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2024/06/28

お題「円安で金利上昇してしまいましたな・・・・/今日は3Mとオペ紙/多角的レビュー第2回WSから」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB261VO0W4A420C2000000/
円37年半ぶり安値、沈む日本の購買力 牛肉も「買い負け」
グローバルマーケット
2024年6月28日 5:00 [会員限定記事]

なんちゅうか日経も円安大絶賛してたんだから自己批判してその辺の過去をちゃんと総括してからこういうの書けよなとは思いますけどねえ。


〇この調子で7月会合までどうやって間を持たせるんでしょ・・・・・・・(円安で金利上昇)

あーあーあーあー
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/HAMRIVXPRJNU7LPRVWYL2TEJNM-2024-06-27/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落、円安が相場圧迫 長期金利は1カ月ぶり1.08%
By ロイター編集
2024年6月27日午後 3:28 GMT+9

ということでご案内の通りの相場ちゃんになってしまった訳ですが、

『[東京 27日 ロイター] - <15:11> 国債先物は大幅続落、円安が相場圧迫 長期金利は1カ月ぶり1.08%

国債先物中心限月9月限は、前営業日比56銭安の142円68銭と6営業日続落して取引を終えた。外為市場で38年ぶりのドル高円安となったことが相場を圧迫した。新発10年国債利回り(長期金利)は同5.0ベーシスポイント(bp)上昇の1.070%。一時、5月30日以来1カ月ぶり高水準の1.080%をつける場面もあった。きょうの国債先物は、海外取引時間の外為市場でドル円が106円後半(原文ママ:「後日160円台後半」に訂正)と38年ぶりの円安に進行したことが逆風となり、朝から売り優勢の軟調な展開が続いた。』(上記URL先より、以下同様)

となってしまいまして、だいたい円安のせいだとは思うのですが、輪番減額に関して6月にバシッと決めておいて、何なら7月は利上げですよってやっておけば債券の方はいったん様子見をする意味もだいぶなくなってくるので、金利があがりゃあ買いも入ったんでしょうけれども、輪番減額規模が幾らになるか分からん上に、利上げもどうせやるにしたっていつやるのか分からん、となると、金利上昇していたから買いましたとか言っても、その後に「なんで輪番減額規模公表前に買ったんだこのヘタクソ」と偉い人から言われると目も当てられないという毎度おなじみのアレがあるわけでして、そら買いが中々入りませんわということになりますな、ナンマイダナンマイダ。

でまあ円安になってくると「円安阻止のためには頑張った輪番減額が入らないと」という期待だけはアホみたいに高まってしまうので、7月会合で相当のことをしないといけなくなってしまいまして、結果また失望となって、債券の方はそれで戻るんですけど円安にかっ飛んで、いったん戻った債券も円安見て売られなおし(ただ7月会合は次まで1か月半あるから急に来るのかどうかは知らん)とかになるわけですな、ダメじゃん。


ということですが、どうもマイナス金利解除(前の「緩和的な政策が続く」アピールからコミュニケーションがボロボロになってきた)からここもとまでのコミュニケーションを見ていますと日銀なんかやると碌なことにならないので、まあ情報発信しないままで済むならその方がまだマシな気がしますが、為替からシバかれてしまうので厳しいですよね。

記念に。

『TRADEWEB
     OFFER  BID    前日比 時間
2年    0.339  0.351   0.042  15:15
5年    0.592  0.601   0.047  15:15
10年   1.068  1.074   0.051  15:10
20年    1.9  1.909   0.034  15:12
30年   2.267  2.277   0.042  15:15
40年   2.414  2.425   0.05  15:15』

見事に全体的に売り込まれてしまっていて、しかも昨日って2年入札は普通に堅調な結果になっていたのにこれですよというお話でこれはなかなか厳しいことになっていますな日銀ちゃん。


〇今日は3M新発とオペ紙が出てくるのですな

今日の新発3M
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20240621.htm
国庫短期証券(第1240回)の発行予定額等

『1. 入札予定日 令和6年6月28日
2. 発行予定日 令和6年7月1日
3. 償還予定日 令和6年9月30日
4. 発行予定額 額面金額で5兆5,000億円程度』

一昔前の普通ですとこの銘柄って期末エンドになるので使いにくいからと言って弱めになることが多かったのですが、マイナス金利政策の間に世の中は変わってしまっていて短国市場の新秩序がどうなっているのかよく分からんところではありますが。

売買参考統計値を見ると1240回WIって

国庫短期証券1240 2024/09/30 :平均値単利 0.030

とはなっているのですが、昨日の売参では1239回が

国庫短期証券1239 2024/09/24:平均値単利 0.025

になっていて、これ一昨日の引けのところで0.030%から0.025%にしらっと金利が低下になっていまして、なんかWIの3bpホンマカイナという感じがだいぶするわけですが、何せずーっと茲許ニーズを集めて7月利上げどころか9月利上げも何ぼのもんじゃいという価格になりそうな勢いのこの新発、実際にどのくらいの水準で決まるのかが注目の材料(ただし一部のマニアのみ)になりそうですな。

まあ何となくなんですけど、昨日の円債の下げっぷりとか見ていると、この下げって別に投機筋の売りチャレンジとかじゃなくて、様子見地蔵の中で誰かが金利リスクを落としにいくと無抵抗主義相場で下がってしまう、という感じになっているように見えるので、そうやって投資家のリスク回避ベースで金利上昇相場になっているのであれば、退避資金の避難小屋としての機能は新発3Mなんて打ってつけになってしまいますので、この入札が馬鹿強だったら長期債方面におけるリスク回避の動きが依然として強い事のバロメーターになるかなと思います、知らんけど。



・さて今日はオペ紙しかも四半期予定ですね

ってことですが、どうせ7月の会合で輪番減額計画を出すんですから、今日出すのは「7月の買入予定」で良いんじゃないですかね。そもそも四半期ベースで出すか単月ベースで出すかは金融市場局の一存で決めれるんだし。

これうっかり四半期ベースで出すとまた「7月末に減額計画をだしてもすぐに減額しないかもしれない、つまり日銀に正常化やる気無し」という認定をされてしまう(と円債の方はもしかしたら戻るかもしれないけど)円安ニキもニッコリの展開にならんかな、というのは変な考えすぎですかそうですか。

しかしまあ何ですな、ついこの前までは「7月輪番減額の先駆けとして6月末のオペ紙では輪番減額あるのかも」とは言われていましたが、足元金利が上昇してしまっているので、ここでオペ紙減額はやらないでしょう。いやまあ減額して為替が円高に振れるなら減額するかもしれませんが、今日の場合はオペ紙で減額しても金利上昇だけして出しただけ損ってことになるかと思いますがどうでしょうかね。


#ま、あとは「講演予定とか増えないのかねえ」ですよね、あとは国債市場参加者会合でなんかが出てくるのかどうか・・・・・・・・


〇多角的レビュー第2回ワークショップですが

https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2024/ron240627a.htm
金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第2回「過去25年間の経済・物価情勢と金融政策」の模様

まずは全体の話を上記URL先から

『要旨

2024年5月21日、「金融政策の多角的レビュー」に関する第2回ワークショップ「過去25年間の経済・物価情勢と金融政策」が日本銀行本店にて開催され、経済学者や金融・経済分野の専門家らを交えて、活発な議論が行われた。』

ということで、

『第1セッションでは、1990年代後半以降のわが国経済・物価情勢を振り返るとともに、最近の環境変化についても報告された。そのうえで、「量的・質的金融緩和」の経済・物価への影響や、なぜ賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方がノルムとして社会に定着したのか、また、こうしたノルムは変化していると評価すべきか、といった点が議論となった。』

『第2セッションでは、金利が実効下限制約に直面するもとでの非伝統的金融政策の「期待に働きかける経路」の有効性や、緩やかな物価上昇がもたらす経済的な意味について報告された。そのうえで、インフレ予想の形成メカニズムや、金融政策の期待に働きかける効果の評価、緩やかな物価上昇のメリットに関する理論的整理が現実に適合するのか、といった点が議論となった。』

てことですがこれは後のパネルの部分で面白話がいくつかあるのでご紹介。

『第3セッションのパネルディスカッションでは、まず、上述のノルムが形成された背景や、その最近の変化について議論された。ノルムの形成の背景としては、1990年代後半以降、雇用維持が優先され賃金が抑制されたことや、厳しい価格競争が継続したことなどが指摘された。』

ここの話なんですけど、例えばアタクシの手元にある「平成バブルの研究(村松岐夫奥野正寛2002)」を見ますと、1980年前後には既に「賃下げや利潤カットを行っても、可能な限り雇用保証をすべきだ」といった価値規範が国民レベルで受け入れられているとの指摘がありまして、別にこの雇用維持優先ってのは1990年代になって急に持ち上がった話ではないんですよね。(「平成バブルの研究(上)(村松・奥野)」東洋経済新報社2002/03(手元にあるのは同年5月の2刷です))

であるからして、なんか長期低迷でノルムがこうなってさらに強化された、みたいな話にするのはおかしくねえかと思う訳で、こういうときに労働経済に詳しそうなのがメンツにいないのが何だかねと思う訳です。

『そのうえで、このところ人手不足の強まりなどを背景にノルムは変化しつつあるとの見方が示された一方、労働市場の構造等に大きな変化はなく、最近の賃金・物価の上昇は、外的なショックによる一時期なものであるとの指摘もあった。』

てな感じで、これ本編の方をよく見ますと「労働市場のノルム」で多くのところを押し通しているのですけれども、だったらこの辺の議論に労働経済の専門家呼べよと思いましたし、だいたいからして労働市場の構造が強固でノルムが変わらなかったとか言い訳するんだったら、QQE導入そのものが現実の分析をなんもしないで打った壮大な無駄玉だったという話にならないとおかしいんだが、なぜかそこを振れる人は1名しかいないというのがこのワークショップの茶番ぶりを発揮していて植田(ハトハトチキンの方)ちょっと出てこいって感じですな。

『また、過去25年間の金融政策から得られる教訓についてもパネリストによる総括が行われた。非伝統的な金融政策運営については、金利の実効下限制約のもとでも需給ギャップの押し上げなどの効果があったと評価する見方があった一方、期待への働きかけの難しさや長期にわたる緩和の生産性等への副作用を指摘する声もあった。』

「期待への働きかけの難しさ」っておいこらエライオブラートに包んで書いてるな、ということで本編に参りましょう。

https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2024/data/ron240627a.pdf
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第2回「過去 25 年間の経済・物価情勢と金融政策」の模様

なおパネル以外は動画付きで見れまして、
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/bpr240405a.htm
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第2回「過去25年間の経済・物価情勢と金融政策」
2024年4月5日
(2024年6月27日更新)
日本銀行

となっております。昨日更新となっているのは今回アップされた議事要旨へのリンクを張ったからですね。

でもってですな、議事要旨見ますとパネルの方がどう見てもおもしろそうだというのに何でパネルはよつべリンクが無いのやらと思いますが、

『5.第3セッション:パネルディスカッション

モデレーター:渡辺 努 (東京大学)

パネリスト :伊藤 隆敏(コロンビア大学)
鶴 光太郎(慶應義塾大学)
福田 慎一(東京大学)
内田 眞一(日本銀行)』

ということですが、最初に渡辺先生が

『5−1.パネリストによるプレゼンテーション

冒頭、モデレーターの渡辺は、賃金や物価が変わらないことを前提とした慣行や考え方(ノルム)について、@そうしたノルムがなぜ生まれ、企業や消費者、労働者にどのような影響を及ぼしたのか、Aそうしたノルムは経済厚生上、どのような影響を及ぼしたのか、Bそうしたノルムは最近、変化しつつあるのか、といった論点を提示した。これらの論点について、各パネリストからそれぞれ見解が示された。』

とあってノルムをお題にしているのですが、後の方のディスカッションでですね(本文19ページ、PDF20枚目)

『(ノルムの位置づけ)』ってのがあって、ここが面白いw

『柳川は、ノルムという概念を使って金融政策を議論すると、本質的に重要な要素を捉え損ねるおそれはないのか――仮に均衡が複数あるとしても、それをどう動かすかを考える際に、ノルムという言葉を使うことでみえなくなる部分もあるのではないか――と指摘した。』

柳川先生良いですね〜

『そのうえで、ノルムを政策議論の文脈においてどのように位置付けているのか、パネリストに見解を問うた。』

『これに対して、パネリストの内田は、今後、インフレ予想を2%にアンカーさせていく過程において、中央銀行の信認という問題に加えて、賃金・物価を巡る社会の慣行やルール、つまりはノルムが変化するかは重要な要素になるとの見方を示した。』

さすが回答になっているようで全然回答になっていない返しをするのは得意ですな日銀は。

『モデレーターの渡辺は、経済学において賃金・物価の決定に際してノルムが重要であるということは過去から指摘されてきたことであり、それを予想という概念で置き換えてきたのがここ 30 年のマクロ経済学の潮流だったと述べた。』

謎の助け舟wwwwww

『もっとも、過去のオークン等の議論をみても、ノルムは制度や政策など、様々な環境に対応して自律的に変化するものであり、人為的に操作できるものではないという点が強調されていると述べ、ノルムを変えれば全て解決というような議論は不適切と指摘した。』

とは言えそもそも内田さんの回答自体が怪しいので渡辺先生もこういう話になったわけですが、

『吉川は、QQE は、わが国経済の低迷の原因はデフレであり、デフレは貨幣的な現象であるから、マネーを増やせば問題は解決する、という主張に基づくものであったと振り返った。』

はい。

『今回の多角的レビューにおいて、この点の是非について議論せずに、物価上昇率が2%まで上がらなかった原因として、金融政策以外の要因であるノルムについて議論している点に、議論の内容自体に違和感はないものの、日本銀行の対外的なコミュニケーションとして大きな違和感があると述べた。』

吉川先生これはwwwwwwさすがとしか言いようが無いwwwwwwwww

『これに対し、内田は、コミュニケーションの問題についてのご指摘はしっかり受け止めると述べたうえで、』

でたな無回答w

『2%の「物価安定の目標」の実現に想定以上の時間を要しているのは事実であり、その背景としては、政策効果の不確実性や労働市場のスラックの大きさに加え、ノルムの存在も考えられ、』

今回の事務方の出してきた資料ってしばらく前にネタにしましたが、「労働市場のスラックがでかかったから政策が効かなかった」とかいう言い訳をふんだんにちりばめているんですけど、だったらQQEじゃない普通の緩和政策で緩和してたって良かったんじゃないのという話だし、今まさに散々ぶっこんだQQEが見事に出口において円安コストプッシュという副作用を発揮している訳ですから、QQEである必要はなかった、ってこと、すなわち上記の部分で吉川先生の指摘した議論をしないのはどっからどう見てもうんこワークショップとしか申し上げようがないわけですな。

『今後、2%目標の持続的・安定的な実現に向けては、ノルムについて理解を深めることが重要と考えていると述べた。』

完全に「ノルム」で押し通すという内田さん。

『また、わが国特有の現象であるデフレ的なノルムについてしっかりと分析し整理しておくことは、仮に将来――わが国に限らず――似たような状況に陥った際に、どのような政策運営が適切か、どのような政策手段を採用すべきかを考えるうえでも必要であるとの認識を示した。』

ちょwwwwwだったら吉川先生の論点を考えろよという話で、そもそもこの多角的レビューって2013年のQQEが正しいというのがアプリオリに決まっているところからスタートしている(前回の第1回ワークショップで思いっきり渡辺先生が「やらなかったことの分析も重要」とか黒田以前は何も政策やってませんでしたとかいう事をこの前提の尻馬に乗って言ってたのが印象的でしたよね)のは「どのような政策運営が適切か」もへったくれもないんですよね。さすが日銀の方は屁理屈が上手だわと思うのでした。



それはそれとして14ページに戻りますと、

『5−1.パネリストによるプレゼンテーション』のタカトシ先生の説明の最初の辺り。

『(1)伊藤 隆敏(コロンビア大学)』

『パネリストの伊藤(隆)は、わが国の物価上昇率とインフレ予想、賃金上昇率について、2012 年までは「0・0・0%」の均衡にあった一方、足もとでは、輸入物価の上昇を契機に企業のコストが上昇したことを受けて、「2・2・2%」の均衡へ変化しつつあると指摘した。加えて、今後、企業の生産性向上によって、賃金上昇率が物価上昇率を上回る「2・2・3%」の均衡へ向かっていくかがポイントであるとの見方を示した。』

というのはクソどうでも良いのですが次の段落はワロタ。

『そのうえで、わが国がデフレ均衡に陥った最大の原因は、バブル経済の崩壊で物価が下落し、インフレ予想も低下したことにあると述べた。』

でもって、

『2013 年以降、日本銀行は期待に働きかける政策を行ったものの、過去に伊藤(隆)自身が主張していたほどの効果は発揮されなかったと指摘したうえで、』

というのを素直に認めているのはタカトシ先生ちゃんとできててよろしい、と思いました。

『この背景にはわが国のインフレ予想の形成において適合的な要素の影響が強いことがあると論じた。また、賃金上昇率がゼロになった背景については、1990 年代後半の金融危機時に、大企業の破綻や人員削減を目の当たりにした労働者や労働組合の行動が一変し、賃上げよりも雇用維持を優先するようになったことがあると指摘した。』

となっているのですが、先ほどアタクシがご紹介しましたように、「雇用維持」の規範はもっと前から日本に存在していまして、先ほどご紹介した本には第一次石油ショックにおける「賃金と物価のスパイラル的上昇」を鎮静化させるために1975年ごろに行われた「三方一両損」の解決策の一つが労使協調による過度な賃上げの抑止、解雇規制の強化による雇用の確保、などになっていたとあるわけですし、まあだいたいその辺は違和感ない話であって、タカトシ先生のような認識にいつの間にかなっているのは如何なものか、と思っております。

・・・・って考えるとそもそも「賃金と物価の好循環」とか言ってるけど、1975年体制(先ほどの「平成バブルの研究」の命名による)の構造が崩れているとなると、それって本当に好循環なのかよ、とかいろいろと考えてしまうのですが、また同書を読みながらいずれかの機会に、とは思います。

今朝はこの辺で勘弁





2024/06/27

お題「円安キタコレを見ながら7月会合に向けたプレビュー雑談を気が早くもするのでした」

あらま夕方から夜のうちに・・・・・・・・・・・・

〇円安キタコレ160円台後半ですかそうですか

160円行っちゃいましたとか言ってたら途中から加速するする。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-26/SCQVX5T0G1KW00
円は対ドルで一時160円80銭台、神田財務官の発言後−対ユーロ最安値
酒井大輔、鈴木克依、Naomi Tajitsu、Masaki Kondo、宮井伸明
2024年6月26日 18:36 JST 更新日時 2024年6月27日 1:37 JST

→対ドル1990年安値も下回る、介入後の上げを約2カ月で解消
→当局は165円まで介入待つ可能性−ウェルズ・ファーゴ

『ニューヨーク時間26日の外国為替市場で円相場は対ドルで一時1ドル=160円80銭台まで下落。1986年以来の安値に沈んだ。円安・ドル高の進行を受けて、神田真人財務官が市場をけん制したが、発言後も円売りに歯止めがかからなかった。通貨当局による円買い介入再開への警戒感が高まっている。円は対ユーロでも下げ幅を広げ、過去最安値を更新した。』(上記URL先より、以下同様)

ということでなんか人様がぐうすか寝ている(老いぼれジジイなので夜が早いですサーセン)間にエライことになっているじゃないですかやだー(棒読み)

『神田氏の発言を受けて円相場は一時160円台前半まで下げ幅を縮める場面もあったが、すぐに再び円売りが優勢になった。』

ってのが中々ヤベー奴でして、今週の頭だったかに大明神が介入24時間スタンバイとかいうブラック職場にも程がある発言をした時には敬意を表してその後160円寸止めのところで押し戻すの連続だったのですが、大明神パワー2日くらいしかもたんかったんかいと。

『ウェルズ・ファーゴのマクロストラテジスト、エリック・ネルソン氏(ロンドン在勤)は「ここ数日の日本の財務省当局者から発せられる言葉遣いは、懸念が増していることを示唆している」と指摘。ただし、介入には165円かそれを下回る水準まで円が下落するのを当局は待つ可能性があると述べた。』

『ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の市場戦略担当グローバル責任者、ウィン・シン氏は「160円を超える円安・ドル高水準で無秩序な動きが出てくれば、変動をならすために日本の通貨当局が介入するかもしれない」とした上で、日銀が一段とタカ派に傾くまで円は売られやすい地合いが続くとの見方を示した。』

ほうほうなるほど、というところですが、まあ何のかんの言いまして日銀が金融政策の修正に関して、3月の時点ではよーやったというところだったのですが、その後現場の裁量と需給動向で減らせるはずだった輪番は減らさんわ、挙句に「緩和的な環境が継続」の方が強調されるわとなって、さらに4月会合での植田総裁不規則発言と来ている訳ですし、6月会合主な意見だって全然緩和修正に対する前のめり姿勢が見られない、という有様だし、輪番減額だってそんなもん日銀がバシッと決めればいいものを「市場参加者の意見を聞く」とか言い出して市場に責任転嫁しようとしている時点で「日銀の意思で勇気を奮って緩和修正を進める」気がサラサラ無いのが見え見え。

とまあそんな日銀ちゃんを控えておりますとそら円売り仕掛けしたくなりますわという話ですが、これ1日2円とか動くと介入入れやすいけど、じりじり進行→ブレイクした時だけちょっと勢いつくけどすぐに落ち着くの繰り返しだと介入する大義名分も難しいですし、そもそもイエレンから介入するなら利上げしろと言わんばかりの扱いをうけておりますので、結局日銀が緩和修正にもっと積極的なところを見せないとどこまでも行こう〜♪の円安ってなるんですかねえ知らんけど。


しかしまあこれですもんね。今朝お早い時間ですと、

https://jp.reuters.com/markets/bonds/

米国債10年 利回り
US10YT=XX +4.310 +0.072

米ドル/日本円 160.7800 +0.71%

アメリカン金利まだ4.3%だというのにこの惨状でして、これで米国の経済統計が強いと物凄く面白いことになるんですが・・・・・・・・・・・・・・


〇さて7月会合に向けて日銀はどうなるのやらですが

これはけっこうびっくりした
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-25/SFMHDZT0G1KW00
日銀の国債購入減額計画と利上げの同時決定、3割超が予想−サーベイ
伊藤純夫、Cynthia Li
2024年6月26日 6:00 JST

→利上げ時期は10月の42%が最多、金利上昇や景気の弱さへの懸念も
→国債減額ペースは緩やか、当初の月5兆円から2年で3兆円に縮小

まあメインは10月だけど7月3割ってマジかよと思ったのと、一方で国債買入減額ペースがなんでそんなクソみたいに遅い予想になってるの、ということで、駄文書き散らしているワイの感覚的にはなんかモヤってしまう調査結果に見えます。

実はBBGにしてもロイターにしてもこの手の何とかストサーベイを行っていてちょいちょい記事になるのですが、まあ別にネタにするほどの意味もねえやと思って放置しているんですが今朝は珍しく話のネタに。

『日銀が14日の会合で国債買い入れの減額方針を決定したことを受け、ブルームバーグは25日に特別調査を行った。回答した43人のエコノミストのうち33%が、日銀が7月30、31日の会合で追加利上げするとみる。最多は10月の42%で、年内に行われるとの見方は95%に達した。6月会合前の調査では7月と10月が最多の33%だった。』

