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2025/06/06

お題「入札コケて減額観測で急騰してたら世話ないんだが/ECBは先行きの経済を「うまくすれば明るいけど」って少し明るい絵に」

https://www.agrinews.co.jp/news/index/310888
2025年6月6日
[農家の特報班]小泉農相に望む政策は? 緊急アンケート
| ニュース| のうとく| 主要記事

なお進次郎は流通卸を悪者に仕立てる方向での扇動をしているだけのようなニュースが出ていたのだが、まああのクソ親父あってのこの息子というムーブをやっぱりやるのかよと残念に思っている所だ一応まだお手並み拝見。

今日のFED方面要人発言(自分用メモ)

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/4KYSBJ3HFVMSTBSOUU4BUZ27HM-2025-06-05/
政策金利の現状維持支持、インフレリスク上昇=クーグラーFRB理事
ロイター編集
2025年6月6日午前 2:23 GMT+9

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/22KON5GJ7JLMRNTH5WJNQVNKZE-2025-06-05/
関税によるインフレ再燃を警戒、全容判明に時間必要=カンザスシティー連銀総裁
ロイター編集
2025年6月6日午前 3:34 GMT+9


〇30年国債入札がクソ弱かったので減額観測までは分かるがその先の市場後講釈は草生える

市況なのでロイターさんを引用するけどBBGも同様の市況記事を書いておりましたので別にロイターさんを晒上げる意図はないことを先にお断りしますwww

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/5K3AGTCBORNIROR4RGIFC3UN5A-2025-06-05/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発、超長期債発行減額の思惑で買い 入札は許容範囲
ロイター編集
2025年6月5日午後 3:39 GMT+9

『[東京 5日 ロイター] - <15:25> 国債先物は反発、超長期債発行減額の思惑で買い 入札は許容範囲

国債先物中心限月6月限は、前営業日比40銭高の139円35銭と反発して取引を終えた。米金利低下に加えて、低調となった30年債入札が許容範囲内と受け止められたことや超長期債の発行減額を巡る思惑がサポート要因となった。新発10年国債利回り(長期金利)は同4.0ベーシスポイント(bp)低下の1.460%。現物市場では超長期ゾーンを中心に金利低下圧力が強まった。』(上記URL先より、以下同様)

って話なんですけど、

『この日実施された30年債入札では、2.92倍と23年12月以来の低水準となり、テール幅も前回より拡大するなど、低調な結果と受け止められた。』

まあ応札倍率に関しては少ない方ってのはそれなりに意味があるんですけど多い方ってのは足切りがどこからどう見てもこの水準、って時には足切りでの案分考えて札が多く入るみたいなこともあるのでそんなにあてにはならんのだが、

『市場関係者によると、前場で大きく買われ入札に警戒感があった中だったものの「十分こなしたという評価だ」(国内銀の運用担当)とし、入札結果をみて市場参加者が買い始めた動きが入ってきたとみる。ただ、「今入札は国内投資家ではなく、海外勢の買いに支えられた面があり、こういった需要は永続的ではない」(同)とし、超長期債の発行減額はしっかりと実施されるべきだとの声が聞かれた。』

だそうなのですが、まあ直近ではマーケットメーカーのリスク許容度が落ちていて、昔だったら入っていた「止め札」みたいなのが入らないので、明確な投資家のニーズをバックにした札がないと流れてしまうってことなんでしょうけれども、入札流れたら結局その流れたのを見て買いが入りましたでござるの巻、なのはいいんですけど、

『 現物市場では超長期ゾーンを中心に金利が大きく低下。30年債入札結果を受けて「20日の国債市場特別参加者会合(PD懇)での超長期債の発行減額幅をめぐる思惑が先行し、徐々にポジティブに受け止められたようだ」(国内証券債券セールス担当)という。』

これはさすがに草どころか森な話で、弱い入札になってもその後急反発するんだったら、それは単純に「もうちょっと金利が上がればニーズが出てくる」という事を意味するんだから寧ろ減額不要まであるじゃろ、って話で、入札コケたあとに一段安とか、全然戻らんとかなら減額への期待っていうのも分かるけど「減額の期待で相場急反発」するくらいなら何で減額する必要があるんじゃヴォケとしか言いようが無いので、まあアホな話になっとるわ、とは思いました。

いやまあさすがに今回はカレンダーベース市中消化の一部振替の形で超長期は幾分か減額になると思いますけど、このムーブ見たらそんなに必死こいて減額せんでも結局のところある程度の金利上昇を甘受すれば普通に消化できるじゃん、というのを示した格好、というのが発行する側から見たときの通常の解釈になるんじゃないですかねえ、とアタクシは思うのですけれどもどうなんでしょうかね。てかだいたいからして超長期減額したら中短期か長期かしらんけど、そっちが増発されるんだたら中短期弱くなれよ(まあ超長期の減額分のカバーを中短期でやると誤差の世界になる説はあるけど)ってなもんですけどwww

あとまあそもそも論を言い出したら、発行があまりにも少なくなると市場の流動性って回復するどころか落ちるんですから、悪い入札なんだから発行が結構減額されるぜヒャッハーとか言って買ってるの頭の悪さが結構な水準に達していると思うんですけどねwwwwwwwww

まあなんちゅうかアホアホ相場だったので備忘メモということで。


〇ECB

例によって手抜きなのでポンチ絵の鑑賞
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2025/html/mopo_statement_explained_june.en.html
Our monetary policy statement at a glance - June 2025

前回4月
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2025/html/mopo_statement_explained_april.en.html

前々回3月
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2025/html/mopo_statement_explained_march.en.html

トラ公大関税前、トラ公大関税直後、現在という流れでポンチ絵を比較鑑賞します、なお日銀とかいう所の出しているポンチ絵は前回との継続性が無い単発の絵を出してくることで著名です(っていうか実は黒田時代はちゃんと前回との継続性のある絵を出してきていたんですが、ある時から急に前回との連続性を丸無視した絵をだすようになったんですよね、あれは何なんでしょうか)、


・最初のポンチ絵では「経済は向かい風」は復活なのですね

最初のポンチ絵ですが、

『We cut our key interest rates by 0.25 percentage points』(今回)
『We cut our key interest rates by 0.25 percentage points』(前回4月)
『We cut our key interest rates by 0.25 percentage points』(前々回3月)

今回も利下げですが、その説明文では、

『We did this because inflation is settling at around our 2% target, while the economy is facing headwinds.』(今回)
『We did this because inflation is on track to settle at around our 2% target.』(前回4月)
『We are doing this because inflation is on track to settle at around our 2% target, and the economy is facing headwinds.』(前々回3月)

「物価が2%で推移する中で経済が向かい風なので」という説明でして、物価については既にターゲット達成状態なので景気重視、という説明。前回の時の会見での説明の時点で政策金利は既に引き締め的ではない状態ってしていましたのですが、これはまあちゃんとしたステートメント見ると書いてあるかなと思ったのですが(ちょっと斜めよみした感じですと)すくなくとも声明文ベースでは今の政策金利が緩和的だの引き締め的だのという能書きは無かったので、そこは有耶無耶なのかね(QAまで見た方が良いちゃあ良いのですが、声明文でどっちとも書いていないのならば明確な緩和ではない、と解釈するのが妥当ではある)とは思いました。

まあ物価2%達成状態で利下げというのは「経済は向かい風」だから利下げしたということで、景気重視型の利下げ(前回もそうでしたけど、でもって前々回は「2%ターゲットに向かってオントラックに進む中で」なので物価目標OKOKの一歩手前というステータス)になっておりますな。


・とは言え経済の絵柄が「半分だけ明るい」という器用な絵になっています

2番目のポンチ絵

『What is happening in the world is holding the economy back』(今回)
『Uncertainty about how the economy will develop is exceptionally high』(前回4月)
『Uncertainty at home and abroad is a burden on the economy』(前々回3月)

ってなことになっていますが、絵面を見ますと、前回、前々回ともに濃いめのブルー(というかまあこれブルー系の濃淡だけのイラストなんですけど)の絵柄になっていたのですが、今回はこの先左に行くと天気の悪い山(峠?)に向かうけど右に行けば明るく晴れた山に向かう、のですが、この先に雲があってさてどっちに行くのかはよくわかりません、みたいな感じの絵になっていて、中々芸が細かくてよく出来ている絵じゃん、と思いました。ということで先行きの絵が「もしかしたら明るいかもしれません」になっています。

説明文の方では、

『Global uncertainties and trade tensions are weighing on the economy. How these are resolved will have an impact on how fast the economy can grow.』(今回)

『Tensions over global trade and the related big swings in financial markets are clouding the outlook for the economy.』(前回4月)

『Trade tensions could weigh on exports and make it more difficult for firms to plan ahead. Because of uncertainty, firms are holding back big investments and people are still saving a lot of their incomes. But, gradually, the economy should get stronger.』(前々回3月)

となっていまして、4月はまあ「アカン」って感じですが今回は「How these are resolved will have an impact on how fast the economy can grow.」ということで、関税を巡る状況がいい感じで解決すれば先行き明るいかも、という願望込みの希望的観測も半分はあるでよ、という絵になっていますわな。


・通商政策問題はあるけど域内要因ではプラス要因も出てきましたというお話

さらに3個め(経済の2個目)のポンチ絵では

『The economy has gained some strength to deal with these global problems』(今回)
『Many parts of the economy are feeling the strain』(前回4月)

ってなっていて、

『Firms are still cautious about investing because of uncertainty. But lots of people are in work and have higher incomes to spend. Governments are also spending more on infrastructure and defence, which helps the economy.』(今回)

この個人が職についてる云々は前々回だと経済の2個目の絵でして、

『Many people are in jobs』(前々回3月)
『Unemployment remains the lowest it has been since the start of the euro. Services, in particular, are doing well.』(前々回3月)

