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2025/05/15

お題「雑メモ少々(グールズビー発言とジャパンの超長期)と展望レポートBOXの威勢の良い話です」

ほほう
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-14/SW99U9T1UM0W00
米企業、利回り上昇を好機とみて米国債に殺到−資金運用の長期化図る
Liz Capo McCormick
2025年5月15日 2:03 JST


〇マクラにしようと思ったら意外に長くなってしまったのでちょっとしたメモ(シカゴ連銀グールズビー総裁)

これはw
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-14/SW93SRDWLU6900
FRBは安定した舵取りを、株価や政策の変動下でも−シカゴ連銀総裁
アンスティー・クリストファー
2025年5月14日 22:57 JST

→「株式市場や政策発言の日常的な振れに反応するべきではない」
→経済データは景気が順調なことを示唆−NPRとのインタビュー

『グールズビー氏は14日朝に放送された米公共ラジオNPRのインタビューで、「米金融当局の役割は、株式市場や政策発言の日常的な振れに反応するのではなく、安定した手綱を握り続けることだという点を忘れてはならない」と発言。「少なくとも順調に行っていることを示唆するデータが続いている」と述べた。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほう。

『経済データを「われわれは依然として息を潜めて見守っている状態だ」とグールズビー氏。4月のような状況では「ある種の麻痺状態に陥ることもあるが、それが数値に表れるまでには時間がかかる」と説明した。』

そらそうよ。

『「多くのノイズがある」が、「これを乗り越えることができれば、表面下には底堅いハードデータに裏付けられた経済がまだ存在していると感じている」と語った。』

まあそこはこれからのデータを見て結論が変わるかもしれませんね。

『その上で、「これほど短期的な変動が大きい中で、企業や中央銀行が長期的な事柄について性急に結論を出すことを期待するのは現実的ではない」と指摘。「非常に難しい環境だ」と続けた。』

>長期的な事柄について性急に結論を出すことを期待するのは現実的ではない
>長期的な事柄について性急に結論を出すことを期待するのは現実的ではない
>長期的な事柄について性急に結論を出すことを期待するのは現実的ではない

ベースラインシナリオを下げた中央銀行いやなんでもありませんwww

・・・・・とまあそれだけの一発ギャグでした。まあFEDの場合は結論を出す=利下げ=トラ公大歓喜もインフレ再加速リスク高まる=FEDの存在意義が問われる、という流れなのでそもそも明確に経済がアカンですバイとなれば別だが変にフォワードルッキングに「結論を出す」わけにいかない、という事情があるのでどこぞの中央銀行とは立場が違う、ってのはあるんですけどね!!!!!!


〇超長期ゾーンェ・・・・・・・・(俺様用市場備忘メモ)

いやもう何なんですかこのイールドカーブ

一昨日
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/C7SZNSKJ7BNONIICDF3RVXDY3M-2025-05-13/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物続落、米中合意でリスクオン 長期金利1カ月超ぶり高水準
ロイター編集
2025年5月13日午後 3:28 GMT+9

めんどくさいから途中を全部かっ飛ばしますが

『TRADEWEB
     OFFER  BID   前日比 時間
2年   0.706  0.714   0.054 15:10
5年   0.971  0.979   0.065 15:10
10年  1.441  1.448   0.056 15:08
20年  2.341  2.351   -0.037 15:09
30年  2.874  2.884   -0.069 15:09
40年  3.345  3.349   -0.086 15:09』

からの昨日は、
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/EUBBFD5BPFIHFAYIW4SOI43Z74-2025-05-14/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物6日ぶり反発、一進一退 長期金利小幅高の1.45%
ロイター編集
2025年5月14日午後 3:29 GMT+9

これまた途中を割愛しましてロイターさん謹製の引け時点の気配だけ出しますと

『TRADEWEB
     OFFER  BID   前日比 時間
2年   0.699  0.706   -0.008 15:09
5年   0.962  0.968   -0.01  15:02
10年  1.444   1.45   0.003  15:08
20年  2.354  2.364   0.014  15:17
30年  2.901   2.91   0.035  15:16
40年  3.354  3.365   0.022  15:17』

ということで連日ツイストな上に2日でこのジャイアントスイングぶりでして、もうおまいら何やってますねんという世界ではあるのですが、ここまで動かれると何も出来ませんがなの世界になっているような気がしますけれども、じゃあ日銀が買えばよいのかというと多分というかほぼ間違いなく逆効果ですし、これってもちろん超長期ゾーンの金利が中長期的な均衡物価水準(つまりは2%物価上昇)に成長率やらタームプレミアム(やら財政プレミアム)やらを乗せて考えられる水準から見たらお前何なんだよというイールドだから実需持ち切り勢が出てきにくくて、さっぱり落ち着きませんってお話なんですかねえ、とは思ってしまうので、そこに日銀の買入を入れる(既に入ってはいますけど)と状況は超短期的には改善するけれども中期的にみたら明らかに悪化するじゃろというお話。

てかまあ超長期のうち20年ってマイナス金利だ何だと言ってる期間に預金金融機関みたいに本来負債の足がそんなに長くない人たちがマイナス金利とかいう焼け野原政策によって戦争避難民と化してやって来て、その結果金利押し下げ効果が出てしまったとか、そういうのもあったと思いますし(個人の見解です)、超長期のスイングばっかり目立ちますが、そもそも論として日銀の長期国債買入が全体的に過大なのと、バランスシートの大きすぎに起因する超過準備のとんでもない莫大さによって、イールドカーブの起点の金利だって無駄におしさげられている感が強い(2年とか)訳で、まあ要するに日銀の買入による金利押し下げ効果が無駄に効いているから市場が機能したいのに機能できていない感がある、とかいうのはまあ「それってあなたの感想ですよね」と言われるとぐうの音もでませんけどまあそういうことじゃろ、とは思う訳でして、つまりは輪番減額ペースを落とせとかいうのは愚の骨頂だと思いますという話だが、昨日ネタにしましたように、主な意見を見ますと買入に関しては「市場に対して短期的なリアクティブな反応をするのはイクナイ」という見解になっているようなので、その辺は日銀の判断に希望は繋いでおこうかと存じます次第。

というだけのメモでした。超長期大暴れに関しては皆様の方がお詳しかろうという所でなんか偉そうですいませんでした(ジャンピング土下座)。


〇それはそうと展望レポート全文の方のBOX鑑賞の続き(その2):やっぱり「構造的に賃金と物価が上がりやすい」ネタです

展望レポート背景説明を含む全文
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504b.pdf

45ページ(PDFだと47枚目)にある『(BOX4)最近の賃上げと価格転嫁を巡る動向 』を拝見しましょうの巻です。

『本BOXでは、最近の正社員の賃金上昇について様々な指標で確認したあと、賃金設定と価格設定の関係性を企業レベルのデータから考察する。』

ほうほう。

・ベースアップ動向に「構造的な変化」の可能性があるそうでイイハナシダナー

『2025 年度のベースアップ率について、連合の集計値をみると、4 月 17 日公表の第4回集計時点で+3.79%と、前年の同時期(+3.57%)を幾分上回っている(2024 年度の最終集計:+3.56%)。』

さいですな。

『マクロでみたベースアップ率を被説明変数、物価上昇率・労働生産性・中長期インフレ予想を説明変数とする簡単な関数を 1992 年度から 2022 年度までのデータを用いて推計し、』

さらっと書いてあるんだがこの「中長期インフレ予想」ってなんの数字を使っているのかがこのボックスの図表にある説明(脚注など)をみても分からんというが諸葛孔明の罠のような気がしますがとりあえず気が付かなかったことにして読み進めますと、

『2023年度以降のベースアップ率の同関数の予測値を求めると、ここ3年間のベースアップ率の実績値は、関数予測値をはっきりと上回っている(図表 B4-1@)。』

ほうほうほう。

『このことは、近年のベースアップ率の決定メカニズムが、デフレ期から構造的に変化している可能性を示唆している。』

キタコレ!!!

『構造変化を示すひとつの可能性としては、BOX3で指摘したとおり、正社員を中心に人手不足感が強まり、転職市場も拡大するもとで、これまで労働需給の影響を比較的受けにくかった正社員の所定内給与にも、上昇圧力がかかるようになってきたことを指摘できる(図表 B4-1A)。』

てな訳でアタクシが一昨日最初にこれって言ったのがBOX3だったりしたのの伏線を回収しておりますが、前回の展望レポートではもっと目立つ格好で構造的におちんぎんが上がるようになってきましたですお、という話をしておったのですが、今回はこのBOX4とさっきのBOX3がここに該当しますわな、というお話。

まあ正社員の所定内給与の上昇圧力と言っても、「正社員(年寄りは除く)」とかそういう世界だったりしたりしなかったりとか書いていると悲しくなるので先に行きましょうwwwww


・でまあ全般の賃金カーブも底上げに向かうそうな

『正社員で強まっている賃金上昇圧力は、新卒市場においてもっとも顕著に表れている。』

裏山鹿〜

『実際、各種企業情報に基づくと、2025 年度の初任給は、昨年度に続いて水準を大きく切り上げているとみられる。初任給の企業別分布をみると、2021 年度頃は 21 万円あたりの最頻値に集中する比較的裾野の狭い分布となっていたが、ここ数年は、上昇方向に裾野の拡大を伴いつつ、分布がはっきりと右方シフトしている(図表 B4-2)。』

ほうほうほうほう。

『初任給の引き上げは、年功賃金カーブ上で新卒に近い若年層の賃上げにも波及すると考えられる。』

ねえねえジジイのおちんぎんはジジイのおちんぎんは(見苦しいにも程がある人)

『こうした動きを起点に、年功賃金カーブが一段と上方改定されていけば、平均的な賃金水準も切り上がっていく可能性がある。』

まあカーブはツイストフラット(書いてて情けなくなってきたwwwwww)


・中小企業への賃上げの広がりに関して

てなギャグはさておきまして、

『正社員の賃上げの動きは、労働組合のある大企業から、ややラグを伴うかたちで、中小企業にも波及している。』

この話は決定会合議事要旨とか主な意見とか(まあタイミング違うだけで同じもんだが)でも言及されていますな。

『2024 年度の賃上げ実績を振り返ると、@労働組合がある企業の賃上げ率は、組合のない企業よりも高かったほか、A労働組合のある企業の中で比較しても、規模が大きいほど賃上げ率が高くなる傾向がみられる(図表 B4-3)。』

マジかそんなに労働組合って力あるんかい、って感じですが、単にそれは「労働組合が組成できるほどの規模の企業ほど賃上げの余力がある」、というAの話なだけで@はただの相関なだけではないかという気がせんでもないのですがまあいいです。

『2025 年度のベースアップ率(連合第4回集計)をみると、中小企業(300 人未満)におけるベースアップ率の上昇率は、大企業より大きくなっており、正社員の賃上げの動きは中小企業にも着実に広がっている姿が窺われる。』

しかしまあ何ですな、そういう賃上げの広がりを定着するのを見たい、ってのはまあ言いたいことは分かるのですが、その間延々と物価の上振れが続いて実質所得が伸びませんって状態が続いてしまうと、そもそも何のために2%物価安定目標をやっているんですか、という話になりゃあせんですかねえとも思う訳で、まあそれこそ「2%への招待状」からこの方(というか黒田緩和直前のハマコーのダイヤモンドオンラインインタビューがまさにそうですが)ちらちらと出ていますように、2%物価上昇の世界ってより優勝劣敗がワークしやすくなる(からこそマクロ的に見た資源の適正配分が進みやすくなり、その結果マクロ的に生産性の向上だったり経済の成長が促進されやすいんだが)訳で、その辺をオブラートに包むだけならまだしも、置物一派を始めとして「物価2%目標達成したら世の中皆が幸せに」みたいな虚構を振り撒いてしまって、その共同幻想が全然解消しない状態だからこそ、いざ物価が上がってみたら「物価高対策で財政を」とか頭おかしい事をおっぱじめている訳ですが、虚構を振り撒いた連中は財政出せ財政出せ減税しろ減税しろなのですからあいつら本当に碌でもないですわな。

・・・・すいません思わず話が逸れてしまいました

でまあそうやって中小にもおちんぎん引き上げの動きが、という話の続きが価格転嫁の話になっていましてですね、


・価格設定行動に関してですが「価格を上げてもたいして問題にならん」の定着が進んでいますという話



『以下では、こうした企業の賃上げ姿勢の積極化と、最近の価格設定行動がどのような関係にあるかを、企業レベルのデータを用いた実証分析によって確認しておく。』

ほー。

『具体的には、POSデータから、個別企業が販売する商品の平均価格を作成したうえで、これを法人季報の企業別の個票データとマッチングしたデータセットを構築した33。』

でまあ『図表B4-4:販売価格引き上げの影響』になるんですけど、これでどの程度のカバーができているのかとかいうのは気になりますけどまあ先に行きましょう。

『これを用いて販売価格引き上げ時の企業行動をみると、近年は値上げした際の販売数量の落ち込み幅が、コロナ禍前よりも小さくなっている(図表 B4-4@)34。』

脚注にありますが、『34 通常の個別需要曲線を念頭に、マクロのインフレ環境等を時間固定効果でコントロールしながら、自社製品の相対価格の変化がどれほど販売数量を変動させたかを推計した。』とのお告げで、『図表B4-4:販売価格引き上げの影響』の『@販売数量』に相当します。

『これは、ここ数年、自社が値上げした場合の顧客の価格弾性値(自社製品の相対価格が1%上昇した際、販売数量が何%減少するかを表す値)が低下している可能性を示唆している。』

値上げしてもそんなにダメージは食らわん、と来てからの、

『また、今次の物価上昇局面では、販売価格を引き上げた企業の価格マークアップは拡大する傾向にあり35、こうした企業では販売数量1単位当たりの利潤(ユニット・プロフィット)も増加している可能性が示唆される(図表 B4-4A)。』

ダメージ食らわんどころか収益が増えて(゚д゚)ウマーである、という可能性もありまっせ、というイイハナシダナー(消費者的にはタマランチ会長という説は大有りだが)。

『また、販売価格を引き上げた企業の一人当たり人件費をみると、足もとでは、販売価格を引き上げた企業ほど、賃上げ率も高い様子が窺われる(図表 B4-4B)。』

あら素敵。ということで、

『今次局面では、価格マークアップの引き上げに成功した企業は、ややラグを伴って賃金支払も増加させる傾向が、中小企業も含めて広がっている可能性が示唆される。』

つまり・・・・・・

賃金と物価の好循環(ただしマークアップ引き上げができる企業とその従業員のみ)という話ではあるのですが、この()の部分に一昨日ネタにしたBOX3で示されるような労働力の移動が起きることによって、マークアップできない企業はマークアップできるように頑張っていただくなり、それが無理なら粛々とご退場いただくなり、ってのがまあ「賃金と物価の好循環」ですわな、という話ならそりゃまあそうですよね、という話ではありますけれども、まあ問題なのはこの「賃金と物価の好循環」ってのがあまねく皆さんに行き渡るかのような幻想を与えているんじゃないの、ってところなんだろうなあ、とか思ったり思わなかったり、ってところかと思います。

まあゆうてこういう形で賃金と物価の好循環(ただしマークアップ引き上げができる企業のみ)が確認されてきたら、それこそそれは物価安定目標達成じゃろ、と考えますと見通し期間の後半とかいうここから1年半も待つ必要あるんかいな、とは思ってしまうこちらのBOX3とBOX4なのでありました、というのがこのシリーズのアタクシの私家版結論ということにしておきます。






2025/05/14

お題「4月決定会合主な意見:出だしの強烈な悲観意見とそれに対するランボー怒りの抜刀の対比がおもろかった」

これはこれは
https://www.mof.go.jp/about_mof/recruit/mof/jimuhosa/20250513_rizai.tyousa.html
専門調査員の募集(理財局国債企画課(調査係))

『現在、理財局国債企画課(調査係)において専門調査員を募集しています。仕事内容・勤務条件等は以下のとおりです。』

ということで、

『4.応募資格
金融機関等において資金運用・金融取引に係る専門的知識(実務経験数年)を有していると認められる者』

マジかここに数年どころか四半世紀いやなんでもありません。


〇4月決定会合主な意見は中々の面白さでしたな

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2025/opi250501.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2025 年 4 月 30 日、5 月 1 日開催分)1

・ものすごい勢いでハトハトチキンになったことに対するランボー怒りの意見が非常に面白いというか素晴らしい

今回の主な意見、一番面白かったというか素晴らしかったのはこの二つの意見でしょ。ということでまずは順序をさておいて引用しますけど、

『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』の8個目の意見ですけどね。

『・ GDPに占める輸出の割合等をみると日本の貿易依存度はそこまで高くないことから、米国の関税政策の動向だけでなく、国内要因にも注目して、冷静に金融経済の状況判断をしていきたい。』

>冷静に金融経済の状況判断をしていきたい
>冷静に金融経済の状況判断をしていきたい
>冷静に金融経済の状況判断をしていきたい
>冷静に金融経済の状況判断をしていきたい
>冷静に金融経済の状況判断をしていきたい

・・・・・・・・(;∀;)イイシテキダナー

でですね、ご案内のように今回はなんせフォワードルッキング(笑)にベースラインシナリオを引き下げるわ前回まで上振れと言ってた物価を下振れと言うわ、という大胆なプレイが出ていた訳ですが、この後でネタにしますが、この「経済情勢」のところとか「この世の終わり」みたいな感じの意見が並びまくっておりまして、なるほどここまで「この世の終わり」みたいな雰囲気だったのか、と思いながら読んでいる所の最後の方(最後から2番目)にこの意見が出てきたので思いっきり吹いてしまいました。

つまりですね、この意見を提出した方から見たら、経済情勢に関する意見の最初の部分、つまりいつもの編集順序からしたら正副総裁辺りの意見と思われるものが冷静さを欠いたハトハト総悲観状態で、「お前らアホかいいから落ち着け」とたしなめたい、というのが非常に良く伝わる意見でして、この「冷静に」ってのがもう素敵としか言いようが無いのですが・・・・・・・


たぶんさっきのと同じお方だと思うのですが、『U.金融政策運営に関する意見』の6番目にも素敵な意見があるんですよ。

『・米国経済減速から利上げの一時休止局面となるが、米国の政策転換次第で追加的な利上げを行うなど、過度な悲観に陥ることなく、自由度を高めた柔軟かつ機動的な金融政策運営が求められる。』

>過度な悲観に陥ることなく、
>過度な悲観に陥ることなく、
>過度な悲観に陥ることなく、
>過度な悲観に陥ることなく、
>過度な悲観に陥ることなく、

(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー

ということでですね、まあ同じお方がランボー怒りの抜刀斎となっておられるのではないかと存じます次第なのですが、要するに「過度な悲観に陥って冷静さを欠いた議論が行われている」という事態が先般の金融政策決定会合では行われていた、という所だったんでしょうなあ、というのが活写されているという事で、言葉の力、というのをここまで感じたことはない、という「主な意見」でありました。


・でもって冷静さを欠いた悲観のハトハトチキンは誰だったのでしょうかねえ(・∀・)ニヤニヤ

てな話になるわけですが、この「主な意見」。後半の方になると総悲観みたいだったのから少しマシになってくるので、決定会合後の記者会見がどう見てもハトハトチキンだったのを踏まえれば、こんなの要するに総裁と副総裁(のうち誰かさん)がハトハトチキンで冷静さを欠いて過度な悲観に陥って議論をリードしたのか強引に押し通したのか、過度な悲観のハトハトチキンに腰抜け政策委員(なお中村審議委員は信念のハト派なので腰抜け呼ばわりからは除外されます)が迎合オブ迎合したのか、その合わせ技なのかは分りかねますが、まあその流れに対してランボー怒りの抜刀斎が抜刀されたということで割と画期的だったかもしれないな、と思うのでありました(あくまでも個人の妄想ですのでその点はよろしゅうに)。

まあ半分くらい妄想ですけどねwww

では通常ベースに戻って順に確認してみましょう。


・経済のパートの冒頭にこの世の終わりみたいな意見が並んでいるというのがもうね

『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』の冒頭がとにかくこの世の終わりみたいな意見が並んでいるのには呆れました。

『・ わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。先行きは、各国の通商政策等の影響を受けて成長ペースは鈍化するものの、その後は海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくとみられる。』

これは公式見解だからまあどうでも良いのですが、

『・ 不確実性の増大が設備投資や家計消費に与える影響、米国への輸出量の減少や採算の悪化、世界的な景気悪化や円高が対世界輸出に与える影響、株価下落の逆資産効果などの負の需要ショックが見込まれる。資源価格下落等に伴う正の供給ショックも見込まれるが、需要ショックよりは小さい。全体としては、米国の関税政策は、わが国の経済・物価のいずれにも下押し方向に働く。』

思いっきり経済も物価も下押しなんですって。

『・ これまでの見通しは、米国の関税政策によって、大きく揺るがされている。米国の関税引き上げは、わが国の経済と物価を下押しする。それは、わが国の輸出を下押しするだけでなく、貿易の縮小を媒介として、世界経済全体を下押しするためである。』

世界経済下押しまで決め打ちしている、というこの世の終わりシリーズが2本続いていて、これって前の方の順序に出ているというのを勘案しますと総裁副総裁なんじゃないのって思ってしまうわけですな。

でもってこの後。

『・@米国の関税政策の着地とAそれへの企業の対応は二重の意味で流動的であり、現時点での見通しは仮置きに止まる。今後の推移次第で、見通しには大きな修正があり得る。』

という冷静なのがあるんですけど、だったらそもそも何で今回ベースラインシナリオを下げたのかと小一時間問い詰めたい。

『・米国では、新政権発足以降、経済成長にマイナスに働く関税等の政策が先行しているが、今後、減税等の政策に転じた場合、成長率上振れもあり得る。』

『・相互関税は世界各国に賦課されるため、日本企業の相対的な競争条件悪化には繋がり難く、収益減少が限られる可能性もある。』

という意見もあるわけで、こんなに意見があって、かつさっきの抜刀もあるんだから(最大で4名ですが、何となくこのうちの一つがさっきの抜刀の人のような気もしますのでもしかしたら3人)、衆寡敵せずでベースラインシナリオを下げるような展望レポートになったって感じでしょうかねえ。

でまあこれは文章からしてたぶん中村審議委員。

『・米国の関税引き上げによる影響について不確実性が高い状況だが、高関税が長期化すれば、直接的影響を受ける輸出企業を中心に、事業再編やバリューチェーン強靱化のための取引先の選別、多層化した下請構造の圧縮、生産拠点の米国シフト等が進む惧れがあり、これが、雇用の7割を占め経営体力が比較的弱い中小企業に影響を及ぼす懸念がある。』

まあこれはさっきの過度な悲観おじさん(またはおばさん)とは違いますので一つの意見。

でもってこの次がさっきの抜刀斎な訳ですが、

『・GDPに占める輸出の割合等をみると日本の貿易依存度はそこまで高くないことから、米国の関税政策の動向だけでなく、国内要因にも注目して、冷静に金融経済の状況判断をしていきたい。』

「冷静に」ってのが強烈な砲撃になっているのは先ほど申し上げた通り。

『・今のところ、国際金融資本市場で顕著な dash for cash の動きは見られないが、引き続きノンバンク金融仲介機関(NBFI)の動向などを注視する必要がある。』

まあここにしか入れる場所が無いのでここに入っていますが、NBFIに関しては今回のFSRでも話になっていましたし、BIS-FSBだったと思いますけど、今回はこの話が出ていましたわな。


・物価のパートを見ますと何でこれで物価見通し下振れとリスク分布も下振れに一気にジャガーチェンジできるんでしょ

まあ経済に関してはそりゃ関税が上振れにはならんから下振れという話で、問題はその程度ということなんですけど、物価に関しても今回思いっきり下振れしたので、さてこれはなんの判じ物、というのを確認してみましょう。『(物価)』のパートですね。

『・ 消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』

『・ 物価見通しについては、展望レポートに前提として記載された関税政策等の影響のもとでも、現時点では、引き続き賃金の伸び と 労働需給の引き締まりに支えられ、振れを伴いつつも、見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると想定している。』

この辺は公式見解。

『・ 米国の関税政策は、わが国経済を貿易面・コンフィデンス面から下押すと考えられる。物価面では、経済の減速とサプライチェーンの混乱という上下双方向の要因があるが、いずれも賃金面ではマイナス要因となりうるため、基調的な物価には下押し要因となる可能性が高い。』

賃金にマイナスだから、っていうのも割と斬新な切り口な希ガス。

『・ 物価は 2027 年度まで2%近傍を維持する見通しであり、更に、グローバルサプライチェーンの混乱等の物価上振れリスクがある点に留意が必要である。』

・・・・筈なのですが展望レポート見ると下振れリスクって話が強調されていましたわな。さらに

『・関税ショックは短期的な価格ショックと考えることもできるので、長期的には実質的な効果を持たないという理論上の結論はありうる。したがって、現時点では、やや長い目でみれば、米国の関税政策とその不確実性が、基調的な物価上昇率や潜在成長率に影響を与えるとはみていない。』

まあそういう話もあるわな。

ということで物価ってこの4つしか意見が無いんだが、何でこれしかないのにあの展望レポートの結論になっているのかがさっぱり分からんのですが、アタクシの大妄想によりますとハトハトチキン音頭の踊り過ぎで冷静さを欠いた過度な悲観に陥ったハトハトチキンのトップ連中が以下同文。


・金融政策に関する意見になるとハトハト音頭の演奏が止まる件についてwwwwwww

『U.金融政策運営に関する意見』ですけれども、この金融政策運営に関する意見で何であの総裁記者会見になるのかが益々意味不明になるわけです、ということで鑑賞しますと、最初の方は公式見解になるんですけどね、

『・ 経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる。そのうえで、こうした見通しが実現していくかは、不確実性がきわめて高いことを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要である。』

まあ予断持ってるから何のデータもでてこないのに堂々とベースラインシナリオを引き下げたんですけどね!!!!!

