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2024/09/30

お題「短国とかレポレートとか/よく考えてみたら多角的レビューの行方が気になるw/7月MPM議事要旨(その1)」

ほうほう
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA292MB0Z20C24A9000000/
衆院選、10月27日投開票軸に 自民党・石破茂総裁が方針
選挙
2024年9月29日 23:05 (2024年9月30日 1:10更新) [会員限定記事]

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA291CA0Z20C24A9000000/
財務相加藤氏・外相岩屋氏起用へ 自民副総裁に菅義偉氏
石破茂新総裁
2024年9月30日 1:00 [会員限定記事]

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA291US0Z20C24A9000000/
自民政調会長に小野寺氏、総務会長は鈴木氏 党4役そろう
石破茂新総裁
2024年9月29日 17:17 (2024年9月29日 20:29更新) [会員限定記事]

しかしまあ何ですな、よつべショートというよつべくんが勝手に流してくれる奴ではひたすら高市推し続いてたのが土曜になって少し静かになったと思ったら土曜の夕方位からまた高市推しばっかり流れてくる(まあワシのよつべ君の見方にも問題あるんでしょうけど)ってのを見ると何かを邪推してしまいますわ。2回目投票前の5分間演説を真面目に比較して聞いた方がエエンチャウノ(どっちが良いとかいう以前であれはプラスとマイナス状態でしょ)かと思うんだが。


〇3Mは調子に乗りすぎの刑・・・だといいんですけどさて

金曜の3M、当然ながら自民党総裁選の第1回投票の前に結果が出ています
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240927.htm
国庫短期証券(第1259回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1259回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号       国庫短期証券(第1259回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日     令和6年9月30日
4.償還期限    令和7年1月8日
5.価格競争入札について
(1)応募額          9兆4,546億円
(2)募入決定額       3兆4,922億円
(3)募入最低価格     99円99銭0厘0毛
(募入最高利回り)     (0.0365%)
(4)募入最低価格における案分比率  72.0000%
(5)募入平均価格     99円99銭8厘7毛
(募入平均利回り)     (0.0047%)』

いやー夢(悪夢)のマイナスならずといったところですが、まあド必殺入れようとしたら100円かマイナスなのでそういうド必殺札もあったんじゃないかと愚考しますが、今回って応札が9.5兆円弱しかありませんで、たとえば前週の3M短国ですと(発行予定額は同じですが)

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240919.htm

(1)応募額        12兆2,356億円

ってなもんで、だいたい3Mですと12兆円前後の応札が入ってくるんですけど、今回は水準がクソ割高なところでの入札になりましたし、足切りが流れたのを見ればお分かりのように、クソ割高入札だからあんまり「平均コスト下げるために札を流そう」みたいなムーブが起きにくくて、上の方に必殺入れたらあとは軽く流す、というような感じで応札が引けたというところだったんですかね、知らんけど。

まあ期末の需給はクソ逼迫と言いましても、期末の残高帳尻買いみたいなのが終わってしまいますと、帳尻方面のニーズが無くなってしまいますし、何なら帳尻の人がこんな低金利持ってても無駄じゃろと言って売る場合もこれあり(何せコールの方が利回り良いんですからコールに置いて良いという仕切りの人なら帳尻以外のニーズがどこにありますねんという話、まあ高市ショックに備えた向きもいたかもしれないし)ということではありますが、まあ期初に関しては約定ベースで期初になってみないと何とも言えませんわなと思います。


でまあ売参ですけど
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

金曜の引けが、

(9/27引値)
国庫短期証券1256 2024/12/16 平均値単利 0.060
国庫短期証券1202 2024/12/20 平均値単利 0.060
国庫短期証券1258 2024/12/23 平均値単利 0.059
国庫短期証券1259 2025/01/08 平均値単利 0.030

ということで、

(9/26引値)
国庫短期証券1256 2024/12/16 平均値単利 0.059
国庫短期証券1202 2024/12/20 平均値単利 0.060
国庫短期証券1258 2024/12/23 平均値単利 0.050
国庫短期証券1259 2025/01/08 平均値単利 0.011

3MカレントのWI1.1bpとかいうこの世のものとは思えない引値からは戻って足切りよりもちと低い水準、という所まで金利上昇しましたが、ゆうて軒並み6bpとかいう世界で、期末プレミアム剥落するかどうか、今日の引値で剥落するのか明日の引値で剥落するのかはたまた入札何回か通過しないと剥落しないのか、という辺りはまあ見世物として鑑賞して頂くと面白いかとは思います(言ってることがヤケクソに聞こえるのは気のせいです)。


まあしかし何ですな。よく考えてみたら「利上げしたのにその直後に株式市場に全面屈服してハトハトチキン復活」となった日銀ちゃんのせいで、もともと需給関係で金利があがりにくい短国ちゃんの利回りが利上げどんなに早くても12月1月だしそもそも上げれるのかも微妙なので決め打ちできないし、というような雰囲気もあって6Mとかそういうところまでクソ低金利になっている、という面もあったわけですが、ゲル総理総裁になったところで日銀には「景気を壊さないようにしながらも今のクソ高い物価は何とかしないといけない」という課題が来たようなもん(結局主要国でトップの首が飛んでる要因の中で「物価高」は大きいと思うし、リフレ脳じゃないゲルは気が付いてるでしょと思いますので日銀に対する「期待」は一段と厳しいものになるでしょ)ですので、さすがに選挙直後の利上げは中々難しいにしても、利上げ自体はより現実的になるでしょと思いますし、そういうもとで幾分かのリプライシングあってもおかしくないんじゃないの、とは思いますが、なんか短国って需給のせいもあって脳死市場ですからどうなるのやら。


あとGCですけど昨日はトムネがご案内のように末初になったんですけどね。

https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

       O/N  T/N  1w  2w  3w  1m  3m
2024/9/19 0.227 0.234 0.202 0.197 0.197 0.198 0.202
2024/9/20 0.244 0.235 0.201 0.197 0.198 0.198 0.204
2024/9/24 0.219 0.235 0.201 0.200 0.199 0.199 0.205
2024/9/25 0.243 0.229 0.200 0.200 0.199 0.199 0.205
2024/9/26 0.241 0.219 0.201 0.199 0.199 0.199 0.206
2024/9/27 0.244 0.208 0.199 0.198 0.198 0.199 0.207

特段末初だからクソ下がるという訳でもなく推移していましたので、GCレポとかそっちの方はあまり変なことは起きていなくて、期末だワッショイのあばばばば―は短国アウトライトのところに集中して災厄が起きていた、ということだったようですな。まあ次回は本決算の期末になるので(その前に海外の決算の12月末もあるが)今回と同じなのかはまた別問題のような気がしますけどね。


〇そういや多角的レビューどうするんでしょうね日銀ちゃんwwwwww

例の「多角的レビューシリーズ」というロゴが付いた日銀のスタッフペーパーを見るたびに「結論先にありきで分析しているので読む意味はない」と秒で却下して回っている多角的レビューなんですけどね。

これって兎に角「異次元金融緩和は間違っていない」というのを前提にしているし、何なら先般のワークショップの議事要旨で軽薄人の極み某大先生が「やらなかったことの検証も必要」とおおむね白川さんになりますが、福井さん白川さんに喧嘩を売るようなことをいうような流れになっていて、思いっきり黒田緩和は正しかった、の線で進んでいるようにしか見えないわけですよね。

岸田さんは内心どう思っているのかは裏金対応でだいたいお察しとしても、基本的にアベノミクス継承という触れ込みで政権運営をしてきたので、まあ日銀の今やっている多角的レビューに過去の政策に対する批判的な反省がなくても毒にも薬にもならずに済んだと思いますが、ゲルは(まあ実際に始まってみるとそこまで過激にはならんでしょうけれども)アベノミクスの問題点を正すべきは正す、というのはよりアカラサマになって来るわけで、そんな状況の中で「黒田緩和は正しい対応でしたこんなに効果が高かったですぅ〜」とかいう多角的レビューを出すのって滅茶苦茶間抜けにもほどがあるし、何ならゲル総理総裁(衆院選で大負けしない限り)に向かって喧嘩を売ってるまでアリエールな訳でして、いや〜マジでこれ植田さんお立場的に大丈夫かよという感じが漂ってくるんですよね(個人の感想です)。

不幸中の幸いにしてまだ最終結論いつ出すとか決めていないので、ここからしらっと「最新の研究なども踏まえたところこのような弊害もあった」とかいうのを出してみるなり、それこそ今の短国市場の惨状を踏まえて「オペレーションの乱発によって金利のある世界に戻った時に担保ニーズが超過してしまって市場にストレスをかけるという形で後から副作用が表れている面があった」とか、なんかそういうの入れていかないと、まずいんじゃないですかねえ(・∀・)ニヤニヤ

という雑感でした。

まあ土曜日も書きましたけど、ここから先日銀は結構かじ取り難しくなると思いますし、そんな中であのブレブレおじさんの植田さん大丈夫かねと心配してしまいます。


〇7月決定会合議事要旨(たぶんその1):米国ガーの連発が直近行われている理由が分からん

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240731.pdf
政策委員会
金融政策決定会合
議事要旨
(2024年7月30、31日開催分)

これは利上げを行った時の議事要旨なのでいくつか確認事項があって多分時間の関係で今朝は間に合わない(おまえ土日にもっとやっとけと言われるとぐうの音も出ない)ので今日はこのネタをば。

・9月決定会合以降物凄い勢いで米国経済下振れリスクガーと言っていますが・・・・・・

まあご案内の通りで、9月決定会合の後の植田さんの記者会見、その後24日に行われた大阪経済4団体会合での総裁挨拶(と会見)に示されていますように、とにかく直近植田さん(か振付師か)は隙あらば「米国経済の下方リスクガー」と連呼してハトハトチキン音頭を盛大に踊っていたわけです。

ではそんなに米国経済が気になるならお前ら7月にどういう情勢判断してたんだよしかも利上げまでしちゃって、ということになるのは当たり前の話になりますので、その辺を確認しようというのが本日の企画であります。

まずはスタッフによる情勢判断も見ておこう、ということで珍しく『T.金融経済情勢に関する執行部からの報告の概要』も見ておこうかと。

『海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。米国経済は、FRBによる既往の利上げの影響を受けつつも、個人消費を中心に緩やかに成長している。欧州経済は、下げ止まりつつある。中国経済は、不動産市場の調整の影響は続いているものの、政策面の下支えもあって緩やかに改善している。中国以外の新興国・資源国経済は、輸出に持ち直しの動きがみられており、総じてみれば緩やかに改善している。』

まあ米国以外の話は折角なのでついでにつけています。では先行き見通しはと言いますと、

『先行きの海外経済は、緩やかな成長が続くと考えられる。先行きの見通しを巡っては、各国中央銀行の既往の利上げの影響のほか、中国経済の動向や地政学的緊張の展開などについて、不確実性が高い。』

中国と地政学はありますが米国の不確実性ってコメント無いですよね。では政策委員の皆さんの討議部分を見てみましょう。『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』の『1.経済・物価情勢の現状』です。

『海外経済について、委員は、総じてみれば緩やかに成長しているとの認識を共有した。』

ということでこちら米国の話が仔細にありますが、

『米国経済について、委員は、FRBによる既往の利上げの影響を受けつつも、個人消費を中心に緩やかに成長しているとの認識で一致した。』

ほほう。それが何でまたわずか1か月半で「下振れリスク連呼」になったんでしょうかねえ。

『そのうえで、何人かの委員は、これまで高止まりしてきた物価上昇率が鈍化していることを指摘し、景気の急減速を避けつつ物価安定が実現するソフトランディング・シナリオが実現する蓋然性が高まっているとの見解を示した。』

という見通しを覆すほどの大きな問題ってその後米国に発生していましたっけ????

『このうちの一人の委員は、日次の価格調査をみると、消費者物価指数よりも更に鈍化傾向にあると付け加えた。』

というのはさておきまして次が米国減速を指摘する人の発言でして、

『別の委員は、雇用・所得環境には軟化の兆しが窺われており、先行き景気は緩やかに減速する可能性が高いと指摘した。そのうえで、この委員は、中東情勢の緊迫化や貿易摩擦の拡大などに伴うインフレ再燃リスクには引き続き注意する必要があると付け加えた。』

この委員、米国減速の話もしているけどインフレリスクの話をしていますね。

『ある委員は、既往の財政拡大もあって民間部門の手元流動性は潤沢であり、このことがインフレ下でも支出を支えていると述べた。』

ということで、なんか今回米国経済下押しリスクガーって連呼するほど状況変化しているのかが謎にもほどがあるのですが。

さらに『2.経済・物価情勢の展望』のリスク要因の部分を見ましても、

『次に、委員は、経済・物価の見通しのリスク要因(上振れ・下振れの可能性)について議論を行った。委員は、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高いとの認識で一致した。また、そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要があるとの見方を共有した。』

ここは展望レポートに合った通りです。海外経済はいつも出ている項目ですからね。

『そのうえで、経済の主なリスク要因として、委員は、@海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向、A資源・穀物価格を中心とした輸入物価の動向、Bわが国を巡る様々な環境変化が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響、の3点を挙げた。』

でまあこの会合では物価の上振れリスクを一つの材料にして利上げしているのでこの先の物価のリスクのところは明日以降別途ネタにします、今日のお題に即して言えばこの先のリスクバランスの方になりますのでそっちに飛びますけど、

『リスクバランスについて、委員は、経済の見通しについては、2025年度は上振れリスクの方が大きいとの見方を共有した。また、物価の見通しについては、2024 年度と 2025 年度は上振れリスクの方が大きいとの見方で一致した。多くの委員は、輸入物価が再び上昇に転じていることを踏まえると、金融政策運営上、先行き、物価が上振れするリスクに注意する必要があるとの認識を共有した。』

>経済の見通しについては、2025年度は上振れリスクの方が大きいとの見方を共有した
・・・・・・うーんこのwwww

とまあそういうわけでございますので、今回の会合で急に「米国経済の下振れリスク」を盛大に連呼した理由がまるで意味不明、というお話でありまして、「丁寧な説明」とか言ってるけどそもそも植田さんの説明まやは振付師の振付が毎度毎度行き当たりばったりにもほどがあるのがコミュニケーションをぐだぐだにしている主犯であることは言うまでもないのでないでしょうか、というのが今朝のお話でございましたとさw






2024/09/28

お題「自民党総裁選あれこれ雑談/ネタが渋滞しているので9/24植田総裁講演関連を成敗」

ということで土曜日ですが自民党総裁選挙もあったしネタが渋滞してきたので期末だしで成敗成敗。

〇いやー高市来るのかと覚悟してましたよ〜ということで

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240927/k10014593201000.html
【詳しく】自民新総裁に石破茂氏 高市氏を抑え選出
2024年9月28日 1時36分

いやーもう1回目出たときにこれは遂に高市かよと覚悟してたら当然ながら市場ちゃんは円安ぶっ飛ぶし、債券は先物上がるし中短期金利下がるし、ということでエライコッチャになっておりました。

この前は総裁選期間中でしたから敢えてこまごま書きませんでしたが、何せ高市大先生、先日の記事にありましたように、

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2325C0T20C24A9000000/
高市早苗氏、日銀をけん制 「今、利上げはあほ」
自民党総裁選2024
2024年9月23日 17:54

『自民党総裁選に出馬している高市早苗経済安全保障担当相は23日公開のインターネット番組で、日銀の金融政策運営を巡り「金利を今、上げるのはあほやと思う」とけん制した。個人消費や企業の設備投資に悪影響との認識を示し「長いデフレに戻る不安がある」と強調。円安についてもメリットがあると指摘した。』(上記URL先より、以下同様)

円安についてメリットとか何言ってるのという話ですが、まあ円安で輸出企業ガーの話をするだけならまだいいんですけど、

『高市氏は「消費マインド、投資マインドを下げることは今しては駄目だ」と明言した。円安を巡り「輸出産業はどんどん輸出できるチャンスだ」と言及。円安で外国為替資金特別会計の剰余金が増加するとも説明した。』

ってこの先生、直近円安になると消費者マインド系の指数が軒並み悪化しているという話ご存じないんですかっていうことだし、まあ他にもこの記事には出ていませんけれども、例の「資産も考えれば財政状況は問題ない」みたいな無茶苦茶な(国道とか換金できるわけないだろ)話をおっぱじめておりまして、もうこの大先生金融財政に関する話が幻想的過ぎて普通に5ノッチくらい格下げ食らっても全然文句の言えない話を連発していました訳ですよ。

でまあこの前もさらっと書きましたけど、安倍ちゃんは輪転機ぐるぐる、とか言いながらも結局はそういうことしないし、外交だって強硬派っぽくしてたけどプーチンにはゴロニャンしてたとか、(良し悪しはさておくけど)現実を踏まえた対応をしてたんですけど、どう見ても高市先生の場合はそのまま全方位に幻想的な理論通りに全自動で突撃するラーテルとかイイズナかというようなイタチ科の香りしかしないので、これはもうトラスショックみたいな破局待ったなし、とか思うじゃないですか。

ただまあアレです、第1回投票終わったところで思ったのは、まあゆうてトラスショック起きて一時的には激烈な痛みが発生するのですが、その結果リフレ派とかいう邪宗門と一緒に全部駆除されて頂いた方が中長期的にはプラスなのではないか、という焼け野原思想にまで至って遠い目で第2回開票を眺めておった次第なのですが、まあそういう事にはならなかったなというお話ではあります。

しかしまあ何ですな、高市先生大好きな産経新聞によりますと、
https://www.sankei.com/article/20240927-PJ7N6D3JEFGCFAT4DKXAUUZNAQ/
市場は石破ショック≠フ様相 円急騰、日経平均株価の先物は一時2000円超も急落
2024/9/27 18:33

なーにが石破ショックじゃという話で、昨日(金曜日)は麻生が高市支持とかそういう報道(をしてたのでも産経ですが)もあって朝から円安な上に総裁選第1回投票結果出てさらに円安進んでいたのがゲルで戻ったんですが、もっと前から見てみれば、総裁選の終盤情勢で高市さんが伸びてきたのを受けて(米金利の影響とか植田総裁のハトハトチキンとかもあるけど)今月前半は142円近辺で推移していたドル円が円安に振れて来てた訳ですな。

然るに、この産経の記事って26日の夕方からの動きのグラフだけだして自民党総裁選のせいで円が急騰したように見せていますが、こんなの9月の月中チャートを出せば単に「高市期待(あるいは高市リスク)の剥落」以外の何物でもなくて、「石破ショック」とか言って直近1日分だけのチャートを出すというのはもうアカラサマな印象操作な訳で、報道機関として如何なものかという感想しか起きないですが産経なのでこれが平常運転でもあります。

なお、このように「チャートを自分の都合の良い期間だけ取り出して印象操作をする」というのはリフレ一派の得意技の一つ(そのほかには相手の言葉尻をとらえて相手の主張を勝手に改変して非難する藁人形論法などが著名ですな)なのですが、まあ産経新聞くやしいのうくやしいのうということで、昨日は夕方以降産経新聞などがこのように発狂しているのを見てメシウマにも程があると眺めておりましたとさ。

あと話はワープしますが、産経の「麻生さん高市支持」ってのがマジだったとすると、最初河野太郎を麻生派として支持するとか言ってたのに梯子を外して(弊駄文では河野さんに関しては閣僚に起用された途端に原発に関するブログの記事を全部削除したりその前からツイッターブロック芸で以前より批判的スタンスでたがさすがに今回は)河野さん何ぼ何でもカワイソスという結果に追い込んでしまい、直前には進次郎が支援要請に来たのを足蹴にした挙句にこの結果ということで、麻生さんが相当ヤバイ(ちなみに総裁選の最後に石破さんが壇上の偉い人たちのところに拍手で迎えられるシーンで麻生さんアカラサマに拍手するタイミング遅らせていてクソ笑いました)立場になったわなと思いました。


〇ゲル総理総裁になって日銀ホッと一息、というのはちょっと読みが浅いんじゃないかと思います

まあそんなわけで超円安起点か格下げ起点かはさておきまして、高市大先生によります幻想的な金融財政理論に則って金融財政政策を強要したらまああっという間に破局が来る(とは言えトラスと同様に首ちょんぱになるから収拾はされるとは踏んでいましたが)訳でして、まあ「あほ」だの言う(自主規制)が総理総裁だとしますと、実は日銀ってヘイコラ言う事を聞いておけばその後に来る破局は全部(自主規制)のせいになるのでその点では実は免責コースだった訳ですよ。

然るに、今度ゲル総理総裁になって、金融緩和を基調としながらも徐々にその緩和度合いを調整していきましょう、という至極ご尤もな話が基本線になってしまいますと、今度はその調整の判断は日銀が責任もって行わなければいけないわけで、その調整およびその後のコミュニケ―ションに大失敗して円安は飛ぶ飛ぶ炎と燃えてしまって日銀非難轟轟になったのが6月7月、ということなので実を言うとここからの日銀が正念場で、緩和調整の判断を間違えないようにしないといけなくなった訳です。

しかしですね、9月決定会合後の会見というのは昨日までにネタにしましたが、ここからネタにする先日の講演に見られますように、植田さんがまたまたハトハトチキンになってしまっていまして、まあこれが高市リスクまで考えた上での偽装ハトハトチキンなら救いはあるんですけど、あの米国経済ガーの連呼は普通にみたら「植田さんはやっぱりハトハトチキンだった」という風に読まざるを得ない訳で、さてそのスタンスのままで日銀は政策調整の判断を間違えずにいけるのでしょうか、ってな話な訳ですよ。

これが9月会合の時にごく普通に「見通し通りに推移すれば緩和政策の調整を今後も徐々に行ってきますよその判断は総合的にやっていくから予告ホームランはしませんよ」と説明していればさほど問題ではなかったかもしれませんけれども、植田さん(なのか振付師なのか知らんですけど)の間の悪さが中々の芸術点が高くて、うっかり9月会合で特に他市場からベタ降りと捉えられるようなコミュニケーションをしてしまっているのが激痛レベルでこれから効いてくるだろうなあ、と日銀の行く末にも心配しかありませんが、まあこれは身から出た錆にも程があるので同情の余地はあんまりありませんwwwwwwwwww


〇植田総裁の9月24日大阪講演関連あれこれ

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240924a.htm
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240924a1.pdf
【挨拶】
最近の金融経済情勢と金融政策運営
大阪経済4団体共催懇談会における挨拶
日本銀行総裁 植田 和男
2024年9月24日

引用はHTML版がもう出ていますのでHTMLの方から行います。

・FEDが50bp利下げ措置を行った米国と現状判断を引き上げた消費が下振れリスクって何だよそれ

『2.経済・物価情勢』の『経済の現状と先行き』ですが、最初にいつもの公式見解なのですけれども、あっという間にこの話がおっぱじまります。

『もちろん、こうした中心的な見通しを巡っては、上下双方向で様々なリスクがあります。ここでは、2点、指摘しておきたいと思います。』

『1点目は、海外経済、特に米国経済の動向とその金融・為替市場への影響です。』

はいはい米国ガー米国ガー。

『図表5をご覧ください。米国では、5%を越える高い政策金利が続いてきましたが、そのもとでも、個人消費が牽引する形で経済は総じて堅調に推移してきました。最近では、労働需給が緩和するもとで、インフレ率は低下してきており、先週、FRBは政策金利の引き下げを決定したところです。』

ということですが、

『こうしたFRBの決定を受けて、米国が、景気の大幅な減速を避けつつインフレ率が2%に向けて低下していくソフトランディング・シナリオを辿るならば、そのことは、わが国経済にとってポジティブに働くと考えられます。』

と言ってるのだが、その直後に

『もっとも、今後の米国経済の展開は依然不確実です。』

FEDがその辺も踏まえてわざわざ25じゃなくて50bpの利下げをしたというのに、これでは読みようによっては日銀がFEDの対応が不十分で先行きリスクありますねえと言ってるようにも見えてしまう訳でして、お前は何でFEDに突撃しているんだとwww

『既往の利上げなどが労働市場に及ぼす影響については不確実であるほか、労働需給の緩和が個人消費に及ぼす影響についてもよくみていく必要があります。米国経済の先行きや内外の金融資本市場の動向がわが国の経済・物価に及ぼす影響については、引き続き、注視していきたいと考えています。』

しかも米国とか言いながら結局市場の話もリスクなんですって。

『2点目は、個人消費の先行きです。先ほど申し上げたように、個人消費が緩やかに増加していくというシナリオの前提は、しっかりとした賃上げが継続し、家計の所得が増加していくことです。この点については、物価の先行きと併せて、後ほど、改めてお話しいたします。』

と思ってるなら何で今回の決定会合声明文で消費の現状判断引き上げているんだよ・・・・・・・・

ってな訳で、まあハトハトチキンにも程があるわけで、この状態でゲル総理総裁に「金融政策の調整は日銀にお任せする」と言われてハトハトチキン調整して円安に飛ばしたり物価を無駄な上げ方をしたりしたら植田さんマジで切腹もんになり兼ねんのだが大丈夫かと申し上げたい。


・来年の賃金ガーで逃げを打つ気満々にしか見えない物価見通しの話

次の小見出しが『物価の現状と先行き』になります。

『そこで、物価情勢に話を移します。図表6の生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、直近8月は+2.8%となりました。』

高すぎなんだが。

『具体的に内訳を確認していきますと、まず、昨年まで物価を大きく押し上げてきた「食料品」や「その他の財」の前年比は、低下しました。これは、コロナ禍後の輸入物価上昇に伴うコストプッシュ圧力が和らいでいるためです。一方、コストに占める人件費の比率が高い「サービス」は、価格の緩やかな上昇傾向が続いています。図表7で、サービス価格の動向を品目別に子細にみますと、賃金上昇の影響が強まっていることが、より明確に分かります。すなわち、昨年は輸入物価上昇の影響を受ける外食などで大幅な価格上昇が目立つ一方、人件費の比率が高い品目の価格は、あまり上がっていませんでした。これに対して、最近では、幅広い品目で2%程度の上昇が確認できます。こうした財・サービス別の物価動向からは、物価上昇の背景が、輸入物価上昇から、景気の改善が続くもとでの賃金上昇へと変化してきていることが示唆されます。』

物価上昇のメカニズムとしてこの説明するのはまあわからんでもないけど、政策判断としては発生している物価上昇が一時的なのか持続的なのか、ということが重要なのであって、この「第一の力」「第二の力」の説明は大概に止めろと昨日も言った気がするが今日も言っておくw

『こうしたもとで、短期的な変動を除いた物価のトレンドは――日本銀行では、基調的な物価上昇率と呼んでいますが――、2%に向けて徐々に高まっています。このことは、図表8の基調的な物価上昇率に関する幾つかの試算値の動きからも、見てとれます。』

でもって、

『先行き、基調的な物価上昇率は上昇を続け、2026年度までとなる見通し期間の後半には、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えています。』

でまあ問題はこの次で、

『この見通しでは、この数年進んできた企業の賃金・価格設定行動の変化が社会に定着し、来年度以降も賃金の上昇が継続していくことを想定しています。』

これ来年度の賃金見ないと定着したとは言えないって話をしているのに等しいんだが、これを言い出すと永遠に「来年度の賃金上昇も確認して」の連続で達成という判断から逃れる事が可能になる理屈でして、これを出してきている時点で植田総裁(だか振付師だかはともかくとして)はやる気無し無しですね、というのが伝わるわけですよ。

そして、

『この点、これまでの賃上げを支えてきた人手不足や良好な企業収益といったマクロ経済環境に変わりはありません。図表9をご覧ください。労働市場の動向をみますと、人口動態も反映して追加的な労働供給の余地は限られてきており、構造的に人手不足感は高まりやすくなっています。また、先ほど申し上げたように、企業収益は好調であり、人件費が増加するもとでも、労働分配率はむしろ1990年代前半以来の水準まで低下しました。』

と言っているのですがすかさず、

『ただし、今後、海外経済の動向などが、企業収益や企業行動に影響を及ぼすことがないか、丁寧にみていく必要はあります。』

はいまた海外経済とか言ってますよこの人。

『また、企業部門が全体として好調であるとしても、経済・物価情勢が大きく変化するもとで、個別にみれば企業の直面する経営環境は区々となっている点にも注意が必要です。』

挙句に個別企業で上げられないところもあるとか言い出しているし、とにかく2%達成したという判断から逃げたいチキンが爆裂してエライことになっていますね。

『先行き、持続的な賃上げとその販売価格への転嫁が幅広い先で実現し、賃金と物価の連関がしっかりと高まっていくか、引き続き注視していきたいと思います。』

何ですかこのやる気の無さは、ということでそらまあ20日の会見と合わせて植田和男はハトハトチキン、ということになるのは万やむを得ませんわwwww


・そもそもお前のコミュニケーションが悪いのであって市場に伝わっていないとか寝言は寝て言え

でもって次が『3.日本銀行の金融政策運営』です『「7月の金融政策決定会合』の話はすっ飛ばして次の『8月以降の市場動向と先行きの政策運営の考え方』に行きます。

『その後、8月に入り、米国の景気減速懸念の強まりを契機に、世界的にドル安と株価の下落が進みました。ドル/円相場については、日本銀行の政策変更もあって、円安方向に積み上がっていたポジションが巻き戻される局面にあったことから、変動幅が大きくなりました。わが国の株価は、一時、他国に比べても大幅に下落しました。』

でもってここが先日先行で引用していた反省の色が全くない反省の弁もどきです。

『こうした8月にみられた市場の乱高下の背景の一つとして、日本銀行の政策運営の考え方が十分に伝わっていなかったとの批判があることは承知しています。』

ではPDCAをどうするのか、という話になるかと思えばただの言い訳がここからおっぱじまる。

『日本銀行は、これまでも「展望レポート」のほか、講演や記者会見等も活用しながら、金融政策運営に関する基本的な考え方をご説明してきましたが、引き続き、丁寧な説明と情報発信に努めてまいる所存です。この場では、8月以降の状況変化を踏まえつつ、先行きの金融政策運営について、改めて、2点、お話ししたいと思います。』

お前が「丁寧に説明」すると説明がゴテゴテデコレーション満艦飾になって肝心の中身が分からなくなるんじゃヴォケ、ということで以下の説明がもう「無駄な丁寧さ」の典型になっておりますので鑑賞しましょう。


・いやだからくどくど説明しなくていいんだよ!

『1点目は、金融政策運営の基本的な考え方です。日本銀行としては、先行き、基調的な物価上昇率が見通しに沿って高まっていくならば、そうした動きに応じて、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当と考えています。』

これだけ言っておけばいいのに、

『7月の政策金利の引き上げ後も名目金利から予想インフレ率を引いた実質金利は大幅なマイナスであり、経済活動を刺激し、物価上昇率も押し上げる方向に作用しているとみています。』

って言い出すから「じゃあ今の実質金利はいくらなんですか」→「それは具体的にお示しするのは難しい」となってお前は何を言ってるんだという話になるんだし、

『一方、将来、基調的な物価上昇率が2%前後となる局面では――物価上昇率を更に押し上げていく必要性は低下しますので――、政策金利を、経済・物価に対して中立的な水準に近づけることが望ましいと考えています。』

さらにこれで「中立金利水準はどこからですか」→「それは具体的にお示しするのは難しい」となるわけですな。アホの極みとしか言いようが無い。

『そのため、今後、「展望レポート」でお示ししている経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、政策金利を引き上げていくことになります。』

「それに応じて」とは何に応じるのか、と聞いても回答は来ない訳でして回答できない要素をゴテゴテ付け加えて話を混乱させる気があって言ってるならまだ救いようがあるのですが、植田日銀の場合これが「丁寧な説明」だと思っているし、何なら「説明が足りなくて理解されていないからもっと説明しよう」とさらに泥沼化しているのが植田(か振付師)クオリティ・・・・・・・・


・シンプルに説明しない上にハトハトメッセージを思いっきり出しているのですが

さらにダメダメなのはこの次の部分でして、

『2点目は、こうした基本的な考え方のもとでの実際の政策運営についてです。経済・物価を巡る不確実性は大きく、予期せぬ事態もしばしば生じます。実際の政策運営は、あらかじめスケジュールを定めるのではなく、様々な不確実性を踏まえたうえで、適時・適切に行う必要があります。』

と言わずもがなのことを言った上にとどめを刺すようにまたまたこの次のパラグラフで、、

『この点、現在の状況下では、米国経済を中心とした海外経済の動向や、引き続き不安定な状況にある金融資本市場の動向について、きわめて高い緊張感をもって注視し、』

米国ガーの何回目の連呼だよという連呼に加えて金融市場(特に株式市場)に全面屈服して株式市場の犬と化したワンワン内田副総裁の路線も継承しておられます、ダメダコリャ。

『これらの動向が、わが国の経済・物価見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響について、しっかりと見極めていくことが求められます。』

そもそも経済の先行きなんて常に不確実なんだし、市場なんて常に値動きするもんなんですから、この言い訳もやる気無しという認定されてやむなしというお話になりますわな。

『また、わが国では、長期にわたり低金利環境が続いてきたことから、経済・物価が金利の上昇にどのように反応するのか、確認していくことも重要です。』

とまあ利上げしたくないのかよという位にこれでもかといろんな要素を出してきて、挙句の果てに、

『この間、8月に入り、これまでの一方的な為替円安は修正されてきており、直近では、輸入物価の上昇率も鈍化しました。輸入物価上昇を受けた物価上振れリスクは相応に減少しています。』

これだけ言いまくってからの、

『政策判断に当たっては、内外の金融資本市場の動向やその背後にある海外経済の状況などについて、丁寧に確認していく必要がありますし、そうした時間的な余裕はあると考えています。』

ではそらハトハトチキンです、と言われるの仕方ないし、そういう意図で発信していないんだったらお前は何を言ってるんだという話なんですけど、こういって円安煽ったら余裕なくなるんですけど何かもうセンスの無さが泣けてきますな。


という訳で会見ですけど、これがまた愚劣な記者会見で、真面目な話万博に関する質疑と以下引用するのくらいしか話にならんわという感じでした、ということでほとんどメモ状態ですけれども引用しますね。


〇24日植田総裁記者会見はそもそも見るべき部分が乏しい残念な会見

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240925a.pdf
総裁記者会見
――2024年9月24日(火)午後4時から約35分
於 大阪市

・正直この質疑が一番意味があったかもしれない

特段この質疑にコメントすることはないのですがなんかいい感じの質疑応答だったので(ちなみにこの講演と会見では植田さんミャクミャクのピンバッジを背広の胸につけていました)。

『(問)万博についての質問なんですけれども、先ほどおっしゃっていたように大屋根リングに行かれたとのことで、それ以外にどのようなところを視察されたのかというのと、あとは協会側の担当者の方から様々な説明を受けられたのかなと思うのですが、実際どのような説明があったのか。

そして最後に先ほど、やはり万博は日本経済にとって重要なイベントになるというふうにおっしゃっていましたが、経済効果を最大限発揮するためにはどのような万博になるべきなのか、どのようにお考えか教えて頂ければと思います。』

『(答)残念ながらあまり時間がありませんでしたので、リングのところに上がって、協会の方から、まずそこから見える姿についていろいろお話を頂き、私からも質問をさせて頂き、ここに至る経緯とか、万博が終わった後どうするのかとか、そういうことについても質疑応答をさせて頂きました。それから、協会の方以外では建設を担当されている建設会社の幹部の方とも意見交換をさせて頂き、建設の過程でどういう点にご苦労があるのかとか、どういう点を注意されているのかとか、そういうことについても興味深い話を伺うことができました。』

たまたま某ベンダーがこれライブ中継してたので流し聞きしていましたが、建設会社の所は思いっきり大林組さんのお名前が出ていました。周知の話なんだし政策運営と関係ある話でもないんだから別にこの会見録で伏せなくてもエエンチャウノと思いましたけど。

『先ほど来、抽象的には申し上げているのですが、この万博で、関西経済ひいては日本経済がうまく活性化されるためにはどういうことがあればいいかという趣旨のご質問、お尋ねだと思いますけれども、抽象的には、そこで新しい技術の展示等があって、そこに集まった人たちがそれを見て議論して、更に新しい、あるいはよりコマーシャライズできるようなものにつながっていくとか、もっと広く世界からいろんな方々が来て、万博を見るだけでなく、関西の大阪を含めた地域を回っていかれる中で、こんなに気が付かなかったいい面が日本の関西にあるんだということを感じて頂くということが必要だと思うんですね。そのためには、あまり準備していない発言で恐縮ですが、こちら側としても、どういう見せ方をするか、マーケティングという抽象的なことになると思いますが、そこにおいていろいろな工夫がなされることが重要だと思いますし、既によく拝見すれば、そういう工夫が随所になされつつあるとは思いますけれども、まだ 200 日くらいある中でいろいろな工夫の余地は今後残っていると思いますけど。すみません、抽象的な言い方で。』

まあこれ自体はほうほうそうですかって話なんですけど、植田さんが政策の説明とかでアホのように満艦飾デコレーションをする背景が何となくわからんでもないという感じが非常にしますなwwwww


・コミュニケーションに関して痛烈な質問があって植田さん見事な無回答の巻

この質問は良かったですね。

『(問)一点、市場との対話のことで伺います。先週末の決定会合後、総裁の記者会見を受けて、市場では利上げに慎重な見方が強いとみられて、2 円強円安に振れました。』

この瞬間茶を吹きそうになって大変でしたwwwwwwwww

『基本、総裁の会見での説明は、経済・物価見通しが実現していけば、利上げを進めるっていうご説明だったと思うんですけれども、このように円安に振れたことで、やっぱり市場との対話っていうのが、非常に、改めて難しいということを感じられましたでしょうか。』

イイシテキダナー

『また、今後利上げを進めていく中で、市場との対話に影響などは何かありますでしょうか。お考えをお聞かせください。』

つまりお前の説明は下手だという自覚を持て、という愛の鞭な訳ですが、これに対するハトハトチキン先生の回答は見るも無残な物でしたw

『(答)いつも申し上げていることですけれども、短期的な、例えば為替レート変動等については、コメントを差し控えたいと思います。そのうえで、できる限り丁寧な、市場、あるいはメディア、国民とのコミュニケーションを続けていきたいというふうに考えております。』

アカン・・・・・・・・・・

とまあそんなところで追いつき作業と自民党総裁選雑感でした。






2024/09/27

お題「3M短国WIが1.1bpって何だよそれ/物国と流動性供給の次四半期予定(メモ)/総裁定例会見より(その3)」

あーあーあーあー
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/ZZOFNIZQ3NI5FGZ2IVAKV5CA4A-2024-09-26/
窓口貸出、利用は緊急時のみ=ボウマン理事
By ロイター編集
2024年9月27日午前 4:00 GMT+9

『[26日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のボウマン理事は26日、銀行によるFRBの割引窓口(ディスカウント・ウィンドウ)貸出制度の利用は、流動性のニーズに応じた一般的なものではなく、緊急時の対応を目的とするとの見解を示した。米銀行規制当局が進めている、金融機関が必要時に割引窓口を利用できるよう促す取り組みとは対照的な考えを示した。』(上記URL先より)

そういうことを言うと連銀貸出利用におけるスティグマ問題が発生して危機時に面倒なことになるのですが、ということで喉元過ぎて熱さ忘れるとはこのこと、とか思ったけどよく考えたらGFCってもはや歴史上の話になっているんですよねきっと(アタクシにとっては可視範囲内にある「ちょっと前に起きたこと」なのだがwww)


〇さらに短国ェ・・・・・・・・

今日はトム末な訳ですよトム末、ということで昨日の売参ですが。
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(9/26引値)
国庫短期証券1256 2024/12/16 平均値単利 0.059
国庫短期証券1202 2024/12/20 平均値単利 0.060
国庫短期証券1258 2024/12/23 平均値単利 0.050
国庫短期証券1259 2025/01/08 平均値単利 0.011

・・・・・は???