ってのがあります。

それはそうと説明文を前回と比較しますと、前回が

『New trade barriers make it more difficult for Europe to sell its exports. Companies may invest less because of trade tensions around the world and the stress in financial markets. Consumers are more concerned about the future and are cautious about their spending.』(前回4月)

でして、「cautious about their spending.」というのは前回も今回も変わらんところではあるのですが、一方で今回は「Governments are also spending more on infrastructure and defence, which helps the economy.」ってのもありまして、こちらも絵柄は前回とは異なり、「世界経済は暗いんだが域内だけで見たら明るい面もありますよ」の両にらみイラストになっていて、こちらも(ある意味当たり前ですが)改善していますし、こちらの絵は貿易問題云々と違う「域内の雇用が堅調」「域内の政府支出が拡大」というものをベースにしているので、さっきの「どっち行くか分からんけど上手くいけばお天気」というのよりは一段明るい意味合いのイラストになっているな、って感じです。


・物価は2%目標達成

経済の3個目(全体の4個目)ですがこちらは物価で、

『Inflation is settling at our 2% target』(今回)
『Inflation keeps coming down』(前回4月)
『Inflation is heading towards our 2% target』(前々回3月)

このポンチ絵説明はスタッフ見通しの会合とそうじゃない会合でイラストの分量が違うので同じ順番のものを出しているわけではないのですが、ここの表現にありますように(さっきの政策のところでもありましたけど)今回はインフレーションが2%に「Inflation is settling」になっていて、前々回ですとまだ「Inflation is heading towards our 2% target」だったので、今回は2%物価目標が達成された状態です、というのを明確にしめしていますな。

『Lower energy prices are helping to keep inflation down. Wages are growing more slowly. A stronger euro means that goods and services from the rest of the world are cheaper for us.』(今回)

『Energy prices have fallen again. Services prices are no longer going up so strongly. Inflation is expected to settle at around 2%. But trade tensions make the outlook for prices more uncertain.』(前回4月)

『Food prices are rising a bit faster than before. But, overall, inflation is coming down mainly because wages and prices for services are no longer going up as much.』(前々回3月)

今回は物価に関しての表現はもう普通に「2%達成じゃ」という感じですな。

つまり、基本的には政策は中立的で良いのですが、経済情勢が怪しいのならば緩和的にするってそういう感じの政策運営になりまっせ、とかそんな感じですかね〜。

でまあここで本当はステートメントという話なのですが、時間の都合上ここで勘弁していただきとう存じます。

#あと新発3M入札があるんですが足元短国のレートが地味に上昇している件もあったのですが割愛で勘弁






2025/06/05

お題「植田総裁内外情勢調査会講演(その2)」

そらそうじゃろ
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/7HIQMEQCTRMRNLHCHJGTUAXYUE-2025-06-04/
米企業、大半が価格転嫁でトランプ関税に対応=NY連銀調査
Michael S. Derby
2025年6月5日午前 2:30 GMT+9

『同報告書は、5月序盤の時点で「大半の企業が関税引き上げ分の少なくとも一部を顧客に転嫁している」とし、製造業の約3分の1、サービス業の約45%が関税によるコスト増加分の全てを価格引き上げで完全に転嫁していると指摘。両業種の企業の約75%が何らかの形で関税関連のコスト増を価格に転嫁しているとした。』(上記URL先より)

トランプのキチガイ政策の是正が行われるか否かってのは、関税の転嫁が進んで米国の愚民の皆さんがこんなはずじゃなかったとトランプに対してイカリだすまでとの時間の戦いみたいな感じではないかと思うというか思いたいw


〇植田総裁内外情勢調査会講演(その2):政策修正の前のめり感は一切出さずに輪番縮小に意欲ですねこりゃ

てな訳で昨日の続き。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a1.pdf

・通商政策動向の経済への下押しの説明はやたら丁寧だったが「リスク」の方は割とアバウトで温度差があります

昨日は『2.通商政策の影響と経済・物価情勢』の『(わが国経済・物価の見通し)』の後半部分の物価の見通しに関するところまでやったら時間切れになってしまいましたが(すいません)、その先が『3.通商政策を巡るリスク』ってのがあるんですよ。

まあそもそもが「通商政策の影響」ってところで詳しく下振れ要因をこれでもかと並べて説明していましたので、わざわざ通商政策を巡るリスクってのを書くのも重複感が漂うわけで、そのせいかリスクの方は微妙なつくりになっています。

『ここまで、米国の関税政策による影響を踏まえつつ、わが国の経済・物価の中心的な見通しについてみてきました。こうした見通しに対しては、常に上振れないし下振れの可能性、リスクが存在します。特に、現在のように不確実性がきわめて高い状況にあっては、従来以上にこの点を念頭に置いておく必要があります。』

ここで下振れだけではなくちゃんと「上振れ」も言っているのは(関税交渉が思いのほか順調に進展したり、突然トランプが改心してめだか師匠ムーブになるというような可能性があるんだから当たり前だけど)当然ながら結構なお話。

というのはですね、4月の展望レポートって何がクソインパクトあったかって、経済見通し引き下げでリスクバランスは下、物価見通しも引き下げでリスクバランスはそれまで上だったのが下、でもって会見での植田さんの説明もハトハトチキン、って出し方をしたから「なんじゃこの全面降伏モードは」ということになったわけですよ。単に「今回は1回パス」だけで良かったのに過剰なまでに下方バイアスを強調した情報発信になっていたからあの相場になった、という面は多々ある訳でして、でまあさすがに大本営もやべえと思ったのか主な意見では展望レポート基本的見解や会合後の会見で示されたハトハトチキンバイアスをある程度中和(中立化ではない)させてるな、と思いましたし、その後の国会などでの説明も「見通し達成への確度が高まれば利上げ」ということでコミュニケーションを立て直している感があったわけです。

でまあ今回ですが、ワタクシはやはり遺憾ながらハトハトチキンだなあ(理由は関税政策の影響の説明部分がやたら丁寧なこと)だし、緩和の調整つまり利上げの前のめり感が一切出さない(理由はお気持ち物価の説明に力点置いている、すなわち利上げしない理由の方の背景説明ばかり一生懸命やっててアクチュアルの物価は「コストプッシュです」で方吹けているから)、というコンボなのでハトハトチキン認定しましたが、ここに「通商政策のリスクは上振れ下振れあり」とちゃんと書いている、というのはジャガーチェンジができる(やるかどうかは兎も角)布石はここでも着実に打っていることが分かるわけです。

ということなので、このあたりのジャガーチェンジができるようにしている仕掛け部分を重視すれば、むしろ衣はハトだけど下の鎧はタカじゃん、とも読めますので、タカ解釈がおかしいとは今回は思わないですアタクシ。

えっと、何の話をしていたんでしたっけ(笑)リスクに関するマクラの続きです。

『例えば、本日ご説明した日本銀行の中心的な見通しについては、「各国の通商政策等に関し、今後、各国間の交渉がある程度進展すること」、また、「グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような破壊的な状況は回避されること」などを前提としています。』

何かこの前提がわかりにくいんですよね、関税何%とかをレンジで良いから想定出してほしいわ。

『逆に言えば、こうした前提が崩れれば、先行きの見通しは上下双方向に大きく変化する可能性があります。また、通商政策の展開そのものに加えて、それらを受けて、内外の経済主体がどのように対応するのか、という点を巡っても大きな不確実性があり、十分な留意が必要です。

こうした点を踏まえつつ、以下では、この先、特に留意すべき3つのリスクについて指摘したいと思います。』

ということなので、ちゃんと上振れすなわち利上げ路線復活の話もしている訳ですよ、でもってこれ昨日も書いた気がしますし何ならこの後にも書きますが、まあ結局6月の国債買入減額の継続決定というのが今の最重要課題で、この課題を無事にクリア(=長期金利が無駄に暴れない)するためにはそれ以外の話は「1回パス」しておく、という感じだし、ちょうど関税問題もあるし、こりゃちょうどええとばかりに関税の経済への影響ガーを丁寧に説明した、ということなんだろうなあって思います。

と申しますのは、以下の「関税のリスク」なんですけど、ここで挙げられている話って経済下押しリスクちゃあ経済下押しリスクですが、特に3点目に長々とあるように「グローバル化の巻き戻し」という話に行数を割いていまして、じゃあグローバル化の巻き戻しってそれ経済下押しなのかというと必ずしもそうとは言えず、一方で物価に関しては明らかに構造的な物価押し下げ圧力の減衰を意味しますから、ここで言ってるリスクってリスクの話をしているからまあ見え方はハトなんですけれども、だから緩和政策が必要なのかという論点で見たばあいに必ずしもそうじゃないのではなかろうか、ってお話なのかなって思いました。

『(サプライチェーンの複雑性)

第1は、近年のグローバルサプライチェーンの高度化に伴い、その複雑さも増してきたことが、関税政策の影響に関する不確実性を高めているという点です。』

と、小難しい事を言っているようですが、

『IT関連を中心に、アジアにおける生産ネットワークが複雑に絡み合っている中で、思わぬ形でボトルネックが生じ、それがサプライチェーン全体に波及すれば、わが国の輸出入や企業活動に大きな影響を及ぼすことも考えられます。こうした観点からは、日米間の交渉だけではなく、各国と米国の交渉の帰趨についても丁寧にみていく必要があります。』

要するに日米交渉だけではなくて米中とか米とアセアン諸国の動向も見ないといけませんね、ってお話でした。

でもって次ですが、

『(企業の賃金・価格設定行動)

第2は、各国の通商政策の影響を受けて、わが国企業の賃金・価格設定行動が大きく変化してしまうリスクです。』

まあこれはリスクです、ってことなんでしょうけれども、前段で「マインドへの影響から需要が下押しする影響」について説明をしていて、なんか重複感半端ないですね。

『先ほど、労働需給の引き締まった状態が続く中、企業の積極的な賃金・価格設定行動は維持されるとの見通しを申し上げました。とはいえ、実際の物価の変動が企業や家計の予想や行動様式を変化させ、これを介して、先行きの物価への影響が増幅され得る可能性があることにも注意が必要です。』