『・ 見通しは2%の「物価安定の目標」を実現する姿となっており、実質金利は大幅なマイナスであるので、利上げしていく方針は不変である。その際、前提となる関税交渉の帰趨を含めて、不確実性がきわめて高い中で、見通し自体が上下に変化しうるため、見通し実現の確度、リスクを見極めていく必要がある。』

まあそりゃそうだって感じですが、実質金利大幅マイナスなんだから利上げするじゃろ、というのは結構なご意見ですが、以下こんな感じで真人間っぽい意見が続きましてですね、

『・ 経済・物価の見通しを巡る不確実性は高く、その確度は従来に比べて高くはない。先行き、見通しの上振れ・下振れ双方の可能性を点検したうえで、適切に政策を運営していく必要がある。』

『・ 米国の関税政策の展開がある程度落ち着くまでは様子見モードを続けざるを得ない。』

様子見モード、とか何ですかそのネット民みたいな言葉はと思いましたが、まあこの辺の意見はそりゃそうだという話ではあるんだが、だったら何で今回決め打ちでベースラインシナリオの引き下げを拙速に行ったのかがまるでよくわからない(しつこくいう人)。

次はこれ多分中村審議委員だと思います。

『・米国の関税政策により、日本企業は行き過ぎたコストカット、賃上げ・投資の抑制といった縮み志向や産業の空洞化に陥る可能性も考えられ、積極化していた企業マインドや倒産の傾向に変化がないか注視する必要がある。日本経済への影響を慎重に見極める必要があるため、現状の金融政策を維持することが適当である。』

過度な緩和は資源配分の非効率を招くリスクがあると思うので、言いたいことは分かるんだが、それが今の金融政策を維持することを正当化しないと思うんですけどね。まあこれは見解の相違の世界だけど。

でもって次がさっきご紹介した抜刀で、

『・米国経済減速から利上げの一時休止局面となるが、米国の政策転換次第で追加的な利上げを行うなど、過度な悲観に陥ることなく、自由度を高めた柔軟かつ機動的な金融政策運営が求められる。』

ランボー怒りの抜刀という話は先ほど申し上げた通りです。

でもって次。

『・「物価安定の目標」の実現に向けて最も重要なのは、@企業の賃金・価格設定行動、A企業や家計の予想インフレ率がどうなるかであるが、以前の賃金・物価が上がりにくい状況に戻っていくリスクは小さい。このため、2%の「物価安定の目標」に向けて上昇してきた基調的な物価上昇率が下方に屈折してしまう可能性は小さい。』

まあそうじゃろうな、とは思うが根拠が書いてないので何んともかんとも。

『・わが国では金利の下限制約から脱却して1年以上経つが、足もとにおける経済と物価はしっかりとしており、こうした中、現在の金融政策スタンスは、とても緩和的な状況にある。』

まあ結論は良いんだけど「政策金利0.5%」ってのは金利の下限制約ひ引っかかって言う状態と変わらんじゃろと思う訳で、そういう言い方は短期金利が1%になってから言って欲しいですねw


・情報発信に関して意見が2つありましたので

『・どのような見通しを立てたにせよ、米国の関税政策の展開によって、良い方にも悪い方にもすぐに覆る可能性がある。それは、日本銀行の政策経路が今後いつでも変わり得ることを意味する。その点、当面、市場とのコミュニケーションにおいて十分に率直であるべきである。』

言ってることはご尤も。

だったら何も今回ベースラインシナリオ変えなくても良かったんじゃないかね、という気が思いっきりしますけれども、「上にも下にも変わりうる」っていう当たり前の指摘がちゃんとできていてエライというか、ハトハトチキン総裁がハトハト決め打ち過ぎるんだがwww

その点で言えばこの意見の「その点、当面、市場とのコミュニケーションにおいて十分に率直であるべきである。」ってのも市場とのコミュニケーションが誤魔化しやってねえか、って批判なのかも知れないなと思うとそれはそれで面白い。

『・市場は、日本銀行の従来からの基本方針を内外の情報にあてはめて、日本銀行からの直接的な示唆を俟つことなく、利上げ時期についての見方を形成し、自ら修正し続けている。こうした状況を維持できるような情報発信の仕方を続けることが望ましい。』

これもご尤もなんですが、とにかく今の日銀って隙あらばしょうもない「直接的な示唆」を受けた記事をメディアに書かせる、というのを得意技にしている訳でして、その点では今回の情報発信においてなんですが、「アベイラブルなデータがなんも無いのにトランプ関税を受けてベースラインシナリオを引き下げた」というのであれば「置き」についてもっと詳しく(関税がどのくらいになるとか、世界経済がどのくらい下押しするか)を示してくれないと、「こうした状況を維持できる」かどうかは怪しくなりますわな、というお話でもあります。

まあ世界経済に関してはIMFのWEO使った、といいたいんでしょうけれども、そもそも論として先般のIMFのWEOってあれどっからどう見ても「アメリカよ、お前らの政策そのままやると世界経済が大変な事になるんだ分かってるのか」って牽制をぶち込むという意図によってマイナス要素モリモリモリタウンにして鉛筆舐めまくってるじゃろ、としか言いようが無い物件で、あれをそのまま真に受けた対応は他の中銀してねえだろってなもんですけどね。


・国債買入に関しては変な動きはしなさそうには見ているんですが・・・・・・

最後に輪番に関しての話があるのですが、

『・4月の市場急変時に、超長期金利の大幅上昇など国債市場で年限別の分断が生じた。国債買入れの減額計画の中間評価に向け、年限別の需給動向や流動性、業態毎に異なる見方を丁寧に確認することが重要である。』

って話なんだが、その次の人はこんなことを言ってまして、

『・超長期債について、金利の先高観が強く市場が神経質な状況では、投資家は投資に慎重にならざるを得ない。中央銀行が市場を十分に考慮することは当然であるが、一方で、その時々の市場の意見に反応しすぎると、その柔軟性が却って予見性を低下させ、市場の不確実性をより高める可能性がある。日本銀行が市場に不確実性を招くことは極力避けるべきである。』

これは誰が言ってるのかわかりませんけど非常に良い意見過ぎて弟子入りしたくなるレベルでして、特にこの「その時々の市場の意見に反応しすぎると、その柔軟性が却って予見性を低下させ、市場の不確実性をより高める可能性がある。」ってのがまさにその通りって感じですわな。

特に今はもうYCCやっている訳ではないのですから、日銀が下手に意図的な市場介入をすると、市場はその意図的な介入を所与として行動しだすので、それこそ市場による価格発見機能とか市場機能を通じた効率的な資源配分とか、そういうものを阻害するだけでなんら良い話は無い、という事を認識して頂いて、YCC脳から脱却すべきだと思うのですが、まあこれに関しては日銀よりも市場の方がYCC脳のクレクレコジキムーブになっているのを自覚してるのかしてないのか知らんけど、見ていてお前それ市場の人間として言ってて恥ずかしくないのってツッコミをしたくなるようなコジキムーブなご意見が聞かれたりするのは非常に見苦しいと申しますか市場の恥だから市場から退場して頂きたいもんですわ、とあらぬ方面に砲撃するアタクシwww

まあそれは兎も角、輪番に関する意見の最初のについては、なんか若干微妙な気もしますけれども、別に意見として市場の短期的な意見にリアクティブに行動しろと言っている訳ではなさそうに見えますので、その意味ではこの「主な意見」を見る限りにおいて、日銀サイドのほうで今回の輪番の中間評価で変なYCCチックなムーブをしなさそうに見える(個人の願望入りです)のは結構なことだと思いました。

まあ超長期の需給がどうのこうのという問題ですが、それは日銀にケツ持ちをさせるという発想がQQEデフレ脳だし、大体からしてそれは財政ファイナンス脳なのでありまして、市場が消化できないレベルで国債発行しているんだったら、お値段が安くなる(金利が上昇する)ことによってしか解決できない訳で、それで発行コストが上がるのが嫌なら発行を減額して短期化するしかなくて、そんなの全部発行当局が何とかしろ案件ですわな。って最近の論調をチラ見すると輪番をどうしろというのではなくて市場の方でも発行サイドが何とかする話じゃろ、ってのが主流になっているようには見えますけど(個人の感想です)。


・しかし「冷静さを欠いて過度な悲観のハトハト音頭を直ぐに踊りだす」というのは・・・・・・・

とまあそんなところで「主な意見」の鑑賞なのですが、これ4月展望レートおよびその後のハトハトチキン音頭満艦飾の植田総裁会見と比較しますと冷静、というかハトハトチキン音頭を「過度な悲観に陥って冷静さを欠いて」踊っていた連中がいて、あまりにもそのハトハトチキン音頭がやかましいのでそれに引っ張られてあんなもんが出てきた、ということではあろうかと存じます。

とはいえ、展望レポート基本的見解(全文でもいいけど)の物価見通しは25年度下振れ6名、26年度下振れ5名(しかも下振れの5名が弱い数字を出している)ということなので、単にハトハトチキン音頭を上の方が踊っていただけではなくて、「過度な悲観に陥って冷静さを欠いて」一緒になって踊ったアホウがいるという事でもありますので、まあこの内容が思ったほどのハトハトチキンじゃなかったからといって安心できるもんでもないな、という感じですわ。

つまりですね、二つの相反する懸念があって、その1としては「こいつら結局隙あらばハトハトチキンじゃん」というのがまあ懸念される訳で、紙に書くと冷静な意見言ってるのに何であの展望レポートのリスクバランスチャートになるんだよ、ってなもんでして、まあ結局根はハトハトチキンなんだろうな、っていう懸念があるのですが、さらに問題だと思われる懸念その2は、「こいつら雰囲気でいきなり極端にドテンしやがるんじゃねえか」って話でして、いやまあこれまでもマイナス金利解除からこの方、毎度毎度ドテンドテンを繰り返すジャガーチェンジおじさんおばさんの集団だった、というのが植田日銀の得意技だったのですけれども、今回なんてもう「雰囲気で一気に弱気化した」としか見えないようなできあがりの展望レポート基本的見解を出してきている訳でして、逆に言えば雰囲気で一気にまたドテンしてくるかもしれない、という事でありますので、兎に角植田日銀は安定性に欠くとしか言いようが無いな、というのはまあ今更言われんでも分かっとるわというのはありますが、それにしてもまあひでえなと思うのでした。


と言ったところで今朝は時間の関係でこの辺で勘弁していただきとう存じます。






2025/05/13

お題「米中90日間先送りムーブで日銀どうするんじゃこれwww/展望レポート全文のBOXを鑑賞(その1)」

ほうほうそうですかそうですか
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250512/k10014803191000.html
政党支持率 自民26.4% 立民7.6% 国民7.2% 支持なし38.2%
2025年5月12日 19時29分

〇トラ公またもめだか師匠ムーブキタコレでクソ笑うしかないのだが(備忘メモと雑談)

・米中合意と言っても結局90日間の交渉期間を設けましょうの世界ではあるが

あらあらまあまあ
https://jp.reuters.com/markets/quote/USDJPY=X/
US Dollar / Japanese Yen FX Spot Rate
USDJPY=X

直近の取引 148.47 JPY
変化 3.13
変化% +2.15%
2025年5月13日の時点。値は少なくとも15分遅れで表示しています

てなわけで皆様ご案内の通りですが、前日に前振りがあったので既に昨日の時点でリスクオン気味の相場にはなっていたのですが、

前日の前振り
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/SCFKO4IKYJLSZE6SP4UASH2N3E-2025-05-11/
米中貿易協議で「大きな進展」、12日に声明 協議枠組み設置と中国
Emma Farge, John Revill
2025年5月12日午前 7:41 GMT

『[ジュネーブ 11日 ロイター] - ベセント米財務長官は11日、スイスのジュネーブで前日から行われた米中の貿易問題を巡る閣僚級協議で2国間の貿易戦争の緩和に向けて「大きな進展」があったと述べた。詳細は12日に説明するとした。』(上記URL先より)

ってところでしたが、昨日日本時間で多分16時くらいだったと思うのですが、共同声明出ましたよのニュース出てリスクオーンとなった次第で、

昨日の合意云々
https://jp.reuters.com/world/us/XKKXM4ODSVIOJPQXYRGALXODCI-2025-05-12/
米中、追加関税引き下げで合意 景気後退懸念緩和で株・ドル急騰
Emma Farge, Olivia Le Poidevin, Lewis Jackson
2025年5月13日午前 12:25 GMT+9

『[ジュネーブ 12日 ロイター] - 米国と中国は12日、両国の貿易問題を巡り10─11日にスイスのジュネーブで行った閣僚級協議で、相互に発動した関税率を115%ポイント引き下げることで合意したと発表した。上乗せ分の90日間の停止、経済・貿易関係に関する協議メカニズムの構築も打ち出した。米中は関税の応酬の結果、米国の対中関税率は145%、中国の対米関税率は125%まで上げられた。この合意を受け、株式市場とドル相場は急騰した。』(上記URL先より)

ってなもんで、相変わらずのトラ公関税茶番劇場(茶番とか言うとめだか師匠に失礼ですがwww)でございますが、そもそもトラ公は制球が全然定まらないノーコン剛球な(自主規制)投手みたいなもん(自主規制の部分はお好きにどぞw)訳でして、ノーコンが投げてくる球をクソ真面目に一々反応するのがアカン訳ですが、まあ今回の場合はちゃんとした人たちが共同声明だしているんだから90日間の交渉期間設定、みたいな感じになったんでしょうなあというのは分かります。

でもってトラ公また調子に乗って
https://jp.reuters.com/world/us/YP2U4MJITVOLHDNPIWJHNBQDRA-2025-05-12/
トランプ氏、対中関税「145%に戻らず」 90日停止後も
ロイター編集
2025年5月13日午前 12:28 GMT+9

『[ワシントン 12 日 ロイター] - トランプ米大統領は12日、中国からの輸入品に対する関税について、90日間の一時停止期間が終了しても145%に戻ることはないとの認識を示した。』(上記URL先より、以下同様)

なんかもうバザールの値段交渉しているみたいなノリじゃなこいつは。

『トランプ大統領は、米中は合意に達するとの期待を表明。同時に、対中関税が再び大幅に引き上げられる可能性もあると述べた。米中は10─11日にスイスのジュネーブで行った閣僚級協議で、相互に発動した関税率を115%ポイント引き下げることで合意。上乗せ分の90日間の停止、経済・貿易関係に関する協議メカニズムの構築も打ち出した。トランプ氏はこの日、今週末に中国の習近平国家主席と会談する可能性があると述べている。』

プーチンにも言いくるめられるトラ公なのでプーさん(以下禿しく自主規制^^)

まあ何にせよ結構結構という感じですが、まあそうなりますと当然のように・・・・・・・


・まあ当然ですが「関税対応での金融政策を急ぐ必要はない」となりますわな

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/NYCFMWT7AVO5XDYBHII5GNF6IM-2025-05-12/
FRB政策対応の必要性低下、米中関税引き下げで=クーグラー理事
ロイター編集
2025年5月13日午前 2:51

『[ダブリン 12日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のクーグラー理事は12日、米中の大幅な関税引き下げ合意を受け、貿易摩擦による経済への影響は軽減される見通しで、FRBが金融政策で対応する必要性が低下する可能性があるとの認識を示した。』(上記URL先より、以下同様)

となるわけで、

『クーグラー氏はアイルランドで開かれた経済シンポジウムで、物価上昇と経済減速を依然として予想しているものの、これまでに見込んでいたほどの規模ではないと指摘。経済減速の可能性に対応するために「FRBがツールを行使する必要性の度合いに関し、私の基本的な見通しは変わった」と述べた。』

とまあ極めて当然ではありますがこういう話になるのですが、こうなりますと関税政策を受けて「先行きが分からないので今回は1回パス」をしようと思えば出来たのに、物凄い勢いでベースラインシナリオを下げた日銀の対応というのが大変に素敵なことになってしまう訳でして、お前ら7月展望でまたジャガーチェンジしたら最低でも今回の展望で「経済下振れさせて下振れリスク認識を出した」という政策委員の面々はリアルハラキリショーをやっていただかないと落とし前が付かんじゃろ(なお中村委員は6月末でご退任だし間違って大本営が7月にジャガーチェンジしたら反対に回るのは確実だと思うのでリアルハラキリショーの出演は免除されますw)ってなもんですが、はてさてどうなるのやらという感じです。

まあゆうて関税ゼロになるわけではないから経済へのマイナスが全部なくなったわけではない(寧ろ米国とか「経済が減速しない程度の関税による物価高」の方がきつくなるんじゃないかという線までアリエールんだが)のですけれども、こうなってくると日銀の今回の展望レポートの前提になっている見方、すなわち

『2 各国の通商政策等の今後の展開やその内外経済・物価に及ぼす影響については、不確実性がきわめて高い状態にある。今回の展望レポートの中心的な見通しは、今後、各国間の交渉がある程度進展するほか、グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような状況は回避されることなどを前提に作成している。なお、今後の各国の政策の帰趨や、それを受けた各国の企業・家計の対応次第で、経済・物価の見通しが大きく変化しうる点には注意が必要である。』(4月展望レポートより)

となっているのですが、じゃあこの「各国間の交渉がある程度進展するほか、グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような状況は回避されることなどを前提に」の前提は米中関税がどの程度の水準になるのか、日本の関税がどの程度の水準になるのか、といったベースラインの前提はどうなっているのか、というのがこれまた今回非開示な訳でして、そもそもの日銀の見通しが関税協議の進展によって「見通しの前提よりもリアルの展開が上振れている/下振れているのか」というのが分からんという作りになっているのが甚だ遺憾の極みだったりするわけでして、4月展望の後に行われる総裁副総裁講演、ということですと今回は

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・記者会見・談話

今後の講演・挨拶等の予定
2025年 6月 3日 植田総裁 内外情勢調査会における講演

となっていて、きさらぎ会よりも後の日程だと思うのですが、今回は内外情勢調査会の方で講演、ということですので、「日銀は関税に関して一定程度の置きを置いて見通しを作った結果が4月展望」なんだから、その置きを公表しろってツッコミに対して何らかの説明が求められるんじゃないですかねえという所です。

・・・とは言いましても日銀見物門前の小僧をウン十ウン年もやっておりますとだいたい日銀の言い訳は想定できる次第でして、これ日銀が何と言って申し開きするかと言いますと「前提について展望レポートで書きましたようなベースラインで考えて頂く、ということで各政策委員にはお願いしましたが、実際に各国の関税がどの程度になるのか、という点については個々の政策委員の判断に委ねられており、関税率が幾らになる、という数値まで決め打ちした前提を置いている訳ではないので、すなわち「何か一定の数値を決めているわけではない」となりますので、具体的な前提はお出しできません」となると思うんですよね。

じゃあ何も出さないのかという話ですが、さすがに今回は話の前提が完全に関税政策依存になってしまっているので、そこを考えたら各々の政策委員がどの程度の関税率を想定していたか、というのを個別委員が分からないようにしてレンジで示す、くらいの事はやっていただかないと、関税政策の進展に伴い今回の展望レポートの前提対比で今の状況が上振れているのか下振れているのかすら分からんという事になってしまいますがな、とは思うのでした。


・ところで為替円安ですが

でまあ先ほど引用したようにドル高進行なのですが、日銀がハトハトチキン音頭を踊ってしまっているのでリスクオン局面になるとそもそも円安が進行しやすい展開に戻っている訳でして、ご案内の通りでドル円148円だという状況になってしまいまして、折角140円瞬間割れまで円安是正されたんですが、こうなりますと展望レポートでの物価見通しの前提条件も変わってくるじゃろ、ってなもんですし、だいたいからして為替円安誘導怪しからんって言われてませんでしたっけという話ではあるのですが、こっちの方が目先は気になるところではあります。


・・・まあしかし何ですな、ここ数年は物価の上振れに対して延々とバックワードルッキングで言い訳を繰り返し、挙句の果てには「基調的物価」という「お気持ち物価」を説明に乱用してその場を凌いでいた日銀ちゃんが、珍しくも突然フォワードルッキングにベースラインシナリオを下げたら2週間もしないうちにこの有様、というのはもはや伝統芸能の美といったものを感じますな、ナムナム。


〇展望レポート全文のBOXを鑑賞する企画(たぶん時間が足りないのでその1)

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504b.pdf
経済・物価情勢の展望
2025 年 4 月

背景説明を含む全文、ってのの最後に毎度のようにBOXってのがあるのですが、今回のお題は・・・・

(BOX1)各国の通商政策の動きとその影響
(BOX2)わが国における生産性の動向
(BOX3)労働需給と労働者の企業間移動
(BOX4)最近の賃上げと価格転嫁を巡る動向

となっていまして、通商政策に関してのお話は1本で残りが労働市場に関連する話になっている、という構成になっておりまして、でまあ1月展望のBOXを思い出していただければわかりますが、今回についても労働市場について言及している部分についてはエライ勢いでポジティブな話が並んでいるのよこれが。

ということでざっと読んで今回視点として一番味わいがあったような気がするのが『(BOX3)労働需給と労働者の企業間移動 』なので今朝は(時間の関係上)こちらの鑑賞でも。

『(BOX3)労働需給と労働者の企業間移動 』から参ります。

・まずは人手不足ですよと言う話から入りますが

『本BOXでは、労働需給が引き締まり傾向を強めるもとでの労働者の企業間移動の動向を点検する。』

ということで、

『まず、短観の雇用人員判断DIの「ヒートマップ」をみると28、人手不足感の強い状態が、大企業、中小企業ともに、幅広い業種で継続していることが確認できる(図表 B3-1)。』

さよですな。

『正社員とパートに分けて人手不足感をみると(図表 B3-2、B3-3)、最近は、パートに比べ、長期雇用を前提とする正社員の労働需給の方が、引き締まり度合いが強くなっており、人手不足の長期化を予想した企業による労働需要の強さが窺われる29。』

(労働者的に)イイハナシダナー


・でもって人手不足の規模は何と平成バブル期並みとな

『前回の展望レポートでは、労働経済動向調査の欠員率(=未充足求人数/常用労働者数)を用いたUV分析を行い、失業率の動きを、構造的な変動と循環的な変動に識別することを試みた(図表B3-4@)30。』

次のページに『図表B3-4:失業率ギャップ』ってのがあって、『@構造失業率』ってのがありましてその数値があるんですが、これもっと昔からの時系列も見たいです(2002〜なので)。

『これと同じ手法で推計した失業率ギャップ(実際の失業率と構造失業率の乖離)をみると、労働需給の引き締まりは、足もとで一段と強まっており、その程度は 1980 年代後半のバブル期をも上回っている(図表B3-4A)。』

でもって『図表B3-4:失業率ギャップ』の『A失業率ギャップ』だと1983年からの数字があるので@も長期時系列出せるじゃろと思いましたが、失業率ギャップはそこそこ結構なマイナスになっています。

『これには、@労働需要の増加を受けた実際の失業率の低下傾向に加えて、A近年の転職市場の拡大に伴う自発的離職の増加が、構造失業率を押し上げる方向に作用していることも影響している。』

ということですが、ただこの分析若干ツッコミどころがあって、足元確かに80年代最後のバブルよりも労働需給が引き締まっているのですが、実は図表B3-4Aを見ますと(グラフのメモリが細かくないから目の子でざっくり見た感じだと)2015年あたり位から既に労働需給が顕著に引き締まった状態で平成バブル並みに引き締まっている訳で、じゃあ何で今とその時代が違うんじゃというのは説明が欲しいなとは思います。

で、まあこの先に一応説明らしきものがあって・・・・・・

・転職市場の活発化による効果があるとのお話でして

『実際、転職市場をみると、中途採用の比率が上昇傾向にあるなど、労働者の企業間移動は近年、活発化してきているとみられる。さらに、転職によって賃金が上昇した人の割合も、足もとでは既往最高水準まで上昇しており、企業が人材確保のため、中途採用者に対する賃上げを積極化している姿が窺われる。』

マジかワシいや何でもありません(自爆)

『こうしたもとで、賃金上昇を伴う転職割合は、2010 年代初頭には 25%であったが、2024 年には 35%まで高まっている31。』

賃金上昇を伴わない転職が65%なのか、と思っちゃいましたがそれはさておき、この先が本稿のメインイベントになります、すなわち・・・・・


・賃金の上昇トレンドが起きることによって企業間の優勝劣敗が起きてマクロ的に効率化が進むというお話

『こうした転職市場を通じた労働者の企業間移動について、企業側からみると、近年は、生産性の高い企業が雇用者数を増加させている一方、生産性の低い企業は雇用者数を減少させている(図表B3-5)。』

キタコレ!

