもしれませんよ!

次の質疑応答での高田さんの回答も面白くてですね、

『(問)もう一問なんですけれども、ギアシフトする必要性を述べられつつ、緩和的な金融環境の継続が大事だということもおっしゃっていました。その意味するところなんですけれども、政策金利を 0.75%まで引き上げても、この緩和的な環境というのは続くというふうな考え方なのか、はたまたこの今日の講演でもその物価安定目標の実現まで目前に迫っているという話もありました。これはこの 0.75%というのを中立金利というようなお考えということもあるんでしょうか。お考えについてお聞かせください。』

金懇挨拶の方で「特に短期の実質金利は大幅なマイナスとなっており緩和的な金融環境は継続しています」って言ってて、金懇挨拶の図表8みたら1年の実質金利▲1.5%近くあるのに、何で0.75%で中立金利になるとかいう愚問を出すのかとは思いましたが、まあ回答の方が面白かったので勘弁しちゃるわw

『(答)中立金利というようなことについては、もちろん概念として私は非常に重要だと思ってるんですけれども、よく申し上げているのは、中立金利っていう概念は重要だけども、虹みたいなもので、だんだん近づいていくと、よく分かんなくなっちゃうというような言い方をさせて頂いているんですけれども、』

これはwwwwwwww

これ中立金利もそうなんですが、今言っているお気持ち物価に関してもあれは虹みたいなもん、ってことになるのかな、と思ってかなりウケたんじゃが。

『これまでのように非常に長い、日本みたいな状況で、いわゆるシクリカルなものもなかなか描けていないというような状況が何十年も続いたという中でのところから申し上げますと、この中立金利というようなものを一定水準のもので考えながら、そこに近づけていくというようなことでもなかなかないのかなと。そういう意味では一定の対応をしながら、その段階をもって、今が緩和的状況なのか、そうしたものを 1 回 1 回検証しながら対応していくという感じになっていくんじゃないかなというふうに思ってます。』

『ですから、必ずしも例えば利上げをした場合に、その水準が中立金利かどうかというのは、繰り返しになりますけれども、そのときの状況というんでしょうか、というところをもう 1 回精査しながらというかたちにならざるを得ないかというふうに思ってます。』

まあ利上げして様子見てまだ緩和的かどうかを判断するって話になるというのは話としてはわからんではないのですけれども、だったら実質金利のグラフとか出すなよな、とは思います。

『そういう面から言いますと、私も今回申し上げたところというのは物価の目標への動きというものが、ようやく目の前に迫ってきたというような状況と考えておりますけれども、ただ一方で足元の状況は、いろんな意味での不確実性というものもあるわけでありますので、また一方で目の前に迫っているといっても、完全にそれが達成されたという状況でもまだないということからすれば、当面そこまでのところについては、ある程度緩和のところで、そこにより近づくためにもですね、緩和的な状況を続けながら対応していく。』

ある程度緩和のところで、は良いんですけれども1年の実質金利が▲1.5%近くにあるような状況が「ある程度緩和のところ」というのは話に無理があるんじゃないでしょうか・・・・・・

『また今どうしても、世の中的に、グローバルにもということだと思うんですけれども、やや悲観の方に振れやすい部分というものもあるわけでありますから、そうした面で過度に悲観に振れないようなためにも、目先のところはある程度緩和的なところで、今の状況をサポートしながら、ようやくここまできた状況というものが遠ざかってしまうようなことがないように、心掛けていきたいなと、そんな感じでみているところであります。』

×世の中⇒〇ハトハトチキン植田総裁ですねわかりますwww


・企業行動がどうなるかが注目のようですね

この点についての質疑というか応答が結構多かった感じです。

『(問)(前半割愛)二つ目が、日本国内の経済動向なんですけれども、午前中の講演でも設備投資とか賃上げであるとか価格転嫁の状況の持続性っていうのがチェックポイントなんだろうなというふうに私は受けとめたんですけれども、先日の短観でもですね、設備投資の意欲は高い水準だというふうに解釈できると思いますし、国内の動向だけみればですね、次の利上げができる環境っていうのが整いつつあるのではないかと思うのですけれども、その辺りのご見解をお願いできればと思います。』

こちらは直接的に短観を踏まえた質問ですが、

『(答)(前半割愛)それから二番目のところで、国内の動向について短観も踏まえたうえでというようなご質問もあったと思うんですけれども、今週発表された短観について申し上げれば、やはり企業の業況感、価格転嫁の進捗を主因として、企業業績も結構高めでもありましたし、全体として良好な水準を維持してたんじゃないかなというふうに思います。』

という評価に加え、

『製造業を中心に懸念されたアメリカの通商政策というんでしょうか、これも現段階ではそんなに大きな影響はみられてないのかなという、そういう意味では底堅い動きだったかなというふうに思ってますし、それから先行きの判断にしても、価格転嫁ですとか、それから人件費への動向ですとか、それから販売価格による状況とか、それについてはもちろん懸念の声は依然としてもちろんあるんですけれども、ただ大きな下押しになっているというような状況でもないのかなというふうには思っているところであります。』

『また設備投資なんかについても、比較的どうでしょうかね、製造業、今年度の計画なんですけれども、製造業・非製造業ともに、3月からやや上方修正されているということもありますので、そういう意味では緩やかな増加傾向にあるという動きはやっぱり不変なのかなというふうに思います。』

ということでエライ威勢の良い評価です。

『やっぱりそういう意味からしますと、DX関連でありますとか、AIだとか、人手不足対応とか、こういうものの需要が引き続き強いということがやっぱり背景にあるんじゃないかというふうには思います。』

だそうですが、

『ただそうは言っても、やはりまだこの不確実性というんでしょうか、それから不透明感というか、なかなか特にこれまでの計画ということについては見極めきらないというような見方も結構出てきてはおりますので、そういう意味からすると、その辺の不透明感はまだ残した状況であるということは言えるんじゃないかと思います。』

あらそうですか。

『ですから、そういう中からしますと、先ほども申し上げた物価安定の目標が目の前にというふうには申し上げておりますけれども、そういうようなところの達成ということについては、やはりこうした投資計画ですとか、企業行動というんでしょうか、こうしたものも踏まえたうえで、われわれ判断をしなきゃいけないというふうに思ってますので、そういう意味からすれば、もうちょっと今暫く見極めるということが必要なのかなというふうに思っている次第であります。』


ということですが、じゃあお前どの位まで見てるのかという話がありまして、


『(問)(前半割愛)あともう一つなんですけど、どこまで見極めるべきかっていうところなんですが、例えば関税のところが、ディールができてですね、その後やっぱりその後もまだハードデータをしっかり見てから判断するべきなのか、その点についてですね、というのも高田審議委員、以前、調整しないでいるリスク、要するに過度な緩和期待というのが高まってしまうリスクについても言及されているので、その点ちょっと教えて頂ければと思います。』

良い質問の仕方である。

『(答)(前半割愛)二番目にご指摘があった、じゃあどこまで見極めるのかというところ、正直言ってこれ、きりないですよね、何があっても毎日何か起こっちゃってるわけですよね。だからそれ言い出してたら、もうきりないよっていうことになっちゃうわけなんですけれども、』

(^^)。

『ただやはり一つの動きとすれば、先ほどからもうこれも繰り返しになっちゃうんですけれども、企業の前向きな動きというんでしょうか、それが海外のところのそういう不透明感も踏まえたうえでも、やはりそれが強くなってくるというような、確信がより高まるというんでしょうか、またそれに伴ってそれがまた当然のことながら、企業行動のところで言えば賃金であり、また価格転嫁ということもあるわけでありますから、物価の動きにどう跳ね返ってくるかというところにも影響するわけでありますから、その辺のところの物価の動向も踏まえたうえで、毎回毎回の会合の中で、一つ一つ判断をしていくということでならざるを得ないんじゃないかなというふうに思います。』

おーーーーーーーーー。

『ですから、それがいつの時期かっていうことを、今の段階で申し上げられるような状況でもありませんし、またそれは予断を持って申し上げるようなものではないんですけれども、ただ、今申し上げたようなところを私なりの時間軸、時間軸というか座標軸というか、いうところの中で持ちながら、これからも判断をしていきたいなというふうに思います。』

という事なんで、そういう文脈からしたらやはり年末から年初にかけてはもうその辺の白黒はつけられるじゃろ、ってことになるんじゃなかろうかとは思いますがどうでしょうかね。


・緩和を引っ張るリスクで「欧米タイプのリスクの可能性」に言及とな!!

今の続きです。

『それから最後にご指摘があった、過度に、ということなんですけれども、当然のことながら、今回の状況なんかもそうなんですけれども、この懇談会の中でも申し上げたんですけれども、今世界的にも、ちょうど、世界中とまでは言いづらいですけれども、米欧にしても中国にしても、それから新興国にしてもですね、比較的揃って金融緩和、それから財政拡大っていう方向に向かってるわけですね。』

はい。

『そうしますと、今回、各地域毎に、こういういろんなストレスがある中で下振れした動きを見込むわけなんでありますけれども、全体が合わさっちゃうと思いがけないような上振れみたいなことが起こってしまうリスクというものも当然あるわけであります。』

まさにアフターパンデミックですわな。

『日本経済につきましても、特に 3、4 年前のときのコロナのときっていうのは、世界的には緩和があってもですね、なかなか日本の場合はそこまで、非常にまだノルムが残っていたりとか、厳しい状況でありましたから、そう変化がでなかったわけですけれども、今回はそれなりに日本の状況というものも変化が出てきてるわけでありますから、』

おおおおおおおおおお!

『そうした状況の中で海外も含めたところが、温度感が上がってくるといった場合には、先ほど私はホームメイド化の兆しがというふうに申し上げましたけれども、そうした点のところもあるということではありますし、また一方で資産価格のところ辺りも含めてよくよくみないといけない部分というものも当然出てきますので、そうしたところ総合判断しながら、これからもみていきたいなというふうに思っている次第であります。』

!!!!!!!!!!!!!

ということでして、なんか高田さん会見の方が金懇挨拶よりも真人間化著しいなあと思いました(ニッコリ)。







2025/07/04

お題「高田審議委員三重金懇:タカ成分もちょいちょい混じっていますけどね」

決着はついている話ではありますがあらためてイイハナシダナー
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-03/SYSPG2T1UM0W00
25年春闘賃上げ34年ぶり高水準、勢い持続で連合の目標達成−最終集計
照喜納明美、横山恵利香
2025年7月3日 16:03 JST 更新日時 2025年7月3日 17:40 JST

→平均賃上げ率は5.25%と2年連続5%台、ベースアップは3.70%
→中小の賃上げ率は4.65%と高水準も目標には届かず、ベア3.49%

#あ、今日は9末越えの3M入札だった・・・・(高田さんの金懇ネタだけで本日は終っております為念)

〇高田審議委員三重金懇はタカとハトが混在している感がありますが・・・・・・

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250703a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
三重県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 高田 創
2025年7月3日

・経済の説明が展望レポートベースなのは別に良いんだが結局高田さんはこれに対してどういう見解なのかが分からん

ということで『2. 経済・物価情勢』を見ますが、

『経済・物価情勢です。海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられますが、総じてみれば緩やかに成長しています。今年4月に改訂されたIMFの世界経済見通しは、米国の関税政策の影響を大きく受ける見通しとなっており、一段の下振れリスクも指摘されています(図表1)。』

でまあそのIMFの見通しに丸乗りしたのが日銀の4月展望レポートでしたが、

『ただし、関税政策の影響が懸念される米国経済について、最近の経済指標――ハードデータ――からはなお緩やかに成長している姿も窺われます。』

となっていまして、

『1月FOMC以降、政策金利は据え置かれていますが、FRBは再び利下げに転じるとの市場参加者の見方もみられます(図表2)。先行きについても、家計・企業・金融機関はバランスシートが健全であることなどから、従来、景気悪化局面でみられた信用収縮に伴う急激な落ち込みは想定され難いと捉えており、私としては、深刻な景気後退というよりは、消費者マインド低迷の影響などから、潜在成長率を下回る成長率への減速を見込んでいました。』

あらそうなんですか。

『ただし、この減速は、米政権の政策に起因するだけに、上下双方向に不確実性は極めて高い点を念頭に置く必要があります。現時点では堅調であっても、関税への不安が長引けば長引くほど、不確実性の高まりから経済への下押し圧力は高まると考えられ、時間軸のなかで慎重に見極める必要があります。』