前日のこの辺の銘柄の売参はどうなっていたかと申しますと昨日も書いていましたけれども(と言って実は1259は書いてなかったけど)、

(9/25引値)
国庫短期証券1256 2024/12/16 平均値単利 0.050
国庫短期証券1202 2024/12/20 平均値単利 0.059
国庫短期証券1258 2024/12/23 平均値単利 0.050
国庫短期証券1259 2025/01/08 平均値単利 0.050

(9/24引値)
国庫短期証券1256 2024/12/16 平均値単利 0.100
国庫短期証券1202 2024/12/20 平均値単利 0.100
国庫短期証券1258 2024/12/23 平均値単利 0.050
国庫短期証券1259 2025/01/08 平均値単利 0.095

昨日の朝の駄文で25日の引けが軒並みクソ強くなりました、って話を書きましたが、1259回だけ昨日は引けがなんと1.1bpとかいう利上げ前のレートになってしまうの巻。

でもって何がドイヒーと言いましてもこの1259回というのはですね、
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20240920.htm
国庫短期証券(第1259回)の発行予定額等

『1. 入札予定日  令和6年9月27日
2. 発行予定日  令和6年9月30日
3. 償還予定日  令和7年1月8日
4. 発行予定額  額面金額で4兆6,000億円程度』

ということで、この銘柄まだ発行されていなくて今日新発入札を行って4.6兆円も供給が出てくる新発債の入札前取引(WI)の気配でありますのがアイヤーな訳ですな。

ここもと何回か入札の前日に引値をお値段高い(利回り低い)方にぶっ飛ばすというプレイがでておりまして、まあ最近WIが入札前に強くなってナンジャソラと思ったら斜め上を行くつよつよ入札になる、というのを見ているような気がしますので、これは今日の新発3M下手したらマイナス金利に突っ込んでしまう(まあそれは不幸中の最悪な場合であってほしいっすけど)んじゃないか位の勢いを感じるわけで、何ぼ期末要因(しかもこの新発年末年始越えてくれる)とは言え、いくら何でも調子に乗りすぎにも程があります。

ということでですね、いくら何でもこんな状況になっているのに対して金融市場局は問題意識無いのかと小一時間問い詰めたいい訳で、今こそ国債売現先発動しろやヴォケといったところではございますが、日銀やる気ねえから「誘導目標は無担保コールだから知らんがな」で放置プレイするに1万アルゼンチンペソといった風情なのですが、短国市場放置するんだったらお前ら何で長期国債の買入減額にはあんなに及び腰なんだよ結局財政ファイナンスかよトラスショック起きたらどうするんだとか悪態が壮大になってくる今日このごろでございますwwwwwwwww

・・・・ということで自民党総裁選挙も注目ですが、総裁選まだその時間だと第一回投票が終わっていないと思いますので、12時30分(長期国債より5分早い)の落札結果発表をお楽しみにしておくのもまた一興かと存じますので自民党総裁選待ちのひと時の清涼剤(ワイは凍死するがw)に如何でございましょうか。


〇物国と流動性供給の10-12月予定

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/240925pd.html
国債市場特別参加者会合(第110回)議事の要点

・日時 令和6年9月25日(水)16:00〜16:55
・場所 財務省 第3特別会議室

内容 

『1.令和6年10-12月期における物価連動債の発行額等について

<当局案>
・発行額・買入消却額について、現状通り、1回(四半期に一度実施)の入札当たりの発行額を2,500億円とし、毎月200億円の買入消却入札を行うこととしてはどうか。』

『<参加者からの意見>
・BEIは8月初の相場混乱時に乱高下し、通して見れば水準を切り下げているものの、需給や流動性等を踏まえると現状の取り扱いを維持することが適当である旨、当局案を支持する意見が聞かれた。また、一部の参加者から、投資家の購入意欲の減退に十分留意し、買入消却額の増額等を含めた対応を検討すべきとの意見が聞かれた。』

とまあそういうことで同額なんですが、買入消却増やせってあーた物国市場って新方式(フロア付き)になって最初の17回債から始まって今月は19回債が償還になっていて、次は3月に20回債が償還になる(その後の21回以降は毎年3月に償還になる)訳でして、今の輪番と買入消却がほぼ新発とバランスしているんだから償還分だけ市場規模が縮小している訳でして、物価連動国債市場を中長期的に育成する、という観点からしたらそもそも今の時点でも市場規模が縮小するということになっているのがどうなのか(デフレ期なら仕方ないけど物価目標2%達成が視野に入るとかいう話になっているというのに・・・・)ってところなんですけどね、とは思いますがどうなんでしょうかねえ。


『2. 令和6年10-12月期における流動性供給入札の実施額等について

<当局案>
・現状通り、残存1-5年ゾーンについては、奇数月の11月に5,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月6,500億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の10月と12月に4,000億円の発行としてはどうか。』

『<参加者からの意見>
・ほとんどの参加者から、前回会合から顕著な変化はないことから、現状の取り扱いを維持することが適当である旨、当局案を支持する意見が聞かれた。また、ごく一部の参加者から、足元の需要が旺盛である残存15.5-39年の発行額を増額し、その代わりに残存5-15.5年を減額して当初の発行計画額に戻すことを希望する、との意見が聞かれた。』

短国の流動性供給をしたら月額4000とか5000なんてちゃちな話じゃなくて毎週5000億円くらい大楽勝で発行できますわよ、って国債発行計画の中に入っているのは1年短国でそれより短いのは別の話になるけど1年短国の成れの果てなら期近ものもありますわ、というのは冗談ですがマジでこの短期ゾーンはどうにかならんのでしょうかね。


『3. 令和6年10月以降におけるクライメート・トランジション利付国債の入札発行について

・令和6年10月以降におけるクライメート・トランジション利付国債の入札発行について、令和6年3月に公表のとおり、10月に10年債、令和7年1月に5年債、それぞれ3,500億円程度をリオープン発行とすることに対し、全ての参加者から異論が無いことを確認。』

GXボンドェ・・・・・・・・・

とまあそういうことで、
https://www.mof.go.jp/jgbs/topics/press_release/20240926-01.htm
令和6年10月から12月における物価連動債の発行額等

https://www.mof.go.jp/jgbs/topics/press_release/20240926-02.htm
令和6年10月から12月における流動性供給入札の実施額等

という四半期末近くの恒例行事でした。


〇植田総裁決定会合の定例会見より(その3)

さーせん全然その後のネタについていってません(7月会合議事要旨も出ちゃいましたね・・・・)

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240924a.pdf
総裁記者会見
――2024年9月20日(金)午後3時30分から約75分

・円安で物価の上振れリスクだったが円高では、の質問に対してハトハトチキン回答爆誕の巻

こんなんありましたけど。

『(問)(前半割愛)もう一点すいません。今回の会見で出てたら申しわけないんですけれども、先ほど冒頭で円安の修正によってですね、上振れのリスクが減って、物価のですね、時間的な余裕があるというふうにおっしゃってましたけれども、円高方向に行ったことによって物価の下振れリスクについてはどのように考えてますでしょうか。』

これに対する回答が困ったちゃんなんですよね。

『(答)(前半割愛)それから、ここまでの、8 月以降ですが、円高の動きと今後の物価見通しというご質問だと思いますが、』

そもそも微妙に回答がかみ合っていないんですよね。こんなの「過度な円安による物価の上振れリスクは軽減したが、現状で物価の下押しリスクになるような状況とは考えていません」ってきっぱり回答しちゃえばいいだけの話なのに、

『もちろんそこは強い関心を持ってみていきたいと思いますが、最初から申し上げてますように、その背後にアメリカ経済がどうなっていくのかという全体を動かしている大きな要素がありますので、』

ってここでもアメリカ経済ガーになっています。何なんですかこのハトハトチキンは、ということで、7月会合の会見の時にアタクシ「見たかお前らこれが真の植田和男じゃああああ」と手のひらクルーと大変にご機嫌に駄文を書いたのが今にして悲しいとしか言いようのないハトハトチキンな訳でして、やっぱりこのお方は博多人形のケースに入れて床の間に飾っておいて、会見ではボーカロイドに喋らせた方が良いんじゃないかと思いますし何ならアタクシが着ぐるみ来て喋りますが(超大嘘)。

『これについての見極めの中で、為替レートの動きおよびそのわが国の物価見通しに与える影響についても判断していきたいと思います。取りあえずの姿は、10 月の展望レポートでまずまとめるということになるかと思います。』

この質疑でまさかのアメリカ経済が出るとは、という感じでして、今回の定例会見って文字起こしされたのを見るとハトハトチキンっぷりがさらに目立つ物件に仕上がっていまして(リアタイで聞いていたときは質疑そのものがしょうもない堂々巡りと自民党総裁選だの中立金利だの時間の無駄な質問の連発でそっちの方にうんざりしながら聞いていた)・・・・・・


・ちょっと「アメリカ」でテキスト検索したらw

まあご案内の通りですが、F5で検索窓出せばテキスト検索できますけど、物は試しに「アメリカ」でテキスト検索したら16個出てきて、ざっくり見ますとその中で植田さんの回答で使われていて「アメリカ経済」に関する話をしているのがなんと7か所もありまして、でもってアメリカ経済の下振れリスクがどうのこうのって話をしているんですから、そりゃハトハトチキンに見えますわな、というお話でもありまして、結局植田さんはギロッポン夜の帝王であっても昼はビビりのチキンだったかと甚だ残念に思います次第でありまする。

話を戻しまして、


・第一の力第二の力のバトンタッチ(その2):植田さんのこの説明はちょっと筋が悪くないですかねえ

昨日引用した部分にもありましたが、最後の方で同じ質問が来ていました。まあだいたい同じ質問が来るって時点で植田さんの説明が余計な修飾語満艦飾のせいでわかりにくい、ということを示しているんですけどね。

『(問)もともと輸入物価上昇率について「第一の力」という説明をされていて、国内でも賃金上昇などによる好循環によるものを「第二の力」としていたと思います。そのもともとのお話だと「第一の力」が「第二の力」に影響したりあるいは転化しようとしていくというような言い方をされてたと思いますが、』

ですね。

『これに従うと、現在は「第一の力」が弱まり始めたという言い方ができると思いますが、結局この 1 年弱を「第一の力」と「第二の力」という概念を使った場合に、この「第一の力」と「第二の力」がどういうふうに影響し合っていって今のような状況になっていて、今の状況だと「第二の力」がメインになりつつあるっていうふうに言うことができるのかどうかという、総裁のご認識について改めてお伺いできればと思います。』

ではどう回答しましたでしょうか。

『(答)この 1 年くらいをみますと、インフレ率という意味では「第一の力」はプラスで推移してきたわけですが、それはだんだん弱まり続けている。ただし、その中で 7 月に向けての円安の動きが、もう一度、若干なりとも「第一の力」を上向きの方向に持ち上げる可能性があったというところかと思います。』

って説明が結構危なくて、なんでかというと、そもそも日銀って「円安が物価上昇リスクを高めるから緩和の修正をした」という触れ込みで7月の利上げをした訳ですよね。

然るに、上記の植田さんの説明だと、「円安で第一の力が強まりそうになった」という話になるんですが、従来日銀は「第一の力」で物価が上振れ(コアCPIはとっくの昔に2%超を続けている)しているのに政策対応をしないのを「これは第一の力なので政策対応しません」って説明をしていた訳ですよね。

ですから、この植田さんの説明を敷衍しちゃいますと「7月の利上げを決める要素の一つには第一の力による物価上昇リスクがあった」ってことになって、従来第一の力で(YCCの柔軟化を超えるような)政策修正はしていなかったことと話が矛盾するんですよね。

この説明を見て黒田さんのQQEE2の時を思い出すのですが、あの時には強引な説明ながら、「原油価格の下落などが持ち上がりつつあるインフレ期待を押し下げるリスクがある」という説明をしていて話のつじつまは一応合わせにいってたのですが、今回のこの植田さんの説明だと、全然そのつじつまが合わないわけですよ。

まあ結局はこの「第一の力」「第二の力」という説明を政策対応とリンクさせるからおかしなことになるのであって、インフレ目標政策の下における物価動向と政策対応の関係ってのは、「発生している(あるいは高い蓋然性で想定される)物価の動きが一時的なものなのか、波及効果を伴って定着していく持続的なものなのか」というのを見極めた上で、一時的であれば政策対応は基本的に必要ないし、持続的なものであれば、それに応じた適切な対応が必要になることもあります、って話なので、「第一の力」「第二の力」とは異なる次元での話になるんですよね。

ということで、最近の日銀ですが、折角昭和温泉旅館の金融政策手段の方のスクラップは(国債買入とか各種オペとか残置物が割と特級呪物なのですがまあそうはいっても)進められてYCCだのQQEだのオーバーシュート型コミットメントだのそういう呪物は解体されたのですが、政策ロジックの方がドンドン昭和温泉旅館になってきているような嫌な感じしかしないわけでして、ロジックが昭和温泉旅館ですからそりゃ市場に日銀の意図がねじ曲がって伝わるわ、というお話でもあります。

と悪態を並べましたが植田さんの回答がまだ残っているので以下引用。

『ただそのリスクは、先ほど来申し上げているように、相応に低下したということです。「第一の力」は弱まりつつあるわけですけれども、そこまでの「第一の力」、その他の影響もあって「第二の力」は引き続き、少しずつですが強まりつつあって、今後のインフレ率の動きをみる際の主なポイントになっているというふうにみています。』

ま、「第一の力」「第二の力」を政策に絡めて説明するの止めなさいとしか言いようが無いですね。


・ちなみに先日大阪講演でのコミュニケーションの部分を引用しましたが・・・・・・・

最後の質疑ですけどね。

『(問)市場との対話についての質疑で、植田総裁、十分に伝わっていなかったのではないかと批判があることは承知しているとおっしゃいました。ただですね、やはり今日の記者とのやり取りを聞いていても、中立金利の評価はどうしても曖昧なかたちになってしまいますし、オントラックなら少しずつ利上げという表現も抽象的でして、やはり記者、市場関係者にしてもなかなか将来の政策へのイメージ持ちにくいかと思うんですね。』

これ結局は余計なことを言いすぎ、というのが今回の会見質疑見て改めて痛感するところです。まあ将来の政策のイメージったってそんなもん別に状況次第で変わるんだから、決め打ち説明する必要はさらさらなくて、「毎回の決定会合で経済物価情勢を点検し、総合的に判断をした結果政策対応が必要であれば対応します」で別にいいんですよいやマジで。でもって「今時点ではこう判断しています。展望レポート(展望会合でなければ声明文)に書いてあるとおりですけどね」で終わりなんですよ本来は(だからクレクレをするメディアや市場関係者というのもどうかと思うのです)。

『7 月の会合後の市場の乱高下を踏まえて、市場との対話について反省すべき点、改善すべき点というのはどういうところだったのか、それを踏まえて今後どういう工夫をしていこうと考えていらっしゃるのか、植田総裁の率直なお考えをもう少し丁寧にお聞かせ頂けますでしょうか。』

もう少し丁寧に、というのは昨日引用したその前の質疑が回答になってなかったからですね。

『(答)先ほど来いくつか申し上げてきたと思いますが、見通しとか考え方を抽象的に丁寧に説明するということはありますけれども、当面の政策運営をかなり大きく動かしていくのは、見通しの確度がどれくらい高まったかというような点ですので、これに関して大きな動きがあるときには、情報発信をきちんとこれまで以上に丁寧にしていくということは、私なりに気をつけていきたいと思います。ボードメンバー全体としてということも言えるかと思います。それから中立金利、つまり行き着く先についての不確実性が残るということはあるわけですが、これは当面、消しようがない不確実性として残らざるを得ないと思いますが、一段と分析を深めていきたいというふうに思っております。』

ということで、植田さん、自分の無駄にゴテゴテとしたデコデココミュニケーションこそが混乱を招いているという自覚が無いのか無い振りをしているのかわかりませんが、まあ先般ネタにしましたように田村委員は素直に「反省すべき点があったのではないか」と言っているのに、このチキンさん、全然反省していないし、何なら「よーしパパもっと丁寧に説明して分かるようにしよう」とさらに余計な説明のデコレーションケーキを作り出しそうで末恐ろしいものを感じます。

という訳で積み残しネタがたまっていますが今朝はトム末だし自民党総裁選だしこの辺で勘弁。









2024/09/26

お題「日銀謹製基調的なインフレ/短国ェ・・・・・・/植田総裁定例記者会見(その2)」

ほうほうそうですかそうですか
https://www.agrinews.co.jp/news/index/260898
2024年9月26日
[自民党総裁選2024]独自色アピール懸命 候補者に農政アンケート

〇基調的なインフレちゃんはやや弱めになっておるのだがワシの体感と合わん(ナンジャソラ)

いつもの
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

毎度のようにエクセルをDLしてみますと・・・・・

いつものように左から刈込平均、加重中央値、最頻値

Jan-23  3.1  1.1  1.6
Feb-23  2.7  0.8  2.1
Mar-23  2.9  1.0  2.7
Apr-23  3.0  1.2  2.8
May-23  3.1  1.4  2.9
Jun-23  3.0  1.4  2.9
Jul-23  3.3  1.6  3.0
Aug-23  3.3  1.8  3.0
Sep-23  3.4  2.0  2.8
Oct-23  3.0  2.2  2.6
Nov-23  2.7  1.7  2.4
Dec-23  2.6  1.6  2.4
Jan-24  2.6  1.9  2.3
Feb-24  2.3  1.4  2.0
Mar-24  2.2  1.3  1.9
Apr-24  1.8  1.1  1.6
May-24  2.1  1.3  1.5
Jun-24  2.1  1.4  1.6
Jul-24  1.8  1.1  1.5
Aug-24  1.8  0.7  1.3

ということで加重中央値1%割れとかになっているのですが、個人的には生活必需品しか買っていないせいかなんか全然体感に合わないんですけどとは思いますが、まあ伸びませんな、というように見える数値になっておりまして、うーんこのという感じですが、これでまたぞろ金融緩和続けろみたいな話になって円安に飛ぶと誰得にもほどがある(まあリフレ派とかいう連中は円安が絶対正義らしいのでリフレ派大喜びですけど)話になるんですけど、まあそうなったらそうなったで面倒ですな。

品目ベースの方は、

Jan-23  80.3  12.6  67.6
Feb-23  81.0  11.7  69.3
Mar-23  82.6  10.0  72.6
Apr-23  84.3  9.2  75.1
May-23  84.9  8.8   76.1
Jun-23  84.9  9.2  75.7
Jul-23  85.6  8.4  77.2
Aug-23  86.0  8.2   77.8
Sep-23  87.0  7.3  79.7
Oct-23  84.7  9.6  75.1
Nov-23  83.0  11.3  71.6
Dec-23  82.0  12.1  69.9
Jan-24  83.9  10.7  73.2
Feb-24  81.8  12.8  69.0
Mar-24  79.5  15.1  64.4
Apr-24  80.8  14.0  66.9
May-24  79.3  15.5  63.8
Jun-24  78.7  16.1  62.6
Jul-24  75.7  18.8   56.9
Aug-24  74.7  19.9  54.8

ということで(下手糞で波打っててすいません)品目ベースでは相変わらず4分の3の品目が値上がりしている訳でして、まあこの品目の方が相変わらずの値上がり感を続けているのが体感とイマイチ合わないなあという感想の元になっているのかなと思いました、知らんけど。


〇短国ェ・・・・・・・・・・・・

売参ちゃん
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

昨日の短国の引値なんですけどね、

期近のあたり(なお来週月曜償還は期内だしクソ短いのでここだけ別でしたが)

国庫短期証券1241 2024/10/07 平均値単利 0.060
国庫短期証券1224 2024/10/10 平均値単利 0.060
国庫短期証券1243 2024/10/15 平均値単利 0.060

3Mカレントの辺り

国庫短期証券1254 2024/12/09 平均値単利 0.060
国庫短期証券1235 2024/12/10 平均値単利 0.060
国庫短期証券1256 2024/12/16 平均値単利 0.050
国庫短期証券1202 2024/12/20 平均値単利 0.059
国庫短期証券1258 2024/12/23 平均値単利 0.050

ということで軒並み6bpとかいう地獄のような利回りになっているのですが、前々日の引値ちゃんですとこの辺が

国庫短期証券1241 2024/10/07 平均値単利 0.100
国庫短期証券1224 2024/10/10 平均値単利 0.100
国庫短期証券1243 2024/10/15 平均値単利 0.100

とか

国庫短期証券1254 2024/12/09 平均値単利 0.100
国庫短期証券1235 2024/12/10 平均値単利 0.100
国庫短期証券1256 2024/12/16 平均値単利 0.100
国庫短期証券1202 2024/12/20 平均値単利 0.100
国庫短期証券1258 2024/12/23 平均値単利 0.050

とかいう水準でして、まあ火曜までの引けの10bpってのも需給強い中でワイ思うに10bpの引けはちょっと甘いかもという感じ(なお1258は先週木曜の入札で強かったのがそのまま引きずられている)ではあったのですが、それにしても期末直前でいきなり引値4bp飛ばすわ水準が6bpだわってナンジャソラという状態でして、まあ期末期初の需給ひっ迫(なので10/1になったからと言っていきなり解消するわけではなくて何回か短国入札を通過しないと需給が緩和しないのが困りもん)の影響で値付けを動かして来たんだとは思うので、需給はともかく値付け自体は期末通過たら変わるのかもしれませんが、思いっきり強い方にサヤ寄せしやがってきましたな、というメモ。

しかしまあ短国市場真面目に育成する気があるんだったら国庫短期証券の発行をもっと増やせと思うんですが、短国市場何ぞ育成してもどうせターンオーバーが速いので発行するの面倒だしぃ、とかまあ短期って割とそういう仕打ちを食らいやすい市場なので(僻み根性)あまり期待はしていないものの、しかしこの「利上げしたのに全然金利が上がっていない短国市場(の3Mとかその近辺くらいまで)」ってのは市場機能が壊れているにも程があるだろという話なので市場機能市場機能と毎度偉そうにおっしゃる割に何もしないどころか市場機能の破壊には熱心な日銀さんもちょっと問題意識持てやゴルァ、といういつもの悪態になるのでした。

まあ悪態はさておきそんなことが起きてますという備忘ということで。


〇遅れ気味で恐縮ですが決定会合レビューで植田総裁定例会見(その2)

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240924a.pdf
総裁記者会見
――2024年9月20日(金)午後3時30分から約75分


・オントラックなら政策修正をしていきますよの話がちゃんと浸透しない理由を愚考してみる

昨日の続きの辺りから参りますけど。

『(問)今しがた経済・物価はオントラックと、そういうふうなお話をされたわけですけども、今回は政策を維持されまして、日銀としてはオントラックであれば、利上げを進めていくと、そういう方針を示されておられまして、オントラックが続く中ではですね、例えば半年に 1 回とか、3、4 会合に一度はですね、そういった方針を示されている以上、コミュニケーション上もですね、利上げが必要になるという考え方もあると思うんですけども、このオントラックを前提とした政策パスに関して総裁のご見解を教えてくださいというのが一点です。(後半割愛)』

ちなみに後半は中立金利の質問でして、お前ら何回その回答の無い質問してるんだリアタイで聞いてる方は時間の無駄にもほどがあるわと毎度トサカに来ながら聞いていると思うんですけど、というか少なくともアタクシは中立金利と聞くたびに血圧が上がる。

でまあこの質問も、そもそも論として「利上げを前もってメジャードペースみたいな形で決め打ちしていくわけではない」っての何回も言ってるのに、相変わらず「利上げパスをペースで示せ」って質問している訳で、もうマジで勘弁して欲しいし、既に答えの分かっている質問を皆で何度も聞くのお前らまとめて東京湾ドラム缶片道クルーズ観光にでも行ってこいレベル。

とか言ってる場合じゃなくて気を取り直して回答を見ますと、

『(答)データ等がオントラック、見通し通りに推移していけば、基本的な姿としては少しずつ利上げをしていくという考え方には変わりはありません。ただ、どれくらい見通し通りの動きが続けば、次の利上げの判断に至るのかということについて、決まったスケジュール感とか決まったペース感があるというわけではなくて、ある程度まとまった情報が得られたと判断できたところで、都度、次のステップに移るということにならざるを得ないのかなと思っています。(後半割愛)』

まあこの植田さんの回答なんだか振付師の回答なんだか知らんけど、この回答にも割と問題があって、まず説明がクソ長くて、しかもやたらゴテゴテと条件を付けているので、この形の説明自体が良くないと思うんですよね、まあ異論はあると思いますが。

つまりですね、こんなの「4月および7月の展望レポートでも申し上げております通り、我々の見通しに沿ってオントラックだったら今後も金融緩和の調整を行います」で終わりだし、その判断は「オントラックかどうかの判断は総合判断」で終わりにすればよいのですが、この説明だと「ある程度まとまった情報が得られたと判断」とか余計なことを言っているから、今回みたいにハトハトバイアスとみられる時には利上げに対して及び腰という印象を与える文章になってしまいますし、さらに言えば「ある程度まとまった情報」とは具体的にどのような情報になるのか、というようなクソしょうもないツッコミの機会を与えている訳ですな。

弊駄文では何度も申し上げているつもりなのですが、とにかく植田日銀の説明はここにある「ある程度のまとまった情報」みたいに言い訳をしている間に余計なツッコミを誘発する餌をばらまいてしまって、その餌に食いつかれるとまた別の言い訳をして、そこでまたツッコミ材料のネタという餌をばらまく、というのを延々としているから、ドンドンと説明が満艦飾ゴテコテになってしまって、肝心の基本方針「見通し通りに経済物価(特に物価)が推移すれば金融緩和度合いの修正を行う」がまるで伝わらないで、次回の利上げタイミングの話とか中立金利とかいう計測不能の話とかばっかりになって、マーケットが振り回されるんですよね。

とまあそういう風に思いましたが個人の感想なので異論はあろうかと思います。


・質問が冗長だと真意が伝わらないという例をみてみましょう

『(問)ちょっと先ほどのお話と重なっちゃうかもしれないんですけども、6 月、7 月と賃金が順調に上がって消費が緩やかに増加している中で、価格転嫁も引き続き続いてるというようにみれるんですけども、サービス価格の方もしっかりしていると。しかしその中で、10 月の価格改定に向けてサービスのところは事前にはなかなかつかめないということですけれども、やはり最近の企業の価格転嫁、賃上げみてると、10月の価格改定それなりにその蓋然性が高まってるというか期待してもいいような感じもするんですけども、そこから先行きのその来年の賃上げとか「第二の力」の強さのところを現状でどういうふうにみてるかということをお伺いしたいのが一点。(後半割愛)』

後半は割愛しますが、この前半の質問前置きが無駄に長すぎなんですけど、会見冒頭の幹事社質問がハッスルしたのか知らんけどやたらめったらくどくどと質問してた余波が来ているんじゃないかと思うので次回以降の会見はもうちょっと何とかしてほしいもんですwww

要は第二の力(まあこの言葉もインチキ説明なんですけどね)へのバトンタッチがどのくらい進んでいるのかの現状認識は如何、という質問ですね。植田さんの回答ですが、

『(答)まず前半は、今後の経済データに関する注目点のようなご質問だと思いますけれども、おっしゃるように 10 月を中心とするサービス価格の、そこが一つの改定時期に多くの企業で当たりますので、そこで好調な賃金動向がどれくらい反映されるかというのは、強い関心を持っている一つの点です。それに加えまして、もう少し先、同じくらいの時期ですが、もう一つ最低賃金が上がり始めますので、それのパート賃金等を通じた賃金への影響にも関心がありますし、また、おっしゃったように、来年の春闘に向けてどういう動きが始まるのかという点も注意深くみていきたいと思っています。(後半割愛)』

質問が冗長のため質問に対する回答が得られませんでしたwwwwwwwwww

まあ植田さん、分かってて敢えて回答を外してごまかしたのかもしれませんが、第一の力から第二の力に徐々に移っている、という回答をしても別に害にはならない話で、その質問の回答を誤魔化すインセンティブは無いので、これは素で植田さんが質問の真意をくみ取れなかったんだと思います。

・・・・ということで何か晒し上げ状態ですが、アタクシ何を言いたいかと申しますと、日銀の今の政策に関する説明のゴテゴテ満艦飾状態も同じであって、お前らの政策の説明に余計な要素をああでもないこうでもない丁寧な説明しているつもりで付け加えるから、肝心の中身が訳わからなくなる、ということなので、これを他山の石としていただきたいと思った次第で、あんまり晒し上げの積りではありませんのでご容赦いただきたいです。


・昨日もネタにしたが本人がコミュ障だと思っていないのがヤバイとしか言いようが無い件

こんな質疑がありました、イイゾイイソー。

『(問)前回の 7 月の会見では、総裁の発言内容ですね、市場がサプライズと受け止めたこともあって、8 月頭のマーケットが大きく動く一つのきっかけになったんではないかとの指摘も出ています。日銀によるこの市場とのコミュニケーションについて、総裁は課題があるとお考えでしょうか。もし何かお考えがあるようでしたら、課題をどのように改善していったらよいとお考えなのか、具体的に教えて頂きたいです。(後半割愛)』

でまあこの回答なんですけどね。

『(答)コミュニケーションの方ですけれども、おそらく 3 月の記者会見から申し上げていると思いますけれども、基調的物価上昇率が上昇するとか、あるいはわれわれの物価見通しの確度が上がるということがあれば、適宜、金融緩和の度合いを調整していくということは繰り返し申し上げてきたところですし、』

いやお前3月は「当面緩和的な金融環境が続く」と利上げしなさそうな言い方してたし、4月も展望レポートの表現に同じのが入って混乱する元になったし、だいたいからして会見で円安ぶっ飛ばしている時点でその真意は全然伝わっていないわけで、伝わっていないのは言ってないのと同じな訳ですけど。

『7 月の政策変更もそれに沿った線の動きというふうに私どもは考えていました。そのうえで、7 月の会合後の市場の乱高下の一因として、やはり私どもの考え方が十分伝わっていなかったのではないかと、市場等に、という批判があることは承知しています。』

承知しているけど反省の弁が一切ないのが植田コミュ障爆裂という所でして、植田総裁は田村審議委員の爪の垢を煎じて飲むべきですな。

『引き続き、私どもの経済・物価情勢に関する認識と、それに基づいてどういうふうに政策運営をしていくかという考え方を丁寧に説明していくということに心掛けたいと思っております。(後半割愛)』

この「丁寧に」ということでやっているのが1万回くらい申し上げていますが、「いろんな要素をゴテゴテ盛り込んだ満艦飾の説明」になっていて、その結果結局日銀の基本的な考え方が伝わっていない、ということなので、丁寧に説明しようとすればするほど地獄状態になるわけで、説明はシンプルにしていただきたい訳ですが、一層丁寧に説明しよう、とか言ってる時点で問題の所在を把握していない(ので反省もしない)し、一段と今後コミュニケーションが悪化しますと言ってるようなもんで、これから先が思いやられる話ではあります。


・でまあ「丁寧な説明」をするとこうなってしまうのよね

中立金利の質疑とかもはや回答が分かってるのに何度も質疑があって呆れるのでその辺は全部飛ばしてこの質問から。

『(問)二問お願い致します。一つ目は物価についての評価を伺えればと思うんですが、今日CPIも出まして 2.8%っていうことで、米とかチョコレートとかって、日銀が重視する部分とは違うかもしれないんですが、足元の物価はちょっと想定より少し上振れしてるんじゃないかと思うんですが、それをどうお考えかっていうのと、先行きの物価の見通しも改めて伺わせて頂ければと思います。』

これは「展望レポートの中間評価をお願いします」という意味合いになるということで王道質問ですな。

『もう一点目は、次の利上げ判断するに当たって、決まったスケジュールとかペースとかはないというふうに先ほどおっしゃられたんですけれども、そのうえで都度判断していくうえで、特に重視したいデータだとか指標とか、その辺りを伺わせて頂ければと思います。』

さて・・・・・・・

『(答)まず今朝方のCPI等からみえる物価の姿ですけれども、特に今朝のデータで申し上げれば、少し前にみていたより強めであるということは、そうかなと思います。』

ほう、と思ったらこの後クソ長く説明をするのですね。

『その要因として、指摘頂いたように、米の値段とか、それから一部の輸入財のところが、7 月までの円安の効果もあって、値上がりしているというようなところで、こういう部分については、全部ではないですけれども、かなりのところ、今後、消えていくというふうにみていますし、その他の一時的な要因の中にも消えていくようなものがまだあって、これはインフレ率を少し押し下げる方向に働くとみています。』

米価ってその前にあんまり上がっていなかったし、製造コストの上昇をやっと転嫁できてきたという側面もあるので今後下がるかというと下がらんでしょと思うのだがまあいいです。

『他方で、今朝の物価の中、特にサービス価格の一部には、引き続き賃金の上昇を転嫁するという動き、物価・賃金の好循環に沿った動きですが、これもみられていまして、こちらは引き続きインフレ率に上方の圧力をかけるというふうにみています。』

この説明、もうちょっと簡単に「財価格も一部大きな動きのあった品目が影響して上がっていますが一時的要素が強いです、サービス価格は好循環の動きが続いています」位にしてほしい。

『こういうのを総合して先行きの姿が決まってきますし、そこに先ほど来申し上げてますような、海外発の様々な不確実性が、金融資本市場を通しての影響も加わって、更に追加的な要因として乗ってくるっていうのが、今後の見通しを決める際の大きな構成要素といいますか考えるポイントかなと思います。』

あーあーあーって感じですが、こうやって米国経済ガーというのとさらに金融市場の影響ガーとか言ってしまいますとどう見てもハトハトチキンです本当にありがとうございました、となるわけですけれども、まあこれは植田さんがハトハトチキンだから、ということであればそらまあシャーナイのですけれども、日銀の基本的なシナリオとしては米国はソフトランディングだし、金融市場の影響で物価が下押しというのも別にシナリオには入っていない(リスクとして経済押し下げからの物価への影響というのはあるでしょうが)訳で、メインシナリオじゃないリスクシナリオの話、しかも下方リスクの話だけを殊更に持ち出すのは「ハト派メッセージを出そうとしている」と受け止められても仕方ない話な訳ですな。

でまあそういう意図で植田さんが言ってるならともかく、そうじゃなくて本人が単に「丁寧な説明をするために最近新しく出てきたリスク要因を説明しよう」などと無邪気に考えて説明している可能性があるのがコミュ障植田の恐ろしいところでして、もしそうだとすればちょっとヤバいんですよねこのおじさん。

でまあ後半のデータ云々ですが、そんなの「物価安定目標なので物価は重要ですが、物価だけ2%になればいいというものでもないので全体を踏まえて総合判断します」で良いのにこの回答である。

『その場合にもう少しデータとの関連で何を先行きみていくのかという点については、先ほどご質問がありましたように、賃金、順調に上昇してきているんですが、これが秋以降、動きが続いていくかあるいは最低賃金の引き上げの影響が出てくるのかどうか、それから引き続きサービス価格への転嫁が続いていくのかどうか、それから来年の春闘に向けての動き、それからサービス価格が上がっていくかどうかという点を決める一つの大きな要因として、消費がある程度堅調であるということが必要かと思いますので、消費の今後の姿にも強い関心を持っています。』

色んなものをゴテゴテにデコるの止めてもらえませんかねえ・・・・・・・・・

という所で時間が無くなってしまったのですが、大阪講演関連含めて続きをちょっとやるかもしれないしやらないかもしれない(まあ論点は基本見たと思うので)です。






2024/09/25

お題「決定会合の度に大暴れ相場になるのは日銀がヘタクソ/20日植田会見より(その1)」

ほうほうそうですかそうですか
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2325C0T20C24A9000000/
高市早苗氏、日銀をけん制 「今、利上げはあほ」
自民党総裁選2024
2024年9月23日 17:54

まあ何ですな、こちらの先生におかれましてはアベノミクスが神聖不可侵な聖典みたいになってしまっているように見えるのがアレでして、よくよく思い起こせば安倍ちゃんって実はかなり柔軟な現実主義者で、何のかんの言いながら現実を見て政策対応を柔軟に行い続けたからこそ政権も長く続いていたんじゃないかと思う訳ですが、聖典は安倍ちゃんしか書き換えられないので、安倍ちゃんの柔軟性がなくなるとこのURL先のように「円安と金融緩和がどこまで行っても善」みたいになってしまうんですけれどもそれって・・・・・・・・

なお上記報道によりますと中々のアレな発言が散見される気がしますが、以下自主規制ということでオナシャス。

〇決定会合のたびに利上げ観測が大幅に前倒しや後ろ倒しになるのはコミュ障日銀のせい

・結局金曜の会見(と昨日の大阪講演)は「ハト派」扱いにされましたなあ

結局こうなったわけでして
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/LCM22TH2KBIJNNRPY3RQRHKY2Y-2024-09-24/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅反発、長期金利0.805% 早期の追加利上げ観測後退
By ロイター編集
2024年9月24日午後 3:21 GMT+9

『[東京 24日 ロイター] - <15:10> 国債先物は大幅反発、長期金利0.805% 早期の追加利上げ観測後退』(上記URL先より、以下同様)

ということで、

『国債先物中心限月12月限は、前営業日比64銭高の145円11銭と大幅反発して取引を終えた。日銀による早期の追加利上げ観測が後退したことが買い材料だった。新発10年国債利回り(長期金利)は同5.5ベーシスポイント(bp)低下の0.805%と、8月15日以来1カ月超ぶりの低水準をつけた。』

以下(時間の関係で今朝全部ネタにできるかアレですが)でネタにしますけど、植田さん今回の会見では「米国経済下振れリスクガー」を連呼するもんだからものの見事にそれがハト扱いになってしまって、最初は為替が反応してましたが、金曜のイブニングでも円債先物ちゃんも反応しだして、(ノ∀`)アチャーって思っていたのですが、結局週明けになってみますと「総裁定例会見はハト派的」という話になりましたな。

とまあそんなわけでして、

『国債先物は、前週末の日銀金融政策決定会合終了後の記者会見での植田和男総裁の発言が「ハト派的」だったとの受け止めから、大幅な買い優勢でスタートした。午後には植田総裁が大阪の経済4団体共催の懇談会であいさつを行い、「政策判断に当たっては、内外の金融資本市場の動向やその背後にある海外経済の状況などについて丁寧に確認していく必要があり、そうした時間的な余裕はある」など20日の記者会見と同様の見解を示したことから、終盤にかけてあらためて国債を買い直す動きとなった。』

となった次第でして、いやもう昨年終わりくらいからそうなのですが、特に最近は金融政策決定会合の度に利上げ観測が思いっきり前倒しになったり、思いっきり後ろ倒しになっている次第でして、植田総裁が二重人格(多重人格)状態なのか振付師の振付がドのつく下手糞なのかその合わせ技なのかさっぱりその辺はわかりませんけれども、ここまで愚劣なコミュニケーションやってる中央銀行というのは、なかなかお目に掛かれないレベルのトンチ
中央銀行ですわな。

・てめえが説明に余計なものをゴテゴテとデコるからちゃんと伝わらないんだよアホが

ちょっと先走って昨日の大阪講演の一部から引用しますけどね、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240924a1.pdf

5ページ目(PDF6枚目)にこんな記述があるわけですよ。

『こうした8月にみられた市場の乱高下の背景の一つとして、日本銀行の政策運営の考え方が十分に伝わっていなかったとの批判があることは承知しています。日本銀行は、これまでも「展望レポート」のほか、講演や記者会見等も活用しながら、金融政策運営に関する基本的な考え方をご説明してきましたが、引き続き、丁寧な説明と情報発信に努めてまいる所存です。この場では、8月以降の状況変化を踏まえつつ、先行きの金融政策運営について、改めて、2点、お話ししたいと思います。』(この部分直上URL先の9/24植田総裁大阪講演より)

ということでああでもないこうでもないと説明しているのですが、「日銀の政策運営の考え方が十分に伝わっている」ならこうも毎度毎度市場の利上げ観測(といわれるもの)が前倒しになったり後ろ倒しにならない訳で、直前のMPMの結果為替が2円以上円安に飛び、長期金利どころか2年金利とかまでも前日比5bpの低下を示す、って時点でお前らの考え方は全然正確に伝わってないんじゃヴォケとしか申し上げようが無いわけです。

ちなみにこのウスラヘチマですが、この講演では以下うだうだと説明をしていまして、まあそれは後で(明日かもしれないけど)改めてネタにして「その説明が余計なんだよこのバカスケ」と悪態をつく予定なのですが、とにかく余計な話をゴテゴテとつけまくっているからハトだのタカだの好き放題に解釈されるんですよね。

こんなの話は簡単で、講演のさっき引用した先の部分にある、「今後、「展望レポート」でお示ししている経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、政策金利を引き上げていくことになります。」以上それまで、でシンプルに説明すれば済むわけですっよ。

然るにこのヘチマの講演ですが、講演でのこの部分でも実質金利、中立金利、不確実性、米国経済、金融資本市場が不安定、円安是正で物価上昇リスク減少、時間の余裕がある、だの盛りだくさんにいろんなもん入れているので、その時の雰囲気で行きたい方向の話をクローズアップされて金融市場の値動きが増幅するだけのことになるわけです。

・・・・というのにいい加減に気が付けよと思うのですが、説明の要素がどんどん追加されている、というのが現状の流れでして、どんどん追加するもんだから益々わけがわからなくなってしまっていて、もうちょっとどうしようもない状態になっているのですが、振付師ちょっと何とかしろよとしか申し上げようがない。


・ここで「見通し通りなら利上げ」が素直に伝わっていないことに関する田村委員の説明を確認しましょう

先日ネタにしました田村委員の岡山金懇ですけれども、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240912a.htm

同じく8月頭の金融市場の大幅な動きに関しましてこのように説明していました。

『日本銀行の政策を少し振り返りますと、本年4月以降、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、「金融緩和度合いを調整していくことになる」という考え方は一貫していました。しかし、そのことが過不足なく市場に伝わっていたのか、市場の受け止めに対してより適切に対応する術はなかったのか、後付けにはなりますが改めて振り返り、市場とのコミュニケーションの改善に絶えず努めていくことが重要であると感じています。』(この部分直上URL先9/12田村審議委員の金懇挨拶より)

さっきのヘチマの講演テキストでは「伝わっていなかったとの批判があると承知しています」→「では説明しましょう」→(いつものゴテゴテ満艦飾説明に米国経済のニューデコレーション追加)という反省という言葉も全くないうえに、説明をさらに複雑にして恬として恥じることのない、というコミュ障というのがコミュ障に失礼なくらいのお馬鹿っぷりを発揮しているのに対して、田村委員は率直に「本来の説明である「見通し通りに推移すれば緩和度合いの調整を行う」が伝わっていなかったのではないか」と率直に認めている訳でして、何でヒラ委員が大本営が言うべきことをきちんというのに総裁があの調子なのかというお話であります(確かに伝わっていないから7月利上げとその後の説明がサプライズ扱いされた訳ですから)。


・てかそもそも論としてそんなに債券市場の中の人たち利上げ観測時期をぶらしてますかしら問題

てかね、そもそも論として8月のあのドタバタと政治日程見たら9月10月の政策変更ってもともと無理筋で、まあ12月か1月じゃないの、っていうのが債券市場の中の人たちの中心的な見解で、ただまあその時期ともなるとちょっと先なので、今から決め打ちする話でもないので、皆さんそこは半身で構えていると思いますし、本来今回の決定会合ってそういう点で言えば無風オブ無風で、10月の展望レポートの方がまあ注目されるって感じだったはずなんですよ。

よって、この説明があったから12月1月の利上げが消えたって話でも何でもないので、おそらくは市場の価格に出ているほど「肚の中で思っている利上げ時期想定」にそんなに変化が起きるような話ではないし、そもそも米国経済ガーって言ってるけどFEDは50bpも利下げしたんだし、そんなにクラッシュするような話ありましたっけ、ってなもんでして、こんなの10月利上げ観測(そんなもんそもそも円債市場の中の人には存在しないんだが)を消すためのその場しのぎの話じゃろ、と思っているんじゃなかろうかと勝手に想像している訳ですよ。

結局馬鹿騒ぎしているのって為替市場とメディアとメディアの尻馬に乗ってる何とかストと株式市場な訳でして、さすがにここ数回のコミュ障コミュニケーションを見れば、総裁会見を一々全部真に受けてポジションなりポートフォリオをドテンドテンするのは、トレーディングならともかく、ポートでこの植田説明に乗って一々ドテンしてたらエライ勢いで往復ビンタ食らってテンコシャンコになるの必定な訳ですが、どうも今の植田総裁なんだか下手糞振付師なのか知らんですが、一々そういう阿呆向けにと親切の積りでああでもないこうでもないと説明をするもんだから、説明の本来の根幹(見通し通りに推移すれば金融緩和の調整を進めて行きますよ)がますます伝わりにくくなって、短期的なメッセージに一々右往左往することになってしまっているんですよね。しかもさらに悪いのはその動きが行き過ぎだと思って慌てて逆側のニュアンスの説明するもんだから市場の動きが増幅されるわけで、「不安定な金融市場」を作ってるのは日銀自身だという自覚が(田村さんにはありそうですが)無いというのがもう救いようがありません。

ということで、本来クソ無風会合で終わるはずなのに悪態ネタ満載、という決定会合になってしまうあたり、植田クオリティなのか振付師クオリティなのか知らんですけど、あまりのことに思わず悪態ばかり最初に書いてしまいましたすいませんすいません。


〇まあ順番で決定会合総裁記者会見

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240924a.pdf
総裁記者会見
――2024年9月20日(金)午後3時30分から約75分

・毎度質疑が押すの分かってるのに幹事社の質問がクソ長すぎでアホかと思いました

まあ毎回幹事社が妙に張り切って質問するのですが、特に今回の会見は幹事社の最初の質疑が無駄にくどくどとクソ長くて、最初の総裁の「今回の決定について」の説明とあわせると、アタクシがリアタイしてた時に書いた手元メモを見ると「9分経過、クソ長い」とか書いてあるという有様で、幹事社が張り切ってクソ長い質問するからその後の質問も長くなって最後に時間が押すんだよと思う訳で、幹事社自主規制してもっと短い質問にしろ、と思いました。

ちなみに昨日の大阪講演は最初の質問幹事社じゃなかったんですけど、最初に質問したどこぞの某社(敢えてどこかは書かない)の質問が同様にクッソ長くて、あまりの長さに質問の趣旨が聞いてるこっちも分からなくなる状態でしたが、それに釣られたのかその後の質問も全般的にクソ長くて非常に聞き苦しい会見でしたので、記者会見そのものをやはり「かずお君のよつべチャンネル生配信」方式にした方が良いんじゃないかとwwwww

