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2024/08/30

お題「氷見野副総裁金懇会見から」

台風いつまでいるんだよ・・・・・・・・

〇氷見野副総裁金懇会見だがお前らもうちょっと聞くことは無いのかと小一時間

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240829a.pdf
氷見野副総裁記者会見
――2024年8月28日(水)午後2時から約35分
於 甲府市

・ほかに聞くことは無いのかと

えーっとですね、こちらの会見なのですが、例の内田副総裁の「金融市場が不安定なら利上げはしない」ってのと、「中立金利」の質問がやたら出ていてお前ら他に聞くことないのかと思いました。

ていうかですね、「金融市場が不安定なら利上げしない」って内田さんの言い方もあれ無茶苦茶で、例えばの話急激な通貨安が発生するような不安定な中で利上げをしないのか、というとそれは違うだろという話で、通貨安が急速に進行している中で「為替市場が不安定なので緩和的な金融環境を継続します」とか言い出したら通貨安に拍車掛けることになるわけで、そういう意味では内田副総裁のあの説明に関してははっきり言って見識を疑う物言いなんですよね。

とまあそんなわけで最初の幹事社さん(地元紙の筈)の質問は「今日はどうでしたか」というのとご当地質問なんでその質疑を割愛しまして、その次の質疑から参ります。

・金融市場が不安定云々のヘッドラインとかにされていた部分だが切り抜きにもほどがあるだろ

ということで実質質疑の一発目の質問ですけど。

『(問)午前の金懇で、副総裁ですね、金融市場は引き続き不安定な状況であって、当面はその動向をきわめて高い緊張感を持って注視するとおっしゃいました。今後の利上げ判断に当たってですけども、経済・物価が見通し通りに推移して、そうであっても、市場の動向であるとか、また、今後利下げが確実視されている米国経済が軟着陸するかどうかとか、そういった注視すべき変数が増えているのかどうか、以前よりですね、一段と慎重に判断する必要があるのかどうか、ということをまず伺えないでしょうか。(後半割愛)』

うーんなんですかねえこの質問は。

氷見野さんの回答。

『(答)まず一つ目のご質問ですけれども、金融政策運営に当たっては、常に無数のファクターを考慮して考えていかざるを得ない、しかも前にも申しましたが、全部青信号とか全部赤信号ということはなくて、様々なシグナルがある中で判断していかなければならないということだと思いますけれども、』

まあ要するにこれだけのことであって、別に普段だって米国経済のこと気にしないわけではないし、金融市場で変なことが起きているかどうか見ないといけない(まあ見たら利上げになったんでしょうけど)ですし、注意すべき変数が増えたとか減ったとかそういうもんじゃないですよね。という感じですが、氷見野さんご丁寧にちゃんと説明しております。黒ちゃんだったら「普段からいろんなものを見るのは当たり前だろ」で一刀両断しそうですがwww

『現在の状況で言えば、現状、金融資本市場は引き続き不安定な状況にありますので、当面はその動向をきわめて高い緊張感を持って注視していくというのが私どもとしてまず取り組むべき事柄だろうというふうに思います。』

なんかこの部分切り取られてヘッドラインにされていたけど、その直後には、

『そのうえで、市場変動の経済・物価に与える影響とか、7月の利上げの影響とか、それだけではなく今おっしゃった、米国経済の先行きとか、様々なことをみながら、そのうえで、経済・物価の見通しが実現する確度が高まっていくということであれば、金融緩和の度合いを調整していくということで、そこの基本的な姿勢は変わらないということであります。』

って言ってるわけでして、別に将来の金融政策運営になんか手かせ足かせを掛けるような話にはなっていないんですよね。普通に市場の大荒れが収まったということであれば政策アクションできまっせという話だし、なんかの拍子に円安再燃したら追加利上げは早くなる可能性だってありますがな。

『引き続き 2%の目標のもとで、幅広い方々と丁寧にコミュニケーションを取りながら、適切に政策運営をしていきたいと考えております。(後半割愛)』

ということでして、特に今回の氷見野さんの講演とか会見って、メディア的には「市場配慮でハトっぽく」というのがニュースとしてキャッチーだから、そっちの方向にバイアスが掛かりやすいと思うので、会見ほぼ冒頭のこの質疑でも、さきほどの「現状、金融資本市場は引き続き不安定な状況にありますので、当面はその動向をきわめて高い緊張感を持って注視していくというのが私どもとしてまず取り組むべき事柄だろうというふうに思います。」がクローズアップされるという格好になっていますわな、と思いました。


・金融市場が安定しないと利上げしないのか問題

『(問)二点お伺いしたいんですけれども、先ほど金融市場の動向とその影響を見極めていくのがまず第一の課題という話がありましたけれども、日銀として次の利上げを決めていくに当たって、やはり前提となるのは金融市場の安定化なのか、金融市場の安定化がないと次の利上げができないのかどうかというお考えをお聞かせください。』

まあこれは確認の意味で聞きたいことはわかる。あとついでですが、

『それから 8 月 5 日の株の暴落の背景として、アメリカの景気の減速懸念というのがありますけれども、氷見野副総裁はアメリカ景気の現状についてどのようにみてらっしゃるんでしょうか。』

というのもあるので一緒に。

『(答)やはり政策運営に当たっては、様々な要因を総合的に判断して考えていくということになると思います。当面、もちろん市場動向を見極めていくというのが、まず取り組むべき課題だというふうに思っておりますけれども、そのうえで、何か論理式を書いてですね、AANDBORC何とかだと利上げとかいう、機械的なことをするわけではありませんので、全体として様々な事柄を全部とらえたうえで、経済・物価の見通しが実現する確度が高まっていくということであれば、金融緩和の度合いを調整していくというのが基本的な姿勢であります。』

こうだからこうする、こうしない、という決め打ちは一切ありませんという答えですな。

『アメリカ経済の減速懸念につきましては、全く減速しないかといえばそういうことではないかもしれませんけれども、逆に昔言っていたような、インフレを克服するためにはかなり深い減速がなきゃならんというシナリオには、引き続きなっていないように思います。一時いろんな指標が出ておりますので、読みにくいんですけれども、私自身としては、メインシナリオは引き続きソフトランディングのコースなんではないかというふうに考えております。』

まあこれはこういうお話ということで。


・金融市場が不安定って話の質問がまだまだ続く

いやまあそういうことも含めて内田副総裁のあの言い方ってどうだったのかと思う訳で、氷見野副総裁飛んだとばっちりという感じですわ。

『(問)(前半割愛)もう一点が、現状、金融資本市場は引き続き不安定な状況にあるということですが、この不安定さが脱した状況っていうのを見極めるうえで、氷見野さんが重視するポイントですとか、指数ですとか、指標ですとかそういったものがありましたら教えてください。』

『(答)(前半割愛)二つ目が、市場が不安定さを脱したかどうかの判断のポイントということだったと思います。これもなかなか、市場の動きの先行きというものを高い確度でとらえる、足元落ち着いているかどうかよりも今後安定しているかどうかというところを見極めるのが大切なわけですけれども、正直言って、例えば海外の統計指標の毎期の振れがどういうふうに振れるかみたいなところまでは読み切れないところもあるわけですけれども、これも一つの指標をみていれば安定性を判断できるというよりは、安定性を損ないそうな要因をいろいろ考えてみたうえで、それの先をできるだけ読むようにしていくということしかやりようがないのかなというふうに思っております。』

ってこの回答、要するに内田さんが金融資本市場が不安定云々という話をおっぱじめたもんだから言わざるを得なくなったけど、定義づけとかそういうものはありませんがな、というお話ではありますわな。


でまあその先の方ではこれまたこんな質問がありまして見ている方がうんざりして来ますけど・・・・・・・・

『(問)先ほど、足元の市場が落ち着くということよりも、やっぱり今後落ち着いていくかどうかという見極めが大事だという趣旨のお話があったかと思います。金融資本市場の動向について当面はですね、緊張感を持って注視していくということなんですけれども、この当面っていうのが、どのぐらい先なのかというお考えでしょうか。(後半割愛)』

『(答)時間軸的にいつまではなくて、いつからはあり得てとかいったイメージを私自身は特に持っておりません。』

というのは当たり前でして、

『一つは市場を見極めるということがあるわけですけれども、これもどれだけ待ったら見極められるというよりは、いろんな市場の動きあるいは市場の動きの背後にあるいろんなファクターをみていって、完全には見極められないんですけれども、ある程度の自信を持てるかどうかっていうところが一つあると思います。(後半割愛)』

まあその通りですわなとしか言いようが無いのですがまだ質問が来ましてこの直後に、

『(問)繰り返しで恐縮なんですけれども、不安定な市場が現時点で経済・物価見通しが実現する確度にどのような影響を与えているかということについてご認識を伺いたいんですけれども、見極めが必要ということなんですけれども、やはり経済・物価が不安定な状況では、確度は高まりづらいということでよろしいのか。あと、副総裁のご自身の経済・物価見通しも、このことによって何か今変化があるのかどうか。その辺を教えてください。』

しかし何で今回の会見やたらこれを聞こうとするんでしょうか・・・・・・・

『(答)どういう影響があるかというのは、ちゃんと見極めていきたいと思っているんですけれども、今日も少しはお話をお聞きできたんですけれども、私が何人かの経営者の方からお話を聞くというよりは、日銀の経済分析班が様々な方からお聞きして、更にできれば統計とかもみて、判断していきたいというふうに考えておりまして、多分こういう経路もあるだろうというようなことは考えられますので、今日の挨拶でもそのいくつかパスとして考えられることは申し上げたんですけれども、そこでも両方の向きがあり得るというようなことを申しましたので、それが実際どうかというところについては、やはり、実際、経済を動かしておられる企業の方とか、あるいは消費者の反応がどうかとか、そういったところを、今日お聞きした中では、円高でインバウンドはそこまで影響しないんじゃないかというご意見もお聞きしましたが、これも何か多少はあるかもしれないが、とおっしゃっていて、どの程度かというのはやっぱり自信はそんなにお持ちでないのかもしれないと思いましたので、そこはこれからちゃんと見極めていきたいというふうに思っております。』

いやーこれは氷見野さんも大変だわって感じですな。しかもまだこの質問が続きやがりまして、

『(問)二点お伺いさせてください。まず、金融市場の不安定さと金融政策の関係性についてお伺いします。先般、内田副総裁、金融市場が不安定な状況では利上げしないとおっしゃられていました。この点に関して、氷見野副総裁、金融市場の不安定な状況で利上げするのかしないのか、ご認識を念のためお伺いさせてください。これが一点目です。(後半割愛)』

・・・・・何回同じ話をさせるのやら。

『(答)一つ目のご質問につきましては、現状、金融資本市場は引き続き不安定な状況にあると考えておりまして、当面はその動向をきわめて高い緊張感を持って注視していくというのが、私どもとしてやるべきまず最初の仕事だろうというふうに考えております。そのうえで、そうした動向が、経済・物価の見通しとかリスクとかに及ぼす影響をしっかり見極めていきたいというふうに考えております。そのうえで今後の政策運営については、そうした影響とか、7 月に決定した利上げの影響とかを見極めながら、私どもの経済・物価の見通しが実現する確度が高まっていくということであれば、金融緩和の度合いを調整していく、というのが基本的な私どもの姿勢であります。(後半割愛)』

あーあー氷見野さん呆れちゃって紋切り型回答になっちゃったよ。


・・・・・しかしその直後にこの質問はワロタ。

『(問)ちょっと一個だけ認識の確認で、金融市場の不安定さの点に関してなんですけれども、これは政策反応関数に金融市場ってのはならないっていう整理の仕方を、氷見野副総裁ご自身されているのかっていうところを、ごめんなさい、ちょっと念のため認識の確認というところで。』

さすがにこれは聞いててヤバいとおもったかw「ごめんなさい、ちょっと念のため認識の確認というところで」って入りましたなwww

『(答)私ども、経済・物価の見通しが実現する確度と政策ということであるわけですけども、その確度には様々な要因が影響を与えるわけでありまして、もちろん、消費、賃上げ、米国経済、様々なものが影響を与えていくわけですけれども、当然のことながら内外の金融資本市場の動向が、確度に影響を与えていくということも、もちろんあるわけですので、政策反応関数というふうに言っていいのかどうかよく分かりませんが、もちろん金融資本市場の動向も、どう経済に影響するかよくみたうえで、政策判断していくということは、その通りだというふうに思います。』

お前らいい加減にしろと内心苦り切っていたに違いない・・・・・・

(つづく)


〇ところで・・・・・

さて、実は氷見野副総裁の金懇ですがまだ話の続きはあるのですが、今朝ほどワタクシの作業用PCが一時的に死ぬという事案が発生してその修復作業に掛かりながらだったので途中になっております。

週末に作業環境を移行する予定なので、その時に続きをアップしたいと思いますしゃーせん。









2024/08/29

お題「氷見野副総裁金懇挨拶は実に読みごたえがありました/その他」

台風ェ・・・・・・・・・・・

〇なんか日銀からスタッフペーパーがドバドバ出ている件について

なんぞこれ
https://www.boj.or.jp/whatsnew/index.htm

8/28(水)調査・研究
(論文)わが国企業における価格マークアップの決定要因と生産性への含意
8/28(水)調査・研究
(論文)過去25年間のわが国経済・物価情勢:先行研究と論点整理
8/28(水)調査・研究
(論文)自然利子率の計測をめぐる近年の動向
8/28(水)調査・研究
(論文)金融研究所DPS:オープンAPIのセキュリティ:認可処理における脆弱性と対策の高度化
8/28(水)調査・研究
(論文)金融研究所DPS:人口増加率の変化がTFP成長率に与える影響につ

でまあこのうち、金研のディスカッションペーパーシリーズはそうじゃないのですが、上の3つは本チャンの方を見ると例の「多角的レビューシリーズ」と銘打ってあってうへーと思うのですが。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/wp24j11.htm
わが国企業における価格マークアップの決定要因と生産性への含意

本文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24j11.pdf


https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/wp24j10.htm
過去25年間のわが国経済・物価情勢:先行研究と論点整理

本文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24j10.pdf


https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/wp24j09.htm
自然利子率の計測をめぐる近年の動向

本文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24j09a.pdf

なおこちらは釣り針のように「自然利子率推計データ」というのがあってエクセルでダウンロードできますな、というかしたんだが。

まあアレです、自然利子率の推計値って過去の実績値計算している場合ですら無茶苦茶差がある(直近の自然推計率が分からん、というのは仕方ない面はあるけど何で過去の自然利子率の推計値がこんなにブレるのよ)訳でして、つまりはそもそも自然利子率自体は政策運営のガイダンスとしては、概念としてそういうものがある、という定性的な意味はあっても定量的には一切使い物にならない、ということを意味しているんじゃないですけねえ、って感じですわな。


・・・・・・うーんなんかまた大本営っぽいきもしますが、余力がある時に読んでみたいと思います。


〇氷見野副総裁甲府金懇:総裁の国会での説明に沿ってますね&格調高いですよね〜

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240828a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 山梨県金融経済懇談会における挨拶 ──

・そもそも初手から格調が高いし最後の部分がもっと格調高い

『1.はじめに』ですが、

『本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。また、日本銀行と甲府支店への日ごろからのご協力に感謝申し上げます。』

はさておき、

『わたくしは富山県富山市の出身で、屏風のように聳える立山連峰を朝な夕なに仰ぎ見て育ちました。昨日当地に参りまして、南アルプスの姿に懐かしい思いがいたしました。武田信玄の「動かざること山の如し」という言葉も、実際に甲斐の山々を目にして思い起こしますと、動かないことの背後にある峻厳さが感じられ、風のように速く、火のように激しい、ということと、動かない山の峻厳さは表裏一体であるような気がいたしました。また、林も山も生きており、力に満ちた静けさなのだ、という印象を抱きました。』

掴みの部分からもう格調が高いのですが、いつもとちがっていきなり最後に飛んじゃいますけど、

『4.おわりに』って普通は読み飛ばす場所なのですが、氷見野さんの講演はここも見どころになっているのが凄い。

『近年世の中の変化が目まぐるしく、また、いろいろな余裕も乏しくなる中で、どうしても目先のことを考えるだけで目一杯になりがちです。そうした毎日を送っていて、対極にある姿として思い起こすのは、当地の信玄堤のことです(図表 10)。』

と言われましたので私もしらっと信玄堤に関して改めて調べてしまいました^^;

『御勅使(みだい)川の急流の力を、石積出しにより方向を変え、将棋頭(がしら)で分断し、十六石で抑え、もともとあった高岩に当て、さらに5つもの堤を並べて、もし水があふれても堤防の切れ目から川に戻すように工夫してあると承知しています。』

この治水はとにかく凄いものだそうですな。

『まるで信玄の軍略を見るようで、信玄が地形を利用しながら軍勢を配置する仕方もきっとこのようなものだったのではないかという気がします。』

『最近の言葉でいえば、さまざまな想定外のシナリオにも対応できるような、レジリエンス重視の設計といってもいいのではないかと思います。』

氷見野さんそういう意味を籠めているのかはともかくとして、この部分って(特に末期の)黒田時代の2%に拘り、というか緩和に拘りなのかもしれないけど、金融政策運営が硬直的になって今まさにガチガチに作った堤防が決壊して大水害の後始末みたいなことになっている状況に対して寸鉄人を刺しているかのようにも読めるところが味わいがあるわけです。

『本日はできるだけ話を単純にするため、景気と物価をめぐる一つのシナリオを中心にしてお話いたしました。また、リスク要因についても、どちらかといえばこれまでの延長線上にあるような目先のリスクについていくつか触れるにとどまりました。』

で、

『地域の経済の将来を切り拓いていくためにも、日本の経済の将来を考えていくためにも、本来であれば、信玄堤を作った先人に学ぶくらいの気持ちでもっと大きな戦略性を持たなければならないだろうと思います。』

と言ってるのも格調が高いのと同時に物価2%達成の数字の細かいコンポーネントの話にすぐに走ってしまう日銀大本営の対外説明に対して寸鉄を刺しているんでネーノとも読めてしまう訳ですな。

『本日は、わたくしが申し上げたようなテーマに限らずに、皆様が現在悩み、取り組んでおられる事柄についてのお話を幅広くお伺いできればと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。』


というわけで本編に戻ります。


・「できるだけ話を単純に」ということですが説明が一々腑に落ちてこれは聞いてたら満足度が高いでしょうね

さきほどの終わりのところに「本日はできるだけ話を単純にするため(略)一つのシナリオを中心にしてお話いたしました」とありましたが、『2.当面の経済・物価情勢』以下のお話がこれがまた上流から下流に悠々と大河が流れるかのように平明で分かりやすい説明になっておるわけです。

『さて、まず、これから景気はどうなっていくのか、物価はどうなっていくのか、という点について考えてみたいと思います。』

でまあ本当はこれ全文引用したくなるのですが、全文引用していると終わらなくなるわ量が大杉勝男だわということでメインシナリオの説明部分を飛ばしてから引用します。

『以上の見通しを整理いたしますと、来年度・再来年度は、物価安定の目標に即したインフレ率、巡航速度を少し上回る程度の成長という、バランスの良い状態をメインシナリオと考えていることになります。』

来年度達成だそうですわよ。

『日本経済はバブル期には過熱し、バブル崩壊後はデフレ的な期間が続き、その後デフレからの完全脱却に向けて進展があったけれども、コロナ後は経済が落ち込み、次いで物価高に襲われ、どうもバランスの良くない状態が続いてまいりました。しかし、来年度あたりからは、とうとう長年目指してきたような状態が実現できるのではないか、とみているわけです。』

キタコレ、ということですがここに続きまして、

『では、本当に来年度以降、このような姿が実現するのでしょうか。』

となるわけでして、

『これまでのところ、物価については想定された道筋に沿って進んでいると考えております。』

ほっほ――――

『また、今年前半の景気については、想定していたよりは弱めでしたが、自動車メーカーにおける認証不正問題などの一時的な要因が相当程度影響しているのではないかと考えております。』

ほうほう。

『今後についても、見通しに沿った展開となることがメインシナリオだと考えていますが、さまざまなリスクシナリオも考えられるところです。』

でもって、

『以下ではその中から、「インフレ率は本当に下がっていくのか」と「下がりすぎて戻らなくなることはないか」の2点について考えてみたいと思います。』


となりまして、2点についての説明があります。


・欧米のように物価がスパイクしなかった理由の説明が長いけど非常に説得力がある

『(欧米との比較)』になります。

『第一に、インフレ率は本当に目標の2%に向かって下がっていくのでしょうか。欧米の人からよく言われるのは、米国や欧州では輸入物価ショックに対して厳しい金融引き締めで対応し、それでもまだ物価安定の目標よりも高い状況が続いている。日本は緩和的な金融環境を維持しているが、インフレを心配しなくていいのか、ということです(図表2)。』

そらそうよ。

『2020 年半ばから 22 年半ばにかけて、日本にとっての輸入物価の上昇は、円安の進行の影響もあり、ドイツよりもずっと高く、米国とでは比較にならないくらい激しいものでした。他方、米国はエネルギーをほぼ自給でき、食糧については輸出国です。ドイツのエネルギーや食糧の自給率も日本よりは遥かに高いです。従って、日本にとって、国際資源価格の上昇のインパクトは、欧米よりずっと大きかったはずです。それなのに、インフレ率は、ユーロ圏では 10%を超えましたし、米国でも9%にまで達したのに、日本ではピークでも4%でした。欧米の人からすれば、「金融引き締めもしていないのになぜだ」ということになるわけです(図表3)。』

こうやって説明されると腹落ちしやすいですよね。

『なぜでしょうか。消費者物価指数は、大きく分けると、財、サービス、家賃の価格から構成されています。まず、輸入物価の上昇が直接影響しやすい財の価格についてみてみたいと思います(図表4)。』

『財価格は、2020 年末以降の累積で、ドイツが 26%、米国が 20%、日本が 16%上昇しています。輸入物価ショックが一番大きかった日本が、なぜ上昇幅が一番小さかったのでしょうか。』

はい。

『実際の財価格の累積上昇幅の動きを説明するために、産業連関表という統計を使って、特定の財を作るために直接・間接にどんなインプットをどれだけ使うのかを調べ、インプットの価格変化が仮にそのまま 100%次々に転嫁されていって、即座に影響が出尽くしていたらどうなっていただろうか、という試算を行ってみました。』

『非現実的な極端な仮定ですが、これと現実を比べることで見えてくるものがあるのではないかと思うわけです。』

ほほう。

『インプットの価格変化としては3種類考えてみました。まず、輸入エネルギーと輸入食料品の価格上昇の影響です。』

『また、産油国である米国を念頭に、国産のエネルギーの価格も国際相場並みに上昇して、その分も転嫁されたと仮定した場合の影響も試算してみました。』

『さらに、今度は逆に、輸入物価とは別の要因の代表として、この間の賃金の上昇が即座に 100%転嫁されたと仮定しての影響も試算してみました(図表5)。』

『大変粗い試算であり、しかも機械的・静学的な試算ですので、結果の評価には注意が必要ですが、日本の場合、輸入物価上昇の激しさと自給率の低さを反映して、輸入エネルギー・食料品の価格上昇の影響が大宗を占める結果となりました。他方、米国の場合は、国産エネルギーの分と賃金増の分が大きいです。ドイツは日米の中間です。』

図表5をみてちょんまげ。

『さらに、当初米独では実際の財価格が即時フル転嫁に近い動きをしたのに対し、日本では転嫁に時間を要したことも見て取れます。価格転嫁に慎重だった日本企業の当時の行動様式や政府のエネルギー価格対策が激変緩和に繋がったのではないかと思います。』

なるほど。

『さらにドイツでは3つの要素で説明できない部分も大きくなっています。この部分が何なのかはよく分かりませんが、「ユーロ圏では企業が収益マージンを拡大する動きが物価を押し上げた」という分析や、「ドイツではサプライチェーンのボトルネックの影響が大きめだった」という分析もみられるところです1。』

ここ、「何なのかよくわかりませんが」ってちゃんと言ってるのがまた良いんですよね〜。

『いずれにせよ、日本は輸入エネルギー・食料品等の価格上昇のインパクトははるかに大きかったが、他の要因が小さかったため、全体での影響は米独より小さかった、という説明ができそうです。』

なるほど。


『次に、家賃を除くサービスの価格の動きについてみてみます。財よりも日米独の違いがずっと大きくなっています(前掲図表4)。』

ほうほう。

『サービスの提供に必要なコストの中心は賃金ですが、米国ではコロナ初期に失業者が2千万人近くも増加したので、コロナ後に労働者の復帰を促すために賃金の大幅な引き上げが必要になった、という面があると思います(図表6)。』

ふむ。

『また、先ほど申し上げた財価格の変動要因のうち、輸入エネルギー・食料品の価格上昇の影響は海外の輸出者への支払いとして流出する一方、国産エネルギー価格や賃金の上昇の影響は国内のエネルギー産業や労働者への支払いに還元されます。』

なるほど。

『自給率が大きく違うので仕方がないのですが、一次産品価格変動により、日本は国民全体として巨大な所得減になったのに対し、米国はむしろ所得増でした。』

確かに。

『日本は交易条件が悪化したのに対し、米国は改善していました(前掲図表6)。交易条件の悪化は賃金にはマイナスに働くと考えられますので、日米独の賃金やサービス価格の動きの違いには、こうした点も影響しているのかもしれません。』

おーーーーーー。

『さらに、日米独では家賃の動きが大きく異なりました。米国では消費者物価指数の3割以上を家賃が占めていますが、家賃がこの間急速に上昇しました。日本の家賃水準はこの間ごくわずかしか上がっていません。ドイツは日本よりは上がっていますが、米国ほどではありませんでした。消費者物価の動きの違いのうち、家賃の動きの違いで説明できる部分がかなりあります(前掲図表4)。』

『以上、日本では輸入物価ショックが大きかったのに消費者物価指数が米欧ほどには上がりにくかった理由を探ってみました。』

ということですが、ここでお気づきになられたかとは思うのですが、最近の日銀大本営が便利使いしている「ノルム」を使っていないことに気が付く訳でして、これ大本営だったら「欧米とノルムの違いがあるから」の一言で欧米との差を片付けてしまって後は賃金慣行とかの話で終わらせちゃうところですが、氷見野さんの解説ってそういうふわっとした言葉を使って雰囲気でごまかすような説明じゃなくて、話は単純化しているとは言え「ノルム」的な部分のお話でも「価格転嫁に慎重だった日本企業の当時の行動様式や政府のエネルギー価格対策が激変緩和に繋がったのではないかと思います」というように具体的な説明をしておりまして、何となくわかったようがするけれども、それは厳密に定義がないフワフワバズワード(物価上昇第一の力第二の力なんかもそうですよね)を使う、というのをしていない、というのが氷見野さんの説明の偉大なところなんですよね、とアタクシは思いましたがどうでしょうか。


・賃金動向・消費動向について

次の小見出しが『(賃金と消費)』です。

『さて、日本でも 2022 年以降はサービス価格が緩やかな上昇を始めており、足元では財価格への賃金の波及分も拡大しています(前掲図表4・図表5)。他のデータも子細に見ていくと2、過去の輸入物価の上昇を起点とするコストプッシュ圧力が減衰する一方、賃金と物価の好循環による緩やかで持続的な力が働き始めていることを見て取ることができます。』

好循環メカニズムキタコレ。

『では逆に、輸入物価上昇の影響が減衰していく一方、賃金と物価の好循環という持続的な力があまり育たず、インフレ率がいずれ2%をまた大きく下回って、そのまま戻ってこなくなってしまう可能性についてはどうでしょうか。これは、「基調的な物価上昇率」が2%に達しない可能性、と言い換えることもできます。』

ほう。

『当面カギとなる点としては、海外経済の動向のほか、国内については、@賃上げが続くのか、A消費が腰折れせず、賃金上昇を価格に転嫁できる環境が続くのか、そしてB最近の円高・株安といった金融資本市場の変動の影響はどうか、の3点が考えられます。国内関連の3点について、互いに関係する問題ではありますが、とりあえずひとつずつ見ていきたいと思います。』

ほうほうほう。


『まず、賃上げに関する見通しです。今年度の賃上げは、春闘の結果が徐々に反映されてきており、労働需給の引き締まり、企業収益の改善などもあって、統計上も昨年を上回る給与の伸びが確認できるようになっています。』

『問題は、来年度以降も賃上げが続くかどうかです。』

『中小企業の経営者の方々からは、「人材を引き留めるため、従業員の生活を守るために今年は賃上げを行ったが、価格転嫁は容易ではなく、収益的には苦しい」という声や、「まだ来年のことを考えられる状態ではない」という声も多いのは事実です。』

『他方、「人手確保、特に若手の確保、また、従業員のモチベーション維持のため、今後も賃上げを続けていく必要があると感じている」といった声も広まってきています。』

はい。

『賃金が毎年上がる時代になった以上、そのための原資を確保できるような価格設定に努める、生産性の向上を意識した設備投資に取り組む、事業ポートフォリオの再構築や他社との連携強化、M&Aなどに取り組む、といったコメントも聞かれるようになっています。』

ちんぎんがまいとしあがるじだいだと(じっと給与明細を見るorz)

『こうした中小企業の経営者の方々の声が示しているのは、変われるようになったことがもたらす機会もあれば、変わらなければならないことの苦しみもあるということだろうと思います。』

ソフトに言ってるけど「継続的な賃上げができるような企業じゃないと生き残れませんよ」って言ってますね。

『先日、地銀の頭取がたのお話を伺う機会がありましたが、「足元のお客様の状況をみると違いが大きくなっていて、全体の動きだけではとらえられなくなっている。景気の現状を『緩やかな回復が続いている』と一括りで語るのはますます難しくなっている。お客様のサポートの仕方もお客様の課題の違いに応じていろいろなやり方を工夫していかなければならない」といった趣旨のお話をされる方が何人かあり、それが印象に残りました。』

なるほど。


『また、消費が腰折れせず、賃金上昇を価格に転嫁できる環境が続くのかどうかも注意点の一つです。ハレの日消費や、こだわり分野では対価を惜しまないといった動きもみられますが、全体としては、消費者の節約志向が広まっている、というのは事実だろうと思います。』

そらそうですよ。

『ただ、今後については、春闘の結果が実際の手取りに反映され、高めの夏のボーナス、所得税減税の効果、さらには昨年に比べれば物価上昇のペースも落ち着く、といったことが組み合わさってくるはずですので、メインシナリオは、消費は腰折れしない、という見方でいいのではないかと思います。ただ、物価上昇のペースが思うように落ち着かず、実質賃金の減少が続く結果となるリスクなどには注意していく必要があると思います。』

つまり円安阻止は大正義だったということで・・・・・・・


『最後に、最近の円高・株安といった金融資本市場の変動の影響です。これについては企業の方々からのお話をまだ十分にお聞きできていませんし、統計に反映されるのもこれからなので、今後よく分析していかなければなりません。』

『ただ、一般的には、円安が修正された影響としては、輸入物価を通じた物価の上振れリスクがその分小さくなり、ひいては家計消費の先行きにもプラスに働きうるかもしれません。他方、円高がインバウンド需要に、株安が高額品消費に影響することも考えられます。』

ふむ。

『また、多くの中小企業にとっては、円安に伴うコスト上昇圧力が足元の円高でいくらか和らぐ面があるのではないかとも思います。』

ほうほう。

『他方、輸出産業や海外に大きく展開している企業にとっては、円高が円建ての収益を下押しするとも考えられますが、これらの企業が過去最高益を更新し続けている理由は決して円安の進行だけではなかったはずだと思いますし、現在の相場がこれらの企業が事業計画の前提としている想定為替レートから大きく外れているわけではないことにも留意すべきではないかと思います。』

別にガンガン円高に振るわけではなくて、過度な円安を阻止するのは無問題だし何なら大正義というお話ですね。

『株価の動きの心理的影響にも注意が必要ですが、自己変革を重ねてきた日本企業の強みは依然健在であり、相場の目先の動きに見方を左右されすぎないことが大切だろうと思います。』

目先の動きを見て大騒ぎして国会の閉会中審査を決定した馬鹿に対するイヤミですねわかります(違)。


『なお、以前は株安というと銀行への影響も気になったところですが、銀行の保有株式の量はかつてに比べればかなり小さくなっており、現時点では全体としてみれば健全性に大きく影響が及ぶとはみておりません。ただし、今回目算が外れた海外投資ファンドを経由してリスクが波及してこないかなども含め、よくモニターしていきたいと考えております。』

「今回目算が外れた海外投資ファンド」ってのちょっと笑いました。


ということでリスクはそれほど大きくない。という話が2つでした。


・金融政策に関しては先般の植田総裁の国会答弁と基本同じような線だが・・・・・・・・

『3.日本銀行の金融政策運営』ですが、最初のところで明確に、

『では、メインの見通しのような道筋を実現するためには、金融政策はどのようにしていったらいいのでしょうか。わたしどもがいま進めているのは、長年続けてきた非伝統的な政策の手じまいと、伝統的な手段である短期の政策金利の調整の2つです。』

非伝統的政策は「手じまい」と言っているのが目に付くわけでして、今まさに一番宙ぶらりんになっているのが長期国債買入とか日銀のバランスシートで、買入減額は決まったけどペースがクソ遅くてバランスシート的には何でもない状態になっている上に、この買入残高がストック効果としてあるから云々、という手じまいを前提にしていないのかというような説明をしたりするし、ということで非常にアカンタレなんですけど、こうやって非伝統的政策の「手じまい」と明確に言ってくれると、じゃあもっとバランスシートの縮小方向を打ち出して来るだろうなあと期待できるのでニッコリというものです。


でもってその『(非伝統的な政策手段の評価)』という小見出し。途中から引用します。

『わたしどもは、昨年の4月から、こうした日本の経験について多角的な視点からレビューを行っています。日本銀行のスタッフや内外の研究者の実証分析では、各種の非伝統的な政策は景気や物価に対して一定の効果を有した、というのが概ね共通した結果です。』

『一方、非伝統的な手段は、金融機関の行動や金融市場の機能にゆがみを与えるといった副作用も伴いました。海外では、政策転換のタイミングの遅れに繋がった、という議論もありますし、出口に際して市場に混乱を生じた事例もみられました。』

はい。

『レビューに際しては、いろいろな論点に関する日本銀行のスタッフの論文をホームページに掲載しているほか3、内外の研究者や実務家の方々とのコンファレンスで議論を深めております。年内をめどに全体をとりまとめた結果を公表したいと考えておりますが、しかし、こうした研究や議論の積み重ねの上でも、まだよく分からない点も残っております。』

って言ってるのがこれまた良くて、最近の多角的レビューシリーズのスタッフペーパーって非伝統的政策に効果がありましたの決め打ちから入ってるんじゃねえかと言いたくなるようなものがバンバン出てくるので苦々しく思っている、というか悪態書いてますけど、まあアタクシ的にはちょっと唸っていましたもんで。

『例えば、強力な金融緩和による経済の後押しを長期にわたって続けた場合、「資源配分を歪め生産性を押し下げる」といった見方がある一方、「人的資本の蓄積等を通じて生産性にプラスに働く」といった議論もあります。こうした点についての実証分析はあまり進んでいないのが実情で、さらなる分析が必要だと思います。』

深い。

『また、非伝統的金融政策の波及経路についても、さらに考えてみるべき問題があるように思います。』

でもってこの次がまた良くてですね、

『わたしは、日銀に来るまでは、金融緩和で資金調達コストが低下すれば、家計や企業が借入によって消費や投資を行いやすくなるので、それが金融政策の主要な波及経路となるのだとイメージしていました。』

まあ一般的にそういう話になっていますもんね。

『しかし、2021 年に日銀が行った点検の結果では、政策金利がゼロに達した後にとられた各種の金融政策については、「資金調達コスト低下を経由して経済を押し上げただけではなく、株価上昇や為替相場を経由しての波及も相応に大きな役割を果たしていた」と推計されています。』

そのうえ氷見野さんの説明がお洒落なのはこの次。

『しかも、資金調達コスト経由の波及についても、貸出量の増加の大宗が不動産関連のものだったことからすれば、この間の地価の安定やマンション価格の上昇と密接な関係があったことが推測されます。』

!!!!!!