『他方で、後段で改めてお話ししたいと思いますが、新政権発足後、経済成長にマイナスに働く関税等の政策が先行しており、今後、減税等の成長にプラスの政策が進められた場合、成長率の上振れもあり得ると考えています。また、海外では、欧米、中国、新興国で押しなべて、財政金融政策が同時に緩和方向に傾き、世界中のベクトルが揃うことで、合成されて予想以上の経済押し上げ・インフレ圧力が生じる可能性にも留意したいと思います。』

という上振れの話はしているんですけど、まあ後に出てくる金融政策の話をみていると、威勢の良い事言ってるけど結局経済先行き不透明ガーで地蔵って感じなのは否めません。

『こうした米国の関税政策の影響は、海外経済の減速や、わが国企業の収益の減少とそれに伴う賃上げの減速、不確実性の高まりによる企業・家計の支出の先送りなどの経路を通じてわが国経済を下押しすると考えられ、4月展望レポートでは、1月対比で成長率・物価見通しとも下方修正しています(図表3)。』

でもって聞きたいのは高田さんがこのベースラインシナリオに対してどう思っているか、なのでございますけれども、

『ただし、足もと、日本の企業部門では、企業収益の改善傾向が続いており、2025年の春季労使交渉でも、連合の第6回集計時点で、高水準の賃上げ率が実現しています(図表4)。家計部門では、個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用者所得の改善を背景に緩やかな増加基調を維持しています(図表5)。コメなどの食料品価格上昇で足もとの物価上昇率は高まっていますが(図表6)、先行き、輸入物価の下落等に伴う物価上昇の落ちつきに加え、賃金上昇率の高まりを背景に、先行して上昇した物価を賃金が追いかけるかたちで、個人消費も緩やかな増加を続けると期待されます。』

という説明はしているのですが、結局のところ「じゃあ高田さんのご意見は」ってのが見えて来ない訳ですわな。(ちなみにこの金懇挨拶の原稿も半角英数がテキスト認識されない謎事象が発生しておりますが、会見の方は半角英数認識されているからちょっとPDFのプロパティみたらPDF変換ソフト金懇テキストと就任会見で別の使っていますね〜)


・基調的物価とかいうお気持ち物価ェ・・・・・・・・・・・・

でもって物価の話なんですけど、

『また、物価の基調をみるうえで、様々な主体の中長期的な予想物価上昇率をみると、着実な底上げが継続しています(図表7)。』

ってのが一発目にあります。さらに、

『加えて、国内のインフレ圧力を示すGDPデフレーターをみると、これまでユニット・プロフィット(UP)等が伸びの中心でしたが、 年以降は賃金上昇を背景にユニット・レーバー・コスト(ULC)の寄与が高まり、UPとULCがバランスよく伸びる姿に近付き、物価上昇が輸入物価要因だけでなく国内要因による上昇、いよいよホームメード化する兆しが生じています。』

いよいよじゃなくてとっくの昔にホームメードインフレじゃろとアタクシは思う訳ですが、まあそれは兎も角として、高田さんの言う基調的物価、というのが図表7ということで本文の巻末になりますけれども、

『図表7 日本の物価関連指標

合成予想物価上昇率
GDPデフレータ―』

ってなっている訳ですな。ではここで直近の政策委員の皆様における基調的物価に関する講演等での言及を確認しますと、

田村審議委員金懇の図表だと
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250625a2.pdf

図表5 消費者物価(前月比・年率)
(季節調整済前月比、年率換算、%)

図表6 消費者物価(家賃・公共サービス)

図表7 消費者物価(生鮮食品・その他食料)

図表8 予想物価上昇率

この辺りが「最近私が注目している指標」として挙げられていまして、一方で植田総裁が6月の内外情勢調査会で講演を行っていた時に言及していたのは、

植田総裁の内外情勢調査会講演での図表
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a2.pdf

図表7 基調的な物価上昇率に関連する指標

@価格変動の大きい品目を控除した物価指標
  CPI(除く生鮮食品)
  CPI(除く生鮮食品・エネルギー)
  CPI(刈込平均値)
  CPI(加重中央値)
  CPI(最頻値)

A賃金変動を反映しやすい指標
  CPI(低変動品目)
  CPI(サービス)のトレンド

B中長期の予想物価上昇率
  合成予想物価上昇率(10年後)

C経済モデルから推計された指標
  モデル@:フィリップス曲線の切片
  モデルA:時変VARモデル
  モデルB:準構造モデル

と散々出していましたが、その前の金研国際コンファランスでの挨拶では「(ここでは、予想物価上昇率を基調的な物価上昇率の近似として用いています)」とか言って説明をぶっ放しておりましたわな。

・・・・・・・ということでですな、これは別に高田っちがどうのこうのの話じゃなくなってしまいましたけど、そもそもこの「基調的物価」ってのを説明する際に説明する人によって別々のものがホイホイと出てくるという状況なのってそもそも論として「インフレーションターゲット」をしているのにその数字の定義自体がフラフラなのって政策運営としてロジカルに成り立つもんなんですか、というツッコミをしたくなる訳でございまして、7月展望レポートでもっとこの「基調的物価」を深堀していただきたいもんだ、とまあそのように思う訳ですな、という悪態でした。


・でもって高田っちは「構造的変化」に言及していまして

話を戻しますと、さっきの続きですが基調的物価に関して高田さんはこのように締めています。

『この点、 年春季労使交渉の賃上げ率が高水準となったことは、こうした傾向が継続する可能性を示唆します。』

さらに次のパラグラフでは、

『人手不足を背景とした供給制約――言わば「人手不足経済」への転換――のもとで、企業の賃金・価格設定行動には積極的な動きがみられており、少なくともこうした国内の動向をみる限り、私としては、「物価安定の目標」実現が目前に迫りつつある局面と捉えています。』

実現が目前なのに短期政策金利0.5%は不味くないですか高田さん、というお話なのですが、


・構造変化が生じているという認識なのですがベースにハトハトおじさんが表れてしまうのですな

『このシナリオは、4月に公表された相互関税後も大筋では変わらないと想定していますが、漸く「物価安定の目標」への動きが生じてきたなかで、このモメンタムに米国による関税政策が水を差さないか注視したいと思います。』

さっきは構造変化を踏まえつつ「目前に迫りつつある」と言ってたのに関税政策一発でその構造変化が台無しになる恐れがある、という説明ですね。

まあこの部分が植田日銀ハトハトチキンの真骨頂と結局同じなところが高田さんの説明の惜しい所でございまして、「人手不足を背景とした供給制約」ってのが構造的な変化として生じているのであれば、多少の循環的な経済の下押しでその構造が壊れる訳ねえだろ、とこちとら思うのですけれども、この点について植田日銀大本営は「いやもう景気が減速したら折角進んできた構造変化がボキッと折れてしまう」懸念を過去のディスインフレ経済のイメージを引っ張りすぎている結果として、過剰な懸念を持っていて、(というのはワシの個人的見解なのでまあ異論は認める)そのために構造変化を過小評価しているんじゃないか、とワシは思う訳でして、何でそう思うかと言えば、何とかストの皆様やら日銀やらがニアータームの物価見通しを最近ずーっと同じ方向に外し続けていることが、まさに「前提の変化」を示しているんじゃないの、ってことな訳です。

でもって、高田さんも構造変化は認めつつも、上記のように「米国の関税政策一発で元に戻る懸念」を示しておりますので、まあ現状抜刀斎コースとハトハトチキンの間で揺れているって感じじゃないでしょうか、とは思いました。

なお、日銀大本営のハトハトチキン方式の場合、マジのマジで構造変化が起きている場合、変化への対応がどっからどう見ても大いなるビハインドになる(短期政策金利がこんなにクソ低いのを放置した場合は特に)ので、途中をすっ飛ばして2%よりも高めのインフレが定着(イメージとしては経済低迷しながらインフレは高かった過去の英国のもうちょっとマイルドバージョンかな)するということになるんだよなーというのが大予想です。

とまあそういう訳ですので、今の部分の続きが、

『その際、関税政策のわが国経済への波及経路を考えると、次の4点でマイナスの影響が現れないかに注目する必要があると思います。』

ってなっていて、

『具体的には、第1に、不確実性の高まりからの設備投資の下振れがあるか。』

『第2に、米国の関税政策に起因した世界経済の減速を背景とする輸出下振れがないか。』

『第3に、企業収益の低下から 年に向けた賃上げの動きが抑制されるとともに、販売価格も抑制する動きが生じないか。』

『さらに、第4として、米国の各種政策に伴う思惑から為替円高が進行し、企業収益や輸入物価等を押し下げないか。』

1は直近の短観ではセーフっぽかったですな。3は田村委員も懸念点として挙げているし、
まあそれはそうじゃろと思うのですが、

『私としては、特に、第4の米新政権の政策への期待次第で市場が大きく変動する可能性に留意したいと思っています。』

って話なんですけど円高に振れて輸入物価下がったら実質所得に思いっきりプラスに働いてイイハナシダナーの方になるんじゃないの、と思ったのでこの点をポイントにするのは若干違和感を覚えました。


・金融緩和度合いの調整に言及するも「円高恐怖症」があるから結局ハトハトチキン音頭になりそうですねえ

『3. 最近の金融政策運営』になります。最初のパラは今の政策金利が0.5%ですって話なので飛ばしてその次から参ります。

『先ほど述べたように、国内要因をみる限り「物価安定の目標」実現が目前に迫りつつあるなかで、特に短期の実質金利は大幅なマイナスとなっており緩和的な金融環境は継続しています(図表8)。こうしたもと、私としては、堅調な設備投資や賃上げ、価格転嫁の継続など「前向きな企業行動」の持続性が確認されていけば、その都度、もう一段のギアシフト――金融緩和度合いの更なる調整――を進めることが引き続き必要だと考えています。』

ギアシフトっていうと加速するみたいなイメージになるから何かもうちょっと言い方変えた方が誤解を招きにくいと思うのですが・・・・・

というのはさておきますけど、構造変化の持続性が確認できた時には「緩和度合いの調整」じゃなくてそれはもう中立金利に持って行っておかないと過剰な金融緩和による好ましくないインフレ上振れにつながるんじゃないですか、と申し上げたいですな。まあこの言い方自体はいつもの高田っちではありますが。

『もっとも、関税政策による影響で米国経済の減速が見込まれるもと、内外の異なる景気サイクルを背景とする金融政策のスタンスの違いで、為替を中心とする金融市場に大きな変動が及ぶリスクへの注視も引き続き重要です。』

さっきの部分で「為替円高に注意」と言っててナンジャソラと思いましたが、こちらでもうちょっと露骨に為替円高警戒をしておりまして、この「為替円高警戒スタンス」ってのがハトハトチキン音頭に繋がる、というか盛大なる推測なんですけど、たぶん植田さんのハトハト音頭成分の半分以上は高田っちと同様に「為替円高恐怖症」からきているんじゃないかとアタクシは妄想していますので、そういう妄想をベースにしますと、この高田さんの「円高懸念」表明ってのは、やっぱり根っこの部分でハトハトチキン音頭になるんだなあ、と思ってしまう訳ですよ。

以下円高怖いよ音頭が展開されます。

『実際、1970年代の変動相場制への移行後、今次局面を除いた日本銀行の過去5回の利上げ局面を振り返ると、米国の利下げ後に、日本も利下げに転じていました。今後、FRBが利下げを再開する場合には、こうした観点で日本銀行の金融政策の自由度が低下する可能性も考えられます。』

米国が利下げすると為替円高が怖いので利上げするのがコワイヨー、というのが何ともかんともですが、

『ただし、先に述べたように米国の深刻な景気後退が想定され難いもとでは、 2000年頃のITバブル崩壊後や2000年代後半の世界金融危機後とは異なり、足もとは利上げの一旦休止局面であって一定期間の様子見の後、再びギアシフトを続けていく状況だと評価しています。』