しかもクソ長いくせに質問としての価値もないので最初の幹事社の質疑は割愛して次に行くw


・最初の方なんか質疑が全然かみ合ってなくて大丈夫かって感じでしたが・・・・・・

まあ2番目の質問も大概にナンジャソラだったんですけどね。

『(問)まず為替についてなんですけども、先ほど円安が修正されたことで上振れリスクが減ってきたというところですけども、日銀のシナリオ自体への影響を、つまり下押しのリスクですね、その辺りは影響はないのかどうか、今後、アメリカが利下げを進めていけば更なる円高圧力になってくると思うんですけども、それが日銀のシナリオに対してどのような影響を与えるとお考えかという点をお願いします。』

そもそも論としてアメリカが利下げしたら円高になるというのが???なのでそれを言うのは余計にもほどがある。でもって質問の2点目に行く。

『もう一点がですね、先ほど金融市場動向を注視していくというところと、円安が修正されたので、利上げについての判断をする時間的な余裕が出てくるというお話ありました。そうすると年内に利上げをしていくという可能性っていうのは低くなってきたのか、それとも全く排除されないのか、その辺りもお願いします。』

この会見でもそうですし、昨日の会見でもそうなのですが、「年内に利上げ」云々って延々と記者どもが質問しやがるのですが、円債市場の中の人的には12月1月ってのはセットで、どっちで利上げしてもその意味するところは大差ない(短期市場的には大差あるけど)ので、そもそも論として「年内」で区切って質問する意味が全く分からないのですが、何でああ年内利上げに拘って質問するんでしょうか、というのが未だに意味不明です。この会見でも昨日の会見でも何度もこの質問があってリアタイ聞いてて一々血圧をあげていると健康に悪いので甚だ遺憾の極みであります。

さて1番目の質問の回答。

『(答)ちょっと一般的なお答えになってしまうかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、アメリカをはじめとする海外経済の先行きを巡る不透明感、これが昨今の金融資本市場の動きの背後にあると考えていますので、その全体を含めて、丁寧に分析して、われわれの見通しに対する影響を確認していきたいというふうに思っています。』

ということで、会見冒頭から「米国(及び海外)経済ガー」という話が出ていまして、最初のうちはそうでもなかったのですが、植田さんがあまりにもこの「米国経済ガー」を連呼するもんだから、「ハトハトチキン植田が再爆誕」ということになってドル円は飛ぶ飛ぶ炎と燃えてだわ円債先物はどすこいどすこいと横綱相撲を始めるわとなった次第。

広範の質問の回答がこれ。

『その確認にどれくらいの時間がかかるかということですが、これは特定のタイムラインというか、スケジュール感を持って、ここまでに確認するというような予断は持っていません。もう少し申し上げれば、アメリカであれば、ソフトランディング的なシナリオに近い姿が実現していくのか、もう少し厳しめの調整になっていくのか、これを丁寧に見極めていきたいというふうに考えています。』

何かここの部分、リアタイで聞いていた時も「全然話がかみ合わないぞ」って思ってまして、またポンコツ質疑かと思ったのですが途中からはかみ合うようになっていたので、単にお疲れだったのかもしれないのですが、今回の金融政策決定会合に疲れる要素なかっただろ、とは思いました。


・米国軟着陸なら利上げできますよね&物価の上振れリスクに関して(個人消費の上方修正に絡め)

3番目にまともな質問がやっと来まして、ここから会見の流れが落ち着いてきた感があります。

『(問)FRBが 0.5%の利下げをしました。アメリカの経済の軟着陸の可能性を高めるために動いたという説明ですけれども、総裁の今の米国経済に対する認識を伺えればと思います。また米国経済が軟着陸するのであれば、アメリカが利下げに動くこと自体は、今後、日銀が見通し期間後半にかけて中立金利に引き上げていくというシナリオに影響を与えないという理解でよろしいでしょうかというのが一点目です。』

米経済なんて日銀が予想できるわけないだろいい加減にしろwwwwというのはさておきまして、米国利下げが米国経済の軟着陸に結びつく利下げならそれは日銀の緩和修正に妨げにならないですよね、という実に真っ当な質問。

後半は、

『もう一点が先行きの物価認識について伺いたいと思います。為替による上振れリスクは 7 月時点と比べて抑えられていると思いますけれども、個人消費を今回判断を上方修正したことないしまた価格転嫁の継続などを踏まえると、一時的な上振れリスクというよりは基調的な物価の上振れが生じる可能性が上がってきていると言えるのではないでしょうか。そこの総裁のご認識と今後どう政策対応していくかを伺えたらと思います。』

確かに。

植田さんの回答。

『(答)まずアメリカですけれども、大まかに申し上げて、判断が難しい部分があるかなと思います。』

って辺りもハトハトチキンっぽいですよね、なんか兎に角この会見は終始「米国経済ガー」を連呼してハトハトチキンを強く印象付けているんですが、これ本人がその意図を持って言ってるならまあ確信犯だから仕方ないのですけれども、植田さんの場合は本人がこの発言をハトハトチキン扱いされるという認識なしに言っている可能性が大有り名古屋は城で持つなのが恐ろしいところです。

『というのは、消費を中心に支出面はかなり好調が持続している。これに対して、労働市場のデータをみますとやや弱めというか、これまでの超過需要が非常に強いという状態から、需給均衡かあるいは失業率はちょっと上昇するような状況になってきて、その間に若干のギャップがある中で、インフレ率ははっきりと低下を続けているということだと思います。』

うーんこの。

『これをまとめて、ソフトランディングになっていくのかあるいはもうちょっと減速が強まるのか、その中でFRBが減速傾向を食い止めるためにどれくらいの利下げをしていくのか、この辺の全体像はまだちょっと、先ほど来申し上げておりますように、みえていないっていうところですので注意してみていきたいと思いますし、そのわれわれの見通しに対する影響を引き続き、丁寧に確認していきたいというところです。』

これはハトハトチキンですわ。では後半の質問に対する回答。

『それから二点目は日本の消費に関するご質問だったと思いますが、今回、若干判断を上方修正していますけれども、データ的には私ども消費活動指数が第 2 四半期は増加に転じた、それから 7 月も増加が続いている、更にその後の動きについてもヒアリングや高頻度のデータでは、緩やかな増加基調が続いているということがまず一点です。』

はい。

『それから猛暑とか台風と自然災害でちょっといろいろ揺れていますけれども、そういうことがありますが、根っこのところで賃金が着実に上昇してきて所得環境の改善が続いている。こういう辺りを総合して少し判断を引き上げたということです。』

分かったが別にそこは質問されていないだから説明しなくて良いと思うのよね。こういうのが一々余計なんですよ植田さんは。

『そのうえでそれが基調的物価上昇の判断にどう影響するかということですが、この消費のデータも含めまして、7 月に申し上げたことと若干重なりますが、その後のデータをみてもわれわれの見通し通りに経済は足元動いてきているというふうに、日本経済ですね、みています。』

そうじゃなくて消費上方修正は物価の上振れリスクになるのか、という話なんだが、

『これは若干なりとも、基調的物価上昇率に対する判断を上げてもいいような材料ですが、他方で、先ほど来申し上げているような海外経済、特に米国経済の動きが先行きに関して若干不透明性を高めている。それが何か相打ちのようなかたちに足元なっているというふうな認識をしております。』

ここでもまた米国経済ガーを連呼しているんですけれども、この説明だと消費の上方修正が「オントラックの中での出来事」なのと「上方サプライズ」なのかが判然としなくて、本来であればこの説明するなら米国云々を言う必要はなくて「もともと家計所得の上昇によって消費は下支えされて先行き堅調に推移する、という見通しに沿った動きであって、特にこの消費判断の上方修正が物価の望ましくない上振れリスクに直結するような材料ではないと考えています、あくまでもオントラックの中での現状判断の修正と考えて頂きたい」と言った方がすっきりするんですよね〜。

というところで最初に余計な悪態書いたから時間が無くなりました続きは明日ということですいませんすいません。





2024/09/24

お題「全国CPI(雑メモ)/決定会合レビューということでだいたい声明文比較」

おお野田さんですか
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240923/k10014589651000.html
立民代表選【結果】野田新代表 党役員骨格人事「刷新感重要」
2024年9月23日 18時57分

野田さんが保守系を率いて自民党に合流して自民党総裁になってええんやで(大妄想)。

〇全国CPI相変わらずお強いですが

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消 費 者 物価指数
全 国 2024年(令和6年)8月分

『◎ 概 況

(1) 総合指数は2020年を100として109.1
前年同月比は3.0%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇

(2) 生鮮食品を除く総合指数は108.7
前年同月比は2.8%の上昇 前月比(季節調整値)は0.4%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は107.4
前年同月比は2.0%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇』

なにこの前月比という感じですが、2ページ目の[総合指数の前年同月比に寄与した主な内訳]を見ますと、

『生鮮野菜 12.5%(0.23) ・・・・・ たまねぎ 31.3%(0.03) など
穀類 6.5%(0.15) ・・・・・ うるち米(コシヒカリを除く)29.9%(0.10) など
肉類 4.6%(0.12) ・・・・・ 豚肉(国産品)7.2%(0.04) など
外食 2.5%(0.12) ・・・・・ 焼肉(外食)3.8%(0.02) など
菓子類 4.1%(0.11) ・・・・・ チョコレート 12.7%(0.04) など
生鮮果物 10.1%(0.10) ・・・・・ 梨 12.8%(0.02) など
調理食品 2.5%(0.09) ・・・・・ すし(弁当)4.2%(0.01) など
飲料 3.9%(0.07) ・・・・・ 果実ジュース 34.9%(0.03) など』

・・・・泣いた。

という所ですし、1ページ目の『表1 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の指数及び前年同月比』を見ますと相変わらず前年同月比でもお高いわけですが、このような物価情勢の中だというのに、どこぞの某有力議員様におかれましては、「コアコア物価が2%に達していないので金融緩和を続けるべき」とかいうご発言をされていたやに記憶しておりまして、アタクシの記憶違いであることを切に願いたいのですが、もしかしてこのお方は先月発表されたCPIのコアコア前年同月比+1.9%というのだけを見てそのようなご認識を示されたのでございましょうかとか、まさかとは思いますが総務省の出している重要統計の公表文書のほぼ鏡の部分もお読みになっておられないのでしょうかと杞憂してしまいますが、どういう幻想的な思考をするとあの統計表を見て「コアコア物価がまだ弱い」という話になるのかと思いますと、まあ何と申しますか以下自粛。


〇決定会合レビュー:7月のタカ色を中和しようとして円安に振ってるとか間抜けにもほどがある

・声明文比較の前にそもそも何なんですかあの会見は為替また動かしちゃったじゃないですか

ということでレビューなのですが、7月のタカ色を中和したいのはわからんでもないのだが、そもそも論として7月会合の後に内田副総裁の株式市場に全面降伏ワンワン講演があった訳でして、アレのあとまた内田さんの市場従属とかいう無見識モードの中和をしている中で、今回のメッセージの出し方が「10月利上げ観測の払拭」だったのかもしれないけれども、一々余計なのでして、今回は会見の方が間抜け(途中結構植田さん良い話をしている場面もあったのですが)にも程があって、それは本日会見要旨が出るからそこでまた確認しますけど。

いやね、10月利上げ観測を消しておきたいのはわかるんだが、そもそも論としてそんな幻想的な観測しているの馬鹿メディアとかド素人市場のド素人だけな訳で、一々馬鹿向けにサービスして説明をするもんだから、特に会見で出てくるメッセージの振れ幅が大きくなるわけですよ。

結局ですね、利上げ観測を叩き潰してみたり、今度は利上げやる気満々な強い言い方をしてみたり、の繰り返しをしているのが良くなくて、今回なんて内田ワンワン講演のやりすぎを一旦少し中和したんですから、そのまま「見通し通りに推移すれば緩和度合いの調整を今後も続けます、以上それまで」で良いのにも関わらず、「米国経済のリスクガー」を連呼するもんだから、特に為替市場が盛大に反応してしまって、債券市場も先物が反応してしまって、という余計な動きを発生させている訳でして、まあ植田さんも余計なことを言う悪い癖があるようですけれども、あれだけ米国経済下振れリスクを連呼するということは、こんなの植田さん個人な訳なくて振付師の振付がヘタクソというか学習効果が無いのか市場のことを分かった積りになって生兵法を振り回してるのか知らんけど、無風会合になる筈なのに為替をまたもう動かしてしまったことには猛省を促したいと思います。


ということで声明文比較になります。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240920a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240731a.pdf(前回7月声明文)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2407a.pdf(7月展望レポート基本的見解)

今回は政策変更が無いので主に直近の展望基本的見解との比較になります。

・現状判断:消費の現状判断を引き上げ

『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(7月展望レポート)

展望レポートの2ページ目(基本的見解本文)との比較になります。総括判断同じ。

『海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっている。企業収益が改善するもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(今回)

『海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっている。企業収益は改善しており、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(7月展望レポート)

業況感云々の部分は短観が直前にあったかなかったかの違いなので特に意味はなく、海外経済、輸出、生産、企業収益、設備投資ともに判断不変になります。

『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響などがみられるものの、緩やかな増加基調にある。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響などがみられるものの、底堅く推移している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(7月展望レポート)

個人消費が「底堅く推移」→「緩やかな増加基調」と判断を引き上げました。何気にこれは大きい。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(7月展望レポート)

緩和というよりガバガバですが。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台後半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(7月展望レポート)

物価の判断文言も同じです。


・先行き見通し:こちら見事に全文一致なので「見通し通りに推移」ですね

『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回)

『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(7月展望レポート)

7月展望は同じく本文(鏡の方ではない)から引用しています。経済の見通しは全文一致です。

『消費者物価(除く生鮮食品)については、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、来年度にかけては、政府による施策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台半ばとなったあと、2025 年度および 2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025 年度にかけては、政府による施策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(7月展望レポート)

展望レポート基本的見解の3ページからの部分を引用しています。こちらは計数があるのは展望レポートの仕様なのでそこを飛ばして読みますと、これもまた基本的に言っていることは同じ(来年度と2025年度、という違いはあるけど)ですね。さらに、

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回)

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(7月展望レポート)

こちらも基本言ってることは同じ(文言は違う部分があるけどテクニカル要因)ですね。ただまあこれ最近ずっと気にしているのですが、本来声明文の予想期間って半年から1年程度の先の話をするもんだったはずなのですが、いつのまにやらそんなロングの見通しを出しているのかよというのは話いつの間に変わったの、と思います。

まあこれは「オントラックである」というのを強調するために入れている文言、と解釈するのが妥当ではあるのですが、従来の仕切りと違う予測期間の話をされるのはちょっともにょる。


・リスク要因ですがこれは展望レポートの表現を踏襲しているのであまり深い意味はない筈ですよ

リスク要因のところを会見で質問されて最初に説明しているのにその後もああだこうだと質問されていましたな。為替の質問したいのはわかるが同じ質問を何回もするなよということで、総裁記者会見は「かずお君のよつべ生配信、質問は赤スパでお願いします」にした方が良いんじゃないでしょうかねえ(暴論)。

・・・・・・いかんいかん話がそれてしまった。

『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。とくに、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(今回)

『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。とくに、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(7月展望レポート)

こちらは展望レポ―ト基本的見解の1ページ(概要、だが鏡とつい言ってしまう)部分になります。

基本的にここの文言は「直近の展望レポートを踏襲」というのが仕様で、そうじゃないときは変更有り、というステータスになりますので、今回のこれは「変更なし」になります。


・政策運営に関する文言の扱いは明確に説明した方が良いと思うの

まあ今回はその文言は声明文から落とされているのですが、

『今後の金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、今回の「展望レポート」で示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(7月声明文)

前回会合では政策変更を行ったからこの文言を声明文に入れている、ということなのですけれども、

1月会合声明文(QQEYCC継続中):先行き文言に関する独立項目あり(ガイダンス入り政策なので順当)
3月会合声明文(政策変更有り):先行き政策に関する文言はあるが独立項目ではない
4月会合声明文(展望会合):3行声明文で情勢判断の記載もないし先行き政策の記載もない(展望レポート内に記載)
6月会合声明文(輪番の予告あり、展望なし):先行き政策に関する記載はない
7月会合声明文(政策変更有り):先行き政策に関する独立光項目あり
9月会合声明文(展望なし政策変更なし):先行き政策に関する記載はない

ということで、1月まではQQEやYCCの継続コミットメント文言があったので独立項目で先行きの政策の話を記載していたのですが、その後が毎回のようにこの先行き政策に関する文言の扱い(声明文の体裁もそうですが)が微妙に違うので、今回削除されたことに何か意味があるのか、という質問も会見で飛んでいました(良い質問です)が、今回削除すると、会見でのアメリカ経済ガーも相まって、なんか金融政策修正への姿勢が後退してるんじゃないか、という印象(誤解なのか誤解じゃないのかは分からん)を与えることになりますので、もうちょっとこの文言の扱いを明確にする必要があるし、そもそも論として政策変更したときに何も先の政策の話をする必要はないので、この文言は声明文に入れる必要はない(そもそも「データ次第」政策をするんなら先行きの政策の予告はできないはず)んじゃないですかねえ、と思いますがどうでございますですかしら。


・・・・・とまあそんな感じでした今回は。


・まあ問題になるのは会見での「米国経済下振れガー」の連呼でしょ

というのはさっき書きました通りで、あれはまあ振付がヘタクソなんじゃないかと思いました。それから会見ですが、前回もそうでしたが今回も質問する方がアカンのが多くて辟易しながらシャーナシで聞いていましたが、まず「質問は簡潔に」とか言ってる幹事社の質疑がクソ長い(最初のが1.5問くらいあってなげえと思ったのにさらに質問してて、お前がクソみたいjに長い質問してるから後ろで時間が無くなるんじゃヴォケと思いました)のと、同じ会社で2人くらいは(更問の余地を残すために)質問しても良いとは思いますが、1社で3人とか質問するのはさすがにふざけるなと思いましたし、まあいろいろと愚劣な会見ではありました。

ちなみにアタクシは日銀公式のよつべチャンネルの方で見てたんですが、前回対比で注目度が少ないだけのことはあって、会見開始直後は同接2000人弱(前回が開始時4000人くらいでピークが5000人近くでしたが瞬断やホワイトノイズでその後急減しましたw)から始まったのですが、某ベンダーの中継よりも日銀公式の方が若干早いことに気が付いた人たちが日銀の方にやってきて、同接5000人超えとなってまさかの前回越えをしていたのですが、質疑がつまらんのが影響したのか開始30分を経たずして同接が徐々に減っていった(ゆうて最後の方でも4200人位はいましたが)のはクソ笑いましたwwwwwwww





2024/09/20

お題「毎週恒例となった3M短国関連悪態であるw/FOMCレビューでSEPとオープニングリマーク」

ワロタ
https://jp.reuters.com/business/SWVV7CPE6JNZXPIYJ3AZDWY6NI-2024-09-19/
新藤経済財政相、20日の日銀決定会合に出席=内閣府
By ロイター編集
2024年9月19日午後 6:20 GMT+9

初回こそそのタイミングで「なんか起きるのか」と緊張が走った新藤さんの出席ですが、その後「このおっちゃん暇だと来るのでは」説が出てきましたが、どうもそれで正しかったようですな。まあそういう感じで見に来るのも別にいいんじゃないのかなって思います。(どうせ内閣変わるからご挨拶とかもするのかもね)

願わくば金懇ではカカシニキやカカシネキにしか見えない(個人の偏見です)誰かさんとか誰かさんとかなどが新藤先生の身になるような議論をちゃんとしていただいていることを希望したい(新藤先生が割とホイホイ出席しているのを見るとクソしょうもないシャンシャンだけではないのでは、ということはちょっと期待できますよね)。


〇3MTDBェ・・・・・・(もはや毎週の行事)

もうね、アホかと馬鹿かと
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240919.htm
国庫短期証券(第1258回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1258回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号       国庫短期証券(第1258回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日       令和6年9月24日
4.償還期限     令和6年12月23日
5.価格競争入札について
(1)応募額       12兆2,356億円
(2)募入決定額    3兆4,941億8,000万円
(3)募入最低価格   99円98銭6厘0毛
(募入最高利回り)   (0.0567%)
(4)募入最低価格における案分比率    88.5533%
(5)募入平均価格   99円98銭7厘7毛
(募入平均利回り)   (0.0498%)』

昨日、近所の短国入札に行ったんですよ、短国入札。そしたらなんか人がめちゃくちゃいっぱいで座れないんです。

というのは吉野家コピペ(って初出が2001年だからインターネット老人会にも程がある)な訳ですが(その後が思い浮かばなかった)、何でまた回を追うごとに強くなってるんですかこの短国、ということでこれは明らかに需給バランスがおかしくなっている訳ですなドイヒー。

でですね、そういえばリーマンショック(も2008年だから債券村青年団の皆様は実体験していないのかそら年取るわ)の時を思い出していただきたいんですけど、あの時ってカウンターパーティーリスク意識の高まりでインターバンクで無担保コールが取りにくい方々のファンディングの場だったオープン市場における現先やGCレポレートが跳ね上がってしまって、ロンバード金利水準に張り付く、という事態が発生しまして、弊駄文(なんか知らんがその時も書いてた気がするw)でも何度も悪態をついていたのですが、結局このレート上昇(当時は貸出金利も上昇した)を受けて社債やCPの金利も爆上がりしてしまって、その後CP社債の買入(当時のはいわゆるバジョット・ルールな買入金利だったので禍根は残さなかった、残したのは終わった後に復活した時の買入)に追い込まれる、というようなことがあったんですよね。

まあ金融緩和しようとしているのに金融引き締め状態になっていたんですが、当初日銀のスタンスは「誘導目標のコールは安定しているから無問題」的なもので、CP買現先も申し訳程度に1回実施(なお日銀の大本営歴史改竄によってこれは効果があったことに日銀の歴史上されていることは付言しておく)しただけ、というような形で、結局社債CPという企業金融にもろに跳ねたところでやっと措置が打たれたという次第。

・・・・・と縁側で渋茶すすってるジジイが急に何を言い出しているのかと申しますと、この手のオープンマーケット金利の変調を「インターバンク市場におけるコールレートが我々の誘導目標であり誘導目標はきちんと維持されているので問題はない」で通してしまいますと、どこかに弊害が生じてしまうリスクがある、ということでありまして、まあそういう話をこの際提唱しておこうかと思った訳ですよ。

緩和しようとしている時に引き締めが発生する、という状況ではないので、リーマン後のCP社債市場みたいな悲劇は起きないかもしれませんけれども、まあ放置プレイの結果弊害が発生してからモタモタと対処をする、というのも割と日銀の伝統芸能だったりしまして、いや確かに「問題を解決した」というのは功績に見えるので格好良いし官僚的な点数になるのかもしれませんけど、リーマンの時も別にアタクシだけではなくそこら中からオープン金利の高止まりに対して大問題という指摘があったのにコールレートは誘導できているので問題はない、の理屈で放置してた挙句にああなったわけでして、何らかの変調が起きているんだったら弊害が発生する前に予防措置取るのが本来の行政だろ予見可能な事故が起きてからドヤ顔で復旧に来られても遅いんだよ、ということで、日銀に置かれましては尊敬すべき大先達の前川春雄元総裁の「奴雁」という言葉を思い出していただきたいもんです、と存じます。

・・・・・などと話を無駄に壮大にしましたが(^^)、ただの期末要因だったらまあ杞憂ではあるんですけど、なんせ「利上げしているのに利上げ前の政策金利よりも3Mの短国の金利が低い」ってのさすがに如何なものかと思いますし、ゆうて利上げ後別に3Mの金利が0.1%台後半とかそういう金利にさえ上がってもいない訳でして、一時的要因というのはさすがにちょっとという感じではありますわな、南無三。

ただまあアレなんですよね。これ別に日銀が短国買入やって締めあげているとかいう状況ではないのがどうしようもないところでして、結局は日銀がバランスシートの縮小を行わないと短期金融市場に変な歪みが発生し続けることになりますな。

償還乗換やっぱなし攻撃、と思ったけど今年度の償還乗換は1.7兆円で議決(https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/trans/tra231222a.htm)されてて、これ金額指定で国債発行計画の方に組み込まれている(筈)ので動かすわけにはいかず、1年短国引受だからこれ市中売却したらとは思いますけど年度で1.7兆円では焼け石に芋程度の効果しかないですのでやっぱりバランスシートの縮小が急務ということでありますな、しょぼーん。


〇日銀はどうせなんもないのでFOMCレビューの続きでも

また3連休とかいうものがあるので中銀ネタの渋滞を何とかしたいのですが、平日は思っているのだが休みになるとぐうたらになるのがワイのアレなクオリティ。


・SEPとりあえずドット鑑賞だけでしたのでその続きから

PDF版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20240918.pdf

HTML版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20240918.htm

基本引用(コピペ)はHTMLの方から行います。

・経済見通しも「25年にマンデート達成して26年は均衡状態で推移」ですね

『Table 1. Economic projections of Federal Reserve Board members and Federal Reserve Bank presidents, under their individual assumptions of projected appropriate monetary policy, September 2024』

ということで、
              2024 2025 2026 2027 ロンガーラン
Change in real GDP  2.0  2.0  2.0  2.0     1.8
June projection     2.1  2.0  2.0  --     1.8

Unemployment rate  4.4  4.4  4.3  4.2     4.2
June projection     4.0  4.2  4.1  --     4.2

PCE inflation      2.3  2.1  2.0  2.0     2.0
June projection     2.6  2.3  2.0  --     2.0

ってなっていまして、これって特に物価のところ(めんどいからコアは引用してないけど)を見ますと、前回は「2026年にはマンデート達成」でしたが、今回は2025年が2.1%になっているので、「2025年にはマンデート達成で、2026年は均衡状態で推移」となっていますよね。

でまあ昨日早速見ましたように、ドットプロットちゃんの方でも2025年の年末にはほぼロンガーランに近いところ、2026年の年末にはロンガーラン水準に到達、となっていますので、6月SEPでのばらけ具合から見たらエライ勢いで自信ニキネキとなっている訳でして、いやまあ本当にそうなら慶賀すべき話なんですけれども、こういう時には落とし穴があるのが世の常なのでどうもねえ、とは思います(心配性)。


・ドットチャートも手抜きでテーブル1の方で読んでみるという手抜き三昧

でもって真面目にドットの方見なくてもざっくり集計ですと、

Memo: Projected appropriate policy path

             2024 2025 2026 2027 ロンガーラン  
Federal funds rate  4.4  3.4  2.9  2.9    2.9
June projection    5.1  4.1  3.1  --    2.8

ということで、2025年年末はマンデート達成状態ではあるもののまだロンガーランよりはちょっと上、2026年末は既に均衡状態なので2027年末も同じ、ということになっていまして、これ前回対比では明確に自信ニキネキになっていますが、さっきの経済物価見通しと整合的ですわな。

さすがにドットプロットを中央値で見るの無理があるので、今まではメディアンしか引用してませんが大勢レンジを引用しますとこうなりますな。

Memo: Projected appropriate policy path 
Central Tendency

              2024  2025  2026  2027   ロンガーラン  
Federal funds rate 4.4-4.6 3.1-3.6 2.6-3.6 2.6-3.6  2.5-3.5
June projection   4.9-5.4 3.9-4.4 2.9-3.6  ---   2.5-3.5

ということで2025年の末にはおおむね均衡名目金利に近いところまでは下がっているでしょう、という見通しに変化しました、ってのは大勢レンジを見ればわかりやすいですわな(プロット見た方が早いですかそうですか)。

あと今回ですが、ロンガーランのメディアンがちょっとだけ上がっているのも既に話題になっておりましたのでご案内のことかと存じますが、ちょっとだけとは言え利下げ打ち止めポイントが変わる話なので、この辺りを反映したのと、これからネタにする(予定なのだが時間の都合でどうせ時間が足りず続きありになる)会見の話も相まって、バンバン利下げでゴルディロックスヒャッハーという夢の話から少し目覚めたとかそういうことなんですかアメリカン債券市場は、よー知らんけど。


〇会見だが時間があんまりないのでQAは近日中にということでオープニングリマークだけで勘弁

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20240918.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
September 18, 2024

既に今朝の時点ではQA付になっていますが、そこまでどう足掻いても間に合わないのでオープニングリマークだがこれも間に合うか怪しい(汗)

・出オチで自信ニキ登場

最初はご挨拶ですが、

『CHAIR POWELL. Good afternoon. My colleagues and I remain squarely focused on achieving our dual mandate goals of maximum employment and stable prices for the benefit of the American people. Our economy is strong overall and has made significant progress toward our goals over the past two years. The labor market has cooled from its formerly overheated state. Inflation has eased substantially from a peak of 7 percent to an estimated 2.2 percent as of August. We are committed to maintaining our economy’s strength by supporting maximum employment and returning inflation to our 2 percent goal.』

とりあえず「Our economy is strong overall and has made significant progress toward our goals over the past two years.」とかのっけから自信満々なのは把握した。

・利下げは「コンフィデンスの成長」だそうです

次が決定事項の説明。

『Today, the Federal Open Market Committee decided to reduce the degree of policy restraint by lowering our policy interest rate by 1/2 percentage point. This decision reflects our growing confidence that, with an appropriate recalibration of our policy stance, strength in the labor market can be maintained in a context of moderate growth and inflation moving sustainably down to 2 percent. We also decided to continue to reduce our securities holdings. I will have more to say about monetary policy after briefly reviewing economic developments.』

利下げの背景は「our growing confidence」だそうで利下げは「reduce the degree of policy restraint」だとな。

・経済情勢・雇用情勢・物価情勢の判断とSEP見通しについて

『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace. GDP rose at an annual rate of 2.2 percent in the first half of the year, and available data point to a roughly similar pace of growth this quarter. Growth of consumer spending has remained resilient, and investment in equipment and intangibles has picked up from its anemic pace last year. In the housing sector, investment fell back in the second quarter after rising strongly in the first. Improving supply conditions have supported resilient demand and the strong performance of the U.S. economy over the past year.』

この辺は経済情勢の話。声明文1パラで経済のオーバーオールに関しては表現同じだったのと同様に「economic activity has continued to expand at a solid pace」ですわな。

『In our Summary of Economic Projections, Committee participants generally expect GDP growth to remain solid, with a median projection of 2 percent over the next few years.』

SEPのさっきの成長率見通しの話ですな、次は労働市場。

『In the labor market, conditions have continued to cool. Payroll job gains averaged 116 thousand per month over the past three months, a notable stepdown from the pace seen earlier in the year. The unemployment rate has moved up but remains low at 4.2 percent. Nominal wage growth has eased over the past year and the jobs-to-workers gap has narrowed. Overall, a broad set of indicators suggests that conditions in the labor market are now less tight than just before the pandemic in 2019. The labor market is not a source of elevated inflationary pressures. The median projection for the unemployment rate in the SEP is 4.4 percent at the end of this year, 4 tenths higher than projected in June.』

労働市場のところは既にまあ言うまでもない感じではありますが、念押しで「The labor market is not a source of elevated inflationary pressures.」と入れているのがお洒落です。

次は物価情勢。

『Inflation has eased notably over the past two years but remains above our longer-run goal of 2 percent.』

物価情勢の最初のところで「has eased notably over the past two years」と威勢よく言ってますが、さすがに現状水準はまだ2%より上ですわ、とは言わざるを得ないので言いますけど、まあ最初のこの言い方を見れば基本自信ニキなのは把握できますわな。

『Estimates based on the Consumer Price Index and other data indicate that total PCE prices rose 2.2 percent over the 12 months ending in August; and that, excluding the volatile food and energy categories, core PCE prices rose 2.7 percent.』

『Longer-term inflation expectations appear to remain well anchored, as reflected in a broad range of surveys of households, businesses, and forecasters, as well as measures from financial markets.』

と、具体的な物価数値とインフレ期待の現状の話をしましてその後SEPの見通し数値ですが、

『The median projection in the SEP for total PCE inflation is 2.3 percent this year and 2.1 percent next year, somewhat lower than projected in June. Thereafter, the median projection is 2 percent』

はいはい2%達成2%達成。


・金融政策運営について

次が金融政策運営の話になります。

『Our monetary policy actions are guided by our dual mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people. For much of the past three years, inflation ran well above our 2 percent goal, and labor market conditions were extremely tight. Our primary focus had been on bringing down inflation, and appropriately so. We are acutely aware that high inflation imposes significant hardship as it erodes purchasing power, especially for those least able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation.』

まあこれはマクラみたいなもん。

『Our restrictive monetary policy has helped restore the balance between aggregate supply and demand, easing inflationary pressures and ensuring that inflation expectations remain well anchored. Our patient approach over the past year has paid dividends: Inflation is now much closer to our objective, and we have gained greater confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent』

でもって引き締め政策をペイシャントに継続したおかげで「we have gained greater confidence」となりました、ときまして、

『As inflation has declined and the labor market has cooled, the upside risks to inflation have diminished and the downside risks to employment have increased. We now see the risks to achieving our employment and inflation goals as roughly in balance, and we are attentive to the risks to both sides of our dual mandate.』

「upside risks to inflation have diminished 」とかしらっと言ってるの大丈夫か感はあるけど、「downside risks to employment have increased」でもあるので利下げしますってことで、

『In light of the progress on inflation and the balance of risks, at today’s meeting the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate by 1/2 percentage point, to 4-3/4 percent to 5 percent. This recalibration of our policy stance will help maintain the strength of the economy and the labor market and will continue to enable further progress on inflation as we begin the process of moving toward a more neutral stance. 』

物価情勢が見通し通りに推移していけば金融政策は中立スタンスに向けて引き締め度合いの調整を行う、とは思いっきり言ってるんですよね。そりゃまあSEP見れば一目瞭然ですけど。

『We are not on any preset course. We will continue to make our decisions meeting by meeting. We know that reducing policy restraint too quickly could hinder progress on inflation. At the same time, reducing restraint too slowly could unduly weaken economic activity and employment. In considering additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks. 』

とは言え利下げ早すぎはインフレ再燃のリスクがあるし、遅すぎて引き締め過ぎると経済にマイナスなので様子見しながらやっていきますよプリセットコースは無いですよ、って言ってるなら何ですかあのドットチャートはという感じでもあるのですが、その辺の「お気持ち」が2024年のこの先の利下げが(今回50も下げたくせに)妙に少なめに感じられる点に出ているんでしょうね。知らんけど。

次はドットの説明してるだけなので引用だけしまして、

『In our SEP, FOMC participants wrote down their individual assessments of an appropriate path for the federal funds rate, based on what each participant judges to be the most likely scenario going forward. If the economy evolves as expected, the median participant projects that the appropriate level of the federal funds rate will be 4.4 percent at the end of this year and 3.4 percent at the end of 2025. These median projections are lower than in June, consistent with the projections for lower inflation and higher unemployment, as well as the changed balance of risks. These projections, however, are not a Committee plan or decision.』

その次も「状況次第で引き締めし直しだってありますし、利下げ加速だってありますよ」という話をしまして、

『As the economy evolves, monetary policy will adjust in order to best promote our maximum employment and price stability goals. If the economy remains solid and inflation persists, we can dial back policy restraint more slowly. If the labor market were to weaken unexpectedly or inflation were to fall more quickly than anticipated, we are prepared to respond. Policy is well positioned to deal with the risks and uncertainties that we face in pursuing both sides of our dual mandate.』

これでオープニングリマーク最後のパラになりますが、これもまあマジナイ文言ですね。

『The Fed has been assigned two goals for monetary policy-maximum employment and stable prices. We remain committed to supporting maximum employment, bringing inflation back down to our 2 percent goal, and keeping longer-term inflation expectations well anchored. Our success in delivering on these goals matters to all Americans. We understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We at the Fed will do everything we can to achieve our maximum employment and price stability goals. Thank you. I look forward to your questions.』

QAコーナーは後日で勘弁してちょ






2024/09/19

お題「寝起きでFOMCさっと確認でござるの巻:物価安定達成大勝利宣言なのは把握した」

今日は地味に3MTDBの入札があって、何ということでしょう先週と同様に新発WIの引値が急に7bpに低下(前日まで10bp)という事案が発生しておりまして、先週の再来のような事前気配になっているのを見ると今日の短国もお察しの展開になりそうで頭がクラクラするんですが、財務省も日銀もこの事態は異常とか思わんのかね(リスクフリーで市場参加者の厚みがある短国アウトライトのレートが政策金利から大幅下方乖離っておかしいでしょ、NCD3M新発利回りが3か月金利の指標だった20世紀の頃の限界短国市場じゃないんだから・・・・・)

と、もはや入札の結果を見る前に悪態をついていますが、まあ残念なことですがこれはフラグにならないで未来人の悪態になるんですよねwww

てな訳でFOMCである。

〇FOMC声明文:うへー50bp利下げしたんかい、が第一印象ですがさて・・・・・・

ニュースとか見ないでいきなり声明文を見ているのでまずは2パラの数字を見てからさてどうでしょうとみるわけです。なお、中の人はPC環境いじった時にプリンターの設定をするの忘れてて時間もないのでいつもだと紙に打ち出して目検してからこれ書くのですが今日はぶっつけ本番wwwどすえ

今回声明文
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240918a.htm

前回声明文
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240731a.htm

・第1パラグラフ:2%安定目標への進展が「進展がみられる」みたいなのから遂に現在完了形の言い切り型になりました

『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace.』(今回)
『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace.』(前回)

経済活動に関する文言は同じ。

『Job gains have slowed, and the unemployment rate has moved up but remains low.』(今回)
『Job gains have moderated, and the unemployment rate has moved up but remains low. 』(前回)

雇用状況に関してはジョブゲインがスローになった、と下方修正しています。

『Inflation has made further progress toward the Committee's 2 percent objective but remains somewhat elevated.』(今回)
『Inflation has eased over the past year but remains somewhat elevated. In recent months, there has been some further progress toward the Committee's 2 percent inflation objective.』(前回)

でもってインフレに関しては前回はああでもないこうでもないとしながら「物価安定目標に向けた進展が幾分かさらに進んだ(there has been some further progress)」だったのが、今回は堂々の現在完了形で「物価安定目標に向けた進展が行われてきました(has made further progress)」と言い切りになっていまして、物価安定に向けた進展来てます大勝利です、とぶっこんでいらっしゃいますな。


・第2パラグラフ:グレーターコンフィデンスとかリスクバランスとかその辺の文言は全文一致

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回)

これはいつものパラ冒頭に出てくるおまじない。

『The Committee has gained greater confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent, and judges that the risks to achieving its employment and inflation goals are roughly in balance.』(今回)
『The Committee has gained greater confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent, and judges that the risks to achieving its employment and inflation goals are roughly in balance.』(前回)

実は今回ぶつ切りにしているのって、さっきも申し上げたように紙に出して目検確認するプロセスをかっ飛ばしてやっているので、3パラまでは少なくとも重要だろと思ってぶつ切りしてまして、2パラは上記のように物価安定に向けた進展に対してなんか追加の文言あるじゃろ、と思って切っているのですが、この時点で「あれ変化ないじゃん」となるわけですな。

『The economic outlook is uncertain, and the Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate.』(今回)
『The economic outlook is uncertain, and the Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate.』(前回)

まあこれもオマジナイ文言なので、なんと2パラ変化なし、でして今朝はさすがに一発目に3パラの金利水準を見にいって0.5%利下げを見てからここを見たので、確かに1パラでは勝利宣言モードになっているのですが、だからと言って0.25%じゃなくて0.5%下げる理由is何??って感じでして、会見で何で50なのかって聞かれているでしょうけれどもそこまで確認する時間はない(3時とか3時半とかに起きてFOMCチェックすると昼の生業に支障をきたしますわ若人じゃないので体持ちませんw)ので明日できればやるという感じで勘弁。


・第3パラグラフ:50bp利下げだが声明文の方では中立金利に向けた話が無い&最後のマジナイに雇用を入れましたね

『In light of the progress on inflation and the balance of risks, the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate by 1/2 percentage point to 4-3/4 to 5 percent.』(今回)

『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent.』(前回)

でまあ皆様ご案内の通り50bp利下げですが、50も下げてじゃあこれからどうなのか、というのが気になるので続きを見ますと、

『In considering additional adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』(今回)
『In considering any adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks』(前回)

お、おぅ・・・・・・・って感じなのですが、これ今回利下げしたからany adjustmentsがadditional adjustmentsになりましたが、言ってることが特になんか先の話をしているわけではない(SEPのドットで示してるから、というのはあるのかもしれないけど)のですね。なんかこう「物価安定達成の際には政策は中立金利近辺に」みたいな遠距離砲を入れるのかと思いましたが、そういうのは声明文にはいれないのね、ということで。

『The Committee does not expect it will be appropriate to reduce the target range until it has gained greater confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent. 』(前回)

前回まではグレーターコンフィデンスが無いと利下げに着手しない、と言ってたのですが、今回は利下げ着手したのでこの文言は今回お蔵入りになりましたがこれは当然なので特に意味はない。

『The Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities.』(今回)
『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities. 』(前回)

何気にお茶目なのはバランスシート縮小作戦は引き続き継続していることでして、利上げ開始したのにバランススートが碌すっぽ減らない根性無しの極東の島国の中央銀行は爪の垢を煎じて飲んでいただきたいですな。

なお、前回は「グレーターコンフィデンスが無いと利下げ着手しませんよ、それに加えて」って文章の繋がりだったのですが、「In addition, 」で文章をつなげた割には利下げ判断とは関係なく淡々とバランスシート縮小継続ってのはまあそうするのは当然ですけど何となくチャーミングでした。

『The Committee is strongly committed to supporting maximum employment and returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(前回)

このパラグラフも最後はオマジナイ文言になるのですが、ここれ面白いのはこのオマジナイに変化がありまして、従来は「2%物価安定に回帰させることにstrongly committed」だったのが、今回、「supporting maximum employment 」というのが入ったことですね。

まあしばらく前から雇用が弱まっておりましてどうのこうのという説明をしていますので、これ自体サプライズというほどの変化ではないですが、25bpじゃなくていきなりどどんと50bp下げた背景としては「最大雇用目標達成への意識」がある、ということをこのオマジナイ文言の変化によって示しているんじゃないかな、と思いましたのでオマジナイにしては重要な変化ということでしょう。

・第4パラグラフ:全文一致ですねえ

実は4パラ以降はまだ見ていないので只今キーボード打ってる時点でガチの初見ですが・・・・・

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook.』(今回)
『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook.』(前回)

コピペ並べた瞬間にこれは全文一致と思いましたが確認のためぶつ切りしながらw

『The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals.』(今回)
『 The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals.』(前回)

『The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)
『The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回)

・・・・やはり全文一致だったか。まあ毒にも薬にもならない文言です。

・第5パラグラフ:ボウマン理事が0.25%利下げが望ましいと反対票を投じました

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W. Bostic; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Beth M. Hammack; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; and Christopher J. Waller. 』(今回)

『Voting against this action was Michelle W. Bowman, who preferred to lower the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point at this meeting.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Austan D. Goolsbee; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; and Christopher J. Waller. Austan D. Goolsbee voted as an alternate member at this meeting.』(前回)

まあ50が全員一致だったら結構ビビるところでした。1名だけかとも思いましたけど。


・インプリメンテーションノートでちょっとだけ

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240918a1.htm
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation

これ基本的に各種オペの金利は50bpフルスライドで下げていて、応札上限とかには変更がないのですが、
最後の方に、

『In a related action, the Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously to approve a 1/2 percentage point decrease in the primary credit rate to 5 percent, effective September 19, 2024. In taking this action, the Board approved requests to establish that rate submitted by the Board of Directors of the Federal Reserve Bank of Atlanta.』

In taking this action〜の部分、これ金利変えたから出た文言だったのかちょっと忘れてまして、過去のインプリメンテーションノートを見ればわかる話なのですが、そんなことをしているとSEP見る時間が無くなるのでパスします。


〇SEPのみんな大好きドットチャート:来年末には中立のかすか上、再来年は中立金利の辺りで安定推移とか大勝利宣言ですね

PDF版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20240918.pdf

HTML版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20240918.htm

さすがに今回は『Figure 2. FOMC participants’ assessments of appropriate monetary policy: Midpoint of target range or target level for the federal funds rate』を見てしまいます。

・2024年末の数字を見る前にまずは25年26年のビジュアルが強い印象を与えますよね

でまあ見た瞬間のビジュアルが「2025年末にはほぼ中立金利、2026年末には中立金利」という結果になっているので、これはすなわちデュアルマンデート達成いきまっせ宣言みたいな大勝利宣言キタコレということになっておりまして、今回に関してはそういう意味で2025年、2026年の数字を見ることに意味がありました。

前回のSEPは6月でして、これは貼り付けうんぬんよりもビジュアルでみれば一発なのですが

(前回6月SEP)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20240612.pdf

前回6月のSEPですと、2025年末は利下げプロセス中、2026年末になって中立金利よりもちょい上程度の水準まで下がってくる(中立金利に関しては右側のロンガーランのドット分布と目の子で比較した印象で書いていますので為念)という図になっていましたが、今回はそれが軽く1年前倒しになっておりまして、いやお前らそんなに自信満々でインフレ下がらなくなったりうっかり上がったらどうするんだよという自信満々モードのプロットになっていますな。

まあ見世物としてはこれが盛大なフラグ建築になって、年末にかけて米国物価が下げ渋るどころか反転しだしたりして、気が付いたらお賃金も上がってきたりして、みたいな面白展開になると笑い死にするレベルの見世物になるので(超無責任)それもまた一興という感じなのですが、偉い勢いで自信ニキになっていますが、そんなに大勝利決め打ちプロットしてて大丈夫なんかいな、と思いました。

でもってこのドットの分布も6月時点と比較してばらけなくなっているので、いやー本当の本当にそうなんでしょうか、というのはすんげえ心配は心配ですがさてどうなんだが。


・というのを見てからおもむろに年末の水準を見ますが

現水準が4.75%-5.00%ですが、年末のFF金利水準の票はと言いますと、

4.75-5.00%(利下げ無し):2票
4.50-4.75%(0.25%利下げ):7票
4.25-4.50%(0.5%利下げ):9票
4.00-4.25%(0.75%利下げ):1票

という微妙になんのこっちゃ感のある並びになっていまして、年内あと2回FOMCあるんですから、今回50bp下げたんだったらあと2回あったらさらに100bp下げる、というような過激派が全然居ないのは何じゃというか、0.25%しか下げないんだったら今回何で50bp下げたんだよという感じで、だったら今回含めて0.25%×3でもよかったんじゃないのとは思います。

利上げが後手に回った反省で利下げ一発目を50にしたかった、というのはあるのかなあとは何となく思うのですが、インフレの粘着性についての認識とかそういうのがどうなっているのか(まあ直近の連銀高官の発言を見ると大勝利宣言しかしていないので大勝利に酔っているのかもしれませんけど)とは思います。

あと、経済見通しに関してはドットと整合的で、来年にはほぼマンデート達成、再来年はマンデート達成です、というのになっていますが、今朝は時間の都合上この辺で一旦勘弁していただきたく存じます。

なお明日の日銀はどうせ無風ですが、貸増のあのアホのようなニーズを踏まえてまして「変動金利でも十分にニーズがある」ということが判明したということで、残高増加が気になる気候変動オペも変動金利化するのを決めて頂きますと誠に幸いですなwwwwwww






2024/09/18

お題「ECBネタで毎度のポンチ絵説明の話とレーン理事のEIBでのスピーチの鑑賞です」

FOMCとか日銀とか控えているので駆け込みでECBから少々。

〇ポンチ絵説明は「引き締めの修正局面に入った」というのを示す芸の細かさがおもろい

いつもの(URL長いのでハイパーリンクは途中の文字列までに入れてますがちゃんと全部リンクしています)
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2024/html/mopo_statement_explained_september.en.html
Our monetary policy statement at a glance - September 2024

前回はこちら
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2024/html/mopo_statement_explained_july.en.html

・金利のこれまでの流れを示すイラストの芸が細かい

『We cut our key interest rate by 0.25 percentage points』(今回9月)
『We kept our key interest rates unchanged』(前回7月)

最初のはこれですが説明文は・・・・

『We did this because inflation is gradually coming down and has been developing as we expected. Our future decisions will depend on how we see the economy and inflation developing.』(今回9月)
『Our rates are still high, helping push down inflation. This is still needed because inflation is likely to stay above our 2% target well into next year.』(前回7月)

利下げをしたのはインフレ鎮静化が予定通りに進展しているからですが今後についてはデータ次第です。とECBは(FEDと違ってそこの変わり身は早いので)だいぶ前にガイダンス政策をしませんよと明言してて、基本的に決め打ちをしないで「データ次第でその時に適切に判断」という中銀としてはそれが普通(フォワードコミットメントが無駄に流行したのはウッドワードとバーナンキが共同正犯でしょ)なのですが、そういう説明をしています。

でもって今回芸が細かいなと思ったのは、前回のイラストでは単に「利下げしましたよ」という絵柄になっていたのが、今回はその前段階の利上げの階段も加えていて、「利上げがピークアウトして利下げ局面に入りましたよ」というのを示している点ですね。

ただし、先に関して決め打ちしていないので、階段はこの先下がるというような絵にはなっていませんで、まあそこれは当然なのですけど、単純に下り階段だけじゃなくて、その前ののぼり階段を入れているのが芸が細かいですね。


・経済情勢は足元が弱いというお話をエラク強調

その次が経済情勢ですが、

『The economy has been weaker than we expected…』(今回9月)
『The economy is slowly recovering』(前回7月)

『Industry and construction are not doing well. People are spending less and companies are cutting their investments.』(今回9月)
『Services are driving growth in the economy. People have more to spend because inflation is coming down and wages are going up.』(前回7月)

経済の現状認識のイラストがエライ暗い絵になっている(青のトーンを調整して絵柄の明るさ暗さがかなり印象的に変わるのがECBのポンチ絵の特徴)のでまあそういう事だぞという話だし、文章もずいぶんと暗くなっています。

『…but it should gradually recover』(今回9月)
『Manufacturing is not doing well』(前回7月)

『Services, especially, are keeping the economy going at the moment. Rising wages and lower inflation mean that in future people will be able to buy more. Together with lower interest rates, this will help the economy.』(今回9月)
『Firms are not increasing their production, and their exports are also not growing. But as the world economy recovers, things should improve.』(前回7月)

でも先は回復するでしょう、という話でサービスとか消費が伸びるってなもんで皆さんが旅行に行く絵何ぞが明るく描かれていますが、「Together with lower interest rates, this will help the economy.」って大きく出過ぎで、お前らの政策金利は既に緩和的なのかと小一時間問い詰めたいですな。


・物価のイラストは元に戻りました&遠い道のりではなくなりましたな

『Overall, inflation is on its way down』(今回9月)
『Inflation is coming down but it will be a bumpy ride』(前回7月)

『Services prices are still increasing strongly because of rising wages. Inflation may also go up in the coming months because of energy prices. But it is on track to come down to 2% in the second half of next year.』(今回9月)
『Prices for goods and food are no longer going up as strongly. We expect inflation to return to our 2% target over the second half of next year, although there might be a few ups and downs before we get there.』(前回7月)

インフレに関しては従来は今回のような謎の温度計3つ(エネルギーと財とサービスを意味していると見られます)を並べていまして、例えば6月は以下のリンク先で見ればわかりますが、そういうイラストになっていたのですが、なぜか前回だけ日銀みたいな謎イラストになっていて、2%まで結構アップダウンの道のりがある、ただしそこまで遠くはない、という絵柄に変身していたのですが、今回あっさり元に戻りました、なんのこっちゃ。(その前に関しても適当に書き方は違っているのですが、3つの柱だったり矢印だったりしますが、エネルギーと財とサービス価格の動向を意味する3つの柱が出ていた感じです)

ちなみに6月はこちら
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2024/html/mopo_statement_explained_june.en.html

でもって以下は今回はプロジェクションの出る会合なので、2026年(暦年)までの見通しを出しているコーナーがありまして終了しているので、そのコーナーの無い前回対比でイラストが2個少ない格好になっていますが、まあこれはいつもの仕様なので特段何か意味合いがあるわけではないですな、うんうん。


〇ラガルド会見も良いのですがなんかレーンさんが簡単な説明をしているのでそれを拝読

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2024/html/ecb.sp240916~c0eff5db57.en.html
Moving from 3.75 to 3.50: explaining the latest rate decision
Keynote speech by Philip R. Lane, Member of the Executive Board of the ECB, at the European Investment Bank Chief Economists’ Meeting
Luxembourg, 16 September 2024

EIBでスピーチをしたようですね。まあそこまで長くないので駆け足モードで鑑賞鑑賞。

最初の小見出しは『Introduction』です。

『My aim today is to cover two topics. First, I will briefly explain our decision last week to lower the deposit facility rate - the rate through which we steer the monetary policy stance - by 25 basis points. Second, I will outline some considerations that will be covered by the 2025 assessment of our monetary policy strategy.』

今回の決定の背景と2025年の金融政策のストラテジー見直しに向けたなんちゃらについてお話をするそうですわよ。

でもって次の小見出しが『The monetary policy decision』です。

・賃金上昇からのインフレ圧力が弱まってきて今後さらに弱まるそうです

『Based on our assessment of the inflation outlook, the dynamics of underlying inflation and the strength of monetary policy transmission, our confidence in a timely return of inflation to target is supported by declining uncertainty around our projections, including their stability across projection rounds, and by inflation expectations across a range of indicators that remain aligned with a timely convergence to target.[1]』

2%に戻る確実性が高まって見通しの確信もついてきたので利下げしましたよと。

『The incoming data on wages and profits have been in line with expectations. The baseline scenario of the latest ECB staff projections foresees a demand-led economic recovery that boosts labour productivity, allowing firms to absorb the expected growth in labour costs without denting their profitability too much.』

ということでその背景の説明がおっぱじまるのですが、なんか大きく出てるなという感じでして、今後の経済の回復は需要の拡大によってもたらされまして、それによって企業の生産性が上がってきますし、労働コストの上昇は生産性上昇に見合う程度で進展して企業の収益をそこまで損ねませんよ、だそうでして、

『This should buffer the cost pressures stemming from higher wages, dampening price increases.』

そのため、賃金上昇が以前ほど価格転嫁に繋がりにくくなって物価上昇の勢いに繋がらん、だそうです。ホンマカイナという気がしますがそれはさておき、

『Most measures of underlying inflation, including those with a high predictive content for future inflation, were stable at levels consistent with a return of inflation to target in a sufficiently timely manner. While domestic inflation is still kept elevated by pay rises, the projected slowdown in wage growth next year is expected to make a major contribution to the final phase of disinflation towards our target. Financing conditions for firms and households remain restrictive, as our past policy rate increases continue to work their way through the transmission chain. Credit growth remains sluggish amid weak demand.』

でもってインフレの基調に関しては2%目標に向けて安定的に戻っていく姿を展望しているそうで、賃金上昇によって依然としてインフレは高い水準ですが、来年以降は賃金上昇の動きが鈍化することによってインフレ鎮静化の最終局面に向かっていくでしょう、だそうです。

・今回は「引き締め政策の調整の次のステップを踏みました」ですな

『Based on this assessment, it is now appropriate to take another step in moderating the degree of monetary policy restriction. The decision to lower the deposit facility rate (DFR) by 25 basis points is robust across a wide range of scenarios. At a still clearly-restrictive level of 3.5 per cent for the DFR, the realisation of upside shocks to inflation that would call into question the timely return of inflation to target could be addressed by a slower pace of rate reductions in the coming quarters compared with the baseline rate path that is embedded in the projections. 』

ということで今回25bp利下げしましたけど、3.5%水準は依然として引き締め的ですよ、と説明していますな。まあ今回は「to take another step in moderating the degree of monetary policy restriction」なので、今後も流れとしては利下げという話になるんだが、そこはあまり明示的に言ってない(言うと予告ホームランになってしまいますから)ですな。

『At the same time, compared to holding at 3.75 per cent, a DFR level of 3.5 per cent offers greater protection against downside risks that could delay the recovery and lead to a material undershooting of our target further out in our horizon, including the risks associated with an excessively-slow unwinding of the rate tightening cycle.』

でもってさっきのポンチ絵の話に繋がる部分になりますが、3.75→3.50で「greater protection against downside risks」ってまた大きく出ているなと(精々betterじゃろうよ)思いますが、まあこう言いたい、というのは把握した。

・とまあ大きく出たのですが近いタームでは物価はまだ強いみたいですね

『In the near term, headline inflation is expected to fluctuate over the next few months. In particular, headline inflation is expected to be low in September before rising again in the latter part of this year, partly because previous sharp declines in energy prices will drop out of the annual rates.』

さっきはエラク大きくでたのですが近いタームでは向こう数か月物価は上下に振れるそうな。

『Negotiated wage growth will remain high and volatile over the remainder of the year, given the significant role of one-off payments in some countries and the staggered nature of wage adjustments. The forward-looking wage trackers also signal that wage growth will be strong in the near term.』

賃金に関しても年末にかけては賃金交渉で引き続き高い数字が出そうとのこと。


・プロジェクションの話で2025年に向けたインフレの展望(落ち着きますよという話)

『Further out in the projection horizon, staff continue to expect a rapid decline in inflation, from 2.6 per cent in the final quarter of this year to 2.0 per cent in the final quarter of 2025. The expected drop in core inflation (primarily services inflation) is even sharper, from 2.9 per cent in the final quarter of this year to 2.1 per cent in the final quarter of 2025.』

2025年までのプロジェクションですね。

『Indeed, the weaker economy and lower wage pressures that characterise the new projections mean the expected speed of disinflation in the course of 2025 has been upwardly revised. The expected significant deceleration in wage growth next year is in line with the information contained in the wage trackers and reflects the fading out of the “catch-up” dynamics that have driven wage growth in the last couple of years.』

足許での想定よりも弱い経済と賃金上昇率の鈍化によって2%に戻るという見通しが強化されたとのことです。一方で一部の地域ではまだ物価へのキャッチアップのための賃金上昇圧力もあるよと言ってますね。

『The disinflation process in 2025 will also be supported by well-anchored forward-looking inflation expectations and weaker price-price and price-wage backward-looking dynamics, in view of the much lower inflation in 2024 compared to 2023.』

インフレ期待がアンカーされていること、価格から価格、賃金から価格、のバックワードルッキングな連鎖(って言い方してるけど要はスパイラルだが)が弱まっていることによって物価は見通し通りに下がっていくでしょう、とのお話になっています。

・最後に金融政策ですが「見通し通りに推移すれば引き締め度合いの修正を行っていく」ですな

『Looking ahead, a gradual approach to dialling back restrictiveness will be appropriate if the incoming data are in line with the baseline projection. At the same time, we should retain optionality about the speed of adjustment. In one direction, if the incoming data indicate a sustained acceleration in the speed of disinflation or a material shortfall in the speed of economic recovery (with its associated implications for medium-term inflation), a faster pace of rate adjustment may be warranted; in the other direction, if the incoming data indicate slower-than-expected disinflation or a faster pace of economic recovery, then a slower pace of rate adjustment may be warranted. These considerations reinforce the value of a meeting-by-meeting and data-dependent approach that maintains two-way optionality and flexibility for future rate decisions.』

ただ、ここで「予告ホームランは打ちません」スタンスの便利なところが如実に出ていまして、先の政策に関してはその時の経済物価情勢次第なので、今後の利下げについて遅らせることだってあり得ますよとか言ってまして、まあこの辺まさに柔軟性って感じですな。


・2025年の金融政策ポリシー見直しに関して

『The 2025 assessment of monetary policy strategy』という小見出しが次です。

『An important element of the 2021 monetary policy strategy review was the commitment to assess periodically the appropriateness of the monetary policy strategy and it was flagged that the next assessment would take place in 2025.』

以下は定期的に見直しをする「金融政策のストラテジー」に関してのお話です。

『As indicated by President Lagarde at the July press conference, the preparatory work by the Eurosystem staff for this assessment has now started and the Governing Council expects to conclude this assessment in the second half of 2025.』

2025年の後半にはまとめるそうで。

『The 2021 strategy review followed an eighteen year gap since the 2003 strategy review and was naturally a very thorough exercise. The 2021 review has served us well and important elements do not require any re-assessment. In particular, we will maintain the symmetric, medium-term oriented two per cent inflation target, which has been essential in re-anchoring inflation expectations coming out of the low-inflation period and in keeping inflation expectations well anchored at target during the inflation surge period.』

先のインフレ高騰期においてもインフレ期待がアンカーされていたことから、基本的なアプローチ(the symmetric, medium-term oriented two per cent inflation target,)は変わらんでしょうな、だそうです。

『Our 2025 assessment will consist of two broad strands: economic developments since the pandemic; and the implications for monetary policy.』

今回の見直しにおいては先のパンデミック以降の経験と教訓を織り込んでいくそうな。

『We will assess the cyclical and structural factors shaping the inflation and economic environment in the light of the recent inflation experience, analyse the likely evolution of those factors over the years ahead and examine the implications for the inflation challenges that may confront the ECB. As part of this analysis, we will also look at the possible enhancements of the existing analytical toolkit, including forecasting techniques.』

でもって経済の循環的な状況、構造的な変化などを再確認してインフレや経済のダイナミクスについて考察していきますよ云々と来ておりまして、最後のパラグラフになりますが、

『We also assess the implications of the changed inflation environment for the monetary policy strategy.』

金融政策ストラテジー策定においてはインフレをめぐる環境の変化も取り入れていきます、と来まして

『This will include reviewing the lessons learned from the low and high inflation periods and our experiences with the evolving roles of the instruments in the policy toolkit over the monetary policy cycle. We will furthermore examine the operationalisation of the medium-term orientation of the monetary policy strategy, with a focus on the ECB’s reaction function to both upside and downside threats to the anchoring of inflation expectations to the target. This will includes the analysis of how risk and uncertainty should inform both policy decisions and policy communication.』

低インフレ環境時代と高インフレ環境の時代からの教訓を踏まえて、政策ストラテジーだけではなくて政策のツールキットやコミュニケーションなども含めて広範に見直すそうです。

ということで今朝はこの辺で勘弁。






2024/09/17

お題「またまた短国/中川審議委員金懇会見/田村審議委員金懇会見」

これは結構な流れ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB161BI0W4A910C2000000/
円相場139円台、日米金利差の連動性回復 米景気も警戒
為替・金利
2024年9月16日 19:56 (2024年9月16日 20:04更新) [会員限定記事]

これなら次期首相がトラスショックを引き起こしても糊代がだいぶありますね!!!!

〇短国・・・・・・(3M入札のたびに書いてる定例行事状態w)

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240913.htm
国庫短期証券(第1256回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1256回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号       国庫短期証券(第1256回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日       令和6年9月17日
4.償還期限     令和6年12月16日
5.価格競争入札について
(1)応募額          10兆8,547億円
(2)募入決定額     3兆4,689億6,000万円
(3)募入最低価格     99円98銭3厘5毛
(募入最高利回り)       (0.0669%)
(4)募入最低価格における案分比率  77.6548%
(5)募入平均価格      99円98銭6厘0毛
(募入平均利回り)       (0.0567%)』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

いやまあ確かに前場のWIの時点で10割れ待ったなしではあったみたいなのですが、しかしあーた平均5bp台で足切り6bp台って何ですかという話で、まあ今回の場合は(も)貸増の残高が全然減らないという状態であったので、貸増見合いの担保繰り、ということでロット押さえられる短国入札が超人気化してしまったという話なんですけど。

でまあこれ毎度申し上げていますが、入札はアホほど強くて、しばらくするとGCがクソ高いせいもあって少し軟化するし、何なら担保繰りという意味では期近になると既にもっている人は兎も角としまして新しく担保用で買う人はいないのでレートが上がる、ということで、ロット捌けるところでレートがクソ下がるとか流動性の無さがここに極まるという風情になっておりましてドイヒー以外の言葉が思いつきませんな。

ちなみに売参ちゃん見ますと
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

金曜日の新発3M引けが

国庫短期証券1256 2024/12/16 平均値単利 0.065

とかいうことになっている訳ですが、前週の3Mに関しては

国庫短期証券1254 2024/12/09 平均値単利 0.100

となっていまして、これ木曜どうだったかといいうと、木曜日の引けは(1256はWI)

国庫短期証券1254 2024/12/09 平均値単利 0.078
国庫短期証券1256 2024/12/16 平均値単利 0.075

という格好でして、前週の3Mも入札は平均0.0778%/足切り0.0822%とかいう(;゚д゚)な入札ではございましたが、この平均レベルで木曜まで値付けされていたのですが、新発出た所で(まあそのレートで本当に買いができるのか(売りはできそうw)というのはさておきますが)10bp水準の引値になっている、というのがなんと申しますか新発だけプレミアム、みたいな訳の分からんことになっておりまして、まあどんだけプライマリーでロットを買いたい人がいる(人が多いというよりは買いたい人の買いたいロットがアホみたいに多いんでしょうけれども)ということでしょうか、という所ですが、さて月内の短国入札は明日が1Y、明後日(MPMの関係で明後日に入札)は3Mで来週金曜が最後の(月末発行)の3Mということですが、ここからどうなるんですかねえ。

あとおまけに雑談ですが、貸増が変動金利方式になったのにあれだけアホみたいにニーズがある、ということは、気候変動オペと被災地支援オペに関しても別に固定金利方式である必要は無いんじゃないですか、とふと思った訳でして、もう全部変動金利方式にしてしまえばいいんじゃないでしょうか、何なら貸増は別に付利金利で貸さなきゃいけないものでもなので上乗せ金利乗せるとかしてもエエンチャウノかね、という話ですな。結局こういうオペはアベイラビリティをつけて差し上げればいいだけの話で、いまさら緩和効果云々じゃないんだから(そもそも緩和が必要じゃなくなった時点でも残高が残るので論理的に言えばコールレートをより高くしないといけなくなるので金融政策の制約要因になる)、こういうのはアベイラビリティをつける機能だけ残せばよくて、なんも金利面での優遇は要らんのではないでしょうか、と暴論を考えてみました。


〇中川審議委員金懇会見:「市場が非常に不安定」ってあんさん証券会社で以下略

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240912a.pdf
中川審議委員記者会見
――2024年9月11日(水)午後2時から約30分
於 秋田市

まあ基本的にこちらの先生は何を言うでもなく、大本営の用意した想定問答を読んでるだけの話ですが、想定問答に何が書いてあるのかというのを見るために確認というステータスであるwww

・中立金利云々に関しては早速理屈の立て方が面倒になっていますわな

中立金利だの実質金利だのというのは弊駄文で何度も申し上げておりますが、どうせ「見えない」ものであって、これは説明の際の屁理屈だと思って聞くべき話なのですが、数字を置くと金融政策が見える、みたいな魔法の効果があるので、ついうっかり何とかストの皆さんですらこの中立金利を真面目に計算したくなってしまうのですが、そんなの計算するだけ時間と労力の無駄だから計算してレポート出している何とかストを見たらネタ切れで暇なのか恐ろしくナイーブなのかのどっちかだと思っておくのをお勧めしたいと思います(個人の偏見です)。

でまあ今回もまた質問されていたわけですが、

『(問)二点伺いたいと思います。まず今朝の講演で実質金利は大幅なマイナスっていうふうにおっしゃったんですけれども、中川さんが今お考えの中立金利の水準は今数値としてどれぐらいでしょうか。(後半割愛)』

そんなもん中川さんがお考えとは思えませんのでじゃあ想定問答はどうなのかと言いますと、

『(答)まず繰り返しになるようなお答えで本当に恐縮なんですが、中立金利というものは推計値でありまして、またそのレンジというのはきわめて幅が広い状態です。』

そもそも「きわめて幅が広い」のに「(実質金利が)大幅なマイナス」と決め打ちができるという説明に題があって、中立金利が極めて幅が広いのに実質金利が大幅なマイナスということであれば、もしかしたら大幅なマイナスどころの騒ぎではない極めて大幅なマイナスである、という可能性だってありますので、そもそも論として今の金融政策スタンスが超ウルトラハイパー緩和状態にあって、物価の安定に対して却ってマイナスになっているのではないか、そんなにハイパー緩和をしているなら政策の調整を急がないといけないのではないか、というツッコミが成立するわけですよ。

その割には政策の調整は急がないって大本営は言っている訳ですから、そうなのであれば、そもそもの「実質金利が大幅なマイナス」と植田総裁をして言わしめた大本営の屁理屈がちゃんちゃらおかしいということになります。

これは結局のところ、3月のマイナス金利の解除の際に、金利全体の急上昇をして欲しくないもんだから声明文に「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」と入れてみたり、4月の展望レポートでも同文言を入れて円安ぶっ飛びを誘発してしまってしまい、7月に利上げに追い込まれたんですが、円安阻止のために今度は「政策金利の調整を行う」を前面に出すために「実質金利論」を前面に出してきた、というように屁理屈をちゃんと整理して伝えないのと、一々強い言葉を使ってしまう(植田総裁に「実質金利は大幅なマイナス」とか「複数回の利上げ」を言わせるとか、内田副総裁に一転してベタ降り発言をさせるとか)のが悪いのでありまして、というのは30回くらい申し上げていますが大事なことなのでしつこく指摘しておきます。

なのでこの説明はそもそも理屈に無理があるんですが、以下鑑賞しておきましょう。

『ですので、今ピンポイントでこのくらいと、「くらい」をつけてもお示しするのはすごく難しいというふうに理解しています。』

じゃあ何で7月会合の会見の時に植田さんに「大幅なマイナス」って言わせたんだよそれが尾を引いて説明が訳わからんことになっているんだよ、と大本営を小一時間問い詰めたいですわな。

『もちろん金融政策の運営において、中立金利というのはきわめて大事なものということは承知をしています。』

「運営において」中立金利は極めて大事??

『ですので、日本銀行としては、4 月の展望レポートはみて頂けたかと思うんですけども、実質ベースの中立金利という、いわゆる自然利子率というかたちで、スタッフによるいくつかの推計値はお示ししています。』

(ノ∀`)アチャー

『直近の値というのが▲1%から+0.5[%]、足元でそれを少し超えるところもモデル次第ではあったかと思いますが、この個々の推計値は非常にそれぞれ幅があるものです。8 月末には多角的レビューの一環で、自然利子率の計測というワーキングペーパーも公表した次第で、こうしたものも新しいデータが追加されると過去の値が大きく変わるというような課題の指摘も一方でなされています。』

あーあーあー。

『こういったものと、また加えて申し上げると、推計値のパラメータとしてはちょっと違うのではないかという指摘を受けるかもしれませんが、実際の政策運営に当たりましては、やはり短期金利を引き上げた経験が長らくありませんので、こうした短期金利の変化に対して、経済・物価がどのように反応をするかも今後点検していくことも重要で、その中で水準を探ることになるというのではないか、というふうに思っています。(後半割愛)』

これ途中が全部余計というかマイナスの説明になっていて、最後のこの引用部分だけ説明すればいい話なのに、この中川さんの言い方、というか大本営の想定問答だと、まるで「中立金利」というのがリアルタイムで明確にあって、その数字を見極めるべく努力しますみたいな説明が「もちろん金融政策の運営において」以降の中でしているのですが、いやだからそうじゃないでしょというかそんなの計算しようとしたって事後的にしか分からん(しかも事後でも推計値)話だし、自然利子率とか中立金利って推計モデルのパラメーターちょっといじれば何とでもなる数字なので、あくまでも「概念としては有効」であるけれども「運営にとって極めて大事」というのは言ってることがちゃんちゃらおかしくて、生兵法は怪我の元にも程がある説明になっています。

まあ中川さんがそもそも論として金融政策運営の理論と実践についてお詳しくないんでしょうなあと思いますが、普通は審議委員の方々って金融政策の専門家じゃ無くてもしばらくすればこういう辺りは理解するもん(以下の記述は内務省検閲によって削除されました)。


・金融市場が「非常に不安定な状況がいまだ続いている」ってあんさんなにゆうてますのん

はいきました金融市場が不安定云々質問なのですが回答のアレさに全米が泣いた。

『(問)今日の講演の中でお話があったように、政策変更後の市場の動向を振り返りつつ、金融市場の変化が経済・物価の見通しに及ぼす影響を丁寧に比較してみていくとおっしゃったと思いますが、7 月の追加利上げをしてからですけれども、今の状態というのを、更なる利上げをすることによって市場のボラティリティを高めてしまうというリスクっていうのは、どのようにみていらっしゃるのか。(後半割愛)』

こんなの「そもそも今は7月の利上げの波及効果を確認していく段階なので、今の状態と利上げ云々という質問をされましても回答の仕様がありませんが(嘲笑)」って回答する位にファンキーな方を審議委員にしていただきたいところですが、そういうファンキーな人は基本的に出世できませんのでノミネートされることはありませんwwwwwwwwwwww

ということで想定問答もとい回答を見てみますと、

『(答)7 月の決定会合と言って頂きました。ただ、7 月の末でしたので、実質今はまだ 1 か月という経過になります。その間に出てきた統計数値自体は、あまりマイナスというよりはプラスというか、オントラックを示すデータでした、ということは申し上げられると思いますが、』

ちょwww想定問答を読むページが違いますよwwwww

『市場環境を丁寧にみていくということに関しては、今も、今日もおそらくそういうふうに表現しようと思えばできるかもしれませんけれども、金融市場自体の変動というのは 8 月の頭は急激なものでしたけども、』

あ、ページが直りましたねw

『それ以降も非常に不安定な状況がいまだ続いているというふうに思います。』

は?????

8月の頭は急激な変動をしてそれ以降も「非常に不安定な状況がいまだ続いている」ってどんだけビビりなんだよ、というかあーたヘトヘト證券に長年いたんだったら8月頭はさておいて、その後の市場まで「非常に不安定」って言ってたら一生何もできないわ、と思いますし、そもそも論として市場を不安定にしているのお前らの過剰な金融緩和とその大風呂敷を畳む上で説明が二転三転して不安定なコミュニケーションしてるからだろ、と思うのですが、いずれにしましても証券会社出身の方が直近程度の値動きで「非常に」不安定というのはさすがに見識どうなっているんですかと苦言を呈したい。せいぜい言うなら「8月の頭に極めて大きな変動があったので、その影響が残っている面があるかもしれません」くらいだろと思う訳ですが、先週水曜日の時点で「非常に不安定」と言わしめる想定問答を書いている時点で大本営どんだけビビりなんだよと思いました。

以下続くので一応引用しますが、

『今日も確か、株価も為替も少し動いたというような評価が、確かネット上でも皆さんの報道も含めて上がっていたようにも思いますし、また内外の金融市場の動向が、結果的にその経済・物価の見通し、それから実現する確度に当然影響を及ぼし得るということを思っていますので、その影響をしっかりと見極めたいというふうに思います。』

これ金懇講演で相場が動いた、って言われていた(別に債券市場は丸無視というか寧ろ別に何も新しいこと言わないのねと金利低下方向でしたけど)のを本人が気にしてこのようなビビりんちょを言っている可能性はあるのですが、この程度でビビるなら審議委員辞めた方が精神衛生によろしいんじゃないですかねえと思ってしまいました(個人の超偏見です)。

でもって最後に、

『ですので、利上げといいますか、前回変更した金融政策の修正の影響度合いが、今引き続き、金融市場動向とともに見極めている最中ということです。(後半割愛)』

って言ってるんですが、途中の説明全部不要でこれだけ言ってこの線で敷衍して説明すりゃいいのに何ですかこの「市場は非常に不安定」とかいうビビりんちょは、というお話でございました。

あとの質疑はクソどうでもよくて読む意味を感じませんので割愛します。


〇田村審議委員金懇会見は穏当な中にも抜刀モードありということで

順序というのがあるから仕方ないのですが、本来読む意味のある田村さんの金懇会見ネタを本来は書くべきでして、まあさっきのポンポコリンとかどうでもよかったんですよねすいませんすいません。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240913a.pdf
田村審議委員記者会見
――2024年9月12日(木)午後2時30分から約35分
於 岡山市

しかしまあこの会見、1%ってのに皆さん見事に釣られていましてその話ばっかりなのが何とも
という感じですが・・・・・・・

・うーんなんじゃこの質問

幹事社の質問の後の先頭打者がいきなり凡ゴロを打つのはいただけません。

『(問)二点お願いしたいんですけれども、一点目については、講演の中で市場の利上げのペースについて織り込みがちょっと遅いので、このペースだとなかなか中立金利を1%まで引き上げるのは難しいのではというご趣旨だと思うんですが、』

えーっとすいません、市場の織り込み通りに政策金利を上げ下げしないといけないという法はどこにもないのですが、何で市場の利上げ織り込みが日銀のメインシナリオ対比足りないからそっちに合わせなきゃいけないんですか??

『そうなると、次の利上げ、再利上げのタイミングは、年内あるいは年度内の可能性もあり得るのかについて伺いたいのが一点目です。(後半割愛)』

これ田村さんが言いたいのは「日銀のメインで言っている説明をそのまま真に受ければ、見通し期間の後半のどこかでは物価安定目標が達成されているから、そのあたりで政策金利は少なくとも中立金利と思われるレンジの下限くらいには来ている筈なんだが、市場の織り込みは全然足りませんねえ」って話でしょ。

『(答)まず、最初の年内あるいは年度内に次の利上げがあるのかという点につきましては、先行きの金利のパスや金融緩和の度合いを調整するペースについては、今後の経済・物価・金融情勢次第であり、予断は持っていませんが、欧米とは異なり、ゆっくりとしたペースになる可能性が高いというふうに私としては思っています。(後半割愛) 』

ということで質問に対して全然正面から回答していないんですけど、まあ質問が間抜けなのでそう返すしかない、ってのと、今回田村さん講演テキストの方ではいつもの抜刀斎、と言っても言ってることは別に過激派でも何でもなくてただの正論なのですが、その話をしているので、それ以上威勢の良い事言わなくてもエエンチャウノ的な感じはこの「ゆっくりとしたペース」って辺りに出ているな、と思いますな。


・1%にホイホイと引っかかる皆様

ちなみにこの凡ゴロヒッターの後半の質問もなんかピントがずれていて残念。

『(問)(前半割愛)二点目は、展望レポートの見通し期間の後半に、1%まで短期金利を引き上げるべきではないかということをおっしゃっていると思うんですけれども、この具体的な時期をもう少しイメージがもしおありであれば、と思います。例えば、見通し期間の後半といっても、2025 年度の後半から 2026 年度までとかなり長いので、いつ頃までにこの 1%に到達すべきなのかっていうのがもしイメージがあればお願いします。 』

そんな先のことはなってみないとわかりませんが金懇挨拶でご説明した通りで、物価安定目標が達成できている状態で大幅な金融緩和状態になっているのは物価の望ましくない上振れを引き起こすリスクがあるからそれじゃいかんでしょ、ということに尽きますが何か??ってなもんですがそんなファンキーな物の言い方をすると以下同文w

『(答) (前半割愛)二つ目のご質問の展望レポート[の見通し期間の]後半、1 年半の間の具体的にどこかというご質問についてですけれども、これについても基本的には、今後の経済・物価・金融情勢次第だというふうに考えております。そういった情勢をみながら、判断していくということになります。』

会見って総裁会見みたいに長丁場だとまた別ですけど、金懇会見の場合そんなに尺が無いので、先頭打者が凡打で倒れるとその後も凡打が続く傾向があって、まあ先頭打者におかれましては死ぬ気で出塁していただきたいものです。


・田村さんが今後注視する点が3つありましたよ

2番打者も思いっきり1%に引っかかっていましたが後半のこれは良かったですね。

『(問) (前半割愛)二点目としましては、7 月、経済・物価情勢はオントラックだというふうにおっしゃっていましたが、7 月時点と比べた現時点での評価と、今後、先行き注視する指標について教えてください。 』

これはまあ良いですよね。田村さんの回答ですが、

『(答) (前半割愛)二つ目のご質問の 7 月時点と比べてどうかという点ですが、7 月会合後に公表されたGDP統計や、消費、賃金、マインド関連の指標なども経済活動が緩やかな改善を続け、賃金・物価も改善している姿を示しています。』

はい。

『こうした状況を踏まえますと、7 月決定会合当時にみていた通りにオントラックで推移していると、1 か月だけですけれども、オントラックで推移しているというふうに考えております。』

ですね。

『もう一つの今後注視する指標についてですけれども、基本的にあらゆる指標を丹念に精査することに加えて、企業ヒアリング結果などの様々な情報も含めて、経済・物価の現状と見通しをタイムリーにとらえていくことが重要だと考えています。そういう意味では、どれか単純にこの指標がこうなったらというようなことは考えていませんが、あえて私が特に注目している事項を挙げれば、一つがわが国の物価の推移と見通し、二つが来年度春闘に向けたモメンタムがどうなっていくか、三つ目が米国をはじめとした海外経済の状況、こういった点が、現在、私の中では注目点です。 』

ほほう。


・金融市場が不安定云々に関する質疑だが田村さんの回答が(当たり前の話ではあるが)極めて秀逸

『(問)午前中の講演の中で 8 月の株価の変動について、その背景にアメリカの景気後退懸念があったと言及されてますけれども、アメリカではこの後、利下げ局面となって11 月には大統領選挙も控えているかと思います。市場が不安定になるリスクが高まる中で日銀として追加利上げに踏み切れるのか、お考えをお願いします。また、今現在ですね、市場の動きは不安定だという認識でいらっしゃるかも伺えますでしょうか。 』

市場の動きは不安定か、というのを一々聞かれる(高田さんも中川さんも聞かれていて中川さんはさきほど引用したようにビビりんちょの回答をしている訳ですが)、というのが内田副総裁金懇講演でのベタ降り講演の大いなる弊害で、これって質問されるたびに「日銀は市場従属」っていう認識が強くなってしまうという最低最悪の弊害が現在進行形で起きてるんですよね。

でもって田村さんの回答ですが、

『(答)まず一つ目の点についてですけれども、そもそも市場は上下に変動するものでして、時には行き過ぎることもあるというふうに考えています。』

いやー素晴らしい!感動した!!