『すなわち、プラスの金利を上げ下げしていた時代はともかく、いわゆるゼロ金利制約に直面していた時代の金融政策の波及については、株価や為替相場や不動産価格といった資産価格の変動による経路の役割もそれなりに大きかったらしいことが窺われるわけです。』

Oh・・・・・・・・・・・・

『資産市場はプロジェクト選別の場であり、経済の未来は資産市場がよいプロジェクトを選別できるか否かにかかっています。』

ですな。

『ゼロ金利制約下の金融緩和が資産市場を一定の方向に動かすことによっても効果を持つのだとすると、資産価格が置かれている状況に従って、金融緩和がもたらす意味合い、特に、資源配分の効率性や長期的な成長力に与える影響が異なってくるのではないかという気がいたします。』

ほうほう。

『たとえば、量的・質的金融緩和が始まる前年である 2012 年の資産価格についてみてみますと、日経平均が 8,000 円台まで低下、ドル円レートは 70 円台まで円高が進行、東京都区部を含め全国で地価変動率がマイナス、と、おそらく異常といってもいいような状況にあったわけですので、翌年からの大規模な金融緩和には、結果としてそうした状況の修正に寄与したという追加的なメリット、いわば副効用とでも呼ぶべき面があったのではないかと思います。』

と、効用って言ってますが、足許は行きすぎという話には一切触れないのがチャーミングでして、その代わりに、

『その後、資産価格をめぐる環境は変化し続けているわけですが、その中で、金融緩和の意味合いは変わっていったのか、変わらなかったのか。』

うーん凄いマイルドな言い方でどういう意味を籠めているのかにもよるんだが、途中で金融緩和の意味合いが変わってしまっていないか、ってこれ言外に提起していますよね、と思うと中々て厳しい。

『こうした問題を考えるためには、資産価格のコンテクストと金融政策の機能の仕方の関係について、さらに分析が必要ではないかと思います。』

いやこの部分無茶苦茶奥が深いっす。

『以上のように、非伝統的な政策手段を用いて金融緩和を続けてきたことの効果と副作用については、ある程度分かってきたことと、まだ必ずしもよく分からないこととがあります。』

『ただ、全体的な評価としては、「伝統的な手段が限界に達した時の備えとして、非伝統的な手段も道具箱には入れておかなければならないが、伝統的な手段で目的を達せられる場合には、あえて非伝統的な手段を動員するにはあたらない」というのが諸外国も含めた定説となっているように思います。』

ということで、非伝統的政策に関するお話の方が今回の氷見野さんの金懇挨拶での見どころだったとアタクシは思います。


・金融政策運営の目先の話はこれから見たらオマケなので割愛

次が『(当面の政策運営)』だが正直これは割愛します。でもって次。


・中立金利に関しては「その経路も大事」というのが味わいがあります

次が『(中立金利)』の小見出しですが、基本的なことはその前段のほうにある、

『中立金利の概念は考え方の整理として貴重なものです。しかし、世の中には「中立金利の推計から自動的に政策金利の終着点が出てきて、そこから逆算して政策運営を進めればそれでよい」という見方もあるようですが、わたしはそういう風には思いません。』

という話だし、経路依存の問題については、

『また、例えば政策金利が中立金利の水準に達したとしても、実際には金利を引き上げた結果そこに到達したのか、引き下げた結果なのか、引き上げや引き下げのスピードはどうだったのか、などにより、その時の企業や家計や金融機関の行動は違ってくる可能性があります。』

『線型の経済モデルでは経路依存性はうまく表現できない場合が多いですが、現実の世界ではタイミングと手順次第で結果が変わります。』

『「一定の金利の幅の中では企業や家計や金融機関の行動はあまり変化しないが、そこを超えると変わる」といったこともありうるのではないかと思います。』

ということで、まあ要するにやってみないとわからんからゆるりとやっていきますわという話になるでしょう。

『いずれにせよ、少なくとも当面の日本の政策運営については、中立金利の議論からそのまま当面の進め方の答が出るというわけにはいかないように思います。中立金利の推計の精緻化の努力は続け、その結果は参考にしつつも、政策運営を進めていく中で、実際の経済・物価の反応を分析しながら、道筋を探っていくしかないのではないかと思います。』

ということで、まあこれ自体は植田総裁も先般の会見で同じような説明をしていました(氷見野さんの方が会見QAじゃなくて講演だから分かりやすい説明になっているのは仕方ない)な、という話です。

とまあそんなところで。





2024/08/28

お題「基調的な物価/短観調査項目追加/パウちゃんのジャクソンホール講演の本題部分から」

へーへーへー
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB223JB0S4A820C2000000/
カード業界、訪日客増で赤字1.5倍に 「二重料率」も
キャッシュレス
2024年8月27日 17:30 [会員限定記事]

『訪日客の増加に伴う国内クレジットカード業界の負担が増している。海外発行のカードが国内加盟店で利用されると、海外事業者に支払う費用が収入を上回るためで、赤字幅は2023年に比べ1.5倍の年300億円を超える勢いだ。一部の店舗などで、海外発行カードの利用に高い手数料を徴収する「二重料率」を導入する動きもある。』(上記URL先より)

・・・・・いまいちよく分からんのだが何で損する設定を初手で組んでいたのでしょうか

〇基調的な物価ちゃん今月は落ち着いたじゃないですかー

いつもの
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

例によって左から刈込平均値、加重中央値、最頻値

Jan-23  3.1 1.1 1.6
Feb-23  2.7 0.8 2.1
Mar-23  2.9 1.0 2.7
Apr-23  3.0 1.2 2.8
May-23  3.1 1.4 2.9
Jun-23  3.0 1.4 2.9
Jul-23  3.3 1.6 3.0
Aug-23  3.3 1.8 3.0
Sep-23  3.4 2.0 2.8
Oct-23  3.0 2.2 2.6
Nov-23  2.7 1.7 2.4
Dec-23  2.6 1.6 2.4
Jan-24  2.6 1.9 2.3
Feb-24  2.3 1.4 2.0
Mar-24  2.2 1.3 1.9
Apr-24  1.8 1.1 1.6
May-24  2.1 1.3 1.5
Jun-24  2.1 1.4 1.6
Jul-24  1.8 1.1 1.5

刈込平均が4月以来の2%割れで加重中央値も4月の水準に戻り、最頻値は1.5%でここもと落ち着いているような感じですな。まあ最頻値1.5%でなんか物価高騰から少しマシになった気がしないでもない(でも日用品はホイホイ値上がりしてますけど)という気がするので、そもそも論としてこの辺の数値が2%とかになるの頭おかしいということにしていただかないと賃金上昇が追い付かないんで勘弁して欲しいですな。

上昇品目下落品目では

Jan-23  80.3 12.6 67.6
Feb-23  81.0 11.7 69.3
Mar-23  82.6 10.0 72.6
Apr-23  84.3 9.2  75.1
May-23  84.9 8.8  76.1
Jun-23  84.9 9.2  75.7
Jul-23  85.6 8.4  77.2
Aug-23  86.0 8.2  77.8
Sep-23  87.0 7.3  79.7
Oct-23  84.7 9.6  75.1
Nov-23  83.0 11.3 71.6
Dec-23  82.0 12.1 69.9
Jan-24  83.9 10.7 73.2
Feb-24  81.8 12.8 69.0
Mar-24  79.5 15.1 64.4
Apr-24  80.8 14.0 66.9
May-24  79.3 15.5 63.8
Jun-24  78.7 16.1 62.6
Jul-24  75.7 18.8 56.9

もう4分の3の品目が上昇する、というのがデフォになっておりまして物価上昇は定着していると思うのですが、いまさら何で物価の押し上げになる強力緩和を引っ張る必要があるのかと小一時間問い詰めたいですな。

・・・・・・しかしまあ何ですな、この基調的物価も出したときはいろいろと意味合い持って出していた(さっきのURL先に参考資料なんてのがある)のですが、いざ物価2%安定目標達成だという話になる頃には「サービス価格ガー」とか「賃金と物価の好循環ガー」とか「2%目標達成の確度ガー」とか言い出して結局この数字は何ですねんというような物件になってしまっているのが日銀クオリティなのと、そんな状況になっていて政策的に意味がないんだったら数字を継続して公表する意味ってあったんだっけという気もするのですが、一度こういうのを出しだすと牛の涎の如く延々とダラダラ出し続ける、というのも日銀クオリティでして、政策の指標として使っていないなら使っていないって言ってくれればこっちもスルーするんですけど、そういうのを明確にしないまま大事な指標とソウジャナイ指標を区別しないで出してくるもんだから困るわけですな。

ま、日銀ちゃんとしてみますとこの数値に関してもどっかでまた説明の道具として復活する可能性があり、便利な道具になりえるもんだからとりあえず生かしておいて使えるときに使おうってなもんだとは思いますが・・・・・・・・・・・


〇おちんぎんの調査をさらにするのか(短観)

https://www.boj.or.jp/statistics/outline/notice_2024/not240827a.pdf
「全国企業短期経済観測調査」の予備調査の実施について

『1. 予備調査の概要

日本銀行では、現在、「全国企業短期経済観測調査」(短観)の調査項目の見直しを検討しています。』

ほうほう。

『これまでも、日本銀行は、短観について累次にわたる見直しを実施してきており、最近では2020年に調査項目の一部廃止を行ったほか、「海外での事業活動」に関する調査項目の新設などを実施したところです。』

ほう。

『その後も、調査にご協力いただく企業の回答負担の軽減を図りつつ、金融経済構造の変化に対応した的確な統計を提供する観点から、さらなる見直しの余地がないか、不断に検討してまいりました。

こうした取り組みの一環として、企業における賃金の動向(賃上げ率の実績や見通し)を的確に捉える調査項目の新設を企図して、適切な設問形式等を確認するため、2024年9月調査以降の調査において、一部の調査対象企業に対して予備調査を行うことといたしました。』

ほーーーーーーー

『予備調査の結果などを踏まえて見直しの方向性が決定した場合には、検討内容を「見直し方針」として公表し、広く皆様からのご意見を募集することといたします。日本銀行では、頂いたご意見を踏まえて、最終的な見直しの内容を決定してまいります。』

ということなので、まあ後日どんな調査をしたのかとかは大々的に公表されることになると思うのですが、長期間の調査に耐えられるような項目を設定していただきたい、という辺りは調査統計局なので抜かりはないと思いますが期待しましょう(これが市場局だの企画局だのが考えるとその場でしか使い物にならない調査項目を考え出しそうで怖いのですが調査統計局なら大丈夫でしょうという意味ですわよおほほほほ)


〇ジャク穴パウちゃん講演ですがコロナ後の物価動向に関するパートを鑑賞しておく次第

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20240823a.htm
August 23, 2024
Review and Outlook
Chair Jerome H. Powell
At “Reassessing the Effectiveness and Transmission of Monetary Policy,” an economic symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, Wyoming

パウちゃんの講演、金融政策パートという現世利益部分だけサクッとネタにしましたが、シンポジウムの趣旨から言いますと本題は後半の物価に関する考察部分なのでさすがに読んでおこうかという企画。

小見出しの『The Rise and Fall of Inflation』から参ります。

『Let's now turn to the questions of why inflation rose, and why it has fallen so significantly even as unemployment has remained low. There is a growing body of research on these questions, and this is a good time for this discussion.5 It is, of course, too soon to make definitive assessments. This period will be analyzed and debated long after we are gone.』

何でインフレが上がって、なんでその後インフレが顕著に低下し、その間に失業が低いままだったか、という事に関してのお話ですが、まだ研究途上で確たる見解が確立されてるわけじゃないよ、として話がおっぱじまります。

『The arrival of the COVID-19 pandemic led quickly to shutdowns in economies around the world. It was a time of radical uncertainty and severe downside risks. As so often happens in times of crisis, Americans adapted and innovated. Governments responded with extraordinary force, especially in the U.S. Congress unanimously passed the CARES Act. At the Fed, we used our powers to an unprecedented extent to stabilize the financial system and help stave off an economic depression.』

コロナ感染症がやってきて急速な経済のシャットダウンが起きて、それに対応して財政や金融安定化措置を盛大に実施しましたと。

『After a historically deep but brief recession, in mid-2020 the economy began to grow again. As the risks of a severe, extended downturn receded, and as the economy reopened, we faced the risk of replaying the painfully slow recovery that followed the Global Financial Crisis.』

2020年半ばには経済が回復を始めたけど、我々はこの回復がリーマンショック後のクソ遅くてペインな回復を繰り返すのではないかというリスクに直面していた。

『Congress delivered substantial additional fiscal support in late 2020 and again in early 2021. Spending recovered strongly in the first half of 2021. The ongoing pandemic shaped the pattern of the recovery. Lingering concerns over COVID weighed on spending on in-person services. But pent-up demand, stimulative policies, pandemic changes in work and leisure practices, and the additional savings associated with constrained services spending all contributed to a historic surge in consumer spending on goods.』

なので追加財政のおかわりを行い、対面などのサービスの回復は遅れていたが、ペントアップ需要や財政や強制貯蓄の取り崩しなどで財への需要が歴史的な規模で高まった。

『The pandemic also wreaked havoc on supply conditions. Eight million people left the workforce at its onset, and the size of the labor force was still 4 million below its pre-pandemic level in early 2021. The labor force would not return to its pre-pandemic trend until mid-2023 (figure 3).6 Supply chains were snarled by a combination of lost workers, disrupted international trade linkages, and tectonic shifts in the composition and level of demand (figure 4). Clearly, this was nothing like the slow recovery after the Global Financial Crisis.』

パンデミックは供給面にも影響を与えた、ということでこの辺は供給ショックの話で、これはリーマンの時にはなかったこと。

『Enter inflation. After running below target through 2020, inflation spiked in March and April 2021. The initial burst of inflation was concentrated rather than broad based, with extremely large price increases for goods in short supply, such as motor vehicles. My colleagues and I judged at the outset that these pandemic-related factors would not be persistent and, thus, that the sudden rise in inflation was likely to pass through fairly quickly without the need for a monetary policy response-in short, that the inflation would be transitory. Standard thinking has long been that, as long as inflation expectations remain well anchored, it can be appropriate for central banks to look through a temporary rise in inflation.7』

でもってインフレですが、2021年の3月4月インフレ上昇の当初は一部の供給制約のある財価格が急速に上昇したのだが、これは幅広いものではなく、波及効果も小さいので一時的と我々は判断しました。

『The good ship Transitory was a crowded one, with most mainstream analysts and advanced-economy central bankers on board.8 The common expectation was that supply conditions would improve reasonably quickly, that the rapid recovery in demand would run its course, and that demand would rotate back from goods to services, bringing inflation down.』

当時は運輸を含む供給制約に関してほとんどのメインストリームのアナリストや主要国の中央銀行では、これらの問題は比較的早期に解決してインフレ上昇圧力が収まると思っていました。

『For a time, the data were consistent with the transitory hypothesis. Monthly readings for core inflation declined every month from April to September 2021, although progress came slower than expected (figure 5). The case began to weaken around midyear, as was reflected in our communications. Beginning in October, the data turned hard against the transitory hypothesis.9 Inflation rose and broadened out from goods into services. It became clear that the high inflation was not transitory, and that it would require a strong policy response if inflation expectations were to remain well anchored. We recognized that and pivoted beginning in November. Financial conditions began to tighten. After phasing out our asset purchases, we lifted off in March 2022.』

当初はそのような感じで推移していたのですが、2021年10月に入り、物価上昇は財からサービス価格に広がり、物価上昇が一時的ではなく持続的ではないか、という動きになってきまして、そのために強力な政策対応が必要であるということになりました。ということでLSAPの停止と利上げの話があって、

『By early 2022, headline inflation exceeded 6 percent, with core inflation above 5 percent. New supply shocks appeared. Russia's invasion of Ukraine led to a sharp increase in energy and commodity prices. The improvements in supply conditions and rotation in demand from goods to services were taking much longer than expected, in part due to further COVID waves in the U.S.10 And COVID continued to disrupt production globally, including through new and extended lockdowns in China.11』

2022年初頭にはインフレがヘッドライン6%コア5%に上昇し、ロシアのウクライナ侵攻による新たな供給ショックや中国の再度のロックダウンなどの供給ショックが起きました。

『High rates of inflation were a global phenomenon, reflecting common experiences: rapid increases in the demand for goods, strained supply chains, tight labor markets, and sharp hikes in commodity prices.12 The global nature of inflation was unlike any period since the 1970s. Back then, high inflation became entrenched-an outcome we were utterly committed to avoiding.』

高インフレは世界的現象になりました。ということで財の需要と供給制約と労働市場のタイト化と商品価格高騰が要因としてあげられます。

『By mid-2022, the labor market was extremely tight, with employment increasing by over 6-1/2 million from the middle of 2021. This increase in labor demand was met, in part, by workers rejoining the labor force as health concerns began to fade. But labor supply remained constrained, and, in the summer of 2022, labor force participation remained well below pre-pandemic levels. There were nearly twice as many job openings as unemployed persons from March 2022 through the end of the year, signaling a severe labor shortage (figure 6).13 Inflation peaked at 7.1 percent in June 2022.』

ということでその労働市場のタイトさについて数字を挙げて説明しています。

『At this podium two years ago, I discussed the possibility that addressing inflation could bring some pain in the form of higher unemployment and slower growth. Some argued that getting inflation under control would require a recession and a lengthy period of high unemployment.14 I expressed our unconditional commitment to fully restoring price stability and to keeping at it until the job is done.』

でもってここで自画自賛が入るのですが、当時のインフレについて鎮静化させるためにはある程度のリセッションは不可避、という意見が多かったけど、それを回避しながらインフレ鎮静化しようと我々は行動してそのようになりました、と来やがりました。

『The FOMC did not flinch from carrying out our responsibilities, and our actions forcefully demonstrated our commitment to restoring price stability. We raised our policy rate by 425 basis points in 2022 and another 100 basis points in 2023. We have held our policy rate at its current restrictive level since July 2023 (figure 7).』

これは利上げしましたという話。

『The summer of 2022 proved to be the peak of inflation. The 4-1/2 percentage point decline in inflation from its peak two years ago has occurred in a context of low unemployment-a welcome and historically unusual result.』

インフレはピークから4.5%下がったけど失業は低いままだよと自画自賛。

『How did inflation fall without a sharp rise in unemployment above its estimated natural rate?』

ではそれは何ででっしゃろと。

『Pandemic-related distortions to supply and demand, as well as severe shocks to energy and commodity markets, were important drivers of high inflation, and their reversal has been a key part of the story of its decline. The unwinding of these factors took much longer than expected but ultimately played a large role in the subsequent disinflation. Our restrictive monetary policy contributed to a moderation in aggregate demand, which combined with improvements in aggregate supply to reduce inflationary pressures while allowing growth to continue at a healthy pace. As labor demand also moderated, the historically high level of vacancies relative to unemployment has normalized primarily through a decline in vacancies, without sizable and disruptive layoffs, bringing the labor market to a state where it is no longer a source of inflationary pressures.』

ホンマカイナという気もしますが、パンデミックによって引き起こされた需要とか供給の大きな変化で高インフレが起きて、その捲き戻してインフレが鎮静化したということが大きいとみられるが、この間に引き締め的な政策をとって需要の一段の高騰を抑制することによって(ピークの山を下げて)反動をマイルドにすることができたのではないか、とかなんとかそんな趣旨の話をしているようですな。

『A word on the critical importance of inflation expectations. Standard economic models have long reflected the view that inflation will return to its objective when product and labor markets are balanced-without the need for economic slack-so long as inflation expectations are anchored at our objective. That's what the models said, but the stability of longer-run inflation expectations since the 2000s had not been tested by a persistent burst of high inflation. It was far from assured that the inflation anchor would hold. Concerns over de-anchoring contributed to the view that disinflation would require slack in the economy and specifically in the labor market. An important takeaway from recent experience is that anchored inflation expectations, reinforced by vigorous central bank actions, can facilitate disinflation without the need for slack.』

さらにインフレ期待をアンカーさせ続けたことが良かった、という話でまあホンマにアンカーされてたんかいという気もしますがそういう話にしています。

『This narrative attributes much of the increase in inflation to an extraordinary collision between overheated and temporarily distorted demand and constrained supply. While researchers differ in their approaches and, to some extent, in their conclusions, a consensus seems to be emerging, which I see as attributing most of the rise in inflation to this collision.15 All told, the healing from pandemic distortions, our efforts to moderate aggregate demand, and the anchoring of expectations have worked together to put inflation on what increasingly appears to be a sustainable path to our 2 percent objective.』

『Disinflation while preserving labor market strength is only possible with anchored inflation expectations, which reflect the public's confidence that the central bank will bring about 2 percent inflation over time. That confidence has been built over decades and reinforced by our actions.』

『That is my assessment of events. Your mileage may vary.』

でまあまとめの部分ではあくまでもこれは私のアセスメントですよ、ということで一意見としていますけど、最後はインフレ期待がアンカーされていたことが大変によく効いたという話で締めておりますな。まあそうなんですかねえとは思いますが、とりあえずパウちゃんのこのまとめ方でも「インフレの戦いに間もなく勝利します」という感じの威勢の良さは大いに感じました。








2024/08/27

お題「9月利下げは確定でその先も見据えているのを明確化ですね/ジャクソンホール雑考/氷見野さん明日金懇ですか」

ほほう
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240827-OYT1T50013/
麻生派、「河野氏支持」原則で最終調整…他候補の支援も容認
2024/08/27 05:00

まだまだ時間がありますからどうなるのやら。

〇パウちゃんのキャッチーな講演に追随来てますねえ

デーリーはん
https://jp.reuters.com/economy/federal-reserve-board/VRDANUUY2ROQBIHG75PENMWGNE-2024-08-26/
FRB、9月に0.25%利下げの公算大 「時期到来」=SF連銀総裁
By ロイター編集
2024年8月27日午前 4:53 GMT+9

『[26日 ロイター] - 米サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は26日、利下げに動く「時期が到来している」とし、利下げ幅は0.25%ポイントから開始する公算が大きいという認識を示した。』(上記URL先より、以下同様)

ということで早速パウちゃんの「The time has come for policy to adjust.」を使うという連携の良さ。

『デイリー総裁はブルームバーグテレビのインタビューで、9月の利下げが軌道から外れる事態は考えにくいと述べた。また、「最も可能性の高い」今後の道筋はインフレが引き続き緩やかに鈍化し、「安定かつ持続可能な」ペースで雇用が拡大することだと指摘。それが実現すれば、「通常通りのペースで政策を調整するのが合理的だと思われる」と述べた。』

ということで、単発の利下げをして様子見、ではなくて引き締め政策を中立に戻すというのを前提にした話をしているのは、パウちゃんの講演と一緒でして、実際にそんなに物価が落ち着いてくれるのか問題はさておきますと、まあやる気のあるスタンスですわ、という感じですよね。


バーキンはん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/E2FRHDUELBOU5BANL7B6OJSSBM-2024-08-26/
米労働市場、景気悪化なら解雇増のリスク=リッチモンド連銀総裁
By Howard Schneider
2024年8月27日午前 1:53 GMT+9

『[ワシントン 26日 ロイター] - 米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は、米国の企業は現在、採用を抑制すると同時に解雇も抑制しているが、こうしたアプローチは長続きしない可能性が高いとし、景気が悪化すれば解雇が増えるリスクがあるとの考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)

ということでこちらは「雇用」に軸足という話ですが、雇用に注意するというのもパウちゃんの講演にあった通りですので、パウちゃんやるなと思うのでありますが。

『バーキン総裁はブルームバーグの「オッド・ロット」ポッドキャストで、現時点で企業は解雇に消極的になっているものの、こうした状態が長く続くとは思えないとし、「需要が継続し採用が再び始まるか、解雇が始まるかのどちらかになる」と述べた。』

でまあ9月利下げは確定としましてその内容ですが、

『バーキン総裁は、利下げについて「試行錯誤」のアプローチを取っていると言及。9月に通常より大幅の0.50%ポイントではなく、0.25%ポイントの利下げを支持している可能性があることを示唆した。』

まあそりゃそうでしょうね。そして物価に関しては、

『物価情勢については、インフレ率はFRBが目標とする2%なお0.5%ポイント程度上回っているとし、利下げを行えば住宅などの需要が押し上げられ、長期的にインフレ加速につながる可能性があると指摘。同時に、ディスインフレの範囲が拡大していることで物価圧力の緩和に対する確信が高まっているとし、「インフレが再加速するという懸念は確実に後退した」とも述べた。』

ほほーというところです。まあこのFEDの見通しに関しては「物価が思ったほど下がらない」とか「物価が反転する」とかになるといきなり話の前提が変わってしまうので、その点だけは注意した方が良いとは思うのですが、まあさすがにこれだけ皆さん揃ってインフレ再加速懸念が低いという話をしていると、何ぼ何でもこれを外したらアホじゃろと思うので、一応皆さんのこの表明を信用しておこうかとは思います。

でまあその場合は中立金利に向けて徐々に利下げをしていく、という話になるのですが、現在の金利水準が引き締め的なのはわかるんですが、じゃあどこら辺までが引き締め的なのかとか、そもそも度合いをあんまり弱めすぎるとゆうてまだ物価がマンデートに達していないので緩めすぎにならんかとかそういう辺りをどう判断していくか、という情報発信を注目することになるんでしょうなあ、とは思いました。


〇今年のジャクソンホールは中銀ゴリゴリの人がそんなにいなかったのかな

あまりにもURLがクソ長いので途中の文字列までに下記URL先へのリンクを貼りましたw
https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/jackson-hole-economic-policy-symposium-reassessing-the-effectiveness-and-transmission-of-monetary-policy/

Jackson Hole Economic Policy Symposium: Reassessing the Effectiveness and Transmission of Monetary Policy
Thursday, August 22, 2024 - Saturday, August 24, 2024
The Federal Reserve Bank of Kansas City hosted central bankers, policymakers, academics and economists at its annual economic policy symposium.

ということでこちらのページは『Agenda』ということでお品書きなのですが、

『Day 2:Friday Session』を見ると、最初の『Opening Remarks』はパウちゃんの例の講演ですが、その次からが、

『Insights from the 2020’s Inflation Surge』
『Government Debt in Mature Markets』
『Panel: Financial Markets and the Transmission of Monetary Policy』

ってのが全部学者さん登場の巻になっていまして、それらの後の『Luncheon Address』がBOEのベイリーですわな。

『Day 3:Saturday Session』を見ると、

『Changing Perceptions and the Transmission of Monetary Policy』
『The Transmission of Monetary Policy Through Bank Balance Sheets』

ってのも学者さんでして、最後の

『Panel: Reassessing the Effectiveness and Transmission of Monetary Policy』

は毎度恒例の中銀の方というとで、

『Ida Wolden Bache | Panelist
Governor, Norges Bank』
『Philip Lane | Panelist
Member of the Executive Board, European Central Bank』
『Roberto Campos Neto | Panelist
Governor, Banco Central do Brasil』

となっておりますな。

まあジャクソンホール自体が基本的に学者学者しているシンポジウムなのですが、政策動向と絡めて注目されていることもあるのか、時々ブラインダーが出てみたりドナルドコーンが出てみたり、というような感じで「癖のある」人選をする場合があるのですが、そういう意味では去年もそうでしたけど、今年もパネルやなんやらに出てくる人たちの中でその手の癖のある方が見受けられませんで、これはカンザスシティ連銀総裁が変わったからなのか、単純に現時点で何らかのメッセージを打ち出すような必要がなかったのか、ということだとは思うのですが、今回のテーマに関して言えば、(昨日ネタにしたパウちゃん講演の最初の方にもありましたが)そもそも論として上記の小見出しにあるような内容に関してはまだまだ決め打ちできない(生々しすぎて決め打ちできないのとまだ結論が出ている訳でもないことの両面あると思いますが)ので、中銀の偉い人として名をはせたお方を呼んできてオリャーと喋ってもらうのは時期尚早ということもあるのかもしれませんな。

しかしまあ何ですな、今回日銀って誰も行かなかったのかよ(米国駐在の米州統括役とかそのあたりの方は行ってるでしょうけど)ということですが、よくよく見たら今回はアジアから誰も来ていないのでセーフということで(何がセーフじゃ)。


〇氷見野副総裁が明日金懇ですよ

https://jp.reuters.com/business/7PTNY4Y4UZNS7PATIUXPBYKBZI-2024-08-26/
氷見野副総裁、28日に甲府市で懇談会出席・記者会見へ=日銀
By 和田崇彦
2024年8月26日午前 10:21 GMT+9

『[東京 26日 ロイター] - 日銀は26日、氷見野良三副総裁が28日に山梨県甲府市に出張して金融経済懇談会に出席し、午後2時から記者会見に臨むと発表した。懇談会でのあいさつ要旨は同午前10時30分に日銀ホームページに掲載される。』(上記URL先より、以下同様)

ということで相変わらずぎりぎりにならないと公表されないのは何でじゃろという話でして、なんかの飛び入り講演とかならまあシャーナイですけど、金懇なんてかなり前の段階から段取り組む必要のあるイベントな訳で、日程なんてとっくの昔に確定している話だし、他のヒラ審議委員の場合2〜3週間前には日程が公表されるというのに何なんでしょうね。

『今月上旬の株価乱高下を受けて23日に衆参両院で開催された閉会中審査では、植田和男総裁が「当面は高い緊張感を持って市場動向を注視するとともに、経済・物価見通しあるいはそのリスクにどういう影響があるか、丹念に見ていきたい」と指摘した。その一方で「経済・物価見通しがおおむね実現していく姿になっていけば、金融緩和度合いを調整していくという基本的な姿勢には変わりがない」と述べ、利上げ戦略の継続方針を示しており、氷見野副総裁の見解が注目される。』

注目される、ということにはなっていますが、そこまでファンキーな話が出るとは思えませんけれども、昨年12月の金懇(大分)の時にはなかなか良いお話をしておられましたので、そういう含蓄の深いお話を期待したいです。

でですね、政策に関してはおそらくこれは植田総裁の国会答弁の線で来るとおもうので、見通し通りに推移して物価2%達成が確実になっていけば今後も政策金利の調整を行う、とは言え金融市場が大荒れになっているようなときに敢えて政策金利の調整をするようなことはせんでもよろしかろ、という線で来るんだと思います。逆にそれ以外の話をしたらうへーって思う予定です。


https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・記者会見・談話

今後の講演・挨拶等の予定
今後の講演・挨拶等の予定

2024年 8月28日 氷見野副総裁   山梨県金融経済懇談会における挨拶
2024年 9月 5日 高田審議委員   石川県金融経済懇談会における挨拶
2024年 9月11日 中川審議委員   秋田県金融経済懇談会における挨拶
2024年 9月12日 田村審議委員   岡山県金融経済懇談会における挨拶

しかし何なんですかねえこの金懇の詰め込みぶりは、というところでして、7月会合前って全然金懇が無かった訳ですけれども、展望の後に行われる内田さんの金懇はまあ展望枠ということですけれども、ヒラ審議委員の金懇を何も3本もまとめて同じ時期に突っ込む(しかも中川さんと田村さんは2日連続)必要はないでしょと思う訳ですよ。

前回の輪番減額と利上げと、の前に何も政策委員からの情報発信の機会がなかった訳ですが、とにかく金懇の日程を無駄に詰めすぎでして、審議委員6人いて、各人が年に2回金懇やったら本来は毎月誰かの金懇がある、というのが自然だし、決定会合以降の中間評価の一環としても金懇の講演を読むことができるわけですよね。しかも黒ちゃんの時みたいにそもそも政策をいじらん、というのであれば別にそりゃそういう中間評価あってもなくても同じかもしれないけど、「物価2%目標達成に向けた推移が確実に進んでいるかの評価をしながら政策を調整する」って言ってるんですから、進捗度合いの中間評価って結構重要なことになるはずなんですよね。

然るに、このお前ナメトンノカという日程の組み方。いやまあ確かに田村さん(と別の意味で中村さん)以外の審議委員が空気だからそういう情報発信できませんですわアイヤーと言われてしまえばそうなのかもしれませんけれども、いや別に大本営腹話術人形でも良いから、物価目標達成への進捗度合いの中間評価ってのしてくれませんかねえ、と思うのですよ。

まあそういう点から言えば本来は金懇が各委員年に2回じゃなくて3回か4回くらいやってもらってバンバン情報発信してほしいんですけどね(それに耐えられる人が田村さんと独自ワールドなのでだいぶ意味合い違いますが多分中村さんはできると思うのですが、その2名しかいない説があるのが悲しいところですが)。

とまあそんなことで今朝も甚だ簡単ですいませんです






2024/08/26

お題「パウエル利下げ方向に堂々の決め打ち宣言キタコレ/植田さん国会招致は無風/短国とか全国CPIとか」

ジャクソンホールが終わると夏も終わりって感じになりますな(職業病)

〇パウちゃんキャッチーな言い方をして「金融政策は今後中立に向けて利下げしていく」宣言をしましたな

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20240823a.htm
August 23, 2024
Review and Outlook
Chair Jerome H. Powell
At “Reassessing the Effectiveness and Transmission of Monetary Policy,” an economic symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, Wyoming

ということでジャクソンホール講演。

『Four and a half years after COVID-19's arrival, the worst of the pandemic-related economic distortions are fading. Inflation has declined significantly. The labor market is no longer overheated, and conditions are now less tight than those that prevailed before the pandemic. Supply constraints have normalized. And the balance of the risks to our two mandates has changed. Our objective has been to restore price stability while maintaining a strong labor market, avoiding the sharp increases in unemployment that characterized earlier disinflationary episodes when inflation expectations were less well anchored. While the task is not complete, we have made a good deal of progress toward that outcome.』

『Today, I will begin by addressing the current economic situation and the path ahead for monetary policy. I will then turn to a discussion of economic events since the pandemic arrived, exploring why inflation rose to levels not seen in a generation, and why it has fallen so much while unemployment has remained low.』

でまあ最初の『Near-Term Outlook for Policy』が見ものとなるわけですが、

『Let's begin with the current situation and the near-term outlook for policy.』

へい。

『For much of the past three years, inflation ran well above our 2 percent goal, and labor market conditions were extremely tight. The Federal Open Market Committee's (FOMC) primary focus has been on bringing down inflation, and appropriately so. Prior to this episode, most Americans alive today had not experienced the pain of high inflation for a sustained period. Inflation brought substantial hardship, especially for those least able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation. High inflation triggered stress and a sense of unfairness that linger today.1』

長期間の高インフレがペイン、どっかの国の中央銀行聞いてるかってなもんです(直近少しその部分をちゃんというようになってきた気がするが)。

『Our restrictive monetary policy helped restore balance between aggregate supply and demand, easing inflationary pressures and ensuring that inflation expectations remained well anchored. Inflation is now much closer to our objective, with prices having risen 2.5 percent over the past 12 months (figure 1).2 After a pause earlier this year, progress toward our 2 percent objective has resumed. My confidence has grown that inflation is on a sustainable path back to 2 percent.』

インフレ2%に戻ります宣言キタコレ!

『Turning to employment, in the years just prior to the pandemic, we saw the significant benefits to society that can come from a long period of strong labor market conditions: low unemployment, high participation, historically low racial employment gaps, and, with inflation low and stable, healthy real wage gains that were increasingly concentrated among those with lower incomes.3』

次に労働市場の話。

『Today, the labor market has cooled considerably from its formerly overheated state. The unemployment rate began to rise over a year ago and is now at 4.3 percent-still low by historical standards, but almost a full percentage point above its level in early 2023 (figure 2). Most of that increase has come over the past six months. So far, rising unemployment has not been the result of elevated layoffs, as is typically the case in an economic downturn. Rather, the increase mainly reflects a substantial increase in the supply of workers and a slowdown from the previously frantic pace of hiring. Even so, the cooling in labor market conditions is unmistakable. Job gains remain solid but have slowed this year.4 Job vacancies have fallen, and the ratio of vacancies to unemployment has returned to its pre-pandemic range. The hiring and quits rates are now below the levels that prevailed in 2018 and 2019. Nominal wage gains have moderated. All told, labor market conditions are now less tight than just before the pandemic in 2019-a year when inflation ran below 2 percent. It seems unlikely that the labor market will be a source of elevated inflationary pressures anytime soon. We do not seek or welcome further cooling in labor market conditions.』

労働市場の話はいろんな指標を出して事細かに説明しているのですが、要は足元では労働市場の過熱感が鎮静化してきているし、その鎮静化プロセスも雇用が減って鎮静化、というのではなくて労働供給が増えてきたり、労働参加率が増えてきたりしているものだし、賃金も不要なインフレ圧力にならない程度の伸びをする、というような健全な形で調整している、という説明をしています。

『Overall, the economy continues to grow at a solid pace. But the inflation and labor market data show an evolving situation. The upside risks to inflation have diminished. And the downside risks to employment have increased. As we highlighted in our last FOMC statement, we are attentive to the risks to both sides of our dual mandate.』

全体的に見てインフレも労働市場も落ち着いてきており、インフレ上昇リスクもなくなってきているし雇用の下振れリスクも出てきている、と来てからの・・・・・・・・

『The time has come for policy to adjust.』

次のパラグラフの最初の一文がこれで、思いっきりキャッチーな言い方をしていますね。これは完全に狙っておる。

『The direction of travel is clear, and the timing and pace of rate cuts will depend on incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』

方向は利下げであるのはクリア―です、タイミングやペースはその時の状況次第。

『We will do everything we can to support a strong labor market as we make further progress toward price stability. With an appropriate dialing back of policy restraint, there is good reason to think that the economy will get back to 2 percent inflation while maintaining a strong labor market. The current level of our policy rate gives us ample room to respond to any risks we may face, including the risk of unwelcome further weakening in labor market conditions.』

ということで、労働市場が好ましくない弱まり方をする事なしに政策対応を行う十分な余地が今の金利水準だとあります、ってんだからまあパウちゃん利下げする気満々ですよ、という説明になりましたな。



〇植田総裁国会お呼び出しの巻でしたが

https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/LYRCAVZWMRLSJOESRW7TPLHYKE-2024-08-23/
内田副総裁と「考え違わず」と日銀総裁、政策調整の戦略を再強調
By 和田崇彦, 石田仁志
2024年8月23日午後 5:30 GMT+9

『[東京 23日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は23日午後に行われた参院財政金融委員会の閉会中審査で、金融政策の考え方について「私と内田(真一)副総裁に違いはない」と述べた。その上で、午前の衆院での質疑に続き、市場動向が経済・物価見通しやリスクに及ぼす影響を見極めた上で「経済・物価見通しがおおむね実現していく姿になっていけば、金融緩和度合いを調整していくという基本的な姿勢には変わりがない」と語った。』

『植田総裁は7月の金融政策決定会合後の記者会見で追加利上げに前向きな姿勢を示した。一方で、内田副総裁は8月7日の講演で「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」と強調した。』

『植田総裁は、内田副総裁の発言は7月会合後の金融市場の変動を踏まえたものだとの認識を示し、「適切だった」と述べた。』(上記URL先より)

そんなに反応していたようにも見えませんでしたが、「内田副総裁と考えが同じ」というのを債券の方は「つまり内田さんも同様に利上げを排除しているわけではない」と読みとり、株式の方は「つまり植田さんも利上げには慎重」と読み取っていたような気がしますが、内田さんの過去の講演見ればわかるように、内田さんってその場その場での最適な説明はするんですけど、前提条件が変わるといきなり全然違う事言い出すという特性がある、というのはまあだいたい日銀のこのあたりの話を見ていると思われるところでありまして(あくまでも個人の感想です)、内田さん今後利上げ行ったときに「昨年8月の発言との整合性」とか突っ込まれても「あの説明はあの時点における状況を元に行ったもので、その後時間の経過と共に状況は変化しているのだから、その変化を踏まえたうえで最適な政策を行うのは当然である」とか平然と言ってきそうなんですよね。


ということですから、債券市場の反応(というか半というか)の方が妥当だと思うんですけど、まあこればっかりは今後になってみないとわからんし、9月は自民党総裁選の前だし10月は解散総選挙やってそうだし、いずれにしても政策はしばらく地蔵でしょうからまあ今後ということで。


〇3M短国ェ・・・・・・・・・・

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240823.htm
国庫短期証券(第1252回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1252回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号     国庫短期証券(第1252回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日         令和6年8月26日
4.償還期限       令和6年11月25日
5.価格競争入札について
(1)応募額          12兆8,855億円
(2)募入決定額       3兆7,199億5,000万円
(3)募入最低価格      99円97銭4厘0毛
(募入最高利回り)      (0.1043%)
(4)募入最低価格における案分比率    33.1987%
(5)募入平均価格      99円97銭5厘7毛
(募入平均利回り)      (0.0974%)』

ちょwwwwwwwwおまwwwwwwwwwww

ということで、足切りは0.10%台平均は0.10%割れだわとお前なにやってますねんという入札なのですが、ショートカバーになったのか引けの売買参考統計値ちゃんは・・・・・・
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

国庫短期証券1252 2024/11/25 平均値単利 0.050

ということで5bpとかいうとんでもないことになっておりますが、まあ他の銘柄は

国庫短期証券1249 2024/11/11 平均値単利 0.100
国庫短期証券1250 2024/11/18 平均値単利 0.100

ということで、この0.10%ってのもどうなのよとは思いますが、一応0.10水準になっておりまして、5bpというのはショートカバー要因でかっ飛ばされている利回りではありますが、しかしまあ短国市場って特に利上げになってから金利差が大きくなった(いやまあ0.10%の時にも大概だったけど絶対水準の差が小さかったから目立たなかった)ので、市場としての異様さが目立つんですけど、これが国債マーケットというのが困りものでして以下いつもの悪態なので割愛しますが、日銀はこのクソ過大なバランスシートを縮小しやがれとしか申し上げようがありませんですわ。


〇そういえば全国CPI

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消 費 者 物価指数
全国 2024年(令和6年)7月分

『◎ 概 況

(1) 総合指数は2020年を100として108.6
前年同月比は2.8%の上昇 前月比(季節調整値)は0.2%の上昇

(2) 生鮮食品を除く総合指数は108.3
前年同月比は2.7%の上昇 前月比(季節調整値)は0.3%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は106.9
前年同月比は1.9%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の上昇』

ということで、相変わらずの数値なんですけど、2020年を100として足元総合が108.6になっておるわけでして、そら2020年から見て物価108.6にされている中でてめえの給与は以下悲しいので割愛。

しかしまあ何ですな、『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)』を見ますと、今年度になって前月比の上昇が中々エゲツナイ感じで上がっていて、これのどこが「基調的な物価は2%に達していない」なのかさっぱりよくわからんですな、と毎度のように思うのでありました。


ということで今朝もまた甚だ簡単で恐縮ですがこの辺で勘弁していただきとう存じます








2024/08/23

お題「交付税特会とかGCとかTDBとか/ジャク穴前に今更声明文比較すいませんすいません/式次第は間もなく公表のようで」

また台風来るんかい・・・・・

〇交付税特会借入は12月1月の利上げを一部織り込みとな

・交付税特会借入

割とすんなり利上げパスを織り込むのでなかなか味わいのある特会借入ですが、

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result240822.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果

『本日、一時借入金の入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.借入根拠法律及びその条項
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第15条第1項

2.借入日     令和6年8月30日
3.償還期限   令和7年2月28日
4.償還方法  令和7年2月28日に一括償還
5.借入利率競争入札について  
(1)応募額      6兆9,266億円
(2)募入決定額    1兆2,490億円
(3)募入最高利率   0.280%
(4)募入最高利率における案分比率  84.9145%0.30
(5)募入平均利率   0.269%』

これを例によって12月会合と1月会合で切って手前を0.25%にした時の後ろのレートどうなりますか計算をすると、(平均と足切りだと結構ズレてくるけれどもここは足切りで計算しますね)足切りの0.28%を分解する(決定会合の翌日から新金利適用という計算をします)と、

12月会合:0.325%ちょい
1月会合:0.42%くらい

とかいう感じになると思うので、(ちなみに0.269%で計算すると1月が0.36%弱、12月が0.30%くらい)、これすなわち一応この界隈では12月か1月だけど1月に利上げするんじゃなかろうか、でも100%じゃないよね、という感じになっているというのが何となくインプリケーションとしては出てくる数字になっておりますな。

これ前回の交付税6Mって利上げからあんまり間もない8/6に入札があって、この時は8/15〜2/14で平均0.259%、足切り0.293%と結構ばらけていたのですが、アベレージで見れば今回の方が織り込み度上がっていて、足きりで見ると前回よりも織り込み度下がっているという味わいのある結果になっておりまして、まあ皆様の読み筋がだんだん近くなってきたってことですかねえ、知らんけど。


・東京レポレートって高止まりしてるんですよね

https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

直近推移見ますと、

2024/8/7  0.213 0.151 0.154 0.164 0.172 0.176 0.201
2024/8/8  0.216 0.174 0.162 0.167 0.172 0.177 0.201
2024/8/9  0.182 0.233 0.175 0.172 0.175 0.178 0.201
2024/8/13 0.229 0.224 0.177 0.176 0.177 0.179 0.200
2024/8/14 0.224 0.230 0.180 0.181 0.179 0.180 0.200
2024/8/15 0.238 0.227 0.185 0.182 0.180 0.181 0.200
2024/8/16 0.233 0.230 0.186 0.184 0.183 0.184 0.201
2024/8/19 0.224 0.223 0.188 0.186 0.184 0.185 0.202
2024/8/20 0.242 0.240 0.190 0.188 0.187 0.188 0.204
2024/8/21 0.238 0.239 0.192 0.189 0.189 0.189 0.203
2024/8/22 0.232 0.229 0.196 0.193 0.191 0.191 0.204

ちょっと前の方まで引用しましたが、以前は見られた翌日物(左の2つ)レートの週の途中で下がって短国発行要因が来ると上がる、というパターンがなくなって、ずーっと高めの推移を続けているんですよね。

でまあ一方で短国ちゃんはというと

https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

国庫短期証券1229 2024/11/11 平均値単利 0.120
国庫短期証券1249 2024/11/11 平均値単利 0.120
国庫短期証券1250 2024/11/18 平均値単利 0.110
国庫短期証券1195 2024/11/20 平均値単利 0.120
国庫短期証券1252 2024/11/25 平均値単利 0.120

1252は今日の3MのWIですが、さすがに10bp割れとかではないにしましても、相変わらずGCとの逆ザヤが凄いわという感じでして、短国ニーズおそロシアとしか申し上げようがないですが、再三再四どころか再百万くらい申し上げているように、そもそもこれは日銀のバランスシートがデカすぎて短期国債に対して無用なニーズが発生しているのが悪いのであって、輪番減額とか抜かしているのですが、あんな程度じゃバランスシート全然縮小せんわヴォケという話だし、5年共担とか乱発したつけが出口になって思いっきり出ている訳で実に怪しからん次第ではあります。ということで利上げも大事なんですが日銀のアホみたいなバランスシート何とかしろと小一時間問い詰めたい訳ですな。


といういつもの悪態でした。


〇ジャクソンホール前にハイパー虫干しネタ:今更7月FOMC声明文比較ですすいませんすいません

まあ後日備忘用です。今更ネタなのであっさりと参ります。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240731a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240612a.htm

『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace. Job gains have moderated, and the unemployment rate has moved up but remains low. Inflation has eased over the past year but remains somewhat elevated. In recent months, there has been some further progress toward the Committee's 2 percent inflation objective.』(今回7月)

『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace. Job gains have remained strong, and the unemployment rate has remained low. Inflation has eased over the past year but remains elevated. In recent months, there has been modest further progress toward the Committee's 2 percent inflation objective.』(前回6月)

現状認識の1パラではジョブゲインの認識を下げて、物価に関してはその水準がまだ高いという認識にsomewhatというのが入っていまして、まあ昨日ネタにした議事要旨にある認識と同じですね。議事要旨の方がきっちり書いてありますが。

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run. The Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation goals continue to move into better balance. The economic outlook is uncertain, and the Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate.』(今回7月)

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run. The Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation goals have moved toward better balance over the past year. The economic outlook is uncertain, and the Committee remains highly attentive to inflation risks.』(前回6月)

2パラではリスクがベターバランスに向かっている、の部分が前回はover the past yearだったのが抜けていて、足許でもそうですよというのを強調しておりますな。

『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent. In considering any adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks. The Committee does not expect it will be appropriate to reduce the target range until it has gained greater confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent. In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities. The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(今回7月)

『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent. In considering any adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks. The Committee does not expect it will be appropriate to reduce the target range until it has gained greater confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent. In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage?backed securities. The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(前回6月)

4パラのところでは「グレーターコンフィデンスがないと利下げしないよ」の文言も含めて全文一致なのね。

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回7月)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回6月)

5パラは毎度の如く同じ文言です。まあ要するにプリセットコースではないよ状況に応じてコンディショナルに政策をやるよ、って話です。

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Austan D. Goolsbee; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; and Christopher J. Waller. Austan D. Goolsbee voted as an alternate member at this meeting.』(今回7月)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(前回6月)

全員賛成ですね(今回はメスターの代打でグールズビーが投票)。


・・・・・という訳で、これ声明文の方では別に予告ホームランを打っていない、というのが中々お茶目でして、議事要旨では「9月予告ホームランはしているけどその先の話ってないじゃん」と昨日申し上げましたが、声明文は少なくとも予告ホームランになっていないのですから、結果的に物価が思惑通りに落ち着いて労働市場も弱まっていくのであればそりゃまあその後の利下げもあるのでしょうけれども、今からそれを全部決め打ちしに行くのってどうなのよ、という感想を思いました。

まあ何ですな、これは今に始まったことではないのですが、アメリカン債券市場って先行きの金融政策の織り込み方が毎度毎度極端すぎでして、なんで「9月一旦利下げして引き締めのおかわりステージから変化したというのを見せておいて一旦FEDは様子見をするんじゃないか」という中間的な織り込みをすっ飛ばしてヒャッハーヒャッハーと動くのかと思ってしまうのですが、これって究極的にはFOMCの出しているドットチャートの弊害でして、将来のことなんてそんな簡単に決め打ちできないのに、あたかも決め打ちをしたかのように政策金利予想を出してしまうのって、要するに「毎回のように予告ホームランを出している」みたいな話なのですが、特に政策金利のパスなんてどうせ直線一気理論で計算するんだから手前の見通しが小さく変わって傾きが小さく変わっただけで先の方の出来上がり数字って大きく変化してしまうんですから、それを見るのに慣れてしまうとそりゃまあ織り込みが毎度毎度極端から極端に振れる罠、というお話な訳で、「金融緩和余地のない中でフォワードコミットメントをすることによって金融緩和を捻りだす」という苦肉の策でぶっこんだドットチャートを後生大事に継続しているのはマズイと思うので、いい加減廃止した方が良いと思うの。まあちなみにジャクソンホールに合わせてその手のコミュニケーションポリシーいじってくることがFEDにはあるので、どうせなら今回考え直してほしいものです。


〇ジャクソンホールのお品書きは間もなく出る予定ですな

(URL長いのでリンク途中の文字列までしか貼りませんがちゃんと飛ぶはずです)
https://www.kansascityfed.org/newsroom/2024-news-releases/kansas-city-feds-jackson-hole-symposium-set-for-aug-22-to-24/
Kansas City Fed’s Jackson Hole Symposium Set for Aug. 22 To 24
The 2024 event marks the 47th year of the annual forum.