『米国では相互関税賦課に伴いインフレ率が反転上昇する観測も根強く、利下げの可能性は低下する傾向にあるだけに、夏場にかけてのFRBの動向に注目です。』

いやーーーーーうーーーーーんって感じですが、だったら何でもっと早く利上げ進めなかったのよってお話ではあります。


・過度に悲観に振れないように云々は高田さんでしたか

でもってこの次ですが、

『なお、米国の各種政策にかかる不確実性が引き続き高いだけに、経済の下押し圧力が強まった場合の対応だけではなく、米国の政策転換次第では機動的に利上げへ回帰する可能性も考えられるため、私としては、過度な悲観に陥ることを排し、自由度を高めた柔軟な金融政策運営が求められていると認識しています。』

主な意見にあった「過度な悲観」云々ってのは高田さんだったんですか、ただし、

『同様に、漸く迫ってきた「物価安定の目標」実現への動きを維持すべく、企業や家計の行動が過度に悲観に振れないよう、日本銀行として緩和的な金融環境の継続でサポートしていく姿勢も必要と考えています。』

って言ってて、結局緩和が必要って認識でして、国内でホームメードインフレが上振れたら面倒なことになりゃしませんかねえ、という辺りに関しては特に問題意識は無い模様ですし、結局為替かよって話なので、根っこの部分hではハトハトチキンちゃんですな、というお話になろうかと思います。


・国債買入の話ですが市場配慮とか言ってるのは実に情けない(過激派の感想です)

その次が国債買入の話ですが、まあこのくだりに関しては盛大にダメ出しですな、というアタクシは過激派。

『また、6月会合では、市場参加者の方々のご意見も参考にさせていただいたうえで、長期国債買入れの減額計画の中間評価を行い、今後、これまでと同じ毎四半期 4000億円程度の減額を 2026年1〜3月まで続けることとしました(図表9)。また、その後も毎四半期 億2000円程度ずつ減額し、 2027年1〜3月に2兆円程度とすることとしています。』

これは決定事項。

『こうした措置は、国債買入れの減額を行うことによる市場の正常化、市場機能の改善を意図したものです。』

バランスシート規模の是正って話をしないのはなんでなんでしょうかねえ・・・・・・・・

『4月の内外の債券市場変動時以降、超長期金利が大幅に上昇し、超長期ゾーンに市場分断が生じたほか、スワップスプレッドの急拡大など市場間の相関も崩れる事態が生じました(図表 )。イールドカーブ上、局所的にリスクプレミアムが高まり、直近5月の債券市場サーベイでは市場機能度が大きく低下するに至っています。』

って言うんですけど、それこそ戦後始まった長短分離政策と金融規制の時代から、金利の世界って参加者による分断があるので、なんか今になって急に市場分断が起きたみたいな言い方しているのは違和感があります。

というか、黒田緩和によるQQEだのマイナス金利だのYCCだのによって超長期以外の金利の世界が全部焼き払われてしまったからしょうがなく超長期方面に難民として追いやられていただけの話で、焼き払われていた故郷が復興してきたら難民の皆さん本来の巣に帰るわけですし、そもそも金融業態自体が調達運用構造が業態によっても参加者によっても違うんだからメインで参加する市場だって皆さん違うので市場分断ガーとかいうのも話がおかしいんですよね。

まあそんな悪態はさておきまして。

『以上の背景には、生保の超長期債ニーズが限界的になっているほか、市場変動を受けて業者がマーケットメイクしにくくなっているとの声も聞かれています。従って、今後、市場全体としての機能度の改善を念頭に、年限別の需給動向や流動性も踏まえたうえで、国債買入れの減額を進めていく必要があると思っています。』

と言ってるのが市場に対する過保護な訳でして(なおワイの意見は多分市場の中心から見たら過激派寄りだと思いますのでお間違えの無いように念のため申し添えます)、そんなことやってたら何時まで経っても市場が当局依存になりますし、それこそ財政リスクへの市場からの警告というトランプですらそれにビビるという市場による経済財政政策への規律付け、がいつまでたっても機能しなくなる訳でして、特に財政ポジションがクソのように悪いジャパンにとって、市場による規律付けの復活は急務としか言いようが無い(繰り返し申し上げますが市場の中心から見たら原理主義的過激派って扱いだと思います)のですが、まあ「市場にお詳しい」高田さんまでこう言ってしまう時点で色々とオワ終わりなものを感じてしょんぼりしちゃいますなという所ではあります。


・節子、その理屈は思いっきり「中銀は財政ファイナンスをやっています」って説明や

さらに話は続きますが小見出しの時点でお察しのように、

『日本銀行の買入れ減額は、「長期金利は金融市場において形成されることが基本」としたうえで、国債買入れは「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していく」としています。』

この次がもうどこからどう見ても財政ファイナンスでこれは故ロバート・ムガベ大統領も天国から微笑みます。

『私としては、これまでの日本銀行の国債買入れは、国債保有を増やすことで市場における国債の量を抑制する効果を持っていたと考えています。』

『一方、買入れ減額はこれまで日本銀行が買入れていた額の一部が市場に供給され、事実上、市場における国債の量が増加することになります。』

『この点を踏まえれば、今次局面は過去と比べて有数の市中への大量国債供給局面とも考えられます。』

どう見ても財政ファイナンスです本当にありがとうございました。

『図表11 は、「ネット発行額」として、これまで発行された国債の残高前年差の推移を示します。これから、日本銀行が行ってきた国債買入れを勘案して、「市中残高」として、事実上、市場に供給される国債の前年差が示され、国債買入れ減額の影響もここに表れます。昨年から始まった買入れの減額に伴い、市中への国債供給は増加し、 2025年度末で2000年代以降における国債市中残高の前年差のピークに匹敵する状況となることがわかります。そのため、国債が市場に供給されることに伴う不安定性を回避するためにも、減額幅の調整や市場の受容状況の見極めが必要と考えています。』

この理屈ってもはや高橋財政が破綻に向かっている時と変わらんじゃろと思う訳でして、その意味で今回2026年4月からの国債買入減額速度を落としているってのはかなり由々しき事態だとワイは思うんですよね(もともと減額速度が遅いわと思っているのに更に遅くするとか言語道断、という過激派思想ですがまああくまでも個人の感想なので)。


・正常化の過程での金利上昇を「意図せざる引き締め」呼ばわりするのでハトハトチキン

さらにこのコーナー最後のパラグラフですが。

『なお、超長期ゾーンのリスクプレミアム上昇は、ボラティリティの変動がイールドカーブ全体に波及し市場機能の低下に繋がりやすいため、その結果、意図せざる金融引き締め効果が幅広く市場に伝播するリスクも生じえます。』

いやそれそもそもQQEだのマイナス金利だのYCCだので過剰にリスクプレミアムを日銀が無くしたことの反動なんだから正常化の過程で甘受すべき話だろ何言ってるんだよという話で、

『また、安定した国債市場におけるリスクフリーのイールドカーブの形成は、日本の金融インフラを支えるものでもあります。』

と思うなら何で巨額の買入続けるんですか???・

『日本銀行による国債買入れの減額が財政に対する配慮ではないことは言うまでもありませんが、先ほど述べたように、事実上、市場に国債を供給する効果が生じるだけに、市場全体としての機能度の改善の観点から、当局間で十分に意見交換し、市場の安定に努めていく必要もあると考えております。』

結果として財政ファイナンスをしていますってのを認めているのはまあ潔いです。

『この 1年を振り返り、超長期ゾーンの投資ニーズの減退等、当初の想定外の市場構造変化もあっただけに、今後も、1年後に改めて中間評価を行って状況に応じた見直しも必要と考えます。』

っていうことで、まあ裏を返せばあの高田さんですらこういう説明になってしまう。ってくらい日銀のバランスシート問題っていうのは深刻で、深刻過ぎるから誰も正面切ってバランスシートの問題を言わない、どころか金融学会で内田副総裁は堂々と「金利政策と関係なくバランスシート政策ができる」とかリアルバーナンキの背理法が可能な屁理屈をぶち込んできている、というのが滅茶滅茶恐ろしいお話だなあ、と原理主義者で過激派で杞憂民のワイは思いました。

なお、以下の部分ですがいつも高田さんそっちの話が多分思い入れあるんでしょうけど残念ながら以下割愛します、まあいつも割愛していますのでワイ的理由はお察しください。








2025/07/03

お題「増審議委員の就任会見テキストを見たらベンダーヘッドライン見たときの印象とは違いますね〜(まあこれからって感じかと)」

明日は我が身という思いをもってほしいもんですな
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-02/SYS25KDWRGG100
英国資産がトリプル安、財政懸念高まる−リーブス財務相には辞任観測
Greg Ritchie
2025年7月3日 1:20 JST


〇増委員の就任会見録をみましたところベンダーヘッドライン詐欺要素が強かったのでホッとしました

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250702a.pdf
増審議委員就任記者会見
――2025年7月1日(火)午後5時から約30分

・最初の質疑と最後の質疑では「まだ白紙」を強調していましたが・・・・・・

一番最初の質疑が、

『(問)審議委員就任に当たっての率直な気持ちをお聞かせください。また、日銀は現在利上げを進める局面にありますが、ご自身としてはどのような政策スタンスで政策決定に関わるお考えでしょうか。この二点についてお願いします。』

『(答)抱負を聞かれるかと思っていたら率直な感想ということでしたので、率直に申し上げますけども、職業人生の最終盤で、こんなえらい重責が来るとは本当に思ってもいなかったので、率直に言うと、えらいことになったなというのが本音のところですね。ただ、ご指名を頂いたのは本当に名誉なことですので、もう精一杯やるだけだとそう思っております。』

微笑ましい回答(別に茶化してはいません為念)

『それから、政策のスタンスの件ですけど、これはちょっとさすがに具体的には差し控えさせて頂きますけれども、今の日銀のスタンスっていうのは承知しておりますし、今日就任したばかりですから、これから執行部からの説明ですとかデータをみさせて頂いて、それを聞く前にお話しするべきことではないと思いますので、それよく聞いたうえで、自分でよくそしゃくして、責任感を持って議論に参加させて頂くということにさせて頂きたいと思っております。』

となっていて、最後の質疑でもう一度、

『(問)俗にですね、利上げに積極的な人をタカ派、慎重な人をハト派と言います。先ほど、具体的な金融政策運営については、これから日銀の執行部と議論して決めるというようなお話がありましたが、増審議委員は、そもそもの考え方として、ハト派、タカ派、どちらかにシンパシーはあるんでしょうか。』

『(答)きわめて正直に申し上げて、頭の中、そこは真っ白でして、どちらとも今、何かの定見を持って持ち込むというようなところにいたわけでもありませんので、きわめて私は白紙だと思いますので、どうしても図表上にプロットをされたい場合は、是非図の一番真ん中にぽっと置いておいて頂ければいいかなと思います。』

って話をしていますし、途中でも「そこはこれから考えます」って説明がちょいちょいと出てきていましたので、まあこの「一番真ん中に置いてくれ」ってのは本音なんだと思いました。


・とは言えお気持ち物価に関しては早速丸め込まれておいでのようですわorzorz

『(問)二点お伺いします。物価への見方をお伺いしたいと思います。日銀は、基調的な物価が 2%に届いていないというふうにしていますが、足元は食品価格の上昇もあり3%超えの物価が続いています。企業実務に携わっていたお立場から、足元のインフレが加速するリスクをどのようにみていらっしゃいますでしょうか。(後半割愛、というか次に)』

『(答)物価についてはですね、特に輸入、エネルギーの問題ですとか、今、米の問題がありますので、そういう意味で日銀が大事にしている、その基調的な物価というところが 2%に行ってないって話は説明も聞いたんですけど、それに違和感は今のところ持ってはないですね。その辺が落ち着いたときにどうなってるかが非常に大切なので、それをみてから十分に考えていく必要があるかなと思っているところです。(後半割愛)』

>その基調的な物価というところが 2%に行ってないって話は説明も聞いたんですけど、それに違和感は今のところ持ってはないですね。

Oh・・・・・・早速大本営に丸め込まれておられるようで甚だ残念。でまあ再三再四申し上げておりますが、この「アクチュアルの物価はこれから下がるはず」が延々と外れ続けていることに関して全然危機感が無いというのが大本営のアレなところで、昨日ネタにしましたラガルドはんのスピーチに見られる欧州の問題意識、日本の場合はさらに現状で「ゼロインフレ期待のアンカーを外して2%に持っていこうとして不安定化させている」という状況なのですから、欧州の指摘以上にインフレ期待が上振れしてしまうリスクが高いというか、雇用賃金の行動みたらインフレ期待上振れしてねえか疑惑しか感じないんですが、何であんなに平気でいられるのかがマジで分からん。