賃金設定で言えば冬季賞与と来年の賃金設定、って事になると思うのですが、そこまで見るのか見ないでもどう見ても問題ないじゃろとなるのかの判断のポイントがどこにあるのかが良くわからんので、これまた通商交渉の進展度合いによって「ああ大丈夫大丈夫」となるかもしれませんね。


・インフレ期待は本当に2%に上がる過程なのでしょうかねえ

でもってこの部分で「インフレ期待のアンカー」という話が続くのですが、

『人々の物価観が2%にアンカーされている米欧と異なり、わが国では、いまなお、緩やかな物価上昇を前提とした賃金・価格設定行動が、企業や社会に十分に定着したとは言えない状況にあります。』

という認識になっているのですが、家計に関してはホンマカイナという感じで、緩やかどころではない物価上昇に対してどうしましょって感じになっていないのかねと思いますし、最近の値上げって寧ろお間ら調子乗ってないかムーブも感じないわけでもないし、本当にインフレ期待がまだまだ低い、というのが正しいのかってもうちょっと検討した方が良いんじゃないかって思うのですよね。

もしここを読み間違えていたら割と重大なダメージになるわけでして、この部分ってそりゃまあ日銀だって必死こいて実態について考えているとは思うのですが、緩和政策継続の方に思考が引っ張られていたりしたら後年戦犯扱いになりますよ本当に大事ですからあんまり過去に引っ張られないで、とは申し上げたいところです。


・結局は主要製造業大手企業の冬から春に向けての賃金設定で判断しそうですね

『そうした中にあって、関税政策の影響により、輸出企業やグローバル企業の収益に下押し圧力がかかる場合、それが自社の賃金抑制圧力や、サプライチェーンを通じたコスト削減圧力につながることがないか、については丁寧にみていく必要があります。』

何かオブラートに包んでいますけど結局は主要製造業大企業のこの先の賃金設定がデフレ脳な設定に戻ってしまうか、それともデフレ脳にはならないで、賃上げが多少マイルドになるにせよ、物価上昇にある程度追随できる賃上げになるのか、というのが注目です、って思いっきりゆうとりますなこりゃまた。

『逆に、グローバルに物流が混乱し、輸入物価に上昇圧力がかかるような状況が生じた場合、コストプッシュ圧力が物価、更には賃金に影響を及ぼす可能性がある点にも注意が必要です。』

後半は注意するのは良いんですが今回の講演の理屈、コストプッシュは中央銀行は対応しない、ですと注意が必要ったって注意した結果なんのアクションに繋がるのかが意味不明ですね〜。


・グローバル化の巻き戻しの可能性についての話が一番長いのよ

でもってこの次が『(グローバル化の先行き)』って小見出しですがこれがかなりの大作。

『第3は、より長い目でみて、米国の関税政策やそれを契機に構築される新たな国際的な関係が、グローバル化という世界経済の成長を支えてきた大きな流れにどのような影響を及ぼし得るかという点です。』

という話でして、これもはや目先の金融政策関係ないじゃろという話ですけれども、以下壮大な話になっているので鑑賞するには興味深いお話になっています、引用しますね。

『図表8をご覧ください。左グラフにありますように、世界の貿易や直接投資は、東西冷戦が終結した 1990 年代以降、2000 年代後半にグローバル金融危機が起こるまで、急速に増加しました。その後も、世界貿易は、世界経済の成長とおおむね同じペースで増加を続けています。また、右グラフにありますように、わが国の企業は、生産コストを抑制するサプライチェーンの構築や現地需要の取り込みなどを企図して、海外諸国と比べても、より積極的に対外直接投資に取り組んできました。』

はい。

『こうしたグローバル化への対応は、わが国企業の収益力強化に貢献してきたと考えられますが、一方で、様々なリスクを抱え込むことにもつながっています。』

ほう。

『例えば、製品の生産工程を細分化し、それらを複数の国にまたがって配置することは、コスト抑制に資する一方、生産・在庫管理を難しくしている面があります。こうした脆弱性は、コロナ禍以降に相次いだサプライチェーン障害によって、より明確になりました。』

まあそうですよねってのはありまして、こちとら昭和脳なので、それこそどっかの国でクーデターが起きましてどうのこうのとか、内戦が現在こんな感じで進行していますとか、そういうニュースを普段のニュースでホイホイと聞いていたわけなので、その時代から比較したらそら海外展開も進むし、急に昭和に戻ったらエライコッチャだわという話でもありますわな。

『また、ロシアのウクライナ侵攻などは、各国の経済安全保障に対する意識を高めることになり、これが世界の貿易や企業の生産活動に影響を与えるケースもでてきています。このような流れが続く中、今回の関税政策が、サプライチェーンの在り方に関する更なる検討を促すきっかけとなり、企業行動、とくに生産拠点の立地戦略に大きな変化をもたらす可能性があります。』

今回は戦争と超大国の横紙破りの合わせ技ですもんね。

『もちろん、生産拠点をどこに配置するかは、コストとベネフィット、様々なリスク要因を考慮して企業自身が判断すべき問題です。世界経済を巡る大きな環境変化は、企業が乗り越えなければならない新たな課題ですが、過去にも、わが国経済は、企業の前向きな取り組みを原動力として様々な課題を乗り越え、成長力を高めてきました。』


・グローバル化の話の後半はリスク云々の話ではなくて米ロに向けた素晴らしいメッセージになっていて評価されるべきです

でもってこの後の部分は大変に良いメッセージだと思います、引き続き引用しますが、

『こうした前向きな努力を後押しするためにも、企業が過度に国際情勢等に対するリスクを警戒しなくて済むよう、開かれた、公正かつルールに基づく国際経済秩序を支えていくことが大切です。』

これはまあロシアもそうですがトラ公に向かっても抗議表明しているような話ですが、大変に良いメッセージだと思いました。連中が聞く耳持つとは思えないけど、意思表示をするのはとても大事。

『この点は、私が出席した4月のIMFC会合(国際通貨金融委員会)でも改めて確認されました。』

ほほう。

『過去 30 年にわたる急速なグローバル化が、その成果の分配を巡って様々な難しい問題を引き起こしているのは事実ですが、その一方で、世界経済の分断化(fragmentation)やデカップリングの進展による勝者がいないこともまた、事実です。』

おーーー!

『各国は、今後、より良い国際経済秩序を構築する努力を重ねていく必要があります。その過程では、国際金融資本市場や国際金融システムの安定を確保していくことも重要です。日本銀行としても、各国の中央銀行や内外の関係者と情報交換をしながら、自らの持ち場において、こうした課題にしっかりと対応していきたいと考えています。』

なんかここだけ滅茶苦茶異質なんですが、植田総裁が思い入れを籠めて差し込みでもしていたのだったらば植田総裁素晴らしいじゃんと思いますし、まあ日銀としてもこういうメッセージを出したい、というのがあったのでしたらそれもまた素晴らしいことでして、この部分って目先の金融政策と関係ないからニュースネタにはならないのですが、もっと評価されるべきところ(というかまあ今回の講演での評価ポイントはほとんどここしかないわ)だと思いました。


・金融政策運営では金利の運営について今はパスだけど状況好転したらジャガーチェンジの余地を示す

『4.日本銀行の金融政策運営』は『(先行きの金融政策運営)』から始まりますが、ここはもう「当面は分からんのでパス」という説明で一貫しています。

『それでは、日本銀行の金融政策運営に話を移したいと思います。』

『ここまで申し上げてきたように、現時点で日本銀行としては、わが国経済は関税政策による下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムも途切れることはないと考えています。』

「賃金と物価の好循環」やっぱり本格的にお蔵入りなんでしょうね、もうこの表現に統一されてますもん。

『基調的な物価上昇率についても、いったん伸び悩む局面はあるものの、2%に向けて徐々に高まっていくという大きな方向感は、これまでの見通しと変わりありません。その一方で、こうした中心的な見通しに対するリスクとして、各国の通商政策の今後の展開を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視していく必要があります。』

でもってこの次に直近の米中合意(一時停戦合意みたいなもんですが)を受けての見通し変化は起きたのか問題にご丁寧に触れていまして、

『最近の各国間の交渉の進展、とくに米国と中国が、相互の関税率を大幅に引き下げることで合意したことは市場においてポジティブに受け止められていますが、それでもなお、不透明感が強い状況は続いています。金融政策運営にあたっては、これらの動向を丁寧に確認したうえで、適切に判断していく必要があります。』

まあこの書き方をみますと(ただの一時停戦合意だから当たり前ではありますが)先行きはまだ全然わからんから動かんもんねーというのは旺盛にみられるわけで、まだまだ動くような雰囲気は出しませんなというお話。

とは言え返す刀でジャガーチェンジの余地は残していまして、

『その前提として、現状、わが国の金融環境が緩和的な状態にあることは、重要なポイントです。図表9をご覧ください。これまで、予想物価上昇率が緩やかに上昇する中でも慎重に緩和度合いを調整してきたこともあり、現在の実質金利は、大規模緩和の時期をも下回る大幅なマイナスとなっています。また、金融機関の貸出スタンスは引き続き積極的で、社債等の発行環境も総じて良好な状態を維持しています。こうした緩和的な金融環境は、各国の通商政策の影響がみられるもとでも、わが国の経済活動をしっかりとサポートしていると判断しています。』

ちなみにこの「実質金利」(脚注にあるように「実質金利は、国債利回り(1年物)から予想物価上昇率(日本銀行スタッフによる推計値)を差し引くことにより算出」というだいぶ怪しげなものを使っていますけど、これは例によって展望レポート背景説明を見ますと、4月号だと本文32ページの図表47に同じものがあります。

