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2025/06/30
お題「田村審議委員福島金懇挨拶と会見:ちょいちょい抜刀してるけど結構オブラート包んでいますなあ」
早速出てきますねえwwwwww
https://mainichi.jp/articles/20250627/k00/00m/010/329000c
石丸新党の新人、視察先の高校で政党PR 学校側の抗議で動画削除
スクープ 政治 速報 山形 東北
毎日新聞
2025/6/27 20:23(最終更新 6/28 20:12)
『動画は26日にユーチューブにアップされ、学校側が抗議した後に削除された。浦野氏はX(ツイッター)で「公選法上の問題はない」と主張した上で「確認不足で高校側にご迷惑をおかけした。申し訳ございません」と謝罪した。』(上記URL先より、以下同様)
公職選挙法上の問題はございません、じゃないんだよな〜
『動画には多くの生徒の顔が映っており、生徒に浦野氏の印象について尋ねる場面もあった。動画は教諭らが内容を確認してから公開される取り決めになっていたが、実際には確認前に公開されたという。顧問教諭はあくまで部活動の視察と認識していたといい、「実際に訪問した際の様子と動画の内容があまりに違っていて驚いた。公開の段取りなども事前の説明とまったく異なっていた」と憤っている。』
動画配信者としてオワットルだろ・・・・・
〇田村審議委員福島金懇(その2):微妙にオブラートにくるんだりしてましてそこまで華麗に抜刀してないんだが・・・・
HTMLバージョンが出てきましたので基本的にこちらから引用します
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250625a.htm
【挨拶】わが国の経済・物価情勢と金融政策福島県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 田村 直樹
2025年6月25日
PDFバージョン
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250625a1.pdf
・米国の関税政策で経済下押しなのですが物価は上振れって言ってますねえ・・・・・
とまあそういう訳で『2.経済・物価情勢』の『(3)米国の関税政策等の影響』から参ります。
『こうした情勢から「物価安定の目標」の実現が目の前まで来ていると考えていましたが、その後打ち出された米国の関税政策等によって、状況は大きく変わりました(図表9)。』
ほうほう大きく変わったとな。
『各国間の関税交渉がある程度進展するほか、グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような状況は回避されることなどを前提に5月1日に取り纏めた日本銀行の経済・物価見通しは、1月時点の見通しから下方修正しています。』
でまあ下方修正したのですが、
『とはいえ、例えばリーマンショックであるとか、コロナ禍であるとか、そういったレベルでの大きなショックに繋がるとは見込んでいません。もちろん個々の企業をみればその影響は区々ですが、日本全体としてみた場合、予断を持つことはできませんが、私としては、景気の「減速」という範疇で持ちこたえられるというのがベースシナリオと考えています。』
『こう考えるのは、米国の関税政策等の直接的な影響を受けるのが輸出型の製造業やそのサプライチェーン関係企業等に限られるということが大きな理由です。』
ふむふむ。
『間接的な影響についてももちろん注意が必要ですが、わが国における製造業の比率は、GDPで20%程度、就業者数で15%程度にとどまります。物価についても、2027年度まで、前年比2%近傍の上昇率が続くと見込んでいますが、グローバルな生産体制が変調をきたし、サプライチェーンに混乱が生じる場合には、輸入物価の上昇などを通じて、わが国の物価を押し上げるリスクがあると考えられます。』
ということで、経済下押しだけど物価は上振れリスクって言ってるんですよね。
『ただし、米国の関税政策等がどうなっていくのか、そうした政策に対して企業がどのように対応するのか、二重の意味で流動的です。したがって、現時点での見通しは仮置きのようなもので、今後の推移次第では、上方向・下方向両面で、大きな修正があり得ます。今後、わが国経済・物価等の状況を丹念に点検していく必要がありますが、特に注視が必要と私が考えているのは、企業の賃金・価格設定行動が、以前の賃金・物価が上がりにくい状態に戻ってしまわないかという点です。』
まあここですよね、ということで企業行動を確認しましょうって話になるのはまあそりゃそうでしょうなとは思います。ただまあそうなりますと、普通に考えて(関税交渉がなんも無しで妥結するようなことでもない限りにおいて)企業行動がどうなるかを見極めるためには数か月単位の日数必要ですよね、って話になると思うのですけど。
・企業行動に関しては「変化しているよ」という説明なのでやっぱり強気なんですよね
でまあその次の小見出しが『(4)わが国企業の賃金・価格設定行動』に流れるようにたどり着くわけですよ。
『ここで、近年みられてきたわが国の企業行動の変化について、いくつか振り返ってみます。
まず、企業の価格設定行動は、従来よりも積極化し、それが定着してきています。短観で「販売価格は上昇する」と回答した企業の割合を、「仕入価格は上昇する」と回答した企業の割合で割った値――正確ではありませんが、仕入れ価格が上昇した企業のうちどれぐらいの企業が販売価格を上昇させるかをイメージしたもの、言い換えれば、価格引上げに関する企業の積極性を示すもの――を計算してみますと、バブル崩壊後、この値は低下し、その状態が長く続きました(図表10)。』
ほうほう、って話でこの図表10の『図表10 企業の価格設定行動の変化』は中々オモロイ。
『しかし、2022年以降の局面では、この値が以前の水準まで戻り、足もとまで高めの水準が維持されています。』
ほう。
『これは、今回局面では、仕入価格の上昇幅があまりに大きく、やむにやまれず販売価格を引き上げたところ、多くの企業が同じような行動を余儀なくされる中で販売価格の引上げが定着し、企業の意識・行動が変容していったということだと考えられます。』
なるほど。
『次に、企業の賃金設定行動も、従来よりも積極化してきています。』
続いて賃金設定行動。
『マクロでみたベースアップ率を被説明変数、物価上昇率・名目労働生産性・中長期インフレ予想を説明変数とする関数を1992
年度から2022 年度までのデータを用いて推計し、2023年度以降のベースアップ率をこの関数で推計すると、ここ3年間のベースアップ率の実績値は、関数の推計値をはっきりと上回っています(図表11)。このことは、企業の賃金設定行動が、近年、大きく積極化してきていることを示していると考えられます。』
ほほう。
『以上のような変化、従来よりも積極化した企業の賃金・価格設定行動が元に戻ってしまわない限り、2%の「物価安定の目標」に向けて上昇してきた消費者物価の基調的な上昇率が下方に屈折してしまう可能性は小さいと考えられます。』
なるほど。
『では、企業の賃金・価格設定行動が元に戻ってしまうリスクはどの程度あるのか。米国の関税政策等の影響は不確実性が高く、十分見通すことはできませんが、私としては、現時点では、そのリスクは小さいと考えています。』
でもってその理由が以下に述べられていまして、
『第一に、人手不足が今後も続く中、実態的な供給力が需要を下回り、賃金や物価には上昇圧力がかかると考えられることです。』
構造的な供給制約と。
『日本銀行の需給ギャップの推計値は、足もとゼロ近傍にありますが、人手不足によって十分に設備を稼働させられないという側面が推計値を押し下げていると考えられます(図表12)。建設工事や機械受注の受注残高が大きく積みあがった状況にあることをみても、旺盛な設備投資需要に対し、供給側が十分に対応できていないことを示しています(図表13)。』
これは1月の展望レポートで指摘されていたことですな。
『第二に、企業に価格引上げの経験が蓄積されるとともに、プライシング戦略の重要性が再認識されてきたことです。』
ほほう。
『日本銀行が2023年11月〜から2024年2月頃にかけて企業を対象に行ったアンケート調査では、「物価と賃金がともに緩やかに上昇する方が望ましい」という回答が72%を占めています。今後についても、政府の各種支援策も後押しとなり、「コストカット型経営」から「高付加価値創出の成長型経営」への転換が持続していく公算が大きいと考えています。』
ということなのですが、ゆうてまだデフレ脳みたいな賃金設定してくる企業も多いんじゃないかなという気はします・・・・・
ということでですね、ここまでの田村さんの説明を見ますと、企業の行動は変容している、って話をしているのですが、その割には米国の関税のところで「こうした情勢から「物価安定の目標」の実現が目の前まで来ていると考えていましたが、その後打ち出された米国の関税政策等によって、状況は大きく変わりました(図表9)。」って言ってまして、微妙にこの辺りが歯切れが悪いというのか何というのか、な感じはします。言ってることは基本的にかなりの強気なのに、「その後打ち出された米国の関税政策等によって、状況は大きく変わりました」と「特に注視が必要と私が考えているのは、企業の賃金・価格設定行動が、以前の賃金・物価が上がりにくい状態に戻ってしまわないかという点です。」の部分が弱気っぽく読めるので、うーんなんじゃろうなという感じではあります。
・金融政策運営に関して:金利に関してはまあ普通に上げる気満々ですな
『3.金融政策運営』の『(1)先行きの金融政策運営』が金利の話です。
『ここからは、日本銀行の金融政策運営についてお話しします。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指して、政策運営を行っており、2024年3月の金融政策の枠組みの見直し以降、短期金利の操作を主たる政策手段と位置付ける、普通の金融政策に戻っています。』
まあやってることは長期国債のアホみたいな買入を継続(の話は次のコーナーです)しているし、アクチュアルな物価が目標を上振れているというのに「お気持ち物価」を持ち出して政策修正を渋るしで全然普通じゃないんですけどね!!!
『先行きの消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて、当面、伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、2027年度までの展望レポートの見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移する、というのが日本銀行としての見方です。』
と、大本営を出すものの返す刀で、
『一方で、私としては、経済・物価の見通しが仮置きとも言える状況であるほか、物価の上振れリスクにも留意する必要がある状況下、「物価安定の目標」の実現時期が前倒しとなる可能性も十分にあると考えています。』
まあ「実現時期が前倒し」というよりは「当初想定の通り」ってことですけどね。
『そういう中、現在の実質金利(名目金利-予想物価上昇率)がきわめて低い水準にあることを踏まえると、データや各種情報を予断なく分析し、経済・物価情勢の改善に応じて早すぎず遅すぎず、適時適切に政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくというのが、私の基本的な考え方です。』
ここは抜刀斎の抜刀が足りない、というかまあ配慮したんでしょうかとは思うのですが、日本の場合は「インフレ期待を一旦不安定化させている」という事をしているのですから、政策がビハインドした場合に期待インフレが2%で止まらないリスクが欧米主要国よりも高い、というのを念頭に置くべき、って話をしてほしいんですよね。
『今後、不確実性が完全に晴れることはないと思いますが、日本銀行は、金融政策決定会合ごとに次の会合までの政策金利を決定しなければなりません。「物価安定の目標」実現の確度が高まる、あるいは、物価上振れリスクが高まる場合には、たとえ不確実性が高い状況にあっても、果断に対応すべき場面もあり得ると考えているところです。』
まあこれ以上強く抜刀するとややこしいことになるって事なのかもしれませんが、皆さん指摘しないのかわかってても言わないのかが良くわからんのですが、「インフレ期待を不安定化させている最中」っていうのがもうちょっと話に上っても良いと思うんですよね。
以下は0.5%に壁は無い、って話なんだがそんなのは本来当たり前で、0.5%に壁があるとか抜かしてた馬鹿が市場の中にも何ちゃらゾロゾロ(最近聞かないなと思ったら10年ちょい前に製造停止になっているのねw)って風情でいますし、総裁会見でも聞かれたりしていましたが、デフレに完全に脳がやられているとしか言いようが無いわけですな、ということでまあ田村さんの説明ですが全く持って仰せご尤もとしか言いようが無いです。
『一方、「わが国の政策金利は過去30年にわたって0.5%を超えておらず、そこに大きな壁がある」といった声もあります。しかし、以下の理由から、私は0.5%に壁があるとは感じておりません。』
でまあその理由ですがどう見ても当たり前でして、
『第一に、物価上昇率の違いです。前回、短期金利が0.5%であった期間を含む2007年、2008年の消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率はそれぞれ0.0%、1.5%であったのに対し、現在は3%台後半となっています。』
以上、それまでって感じですね。
『第二に、市中銀行の貸出金利水準の違いです(図表14)。2007年、2008年当時の短期貸出金利は1.5〜1.7%でしたが、現在は0.7%にとどまっています4。信用コストが当時より低下しているという側面はありますが、それ以上に、貸出金利のスプレッドは縮小していると考えられます。住宅ローンについても同様のことが言え、借入金利は依然当時を下回っている状況です。』
まあこの説明は余計な気がするんですけどね。ということで普通に利上げする気満々なのでした。
・長期国債買入に関しては「市場機能」よりも「巨額なバランスシートの存在が”普通の金融政策”の運営を妨げる」方が重要だと思うの
次が『(2)長期国債買入れの減額計画』です。
『金融政策運営の話に加え、先週の金融政策決定会合で決定した長期国債買入れの減額計画についても触れておきたいと思います(図表15)。まず、昨年7月に決定した2026年3月までの減額計画についての中間評価を行い、月間の長期国債の買入れ予定額を、2026年1〜から3月までは原則として毎四半期4,000億円程度ずつ、2026年4〜6月以降は原則として毎四半期2,000億円程度ずつ減額し、2027年1〜3月に2兆円程度とすることを決定しました。』
『また、2026年6月の金融政策決定会合では、長期国債買入れの減額計画の中間評価を行うこととし、今回の減額計画を維持することを基本としつつ、国債市場の動向や機能度を点検したうえで、必要と判断すれば、適宜計画に修正を加えること、また、2027年4月以降の長期国債の買入れ方針についても検討し、その結果を示すこととしました。』
『これらは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切であるとの判断に基づくものです。
というのは大本営ですが抜刀斎はここで抜刀している(ので金融政策決定会合の結果が出るのが12時半回ったんじゃないかと思いますがどうでしょうかね)のでその先の部分が重要でして、
『これを決めた金融政策決定会合において、私は、4,000億円の減額ペースを変える必要はないと考え、本案の議決に反対票を投じました。』
なのですが、
『これは、長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであり、可能な範囲でできるだけ早く日本銀行の国債保有残高の水準を正常化していくべきだと考えたからです。』
ということで市場機能の話をしているのはちょっと惜しい所ではあるのですが、まあ確かにゆうて日銀が巨額のバランスシートを抱えたままで2%物価安定目標達成後の「普通の金融政策」をやろうと思ったら、日銀の巨大なバランスシートが悪さをして金融政策運営(特にインフレ上振れ(による期待インフレの不安定化)の際に必要になる措置が取れなくなるので早急にバランスシートの正常化を進めていく必要がある、って言い切ってしまうと、まあそれはそれでとっても重要な問題認識ではあっても、ハレーション起こるやもしれん、とか大本営のチキチキチキンの皆さんが言い出しそうではあるなあと思うので、
『決定した減額計画のペースでは、日本銀行のバランスシートの正常化、すなわち、これ以上の削減を行わなくてよいという水準まで国債保有残高を減少させるまでに、より長い期間が必要となってしまいます。現在、国債市場の機能度は、一時より改善したとはいえ依然低い状態にありますが、こういった大規模緩和の後遺症は、しばらく残り続けてしまうことになります。市場の状況を十分に注視しつつ、時間はかかりますが、着実に正常化を進めていく必要があると考えています。』
ということで、あくまでも債券市場の話にしているのは残念ちゃあ残念なのですが、まあそこは言いにくいのかもしれませんな(という状態になっている、というのがまさしくオワ終わりな話ではあるのですが・・・・・)。、
〇記者会見も割とオブラートに包んだ説明をしているのですが時々すごく重い発言をしていましたね
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250626a.pdf
田村審議委員記者会見
――2025年6月25日(水)午後2時から約40分
於 福島市
ちなみにこの会見に関しても「半角英数をテキストデータとして認識しない」事案が発生しているのですが、頼むから変なテキストエディターだかPDF変換ソフトだか知らんけど使うの勘弁してもろて頂いて・・・・・・・
・初手の質問でやたら大演説が行われるの巻
最初の質問は「今日はどうでしたか」と「当地の経済について」なのでこれは地元の新聞社さんによる幹事社質問ですが、この次の質問がいきなり微妙な質問でして、
『(問)私からも二点お願いしたいんですが、午前の講演で足元の物価上振れに言及されまして、先行きにつきましても物価の上振れリスクの方が大きいとお考えなのか。また、物価目標の実現時期につきまして、展望レポートで
27年見通し期間の後半となっていますが、田村委員も同じようなお考えでいいのかというのが大きく一つです。』
いやそれ思いっきり金懇挨拶で説明しているじゃん・・・・・・・・
『二点目なんですけども、午前の講演で物価目標の確度や物価の上振れリスクが高まる場合には、不確実性が高くても果断に対応するべきだというふうにご発言されました。関税の影響がですね、明確になる前の段階であっても、物価の上振れリスクが高まる場合には、例えば
7月会合とか含めてですね、利上げが必要になる局面というのもあり得るとお考えなのか、この二点お願いします。』
それも金懇挨拶で説明しとるじゃろって話で、7月会合前に「関税問題が結局何もなし従来通りですねえはい解散」とでもなるか、なんかの拍子にドル円がまたドル高にすっ飛んでしまってやべーよやべーよとでもならん限り7月利上げは何ぼなんでも話に無理があるじゃろ、って話をしていたと思うのですが、何を今さら質問しているんだか。
とは思うのですが、前半の質問に対して無駄に丁寧に回答してるので、もしかしたらこれは出来レース質問かも知れないのであまりそこは追及しないことにします笑。
でもってそのクソ長い回答ですが、
『(答)まず、物価の上振れリスクに関してですが、 5月のMPM時点と比べて、多少霧が薄くなったとはいえ、前がよくみえない状況に大きな違いはないと思っています。』
上ぶれなのか上振れじゃないのか謎。
『そういう中で、企業のヒアリング情報などから私が感じているのは、まだトランプ関税がどうなるか分からないという留保条件付きではありますけれども、当初の時点で私が予想していたほど悲観的にみておられない会社も多いということです。一言で言いますと、過度に悲観的ではないという意味で、
cautiously oprimisticな企業スタンスを感じます。』
ということなのですが、
『例えば、人手不足の中、賃金は引き続き上げていく方針であるとか、能力増強投資は一部様子見する企業もあるものの、DXやGX投資、効率化投資は継続的に実施する、不確実な中でも、株主から企業の成長が求められており、収益増強のためには投資をしっかりと行っていく。こういった企業の声が多いと感じております。』
だそうなのですが、それは構造要因なのではという気がせんでもない訳で、経済の話と企業行動の話に関してはもやっとした感じですが物価の話になりますと・・・・・・
・物価に関する発言に注目すべきだと思うんですよね〜
『一方で、消費者物価は 5月MPM時点の私の想定より上振れて推移していて、インフレが加速してきているというふうに受け止めています。』
これは!!!
『例えば、季節調整済みの前月比年率の話を今日の講演でも致しましたが、ラフな試算ですけれども、今後、前月比の上昇率が急減速したとしても、
5月の展望レポートで示した見通しは概ね実現できてしまう可能性がある状況です。』
って言い方をしているのもなんか気を使っている感が漂ってくるのですが、これって要するに「現時点でみても既に4月展望レポートで示した(展望レポートは4月号だが決定会合は4/30-5/1なので面倒なことになるからこういう日程の組み方止めてほしいですねえ笑)物価見通しは上方修正待ったなし」って事で、そう言い切ってしまえば良いじゃんと思うのですが、それを言うとインパクトがあるって事なのかもしれませんけれども、今回の田村さん、発言の趣旨的には抜刀しているんですけど、結構オブラートに包んでいる部分が多いなあとは思いました。
『それから、サービス価格についても、増勢を強めているという話を今日講演でしましたけれども、これまでサービスの品質を調整することで各種コスト増を吸収してきたところ、こうした余地がなくなっていく中で、今後は人件費の増加がサービス価格に反映されやすくなっていくのではないかと考えています。逆に言いますと、これまでサービス価格の上昇が比較的抑えられてきたのは、品質の引き下げによる実質値上げを統計上捕捉しきれていない面があるのではないかとも考えています。』
つまりサービス価格は実力ベースで言えばとっくの昔に強かったと。
『それから、食料品の値上げ、家計にとって身近な食品価格の上昇は、予想物価上昇率に大きな影響を与え、持続的な物価押し上げ要因になり得る、あるいは既になっていると考えています。』
でもってさらっと言われていますがここもドチャクソ重要な話でして、「予想物価上昇率に大きな影響」だし「(持続的な物価押上げ要因に)既になっていると考えています」なので、物価に関する説明がバチクソ強いんですよ。
でもって、
『こういうふうに、物価の上振れリスクというのは高まってきているというのが、現時点で私の感じているところです。』
物価上振れリスクが高まっている、という認識な訳ですが、その上振れリスクに関しての内容が、例えば昨年7月の利上げの時のような為替円安ガーとかいうような割とシンプルな話ではないし、しかもこの「予想物価上昇率の上昇」という基調的物価の根幹部分にあたる話で勝負してきている訳でして、物価の話だけで言えば利上げしないとおかしいくらいの話をしている訳ですよ。
ただまあトラ公の関税問題がまだまだ訳わからん中なのでさすがにそこはアレではあるのですが・・・・・
・「物価の番人」というのは重い表現だと思うの
『そういう中で、二つ目の質問に先に答えることになりますけれども、このトランプ関税がどうなっていくのか、それに対して企業がどのように対応するのか、その影響は二重の意味で流動的で、私としては物価の上振れリスクに配意しつつ、予断を持たずに今後の情報・データを分析する必要があると考えていますけれども、そのうえで物価の上振れリスクが一段と膨らんでいった場合、物価の安定、物価の番人である日銀として、果断に動くべき時というのが来る可能性もあり得るというふうに考えているところです。』
この「物価の安定、物価の番人である日銀として」って話を生粋の日銀の中の人に言われる前に外部招聘の政策委員に言われてしまう、って日銀どうなってるんだよというお話ではありまして、オブラートに包んで話はしているのですが、ちょいちょいとこういう辺りに田村さんのランボー怒りの刀剣乱舞ってのが見えたりするわけです。
7月利上げがどうしたこうしたの部分は特にまあ、っていうかクソクダラナネエって感じですが一応引用しますと、
『それから、もう一つのご質問の、物価目標の実現時期の話です。私自身いつになったら分かるというのに予断は持っておりません。今後の展開次第では、早いかもしれないし、暫く時間がかかるかもしれません。ただ、そういう意味で、
2026年度後半以降の可能性を否定するわけではありませんけれども、それよりもっと早く物価安定目標が実現したと判断できる可能性も否定できないというふうに考えています。』
・基調的な物価は2%行ってるようなもんじゃんという説明
こんな質疑がありました。
『(問)一点目は、基調的な物価上昇率という考え方なんですが、講演を拝読すると季調済みでみた消費者物価の動き、あとサービス価格、中長期の家計や企業の予想インフレ、どれも2
に達していたり、かなり強めであるということなので、ここでみると田村委員は基調的なインフレ率は既に
2%に達しているという理解でいいのでしょうか。というのは、植田総裁はまだもう少し2
に近づいているが達していないという評価なので、そことのどういう違いがあるのかということを伺いたいのが一点目です。(後半割愛)』
後半は利上げ時期云々の質問(って質問ばっかりなのは心底ガッカリしました今回の会見)なので
割愛します。
『(答)まず、基調的物価上昇率が今何%ですと明確に申し上げることはできず、様々な指標をみての総合判断になると考えています。基調的物価上昇率に大きな影響を与える企業や家計の中長期の予想物価上昇率、これは概ね
2%程度に達していると私は考えています。』
利上げ待ったなしですがそれは。
『ただし、トランプ関税がどうなっていくのか、それに対して企業がどのように対応するのか、二重の意味で流動的な状況ですので、基調的物価上昇率が
2%に達したと言い切るには、あと少し情報・データを分析していきたいというふうに考えています。(後半割愛)』
ではその分析するデータとは何ぞやというお話で質問が当然飛んできまして、
『(問)7月には日銀さんの出す短観ですとか、支店長会議とかございますけれど、その内容、中身についてですね、今後の金融政策判断、利上げをするときに、その中のどういうデータ、どういう声を中心に確認されていって、もしそこでどういうデータや声があれば政策金利を引き上げられるというふうに考えているかというのをちょっとお聞かせください。(後半割愛)』
でまあ回答はやっぱり「企業の行動」でして、
『(答)まず、一つ目の7月、短観の公表があり、支店長会議がある中、何を確認したいのかということについて申し上げます。今日の講演でも申し上げましたけれども、私が一番注視したいと考えているのが、企業の賃金・価格設定行動が変わっていくのか、変わっていかないのかという点です。』
ということで、
『従いまして、短観でも、例えば販売価格の予想ですとか、あるいは予想物価上昇率がどうなるのか、そういった点について確認していきたいと思っていますし、支店長会議で各地の中小企業を含めた企業の考え方が、その辺り変わってるのか、変わってないのかを確認していきたいというふうに考えております。』
ふむ。
『どういう声があれば利上げするのかという、これはもう一概には言えなくて総合的に判断していきたいと。ヒアリングの声だけで金融政策判断するわけではありませんので、そのときまでに得られるデータも併せて検討・分析して判断していきたいと考えています。(後半割愛)』
まあ順当な回答でした。
・長期国債買入に関して
一つだけ質問がありまして(今の質問の後半です)回答がありました。
『(問)(前半割愛、というかさっきの質問の後半です)もう一つがですね、前回の金融政策決定会合で決めた国債減額計画のことについて、田村委員はペースをダウンするのを反対されてたと思うんですが、この午前の講演の中で大規模緩和の後遺症が暫く残るという発言をされていたと思うんですけど、この
2000億円のペースに下げると具体的にはどのような悪影響が出ていくのでそういうふうに反対されたかっていうのをこの二つをお聞かせください。』
『(答)(前半割愛)二つ目のご質問、国債買入れの減額計画について、私は反対しました。まず、私の考えと日銀の公式見解とは、そんなにずれているわけではないということを最初に申し上げておきたいと思います。』
いやー、日銀公式の発想ってビビリンチョなので田村さんと全然違うじゃろと思うのですが、そこはオブラートにくるんでいるのかビブラートでも掛けているのかって感じで抜刀していないのが分かります笑
『日本銀行としての減額計画の基本的な考え方については、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による国債買入れは国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切ということです。そのうえで、金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されていくようにするためには、国債買入れ額を更に減額していくことが望ましいと考えられる。』
って理屈なんですけど、この理屈って(先般の金融学会での内田副総裁の講演もそうなんですけど)長期金利の話にかこつけて巨大なバランスシートのもたらす弊害のことを誤魔化すためのデコイになっているんですよね。まあ弊駄文では再三再四申し上げている通りですが。
『その一方で、国債買入れの減額が進展する中、今後の減額ペースが速過ぎると市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性もあると。これが日銀の基本的な考え方で、ここまでは私も全く同意見です。』
私も全く同意見です(棒読み)、ですねわかります。
『そのうえで、私としては、 2026年 4月以降も引き続き四半期毎に 4000億円ずつ減額していくべきというふうに考えました。これは、市場の状況などを踏まえれば、減額ペースを変更する必要がなく、長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであり、可能な限り早く日本銀行の国債保有残高の水準を正常化すべきと考えたからです。』
でもって田村さんも市場機能の話しかしていないのですが、ドっからどう見ても問題になるのは巨額なバランスシートを抱えた大金融緩和状態のままで「普通の」金融政策が非常に面倒なことになる点なんですよね、誰が言い出すか、誰かが指摘しだすか、ってなもんですが。
『市場機能が改善してきたとはいえ、まだまだ水準として低いと言わざるを得ない状況です。平常時から市場の流動性が低いと、何らかのショックが生じた際にボラティリティが増幅され、市場が不安定化するリスクが大きくなります。グローバルな通商政策等を巡る不確実性のある中で、今後大きなレジームチェンジが進む可能性もある、そういう中で金融市場のショック吸収力を一刻も早く高めておくことが重要だというふうに考えているところです。』
ふむ。
『 4000億円の減額と 2000億円の減額、 2000億円の減額だと取り返しのつかないようなことになるかというと、そういうふうには私も全く考えておりません。』
物理的にそうであっても、こんな段階で減額ペースを下げる、という判断をしてしまう(べき論で言えばむしろ加速すべきなのに)という考えの背景こそか「取り返しがつかない」と思うのですよね。日銀のビビリンチョが結果的に財政ファイナンス状態をインフレ時代になっても超大規模で継続することもそうですし、この程度の話で当局にクレクレ言いまくる日本国債市場の当局依存体質もそうですし・・・・・
『いずれにしても、市場の流動性を高めて、国債保有残高を正常化するには長い時間をかけざるを得ないという状況で、その中でも少しでも早く、なのか、市場の安定に配慮するか、そこのバランスの総合判断の違いがあるだけだと思っています。』
とのことですが、まあ物価目標達成だ、となった時にこのバランスシートは間違いなく色々な弊害を発生させますので、物価目標達成する気が無いならともかく、物価が上振れているのにこのテイタラクというのはどうみたってマズイと思うんですがさて大丈夫ですかねえとしか思えません。
ということで金懇と会見をまとめてネタにしましたが、日銀からちょっと面白そうなぺーぱーが出ていたり、3Mの短国入札があったりとかイベントがあったのですが、そっちのネタは時間と量の関係でちょっと本日はパスということで誠に申し訳ございません。
2025/06/27
お題「短国謎の金利上昇(その前の低下も謎でしたが)/田村審議委員金懇(その1)物価に関する説明は重要な指摘が数多いですね」
よくある悪事例ですなあ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250626/k10014844861000.html
国民 玉木代表「女性にとって理解は難しい」趣旨の発言を陳謝
2025年6月26日 10時52分
『玉木氏は、その後、旧ツイッターのXに「私が伝えたかったのは『国民民主党の政策は、女性にとっても良い政策だと考えているが、実際には女性に届いていない実情があり、それについて、難しさを感じている』だった」と投稿しました。
そのうえで「英語が未熟なため、つたない表現をしてしまったことを反省している。決して女性蔑視をするつもりはなかった。政策をちゃんと伝え切れていない私たちの問題だ。本当に申し訳ございません」と陳謝しました。』(上記URL先より)
余程の使い手じゃない限り原稿なしでやるとやらかしてしまいますわな、って自分の場合はそもそも英語で説明とかできないと認識しているので縁のない話じゃが、ガハハハハハ。
〇今日は3Mの入札なのですが昨日謎の短国金利上昇とな
今日の3Mは上半期末前日に足の来る奴なんですが
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20250620.htm
国庫短期証券(第1315回)の発行予定額等
1. 入札予定日 令和7年6月27日
2. 発行予定日 令和7年6月30日
3. 償還予定日 令和7年9月29日
4. 発行予定額 額面金額で4兆4,000億円程度
5. その他 上記の発行予定額を変更する場合には、入札日の前日に再度公表する予定です。
は良いのですが、昨日の短国の引けがですね
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
売買参考統計値
(6/26引値)
国庫短期証券1302 2025/07/28 平均値単利 0.379
国庫短期証券1303 2025/08/04 平均値単利 0.379
国庫短期証券1305 2025/08/12 平均値単利 0.379
国庫短期証券1306 2025/08/18 平均値単利 0.379
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.379
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.420
国庫短期証券1310 2025/09/08 平均値単利 0.420
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.415
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.415
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.415
(6/25引値)
国庫短期証券1302 2025/07/28 平均値単利 0.330
国庫短期証券1303 2025/08/04 平均値単利 0.330
国庫短期証券1305 2025/08/12 平均値単利 0.330
国庫短期証券1306 2025/08/18 平均値単利 0.330
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.330
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.370
国庫短期証券1310 2025/09/08 平均値単利 0.370
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.370
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.370
国庫短期証券1315 2025/09/29 平均値単利 0.370
ということで、なんか知らんけど急に大甘の王子になっておりまして、何やってるんだかという感じではあるのですが、まあそれ以前にこの引値にありますように、足元で急に短国の気配(特に3M以内)がアホみたいに強くなっていましたので、これ金利が上がって何となく尤もらしい金利水準になった、とは言えるのですが、しかしこのタイミングというのが意味不明でありまして、水曜までの短国馬鹿強い(しかも9月末越えではなくて9月までの償還の銘柄)モードの方も訳わからなかったので、これでチャラと言ってしまえばチャラなんですけど(笑)、てっきりこちらは四半期末で国債残高が必要な方の帳尻買いでも短国に入ったのかと思っていたのですが、昨日引値を甘くされますとナンノコッチャになるわけで、仮に売りが出て(というか基本的には売りが出ないと甘くならんから売りが出たんでしょうけど)甘くなるにしましても、6月末残稼ぎの視点で見たら昨日の時点で売るという手は無いので(そりゃまあ相対取引だからやろうと思えば7/1渡しでも売れますが)そういう人が用無しだから売ったという訳でもない次第でして、何で強くなったのかも謎ですがここで甘くなったのも謎、という謎尽くしの短国ちゃんでした。
まあゆうてこれ金利上がったと言ったって0.4台カツカツな訳ですから、やっぱり短国市場の方は相変わらず物が足りない状態になっているのは変わらんなあと思うのでした、ってか超長期あたりとは違って金利がある程度調整すれば調整しただけ買いが入ってくる(何なら日銀当座預金金利を上回ったらホイホイと買いが来るじゃろう(ただし利上げが無いと確信できるテナーまで)って感じですよね〜)のが短期クオリティなのでまあ増発自体は全然平気なんでしょうけどね。
まあ半期末直前の償還という再投資考えると使い勝手悪いけど期内だけ用があるなら使い勝手が良いという銘柄なのでどうなるのやら(9月利上げの可能性とかいうのをすっかり忘れているような気がするのはたぶん気のせいですwww)。
〇田村委員の福島金懇ですがまあ普通に抜刀はしていますが大立ち回りは無かったようでw
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250625a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 福島県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
日本銀行政策委員会審議委員
田村 直樹
・謎の講演テキスト仕様について
さて実はこの金懇挨拶、先般(6/7)の内田副総裁の金融学会での講演のテキストのPDFが「半角英数だけコピペできない現象」が発生していたのですが、今回もこの事案が発生しております。
でもってさらに不思議なのは、この間に行われた6/20の植田総裁の全国信用金庫大会での挨拶のPDFではこの事象が発生していなくて、ついでに言えば6/4と6/6の神山理事の挨拶、それ以前の植田総裁の講演(内外情勢とか金研コンファランス)とか野口委員の金懇ではこの事象が発生していないんですよね。
ということでですね、なんかこれ内田副総裁の金融学会での講演テキストPDFとこの田村委員の金懇挨拶PDFだけ編集時に別のテキストエディタ(または別のPDF作成ツール)を使っているじゃろ、というのが想定される訳でして、そうなりますとこれが色々とまた変な妄想を色々と掻き立てることになるのですが、妄想にも程があるので読み筋については今のところ書かないことにします。
・物価上振れに言及&基調的物価はだいたい2%じゃろという認識
最初のご挨拶はさておきましてあっという間に『2.経済・物価情勢』の『(1)経済・物価の現状と先行き』に入ります。
『先ず、わが国の経済・物価情勢についてお話しします。最初に、現時点での私の認識を端的に申し上げれば、次の3点にまとめられます。』
ほいな。
『第1に、本年3月まで、わが国の消費者物価の基調的な上昇率は、2%の「物価安定の目標」に向かって、オントラック、やや強めで進んでおり、目標が実現する確度が一段と高まってきた、更には、上振れリスクも一段と高まってきたと判断できる状況にありました。』
会見(なんか今日はすいません間に合わん気が)での説明とかですと「もはや達成してるじゃろ」って感じにも見えますが、まあいずれにしましても強い話な訳です。
『第2に、その後打ち出された米国の関税政策等は、わが国の経済・物価を下押しする公算が大きいとみていますが、それでも
2007年度まで、前年比2%近傍の物価上昇が続くと予想しています。』
これはどっちなのか分からんですがこの直後の説明を見ると展望の説明しながらこの表現を使っているのでちょっとここの表現が第一および第三との平仄が妙ではある。
『第3に、そうした下押し要因があるもとでも、企業の賃金・価格設定行動が、賃金・物価が上がりにくかった以前の状況に戻っていくリスクは小さく、これまで高まってきた消費者物価の基調的な上昇率が下方に屈折してしまう可能性は小さいと考えています。』
期待インフレの変化が起きているじゃろ、というお話ですな。
『それでは、こうした点について、日本銀行の経済・物価見通しにも触れつつ、もう少し具体的に、説明してまいります。』
・最初は展望レポートの数値で説明しまして
『まず、現状のわが国の景気は、一部に弱めの動きもみられますが、全体としてみれば、緩やかに回復していると判断しています。4月の展望レポートで示している実質GDP成長率は、政策委員の中央値で、2025年度が+0.5
%、2026年度が+0.7 %、 2027年度が+1.0 %となっています(図表1)。米国の関税政策等がもたらす海外経済の減速等によって、わが国経済の成長ペースが鈍化すると考えられるため、1月時点と比べて見通しを引き下げています。その後、海外経済が緩やかな成長に戻っていくのに伴い、わが国経済も成長率を高めていくと見込んでいます。』
『次に、わが国の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もとは3%台後半となっており、4月の展望レポートで示した見通しは、
2025年度が+2.2%、 2026年度が+ 1.7%、2027年度が+1.9 %となっています(図表2)。』
『原油価格の下落や今後の成長ペース下振れの影響などから、1月時点と比べて見通しを引き下げていますが、それでも2%近傍の物価上昇が続くことを見込んでいます。』
ということで展望レポートの説明をしていて、さっきの「第二」と同じ表現になっているのが(第二の方に)違和感を感じる次第です。まあ詮索せずに先に行きますけど、
・「賃上げモメンタムは十分に高まっている状況」との認識
次が『(2)賃金・物価の動向』ですね。
『冒頭に申し上げたとおり、こうした見通しを作成する以前、3月までは、わが国の消費者物価の基調的な上昇率は、2%の「物価安定の目標」に向かって、オントラック、やや強めで進んでいたと捉えています。わが国の賃金や物価の状況などを踏まえた判断ですが、これらの状況は足もとまで引き付けてみても大きくは変わらず、消費者物価指数の4月、5月のデータは想定よりも上振れてきています。』
上振れ指摘ですがこれは別にキタコレでもなんでもなくて当然の指摘ですよね。
『まず、賃金について、今年の春季労使交渉の状況をみますと、確りとした賃上げが行われた昨年を上回る推移となっており、特に中小企業のベアは、昨年からの上振れ幅が大企業よりも大きくなっています(図表3)。最終着地がどうなるか、労働組合のない中小企業への広がりはどうか、引き続き確認していく必要はありますが、賃上げモメンタムは十分に高まっている状況にあると考えられます。』
>賃上げモメンタムは十分に高まっている状況にあると考えられます
そらそうよという感じですな、まあ賃上げモメンタムなんだか生活給の概念定着なんだかはよくわからんところではありますけれどもw
・消費者物価指数の上振れに関しての話で早速の抜刀である
『次に、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、人件費の販売価格への転嫁が続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、足もとは3%台後半、振れの大きいエネルギーを除いてみても、3%台前半となっています(図表4)。』
からの
『関連して私が最近、注目している点を4点、申し上げます。』
という所で抜刀が始まるのですが・・・・・・
・物価の論点その1:コアコア物価の前月比(季節調整済)推移(すなわち原数値を見ろという話に繋がる)
『第一に、前年同月の状況に左右されない瞬間風速とも言える、季節調整済みの前月比年率でみた消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の動きです。』
コアコアの季節調整済の前月比は総務省のCPI統計の報道発表資料に毎回アップデートされておりますが、あの数字見るとマジで目ん玉ひっくり返りますわ。
『長らく低空飛行が続いた後、 2022年から 2023年にかけて輸入物価の上昇を背景に急上昇しました。その後、昨年前半にかけていったん落ち着いてきましたが、第2ラウンドとも言える人件費などの価格転嫁の動きによって、昨年6月以降再加速し、足もとまで年率で3%程度のインフレが継続しています(図表5)。』
まあ要するにこれって前月比をみるというのもそうなんですが、「CPIの原数値をちゃんと見ろ」ってお話でして、2022年から上がりだしているCPIの2020年基準で見た場合に今いくらの絶対水準にあるのか、って考えたらエライコッチャでございますがなという話っだし、CPIこれだけ上がってるなら賃金って相当上がらんとそもそもチャラにすらならんという世界な訳で、ゼンネンドウゲツヒガーとそっちだけ見ているのは最早そういう時代ではないって思うので田村委員のこの指摘って大変に共感する訳ですよ。
・物価の論点その2:サービス価格が過小評価されており実際にはもっと強いじゃろという話
『第二に、賃金の販売価格への転嫁の状況を確認するうえで重要なサービス価格の動きです。』
ほいな。
『サービス価格の上昇率は、表面的には、前年比で2%をやや下回っています(図表6)。ただし、サービスには、構造的に一般物価の動きから大幅なタイムラグを有するとみられる家賃
や公共サービス が含まれており 、これらがサービス価格の上昇を下押ししていることに注意が必要です。』
脚注の数字が半角なので拾えていませんが、妙なスペースのある家賃と公共サービスについての脚注がありまして、
『(脚注1)わが国の消費者物価指数の家賃の上昇率が低い背景として、家賃の引上げにかかる制度的なハードルが高いこと、継続家賃を含めた調査であるため居住者入れ替え時に行われた新規家賃の上昇の影響は一部に限られることなどが指摘されている。』
『また、賃貸住宅の経年による品質劣化の調整を行っていないことも下方バイアスを生じさせている。』
この2点でたぶん結構な下方バイアス出ていると思うんですよね。
『こうした影響は、民営家賃の価格だけでなく、ウエイトの大きい持家の帰属家賃の価格にも反映されることにも留意しておく必要がある。』
ということでして、この点ではかつて石田審議委員(奇しくも田村さんと同じく住友銀行出身)が帰属家賃を除いたベースでの物価を見るべき、という話をしていたことがありますな。
さらに脚注の公共料金ですが、
『(脚注2)消費者物価指数の公共サービスには、国や地方自治体が法律などで価格を規定する法定料金・条例料金の品目に加え、価格改定に国の認可を要する認可料金や価格改定を国に届け出る届出料金の品目も含まれる。』
でもってここでもさらに指摘があって、
『わが国の公共料金が上昇しにくい原因の一つとして、公営企業の収益に対する補助金の投入が常態化し、営業費用や設備の減価償却費用が料金に反映されにくいことが指摘されている(
2016年 7月展望レポートのBOX4 )。』
おおおお!2016年の展望レポートとは熱い。
『なお、足もとは、火災・地震保険料や自動車保険料(任意)の価格上昇が公共サービスの価格の上押し要因となっているが、これらを除くと、上昇率は低い伸びにとどまっている。』
なるほどなるほど(保険料は上がっていますもんね)。
さらに、
『(脚注3)サービス物価に占めるウエイトは、民営家賃(帰属家賃を含む)
36%、公共サービス 25%となっている。』
ということで、下方バイアスがあるものが36%、構造上上がりにくいのが25%ある訳で、それを含めたままで「サービス価格ガー」って言うのはどこからどうみても「利上げを先送りするためにわざと弱めの数字が出やすい指標を使って説明するという毎度の大本営の詭弁ムーブ」という事になるわけでして、田村委員は以下
『(挨拶本編に戻ります)これらを除いたサービス価格、私は「市場ベースのサービス価格」と呼んでいますが、この推移をみると、近年2%を超える伸びが続いており、更に、足もとでは、家賃や公共サービスの価格も徐々に上昇を始めています。』
さようでございますな。
・物価の論点その3:食品価格の動向は一時的ではないし影響も持続的ではないかという指摘
『第三に、生鮮食品の価格動向です。』
この指摘は生鮮食品の動向を丸無視スルーし続ける大本営にとっては結構な抜刀だし、それよりも植田和男先生この論点について金融論の我が国の第一人者の一人としてどうお答えするのでしょうか、と小一時間問い詰めたい訳ですが。
『生鮮食品の価格は一時的な要因で大きく上下に振れ、一過性のものであると考えられることから、物価の基調をみる際に除かれることが多くなっています。実際、
2021年頃までの生鮮食品の価格推移をみると、上下に振れ幅が大きいものの、均してみれば物価全体とおおむね同程度の動きとなっていました(図表7)。』
図表7は面白い(興味深い)ですね。
『しかし、 2022年初頃以降は、振れ幅が大きいのは相変わらずですが、均してみても物価全体を大きく上回って上昇しています。』
物価が目に見えて上がりだしたウクライナ侵攻以来ですわな。
『この背景として、@人手不足等による供給力の低下、A各種コストや光熱費、運送費の上昇、B作り手の人件費上昇、などが挙げられており、一過性のものとは言えません。』
>一過性のものとは言えません
ですよねー。
『更に、気候変動に伴う天候不順の影響も大きく、この押し上げ要因は今後も継続するとの指摘もあります。』
はい。
『生鮮食品以外の食料についても、同様のことが言えます。』
ですわな。
『生鮮食品やその他の食料の価格上昇は家計に大きなネガティブ・インパクトを与えるうえ、家計の予想インフレ率に大きな影響を与え、持続的な物価押し上げ要因となり得ます。したがって、生鮮食品の価格の動きについても、十分に目配りしていく必要があると考えています。』
>家計の予想インフレ率に大きな影響を与え、持続的な物価押し上げ要因となり得ます
>家計の予想インフレ率に大きな影響を与え、持続的な物価押し上げ要因となり得ます
>家計の予想インフレ率に大きな影響を与え、持続的な物価押し上げ要因となり得ます
ですよねーーーーーーー
・物価の論点その4:予想物価上昇率というお気持ち物価のコンポーネントに関してもきっちりと抜刀
さらに抜刀は続きまして、
『第四に、このような中、中長期的な予想物価上昇率がじわりと上昇してきていることです(図表8)。』
この図表8で日銀お手盛りのどう見ても計算上の下方バイアスマジックが仕込んである「合成予想物価上昇率」を持ち出してこないのはチャーミングです(^^)
『短観における企業の物価全般の見通しは、緩やかに上昇しており、5年後の予想は2%を超える姿が続いています。家計について、日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」の結果では、バイアスがあるため水準自体は割り引いてみる必要がありますが、中央値でみた5年後の予想は2%を大きく超え、平均値でみた予想は足もとも上昇を続けている状況です。』
んだんだ。
『専門家の見通しは低めにとどまっていますが、私としては、実際の経済活動の主体である企業や家計の予想物価上昇率を重視すべきと考えており、』
何とかストにまで抜刀されておる、いやまあESPフォーキャストの馬鹿みたいな外し具合見たらそりゃ抜刀するわと思いますので全く同感なのですが、
『これは既に2%程度に達していると捉えています。』
キタコレ!というか当然ですわなワシもそう思うもん(ただの野性の山勘ですがw)
でもって最後が無茶苦茶重要な論点だとアタクシ思うのですけれども、
『予想物価上昇率が2%程度で安定している欧米と異なり、低い水準から上昇してきたわが国において、これが更に上振れしていってしまわないか、注意が必要だと考えています。』
おおおおおおお!