『このことは、企業間の生産性水準の違いが、賃金水準の差につながり、ひいては新規に雇用できる労働者数の差をもたらしている可能性を示唆している。』

ほう!

『こうした動きを、労働者側からみると、現在勤めている企業の年収や実質賃金期待が低い場合、当該労働者は転職を選択する可能性が高くなることも分析を通じて確認されている32』

ほっほーーーーー

ちなみにこの脚注32は

『32 リクルートワークス研究所が集計している「全国就業実態パネル調査」の個票データを用いて、転職意向の決定要因を推計したところ、現在の年収が業種平均対比で低いと転職意向が高くなるほか、インフレ期待が高いと実質賃金期待が低いこともあり、転職意向の確率を有意に押し上げることが
確認された。』

>インフレ期待が高いと実質賃金期待が低いこともあり、転職意向の確率を有意に押し上げる
>インフレ期待が高いと実質賃金期待が低いこともあり、転職意向の確率を有意に押し上げる
>インフレ期待が高いと実質賃金期待が低いこともあり、転職意向の確率を有意に押し上げる

・・・・・なんか話が(日銀的に)うますぎる気がしますので、ここら辺はちょっとお手盛りモリモリモリタウンと化しているような気がしますが、なんか美しいまとめ方をしていまして、

『このように、マクロ的に労働需給が一段と引き締まるもとで、賃金水準のばらつきの拡大は、転職市場を通じた労働者の企業間移動を促しているように窺われる。』

という結論になっていますけど、これ途中のところでさらっと書いているからオブラートにやや包まれていますけど、さっきの「このことは、企業間の生産性水準の違いが、賃金水準の差につながり、ひいては新規に雇用できる労働者数の差をもたらしている可能性を示唆している。」ってのが重要ポイントで、つまりは労働者の移動がインフレ期待の高まりにより促進されることによって、労働力が生産性の低い企業に固定されることなく、マクロ的に見た場合の生産性向上に資する、ってエライまた美しいストーリーを描いている訳でして、お気持ち物価の話とかベースラインシナリオあっさり引き下げとかの話とはだいぶ違った威勢の良いコラムになっている、というのが見て取れると思います。

他のBOXについては追々ということで今朝はこの辺で勘弁してつかあさい。




2025/05/12

お題「短国とかのメモ/FOMCオープニングリマークは思いっきり物価重視な説明になっていますね」

いやマジでこのオッサン何なん??
https://diamond.jp/articles/-/364394
日本銀行は利下げへ転換せよ、トランプ関税下の利上げ路線が招く「デフレ逆戻り」のリスク
渡辺 努:ナウキャスト創業者・取締役、東京大学名誉教授
政策・マーケット
渡辺努 物価の教室
2025.5.8 8:30 会員限定

このオッサンが金融政策の話をするときってその場その場でウケそうな事を言ってるだけじゃろ、としか思えない次第(個人の意見ですw)わけで、まあ今回は減税だの高圧経済だの寝言を言ってるどっかの連中に媚び売ってるんでしょうけれども(個人の妄想ですww)、これが東大の経済学部長だったってのが日本の経済学の退廃をよく示しているとワイは思う訳で(なんせ東大という権威を背負っているんですから)、まあ何と申しますか経済学が学問の名に値するのかという疑問まで生じてしまうわけで学会に自浄作用とか無いのかね(あくまでも個人の感想ですwww)。

てかよ、そもそも論として「賃金と物価の好循環」ってのがブードゥー経済学じゃろって話なんだが。


〇また長いところが弱くなったり短国が強くなったりしているんだが

金曜の3M短国ちゃん
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250509.htm
国庫短期証券(第1305回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1305回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号  国庫短期証券(第1305回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日      令和7年5月12日
4.償還期限     令和7年8月12日
5.価格競争入札について
(1)応募額          10兆7,289億円
(2)募入決定額     3兆4,322億8,000万円
(3)募入最低価格     99円89銭7厘0毛
(募入最高利回り)     (0.4090%)
(4)募入最低価格における案分比率   56.0199%
(5)募入平均価格     99円89銭9厘8毛
(募入平均利回り)    (0.3979%)』

前週は平均0.4台だったし足切り0.42%まで乗ってきた(0.4051/0.4249)のですが、金曜は0.40を切る平均になりまして、あらまあ0.4台は長持ちしないんですか、と申しますのは

売参
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

いつもの奴を見ますと、

(5/9引値)
国庫短期証券1301 2025/07/22 平均値単利 0.380
国庫短期証券1302 2025/07/28 平均値単利 0.380
国庫短期証券1303 2025/08/04 平均値単利 0.379
国庫短期証券1305 2025/08/12 平均値単利 0.380

ちゃっかり引値が0.38%とお強くなっておられまして、しかも新発だけではなくて既発も揃ってお強くなっておられますのでこりゃまあ普通に短国また強く成りやがったなという感じですわな。月末跨ぎだかGW跨ぎだかを抜けた瞬間一瞬大甘の皇子になったかと思ったのですが、結局売り(かどうか知らんけどまあ状況証拠的には少し外しがあったんだろうなあという感じですかしら)はいつものようにあっさり味で吸収されてしまいましたでござるの巻となっておられるようです、短国強いっすわ。

ちなみに木曜の引けが

(5/8引値)
国庫短期証券1301 2025/07/22 平均値単利 0.410
国庫短期証券1302 2025/07/28 平均値単利 0.410
国庫短期証券1303 2025/08/04 平均値単利 0.410
国庫短期証券1305 2025/08/12 平均値単利 0.410

と3Mカレント近辺は軒並み41bpだったのですが、金曜の入札イベントを経て軒並み3毛強となっている(まあ素地として木曜の時点で実力はもうちょっと強かったんでしょうけど)ということで、こりゃまたお強いという所ですが、そもそも(ネタにしてなかったですが)先週の場合は木曜の6Mも

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20250508.htm
国庫短期証券(第1304回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1304回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。


1.名称及び記号    国庫短期証券(第1304回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第123条の18第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日       令和7年5月12日
4.償還期限      令和7年11月10日
5.価格競争入札について
(1)応募額          10兆1,422億円
(2)募入決定額     2兆6,774億8,000万円
(3)募入最低価格      99円77銭8厘
(募入最高利回り)      (0.4462%)
(4)募入最低価格における案分比率  36.1956%
(5)募入平均価格      99円78銭2厘
(募入平均利回り)      (0.4381%)』

そもそも6Mも40台前半でしたし、こちらの短国引値が

(5/8引値)
国庫短期証券1304 2025/11/10 平均値単利 0.410

と入札レベルよりも強い引値になっているわ、さっきの5/8引値の3M近辺とレート並びということで、もはや7月利上げとか一切あり得んじゃろというような素敵な値付け(10月だと10月末なのでまあ11月10日償還に効かないのはあるけど)になっていまして、この時点でまあ強いわなと思いました、とかそういうのを事前に言わないで結果が出てからいうのを事後諸葛亮と言いますのでアレですがw

とまあそんな感じでまたまた短国堅調になっているんですけど、長い方は足元では、


ロイターさん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/XXZOAGIMEZOSHN5W4DSZD7KMJM-2025-05-09/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物続落、米関税巡る警戒後退や米金利高で 長期金利1.355%
ロイター編集
2025年5月9日午後 3:19 GMT+9

『[東京 9日 ロイター] - <15:10> 国債先物続落、米関税巡る警戒後退や米金利高で 長期金利1.355%

国債先物中心限月6月限は、前営業日比27銭安の140円35銭と3営業日続落して取引を終えた。トランプ米政権の関税政策を巡る警戒ムードの後退や米金利上昇が相場を圧迫した。新発10年国債利回り(長期金利)は同3.5ベーシスポイント(bp)上昇の1.355%。』(上記URL先より、以下同様)

ってな訳で、まーたイールドカーブの方がスティープしておるんだが

『現物市場では10年物以外の新発国債利回りも総じて上昇。2年債は前営業日比1.5bp上昇の0.630%、5年債は同1.5bp上昇の0.875%、20年債は同4.0bp上昇の2.340%、30年債は同3.0bp上昇の2.905%、40年債は同5.5bp上昇の3.385%。』

ということで、

『TRADEWEB  
     OFFER  BID   前日比 時間
2年   0.624  0.63    0.01  15:00
5年   0.871  0.878   0.015  15:06
10年  1.349  1.354   0.029  15:03
20年  2.335  2.344   0.04   15:05
30年  2.898  2.907   0.031  15:04
40年  3.375  3.383   0.046  15:10』

てな訳でまたも後ろが甘くなっておられるようで、何ですかねえこの相場ちゃんはと思いますけど、最近偶然なのかそういうムーブがあるのかは知らんですが、イールドカーブスティープでベア相場みたいな時ってだいたい短国の短いところがツエツエバエになるという
謎の逆相関があるようにも見受けられますがよくわからんので判断保留。


〇FOMCオープニングリマークを確認しておく企画ですがまあ物価重視明言ですねえ

QAもあるんですが
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20250507.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
May 7, 2025

どうしても会見の方が瞬間瞬間でヘッドラインになるから市場ちゃんって瞬発的に反応してしまう傾向があるのですが、特にパウちゃんになってからのFEDでは、声明文>オープニングリマーク>>会見での説明、って序列が厳然としてあるように見受けられまして、結局のところ声明文をメインで読んでおかないといかんじゃろ、って思うのですよね(後になってみると結局声明文で示した認識の方に寄せられる)、まあその辺はバーナンキとかいう逆さ絵のインチキジジイが会見で変にレトリック使って説明するというのを多用したせいで、それが市場のイメージとして強く残ってしまった流れにあるというのがアタクシの見解(偏見にだいぶ寄っているので念のため申し添えますw)でして、本来声明文が一番エライのですが、声明文以外の出物の方が色々な分かりやすい出し方で情報をだしているもんだからつい皆さんそれに飛びつくって感じだと思うの(個人の偏見入り感想です)。

てな訳で声明文の次に偉いのはオープニングリマークなのでそちらを先ずは読むのダイジダイジネーということで。

あと、FRBのトップを見ますと

『Speech by Governor Cook on productivity dynamics
Speech - 5/9/2025

Speech by Governor Waller on monetary policy research
Speech - 5/9/2025

Speech by Governor Kugler on assessing maximum employment
Speech - 5/9/2025』

などという読めと言わんばかりの3連発がありますが(実はもう一つあるけどAIと労働市場なので)それはまた追々ネタにできればしようかと思います。


・初手で「The risks of higher unemployment and higher inflation appear to have risen」を示す。

『CHAIR POWELL. Good afternoon. My colleagues and I remain squarely focused on achieving our dual mandate goals of maximum employment and stable prices for the benefit of the American people.』

冒頭はいつもの文言。

『Despite heightened uncertainty, the economy is still in a solid position. The unemployment rate remains low, and the labor market is at or near maximum employment. Inflation has come down a great deal but has been running somewhat above our 2 percent longerrun objective.』

でもってその次が経済の全体の状況についてとデュアルマンデートに対する物価雇用の状態についてのコメントになって、今回も通常通りにそのコメントになるのですが、今回はもうこの一発目の「Despite heightened uncertainty, the economy is still in a solid position.」が出オチのようなもんでもうこの時点で様子見地蔵ですよというのが伝わるわけですが。

『In support of our goals, today the Federal Open Market Committee decided to leave our policy interest rate unchanged. The risks of higher unemployment and higher inflation appear to have risen, and we believe that the current stance of monetary policy leaves us well positioned to respond in a timely way to potential economic developments. I will have more to say about monetary policy after briefly reviewing economic developments.』

でもって次のパラグラフに行きますと「The risks of higher unemployment and higher inflation appear to have risen」ってなりまして、さらに「we believe that the current stance of monetary policy leaves us well positioned to respond in a timely way to potential economic developments.」ってありまして、「リスクは高まっているけどとりあえずワシらの政策はwell positionedで今後の展開に如何様にも対応できます」って説明をしていて、つまりはこれは「今後の展開を見て必要なら何かするけどそうじゃなかったら地蔵ですわ」というお話でございますわな。


・経済物価情勢に関する説明では1QGDPの説明をわざわざしているんですね

この先は経済物価雇用情勢に関する説明です。全体の話の中では1QのGDPについての説明があって、

『Following growth of 2.5 percent last year, GDP was reported to have edged down in the first quarter, reflecting swings in net exports that were likely driven by businesses bringing in imports ahead of potential tariffs.This unusual swing complicated GDP measurement last quarter.』

関税駆け込み要因で輸入が増えてGDPが押し下げになっていますが、そのせいで統計の解釈を複雑にしています、

『Private domestic final purchases, or PDFP-which excludes net exports, inventory investment, and government spending-grew at a solid 3 percent rate in the first quarter, the same as last year’s pace. Within PDFP, growth of consumer spending moderated while investment in equipment and intangibles rebounded from weakness in the fourth quarter. Surveys of households and businesses, however, report a sharp decline in sentiment and elevated uncertainty about the economic outlook, largely reflecting trade policy concerns. It remains to be seen how these developments might affect future spending and investment. 』

民間最終消費を見ますと3%成長と堅調に推移していますが、そうは言っても消費支出はモデレートしてきていますし、サーベイを見ますと関税政策のせいでセンチメントが急速に悪化しているので、「It remains to be seen how these developments might affect future spending and investment.」と先行き警戒。

『In the labor market, conditions have remained solid. Payroll job gains averaged 155 thousand per month over the past three months. The unemployment rate, at 4.2 percent, remains low and has stayed in a narrow range for the past year. Wage growth has continued to moderate while still outpacing inflation. Overall, a wide set of indicators suggests that conditions in the labor market are broadly in balance and consistent with maximum employment. The labor market is not a source of significant inflationary pressures.』

労働市場に関しては「broadly in balance and consistent with maximum employment」ということで、最大雇用というワシらのマンデートにおおむね整合的で、しかもおちんぎんが無駄な高インフレのドライバーになっている訳ではない、といつものように労働市場に関しては結構な状況であるとの認識。


『Inflation has eased significantly from its highs in mid-2022 but remains somewhat elevated relative to our 2 percent longer-run goal. Total PCE prices rose 2.3 percent over the 12 months ending in March; excluding the volatile food and energy categories, core PCE prices rose 2.6 percent.』

『Near-term measures of inflation expectations have moved up, as reflected in both market- and survey-based measures. Survey respondents, including consumers, businesses, and professional forecasters, point to tariffs as the driving factor. Beyond the next year or so, however, most measures of longer-term expectations remain consistent with our 2 percent inflation goal.』

物価に関してはマンデートよりも若干高い水準に維持されており、インフレ期待に関してはニアータームのインフレ期待が上昇していてこれは関税のせい、ただしロンガータームのインフレ期待は安定している(と言ってもこれが安定していないとなったら即政策対応必要なのでまあここに関してはいつもこう言っているのが基本だから必ずしもあてにならない)。


・今回の政策に関しては現状維持なので特筆すべきことはなし

『Our monetary policy actions are guided by our dual mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people. At today’s meeting, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 4-1/4 to 4-1/2 percent and to continue reducing the size of our balance sheet. 』

政策決定は地蔵だったので特に書くことも無く次に行く、


・政策は大きなものをぶっこまれたものの状況は変化しつつあって皆目見当がつかないので今後を見て判断、ですわな

ここからトラ公の関税政策に関する話になるが、まあ当然ちゃあ当然ですが大事な話なので2パラグラフ使って説明していますね。

『The new Administration is in the process of implementing substantial policy changes in four distinct areas: trade, immigration, fiscal policy, and regulation.』

ってのは3月FOMCでも最初の書き出しは同じです為念。

『The tariff increases announced so far have been significantly larger than anticipated. All of these policies are still evolving, however, and their effects on the economy remain highly uncertain.』

関税について最初にぶちこまれた政策案は「significantly larger than anticipated.」でしたよ、という話はしておりますが、全ての政策は「still evolving,」であって、政策の影響に関しては「remain highly uncertain」ですよ、という説明をしまして、

『As economic conditions evolve, we will continue to determine the appropriate stance of monetary policy based on the incoming data, the outlook, and the balance of risks.』

今後の状況の進展を見ながら経済の見通し、およびリスクのバランスを判断していき、その結果として私たちは適切な金融政策について決定していくことを続けるでしょう、とまあ当然といえば当然なのですが、このように「状況の変化を見ながら適宜適切な対策」って話をしておりまして、碌すっぽデータもないのに国難国難減税減税財政支出財政支出と喚き散らかしておられるどっかの国の烏合の衆の尻馬にのってフォワードルッキング笑にベースラインシナリオを下げておられるどこぞの中央銀行は爪の垢を煎じて飲むべきだと思いました。

でもって、

『If the large increases in tariffs that have been announced are sustained, they are likely to generate a rise in inflation, a slowdown in economic growth, and an increase in unemployment.』

先般ぶっこまれた関税政策がそのままぶち込まれた暁には米国は物価上昇と経済の減速と失業の増加を招くでしょう、と来まして、

『The effects on inflation could be short-lived-reflecting a one-time shift in the price level. It is also possible that the inflationary effects could instead be more persistent. Avoiding that outcome will depend on the size of the tariff effects, on how long it takes for them to pass through fully into prices, and, ultimately, on keeping longer-term inflation expectations well anchored』

関税の影響は基本的にはワンタイムの価格レベルのシフトにとどまるとみられますが、そうは言いましても本当にワンタイムで済むのかというと、より長期的な影響を与える可能性もありますよ、って説明をしているのが(上振れリスクって言ってるんだから当たり前とは言え)大変に良いお話になっていまして、3年間アクチュアルの物価が2%を上振れて推移しているのに「コストプッシュは一時的」を念仏のように唱えて挙句の果てには「基調的物価」というお気持ち物価で政策を説明し続けているどこぞの中央銀行以下同文。

でもって次のパラグラフはこの部分の締めになるのですが・・・・・・

・「ワンタイムの物価上昇に留める」「物価の安定無くして最大雇用の実現無し」

『Our obligation is to keep longer-term inflation expectations well anchored and to prevent a one-time increase in the price level from becoming an ongoing inflation problem. As we act to meet that obligation, we will balance our maximum employment and price-stability mandates, keeping in mind that, without price stability, we cannot achieve the long periods of strong labor market conditions that benefit all Americans. 』

ということで、小見出しにした通りで「ワンタイムの物価上昇が先行きのインフレの好ましくない上昇を引き起こさないようにすること」というのが大事だという話をしておりまして、でもって「物価安定無くして最大雇用は実現しません」って思いっきり言っていますので、このオープニングリマークに関して言えば(QAで何言ってるかはさておいて)物価重視スタンスで政策やっていきますよ、というお話にしか読めないと思うのだがどうでしょうかねえ。

でもって、

『We may find ourselves in the challenging scenario in which our dual-mandate goals are in tension. If that were to occur, we would consider how far the economy is from each goal, and the potentially different time horizons over which those respective gaps would be anticipated to close. For the time being, we are well positioned to wait for greater clarity before considering any adjustments to our policy stance.』

結局は「we are well positioned to wait for greater clarity before considering any adjustments to our policy stance.」ということで様子見地蔵。


・ロンガーランストラテジーあんどゴールに関してと最後のご挨拶

次は話が変わりまして、

『At this meeting, the Committee continued its discussions as part of our five-year review of our monetary policy framework.』

ということで5年に1度の見直しのロンガーランストラテジー&ゴールに関しての話になります。

『We focused on inflation dynamics and the implications for our monetary policy strategy. Our review includes outreach and public events involving a wide range of parties, including Fed Listens events around the country and a research conference next week. Throughout this process, we are open to new ideas and critical feedback, and we will take on board lessons of the last five years in determining our findings. We intend to wrap up the review by late summer. 』

こちらは予定通りで多分ジャクソンホールのタイミングで出てくるでしょうね。


最後はいつものご挨拶なので引用だけ。

『The Fed has been assigned two goals for monetary policy-maximum employment and stable prices. We remain committed to supporting maximum employment, bringing inflation sustainably to our 2 percent goal, and keeping longer-term inflation expectations well anchored. Our success in delivering on these goals matters to all Americans. We understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We at the Fed will do everything we can to achieve our maximum employment and price stability goals. Thank you. I look forward to your questions.』

ということで。






2025/05/09

お題「3月MPM議事要旨:これだけ威勢の良い話をしていたのに何で4月にああなったんでしょうかねえ・・・・・」

https://jp.reuters.com/business/P6VGX2OLAFN3VI4O2C7JRHBBNU-2025-05-08/
米、対中関税を最低50%に引き下げる計画検討 来週実施も=報道
ロイター編集
2025年5月9日午前 5:04 GMT+9

『[8日 ロイター] - トランプ米政権は、計145%の対中関税を最低50%まで引き下げることを検討しており、早ければ来週にも実施される可能性がある。米紙ニューヨーク・ポストが8日、関係筋の情報として報じた。』(上記URL先より)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-08/SVY6YWDWX2PS00
トランプ氏、英国との貿易協定合意を発表−詳細は交渉継続
Josh Wingrove、Hadriana Lowenkron、Alex Morales、Jennifer A Dlouhy
2025年5月9日 0:13 JST 更新日時 2025年5月9日 1:49 JST

『トランプ氏は、今週末に開始する中国との貿易交渉についても、「中身のあるものになると思う」と述べ、目に見える進展が得られるとの見通しを示した。中国側に譲歩する意向があると予測し、大きく前進すれば、同国への関税引き下げを検討する可能性もあるという。

関税引き下げの可能性について問われると、トランプ氏は「あり得る」と答えた。「様子を見るつもりだ。現在は145%で、これ以上は上がりようがない。従って、下がるのは確かだ。われわれは非常に良好な関係を築けると思う」と語った。』(上記URL先より)

って言う事ですが英国との合意だって結局やってること因縁つけてタカリをしているチンピラゴロツキのお作法以外の何物でもない訳で米国が無法者国家になってしまうのは残念な話です。


〇3月会合議事要旨:4月展望で振り切る「前」の話を普通に載せているので次回がちょっと楽しみだったり

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2025/g250319.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2025年3月18、19日開催分)

ご案内の通りでトラ公のせいで先行き訳わからん(マクラにある話のようにそもそも先行き何が出てくるのかも分からんわな)ところなので、じゃあその前段階の3月はどうでしたか、って話になるのですが、4月にベースラインシナリオを下げる、という他の中銀がまだ様子見とか言ってる中で画期的なフォワードルッキング(笑)をカマしてきた日銀ちゃん、さぞかし3月も警戒を怠っていなかったのかと思いますと、そこにはナンジャソラな光景が待っておりました、ってのが今回の3月議事要旨のキモかなと思いました。

ということで『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』からちょいちょいと拝読して参ります。

・雇用所得環境に関してこれでもかとばかりに強い話を延々と並べているのが不思議ちゃんではある

途中からになりますが、雇用所得環境。

『雇用・所得環境について、委員は、緩やかに改善しているとの見方を共有した。また、委員は、連合による春季労使交渉の第1回回答集計結果は、本年もしっかりとした賃上げが実施されるという1月会合時点の見方に沿ったものとの認識を共有した。』

からいきなりの出オチで、

『そのうえで、何人かの委員は、現時点で明らかとなっている賃上げ率は、事前に想定していた範囲の中では、高めの水準となっていると述べた。また、何人かの委員は、大企業だけではなく、相対的に規模の小さい企業でも賃上げ率が高めとなっており、賃上げの裾野が広がっていることが窺われると指摘した。』

とまあエライ威勢の良い話(まー実際問題として(除くワイの財布orz)威勢が良かった訳ですが)で始まりまして、

『このうちのある委員は、今回の賃上げ率の前年からの上振れ幅が大企業よりも中小企業の方が大きいことを指摘したうえで、2022 年以降の価格転嫁の進捗と同様に、賃上げについても、大企業が先行し、それを中小企業が追いかける展開となっていると付け加えた。』