August 20, 2024 News About Us Jackson Hole Economic Policy Symposium

ということで、

『KANSAS CITY, MISSOURI - The Federal Reserve Bank of Kansas City will convene its annual Economic Policy Symposium, Aug. 22-24 in Jackson Hole, Wyoming. The 2024 event, which marks the symposium’s 47th year, will focus on the theme "Reassessing the Effectiveness and Transmission of Monetary Policy.”

This year’s theme will explore lessons learned from the response of monetary policy to both the pandemic and the subsequent surge in inflation.』

お品書き見ないと何とも言えませんが、今日まるまる1日国会に呼び出しの刑を食らっている植田総裁が土曜日のセッションに行けるのかというとさすがに無茶だと思うのですが、そもそも論として「基調的な物価はまだ2%に達していません(キリッ)」とか言ってる人が、「lessons learned from the response of monetary policy to both the pandemic and the subsequent surge in inflation」というテーマで話をするシンポジウムに出ても場違いにも程があるわけで、下手に参加して「日本の基調的物価は2%行ってません」とか言い出して場の雰囲気を微妙なものにするくらいなら行かない方が賢明かもしれませんねwwwwwwww

『The full agenda will be available at kansascityfed.org on Thursday, Aug. 22 at 8 p.m. EDT/6 p.m. MDT. Federal Reserve Chair Jerome Powell’s remarks will be streamed on the Kansas City Fed’s YouTube channel, External Linkyoutube.com/kansascityfed on Friday, Aug. 23 at 10:00 a.m. EDT/8:00 a.m. MDT.』

米国東部時間の20時だからこっちの朝9時で良いのかな?

https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/

にお品書きが出るようですので楽しみに待っています。

ということで本日はこの辺で勘弁





2024/08/22

お題「声明文ネタやる前に7月議事要旨:9月予告ホームランはわかったがその後はあんまり決め打ちしない方が・・・・・」

あ、FOMC声明文ネタをやる前に議事要旨がでてしまうまorzorz

〇声明文比較をしている余裕がないまま議事要旨の方が先に出てしまう失態orz

というわけで先入先出すいませんすいません(声明文比較明日します)。

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20240731.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20240731.pdf

・クソどうでもいいですが表示形式が変わりましたね

こちら6月FOMC議事要旨ですが
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20240612.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20240612.pdf

PDF見ると思いっきり表示形式が変わっていて一瞬違和感を覚える次第(ワシが真面目にこれを見だしてから特にPDFは旧型式だった)なのですが、HTMLの方も出席者の長いリストなどが後ろになっていまして、ナンジャコリャと思ってしまいました。まあどうでもいいと言ってしまえばそうなんですけど。

では例によって手抜き読みで『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の政策に関する部分を読むのですが、その前に今回『Committee Policy Actions』の量が若干いつもよりも多い事に気が付いたのでそっちから。

引用はHTMLバージョンから参ります
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20240731.htm

・この文言を討議の結果入れましたよ、というのをわざわざ説明しておりますね

『Committee Policy Actions』ですが、最初の3つのパラグラフの構成は前回と同じなのですが、今回4パラ目が挿入されています。そ奴がこちら。

『Members agreed that to appropriately reflect developments since the previous meeting related to their maximum-employment objective, they should note in the statement that "job gains have moderated, and the unemployment rate has moved up but remains low." Similarly, to appropriately reflect developments related to their price-stability objective, they agreed to note that "there has been some further progress toward the Committee's 2 percent inflation objective." 』

今回声明文に、
"job gains have moderated, and the unemployment rate has moved up but remains low."
"there has been some further progress toward the Committee's 2 percent inflation objective."
というのを入れたのは、デュアルマンデート達成に向けた雇用と物価の進展に対する認識に前向きの進展があった、ということを示しますという意図がありますよって言ってますね。

『Members also agreed to reflect the shifting balance of risks by stating that "the Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation goals continue to move into better balance" and that "the Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate."』

さらに
"the Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation goals continue to move into better balance"
"the Committee is attentive to the risks to both sides of its dual mandate."
というのを入れたのは、リスクバランスの認識の変化を示しますという意図があります、っていうことですが、わざわざ「投票メンバーはこの文言をステートメントに入れるのに合意しました」ってアピールしている訳でして、まあ既にその辺市場は織り込んでおられるわけですが、ダメ押しをしてきたという感じでございますな。


では例によって手抜きなので『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の金融政策パート、第10パラグラフから第12パラグラフになります(ケツの3パラ)がそちらを鑑賞しようではありませんか。


・数名の参加者は「今回0.25%の利下げでもええんじゃねえの」との見解を示しましたとな

10パラ。

『In their consideration of monetary policy at this meeting, participants observed that recent indicators suggested that economic activity had continued to expand at a solid pace, job gains had moderated, and the unemployment rate had moved up but remained low. While inflation remained somewhat above the Committee's longer-run goal of 2 percent, participants noted that inflation had eased over the past year and that recent incoming data indicated some further progress toward the Committee's objective.』

この辺は(まだネタにしてないけど)声明文に言及されているのと同じでして、

『All participants supported maintaining the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent, although several observed that the recent progress on inflation and increases in the unemployment rate had provided a plausible case for reducing the target range 25 basis points at this meeting or that they could have supported such a decision.』

参加者全員が現状の政策金利維持をサポートだったのですが、数名(several)の参加者は最近の物価の進展と失業率の上昇を勘案すると、今回のFOMCで0.25%の金利引き上げを行うのもアリエール、という指摘をしたそうな。

『Participants furthermore judged that it was appropriate to continue the process of reducing the Federal Reserve's securities holdings.』

バランスシートの方は引き続き縮小と。


・9月利下げ予告ホームランだが中立金利までホイホイ下げていく話にはなっていないのは要注意

11パラ。

『In discussing the outlook for monetary policy, participants noted that growth in economic activity had been solid, there had been some further progress on inflation, and conditions in the labor market had eased.』

物価の落ち着き、労働市場の過熱緩和の一段の進展がみられると。

『Almost all participants remarked that while the incoming data regarding inflation were encouraging, additional information was needed to provide greater confidence that inflation was moving sustainably toward the Committee's 2 percent objective before it would be appropriate to lower the target range for the federal funds rate.』

ほとんどすべて(Almost all)の参加者は最近のデータは良好で、マンデート達成への確信を深めるものであると評価。

『Nevertheless, participants viewed the incoming data as enhancing their confidence that inflation was moving toward the Committee's objective.』

とは言えもう少しデータを見て確信の後押しをされたい(ので今回は据え置きということですな)ようでして、

『The vast majority observed that, if the data continued to come in about as expected, it would likely be appropriate to ease policy at the next meeting.』

予告ホームランキタコレ!!!ということで大きな多数の参加者(The vast majority)はこの調子でデータが見られるようであれば、次回9月のFOMCでの利下げが適切であると観測している、ということで予告ホームラン来ました。まあ市場ちゃんは織り込んでいるとはいえ。

『Many participants commented that monetary policy continued to be restrictive, although they expressed a range of views about the degree of restrictiveness, and a few participants noted that ongoing disinflation, with no change in the nominal target range for the policy rate, by itself results in a tightening in monetary policy.』

引き締めの具合の調整である。という指摘になっているのですよね。アメリカン市場がどのくらいの利下げを見ているのとかとかアタクシったらてめえの目の前の蠅を追うのに忙しいのできちんと分かっていない訳ですが、9月の利下げがその後もホイホイと中立金利に下げるというような話に市場がなられても困るんだよなあというのは把握した。

『Most participants remarked on the importance of communicating the Committee's data-dependent approach and emphasized, in particular, that monetary policy decisions are conditional on the evolution of the economy rather than being on a preset path or that those decisions depend on the totality of the incoming data rather than on any particular data point.』

あくまでも一部のデーターポイントで判断するのではなくトータリティーで判断しますしデータ次第ですよ、とさらに付け加えていまして、これ9月利下げの予告ホームランは打っているけど、連続利下げの予告は打ってないんですよね。まあ理屈からしたらマンデート達成の頃には中立金利という理屈になるから進展がちゃんと進めば利下げは続くって読むのはわかるんだけど、市場が突っ走らないように気を使った見せ方をしている(市場がそう受け止めるかどうかは知らんけどワシはそう思った)なあと思いましたわ。

『Several participants stressed the need to monitor conditions in money markets and factors affecting the demand for reserves amid the ongoing reduction in the Federal Reserve's balance sheet.』

最後はFEDのバランスシートの話で、バランスシート縮小を継続する中で市場が必要なリザーブが実際問題どの辺にあるのか、というのがバランスシートを縮小してくるとどこかで見えてくるかもしれないのでよく見ておくのダイジダイジネーという指摘ですね。


・とは言えリスクマネジメントの観点からも利下げをそろそろという追い打ちをかけるという微妙な構成ですね

第12パラ。

『In discussing risk-management considerations that could bear on the outlook for monetary policy, participants highlighted uncertainties affecting the outlook, such as those regarding the amount of restraint currently provided by monetary policy, the lags with which past and current restraint have affected and will affect economic activity, and the degree of normalization of the economy following disruptions associated with the pandemic.』

リスクマネジメントの観点から、ということで何の話をしているかといえば引き締め政策が波及ラグをもって今後影響してくる度合いとか、パンデミックによる毀損からの正常化度合いの経済に与える影響なんかが気になるそうな。

『A majority of participants remarked that the risks to the employment goal had increased, and many participants noted that the risks to the inflation goal had decreased.』

多数派の参加者(A majority of participants)は失業が上がってしまってアイヤーとなるリスクが高まっていることと、物価が落ち着いてきてマンデート達成になる可能性は高まっている(マンデート達成へのリスクが減っている、という表現です)ことを指摘。

『Some participants noted the risk that a further gradual easing in labor market conditions could transition to a more serious deterioration.』

数名(Some)の参加者は労働市場の一段の緩和は経済にアカンことになる可能性がありまっせと指摘。

『Many participants noted that reducing policy restraint too late or too little could risk unduly weakening economic activity or employment.』

多くの(Many)参加者は利下げが遅すぎたり足りなかったりすると経済や労働市場に好ましくない打撃になる、と指摘してて、だったらお前ら7月利下げしろやというような勢いのこの説明が来ますな。

『A couple participants highlighted in particular the costs and challenges of addressing such a weakening once it is fully under way.』

2名(A couple)は経済が一旦ダウントレンドに入ってしまうと面倒なことになりますよねと指摘。

『Several participants remarked that reducing policy restraint too soon or too much could risk a resurgence in aggregate demand and a reversal of the progress on inflation.』

とまあこれでもかと利下げしよう派(多数派)の見解をご紹介した後に、数名(Several)の参加者が利下げが早すぎた場合に物価が反転上昇してしまうリスクがあるぜよ、という指摘をしているというのが入ってきまして、

『These participants pointed to risks related to potential shocks that could put upward pressure on inflation or the possibility that inflation could prove more persistent than currently expected.』

利下げ急ぐべきではない派の方々は、インフレ圧力が我々の想定よりも強くてより持続的であるという可能性もあるし、潜在的にはまだ物価上振れリスクもあるんだから、ということで利下げ急ぐべきではない、という主張をしています。まあ少数派なのですけど。


ということで政策に関する3パラは終わっておりまして、まあ結局これ9月利下げはするんでしょうけれども、その後ホイホイ利下げできるのかというと、なんか最初は様子見地蔵っぽい言い方になって、その後のデータを見ながらさらに利下げ、みたいな感じでの見せ方をしてくるんじゃなかろうか、という感じですかね、知らんけど。

ということで今朝はこの辺で勘弁。







2024/08/21

お題「展望レポート本文BOXのフォローアップみたいなの出てますね/ボウマン理事講演備忘用メモ」

さあもりあがってまいりました
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240820-OYT1T50177/
小泉進次郎・元環境相、総裁選出馬へ…周囲に「党を変えるための真剣勝負にしないと」
2024/08/20 23:36
自民党総裁選

まあしかし今回ってどうせなった人ボロボロになるんで進次郎がなってもエライことになるでしょうからこの1回で潰れないで頂きたいもんです。


〇展望レポート本文BOXのフォローアップみたいな日銀レビューが2本出ました

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/rev24j11.htm
消費者物価における最近の企業のサービス価格設定行動
2024年8月20日
調査統計局 尾崎達哉、八木智之*、吉井彬人

本文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j11.pdf
消費者物価における最近の企業のサービス価格設定行動

というのと、

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/rev24j12.htm
人口動態の変化が労働市場や賃金の動向に与える影響
2024年8月20日
池田周一郎*、川野潮、高田耕平、眞壁祥史、八木智之**

本文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j12.pdf
人口動態の変化が労働市場や賃金の動向に与える影響

という物件が出ている訳ですが、これって先般ネタにしました展望レポート全文の最後のコラム「BOX」の

展望レポート全文
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2407b.pdf

『(BOX1)2024 年春季労使交渉の振り返り 』
『(BOX2)サービス価格の動向:「期初の値上げ」の広がり 』

の詳細版というか背景説明みたいな風情で出してきている物件でして、なんでこういうのが出てくるのかといえば、つまりそれは「展望レポート全文のBOX1とBOX2は大事な論点ですよぜひ見てくださいね」というメッセージ、ということになるわけですな、知らんけど。


・サービス価格の上昇が広がっていますよという話

再掲します。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/rev24j11.htm
消費者物価における最近の企業のサービス価格設定行動
2024年8月20日
調査統計局 尾崎達哉、八木智之*、吉井彬人

まずは紹介ページのHTMLの方から。

『要旨

消費者物価におけるサービス価格は、産出価格に占める人件費の比率が高いという特徴を持ち、今後、賃金・物価の相互連関の強まりを通じて、消費者物価の基調的な上昇率が高まっていくための重要なファクターとなる。』

ということですが、だったら最初からそう言っておけば良い話なのに、コアコアCPIだの基調的な物価だの色々と手を変え品を変え説明する元ネタをホイホイと動かしていましたので、こっちは当然ながら「政策に都合の良いようにゴールポストを動かしておられますなあ」という理解になりまして、それすなわち「日銀の政策反応関数が全然ロジカルじゃない」という話になるわけです。政策反応関数が訳わからなくなるとロジカルに政策の見通しができないわけで、そうなると「メディアの抜き」が注目されてしまう、という阿呆のような話になるわけです。

なのでこのサービス価格云々も都合が悪くなると引っ込めてくる可能性は大有りでございますので、サービス価格云々の話よりも、このサービス価格にかこつけて何を主張しているのか、というのを読むほうが吉、ということになっているのが今の日銀観察の面倒くささではありますな(あくまでも個人の偏見です)。

『わが国のサービス価格は、過去、前年比ゼロ%近傍で推移し、きわめて粘着性の高い状態が続いてきた。最近の企業行動を分析すると、春季労使交渉において2年連続で賃金改定率が大幅に加速するなかで、2024年春の価格改定において多くのサービス品目で「期初の値上げ」が広がるなど、足もと、企業の価格設定行動が変化してきている。』

はいきました期初の値上げ。展望レポートBOX2ですな。

『今後、こうした動きがさらに広がり、基調的な物価上昇率が着実に高まっていくか、幅広い観点から丁寧に見極めていくことが重要である。』


ということで本文
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j11.pdf
消費者物価における最近の企業のサービス価格設定行動

『はじめに』の最初は、

『消費者物価(CPI)の「生鮮食品・エネルギーを除く総合」の前年比は、2021 年以降の輸入物価の大幅な上昇を受けて、2023 年半ばにかけて財価格を中心にプラス幅を大きく拡大した(図表 1)。こうした既往の輸入物価上昇を起点とした物価上昇圧力はこのところ減衰してきており、今後、物価上昇のドライバーが、これまでみられてきたコストプッシュ圧力から、賃金と物価の相互連関の強まりを背景としたものにシフトしていくか、丁寧に見極めていくことが求められる1。』

という説明をしているのですが、一方でこの前の内田副総裁の金懇周りでは「2%を超えた物価が継続していること」についても論点として置いておりまして、このあたりの説明も何ちゅうか微妙ではあるのですよね。

つまりですね、そもそも論として物価上昇圧力の要因が何か、ということもそりゃまあ大事は大事なのですが、中央銀行が物価安定の達成ということで見るのであれば、現在起きている物価上昇(下落)が一時的なのか持続的なのか、ってのが大事であって、コストプッシュだろうとそれが持続的な要因に基づくのであれば、金融政策で対処すべきところは対処しないといけない訳でして、先般の内田副総裁の金懇での話って上記の第一の力第二の力とは必ずしも一致しない論点を出してきていますし、だいたいからして今回の決定会合の時の会見でも第一の力第二の力ってのを出さなくなってきていますので、実はこの分析自体は(完全にお蔵入りすることはないでしょうけれども)前面に出さなくなる可能性もあるのよね。という点には留意が必要かと思うのですよ、個人の感想ですけど。

まあそれはそれとしてこの次の小見出し『サービス価格の変動要因は何か? 』の結論部分を見ますと、

『次に、計量的な手法(スパース推計)を用いて消費者物価の各品目の変動要因を分析しても、同様のことが指摘できる4。財のうち食料工業製品では、輸入物価の影響が大きく、サービスのうち外食では、輸入物価に加え、自社の賃金や運輸等の他サービスの影響も受ける(図表 3)。サービスのうち、より人件費ウエイトの大きい教養娯楽サービスでは、自社の賃金や運輸の影響が大きい。』

『したがって、幅広い品目における物価上昇を実現するためには、サービスを中心に、賃金から物価への波及が強まることが重要といえる。』

ということでさっきの要旨部分にもありましたし、だったら最初からそれを言えよとしか申し上げようがない(だって黒田末期はまだサービス価格がそんなに上がっていなかった訳で、サービス価格がそんなに上がっていないのになんで長期金利の変動幅拡大しましたのんとかいう話を遡及して突っ込みたくなるわけですがなwww)のですが、とりあえず「サービス価格推し」なのは把握した。

でもって次の小見出しが『「期初の値上げ」の動向 』というキタコレの話で、重要なのはこの結論部分でして、

『品目別の価格変動分布は、分布の「山(ピーク)」がゼロ%近傍から 2%近傍へシフトしており、サービス業全体として、価格設定行動が変化していることが窺える(図表 5)。』

本文の図表5ってのを見てちょんまげという話ですが、これなんで直近1年の数字しか出していないのかが訳わからんところでして、どうせならもっと前の0のところに思いっきり山がある(んだったと思うの、どっかで見たことがあるんだがそういうの)のを出して比較しろよと思うのですが、ここのところが重要、という建付けになっている筈です。

『より子細に把握するために、分布を「コストに占める人件費比率」の高い品目と低い品目に分けて描くと、既往のコスト上昇圧力の影響で高い伸びとなっていた、同比率の低い品目(外食等)の分布が左方へシフトした一方、同比率の高い品目(各種講習料等)では分布が右方へはっきりとシフトしたことが分かる(図表 6)。前述のスパース推計の結果と合わせて考えれば、賃金の上昇によって、幅広い企業の行動が変化してきていることが示唆される。』

ということで企業行動が変わったんですってよ奥様、というのが主張する点ですね。

次の小見出しは『最近の価格設定行動における特徴点』でして、

『以上のように、これまで、財価格対比で変動が小さかったサービス価格でも、価格改定の動きが着実に広がっている。』

『最近の企業の価格設定行動について、日本銀行の全国企業短期経済観測調査(短観)の個票等を用いて特徴点を考察しても、長年にわたって定着してきた、賃金や物価が上がりにくいことを前提とした考え方が変化していることが窺える。』

でもって以下色々と説明がありますがその辺は飛ばしまして最後が『おわりに』でござる。

『本稿では、消費者物価における最近の企業の価格設定行動について、サービス価格を中心に整理した。サービス価格は、その産出価格に占める人件費の比率が高く、今後、賃金と物価の相互連関がさらに強まり、消費者物価の基調的な上昇率が高まっていくかをみるうえで、重要なファクターとなる。』

ほうほう。

『わが国のサービス価格は、1990 年代末以降、前年比ゼロ%近傍で推移し、きわめて粘着性の高い状態が続いていたが、本稿における各種分析結果が示すとおり、春季労使交渉において、2 年連続で賃金改定率が大幅に加速するなど、賃金上昇圧力が高まるなかで、企業の価格設定行動も変化してきている。』

でもって、

『先行き、企業の価格設定行動の変化がさらに広がり、物価上昇のドライバーが、既往の輸入物価上昇を起点としたコストプッシュ圧力から、賃金と物価の相互連関の強まりを背景としたものにシフトしていくか、引き続き、幅広い観点から点検していく必要がある。』

どうやって点検するのかというと、

『とくに、@春季労使交渉における高水準の賃上げが、サービスを中心とした販売価格に反映されていくか、A賃金上昇を見据えた販売価格設定が広がっていくか、そして、Bこうした動きが継続することで、賃金・物価の相互連関がさらに強まっていくか、企業の賃金設定行動と合わせて、丁寧に見極めていく必要がある。』

と思いっきり決め打ちしているけど大丈夫かしらと思いつつ先に行きますと、

『また、企業の価格設定行動をみるうえでは、需要動向、すなわち個人消費の動向も注視する必要がある。この点、企業収益の改善が続くもとで、賃金上昇率が高まっていき、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まっていくか、確認していくことが求められる。』

というふわっとした説明をしておりますなこちらはw

『以上の点を確認していくにあたっては、様々な角度から定量的な分析を行うとともに、ヒアリング等の定性的な調査も丹念に行い、企業行動の変化を的確に把握することが重要となる9。』

一瞬決め打ちするのかと思いましたが結局いつもの総合判断ではありますが、話の筋として「物価安定目標の定着が見えてきております」という話なので、まあそういうことでしょうという話で、つまりは先般は内田さんが株安を受けてものすごい勢いで腰砕けになっていましたが、まあアレはその場しのぎの話であって、本質的には緩和修正路線継続ですよ勘違いしないでくださいね、というのが(次のも含めて)今回のキーメッセージですわな、というお話になりますな。


・賃金が構造的に上がりやすくなっているというお話なのだが

再掲します
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/rev24j12.htm
人口動態の変化が労働市場や賃金の動向に与える影響
2024年8月20日
池田周一郎*、川野潮、高田耕平、眞壁祥史、八木智之**

要旨から参りますと、

『わが国の人口動態の見通しを前提にすると、先行き、労働供給量の大幅な増加は見込みにくく、人手不足が継続する可能性が高い。本稿では、こうした人手不足が労働市場や賃金の動向に与える影響を考察した。』

しかしこの話を前面に出しちゃうと少子高齢化でインフレというホンマカイナという話になるので用法容量には注意して使った方が良いんじゃないかと老婆心ながら思うのでありますが。

『わが国の労働市場では、流動性の低さや、雇用形態等によって賃金決定メカニズムが異なること――いわゆる「二重構造」――が課題とされてきたが、人手不足感が強まるもとで、状況に変化がみられ始めている。』

この辺の話ってアタクシ当然ながら詳しくないので、それこそ濱口桂一郎先生とかの著書でも読んで勉強しないといかんのですけど、この「いわゆる二重構造」って本当に強固なものなのかってのが若干???には思えるんですよね。

『すなわち、本稿の分析結果をみると、転職市場の拡大によって雇用の流動性が変化し始めていることや、これまで異なる仕組みで賃金が決まってきた市場間で、相互に連関して賃金が上昇するメカニズムが働き始めている――例えば、パートの賃金上昇が正社員の賃金上昇圧力となっている――ことが窺える。』

『先行き、こうした変化が続き、企業の賃金設定行動が一段と積極化する可能性がある。』

まあその二重構造云々はともかくとして、結論項は上記のようになっていまして、さっきの賃金とサービス価格の話の中にある「賃金」が構造的に上がりやすくなっているという話につながって、賃金と価格の相互作用がしっかりしたものになる、という話のようです。

本文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j12.pdf
人口動態の変化が労働市場や賃金の動向に与える影響

まあ何ですな、最初の『わが国の労働市場における課題』について、

『わが国の労働市場を巡っては、数多くの課題が挙げられてきた4。とりわけ、労働市場の流動性の低さに関する課題が指摘されることが多い。』

という話になっているのですが、これが本当の本当なのかというのが多少ワイ疑問でして、

『わが国では、長年、終身雇用型の雇用形態のもとで転職などの労働移動が限られるなど、人的資本の効率的な再配分が生じにくい構図となってきた。1990 年代以降、グローバルな競争環境や国内の経済構造が変化するなかで、必要な人材が衰退分野から成長分野にスムーズに移動することが求められてきたが、わが国の硬直的な労働市場はその障害となってきたとの指摘は多い5。』

この辺りがホンマカイナというのは多少あって、衰退分野の企業を無駄に延命させるようなマクロ政策(金融政策もそうですが経済政策も)バンバン打ちまくっていたことも問題だったんじゃネーノという気はするので、この割り切り方は微妙にどうなのかとは思うのですけど、まあその辺はさておいて実際に起きている現象についての部分を見ますと、

『企業の賃金設定行動の変化点 』という小見出しになりますが、

『足もとにかけて、こうした労働需給の引き締まりを受けて賃金上昇圧力が働きやすくなっており、正社員やパートの賃金は高い伸びとなっている(図表 5)。この間、前述の二重構造に代表されるように、これまで異なる仕組みで賃金が決まってきた市場間において、相互に連関して賃金が上昇するメカニズムが働き始めている可能性がある。』

から、

『(パート賃金上昇の正社員賃金への波及)』
『(転職市場拡大の正社員賃金への影響)』

という小見出しになっておりまして、中身は飛ばしますがまあ見てちょというお話。

『おわりに』までワープしますと(手抜き)、

『本稿では、人口動態が変化し、追加的な労働供給余地が縮小するもとで、わが国の労働市場を取り巻く構造的な課題について、変化がみられ始めていることを指摘した。』

『すなわち、分析結果をみると、@人手不足を契機に、転職市場が拡大し、労働市場の流動性が変化し始めていることや、A二重構造に代表されるように、これまで異なるメカニズムで賃金が決定されてきた市場間で、相互に連関して賃金が上昇するメカニズムが働き始めていることが窺える。』

まあ良いんですけどこれ言い出したらさっきも申し上げたように人口増加社会では労働供給が増えやすいのでデフレ圧力って話になってしまうのですがそうじゃない筈なんで、なんかこの説明って微妙感は拭えない面があります。

『先行き、こうした変化が続き、企業の賃金設定行動が一段と積極化する可能性がある。さらには、労働市場の変化を契機に資源配分の効率化が進み、生産性の向上を通じて経済を押し上げる方向に作用するか、注視していく必要がある。』

これは前向きな話なんですが、裏を返せば賃金上げられない企業は退出しなはれという話でもあるのですけど、まあそういう風にならんと資源配分の効率化は進まんわけなのですけれども、決定会合の植田総裁定例記者会見の中で、アタクシ敢えてネタにするのを飛ばしましたが、どこぞのアホウが「防衛的な賃上げをしたりゼロゼロ融資の返済に追われている企業が利上げに耐えられるのでしょうか」とかアホウな質問をしていて、いやお前賃金上げれないわゼロゼロ融資の返済もできないわ、というような利潤しか出せない企業にマクロ政策を合わせる必要があるのかよと思いましたが(ちなみに植田さんものすごくオブラートに包んでいましたが結構いい回答していました)、相変わらず「利上げで住宅ローンガー」とか抜かしている馬鹿メディアの意識改革が必要ですよね、なんて思いながらこの部分を読む訳です、なんか話の筋と外れて恐縮ですが。

本文に戻りまして、

『なお、労働市場や賃金の動向を巡っては、本稿で取り上げた論点以外にも、経済情勢や労働政策など、多岐にわたる要因が影響を及ぼしうる。引き続き、労働市場の状況や企業の賃金設定行動について、様々なデータを分析するとともに、ヒアリング情報も丁寧に収集・確認していくことが重要となる13。』

またヒアリング情報か!!!というのが締め文言でした。


〇ボウマン理事の講演とかいうのがあってちょっとだけ引用しておきます備忘代わりに

7月FOMCレビュー大会とか言ってたのにいきなり直近ネタにワープしますが、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bowman20240820a.htm
August 20, 2024
Remarks on the Economic Outlook and Financial Inclusion
Governor Michelle W. Bowman
At the Alaska Bankers Association, Anchorage, Alaska

現世利益のあるのは『Economic and Monetary Policy Outlook』の7パラ目ですね。

『My baseline outlook is that inflation will decline further with the current stance of monetary policy. Should the incoming data continue to show that inflation is moving sustainably toward our 2 percent goal, it will become appropriate to gradually lower the federal funds rate to prevent monetary policy from becoming overly restrictive on economic activity and employment.』

オーバーキルにならないように引き締め度合いを緩めていく必要があるよ。

『But we need to be patient and avoid undermining continued progress on lowering inflation by overreacting to any single data point.』

でも一つのデータポイントで過剰反応するのはダメ!ゼッタイ!!と来まして、

『Instead, we must view the data in their totality as the risks to the Committee's employment and price-stability mandates continue to move into better balance. That said, I still see some upside risks to inflation as supply conditions have now largely normalized and any further improvements to supply seem less likely to offset price pressures arising from increasing geopolitical tensions, additional fiscal stimulus, and increased demand for housing due to immigration.』

まだ物価にはアップサイドリスクが残存しているので、そのリスクの全体をよく見て調整しないとね、というお話なので、利下げに反対とかではないでしょうけれども、そんなにホイホイ利下げするものではないよ、って話をしている、ということですな。

・・・・って一応このコーナーの前後のパラには目を通しましたが、まあとりあえずメモ的にここだけということで(単に時間がないだけですサーセンw)。







2024/08/20

お題「1年短国入札/ダイヤモンドオンランで電波浴とな/ジャクソンホール前に泥縄で米国虫干しネタへ回帰します」

ほうほう
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/GZDEBJHI6BOQHIXGKHXPOU4NAE-2024-08-19/
ミネアポリス連銀総裁「9月の利下げ議論は適切」 WSJ報道
By ロイター編集
2024年8月19日午後 8:36 GMT+9

〇1年短国入札とか

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240819.htm
国庫短期証券(第1251回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1251回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号          国庫短期証券(第1251回)
2.発行根拠法律及びその条項
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第46条第1項

3.発行日     令和6年8月20日
4.償還期限   令和7年8月20日
5.価格競争入札について
(1)応募額        7兆4,817億円
(2)募入決定額     2兆4,327億円
(3)募入最低価格    99円74銭7厘
(募入最高利回り)    (0.2536%)
(4)募入最低価格における案分比率    14.0000%
(5)募入平均価格     99円77銭5厘
(募入平均利回り)    (0.2255%)』

ということで、新発WIが売参ベースで先週木曜日には0.21%だったのを金曜に0.23%に修正してきた、と思ったら平均は0.225%でWIから見ればそんなもんかなレートでしたが足切りが0.25%に乗っかるの巻。

とは言いましても、そもそも日銀当預と比較したら0.25%で足元時点で精々チャラな訳で、1年のスパンで見たらまあ普通は利上げあるじゃろ(2回あるかも)な訳で、うーんこの利回りという感じですが、まあそれでも0.20だの何だのという水準よりは一応7月利上げが反映されましたなくらいの金利でして、まあ毎度申し上げておりますがこの辺の短い国債の利回りの低さはどうにかならんのかと小一時間だし、だいたいからしてお前らYCCやってるときに「イールドカーブ全体の状況に意味がある」という建付けで政策やってたくせにマイナス金利解除した途端に政策金利水準と国債イールドカーブの整合性がおかしい(=政策金利と3Mがインバート)話はスルーかよ、ってなもんでありまして、だったら国債買入全部やめろやとかまた過激なことを言いたくなってしまいますわな。

でまあ昨日の引けベースですと、
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

国庫短期証券1251 2025/08/20 平均値単利 0.245

となっているので平均落札よりも甘い水準で引かせている格好ですが、まあゆうて一個手前の7月償還1年短国の1244は0.210%とか抜かしていまして、結局のところ発行後しばらくすると買いが入ってきて在庫が捌けてしまい、そうなると普通に需給締まってくるので金利は下がるの巻という風情になっておるわけで、いやーどこまで行っても短期ゾーンの国債の金利が短期政策金利との整合性付かない状態だわと呆れ果てる次第でありまして、日銀当座預金とっとと減らせやとしか申し上げようがないところではあります。


〇最近はダイヤモンドオンラインで電波浴ができるのか・・・・・・・・

昔よく産経電波浴とか言って産経新聞とか産経系のイエローペーパーで怪電波が放映されていたりしましたが、最近では天下のダイヤモンドオンライン様でも電波浴ができるようになったとは世もまつとしか言いようが無い。

https://diamond.jp/articles/-/348830
日銀の追加利上げは「全く理解できない」物価研究の第一人者が警鐘、「初歩的な経済学から逸脱」
渡辺努 東京大学大学院経済学研究科教授インタビュー
ダイヤモンド編集部

永吉泰貴:記者
連載
渡辺努 物価の教室
2024.8.16 8:30

2%を上回るコアCPIが2年以上続いているのに、短期政策金利がマイナス金利だゼロ金利だってのを漫然と続けている方が「初歩的な経済学から逸脱」してるんじゃないですかねえという気しかしないんですが、残念ながら2ページ目以降は有料会員じゃないと読めないっぽいので中身は知らんがなということで。

というかこのおっちゃん、正常化しろとか正常化するなとか言ってることがコロコロ変わってて、馬鹿のアタクシには一体全体なんだかさっぱり分からんのですが東大教授なんですよねえ・・・・・・・


〇日本ネタばっかりですっかり海外ネタをスルーしていたのでぼちぼち成敗ということで

どうもすいませんすいません。

・ジャクソンホールは今週22日(実質23日)からですな

https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/

Jackson Hole Economic Policy Symposium

The 2024 Economic Policy Symposium. "Reassessing the Effectiveness and Transmission of Monetary Policy," will be held Aug. 22-24.