火曜日に調べたんでしたら会見後の4月議事要旨、6月主な意見も反映されていますね。

『日銀は6月会合で金融政策の現状維持と長期国債買い入れの減額方針を決定し、7月会合で今後1−2年程度の具体的な減額計画をまとめることも決めた。植田和男総裁は会合後の記者会見で、減額計画について「相応の規模となる」と言明。円安傾向が続く中、7月会合での利上げも「当然あり得る」とタカ派的なトーンを強めた。』

さいですな。

『今回調査では、44%のエコノミストが減額計画の決定によって7月利上げの可能性が低下したと思うと回答した。国債減額計画と追加利上げの同時決定は難しいとの見方から、10月の利上げ予想が増えた可能性がある。ただ、7月利上げの見方の比率自体に変化はなく、植田総裁の発言などが7月予想をつなぎとめたと言えそうだ。』

ってのがほほーと思ったのでネタにした次第なのですが、いやもうそれって植田さんが要らん事(今回だったら「輪番減額による長期金利上昇については短期政策金利の判断において考慮する点の一つ」みたいな話をおっぱじめて植田さんが見事に7月利上げ観測を叩き潰した件)いうもんだからそれを火消しするために「7月同時利上げあるで」と言い続ける羽目になったわけですが、一方であの例の「主な意見」をみたらこれまた利上げ前傾なのってあくまでも一部の委員に過ぎないのも見え見えなんですよね。

なのでおまいら国会とかでの植田発言にウェイト置きすぎじゃろと思う訳ですよ。


ちょっと整理すると、アタクシの読み筋としては6月会合で一番エライのは声明文ですが、その声明文は長期国債買入を中長期的に減額するというのを「決定」しまして、ただ具体策はこれから考えて7月に出すよ、といってるのですけれども、その肝心の声明文における経済物価情勢の認識と先行き見通しをしめした部分では、「オントラックだから今後政策は修正されていく」系の予告ホームランとは言わんけど予告タイムリーヒットくらいの判断入ってくるかなと期待したのに全然そっちはやる気ナッシングだったのがあって、さらに植田さんがいつものハトハト音頭で会見をやってたこと、でまあこりゃ7月は利上げするのは「円安で日銀がまた大明神とか官邸とかからシバキ上げ食らわないと厳しいな」となったわけですな。

でもってですね、まあその後国会とかで上記記事にありますように、植田さん会見での発言が余計だったというのを認識したんだか火消をして、挙句に4月会合議事要旨がやたらタカタカ編集されてたじゃないですか。明らかにあの日の総裁会見のトーンと全然違う話になっていてこれは不自然なのですが・・・・・・

まああちらを見ると「あれやっぱりやる気あるのかな」と瞬間思うのですが、その答え合わせで6月主な意見を見たら、何のことはない現状で政策委員のタカハトは拮抗しているし、どっちが優勢と言われたらハトの方が優勢なので、そうなると一連の「7月同時利上げを排除しない」っていうのはただの時間稼ぎのブラフだというのが見えてきましたな、というの読み筋になるんですなこりゃまた。

つまりですな、なんか急に読み筋のコツを自分語りしていますけど、一番偉いのは「声明文」であって、議事要旨と主な意見は基本同じで、本来的には議事要旨は次の決定会合でオーソライズされているから重要は重要のはずなんですが、議事要旨って嘘書いてない限りにおいて編集テクニックで意見のフレームアップを意図的にバイアス書けることが不可能ではない(まあそんなにバイアス掛かってるなら決定会合で反対して差し上げればと思いますが笑)という大本営の編集が入る余地があり、一方で主な意見は基本的に政策委員が自分で書くので、そこには編集の入る余地が小さい(大本営が政策委員にお手柔らかにとお願いして回る余地はあると思うけど笑)となるので、声明文と主な意見を総合するとそーなる、ってのと、4月議事要旨の編集バイアスがちょっと露骨で、そっちはただの円安阻止のための新手の情報発信だな〜と思ってしまったからですな、うんうん。


なお、以上申し上げたシナリオですが、ドルは飛ぶ飛ぶドームの風で、となってしまって日銀がシバかれる事態になった場合はその限りではありませんので、要は何を言いたいかというと円安ヒャッホーということですwwwwww



しかしまあ何ですな。さっきの記事の後半ですけど

『国債買い入れの減額計画に関しては、現時点での市場のイメージは緩やかなものと言えそうだ。日銀は現在、月間6兆円程度の買い入れを続けているが、調査の中心的な回答を基準にした場合、減額計画の決定直後に5兆円程度とし、半年ごとに段階的に縮小して、2年後の買い入れ額は3兆円程度となる。』(だいぶ飛んでるけど上の方のURLのBBG日銀サーベイ記事です)

ええええええええええええ!!!!

何でそんなにペース遅いのよという話でして、月額の買入フローベースで言ったら開始から1年で半減以下、2年後にはリーマンショック前が月額1.2兆円だったのでそれと同等できればそれ以下、というかそもそもゼロで良いんだけど、まあそのくらいには下げているの最低限だろと思っているんですが、なんかこうどっちもワイのイメージと合わん(ゆうて市場は数が力なのでワイの方がおかしいんだとはおもうけどさ)。

国債買入って直近の拡大の前に誰が拡大したっけというと速水総裁時代でして、速水総裁時代に月額1.2兆円とかいう買入になって、福井の俊ちゃんは緩和をしてますアピールはしてたけど輪番はびた一文増やさなかったという実績をお持ちであらされる訳ですな。

でまあそんなんを考えると月額1.2兆円ってのも緩和政策残滓っぽいですけど、こんなの2年後の着地月1兆円買入にしてこそ「相応の額の減額」というのに相応しいのであって、こんな2年かけてやっと半減とかやる気あんのかの世界だと思うんですけど、そっちの「相応の減額」は重視しないというのも変な人たちだと思ってしまいました、ちゃんちゃん。


〇というか輪番って事務方の裁量で相当程度上下できたはずなのにこの間に何があったかの説明がない

というのがまあ雑談の一環としてある疑問点でして、

3月19日の決定会合後の総裁会見の冒頭部分
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240321a.pdf

『長期国債の買入れについては、これまでと概ね同程度の金額で継続することとしました。足元の長期国債の月間買入れ額は 6 兆円程度となっていますが、実際の買入れは、従来同様、ある程度の幅を持って予定額を示すこととし、市場の動向や国債需給などを踏まえて実施していきます。なお、長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施することとします。』(3/19総裁会見冒頭説明部分、上記URLの1ページ目)


3月会合主な意見
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240319.pdf

『国債買入れは、現在と概ね同程度の金額で継続するが、その際、実際の買入れは、これまで同様、調節の現場において、市場の状況に応じて 柔軟に決めていく必要があり 、 上下に多少のアローワンス(例えば1〜2兆円程度)をもって対応していくことが適当である。』(3月会合主な意見、上記URLの3ページ目)

ってことで、そもそも論として今出しているオペ紙レンジの中で月額5兆円への減額だって可能な建付けになっていたのに、なんでそれこそ6兆を5兆にするのに一々MPMを通さないといけなくなっているか、というのが有耶無耶のうちに変化している訳で、この感の事情というのものもちゃんと説明していただきたいですね。

まあ今後変な柔軟性はなくして、基本的に淡々と減額する、って方式にやっぱり変えるのが適切だと思いましたてへぺろ、ってやるような気がしますが、3月会合当初に言ってた「柔軟性」を引っ張りながら買入計画を作ろうとするとたぶん碌なことにならないと思われます。


〇ところで7月会合に向けて情報発信というのは無いのかね日銀ちゃん

https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm
公表予定

8日に支店長会議があるのはわかったのだが(この時には重要4支店の支店長による会見が行われる)、それ以外の政策委員方面からの講演予定はどうなったんでしょうか。

まあこの公表予定は週末アップデートなので、こっちも見てみましょう

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・記者会見・談話

今後の講演・挨拶等の予定
  日程  講演者等 講演内容等

ってあって下が空欄キタコレということで、おんどれらこの重要なタイミングでなんの情報発信もせんのか、というかこれだと副総裁辺りがどっかのメディアのインタビューに登場して、という昨年のパティーンを思い出してしまうので、いつ球が飛んでくるかと気が気じゃなくなるんですけど精神の平和のためにも副総裁(どっちでもいい、ちなみに順番としてなら次は氷見野さん)の講演とかとっととぶっこんでくれませんかねえ・・・・・・・・・・・・・・

ま、やったところで情報発信がブレブレになられても迷惑極まりないので、もうどどーんと構えて「経済物価金融情勢と先行きの見通しを踏まえて適時適切に政策対応を行う」と一つ覚えのように言い続けて政策決定会合で決めます、でいいとは思うのですが(むしろそれで無問題)、このまま7月まで大したもん出さないで迎えるという事になるでしょうかね、知らんけど。

という雑談大会になってしまいましたサーセン、まあ次回決定会合まで丸々1か月ありますからね!





2024/06/26

お題「6月主な意見は個人消費動向を「注視したい」が目立ちますね/基調的な物価/時事とロイターが7月利上げ可能性あるで記事を同日に出すとは」

内田副総裁満面の笑みキタコレ
https://www.boj.or.jp/about/koho_nichigin/news/kn240625a.pdf
【対談】津田塾大学学長 高橋裕子氏vs内田眞一副総裁(広報誌「にちぎん」No.78 2024年夏号)[PDF 1,091KB]

〇6月会合主な意見関連(その2):物価に対しては上振れの話が多いのに何で政策やる気なしの助に

昨日は政策運営のところと政府からの意見で終わってしまったので前半参りますすいません。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240614.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 6 月 13、14 日開催分)1

・経済情勢に関する意見は微妙なのが連発

『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』である。

『・ わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しており、先行きも、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。』

これは大本営なので中立。

『・ 今回は弱めのデータや懸念される情報もあったが、きわめて高水準の企業収益と約 30 年ぶりの水準となった春季労使交渉の結果が所得面から好循環メカニズムを支える、とのメインシナリオは不変である。物価面の指標もオントラックであった。』

であれば本来は「徐々に利上げ」だから7月展望の時点で確認出来たら利上げで問題ないんですけどね、まあタカ。

『・ 日常の買い物やセンチメントには物価高の影響がみられ、個人消費は強さに欠ける。賃上げや政府の施策が今後どの程度個人消費を押し上げるか注視していく必要がある。』

そもそも論として「物価高の影響で個人消費が弱い」ってんだったら物価目標2%達成どころか「望ましくない物価上昇」になっているんだからこんなノンビリした話してる場合じゃないだろと思うのですが、なんかまあこの言い方だとタカではないですよね。びみょー

『・ 当面、中小企業の正規雇用や年金受給者については、賃金や受給額の増加が物価上昇に追いつかない可能性がある一方、非正規雇用や大企業の正規雇用については物価上昇以上の賃金上昇が期待できる。こうした賃金動向が個人消費の先行きに及ぼす影響を注意してみていく必要がある。』

でまあこちらの方も一部では威勢の良いことを言ってるんですが、さっきの人と同じで結論が「状況を注視」ということになってしまっています。6月のこの時点で状況を注視している方々が7月末(次回会合)の時点で見極めが終わりました利上げオッケーって話になるのには話の飛躍が必要だし、さらには長期国債買入減額によって長期金利に影響があるって触れ込みですから、そうなるとこの辺の方々は「個人消費の見極めが必要」とか言いながら利上げを渋るだろうなあと思われますな。

しかしまあ何ですな、長期金利上がると固定型住宅ローンの新規借入金利に影響が出る一方で、短期金利上がると預金金利上昇するんだから、個人消費がそんなに気になるんだったら短期金利の引き上げを先行しろよ(変動型住宅ローンの金利が上がるけど個人は圧倒的預金超過なんだから預金金利上昇の方がでかいだろ)と思いますがwww

『・ 消費者マインドが低下してきているが、それは、物価の上振れリスクの高まりによるものである。』

まあこれはタカ派なんでしょうね。

『・ 中小企業の収益力はコロナ前より大幅改善した大・中堅企業に比べ弱く、投資も低調で賃上げ率も低い。少子高齢化等の構造的問題を抱え国際競争力が低下している日本で、賃金と物価の好循環を実現するには、成長志向の中小・中堅企業が投資・事業構造強化を進め、スタートアップが躍進し、資金・人材を集め成長スパイラルを創出する必要がある。』

これはいつもの中村委員ですね。まあこれはこれで言いたいことは一つの意見だが金融政策運営と関係ないやんという話ではある。

・・・・・ということで、金融政策のところが両論併記どっちかといえばハト寄り、なんですが、経済のところ見ると明らかにこれハトになっている次第でして、まあこれと政策運営の合わせ技で考えると、このひとたち短期政策金利上げる気がない方が優勢だな、と思わざるを得なくて頭がくらくらしてまいります。


・物価に関しては上振れ指摘が多いんですけどねえ・・・・・・・・

『(物価)』の部分。

『・ 消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』

一本目は必ず大本営。

『・ 賃金と物価の好循環が実現しつつあるが、名目賃金上昇率、予想インフレ率、サービス価格上昇率などを踏まえると、基調的な物価上昇率はまだ2%に届いていない。』

ハトですねハイ次。

『・ 本年の春季労使交渉の結果が賃金統計に十分に反映されているとは未だ言い難いが、企業物価指数や企業向けサービス価格指数の上昇を見る限り、「物価安定の目標」に向けて着実に進んでいる。』

同じもん見てなんでこんなにニュアンスの違う意見になるんですかとは思うがタカ寄りですね。

『・ 物価は4月の展望レポート時の見通しに沿って推移している。先行きも、輸入物価上昇に加え、タイトな労働需給や所謂 2024年問題による運送費高が影響し、価格上昇が続くと考えられる。』

そもそも物価は上振れどころかオントラックだったら政策調整を行っていくという話だったので、オントラックだし先行きもOKOKなんだったら利上げ提案せえやと思いました、普通にタカ。

『・ 為替円安に伴う物価上昇のもとでも賃金と物価の好循環が着実に強まっていくためには、中小企業の価格転嫁が進展するとともに、名目賃金上昇率が一段と高まっていくことが重要である。』

中村委員っぽいですけど、これただの悪循環スパイラルにならんかと思いました、ハトですね。

『・ 輸入物価上昇は、現時点で、2022 年以降のような価格転嫁をもたらすとは考え難いが、価格を据え置くとするノルムの転換もあり、従前より価格転嫁が進みやすく、2024 年後半に向けて価格引き上げの波が再び生じる可能性もある。』

うーん持って回ったような言い方ですが、結論としてはタカ気味って感じですね。

とまあそういう訳で、経済のところは明らかにハトっぽくて、物価はオントラックからタカ寄りなんだから、本来の建付けであれば政策金利の調整にそろそろ着手すべきという話なんですが、例によって「個人消費の先行きを確認したい」とか言い出しているので、これはまあ利上げ先送りの怪しい理屈ということで、7月どころか9月も引っ張るリスクあるでって話ではあります。

と申しますのは、この人たち黒田末期でウクライナ侵攻が始まった以降の円安進行と物価上昇開始局面から「基調的物価(コアコア)」が上がらん→「賃金が上がらん」→「サービス価格などの動いていない品目が多い」→「賃金上昇の持続性を見たい」→「賃金と物価の好循環を確認したい」、と来て最近は「基調的物価が」というのを使っていますが、ここで「個人消費がー」と言い出す、ということで、手を変え品を変え緩和政策修正の先送りをする小理屈ばっかり出して来るというマーベラスなことをしておりますので、だいたいこういう新手の言い訳とともに「状況を注視したい」とか言われるとその時点でアタシャがっくりと来てしまうんですよね。まあそんなことで読んでるアタクシ的に期待外れでガッカリしているというのはあるのですが、それにしてもこれマジで4月の金融政策決定会合議事要旨となんでこんなにトーンが違うんだよおまえら4-6でなんか変なこと起きたかよと思うのでありまして、アタシャ日銀の言ってることのどこを信用して読めば良いんでしょと思ってしまう次第です。

なんせアタクシの日銀ヲチって公表文書をひたすら読むこむところから始まっていますし、今でもその基本スタンスは同じなのですが、ハトハトチキン総裁の発言がブレブレになるどころか、こういう公表文書までブレてくるとマジで勘弁していただきたいんですよね、ということで足元における「公式文書ベースでの情報発信のブレっぷり」に関しては結構深刻に受け止めておりますんですよ、とお伝えしておきます。


〇基調的物価が順調に下がり・・・・ませんなw

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

まあこれも都合の悪い水準が続いているうちはだんまりを決め込んでおきながら、最近は「基調的なインフレガー」とか言い出す始末で、いやとにかく君たちはロジックの軸というものが無いのか(ないんでしょうけど)という話ではありますが、まあゆうてみておく必要もあるので見るqqq

んじゃまあ直近2年分

May-22 1.5 0.4 0.5
Jun-22 1.6 0.5 0.5
Jul-22 1.8 0.3 0.7
Aug-22 1.9 0.5 0.8
Sep-22 2.0 0.5 0.9
Oct-22 2.7 1.1 1.3
Nov-22 2.9 1.2 1.5
Dec-22 3.1 1.4 1.6
Jan-23 3.1 1.1 1.6
Feb-23 2.7 0.8 2.1
Mar-23 2.9 1.0 2.7
Apr-23 3.0 1.2 2.8
May-23 3.1 1.4 2.9
Jun-23 3.0 1.4 2.9
Jul-23 3.3 1.6 3.0
Aug-23 3.3 1.8 3.0
Sep-23 3.4 2.0 2.8
Oct-23 3.0 2.2 2.6
Nov-23 2.7 1.7 2.4
Dec-23 2.6 1.6 2.4
Jan-24 2.6 1.9 2.3
Feb-24 2.3 1.4 2.0
Mar-24 2.2 1.3 1.9
Apr-24 1.8 1.1 1.6
May-24 2.1 1.3 1.5

おやおやまあまあ、刈込平均が2%に戻って加重中央値も反転しましたねということでして、これから円安の影響が出てきたらまた上がるんとチャイマスカという気もする(なお電力料金とかエネルギー補助金のクソバラマキが発生するのがまためんどい)次第でして、「待つことのリスク」って小さくないようにしか思えないんですけど(円安放置したら昨年の二の舞にならんか問題)どういう分析になっているのでしょうか日銀ちゃんでは・・・・・・・・・・・・


〇これはまたどういう風の吹き回しで(経団連会長急に日銀に「理解のある」スタンス)

これはなんの判じ物ですかしら
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024062501003&g=eco
円安「今がピーク」 為替介入は一定の効果―十倉経団連会長
時事通信 経済部2024年06月25日18時28分配信

『経団連の十倉雅和会長は25日の記者会見で、円相場が1ドル=160円台目前まで下落していることについて「今が(円安の)ピークのような気がする」との見解を示した。日銀が金融緩和政策の修正を模索する一方、米国は物価高が落ち着けば利下げを行う方向で、円安の一因となっている日米金利差が「中長期的に見れば埋まる」ことが理由という。』(上記URL先より)

ってアメリカン金利がここから上がったらどないしますねんという気がするのでフラグにしか見えないのと、なんか知らんがこの記事だと割愛されているのですが、最初見たときは「金融政策を為替対応で使うのはよくない」とか言い出していたのがありまして、えええええええええなんで急にそっちになったのよと思いましたが、これはハトハトチキン総裁もニッコリという展開で、いやーこれは7月輪番減額だけで行きそうですなあというのが一つ。

あと気になるのは、こうやって「ご理解」が得られてしまっている訳ですが、一方で金融市場の方は株は知らんけど債券と為替ってたぶん結構頑張って輪番減額するのと、7月展望で利上げをしないにしても利上げに向けた前向きなスタンスと、近いうちに利上げがあるんじゃないか的な予告ホームランとまでは言わないけどそれなりに強い機軸を打ち出してくるのを期待していると思う(個人の印象です)ので、「ご理解得られたからヘーキヘーキ」とばかりにショボいのを打ち出してきた場合、その反動が来るんじゃまいかという話で、そうなると4月6月に続いて7月でも「会合前に期待値が高まるけど会合結果が期待外れで円債市場では債券先物踏み踏み祭り」というのを繰り返す可能性がますます高まってきてねえかと気が早いけど思ったりします。


〇気が早いといえば気が早いのにちょこちょこ出てくるんですよね

まあこの時期だし書きっぷりが別にお漏らし風でもないから反応しなかったんですけど、昨日って時事通信とロイター(しかも英語版の方で)なんかまあ7月利上げの可能性、みたいな記事が出てたんですよね。

時事通信
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024062400888&g=eco
日銀の7月利上げが焦点 円安で物価上振れリスク
時事通信 経済部2024年06月25日07時03分配信

『日銀が3月のマイナス金利解除に続く政策変更のタイミングを慎重に模索している。円安や原材料高を受けて、企業による値上げが相次ぎ、物価の上振れリスクが強まっていることが背景。ただ、拙速な金利引き上げは景気にブレーキをかける恐れもあり、7月末の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切るかが焦点となっている。』(上記URL先より、以下同様)

ってことですが、いや少なくとも円債市場は「7月利上げは為替で追い込まれでもしないとやらないんでネーノ」って感じかなと思うのよね。

なお、ここでワンチャンあるとすれば、前回会合では「輪番減額計画を作ってとっとと開始します」という話だったのですが、しれっとこの順序を変えて、7月会合で政策金利の引き上げを実施して、その代わりに「中長期的に輪番は減額しますよはいこの通り、ああそれから輪番減額のスタートは今年度下半期からでよろしくオナシャス」みたいなアクロバットをかましてくる可能性ってのはあるのですよね、というか本来的には4月頭の減額チャンスで輪番減額しなかった時点で、ああこれは0.25%への利上げを先行させてから輪番を減らすんだろうな、ってアタクシなんぞは思っていた次第で、こんなの5.13事件で輪番が悪目立ちしてしまったから輪番が先に来るわ政策イシューになるわ、という日銀のチョンボだと今でも思っています。

『「(企業の)価格転嫁によって物価が上振れる可能性もあり、金融緩和のさらなる調整の検討も必要だ」。日銀が24日公表した6月会合の「主な意見」によると、政策委員の一人が、追加利上げを検討すべきだと主張。また、「次回会合に向けてデータを注視し、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げることが必要だ」との意見も出された。』

って記事ではなっているのですが、昨日今日とネタにしましたように、今回の「主な意見」はどっからどう見てもアグリゲートすれば中立ややハト風味に仕上がっていまして、片面だけとらえてこういうのを書くってのは時事通信さんらしからぬプレイ、と思ったのですが・・・・・・・・・・・・・


午後にロイターさんただし英語版だけの記事だと思うのだが
https://www.reuters.com/markets/rates-bonds/bank-japan-opens-door-hawkish-double-surprise-2024-06-25/
Bank of Japan opens door for a hawkish double surprise
By Leika Kihara
June 25, 20243:05 PM GMT+9

いつもの木原記者の署名記事。

『TOKYO, June 25 (Reuters) - The Bank of Japan is dropping signals its quantitative tightening (QT) plan in July could be bigger than markets think, and may even be accompanied by an interest rate hike, as it steps up a steady retreat from its still-huge monetary stimulus.