でまあそうやって丸め込まれているのは分かりましたが・・・・・・・・


・企業の価格設定行動(構造的に見て)

質問の後半はこれでして、

『(問)(前半割愛)また、企業の価格設定行動の変化は不可逆なものだとお考えかも、併せてお伺いできたらと思います。』

『(答)(前半割愛)企業の価格設定が不可逆かというご質問ですよね。これは非常に難しいご質問なんですけど、不可逆かということは値下げができないのかというご質問と取ればいいですか。』

質問する方ももうちょっと丁寧に質問して差し上げてください。

『(問)例えば、企業の人件費とか原材料コストの上昇分を価格に転嫁する動きが加速してきたかと思うんですけれども、こうしたその企業の価格設定行動の変化が、長い目でみてデフレ期のような状態に戻らないというふうにお考えかどうかっていうことです。』

よすよす。

『(答)流れという点ですね。今、率直に思うところは、ちょうど端境期にいる感じがするんですね。だからどっちに行くかっていうと、これちょっと感覚でしかないんですけど、そういう流れに向いてるなと思う部分もあります。特に消費者に一番影響が出る食品なんかそういう流れが出ちゃってますよね。』

ふむふむ、まあそうですね。

『ただ、他がみんなできるかどうかというと、まだまだ分からないというか、だいぶ変わってきたとはいえ、日本企業はまだまだ終身雇用で、長い期間雇うという意味で簡単に給与を上げにくいというところもありますのでね、それが日本全体に伝わってるかというと、そういう動きが出た部分と、まだまだかなという部分と分かれてる、ちょうど真ん中辺にいるんじゃないかなという気がします。』

というのはまあこれは感覚の問題になるから何ともいわく言い難いところではあるのでしが、そもそも論として「日本企業はまだまだ終身雇用で、長い期間雇うという意味で簡単に給与を上げにくいというところもありますのでね、」ってところが本当にそうなのか、という辺りはヒジョーに気になる所ではございます。


・物価よりも景気の方に完全に目線が行ってますね、というのは把握した

次にこんな質疑がありました。

『(問)トランプ関税の影響につきまして、今日の短観なんかでも、一部業種にとどまってる状況ですけども、委員は今後どういった時期にですね、そういったものが顕在化して、具体的に内外経済に、いわゆる物価についてどのような影響が出てくるとお考えか。』

『また、影響が出てくる前にですね、日銀が、物価が上振れたからといって利上げをするということには慎重であるべきか、影響が出る前の政策、利上げとか、そういうのに慎重であるべきかどうか、その辺のお考えはどうでしょうか。二点お願いします。』

この回答ですが、前半については

『(答)トランプ関税は、実は、非常に難しいご質問なので、今日までに解決していることを祈ってたんですけど、大変残念ながら全くこの状態ですので。そうですね、企業の受け止め方は、今日短観でしっかりした数字が出てたということをみると、悲観論が減ってきてるということは確かだと思う。それは悪いことではないと思うんですけど、これ、まだまだ交渉が終わってませんから、交渉中ですから、これは絶対見守っていかなきゃいけないことですし、それから、おそらく自動車が引っかかってるんだとすると、自動車は対米輸出の中核ですので、ここをちゃんとまとまらないとどうなるかというところ、もう本当予断を許さない状態が続いてるかなと思います。』

ということで、自動車関税の話に全集中という感じでして物価への影響という質問にはそもそも回答すらしていないでござるの巻。

まあアレです、さっきの基調的物価うんぬんの部分を見ますと、あの「お気持ち物価」に対して既に大本営によりますイニシエーションもといブリーフィングが十分に行われておられる、というのはまあ普通に想定できちゃったりする訳ですよね。でもって上記の質問に対して(この後の後半部分も含めましてそうですしさっきの質疑もそうですが)物価上振れの問題について特に大きな問題意識を表明していない、っていうのは、これすなわち今の日銀大本営様におかれましては、物価上振れが長期化している問題に関して(田村抜刀斎とたぶんもう一人か二人の審議委員以外)こんなんどうせ下がるぜ楽勝楽勝、と楽観視しているということを示唆しているんですわな、というのがよくわかる部分だな、とアタクシは思った訳で、いやもうちょっと物価上振れに関して危機意識持てよとは思うのですけどね。

後半の所がヘッドラインになっていましたが、

『その中で、つながったご質問だと思うんですけど、利上げとか金融政策をどうするかという点は、ここをよくみてからじゃないとやはりできないと思いますので、これをみながらという、今そういうスタンスで日銀自体はいると思うので、それについては私も、聞いていて違和感を持ってるところはないです。』

ということでして、物価高なんぞは知らんがな一過性のコストプッシュだから下がるわ、というのは相変わらずです、っていう大本営のスタンスはよく伝わったと思いますが、この部分も妙にハトハトチキンっぽいヘッドラインにされていましたな(いやまあ大本営の口伝なのでハトハトチキンはハトハトチキンなんですけど)。


・ヘッドラインほどヤバイ発言ではなかったのは安心しましたが・・・・・・・・・・

この質疑応答の発言が結構ヤバイ感じのヘッドラインになっていたので実はこの会見録をネタにするときに「この想定を書いたのは誰だ(ガラッ)」と突発性海原雄山を発症する予定だったのですが、ヘッドライン詐欺成分の方が強かったのには安心しました。

というのは上記質疑の次になるんですけど、

『(問)二点お願いします。一点目が、大規模金融緩和を、当時、企業経営者の 1 人として、どういうふうにみていたり、評価していたのかというのが一点目。(後半割愛)』

こんなん「アリガタヤ」って回答させる誘導質問じゃろという感じですが増さんの回答は、

『(答)まず、金融緩和をどうみていたか、これが、今、その時期私が自分は何をしてたかというのをちょっと思い出しているんですけれども、そうですね、やっぱり企業としてこうあってほしいというものっていうのは、やっぱり、あったのはあったと思うんですね、』

『その時期って。大きな流れがですね、少しこのままでは良くない、特に総合商社なんかにいますと、デフレというものがですね、企業経営にどうなるかっていうと、総合商社ってどんなとこでも泳いでいくところがあるので、ちょっと今お答えに詰まっちゃったのはそこなんですけど。』

増さん、この質問が大いなるトラップなのはちゃんと把握していて、その結果「ちょっと今お答えに詰まっちゃったのはそこなんですけど」って回答している、とお見受けしました。ということでまあアタクシの妄想かもしれませんがこの辺りの部分は何気にワシの中での好感度が高いです。

『商社としてどうだったかというと、どんな方向でも何か対応して生きていこうとする集団なので、そのときどうしてたかというと、それに合わせて今度はやっていくしかないなというかたちで生きてたのは事実なんです。』

でまあここからが本論(?)で、

『ただ、経済全体がデフレっていうのがいいわけはないので、その中で、デフレ対策として大規模な金融政策を打っていくということは、国民みんなが期待していたことも事実ですので、それについて期待する施策だったなというのは確かだと思いますね。(後半割愛)』

この部分、まあ確かに説明の方法は微妙ですけれども、会見のヘッドラインベースだと増さんが如何にも「黒田緩和は国民が求めた政策」と発言したかのような書かれ方をしていまして、まあ普通にそういう書かれ方するのは良いわけないですよね。

「国民が求めた政策だから実施」っていうのはこれ日銀(の大本営)が責任回避するときによく使う言い訳の一つなんですけど、そんなこと言ったらパウエルだって(国民の負託を受けた)大統領様が2%利下げしろって言ったら利下げするんですか、って話に発展する訳で、中央銀行が何で独立した存在として管理通貨制度における通貨価値の維持をしているのか、という根本を崩す話になってしまう訳で、「国民が求めた政策だから実施します」で済むなら独立した政策委員会なんぞ要らんわというお話に繋がる話だとアタクシは強く思う訳です。

でまあそんな次第なのでヘッドライン見たときにかなりビビって、昨日はちょっと大丈夫かみたいなトーンで書いたと思うのですが、まあこの説明を見ますと「デフレ脱却のために大規模金融緩和を行ったのですからそりゃまあそういうもんじゃろ」というのが主文で、国民云々はおまけっぽいように見えますので、そこまでドイヒーな発言でもなかったかと杞憂民安心するの巻ではございましたが、ただまあ「国民が期待してた政策云々」という説明は、日銀大本営の屁理屈シリーズの中でも結構なタチの悪い開き直り屁理屈を捏ねている時に使われる奴なので、ちょっとこの理屈展開をされてしまうのは不安が無いわけではないですな、とワイは根が杞憂民なのでそう思いました。


・質問に無い地政学というか事業のリスク分散の話があったので折角だから引用します

次の質疑ですけど、

『(問)二点お願いしたいんですけれども、一点目は、産業界ご出身ということで、企業の観点から、最近の地政学リスクやトランプ関税といった、企業活動にとって大きな逆風ですけれども、これが今後の企業の景況感や設備投資にどの程度の悪影響を及ぼし得るのか、ご感触を伺いたいというのが一点目です。(後半割愛、というか次でやります)』

というのに対しまして、

『(答)地政学はちょっと日銀とは関係ないと思うんですけど、逆にいうとお答えしやすいのでお答えしちゃいますけども、この話題って特に商社がよく聞かれるんですけど、特にカントリーリスクって一番難しいんですね。商社が対面するリスクの中で一番難しい。』

以下この話が続くのですが、金融政策に直接の関係は無いとは言え、話が面白いのと実は金融政策運営を考えるにあたっての示唆もあるんじゃないのと思いながら読んだので引用します。こういう話を思いっきりする自我がでてるのは、大本営に変に丸め込まれないのであれば良い流れになって欲しいなと。まあだいたい新法以降の過去において大手商社出身の政策委員の方々は必ずしも大本営に丸め込まれないムーブを示していたので増さんにもそこは期待しているというのもあります。

ということで増さんのお話に戻りますが、

『というのは要するに予測がつかないので、短期間だったら予測がつくかもしれませんけど、やってる事業によっては非常に長いもの、特に商社は長いものが多いですから、長い期間で安全かどうかって測るってやっぱり本当難しいんですよ。』

そらそうですね。

『そうすると、今起きてることをみてどう判断するってなかなかしにくい。』

金融政策判断の考え方にもつながりそうな気がします。なんせ今の日銀大本営は緩和政策の調整(つまり利上げ)を先送りしようとしてとっかえひっかえ目先の現象を捕まえて屁理屈を繰り出すというのを黒田末期以来連発しているんですからwwwww

『具体的な例で言いますと、私がまだかなり若い時期にあのイラクの問題が起きて、実は三菱商事は非常に大きな与信がイラクにあったんですけど、これがまさかですね焦げ付くっていうふうには思ってもいなかったことがいっぱい起きてしまうと、これが地政学リスクなので、予測不能のことに対して、どう対応するかっていうのをいちいち考えてると何もできなくなってしまうのも事実ですから、この辺をどう上手にやるかというのは各社の工夫だと思うんですね。』

>予測不能のことに対して、どう対応するかっていうのをいちいち考えてると何もできなくなってしまうのも事実ですから

別に他意は無いと思うのですが昨年来隙あらば不透明要因ガーばっかり持ち出すチキンさんに対する巧まざる砲撃になっているのはチャーミング^^

『特に商社がやってたのは、できるだけ特定の国に偏らないようにしていくということ、分散させていくっていうことが、そういうことをやれる業態なので、分散をもうあれ以降は気をつけてやってるということが事実かなと思います。ですから、これをみて特定の地域は危ないからとかいう話には、なかなか探していくと、どこにも出すとこがなくなってしまうので、アメリカが一番安全なんて言ってて本当にそうかってことも起きますから、そういうふうに対応するのが地政学かなとは思っています。(後半割愛)』

ということで政策論議とはまあちょっと違いますが面白かったので引用してみますた。


・利上げを急ぐ必要が無い発言ですがそもそもこれ質疑応答が噛み合っていないですねwww

さっきの後半ですけど

『(問)(前半割愛)あと二点目なんですけれども、利上げをいつするとかそういったタイミングは、まだなかなかこれから執行部の方との議論というふうにお話しになってましたが、日本の実質金利はかなりマイナスであると、他の国に比べても日本の、日銀の政策金利は非常に低いんですが、今の日本の金利はやっぱり低過ぎるとお考えなのか、そろそろこの超緩和的な政策の出口をもう少しスピードアップすべきなのか、今の日本の企業や経済にとってこの金利水準、緩和水準についてどういうふうにお考えになっているか、お聞かせください。』