ということで今年のお題は「金融政策の有効性と伝達経路の再評価」ということでございまして、まさにこれこそ日銀の異次元緩和政策のレビューで必要な話ではありますので、大変にホットなテーマじゃあーりませんかという話なのですが、なにせ日銀様におかれましては多角的レビューシリーズと銘打って結論先にありきの無駄分析を最近バンバン量産しているという日銀の中の人の才能の無駄遣いとしか申し上げようがないプレイをしているので、そもそもジャクソンホールに入れてくれるのでしょうか、というかジャクソンホールの真っ最中に植田総裁が国会の閉会中審査に召集されてるじゃないですかヤダー。

過去の式次第から勘案すると、22日ってただのオープニングレセプションとディナーで23日金曜の朝8時だか9時くらいから始まるオープニングリマークが注目のパウちゃんのご挨拶なので、まあ金曜の夜に日本を出れば土曜日のセッションには出れるような気がする(ジャクソンホールってサンディエゴ乗換で行くとしてどのくらいかかるのかは知らんけど)のですが、植田さんはジャクソンホール行かないのかな???と思ってしまいますな。

何ぼ国会と行っても閉会中審査なんだからジャクソンホールの金曜のセッションに出張予定があったら閉会中審査自体の日程が8月23日とかにぶち込まれないでしょうから、実は初手から総裁のジャクソンホールは無しなのかもしれませんけど・・・・・・

まあ何ですな、ジャクソンホールでの内容がどのようになるのか、過去の金融緩和についての話をするのか、それとも中立金利とかそっちの話になるのか、(両方なのかも)ということで、パウちゃんのご挨拶ばっかり注目されそうですけれども、このお題に関するお話というのも注目ですなという感じですし、日銀だけはまだ大規模緩和レジームを引っ張っている(現に今の状況も「緩和的」ですからね)ので、このお題で話をするのは心苦しい以外の何物でもないというのはありますので、日銀は氷見野さんにでもご出席いただく感じですかしらねえ。


まあそんなわけで注目ということになっているパウちゃんのオープニングリマークは向こうの時間の金曜の朝になりますので、それまでの間に1か月近く放置プレイをしていた米国金融政策ネタに追いついていこうかと思います。


ということで泥縄にも程があるが7月FOMCレビューを成敗していくの巻です。それはそうと知らん間にFEDのページ『Economy at a Glance』などというチャラいコーナーができていますな、って今頃気が付くとはどんだけお前FED見てないんだと言われそうですがまあそういうことです。日銀があまりにもアレだったので日銀追っかけて回って居たらすっかり日がたってしまいました・・・・・


〇ジャクソンホール前に泥縄シリーズで7月FOMCレビュー:オープニングリマークは「コンフィデンス」の言及なのね

既に会見録がFINALになっているという時点でワイの大敗北が確定しているのですが

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20240731.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
July 31, 2024

声明文をいつもなら先にやるのですが、声明文成敗は後に回しまして先に会見のオープニングリマークの方を読んでみようかと(一応なんでそうしようとしたかの考えが無いわけではない)。

最初のご挨拶パラグラフをかっ飛ばして2パラ目から。

『Today, the FOMC decided to leave our policy interest rate unchanged and to continue to reduce our securities holdings. We are maintaining our restrictive stance of monetary policy in order to keep demand in line with supply and reduce inflationary pressures. We are attentive to risks on both sides of our dual mandate, and I will have more to say about monetary policy after briefly reviewing economic developments.』

政策は据え置きだった訳ですが。

『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace. GDP growth moderated to 2.1 percent in the first half of the year, down from 3.1 percent last year. Private domestic final purchases, or PDFP-which excludes inventory investment, government spending, and net exports and usually sends a clearer signal of underlying demand-grew at a 2.6 percent pace over that same period, the first half. Growth of consumer spending has slowed from last year’s robust pace but remains solid. Investment in equipment and intangibles has picked up from its anemic pace last year. In the housing sector, investment stalled in the second quarter after a strong rise in the first. Improving supply conditions have supported resilient demand and the strong performance of the U.S. economy over the past year.』

この辺は経済状況のオーバービュー

『In the labor market, supply and demand conditions have come into better balance. Payroll job gains averaged 177,000 jobs per month in the second quarter-a solid pace, but below that seen in the first quarter. The unemployment rate has moved up but remains low at 4.1 percent. Strong job creation over the past couple of years has been accompanied by an increase in the supply of workers, reflecting increases in participation among individuals aged 25 to 54 years and a strong pace of immigration. Nominal wage growth has eased over the past year, and the jobs-to-workers gap has narrowed. Overall, a broad set of indicators suggests that conditions in the labor market have returned to about where they stood on the eve of the pandemic-strong, but not overheated.』

労働市場のところですが、最後の「strong, but not overheated」がキーワードですね。だからこそ今後引き締め状況の調整ができる、という話なので。

『Inflation has eased notably over the past two years but remains somewhat above our longer-run goal of 2 percent. Total PCE prices rose 2.5 percent over the 12 months ending in June; excluding the volatile food and energy categories, core PCE prices rose 2.6 percent. Longer-term inflation expectations appear to remain well anchored, as reflected in a broad range of surveys of households and businesses and forecasters, as well as measures from financial markets.』

物価についてはまだsomewhat aboveという説明、ということで、労働市場が「過熱ではない」ということにしないと引き締めの調整をする言い訳にならんのでそらまあそうですよねという現状認識を示しました。

でもってその次。

『My colleagues and I are acutely aware that high inflation imposes significant hardship, as it erodes purchasing power, especially for those least able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation. Our monetary policy actions are guided by our dual mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people. In support of these goals, the Committee decided at today’s meeting to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent and to continue reducing our securities holdings. As the labor market has cooled and inflation has declined, the risks to achieving our employment and inflation goals continue to move into better balance. Indeed, we’re attentive to the risks to both sides of our dual mandate.』

政策決定についての話がここから始まります。最初の部分と最後の部分はいつもの文言なのでこれは定例文言。

『We’ve stated that we do not expect it will be appropriate to reduce the target range for the federal funds rate until we have gained greater confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent. The second quarter’s inflation readings have added to our confidence, and more good data would further strengthen that confidence.』

ということでここから始まるわけですが、物価が2%に戻るというreater confidenceを得たら利下げをする(得られるまで利下げをしない、という言い方ですが)ということでやってきたが、最近のデータはこのコンフィデンスを強めてきているし、今後のデータでもコンフィデンスが強まる期待がある、と来ましてからの、

『We will continue to make our decisions meeting by meeting. We know that reducing policy restraint too soon or too much could result in a reversal of the progress we have seen on inflation. At the same time, reducing policy restraint too late or too little could unduly weaken economic activity and employment. n considering any adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』

ということで以下の文言は従来通りの文言になっていますが、今後コンフィデンスが高まるでしょう、という言い方をして9月利上げ検討大いにあるでという言い方になっています。予告ホームランはしらっと回避していますけれども、どうせ会見質疑でもうちょっと予告ホームランしてるんでしょうねとは思いつつ(何せ日銀がクソ忙しかったのでベンダーフラッシュと人様の後講釈をちょっとみただけのワイ)。

『As the economy evolves, monetary policy will adjust in order to best promote our maximum-employment and price-stability goals. If the economy remains solid and inflation persists, we can maintain the current target range for the federal funds rate as long as appropriate. If the labor market were to weaken unexpectedly or inflation were to fall more quickly than anticipated, we are prepared to respond. Policy is well positioned to deal with the risks and uncertainties that we face in pursuing both sides of our dual mandate.』

政策はデータ次第、といういつもの説明をしていまして、さっきの例の部分で言ったもののそれ以上にきつい予告ホームランにはしていないのね、なるほどなるほど。

『The Fed has been assigned two goals for monetary policy-maximum employment and stable prices. We remain committed to bringing inflation back down to our 2 percent goal and to keeping longer-term inflation expectations well anchored. Restoring price stability is essential to achieving maximum employment and stable prices over the longer run. Our success in delivering on these goals matters to all Americans. We understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We at the Fed will do everything we can to achieve our maximum-employment and price-stability goals. Thank you. I look forward to your questions.』

なるほどなるほどという感じでして、この部分も定例文言みたいな感じのいつもの締め文句でして、結局のところオープニングリマークベース(一応このオープニングリマークに関しては決議事項ではないようなのですが、どのようなニュアンスで話をするみたいなのは議事要旨を見る感じですと議論の対象になっているのであんまりパウちゃんが好き勝手に言う訳にはいかないはずですし、だいたいからしてオープニングリマークは会見終わった直後に出てくるのできちんとした原稿になっている筈です)では「コンフィデンスが高まってきた、今後のデータでもコンフィデンスが高まる期待がある」と言っているだけで、あとの現状認識とかで強く利下げを示唆するものはない(労働市場が過熱していないというのは一つあるけどそれだけでは利下げの障害にならないだけで利下げの理由にはならん)という説明文になっているんだな、というのをお前は3週間もたって何を言ってるんだと言われそうですが再認識した次第です。

という感じで拾ってまいりますね。






2024/08/19

お題「短国と物国の入札メモ/夏休み虫干し企画で超今更の展望レポート基本的見解とBOXに関して」

ほうほうそうですかそうですか
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240817/k10014551351000.html
米 ハリス副大統領 新たな政策発表 “物価引き下げ 最優先に”
2024年8月17日 8時16分

〇3MTDB入札とか物国入札とか

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240816.htm
国庫短期証券(第1250回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1250回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号            国庫短期証券(第1250回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日          令和6年8月19日
4.償還期限        令和6年11月18日
5.価格競争入札について
(1)応募額          12兆9,100億円
(2)募入決定額     3兆7,261億6,000万円
(3)募入最低価格     99円97銭0厘5毛
(募入最高利回り)     (0.1183%)
(4)募入最低価格における案分比率   89.6119%
(5)募入平均価格     99円97銭2厘1毛
(募入平均利回り)     (0.1119%)』

うーんこのという感じで、前日の売参ベースのWIだと0.120%だったのですが、結局0.12%割れの水準で決着の巻となっておりまして、昨日の引けでは
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

国庫短期証券1250 2024/11/18 平均値単利 0.110

になっているのですが、入札がもっと強かった前回債ちゃんの方が

国庫短期証券1249 2024/11/11 平均値単利 0.120

となっていて、なんでここで逆イールドになるのかとかもうそういうことは考えてはいけないのが短国クオリティなのでそれはさておくとしまして、まあ全部の利回りが下がっている訳でもなくて新発だけ堅調ということになっているので、どうせこれ短国重くなってきたら甘くなるんじゃろということにしておきますがそれで良いのかは知らんw

一方で東京レポレートの方は

https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

        O/N T/N  1w  2w   3w  1m  3m
2024/8/8  0.216 0.174 0.162 0.167 0.172 0.177 0.201
2024/8/9  0.182 0.233 0.175 0.172 0.175 0.178 0.201
2024/8/13 0.229 0.224 0.177 0.176 0.177 0.179 0.200
2024/8/14 0.224 0.230 0.180 0.181 0.179 0.180 0.200
2024/8/15 0.238 0.227 0.185 0.182 0.180 0.181 0.200
2024/8/16 0.233 0.230 0.186 0.184 0.183 0.184 0.201

つーことで先々週の新発1249の発行のところからGCレートって割と高いところでへばりついておりまして、これGC対比で利回りニバイニバーイ状態の逆ザヤになっている、という状況ではあるのですが、いつものパティーンで月曜のところでレポレート下がるなら別に新発11bpって正当化されるのかもしれないけど、今週もGCレート下がらんのであればこの水準ってどうなのよとは思うのですが、まあ要はファンディングがGCじゃない人の買いニーズが強いってことではあるんでしょうけれども、これは短国の店を開けてるマーケットメーカーもなかなか大変だなと思うのであります。

まあいつもの悪態だが日銀のバランスシートが馬鹿みたいに多いのがすべての元凶なんだが。



物国入札もありましてこちらは29回リオープン(5月に新発が出てその後1年間リオープン)でしたけど、お盆の時期に物国入札ぶっこんでくるというのが何ともかんともでしたけど。

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20240816.htm
10年物価連動国債(第29回)の入札結果

『 本日、10年物価連動国債(第29回)の入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号      利付国庫債券(物価連動・10年)(第29回)
2.発行根拠法律及びその条項    特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第46条第1項

3.表面利率            年0.005パーセント
4.発行日             令和6年8月19日
5.償還期限           令和16年3月10日
6.応募額               7,385億円
7.募入決定額            2,499億円
8. 発行価格(募入最低価格)   104円30銭
9. 募入最高利回り         -0.426%
10. 募入最低価格における案分比率   53.3333%

(注1)発行価格は連動係数積算前の価格
(注2)募入最高利回りは発行価格を基に算出した単利利回り
(参考)発行日(8月19日)の連動係数  1.01116』

連動係数抜きの木曜の物国29回の売参ベースの引けが104円80銭で、金曜の前場は先物が40銭くらい下がっていたので、引け対比50銭安ですとまあそんなに流れなかったという結果になると思うのですが、BEIで130割れくらいですかそうですかという水準。

まあ金曜の売参見るとしらっと29回だけ前日比甘になっていて他は前日比プラスになっている(19回は期近なので無視)のは若干寂しいのですが、なんせこの高いボラティリティ環境下、ボラが高いと物国は気配が甘くなる(あるいはアロケーションの売りが出たりもする)という割とカジュアルにいじめられっ子な債券なので、高ボラ環境下で流れなかったですねという感じ(と言ってじゃあ10年BEI130割れってどうなのとか色々とあるのかも知らんがその辺はよーわからんのでパス)。



〇虫干しにも程がありますが展望レポートネタを成敗という夏休み虫干しネタで恐縮

基本的見解本文の逐条比較はさすがに簡略方式にします。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2407a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404a.pdf(前回)

まずは現状認識。『1.わが国の経済・物価の現状』から。

『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(今回7月)
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(前回4月)

そもそも論として現状認識が同じ。

『海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回7月)

『海外経済は、回復ペースが鈍化している。そうした影響を受けつつも、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。鉱工業生産は、基調としては横ばい圏内の動きとなっているが、足もとでは、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響もあって減少している。』(前回4月)

海外経済の判断が上がっているのと生産のうち一時的要因のマイナス剥落を指摘。

『企業収益は改善しており、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(今回7月)
『企業収益は改善しており、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(前回4月)

判断不変。

『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響などがみられるものの、底堅く推移している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回7月)

『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の減少などがみられるものの、底堅く推移している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(前回4月)

個人消費も底堅い、の評価のままですな。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回7月)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回4月)

緩和のし過ぎじゃwww

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(今回7月)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(前回4月)

物価も判断同じ、ということでオントラックで推移しているというだけにほとんど情報下方修正がない、というのが特徴的ではあります。


見通し部分は基本線は鏡の比較の通りなのですが一応。

経済の見通しについては、

『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回7月)

『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかに成長していくもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(前回4月)

思いっきり同じです。ただこれなんですけど、前回も確かに「経済物価情勢が2%目標達成に整合的に推移すれば徐々に緩和度合いの調整を行う」となっているのでまあ今回急に変わるわけではないのですが、見通し期間中に物価目標を達成できるというのであれば、達成したと考えられる時点においては金融政策は緩和的な状態であったら今度は上へのオーバーシュートのリスクが高まるわけでして(特にジャパニーズって極端から極端に振れる傾向があるから油断はならないと思うの)、「緩和的な金融環境などを背景に」というのってこれ見通し期間中すべてに置いてそうなんですか???というのが????なのでこの見通しで良いのかよというのは気になってしょうがないんですよね最近。

でまあ本来は個別項目の話も比較するのですがスーパー虫干しネタなのでもはやそこはパスしまして物価の見通しに飛びます。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台半ばとなったあと、2025 年度および 2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。』(今回7月)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台後半となったあと、2025 年度および 2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。』(前回4月)

オントラックなだけに同じでして、

『既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025 年度にかけては、政府による施策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(今回7月)

『既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025 年度にかけては、このところの原油価格上昇の影響や政府による経済対策の反動が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(前回4月)

原油価格云々の記載が削除。

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回7月)

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回4月)

この微妙になんだかよくわからない「基調的な上昇率」ですが、こちらも文言変更なし。

とまあそういう訳で、今回って基本的にオントラックで推移する中で政策金利の調整を行いましたよ、という建付けになっているので、現状認識にしろ先行き見通しにしろほぼ変わっていないというのが特徴な訳です。


でもって問題になるのはリスク認識でして、しかもその中で物価のリスクの2番目が文言変更になっていた訳です、まあ鏡にもありましたけど。

『第2に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、およびその輸入物価や国内価格への波及は、上振れ・下振れ双方の要因となる。世界経済の先行き等を巡る不確実性は高く、これが国際商品市況を大きく変動させる可能性がある。』(今回7月)

『第2に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、およびその輸入物価や国内価格への波及は、上振れ・下振れ双方の要因となる。世界経済の先行き等を巡る不確実性は高く、これが国際商品市況を大きく変動させる可能性がある。 』(前回4月)

までは同じですが、皆様ご案内のようにその次が、

『また、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。 』(今回7月)
『世界的なインフレ率の動向や為替相場の変動といった点も含め、それらがわが国物価に及ぼす影響については十分注意してみていく必要がある。』(前回4月)

ということで、円安物価上昇が物価上振れrのリスク、ということになりまして、これは従来「第一の力、第二の力」という謎説明によって円安コストプッシュは第一の力だからネグってよろしい、という強引な説明により円安輸入物価上昇の話をネグり続けていたのをしらっと手のひら返しをしている、というのが結構重要なポイントでして、これはすなわち従来使っておりました物価上昇第一の力、第二の力、というのの説明を(ようやっと)引っ込めたということも意味されるのであります。

そりゃ普通に当たり前でして、金融政策運営において物価動向の分析をする際に重要なのは「この物価上昇(下落)が一時的なものなのか、それとも持続的なものなのか」という点であり、持続的な上昇要因によって物価が目標対比上振れる、という状況を放置するのは良くない、という話になりますので、第一の力第二の力の説明が引っ込められた(と思われる)のは実に結構な話、ということになります。


でまあ問題なのは最後の金融政策運営ですが、いつもの点検はいつもの点検なのでパスしまして、

『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。』(今回7月)

『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。』(前回4月)

4月も7月も実は主文は「見通しが実現するなら金融緩和の度合いを調整する」という話なのですが、ご覧の通りで4月はその前と後にゴテゴテとハトハトチキン文言が並んで居まして、3月のマイナス金利解除直後ならともかく、1か月経過している中でこのハトハトチキン文言ぶっこんでしまうもんだから円安にぶっ飛んでしまったのはご案内の通りであります。

ということで、7月はそのゴテゴテにデコっているハトハトチキン文言を外して主文が分かりやすくなるように記載した訳でして、まあこれはマイナス金利政策解除前からでしたけれども、解除に伴う金利上昇を懸念しすぎてしまって、緩和的なメッセージを出しすぎた、ということの反省かと思うのですが、まあその反省をした傍からご案内の通りで内田副総裁がクソのような金懇講演を行ってしまってまたしてもコミュニケーションを混乱させている訳で、もうこいつらつける薬がねえという感を深くするものではあります。

あ、この部分ですが最後の締め文言がありましてこれは変わらないです。

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(今回7月)
『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(前回4月)

コンディショナルにやるんだったらそんなにハトでもタカでも決め打ちしなくて良いのに、とは思うのですけどね・・・・・


あと、展望レポート全文の方のコラムですが、

展望レポート全文
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2407b.pdf

(BOX1)2024 年春季労使交渉の振り返り
(BOX2)サービス価格の動向:「期初の値上げ」の広がり

4月展望全文
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404b.pdf

(BOX1)個人消費の現状と先行き
(BOX2)2024 年春季労使交渉
(BOX3)賃金・物価の相互連関:人件費上昇を販売価格に転嫁する動きの広がり
(BOX4)「物価の基調」の捉え方
(BOX5)金利面からみた金融緩和度合いの評価

前回対比エライあっさり味になっている上に、前回はああでもないこうでもないといろんな話をしているのに対して、今回は「物価が持続的に上がってきていますなあ」というのの傍証になる話を2本というシンプル設計にしまして、メッセージが明確になっていますね、というのが違うところです。

まあこの辺に関してはやはり金融政策のステージの変化に伴い、いろいろと変なハトハトチキンをしなくて済むようになった、ということが大きいのかと思うのですが、問題はこのあと内田副総裁がハイパー腰砕けになっていることでして、まあ足元暴落分も戻ったことだしむしろ円安の方が気になる今日この頃ですので、23日でしたっけ、国会招致の方では植田さん変にハトハトしないで進んでいただきたい、と思って止みません。


ということで夏休みも終わってるんじゃないかというツッコミの中、夏休み虫干し企画でございました(汗)






2024/08/16

お題「2QGDP個人消費堅調でしたね/展望レポートハイライトがなんかまともな作品に戻っている(驚)」

ほうほうほう
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-15/SI9F5YDWLU6800
円が対ドルで1%超える下落、一時149円台前半−米経済指標に反応
George Lei
2024年8月15日 21:47 JST 更新日時 2024年8月15日 23:08 JST

『7月の米小売売上高は前月比1%増。市場予想は0.4%増だった。物価高と借り入れコストの高止まりにもかかわらず、個人消費が底堅さを維持していることを示唆した。先週の米新規失業保険申請件数は2週連続で減少。最近の雇用減速にもかかわらず、7月上旬以来の低水準だった。』

『米国債市場では利回りが上昇。米経済指標が堅調な内容となり、年内の積極的な利下げ観測が後退した。金融政策に敏感な2年債利回りは一時14ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の4.09%。』(上記URL先より)

150円に乗っかってくると素敵な展開が発生しそうでワクワクテカテカ

〇なんだ個人消費堅調じゃないですかヤダー(4-6月期GDP)

ゆうてアタクシは何とかスト様ほどの知能を持ち合わせておりませんので、数字の内容を詳しくどうのこうのというのは知らんがなとしか申し上げようがないですが。

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/YHFBC5CNMBKULGC5RKFLVLRUVE-2024-08-15/
GDP4─6月期は2期ぶりプラス、年率3.1%増 車の生産回復などで
By 杉山健太郎
2024年8月15日午前 10:33 GMT+9

『GDPの過半を占める個人消費は前期比1.0%増と、5四半期ぶりのプラス。自動車に加え、衣服や外食などが増加に寄与した。個人消費とともに内需の柱となる企業の設備投資も同0.9%増と、2四半期ぶりのプラスとなった。』(上記URL先より)

ということでござんして、「消費が弱いから利上げしにくいんでネーノ」っての今回の利上げ前の時に結構指摘されていたりしましたけど、なんだ堅調じゃん良かったですね(まあそもそも論としてGDPの個人消費本当にこれでいいのか説はややあるのですがそれはさておき)という話でして、こうなって来ますと23日の国会招致とかでも植田さん堂々と「ご覧の通り経済は底堅く推移しております」って話ができますよね、とは思うので益々結構な結果でございましたな。

まあ政治日程からしてどっからどう見ても9月10月の利上げというのは(円安アゲインで160円になっていない限り)無理筋に見えますが(個人の感想です)、じゃあその後もできないのか、という話になりますと、これはまあ懸念されていた個人消費も存外底堅いということになれば、利上げをするときにつけられるいちゃもんの一大要素「〇〇が弱いのに何で利上げするんだ」が外れることになります(なお本来的に言えば「オントラックであれば政策金利の調整=利上げ」なのでただのマドルスルーであれば利上げの障害にはならないのですけど)ので、これはますます12月1月って逝けるんでネーノとは思った次第でありますがどうでしょうかね。


〇前回との継続性がない開示文書とか悪態をついてたら今回は前回との比較に意味があるポンチ絵でしたwwwwwww

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202407.htm
展望レポート・ハイライト(2024年7月)
経済・物価情勢の展望

過去の開示文書(笑)はこちら
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202404.htm(4月)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202401.htm(1月)

最初のポンチ絵ですが、

『日本経済は成長を続ける』(今回)
『日本経済は成長を続ける』(4月)
『日本経済は緩やかな回復を続ける』(1月)

ご案内かとは存じますが「成長」は潜在成長率(推計)よりも高成長の場合で方向が上向きの時に使いまして、「回復」は潜在成長率以下の場合で上向きの場合に使います。

『日本経済は、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、金融面からの後押しなどもあって、潜在成長率を上回る成長を続けます。』(今回)
『日本経済は、海外経済が緩やかに成長するもとで、金融面からの後押しなどもあって、潜在成長率を上回る成長を続けます。』(4月)
『日本経済は、海外経済の回復の鈍さにより下押しされますが、消費の増加などに支えられて、緩やかな回復を続けていきます。』(1月)

ということで展望の鏡が前回とほぼ同じだったのですからまあ同じだな、とは思うのですが、実はこの「金融面からの後押しなどもあって」というのが中々の謎文言でして、4月展望の時には金融政策運営の部分で例の悪名が高かった文言「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」が今後の金融政策運営にかかわる部分に記載されていた訳ですが、今回ってその文言削除しているんですよね。

とはいえ声明文の方には「政策金利の変更後も、実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持されるため、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えている。」とありますし、そらまあ現実問題として円安大爆発とか驚異の物価一段高でもしない限りにおいて、向こう1年とかのスパンで政策金利が中立水準に届く気はしないので、そういう意味では「金融面からの後押し」があるのはその通りなんですけど、「物価目標を達成する見通しになっている、あとは確度の問題」という話が後段にある中で、「金融面からの後押し」ってのいつまでするんですか、というのがあって、これが目先の話ならそらまあ今急に政策金利が中立水準になりはしないけど、2026年度までというタイムスパンで考えた場合、ちょっとこの表現も次回以降の展望で考えた方がエエンチャウノという気はします。

でもってこのポンチ絵ですが、前回は2026年度に向けて階段を上がっていくという姿だったのですが、今回は丘をウォーキングでホイホイと上がっていくという姿になっておりますので、これはどう見ても前回対比で自信ニキ、ということになっていると思いますな。


次のポンチ絵は物価です。

『物価は来年度以降2%程度で推移する』(今回)
『物価は来年度以降2%程度で推移する』(4月)
『物価のトレンドは2%目標に向けて徐々に高まる』(1月)

4月とは同じなんで今回から、という訳ではないのですが、物価のトレンドが徐々に上がる、というようなイカサマ臭い説明から、マイナス金利解除によって詭弁を弄する必要が少しだけ減ったので、前回からは「今の物価はこれから2%に向かって下がります」というポンチ絵に進化(?)しまして、前回は単純に「今はちょっと上にいるけど今後2%に下がります」って表示だったのですが、今回はその物価の軌跡が「トラックコースを走っている陸上ランナー」になっているのがクソワロタというお話でして、「物価見通しはオントラックで推移しています」という説明に重ねた絵じゃんということでこれは笑いました。

説明文の方ですが、

『消費者物価の前年比は、今年度に2%台半ばとなったあと、来年度・再来年度は概ね2%程度で推移します。この間、一時的な変動を取り除いた消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まったあと、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移します。』(今回)

『消費者物価の前年比は、今年度に2%台後半となったあと、来年度・再来年度は概ね2%程度で推移します。この間、一時的な変動を取り除いた消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まったあと、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移します。』(4月)

『消費者物価の基調的な上昇率は、2%の「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていきます。こうしたシナリオが実現する可能性は、引き続き、少しずつ高まっています。』(1月)

これを見ればわかると思うのですが、本来4月の展望レポートって「物価目標は今後達成するでしょう、あとは確信度合いの問題なので、オントラックで推移していると確認したら徐々に(将来一気に調整したくないから)政策金利を調整しますよ」って言っていたし、そういう文書だったはずなのですが、例の「当面緩和的な金融環境が続く」という文言だったり、会見での植田総裁のハトハトチキン発言などで台無しにしていた、という事は言える訳なのですが、展望だして1週間でドテンひっくり返す形になった内田副総裁金懇から今後どういうコミュニケーションをしてくるのかは楽しみですな。


3つ目のポンチ絵ですが、

『日本経済・物価を巡る不確実性は高い』(今回)
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い』(4月)
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い』(1月)

というお題目は同じ、ポンチ絵は1月から4月の間に「人が不確実性要因を考えて???となっている」から「スライドに投影されている不確実要因についてセミナーかなんかで話を聞いている」ということで、なんとなく身近じゃなくしました、というのがありますが、4月から7月にかけては同じポンチ絵になっております。

『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(今回)

『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(4月)

『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(1月)

この不確実性要因に関しては文言自体は同じです。


でもって4つ目のポンチ絵。

『2%目標のもとで金融政策を運営していく』(今回)
『2%目標のもとで金融政策を運営していく』(4月)
『強力な金融緩和を継続する』(1月)

1月はまだマイナス金利とYCCやっていたので文言が違いますが、1月に謎としか言いようのない変なイラストになったと思ったら、4月は日銀本館のイラストと2%という旗、という益々わけのわからんイラストになりましたが、今回は少しまた説明チックな絵になりましたね。

でまあ絵の話の前に説明文見ますけど、

『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。』(今回)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していきます。』(4月)

『日本銀行は、粘り強く金融緩和を継続することで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していきます。』(1月)

1月はさておきまして、4月のポンチ絵は何が何だかわけわからない絵に加えて説明文の方もお前は何を言ってるんだという感じでいいかんじで何か言っているようで何も言ってない文章になっている(意味があるとすれば従来と違ってコンディショナルに政策運営しますと書き換えた、ってところですね)のでして、展望レポート基本的見解には書かれていたもののこっちのポンチ絵ではスルーされていた「見通し通りに推移すれば利上げ」というのを今回のポンチ絵では明確に記載した、というのが大いなる変更点になります。

でもってポンチ絵ですけれども、前回のまるで何の意味もないポンチ絵から一転して、なんかいろんなものを見ながら計器のつまみ(というには大きいですけど)を調整しようとしている人たちの巻、という面白イラストになっていまして、しかもその計器の調整でゼロから少し調整しております、ってな絵になっているのはチャーミング。

でですね、計器の調整をするために見ているモニターに映っている一つ目のが、「買い物をしている人とその上にグラフっぽいのがあって2%って数字がある」という図なのですが、この物価推移らしきものが現状では2%を上回っていて、それが徐々に2%に向けて下がる、という図になっているのは芸が細かい。

これはですね、アタクシが勝手に妄想しているだけかもしれませんけれども、先般の内田副総裁の金懇でも「物価が高止まりしていること」に対するマイナス面についての説明があったわけですけれども、従来の「物価上昇第一の力、第二の力」の説明ではなく、そもそも論として物価が長期に高止まりするのイクナイ、という極めて当たり前の話に日銀が回帰してるんジャマイカということを示しています。

さらに芸が細かいのはこの1つ目のモニターで買い物をしている図が見るからにスーパーのカートを押しているお姉さん、って図になっておりまして、これすなわち輸入価格上昇に伴う物価上昇も気にしていますよ、と言わんばかりの絵になっていて、なんか急に変なもんでも食ったのかという位に細かいニュアンスが読み取れますね。

そして2つ目のモニターに映っているのは「飛行機が飛んでてその下に一回落ち込んだ後に上向きトレンドになってきている線」というのが上半分にあるわけでして、これはどう見てもインバウンド需要です本当にありがとうございました、ということですのでインバウンドまで含めれば消費は強いんですよとでも言いたいのかね、と思ってしまいました。下半分のイラストは工場生産の絵みたいになっているので、これは生産を意味しているのかなとも思いました。

・・・・とまあそういうわけで、何でしょう今回はそもそも前回との継続性があるわ、絵にいろんなニュアンスが込められているわと、ハイライト作成担当の中の人が急に覚醒でもしたのか、ついこの前までのもはや何を言っているのかが無茶苦茶だわ前回との絵の継続性が全く無いわという無茶苦茶プレイから変化した訳です。

これをどう解釈するか、と30秒ほど考えたわけですが、そもそも論としてこのポンチ絵で@「2%」が近かったはずが突如急に遠くなる、という怪奇現象が発生したのが2023年4月展望→7月展望のところ、A物価上振れについてマイナス金利YCC解除をした前回から急にポンチ絵に織り込むようになった、という点を勘案しますと、植田さん就任後のハトハトモードの時っていうのは説明に大いなる無理があった、すなわち本来マイナス金利の解除やその後の政策修正などを行って然るべきであった時期に延々と黒田緩和を引っ張ってしまったので、展望レポートハイライトでの絵の説明が無理矢理観満載のものになったのだが、マイナス金利YCCを解除して、今回利上げも行った時点になって、やっと説明で変な無理をしなくて済んで、ということなのではないかと思いますし、そう考えるとウッチーの先般のハト転換はなんかその場しのぎの偽装ハト転なんじゃネーノ、とも思ったりします。

今朝は時間の関係上この辺で勘弁。







2024/08/15

お題「岸田さん退陣とな/3M短国金利が上昇のようで/今更ですが展望レポートから」

ほえー
https://www.agrinews.co.jp/news/index/252235
2024年8月14日
[農家の特報班]積み上がるウズラ卵在庫 事故で需要減


〇なんと首相退陣ときましたかそうですかそうですか

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240815/k10014549291000.html
【解説】岸田首相 退陣へ 自民総裁選どうなる?動き本格化へ
2024年8月15日 4時59分

結局安部ちゃんの後始末に追いまくられた挙句に安倍派の捲いた政治と金問題で退任とかもうねという感じですが、ちらっとネット見てたら早速岸田さんを後ろから追い打ちコメントしている自民党の某馬鹿議員とかいてアホなのかと思いました。どこの神奈川県選出参院議員とか言いませんけれどもwwwww

・・・・・まあ何ですな、後任誰になるのかとか知らんけど、アベノミクスとかリフレとかいうような妄言を吐く人は勘弁して欲しいのと、何なら安部ちゃんの後始末一切しないで逃げ切りを図っている黒田とかいうゴミクズカスダニを引っ張りだしてコンコルド広場で(以下の記述は自主規制されました)。

まあどうせ次の政権は選挙乗り切るための目くらまし政権の意味合いが強くならざるを得ないので、ワシ的にはこんなところで進次郎とかの貴重なカードを切ってしまうの勿体ないということでゲル選挙管理内閣で十分じゃ無かろうかと思うのですが、当然ながらそこにはポジトーも入っておるわけでwww

こんなんあったんですけどね
https://jp.reuters.com/world/japan/PAPA7GTTANNWNE4662CT36T6FI-2024-08-07/
インタビュー:金利ある世界の実現、物価上昇抑制や構造改革に資する=石破元自民幹事長
By 竹本能文, 山崎牧子
2024年8月7日午前 9:09 GMT+9

『[東京 7日 ロイター] - 自民党の石破茂元幹事長は、ロイターとのインタビューで、徐々に金利のある世界を実現することが物価上昇の抑制や構造改革に資すると述べ、日銀の金融政策運営を評価した。適正な為替水準については「常識的に110円−140円と言われている」としたが、日銀のさらなる利上げの是非に関しては明言を避けた。』(上記URL先より、以下同様)

と来ましたんですが、これ記事見ても分かりますが記事の最後の方に、

『*インタビューは6日に実施しました。』

ってありますように、株価が爆下げする中で以下の内容を堂々とお話になっている辺り、閉会中審査とか息巻いていた馬鹿議員とは一線を画していて大変に素晴らしいのですが、

『7月末の日銀による追加利上げとその後の世界的な株価急落によって、市場関係者の一部では日銀の利上げ判断に批判も出ているが、石破氏は「金融緩和という基本的政策を変えないなかで徐々に金利のある世界を実現していくのは正しい政策だ」と評価。今は株価下落など負の側面だけが強調されるが、輸入物価の引き下げにつながる」との考えを示した。』

どうですかこの発言。まあ気楽な立場で言ってるから、という説は無いわけでもないのですが、8月6日にこれを堂々と言う(しかもメディアに出るの分かっているインタビューで)ってのは大変に結構だと思うのですけどね。

目先の株価で大騒ぎして国会招致だとか抜かしてる馬鹿に関してもコメントがあって、

『株安を受け与野党は国会の閉会中審査を開催し、日銀の植田和男総裁を参考人として呼ぶ方針だが、石破氏は「少しでも金利のある世界というものに戻していくことによって得られるメリットもあり、それが日本の経済の構造そのものを転換することに繋がるものだということを、国会の場を通じて多くの国民に納得してもらえるように努めていただきたい」と述べた。』

(;∀;)イイハナシダナー

『適正な為替水準については「そんなことはわからないし、政治の立場で言えない」としつつ、「常識的に110−140円が適正な水準と言われている」とした。一時161円台まで進んだ円安に関しては「GDPに占める輸出比率は日本は18%に過ぎず、日本経済は内需主導」との認識を示し、「円安で企業が史上最高の利益を上げているのは経営者にとってはうれしいことかもしれないが、多くの労働者にとっては決して幸せではない」と語った。』

とまあそんな感じでして、例によって国会議員の推薦人集めで苦労するんでしょうけれども(進次郎がゲルを弾除けにしてゲルの後とか後の後とかを狙うとかいう判断になると滅茶苦茶おもろいのだが)まあ金融市場に関する話はゲルが一番マシっぽいので希望はしたいが期待はあんまりしていない(立候補に持ち込めるかが最大のネックなので)。


しかしまあ何ですな、ここもとバイデンさんも結局再選出馬しなかったし、フランスは大統領は変わらんけど総選挙で勢力図変わってしまったし、英国は総選挙で保守党大敗北しちゃうし、ということで、普通選挙やってる民主主義国家においてインフレ下における政権の維持ってのは中々大変である、というインプリケーションもあるんじゃなかろうか、と思ってしまう今日この頃でもございました(個人の感想です)。


〇おや短国の引値が・・・・・・・・

いつもの売参を見ながら
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

火曜日の引け(=14日発表日付)のカレント3M周りの引けってこんな感じだったのですよ。

国庫短期証券1247 2024/11/05 平均値単利 0.095
国庫短期証券1229 2024/11/11 平均値単利 0.095
国庫短期証券1249 2024/11/11 平均値単利 0.090
国庫短期証券1250 2024/11/18 平均値単利 0.095

1249が先週金曜に入札があって足切り10bp割れとかいうアイヤーな結果だったカレント3Mで1250は
今週入札のある新発WIですな。

昨日の引け

国庫短期証券1247 2024/11/05 平均値単利 0.119
国庫短期証券1229 2024/11/11 平均値単利 0.120
国庫短期証券1249 2024/11/11 平均値単利 0.120
国庫短期証券1250 2024/11/18 平均値単利 0.120

・・・・まあ水準は相変わらずクッソ低いのですけれども、10bp割れとかいう水準ではなくなっておられますなこれはまた。

そもそも論として東京レポレート見れば
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

       O/N T/N  1w  2w   3w  1m  3m
2024/8/1 0.166 0.200 0.186 0.186 0.187 0.189 0.202
2024/8/2 0.220 0.228 0.192 0.192 0.191 0.192 0.203
2024/8/5 0.051 0.147 0.162 0.171 0.179 0.184 0.201
2024/8/6 0.046 0.115 0.154 0.165 0.172 0.175 0.200
2024/8/7 0.213 0.151 0.154 0.164 0.172 0.176 0.201
2024/8/8 0.216 0.174 0.162 0.167 0.172 0.177 0.201
2024/8/9 0.182 0.233 0.175 0.172 0.175 0.178 0.201
2024/8/13 0.229 0.224 0.177 0.176 0.177 0.179 0.200
2024/8/14 0.224 0.230 0.180 0.181 0.179 0.180 0.200

ということで、TKRRベースでみた場合って週前半の翌日物は低めで、新発発行日の前日に当たる金曜日のところで翌日物が上がる、というパティーンになっているのですが、今週は週初になってもサガランチ会長になっているので、新発が捌けていないのか別の理由なのかは知らんけど、GCが高止まりしている中で今週って1日営業日少ないので、もう明日には3M(1250回)のおかわりが飛んでくるという事で、さすがに10割れ水準で新発の入札をするのは勘弁島倉千代子ということで調整をしてきたということですかねえ、さっぱり分からんのだが。

まあとにかく短国は謎(でも何でもなくてモノとしての需要が金利商品としての需要を笑い飛ばす勢いで強いのですが)にクソ強い状態が続いておりまして、足元金利とのスプレッドも政策金利引き上げの前に比べて大きくなった(ベースレートの水準が10→25になって金利の変動する回廊が大きくなったんだから今の市場状況ではある意味当たり前とはいえ)ところでしたので、短国のモノとしてのアホみたいな需要の強さが一服した結果としてこういう水準(ちなみに売参見ればわかりますが、短国は手前の引けを10bpに置いているのに、3Mカレントゾーンは10bp割れというかなり豪快な状況が続いておりました)になりますと、もしかしてアホみたいに強かった需要に少しは変化が起きているのかとか期待してしまいます。

なお短国ちゃんというのは何せターンオーバーが早いので、モノとして押さえても3Mで償還来ちゃうからまた押さえに行かないといけなくて、実はまあそんなに状況が劇的に変わってくれるような期待はしていないという説は大有りなんですけどねorzorz


〇利上げからこの方アホみたいにいろんなことがあって結局全然できていなかった件を徐々に成敗します

ショパンの事情(7割くらいはワイの体力の問題)によってそもそ7月FOMCに関しても碌すっぽフォローしていないのですが、こういうのは1回飛ばすと後で苦労するので今週末こそはちょっと成敗をしないと(なおワイの体力の問題は継続しておるのですサーセン)いけないとさすがに思う今日この頃ですが。

ということでクッソ昔の話になりますし、何ならそろそろ展望レポートハイライトとかいう「継続性のない開示文書」という民間がやるとすかさずどこぞかの方面からお叱りを食らいそうだというのに、日銀が継続性のない開示ポンチ絵を出しても無罪放免という民間人として極めて釈然としない物件が出てきそうなのでせめて展望の鏡だけでも。

ということで今更ジローですが展望の鏡を改めて確認しておきます。

7月基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2407a.pdf

4月基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404a.pdf

1ポツ目

『・先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回7月)

『・先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかに成長していくもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(前回4月)

この「先行き見通しは今回別に引き上げたわけではない」というのは明らかに意図的にやっておる訳でして、「見通し通りに推移すれば徐々に政策金利の調整を行う」という4月展望で書いていたこと(だというのに会見で台無しにしてしまって円安をぶっ飛ばしてしまったのはご案内の通り)の通りな訳です。

よって、「見通しの引き上げが無くても今後も政策金利の修正ができる」となっているので、今回の場合は展望レポート会合のタイミングで確認をして上振れリスクも高まったということで政策修正をしましたが、7月会合後の会見での説明にもありましたように「ある程度データが揃ってオントラックが確認出来たら」政策金利の修正は可能、という建付けになっているので、別に展望会合ではなくても次回の利上げは可能という話になるんですなこれがまた。

まあウッチーが(後でひっくり返すことのできるような詭弁を駆使はしているけどそうは言っても事実上)この1週間後にベタ降りしてしまったので次の調整に向けてはまた情報発信を1からやり直さないといけなくなっている(しかも岸田さん退陣確定で官邸にゴマをすったつもりが肝心の官邸がなくなってしまうという辺りに日銀の日銀たる間の悪さが出ていて実にほほえましいですね!!!)のはそれはそうなので、まー12月1月とかが良いとこ(為替次第の面はあるけど)かなって感じになるんですかね、知らんけど。


2ポツ目

『・物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台半ばとなったあと、2025 年度および2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。』(今回7月)

『・物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台後半となったあと、2025 年度および2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。』(前回4月)

そもそも論としてこの見通しなら「物価目標は達成」なのですが、見通しが当たるかどうかはワカランチ会長、ということで政策修正をモタモタとやっている、という建付けですね、いまさら言うまでもないのですが念のため。

『既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025 年度にかけては、政府による施策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(今回7月)

『既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025 年度にかけては、このところの原油価格上昇の影響や政府による経済対策の反動が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(前回4月)

原油価格上昇の影響や、が抜けただけで言ってることは基本同じですぬー。


『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(今回7月)

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(前回4月)

基調的な物価(って何なのという説があるのですがそれはさておきまして)に関しても言ってることは同じでして、「見通しオントラック」であれば政策金利の調整はできますよというお話な訳です。


3ポツ目

『・前回の見通しと比べると、成長率については、2024 年度は、前年度の統計改定の影響等から、幾分下振れている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2024 年度は、政府の施策がエネルギー価格を押し下げることを主因に下振れている一方、2025 年度は、こうした施策による押し下げの反動から、幾分上振れている。』(今回7月)

『・2025 年度までの見通しを前回の見通しと比べると、成長率については、2023 年度と2024 年度は、個人消費を中心に下振れているが、2025 年度は概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2024 年度が上振れているが、2025 年度は概ね不変である。』(前回4月)

ゆうてこれまた基本的には変わっていないのでした。


4ポツ目

『・リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(今回7月)

『・リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(前回4月)

と4ポツ目もここまでは同じですが皆様既にご案内の通りで、

『とくに、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。』(今回7月)

というのがぶっこまれていて、「企業の賃金・価格設定行動が積極化する」という現状認識と、「為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている」を加えているので、今回は「見通しオントラック+円安進行によるリスク認識の変化」によって政策金利の調整をしました、という触れ込みになるわけですな。

そうなりますと、ウッチーがああやってベタ降りした(ような見せ方の講演を行った)のですが、ウッチーベタ降りした結果として円安再燃になると結局リスク認識がまた物価の望ましくない上昇のリスク、となるので政策金利の調整待ったなし、という話になりますが、それをやっておりますといやお前ら利上げしたの何だったのって話にもなるわけで、なんであそこまでベタ降りしたのかというのが訳ワカメですが、面倒になると皆で日銀のせいにするムーブが湧きおこって来たので自衛したら過剰防衛になった、ってところなんでしょうけど、防衛力の行使も節度を持つ必要がありますなwwwww