Hawkish hints delivered over the past week highlight the pressure the central bank faces in the wake of renewed yen falls, which could push inflation well above its 2% target by raising import costs.』(上記URL先より、以下同様)

ということで、こちらでも円安キタコレによって輪番減額だけではなくて利上げも7月ぶっこみあるでという話ですが、なんせ記事のお題が割と刺激的。

『Notwithstanding a market shock or severe economic downturn, a rate hike would be on the table at each policy meeting, including July's, said three sources familiar with its thinking.

"Given what's happening with inflation, interest rates are clearly too low," said one of the sources. "Much depends on upcoming data, but a July rate hike is a possibility," another source said, a view echoed by a third source.』

3人のお詳しいソースから聞きました、ってことで輪番減額と利上げは同時にあるでと来て、うち1番目の人は「そもそも金利が物価に対して低すぎるのは明確」と言ってて、2番目の人は「データ次第だけど7月利上げの可能性あるで」と言ってて3番目の人も2番目の人に同意してるんですと。

ただこちらの記事でも、

『However, the board debated the need for a timely hike with one member signaling the chance of doing so to prevent cost pressures from pushing up inflation too much, a summary of the meeting showed on Monday.

That was largely read as a sign the bank is gearing up for near-term action.』

ということで、6月会合主な意見でのタカ派コメントを拾ってきてこういうストーリーを展開しているっぽく見えますが、ロイターさんにしろ時事さんにしろ、そんじょそこらのポンポコリンじゃないので、6月主な意見の全体を読むと前のめり感が出ていないことくらいは先刻ご承知の助だと思うののですが、同じタイミングでこういう観測記事が出てくるのは何かアレなものを感じて甚だアレ、とアタクシの碌に当たらないカンピューターには響くのですが、はてさてどうなんでしょうかね。

いずれにしましても、本件はなんせ7月末までという長丁場がこの先待っていますし、昨年の6月7月を思い出して見ますと、6月時点ではこりゃ全然動かんのかこいつら、と思わせておきながら急に局面が変わったという事案もあったわけでして、まだまだ分からんわなとは思いますけどね。


ちなみにこちらは円安で家計があばばばばーになる懸念がという見解を紹介した同じ日のロイター記事です
https://www.reuters.com/markets/currencies/veteran-boj-watcher-warns-japanese-households-facing-more-pain-weak-yen-2024-06-25/
Veteran BOJ watcher warns Japanese households facing more pain from weak yen
By Leika Kihara
June 25, 20244:45 PM GMT+9






2024/06/25

お題「主な意見が寧ろハト気味な件について/3M短国引け利回りが唐突に上昇/輪番減額無しでしたね」

なんか出てるんだが
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24j07.pdf
大規模国債買入れのもとでのわが国の長期金利形成

頭に「多角的レビューシリーズ」ってあるのでどうせ結論先にありきと読みもしないで断定が可能なので、「ここに書いてあることから考えるとどういう屁理屈を組んで輪番の減額を行っていくのか」という事を知るのには良いのですが、分析自体をあまり有難がって読むもんではない、と1ミリも読まないで断言する人間の屑がアタクシになりますwww


〇6月会合主な意見が輪番減額も利上げも全然前のめりじゃない件について

メディア的にはこういう見出しの方がヒットするんでヘッドラインを見るとどこのベンダーでもこんな感じだったのですが・・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/ZPKVUGHBPJNPJEJCMUDGKZFPWA-2024-06-24/
物価に上振れリスク、「遅きに失することなく」適時に利上げ必要=日銀主な意見
By 和田崇彦、 内田慎一
2024年6月24日午前 11:22 GMT+9


https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240614.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 6 月 13、14 日開催分)1

・先に政策運営の方から見るけど見事に両論併記だしまあ普通にこれハト優勢ですよね

『U.金融政策運営に関する意見』ですが、掲載順に引用します。

『・ 展望レポートで示した経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくこと
になる。』

これはもともと4月展望で書いてあることなので別にどうということはない。ハトではないがタカとも言い難い。

『・ 見通しに沿った物価の推移が続く中、コストプッシュを背景とする第2ラウンドの価格転嫁によって物価が上振れる可能性もあるだけに、リスクマネジメントの観点から金融緩和のさらなる調整の検討も必要である。』

これはタカ。

『・来年度後半の2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、オントラックで進んでいるが、上振れリスクも出てきている。こうした点が消費者マインドに影響していることも意識しつつ、次回会合に向けてもデータを注視し、目標実現の確度の高まりに応じて、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げることが必要である。』

まあベンダーヘッドラインインなるくらいだし、「遅きに失することなく」ってのが植田ハトハトによる「遅れることのリスクは小さい」へのアンチテーゼになっているのでこれは文句なしのタカ。

・・・・・と、最初にタカを並べるのですが、ここでハトが来て中和されるんですよね。

『・政策金利の変更を考えるタイミングは、消費者物価が明確に反転上昇する動きや、中長期の予想インフレ率の上振れなどを経済指標で確認してからで良いと考えられる。』

いや予想インフレ率上振れしたらアンカー外れてますやんその時は引き締めまでいかないとダメなんですがおっちゃん(かおばちゃんか知らんけどたぶんおっちゃん)何考えてますの????

・・・・というレベルのスーパーハトという智頭急行に走ってそうな人発生。

『・個人消費が盛り上がりを欠く中、一部自動車メーカーの出荷停止という想定外の事態が続き、これらの影響も確認する必要がある。このため、当面は現在の金融緩和継続が適当である。』

個人消費が盛り上がらないのはてめえらの緩和継続が招いているコストプッシュによる物価上昇なんですけどなんで緩和継続するんですか馬鹿なんですか、と思いますが、まあそういうことなのでこれもスーパーハト。

この次が「為替円安と金融政策」コーナーになります。特にそんな見出しはついていないけど。

『・円安は物価見通しの上振れの可能性を高める要因であり、リスクマネジメントアプローチに立って考えれば、リスク中立的な、適切な政策金利の水準は、その分だけ上がると考えるべきである。』

コーナーが変わりましたのでまたタカからスタートなんですが、こちら中立金利上がるというタカの話ですが利上げを急ぐべきとかいう話になっていないのでタカはタカだがスーパーはつけられませんな。

『・ 為替相場の変動は経済活動に幅広い影響があるほか、ファンダメンタルズから乖離した水準が続けば国民経済の健全な発展にも影響が及ぶ。他方、金融政策も為替相場だけではなく国民生活や経済活動の幅広い側面に影響するので、経済・物価情勢の全体像をみて運営しなければならない。』

結局この人は何を言いたいのという話なんですが、まあだいたい円安怪しからんといいながら後半のようなことを言う人は普通の場合はハト理屈なんですよねー残念無念また来年。

『・金融政策運営は、物価の基調とその背後にある賃金動向を見極めて行うものであり、為替の短期的な変動には左右されない。』

これはまあハトになりますが、

>為替の短期的な変動には左右されない
>為替の短期的な変動には左右されない
>為替の短期的な変動には左右されない

っていやマジで貴殿の首の上に乗っかっているのはカボチャかなんかですかと小一時間問い詰めたくなるんですが、「為替の短期的な変動」ってお前2023年植田総裁就任以来のドル円チャート見てからものを言えやという話だし、まあ本来で言えば2022年からのドル円チャートを見てからものを言えということで、そのカボチャ脳でちょっとドル円の3年チャートでも見てからこの意見を読み直せと思うのですが、まあカボチャだからそれ見ても分からんかね。

と、カボチャ政策委員にひとしきり憤慨したところで次のコーナーが「長期国債買入をどうするのコーナー」になります。まあ「長期的に減額」というのは決定したんですが、じゃあ具体策どうなのよという話だが。

『・金融市場において長期金利がより自由な形で形成されるよう、国債買入れを減額していくべきである。その際、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で相応の規模の減額をしていくことが適切である。』

まあこれは仰せの通りではあるのですが、「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保」するという発想がイマイチ行けてなくて、ここを重視するあまりに今の植田日銀ってものすごく不透明なオペレーション運営をしていて、その結果としてマーケットメーカーにしろ投資家にしろ、先行きの政策運営をロジカルに考えたポジションテイクができない状態になっている、というのがちゃんと伝わっていないんじゃないのと毎度思ってしまいます。

『・イールドカーブ・コントロールからの出口を円滑に行うことができた経験も踏まえて、国債買入れの削減についても、削減額やペースのほか、枠組みの作り方などを工夫することで、市場の混乱を起こすことなく削減を行うことができると考えている。今回具体案を決めるより、市場参加者の見方を確認するプロセスを踏んだ方が、よりしっかりとした規模の削減ができる。』

基本的にタカなんだが、「イールドカーブ・コントロールからの出口を円滑に行うことができた経験」って黒田末期以降にYCC維持のためにどんだけ無茶苦茶オペの乱発したんだということで、なにが「出口を円滑に行うことができた経験」じゃ勝手に歴史改竄するなやボケというお話でございまして、なんかこの国債買入減額のタカのお二人とも余計な枕言葉が入っているのが気になりますね。

つまちこれは「余計な枕言葉を入れないと意見が全然通じない」という事に繋がっている訳で、長期国債買入減額に関してはうっかり市場のイシューになった(してしまったのは4月に素直に減額しなかったのと5.13事件のせいなので自業自得なんだが)ので今回「長期的に減額」というのをわざわざ決定するという羽目になったのですが、そうは言っても別に気合入れて減額する必要ってありましたっけというのが実際の政策委員会の空気なんじゃないか、と邪推したんですがどうですかね(個人の感想です)。

『・3月の政策枠組み見直しの趣旨を踏まえ、国債買入れの減額を行うことで、市場における日本銀行のプレゼンスを小さくしていくことが必要である。』

いやこういうシンプルな意見が欲しいですよね。問題はその規模なんで立ち位置は不明ですけど。

『・@国債市場で日本銀行が圧倒的に大きなプレーヤーである、A市中での代替が簡単ではないほど、日本銀行が大量の国債を保有している、といった大規模緩和の副作用が課題として残っている。このため、市場と対話しながら、適時適切に、日本銀行バランスシートの正常化を進めていく必要がある。』

市場と対話しなくたって、望ましいバランスシートを考えたときのゴールがあって、まあいきなりゴールまでの道は示さなくても、中間目標を途中に置いて、その中間目標までは淡々と減らす、ってやった方がどう見ても現実的には望ましくて、この「市場と対話しながら」の大義名分を入れると却って不確実要因になりますがな、と思うのよね、そら適時適切に減額できればそれに越したことはないけど、市場の中の人だって立場によって利害は違うんだからそんなの一々全部聞いてられないでしょ。

『・ 国債の買入れ額の減額については、債券市場の需給や機能度の改善状況を踏まえつつ、中期的な計画を策定して、これに沿って淡々と減額を行うことが望ましいが、減額の最適なペースなどを設定する必要があるため、市場との対話も含め、ある程度の時間をかけて慎重に検討すべきである。』

前半は良いんだがなんで結論が「時間をかけて慎重に検討」になっちゃうのよ・・・・・・・・・・・

『・ 国債買入れの減額については、開始時期や規模次第で経済を下押しし得るため、市場と対話を図りつつ、経済情勢を点検してから徐々に進めることが必要である。』

はいきましたハト理論。

『・ バランスシートの縮小は、拡大した日本銀行の市場への関与を市場への攪乱的影響を避けつつ減らしていくことが目的であり、金融政策とは切り離して行うものである。』

「市場への攪乱的影響を避けつつ減らしていく」と言ってる時点でダメなロジックで、これを言い出すと結局チキン丸出しになるんですよね。

『・国債買入れの減額に際し、今後の国債保有構造の在り方を念頭に、中長期的観点から新たな市場構造を議論していく必要がある。その際には、市場参加者を取り巻く前提となる環境を含め、幅広く議論していくことが重要である。』

そんなもんはお前らが考えなくてよろしい。なんか言ってるようでなんも言ってない意見ですね。

最後はETFです。いつも1名これ言ってますね。

『・ 保有するETFの取扱いを議論していくために、それが個別株式でなく投資信託であることなど、市場に影響を与える諸特性について理解を深めることが必要である。』


ということで、輪番減額につきましても「中長期的な方向として減額する」までは決まったものの、その中身に関して言えば積極減額しようという前のめり感を全然感じないという内容になっておりまして、今回輪番減額決定というのがあってベンダーのヘッドラインがタカ派バイアス掛かっていましたし、昨日は朝っぱらから神田大明神が円安牽制発言をがっつりと行っていたのもあって、とりあえず反応的には無事でしたけれども、まあこれ普通に「タカハト拮抗、むしろハト優勢」でしょと思いました。


・しかし4月議事要旨があの調子だったのに何で今回の主な意見はこんなにハトっぽいんだか

という疑問が当然沸き起こってくるのですが、こうなってくると10年後に出てくる議事録でも見たくなりますが、10年後とかワイも棺桶に片足突っ込んでいるとか何ならどっかの焼き場で燃えた後かもしれないと考えると、この近辺の議事録を見るまではボケずに生き抜こうという励みになるというものですw

・・・・てなギャグはさておきまして

まあでもそういうことでして、これ4月議事要旨の方が「タカ的な意見を殊更にフレームアップして作成された」んじゃネーノ疑惑の方が涌き起ってくるわけですよ。まあ主な意見って各委員が出したものを使うからそうそう内容いじれないでしょうけれども、議事要旨は言ってもいないことを書くのはアウトですけど、どの意見をフレームアップするのかは恣意的にやろうと思えばできる(本来はやるべきではないのだがFEDでもその可能性が垣間見れますよね)ので、まあそういう疑惑になってしまう訳ですよ。

でまああんまりそういう事やってると、日銀公式が出すものが信用ならんとなりかねない重大なリスクを起こす可能性があるので、何なんですか今回の一連の流れは、と思ってしまうんですよ益々のこと。いやほんと何なんですかね。



・政府から公開処刑されててクソワロタ

でまあ今回の主な意見最大の面白ポイントは『V.政府の意見』になります。


『(財務省)』から。

『・ 足もとでは賃上げ、設備投資等に前向きな動きが見られる一方、個人消費は力強さを欠いており、海外経済のリスクも認識している。』

『・ 政府は、経済再生と財政健全化を両立させる歩みを更に前進させていく。』

まあここは(2番目とか寝言は寝て言えと思いますが)さておきまして、

『・ 日本銀行には、政府との密接な連携のもと、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。その上で、情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい。』

>情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい
>情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい
>情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい

wwwwwwwwwwwww

『(内閣府)』から。

『・ 足もとの経済運営に万全を期しつつ、コストカット型から成長型経済への移行に向け、強い決意で改革に取り組む。「経済・財政新生計画」を策定し、政府を挙げて実行する。』

はさておきまして次。

『・ 日本銀行には、金融政策の具体的なオペレーションについて適切な判断を期待する。引き続き、政府と緊密に連携し、十分な意思疎通を図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的実現に向け、適切な金融政策運営を行うことを期待する。』

>金融政策の具体的なオペレーションについて適切な判断を期待する
>金融政策の具体的なオペレーションについて適切な判断を期待する
>金融政策の具体的なオペレーションについて適切な判断を期待する

wwwwwwwwwwwww

情報発信が無茶苦茶、オペレーションが下手くそ、とか財務省と内閣府の共同砲撃を食らっていてもうこれは公開処刑レベルの苦言の呈され方。

と申しますのは、
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/index.htm
金融政策決定会合における主な意見 2024年

こちらに過去の「主な意見」がありまして、3月のマイナス金利YCC解除含めて今回が3回目の決定会合になりますけれども、3月、4月ともこんな言われようはしていないわけでして、4月決定会合総裁会見のやらかし事件(情報発信を指摘した財務省)や、無駄な混乱だけ招いたサプライズ輪番減額の5.13事件(オペレーションを指摘した内閣府)について思いっきり言われとるやんという事だし、こんなにぶっこむのは割と異例ですよね、という話。

でまあ急に話が戻りますが輪番減額に関しての話で「市場との対話」というのが何度も出てきているのですが、なにせ5.13事件ぶっこんでいるという直近実績がある人たちに「市場との対話」とか言われましてもヘソが茶を沸かすとしか申し上げようがないんですよね、と改めて思いました。


なんか経済物価の話をかっ飛ばしている気がするが別ネタがあるので本日はパス(書くものがあったら明日書く)。


〇3M短国の引けが突然上昇している謎事案について

まあ謎事案だから謎なんですけど何なんですかこれ。
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

こちらの本日付け(=昨日の引け)の短国を見ますと、

国庫短期証券1237 2024/09/17:平均値単利 0.030
国庫短期証券1239 2024/09/24:平均値単利 0.030

っていうことで、金曜日に平均落札価格が100円オーバー(つまりマイナス利回り)になったカレントの1239とその1個手前のこれまたお強くて100円が金曜日の引けになっていた1237回3Mがなぜか3bpとかいう威勢の良い金利上昇を示しています。

でまあ一々引用すると大変なことになるからアレですが、前日軒並み0.1bp水準だった9月までの償還の短国の引け(平均値単利)が軒並み全銘柄3bpまで上昇しておりまして、いやなんなのこれという話であります。

これが四半期末の特殊需給要因の剥落が起きたからとか言って7月に発生しているんなら話はまだ分からんでもないのですが、なんで今週頭に発生するのか、というのがマジで分からん誰かしってたら教えてと言いたいが、そもそも短期市場ってこういうところは良くも悪くも謎市場なのでなんなんでしょうねえと首を傾げながら引値を眺める昨日の夕方なのでした、いやマジでなんなんこれ。

まあ東京レポレートとか見てるとGCは高止まりで、短国アウトライトだけ変なことになっているから修正される、というのはそらまあそうなんですけど、タイミングがこの時期なのが謎(しつこい)ですわ、はい。


〇そういや輪番減額しませんでしたね

オファー (6月24日<月>)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of240624.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下)    3,750  2024年6月25日
国債買入(残存期間3年超5年以下)    4,250  2024年6月25日
国債買入(残存期間5年超10年以下)   4,250  2024年6月25日

昨日アタクシ「実はアタクシは輪番減額無しの方に100インドネシアルピア(一切自信がない)ということにしておきます。」などとチキンにもほどがある両建てをしましたが、ちゃんと同額で実施したじゃんそらそうよ(急に勢いづく人w)、と思いました。

まあメモだけです。神田大明神発言効果だったのか、そもそも輪番を無視していた(どうせ今後減らされる話の方が大きな話だから足元の話はどうでもよいというロジックでしょうね)のか、その辺はわかりませんけれども、ドル円が反応してなくて良かったですねという風情でした。


ということで今朝はこの辺で。






2024/06/24

お題「短国3M平均マイナスェ・・・・・・/ドル円が来てますが輪番とか主な意見とかどうなるやら」

ほうほうそうですかそうですか
https://jp.reuters.com/markets/bonds/

米国債10年 利回り
US10YT=XX +4.257 +0.003

米ドル/日本円
159.8000 +0.01%


〇短国3Mが平均マイナス金利ェ・・・・・・・・・

金曜の短国入札ですがまあやっちまいましたな

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240621.htm
国庫短期証券(第1239回)の入札結果

『1.名称及び記号     国庫短期証券(第1239回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日         令和6年6月24日
4.償還期限       令和6年9月24日
5.価格競争入札について
(1)応募額          13兆1,376億円
(2)募入決定額      4兆1,796億5,000万円
(3)募入最低価格     99円99銭8厘5毛
(募入最高利回り)     (0.0059%)
(4)募入最低価格における案分比率    16.9607%
(5)募入平均価格     100円00銭0厘9毛
(募入平均利回り)    (-0.0035%)』

>(募入平均利回り)(-0.0035%)
>(募入平均利回り)(-0.0035%)
>(募入平均利回り)(-0.0035%)

・・・・アイヤー!!!!!

ということで平均が明確に100円よりも(入札の応札刻みベースで)2ノッチ近く高いので、これはもう全力で100円とかそれ以上の札が入りました、ってことでありまして、いやーそれ短期のコールだの日銀当座預金付利金利だの考えたらとんでもないレートなんですけど、まあ「国債」というものへのニーズなんだからしょうがない。

まあこれ約定ベースの期内だと今週金曜入札で7/1発行の1240回(オシャンティーなことに1240は償還が9月30日という半年期末タイミングになります)があるので、実はこの入札がピークじゃない可能性もあるというのがオソロシス。

売参を見ますと
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

国庫短期証券1237 2024/09/17:平均値単利 0.000
国庫短期証券1239 2024/09/24:平均値単利 0.001

となっていて、先々週金曜に入札のあった1237の方がゼロ利回りになっていて新発の方は0.1bpとなっておりますが、1240WIも0.1bpだし、何なら3か月以内全部0.1bpになっています。まあこれ引値がこうなっていますが、入札が売参よりも強く決まっているということは、まあ要するに需要が強いんですから、入札結果に見えるように世の中で実際に買うときは100円で買わせてくれるかどうか怪しいんじゃないですかね、知らんけど。


まあゆうてGCの方はこの2週間でこんな推移なので(珍しくやる気出して上に凡例入れてみた)

https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

         翌日物
        T+0  T+1  1W   2W  3W  1M   3M
2024/6/10 0.080 0.043 0.051 0.052 0.052 0.051 0.087
2024/6/11 0.088 0.044 0.051 0.051 0.051 0.052 0.087
2024/6/12 0.077 0.047 0.052 0.052 0.051 0.052 0.087
2024/6/13 0.011 0.030 0.048 0.049 0.050 0.048 0.086
2024/6/14 0.037 0.032 0.043 0.043 0.044 0.041 0.086
2024/6/17 0.073 0.056 0.049 0.044 0.046 0.044 0.085
2024/6/18 0.072 0.045 0.045 0.044 0.045 0.042 0.083
2024/6/19 0.041 0.058 0.046 0.042 0.044 0.044 0.084
2024/6/20 0.068 0.076 0.049 0.044 0.046 0.050 0.083
2024/6/21 0.084 0.086 0.051 0.050 0.051 0.051 0.084

短国持ってる人がGC出して日銀当座預金置くと短国の低利回り回収できますってことなんですかね、4月の時みたいにGCまでクソ下がるという訳ではないのですし、だいたいからしてタームの金利ってなんだかんだそんなに低いわけでもない(まあ1M以下の水準これでいいのかとは思うけど一応7月決定会合を跨がないし)という感じですが、ゆうて短国利回り低下の方は今回の方が凶悪ということで、まあ4月決定会合の前の時点では利上げとかは早くて6月7月の話って感じでしたのでターム金利が上昇する感じがなかったですけど、今回は見事に短国というモノへのニーズで短国アウトライトがおかしなことになっておられる次第。

まあこれは日銀のコミュニケーションがクソおぶクソで、利上げに関しても輪番減額に関しても説明が全然論理的じゃないので、こっちとしては論理的にデータを見て日銀の次のアクション及びその時期を想定して価格形成をする、という市場が当たり前にもっている機能が果たせないわけですよ。なんせ政策反応関数が「お気持ち」と「官邸に呼び出し食らって怒られるか否か」じゃあそんなん分からんがなということで、そらまあ何が飛んでくるかわからんから落とせるリスクは落とすし、所詮3Mなんで極端な話25bp食らったって年間25銭の4分の1ですから、10年債1毛投げる寄りもやられが小さいわけで、そら様子見地蔵には絶好(キャリー負けの問題があるけどいったんさておく)ですからぬー。