いやまあ拙駄文でも申し上げたことがあるとは存じますが、日本ってゼロ近傍にあった期待インフレを2%に持ち上げて2%でアンカーさせようってやっている訳で、神風吹いて物価が上振れしたのと構造的に供給問題が生じているのとがあって物価が上がりだした訳ですが、欧米と違って日本の場合は現状で「インフレ期待が不安定化している」状況(そうじゃなかったらインフレ期待が2%に上がらないんだからそれ自体は仕方ない)に有るわけでして、物価がクソ上がりしてインフレ期待が上振れするんじゃないか、って欧米は大金融引き締めを実施した訳ですが、日本って現時点でインフレ期待不安定なんだから、それが2%で止まる保証なんてどこにも無いわけで、アクチュアルの物価が上振れし続けている時点で「期待インフレの上昇が2で止まらないリスク」についてもっと考えるべきだという話になると思いますし、今回田村委員がこうやってきっちり指摘しているのは重要だと思います。
てな訳で以下田村委員の金懇挨拶の大変に大事なお話は続くのですが、この先は米国関税政策の影響、企業の価格設定行動の変化、という話になりまして、アタクシのショパンの事情によりまして時間が足りなくなりそうなのでキリの良いところで月曜に続くとしますが、ちょっとネタが渋滞しているので週末書き溜めて月曜に一挙放出でもするかとか構想は練っておきますすいませんすいません。
2025/06/26
お題「国債買入の話が財政従属感満載で頭が痛い6月会合主な意見(抜刀斎金懇は明日以降で勘弁)」
ほれほれ来た来た
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-25/SYF6TVDWX2PS00
パウエルFRB議長、銀行準備預金への利払い廃止は費用削減にならず
Alex Harris
2025年6月26日 2:27 JST
→「費用削減になるというのは錯覚。事実ではない」−議会証言で発言
→準備預金が限られる状態に戻るのは「長く不安定な道のりになる」
『米共和党のテッド・クルーズ上院議員(テキサス)は今月、金融当局による銀行への利払いを廃止するよう、共和党上院議員らに提案した。これにより今後10年間で1兆1000億ドル(約160兆円)の削減が可能と主張しており、党内の保守派議員から賛同する声も上がっている。』(上記URL先より)
弊駄文で以前も何回か指摘したとは思うのですが、この利払いの問題はもちろん莫大な費用ってことですが、それは別の言い方をすれば「統合政府による財政支出」でもある訳で、金融引き締め効果を(どの程度かは兎も角として)オフセットしているという問題があるんですよ。でもってバランスシートをランオフしている米国ですらこれなんですから、日本でインフレ上振れして引き締め的な金融政策をしようとする場合にはこの付利が大変な悪さをする可能性が否定できない、というのが実はバランスシートの大問題なんですけど(この前の総裁記者会見で確か東洋経済の記者の人だったと思いますが、ちらっと質問していました)、その点が論点になろうとしないのが非常に不可解(どころかウッチーは金融学会で「金利と関係なくバランスシート政策ができる」とかトンデモナイことを言ってました)なんですよね。
・・・・・思わずマクラの積りだったのに大演説になってしまいましたが、これは非常に重要な論点なのにしらっと目をつぶってみて見ぬふりをしている「全電源喪失はあり得ません」レベルの話ですのでまたいずれネタにしたいと思います。
ということで昨日は主な意見と抜刀斎金懇という何で同時に入れるのよというイベントがありましたがまずは主な意見の方から参ります。
〇6月会合主な意見:インフレ期待の議論が無いですね&国債買入の話が財政従属感満載で頭が痛い
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2025/opi250617.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2025 年 6 月 16、17 日開催分)1
・経済のパートでは「企業ヒアリング情報では」をみましょう
『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』ですが、企業ヒアリング情報では云々、というのを鑑賞しますと・・・・・
『・米国の関税政策の影響について、中小企業を含む幅広い業種の企業へのヒアリング結果をみると、判断材料に乏しく方向性を見出すことが難しい状況の中で、判断を留保する先が散見される。センチメントの下押し圧力になることは間違いないが、実体経済への影響の大きさについては、今しばらく時間をかけてみていかざるを得ない。』
『・ 企業のヒアリング情報では、米国の関税政策を受けても、@人手不足の中、賃金は引き続き上げていく、ADXや効率化投資など、高水準の設備投資は継続的に実施する、B株主の期待に応えるため、収益増強のためには投資をしっかりと行っていく、とする企業が多い。』
てな訳で、日銀が4月展望でいち早く見通しをクッソ下げたのとは対照的な話になっていまして、そもそもお前らの4月展望レポートは何だったのか、という話に(今後の関税交渉が酷いことにならない限りにおいて)なってもおかしくないんですよねこれ・・・・・・・
まあ、
『・4月や5月のハードデータは比較的しっかりしたものが多いが、関税政策の影響の顕在化はこれからと考えられる。』
ってのはその通りでしょうから、この辺は今後の展開次第という話ではありますな。
・物価のパートだが碌に話が無いし「基調的物価はインフレ期待」なのにインフレ期待の話は碌に無いし
『(物価)』を見ますと「基調的物価」がただの「お気持ち物価」である、というイカサマが良くわかるというものでして、そもそも物価のパートに意見が5個しかない(うち1個は必ず大本営発表が入るので実質4個)訳でして、それだけでもトサカに来るんですけど、この前の金研国際コンファランスで植田総裁って、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250527a.htm
『基調的な物価上昇率を評価するために注意深くモニターしている指標のひとつは、予想物価上昇率です。』
『図表5が示しているように、総合ベースでみた物価上昇率と基調的な物価上昇率との間に大きな乖離があるためです(ここでは、予想物価上昇率を基調的な物価上昇率の近似として用いています)。』
(以上この部分だけ直上URL先の5/27金研国際コンファランスでの植田総裁スピーチ(の邦訳)より引用)
って言ってるんだから、どっからどう見たって基調的物価はインフレ期待が重要、って話になるはずなんでうしょね。
じゃあ当然ながら基調的物価とやらがどうなっているのか、という議論が行われ、その中でインフレ期待がどうなっているか、というのを詳細に見極めていく、という作業が行われ、それに関する所感が「主な意見」に出てきて然るべきなのですけれども、期待インフレに関する議論が行われているような感じが無いんですよね、つまり・・・・・・
『・ 消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むとみられ、下振れリスクも大きいと考えられる。その後は、成長率が高まるもとで徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』
これは大本営なのでスルーしておきまして、
『・ 通商政策を巡る不確実性は引き続ききわめて大きいが、国内面では、賃金情勢は堅調であり、消費者物価は若干上振れ気味で推移している。』
上振れキタコレ、ではありますがアクチュアルの物価の話ですわな。賃金情勢に関してはまあ企業行動って話ではあるので若干期待インフレに関連する話ではありますけど。
『・ 米価格は前年比約2倍に上昇し、消費者物価を相応に押し上げているほか、関連品目の価格にも波及している。主食である米の価格はインフレ実感やインフレ予想に影響を及ぼし得るため、その動向を注視したい。』
こちらはアクチュアルの話ではなくて今後の話としての期待インフレ動向の話ですけど、期待インフレに関する言及がありましたね。
『・ 欧米・中国・新興国が揃って財政金融両面で緩和策に傾く中、予想外の経済押し上げ・インフレ圧力が生じる可能性もある。』
こちらも上振れで、実はこれを見るとインフレ上振れおよび上振れリスク(さっきの期待インフレ上振れの可能性を指摘している人)に言及しているのが3人もいたりするんで、それはそれで重要な話ではあります。
『・ 物価は上振れているが、賃金からサービス価格への波及には頭打ち感がみられる。』
まあこれは若干基調的物価チックな話ではありますが、いずれにしましても「基調的物価の動向について点検している」とはとても思えない意見の数だったりする訳でして、これすなわち日銀大本営の持ち出している「基調的物価」ってのは単純に「利上げを先送りするために使われているお気持ち物価」って奴じゃなかろうか、という香りが濃厚に漂ってくるわけですな。
よく考えてみたら2022年2月3月(要はロシアのウクライナ侵攻)以降アクチュアルの物価がホイホイと上がる中で、当初は「コアコア物価ガー」とか言ってたのが「賃金ガー」に替わり、そのうち「賃金と物価の好循環ガー」とか「サービス価格ガー」とか言い出し、でもって最近になるとこの「基調的物価ガー」と言いながら政策金利の調整をクソ粘りする言い訳にご利用されているというのが黒田末期以降の動きな訳でして(その合間に不透明感だの米国下振れリスクだの金融市場が不安定だのというハトハトチキン音頭も入る)、まあ結局のところお前ら基調的物価とか言ってるけどそれただの目くらましはろ、などと弊駄文如きが煽っても蛙のツラに何とやらではありますが、「お気持ち物価」ってのもなんか最近は人口に膾炙しているっぽいように思える(弊駄文調べによる笑)ので、7月展望辺りでハンギレ王子となって何か尤もらしいものを展望レポート背景説明のコラムあたりにぶっこんでくるに1万パウエルと申し上げておきましょうwwwwwww
まあお気持ちはお気持ちなんでなんかの拍子にジャガーチェンジ、というのは普通にアリエールな訳でございまして、よくよく考えてみたらマイナス金利解除だけは事前(1月)にあれも12月対比で言えば盛大なジャガーチェンジでしたが、一応予告ホームラン打ってきましたけど、25bpへの利上げだってあれ輪番縮小の具体案公表だけだと思ったらいきなり打って来たし、50bpの利上げに至っては直前のMPMから見たらどの面下げて利上げするんだっていうジャガーチェンジで、本当に直前になってから強引な地均しが行われた、という実績があるので、まあ何があるのかは本来はこっちも決め打ちしにくいなあというのは忘れてはいけませんな。とは言いましても・・・・・・・・・
・まあ金融政策の話で政策金利の話が碌すっぽ無い時点でやる気は感じられませんなあ
次の『U.金融政策運営に関する意見』のパートですけれども、前半が金利調整の話になるのですけれども、これがまた大本営含めて5つ(さっきの物価と同じ)しかない、という時点でお前ら利上げする気あるのかと小一時間問い詰めたい訳で、そういう話を「主な意見」に乗せようというような感じになっていないんじゃろうな、というのは把握しました(個人の妄想です)。
『・経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる。そのうえで、こうした見通しが実現していくかは、不確実性がきわめて高いことを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要である。』
これは大本営なんですが、次の意見でもあるんですけどね、
『・メインシナリオに沿ったとしても、成長ペースが鈍化し、基調的な物価上昇率の改善がいったんは足踏みする姿を想定していること、通商政策を巡り、大きな不透明性・ダウンサイドリスクがあることから、今は、現在の金利水準で緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりと支えるべきである。』
関税政策の話がまだ始まったばかりに近い状態(つーてまあ2か月半くらいにはなるけど)なので一旦様子見、というのは(物価およびインフレ期待が上振れているからそんなに待ってるのヤバくねえかとはアタクシは思うのですがまあそれはさておきまして経済だけで言えば)まあそういう話にはなるじゃろ、とは思いますけれども、そもそも論として4月展望でメインシナリオを下げた前提がどこにあるのか、ってのがフワフワとした書き方になっているので、関税交渉がどの水準で落ち着くとシナリオ通りなのか上振れ下振れなのかが良くわからんのよね。困ったもんです。
『・物価がやや上振れているとはいえ、米国関税政策や中東情勢に伴う景気の下方リスクを勘案し、金融政策運営は現状維持が適当と考える。』
この後の方でどう見ても抜刀斎の意見があるので、それ以外での物価上振れさんの意見ですね。まあそれで大丈夫かというのはありますが、意見としてはわかります。
『・ 先行きの不確実性が非常に高く、経済情勢等を見極める必要があり、政策金利は当面現状維持が適当である。』
まあ物価を無視すればそういう見解になりますわな。
『・ インフレが想定対比、上振れて推移する中、たとえ不確実性が高い状況にあっても、金融緩和度合いの調整を、果断に進めるべき局面もあり得る。』
これはどう見ても抜刀斎でして(って今日は時間が足りなくて抜刀の鑑賞が中々できないのがいただけない訳ですがorz)物価上振れだから緩和の調整も必要じゃないの、というインフレ目標政策やっているんだからよく考えたら至極ご尤もなお話をしておりますが、まあこれ見ますと一応物価上振れを見ているのが3名いて、うち1名は政策金利調整に積極的、1名はやや親和性があるけどもう1名と思われる人は金利にノーコメントなので特にそこまでは考えていないって感じですかね。でまあ残りは利上げやる気無し無しではあるのですが、前述したようにこいつら突然のジャガーチェンジがあるからそこだけは要注意、って感じですかね。
・長期国債買入に関する議論がハトハトチキンの財政従属市場従属過ぎてひどすぎる件について
後半が国債買入のパートでして、なんと12個もあるという満艦飾状態。
『・ 長期金利がより自由な形で形成されるようにするためには、国債買入れを更に減額していくことが望ましい。一方、国債買入れの減額が進展する中、今後のペースが速すぎると、市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性もある。減額計画の策定においては、両者のバランスを勘案する必要がある。』
これは大本営なのでパス。
『・ 決定した国債買入れの減額計画は、金利形成を基本的に市場に委ねつつ、急激な金利変動によって経済・物価に悪影響を及ぼすことを避けるための措置である。財政への配慮ということでは全くない、という点はしっかり説明していく必要がある。』
どう見たって財政従属でしょwwwwwwwwwww
『・ 日本銀行の国債保有比率はできるだけ速やかに引き下げることが望ましいが、2019
年に米国が量的引き締め(QT)を停止せざるを得なくなったように、急ぎすぎても却って調整に時間を要することになりかねない。購入額をいったん大きく減らしてそれをまた増やす形では、途中で市場の混乱を招く可能性を不必要に高めかねない。』
すげえ尤もらしい事を言っているけど、2019年の米国と今の日銀のバランスシートは状況が全然違うじゃろという話で、ただのチキンな訳でして、トランプのTACOならぬUACOって奴ですかwwwwwww
『・ 市場機能は回復途上であるため、国債買入れ減額を継続する必要がある。わが国経済の弱い回復力や先行きの不透明感の高まり、市中の国債保有余力を踏まえると、リスクマネジメントの観点から2026
年4月以降は減額幅を 2,000 億円に引き下げ、同年6月に中間評価することが適当である。』
>市中の国債保有余力を踏まえると
>市中の国債保有余力を踏まえると
>市中の国債保有余力を踏まえると
・・・・・それを踏まえて国債買入を高水準で継続しよう、という発想が財政ファイナンスっていうんですけどw
『・ 国債買入れについては、よりスムーズな政策運営の観点から来年4月以降の減額幅を縮小することが望ましい。しかし、それは金融政策運営スタンスの変化を意味するわけではない。』
「よりスムーズな政策運営の観点から」とかもはや意味不明。お前ら何の議論してたの???
『・これまで多額の国債を買入れてきた日本銀行が、買入れを減額することによって、市中への国債供給が増加する。この点を踏まえれば、今次局面は過去と比べて有数の市中への大量国債供給局面とも考えられる。市場の不安定化回避のため、過去の国債供給量も念頭に減額幅の調整や市場の受容状況の見極めが必要である。』
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)
節子、それは完全に今までの国債買入が財政ファイナンスなのを認めたうえで財政ファイナンスを継続せざるを得ないっていうのマーライオン並みにゲロっておるぞな。
『・フローの国債買入れの減額については、最終的な着地点に向けて、次のフェーズである
2026 年度は、より慎重に進めても良い。加えて、最適なバランスシートの大きさについて、資産・負債の両面から考えていく必要がある。』
そもそもバランスシートの最適化が必要なんだから、フローの国債買入はバランスシートが適正規模になるまではゼロじゃろ(FED方式でバランスシートの縮小ペースの調整での少額の再投資は行うにしてもあれは理念的にはゼロですからね)と思う訳で、最終着地がゼロじゃないってのが話としてそもそもおかしいし正常化ができていないしQQE脳から抜けてない訳ですよ。まあそれはジャンキーになって涎垂らして道端に転がっている風情の債券市場の中の人たちもQQE脳なんで政策委員に悪態ついてる場合でもないけどorzorz
『・長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであり、可能な限り早く、日本銀行の国債保有残高の水準を正常化するべきである。これにより、金融市場のショック吸収力を一刻も早く高めておくことが重要である。』
今日ネタにしている時間が無いのですが(すいませんすいません)抜刀斎の金懇でもこの点の言及がありましたのでどう見ても抜刀斎。
まあ市場云々もあるのですが、そもそも巨額のバランスシートを抱えたままでは物価安定目標を達成した後の「普通の金融政策」の運営上支障をきたすし、支障をきたすと思われたら市場が反乱起こしたり、ひいては一般のインフレ期待のアンカリングができなくなる可能性だってあるんだから、バランスシートの縮小を早期に進める、まで踏み込んだら大抜刀なのですが、もしかしたらこの次の意見が上記意見の続きになりますかしら、
『・ 超過準備はきわめて潤沢な状況にあるとみている。したがって、国債買入れの減額を粛々と進めて日本銀行のバランスシートを正常化させていくことは必要である。』
ということで抜刀斎の抜刀パート2かも知れないなと思いました。この先ちょっとだけバランスシート規模の話になりますが、
『・ 国債買入れの減額については、今後、その着地点をどう設定するのかを、日本銀行のバランスシート縮小の行方とあわせて、長期的な視点で検討する必要がある。』
いや着地点は適正なバランスシート規模に戻るまではゼロ(微調整の買いはあり)じゃろ、としか思えないのですが、
『・ 今後、例えば月間の国債買入れ額が 1 兆円程度にまで減少すれば、日本銀行の動きが市場で話題になることもなくなるのではないか。買入れ額をゼロにすることに強く拘ることは不要と考えている。』
・・・・・・・・・お前は何を言ってるんだ??????
『・超長期ゾーンのボラティリティ上昇がイールドカーブ全体に波及し、意図せざる引き締め効果が市場全体に及ぶ可能性もある。安定した市場のもとで形成されたイールドカーブは重要な金融インフラである。当局間で十分に意見交換し、市場の安定に努めていく必要がある。』
って話なんですが、そもそも超長期金利が上がっているのは「日本の基礎的条件が超長期での国債発行を段々難しくするような状態になりつつある」ってのを示していて、これまではQQEだのYCCだのと言って調子に乗りまくって日銀が馬鹿買入をしていたから、この間の日本の基礎的条件の変化について市場が反応できなかったのが、インフレ目標達成するとかそういう状態になる中で、QQEだのYCCだの出来なくなってみて、これまで蓄積されていた基礎的条件の変化が何年分纏めて出ている、ってだけの話じゃろと思うので、「当局間で十分に意見交換し、市場の安定に努めていく必要がある」っての別に意見交換するなとは思わないけど、これもやり方とか出し方を間違えれば「財政ドミナンス」になる話な訳ですな。
ということで、今回の「2026年以降の長期国債買入ペース減額」は「市場安定」の美名のもとに財政ドミナンスがインフレ状態になってきているのに全然改善されない、という恐ろしい事を示しておられるわけでして、それはインフレのさらなる上振れか為替の大幅な減価(または合わせ技)で後日お勘定が回ってくるという懸念がぬぐえませんな、というお話でした(個人の偏見です)。
#つーことで抜刀斎の金懇は明日で勘弁
2025/06/25
お題「パウエル議会証言冒頭挨拶は「インフレの持続化の有無」が焦点/20年国債入札(メモ)/日銀謹製基調的物価」
おー
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250624/k10014842841000.html
トランプ大統領 “イスラエル 爆弾落とすな”と警告
2025年6月24日 21時49分
〇毎度の如く寝起きだがパウちゃん議会証言(の冒頭部分)を拝読
直近で一部のFED高官から”さゆりムーブ(なんのことだかわからない方は2013年3月7日の金融政策決定会合の議決内容を確認してください)”が発生しているようでございますが、はてさてパウちゃんはどうですかというとこですけど・・・・・
https://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/powell20250624a.htm
June 24, 2025
Semiannual Monetary Policy Report to the Congress
Chair Jerome H. Powell
Before the Committee on Financial Services, U.S. House of Representatives
まあ今回はそれなりに見ておかんとと思ったので(って先週のFOMCのオープニングリマークまだネタにしていないのですがすいません)経済のパートから読む。
ということで『Current Economic Situation and Outlook』から参ります。
・経済全般はハードデータは依然堅調だがセンチメントの悪化が気になりますと
『Incoming data suggest that the economy remains solid.』
一発目は経済は引き続きソリッド、としておりますな(まあFOMCがそういう認識なんだから当たり前だが)、以下現状認識なのでサラサラと参りますか。
『Following growth of 2.5 percent last year, gross domestic product (GDP)
was reported to have edged down in the first quarter, reflecting swings
in net exports that were driven by businesses bringing in imports ahead
of potential tariffs. This unusual swing has complicated GDP measurement.
Private domestic final purchases (PDFP)-which excludes net exports, inventory
investment, and government spending-grew at a solid 2.5 percent rate. Within
PDFP, growth of consumer spending moderated, while investment in equipment
and intangibles rebounded from weakness in the fourth quarter. 』
ハードデータに関しては民間最終支出が堅調であるという話をしていますね。
『Surveys of households and businesses, however, report a decline in sentiment
over recent months and elevated uncertainty about the economic outlook,
largely reflecting trade policy concerns. It remains to be seen how these
developments might affect future spending and investment.』
一方でセンチメントが弱くなってきているので、この状況が消費や投資にどう影響するかを見たいと。
・労働市場についてはいいことづくめといった感じの現状認識
『In the labor market, conditions have remained solid.』
労働市場のコンディションはソリッドと。
『Payroll job gains averaged a moderate 124,000 per month in the first
five months of the year. The unemployment rate, at 4.2 percent in May,
remains low and has stayed in a narrow range for the past year. Wage growth
has continued to moderate while still outpacing inflation. Overall, a wide
set of indicators suggests that conditions in the labor market are broadly
in balance and consistent with maximum employment. 』
労働市場は全体として完全雇用状態。
『The labor market is not a source of significant inflationary pressures.
The strong labor market conditions in recent years have helped narrow long-standing
disparities in employment and earnings across demographic groups.』
労働市場に関してはインフレの無駄な上振れ要因でもないし、労働市場が堅調なので格差も縮小とかイイハナシダナーな説明で問題の物価ちゃんに進む。
・物価に関してはニアータームのインフレ期待上昇という指摘(平常運転だが)
『Inflation has eased significantly from its highs in mid-2022 but remains
somewhat elevated relative to our 2 percent longer-run goal. 』
全体観としては「まだ2%よりもサムホワットエレベーテッド」ってのをいつも通りに述べまして、
『Estimates based on the consumer price index and other data indicate that
total personal consumption expenditures (PCE) prices rose 2.3 percent over
the 12 months ending in May and that, excluding the volatile food and energy
categories, core PCE prices rose 2.6 percent.』
コア指数は前年比2.6%の上昇。
『Near-term measures of inflation expectations have moved up over recent
months, as reflected in both market- and survey-based measures. Respondents
to surveys of consumers, businesses, and professional forecasters point
to tariffs as the driving factor. Beyond the next year or so, however,
most measures of longer-term expectations remain consistent with our 2
percent inflation goal.』
ニアータームのインフレ期待はここ数か月上昇していて関税云々のせいですよ、とまあ順当な説明ですね。
ということで経済のパートは終っていまして、まあ順当な説明をしていまして、特にこの先の景気がどうのこうのとか物価がどうのこうのとか、そういう方向感を出さないで淡々と現状説明をしていましたね。
次は金融政策。
・金融政策は想定通り「簡単に利下げしねえよ」ですがそのポイントは「物価上昇をワンタイムに留める」ですな
『Monetary Policy』に入ります。
『Our monetary policy actions are guided by our dual mandate to promote
maximum employment and stable prices for the American people.』
これはただのお経。
『With the labor market at or near maximum employment and inflation remaining
somewhat elevated, the Federal Open Market Committee (FOMC) has maintained
the target range for the federal funds rate at 4-1/4 to 4-1/2 percent since
the beginning of the year. We have also continued to reduce our holdings
of Treasury and agency mortgage-backed securities and, beginning in April,
further slowed the pace of this decline to facilitate a smooth transition
to ample reserve balances.』
ここまでが現状政策の説明。
『We will continue to determine the appropriate stance of monetary policy
based on the incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』
でもってここは「あんじょうようやっときますわ」と言ってるだけなのでご挨拶みたいなもん、次のパラに進みますと、
『Policy changes continue to evolve, and their effects on the economy remain uncertain.』
先の話になりまして、
『The effects of tariffs will depend, among other things, on their ultimate
level. Expectations of that level, and thus of the related economic effects,
reached a peak in April and have since declined. Even so, increases in
tariffs this year are likely to push up prices and weigh on economic activity.』
関税に関しては4月に想定されていたようなもっともシビアな状態ではなくなってきていますが、そうは言いましても(Even
so)関税引き上げは価格の上昇と経済の重石になりますわな、となって次のパラグラフ。
『The effects on inflation could be short lived-reflecting a one-time shift
in the price level. It is also possible that the inflationary effects could
instead be more persistent. Avoiding that outcome will depend on the size
of the tariff effects, on how long it takes for them to pass through fully
into prices, and, ultimately, on keeping longer-term inflation expectations
well anchored.』
関税の影響は一時的なワンタイムの価格シフトに留まるんじゃないかと思われますが、そうは言いましてもインフレの押し上げ効果がより持続的になる可能性もあります。でもってより持続的になってしまう、ということを避けるかどうかは、関税のサイズ、関税が価格にどのようにパススルーされるか、そして究極的にはインフレ期待が現状のようにマンデートに整合的な水準にアンカーされているかどうか、に依存します。
と、来ましてからの
『The FOMC's obligation is to keep longer-term inflation expectations well
anchored and to prevent a one-time increase in the price level from becoming
an ongoing inflation problem.』
インフレ期待をアンカーさせ続けて、その上でワンタイムの物価上昇圧力が持続的な将来のインフレ問題にならないようにする、というのがワシらの使命じゃが、というのが次のパラグラフの頭に有るわけですな。
『As we act to meet that obligation, we will balance our maximum-employment
and price-stability mandates, keeping in mind that, without price stability,
we cannot achieve the long periods of strong labor market conditions that
benefit all Americans.』
この使命を守らないと、結局は労働市場の悪化にもつながるわけで、と言っている時点でまあお察しの通りでそう簡単に利下げするかバーカバーカという話になると思われますが次のパラグラフに参ります。
『For the time being, we are well positioned to wait to learn more about
the likely course of the economy before considering any adjustments to
our policy stance.』
次のパラはこの一文でして、当面は今の政策金利水準で状況の推移を見るのが適切、というお話ですな。まあ順当順当。
でもって最後は
『To conclude, we understand that our actions affect communities, families,
and businesses across the country. Everything we do is in service to our
public mission. We at the Fed will do everything we can to achieve our
maximum-employment and price-stability goals.
Thank you. I am happy to take your questions.』
これはFOMCのオープニングリマークでも使ういつもの締めのご挨拶です、ということでまあ順当に利下げしねえよという話をしていますが、明らかに説明のポイントは「物価の上昇はするんじゃろうけど、それが一時的にとどまり、中長期のインフレ期待を引き上げることが起きないようにする」に絞っているので、結局は物価推移がポイントって話になるんでしょうね、と改めて確認できた感じでした。
〇あらあら20年国債入札ちゃんたら(メモ)
ロイターさん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/F4UIGTRLL5PCVBEFB6625R3ETE-2025-06-24/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、リスクオフの巻き戻しで 長期金利1.415%に上昇
ロイター編集
2025年6月24日午後 3:21 GMT+9
『[東京 24日 ロイター] - <15:10> 国債先物は続落、リスクオフの巻き戻しで 長期金利1.415%に上昇
国債先物中心限月9月限は、前営業日比5銭安の139円25銭と小幅続落して取引を終えた。トランプ米大統領がイスラエルとイランの停戦合意を発表したことを受けて投資家のリスク回避の動きが巻き戻され、安全資産とされる国債相場の重しとなった。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.0ベーシスポイント(bp)上昇の1.415%。』(上記URL先より、以下同様)
ということでしたが、
『また財務省が実施した20年利付国債入札は、「記録的な不調」となった前回5月の入札とは異なり、「辛うじて無難な結果」と受け止められたが、入札通過後も買いを入れる動きは限られた。』
って話ですが、事前にベンダーが集計していた足切り予想よりは盛大に悪い足切りという流れ入札でしたし、応札倍率がまずますっていうのをベンダー方面ではネタにされていましたが、あの応札倍率ってのは低い方は指標としてあてになりますが、高い方って今回の20年みたいに「入札が流れそうなので下の方にシャレで札を入れておきますか」みたいなケースとか、最近はそういうのあんまりないですけど、昔の中期ゾーンみたいに「誰がどう見てもこの水準で切れるしかないから足切りのところは多めに札をさしておかないと」みたいなケースもあるので、応札倍率高いのが即座にニーズが高いかというとそうではないんですけど、まあ一応応札倍率は悪くなかったという話らしいですね、知らんけど。
落札結果出た後は瞬間下がって戻ったと思ったらやっぱり下がるのかよ、となっていたと思うのですが、次第に持ち直してきまして結局、
『TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 0.73 0.739 0.008 12:44
5年 0.968 0.975 0.012 12:42
10年 1.428 1.435 0.026 12:42
20年 2.354 2.365 0.023 12:43
30年 2.925 2.937 0.021 12:44
40年 3.128 3.153 0.024 12:44』
長い方も持ち直して終了したので結果的にはセーフという感じになっていましたけど、思った以上に減額するというアナウンス効果で月曜とか20年カレントゾーンだけ強くひかせていたのは何だったんですか、という残念な入札ではありましたのでメモという事で。
まあアレです、今日は中期後半と長期と超長期後半(と物国)の輪番がありますので、じゃあ超長期後半の輪番結果ってどないなりますねん(なおその前に抜刀斎の金懇がある)というのを注目すればよいんですかね。うんうん。
〇日銀謹製基調的な物価ですがどう見ても2%達成にしか見えませんけどねえ相変わらず
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標
いつものようにエクセルデータをテキストにヘコヘコと貼り付けますが、ちょっと長めに今日は貼ってみます。
刈込平均値 加重中央値 最頻値
Jan-23 3.1 1.1 1.6
Feb-23 2.7 0.8 2.1
Mar-23 2.9 1.0 2.7
Apr-23 3.0 1.2 2.8
May-23 3.1 1.4 2.9
Jun-23 3.0 1.4 2.9
Jul-23 3.3 1.6 3.0
Aug-23 3.3 1.8 3.0
Sep-23 3.4 2.0 2.8
Oct-23 3.0 2.2 2.6
Nov-23 2.7 1.7 2.4
Dec-23 2.6 1.6 2.4
Jan-24 2.6 1.9 2.3
Feb-24 2.3 1.4 2.0
Mar-24 2.2 1.3 1.9
Apr-24 1.8 1.1 1.6
May-24 2.1 1.3 1.5
Jun-24 2.1 1.4 1.6
Jul-24 1.8 1.1 1.5
Aug-24 1.8 0.7 1.3
Sep-24 1.7 0.8 1.4
Oct-24 1.5 0.8 1.3
Nov-24 1.7 0.9 1.1
Dec-24 1.9 1.0 1.1
Jan-25 2.2 1.4 1.3
Feb-25 2.2 1.4 1.2
Mar-25 2.2 1.4 1.4
Apr-25 2.4 1.7 1.8
May-25 2.5 1.7 1.6
4月の年度替わり効果で最頻値までクソ上がったのは一旦下がった、とは言いましても普通に1%台後半ですし、加重中央値も反転上昇していまして、2023年水準を窺う、というよりは2023年って(物価が上がりだしたのが2022年ですわな)まだ加重中央とか最頻とかは出だしでは今ほど高くなかった訳でして(後半刈込平均3%とかまで来たら上がってきましたけど)、そういう物価高水準にまた戻っておるわけですわな。
ということで、こういうのを見ても「基調的物価は2%にまだ距離がある」とか寝言言ってるのマジでなんなのお前らって感じですし、日銀がずっと外し続けている物価見通しの「一旦2%割れになった後また上昇する」という「一旦下がる」が碌に下がらないのも反省しないのか、と思う今日この頃でして、物価面から日銀が十字砲火を浴びる日が来るようですと、そりゃもう利上げ待ったなしになるじゃろ、とは思うのですがはてさてどうなるか。
しかしまあ何ですな、ふと思ったのですが、日銀はそういう訳でニアータームの物価見通しを毎度「下がる下がる詐欺」状態になっているのですが、ゆうてこれ民間の何とかスト連中も同じような予想をして外し続けている(ESPフォーキャストとかがまさにそう)んですけれども、この背景っていうのは、要するに「期待インフレが結構な上がり方を示したから、マクロモデルを回して立てた物価見通しが下に外れ続ける」ということを意味している筈だと浅学菲才なアタクシは思う訳でございまして、だったら今回の物価上昇ってうっかりするとインフレ期待を一段と上げてしまってアカン奴になるんじゃないのか、というのが心配な訳ですけれども、もしかして日銀はインフレが高進して「日銀様何とかして下せえ」となるまで「汝人民飢えてタヒね」スタンスでぶっ走る気なんじゃないかという背筋の冷えることも妄想してしまいたくなったりならなかったりする今日この頃ではあります、ナムナム。
2025/06/24
お題「7月8月足辺りの短国が妙に強いのだが(備忘メモ)/5月会合議事要旨(その2)政策運営に関する部分を鑑賞の巻です」
ほほう
https://www.cnn.co.jp/usa/35234603.html
トランプ氏が「2週間の猶予」を公表するよう指示、攻撃計画隠すため 情報筋
2025.06.23 Mon posted at 12:25 JST
『情報筋によれば、トランプ氏は、イランの核施設への攻撃について最終的な決断を下したとする報道に不満を募らせ、2週間という猶予を示すことでイラン側を混乱させて、攻撃計画を隠すことができると考えたという。』
『トランプ氏から指示が出されたのは19日で、かつての側近スティーブ・バノン氏と昼食をとる直前だった。バノン氏は公の場で、イランへの関与について懐疑的な姿勢を示していた。その後、ホワイトハウスのレビット報道官が記者団の前に現れ、トランプ氏の指示に従った。この発表は、トランプ氏が攻撃についてまだ決断していないことを世界に向けて示唆するものだった。』(上記URL先より)
パールハーいやなんでもありませんorz
〇何か知らんけど短国の7月8月あたりの引けが強いのだがこりゃなんじゃろ
マジで教えてエロい人!って感じなのですがまずは事実関係をメモっておきます、
売買参考統計値
例によって3M短国の末裔だけ並べますが実際には6Mと1Yの末裔がちょいちょいとあります。
(6/23引値)
国庫短期証券1299 2025/07/14 平均値単利 0.430
国庫短期証券1301 2025/07/22 平均値単利 0.350
国庫短期証券1302 2025/07/28 平均値単利 0.350
国庫短期証券1303 2025/08/04 平均値単利 0.350
国庫短期証券1305 2025/08/12 平均値単利 0.350
国庫短期証券1306 2025/08/18 平均値単利 0.350
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.350
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.370
国庫短期証券1310 2025/09/08 平均値単利 0.360
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.390
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.390←こちらが先週金曜入札のあったカレント
(6/20引値)
国庫短期証券1299 2025/07/14 平均値単利 0.430
国庫短期証券1301 2025/07/22 平均値単利 0.390
国庫短期証券1302 2025/07/28 平均値単利 0.400
国庫短期証券1303 2025/08/04 平均値単利 0.400
国庫短期証券1305 2025/08/12 平均値単利 0.400
国庫短期証券1306 2025/08/18 平均値単利 0.400
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.370
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.420
国庫短期証券1310 2025/09/08 平均値単利 0.410
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.410
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.390
てな訳で、月曜は3M近辺が強いって話をしたのですが、何がどうなっているのかはさっぱり分からんのですが、期内物の短い方が特にツエツエ蠅と化しておりまして、なんのこっちゃですがなという風情ではあるのですが、短い償還の方が急速に気配が強くなる現象というのも珍しいなあと。なんか強くなるなら9月末跨ぎの方が先に強くなっても良いのですが、とは言ってもまだ3Mカレントが9/22で9月末越えは6mと1yの末裔しかいないので玉が少ないってのはあるのですけど、こっちは(引用しませんでしたが)3mカレントが0.41とか0.39とかからお察しの通り0.4台半ばの水準でそっちがぶっ飛んでいる訳ではないのですな。
でまあ普段6月末ってのは四半期末の中では比較的どうでもいい四半期末扱いになるので、6月末跨ぎだからどうのこうのってそんなに意識しないのですけど、手前がクソ強いのは6月末跨ぎで何かニーズがある(四半期末だからだいたい規制資本がらみ)のかなとは何となく妄想はするのですが妄想しているだけ。
かなり大昔の話なので何年の事だったかも咄嗟に出てきませんが、かつてバーゼルがらみで「四半期末の総資産残高対比のうんたらかんたら」というのを意識したムーブが一部で起きたらいきなりGC市場が飛んでも無いことになった(総資産残高圧縮のために両建て解消ムーブが起きてGC市場が盛大にシュリンク)、という事案が6月末跨ぎの所であったりなかったりしたことがあるので、四半期末と言っても四半期末じゃないと舐めて掛かっていると時々そういうあっと驚くムーブが出てくるのですが、何らかの規制資本がらみなのか他の理由なのか、ただの気まぐれで買いが入っているのかは知らんですけれども、まあメモっておこうと思いました。
〇5月決定会合議事要旨(その2)
しゃーせん昨日の続き。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250501.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2025年4月30日、5月1日開催分)
昨日この手前までで終わってしまったので『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に参ります。
・別に「今の状況はどういう事になるか分からんのでとりあえず現状維持」でよかった筈なのですが・・・・
『次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針 について、委員は、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す」という方針を維持することが適当であるとの見解で一致した。』
でですね、
『多くの委員は、経済・物価見通しの下振れや不確実性の高まりを踏まえると、現時点では、緩和的な金融環境を維持しつつ、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を丁寧に確認していくことが適当であると指摘した。』
今回の判断で「下振れ」を入れたのが妥当だったのか、ってな話でして、4月末の時点ではどうなるか分からんという状態なのに、思い切って下振れハトハトを出した意味は何だったんでしょってなもんですが、昨日ご紹介したように、経済物価認識のパートが一部の委員を除いてとんでもなくハトハトチキンだったので、まあ当然ここでも「経済物価見通しの下振れ」が入っています。
でですね、経済物価情勢の下振れなら下振れでも良いんですが、じゃあ(6月会合声明文と記者会見での説明ではそういうのは無かったですけど)何でこの前のBBGでは「日銀では物価の上振れを意識してる」みたいな話が舌の根も乾かぬうちに出てくるんだという話でして、結局おまいらの経済物価見通しは政策判断の説明の後付けで見通しを立ててないのかと小一時間問い詰めたくなる訳ですよ。まあそういう意味で7月展望もそうですが6月の議事要旨と、その前に明日「主な意見」が出ますからそこも確認したいですけど。
『何人かの委員は、現在の実質金利はきわめて低い水準にあり、これを維持することで、経済をしっかりと支えていくことが重要であるとの見解を示した。このうちの一人の委員は、金利の下限制約から脱却して1年以上経つが、経済と物価はしっかりしており、現在の金融政策スタンスは、とても緩和的な状況にあると付け加えた。ある委員は、1月に決定した政策金利引き上げの影響も、確認していく必要があるとの見解を示した。別のある委員は、米国の関税政策の展開がある程度落ち着くまで、取りあえずは様子見モードを続けざるを得ないと述べた。この間、一人の委員は、最近の関税政策により、企業における行き過ぎたコストカット、賃上げ・投資の抑制や産業の空洞化に陥る可能性も考えられることから、企業マインドや倒産の傾向に変化がないか注視する必要がある
との見方を示したうえで、経済への影響を慎重に見極めるため、現在の調節方針を維持することが適当であると述べた。』
ということでして、これよくよく読みますとあくまでも「関税の影響、特に関税政策によって企業の価格設定や賃金設定の行動が下方屈曲しないか、を見極めたい」って話で、それはまあ言いたいことはわかる(ただしアタクシ的には既に基調的物価が2%を超えているんじゃないかと思っているので待っている余裕はそんなに無い、と思っていますがそれはアタクシの感想なのでさておきまして)のですが、「関税政策の経済物価への影響、特に企業や家計の行動が下方屈曲しないかどうかを見極めたいので様子見」だったら別に初手からそういう説明をメインにすれば良いだけのことで、なんも経済(はまだ分からんでもないが)物価(上方修正上振れリスクからのドテンが酷すぎ)見通しをあんなに盛大に修正しなくたってエエジャロとしか思えないんですよね。
・見通しを下げているのに「先行きの方向性は変わらん」というのが如何にも訳わからん事になるわけですよ
でもって次のパラグラフが先行き金融政策ですが、
『先行きの金融政策運営について、委員は、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当との見方で一致した。』
見通し下げてリスク認識も下げているのに先行きの話が同じってのもよくよく考えてみたら妙ですわな・・・・・
『何人かの委員は、現在の実質金利が大幅なマイナスであり、かつ、先行き2%の「物価安定の目標」を実現する姿になっていることを踏まえると、方向としては、これまで同様、政策金利を引き上げていくのが適当であるとの認識を示した。』
ってな話だが、先行き2%達成云々って作文の世界ですからねえw
『このうちの一人の委員は、健全なバランスシートなど、日本企業の財務体質が過去と比べて大きく改善している点も認識しておく必要があると述べた。』
まあその分のツケが政府に行ってますがqqqq
『ある委員は、「物価安定の目標」の実現に向けて最も重要なのは、企 業の賃金・価格設定行動や企業や家計の予想インフレ率の動向であるが、これらが以前の賃金・物価が上がりにくい頃の状況に戻るリスクは小さく、2%に向けて上昇してきた基調的な物価上昇率が下方に屈折してしまう可能性は小さいとの見方を示した。』
ちなみにアタクシも同感です。というか「基調的物価」がインフレ期待ってこの前植田さんが講演で言ってたんだから、もうちょっとインフレ期待の話をしてないとおかしい訳で、そういう点から見ても日銀のいう「基調的物価」って説明用のお気持ち物価ではあるけど、政策運営の時にその話まともにしているのかというのが疑問で、これすなわち何時もの「説明に困ったら動いたり無くなったりしてしまうゴールポスト」なんだと思います(個人の偏見です)。
・結局関税政策次第ですよという話がその先に続きまして・・・・・
次のパラグラフに参ります。
『そのうえで、多くの委員は、経済・物価の見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要であると指摘した。』
予断を持たずにって言ってますが一回下がってまた上がる、というような器用な予断をもって物価見通し毎度出して毎度外しているのどこの誰でしたっけw
という悪態はさておき、
『ある委員は、前提となる各国の交渉の帰趨を含めて、不確実性がきわめて高い中で、見通し自体が上下に変化しうるため、見通し実現の確度やリスクを見極めていく必要があるとの認識を示した。一人の委員は、今回の経済・物価見通しの確度は従来と比べて高くはないとの見方を示したうえで、先行き、見通しの上振れ・下振れ双方の可能性を点検し、適切に政策を運営していく必要があると述べた。』
物価見通しっていつも外していますので確度が従来より高いも低いも無いと思いますがwwwwwww
『別の一人の委員は、米国経済減速から利上げの一時休止局面となるが、米国の政策転換次第で追加的な利上げを行うなど、過度な悲観に陥ることなく、自由度を高めた柔軟かつ機動的な金融政策運営が求められるとの認識を示した。』
過度な悲観キタコレ
『また、別のある委員は、サプライチェーンの毀損などにより経済が下押しされると同時に物価が上押しされるような状況となれば、米国と比べて予想インフレ率がアンカーされていないわが国では、金融政策での対応がより難しくなる可能性があると指摘した。』
難しいのはそうなんだがじゃあその際にどうしろって話だったのか、というのを何で書いてくれないんでしょうか(まあいわなかったんだったらシャアナイけど)。
・情報発信について(その1)ベースラインシナリオを下げた理由についてのわが妄想
次のパラグラフは、
『委員は、金融政策運営に関する情報発信のあり方についても議論を行った。』
から始まるのですが、
『何人かの委員は、経済・物価の見通しが上下双方向で大幅に変化しうるもとでは、先行きの政策金利のパスは、中心的な見通しのもとで予想されるものから変わり得ることを丁寧に説明していくことが重要であると指摘した。』