でまあその実質金利の水準の見せ方の怪しさはさておきますけれども、まあこのように実質金利はドマイナスアピールをしているのですから、通商交渉好転の暁にはしらっとジャガーチェンジする布石は盛大に打っているわけですな。

『以上の点を踏まえますと、今後、私どもの中心的な見通しに沿って、わが国の基調的な物価上昇率が2%に向けて高まっていくという姿が実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、各国の通商政策の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、そうした見通しが実現していくかについては、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していく方針です。』

と最後は従来示している通りの話をして締めています。


・長期国債買入減額に関してはイタコ話法を使って日銀の減額に関するやる気を見せたものと解釈します

一方で異色だったのは次(実質最後)のコーナーの『(国債買入れの減額計画の中間評価)』です。

『最後に、長期国債の買入れについてお話しします。日本銀行は、かつて実施していた大規模緩和からの出口を進めていく中で、昨年6月、我々が市場から買入れている長期国債の金額を減らしていく方針を決定しました。翌7月には、図表 10 にあるような、2026 年3月までの減額計画を策定し、現在は、この計画に沿って実際に減額を進めています。』

から始まりますが、ここも含めて以下はただの現状のご紹介ですので引用はしますが流します。

『そこでは、「長期金利は金融市場において形成されることが基本」であるとしたうえで、日本銀行による国債買入れは、「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していく」としています。予見可能性という意味では、現在の計画において、来年1〜3月にかけて、国債買入れ額を毎四半期 4,000億円程度ずつ減額していくことをあらかじめ明確に示しています。一方、柔軟性を確保する観点からは、計画の中で、「長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に、買入れ額の増額等を実施する」こととしているほか、国債の残存期間別の買入れ額といった具体的な事項は、その時々の市場環境を踏まえて実務的に決定する扱いとしています。』

『さらに、今月開催される金融政策決定会合において、現在の計画の「中間評価」を行うとともに、2026 年4月以降の買入れ方針について検討し、その結果をお示しすることとしています。』

でもって段落が変わって、

『そうしたもとで、現在、日本銀行では、この中間評価に向けて、国債市場の動向や機能度の点検を進めています。その一環として、先月半ばには、債券市場の参加者との意見交換を行うための会合を開催しました。昨日、同会合の議事要旨が公表されていますが、そこでの議論も踏まえたうえで、現時点で私どもが考えているポイントは、次の3点になります。』

ということでマクラが長いのは内外情勢調査会が相手なので背景説明しないで本編から入るのはちょっと不親切だから、ってことでしょう。では3点ですが、

『第1は、これまでのところ国債買入れの減額は、国債市場の機能度回復という所期の効果を発揮しているということです。』

まあやらないよりはましだけどもっと減額すればもっと機能度回復してたんじゃないでしょうかとしか申し上げようがない。

『市場参加者からは、関税政策の影響を受けて、春先以降、市場の流動性が低下する局面がみられたが、全体としてみれば、国債市場の機能度は改善傾向にあるとの指摘が多く聞かれました。こうしたもとで、来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです。そのうえで、日本銀行の国債保有残高がなお多額に上るもとで、市場の機能度を一段と高める努力を続けていくことが重要との認識も、多くの市場参加者に共有されていたように思います。』

>来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです
>来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです
>来年3月までの現在の減額計画の修正を求める声は限られているようです

イタコ話法キタコレ!


『第2は、2026 年4月以降の計画を検討する際には、引き続き、予見可能性と柔軟性のバランスが重要であるという点です。』

なのは良いんですけど、来年4月以降のペースについて今から決め打ちする必要ってあるのかね、というのは疑問で、何ならFEDとかだって(規模が違うから参考にしにくいのはあるけど)とりあえずバランスシートの縮小幅(の限度)を決めてオートパイロットで減らしていって、途中で「今後はこれで行きます」って言ってペースを変更している訳でして、2026年4月以降を決め打ちするんじゃなくて、そろそろオートパイロット方式にしても良いんじゃないか(まあべき論としては加速しろなのでオートパイロット方式を今入れられるとペース遅いわと言い出しそうですけどワタクシ)。

でもって、

『予見可能性を確保する観点からは、あらかじめ、ある程度の期間の計画を示すことが適切と考えられます。一方で、国債市場の機能度の回復がなお道半ばにあることや、春先以降の価格変動の経験も踏まえますと、引き続き、柔軟性を確保する仕組みが必要とのご意見が多かったように思います。』

ここでもイタコ論法なのですが、市場の大きな変動に対する柔軟性、の他に「実はもっと加速しても良かったんじゃないか」なのが見えてきた時の柔軟性ってのもあると思うので、なにも今の時点で1年半とか2年も先の話を決め打ちせんでもよかろうって思うのですが(前回は初回だったから2年というか1年9か月にしてたけど・・・・・)。

まあそれは兎も角3点目。

『第3は、市場参加者からは、2026 年4月以降も、国債の買入れ額を減らしていくことが適切との声が多く聞かれたという点です。』

はいはいイタコ話法イタコ話法。

『もっとも、具体的な減額ペースについては様々な意見がありました。日本銀行としては、これまでの減額の経験を踏まえつつ、こうしたご意見も参考にしながら、次回の金融政策決定会合において、来年4月以降の買入れ額をどのようにしていくのか議論していきたいと考えています。』

いやマジで「方向性としては減額するのは変わらんのだが今後の減額の進捗を踏まえて12月会合か1月会合辺りを目途に26年4月以降の具体的な計画を策定したい」で何が困るのかとは思うんですけどねえ・・・・・・さもなくば普通にオートパイロットにして、何か不具合有りそうだったら修正しますわ方式にするか。


〇昨日は調節年報でていましたね

面白そうだが読んでいる時間が無くて目をとおしただけなのでそれはまたいずれ・・・・

https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/mor250604.htm(要旨)
https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/data/mor250604a.pdf(本文)







2025/06/04

お題「内外情勢調査会総裁講演(その1)ジャガーチェンジの余地は示しているがまあ基本的に利上げは地蔵じゃろ」

なるほど
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250604/k10014824921000.html
韓国大統領選 イ・ジェミョン氏が勝利 4日大統領に就任へ
2025年6月4日 4時15分

『韓国の大統領選挙で革新系の「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏が勝利し、4日大統領に就任します。イ氏は支持者を前に演説し、「国民の統合は大統領の責任だ」と述べ、ユン・ソンニョル(尹錫悦)前大統領が「非常戒厳」を宣言して以降、深まった社会の分断や対立を解消すると強調しました。』(上記URL先より)

そういえばFED方面は色々発言が出ているのだが追いかけている暇が全然ないという悲しい状態なので備忘クリップだけ

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/Y7YBUVAB2FODHNSRYJDOIIWAS4-2025-06-03/
FRB、関税影響見極めに時間的余裕 経済堅調で=アトランタ連銀総裁
Michael S. Derby
2025年6月4日午前 12:14 GMT+9

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-03/SXAMD6T0G1KW00
FRBクック理事、物価安定の重要性を強調−力強い労働市場の達成で
Maria Eloisa Capurro
2025年6月4日 5:01 JST


〇植田総裁内外情勢調査会講演ですが「利上げへの熱量無し」「輪番削減はやる気満々」かなと

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250603a1.pdf
最近の経済・物価情勢と金融政策運営
―― 内外情勢調査会における講演 ――
日本銀行総裁 植田 和男


・基本的には「慎重スタンス」の表明とアタクシは読みましたがハトハトと読まない人もいるでしょうな

今回の内外情勢講演はやや解釈に幅が出てくると思うのですよね。と申しますのは「見通し通りに推移すれば緩和政策の調整を行う」というのを強調しているというのがあって、しかも経済に関して言えば関税の影響の話をああでもないこうでもないとしているけれども、実際の経済の認識についてはここまでのところ大コケしている訳ではない、ということになっているうえに、最後の長期国債買入ペース削減問題に関しては割とやる気満々になっているんですよね。

とは言いましても、まあアタクシ思いまするに、政策スタンスの部分、米国関税政策の影響の説明の部分、「基調的物価」の説明部分を見ますと、まあ早期利上げなんてとてもとても、って感じの説明で、利上げをやっていって正常化しましょう感が全然出ていないな、という風に読んだので、どちらかというとハトハトというかや〜るき無し♪無し♪って読みました。

ってな訳でその辺を中心に読んでみるでござるの巻です。


・冒頭の「初心を忘れず」ってのはつまり2023年5月のハトハトチキン講演に立ち戻るということですよね

最初は『1.はじめに』ですが、

『日本銀行の植田でございます。本日は、内外情勢調査会でお話しする機会をいただき、ありがとうございます。今からちょうど2年前、私が日本銀行総裁に就任して初めて講演をさせていただいたのが本席でした。そこでは、総裁の職務を果たしていく際の心掛けとして、「論理的に判断したうえで、できるだけ分かりやすく説明していきたい」と申し上げました。また、物価の安定の達成というミッションの実現に向けて、当時ようやく見え始めていた「2%達成の『芽』を大事に育てていくこと」の重要性を指摘いたしました。』

でまあその「芽」を大事に育てていく、というのが何だったのか、2023年の内外情勢での金融政策運営の最後の部分を改めて確認しましょう。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230519a.htm
金融政策の基本的な考え方と経済・物価情勢の今後の展望
内外情勢調査会における講演
日本銀行総裁 植田 和男
2023年5月19日

『これをわが国の現状に引き直しますと、拙速な政策転換を行うことで、ようやくみえてきた2%達成の「芽」を摘んでしまうことになった場合のコストはきわめて大きいと考えられます。逆方向の、政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまうリスクもありますが、こうした2%の定着を十分に見極めるまで基調的なインフレ率の上昇を「待つことのコスト」は、前者に比べれば大きくないと思われます。そうした意味で、先行きの出口に向けた金融緩和の修正は、時間をかけて判断していくことが適当だと考えています。この「芽」を大事に育て、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指します。』(この部分のみ直上URL先2023年5月の植田総裁講演より)