とまあそんなわけで、短国市場がオーバーツーリズム状態になっておりまして、地元住民(短国を純粋に短期資金運用で考える住民)は外出もままならぬ(むしろ外出したら命にかかわるwww)という風情ですが、ツーリスト帰るのって日銀の政策がロジカルに読めて、先の政策を織り込んだ価格形成を債券市場がするまで、と思うと頭痛い(ワンチャン6月末抜けたら少し違うかもだが)。


〇本日は輪番と主な意見で円安牽制ができるかもしれませんけどさてどうする(ニヤニヤ)

・さあ今日は輪番ですけどドル円が160円に乗りそうですねえ(ワクワク)

ワクチン2回目でワクワク(自主規制)とかいう駄洒落で心がほっこりした時代がありましたな・・・・・

という懐古厨はさておきまして、今日は輪番が予定されているんですよねーお誂え向きに。

(再掲)
https://jp.reuters.com/markets/bonds/

米国債10年 利回り
US10YT=XX +4.257 +0.003

米ドル/日本円
159.8000 +0.01%

ってことで、アメリカン長期金利が4.3%も行ってないのにこの水準ってことで、つまりは決定会合当日に関しては突然のフランスネタでのリスクオフとかあったのでごまかされてしまいましたが、やっぱり6月会合で「次回決定会合という1か月半後に輪番減額やりますけれども短期金利の引き上げはどうでしょうかねえ」という、よくよく考えてみたら手ぶら会合だった、というのが人口に膾炙してきて、日銀はやる気無しだし、イエレン姐さんが前々から言ってるように。「介入するなら利上げしろ」ってことですから裏を返せば日銀がこれでは為替介入できないし、できたにしたって効きやしない、ということになります。

もちろん日銀が25bpに利上げしたってその先の利上げやる気無しとかだったら全然お話にならないのですが、いずれにしても何かやる気を見せても円安でしたテヘペロならまだしも、やった振りだけして円安進行止まらないのは無為無策の植田日銀は肥溜めに飛び込んで反省汁という話になりますな。

・・・・・・なので5.13事件があったくらいなので、今日って輪番減額(やるなら中期の方)って一応期待するのもあるみたいですけれども、しかしまあここで問題になるのは「7月に減額の中期的な計画を出します」って言ってしまっていることでして、7月にちゃんとした計画を出しますその前に市場の皆様に相談します、って言ってるのに、いくら金融市場局の裁量の範囲を言い張っても、まあ政策的意図があるんでしょうなあというような減額をここで打つのって6月会合で言ってたことと話が違くね???ってことになりますよねこれ。

なので、実はアタクシは輪番減額無しの方に100インドネシアルピア(一切自信がない)ということにしておきます。


・今日は主な意見が公表されるんですよねー

ということで

https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm
公表予定

6月24日(月) 8:50 ○ ● 金融政策決定会合における主な意見(6月13・14日分)

まあこれなんですけどね、先般珍しく2回シリーズでネタにした4月金融政策決定会合議事要旨ですけれども、「円安が物価の基調に及ぼす影響」という植田失言(と言っていいでしょあれは)の背景となるはずの決定会合での議論は少なくとも4人の政策委員ですから半数になろうとする政策委員が基調的な物価に与える影響についてああでもないこうでもないと指摘していたし、先行きの金融政策運営に関してだって、総裁の記者会見での発言のトーンと議事要旨で記載されている議論のトーンが全然違ったじゃないですか。

・・・・・ということでですな、まあ今回の主な意見に関してもなんかどうせタカタカなものが出てくるんジャマイカ、というのは容易に妄想できるんですけど、そうなりますと今度は今回の決定会合後の記者会見での植田総裁のやっぱり政策修正への前のめり感皆無の発言との整合性を問われる事態になりますので、まあちょっと待てよと思うのです。

さすがにこれ2回続きますと、何ぼ何でもおかしくないかという人が増えてくる(ワイ的には1回の時点でおかしいだろこれって感じですけどw)訳でして、まあマイナス解除の前もそんな傾向があったんですけれども、総裁会見と主な意見や議事要旨のトーンがこれだけ振幅あると、日銀の情報発信そのものが「こいつらウソツキなんじゃねえか」となって誰も信用しなくなってしまいましたら政策もへったくれもなくなってしまう訳して、いいからお前ら落ち着けという感は拭えません。

ま、植田さんが勝手に会見で暴走してるなら植田さんの口を縫い付けてしまって会見では椅子の下に声帯模写師でも隠して声帯模写師に会見原稿読んで貰えば済むんですが、これ事務方の方で市場の反応見ながら議事要旨や主な意見のトーンを針小棒大スキーム(さすがに嘘は書けないけど掲載する意見のウェイトを恣意的にいじれば特に議事要旨なら操作するのは不可能じゃないですからね)を使って操作している、と思われてしまうと、そもそもこれらの情報発信が信用できないとなってしまうので、もっとヤバいわけで、なんかどんどんドツボにはまってさあ大変、になっておりますのを懸念するところではあります。


〇市場参加者会合実施へ

ほうほうそうですかそうですか
https://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond_list/mbond240621.pdf
「債券市場参加者会合」(第 20 回)の開催について
2024 年 6 月 21 日
日本銀行金融市場局

『日本銀行金融市場局は、「債券市場参加者会合」(第 20 回)を以下の要領で開催します。

1.日 時
銀行等グループ 7 月 9 日 (火) 15 時 45 分から
証券等グループ 7 月 9 日 (火) 17 時 30 分から
バイサイドグループ 7 月 10 日 (水) 16 時 30 分から

2.場 所 日本銀行本店

3.参加予定者
・「債券市場サーベイ」等に参加する金融機関の実務担当者
・日本銀行金融市場局長、総務課長、市場調節課長、市場企画課長

4.内 容
先行きの日本銀行による国債買入れの運営について、意見を伺う予定。』

まあ運営もへったくれも本来なら明日から輪番辞めろやと思いますが(さすがに売れまでは言わないw)何せ日銀の保有国債残高って、

https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

5月末の数字で計算してみたんですけど、


https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2024/ac240531.htm
営業毎旬報告(令和6年5月31日現在)

発行銀行券   119,469,474,992千円→120兆円くらい

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx240621.htm
日銀当座預金増減要因と金融調節 (6月21日<金>分)

積み期間(6/16〜7/15日)の所要準備額(1日平均) 131,400億円→おまけして15兆円くらい

としますと、発行銀行券と所要準備預金の合計ってざっくり135兆円で、これが本来日銀の事実上の長期負債というか永久負債部分(所要準備に付利しない限り負債コストなし)になりますので、本来は長期資産たる長期国債の保有はこの見合い程度にしておいて、通常の資金需給調節は短期オペで実施するのが筋なんですよね(ETF??そんなん知らんわwww)

と考えつつ保有銘柄の償還構成を見ますと、

2033年以降に償還が来る銘柄の保有額面合計=1,350,853億円=135兆円

てな感じなので、国債の買入をゼロにしても日銀保有国債がまともな姿になるのは8年後って話になるわけですよアイヤー。

ですから、植田総裁が最近質疑で「最終的な姿になるにはかなり先の話」っていうのは実際そうなのですが、そもそもその時点の話をするというのが、日銀はバランスシートの正常化をやる気がない、という印象を与えてこれまたハトハトっぽくなるんで、お前は余計なことを言うなという感じですが、まあ現実問題こんな感じなので、輪番でこれから買う銘柄の償還構成を一気に短期化するなら別ですけど、そうじゃないならまあクソ時間がかかるの当たり前で、当たり前のことを一々強調するのは(ハトハトチキンな)意図があるとしか思えないっすな。

まあそれはともかくとして、バランスシートがまともな形になるのにそれだけお時間かかるわけですから、バンバン減額しやがれとしか申し上げようがないので、1年後にはフローの買入量が半減以下、2年後には黒田前の水準(月間1兆、でも多すぎなんだが)ってのはまあそのくらいやれやとはおもうのでありました。

でもって一応計算間違えてたらごめんやでなのですが(人力で売参から各銘柄の償還を拾って来て償還日ソートして足し算しているだけです)、一応今年と来年と再来年(暦年)の償還を見ると、

今年残り:487,831億円(49兆円)
2025暦年:743,244億円(74兆円)
2026暦年:640,490億円(64兆円)

って感じですが、2026暦年に関しては1-3の輪番で2年カレントが打ち込まれると増えますな、ってなもんです。


・・・・・・あとそういえばどうでもよいかもしれませんけど、6/7の輪番

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba240607.htm
国債買入(残存期間1年以下) 3,139 1,501 0.006 0.011 91.0

6/10渡しなので6/10と5/31の残高の差分取ってみると期近債のうち「5年140回」が1億円だけ入っていましたね。

こちらの6/7付け売参が、
中期国債 140(5) 2024/06/20:平均値単利 -0.036

となっていたので、どう見ても出来上がりマイナス金利を買ってやがるわなんで買うんじゃ札切れよ、と思いましたですわ、はい。


というところで今朝は勘弁。




2024/06/21

お題「4月決定会合議事要旨の政策(金利調整)部分も強気で植田さんの話と整合性がアレなんですが/短国メモ」

ほほう
https://www.imes.boj.or.jp/jp/conference/citecs/24sec_semi01/24sec_semi01.html
情報セキュリティ・セミナー特別企画
「認知の脆弱性から人間をどう守るか〜コグニティブ・セキュリティと法的課題の入門〜」開催のお知らせ
2024年6月20日
日本銀行金融研究所

「金融政策と情報発信のポンコツ性から市場をどう守るか」でも開催しますかwwww

あとなんかスタッフペーパーが2本出ているのですが(基本同じ話だと思うけど)、ペーパーの頭に「多角的レビューシリーズ」というロゴの入っているものは結論が必ずこれまでの政策の正当化という提灯レポートになる、という知見を既に得ているのであんまり読む気がしないんですよね〜正直言って。

普通に「いけると思ったけどこれはワークしませんでした逆効果でした」って話をなんでできないんですかねえ日銀ってところはと思う訳で、政策のPDCAサイクル回らないんだからそらいつまでたってもやることが本質的にアレだわという話っすな、ナムナム。

#ちなみに今回ので実は良いレビューでもしてたら教えてちょんまげ


〇円安堂々進行なので4月決定会合議事要旨ネタの続きで政策金利に関して

堂々の2回シリーズになってしまいましたが(汗)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240426.pdf

なぜかというと、
https://jp.reuters.com/markets/bonds/

米国債10年 利回り
US10YT=XX  +4.250 +0.033

米ドル/日本円 158.9200 +0.53%

とかいうとても素敵なことになっているのですが、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-20/SFE19WDWLU6800
円安進行、対ドル160円が再び視野に−市場で高まる介入警戒感
Carter Johnson、George Lei、Anya Andrianova
2024年6月21日 3:04 JST

→ニューヨーク外為市場では一時、1ドル=158銭90銭台に下落
→4月29日に付けた34年ぶり安値の160円17銭も意識されている

ってなことで、

『円の下落は、米国など主要国・地域と日本の金利差が続いていることに起因する。日本銀行が先の会合で国債買い入れの削減計画について詳細を明らかにしなかったことも響いている。

門田真一郎氏らバークレイズ証券のストラテジストは「日米金利差が一定の水準を超えている限り、金利差がある程度縮小してもキャリートレードによる円売りは減らない可能性がある」と20日のリポートで指摘。ドル・円相場は年内1ドル=160円近辺で推移するとみている。

円の下落阻止には4−4.5%の日米金利差が必要−バークレイズ』(直上URL先ブルームバーグ記事より)

まあ要するにジャパン要因で言えば「今後継続的に短期政策金利がそれなりのペースで引き上げられる見通し」ってのがないと話にならんし、何度もチャンスがあるのに短期政策金利を上げ渋って(本来ならば今頃0.50%なんて普通になっていておかしくなかったんですがハトハトチキンがさっさと決断したら)いて、しかも今般の金融政策決定会合後の会見でもうっかり「輪番減額によっておこる長期金利上昇の度合いも短期政策金利の引き上げの判断材料」とか本音を駄々洩れさせるもんだから7月利上げ観測が大幅後退(少なくとも7月メインから9月メイン下手したら10月に後退しましたわな)の巻となっておるわけです。

でもってこんな状況では介入何ぞやっても効かない(ので外準全部売りでもしたければ相場を崩さず売れますがwwwww)でしょうから、そら通貨当局のトーンもさがるわな、というお話ではありますな。ちーん。


てな訳ですので議事要旨に戻って(再掲)

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240426.pdf
政策委員会 金融政策決定会合
議事要旨
(2024年4月25、26日開催分)

政策に関する部分はタカタカアピールになっていますが特に金利の部分とか再確認して、このトーンが月曜に出てくる「6月会合主な意見」でどのようになっているのかの差分を見ておくのが宜しいかと思います。

まあしかし何ですな、これで月曜出てくる主な意見で4月よりもさらに政策金利の調整に積極的なトーンになっていたとしますと、やっぱり植田総裁の一連の説明のトーンと話が全然違ってくるので、それはそれでどうなっているのか、って話になるんですよね。

では参りますが、『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』を成敗して参ります、本文12ページ以降になりますな。

・先行きの政策予見可能性wwwwwwwwwwwwww

最初のところはまあオマケです。

『何人かの委員は、前回会合で決定した金融政策の枠組みの見直しは、市場に混乱なく受け入れられているとの見方を示した。このうちの一人の委員は、最近の消費者物価等をみても、前回会合時点で金融政策の枠組みの見直しの条件が既に満たされていたことを裏付ける内容となっていると指摘した。』

一人の委員は中村さんですかね。

『別の一人の委員は、昨年後半以降の日本銀行の情報発信によって先行きの金融政策運営に関する 予見可能性が高まり、市場の安定に寄与したとの見解を示した。』

wwwwwwwwwwww

いやーこの後の円安ぶっ飛びからの5.13事件というイベント発生を見ますと、何ちゅうフラグ建築士と笑ってしまうしかありませんが、そもそも日銀って先行きについて「不確実性が極めて高いから先行き利上げとか輪番減額とかのパスを軽々に示せません(今回輪番は方向性だけ明確化したけど)」ってスタンスであって、ただ「緩和的な環境が続くでしょう」とだけ言っているのですから、そもそも論として「何もしない」という以外に予見可能性も糞も予見する未来がなかったはずなんですよね。

ですから、まあ一委員の見解だからそんなに深刻に捉えなくてもいいんですけど、こういうのが出てくるということは、この時点では「先行きやる気ないもんねー」って思う方もおいでになられたという意味でこの部分はチャーミングですね、と思いました。


というのはおまけでして先に進みます。


・先行きの政策運営の話は最初のところから結構強いトーンなんですけどねえ

『委員は、先行きの金融政策運営について議論を行った。まず、委員は、先行きの金融政策運営は、今後の経済・物価・金融情勢次第であるとの見解で一致した。』

予見可能性って面においては、別に政策自体が予見可能じゃなくてもいいんですよ、上記のように「状況に応じて適時適切に政策を決定する」で良いんですから。

ただ、その決定するための判断ロジックというのを完全決め打ちしなくてもいいけど、筋道が通った説明してくれないと困るわけで、今の日銀というか黒田末期以降の日銀って結局やりたい政策が先にあって、その言い訳を小手先でコロコロ変化させて来るもんだから、それによって政策の予見可能性がなくなるわけで、別にガイダンス出すのが予見可能性じゃないし、何なら今の米国みたいにもはやドットチャートとか完全に害悪になっている訳なんですよね。

というのはさておきまして次。

『具体的には、何人かの委員は、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現するという観点からは、基調的な物価上昇率の動向が重要であるとの認識を示した。』

具体的には、って言ってるんですがこれじゃあただのトートロジーと変わらん。

『別の一人の委員は、夏場にかけて前向きな企業行動が設備投資等から確認できるか、賃上げを受けて個人消費が改善していくかがポイントとなると指摘した。』

こういうのはわかりやすい、まあこれがポイントと言ってる人だと7月利上げするには相当強いアネクか、相当に強い短観が必要になりそうですが。

『一人の委員は、賃金・物価スパイラルの想定以上の進展、円安の進行、積極的な財政政策、人手不足を主因とする供給力不足、資源価格の上昇など、様々な物価の上振れリスクがあるとの見解を示した。』

これはタカ派。

『また、何人かの委員は、金融政策は為替相場を直接コントロールの対象としていないが、為替は経済・物価に影響を及ぼす重要な要因の一つであり、経済・物価見通しやそれを巡るリスクが変化すれば、金融政策上の対応が必要になると指摘した。』

というのがあってですよ、昨日ご紹介したように、前段の章で「委員は、このところの為替円安等が物価に及ぼすリスクについても議論した。」ってところでは少なくとも4人の委員が為替円安が基調的な物価に及ぼす可能性について強いトーンで指摘している訳ですので、この言い方見たら普通に6月に利上げあったっておかしくなかった、という話になるんですが、なんでこういう指摘出ているのに6月実質ゼロ回答になったんですかねえ、と不思議おぶ不思議。

挙句にこんな指摘までされてて、

『このうちの一人の委員は、国際金融のトリレンマなどを踏まえると金融政策を為替の安定に割り当てるべきではないが、為替の変動が、企業の中長期の予想インフレ率や企業行動に影響を及ぼす場合には、物価に影響を及ぼすリスクが高まるので、金融政策での対応が必要となると述べた。』

円安対応をする理屈まで登場しているんですよね。


・プリエンティブな政策金利の調整について4月会合時点で少なくとも3人の委員が指摘している件について

次に行きまして

『そのうえで、委員は、@先行き、見通しに沿って基調的な物価上昇率が高まっていけば、金融緩和度合いを調整していくことになるほか、A経済・物価見通しやそれを巡るリスクが変化すれば、金利を動かす理由となるとの認識を共有した。』

となっていますが、

『この点に関連し、多くの委員は、基調的な物価上昇率の高まりに応じて緩和 度合いは調整していくことになるが、経済・物価の見通しを踏まえると、当面、緩和的な金融環境は継続することになると指摘した。』

っていう部分が7月の展望レポートの文言で消えるのかどうかが実はひそかな注目材料で、この議事要旨の4月会合ではこの「当面緩和的な環境」文言を声明文から落として、展望レポートの「金融政策運営」の部分の記述に降格させてて、6月会合では先般ネタにしましたように、金融政策運営のガイダンス的文言を全部削除しているんですが、7月展望の「金融政策」のコーナーでどうなるのかは注目したいと思います。

しかしまあ何ですな、この「当面、緩和的な金融環境は継続することになる」がどこまで行っても玉虫色表現で、本来的にはこれ別に日銀が積極的に金融緩和環境を必死こいて作る、という金融緩和政策の推進をしているのではなくて、もともとの大規模金融緩和の影響が残っているから残置物の影響で金融環境は緩和が続くから一足飛びに引き締めに飛ぶわけではない、程度の文言のはずなんですが、ハトハトチキンおじの植田さんに掛かってしまいますとなんか未だに緩和必要ですからみたいな話になっちゃうの何なの?とは思います。
でまあここからが政策金利に関する話になりますが、

『ある委員は、政策金利の引き上げについて、そのタイミングや幅に関する議論を深めることが必要であるとの認識を示した。』

その後深まったんでしょうかねえ、主な意見で垣間見れるのを期待。

『一人の委員は、緩和度合いの調整ペースは経済・物価見通しの確度に応じて変化するが、先行きの急激な政策変更を避けるために、確度が十分に高くなる前から、経済・物価・金融情勢に応じて、緩やかな利上げにより緩和度合いを調整することも考えられると述べた。』

『別の一人の委員は、経済にストレスを与えないように緩和度合いを調整するには、今後、見通しの確度の高まりに合わせて、適時適切に、政策金利を引き上げていくことが必要であると指摘した。』

全く仰せの通りでして、プリエンティブに対応すべき、という意見が2人から出ている上に、

『ある委員は、現在の経済・物価見通しが実現するのであれば、約2年後に「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現し、需給ギャップもプラスとなるので、金利のパスは、市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性があるとの見解を示した。』

主な意見でもあって、出たとき田村抜刀斎キタコレと話題になったのですが、よくよく考えて見ますとこの並びで出ているということは、田村さん以外にあと2名がプリエンティブに政策金利の調整をしましょうよ、と言っている訳でして、これまた6月会見での植田総裁の本音駄々洩れ発言との差異は何なんですかということになるんですよね。

・「当面、緩和的な金融環境は継続することになる」のダブルミーニング

以下ハトの2名なので野口さんと中村さんで、たぶん前者が野口さんで後者が中村さん。

『一人の委員は、基調的な物価上昇率が2%を下回る現状では、緩和的な金融環境を今後も相応に長く維持する必要があると考えているが、円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合には、正常化のペースが速まる可能性は十分にあると指摘した。』

『この間、ある委員は、家計の購買力はまだ弱く、当面は緩和的な金融環境の継続が妥当との見方を示した。』

この見解自体はまあハトならこう来るわという話なのでそりゃそう言うでしょうねってなもんなのですけれども、ここでやっぱりアレなのは「当面、緩和的な金融環境は継続することになる」の文言の意味合いになってくるわけでして、明らかにこの文言をハト派のお二方は「積極的」な意味で使っている訳です。まあもちろんそういう使い方もできてしまうし、4月の植田総裁の会見を受けて市場だってこのフレーズをハト派解釈せざるを得なかったという訳です。

という訳でまあこれって3月の時からそうなので最初は声明文に載っていたのですが、声明文にこういうダブルミーニングしかも正反対に読める文言を載せている、というのがコミュニケーション上アカン訳でして、どうせ妥協してタカでもハトでもどっちでも取れる文言にして声明文(なり展望レポート基本的見解なり)をまとめたつもりなんでしょうけれども、そういう反対の意味に取れるような言葉を安易に使ってしまうのって、日銀大本営の皆様がクッソ頭がいいからついやってしまうんでしょうけれども、マイナス金利解除以降のここまでのグダグダぶりを見ますとやっぱりそういうことはやってはいけないんだと思います。

とまあそんな感じですかね。ここに書かれているのだけを見れば何なら6月に利上げでもうっかりしたらアリエールだし、まあ普通に考えて短観次第では7月だって十分できる、という書き方になっているのですけれども、一方であの植田総裁の記者会見ではそういうトーンじゃなかったんで、どこまで行ってもこのギャップがわけわからんままであります。


〇さて今日は3M短国がありますが

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20240614.htm
国庫短期証券(第1239回)の発行予定額等

『1. 入札予定日 令和6年6月21日
2. 発行予定日 令和6年6月24日
3. 償還予定日 令和6年9月24日
4. 発行予定額 額面金額で5兆5,000億円程度』

今回の3Mって足は期末ぎりぎりじゃない(多分来週入札の3Mが9/30足のはず)わ、四半期末前に発行される3Mでは最後のになるわ(来週入札の3Mは7月1日発行になるはずなので)という大変に使い勝手の良い新発。

・・・・・さていくらになるのやらナムナム。




2024/06/20

お題「4月会合議事要旨と総裁定例記者会見での発言に整合性が取れないという恐ろしい事態が/1年短国がアイヤー」

ほうほうそうですかそうですか
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/FKJGVPOXU5NKHCFMJBUKLGH72Q-2024-06-19/
国債安定消化へ金利リスク抑制、変動債導入も選択肢 債務管理で近く提言
By 山口貴也
2024年6月19日午後 12:05 GMT+9