・・・・・というかですね、中央銀行の政策運営を担う人としてはこう言うのが当たり前でして、さきほど引用した某中川さんのビビりんちょがアレという話ではありますが、次が実に素晴らしい、というかセントラルバンカーとして当たり前の発言なんですけど、

『市場の安定だけを優先し過ぎる場合は、経済・物価に応じた適切な金融政策を取れなくなってしまう懸念がありますし、また、経済・物価情勢と市場との間の歪み、ギャップを拡大させてしまうリスクもあると考えています。』

まったくもってその通りで、この点からも内田副総裁の金懇挨拶での言及は中央銀行の副総裁としての見識はどうなっているんだというか、これが置物辺りが言ってるならまあ置物かしょうがねえなとなるのですが、日銀プロパーの副総裁がああ言ってしまうのって、日銀全体が組織として別にセントラルバンカーとしての理念を持ち合わせていないんじゃないのって話に通じてしまうからさらによろしくない訳で、内田さんに置かれましては、少なくとも田村さんのこの発言をリファーするなりして市場従属宣言を上書きした方がエエンチャウのと思います。

まあ抜刀斎の抜刀来ましたという所ですが以下続きまして、

『また、やや長い目でみた場合には、市場はファンダメンタルズに沿った水準に落ち着いていくものだと考えています。ただし、大幅な急変動は望ましくなく、過度に市場がフラジャイルな状況にあるときには、冷却期間を置くことが必要なケースもあるというふうに考えています。』

『今先ほど申し上げたのが基本的な考え方ということで、あとは米国経済がどういう推移になっていくのか、それが日本の経済・物価にどういう影響を与えるのか、というのをしっかりとみていく必要があると考えています。』

『基本的に市場は日々変動するものですが、この金融資本市場の動向や経済・物価に与える影響については、引き続き丁寧に目を配ってまいりたいというふうに考えています。』

こちら「丁寧に目を配ってまいりたいというふうに考えています。」がどうしてもヘッドラインになりやすい(実際そうでした)のですが、文脈を見ていきますと別に市場従属でも何でもないんですよね。ただまああんまり今回は会見での抜刀はしていないな、という位でして。


・ひたすら1%に引っかかっている質疑ばっかりで残念ですが代表的なのを

この質問、後半はまあ良いのでこの続きに入れますが1%云々は延々とこの質疑ばっかりで、聞く方もなんかもうちょっと別の質問しろよ(この方は別の質問を後半に入れているのでまだマシである)と思いました、まる。

『(問)二点お願いします。一問目ですが、先ほどから出ている 26 年度の短期金利 1%の件ですが、これ少なくともというふうに表記してあるんですが、もし物価の上振れリスクなどが高まれば、更に上がるという理解でいいのか、もし分かればどの程度をイメージされているのかを教えてください。 (後半割愛、というか次で)』

何度もこの質疑が繰り返されていてさすがに如何なものかと思いました。

『(答)物価の上振れリスクがあると、1%よりもっと上がるのか。まず 1%なのかどうかは実際に金利を上げながら、経済・物価の反応をみていって、適切な水準を探っていくということです。』

という回答を何度も行っているのは不憫ちゃあ不憫ですが、ほれほれ記者どもがデコイに引っかかったとほくそ笑んでいるかもしれませんのでその辺は判断保留w

『実際に物価がわれわれのベースの見通し対比上振れることがはっきりしてくると、もう少し金利を上げなきゃいけないというケースもあるでしょうし、あるいは逆に、物価がわれわれの見通しよりも低くとどまっていそうだということになったら、金利は 1%よりも低い水準が適切ということになる可能性もあると考えています。(後半割愛) 』

そらそうよ。

・円高で物価上振れリスクの変化は起きたか

というのが今引用した後半の質問です。

『(問)(前半割愛)二点目ですが、円安による物価の上振れリスクを指摘されていますが、足元では円高にどちらかというと振れていますけれども、その辺り変化してくるのか、それとも、円高に振れても、企業の値上げとかが続いて物価の上振れリスクというのは変わらないのか、その辺りお願い致します。 』

これは良い論点ですが田村さんの回答は、

『(答)(前半割愛)二つ目のご質問の、今円高になっているのになんで円安の物価上振れリスクなのかという点につきましては、まず、160 円台に乗った時と比べれば、円安は修正されていますけれども、今年の前半に輸入物価が上昇して、輸入物価の上昇がラグを伴って消費者物価に効いてくると、ある程度それも織り込んで見通しを作っておりますけれども、企業が仕入価格を販売価格に転嫁するパススルー率、これが高まっている可能性があって、そういう意味で物価の上振れリスクがあるんじゃないかということを午前中は申し上げました。』

ほうほうなるほどなるほど。

『円安の修正によって、上振れリスクは変わってるのかという点については、160 円がずっと続くのに比べると、日本経済にとっては幸いなことだと思うんですけれども、上振れリスクは小さくはなっているというふうに判断しています。 』

ほうほうなるほど。


・コミュニケーションの質疑は抜刀斎キタコレの抜刀モードで大変に結構でした

金懇挨拶で思いっきり抜刀していた件ですが、こちらの質問の方も惜しくも前半が1%ネタになっていますが、後半のこの質疑はよろしゅうございました。というかこの件をもっと深堀りして頂きたかったんですけどね。

『(問) (前半割愛)もう一つが、こちらの講演の中で、市場とのコミュニケーションの改善に絶えず努めていくとされていると思うんですけれども、現状のコミュニケーション、日銀さんのコミュニケーションっていうところにどういう課題があるのか、あるいはどういうふうに改善していくべきだっていうお考えがあればお願いします。』

抜刀斎の抜刀タイム来るか、ということで回答を見ますと、

『(答) (前半割愛)二つ目が日銀のコミュニケーションについてのご質問でしたが、金融政策は金融市場への働きかけなどを通じて経済・物価に波及していくものですので、日本銀行の経済・物価に関する見方や政策運営の考え方について、市場参加者を含む幅広い層に、丁寧かつ分かりやすく説明することがきわめて重要だと考えています。』

ここまではマクラ。

『一方で、日本銀行として、本年 4 月以降、一貫して示してきた、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになる、という言葉、』

4月の展望レポートでもそれは入れていたのですが、同時に3月声明文と同様に、

『そして、緩和的な金融環境が継続する、という言葉が、どのように市場に受け止められていたのかを考えた場合、』

どう見てもこの文言はアカンかったです。今回の決定会合では先行きの政策運営にかかわる部分での「緩和的な〜」は消えているのは良くやったと思いますが、ゆうて文言自体は残っているのでまだコミュニケーションとしては腰が定まっていないところがありますよね。変に両論併記するくらいなら「今後の物価安定目標達成に向けた経済物価推移次第」と出たとこ勝負にしちまえば良いのに、なんかとりあえず予告ホームランを打ちたがるのはちょっと改めた方が良いと思いますよね大本営。

『ただマーケットによっても、参加者それぞれによっても様々ではありますけれども、私としては日本銀行の意図とは異なるニュアンスでの受け止めもあったように思います。』

だから為替が160円まで飛んで行った訳です。

『そして、それに対応した日本銀行の情報発信は、タイミングを含め、改善の余地があったと感じております。』

これは田村抜刀斎の大抜刀。

『日銀の考え方が市場に適切に伝わるように、市場の受け止めを踏まえた発信内容の調整ですとか、あるいは情報発信のタイミングや頻度の改善など、市場とのコミュニケーションの改善に絶えず努めていくことが重要であるというふうに感じています。 』

(;∀;)イイハナシダナー

ということで今朝はこの辺で。







2024/09/13

お題「田村委員金懇挨拶は今回もしっかり抜刀すべきところは抜刀していますな」

ECB関連は週末ちゃんと読んで週明け(気合が入れば連休最終日あたりだが気合が入るかどうかは別問題なので汗)にでもということで今日はモチのロンで田村審議委員である。

〇田村委員の金懇はベンダーヘッドラインだけ見ていると読み落とす点が多々あるのでご注意あれ

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240912a1.pdf
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
岡山県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 田村 直樹
2024年9月12日

ということで京洛の剣士、田村抜刀斎の登場である(アニメ版と実写版のどちらで再生するかはお任せします)。

・基本的には従来からの主張を継続しているし何なら少し穏健でもあるのですが

とにかく先般の内田副総裁による株式市場従属宣言にしか取られない腹出しひっくり返りワンワン講演が未だに尾を引っ張る中、そのようなワンワンモードは出さずにいつもの抜刀をしておられますが、まあよくよく考えてみたらこの田村さんの金懇挨拶のトーンって本来中銀だったらこのくらいの説明するよね、って話でありまして、この田村さんの説明が最タカ派に見えてしまうってのは日銀の政策委員会がどんだけアレになっているのか、というのを示しているともいえるわけですな南無南無。

でまあ今回ですけれども、いつものようにオリジナル感のある体裁でいろいろと説明をしていますので見ていきましょう。

・消費に関して注目していますね

前回の金懇でもそうでしたが、田村さんは個人消費の話を経済の話の中では注目していますので、個人消費が底堅ければ「オンラインで推移」と来る可能性が高いし、個人消費弱くなってきた場合はその背景次第(物価高が原因だったら実はそっちの対処という話になりえるんですよね)という所でしょう。

ということで『2.経済・物価情勢』の『(1)経済情勢』の途中から(最初は展望レポートの見方を中心にしているのでパス)。

『こうした動きの背景にある個人消費と設備投資の動きについて、やや子細にみていきます。』

ほう。

『まず、個人消費については、物価高を受けた家計の生活防衛的な動きがみられるもとで、食料品や衣料品などの非耐久財消費は、価格上昇分を差し引いた実質ベースで減少傾向となっていますが、個人消費全体としては底堅く推移しているとみています(図表2)。』

ほうほう。

『生活防衛的な動きについては、物価高を受けて低価格商品へシフトするケースもある一方で、メリハリ消費と呼ばれる「使うところには使う」という消費行動も多くみられます。コロナ禍を経て消費者の行動に変化が起きている可能性もあり、統計から窺われるほど個人消費の実態は悪くない可能性もあるのではないかと感じています。』

ということですが、この「統計でちゃんと消費の実態を捕捉しきれていないんじゃないか」という論点は田村さん以外からも指摘があったと思います。需要側の統計と供給側の統計を見ると必ずしも一致しないとか、そもそも捕捉しきれていない部分(特にコロナ以降の変化を統計が捕捉できていない点)があるんじゃないか、という話ですわな。

でもって消費のベースになる所得の話が続きまして、

『所得面については、名目賃金の上昇が物価上昇に追い付かない状況が続いてきましたが、足もと改善がみられます。』

ほほう(じっと給与明細を見ているとワイ目から汗が出るorzorz)。

『今年の春季労使交渉は、中小企業を含め昨年実績を大幅に上回る結果となったこと、日本銀行の本支店における企業からのヒアリング情報でも、人手不足に対応した人材の係留・確保の必要性といった側面もあって、幅広い企業に賃上げの動きが広がってきていることも踏まえると、先行きは、実質ベースの賃金の改善が下支えとなり、個人消費は緩やかに増加していくと見込んでいます(図表3)。』

結局実質賃金プラスってのは欧米でもそうでしたが、上がりすぎた物価上昇ペースが鎮静化していく中で達成されるものでありまして、最近だいぶ言わなくなりましたけど、実質賃金ガーの話を前面に出すのは筋悪だったんですよね。

『更に、消費者マインドにネガティブな影響を与えていた急速かつ一方的な円安がある程度、是正されたことも、こうした動きを後押しするものと期待されます。』

って消費の説明部分の最後にしらっとぶっこまれていますが、この「円安進むと消費者マインドが下がってくる」っての割と重要で、足許で円安是正されてどうなってるのかは(自分の頭の上の蠅を追うのに多忙のため)ちゃんと見れていませんが、少なくとも160円への円安進行の際には円安がマインド系にビビットに悪影響を与えていましたので、その点からも円安是正は大正義であって、円安是正の結果少々株が下がって泡ふいてる場合じゃなかったんですよね。まあ馬鹿政治家どもが馬鹿なのでどうしようもないのですが。

設備投資の部分はパスして「物価の方に参ります。


・物価上振れリスクを指摘とな

『(2)物価情勢』ですがこれまた途中から参ります。

『物価の先行きに関し、私としては、上振れリスクが膨らんできているのではないかと懸念しています。』

キタコレ!!

『第一に、人手不足の影響です。企業の人手不足感は、短観で確認してもかなりの高水準にありますが、人手不足が供給制約となり、一部の業種では、供給不足・需要超過の状態にあるという印象を受けています(図表7)。』

ふむふむ。

『例えば、客室稼働率を抑制せざるを得ないホテル業界、ドライバー不足に悩むタクシー業界、製造業でも人手不足で設備をフル稼働させられない企業もみられています。こうした状況が、想定以上に物価を上振れさせる可能性もあると考えています。』

他にもいろいろと例がありますよね。遅くまで営業できなくなった飲食店とかもそうだし。

『第二に、中小企業を中心に賃金の価格転嫁は容易ではないとの声も引き続き聞かれていますが、昨年よりも高い賃金上昇が見込まれる中で、人件費の価格転嫁が想定以上に進む可能性があることです。』

今までが転嫁遅れていた面もありますな。

『第三に、足もとある程度是正されたとは言え、年初以降、円安が進んだこともあって、一度は落ち着いていた輸入物価が再度上昇基調にあることです。』

はい。

『輸入物価の上昇を企業が製品価格に転嫁する際のパススルー率(コスト上昇分が製品価格にどの程度転嫁されるかの比率)が近年高まっており、消費者物価への影響も従来対比高くなる可能性があると考えています。』

とまあそのようなご指摘でありました。では金融政策運営のパートで抜刀ぶりを鑑賞しましょう。


・長期国債買入の話を先に切り分けておこなっていますね

次のコーナーが抜刀もとい金融政策関連のパートでして、『3.金融政策運営』の最初は『(1)2024年7月の金融政策決定会合』です。最初は決定事項の説明なんでかっ飛ばして途中から参りますが、

『日本銀行は、600兆円に迫る規模の国債を保有していますが、日本銀行の国債保有残高を名目GDP比で欧米と比べると段違いに規模が大きいことが分かります(図表10)。』

と、決定事項の後に長期国債買入残高の話をしています。田村さんはその前に長期国債買入に関して『過去行ってきた大規模な金融緩和からの不連続な変化を避けるために続けているもので、能動的な金融政策手段として用いているものではありませんが』って言っているので「今後の金融政策運営」の話をする前のところに持ってきているのは細かい芸ではあるのですが、ちゃんと分けているの流石ですわと思いました。

でもって長期国債買入の話ですけど、

『満期が到来した国債は償還されますので、国債の買入れ額を償還額以下に減額すれば、保有残高は減少していきますが、決定した減額計画のペースでは、日本銀行のバランスシートの正常化、すなわち、これ以上の削減を行わなくてよいという水準まで国債保有残高を減少させるまでに、かなりの期間が必要となってしまいます。』

連休2回あるからこの辺の計数もちゃんと整理しておこうかなと。

『一方で、市場に混乱を与えることを回避しながら国債買入れの減額を進めるには、この程度の減額ペースにとどめることが適当であるというのが現状です。』

とのことですが、この後田村委員が指摘しているんですけど「利上げの織り込み度合い」というのに対しまして、国債金利がクッソ低い事も影響していると思われるのですな。ちなみに田村さんは国債市場のフォワードレートではなくてOIS市場のレートを使ってフォワードレート計算して織り込み度合いを計算しているのですが、国債市場の金利が日銀の買入によってクッソ低い水準に抑圧されているのは、他の金利デリバなどに対してもテナーが長くなってくると影響しやすくなるんじゃなかろうか(OISを振り回している身じゃないので詳しくはないが)と思われます(だいたいからして参加者層から想像したら国債金利の影響あるだろと思うんだがどうですかね)次第でありまする。

つまりですね、現状の国債買入減額ペースが遅くて、国債市場の金利が「政策金利の先行き見通し織り込みに日銀買入による押し下げ効果が乗っかったもの」になっているのが自己実現的に市場の先行き金融政策見通し織り込みに影響を与えているんじゃないですか説は積極的にアタクシは提唱していきたいので、このあたりは田村さんもっと踏み込んだ考察を頂きたいところではあったな、とは思うのであります。

それに国債買入減額ペースが遅いと日銀当座預金残高も減らないので短国市場に代表されるように金利のベース部分である短期ゾーンの実金利にも影響あるんだし。

とは言え田村さんこの先ではこんな抜刀をしております。

『現在、国債市場の機能度は、一時より改善したとはいえ依然低い状態にありますが、こういった日本銀行が国債を大量に保有することに伴う副作用は、日本銀行のバランスシートの正常化が進む過程では、しばらく残り続けてしまうことになります(図表11)。』

しばらくどころの騒ぎではないです今日の新発3Mとか(いちいちコーナー作らんけど)新発WIの売参が入札前日の昨日の引けでいきなり2毛5糸強の0.075%とかいうとんでもない値付けをされていて、バランスシートの正常化がクッソ遅いんで何とかしてくださいよろしくお願いします。


・長期国債買入がやりすぎにもほどがあったのではないかというのをはんなりとご指摘

でその続きですが、

『私としては、大規模金融緩和からの正常化のためにはこれからの手綱さばきが極めて重要であり、その道のりはまだまだ長いと考えています。』

いやもうバンバン減額してください(陳情)、というのはさておきまして、

『また、将来、万が一再び、量的な金融緩和を検討せざるを得ない状況となった際には、こうした出口論も含め、その効果とコストのバランスを慎重に検討する必要があると改めて感じています。』

これは要するに「今般のバランスシート拡大は調子に乗りすぎで、後処理する方がエライ面倒な事になっているんだがちょっと物考えて非伝統的政策の導入をやれやバカチンどもが」というのをぶぶ漬け話法で説明されておられるわけですな、しらっと抜刀しておられます。


まあこの先の方がさらに抜刀斎な訳ですけれども。


・1%が注目されていますが実はテキストを見るともっと抜刀しているんですよね

次の小見出しが『(2)見通し期間の金融政策運営』でメインイベントの抜刀祭りですな。

『主たる政策手段である短期金利の操作に話を戻したいと思います。』

ということで切り分けていますね。でもってですねえ・・・・・・

『今後、消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていき、2026年度までの展望レポートの見通し期間の後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するというのが私どもの見通しです。』

はい。

『こうした見通しが実現していく場合、2026年度までの見通し期間の後半には、政策金利である短期金利は経済・物価に対して中立的な水準、すなわち名目の中立金利まで上昇していることが必要と考えています。短期金利が経済・物価に対して中立的な水準を下回っていると、物価を必要以上に押し上げてしまうからです。』

「短期金利が経済・物価に対して中立的な水準を下回っていると、物価を必要以上に押し上げてしまうから」「2026年度までの見通し期間の後半には、政策金利である短期金利は経済・物価に対して中立的な水準、すなわち名目の中立金利まで上昇していることが必要」という説明になっています。

これ今回の講演テキストって以下の部分でワイが勝手に指摘するので違ってたらごめんやでなのですけれども、わざとマイルドに見えるように作りこんでいる部分があって(だから最初のところでワシ「何なら少し穏健」と書いたのです)、この部分も「中立金利」じゃなくて「1%」の方をベンダーなどが拾って、記者会見でも1%云々という話が注目されていたんですが、これ多分田村さんわざとやってて(とワシが思う理由は後述)、「1%」とすることによってベンダー的な反応をマイルドにしていますが、よくよく見れば今後の金融政策運営の一発目に「見通し期間の後半には物価安定目標が達成されている状態なんだかから「中立金利」まで上がっているのが当然である」というまあそれが当然ではあるのですが、そういう話をしている訳でして、物価が安定して2%で推移している時の名目中立金利が1%の訳ないじゃん(実質中立金利▲1%ってナンジャソラな訳で)と考えると、実は田村委員は冒頭から抜刀斎モードとなっているんですよね。

というのは1%という数字で目くらましされているのですがちゃんと覚えておきましょう。


・中立金利が最低でも1%だろうという話をしているのだが1%に食いつかせることによって穏健に見せる話法

でまあその続き。

『中立金利は、概念的には、経済・物価に対して中立的な実質金利の水準である自然利子率に、予想物価上昇率を加えたものですが、自然利子率は直接観察できるものではなく、その推計値は手法によって大きなばらつきがあります(図表12)。なお、現在、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利ははっきりとしたマイナスで、自然利子率のいずれの推計値をも下回っており、現在の短期金利の水準は緩和的な環境、すなわち、経済や物価を押し上げる位置にあると言えます。』

これは大本営も言ってますが、こういう言い方をしないで「緩和的な金融環境が続く」という説明で誤魔化そうとするから大本営のコミュニケーションが上手くいかないんですがその点についてもご案内の通りで田村抜刀斎の抜刀が後程行われております。

でもって例の1%がここで出てきます、上記の続きが、

『この中立金利について、私は、最低でも1%程度だろうとみており、したがって2026年度までの見通し期間の後半には少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げておくことが、物価上振れリスクを抑え、物価安定の目標を持続的・安定的に達成する上で、必要だと考えています。』

まあ極めて理詰めだし、展望レポートの見通し、すなわち大本営を含む日銀の公式見解が見通し期間の後半には物価安定目標が達成されているって言ってるんだから、この説明って極めてフェアな説明であり、本当は抜刀じゃないんですけど、大本営がクソみたいな緩和アピールばっかりするから抜刀斎が抜刀しないといけなくなるわけですな、南無三。

とはいえ、海外主要国と異なり日本の場合はゼロ近傍のインフレ状態という均衡状態からの遷移によって物価安定目標を達成しようとしているだけに、もともと物価安定が達成されている状態すなわち望ましい均衡状態の経済状態の例があった海外主要国と異なる点として「前例がない」というのがあるがゆえに、

『ただし、長きに亘ってほとんど金利がない世界が続いてきたわが国においては、経済主体が金利にどのように反応するか、予断を持たずに注意深くみていく必要があります。したがって、2026年度までの見通し期間の後半の1%の水準を念頭に置きつつも、「物価安定の目標」の実現する確度の高まりに応じて、段階的に短期金利を引き上げつつ、経済・物価の反応を確認し、適切な短期金利の水準を探っていく必要があると考えています。』

となるのも当然で、この辺りを田村委員のようにちゃんと説明する、というのは今の大本営に求められていることなんじゃないですか、と思うのよね。


・コミュニケーションがぐだぐだになっている点について田村抜刀斎盛大に抜刀の巻

この次が実に良い。

『8月入り後、わが国の株価や為替の変動が大きくなりました。この背景には、経済指標の下振れを受けた米国の景気後退懸念を契機に、世界的にドル安と株価の下落が進んだことがあるとみていますが、日本銀行の金融政策を結びつける声も聞かれています。』

まあ無関係ではないわな。

『直前に行われた政策修正が早すぎたという主張がある一方で、遅すぎたとの主張もみられます。』

遅すぎというか、3月4月に緩和アピールをし過ぎて為替をぶっ飛ばしたのが最大の悪手でしたが、その点について盛大に人斬り抜刀斎となるのがこの次の部分。

『日本銀行の政策を少し振り返りますと、本年4月以降、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、「金融緩和度合いを調整していくことになる」という考え方は一貫していました。しかし、そのことが過不足なく市場に伝わっていたのか、市場の受け止めに対してより適切に対応する術はなかったのか、後付けにはなりますが改めて振り返り、市場とのコミュニケーションの改善に絶えず努めていくことが重要であると感じています。』

これは人斬り抜刀斎ですわ。

『また、金融資本市場の動向や経済・物価に与える影響については、引き続き、丁寧に目を配ってまいりたいと考えています。』

最後にこれを入れて中和していて、ベンダー見てるとこの部分拾ってたりしていますが、どっからどう見ても市場従属の話をしているわけではないのは文脈を見れば明らかなのですが、ベンダーヘッドラインだけ見ていると田村委員の金懇挨拶のトーンを読み間違るリスクがあるな、と思いました。


・市場の織り込み云々のところでインチキグラフを出して中和しているのはワロタ

その次もおもしろくて、

『現時点の市場が予想する短期金利の引き上げペースは緩やかです(図表13)。』

ってあるのですが、この図表13の芸の細かさにクソ笑いましたアタクシ。まあ先にテキストの方を読みますが、

『もちろん、経済・物価の進展次第ではこういった引き上げペースに止まる可能性はある訳ですが、このペースの短期金利の引き上げでは、見通し期間の後半においても短期金利は中立金利に届かず、懸念している物価の上振れリスクを更に高めてしまう、あるいは、後になって急ピッチの利上げを余儀なくされる可能性も否定はできません。そうしたリスクを避けるため、私としては、金融市場の動向にも十分に配意しつつ、経済・物価の反応を確認しながら、適時かつ段階的に利上げしていく必要があると考えています。』

まあそういう訳で市場の織り込みが足りん、との指摘ですが、先ほどワイが申し上げた仮説としては、日銀の国債買入が依然として過大で、国債市場において将来の政策金利を含めた金利見通しを過大な国債買入が歪ませており、それが自己実現的に市場の織り込みを過小にしているようになっているのではないか(だって何とかスト調査だってたぶんポジション取ってる中の人たちだって12月1月は利上げありうべしってのが最大予想の筈なんですよね、金利形成がそれをちゃんと織り込めていないだけで)と思うんです。

でまあそれはさておきましてこの図表13、網掛けの部分があって、そこに「見通し期間(24〜26年度)の後半」ってあって、さらに「消費者物価の基調的な上昇率が「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移」って堂々の記載があるのですが、図表13をパッと見ると「見通し期間の後半とか書いてあるけどなんか後半というよりは終盤じゃないのこれだと」と思ってしまうんですよね、というかワシも最初「はて?」と思いました。

しかしですね、これグラフの横軸を見てみますと、途中で横軸(すなわち時間)のスケールが変わっている、という面白グラフになっていまして、これって足元株式市場が無駄に振れているもんだから、あんまり刺激を与えないようにしようとして、わざとこのインチキ横軸を作ったな、ということで芸の細かさに気が付いた瞬間に爆笑の発作を起こして腹筋が崩壊してしまいました。


・ということで田村さん「持ってる」説を提唱しておきます

まあ何ですな、その辺はメッセージをアホどもがアホアホ解釈して市場に変なハレーションが起きないように中和しておくか、ってことでこのようなイカサマグラフを出しているんだとアタクシは解釈しましたけれども、田村委員の金懇の日である昨日はご案内の通り別の要因でジャパニーズ株式市場上昇祭りヒャッハーとかやっていた訳でして、田村委員の講演で株式市場暴落みたいなことも起きなかった、という意味では田村さん実は「持ってる」人なんじゃなかろうかと思いましたのでそんな説を提唱しておきましょう(フラグ建築ではありません)。



・最後に金利上がっても別にそんなに民間に対してマイナスじゃないよというド正論登場

最後の抜刀コーナーはそういうネタです。先ほどの続きになりますが、

『短期金利を引き上げていくことの各経済主体への影響についても考えておきたいと思います。』

以下はド正論の話で一々ワイが茶々を入れるまでもないですしそもそもノリノリで書いてたら時間がアレになって来たので簡単に流しますすいませんすいません。

『大雑把に言えば、借入超過主体が金利を支払い、貯蓄超過主体が金利を受け取るため、短期金利の引き上げによって、借入超過主体は負担が増加し、貯蓄超過主体は受取利息が増加するということになります。』

はい。

『したがって、家計であっても住宅ローン借入のある家計とない家計、企業でも借入のある企業とない企業、あるいは、借入があってもそれを上回る貯蓄を保有しているかどうかなどによって、短期金利の引き上げの影響は異なります。加えて、短期金利の引き上げが経済に波及する経路、更には、金利だけではなく、利上げに繋がった経済・物価の状況変化にも目を配る必要があると考えています。』

さいですな。

『例えば、家計の貯蓄・負債状況を世帯主の年齢別にみると、40歳代以下の世帯は負債の方が大きく、50歳代以上の世帯では貯蓄の方が大きくなります(図表14)。したがって、様々な前提を捨象して考えれば、平均的には、利上げは40歳代以下の世帯にとっては負担が増え、50歳代以上の世帯にはプラスが大きいという傾向になります。』

ふむ。

『ただし、金利引き上げの影響を考えるうえでは、@短期金利の引き上げが住宅ローン金利にどの程度反映されるかは、貸出を行っている金融機関の判断によるほか、多くの場合、毎月の返済額が急には上がらない仕組みが設けられていること、A住宅ローン保有世帯は勤労世帯が多く、賃上げの恩恵を受けている世帯も含まれていること、といった側面があることも考慮に入れる必要があります。』

なるほど。

『50歳代以上の世帯は大きな貯蓄超過となっており、預金金利の引き上げ――どの程度引き上げられるかは金融機関の判断によりますが――による受取利息の増加が想定されます。老後に備えて預貯金の元本取り崩しには抵抗感を覚える家計も、安定した受取利息が増加すればマインドの改善に繋がる可能性が高いと思います。』

そう来たか。

『企業についても、長らく資金フローは貯蓄超過となり、借入を減らして手元資金を積み上げてきたこともあって、無借金ないしは実質無借金の企業の割合は増加しています(図表15)。このため、過去と比較すれば、短期金利の引き上げの影響に対する耐性は高くなっていると考えられます。』

次は企業。

『また、先ほど申し上げた見通しの通り、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まっていく中で潜在成長率を上回る成長が実現していけば、堅調な企業収益が支払利息の増加の影響を軽減させることも期待されます。』

そしてこの次にしれっとこの話を入れ込む。

『更に、次元の異なる話ですが、金利が上昇し、金利の持つハードルレート機能1が発揮されるようになれば、企業が生き残るためには、その金利負担を賄うことができる儲かるビジネス、言葉を換えれば付加価値の高いビジネスに経営資源を集中させていく必要に迫られ、結果として、ビジネスの新陳代謝が促され、生産性が上昇するということも期待されます。』

しれっと抜刀していますがこの次でもさらに抜刀。

『この他にも金利上昇の影響は、政府においても生じることとなります。一般論として申し上げれば、財政運営に対する市場の信認をしっかりと確保することが重要であると考えています。』

どさくさに紛れて抜刀していますが、こういうのは極めて正論なのであって、総裁副総裁を含めもっと言うべきなんですよね〜

『以上のような影響を含め、政策金利の変化が与える影響を今後も丁寧に確認し、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営してまいりたいと考えています。』

ということで以下は岡山県経済の話になるので時間も押してきたので今日はここで勘弁していただきとう存じます(中川さんの会見は田村さんの会見と共に週明けにも)。








2024/09/12

お題「貸増変動金利にしたのに何で減らんのや!!!/中川委員金懇には大本営による内田発言の中和スタンスが見えますな」

ほうほうそうですかそうですか
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/XZS3STT6NNMTZAP5KSMOOZVHXI-2024-09-11/
米CPI、8月は2.5%に鈍化 基調インフレに依然粘着性
By ロイター編集
2024年9月12日午前 4:01 GMT+9


〇貸増ェ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なんでそうなるの
https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/len_b/mope240911a.pdf
貸出増加を支援するための資金供給の実施結果
(2024年9月実施分)

『今回の貸付の概要

貸付予定額  121,454億円
貸付先数   23先


(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み

大手行         316,185億円   6先
地域金融機関等   467,629億円   111先
合計           783,814億円   117先』

・・・・・1年物変動金利にしても全然減らないんですがどうなってるのよ、という感じですが、変動金利にしても全然減らないんだったら、そもそも気候変動とか被災地支支援オペも変動金利にすればいいんじゃないですかという気がだいぶしてきました次第なのですが、貸付日とかそういうのはHPに出ているのですがもしかして今回って固定金利でやってるんですかと言いたくなってしまう実施額になっていてナンジャソラ状態。

今回って前回の4年貸増の期落ちがあって、
https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/len_b/rel200914a.pdf
貸出増加を支援するための資金供給の実施結果
(2020 年 9 月実施分)

『今回の貸付の概要

貸付予定額      132,310 億円
貸付先数         35 先』

期落ちが13兆円あるからかなりの部分が落ちてその分だけ日銀当座預金が減るじゃろ、と思っていたのですが、1兆しか減らないということになってしまいましたので、貸増全体の残高も碌すっぽ減らないわけで・・・・・・

前回の貸増実施時点でこうなっていたんですよね。
https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/len_b/mope240617a.pdf
貸出増加を支援するための資金供給の実施結果
(2024年6月実施分)

『(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み

大手行          320,968億円    6先
地域金融機関等    469,678億円   111先
合計            790,646億円   117先』

79兆の貸増が78.4兆に減っただけ、という誤差の範囲内しか減らないという飛んでもない結果になっておりましたが、もしかしたら先週今週と短国入札のところでアホみたいに強くなっているのって今回の貸増(13日スタート来年9月12日エンド)分の担保繰り要因があったのかのかもしれませんが、しかし貸増全然減らないとなるとこの見合いの担保ニーズが減らない訳で、短国のレートが明後日の方向に飛んでいく現象は続くわ(しかし短国を担保にして付利金利で調達するという取引単体で見たら赤字にも程があるし、途中で政策金利上がったらどうするんじゃという話ではあるのだが、まあそんな単純な話ではないんですよねこればっかりは)と頭のくらくらする結果を見て世を儚んで西行法師の如く山奥に庵を結ぼうかと思う今日この頃です(大嘘ですのでご安心?ください)。

まあ短国市場とかそんな限界市場知らんがな、ということなのかもしれないのですが、リスクフリーレートの市場をちゃんと作るとか言ってた話はどこ行った(GCレポ市場はシステム対応的な意味での参入障壁が高くて短期金利が2%にでもなればともかくこの金利水準で参入障壁を越えて参加しようとはなかなかならんでしょうからね)という所なのですが、まあそんな話はすっかり忘れているでしょうからねえ日銀ちゃん。



〇中川委員の金懇は特になんも言っていないのだが内田講演を中和したい大本営の意思は把握した

しかしまあ何ですな。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-11/SJMMH7T0AFB400
【日本市況】円8カ月半ぶり高値、日米金利差の縮小観測−株式は続落
船曳三郎、佐野日出之、山中英典
2024年9月11日 14:14 JST 更新日時 2024年9月11日 16:01 JST

なぜかこういう後講釈ばっかり出ていたんですけど、昨日の市場って米国長期金利の低下と米国株式市場の下落(どっちも時間外取引)がドライブしてて、それが円高ドル安にもなっていたんだし、中川さんの金懇は前場一瞬反応したけど後場は強いて言えば米国大統領選挙討論会だし、あれだって要は「トランプトレードでリスクオンの巻き戻し」じゃろという話ですよね。

だって「中川審議委員講演で日米金利差の縮小観測」って言うなら債券は売られないとおかしいのに、昨日の円債市場って限月交代した12月限の横綱がどすこいどすこいと電車道相撲を示して(しかも後場に入って一段と)1日にして限月交代のカレンダースプレッド分戻す勢いで上昇しているのですから、中川審議委員講演で日米金利差云々とか言ってるのはちゃんちゃらおかしい後講釈でこたつ記事でも書いてるのかと思ってしまいました。

なお、ちゃんと後場米国金融市場が引っ張って大きく動きましたって記事にしていたのはワシの見つけた限りでは金融ファクシミリ新聞さんだけだったりしまして、ベンダーさんも頑張ってほしいもんだとおもいました、まる。

なお、これたまたまBBGさんをネタにしましたが、他のニュースでも上記のような感じで報道されていて、いやーそれは違うじゃろと思いました。


てな話はさておきまして金懇挨拶。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240911a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
秋田県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 中川 順子
2024年9月11日

・経済物価のリスクのところから拝見しましょう

まあ基本的にこの中川さん、特になんか主義主張あるわけでもなさそうですし、基本は大本営が道具箱に用意しているホーンスピーカーかウォーキートーキーってな風情を強く醸し出しておられるというカカシ先生なので、別に議論をリードするようなお話が見れるわけでもないのですが、九官鳥は九官鳥としての意味もありまして、なんか大本営が変わったこと言い出しているか、ということに関する観測にはもってこいなのであります。

でまあ最初に申し上げましたように、別に新しい情報があったわけでもない(から債券市場は中川講演で別にたいして反応してなかったし何なら債券先物上がっていたので為替市場とは別反応をしていた)ので、経済物価情勢の話とかそのあたりは全部かっ飛ばして無問題ですが、先行きのリスク要因のところだけは読んでみましょう。

『3.経済・物価の先行き見通しとリスク』の後半になりまして、講演テキストの6ページ(PDFだと7枚目)のケツのところからになります。

『(2)経済・物価見通しにおけるリスク

これまでお話しした通り、わが国の経済は、高水準の企業収益に支えられ、賃金と物価の好循環が展望できる状況にあると考えています。もちろん、こうした経済・物価の先行きの見通しについては、様々な不確実性が存在します。以下では、私が特に注目する経済・物価見通しにおけるリスクについて3点お話しさせていただきます。』

なるほど大本営はどういう点を指摘したいのでしょうかね。

『リスクの1点目は、物価の上振れリスクです。』

は??

『先ほど、海外のこれまでの大幅なインフレと円安による輸入物価上昇の影響は徐々に減衰していくとの見通しをご説明しました。もっとも、先ほど申し上げたいくつかの要因などにより、今後、輸入物価が再び上昇に転じる場合には、価格転嫁が積極化する可能性があります。また、労働需給のひっ迫の影響で賃金が上振れる可能性もあり、賃金や物価が「物価安定の目標」を超えて上昇するリスクには注意が必要です。』

ちょwwwwおまwwwwwwそう思ってるなら何で内田さんあんな全面降伏ベタ降り講演したんだよあんなこと言ったら物価上振れリスクを高めるじゃんwwwwwww

『一方で、2点目は、海外経済の下振れリスクです。』

こっちは普通に言いそうな話だ。

『高水準であった米欧の物価上昇率は、このところ着実に低下してきていますが、既往の利上げの影響が、時間をかけて実体経済や金融面にどのように及ぶかには不確実性があります。また、先月初には、米国経済の減速の可能性を示唆するデータをきっかけとして、急激な景気後退――ハードランディング――を意識した市場の動きがありましたが、こうした海外経済の減速懸念を背景にした金融市場の過度な動きや調整が続き、それが海外経済をさらに下押し、わが国経済に波及するリスクにも注意が必要です。』

この部分、どさくさに紛れて8月頭の市場混乱は米国のせいであってうちらのせいではない、という話を混ぜ込んでいるのがいかにも大本営らしいチャーミングさを示しているのはほほえましいですなw

『3点目は、消費者マインドの改善の遅れが、所得から支出への前向きな循環を阻害するリスクです。』

おwwwwwwいwwwwwwwww

だったら何で内田さんあんな全面降伏以下同文。

『これまで、食料品、日用品など身近な品目の価格上昇率が相対的に高かったことや、実質所得の伸びがマイナスとなったことなどから、家計部門では生活防衛的な動きがみられています。足もとで実質賃金の前年比がプラスに転じるなど、所得環境が改善していることや、企業努力、政府による様々な施策の効果もあり、個人消費には底堅さがみられますが、これまで実質所得のマイナスが長期化したことが今後の消費者マインドの改善の重しとなる可能性もあり、丁寧に確認していく必要があると考えています。』

いやお前ら黒田末期から物価上振れを「一時的」って言いながら放置してた結果こうなってるんだろ何を言ってるんだというお話な訳ですが、まあこの3点を総計しますと、何気に「物価上振れ良くないですよね〜」って話になっていて、そうなりますと日銀の政策調整全然足りてませんですよ、って説明になっております。

これすなわちどういうことかといえば、うっちーのポツダム宣言受諾株式市場軍への全面降伏文書をしらっと上書きしようとしているの巻となっているという話なのですけれども、時すでにお寿司感は拭えませんな。


・8月頭の市場ムーブメントはうちのせいじゃないもんアピールが他の箇所でもwww

次の小見出しが『4.日本銀行の金融政策運営』ですが、これまた大本営腹話術人形として腹話術を披露しているだけの話なので基本どうでも良いのですけれども、最後の部分にこんな記述がありましてクソ笑いました。

『7月の決定会合後、8月初旬に公表された米国の雇用統計において失業率の上昇などがみられたことをきっかけとして、米国の景気減速懸念から、世界的に急速なドル安と株価の下落が生じました。』

wwwwwwwwwwwwwww

ということで、まあ大本営としては「オラのせいじゃないですゾ」という話で、確かにまあ全部日銀のせいみたいになって国会招致とか吹きあがっていた大馬鹿の所業には呆れるしかなかったですけれども、そもそも論として160円までの円安を招いたのって日銀がマイナス金利解除からこの方どっち付かずの説明を繰り返した結果、中銀文学に詳しくない他市場の方々を中心に日銀のゼロ金利政策はずっと続くから円キャリー取引はフリーランチで丸儲け、みたいな投機ポジション積みあがったのがかなり効いていたと思われるわけで、その投機筋を焼き尽くしに行ったらあんなムーブになったのですから、利上げがどうのこうのの前にその前のコミュニケーションにだいぶ問題があったのでやっぱり日銀のせいであるという面は残念ながらあるんですよね。たとえそれが望ましい方向でのポジション解消によるものだったにしても。

まあでも大本営はとにかくほとぼりが冷めたあたりから上記の宣伝を行うことによって、日銀ショックだの植田ショックだのと言われていたことを上書きしていこう、という浅ましいムーブをしている、ということが示されていると思いましたのでメモっておきました。


・まあ今回の金懇挨拶の一番のポイントはこのパラグラフです

でもって上記部分は何で出てきたかというと、今から引用するこの次のパラグラフのマクラ(にかこつけて植田ショックとかそういうのを上書きしようというムーブをしていますけど)でして、

『先ほど申し上げた通り、わが国企業の収益は歴史的な高水準にあるなど、この間、わが国経済のファンダメンタルズに大きな変化は無いと考えていますが、』

というのはさておきましてこの次ですポイントは。

『先行き、金融緩和の度合いの更なる調整を検討するに当たっては、7月の政策変更後の市場の動向を振り返りつつ、金融市場の変化が経済・物価の見通しに及ぼす影響――例えば、市場機能や企業の資金調達行動の変化が見通しの実現する確度やスピードに与える影響――について、これまでと同様に、丁寧に評価を行い、判断をしていく必要があると考えています。』

なにがこれまでと同様じゃ、というような無粋なツッコミはさておきましてwwwww

「例えば、市場機能や企業の資金調達行動の変化が見通しの実現する確度やスピードに与える影響」

というのがチェックポイントだと言ってますね。でまあ『4.日本銀行の金融政策運営』の前半部分って引用しませんでしたが、こちらは実施したことの説明が延々とあった上に、「見通し通りに推移していけば先行き緩和度合いの調整を行う」という本来の説明をしております。

そして上記の記述になるのですが、ここでチェックポイントで示されたのは「市場の安定性、不安定性」なのではなくて、あくまでも「企業行動や経済への影響」という話をしている訳ですね。

そして引用かっ飛ばした前半部分でも「市場の安定性、不安定性」の話は行っていなくて、上記で引用を行った「7月の決定会合後」から始まるパラグラフのところで市場に対する言及があり、上記の最後の部分のチェックポイントへと話が繋がるのであります。

ということはですね、まあ中川さんの金懇挨拶テキストがどう見ても大本営腹話術人形でしょというのを勘案すれば明確になりますが、大本営としては内田さんの「金融市場が不安定なら政策を修正するわけなし」というベタ降り発言に関しては、その場しのぎで言ったにしても後々延々と「では今の市場は安定的ですか不安定ですか」って聞かれ倒して政策運営が株式市場(や金融市場)に従属するとかいう中央銀行の風上にも風下にも置けないようなアホアホ政策プリンシパルになってしまうのを回避しようとして、ウッチーの全面降伏発言を上書きしようとしている、ということを示している、とアタクシは見て取りましたが如何でございましょうか???