ということで、「芽を大事に育てていく」とか言ってますがまあ既にセイタカアワダチソウ状態になってるじゃろヴォケと言いたいところですが、では2年前からどうなったのでしょうという話で講演に戻りますと、

『その後、幸いにして、わが国の経済・物価情勢は改善を続け、賃金の上昇を伴う形で2%達成の「芽」は順調に育ってきました。昨年3月には、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、10 年以上に及んだ大規模な金融緩和の枠組みを見直しました。その後、昨年7月、本年1月と政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整してきたところです。』

芽が育ちすぎてませんかねえ。

『もっとも、本年春先以降、米国が打ち出した一連の関税政策は、多くの人々の事前の予想を大きく上回る規模であり、内外の経済・物価を取り巻く環境は大きく変化しています。わが国の経済・物価を巡る環境も複雑さを増していますが、本日は、初心を忘れず、改めて、私どもの経済・物価に対する見方や金融政策運営の考え方について、出来るだけ分かりやすく説明したいと思います。』

>初心を忘れず

初心を忘れず、というのはまあ現国の試験問題的には「わかりやすく説明したい」だということになるのですが、2年前の講演が衝撃のハトハトチキン講演で為替市場における円安を促進した、ということがありますので、どうもこの「初心」とは「ハトハトチキン」を思い出しますし、ハトハトチキンが言いすぎならば「慎重なアプローチ」であり、「待つことのリスクは相対的に低いという認識」というお気持ちが溢れているようにアタクシには読み取れましたが勝手読みのし過ぎかも知れませんので念のため申し添えます。


・関税政策の影響はひたすら「経済に下」の話ばっかりなのと主役が展望レポート時の見立てから交代している感があります

『2.通商政策の影響と経済・物価情勢』ってのがまあ本編ですが、最初の小見出しが『(通商政策のわが国経済への影響)』ですな。最初の方の能書きは飛ばしまして関税政策の影響について。

『こうした各国の通商政策の動向は、いくつかの経路を介して、わが国の経済を下押しする要因となります。』

はい。

『第1の経路は、米国市場におけるわが国の輸出財の価格競争力の低下を起点としたものです。』

つまり従来の米国向け輸出に関連する数量あるいは収益への悪影響ですな。一応以下の能書きを引用します。

『これは、米国の関税政策の直接的な影響として、メディアなどで取り上げられることも多いかと思います。図表2をご覧ください。輸出関連のデータをみますと、これまでのところ、左グラフの実質輸出の実績はしっかりとしています。これには、今後の関税引き上げを見越した駆け込みの動きが一部影響していると考えられますが、この先、わが国企業が米国での販売価格に関税の影響を転嫁する場合には、米国製品にシェアを奪われるなどして、わが国からの輸出を抑制する方向に作用すると考えられます。』

でもって、

『実際、右グラフにあるように、輸出受注に対する企業の見方は、増加と減少の節目である 50 を下回っています。』

なので、マインドには出ているけれども実際には駆け込み効果などもあって今のところ数値としてはでていませんという評価ですね。

『他方、わが国の企業の中には、米国内の販売価格を変えずに、関税引き上げの影響を輸出採算の悪化という形で吸収する戦略をとる先もあると思います。この場合、現地での売れ行きや輸出数量に対する影響は限定的です。しかしながら、企業収益には下押し圧力がかかることになるため、これが先行きの賃上げや設備投資にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。』

こっちは収益なので経済指標みたいな形で出るのにはもう少し時間がかかりますわな。

でもって次。

『第2の経路は、不確実性の高まりによる需要の減少を起点としたものです。』

でですね、この点ですけれどもこの先にしれっとこんな記述がありまして、

『第1の経路に比べて話題になることは少ないですが、むしろこちらのルートの方が、より早い段階でわが国経済の下押しに働く可能性があると考えています。』

あらま、って感じでして、従来(というか4月展望レポート)では関税政策の影響で世界経済に影響が来て(IMFのWEOもちょうど下方修正された時期でした)、それが国内経済に跳ねてくる、というルートで主に説明していたのですが、「むしろこちらのルートの方が、より早い段階でわが国経済の下押しに働く可能性があると考えています。」としているのは注目ですね。

以下能書き。

『関税政策を巡る不確実性がこれだけ高ければ、その影響を受ける可能性がある企業は、当然のことながら、各種の投資案件に対して慎重にならざるを得ません。』

『家計部門でも、将来の景気悪化リスクなどに備え、自動車・家電といった耐久消費財や住宅の購入など、当面、大きな買い物を見合わせるインセンティブが生じます。』

ついこの前(と言っても関税前)は耐久消費財の前倒しの可能性に言及していたのでこの辺エラク弱気化したなと思ったので、まあこの辺りからもワシ的にはいつものハトハト音頭、と思ってしまいました。

『実際、図表3の企業や家計のコンフィデンスのデータをみますと、わが国の企業の景況感や消費者マインドは、ここにきて悪化しており、不確実性の高まりが企業や家計の支出行動に影響を及ぼす可能性があります。』

と来まして、

『実際にどの程度の影響が及び得るのかという点については、日本銀行としても、次回短観において、今年度の設備投資計画の修正状況などをしっかりと確認していきたいと考えています。』

ということで短観の設備投資計画がにわかに大注目となってきましたね。

では3番目行きます

『第3の経路は、世界経済が広く減速し、グローバルな貿易活動が縮小することに伴う影響です。』

4月の展望レポートの時点ではむしろこれがメインになっていて、他の主要国の中央銀行があの時点ではFEDは「まだ様子分からんから1回パス」でしたし、もともと景気減速気味だったECBは「段階的な利下げの追加で政策金利を中立化」はしたものの影響はこれから見て行きます、という中でなぜかフォワードルッキングに世界経済の下押しが強まるからベースラインシナリオを変更しました、とぶっこんで来たわけですが、今回はメインが「米国向け輸出の直接の影響」「マインド悪化による需要減」で、特にマインド悪化の方がこれから直ぐに来ます、ってことで話が変わっていますわな。

以下は能書き。

『いま述べた不確実性の高まりに伴う支出先送りの動きは、日本だけでなく、世界中で生じます。』

『また、関税を課される国だけでなく、米国など関税を課す側の国でも、輸入物価の上昇などを通じて国内需要が下押しされる可能性があります。』

『とりわけ、多くの生産工程を必要とする耐久消費財や資本財などに対する世界的な需要の減少は、グローバルサプライチェーンを通じて増幅される形で、わが国を含む各国の輸出や生産を下押しする可能性があります。』

とまあエライしょんぼりしてしまう話ですが、

『この点、4月に公表されたIMFの世界経済見通しでは、図表4の右グラフにあるように、先行き、グローバルな貿易量の停滞に引き摺られる形で、世界全体の実質GDPが下振れる姿が予測されています。こうした貿易活動を通じた影響に加え、世界経済の減速が、海外現地法人からの配当金減少という形で、わが国企業の収益を下押しする可能性にも留意が必要です。』

とまあ威勢の悪い話。

最後は金融市場からの話です、まあこれは普通の事しか書いてませんが。

『第4の経路は、金融・為替市場を介したものです。』

はい。

『4月の半ばにかけては、米国による関税政策の発表をきっかけに、世界的に株価が大きめに下落し、ドル安が進みました。その後、こうした動きはある程度巻き戻され、世界的に株価や為替のボラティリティも低下してきていますが、引き続き、金融・為替市場の動向やそれがわが国経済に及ぼす影響を十分注視していきたいと考えています』

てな訳ですが、これ一つ留意点があって、「米国向けの直接的な輸出」と「マインド」ってのは関税交渉次第で一気に晴れる可能性がある代物なので、例によって例の如くこれが晴れたらまたも突如のジャガーチェンジが発生する、という可能性は無くは無い、というか多分そうなる、という点は留意すべき所でして、まあこれ読んでいると見極めに時間がかかりそうな説明にはなっていますが、所詮は関税交渉次第なので、トラ公の方が先に音を上げてしまえばこっちのもの、というのはおおありだと思いますからぜんぜん利上げないでっせと決め打ちするのもちょっとやりすぎ、というのはあると思います。


・現状の経済の走りについては逆に妙に強気ですがこれはジャガーチェンジをするための伏線ですね

次が『(わが国経済・物価の見通し)』ですが、ここの記述は威勢が良いのですよ。

『以上、米国の関税政策の影響について、やや詳しくご説明してきました。続いて、これを前提とした、わが国の経済・物価の見通しについてお話しします。』

という事ですが何とですね、

『いま申し上げたように、最近の関税政策は、いくつかのルートを通じて、わが国経済の下押し要因として作用します。もっとも、現時点で日本銀行としては、わが国経済は、こうした下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムも途切れることはないと見込んでいます。これは、高水準の企業収益がバッファーとなるほか、これまでの景気回復で家計の所得環境も底堅さを増しているためです。』

実質賃金のマイナスが続いているのに「これまでの景気回復で家計の所得環境も底堅さを増している」ってこれ下手に着火されたらアカン火種じゃろと思うのですが、まあ大本営発表ではこういう話にしているのは要は「足もとは強いよ」と言いたいという事。

『図表5をご覧ください。ここ数年、わが国の企業収益は、全体として歴史的な高水準を続けており、多少の下押し圧力を受けたとしても、資金面から企業行動が大きく制約される状況ではありません。』

『また、先ほど申し上げた関税政策の影響は、まずは製造業・輸出企業を中心に表れると見込まれますが、雇用全体の約8割を占める非製造業が堅調であることから、これが、わが国の経済活動を下支えすると考えられます。』

なんですかこの楽観(のように見える説明)はw

『この点、2019 年に米中貿易摩擦が拡大した局面でも、わが国の輸出や製造業の生産活動が弱めの動きを余儀なくされた一方、非製造業の業績は堅調に推移し、人手不足感が強い状況は維持されました。』

で、ここからが家計の話なんですが、実質賃金の話を丸無視して雇用が強い、という話をしていて、だから「家計の所得環境も底堅さを増している」ということにする、という割と強引感のある説明。

『人口動態の変化を受けて労働供給の限界が強く意識されている中、このところ、非製造業の人手不足感は一段と強まっています。こうしたことから、関税政策の影響を受けるもとでも、わが国の労働需給は引き締まった状況が続き、企業の積極的な賃金設定行動は、全体として維持されていくのではないかと判断しています。』

という根拠になっていますので、つまり現状が強いってのを強調しているのは、関税交渉が進展した場合にジャガーチェンジをするための布石を打っていることに他ならないので、この部分を重視して読めば「割とタカっぽいじゃん」となると思います。


・好循環は遂にお蔵入り(か????)