昨日はこのニュースでイールドカーブが反転フラットニングしていましたが、いやおまえこれ有識者提言段階だろ気が早いわとは思いましたが、発行年限短期化するんだったらちょっと3か月TDBを100万兆円くらい増発してくれませんかねえwww


〇4月会合議事要旨が出てきたわけだがこれ見るとマイナス金利解除辺りからのアレっぷりが鮮明になりますな

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2024/g240426.pdf
政策委員会 金融政策決定会合
議事要旨
(2024年4月25、26日開催分)

ということで出ているのですが・・・・・・・・・

・なんかタカタカ議論があったアピールがされているのですがはっきり言って債券市場にも為替市場にも不発でしたな

いやまあ議論の部分とか見てもそうだしヘッドライン見てもそうなんですが、一応この会合でもタカタカ議論があったような書きっぷりになっているんですよ。でまあまさか話をしていないことは議事要旨として書けないからそれ自体はそうなんでしょうけど、マイナス金利YCC解除のちょっと前からの日銀のコミュニケーションって、

マイナス金利YCC解除前:長期金利が急騰するのが怖いから「緩和的な状況が続く」をアピール
→まあこれは心情としてはわからんでもないから、あそこまでアピる必要あったのかはともかく話としては分からんでもない

マイナス金利解除後:継続する緩和アピールと輪番減額せずのせいで円安がバンバン進行してしまって急に威勢の良いことを言い出す
→でも言ってるそばから植田さんはハトハト発言をするし、挙句に4月の展望でやる気見せない会見をして円安加速

4月会合で円安進行の後:突如サプライズ輪番減額(5.13事件)をぶっぱなすなどの所業にでる
→なお植田さんは相変わらずハトハトなのですが一方で内田さんがぶっこむとかいう面白金研国際コンファランスは笑った

挙句に今回の会合:結局事実上なんもしなかったのと同じな上に輪番減額をするので短期金利の引き上げを先送るスタンス

でまあその結果債券市場では明らかに7月利上げ観測後退というかなくなったくらいの勢いになってしまっていまして、火曜日の国会半期報、昨日のこの議事要旨と政策金利の早期引き上げもありえますよアピールが飛んできても思いっきり無視される(昨日はさっきの国債管理政策がらみのニュースでカーブはフラットしてくれましたがそれまではスティープどころかツイストスティープする有様だし、後述するように1年短国の入札ツエツエバエでレートがなんかもうエライことになっておられる)の巻となっているようにしか見えないわけですな。

まあアレです、結局のところマイナス金利政策とYCCは解除してみたものの、その後の政策金利引き上げについても輪番減額についても実はこいつらやる気無し無しで、ただ円安進行はマズいので、円安進行を止めたいからちょいちょい威勢の良いことは言うのですが、その結果無駄に期待が高まり、今回の会合のように事前に妙に期待をさせておきながら期待外れの回答しかしない(って総裁会見での大江さんや国会半期報での大塚先生にもがっつり言われている訳でございますが)という流れになっておられまして、ああこれは日銀の伝統芸能復活、と思う訳です。

ともうしますのは、これって方向性が正反対ですけど麿がなんだかんだ追い込まれて、今に禍根を残すETF買入みたいな包括緩和をぶっこんだ(という意味で麿もそんなに偉そうなことを言える立場ではないという話はある)のに、全然緩和が足りないといわれ続けた小出し対応の日銀、というのと同じことを今度は正常化方向でやっている、というのがマイナス金利とYCCの解除を行ってからの植田日銀の所業とコミュニケーションになっているのですが、誰得円安がバンバン進行しているという意味で今回の方が罪が重くねえかって気もしないでもないですな、アイヤー。


つまりですな、これどうせ来週月曜の「6月会合主な意見」ってそれなりに威勢の良いのが出てくるんじゃないかな、とは邪推できるわけですよなんせ米債4.2%なのにドル円158円近辺になっているんですから、米債がなんかの拍子で4.5%だ4.6%になったら160円なんぞ笑い飛ばす勢いになってもおかしくないですわな、と考えると足元で円が全然戻らんの普通に日本要因だし、その中には日銀が小賢しい小手先のコミュニケーションで目先の対応をする結果その反動が大きくなって円安要因になっているのが多分に含まれるんじゃないかなって思う訳です。

ということでして、まあこうなってくると来週月曜の主な意見でどういう反応をする(する、というかしない、ということになりますがw)のかというのが楽しみで、6月会合の会見で7月は輪番減額だけしますよ政策金利は長期金利の動向を見てからですよってアピールしちゃったのが猛烈に効いて直前ではほぼコンセンサスだった7月利上げを消したのを打ち返すのはできるのでしょうかねえ(・∀・)ニヤニヤって感じです。

これが単発ならともかく、威勢の良いことを言っているのが実はただの時間稼ぎでした、ってのがすでにマイナス金利YCC解除以降連発しているし、植田総裁は毎度毎度のハトハト音頭を踊るし、そりゃ市場だって何度も時間稼ぎにお付き合いするほどお人よしじゃないですからねえ。

・・・・まあアレです、日銀どうせ威勢の良いこと言ってもやる気なくてあれはただの円安の足止めをしたい時間稼ぎ、ってのがどんどん広まってしまうと、多少のことをしてももはや反応してくれなくなるし、だいたいからして輪番減額について市場にご相談して7月に決定、といった手前ここから7月末まで輪番は動かせなくなったし、その結果主に円安方面から日銀が追い込まれて7月会合の時点でションベンちびりながら植田総裁が野々村号泣会見をして利上げに追い込まれる、というのはシナリオとしてはアリエールはアリエールかな、とは思わんでもないwwww


とゆーことで議事要旨の話なのに前置きがクソ長くなりましたが、まあそういう視点で読みますとこの議事要旨と総裁会見での発言が全然整合性が取れていない部分があるんですよね、ということでクソ長い前置き悪態を述べさせていただきましたですバイ。


・4月会合議事要旨最大の謎ポイント:なんでこの指摘があったのに総裁会見であの発言があったのか

本文12ページ、PDFで14枚目になりますが、『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』の『2.経済・物価情勢の展望』のほぼ最後の部分です。この円安の影響云々に関しては当然注目ポイントなのでヘッドラインなども出ていましたが改めてこの段落を全部読んでおきましょう。

『委員は、このところの為替円安等が物価に及ぼすリスクについても議論した。』

からの話ですが、

『ある委員は、円安と原油価格上昇は、コストプッシュ要因の減衰という前提を弱めていると指摘した。そのうえで、この委員は、企業の賃金・価格設定行動の変化も踏まえると、円安・原油高が物価、さらには賃金に波及する タイムラグが短くなっている可能性があると述べた。』

というのが一人目の指摘。まあ仰せご尤もですな。

『この点に関連し、一人の委員は、企業の行動変化を受けて円安のパススルーの度合いは高まっているとみられ、その物価や賃金への影響が一時的なものにとどまらない可能性もあると指摘した。』

二人目の指摘です。でもって「この点に関連し」だから最初の指摘と同意見な上に上乗せして、ということになりますよね(最初の人と同一だったら「一人の委員」じゃなくて「この委員は」になるはずだから)。でもってこちらの方は円安が一時的ではない、となると基調的な物価にも影響するって話に繋がるのかな。

『別の一人の委員は、円安と原油価格上昇は、輸入物価を通じて企業物価へ波及しつつあり、賃上げに伴うサービス価格の高まりに加えて、現在伸び率が低下している財価格が底打ちして反転する可能性にも注意を払う必要があるとの見方を示した。』

これが三人目の指摘。これまたご尤も。でもって次の人はちょっと別の論点なので多分次の方は中村審議委員じゃないかな、円安は別に問題なし、と言っているので。

『さらに別の一人の委員は、円安は、短期的にはコストプッシュ型の物価上昇を招くことで経済を下押しするが、インバウンド需要の増加や製造業における生産拠点の国内回帰などを通じ、中長期的には生産や所得への拡張効果もあるため、基調的な物価上昇率の上振れにつながり得ると指摘した。』

まあこれはちょっと別視点なのでパスしますが次を見ますと、

『一人の委員は、輸入物価上昇や予想物価上昇率の上昇に伴う物価上昇率上振れのリスクもあるため、今後、2022 年以降に続く第2ラウンドの価格転嫁が生じることがないか、予断なく見極める必要があるとの見解を示した。』

ということで少なくとも4名の方が円安の基調的物価の影響について強いことを言ってるわけですよ。

『これらの議論を踏まえ、委員は、最近の円安の動きが、基調的な物価上昇率にどのような影響を及ぼすのか、注視していく必要があるとの認識を共有した。』

ってなってるじゃないですか、それなのに皆様ご案内の通り、この会合後の記者会見で植田総裁ってどういう説明してましたっけ、となるとかの有名な発言になるわけですよね。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240617a.pdf
総裁記者会見
――2024年4月26日(金)午後3時30分から約65分

本文4ページ、PDFも4ページですね。

『(問)
植田総裁はですね、先日の会見で、円安の進行によって基調的な物価上昇率に無視できない大きさの影響が発生した場合は金融政策の変更もあり得ると、先ほどお話しした通りだと思うんですけども、今回金融政策の変更がなかったということは、これはつまり円安の進行が、これ無視できる影響だという、そういう範疇になるというご認識でしょうか。総裁のご認識、お尋ねしたいです。

(答)
それは今までの回答とちょっと重なりますけれども、取りあえず基調的な物価上昇率への大きな影響はないと、皆さん判断したということになるかと思います。ただ、申し上げましたように、そこに影響は今後発生するリスクはゼロではないので、注意してみていきたいということでございます。

(問)
つまり今回は、これは基調的な物価上昇率への影響は、まあ無視できる範囲だったという認識でよろしいでしょうか。

(答)
はい。』(この部分だけ直上URL先の4月決定会合後の植田総裁会見録より)

・・・・・・いやあのですね、議事要旨にあるような議論をしていたんだったら、少なくとも「今回金融政策を変更する必要があるような影響ではないという判断だった」位で説明が止まるはずで、「今後発生するリスクはゼロではない」とか、いかにも大きな影響が発生しそうもないかのような言い方をして説明するのって、4月決定会合議事要旨に書かれている議論内容を受けたらこういう言い方しちゃダメでしょという事でして、決定会合で行われた議論の内容について細かく説明する必要は確かにないのですが、明らかにこの会見での説明と議事要旨の内容に飛躍があって、議事要旨が針小棒大に書いているのか、植田総裁が本来の職務を理解しないで自分勝手に自分のハトハト見解を勝手に並べ立てているのか、どちらにしたって大問題な話ですよこれは。

まあちょっと植田出てきて説明してみろやオイコラという話ではある(と書いているくらいだからアタクシは植田の野郎が好き勝手に自分のハトハト音頭を開陳しているんじゃなかろうか疑惑の方を持っているんですがwww)のですが、今回の議事要旨の最大の見どころは何といってもここではないか、と思う次第でございます。


・この議論内容を踏まえると6月決定会合後の総裁会見でのこの説明もおかしいんですけど

さっきのを再掲すると、

『一人の委員は、輸入物価上昇や予想物価上昇率の上昇に伴う物価上昇率上振れのリスクもあるため、今後、2022 年以降に続く第2ラウンドの価格転嫁が生じることがないか、予断なく見極める必要があるとの見解を示した。』

ってのがあって、これはまあ一人の意見ではありますが、それ以外の円安の基調的物価への影響を指摘した他3名の方々も円安のパススルーの影響について指摘していた訳ですな4月会合の時点で。

でもってその4月会合時点から円安について状況はそんなに変わらず、円安定着の香りも漂う中で今回の決定会合を迎えていたわけですよね。でもってその決定会合を受けたこの前の記者会見ですが、これもこの前ネタにした質疑応答の再掲になりますけど、

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240617a.pdf
総裁記者会見
――2024年6月14日(金)午後3時30分から約65分

本文7ページ後半の質疑になります。

『(問)(前半割愛)あと二点目は、最近、企業物価指数等みてますと、円安の影響等でまたコストプッシュ型のインフレ圧力が再加速してるようにみえます。また、企業レベルでのサービス価格の動向をみても、「第二の力」の方の広がりが出ているようにもみえます。これを総合すると、基調インフレ、少し上振れ気味になっているのではないかとも思えるんですが、4 月の決定会合以降のこうした物価の動きについて、総裁のご見解をお願いします。』

『(答)(前半割愛)それから二番目の物価の動きに関するご質問ですけれども、これまで暫く、だいぶ前に始まった輸入価格上昇の国内物価への転嫁に伴うインフレ圧力、「第一の力」については、だんだん減衰してきている。一方で、賃金上昇がサービス価格等に波及するという「第二の力」の部分については、少しずつ上昇してきているという説明をしてきたところで、その点に大きな変更はございません。ただし、これもおっしゃいましたように、ここのところの円安も含めて、輸入物価等に若干の再上昇の気配がみえる。ある種、「第一の力」の第二ラウンド目が少し始まっているかもしれないというようなところについては、今後、基調的物価上昇の判断をする際に注視してみていきたいと思います。』(この部分のみ直上URL先6月決定会合後の総裁記者会見より)

いやあのさあ、4月会合の議論の温度感から言ったらそこから実質1か月半経過した6月会合の議論だって当然この問題ってもっと深刻に議論している筈なのに、この説明のトーンだと、全然切迫感もなんもなくてのほほーんと「ああまあそういわれてみればそういうこともありますかねえ」くらいの説明になっている(口調も大体そんな感じでしたよちなみに)訳でして、いやあのどういうことになっているのよというところなんですよね。


とまあそんなわけで、どうなっているんだこの植田日銀の情報発信は、というお話なんですが、まあ諸悪の根源が好き勝手に少数意見なのに自分の意見を総裁会見の発言にしてしまうハトハトチキン総裁の所業なんでしたらとっとと座敷牢に押し込めて会見はつば九郎でもマー君でもハリーホークでもドアラでも何でもいいから代打に喋らせろというお話なんですが、この混乱っぷりと、結局6月会合は期待を下回るしょうもない予告しか出なかったという所業を見ますとなんかハトハトチキン総裁だけの問題なのかどうかもアレというお話でもありますし、まあそんなこんなで、こいつら結局「やるやる詐欺集団」と認定されつつある、というのが今のステージなんだと思いますので7月頑張って態勢を立て直すのがベストですが、ボロボロになって8月9月に円安爆裂して日銀が地獄の業火に焼かれる(ワシらの生活にも貰い火がくるから飛んだ大迷惑ではありますが)方が焦土から登場する黒ちゃんの逆バージョンという面白展開も期待できるかもしれませんな(暴論)。



〇これは日銀必死だなと思いました(BBGでの清水季子前理事インタビュー記事)w

昨日のこれはクソワロタ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-19/SFBI1ST1UM0W00
植田総裁はインフレ見通しに確信を深めている−清水前日銀理事
Tania Chen、藤岡徹
2024年6月19日 18:08 JST

『前日本銀行理事の清水季子氏は、最近の植田和男総裁の発言からはインフレ見通しに対して明らかに確信を深めている様子がうかがえるとの認識を示した。』(上記URL先より、以下同様)

じゃあなんであんなに利上げやる気ナッシング発言を会見の最初の方の質疑でするんでしょうかねえ。

『清水氏は19日、「総裁が選んだ、あるいは使った言葉にはややサプライズがあった」と指摘した。その上で、「金融政策決定会合では次の行動について有意義な議論がなされたのだろう」とも述べ、そうした自信が会見での発言につながったのではないかと語った。5月10日に4年の任期を終えて以降、メディアのインタビューを受けるのは初めて。インタビューは英語で行われた。』

>インタビューは英語で行われた
>インタビューは英語で行われた
>インタビューは英語で行われた

どう見ても為替対策です本当にありがとうございましたwwwwwwwwww

『植田総裁は先週開催された決定会合後の記者会見で、量的引き締めの開始となる国債買い入れ減額の具体策を決める7月会合での利上げの可能性を問われると、データ次第では「当然」あり得るとの見解を示していた。清水氏によれば、植田総裁がこのような確実性を示す表現を使うのはやや異例だという。』

そんなんその前に「輪番減額による長期金利の動きも短期金利操作に際して影響する」って感じの本音駄々洩れ発言をしたもんだから慌てて言い直したんでしょ。

とまあそういうことで以下割愛なんですけど、いやーもう日銀為替円安対策必死だな、とクソ笑ってしまう茶番劇なんですが、こういう小賢しい小手先の事ばっかりやってるから底を見透かされるのであって、もっと腹を括って「状況に応じて適宜適切な政策判断を行う(キリリッ」っとドッシリと構えられないんですかねえチキン総裁だから無理かなあ、と思いました。


〇市場メモってか1年短国ェ・・・・・・・・・・・・

ひょえー
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240619.htm
国庫短期証券(第1238回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1238回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。


1.名称及び記号   国庫短期証券(第1238回)
2.発行根拠法律及びその条項  特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第46条第1項

3.発行日      令和6年6月20日
4.償還期限    令和7年6月20日
5.価格競争入札について
(1)応募額        11兆3,708億円
(2)募入決定額      2兆4,174億円
(3)募入最低価格    99円85銭1厘
(募入最高利回り)     (0.1492%)
(4)募入最低価格における案分比率     7.0000%
(5)募入平均価格     99円86銭1厘
(募入平均利回り)     (0.1391%)』

これ前日のWI売参が(まあWIだから必ずしもあてにならんとはいえ)平均値単利0.170%(ちなみにこのレートもその前日から見ると2毛強になっている)だったのですが、前日WI売参の0.17%を大きくスルーしまして0.1391%/0.1492%(極薄案分)という結果。

でもって昨日の新発1238の売参ですが、

国庫短期証券1238 2025/06/20:平均値単利 0.125

ということで平均のだいたい0.14%という水準を笑い飛ばすような金利低下を示しておられまして、まあ入札空振りのカバーとかもあるとは思いますが、来年6月償還の1年短国の引け利回りが0.125%とか、あれ利上げ最終局面でしたっけというようなレートになっておられまして、いやおまいら大概にしてくださいちょっと短国100億兆円くらい増発してくれませんかねえというような価格になっていてもう大変。

もう向こう1年間政策金利水準が変わらない場合にのみファンディングコスト見合いで勝てるという恐ろしい事になっているのですが、これもまたハトハトチキン一派のダメダメ情報発信とダメダメスタンスのなせる事態な訳ですな、南無阿弥陀仏。


ということで本日はなんか結局いつもの悪態になっておりましたな、(ノ∀`)アチャー








2024/06/19

お題「昨日の参院半期報で面白い質疑(というか質問)が/関連雑談その他」

いやーあっはっはっは
https://jp.reuters.com/markets/bonds/

こちら見に行くと今時点(若干ディレイ)の市況なのでアタクシが駄文書きをしている時間のものとは別物になりますけど、今朝見ますと、

『債券利回り

米国債10年 利回り
US10YT=XX    +4.219  -0.06』

に対して

『外国為替

米ドル/日本円   157.8100  +0.06%』

などとなっている訳でして、昨日は東京の15時以降に158円台に乗ってたから一応そこ対比では円高になっているのですけれども、アメリカン金利様が4.2%近くまで下がってきているのにドル円157円80銭ってこれはマズイんじゃないですかねーーーーーーーー(・∀・)ニヤニヤ


〇国会半期報だが参院の質疑で良い質疑(質問)があったのでご紹介

毎度の国会半期報で昨日は参院財政金融委員会での質疑だったのですが、

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
参議院インターネット中継

こちらで日付を昨日で選択していただいて、財政金融委員会をクリックしていただきますと、昨日の質疑内容の動画が見れるのですが、この中で動画の1時間6分くらいから大塚耕平委員(国民民主党・新緑風会)による質疑があるんですよ。

でもってこれが中々良い指摘を行っていまして、頭からでもよいですし、一番良かったところを聞きたい場合は1時間8分の辺り(最初一瞬何の話かと??になるんですけどそれは本題の伏線ですので我慢して聞いてください)から始まるんですが実にいい指摘をしています。

まあ確認して味噌ってお話ではあるのですが、ものすごくざっくりとご紹介すると、今回の輪番減額予告公表に関して、会見で植田総裁が「相応の規模」という説明をしていることに関して、

「相応」という言葉を別のところ(金融システムの頑健性評価)でも使っているけれども、言葉の意味するニュアンスが文脈によって異なるようにしか見えないがそういう言葉の使い方をするのは如何なものか

この「相応」からは「かなりの規模」というニュアンスが読み取れるし、市場でもそういう解釈になっていると考えるが、実際に減額の公表があった際に、その規模が「相応」から期待される規模に対して失望的だった場合に市場が日銀の期待を裏切る反応をするリスクがあるのではないか

そもそも「相応」のような言葉を使うのがおかしい、私(大塚さんは元日銀です)なら「今後の金融政策運営に適合する規模」というような言葉を選んで想定問答を作成する

ってな感じで質問してて、植田総裁回答はしているけど大塚委員のツッコミには回答できませんでしたわ、というところでして、質疑後半においても今の日銀が情報発信で使っている言葉の使い方がこの相応と同様に「粗雑」である、という指摘をしておられました。

・・・・・・いや全く仰せの通りですわとゆーお話ではあるのですが、このパティーンって結局のところ円安コワイコワイネーなもんだから、円安に配慮してなんか威勢の良いことを言ったり、この前のサプライズ輪番減額5.13事件みたいなことを急にぶっこんだりするのですが、じゃあ実際にどうかというと、今回の決定会合がまさにそうですが、輪番減額を実施しますが規模は市場と相談してから決めますよ、って7月に問題の先送りを行った挙句、市場が期待というか予想してた7月利上げに関しては、なんも言わないならまだしも、「輪番減額による長期金利の動向も短期金利操作を決定する判断材料」とか言い出して、7月は輪番減額だけで利上げはしませんよって言ってしまうという期待を大きく下回る所業に出る、というハトハトチキンムーブをする訳ですな、うんうん。


でまあ金曜月曜は欧州リスクオフのせいでごまかされましたが、結局昨日からドル円また158円台だし、米金利下がっても碌に円戻らないで、これで米国の利下げ期待が後退したらドル円どこまで飛んでいくのという事になりますが、そのたびごとに威勢の良いことは言うんだが行動が伴わない、という世が世なら支店の営業会議で激詰めされてしまうダメダメ営業のようなことを(などと書いててなぜか目から汗が出るアタクシorz)してる次第で、まあシバキ倒されても文句の言えないダメダメムーブなんですよね。


〇総裁記者会見を見ても総裁(というか日銀全体というか)に市場に対するセンスが感じませんよね

ご紹介のおまけのつもりだったのにうっかり脱線して長くなったので小見出しつけるが、実はさっきの続きから話が始まりますわ。

まあそんなわけですから、昨日ネタにした総裁記者会見の

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240617a.pdf
総裁記者会見
――2024年6月14日(金)午後3時30分から約65分

『(問)かなり丁寧に進めていきたいということはよく分かったんですけれども、今回動かなかったことによって今日になって円安が進み、158 円台になっているということもあります。この 7 月まで動かないことのリスクについては、総裁どうお考えなのかというのをお伺いしたいのが一つです。

あとは市場の金利形成の自由度を高めるために政策の予見可能性を高めていくというのは、非常に重要なことだと思うんですけれども、それによって市場に事前に政策が織り込まれ過ぎて、それで円安が進む展開のようにもみえるんですが、この市場との対話の難しさについては、今どう感じていらっしゃるでしょうか。』