5ポツ目

『・リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2025 年度は上振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、2024 年度と 2025 年度は上振れリスクの方が大きい。』(今回7月)

『・リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2024 年度以降、概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2024 年度は上振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。』(前回4月)

ということで、リスクバランスが経済も物価も上振れになるとかいうことで政策金利の調整をしましたよ、という形になっていますので、「見通しがオントラックなのを確認する」とかいうこれまた「お気持ち」の世界で政策金利の調整は可能、という建付けを崩していませんし、リスク上振れの認識が続いたらなおのこと政策金利の調整待ったなし、となります。

でもってこの「リスク上振れの認識」が先週の相場変動を受けて変化した、というのが内田副総裁の説明になっているのですから、結局のところ内田副総裁の説明もベタ降りのようには見えますし、本人それを明らかに意識しているでしょとは思いますが、仕掛け上はベタ降りしたように見せて急に息を吹き返すことは可能になっている、というのが諸葛孔明の罠といったところかと思います。

#てな感じでちょいちょい成敗してまいりますすいませんすいません





2024/08/14

お題「23日に閉会中審査ですか/内田副総裁函館金懇会見(その2)」

ほほう
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-13/SI5PH3DWLU6800
米PPI、市場予想を下回る伸び−サービス価格が今年初の低下
Matthew Boesler
2024年8月13日 21:35 JST 更新日時 2024年8月13日 23:26 JST


〇23日に閉会中審査ですかそうですか(どうでもいいがメモ)

このまとめ方はなかなか分かりやすいw

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240813/k10014547901000.html
衆院の財務金融委 8月23日閉会中審査開催 株価不安定な値動き
2024年8月13日 19時11分

『株価の不安定な値動きが続く中、衆議院の財務金融委員会は、今月23日に鈴木財務大臣や日銀の植田総裁に出席を求めて閉会中審査を開くことで、与野党が合意しました。』(上記URL先より、以下同様)

円安是正に関しては知らんぷりですね、と思ったら、

『東京株式市場で不安定な値動きが続く中、衆議院財務金融委員会は13日、理事懇談会を開き、国会で政府・日銀に説明を求める必要があるとして日程を協議しました。そして、今月23日の午前に鈴木財務大臣や日銀の植田総裁に出席を求めて閉会中審査を開くことで、与野党が合意しました。』

なるほど株価が大きく動いた(下がった)から説明を求めるんですかそうですかというところですが、株価ってだいぶ戻って(今朝も夜間の先物は戻っているように見えますな)おられるようで、23日になったらあっさり元に戻って居たら笑えるわ。

というかですね、そもそも日銀の金融緩和修正ペースが無駄に遅いから、その結果円安進行とか株高が進んでポジションが積みあがっていた訳で、その前の投機ポジションの積み上がりを発生させた方に対してモノ申すんでしたら評価して差し上げますが、もうこの記事のように「株が下がったから説明しろ」といっている時点で23日の閉会中審査は馬鹿の見本市が開催されるのが火を見るより明らかというが悲しいとしか申し上げようがありませんな。


さてここでシカゴ連銀グールズビー総裁のお言葉を見てみましょう。
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/JGNQNLBCNVMM7J6AGNFYIHPYJU-2024-08-08/
FRB、政治や株価ではなく経済指標に対応=シカゴ連銀総裁
By ロイター編集
2024年8月9日午前 7:32 GMT+9

先週木曜日のご発言なのですが、

『[8日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のグールスビー総裁は8日、米連邦準備理事会(FRB)の仕事は株式市場の急落や政治的事象に対応することではないとの見解を改めて示した。』

『同総裁はフォックス・ニュースのインタビューに応じ、このところの株価急落について「われわれは株式市場に対応する仕事をしているわけではない。われわれの仕事は雇用の最大化と物価の安定だ」と述べた。』

『また「FRBは選挙には関係はない」と明言し、FRBはどのような経済データが金利政策判断の動機となるかについて非常に明確にしてきたと指摘した。』(上記URL先より)

とまあそういうことでして、これどこからどう見ても内田副総裁および日銀に対して強烈なイヤミになっていますけれども、真面目な話日銀ってECBとかFRBから見たら何やってるんだあいつらって感じになってるんじゃないのと心配であります。


まあ何ですな、こうなったら23日に向けて円安が進行して株はまあこの辺からちょっと上がる位でも良いんですけど、ところでこの閉会中審査って何でしたっけ位の状態になって迎えて頂けると大変に間抜けなことになってよろしいんじゃないですかねえw


〇やっぱり内田副総裁会見の続きをば

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240808a.pdf
内田副総裁記者会見
――2024年8月7日(水)午後2時30分から約45分
於 函館市

・円安が是正されたので「金利パスが変わる」はさすがに話が飛躍してませんかねえ

4ページの質疑から参りますね。

『(問)(前半割愛)あと講演の中で、7 月 31 日に指摘されたその上振れのリスクが小さくなっているということですけれども、今の段階でその金利のパスに変化があったと考えてらっしゃるのか、その点について教えてください。』

というのに対する回答なのですが、

『(答)(前半割愛)そのうえで、円安修正、すみません為替自体はもちろん日々の動きにコメントすることは適切ではないと思いますし、いつも言っていることですが、為替相場はファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが重要だというふうに思います。そのうえで申し上げますが、見通しとの関係というご質問ですけど、』

からの、

『見通しとの関係ではですね、円安が修正されたことが、ある種懸念していた輸入物価(注)の上昇による上振れ、消費者物価の上振れリスクをその分だけ減らした、少なくしたということは事実だと思います。』

そもそもその対応で利上げしたんでしょ。

『ただ当然、為替は動いていくものですので、それ自体が経済・物価見通しあるいは物価のリスク、更には確度といったものをですね、どう変えていくのかは、まだ市場が動いている過程にあるわけですから、この段階で確定的なことは言いづらいということです。』

だったら利上げのパスは変わらないはずなのですが、

『現時点だけ、その変化だけをとらえれば、書いた通り、その分だけ上振れリスクは小さくなったと言えると思います。』

上振れリスクは小さくなったといってもそもそも見通し通りに推移すれば今後も政策金利の調整を行う、というスタンスだったはずなのに、

『もともと、これは前年比でみるか、流れでみるかによって違うのですけれども、流れでみると、ドルベースというか、契約通貨ベースも一緒に上がってるんですけど、少なくとも前年比でみる限りは、契約通貨ベースはほぼゼロですので、今 9.5%でしたっけ、ちょっと間違っているかもしれませんが、輸入物価が上がっているものは、専らこの間の円安が原因ということです。』

『その部分が修正されれば、その分だけ、そのリスクは減るというのは、これは計算上その通りですので、そういったことが起きたということもですね、当然ながら他の条件を一定とすれば、パスには影響するということになると思います。』

しねーよ何言ってんだよ、という話でして、これ円安の物価上振れリスクが高まったら利上げパスが早まる、というのはあっても、リスクが高まらないから利上げパスが遅くなる、というのは「見通し通りに経済物価情勢が推移すれば徐々に政策金利を修正していく」という金融政策運営方針で言ってることと違う話をしているんですよね内田さん。

まあいつもの黒田時代から続く「その場しのぎの屁理屈」な訳なのですが、さらに更問追撃が来まして、


『(問)講演の中で市場の変動の結果として、当然、金利のパスは変わってくるということを言及されていますけれども、今回の変動を受けて、7 月末に描いていたパスに比べて、今回は変動を受けて、今後のあり方のパスというのは比較的ゆっくりになっていくというとらえ方でよろしいのかということが一点と、あとビハインド・ザ・カーブに陥ることは少ないでしょうということを書かれているのですが、以前の総裁の会見では金利の引き上げが遅れると、後に大きな幅で引き上げが強いられる可能性があってということで、ビハインド・ザ・カーブに懸念を示されているかと思うのですけど、その認識の違いについてどのように感じているか。』

ですよねー。言ってることが1週間でこんなにコロッと変わるとか天変地異でもあったのかと。

まあこの回答も流れるような内田副総裁の屁理屈を鑑賞できますのでどうぞ。

『(答)前者についてはですね、書いていることは割と正確に書いたつもりなのですけれども、変動そのものというよりは変動の結果として、見通し、上下のリスク、それから確度、こういったものが変われば、それは当たり前のことですけれども、金利のパスが変わってくるということです。』

といっておいて、

『現時点でですね、これを評価することは難しいです。』

難しいのに何で決め打ちしたんだよオイコラ。

『難しいという意味は、これは最初から二番目の質問にお答えした通りですが、現にまだ不安定な状況にあるわけです。先ほどの為替の質問もそうですし、株価の質問もそうですけれども、株価も為替相場も不安定な状態にあるので、これが落ち着いていく中でですね、いろんな評価をしていかなければいけない。』

じゃあ数日の値動きでいきなり断定調で利上げを滅茶苦茶先送りするような言い方をなんでするのかと言いますと、

『逆にそういう不安定な状況であるときには、当然リスクを考えないといけないわけです。』

どうよこの屁理屈。だったら普通は「このような不安定な状況が続いた場合には経済物価に対する下押しリスクも考慮していく必要が起こりえるので、状況を注視していきたい」位の話をするはずなのに、不安定な状況が長々と続く前提みたいな決め打ち発言をしている訳ですな。

『そのことが二番目の質問につながってくるわけであって、そういう状況でも、ちょっと例えが良くないかもしれませんけど、今回の欧米のようなケースだったら、これは利上げせざるを得ないのですね、危なくても。1 回 75[bps]上げたり、毎回75[bps]上げてるようなケースだと、これはやらないといけないのですけど、われわれそういう状況には全くないわけです。つまり時期を選べるわけですね。』

円安上振れリスクで利上げしておいて「時期を選べる」とか何言ってるんだ。

『ですから総裁の申し上げていることと基本的に同じことを言っているのですけれども、一定のペースで上げていかないと、ビハインド・ザ・カーブになるわけではないので、』

一定のペースって1年に0.25%でも一定のペースだがそれで本当にビハインドにならんとでもお思いなのでしょうかねえ。

『当然ですけど、待てば後の方が重たくなるのはそれはそうだけれども、それがすごく急速な利上げにつながってしまうようなパスを想定されてる方は、もともと市場にはおられないと思うんですね。』

いやいやいや、あの調子でハトハト音頭踊ってて円安がじゃんじゃん進行したらエライことになっていただろうよ。

『リスクがあることですから、必ずそうなるわけじゃないですけど。そういうことなので、ある意味緩やかなパスで利上げをしていくことができる状態っていうのは、時期を選べるので、いろんな状況によって、これは一つのアドバンテージなわけです。』

などと言ってクソ粘りしていたら円安進行がやばいことになって今回の利上げに至った、というのをすっかりとぼけているのが内田屁理屈クオリティ。

『そういう意味でですね、条件が満たされていくのであれば、ゆっくりとではあるのですけど、上げていく必要があるということをですね、総裁会見では申し上げたわけであり、全く同じ論理の中で、不安定な状況のときに利上げをするということはないということは申し上げられるわけです。』

不安定なら利上げしない、では不安定じゃなければ利上げできるというこの逃げを打っている訳でして、これ結局この後になって円安進行再燃とかすると、内田さん「あの時点ではこのような考えでしたが状況が変わりましたので判断も変わります」と堂々とスタンスを翻してくるのはほぼ必定って感じでしょ。

『当然その不安定な状況がいつ解消するか分かりませんし、不安定な状況がもう解消しましたっていうふうに 100%晴れるということもないわけですから、そのリスクを感じながら政策運営をしていかなければいけない、そういうことを考えれば、何度も言いますが私の個人としてはですね、利上げについて慎重に考えるべき要素が生じたというふうに言わざるを得ないと思っているということです。』

まあこうやって市場に対してハトハト音頭を踊っている訳ですが、不安定なのが100%晴れるとかそういう話があるかよアホウというところで、昨年の氷見野副総裁の金懇会見にあった、『ただ、いろんなものをみていくといったときに、全部青信号が灯るということも実際の経済ではないわけですし、全部赤信号という状態もないわけで、実際には経済の動きの中でいろんなシグナルが混じって観察される中で、どこかで判断していく必要があるということだというふうに思います。』(2023年12月6日氷見野副総裁大分金懇における記者会見より)というのはどこに逝ったんだという話で、内田さんこれ「個人としては」で逃げを打っておいてやたら強いメッセージを出しているのってもうねという感じですな。


・そもそも見通し通りに推移しているんなら政策金利の調整が続くのではないかというツッコミ

ちょっと先(9ページ)になりますが、

『(問)繰り返しで恐縮なのですが、市場変動が下振れリスクになることは明白ということなのですけれども、そのうえで確認させて頂きたいのは、そうした市場変動を受けても、経済・物価が日銀の見通しに沿っているという判断になれば、今後も淡々と利上げを進めていく方針に、これ自体は変わりはないということでよろしいのか。つまり、市場が大きく変動することをもって利上げを躊躇するということにならないということで、確認ですが、よろしいのかお願いします。』

さきほどまあ上記のように市場が不安定なら利上げしないだの円安が是正されたからリスクがさがっただの小理屈を捏ねていた訳ですが、そもそも論で質問していてこれは大変に良い質問でございますな。さてどう回答するのでしょうかといえば、

『(答)これは、講演の方が正確に書いているので、その通りに言いたいと思いますけど、市場の変動の結果として、見通し、上下のリスク、見通しの確度が変われば、パスは変わってくるということですので、当然そこに影響があります。それが一つです。』

市場変動って基本的に変な金融ショックでもあれば別ですけど、基本的に経済情勢に対応して市場変動するんですから、そもそも論として見通しとかリスクが変わらないのに市場が引っ張って状況を変えるってのは金融面単独で何かが起きる、ということはむしろ金融緩和によるバブル発生とその崩壊みたいなことでもない限り仰せのような話にはならんじゃろ、という事なんですよね。

まあこれその場で聞いてて瞬間的には内田さんのこの答えで「ほうほう」って思ってしまいそうですけれども、よくよく考えてみたらそんな訳でこれも屁理屈オブ屁理屈。

『もう一つ、そのうえでなんですけれども、「そのうえで」と書いてないから読みづらいかもしれませんが、大きなパスはそれで決まる。そのうえで、わざわざ不安定な時期にやらなくてもいいくらい、ビハインド・ザ・カーブになるリスクは小さくて、緩やかなパスが想定、もともとされているのであると書いているわけであるので、』

「わざわざ不安定な時期にやらなくてもいい」と「不安定ならやらない」じゃあ全然意味が違うだろ、ということでこれ金懇のこの部分どうなっていたかといいますと、

『こうした市場の変動の結果として、見通しやその上下のリスク、見通しの確度が変われば、当然金利のパスは変わってきます。もともと、欧米の利上げプロセスとは異なり、わが国の場合、一定のペースで利上げをしないとビハインド・ザ・カーブに陥ってしまうような状況ではありません。したがって、金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはありません。』(同日におこなれた金懇挨拶より)

・・・・・・このテキストの書き方から今の説明みたいな留保条件モリモリの話になるかよ、というところでして、まあ完全にこれ内田さん二枚舌使っているのですが、まあしいて言えば確かにこの会見での説明通りの話です、と言い切ってしまえば「あ、そうですか」となるような日本語の書き方(なので英文テキストの方が誤魔化しが効きにくいので表現がどぎつくなっている)になっているのが屁理屈大王クオリティ。

『そういう意味で、今の答えは、正確に申し上げると、リスク、確度、もちろん見通し自体が変われば当然ですけど、そういったものに影響すれば変わるし、そこについて一定程度留保が残るとしても、わざわざ危ない時にやることはないという意味では、今申し上げた要素が確実に変わっていなくても、それは当然要素になり得るということです。』

どう見てもそういうニュアンスに取るのに無理がある金懇テキストでしたけどねえ・・・・・・・

『従って、条件が満たせばというのは、その条件を満たせばというのは何かっていうことを真剣に毎回議論しているわけであり、皆さんにご説明しているわけなので、当然ながら、「こうであればこうです」というふうに一言で答えられるくらいであればですね、それは決定会合であれだけ議論を重ねる意味はないわけだから、それについては、一言で答えるのは難しいけれど、あえてかたちを言えば、今言った、二つの要素が市場変動との関係ではあるということですね。』

一言で答えるのが難しい割には随分と金懇テキストの方では明快な決め打ちをしておりましたが何なんですかこの屁理屈は、という感じで、まあ立て板に水というか実にこう流暢な屁理屈展開に感心してしまうしかありません、マネしたくはないですがwwwww


・コミュニケーションについてさらに

『(問)(前半割愛)あともう一点がですね、今日もそうなのですけれども、政策変更やですね情報発信によってこのマーケットが大きく反応するっていうことが続いています。この状況は望ましいことではないと思ってるんですけれども、副総裁のお考えと、もしこれがやはり望ましくないのであれば、何か改善すべき点があるのかどうか、その辺りの考えをお願いします。』

これで自分たちの説明が不十分あるいはブレブレであるなどというのを死んでも認めないのが内田クオリティなのですが、じゃあどういう回答をするのか鑑賞してみましょう。

『(答)(前半割愛)マーケットの反応についてはですね、確かに大き過ぎる反応はよろしくないというふうに思いますし、私どももコミュニケーションには注意していかなければいけないというふうに思います。』

と言ってますが、

『重ねて言いますけれども、中央銀行のコミュニケーションは、いわゆる政策反応の考え方、政策反応関数を示すということと、これは大きく変わってはいけないので、基本的には分かりやすくするために排除というか、省略されてる部分はやっぱりあるので、その中でのニュアンスの違いはどうしても出てきます。』

これはなかなか斬新な説明で、どういうことかというのをアタクシなりに解釈しますと、「2%物価安定目標の達成」という大きなものは変わってないのだが、達成に至るメルクマールはコアCPIだったりコアコアCPIだったり賃金だったり賃金の持続的上昇だったり基調的物価とかいうものだったりサービス価格だったり、という事がコロコロと変わってゴールポストが動いているようにしか我々のような素人には見えないのですが、内田理論によればゴールポストは動いていなくて、単にわかりやすくするために省略している部分が状況に応じて変化しているだけである、というかなり強引な理論になっている訳ですな。

などと書いておりましたらちゃんと以下説明があるんですけどねw

『これは日本銀行に限らず出てきてしまいますけれども、大きな考え方はきちんと示していく必要があると思いますし、そこはこの間、ぶれてないというふうには思います。』

『ただそこに代入するというか、われわれがどう経済・物価をみているのか、それから市場がどうみているのかっていうところのですね、ギャップというのは常にこの間もありましたし、』

一応自分たちがゴールポストを自分に都合よくホイホイと動かしている、という自覚はあるようですねwwwwwwww

『今回のような大きな変動のときには、そこは大きく出てくるわけであって、そのことがですね、政策が読みにくいとかそういったことにつながっていくのだとすればですね、そこは更なる努力が必要だというふうに思います。』

って言ってるけどこれ理解しない市場のアホウが悪いと思ってるでしょwwww

『もう一つですね、そこがなかなかきちんと伝わらない理由っていうのが、先ほど申し上げたパスが緩いからっていう面はやっぱりあるんですね。つまり、時期を選べるっていうことはイコール、人によって、今回の方が、次回の方が、前の回の方がいいってことが選べるわけです。』

って言ってるんだが今回って「上振れリスク」を利上げの要素に入れている訳で、本当に利上げパスが緩いのかは実は議論の余地があるように思えます。

『また悪い例を申し上げて申し訳ないけど、アメリカが 75[bps]とか連続で上げている時に、次回上げるわけないということには絶対ならないわけですよ。50[bps]か 75[bps]かは分からないけど。』

『われわれのようなケースっていうのは、もっとずっと緩いペースで考えているので、今回絶対やらないとおかしいよねっていう話を市場の人がみんな納得するっていうことにはどうしてもならないんですよ。そういう意味で分かりにくいということはあります。』

と言って、

『ただ、逆に申し上げるとですね、そういう話なので、そのことによって大きく反応するほどのことでは本当はないんです。本当はと申し上げたのは、[反応は]あるんですけど、市場ですから当然あるのですが、今回のケースについても、ちょっと正確には覚えてないのですけど、10 月まで[の利上げ]だったら確か100%織り込まれていたわけであって、その違いなわけですよね。』

お前は何を言ってるんだという話で、これまでずっとハトハト音頭を踊っていて、3月のマイナス金利解除の前からずーっと「でも緩和的なのが続く」というのを延々と言って(まあその結果円安が加速したわけですが)いたのに対して、今回やっと「段階的な利上げ」の方向性を明確化した、というスタンスの変化(本来はマイナス金利解除の時点で変化していないといけなかったことなのですが)を出したから反応したのを完全に無視していますね。内田さんのことだから当然これ分かっててすっとぼけている訳でして、問題は単品の利上げではなくて、「今後もちゃんと政策の調整をしますよ」ってのが今まで有耶無耶(やるとは書いてはいるけど隙あらば総裁にハトハト音頭を躍らせて利上げ観測を盛り下げていた)にしていたのが変わったためであって7月か10月か、の話じゃないんですよね。

なので、

『ですから、そのことによってかたちが大きく変わるということは本来ないはずなんですけれども、』

といううのがそもそも詭弁で、

『われわれの政策反応関数を象徴するのではないかとか、いろいろなことがそこからプラスとして読み込まれていくということは、これ実際にはあるので、そういったところはですね、より丁寧にその部分を説明していくという努力は必要だなというふうに思っています。』

お前らの説明は丁寧なんじゃなくてブレブレだわ、と言ったところで内田副総裁の会見の鑑賞会は(時間も無くなって来たので)この辺で。




2024/08/13

お題「短国ェ・・・・/日銀の持ち出す市場機能論はデコイ/内田副総裁会見はトーンダウン」

ブルームバーグコラムにしては良いことが書いてありますな
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-08/SHVFAYT1UM0W00
【コラム】日銀にボルカー流期待、市場の威圧に屈するな−エラリアン
コラムニスト:Mohamed El-Erian
2024年8月8日 12:01 JST


〇3M短国入札ェ・・・・・・・・

金曜日は毎度の3M短国でしたが・・・・・・・

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240809.htm
国庫短期証券(第1249回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1249回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号          国庫短期証券(第1249回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日         令和6年8月13日
4.償還期限       令和6年11月11日
5.価格競争入札について
(1)応募額          11兆1,836億円
(2)募入決定額     3兆7,182億6,000万円
(3)募入最低価格     99円97銭6厘0毛
(募入最高利回り)      (0.0973%)
(4)募入最低価格における案分比率     95.2304%
(5)募入平均価格     99円97銭8厘8毛
(募入平均利回り)      (0.0859%)』

・・・・・・・orz

おいこらちょっと待て足切りも10bp割れたあどういう事やという結果になっておりまして、まあ先週は驚異のリスクオフ祭りがあったのでシャーナイのかもしれないですけど、それにしてもお前これ金利商品としての意味があるんかというレートで、完全に短国が「コモディティ」状態になっておりまして、金利じゃなくて国債という「モノ」として扱われているという歪んだ状態になっておりますわな。まあハイパー超過準備があるのとアホみたいに日銀がオペだの貸出だの実施していることが原因なんで、YCC維持のためとか言って2年とか5年の長期共担をバカスカ打った弊害が出口になって思いっきり出ている、という話でして、出口の際に円安か株安のどっちかが起きているのもそうですけれども、黒田のアホウが自分さえよければ後のことはどうでもよいという姿勢でぶっこんだ無責任極まりない施策の副作用というのは、大規模緩和やってるうちは弊害として顕在化しにくいのですが、出口(まだ余計なほどに緩和的な状態であっても)では早速このように弊害が出るわけで、私の履歴書書いたり勲章もらってるの全部取り消して墨染めの衣着てお遍路さんでもやってろやこのクソ野郎というお話ではあります。

いかんいかんつい朝から血圧が。

でもってまあ売買参考統計値ちゃんの方を見ますと
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

国庫短期証券1247 2024/11/05 平均値単利 0.095
国庫短期証券1249 2024/11/11 平均値単利 0.090

となっていまして、平均よりは甘めの引けになっていますが、まあゆうて10bp割れの引けになっておりまして、まあ確かに足元の状況からすると次に利上げするとしても12月か1月ちゅうかんじ(株式市場のアレとうっちーのアレが無くても、まあ10月にやってしまうのって「展望ごとの利上げ」になるのであっという間に短期金利を1%まで上げるくらいの腹の据わり方をしていない限り無理気味なんじゃネーノとは私言いましたよね)なので10月会合跨ぎも関係ないと言ってしまえばそうかもしれないけど、それにしたって10月会合までに再度円安ぶっ飛んだらまたも避難轟轟から利上げ(しかも前回の株安にビビって事前予告付きとかw)になるのワンチャンどころか10ちゃんくらいはありそうなんですけどなんかもう全然気にしないレートなの何なんでしょ(そもそもベースレート15bp上がったのに短国これだと6bp〜7bpくらいしか金利上がってないんですけど)とは思うのでした。


なおちなみに東京レポレートの方は
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

       O/N  T/N  1w  2w  3w  1m  3m   
2024/8/7 0.213 0.151 0.154 0.164 0.172 0.176 0.201
2024/8/8 0.216 0.174 0.162 0.167 0.172 0.177 0.201
2024/8/9 0.182 0.233 0.175 0.172 0.175 0.178 0.201

という事で短国発行要因でトモネ0.233とか結構な利回りになっておりまして、どんだけ短国だけ別世界なのかというお話かと思います。全くひどい話でとりあえず日銀はアホみたいな共担と何とか貸出を止めろや(しかし気候変動でまたクソみたいな残高を積み上げようとしているのが腹立たしいしあんなのただの掴み金補助金だろと)という話だし、財務省は短国市場がこの有様でまともなリスクフリーの短期運用手段がない状態になっていることに対して発行を減らしてるんじゃねえよという話ではございますな、マッタクモウ。


〇なんか謎の紙がでておられますが

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/wp24j12.htm
量的・質的金融緩和やイールドカーブ・コントロールが国債市場の機能度に及ぼした影響

これ下の方にありますように、

『本稿は、2023年12月4日に開催された「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ第1回「非伝統的金融政策の効果と副作用」の第1セッション(金融市場)における報告内容の一部をベースに作成した。本稿の作成にあたっては、粟井益大、岩壷健太郎、開発壮平、加藤出、川本卓司、久保太基、倉知善行、清水誠一、長野哲平、永幡崇、藤田研二、宮川大介、Alexander Dueringの各氏及び日本銀行スタッフから有益なコメントを頂戴した。また、図表作成では、村本布美子氏にご協力を頂いた。ここに記して感謝の意を表したい。ただし、本稿のあり得べき誤りは全て筆者たち個人に帰する。また、本稿に示される内容は筆者たち個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。』

ということで、本チャンを見ますと

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24j12.pdf
量的・質的金融緩和やイールドカーブ・コントロールが国債市場の機能度に及ぼした影響

というのがあるのはいいんですけど、表紙を見ますとそこに燦然と輝く「多角的レビューシリーズ」のロゴがある時点で、だいたいこのロゴのあるペーパーはQQEやYCCは間違っていなかった、という結論が先にあるのでその結論から逆算した分析を行っているので読むだけ時間の無駄、という認定をアタクシはしておりますのでどうせ論じるに値しない(そもそも12月の多角的レビューの資料もなんだかねえという感じでしたが)物件だと思うのでパス。

というかさ、そもそも論としてこの「国債市場の機能度」ってのが本質的な問題から目をそらすためのデコイであって、QQEやYCCによって国債市場に介入しまくったことの弊害は、「国債市場で価格が形成されることによって、財政リスクプレミアムなどのシグナルを市場が発する事が出来なくなる」という話だし、そうやって市場をジャンキーにした結果、今般の輪番減額の際に「日銀の買入を減らすと国債の金利が上がってよくない」とかいう節子それは財政マネタイズっていう一番ヤバい奴や、というような話が市場の中の人(の一部の現実派と自分たちは思っているであろう理念なき薬物中毒なアホウ連中)から堂々と出てしまっている、というのが本来の悪影響であって、オファービットのスプレッドとか取引量とかそういう数字の話をしているのは、QQE(といよりYCCなんでしょうけど)の本当の意味での副作用の話について論じるのを忘れさせるものでしか無いと断じておきましょう。

ということで中身はだいたい想像がつくのでパス。お暇なら読んでみてちょ。


〇内田副総裁記者会見:講演で為替がぶっ飛んだのでせっせと修正を入れる辺りが姑息にも程がある

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240808a.pdf
内田副総裁記者会見
――2024年8月7日(水)午後2時30分から約45分
於 函館市

本件木曜に出ておりまして出遅れにもほどがあるのですが、主な意見の方を確認しておきたかったというのもあるのでこっち後回しになりましたすいませんすいません。

・あの講演を見てこういう質問するのか・・・・・・orz

実質最初の質疑(最初は「本日はどうでしたか」なので)の質問だが、あの講演テキストとその後の市場の反応を見ている筈なのになんでこういう質問するのアホなのこの人。

『(問)7 月の利上げの後ですね、金融市場で株安と円高が進んでいます。市場ではですね、米国経済の減速が主因ではないかという見方も少なくない一方、日銀の利上げが引き金になったという声もあります。追加利上げと金融市場の変動の関係についてお伺いします。併せて、7 月の利上げのタイミングが妥当であったのか、この点についてもお願い致します。』

まあ回答は別に引用するまでもないので引用しませんが、これは無いわと思ったので晒してみました。まあ次の人はちゃんとこういう質問をしているのですが・・・・・・・・・


・強い表現(ただし諸葛孔明の罠付き)で利上げを否定した件について

次の質疑である。

『(問)二点お願いします。今回このタイミングで、市場が不安定な状況で利上げしないと、明確なメッセージを打ち出された理由について教えてください。』

『あともう一点、今朝の講演で当面現在の水準での金融緩和を続けるとおっしゃっていますが、この後の追加の利上げに向けた条件、必要なデータは何になるのか、当面ということは年内に更なる利上げというところは可能性としてないのか、併せてお答え頂けますでしょうか。』

当然ながらこの質問になるわという話ですな。まあ三百代言話法なので「あの時と今は状況が違う」の一言でひっくり返せる仕掛けにはなっているのですが、この回答でもひっくり返すことが可能な設計なのが分かりますわよ、ということで鑑賞しましょう。


『(答)これも関連した質問かなというふうに思いますが、中央銀行のコミュニケーションというものは通常二つのファクターというか要素で構成されています。』

第一の力第二の力、みたいになんか二つ出すの日銀好きよね(しかも詭弁で)と思うのですが、さては内田さんの趣味ですかこれはwww

『皆さんよくご存じの通りですが、一つは政策運営の考え方、いわゆる政策反応関数と言われるものと、そこに代入する経済・物価情勢の見方、この二つをコミュニケーションして、市場は市場でそれぞれ考えたうえで、市場金利というのは決まっていくという性質にあるわけです。』

あんたら政策反応関数コロコロと変えてるじゃん・・・・・・・・

『その中で、一つ目のその考え方については、条件付きではありますけれども展望レポートに書いているわけです。そうした中で、今回、急激な国際金融資本市場の変動というべきですかね、変動が起こったわけですから、その影響を注視して、そのことを政策に反映していくということは当然だと思いますので、このタイミングで申し上げた理由は、まさにその経済金融情勢が大きく変化する、あるいは変化するかもしれない大きな要素が生じたためということになります。』

とありますように、これって再度円安に振れたらあっという間に反故になるんですよね。さらに、

『そのうえで、当面とはいつまでかというのはですね、書いた以上当然聞かれると思って書いているわけではありますが、これはですね、例えば今の市場というのが、どういうふうに落ち着いていくのかっていうのはまだはっきり分からないわけです。』

つまり落ち着けば反故になる。

『私の考え方を述べさせて頂ければ、基本的には、例えば株価であれば、企業収益とか、日本の経済、あるいはアメリカであればアメリカの経済ですが、こういったものを反映して、いずれ落ち着いていくというふうに思っています。』

『ただ変動が急激であったこと自体は事実です。引き続き、きわめて不安定な状態にあるわけですから、その帰趨は、これはよく注視して、緊張感を持ってと申し上げましたけれども、みていかなければいけないというふうに思います。』

であれば、上記のように「足もとの金融市場情勢が極めて不安定であり、十分に警戒を持って状況の推移を見ていく」といえば良いんだし、もっと強く言いたいなら「金融市場の動向によっては我々の見通しに変化が生じ得る」というような言い方をすればいいだけであって、「利上げをしない」とかいう必要ないんですよね本来は。

これは植田日銀の悪癖なんですけど、植田さんにしろ内田さんにしろ、政策がらみのメッセージが一々露骨に強い表現をする(ハトでもタカでも)のが良くなくて、まあ植田さんにしろ内田さんにしろ頭が飛んでもなくよろしいので、馬鹿に分かるようにコミュニケーションしないと、っていう一種の親切心でこういう表現を使っているんだろうなあというのは想像できるのですが、馬鹿向けにコミュニケーションするから表現が毎度どぎつくなってしまい、そのたびに市場(特に足元の円金利市場)が極端に振れるようになってしまうのですな。でもってその極端ムーブを打ち消そうとして反対側にどきつい表現をする、という増幅作用が起きているのが今の市場と日銀の対話になっていまして、もう見てらんない(と言っても弾が飛んでくるので見ている訳ですが)という感じではあります。

でですね、この続きがですね、

『そのうえでですね、そういう意味でお答えとしては、今後の経済・物価・金融情勢次第であるということになりますし、』

ズゴー

『何より当然、決定会合で9人の委員の中で議論したうえで決定していくべきものでありますから、その範囲内で私の個人的な意見ということになってしまいますけれども、』

お前さあ、展望会合の直後の金懇で(平審議委員ならまだしもだが副総裁ともあろう立場の人間が)断り入れないで「個人的な意見」を言うなよしかもあんなどぎつい表現で。

『私個人としてはですね、そういう意味で当面がいつまでかということはともかくとしてということになりますが、これまでよりも慎重に考えるべき要素が生じているということではないかというふうに思っています。』

と締めていますが、9月決定会合までですら1か月半あるし、次の展望レポートの10月会合までほぼほぼ3か月あるわけで、その間延々と金融市場が混乱を続けるとでも思ってるのかよという話で、「利上げを当面しない」っていうのは、利上げをするチャンスが基本的に金融政策決定会合であることから、2か月3か月のスパンの話なのに対して、上記説明を見ますと単純に「足もとの金融市場が落ち着くかどうか」という話をしている訳で、明らかにこれ金懇講演テキストを受けて為替市場が盛大に円安にぶっ飛んでしまったのを見て「こりゃ薬が効きすぎた」と思って表現を修正してるだろ、とまあそういうお話な訳ですよ。なんだかねー。


・説明が明らかにトーンダウンしているので更問が飛ぶのでありました

次の質問は更問です。

『(問)二問関連して質問させて頂きます。講演で、先ほどの緩和のところの、現在の水準のくだりは講演の中で二回、現在の水準で金融緩和をしっかり続ける必要があると考えているのは当面、これ二回強調されていますが、この意図っていうのは、同じことを二度強調しているというのはやはり、前の質問にも関連するかもしれないですけど、9 月であったり 10 月は、緩和は取りあえずかなりしないのでないかというような、織り込むようなメッセージのようにもとらえられるのですが、その辺をどうとらえたらいいのかというのが一点目です。』

そら聞きますよね。

『もう一点は、前回の金融政策決定会合から 1 週間での今回、副総裁の講演、会見なのですが、市場の中で総裁と副総裁の意見が違って、これが結果的に市場とかのコミュニケーションに誤解を生むのではないかみたいな見方をしている人もいますが、その点について総裁と副総裁の考えは、意見は整合的なものなのかどうか、その辺の見解をお聞かせください。』

イイヨイイヨー。

でもって回答。

『(答)まず一点目ですね。二回書いたのは文章の流れ上、最初に書いて、それから詳しく敷衍するかたちでその後文章がつながっていますので、流れの中で全部説明しきった後にもう一度結論を書いたということですので、それ以上の他意はないですけれども、』

『結論部分になっている、あるいは「先取りすると」と結論を先に書いているという意味では強調していることは間違いありません。当然、皆さんもそこを見出しに取ったでしょうから、それは強調していると思って頂いて結構です。』

ほうほう強調していると。

『そのうえで、次回会合以降の話は、これは当然政策委員会で話すべき話であって、私が今どうだと申し上げるべきではないし、実際この後状況がどう変わるかにもよりますけれども、正直個人的にはですね、慎重に考えるべき状況にあるというふうには思っています。』

申し上げるべきじゃないのに何で申し上げてるんだこのデコスケという話ですが、個人的にはだったら最初に個人的にはと断れという話ではありますな。

『そのうえで、総裁とどうかという話については、一問目、二問目でしたっけ、にお答えしたことを繰り返すのがよいと思うのですけれども、総裁会見でもですね、当然ですけれども、「見通しに沿って展開していくのであれば」という条件をつけたうえでお話を申し上げているわけです。』

『いわゆる政策反応関数が条件付きであることは、9 人のボードメンバーが全員一致で決めていることですから、そこについての違いはないわけです。そのうえで、総裁会見より後の段階で、今回の市場の急激な変動が起きているわけですから、そのことをその政策反応[関数]に入れれば、当然のことながらより慎重に考える必要があるということが起きているということですので、総裁と私の間に考えの違いがあるということではなくて、状況が変化したということだとご理解頂ければと思います。』

市場の急激な変動に一々反応して状況が変化したと大騒ぎするのって中央銀行として如何なものかと思う訳ですけどね、リーマンショックとかコロナショックみたいなのがあって変化しているなら話は分かるけど、今回の変化って少なくとも円安修正はお前らの意図してた話だろという訳でございまして、もう酷いわという感じです。

以下色々と質疑応答が続いていますが、てめえの講演で円安にぶっ飛んだことを明らかに意識して、講演テキストで言っていたスーパーハトハトモードを明らかにコンディショナルモードに変化させた言い方をしていまして、まあ何ちゅう姑息なという感じなのですが、時間が無くなって来たのでこの辺で勘弁(必要なら続きやりますがまあ要らないような気もしますので)。








2024/08/09

お題「7月決定会合主な意見の鑑賞会ということで」

ほうほうそうですかそうですか
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-08/SHWIK0T0G1KW00
米長期債利回り上昇、入札が連日低調−新規失業保険申請の減少も寄与
Liz Capo McCormick、Aline Oyamada
2024年8月9日 0:00 JST 更新日時 2024年8月9日 4:01 JST

→30年債入札の最高落札利回り4.314%、WI水準は4.283%
→またしてもひどい入札だったが10年債入札ほど悪くない−ブレナー氏

『米国債相場は8日に続落。朝方に発表された米新規失業保険申請件数が約1年ぶりの大幅減少となり、景気に対する懸念を幾分和らげた。市場では年内の積極的な利下げ観測が一段と後退した。午後に行われた30年債入札(250億ドル=約3兆6800億円規模)は、需要が振るわなかった。前日の10年債入札に続く低調な結果となり、長期債利回りは入札後にさらに上昇する場面があった。』(上記URL先より)

とまあそういうことで日本株式インデックス様も今日も今日とて乱高下するんですかね。


〇決定会合主な意見は利上げしたんだから当たり前だが強い見解が並ぶ

そらそうよという感じですが
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240731.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 7 月 30、31 日開催分)1

・経済に関しては「消費」が話題になっていたのですがよくよく見ると「高物価放置プレイの弊害」の話だったりする

『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』は消費の話のオンパレードでして、

『● わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しており、先行きも、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。』

『● 春季労使交渉の結果が賃金に反映されてきているなど、経済・物価はオントラックである。』

とまあそういうのはあるのですが、この後が連続して消費の話になっていまして、

『●個人消費は決して強くないが、この先春季労使交渉の結果の賃金への反映がさらに進むこと、夏季賞与が好調であることに加えて、定額減税等もあり、底堅い動きが続くとみられる。』

『● 個人消費はマクロでは力強さに欠けるが、ミクロでみれば強弱があり、必ずしも弱さだけではない。』

『● 名目賃金の伸びを上回る物価上昇により、実質賃金の低下が続くなか、個人消費などに弱さがみられる。名目賃金上昇のモメンタムが維持される限り、時間の経過とともに経済状況は改善すると思われるが、足もとは、賃金上昇の波が幅広く浸透し、その持続可能性が高まることを見守る忍耐が重要な局面にある。』

ということで、消費だけで3つ立て続けにならんでいるのですが、まあベースは別に弱くはないという話になっています。しかしこの3番目の意見とかそうなんですけど、結局のところ個人消費が弱いのって物価が上がりすぎな状態になっているからなのでありまして、昨日ネタにした内田副総裁函館金懇の中でしれっと書かれていた、

『また、図表 14 をご覧ください。左のグラフの通り、2年以上にわたって物価が2%を上回っており、今年度の見通しでも上回ると予想されます。このことは、わが国経済やここにおられる皆様の生活に直接影響を及ぼしており、政策判断において、重要な要素だと考えています。』(8/7内田副総裁函館金懇挨拶より)

の話になっているという事でつながっているんだと思います。まあ今まで散々物価高を放置して基調的インフレが行ってないで突っぱねていたのに、急にここに来て(利上げをしたから、なのかどうかは判然としませんが)このような話がクローズアップされてくるのはナンジャソラ感はありますが、まあ正常な方向といえば正常な方向になっているのでは、と思いますがどうですかね。


『● 実質金利のマイナスの長期化が、家計などの資金の出し手から、実質負担減となる資金の受け手への所得移転をもたらす面があることを意識して、金融経済情勢を確認していく必要がある。』

こっちも物価高止まり放置プレイによって発生している話なのですが、これまた従来そういうのを言ってなかっただろおまいらと考えるとかなり味わいのある記載のように思えました。

『● 新しい環境への適応度に応じ企業間の差が大きくなっており、全体の動きだけでは経済の実態を捉えにくくなっている。』

消費を念頭に置いてるのかどうかは分からんですけれども、マクロ統計だけではよくわからんという話がありまして、このコーナー最後を飾るのは中村審議委員と思われるお方ですが、ちと長いので分割します。


『● 日本経済の構造的問題は、少子高齢化による消費低迷と低収益化した産業構造にある。』

ふむふむふむ。

『今後、新NISAによる金融資産所得の持続的増加が消費を刺激するとともに、』

ちょwwwwww唐突に新NISAしかも金融資産所得が持続的に増加することになっているのがチャーミング。

『国際競争力の高い事業の育成が産業集積と輸出拡大に繋がり、成長志向の中堅・中小企業の能増投資や雇用の拡大に波及すると期待される。』

まあ何ちゅうかそれはそれでまあそうかも知れんねという話なんですが、でもって金融政策でなんかできるんでしたっけ、という話になってしまいますし、低収益化した産業構造を不必要な低金利政策により温存されるのイクナイって話にはならんのですな。


・金融政策変更の会合なのに物価の意見が5個しかないwwwww

『(物価)』なのですが、小見出しで書いた通りで物価の意見が5個しかなくて、おまいらインフレターゲットやってるんじゃなかったのかよという話ですけど、まあこういう辺り、なし崩し的(なのはどうかと思うけど)に「厳格なインフレ目標」から「インフレ目標はあるけど政策運営はフレキシブル」に代わってきているような気がしないでもないな、と思いました。

『●消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』

はいはい大本営大本営。

『● 中長期の予想インフレ率の上昇や春季労使交渉の結果が統計に反映され始めたこと等を勘案すると、賃金と物価の好循環が働きだしたと考えられ、基調的な物価上昇率は2%に向けて着実な歩みをみせている。』

好循環働き出しているそうですよ!!!!