だったら何で「従来の見通しは一旦維持しますが、経済の下振れリスクは関税政策次第でメッチャ高いし、物価のリスクは経済コケると物価にもマイナスだと思います」って言って「だから先行きの政策金利パスはこれからの進展次第でどうなるかって話なんですよ」って説明すればいいものを、なぜか知らんが見通しを下げるという技を使う訳ですよ。まあこれに関してはワイ的には一つ仮説はあるんで後程。
『また、ある委員は、様々な不確実性の存在を前提としつつも、今回示した中心的な見通しのもとでは、2%の「物価安定の目標」は、後ずれはするものの達成できるという見通しがあり、その見通しに立つのであれば、これまで同様、政策金利の引き上げにより金融緩和の度合いを調整していくことが適当であるという、現時点での日本銀行の基本的な考え方を説明していくことが大切であるとの意見を述べた。』
これは1名の方の発言ですけれども、まあ建付け的にはこういう建付けが今回の決定でしたよね、ってなもんなのですが、これ結局のところ「先行きの政策金利パスは上向きです」って話をしたいがために見通しを先んじて下げている、というのが多分屁理屈大魔王の屁理屈の中にあると思われまして、すなわちさっき申し上げましたように「見通しは一旦維持しますけど下振れのリスクも高いですね」ってやってしまうと、「じゃあ下振れしたら金融緩和強化ですか」って話になりやすいので、さきにベースラインシナリオを下振れさせておいて、「ベースラインシナリオは下がったけれども利上げ方向は変わりません」と言っておけば、現実に下振れしても「ほらベースライン通りでしょ」と言える、というまあそういうプレイが使える、ってことなんでしょうね、と思いました。
・情報発信について(その2):お漏らしプレイはいい加減にしやがれというご指摘
さらに話は続くがここで話題は一転しまして、
『この点に関連して、一人の委員は、市場は、日本銀行の従来からの基本方針を前提に、内外の新しい情報を自ら咀嚼して、日本銀行からの直接的な示唆を俟つことなく、利上げ時期についての見方を形成し、自ら修正し続けていると指摘した。そのうえで、この委員は、市場が日本銀行の細かな言い振りよりも、経済・物価の動向に着目するようになることが望ましく、日本銀行としても、そうした状況を維持できるような情報発信を続けることが適切であるとの見解を示した。』
こういうことを言うのはまあ高田っちか抜刀斎だろうなあ(他にあるとすればワンチャン氷見野副総裁)と思う訳ですが、まったくもっておっしゃる通りでして、あの謎のお漏らし記事が出てきて方向性を出そうとするスカトロプレイは大概にして頂きたいものです。
・長期国債買入について:うーん2名を除いてビビリンチョっぽいなあ・・・・・・・
でまあこれを受けて展望レポートはこんな感じでよろしゅございますでしょうかと執行部が言って、それに対してああそうですねと政策委員が返す下りはまあ飛ばしましてその次の長期国債買入に関して。
『委員は、最近の国債市場の動向と日本銀行の国債買入れに関する考え方についても、議論した。』
はじまりはじまり。
『何人かの委員は、@長期金利は金融市場において形成されることが基本であること、A日本銀行による長期国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適当であること、といった基本的な考え方を改めて示した。』
この「国債市場の安定に配慮」と「予見可能」をどう見てもやりすぎているのが6月に出た買入計画なんですけどねえ・・・・・・・・・・・・
『このうちの一人の委員は、減額計画を定める際には、どの程度の減額であれば国債市場の機能に混乱が生じる可能性を低く抑えられるか、がポイントとなると指摘した。』
そんなものを気にしている時点でお前の言ってるのは財政ファイナンス。
『何人かの委員は、超長期国債の金利が大幅に上昇するなど、年限間の分断が生じているとの見方を示した。このうちの一人の委員は、国債買入れの減額計画の中間評価に向けて、年限別の需給動向や流動性、業態毎に異なる見方を丁寧に確認することが重要であると述べた。』
これだって結局「超長期の買入が少ないのが悪い」のではなくて、「中短期から長期の買入が過大でイールドカーブの手前が押さえつけられているので金利上昇のエネルギーが超長期に行ってしまう」という面も多々ある訳で、そもそも買入の額がおかしい、というのを前提にしないで話をすると今回のように減額1年にしてビビリンチョと化してしまって2026年4月からどうのこうのとか言い出すわけですよ。
『この点に関連して、何人かの委員は、超長期金利の上昇については、そもそも同市場の参加者が限られているもとで、規制対応の一巡により投資家需要が減退していることなどが影響していると
の指摘が市場参加者から聞かれていると付け加えた。』
規制対応の一巡も勿論大きいのですが、YCCなかりせば本来20年とかのリスクを取りに来なかった人たちをYCCで超長期に追いやってしまったことの反動が起きている、という面も見逃せないと思うんですけどね。
でもって最後に2名(なので高田っちと抜刀斎だと思いますが)が良い意見を。
『ある委員は、例外的な状況を除き、日本銀行が、一時的な需給バランスの変化に都度対応すると、市場の機能を再び損なうことになってしまうとの認識を示した。』
仰せの通りです。
『一人の委員は、中央銀行が市場を十分に考慮することは当然であるが、一方で、その時々の市場の意見に反応しすぎると、その柔軟性が却って予見可能性を低下させ、市場の不確実性をより高める可能性があると指摘した。』
全くです。
・・・・さすがに最近はこの輪番問題と国債発行計画問題の話題を聞きつけた他市場(主に外債方面)のお友達から「円債市場の連中って当局に甘えすぎじゃねえのか」と悪態をつかれる始末でして、クレクレコジキに成り下がっているのはちょっと残念ですわな。
なお、
『これらの議論を踏まえ、委員は、6月の金融政策決定会合では、市場参加者の意見や見方を十分に確認したうえで、国債市場の動向や機能度についてしっかりと点検し、現在の減額計画の中間評価を行うとともに、来年4月以降の国債買入れ方針を検討する必要があるとの
認識で一致した。』
一致したのかつまらん、「来年4月以降の国債買入方針に関しては大まかな方向を公表するのは良いが、具体的な金額などを10か月も前に公表するのは時期尚早なので行うべきではない」って意見を堂々とぶっこんで議事要旨に乗せて頂きたかったですね。まあ今回の主な意見で何かそういうのあるとは思いますが(主に反対してた抜刀斎方面から)。
ということで今朝はこの辺で勘弁。
2025/06/23
お題「短国金利低下とな/国債市中消化計画修正(メモ)/5月会合議事要旨が案の定経済ド悲観だったようですな」
ほほう
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250622/k10014839821000.html
都議選 都民が第1党に 自民 過去最低議席に 国民 参政が初議席
2025年6月23日 3時10分
参院選はこの都ファの部分がどこに流れるのやら・・・・・
〇何のかんので短国の金利がまたさがっておられるようですが
金曜の3M
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250620.htm
国庫短期証券(第1314回)の入札結果
『本日実施した国庫短期証券(第1314回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。
記
1.名称及び記号 国庫短期証券(第1314回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項
3.発行日 令和7年6月23日
4.償還期限 令和7年9月22日
5.価格競争入札について
(1)応募額 13兆5,614億3,000万円
(2)募入決定額 3兆3,469億9,000万円
(3)募入最低価格 99円89銭2厘5毛
(募入最高利回り) (0.4316%)
(4)募入最低価格における案分比率 65.1823%
(5)募入平均価格 99円89銭5厘2毛
(募入平均利回り) (0.4207%)』
ということで0.4207%/0.4316%になりまして、前々週が0.4529%/0.4698%、前週が0.4317%/0.4468%
でしたので、一瞬上がったと思ったのですが着々と金利が低下しているという中々残念な推移となっており
ますけれども、売参ちゃんの方を見ますと3Mカレント近辺は、
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
(6/20引値)
国庫短期証券1310 2025/09/08 平均値単利 0.410
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.410
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.390
(6/19引値)
国庫短期証券1310 2025/09/08 平均値単利 0.420
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.420
国庫短期証券1314 2025/09/22 平均値単利 0.420(WI)
ということで引値ちゃんは一段と強くなっている(というか新発の0.39はショートカバーでもあったのかというレートではありますが)次第でして、5月終わり位からちょっと需給緩んだに見えました短国ちゃんですが結局またまた確りとなっていますわなorzorz一応40台なのが救いちゃあ救いですが、これまあこの前の貸増が相変わらず残高多かった辺りも影響しとるんけ??とは思いました、知らんけど。
ちなみにネタにしてませんでしたが木曜の1年は
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250619.htm
国庫短期証券(第1313回)の入札結果
『本日実施した国庫短期証券(第1313回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・
第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。
記
1.名称及び記号 国庫短期証券(第1313回)
2.発行根拠法律及びその条項 特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第46条第1項
3.発行日 令和7年6月20日
4.償還期限 令和8年6月22日
5.価格競争入札について
(1)応募額 8兆8,114億円
(2)募入決定額 2兆4,416億7,000万円
(3)募入最低価格 99円42銭2厘
(募入最高利回り) (0.5781%)
(4)募入最低価格における案分比率 42.4154%
(5)募入平均価格 99円43銭3厘
(募入平均利回り) (0.5671%)』
ってな結果で、5月の1年が0.5702%/0.5783%で4月の1年が0.5292%/0.5454%でして、まあ4月はトラ公関税のアヒャヒャヒャヒャなのでしゃあないとしても、5月よりもちゃっかり金利がさがっておりまして、いやーこれはこれはという堅調モード継続で、年内利上げがどうのこうのという話はどこにあるのかと言いたくなりますけどまあ引き続きのニーズでございますことよ。
〇国債発行計画修正キタコレ
まあ事前に散々報道されていましたのでアレですが。
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/250620pd114.pdf
国債市場特別参加者会合(第114回)
理財局説明資料
6ページ(PDF6枚目)に『国債管理政策の基本的な考え方』ってのがありまして、
『国債管理政策は、
@ 確実かつ円滑な発行により必要とされる財政資金を確実に調達すること
A 中長期的な調達コストを抑制していくことによって、円滑な財政運営の基盤を確保すること
という基本的な目標に基づき運営。』
ってことで、その次に
『※ 国債を将来にわたって低コストで安定的に発行・管理するためには、財政健全化を推進し、新規財源債の発行額を抑制することが基本。』
という悲しい文言がありますがそれは悲しみを共有するにとどめておいて、
『○ 上記目標を達成するため、国債発行計画の策定・運営に当たり、「市場との対話」を丁寧に実施し、市場のニーズを十分に踏まえた国債発行に努めてきたところ
○ 一方で、一時的・短期的な需要の変化に過度に対応すれば、結果として、市場参加者にとっての透明性・予見可能性が損なわれ、国債投資に対するリスクが高まり、中長期的な調達コストの上昇につながる場合もある』
>一時的・短期的な需要の変化に過度に対応すれば、結果として、市場参加者にとっての透明性・予見可能性が損なわれ
>一時的・短期的な需要の変化に過度に対応すれば、結果として、市場参加者にとっての透明性・予見可能性が損なわれ
>一時的・短期的な需要の変化に過度に対応すれば、結果として、市場参加者にとっての透明性・予見可能性が損なわれ
全く仰る通りなのですが、日銀とか言う人が2026年4月以降の輪番減額をさっそく金利上昇にビビって減らすということをしている(しかもまだまだ先の話なのに今の時点で決め打ち減額)んですが、ちょっと説教してもらえませんかねえw
『⇒ 今後とも大量の国債発行が見込まれる日本においては、中長期的な需要動向を見極め、安定的で透明性の高い国債発行を行っていくことが重要
(注)海外においても、例えば、米国が「定期的かつ予見可能な発行」(regular
and predictable issuance)を債務管理の方針として掲げるなど、一部の国では、機会主義的な債務管理運営に陥るリスクを意識した対応がとられている。』
てな話なんですが、日銀の輪番に関するムーブって日銀としては「定期的かつ予見可能な」ムーブだと思っている節があるのです、というか節しかしませんけれども、金利上昇にビビって輪番減額を緩めているだけにしか見えないというのが悲しい所(個人の感想です)。
でまあ次のページが『令和7年度国債発行計画(6月変更)の概要【案】』ですが・・・・・・・
『○ 市場のニーズを踏まえ、7月より直ちに、40年債・30年債を各1,000億円/回、20年債を2,000億円/回減額。流動性供給入札(超長期ゾーン分)についても、1,000億円/回減額。』
ナムナム。
『○ 超長期債の減額分は、2年債、短期国債の増額及び個人向け販売分の上振れ実績を反映すること等により対応。』
5年すら増発できないのかよ(まあ事前報道で5年増発無しみたいな感じになっていたのでサプライズは無いですが、せめて5年は増発できるじゃろと思ったというか、20年以降を減額して2年とT-Billを増発する重債務国家ってそれ普通に「長い期間の債務発行ができなくなりつつありますよこの重債務主体」ってことで、ヤベー奴じゃんというお話ではあるのですが、まあとりあえずユルユルのユルなメディアはそういう視点で報道しないので無事に収まっているだけの話で、本来はまあヤベー奴なお話ではありますぞな。しかもしれっと「個人向け個販売分の上振れ」を使っている辺りもそれだけ見ると(゚∀゚)アヒャって感じですな。
『○ 今後とも、市場の状況や投資家の動向等を注視しつつ、適切な国債管理政策に努めていく。』
まあそもそも論として税収上振れたら全部撒くとか(インフレで税収上振れるということは経常経費だってインフレで上振れるんだから税収上振れたからその分使うというのは頭おかしいとしか言いようが無いんだが)いうような馬鹿が立法府の方にいる(悲しいかなそういう馬鹿立法府に馬鹿言説を吹き込んでいる馬鹿が金融界にいるのが困るわと思いますけど)ので、まあ発行を何とかしましょうと言っても所詮は蛇口の方を何とかしないとどうしようもないし、そう考えると目先必死こいてその場をやりくりしていると蛇口の方が問題になかなか気が付かないので、そんなに「市場に配慮」せんでもええじゃろという暴論の方を思いついてしまうんですよね(やりくりを散々した挙句に爆発するくらいなら早めに爆発させた方が爆発規模が小さくて済む理論)。
などと言っててもしょうがないのですが、これもまあ元をただせばYCCのせいで超長期に無駄な需要が発生してしまっていたので超長期の発行が多すぎたってのがある訳で、色々な面で黒田緩和のやらかしたことの手じまいをする中で問題がちょいちょいと出てきている訳で、そういうのを待たずに「多角的レビュー」とかやって黒田政策の正当化をオーソライズしてしまったのはこれ中長期的に見てかなり禍根を残す話になってくると思います。
〇4月展望会合議事要旨(その1)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250501.pdf
政策委員会金融政策決定会合
議事要旨
(2025年4月30日、5月1日開催分)
・米国の物価に関する見方にデフレ脳を感じるんだが・・・・・・・・・
まずは『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』から参りますが、
『米国経済について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに成長しているとの認識で一致した。そのうえで、多くの委員は、今後、関税政策は、米国の実体経済を下押しする方向に作用するほか、少なくとも短期的には物価を上押しするとの見解を示した。』
まあこの会合は海外経済の所がやたら下がったのでこの辺から見ていきますが、
『ある委員は、家計や企業、金融機関のバランスシートが健全であることなどを踏まえると深刻な景気後退は考えにくいが、しばらくは潜在成長率を下回る成長が続く可能性が高いと指摘した。』
『別の一人の委員は、一時凍結されている相互関税の上乗せ部分が撤回されたとしても、関税の物価に及ぼす影響は大きく、個人消費や設備投資には下押し圧力がかかるとの見方を示した。』
あらそうって感じで弱いですけれども、
『複数の委員は、やや長い目でみて、いったん上昇した物価が経済の減速により下押しされるのか、それとも高めの物価上昇率が継続するのかについては不確実性が大きいと指摘した。』
でもってこの米国の物価に関してですが・・・・・・・
『そのうえで、このうちの一人の委員は、今後の物価動向を見定めていくためには、労働市場の状況、とくに賃金の動向を注視していくことが重要であると付け加えた。』
というのはまあ分かるんだが次の意見が???で、
『この点に関連し、ある委員は、経済が減速するもとでは、一時的な物価上昇ショックによってインフレ予想のアンカーが上方に外れるリスクは限られるとの見解を示した。』
????????いやあの第一次石油ショックとか第二次石油ショックとかご存じですよね・・・・・・・
『この間、一人の委員は、新政権発足以降、経済成長にマイナスに働く関税等の政策が先行しているが、今後、減税等が実現していけば、成長率の上振れもあり得ると指摘した。』
とまあこういう感じで、最後にちょっと上振れがありますけど、総じて弱気な上になぜか物価に関してもあんまり強くなさそうな見通し、という印象を与える構成になっておられますな。
・欧州と中国に関しても弱気ですねえ
『欧州経済について、委員は、製造業を中心に弱めの動きがみられているとの認識を共有した。ある委員は、米国の関税引き上げの影響に加え、これまでの投資抑制やコストの高止まりにより、欧州の産業競争力は低下しているとの見方を示した。』
後者の方ですが、こういうの言いそうなのは中村委員かしら。
『中国経済について、委員は、政策面の下支えはあるものの、不動産市場や労働市場の調整による下押しが続くもとで、改善ペースは鈍化傾向にあるとの見方を共有した。一人の委員は、内需低迷や貿易摩擦激化による輸出の減少が懸念されるほか、住宅の販売在庫の大きさを踏まえると不動産市場の回復にはかなりの時間を
要する可能性が高いとの見方を示した。』
とまあそんな感じで弱気なのが並ぶ。
・国内物価の現状ですが東京都区部が上振れていた件は何かあんまり重視されていませんでしたなあ
日本の経済物価の話になるのですが、経済の方はさておきましてこの会合で一気に見通しの下がった物価ちゃん、東京都区部CPIが重視されていたら物価見通しが下方修正してリスクは下振れにならんじゃろという話だが。
物価面について、委員は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もとでは3%台前半となっているとの認識で一致した。』
ということですがまあこれは事実なのでさておきまして、
『ある委員は、全国に先行して公表された4月の東京都区部の消費者物価の前年比をみると、家賃を除く一般サービスの伸び率が3%を上回ったほか、東京固有の要因である可能性はあるものの、家賃の伸び率も大きく高まっていると指摘した。』
『この点に関連し、一人の委員は、東京以外の地域では、全体として家賃の上昇率は小幅にとどまっているが、新規家賃については、大都市圏を中心に、このところ上昇の動きが目立ってきていると指摘した。』
って指摘があるのに何であの見通しになったか、といううのは後程。
『この間、予想物価上昇率について、委員は、緩やかに上昇しているとの見方で一致した。』
この部分ってもっとまじめに議論してくれませんかねえ、だって「基調的物価」は「予想物価上昇率」ってこの前植田総裁内外情勢調査会で話をしてたじゃ・・・・・・・・・・・
・なんかもうこの世がオワ終わりみたいな話をしておりますな(見通し部分)
でもって先行き見通し、ということで『2.経済・物価情勢の展望』ってところなのですが・・・・・・・・・
『次に、委員は、これらの前提のもとで、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。』
前提のところはご案内の通りなのでパスしてここから参ります。
『委員は、わが国経済について、@各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化する、Aその後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、わが国経済も成長率を高めていくと見込まれるとの認識を共有した。』
という字面になっているのですが、この関税政策の影響に関する部分がですね・・・・・・
『委員は、米国の関税政策やそれに対する各国の通商政策は、わが国の経済を下押しする方向に作用するとの見方を共有した。そのうえで、多くの委員は、関税政策は、主として、貿易面および企業や家計のコンフィデンス面から、わが国経済を下押しすると指摘した。ある委員は、資源価格下落等に伴う正の供給ショックも見込まれるが、様々な経路を介して発現する負の需要ショックよりは小さいと考えられると付け加えた。』
からの、
『貿易を通じた経路について、何人かの委員は、 関税の引き上げは、米国内でのわが国企業の価格競争力の低下に加え、貿易の縮小を介した世界経済全体の下押しを通じて、わが国の輸出を押し下げるとの認識を示した。また、複数の委員は、為替が円高方向で推移すれば、わが国の輸出にマイナスの影響を及ぼすと指摘した。別の一人の委員は、高関税が長期化すれば、直接的影響を受ける輸出企業を中心に、事業再編やサプライチェーン強靱化のための取引先の選別、生産拠点の米国シフト等が進む惧れがあり、これが、経営体力が比較的弱い中小企業に影響を及ぼす懸念があると述べた。この点に関連し、ある委員は、当面影響が懸念されるのは、個別関税が設定されている自動車であるが、米中間の高関税により中国経済が更に落ち込むようなことがあれば、より幅広い製造業に影響が及ぶ可能性があると指摘した。』
な、なんですかこのオワ終わりみたいな話は、というほどのバチクソ弱気な話が大展開されている訳でして、こりゃまたエライ弱気ですねってなもんで、同時期の米国が「まあゆうてよおわからんから様子見じゃ様子見」と言ってたのとエラい温度差がありましたなこりゃ。
でまあさすがにこの「この世の終わりを嘆く会」状態に対してカウンターも入っていまして、
『これに対して、一人の委員は、1990 年代の円高局面と違い、今回の相互関税は世界各国に賦課されるため価格転嫁も可能であり、わが国企業の相対的な競争条件悪化には繋がり難く、収益減少が限られる可能性もあると指摘した。』
『別の一人の委員は、理論的には、米国による関税賦課はドル高・円安方向の圧力をかけることになるため、わが国の輸出に対する影響を緩和する可能性もあるとの見解を示した。そのうえで、この委員は、GDPに占める輸出の割合等でみたわが国経済の貿易依存度はそこまで高くないため、関税政策の動向だけでなく、国内要因にも注目して、冷静に金融経済の状況を判断していく必要があると付け加えた。』
2名がこの世の終わりみたいな議論に対して「いやお前ら悲観しすぎじゃろ」というのを入れてきましたのが救いなわけですが、さらに「冷静に金融経済の状況を判断していく必要がある」って指摘がかなり味わいがあって、つまりはこの会合ってなんかもう悲観でウヒャーウヒャーって茹で上がっていた方々が多かった、ということだったんじゃなかろうかと思われますな、南無大師遍照金剛。
・しかし中心的な見通しを前提にして1年後ずれってよく考えたら何なんでしょうかね
ちょっと先に行って物価の見通しなんですけど、
『続いて、委員は、物価情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。』
はい。
『委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、2025 年度に2%台前半となったあと、2026
年度は1%台後半、2027年度は2%程度になるとの見方を共有した。』
26年度2%割れってそうなるのかねえとしか言いようが無いのだがまあさておきまして、
『委員は、これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくとの認識で一致した。』
普通にいろんなところに価格転嫁が波及しているようにしかみえませんがさておきまして、
『そのうえで、委員は、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとの見方を共有した。何人かの委員は、今回前提とした各国の通商政策等の影響がみられるもとでも、引き続き賃金の伸びと労働需給の引き締まりに支えられ、基調的な物価上昇率は、2%に向けて徐々に高まっていくという大きな方向感はこれまでと変わらないとの認識を示した。』
って話なのに、
『そのうえで、複数の委員は、中心的な見通しのもとでは、基調的な物価上昇率が「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するようになる時期は、従来の見通しから1年程度、後ずれするとの見方を示した。』
なんで1年も後ずれするんだよという話で、まあ意味不明ではありますな。
『委員は、各国の通商政策は、物価に対して上下双方向の影響を及ぼしうるが、今回の前提のもとでは、今後の成長ペース鈍化などを通じて、中心的な見通しを押し下げる方向で作用するとの見方を共有した。また、一人の委員は、サプライチェーンが混乱するようなことがあれば、一時的には物価を押し上げる可能性があるが、混乱が長引けば、企業収益や賃金への下押し要因として働き、基調的な物価上昇率を押し下げる要因として作用する可能性があるとの見解を示した。この間、別の一人の委員は、関税の賦課は短期的な価格ショックと考えることもでき、長期的には実質的な効果を持たないとの理論上の結論はありうることから、現時点では、やや長い目でみれば、関税政策とその不確実性が、基調的な物価上昇率や潜在成長率に影響を与えるとはみていないとの認識を示した。』
ってな話で、インフレ期待の上振れ、という指摘が無いんだよなーと思いつつ、先の方になりますが、リスク要因の物価の話を見ますとですね・・・・・・・・
・やっぱり一部の委員を除いて「期待インフレの上振れ」を懸念してないんだよな〜
『物価のリスク要因について、委員は、上記の経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも影響が及ぶほか、物価固有のリスク要因として、@企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響、A今後の為替相場の変動や国際商品市況を含む輸入物価の動向、およびその国内価格への波及には注意が必要であるとの見方で一致した。』
というのは展望レポートにあった通りですが、
『各国の通商政策等の動きが物価に及ぼすリスクに関連して、ある委員は、輸出企業を中心とした企業収益の減少が、今後、サプライヤーへの原価低減圧力の強まりや賃金設定行動の変化を介して、基調的な物価上昇率を押し下げうると指摘した。』
でまあこれに関連して、
『この点に関連し、一人の委員は、先行きの賃上げ気運を維持していくためには、本年の冬季賞与や来年の賃上げに向けて、企業経営者がどのようなメッセージを打ち出していくかが重要なポイントになると指摘した。別の一人の委員は、企業や家計の予想物価上昇率がどのように推移するのか、企業の賃金・価格設定行動がデフレ・低インフレ下のものに戻ることがないかといった点を、ヒアリングなども含め、しっかりモニタリングしていく必要があると述べた。』
企業の賃金設定行動について注目、ということになるとそれを判断するのは最初のひとりの委員が言ってるように冬の話になってしまいますねえ。
『また、何人かの委員は、米中間の高関税の影響等を受けて、中国から安値輸入品がわが国に流入し、物価を押し下げるリスクもあるとの認識を示した。』
というのの後に上振れの話がありまして、
『これに対して、複数の委員は、各国間の交渉の帰趨次第では、中心的な見通しよりも物価が上振れる可能性もあると指摘した。』
でもって最後に出てくるこの人だけが期待インフレの上振れをしてきしていまして、
『このうちの一人の委員は、成長率や消費者物価の前年比が今回の見通し通りに推移するとしても、企業や家計の予想物価上昇率や、企業の賃金・価格設定行動の状況次第では、基調的な物価上昇率は見通し期間前半に「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移する可能性も十分あると付け加えた。また、この委員は、物価は
2027 年度まで2%近傍を維持する見通しにある中で、グローバルサプライチェーンの混乱等による物価上振れリスクには留意が必要であるとの見解を示した。』
普通にこの意見が仰せご尤もだと思うのですが、その前の経済の所であったように、なんかこの世の終わりみたいな議論になっていたんだな、というのは議事要旨を見て再確認(展望レポートの時点でまあエライ弱気でしたけど)できた感じですね。
『この間、何人かの委員は、為替相場が大きく変動すれば、物価にも影響が及びうると付け加えた。』
でもってこの後金融政策のパートになるのですが、ちょっと時間が怪しくなってきたのでここで勘弁していただきとう存じます。
2025/06/20
お題「山口元副総裁のお話をご紹介しませう/総裁会見はまあハトハトチキン節全開でしたな」
ほほう
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250619/k10014839161000.html
立民 野田代表 内閣不信任案の提出見送り表明
2025年6月19日 21時10分
『石破内閣に対する不信任決議案の扱いについて、立憲民主党の野田代表は記者会見で、アメリカの関税措置を受けた日米交渉が続くことなどを踏まえ、政治空白を作るべきではないとして、今の国会での提出を見送る意向を明らかにしました。』(上記URL先より)
これはちょうど良い言い訳がありましたな(ニッコリ)。
〇山口元副総裁のお話が大変に素晴らしい件について
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20250619-3357896/
日興リサーチセンター・山口廣秀理事長に聞く!「トランプショックをどう捉えますか?」
掲載日
2025/06/19 11:00
本記事は「財界オンライン」から提供を受けております。著作権は提供各社に帰属します。
金融政策以外の話(米国の政策に関する色々な考察)の方がメインのテーマでそっちの方も大変に学びがあるのですが、金融財政についても全くその通りです、ってご意見を述べておられまして、『痛みの伴う政策が時には必要』って小見出しから先が一々頷いてしまって首がもげそうになりました。
ということで以下ご紹介ですが。
『─ 1人ひとりの国民の意識も大事になってくると思うのですが。』
『山口 その通りです。特に大きいのは、安易に大幅な財政出動や大規模な金融緩和を求めるような、ある種の「甘え」の雰囲気が国民の側にもあるのではないかということです。改めて、国の政策に頼るのではなく、自助自立の覚悟が求められているのではないでしょうか。』
『様々な意味で政治の役割は大きいと思います。米中対立の中で、日本らしい米国との関係、中国との関係を念頭に置きながら、米中の間に立って両国の調和、ひいては世界・アジアの安定を模索していく役割が日本には求められています。大変困難なことですがやらなければなりません。そのための覚悟を政治にしっかりと持ってもらう必要があります。』(上記URL先マイナビニュース記事より、以下同様)
まったく仰る通りであります。でもってここから金融政策の話になりますが、
『─ こうした状況下で、日本銀行による金融政策はどうあるべきだと考えますか。』
『山口 消費者物価の上昇率が2%を超える状態が3年続いており、デフレからははっきりと脱却したと言えます。政府による電気料金やガス料金などの補助金政策によって物価上昇率が実態よりも低く見えていますが、実勢は前年比3%程度の高い上昇率になっています。国民から物価高への不満の声が出てきているのも、それが原因です。』
ですよね〜〜。何で「基調的物価」とかいう「お気持ち物価」で誤魔化そうとするんでしょうかと思いますし、だいたいからして日銀って今次局面でずーっと「これから物価上昇は鈍化して2%を一旦割り込みます」って言ってる見通しを延々と外しまくっている訳ですもんね。
『日銀が引き締め方向の政策を行っていくことが、すでに適切な状態になっています。しかし、実質金利はまだマイナスです。』
おお!!
『これを一気に引き上げていくわけにはいきませんから、少しでも利上げをして、マイナス金利の幅を縮小する努力をしていくということです。それでも実体としては金融緩和の状況に変わりはありません。』
左様でございますな。さらに質疑応答は続きまして、
『─ 日銀は国債、ETF(上場投資信託)も大量に保有しています。これをどう減らすかも課題です。』
ということで、
『山口 日銀は長期的な方向感を出していますが、それをさらに進めて、より早いペースで減額する方向に持っていけるかは、いずれ問われると思います。』
だというのに今回は減額のペースを落とすとか言う問題の先送りモードに出ているのですが、山口さんきっちりとこの点についても厳しい指摘をしておられまして、
『マーケットに大きなインパクトを与えたくないという気持ちは理解できますが、これだけ大量の国債等を保有している以上、多少マーケットに影響が出ることは覚悟しなければなりません。』
全く仰る通りです。でもってこの部分の最後の言葉が重くて、
『変化の激しい時代に慎重な対応だけを心掛けていたのでは、やらなければならないことを前に進めることはできません。』
>変化の激しい時代に慎重な対応だけを心掛けていたのでは、やらなければならないことを前に進めることはできません
>変化の激しい時代に慎重な対応だけを心掛けていたのでは、やらなければならないことを前に進めることはできません
>変化の激しい時代に慎重な対応だけを心掛けていたのでは、やらなければならないことを前に進めることはできません
いやもう本当の本当におっしゃる通りですわ。
・・・・・ということですが、本編の方は金融政策以外の話もありまして(というかそっちがメイン)、全力で一読推奨なのでMPMとかFOMCの話の前にネタにさせていただきました。
〇MPMレビューで植田総裁会見ですがハトハトチキンよりも気になるフレーズがちらほらあってですね・・・・・
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250618a.pdf
総裁記者会見
――2025年6月17日(火)午後3時30分から約65分
・「記者クラブ主催」だから仕方ない面はあるのだがオープニングリマークの位置づけをもっと明確化してほしい
これ仕組み上しょうがないのかもしれないのですが、
『(問)本日の金融政策決定会合の内容について、総裁ご説明をお願い致します。』
『(答)今日の決定会合では、金融市場調節方針を決定したほか、昨年 7 月に決定しました長期国債買入れの減額計画の中間評価を行い、それを踏まえて、2027
年 3 月までの新たな減額計画を決定しました。最初に、これらの決定内容についてご説明します。まず金融市場調節方針ですが、無担保コールレート・オーバーナイト物を
0.5%程度で推移するよう促す、というこれまでの方針を維持することを全員一致で決定しました。(以下延々と続く)』
という形になっているのですが、ECBやFRBの場合はまず説明をしてから「では皆様のご質問をお願いします」っていう形にしていて、「オープニングリマーク」と「Q&A」が別になっているんですよね。
でもってこのオープニングリマークの際って声明文で書かれている話の背景説明も入れていて、経済物価情勢がどうなっているのか、といった辺りについて声明文などよりも詳しい説明をしてくれているのですが、この形だと「決定会合の内容について」の説明になっているので、皆様ご案内の通りで、声明文(展望レポートがある場合は展望レポートの鏡の部分)の棒読み状態になっていて、皆さん聞く時にほぼ意識失って聞いているんじゃないかと思うのです。
でですね、それ時間の無駄でもあるし、勿体ないにも程があるので、最初の部分は「オープニングリマーク」として扱っていただきたい訳で、例えばFOMCだと議事要旨に出てくる議論の中でも「この点についてはオープニングリマークでこう説明すべき」っていう感じで重要なコミュニケーションツールというか、声明文のサプリメンタルツールとして活用していますわな。
ということなので、この実質の冒頭挨拶部分は会見QAの前に独立して行うようにして、今みたいな棒読みじゃなくてもうちょっと背景説明を加えるような形にして頂きたいですね、と前々から何となくは思っていたのですが、今回まあそういうのを最初に申し上げた次第です。
・国債買入に関する質疑なんですが「国債市場の安定に配慮」で結局YCC脳が抜けないんだよな
最初はこれですね。
『(問)幹事社からの質問は二問です。まず一問目は、国債買入れの減額計画についてお伺いします。26
年 4 月以降に四半期毎の減額幅を 2,000 億円にした理由を教えてください。26
年 3 月までと比べて半分のペースに緩めるうえで、どういった観点を重視したのかを具体的に教えて頂ければと思います。(後半割愛)』
オーソドックスに来ましたが、
『(答)まず国債買入れの減額計画ですが、基本的な考え方はこれまでと同じでございます。すなわち、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による国債買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切と考えています。そのうえで、金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されていくようにするためには、国債買入れ額を更に減額していくことが望ましいと考えられます。』
そもそもですね、「金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されていくようにする」って言ってるのに「国債市場の安定に配慮」ってのが話として矛盾している訳で、市場ってのは常に安定しているもんじゃないですし、それこそさっきの山口元副総裁の言葉を拝借すると「変化の時代」なんだったら時に市場が大きく動くことがあったっていいじゃないですかってなもんですわな。
そりゃまあ何とかショックで市場での売買が全くできなくなってしまう、みたいなことがあれば「最後のカウンターパーティー」として中央銀行が介入した方が良い場合もあるでしょうけれども、別にそんなことが起きたわけではないですし、あの程度のことで市場配慮とかビビりだす方が「市場の当局依存」を抜け出せなくするという意味で問題じゃろと思いますがまあそれはワシの個人の見解で、YCCシャブ漬けジャンキー脳の皆様におかれましては当局の介入が必要でちゅーボクたちだけの自由な価格形成なんてこわいでちゅーってお話ではありますので、そこはもう思想の問題になりますな、トホホ。
『一方で、国債買入れの減額が進展する中で、今後の減額ペースが速過ぎますと、市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性もあるとみています。』
起きねえよ、とは思いますがいずれにしたってその点を勘案するんだたら、実際に減額が進行していったあととなります年末か年始の会合辺りで判断すればいい話なのに、何で「来年4月以降再来年3月まで」は減額しないと不味いですって判断ができたのかが全く意味わかりませんね。
『本日の会合では、市場参加者の意見も参考にしつつ、この両方の考え方のバランスを勘案し、国債市場の安定に配慮したかたちで市場機能の改善を進めていけるよう、申し上げましたように、来年の
1〜3 月までですね、[毎四半期]4,000 億の減額を続け、26 年 4 月以降は月間買入れ予定額を、[毎四半期]2,000
億円ずつ減額して、27 年 1〜3 月に 2 兆円程度とするということが適当と判断したところでございます。(後半割愛)』
結局「じゃあ何で2000なのか」「じゃあ何で今の時点でそんな先の状況を判断できるのか」という点が全く説明が無いわけです。FEDだってバランスシート縮小を継続する中で特に期限を定めずにオートパイロットで減らしていって、その中で短期金融市場の金融調節上ちょっと微妙になってきたから減額ペースを縮小した、ということをしているというのに、日銀は何でこんな先の事が神のように予測できるんでしょうかってお話で、FED方式で四半期4000を継続するけど、不具合が生じるようならペースはその時に適切に対応する、で何の問題があったのかというお話ですな。
・そんな先の決め打ちをしないといけない背景をさっそくゲロっているのがこの正直者!って感じな訳でして
次の質問の後半で早速追い質問されていて、
『(問)(前半割愛)もう一点が国債買入れの減額について、先ほど減額ペースについては債券市場の安定に配慮したというお話がありました。金利の急騰に対する配慮だと思うんですけども、これは財政に対する配慮という面もあるんだと思いますが、この点を総裁はどのようにお考えでしょうか。』
イイシツモンダナー
『それも踏まえてなんですけれども、減額のペースを緩めなくてはいけないということを考えると、それは異次元緩和の副作用といったものがまだ顕在化してきているという面もあるのかなと思いますが、その点も含めて総裁のお考えをお願いします。』
ですねー。
『(答)(前半割愛)それから買いオペの減額についてですけれども、これは申し上げるまでもなく財政の配慮というよりは、あまり早めに減額を進めて、国債金利が異常なボラティリティを示す、それが経済にマイナスの影響を与える、そういうことが起こらないようにという配慮からの今回の措置でございます。』
>財政の配慮”というよりは”
>財政の配慮”というよりは”
>財政の配慮”というよりは”
これはまた華麗なポロリで(途中からつまらなくなったので実はライブで聴くの止めたのですがこの辺りはさすがに聞いていた)クソ笑いましたが、「というよりは」っていうことはつまり財政にも配慮していますじゃん、というお話でして、財政に配慮して大規模国債買入を継続するし、その規模は中々減らせないんですーって言ってるのはどう見ても財政マネタイズ政策です本当にありがとうございましたという告白をしておりまして植田和男先生それで良いんですかと小一時間問い詰めたいですね。
『従って、大規模緩和の副作用ということとの関連で申し上げれば、副作用が顕現化しないように注意深く進めているということかと思います。』
大規模国債買入、という緩和政策を物価安定目標が達成されそうになる、すなわち金融緩和政策が本来不要になる段階になっても、市場金利への配慮で不要な緩和政策を行わざるを得ないというジレンマがまさに副作用なんですよね。
でまあ財政の配慮という意味ではこんなこともポロリとしておりまして・・・・・・・・・・
後の方の質問ですが、
『(問)二問伺います。まず国債買入れ減額計画についてです。ちょうど 1 年前のこの会見で総裁は減額計画の策定スパンに関して、日銀の向こう
1 年間のオペの大まかな姿を明らかにして、そのうえで政府の国債管理政策などを決めて頂く姿勢、とおっしゃっていました。計画期間を
1 年延長した今回の中間評価においてもこのスタンスは変わっていないのか、改めてなんですけれども財政政策と金融政策の距離感、もう少し言うと政治と中央銀行の距離感について伺えればと思います。(後半割愛)』
ということですが、
『(答)まず、国債買いオペ減額に関連してというご趣旨だったと思いますけれども、政府・財務省との意思疎通はということのご質問だったと思いますが、これは様々なレベルで日頃から密接にとっております。』
別に意思疎通をするのは良いんですけど、
『そうした意思疎通を行ったうえで、今回私どもとしては政策委員会で今回の減額[計画]の案を作成し決定したということであります。』
まずこの時点で説明がデンジャラスゾーンに入ってくる訳でして、中央銀行の長期国債買入は、あくまでも短期金融市場の調節の一環の中で、負債サイド(発行銀行券と当座預金)の見合いで短期資産(短期オペレーション)と長期資産(長期国債)をどのような配分で持つか、ということから決定されるものでして、別に国債発行額がなんぼだからどうのこうのというようなリアクティブなものではない訳です。
さらに、
『それを少し先まで明らかにするということによって、政府にとっても発行計画にとって不確実性が一つ減るというプラスがあるかと思いますが、』
はいアウト―って説明でして、これ日銀の国債買入が政府の国債発行計画に影響します、って堂々と言っている話になるので、これまた財政マネタイズを公言しているようなもんで、会見でのツッコミが甘いから助かっているけど、こんなの全然ダメな説明ですよね。
『引き続き政府とは密接な意思疎通を図っていきたいというふうに考えております。』
実際には今の市場で日銀の馬鹿買入が続いている関係上、そんじょそこらの投資家やPDが足元にも及ばない程の国債投資家状態になっているので、発行当局としては「巨大投資家の日銀」に状況を聞くという意味での意思疎通はそりゃまあせざるを得ないですが、それはGivenになっている今の国債買入規模がおかしいからそうなっているだけの話で、原則論は中銀のオペレーションとしての国債買入は国債発行とは無関係(もちろん国債発行規模によって市中の資金需給への影響は変化するから全くの無関係ではないが)に決まるもの、という則を崩した説明を中銀自らが行うっていうのは、非常に危ない説明なので止めて頂きたいと思います。
市場配慮位なら(それもどうかとは思うけど)まだ財政マネタイズに関する則を外しているわけではないからまだしも、財政との関係のところで原理原則を踏み外した説明をするのに対して無神経すぎる、と思いました。
・足元の物価が想定よりも上振れているというような話は一切なしというのを一発目でぶちかます
景気判断はハトハトチキン、ってのはまあ皆様ご案内のところだとは思いますが、備忘ということで引用しておきましょう。
幹事社質問に戻りますね。
『(問)(前半割愛)二問目は、経済・物価情勢の考え方についてお伺いします。足元のインフレ率は3%を超えています。5
月の展望レポートを出したときと比べて物価上振れリスクは高まっているとお考えになりますでしょうか。また、今後の利上げ判断において経済の不確実性も考慮し、どういう指標を重視するかについて教えてください。』
物価上振れの話は前週金曜日にBBGが報道した訳で、そりゃモチのロンで質問しますよね。でもってこれにどう回答するのかが注目されるわけですが・・・・・・・・・・
『(答)(前半割愛)経済・物価情勢ですが、先ほども申し上げましたように、本日の会合では、前回会合時点からわが国の経済・物価を巡る大きな構図に変化はないと判断致しました。』
まあ「大きな構図」は変化ないと来るでしょう(そうじゃなかったら声明文が事実上の4月展望からの全文一致にならない)が、じゃあ物価はと言いますと・・・・・・
『直近の消費者物価の上昇率は 3%を超えていますが、これにはこれまでの輸入物価上昇や米を含む食料品価格上昇が大きく影響しています。』
BBG報道で言われていた「足元までの消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は、人件費や原材料価格の上昇を価格転嫁する動きが続き、食料品価格を中心にやや強めの動きとみている。(6/13のブルームバーグ記事より)」ってのは何だったのかという拍子抜けの「はいはいコストプッシュコストプッシュ」ムーブでして・・・・・・・
『こうした物価上昇が国民生活にマイナスの影響を与えていることは、十分に認識しております。』
質問はそっちじゃねえよ。
『先行きについては、これらの影響は減衰していくと基本的には考えています。』
とまあそういうことで、「コストプッシュだから下がります」のままでした。
『ただ、物価を巡って上下双方向のリスクがあるとみています。コストプッシュによる物価上昇が、人々のマインドや予想物価上昇率を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼす可能性があることも認識しておく必要があります。そのうえで現時点では、各国の通商政策等の今後の展開や、その影響を巡る不確実性がきわめて高いことを踏まえると、先月の展望レポートで示した通りですが、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きいと判断しています。』
下振れリスクの方が大きいんですってorzorz
『日本銀行としては、今後明らかとなるデータや情報を引き続き丁寧に確認し、経済・物価情勢を点検してまいりたいと思っております。不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえますと、各種のデータに加えまして、本支店を通じて得た企業ヒアリング情報を含め、できるだけ幅広い情報に基づいて分析を行うことが従来以上に重要となっていると考えています。』
分析したって最後は「お気持ち物価」じゃんwwwwwww
・「悪くなるの待ち」という謎ムーブキタコレorzorz
2番目の質疑でこんなのがありましてですな。
『(問)二点お伺いします。まず利上げの考え方についてですけども、今後、経済が減速していく見通しの中で、経済の改善に応じて政策金利を引き上げていくというお話でした。その判断においてデータが重要になると思うんですけども、データの改善がなかなか追い付いてこないけれども、見通しとしては上がっていくという見通しがついた段階でもう利上げという判断はあり得るのか、というところを一点目教えてください。(後半割愛)』
という質問があって、この回答が皆様ご案内の通りハトハトチキンでして、まあこの辺りで今回の総裁記者会見は利上げの面では勝負あったって感じでしたな。
『(答)今後の金融緩和度合いの調整を判断するに際してのデータの点ですけれども、難しい局面にありまして、』
もうこの時点でハトハトチキンの香りしかしませんでしたが、
『前回も申し上げたかもしれませんけれども、センチメント関係の指標は今悪いものが割と増えてきています。世界的にですね。一方でハードデータについては、いろんな理由がありますが、まだしっかりとしているという大まかには感じかと思います。』
と来てからのこれですよね・・・・・・
『ですので、おっしゃったように悪いのが良くなってきたところ、そのどこのタイミングで利上げをするのかという話のまだ手前にありまして、悪くなっていない段階で。』
つまりは今は「悪くなるの待ち」という謎ムーブだとおっしゃっているようです。
『ただし、例えばタイミング的にいえば、今年の後半ですね、7 月以降後半に入りますけれども、いくつかのデータに悪い動きがみられるんではないかというふうに予想している人が多いかと思います。』
逆にこの時期にそんなに悪くならなかったらどうするんでしょ、と思うのですが・・・・・・・
『そういう動きがどれくらいになっていくか、われわれの見通しとの関係で、それとの判断、比較において見通しが実現しそうかどうか。その判断次第では、はっきりとそこから先もう
1 回上向きに転じるっていうところが確認できなくてもというご質問の点は、確か
1、2 回前にもそうお答えしたと思いますが、その通りかと思います。見通しの確度次第ということになるかと思います。(後半割愛)』
っていう説明ですが、なんかこれを言い出すとですね、この先まあさすがに幾分かは落ちるとは思うのですが、落ちないとか落ち方が大したことがない、って状態になった時に「いやいやまだ影響が出ていないだけでこれから落ちるにちがいない」と言い出して何時まで経っても利上げを決断せずに引っ張ってしまう、という「物価落ちるだろう」の景気バージョンというのが発生しそうで、ますます過剰緩和の副作用が心配になってきたんですけどアタクシ・・・・・・・
・おそるべき「絶対下がるだろう」ムーブ
別の質疑で物価面にフォーカスしたこんな質問があって中々結構だと思ったのですが、
『(問)先ほど物価の先行きについて少し言及がありましたが、食品価格の上昇と併せて、イランとイスラエルの間の中東情勢の緊張によって、原油価格の上昇も今後懸念されるところですが、既に基調的なインフレが2%に近づいている中でこうしたコストプッシュの上昇圧力と原油価格の今後先行き次第では、物価の上振れリスクが無視できなくなる可能性がどれぐらいあるのか、』
全く仰る通りで、今次物価上昇局面において欧米はこの上振れリスクを当初放置した結果ああいう引き締め政策を打たざるを得なくなり、欧州に至ってはスタグフレーションの様相になってしまった訳でございますということで大変に秀逸な質問だと思いました。
『先ほどはやはり景気・物価ともに下振れリスクが依然大きい、より大きいということでしたが、そのバランスが今後変化して、物価の上昇が家計のインフレや基調インフレに影響を及ぼすリスクがどの程度になりそうなのか、ちょっと原油価格の動向を含めて展望をお聞かせできればと思います。』
しかしこの良問に対してのハトハトチキン先生の回答はと言えば、
『(答)お答えは、基本的に注意深くみていきたいということに尽きてしまうんですが、おっしゃるように、食品関連の価格上昇に加えまして、足元、イラン、イスラエルの問題で原油が上昇している。こうした動きが広がったり続いたりする場合には、期待物価上昇率とか基調的物価上昇率に二次的な影響を与えるリスクはあると思っています。』
とは言ってるのですが、
『現状そこまで至っていないと思いますけれども、そこについては注意深くみていきたいということであります。』
って話なんだが、「ゼロ近傍で安定していた期待インフレ率を2%に引き上げる」という政策を実施して、その期待インフレが上昇しているという認識があるのであれば、インフレ期待が2%でアンカーされている国よりも、アクチュアルの物価上昇が期待インフレの上昇にモロに跳ねやすくなる、と理屈の上ではそうなるので、こんな楽観視してて良いのかというのがある上に、さらに追い打ちを掛けまして返す刀でハトハト先生は、
『ただし一方で、先ほども申し上げましたように、通商政策の影響がだんだんこれから出てきて、製造業、特に製造業ですね、の企業収益が低下に向かう、それが場合によっては、暫く前まで続いていたようなコストカット型の価格、あるいは賃金設定行動を復活させるというリスクも無視できないと思いますので、両方注意深くみていきたいと思っております。』
ということで、まあベースがハトハトなんですよね〜。
・「お気持ち物価」がわからんわという指摘に対して
こんな質疑もありました。中々よろしい質問でして。
『(問)金利操作に関してお伺いしたいんですけども、現状日銀では目標とする
2%の物価と推計された中長期の予想インフレ率で説明されてると思うんですけど、諸外国をみると金融政策運営に関しては実際の物価と目標の物価を使って説明されてるというか、金融政策を運営されてるかと思うんですけど、』
イイシテキダナー
『欧米のように 2%でアンカーされているという点があるかもしれませんけれども、日本でやはりその目標とする2%の物価と中長期の予想インフレ率で説明するのがなかなか分かりにくいと思うんですけども、その辺を現状どういうふうにお考えかということと、』
んだんだ。
『それに絡めて日本でも中長期的に 2%でアンカーされることが必要だということでよろしいんでしょうか。そうすると、結構金融政策の運営スパンが長いような気がするんですけれども、その辺をどういうふうにお考えかよろしくお願い致します。』
でもってこれに対するご回答ですが、
『(答)基本的には 2%の目標インフレ率を短い期間だけではなくて、持続的・安定的に実現するためにどういう政策運営が良いかという観点から政策を行っています。これはある意味では、あるいは少し広くとれば、他の中央銀行も同じかなと思います。』
あっそう(しかしこの前の金融学会の内田さんの説明もそうなんだが「海外もそうです」って言いながらそうじゃないことを言ったりすることがあるので油断大敵)。
『ただ、持続的・安定的に 2%が実現されるためにはということで、われわれは基調的な物価上昇率という概念を使い、様々な指標からそれをみているわけです。』
で、そのお気持ちもとい基調的物価を使う理由は????