って質疑に関して、日銀のよつべチャンネルの会見動画を見ますと(これはよつべに行って「日本銀行」で検索してちょんまげ)会見の26分11秒からこの質問が始まるのですが、よくよくこの動画を見ますと回答の際に総裁たぶんこれ想定問答を見ていなくて(少なくとも問答集を繰って探している気配はない)まして、いやこんなの普通に市場の中の人たちが全員思ってるだろうというツッコミ(だからこそ白眉の一つと申し上げた次第)であるのでして、その回答が全然回答になっていないというの想定問答用意してないのかよ何やってるんだと改めて思った次第です。

しかしまあ何ですな、この回答に関しても

『(答)具体案の発表は 1 か月先になるわけですけれども、その間の不確実性を極力避ける意味で、今日は不十分かもしれないですけれども、私どもの減額に当たっての基本的な考え方をご説明しているところです。』

からの、

『もうちょっと長いタームで考えますと、先ほど来出ていますように、どこが最適点か分からないですけれども、望ましい国債保有残高とか超過準備の水準に到達するまでにはかなりの時間がかかることですので、』

と相変わらず「かなりの時間」の話をしている訳ですけれども、この説明もクソ説明にも程がある話で、今問題なのは「輪番減額の規模感」なのに「バランスシートの大きさ」の話に回答をすり替えて説明していることなんですよね。他の質疑でもこういうパターンで回答しているんですけど。

まあ実は今朝は直近の数字でアップデートしたもの作ってないのであれなんですけれども、今の日銀保有国債の構成から計算すると、明日から輪番をゼロにしたとしましても、発行銀行券残高見合いに保有長期国債残高が減少するのに9年とかの規模での時間がかかるのは保有銘柄の銘柄属性を拾って(売買参考統計値で十分拾えるので特殊な装備は不要)エクセルが使えば猫でも計算すれば判る話だし、そんなことは少なくとも円金利やってる中の人で知らん人いないと思いますので、輪番の買入規模が減る話をイシューにする中で「バランスシートが本来望ましい姿(と思われる)水準になる時点までの話」をするのって完全に議論のすり替えになっているんですよね、しかもこのすり替えをすると「かなりの時間がかかる」というハトハトチキン総裁の大好きなやる気なし無しフレーズが使えるというおまけつき。

ですから月6兆円程度の輪番フローをどう減らすかという話と時間軸が全然違う話を持ち出しているのに、上記の説明のに続き、

『ちょっと極端な言い方になりますけれども、短期的に 1 か月、2 か月先になるということ自体のコストはそれほどないというふうに思っております。』

という話をしちゃっていて、これもよく考えたらひどい話で、1か月2か月とか言いながらダラダラ引っ張ることによって誰得円安が進行しているのであって、コストがそれほどない、とか言っているのがもうセンスとして絶望的なのですが・・・・・・・・

なんか話がバンバン逸れてしまいましたが昨日ネタにした会見でやっぱりこれもナンジャソラなのでネタにしますと、本文7ページになりますが、

『(問)(前半割愛、というかそれは昨日ネタにしました)あと二点目は、最近、企業物価指数等みてますと、円安の影響等でまたコストプッシュ型のインフレ圧力が再加速してるようにみえます。また、企業レベルでのサービス価格の動向をみても、「第二の力」の方の広がりが出ているようにもみえます。これを総合すると、基調インフレ、少し上振れ気味になっているのではないかとも思えるんですが、4 月の決定会合以降のこうした物価の動きについて、総裁のご見解をお願いします。』

という質問に対しての総裁の回答では、

『(答)(前半割愛)それから二番目の物価の動きに関するご質問ですけれども、これまで暫く、だいぶ前に始まった輸入価格上昇の国内物価への転嫁に伴うインフレ圧力、「第一の力」については、だんだん減衰してきている。一方で、賃金上昇がサービス価格等に波及するという「第二の力」の部分については、少しずつ上昇してきているという説明をしてきたところで、その点に大きな変更はございません。』

いや円安加速したらまた「第一の力」が出るだろと聞いているのだが変更はないのかよ、って言いたくなりますが、

『ただし、これもおっしゃいましたように、ここのところの円安も含めて、輸入物価等に若干の再上昇の気配がみえる。ある種、「第一の力」の第二ラウンド目が少し始まっているかもしれないというようなところについては、今後、基調的物価上昇の判断をする際に注視してみていきたいと思います。』

ってこの言い方なんですが、「第一の力」って言ってるけどこれ単なるコストプッシュの話で、この力ってディスインフレの均衡を打破するための力としては必要な力かも知れなかったけど、単なるコストプッシュなんだからそれは日銀法の定める日銀の本来の存在意義である国民厚生の向上から言ったらマイナス要因なんだし、だいたいからしてお前らの情勢判断だって「物価高が個人消費を下押ししている」って判断しているんだから、そもそも「第一の力」が再加速したらダメだろという話な訳ですが、このハトハトチキンは「ある種、「第一の力」の第二ラウンド目が少し始まっているかもしれないというようなところについては、」とかのんびりした事をのたまっている訳でして、実はこいつ円安になって下級国民どもが死ぬのとか知らんわくらいの認識で生きてるんじゃないかと邪推したくなるくらいに円安に関して危機意識無いですよねって話なんですよね。

まあそういう危機意識の無さだから「待つことのコストは小さい」って未だに堂々と言える、ということなんでしょうけれども、根本的にこの点がダメだと何やらせてもダメで、とりあえずその場しのぎの舌先三寸だけは言えても本質的にやばいと思っていないという事ですから、そらなんもしませんわ、と頭がくらくら来る次第なのでありました。

なお、そのヤバさに対して日銀お取り潰し危機意識がバネになって宮廷クーデターでも起きて頂いて、このハトハトチキンのウスラトンカチが幽閉されれば話はだいぶ変わって来ますので、主君押し込めムーブを期待したいものでありますが、そういう蛮勇は・・・・


〇今日は1年入札&よくよく見たら貸増ェ・・・・・・・・・

・さて今日は1年入札ですな

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20240612.htm
国庫短期証券(第1238回)の発行予定額等

『1. 入札予定日  令和6年6月19日
2. 発行予定日  令和6年6月20日
3. 償還予定日  令和7年6月20日
4. 発行予定額  額面金額で3兆2,000億円程度』

まあアレです、1年となるとこれは3か月の4倍のBPVになりますので、退避資金が1年短国まで流れるのかどうかは知らんですけど、昨日も2年以下は前日比金利低下(さすがに短国は実力は3M以内って下手したらマイナスかもしれないけど引値までマイナスにはされなかったので前日比おおむね変わらずだったですけど)とかになっておられる次第でして、退避資金ムーブが絶好調のツイストスティープとなっておる次第なので、この入札何ぼになるんでしょうかねえ、知らんけど。


・ところで貸増

そういやうっかりしてましたが月曜にかしぞうがあって、

https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/len_b/mope240617a.pdf
貸出増加を支援するための資金供給の実施結果
(2024年6月実施分)

(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み

合計   790,646億円   117先


前回のかしぞうが
https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/len_b/mope240314a.pdf
貸出増加を支援するための資金供給の実施結果
(2024年3月実施分)

(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み

合計   782,979億円   117先

ということで、なんという事でしょうかしぞう増えておられます、ってそりゃ期間1年に短縮されたとは言え、1年間固定金利で今の政策金利を基準にしたものが適用されるんだから、利上げ局面になると何ぼでも取りに来られるという話であって、利上げ打ち止め局面になるまでこのムーブが続くと思うと頭が痛いというか、そもそもかしぞうって

https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/len_b/index.htm
貸出支援基金

『物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する観点から、金融緩和効果を一段と浸透させるための措置として、バランスシート上に基金を創設し、わが国経済の成長基盤強化および貸出増加に向けた民間金融機関による取り組みを支援するため、適格担保を担保とする資金供給を実施。』

>金融緩和効果を一段と浸透させるための措置
>金融緩和効果を一段と浸透させるための措置
>金融緩和効果を一段と浸透させるための措置

という建付けなんですから、今はあくまでも「緩和的な金融環境が当面は続くけど積極緩和しているわけではない」、すなわち「普通の金融政策に戻った」と3月の会見で植田総裁は言ってたはずで、このような「金融緩和効果を一段と浸透させるための措置」というのは包括緩和(そもそも最初の箱が始まったのは麿が緩和とかのたまっていた時代に遡る)以降の「積極的な意味での金融緩和スタンス」とは一致しますが、今の枠組みからしたらおかしいんじゃないでしょうかねえ、と積極的に問いたいし、こういう緩和時代の残滓によって特に短期では市場参加者間の条件にやたら差がついているのは市場の価格形成を歪めることにつながるのでよろしくないと思うんですよね、ということですが、短期的にはこのせいで相変わらず担保需要から短いところの国債がコール市場とかから乖離した金利形成されるのかと思うとげんなりしてしまいますわ、という話でした。





2024/06/18

お題「なんかまあグダグダだった総裁記者会見だが本音駄々洩れクソワロタ」

うーん
https://www.bloomberg.co.jp/quote/JPY:CUR

『始値 157.41
安値 - 高値 レンジ(日) 157.16 - 157.96
前日終値 157.40』

輪番減らす予告は結局ドル円に効いたわけでもなかったようでございまして、これから来月末までの先行きがどうなるのやら、ってまあどうせ海外情勢次第でしょうけどなんもなければ円安はまだまだ続くんですかねえ。


〇日銀総裁会見ですけれども会見中に言ってることがブレるのは相変わらずですよね

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240617a.pdf
総裁記者会見
――2024年6月14日(金)午後3時30分から約65分

まあ今回はおとりのデコイがあるからそっちに食いつかれてしまって会見質疑そのものは低調って感じではあったのですが・・・・・・・・


・輪番の位置づけについての説明の最初の部分からツッコミどころ満載なんですよね

最初の幹事社の質問(二問と言いつつ三問以上聞いてた気がするが)から。

『(問)幹事社から二問質問させて頂きます。一問目は長期国債の買入れについてですが、今回、次回の金融政策決定会合で今後 1、2 年程度の具体的な減額計画を決めるということですけども、実際に減額を始めるタイミングについては、次回の会合終了後すぐに開始すると、そういうことでよろしいでしょうか。』

『また、減額に当たってですね、日銀のバランスシートの規模を適正化するという観点から、かつ市場の大きな変動を避けながら、どのようなペースで減額を進めるのか伺えないでしょうか。』

『また、国債買入れによるストック効果については概ね 1%程度の長期金利の押し下げ効果があるということですけども、今後、国債の買入れを減額することによって、この金融緩和の度合いについてどのような変化があるのか伺えないでしょうか。』

まあ全部輪番なんですけどこの時点で3つ聞いてるわと日銀のよつべ実況聴いてて笑いました。なおこれ二問目、もありますwww

まあ全部輪番の話だから一つの質問ではあるのですが、さてこの回答なんですけどね。


『(答)今日の会合では、3 月に決定した枠組み見直し後の金融市場の状況を確認したうえで、金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されるよう、国債買入れを減額していく方針を決定したところです。』

ここでは輪番の減額に関して「金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されるよう」ということで、市場機能論的な意味合いでの説明をしているんですよね。これ後で別の話が出てくるから覚えておきましょう。

『その際、国債買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切であるという基本的な考え方も共有致しました。』

「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保」の件ですが、柔軟性を確保、は金利急騰時に臨時輪番を打つことができるように、という話なのですが、マイナス金利解除移行に行われた輪番減額が一種の「柔軟性」の発露なのですが、この「柔軟性」を発動した途端に輪番運営に関して「突如何か変更するかもしれない」という疑心暗鬼が発生した結果、市場のボラが高まるわ流動性が落ちるわ、ということが起きたわけでして、そもそもこの「柔軟性」によって不透明感が高まってしまうんですよね。

なので、「予見可能な減額」をするのであれば、よほど飛んでもないこと(トラスショックとかコロナショックとかそういうレベル)が起きない限り、この金利上昇はそもそも日銀によって発生させていた不要なプレミアム部分の剥落によるもの、と達観していただきたい訳ですな。

さらに、YCCはもうやっていないのだから、輪番の途中の上げ下げに関しても、その発動基準がさっぱりわからないわけで、うっかり発動ると5.13事件になってしまう、というのがYCC撤廃後の輪番運営における教訓として考えて頂き、今後期中の上げ下げ基本はやらない(札割れ2連発とかでもすれば(1回だけなら偶然かもしれないので)減額してもよいとは思いますが)、つまりオペ紙に関しても今出しているようなガバガバレンジではなくて、ピンポイントでオペ紙の数字出せということに尽きるんじゃないかな。


でもって減額に関して

『減額する以上、相応の規模となるというふうに考えていますが、具体的な減額の幅やペース、減額の枠組みなどについて、市場参加者の意見も確認しながら、しっかりとした減額計画を作っていきたいと考えております。』

という説明なのですが、この「相応の規模」ってフワフワワードに関しては、さっそく昨日あたり何とかスト界隈でトンチ合戦みたいな感じでああでもないこうでもないと取りざたされていましたけれども、こういうのをわざわざ言うのって、「円安進行の足止めをしたいから口先でとりあえず威勢の良い事を言って時間を稼ぎたい」っていう下心満載なのはわかるんですが、こういうのをうっかり言ってしまうと市場の方で勝手に「相応の規模」の期待が膨らんでしまうので、実際にぶっこんだ時に「何だこんな程度か」と失望されてしまって却って円安を加速させてしまう、という間抜けコミュニケーションが発生しているのって、今回のこれもそうなりそうな気しか今のところはしてませんが、植田日銀になってからこの連続じゃん、と思う訳ですが、この論点に関しても後程鋭い質問があって、質問したのTV東京の大江さんですが、金曜の会見の白眉はこの大江さんのツッコミと昨日も申し上げたニュースソクラの土屋さんのツッコミと、実は地味に大ヒットなのが土屋さんの次に質問したお方(どこの方かは乞うご期待、ってかよつべ聞けばわかります)じゃねえのと思いました。

さてその続き。

『金融市場局が開催する、先ほど申し上げました、債券市場参加者との会合を活用しつつ検討を進め、次回の会合において、今後 1〜2 年程度の具体的な減額計画を決定し、速やかに減額を行う予定であります。』

そもそもこんな会合やらなくたっていいだろという話で、普段好き放題やっているのに減額みたいな時だけ市場参加者会合集めて「市場もこう言ってますから減額しました」って自分たちで決定すべき問題のケツ持ちをあわよくば市場にさせようという浅ましい責任転嫁の香りまで感じてしまうのは悪意を持って読んでいるからですかそうですか。

でもって最後なんだがこれがまた問題で、

『今後、国債買入れを減額していけば、日本銀行の国債保有残高は償還に伴い減少していくことになりますが、国債買入れに伴う緩和効果、いわゆるストック効果は、引き続き相応に作用するとみております。』

この「ストック効果」を出してしまうと、それは金融政策において緩和的な金融環境を作るためのツールとして国債買入を今後も使っていきます、といっているのと同義になってしまいまして、最初に言ってた市場機能論による減額、とのコンフリクトをどうさばくんですか、という話になってしまうのですが、以降の説明ではむしろ市場機能じゃなくて国債買入のストック効果の話を軸に説明してたりするので世話はないのですよね。


・国債買入減額が為替を念頭に置いている筈ですが質問に完全スルーするのは笑いました

3ページ目の質疑では

『(問)まずは国債買入れの減額についてですが、金利の形成を市場に任せていくということですが、QTに入ると基本的には円高の要因になると思うんですけども、減額方針決定に当たって円安の影響というのは考慮されたのでしょうか。その点、お伺いします。併せて、前回の会合では、基調的な物価上昇率に対する円安の影響は大きくないとお話しになっていましたけども、その認識に変更はないかということもお願いします。(後半割愛)』

輪番を聞いているというよりは為替の質問ですがまあそこはさておき

『(答)まず、今回の長期国債買いオペの減額の決定の背景ですけれども、これは申し上げましたように、中長期的なタームでみて、市場における金利形成の自由度を高めていくという観点から実施したものでございます。』

だそうでして、その後の説明が、

『次に、最近の円安と基調的物価上昇率との関係ということですが、これは常にわれわれは注意してみているところでもちろんあります。他の変数の基調的物価上昇率の影響についてもそうですけれども、為替について申し上げれば、為替変動の幅とか、その持続性とか、またそれが国内物価にどれくらい転嫁されていくのか、その後また賃金その他への波及がありますが、こういう各点について日々確認しながら、毎回の決定会合で、そこまでの情報を確認して進んでいくという姿勢でおります。(後半割愛)』

という風に話をかっ飛ばしておりまして、輪番減額で為替レートに影響することを意識しているのか、という質問に対しての回答を完全に逃げているのが中々笑えます、


・政策金利との絡みで輪番のストック効果についての説明が絡んでいるのは市場機能論の説明と整合性が取れない

4ページの一番下から5ページにかけてです。

『(問)(前半割愛)二点目が、7 月の会合で具体的な減額計画出すということで、市場への影響それなりに出る可能性もありますけど、こうなってくると 7 月に同時にですね、追加の利上げをするのは難しくなるっていう考え方っていうのはあるものなんでしょうか、お聞かせください。』

この質問に対して植田さんの本音が駄々洩れしたの巻になっているんですよね、すなわち・・・・・・・・・

『(答)(前半割愛)それから、7 月あるいは 7 月以降の短期金利の調節方針ですが、これは先ほど申し上げましたが、経済・物価情勢に沿って、先ほど申し上げたような方針で粛々と決定してまいりますが、』

ここまでは良いんですけど問題はこの次。

『もちろんその際に、長国買いオペの方でわれわれがすること、およびそれがどう市場で消化されていくかということは考慮したうえで、短期金利の設定をしていくということになります。』

はい利上げする気がありません少なくとも植田さんは(この部分前半の質問の時に想定問答を見てたんですけど後半回答する時には想定見ないでしらっと言ってるように見えましたけどよつべ見た感じでは、というのもチャーミング)、と思わせるご発言だった訳ですよ。

これって「輪番減額によって市場金利(長期金利)がどの程度上昇するかを見極めてから短期金利の操作を考えます」って言ってるのと同義にしかワタクシには読めないし、会見中聞いてた人たちも多分同じ感想を持ったんじゃないかな、と思うんですよね。

そうなりますと、ついこの前まで7月利上げが市場的にはコンセンサスビューに近くなっていたので、思いっきりちゃぶ台ひっくり返し事案ということになりまして、その余波が昨日も続いてしまって昨日ってイールドカーブ思いっきりツイストスティープしておりましたが、まあこの発言って「輪番を減額すると長期金利が上がるからそれを見ながら短期金利の引き上げに手心を加えます」ってのが今後の輪番減額のインプリケーションですよって話で、それ最初のところに言ってた市場機能論と話が違うがなと存じます次第。

てかね、普通はこの「ストック効果」の話をする時って、せっせと短期政策金利を引き上げていく過程において「私たちはこのようにせっせと利上げをしていますけれども、一方でこれまでの資産買入によるストック効果の緩和効果があるから、利上げの数値で見るよりも政策は引き締め的じゃないんですよ」って正常化推進するときの方便に使っていたのがFEDとかでして、本来は「長期国債買入によるストック効果があるから多少利上げしてもヘーキヘーキ」って文脈でストック効果の話をするもん(だいたいからして売りオペするわけじゃないんだから既存のストックは時間の経過とともにゆっくり短期化するだけの話だし償還銘柄が落ちたからとて長期金利のストック効果に影響あるか、って話なのよね)だと思うのですが、植田さんの場合は「買入を減らすと今莫大にあるストック効果がちょっと減るから政策金利を引き上げなくてもよろしい」という逆の理屈に使っているのが恐ろしいところな訳です。

いやーマジでこの人やる気ないですね、さっさと床の間の博多人形ケースに入っていただきたいところです。


・本音駄々洩れの後に火消しを行っているのでやっちまったという自覚はあるのか紙でも入れられたかw

とまあこのように利上げコワイヨーという本音が駄々洩れになってしまった訳ですが、やっちまったと思ったのかそれともスタッフがブロックサインでも送ったのかどうかは知りませんが、この先の質疑応答でさっきの7月利上げを如何にもやらないような説明の火消しを実施しています。7ページの質疑応答になります。

『(問)二点あるんですけれども、一点目は、7 月に国債買入れの長期的な減額のプランを出すということで、それはすなわち 7 月の利上げはないだろうというふうな市場の見方が一部にあるんですが、確認なんですが、仮に経済・物価情勢から判断して、7月に利上げするのがふさわしいということであれば、同時に決めるっていうことがあるのか、それとも市場の動揺がやっぱり大き過ぎるのでそこはちょっと考慮に入れるっていうことなのか、その辺のご見解を伺いたいのが一点目です。(後半割愛)』

『(答)まず 7 月の短期金利に関する判断の方ですけれども、これは 7 月に同時に長期国債買いオペに関する具体案をお示しするということでありますけれども、おっしゃいますように、そのときまでに出てきます経済・物価情勢に関するデータないし入ってくる情報次第で、短期金利を引き上げて金融緩和度合いを調整するということは当然あり得る話だというふうに考えております。(後半割愛)』

2ページ前では「国債買入減額による影響を勘案して」と言ってたのにここではそれを言わない、ってのはもちろんのこと2ページ前の質問が植田さんの本音であったにせよ、公式にはそういう建付けじゃないのだし、そもそも7月利上げやりません、って話を明確にしてしまうと「やっぱり日銀は緩和修正に消極的」という評価から円安に持っていかれる(まあ実際問題欧州リスクオフみたいなのあったけどしっかり元に戻ってますからねドル円ちゃん)訳で、そうなると何のために輪番減額カードしかもやるやる詐欺方式を行ったのかがわけわからんという事になるわけでして、慌ててさっきの7月利上げ無しを火消しに入った、ということでしょうなと思いました。


・じゃあ7月の利上げはどうなんですねんという話ですが

12ページに飛びます、今引用した7ページでの質疑を踏まえての質問ですね。

『(問)先ほど 7 月にデータ・情報次第では、当然利上げあり得るという趣旨のご発言をされましたけど、4 月にまず物価がオントラックできている、今回の会合でもオントラックできている、7 月にもしそういった姿が確認できるならば、利上げしてもおかしくないという判断があり得るという、その確信が高まっているということなんでしょうか。(後半割愛)』

でもってまあアタクシMPM前に「7月利上げ予告ホームラン」とか申し上げたのは、この物価情勢が見通し通りオントラックで推移していて物価目標達成に向けて着実に進展している、というような形で強く声明文の情勢判断で言及すれば予告ホームランになるんじゃないかなと思ったのですが、惜しくもそういう話にはならず、挙句に植田さんが「輪番減らしたらその状況をみてからじゃないと利上げできませんでちゅー」と抜かしやがったのであちゃーってなもんだったのですが。

『(答)4 月以降の金融・経済・物価情勢に関する判断、特に基調的物価上昇率周りの判断ですけれども、新年度入り後の様々なデータが出つつあるところですので、もう既に 6 月ですけれども、ようやく 4 月のデータが大体出そろい、これから 5 月のデータが出てくるというところですので、これまでのところは私どもの見通しに概ね沿ったデータの出方になっておりますが、そういうことでいいかどうかもう少し確認したいというところでございます。そのうえで 7 月の短期金利をどうするかということは決定したいということでございます。(後半割愛)』