先ほどの部分を再掲しますが、

『もっとも、現時点で日本銀行としては、わが国経済は、こうした下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズムも途切れることはないと見込んでいます。』

>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム
>賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくというメカニズム

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・( ゚д゚;)

なんですかこれはという感じですが、まあさすがに「好循環」って言ってると今は政治ばかりが叩かれているので日銀セーフ(寧ろ利上げするなとか言われていて金融リテラシー無し無しムーブなのが悲しいですが)という図になっていますが、どこかでうっかり犬笛を吹かれたらどうみたって「好循環」って炎上要素ですから、そらまあ好循環はお蔵入りさせろというのはあったのですが、今回しれっとお蔵入りですかね、まあ今後も確認したいですけど。


・物価に関しては「基調的物価」の説明でいろいろな図表登場

『次に、物価についてご説明します。足もと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は3%台半ばとなっています。これについては、図表6でお示ししているように、昨年秋以降、米などの食料品価格が大きく上昇していることが寄与しています。こうした価格の上昇については、輸入した肥料や原材料、天候要因などのコストプッシュの影響が大きいとみており、少なくとも前年比でみた上昇率は、今後低下していくと見込まれます。』

コストプッシュだから対応しない、という屁理屈がおかしい点については今次のインフレ局面で主要国の中央銀行だって対応を間違えていて、その反省の元に米国の定例のロンガーランゴールあんどストラテジーの見直しが行われている、という状況になっているのに、これ黒田末期からの物価上昇をずっと一時的と言い張って政策の見直しが遅れていることの正当化先にありきで「コストプッシュだから対応しない」を続けた結果物価が高止まりしているんですけど、こんなん「初期段階でコストプッシュは一時的と思っていましたがどうもそうではなかったようです」って言えば済むことを何で日銀って「謝ったら死ぬ」ムーブをぶちかますんでしょうかねえと思います、まあいつもの悪態ですが。

『そのうえで、中央銀行の金融政策は、特定の財・サービスの価格を動かすものではなく、需要全体に影響を及ぼすことを通じて物価の安定を実現しようとするものであり、また、その政策効果は時間をかけて経済に波及していくものです。そのため、2%の物価安定を実現していくにあたっては、コストプッシュの直接的な影響を除いた基調的な物価上昇率の動きをみていくことが重要となります。』

はいきました基調的物価とかいうお気持ち物価。

『残念ながら、これさえみれば基調的な物価の動きがわかるという便利な指標は存在しません。物価変動の背後にある労働需給や賃金上昇率など、経済・物価に関する様々な情報とともに、各種の物価指標を丁寧にみていく必要があります。そう申し上げたうえで、図表7にお示しした代表的な指標を見る限り、』

ということで図表7を見ますと、巻末の方に「図表7 基調的な物価上昇率に関連する指標」ってのがあるので見るわけですが・・・・・・・・・・(PDF17枚目になります)

『@価格変動の大きい品目を控除した物価指標』

凡例を見ますと、

『@CPI(除く生鮮食品)
ACPI(除く生鮮食品・エネルギー)
BCPI(刈込平均値)
CCPI(加重中央値)
DCPI(最頻値)』

となっていますけど、毎月出している刈込平均の図表対比で扱いが随分寂しいですな、と思うと次に

『A賃金変動を反映しやすい指標』

というのが出てきまして

『@CPI(低変動品目)
ACPI(サービス)のトレンド』

ってのがあるんですが、これは展望レポート背景説明の方でも同じものがありまして、4月展望レポート全文(https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504b.pdf)本文28ページ(PDFで30枚目)に3つあるグラフの一番下に「図表38:賃金要因によるCPIの変動」ってのがありまして、まあこれと同じものですわな。

『B中長期の予想物価上昇率』

がこの前もネタにしましたように、そもそもこの数値自体が推計値だし、家計のインフレ期待に関しては定性的な回答(大きく上がるとか上がるとか下がるとか大きく下がるとか)を数値処理しているので、過去の低インフレ局面を割と長い期間含めた処理をしたら局面変化の際にちゃんとその変化を読み取れているのかが怪しい(というのはスタッフペーパーの段階ではちゃんと記載されています為念)のに、あたかも「ザ・10年予想物価上昇率」があるようなグラフになっているのが毎度申し上げている通りの怪しさですし、

『C経済モデルから推計された指標』

『モデル@:フィリップス曲線の切片
モデルA:時変VARモデル
モデルB:準構造モデル』

こりゃ何ですねん(フィリップス曲線は4月号展望全文の本文31ページに出ています)というのがありまして、なんかいろいろと説明しようとしているのは分かるのですが、どうせお前らまたチェリーピッキングしとるじゃろと言いたくなるのですな。

とは言いましても今回新手に出てきたCの数字はなんか急速に2に接近してて、何ならお前らこれ物価目標達成じゃなねえのとも思ってしまいますので何なんでしょうという感じではありますが、本編に戻りますと。

『わが国の基調的な物価上昇率は、これまでのところ緩やかに上昇していこれまでのところ緩やかに上昇しています。』

となっているだけでお気持ち物価の方は威勢良くない説明になっていますわな。ただまあさすがに実際の物価に関しては、

『4月の消費者物価指数をみても、様々な品目において、いわゆる「期初の値上げ」という形で、企業が人件費や物流費を含むコスト上昇を販売価格に反映する動きが続いていることが確認されました。』

としていますが、最後に関税政策を出してきて

『もちろん、関税政策の影響を受けてわが国の経済成長のペースが鈍化することは、物価に対する下押し圧力として作用します。』

つまりは利上げを前倒しする気は皆無というのはよくわかります。

『しかしながら、そうしたもとでも、先ほど申し上げたように、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持されると考えています。また、先行き、各国間の交渉が進展し、通商政策を巡る不確実性が低下していけば、海外経済は緩やかな成長経路に復していき、わが国経済の成長率も高まっていくことが予想されます。』

ということなので、まあ一応関税交渉次第ではジャガーチェンジの可能性は大有り、というのは把握できたなというところではあります。

・・・・・ここで時間切れになりましたので続き(主に輪番ネタ)は明日で勘弁してつかあさい。








2025/06/03

お題「債券市場参加者会合の議事要旨が出てたので雑談を少々」

これはさすがの公共放送です
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250530/k10014819991000.html
市場も気になる!消費税減税議論の行方は【経済コラム】
2025年6月1日 11時23分

日銀の輪番がどうのこうので投資家がストライキとかいうゴミにも劣る題名の記事書いていた某ベンダーには猛省を促したいですな。いやまあ公共放送のHP読者に輪番オペがどうのこうのと言われても分からんから書かんってのは有ると思うけどw

この調子で次は「基調的物価って何?」ってお題でお気持ち物価について寸鉄をぶっこんでいただけることを期待しますし、そういうのを理性的に書いてくれるのはやっぱり公共放送さんしか居ないなあと思うのでした。


〇債券市場参加者会合議事要旨出ましたがまあ特にまとまりはないけど感想雑談を

https://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond_list/mbond250602.pdf
「債券市場参加者会合」第 22 回議事要旨

1.開催要領
(日時)
銀行等グループ 5月 20 日(火)15 時 45 分から
証券等グループ 5月 20 日(火)17 時 30 分から
バイサイドグループ 5月 21 日(水)16 時 00 分から

(場所)日本銀行本店

(参加者)「債券市場サーベイ」等に参加する金融機関の実務担当者

(日本銀行出席者)金融市場局長、金融市場局総務課長、同市場調節課長、同市場企画課長

とまあそういうことで行われたようですが、こういうのってどういう話をするのか、という点で難しいものがあって、まあ今回の場合はテーマが輪番減額の話だから基本その話になるんですけど、より中長期的な話をしたいのか、目先の話をしたいのか、という辺りって(これはまあそういう設定にしたの市場局じゃなくて総裁方面だから仕方ないのですけれども)今回は先行きの話についてと目先の話について一緒くたにやってるうえに、先行きに関してももっと長い期間の話のべき論、という話なのかそうじゃないのか、というのも議事要旨を見ると判然としないなあという所でして、結果として読んでみるとなんというカオスのごった煮、ということになっておりますわな(個人の感想です)。

まあ長期的なべき論に関しては財務省の何とか委員会じゃないですけど、その手の諮問会議方式の方がよいのかも知れないなとは思いますし、特に本件のような日銀のバランスシートに関する話では、債券市場の話だけで考えても話が完結しないので、逆にこういう会議で中長期的な話をすること自体が無理筋じゃねえの、とは思います。

と申しますのも、債券市場の人たち普段は通常の短期金融市場における金融調節とかもともと興味がないところに来て黒田緩和以降の大幅な日銀当座預金の拡大で日々の資金需要の変化がどうしたこうしたとか分からんですけど、日銀保有国債残高に関してはひとえに短期金融市場における資金需給調整をどういうツール(今なら超過準備付利というツール)で実施していくか、という思いっきり短期市場プロパーの話になるので、まあそもそも論として中長期の姿を短期市場プロパーじゃない債券市場参加者会合で論じるというのには無理があるのでそんなの聞く必要ねえだろ、とは思いました。