『その指標の一つが予想インフレ率、あるいは特に中長期の予想インフレ率ということでございます。もう一度、欧米との微妙あるいはかなりの違いということで申し上げれば、予想インフレ率あるいは基調物価のところが
2%にまだ日本ではアンカーされていないという点は意識しつつ、そうなるように政策を続けているということであります。』
・・・・・全然答えになっていないんですが勘弁していただけますでしょうか。
という所で時間が無くなったので今朝はこの辺で勘弁していただきたく存じます。
2025/06/19
お題「FOMCインスタントレビューということですが五里霧中地蔵モードではないものの直ぐ動くわけでもないという感じっすか」
日銀ネタはどうしたおめー昨晩準備してないのかと言われるとぐうの音もでませんさーせん。
〇FOMC声明文:経済の大きな下振れと物価の大きな上振れの両方のリスクが減ったとな
今回
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250618a.htm
前回
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250507a.htm
・第1パラグラフ:経済の現状認識については大きな変更は無いですねこれたぶん
知らんけど、ということで比較比較。
『Although swings in net exports have affected the data, recent indicators
suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace.
』(今回)
『Although swings in net exports have affected the data, recent indicators
suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace.
』(前回)
最初のところは同じですね。
『The unemployment rate remains low, and labor market conditions remain solid.』(今回)
『The unemployment rate has stabilized at a low level in recent months, and labor market conditions remain solid. (前回)
雇用に関して、結論は前回と同じですし、失業率はremains lowなので認識自体は前回とほぼ変わらんという評価でよいと思います。
『Inflation remains somewhat elevated.』(今回)
『Inflation remains somewhat elevated.』』(前回)
同じですね。
・第2パラグラフ:「双方の大きなリスクが減りました、まだまだあるけど」をどう読むか、ですけど・・・・・・
今回問題になるべきはこの第2パラ。
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回)
2パラの頭は3パラの最終部分との対句になる開経偈なのでいつも通り。
『Uncertainty about the economic outlook has diminished but remains elevated.
The Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate.』(今回)
『Uncertainty about the economic outlook has increased further. The Committee
is attentive to the risks to both sides of its dual mandate and judges
that the risks of higher unemployment and higher inflation have risen.』(前回)
前回は経済見通しの不確実性が更に上がった、と言ってから「より高い失業(=景気悪化)とより高いインフレのリスクが高まったと判断しておりまして、両サイドのリスクに警戒しています」という表現でしたけれども、今回は「経済の不確実性が減りました、でもまだ高いには高いです」というのが最初にありますので、この部分で言えば利下げ時期が手前ではなくなる(ここで忘れがちなのは、FEDの今の政策金利水準は「引き締め的」ということになっていることで、政策金利水準は引き締め的なのでもし経済物価がマンデート達成しているなら政策金利を下げるのがデフォな事ですので念のため)ということになります。しかしながら返す刀で現状について「より高い失業とより高いインフレのリスク」ってのもバッサリと削除していますので、このより高いインフレのリスク削除をどう見るのか、ってな話になるわけです。
これどう見るかはさすがにこれだけだと分からんのでその後SEPを見ました(次にネタにします)けれども、SEPみたところ経済見通しが手前2年で若干下がって物価見通しが全般的に上がっているので、そうなりますと利下げ(=正常化)に関しては若干遅れるという結論になるじゃろと思ってあんまり信じちゃいけないドットプロットをみましたら、やっぱりお気持ち程度ですが利下げの人たちの一部がシフトしていました。
ということなので、これは「相変わらずリスクはあるんだが経済腰砕けリスクが5月の頭とかいう地獄タイムで見てた時よりだいぶマシになったからそっちの利下げは急がんわ」という意味合いになったのかね、とか何とか思いました。まあオープニングリマークと会見を読めば良いのだが寝起きでそこまで時間無し無し(3時半に起きろというツッコミが聞こえた気がする)ということで明日以降日銀も含めて(急ぎそうな方から順に)ボチボチ成敗していきます。
・第3パラグラフ:政策は維持、資産買入縮小もしばらく前に変更したのをそのまま継続
『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target
range for the federal funds rate at 4-1/4 to 4-1/2 percent.』(今回)
『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target
range for the federal funds rate at 4-1/4 to 4-1/2 percent.』(前回)
政策金利維持。
『In considering the extent and timing of additional adjustments to the
target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess
incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』(今回)
『In considering the extent and timing of additional adjustments to the
target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess
incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』(前回)
今後の金利誘導運営に関しては総合的にいろんなもんをみてあんじょうようやっときますわ。
『The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities
and agency debt and agency mortgage-backed securities. 』(今回)
『The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities
and agency debt and agency mortgage-backed securities. 』(前回)
こちらですが、念のためディレクティブも確認しましたが前回からの変更はありませんでした。
『The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.』(前回)
これは第2パラグラフの頭にあった開経偈の対句です。
・第4パラグラフ:今後の金融政策運営はあんじょうようやっときますわの文言は全文一致
『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee
will continue to monitor the implications of incoming information for the
economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance
of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the
attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take
into account a wide range of information, including readings on labor market
conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial
and international developments.』(今回)
『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee
will continue to monitor the implications of incoming information for the
economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance
of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the
attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take
into account a wide range of information, including readings on labor market
conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial
and international developments.』(前回)
金融政策運営に関しては総合的に判断してあんじょうようやりまっせ、という話でここはもう毎回判で押したように一致ですな。
・第5パラグラフ:今回も全員一致ですね
『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John
C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Susan M.
Collins; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Philip N. Jefferson; Adriana
D. Kugler; Alberto G. Musalem; Jeffrey R. Schmid; and Christopher J. Waller.』(今回)
『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John
C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Susan M.
Collins; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Philip N. Jefferson; Neel Kashkari;
Adriana D. Kugler; Alberto G. Musalem; and Christopher J. Waller. Neel
Kashkari voted as an alternate member at this meeting.』(前回)
ということでして、
・ディレクティブは前回決定をそのまま横に伸ばした内容です
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250618a1.htm
Implementation Note issued June 18, 2025
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation
ということで今回決定されたディレクティブ(金融調節方針)がございますが、
前回ディレクティブ等
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250507a1.htm
前回と比較しまして、各種オペや常設ファシリティの金利水準、限度額がある場合のオペ限度額、バランスシート縮小に関する月額閾値などの数値には変更はありませんでした、とアタクシが目視確認した結果そう思いました、違ってたらゴメンやでですけどまあ大丈夫だと思います。
〇SEP:政策金利の中立化に向けた着手が気持ち後ろ倒しになったって感じですかね
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20250618.pdf
Summary of Economic Projections
HTML版はこちら
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20250618.htm
ペタペタ貼ったりするのはHTMLから参りますが、ビジュアル分かりやすいのはPDFですよね。
・経済物価見通し:経済は2025、2026が若干下げ、物価は手前若干上げの全期間上げ
『Table 1. Economic projections of Federal Reserve Board members and Federal
Reserve Bank presidents, under their individual assumptions of projected
appropriate monetary policy, June 2025』
めんどくさいので基本的に「Median」をみています
2025 2026 2027 Longer run
Change in real GDP 1.4 1.6 1.8 1.8
March projection 1.7 1.8 1.8 1.8
ということで経済見通しは2027はロンガーラン並でして、これ念のためCentral
Tendencyを見ますと、2027年の見通しは1.6?2.0⇒1.7?2.0になっているので、つまりは今年と来年の下押しを予想するけどより長い期間に関してはそうでもないよって見通し。
ちなみにクソどうでもよいですが、GDP見通しの全員の数字「Range」を見ますと、2027年の見通しは0.6?2.5⇒0.6?2.5という面白数字になっています。
2025 2026 2027 Longer run
Unemployment rate 4.5 4.5 4.4 4.2
March projection 4.4 4.3 4.3 4.2
失業率に関しては全般上昇しています、と言ってもまあロンガーランの近辺ちゃあ近辺ですけど。
2025 2026 2027 Longer run
PCE inflation 3.0 2.4 2.1 2.0
March projection 2.7 2.2 2.0 2.0
こちらは若干上昇しています。これ2026年が2.4ということなのでまあ穏当な数字ではあるのですが、2026年の見通しがもっと高い数字だったとすると利下げどころの騒ぎではないってことになるようにも見えますので、その辺はバランスとったのかなとも思いました。
・その結果として2025年末の利下げ回数が気持ちだけ減りましたという結論
『Figure 2. FOMC participants' assessments of appropriate monetary policy:
Midpoint of target range or target level for the federal funds rate』
ということですが、これはHTMLバージョンをペタペタ貼ると却って見にくいのでお手書きしますが、
2025年末までの利下げ回数(利下げは25bp/回として)
0回:4人⇒7人
1回;4人⇒2人
2回:9人⇒8人
3回:2人⇒2人
となっていましたので、これはどう見ても1回の4人のうち3人が0回に転向して、2回のうち1人が1回に転向しました、って結果になっていまして、これメディアンの数字を取ると「2回」のままになりますけれども、まあどこからどう見ても利上げ回数減ったじゃろ、という結論になりますけど、そんなに過激に減っている訳でもない、ってなもんですな。
であとアタクシが注目するのはロンガーランなのですが、今回はアタクシの目が節穴じゃなかったら「前回と完全一致」かと思いまして、まあこの点から見ますと「トランプ関税の影響が色々とあるじゃろうけれども所詮は永続的な話にならんじゃろ」ってなもんなのか、分からんから今の時点で動かす気が無いのかはともかくとして、まだまだ「謎なので様子見」って感じになっているんだろうなあ、とは思います。
でですね、別にアタクシ中の人でも何でもないからわからんけど、こういう情勢において2026年末の政策金利プロットとかそんなの真面目につけられるもんじゃないんだからそんな数字を真面目に見てああだこうだいうのはディスインフレ時代のフォワードガイダンス時代からのマインドセットが遅れていると思うのですが、折角出してくれているのでざっと2026年末を目の子で見たら、金利の上の方と下の方が少し減っている感じがするので(あんまり真面目にカウントしていない)、一応そういう点では、さっきの声明文にあった、「Uncertainty
about the economic outlook has diminished」にも呼応していますな、とちょっと美しいつくりだなと思ってみておりましたです、はい。
という事ですので、まあ今回のFOMCですけれども、「不確実じゃああああああ」を削除したけど、まあゆうて手前の経済見通しと物価見通しは経済下げ物価上げにしていますわな。前回FOMC後に示されたスタンスは「今の政策ポジションは特にどっちに動かないとアカンという状態でもないので、不確実で五里霧中の中では様子見地蔵です」でしたけれども、今回はその五里霧中が一里霧中くらいになった、っていう現状認識になって、「経済見通しは下げました物価見通しは上げましたので、今後はこの推移によって今の引き締め状態の金利を中立に向けて引き下げるかどうかを検討します」っていうニュアンスに読めまして、地蔵モードという訳ではないですよって感じになったのかな、とは思いますがこの辺はオープニングリマークも確認しないといけないのですが時間が無いのでこの辺で勘弁してつかあさい。
2025/06/18
お題「決定会合レビュー:結局ハトハトムーブのままでしたな」
ついにロバート・ムガベムーブ来たか
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-17/SXZXEJDWRGG000
トランプ氏が利下げ要求で新たな主張、債務負担の軽減−識者は懐疑的
Enda Curran
2025年6月17日 22:14 JST
→8カ月で110兆円超える利払い費、対処には利下げ必要とトランプ氏
→エコノミストら相次ぎ反対論、効果は「容易に短命に」と野村HD
まあ当然ながら、
『そのような動きは裏目に出る公算が大きいと、エコノミストらは警告する。実体経済が必要としていないにもかかわらず利下げに踏み切れば、インフレ再燃の懸念を招く恐れがある。その結果、米国債需要が後退し、利回り上昇を促すなら、政府の利払い負担は一層重くなる。』(上記URL先より)
って話になるんだが、なぜ日本の場合は「超長期金利の上昇ガー」という話で日銀の買入継続が正当化されるのか、と考えると日本の金利市場もそうだしメディアもそうだし日銀もそうなんだが、完全に黒田の行ったYCC政策による薬物中毒になって正常な判断力が失われて廃人化している、ということですわな(個人の感想です)
などと言ってたら公共放送ニュースが
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250618/k10014837601000.html
財務省 超長期債の発行減額へ “短い年限の発行額増やす方向”
2025年6月18日 4時39分
まあ想定されていた話というところではありますがニュースになりましたかそうですか。
〇声明文の経済物価の現状認識:先行き見通しともに4月展望基本的見解と変更なし
今回声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250617a.pdf
4月展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf
輪番の話はさておきまして経済物価情勢に関する評価が「物価上振れ」したかどうかを見たかったのでそっちを先に見るわけですな。
・現状認識:まあやっぱり変えないだろうなあと思ったら変更ありませんでしたwwwwww
声明文では項番3の第一段落、展望レポート基本的見解では本文最初の『1.わが国の経済・物価の現状
』が該当します。
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(今回声明文)
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(前回展望レポート)
はい。
『海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みの動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。』(今回声明文)
『海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みの動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。』(前回展望レポート)
6月半ばにもなって今更「駆け込みの動き」なのかよと素朴には思うのですが、ゆうてワイも通関統計を真面目に見たりしている訳ではないので判断保留。でもってご覧の通り全文一致。
『企業収益が改善傾向にあるもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(今回声明文)
『企業収益は改善傾向にあり、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(前回展望レポート)
業況感のところは直前に日銀短観があった時のみ入るアセスメント文言ですので、ここは事実上の全文一致となります。
『個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持している。』(今回声明文)
『個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持している。』(前回展望レポート)
個人消費の現状判断も4月展望(5/1)と同じ。
『住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回声明文)
『住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(前回展望レポート)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回声明文)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回展望レポート)
同じですなあ、ということで金曜日に謎のBBG報道があった物価認識ですけれども・・・・・・
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、足もとでは3%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(今回声明文)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、足もとでは3%台前半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(前回展望レポート)
数字が上がっていますが、これはアクチュアルの数字が上がったからこう書いているだけの話で、背景説明を見たら何も変更は無いわけで、物価が上振れて推移している云々のBBG報道は一体全体何だったのかというお話ですが、この後記者会見でどういうかなあというのは有ったのですが、別に何か威勢の良いことは無かったなって感じですがその辺は会見録出てから再度。
・・・・・ということで事実上の全文一致でした。
・先行き見通し判断:これまた事実上の全文一致でしたなあ
先行き判断に関しても前回展望は本文の方を見ます。ここの比較にはちょっとコツというほどのものでもないのですが、まあそんなのがありまして、展望回じゃないときのここの文言って展望レポートの基本的見解の本文を引っ張って来てそこから何か変更を入れる場合は入れている、と思われる節がありまして、鏡の部分と比較すると抜けが発生することがあると思うのです(鏡と比較する方が自然にも思えるのですが、アタクシは実はあんまり鏡と比較したことがない)。
という豆知識はさておきまして、本文に関しては先行きのところに分散して載っています。
『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。』(今回声明文)
『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。』(前回展望レポート)
成長はまあ同じじゃろうなとは思いますけど。
『その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(今回声明文)
『その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、わが国経済も成長率を高めていくと見込まれる。』(前回展望レポート)
「その後」も事実上全文一致みたいなもんですね。でもって物価ですけど・・・・・・
『消費者物価(除く生鮮食品)については、これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(今回声明文)
『これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(前回展望レポート)
同じですねえ(冒頭部分の違いは文章構成の違いに起因します)。
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、』(今回声明文)
『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、』(前回展望レポート)
ということで「お気持ち物価」の見通しも変わっていないのでつまりはお気持ちにも変化はないということでございますなwwwwww
『「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回声明文)
『見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回展望レポート)
結局見事に全文一致でして、先週金曜日のBBGの報道は何だったのかという話になりますし、記者会見でもそんなに威勢の良い話(以下同文)。
ということで、7月ジャガーチェンジに向けた何かが出る、というような面白事案は生じていませんので、ここでいきなり7月ジャガーチェンジをしたらそれこそ「大阪や!(ガン!!)オラ開けんかいゴラァ!!」の世界(よつべがニコ動で「大阪や」で検索すればわかりますw)案件待ったなしということで、とりあえず変な物は出てきませんでしたし、上書きムーブも(声明文では)無かったな、というお話になりました、いやーなんかやったらどうしようと思ってましたけどw
〇輪番減額計画:事前報道通りでしたが何で減らすのかもわからんし次回の中間評価の時期設定おかしいじゃろ
声明文項番2が
『2.長期国債買入れの減額について、月間の長期国債の買入れ予定額を、2026
年1〜3月までは原則として毎四半期 4,000 億円程度ずつ、2026 年4〜6月以降は原則として毎四半期
2,000 億円程度ずつ減額し、2027 年1〜3月に2兆円程度とする計画を決定した1(別紙参照)(賛成8反対1)(注)。』(今回声明文)
とまあそういうことですが、ここで抜刀斎が華麗に抜刀をしていまして、
『(注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、中村委員、野口委員、中川委員、高田委員、小枝委員。反対:田村委員。田村委員は、長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであるとして、2027
年1〜3月まで月間の買入れ予定額を原則として毎四半期 4,000 億円程度ずつ減額する議案を提出し、反対多数で否決された。』
ということで現行ペースを維持すべき、という提案をしたものの惜しくも(って8-1だから全然惜しくはないけど)否決されてしまいました。
まあ折角ならここの所では「既往の長期国債残高によるストック効果による影響も勘案すれば、長期国債保有残高の削減を可能な限り進めるべき」という日銀バランスシート側からの理由付けをしていただくともっと論点が明確になるとは思った訳ですがそれは兎も角として。
でまあその別紙参照の方ですが、
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k250617b.pdf
長期国債買入れの減額計画(2025年6月金融政策決定会合)
『@長期金利 :金融市場において形成されることが基本
A国債買入れ:国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形での減額が適切
・2026年3月まで :原則、毎四半期4,000億円程度ずつ減額(従来の減額計画を維持)
・2026年4月〜2027年3月まで:原則、毎四半期2,000億円程度ずつ減額
国債市場の安定に配慮した形で市場機能の改善を進めていけるよう、段階的に減額していく』
って言ってるんですが、そもそも論として日銀の買入が多すぎるしストックの買入が多すぎるから(この点でSLFからの減額措置を若干拡大したのは評価できるけど不十分にも程があるので今後一段の拡大をしていただきたいがその話は別途)市場機能の回復が遅れているのであって、長期国債買入残高を減らしていく方がどう見たって急務じゃろ、とアタクシは思うのですが、そうじゃないという話になっています。
・債券市場に配慮とか言ってるけどこれは「物価安定目標が達成しない」というデフレ脳から抜けてないんじゃないのかと
という訳でですね、じゃあ何でワイが急務かと言えば話は簡単で、そもそも論として現時点で「基調的物価」とやらが2%に到達してて、家計を中心に期待インフレ率は上がっているし、企業の価格設定行動って最近は一部はもはやコスト転嫁の域を超えて欧州でいう「グリードフレーション」化してませんか、という問題意識がワイ的にはある訳ですよ、まあ何とかスト的にはそんな訳ねえだろって話だと思うのであくまでもシロートの話ってことになるかなって所ですが。
でもってですね、先日来何回かネタにしましたが、昨年末に出ていた「将来の財務シミュレーション」を見れば、早期に2%物価目標を達成し、「普通の」金融政策に戻る、すなわち期待インフレが2%で安定している世の中での金融政策運営をする、って事になった場合、コストプッシュだの供給ショックだのの要因によって物価が上振れたときに、「コストプッシュだから/一時的な供給要因だから」政策対応をしなくて良い、という行動をとると後で面倒なことになる、というのが欧米の今次インフレ局面での教訓な訳でして、それは日本だって同じことが今後起こりうる(というかまあワイは既に起きている可能性を思うのですがまあそこは措くとしまして)訳で、「普通の」金融政策をする際に、今ある巨額のバランスシートってのは政策の足かせになるわけですよどっからどう考えても(その辺会見でよい質問がありましたね)。
ですから、日銀保有国債の残高圧縮とか本来はマジで急がないといけないのに、たいして金利が上がった訳でもない状態において早くもビビって国債買入の継続を延命するという措置を取ってしまっている訳でございまして、それ債券市場に対する本当の配慮なのか、というと財政ファイナンス懸念とか、巨額のバランスシートによって将来の時点で本来必要となる引き締め政策ができなくなるのではないかという懸念とか、そっちの方からもっと大きな大問題が起こるリスクを抱えに行ってる、って話な訳ですよ。
・・・・と本来ならそうなると思うのですが、そうはならずに今回2026年4月以降とかいう飛んでも無い先の時点の決め打ちを行っている(FEDのテーパリングだってこんな決め打ちしてないぞ・・・)時点でお前ら本当に物価安定目標達成する気があるのかというか、物価目標達成後に起きる「普通の金融政策」への覚悟がないだろ大丈夫かってなもんでして、まあ黒田がキチガイみたいにバランスシートを拡大したのが悪いんですけど、そうは言ってもそれに対して全然反省しないで丸々黒田継承をしている時点で何やってるんだよとは思いました。
・減額前と比較して16%減少って碌に減ってねえだろ・・・・・
『<予見可能な形での減額>』ってのがあって、結局2027年3月の段階でも月額2.1兆円の長期国債買入を継続する、ということで、国債残高の方はと言えば相変わらず500兆円を大きく上回った状態、ということになっておりまして、いやすまんお前ら展望レポートの見通し期間の後半には物価安定目標達成する、って言ってるんだから2025年4月から2028年3月の後半ってそれはどこからどう見ても2026年10月な訳でして、物価安定目標を達成して「普通の金融政策」をやっている中なのに長期国債買入に関しては超緩和的な状態を続けるって何なんだよという話だし、仮にその巨額の買入を正当化するのであれば、長期国債買入による長期金利押し下げから来る緩和効果を相殺しないといけないんだから、短期政策金利は中立金利の下限とかいうような寝言を言ってる場合じゃないだろ、という話になると思う訳ですけれども、そこの整合性はどうなっているんでしょうかと小一時間(なので4000億円のペース継続でも遅いくらい)な訳ですよ。短期政策金利との整合性はどうなるんでしょうかねえ。
ちなみに、この質問をしますと、金融学会での内田副総裁の説明にあるように「短期政策金利とは全く無関係に保有長期国債の残高を設定できます(キリッ)」という返答が返ってくるのは1000%間違いないのですが、どっからどう見たって巨額の国債買入を継続して残高アホほどもっていたらバランスからして短期政策金利は引き上げていかないとインフレが止まらないか自国通貨安になってまた窮乏化するのか、その合わせ技になるのかという話じゃろとしか思えませんが、まああくまでも個人の感想ですのでそういうことで。
・次回の中間評価が何で来年の「6月」なんだよ真面目にやる気あるのか
べき論云々もさることながら(まあどうせこんな計画だすんじゃろうなあとは諦観してたのでそこはサプライズではなかったんだが)腰が砕けたのは最後の『<柔軟性の確保>』のところでして、
『@来年6月の金融政策決定会合で中間評価を実施
A長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に、買入れ額の増額等を実施
B必要な場合には、金融政策決定会合において、減額計画を見直す』
まあ2番と3番はいつも通りの抜かずの宝刀なのでさておきますとしまして、1番の「来年6月に中間評価」ってお前真面目にやる気あるのかという話ですよ。
いやあのですね、前回は減額開始したところだし、減額計画出すのと同時に政策金利の引き上げを実施してやっとマイナス金利だゼロ金利だから(25もゼロみたいなもんとは言え)プラス金利になりました、ってタイミングだったので、そこから1年後に状況を確認しますね、というのは話としてはまあ分からんではない(ただし現時点で来年4月以降1年分、というエライ長距離な計画を決め打ちする必要は無くて、そっちは12月なり1月なりに決めればよかったと思います)ので、今回の「中間評価」というのが前回設置されたのはまあ話としてはわかるんですよ。
然るにですね、今回ってその「中間評価」をした結果、「来年の3月までも今の計画を継続しても問題ないでしょう、まあ何か不測の事態が起きたら対応するにしまして」という結論を出したわけでして、それすなわち「来年3月までの中間評価は一旦完了」している筈なので、そこから3か月(6月会合の日程を考えたら実質2か月半とかですかねえ)の間に何の「中間評価」をするんですか、というお話でして、買入ペースを減額した事に関する影響を評価するのに2か月ちょいで何が分かるんだよと小一時間問い詰めたいし、しかも会見で植田さんは「次回中間評価で2027年4月以降の買入計画を策定します」みたいなことを言ってまして、買入ペース減額の影響もみないで何の買入計画を立てれられるのかということで、真面目にやる気あるのかというお話ですわな。
どう見たって10月会合(買入減額してから半年経過)以降に中間評価じゃろと思うのですが、これどうせ前回が6月だからとか言って機械的に何も考えずに1年先に設定したんじゃろ、という辺りにぞんな雑な運営でこの先このバランスシートを抱えたままで「普通の」金融政策が運営できるのかよ、と非常に不安におもいましたが、まあワイはご案内の通りの杞憂民族なので杞憂に終わっていただきたいものだと願って止みませんorzorz
〇減額措置拡充とか今回のオペ紙とか会見とかは明日(FOMCとぶつかる・・・・)
ということですが、例によって例の如く時間の関係上(昨日夜なべする余裕が無かったのでシャーセン)この辺で勘弁して頂くわけですが、少なくとも今回の声明文もそうですし、このやる気のない国債買入減額ペースの腰砕けを見ますと、物価安定目標は当分行かないですなあ、というメッセージを裏から発しているように読んでしまいましたアタクシは。
まあゆうて実際の物価は高止まりしている訳でして、日銀の目論見通りにここから物価上昇率が鈍化してくるのか、というのが目先では日銀に対する落とし穴の一つ(もう一つは円安の再燃)かとは思う訳でして、この後物価上昇率がコアコアベースで『既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響が徐々に減衰していくことに加え、成長ペース鈍化などの影響から、いったん2%を下回ると見込まれる。』(4月展望レポートより)となっている見通しが外れ、ついでに誰かの犬笛が差さって物価高止まりの戦犯として日銀がやり玉にあがるようなことでもありましたら、まあ今回の説明なんぞは全部ジャガーチェンジしてくると思いますので、今いまはハトハトチキン継続だし、主体的にジャガーチェンジするとも思えませんけど、外部要因の変化には注意をしていきましょうね、ってのが今回の決定会合のいったんのワシのレビューかな、と思ったのですけれども、まあこの後の金懇とか見て行って行きたいと思います。
次回は20日に総裁の全国信用金庫協会でのあいさつがありますが、そこはまあ通り一遍の物になるでしょうから、その次に予定される25日の抜刀斎の金懇でどういう抜刀が行われるのかを楽しみにしたいと思うところです。
2025/06/17
お題「決定会合は「長期国債買入の位置づけ」と「物価に関する現状評価」がどうなるかが注目ですね/貸増残高71兆円か・・・・」
虚構新聞じゃないのかよ・・・・・
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16C5K0W5A610C2000000/
トランプ一族、携帯事業「トランプ・モバイル」開始 金ピカ端末も
北米
2025年6月17日 3:56
サムネがまた虚構新聞かと思わせてくれますがwwwwwwwwwww
しかしまあこういうのって普通に利益相反案件だと思うのですが、米国ってどういうガバナンスになっているんだよというお話で、やっぱり制度上の牽制機能ってのは大事だし、緊急事態条項ってのは導入に際してかなり慎重に考えないといけないんだな、と思いました。
#なお例外規定を乱発してETFは買うわREITは買うわいや何でもありません
〇貸増経過措置前の最終回ですが総残高71兆円なわけで・・・・
貸増
https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/len_b/mope250616a.pdf
貸出増加を支援するための資金供給の実施結果
(2025年6月実施分)
『今回の貸付の概要
貸付予定額 70,188億円
貸付先数 31先』
ということで7兆円実施でして、
『(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み
大手行 284,111億円 6先
地域金融機関等 425,919億円 110先
合計 710,030億円 116先』
とまあそういうことで相変わらず71兆円もでているんですが、じゃあこの71兆円も出した結果貸出がどうなったのか、という話になると、なにせこういうのって実験室の実験じゃないからやらなかった場合にも別に何か変わったかよ、っていったら直感的には何も変わらず、単に金融機関のファンディングに使われているだけで、それは要するに量的緩和の一環で続いているのに「期間4年」とかふざけた期間で出した結果、量的緩和を本来縮小しないといけない段階になっても全然残高が減らない(政策修正に入ってからやっと「1年変動」に切り替えましこれから減るけど)ということになっておりまして、しかもこれ長期共担と同じで、一旦突っ込んだものは満期まで落ちない(超引き締めが必要になった時に本当の本当に必要なら買った国債は売却できるが資金供給は途中で回収できない)というのも問題で、どうせ物価2%達成せんじゃろと高を括って調子に乗って行ったこの手のオペについては、まあどうせ今検証するとお手盛りのインチキカウンターファクチュアル検証で貸出増加に効果があったことにされますので、当時のエライ人達が引退してから再検証した方が良いと思うの(多角的レビューもそうですが)。
という悪態は兎も角として、まあこれと2年(は満期来たけど)5年共担はマジでクソとしか言いようが無いというか、「どうせ2%達成しないだろ」と高を括ってないとこういうオペは考えつかないので(ガチで物価安定目標を達成した時に明らかに邪魔になるくらいは余程のアホウじゃなければ分かる)、まあそういうことなんでしょ、というお話ではあります。
とっとと無くなって頂きたいのだが前に突っ込んだ4年オペがまだまだありますからこれも正常化に時間がかかる訳で、長期国債買入をアホみたいに継続している場合じゃ無いと思うのですが・・・・・・・・
〇とまあそういう訳で決定会合ですが
でまあどこかで何か報道しているかと思いましたが案の定報道は無く、しばらく前にロイターさんとブルームバーグさんが出していた「2026年4月以降は減額幅を四半期4000億円→2000億円」って話と、金曜にブルームバーグさんが出していた「物価が想定よりも上振れて推移している」という話くらい、ということになりましたので、まあ今回はその2点ですわなというお話ですね。
・しかし2026年4月以降の買入について何でピンポイントで出す必要あるんだよ
この点に関してはハトハトチキン総裁が時々お見せする、「なんでそう変な方向にばかり思い切りがいいのよ!!」(画像割愛)の一環で何故か全く意味が分からないのですが、2026年4月以降の買入計画も出す、とか言い出したのが原因なのですが、そもそも今回って去年の7月に出した2026年3月末までの長期国債買入縮小計画の中間評価、という位置づけであって、何で中間評価するかと言えば長期国債買入の縮小というのを始めてやるし、元々が飛んでも無い勢いで買っていたのを減らすという作業の一発目だから、途中で中間評価をしましょう、って建付けだった訳ですよ。
つまりですね、なんも来年4月以降の話を今決める義理はどこにも無いわけなのに、普段ハトハトチキンで運営しているくせに、時々なんか変なもんでも食ったのか、はたまた植田和男先生本来の自我が目覚めるのか、その背景は全くわからんのですけれども、突発的に「変な方向に思い切りがいいムーブ」をぶっこんで来たから2026年4月以降とかいうのが話題になる、という日銀がわざわざドツボにハマりにいっている訳ですな。
・・・・などと書いておりましたらこんなのが今しがたw
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250617/k10014836931000.html
日銀 国債買い入れ減額の対応議論 政策金利は据え置きで検討か
2025年6月17日 5時39分
『日銀は17日に2日目となる金融政策決定会合を開き、債券市場から買い入れる国債を徐々に減らしている今の措置について、今後の対応を議論します。』(上記URL先より、以下同様)
ということで公共放送さんが話題にしてくれたようですが・・・・・・・
『日銀内には、長期金利が急上昇するなど市場が不安定にならないようこの先は減らすペースを緩めるべきだといった意見が出ていて、どのように調整するかが焦点となります。』
というのを見て、いやだから長期国債買入に関してはバランスシートのデザインをどうするかが問題なのであって、「市場が不安定にならないように買入の削減を抑える」とか言ってるのがもう本末転倒なんですが、日銀内でそういう意見が出ている、っていう時点でお前ら財政ファイナンスやっているって自白しているようなもんで、通貨の信認に関わる話をしている、って認識は無いのかと小一時間問い詰めたいのですが、まあこの「長期金利が急上昇しないように」って辺りがもうハトハトチキンのチキンっぷりを遺憾なく発揮しておられますなあと思いますし、
『日銀は金融政策の転換に伴って、去年8月以降は債券市場から買い入れる国債を徐々に減らし、来年3月までは原則3か月ごとに4000億円程度減額する計画です。ただ債券市場では、財政悪化の懸念などを背景に期間の長い国債が売られ、長期金利が記録的な水準まで上昇する場面がありました。』
あの水準で記録的な水準って報道しているのも何ちゅうか頭が痛いですけど。
『こうした状況に、日銀内では国債の買い入れは減らし続ける必要があるものの、債券市場が不安定になる中、影響を最小限に抑えるため来年4月以降は減らすペースを緩めるべきだといった意見が出ていて、どのように調整するかが焦点となります。』
だから日銀の大規模介入が続いている(ストック効果分も含めて)から市場が安定せんのじゃという話ですし、そもそも論としてバランスシートの全体のデザインから以下同文という話ではありますな。
・・・・・・ということでですね、まあ買入に関しては「2026年4月以降の数字をわざわざ出すのか」(出す必要なくて「減らす方向ですが具体的にどうするかは今後の状況を確認したうえで今年12月か来年1月の決定会合で改めて決定します」で一切問題ない筈ですけどねえ)というのと、国債買入の位置づけについてどのような説明があるのか、というのを注目したいんですが、問題はそうじゃなくて数字の話ばっかり質疑応答で出てくるだけになりそうな会見が予想されること。
いやマジな話、YCC止めた後の長期国債買入っていうのに何の政策的な意味があるのか、というのはずっと誤魔化し続けてなんらの定義もしないまま馬鹿みたいな額の買入を依然として続け、今後物価安定目標が達成された後に金融政策運営のとんでもない足かせになりそうな巨額なバランスシートを何でのこさにゃ行かんのよという話なので、じゃあそこまでの顕在化すると面倒なことになりそうなコストを何でかけるのか、という話な訳ですよ。
「バランスシートを金利は上げられます」と内田さんは金融学会の講演で説明していますが、当然ながら利上げしたらバランスシート見合いの日銀当座預金から付利金利の支払いという広義の意味での財政垂れ流しが発生する訳で、それが多少の額なら問題にならないでしょうけれども、今の日銀の規模で問題にならない訳がないので、物価安定目標達成後の円滑な金融政策運営に対して今のバランスシートはどっからどう見ても大問題な状態で、お前ら本当に物価安定目標達成する気あるのか、とまで言いたくなってしまう(ちなみに実はもう上抜けしかかっているんジャマイカという話はここでは措く)んですよね。