『● 物価目標の実現の確度はさらに高まった。ただし、人手不足の結果、供給不足・需要超過の業種が増えており、物価の上振れリスクに注意する必要がある。』

上振れリスク・・・・・・

『● 海外のインフレやこれまでの円安による輸入物価の上昇に加え、タイトな労働需給や、労働時間の上限規制の影響もあり、価格上昇圧力が続くと考えられる。』

もう「足元までの上昇は一時的でそのうち2%割る」という話はすっかり無くなっているんですな。

『● 2%を超える物価上昇が3年目となるなか、「物価安定の目標」の厳密な意味での実現とは別に、家計を中心に「目標」実現が従来よりも意識されてきていることを認識する必要がある。』

ちょwwwwwwwww

ということで、物価の意見が5個しかない(1個大本営枠だから実質4個)のもウケたが、全員上振れだわアクチュアルの物価が高止まりしている件の影響の話まであるわで、そもそも言ってることの理屈がなんか変わっているんですよね。


・金融政策運営パートに参りますがやっぱり基本ロジックには君子豹変感が強いですよね

次が『U.金融政策運営に関する意見』です。利上げ会合だからうじゃうじゃ並んでいるのは仕様としまして鑑賞しましょう。

『●経済・物価は、これまで示してきた見通しに概ね沿って推移しているほか、輸入物価は再び上昇に転じており、物価の上振れリスクには注意する必要もある。「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整することが適切である。』

これは大本営。

『● 3月の政策変更以降、経済・物価は概ね想定通りに推移している。足もとの経済の状態は、現在の極めて低い政策金利を幾分引き上げることができる程度には良いと考えている。』

しかし今までこの理屈を前面に出していなかったのに、今回の政策変更にあたってこの説明を堂々と前面に出してくる、というのはコミュニケーションという意味で違和感は拭えないわけで、だったらもっと前の段階から政策委員の金懇でもよいから、「実質金利で考えれば今の金利はマイナス圏にあり、インフレ期待などの上昇が続けば一段とマイナスが拡大する」みたいな説明をもって行ってほしかったわけですよ。

でまあそういうのが何となくなあなあで流しながら、いざ利上げとなるとこの実質金利は低い理論を前面に出してくる、というのは日々日銀見物をしてきゃあきゃあ言ってるマニアのアタクシであってもやっぱり「唐突感」はぬぐえないわけですから、そらまあ普段そこまで日銀シャカリキになってみているわけでもなさそうな他市場の方とか海外さんとかからすると今回青天の霹靂でジャガーチェンジしたと思う罠、と感じますね。

でもって以下がジャガーチェンジの皆様のお話でして、

『● 実質金利は過去 25 年間で最も深いマイナスとなっており、様々な指標でみた金融緩和の度合いは、量的・質的金融緩和期の平均的な水準を大きく上回っている。』

『● 金利を引き上げたとしても、0.25%という名目金利は引き続き極めて緩和的な水準であり、経済をしっかりと支えていく姿勢に変わりはない。』

なんか後者って内田さんの金懇での説明に似ている部分がありますが、「緩和で経済をしっかり支える」という理屈を持ち出すのが話を混乱させるもとでして、緩和の調整をする位に物価目標達成に自信があるんですから、そういう経済に対して「緩和でしっかり支える」というのが本当に必要なのかという話はあるんですよね。

つまり、物価目標達成への自信が高まる中で緩和修正しているんですから、それはもはや本来的に言えば大いなる緩和は不要(大いなる緩和をやりすぎたら欧米みたいなドテン引き締めをしないといけないので)な話で、「日本の場合はゼロインフレ均衡からの脱却を行っている関係上、物価目標達成の確認までの期間は金融政策が緩和的になるのは過去からの経緯からそうなるもんです」という感じになるのが本来の理屈であって、緩和で経済をしっかり支える、というのはゼロインフレ均衡の時から思考が変わっていない、ということを意味するので、ちょっとこの説明には違和感がありますな、うんうん。

『● 金融政策の正常化が自己目的になってはならず、今後の政策運営については、注意深く進めていく必要がある。』

わけわからん。物価目標達成するなら自己目的も糞もなくて正常化しないとダメでしょ。慎重にやりたいという意見はわかるけど。

『● 足もとの物価を取り巻く環境を踏まえると、小幅な利上げを検討してもよい時期だと考える。なお、緩やかなペースの利上げは基調的な物価の上昇に応じて緩和の程度を調整するものであり、引き締め効果を持たない。』

まあそうなんですけど、緩和の時に緩和緩和緩和と盛大に強調していたので、逆で引き締めと言われるのは安易な緩和アピールのつけです。


・少なくとも2名は今後の利上げもとっととやれという主張ですね

『● 2025 年度後半の「物価安定の目標」実現を前提とすると、そこに向けて、政策金利を中立金利まで引き上げていくべきである。中立金利は最低でも1%程度とみているが、急ピッチの利上げを避けるためには、経済・物価の反応を確認しつつ、適時かつ段階的に利上げしていく必要がある。』

1%キタコレという感じですが、0.5%とは言わず0.75%か1%まではさくっと利上げして、その後はゆっくり経済物価情勢見ながら考えていく、という感じになるんでしょうね、とは思います(内田副総裁講演で割とダイナシーになっていますが)。

『● 今回の政策変更後も、物価が見通しに沿って推移するもと、堅調な設備投資や賃上げ、価格転嫁の継続といった前向きな企業行動の持続性が確認されていけば、その都度、金融緩和の一段の調整を進めていくことが必要である。』

まさかの展望の都度上げそうな勢いの見解来ました。


・なお慎重派2名は反対した2名ですね

『●現状は、政策金利の引き上げがまったく不可能とは捉えていないが、経済成長率や消費など下振れ気味のデータが多いため、賃金上昇の浸透による経済状況の改善をデータに基づいてより慎重に見極める必要がある。』

というのが野口さんで、

『● 現時点では経済の持続的成長を裏付けるデータが少ないため、次回会合で重要な経済データを点検して変更を判断すべきで、今次会合での利上げについては反対する。』

というのが中村さん。


・以下輪番の話になりますね

『●長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切である。』

『● 市場に金利形成を委ねるため、基本的には計画に沿って、国債買入れの減額を淡々と進めていくべきである。』

大本営ですね。

『● 国債買入れの減額計画の目的は、あくまでも市場領域の回復であり、金融引き締めにあるのではない。』

とは言え買入増やしながら緩和って言ってたんでね〜。

『● 国債買入れの減額は緩やかなペースで着実に実施していくことが望ましい。債券市場参加者会合の結果から、市場の減額への見方には相応にばらつきがみられるため、予想形成が一方向に偏ることによる市場の混乱のリスクは高くないと考える。』

前半は良いけど後半言ってることがイミフ。

『● 国債買入れ減額については、1年半強かけて四半期毎に月3兆円程度まで等速で減額することとし、機動的対応の余地を残し中間評価を実施するなど、慎重に進めれば、市場にサプライズを起こさず実施可能と思われる。』

まあ言いたいことも分かるし猫かぶっているんだろうなというのもあるんですけど、そもそも今がアホみたいに買いすぎなので、減額が足りない可能性という方が高いのですが、そっちへの配慮が無いのが何ともかんとも。

『● 今後、長期金利がより自由な形で形成されるようになるなかで、国債市場の投資家層が広がっていくことを期待している。』

これはまあ今の短国市場見れば一目瞭然なんですが、金融安定化委員会とかああいうのが金融機関が本来持っているマチュリティートランスフォーメーション機能をつぶそうつぶそうとしやがって親の仇のように規制かけている訳で、日銀マターではないのですが、そっちの「過度な安定化志向による過剰な規制」について何とかしないとアカンのではなかろうか、と思います。


・日銀が国債買入を止めても新規発行が増えるのと同じというのは誤認を誘発しやすいので如何なものかと

『● 仮に国債買入れの減額を市中への国債供給の増加という点で新規発行と同等と捉えると、今回の減額により、歴史的にも有数の大量発行局面を迎えると考えられる。国債の保有構造の在り方を念頭に、市場や投資家動向をモニタリングしていくことが重要である。』

よくこの理屈が飛び出すんですけど、マクロの資金的に言ってしまえば、国債発行されて日銀が買入をするっていうのは、国債が日銀負債の形でマチュリティートランスフォーメーションが起きているだけの話であって、もちろんそれがマネープリンティングで出ればインフレ要因にも程がある話ですが、日銀の場合は利息付日銀当座預金に国債が化けているだけのお話なんですよね。

つまり「国債大量発行と同等」というのは非常に語弊のある言い方であって、「国債発行年限の長期化と同等」というのが資金循環的に考えれば妥当な表現になるのでして、まあそれもあるから発行年限を調整しましょうとかそういう話が発行サイドから出ているんですよね。

この「国債大量発行と同等」という言い方をするのって、突き詰めていってしまうと「国債を中央銀行が買入をすると国債が消える」とかいう例えば某ジンバブエ元審議委員が審議委員就任直前に某新聞のインタビューで堂々と言っていたロバート・ムガベも裸足で逃げ出すジンバブエ理論を別の角度から言ってるのと同じことになりますので、甚だ誤解を招きやすい例えだと思うので、この言い方はすべきではないと思います。


・市場機能論はほどほどに

『● 日本銀行のバランスシート正常化の道のりは長く、国債大量保有に伴う副作用が残り続けてしまう。引き続き、市場機能の状況等を注意深く見ていく必要がある。』

アタクシ的には市場機能論を押し出していく説明あんまり好きじゃなくて、まあ根っこは同じように市場機能ではあるんですけれども、「財政運営に関する市場からの警告が行われない(ので馬鹿官邸を筆頭とする馬鹿の巣窟がコストタダだと思って隙あらばノーズロ失禁脱糞垂れ流し財政運営を行い大惨事を巻き起こすリスクが高い)」という事の方が大事だと思います。


とまあそんな感じで。


〇短国ェ・・・・・・・・・・・・

昨日は当然30年国債が注目でしたがその裏でひっそりと実施された6M

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240808.htm
国庫短期証券(第1248回)の入札結果
 
『本日実施した国庫短期証券(第1248回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号       国庫短期証券(第1248回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日      令和6年8月13日
4.償還期限    令和7年2月10日

5.価格競争入札について
(1)応募額          9兆5,058億円
(2)募入決定額     2兆8,265億7,000万円
(3)募入最低価格     99円94銭5厘
(募入最高利回り)   (0.1109%)
(4)募入最低価格における案分比率   81.5135%
(5)募入平均価格    99円95銭3厘
(募入平均利回り)   (0.0948%)』

ちょwwwwwおまwwwwwwアベレージ10bp割れwwwwwwwwwww

これがまた3Mじゃなくて6Mってのがドイヒーな訳ですが、6Mって月一発行だし年限的にも中途半端(ちなみにおじいちゃんの昔話をすると大昔の割引短期国債市場では6Mの方が中心的な存在でしたが、たぶんその理由は6Mの方が値動き大きいからとかいうディーリング相場時代残滓だったような気がしますw)なので、3Mと比べて圧倒的に使い勝手が悪く、そのため需給が極端に振れる局面が時々ある(誰も買わないか突如需要が暴発するか)のですが、お前2月償還で10bp割れってナメトンノカという世界ですな。

でまあ恐る恐る売参様を見ますとw
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

国庫短期証券1248 2025/02/10 平均値単利 0.095

と10割れのアベレージが正当化されているのですが、じゃあ本日の3M新発(足は11月11日)の新発WIはどうなっているかと言いますと(新発は1249回です)

国庫短期証券1247 2024/11/05 平均値単利 0.070
国庫短期証券1229 2024/11/11 平均値単利 0.095
国庫短期証券1249 2024/11/11 平均値単利 0.095

1247は先週入札のあったカレント3Mです(1229は6M短国の成れの果て)けれども、やっぱりこっちも10bp割れのWIになっとりますなナムナム・・・・・・・・












2024/08/08

お題「植田さんが真人間になったと思ったら内田副総裁がハトハトチキンジジイになってしまったでござるの巻」

なお正確には「ハトハトチキンイカサマジジイ」であることについては後述しますwwwww

〇その前に昨日の債券市場ちゃんをロイターさんから貼っておく

ということで昨日の債券市場ちゃんばいロイターを備忘で貼っておきますと、

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/MP2B2FQMLNMDTAZNDQMXAGRNFA-2024-08-07/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発、日銀副総裁のハト派発言で買い 長期金利0.875%
By ロイター編集
2024年8月7日午後 3:50 GMT+9

『[東京 7日 ロイター] - <15:15> 国債先物は反発、日銀副総裁のハト派発言で買い 長期金利0.875%

国債先物中心限月9月限は、前営業日比6銭高の144円96銭と反発して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.0ベーシスポイント(bp)低下の0.875%。日銀副総裁のハト派的な発言が買い材料だった。』(上記URL先より、以下同様)

『その後、午前10時半過ぎに、函館市金融経済懇談会に出席した日銀の内田真一副総裁による「金融資本市場が不安定な状況で利上げをすることはない」などの発言 もっと見る が伝わると、ハト派的だと受け止められて先物相場は上昇基調に転じた。』

ハト派的どころかこんなのベタ降りのハトハトチキンですがな(後述)。

『現物市場で10年物以外の新発国債利回りはまちまち。2年債は前営業日比2.0bp低下の0.265%、5年債は同1.5bp低下の0.410%と、追加利上げの織り込みの後退を反映した動きとなった。』

>2年債は前営業日比2.0bp低下の0.265%
>2年債は前営業日比2.0bp低下の0.265%
>2年債は前営業日比2.0bp低下の0.265%

ちょwwwwwおまwwwwwwww利上げ織り込みの後退どころか「利上げ無し」じゃねえかその金利wwww

ということでエライコッチャになっておりましたが、為替市場ちゃんの方もエライことになっていて、一時148円台とかやっていたのはご案内の通り。

しかし今日は30年国債ちゃんの入札がある(6か月TDBもあるけど)のですが、

『TRADEWEB
    OFFER  BID   前日比  時間
2年  0.259  0.268   -0.02   15:15
5年  0.405  0.414  -0.017   15:15
10年  0.871  0.879  -0.017  15:15
20年  1.736  1.744  0.034   15:09
30年  2.18  2.189   0.088  15:15
40年  2.435  2.446  0.107  15:15』

超長期の後ろドイヒーですな・・・・・・・


〇コミュニケーションをまた崩壊させて度し難いアホウ以外の感想がないのだが(内田副総裁函館金懇)

という訳で金懇テキストですが

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240807a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 函館市金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一


あとで引用するので英文ちゃんも(英文はあくまでもオマケ扱いで正本は日本語)
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2024/data/ko240807a1.pdf
Japan's Economy and Monetary Policy
Speech at a Meeting with Local Leaders in Hakodate
UCHIDA Shinichi
Deputy Governor of the Bank of Japan
(English translation based on the Japanese original)


・途中まではただの7月展望レポートのご紹介です

『1.はじめに』では

『日本銀行の内田でございます。本日は、道南地域の各界を代表する皆様とお話しする機会を賜り、誠にありがとうございます。皆様には、日頃から、函館支店の業務運営に多大なご協力を頂いております。この場をお借りしまして、改めて厚く御礼を申し上げます。意見交換に先立ちまして、まず私から、わが国の経済・物価情勢と、日本銀行の金融政策運営について、ご説明したいと思います。』

とあって、『2.経済情勢』に入るのですが、今回も

『図表1をご覧ください。はじめに、経済情勢です。わが国経済は、一部に弱めの動きもみられますが、緩やかに回復しています。振り返りますと、昨年前半にかけて、コロナ禍からの経済活動の正常化を受けて、高めの成長を続けました。その後、一部自動車メーカーの生産停止等もあって、いったん成長率はマイナスとなりましたが、景気の改善基調は続いています。先行きも、潜在成長率を上回る成長が続くと予想しています。』

『図表2をご覧ください。企業部門では、業況感は良好な水準を維持し、企業収益も既往ピーク水準にあります。そのもとで、短観の設備投資計画をみますと、昨年度は前年比+9.9%で着地し、今年度も+10%台の増加が計画されています。人手不足への対応などでソフトウェア投資が増加しているほか、研究開発投資を一段と積み増す動きが目立ちます。こうした将来を見据えた案件が引き続き投資を押し上げるほか、工事の人手不足などで先送りせざるを得なかった案件も積み上がっていますので、高水準の設備投資が続く可能性が高いと思います。』

という内田さんだけがこれをしているのですが、スピーチでしゃべる原稿というかカンペそのものを出してきています。

ちなみにこれは豆ですが、例えば先日の中村審議委員の札幌金懇では
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240606a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 札幌市金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

なんですけど、今回の内田さんの函館金懇は
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240807a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 函館市金融経済懇談会における挨拶 ──

と「挨拶」であって「挨拶要旨」ではないので、もう完全にこれがカンペと化して読んでおりますって状況ですな。(中村さん以外の政策委員の金懇も日銀に出てくるのは「挨拶要旨」ですのでご確認あれ)

でもってこの辺のおしゃべり部分は7月展望レポートの趣旨に沿った話をしていますので、まあどうでもよい(と言っても最初から読んでいきましたので「ふーん」と流し読みしておったわけですがw)のであります。

まあ展望会合の後にやる総裁副総裁の講演類なので展望レポートに沿った説明をする、というのはこれはこれで平常運転なのでまあ平常運転ですなというところです。


・しかも物価の構造変化とか堂々と言ってるんですよね

でまあその説明の部分ですけど『3.物価情勢と労働市場の構造変化』を見ますと、

『次に、物価情勢についてお話しします。図表5をご覧ください。赤い線の生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、振れを伴いつつもプラス幅が緩やかに縮小しており、直近の6月で 2.6%となっています。内訳をみますと、水色の「食料品」や、青色の「その他の財」では、既往の輸入物価上昇に伴うコスト転嫁の影響が残っていますが、これが和らいでいく中で、緩やかにプラス寄与を縮小しています。』

からの、

『一方、ピンクの「サービス」も、プラス幅がやや縮小しているようにみえますが、内容面では、賃金上昇がサービス価格を緩やかに押し上げる構図が徐々に明確になってきています。』

とかいうのを思いっきり言ってて、

『図表6をご覧ください。こちらは、消費者物価の「サービス」を構成する個別の品目について、前年比でどれだけ価格が上昇したか、それぞれの上昇率ごとに集計したものです。』

でたなサービス価格。

『左のグラフ、昨年4月時点では、大きな山はゼロ%付近にありました。+10%のあたりにもう一つ山がありますが、これは外食など、原材料コスト上昇の影響を受けた品目であり、コストプッシュの一環でした。サービスのうちでも人件費の割合が高い品目の価格(濃い青色)は、ゼロ%付近に集中していました。』

『一方で、右のグラフの通り、最近(本年4月)では、この濃い青色を含めて、価格分布の山は、+2%を中心とする形になっています。』

とまあ説明に都合の良いものをホイホイと出してくるこの日銀クオリティという感じで、だったら最初からサービス価格に注目しています、といえば余計なもんみなくて済むんですが、ってなもんですが、この説明だって都合がいい時だけ出してくるのが日銀(あるいは内田副総裁)の三百代言クオリティと言って差し支えないものな訳ですな。

まあこうやってインフレ期待が変わったという話をしようとしておるわけでして、この辺りまでの説明って普通に「物価目標達成に向けてドンドン状況が良くなっています」って話ですわな。



・労働市場の話ではお前そんなこと言ってたっけという堂々の歴史改竄が行われていまして

さらに『(労働市場の構造変化)』でも流れるように説明をしていまして、三百代言おそるべしと言ったところなのですが、どさくさに紛れておっさん何言ってますねんというのがあってクソ笑いました。

本文5ページ(PDF6枚目)の冗談もとい上段のあたり。

『私自身は、この 10 年ほど、「日本経済に変革をもたらすドライビング・フォース(原動力)は、人手不足しかない」と言い続けてきました。』

・・・・・いやお前ら異次元緩和行ったときに言ってたのは「インフレ期待の引き上げ」だろうが何嘘八百言ってるんだというお話なのですが、わざと言ってるのかそれとも脳内ファンタジーで勝手に歴史が改ざんされているのか、という話になりますと、あくまでもワイの考察するところ、置物大師匠のような方の場合はファンタジー脳なので未だに自分のマネタリーベース直線一気理論が正しいとか、そもそも昔言ってた話をすっかり脳内で無かったことにしているとおもうのですが、内田副総裁の場合は自分でそんなこと言ってなかったのに後出しで言ってることくらい先刻ご承知の助でこういう事を堂々といってると想像されますのでおそロシアとしか申し上げようがないですね。

でまあそのコーナーですが、締めの部分が、

『もちろん、失業を生みにくいとはいえ、変革に摩擦はつきものです。また、個々の企業や個人、さらには、地域によって、受ける恩恵や影響は異なります。言葉を選ばずに言えば、これまで人手に余裕があったから可能であったサービスは、市場メカニズムの中では供給されなくなります。』

『昔は、都市部以外の地域でも駅を降りるとタクシーが待っていたが、今は呼んでもなかなか来ない、といった声がありますが、都市部の需給環境が変わり、お客さんが容易につかまるのであれば、当然の帰結です。』

『この先も人手は足りないことを前提に、地域の機能をどう維持していくのか、都市部と周辺部との関係をどう構築していくのか、市場メカニズムでは満たされないニーズをどう補完していくか、考えていく必要があると思います。皆さんの周りで起きている各種の変化は、この図表の水色の棒の帰結なのかもしれません。少なくとも、何もしなければ、元に戻ることはありません。』

元に戻ることはありません、と思いっきり構造変化が不可逆である、と言い切っていまして、まあこの前の金研国際フォーラムで「ディスタイムイズディファレント」って思いっきり言ってたのと同じ話をしておるわけです。


・・・・・とまあそういうことで、ここまでの部分を見ますと思いっきり「2%物価目標に向けた構造変化が起きているし、しかもその構造変化には不可逆の部分もあるのでこのまま定着ですよ」と全力で威勢の良いことを言っているんですな。ところが皆様ご案内の通り、


・利上げの説明を見ますと今まで前面に出していなかったことまで言っているという諸葛孔明の罠

『4.日本銀行の金融政策運営』ですが、最初の方は長期国債買入規模の減額計画の話、政策金利引き上げの話をこれまた今回の決定の説明通りにおこなっていますので、

『(短期政策金利の引き上げ)』の部分、途中から急に変なことを言い出す形になっていますので、最初から続けてみていきましょう。

『次に、短期の政策金利の引き上げについて、ご説明します。図表 13 をご覧ください。景気は、緩やかに回復しており、先行きも潜在成長率を上回る成長を続けると考えています。もとより、個人消費には、物価上昇の影響が表れていますし、1〜3月の成長率は自動車生産の影響もあってマイナスになるなど、弱い動きもみられています。そうしたこともあって、3月にマイナス金利政策を終了したのちも、短期の政策金利(赤い線)は、0〜0.1%という低い水準に設定していました。』

で、

『これは、現実の物価や物価の予想が上がっていることも考えますと、実質ベース(青い線)では、かなり低い水準で、極めて緩和的な状況です。経済や物価が見通しに沿って展開していくのであれば、それに応じて、この金融緩和の度合いを調整していくことが適切になります。』

と来まして、

『先週の金融政策決定会合では、今春の労使交渉の結果が賃金に反映されてきていることなど、前半でご説明したような経済・物価の状況は、見通しに沿って推移している、と判断しました。』

賃金が強かったし見通し通りにオントラックで推移しているから利上げした、と言ってさらにこの先の説明がかなりとんでもない話をしていまして、

『また、図表 14 をご覧ください。左のグラフの通り、2年以上にわたって物価が2%を上回っており、今年度の見通しでも上回ると予想されます。』

この部分って今まであんまり前面に出していなかった話なんですけど、

『このことは、わが国経済やここにおられる皆様の生活に直接影響を及ぼしており、政策判断において、重要な要素だと考えています。』

おwwwwwwいwwwwwwwwwww

今まで延々と2%を上回っている間「基調的物価ガー」とか言って実際の物価上昇の話を散々ネグっていたくせに利上げした瞬間にこれを言い出すとかお前ナメトンノカとしか言いようが無い訳ですよ。

『そうしたもとで、右のグラフにあります通り、一度は落ち着いていた輸入物価が、円安の影響などから再び上昇しています。』

ときまして、例の「為替円安が物価の上振れリスクになりかねないので利上げしました」という方の話になるのですけど、

『その消費者段階への影響については、企業の行動がデフレ期とは異なってきていることも踏まえて点検していく必要があります。』

というのは以下にありますが、

『デフレ期には、企業はコストが上がってもできるだけ価格に転嫁しないように行動したため、輸入コストの上昇が消費者段階に伝わる程度は緩やかでした。ここ数年は、輸入コストの上昇幅が大きかったこともあって、消費者段階の価格に転嫁されました。また、それが人手不足の中で賃金上昇につながり、基調的な物価上昇率を押し上げました。このように企業の賃金・価格設定行動が積極化していることを踏まえますと、為替の変動が物価に影響を及ぼす程度やスピードは高まっていると考えられます。』

構造変化によって輸入価格上昇が持続的なインフレ圧力になりやすくなった、とかいう説明をしていまして、

『2年前のように輸入物価が 50%上昇しているわけではありませんが、円安とそのもとでの輸入物価の上昇は、消費者物価を上振れさせるリスク要因です。』

とまあそんな状況だから利上げしました、という話な訳で、

『以上のように経済・物価見通しがオントラックであることを確認したうえで、リスクの観点からも、消費者物価が2年以上にわたって2%を上回って推移する中で、円安を受けて輸入物価が再び上昇に転じていることを踏まえて、0〜0.1%よりも 0.25%程度の金利水準の方が、よりリスクに中立的で、適切であると判断したということです。』

っていう話なので、まあつまりは足元の個人消費云々という話よりも、物価をめぐる構造変化が起きているなかで、物価をめぐるリスクバランスが以前のように隙あらば下振れの世界から大きく変わっている、という俯瞰的というか中長期的というか壮大なというか、かなり大きなビューのもとで利上げしました、って説明だし、今回の内田さんの説明って「アクチュアルな物価が2%を超えて長期間推移していること自体も望ましい事ではない」という趣旨の説明をしているので、何気に踏み込んでいる部分もあるんですよこれがまた。


・しかしこの威勢の良い話が怪しくなりましていきなりのジャガーチェンジである

とまあそんなこと書いてあるのに、上記文章って実はこの直後に

『もちろん、0.25%という水準は、名目金利としても、また特に実質ベースでみれば、極めて低い水準ですので、引き続き、極めて緩和的な金融環境によって、経済を支えていきます。』

と怪しい空気になって締められている辺りからちょっと様子がおかしくなるわけでして、その次の段落がご案内のように、

『先行きにつきましては、結論から申し上げますと、内外の金融資本市場の急激な変動がみられるもとで、当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要があると考えています。』

>当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要がある
>当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要がある
>当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要がある

・・・・・・・お前は何を言ってるだという話でして、その直前で散々「上振れリスクがあるので金融緩和の度合いを調整するのが適切だから調整した」って言ってるのに、その直後に「金融緩和を現水準でしっかり続ける必要がある」って支離滅裂にもほどがあるわけで豹変にあきれるしかありません。

英文の方ではこの部分、

『As for the future conduct of monetary policy, in a nutshell, I believe that the Bank needs to maintain monetary easing with the current policy interest rate for the time being, with developments in financial and capital markets at home and abroad being extremely volatile.』

ということで、フォーザタイムビーイングは政策金利いじりませんって言ってるわけでして、これは海外投資家とかいう単細胞生物から見たら「当分利上げをしない、と突如足元の相場を見て腰砕けになった」と思う、というかまあ国内も思うのだが、笑ってしまうのは「with developments in financial and capital markets at home and abroad being extremely volatile」って言ってるんだがそのエクストリームリーボラタイルなマーケットは誰が作ったんだよという話で、1週間前の説明を思いっきりひっくり返すような言い方をしているし、まあその前からもずっとそうですけど、政策運営にかかわる説明が足元の何かに過剰反応してハトかタカにブレブレメッセージを出してしまっているのはお前ら日銀だし、自分でボラ作っておいて「エクストリームリーボラタイル」とか何を言ってるんだという話で、控えめに申し上げましてもその場で腹掻っ捌いて津軽海峡に身投げしてこいとしか申し上げようがないこのクソ情報発信はひどすぎるとしか言いようがありませんな。

でもってこの続きですが、

『この点、展望レポートの中で、「金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」という考え方を示しました。』

と来まして、

『この考え方は、その前提「経済・物価の見通しが実現していくとすれば」という条件が付いています。』

三百代言キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

『そして、この点で、ここ 1 週間弱の株価・為替相場の大幅な変動が影響します。』

・・・・・・いやお前さあ、今回の政策変更について「足もとの消費動向とかよりも先行きのリスクバランスを考えた」ということで凄い俯瞰的かつ中長期的な話をしていたのに、いきなりたかが1週間の株式市場と為替市場に反応してるとかアホなのかと。

いやもちろんそのバックになんか戦争とか災厄とかあるのなら反応しても良いんですけど、今回面倒だから引用しなかった前半部分の本文2ページ(PDF3枚目)下から6行目に『私自身は、米国はソフトランディングする可能性が高いと思っています。』って言ってるわけで、そう思ってるなら益々こんなビビッドな反応をした講演をする必要があるのかという話ですよ。

しかも今回って「リスク対応」とは言ってるけどそこに円安による輸入物価上昇の影響がセカンドラウンドエフェクトを出して物価の上振れにつながるってロジックがあるんだから、円安が是正されたことに関してはリスクでも何でもなくて、むしろ望ましい方向に進んでいるので歓迎すべき話で、懸念も糞もあったもんじゃないでしょ、というお話な訳ですよね。

ということですから、これは「足もとの株安にビビりました」と降参宣言をしているのに等しい、とまあ普通はそのようにメッセージを読み取るわけでして、「日銀は株価が下がると本来行うべき金融政策を行わない」と解釈された日には、お前らは中央銀行としての責務を何だと思ってるんだという話で、かなりの重症レベルの中央銀行ということでして、これは亡きロバート・ムガベ大統領もニッコリという悲惨な低レベルの中央銀行ですよ、ってのをこともあろうに中央銀行プロパーの副総裁が言っているんですからこれはたちが悪いというか罪万死に値するレベルの説明な訳ですな。

そんなこと言わなくても「足もとでは米国でのやや過剰とも言える景気後退懸念の影響も含めて内外金融市場が大きく動いていますが、この状況については今後物価目標達成に向けた悪影響となるかどうかを時間をかけて注意深く分析していきたいと思います」程度でも早期追加利上げの牽制できるじゃろ、と思う訳でして、なんでお前らは一々タカでもハトでも強すぎる決め打ちトーンで説明をおっぱじめるのかという話でもあります。まあ端的に言ってお前らもう見てらんないから大蔵省日銀局に格下げされとけと。


・株価は重要って中銀が正面切っていうのは見識を疑う

でまあその説明をくどくどとしているのですが、

『金融資本市場では、最初にお話しした米国の景気減速懸念を契機に、世界的に急速なドル安の動きと株価の下落が生じています。特に円ドル相場は、これまで円安方向で大きなポジションが積み上がっていたことの巻き戻しがあり、変動幅が大きくなっています。また、わが国の株価は、円安の修正もあって、他国に比べても下落幅が大きくなっています。』

で?

『株価は、基本的には企業収益や経済の先行きの見通しを反映して形成されるものであり、この点、わが国企業の収益は歴史的な高水準にあります。これは単なる円安の恩恵といったものではなく、より本質的な収益力の強化によるものです。』

じゃあ問題ないじゃん、と思うjのですが、

『もちろん、株価の変動は、企業の投資行動や、資産効果などを通じた個人消費、ひいては経済・物価の見通しに影響するものであり、政策運営上重要な要素です。』

単に官邸とかいう木偶の坊に言われたから政策運営上重要なんでしょ、と言いたくなりますが、重要な要素って言い切るの流石にヤバくないかというお話で、これって1987年のブラマンの時に既に資産バブルの動きは始まっていたのに、ブラマンでビビって金融政策、経済政策(金融行政)の引き締めが完全に後手に回って取り返しがつくまで35年くらいかかっている壮大なバブル崩壊を巻き起こしたときから何も進歩していない説明にしか見えませんし、日銀って組織は反省という行為をしないのかと情けなくなるわけですな。

『また、為替相場の面では、円安が修正された結果、輸入物価を通じた物価上振れのリスクは、その分だけ小さくなりました。図表 14 の緑の線にあります通り、輸入物価の上昇は、契約通貨ベースではほぼゼロ%ですので、円ベースでの上昇は、ほぼこれまでの円安によるものです。この点で円安の修正は、政策運営に影響します。』

って言ってるのも間抜けな話で、その結果1週間前に言っていた「見通し通りに推移すれば淡々と政策調整を行う」を反故にしたらまた円安が進むし、現に昨日は148円台に乗った(結局147円近辺でしたっけ)りして早速円安が息を吹き返している訳で、馬鹿なのかとしか言いようが無い。


・挙句にこれである

でもってその次がご案内の通り、

『こうした市場の変動の結果として、見通しやその上下のリスク、見通しの確度が変われば、当然金利のパスは変わってきます。もともと、欧米の利上げプロセスとは異なり、わが国の場合、一定のペースで利上げをしないとビハインド・ザ・カーブに陥ってしまうような状況ではありません。したがって、金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはありません。』

って話なのだが、そもそも為替円安で物価上振れリスクも意識して利上げしておいて、「ビハインド・ザ・カーブに陥ってしまうような状況ではありません」もあったもんか、ってなもんでして、まあこれ内田さん的には「欧米のようなペースで利上げしないとビハインドになるようなことはないといっただけで、ビハインドのリスクがないといったわけではない」という説明をすると思うのですが(会見はヘッドラインしか見てないからこの点誰か質問をしたかは知らんけど)、まあ普通にこの部分だって「ベタ降り」としか見えませんよね。

英文だと、

『If the outlook, the upside and downside risks to the outlook, or the likelihood of realizing the outlook change as a result of these market developments, the path of the policy interest rate will certainly change. In fact, in contrast to the process of policy interest rate hikes in Europe and the United States, Japan's economy is not in a situation where the Bank may fall behind the curve if it does not raise the policy interest rate at a certain pace. Therefore, the Bank will not raise its policy interest rate when financial and capital markets are unstable.』

なのですが、そもそも金融資本市場が不安定だから利上げしないってアホの極みで、市場なんて基本的にunstableな訳だし、(動かない市場は市場じゃないでしょ)中央銀行は通貨価値の安定のために必要なことをすべきなんだから、通貨価値安定のために金融引き締めが必要なら金融資本市場が不安定な時だって必要な政策をとらないといけない筈で、まあとにかくこれ切り取ってみれば不見識の極みな説明ばっかりしてるんですよね。

『先ほど申し上げた通り、私自身は、米国経済はソフトランディングする可能性が高いと考えていますし、わが国の株価が上昇してきた背景には企業の収益力の強化があると思っています。両国の経済のファンダメンタルズが大きく変わったとは思えませんので、米国の単月の指標に対する反応としては、大きすぎると思っています。』

じゃあこんな強い「ベタ降り」メッセージ出すなよ。

『もっとも、最近の内外の金融資本市場の動きは極めて急激ですので、その動向や経済・物価に与える影響について、極めて高い緊張感をもって注視し、政策運営において適切に対応してまいります。繰り返しになりますが、当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要があると考えています。』

現在の水準、が余計にもほどがあるわけで、見通し通りに推移したら実質金利のマイナスがまた深まるから利上げして調整するのは然るべき、と言ってた説明との整合性全然取れていないですよね、という話で、まあこれはひどすぎるコミュニケーションでして、ちょっとお前その場で腹かっさ(以下同文)


・なおこれでまた円安に飛んだりすると三百代言クオリティが炸裂するのは言うまでもありませんのでご注意を

上記の説明、まあメッセージは明らかに「ベタ降り」だし言ってることも中央銀行副総裁としての見識を疑うフレーズがちりばめられている、というとんでもない過去最悪に近いクソ講演なのですけれども、なんだかんだと変な留保条件はちょいちょい入れているのでして、為替に関しても「今は円安が修正されたので懸念した物価上振れリスクが後退した」と言っているだけなので、またぞろ為替が155円だとか言い出したらあっという間に再度のジャガーチェンジをすると思いますし、その時は「あの時点での為替と今の為替は違うんだから言う事が違って当たり前」位のことを平然と説明すると思います(だから最初に「イカサマジジイ」というのを入れたわけです)ので、まあ面白いからちょっと米国で強い経済指標がここからバンバンと出てきてドル円再度160円に向かっていくと滅茶苦茶笑えることになりそうなので(日本経済にとってはただの災厄だが)もう頭きたんでそっちでお願いしますわ、というところですな。


とまあそんな感じですか今回の金懇挨拶。







2024/08/07

お題「短期回りと物国の引けの雑談備忘メモ/今更総裁会見ですが国債買入減額の発言トーンが政策金利と対照的ですね」

ほほう
https://news.yahoo.co.jp/articles/278dbf973ccc19a29f33d97a63bd1d31c741fcce
ひろゆき氏、日銀総裁批判の自民党市議に反論「アベノミクスの尻拭いで叩かれている」石丸氏も市議を挑発
8/6(火) 15:30配信

尻ぬぐいの着手が遅れた、というか就任当初黒田継承みたいなことを大々的に言ったせいで余計な円安を招いた、というのはどっからどうみても植田さんの失敗なのですけど、それはさておきまして「行き過ぎた円安が是正された」(勢い良すぎではあったがwww)のにたいして文句言ってるのはつまり「円安コストプッシュで一般人の生活コストが上がっても株が上がればOK」という格差拡大論者ですってもんですから議員に向いてるのかというとどうなのかね、と思う訳ですが。

しかしまあ何ですな、
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA062II0W4A800C2000000/
株価乱高下で月内に閉会中審査 植田日銀総裁の出席要請
政治
2024年8月6日 11:46 (2024年8月6日 20:04更新)

閉会中審査して何の意味があるんだ馬鹿としか言いようが無いのですが、まあ立憲がドヤ顔でこういうのをやれって言ってるんだからその逆が正しいということですwwwwww

てかね、過去最大の下落率だった1987年のブラマンってその後政府日銀がビビって金融緩和を無駄に長く続けてしまって、その後の取り返しがつかない資産バブルを発生させてその崩壊でワシら長年にわたって困っている訳で、今回の値動きでビビって無駄に緩和状況を長く続けることによって同じことが起きたら斬首もんだぞとしか申し上げようがないし、さすがにそれは「利上げのトラウマ」が裸足で逃げ出す日銀の痛恨の大失敗だというのは植田さんが分かっていない訳はないので、そこは真の植田和男に戻った植田さんに期待するしかありませんな。


〇特会6Mは年内利上げを織り込まず(?)&物国とかその他少々

・交付税特会6M

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result240806.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果(令和6年8月6日入札)

『本日、一時借入金の入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.借入根拠法律及びその条項
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第15条第1項

2.借入日      令和6年8月15日
3.償還期限     令和7年2月14日
4.償還方法    令和7年2月14日に一括償還

5.借入利率競争入札について  
(1)応募額        5兆3,055億円
(2)募入決定額     1兆2,490億円
(3)募入最高利率      0.293%
(4)募入最高利率における案分比率   35.7143%
(5)募入平均利率      0.259%』

今回はまだ目線が定まっていないのかテールが出る珍しいパターンでしたが、今回の0.259%平均ってのを期間分解した場合、12月会合のところで切って手前を0.25%にしても後ろは0.28%弱でして、これは全然年内利上げを織り込んでいないレートでして、。1月会合のところで切って同じ計算をすると後ろは0.33%弱になりますので、1月利上げは4分の1くらい織り込んでいる、というレートになりますな。