でですね、

『こうした中、多くの委員は、賃金上昇の持続性が次第に高まっているとの認識を示した。』

という認識と共にさらに、

『複数の委員は、今後の毎月勤労統計等を確認していく必要はあるが、2%の「物価安定の目標」と整合的な賃金上昇が定着しつつあるとの認識を示した。』

でもって、

『この点に関し、一人の委員は、人手不足という構造的な変化が進むもと、労使双方で、物価上昇を賃金に反映する必要があるとの認識が広がってきていると付け加えた。』

とまあ3月会合でこれだけイキリ散らかしていた訳ですよ、全員の意見じゃないとは言え、議事要旨でここまでスペース取ってああでもないこうでもないと景気のいい話を並べ立てるんですから、これは少なくとも議事要旨を作っている編集(すなわち大本営の事務方)としても、こういう意見が強かった、ということをお示ししましょう、ってことになっている筈なんですよね。

でまあここまで威勢の良いイキリ散らかしモードだったのに、今回の展望レポートでは「所得から支出への前向きの循環メカニズム」を削除してしまっている、というのは飛んでもない勢いでのジャガーチェンジ、って話になるわけでして、逆に言えば4月(5月)に突如の腰砕けになった背景は何ぞね、ってのが非常に気になるわけですよ。その背景が何なのかがある程度わかれば、背景に変化が生じたらまた再度のジャガーチェンジもありうるで、となるわけですから。

でもってその続きですが、

『複数の委員は、人手不足感が強いことに加え、企業収益が好調なことも、賃上げの背景にあると指摘した。』

まあ一つあるのは「企業収益」のところでして、4月展望の基本的見解では、既に確認した通りですが、関税政策の影響について海外経済の減速と企業収益の下押し、というのを強調していましたので、企業収益が下押しされるから賃金が上がりにくくなる、というストーリーだと思うんですよね。

でまあそれはそれで理屈はその場では完結するのですが、だったら1月展望で言ってた「この間、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給はマクロ的な需給ギャップ以上に引き締まっている。こうしたもと、多くの業種で企業が労働の供給制約に直面しつつある状況を踏まえると、マクロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価には上昇圧力がかかるとみられる。」(というのは1月展望の基本的見解の4pにあります)って認識はどこに逝ったんだよ、というのは先日来申し上げている通りであります。

まあ何ですな、日銀って特に最近の黒田末期からこの方そうなのですが、政策運営に対しての理屈を良く言えば丁寧に作り過ぎでして、その結果政策が変わると過去説明していた丁寧なつくりの理屈との整合性が取れなくなるのでシレっと新しい理屈をこれまた堅牢に構築してしまう、という傾向が強くて、結果的にはどこからモウロクジジイの関税政策みたいに「お前さっきまで言ってたことと違うじゃねえか」という話になる訳で、なんも考えていない(知らんけどそうとしか見えない)モウロクジジイの耄碌理論と結果的に同じことになってませんかねえ、って残念に思ってしまいます次第ではありますな、うんうん。

・・・・・しまった話が逸れたので元に戻してさっきの続き。

『この間、別のある委員は、人材のスキルや地域のミスマッチが拡大しており、企業間での賃金格差も広がっているとみられる点は丁寧にみていく必要があると述べた。』

『また、一人の委員は、法人企業統計をみると、雇用の7割を占める中小企業では、賃金が増加する一方、設備投資は2年連続で減少していると指摘した。そのうえで、この委員は、中小企業では、労働分配率が高い中、防衛的賃上げと設備投資の両立は難しい状況が窺われるとの見方を示し、賃上げモメンタムの定着には、中小企業の生産性を向上させる設備投資ともう一回り大きくなる構造改革が鍵となる と指摘した。』

最後のは多分中村審議委員だと思いますが、まあこの辺りの話ってのはそれはまあ個別で見るとそういう話になるというのはその通りなのですが、2024年12月の黒田総裁(当時)の経団連での「2%への招待状」講演の結びの部分に、

「要するに今の過渡期的な状況を利用するかどうかは、早い者勝ちの面があるということです。デフレのもとでの「縮小均衡」の経済と、2%の物価上昇のもとでの「拡大均衡」の経済とでは、企業を取り巻く環境は全く異なります。企業経営のルールブックが変わるということです。進化論を唱えたダーウィンは、「生き残るのは、強い生き物ではなく、変化に対応できる生き物だ」と言ったと伝えられています。いち早く環境変化を先取りし、「拡大均衡」の経済に対応できた企業こそが競争の「勝者」となり、新しい時代における繁栄を享受できることになるのだと思います。」(2014年12月25日黒田総裁講演より)

ってなっていた訳で、そもそも論として2%物価安定目標が達成されている世界というのは、自分の被雇用スキルを時代に即して変化させることができない個人や、生産性を引き上げることができない企業は「拡大均衡」の経済の中で取り残されていくのは必然ですよ、っていう世界を含意している筈で、そういうのを目標にして政策やるって息巻いて黒田緩和以降の政策をぶっこんでいるのに、それが実現する段になって「変化できないで取り残される者」に対してどうのこうのだから、みたいな話をするのはおめーそりゃ話が違うじゃろ、としか申し上げようがないんだが、また余談になってしまいましたなすいませんすいません。


・物価の話ですがこちらも何だろねってのがちょいちょい見受けられますが

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは3%台前半となっているとの認識で一致した。また、予想物価上昇率について、委員は、緩やかに上昇しているとの評価で一致した。』

まあこれは良いとしまして、

『そのうえで、何人かの委員は、足もとの物価上昇率は見通しの範囲内にあるものの、米を含む食料品価格の上昇から、幾分上振れて推移しているとの認識を示した。』

という認識だったのですよね。でもって

『多くの委員は、こうした食料品価格の上昇は、天候など一時的な要因による部分が大きいが、供給力の持続的な低下や人件費・輸送費の上昇などが影響している面もあるほか、食料品価格の上昇が予想物価上昇率を押し上げ、基調的な物価上昇率に影響する可能性もあるとの見解を示した。』

えーっと、3月会合では「多くの委員」がこういう認識をしめしていたのに、何で4月になって物価見通しが下方修正された上にリスクも下振れリスクが大きい、っていう認識にひっくり返ったんですか、というお話でありまして、お前らどんだけ情緒不安定なんだよと小一時間問い詰めたいし、今回の展望レポートの物価のリスク要因のところでは、

「この間、このところの米などの食料品価格上昇については、それ自体は天候要因等を背景とするものだとしても」(4月展望レポート基本的見解6ページ)

っていうあっさり味で天候要因(なのでこの後下がる、って含意)というのだけにしていて、いやお前らどっちなんだよというお話ではありまして、この辺の認識がどうワープしたのか、というのも非常にイミフなところではありまして、4月議事要旨でどんな話に変化しているのかを見るのが楽しみで6月会合が待ち遠しいという所ではあります。

てなイヤミはさておきまして続きですが、

『このうちの一人の委員は、1月の総合ベースの消費者物価指数の上昇率の過半はエネルギー、生鮮食品、穀類によるものと指摘したうえで、生鮮食品、穀類の上昇は主に供給ショックと位置付けられるが、持続性がありうるため、予想物価上昇率などへの波及を注視すべきとの見方を示した。』

『また、別の一人の委員は、企業の価格設定行動が変化するもと、これまで動きの鈍かったサプライチェーンの川下でも、コスト転嫁がされやすくなっていると指摘した。』

『一方、ある委員は、賃金上昇の価格への転嫁は、企業向けサービスには明確に表れている 一方、消費者向けサービスにおいては明確ではなく、個人消費が力強さを欠く中で企業が価格転嫁に慎重になっている可能性があると指摘した。』

まあこの辺は個別の意見ですので流しまして「先行き」のパートに入ります。


・物価の先行き見通しは4月にどのように変わったのかをイヤミたらたらしながら確認するのが吉(意地悪)

『物価の先行きについて、委員は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくとの認識で一致した。』

ほうほうそうでしたかそうでしたか、4月にどうジャガーチェンジしたのか、その背景に何があるのか、というのを
見たいもんですなあ(棒読み)

『そのうえで、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとの見方を共有した。』

トラ公の関税が出たとはいえ、まだどうなるかが見当つかないのにいきなり見通しを1年後ろ倒しにした皆さんどういう言い訳を次回出してくるのかが楽しみですな(一部は「主な意見」でも見れるかもですが)。

『ある委員は、春季労使交渉の集計結果などを踏まえると、物価は着実な上昇が見込まれる状況となっており、基調的な物価上昇率も2%に向けて順調に上昇している可能性が高いとの見方を示した。』

『一人の委員は、企業の価格転嫁に伴う価格上昇圧力はしばらく継続するとの見解を示したうえで、民間調査によれば、2025 年の食料品の価格改定の動きも再び勢いを増していると指摘した。』

まあ今回は26年度の物価見通しで上のプロットの人たちが上振れ、下のプロットの人たちが下振れをリスクとして認識しているので、この人たちは上プロット組かもしれませんので個別見解に対してはあまり悪態をつく必要ないかもしれませんw

『この点に関連し、別のある委員は、4月の期初の値上げが、とくにサービスにおいてどの程度となるか見極めていく必要があると述べた。』

あら〜〜、見極める前に物価のベースラインシナリオが下がっちゃったの〜〜〜かなちいね〜〜〜、と言ってもこの方が上振れ組なのか下振れ組なのかが分からんからまあ煽らんでおくw


・関税の影響は物価については上下双方ある、だったのに何で4月には見通し下振れになったんでちゅかねえ

でまあその続きですがリスク要因、

『経済・物価の見通しのリスク要因として、委員は、各国の通商政策等の動きやその影響を受けた海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高いとの認識で一致した。』

というのはまあヨロシとしまして、

『そのうえで、何人かの委員は、春季労使交渉での賃上げ率が高めとなっていることや、食料品価格が上昇していることが物価に及ぼす影響について注意する必要が あると述べた。』

ほほう。

『他方、何人かの委員は、このところ、関税政策を含めた米国新政権の政策運営を巡る不透明感が高まっているとしたうえで、今後発表される米国の政策やそれに対する各国の対応次第では、わが国の経済・物価にも影響が及びうることに十分注意する必要があるとの見方を示した。』

まあそりゃそうですわな、ではありますがこの後が中々味わいありまして、

『これに関連して、複数の委員は、関税の導入は、経済活動を下押す要因になると考えられる一方、物価に及ぼす影響については一概には判断しにくいと指摘した。』

って認識だったのに、何で4月展望レポートで思いっきり下方向になってしまっているんですかというお話でして、結局のところ4月展望でいきなり下方修正しないでリスク認識の下方修正だけにとどめておいた方が3月からのジャガーチェンジ感が出なかった話だし、そもそもこの関税政策ってリーマンショックとかコロナショックみたいなのとはまた別の種類のショック(かどうかも現時点では分からんが)なのに、フォワードルッキングに反応するから過去との整合性がおかしくなる、ということになっている訳ですな、ナムナム。


・先行きの政策運営に関して3月は勇ましい意見が結構並んでいたんですけど・・・・・・・・

『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですが、まあ前半の方はさらさら流して読むとしまして最後の辺りが何ともなのでそっちがアタクシ的にはメインイベントになります。

『先行きの金融政策運営について、委員は、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくという基本的な考え方を共有した。そのうえで、具体的な金融政策運営については、予断をもたず、経済・物価見通しやリスク、見通しが実現する確度をアップデートしながら、適切に判断していく必要があるとの認識で一致した。』

ってのから始まる話ですが、

『何人かの委員は、前回1月の会合で政策金利を引き上げた直後であることも踏まえると、現在は、政策効果に加え、各国の通商政策等の動きやその影響を丁寧にみていくことが可能な局面にあるとの認識を示した。』

なのはまあ良いんですけどなんかこの辺りのタイミングって威勢の良い感じの情報発信があったような無かったようなw

『ある委員は、1月までの政策金利変更の影響や、このところの長期金利の変動の影響を評価するためのデータは現時点では 十分に揃っていないとしたうえで、経済活動への本格的波及とその影響の確認には時間が必要であると述べた。』

『別のある委員は、当面、米国新政権の政策とその世界経済・国際金融資本市場への影響を注視しながら、国内的には0.5%という新しい金利水準の下での経済・物価の反応を見極めていくことが適当であると指摘した。そのうえで、この委員は、これらを踏まえて、次の政策金利の引き上げを判断すべきであるとの見解を示した。』

『別の一人の委員は、米国の政策運営に起因する下方リスクは急速に高まっており、関税政策の今後の展開次第では、わが国の実体経済にまで大きな悪影響を及ぼす可能性が十分あると指摘した。そのうえで、この委員は、そうした可能性が高まった場合には、政策金利を引き上げるタイミングをより慎重に見極めることが必要となるとの見方を示した。』

『この間、別のある委員は、変革速度の非常に速い中国企業との競争激化に加えて、米国の関税政策や供給網の分断などの不確実性の高まりから、わが国経済への下押しリスクが高まっていると評価したうえで、今後、中小企業の業績・投資、賃金・物価動向などへの影響を入念に確認する必要があることから、当面は現状の政策を維持することが適当であると述べた。』

最後のは中村審議委員だと思うのですが、実質金利を低位に維持することによって中小企業の変革を遅らせてしまう、ってご認識が無いのかしら、ってのはずーっと昔から気になるところではございますわな。

でもって続きですが、ここからがイキリ散らかしパートになりましてですね、

『他方、ある委員は、不確実性が高まっているからといって常に慎重な政策対応が正当化されるわけではなく、今後の状況によっては、果断に対応することもありうるとの見解を述べた。』

抜刀斎キタコレ!

『別の一人の委員は、各国の通商政策等の影響から物価に上下双方向の不確実性がある時に、不確実だから現状維持、金融緩和を継続するということにはならないと指摘したうえで、次回会合では、@企業や家計のインフレ予想、A物価上振れリスクの顕在化、B賃上げの進展をしっかりと確認し、金融政策を判断していく必要があると述べた。』

おおおおおおお抜刀斎以外にも!

『この点に関連して、別の一人の委員は、米国経済は、減速を示す指標もあるが、雇用関連指標などは底堅いと指摘し、政策変更を急がないとのFRBの情報発信も踏まえると、日本銀行の政策の自由度は引き続き増した状況であるとの見方を示した。また、この委員は、資産価格上昇に伴う期待収益率向上から、市場参加者は、実質金利を消費者物価で捉える以上に低位に感じ、緩和効果がより強まっている可能性があると指摘したうえで、今後、来年度を視野に、過度な緩和継続期待の醸成による金融の過熱を避けることが必要になった場合には、金融緩和度合いの調整を機動的に行う必要があると述べた。』

あらこれはさらに威勢が良い、ということでもしかしたらこっちが抜刀斎かもしれませんね。

・・・・何はともあれこのパートがそこそこ字数を取りつつ結構な勢いで威勢がいい話をしておる次第でして、一方で4月展望であそこまで盛大に腰砕けになった訳ですからその間は何だったのか、というツッコミを受けるのは当たり前田のクラッカーだと思うのですが、そこを堂々と出してきた日銀大本営のスタンスってのが中々味わいがあるなと思いました。

と申しますのは、まあワイの完全なる妄想の世界線ではありますが、こういうのを思い切り強調しておくことによって、「いやー米国関税政策の影響ってビビるほどの事も無かったね〜よかったよかった」という話に一件落着、となった時に再度ジャガーチェンジできるように「私言いましたよね」ムーブとしてこの威勢の良い話のご紹介パートが浮上してくるんですよね〜。まあワイの妄想だけど。


そして次の段落もさらに威勢が良くて、この状況認識で何で4月展望があそこまで弱くなるのか、というのが甚だ疑問としか言いようが無いのですが、


・中立金利に関連した情報発信についてとかいうこれまた勇ましい議論

『委員は、今後、基調的な物価上昇率が高まっていった場合の政策運営について、どのような情報発信が適切かについて議論した。』

っていうこれまた勇ましい議論をしていたのに、4月展望であそこまで一気に青菜に塩モードになってしまうのが全く意味不明ですけれども、わざわざこのコーナーを作っているのはまあ何らかのナニがあるかもしれませんなあという所で。

『ある委員は、高水準の賃上げが実現し、「物価安定の目標」の実現が目前に迫りつつある段階にあることを踏まえると、今後は、こうした前提で情報発信する新たな局面に入るとの見方を示した。』

こりゃ強い。

『別のある委員は、次の利上げを行う局面では、基調的な物価上昇率が2%にかなり近づいていることも想定されることから、その際には、金融政策スタンスについての説明を、従来の緩和から中立へ転換させることを含めて検討していく必要があると述べた。』

とは言え0.75%じゃあクッソ緩和には変わらんじゃろと思いますけど。

『この点に関連し、何人かの委員は、中立金利を巡る不確実性を踏まえると、政策金利を引き上げていく過程において、金融政策が緩和的かどうかの評価は次第に難しくなると指摘した。』

となりまして、

『このうちの一人の委員は、中立金利の推計誤差を大きく減らす特効薬は存在しないが、引き続き推計の精度の引き上げ等に向けて努力していく必要があると述べた。』

これは総裁かな〜

『何人かの委員は、中立金利や基調的な物価上昇率はいずれも厳密に観察することができないものであることを前提としたうえで、どのような情報発信が適切か考えていく必要があるとの見解を示した。』

いやだから「基調的物価上昇率」とかいう「お気持ち物価」を便利使いするの止めれば良いだけだと思うんですけどね、とは思いました。

なお、以下の長期国債買入云々の話はまあどうでもいい話しかしていないので割愛します。





2025/05/08

お題「FOMCでござるが声明文は案の定「今回は1回パス」で来ましたわな」

この手の輩って必ずと言っていいほどこういうムーブをするんだが
https://www.47news.jp/12547944.htm
戦争検証の中止申し入れ 自民保守系、官房長官にl
2025年05月07日 21時35分共同通信

『自民党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護る会」代表の青山繁晴参院議員らは7日、林芳正官房長官と国会内で面会し、戦後80年の節目に石破茂首相が調整している先の大戦の検証について、中止するよう申し入れた』(上記URL先より)

勝っていたとしたって今後の事を考えたら検証するのが大事ですし、ましてや先の大戦は本邦の歴史に類を見ないまでに大敗北したんだから検証することは「今後の日本の尊厳と国益」を守るために必要じゃろ、としか言いようが無いんだが何考えてるんだか。

なお本件は短期間で結論出せるもんじゃないからもっと数年単位で時間を掛けて腰を据えてやるべきだ、という面でのツッコミはあるんですけどね。

というのはさておきましてFOMCを寝起きかつ答え合わせ(?)しないで確認。


〇FOMC声明文:不透明性とリスクの高まりを示すも両方のバランスはとりつつ現状認識は変更せずに1回パスですかね

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250507a.htm(今回5月)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250319a.htm(前回3月)

ということでいつもの寝起き確認。


・第1パラグラフ:今のところまだ経済の強さは維持されていますとしていて1QGDPはノイズ扱い

『Although swings in net exports have affected the data, recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace. 』(今回5月)
『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace.』(前回3月)

そりゃまあそうじゃろ、ということでして、1QGDPで輸入が関税前の駆け込みムーブと思われる動きでクソ強くなり、その結果統計的にはGDPが弱くなった、という現象が見られましたが、それはさておき今のところ得られるデータを見ますと経済はソリッドペースで拡大を続けている、という認識を示しています。よって、

『The unemployment rate has stabilized at a low level in recent months, and labor market conditions remain solid.』(今回5月)
『The unemployment rate has stabilized at a low level in recent months, and labor market conditions remain solid.』(前回3月)

だし、

『Inflation remains somewhat elevated.』(今回5月)
『Inflation remains somewhat elevated.』(前回3月)

と現状認識自体は変更していません。


・第2パラグラフ:失業率の高まりとインフレの高まりのリスクが同時に高まっている、という両論併記モード

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回5月)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回3月)

これはいつもの開経偈。

『Uncertainty about the economic outlook has increased further.』(今回5月)
『Uncertainty around the economic outlook has increased.』(前回3月)

今回は不透明感に関して謎に前置詞を変えてきましてこれは最早ドメドメザパニーズのアタクシには良くわからんですが、アラウンドからアバウトになったのは多分それだけでも不確実性の一段の強まりを示しているんだと思いますし、そもそもファーザーが付いているので不確実性が盛大に高まっている、という訳ですが、そらそうよとしか言いようが無いのでこれは順当な言い回し。

『The Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate and judges that the risks of higher unemployment and higher inflation have risen.』(今回5月)
『The Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate.』(前回3月)

マンデートに対する上下双方のリスクに注意、は同じですが、今回は「より高い失業率(=経済下押し)リスク」と「より高いインフレーションのリスク」の双方が高まっている、ということで、インフレと経済と両にらみでリスク拡大という説明でバランスを取っていてどっちがどうなのというのは会見を見ないと(読まないと)ワカランチ会長ではありますがどうだったのかまでは確認できていませんサーセン寝起きなので。


・第3パラグラフ:前回縮小ペース削減したバランスシートに関しても含めて政策は現状維持

『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 4-1/4 to 4-1/2 percent.』(今回5月)
『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 4-1/4 to 4-1/2 percent.』(前回3月)

政策金利据え置き。

『In considering the extent and timing of additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』(今回5月)

『In considering the extent and timing of additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』(前回3月)

あんじょうようやっときますわ、の文言は当然ですが同じ。

『The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities. 』(今回5月)

『The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities. Beginning in April, the Committee will slow the pace of decline of its securities holdings by reducing the monthly redemption cap on Treasury securities from $25 billion to $5 billion. The Committee will maintain the monthly redemption cap on agency debt and agency mortgage-backed securities at $35 billion.』(前回3月)

前回はバランスシートの削減ペースを落とすという決定をしたので前回比較で文章が短くなっていますが、これは前回決定の踏襲ですよというお話ですな。

『The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.』(今回5月)
『The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.』(前回3月)

3パラの最終文言はいつもの同じ文言で、これは2パラの最初の文言と対句みたいになっている文言ですな。


・第4パラグラフ:こちらは毎度のように全文一致

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回5月)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回3月)

塩梅見ながらあんじょうようやっときますわ、の文言は同じですわ。


・第5パラグラフ:全員一致で少なくとも投票メンバーには利下げ主張無かったんですね

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Susan M. Collins; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Philip N. Jefferson; Neel Kashkari; Adriana D. Kugler; Alberto G. Musalem; and Christopher J. Waller. Neel Kashkari voted as an alternate member at this meeting.』(今回5月)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Susan M. Collins; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; Alberto G. Musalem; and Jeffrey R. Schmid. Voting against this action was Christopher J. Waller, who supported no change for the federal funds target range but preferred to continue the current pace of decline in securities holdings.』(前回3月)

今回カンザスシティ連銀のシュミッド総裁の代打でカシュカリ大僧正が投票していますが、いずれにしましても全員一致で金利据え置きとなりましたな。


・ディレクティブにも変更は無し

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250507a1.htm
Implementation Note issued May 7, 2025

前回はこちら
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20250319a1.htm
Implementation Note issued March 19, 2025

こちらは引用してるとクソ長くなるので引用しませんが、各種ファシリテやディスカウントウィンドウィの金利水準、ONRRPなどの固定金利オペレーションの応札限度額などに変更は無く、バランスシート縮小に関しては前回FOMCで減額ペースの鈍化を決定した米国債保有残高に関して、4月の「月間50億ドルを超える償還があった場合は超過分を再投資する(3月末までは250億ドル)」を継続しています。


・まあこれは順当オブ順当だとは思いますが・・・・・・・

ということでまあ順当オブ順当な結果になったんじゃないかとは思いますし、投票メンバーの皆様もうっかりここで利下げ票入れるとトラ公が調子に乗ってキチガイムーブを強めるだけですから全員一致は結構な結果だったと思います。

しかしまあ何ですな、確かに「関税によってモロにインフレ上振れ要素がある」という事情があるにせよ、本家本元のFEDが「先行きは不透明だしリスクは経済と物価で逆方向のリスクがあるので今回は1回パスして様子を見ましょう」ってやっているのに、どっかの日銀とか言うハトハトチキンヤローは国難国難財政財政減税減税と喚き散らかしておられるのの尻馬に乗って、何のデータも出てきてないのにハトハトチキンのサイドだけはフォワードルッキングに機敏に対応してベースラインシナリオを思いっきり下げてくる、という謎プレイを演じているのでして、まったくもって何やってるんだか、という感想は否めません(あくまでも個人の感想です)。


でもって今回はSEPの無い会合なのでオープニングステートメントを読んでいくお時間になるのですが、例によって例の如く時間が足りなくなりそうなので今朝はここで勘弁していただきとう存じます(ジャンピング土下座)






2025/05/07

お題「決定会合レビューで総裁会見」

さて連休明けですな。でもって明日はFOMCと。

〇総裁会見はまあ普通に展望レポートの「ベースラインシナリオ引き下げ」の説明ですねえ

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2025/kk250502a.pdf
総裁記者会見
――2025年5月1日(木)午後3時30分から約65分