つまり、物価安定目標を本当に達成すると思っているなら、買入なんぞとっととゼロにしてバランスシートの縮小を急がないと、物価安定目標達成後に今度は金融引き締めが必要になった時に厳しいことになってしまう、とまあそんなお話なんですが、その辺り今の長期国債買入を何でまだ継続しているのか、という話をひたすらスルーしている(会見で誰も聞かないのも悪いんだが・・・・)のをちゃんと説明して頂きたいもんだ、とさすがにそろそろ思うのでありました。
なお、物価目標達成しないでゼロインフレのままなら巨額なバランスシートの問題点は顕在化しないもんだから調子にのって野放図に拡大した、というだいたい前任のケツ拭きなのでそこは同情に値すると言いたいけど、黒田緩和は問題なし、とかいう飛んでも無い多角的レビューを出した時点で以下の問題は全部ハトハトチキンが黒田緩和の後始末をちゃんとやらなかったから悪い、になるんだよなあとおもいました、まる。
・・・でもう一方の注目点は、昨日ネタにしました金曜のBBG報道の「日銀はインフレが想定よりやや強めと認識」という件でして、今回のMPMは展望回ではないので、声明文の方に経済物価情勢の中間評価みたいなのが入ってくる訳でして、さてそこで何か言い出すか、というのが第一の注目点。
もしここで物価に関して「物価がやや強めに推移」とか言い出したらお前は何を言ってるんだ(画像割愛)というのはさて置きましても、4月展望でのフォワードルッキングハトハトチキンを上書き訂正するものになりますので、4月展望を上書きするとなりますと、それは1月3月の説明となるわけですので、これは大きな意味を持つ話になりますので国債買入の話と共に今回は声明文での物価の記述は楽しみに待ちたいと思います。
とは言いましても、日銀とて4月の展望レポート、と言いましても出したの5/1な訳で、しかも5/1には既に上振れしていた4月東京都区部CPIというのが出ていた、という状態だったのに、そこは丸無視して「物価見通しを下振れさせた挙句にリスクも下振れ」というのを出した、という背景があるので、6月会合の声明文、という一番エライ文章の所でそんなの出した日には政策委員か企画か調統か知らんけど丸坊主になって詫びろって話(個人の感想です)なので、声明文では何もその辺は書かない、と予想しております(フラグではありません)。
ただ、7月の展望レポートの時点で4月の(経済は兎も角として物価に関する)ハトハトジャガーチェンジを修正しよう、と思うのでしたら、さすがに今回会見で何かその辺聞かれたら「最近も価格転嫁の動きが続いており、想定以上に堅調に推移している」ってコメントをすることによって、4月の物価ハトハトムーブにオブラートを掛け、でまあ7月展望で物価に関してはやっぱり1月展望から概ねオントラックで推移していますねよかったよかった(ただし物価目標達成時期の表現を前倒しにすると面倒なことになるのでそこはいじらない)、という風にしておいて、9月会合以降に理由(主に貿易問題)さえつけば利上げできるようにする、という形に立て直してくる、というのはまあだいたい予想は付くところではあります(しつこいがフラグではありません)。
え、お前この前政策修正するなら大企業製造業の冬季賞与と来年度の賃金改定に向けた動きが見えてくる12月か1月じゃないか、って言ってなかったか??とツッコミをされそうでございますけれども、まあ物価に関してあのハトハトチキンムーブがあっさり上書きされてしまいますと、5月会合以降の説明も全部上書きされてしまう、という一貫性もへったくれもない、というのが今の日銀なのでそこがどうしようもない訳ですな、ナムナム。
〇そういや超余談ですが
https://www.mof.go.jp/jgbs/publication/debt_management_report/2025/index.html
債務管理リポート2025 −国の債務管理と公的債務の現状−
昨日弊駄文がうっかり気が付いてしまいましたタイポの件ですが、早速直っておられましたな。というかまあ実は昼過ぎに見たらもう直っていましたのではえええええええ!と思いました(^^)。
2025/06/16
お題「今になって「インフレが想定より高めに推移」は大草原待ったなしwwwww/3M金利0.4台前半に低下ですね&関連雑談」
ほほう
https://www.yomiuri.co.jp/national/20250615-OYT1T50125/
三浦市長選挙、元会社員の43歳が自民推薦の現職6選を阻む…小泉農相のおひざ元で
2025/06/16 01:28
〇BBGのいつもの関係者ソース記事ですけれどもマジネタだったらこれはwwww
金曜の午後イチでこんなのが出ていましてね
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-13/SXPYSPDWX2PS00
日銀はインフレが想定よりやや強めと認識、価格転嫁の継続で−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2025年6月13日 12:45 JST
→来週の会合では政策金利の維持が決まる見通し、関税見極め−関係者
→関税の影響緩和が明確になれば、利上げ適切か検討の可能性−関係者
またいつもの「関係者はこう語った」ネタですけれども・・・・・・・
『日本銀行は、インフレ動向は予想よりやや強めに推移しているとみている。世界的な貿易摩擦が緩和した場合、利上げの議論のきっかけとなる可能性がある。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。』(上記URL先より、以下同様)
ということでもうこの記事は冒頭から(というかヘッドラインの段階で)抱腹絶倒モンでして、まさに「お前は何を言ってるんだ」状態で椅子から転げ落ちそうになりました。
・・・・・だってさ、4月展望(4月展望と言っても5月頭ですけれども)の段階で、トランプ関税の影響についてアベイラブルかつ信頼感のあるデータが全然出きていなかったのに、何をトチ狂ったのか普段物価に対してビハインド・ザ・カーブにも程がある日銀の政策委員会の皆様が、突如物価見通しを下振れ、リスクも下振れ、とフォワードルッキングにジャガーチェンジしたばっかりでして、あの時点だって(ワシはそう予想して外しましたけど)「とりあえずトランプ関税の影響は超不確実ですが、まあ普通に考えたら経済下振れ要素なんで政策はいったん様子見しますわ、見通しに関してはとりあえず6月7月に状況の変化を受けて改定するわ」でもよかったわけで、「わからんから一旦ベースラインシナリオ維持だけど先行き不透明要素強すぎ」にしても良かった筈なのに、堂々の見通し引き下げに、ハトハトチキンな総裁の説明、と来ていた訳でして、どの面下げて6月にいきなり修正するんだよアホなのかお前らという話で、下方修正下振れとか言ってた連中のうち上記BBG報道みたいなこと言ってる輩がいたら政策委員としての適格性に疑問を呈さざるを得ませんわwwwwwwというお話ではありますわな。
まあしかし何ですな、
『関係者によると、日銀が16、17日に開く金融政策決定会合では、米関税政策を巡る日本をはじめとした各国間の交渉の進展やその内外経済への影響を見極めるため、政策金利を0.5%程度に維持することが決まる見通しだ。』
まあそりゃそうじゃろという話なのでこれはさておきまして、
『一方で、足元までの消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は、人件費や原材料価格の上昇を価格転嫁する動きが続き、食料品価格を中心にやや強めの動きとみている。急騰している米価格が消費者のインフレ期待を押し上げる可能性を指摘する声もある。』
いやあのさあ、わずか1か月半前にそれまでの物価上振れのリスクあり、というのを思いっきり下げたばっかりだし、食料品価格を中心にCPI強いじゃろ、ってのは当時も指摘されていた話だし、今さら何を言ってるんだよというお話に最早呆れて物も言えませんですな(言ってるけど)。
でまあこいつらの見通しって何なんだよというお話ですけれども、
『米関税によって基調的な物価に大きな下押し圧力がかからないことが明確になれば、毎回の会合で経済・物価見通しの実現確度を精査し、利上げが適切かどうかを検討する可能性があるという。こうした関係者の発言は、世界貿易の情勢がより明確化すれば、日銀が年内に利上げを行う選択肢があることを示唆している。』
というまとめになっていますけど、これは「年内」じゃなくて極端に言ったら7月に手のひら返し(の結果結局半年に1回のペースになるんだが)をする可能性も示唆している、というお話で、まあさすがに7月はジャガーチェンジがあまりにも酷いので相当無理があると思いますけど、ゆうて今回の会合によるメッセージの出し方が強かったらジャガーチェンジが全くないわけではない、ということになりますわな。
ですので、7月はさすがにアレですけれども、普通に9月10月というのは、今回「関税の影響はまだ不透明だがそこまで深刻な物にはならなさそう」→7月「基調的物価が思った以上に堅調に推移している上に関税の影響は以下同文」というぶっこみ方をすればまあ普通に9月あるいは10月で政策修正できまっせ、ということなので年内と言っても12月とかそういう話ではないということになりますな。
・・・・・・いやまあそれはそれで政策修正とっととやれ派のワシとしては結構な展開ではあるのですが、お前ら賃金の好循環(最近「好循環」は言わなくなっています為念)の見極めとトランプ関税の影響による企業行動の変化を確認するために来年に向けた賃金設定の動きを見るとか言ってたのは何だったのか、というお話になるわけでして、政策修正するにしても修正を見送るにしても、その理由付けの説明が「その場限り」なのは勘弁してくれよという感じです。
とは言いましても、先週しつこく特集した内田副総裁の講演、ツッコミどころだらけでしたけれども、特に衝撃(あるいは笑劇)のツッコミどころって、YCC導入時の「オーバーシュート型コミットメント」について、黒田総裁に散々「強力なコミットメント」って言わせておいて、今頃になって堂々と「あのコミットメントはそんなに強力なものではない」って言い放っている部分でしたが、そりゃまあ政策の根幹っぽく説明していた手段でさえ「あの説明はペテンでした」って堂々と言ってしまうのが今の日銀の仕様だとすれば、経済物価見通しが政策アクションからの後付けになって、都合が悪くなると物価に関するアセスメントを1か月半でひっくり返す、という位は平気の平左でしょうなあ、と思いまして、ちょうど講演が出た後にこの「関係者談」記事が出てくるあたりに味わいを感じる先週金曜でありました。
〇3M新発はレート低下ですな
まあ入札の前からしっかり目にはなっていましたけど。
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250613.htm
国庫短期証券(第1312回)の入札結果
『本日実施した国庫短期証券(第1312回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。
記
1.名称及び記号 国庫短期証券(第1312回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項
3.発行日 令和7年6月16日
4.償還期限 令和7年9月16日
5.価格競争入札について
(1)応募額 13兆5,737億円
(2)募入決定額 3兆3,499億7,000万円
(3)募入最低価格 99円88銭7厘5毛
(募入最高利回り) (0.4468%)
(4)募入最低価格における案分比率 29.9699%
(5)募入平均価格 99円89銭1厘3毛
(募入平均利回り) (0.4317%)』
ということで前の週の3Mが0.4529%/0.4698%と40bp台後半に金利上がったのですが、結局のところ長続きしませんでしたなあという感じでまたも0.4台前半に戻るの巻。
とは言いましても、しばらく前までは30bp台が普通だったのでそこから見たらちったあマシという水準ですけれども、引値を見ますと(というか売参を見ますと)
いつもの売参
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
(6/13引値)
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.430
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.430
国庫短期証券1310 2025/09/08 平均値単利 0.430
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.430
(6/12引値)
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.440
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.445
国庫短期証券1310 2025/09/08 平均値単利 0.445
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.460
ということで、まあ12日の時点で新発WI以外は0.45割れになっていたのですが、新発入札が普通に堅調で既発ゾーンもそっちにサヤ寄せされて0.43%水準、ということになっておりまして、じゃあ現状GCってどの辺なのかと思えば
東京レポレート
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
O/N T/N 1w 2w 3w 1m 3m 6m 1y
2025/6/9 0.493 0.490 0.479 0.478 0.477 0.477 0.487 0.500 0.572
2025/6/10 0.488 0.489 0.480 0.478 0.477 0.477 0.486 0.500 0.572
2025/6/11 0.494 0.489 0.480 0.478 0.477 0.477 0.487 0.500 0.572
2025/6/12 0.493 0.489 0.480 0.478 0.477 0.478 0.486 0.500 0.572
2025/6/13 0.493 0.490 0.480 0.478 0.477 0.477 0.485 0.500 0.572
先週1週間の推移ではトモネがずーっと0.49%になっていまして、GCって基本的に高止まり傾向にありますので、3台よりはマシですけど0.4台前半でGC対比スプレッドついている状況だとやっぱり強いのよね、って感じではありますな。
〇ところで債務管理レポートに短国の話がありまして
https://www.mof.go.jp/jgbs/publication/debt_management_report/2025/index.html
債務管理リポート2025 −国の債務管理と公的債務の現状−
債務管理レポートってフルカラーなので全部DLすると結構な量になってしまう、ということで分割バージョンも公開されているのでそっちから。
『第T編 債務管理政策の現状
1.令和6年度の国債市場の動向(PDF:1208KB)
2.国債発行計画(PDF:1355KB)
ボックス3 コスト・アット・リスク分析
ボックス4 最近の国債管理政策における課題と取組
3.保有者層の多様化(PDF:2079KB)
ボックス5 T-Bill需要に対する需要について』
ちなみにこの「T-Bill需要に対する需要について」ってのはどう見てもタイポなので直しておいてよろしくてよと思いますがそれはさておき、第1編の項番3、でDLできますのでそちらを見ますと、
https://www.mof.go.jp/jgbs/publication/debt_management_report/2025/saimu2025-1-3.pdf
債務管理リポート 2025
第T編 債務管理政策の現状
3 保有者層の多様化
『現在、我が国は多額の国債残高を抱えており、国債の安定消化・安定保有の観点から、幅広い投資家層による国債保有を促進することが重要な課題となっています。』
さいですな。
『また、多様な投資家が様々な投資ニーズに基づき国債を保有することは、市場の状況が変化した場合に取引が一方向に流れることを防ぎ、市場を安定させる効果もあると考えられます。』
これは本当にそうでして、ジジイから言わせてもらうと昔の方が参加者のポジション運営に関しても業態の中でも各社各様だったりしたので、誰かの動きに対して誰かがカウンターになる、みたいなのが国債投資家の間でもあったのですが、近年は規制がガチガチになったのと、各業態での合従連衡によって参加者が巨大化して数が減った、というのもありまして、何せ動きが極端に振れ過ぎる傾向にあるかと。
でもってジャパンの場合は日銀がこれを吸収しまくっていたので、市場そのものが日銀依存みたいになっていて、昨今の輪番減額議論だって「債券市場に対する配慮」とか本来そんなもんは不要なものを市場の方から泣きを入れる始末になっているほどのクレクレコジキモードになっているのですが、日銀が国債買いすぎで市場の自立心を奪ってヤク中にしたのが悪いんだが、まあそんな現状ですわな。
『こうしたことから、財務省では、銀行や生命保険会社等の国内機関投資家のみならず、国内外の幅広い投資家層による国債の保有促進に向けた取組を進めてきました。ここでは、国内外の投資家による国債保有の状況、個人投資家の保有促進策及び国内外の機関投資家向け
IR 活動について説明します。』
んな訳で
『(図1− 19)国債及び国庫短期証券(T-Bill)の保有者別内訳 (令和6年 12 月末速報値)』
『(図1− 20)国債の保有者別内訳 (令和6年 12 月末速報値)』
『(図1− 21)国庫短期証券(T-Bill)の保有者別内訳 (令和6年 12月末速報値)』
というのがありますが、まあこの辺の数字は皆様先刻ご承知の介のお話だとは思いますので一々説明はしませんであとは個人向け国債の話と短国需要の説明についての部分でも。
『(1) 個人投資家の国債保有』ということで。
『個人投資家の保有促進策として、平成 15 年3月に個人向け国債(変動 10 年)を導入して以来、平成
18 年1月に個人向け国債(固定5年)、平成 22 年7月に個人向け国債(固定3年)の導入を行い、また、平成
19 年 10 月には、新型窓口販売方式の導入を実施してきました。』
はい。
『令和6年度は、市場実勢金利の上昇に伴い、個人向け国債の金利も上昇したことから、販売額は約
4.5 兆円と大幅に増加し、家計による国債保有残高も増加しました。』
イイハナシダナー
『しかし、長期的な推移をみると、家計の国債保有割合は低位で推移しております。』
図表とかもあります、そらまあこの金利だから仕方ないじゃろと思いますけど。
『このような状況を踏まえ、個人向け国債の中長期的な購入者層の拡大を図るための広告展開を実施しています。』
広告よりも特別マル優の復活ってのどうでしょうかねえ、500位で(国債だけやったら民業圧迫と思いっきり言われそうですが・・・)の方がエエんちゃいますかねえ(昭和脳)。
『令和6年度はメインターゲットを既存の主な購入者層である 50 歳以上とし、購入判断を促すような広告を実施するとともに、サブターゲットである勤労世代や若年者層についても認知・商品理解を促すような広告展開を実施しました。』
ほほう。
『具体的には、「個人向け国債の個子ちゃん」及び「コクサイ先生」に加え、タレントを起用し、インターネット広告(バナー広告等)、SNS・動画広告、新聞広告、雑誌広告、交通広告、TVCM
を展開したほか、ポスター・パンフレットの作成・頒布、イベントでのブース出展を実施しました。また、愛知県・岡山県などで地域限定広告、セミナーや出張授業などを実施しました。』
ほうほう。って何でワイは動画広告で国債ネタを引かないんじゃろ。よつべでも広告出しているみたいなのですが、アタクシ今までよつべの広告で国債ネタを引いたことがないんですよね・・・・・・・
『令和7年度も令和6年度と同様のアプローチで、個人向け国債等の商品性の魅力を訴求し、購入につながる広告展開を予定しています。』
ということでどうも広告を工夫するくらいの話らしいですが、もう少額貯蓄利子非課税制度でも入れたらって言いたくなります(相続税無税国債、ってのも時々出てくるけれども、それはただの金持ち優遇になるからイマイチ感が)。
でまあ途中をかっ飛ばして『ボックス5 T-Billに対する需要について』ってのを少々。最初の説明部分は言うまでも無いのでパスしますが、
『保有者別の内訳を見ると、金利がマイナスであった期間は、通貨ベーシス・スワップ取引を通じた収益確保が可能である海外投資家が高いシェアを占めていましたが、金利がプラスに転じた後は、国内投資家の保有割合が増加しています。』
ってなっていまして、『(図B5−2)T-Bill の国内・海外投資家の保有割合』を見ますと、
令和5年9月末確報値:国内33.2%
令和6年9月末確報値:国内40.0%(うちMRF2.6%)
ちゅうことで、
『〇 国内投資家の動向
国内投資家については、担保目的での保有ニーズを有する国内銀行のほか、短期的な資金運用ニーズを持つ国内機関投資家が主な主体として挙げられます。とりわけ、国内機関投資家による短期運用ニーズに関しては、T-Bill
の金利がマイナス圏で推移していた期間中、T-Bill を用いた資金運用は抑制されていました。しかし、令和6年3月のマイナス金利政策解除を契機に金利がプラス圏へ移行したことで、同年4月以降、T-Bill
を活用した運用が再開されています。』
さいですな。
『T-Bill での運用を再開した投資主体の一例としては、MRF(Money ReserveFund)が挙げられ、以下ではその概要について紹介します。』
ということで、マイナス金利政策時に(正確にはマイナス金利政策導入時にその施策が無くてMRFへの影響が甚大じゃろとか言ってたら2か月遅れで)導入された「マクロ加算残高のMRF特則」以来ですなこんなに思いっきりMRFの文字が当局の説明で出てくるのは、と思うといよいよプラス金利の時代ですよと思う訳ですが、いまさらながらに。
『MRF は、証券総合口座の導入に伴う待機資金の受け皿ファンドとして、1997
年に設定されました。2012年の「アベノミクス」開始以降、株価の上昇に伴って株式や投資信託の取引が増加したことから、証券口座における待機資金が拡大し、MRF
の純資産残高は継続的に増加しています。』
『MRF は証券口座の待機資金を運用するファンドであることから、運用にあたっては高い安全性が求められており、例えば「有価証券を
50%以上組み入れること」や「組入債券の残存期間を1年以内とすること」など、運用手法に関する一定の規制が設けられています。このような規制のもと、有価証券であり償還期限の短い
T-Bill は、もともと MRF にとって親和性の高い運用対象となっていましたが、T-Bill
の金利がプラス圏で推移するようになったことを受けて、現在、その運用が再開されています。』
まあこの債務管理レポート自体が必ずしも市場向けではないというか寧ろ一般向けなので説明は端折りまくられていますけれども、まあそれは兎も角としてMRFの文字が出てくるのMRF特則以来(あれは日銀ですけど)じゃねえか(なおしばらく前に世界的な規制強化の一環で日本でもMMFに関する規制強化が行われたので、その際にMMF・MRFは当局マターになっています、為念)ということで、金利がプラス化しましたなあと(大事なことなので二度言いましたw)。
とまあそういうことで今朝も決定会合待ちの雑談雑感で勘弁。
2025/06/13
お題「内田副総裁講演ですが決済システム関連部分なので概ね雑談ですサーセン(最終回)」
今度は原油価格に八つ当たりですかそうですか
https://jp.reuters.com/markets/commodities/QN5RBPVK5JLPFLUR2RO24YOTJQ-2025-06-12/
トランプ大統領、ここ数日の原油高に不満表明
ロイター編集
2025年6月13日午前 2:37 GMT+9
『トランプ氏はホワイトハウスのイベントで「ここ数日、原油価格が少し上がったのは気に入らない」と表明。さらに、「これから少しは下がるだろう。インフレは抑制されているのだから」とした。』(上記URL先)
インフレが抑制されているから原油価格が下がるっておじいちゃん大丈夫レベル発言に見えますけど、まあこういうのはメディアのテキトーな切り取りの可能性があるので判断保留という事にしておきますかw
〇内田副総裁講演は決済システムに関する話がオモロイので現世利益関係ないけど
まあさすがにこのシリーズ最終回にしようかと思いますが。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250607a.htm
【講演】
業務からみた日本銀行
日本金融学会2025年度春季大会における講演
日本銀行副総裁 内田 眞一
2025年6月7日
まあ決定会合前の雑談という事でお暇な方は以下お付き合いいただければってな感じです(滝汗)。
・ということで決済システムに関してです
今回の講演、『6.デジタル社会の中での決済システムと中央銀行業務』という見出しのコーナーと、『8.中央銀行業務と決済システムの未来像』という見出しのコーナーが結構面白いんですよね。何故か知らんが章立てがワープしているの何なのって感じですがw
『6.デジタル社会の中での決済システムと中央銀行業務』って小見出しから参ります。
・DX化による決済の変化について
『決済のデジタル化』ってのが最初の小見出しです。
『図表9をご覧ください。ここからは後半パートに入り、日本銀行の業務と政策が、デジタル化などの環境変化によって、どう変わるのか、あるいは変わらないのか、考えてみたいと思います。』
てなことではじまりはじまり。
『わが国は、キャッシュレス比率が低いと言われます。この点は、各国で定義も異なり、厳密な比較は難しいのですが、わが国の場合、銀行口座での引き落としのほか、振込の割合が大きいのが特徴です。これは1973年から稼働している全銀システムによって、これらが極めて便利にできていることが背景です。』
第3次オンライン(だいたい昭和の終わりから平成の話だが)への完全移行から先さらに便利になった感はある。
『また、冒頭でご説明したように、わが国の銀行券残高は、低金利になる前で比較しても、他国よりも多くなっています。これには、現金を持ち歩いても安全であることや、そのもとでコンビニエンスストアを含めてATM網が発達しているという背景があります。もともと人々がどのような決済手段を使うかはその人の自由です。』
んだんだ。
『もっとも、日々の買い物を含めて、経済のデジタル化が進展する中で、人々にとって便利で安全な決済手段を選択できるように、それにふさわしい決済手段が提供されることは重要です。そして、決済システムが全体として、デジタル社会の中で高い安定性と効率性を発揮するために、中央銀行がどのような形態の「支払完了性のある決済手段」(中央銀行負債)を提供すべきか、設計していく必要があります。』
ここで中銀デジタル通貨の話が出てきまして、小見出し『中央銀行デジタル通貨』に進みます。
『この点に関連して、中央銀行自身がデジタル通貨(「中央銀行デジタル通貨」<CBDC>)を発行するというプロジェクトが、各国で進められています。欧州では、欧州中央銀行(ECB)が、2023年に「デジタルユーロ」に関する調査フェーズを完了し、準備フェーズに移行しています。また、イングランド銀行は、「デジタルポンド」について、設計フェーズの進捗レポートを公表しています。中国では、国内26都市や香港で「デジタル人民元」のパイロット実験を実施中です。』
『一方、米国では、2022年から23年にかけてCBDCに関する市中協議を行いましたが、銀行協会などから強く懸念する声が寄せられました。また、トランプ大統領は、今年1月、CBDCの発行等に関する政府機関の取り組みを停止・禁止する大統領令に署名し、FRBのパウエル議長も2月の議会証言で、自身の在任中のCBDCの発行を否定しています。』
CBDCについては一時エライい勢いでブームなのかって状態でしたが最近は落ち着いていますよね、寧ろこの「何で落ち着きましたのよ」という背景を知りたいですなアタクシ的には。
『わが国では、2020年に日本銀行が「中央銀行デジタル通貨に関する取り組み方針」を公表し、技術的な検証を進めています。2023年からは、パイロット実験に移行し、「実験用システムの構築と検証」を実施するとともに、民間事業者の技術的な知見を活用するため「CBDCフォーラム」を設置し、幅広い関係者に参加いただいて、様々なテーマで議論しています。政府においても「CBDCに関する関係府省庁・日本銀行連絡会議」が設置され、制度設計の大枠の整理に向けて検討が進められています。』
とは言え数年前とはだいぶ勢いが違う感が否めません。
『CBDCは、デジタル社会のもとでのわが国の決済システムの将来像を決める重要なインフラになりうるものですから、これを発行するかどうかは、こうした内外の情勢を踏まえたうえで、国民的議論の中で決める必要があります。ご説明した通り、各国の対応も分かれています。ただ、CBDCを発行するにせよ、しないにせよ、デジタル社会の中で、現金のような「支払完了性のある決済手段」を誰がどのように提供するのが、決済システム全体の安全性と効率性につながるのか、考えていくことは必須です。』
「現金のような「支払完了性のある決済手段」を誰がどのように提供するのが、決済システム全体の安全性と効率性につながるのか、考えていくことは必須です」という所にまあ論点が有るわけですが、
『具体的な仕組みとしては、まず、必ず必要になる個人との接点(インターフェイス)の部分は、いずれにしても、基本的に民間の事業者が担うべきだと思います。個人の多様なニーズに応えることは公的機関である中央銀行には難しいからです。その中で、利用者にとって便利なインターフェイスや、それを生かしたイノベーションが生まれるのだと思います。』
ってさらっと流していますが、この点って言うのは利便性とかイノベーションの話ってのは実はオマケの話でして、問題は「通貨発行の二重構造」に関わる部分になるわけですけれども、CBDCが預金通貨を駆逐してしまう事になった場合、信用創造とかそういうのが無くなるわけで(預金銀行が今のノンバンクと同じ構造になる)、これは通貨発行構造のデザインの問題になるのですが、議論がおっぱじまった当初は兎も角、最近は「通貨発行の二重構造」は維持し、CBDCはその構造を阻害しない程度のものとする、ってのが一般的な理解になっているかと思われるのですが(例えば昨年の植田総裁のこの講演→https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240305a.pdf 「中央銀行デジタル通貨について知っておきたいこと──
FIN/SUM(フィンサム)2024における挨拶 ──」の最初の方をご参照いただければと)、ただまあそうだとしたらわざわざCBDC作らんでも民間の預金通貨でエエンチャウノという気はだいぶします。
一時のブーム的な動きが下火になったのはこの通貨発行の二重構造への影響を考えた場合にどうなのか(しかもものが通貨なだけに「やってみたら金融システムが大混乱のでやっぱ止めますテヘペロ」とかいうのは基本的に許されるものではないでしょうからね〜)という辺りにあるんじゃないかとワシは思うざます。
まあそれは兎も角としてCBDCの続き。
『そのうえで、考えられるバリエーションには、結構大きな幅があります。決済手段というものは、そのほとんどすべてが、最終的には中央銀行につながっています(「すべて」と言い切らない理由は、最終章で述べます)。問題は、人々が「現金と同じような機能を持つ」と認識する決済手段は、どの程度直接的な「支払完了性」を有する必要があるのか、その「支払完了性」をどう担保するのか、ということです。』
今の時点では一般人(ワシもワシも)は預金通貨による決済をもって「支払完了」としております(現金は現金でありますよ為念)訳ですな。
『この点、CBDCは、中央銀行の負債ですので、現金と同等の「支払完了性」があります。』
はい。
『CBDCを発行しない場合には、民間が提供するその決済手段と中央銀行負債をどう結びつけるのか、また、現金のようにいつでも受け渡し可能であるようにオペレーションの頑健性や広範な利用可能性をどう確保するかなど、技術的な側面を含めて検討する必要があります。』
って話ですが、まあ今の時点でこの預金通貨による通貨発行の二重構造が効率よく大規模に回っていますので、発行しない場合は別に検討もへったくれれも無いので、これは発行する場合の話だとは思いますが、この側面から今テストやっている、というお話です。
・国際的な決済システムの進化に向けたお話
次が『国際的な視点』の話。
『決済の未来像を考えるうえでは、国際的な視点が欠かせません。実を言えば、現在の国際的な決済システムには多くの不満が寄せられており、これをいかに便利で安全なものにしていくかは、未来の問題というより、現在の喫緊の課題です。』
海外送金の際にコルレス銀行がどうのこうのでデポ先がどうのこうのでとか懐かしい話だ(20世紀脳)。
『例えば、各国では、外国からの労働者が母国に送金する際の手数料の高さや時間の遅さが問題になっており、2020年以降、G20のアジェンダには「クロスボーダー送金の改善」が掲げられてきました。』
まあわかる。
『この点は、既存のコルレス銀行を中心とするシステムの運用を改善していく方向性として、決済システムの稼働時間の拡大、国際送金電文フォーマットの標準化などの方策が検討・実施されているほか、新たな可能性として、例えば各国のリテールの即時送金システム(ファスト・ペイメント・システム。日本では全銀システムやことらがこれに当たります)の相互接続といったことも模索されています。』
まあわかるんだがここは効率性と安全性のトレードオフの面があって、リテールの即時送金システムの接続とかうっかりやってしまうと、どこかの国で発生したシステム上の問題が世界中に波及して一国だけの問題に留まらない、みたいなことが起き得る訳でして、そこは大型船には防水区画を区切って浸水即沈没にならないようにするのと同様に、効率性を捨ててもウォール作って安全性を高めておかないといかんのじゃなかろうかとは思います。
『また、金融機関間の資金決済や貿易にかかる決済など、より大口の資金決済の分野では、先進国のグループや新興国を中心としたプロジェクトなど様々な試みが進行し、成果を競い合っています。そのひとつ、BISが主催し、多くの民間金融機関と、日本銀行を含むいくつかの中央銀行が参加している「プロジェクト・アゴラ」では、分散台帳技術(DLT)を使った共通プラットフォーム上に、商業銀行預金と中央銀行預金の両方を載せて、それらを組み合わせて、安全かつ効率的なクロスボーダーの決済を行う、という新しいタイプの決済インフラが構想され、実験プロジェクトがはじまっています。』
この分散台帳技術は何度聞いても今一歩腑に落ちない面があるので一度じっくり理解をしたいです。
『こうした国際的な決済システムを巡る取組みが競うように進展していることは、経済安全保障の観点と切り離せません。』
と、さらに話が大きくなりまして、
『ロシアのウクライナ侵攻を受けて、各国で経済制裁が発動され、その実効性を担保するため、Swiftなど国際的な決済ネットワークからロシアの銀行を排除する動きになったのは記憶に新しいところです。またやや異なる観点ですが、サイバー空間には国境はありませんので、サイバー攻撃が大規模化、組織化されるもとで、一国の決済システムの安全をどう守っていくのか、その際の中央銀行を含めた公的部門の役割は何か、考える必要は年々大きくなっています。』
そうですね。
『例えば「デジタル通貨」が発行された場合、中央銀行が発行するにせよ、民間が提供するにせよ、サイバー攻撃の対象になりやすいと考えられます。』
そらそうよ。
『これに対抗するためには、相応のコストと技術を集める必要があります。』
発行しなければ良いんじゃないでしょうか(←頭が固くて使い物にならない老害ジジイの典型発言)
『米国は基本的に民間のイニシアティブで進めていく方向に見えますし、欧州は、官民でCBDCエコシステムを構築する計画です。ECBが、CBDC発行の理由として、「ユーロエリアの戦略的自律性(strategic
autonomy)と通貨主権(monetary sovereignty)を高めること」「ユーロ決済における非欧州系の民間決済事業者(private,
non-European payment providers)への依存度を下げること」とはっきり述べていることは、この問題が国内的な事情を超えて、経済安全保障的、国際競争的な側面をもっていることを示唆しているように思います。』
まあユーロ圏は「共通通貨で財政が別だし何なら法制度だって別」という事情があるので・・・・・
・決済デザインに関する将来の話のコーナーもこれはこれで面白いですよ
ということでさっきの見出し6の部分が終わるのですが、次が『8.中央銀行業務と決済システムの未来像』です。
・銀行券に関して
『銀行券の未来』って小見出しの所ですが。
『最後に、中央銀行業務と決済システムの未来像について、思考実験を行ってみたいと思います。デジタル化が大きく進む中で、銀行券はどうなるでしょうか。』
アタクシはたぶんこの業界の人では珍獣の方に入ると思う現金決済おじさんなのですけどwww
『この点まず申し上げたいことは、日本銀行は、現金に対する需要がある限り、現金の供給について責任をもって続けていくとコミットしている、ということです。中央銀行が現金供給に責任を持つ中で、銀行の支店網やコンビニエンスストアを含めたATM網など、現金が流通する経路が維持され、人々にとって現金を使うことが便利であり続けることは重要で、それによって、今後の現金の使われ方は変わってきます。』
ふむふむ。
『スウェーデンでは、現金流通残高の対GDP比率が0.9%まで低下しています6。これはデビットカードや個人間送金システムが便利だということが主因ですが、銀行の店舗網などの関係で、現金の利用が不便になったことも一因と言われています。』
ほほう。
『このため、2021年には、金融機関は、現金の引き出しや受け入れ拠点を整備しなければならない、という趣旨の法律が制定されました。』
ほえー。
『こうした問題意識は、他の欧州諸国でもみられ、例えば英国では2023年の法令に基づき、財務省がATM等の配置に関する距離基準を設定しています。スイスでは、中央銀行と財務省が、金融機関・警備輸送会社・小売業界・消費者団体等を招いたラウンドテーブルを共催し、現金を巡る課題と共に「現金は将来にわたって必要である」という認識を共有しました。』
へーへーへー。
『さらに、欧州諸国はそうではありませんが、偽造などによって、銀行券を使うことの便利さや安全性が低いことが、キャッシュレス化が進む要因になっている国もあります。』
こういうケースだとかつては米ドルが通用する、みたいな世界ですねw
『一方、当然のことながら、現金の供給体制の維持にはコストがかかります。現金供給には、日本銀行だけでなく、金融機関、コンビニエンスストアなどのリテール事業者、現金を運ぶ警備輸送会社など、多くの関係者がかかわっています。この体制を維持していくためには、これらの関係者にとって、銀行券の供給が、それぞれの顧客のニーズに応えて、サービスを維持していくメリットがあるものであり続ける必要があります。』
と来てからの「決済の経路依存症」の話です。
『この「顧客ニーズ」と言う点では、私は、決済には経路依存性があり、現金は対面での決済としてとても便利なので、現金に対する需要は簡単にはなくならないと思っています。』
まさに経路依存症のジャンキージジイがここにおります(汗)。
『日本銀行としては、そうしたニーズがある限り、いかに安全かつ効率的に現金供給の体制を維持していくか、責任をもって考えていきたいと思います。「デジタル化」や「キャッシュレス化」は、社会・経済の効率性を高める効果を持ちうるものだと思いますが、そのプロセスは利用者の自由な選択の中で進むのが望ましいと思っています。』
ということでして、一時期クッソ大流行したようなCBDCに全部置き換わる位の勢いの話ではなくなっておりますな、というのは伝わります。
・「CBDCが発行されるとマイナス金利が簡単にできる」という無邪気な見解を砲撃しているのはワロタ
でまあその次の小見出しとその次のも面白くて、まずは『架空の世界1:現金のない世界』って話。
『銀行券が存在するのであれば(仮に決済に占める比率が低下したとしても)、これまでお話ししたような中央銀行の業務のやり方や政策のメカニズムは、変わりません。「支払完了性」のある決済手段の唯一の提供者として、資金供給などの業務によって、金利操作を行い、日々の決済を完結し、最後の貸し手として機能します。』
ですな。
『このメカニズムが変わる可能性があるのは、以下のような2つの構造変化が起こった場合です。いずれも架空のシナリオです。こうしたことが起こると予想しているわけではありませんが、架空の世界を想像してみることは、現在をより良く理解するうえで有益です。』
ということで、
『ひとつめは、現金が全く存在しなくなる場合です。』
からの、
『よく「CBDCが発行されれば、マイナス金利を付すことができるので、金融政策運営は大きく変わる」と言われますが、正確には少し違います。』
某東京大学の某経済学部長だった大先生もこんなことを言ってましたなあそういえばw
『まず、CBDCが発行されても、現金が残る限り、名目金利のゼロ制約は残ります。マイナス金利を付されない逃げ場がある限り、CBDCにマイナス金利を付すことには限界があります。』
そらそうだ。
『また、逆に現金がなくなるのであれば、CBDCを発行しているかどうかはあまり関係ありません。』
それもそうですよね、つまり・・・・・
『民間が提供するデジタル通貨であっても、何らかの形で金融資産の裏付けがある以上、中央銀行は金融資産の価格(金利)に影響を与えることで、金利のゼロ制約を破ることができます。例えば、民間提供のデジタル通貨が中央銀行の当座預金と完全に紐づいている単純なケースでは、当座預金の付利水準の変化によって、民間デジタル通貨にマイナス金利を付すことができます。そうした意味で、「マイナス金利を可能にするためにCBDCを発行する」という発想は、中央銀行にはありません。』
一時この「CBDCを発行すると金融政策運営は大きく変わる」というトンデモが流行して、いやそんなこと言い出したら逆に誰もCBDCを支持しなくなるじゃろ、とCBDC要らないんじゃネーノ派のワイも思ったことがあります。
・そしてどさくさに紛れてしらっと地雷を埋め込んでいるのが面白いのですが
でもってこの続きがどさくさに紛れて面白すぎるネタを突っ込んでいましてですね・・・・・・・
『この「現金がない世界」では、金利のゼロ制約がないため、マイナス金利の付利に限界がなく、したがって、政策金利の引き下げ余地の「のりしろ」を確保する必要はなくなります。』
しらっと言ってるけど、だったら今の「現金のある世界」では「政策金利の引き下げ余地の糊代を確保する必要がある」ってことになりまして、なんということでしょう決済システムの話をしているどさくさに紛れて政策金利の糊代が必要という話をぶっこでいるじゃあーりませんかw
『物価目標は、バイアスのない物価指標であれば、ゼロ%になるはずです。』
まあ確かに物価目標2%の理由として日銀が言ってるのは「名目ゼロ制約があるから糊代が必要」「ボスキンバイアスなどの統計上のバイアスの問題」「となりのパウちゃんもクリステーヌちゃんもやってるから」なので論理的にこうなりますがパッと見るとちょっと刺激的ですねw
『金融政策の運営は大きく変わります。それでも、中央銀行として「物価の安定」などの使命を果たすことができる、という点は不変です。』
まあ今果たしているかいやなんでもないです。
・最後に中央銀行としての適切な政策運営が大事と豪語しておるwww
最後が『架空の世界2:「円」のない世界』という小見出しで、掴みから、
『もうひとつの可能性は、中央銀行としては起こってほしくないシナリオです。』
ということで、
『「円」で表示されない決済手段が決済の主役になることです。』
つまり、
『取引の決済は双方が合意するのであれば、どんな手段でも可能です。それは「円」で表示される資産に限らず、金でも、コメでも、引越しのお手伝いでも、肩たたき券でも、双方がそれで債権債務関係を消滅させることに納得していればかまいません。デジタル社会においては、暗号資産がその対象となりえます。もともと一部の暗号資産の動機には、主権国家に頼らないリバタリアン的な発想があります。』
はい。
『現在、「円」で表示された銀行券や銀行預金の振込が利用されているのは、それがほとんどすべての人が納得する決済手段として認識されているからです。その前提の下で、日本銀行券には法律的にも「強制通用力」が付与されています。ただし、これはあくまで、「円」で表示された債権債務関係を消滅させる弁済手段となる、というだけであって、取引関係に入ることを強制されるわけではありません。「私は金でしか、あるいは暗号資産でしか、売る気はない」と言うことは契約自由の原則により可能です。』
そうですね。
『こうした未来が訪れることは、少なくともわが国においてはないと思います。「円」に連動しない決済手段について、モノやサービスとの関係で価値を安定させる仕組みを作ることは、中央銀行の「物価の安定」と同じ機能を独自に持つということですから、簡単ではありません。中央銀行が価値を安定させてくれる「円」に乗っかった方がずっと合理的です。その意味で、中央銀行がその使命をきちんと果たしている限り、「円」以外の決済手段が決済の主役になることはないでしょう。「中央銀行がその使命をきちんと果たしている限り」。』
アタクシがツッコミをいれるまでもなく、
>中央銀行がその使命をきちんと果たしている限り
って内田さんが繰り返して言っておられますな。まさにその通りなんですが、ところで今って物価もインフレ期待も上振れているかもしれないのですが、堂々と大丈夫と言い続けて超絶大緩和政策しているのって本当に使命を果たしているんでしたっけ???????という疑問は無くは無い、というかある。
・最後のところでも言ってることは立派なのだがところで行動はどうでしたっけというのがありまして
『9.おわりに』ってところですが、
『本日は、日本銀行の政策について業務面に焦点を当てて、ご説明しました。もう一度図表8をご覧ください。中央銀行の政策の源泉は、「支払完了性のある決済手段」(負債)の提供とその裏側で資産として何を持つかにあります。日本銀行はそれを通じて、金利操作を行い、「最後の貸し手」として機能します。非伝統的政策は、こうした業務やバランスシートをどのように、どこまで使えるのかを追求したものとも言えます。』
>非伝統的政策は、こうした業務やバランスシートをどのように、どこまで使えるのかを追求したものとも言えます
といったその後に、
『「政策」を考えるときに「業務」に関する理解は不可欠です。それは、「業務としてできないことが制約になる」といった意味ではなく、むしろ中央銀行業務の持つ可能性を知ったうえで、政策のイノベーションにつなげる、というほうが、私には実感に合います。ただし、「支払完了性のある決済手段」を独占的に提供できることの重みをしっかりと胸に刻んだうえで、という自覚が必須です。万能薬は、使い方によってはモラルハザードを生むものです。』
ただし、「支払完了性のある決済手段」を独占的に提供できることの重みをしっかりと胸に刻んだうえで、という自覚が必須です。万能薬は、使い方によってはモラルハザードを生むものです。
って実に良い事を言ってるんだが、黒田緩和ってそんな重みを胸に刻んでましたって、なんか野放図に万能薬打ちまくった(まあ万”能”だったのかは謎ですけど)んジャマイカと思いますが・・・・・・・・・
『そして、何より、「支払完了性のある決済手段」を与えられた目的は、「人々が安心してお金を使えるようにする」ためであるということを、忘れてはならないと思っています。後者の「使命」を果たせない場合、前者の「手段」は機能しなくなります。歴史は、物価の安定が損なわれて、あるいは、金融システムが崩壊して、自国通貨が流通しなくなる国をたくさん生んできました。』
めちゃめちゃ立派なことを言っているんだが本邦の物価って・・・・・・
『さらに将来に向けては、デジタル化が大きく進展した社会で、主権国家の中央銀行が発行する通貨が一般受容性のある決済手段として機能し続ける保証はありません。支払決済手段を選ぶのは人々の自由である、このことを胸に置いて、中央銀行の業務を運営していかなければなりません。もちろん多くの関係者の皆様とともに。
こうした様々な自戒の念を込めて今日の原稿を用意しました。ご清聴ありがとうございました。』
ということで立派なお話で締めていまして、論点も面白いのですが、残念なのは今の政策運営がこの立派な話と言行一致してましたっけというツッコミをしたくなってくることですなwwwwwwwwwwwwww
#さあ来週は決定会合ですね!