と言ってるのですが、じゃあこれが前のめりなのかというと残念ながらそういう訳でもなくて、その前の5ページの質疑を見ますと、

『(問)(前半割愛)あと、景気認識の部分なんですけど、こちらの個人消費については、底堅く推移してるっていうふうにご評価されてるかと思うんですけど、そこまでいい経済指標ってのはあまり示されてないように思うんですが、この点、その先行きの見通しと、あと足元トヨタなどの認証不正の問題がこういったところに及ぼす影響についてのお見立てをお願いします。』

に対して、

『(答)(前半割愛)それから、消費の現状をどう読むかということですけれども、おっしゃるように、一つは、おそらく物価上昇の影響で、特に非耐久財中心に、弱めのデータが出ているということとか、これもおっしゃいましたように、自動車の出荷停止の影響が直接消費にマイナスの影響を与えているという部分もありますし、後者の部分はもうワンラウンド来そうであるということも、ここまでに判明しています。』

この説明、聞いてた時にはアタクシの脳内フィルターが掛かっているせいだと信じたいのですが、妙に生き生きと説明していた感じがありまして(あくまでも個人の主観です)、利上げをしない方の材料の話になると勢いづいているように見えてしまって「よっ!この正直者!!」と大向こうから声を掛けたくなる場面でした。一応この後、

『ただ、出荷停止の、最近明らかになった部分については、1 回目の出荷停止の影響よりは、今のところは小さいであろうというふうに私どもは判断しています。そのうえでですが、賃金が緩やかに増加していくというふうに考えていますので、一方で消費者物価総合は落ち着いてきていますので、インフレ率がですね、実質所得の伸び率の低下がだんだん止まっていって、消費が強めの動きに転じていくという基本的な見方については今のところ維持しているということでございます。』

とは言ってるけど、前半の方がどう見ても言ってることが元気で、後半はなんかもう言ってみただけ感がwww


・やっぱり「輪番減額をやったら様子見たいので短期金利は上げたくありません」って言ってるんですよねーーーーー

この関連で9ページの質疑応答になるんですけど、

『(問)ちょっと改めてになりますが、今回、この国債の買入れの減額の予告をしている、この決定はですね、なぜこのタイミングでの決定だったのかについて、総裁のお考えをお知らせください。3 月に大規模な金融緩和を終了して、その時に、一度にやると影響があるというふうに判断されてのことなのか、そういった点を踏まえて考えをお知らせください。』

これ、「なんで3月に減額アナウンスしなかったんですか」と聞いているように見せた諸葛孔明の罠質問なんですが、植田先生ちゃっかり石兵八陣に迷い込むの巻でして、

『(答)これは基本的には、3 月以降申し上げてきましたように、3 月にあの大きな政策の枠組みの変更を致しましたので、その変更を金融市場がどういうふうに消化するかということを少し丁寧にみたいという気持ちで 4 月以降みておりました。それがある程度確認できたという判断のもとに、今回減額を決定し、更に丁寧に市場の意見も伺いつつ、7 月に具体案を発表するという手順を踏んでいるところでございます。』

はい、これさっき引用した5ページの回答を並べると、答えは「僕は7月利上げする気はない」になりますよね。再掲しますと、

『『(答)(先ほど引用した5ページでの質疑応答の回答部の再掲です、前半割愛)それから、7 月あるいは 7 月以降の短期金利の調節方針ですが、これは先ほど申し上げましたが、経済・物価情勢に沿って、先ほど申し上げたような方針で粛々と決定してまいりますが、もちろんその際に、長国買いオペの方でわれわれがすること、およびそれがどう市場で消化されていくかということは考慮したうえで、短期金利の設定をしていくということになります。』

ということで、きっちりとシンクロしている訳でして、まあ要するに植田さんは利上げコワイヨーって言ってるわけですが、この前の金研国際コンファランスでの内田副総裁の植田挨拶公開処刑講演を見れば植田さんが言っていることがそのまま通るのかというとこれまたアレな訳でして、こう植田さんが言ってるから7月利上げが消えたかというと必ずしもそうではないとは思います。まあ鍵はここからの為替が一番効くっしょとは思いますので他力(??)頼みではありますがwww


・舌先三寸で時間稼ぎをすることの弊害について

今回の会見の白眉となる質疑を3つほど。先ほども申し上げましたけど本文6ページから7ページにかけての質疑応答でこれは先ほど申し上げたお方による質問ですが

『(問)かなり丁寧に進めていきたいということはよく分かったんですけれども、今回動かなかったことによって今日になって円安が進み、158 円台になっているということもあります。この 7 月まで動かないことのリスクについては、総裁どうお考えなのかというのをお伺いしたいのが一つです。』

動かないことのリスクの指摘も良いのですがさらに良いのはこの後半でして、

『あとは市場の金利形成の自由度を高めるために政策の予見可能性を高めていくというのは、非常に重要なことだと思うんですけれども、それによって市場に事前に政策が織り込まれ過ぎて、それで円安が進む展開のようにもみえるんですが、この市場との対話の難しさについては、今どう感じていらっしゃるでしょうか。』

物凄く丁寧な言い方をしているのですが、これってアタクシが勝手に解釈してるから間違ってたらゴメンナサイではあるのですが、「円安進行を抑えようとして舌先三寸でいろいろと時間稼ぎをしているもんだから、市場の期待が高まりすぎて実際にやったことが「失望」になっているんだからコミュニケーションの方法もうちょっと考えろ」って話ですよね。これはかなりキツイのですが、植田さんまともに回答をしていないのが残念ですが、まあ「入った」から回答できなかったんでしょうね。

『(答)具体案の発表は 1 か月先になるわけですけれども、その間の不確実性を極力避ける意味で、今日は不十分かもしれないですけれども、私どもの減額に当たっての基本的な考え方をご説明しているところです。もうちょっと長いタームで考えますと、先ほど来出ていますように、どこが最適点か分からないですけれども、望ましい国債保有残高とか超過準備の水準に到達するまでにはかなりの時間がかかることですので、ちょっと極端な言い方になりますけれども、短期的に 1 か月、2 か月先になるということ自体のコストはそれほどないというふうに思っております。』

そうやって引っ張って結果円安進行してますけどねえ。

『市場とのコミュニケーションについては、常日頃から丁寧に私どもの考え方が伝わるように努めていきたい、丁寧に説明していきたいということに尽きるかと思います。』

ということで、全然反省していないのは理解しました。


・参加者会合を招集する件に関するランボー怒りの質問

口調はアレですが質問の内容はまさにその通り、というのが13ページにあって、

『(問)記者会見の運営についてですね、非常に不満を持ちましたので、少し嫌味な質問をさせて頂きますけれども、丁寧にするために市場関係者と会合を設けるとおっしゃってるんですけども、金融市場局は今までそういうことを、これほど重要なことについてですね、ヒアリングをしてこなかったってことなんですか。そんなわけないですよね。ですから、政策担当部局による時間稼ぎですよね、これは。そうじゃないんですか。そう思ってるから円安になってるわけでしょ、市場が。お答え頂きたいと思います。』

ただの時間稼ぎだろ、というのはまさに仰る通りだし、輪番減額の話が急に金曜になって出たわけではなくてマイナス金利YCC解除したあとから、というかうっかりしたらその前から長期的な課題として説明があったのですから、一切ヒアリングしていないなんてことあるわけないし、マーケットでもいろいろと言われていた(のは割愛しましたが前の方の質疑でもありました)訳です。

『(答)これはオペ減額の方針を決定する際、それに伴うヒアリングということですので、なかなかそういう決定がないもとで、いろいろな個別の金融機関とヒアリングで意見を聴取するということが難しい性質の問題かなと思います。』

それ長期金利ペッグ政策の下で政策金利の引き上げとペッグ政策廃止するって話をするときはそうかもしれないけど、

『最初に減額をしますということをみんなにアナウンスしたうえで、ヒアリングをするというステップを踏まないと、それこそ情報リークみたいなリスクを引き起こしてしまう問題にもつながりかねないということで、今回のようなプロセスを踏んでおります。』

いやお前ら散々「長期国債買入は将来的に減額する」って言ってたんだからヒアリングできるだろいつ頃からがいいですかとかどのくらいの期間かければいいのですかとか幾らでも聞けるだろうよ、ということでこの想定問答?もかなり乱暴な回答だったのですが・・・・・・・・・・


・ランボー怒りの質問に他社の記者さんも加勢したのがさらに大ヒットでした

この回答の直後の方が追い打ちをかけたというのも今回の会見の素敵なポイントでして、

『(問)今の質問をもう少し丁寧にご説明頂きたいんですけれども、』

この時点で「わが軍、助太刀に参上!」って感じでよつべライブ聴いてて吹きそうになったです。

『国債減額の計画を決めるに当たって、市場参加者の意見を聞く場をわざわざ設けるということの意義なんですけれども、やはり市場関係者からは、今までこういう機会がなかったのに、なぜ今回はこれを開くのかという、やはり日銀が市場に政策の責任を転嫁してるんじゃないかというような不満の声が早速出てるんですけれども、ちょっともう少し丁寧にご説明頂けましたらありがたいです。』

なお、よつべ聞けばわかりますが、これ追い打ちかけているのが日経の方ってのがさらにポイント高くて、やはりこの国債市場参加者会合臨時開催ってのの茶番性に関して厳しい意見があの時点からあったということですわな。そらそうよ。

『(答)もちろん常日頃から市場とは意見交換をしているわけですが、先ほど申し上げましたように、非常にセンシティブな問題ですので、先に方針を公表したうえでヒアリングをしたいということですし、その中で私どもがこれまでつかめてない情報も入ってくるということだと思います。そのうえで、更に決定の責任は当然日本銀行にあるということになります。』

ということで、まあ自分たちも茶番なことは理解しているんでしょうね、こういう回答をするしかなかったというところでした。


とまあそんなところで今朝は勘弁。







2024/06/17

お題「決定会合レビュー:しかしこの人たちなんも決められないんですかねえ」

まあアレです、決定会合だというのに土日に更新しない時点で(ノ∀`)アチャーって話な訳ですが。(単に先週バチクソ疲れて死んでただけという説はある)

〇決定会合レビュー:7月利上げ予告もしないで減額内容も先送りってナンジャソラ

・輪番減額を政策イシューにした挙句に今回なんも決定できないとかアホなのかお前ら

今回の声明文

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240614a.pdf
当面の金融政策運営について

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す。

次回金融政策決定会合までの長期国債およびCP等・社債等の買入れについては、2024 年3月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施する。その後については、金融市場において長期金利がより自由な形で形成されるよう、長期国債買入れを減額していく方針を決定した(賛成8反対1)(注)。市場参加者の意見も確認し、次回金融政策決定会合において、今後1〜2年程度の具体的な減額計画を決定する。』

もうね、お前らなんも決断できないチキンやなという話なんですが、

3月のマイナス金利YCC解除の時に植田総裁こんなこと言ってましたよね。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240321a.pdf
総裁記者会見
――2024年3月19日(火)午後3時30分から約65分

本文4ページ。

『(答)
一点目ですけれども、今日からといいますか、明後日から始まる金融調節、金融政策枠組みについて、名前を付けるかというご質問だと思いますが、特に名前は考えておりません。先ほど申し上げましたように、短期金利を主たる政策手段とする普通の金融調節になるということだと思います。』(直上URL先3月の植田総裁定例記者会見より、以下しばらく同様)

>短期金利を主たる政策手段とする普通の金融調節になる
>短期金利を主たる政策手段とする普通の金融調節になる
>短期金利を主たる政策手段とする普通の金融調節になる

『それから、長期金利ですけれども、国債買入れは当面これまでと同程度の額で継続致しますが、そのうえで金利水準は市場が決めるものというふうに考えております。ただし、ご質問にもありましたように、市場金利が急激に上昇する場合は機動的なオペを打つということは、バックストップとして担保しておきたいということでございます。』

>そのうえで金利水準は市場が決めるものというふうに考えております
>そのうえで金利水準は市場が決めるものというふうに考えております
>そのうえで金利水準は市場が決めるものというふうに考えております

本文5ページ

『それから、国債を私ども大量に保有していることのストック効果をどう考えるかということが後半のご質問だったと思いますが、これはもちろん、われわれも申し上げてきましたように、ストック効果というものが定量的に何%かというのは難しいですけれども、無視できない影響を長期金利に及ぼしていて、たくさん持ってるということですので、緩和方向の力が働いているということだと思います。これは認識しつつ、しかし、買いオペや残高の調整を能動的な金融政策、金融調節手段としては用いず、主たる調節手段としては短期金利の調節をもって行うというのが今後の考え方でございます。』(ここまでの引用は直上URL先3月の植田総裁定例記者会見より)

とまあ思いっきり輪番をフレームアップしている上に、利上げじゃなくて輪番減額の予告ホームランになるわけですし、さらにトサカに来るのは・・・・・・・・・・・


・な〜にが「市場の意見を確認する」だよ茶番にも程があるわ

(再掲します、今回の声明文から)

『市場参加者の意見も確認し、次回金融政策決定会合において、今後1〜2年程度の具体的な減額計画を決定する。』

とか抜かしているのがボードの責任放棄にもほどがあって、しかも茶番のように

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/mpr240614a.pdf
「債券市場参加者会合」の開催について

2024 年 6 月 14 日
日本銀行金融市場局

『日本銀行金融市場局は、本日の政策委員会・金融政策決定会合における決定内容を踏まえ、「債券市場参加者会合」を以下の要領で開催します。』

という話なんですが、

https://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond_list/mbond2405.pdf
「債券市場参加者会合」(第 19 回)の開催について

202 4 年 5 月 1 日
日本銀行金融市場局

『日本銀行金融市場局は、「債券市場参加者会合」(第 19 回)を以下の要領で開催します。

1.日 時
銀行等グループ 6 月 4 日 (火) 15 時 45 分から
証券等グループ 6 月 4 日 (火) 17 時 30 分から
バイサイドグループ 6 月 5 日 (水) 16 時 00 分から』

ってつい2週間前にやったばっかりだし、だいたいからして金融市場局の方ではマーケット動向のヒアリングとか普段からちゃんとやっている訳で、これ記者会見でニュースソクラ(ネットメディア)の方が口調は悪いけど実に当然の質問をしていて、「普段から金融市場局が市場の意見を聞いていない、という事では無い筈だからこれは責任転嫁だろ」みたいな趣旨(違ってたらゴメンよ、今日会見録出るけど)の質問をしていて、いや仰る通りですわというお話だし、6月の時点で輪番減額の話が1ミリも出ていないから改めて仕切り直しというのならともかく、3月会合の時点で長期的な減額って話は出ていたのですから、その後長期的な減額についてヒアリングをできなかったという話でも何でもないんですよね。

まあそういうことでして、ついこの前やったばっかりなのにまた会合実施とか金融市場局さんにおいてはご苦労なこったと思いますし、それ以前の問題としてまるで普段金融市場局が市場の意見を聞いていないかのようなこの会合実施っての金融市場局がカワイソスにも程があって同情の念に堪えませんし、マジのマジでこんなのボードの責任放棄というか、なんも決められないのかこのアホウどもは、と思いました。

いやまあこれが声明文で7月利上げ予告ホームランでもしていれば別なんですが、後述のようにそうでもないですし、総裁会見ではむしろ輪番減額による長期金利の影響ガーとか言い出して、輪番減額してその後利下げは様子を見ますと言わんばかり(言っちまったと思ったのかその後の質疑では7月も可能性ありますとは言ってたけど完全にあれはハトハトチキンの本音駄々洩れでしたわな)ですし、金曜は偶々おフランス様などなどの影響でリスクオフになってドイツ様とかの金利が急低下してドルも下がっておられましたので事なきを得ましたが、その後ドルは下がるがドル円は下がらんとかいうチャーミングなことになっているのは後でメモっておきます。


まあもっとそもそも論を言いますと、そもそも「市場の意見を聞く」などという姿勢があるならマイナス金利の解除を昨年の4月か遅くとも7月にやって桶という話でして、散々っぱらマイナス金利解除を引っ張りに引っ張りまくって円安誘導していたハトハトチキンが何を今更「市場の意見を聞く」だよふざけるなお前馬鹿にしてるのかという話でして、どうせ市場の意見通りにやるわけでじゃなくて、どっかの太鼓持ち何とかストが太鼓持ち意見を言ったのをチェリーピッキングするんだろとしか申し上げようがない次第で、なんちゅうかこういう糞茶番に付き合わされるの金融市場局も迷惑だし、そんなに市場の意見を聞きたいんだったら植田お前だお前、お前が出てきて参加者会合メンバー個別に30分づつ膝付め談判してみろやこのチキンが、というところではありますな。


・そんな茶番はさておきまして情勢判断なんですけど現状認識はむしろ下がっていますなあ

まあ輪番減額が利上げとセットなら話はまだ分かるのですが声明文項番2に進みますと、

今回声明文(URL再掲)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240614a.pdf

前回展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2404a.pdf

項番2が経済物価情勢の現状認識と先行き見通しで、言ってみれば展望レポートの中間評価になりますが、

『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(6月声明文)
『わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。』(4月展望レポート)

現状判断の総括判断は同じ。

『海外経済は、総じてみれば緩やかに成長している。輸出は横ばい圏内の動きとなっている。』(6月声明文)
『海外経済は、回復ペースが鈍化している。そうした影響を受けつつも、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。』(4月展望レポート)

回復ペースが鈍化、というのと総じてみれば緩やかに成長、というのがどcっちがどっちですねんというお話ではあるのですが、総じてみればっていうヘッジクローズが入っているので威勢が悪いのは今回かな。

『鉱工業生産は、基調としては横ばい圏内の動きとなっているが、足もとでは、一部自動車メーカーの生産・出荷停止による下押しが続いている。』(6月声明文)
『鉱工業生産は、基調としては横ばい圏内の動きとなっているが、足もとでは、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響もあって減少している。』(4月展望レポート)

減少している、と下押しが続いている、のどっちがというのもこれまたわかりにくいんですけど、直近で自動車メーカーさん追加の悪材料あったんだからまあそれも加味したら、一時的と思ってた減少状況が続いていますねアイヤーって感じでしょこれ。

『企業収益が改善するもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(6月声明文)
『企業収益は改善しており、業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(4月展望レポート)

業況感の記載がないのは前回以降に短観がアップデートされていないからです。ここは前回対比同じ。

『雇用・所得環境は緩やかに改善している。』(6月声明文)
『雇用・所得環境は緩やかに改善している。』(4月展望レポート)


『個人消費は、物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の下押しが続いているものの、底堅く推移している。』(6月声明文)
『個人消費は、物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の減少などがみられるものの、底堅く推移している。』(4月展望レポート)

『住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(6月声明文)
『住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(4月展望レポート)

この辺みな同じで、

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(6月声明文)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(4月展望レポート)

と来まして物価は、

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台前半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(6月声明文)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは2%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(4月展望レポート)

現実の数値以外皆同じか・・・・・・・・


・先行き見通しなんだが物価の見通しが明示的に展望レポートの期間までの見通しを明確に言及ですな

でもって先行き見通しですが、

『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(6月声明文)

『先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかに成長していくもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(4月展望レポート)

はいはい同じ同じ。ちなみに展望は本文2ページ部分相当です。

『消費者物価(除く生鮮食品)については、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、来年度にかけては、政府による経済対策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(6月声明文)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台後半となったあと、2025 年度および 2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、2025 年度にかけては、このところの原油価格上昇の影響や政府による経済対策の反動が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられる。』(4月展望レポート)

こちらの展望は本文3ページの下の方から4ページにかけてになります。数字が入っているのはさておき言ってることは同じですな。でもって気になったのはこの次でして、

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、』(6月声明文)

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、』(4月展望レポート)

とまあ基調的な上昇率とやらのも表現も同じですが、

『「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(6月声明文)
『見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。』(4月展望レポート)

ここはナンジャソラと思った場所で、まあ従来は確かに「物価安定と整合的な水準に上がる」という予想がされていなくて、3月の声明文で「先行き、見通し期間終盤にかけて、「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した。」という話をしていたので、その継続である、と言ってしまえばそれまで何ですけど、よく考えてみると従来の建付けでは展望レポートが先行き3年程度の長期見通し、通常の会合は1年程度の見通しの話をしていたので、いつの間にやらその区別がなくなってやがる(まあ書きながら気が付いたがそもそも3月も展望会合ではない)と思いました。

でですね、今回引き続き「見通し期間後半に物価目標達成と考えられる」が続くのであれば、当然ながら次回の展望レポートの時点で、先般の4月の展望レポートで示された政策金利の修正の話が起こる筈ですよね、という話があるんだがその前にこの項番2にはリスク要因の話があるのでそっちを先に。


・リスク要因はいつも通り

『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(6月声明文)

『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(4月展望レポート)

こちらの記述は展望の1ページの鏡(概要)部分になります。同じですね。


・幻の声明文項番3となったのはどういう意味があるのでしょうかというのがいくつか考えられます

でまあこの声明文は終わっているのですが、これまでって「先行きの金融政策運営」に関する記載が声明文にありましたよね。でもって今回この項番3がすっぽりと抜け落ちているのですが、先行きの金融政策運営に関してはご案内の通りで前回声明文でも実はなくて、その代わりに展望レポートの最後の部分(「4.金融政策運営」の最後)にあたります本文8ページの最後に

『金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済・金融面の不確実性は引き続き高い。以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。』(4月展望レポート8ページより、6月声明文には該当する記載なし)

この記載に相当する部分、前回は「声明文には記載していませんが展望レポートの方で記載しております」という説明ができたのですが、今回はバッサリ削除になっていまして、これはまあ何らかの意味をもって削除している訳ですな。

ちなみにアタクシ基本的にはFEDのドットプロットですら要らねえと言ってるくらいなので、先行きの政策に関するガイダンス的な文言自体、フォワードガイダンスで緩和効果を出すような必要がない上に構造変化などの可能性もあるこのご時世において、ガイダンスもどきの文言自体要らないというスタンスなので、このばっさり削除自体結構なことで、何なら次回展望でも上記文言のうち前半はいらない(「日本銀行は〜経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。だけで十分)と思っているので、このばっさり削除自体はほほうと思いました。

ただまあ何ですな、この文言って金融政策に関して「以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。」というハイパー意味不明というか、この緩和的な金融環境云々とかいう糞文言によって円安助長していたのでこれが外れるのは非常に結構なのですが、同時に見通し通りなら金融緩和度合いを調整、というのも外れるので、わざわざ項番2の物価のところで「見通し通りに推移している」って評価したことが7月の利上げ予告ホームランにならないという残念な面もあります。

まあ削除したこと自体は良いんですけど、じゃあ今ボードは「当面緩和的な金融環境」なのか、「見通し通りに推移しているから金融緩和度合いの調整(なお3月当初の建付けで言えばこれは利上げを意味するのであって輪番減額は意味しない)」なのかが分からん、ということになっておりますのがまあムツカシねというところですが、ただまあ今日出てくるので明日ネタにしますが、ハトハトチキンおじさんの会見だと前者の「当面緩和的な金融環境」の方に傾いている感じもしますし、一方でこの前の内田副総裁の講演とかだと公社なんですが、まあ不明にも程があるという感じです。


・中村審議委員が正論をぶち込んでいる件について

まあオマケですけど声明文脚注。

『注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員。反対:中村委員。中村委員は、長期国債買入れを減額していく方向性については賛成だが、7月の「展望レポート」で経済・物価情勢を改めて点検してから決定すべきとして反対した。』