ということで「今の金融緩和状態の水準」について質問しているのですが、増さんの回答は、

『(答)(前半割愛)それから実質金利がマイナスというのは、これはもう事実なわけですから。でもご質問はスピードのお話だと思いますけど、スピードに関しては今の情勢、特に昨今の経済情勢をみると、急いでいい状態とも言えなくなってるわけなので、こういうのをみながら決めていくっていう、総裁からも発信されてるコメントっていうのには全く違和感がありませんので。』

そもそも質問と回答が噛み合っていませんでしたw

ただまあ何ですな、この後に

『ゆっくりがいいという意味ではありませんよ。慎重に考えながら、実質金利がマイナスだから急いだ方がいいというふうには思っていないと。よく話を聞いてデータをみてこれから考えていきたい、一番そういう部分ではないかなと思ってます。』

という説明をしているのが人間味溢れる(意味深)部分でして、これアタクシの妄想なんですけど、増さん前半部分の説明をして、「これじゃあハトハトチキンの極みっていう事になりそうだから中和しないと」と思って「ゆっくりがいいという意味ではありません」以下を入れたって事だという風に理解しましたので、これまたベンダーヘッドラインの印象操作作用恐るべしと言った所なのではないかと思いました。

まあどこからどこまでが大本営丸め込み要素が入っているのかは謎ではありますが、もしこの「ゆっくりがいいという意味ではありません」という部分が実は大本営の意思を反映しているのであれば、それはそれで一段と面白いことも想定されますが、その辺りはまあ適当に深読みするネタとして使えるんじゃないかなと思いました笑。


・企業にとっては円安は基本的に(゚д゚)ウマーと言いつつも色々と留保しているのは味わい深い

ちょっと飛んで先の方に行きますが為替水準に関する質疑がありました。

『(問)二点お伺いしたいんですけれども、為替レートなんですけども、今 1 ドル 143 円台というところで、この為替水準というのは、日本経済への影響という点では、いい円安なのか悪いのかっていう点、ご認識をお伺いしたいというのが一点目。(後半割愛)』

この部分はまあ下手な回答するとちょっとした事故になるのでさすがに慎重な回答をしていまして、

『(答)為替のご質問ですけど、今の 140 円がいいのか悪いのかっていう。これは、業界によって皆さん違ったりするんですよね。私のいた会社は、円安の方がいいというのはご承知の通りで。』

と最初に断りを入れておきつつ、

『かなりの会社が、それによって業績が上振れしていることは間違いないんですけど、悪い影響が出てる会社も当然ありますし、悪い影響は特に消費者側に出ますので、物価というかたちで。これをいいのか悪いのかっていうと、やっぱり両方出てくると思うんです。』

まあ模範解答。

『ただ良い面の方の分析だけ先に言っちゃってしまいますと、良い良いと言っても、例えば最近は、輸出がたくさん円安でできるから儲かるという形態じゃないやつが多いじゃないですか。』

ほうほう。

『これ商社なんかが典型でして、それから製造業さんもそうですよね。既に拠点を外へ出してる企業さんが多いので、そこで上がった利益が円安になると評価として大きくなると。評価として大きくなっていることが本当にいい業績になってるかっていうと、必ずしも多分、誰も実感はないと思うんです。いい業績になってるという実感を企業側が持ってないのが、この状態かなと。』

それはそうですよね。

『というのは、上がった利益を日本まで引いてくれば、ちゃんとした日本円で利益になりますけど、置いてあるままになってるケースが結構多いと思うので。これってまだ評価益ですから、この後円高になったらこの部分が減ってしまう。置いといていいのか、でも全部引いていいのかと、こういう悩みが出てくる中で、言い方を変えますと、円安になったから、業績が良くなってるから、これは良い為替だと企業側も思っていないと思うんですね。』

おおおおおおおおお!!!!!!

『少なくとも物価に関しては、輸入物価に影響するという意味では、必ずしも良くないインパクトを与えてますので、やっぱりいつでも両面あって、立ってる場所ですとかによって相当違うものかなと思います。(後半割愛)』

ということで円安上等スタンスは取らなさそうなので結構なことだと思いました。


・日銀保有のETFに関する問題を多分狙っていたわけではないけど結果的に喝破しているのはチャーミング

最後から2番目の質問になります(最後のは冒頭に引用したタカハトプロット)。

『(問)委員は民間企業ご出身で、なおかつコーポレート・ファイナンスの分野にもお詳しいということで、あえてお聞きしますが、日本銀行は、中央銀行としてはかなり異例なことに、巨額の事実上の株式を保有しております。ETFというかたちで、東証プライム市場のおよそ 7%ぐらいの株を持っている状況にあります。』

キタコレ!

『中央銀行がこのように大株主であるという状況についてどのようにお考えなのか、やはりこういうものは手放した方がいいというふうにお考えなのか、あるいはすぐに手放すのが難しいとしても、何らかの企業統治の工夫が必要になるのか、その辺りについてご所見をお聞かせください。』

ということですが、

『(答)株式なりETF、株式はだいぶ減っていて、個別銘柄で銀行から出たやつは、もうだいぶ減ってると思うんですけど、』

うへー懐かしい(なんせ銀行が持ってる個別株とかいうのって始まった時はまだワイ国債のマーケットメイクしてた時代じゃ)。

『ETFで持っている部分について、大きな数字になってることは承知してます。』

はい。

『こう整理した方がいいですね。最初に銀行から出た株を一度日銀が買って、マーケットへ出ないようにして、今日までゆっくりさばいて頂いた、これは企業として非常にありがたいことだったわけで、あの段階でマーケットに出ていたら、株価にすごいインパクトがあったわけですから、これは非常にありがたいことだったと思います。』

まああれは銀行の財務リスク減らすという大義名分で実施した訳ですからね。

『ETFは、これは入り方が多分違うルートから入ってますので、』

ちゃんと整理されていて偉いです。

『これをもって企業側としてですね、日銀に株を持たれてるという意識はあまり持ってないですね。』

でまあこの部分から以下の説明が大変に滋味のある話でして、これ日銀が「金融政策として」とか言ってETFを調子にのって買い続けた弊害について別に増さん自体は弊害の指摘みたいな意図は無く説明をしていると思うのですが、しれっと問題点の大指摘になっているんですよね。

つまり上記のように「日銀に株を持たれている意識はあまり持っていない」という持たれ方をされているのが株主によるガバナンスという文脈からしたらアチャーという部分でして、さらに追い打ちをかけるように(増さんは追い打ちかけている気は無いと思うのですが、知らんぷりしながらしれっと問題点を指摘しているんだったら中々の狸です)、

『ETFってかたちを通ってる。もちろん、ETFだって議決権は出そうと思えば出せますし、全く影響がないとは言えませんけれども、企業側から意識をしてみているということはないと。』

これは見事な追い打ちwwwwww

『そういう意味では、統治の話になると、ちょっと私もピンとこないところもあるんですけど。』

ということでピンとこないと言っていますがおとぼけで言ってるんだったら狸又にも程がありますw

『これはどうしていくかというと、今の状態がいいということは、もうもちろん誰も思ってないことなので、どこかで圧縮はしていかなきゃいけないと思うんですが、これは当然株式市場全体にすごく影響のある話ですから、すごく時間をかけて、きわめて慎重にやっていって頂くということが企業としては望ましいこと。それから日銀としても、そうやる必要があることかなと思っております。』

まあこの点はそういうしか言いようが無いでしょうな。うんうん(今のままETF形式で持っている必要があるのか問題とか色々とこのETFには問題が山積である)。

ということで今朝は増さんのネタだけで勘弁してもろていただいてということで。










2025/07/02

お題「短観私家版確認/中村さん退任で増さんが就任ですね/ECBフォーラムでのイイハナシダナー(その1かな)」

ほうほうそうですかそうですか
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/QSEGK6GTLJP4PP55OHG6EY5HTE-2025-07-01/
日本との合意困難、対日関税は「30─35%あるいは米が決める数字」=米大統領
ロイター編集
2025年7月2日午前 4:44 GMT+9

『[ワシントン 1日 ロイター] - トランプ大統領は1日、米国との貿易協定交渉期限である7月9日の延長は考えていないと述べた上で、日本との合意には引き続き疑念を表明した。トランプ大統領は大統領専用機エアフォースワン機内で記者団に「われわれは日本と交渉した。合意できるかどうかは分からない。おそらくできないだろう」と述べた。トランプ大統領は、日本からの輸入品に「30%か35%、あるいはわれわれが決定する数字」の関税を課す可能性を示唆した。これは、4月2日に発表した24%の関税率を大幅に上回る。』(上記URL先より)

アホみたいな譲歩するくらいなら仕方ないんじゃないですかねえ、とは思いますけど。


〇いつもの短観私家版確認:全然弱くなってこないじゃないですかヤダー(棒読み)

https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2506.pdf
短 観(概要)―2025年6月― 
 第205回  全国企業短期経済観測調査  
< 回 答 期 間 > 5月28日 〜 6月30日

・一応短観にちょっとは反応してくれましたが・・・・・・・

前回の短観は4/1だったのでまだ例のトラ公のアレが出る前(直前)で、短観がやや強いですなという結果に債券市場が盛大に反応していたのですが、その前の短観が12月の短観でこれが出たのが12/13だったんですね。

でもって昨年の12/13と言えば短観は普通に強い内容だったのですが、その前に日銀の毎度のお漏らし攻撃によって12月利上げ観測火消どころか1月利上げもしないんじゃなかろうかということになって市場がなんも反応しなかった訳です。

これに対して4/1は短観結果に普通に反応して(その前が期末だったのですが謎の債券先物クソ上がりをしたのでその反動もあったのですが)いてよかったよかったなどと言ってたらトラ公のアレが出てぶち壊しになった訳です。

で、今回ですけれども、短観は全然悪い内容ではなくて、関税で国難とは何だったのかというような風情ではあったので、債券先物10銭ちょい反応しておりました(その後10年国債入札が激強の結果となったので全ての話がすっ飛んでしまいましたが)ので、まあちったあ反応するだけ昨年12月よりはマシとは言えるのですが、まあでも結局のところ今回って「思ったほど弱くないじゃん」となっても、日銀大本営におかれましては「これから影響が出る出る詐欺」作戦で行くのがまあ見え見えって感じじゃろうな、とは誰しもが思う訳でして、残念ながらこの短観が弱くなかったのを材料に日銀が4月の展望がクソ弱くし過ぎましたゴメンチャイなどという訳も無く、ってなことで反応してくれないという所なのかな、とは思いました、知らんけど。


・業況判断DIは「前回の先行き下がる見通しよりも全然強い」し何なら前回の短観はトラ公の例のアレの前なんですよ!!!