・・・・ただまあこの点は総裁がいつぞやの会見で「2026年3月以降の中長期的な姿も云々」とか変な事言い出すからこうなっているのです、というのは繰り返しましてさて内容をちょっとだけ拝読しますが。

『2.日本銀行からの説明等

・ 日本銀行より、@最近の市場動向と市場調節、A国債市場の流動性、B債券市場サーベイの結果について説明し、C事前照会で寄せられた意見を紹介した。

3.参加者の意見
・ 上記説明の後、@これまでの買入れ減額を踏まえた国債市場の動向や機能度、A現行の長期国債買入れ減額計画、B2026 年4月以降の長期国債の買入れ、Cその他について意見を尋ねた。事前照会を含め、会合参加者から聞かれた主な意見は以下のとおり。』

ということで、事前照会の方(すなわち先に公表された資料)とだいたい同じ話になっているのですが、その時に無かった意見を少々鑑賞しておきますね。なお@とAはまあどうでもよいのでB以降の部分を見ますが、

『現行の長期国債買入れ減額計画』ってところから。

『・ボラティリティの上昇により市場全体のリスク許容度が低下し、需給環境も良好ではない状況で減額ペースを加速させると、かえって市場の機能度を低下させる恐れがあるため、現行計画を変更することは望ましくない。また、減額は金融政策の正常化の一環と理解しており、計画の途中で減額ペースを緩めると、誤ったメッセージを送ることになるため、これも適切ではない。』

まあ結局動かすなって話で、実務的にはまあそうじゃろうなとは思うのですが、ただまあそもそも当初の減額計画が(それまでの国債買入規模が馬鹿でかかったうえにマイナス金利政策解除して数か月の時点だったこともあって)及び腰気味の減額計画だった(と私は思っていますが異論は認める)ために市場機能の回復が遅れている、という可能性もあるのではないかと思うので、本当はその点をもっと深堀りした方が良い話ではあるんですよね。

まあそんな感じで、もともとに立ち返った時にこのペースで本当に良かったんだっけ問題は大いにあると思うのですが、実務的にシャーナシということで、

『・市場にショックが生じ、かえって減額の流れが途切れてしまうような事態は避けるべきであり、予見性を維持するという観点でも、減額の加速や一度の大幅な減額といった見直しはせず、現行計画を維持するべき。』

ってな話もあったようで。あと、事前資料の方では1行コメントになっていましたが、

『・現行計画のもとで、過度なボラティリティが生じることなく、着実に減額が進んだことや、国債補完供給に関する措置も相俟って、市場機能度が緩やかに改善してきた点を評価している。現行計画については、当初予定どおり実施することが適切だと考えている。』

という評価もまあそうですねとは思いました。ただ債券市場のスムージングはそれでいいのかもしれないけど、物価が高止まりしている中で日銀のバランスシートの縮小って本当は急がないといけなくなってきていると思うのです。

と申しますのは、これは年末に日銀のバランスシートに関して企画局ペーパーが出ていた時にちょっとネタにしましたけど、財務シミュレーションの前提にストレステストは無いわ、前提はユルユルのユルな時間かけていく前提だわというの「しか」出せないというのが今の日銀のバランスシートの抱える潜在的なリスクな訳で、正常化を加速させないといけない事態や金融引き締めまで行かなければいけない事態になった時に長期国債買入をこんなユルユルでやってたら対応余地が狭くなるのと、日銀財務がクソ悪化した時のリスクがある(一時的悪化は問題ないとは言え、信認はそういう理屈だけでは決まらないのでリスクはある)のですが、債券市場参加者会合でそっちのテーマでの話をする人もいない(そういうお題は課されていないし)ので、まあその辺はどうなのですかね、とは思います。


『26/4 月以降の長期国債の買入れ<ペース>』

最初の『(月間買入れ金額の減額ペース)』は意見がバラバラ過ぎてクソワロタという感じなのですが、そもそも論として日銀の長期国債買入はYCC政策をやっていた時期は長期金利の抑制という観点で実施していたものですが、今はあくまでも「資金供給オペの一環」なのでありまして、ただまあ過去YCCで馬鹿みたいな買入をしてしまっているので一度にゼロにできないから段階的に減らしている、というだけの話なんですよね。

然るに、意見を見ますとどう見てもお前ら日銀の長期国債買入を「あてにして」ポジション運営をしようとしているだろ、と思われる意見が散見されていまして、こういう状態、すなわち中央銀行による長期国債の買入が市場にビルトインされているような状態、というのがそもそも論としてまちごうとるのですから、まずそのYCC脳を何とかしろと申し上げたいのですが、まあゆうてマイナス金利にYCCってのも10年くらいやってた訳でして、債券市場関連で息していた時間帯の中でその10年が殆どって方もそりゃ多いじゃろと思う老害ジジイのワイとしては、輪番が無いとマーケットメークできないとかただの甘え、と言いたくはなるのですが、言うと老害ジジイと言われるのが確定的なので大人しく黙っておくことにしておきます(黙ってないですかそうですかwwww)。

でまあそちらは事前資料と同じもの(文章が長いだけ)しか無かったので次に行きますと、


『26/4 月以降の長期国債の買入れ<買入れ金額等>』

こちらも事前資料通りだったのですが、事前資料の中では割愛されていた部分が紹介されていたのがあったので拝読拝読。

『・3兆円程度であれば、需給バランスが崩れ、金融システムの不安定化を招く恐れが低く、かつ日銀保有額も徐々に減少していくため、一旦この水準を維持することが望ましい。』

というのは事前資料の方にもあったのですが、さらに追加がありまして、

『更なる減額を行う場合、IRRBB 上の制約を踏まえた銀行の保有余力や、銀行以外の投資家の保有余力の確認が必要。』

・・・・・節子、それは財政ファイナンスって言うんやorzorz

「市場が支えられないから中央銀行が買うべき」ってのは何とかショックみたいな金融ショックの時にいう話としては危機対応で仕方ない面があるので、一から十まで中銀の介入を否定する気はアタクシとてさらさらないのですが、今の状況のどこがショックで危機対応なのか、ということを考えた場合、危機対応の時みたいな発想で考えるのはどう見たって良くないというか、このケースで言えば中銀による財政マネタイズを積極容認しているのに他ならない話になりますわな。

まあ発行に関しては要は発行を減らせ、すなわち中長期的な財政健全化という2013年2月の政府と日銀の共同文書に立ち返って話をすべき問題なので、そういう意味では2026年4月以降の買入が何兆円になるべき、みたいな話も何でいまする必要がありますねんとは思うので、日銀のこのお題のセッティングにも問題がある(のだがしつこいようだがこれをやらせているのは植田総裁の会見での説明によるので市場局よりも上の方が問題なのですけど)とは思いますけどね。

あと、これまた事前資料の方にもありましたが、

『・長期の計画を示す場合、目指すべき超過準備の姿も含めたバランスシートの考え方を示すと、予見性の向上につながると思われる。』

ということですが、まあだいたい今の中銀業界では「アバンダントリザーブ」を「アンプルリザーブ」に縮小して、ただそこから「スケアスリザーブ」に下げるのはよーせん、という形になっている向きが多いとは思うのですが、じゃあ日銀がアンプルリザーブにする、って言ったって所要準備が13兆円しかないわけで、アバンダントにも程がある今の状態で「適正なアンプルリザーブがどこか」とかわかる訳ないだろ、と思うのですよね。

つまりですね、植田さん「中長期的なものも示したい」みたいなこと言ってたとおもうのですが、どこからどうみてもそれは寝言オブ寝言じゃろ、と思うのです。

ちなみに話は脱線しますが、アタクシ的にはこの「アンプルリザーブ」ってのもあまり好きじゃなくて、と申しますのは、この方法ですと「中央銀行当座預金」が「市場運用よりも有利な運用先」になってしまうので、中銀当座預金へのアクセスの有無によって市場参加者間の競争のスタート時点の下駄が違ってくることになって、市場の価格発見機能が働く前に、この参加者間の不公平アービトラージの方が先に取引として出てしまう傾向が(特に超過準備が多くなればなるほど)発生してしまうので、市場デザインとしてあまりよろしいものではないと思うのです。

でまあそれよりはましだと思うのは旧ECB方式で、金融機関への所要準備をやや厚めに積ませる代わりに所要準備には付利を行い(ちなみにこの時代日銀もFEDも当預付利はしてない)、超過準備に関しては市場金利の下限を画すための常設ファシリティ金利(デポジットファシリティ)での付利を行い、市場金利の上限を画すための常設ファシリティ金利(マージナルレンディングファシリティ)で付利すりゃエエンチャウノとは思うのですが、一旦アバンダントリザーブの付利金利(゚д゚)ウマーとなってしまうとそれを引っぺがすのは(ひっぺがされる方からしたら収入剥奪だから)なかなか大変じゃろうなとは思うのですけどね。


あと、『その他のご意見』ってところですが、こちらは事前資料にもありましたが、ちょうど対句になっているようなのがあったので改めて並べておきます。

『・残存期間別の国債買入れ金額の決定に当たっては、フローだけでなく、ストックである発行残高対比の国債保有比率も勘案すべき。』

『・日銀保有比率の高い残存5〜7年の銘柄が恒常的に割高な状態となっており、イールドカーブの歪みを改善する観点からも、国債補完供給の減額措置の上限緩和、要件緩和の対象銘柄の拡大などの柔軟な措置を検討しても良いのではないか。』

ということで、結局これってYCCの最後に無駄な延命のために連続指値オペだのなんだのを乱発した弊害がここに来て表れてるって話でして、多角的レビューってこういう後から出てくる問題点をネグって纏めちゃっているのが罪深くて、数年後にもういちど多角的レビューのやりなおしをしてほしいと思うのでした。まあやらんじゃろうけど。