・ということで最初の質問は「関税政策の影響は」という順当なものですが

『(問)トランプ大統領の一連の関税政策について、現時点でどのように分析していらっしゃいますでしょうか。今回の決定会合の結果と展望レポートについて、関税政策がどう影響したか教えてください。』

順当である。

『(答)今回の展望レポートでは、最近の関税政策ですが、これは海外経済の減速、わが国企業の収益の減少、不確実性の高まりによる支出の先送りなどの経路を通じて、経済の下押し要因として作用すると評価しています。』

いきなりの出オチとしか言いようが無いですが、予断を持たずに判断という事を(ちょっと上の方で引用した展望レポートでは)言ってるのに、思いっきり予断をもって判断しておるわけです。まあこの時点で「シナリオを定性的に下振れさせている」訳ですが。

『ただその後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくことなどから、下押し圧力は次第に弱まっていくとみています。』

このような器用な見方をするよりも「今は良くわからないからベースラインシナリオを維持するけど今後の動向を見ながら考えます」の方が良いと思う訳でして、今回の日銀方式ですと、思ったより影響が大したことがなかった場合に下振れさせた見通しを再度上げるのが出遅れる可能性があるのもそうなんですが、「影響はいずれ無くなっていく」という見通しを置いていることによって、実は関税政策の影響がもっと持続的かつ構造的なものになったという場合に「今は弱いけどいずれ戻る」という看板を下ろすのが遅れてしまうリスク、ってのもあると思うのでして、あんまりこういう小賢しい見通しを出さない方が良いと思うのですよね、もっと見えてからで良かったと思うのですが。

『物価に対しては、成長ペースの鈍化などを通じて、押し下げ方向に作用をすると考えており、基調的な物価上昇率もいったん伸び悩む姿を想定していますが、』

グローバルな供給網の変化とかそっちの方は気にしないんですかそうですか(展望のリスクシナリオの中にはあったけど)。

『その後は徐々に高まっていくと予想しています。』

このような器用な見方以下同文。

『ただ、物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移すると考えられる時期は、見通し期間の後半になる見込みです。』

こういう表現をしていますので、時期が1年先送りになっています。よって、

『こうした意味で、今回お示しした経済・物価の見通しは前回と比べて下振れていますが、見通し期間内に基調的な物価上昇率が物価安定の目標と整合的な水準まで高まるという姿は、これまでと変わっていないところでございます。』

ベースラインシナリオを下げているのに「これまでと変わっていない」っての訳わからんから勘弁して欲しいんですが、そうしておかないと円安にぶっ飛ぶから、って配慮は有るんだと思います。

『こうした中、今回の決定会合では、実質金利がきわめて低い水準にあることなどを踏まえ、現在の緩和的な金融環境を維持することで、引き続き、経済活動をしっかりとサポートしていくことが適当と判断しました。そのうえで、各国の通商政策等の今後の展開や、その影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることも認識しております。』

でもって、

『この点を含め、経済・物価の見通しが実現していくかについては、今後とも予断を持たずに点検し、2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現という観点から、適切に政策を判断してまいりたいと考えています。』

特に現時点で明らかに出ているような経済指標も(たぶんアネクも)ないのにベースラインシナリオ下げている時点でお前ら「予断を持ってシナリオ変更」じゃろとしか申し上げようがないのだが、どこまで行っても今回ここでいきなりベースラインシナリオを下げるとかいうある種の蛮勇を振るった意味が分からんですな、というお話でした。


・これもよいそもそも論でまあこの辺りまでで論点はかなり出ている感じがw

会見の頭の辺りからクソ忙しくてヘッドラインしか追えなかったのでリアタイであんまり聞けてなかったのですが、これはよいそもそも論質問。

『(問)二問お願い致します。最初は、展望レポートの中で、持続的な安定的な物価、基調インフレが達成する見通し期間が後半ということで、展望レポートの見通し期間が1 年間延びた、その中での後半に物価安定の目標と概ね整合的な水準で基調物価が推移するということであれば、当然のことながら利上げのタイミングやペースもその分遅れるという判断でよろしいのでしょうか、という点が一点目です。』

そらそうだ。

『二点目は、金融政策の基本的な方針は利上げを続けるということだと思うんですけれども、これはすなわち賃金と物価の好循環等の基本的なメカニズムは維持されていると、ただそこを巡る不確実性が高いと、そういう理解でよろしいでしょうか。』

うんうん。

でもって回答ですが、

『(答)後半からお答えしますと、この見通しのまず成長率といいますか実質GDPの姿に示しましたように、関税政策の影響等を受けて、今年度と来年度、成長率が少し下振れするという姿をみています。その結果として、物価上昇率と賃金上昇率はやはりやや下振れするというふうに、あるいは伸び悩みの状態に入っていくというふうに考えています。ただ、その間もかなり深刻な労働者不足は続いているというようなこともあって、賃金と価格がお互いに相手を上昇させるという意味での好循環は継続していくというふうに考えています。もちろんどの程度の水準でそれが続いていくかという点については、見通しの姿のうえで、上下にリスクがあるということは認識しております。』

丁寧に説明したいのは分かるのだが、こういう説明をするから植田さんの会見はクソ長くなってしまう訳でして、こんなの「ご指摘の通りで、足踏みはするかもしれないが基本的なメカニズムが崩れたという認識をしている訳ではありません」って回答すればいいだけなんですよね。昔どこかの記事だかインタビューだか講演だか忘れたけど、共立女子大の先生やってる時に「講義がつまらない・わかりにくい」とか言われたと自嘲ネタを植田総裁ぶっこんでいましたけど、全然反省してねえだろとしか申し上げようがありません。

『そのうえで、それを前提にということですけれども、おっしゃいましたように、基調的物価上昇率が 2%に近いところに収束していくというタイミングは、見通し期間が延びてその後半ということですので、やや後ずれしているという姿になっています。』

はい後ずれ明言キタコレな訳でして、関税の影響がまだ全然わからんという状況なのに「予断を持って」思いっきり政策運営にかかわる物価目標達成時期の後ずれをしているんですよね。

『それが金融政策にどう影響するかということですけれども、これまでのように割と単調に基調的物価が 2%の上昇率に収束していくという姿から、いったんちょっと足踏みするようなところを経てまた上昇するという姿にやや修正していますので、その中のどこでその見通しの確度が高まったということを判断できるかというのは、なかなか難しい問題かなと思います。その辺、柔軟に考えて政策対応したいと思いますし、それから、先ほども強調させて頂いたと思いますが、中心的な見通し自身の確度が、これまでほどは高くないというふうに残念ながらみています。従って、例えば関税政策等について大きな動きがあるという場合には中心的な見通し自体も変わり得るし、それが将来の金融政策の動向にも影響を与えるというふうにみております。』

ワシもしつこいのだが「関税政策等について大きな動きがあるという場合には中心的な見通し自体も変わり得る」のに何で今回動きもない段階で中心的な見通しを変えたんだよとしか言いようが無い。

・・・・まあそれだけハトハトチキンの血が騒いでコケコッコーとなったんでしょうとしか思えませんが。


・よく考えたら財政とかは「決まったものだけ織り込んでいる」のに何で今回の関税は・・・・・・・

次の質問の前半ですが、

『(問)前回の 3 月会合で、総裁は米国の関税も含めて、4 月になればある程度みえてくるというふうに話しておられましたけれども、その結果として米国の関税政策というのは想定よりも悪かったというか、景気に対しては下押しかなり強かったと考えているのかという点と、その結果として、現時点でですね、経済と物価、オントラックというふうに言えるのでしょうか。(後半割愛)』

これに対する説明だが。

『(答)まず経済自体ですけれども、足元までは概ねオントラックできているというふうにみています。経済と物価ですね。ただし、おっしゃったように、懸念していた米国の関税政策が、特に 4 月 2 日の時点では、かなり悪い方に振れた。その後、若干の巻き戻しがあって、現在もうひとつ分からない状態になっているということ。その後、ある程度交渉の進展があるということは、見通しの中に織り込んでいますけれども、それでも無視できないレベルの関税が残るということを前提にした見通しになっています。その結果、見通しがやや下振れたという姿になっています。(後半割愛)』

は良いんですけど、展望レポートの作りとして毎回「各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また、先行きの政策運営については、市場の織り込みを参考にして、見通しを作成している」としていて、財政政策とか、物価対策の各種措置とかそういうのは「最終決定するまで入れない」という仕切りになっていまして、だったら今回だって「関税が分からんからとりあえず無視して(あるいは10%の部分だけにして)出すけれどもより影響が大きくなる可能性はありその場合は見通しを変更します」と言って出す方が分かりやすかったと思うのですけど、ハトハトチキンがコケコッコーだから仕方ないですわな。

でもってこの人の次の人の質疑で「では関税の置きはいくらか」という話があったのですが、

『(問)総裁、冒頭のご説明で、この中心的な見通しを作るうえで各国間の交渉がある程度進展すると、関税についてですね、ということを前提に置いているというご説明がありましたけども、具体的には現在、日米の関税交渉が進行中でありますけども、相互関税の上乗せ分が今一時停止されてますが、それがかからない、発動されないということなのか。それともう一つ、自動車への関税っていうのもこれは撤廃されるという前提で想定して見通しを作ってるのか。各委員それぞれ前提が少しずつ変わると思うんですけど、総裁自身はどういった前提を置いて見通しを置いたのかをまず伺えないでしょうか。(後半割愛)』

それはその通りで、「置きを置いて見通しを作った」のであれば、その置き自体を見せてくれれば、実際の交渉の進展次第で日銀の今回の見通しが今後どっちに転ぶのか、というのが分かりやすくなるんですが、回答がこりゃまた摩訶不思議でして、

『(答)まず、関税に関する仮定ですけれども、おっしゃるように各委員、個別にそれぞれだと思いますけれども、私も含めて大まかな姿としては、これまでに議論されてきたものの中の一番極端なところにはいかない、それから全くゼロとか、10%だけで済むというよりはもう少し高いレベルに交渉の結果落ち着く程度の前提で、それぞれ具体的な姿は各委員に任されているというところでございます。(後半割愛)』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

いやちょっと待て、展望レポートの説明だと「今回の展望レポートの中心的な見通しは、今後、各国間の交渉がある程度進展するほか、グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような状況は回避されることなどを前提に作成している。」けど「なお、今後の各国の政策の帰趨や、それを受けた各国の企業・家計の対応次第で、経済・物価の見通しが大きく変化しうる点には注意が必要である。」ってあるんだが、その前提がそもそも各委員でバラバラにばらけていたら置きの意味はどうなっているんだというお話ですがな。

関税率がこのくらいとした場合に、この程度の下押しが考えられます、のこの程度の下押し、という部分に関して各委員の評価が違って、その結果見解がバラけるというのは別に普通の話だから良いんですけど、その関税率がこのくらい、自体が全然バラバラの前提で置いてるんだったらそれ意味ねえだろというか、だったら最初から「関税は不確実なのであくまでも不確実要因」とかまあ何なら10%だけ入れておくとかの置きにしておいて今後の展開次第で6月の会合での見通し変更も視野に入れた方がええじゃろと思う訳なのでこの説明はナンジャソラとズッコケてしまいますな。

つまりですね、このちょっと先の質疑であったのですが、

『(問)今の質問にも関連する点で二点お願いします。一つは、これだけ読みにくい関税政策の影響、きわめて高い不確実性ですけれども、見極めに現時点でどの程度時間がかかるかという点において、例えば今 90 日間の関税の猶予期間というのをトランプ政権、設けてますけれども、これが 7 月の上旬に来ますけれども、例えばやはりその 90 日の期限が終わってある程度関税の中身が確定するまでは、なかなかこれは見極めにくいと現状でみていらっしゃるのかどうかという点が一つです。(後半割愛)』

というのがあったのですが、これには植田さん、

『(答)まず、関税政策について不確実性が大きく低下するのはいつ頃かというご質問だと思いますが、おっしゃるように 90 日間で交渉を米国政府としては終わらせたいという意向が表明されてますので、そこは一つのポイントになるとは思いますけれども、その手前でも、例えば現在の日米の交渉のように順次行われている交渉もありますし、90 日経ってもまだっていうところも残ると思いますので、そこは何とも言えないと思いますし、いったん大体これでいくというふうにセットされても多少の不確実性はまだ残るという、何とも断定のしにくい状態が続くかなと思います。それと余談になるかもしれないですが、関税の体系が決まっても、その経済への影響というところは、これまでにない規模の関税の発動ですので、なかなか不確実性は大きいということだと思います。(後半割愛)』

だったら今回はベースラインシナリオを維持して7月に下方修正必要なら下方修正して、もし6月の時点である程度アウトラインができたら出す、で良かったと思うのですが、結局どこまで行っても今回こんなにハトハトチキン音頭でコケコッコーとなる理由が分からんですな・・・・・・・・


・輪番に関しては「政策意図を輪番では使わない」ようでそれは大変に宜しいお話である

『(問)(前半割愛)もう一点、次回の 6 月会合で国債買入れの中間評価と 26 年度の減額計画を示すと思うんですけども、経済の減速のリスクを受けてですね、景気を支えるために買入れの減額ペースを緩めたり、あるいは減額を止めたりといったことは選択肢として取り得るのでしょうか。』

という質問に対しての回答ですが、

『(答)(前半割愛)そのうえでですが、国債の買いオペの中間評価に関わる部分ですけれども、これは以前から申し上げていますように、金融政策としての対応は短期金利の操作を中心に行うということで考えています。今回の中間評価は、債券市場、国債市場の市場動向、機能度をしっかり点検しつつ、26 年 4 月以降の姿も提示するということを基本線に行うということでございます。』

ということなので、基本的に政策ツールではない(もうYCCじゃないんだから)というのを明らかに説明しているのは中々結構だと思いました。さらに別の質問で、

『(問)(前半割愛)あと国債の買入れについてですけれども、次回会合で議論されるということですが、最近の超長期金利の動きだとか、債券市場全体のボラティリティだとかを受けてですね、もっと減速ペースを来年度ですね、26 年度に早めるべきだとか、いやそうじゃないという意見もいろいろありますよね。今、総裁、そういったことについてはどういうふうにお考えになってるんでしょうか。』

に対しては決め打ちは特に行わずに、

『(答)(前半割愛)それから国債の買入れについては、中間評価でこれまでの経験をレビューするわけですけれども、おっしゃった点を含めまして、市場参加者会合でのやり取りも含めて市場の機能度等について判断していきたいというふうに思っています。』

としていましたな。


・基調的物価とアクチュアルの物価に関しての指摘に対して

『(問)国内物価に関して二点伺います。一点目が海外が騒がしくなってちょっと霞んでしまってますけれども、国内のインフレは、年度ベースでみると日銀の見通し期間と同じスパンの 3 年間 2%を超すというか 3%台となってます。一方で、実質金利はきわめて低い水準で推移しておりまして、そうした情勢下で不確実性はきわめて高い局面に入りました。この局面での政策判断の考え方をちょっと改めて伺いたいなと。正常化のタイミングが遅れたある種のビハインド・ザ・カーブに陥っているのではないのか、現状の認識を伺えればと思います。(後半割愛)』

ということで、基調的物価を連呼するが現実の物価が延々と上振れているじゃないかという石直球な質問に対して植田さんの回答は、

『(答)消費者物価総合では 3%を超えるインフレ率が足元続いていまして、これは直ちに2[%]に下落するとか 2[%]を下回るという状況ではないわけですけれども、一方で、これも前から申し上げています通り、数字できっちりお示しすることができないのは、なかなか申し訳ありませんが、基調的物価上昇率は、2%をやや下回っているというふうにみています。』

数字できっちりお示しできないのでしたらそれはただの「お気持ち表明」ではないでしょうか、と言いたくなるわけで、展望レポートの背景説明の方なんかでも説明はあるのは分かっていますが、でも結局この2%行ってない云々って「お気持ち」じゃないのかと言いたくなる訳ですな。

『上昇してきてはいるけれども、2%まではある程度の距離があるというふうにみていたわけですが、従って金融緩和基調を、ここまで調整しながらも維持してきたということでございます。』

その調整が足りないからアクチュアルの物価が高止まりしているんじゃないか、ということには毎度毎度特殊要因ワンタイムエフェクトだから、で説明をしているのが現状ですわね。

『ちょっと先に行きますけれども、この基調的物価上昇率がどんどん急上昇してくるということになれば、場合によってはビハインド・ザ・カーブということだと思いますが、これまでのところゆっくりとした上昇できている、ということで、ビハインド・ザ・カーブではないというふうに考えてきましたし、』

それはビハインド・ザ・カーブじゃないとしたいから基調的物価が急上昇しないということにしているだけなのかもしれませんし、更に別のポイントとして、1989年に見られましたように、物価が反応する前に緩和的な金融環境が資産価格形成を歪めてしまってから物価がノコノコと上がりだす、ということもあり得るわけで、基調的物価一点張りで説明している(ように見える)スタンスって如何なものかとは思います。

『更に今回の見通しにありますように、少し先にいって、基調的物価の上昇には足踏みの可能性が出てきている、という中では、現在の金融緩和の程度を取りあえず、少なくとも今回の会合では維持するのが適当というふうに考えたところです。(後半割愛)』

だそうです。

・この質疑は中々でした

これに一種関連した質疑があったのが面白かったけど、

『(問)総裁、先ほどビハインド・ザ・カーブは否定されましたけれども、やはり現状をみてますと絶好の正常化のチャンスを逸してしまったんではないかっていうような感じにも受け取れております。』

からの、

『ゆっくりやってきた前提というのは先ほどお話あったように基調的物価上昇率が 2%に達してないってことですけれども、その基調的物価上昇率って非常にブラックボックス的な指標の前提っていうのは、おそらく賃金と物価の好循環があり得るという前提だったと思うんですが、』

と来まして、

『現実に起きていることはですね、2 年連続で非常に高い春闘の賃金上昇率が、賃上げがあったにもかかわらず、ほとんどの月で実質賃金がマイナスになってると。つまり現実に起きてることは、賃金と物価の悪循環が起きてるわけですけれども、そもそも植田総裁が追い求めていた賃金と物価の好循環というのは幻想だったんではないんでしょうか。』

イイシツモンダナー

でもって回答ですが、まあこれは引かれ者の小唄として鑑賞する物件ですな。

『(答)賃金と物価の好循環はある程度回っているというふうに、もちろん考えております。』

盗人モーモーしいとはこの事w

『ただ、やや誤算だったという意味では、去年の半ば過ぎから、食品価格の上昇が目立ってきた、これが以前に使っていた言葉で申し上げれば「第一の力」がまた出てきたような動きで、賃金がある程度上がっているにもかかわらず、実質賃金を抑えてきたという動きになっているということだと思います。』

第一の力だからしゃーなし理論で誤魔化すのかw

『それからもう一つ、好循環という意味では、まだかなと思いますのが、賃金が上がり続けていますし、今回の春闘も強いわけですけれども、財価格への波及はある程度進んでるわけですけれども、サービス価格のところへの波及がもう一つ思ったほどのところではないかな、というところを注意してみております。』

サービス価格がもっとあがるべきとな・・・・・


あと、なんかお前の感想を会見で大演説するなそういうのはチラシの裏にでも書いとけ、というような文字列があった(リアタイ視聴してないからイマイチよくわからんが)ような気がするんですが、巣に帰って寝てろって感じですな。






2025/05/06

お題「展望レポート基本的見解ですが見ているとやっぱり前回からの整合性が気になりますねえ」

うーん結局連休最終日の夜になってしまうま。

〇展望レポート基本的見解逐語確認(その3かつファイナル)

引き続き展望レポート基本的見解の続きで物価の見通しから参ります。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf(今回4月)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2501a.pdf(前回1月)

・CPIの見通しを下げている訳ですがその理屈は・・・・・

『(2)物価の中心的な見通し 』から参ります。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2025 年度に2%台前半となったあと、2026 年度は1%台後半、2027 年度は2%程度となると予想される。』(今回4月)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台後半、2025 年度に2%台半ばとなったあと、2026年度は概ね2%程度となると予想される。』(前回1月)

ということで何と引き下げですが、経済の見通しが弱くなったから下げ、ってのはまあそれはそれで理屈としては完結しているのですが、上の方でも申し上げましたように、そもそも論として1月展望の時に「物価が経済の需給ギャップにかつてよりも反応しにくくなっていて、構造的な労働供給ギャップの要因で堅調に推移する」って話をしたばっかりなのにいきなりのジャガーチェンジをしているのはお前ら前の説明との整合性をもうちょっと考えて説明してくれや、というお話ではあります。

なので以下の部分は「お前ら何で1月に言ってたことと違う理屈で勝負するのよあんたら認知に問題ありませんですかねえ」って言いたくなってしまうのですが、まあこの理屈を以下鑑賞するわけですな。

『これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(今回4月)

『既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、』(前回1月)

文章の都合上前回のをここでぶつ切りしますが、輸入価格云々は円安が一服したから、と言いたいんでしょうけれども今回の決定会合受けて140円くらいまで戻ってくれてたドル円ちゃん早速145円近くになっていますし、だいたいからしてコメ価格の転嫁問題だってまだまだだし、各種価格転嫁いよいよこれからも続く、としか思えないのですが、なぜか減衰することになっている、というのが不思議なんですが、たぶんこれ何とかストを捕まえても同じような話をする向きが多そうなので、過去データから語る人たちはこういう局面変化に弱くて、お前らまだデフレ脳やってるのかという感じですが、まあそこは個人の感想ですの世界なので何んともかんとも。

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回4月)

『消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。なお、2025年度にかけては、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対して、米価格が高水準で推移すると見込まれることや政府による施策の反動が生じることが押し上げ方向で作用すると考えられる。』(前回1月)

前回言ってた1月の押し上げって米価の高止まりは現実に続いているんだし、何でそれを引っ込めたのかが訳わからんとしか言いようが無いですよね。でまあ見通し期間が2027年3月末までから2028年3月末までに伸びているので、見通し期間の後半の開始時期が1年先送りになっているのは言うまでもありません。

・1月に言ってた上振れ要因を全部打ち返してしまうのは「経済の下振れ」

『2026年度までの見通しを前回の展望レポートにおける見通しと比較すると、2025 年度と 2026 年度は、原油価格の下落や今後の成長ペース下振れの影響などから、下振れている。』(今回4月)

『こうした見通しを前回の展望レポートにおける見通しと比較すると、2024年度と 2025 年度が、米価格の上昇に加え、このところの為替円安等に伴う輸入物価の上振れもあって、上振れている』(前回1月)

明確な輸入物価の転嫁やら米価の転嫁やらというのを押し返してドテンさせるほど経済の下押しによる物価の下げ圧力が強い、という謎結論になっています。何でお前らそこまで悲観的なの????