          (3月短観)        (6月短観)
          現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業   +12→+12     +13→+12 
製造業中堅企業 +11→+4       +10→+6        
製造業中小企業  +2→▲1       +1→▲2

非製造業大企業  +35→+28     +34→+27
非製造業中堅企業 +25→+18     +25→+17
非製造業中小企業 +16→+9      +15→+9

こちらですけど、何せ前回の短観は「 < 回 答 期 間 > 2月26日 〜 3月31日」でして、短観の回答ってのが概ね回答期間の前半の早いうちに回答される傾向がある、という風に聞いておりますので、すなわちあの4月に出たトラ公のキチガイ関税は織り込んでいない(トラ公の事だからある程度のブラッシュボールは投げてくるじゃろというのは織り込んでいたと思いますが)訳でして、その状況でトラ公に対するフワッとした懸念段階で出した先行きの下げ(特になぜか非製造業)見通しに対して、今回って軽々と上方修正していますし、殆ど3月短観から現状DI変わっていないという結果になっておりますので、これは堅調堅調。

ただまあどうせ大本営のことですから、「米国関税政策の悪影響はこれから出てくるんです」とか言い出す下がる下がる詐欺によってこの数字は追い風参考記録扱いしてくる、に1万ジンバブエドルといった所です。


・企業の販売価格見通しはこれまた大して落ち込んでもいないのですな

販売価格見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 6月:3.0%→9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.8%→3月:2.9%→6月:2.9%
3年後 6月:3.8%→9月:3.8%→12月:3.7%→3月:4.0%→6月:4.1%→9月:4.1%→12月:4.2%→3月:4.4%→6月:4.3%
5年後 6月:4.4%→9月:4.4%→12月:4.4%→3月:4.7%→6月:4.8%→9月:4.9%→12月:5.0%→3月:5.2%→6月:5.1%

大 企 業 製 造 業
1年後 6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%
3年後 6月:2.8%→9月:2.9%→12月:2.8%→3月:2.8%→6月:3.2%→9月:3.1%→12月:3.2%→3月:3.4%→6月:3.1%
5年後 6月:3.0%→9月:3.1%→12月:3.0%→3月:3.1%→6月:3.3%→9月:3.4%→12月:3.4%→3月:3.7%→6月:3.8%

大 企 業 非製造業
1年後 6月:2.1%→9月:2.2%→12月:2.0%→3月:2.0%→6月:2.1%→9月:2.1%→12月:2.2%→3月:2.4%→6月:2.3%
3年後 6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.8%→6月:3.0%→9月:3.0%→12月:3.1%→3月:3.1%→6月:3.2%
5年後 6月:3.2%→9月:3.4%→12月:3.2%→3月:3.2%→6月:3.4%→9月:3.5%→12月:3.6%→3月:3.5%→6月:3.9%

この推移を見ますと、どこからどう見ても「企業の価格設定行動はこの2年間ほど全然変わらずに堅調」としか言いようが無いと思うのですが、これまた「米国関税政策の悪影響は以下同文」と言い張ってくると思います。まあこれを受けて7月展望が4月にクソ下げしたものを撤回でもすれば日銀も大したもんですけど、そんなタマではない、というのは散々見ておりますのでwwwww


・企業の物価全般見通しも同様でこの2年くらいずっと高値安定しているんですけどね

物価全般見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 6月:2.6%→9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%
3年後 6月:2.2%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.2%→6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.4%→6月:2.4%
5年後 6月:2.1%→9月:2.1%→12月:2.1%→3月:2.1%→6月:2.2%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%

中小企業 製 造 業
1年後 6月:2.9%→9月:2.8%→12月:2.7%→3月:2.6%→6月:2.7%→9月:2.6%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.6%
3年後 6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.5%→12月:2.5%→3月:2.6%→6月:2.5%
5年後 6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.5%→3月:2.5%→6月:2.5%

中小企業 非製造業
1年後 6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.6%→3月:2.6%→6月:2.6%→9月:2.6%→12月:2.6%→3月:2.7%→6月:2.6%
3年後 6月:2.4%→9月:2.5%→12月:2.4%→3月:2.4%→6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.5%→3月:2.6%→6月:2.5%
5年後 6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%→3月:2.3%→6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%

毎回申し上げていますが、こちらで大企業じゃなくて中小企業をだしているのは、かつてこの短観の数字を出しだしたときに日銀大本営は「大企業の価格見通しはエコノミスト見通しや市場見通しに影響されやすいが、より一般の見方に近いのは中小企業の見通しである( ー`дー´)キリッ」とか言ってたんですが、黒田末期以降は利上げを渋る屁理屈を並べるのに忙しいので、すっかり言わなくなっているので可哀そうなので掲載している次第でありますw

でまあ今回は確かにスライトリーに下がってい入るものの、結局のところこの2年間ほど特に著変は無い、とも先ほどと同様に言える訳でございまして、「そもそも論として何を持ち出せば「インフレ期待がまだ2%に届いていない」とか言えるのか、というのを日銀は真面目に示すべきではないか、と斯様思う訳です、ってのを毎回のように言っているのですが、ひたすら誤魔化し続けているのが変わっていない、というのも皆様ご案内の通りかと存じます。


・販売価格判断と仕入価格判断は3月短観が驚愕の強さでしたがさすがにこちらは落ち着いた感じで

販売価格判断

            (3月短観)         (6月短観)
           現状→6月予測      現状→9月予測
製造業大企業   +28→+30       +25→+27
製造業中小企業 +27→+37       +27→+31

非製造業大企業  +32→+34      +34→+30
非製造業中小企業 +30→+37      +30→+33


仕入価格判断
          (3月短観)          (6月短観)
          現状→6月予測      現状→9月予測
製造業大企業   +41→+43      +39→+39
製造業中小企業 +57→+62      +54→+56

非製造業大企業  +48→+49     +45→+44
非製造業中小企業 +57→+61     +54→+56

ということでこちらの数値は(3月短観がクソ強かったというのもあるのですが)3月短観よりも落ち着いた数値になっていますので、これは大本営が鬼の首を取ったようにチェリーピッキングしてきますねw


・雇用判断DI:前々回、前回はその前並みで見通しほどは一段の引き締まりなし、でしたが今回も同様

            (3月短観)        (6月短観)
           現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業   ▲17→▲21     ▲18→▲22
製造業中堅企業  ▲26→▲28     ▲24→▲28
製造業中小企業  ▲24→▲30     ▲23→▲28

非製造業大企業   ▲39→▲40    ▲39→▲40
非製造業中堅企業  ▲46→▲48    ▲46→▲48
非製造業中小企業  ▲48→▲52    ▲46→▲50

こちらは毎度そうなのですが「先行き更に雇用人員が逼迫する」という見通し程には引き締まらないという結果なのですが、とはいえだいたい前回の時に示した逼迫度合い程度は維持されている、という数値になっています。

・・・・・ということでして、前回の短観がトラ公のアレの直前、というタイミングであったことを考えると、よくよく考えたらエライ良い数字じゃんトラ公のアレの影響はどうしたの、という結果だった、というのが私家版の短観の感想になろうかと存じますです、はい。


〇増さん就任会見(の詳細は会見録出てからですが)と中村さんお疲れさまでした

https://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/pb250701a.htm
審議委員の発令について
2025年7月1日
日本銀行政策委員会室

『次のとおり発令がありました。

増 一行
日本銀行政策委員会審議委員に任命する

令和7年7月1日
内閣

なお、中村 豊明 政策委員会審議委員は、6月30日任期満了により退任しました。』

ということで中村委員はしょっぱなから「給料が上がらないなら株や投資信託を買えばいいじゃないか」というような感じで、いやまあそれ全く間違いという話ではないのですが、基本的にマッチョ理論で来てて、そらまあ社会の構成員の皆さんがマッチョになってバリバリと頑張れば社会の生産性も高まるし成長もしますし、というのは仰せの通りなんですけど、うーんそうじゃないんだよなあ感はずっとありましたな、というお方ではありました。

なんちゅうかですね、マッチョになれない人の方が世のなかの多数だと思う訳でして、そういうのを前提としながらも、社会全体はがっちり成長できる、みたいなシステム構築というのはできないものなのか、というのを思う次第でして、まあその辺は最後まで疑問ではあったのですが、ただまあ主張そのものは考え方として一つの考え方ではあったので教義の違いはあれどもオモロイ方ではあったかなと。


でまあ増さんですが、初手の会見のニュースヘッドラインを見ますと・・・・・・

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-01/SYNLH6T1UM0W00
増日銀委員、利上げ急いでよい経済状況にない−米関税の影響を見極め
伊藤純夫
2025年7月1日 11:07 JST 更新日時 2025年7月1日 19:25 JST

どういう質疑応答をしたら「利上げ急いでよい経済状況にない」という回答になるのかが良くわからんのですが、利上げ急いで「よい」ってナンジャソラということで・・・・・・

→実質金利がマイナスだから利上げを急いだ方がいいとは思わない
→悲観論は減っているが予断許さない状況、よくみていく必要−米関税

ということですが、いや実質金利がマイナスってのは飛んでも無い緩和状態な訳で、その上物価は2%台後半から3%台前半というのを延々と続けている状態なんですから、本来は「実質金利のマイナス状態とかいう飛んでも無い緩和状態を継続して良いのかどうかをよくよく見極めないといけない時間帯」の筈なんでございますが・・・・・・・

『日本銀行の増一行審議委員は1日の就任記者会見で、金融政策運営に関して、利上げを急いでよい経済状況にはないとの見解を示した。』(上記URL先より、以下同様)

また出てきましたな。まあ先を読んでみますと、

『増委員は、利上げについて「昨今の経済情勢をみると急いでいい状態とは言えなくなっており、こういうことを見ながら決めていくという総裁の発信に全く違和感ない」と指摘。その上で「ゆっくりがいいという意味ではなく、慎重に考えながら、実質金利がマイナスだから急いだ方がいいとは思っていない」と語った。』

うーんなんでしょうこの説明は、というかそもそもこの「利上げを急いで「良い」状態」ってのが良くわからない表現でございまして、この表現に「藁人形論法」っぽいのを感じるのですよね。だって利上げを急ぐか急がないかってのはべき論の話であって良い悪いみたいな表現使うのが妙なのですが、植田日銀になってから植田さんが(最近は言わないけど「拙速な利上げ」とかそもそも「拙速」という言葉自体に良い悪いみたいな意味合いが(この場合は悪い、ですけど)含まれる表現を使っていまして、いやだからそうじゃなくて経済物価情勢を鑑みて今の政策金利水準が適正なのかどうか、って話がまずあるじゃんと思うのですが、その話を華麗にスルーして価値判断みたいな言い方に逃げるのっていう辺りがもう植田日銀大本営なものを感じるわけですな、南無三。

しかも「急いでよい状況にない」って言ってるのに「ゆっくりがいいという意味ではなく、慎重に考えながら、実質金利がマイナスだから急いだ方がいいとは思っていない」とまで言われるとナンノコッチャにも程がある訳で、急いでよい状況にないんだったらそれはゆっくりが良いって事になるじゃろと思うので、何ですかこの謎説明はという感じですが、まあ会見録を読んでこの辺は何をどうしたいのかという話を見ていきたいと存じます。

『トランプ米政権の関税政策の影響については、1日公表の6月日銀短観がしっかりした内容になったことを踏まえ、「企業の受け止め方として悲観論が減っていることは確かだ」と説明。一方で関税を巡る日米交渉などの行方を見極める重要性を指摘し、「予断を許さない状態が続いている。その中で金融政策をどうするかは、そこをよく見ていかなければいけない」と述べた。』

単純に「関税交渉の結末がどうなるかがまだ不明な状況にあるので様子見」って言えばよかっただけの話だと思うのですが・・・・・・・・・・

とは言いましても、わざわざこういう説明をした(あるいは大本営謹製想定問答にこういう説明がぶち込まれた)というのに無理やり意味づけをしますと、日銀大本営におかれましても、先般の田村委員による抜刀、すなわち「そもそも物価が高止まりしており、世の中の予想物価上昇率が2%に既に達しているかもしれないという状況の中において、先行き不透明だからと言って緩和政策の調整を渋っていると、インフレ期待が2%を超えて上振れてしまい、日銀の「物価の番人」としての責務が果たせなくなる恐れがあるんじゃないか」という問題提起になる訳ですが、この点につきましてはハトハトチキン植田総裁と言えども流石に植田和男先生という真人間に戻って考えた場合に思う所があって、でまあその結果こういう話になるのかな、とも思ったり思わなかったりする訳ですが個人の妄想なのであくまでも妄想語りということで。

とまあそういうことで、物価とインフレ期待の動向を鑑みるに大丈夫なのか問題、というのがさすがに無視できなくなってきたのではないか、という事になっていれば結構な傾向かなとは思うのですがどうなんだか・・・・・


〇ECBのいつものシントラのフォーラムでラガルドはんが非常に良い話をしていたのをうっかりしてましたサーセン

今トップページを見ると風光明媚なシントラの風景が出てきまして、

『EVENT
ECB Forum on Central Banking

Tune in from 30 June to 2 July for the latest from Sintra, Portugal, as leading voices in central banking discuss how to navigate macroeconomic shifts and develop appropriate policy responses during these unpredictable times.』

ってのがありまして、さらには、

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2025/html/ecb.sp250630_1~ba0ef03e6f.en.html
SPEECH
Strategy assessment: lessons learned
Introductory speech by Christine Lagarde, President of the ECB, at the opening reception of the ECB Forum on Central Banking 2025 "Adapting to change: macroeconomic shifts and policy responses"
Sintra, 30 June 2025

ってラガルドはんのスピーチと、

https://www.ecb.europa.eu/mopo/strategy/strategy-review/strategy-review-assessment-2025/html/index.en.html
Our 2025 monetary policy strategy assessment
The aim of the ECB’s 2025 strategy assessment was to make sure our monetary policy strategy remains fit for purpose, both now and in the future.