2025/06/12
お題「外貨預金の粘着性に関する日銀レビューとか内田さんの講演からの雑談大会で恐縮ですが」
ケイキノイイハナシダナー
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-10/SXNSRDT0AFB400
若手人材の需要は「異常な水準」−日本の金融業界で採用競争激化
Lisa Du、Ambereen Choudhury、中道敬
2025年6月11日 7:31 JST
『複数の人材採用関係者の推計によれば、2024年の債券トレーダーの場合は平均で15%増加した。インベストメントバンカーについては、ここ3年間で年間10%程度増えていると事情に詳しい関係者1人が指摘している。複数のヘッドハンターによれば、一部の国際的な金融機関は、トップクラスのトレーダーに対し、100万から150万ドル(約1億4500万−2億1700万円)相当の報酬を保証しているという。』(上記URL先より)
そんなに日本の債券業界が儲かっているんだったら「債券市場への配慮で国債発行をどうたら/日銀の買入減額をどうたら」って配慮なんぞする必要ってあるんですかねえ、って思いましたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
まあご覧になると分かるように元記事が英文なんでだいたいお察し案件にみえますし、そんなに景気が良いなら不肖このアタクシの懐具合は(以下内務省検閲により削除されました)
〇預金の粘着性に関しては金利がつくようになると日本でも参考になることもあるかもですね
日銀レビューで興味深いネタが取り扱われていましてですね
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2025/rev25j04.htm
高粒度データを用いた大手行の外貨預金の特性や粘着性の考察
2025年6月11日
金融機構局 船田直輝、坂田智哉、小川佳也
上記HTML先の「要旨」を拝読しますが、この「邦銀の外貨調達の安定性」に関する話は近年(なのでここもと数回にわたって)金融システムレポート(FSR)の方でも大きめのトピックとして扱われていた案件ですし、何なら一昨年の米国SVB破綻事例があったので特に昨年は結構取り上げられていましたので、この辺りの一連の調査研究の一旦のまとめを皆様に分かりやすくお出しします、ってなもんだと思います。
では拝読。
『要旨
大手行は、海外貸出を増加させる中、外貨流動性リスクをかねてより経営上のリスクの一つと位置付け、外貨調達基盤の安定性向上に努めてきた。』
ふむふむ。
『こうしたもと、本稿では、SVB破綻等を受けた国際的な議論も踏まえ、外貨調達の過半を占める外貨預金の高粒度データを用いて、外貨預金の獲得状況や粘着性について分析した。』
なるほどなるほど。でもってその結果ですけど、
『分析結果からは、高金利の大口預金抑制に伴う預金の小口分散化が進展している一方、低コストで調達可能な決済性預金残高は概ね横ばいであることが確認された。』
直感的にまあそうじゃろうなあという結果ですね。ただまあゆうて決済性預金ってのを維持するためには決済性の利便性というのを提供しないといけない訳でして、低コストで調達可能なのはまあその通りではあるけど、決済性預金機能を維持するのにはそれなりにコストがかかるようにも思えます。
『また、属性ごとに預金流出率は異なり、金融法人預金等の粘着性が低く、決済性預金獲得に伴う企業との関係強化が預金の粘着性向上に繋がり得る点も示唆された。』
直感的にまあそうですねという所ですが、
『今後も本分析結果等を活用しつつ、大手行の外貨流動性リスク管理の更なる高度化に資するよう、大手行や海外当局と議論を深めることが重要である。』
ってお話ではあるのですが、モチのロンでこの手の話は法域が違って預金や預金類似商品を巡る環境が違っていたら全然話が違う、というのはあるにしましても、背景にある基本的な部分ってのは共通することもありますし、その点日本の場合は30年くらい要求性払いの預金金利が実質ゼロみたいな状態でして、その前は規制金利の時代だった、というよくよく考えたら驚愕の事実があるので、この辺りの考察は今後の日本における預金やらなにやらの動向に対する何らかの示唆があるんじゃなかろうかと思いますがどうでしょうかね。
本文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2025/data/rev25j04.pdf
本文の最初と最後だけちょっと見ておきますね。『はじめに 』から。
『本邦の一部大手行1(以下、大手行)は、国内において低金利環境が継続する中で、これまで海外貸出を積極的に増加させてきた。この点、大手行は、米国内に安定的なリテール預金基盤を有していないことから、企業から外貨預金の獲得を進めつつ、不足分を短期・中長期の円投や社債等の市場性調達で賄ってきた。』
ふむ。
『そのため、大手行にとって、外貨流動性リスクはかねてより経営上の重要なリスクの一つと位置付けられており、日本銀行としてもモニタリング上、優先すべき事項の一つとして捉えてきた。』
FSRをご覧いただければこの辺りの問題意識について分かるかと思います。
『この間、大手行は、資金調達コストの適正化に取り組む中で、調達手段の多様化や市場性調達の長期化など、外貨調達基盤の安定性向上にも努めてきた。もっとも、米国では新型コロナウイルス感染症拡大時における金融機関の貸出態度慎重化2や、2022
年 3 月以降の FRBの利上げを受けた高金利環境の継続等から、企業の銀行借入需要に盛り上がりがみられていないことや、大手行が採算性を一段と意識していることもあって、海外貸出の残高は概ね横ばいで推移している。』
なるほどなるほど。
『こうしたもとで、大手行の運用・調達ギャップ(海外での貸出金と、短期円投等と比べて相対的に安定している社債発行など長期調達や預金との差額)をみると、安定的な調達額が、運用を上回る状態が続いている(図表
1)。』
という意味での安定性についてはまあレジリアントに見える、というのがここ数回のFSRでの評価です。
『一方で、2023 年 3 月にみられた銀行部門の混乱(米地銀 Silicon Valley Bank(以下、SVB)の経営破綻や
Credit Suisse の救済合併)は、これまでの外貨流動性リスク管理の前提となる預金が安定的な調達手段であるとの想定を改めて検証する契機となった。』
でもって、
『具体的には、一部の預金における流出速度は、SNS 等の影響もあり金融当局が想定していたスピードよりも速い可能性や、大口の非付保預金の取り付けが発生した際の影響度などを、適切に考慮する必要性などが認識された。』
『さらに、SVB の破綻直後には、SVB と同様のリスク・プロファイルを有する米地銀からの預金流出・株価下落が先鋭化し、First
Republic Bank が同年 5 月初に JP Morgan に買収された3。』
ってな訳で、
『こうした新型コロナウイルス感染症拡大以降の一連の事象を踏まえ、国内・海外の金融当局は、金融機関の流動性リスク管理体制の更なる高度化の必要性について議論を進めている。』
『日本銀行では、従来から、金融庁と共同で G-SIBs に分類される大手行への「外貨流動性リスク管理に関する共同調査」等を通じて、大手行との継続的な対話を行っている4。加えて、効率的かつ効果的なモニタリングを実行するために、金融機関から報告されているデータの利活用も進めており、大手行の協力を得て、日本銀行・金融庁に報告されている、外貨預金の個別取引明細・高粒度データ(以下、「高粒度データ」)の拡充を図ってきた5。』
『大手行自身も、着実に外貨流動性リスク管理の高度化に取り組んでいるもとで、より一層の安定性向上に資するよう、本稿では、個別明細レベルの高粒度データを用いて、大手行の外貨調達の過半を占める外貨預金の獲得状況や外貨預金に係る粘着性等について分析を試みた。』
以下分析の話になってこれはこれでオモロイのですが、単純に合いの手入れているだけになるので笑その辺は引用かっ飛ばすのでまあ読んでちょというところです。
結論にかっ飛びますけど。
『おわりに
本稿では、外貨預金の個別明細レベルの高粒度データを用いることで、大手行の外貨預金の獲得状況や粘着性等を分析した。本分析からは、大手行が、外貨預金獲得に向け、収益性を意識しながら進めてきた各種取組みやその特性などを確認した。』
具体的には・・・・・
『具体的には、@貸出が足もと横ばいで推移する中で、高金利を提示して大口預金を獲得する必要性が低下しており、同預金の抑制に伴い預金の小口分散化が進展している一方、A低コストで調達可能な決済性預金比率は横ばいの動きが続いており、とりわけ、非日系企業においてその残高は限定的となっていることが確認された。』
『同時に、預金者属性によって、預金の流出率は異なり、大口預金や非日系企業・金融法人といった預金者属性の預金の粘着性は相対的に低く、決済性預金獲得などの企業とのリレーション強化が、預金の粘着性向上に繋がり得る点が示唆された。』
なお決済性預金獲得に関しては単なる営業勧奨で増えるものではなくて、決済性預金を顧客が活用できるインフラ整備が必要です、って話に関しては本文中にありますので読んで味噌。
『これらを踏まえると、自らの預金者ポートフォリオの預金者属性の構成(預金規模や業種、さらには付帯取引の有無)等も考慮して流出率を設定することが、預金獲得戦略や流動性リスク管理の向上に有益であると考えられる。』
これは大手行の外貨調達、という点にフォーカスして分析が行われていますが、そもそも金融のお仕事というか付加価値創造の源泉の一つとして「満期変換機能」ってのが有るわけで、別に銀行セクターに留まるものではなくて、このような分析を行うという考えは、まあその分析をどのように行っているかは千差万別だと思いますし、単純に経験則からおおむねこんな感じじゃろっていうことで意識している場合も多々ありそうですけれども、満期変換機能を提供する人たち、すなわち銀行だけではなくてNBFIも含めて意識するべき話。ではあるのですが、某アメリカンの場合は何とかショックの度にプライムMMFがあばばばば―ってなってFEDに泣きついてお助けオペが炸裂して、その事例を受けて再発防止のためにFSBやIOSCOがNBFIへの規制強化に乗り出す、というのを何度もやっている、というのが中々の頭痛の種ですなあ、って思いました。
『この点、大手行は、預金の流出率想定に預金者属性別のヒストリカルデータを用いて、その妥当性を検証しており、こうした精緻化への取り組みは、本分析結果と整合的である。』
これ円資金でも(パラメータは全然違うとしか思えませんけど)同じ考えを適用できそうに思えます。ただまあ円貨資金繰りはリクイディティーという面からみたファンディングに関しては日銀当座預金残高がアホみたいにあるので、短期金融市場を見てもビビットにわかりにくい(そのためソルベンシーの問題の予兆管理がしにくいんじゃないかとアタクシは懸念しています)ってのもありますけどね。
『また、本稿で用いた高粒度データには、ドル以外の地場通貨も含まれている。地政学的な要因等が意識される場合、ドル以外の地場通貨の流動性リスクのモニタリング高度化に向けて、高粒度データを活用することは有益である。』
ほーーーーー
『今後も、本稿で紹介した分析結果等を活用しつつ、モニタリング体制の整備を進めるとともに、大手行の外貨流動性リスク管理の更なる高度化に資する分析を続けていくことが肝要である。そのうえで、得られたインプリケーションおよび分析結果等も用いて、大手行や海外当局とも引き続き議論を深めていくことが重要と考えている。』
とまあそういうお話で、全然現世利益と関係ないと言われるとまあそうなんですけど、一応債券市場に加えて短期金融市場の方も見ているという設定になっております不肖このアタクシとしては、まあこういうネタには反応しますよというお話でしたので備忘もかねてご紹介させていただきました。
なお、本文の後に『BOX 地場通貨における外貨預金の獲得状況 』ってのがありますが、そちらはまあ本文読んだついでに見てちょんまげというところです。
あと、今回のレポートってちょっと興味深かったのは、本文の最後(概要の最後にもありますが)
『内容に関するご質問等に関しましては、日本銀行金融機構局金融第 3 課までお知らせ下さい。』
ってなっていて、日銀の本店局室研究所体制表(HPにあるやつ)だと機構局には金融1課から3課があるのはわかるけど管掌がどことは書いていないのですが、ワタクシの認識が間違っていなければ大手行に対するプルーデンス担当窓口って金融1課だったような気がしますので(違ってたらゴメンですけれども)、3課マターになっているのも興味深く読みました(^^)。
〇内田副総裁講演をしつこく読む訳ですが日銀バランスシートの日銀財務に対する影響のお話
HTMLバージョンも出てきたのでHTMLバージョンから引用しますね(なぜか半角英数がコピペで認識されない謎PDFだったので)。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250607a.htm
【講演】
業務からみた日本銀行
日本金融学会2025年度春季大会における講演
日本銀行副総裁 内田 眞一
2025年6月7日
『7.非伝統的な金融政策と中央銀行のバランスシート』の後半、『非伝統的な金融政策と中央銀行の収益』
の部分になります。
『中央銀行は、平常時にはバランスシートの構造上、収益があがるようになっています。』
ってどういう話かというと以下シニョリッジの説明になります。
『もう一度図表7をご覧ください。98年度末、伝統的な金融市場調節を行っていた当時のバランスシートです。負債項目の多くを占める発行銀行券は無利息です。当座預金も無利息でした(この時点では付利制度は導入されていませんでしたし、仮に導入されていたとしても、準備預金ぎりぎりの水準で調節を行うのであればほぼ無利息です)。一方で、資産サイドの国債や金融機関への貸出には利息が付きます。この差額は、通貨発行権を持つことに伴う収益(シニョレッジ)であり、支払完了性のある決済手段を「負債」として独占的に供給できることによるものです。』
ですです。
『この関係は、非伝統的な政策によって、バランスシートが大きく拡大すると変化します。』
はい。
『まず、非伝統的な政策を行っている間は、収益は大きく拡大します。短期金利はゼロ%ないしマイナスですので、負債サイドの利払いは基本的には生じることはありません。』
この辺もうちょっと説明を練ってほしいのですが、「短期金利がゼロ%の時にバランスシートを拡大すれば」というのが表現としては正しくて、非伝統的政策って言ったってバランスシート使わない政策(短期政策金利のフォワードコミットメントみたなやつ)をしてたら別に収益拡大しないし、何なら短期オペだけでバランスシート拡大してたらやっぱり変わらんのですが、まあそういうクソ細かい話はさておきまして、
『資産サイドからは、バランスシートが大きい分だけ、より大きな収益が得られます(日本銀行の場合、当座預金を3層構造とし、マイナス金利部分を最小限に抑える一方、プラス金利部分もあったため、ネットで利払いが発生しましたが、資産サイドの方がずっと大きな効果を持ちました)。図表11をご覧ください。実際、大規模緩和前の日本銀行の経常利益は平均して6千億円程度でしたが、大規模緩和を行っていた時期には、毎年数兆円の収益を計上していました。』
バランスシートが大きくても短期に近い国債買っている分にはまた違うので、結局バランスシート内でどれだけ長短ミスマッチ取っているか(満期変換を行っているか)というお話ではありますわな。
『これが出口になると、当座預金の付利によって利上げを行う一方で、資産サイドは、金利が低い時に買った国債で固定されているため、逆ザヤが発生します。この点、日本銀行のスタッフがシミュレーションを行っています5。』
とありますが本件は昨年末に出ていましてその時にツッコミを軽く入れましたがこの後改めて。
『図表12をご覧ください。その結果は、短期金利・長期金利のパス、バランスシート縮小のペース、さらには冒頭でご説明した銀行券の残高がこの先どうなるかなど、複数の要因に左右されます。』
そらそうですな。
『前提条件として、昨年9月時点で市場が織り込んでいた金利見通しのとおり金利が動くと仮定した場合、青い実線のようになります。この前提では、収益は減少しますが、赤字にはならないという結果でした。ただ、金利がより急激に上昇するなどのストレスをかけると、シャドーのように、一時的に赤字になる場合があります。ただ、どちらのシナリオでも、その後は、負債サイドで当座預金が減少し、資産サイドで国債が高い金利のものに入れ替わっていくにしたがって、収益が回復していきます。』
という話になっていますが、じゃあ例のシミュレーションを見ますと
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j15.pdf
日本銀行の財務と先行きの試算
企画局企画調整課
2024 年 12 月
日銀レビュー 2024-J-15
本文5pに『先行きの収益・自己資本に関する試算 』ってのがありますが、その前提になっているのは、
『(前提)
@ 短期金利・長期金利の推移
短期金利については OIS 市場7におけるインプライドフォワードレート、長期金利については国債のイールドカーブから算出されるインプライドフォワードレート(市場金利が織り込む金利見通し)のとおり推移すると仮定する。』
『また、市場金利が織り込む金利見通しに加え、(a)短期金利は、今後数年程度をかけて
1.0%〜2.0%となり、(b)その際の長短スプレッドは、+0.25%P〜+0.75%P
となると仮定した場合の試算値のレンジも合わせて示すこととする8。』
っていうことで、全然ストレスを掛けたシナリオじゃねえだろ、ってのしか示されていない訳で、欧米みたいにインフレが高進してインフレ期待の2%アンカーが上振れするんじゃないかってことで盛大に引き締めを行う、というような前提にはなっておりませんが、何せ日本の場合は欧米のようにもともとインフレ期待が2%でアンカーされている国と違いまして、ゼロ近傍にアンカーされていたインフレ期待を一旦2%に引き上げてアンカーさせる(リアンカリングとか言ってた時期もあったけど最近言いませんなそういや)という器用なことをしないといけなくて、インフレ期待を一旦不安定化させる、というプロセスを踏むだけに、2%で止まらずにインフレ期待が上振れる(というか既に家計のインフレ期待は上抜けてしまってるんじゃないかと個人的には思ってるんですが・・・)というリスクって欧米よりも実は高いんですよね。
そう考えますと、この程度のユルユルで済むのか問題があるわけで、これはこの前もかきましたけど、だいたいからして実質中立金利が0%で均衡物価水準が2%の時に短期政策金利の名目中立金利は2%な訳で、「(a)短期金利は、今後数年程度をかけて
1.0%〜2.0%となり、」ってのがセカンドシナリオになっている時点で節子それはむしろベースラインシナリオレベルやというお話。
でもってこの前提ってしらっと、
『A バランスシートの規模やその推移
バランスシートについては、試算の便宜上、本年 7 月に決定された長期国債買入れの減額計画のとおり
2026 年 1-3 月にかけて国債の月間買入れ額を月 3 兆円程度まで減額し、同年
4 月以降は当該買入れ額から不変と仮定する(図表 9、10 参照)9。また、今後の取扱い方針を公表している資産はその方針に沿って変動し、その他の資産は不変と仮定する。』
となっているので、これ追加の国債買入で金利の高い債券が入って来て収入がアップする、というのを見積もっている計算になっていて、日銀のバランスシートの削減をあんまり進めなくてよくて短期金利もあんまり上がらない、というデフレ均衡とまではいわないけれども、物価安定目標の達成時にそれでエエノンカイナという日銀の損益シミュレーション的には甘甘の設定になっている訳ですな、前も書きましたけど。
でまあ今日はそこを突っ込むのが目的ではないので内田さんの講演に戻りまして。
『このように収益や自己資本の試算は、前提条件次第で変わりますが、いずれにしても、中央銀行のバランスシートの状況によって、「物価の安定」が毀損されることはありません。』
って威勢よく言いきっているのですが、実際問題一番ヤバい筈の「2%に向けてあげて行こうとしている期待インフレが2%で止まらないで上振れてしまった場合」に日銀が行わないといけない施策に対してこんなに巨額のバランスシート抱えたままだとあんまりよろしくないんじゃないでしょうか、っていう話は華麗にスルーしております。
まあ自分から「いやー実はインフレがガチで高進してインフレ期待が2%を超えてどんどん上がったら日銀の財務は大変なんです」とは言いにくいというかまあ言えないってのは分かるんですけれども、だからと言って堂々とここまでいうのもどうなんでしょうかね、ってな風には思う訳でして、この点から考えても「債券市場の金利急騰がどうのこうの」とか言いながらバランスシート縮小を必要以上に慎重に行う事っていうのは、物価上昇レジームになった時に日銀としての適切な政策対応の足かせになるのでもっとバランスシート縮小を頑張らないといけないんじゃないの、ってのがまあワイの思う所ですし、大体からしてこの巨大バランスシートがあって、さっきのシミュレーションで見られたように「モデストな金利上昇シナリオ」じゃないと財務上面倒なことになるって足かせを意識してしまったために今次局面で政策調整がビハインドしているんじゃないかという風にも思ってしまうわけでございます。
でまあ以下続きですが、
『皆様にはご説明するまでもないことですが、管理通貨制度のもとで、通貨の信認は、中央銀行の保有資産によって担保されるものではなく、適切な政策運営によって「物価の安定」を図ることを通じて確保されます。また、そうした使命追求のための「政策遂行能力」に、財務状況が影響を与えることもありません。』
本当に影響が無いのか、というとそれは微妙ですよね。でもFEDの例をもってそこは強弁しておりまして、
『一時的に赤字や(極端な場合)債務超過になったとしても、収益や資本はシニョレッジによる将来の収益で復元されますし、支払完了性のある決済手段を自ら供給できるため、支払いは常に可能です。実際に、FRBやECBを含めて多くの中央銀行が現在赤字を計上しており、その一部は債務超過になっていますが、業務や政策の運営に支障は生じていません。』
それは他の要因も複合しているので、日本のように財政運営はガバガバ、中央銀行の資産は莫大、という状態で全く同じな保証はないでしょ、という話ですが、まあさすがにそこは、
『それでも、多くの中央銀行は、自己資本など一定のバッファーを有しています。日本銀行も自己資本を有しているほか、大規模緩和の過程では、収益の上振れ分の一部を引当金として留保し、出口で損失が発生した場合に備えています。』
『本来、中央銀行の財務構造を理解していれば問題ないことであったとしても、例えば、赤字や債務超過などが発生した時に、市場が「中央銀行が財務リスクを気にして適切な政策の実施を躊躇するのではないか」といった疑念を持つようなことがあれば、政策効果の波及が阻害されます。そうした疑念を惹起させることのないよう、適切な政策運営を行うという大前提のもとで、上記の引当金など可能な手段を通じて、財務の健全性にも配慮していくことは大切です。』
ということで話を締めているのですが、まあ本来は財政運営の中長期的な持続可能性をちゃんと考慮した運営をしろって話がそこに思いっきり加わるんですよね。
という所で今朝はこの辺で勘弁して頂ければと存じます。現世利益とあんまり関係ない雑談ばっかですいませんでした。
2025/06/11
お題「植田発言は何ら新しくないのに為替が反応とな/オーバーシュート型コミットメントに関する内田講演の説明はちょっと・・・・」
ほうほう
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-10/SXNHB5DWRGG000
ベッセント財務長官、次期FRB議長候補に浮上−パウエル氏後任
Saleha Mohsin、Nancy Cook、Joshua Green
2025年6月11日 3:14 JST 更新日時 2025年6月11日 4:32 JST
『トランプ大統領は6日、「パウエル現議長の後任を近く指名する」と述べた。パウエル氏の任期は2026年5月に終了する。事情に詳しい関係者によると、検討されている候補者リストには元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏が含まれ、トランプ氏は昨年11月に財務長官候補として同氏と面談したとされている。』(上記URL先より)
ベッセントをFRB議長にしたあとベッセントの後釜どうするんでしょうねというのがあるし、日銀と違って地区連銀総裁という自我の強い人たちがぞろぞろといるので、上を挿げ替えたからいきなり大きく変化できるものなのか、ってのはよくわからんですよね。
〇こんなので為替が反応するもんなのか(「2%までまだ少し距離がある」)・・・・・(呆)
昨日はこんなのがありましたな
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-10/SXF8E7T0G1KW00
植田日銀総裁、基調的物価は「まだ2%に少し距離がある」−円下落
伊藤純夫
2025年6月10日 10:56 JST 更新日時 2025年6月10日 12:01 JST
→基調的物価が2%に近づけば、引き続き利上げで金融緩和度合い調整
→0.5%の政策金利水準、利下げで経済刺激の余地は非常に限られている
『日本銀行の植田和男総裁は10日、金融政策運営で重視している基調的な物価上昇率は物価目標の2%まで少し距離があるとの認識を示した。参院財政金融委員会で答弁した。総裁発言を受けて円は下落した。』(上記URL先より、以下同様)
ということで、
『植田総裁の発言後、円はドルに対し一時1ドル=145円29銭に下落。発言前は144円50銭前後で推移していた。株式市場では日経平均株価が上げ幅を拡大し、上昇率は一時1%を超えた。』
ってことになっているのですが、そもそも論として先日の内外情勢における植田総裁の講演の資料を見ますと、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a2.pdf
最近の経済・物価情勢と金融政策運営
(図表編です)
図表7『基調的な物価上昇率に関連する指標』を見れば分かりますけど、実はその右下にありますように、マクロ経済モデル回して計算(という一番まともっぽいことを)したらどの指標も「2%に向けて威勢よく接近中」なのでして、植田さんの説明上重視していることになっている(家計のインフレ期待の推計値がどう考えても下方バイアスの掛かる方法を使った)合成予想物価上昇率だって目盛みたら24年で1.5%近辺、25年で1.7%近辺と上がっている訳でして、モメンタムからいったらこんなの2%到達待ったなしだし、元々がこれ計算上下方バイアスが掛かりやすい(予測力を重視しして算出しているんですがそのサンプルがゼロインフレの期間を大きく使っているから)な訳ですよ。
とは言え、足元に関してはトランプ関税とかいう攪乱要因があるから、このモメンタムが止まるかもしれないってんでまあハトハトチキンになっているのはまあ分からんでもないですが(と言ってるけど物価には慣性があって足元の動きは「上に抜ける」方の慣性が掛かっているから逆に止まらんリスクの方が高いと思うのですけど)、これ普通にグラフをみたらこの先基調物価とされるものが2の水準を涼しい顔して上にぶち抜けるリスクの方が高いじゃろ、という図でもあるんですよね。
なのにまあ「少し距離がある」とか言ってるのは、単純に6月7月の時点で利上げをする予定は無い、という「やりたい政策」が先にあって、政策アクション(今回の場合は動かない方のアクションですけど)を正当化するための「お気持ち表明」を「基調的物価は2%までにまだ少し距離がある」と言ってるだけの話なんですよね。というか説明の定義上、基調的物価が2%に到達している、という認識だったら政策調整をゆっくり実施しているどころの騒ぎではなくて、政策を中立ポジションにもっていかないといけないのですから、半年に1回とか悠長なことを言ってる場合じゃなくなるので、6月7月に利上げする気が無いのであれば、上記のような発言が出てくるのは当たり前ですし、逆に為替市場の皆さん6月7月に利上げがあるとでも思っていたのかよお前らの首の上についている物体はカボチャか何かかと小一時間問い詰めたいですな、と思いました。
じゃあ9月10月に利上げがあるか、ってことになると、これはまあ7月展望で何を言い出すか次第ではあるのですが、トランプ関税政策を受けた企業や家計の行動変化(下方屈曲)が起きるかどうかってのを茲許はずっと気にしているような説明になっていますので、そうなると企業の賃金設定行動、すなわち冬季賞与動向と来年の賃金改定に向けたスタンスのアネクドータルなデータが出てくる年末年始、って考えるのが一番妥当なような気がしますが、何せこの人たち「やりたい政策」先にありきで情勢判断を後付けで説明する、というのを全然隠そうとしない(普通は隠そうとして過去との説明の整合性を取ろうとするのですが、黒田時代の末期あたりになってからはもはや過去との整合性を全然気にしなくなっているのは展望レポ^−トハイライトというポンチ絵の推移を見れば一番わかりやすいと思います)ので、つまりは「やりたい政策」が「やっぱり政策金利引き上げないと」って事になるトリガーが先に出てきたら年末年始の限りではない、ってことになるんじゃないですかね、個人の感想ですではありますけど。
てな読み筋って別にアタクシがドヤ顔(の積りではないですが)で言うまでも無くごく普通の読み筋だと思うので、「まだ距離がある」云々は「6月7月(まあ少なくとも6月)に利上げする予定は今のところありません」以外の意味合いは無いので、それすなわちなんら新しい情報でもなくて市場は先刻織り込み済みなんですけど、何でそんなのに為替市場が反応しているんだこれだからAI相場は困るわ、と思いました(個人の偏見です)。
〇引き続き内田副総裁の講演をネチネチと鑑賞するの巻
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250607a1.pdf
業務からみた日本銀行
── 日本金融学会2005年度春季大会における講演 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一
・「業務」を言い訳にするのはちょっと卑怯じゃないですかねえ
昨日ネタにした「オーバーシュート型コミットメント」の説明部分ですが、昨日はこのコミットメントが「このコミットメントは強いものではありません」とかコミットメントを導入した時に黒田総裁が「強力なコミットメント」と説明しまくって居たものを当時の企画担当理事の内田さんが積極的に否定してくる、という飛んでも無い部分をご紹介しましたが、この説明って小見出しの通りでもう一つ飛んでも無いツッコミ部分があるんですよ。
ということで重複になりますがオーバーシュート型コミットメントの説明の頭のところからもう一度見てみましょう。
『バランスシートの大きさを明示的に使ったコミュニケーションとしては、日本銀行は、
2016年9月にイールドカーブ・コントロールを導入した際に、「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで」マネタリーベースの拡大方針を続ける、というコミットメント(オーバーシュート型コミットメント)を行いました。』
でもって昨日は、
『先ほど述べた通り、短期金利の操作とバランスシートの大きさは切り離し可能なものなので、このコミットメントは強いものではありません。』
という導入時の説明を思いっきり「あれは嘘です」って言ってしまっているという飛んでも無い部分があったわけですが、
『より直接的なコミットメントとして、例えば、「消費者物価が2%を安定的に超えるまで」長短の金利目標の水準(短期は−0.1
%、 年金利はゼロ%程度)を続ける、と約束することも論理的にはありえました。ただ、これではフォワードガイダンスとして強すぎ、将来の柔軟性を犠牲にする恐れがありましたので、バランスシートの大きさに紐づけたということです。』
しかしながら「金利と分離して運営が可能」だったらバランスシートの大きさに意味は無い、という話になるのでして、だったらそもそもこのオーバーシュート型コミットメントが虚偽説明だったという話になるわけですが、バランスシート拡大した後遺症で今面倒なことになっている(そもそもバランスシートこんなに拡大しなかったら長期金利の急騰(財政配慮を含めて)にビビることなくもっと早くに利上げ出来てたんじゃないのとかまあ色々とツッコミは有るわけですよ)ので、足元の内田さんの説明もかなりインチキ臭いんですけどね。
『一般的に「バランスシートの拡大を続けながら、利上げをする」というのはイメージしにくいので、「緩和を続ける」というスタンスは伝わる一方で、オペレーション的には(業務面から考えれば)、バランスシート縮小(QT
)の前に利上げを始めることは可能で、その余地を残したものです。』
というこの部分、ここまでは昨日も引用しましたな。ちなみに海外中銀は「バランスシートの縮小を続けながら利下げを実施」しているのですから、まあこの説明は明らかに「ワシらはお前らの誤解を利用してペテンを打ちましたもんね」って言ってるのに等しいんですけど、まあそれは兎も角としてこの続きがあって以下引用しますと・・・・・
『この辺りの事情は、フォワードガイダンスという「自分を縛って効果を得る政策」の微妙なバランスを示しています。』
とまあドヤ顔(かどうか知らんが)の説明が始まるのですが
『効果と自由度のバランスを取るために、明示的に例外条項(escape clause )を入れておくという例もありますが、「業務」の要素を絡めて対応余地を残すという方法もあるということです。』
いやいやいや、それを「業務の要素」っていうのインチキじゃろという話だし、大体からして業務的にバランスシートは金利と分離できるんだたら、QQEとか言ってバランスシートを拡大したこと自体が初手からインチキでしたって言ってるのと同じになってしまう訳で、この説明は何ぼ何でも無理筋じゃろ、と言わざるを得ません。さらにですね、
・オーバーシュート型コミットメントは初手からイカサマ目くらましでしたとネタバラシとはこれは酷いwwwww
『日本銀行を含めて各国の中央銀行は、当然こうしたことを分かったうえで、』
>当然こうしたことを分かったうえで、
>当然こうしたことを分かったうえで、
>当然こうしたことを分かったうえで、
これは額装して決定会合のお部屋の総裁の席の後ろ辺りにでも飾っておきたい言葉ですなあという感じでして、他の国の中銀からしたらイカサマペテン説明の片棒担ぎみたいに言われるのは心外にも程があるでしょうし、そういうインチキ説明を最も嫌っていたであろうと思われる白川さんやダブル山口さん(過去の2名の「山口副総裁」です為念)などがこの額装を見たら飛びあがって額縁を叩き壊すレベルかとは存じますが、何とですね、
「オーバーシュート型コミットメントが強力なコミットメントだと言ってたのはぜーんぶ嘘ですテヘペロ」
ってオーバーシュート型コミットメントが用済みになった時点で言いだす、というお話でして、まあ何となく今の日銀が屁理屈(「コアコア物価」から始まり2%達成に向けた政策反応関数をホイホイと使い分けて涼しい顔をしている件ね)を捏ね回すバックグラウンドがこういうことなんでしょうな、というのが垣間見れるんじゃないかと思うのよね。でまあしかもそのイカサマに関して(話が分かりにくくなるといかんと思うので重複引用しますが)
『日本銀行を含めて各国の中央銀行は、当然こうしたことを分かったうえで、バランスシートと政策金利の運営、そしてそのシークエンスを考え、コミットメントを実施してきました。こうした意味でも、中央銀行にとって「政策」と「業務」は不可分のものです。』
って業務の話にして誤魔化していますけど、当時のオーバーシュート型コミットメントはその場しのぎの目くらましで、強力なコミットメントとか言ってたのは全部その場しのぎの説明でした、ってのを思いっきり表明してしまう、っていうのは将来コミットメント政策がまた必要になった場合にお前どうするんだよ、と思ってしまいますね。
・・・・・とは言いましても、まあ市場というのもアタクシのような粘着質の変な奴というのは基本的に珍獣の方に多分寄っているのでありまして(そのくらいの自覚はアタクシだってありますわよおほほほほ)、普通は(というか最近は、というべきか)昔の理屈との整合性がどうのこうのとか、展望レポートハイライトを半年以上遡って前回の絵との整合性とか言う人もあんまりいませんので、まあこのような割と衝撃的な「昔のあのコミットメント、当時は強力なコミットメントと言ってたけどアレはその場しのぎの方便で実は強力じゃありませんでした」って説明だって全然金融メディアの話題にならない(ので珍獣がネタにするわけですがw)まあこう言い切ってもセーフ、と高を括っているんじゃないかなあ、とは思いました。てか「金融学会」なんだからこの部分に対してツッコミを誰か入れたのかという方が気になるけど、どうせ金融学会とか言ったって使えねえ馬鹿学者(学者馬鹿ではありません為念)の集まりでしょうから(個人の偏見です)誰もツッコミ入れないんでしょうけどね(入れられるような骨のある学会だったらこんなツッコミどころ満載の説明はせんじゃろうよwwwwwwwwww)。
ということで、この辺の説明は随分と舐め腐った説明しやがって、てなお話ですが、この次に日銀のバランスシートというか今後の収益の問題、というのが出てくるので、本当は今朝はそっちをメインにする積りだったのですが、ついつい昨日の続きのオマケ部分の予定だったところで興奮してw手が踊ってしまいましてこの先を成敗する時間が中途半端になってしまいましたのでまあ先の話はまたいずれ。
・バランスシートの今後に関する問題点は「収益シミュレーションの前提にガチのリスクシナリオが描けないこと」
というのだけ書いておきますが、これは昨年末に企画局が出したバランスシートがどうしたこうしたのペーパーの時に突っ込みましたが、日銀の巨大なバランスシートが問題になり得るのは何のことはないですけど「インフレがオーバーシュートした時に、巨大なバランスシートのストック効果による緩和効果が邪魔をしてインフレのオーバーシュートを止めるのが困難になるケース」でして、その場合ってストック効果を相殺するために強力な利上げを実施しないと行けなくなるので、バランスシートの損益的には期間損益が真っ赤っ赤になるのですが、それが容認できるのか(いくら「時間を掛ければシニョリッジで回収できる」と言っても程度問題があるし、そもそも引き締めた傍から超過準備付利の形で盛大に利払いをするのも財政支出の一種のような気がするんだがその効果ってどうなのよというお話だって超過準備の規模が巨大だと何か悪さをしそうな気がしますし・・・)という話が有るわけですがなというお話。
でもってさらに強力な引き締めをするためにはこのストック効果が邪魔、となった場合に国債売却をすれば良いのですが、その場合は当然ながら過去に買った国債は損失が出る訳で、まあその損失は時間を掛ければシニョリッジで回収できるとは言いましても以下同文な訳でして、まあバランスシートを巨大なままたいして減らせない、という状況はインフレが落ち着いて低位にいるなら問題はたいしたことは(たぶん)無いのですけれども、上振れするような時には甚だよろしくないのでして、その辺の話は確かに正面切って書きにくいというのは分かるのですが、だからと言って大丈夫ですヘヘーンと強弁するのも「全電源喪失はあり得ません(キリッ)」を思い出してしまうのでどうなのよ、とおもいます、ってな話をしようと思っておりました次第です(他にもネタはあるけど)ので一応書いておきます。
ということで今朝はここで勘弁してちょということで。
2025/06/10
お題「6M短国足切り50乗せ(引け50割れ)/内田副総裁講演(その2)非伝統的政策の説明がちょっとアレなんすけどねえ」
ほほう
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250609/k10014829771000.html
石破内閣「支持」6ポイント上がり39% 備蓄米の対応評価は?
2025年6月9日 19時00分
『物価高対策として消費税の扱いが議論されていますが、消費税をどうすべきだと思うか尋ねたところ、「今の税率を維持すべき」が41%、「税率を引き下げるべき」が37%、「消費税を廃止すべき」が16%でした。』(上記URLより)
以前どこかの世論調査では消費税減税しろ7割超えとかだったと思いますが、「消費税下げろ財源は知らん」みたいな無責任理論に対して少しだけでも冷静に考える人が増えてきたように見えたので、まあこれは結構な傾向だわ、と思いました。
〇6M短国久々の0.5%乗せキタコレ(なお引値は0.5%割れorzorz)
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250609.htm
国庫短期証券(第1311回)の入札結果
『本日実施した国庫短期証券(第1311回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。
記
1.名称及び記号 国庫短期証券(第1311回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項
3.発行日 令和7年6月10日
4.償還期限 令和7年12月10日
5.価格競争入札について
(1)応募額 9兆2,884億5,000万円
(2)募入決定額 2兆7,035億8,000万円
(3)募入最低価格 99円74銭7厘
(募入最高利回り) (0.5058%)
(4)募入最低価格における案分比率 11.3349%
(5)募入平均価格 99円75銭3厘
(募入平均利回り) (0.4938%)』
ということで金曜の3Mの入札レートも上昇していたので期待(?)したら足切り0.5%乗せでして、なにせ5月発行の6Mが0.4381%/0.4462%という金利でしたので、なんかエライ上がった気はしますけど、ただまあ絶対水準で言えばこれでやっとGCや現先レートに毛が磯野波平くらい生えたとかそういう世界なので、タームプレミアムとは何ぞやの世界であるのは変わらんという感じですかね。
まあ12/10償還なので10月会合までしか跨がないので、9月10月の利上げへの意識ってゼロとかではない(さすがに今月来月はないでしょうけど秋までにトランプが関税問題に関して池乃めだか師匠ムーブになっている可能性だって大いにアリエールだし)のでお気持ちだけ段差がついてますね、ってなもんちゃあてなもんですが、
売参
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
6Mカレントは
(6/9)
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.490
(6/6)
国庫短期証券1311 2025/12/10 平均値単利 0.490
となっていまして、結局引値はアベレージよりも強くて0.5%割れで引かせていますけど、一方で
3Mどころはと言えば、
(6/9引値)
国庫短期証券1306 2025/08/18 平均値単利 0.450
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.450
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.450
国庫短期証券1310 2025/09/08 平均値単利 0.455
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.460(今週入札の3MWI)
(6/6引値)
国庫短期証券1306 2025/08/18 平均値単利 0.449
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.449
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.460
国庫短期証券1310 2025/09/08 平均値単利 0.460
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.460(今週入札の3MWI)
9月足がやや強くなっていまして、1310に関しては入札が0.4529%/0.4698%だったので金曜の0.46はちと甘いかしらと思っていましたがさすがに5糸訂正してきていまして、入札前弱めに推移していたのは推移していましたが、まあ金利調整すれば買おうという人も増えてきますので、そうなればマーケットメーカーの在庫も軽くなって結局はそんなに金利は上がらんぜよというお話(結局は「モノとしての短国」へのニーズは根強い)ということなんですかね、知らんけど。
〇色々と面白い論点が転がっているので昨日の続きで内田さんの講演をば
まだHTMLバージョンが出ていないので時々数字が認識できない問題がありますがPDFから引用して参ります。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250607a1.pdf
業務からみた日本銀行
── 日本金融学会 2025年度春季大会における講演 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一
(ちなみにこの2025も文字列認識しませんw)
本文15ページ(PDFの16枚目)の『7.非伝統的な金融政策と中央銀行のバランスシート』ってコーナーから参ります。
・非伝統的な政策の話をするときにいきなりマネープリンティングしないで頂きたいんだが
最初の小見出しが『(非伝統的な金融政策の効果:資産サイドと負債サイド)』というお話。でもってその冒頭が、
『後半パートの2つめのテーマは、非伝統的な金融政策とバランスシートです。「非伝統的な金融政策」はその名の通り、伝統的な業務運営を超えて、中央銀行業務を拡張することで、金融政策の効果を追求するものです。これはしばしば「バランスシート政策」と呼ばれます。』
ほうほう。
『中央銀行が、「支払完了性のある決済手段」を負債として供給することは、その裏側で、資産を持つことを意味しています。理論的には支払完了性がある負債はいくらでも提供できるので、「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメターになりうるのです。』
支払い完了性(ファイナリティ)のある決済手段云々はこのコーナーの前の方で決済に関する話をしておりまして、でまあ決済の中で中央銀行の負債(銀行券または中央銀行当座預金)は決済の最後の尻が完了できるものなのでファイナリティがどうのこうのという説明でして、その辺興味のある方は読んで味噌という話ではあるのですが、どさくさに紛れて内田さんそれはちょっと読まれ方によっては大変な暴言なんですけど、というのがこれ。
>理論的には支払完了性がある負債はいくらでも提供できるので
>理論的には支払完了性がある負債はいくらでも提供できるので
>理論的には支払完了性がある負債はいくらでも提供できるので
おいこらちょっと待て、それは「マネープリンディング」っていうんじゃないかってな話で、支払完了性がある負債をいくらでも発行して、それで政府の債務をいくらでも引き受ければ紛うことなき財政ファイナンスな訳ですよ。
でもってですよ、昨日ネタにしましたけれども、本文8ページにあった中央銀行当座預金付利に関する説明の中で、
『このことは、その後、技術的な金利操作の手段という意味合いを超えて大きなインプリケーションを持つようになりました。ひとつは、金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。』(本文8pより)
って言ってるんだから、この「負債はいくらでも提供できる」と合わせて考えたら、中央銀行は財政ファイナンスを何ぼでもできまっせ、という説明しているのと変わらんじゃろ何ちゅう危険な説明をしてるんじゃと小一時間問い詰めたいわけですけど、この次の部分も論点になりうる話でして、
・バランスシート政策があるのであれば「短期金利とは別」という説明はどうなのかよと思いますけどね
>「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター
>「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター
>「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター
さっきの8pの説明の通りで「金利政策と切り離してバランスシート政策を行うことが可能になりました」って言って、この部分で「「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター」と言ってるんだったら、日銀の保有する長期国債残高に関しては立派(?)な「政策」でありますので、「金融政策運営は短期金利コントロールで行うので長期国債買入に関しては政策意図云々ということではない」という説明とお前話が違うじゃろ、という話でもあります。
短期市場に対しては当預付利を使って超過準備を不胎化することができるからバランスシートは別物、と言ってもバランスシートの資産サイドで持っているものが政策中立なのか、というとそうではない、って自分で言ってしまっているので、つまりは「付利をして短期金利をコントロールしているので無問題」という理屈は短期市場だけ見て説明しているイカサマ説明じゃろってなもんで、いやだからそういう所の説明が「部分部分では筋の通ったことを言ってるけど全体で見た整合性と、過去の説明との整合性がないじゃろお前ら」ってツッコミを入れてしまう要因なんだよな、と思いました。
・どさくさに紛れてマネタリーベース直線一気理論が完全に無視されているのはワロタ
『図表10 をご覧ください。現在の日本銀行のバランスシートです。非伝統的金融政策として長期国債を買った場合、資産サイドで長期国債が増加し、負債サイドでは、相手方の金融機関の当座預金が増えます。その政策効果は、資産サイドで国債を買入れることによって、市中から金利リスクを吸収し、タームプレミアムを押し下げる効果(いわゆる「ストック効果」)が中心であると分析されています。』
からの、
『一方、負債サイドの当座預金残高やマネタリーベース、あるいはバランスシートの大きさには、資産サイドのような直接的な効果があるわけではありませんが、一定のアナウンスメント効果は持つ可能性があります。』
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
しつこいので久々にこれでも
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2015/kk1502a.pdf
岩田副総裁記者会見要 旨
―― 2015年2月4日(水)
午後2時から約35分
於 仙台市
『(問) 副総裁は就任前の 2013 年 3 月 4 日の講演で、「日銀当座預金が10%増えると予想インフレ率が
0.44%上昇する」ということをおっしゃったという報道がありますが、これが事実かどうかをお伺いします。また、実際に日銀当座預金残高の推移をみますと、講演をされた
2 年前の水準が44 兆円で、足許の水準が 185 兆円、これは 10%どころか 4 倍以上に達しています。それにもかかわらず、予想インフレ率を表す一つの指標であるBEIは足許で1%を切っている水準です。これは、もともとのご発言自体が誤っていたのかどうか、それとも今でも同じようにお考えなのでしょうか。』(この部分だけ直上URL先2015年2月岩田規久男副総裁(当時)の会見要旨4pより)
・・・・いやはやなんともw
・バランスシートの効果の説明が粒粒では言ってることそうかもしれんが全体の整合性がおかしい
では講演本編に戻りまして、
『大きなバランスシートを急激には縮小できないことは、市場もわかっているので、「しばらく緩和を続ける」というメッセージになりえるということです。』
ということではあるのですが、インフレが急速に進むような場合はバランスシートによる緩和効果が逆に足かせになるわけで、ストック効果の緩和効果がどうのこうのと主張すればするほど、バランスシートが大きいならば、そのストック効果の緩和効果を加味して政策金利水準の設定が必要になるはずなんですが、そういう説明を一切しないで今の政策運営をしているのは如何なものかって話になるんですよね。
『2000年代のはじめ頃、為替市場などで、中央銀行のバランスシートの大きさの比較が材料になったことがありました。この点、リニアな関係を導くことは無理ですが、「緩和スタンスのproxy
」として、緩い関係を見出すことは不可能ではなく、あとはケインズの美人投票的に機能したということでしょう。』
「この点、リニアな関係を導くことは無理ですが、「緩和スタンスのproxy 」として、緩い関係を見出すことは不可能ではなく、あとはケインズの美人投票的に機能したということでしょう」って言っているのですが、さっきうっちーさん「「どんな資産を、どれだけ持つか」が政策のパラメター」って言ってたんだから、バランスシートの大きさ(とその構成)の比較は政策のパラメターなんだからリニアかどうかは兎も角としてその理屈なら意味あるじゃろという話なのですが、なぜかここの説明ではバランスシート規模はあくまでも「緩和スタンスの代理変数」程度であり、「スタンスの表明」にすぎないような説明をしている訳でして、いやだからそこさっきとの話の整合性どうなっているのよ、というお話。
まあ非伝統的緩和政策自体が結局何だったのかというのはまだ評価が固まっている訳でもないのでクリアカットな説明ができない、というのはその通りなんですが、だからといって「粒粒での説明はいいんだが全体として結局なんだったのかという説明が無いどころか話の整合性が無いんじゃが」というのも如何なものかと思います。
・オーバーシュート型コミットメントが強いものではなかったとはこれはまた酷い
でもってこの次ですが、これがまたドイヒーでして、
『バランスシートの大きさを明示的に使ったコミュニケーションとしては、日本銀行は、
2016年9月にイールドカーブ・コントロールを導入した際に、「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで」マネタリーベースの拡大方針を続ける、というコミットメント(オーバーシュート型コミットメント)を行いました。先ほど述べた通り、短期金利の操作とバランスシートの大きさは切り離し可能なものなので、このコミットメントは強いものではありません。』
>このコミットメントは強いものではありません
>このコミットメントは強いものではありません
>このコミットメントは強いものではありません
>このコミットメントは強いものではありません
>このコミットメントは強いものではありません
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)
さてここで2016年9月の総裁定例記者会見の冒頭発言、オープニングリマークに相当する政策説明の部分を途中から見てみましょう。
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2016/kk1609b.pdf
総 裁 記 者 会 見 要 旨
―― 2016年9月21日(水)
午後3時半から約70分
本文2ページの後半以降になります。
『次に、「オーバーシュート型コミットメント」について説明します。』
『日本銀行は、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に
2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという新しいコミットメントを導入しました。』
『2%の「物価安定の目標」を実現するためには、人々のデフレマインドを抜本的に転換し、予想物価上昇率を引き上げる必要があります。この点、「総括的な検証」でも示したように、わが国における予想物価上昇率の形成は依然としてかなりの程度「適合的」であり、足許の物価上昇率に強く引きずられる傾向があります。』
『こうしたことを踏まえ、予想物価上昇率をさらに引き上げていくためには、金融緩和の継続に関する極めて強力なコミットメントを導入することによって、「物価安定の目標」の実現に向けた日本銀行の揺るぎない姿勢を改めて示すことが必要であると判断しました。』
『もともと 2%の目標を実現するということは、景気変動などを均して平均的に
2%を実現するということですから、2%をオーバーシュートする局面は想定されています。しかし、金融政策には効果が現れるまでにラグがあることを踏まえると、実際に
2%を超えるまで金融緩和を続ける、というのは極めて強いコミットメントです。』(以上この部分2016年9月21日黒田総裁(当時)の定例記者会見要旨より)
・・・・・・・・・・・(゚д゚)
ちなみに「実はもっと強力なコミットメントがありましたてへぺろ」という説明が以下続きまして、
『より直接的なコミットメントとして、例えば、「消費者物価が2%を安定的に超えるまで」長短の金利目標の水準(短期は−0.1
%、10 年金利はゼロ%程度)を続ける、と約束することも論理的にはありえました。』
『ただ、これではフォワードガイダンスとして強すぎ、将来の柔軟性を犠牲にする恐れがありましたので、バランスシートの大きさに紐づけたということです。』
だそうですが、
『一般的に「バランスシートの拡大を続けながら、利上げをする」というのはイメージしにくいので、「緩和を続ける」というスタンスは伝わる一方で、オペレーション的には(業務面から考えれば)、バランスシート縮小(
QT)の前に利上げを始めることは可能で、その余地を残したものです。』
って説明をしているんですが、最初の方で話をしている通り「バランスシートは金利と別」って言ってるわけでして、「一般的に「バランスシートの拡大を続けながら、利上げをする」というのはイメージしにくいので」ってのがそもそもペテンじゃろという話だし、じゃあお前2016年のオーバーシュート型コミットメントの説明はペテンだったのかという話になって、まあ色々とダメな説明になっていませんかねえ、という所で誠に遺憾ながら時間が無くなってしまったので今朝はここで勘弁していただきとう存じます。
2025/06/09
お題「短国金利がまた上昇とな/内田副総裁の講演は面白い(その1)/2026年4月以降の買入を決め打ちで出す気なのかしら??」
こいつマジでキチガイじゃろ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-06/SXFTGXDWLU6800
トランプ米大統領、パウエルFRB議長に1ポイントの利下げ要求
Jordan Fabian
2025年6月6日 23:42 JST 更新日時 2025年6月7日 9:56 JST
というか米国って法の支配とかどうなっているんだよ・・・・・・
〇3M短国(というか短国全般的に)レート上昇しておりますがこれは何ぞ??