いやまああのベタ降り発言はやっちまったって感じなので上書きした方が良いとは思うのですが、結局はウッチーが自分で「あれはちょっと強く言い過ぎましたテヘペロ」って上書きしないとだめで、テキストは今日出てきますけど金懇後の会見で中川さんも今の金融市場が安定的か不安定か、って質問されてて、中川さんもそれに回答しちゃったりしている訳ですな。残念無念。

まあ何ですな、ワイ思うに市場が安定している不安定だ云々の質問にはもう一々回答しないでいかないと何時までたってもこの話を蒸し返されて。その結果として「日銀の政策は金融市場従属」っていう認識を金融市場に与えるしそれを強化していくプロセスに入ってしまっているんじゃないかと懸念しているんですが、まあ何度もやってると市場従属色を濃くするだけなので、漫然と回答してるのではなく回答をもっと練った方が良いと思います。

ということで、大本営としては金融市場従属みたいに取られる(というかああいったらそうなるわな)内田講演を上書きしようとして手を変え品を変え説明しようとしている、というのが今回の中川さんの講演テキストから読み取れるお話なんだとアタクシは思いました、異論は認める(^^)。






2024/09/11

お題「ウォーラー理事の判断根拠(講演ネタ続き)/エネルギー特会借入から利上げ思惑を計算するの巻」

9月11日・・・・・・

〇物価安定自信ニキなのか引き締め効きすぎたぜヤベーニキなのかはアレですが(ウォーラーの続き)

昨日の続きで恐縮ですが、
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20240906a.htm
September 06, 2024

The Time Has Come
Governor Christopher J. Waller

At the University of Notre Dame, Notre Dame, Indiana

先週末にウォーラー理事講演で転向宣言をしてた訳ですが、転向宣言部分(金融政策のお話)だけ引用しても背景が分からんとなんのこっちゃになってしまうので背景部分をということで他の部分をちょっと確認しておこうという企画です。

これ講演の冒頭部分でも「これからはアクションが必要」とかそういう話をぶち上げていまして、まあ要するに金融政策云々に入る前から転向宣言をしているんですけど、途中に転向宣言の背景説明があります。前半3分の1くらいのところからになりますけど、そこそこ長いので駆け足で確認してまいります。

『In the rest of my remarks, I will lay out my reasons for believing that the economy and employment will likely keep growing as inflation moves toward 2 percent.』

何で2%自信ニキなのかについての説明が始まりますね。

『The first of these is the large body of evidence that economic activity is continuing to grow at a solid pace. Real gross domestic product (GDP) grew at a 2.2 percent annual rate in the first half of this year and recent data indicates that growth is continuing at around this pace in the third quarter.』

成長はソリッドなペースで進んでいるので、というのが理由なんですと。

『Retail sales were stronger than expected in July and showed that households continue to spend as their finances, in the aggregate, remain healthy. The increase was fairly broad based across goods categories. While many online retailers offered discounts last month, this was not a dominant factor in the solid results. Although manufacturing output fell in July and the August Institute for Supply Management manufacturing survey pointed to weak production and new orders, the similar survey for the larger, nonmanufacturing sector was consistent with a modest expansion of activity.』

この辺は小売り売上が堅調ですというお話です。

『As for the labor market, on balance, the data that we have received in the past three days indicates to me that the labor market is continuing to soften but not deteriorate, and this judgement is important to our upcoming decision on monetary policy.』

次が労働市場で、こっちは過熱が収まって弱まっているという話。弱まっているけど悪化ではないそうだが、今後さらに弱まると「悪化」になってしまうのでそれは避けたいんですと。

『As I said earlier, Wednesday's report on job openings in July was consistent with a moderating labor market. Meanwhile, the four-week moving average of initial claims for unemployment insurance has risen gradually since January but has changed little on net in the past two months, with initial claims remaining fairly low.』

さっきの小売りもそうですけど、こちらもジョブデータに関して細かいコンポーネントの説明をしながらこうでっせという話をしています。まあこの辺細かい説明なのでそれが変わったら考え変わるのかは微妙ですけど、まあこの辺のデータをウォーラーさんとしては見ていますよという話になっています。

『The jobs report for August, released this morning, supported the story of ongoing moderation in the labor market. After rising to 4.3 percent in July, the unemployment rate ticked down to 4.2 percent in August. Taking a longer perspective, the unemployment rate over the past 16 months has increased gradually but fairly steadily from 3.4 percent to 4.2 percent in today's release. Payrolls rose by 142,000 in August compared with 89,000 in July, leaving the three-month average payroll gain at 116,000, compared with the 267,000 average in the first quarter and 147,000 in the second. Accounting for revisions to the jobs numbers that we received in August, that level is a bit below what I see as the breakeven pace for job creation that absorbs new entrants to the workforce and keeps the unemployment rate constant.2』

これは講演同日の朝に出た雇用統計の解説。まあこの辺に関しても説明をこまごま読んでおくのも悪くはないと思うのですが、それをやっているとエライ量になってしまうので引用だけしておくので後で見るかなというほぼ備忘メモ状態ですいませんすいません。

『July marked the first time that the three-month average unemployment rate has increased by at least a half of a percentage point above its 12-month low, which was 3.6 percent in July 2023. This breached a threshold established by the Sahm rule, which observes that when this has occurred in the past, it has been a reliable indicator of the economy entering a recession.』

Sahm ruleとかいうのがあるそうで、リセッション入りの判定をするためにいろんな指標をもとに判断するらしいのですが、その中で労働市場というか失業率というか、その推移から見る場合の失業率の水準は足元でその閾値の辺りまで来ている(から緩和アクションが必要)というお話をしていますな、ホンマカイナという気はしますが。

『While this is a correlation that certainly bears attention, I want to make a few cautionary points about relying on such rules in deciding that a recession has begun.』

でもって、ウォーラーさんとしてはリセッションが始まったということを示すいくつかの注意すべきポイントについて説明しておりまして、

『As we have seen in the recent past with other supposedly reliable recession rules, such as an inverted yield curve, there is more to forecasting economic outcomes than the relationships between a couple of variables.』

そのほかにイールドカーブのインバート(正直これは一番リセッション判定に使えない物体だとワシは思うのですけどねえ)とかそういうのもありますし、という話をしながら以下ポイントを出して案内しているのですが、

『First, these rules are nothing more than a mechanical, statistical description of past economic outcomes-they do not seek to explain what economic forces drive the relationship between the data, nor are they based on the totality of economic data. All recessions rules do is pick up a correlation between movements in economic data and the dates of recessions or other outcomes.』

リセッション判定ルールって基本的に経済データから機械的に出しているだけですというのは留意が必要、ってじゃあ何でさっき何とかルールの話をしていますねんということですが、日銀にかまけて細かく見てなかったんですけど、どうせ米国でこのルールベースのリセッション判定の話が盛り上がってるんでしょうね、知らんけど。

『A second point is that, setting aside the unusual circumstances of the 1981-82 recession, recessions occur when a major shock hits the economy.3 In the absence of a big negative shock, an inversion of the yield curve or a triggering of the Sahm rule doesn't necessarily mean we are entering a recession.』

1981-1982のリセッションは経済サイクルの中で起きたものではなくて大きな外的ショック起因でしたよ(だから今の環境とはまた話が別と言いたいのかな)。

『Third, recession rules typically pick up demand-driven recessions. But this is not why unemployment is rising now. GDP forecasts for the current quarter all show solid growth, labor market data show lay off rates are stable, and consumer spending is growing at a healthy rate. These data suggest demand is fairly strong. Instead, most of the increase in the unemployment rate is from workers entering the labor force and not finding jobs right away. So, the recent rise in the unemployment rate appears to be more of a supply-side-driven phenomenon, not demand driven.』

リセッション判定ルールで拾ってくるのは需要ドリブン(需要減)によるリセッションだが、足許で起きている労働市場の調整は需要の大きな減少によるものではなくて、むしろ労働供給の増加による労働市場の緩和の面が強いので、必ずしもリセッション判定ルールの失業率を充てはめればよいというものではない、だそうな。

『And lastly, it should be clear to everyone that many pre-pandemic economic relationships have not proven to be good policy guides post-pandemic. Reliance on old lessons from inverted yield curves to predict a recession, a Phillips curve to predict inflation, or a flat Beveridge curve to predict the movement in the unemployment rate have all led to mistaken economic forecasts.』

そしてパンデミック前の世界とパンデミック後の世界は違っている可能性があり、過去のルールが必ずしも当てはまるわけではないのは皆様ご案内の通り、って言ってて結局この辺はリセッション警戒してるのか警戒していないのかが謎な説明を行っております。まあ経済が減速しているのは明らかだから注視して政策運営したいし、引き締め政策を続けすぎるのよくない、って認識なんだけどリセッション入りまではしていないよって言いたいんですかね。

『While I don't see the recent data pointing to a recession, I do see some downside risk to employment that I will be watching closely. But at this point, I believe there is substantial evidence that the economy retains the strength and momentum to keep growing, supported by an appropriate loosening of monetary policy.』

とか言ってたらその記載があって、「今はリセッション入りしていないけど、経済が減速しているので、今後金融政策を適切に緩和(引き締めの縮小)していくことが必要である、というのはストロングなエビデンスがある」と仰せでして、要するにそういうことを延々と説明しているの巻でした。

でもって経済情勢の後に物価情勢の話が来まして、

『Let me now turn to the outlook for inflation.』

となりますが、こっちはそこまで長くなくて3パラ分使って説明しています。

『With the labor market cooling, it doesn't surprise me that wage growth has slowed to a pace consistent with the FOMC's price-stability goal, and this is supporting ongoing progress toward that objective. The employment cost index grew at an annualized rate of 3.5 percent from March to June, and the 12-month change was 3.9 percent for private sector workers, the lowest since late 2021.4 Average hourly earnings, reported in today's jobs report, rose at a three-month annualized pace of 3.8 percent in August, the same as the 12-month change.』

労働市場の需給緩和によりおちんぎんの伸びが緩和している(から物価2%に向けて自信ニキ)というのが最初に来まして、

『Inflation in July continued to show progress toward the FOMC's goal.』

7月の物価データも2%に向けて自信ニキあるよ、ということでして、

『The price index for personal consumption expenditures (PCE), the Committee's preferred inflation measure, increased at a monthly pace of 0.2 percent in July for both total and core PCE inflation. Core PCE inflation, which excludes volatile food and energy prices, is a good guide to underlying inflation, and it increased 2.7 percent over the past 12 months. Given the downward trajectory of monthly readings, I also look at the 6- and 3-month annualized rate. These stand at 2.6 percent and 1.7 percent, respectively. These numbers are good news and suggest that our restrictive policy stance has put us on the right path to attain our 2 percent inflation target.』

この辺はPCEデータをコアだの移動平均だのいくつかの角度で説明していますが、要するにワシらの引き締め的な金融政策が物価の沈静化に寄与した、というその前は何でしたっけというマッチポンプにも程がある気がするのでやや図々しいのですが、まあ図々しく自信満々ニキと化しておりまして、

『Looking across the components of inflation, one can see the breadth of the disinflation. Over 50 percent of categories in the total and core market baskets had annualized monthly inflation less than 2.5 percent in August. In fact, the index of core goods prices has reverted to its historical pattern of slight deflation, reflecting normalized supply after the disruptions of the pandemic as well as ongoing technological and productivity advances. Meanwhile, services price inflation has slowed as wage growth has slowed, since labor is a large input for much of the service sector. Overall, I see significant and ongoing progress toward the FOMC's inflation goal that I expect will continue over the remainder of this year.』

物価構成要素の中の説明が最後に来まして、財の項目の全体的な落ち着きだのサービス価格の動向だの、というような話をしております。

ということで以下が昨日ネタにした金融政策の話になりますが、全般として説明が細かいんですけど、なんかもう物価鎮静化には死角が無いし、経済はリセッション入りしていないけどこのまま引き締めを続けるとリセッションのリスクがある、という話になっておりまして、まあ昨日引用したところにあったように、これ当面ウォーラーは利下げ最右翼ってことになりそうですな、というのは把握しました。

#斜めよみ駆け足モードになっておりましてサーセンでございます


〇5年入札ではなくてマニアなエネ特借入金見ますと利上げ織り込みは・・・・・

5年国債の話じゃなくてマニアな話で恐縮至極。

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/energy-result240910.htm
エネルギー対策特別会計の借入金の入札結果

『本日、借入金の入札について、下記のように募入の決定を行いました。
 


1.借入根拠法律及びその条項
 特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第13条第1項

2. 借入日    令和6年9月20日
3. 償還期限   令和7年9月22日
4. 償還方法   令和7年9月22日に一括償還

5. 応募額      4兆422億円
6. 募入決定額   6,402億円
7. 募入最高利率   0.389%
8. 募入最高利率における案分比率  68.0000%
9. 募入平均利率   0.363%』

ということですが、こちらの金利は何ぼですねんという話になりますと、単純に1月会合で利上げ(この場合決定会合が1/24なので新金利適用は1/27)として計算した場合、手前の金利0.25%で計算すると後ろの金利が平均の0.363%の場合0.424%、足切りの0.389%だと0.464%になるので、だいたい1月利上げをほぼほぼ織り込む水準のところがストップの金利になっている、という感じですな。なおその先の利上げは織り込んでいないというのもあるけど。

エネ特借入って期間が1年でちと長くて、どっちかというと6Mで行われる交付税特会借入の方が織り込み度合い見るのにちょうど良い(1年だと「次の次」の話が出てくるから)のですが、いかんせん今月の特会借入は昨日のエネ特1年しかないのでまあこれで見ましょという感じです。

なお、12月利上げ、で計算すると当然ですが後ろの期間が長くなる分だけ後半の換算レートがさがってしまいますので、12月利上げフル織り込みからは遠い結果になっておりますな。


ちなみにドタバタしててスルーした8月のエネ特1年はいくらだったかと言いますとこっちなんですが、

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/energy-result240808.htm
エネルギー対策特別会計の借入金の入札結果(令和6年8月8日入札)

こちらは8/20-8/20で平均0.358%で最高落札が0.396%だったのですが、これをさっきと同じく1月決定会合でベースレートが変わる仮定にして手前を0.25%にした場合後ろの金利が幾らになるかというと、平均の場合は後ろが0.442%で足切りの場合は後ろが0.510%になりますな。

8/8と言えば阿鼻叫喚相場を受けて内田副総裁による株式市場への全面降伏ポツダム宣言受諾講演をぶっこんでおられたのが8/6ですので、うっちーのポツダム宣言受諾の後、ということになりますが、この時と比較しても実は足許では次回利上げの織り込みが微妙に剥落しているというのが見て取れる結果になっておりまして、まあ直近短国入札が別の意味での阿鼻叫喚になっているのが影響しているのかもしれませんが、まあそういう事やぞ、という話でして、うっちーのポツダム宣言受諾はその後の植田さんの国会やら経済財政諮問会議や氷見野さんや高田っちの発言で上書きがされていない、ということでヘイヘイ日銀ビビってるよビビってるよ、というスタンドからの掛け声が聞こえるというお洒落な結果になっております。

ちなみにちょっと関連法規真面目に見た方が良いんですけど、特会借入とかしないで短国発行すればいいじゃないとか言いたくなるんですが、正式には国庫短期証券って、昔のTBとFBを統合発行している物体であって、FBって為券と蔵券と糧券とあと3種類あるのですが、あと3種類は発行されてるの見たことなくて、糧券もハイパーレアアイテム(1回見たことがあったようななかったような)だし蔵券ですらレアアイテム(たまに見たような気がせんでもない)でして、特会ごとに決まっているからこんなんになるんでしょ、というのは発行根拠法が募集要項にあるから根拠法見ればいいんですけど、思わす根拠法見る前に脊髄反射で書いてしまいましたさーせん(暇を見つけて調べておきますが多分銀行とか短資の人(の一部マニア部門)なら知ってると思う)。ちなみに日銀引き受けがろ号で定率募集発行がい号(御用金調達金利なので普通は発行されないのだが)でしたっけ、潜水艦みたいなのが頭につくんですよねw


〇なんかバーゼルがらみでお話をしているような気がするが読んでる時間が無いので頭出しだけ

昨晩はバーゼルがらみが2連発。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/barr20240910a.htm
September 10, 2024

The Next Steps on Capital
Vice Chair for Supervision Michael S. Barr

At the Brookings Institution, Washington, D.


https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bowman20240910a.htm
September 10, 2024

The Future of Stress Testing and the Stress Capital Buffer Framework
Governor Michelle W. Bowman

At the Executive Council of the Banking Law Section of the Federal Bar Association, Washington, D.C

ということで、金融機関の資本規制に関する(お題からして多分資本バッファーに関する新しい枠組みの話)お話をしているようですな、なんかうっかりしてたが今週末連休だし読めるもんなら読んでおくかなという感じです。


今朝はこの辺でご勘弁。






2024/09/10

お題「6MTDBもアイヤー状態/ウォーラー理事の「転向宣言」キタコレということで(9/6講演)」

しかしいつまで夏をやってますのやらというかこれ秋がなくなるんじゃないか疑惑。

〇6MTDB何やってますねん

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240909.htm
国庫短期証券(第1255回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1255回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号       国庫短期証券(第1255回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日        令和6年9月10日
4.償還期限      令和7年3月10日
5.価格競争入札について
(1)応募額         9兆2,013億円
(2)募入決定額    2兆6,905億9,000万円
(3)募入最低価格     99円95銭5厘
(募入最高利回り)     (0.0907%)
(4)募入最低価格における案分比率    97.4185%
(5)募入平均価格     99円95銭7厘
(募入平均利回り)     (0.0867%)』

お、おぅ・・・・・・・・


売参を見ますと、
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

国庫短期証券1255 2025/03/10 平均値単利 0.050

ちなみに償還が前後の銘柄はと言いますと、

国庫短期証券1214 2025/02/20 平均値単利 0.100
国庫短期証券1220 2025/03/21 平均値単利 0.130

この辺の銘柄も引値は前日対比で強くなっている(金曜の売参だと1214が11bp、1220が16bpでした)のですけれども、それにしても何ですかこのレートはというところで、まあ入札空振りショートカバーのなせる業だとは思いますが、毎度毎度どうなってしまっているのこの短国という感じですが、足許のGCと比較しても全然低い水準にある上に、来年3月償還だと12月と1月の決定会合を跨いで少なくとも1か月半近くあるんだぞ(12月ならもっとある)という話ですが、5bpは極端にしても10bpとか何ですのよというところで、短国が短期の指標金利にならなくなってしまう、とかいうことになりますと、これしばらく前に債務管理のなんちゃらかんちゃらで話が出ていた「短期金利フローター国債」の発行をするのかしないのか知らんですけど、商品設計の際に初手で(本来あるべき)3Mまたは6MのTDB利回りが使えなくて、変なリファレンス金利を使って変動金利を充てるという設計にしないといけなくなって、でまあそういうイレギュラーなことをすると、後々だいたい地雷の元になる、という甚だ遺憾なことしか思い浮かばない訳ですなこれがまた。

いやまあ短期フローターったって今日明日にホイホイだせるよなもんじゃないから、その間に日銀の当座預金うんこタワーが削れて短国市場もちゃんと「短期金利の定積分」で利回りが形成される真っ当な市場になっていれば良いのですが、今のままですと短期市場におけるリスクフリー資産としての国債金利が全然政策金利を反映していない状態なので、まあ短期フローターもそうですけど、短期系公社債投信とかでも短期国債という本来最も使われるべき資産への投資利回りがとんでもない低金利ってことですと、そっち方面での商品が(折角金利がプラスになっているのに)広がらないとなって、長い目で見た場合に国債消化主体が多様になって厚みを持った幅広い層が消化していく、というような健全な発展を阻害することになるんですよね、と思う訳ですよ。

とまあ話を無駄に壮大にしてしまいましたが、まあ元はと言えば後先考えずにキチガイ金融緩和をした以下同文なのですが、なんちゅうかこの「政策をやる時にはちゃんと撤収まで考えて政策を実施しろ、特に異例の政策をやる時には」という当たり前の話のツケで全然短国市場がワークしていないという弊害がありますが、まあよく考えてみたら今日5年国入札あるけど5年カレントの利回りはあれ何ですかというお話でもありまして、実はイールドカーブのかなりの部分まで日銀によるキチガイ金融緩和の残滓でエライことになっているし、その長期国債買入の減額とかいう売るでもないしアホみたいな買入をちょっと減らすだけの話なのにあんなにビビってたら世話はない、というお話ではありますな、ナムナム。


・・・・・え?短国入札のたびに同じ話すんなって??こりゃまたすんつれいしましたwwwwww



〇ウォーラー理事の出オチ講演は最後に転向宣言が行われておりました

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20240906a.htm
September 06, 2024

The Time Has Come
Governor Christopher J. Waller

At the University of Notre Dame, Notre Dame, Indiana

昨日あたまだしだけしましたが、本日はショパンの事情であまりお時間がないのでハイパーインスタント読みで勘弁してもらう、ということで最後の「以上の私の認識からしますと金融政策はこのようになります」といまとめ部分をインスタント読みということで(滝汗)。

最後の4パラである。

・ウォーラーの経済物価のアウトルックをかっ飛ばしてそれを前提にした結論を(汗)

『Now let me discuss the implications of this outlook for monetary policy.』

前の部分はネタにする時間があったらネタにします。

『As I said at the outset, considering the achieved and continuing progress on inflation and moderation in the labor market, I believe the time has come to lower the target range for the federal funds rate at our upcoming meeting.』

はい、「the time has come」ですな。

『Reducing the policy rate now is consistent with many versions of the Taylor rule, which suggest reducing the policy rate is appropriate given the data in hand.』

でまあこういうときにテイラールールをだすのは中銀文学の得意技でして、テイラールールとか所詮は置きによって何とでもなる(=それなりの幅で「適正金利」の結果を操作できる)ものなので、てめえらの政策に都合のいい屁理屈として使われる、というのが仕様でして、中銀文学でこれが出てくるのは別に客観的なエビデンスではなくて意思を持った鉛筆舐め舐めが行われている際に使われるものです(もちろん意思をもった鉛筆舐め舐めですという阿呆はいなくて客観的なエビデンスの振りをして出しますがw)。

でまあ利下げの時期が来た、ということですがその次のパラに参りますと、

・利下げするにしても「一回下げて様子見」ではないよさらに下げるよとの由

『Furthermore, I do not expect this first cut to be the last.』

「一回下げて様子を見てみる」という(ECBの一発目の時のような)アプローチではなくて、「一回下げるならその後も下げます」とぶっこんでいるのもこりゃまた決め打ちしていますね。

『With inflation and employment near our longer-run goals and the labor market moderating, it is likely that a series of reductions will be appropriate.』

インフレと雇用がロンガーランのゴールに近いうえに労働市場が軟化しているので、という結構な決め打ちで理由をぶっこんでいるのもなかなか勝負入ってるじゃん、と思うのですけれども、そのような理由なので利下げは「利下げシリーズですわよオーホッホッホッホ」ということでこれまたエライ勝負してるなFEDちゃんよ、と思うのですが、これはもう利下げヒャッハーで個人消費が強くなって物価が下がらんどころかまた上昇しだしてFED真っ青というのが一番面白そうなので(他人事だと思って超不謹慎にもほどがあります)そうならんかなあと今からワクワクチンチン。

『I believe there is sufficient room to cut the policy rate and still remain somewhat restrictive to ensure inflation continues on the path to our 2 percent target.』

それだけ威勢の良い(利下げだからある意味威勢良くないのだが)事いっておいて最後にしらっと逃げを打ってるのがチャーミングで、最後のところでしらっと「物価が2%目標に進むためには引き締め的である必要がある」というのを入れていて、ただし「相当利下げしても引き締め的な状態なのでOKOK」という話をしている、という辺りは、さすがに自信満々ニキのフラグ建築というのを気にしたんでしょうかねえ、知らんけど。


・利下げペースに関しては難しい課題と言いつつ利下げの遅れのリスクをより警戒していますなあ

次のパラに参ります。

『Determining the appropriate pace at which to reduce policy restrictiveness will be challenging.』

時刻到来である、利下げは1回では終わらない、利下げをする余地は十分にある、と前の2つのパラグラフでめちゃめちゃ威勢の良い事を言ったと思ったら3番目のパラの頭は「利下げの適切なペースを決めるのはチャレンジングだ」と来ましたが何すかこれは、ということで以下鑑賞。

『Choosing a slower pace of rate cuts gives time to gradually assess whether the neutral rate has in fact risen, but at the risk of moving too slowly and putting the labor market at risk.』

でまあここでウォーラー理事、先に「利下げペースが遅すぎると労働市場をリスクにさらす」というのを先に説明して、

『Cutting the policy rate at a faster pace means a greater likelihood of achieving a soft landing but at the risk of overshooting on rate cuts if the neutral rate has in fact risen above its pre-pandemic level. This would cause an undesired loosening of monetary policy.』

その後に「利下げペースが速すぎると中立金利が実は上昇していたというときにやりすぎを発生させてアカンタレになるリスクがある」という説明をしているのですが、こんなんどう見たって前者のリスクの方が現実に近い書き方をしているので、利下げをあまりちんたらやっていくことはないですよ、と言ってるようなもんですな、はーこりゃこりゃ。

でもって次のパラが最後です。

『Determining the pace of rate cuts and ultimately the total reduction in the policy rate are decisions that lie in the future.』

利下げのペースをどうするのかというのと、利下げをどの水準まで行うのか、というのは今後の課題で今後検討して決めていきますよ、とパラの頭に前置きが来まして、

『As of today, I believe it is important to start the rate cutting process at our next meeting.』

次回利下げ宣言キタコレ。まあそれ自体は市場様完全に織り込んでいるのでこれ言ったからどうという話ではないけど今の時点で。

『If subsequent data show a significant deterioration in the labor market, the FOMC can act quickly and forcefully to adjust monetary policy.』

今後の経済データが著しい労働市場の悪化を示すようであればFEDは早く強力に利下げを実施すべきである、と来ましたが雇用統計の評価はどうだったんでしょうね(講演は9/6だがまあ雇用統計は織り込まないで書いていると思うんだが本編は精読していないのでそこは謎)。

でまあそういう訳ですので、

『I am open-minded about the size and pace of cuts, which will be based on what the data tell us about the evolution of the economy, and not on any pre-conceived notion of how and when the Committee should act.』

私はオープンマインドです現時点で何か将来のパスを決め打ちしているわけではないです、ということを説明していますが、まあ「I am open-minded about the size and pace of cuts」と言われたら9月の大幅利下げも労働市場に対するデータ次第ではありますよ、と言っているのにも等しいということになりますね。

・最後はウォーラー理事の「転向宣言」である

『If the data supports cuts at consecutive meetings, then I believe it will be appropriate to cut at consecutive meetings.』

どっかの進次郎話法みたいな言い方ですが連続利下げが適切というデータが出るなら連続利下げをするのが適切だと思います、ってなんか間抜けな言い方ですけど、要はおっちゃん連続利下げ行くぜヒャッハーという気分なんでしょうね。

『If the data suggests the need for larger cuts, then I will support that as well.』

挙句に大きな利下げが必要というデータが出るなら私は大きな利下げを主張する、とまあ威勢がいい(ある意味悪いんだが)お話をしておりますがこの次に・・・・・・・・・

『I was a big advocate of front-loading rate hikes when inflation accelerated in 2022, and I will be an advocate of front-loading rate cuts if that is appropriate.』

転び宣言キターーーーーーーーーー

ということで、何言ってるかというと「私は2022年には最もレート上げろと言いまくる人だったが、今後はもしそれが適切ならば最もレート下げろという人になります」という転び宣言やって来ましたということでありまして、

『Those decisions will be determined by new data and how it adds to the totality of the data and shapes my understanding of economic conditions. While I expect that these cuts will be done carefully as the economy and employment continue to grow, in the context of stable inflation, I stand ready to act promptly to support the economy as needed.』

ということで終わっているのですが、全力で転向宣言して決め打ちしまっくっているのに、「While I expect that these cuts will be done carefully 」ってなんの寝言だよお前決め打ちしててcarefullyも蜂の頭もあるかよって気がしますが、まあ一応引き締め局面ではこの方当たっていたので、まあそうなのですかねえと思いながら見ていこうかと思います。

つーことで今朝はショパンの事情で時間がアレにつきここで勘弁していただきとう存じます(平伏)。







2024/09/09

お題「雇用統計メモ/ツトムちゃんはまた怪電波を発信/高田審議委員金懇会見」

最初の2つはまあマクラの積りが長くなった物件です^^

〇雇用統計ちゃんメモ(マクラにするつもりだったが長くなったので小見出しつける)

雇用統計ちゃん
https://jp.reuters.com/markets/commodities/CNWN3VZVFJJ3ZIS46VOZFK4AV4-2024-09-06/
NY市場サマリー(6日)ドル高、株安 利回り低下
By ロイター編集
2024年9月7日午前 6:25 GMT+9

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-06/SJEQK4DWLU6800
【米国市況】株下落、米雇用統計で景気懸念再燃−ドル一時141円78銭
Rita Nazareth
2024年9月7日 5:33 JST

ということでしたが、夜間の先物ちゃんを見ますと、

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_night
先物価格情報(夜間取引)

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=101.555/O
日経225先物(ラージ) 24年9月限

取引日 2024/09/09
立会区分 日通し(引用者追記:日通しですが週末の夜間取引です)
始値 36,140 (09/06)(16:30)
高値 36,670 (09/06)(22:35) 
安値 35,120 (09/07)(00:20)
現在値 35,150 (09/07)(06:00)  
前日比 -1,210(-3.32%)
取引高 30,237

と日経平均先物ちゃんは威勢良く下がるも円債ちゃんは(円債ちゃんは夜間の日中チャートが
なぜか出せないという謎仕様なのでURL貼れませんが)、

長期国債先物 24年9月限

取引日 2024/09/09
立会区分 夜間取引
始値 145.19 (09/06)(15:30)
高値 145.41 (09/06)(21:32) 
安値 144.81 (09/06)(22:36)
現在値 144.98 (09/07)(05:54)  
前日比 -0.20
取引高 18,658

ということで株安債券安でなぜか円高という面白反応になっておりますな、なんのこっちゃ。



〇これはひどい(某つとむちゃん)

これまたマクラにしようとしたが独立小見出しをつけてしまった。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-06/SJBOSMT1UM0W00
日銀の次回利上げ、市場予想より前倒しの可能性−渡辺東大教授
梅川崇、藤岡徹
2024年9月6日 9:50 JST

『不況などのショックが訪れた際の準備として考えると、「今利上げしておくというのは理屈がないことではない」としつつ、「日銀にはやはり金利を上げたいというDNAがある」と分析した。』(上記URL先より)

ついこの前は
https://diamond.jp/articles/-/348830
日銀の追加利上げは「全く理解できない」物価研究の第一人者が警鐘、「初歩的な経済学から逸脱」
渡辺努 東京大学大学院経済学研究科教授インタビュー
ダイヤモンド編集部

永吉泰貴:記者
連載
渡辺努 物価の教室
2024.8.16 8:30

『7月31日の日本銀行の追加利上げについて、物価研究の第一人者である渡辺努・東大教授は「利上げの時期が適切か否かというレベル以前に、経済学の初歩的な観点から全く理解できない」と厳しく批判した。その真意と、追加利上げが今後の物価に与える影響について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)』(上記URL先より)

・・・・・しかも今回のBBGで言ってる話、ナンジャソラという説明だし、元日銀で東大教授って肩書(さらに肩書について申し上げれば「物価研究の第一人者」には日銀出身でそう呼ばれるにふさわしい方が他にいるんですけどねえ)でこのような不誠実な発言を連発するのって、日銀にも東大にもついでに言えば経済学という学問全体にとってもレピュテーションを下げまくっている(少なくとも円債市場の中の人は呆れまくっておりますよ)訳で、まあこのオッサンに変な権威付けをするとレピュテーションリスクが高まるだけなので、日銀は未来永劫コンファランスとかそういう日銀主催のイベントに呼ばないことをお勧めしたいですな。

いやマジでなんなのこのオッサン・・・・・・



〇3M短国ェ・・・・・・・

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240906.htm
国庫短期証券(第1254回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1254回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号    国庫短期証券(第1254回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日     令和6年9月9日
4.償還期限   令和6年12月9日
5.価格競争入札について
(1)応募額          14兆5,609億円
(2)募入決定額     3兆4,686億7,000万円
(3)募入最低価格    99円97銭9厘5毛
(募入最高利回り)     (0.0822%)
(4)募入最低価格における案分比率  83.1090%
(5)募入平均価格    99円98銭0厘6毛
(募入平均利回り)     (0.0778%)』

・・・・・(;゚д゚)

なんですかこの平均7.78bp足切り8.22bpってのは、って感じでして、いや確かに発行3000減ったんだが、それでここまで強くせんでもええじゃろという話ではあるのですけれども、短国の困ったところは、最近明らかに「入札がセカンダリーよりも強い」という傾向になってきていることでして、これってどういうことかというと、セカンダリーでチマチマと売買するのに対してドカンとロットで売買(というか買いだが)をしようとすると入札(短国は日銀買入が行われていないので入札の方だけ)で突っ込んでロットを確保しに行く、というムーブになっている訳でして、これって「実は流動性が無い債券」の典型的な動きなんですよね、入札がクソ強くて輪番がクソ弱い物国というのがあって、あれはまあ過激な例になりますが、こう入札が突出して強いと短国の流動性低下が懸念されるわけです。

まあ何でもいいから(資金繰り債なんだから発行側がその気になれば出せるじゃろホレホレ)増発しろや減額とかもっての外、と言いたい訳ですが、そもそも日銀の当座預金残高が以下同文なので悪態割愛。

今日は6Mがあるのですがなんかもう結果見たくないわwwwwwwww


〇高田審議委員金懇会見でもまあ市場の安定の話聞かれる聞かれる

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240906a.pdf
高田審議委員記者会見
――2024年9月5日(木)午後2時30分から約35分
於 金沢市

・早速市場の安定不安定について聞かれるの巻

幹事社による「本日はどうでしたか」というのの次の実質的な質問一発目が早速これである。

『(問)高田委員にお伺いしたいんですけれども、今回の講演の中でも株式市場などの大幅な変動についてのお話があったと思いますが、現在、金融資本市場は不安定だという認識でいらっしゃるのかご見解を教えてください。』

ついでにこの人の質問続けて引用しますが、

『また、政策金利の引き上げについてもお伺いしたいです。十分な時間をかけるというご発言もありましたが、具体的なイメージはありますでしょうか。』

『そして、政策金利の引き上げについて、経済・物価や金融の情勢を検証しながら対応するのが現実的だというお話がありました。7 月に利上げしたとき、検証が不足していたという意味、そういった認識はあるのでしょうか。こちらも併せて教えてください。』

最後のはもうちょっと露骨に「その後の市場の反応を見ると検証が不足していたから大きな動きがあったのではないかとお考えでしょうか」とか聞いても良かったんでネーノ。

高田さんの回答。

『(答)不安定ということについてみると、特に 8 月以降ということになりますか、海外なかんずくアメリカ経済のところに対する見通しというんでしょうか、これがグローバルにも随分と意見が分かれたということじゃないかと思うんです。』

って回答をしているんですよね。つまり、

『そうしたところが世界的な市場のボラティリティを高めたわけで、そういう意味からすると月毎に、経済指標が大体出てくるのが主でありますので、今二巡目が始まっているような状況だと思うんです。』

ということで日銀のせいじゃないよと暗に言ってまして、それはそれでそういうのはわかるんですけれども、そういう話をしだすと、じゃあ日銀は海外要因で市場が変動している時に政策変更を躊躇するというお話になってしまう訳でして、いやそうじゃないでしょまずは国内物価の安定に対して問題があるような状況なら政策を変更するでしょというツッコミを入れたくなるわけでして、まあこれ高田さんが悪いんじゃなくて、完全に市場従属ですよってひっくり返ってワンワンと降参のポーズを取った内田副総裁のあの情報発信が悪いんですけど、米国経済に対する市場の思惑で金融市場が動いている時には政策変更しない、ってアホの極みみたいな話になってしまう訳ですよね。

『もちろん 8 月の頭ほどではありませんけれども、ややボラティリティが高まりやすい動きが生じています。同じようなモノの見方というか、アメリカ経済の減速に関していうと、やや 8 月ほど高まっているわけではありませんけれども、それに類する動きが足元も生じているということは確かなんだろうと思っています。そういう意味では多少収まってきているとは言いながらも、少しずつ変動がという動きはあるかと思っています。』

ということなんですが、そもそも論として市場なんて毎度毎度先行きの思惑で大きく動くことなんてあるわけですし、日銀の政策修正の思惑でだって大きく動くこともあるわけで、市場が大きく変動したから本来実施すべき政策を行いません、というのは無茶苦茶にも程がある馬鹿説明でして、その場しのぎにしたって言って良い事と悪いことがあるわけで、そういう最低限守るべきラインを踏み越えた内田副総裁講演は後々どころか早速禍根を残しておる次第。

さて先ほどの質問の後半2つに関してですが、

『それから政策金利の引き上げのところについては、十分な時間ということで申し上げましたけれども、この十分というところに関しては、別に特定の時間を指しているわけではございません。』

じゃあ「十分な時間をかける」って言う必要ないじゃん。

『私が今日の金融経済懇談会のところで申し上げたのは、政策金利、特に中立金利と言われているところに例えば目標みたいなものがあってそこにポンというようなことではなくて、やはり毎回毎回の経済の状況をみながら対応していくということに尽きるということだと思っておりますので、そういう意味で十分な時間をと申し上げたということです。』

毎回毎回検討するのと「十分な時間を」というのではずいぶん言ってることが違いやせんですかねえ。ということで3番目ですがまあこれは比較的どうでもよくて、

『検証をしながらというような状況であるとすれば、7 月にも私どもは調整したわけでありますけれども、そこの段階でも当然のことながら様々な検証をしながら調整を行ったということであります。決して検証が不足していたということではありません。当然のことながら今後に関しても毎回毎回、検証活動をしながら、最善を尽くして対応していきたいと思っているところであります。』

まあこれはこう回答するわな。


・市場が動いていると利上げはしないのかという露骨質問来ますよね〜

次の人。

『(問)先ほどの質問にも関連するのですが、8 月前半に大きなマーケットの変動が生じた影響を当面は見極める必要があるということですが、確認なんですけれども、やっぱり市場が不安定な間は再利上げっていうのは更なるボラティリティを生じてしまうので難しい、っていうことなのかという点が一点目です。』

露骨プレイキタコレですな。

これ従来(7月利上げ前)であれば、「諸外国と異なって日本は物価が大きく上振れするリスクが小さく、基調的物価は徐々に2%に向かって上昇している段階なので、政策調整する際に急いで実施する必要がなく、したがって内外金融市場が不安定な時に敢えて政策調整をする必要はない」でよかったのですが、7月利上げの際には為替を意識したんでしょうけど、為替とそれに伴う物価上振れリスクに思いっきり言及しているので、本来は物価上振れリスクがあるというのであれば、状況によっては金融市場がどうであれ対応しないといけないタイミングがある、ということになるんですよね。

でまあこの質問の後半、そのあたりを念頭に置いてるんだったら中々お洒落なのですが、物価の上振れリスクについて聞いています。

『二点目は、こうした市場変動はやはり経済には下振れリスクになると思われますが、一方で、ご講演では値上げの波がまた再燃して、今年度の下期には、そちらが到来するのではと、どちらかというと、物価の上振れリスクになり得る点についても述べられています。政策運営上、どちらが、より今大きいリスクというふうに認識されているのか、ご見解をお願いします。』

物価上振れがリスクとして大きいんだったら「市場が不安定」云々って説明はおかしいということになる、という諸葛孔明の罠みたいな質問ですね。


高田さんの回答。

『(答)こういう変動が 8 月以降生じたという中で言えば、今日の文言の中でも申し上げたんですけれども、きわめて高い緊張感を持って注視していくということに尽きると思うんです。』

結局これである。

『ですから、当然のことながら、基本的な考え方としては、物価それから経済の見通しが実現していくということであれば、金融緩和の度合いをその時々に応じて調節していくというのが基本姿勢であることは間違いないです。』

とは言ってますが、

『ただ一方で、金融とか資本市場の動向というものが、当然その前提である大目的である物価それから経済の見通しのリスク等に及ぼす影響が生じるということであるとすれば、当然、そこのところを考えざるを得ないということになるわけです。』

はいはいチキンチキン。

『あくまでも、基本的な姿勢としてわれわれは考えているわけでありますが、条件付きであるということはもう間違いないというふうに思っていますので、そういう意味で毎回毎回検証していくということになると思っています。』

「条件付きであるということはもう間違いない」とはこれまたヘイヘイピッチャービビってるよビビってるよというやつですな、南無三。

リスクに関してはこんな回答をしていまして、

『それから当然のことながら、いろんなリスクがあるわけでありまして、例えば、物価においても、4 月とか 10 月のタイミングにおいて値上げがあるということは、当然のことながらリスクであります。』

節子、それはリスクちゃう、好循環や。

という筈なんですけど、それをリスクとか言ってしまっている時点でナンジャソラというか、まあ2%物価安定目標を標榜しているのに肝心の脳の方がそっちに順応してないんじゃないのかね、とこの部分を見て思ってしまいました。

『また、われわれもいろいろヒアリング等をしておりますと、10 月のところにいろんな品目の値上げがもう既に予定されているとか、これも完全に決まったわけではないんでしょうけれども、ある程度こうしたものがあるというのはリストとして上がっているのは確かであります。』

で?