The results of the strategy assessment provide a strong foundation for our monetary policy in a changing environment.

ってことで、
https://www.ecb.europa.eu/mopo/strategy/strategy-review/ecb.strategyreview202506_strategy_statement.en.html
The ECB’s monetary policy strategy statement

https://www.ecb.europa.eu/mopo/strategy/strategy-review/ecb.strategyreview202506_strategy_overview.en.html
An overview of the ECB’s monetary policy strategy

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2025/html/ecb.pr250630~aabf988af8.en.html
PRESS RELEASE
ECB’s Governing Council updates its monetary policy strategy
30 June 2025

とまあ重要なのが目白押しで、昨日はまあ元々書くこと(今更のFOMCオープニングリマーク)もあったので朝はベンダーニュースさらっと見ただけだったのですが、お前らこんな大事な話を何でトップニュースにしない、と思いましたが冷静に考えたらまあ大事だからトップニュースにしろと思うのはアタクシのような変態に限られるという厳然たる事実があることに気が付きましたので(これがFEDならもうちょっと話題になるかもしれなかったが)シャーナイナイという事で(滝汗)。

ということでですね、このECBのマネタリーポリシーストラテジーの話って金融政策運営の論点としては(全然まだ全部読んでるほど時間がない(そもそも昨日は短観だったし月末月初だし)のですが直感的に)大変重要なお話を含んでいるし、何なら日本って今次の物価上昇局面における政策対応としてはECBの方が教訓になりそうな気もするので、これは読まないと損ですよ皆さん、って鼻息を荒くしてラガルドはんの背景説明なスピーチを見るわけです。


ということでURL再掲しますと、
https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2025/html/ecb.sp250630_1~ba0ef03e6f.en.html
SPEECH
Strategy assessment: lessons learned
Introductory speech by Christine Lagarde, President of the ECB, at the opening reception of the ECB Forum on Central Banking 2025 "Adapting to change: macroeconomic shifts and policy responses"
Sintra, 30 June 2025

ということですが、ECBのトップページにこのスピーチへのリンクのサムネがありますけど、そこのサムネには、

『We have fine-tuned our monetary policy strategy to ensure it remains fit for the challenges of a more uncertain global economy, where inflation risks are two-sided, says President Christine Lagarde at the ECB Forum. In a changing world, we will do what is needed to keep prices stable.』

とありまして、グローバル経済の不確実性が高く、インフレーションには両サイドのリスクが以前よりも高い、という
状況下において、物価の安定というマンデートに資するために政策の戦略をファインチューニングしましたので
背景説明を行います、ってあるんですよね。

でもってこのシントラのECBフォーラム、植田総裁もお出かけになっている筈なのですが、植田総裁はこのラガルドはんの話をどう聞くのでしょうか、と言いたくなる内容になっていまして・・・・・・・・・

・そもそもお題が "Adapting to change: macroeconomic shifts and policy responses"

今回のECBフォーラムのお題が上記のようになっているくぁえで、マクロ経済の構造変化が起きているので政策もそれに対応して変化することを受け入れないといけない、って言ってるわけですよ、でもってラガルドはんのスピーチのマクラ部分も、

『As Nietzsche once observed, “it is our future that lays down the law of our today.”』

いきなりニーチェ登場。なおニーチェと言えば一定年齢よりも上の人には野坂昭如作詞のCMソングで有名だったりしますが昭和オブ昭和にも程がある(さっきちょっと調べたら昭和51年初出だったみたいですねw)のでただの老害のタワゴトですすいませんすいません。

『When we last reviewed our strategy four years ago, our thinking was shaped - quite naturally - by the recent past: a decade of too-low inflation, compounded by the pandemic.』

『But as Nietzsche warned, there is a danger in letting the past dominate our thinking. Sometimes, it is the future - still dimly understood - that is already shaping our present.』

『And soon after that review, the world changed in ways we had not foreseen.』

ま、このフォーラムのお題通りの話で、パンデミックど真ん中の辺りまでは低インフレ環境が続いていたが、その後ニーチェが警告するように、過去をもって推し量っていると状況の変化に気が付かずに未来を読み間違えますわよ、ということで・・・・・・

『The reopening of our economies after the pandemic brought about major sectoral shifts. Russia’s invasion of Ukraine triggered a fundamental shift in energy markets.』

『The geopolitical landscape was upended, reshaping global trade. And structural changes in labour markets became increasingly apparent - driven by demographics, technological transformation, and evolving worker preferences.』

『Given all these developments, the fundamentals of our strategy have held up well - as they should, because a sound strategy must be robust to a changing environment.』

その後に起きた世界的な構造変化(ウクライナ侵攻、その他地政学的な問題、世界貿易の再構築などなど)によって、「changing environment」に対してロバストな政策運営戦略が必要になった、という話をしまして、

『Our symmetric 2% inflation target has proven effective in anchoring expectations - even through some of the most severe and persistent shocks in recent economic history.

And our medium-term orientation has provided essential flexibility to absorb an extremely large shock - helping to reduce the overall cost of disinflation to the economy, while still enabling a timely return of inflation to target.

We therefore saw no need to revisit these core pillars - which is why we refer to the exercise we have just concluded as a strategy assessment rather than a review.』

でまあこの2%目標自体を変える必要はない、ってのは確かに月曜の夕方辺りにベンダーフラッシュでも出ていたのですが、ベンダーよ、そっちじゃないんだよ重要なポイントは、というのをこのラガルドはんのスピーチを見て思った訳ですが、

『The central theme of our work has been to update the framework so that monetary policy can continue to deliver price stability in the face of the new types of shocks we are confronting.

This evening, without downplaying the other lessons learned, I would like to highlight three key conclusions that have emerged from this work.

They concern the nature of the new environment, how we assess the risks that arise from it, and how we have adjusted our reaction function to safeguard price stability in this new world.』

ということでして、長期期待インフレを2%程度でアンカーさせてインフレをその程度になるように運営する、という意味での基本的な事には変化は無いのですが、重要なのはこの最後にある3つのポイント、すなわちnature of the new environment、how we assess the risks、how we have adjusted our reaction functionになるわけですな、うんうん。


・「供給要因によるインフレは一時的だから対応する必要はない」とか言ってる植田さんはこれを聞いて何を思うんでしょ

でもってこの最初の小見出しがThe changing environmentな訳ですが、

『One word has dominated the public debate in recent weeks: uncertainty.』

まあ不確実性というのはそうですが、その先が植田日銀にぶっ刺さるはずのネタでしてですね・・・・・・・

『And this is one of the first key conclusions from our strategy assessment: the world ahead is more uncertain - and that uncertainty is likely to make inflation more volatile.』

不確実性がインフレをボラタイルにする、ときましてからの、

『First, we see clear signs that supply shocks are becoming more frequent.』

明確に言えることだが「供給ショックがより頻繁に来るようになった」、ということでしてまさにジャパンもそうですがグローバルにそうなんだからそらそうよという話で、その点に関してラガルドはんはこのように説明していますね。

『Model-based analysis by ECB staff shows that, during the recent inflation surge, such shocks played a much greater role in driving inflation than they had over the previous two decades. And even today, supply-side forces continue to generate inflation risks in both directions.』

最近の供給ショックはインフレの上振れに対して「a much greater role in driving inflation」と言っていて、「And even today, supply-side forces continue to generate inflation risks in both directions」と仰せな訳でして、これまあどう見てもその通りですよねとしか言いようが無いが、一方で植田日銀は「供給ショックのインフレは一時的なので政策対応は不要」と念仏のように言い続けてハトハト音頭を踊っているのですが、植田和男先生はこのラガルドはんの話を聞いて何を思ったか所感を伺いたいものであります。

さらに、

『Second, we see mounting evidence that more regular supply disruptions are leading firms to adjust prices more frequently - thereby contributing to greater inflation volatility.』

より通常的に起きる供給の毀損がインフレをボラタイルにしていますというのも明らかだと。

『This is not simply an extrapolation from the most recent shock. Rather, it reflects a structural shift in how firms operate under conditions of permanently higher uncertainty.』

継続的な高い不確実性の元で企業の行動が構造的な変化を起こしている、ということを反映しているんじゃなかろうかという認識ですね。

『Research shows that, in such an environment, firms tend to react more quickly to shocks - especially supply ones - in order to protect against potential future losses.[1] At the same time, they are more likely to adopt more flexible pricing strategies, which means prices may respond not just to major shocks, but also to smaller frictions and local disruptions.[2]』

でもってそのような状況では企業が供給ショックに対して迅速に反応しやすくなる(ので物価が上昇しやすくなる)というお話で、そのショックも大きなショックだけじゃなくて細かいレベルのショックなどにも反応しやすくなると。

『Third, if inflation becomes more volatile, we could see non-linearities on both sides.』

第3点目は「インフレがよりボラタイルになれば、我々は上下双方において非線形的な変化をみることになるだろう」ということでして、

『In our last strategy review, we rightly focused on the non-linear dynamics that emerge in a prolonged environment of too-low inflation - where interest rates are eventually pushed to their effective lower bound. That constraint can, in turn, feed into inflation expectations and risk creating a self-fulfilling low-inflation trap. And we remain alert to the possibility of renewed downside inflation shocks.』

過去においては低インフレの定着からのゼロインフレトラップが懸念されましたが、

『But recent experience has also revealed non-linearities on the upside.

Since firms are generally quicker to raise prices than to lower them, more frequent price adjustments mean inflation can rise quickly in response to large upside shocks. If wages then adjust only gradually to these price increases - as we saw in recent years - inflation may remain above target for longer as wage growth slowly catches up. This, in turn, can raise the risk of inflation expectations de-anchoring on the upside.[3]』

最近の状況は逆にインフレが非線形的にアップサイドになるという事も示している、ということで物価が供給ショックで上昇して賃金が上昇するという状況になりますと、

「inflation may remain above target for longer as wage growth slowly catches up. This, in turn, can raise the risk of inflation expectations de-anchoring on the upside」

って植田和男先生どんな顔をしてこのくだりを聞いたんでしょう、ってお話が繰り広げられている訳ですが、まあ普通に今の主要国でインフレ目標政策取ってる中銀だったらこういう話をするのが仕様(何なら暫く前にBISも出していましたけどネタにはしていない、というか教わったのですが全然読み込んでいる暇がないです汗)になっている訳で、「供給ショックは一時的だから政策対応する必要はない」と言い続けてアバッブターゲットのインフレーションを2年以上も放置し続けている日銀の方が普通じゃない、というのが良くわかるわけで、まあ引き続きこのECBのポリシーストラテジーの話を弊駄文では追っかけようかと思います(タカダッチの金懇があるような気がしましたが・・・・・)。

ということで今朝はここで勘弁してつかあさい。






2025/07/01

お題「6月末の短国やGCは結局大きな波乱は無しでしたかしら/今更ですがFOMCオープニングリマークで地蔵の確認」

これはどこのジンバブエですかwwwwww
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-30/SYOE6QDWLU6800
米共和党、減税費用3.8兆ドルを実質ゼロと計上−異例の会計手法で
Jarrell Dillard、Erik Wasson、Chris Cioffi
2025年7月1日 1:36 JST

とりあえず題名だけでクソワロタw

〇先週金曜の短国とかGCTNとかですが結局そんな波乱にもならなかったようですけど・・・・・

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250627.htm
国庫短期証券(第1315回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1315回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。


1.名称及び記号    国庫短期証券(第1315回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日     令和7年6月30日
4.償還期限    令和7年9月29日
5.価格競争入札について
(1)応募額        10兆923億円
(2)募入決定額    3兆3,549億5,000万円
(3)募入最低価格    99円89銭0厘5毛
(募入最高利回り)     (0.4396%)
(4)募入最低価格における案分比率     7.9746%
(5)募入平均価格    99円89銭5厘0毛
(募入平均利回り)    (0.4215%)』

ということで先週の頭から謎のクソ強さだったのが週後半に一転してクソ甘い引けになって結局行ってこいで前週の0.4207%/0.4316%よりも若干金利上昇で終了しまして、先週途中の動きは一体全体何だったのかという結果と相成っておりましたが、3Mカレント近辺の引値は、