って話でして、潜在成長率並程度の成長が見込まれるのに、なんで1月に言ってた上振れ要因を押し返してお釣りがくる下振れ要因になるんだよ(すくなくとも潜在成長率並の成長ならば、理屈の上では基調的な物価上昇にマイナス要因にはならんじゃろ(押し上げ要因にもならんけど)というお話だと思うんだがどういう理屈でこうなるの???)と小一時間問い詰めたい。


・そもそも論として「物価安定目標達成と整合的な基調的物価」という状態には「金融政策が中立的」を自動的に含意してないとおかしいんだが

『消費者物価(除く生鮮食品)の見通しは、原油価格や政府による施策に関する前提にも依存する。』(今回4月)
『消費者物価(除く生鮮食品)の見通しは、原油価格や政府による施策に関する前提にも依存する。』(前回1月)

というのはいつものことですが、

『原油価格については、先物市場の動向などを参考に、見通し期間終盤にかけて、概ね横ばいで推移していく前提としている。』(今回4月)

『原油価格については、先物市場の動向などを参考に、見通し期間終盤にかけて緩やかに低下していく前提としている。政府によるガソリン・電気・ガス代の負担緩和策は、昨年度までの消費者物価(除く生鮮食品)の前年比を押し下げる方向に作用してきた。2024 年度と 2025 年度については、負担緩和策の段階的な縮小・終了が、前年比を押し上げる方向に作用するとみられる。』(前回1月)

この辺は特殊要因の話、ちなみに原油価格って毎回これ先物市場の価格を見て云々っていう説明になっているのですが、そもそも論として先物価格の期先限月と期近限月の間の差ってのは受渡適格品目が変わらない限りにおいては、単純に保管コストの差になるんですから(農産物の場合は供用適格銘柄の生産年が変化するので必ずしもこの限りではないが原油は基本変わらん筈)、もともと先物市場の価格を使って云々って前提を置くのも訳わからんのだが何とかならんのかこの設定は。


『エネルギー価格の変動の直接的な影響を受けない消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響が徐々に減衰していくことに加え、成長ペース鈍化などの影響から、いったん2%を下回ると見込まれる。その後は、成長率が高まるもとで、2%程度で推移すると考えている。』(今回4月)

『エネルギー価格の変動の直接的な影響を受けない消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響は徐々に減衰するものの、賃金上昇等を受けたサービス価格等の緩やかな上昇が続くほか、米価格の上昇などもあって、2%程度で推移するとみられる。』(前回1月)

ということで今回は「成長が下押しされるから物価見通しが下押し」になっているのですが、そもそも論として物価安定目標2%が達成されているのでしたら、理屈の上では経済が潜在成長率並で推移していたら物価の前年比はおおむね2%になっていないと話としておかしいのですが、今回の見通しだと経済が潜在成長率程度で推移すると物価(基調物価)が2%割り込むって説明になっていますので、まあ物価目標達成していないから、ということなんでしょうけれども、潜在成長以上の成長が続いて物価目標と整合的な水準に達する、ってのも説明としては謎オブ謎なんですよね。

つまりですね、緩和的な政策を続けていて、物価見通しが2%行くか行かないか、って状況が続いているんだったら、そもそも論としてそれはバイデフェニションで物価目標未達成(=本来なら中立的な金融政策を実施している中で2%で推移していないとおかしいから)ということになるので、見通し期間の後半に物価安定目標達成と整合的な水準、っていうのがそもそも何を言っているのかを詰めると話が結構矛盾してくるんですよ。

おまけにアクチュアルの物価の方は2%から上振れ推移で延々とやっておられるわけで、結局この人たちの言ってる「物価目標達成」というのは具体的にどういう状態なのか、というのが曖昧なまま、その曖昧な「基調的物価」で話を通しているからアタクシのような頭の悪い者にはいつまで経っても腑に落ちないんですよねえ(物価目標達成と整合的な水準に基調的な物価がいますよ(見通し期間後半のどこかでそうなる、という説明ですよね)、というときには金融政策が中立的な水準にある、というのがセットじゃないとそもそもその状態は「物価目標達成と整合的」とは言わないんじゃないか、ってことね)。

とまあメタ哲学みたいな話をこねくり回しましたが続き行きますね。


・需給ギャップの部分に対する感応度合いが弱くなっていったという話は生きているのよね

『物価の基調を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、振れを伴いつつも、改善傾向をたどっている。先行きの需給ギャップは、上記の経済の見通しのもとで、現状程度で推移したあと、見通し期間終盤にかけて、再び改善していくと予想される。この間、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給はマクロ的な需給ギャップ以上に引き締まっている。こうしたもと、多くの業種で企業が労働の供給制約に直面しつつある状況を踏まえると、マクロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価には上昇圧力がかかるとみられる。』(今回4月)

『物価の基調を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、振れを伴いつつも、改善傾向をたどっている。先行きの需給ギャップは、上記の経済の見通しのもとで、見通し期間終盤にかけては、プラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。この間、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給はマクロ的な需給ギャップ以上に引き締まっている。こうしたもと、多くの業種で企業が労働の供給制約に直面しつつある状況を踏まえると、マクロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価には上昇圧力がかかるとみられる。』(前回1月)

今回は経済見通しをバチクソ下げた結果、ここの文言の中での需給ギャップの見通しに、「現状程度で推移したあと」というのが入った格好になっています。

でまあそれはそれでいいんですけど、「マクロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価には上昇圧力がかかるとみられる」っていうのを今回引っ込めていないんだったら、何で物価の見通しが下振れる上にリスクバランスも下になるのよという話で、話の整合性に関して違和感しかないですね。まあ最初の方から言ってますけど、今回は「先行き見通しリスクが多くてまあ普通に考えると経済に下振れリスクになるんだが、ゆうて状況が皆目見当つかないので一旦は従来シナリオを維持して警戒度を高めます」で良かったと思うのですが、ハトハトチキン音頭を踊ったが為に話の整合性が取れなくなっている感は非常に強いし、結局大したことが無かったらまたお前らベースラインシナリオを動かすのかと小一時間という所ではあります。


・適合的期待形成云々をどさくさに紛れて削除しているんだがアクチュアルの物価は上振れしとるじゃろ

『次に、中長期的な予想物価上昇率をみると、緩やかに上昇している。』(今回4月)
『次に、中長期的な予想物価上昇率をみると、緩やかに上昇している。』(前回1月)

何四半期「緩やかに上昇」って言い続けてるんでしょうかいい加減にしてください。

『先行きについては、従来より積極化している企業の賃金・価格設定行動は維持され、人件費や物流費を含むコスト上昇を販売価格に反映する動きは継続すると見込まれるものの、成長ペースの鈍化などの影響を受けて伸び悩むとみられる。』(今回4月)

という説明でその後復活するって話ですけれども、これ前回1月の見通しと比較しますとね・・・・

『短観における企業の物価全般の見通しは、緩やかに上昇している。適合的予想形成の強いわが国において、これまでの物価上昇率の高まりは、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率の上昇をもたらしてきている。』(前回1月)

アクチュアルの物価は高止まりしているので当然「適合的予想形成の強いわが国において、これまでの物価上昇率の高まりは、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率の上昇をもたらしてきている」という記載がありまして、何なら10月の展望でも同じ記載があったのですが、今回どさくさに紛れて削除しているんですが、「適合的期待形成でインフレ期待が上がる」っていうのは今次局面におけるキモみたいな話をしていたし、大体からして過去の大規模黒田緩和がインフレ期待に効かなかった理由も適合的期待形成にしていたんだから、この期に及んで急に適合的期待形成を引っ込めるのはインチキにも程があるじゃろ、と思いました。

適合的期待形成を引っ込めるのは今回物価見通しを下げるわ下振れリスクにするわとしたのと無縁ではないはずで、適合的期待形成の面からいったら足元物価が延々と上振れ状態になっていることは、インフレ期待を押し上げる強い要因になり得るので、あるかまだわからん景気下押し要因を打ち返してお釣りが来たっておかしくないじゃろ、という話になるので、適合的期待形成の話をすると見通しの数値との整合性がおかしくなる、という事によりましてこのような仕儀になったんじゃろうな、というのは何となく想像は付きます(個人の妄想です)。


・1月は随分と威勢よく構造的な感じの話をして期待インフレの強まりの話をしていたんですけどねえ

しかも1月の説明は上記に引き続きまして、

『企業の賃金・価格設定行動には、従来よりも積極的な動きがみられており、名目賃金ははっきりと増加している。また、賃金の上昇が続くもとで、人件費や物流費等の上昇を販売価格に反映する動きも広がってきている。』(前回1月)

と勇ましい話に加えて、

『先行きについては、労働需給が引き締まった状況が維持されるもと、企業の賃金・価格設定行動の変化が続き、予想物価上昇率は緩やかに上昇していくと考えられる。こうしたもと、物価上昇を反映した賃上げが実現するとともに、賃金上昇が販売価格に反映されていくことを通じて、賃金と物価の好循環は引き続き強まっていくとみられる。本年の春季労使交渉についても、昨年に続きしっかりとした賃上げを実施するといった声が多く聞かれている。』(前回1月)

となっていて、エライ勢いでイキリ散らかしていた訳でして、何なんですかこのジャガーチェンジは、というお話でしてどんだけお前らハトハトチキン音頭になっとるんじゃ、というお話ではあります。

でまあ今回はさっきの後に、

『その後については、成長率が高まり、労働需給の引き締まりがより明確となるもとで、積極的な企業の賃金・価格設定行動は更に広がっていき、再度、予想物価上昇率は緩やかに上昇していくと考えられる。』(今回4月)

となっていますが、前回は段落分けた状態で、

『これらの点検を踏まえると、消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを受けて徐々に高まり、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。もっとも、こうした見通しには引き続き不確実性があり、企業の賃金・価格設定行動などを丁寧に確認していく必要がある。』(前回1月)

ということでエライ威勢が良かったのに対して、ってお話ではございました。


・リスク要因その1は通商政策

『3.経済・物価のリスク要因』の『(1)経済のリスク要因 』

『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れないし下振れの可能性(リスク要因)としては、主に以下の点に注意が必要である。』(今回4月)
『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れないし下振れの可能性(リスク要因)としては、主に以下の点に注意が必要である。』(前回1月)

ということで最初が通商政策。

『第1に、各国の通商政策等の動きやその影響を受けた海外の経済・物価動向である。』(今回4月)
『第1に、海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向である。』(前回1月)

『最近打ち出された各国の通商政策は、様々な経路を介して内外経済を下押しする方向に作用すると考えられる。広範な関税の導入はグローバルな貿易活動に影響を及ぼすとみられるほか、関税を含む政策の不確実性の高まりが、各国の企業や家計のコンフィデンスや国際金融資本市場に大きな影響を及ぼすと考えられる。これらの政策が内外経済に及ぼす影響やその程度については、今後の政策の帰趨にも大きく依存するため、その動向を十分に注視していく必要がある。』(今回4月)

『米国経済は堅調に推移しており、同国の政策運営を巡る不確実性は意識されているものの、国際金融資本市場は全体として落ち着いている。もっとも、こうした政策運営を巡る不確実性が、同国の経済・物価動向のみならず、世界経済や国際金融資本市場に影響を及ぼしうることについては、引き続き留意していく必要がある。また、米欧では、中央銀行による既往の利上げの影響についても、引き続き不確実性がある。』(前回1月)

まあここは前提の話が変わっていますが、過去の利上げの影響が云々がしらっと抜けていますな。

『この間、ウクライナや中東情勢等の帰趨次第では、海外経済への下押し圧力が高まる可能性がある。中国経済についても、不動産市場や労働市場における調整圧力が続くなか、政策効果も含めて、先行きの成長ペースを巡る不確実性は引き続き高いほか、通商政策の影響も相俟って、一部の財における供給能力の過剰が世界経済・物価に及ぼす影響についても注意を払う必要がある。』(今回4月)

『この間、ウクライナや中東情勢等の帰趨次第では、海外経済への下押し圧力が高まる可能性がある。中国経済についても、不動産市場や労働市場における調整圧力が続くなか、先行きの成長ペースを巡る不確実性が高いほか、一部の財における供給能力の過剰が世界経済・物価に及ぼす影響についても注意を払う必要がある。』(前回1月)

関税政策の中国経済の影響を付け加えています。まあこの辺はそうですよねという話ですけど、既に見通しを下げてしまっているので、さらに上乗せで下振れかよどんだけハトハトフォワードルッキングなんだよ、とは思ってしまいます。


・輸入物価の動向なんだが明確に「輸入物価上昇が経済に悪影響」というのを連呼しているんですが・・・・・

『第2に、輸入物価の動向である。』(今回4月)
『第2に、資源・穀物価格を中心とした輸入物価の動向である。』(前回1月)

今回「輸入価格の動向である」とぶっこんで来ましたが、この中身が結構前回と違っていまして、

『上記の各国の通商政策等の影響を受けて、グローバルに物流の混乱が生じたり、サプライチェーンの再構築などが進み、そのコストが嵩んだりするようなことがあれば、輸入物価が上昇し、国内需要を下押しする可能性がある。』(今回4月)

輸入物価上昇が国内需要の下押し圧力、って思いっきり言ってまして、それは仰せの通りなんですが、だったらお前ら円安に振るなよアホがとしか言いようが無いわけで、今回ハトハト情報発信をしてドル円が5円近く円安ドル高に振れたんだが輸入物価上昇を悪だと明確に言い切るんだったらなんでハトハトチキン満艦飾の話をする訳なのお前ら、って思いました。

でもって

『また、資源・穀物価格については、先行き、ウクライナや中東等を巡る地政学的な要因により、大幅に変動するリスクに引き続き注意が必要である。』(今回4月)
『資源・穀物価格については、先行き、ウクライナや中東等を巡る地政学的な要因により、大幅に変動するリスクに引き続き注意が必要である。』(前回1月)

というのは前回と同じで、

『中長期的には、気候変動問題への各国の対応等を巡る不確実性もきわめて高い。』(今回4月)
『中長期的には、気候変動問題への各国の対応等を巡る不確実性もきわめて高い。』(前回1月)

これも同じ。輸入物価に関してはこの後にもあって、

『また、輸入物価が大幅に上昇することがあれば、家計の生活防衛的な動きが一段と強まり、経済を下押しすることも考えられる。一方、輸入物価が下落すれば、経済が上振れる可能性もある。』(今回4月)

となっていますが、前回までは

『エネルギーや小麦など資源・穀物の輸入国であるわが国にとって、供給要因による資源・穀物価格の上昇は、海外需要の拡大や輸出の増加を伴わないため、輸入コストの増加を通じた経済への下押しの影響が大きくなる。仮に交易条件が再び悪化する場合には、企業収益や家計の実質所得を圧迫し、企業や家計の支出行動の慎重化を通じて、設備投資や個人消費が下振れるリスクがある。また、輸入物価上昇の消費者物価への転嫁が進むもとで、家計の生活防衛的な動きが一段と強まり、経済を下押しすることも考えられる。一方、資源・穀物価格が下落すれば、経済が上振れる可能性もある。』(前回1月)

ということで、前回までも輸入物価上昇自体は交易条件の悪化が経済下押し、とはなっていましたが、引用部分の頭に「供給要因による資源・穀物価格の上昇は、海外需要の拡大や輸出の増加を伴わないため、輸入コストの増加を通じた経済への下押しの影響が大きくなる」って説明があったのに対して、今回はもうその手の前提の話を取っ払ってシンプルに「輸入物価上昇はアカン」という説明になっているのはほほうと思いました。だったら円安に飛ぶような情報発信するなやとは思いますが(しつこい)。


・リスク要因その3はおおむね同じ

『第3に、やや長い目でみたリスク要因として、わが国を巡る様々な環境変化が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響がある。』(今回4月)
『第3に、やや長い目でみたリスク要因として、わが国を巡る様々な環境変化が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響がある。』(前回1月)

『感染症の経験や人手不足の強まり、脱炭素化に向けた取り組みや労働市場改革の進展などは、わが国の経済構造や人々の働き方を変化させるとみられる。人口動態の変化等に伴う人手不足感の強まりは、デジタル化などによる省力化投資の動きを加速させる可能性がある。一方、そうした資本と労働の代替が十分に進展しない場合には、一部の業種における供給制約によって成長率が下押しされるリスクがある。』(今回4月)

『感染症の経験や人手不足の強まり、脱炭素化に向けた取り組みや労働市場改革の進展などは、わが国の経済構造や人々の働き方を変化させるとみられる。人口動態の変化等に伴う人手不足感の強まりは、デジタル化などによる省力化投資の動きを加速させる可能性がある。一方、そうした資本と労働の代替が十分に進展しない場合には、一部の業種における供給制約によって成長率が下押しされるリスクがある。』(前回1月)

ここまで前回と同じ、資本と労働の代替が十分に進展しない場合は云々というのは具体的には「顧客ニーズはあるけど従業員足りないから設備が稼働できない」という話ですね。

『さらに、最近打ち出された各国の通商政策はグローバル化の潮流に変化を及ぼしていく可能性があり、今後の各国の政策の展開次第では、そうした変化が急速に進むことも考えられる。』(今回4月)
『さらに、地政学的リスクの高まりや貿易摩擦の強まりなどを背景に、グローバル化の潮流に変化が生じる可能性もある。』(前回1月)

これは今回のトランプを受けた文言変更。

次が『(2)物価のリスク要因 』ですね。

『以上の経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも影響が及ぶと考えられる。このほか、物価固有のリスク要因としては、以下の2つに注意が必要である。』(今回4月)
『以上の経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも影響が及ぶと考えられる。このほか、物価固有のリスク要因としては、以下の2つに注意が必要である。』(前回1月)


・企業の価格設定行動が成長下押しを受けて弱まるので予想物価上昇率が弱まるというのがリスクとは違和感大有りだが

『第1に、企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響である。』(今回4月)
『第1に、企業の賃金・価格設定行動である。』(前回1月)

ということなんですけど、これ期待インフレが上がるという話かと思えばさに非ず。

『企業の賃金・価格設定行動は、従来よりも積極化しており、中心的な見通しでは、成長ペースが鈍化するもとでも、こうした傾向は維持されると想定している。もっとも、今後の各国の通商政策等を巡り不透明感が高い状況が続くことがあれば、コスト削減に注力する傾向が強まる可能性がある。こうしたもと、物価上昇を賃金に反映する動きが弱まることも考えられる。』(今回4月)

『企業の賃金・価格設定行動は、従来よりも積極化しており、中心的な見通しでは、賃金と物価の好循環が引き続き強まっていくことを想定している。もっとも、中小企業を中心に賃金上昇の価格転嫁は容易ではないとの声も引き続き聞かれており、今後、輸入物価からの価格転嫁の影響が減衰していくもとで、賃金上昇分を含め、コストの販売価格への転嫁の動きが弱まることがないか注視していく必要がある。』(前回1月)

前回は「価格転嫁も賃金上昇も進んでいるけど中小企業がちと心配」「価格転嫁は本当に続くのかがちと心配」って感じのニュアンスだったのですが、どうも通商政策を受けて企業部門が収益をスクイーズさせて対応して(というのがそもそもデフレ脳であって、全部かは知らんけど普通にホイホイコスト転嫁される動きが続くじゃろ、とアタクシは思うのですけれども、まあそれは見解の相違なので何とも)対応する結果、価格があまり転嫁されずに賃上げの原資も足りなくなる、ということでメカニズム崩壊じゃんという話をしているのはちとビビった。

『一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性もある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。』(今回4月)

『一方、販売価格に賃金を反映する動きが想定以上に強まったり、先行き労働需給が引き締まった状況が続くとの見方が強まるもとで、賃金の上昇圧力が強まっていく可能性がある。こうしたもとで、中長期の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物価とも上振れていくことも考えられる。』(前回1月)

ということでこっちは同じなのですが、今回4月はおまけ文言があって、

『この間、このところの米などの食料品価格上昇については、それ自体は天候要因等を背景とするものだとしても、家計のコンフィデンスや予想物価上昇率の変化を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼしうる点にも留意が必要である。』(今回4月)

って言ってるけど、お前2024年産米の作況指数101だぞ何が天候要因じゃ、ってのはさておきまして米の価格上昇などによる価格上昇に関して「家計のコンフィデンス」って入れていて、価格上昇による適合的期待形成の話の中にコンフィデンス悪化に伴う影響ってのを入れていて、どうしても物価のリスクも下振れ方向にしたいらしいというのが伝わります。


・為替の影響云々はまだ残しているのね

『第2に、今後の為替相場の変動や国際商品市況を含む輸入物価の動向、およびその国内価格への波及は、上振れ・下振れ双方の要因となる。』(今回4月)

『第2に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、およびその輸入物価や国内価格への波及は、上振れ・下振れ双方の要因となる。』(前回1月)

2番目のこちらですが、

『各国の通商政策等の展開をはじめ世界経済の先行きを巡る不確実性は高く、これが供給サイドから輸入物価を上昇させたり、為替相場や国際商品市況を大きく変動させる可能性がある。この点、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(今回4月)

『世界経済の先行き等を巡る不確実性は高く、これが国際商品市況を大きく変動させる可能性がある。また、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(前回1月)

でもって為替の影響が以前よりも大きい、かつ輸入物価上昇が経済の下振れリスクだったら、別に円高誘導しろとは言わないけど、円安を促進するような政策の「見せ方」をすること自体が経済にマイナスになるんじゃないかねえ、と思いました。


・第一の柱第二の柱は思いっきり形骸化しているから見直すべき

という訳で金融政策に参ります。『4.金融政策運営 』

『以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する5。』(今回4月)
『以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する4。』(前回1月)

ってやっていますが、そもそも論として第二の柱による点検、という意味では累積している緩和政策が出口の段階で物価高と円安を招いていること、なんてえのは思いっきり「第二の柱」に引っかかっている話の筈なんですが(よって緩和縮小はできるものはどんどんやらないといけない)、まあそういう話にはなっておりませんわなあと思うので、この点検も形式的になっているにも程があるので見直した方が良いと思います。

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、2025 年度に2%台前半となったあと、2026 年度は1%台後半、2027 年度は2%程度となると予想される。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回4月)

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、2024 年度に2%台後半、2025 年度に2%台半ばとなったあと、2026 年度は概ね2%程度となると予想される。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回1月)

でもってこの『「物価安定の目標」と概ね整合的な水準』ってのがそもそもこの時点で政策金利が緩和的だったら整合的な水準じゃねえだろ、というのは先ほどから申し上げている通り。

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検する。』(今回4月)
『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検する。』(前回1月)

でもって本来の意味でのリスクってまさに今QQEYCC政策の出口において色々と問題が発生しているじゃろ、と思うのだがそういう話は全然なくていつもの能天気な話だけである。一応引用します。

『わが国経済・物価を巡るリスクとしては様々なものがあるが、とくに各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。リスクバランスは、経済の見通しについては、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについても、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。』(今回4月)

『わが国経済・物価を巡る不確実性は上下双方向で引き続き高く、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響にも、十分注視する必要がある。リスクバランスは、経済の見通しについては概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2024 年度と 2025 年度は上振れリスクの方が大きい。』(前回1月)

でもって、

『金融面のリスクについてみると、不動産価格の上昇ペースには引き続き留意が必要であるものの、全体としてみれば、資産市場や金融機関の与信活動には過熱感はみられていない。わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。また、内外の実体経済や国際金融市場が調整する状況を想定しても、わが国の金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどを踏まえると、全体として相応の頑健性を有している。そのうえで、各国の通商政策等を巡る不確実性がきわめて高いことを踏まえると、それが様々な経路を通じて金融システムに及ぼす影響については丁寧にみていく必要がある6』(今回4月)

『金融面のリスクについてみると、株価や不動産価格の上昇ペースには引き続き留意が必要であるものの、全体としてみれば、資産市場や金融機関の与信活動には過熱感はみられていない。わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。また、内外の実体経済や国際金融市場が調整する状況を想定しても、わが国の金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどを踏まえると、全体として相応の頑健性を有している。有価証券投資におけるリバランス行動などを反映して、円金利の上昇に対する金融機関の耐性も改善方向にある。より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、低金利や人口減少、企業部門の貯蓄超過などによる金融機関収益への下押しが長期化した場合、金融仲介が停滞方向に向かうリスクがある。一方、こうした環境のもとでは、利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もある。現時点では、これらのリスクは大きくないと判断しているが、先行きの動向を注視していく必要がある。』(前回1月)

金融面のリスクのうち過熱リスクに関するものをバシバシと削ってやがってこんなところでもハトハト音頭ですね・・・・


・金融政策運営に関してはハトハトオマケ文言が加わりましたとさ

『金融政策運営については、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。』(今回4月)

『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。』(前回1月)

あれだけハトハト音頭言っておいて緩和度合い調整する気概があるようには見えませんけどねえ。

でもって今回は昨年10月とかにあったハトハトオマケ文言が追加。

『そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要と考えている。』(今回4月)

ちなみに昨年10月展望でのハトハトオマケ文言はこちら。

『そのうえで、米国をはじめとする海外経済の今後の展開や金融資本市場の動向を十分注視し、わが国の経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極めていく必要がある。』(昨年10月)

何で今回は「予断を持たずに判断していくことが重要」って言ってるのかよくわからん話で、予断を持たずに判断するのが本当に大事なんだったら今回慌ててベースラインシナリオを下方修正しないで、ベースラインシナリオは今のところ維持するけれども、先行きは思いっきり不透明ですから予断を持たずに判断して行って、シナリオの下方修正も機を逃さずに行います。って言えばいいわけで、今回ベースラインシナリオを下げている時点で予断をもって見通し修正してるじゃろと思いましたwwwwwwwww

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(今回4月)
『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(前回1月)

適切に運営しているとも思えませんがwwwwwww

というところで今回は全文逐語比較してしまいました、クソ長くてごめんやで。






2025/05/05

お題「というわけで展望レポート基本的見解本編に参ります(現状判断と経済の先行き見通し編)」

連休も残り1日半となりましたがいかがお過ごしでしょうか。

ということで展望レポート確認の儀の続きです。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf(今回4月)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2501a.pdf(前回1月)

〇展望レポート基本的見解:ロジック的にはベースライン下げているとしか言いようが無い

・現状認識:海外経済ってそんなに弱いデータもう出てましたっけという説はあるのだが

経済の現状認識『1.わが国の経済・物価の現状』から参ります。

『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(今回4月)
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(前回1月)

ということで現状認識は変わっていません。

『海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みの動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。企業収益は改善傾向にあり、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(今回4月)

『海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっている。企業収益は改善傾向にあり、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(前回1月)

海外経済のところで「一部に弱めの動きもみられるが」が入って輸出や生産には「関税の駆け込みがある」という話、企業収益と業況感は短観直後なので入っている感じですね。


・後でも出てくるんですがアクチュアルの物価上昇が宜しくない状態というのを明言してるんだよな〜

『個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回4月)