『ただ、こういう動きというのは、われわれもずっと考えておりましたけれども、為替のところが円安に振れている中で、上振れしやすい部分もあったと思いますから、そういう面でコストプッシュの要因で、下期に向けてもというところもあったと思います。為替のところもこの 1 か月間で変動もしておりますから、そういう面も受けた中で、どういう方向になるのかというところに関しては、また新たな目で見る必要も出てくるんだろうなと思っています。』

この高田っちの言い方ですと、全然好循環の存在を意識していないような説明になっていまして、いやそれって違うんじゃないのと思ってしまいます。

『ですから、物価ですとか、リスク要因とか、その辺のところについては、必ずしも上か下かという、白か黒かというものではないと思うんですけれども、多少この 1 か月間で変動があった部分、もしくは環境の変化があった部分もあるので、その部分をもう一回見極めながら考えていきたいと思っているところです。』

まあさっきからずっとそうなんですが、高田っちってハト派とかタカ派とかいう以前にチキン派という方が適切なんじゃねえのって感じでして、節目節目の説明がチキンで、しかもここまでの質問でも結局方向性を持った回答は全然していない訳でして、うーん何なんですかねえって感じです。


・という訳で好循環に関して質問されるのだが

こんなんありました(この質問の後半部分は次に)

『(問)二つ伺いたいと思います。一つは、7 月会合時点と比べた賃金と物価の好循環の強まり度合いは、今、いかがでしょうか。そして、今後それを確認するために、どういう指標をご覧になるのか伺えたらと思います。(後半割愛)』

なるほど。では高田さんどう回答しましたかと言いますと、

『(答)7 月会合の時の物価と賃金の好循環というところに関しては、今日私の金融経済懇談会の中での議論というんでしょうか、そこのところも企業のバランスシートですとか、それから損益計算書、こうしたところの好循環、もしくは前向きな動きというふうに言ってもいいかもしれませんね、そうしたところを中心に申し上げましたので、そういう点で、私はあまり変化があるとも思っていません。』

進展してないのかよ、と思ったら

『そういう意味では、着実にそういう前向きな動きになってきているんじゃないかなと思っているところであります。』

うーん結局何が言いたいんだろう、と思いますが高田さん返す刀で、

『ただ、先ほど頂いた質問の中の議論の繰り返しにはなってしまうんですけれども、こういう中で物価、それから経済の見通しというところに関して、当然、様々なリスク要因が与える影響も出てまいります。』

うへーやる気ねえな。

『先ほど申し上げた損益計算書、バランスシートというところにも出てまいりますので、その辺のところについては予断なくというか、丹念にみていきたい。特に、こういう変化の時期においては、高い緊張感を持って注視していきたいなと思うところであります。(後半割愛)』

何ちゅうか結局なんも答えてないのよね高田さん・・・・・・・


・中立金利は案の定質問されるの巻

氷見野さんの金懇で中立金利についての愚劣な質疑に悪態をついたのが聞こえたのかどうか知らんですけど今回中立金利の質問これとあと1個だけでしたなwwwwwwwwww

『(問)(前半割愛)二点目は、今朝の講演で、まだ緩和的な金融環境はなお継続しているとおっしゃったんですけれども、高田さんがお考えの中立金利の水準は、数値として、今どれくらいでしょうか。』

中立金利に達しているだの達していないだのというのを講演でお話をしたんならそら質問するよね、というお話ですがこの回答は・・・・・・

『(答)(前半割愛)二番目のご質問ですけれども、緩和的な状況ということで今日の懇談会の中でも、実質金利が相当低いというような話をさせて頂きましたし、また一方で、中立金利という概念を考えた場合に低いのではないかということを申し上げました。』

これもまあ元はと言えば日銀大本営が最初のマイナス解除の時に「金融政策は緩和的な状況が続く」ってのを(長期金利上昇が怖いから)積極的にアピールしてしまった(その結果ドル円が160円に飛んで行ったわけですが)のが「やり過ぎコミュニケーション」であり、その後円安是正の意味もありつつ政策調整を行う際に、当初の「緩和的な状況云々」との説明との整合性を取るために持ち出して来ているのがこの中立金利だの実質金利だのの話でして、本来はもっとフワッとした形で「そうは言ってもまだ緩和的ですよね、今の状況見て引き締め的とは思わないよね」くらいの定性的な話にすればよかったのに、実質金利は大幅なマイナス、みたいな定量的な物言いをするもんだから、毎度毎度皆さんがこうやって質問される羽目になっている訳ですよ。

ということで高田っちも、

『ただ、この議論は、いろんな方からご質問を頂くことになるんですが、』

とイヤミの一つもぶっこみたくなるわけですなw

『中立金利という概念にはなかなか幅があって、ピンポイントでということでもないんです。』

はい。

『今日の私の資料の中にも、これだけの幅みたいなところでの議論はありますけれども、逆に言えば、相当幅があるんだよということを皆さんに申し上げたかったというところが趣旨でありまして、』

んだんだ。

『あまり明確に水準といいましょうか、それから私もこの半世紀ぐらい市場をみておりますが、正直申し上げて、この中立金利という概念をこれまで議論してきて、理論的にはある概念ではあるんですが、実務的にはなかなか難しい概念だなというのも実感しているところであります。』

これは仰る通りなのでして、つまりはこの中立金利だの実質金利だのを前面に押し出して説明をしまくっている大本営に問題が大有りなんですよね。

『ですから特に日本のように、今日の私の懇談会の中でのテーマでもあるのですが、過去という中でこの 30 年間ぐらいの[金利が]もうほとんどゼロもしくはマイナスのような状況の中で、いろんな試算をしてもですね、パッとした議論というのになかなかなりにくいというのが現実の問題です。』

『海外のように比較的アップダウンというか、シクリカルに変動がある状況であれば、一定の水準というところにある程度、この 10 年、20 年の中で線を引くことも、一つの対応としてはあり得るということかもしれませんが、』

ということでして、海外のようにもともとが経済のサイクルが通常ベースで回る中で、物価安定目標近辺でインフレ期待が安定しており、実際の物価もサイクル描きながら推移している、という時点でやっと中立金利の話が実務的にできないわけでもない、という世界になるわけで、これからそれをしようという日本では中立金利の話を持ち出してくるのに無理がある、ってお話ですわな。つまり、

『残念ながら日本の場合は、今申し上げたような 30 年間、こうした状況の中での対応ということからしますと、その水準というのは相当慎重に、もしくは幅を持って考えていかないといけない概念であるし、実務的にこれということにはなかなかなりづらいというのが一つの考え方なんではないかと思っております。今のお答えのところもそれが趣旨だということで申し上げればというふうに思っています。』

まあさすがにここの説明は高田さん分かりやすく説明していますよね、という感じでした。金融政策運営に関わりそうな部分では回答を華麗に逃げているようなムーブでしたがさすがにこっちはね。


〇ウォーラー理事が講演をしていたようですが(予告編というか備忘メモ)

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20240906a.htm
September 06, 2024

The Time Has Come

Governor Christopher J. Waller
At the University of Notre Dame, Notre Dame, Indiana

題名が「The Time Has Come」とか出オチにも程があるのですが、金融政策運営に関しては、上記URL先の講演テキスト中、最後の4パラグラフにあります(パラの頭が「Now let me discuss the implications of this outlook for monetary policy.」ってなっているところ以降)ので、インスタント読みをしたい場合はその4パラを見ておけばよろしいかと思います。

ってワイ、時間が足りなくて今日はパスします明日で勘弁島倉千代子。






2024/09/06

お題「高田審議委員金沢金懇だが案の定今後の政策修正には受動的なスタンスと見ました」

米の品薄が話題ですがその一方で、
https://www.agrinews.co.jp/news/index/257030
2024年9月6日
米農家の倒産・廃業 24年 進まぬ価格転嫁、経営圧迫

『背景にあるのが生産コストの高止まりだ。農水省の7月の農業物価指数(20年の平均価格を100)は、肥料が139、農薬は115、光熱動力は132と高騰する一方、米は95と低迷している。』(上記URL先より)

Oh・・・・・・・・


〇高田審議委員の金懇講演は今後の政策調整に対しての主体性を一切感じず残念なことです

HTML版
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240905a.htm

PDF版
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240905a1.pdf

でまあ今回HTML版とPDF版が同時公表されていまして、コピペにはHTMLの方が便利なので
引用はHTML版から行います。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240905a.htm
【挨拶】わが国の経済・物価情勢と金融政策
石川県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 高田 創
2024年9月5日


・案の定ではあるが今後の政策調整を主体的に進めようという意思は見られません

前回の高田さんの金懇は2/29に実施されていまして、2/29と言えば1月決定会合で予告ホームランチックなものが打ち出されていた後、ということでして、それまで高田さん何で守りに入っているのかさっぱり意味不明ながらまるっきり踏み込んだ発言とかオリジナリティある発言とかしなくて、債券市場のマーケットエコノミスト出身者というカテゴリー(過去は水野温氏さん、佐藤健裕さんという寄らば斬るぞというファンキー(褒めてる)な方々でしたな)なのに何ですかこれはというテイタラクでございましたが、2月の金懇少しだけ踏み込んでいたのでまとめでこんなこと書いたんですよね。

(3月1日に書いた駄文より引用開始)
「しかしまあ何ですな、この前の金懇でも高田さん歴史的な話をしてた割に別に面白い話があった訳でもなくて、多角的レビューということで25年レビューの話をしているのですが、あーたの25年はナンダッタノカと小一時間問い詰めたくなるのをまあ我慢しておるというような状態ですわwwwwwwww

あ、あと会見でも微妙に踏み込み気味の言い方になっていまして、これはまあ「緩和的な環境が続く」というのが効きすぎて特に他市場がヒャッハーヒャッハー言ってるのに対してちょっと水を差しておく必要があるんじゃないか、という人形使いの意志らしきものを感じたのはアタクシの超個人的偏った感想ですが一応そういう読み筋ですというのを申し上げておきます(この前の植田さんの国会答弁も然りで)」
(ここまで3月1日に書いた駄文)

・・・・踏み込んではいるもののご自身の意思というよりは腹話術人形遣いの意図とかアタクシも大概にボロカス申しておりますが、まあ高田さんへの期待値の高さがあったからこうなっておるわけでございますな。

でまあそんなこんなで、今回もそんなに期待してはいなかった(むしろ今回の金懇で踏み込みが出るのを期待している市場の一部の方が健忘症にも程がある)のですが、案の定今回も小見出しの通りで、「主体的に金融緩和の修正を推進しようという意思を全く感じない」という素敵な金懇挨拶(会見もそうですがそちらは会見録でましたら週明けにでも)になっておりました。


ということでまとめを先に出オチにしてしまいましたが中身を鑑賞鑑賞。

・輪番に関しては公式説明をしたあと積極的な話をするかと思えば全然しないのが高田っちクオリティ

てな訳で『2.経済・物価情勢』はかっ飛ばして『3.最近の金融政策運営』の部分から参ります。このコーナーを最初から引用しますが、

『次に、金融政策運営に対する考えをお話しします。日本銀行は、今年3月の金融政策決定会合で、「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、金融政策の枠組みの見直しを行いました。イールドカーブ・コントロールの枠組みおよびマイナス金利政策といった大規模な金融緩和はその役割を果たしたことから撤廃し、短期金利の操作を主たる政策手段として、「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現に向けて、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営することにしています。』

ってのはまあどうでも良いのですがこの次に輪番の話があって、

『更に、7月の金融政策決定会合で、市場参加者の意見も参考にしつつ、2026年3月までの国債買入れの減額計画を決定しました(図表8)。長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、国債買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切との考え方に基づき、相応の規模となる減額計画を策定したところです。』

とは言ってるんですが、この次がもう腰が砕けるわけでして、

『ただし、日本銀行のバランスシート規模は大きく、今後もかなりの期間にわたってバランスシートの縮小を続けることが予測されるため、現時点では、最終的な国債保有残高やバランスシートをどこまで縮小するのが望ましいかを議論することは難しい点も指摘したいと思います。海外中央銀行が既に保有債券額の削減を進めてきており、こうした事例も参考にしていく必要があります。』

なんすかこのやる気のない説明は、というところでして、いやそもそも論として通常の金融政策運営を行うにあたっては、成長通貨供給に必要な残高+短期金融市場のオペレーションの都合上必要な当座預金残高の底だまり部分以上に長期国債を買う意味は一切存在しないのですから、債券市場とかマネーマーケットとか見てたという触れ込みの人だったら初手はその原則論をぶち上げて、その後に現実論としまして黒田とかいうスカポンタンが日銀当座預金のうんこタワーを積み上げてしまったので、これを一気に崩すとそこら中にうんこが飛び散って悲惨なことになるからそういう訳にはいかなくて、という話をしろよ(うんこタワーとか金懇で言ったら事故だけどwww)という流れで話をするもんだろというところでして、初手でべき論を言わない時点で腰の引け方が半端ないのがよくわかりますね。


・政策金利の調整に関しても腰の引け方が半端ないのだがその前に実質金利論があったので雑感

とまあ輪番減額に対して「ワイが主体的に減額の議論をリードする」とかいうような気概を1ミクロンも感じない残念なコメントの次に政策金利の方の話になるのですが、

『加えて、主な政策手段である短期金利については、0.25%程度への引き上げを決定しました(図表9)。これまで示してきた経済・物価見通しに概ね沿って推移する一方、物価上振れのリスクに注意する必要がある状況を踏まえ、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現との観点から、金融緩和の度合いを調整することが適当と判断しました。』

公式見解通り。

『政策金利を引き上げましたが、金融緩和度合いを評価するうえでは、実質金利と比較する対象となる自然利子率の把握が重要となります。』

『もっとも、自然利子率は、現実の世界で直接観察できるデータではなく、様々な手法で推計した結果をみても大きなばらつきがあり、足もとの水準をピンポイントで把握することは極めて困難です(図表10)。』

自然利子率の把握って金融政策運営の実務的観点から言えばそれ無理って話で、金融政策を実施していく中でその波及状況と、経済への影響を見ながら今の政策が緩和的なのか中立的なのか引き締め的なのかを結果から逆算して判断していく(ので自然利子率の把握に無駄に拘ろうとすると政策が常にビハインドになってしまうリスクがある)しかないですし、インフレ期待がインフレ目標近辺で長期にわたってアンカーされていて、実際のインフレ率もインフレ目標近辺でサイクルをもって回っている、というような一種の定常状態だったら自然利子率が何となく推計できるかもしれないけど、今の日本の場合はインフレ期待を変化させようとしている(もうしちゃってるんじゃないか説もあるがそこらはさておきまして)という政策をしているんですから、そもそも論として自然利子率云々の話を持ち出すのは話がややこしくなるだけだからあんまりこれ言い出さない方が良いと思うのです。

では何で大本営はこういう話をするのかといえば(っていつの間にか高田っちじゃなくて主語が人形遣いになっていますが気にしない気にしない)、以下にありますように、

『ただし、こうした様々な試算結果と比べても、足もとの実質金利は自然利子率を下回っており、政策金利引き上げ後も、緩和的な金融環境はなお継続しているとみています(図表11)。』

結局ですね、大本営が実質金利の話を持ち出しているのって、マイナス金利解除直前から続いている複雑骨折コミュニケーション、すなわち「マイナス金利を解除しても緩和的な金融環境を続けます」⇒「今後見通し達成が進展してきたら利上げを継続します」っていう流れ、これ初手で「緩和的な環境を続けます」を強く言いすぎたのが元凶で、3月は兎も角4月展望で軌道修正しないといけなかったのに、4月展望でさらに緩和アピールを加速させてしまったようなコミュニケーションをしたのがすべての間違いのもとなんですけど、まあこの複雑骨折コミュニケーションの帳尻を合わせに行くため(と政治方面からうっとおしい蠅が飛んでこないようにするため)に「利上げしても緩和的な状態は続いている」アピールをすることになってしまい、そこで実質金利の話を出すことになってしまったので、結果的に中立金利はいくらか、というデギンドス副総裁の頭髪並みの不毛な質疑応答が繰り返され、このような説明が行われることになっているんですよね。

とまあそういう訳ですので、政策調整の過程において実質金利がどうのこうのって話はこれからも説明で使うんでしょうけれども、あくまでも金融政策アクションという結果から後付けして説明している道具に過ぎないのであって、日銀が実質金利の話をしているからと言ってクソ真面目に実質金利あるいは中立金利水準の推計をしようとかいう作業を下々の市場の中の人たちが行うのは、カシュカリ総裁の頭髪並みに不毛な作業になると思うの。まあ目くらましの説明に便利なのはその通りなんで、あくまでも目くらましだと思って使うんだったらそれはそれでアリだと思いますけどね、と身も蓋もない中立金利雑談でした。


・追加の金融政策調整(利上げ)に関しては腰が引けてる引けてる

すいません脱線しました話戻って高田っちの金懇挨拶のこの先に参りますと、

『8月前半に株式・為替相場の大幅な変動が生じその影響が残存するだけに、当面はその動向を注視し影響を見極める必要があります。そのうえで、緩和的な金融環境が続くもと、私自身としては、先行きについても、物価が概ね見通しに沿って推移するもとで、堅調な設備投資や賃上げ、価格転嫁の継続など「前向きな企業行動」の持続性が確認されていけば、その都度、もう一段のギアシフト――金融緩和度合いの更なる調整――を進め、言わば「金利のある世界」にしていくことは必要だと考えています。』

と、一瞬高田っちに自我が芽生えたかとおもってこれはイプセンもニッコリという話になるのですが返す刀で、

『ただし、自然利子率のピンポイントでの把握が困難なもと、「物価安定の目標」実現の時期に向けて一定の中立金利の水準を念頭に政策金利を引き上げていく訳ではなく、十分な時間をかけつつ、その都度、政策金利引き上げの経済・物価・金融情勢への影響を検証しながら対応するというアプローチが現実的ではないかと考えています。』

お、おぅ・・・・・・・・

これね、まあ結局のところ大本営の説明と同じことになるんだけど、大本営理論というか今回の高田っちの説明でも、直前のところで「ただし、こうした様々な試算結果と比べても、足もとの実質金利は自然利子率を下回っており、政策金利引き上げ後も、緩和的な金融環境はなお継続しているとみています」って仰せな訳でして、図表11とかいうのを見ると(PDFバージョンでみてちょんまげ)雑な目の子でみても実質短期金利▲1.7%くらいだし、実質長期(10年)金利は▲0.6%くらいなんですが、図表10の日本の自然利子率、ってのが▲1.0%〜+0.5%のレンジになって居ますから、少なくとも途中までの政策金利調整は高田っちのいう「慎重なアプローチ」をしなくても良い筈だし、逆に慎重にやりすぎて政策がビハインドするリスクがあるから今回利上げしたんじゃなかったっけ、というお話になるわけですな。

ということですので、この高田っちの慎重アプローチ、っての実は大本営理論とは今の金利水準から暫くの間の調整に関しては相性悪いんですよ。高田っちが今の政策金利水準は中立金利にかなり近いところにあって今の政策は実はかなり中立に近い、という認識であれば慎重アプローチで良いんですけど・・・・・・・・・

とまあそういう訳ですので、残念ながら高田っちにおかれましては政策調整に関して及び腰という感じでして、少なくとも利上げについて積極的に主導するということはなさそうだな、というのがアタクシの勝手な結論になるわけですな。まあゆうてなんか明確な理屈をもって慎重派という話でもないので、大本営が政策調整するぞと言えばイエッサーってなるでしょ(あくまでも個人の感想です)というところで。

さらに、

『振り返ると、1970年代の変動相場制への移行後、先進国の金融政策スタンスとそれに対応する景気サイクルは概ね連動していましたが、足もと、内外の景気サイクルは異なります。』

単に日本の政策がクッソビハインドしているだけのような気がしますがそれはさておきまして、

『米欧では利下げに向けた動きが生じていますが、これまでの利上げが急だっただけにその影響が時間を経て生じる場合、わが国の経済を下押しするリスクがあり、同時に、金融政策スタンスの違いから金融市場に変動が生じる可能性もあるだけに、当面は内外の動向を慎重に見守る必要があります。』

と金融政策運営のコーナーをこのように締めておりまして、フォワードルッキングに政策を運営して行きましょう、というスタンスは残念ながら感じられず、言ってることが全部リアクティブというのが誠に残念無念といったところですが、何でこんなにチキンちゃんなんでしょ高田っちは・・・・・・・


・おじいちゃん満州の話はさっきもしたでしょ

ちなみに次のコーナーの小見出しが『4.バブル崩壊からの「過去・現在・未来」』となっていて、過去の金懇で毎回この話題をしておりまして、いやまあ確かに金懇は毎回別会場でやるから聞いてる人は別なんで同じ話をしちゃあいかんという法は無いので別に良いんですけど、さすがに毎回この話を読まされますと読んでる方としてははいはいおじいちゃん満州のお話はさっきもしたでしょお昼ごはんの時間ですよって申し訳ないがなってしまいますな。
なお、その話の中で思いっきり、

『私としては、ノルムの転換には1つの世代を形成する10年単位の時間が必要な可能性を踏まえると、日本銀行が長年にわたって粘り強い緩和姿勢を続け、資産価格の改善や極端な円高からの反転を支えたことが、バブル崩壊からの歴史的な変化となるノルム転換の変曲点を迎える「下地」となったと捉えています。』

ということで、異次元緩和を思いっきり肯定しているので(ノ∀`)アチャーって感じで読んでおりましたが、全体のお話自体はいつもの奴なので割愛します。

あと、最後のところに長期国債買入の話があるのですが、お前は何を言ってるんだという話ではあるのですが時間も無くなりましたし、どうせ主体的に減らそうという話ではない(読めばわかりますが無茶苦茶腰が引けている)ので引用割愛します。

とまあそういうことで。




2024/09/05

お題「今日は高田さん金懇/レポとか短国とか雑談/ボスティック総裁(ハト)による物価安定の注目ポイントなど」

ふむふむ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240904/k10014572221000.html
株価 4日の東京株式市場で1800円以上の下落 背景に3つの主要因
2024年9月4日 22時16分

『理由1. ISM製造業景況指数でアメリカの景気減速懸念』
『理由2. 半導体関連の銘柄下落』
『理由3.円高ドル安に伴う輸出関連銘柄の売り注文』
(以上上記URL先より)

・・・・・とまあこういう解説がある中、どこの誰とは言いませんけど昨日どこぞのアホウ何とかストが「(8月頭と同様に)日本発の国際市場混乱の側面(がある)」とか抜かしているとかいうのをベンダーのヘッドラインで見たわけで、日銀に永遠に異次元緩和しててほしいという心の発露でしょうなとは思いますが、とりあえずこの馬鹿は義務教育どころか幼稚園からやり直してこいと思いましたし、まあこのドアホウがどこの誰とは言わないけどそれなりに知名度も名声値も高い人なのが悲しい話ではあります。

〇高田審議委員金懇ですがこれはもう「市場の不安定」について聞かれまくりますなあ

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・記者会見・談話

『今後の講演・挨拶等の予定

    日程       講演者等          講演内容等
2024年 9月 5日   高田審議委員   石川県金融経済懇談会における挨拶
2024年 9月11日   中川審議委員  秋田県金融経済懇談会における挨拶
2024年 9月12日   田村審議委員  岡山県金融経済懇談会における挨拶』

ということで、相変わらず日銀は情報発信を真面目にやる気あるのか、というようなこのタイミング(だって6月から7月は金懇0で8月9月で金懇5本ですよ)で金懇が設定されていまして、こんなの中間レビューみたいな話をさせたいんだったら期日分散させろよと思いますし、各委員の意見のばらつきを見せてくれるなら敢えて期日接近させるのもおもろいとは言え、田村さんと中村さん以外はカカシあるいは腹話術人形という説が大有りなので、腹話術人形に腹話術させるんだったら期日分散しろや、としか思えませんけどね。

でまあお誂え向きのように昨日に引き続き今日もアメリカン株式市場がおさげになって戻ってこられておりますので、もうここぞとばかりに会見では「今まさに金融市場が不安定な状態にある、というご認識でよろしいでしょうか」ということになりまして、高田さんって民間にいるときは結構威勢の良い話をしていたのに、いざ審議委員になってみると借りてきたチワワのような大人しさになっているという印象なので(個人の偏見です)、まあ普通にこの市場の定義とか言われたらビビりんちょ発言をするでしょうというのに1万ドラギといったところであります。

どうも円債方面でも高田さんが金融政策の修正推進に前向き発言をするんじゃないかという期待をしている向きもそこそこおられると思うのですが、正直ワイは期待していないし、何ならビビりんちょチキンの助発言になるんとちゃいまっかと(金懇テキストは昨日の今日だから間に合わない可能性があるが会見ではビビりんちょするでしょ)いうところでございますな。あくまでもアタクシ個人の偏見ですけど。


・・・・でまあそれはそれとして、この市場の不安定云々に関してはこうやって後々までずーっと尾を引くイッシューになってしまいましたよね、というのが今週来週の金懇後の会見で明らかになると思われますが、まあ確かに内田さんの発言は明らかに言いすぎというか言わなくても良いことを言ってしまったというのはあるんですけど、さらに元を辿ってみますと、3月のマイナス金利解除の時に必要以上に「マイナス金利解除しても緩和的な政策を続ける」を連呼してしまい、まあ初手でビビるのはわかるんですが、4月の展望では説明が悪くて市場の期待をハト方向に思いっきり振ってしまい、その結果7月の利上げの段階では今後はハト方向に振れている市場の期待を戻すべく政策修正に威勢の良い発言をぶっこんでしまう、という風に、中の人たちは必ずしもその意図ではなくても、結果としては市場の皆様(およびワシ)の先行き金融政策運営に関する「予告ホームラン」を打って、しかもその予告ホームランが首尾一貫してなくて、市場の反応見て変えてくるもんだから、3月4月⇒7月会合後⇒内田さんのビビりんちょ金懇⇒植田さんの国会答弁や経済財政諮問会議などでの情報発信、という風に市場の期待を右や左に大きく振り回している訳で、もとはといえば、先行きのことなんぞ分からんって自分らで言ってるのに、なぜか先行きに関して予告ホームランをしたがるという今の日銀の謎コミュニケーションポリシーが混乱を呼んでるんで、まあちょっとお前ら少しは反省しろと思いますし、この「金融市場が不安定」云々に関しては相当尾を引くことになりそうですし、変に策を弄さずに骨太でぶれない説明というのをしてほしいもんだと思います。

んですけど、まあ今日の高田さんの金懇もなんか8月の市場のムーブで腰砕けになっていそうな気しかしなくて、市場のムーブで腰砕けってコミュニケーションを出されますと、益々「金融市場が不安定だと動きません」がクローズアップされる形になるんだろうなあ、とまあそういう風にちょっと今日の金懇および会見に関しては決め打ちをしてみましたwww


〇TKRRちゃん雑談

という毎度の備忘メモですが。
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

ここ2週間ほどの推移ですけどね。

        O/N  T/N 1w  2w  3w  1m  3m
2024/8/23 0.142 0.227 0.193 0.193 0.191 0.191 0.203
2024/8/26 0.239 0.214 0.193 0.193 0.190 0.190 0.204
2024/8/27 0.242 0.221 0.193 0.193 0.191 0.189 0.203
2024/8/28 0.243 0.196 0.182 0.184 0.186 0.186 0.203
2024/8/29 0.204 0.058 0.163 0.170 0.174 0.173 0.201
2024/8/30 0.173 0.230 0.187 0.187 0.185 0.185 0.201
2024/9/2  0.244 0.233 0.187 0.187 0.186 0.184 0.201
2024/9/3  0.240 0.237 0.191 0.189 0.187 0.184 0.201
2024/9/4  0.243 0.237 0.191 0.190 0.189 0.184 0.201

3Mとかド安定しているのでまあそういうことやぞという話(まあ12月に金融政策の変更があったとしても、12月19日が決定会合2日目ですから誘導金利上がるのは20日ですからぬー)ではございますが、別に1Mが期末越えになるからと言って上がるか下がるかしている訳でもなくて(8月末の動きとか見ていると期末越えは金利にプレミアムが付くのではなく、物無し芳一プレミアムで下手したら金利下がるんちゃいますかってな悪寒がしますが)なんか妙に安定推移しているのは逆に気になりますな。

あと、先週は週末のところに向けてトモネの金利がドドーンと低下するという現象が久々に発生していたのですが、あれは月末要因が重なったか何かだったのか、今週は水曜の時点まででトモネGCのレート下がっていませんでして、いや今週金曜の3Mこそもう少しマシなレートになりませんですかねえ、ってなもんですが、そっちはまた別の動機が働くみたいなので正直分からんです。

ちなみに今週の3Mですけれども、
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20240830.htm
国庫短期証券(第1254回)の発行予定額等

『1. 入札予定日   令和6年9月6日
2. 発行予定日    令和6年9月9日
3. 償還予定日    令和6年12月9日
4. 発行予定額  額面金額で4兆6,000億円程度』

ということで、12月決定会合跨ぎになるのは次の次の入札(と言っても次の次は償還日が12/23だと思うので実質的に跨ぎっぽくなるのは来年償還になるところからって感じかな)ですので、あとは短国にどの程度期末残高帳尻ニーズが入ってくるかとかそういうお話なのですけれども、誠に怪しからんことに今回から3Mって発行予定額が4.9兆円⇒4.6兆円に減額の刑となっておりまして、甚だ遺憾に存じますの巻ですけど、国庫資金繰りでそんなにアホみたいに無駄な政府預金置いてられませんというのはわかるのですけれども、米国みたいにMMFお助けビル発行、みたいな連携がまるで無いというのもちょっと残念は残念。

なんか話しが全然東京レポレートじゃなくなっていますけど、「貯蓄から投資」っての推進するってんだったら、個人の証券決済の決済口座として地味だけど重要な機能を持つ証券総合口座におけるMRFに対してもうちょっと物事考えてよとは思うのですが、なにせ日銀の野郎はマイナス金利ぶっこんだ当初MRFのことまるで考えてなくて後から気が付いてMRF特則を作ったという手抜かりな上に、その後日銀当座預金残高の拡大に伴いマクロ加算掛け目の引き上げを行いマクロ加算残高を拡大する中で、なぜかMRF特則に関わるマクロ加算残高を動かさない(貯蓄から投資への動きが拡大すれば当然のようにMRFの残高が増えるというのに)という位にリテール証券業務に関する配慮が無いのか知識が無いのか知らんけど、まあもうちょっと何とかした方がエエンチャウノとは思うところではあります。

と、完全に別の雑談になってしまいましたが、今週の3Mは翌週月曜日、すなわち事実上の翌日に6Mの入札もありまして、まあどうせ6Mなのに利上げ丸無視レートになるんでしょうけれども、そうは言っても余程のことが無い限り瞬間蒸発とは逝かない(と言いたいがガチで瞬間蒸発してショートカバーだけのこって地獄のレートになることがあるから油断も隙もない)となると、ちょっと在庫が重くなってくれてもうちょいマシなレートにならんかな、というかコールとのインバートいつまでたっても何ともならんの勘弁という感じではあります。

さてどうなりますのやら。


〇ボスティック先生なので物価抑制には基本楽観なのですが

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/46F2V6NI6NKHTJIGQ46MYCXOFI-2024-09-04/
米アトランタ連銀総裁、長期間の金融引き締め維持に警告
By ロイター編集
2024年9月5日午前 12:46 GMT+9

『[4日 ロイター] - 米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は4日、連邦準備理事会(FRB)が高金利をこれ以上長く維持すべきではないとの見解を示した。雇用に過度の悪影響を与える恐れがあるためという。』(上記URK先より、以下同様)

ほうほう。

『同銀のウェブサイトで公開されたエッセイの中で、ボスティック氏は、インフレ率が実際にFRBの目標である2%に戻るまで待ってから利下げを始めれば、「労働市場の混乱を招くリスクがあり、それは不要な痛みや苦しみをもたらす可能性がある」と述べた。また、最近の物価指標などにより、インフレが現在、FRBの目標に回復する持続可能な軌道に乗っており、価格圧力が急速かつ広範囲に鎮静化しているとの自信が強まったとも述べた。』

ということで、まあボスティックさんが利下げ提唱するのは仕様みたいなもんなんでそこはまあ平常運転である、という前提のもと、アトランタ連銀のHPに行きますとこんなんありました。

(URLがアホのように長くてこのままハイパーリンク貼ると画面表示がおかしくなると思うので途中までで貼っています)
https://www.atlantafed.org/about/atlantafed/executive-leadership-committee/bostic-raphael/message-from-the-president/archive/2024/09/04/shifting-focus-to-both-sides-of-the-dual-mandate

Shifting Focus to Both Sides of the Dual Mandate
By Raphael Bostic, President and Chief Executive Officer
September 4, 2024



最初のマクラ部分の第2パラグラフ以降に出オチの如く説明がありまして、

『And I would like to home in on one particularly timely dynamic: the balancing of my risk outlook as it pertains to the Committee's dual mandate of price stability and maximum employment. I have focused mainly on the price stability side of the mandate since inflation spiked in 2021, as we were clearly further from that goal than from the goal for maximum employment.』

『But as the labor market has cooled in recent months, the balance of risks has shifted, and I am today giving basically equal attention to the maximum employment objective.』

雇用に対しての目配りが物価に対しての目配りと同じウェイトで必要ですよ、という点ではこの前の議事要旨とかジャクソンホールのパウちゃんとかと同じですわな。

『The labor market continues to weaken, but it is not weak. The unemployment rate has ticked up this year, yet at 4.3 percent is just a smidge above the Committee's long-run projection of 4.2 percent. Monthly job creation paints a similar picture. The 12-month moving average was a still-healthy 209,000 new jobs a month through July 2024.』

労働市場は弱まっているけど弱くはない、という現状認識ですが、

『But that number has steadily declined from a 12-month average of 264,000 in July 2023.(I will note that the Bureau of Labor Statistic has signaled that these growth numbers are likely to be revised downward in the next benchmark revision, in February 2025.)』

今後この状況が一段と弱まる、しかも来年に基準改定行われると遡及で今のデータが下方修正される可能性があることを鑑みますと、まあ先行き弱くなるんでネーノという話で、

『Another key metric, the number of hires as a percentage of employment, or the hires rate, has retreated to roughly the prepandemic trend. And job openings across the economy remain above levels that prevailed before 2020, but are down substantially from the peaks of 2022.』

『Given those data, it is not surprising that the once-yawning gap between high labor demand (employed people plus job openings) and lower labor supply (employed plus the unemployed) has gradually narrowed to under 1.5 million in June from more than 5 million in early 2023.』

まあ今後の労働市場の弱まりがフォワードルッキングで気になりますよ、という話をしていまして、言いたいことはわかりますし、今次インフレの初期にこのインフレ上昇は一時的って皆で言ってて緩和を引っ張りすぎたので、今度はちゃんとフォワードルッキングに対応しなきゃ、と思っているんじゃないのかな、というのも分かるんですが、なんか今度はインフレのビハインドを反省して雇用悪化に対してプレマチュア―に反応してるんでネーノという悪寒はますます募るのでありました、杞憂なら良いんですけどね。


・インフレに関しては鎮静化に自信ニキだがその3つの「エンカレッジングな要因」を挙げています

次の小見出しが『Surveys, anecdotes back up the data』でこちらは雇用の話なので、いやお前そっち嫁というツッコミを食らいそうですが今回はしれっと飛ばしまして、物価に関するボスティック総裁のご意見を見ておこうかということで、小見出し『Inflation declining quickly and broadly』から参ります。

まあこの「Inflation declining quickly and broadly」って小見出しの時点でお腹一杯になるという話はありますが鑑賞しますとですね。

『The upside to this is that the slowdown in activity is feeding a continuing, welcome decline in the pace of inflation.』

あらそうですか、ということで以下は現状の話ですけど。

『The headline rate has fallen by about two thirds since peaking in June 2022. Further, the most recent monthly reports bolster my confidence that inflation is likely on a sustainable path to the Committee's 2 percent objective, measured by the personal consumption expenditures (PCE) price index, the Committee's preferred gauge.』

「the most recent monthly reports bolster my confidence that inflation is likely on a sustainable path to the Committee's 2 percent objective」って無茶苦茶大きく出ていますね。ボスちゃんの仕様とは言え。

『I am especially encouraged by three key signals.』

ボスちゃんが歓喜する3つの動きとは??

『One, the breadth of price increases is narrowing to a range that accords with price stability.』

とは何ぞ?

『That is, the collection of goods and services whose prices are rising rapidly continues to shrink.』

価格改定(要は引き上げ)の動きが急速に弱まっていること、だそうです。

『For the three months through July, 27 percent of prices, weighted by expenditures, rose by more than 5 percent in the PCE price index, compared to the same period a year earlier. That is the lowest share since mid-2021. And the figure for July alone was 18 percent, the lowest level since October 2020 and just above the long-term norm of 17 percent.』

PCE指数構成バスケットの中での価格上昇品目数の割合に注目しています、なるほどなるほど。

『Two, core PCE inflation for the three months through July came in at an annualized rate of 1.7 percent.』

この3か月のコアインフレ率を年率換算すると1.7%と。

『I realize it can seem counterintuitive to closely track an inflation measure that excludes consumer staples like food and energy, as the core reading does. But food and energy prices are particularly volatile and can produce dramatic month-to-month price swings that can distract from a focus on the longer-term, fundamental trend in prices across the economy. Core measures are less susceptible to this and have historically proven to provide a clearer signal of inflation fundamentals.』

ああだこうだ書いているけどコア指数を見るのがダイジダイジネーという話をしているだけなのでこの部分はおまけ。

『Three, we have finally begun to see early signs of the long-anticipated slowdown in shelter price increases.』

住居費の価格上昇のスローダウンがやっとみられるようになってきた、というのが3つ目ですとな。

『Rising costs for housing and related services have buoyed overall inflation for many months. And though many market-based measures of house prices and rental indexes have moderated over the past year-think Zillow and Redfin-the housing component in our official inflation statistics had been stubbornly high. Exactly why the housing components in the PCE price index and consumer price index have reacted unusually slowly to market forces remains something of a mystery. Nevertheless, I'm hopeful that recent moderation in shelter prices will continue.』

まあこちらも単に状況説明している話なんですけど、今後も住居費の上昇は鈍化するとみているそうです。

てな訳で、まあこの辺を見てるのねーというのは理解しました。


・金融政策に関しては「2%に達するまで引き締めを継続するのダメ!ゼッタイ!」という話はまあそうですねと

次の小見出しが、『Dual mandate focus seesawing』でして、ちょっと時間がアレなので流しますけど(汗)。

『Let me reiterate that the Federal Open Market Committee has a dual mandate from Congress to strive for price stability and maximum employment. I have been intensely focused on the price stability side of the mandate for the past three-plus years.

『That's changing. Given the circumstances before us?eroding pricing power and a cooling labor market?I've rebalanced my focus toward both sides of the dual mandate for the first time since early 2021.』

最初で話していたことですね、物価にフォーカスからステージは変わったとな。

『In formulating my monetary policy stance, I always carefully weigh scenarios and take a risk management approach. Right now, I am not quite prepared to declare victory over inflation. Though they have declined significantly, risks to meeting our price stability mandate remain. So, we must stay vigilant to ensure those risks continue to wane. After all, history shouts to us that loosening monetary policy prematurely is a dangerous gambit that can rekindle inflation and entrench it in the economy for many months or even years. In that scenario, the least economically secure among us would suffer most.』

このパラグラフでは「まだインフレに勝利したというには早い」とは言ってるんですが・・・・・・

『At the same time, we must not maintain a restrictive policy stance for too long. I believe we cannot wait until inflation has actually fallen all the way to 2 percent to begin removing restriction because that would risk labor market disruptions that could inflict unnecessary pain and suffering.』

ここがヘッドラインになっていた部分ですが、そうはいっても2%に下がるまで一切引き締めを緩めないのは雇用がコケてエライことになるがな、と仰せです。

『Right now, I think we are in a generally favorable position. The labor market is still stable and we're moving ever closer to the Committee's price stability objective. My staff and I aren't celebrating yet. But the outcome that has proven so elusive historically-wringing high inflation out of the economy without provoking severe economic damage-may be within reach. I assure you my colleagues on the Committee and I are doing everything possible to achieve exactly that outcome for the American public.』

ということで締めているんですけど、さっきに続いてここでも「勝利宣言はまだ早い」とか言って(書いて)ますけど、話の流れはどう見ても勝利宣言です本当にありがとうございました、という感じですね。まあ本当に勝利しているんだったら良いんですけどフラグ建築士になりませんようにナムナム。

ということで今朝はこの辺で





2024/09/04

お題「コミュニケーションに関する雑談とかそんな感じです今日は」

そういやこんなニュースがあったんだメモメモと
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240902/k10014568571000.html
食品の値上げ 今月は1300品目余 5か月ぶり1000品目超に
2024年9月2日 6時39分

〇FEDもECBもインフレ鎮静化自信ニキなのですがこの段階で大勝利宣言するのはねえ

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/HSHGCCCU3NPPJPXSPZMUS3PIOM-2024-09-03/
インフレの大波は去り「正しい軌道に」=独連銀総裁
By ロイター編集
2024年9月4日午前 3:21 GMT+9

『[ベルリン 3日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのナーゲル独連邦銀行(中銀)総裁は3日、「インフレの大波は去り」、現在は「正しい軌道に乗っている」との見解を示した。ドイツ紙フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)が3日に報じたインタビューで語った。9月の理事会で利下げに投票するかどうかは来週まで決めるつもりはなく、全てのデータを確認したいとした。』(上記URL先より)

ということでドイツニキもインフレ鎮静化に自信ニキとなっている今日この頃ですけど、まあこちらに関しては本当は本チャンの文脈をみないと本当の本当に大勝利宣言をしているかというとそうでもなさそうな気がせんでもないですけど。

まあとにもかくにも、昨日ネタにしましたように7月FOMC議事要旨が「ほとんど反対もなく物価鎮静化大勝利宣言モード」になっているのは気持ち悪い以外の何物でもなくて(相場、特に債券方面を長年やっていると「皆の意見が揃うとき」に碌なことが起きないというひねくれ精神が身につくし着かない人は早死にします)でまあインフレの内容とスケール感は違いますがドイツニキまでこれかよという感じでして、これは9月に欧米が利下げ(欧州は再利下げ)してみたら金融環境がヒャッハーとなって、特に米国の場合は金融環境がヒャッハーになるとホイホイ消費するアメリカンドリームの国なので(個人の偏見です)個人消費が上向いて物価がサガランチ会長になってパウエル何やってるんだこのバカチンが、となるに1万アルゼンチンペソ。

というかですね、なんか今回FEDがパウちゃんに合わせてるんだか、大統領選挙のある政治の季節だから威勢の良いことを言いたいのか、その辺が謎にもほどがあるんだが、基本的に毎度両論併記している議事要旨でここまでインフレ戦争大勝利宣言をぶっこんでくるのは怪しいわけで、これを見て大喜びして9月50bp利下げとかいうのはちょっと早計なんでネーノとは思うのよ。先日来申し上げていますように、ここまで大勝利宣言して外したら信認問題にかかわるし、そもそも論としてこいつら2021年の時だってインフレ見通しを後から見たら盛大に外しまくってインフレは一時的を連呼していた訳ですし、大幅利下げしてインフレ鎮静化が遅れたらパウちゃん磔獄門余の物終生遠島を申し付けるってお白洲に引き出されるの待ったなしになるわけで、そんな決め打ち利下げしてくるのは外した時にFEDの信認無くすからやらんと思うのよね。

とは思ったものの、まあ連中雇用雇用言ってるので雇用統計が楽しみになって参りましたなという雑談でした。


〇債券市場サーベイだが何ちゅうタイミングで調査してますねん

https://www.boj.or.jp/paym/bond/bond_list/bond2408.pdf
債券市場サーベイ
<2024年8月調査>
回答期間:2024年8月1日〜8月7日
調査対象先数:72先

いやまあ回答期間って毎度対象月の頭(から10日前後まで)なので仕方ないちゃあ仕方ないのですけれども、7/31に政策金利動かした直後に市場機能がどうしたとかアスクビットスプレッドがどうしたとかいう調査するのって、わざわざ外れ値のところを取りに行ってるようなもんで、展望会合が1月以外ほぼ月末に実施されていることを勘案すると、これせめて第2週目を回答期間にするとかした方が良いんじゃないでしょうか。

まあこれおっぱじめたときには黒田時代で政策が変わらんのが仕様だったのであんまり気にならなかったんですけど、金融政策が動くような時代になると展望会合の時って基本的に政策変更が起きやすいタイミングになるのですから、まあ月の半ばとか月末近くのタイミングの方がよろしいんじゃないでしょうかご検討いただきたいです。


でまあそれは兎も角結果だけ見ますと、

『(1)貴行(庫・社)からみた債券市場の機能度』

機能度判断DI(現状)
前回 -24 ⇒今回 -23

まあ1日とか2日くらいにちゃちゃっと回答しちゃっているとそこまでアレなわけではなくて、先物爆発炎上とかしてたの週明けでしたし、まあ値動き無茶苦茶でしたけどアクティブはアクティブでしたということでしょうか、と思って内訳見たら

1. 高い       前回 7 ⇒今回 3
2. さほど高くない 前回 62⇒今回 71
3. 低い       前回 31 ⇒今回 26

って低いが減ったのかほうほうほう、と思って横の方見たら、

機能度判断DI(3か月前と比べた変化)

機能度判断DI(変化)
前回 7 ⇒今回 -6

って機能度変化でみたらドテン悪化じゃん、ということで

1. 改善した         前回 15 ⇒今回 3
2. さほど改善していない  前回 76 ⇒今回 86
3. 低下した         前回 8 ⇒今回 11

ということですので何のことはない、「機能度は悪化しているけど、低いというほどまでは悪化していませんですわ」というのがお答えだったようですな。


ただまあ何ですな、マイナス金利政策の時とかと違って、金利がまともにあって経済物価状況に応じて政策金利が上がったり下がったりする世界における市場の機能度ってのは何なんですかと考えますと、市場の価格形成において多種多様な参加者が多様なビューで参加してきてその総和が市場での価格になる、というような生物多様性とでも言いますか(ナンジャソラ)そういう体系が結果として安定的になるわけでして、一部のドミナントな少数の参加者がポジション振り回すとか、画一的な管理手法によって参加者のポジションや投資行動が金太郎飴状態になってしまうとか、そういうのは市場として健全じゃないんですよねーとは思うものの、大昔と違って参加者の規模が大きくなっているわ、各種金融規制の強化によってポジションの画一化が起きやすくなっているわ、日本の場合はどっかのアホウがドミナントに買って持ち切りのアホールドをするわで、まあ碌なもんじゃない訳です。

日本の場合は兎に角日銀の輪番もっと減らせやヴォケという話ですけどね。


まあしかし何ですな、その後の質問項目なのですが、

@貴行(庫・社)からみたビッド・アスク・スプレッドについてご回答下さい。
A貴行(庫・社)からみた市場参加者の注文量について、板の厚み(注)等を念頭においてご回答下さい。

ってそれはあのタイミングで聞く質問じゃないだろという感じ(いやまあ定例の質問項目なので聞くのは当たり前ではあるのですが)の話なのですが、先ほども申し上げました通りで、2月5月8月11月の頭に質問期間置いていると、何回かに1回のタイミングで「金融政策変更直後でまだ落としどころが決まっていない状態の市場の状況をわざわざ質問する」ことになるのでどうなんでしょとは思います。

まあ変更直後のを毎度狙って質問することによって、「この時の金融政策変更は市場にサプライズを与える結果になっておりそのせいで直後の債券市場の機能度はこうなっていますね」というような集計を取ってみたい、とかいうような深慮遠謀がありましたらそれはそれで結構なんですけど、だったら政策変更の直後に臨時で同じサーベイヤればエエンチャウノとは思いますけどw



〇経済財政諮問会議での資料でどうのこうのとか言ってましたが

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0903/agenda.html
第12回会議資料:会議結果 令和6年
議事次第
令和6年第12回経済財政諮問会議
開催日時:令和6年9月3日(火曜日)13時30分〜14時00分
開催場所:総理大臣官邸4階大会議室

議事
マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議)

ほうほうそうですかってなもんですが、そちらの資料とやらに日銀謹製の物件があって、

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0903/shiryo_01.pdf
資料1 植田議員提出資料 令和6年9月3日

資料自体別に新しいお話があるわけではないのですが、なぜか知らんがこの中の『202年7月金融政策決定会合での決定内容』の資料を見て(債券市場は別に無視してたと思いますが)為替市場ちゃんが反応したことになっていて、そっちの方がビックらこきました、まあ実際に本当の本当に為替がこれに反応したのかどうかはワシもベンダーの後付け講釈見ているだけなのであれなんですけどね。