最高利回りの方の0.293%で計算すると、12月会合のところで上記のように分かち計算をすると後ろの利回りが0.39%弱なので、12月の利上げを半分くらい織り込んでいる計算、1月決定会合のところで分かち計算すると後ろの利回りが0.62%ちょいとなりまして、1月利上げはフルに織り込んでいます、というレートになっております。

まあ特会入札自体がマイナーではあるのですが、短国みたいに謎の(謎じゃないけど)需要によってアホほど買われてしまっているのを見ても織り込みが読めないし、参加者限定市場(市場なのか??)なので追い風参考記録みたいなもんでございますが、まあいずれにしましてもこっちの方が結構いい感じの数字を出してていまして、昨日の入札のこの平均落札と最高落札のレートを手前0.25%で後ろはいくら??方式で分解すると味わいのある結果になったなあ、と思いますので、だからどうしたというツッコミがありそうですが(汗)そんな感じでしたという備忘メモ。


・東京レポレートは手前が低いのが気になるんですよねー

毎度のこれ
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

       O/N  T/N  1w  2w  3w  1m  3m  6m  1y
2024/8/1 0.166 0.200 0.186 0.186 0.187 0.189 0.202 0.244 0.317
2024/8/2 0.220 0.228 0.192 0.192 0.191 0.192 0.203 0.254 0.332
2024/8/5 0.051 0.147 0.162 0.171 0.179 0.184 0.201 0.254 0.329
2024/8/6 0.046 0.115 0.154 0.165 0.172 0.175 0.200 0.254 0.328

とまあそんなわけで、手前のGC(とか短国現先)ってやたら低くて、まあこの辺はやはり玉無し芳一という話ではあるんでしょうけれども、日銀は確かにコール無担保を誘導目標に使っているから知らんがな、と言ってしまえばそれまでなんですが、GCの利回りまで(足元から1wにかけて)下がってしまう、という流れになってくると、これは「政策が意図している金融緩和の調整」が本当にできているのか、という問題につながってくるとしつこく言い続けるわけで、無担保コールをでくれくてぃぶにするのはまあいいけど、他の金利は知らんがなで良いのか問題は今後積極的に問題視していきたいもんですわ、と思いますです、はい。


・物国ワロタなんじゃこの値付けは

月曜の引けが余りといえば余りだった物国ちゃんですが、昨日もなんか変なことになっておられましてですね。

いつもの売参から
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

月曜日の引けはこのようなすさまじい逆行安になっておられました物国ちゃんですが

物価連動国債 28 2033/03/10 平均値単価 102.35 前日比 -245
物価連動国債 29 2034/03/10 平均値単価 101.95 前日比 -285

長期国債 370 2033/03/20 0.5 平均値単価 98.97 前日比 +175
長期国債 374 2034/03/20 0.8 平均値単価 100.58 前日比 +182

昨日の引けはほらご覧の通り

物価連動国債 28 2033/03/10 平均値単価 104.85 前日比 +250
物価連動国債 29 2034/03/10 平均値単価 104.65 前日比 +270

長期国債 370 2033/03/20 0.5 平均値単価 97.98 前日比 -99
長期国債 374 2034/03/20 0.8 平均値単価 99.42 前日比 -116

・・・・・・・・・・いや何なのこの値付けって感じでして、平均株価連動で値付けでもしてるんですかおまいらという感じですわな。いやまあ物国とJ-REITは何とかショックみたいなときに流動性が低いからとかいう理不尽な理由で理不尽に売られるカテゴリーの商品ではありまして、コロナショックの時とかも物国はフロアあるはずなのにBEIがマイナスになってみたり、J-REITは飛んでもない勢いでたたき売られていたりしましたが、1日にして戻るってのも(普通国債の金利が下がっている分があるからBEI的にはBEI縮小になっているけど)何ですかこいつはという訳ワカメ相場になっておられました。ナンジャコリャ以外の感想が沸かない・・・・・・・・・・・・


〇さて本日は内田副総裁の金懇挨拶がありますな

https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/7N34NMSFBFP2NBX3AGNWKC7DSQ-2024-08-02/
日銀の内田副総裁、7日に金融経済懇談会 函館市で
By 和田崇彦
2024年8月2日午後 5:33 GMT+9

ところで日銀のHPでは

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・記者会見・談話

の『今後の講演・挨拶等の予定』を見ても何もなし、

https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm
公表予定

を見ても何もなし、ということで、おまいらコミュニケーションを真面目にやるきあるのか、というのは相変わらずですわなという感じですが、まあ今日の金懇でどの程度のトーンで話をしてくるか、によっては1987年ブラマン以降の再現もあるでとかそういう話になる(とは言いましても、あんまりハトハト情報発信をすると円安が再燃して元の木阿弥になる上に円安はいかんがねという話が復活して利上げになるという説はあるが、まあ何はともあれ確認ではありまする。


〇なんか足元の相場大暴れで過去の話っぽくなってしまいましたが植田総裁会見の続き

まあ8月1日からこの方いろんなものがバッタバタでなかなか追いつかなくてすいませんすいません

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240801a.pdf
総裁記者会見
――2024年7月31日(水)午後3時30分から約65分

今日は国債買入減額に関連する質疑を確認するわけですが、

・国債買入減額の説明は6月会合で威勢の良い事言ってたのと比較してよわよわ

『(問)幹事社の方から質問させて頂きます。一問目が、説明にもありました長期国債の買入れ減額についてです。7 月 9 日、10 日の債券市場参加者会合の参加者からは、減額の幅やペースについて幅広い意見が出ましたが、この内容をどのように踏まえて今回の決定に至ったのか、そのプロセスについて、可能な範囲でもう少しご説明ください。(後半割愛)』

『(答)最初のご質問ですけれども、債券市場参加者会合では、国債買いオペ減額の幅やペース、買入れ金額の示し方、臨時オペ・指値オペの位置付けなどについていろいろご意見を頂きました。頂いたご意見は、今回の減額計画にも反映されています。』

確か買入ゼロにしろとか、イニシャルでどどーんと減額してその後はいったん様子見の方が却って市場機能回復が早くなる、というような意見もあったはずだが反映されている気がしませんなwwww

『すなわち、先行きの国債買入れの予見可能性を求める声が強かったということを受けまして、』

なんでしょうね、「反映されています」とか説明しなくて良いわけでして、「頂いた意見を踏まえて検討したらこうなりました」という説明で良いと思うんですけど、なんか知らんけどこの長期国債買入減額問題に関しては、「会合の開催そのもの」もそうなんですけど、この計画に関しても日銀が自分の判断で決めている筈なのに、やたら市場の意見がどうのこうのというトーンでの説明がずっと続いている訳でして、この点に関しては、綺麗に言えば「市場との対話」ということなんでしょうけれども、意地の悪いアタクシから見ますと「市場に責任転嫁する日銀のスーパー保身ムーブ」に見えてしまうんですよね、というか6月会合でそういうツッコミ思いっきり日経新聞を含む複数の方に突っ込まれていましたがwwwww

『一つには 2026 年 3 月までの各四半期毎の買入れ予定額を具体的に示すということにしましたし、また、残存期間別等の買入れ予定額についても、レンジではなく、ピンポイントで示すことにしました。』

『一方で、市場参加者からは、先行きの市場環境等についての懸念も少なからず窺われました。』

ゼロにしろとかドドーンと減らせ、と言ってた人たちもいたんですが、そっちの人たちからしたら「買入減額が足りないことへの懸念」になるはずなんですが、この表現だとまるで買入がやりすぎの方に関する懸念について言及しているように見えます。

『この点も踏まえ、中間評価の実施など、国債市場の安定に配慮するための柔軟性も確保することと致しました。』

ということですが、何回か申し上げているように「国債市場の安定に配慮」という言葉で今まで日銀は散々市場介入をして、出口に近づく中でアホみたいに買入を積み上げまくってしまった、というのがあるわけでして、この説明だと6月に言ってた「減額するなら相応に」とかいうのはどこに逝ったんだ、という話になりますな。

『このように、市場参加者の意見を丁寧に確認することで、市場の現状と先行きを踏まえた、しっかりとした減額計画を決定することができたと考えています。会合に参加頂いた市場関係者の皆様には感謝申し上げたいと思います。(後半割愛)』

あの及び腰の計画のどこがしっかりした計画や、と思いますがまあそれは個人の感想ということで。


・バランスシートの規模を語る時のトーンが政策金利を語る時のトーンと明らかに違う件について

将来の日銀バランスシートに関する質疑もありまして、

『(問)(前半割愛)もう一つが将来的なバランスシートについてお伺いします。今回の減額は、特に資産側、金融機関の国債の買入れ余力の見極めを重視したというふうに認識してます。一方で、その残高のゴールがなかなか見えない中で、将来的に資産・負債サイド、どういった点に着目して目指す残高を決めていきますでしょうか。総裁のお考えをお伺いできればと思います。』

これ毎度思うんですが、マクロ的には日銀が国債買入しなくったってどこかで回る筈で、それが懸念だの何だのって言われるのは、「国債の金利水準がリスクに見合ったリターンになっていない」ということに尽きるわけで、つまりは金利水準が解決する話だし、それでは財務省が困るから日銀は大量購入を続けるべき、ってのはまんま財政ファイナンスであって、ムガベ大統領状態だろとしか言いようが無いのですけどね。では回答。

『(答)(前半割愛)それからバランスシートの大きさですけれども、国債の保有残高ということで言いますと、約 2 年後に私どもの試算では、今回の計画によって 7〜8%程度減少するというふうに考えています。ただ、これはまだおそらく長期的に望ましい水準よりも高い水準であるというふうに思っています。』

高いじゃなくて「きわめて高い」だろうがこのボケナス。

『そのうえで長期的に望ましい水準がどの辺かということは、他の中央銀行もそうですけれども、現在、量的緩和の後、皆さん模索状態にありまして、私どもとしても、海外の例も参考にしつつ、だんだんと見極めていきたいというふうに考えています。』

とありますように、んなもん1割減っても超越過大なバランスシートだというのにお前は何を言ってるんだというお話をしている訳ですよね。

一方で(もうだいぶ前にネタにしたような気のする時間帯ですが)総裁会見における政策金利水準のお話は、ネタにしました通りで「実質金利は大きなマイナス」だし「中立金利とみられるレンジの下限に到達するのも何回かの利上げの後」というように、やたら威勢よく「長期的な政策金利水準と今の政策金利水準の乖離」について植田総裁は説明していたわけでして、この差は何なのという位に大きなトーンの差を感じます。

まあこの点に関しては政策金利に関しては植田さん学者ですからそういう話は身近なのに対して、このクソのように聳え立つ長期国債買入残高と日銀の巨大なバランスシート、ってのは、ムガベ大統領みたいな例外をさておきますと、経済の主要国では今まで見ていなかった物件なので、そういうものに対しては未知のものコワイヨーって話なのかもしれませんな、とは思う訳ですが、それにしても及び腰感が強いですよねこの言い方も。


ということで、植田総裁金利に関しては威勢の良いトーンだったのですが、国債買入に関しては6月に大口叩いていたほどのトーンがない、というのが目立ったなと思います。

・・・・まあ何ですな、これに関しては利上げをぶっこんだので、長期国債買入減額に関してはトーンダウンしておこう、というバランスでやっているのかなあ、とも思うのですが、今回の利上げってまあ直前(前日夜中から朝の報道は除きまして)まで「あっても不思議じゃないけどあるかどうかはよくわからん」みたいな感じになっていましたので、あれはまあサプライズではなかったにしましても、6月の会見の時のトーンは「輪番減額をドンとやるのが7月会合」って線で説明していた訳でございまして、まあ利上げ自体はアタクシやったこと自体は高評価しているのですが、それにしましても、6月会合の会見での説明だと減額がメインテーマのはずがどうしてこうなった、というのは不可解で、そういう辺りが今の日銀のコミュニケーションを訳わからなくさせている背景にあるんだと思いました。








2024/08/06

お題「相場記念メモ/まあ相場もクソ動いたので政策コミュニケーションに関する雑談でも」

アメリカンってのは集団馬鹿か集団発狂でもしているのかと
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/5YV3A7EQLJKEDDNISC5CVV6X5M-2024-08-05/
米金利先物市場、9月FOMC待たず緊急利下げの観測高まる
By ロイター編集
2024年8月6日午前 4:25 GMT+9

『[ニューヨーク 5日 ロイター] - 5日の米金利先物市場で、米連邦準備理事会(FRB)が9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を待たず、月内にも緊急利下げに踏み切るとの観測が高まっている。』(上記URL先より)

なんかとんでもない大災厄が起きたとか明日にでもリセッション入りするとかなら話は別ですが、コロナショックの時だってコロナ問題化から1か月近く引っ張って突如急に動き出した、というFEDが何が起きたわけでもないのに緊急会合して利下げするとかどういう発想なんだか。米国の街中に失業者があふれて大変な騒ぎになっているとかそういう話一切聞いてないんですけど。

〇いやーしかし無茶苦茶な動きをしましたなあ(記念メモ)

・株式市場ェ・・・・・

https://jp.reuters.com/markets/quote/.N225/
日経平均 .N225
直近の取引 31,458.42
変化 -4,451.28
変化 -12.40%

こりゃまたよーさがりましたな、と思いましたがちょうどロイターちゃんもチャートを1年で出しているのですが、これ結局のところ昨年11月とかに「マイナス金利解除近い」で盛り上がっていた時期まで戻った、というだけのお話だったりするのですな。まあ新NISAでインフレ時代に備えようって突っ込んだ皆様におかれましてはご愁傷様としか申し上げようがないですが、気を失っていればそのうちなんとかなるんじゃないですかねえ(ただし長期間必要だと思うので気を失っているうちに寿命が来そうなジジイは残念無念)知らんけど。

なお、
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through
先物価格情報

日経225先物
限月 24年9月限
取引日 08/06 日通し
始値 31,690 (08/05)(16:30)
高値 33,830 (08/06)(01:27)
安値 31,140 (08/05)(21:21)
現在値  33,030 (08/06) (04:47)

前日比 +1,650 取引高 61,106

とか何とかいう大変にチャーミングな反発を示しておられまして、いやまあそりゅあそうじゃろという感じでして、何もこの世の終わりみたいな売り方をせんでもよろしかろとは思いました。まあビックリしたけど。

これでスターリン暴落が下落率で歴代5位まで下がってしまったのが何とも。ちなみにアタクシちょっと資料をどっかにやってしまいましたが、スターリン暴落の日の日経の市況面が物凄い煽りタイトルだらけで中々下品でよろしいので昔の日経縮刷版を図書館などで探すと面白いですよ。


・債券市場なのですがいやお前ら金利水準というものを考えて踏みあがれと

債券先物ちゃん。

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 24年9月限

取引日  2024/08/05
立会区分 日中取引

始値  144.81(08/05)(08:45)
高値  146.14(08/05)(09:32)
安値  144.78(08/05)(08:45)
現在値 146.06(08/05)(15:02)

前日比 +2.26
取引高 49,683

ということで226銭高とかいうとんでもないことになってしまいましたが、これ先物だから7年なのですけど、7年チーペスト(10年364回)の利回りって単利で0.475%、複利で0.470%になっていまして、いやお前ら向こう7年間で政策金利が0.50%にならんとでもいうのかというお話ですが、まあそれを言い出すと5年カレントとかもひどいもんで・・・・・・

いつもの売買参考統計値
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

まあいろんなもんがアレでして、

先物チーペストすなわち7年金利

長期国債 364 2031/09/20 0.1:平均値複利 0.470 平均値単利 0.475

って先ほど申し上げた通りの利回りなのですが、5年カレントが

中期国債 170(5) 2029/06/20 0.6:平均値複利 0.363 平均値単利 0.360

って0.5%までは普通に利上げしてきそうな説明(まあ日銀のことですから今回のムーブでまたションベンチビッテびびりんちょと化して植田和男先生がまたハトハトチキンおじさんに戻ってしまうのではないかという懸念が大いにあるのですが・・・・・・)してたのに5年金利でこのストロングな利回りとか草も生えません。


しかしまあ何ですな、引値といえば短いところの短国が(あまりにもクソ短いのはさておきまして)

国庫短期証券1233 2024/08/26 平均値単利 0.100
国庫短期証券1234 2024/09/02 平均値単利 0.100
国庫短期証券1236 2024/09/09 平均値単利 0.100

ってなっているんですが、この辺って弊駄文が利上げ直後から指摘しておりましたように、前日の売買参考統計値って8月償還で0.190%、9月償還で0.180%とかいういやそれは無いだろうという引値を出していまして、しかも金曜日に3M新発TDB入札が平均0.121%という利回りで決着してその時点で既に短国のニーズが強いのが分かっているのに、2日の引値が上述のような変な値付けになっていまして、昨日になって急に9毛強だの8毛強だのとか値付けしているんですけど、いいからお前ら真面目に値付けしろという話で、債券市場の市場機能回復ってのにはこういうのも含まれているんだぞと思う次第でありまして、関係各位の猛省を促したいところであります。


・短国とかもなかなかのアレでして

短国の短いところが8毛強だの9毛強だのになっているのはこれはそもそも論としてその前の値付けに疑問が大いにあった、ということでまあ外れ値なんですけど、ゆうて3Mとかもこういうリスクオフ祭りになりますと、とりあえず短国に逃げておく系のニーズが発生してしまいますので、金曜の入札で0.121%つえええよ、と思ったものの引値は何とか0.125%(どうせビットサイドでしょうけど)で踏みとどまった新発3Mちゃんですが、

金曜日
国庫短期証券1247 2024/11/05 平均値単利 0.125

月曜日
国庫短期証券1247 2024/11/05 平均値単利 0.070

・・・・・お、おぅ

またも利上げが何ぼのもんじゃいというレートになりやがってしまいましたが、 こちらはリスクオフ祭りの避難マネーが流入してきているのでシャーナイナイではありますけど、7bpって何だよそれって利回りでして、日銀が買入を減らすと国債消化がどうのこうのとか言ってますけど、その一方で何か起こると短い国債の需給がこんな状態になってしまう訳でして、現実問題として「国債」自体は不足している訳ですので、発行サイドも国債発行を思い切って短期化する(発行する側としてはあんまり短期化したくないでしょうけど)とか考えた方が良いのでは、って思ってしまいました。まあ一昔前と違ってやれ流動性規制だやらIRRBBだとリスクを取らせないように金融監督の方が進んでいますので、それによる短い国債へのニーズってすごい増えている筈なんですよね。まあ今回のリスクオフ局面でもろによくわかったなと。


しかし地味に派手な引値だったのがこちら。

物価連動国債 28 2033/03/10 平均値単価 102.35 前日比 -245
物価連動国債 29 2034/03/10 平均値単価 101.95 前日比 -285

長期国債 370 2033/03/20 0.5 平均値単価 98.97 前日比 +175
長期国債 374 2034/03/20 0.8 平均値単価 100.58 前日比 +182

まあ物国って国債のくせに流動性が低い金融商品でして、「リスクオフで売られるときは流動性の低い金融商品が自動的に売られる」の法則があるというのはわかるんですけど、単価ベース(連動係数の話は置く)で普通国債対比4円逆に行くのはさすがに何だよという話で、いやまあ昨日の株価の下げ方はコロナショックとかリーマンショックとかそういう世界ではございますけど、何がどうなっているのやら。


・・・・・・とまあ訳の分からん値動きだったり、値動きの訳は分かるのだが水準は何なんのよという値動きだったり、まあそうかなーって値動きだったり、リスクオフ相場の怪奇現象をいろいろとみせられておとーさんは月曜から疲れてしまいましたわよwwwwwwww


なお、株価指数先物がもどっておられるようですので債券先物ちゃんも70銭くらい下がっておられるようでして、なんかまあ今日も今日とてバタバタしそうではありますな。


〇しかしこうしてみますと「12月解除、4月利上げ」でしたなあと思う訳で

さっき「株価下がったといっても結局は去年のマイナス解除あるでと言ってた頃じゃん」というのはまあこの雑談に繋がるのですが。

そもそもですね、昨年12月ってその前に「さすがにマイナス金利解除いけるじゃん」という話になっていて、それこそ氷見野副総裁の金懇での話など、いかにもやるんじゃないか、というような流れだったのに、国会で植田総裁が口が滑って威勢の良い事いったらハレーションが起きてしまって、それにビビって急に12月会合でそれまでの話を無かったことにする、というハトハト情報発信を行った訳ですな。

まあその後は1月会合で急にそれをひっくり返して3月おあ4月解除予告みたいな感じになって3月のマイナス金利YCC解除につながったんですけど、まあ後付け軍師にもほどがありますけれども、こうなってしまいますとやはり米国が利下げ局面入りする前の段階で初回利上げに着手すべきだったし、マイナス金利YCCをあの時の流れのまま12月に解除して、賃金を確認して4月に利上げしておけば、今回変な貰い事故にならずに済んだとしか申し上げようがない、後付けで何言ってもしょうもないんですけど。

だいたいからして12月の植田国会発言→火消しで12月にハトハト発信、の辺りから(まあ正確には植田総裁就任以降ずーっとですけど)日銀の説明っておかしくて、片側の示唆をする→ハレーションにビビってその逆の話をする→ハレーションにビビって以下同文、ってのを繰り返しながらマイナス金利YCC解除と今回の利上げをぶっこんでいる訳でして、3月の時は仕方ないにしても、その後4月の情報発信がハトに寄りすぎて過度な円安を生させ、そのために過度な株高を発生させて、今回の利上げもある程度織り込んでいたとは言え、4月以降の説明が「展望レポートに書かれている先行き政策運営の書きっぷりだと次回展望レポートで利上げなのに、会見でもその後でも植田さんの説明が全然利上げをやりそうもない説明だった」というのがアカンタレだった訳ですな。

これはまあ今の日銀が変なところで器用(個人の感想です)なのが良くない方向に作用しているとあたしゃ思うのでして、そもそも「経済物価情勢を見ながら適時適切な政策を実施します」というような感じである種頭の悪い説明をしておけば良いのに、一々説明しようとするからその場その場の状況で説明がフラフラとしてしまうし、おまけに(今回の会見ではその点改善されましたが)植田さんが国会にしても会見にしても、本人は丁寧に説明しているつもりなんでしょうけど一々余計なことを言って話を混乱させるという困った芸風を確立させているのがやばいわけですな。

今回だって先般の総裁記者会見における「政策金利」の部分をネタにしたことで分かりますように、日銀としては円安圧力を止めたかったんでしょうけど、政策金利についてずいぶん威勢の良い話をしておりまして、まああの説明をゴリゴリ詰めると「10月展望の時点で経済物価情勢、なかんずく物価情勢がオントラックなら再利上げ」になってしまう説明を堂々としていた訳ですが、この株安円高(140円とか割と快適な水準に戻ってきたのでめでたしめでたしだと思うけど速度がw)を受けて日銀ちゃんお得意のションベンちびってハトハト情報発信をしてくると、益々「結局日銀の政策反応関数が読めない」となってしまいますので、まあどうなるのやら、明日内田副総裁の金懇だか何だかがあるような報道があった(ただし日銀のHPにはなんも書いてない)ので、楽しみに待ちたいと思います。


〇しかしコミュニケーションといえば今回って「実質金利はまだまだ無茶苦茶低い」って言ってますが・・・・・

今申し上げましたように、先日ネタにした通りで、今回って日銀は思いっきり「実質金利が物凄くマイナス」って話をしていて、だからこそ次回の利上げも全然アリエール、という情報発信に繋がっていて、まあそれはその通りではあるんですよ。

ただね・・・・・・・・・

5月8日読売国際での植田総裁講演
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240508a.htm

『先行きの金融政策運営

先行きの金融政策については、毎回の金融政策決定会合で経済・物価の見通しやリスクを点検したうえで、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、適切に運営していく方針です。

そのうえで申し上げますと、先行き、見通しに沿って基調的な物価上昇率が高まっていけば、「物価安定の目標」実現の観点から適切となる金融緩和の程度も変化しますので、緩和度合いを調整していくことになると考えられます。また、経済・物価見通しやそれを巡るリスクが変化すれば、当然、金利を動かす理由となります。』

とまあこれは直前の4月展望レポートの金融政策運営部分に記載されている話なのですが、

『この点、先ほども申し上げたとおり、物価を巡るリスクが上下双方向に引き続き大きいことは認識しておく必要があります。仮に、物価見通しが上振れたり、あるいは上振れリスクが大きくなった場合には、金利をより早めに調整していくことが適当になると考えられます。』

といった口から、

『一方、見通しが下振れたり、下振れリスクが高まった場合には、現在の緩和的な環境をより長く維持していくことが求められます。また、経済・物価に対する大きな下方ショックが生じるような場合には、必要があれば、これまで用いてきた様々な非伝統的な手段も含め、あらゆる手段を予め排除することなく、対応を考えていくことになります。』

ってまあ思い切り両論併記でして、今回の利上げにあたって言ってた「上振れリスクが大きい」みたいな話はなかったんですね。まあこれは5/8だからちょっと前、と言ってしまえばそれまでなんですけど、1年前の内外情勢調査会で「待つことのコストは大きくない」って言ってた発言を明示的に否定しているわけでもないし、そこまでの流れから言ったらまあ普通にこれハトハトに見えてしまう訳ですよ。

さらに5月27日での金研国際コンファランスでのスピーチでは
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240527a.htm

『3.今後の課題

それでは、今後の課題を簡単に述べたいと思います。日本銀行の目標は、2%のインフレを持続的かつ安定的に実現することです。これまでのところ、インフレ予想をゼロ%から押し上げることには成功したように思いますが、それを今回は2%の目標値にアンカーしなければなりません。日本銀行は、インフレ目標の枠組みを有する他の中央銀行と同様に、その実現に向けて注意深く進んでいくつもりです。日本銀行が直面する課題の多くは他の中央銀行が直面したものと似た側面を有していますが、いくつかの課題には日本に特有の難しさもあります。

そうした課題のうち主要な一つが、自然利子率(r*)をできるだけ正確に把握することです。その正確な計測は、どの中央銀行にとっても容易なことではありませんが、過去30年間の長きにわたって短期金利がほぼゼロに張り付いてきた日本では、特に難しいことです。実質金利は多少なりとも変動してきたとはいえ、金利変動が乏しいもとでは、金利変動に対する経済の反応度合いを計測することには相応の難しさがあります。』

前半はともかくとして、後半でRスターの話、すなわち実質金利論の話をしているわけですが、この時点で植田総裁は「Rスターはわからん」とまあそれはそれで事実なのですが、そういう話をしていた訳でして、それが7/31には「今の実質金利はとってもマイナスですし多少利上げしてもマイナスですよ」って言ってしまうってのは、まあ日銀に言わせれば「計測は難しいけど今の実質金利が大変にマイナスであるのは事実でしょ」って話だと思うのですが、植田さんのこういう説明の際に少しでも「自然利子率の測定は特に直近過去の事例に乏しい日本では難しいものがありますが、現在の金利水準で見た場合に実質金利が大幅にマイナスの領域にあるのではないか」位の事を言ってほしいわけでして、そういうのなんも言わないでいきなり7月に変なもの食ったのかという位に真人間に戻られましても、そりゃ植田さんの言ってること真に受けてたら痛い目に遭うわ、としか思えない人の方がドンドン増えるわけで、もうちょっとコミュニケーションというか説明の仕方を何とかしてほしいと思います。



〇6月会合議事要旨はまあ後付け感が漂うのでアレですけど

決定会合レビューが全然終わっていないのですがさきにこっちを簡単に成敗
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240614.pdf
政策委員会金融政策決定会合議事要旨
(2024年6月13、14日開催分)

『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』をちょっと確認しておきましょう。

・6月会合後はいろいろと積極的な話の方が多かったとはいえ・・・・・・

『先行きの金融政策運営について、委員は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく との考え方 を共有した。そのうえで、委員は、「展望レポート」で示した経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになるほか、経済・物価見通しが上振れたり、見通しを巡る上振れリスクが高まったりする場合も、利上げの理由となるとの認識を共有した。』

これ自体は6月会合後に強調されていましたが、そもそもは4月の展望レポートの時点で書かれていた話でして、4月の会合って展望レポートの先行き政策の話を見ると7月に利上げをしてもおかしくないロジックで書いていたのに、会見がご案内の通りのハトハトで一段の円安を招いた、という代物だった訳でして、結局こういう話になるんだったら、4月会合の植田総裁の説明が不適切だった(両論併記で余計なこと言いすぎ)という話だし、その後の政策委員における金懇などの情報発信で軌道修正を早めに見せるべきだったという話。まあ要するにコミュニケーションが今回は悪い。

『この点に関連し、一人の委員は、見通しに沿った物価の推移が続く中、最近のコストプッシュ圧力の再度の高まりを背景とした価格転嫁が進み物価が上振れる可能性もあるだけに、リスクマネジメントの観点から金融緩和の度合いを更に調整することの検討も必要であると指摘した。』

キタコレ。

『別の一人の委員は、物価について、来年度後半の2%の「物価安定の目標」の実現に向けて想定通り推移しているが、上振れリスクも出てきているとの見解を示した。そのうえで、この委員は、こうした点が消費者マインドに影響していることも意識しつつ、次回会合に向けてもデータを注視し、目標実現の確度の高まりに応じて、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げることが必要であると述べた。』

田村さんだけだと思ったらもう一人いたんですね6月会合。でもってこの人が指摘しているように、「上振れリスクが消費者マインドに影響」なんですから、利上げをちゃっちゃとするのは適切という話をしていますね。まあその通りというか既にこの時点で「遅きに失していた」という感じだし、6月に輪番とか言ってないでちゃっちゃと利上げすべきでしたなあ。

『また、ある委員は、政策金利の変更について、消費者物価が明確に反転上昇する動きや、中長期の予想物価上昇率の上昇などをデータで確認したタイミングで検討することが適切であるとの見解を示した。』

慎重派その1なのですが、ただでなくさえ2%超なのに「明確に反転上昇する動き」が出たらそれは節子望ましくない上振れや、という話なのでこういうのは何なんだよとおもってしまいますな。

『一方、一人の委員は、個人消費が盛り上がりを欠く中、一部自動車メーカーの出荷停止という想定外の事態が続いていることから、これらの影響も確認する必要があると指摘したうえで、当面は現在の金融緩和を継続して企業の前向きの構造改革を後押しすることが適当であるとの見解を示した。』

どうせ企業の前向きの構造改革云々だから中村委員なんですけど、自動車メーカーの云々って話、これ影響を確認したい気持ちはわかるんですが、そんなことを言い出したら何でもかんでも確認をしないといけなくなる話な訳で、単に動かない言い訳にしかなっていないんですよねこれ。

つまりですね、この手の事案に関しては「その事案がワンオフの事案なのか、それとも長期的に影響あるいは二次的な波及効果がある事案なのか」という点からまずは考える話であって、そう考えるとこれはワンオフ事案に寄っていませんかね、というお話になると思うんですよね〜


・為替円安の影響に関してこんなに話をしてたんだったら・・・・・・

『委員は、為替円安と金融政策運営との関係についても議論した。』

ってのが次にありまして、

『まず、委員は、最近の為替円安の動きについて、物価の上振れ要因であり、金融政策運営上、十分に注視する必要があるとの認識を共有した。』

4月決定会合の植田発言は何だったのかと小一時間問い詰めたいwwwwwwwwwwww

『一人の委員は、為替円安は物価見通しの上振れリスクを高める要因であり、国内物価へのパススルーが強まっていることや、現実の物価が2%を超えていることを踏まえると、物価の上振れリスクが顕在化した際に生じ得る損失も高まっていると指摘した。』

さらにこの人が主張しておりまして、って1名の意見なのに取り扱いが長いなおい。

『そのうえで、この委員は、リスクマネジメントアプローチに立って考えれば、リスク中立的な、適切な政策金利の水準は、その分だけ引き上がると考えるべきとの見方を示した。』

はい。

『別の委員は、円安観測の強まりなどが、企業行動や株価に及ぼす影響も重要であると述べた。』

ほう。

『ある委員は、為替相場の変動は経済活動に幅広い影響があるほか、ファンダメンタルズから乖離した水準が続けば国民経済の健全な発展にも影響が及ぶとの認識を示した。そのうえで、この委員は、金融政策は、為替相場だけではなく国民生活や経済活動の幅広い側面に影響するため、経済・物価情勢の全体像をみて運営していく必要があると付け加えた。』

ときてから最後に

『別の一人の委員は、為替は物価に影響を及ぼす要因の一つではあるが、金融政策運営は、物価の基調とその背後にある賃金動向を見極めて行うものであるため、為替の短期的な変動に左右されるべきではないとの見解を示した。』

原則論はそうなんだが為替の短期的な変動で済まされる動きじゃなかったですからねーーー。

ってかですね、こんなに円安懸念してるならもっと事前に言えよとしか言いようが無い・・・・・・・





2024/08/05

お題「ゆうて3月前に戻っただけの話ですが/国債買入はチキンベース/3M短国入札・・・・・」

いやー土日になんか更新するとか申しておりましたがショパンの事情によりまして特に大したこともできませんで更新もせず、と大変に失礼いたしました。

〇雇用統計ェ・・・・・・・・・・

おやおやまあまあ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-02/SHLX2EDWLU6800
【米国市況】円が146円台に上昇、弱い雇用統計で株急落−金利低下
Rita Nazareth
2024年8月3日 5:52 JST

→円は対ドルで一時146円42銭まで上昇、週間では約4.6%高
→ナスダック100は「調整局面」入りの定義と整合、VIXも大幅上昇

これは盛大な振り落としキタコレですなあ。

『2日の外国為替市場では、円相場が対ドルで大幅高となり、146円台に突入した。米雇用統計が弱い内容となり、景気悪化への懸念が増大。米金利が急低下し、ドルへの売り圧力が強まった。』(上記URL先より、以下同様)

いやー利上げしておいてよかったですねえ植田さん(というかもっと早くやっておけば良かったんですけどね)。

『円は対ドルで一時、2%高の146円42銭に上昇し、2月以来の高値をつけた。これで4日連続で上げた。米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比11万4000人増と、伸びは予想中央値の17万5000人増を下回った。失業率は4カ月連続で上昇し、4.3%となった。』

なのはまあ良いんですけど、

『金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は年内4回の0.25ポイント利下げを織り込んでいる。先物相場では9月会合を待たずに緊急会合を開催して利下げするとの見方も浮上している。』

『米国債はこれで7営業日続伸。市場は今年1ポイントの利下げを完全に織り込んだ。』

『金利の動きに敏感な2年債利回りは一時31ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。全年限で利回り低下幅は16bpを超え、指標の10年債利回りは約3.8%まで下がった。』

ちょwwwwおまwwwwwwwなんちゅう極端なアメリカンwwwwwwwww

まあしかしその記事にあるナスダック100のチャートとか見ると、直近如何にアホみたいに上がっていたかという話のような気もするので、何が何やらわからんですが、だいたいアメリカン市場の場合近年の傾向ってあくまでもアタクシの個人の感想ですが、債券市場が一番極端なアホムーブをかましてて、株式市場見ている方がまだ反応が普通だと思っておりまして、正直米国債券市場は頭のネジ外れている(というかどうせAIとかいう知能指数の低い馬鹿がやってるんでしょうけど)と思うので、まあいろんな株価を見ながらふーんと思う方が吉のような気がします、知らんけど。


〇これはなかなか良いグラフ

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240802/k10014532861000.html
円安局面は終わるのか?【経済コラム】
2024年8月4日 1時18分

『先月初めは1ドル=161円台だった円相場。これが1か月近くで10円余り円高ドル安が進み、一時1ドル=148円台に(8月1日時点)。ジェットコースターのような急激な変動の主な要因だったのは、日銀の利上げとアメリカの利下げ示唆でした。日米の金融政策の転換がより鮮明になった今、歴史的とも言われた円安局面は終わったのでしょうか。』(上記URL先より、以下同様)

とありまして、次の小見出しが『ジェットコースター』となってるのですが、

『ドルに対する円相場のグラフを見てみると円の急騰ぶりがわかります。7月上旬は1ドル=161円台で1986年12月以来37年半ぶりの円安水準でした。』

って感じで記事はありますが、そこにあるドル円チャートが「年初来」で出しているのが中々優秀でして、これはつまり年初来円安進んだのが戻っただけの話だよ、というのが示されておりまして、これが煽り記事でしたら6月辺りからのチャートをだすのですが、この辺はさすが公共放送さんきちんと書いてるな、と感心しました。

まあドル円だけ見て語ってもしょうがないちゃあしょうがないですけど、為替に関しては3月のマイナス金利YCC解除に向けてハトハト発信を結果としては過剰にしてしまい、まあその後の解除後の動きを見てもう少し利上げトーンを出せばよかったのに、その後一段とハトハトチキン発信をしていたのが悪くて、あれで過剰な円安を招いた分がやっと戻ってきた、というだけの話ってえのがわかるし、まあ何なら植田総裁就任時のドル円っていくらでしたっけというお話でもあるので、こんなの過剰の修正以外の何物でもないんですが、日銀砲とか言って煽る馬鹿が現れてきますので、そういう意味では馬鹿発見器として今後のインチキ野郎のインチキコメントを見つけてワイの「信用ならない何とかスト閻魔帳」に書き加えないといけませんな、と思うのでありました。


・・・・・という雑談はさておき決定会合レビュー(FOMCはもうちょい後で勘弁、推計3連休で何とかしますわ)はまだ続く。


〇決定会合レビュー:長期国債買入減額は「予見可能性」は高いちゃあ高いのだが

今更声明文だが
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240731a.pdf
金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画の決定について

別紙の方。

『長期国債買入れの減額計画について

長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による長期国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切である。こうした観点から、2026 年3月までの長期国債の買入れは、以下のとおり運営する。』

この「安定に配慮」ってのが何なんでしょうねというのは先日も申し上げた通りでして、過去の黒田緩和、特に後半のYCCでは「市場安定」と言いながら飛んでもない介入をしてしまったのはご案内の通りでして、同じ言葉を使ってるんじゃねえよ思う訳ですよ。

つまりこれ「減額をするのが基本」なのか「国債市場の安定を図るのが基本」なのか、主目的がどっちなのか微妙に分かりにくいわけで、本当に減額を基本にするんだったら「減額するのが基本だが、減額の規模は市場に過剰なストレスを与えない」みたいな「市場が暴れないなら減額はバンバンやっていく」というのをもうちょっと見せても良かったんじゃないの、と思うのですが。

『1.月間の長期国債の買入れ予定額を、原則として毎四半期 4,000 億円程度ずつ減額し、2026 年1〜3月に3兆円程度とする(詳細は、別添)。』

『2.来年6月の金融政策決定会合では、長期国債買入れの減額計画の中間評価を行う。中間評価では、今回の減額計画を維持することが基本となるが、国債市場の動向や機能度を点検したうえで、必要と判断すれば、適宜、計画に修正を加える。また、同時に、2026 年4月以降の長期国債の買入れ方針について検討し、その結果を示すこととする。』

仮に「減額が基本」であり「一方で減額が原因で市場に無用の混乱を与えるのは良くない」という考えなのであれば、本来は「維持することが基本」なのではなく、減額を行ってみて市場が特に問題なく減額を消化する、あるいは減額が足りなくて国債需給がタイトなままということであれば、「1年後は維持ではなくて減額を加速するのが基本」じゃないの、って思うのですよね。

『3.長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。』

やらんでよろしい。

『4.なお、必要な場合には、金融政策決定会合において、減額計画を見直すこともありうる。』

って話なのですが、まあアレです。今回って政策金利に関しては「実質金利は大幅マイナス」とか物凄く威勢の良い話をしていて、この先さらに利上げをしても全然緩和的ですがな、みたいな自信ニキの話をしているのと、こちらの長期国債買入減額に対する話がだいぶ対照的だな、と思う訳ですよ。

まあね、ここまでアホみたいに国債買入を積み上げてしまって、しかも圧倒的なフローでまだ買入をしている、という状況なのに関してってのは、政策金利よりも話が難しいというのもこれまたお話としては分からんでもないところでして、まるで分らんからとりあえず上記のリリースに関しても及び腰っぽい書き方になっているんだろうなあとは思うのですよ。

でもね、さすがに日銀もアホじゃないので今の日銀の保有国債の残高が過剰オブ過剰なのは分かっていると思うので、本来は「減らしても混乱しないんだったら減らしたい」はずなのは上記の文章からも出てきていると思うのですが、とにかく初手は混乱を回避したい、というチキン(気持ちは分からんでもないが)な方が先行しているからこうなっているんでしょうな、ということだと思うのでありまして、輪番が相変わらず長期金利を抑圧していて碌なことになっていない、という認識が広がって固まってきたら1年後には輪番減額ペース加速したっておかしくないよね、とはさすがに思うのであります。まあ1年後世の中どうなってるのかよく分からんけど。


〇3MTDBが利上げとは何かという価格になってしまってますがこれって政策金利との整合性は気にならんのかね

金曜の3MTDBですが、まあ売参WI全然参考になっておりませんで・・・・・・・・・

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240802.htm
国庫短期証券(第1247回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1247回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号     国庫短期証券(第1247回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日     令和6年8月5日
4.償還期限   令和6年11月5日

5.価格競争入札について
(1)応募額           14兆4,252億円
(2)募入決定額     3兆9,473億7,000万円
(3)募入最低価格     99円96銭7厘0毛
(募入最高利回り)      (0.1309%)
(4)募入最低価格における案分比率    44.9889%
(5)募入平均価格     99円96銭9厘5毛
(募入平均利回り)     (0.1210%)』

>募入平均利回り 0.1210%
>募入平均利回り 0.1210%
>募入平均利回り 0.1210%

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(゚д゚)

ちょwwwwwおまwwwwwwコール0.227%だぞ何ぞその乖離はwwwwwwww

と草も生えない結果になってしまいましたが、まあ短国のニーズ自体がもともと強いのと、利上げ後一発目ということもあったのだとは思うのですけれども、それにしましてもGCレートだってちゃんと上昇しているのに、もともと低位の短国の利回りが一番上がらん形になっているのは何ちゅうことやというお話。

まあ0-10の時はその間にいろんな金利が詰まっておりましたのでそこまで派手に乖離していませんでしたけれども、付利金利が25bpになったら思いっきり乖離が目立つようになってきましたな。まあ始まったばかりなのでこれからどうなるかというのがあるので今から決め打ちしてもしょうがないのではありますが、この結構派手な乖離が続くと、「政策金利の調整とは??」というお話になってくる可能性だってあるんじゃネーノという気がせんでもないわけですよ。

すなわち、短期政策金利ってイールドカーブの起点となる翌日物金利を定める、ということで政策金利として存在している訳ですが、国債イールドカーブの起点になっている短いゾーンの国債金利がこの政策金利と乖離してしまっていると、それはそもそも何のために政策金利水準を定めたのか、というお話になってくるわけですわ。だいたいからして現時点でコールレートって日銀当座預金に放り込んで超過準備付利を獲得することとの裁定になっていて、本来的な意味での「金融機関のファンディングコスト」と必ずしも一致していないわけでして、実体経済に影響を与える金利ってのは金融機関のファンディングコストであり、長期金利である、と考えますと、コール翌日物がこの金利だから金融政策運営のディレクティブは達成できている(キリッ)っていう理屈も妙な話じゃなかろうか、とまあそんなことを思うのですけれども、短国のレート自体がここからまあ上がってくればそんな話にも並んで済むかもしれませんのでとりあえず言ってみただけというところです。


ちなみに新発3Mの引けですけれども、売買参考統計値のお告げによりますと、
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

国庫短期証券1247 2024/11/05:平均値単利 0.125

とアベレージより若干甘めになっておりますが、まあこれがマジなのかどうかはわからんけど、さすがに新発だけに板はあるでしょうから板からはそんなに乖離していないと思います。


しかしまあ何ですな、東京レポレートちゃんを見ますと、

https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

今日はご参考に6Mと1Y(などというテナーのGCに流動性あるのか問題はさておきまして)も引用してみますけど、

         O/N  T/N   1w   2w   3w   1m   3m   6m   1y
2024/7/30  0.024  0.006  0.069  0.077  0.080  0.089  0.119  0.156  0.211
2024/7/31 -0.062  0.100  0.110  0.111  0.112  0.117  0.138  0.176  0.230
2024/8/1   0.166  0.200  0.186  0.186  0.187  0.189  0.202  0.244  0.317
2024/8/2   0.220  0.228  0.192  0.192  0.191  0.192  0.203  0.254  0.332

まあタームに関しては一応利上げをちったあ織り込んでいたはずなので、フルスライドで金利上がらんでもええんじゃが、しかし短国とGCの金利差、政策金利が0.25%になったら結構目立ってきましたね、という話でして、超大昔(政府短期証券が日銀引受で市中に現先方式で放出されていた時代)には割引短期国債って恒常的にモノ不足で(海外がリザーブ需要で買うのだが発行が少ないので)常に現先レートやコールレート対比大幅な逆ザヤだったという時代があったのですが、時代がそこまで遡るのかよという世界でして、これちょっと短国増発ってできないもんですかねえとは結構マジで思うのであります。まあ要りもしない金のために国債発行せんわ、と言われたらぐうの音もでませんけれども。


・・・・・ということですいません決定会合レビューとか言いながら決定会合ネタの続きがあまりございません&甚だ簡単で恐縮至極(ショパンの事情によりご勘弁)ということで今朝はこの辺でご勘弁していただきとう存じます。









2024/08/02

お題「BOE利下げ(メモ)/3M短国入札なのでその周りのメモ/総裁記者会見:政策金利の話は極めて明快」

おおお!アメリカン長期金利4%割れでドル円また150円割れ!!!