『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響などがみられるものの、緩やかな増加基調にある。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(前回1月)

今回語順が謎に変わっていますが、個人消費のところで「物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられる」ってのを入れていますね。いやだからそんなにアクチュアルの物価上昇がまずいんだったら何でガバガバ緩和金融政策を継続するのかが良くわからん次第だし、円安いかせるようなハトハト情報発信をなぜ行うって思いますけどね。個人消費以外の部分も含めて基本的に言っていることは同じです。


・既往の価格転嫁の影響が減衰という文言をしらっと削除

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、足もとでは3%台前半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(今回4月)

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、政府によるエネルギー負担緩和策の縮小もあって、足もとは3%程度となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(前回1月)

金融環境と物価のところですが、金融環境はいつも通りですけど、物価に関しては今回「既往の輸入物価の転嫁が減衰」を外していまして、足元の物価は強い話をしているんですよね。でもなぜか今回は物価見通しが下がるという謎展開。

ということで先行き見通しですがまずは経済の見通し。


・経済見通しは「通商政策のせいで海外が下がる」が前提

『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し2, 3 』

脚注2は金曜日に申し上げた通りですし・・・・・・・

『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。』(今回4月)

『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。こうした見通しは、前回の展望レポートにおける見通しから概ね不変である。』(前回1月)

金曜日にネタにした通りで、そもそも論として脚注2にあるように、「今後、各国間の交渉がある程度進展するほか、グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような状況は回避されることなどを前提に作成している。」という前提なのにもう海外が下がって企業収益も下がる、と決め打ちしていまして、ナンジャソラという感じですけれども、さらにこの部分は見どころがありますわな。


・「所得から支出への前向きの循環メカニズム」がなくなるってよく考えたら飛んでもない下方修正なんだが・・・・

ご案内の通りで、今回会見でも散々ツッコミを受けていたと思われる(と思われるというのは実はアタクシ先週木曜って月末月初だったせいもあって会見をゆっくり聞いている場合じゃなかったので、つまりは決定会合を月末月初にやるのは大迷惑ということですなw)のですが、今回皆様ご案内の通り「所得から支出への前向きの循環メカニズム」が削除されました。


循環メカニズムが壊れたんだったら政策の前提壊れたじゃろ、と言いたくなるのですが、どうも会見での説明もそうですし、今回の展望ってベースラインシナリオは下げているものの、25年度の成長率見通しを辛うじて潜在成長率並に置くとか、2027年度の経済物価見通しが何となく長期均衡っぽい数値を出しているとかいうことで、どうも「循環メカニズム」とやらが壊れたという認識ではないっぽいですな(壊れているのなら先行き政策調整どころの騒ぎではないし)。

だったら普通に考えて「所得から支出への前向きの循環メカニズム」は生きているという認識なんだから、この文言生かせておけよ、と思う訳ですが、これを外したってのは結構な下方修正を意味するんですな。


でまあこの「前向きの循環メカニズム」で思い出すのは昨年1月の展望レポートハイライトのポンチ絵をだったりする訳で。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202401.htm
展望レポート・ハイライト(2024年1月)

2番目のポンチ絵の『物価のトレンドは2%目標に向けて徐々に高まる』って奴ですが、これ出たときにアタクシ「お前ら賃金と物価の好循環を6回も確認しないと2%行かないって言うのか」と悪態をついたと思います。

でですね、日銀大本営としては、前々から言っている「賃金と物価の好循環」という痴人の夢キャッチコピーがあるんですけれども、現実の物価が上振れしていてどっからどう見ても起きているのは悪循環だし、物価高が大きな政治イシューになっているのですが、物価高対策と称して再分配やるならまだ話は分かるが、財政出動をしようという物価高促進政策をとる馬鹿どもが馬鹿踊りをして大変なことになっている今日この頃というご時世の中、呑気に「賃金と物価の好循環」とか言ってるとそのうち火炙りにされかねないから、そもそも「好循環」という言葉自体を使うのを止めよう、としているんじゃないかねえ、とアタクシは思ってしまったのですよ。

まあこの「前向きの循環メカニズム」がまた復活するかもしれませんし、何ともその辺は良くわからんけど、少なくとも「賃金と物価の好循環」とかいう寝言を言わないで済むようにするために、「循環メカニズム」みたいな文言はしばらく(何なら未来永劫)お蔵入りにしておいた方が日銀の身を守るためにもお勧めなんだけどなあ、とアタクシが勝手に思っているだけですが、もしかして大本営も「循環メカニズム」系の言葉をこのどさくさに紛れてお蔵入りにしようとしているならオモロイなと感じました(あくまでもワシの妄想)。


・前回見通しとの比較がエライ先の方にありまして、

さっき引用した部分、実は1月展望では段落分けがあって、最後の一文の

『こうした見通しは、前回の展望レポートにおける見通しから概ね不変である。』(前回1月)

は毎回の展望で「前回との比較」ということで横ばいだったり上げてたり下げてたり、というのを書いているのですけれども、今回はこの前回からの比較がエライ先の方にありまして、ここだけ順不同になりますが引用しますと、

『2026年度までの見通しを前回の展望レポートにおける見通しと比較すると、2024 年度は、個人消費を中心に幾分上振れているが、2025 年度と 2026 年度は、各国の通商政策等の影響を受けて、下振れている。』(今回4月)

24年度とか終わった話はどうでもよくて、ご案内の通りで25年度26年度の成長見通しを引きさげというベースラインシナリオ書き換えの巻となっています。


・「設備投資は構造的な投資需要で支えられる」だったのがいきなり足元の景気要因で腰砕け見通しになると

今回はご案内のように先行き見通しのところ「目先は通商問題で下押し(ただし景気後退にまではならない)けどその後元に戻ってくる」という見通しになっています。

『すなわち、輸出や生産は、海外経済の減速を背景に、弱めの動きになると見込まれる。こうした動きを受けて、企業収益も、高水準ながらも減少するとみられる。』(今回4月)

ってのが最初に来まして、

『こうしたもと、設備投資は、緩和的な金融環境が下支え要因として作用するなか、人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素化関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靱化に向けた投資は継続されると見込まれるが、海外経済減速の影響を受けて伸び率は鈍化すると見込まれる。』(今回4月)

となっています。前回のとはだいぶ文章構成が違うので引用箇所が結構ズレてしまいますが、設備投資に関しては、

『そうしたもとで、設備投資は、緩和的な金融環境が下支えとなるなか、人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素化関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靱化に向けた投資を含め、増加傾向を続けると考えられる。』(前回1月)

ということで、基本的な話は前回と同じだけど、海外が減速するので伸び率が鈍化する、という話になっていて、それはまあ理屈としては分かるのですが、これまでの説明って設備投資は上記の説明にあるような「構造的な投資需要に支えられる」って話だったので、循環的(かつ一時的)な要因で設備投資が鈍化する、っての何か従来の話と違くねって感じでして、従来が強すぎなのか今回が弱すぎなのか、どっちなのかねとは思いますけれども、これは植田日銀になってからの仕様だと思うのですが、とにかく政策アクションを正当化するために理屈を無駄に強気/弱気に極端に振り切ってしまう傾向があって、今回は特に前回利上げした後の展望だからその振れ方が極端に見える、というのがありますわな、と思いました(個人の感想です)。


・労働需給は逆に前回「今後の回復過程で一段と引き締まる」だったのが構造的に引き締まる話になっています

次が雇用所得ですが、

『雇用・所得環境をみると、経済の成長テンポは鈍化する中にあっても、女性や高齢者などの追加的な労働供給が見込みにくくなってくるもとで、労働需給は引き締まった状態が続くと考えられる。こうしたもと、名目賃金は、当面は本年の春季労使交渉の結果等を踏まえて高い伸び率が続くと見込まれるほか、その後も、企業収益減少の影響を受けて伸び率を幾分鈍化させつつも、増加を続ける可能性が高い。』(今回4月)

というのが今回で、前回1月は、

『家計部門をみると、雇用は増加を続けるが、これまで女性や高齢者の労働参加が相応に進んできたなかで、追加的な労働供給が見込みにくくなってくるため、その増加ペースは徐々に緩やかになっていくと考えられる。もっとも、このことは、景気回復の過程で、労働需給の引き締まりを強める方向に作用する。そのもとで、名目賃金は、物価上昇も反映する形ではっきりとした増加が続くとみられ、雇用者所得も増加を続けると予想される。』(前回1月)

となっていて、労働需給の説明って前回は「供給制約が出てきているので今後の景気回復の過程で労働需給が引き締まる」だったのですが、今回って景気に関して目先下押しって言ってるくせに、なぜか景気回復の過程云々が関係なくなってもう構造的に労働需給が引き締まります、って話になっていまして、これはこれで設備投資の先行き見通しとアプローチが違っていて整合性はどうなっているの、と思いました。これ設備投資と労働需給の説明が前回と今回で逆転しているんですよね。なんですかねえという感じですが。

まあそうしておかないと賃金の増加って絵が描きにくくなって、賃金と価格の好循環とかいう痴人の夢が実現しなくなってしまって、これまたメカニズム自体が壊れるという話になるから、って事なんでしょうけれども、ご都合主義っぽさは否めない。


・個人消費の部分でも「賃金と物価の好循環」を引っ込めるムーブ的なものを感じるんですけどね

『個人消費は、当面は物価上昇の影響を受けつつも、雇用者所得の増加が続くことなどから、緩やかな増加基調を維持するとみられる。政府によるガソリン代の負担緩和策や 2025 年度から実施される税制改正なども、個人消費を下支えすると考えられる。この間、公共投資は横ばい圏内で推移し、政府消費は、医療・介護費の趨勢的な増加を反映し、緩やかに増加していくと想定している。』(今回4月)

こちらも前回と構成が違うので前回の方がぶつ切り引用になります。

『こうしたもとで、個人消費は、当面は物価上昇の影響を受けつつも、賃金上昇率の高まりなどを背景に、緩やかな増加を続けるとみられる。政府によるガソリン代等の負担緩和策が縮小しつつも継続されることなども、当面の個人消費を下支えすると考えられる。』(前回1月)

『この間、公共投資は、横ばい圏内で推移すると想定している。政府消費については、医療・介護費の趨勢的な増加を反映し、緩やかに増加していくと想定している。』(前回1月)

さて、こちらなんですけど、前回と比較して違うのって個人消費のドライバーが前回は「賃金上昇率の高まりなどを背景に」だったのが「雇用者所得の増加が続くことなどから」になっていまして、こちら前回は個別の賃金という話だったのが、今回マクロ的に「雇用者所得」としてきましたことについては「賃金上昇と物価上昇の好循環」という痴人の夢を引っ込めるために「賃金上昇」アピールを減らしてきたんじゃないか、って邪推してみたいのですがどうでしょうかね。


・今回は「その後」バージョンがあって

今回4月は「その後」ってのがあります。

『その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、わが国経済も成長率を高めていくと見込まれる。』(今回4月)

こちらは再掲になりますが前回1月の最初の部分、

『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(前回1月)

に重なる部分です。でもってその先ですが、

『輸出や生産は、増加基調に復していくと考えられる。企業収益は内外需要の増加から改善していくとみられ、設備投資は、需要増に対応した能増投資もあって、増加傾向を続けると考えられる。雇用・所得環境をみると、人手不足感が強まるもとで名目賃金は再度伸び率を高め、個人消費は緩やかに増加していくと考えられる。』(今回4月)

『企業部門をみると、輸出や生産は、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、グローバルなIT関連財の回復などから、増加基調に復していくと考えられる。この間、サービス輸出であるインバウンド需要は、増加を続けると予想される。企業収益は、内外需要が緩やかに増加していくもとで、改善傾向をたどるとみられる。』(前回1月)

ちなみにインバウンドに関しては今回記載がないです、何でなのかは知らん。でもって先ほど先出しをした見通し対比があって、

・潜在成長率の話は同じですか

『この間、潜在成長率は、政府による各種の施策の後押しなどもあって、デジタル化や人的資本投資の進展による生産性の上昇、設備投資の増加による資本ストックの伸びの高まりなどを背景に、緩やかに上昇していくとみられる4。』(今回4月)

『潜在成長率は、デジタル化や人的資本投資の進展による生産性の上昇、設備投資の増加による資本ストックの伸びの高まりなどを背景に、緩やかに上昇していくとみられる3。政府による各種の施策や緩和的な金融環境は、こうした動きを後押しすると考えられる。』(前回1月)

でもってこの次が物価の話になるのですが、とりあえず本日はこの辺で、残りどどーんと明日成敗しまくろうかと思います、天気も明日は悪いみたいだしw







2025/05/03

お題「決定会合レビュー:引き続き展望レポートを拝読の巻」

ということで南関東地方は天気もよろしく絶好の行楽日和となっておりまして、これは消費が捗るわと大変に結構なことではありますが、ワイ将成敗ネタをボチボチ成敗して参りたいと思います。

話は違いますが昨日の日経さんの解説記事、例によって無課金おじさんなので中身はシランガナなのですけれども、

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK01CSQ0R00C25A5000000/
植田日銀は「動かぬ鳥」か 米関税で「消えた」賃金と物価の好循環
編集委員 大塚節雄
日銀政策決定会合
2025年5月2日 5:00

こちらの記事ですが、題名を「動かぬ鶏」にすればよかったのに、と思いました、なおガチで中身は見ていないので読む意味があるかどうかは知らんのでよろしゅうに。


〇展望レポート基本的見解の鏡部分:昨日も申し上げましたが「何でデータもないのにここまで弱気化したのか」が・・・・

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf(今回4月)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2501a.pdf(前回1月)

昨日は鏡の経済見通しのところでおもいっきりああだこうだ申し上げましたが、まあ今回の展望レポートに関してはキモはこの鏡の部分かな、ってところだと思うのでうだうだ書いたわけですが、再掲しますと、「アベイラブルなデータがなんも無いのにいきなりフォワードルッキング(と言えば聞こえがいいが)に見通し下げるとかお前ら本当にチキンというかなんというかではあるのですが、それこそ昨年12月の決定会合主な意見で「米国という面では新政権発足を確認していくのが常識的である。」とか言ってた人とか関税政策の動向がこれから確定していく訳で、何の確認もしないでベースラインシナリオを引き下げる、という行動をとることに対してどういう所感があったのか、ぜひ聞いてみたいものでありますな、あっはっは。

とまあそういう話ですが物価のところを若干時間が無いので端折り気味に書いてたな、とちょっと反省しているので再掲しながら物価のメカニズムの部分でのポイントと勝手に思っている部分を再掲しますね。


・物価見通し:基調的物価に対して1月に言ってた話はどうなってるんだよという一貫性の無さに泣いた

鏡の2ポツ目、基調的物価というピンポイントでは数値が出てこない謎の概念についてですけれども、

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回4月)

『消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回1月)

元々日銀の説明として「基調的な物価の主な決定要因は「需給ギャップ」と「期待インフレ率」です」って話をしていたのですが、1月の展望レポートでは展望レポート全文の方で詳しく背景説明がありましたが(12月の25年レビューの結果も踏まえて)、労働市場の構造的な変化が進んだ結果として、労働需給の構造的な供給不足要因が寄与するようになって、景気循環による需給ギャップに対する感応度が下がってきている、という話をしていたのですが、今回って成長見通しが確かに下方修正されたとはいえ、2025年度の成長見通しが中央値で+0.5%、すなわち「潜在成長率程度の経済成長は続ける」という見通しになっている(だから経済の見通しでの表現が「成長ペースは鈍化する」となっていて後退になっていない)のでして、いやそれで何でこんなに基調物価を下方修正する必要があるのよ、って感じな訳ですな。ちょっと昨日は時間がなくて端折ってしまったので改めて。

でまあ1月の説明との整合性が無くて今回は成長見通しに普通に反応する基調的物価の図、というのを出しているのですが、だったら何で1月にあんな認識しめしたんでしょうねえ、って感じで、兎に角黒田日銀の最終盤からこの方ずっとそうなのですが、政策アクションに対してそれを正当化する立派な理屈(もしくは屁理屈)を繰り出してくる(例えば1月展望の「需給ギャップ離れ」は追加利上げの際に「需給ギャップがマイナスなのに何で利上げするんだ」と言われる時のカウンターとしての理屈な訳ですよ)から、継続して日銀のロジック展開を見ている方としては「ロジックが全然一貫していないからまたこいつジャガーチェンジしやがった」としか見えない訳でして、それが極北とまでは言わないけれどもドイヒーな状態になると、MPMの前に出てくる日銀のお気持ち表明報道みたいなのに一々右往左往する、という事になるわけでして、折角ここもと経済指標に対して真面目に反応しようとしていた、すなわち本来の意味での市場の価格発見機能がワークしてきそうになっている中で、頼むからロジックをホイホイと翻さないで欲しいと思うのです(そうなるとまた「日銀のお気持ちリーク報道しか勝たん」になってしまうので)。


・まあ経済物価見通しを下振れさせてリスク認識を下振れリスクが大きいとなるとそりゃ円安よ

ということで展望レポート鏡の3ポツ目に進みます。

『・2026 年度までの見通しを前回の見通しと比べると、成長率については、2024 年度は幾分上振れているが、2025 年度と 2026 年度は、各国の通商政策等の影響を受けて、下振れている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2025 年度と2026 年度は、原油価格の下落や今後の成長ペース下振れの影響などから、下振れている。』(今回4月)

『・前回の見通しと比べると、成長率については概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2024 年度と2025 年度が、米価格の上昇に加え、このところの為替円安等に伴う輸入物価の上振れもあって、上振れている。』(前回1月)

成長率下振れはまあ関税わからんから積極的な企業活動をしにくくなる、という事になるから、まあ下振れになるのはしゃあないのですが、まあ今回は物価見通しも下げてるわけで、ナンジャソラとなりますわな。

でまあ何で下がったのかは前述の通りで、経済見通しが下がったから全自動で物価見通しも下がる、という計算になっていて下がっている、って事なんでしょうが、お前ら多角的レビューと1月展望の話はどこ行ったんだ、というのはさっき申し上げた通りです。


4ポツ目はリスク要因

『・リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。』(今回4月)

『・リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。とくに、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(前回1月)

不確実性が高いのに堂々とベースラインシナリオ変更するとは何ぞこれという話はさておきまして、今回鏡の部分では「為替の変動が」云々が抜けておりまして、ありゃりゃとは思ったものの、本文には残っているのでまあそこは大きく気にしなくても良いのかなとは思いました。

5ポツ目はリスクバランスですが

『・リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについても、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。』(今回4月)

『・リスクバランスをみると、経済の見通しについては概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2024 年度と2025 年度は上振れリスクの方が大きい。』(前回1月)

ということで、経済のリスクバランス下なのはまあ良いとして、物価のリスクバランスがドテンして「下」になったのはさすがにそれは衝撃(または笑劇)でして、FRBの場合はてめえが関税掛けるんだから物価に上振れリスクなのは当然ですけど、関税に関して例えば直近のECBのステートメントでは、物価のリスクに対して「Increasing global trade disruptions are adding more uncertainty to the outlook for euro area inflation.」(4/17会合後のマネタリーポリシーステートメント)としていて、「分からん」というだけにとどめている(経済の下振れは物価の下振れ要因になるけど、供給制約が発生すると物価の上振れになる、ってのが関税関連の要因として説明されています、他には財政支出とか天候不順とかが上振れ要因)訳でして、そういう中で日銀が果敢に「物価は下振れリスク」とぶっこむのはそりゃ目立つじゃろ、としか言いようが無いわけですな。


・ただこの物価のリスク評価を見ますと「そもそも政策委員のスタンスが極端な割れ方をしている」と見るべきでして

でもってですね、これは基本的見解最終ページ(10p)の『政策委員の経済・物価見通しとリスク評価 』を見ますとどうなっていますかというと、特に2026年度のところが分かりやすいのですが、

2026年度の物価見通しとリスク要因

コアCPI
1.9%:1名でリスクは上振れ
1.8%:3名でリスク上振れ2名、リスク中立1名
1.7%:2名でリスク下振れ2名(ここが中央値)
1.6%:2名でリスク下振れ2名
1.4%:1名でリスクは下振れ

というのが全員の分布になっていて、お前ら全般的に何でそんなに弱いんじゃと思うのですが、まあそれはさて置きますとしましても、これ上の方の見通しを出している人がリスクは上振れ、下の方の見通しを出している人がリスクは下振れ、となっているんですよね。

ということはですね、これ恐らく何ですけど、物価の数値を上目の方で見ている人と下目の方で見ている人って、根本的に物価のシナリオが違っていて、上と下とに割と極端な割れ方をしているんじゃないかという感じがするのですよね。なんかまあ「置きシナリオ」を置かれているから大人の配慮で数字が収斂しているけれども、実際はもっとこの人たちの見通しって「上下にスプリット」なんじゃないかなと思うのですよ。

でまあこのリスク評価の表現って建付けとして上と下の数が多い方を取る、みたいな仕切りがあるらしいのですが、その結果っ今回は5対3で下振れが勝っているので、出来上がりが「物価の見通しを引き下げ、リスクバランスもドテン下振れ」というインパクトの強いものになっているんですけれども、これ上振れの面々は逆にそこそこの上振れを本来は見ていた可能性があるので、なんか編集の仕切り上仕方ないのですけれども、必要以上にハトハトメッセージの出来上がりになってしまっているようには見えますね。

ということで鏡の読み込みが終わったところで一旦アップします。続きは今日か明日か明後日かは知らんですけれどもボチボチやっていきます。





2025/05/02

お題「ハトハトサプライズキタコレでしたなこりゃまたすんつれいしました(日銀MPMレビュー)」

今回は何も方向性出さんじゃろ、と自信満々に死亡フラグを立てたらきっちりと回収してしまいましたという一級フラグ建築士クオリティに全米が泣いたwwwwwww

でまあ今日も今日とてフラグ回収のせいで時間もアレにつきまあ展望レポート詳細に関しては連休中に(気力があれば明日に)続きをしますが今日は簡単に全般的なワシの愚感想をば。

〇展望レポート全般:3か月様子見するかと思ったのだがここでベースラインシナリオを下げるとは・・・・・

政策変更も無かった(それは順当)ので展望レポートなのですが・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2504a.pdf(今回4月)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2501a.pdf(前回1月)

今回の決定会合、5/1ではありますが展望レポートは『経済・物価情勢の展望(2025 年4月)』なので4月という表記で参りますね。

ということでまずは<概要>(いわゆる「鏡」)を見ます。1ポツから順に鑑賞。

・ベースラインシナリオをバチクソ引き下げてきまして・・・・・・・

『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(今回4月)

『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(前回1月)

もう最初の時点でシナリオがどちゃくそ下方修正されていまして、「海外経済が緩やかな成長を続けるもとで」→「各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し」ってありまして、さらには「わが国企業の収益なども下押しされるもとで」ってのが入っています。

でもって今回は前回と違って二段階方式の見通しになっていて、「目先」バージョンは「成長ペースは鈍化」になっていますな。ちなみに「成長ペースは鈍化」とあるのは出来上がりの成長率見通しの数字の中央値が2025年度で+1.1%→+0.5%なんですけど、潜在成長率がそのくらいということになっているから「成長ペースは鈍化」にしていると思います。

でもって「その後」ですけれども、従来のシナリオにあった「所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから」というのをしらっと引っ込めているんですよね。「その後」は「海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで」戻る、というシナリオになっています。

でまあこの文章が今回どう見ても重要ポイントになるのでさらに確認したいのですが・・・・・・・


・「関税問題はある程度穏当に収まる」という置きにも拘わらず「様子見」ではなく「ベースライン下方修正」とはこれ如何に

2pにある脚注2ですな。

『2 各国の通商政策等の今後の展開やその内外経済・物価に及ぼす影響については、不確実性がきわめて高い状態にある。』

さいですな。

『今回の展望レポートの中心的な見通しは、今後、各国間の交渉がある程度進展するほか、グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような状況は回避されることなどを前提に作成している。』

でまあここが今回バチクソユニークなところでして、普段のこの脚注2は

『2 各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また、先行きの政策運営については、先行き政策金利が緩やかに上昇していくという市場の織り込みを参考にして、見通しを作成している。』(前回1月)

という風になっていまして、今回も脚注3に「各政策委員は、既に決定した政策を前提として」文言はあるので上記の部分(とこの先の部分)は今回特別記載な訳ですよ。

・・・・でですね、この前提って要するに「関税政策はまあゆうて破壊的な結果を招くようなことにはなりませんなあ」という前提を置いている、という事だと思うのですが、それだったら普通はFEDみたいに「今の我々は状況を確認する余裕のある政策ポジションにある」と言いながら「この先何が起きるかはまださっぱり分からないので現時点では予断を持たずに状況の把握に努めていく」と言いながらシナリオの変更をしないでステイ、という選択肢を取るのがまあ普通の対応で、6月なり7月なりの時点で状況をアップデートして必要ならばベースラインシナリオの引き下げをすれば良いじゃん、とまあそのようにアタクシは思っていたので、今回はこれみた瞬間にハトハトサプライズキタコレ!!!!となった訳でございますわよ。

でですね、さっきの脚注の続きですが、

『なお、今後の各国の政策の帰趨や、それを受けた各国の企業・家計の対応次第で、経済・物価の見通しが大きく変化しうる点には注意が必要である。』

ということなのですから、なおさら今回って別にベースラインシナリオ下げる必要が無かったとは思うのですが、わざわざ今回ベースラインシナリオを下げてきた、となりますとそりゃまあハトハトサプライズじゃろ、ということになりますので、為替市場ちゃんの方がさっき見たらドル円145円台まで来ておりまして、折角円安是正したというのに何やってるんだか、という感じであります。


・ここでベースラインシナリオを下げるメリットis何???