あと、この意見は良かったですね、事前資料にもあったけど・

『・超長期ゾーンの需給悪化は、発行に比して投資家需要が少ないという構造的な要因によるものであり、日本銀行が根本的に対応できる余地は小さい。』

そうなんですよ、そこを日銀に何とかさせようとするのは、ただの財政ファイナンスになるんですよね。

ということで今朝はこの辺で勘弁







2025/06/02

お題「新発3M0.40乗せ/5月FOMC議事要旨から金融脆弱性に関するスタッフ報告を」

厚生年金のワイ(まだ支給年齢ではありませんwww)憤怒案件
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250530/k10014820861000.html
年金改革関連法案 衆院本会議で可決 参院へ
2025年5月31日 0時02分

〇新発3M短国0.40%台に上昇とな

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250530.htm
国庫短期証券(第1309回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1309回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。


1.名称及び記号   国庫短期証券(第1309回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日      令和7年6月2日
4.償還期限     令和7年9月1日
5.価格競争入札について
(1)応募額         9兆6,007億5,000万円
(2)募入決定額      3兆4,772億7,000万円
(3)募入最低価格      99円89銭3厘5毛
(募入最高利回り)   (0.4276%)
(4)募入最低価格における案分比率    84.2596%
(5)募入平均価格      99円89銭8厘3毛
(募入平均利回り)   (0.4083%)』

とまあそういうことで、3Mカレント平均も0.4%台乗せになりまして、その前の週(5/23)が0.3818/0.3934でもうひとつ前(5/16)が0.3677/0.3793で、その前(5/9)が0.3979/0.4090でして、5/2の入札という連休の中にあった奴が0.4051/0.4249でして、0.40%台の入札をやったのは5/2以来、ということになります。

まあ何でですかねえと言われましてもイマイチ良くわからんというかただの需給で、しかも相場観と関係がなさそうな需給だったりするところではあるので何が何やらという感じではありますが、避難民が短期ゾーンに来ないような状態だと需給は若干緩むかなとか思いますが、なにせ現状は日銀の各種資金供給と規制対応のニーズでこのありさまでして、短国が普通に1M0.50%2M0.52%3M0.54%位の世の中になっていただきますと市場も平和だし純粋な運用資金も入ってくるし、とは思いますし、超長期の減額ガーとか言ってるなら短国増発したら(超極端なのでそうはいかんですけど)どうよとは思ってしまいます(超長期の減額なんぞ短国からみたらハナクソみたいな額ですからぬー)。

一応売買参考統計値を確認しますと
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(5/30引値)
国庫短期証券1306 2025/08/18 平均値単利 0.400
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.400
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.405

(5/29引値)
国庫短期証券1306 2025/08/18 平均値単利 0.400
国庫短期証券1308 2025/08/25 平均値単利 0.400
国庫短期証券1309 2025/09/01 平均値単利 0.400

まあ元々ここもと短国の引けは少し甘めに推移していて入札前の時点でカレント0.40%とかだったのですが、一応平均落札並の引値をつけている格好になっていますので、今週の推移と今週の3Mの結果でも見てみますかってな感じです。

6月発行の短国って足が9月になるのですが、足が9月の後ろになってくると償還時の再投資の時に期末要因がどうのこうのみたいなのがあるかもしれない(ないかもしれない)ので微妙に使い勝手が悪くなる(四半期末の中では6月末は毎度基本は無風、まれに事件が起きるけど)というのがあったり、

東京レポレート
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

        O/N T/N  1w  2w  3w  1m  3m  6m  1y
2025/5/26 0.492 0.491 0.476 0.474 0.472 0.473 0.481 0.497 0.573
2025/5/27 0.491 0.488 0.475 0.474 0.472 0.473 0.481 0.498 0.572
2025/5/28 0.495 0.488 0.476 0.474 0.472 0.473 0.481 0.499 0.572
2025/5/29 0.488 0.467 0.473 0.473 0.471 0.472 0.481 0.500 0.572
2025/5/30 0.496 0.491 0.477 0.474 0.472 0.473 0.482 0.500 0.572

てな状況でGCのターム物もまあ安定推移しているのですが、ちょっと見ますと29日のトモネ、すなわち月末月初の翌日物の所はレートがちょっとではあるけどしらっと下がっておりまして、まあ決算期は決算期であるのは明白なんですけど、それだけではなくて月末になると月末要因が発生する、というのが仕様になっていますねえ、というのは見える訳でして、GCとか短国界隈の安全資産へのニーズが強いのと、月末のバランスシート抑制ニーズが結構あるんだな、というのは見て取れるかなと思います、知らんけど。


〇5月FOMC議事要旨のさらに続きです

HTML
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20250507.htm
PDF
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20250507.pdf

引用は例によってHTMLから。

・金融システムの安定性に関する事務方の報告ってのがありまして(半年に1回バージョン)

『Staff Review of the Financial Situation』という所があるのですが、この後半に普段は出てこないものがありましたので引用しますわ。

『The staff provided an updated assessment of the stability of the U.S. financial system and, on balance, continued to characterize the system's financial vulnerabilities as notable.』

この「an updated assessment of the stability of the U.S. financial system」ってのは半年に1回アップデートされていまして、前回が昨年11月のFOMC、前々回が昨年5月のFOMCでして、こちらはFEDが出してるFSRってのがありまして、そのアップデートに合わせてアップデートって感じですので、FSRを見てないアタクシにも親切設計(ソウジャナイ)

https://www.federalreserve.gov/publications/financial-stability-report.htm
Financial Stability Report

ちなみにどうでもいいのですが、4月10月に出せばええじゃろと思うのですが、なんか年によって発行月が4月または5月/10月または11月、ってなっているのがアメリカンらしいアバウト感覚だなって思いましたw

でまあ金融システムでしすけれど「continued to characterize the system's financial vulnerabilities as notable」ってことで「脆弱性は引き続き顕著」ってしていまして、「continued to characterize」って言ってるくらいですから昨年11月はどうだったかというと、詳しくは議事要旨(https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20241107.htm)見てちょんまげと思いますが、同じく「The staff provided an update on its assessment of the stability of the U.S. financial system and, on balance, continued to characterize the system's financial vulnerabilities as notable.」と言っておりますわ。

じゃあ何の脆弱性が顕著なのかと言いますと、

『The staff judged that asset valuation pressures were notable. Equity valuations declined but still stood at the upper end of their historical distribution, spreads on high-yield corporate bonds widened and stood around the middle of their historical distribution, and housing valuations remained quite high amid increased risks to the economic outlook and the appearance of ebbing risk appetite.』

資産価格市場のバリュエーションの脆弱性がノータブルとおっしゃっておられまして、株価とかハイイールド債のクレジットスプレッドなどが割高じゃろとのご指摘。

・・・・・まあこれ国情(というかマスメディア)の違いがあるから何とも言い難い面はあるのですが、日本だとFSRって毎度「金融システムは安定性を維持」というのを前面に出していて、「脆弱性はノータブルで特に株価や低格付けの信用スプレッドが云々」ってのを目立つように言えない(言うとメディアが鉦や太鼓を鳴らして馬鹿騒ぎして永田町とかいう所の馬鹿集団が更に輪を掛けて日銀をお呼び出ししたりしてエライことになる)という面で同情すべきところはあるのですけれども、逆にFEDは毎度これを堂々言っても別にそれが大騒ぎになるわけではない、ということでして、これ鶏と卵みたいなところがあって、日本の場合は率直な指摘をすると何故か無駄なハレーションが起きてしまうので大本営発表チックな発表になってしまう、ってのプルーデンスもそうだし何ならマネタリーポリシーだってそういう感じになっているのは、日銀が悪いとまあワシはいうものの、社会全体としての問題もあるわな、とこのFEDのド直球な表現を見て思うのでした。

でもってその他の脆弱性ですけれど、

『Vulnerabilities associated with business and household debt were characterized as moderate.』

企業や家計の負債から来る脆弱性はモデレートである(なお前回11月もモデレート)と。

『The ability of publicly traded firms to service their debt had improved slightly, partly reflecting stable earnings. That said, riskier firms continued to face high debt service costs relative to historical ranges. Household balance sheets remained solid overall, though delinquency rates on auto and credit card loans were elevated.』

前回11月はここの部分の説明がもうちょっと長くて、「非金融企業におけるレバレッジの水準がヒストリカルスタンダードから見て高い」という記述があったのですが、今回はその話は無くて、その代わりに「riskier firms continued to face high debt service costs relative to historical ranges」ってのが入っていて、どちらかと言えば二極化チックな話をしているのと、今回は家計に関してもオートローンやカードローンの延滞が増えているという話がありますな(前回はホームエクイティに余裕があってモーゲージの延滞は低い、って話をしていました)。

次がレバレッジの話で。

『Vulnerabilities associated with leverage in the financial sector were characterized as notable.』

これまた前回11月と同じ総合評価。

『Regulatory capital ratios in the banking sector remained high. Banks, however, were still seen as exposed to some interest rate risk. In the nonbank sector, leverage at hedge funds stayed high.』

前回ここの部分の説明が割と長かったのですが、今回は2分割されていまして(書いてあることは全体的には前回とそんなに変わらん)、後半に

『Vulnerabilities associated with funding risks were characterized as moderate.』

ファンっディングに関する記述が入ってますね(モデレートだからやばいという認識ではないけど)

『The liquidity mismatch of assets and liabilities at mutual funds was evident amid substantial outflows in the first week of April. Nevertheless, the outflows were not sustained and did not ultimately strain overall liquidity in the markets in which the mutual funds invest. Banks reduced their reliance on uninsured deposits notably since the end of 2021.』

ということで、まあこれはこの前のトランプ云々で市場が暴れたから注目点に入れてるんだろうなあ、とは思いました。このコーナーはここまでですが、経済物価に関する本編はネタにできたらします(今日は時間が無いので勘弁)