『2024年7月金融政策決定会合での決定内容

(1)金融市場調節方針の変更

●経済・物価は、これまで示してきた見通しに概ね沿って推移、賃上げの動きに広がり
● 輸入物価は再び上昇に転じており、先行き、物価が上振れするリスクには注意』

ってなっていまして、「見通しに概ね沿って推移」と「物価が上振れするリスクには注意」というのを赤字でハイライトしていますので、まあその点では決定会合の説明を改めて分かりやすく示した、という格好になっていますわな。

でもってその下に、

『2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整』

ってあって、その結果として利上げしましたよ、という話をしているんですけど。

『短期金利(無担保コールO/N物):「0.25%程度」に引き上げ(従来は「0〜0.1%程度」)』

はまあ良いんですけどね、

『●実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持 → 経済活動をしっかりとサポート
● 見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整』

ってなっていまして、これ2番目の「金融緩和の度合いを調整」の方が今回ハイライトされているのですけれども、相変わらず日銀クソコミュニケーションしてるな、とアタクシが思うのは1番目の方な訳ですよ。

つまりですね、

(再掲)
『●実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持 → 経済活動をしっかりとサポート』

ってあって、「経済活動をしっかりとサポート」というのを赤字でハイライトしているのですけれども、何で今更お前らこれをアピールするんだと小一時間問い詰めたいわけでして、いやまあどっかの党の総裁選の某候補者の経済政策に馬鹿が二匹参画しているように、馬鹿がうるさい(まあ馬鹿だからうるさいというのもあるが)のでこういうのを政治的配慮で入れる、というのはお気持ちとしてはわかるのですが、このしょうもない忖度が市場とのコミュニケーションにノイズを与えているんですよね。

すなわち、上記の話って「実質金利は大幅マイナスが続き」は良いんですけど「緩和的な金融環境は維持」っていうのがおかしくて、お前らこれから「金融環境の度合いを調整」するって言ってるんだから、その口が「維持する」って言葉使うなよという話な訳でして、4月の展望レポートの先行きの金融政策運営の文言に変なものを入れたが為にドル円は160円方面にぶっ飛ぶわ、利上げ観測が大きく後退するわとなって、その結果7月の利上げが半分くらい騙し討ち成分の入るムーブになったわけですよ。

でまあこの「維持」って言葉使うなよなと思う訳で、これ日銀は「維持」というのは状態のことを示しているってことだと思うし、まあそういう意味で使っているんでしょうけれども、「維持」ってのは金融政策決定における文章でも使う言葉なので、こう書くと「日銀は政策を変更しない」っていうニュアンスが出てしまう訳ですよ。実際に4月がそうだったように。

ということでですね、日本語ちょっと考え直した方が良いんじゃないかと思うんですよね。何がいいのかと言われますと共通一次試験(歳がバレる)の現国で国語の勉強が終了して久しいワイとしてはアレでございますが、「実質金利は大幅なマイナスが続いているので金融環境引き続き緩和的」みたいな感じで、「維持」とかいう日銀の政策意図を示すものと誤認されやすそうな言葉を使わない方がエエンチャウノ、というのはまあ個人の感想ですが一応共通一次の現国は得意科目でした(しつこい)ので申し添えますwwwwww

あとですね、先日の氷見野副総裁の金懇会見でもアホほど質問されていましたが、この「実質金利」の説明もあまり前面に出してしまうと、「じゃあ中立金利はいくらですか」というような泥沼にはまってしまってこれまたコミュニケーションのノイズを増すことになるので、もうちょっと何とかならんか、とも思いますのですが、実質金利云々の話は高校現国ではフォローできませんので今日はパスしますw

・・・・・と、注目されていない文言の方にツッコミを入れるというデギンドス副総裁の頭髪並みに不毛な話をしてしまいましたが(ちなみにデギンドスは某カシュカリ大僧正と違って頭髪がサイドにありますので念のため申し添えます^^)、今回の植田さん提出の資料に関して言えば、内田副総裁の金懇講演でちょっと威勢よく言いすぎてしまって利上げ観測がぶっ飛んでしまったことに対する態勢立て直しの一貫という感じだと思います。

すなわち、国会招致での植田総裁の答弁も態勢立て直しですし、氷見野副総裁もやんわりというかほんわかという感じですが、市場が不安定云々に関しては「総合判断の一つの要素」みたいな説明をしていたわけですが、内田副総裁の説明だと思いっきり「株式市場本位主義」みたいな言い方に取られても文句の言えない説明でした(のでその後散々質問されるわけです)すが、すこしはその辺の改善はできている、というか円債市場の方はさすがに伝わっているとは思うのですけれども、為替市場ちゃんが(本当かウソか知らんけど本当ならば)この提出資料の「金利調整」の部分に反応しちゃっている、ということは他市場は内田副総裁発言を上書きする植田さんたちのコミュニケーションがイマイチ伝わっていない、ということを意味するんじゃないかと思いまして、次回の政策金利調整の際も騙し討ちだの何だの言われるリスク高いな、って思いました。

ということで今朝はこの辺で勘弁。




2024/09/03

お題「今更7月FOMC議事要旨ですけれども物価安定に自信満々すぎてフラグ建築してないかが気になって来たwww」

えーっとこれは・・・・・・・・・
https://news.yahoo.co.jp/articles/14ee42d5a591bf20c300eed58267568a2a9fdf06
安倍路線」継承の布陣、高市早苗氏の新刊『国力研究』が話題 外交、防衛、
経済など第一人者も強固 「総裁選にもプラス」と識者
9/2(月) 17:00配信

『経済力」を本田悦朗元内閣官房参与、若田部昌澄元日銀副総裁』(上記URL先より)

・・・・・・第一人者とは??と思ったが第一人者とか言ってるお方がアレだしそもそもこの記事が金融政策ネタで怪電波を飛ばすのを得意技にしている産経グループということで安倍残滓ホイホイってところですな。


〇そういやなんか7月FOMC会見ってすっとばしたままですが議事要旨の方をもうちょっと確認します

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20240731.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
July 30-31, 2024
A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, July 30, 2024, at 10:00 a.m. and continued on Wednesday, July 31, 2024, at 9:00 a.m.1

金融政策運営に関する部分だけとりあえずインスタント読みをしたのですが、そもそもその背景となっている経済物価認識は何ぞ、ということで『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』を確認しましょうぞ、というお話。

・初手から「インフレ鎮静化」のエビデンスをこれでもかと並べるの巻

最初のパラグラフは基本的に声明文の最初に記載されている認識と同じことを言いますが、その後が割と見ものなのよ。

『Participants observed that inflation had eased over the past year but remained elevated and that, in recent months, there had been some further progress toward the Committee's 2 percent inflation objective.』

インフレーションは目標に向けたsome further progressが続いてまっせ、というのは声明文でも会見の冒頭説明でも示された通り。

『Participants noted that the recent progress on disinflation was broad based across the major subcomponents of core inflation. Core goods prices were about flat from March through June after having risen during the first three months of the year. Price inflation in June for housing services showed a notable slowing, which participants had been anticipating for some time. In addition, core nonhousing services prices had decelerated in recent months. 』

例の「disinflation」を使っているのですが、disというほどにお前らインフレから脱却できているのかってな論点があるわけで、財の価格がこのように幅広く下がっていますという話があって、その次にサービス価格低下の話が説明されていますね。

『Some participants noted that the recent data corroborated reports from their business contacts that firms' pricing power was waning, as consumers appeared to be more sensitive to price increases.』

数名(Some)の参加者は最近は企業の価格決定力が落ちてきて消費者は価格上昇にセンシティブになってきている、ということで企業や家計の行動が高インフレ前提から脱却しつつあるとの認識。

『Various contacts had also reported that they had cut prices or were offering discounts to stay
competitive, or that declines in input costs had helped reduce pressure on retail prices.』

でもっていろんな方々から地区連銀などが聞いていると、正札引き下げや一時的な安売りなどで競争力を維持している動きがあり、投入価格の低下も小売価格の価格上昇圧力を下げている。

とまあそういうことで1パラ目には物価が沈静化しているという話のエビデンスをこれでもかとお付けしている、という時点でまあお察しの議事要旨ってなもんです。


・物価の見通しも自信満々すぎて大丈夫かと心配になるわけですあたしゃ

2パラ目は物価の見通し。

『With regard to the outlook for inflation, participants judged that recent data had increased their confidence that inflation was moving sustainably toward 2 percent.』

見通し部分でも初手から2%達成に自信ニキネキというのをどどーんと出オチで出すの巻。

『Almost all participants observed that the factors that had contributed to recent disinflation would likely continue to put downward pressure on inflation in coming months.』

今後数か月もこの物価鎮静化の動きが続きますよというのをほとんど全員(Almost all)の参加者が見ていますってこらまた大きく出ていますな、でもってその要因ですが、

『These factors included a continued waning of pricing power, moderating economic growth, and the runoff in excess household savings accumulated during the pandemic.』

前述の企業の価格決定力の低下、経済成長の鈍化、パンデミックで積みあがった家計の余剰貯蓄の枯渇、だそうです。ふーん。

『Many participants noted that the moderation of growth in labor costs as labor market conditions rebalanced would continue to contribute to disinflation, particularly in core nonhousing services prices.』

賃金コスト上昇の緩和はサービス価格の鎮静化に寄与していると多くの(Many)参加者が指摘とな。

『Some participants noted that the lags in the time it takes for housing rental conditions for new tenants to show through to aggregate price data for housing services meant that the disinflationary trend in this component would likely continue.』

数名(Some )の参加者は新規賃貸住宅の賃料がこれからラグを持って効いてくるのでこれまた物価鎮静化トレンドを支える、と言ってまして、

『Participants also observed that longer-term inflation expectations had remained well anchored and viewed this anchoring as underpinning the disinflation process. A couple of participants noted that inflation pressures might persist for some time, as they assessed that the economy had considerable momentum, and that, even with some easing of the demand for labor, the labor market remained strong.』

最後はインフレ期待がアンカーされている云々の話になって「物価の見通し」コーナーが終わるわけなのですけれども、物価の現状認識と先行き見通しの記載が見事なまでに「全員そろって大丈夫大丈夫の大合唱モード」になっているのは、市場とかいうところでウン十ウン年おこぼれを頂戴して生業としておりますところのアタクシの個人の感想になるのですが、これさすがに気持ち悪くて、ここまで全員そろって物価鎮静化だぜヒャッハーってやっているのって、死亡フラグ建築の香りがものすごく漂ってくるんですけれども、いやこいつらなんか見落としてないか大丈夫かってなもんですな。

では次のパラに参ります。

・雇用環境の話はこれまた虫のいい現状認識

『Participants assessed that supply and demand conditions in the labor market had continued to come into better balance.』

ということでここから雇用環境の話になります。

『The unemployment rate had moved up but remained low, having risen 0.7 percentage point since its trough in April 2023 to 4.1 percent in June. The monthly pace of payroll job gains had moderated from the first quarter but had been solid in recent months.』

ここは最近失業率が上がって新規雇用拡大ペースが鈍化しているという認識で、

『However, many participants noted that reported payroll gains might be overstated, and several assessed that payroll gains may be lower than those needed to keep the unemployment rate constant with a flat labor force participation rate.』

しかもペイロールのデータは労働参加率や失業率の動きからみたら数字が過大に出ているとの指摘。

『Participants observed that other indicators also pointed to easing in labor market conditions, including a lower hiring rate and a downtrend in job vacancies since the beginning of the year.』

そのほかのデータ(hiring rateとjob vacanciesを挙げている)も労働市場の鈍化を示していますと。

『Participants noted that the rebalancing of labor market conditions over the past year was also aided by an expansion of the supply of workers, reflecting increases in the labor force participation rate among individuals aged 25 to 54 and a strong pace of immigration. Participants noted that, with continued rebalancing of labor market conditions, nominal wage growth had continued to moderate. 』

労働市場のリバランスに関しては移民増加による労働供給の増加も寄与していると。

『Many participants cited reports from District contacts that supported the view that labor market conditions had been easing. In particular, contacts reported that they had been experiencing less difficulty in hiring and retaining workers and that they saw limited wage pressures. Participants generally assessed that, overall, conditions in the labor market had returned to about where they stood on the eve of the pandemic-strong but not overheated.』

地区連銀によるヒアリングでも企業の雇用での人員確保や賃金引上げ圧力などに緩和傾向が見られている、ということで全般的には「conditions in the labor market had returned to about where they stood on the eve of the pandemic-strong but not overheated.」とかいう虫のいい話になっております。


・先行きは「ちょっと注意が必要」的な書き方であんまり細かい話はしていない

次は先行き見通しでして、

『Regarding the outlook for the labor market, participants discussed various indicators of layoffs, including initial claims for unemployment benefits and measures of job separations.』

『 Some participants commented that these indicators had remained at levels consistent with a strong labor market. Participants agreed that these and other indicators of labor market conditions merited close monitoring.』

レイオフとか新規失業保険申請とか離職率などで見ていくと、まだ労働市場は強いけどちょっと注意する必要がある、ということだそうでして、

『Several participants said that their District contacts reported that they were actively managing head counts through selective hiring and attrition.』

ヘッドカウントのアクティブな制御なども行われているということでここの部分はあっさり味で終わっているのですけれども、さっきの「先行きのデータをよく見ておきましょう」って話がまあ結論ちゃあ結論か。


・経済について

次は成長率に関して。

『Participants noted that real GDP growth was solid in the first half of the year, though slower than the robust pace seen in the second half of last year. PDFP growth, which usually gives a better signal than GDP growth of economic momentum, also moderated in the first half, but by less than GDP growth. PDFP expanded at a solid pace, supported by growth in consumer spending and business fixed investment. Participants viewed the moderation in the growth of economic activity to be largely in line with what they had anticipated.』

成長の鈍化が想定以上に大きかったとの由。

次からが個別需要項目で最初は家計。

『Regarding the household sector, participants observed that consumer spending had slowed from last year's robust pace, consistent with restrictive monetary policy, easing of labor market conditions, and slowing income growth.』

家計は引き締め的な金融政策や労働市場の緩和や収入増加ペースの減少などによって昨年のロバストなペースから鈍化しておりますと。

『They noted, however, that consumer spending had still grown at a solid pace in the first half of the year, supported by the still-strong labor market and aggregate household balance sheets.』

とは言っても家計消費の伸びは依然としてソリッドなペースなんですとな。

『Some participants observed that lower- and moderate-income households were encountering increasing strains as they attempted to meet higher living costs after having largely run down savings accumulated during the pandemic. These participants noted that such strains were evident in indicators such as rising credit card delinquency rates and an increased share of households paying the minimum due on balances, and warranted continued close monitoring.』

中低所得者の動向についての指摘がありますね。生活コスト上昇に直面して貯蓄の取り崩しやらカードの延滞やらが出ているのでこの状況についてはよく観察する必要があるとの指摘が数名(Some)から。

『Several participants cited reports that consumers, especially those in lower-income households, were shifting away from discretionary spending and switching to lower-cost food items and brands.

『A couple of participants remarked that spending by some higher-income households was likely being bolstered by wealth effects from equity and housing price appreciation. 』

さらに何人かの(Several)参加者は低所得家計が安売り商品にシフトしているとの指摘をしていまして、一方で2名の参加者は高所得家計が株高とか住宅価格上昇でウハウハという指摘もしている訳でして、まあだからどうだという結論は特にないにしましても、ジャパンの金融政策決定会合でもそういう議論についてもうちょっと真面目に考えると、円安促進イクナイってのは言える訳で、植田日銀っていろいろな黒田残滓の昭和温泉旅館部分の解体工事をしているのは評価できるんですけど、円安で格差拡大という点に関して放置プレイどころかついこの前まで促進していたというのは、世が世なら焼き討ち食らってもおかしくないし、今までは全部岸田無策ってことでごまかされていたけど新首班になったらそういう訳にもいかん可能性あるで、と思ってしまうのでありました。

いかんいかんついうっかり関係ない方面に悪態をwww

『Participants noted that residential investment was weak in the second quarter, likely reflecting the pickup in mortgage rates from earlier in the year.』

住宅投資はモーゲージ金利の年初来の上昇の影響で弱い、で家計部門の話は終わりです。


『Regarding the business sector, participants noted that conditions varied by firm size, sector, and region.』

次は企業セクターですが、企業セクターに関してはその企業規模、企業の属するセクター、企業の属する地域によって状況がまちまちです、というのが全体認識ですな。

『A couple of participants noted that their District contacts had reported larger firms as having a generally stable outlook, while the outlook for smaller firms appeared more uncertain.』

2名の参加者からは「うちの地区では大企業は総じて安定的だが中小企業はより不安定」との報告。

『A few participants said that their contacts reported that conditions in the manufacturing sector were somewhat weaker, while the professional and business services sector and technology-related sectors remained strong.』

企業向けサービスやテクノロジー系は強いけど製造業はちと弱いと数名(A few)の参加者の報告。

『A few participants noted that the agricultural sector continued to face strains stemming from low food commodity prices and high input costs.』

食品価格の低迷と投入コストの上昇で農業部門は厳しいようですな。という指摘。


・見通しをめぐるリスクについてですがこちらを見てもやっぱりフラグ建築の杞憂を高めてしまうアタクシ

先ほどの物価と労働市場の現状認識と先行き見通しで、特に物価のところが決め打ちオブ決め打ちにも程があって死亡フラグちゃんにしか見えないのですが、じゃあリスク認識どうなっているのか、というこのコーナーも重要あるね。

『Participants discussed the risks and uncertainties around the economic outlook.』

はい。

『Upside risks to the inflation outlook were seen as having diminished, while downside risks to employment were seen as having increased.』

まあこの全体観については既にオープニングリマークなどでも話があったんですが、しかしインフレのアップサイドのリスクは「as having diminished」って決め打ちしてて大丈夫なんですかねえ、とは思う訳で先に行きます。

『Participants saw risks to achieving the inflation and employment objectives as continuing to move into better balance, with a couple noting that they viewed these risks as more or less balanced.』

あんじょうようやってますのう、という話しか出てこない。

『Some participants noted that as conditions in the labor market have eased, the risk had increased that continued easing could transition to a more serious deterioration.』

挙句に労働市場がコケるリスクは拡大している、という話が出てきてハトハト音頭になっているのだが。

『As sources of upside risks to inflation, some participants cited the potential for disruptions to supply chains and a further deterioration in geopolitical conditions. A few participants noted that an easing of financial conditions could boost economic activity and present an upside risk to economic growth and inflation.』

最後にやっとインフレのアップサイドリスクの話があるんだが、潜在的な供給制約の再発生リスク(地政学とかでしょうね)についての指摘はまあご尤もなのですがそれはいつでもある話なんで言ってみただけって感じで、後半に数名(A few)が「足もとの金融環境の緩和が成長の上振れとインフレの上振れを招くリスク」を指摘しているんですが、なにせA fewでございますし、まあ結局これを見ていると最初の「インフレ鎮静化自信ニキネキ」モードがやっぱりなんかのフラグ建築をしているように見えてしまいますが、さてどうなることやら。

まあ個人的には50とか利下げして金融市場がヒャッハーってなって米国インフレ再燃とかになると滅茶苦茶香ばしい展開になる(どう見ても対岸の火事扱いですすいませんすいません)ので見てみたい気はするけどwwwwwww


・ファイナンシャルスタビリティの話は直接目先の金利上げ下げ問題には関係ないお話でありまして

最後の(というかその後に金融政策の話があるので最後じゃないけど今日ネタにする最後ね)パラはファイナンシャルスタビリティの話ですが。

『In their discussion of financial stability, participants who commented noted vulnerabilities to the financial system that they assessed warranted monitoring.』

金融システムの脆弱性についてはモニタリング必要との指摘をする向きがあるようですな、ナンデジャロという感じですけど。

『Some participants observed that the banking system was sound but noted risks associated with unrealized losses on securities, reliance on uninsured deposits, and interconnections with nonbank financial intermediaries.』

証券投資の含み損とか、ノンバンク金融仲介機関の作用とかが気になるらしい。

『In their discussion of bank funding, several participants commented that, because the discount window is an important liquidity backstop, the Federal Reserve should continue to improve the window's operational efficiency and to communicate effectively about the window's value.』

銀行の短期資金繰り、という意味では公定歩合貸出は重要なバックストップなのでこの使い勝手を良くすべき、という話なんですが、これはスティグマ問題があるから仕方ないよね、という気はします。公定歩合貸出を堂々と「貸出常設ファシリティです」って言う建付けにしないと皆さんがホイホイ使わないし、それでもホイホイ使うのどうかって感じかな。

まあそれ以前にこの高金利になっているのに短期市場金利の下限用ファシリティと上限金利の差が無さすぎで、もっとコリドアを大きくして昔みたいにFFレートは乱高下するもん、という風にならないと公定歩合貸出のスティグマ問題は解決しないと思います(個人の感想です)。

『Participants generally noted that some banks and nonbank financial institutions likely have vulnerabilities associated with high CRE exposures through loan portfolios and holdings of CMBS.』

商業用モーゲージにしこたま突っ込んで商業用不動産エクスポージャーが大きな銀行やノンバンク金融仲介機関がいるというお話をノートしたとな。

『Most of these participants remarked that risks related to CRE exposures depend importantly on the property type and the local market conditions of the properties involved. A couple of participants noted concerns about asset valuation pressures in other markets as well.』

でもってそのエクスポージャーがどうのこうのの話をしていますね。

『Many participants commented on cyber risks that could impair the operation of financial institutions, financial infrastructure, and, potentially, the overall economy.』

サイバーリスクの話になりましたが、

『Many participants remarked that because a few firms play a substantial role in the provision of information technology services to the financial sector and because of the highly interconnected nature of some firms in the financial industry itself, there was an increased risk that significant cyber disruptions at a small number of key firms could have widespread effects.』

ハッキングとかそっちの話ではなくて、金融関連業務に提供されているITテクノロジーを扱う会社が一部に集中しているので、その点での脆弱性がありますよって話で、その会社でシステムトラブルがあったらどうなるとかそういうことで、先般(日本では利用者が少ないので対岸の火事でしたが)米国の企業向けクラウドサービス(セキュリティソフトでしたっけ)でバグ発生して飛行機は欠航するわ企業のPCは動かんわ、みたいになった事案がありましたけど、そういう話ですね。

『Several participants noted that leverage in the Treasury market remained a risk, that it would be important to monitor developments regarding Treasury market resilience amid the move to central clearing, or that it is valuable to communicate about the Federal Reserve's standing repo facility as a liquidity backstop.』

米国債市場でのレバレッジもリスクですよって話なんだが、何ちゅうかその何でもかんでもリスク扱いされると金融仲介自体が回りにくくなるような気がするんですけどねえ、とは個人の感想としては思うのですけどね。

『A couple of participants commented on the financial condition of low- and moderate-income households that have exhausted their savings and the importance of monitoring rising delinquency rates on credit cards and auto loans.』

最後にまたも低所得家計の話が出てきまして、コロナ貯金を使い果たしてしまった低所得家計はクレジットカードや自動車ローンの延滞が増えてきているのはモニターすべき、という話で締められています。まあこの辺あまり金利の上げ下げマターとは関係ないですけど折角なので引用しました。


ということでまたも虫干しネタでどうもすいません。





2024/09/02

お題「氷見野副総裁金懇会見続き/短国とか期末とかの雑談」

中の人より業務連絡:週末に作業環境の移行をしたのですが、不具合がある場合ご指摘いただけるとありがたいです

でまあ作業環境の移行をしたのですが、そのついでにちょこっと手直しをしたりしたら案の定のハマリコフになりまして、結局金曜の更新の再更新をする気力を失ってしまいました。だいたいメーラーのせいなんですけど、20年以上いじっているけど初期設定は毎度毎度死ねるし、PCってとにかくこれがうざいからそりゃ皆さんスマートフォンやタブレットを使う罠。

〇短国ェ・・・・・・・・・・・

金曜の短国もアレでした。

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240830.htm
国庫短期証券(第1253回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1253回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号    国庫短期証券(第1253回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日      令和6年9月2日
4.償還期限    令和6年12月2日
5.価格競争入札について
(1)応募額         13兆2,790億円
(2)募入決定額      3兆7,182億8,000万円
(3)募入最低価格    99円97銭4厘5毛
(募入最高利回り)     (0.1023%)
(4)募入最低価格における案分比率    58.1989%
(5)募入平均価格     99円97銭6厘4毛
(募入平均利回り)     (0.0946%)』

・・・・・・なんか手前の銘柄が少し甘くなったからと思って期待したらまたも平均10bp割れとかどういうことやというお話で、担保需要だか退避資金(木曜の2年国がアホみたいに強くなった)だか知らんけど、エエカゲンニセエというか、そもそも発行量が少なすぎるんじゃヴォケいい加減にしろ発行せんか発行。

とまあそういういつもの話に帰着するのですが、後先考えないで馬鹿みたいなオペ打ってその残置物のせいでエライことになっている面が強いので、まあ日銀が悪いよ日銀がということで、バランスシート何とかしやがれ国債売却しやがれと暴論をぶっこみたくなる今日この頃なんですが、これさらに利上げしていくとコールレートとの乖離がもっとひどいことになってしまいそうで益々頭が痛い(本来期日ものなんだから将来の短期金利見通しが反映されて然るべきってまあ直近だと向こう3か月政策変更ないじゃろという話だから関係ないけど)。


東京レポレートちゃんは
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

2024/8/26 0.239 0.214 0.193 0.193 0.190 0.190 0.204
2024/8/27 0.242 0.221 0.193 0.193 0.191 0.189 0.203
2024/8/28 0.243 0.196 0.182 0.184 0.186 0.186 0.203
2024/8/29 0.204 0.058 0.163 0.170 0.174 0.173 0.201
2024/8/30 0.173 0.230 0.187 0.187 0.185 0.185 0.201

金曜日書き損じておりましたが、月末要因なのかなんか知らんですけど木曜のトモネなので末初になりますが、ここのレートが謎に飛んで下がってしまいましたけれども金曜日になったら戻っているので末初要因かなとは思うのですが、通常月の末初でこれっていうのもねえという話で・・・・・・・・・


〇9月末はまともに金利が復活して事実上最初の期末期初になるんですよね〜

いやまあマイナス金利解除されたのは3月なんですけど3月の末初は解除直後だし金利水準クソ低いし、ということですが、今回は政策金利が(なんかの発狂事案でも発生して政策変更が起きない限り)0.25%とかいう一応人間界の金利に少しだけ戻り、しかもその水準がおっぱじまって丸々2か月経過して迎える期末なので、そういう意味で「金利が戻った世界の最初の期末期初」になるんですよね。

でまあどうなるのかという話は当然ながら関係各位の間ではとっくの昔に「さてどうなるんじゃろ」と話題にはなっているお話ではあるのですが、なにせこの世界、マニアにもほどがあるので関係各位が頭捻っても世の中的には長期金利のように大いなる話題にはならない(そもそも他の人から見たら知らんがなの世界だし)というのが大変にチャーミングなところではあるのです。

・・・・・でお前何か答え持ち合わせているのか、と言われますと、なにせ短国3Mと足元金利のこの強烈なインバート、というような、この世のものとは思えない市場変化が生じていますし、期末のバランスシート制約が皆様どんな具合なのかとか、日銀当座預金放り込んでていいのかとか、各種もろもろの前提条件が黒田とかいう破壊王がマイナス金利政策とかいうキチガイ政策を行った上に、治世の末期になって単に自分が金融緩和の見直しをしたくない一心でバランスシートを破滅的な勢いで拡大させるというテロ行為を行ったせいで、何がなんだかわけわからん世界になっておるわけですな。

ということですので、アタクシのような人が能書きを垂れるよりも短資の中の人が解説されて頂ければヨロシアルと思いますので(何という責任放棄マンw)なんか良い解説がありましたら宣伝するのはやぶさかではありません(人の作った解説を解説するとかいうのも考えたがさすがにちょっとそれはwww)。

まあ要するに「なんだかさっぱりわからんゾ」という話ではあるのですが、分からんということを折角9月になったので申し上げておくのもこれまた一興かなと思いまして(ナンジャソラ)。


〇とか言ってたらこんなのがしらっと出ていました(短期市場に関するなんか)

https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2024/ron240830a.htm
超過準備下の短期金融市場の動向と機能度
― マイナス金利政策解除後の動きも含めて ―
2024年8月30日
日本銀行金融市場局

なんちゅうかですね、この要旨見ただけでワイの反応ご想像つくと思うのですけどまあ寝言の鑑賞。

『要旨』

『日本銀行は、各種の非伝統的金融政策を実施する中、過去25年間の大半の期間、所要準備額を大きく上回る潤沢な資金を供給してきた。本稿では、こうした超過準備下での短期金融市場におけるレート形成および取引動向を振り返ることで、非伝統的金融政策が短期金融市場に与えた影響を評価する。』

市場を壊滅的に破壊してその影響はマイナス金利解除後にますます深刻になりました、以上それまでで後何か言う事あるんですか?????

『短期金融市場には、(1)イールドカーブの起点としての機能、(2)金融機関の資金過不足の調整を行う場としての機能が期待される。超過準備下では、後者の重要性は低下していると考えられるが、無担保コールO/N物レート(TONA)が金利指標として担う近年の役割を踏まえると、無担保コール市場が多様な顔ぶれで構成され、一定の取引規模が確保されていることの重要性は高まっている。』

当預保有者が資金借りてきて当預に放り込んでいるだけの市場の何か「市場」なんだよという話だし、「イールドカーブの起点としての機能」って短国レートを見てから物を言えとしか言いようが無い。

『非伝統的金融政策が採用された期間は、超過準備への付利の状況に応じて、(1)2001年〜から2006年の量的緩和期(第1局面)、(2)2008年の補完当座預金制度の導入〜から2016年のマイナス金利政策導入までの期間(第2局面)、(3)2016年〜から2024年のマイナス金利政策期(第3局面)、に大別される。このうち、補完当座預金制度が存在せず、超過準備への付利がゼロ%であった第1局面は、無担保コール市場における取引インセンティブが失われ、市場の機能度が低下した。第2局面では、補完当座預金制度が導入され、日銀当座預金の付利先と非付利先との間で取引インセンティブが発生した。こうした中、無担保コール市場の機能度は徐々に回復し、第3局面においても、市場機能は維持された。この間、GCレポ市場においても、レート形成や取引動向といった点で、市場機能は維持された。』

これはまあ多角的レビューで毎回言ってる話なんですが、そもそも論として日銀当座預金付利先に対してマクロ加算だの何だのと言って優遇措置を与え、非当預先に対してマイナス金利の負担を押し付ける形になって(生保年金その他諸々ね)、それらの負担によって見た目取引だけは行われている、という状況を捕まえて「市場機能は維持された」ってのがちゃんちゃらおかしいわけで、市場参加者間に機会不均衡を与える、すなわち一部の市場参加者(その後ろにはその業態に対して資金を預けている人がいる)の一方的な負担によって市場機能が維持されることが、そんなに大事なことだったのかという社会的公正の面からの評価が一切ない(まあそれをやりだすと自己否定になるからこやつ等が評価しないのは順当だが)訳ですな。

『2024年3月に「金融政策の枠組みの見直し」が決定され、マイナス金利政策が解除されると、短期金融市場は、「マイナス金利」から「プラス金利」の世界にスムーズに移行した。円滑な移行には、第3局面において、無担保コール市場の顔ぶれが多様化し、取引ネットワークが拡大したことなどが寄与している。』

当預保有者が以下同文。

『日本銀行が短期金利の操作を主たる政策手段としたことに加え、TONAが金利指標として担う近年の役割を踏まえると、短期金融市場の機能が維持されることは、これまで以上に重要である。日本銀行では、短期金融市場のレート形成や取引動向を今後とも丁寧にフォローし、市場の機能度に目配りする方針である。』

国債市場見てから物を言え。

ということで本チャンの方ですが、
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2024/data/ron240830a.pdf
超過準備下の短期金融市場の動向と機能度
― マイナス金利政策解除後の動きも含めて ―


となっているのですが、あのしょうもないロゴ「多角的レビューシリーズ」がある時点で、非伝統的政策の問題点の指摘とかそういうことをしない茶坊主レポートになっているのが読むまでもなく明らかではあるのですが、暇だったら読んでみるわ。




〇ついでに東京都区部CPI

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf
2020年基準 消 費 者 物価指数
東京都区部 2024年(令和6年)8月分(中旬速報値)

『◎ 概 況

(1) 総合指数は2020年を100として108.4
前年同月比は2.6%の上昇 前月比(季節調整値)は0.6%の上昇

(2) 生鮮食品を除く総合指数は107.9
前年同月比は2.4%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は106.9
前年同月比は1.6%の上昇 前月比(季節調整値)は0.4%の上昇』

・・・・・・いやちょっと前月比の上げ方なんなのって感じで、確かこれサーベイベースの予想よりも強かった気がするんですが、さらに個別の方を見ますと、2枚目に

『[総合指数の前年同月比に寄与した主な内訳]』

というオシャンティーなものがございまして、

『上昇

食料  生鮮野菜 12.5%(0.24) ・・・・・ きゅうり 27.7%(0.04) など
     穀類 6.6%(0.13) ・・・・・ うるち米(コシヒカリを除く)28.2%(0.08) など
     肉類 5.6%(0.13) ・・・・・ 牛肉(輸入品)14.7%(0.04) など』

とかいうのがあるんですが、きゅうり高騰とか迎え盆のご先祖様もしょんぼりですなというのはさておきまして、コメがエライことになっておる上に、これ8月前半ですから後半になったら一段上振れしてるじゃろという話でして、いやまあ米価自体は新米が出てくれば徐々に落ち着くでしょうけれども、こう食料品が上がられますとねえという話で、あんまりネタにされませんけれども、この辺りの価格上昇って政権支持率に影響与えているんじゃないかなと思うんですよね・・・・・・・・


〇氷見野副総裁金懇会見ネタの続きです

さて気を取り直して金曜日PCトラブルで途中までしかやってなかった物件。
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240829a.pdf

・しかしあの内田副総裁の「金融市場が不安定な時は」云々は後で相当高くつくことになりますな

金曜日に延々と引用した例の内田副総裁発言に関連する質疑応答、実はあと1個残っていまして、

『(問)ちょっと一個だけ認識の確認で、金融市場の不安定さの点に関してなんですけれども、これは政策反応関数に金融市場ってのはならないっていう整理の仕方を、氷見野副総裁ご自身されているのかっていうところを、ごめんなさい、ちょっと念のため認識の確認というところで。』

ということで、金曜日に引用したのも含めて、今回の質疑応答のうち7つの質問がこの金融市場の不安定云々になってしまった訳です。

まあこの回答自体は、

『(答)私ども、経済・物価の見通しが実現する確度と政策ということであるわけですけども、その確度には様々な要因が影響を与えるわけでありまして、もちろん、消費、賃上げ、米国経済、様々なものが影響を与えていくわけですけれども、当然のことながら内外の金融資本市場の動向が、確度に影響を与えていくということも、もちろんあるわけですので、政策反応関数というふうに言っていいのかどうかよく分かりませんが、もちろん金融資本市場の動向も、どう経済に影響するかよくみたうえで、政策判断していくということは、その通りだというふうに思います。』

もはや一般的な回答しかできんわ、というお答えになっていますが、これだけしつこく質問される、っていうのはまあ長年会見のテキスト見てるワイからしても異様オブ異様な話でございまして、いやそんなのどうでもいいじゃんと言いたくなるところではありますが、まあ円債の人たち以外からしてみたらこの「金融市場が不安定かどうかによって今後の利上げペースが変わってくるから、金融市場がどういう状態にあるのかという認識を聞くのは大事」ということになるんでしょうなあ、と思う訳ですよ(正直報道する方がもっとこの点から離れて欲しいのだが連中も商売だからこうなるわな)。

となりますと、これ今週来週の審議委員の皆さんの金懇でも「内田副総裁の発言があった頃から比べれば落ち着いているようにも見えますが、先般の氷見野副総裁も会見で最大の注意を払うようなことをおっしゃっていました、委員の現状のご認識は如何でしょうか」って質問が飛んでくるの間違いないし、今月の決定会合の後の定例会見だって植田総裁に「金融市場の安定度合いについての評価はどうなっているでしょうか」って絶対そういう話になるわけですよ。

ということで、このクソしょうもない「金融市場の安定」とかいうのがどこまで行っても話題になるし、あたかも政策反応の重要な要素って話にいつまでたってもなってしまう訳で、その場しのぎで言ったにしたって内田副総裁の先般の発言は、日銀の今後の政策運営におけるコミュニケーションに対して罪万死に値するレベルのマズイことを言ってしまった、としか評価しようがありませんよね、ということになるわけでして、金融市場の安定云々が話題のメインじゃなくなるのいつになるのやら、ってなところであります。

まあお前らは福井俊彦じゃないんだから福井の俊ちゃんみたいな天才的なその場しのぎができるわけなくて、真似したら大怪我するだけなんだから器用ぶってその場しのぎのクソ理屈を捏ねる悪い癖を治せってなもんですけどね。


・中立金利に関する質疑がこれまたしょうもない

実質最初の質疑に戻りまして、

『(問)(前半割愛)もう一つは、中立金利についても触れられていましたけども、中立金利、推計の幅があって、不確実性が高いということですけれども、今後政策金利を 0.5%、0.75%と引き上げていく中で、幅のある下限について、どの辺りで意識して政策運営をしていく段階になるのか。また、過去 30 年間、一度も政策金利が 0.5%を超えたことないんですけれども、そういった中でですね、実際の経済・物価の反応を分析するうえでどういったところを注視するべきなのかどうか、伺えるでしょうか。』

何ちゅうか植田さんとかの話聞いてるのかお前という質問だが。

『(答)(前半割愛)そのうえで、中立金利をどうとらえるかということなんですけれども、これについては政策運営を進めていく中で、実際の経済・物価の反応を分析しながら、道筋を探っていくしかないのかなというふうに考えておりまして、現在、何か特定の水準なりレンジを特別に意識して考えているということは、私自身はございません。』

としか回答の仕様がないのだがこれがまた愚劣なことに次の人が、

『(問)中立金利の事情とかよくよく理解はしているつもりなんですけれども、総裁の説明ですと、今の金利水準というのは、中立金利よりもだいぶ下の方にあるというような趣旨のことをこれまで述べられてきたかと思うんですけれども、その辺りの認識については、副総裁はどう考えてらっしゃるでしょうか。』

ねえ、理解しているのに何でそんな質問するの????

『(答)現状がかなり緩和的な金融環境にあるというのは事実だろうというふうに思います。緩和的な金融環境にあるということは、中立金利よりは低いだろうということではあるわけですが、では一体どれくらい幅があって、どれくらいの範囲だと緩和的の範囲なのかというところの見極めについては、政策運営を進めていく中で実際の経済・物価の反応を分析しながら、道筋を探っていくしかないのかなというふうに思っているところです。』

ということで、これ以上の回答は無いわ、と思うのですが、これがまた中立金利に関してアホみたいな質問が来るんですよね。ちょっとあとのほう(途中は「金融市場が不安定」の質疑が延々と続く)になりますが。

『(問)(前半割愛)二点目なんですが、今日、中立金利について、かなり丁寧にご説明されていました。中立金利、少なくとも 1%以上という指摘もありますけれども、改めてですね、この講演資料の中にも載ってるんですけれども、中立金利と政策の関係性についてご見解を教えて頂けましたら幸いです。』

アホなのか??

『(答)(前半割愛)中立金利は 1%以上なのかというところなんですけれども、そこまではっきり特定できると思っている人もいろいろいるんだと思いますが、私は、特に過去 30 年、短期金利はゼロだったわけですので、それにいろんな行動とか、仕組みとかも適応してきている面があると思うんです。その中で金利を変えていくといったときに、中立金利っていうのはじゃあどうなのかっていうのを、なかなか簡単には当てられないというふうに考えておりますし、何かモデルで出てきた数字をそのまま信じるというのもあんまりいいというふうには思っておりませんで、いろいろ人によって意見もあれば考え方もあって、それは引き続き議論して勉強していきたいというふうに思っておりますけれども、実際には、政策運営を進めていく中で、実際の経済・物価の反応を分析しながら、道筋を探っていくしかないかなというふうに考えております。』

氷見野さん丁寧ですよね、これ黒ちゃんだったらとっくの昔に「さっきも同じこと言いましたが」って言い出すわw

なお、最後にこんなのも。

『(問)私が先ほど聞いた時に、今、金利水準がかなり緩和的であるというふうにおっしゃって頂きました。とはいえ、中立金利の水準っていうのはやっぱり経済・物価の反応をみながら道筋を探っていくしかないというふうにもお答え頂いたんですけれども、次の利上げをしたら、それをもって中立金利に達してしまったみたいな状況っていうのは、さすがに想定はしてないというふうに受け止めてよいのでしょうか。』

人の話聞いてる???

『(答)中立金利についてもいろんな議論がありまして、御紙に岩田一政元副総裁が寄稿しておられたのでは、もう足元ので大して中立金利と違わないんじゃないのかというようなことも書いておられました。あまり決め打ちで予断を持つことなく、やっていきながら、実際の経済・物価の反応を分析しながら道筋を探っていくしかないのかなと。ここまでは必ずやるとか、ここから先はやらないとか、どこがどうとかっていうのは、私はそういう自信は持っておりません。』

えーっと、どこですかこれ質問してるの????


・これは良い質問だが質問のツッコミが足りない

という質疑の中、信玄堤の話題を質問した記者さんがいてこれは目の付け所は良い。

『(問)午前中の懇談で、副総裁、信玄堤の例を引かれてご挨拶されましたけれども、多分に地元向けのリップサービスではあろうかとは思うんですが、この信玄堤の考え方というものをですね、金融政策に生かすとすれば、例えばどんなことがあるのか、考え方としてご紹介頂けますでしょうか。』

目の付け所は良いのだが「地元向けのリップサービス」とか言っちゃうのがダメダメにも程があるのと、金融政策に生かすとすれば、ではなくて、これは「異次元緩和政策のような硬直的な政策運営よりも信玄堤のような柔軟な政策運営が求められる、というように読み取ったのですが、氷見野副総裁はこの信玄堤の精神を金融政策にどのように反映させていかれますか」とか突っ込んでほしかったですね。この話をネタにしたのはなかなかの着眼点でしたがツッコミが惜しくも足りん。

『(答)これはなかなか真似できるかと言われると難しいわけですけれども、何か一つの問題を一つのことで単純につなげて考えるというよりは、水だってどんなふうに来るか分からない中で、いろんな対応を考えておいて、対応できるようにしておくということなので、』

どう見てもマネタリーベース直線一気理論をディスっています本当にありがとうございました。

『実は金融政策は手段がそんなたくさんあるわけでありませんで、非伝統的政策を卒業した後は、政策金利を上げる、下げる、据え置くという、それぐらいしかないので、なかなか将棋頭と十六石と信玄堤と、というようなことは難しいんですけれども、いろんな展開を思い描いて、それでどういう展開になっても、できるだけ対応できるように、特に一番悪い結果をあまり悪くしないようにというようなことを考えながらやっていくのが望ましいという意味では、少しでも信玄堤を作った信玄公に学びたいというふうに考えております。』

「特に一番悪い結果をあまり悪くしないように」ってのが含蓄ありますよね。

とまあそういうことで。