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250606.htm
国庫短期証券(第1310回)の入札結果
『本日実施した国庫短期証券(第1310回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。
記
1.名称及び記号 国庫短期証券(第1310回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項
3.発行日 令和7年6月9日
4.償還期限 令和7年9月8日
5.価格競争入札について
(1)応募額 10兆4,902億円
(2)募入決定額 3兆3,749億5,000万円
(3)募入最低価格 99円88銭3厘0毛
(募入最高利回り) (0.4698%)
(4)募入最低価格における案分比率 7.2609%
(5)募入平均価格 99円88銭7厘2毛
(募入平均利回り) (0.4529%)』
ということで、3Mがなんと0.45%水準まで金利上昇となりまして、ここまで来るとGCと一桁前半BPの差になってくるので、やっとモノ状態から金利商品に近くなってきたじゃんという所ではありますが、まあ実際問題としては一時的な需給なのかもしれずよくわからんですな。まあ構造的にモノとしての短期国債ニーズが減っているならイイハナシダナーなんですが。
売買参考統計値では
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
(6/6引値)
国庫短期証券1306 2025/08/18 平均値単利 0.449
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.449
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.460
国庫短期証券1310 2025/09/08 平均値単利 0.460
国庫短期証券1312 2025/09/16 平均値単利 0.460(今週入札の3MWI)
(6/5引値)
国庫短期証券1306 2025/08/18 平均値単利 0.422
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.422
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.430
国庫短期証券1310 2025/09/08 平均値単利 0.430
とまあそんな訳でして、引値の方は平均落札よりは甘くて足切りよりは強いという数値ですが、周辺の銘柄揃ってレート上昇となっていまして、まあこのまま水準訂正してくれれば短国市場の正常化に近づく(本来無担保コールよりもタームプレミアム乗る分だけレート高くないとおかしいじゃろという物件なのですがまあ諸々あってこうなっているので)ことになって大変結構なお話かな、とは思いました。
〇内田副総裁の金融学会での講演がなんかいろんな論点の展覧会みたいになって面白い件
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250607a1.pdf
業務からみた日本銀行
── 日本金融学会2025年度春季大会における講演 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一
この講演、いろんな論点の展覧会みたいになっていまして、この前の金研コンファランスで本来学術的なお話をする場所なのに政策運営のために屁理屈捏ね捏ね講演をしていた植田さんの講演とはだいぶ格調が違っている、という感じでして、いや植田さんがこの話をしろよとは思いましたけれども・・・・・・・・・・・
マクラの部分ですが『1.はじめに』から引用しますね。
『図表1をご覧ください。普段、メディアで目にする「日本銀行」は、金融政策の担い手としてのものが中心です。昨年度の報道件数のうち、3分の2は「金融政策関連」でした。それ以外では、例えば昨年7月に
年振りの改刷があり、その前後では「銀行券関連」の記事で盛り上がりました。』
『実際、多くの方々にとって、人生で最初に「日本銀行」に接したのは「日本銀行券」であったのではないかと思います。そして、中学の社会科では、日本銀行は、「発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」である、と教えられ、高校にかけて、「金融政策」や「物価の安定」、あるいは「最後の貸し手」や「金融システムの安定」について学んでいきます。』
金融システムの安定とか高校の政経でやったっけとは思いますがまあ気にせず先に進めまして、
『私自身、支店長をしていた頃は、中学校の体育館で、「お金とは何か」の出前授業をしたりしました 。』
(^^)。
『ただ、これらのキーワードを有機的に結ぶこと、例えば、「なぜ、中央銀行はお札を発行して、金利を上げたり下げたりし、インフレやデフレに責任を持つのか」まとめて整合的に説明することは、大人にとっても意外に難しいことです。』
はい。
『中央銀行の政策と業務は一体不可分のものです。通常それは「政策を実現するための手段としての業務」という順番に語られます。今日の私の試みは、逆の順番、つまり「業務」を出発点にして、「政策」につなげていこうというものです。』
ふむふむ。
『私は、昔からこうした視点を大切なものだと思ってきました。実は、私自身が関わったものを含めて、同じような試みは、過去にもいくつかあるのです(ここの数字がコピペ不能)が、時折こうしたことを繰り返していかないと忘れられがちなテーマですので、今日のこの場をお借りしたいと思った次第です。』
ここ(コピぺ不能部分には本当は2という数字がある)に実は脚注2というのがあるのですが、今回のこの講演テキストのPDFバージョン、割と致命的に残念なことがありまして、一部の数字(見出しとか脚注は良いんですが本文の数字だったり表題の数字だったり)がテキストデータになっていない、という謎の状態になっていまして、コピペしようとすると数字の部分だけ認識しないのですが、脚注2は、
『2 例えば、速水優『私の中央銀行論』(2001 年 4 月一橋大学創立 125 周年記念講演会における講演)、日本銀行金融研究所編『新しい日本銀行
その機能と業務』(有斐閣)、白川方明『「法と経済」からみた中央銀行』(2009
年 10 月東京大学法学部における講義)。』(ちなみにここの数字はちゃんと認識される)
となっていますように、実は重要なお話だと思いますし、それこそ短期のオペレーション関連に関する実務の現場から叩き上げております所のアタクシからしても、基本的に金融実務から見ていくってのは大事じゃろ、ということで以下のテーマが多岐にわたって、結構面白いのが幾つかあるので1回で終わらないネタではあるのですが、まあ一応今の政策的にポイントになる日銀のバランスシート政策に絡む部分を今日は拝見しようかと存じます。
・金融政策目的の国債買入は財政ファイナンスではないし財政ファイナンスでないと言い張れば良いだけではない
という訳で『3.政府の銀行』の後半の『(中央銀行と政府の取引)』に話は飛びます。
『日本銀行は、国庫金の管理に付随して、政府の資金繰りの実務も担っています。収入と支出のタイミングのずれによって、政府預金の残高は上下しますが、短期的な資金の不足は、国庫短期証券の発行によって賄います。これは公募入札で金融機関等に売却されますが、例外的に、募集残額が生じたり、国庫に予期せざる資金需要が生じた場合には、日本銀行が引き受けることができます。その場合には、次回以降の公募入札の代金で償還を受けることになっています。』
おーーーーーー。これは久々に聞く説明です。
『また、日本銀行が金融市場調節など自らの必要のために買った国債の償還期限が到来した場合、国庫短期証券で借り換えることができるようになっています。これは、「乗換引受」と呼ばれ、日本銀行側では政策委員会が金融市場調節上支障がないことを確認して議決する必要があるほか、政府側では財政法第5条の例外として国会の議決が必要になります。』
かつて償還乗換は10年国債で行われていましたが1年短国になった話とかそらもう老害なので色々とw
『以上細かい説明になりましたが、これらの業務は、政府に対する信用供与にあたり、政府と中央銀行の関係を考えるうえで重要な論点を含んでいます。このため、日本銀行では、「対政府取引に関する基本要領」を定め、基準や手続きを明確にしています。』
当然ですな、財政マネタイズするのは要するにマネープリンティングなんですから。
『また、こうした「政府の銀行」としての業務とは別に、金融政策目的での国債の買入れがあります。』
はい。
『現在の日本銀行のバランスシートの資産サイドで最大の項目は、「国債」です。これは、2013
年からの大規模な金融緩和において、2%の物価安定の目標を実現するため、金融政策の必要性から買い入れ、保有しているものです。政府による財政資金の調達を支援するためのものではありません。』
ちなみに本文中2013のところが認識されなかった(半角数字が認識されないのかな?)のですがそれはさておきまして、この「政府による財政資金の調達を支援するためのものではありません」につきましてこの直後に内田さんは、
『ただし、この問題は、中央銀行が「金融政策目的であって財政ファイナンスではない」と言うだけで完結するとは思っていません。』
とまあ実に当然ではあるのですが大変に素晴らしい事を仰せな訳でして、ともすればこの論点を逸脱した議論が特に今般では日銀の長期国債買入運営に関する議論の中で堂々と展開する馬鹿民間がいる訳でして、まあその悪態は次のコーナーで行いますけれども。
でもってじゃあどうしたらいいのか、ですけれども・・・・・・・
『出口を含めた緩和政策の全プロセスにおいて、経済・物価との関係で適切な金融政策を行い、これを財政状況への配慮によって曲げることはない、という「結果」が必要です。その意味で、今後の日本銀行の政策運営をもって、示していくべきことと考えています。』
おおおおおおおお!!!!!!!!!何と立派な決意表明でしょう!!!!と思う訳でして、これはすんばらしい、とは思う訳です。
・・・・ええまあ思うんですけどね、その割にはアクチュアルの物価が2%を延々と上回っているのに、今の物価高はコストプッシュなのでいずれ下がると言い続けて「基調的物価」とかいうお気持ち物価を持ち出して大緩和政策を延々と継続している、という実態があるんですがそっちとの整合性はどうなっているんですかってなもんですし、今行っている長期国債買入の縮減だって金利急上昇したらいかんとか言ってるけど、それって財政状況への配慮が入っていませんでしたっけというツッコミをしたくなるわけで、まあ内田副総裁のこの講演自体言ってることは大変に立派なのですが実際の行動がこの格調高いお話に見合っているのか、というのは謎ですわな、と思いましたが如何でございましょうか。
・これは極めて微妙な論点を踏みに行っていてどうなのかと思う
この先に『4.銀行の銀行』ってのがあって、その後半のところに『(当座預金への付利とそのインプリケーション)』という話をしているのですが、ここでの説明は結構際どい地雷を踏んでいると思ったのでネタにしますと、
『しかし、現在では多くの中央銀行が、バランスシートの大きさと短期金利の操作を切り離しています。当座預金に金利を付すという金利操作の方法が導入されたためです。』
とのことですが、
『日本銀行も、 年に「補完当座預金制度」を導入し、超過準備(当座預金のうち準備預金制度に基づく所要準備を超える部分)に対する付利ができるようにしました(当初は臨時措置として導入されましたが、その後恒久化されました)。』
『金融機関は余った資金を日本銀行の当座預金に置くか、市場に放出するかの選択がありますので、裁定行動により市場の金利は日本銀行が付利している水準に近い水準に誘導されます。現在でいえば付利金利は0.5%、市場における短期金利は、0.48
%程度です。』
でまあそりゃそれで良いんですけど、この次の説明が結構な地雷でして、
『このことは、その後、技術的な金利操作の手段という意味合いを超えて、大きなインプリケーションを持つようになりました。』
でもってですね、
『ひとつは、金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。』
って言ってるんですが、それはそもそも「可能になった」というのは如何なものかという話でもありまして、すなわち日本銀行がバランスシートに資産を能動的に積み上げること、というのは見合いの日銀当座預金を積み上げることでありますので、積み上げる資産が民間資産であれば、日本銀行が民間に信用供与ができることになり、それは中央銀行による財政政策に他ならないし、積み上げる資産が国債であれば、それは財政ファイナンスになりませんか、ってお話になるわけですよ。
中央銀行による財政政策類似政策、というのが民主主義国家における財政運営においてやって良い物なのかどうか、という議論もそうですし、財政ファイナンスに関しては講演のその前の部分で内田副総裁自らケシカランと言っている訳なのですから、ここでいきなり「金利操作と切り離して、バランスシートの大きさを決められるようになった結果、資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。」って言ってるのは中央銀行の原理原則から言ってヤバイ話ですよね、としか言いようが無いですよね。
続きを拝読しましょう。
『非伝統的金融政策の中心手段のひとつは、いわゆる「量的緩和」すなわち、国債の買入れによって長期金利を押し下げることですが、これを実行するのには、バランスシートの大きさとは無関係に短期金利をコントロールできることが前提になります。この点、量的緩和を実行している間は、割り切ってしまえば、金利をコントロールできなくても、ゼロ金利でもよいと考えることもできなくはありません。』
という事で実はこの講演最後のところに非伝統的金融政策の話があるのですが、今日はそこまでいく時間が無いのでこのコーナーまでで続きは明日以降って感じなのですが、こういう説明からの、
『しかし、量的緩和からの出口プロセスに時間がかかることはあらかじめわかっているので、その時に、大きなバランスシートを抱えながら、短期金利をコントロールできることが保証されていないと、こうした手段は採用できません。』
って言ってるんだが、出口プロセスの間に時間がかかる、だけではなくて、現状では長期国債の買入がどこからどう見ても財政ファイナンスという規模での買入を継続していて、それを中々減らせない、という状態になっている時点で、「インフレにならない」ことが前提じゃないとあの政策ができなかった、というアホウなことになっている訳ですし、まさにこの量的緩和というかYCC政策というかの副作用が徐々に顕在化してきているプロセスな訳で、そう考えますと「資産サイドを使った政策を大規模に行うことが可能になったことです。」といって大規模に行う、というのはそりゃまあ物理的には行えましたけど、物理的にできるというのとやることが適切なのかというのは別問題な訳で、当座預金付利で何ぼでもバランスシートを拡大できる、というこの説明は物理的な可能性と中央銀行としての適切な政策運営姿勢というのを意図的に混同して説明してるじゃろ、と申し上げざるを得ません。
・いわゆるアンプルリザーブシステムに関する説明はちょっと微妙
『バランスシートの大きさと短期金利の操作が切り離されたことのもうひとつの帰結は、短期金融市場の参加者と中央銀行の取引先の範囲が必ずしも一致しないことで起こる流動性の偏在への対応が可能になったことです。』
とな何ぞやという話だが、
『取引先と非取引先が混在する状況で、伝統的な短期金利操作によって、所要準備預金残高ぎりぎりの水準しか供給しないと、金融市場の多様な参加者に必要な流動性の量に足りない、ということが起こってしまいます。』
大昔の米国の場合はそもそもFF取引の金利(政策金利ではない)ってのは乱高下するもんだったし、大昔の欧州圏の場合はこの対策として資金繰り事故が起きにくいようにするために所要準備預金の水準を高めに置いて(その代わりに所要準備に付利をしたりしていた)運営したりしているので、別にこれはバランスシートでわざわざ対応しなくても制度設計や短期金融市場の設計で割と何とでもなる問題ではないか、と大昔から実務見ているワシは思うので、ここの部分はちょっと????ではあります。
『この問題は、米国FRB のように法律で当座預金取引先の範囲が基本的に預金取扱金融機関に限られている国では以前からあったのですが、近年は各国でノンバンク金融仲介機関(NFBI。保険会社、年金基金、各種ファンドなど)の存在感が拡大し、その影響が短期金融市場に及んでいます。』
って言ってるんですが、それは翌日物ファンディング市場における話とは違くねってことだし、大体からして日本の場合は中銀当座預金へのアクセスが広範に及んでいるので、民間金融機関の短期資金繰りにおいてNFBIがどうのこうのってのそんなに重要か(安定した資金供給主体、としての市場の安定性への寄与自体は大きいと言えるんじゃないか、ってのは思うけど)ってのはよくわからん。
『この状況に対応するには、中央銀行が付利を使って短期金利を操作しながら、市場に必要な量の流動性を供給できることが重要です。』
別に付利使わんでも常設預金ファシリティと常設貸出ファシリティでコリドア作りながら必要な場合には積上調節すれば問題ないと思うんですけどね。
『現在、各国の中央銀行は、バランスシートの縮小を進めていますが、その多くは、伝統的な金融調節方法に戻ることはないでしょう。市場の求める流動性に見合ったバランスシートを維持しながら、当座預金への付利によって短期金利操作を行うことになるだろうと思います。』
まあこれは多分超過準備のデザインがいわゆるアンプルリザーブになっていくだろうという流れにはなっているので仰せの通りの面はあるのですが、じゃあアンプルリザーブが常に良いのかというとそこも良くわからない面もありまして、アンプルリザーブシステムにおいては金融機関のファンディングに一種の中銀プットが入っているような状態になっている、ともいえる訳でして、ソルベンシーが本当の本当におかしくなるまで金融機関のファンディングが回ってしまうファンディング市場がある、ってのも市場参加者の規律を失わせることになるんじゃなかろうか(なので次にプルーデンス的な問題が起きるならこの市場デザインによって兆候が分からない状態で突如問題が顕在化する、みたいなルートがあり得ると思うの)とは思うのでありました。
ということで内田さん講演ネタはこの辺で、あとは関連悪態。
〇長期国債買入なんじゃが来年4月以降の計画って今から決め打ちする必要あるの???
金曜の午後はBBGですがもともとは木曜日の夕方にロイターが(先に英文で)打っててその後日本語も出ていたと思うのですが、ネット版だと日本語のニュースが拾えなかったのでしゃーなしでBBGニュースの方から参りますけど。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-06/SX9VE4T0AFB400
日銀が国債買い入れ減額幅の圧縮を検討へ、来年4月以降−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2025年6月6日 18:43 JST 更新日時 2025年6月6日 19:54 JST
→毎四半期2000億円に半減か現状維持かが議論の中心−今月会合
→来年4月以降の国債買い入れ計画、期間は先行き1年程度に
ということなんですが、前回は初手だったのと、そもそも先行きにそんな変な不透明要素は少なかった(少なくともキチガイ大統領のキチガイムーブは無かったんですから)訳ですが、足元では不透明要素だらけで来年の3月の時点で世の中がどうなっているか分からん訳で、まあ計画継続(四半期4000減を維持)だったらまだ話は分からんでもないんですが、買入減額ペースの上げ下げをこの時点で決めるのってそりゃ何かの政策意図があるんですかって話になるじゃろという話なんだが、何でこの「2026年4月以降の買入」がこんなにネタになるのか意味が分からんし、日銀も来週の会合で2026年4月以降の買入を決め打ちで出そうとしてるならちょっと落ち着けと思う訳ですよ。
んなもん今回はどうせ中間評価なんだから、中間評価として特に問題なし、2026年3月まではこのペースを継続して、その後のことは年末か来年1月のMPMでまた話をしますが、方向性は一段の縮小ですよ、ってだけアナウンスすりゃエエヤンと思う訳ですよ。
でもなんか木曜のロイターと言い、金曜のブルームバーグと言い、何でそんな先の計画についての決め打ちが話題になるのですかねえ、とは思いますが、まあ来週の決定会合で2026年4月以降の買入縮小ペースの決め打ちが出たらお前馬鹿じゃねえのって罵倒する予定なのでよろしゅうお願いするます(原則同じペースだけど近くなってからまた考える、だったらまあ罵倒しないかもしれないけど)。
まあ記事の方は前日のロイターさんも大体同じ線で報道していて、BBGの方が後追いなのですが、兎に角ロイターさんって過去記事の検索がしにくいのよ(検索しても上手く引っかからないことが多々ある)ということですいませんが以下BBG記事から。
『日本銀行は今月の金融政策決定会合で議論する2026年4月以降の国債買い入れ計画について、現行計画で進めている減額幅の圧縮を検討する見通しだ。複数の関係者への取材で分かった。』(上記URL先より、以下同様)
圧縮を何で今から検討しなければいけないのか、ということに関しては、
『来年4月以降の1年間に毎四半期2000億−4000億円の減額を行った場合、27年1−3月の月間買い入れ額は1.3兆−2.1兆円になる計算だ。減額ペースの減速が必要との主張の背景には、日銀が買い入れ減額を続ける中、短期的な国債需給の悪化などで市場に無用な混乱が生じないよう、より慎重な対応が必要との意見がある。』
とのことなんですが、そもそも論として現在はもうYCCやっている訳ではないんですから、「短期的な国債需給の悪化などで市場に無用な混乱が生じないよう、より慎重な対応が必要」って発想が根本的に間違っている訳で、日銀の保有国債をどうしていくのか、というのは(他の中銀と同じく)、短期金融市場における超過準備をどのような規模で置くのか、というのがあって、日銀の保有国債規模がこの程度というのがそこから決まって、でもってその保有規模に合うような買入が決まる、という話であって、(しつこいけど)YCCやってるんじゃないんだから、本来的には債券市場への配慮がどうのこうのとかそういうのは気にすべき話じゃないんですよね(原理主義者ですすいません)。
てなわけで、テーパリングというほどテーパリングも進んでいないこの段階で既に債券市場への配慮がどうのこうのとか言っている時点で今の日銀の長期国債買入は財政ファイナンスに他ならないし、日銀の買入が減ったら金利が上がって財政が困るとか言うのは、その前の黒田緩和の買入が過大であって、黒田は否定してたけど黒田日銀が財政ファイナンスをしていた、というロバート・ムガベ先生も大喜びな事をしていただけ、という話だし、財政ファイナンスとかいう不適切な状況を是正するの当然だし国債金利の上昇がどうのこうのとか言うなら国債発行減らせやという話だし、減らせないとか泣き言言ってないで「日本の財政は飛んでも無い状態です」って馬鹿政治共に知らしめるしかないじゃろ、などと過激派な事しか言わないアタクシなのでした。
てかさ、先週の「30年入札こけたら超長期国債発行減額の思惑でブルフラット」とかいうふざけた事が起きている時点で債券市場への配慮とかする必要ねえだろ寧ろ変な配慮したら当局プットバンザーイってコジキ共が喜ぶだけじゃとしか申し上げようがありませんな。
などと偉そうに申し上げておりますが、まあ問題の先送りを図って結果的に問題が後の方でさらに深刻になってもその時はワシ担当じゃないもんとかいう無責任理論で問題の先送りを延々とやっているのが失われた何十年におけるジャパンの仕様だと考えれば、今回もまた忍法「どうせ問題が発生した時はワシは担当してないもん理論」が炸裂して問題の先送りみたいなしょうもない弥縫策に日銀買入も巻き込まれる、には100万ジンバブエドル位は張った方が良いのかもしれませんな。ナムナム。
2025/06/06
お題「入札コケて減額観測で急騰してたら世話ないんだが/ECBは先行きの経済を「うまくすれば明るいけど」って少し明るい絵に」
https://www.agrinews.co.jp/news/index/310888
2025年6月6日
[農家の特報班]小泉農相に望む政策は? 緊急アンケート
| ニュース| のうとく| 主要記事
なお進次郎は流通卸を悪者に仕立てる方向での扇動をしているだけのようなニュースが出ていたのだが、まああのクソ親父あってのこの息子というムーブをやっぱりやるのかよと残念に思っている所だ一応まだお手並み拝見。
今日のFED方面要人発言(自分用メモ)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/4KYSBJ3HFVMSTBSOUU4BUZ27HM-2025-06-05/
政策金利の現状維持支持、インフレリスク上昇=クーグラーFRB理事
ロイター編集
2025年6月6日午前 2:23 GMT+9
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/22KON5GJ7JLMRNTH5WJNQVNKZE-2025-06-05/
関税によるインフレ再燃を警戒、全容判明に時間必要=カンザスシティー連銀総裁
ロイター編集
2025年6月6日午前 3:34 GMT+9
〇30年国債入札がクソ弱かったので減額観測までは分かるがその先の市場後講釈は草生える
市況なのでロイターさんを引用するけどBBGも同様の市況記事を書いておりましたので別にロイターさんを晒上げる意図はないことを先にお断りしますwww
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/5K3AGTCBORNIROR4RGIFC3UN5A-2025-06-05/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発、超長期債発行減額の思惑で買い 入札は許容範囲
ロイター編集
2025年6月5日午後 3:39 GMT+9
『[東京 5日 ロイター] - <15:25> 国債先物は反発、超長期債発行減額の思惑で買い 入札は許容範囲
国債先物中心限月6月限は、前営業日比40銭高の139円35銭と反発して取引を終えた。米金利低下に加えて、低調となった30年債入札が許容範囲内と受け止められたことや超長期債の発行減額を巡る思惑がサポート要因となった。新発10年国債利回り(長期金利)は同4.0ベーシスポイント(bp)低下の1.460%。現物市場では超長期ゾーンを中心に金利低下圧力が強まった。』(上記URL先より、以下同様)
って話なんですけど、
『この日実施された30年債入札では、2.92倍と23年12月以来の低水準となり、テール幅も前回より拡大するなど、低調な結果と受け止められた。』
まあ応札倍率に関しては少ない方ってのはそれなりに意味があるんですけど多い方ってのは足切りがどこからどう見てもこの水準、って時には足切りでの案分考えて札が多く入るみたいなこともあるのでそんなにあてにはならんのだが、
『市場関係者によると、前場で大きく買われ入札に警戒感があった中だったものの「十分こなしたという評価だ」(国内銀の運用担当)とし、入札結果をみて市場参加者が買い始めた動きが入ってきたとみる。ただ、「今入札は国内投資家ではなく、海外勢の買いに支えられた面があり、こういった需要は永続的ではない」(同)とし、超長期債の発行減額はしっかりと実施されるべきだとの声が聞かれた。』
だそうなのですが、まあ直近ではマーケットメーカーのリスク許容度が落ちていて、昔だったら入っていた「止め札」みたいなのが入らないので、明確な投資家のニーズをバックにした札がないと流れてしまうってことなんでしょうけれども、入札流れたら結局その流れたのを見て買いが入りましたでござるの巻、なのはいいんですけど、
『 現物市場では超長期ゾーンを中心に金利が大きく低下。30年債入札結果を受けて「20日の国債市場特別参加者会合(PD懇)での超長期債の発行減額幅をめぐる思惑が先行し、徐々にポジティブに受け止められたようだ」(国内証券債券セールス担当)という。』
これはさすがに草どころか森な話で、弱い入札になってもその後急反発するんだったら、それは単純に「もうちょっと金利が上がればニーズが出てくる」という事を意味するんだから寧ろ減額不要まであるじゃろ、って話で、入札コケたあとに一段安とか、全然戻らんとかなら減額への期待っていうのも分かるけど「減額の期待で相場急反発」するくらいなら何で減額する必要があるんじゃヴォケとしか言いようが無いので、まあアホな話になっとるわ、とは思いました。
いやまあさすがに今回はカレンダーベース市中消化の一部振替の形で超長期は幾分か減額になると思いますけど、このムーブ見たらそんなに必死こいて減額せんでも結局のところある程度の金利上昇を甘受すれば普通に消化できるじゃん、というのを示した格好、というのが発行する側から見たときの通常の解釈になるんじゃないですかねえ、とアタクシは思うのですけれどもどうなんでしょうかね。てかだいたいからして超長期減額したら中短期か長期かしらんけど、そっちが増発されるんだたら中短期弱くなれよ(まあ超長期の減額分のカバーを中短期でやると誤差の世界になる説はあるけど)ってなもんですけどwww
あとまあそもそも論を言い出したら、発行があまりにも少なくなると市場の流動性って回復するどころか落ちるんですから、悪い入札なんだから発行が結構減額されるぜヒャッハーとか言って買ってるの頭の悪さが結構な水準に達していると思うんですけどねwwwwwwwww
まあなんちゅうかアホアホ相場だったので備忘メモということで。
〇ECB
例によって手抜きなのでポンチ絵の鑑賞
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2025/html/mopo_statement_explained_june.en.html
Our monetary policy statement at a glance - June 2025
前回4月
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2025/html/mopo_statement_explained_april.en.html
前々回3月
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2025/html/mopo_statement_explained_march.en.html
トラ公大関税前、トラ公大関税直後、現在という流れでポンチ絵を比較鑑賞します、なお日銀とかいう所の出しているポンチ絵は前回との継続性が無い単発の絵を出してくることで著名です(っていうか実は黒田時代はちゃんと前回との継続性のある絵を出してきていたんですが、ある時から急に前回との連続性を丸無視した絵をだすようになったんですよね、あれは何なんでしょうか)、
・最初のポンチ絵では「経済は向かい風」は復活なのですね
最初のポンチ絵ですが、
『We cut our key interest rates by 0.25 percentage points』(今回)
『We cut our key interest rates by 0.25 percentage points』(前回4月)
『We cut our key interest rates by 0.25 percentage points』(前々回3月)
今回も利下げですが、その説明文では、
『We did this because inflation is settling at around our 2% target, while
the economy is facing headwinds.』(今回)
『We did this because inflation is on track to settle at around our 2% target.』(前回4月)
『We are doing this because inflation is on track to settle at around our
2% target, and the economy is facing headwinds.』(前々回3月)
「物価が2%で推移する中で経済が向かい風なので」という説明でして、物価については既にターゲット達成状態なので景気重視、という説明。前回の時の会見での説明の時点で政策金利は既に引き締め的ではない状態ってしていましたのですが、これはまあちゃんとしたステートメント見ると書いてあるかなと思ったのですが(ちょっと斜めよみした感じですと)すくなくとも声明文ベースでは今の政策金利が緩和的だの引き締め的だのという能書きは無かったので、そこは有耶無耶なのかね(QAまで見た方が良いちゃあ良いのですが、声明文でどっちとも書いていないのならば明確な緩和ではない、と解釈するのが妥当ではある)とは思いました。
まあ物価2%達成状態で利下げというのは「経済は向かい風」だから利下げしたということで、景気重視型の利下げ(前回もそうでしたけど、でもって前々回は「2%ターゲットに向かってオントラックに進む中で」なので物価目標OKOKの一歩手前というステータス)になっておりますな。
・とは言え経済の絵柄が「半分だけ明るい」という器用な絵になっています
2番目のポンチ絵
『What is happening in the world is holding the economy back』(今回)
『Uncertainty about how the economy will develop is exceptionally high』(前回4月)
『Uncertainty at home and abroad is a burden on the economy』(前々回3月)
ってなことになっていますが、絵面を見ますと、前回、前々回ともに濃いめのブルー(というかまあこれブルー系の濃淡だけのイラストなんですけど)の絵柄になっていたのですが、今回はこの先左に行くと天気の悪い山(峠?)に向かうけど右に行けば明るく晴れた山に向かう、のですが、この先に雲があってさてどっちに行くのかはよくわかりません、みたいな感じの絵になっていて、中々芸が細かくてよく出来ている絵じゃん、と思いました。ということで先行きの絵が「もしかしたら明るいかもしれません」になっています。
説明文の方では、
『Global uncertainties and trade tensions are weighing on the economy.
How these are resolved will have an impact on how fast the economy can
grow.』(今回)
『Tensions over global trade and the related big swings in financial markets
are clouding the outlook for the economy.』(前回4月)
『Trade tensions could weigh on exports and make it more difficult for
firms to plan ahead. Because of uncertainty, firms are holding back big
investments and people are still saving a lot of their incomes. But, gradually,
the economy should get stronger.』(前々回3月)
となっていまして、4月はまあ「アカン」って感じですが今回は「How these are
resolved will have an impact on how fast the economy can grow.」ということで、関税を巡る状況がいい感じで解決すれば先行き明るいかも、という願望込みの希望的観測も半分はあるでよ、という絵になっていますわな。
・通商政策問題はあるけど域内要因ではプラス要因も出てきましたというお話
さらに3個め(経済の2個目)のポンチ絵では
『The economy has gained some strength to deal with these global problems』(今回)
『Many parts of the economy are feeling the strain』(前回4月)
ってなっていて、
『Firms are still cautious about investing because of uncertainty. But
lots of people are in work and have higher incomes to spend. Governments
are also spending more on infrastructure and defence, which helps the economy.』(今回)
この個人が職についてる云々は前々回だと経済の2個目の絵でして、
『Many people are in jobs』(前々回3月)
『Unemployment remains the lowest it has been since the start of the euro.
Services, in particular, are doing well.』(前々回3月)
ってのがあります。
それはそうと説明文を前回と比較しますと、前回が
『New trade barriers make it more difficult for Europe to sell its exports.
Companies may invest less because of trade tensions around the world and
the stress in financial markets. Consumers are more concerned about the
future and are cautious about their spending.』(前回4月)
でして、「cautious about their spending.」というのは前回も今回も変わらんところではあるのですが、一方で今回は「Governments
are also spending more on infrastructure and defence, which helps the economy.」ってのもありまして、こちらも絵柄は前回とは異なり、「世界経済は暗いんだが域内だけで見たら明るい面もありますよ」の両にらみイラストになっていて、こちらも(ある意味当たり前ですが)改善していますし、こちらの絵は貿易問題云々と違う「域内の雇用が堅調」「域内の政府支出が拡大」というものをベースにしているので、さっきの「どっち行くか分からんけど上手くいけばお天気」というのよりは一段明るい意味合いのイラストになっているな、って感じです。
・物価は2%目標達成
経済の3個目(全体の4個目)ですがこちらは物価で、
『Inflation is settling at our 2% target』(今回)
『Inflation keeps coming down』(前回4月)
『Inflation is heading towards our 2% target』(前々回3月)
このポンチ絵説明はスタッフ見通しの会合とそうじゃない会合でイラストの分量が違うので同じ順番のものを出しているわけではないのですが、ここの表現にありますように(さっきの政策のところでもありましたけど)今回はインフレーションが2%に「Inflation
is settling」になっていて、前々回ですとまだ「Inflation is heading towards
our 2% target」だったので、今回は2%物価目標が達成された状態です、というのを明確にしめしていますな。
『Lower energy prices are helping to keep inflation down. Wages are growing
more slowly. A stronger euro means that goods and services from the rest
of the world are cheaper for us.』(今回)
『Energy prices have fallen again. Services prices are no longer going
up so strongly. Inflation is expected to settle at around 2%. But trade
tensions make the outlook for prices more uncertain.』(前回4月)
『Food prices are rising a bit faster than before. But, overall, inflation
is coming down mainly because wages and prices for services are no longer
going up as much.』(前々回3月)
今回は物価に関しての表現はもう普通に「2%達成じゃ」という感じですな。
つまり、基本的には政策は中立的で良いのですが、経済情勢が怪しいのならば緩和的にするってそういう感じの政策運営になりまっせ、とかそんな感じですかね〜。
でまあここで本当はステートメントという話なのですが、時間の都合上ここで勘弁していただきとう存じます。
#あと新発3M入札があるんですが足元短国のレートが地味に上昇している件もあったのですが割愛で勘弁
2025/06/05
お題「植田総裁内外情勢調査会講演(その2)」
そらそうじゃろ
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/7HIQMEQCTRMRNLHCHJGTUAXYUE-2025-06-04/
米企業、大半が価格転嫁でトランプ関税に対応=NY連銀調査
Michael S. Derby
2025年6月5日午前 2:30 GMT+9
『同報告書は、5月序盤の時点で「大半の企業が関税引き上げ分の少なくとも一部を顧客に転嫁している」とし、製造業の約3分の1、サービス業の約45%が関税によるコスト増加分の全てを価格引き上げで完全に転嫁していると指摘。両業種の企業の約75%が何らかの形で関税関連のコスト増を価格に転嫁しているとした。』(上記URL先より)
トランプのキチガイ政策の是正が行われるか否かってのは、関税の転嫁が進んで米国の愚民の皆さんがこんなはずじゃなかったとトランプに対してイカリだすまでとの時間の戦いみたいな感じではないかと思うというか思いたいw
〇植田総裁内外情勢調査会講演(その2):政策修正の前のめり感は一切出さずに輪番縮小に意欲ですねこりゃ
てな訳で昨日の続き。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a1.pdf
・通商政策動向の経済への下押しの説明はやたら丁寧だったが「リスク」の方は割とアバウトで温度差があります
昨日は『2.通商政策の影響と経済・物価情勢』の『(わが国経済・物価の見通し)』の後半部分の物価の見通しに関するところまでやったら時間切れになってしまいましたが(すいません)、その先が『3.通商政策を巡るリスク』ってのがあるんですよ。
まあそもそもが「通商政策の影響」ってところで詳しく下振れ要因をこれでもかと並べて説明していましたので、わざわざ通商政策を巡るリスクってのを書くのも重複感が漂うわけで、そのせいかリスクの方は微妙なつくりになっています。
『ここまで、米国の関税政策による影響を踏まえつつ、わが国の経済・物価の中心的な見通しについてみてきました。こうした見通しに対しては、常に上振れないし下振れの可能性、リスクが存在します。特に、現在のように不確実性がきわめて高い状況にあっては、従来以上にこの点を念頭に置いておく必要があります。』
ここで下振れだけではなくちゃんと「上振れ」も言っているのは(関税交渉が思いのほか順調に進展したり、突然トランプが改心してめだか師匠ムーブになるというような可能性があるんだから当たり前だけど)当然ながら結構なお話。
というのはですね、4月の展望レポートって何がクソインパクトあったかって、経済見通し引き下げでリスクバランスは下、物価見通しも引き下げでリスクバランスはそれまで上だったのが下、でもって会見での植田さんの説明もハトハトチキン、って出し方をしたから「なんじゃこの全面降伏モードは」ということになったわけですよ。単に「今回は1回パス」だけで良かったのに過剰なまでに下方バイアスを強調した情報発信になっていたからあの相場になった、という面は多々ある訳でして、でまあさすがに大本営もやべえと思ったのか主な意見では展望レポート基本的見解や会合後の会見で示されたハトハトチキンバイアスをある程度中和(中立化ではない)させてるな、と思いましたし、その後の国会などでの説明も「見通し達成への確度が高まれば利上げ」ということでコミュニケーションを立て直している感があったわけです。
でまあ今回ですが、ワタクシはやはり遺憾ながらハトハトチキンだなあ(理由は関税政策の影響の説明部分がやたら丁寧なこと)だし、緩和の調整つまり利上げの前のめり感が一切出さない(理由はお気持ち物価の説明に力点置いている、すなわち利上げしない理由の方の背景説明ばかり一生懸命やっててアクチュアルの物価は「コストプッシュです」で方吹けているから)、というコンボなのでハトハトチキン認定しましたが、ここに「通商政策のリスクは上振れ下振れあり」とちゃんと書いている、というのはジャガーチェンジができる(やるかどうかは兎も角)布石はここでも着実に打っていることが分かるわけです。
ということなので、このあたりのジャガーチェンジができるようにしている仕掛け部分を重視すれば、むしろ衣はハトだけど下の鎧はタカじゃん、とも読めますので、タカ解釈がおかしいとは今回は思わないですアタクシ。
えっと、何の話をしていたんでしたっけ(笑)リスクに関するマクラの続きです。
『例えば、本日ご説明した日本銀行の中心的な見通しについては、「各国の通商政策等に関し、今後、各国間の交渉がある程度進展すること」、また、「グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような破壊的な状況は回避されること」などを前提としています。』
何かこの前提がわかりにくいんですよね、関税何%とかをレンジで良いから想定出してほしいわ。
『逆に言えば、こうした前提が崩れれば、先行きの見通しは上下双方向に大きく変化する可能性があります。また、通商政策の展開そのものに加えて、それらを受けて、内外の経済主体がどのように対応するのか、という点を巡っても大きな不確実性があり、十分な留意が必要です。
こうした点を踏まえつつ、以下では、この先、特に留意すべき3つのリスクについて指摘したいと思います。』
ということなので、ちゃんと上振れすなわち利上げ路線復活の話もしている訳ですよ、でもってこれ昨日も書いた気がしますし何ならこの後にも書きますが、まあ結局6月の国債買入減額の継続決定というのが今の最重要課題で、この課題を無事にクリア(=長期金利が無駄に暴れない)するためにはそれ以外の話は「1回パス」しておく、という感じだし、ちょうど関税問題もあるし、こりゃちょうどええとばかりに関税の経済への影響ガーを丁寧に説明した、ということなんだろうなあって思います。
と申しますのは、以下の「関税のリスク」なんですけど、ここで挙げられている話って経済下押しリスクちゃあ経済下押しリスクですが、特に3点目に長々とあるように「グローバル化の巻き戻し」という話に行数を割いていまして、じゃあグローバル化の巻き戻しってそれ経済下押しなのかというと必ずしもそうとは言えず、一方で物価に関しては明らかに構造的な物価押し下げ圧力の減衰を意味しますから、ここで言ってるリスクってリスクの話をしているからまあ見え方はハトなんですけれども、だから緩和政策が必要なのかという論点で見たばあいに必ずしもそうじゃないのではなかろうか、ってお話なのかなって思いました。
『(サプライチェーンの複雑性)
第1は、近年のグローバルサプライチェーンの高度化に伴い、その複雑さも増してきたことが、関税政策の影響に関する不確実性を高めているという点です。』
と、小難しい事を言っているようですが、
『IT関連を中心に、アジアにおける生産ネットワークが複雑に絡み合っている中で、思わぬ形でボトルネックが生じ、それがサプライチェーン全体に波及すれば、わが国の輸出入や企業活動に大きな影響を及ぼすことも考えられます。こうした観点からは、日米間の交渉だけではなく、各国と米国の交渉の帰趨についても丁寧にみていく必要があります。』
要するに日米交渉だけではなくて米中とか米とアセアン諸国の動向も見ないといけませんね、ってお話でした。
でもって次ですが、
『(企業の賃金・価格設定行動)
第2は、各国の通商政策の影響を受けて、わが国企業の賃金・価格設定行動が大きく変化してしまうリスクです。』
まあこれはリスクです、ってことなんでしょうけれども、前段で「マインドへの影響から需要が下押しする影響」について説明をしていて、なんか重複感半端ないですね。
『先ほど、労働需給の引き締まった状態が続く中、企業の積極的な賃金・価格設定行動は維持されるとの見通しを申し上げました。とはいえ、実際の物価の変動が企業や家計の予想や行動様式を変化させ、これを介して、先行きの物価への影響が増幅され得る可能性があることにも注意が必要です。』
賃金設定で言えば冬季賞与と来年の賃金設定、って事になると思うのですが、そこまで見るのか見ないでもどう見ても問題ないじゃろとなるのかの判断のポイントがどこにあるのかが良くわからんので、これまた通商交渉の進展度合いによって「ああ大丈夫大丈夫」となるかもしれませんね。
・インフレ期待は本当に2%に上がる過程なのでしょうかねえ
でもってこの部分で「インフレ期待のアンカー」という話が続くのですが、
『人々の物価観が2%にアンカーされている米欧と異なり、わが国では、いまなお、緩やかな物価上昇を前提とした賃金・価格設定行動が、企業や社会に十分に定着したとは言えない状況にあります。』
という認識になっているのですが、家計に関してはホンマカイナという感じで、緩やかどころではない物価上昇に対してどうしましょって感じになっていないのかねと思いますし、最近の値上げって寧ろお間ら調子乗ってないかムーブも感じないわけでもないし、本当にインフレ期待がまだまだ低い、というのが正しいのかってもうちょっと検討した方が良いんじゃないかって思うのですよね。
もしここを読み間違えていたら割と重大なダメージになるわけでして、この部分ってそりゃまあ日銀だって必死こいて実態について考えているとは思うのですが、緩和政策継続の方に思考が引っ張られていたりしたら後年戦犯扱いになりますよ本当に大事ですからあんまり過去に引っ張られないで、とは申し上げたいところです。
・結局は主要製造業大手企業の冬から春に向けての賃金設定で判断しそうですね
『そうした中にあって、関税政策の影響により、輸出企業やグローバル企業の収益に下押し圧力がかかる場合、それが自社の賃金抑制圧力や、サプライチェーンを通じたコスト削減圧力につながることがないか、については丁寧にみていく必要があります。』
何かオブラートに包んでいますけど結局は主要製造業大企業のこの先の賃金設定がデフレ脳な設定に戻ってしまうか、それともデフレ脳にはならないで、賃上げが多少マイルドになるにせよ、物価上昇にある程度追随できる賃上げになるのか、というのが注目です、って思いっきりゆうとりますなこりゃまた。
『逆に、グローバルに物流が混乱し、輸入物価に上昇圧力がかかるような状況が生じた場合、コストプッシュ圧力が物価、更には賃金に影響を及ぼす可能性がある点にも注意が必要です。』
後半は注意するのは良いんですが今回の講演の理屈、コストプッシュは中央銀行は対応しない、ですと注意が必要ったって注意した結果なんのアクションに繋がるのかが意味不明ですね〜。
・グローバル化の巻き戻しの可能性についての話が一番長いのよ
でもってこの次が『(グローバル化の先行き)』って小見出しですがこれがかなりの大作。
『第3は、より長い目でみて、米国の関税政策やそれを契機に構築される新たな国際的な関係が、グローバル化という世界経済の成長を支えてきた大きな流れにどのような影響を及ぼし得るかという点です。』
という話でして、これもはや目先の金融政策関係ないじゃろという話ですけれども、以下壮大な話になっているので鑑賞するには興味深いお話になっています、引用しますね。
『図表8をご覧ください。左グラフにありますように、世界の貿易や直接投資は、東西冷戦が終結した
1990 年代以降、2000 年代後半にグローバル金融危機が起こるまで、急速に増加しました。その後も、世界貿易は、世界経済の成長とおおむね同じペースで増加を続けています。また、右グラフにありますように、わが国の企業は、生産コストを抑制するサプライチェーンの構築や現地需要の取り込みなどを企図して、海外諸国と比べても、より積極的に対外直接投資に取り組んできました。』
はい。
『こうしたグローバル化への対応は、わが国企業の収益力強化に貢献してきたと考えられますが、一方で、様々なリスクを抱え込むことにもつながっています。』
ほう。
『例えば、製品の生産工程を細分化し、それらを複数の国にまたがって配置することは、コスト抑制に資する一方、生産・在庫管理を難しくしている面があります。こうした脆弱性は、コロナ禍以降に相次いだサプライチェーン障害によって、より明確になりました。』
まあそうですよねってのはありまして、こちとら昭和脳なので、それこそどっかの国でクーデターが起きましてどうのこうのとか、内戦が現在こんな感じで進行していますとか、そういうニュースを普段のニュースでホイホイと聞いていたわけなので、その時代から比較したらそら海外展開も進むし、急に昭和に戻ったらエライコッチャだわという話でもありますわな。
『また、ロシアのウクライナ侵攻などは、各国の経済安全保障に対する意識を高めることになり、これが世界の貿易や企業の生産活動に影響を与えるケースもでてきています。このような流れが続く中、今回の関税政策が、サプライチェーンの在り方に関する更なる検討を促すきっかけとなり、企業行動、とくに生産拠点の立地戦略に大きな変化をもたらす可能性があります。』
今回は戦争と超大国の横紙破りの合わせ技ですもんね。
『もちろん、生産拠点をどこに配置するかは、コストとベネフィット、様々なリスク要因を考慮して企業自身が判断すべき問題です。世界経済を巡る大きな環境変化は、企業が乗り越えなければならない新たな課題ですが、過去にも、わが国経済は、企業の前向きな取り組みを原動力として様々な課題を乗り越え、成長力を高めてきました。』
・グローバル化の話の後半はリスク云々の話ではなくて米ロに向けた素晴らしいメッセージになっていて評価されるべきです
でもってこの後の部分は大変に良いメッセージだと思います、引き続き引用しますが、
『こうした前向きな努力を後押しするためにも、企業が過度に国際情勢等に対するリスクを警戒しなくて済むよう、開かれた、公正かつルールに基づく国際経済秩序を支えていくことが大切です。』
これはまあロシアもそうですがトラ公に向かっても抗議表明しているような話ですが、大変に良いメッセージだと思いました。連中が聞く耳持つとは思えないけど、意思表示をするのはとても大事。
『この点は、私が出席した4月のIMFC会合(国際通貨金融委員会)でも改めて確認されました。』
ほほう。
『過去 30 年にわたる急速なグローバル化が、その成果の分配を巡って様々な難しい問題を引き起こしているのは事実ですが、その一方で、世界経済の分断化(fragmentation)やデカップリングの進展による勝者がいないこともまた、事実です。』
おーーー!
『各国は、今後、より良い国際経済秩序を構築する努力を重ねていく必要があります。その過程では、国際金融資本市場や国際金融システムの安定を確保していくことも重要です。日本銀行としても、各国の中央銀行や内外の関係者と情報交換をしながら、自らの持ち場において、こうした課題にしっかりと対応していきたいと考えています。』
なんかここだけ滅茶苦茶異質なんですが、植田総裁が思い入れを籠めて差し込みでもしていたのだったらば植田総裁素晴らしいじゃんと思いますし、まあ日銀としてもこういうメッセージを出したい、というのがあったのでしたらそれもまた素晴らしいことでして、この部分って目先の金融政策と関係ないからニュースネタにはならないのですが、もっと評価されるべきところ(というかまあ今回の講演での評価ポイントはほとんどここしかないわ)だと思いました。
・金融政策運営では金利の運営について今はパスだけど状況好転したらジャガーチェンジの余地を示す
『4.日本銀行の金融政策運営』は『(先行きの金融政策運営)』から始まりますが、ここはもう「当面は分からんのでパス」という説明で一貫しています。
『それでは、日本銀行の金融政策運営に話を移したいと思います。』
『ここまで申し上げてきたように、現時点で日本銀行としては、わが国経済は関税政策による下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムも途切れることはないと考えています。』
「賃金と物価の好循環」やっぱり本格的にお蔵入りなんでしょうね、もうこの表現に統一されてますもん。
『基調的な物価上昇率についても、いったん伸び悩む局面はあるものの、2%に向けて徐々に高まっていくという大きな方向感は、これまでの見通しと変わりありません。その一方で、こうした中心的な見通しに対するリスクとして、各国の通商政策の今後の展開を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視していく必要があります。』
でもってこの次に直近の米中合意(一時停戦合意みたいなもんですが)を受けての見通し変化は起きたのか問題にご丁寧に触れていまして、
『最近の各国間の交渉の進展、とくに米国と中国が、相互の関税率を大幅に引き下げることで合意したことは市場においてポジティブに受け止められていますが、それでもなお、不透明感が強い状況は続いています。金融政策運営にあたっては、これらの動向を丁寧に確認したうえで、適切に判断していく必要があります。』
まあこの書き方をみますと(ただの一時停戦合意だから当たり前ではありますが)先行きはまだ全然わからんから動かんもんねーというのは旺盛にみられるわけで、まだまだ動くような雰囲気は出しませんなというお話。
とは言え返す刀でジャガーチェンジの余地は残していまして、
『その前提として、現状、わが国の金融環境が緩和的な状態にあることは、重要なポイントです。図表9をご覧ください。これまで、予想物価上昇率が緩やかに上昇する中でも慎重に緩和度合いを調整してきたこともあり、現在の実質金利は、大規模緩和の時期をも下回る大幅なマイナスとなっています。また、金融機関の貸出スタンスは引き続き積極的で、社債等の発行環境も総じて良好な状態を維持しています。こうした緩和的な金融環境は、各国の通商政策の影響がみられるもとでも、わが国の経済活動をしっかりとサポートしていると判断しています。』
ちなみにこの「実質金利」(脚注にあるように「実質金利は、国債利回り(1年物)から予想物価上昇率(日本銀行スタッフによる推計値)を差し引くことにより算出」というだいぶ怪しげなものを使っていますけど、これは例によって展望レポート背景説明を見ますと、4月号だと本文32ページの図表47に同じものがあります。
でまあその実質金利の水準の見せ方の怪しさはさておきますけれども、まあこのように実質金利はドマイナスアピールをしているのですから、通商交渉好転の暁にはしらっとジャガーチェンジする布石は盛大に打っているわけですな。
『以上の点を踏まえますと、今後、私どもの中心的な見通しに沿って、わが国の基調的な物価上昇率が2%に向けて高まっていくという姿が実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、各国の通商政策の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、そうした見通しが実現していくかについては、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していく方針です。』
と最後は従来示している通りの話をして締めています。
・長期国債買入減額に関してはイタコ話法を使って日銀の減額に関するやる気を見せたものと解釈します
一方で異色だったのは次(実質最後)のコーナーの『(国債買入れの減額計画の中間評価)』です。
『最後に、長期国債の買入れについてお話しします。日本銀行は、かつて実施していた大規模緩和からの出口を進めていく中で、昨年6月、我々が市場から買入れている長期国債の金額を減らしていく方針を決定しました。翌7月には、図表
10 にあるような、2026 年3月までの減額計画を策定し、現在は、この計画に沿って実際に減額を進めています。』
から始まりますが、ここも含めて以下はただの現状のご紹介ですので引用はしますが流します。
『そこでは、「長期金利は金融市場において形成されることが基本」であるとしたうえで、日本銀行による国債買入れは、「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していく」としています。予見可能性という意味では、現在の計画において、来年1〜3月にかけて、国債買入れ額を毎四半期
4,000億円程度ずつ減額していくことをあらかじめ明確に示しています。一方、柔軟性を確保する観点からは、計画の中で、「長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に、買入れ額の増額等を実施する」こととしているほか、国債の残存期間別の買入れ額といった具体的な事項は、その時々の市場環境を踏まえて実務的に決定する扱いとしています。』
『さらに、今月開催される金融政策決定会合において、現在の計画の「中間評価」を行うとともに、2026
年4月以降の買入れ方針について検討し、その結果をお示しすることとしています。』
でもって段落が変わって、
『そうしたもとで、現在、日本銀行では、この中間評価に向けて、国債市場の動向や機能度の点検を進めています。その一環として、先月半ばには、債券市場の参加者との意見交換を行うための会合を開催しました。昨日、同会合の議事要旨が公表されていますが、そこでの議論も踏まえたうえで、現時点で私どもが考えているポイントは、次の3点になります。』
ということでマクラが長いのは内外情勢調査会が相手なので背景説明しないで本編から入るのはちょっと不親切だから、ってことでしょう。では3点ですが、
『第1は、これまでのところ国債買入れの減額は、国債市場の機能度回復という所期の効果を発揮しているということです。』
まあやらないよりはましだけどもっと減額すればもっと機能度回復してたんじゃないでしょうかとしか申し上げようがない。
『市場参加者からは、関税政策の影響を受けて、春先以降、市場の流動性が低下する局面がみられたが、全体としてみれば、国債市場の機能度は改善傾向にあるとの指摘が多く聞かれました。こうしたもとで、来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです。そのうえで、日本銀行の国債保有残高がなお多額に上るもとで、市場の機能度を一段と高める努力を続けていくことが重要との認識も、多くの市場参加者に共有されていたように思います。』
>来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです
>来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです
>来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです
イタコ話法キタコレ!