ということで今回は経済のベースラインシナリオを(出来上がりの数字はさほどではないけど)定性的にはドチャクソ下げているのですが、不確実なんだからリスク認識だけしておいて様子見しないで下げる理由ってのが結局よくわからなくて、まあ素直に考えれば通商問題を受けて一気にハトハトチキン音頭が復活してハトハトチキン音頭を踊りだすの巻、という話になるので素直に為替とか反応して毎度の円安になっている訳ですが、債券市場ちゃんの方はツイストスティープとかいうこれまた面白ムーブになっていて(ブルスティープならまあ素直なんですが)ナンジャソラという感じではあるのですが、勝手に解釈してみますと・・・・・・

まあアレですよ。この人たち昨年12月には米国の政策ガー来年度の賃金動向ガーって言ってハトハト情報発信としか思えない説明をして、その前の時点では1月遅くても3月には利上げじゃろとかいう感じだった市場の利上げ見通しをいきなり3月も怪しいんじゃないかという風に持って行ったのに、年末年始に突如のジャガーチェンジをぶっこんで1月に利上げしてしかもその後の情報発信も割と利上げ路線が順風満帆っぽい説明が続いていたわけですよ(直近を除くと)。

でもって今回だって直前まではさすがに順風満帆とは言ってないけど、米国政策を受けて一瞬でハトハトチキンになるかと思ったら意外にも(笑)粘っているから、ああこれは今回の展望は「1回パス」で行って6月か7月展望のところで必要ならば修正していくんでしょうなあ(ちょうど90日云々もあるし)とまあ思われたのですがまたまたここでハトハトジャガーチェンジをする、という傍から見たら情緒不安定と言いたくなるプレイをしておるわけですな。

でまあそういうのに何度も振り回されている(だいたいからして昨年7月の利上げだって突如マジックマッシュルームでもキメたのかというタカ転ジャガーチェンジでナンジャソラだった訳ですし)国内債券市場ちゃんとしては、「このジャガーチェンジって要するに6月7月は利上げしない、っていいたいだけなんチャウの」という疑念がぬぐいきれない、というのはあって今までのジャガーチェンジの時よりも初期反応が小さめだったんじゃないのかね、とアタクシ勝手に皆様の心中を想像したんですけどそんな感じですかしらどうっすかねえ・・・・・・・・・・

でまあそれが何より証拠には、さっき引用した脚注2にありますのを再掲しますと

『なお、今後の各国の政策の帰趨や、それを受けた各国の企業・家計の対応次第で、経済・物価の見通しが大きく変化しうる点には注意が必要である。』(再掲)

となっている訳でして、これ何かあっさり味で片付いたらどうなのよとか、そもそも関税でもろ被りする人はもちろんいるのだけど全員が直撃弾くらう話じゃねえだろとか、まあ色々とツッコミどころはある話なので、急に「やっぱり大したことないのが分かったので従来のシナリオに戻しまーす(はあと)」とか言い出して10月展望の辺りでジャガーチェンジするとか普通にやり兼ねない(何なら7月だってやり兼ねないけどさすがにそれやったら総裁記者会見の前に政策委員全員のリアルハラキリショーを横にドクター控えさせて差し上げるのでやっていただかないと落とし前というのが付かないじゃないでしょうかと存じます次第ではございますがwwwwwwww)というのも別に普通にアリエールな訳だし、これまで散々こいつらのジャガーチェンジ芸で煮え湯を飲まされているので、まあそういう意味では債券市場が普通に先物踏み踏みになりつつもどこか微妙なテイストなのもむべなるかな、という感じですな。


・これ関税の影響が思いっきり海外経済の下押しになるという前提になっているのですよね

でですね、さっきの経済見通し再掲しますと、

『先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。』(今回4月)

良く見ますと、「海外経済が減速するから成長ペースは鈍化」するけど「その後は海外経済が成長に戻るから成長率が上がってくる」という説明になっていまして、これ関税の影響が徹頭徹尾海外発ということになっている訳ですな。

この間先般のECBは関税の影響について経済に下押しって言ってるけど大物のFEDちゃんはまだ「経済のリスクは下ですけどそこはまあ分からん」になっていて、まあFEDの場合は物価がどう見ても上振れになるので、というのはあるにしましても、そこまで決め打ちでアカンタレとしている訳でもなくて、じゃあどこが下振れ出しているかというとIMFの見通し(WEO)ですかねえという感じですよね。

でもってあまり詳細に見ていない(すいません、というか忙しくて中々ね〜)のでIMFの見通し云々の話は通り一遍の話しか分かっていないですがIMFの見通しってこれやや下方にバイアス掛けてねえか(トラ公に反省させる意味もあるし)という気がするんですが、まあとにかく日銀は今回の関税政策の影響について「海外の経済が関税政策の影響でクソ減速します」という前提を置いている点は注意が必要で、そこまで減速しないという話になったらこれまたジャガーチェンジが可能になっておりまして、ベースラインシナリオがどちゃくそ下がっているとは言え、あくまでも「海外が下がるからアカンじゃろ」になっているのが一種のエスケープクローズでして、国内の話に直接的になっていない点もジャガーチェンジができる伏線を張っている、というお話な訳ですわ。


・つまり今回の決定会合「書いてあることを素直に読めばハトハトチキン音頭満艦飾だが・・・・」

はい、ハトハトチキン音頭満艦飾になっているけど、色々とジャガーチェンジするための抜け道は用意してあるので、ジャガーチェンジには要注意、ってのがアタクシの私家版結論となっております今のところ。

・・・・しかし結局のところ、だったら従来シナリオを維持しながら「不確実性が非常に高いので今後の進展を慎重に見極めて判断します」で良かったんじゃないの、と思う訳で、こんなのまた利上げしますって話になる時に強引な説明をしてジャガーチェンジをしないと行けなくなるんだから、日銀に何のメリットありますねんという風に思うのですが、まあ辛うじてこれ交渉も始まる前から交渉の失敗を前提にしたような国難国難財政財政減税減税とか喚いている永田町方面の馬鹿集団へのアピールでもしたかったのかね、くらいしか咄嗟に思いつくメリットが無いのですが、まあその結果としてハトハト満艦飾を受けてドル円がまた145円になっててこれ連休中に円安一段と進行したらどう落とし前つけてくるのか物凄く楽しみになってきたので円安ワッショイでオナシャスとは思ってしまう今日この頃ではありますな。


・・・・という訳で何か最初の一文4行分だけで散々マイポエムを書いてしまって申し訳ない、あと鏡の部分で物価ですけれども。


・なんと物価は「経済見通しが下がるから基調的物価も伸び悩む」になっておられますな

そもそもお前ら基調的物価を持ち出して説明しているけど実際の物価上昇率の見通しを展望レポートで下方に外し続けているのは毎度毎度「ワンタイムの特殊要因」で済ませているの何ですねんという感じな訳ですがそれはさておきまして、

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2025 年度に2%台前半となったあと、2026 年度は1%台後半、2027 年度は2%程度となると予想される。これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。』(今回4月)

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台後半、2025 年度に2%台半ばとなったあと、2026 年度は概ね2%程度となると予想される。既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、(中間部分割愛)なお、2025 年度にかけては、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対して、米価格が高水準で推移すると見込まれることや政府による施策の反動が生じることが押し上げ方向で作用すると考えられる。』(前回1月)

比較のために読点のところで切って後ろの部分にワープしまいましたが、既往の輸入物価上昇とか米の上昇の影響は減衰する、とのお告げで、1月に見ていた話はしらっと抜けるという素早い対応ですけれども、米価って普通に端境期に向けて上がっているし、早場米の作付が順調ではないというニュースも一部の現象かもしれませんが流れていた気がするんですが、そういうのはリスク要因には入っているようですが(明日以降に本編のネタをやります)さっきの通商と違ってメインシナリオには入れないんですねえ(棒読み)という所ですが、

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回4月)

『消費者物価の基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回1月)

となっていまして、えーっと確か前回の展望レポートの時は思いっきり「労働需給ギャップ」をキーにした形で物価への影響を説明していくながれになっていて、単純に経済の成長がちょっと弱まったくらいでは物価がいきなりコケるわけではないって説明をしていた筈なのですが、今回は思いっきり「経済の見通し変化による一時的な成長鈍化(しかもマイナス成長とかじゃなくて潜在成長率並程度に落ちるだけ)が基調的な物価に影響を与えます」って説明になっていまして、お前ら前回の説明はどこに行ったんだという話なのですが、こうやって説明の理屈をホイホイと変えるから困るんですよね。しかも前回との整合性を無視すればこの説明はこの説明で完結した理屈になっているのがだいぶタチが悪いwwwww

まあそんな悪態は兎も角として、すくなくとも「目先」に関して経済の見通し下げて基調物価の見通しも下げているんですからそらまあハトハトになるじゃろということですわな。

でもって「見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。」の文言を維持するのは皆様ご案内の通りで、物価目標達成時期の見通しが後ずれしていることに他ならない(見通し期間が1年延びているから)訳で、そりゃまあ素直に読めばハトハト満艦飾になりますわな、というお話ではあります。


とまあそんなところで鏡の1ポツと2ポツだけでアタクシめの時間が無くなってしまいましたので今朝はここで勘弁してもろていただいて、気力体力残っていたら明日(すくなくとも連休前半)には記者会見とか展望全文とか含めて成敗の儀を行いたいと存じます(そうしないと連休明けはFOMCからスタートになりますからね)。なにとぞご勘弁(平伏)





2025/05/01

お題「今日は「余計なことは何もなし」でオナシャス/末初GC界隈ェ・・・・/ECBなどがfragmentationへの対応についてのコンファランスやっとりますね」

聞け万国の労働者♪とどろきわたる〜めーでーの♪

〇ということで決定会合ですがまあ今回は「なんも余計なことはしない」でしょうね

お、日経がなんも書いてないな
https://www.nikkei.com/
(日経新聞トップページ)

んな訳で決定会合なのですが、今回って展望レポ―トの見通し期間が1年度長くなるので、物価目標達成時期の表現をどうするのか、ってのはまあ一般的にはちょいと注目されるところでして、従来通りの『見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』の表現をそのまま使いますと、自動的に物価安定目標達成の時期が後ずれする、ということになりますわな。

でまあここの表現をどうするのかというのが作文的には悩ましいところでして、表現同じなら物価安定目標達成の時期が後ずれするから「後ずれした」という話になって金融緩和の修正が先送りになる、という見方になるでしょうねえと思うので、まあこの作文は一番注目されるんじゃないでしょうかね。

ちなみに2027年度の見通し数値も注目されるのかもしれませんが、こんなの今の時点だとどこからどう考えても「成長率は潜在成長率(と日銀が考えている)近辺」「物価は2%近辺」に落ち着くとしか思えませんので(つまり目標を達成して特に外的ショックが無い状況で長期均衡水準に収れんします、って意味あい)まあそこは特に、って感じですし、2025年度の成長率見通しは下げるんでしょうけれども、そこが下がったとて2026がたいして変わらず、2027が長期均衡水準って見通しを出すなら特にそこによる深い政策的な意味はない、ということになりますわな。

まあ今回はここまでの植田総裁の珍しくもガードが固くてハトハトチキン音頭を踊りださないという状況を鑑みるに、日銀大本営としては「極力新しい色を出さないようにして従来路線の踏襲を行う」というの徹すると思うので、まあハトハトチキン音頭を期待している向きからしたら失望するかもしれませんけど、市場だって別に今回ハト転するの期待してないでしょと思うので(知らんけど)特にそれがあったからどうのこうのってのも無いでしょうな、とか死亡フラグを建築しておきます。


それより寧ろ問題というかなんというかなのは、アクチュアルの物価が従来から日銀の見通しの「2%に落ち着く」ってのが全然見えないことに関して「基調的な物価は2%に達していない」という弁明をどこまで通すのか、って話ですが、まあ日銀記者クラブの面々もクソ甘いから「そもそもお前らの言ってる基調的物価って何なんだよちゃんと国民にわかるように説明しろや」とツッコむ向きもあんまりいなさそうで、この「基調的物価」のレトリック大概にせえというのがあるのと、さらには中立金利に関するレトリックをそろそろちゃんと整理しておけと思う訳ですが、まあこの辺りちゃんと整理する気はアリやナシや、というのを今日は見たい(のだが会見でそういうツッコミは飛ばないかなあ〜)ところではありまする。


とまあ好き勝手雑感を述べましたが、「余計なことをしない」で行くのか行かんのかはまあ知らんけど、今回は日銀が先頭に立って波風立てることはしない方が良いと思いますし、ここまでの植田さんの説明が変なハトハトチキン音頭とか下手糞な両論併記とかしなくなっているのでまあそういう「本当の無風」を予想しておきます。



〇末初レートェ・・・・・・・・・・・・(GC界隈)

東京レポレートちゃん
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

        O/N  T/N  1w  2w  3w  1m  3m  6m  1y
2025/4/25 0.494 0.483 0.459 0.457 0.455 0.453 0.466 0.490 0.577
2025/4/28 0.459 0.446 0.453 0.453 0.453 0.452 0.465 0.490 0.578
2025/4/30 0.272 0.408 0.429 0.432 0.446 0.451 0.464 0.490 0.577

おぉ・・・・・・・・・・・

とまあそういうことで4/30の当日スタート翌日物のGCちゃんのリファレンスレートが0.272%とかいうエゲツナイ低下をしておりまして、5/1-5/2のトモネGCも低下(1w2wも低下)するとかいう結果になっておりまして、謎に月末月初のところ、なのか大型連休の合間モードのせいなのかが謎ですけれども、四半期末でもないのにGCレート界隈の金利がクッソ低下しておられましてわけわからんという所ではありまする。

まあこれが短国全般に波及しているかというと、月曜もそうでしたけれども、昨日に関しても3M以内の短国に関して特にレートが全般低下したという訳でもなく(寧ろ期近銘柄の引けは甘くされていました、一々引用しませんけど)東京レポレート見ても1M以降の金利が特に動いた訳でもないので、まあ一時的現象ではあると思う(というか思いたいwww)のですが、なんか気味悪い現象が発生しやがったなという所なのでメモメモという感じです。

なお、
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/mp250430.htm
無担保コールO/N物レート(4月30日<水>速報)

『平均 0.476%』

といういつもの0.47%台後半張り付き状態でファンディング市場全体の話ではない(そもそも無担コールがファンディングじゃなくてただの日銀当座預金裁定の場じゃないかという話はさておく)ようですし、あくまでもGC界隈での現象、ということなのですが、GCに関しては再三再四申し上げておりますように、市場の規模はばかでかいのですが参加者層が特定参加者限定感が強いので、特定の方のお家の事情によってイミフムーブが発生することもあり良くわからんところではあります、知らんけど。


〇ECBのトップページのお勧め新着(?)にあったスピーチのお題が遠大っぽかったのでご紹介でも

まあ決定会合待ち(ゆうて無風なので待っても意味無し芳一説は大有りだが)なのでちょっとこんなんでも、という企画です。

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2025/html/ecb.sp250429~5c32473955.en.html
SPEECH
Navigating a fractured horizon: risks and policy options in a fragmenting world
Frankfurt am Main, 29 April 2025

Speech by Piero Cipollone, Member of the Executive Board of the ECB, at the conference on “Policy challenges in a fragmenting world: Global trade, exchange rates, and capital flow” organised by the Bank for International Settlements, the Bank of England, the ECB and the International Monetary Fund


BISとCOEとECBとIMFの共催で「“Policy challenges in a fragmenting world: Global trade, exchange rates, and capital flow” 」というのがあったそうで、IMFの方でこのコンファレンスのページがあったので見ますと、こちらの講演がウェルカムリマークということで最初の基調講演みたいな感じになっているようですな。

(URLがクソ長いのでリンクは途中のところまでで当該サイトに直リンするようにしました)
https://www.imf.org/en/News/Seminars/Conferences/2025/04/29/policy-challenges-fragmenting-world-global-trade-exchange-rates-capital-flows
Policy Challenges in a Fragmenting World: Global Trade, Exchange Rates, and Capital Flows
Joint BIS, BoE, ECB, and IMF Spillover Conference
Frankfurt, Germany
April 29-30, 2025

『As the world economy faces unprecedented shifts, the dynamics of global trade, exchange rates and capital flows are evolving in ways that challenge established economic theory and policy frameworks. Rising geopolitical tensions, economic fragmentation and changing approaches to trade policy and financial regulation are reshaping global integration, capital mobility, and currency stability.』

『This conference brings together recent research in international economics and finance, offering insights that can inform policy design and support effective interventions.』(以上の部分直上URL先IMFページより)

ということで講演の方ですけど、講演のマクラの部分で、チポローネ理事(と読むのか?)は、

『I’m honoured to welcome you to this conference, jointly organised by the Bank for International Settlements(BIS), the Bank of England, the European Central Bank (ECB) and the International Monetary Fund (IMF).』

『Today, we come together to discuss the urgent challenges posed by global fragmentation - a growing risk to our interconnected world. Earlier this month, the President of the United States announced tariff hikes, sending shockwaves through the global economy - a stark reminder that the fractures we face are no longer hypothetical, but real.』(最初のURL先のチポローネ理事の講演から引用、以下同様)

ということで思いっきり昨今の情勢を受けてどないでっしゃろというのを欧州英国連合で集まっております、みたいな図になっておられますな、うんうん。

でもってもちろん本来でしたらこの講演をじっくりお料理するというところではあるのですが、何せ日銀会合もありますし月末GCは変なことになっていますしなのでこのコンファランス自体面白そうな気がだいぶするのですけれども大型連休中に成敗する暇があれば成敗する感じですか(その前に日銀の展望レポートの成敗が先ですけど)。

一応講演の全体像ですが、マクラのケツのところに、

『Today I will focus on three key points.』

ってなことで、

『First, we are seeing increasing signs of fragmentation becoming visible across the economy and financial system.』

世界経済のfragmentationが進んできているんじゃなかろうかという点について

『Second, the implications of this accelerating fragmentation could extend far beyond the immediate disruptions, with consequences for growth, stability and prosperity.』

fragmentationが世界経済の目先の混乱のみならず、中長期的に成長、安定、繁栄を損なう点について

『Third, in this evolving economic landscape, central banks must adapt their approaches yet retain a steadfast focus on their core mandates, while striving to preserve international cooperation.』

このような経済変化の状況の中において、中央銀行は我々に課されたマンデートに対するしっかりとしたフォーカスを維持し、国際的な協力も確保していくように努めることが大事だということ

というのがありまして、でまあ今日はインスタント読みなので肝心の本論をかっ飛ばして最終部分にワープしておきますが(おい)、

『The central bank's role in a fragmented world』って小見出しが最後の方にあって、

『So, as these tectonic shifts reshape the global economic landscape, central banks must adapt their approaches while remaining steadfast in their core mandates. The challenges posed by fragmentation require a delicate balance between confronting new realities and working to preserve the benefits of an integrated global economy. In order to navigate the present age of fragmentation, it is necessary to take action in four key areas.』

中央銀行は今の大きな変化(になりうる)問題に対して、新たな現実に対応していく必要があります、ということで、「 In order to navigate the present age of fragmentation, it is necessary to take action in four key areas」ってなことで4点言ってましてですね。

『First, central banks must focus on understanding and monitoring fragmentation.』

fragmentationのモニタリングと理解が必要ですと。

『Traditional macroeconomic models often assume seamless global integration and may not fully capture the dynamics of a fragmenting world. Enhanced analytical frameworks that incorporate geopolitical factors and how businesses adjust to these risks will be essential for accurate forecasting and effective policy formulation. The Eurosystem is reflecting on these issues.』

伝統的な経済学のモデルではfragmentationをカバーできていないので対応しないといけませんねもちろんECBも努力していますよ、ときまして

『Second, monetary policy must adapt to the new nature of supply shocks generated by fragmentation.』

金融政策はfragmentationによる供給ショックの新たな本質に対応しないといけません、とは何ぞやということですが、

『The effects of the greater frequency, size and more persistent nature of fragmentation-induced shocks and their incidence on prices require a careful calibration of our monetary responses. In this respect, our communication needs to acknowledge the uncertainty and trade-offs we face while giving a clear sense of how we will react depending on the incoming data. This can be done by making use of scenario analysis and providing clarity about our reaction function, as emphasised recently by President Lagarde.[30]』

fragmentationによって発生する供給ショックが物価に及ぼす影響について、それが持続的なのかとかその規模とかそういう面について十分な考察が必要です、というお話で、ラガルドもこの前そんな話をしていたとのことですが、物件はこちらのようですね。

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2025/html/ecb.sp250312~915537d675.en.html
SPEECH
A robust strategy for a new era
Speech by Christine Lagarde, President of the ECB, at 25th "ECB and Its Watchers" conference organised by the Institute for Monetary and Financial Stability at Goethe University in Frankfurt, Germany.Frankfurt am Main, 12 March 2025

まあこちらは全然読んでませんのでパスですがw

それは兎も角、まあこういう話をECBがしているというのに、日本では(緩和修正を早めたくないからなのは詭弁を使っているのはわかるけど)相変わらず「コストプッシュは一時的なので」で済ませているのは如何な物かなって思ってしまいますよね〜。

『Third, instead of building walls, we must forge unity.』

壁ができる代わりに我々がユニティーを作らないといけません、ということで、

『Even as political winds shift, central banks should strengthen international cooperation where possible. Through forums such as those provided by the BIS and the Financial Stability Board, we can keep open channels of cooperation that transcend borders. Our work on cross-border payments stands as proof of this commitment in line with the G20 Roadmap[31]. 』

『The ECB is pioneering a cross-currency settlement service through TARGET Instant Payment Settlement (TIPS) - initially linking the euro, the Swedish krona and the Danish krone. We are exploring connections between TIPS and other fast-payment systems globally, both bilaterally and on the basis of a multilateral network such as the BIS’ Project Nexus.[32]』

ここではクロスボーダー決済のシステム構築を例に挙げていますね。

『And fourth, central banks must enhance their capacity to address financial stability risks arising from fragmentation.』

fragmentationによって生じる金融安定リスクへの対応の余地を強化しないといけません、だそうで、

『The potential for sudden stops in capital flows, payment disruptions and volatility in currency markets requires robust contingency planning and crisis management frameworks. Global financial interlinkages and spillovers highlight the importance of preserving and further reinforcing the global financial safety net so that we can swiftly and effectively address financial stress, which is more likely to emerge in a fragmenting world.[33]』

『In fact, the lesson from the 1930s is that international coordination is key to avoiding protectionist snowball effects, where tit-for-tat trade barriers multiply as each country seeks to direct spending to merchandise produced at home rather than abroad.[34] 』

『In order to avoid this, the G20 countries committed to preserving open trade could call an international trade conference to avoid beggar-thy-neighbour policies[35] and instead agree on other measures, such as macroeconomic policies that can support the global economy in this period of uncertainty and contribute to reduce global imbalances.』

1930年代の保護主義の雪だるま式な拡大(からの世界大戦、ということでしょうね)からの教訓は、国際強調が重要であるし、近隣窮乏化政策(beggar-thy-neighbour policies)を回避するような国際強調の仕組みが大事ですよ、とのことですがトラ公どこからどう見ても逆をやるとしか思えない・・・・

ということでこのコーナーの最後が

『Let me finally emphasise that the current situation also has important implications for the euro area. If the EU upholds its status as a reliable partner that defends trade openness, investor protection, the rule of law and central bank independence, the euro has the potential to play the role of a global public good. This requires a deep, trusted market for internationally accepted euro debt securities. That is why policy efforts to integrate and deepen European capital markets must go hand in hand with efforts to issue European safe assets.[36]』

EUのような枠組みは国際協調のために大事です、とかいうことで、EU圏の資本市場がの統合と信頼の確保が大事ですよ、みたいな話をしております。

ということでヒマネタといえばヒマネタなのですが、まあなるほどね〜と思いながら眺めておりましたのでご紹介させていただいた次第です。