売買参考統計値
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(6/30引値)
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.430
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.430
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.430
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.435←今週入札のある3MWI

(6/27引値)
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.430
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.430
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.430
国庫短期証券1316 2025/10/06 平均値単利 0.435

となっていて、入札の平均レベルよりも安い所で引かせていて過熱感は無し(というかそもそも論としまして9/29とかいう半期末直前に落ちる短国は「使い勝手が悪い」ので元々人気化しないのがデフォという話はある)なのですが、あてになるかどうかは知らんですけど新発WIもそんなに値付け上は人気化していないような感じにはされていますが、まあこれはさすがにあてにならんので、実際には10月足の6Mや1Yの成れの果てのセカンダリーで判断するしかないのですけど、この辺ってまあ基本的にセカンダリーがあってないようなもんなのが仕様なので状況はワカランチ会長(結局分からんのかいなというツッコミが来そうですがw)。

まあ金曜の入札で今回の四半期末越えの動向が出てくる、ということになりそうですが、まあ短国市場に関してはカレント以外はその時の状況によってセカンダリーが出てきたり出てこなかったり(ビットは普通に立つのだがオファーはオンデマンドではが出てこない、って奴です)なので、短国の市場自体がまあそんなもんと言えばそんなもんなのですが、自由に売買できるというものでもない、という所なので増発増発増発と思うのですが、まあゆうて短国金利がちゃっかり上昇しちゃうと国債イールドカーブ全体が上方シフトするというのも発行サイドとしては悩ましいってのは分からんでもない所ではありまする。


東京レポレート
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

        O/N  T/N  1w  2w  3w  1m  3m  6m  1y
2025/6/23 0.491 0.492 0.478 0.476 0.476 0.477 0.485 0.500 0.571
2025/6/24 0.470 0.487 0.477 0.476 0.476 0.476 0.484 0.500 0.571
2025/6/25 0.490 0.485 0.476 0.476 0.476 0.477 0.484 0.500 0.571
2025/6/26 0.490 0.485 0.473 0.476 0.476 0.478 0.484 0.500 0.571
2025/6/27 0.491 0.483 0.475 0.475 0.476 0.477 0.484 0.500 0.571
2025/6/30 0.491 0.488 0.478 0.477 0.477 0.478 0.485 0.500 0.570

東京レポレートの推移を見る感じですとGCレートは影響なしという感じではありまして、まあだいたい四半期末の中で一番平和になることが多い6月末なので無事に四半期末を通過できましたってなところだったのですが、先週前半に短国の短い所の金利が急にクソ低下したのはちょっとビビりましたってだけの備忘メモでした。


〇そういや今日は短観ですな(これまたただのメモ)

https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm
公表予定

一部だけ引用しますと、

7月 1日(火)
8:50 ○ ● 短観(6月概要)
8:50 ○ ● 短観(6月要旨)

2日(水)
8:50 ○ ● 短観(6月調査全容)

3日(木)
10:30 ○ ● 【挨拶】高田審議委員(三重)

ということでして、短観ちゃんが今日出るのですが、田村審議委員の先般の金懇挨拶や会見で盛大に注目材料と言われていました「企業の賃金・価格設定行動」の変化がありやなしや、というのが今回は注目おぶ注目でしょうとしか言いようが無いですし、最近の主な意見やら議事要旨やらを見ますと、田村さん以外にも政策修正に対する前向きな姿勢や物価上振れリスクに関する言及をしている人がいるようにお見受けされる訳で、そうなると高田さんが一番その方向性を出す可能性があるのでちょっとだけ楽しみにしておきましょう。


〇ハイパー今更ですがFOMCオープニングリマークをサラサラと

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20250618.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
June 18, 2025

・今の状況はwell positioned

最初のご挨拶は飛ばして2パラ目から参りますと、

『In support of our goals, today the Federal Open Market Committee decided to leave our policy interest rate unchanged. We believe that the current stance of monetary policy leaves us well positioned to respond in a timely way to potential economic developments. I will have more to say about monetary policy after briefly reviewing economic developments.』

と、いつものwell positionedから始まりまして、

『Following growth of 2.5 percent last year, GDP was reported to have edged down in the first quarter, reflecting swings in net exports that were driven by businesses bringing in imports ahead of potential tariffs. This unusual swing has complicated GDP measurement. 』

全体観は関税駆け込みの影響で読みにくいけど若干の景気減速。

『Private domestic final purchases, or PDFP as we call them -which excludes net exports, inventory investment, and government spending-grew at a solid 2.5 percent rate. Within PDFP, growth of consumer spending moderated while investment in equipment and intangibles rebounded from weakness in the fourth quarter. 』

国内民間需要はソリッド。

『Surveys of households and businesses, however, report a decline in sentiment over recent months and elevated uncertainty about the economic outlook, largely reflecting trade policy concerns. It remains to be seen how these developments might affect future spending and investment. 』

家計や企業のセンチメントは関税動向を懸念して低下。

『In our Summary of Economic Projections, the median participant projects GDP to rise 1.4 percent this year and 1.6 percent next year, somewhat slower than projected in March.』

でもってSEPの見通しで3月見通しよりも, somewhat slower 、というのが経済の話でまあ淡々とした説明ではありますな。


・労働市場はconsistent with maximum employment.で失業率見通しはa bit higher

『In the labor market, conditions have remained solid.』

労働市場はソリッド。

『Payroll job gains averaged 135thousand per month over the past three months. The unemployment rate, at 4.2 percent, remains low and has stayed in a narrow range for the past year. Wage growth has continued to moderate while still outpacing inflation. Overall, a wide set of indicators suggests that conditions in the labor market are broadly in balance and consistent with maximum employment. The labor market is not a source of significant inflationary pressures. 』

労働市場に関しては毎度なのですが威勢の良い話が続いた上に「労働市場の強さは(望ましくない)インフレのソースにはなっていません」と大変に景気の良い話になっているので、consistent with maximum employment. という大変にイイハナシダナーですな、毎度最近はこうですけど。

『The median projection for the unemployment rate in the SEP is 4.5 percent at the end of this year and next, a bit higher than projected in March.』

SEPの見通しですが失業率がa bit higherとは言ってますが、a bit と言ってる時点で無問題感満載。


・物価に関してはsomewhat elevatedで物価見通しはsomewhat higher

問題は物価ちゃんですなというのは衆目の一致するところだと思いますが、

『Inflation has eased significantly from its highs in mid-2022 but remains somewhat elevated relative to our 2 percent longer-run goal. 』

物価が2%よりちょっと高い、というのは引き締め的政策の維持をやってるんだから当然の認識ですが、

『Estimates based on the Consumer Price Index and other data indicate that total PCE prices rose 2.3 percent over the 12 months ending in May and that, excluding the volatile food and energy categories, core PCE prices rose 2.6 percent.』

でまあコアPCEが2.6%でremains somewhat elevatedと言ってるわけでどこぞの中央銀行は爪の垢を煎じて飲んでいただきたい。

『Near-term measures of inflation expectations have moved up over recent months, as reflected in both market- and survey-based measures.』

ニアータームのインフレ期待は政策運営に直接ヒットしないとはいえ、上昇していますとの認識を示していて、

『Respondents to surveys of consumers, businesses, and professional forecasters point to tariffs as the driving factor. 』

関税のせいですわなあと言いまして、

『Beyond the next year or so, however, most measures of longer-term expectations remain consistent with our 2 percent inflation goal. 』

長期インフレ期待は上振れしているとか上振れ懸念があるみたいなこと言い出したら引き締め強化をする、という話になるので、remain consistent with our 2 percent inflation goalと言い続けるのが仕様です。

『The median projection in the SEP for total PCE inflation this year is 3 percent, somewhat higher than projected in March. The median inflation projection falls to 2.4 percent in 2026 and 2.1 percent in 2027.』

SEPの見通しは上がったのですが、さっきの失業率はa bit higherだったのに物価に関してはsomewhat higherって表現していまして、これは要するに「見通しにおける景気下振れ要素よりも物価上振れ要素が強い」っていう表現になっている訳で、この辺りからも「そう簡単に利下げしねーよバーカバーカ」(などと品の無いことは言わないと思いますがw)という意思が出ているな、と思いましたが裏読みのし過ぎですかしら(汗)、


・政策では今はwell positionedを再度強調するのとインフレ期待上振れの警戒を強調しているので地蔵宣言

次からが政策の話で、

『Our monetary policy actions are guided by our dual mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people. At today’s meeting, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 4-1/4 to 4-1/2 percent and to continue reducing the size of our balance sheet. We will continue to determine the appropriate stance of monetary policy based on the incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』

今回政策金利据え置きました云々はただの決定事項説明で、今後もあんじょうようやりますわというのはただのあんじょうようやりますわなので次に進みまして、

『Changes to trade, immigration, fiscal, and regulatory policies continue to evolve, and their effects on the economy remain uncertain. The effects of tariffs will depend, among other things, on their ultimate level. Expectations of that level, and thus of the related economic effects, reached a peak in April and have since declined. Even so, increases in tariffs this year are likely to push up prices and weigh on economic activity.』

先行きはトラ公の政策次第で不確実ですが、関税に関しては景気の押し下げと物価の押し上げ要因になるわ、

『The effects on inflation could be short-lived-reflecting a one-time shift in the price level. It is also possible that the inflationary effects could instead be more persistent. Avoiding that outcome will depend on the size of the tariff effects, on how long it takes for them to pass through fully into prices, and, ultimately, on keeping longer-term inflation expectations well anchored.』

この辺は議会証言とかでも同じ話をしていますが(順序はこっちの方が先ですねすいません)関税による物価押上げの影響はワンタイムかもしれないけどそうじゃないかもしれないので、インフレ期待の上振れに注意しないとですね、というお話をしておりますわな。

『Our obligation is to keep longer-term inflation expectations well anchored and to prevent a one-time increase in the price level from becoming an ongoing inflation problem.』

でもってここから次のパラグラフになるのですが、改めてこの「ワンタイムの物価上昇圧力が好ましくない持続的物価上昇にしてはいけない」ということを強調している訳でして、

『As we act to meet that obligation, we will balance our maximum employment and price-stability mandates, keeping in mind that, without price stability, we cannot achieve the long periods of strong labor market conditions that benefit all Americans』

でまあ景気と物価のバランスを取った運営をします、って当たり前ですがそういう話をしてから、

『We may find ourselves in the challenging scenario in which our dual-mandate goals are in tension. If that were to occur, we would consider how far the economy is from each goal, and the potentially different time horizons over which those respective gaps would be anticipated to close. For the time being, we are well positioned to wait to learn more about the likely course of the economy before considering any adjustments to our policy stance.』

ここはまあ一般的なバランスとってフォワードルッキングにやりまっせ、という話をしているのですが、そこの最後にまた「For the time being, we are well positioned to wait」ということで well positioned を強調しておりますわな。


・SEPも見直しますかそうですか

次はSEPの内容に関しての話なのですがそこはSEPに書かれている通りの話なので割愛しまして、その次にストラテジーのレビューの話がありまして、

『At this meeting, the Committee continued its discussions as part of our five-year review of our monetary policy framework.』

てな訳で、

『We focused on issues related to assessing the risks and uncertainties that are relevant for monetary policy and the potential implications for policy strategy and communications. Our review includes outreach and public events involving a wide range of parties, including Fed Listens events around the country and a research conference that we held last month. We are open to new ideas and critical feedback, and we will take on board lessons of the last five years in determining our findings.』

色々な議論、皆様からのご意見、 Fed Listensの開催などで議論を深めまっせ、というのはまあ一般的なお話ですが、その最後にしらっと、

『We intend to wrap up any modifications to our Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy by late summer. After that, we will consider enhancements to our suite of communication tools, including the SEP.』

ってあって、まあ正直ドットチャート無くす方がエエンチャウノとしか言いようが無い(あれはフォワードガイダンス政策が有効な時には使えるツールだがガイダンス政策が却って市場のボラを高めるだけという状況になってしまうと無駄ツールの最たるものですがな)ので、そこを見直していただきたいもんだと思いました。

以下はご挨拶なので割愛しますが、そういうことで少なくともこのオープニングリマーク段階では地蔵宣言なのと、物価上振れというか長期インフレ期待上振れへの警戒感をアピっている感じがしましたので地蔵ですな、という所だと思いました。今更ネタにも程があって恐縮至極。