・・・・・・ということで、この際いったん焼き討ち介入をぶっこむのをお勧めしたいのですが、そんなのはできませんですかそうですか。

〇BOE利下げだが全然見ている暇がないので週末か来週末にでも(メモだけ)

ほうほう
https://www.bankofengland.co.uk/monetary-policy-summary-and-minutes/2024/august-2024
Current Bank Rate
5%
Next due: 19 September 2024

Monetary Policy Summary and minutes of the Monetary Policy Committee meeting ending on 31 July 2024
Published on 01 August 2024
Monetary Policy Summary, August 2024

『The Monetary Policy Committee (MPC) sets monetary policy to meet the 2% inflation target,and in a way that helps to sustain growth and employment. The MPC adopts a medium-term and forward-looking approach to determine the monetary stance required to achieve the inflation target sustainably.』

まあこれは定例文言で開経偈みたいなもん。

『At its meeting ending on 31 July 2024, the MPC voted by a majority of 5-4 to reduce Bank Rate by 0.25 percentage points, to 5%. Four members preferred to maintain Bank Rate at 5.25%』

あら5対4。

『The Committee has published an updated set of projections for activity and inflation in the accompanying August Monetary Policy Report.』

以下は読んでる時間がないのでこれはまあただの備忘メモです(汗)


〇ところで今日は3M短国入札です(0.25%利上げ後初の国債(短国だけど)入札)

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20240726.htm
国庫短期証券(第1247回)の発行予定額等

『1. 入札予定日 令和6年8月2日
2. 発行予定日 令和6年8月5日
3. 償還予定日 令和6年11月5日
4. 発行予定額 額面金額で5兆2,000億円程度

5. その他 上記の発行予定額を変更する場合には、入札日の前日に再度公表する予定です。』

ということで9月会合はバチクソ跨ぎまして、10月会合は跨ぐには跨ぎますが10月会合は月末なのでまあかする位、という入札。

昨日のコールが、
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/mp240801.htm
無担保コールO/N物レート(8月1日<木>速報)

『平均 0.227%
最高 0.228%
最低 0.215%』

ということで22.8bpな訳ですが、売参のWIを見ますと、
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

国庫短期証券1246 2024/10/28:平均値単利 0.150
国庫短期証券1247 2024/11/05:平均値単利 0.150

付利ー10bpかよという感じですが、まあそもそもこの0.15%ってのもいまいち本当なのかよくわからんところがありまして(まあ一応WIは板が立ってたと思うのでこんなもんなのかとは思いつつも)、というのは昨日の売参の短国のクソ短いところを見ると

国庫短期証券1211 2024/08/13:平均値単利 0.189
国庫短期証券1230 2024/08/13:平均値単利 0.189
国庫短期証券1232 2024/08/19:平均値単利 0.189
国庫短期証券1233 2024/08/26:平均値単利 0.189

とか8月償還のレートなぜか上昇して0.19%近くになっているのですが、気配とかその他新発CPとかもろもろのレート勘案してこれはねえだろ真面目に値付けしてるのかてめえはというレートになっておりまして、まあ利上げ初日だからしょうがない面があるのはわかるんだが、手前と3Mがインバートはせんじゃろ(超短くて担保などに使えないから外しが来る、っていうので残存1週間とかが後ろとインバートするのはまあある話なんですけど)と思う訳で、短期も脳死市場から脱却してくるご時世になるわけですので、脳死値付けをするのは勘弁していただきたいところではありますな。

まあアレです。利上げがあるから長期債買わない組に関してはどっからどう見ても次の利上げは10月末以降になるということ(為替が超絶円安になったら9月もあるけど)なので、もう長期債買わないとか言ってる場合じゃないと思うので、退避資金で来ていた皆さんはお帰りになられるとは思うのですけれども、ゆうて短い国債に対するもろもろのニーズは多いので、という感じですかね、知らんけど。

あと、東京レポレートは
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

2024/7/30  0.024 0.006 0.069 0.077 0.080 0.089 0.119
2024/7/31 -0.062 0.100 0.110 0.111 0.112 0.117 0.138
2024/8/1   0.166 0.200 0.186 0.186 0.187 0.189 0.202

となっていまして、3Mと言ってもほとんどの期間が10月会合前ですので、またも「コールより低いGC」モードになっておられていまして、まあこの辺見ていると短いゾーンの国債ニーズつええええええええって感じですのでいいからおまいら短国増発しなさい短国増発と思いますし、超過準備が多すぎなんじゃ何が2年後に日銀保有国債が7%減るじゃおせえんじゃ、と憤怒を隠し切れない今日この頃といったところでしょうか。しょんぼりーぬ。


〇決定会合レビューシリーズの続き:輪番の話の前に総裁会見の話を少々(その1:政策金利回りを中心に)

金利政策に関する部分はまあだいたい昨日申し上げた通りで、あれ書いてあるロジックを真に受けると、「2%物価目標に向かってオントラックで推移しているんだったら、実質金利がクッソ低い状態になって却ってよろしくないので利上げをしまっせ」ということになるので、それはすなわちナンジャラホイというと、10月展望の時点で進捗が順調なのを確認したら再利上げ、になるんですよね。

ただまあ7月10月ってやってしまうと次は1月って話になってしまうので、そこまで根性据わってるのか、と考えると10月は微妙だと思うのですが、もしかして「調整を行って極端な緩和からマイルドな緩和じゃないかと思われるところまではホイホイ利上げして、その後はマイルド緩和を続けて様子見をする」という根性が据わっているのであれば、どうせ今次局面の利上げだって(余程の物価上振れが起きない限り)一旦1%(下手したら0.75%)まで利上げしたら「ちょっと様子見」になると勝手に思っていますので、何ならポンポン利上げしちゃって1%まで来たところで「当面打ち止め、この後はマジのマジで2%物価定着を確認しますのでお時間ちょんまげ」とやるくらいまで腹くくっているなら10月利上げだって普通にありますわな、と思います。

てな話はさておきまして、今回の総裁会見は中の人が入れ替わったとしか思えないほどに秀逸な会見でして、ついこの前までハトハトチキン会見で記者のツッコミにヒーコラ言ってたのに、今回は植田総裁が真人間に戻ってしまった途端に記者の皆様との格の違いを見せつけて、植田無双状態だったし、記者の方がわかりきった質問の連発で、会見止めて「かずおくんのスパチャ読みタイム」にでもしてくれと思うような内容になってしまいましたぬー。

まあアレです、植田総裁が本来の真人間を取り戻せばこんなもんな訳でして、見たかお前らこれが真の植田和男じゃああああああ!!!!といったところでしょうな、

まあ単に羽交い絞めにされてハトハトチキンを封印しているだけの可能性もあるんですけど、やはり今回は何と言いましても昨日ご紹介したように、「金融政策が本当の意味での「普通の中央銀行」に戻り、黒田緩和の呪縛から解放された(長期国債買入とETF残高という特級呪物は残っているのですが)」ということが背景にあり、呪縛から解放されたので植田総裁が真人間に戻った、という説を積極的に提唱したいと思います。

#「金融政策腐蝕列島 呪縛」って電波が空から降りてきましたw

では総裁会見から少々

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240801a.pdf
総裁記者会見
――2024年7月31日(水)午後3時30分から約65分

まずは政策金利に関する説明を確認しましょう、というのもそっちのロジックがかなり明快になったからなんですけど。

・利上げの背景となる現状認識

『(問)(前半割愛)二問目は、追加利上げに関してです。3 月の決定会合でマイナス金利政策を解除してから約 4 か月で今回政策金利の追加の引き上げを決めました。その背景となる基調的な物価や経済の動向についての現状認識と、懸念材料として個人消費の弱さを指摘する声などもありますが、これらについて総裁の見解を併せてお聞かせください。』

『(答)(前半割愛)それから、後半のご質問ですけれども、今回の政策金利引き上げの背景ですが、まず、個人消費ですけれども、物価上昇の影響などがみられますが、底堅く推移していると判断しています。最近では、マインド指標にも底入れの兆しが窺われます。』

消費に関して「底堅い」と認識していますね。

『また、5 月の毎月勤労統計では、一般労働者の所定内給与が伸び率を高めたほか、私ども本支店のネットワークを活用して、中堅・中小企業に対して実施したヒアリングでも、幅広い地域・業種・企業規模において、賃上げの実施を指摘する声が聞かれるなど、賃上げの動きが広がってきていることが確認できます。』

中小含む賃金、と来ました。これも従来賃金賃金言ってたわけですので、このタイミングで賃金の強さがあるんだからまあそもそもは利上げしない方がロジックの整合性が無いともいえたんですよね。

『先行き、こうした動きが一段と進むことが見込まれ、賃金・所得の増加が個人消費を支えていくと判断しています。』

先行きはお気持ちの世界なのでまあ何とでも・・・・・・

『物価面ですが、サービス分野を中心に、年度初めの「期初の値上げ」が相応に広がったことが確認されたと考えています。』

サービス価格キタコレ。

『企業ヒアリングでも、ばらつきを伴いつつも、賃金上昇を販売価格に反映する動きが強まってきている点が指摘されていまして、』

賃金の価格転嫁キタコレ。

『先行きも、賃金と物価が連関を高めつつ、緩やかに上昇していくと見込まれます。』

まあこれはお気持ちですが、

『このように、わが国の経済・物価は、これまで展望レポートで示してきた見通しに概ね沿って推移しています。』

オントラックで推移しています、からの、

『また、加えまして、これまでの為替円安もあって、輸入物価が再び上昇に転じていまして、物価の上振れリスクには注意する必要もあると考えています。』

いままで明確にこの話をしないでうにゃうにゃとごまかしていたというのに急に変なもんでも食ったかのように円安輸入物価上昇からのリスクについて言明www

『こうした状況を踏まえ、物価安定目標の持続的・安定的な実現という観点から、今回、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整することが適切であると判断しました。』

でもって今回は「金融緩和度合いの調整」ですが・・・・・・・

『先行きについても、先ほども申し上げましたが、経済・物価情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針です。』



・「待つことのリスクは大きくない」はいつのまにか封印された模様

こんな質疑がありました。

『(問)(前半割愛)もう一点は、展望レポートの物価見通しについて、円安が基調的な物価に与える影響についてどのように評価されたのか、またそれが今回の利上げの決定においてどの程度考慮されたのかという点も併せてお願いします。』

この部分今回目立ちましたもんね。

『(答)(前半割愛)それから、円安と私どもの[物価]見通しと政策変更の関係という点に関するご質問ですけれども、まず例えば年初来あるいは昨年末来の円安ですけれども、これは消費者物価見通しはほとんど前回と比べて動いていないということですので、[物価]見通しのところに大きな影響を与えたということではないということだと思います。』

とこの点は相変わらずなのだが、

『しかし、先ほど来申し上げておりますように[物価]見通しに対して現実が上振れるというリスクとしては、かなり大きなものであるというふうに評価したうえで、そこまで含めて政策的な対応を今回は打ったということでございます。』

>上振れるというリスクとしては、かなり大きなものである
>上振れるというリスクとしては、かなり大きなものである
>上振れるというリスクとしては、かなり大きなものである

昨年5月のハトハトチキン宣言となった内外情勢調査会での例の「逆方向の、政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまうリスクもありますが、こうした2%の定着を十分に見極めるまで基調的なインフレ率の上昇を「待つことのコスト」は、前者に比べれば大きくないと思われます。」(2023年5月19日の内外情勢調査会での植田総裁講演テキストより)と言ってたのは時間の経過とともに情勢判断を変えた、ということだと思うのですが、まあ次の講演どこになるのか分からんけど、リスク認識が変わったから利上げした、っていうのをもうちょっと明示的に講演とかで説明してほしいんですよね。1年経過して判断が変わるのはそりゃまああり得る話なんだから別に恥でも何でもないわけですし。

今回の会見での説明で上記のように「上振れリスクにも対応して政策金利の調整をした」と明言はしているのですが、まあこのあたりの背景説明を今月どうせ総裁か副総裁が説明の金懇なり講演会なりをすると思うのですけれども、この際に「待つことのリスクが大きくないという状況から大きく変化している」というのを明示してほしいし、そうじゃないとまたぞろ「政策調整はゆっくりと行うので当分金利上がらない」みたいな意識って出てしまうと思うんですよね。利上げ前は言いにくかったのかもしれませんけど、利上げしたんですからもうそこは堂々と言ってほしいです。


・「利上げしないリスク」と「そもそも今の金利水準がクソ低い」の明確化

こんな質疑がありまして、

『(問)先ほど利上げに踏み切った理由の部分でですね、利上げするリスク、それから利上げしないリスクを少しお話し頂けたと思うんですが、その辺りちょっと詳しくお伺いしたいと思います。』

良いですね〜

『低い水準の金利を調整しておいた方が、慌てて急激に上げなくて済むというところが、一番今回の追加利上げの判断に影響したのかなと思うんですけれども、一方ですね、景気の腰折れリスクみたいな部分をどう考えられたかというところです。というのも、先週発表されました東京都区部の消費者物価指数をみてみましても、物価の基調がみやすいところの生鮮食品とエネルギーを除く総合の部分は、市場の予想を下回っていますし、サービス価格の部分も鈍化していることが確認されています。そうした中でも、今回利上げをして、日本経済問題ないということなのでしょうか。(後半割愛)』


『(答)前半ですけれども、まずこの辺で金利を引き上げておいた方がいいという際の、その理由ですけれども、それはおっしゃったように中長期的な意味で、持続的・安定的な 2%の物価目標をちゃんと実現するという観点からは、少し早めに調整をしておいた方がいい、というのが一つ大きな理由になったかと思います。』

からの、

『他方でそれは、景気腰折れのリスクを高めてしまうのではないかというご指摘ですけれども、これは、先ほど来申し上げてますように、25bps に上がったといっても、非常に低い水準ですし、実質金利で考えれば、非常に深いマイナスであります。』

まあ今回はこの質疑をネタにしましたが、この点何度も同じ会話になっていて正直げんなりしましたが、「そもそも今の金利水準がクソ低すぎなんだから調整するのは当たり前」っていう説明ですと、これは次の利上げに対してそんなに障害はないって話なので、本来順当な話ではあるけど今までのハトハト風味からしたらウヒャーとなるわけです。

『従って、強いブレーキが景気等にかかる、というふうには考えていないということです。』

実質金利の説明が今回多かったですね。

『その関連で、東京CPIですけれども、私もちょっとみると、少し弱めかなと思ったんですが、いろいろ分析してみますと、一時的な要因を除いたところでは、必ずしも弱くなく、サービス価格等の着実な上昇がみえている、というふうに判断しています。(後半割愛)』


・しれっと「数回利上げしても中立金利より下」というニュアンスの説明がw

最後の方になりますが、

『(問)先ほど、今回の利上げに関して、中立金利の不確実な範囲よりもかなり下の方にあるなかでの調整というふうにおっしゃられましたけれども、では、どの程度ですね、利上げすれば不確実な領域に入るのか、ということなんですが、例えば、0.5%を超えれば意識する必要があるのか、それともあと数回はですね、そういった領域に入らないので大丈夫そうなのか、その辺の総裁のイメージとして持たれていることがあれば、お願い致します。』

うんうん。

『(答)あまり具体的なことは申し上げにくいですが、以前から申し上げてるような中立金利に関するレンジを前提としますと、まだ暫くそういうところには入ってこないというふうには認識しております。』

>まだ暫くそういうところには入ってこない
>まだ暫くそういうところには入ってこない
>まだ暫くそういうところには入ってこない

ちょwwwwwwwwまだしばらく利上げしても緩和的領域です発言キタコレ。でもってその直後の質問で、

『(問)一点ご質問で政策金利の今後の推移について伺いたいんですけれども、総裁は以前展望レポートの見通し期間の後半に、政策金利がこの中立金利近辺になっているんではないかというお話をされてました。今回改めて例えば追加利上げ、それからインフレリスク、物価のですね上昇リスク、あるいは展望レポート改定されたものも含めて、総裁のこの政策金利のパス、従前と変更ないかどうかお聞かせください。』

『(答)先ほど申し上げたんですが、行き着く先の、それこそ中立金利について、ものすごい絞り切れてるという状況ではないので、はっきりとしたパスを将来まで引いたうえで今この辺を走ってるというのではなく、走りながら考えているというところかなと思います。』

まあそりゃそうだ、と思ったらついでに、

『ただ、先ほど直前のご質問にあるようなところを今の状況で走ってるということは言えるかと思います。』

ということで、数回利上げしても緩和的状態キタコレでありますな。


・・・・・まだまだ盛りだくさんなのですが利上げのせいでワシの生業も忙しいので今朝はこんなところで勘弁してつかあさい。週末元気があればさすがに少し何か投下したいと思います(投下確定ではありませんが努力はします)。






2024/08/01

お題「金融政策のステージがやっと「緩和の縮小」に明確化した日銀会合でした(FOMCネタは勘弁)」

ということで、いつもですと本日は寝起きでFOMCシリーズなんですが、さすがに昨日の日銀ネタが大ネタすぎまして処理能力が追い付かないので今しばらく日銀ネタで勘弁してつかあさい。

#どうせFED動くの9月以降だし(おい)

しかしまあ何ですな、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-07-31/SHHNEST0AFB400
円が対ドルで一時149円台、3月19日以来−米ADP統計後に一段高
Masaki Kondo、グラス美亜、Alice Atkins
2024年7月31日 22:26 JST

今まさにこのタイミングで円安是正介入をぶっこんでドル円140円目指す気概で弾幕投下したらバチクソ効きそうな気がするんですがもうぶっこんじゃえぶっこんじゃえ!!!!


〇その前に昨日の訂正というか差し替え(時事通信の報道の件)

時事通信さん、昨日ネタにしたネット(=無料版)の記事ですが、確かに一昨日の夜に投下された記事ではあるのですが、よくよく調べてみますとその後朝刊締め切り前の段階(時事さん自体は朝刊出すわけじゃないですけど新聞社に出してますからね)に以下の記事に有料版(というか会員向けというか)は差し替えになっていまして、無料版の方は昨日の朝7時過ぎにこの記事になっていました。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2024073100039&g=eco
0.25%への追加利上げ検討 国債購入減額の計画決定へ―日銀
時事通信 経済部2024年07月31日07時35分配信

『日銀が31日の金融政策決定会合で、追加利上げする検討に入ったことが30日明らかになった。短期金利を現在の「0〜0.1%程度」から「0.25%程度」に引き上げる案を軸に議論する。中小企業を含め、賃上げの動きが地方にも広がり、日銀は先行きの物価上昇率が目標である2%程度で推移する見通しに一段と自信を強めている。このため、会合では、3月のマイナス金利政策の解除に続く追加利上げを検討する。』(上記URL先より、以下同様)

とありまして、記事の中で

『物価高で個人消費はもたついているものの、日銀は賃金上昇や政府による定額減税などの効果で、景気の腰折れは回避できると判断している。また、最近の急速な円安で輸入インフレが再燃する恐れもあり、日銀内では、利上げが妥当との見方が広がっている。ただ、一部に実質賃金がプラスになるまで待つべきだとの意見もあり、会合で最終調整する。』

円安でインフレ云々って今回のいくつかあるキーワードの一つになっていまして、この点もきちんと指摘していますね、というのと、まあこの「検討に入った」は基本的に「多分やるでしょう(ただし自信満々に裏取れているわけではない)」という意味のメディア話法になりますので、かなりやりそうですなという感じの記事になっていましたので、謹んで訂正いたします(過去ログは後で追記しておきます)。


ということで決定会合ですが・・・・・・・・


〇決定会合声明文より(その1)金融政策のステージ変化を声明文にぶちこんできました

今回声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240731a.pdf
金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画の決定について

前回6月声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240614a.pdf

4月声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240426a.pdf

4月展望基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404a.pdf


もちろん利上げ云々ダイジダイジネーなのですが、今回見て「おおおおお」と最初に思ったのが項番5です。すなわち、

『5.今後の金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、今回の「展望レポート」で示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(今回)

というのが鎮座しておられるわけですが、この「先行きの金融政策運営」に関する文言って3月のマイナス金利YCC解除の時にはこの項番5に相当する記述(独立項目ではなく、声明文項番1の中で記述されている)が声明文にありましたけれども、4月と6月って「声明文」には項番5に相当する記述がなかったわけなんですよ。

でもって4月の展望レポートでは今回の項番5に相当する文言が基本的見解の最終パラグラフ(『4.金融政策運営 』の最終パラグラフ)に記載されていまして、6月には声明文本紙からは上述のように乗っていなかった(ので展望回じゃないから別に記載なし状態)訳ですな。

そして今回項番5が「声明文」として復活したのってこれは当然ながら「声明文」の「重み」というのを考えますと意味がある話で、今後の金融政策運営に関する姿勢を「わかりやすく示した」と解釈するのが妥当ということになるんですよね知らんけど(おい)。

つまりこの項番5はダイジダイジネーなので過去のと比較するわけですよ。

『5.今後の金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、今回の「展望レポート」で示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(再掲、今回の声明文)

『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(4月展望レポート)

『日本銀行は、引き続き2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、短期金利の操作を主たる政策手段として、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する1。現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。』(ご参考までに3月決定会合声明文項番1より抜粋)

・・・・ベタ打ちだと微妙に比較しにくいですな(汗)、3月のはさておき4月展望と今回のを比較しましょう。

『今後の金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、』(今回声明文)
『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、』(4月展望基本的見解)

これは実質同じこと言っていますが、この先が違いまして

『この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。』(4月展望基本的見解)

という文言を今回削除しているんですよね。じゃあ先行き見通しが不確実なのか、というとこれは(今日間に合うか知らんけど)展望レポート基本的見解のいわゆる鏡の部分(概要ってところ)の中のリスク認識に関する項番のところで相変わらず「わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。」としているんで、実際には先行きの不確実性が高いというのは変わっていないんですよね。でもこの先行きの金融政策運営に関する部分ではそれに触れていない、というのがポイントになります、と思います。

そのうえ、今回は

『現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、』(今回声明文)

って文言が加わっています。これは総裁記者会見で再三再四植田総裁(急に呼称が変わっているような気がするのは気のせいではなく意図がありますwwww)が言及していましたように、「足もと消費が多少弱めとかそういうのは別に景気が大崩れするわけじゃないから良いんだよそもそも実質金利クソ低いじゃろ」と急にマジックマッシュルームでもおキメになられたのかというようなホーキッシュ(まあ当然のことなので普通ともいえるが)発言を繰り返していたこととつながっていると思われますが、「そもそも実質金利がクソ低いんだから多少調整するのは当たり前田のクラッカー」という堂々たる政策修正継続宣言文言になっている訳です。これが4月展望の金融政策運営部分では入っていなかった文言でして、その次は

『今回の「展望レポート」で示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている。』(今回声明文)

『以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、』(4月展望基本的見解)

金融緩和度合いの調整、に関しても前段の文言があるため、より明確に金融政策調整局面というのが分かりますし、今回輪番減額を明確に示して計画も出したので、輪番については今後は計画通りやりまっせということで、金融緩和度合いの調整という部分から分離しまして、今後の金融緩和修正は「利上げ」で行いますってのがより明確化されました。


でですな、4月展望レポートの金融政策運営に関しては、3月声明文にあった悪名高き文言を引っ張って、

『当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。』(4月展望基本的見解)

という腐れうんこ文言があって、先行きの金融政策運営に関して相当にやる気ナッシング感を醸成して円安ヒャッハーの一翼を担った、というゴミカスうんこ文言があったのですがこれもめでたく削除されました。

でも実はですね、この「当面緩和的」云々に関しても実は今回の声明文のこの文言のある項番5の直上にある項番4の最終段落に『政策金利の変更後も、実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持されるため、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えている。』(今回声明文項番4より)とあるので、実態認識として当面の金融政策は状況としては極めて緩和的である、という認識のままな訳ですよね(そりゃ0.25で中立だとか言われても困るがw)。

ということで、今回項番5ってoutした2つの文言は、認識としては持ったままなのだが先行きの金融政策運営に関する文言から外した、という形にしていますので、これはもう明らかに意図的に外している訳ですな。すなわち、4月展望における先行き金融政策運営に関する文言というのは、今回外した2つのフレーズによって「金融政策修正に関する消極的なスタンスという連想」を働かせやすくなる内容になっていた、というのはその後の市場の反応などなどを見れば明らかなのであって、今回それを敢えて(認識を持っていても)外した、というのは、「先行きの金融政策運営」に関する文言の部分でさらなる金融緩和修正に対する日銀のスタンスを明確に示すために外した、と考えるべきだと思う訳ですよ。

とまあそういうことですので、今回の決定の中での「今後の政策金利」に関する部分はこの項番5に集約されていて、「金融政策のステージが「とりあえず異次元緩和解除してみた」から「緩和政策の修正ステージに入った」という変化を示す」という解釈になります(個人の解釈ですがw)のでありまして、まあ重要な「政策ステージの変化」を示したんだと思います。


〇決定会合声明文より(その2)ステージが変わったので貸増の意義はなくなった、というのはよくやりました

あたくし昨日の朝「利上げするのは良いんだけど貸増どうするんだよ」という話をしましたし、その前から貸増の扱いにつきましてぶーぶーと悪態ついていたのですが、今回しらっと貸増の扱いを変更してきたのは「おおおおおやるじゃん!」と思いました、褒めて遣わす。

声明文項番3になります。

『3.上記の金融市場調節方針の変更に伴い、以下のとおり、各種制度の適用利率の変更等を決定した3(賛成7反対2)(注)。

(1)補完当座預金制度の適用利率
補完当座預金制度の適用利率(日本銀行当座預金<所要準備額相当部分を除く>への付利金利)については、0.25%とする。

(2)基準貸付利率4
補完貸付制度については、その適用金利である基準貸付利率を0.5%とする。

(3)貸出増加支援資金供給等(新規実行分)に対する適用金利被災地金融機関支援オペ、気候変動対応オペについては、貸付利率を0.25%とする。貸出増加支援資金供給については、変動金利貸付に変更のうえ5、実施する。』(今回声明文)

まあ本当は気候変動もいるのかって気はしますが(残高何気に増えてますし)、まあ被災地金融機関支援と気候変動オペに関しては政策的意図(被災地オペはまあ良いんですけど気候変動に関してはミクロの資源配分に日銀が介入する話なので筋が良いとは思わないけど)があるのでシャーナシなんですが、何度か弊駄文で指摘しておりますように、貸増というのはですね、

https://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo80.htm
貸出支援基金運営基本要領

『1. 趣旨

この基本要領は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する観点から、金融緩和効果を一段と浸透させるための臨時措置として、貸出支援基金(わが国経済の成長基盤強化および貸出増加に向けた民間金融機関による取り組みを支援するため、適格担保を担保とする資金供給を行うために本行バランスシート上に創設する基金をいう。以下同じ。)の運営を行うために必要な基本的事項を定めるものとする。』(この部分直上URL先の貸出支援基金運営基本要領より)

>金融緩和効果を一段と浸透させるための臨時措置として
>金融緩和効果を一段と浸透させるための臨時措置として
>金融緩和効果を一段と浸透させるための臨時措置として

とありますので、そもそも論として今回の声明文項番5で示されたように、今回の金融政策決定によって「金融政策のステージが変わった」という事であれば、金融緩和効果を一段と浸透させるための臨時措置というのはその存在意義を失っている、というかあると政策の尻が滅裂ですよという切れ痔金融政策状態になるわけでして、今回貸増について見直しをしたのは、その意味では極めてロジカルなんですけど、ちゃんとやったのエライエライと褒めて遣わすという感じですわ(謎のウエメセ)。

とは言いましても、この前貸増継続ってしちゃってますし、先行きの実施時期とかも出しているので、いきなりなしという訳にはいかないのもその通りではあるのですが、前回6月に実施した貸増(弊駄文でもネタにしましたが)のように「この時点での政策金利1年固定」だと「金融政策の修正ステージに入った」という状況においては飛んでもない勢いでの緩和的なオペになってしまいますので、今回上記の脚注5にありますように、

『5 貸付利率は、貸付期間中の補完当座預金制度の適用利率の平均値とする。』(7月会合声明文からの引用に戻ります)

としまして、単なる「付利金利で貸すという流動性だけつけてやるわ」オペになりまして、金無し芳一の金融機関には応札インセンティブが起きますが、ご案内のように世の中カネアルコ号ばっかりという状況なので、これでまあ貸増の新規取り組みは大きく減るだろうと思いますし、貸出支援基金そのものに関しましても、そもそもが「金融緩和を支援するための臨時措置」なので今後の廃止も含めて検討していくんでしょうなあ(既に実施すると言っている分はやるとしても)ということで、これは「金融政策のステージが変わった」というのが明確化されたというのと実はセットになっている話でして、いやまあ貸増でこれだけああでもないこうでもないと書くのも大概にマニアかとは思いますけれども(自覚は一応ある)地味ながら(総裁会見で当たり前ですが誰も貸増の話をしてませんでしたなwww)これは「おおおおおお」と思ったので思わず熱く語るの巻。


〇決定会合声明文より(その3)指値売現はONRRPになるのかならないのか

さっきの声明文項番3の中に地味に脚注3というのがあって、

『3 補完当座預金制度の適用利率および基準貸付利率は、翌営業日(8月1日)から適用する。また、金融調節の一層の円滑化を図る観点から、固定金利方式の国債売現先オペを新たに導入することとした。』

>金融調節の一層の円滑化を図る観点から、固定金利方式の国債売現先オペを新たに導入することとした。
>金融調節の一層の円滑化を図る観点から、固定金利方式の国債売現先オペを新たに導入することとした。
>金融調節の一層の円滑化を図る観点から、固定金利方式の国債売現先オペを新たに導入することとした。

これは!!!!!

ということで、今日以降の市場金利形成がどうなるかは蓋を開けてみないとワカランチ会長ではあるのですけれども、短いところの国債の利回りがこれまでも補完当座預金金利(超過準備付利金利)よりも低かったり、3M短国がコール翌日物と盛大にインバートしたり、というようなアホアホ状態になっておりまして、この部分で国債の金利がコール目標よりも低い、という状態になりますと、それってイールドカーブの起点のところが政策金利よりも低い状態になるので、えーっとそれって政策金利の意味合いとしてどうなのよ、というのはあると思うのです。まあ日銀は既にYCC撤廃していてイールドカーブは知らんがな、というスタンスだと割り切ってしまえばコールはコール、国債イールドカーブは国債イールドカーブですから知らんがな、という話になる、と言ってしまえばそれまでなんですけどね。

でまあそういう意味も含めて、この指値売現先がFEDのONRRPみたいに、短期の(日本の用語でいえば)オープン市場の金利低下を牽制するものとして機能する、というようになるとまた短期の市場の変化、というものも見込まれる次第でございますが・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/mpr240731c.pdf
「補完当座預金制度基本要領」の一部改正等について

『日本銀行は、令和6年7月30・31日の政策委員会・金融政策決定会合において、金融市場調節方針の変更に伴い、下記の諸措置を講ずることを決定しましたので、お知らせします。

なお、本件に伴い必要となる関係諸規程の改正に関しては、所要の準備が整い次第、別途、各対象先に通知します。 』

『2.「国債の条件付売買基本要領」(平成14年9月18日決定)を別紙2のとおり一部改正すること。 』

ってあるのですが、別紙2を見たらなんか新機軸のオペを打つような雰囲気はカシュカリ総裁の頭髪ほども無い、というちょっと残念な感じ(単に既存の国債売現先のコンベンショナル方式に指値方式が加わっただけ)なのですが、まあ今回の利上げの後の短いところの国債市場とか、それこそ次の利上げの後とかも考えた場合に、ONRRPちっくなオープン市場の金利低下を牽制する機能ってあった方がよさそうには思える(いやまあ財務省様が短国を今の3倍くらい発行してくれれば問題は解決する説は大有り名古屋は城で持つんだが)のですがどうなることやら。


〇一方で輪番の扱いはなんか微妙に曖昧な面がありまして・・・・・・・

えーっとすいません、あまりに盛りだくさんで全然書ききれなくてすいませんなのですが・・・・・・・・・・

今まで申し上げてきましたように、基本的に今回の決定って「金利操作に関しては政策のステージが変わった事を大々的に明確化した」という内容になっていますので、そうなると次の展望レポート(10月)で追加の利上げをしない説明をする方が面倒というような感じ(まあ「データを確認したい」でスキップしたけりゃスキップすると思いますのでアタクシ的には12月会合かな次の利上げはとか思いますけど、筋から言えば10月に再利上げとなってもおかしくはない)になっています、ということでかなり明確何ですけど・・・・・・・・・

URL再掲
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240731a.pdf(今回声明文)

こちらの「別紙」が輪番減額計画なんですけど、

『長期国債買入れの減額計画について

長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による長期国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切である。こうした観点から、2026 年3月までの長期国債の買入れは、以下のとおり運営する。』

この「国債市場の安定に配慮」ってのが怪しげな文言でして、いやそもそも国債市場を不安定化していたのお前らのこの世のものとは思えない長期国債大買入だろいい加減にしろという話ではあるんですが、この文言が入ると「まーたこいつら変な不規則オペ打ってくるんじゃネーノ」という懸念がどうしても残ってしまいます。

『1.月間の長期国債の買入れ予定額を、原則として毎四半期 4,000 億円程度ずつ減額し、2026 年1〜3月に3兆円程度とする(詳細は、別添)。』

はさておき、

『2.来年6月の金融政策決定会合では、長期国債買入れの減額計画の中間評価を行う。中間評価では、今回の減額計画を維持することが基本となるが、国債市場の動向や機能度を点検したうえで、必要と判断すれば、適宜、計画に修正を加える。また、同時に、2026 年4月以降の長期国債の買入れ方針について検討し、その結果を示すこととする。』

っていうのが中々チャーミングで、だったら最初から計画1年でだしておけよって気はしますが、これ2年にしたのって「出来上がりの減額幅を大きく見せたい」という為替配慮がありました、ってのを大々的にゲロっているのでなかなか笑いました。

まあ2年間動かさんとか言い出すよりはマシなので良いんですけどね。

『3.長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。』

『4.なお、必要な場合には、金融政策決定会合において、減額計画を見直すこともありうる。』

これですけれども、YCCの生きていた時代みたいにちょっと金利が上がるとすぐにビビりんちょして変な指値入れる、みたいなことが無くて事実上の空文なら良いんですけどどうするんでしょうかね。


という感じで扱いが謎なのもさることながら、

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240731b.pdf
2024年7月金融政策決定会合での決定内容

ポンチ絵2枚目の『2024年7月金融政策決定会合での決定内容A:長期国債買入れの減額計画』ですけれども、相変わらずストック効果の話をしている訳ですが、金利部分の方では「金融政策のステージが金融緩和修正方向になった」ってのを明確に示しているのに対して、長期国債買入に関してはストックがこんなにありますよ見たいなポンチ絵が出ていまして、いやお前ら金融緩和政策は修正するって言ってるのに「こんなにストックがあります」って話をするの矛盾してないか、と思う訳ですよ。

まあ結局この「長期国債買入」に関しては「ところで金融緩和の修正を行っている最中なのに何でこんな大量の国債買入をしているんでしたっけ」に対する明確な回答が総裁会見でも(誰もそれ質問しないから仕方ないとはいえ)なかったですし、輪番に関しては鵺みたいな状態になっている、ということですな。


〇つまり今回は輪番をデコイにして短期政策金利の修正局面入りを行ったとも言えます

とまあそういうことで、輪番の方がエライ曖昧な状態のままですが(減額とか買入額とかは明確ですので定義づけという意味で曖昧という事です、為念)金利に関してはかなり明確に「修正局面入り宣言」をしているので、何のことはない輪番をデコイにして利上げステージ入り作戦大成功、ということなのかもしれませんし、それならまあ「おぬしやるな」ってなもんですが、果たしてどうだったのかというのは今後(展望会合の後だから)総裁または副総裁の然るべき講演なども実施されると思いますし、おいおいみていくことにしましょう。



〇総裁会見も今回は過去に無い(下手したら就任以来の)上出来でした

会見に関してはこれまた後日になると思いますが、さすがに今回は日銀よつべチャンネルで会見放送を見ていました。

今回の植田総裁ですが、なんか変なもんでも食ったのか、という位に真人間に戻っていて、これはノミネートの時に大きな期待をしていた植田和男先生じゃないですか!!!今までどこに幽体離脱してたんですか!!!!と目頭が熱くなる(大げさ)会見でしたな。

ま、今回の植田総裁の会見ですが「今まで猫かぶっていましたがこれから本物の植田和男をお見せしますよ(フフッ)」なのか、実は本質はハトハトチキンなんだけどあちこちから突き上げられて背中にナイフ突き付けられてああなっているのか、というのがイマイチまだ安心できない説はありますけど、まあよかったと思います。

ちなみによつべチャンネル、最初同接4000人くらいからスタートして、途中5000人近くになったのですけれども、会見前半でちょいちょいホワイトノイズや瞬間ブラックアウトが生じていまして、そのせいで他のメディアに逃げた人もいるようで、中盤以降は同接4500人程度になっていました。

しかしまあ何ですな、質疑が途中から同じことをぐるぐるしてて、植田総裁の答弁がシャキッとしているのに対して何だよお前らこの馬鹿記者どもがと思ってしまった人は多いのではないかと愚考するのですが、この際もう記者クラブの会見とか無しにして、よつべチャンネルで「植田和男のよつべ生配信!」とかやって、質疑応答は赤スパのスパチャ読みの形で実施すれば日銀は赤スパでウハウハだし、赤スパぶっこまない程度の質問が排除できませんかねえ、と思いましたがよく考えたら「あー〇〇さん、今回も赤スパありがと〜(はあと)」でごまかされるだけの気がしてきましたorzorz

(なお赤スパ云々は冗談ですので念のためお間違えないようにwwwww)

続きは明日以降ということで勘弁島倉千代子