『第2は、2026 年4月以降の計画を検討する際には、引き続き、予見可能性と柔軟性のバランスが重要であるという点です。』
なのは良いんですけど、来年4月以降のペースについて今から決め打ちする必要ってあるのかね、というのは疑問で、何ならFEDとかだって(規模が違うから参考にしにくいのはあるけど)とりあえずバランスシートの縮小幅(の限度)を決めてオートパイロットで減らしていって、途中で「今後はこれで行きます」って言ってペースを変更している訳でして、2026年4月以降を決め打ちするんじゃなくて、そろそろオートパイロット方式にしても良いんじゃないか(まあべき論としては加速しろなのでオートパイロット方式を今入れられるとペース遅いわと言い出しそうですけどワタクシ)。
でもって、
『予見可能性を確保する観点からは、あらかじめ、ある程度の期間の計画を示すことが適切と考えられます。一方で、国債市場の機能度の回復がなお道半ばにあることや、春先以降の価格変動の経験も踏まえますと、引き続き、柔軟性を確保する仕組みが必要とのご意見が多かったように思います。』
ここでもイタコ論法なのですが、市場の大きな変動に対する柔軟性、の他に「実はもっと加速しても良かったんじゃないか」なのが見えてきた時の柔軟性ってのもあると思うので、なにも今の時点で1年半とか2年も先の話を決め打ちせんでもよかろうって思うのですが(前回は初回だったから2年というか1年9か月にしてたけど・・・・・)。
まあそれは兎も角3点目。
『第3は、市場参加者からは、2026 年4月以降も、国債の買入れ額を減らしていくことが適切との声が多く聞かれたという点です。』
はいはいイタコ話法イタコ話法。
『もっとも、具体的な減額ペースについては様々な意見がありました。日本銀行としては、これまでの減額の経験を踏まえつつ、こうしたご意見も参考にしながら、次回の金融政策決定会合において、来年4月以降の買入れ額をどのようにしていくのか議論していきたいと考えています。』
いやマジで「方向性としては減額するのは変わらんのだが今後の減額の進捗を踏まえて12月会合か1月会合辺りを目途に26年4月以降の具体的な計画を策定したい」で何が困るのかとは思うんですけどねえ・・・・・・さもなくば普通にオートパイロットにして、何か不具合有りそうだったら修正しますわ方式にするか。
〇昨日は調節年報でていましたね
面白そうだが読んでいる時間が無くて目をとおしただけなのでそれはまたいずれ・・・・
https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/mor250604.htm(要旨)
https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/data/mor250604a.pdf(本文)
2025/06/04
お題「内外情勢調査会総裁講演(その1)ジャガーチェンジの余地は示しているがまあ基本的に利上げは地蔵じゃろ」
なるほど
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250604/k10014824921000.html
韓国大統領選 イ・ジェミョン氏が勝利 4日大統領に就任へ
2025年6月4日 4時15分
『韓国の大統領選挙で革新系の「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏が勝利し、4日大統領に就任します。イ氏は支持者を前に演説し、「国民の統合は大統領の責任だ」と述べ、ユン・ソンニョル(尹錫悦)前大統領が「非常戒厳」を宣言して以降、深まった社会の分断や対立を解消すると強調しました。』(上記URL先より)
そういえばFED方面は色々発言が出ているのだが追いかけている暇が全然ないという悲しい状態なので備忘クリップだけ
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/Y7YBUVAB2FODHNSRYJDOIIWAS4-2025-06-03/
FRB、関税影響見極めに時間的余裕 経済堅調で=アトランタ連銀総裁
Michael S. Derby
2025年6月4日午前 12:14 GMT+9
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-03/SXAMD6T0G1KW00
FRBクック理事、物価安定の重要性を強調−力強い労働市場の達成で
Maria Eloisa Capurro
2025年6月4日 5:01 JST
〇植田総裁内外情勢調査会講演ですが「利上げへの熱量無し」「輪番削減はやる気満々」かなと
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a1.pdf
最近の経済・物価情勢と金融政策運営
―― 内外情勢調査会における講演 ――
日本銀行総裁 植田 和男
・基本的には「慎重スタンス」の表明とアタクシは読みましたがハトハトと読まない人もいるでしょうな
今回の内外情勢講演はやや解釈に幅が出てくると思うのですよね。と申しますのは「見通し通りに推移すれば緩和政策の調整を行う」というのを強調しているというのがあって、しかも経済に関して言えば関税の影響の話をああでもないこうでもないとしているけれども、実際の経済の認識についてはここまでのところ大コケしている訳ではない、ということになっているうえに、最後の長期国債買入ペース削減問題に関しては割とやる気満々になっているんですよね。
とは言いましても、まあアタクシ思いまするに、政策スタンスの部分、米国関税政策の影響の説明の部分、「基調的物価」の説明部分を見ますと、まあ早期利上げなんてとてもとても、って感じの説明で、利上げをやっていって正常化しましょう感が全然出ていないな、という風に読んだので、どちらかというとハトハトというかや〜るき無し♪無し♪って読みました。
ってな訳でその辺を中心に読んでみるでござるの巻です。
・冒頭の「初心を忘れず」ってのはつまり2023年5月のハトハトチキン講演に立ち戻るということですよね
最初は『1.はじめに』ですが、
『日本銀行の植田でございます。本日は、内外情勢調査会でお話しする機会をいただき、ありがとうございます。今からちょうど2年前、私が日本銀行総裁に就任して初めて講演をさせていただいたのが本席でした。そこでは、総裁の職務を果たしていく際の心掛けとして、「論理的に判断したうえで、できるだけ分かりやすく説明していきたい」と申し上げました。また、物価の安定の達成というミッションの実現に向けて、当時ようやく見え始めていた「2%達成の『芽』を大事に育てていくこと」の重要性を指摘いたしました。』
でまあその「芽」を大事に育てていく、というのが何だったのか、2023年の内外情勢での金融政策運営の最後の部分を改めて確認しましょう。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230519a.htm
金融政策の基本的な考え方と経済・物価情勢の今後の展望
内外情勢調査会における講演
日本銀行総裁 植田 和男
2023年5月19日
『これをわが国の現状に引き直しますと、拙速な政策転換を行うことで、ようやくみえてきた2%達成の「芽」を摘んでしまうことになった場合のコストはきわめて大きいと考えられます。逆方向の、政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまうリスクもありますが、こうした2%の定着を十分に見極めるまで基調的なインフレ率の上昇を「待つことのコスト」は、前者に比べれば大きくないと思われます。そうした意味で、先行きの出口に向けた金融緩和の修正は、時間をかけて判断していくことが適当だと考えています。この「芽」を大事に育て、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指します。』(この部分のみ直上URL先2023年5月の植田総裁講演より)
ということで、「芽を大事に育てていく」とか言ってますがまあ既にセイタカアワダチソウ状態になってるじゃろヴォケと言いたいところですが、では2年前からどうなったのでしょうという話で講演に戻りますと、
『その後、幸いにして、わが国の経済・物価情勢は改善を続け、賃金の上昇を伴う形で2%達成の「芽」は順調に育ってきました。昨年3月には、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、10
年以上に及んだ大規模な金融緩和の枠組みを見直しました。その後、昨年7月、本年1月と政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整してきたところです。』
芽が育ちすぎてませんかねえ。
『もっとも、本年春先以降、米国が打ち出した一連の関税政策は、多くの人々の事前の予想を大きく上回る規模であり、内外の経済・物価を取り巻く環境は大きく変化しています。わが国の経済・物価を巡る環境も複雑さを増していますが、本日は、初心を忘れず、改めて、私どもの経済・物価に対する見方や金融政策運営の考え方について、出来るだけ分かりやすく説明したいと思います。』
>初心を忘れず
初心を忘れず、というのはまあ現国の試験問題的には「わかりやすく説明したい」だということになるのですが、2年前の講演が衝撃のハトハトチキン講演で為替市場における円安を促進した、ということがありますので、どうもこの「初心」とは「ハトハトチキン」を思い出しますし、ハトハトチキンが言いすぎならば「慎重なアプローチ」であり、「待つことのリスクは相対的に低いという認識」というお気持ちが溢れているようにアタクシには読み取れましたが勝手読みのし過ぎかも知れませんので念のため申し添えます。
・関税政策の影響はひたすら「経済に下」の話ばっかりなのと主役が展望レポート時の見立てから交代している感があります
『2.通商政策の影響と経済・物価情勢』ってのがまあ本編ですが、最初の小見出しが『(通商政策のわが国経済への影響)』ですな。最初の方の能書きは飛ばしまして関税政策の影響について。
『こうした各国の通商政策の動向は、いくつかの経路を介して、わが国の経済を下押しする要因となります。』
はい。
『第1の経路は、米国市場におけるわが国の輸出財の価格競争力の低下を起点としたものです。』
つまり従来の米国向け輸出に関連する数量あるいは収益への悪影響ですな。一応以下の能書きを引用します。
『これは、米国の関税政策の直接的な影響として、メディアなどで取り上げられることも多いかと思います。図表2をご覧ください。輸出関連のデータをみますと、これまでのところ、左グラフの実質輸出の実績はしっかりとしています。これには、今後の関税引き上げを見越した駆け込みの動きが一部影響していると考えられますが、この先、わが国企業が米国での販売価格に関税の影響を転嫁する場合には、米国製品にシェアを奪われるなどして、わが国からの輸出を抑制する方向に作用すると考えられます。』
でもって、
『実際、右グラフにあるように、輸出受注に対する企業の見方は、増加と減少の節目である 50 を下回っています。』
なので、マインドには出ているけれども実際には駆け込み効果などもあって今のところ数値としてはでていませんという評価ですね。
『他方、わが国の企業の中には、米国内の販売価格を変えずに、関税引き上げの影響を輸出採算の悪化という形で吸収する戦略をとる先もあると思います。この場合、現地での売れ行きや輸出数量に対する影響は限定的です。しかしながら、企業収益には下押し圧力がかかることになるため、これが先行きの賃上げや設備投資にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。』
こっちは収益なので経済指標みたいな形で出るのにはもう少し時間がかかりますわな。
でもって次。
『第2の経路は、不確実性の高まりによる需要の減少を起点としたものです。』
でですね、この点ですけれどもこの先にしれっとこんな記述がありまして、
『第1の経路に比べて話題になることは少ないですが、むしろこちらのルートの方が、より早い段階でわが国経済の下押しに働く可能性があると考えています。』
あらま、って感じでして、従来(というか4月展望レポート)では関税政策の影響で世界経済に影響が来て(IMFのWEOもちょうど下方修正された時期でした)、それが国内経済に跳ねてくる、というルートで主に説明していたのですが、「むしろこちらのルートの方が、より早い段階でわが国経済の下押しに働く可能性があると考えています。」としているのは注目ですね。
以下能書き。
『関税政策を巡る不確実性がこれだけ高ければ、その影響を受ける可能性がある企業は、当然のことながら、各種の投資案件に対して慎重にならざるを得ません。』
『家計部門でも、将来の景気悪化リスクなどに備え、自動車・家電といった耐久消費財や住宅の購入など、当面、大きな買い物を見合わせるインセンティブが生じます。』
ついこの前(と言っても関税前)は耐久消費財の前倒しの可能性に言及していたのでこの辺エラク弱気化したなと思ったので、まあこの辺りからもワシ的にはいつものハトハト音頭、と思ってしまいました。
『実際、図表3の企業や家計のコンフィデンスのデータをみますと、わが国の企業の景況感や消費者マインドは、ここにきて悪化しており、不確実性の高まりが企業や家計の支出行動に影響を及ぼす可能性があります。』
と来まして、
『実際にどの程度の影響が及び得るのかという点については、日本銀行としても、次回短観において、今年度の設備投資計画の修正状況などをしっかりと確認していきたいと考えています。』
ということで短観の設備投資計画がにわかに大注目となってきましたね。
では3番目行きます
『第3の経路は、世界経済が広く減速し、グローバルな貿易活動が縮小することに伴う影響です。』
4月の展望レポートの時点ではむしろこれがメインになっていて、他の主要国の中央銀行があの時点ではFEDは「まだ様子分からんから1回パス」でしたし、もともと景気減速気味だったECBは「段階的な利下げの追加で政策金利を中立化」はしたものの影響はこれから見て行きます、という中でなぜかフォワードルッキングに世界経済の下押しが強まるからベースラインシナリオを変更しました、とぶっこんで来たわけですが、今回はメインが「米国向け輸出の直接の影響」「マインド悪化による需要減」で、特にマインド悪化の方がこれから直ぐに来ます、ってことで話が変わっていますわな。
以下は能書き。
『いま述べた不確実性の高まりに伴う支出先送りの動きは、日本だけでなく、世界中で生じます。』
『また、関税を課される国だけでなく、米国など関税を課す側の国でも、輸入物価の上昇などを通じて国内需要が下押しされる可能性があります。』
『とりわけ、多くの生産工程を必要とする耐久消費財や資本財などに対する世界的な需要の減少は、グローバルサプライチェーンを通じて増幅される形で、わが国を含む各国の輸出や生産を下押しする可能性があります。』
とまあエライしょんぼりしてしまう話ですが、
『この点、4月に公表されたIMFの世界経済見通しでは、図表4の右グラフにあるように、先行き、グローバルな貿易量の停滞に引き摺られる形で、世界全体の実質GDPが下振れる姿が予測されています。こうした貿易活動を通じた影響に加え、世界経済の減速が、海外現地法人からの配当金減少という形で、わが国企業の収益を下押しする可能性にも留意が必要です。』
とまあ威勢の悪い話。
最後は金融市場からの話です、まあこれは普通の事しか書いてませんが。
『第4の経路は、金融・為替市場を介したものです。』
はい。
『4月の半ばにかけては、米国による関税政策の発表をきっかけに、世界的に株価が大きめに下落し、ドル安が進みました。その後、こうした動きはある程度巻き戻され、世界的に株価や為替のボラティリティも低下してきていますが、引き続き、金融・為替市場の動向やそれがわが国経済に及ぼす影響を十分注視していきたいと考えています』
てな訳ですが、これ一つ留意点があって、「米国向けの直接的な輸出」と「マインド」ってのは関税交渉次第で一気に晴れる可能性がある代物なので、例によって例の如くこれが晴れたらまたも突如のジャガーチェンジが発生する、という可能性は無くは無い、というか多分そうなる、という点は留意すべき所でして、まあこれ読んでいると見極めに時間がかかりそうな説明にはなっていますが、所詮は関税交渉次第なので、トラ公の方が先に音を上げてしまえばこっちのもの、というのはおおありだと思いますからぜんぜん利上げないでっせと決め打ちするのもちょっとやりすぎ、というのはあると思います。
・現状の経済の走りについては逆に妙に強気ですがこれはジャガーチェンジをするための伏線ですね
次が『(わが国経済・物価の見通し)』ですが、ここの記述は威勢が良いのですよ。
『以上、米国の関税政策の影響について、やや詳しくご説明してきました。続いて、これを前提とした、わが国の経済・物価の見通しについてお話しします。』
という事ですが何とですね、
『いま申し上げたように、最近の関税政策は、いくつかのルートを通じて、わが国経済の下押し要因として作用します。もっとも、現時点で日本銀行としては、わが国経済は、こうした下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムも途切れることはないと見込んでいます。これは、高水準の企業収益がバッファーとなるほか、これまでの景気回復で家計の所得環境も底堅さを増しているためです。』
実質賃金のマイナスが続いているのに「これまでの景気回復で家計の所得環境も底堅さを増している」ってこれ下手に着火されたらアカン火種じゃろと思うのですが、まあ大本営発表ではこういう話にしているのは要は「足もとは強いよ」と言いたいという事。
『図表5をご覧ください。ここ数年、わが国の企業収益は、全体として歴史的な高水準を続けており、多少の下押し圧力を受けたとしても、資金面から企業行動が大きく制約される状況ではありません。』
『また、先ほど申し上げた関税政策の影響は、まずは製造業・輸出企業を中心に表れると見込まれますが、雇用全体の約8割を占める非製造業が堅調であることから、これが、わが国の経済活動を下支えすると考えられます。』
なんですかこの楽観(のように見える説明)はw
『この点、2019 年に米中貿易摩擦が拡大した局面でも、わが国の輸出や製造業の生産活動が弱めの動きを余儀なくされた一方、非製造業の業績は堅調に推移し、人手不足感が強い状況は維持されました。』
で、ここからが家計の話なんですが、実質賃金の話を丸無視して雇用が強い、という話をしていて、だから「家計の所得環境も底堅さを増している」ということにする、という割と強引感のある説明。
『人口動態の変化を受けて労働供給の限界が強く意識されている中、このところ、非製造業の人手不足感は一段と強まっています。こうしたことから、関税政策の影響を受けるもとでも、わが国の労働需給は引き締まった状況が続き、企業の積極的な賃金設定行動は、全体として維持されていくのではないかと判断しています。』
という根拠になっていますので、つまり現状が強いってのを強調しているのは、関税交渉が進展した場合にジャガーチェンジをするための布石を打っていることに他ならないので、この部分を重視して読めば「割とタカっぽいじゃん」となると思います。
・好循環は遂にお蔵入り(か????)
先ほどの部分を再掲しますが、
『もっとも、現時点で日本銀行としては、わが国経済は、こうした下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムも途切れることはないと見込んでいます。』
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)
なんですかこれはという感じですが、まあさすがに「好循環」って言ってると今は政治ばかりが叩かれているので日銀セーフ(寧ろ利上げするなとか言われていて金融リテラシー無し無しムーブなのが悲しいですが)という図になっていますが、どこかでうっかり犬笛を吹かれたらどうみたって「好循環」って炎上要素ですから、そらまあ好循環はお蔵入りさせろというのはあったのですが、今回しれっとお蔵入りですかね、まあ今後も確認したいですけど。
・物価に関しては「基調的物価」の説明でいろいろな図表登場
『次に、物価についてご説明します。足もと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は3%台半ばとなっています。これについては、図表6でお示ししているように、昨年秋以降、米などの食料品価格が大きく上昇していることが寄与しています。こうした価格の上昇については、輸入した肥料や原材料、天候要因などのコストプッシュの影響が大きいとみており、少なくとも前年比でみた上昇率は、今後低下していくと見込まれます。』
コストプッシュだから対応しない、という屁理屈がおかしい点については今次のインフレ局面で主要国の中央銀行だって対応を間違えていて、その反省の元に米国の定例のロンガーランゴールあんどストラテジーの見直しが行われている、という状況になっているのに、これ黒田末期からの物価上昇をずっと一時的と言い張って政策の見直しが遅れていることの正当化先にありきで「コストプッシュだから対応しない」を続けた結果物価が高止まりしているんですけど、こんなん「初期段階でコストプッシュは一時的と思っていましたがどうもそうではなかったようです」って言えば済むことを何で日銀って「謝ったら死ぬ」ムーブをぶちかますんでしょうかねえと思います、まあいつもの悪態ですが。
『そのうえで、中央銀行の金融政策は、特定の財・サービスの価格を動かすものではなく、需要全体に影響を及ぼすことを通じて物価の安定を実現しようとするものであり、また、その政策効果は時間をかけて経済に波及していくものです。そのため、2%の物価安定を実現していくにあたっては、コストプッシュの直接的な影響を除いた基調的な物価上昇率の動きをみていくことが重要となります。』
はいきました基調的物価とかいうお気持ち物価。
『残念ながら、これさえみれば基調的な物価の動きがわかるという便利な指標は存在しません。物価変動の背後にある労働需給や賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報とともに、各種の物価指標を丁寧にみていく必要があります。そう申し上げたうえで、図表7にお示しした代表的な指標を見る限り、』
ということで図表7を見ますと、巻末の方に「図表7 基調的な物価上昇率に関連する指標」ってのがあるので見るわけですが・・・・・・・・・・(PDF17枚目になります)
『@価格変動の大きい品目を控除した物価指標』
凡例を見ますと、
『@CPI(除く生鮮食品)
ACPI(除く生鮮食品・エネルギー)
BCPI(刈込平均値)
CCPI(加重中央値)
DCPI(最頻値)』
となっていますけど、毎月出している刈込平均の図表対比で扱いが随分寂しいですな、と思うと次に
『A賃金変動を反映しやすい指標』
というのが出てきまして
『@CPI(低変動品目)
ACPI(サービス)のトレンド』
ってのがあるんですが、これは展望レポート背景説明の方でも同じものがありまして、4月展望レポート全文(https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504b.pdf)本文28ページ(PDFで30枚目)に3つあるグラフの一番下に「図表38:賃金要因によるCPIの変動」ってのがありまして、まあこれと同じものですわな。
『B中長期の予想物価上昇率』
がこの前もネタにしましたように、そもそもこの数値自体が推計値だし、家計のインフレ期待に関しては定性的な回答(大きく上がるとか上がるとか下がるとか大きく下がるとか)を数値処理しているので、過去の低インフレ局面を割と長い期間含めた処理をしたら局面変化の際にちゃんとその変化を読み取れているのかが怪しい(というのはスタッフペーパーの段階ではちゃんと記載されています為念)のに、あたかも「ザ・10年予想物価上昇率」があるようなグラフになっているのが毎度申し上げている通りの怪しさですし、
『C経済モデルから推計された指標』
『モデル@:フィリップス曲線の切片
モデルA:時変VARモデル
モデルB:準構造モデル』
こりゃ何ですねん(フィリップス曲線は4月号展望全文の本文31ページに出ています)というのがありまして、なんかいろいろと説明しようとしているのは分かるのですが、どうせお前らまたチェリーピッキングしとるじゃろと言いたくなるのですな。
とは言いましても今回新手に出てきたCの数字はなんか急速に2に接近してて、何ならお前らこれ物価目標達成じゃなねえのとも思ってしまいますので何なんでしょうという感じではありますが、本編に戻りますと。
『わが国の基調的な物価上昇率は、これまでのところ緩やかに上昇していこれまでのところ緩やかに上昇しています。』
となっているだけでお気持ち物価の方は威勢良くない説明になっていますわな。ただまあさすがに実際の物価に関しては、
『4月の消費者物価指数をみても、様々な品目において、いわゆる「期初の値上げ」という形で、企業が人件費や物流費を含むコスト上昇を販売価格に反映する動きが続いていることが確認されました。』
としていますが、最後に関税政策を出してきて
『もちろん、関税政策の影響を受けてわが国の経済成長のペースが鈍化することは、物価に対する下押し圧力として作用します。』
つまりは利上げを前倒しする気は皆無というのはよくわかります。
『しかしながら、そうしたもとでも、先ほど申し上げたように、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持されると考えています。また、先行き、各国間の交渉が進展し、通商政策を巡る不確実性が低下していけば、海外経済は緩やかな成長経路に復していき、わが国経済の成長率も高まっていくことが予想されます。』
ということなので、まあ一応関税交渉次第ではジャガーチェンジの可能性は大有り、というのは把握できたなというところではあります。
・・・・・ここで時間切れになりましたので続き(主に輪番ネタ)は明日で勘弁してつかあさい。
2025/06/03
お題「債券市場参加者会合の議事要旨が出てたので雑談を少々」
これはさすがの公共放送です
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250530/k10014819991000.html
市場も気になる!消費税減税議論の行方は【経済コラム】
2025年6月1日 11時23分
日銀の輪番がどうのこうので投資家がストライキとかいうゴミにも劣る題名の記事書いていた某ベンダーには猛省を促したいですな。いやまあ公共放送のHP読者に輪番オペがどうのこうのと言われても分からんから書かんってのは有ると思うけどw
この調子で次は「基調的物価って何?」ってお題でお気持ち物価について寸鉄をぶっこんでいただけることを期待しますし、そういうのを理性的に書いてくれるのはやっぱり公共放送さんしか居ないなあと思うのでした。
〇債券市場参加者会合議事要旨出ましたがまあ特にまとまりはないけど感想雑談を
https://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond_list/mbond250602.pdf
「債券市場参加者会合」第 22 回議事要旨
1.開催要領
(日時)
銀行等グループ 5月 20 日(火)15 時 45 分から
証券等グループ 5月 20 日(火)17 時 30 分から
バイサイドグループ 5月 21 日(水)16 時 00 分から
(場所)日本銀行本店
(参加者)「債券市場サーベイ」等に参加する金融機関の実務担当者
(日本銀行出席者)金融市場局長、金融市場局総務課長、同市場調節課長、同市場企画課長
とまあそういうことで行われたようですが、こういうのってどういう話をするのか、という点で難しいものがあって、まあ今回の場合はテーマが輪番減額の話だから基本その話になるんですけど、より中長期的な話をしたいのか、目先の話をしたいのか、という辺りって(これはまあそういう設定にしたの市場局じゃなくて総裁方面だから仕方ないのですけれども)今回は先行きの話についてと目先の話について一緒くたにやってるうえに、先行きに関してももっと長い期間の話のべき論、という話なのかそうじゃないのか、というのも議事要旨を見ると判然としないなあという所でして、結果として読んでみるとなんというカオスのごった煮、ということになっておりますわな(個人の感想です)。
まあ長期的なべき論に関しては財務省の何とか委員会じゃないですけど、その手の諮問会議方式の方がよいのかも知れないなとは思いますし、特に本件のような日銀のバランスシートに関する話では、債券市場の話だけで考えても話が完結しないので、逆にこういう会議で中長期的な話をすること自体が無理筋じゃねえの、とは思います。
と申しますのも、債券市場の人たち普段は通常の短期金融市場における金融調節とかもともと興味がないところに来て黒田緩和以降の大幅な日銀当座預金の拡大で日々の資金需要の変化がどうしたこうしたとか分からんですけど、日銀保有国債残高に関してはひとえに短期金融市場における資金需給調整をどういうツール(今なら超過準備付利というツール)で実施していくか、という思いっきり短期市場プロパーの話になるので、まあそもそも論として中長期の姿を短期市場プロパーじゃない債券市場参加者会合で論じるというのには無理があるのでそんなの聞く必要ねえだろ、とは思いました。
・・・・ただまあこの点は総裁がいつぞやの会見で「2026年3月以降の中長期的な姿も云々」とか変な事言い出すからこうなっているのです、というのは繰り返しましてさて内容をちょっとだけ拝読しますが。
『2.日本銀行からの説明等
・ 日本銀行より、@最近の市場動向と市場調節、A国債市場の流動性、B債券市場サーベイの結果について説明し、C事前照会で寄せられた意見を紹介した。
3.参加者の意見
・ 上記説明の後、@これまでの買入れ減額を踏まえた国債市場の動向や機能度、A現行の長期国債買入れ減額計画、B2026
年4月以降の長期国債の買入れ、Cその他について意見を尋ねた。事前照会を含め、会合参加者から聞かれた主な意見は以下のとおり。』
ということで、事前照会の方(すなわち先に公表された資料)とだいたい同じ話になっているのですが、その時に無かった意見を少々鑑賞しておきますね。なお@とAはまあどうでもよいのでB以降の部分を見ますが、
『現行の長期国債買入れ減額計画』ってところから。
『・ボラティリティの上昇により市場全体のリスク許容度が低下し、需給環境も良好ではない状況で減額ペースを加速させると、かえって市場の機能度を低下させる恐れがあるため、現行計画を変更することは望ましくない。また、減額は金融政策の正常化の一環と理解しており、計画の途中で減額ペースを緩めると、誤ったメッセージを送ることになるため、これも適切ではない。』
まあ結局動かすなって話で、実務的にはまあそうじゃろうなとは思うのですが、ただまあそもそも当初の減額計画が(それまでの国債買入規模が馬鹿でかかったうえにマイナス金利政策解除して数か月の時点だったこともあって)及び腰気味の減額計画だった(と私は思っていますが異論は認める)ために市場機能の回復が遅れている、という可能性もあるのではないかと思うので、本当はその点をもっと深堀りした方が良い話ではあるんですよね。
まあそんな感じで、もともとに立ち返った時にこのペースで本当に良かったんだっけ問題は大いにあると思うのですが、実務的にシャーナシということで、
『・市場にショックが生じ、かえって減額の流れが途切れてしまうような事態は避けるべきであり、予見性を維持するという観点でも、減額の加速や一度の大幅な減額といった見直しはせず、現行計画を維持するべき。』
ってな話もあったようで。あと、事前資料の方では1行コメントになっていましたが、
『・現行計画のもとで、過度なボラティリティが生じることなく、着実に減額が進んだことや、国債補完供給に関する措置も相俟って、市場機能度が緩やかに改善してきた点を評価している。現行計画については、当初予定どおり実施することが適切だと考えている。』
という評価もまあそうですねとは思いました。ただ債券市場のスムージングはそれでいいのかもしれないけど、物価が高止まりしている中で日銀のバランスシートの縮小って本当は急がないといけなくなってきていると思うのです。
と申しますのは、これは年末に日銀のバランスシートに関して企画局ペーパーが出ていた時にちょっとネタにしましたけど、財務シミュレーションの前提にストレステストは無いわ、前提はユルユルのユルな時間かけていく前提だわというの「しか」出せないというのが今の日銀のバランスシートの抱える潜在的なリスクな訳で、正常化を加速させないといけない事態や金融引き締めまで行かなければいけない事態になった時に長期国債買入をこんなユルユルでやってたら対応余地が狭くなるのと、日銀財務がクソ悪化した時のリスクがある(一時的悪化は問題ないとは言え、信認はそういう理屈だけでは決まらないのでリスクはある)のですが、債券市場参加者会合でそっちのテーマでの話をする人もいない(そういうお題は課されていないし)ので、まあその辺はどうなのですかね、とは思います。
『26/4 月以降の長期国債の買入れ<ペース>』
最初の『(月間買入れ金額の減額ペース)』は意見がバラバラ過ぎてクソワロタという感じなのですが、そもそも論として日銀の長期国債買入はYCC政策をやっていた時期は長期金利の抑制という観点で実施していたものですが、今はあくまでも「資金供給オペの一環」なのでありまして、ただまあ過去YCCで馬鹿みたいな買入をしてしまっているので一度にゼロにできないから段階的に減らしている、というだけの話なんですよね。
然るに、意見を見ますとどう見てもお前ら日銀の長期国債買入を「あてにして」ポジション運営をしようとしているだろ、と思われる意見が散見されていまして、こういう状態、すなわち中央銀行による長期国債の買入が市場にビルトインされているような状態、というのがそもそも論としてまちごうとるのですから、まずそのYCC脳を何とかしろと申し上げたいのですが、まあゆうてマイナス金利にYCCってのも10年くらいやってた訳でして、債券市場関連で息していた時間帯の中でその10年が殆どって方もそりゃ多いじゃろと思う老害ジジイのワイとしては、輪番が無いとマーケットメークできないとかただの甘え、と言いたくはなるのですが、言うと老害ジジイと言われるのが確定的なので大人しく黙っておくことにしておきます(黙ってないですかそうですかwwww)。
でまあそちらは事前資料と同じもの(文章が長いだけ)しか無かったので次に行きますと、
『26/4 月以降の長期国債の買入れ<買入れ金額等>』
こちらも事前資料通りだったのですが、事前資料の中では割愛されていた部分が紹介されていたのがあったので拝読拝読。
『・3兆円程度であれば、需給バランスが崩れ、金融システムの不安定化を招く恐れが低く、かつ日銀保有額も徐々に減少していくため、一旦この水準を維持することが望ましい。』
というのは事前資料の方にもあったのですが、さらに追加がありまして、
『更なる減額を行う場合、IRRBB 上の制約を踏まえた銀行の保有余力や、銀行以外の投資家の保有余力の確認が必要。』
・・・・・節子、それは財政ファイナンスって言うんやorzorz
「市場が支えられないから中央銀行が買うべき」ってのは何とかショックみたいな金融ショックの時にいう話としては危機対応で仕方ない面があるので、一から十まで中銀の介入を否定する気はアタクシとてさらさらないのですが、今の状況のどこがショックで危機対応なのか、ということを考えた場合、危機対応の時みたいな発想で考えるのはどう見たって良くないというか、このケースで言えば中銀による財政マネタイズを積極容認しているのに他ならない話になりますわな。
まあ発行に関しては要は発行を減らせ、すなわち中長期的な財政健全化という2013年2月の政府と日銀の共同文書に立ち返って話をすべき問題なので、そういう意味では2026年4月以降の買入が何兆円になるべき、みたいな話も何でいまする必要がありますねんとは思うので、日銀のこのお題のセッティングにも問題がある(のだがしつこいようだがこれをやらせているのは植田総裁の会見での説明によるので市場局よりも上の方が問題なのですけど)とは思いますけどね。
あと、これまた事前資料の方にもありましたが、
『・長期の計画を示す場合、目指すべき超過準備の姿も含めたバランスシートの考え方を示すと、予見性の向上につながると思われる。』
ということですが、まあだいたい今の中銀業界では「アバンダントリザーブ」を「アンプルリザーブ」に縮小して、ただそこから「スケアスリザーブ」に下げるのはよーせん、という形になっている向きが多いとは思うのですが、じゃあ日銀がアンプルリザーブにする、って言ったって所要準備が13兆円しかないわけで、アバンダントにも程がある今の状態で「適正なアンプルリザーブがどこか」とかわかる訳ないだろ、と思うのですよね。
つまりですね、植田さん「中長期的なものも示したい」みたいなこと言ってたとおもうのですが、どこからどうみてもそれは寝言オブ寝言じゃろ、と思うのです。
ちなみに話は脱線しますが、アタクシ的にはこの「アンプルリザーブ」ってのもあまり好きじゃなくて、と申しますのは、この方法ですと「中央銀行当座預金」が「市場運用よりも有利な運用先」になってしまうので、中銀当座預金へのアクセスの有無によって市場参加者間の競争のスタート時点の下駄が違ってくることになって、市場の価格発見機能が働く前に、この参加者間の不公平アービトラージの方が先に取引として出てしまう傾向が(特に超過準備が多くなればなるほど)発生してしまうので、市場デザインとしてあまりよろしいものではないと思うのです。
でまあそれよりはましだと思うのは旧ECB方式で、金融機関への所要準備をやや厚めに積ませる代わりに所要準備には付利を行い(ちなみにこの時代日銀もFEDも当預付利はしてない)、超過準備に関しては市場金利の下限を画すための常設ファシリティ金利(デポジットファシリティ)での付利を行い、市場金利の上限を画すための常設ファシリティ金利(マージナルレンディングファシリティ)で付利すりゃエエンチャウノとは思うのですが、一旦アバンダントリザーブの付利金利(゚д゚)ウマーとなってしまうとそれを引っぺがすのは(ひっぺがされる方からしたら収入剥奪だから)なかなか大変じゃろうなとは思うのですけどね。
あと、『その他のご意見』ってところですが、こちらは事前資料にもありましたが、ちょうど対句になっているようなのがあったので改めて並べておきます。
『・残存期間別の国債買入れ金額の決定に当たっては、フローだけでなく、ストックである発行残高対比の国債保有比率も勘案すべき。』
『・日銀保有比率の高い残存5〜7年の銘柄が恒常的に割高な状態となっており、イールドカーブの歪みを改善する観点からも、国債補完供給の減額措置の上限緩和、要件緩和の対象銘柄の拡大などの柔軟な措置を検討しても良いのではないか。』
ということで、結局これってYCCの最後に無駄な延命のために連続指値オペだのなんだのを乱発した弊害がここに来て表れてるって話でして、多角的レビューってこういう後から出てくる問題点をネグって纏めちゃっているのが罪深くて、数年後にもういちど多角的レビューのやりなおしをしてほしいと思うのでした。まあやらんじゃろうけど。
あと、この意見は良かったですね、事前資料にもあったけど・
『・超長期ゾーンの需給悪化は、発行に比して投資家需要が少ないという構造的な要因によるものであり、日本銀行が根本的に対応できる余地は小さい。』
そうなんですよ、そこを日銀に何とかさせようとするのは、ただの財政ファイナンスになるんですよね。
ということで今朝はこの辺で勘弁
2025/06/02
お題「新発3M0.40乗せ/5月FOMC議事要旨から金融脆弱性に関するスタッフ報告を」
厚生年金のワイ(まだ支給年齢ではありませんwww)憤怒案件
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250530/k10014820861000.html
年金改革関連法案 衆院本会議で可決 参院へ
2025年5月31日 0時02分
〇新発3M短国0.40%台に上昇とな
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250530.htm
国庫短期証券(第1309回)の入札結果
『本日実施した国庫短期証券(第1309回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。
記
1.名称及び記号 国庫短期証券(第1309回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項
3.発行日 令和7年6月2日
4.償還期限 令和7年9月1日
5.価格競争入札について
(1)応募額 9兆6,007億5,000万円
(2)募入決定額 3兆4,772億7,000万円
(3)募入最低価格 99円89銭3厘5毛
(募入最高利回り) (0.4276%)
(4)募入最低価格における案分比率 84.2596%
(5)募入平均価格 99円89銭8厘3毛
(募入平均利回り) (0.4083%)』
とまあそういうことで、3Mカレント平均も0.4%台乗せになりまして、その前の週(5/23)が0.3818/0.3934でもうひとつ前(5/16)が0.3677/0.3793で、その前(5/9)が0.3979/0.4090でして、5/2の入札という連休の中にあった奴が0.4051/0.4249でして、0.40%台の入札をやったのは5/2以来、ということになります。
まあ何でですかねえと言われましてもイマイチ良くわからんというかただの需給で、しかも相場観と関係がなさそうな需給だったりするところではあるので何が何やらという感じではありますが、避難民が短期ゾーンに来ないような状態だと需給は若干緩むかなとか思いますが、なにせ現状は日銀の各種資金供給と規制対応のニーズでこのありさまでして、短国が普通に1M0.50%2M0.52%3M0.54%位の世の中になっていただきますと市場も平和だし純粋な運用資金も入ってくるし、とは思いますし、超長期の減額ガーとか言ってるなら短国増発したら(超極端なのでそうはいかんですけど)どうよとは思ってしまいます(超長期の減額なんぞ短国からみたらハナクソみたいな額ですからぬー)。
一応売買参考統計値を確認しますと
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
(5/30引値)
国庫短期証券1306 2025/08/18 平均値単利 0.400
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.400
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.405
(5/29引値)
国庫短期証券1306 2025/08/18 平均値単利 0.400
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.400
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.400
まあ元々ここもと短国の引けは少し甘めに推移していて入札前の時点でカレント0.40%とかだったのですが、一応平均落札並の引値をつけている格好になっていますので、今週の推移と今週の3Mの結果でも見てみますかってな感じです。
6月発行の短国って足が9月になるのですが、足が9月の後ろになってくると償還時の再投資の時に期末要因がどうのこうのみたいなのがあるかもしれない(ないかもしれない)ので微妙に使い勝手が悪くなる(四半期末の中では6月末は毎度基本は無風、まれに事件が起きるけど)というのがあったり、
東京レポレート
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
O/N T/N 1w 2w 3w 1m 3m 6m 1y
2025/5/26 0.492 0.491 0.476 0.474 0.472 0.473 0.481 0.497 0.573
2025/5/27 0.491 0.488 0.475 0.474 0.472 0.473 0.481 0.498 0.572
2025/5/28 0.495 0.488 0.476 0.474 0.472 0.473 0.481 0.499 0.572
2025/5/29 0.488 0.467 0.473 0.473 0.471 0.472 0.481 0.500 0.572
2025/5/30 0.496 0.491 0.477 0.474 0.472 0.473 0.482 0.500 0.572
てな状況でGCのターム物もまあ安定推移しているのですが、ちょっと見ますと29日のトモネ、すなわち月末月初の翌日物の所はレートがちょっとではあるけどしらっと下がっておりまして、まあ決算期は決算期であるのは明白なんですけど、それだけではなくて月末になると月末要因が発生する、というのが仕様になっていますねえ、というのは見える訳でして、GCとか短国界隈の安全資産へのニーズが強いのと、月末のバランスシート抑制ニーズが結構あるんだな、というのは見て取れるかなと思います、知らんけど。
〇5月FOMC議事要旨のさらに続きです
HTML
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20250507.htm
PDF
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20250507.pdf
引用は例によってHTMLから。
・金融システムの安定性に関する事務方の報告ってのがありまして(半年に1回バージョン)
『Staff Review of the Financial Situation』という所があるのですが、この後半に普段は出てこないものがありましたので引用しますわ。
『The staff provided an updated assessment of the stability of the U.S.
financial system and, on balance, continued to characterize the system's
financial vulnerabilities as notable.』
この「an updated assessment of the stability of the U.S. financial system」ってのは半年に1回アップデートされていまして、前回が昨年11月のFOMC、前々回が昨年5月のFOMCでして、こちらはFEDが出してるFSRってのがありまして、そのアップデートに合わせてアップデートって感じですので、FSRを見てないアタクシにも親切設計(ソウジャナイ)
https://www.federalreserve.gov/publications/financial-stability-report.htm
Financial Stability Report
ちなみにどうでもいいのですが、4月10月に出せばええじゃろと思うのですが、なんか年によって発行月が4月または5月/10月または11月、ってなっているのがアメリカンらしいアバウト感覚だなって思いましたw
でまあ金融システムでしすけれど「continued to characterize the system's
financial vulnerabilities as notable」ってことで「脆弱性は引き続き顕著」ってしていまして、「continued
to characterize」って言ってるくらいですから昨年11月はどうだったかというと、詳しくは議事要旨(https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20241107.htm)見てちょんまげと思いますが、同じく「The
staff provided an update on its assessment of the stability of the U.S.
financial system and, on balance, continued to characterize the system's
financial vulnerabilities as notable.」と言っておりますわ。
じゃあ何の脆弱性が顕著なのかと言いますと、
『The staff judged that asset valuation pressures were notable. Equity
valuations declined but still stood at the upper end of their historical
distribution, spreads on high-yield corporate bonds widened and stood around
the middle of their historical distribution, and housing valuations remained
quite high amid increased risks to the economic outlook and the appearance
of ebbing risk appetite.』
資産価格市場のバリュエーションの脆弱性がノータブルとおっしゃっておられまして、株価とかハイイールド債のクレジットスプレッドなどが割高じゃろとのご指摘。
・・・・・まあこれ国情(というかマスメディア)の違いがあるから何とも言い難い面はあるのですが、日本だとFSRって毎度「金融システムは安定性を維持」というのを前面に出していて、「脆弱性はノータブルで特に株価や低格付けの信用スプレッドが云々」ってのを目立つように言えない(言うとメディアが鉦や太鼓を鳴らして馬鹿騒ぎして永田町とかいう所の馬鹿集団が更に輪を掛けて日銀をお呼び出ししたりしてエライことになる)という面で同情すべきところはあるのですけれども、逆にFEDは毎度これを堂々言っても別にそれが大騒ぎになるわけではない、ということでして、これ鶏と卵みたいなところがあって、日本の場合は率直な指摘をすると何故か無駄なハレーションが起きてしまうので大本営発表チックな発表になってしまう、ってのプルーデンスもそうだし何ならマネタリーポリシーだってそういう感じになっているのは、日銀が悪いとまあワシはいうものの、社会全体としての問題もあるわな、とこのFEDのド直球な表現を見て思うのでした。
でもってその他の脆弱性ですけれど、
『Vulnerabilities associated with business and household debt were characterized as moderate.』
企業や家計の負債から来る脆弱性はモデレートである(なお前回11月もモデレート)と。
『The ability of publicly traded firms to service their debt had improved
slightly, partly reflecting stable earnings. That said, riskier firms continued
to face high debt service costs relative to historical ranges. Household
balance sheets remained solid overall, though delinquency rates on auto
and credit card loans were elevated.』
前回11月はここの部分の説明がもうちょっと長くて、「非金融企業におけるレバレッジの水準がヒストリカルスタンダードから見て高い」という記述があったのですが、今回はその話は無くて、その代わりに「riskier
firms continued to face high debt service costs relative to historical
ranges」ってのが入っていて、どちらかと言えば二極化チックな話をしているのと、今回は家計に関してもオートローンやカードローンの延滞が増えているという話がありますな(前回はホームエクイティに余裕があってモーゲージの延滞は低い、って話をしていました)。
次がレバレッジの話で。
『Vulnerabilities associated with leverage in the financial sector were characterized as notable.』
これまた前回11月と同じ総合評価。
『Regulatory capital ratios in the banking sector remained high. Banks,
however, were still seen as exposed to some interest rate risk. In the
nonbank sector, leverage at hedge funds stayed high.』
前回ここの部分の説明が割と長かったのですが、今回は2分割されていまして(書いてあることは全体的には前回とそんなに変わらん)、後半に
『Vulnerabilities associated with funding risks were characterized as moderate.』
ファンっディングに関する記述が入ってますね(モデレートだからやばいという認識ではないけど)
『The liquidity mismatch of assets and liabilities at mutual funds was
evident amid substantial outflows in the first week of April. Nevertheless,
the outflows were not sustained and did not ultimately strain overall liquidity
in the markets in which the mutual funds invest. Banks reduced their reliance
on uninsured deposits notably since the end of 2021.』
ということで、まあこれはこの前のトランプ云々で市場が暴れたから注目点に入れてるんだろうなあ、とは思いました。このコーナーはここまでですが、経済物価に関する本編はネタにできたらします(今日は時間が無いので勘弁)