・・・・・どう見ても正論です本当にありがとうございました。


〇市場備忘メモ

・3M短国ェ・・・・・・・・・・・

売参ちゃんですが
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

6月は期近だから変わらないのですが、短国の気配軒並み強くなっていて、益々7月利上げ何ぼのもんじゃいということになっておられます。まあ7月利上げするのかしないのかがこれだけだと微妙としかおもえませんもんね。

ということで木曜に入札のあったカレント3Mですが、

国庫短期証券1237 2024/09/17:平均値単利 0.000

ちょwwwwおまwwwwwwwちなみに単価も100円ですorzorzorz


・おフランスでリスクオフとな

https://jp.reuters.com/markets/us/G3OOXBIXCNNH3FZSBJTTM4GAXE-2024-06-14/
NY外為市場=ユーロ/ドル、週間で2カ月ぶり大幅安 仏政局不安で
By ロイター編集

『[ニューヨーク 14日 ロイター] - ニューヨーク外為市場ではユーロが対ドルで下落。週ベースでは2カ月ぶりの大幅な下げを記録する見通し。フランスで実施される総選挙で極右が勝利すれば財政状況が悪化するとの懸念に圧迫された。

フランスのルメール経済・財務相は14日、同国の総選挙で極右が勝利すれば、金融危機のリスクに直面すると述べた。 フランス市場では株式・債券などが売られ、仏債のリスクプレミアムは週ベースで2011年以来の高水準となったほか、銀行株も急落した。終盤の取引で、ユーロは0.34%安の1.0699ドル。週間では0.95%安と2カ月ぶりの大幅な下落となる勢い。』(上記URL先より)

ということで、なんかまあこのおかげで総裁会見で円安に振れずに済んでいますが、結局ドル円だけはドル下げ渋っていますので、まあここから7月会合に向けて円安になればまた話も変わるっしょというところですかね、知らんけど。





2024/06/14

お題「短国3Mが1bp割れ/決定会合プレビュー与太雑談/FOMCオープニングリマークは「無風狙い」が明らかですね」

はて・・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/markets/bonds/
米国債10年 利回り
US10YT=XX    +4.237 -0.059

https://jp.reuters.com/markets/quote/USDJPY=X/
US Dollar / Japanese Yen FX Spot Rate
USDJPY=X
直近の取引 156.96 JPY
2024年6月14日の時点。値は少なくとも15分遅れで表示しています

(各リンク先の数字に関してはアタクシが取得した今朝のお時間のモノです為念)

アメリカン金利上昇したところからずいぶん戻したのにドル円ってたいして戻していないようにしか見えないのですが、これは本日の決定会合で日銀が下手を打つと円安が爆裂して神田大明神激怒激怒大激怒の展開という大変にお茶目な事態が想定されるのではないか、と斯様心配なのですが、日銀の伝統芸能なので下手打って円安爆裂して総裁週明けに呼び出されて激詰め食らってションベンちびる、という展開に1万アルゼンチンペソでお願いしますorzorz

〇短国3Mェ・・・・・・・・・・・・・

昨日の短国ちゃん(今日MPM2日目だからいつもの金曜3Mが木曜に実施)

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240613.htm
国庫短期証券(第1237回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1237回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号      国庫短期証券(第1237回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日      令和6年6月17日
4.償還期限    令和6年9月17日

5.価格競争入札について
(1)応募額       15兆7,930億8,000万円
(2)募入決定額     4兆1,491億6,000万円
(3)募入最低価格    99円99銭7厘0毛
(募入最高利回り)     (0.0119%)
(4)募入最低価格における案分比率  17.6292%
(5)募入平均価格     99円99銭8厘0毛
(募入平均利回り)     (0.0079%)』

ちょwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwwアベ1bp割えええええええええ

とまあそういう訳でアベレージ1bp割れとかいうの4月の3M短国入札がずっとその水準で推移していまして、いやまあそうは言いましても4月の新発3Mって足は1番長いので7/29(1227回)でして、7月決定会合を跨がないので、っちゅうのはあったわけですが、この新発、13週間物で7/31が6週間半のところに当たるから、期間の半分が7月決定会合以降という新発になるのですが、弊駄文で毎週のようにボヤッキーしておりますように、落札レートの方がじゃんじゃんと低下を続けるの巻であります。

なお、売参ちゃんを見ますと1237回はきっちりと平均値単利が0.8bpという平均落札レベルになっていますので別に強すぎ入札だった訳でないというのがおそロシア。

しつこいけど備忘もかねて並べると、

6/13の3M(1237) 0.79bp/1.19bp(9/17足)
6/7の3M(1236) 1.72bp/2.20bp(9/9足)
5/31の3M(1234) 3.16bp/3.81bp(9/2足)
5/24の3M(1233) 4.01bp/4.21bp(8/27足)
5/17の3M(1232) 4.13bp/4.81bp(8/19足)
5/10の3M(1230) 4.76bp/5.35bp(8/13足)

ということで、お前なんで金利急低下してますねんという世界な訳ですが、単純に利上げパスとかの不透明感で国債投資資金のデュレーション調整で毎週出てくるしロットは他の利付国債対比余裕のよっちゃんでさばける(うっかりしたら2桁違うでしょ)債券ということで買いが来ている要因は大きいと思いますが、実際問題として今日のMPMで7月利上げを既定路線にすべく地均しの予告ホームランを打つとか、7月に利上げが行われるとかで次回利上げが起きて、買わない言い訳が一つ無くなってからこの短国ちゃんがどのような挙動を示すのか凄く気になります。

と申しますのは、これもし利上げしてもこんなテイタラクで短国が推移する、ってことになりますと、短期金融市場における信用リスクがフリーな資産へのアクセスにおいて飛んでもないレベルの不公平が発生する(いやまあ今でも発生してるんですけど)という話で、日銀当座預金に対して直接アクセスできる人は日銀当座預金付利金利での信用リスクフリー運用ができて、そうじゃない人の場合は短国を買いに行くことになるのでやたら低金利になっている短国との差がちょっとどうなのよというお話に。

ま、この話はそもそもマイナス金利時代にさかのぼって階層構造ってのが日銀当座預金へのアクセスが可能かつ基礎残高を持っていた先とそれ以外の間に差をつけて「市場機能」とやらを発生させようというのから始まっていますが、マイナス金利の場合は政策的に市場金利をマイナスにする(ということがポンコツ思想なのでは言うまでもないのですがその点はひとまず置くとして)というのと、付利のマイナスチャージを広範に行うのは事実上の課税行為になってしまうのでよくない、ってのがあったからまあ百歩譲れば必要悪みたいなもんだったのですな。

でまあ今も確かに金利差とんでもないんですけど、ただまあ達観すれば金利水準的に10bpと(足元は下がりすぎですが)3bpだと金利3倍とかおもってしまいますが所詮は数べーシスの世界と頑張って達観すれば達観できないことはないのですが、これ短期政策金利というか付利金利が0.25%に上昇した時に短国のレートが全然下、ってことになると金利水準の差による短期市場参加者間の不公平がちょっと看過できない水準になりかねないので、まあ足元の金利低下はほぼほぼ逃避資金による仮需要だとは思うのですが、ゆうて日銀のオペ打ちすぎ問題とか、過去と違って市場参加者(投資家)に対する流動性規制の強化による国債への需要の高まりとかが効いているんだとしたら、日銀も何とかせえとは思いますけど、短国をかなりの規模で増発しないとアカンのとチャイマスカという気はしますな、うんうん。


ちなみに大昔、FBが市中公募されてなかった時代の短国って3Mじゃなくて6Mが取引の主体で、短国へのニーズに対して発行が少なかったので常にコールよりもクッソ低い利回りになっていましたが、この時は短国市場の参加者が限定的だったし、ターム物の市場はNCD3か月とかで短国自体が珍獣エリア扱いだったので今とは全然違ったりするのですがまあそういう時代もありました。どうでもいいけど隙あらば入るおいぼれじいさんの昔語り。


〇そういえば今回はお漏らしがほとんど無いということでなーーんだやればできるじゃん

決定会合2日の朝といえば恒例行事になりつつあった某新聞社のWebページ
https://www.nikkei.com/

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB126370S4A610C2000000/
日銀きょう総裁会見、国債減額・円安への言及焦点
金融政策
2024年6月14日 5:00 [会員限定記事]

例によって日経無課金勢(よい子は真似してはいけません)のアタクシは会員記事の部分は読めませんが、特に毒にも薬にもならない記事になっておりまして、お漏らしの気配はない、ということでございまして、なんだやればできるじゃんという大変に素敵な展開になりました。というかこれが本来の姿でしょ。

まあお漏らしがなくなるのはよいことなのですが、そうなりますと別に米国みたいにフリーダムにしろとは言わないのですが、金懇の回数を増やしていただいて、まあできれば四半期ごとに各政策委員の皆さんが「大本営発表」だけではなく「私のビュー」をもうちょっと示すようにしていけば、各政策委員のスタンスとか考えるポイントとかが見えやすくなり、その結果として日銀の政策反応関数が分かりやすくなり、いまみたいなへなちょこリーク(もどき)記事が刀剣乱舞状態にならなくて済む、という事になると思うのよね。

まあ金懇ってその地域の偉い人集めて実施するというロジが無茶苦茶大変な物件になるので、年4回中2回は日本記者クラブとかでの講演会(もちろん読売とか日経とか時事共同とかでもいいんですがあんまり営利団体が主催するのをポンポンと正式行事にするのも中央銀行としては微妙な気がするので)みたいな形式にするなどの工夫は必要だと思いますけど、お漏らし無しのムーニーマンになるのでしたら、各政策委員の意見表明、それもある程度我を出していただく形での意見表明の回数を増やすってのはアリだとおもうので、面倒かもしれないけど検討していただきたいものであります。


〇でまあ今日の決定会合ですけれども本来は無風でよかった会合なんですよねよく考えれば・・・・・・・・

5.13事件以来の流れで「一段の円安阻止」に輪番カードを使う、というもともとお前ら3月の時点で「短期金利操作を使った普通の金融政策をする」って言ってたのと話が全然違うじゃんという流れになってしまい、まあさっきの日経さんにもあるように輪番減額の話が一つのホットイシューになっている訳です。

でまあアタクシもそもそも輪番過大にもほどがあって今の半減でも多いわと思う過激派なので輪番バンバン減らせやとは思いますが、ただまあ3月会合の時点で輪番の政策としての建付けを変更した以上、本来は初回利上げと同時かその後かに輪番を減額する方が筋だと思うのですよね。

つまり、7月に利上げと輪番の中期的減額方向および目先の減額をアナウンスするのであれば、「金融緩和度合いの調整を行います」で済む話ですし、7月に利上げして9月に輪番だけ減額の話をするのであっても、「利上げの影響を確認しましたので今後は輪番を中期的に減らしていきます」って感じであくまでも補助ツールとして扱う、って感じになるんですよ。

然るに、今回輪番を正面切って減らす決定をする、ってことになりますと、明らかに「利上げの露払い」になってしまって一度奥に引っ込めたはずの輪番が堂々と政策のメインツールの一つとして前面に復活してしまう、ということになりまして、これは何ぼ何でもお前ら話が違くねえか、ということになりますし、今回輪番減額の最終形態まで見せて長期的な減額を示す(ちなみにアタクシの推奨は四半期ごとに1兆減額して1年ちょっとかけて月額1兆円まで減らしていく」です)ならともかく、単に「6兆円→5兆円」みたいな形にすると、輪番減額が一々短期金利政策決定と連動する形になってしまって、通常の輪番の上げ下げが全部政策意図と結び付けられて考えられてしまうというはなはだ面倒なことになるんじゃなかろうか、と思う訳なのですよ。


ということで、どうせ当たらないというか死亡フラグな大予想(べき論込み)をすると、今回の決定会合って展望回じゃないから声明文のところで経済物価情勢に対するアセスメントを書くことになると思うんで、声明文のところで「2%物価目標達成に向けた進展は想定通りに進捗しており、達成への確度は一段と高まっており、今後も見通し通りに推移すれば政策金利の調整を検討する」というような感じで、7月会合での利上げの予告ホームランを打つ代わりに輪番に関しては「中長期的な減額を行う場合の具体的な方法やコミュニケーションについて執行部に検討を指示する」という形にして、その代わり今回は何もしない、という風にすれば何とか7月会合で輪番の政策的な立ち位置を再構築できるとおもうのですよね。


何度も申し上げているように、とにかく今の日銀って黒田の途中(具体的にはQQE2からYCC導入までが酷かった)から、そして黒田末期からが完全にそうなっているのですが、とにかくその場を何とかしてやり過ごしたり凌いだりすることばかりやってて、前の話との整合性を丸無視しながら運営していった癖が抜けなくて、足許では輪番オペの扱いがこんなにクローズアップされるとかいう3月に決定した時と全然違う状態にわずか3か月でなってしまっているというすさまじいばかりのロジック崩壊が発生しているんですよ。なので今回次回の決定会合ってその建付けを本来のモノに戻す(あるいは重要ツール2本立てとする、と開き直るのもかなり間抜けですけど一応手としてはあるかも)最初で最後の機会になりますんで、まあどういうのたうち回り方をするのかをニヤニヤしながら眺めていきたいと存じます。

さてどうなるのやら・・・・・・・・・・・・


なお、最初の方で申し上げたと思いますが、コミュニケーションで伝統芸能のチョンボをやらかしてドル円は飛ぶ飛ぶ炎と燃えて、となると日銀が地獄の業火に焼かれながら7月に利上げすることになりますのでまあそれはそれで面白そう(超不謹慎)ですけどね。


〇FOMCパウエル会見:オープニングリマークは「無風狙い」なのがよくわかる内容でした

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20240612.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
June 12, 2024

今朝見たらQ&A付の物件に進化しておられましたが、今回のオープニングリマークの部分を読んだわけですが、まあ声明文の変化が事実上1か所みたいなもんだった訳で、あの変化自体はそれなりに重要な変化ではあるものの、今回ってまあ事実上の「1回パス」をしたという会合だったと思うので、ハト派もタカ派も極端に過激なことを想定していないのであればまあ順当って思う結果だったんじゃないかなって感じですな。

ということでオープニングリマークを簡単に

『CHAIR POWELL. Good afternoon. My colleagues and I remain squarely focused on achieving our dual mandate goals of maximum employment and stable prices for the benefit of the American people. Our economy has made considerable progress toward both goals over the past two years. The labor market has come into better balance, with continued strong job gains and a low unemployment rate. Inflation has eased substantially from a peak of 7 percent to 2.7 percent but is still too high. We are strongly committed to returning inflation to our 2 percent goal in support of a strong economy that benefits everyone.』

『Today, the FOMC decided to leave our policy interest rate unchanged and to continue to reduce our securities holdings. We are maintaining our restrictive stance of monetary policy in order to keep demand in line with supply and reduce inflationary pressures. I will have more to say about monetary policy after briefly reviewing economic developments. 』

ってな訳で話が始まるのですが、最初の部分にしましてもいつもの定例言い回しで流していますし、以下の部分に関しても経済物価情勢の話についてあまり強い思想を入れないで説明をしている、というノーバイアスモードに徹した説明になっています。一々引用するとクソ長くなるのでその辺を全部かっ飛ばしまして政策運営に関する2ページ(PDFも2枚目)の最後の辺りから。

『My colleagues and I are acutely aware that high inflation imposes significant hardship as it erodes purchasing power, especially for those least able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation. Our monetary policy actions are guided by our dual mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people. 』

まあここもいつもの定例文言ではあるのですが、生活価格が相変わらず上がってヒーコラ言ってるのは米国だけじゃなくて日本がまさにそうなんですが、ハトハトチキン総裁はこういうこと全然言ってくれませんよね(まあ言ったらなんで今の超緩和継続してるんだといわれるから言えないのはあるw)。

『In support of these goals, the Committee decided at today’s meeting to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent and to continue reducing our securities holdings. As labor market tightness has eased and inflation has declined over the past year, the risks to achieving our employment and inflation goals have moved toward better balance. The economic outlook is uncertain, however, and we remain highly attentive to inflation risks.』

今回の金利据え置き決定、と以下の部分は声明文にあった説明どおりですね。

『We have stated that we do not expect it will be appropriate to reduce the target range for the federal funds rate until we have gained greater confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent. So far this year, the data have not given us that greater confidence. The most recent inflation readings have been more favorable than earlier in the year, however, and there has been modest further progress toward our inflation objective. We will need to see more good data to bolster our confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent. 』

先行きの利下げに関しての言い方も変わらずで、すくなくとも予告ホームランにとられるような言い方は全くしていない、という感じです。

『We know that reducing policy restraint too soon or too much could result in a reversal of the progress we have seen on inflation. At the same time, reducing policy restraint too late or too little could unduly weaken economic activity and employment. In considering any adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks. 』

早すぎても遅すぎてもよくない、というのも従来の言い方を継承していまして、要するに今回は従来通りの様子見地蔵だから1回パスだよ、というのが伝わってくるオープニングリマークだと思いました。

よってこの次にドットプロットの説明がありますが、

『In our SEP, FOMC participants wrote down their individual assessments of an appropriate path for the federal funds rate, based on what each participant judges to be the most likely scenario going forward. If the economy evolves as expected, the median participant projects that the appropriate level of the federal funds rate will be 5.1 percent at the end of this year, 4.1 percent at the end of 2025, and 3.1 percent at the end of 2026. But these projections are not a Committee plan or any kind of decision.』

最後にドットプロットはプランでも決定でもないよって言ってますが、フォワードコミットメントをする意味がなくなっている現状でこういうの出すだけ混乱のもとだから出すの止めればと思います(ってかパウちゃんなら蛮勇振るってなくせるんじゃないかと期待している)。

『As the economy evolves, assessments of the appropriate policy path will adjust in order to best promote our maximum employment and price stability goals. If the economy remains solid and inflation persists, we are prepared to maintain the current target range for the federal funds rate as long as appropriate. If the labor market were to weaken unexpectedly or inflation were to fall more quickly than anticipated, we are prepared to respond. Policy is well positioned to deal with the risks and uncertainties that we face in pursuing both sides of our dual mandate. We will continue to make our decisions meeting by meeting, based on the totality of the data and its implications for the outlook and the balance of risks.』

ああだこうだ言ってるけど要するに「We will continue to make our decisions meeting by meeting, based on the totality of the data and its implications for the outlook and the balance of risks.」すなわち「出たとこ勝負」である。

『The Fed has been assigned two goals for monetary policy-maximum employment and stable prices. We remain committed to bringing inflation back down to our 2 percent goal and to keeping longer-term inflation expectations well anchored. Restoring price stability is essential to achieving maximum employment and stable prices over the long run. Our success in delivering on these goals matters to all Americans. We understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We at the Fed will do everything we can to achieve our maximum employment and price stability goals. Thank you. I look forward to your questions. 』

ということで締めの辺りも同じでして、まあ見事なまでに無風狙いだな、と思いました。


・・・・・でもって無風のオープニングリマークだったのでついでに会見Q&Aを流し聞きしていたのですが、極東のとある島国の新聞社の方がものすごく恥ずかしい質問をしてパウちゃんに一蹴されていた、という国の恥事案が発生しておられた件についてはまた後日。










2024/06/13

お題「寝起きで簡単にFOMCで勘弁でござる」

今日はアメリカンCPIも気になる、というかそっちの方がむしろ重要じゃねえかという認識なので、あとで答え合わせ(CPIの結果見るためにニュースを見る)するんですが、とりあえず第一勘は「まあこんなもんじゃねえの」というのと「そんなに過激にタカじゃなかったので拍子抜けだったんじゃネーノ」です。なお会見は見てません。

さてどうなんでしょうねwww

〇声明文:物価に関しては2%に向けた進展の表現に変化が

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240612a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240501a.htm(前回)

・第1パラグラフ:物価に関して2%への進展文言が復活であるのでこれは利下げ待望おじさんもニッコリですかねえ

『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace.』(今回)
『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a solid pace.』(前回)

全体感変わらず。

『Job gains have remained strong, and the unemployment rate has remained low. Inflation has eased over the past year but remains elevated.』(今回)
『Job gains have remained strong, and the unemployment rate has remained low. Inflation has eased over the past year but remains elevated.』(前回)

雇用と物価に関する認識の文言もここまでは同じなのですが・・・・・・・・

『In recent months, there has been modest further progress toward the Committee's 2 percent inflation objective.』(今回)
『In recent months, there has been a lack of further progress toward the Committee's 2 percent inflation objective.』(前回)

2%に向けた進展に関する文言で5月頭のFOMCで「進展が失われている」と利下げ派涙目のぶった切りをしていたのですが、今回はモデストという控えめ表現ではありますが、2%に向けたさらなる進展がチョットチョットネーと入れてきましたのでこれは利下げ待望おじさんもニッコリ、なのかな??


・第2パラグラフ:実はこの先延々と前回と同じなんですよね

まあ今回のFOMCに関しては市場もそう予想してたと思うのですが、いかにノーイベントでやり過ごすか、って感じだったと思うので、その点から考えるとそらそうよというところなんですけど。

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回)

でもって、

『The Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation goals have moved toward better balance over the past year.』(今回)
『The Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation goals have moved toward better balance over the past year.』(前回)

『The economic outlook is uncertain, and the Committee remains highly attentive to inflation risks.』(今回)
『The economic outlook is uncertain, and the Committee remains highly attentive to inflation risks.』(前回)

インフレ目標に向けたリスクはベターバランスになっている、という表現を踏襲しています。全文一致

・第3パラグラフ:政策金利据え置き、資産買入は前回に変更した新ペースを踏襲

『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent.』(今回)
『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent.』(前回)

金利据え置き。

『In considering any adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks. The Committee does not expect it will be appropriate to reduce the target range until it has gained greater confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent.』(今回)

『In considering any adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks. The Committee does not expect it will be appropriate to reduce the target range until it has gained greater confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent.』(前回)

今後利下げするに際にしては2%達成へのグレーターコンフィデンスが必要です、という文言も変更ないですね。

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage?backed securities.』(今回)
『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage?backed securities.』(前回)

資産買入に関しては前回ペース変更を行ったのですが今回はペースを変えていないので以下の部分が前回あって今回ない部分になります。

『 Beginning in June, the Committee will slow the pace of decline of its securities holdings by reducing the monthly redemption cap on Treasury securities from $60 billion to $25 billion. The Committee will maintain the monthly redemption cap on agency debt and agency mortgage?backed securities at $35 billion and will reinvest any principal payments in excess of this cap into Treasury securities.』(前回)

これは技術的な話なので削除されていますけど政策的には特に削除の意味はなくて、このパラ最後のいつものキメ台詞で締めます。

『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(前回)

つまり事実上の文言一致です。


・第4パラグラフ:こちらもほとんど定例文言になっていますな、変更なし

めんどいので一気に引用する。

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回)

ということでここはいつも通り。


・第5パラグラフ:今回も全員一致

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(前回)

はい。


・ディレクティブにも変化はないです

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240612a1.htm
Implementation Note issued June 12, 2024

Decisions Regarding Monetary Policy Implementation


前回はこちら
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240501a.htm

各種オペや常設ファシリティの金利、応札限度額など変更なくて、資産買入減額ペースも5月に決定したペースを維持していますね。

ということですが、インフレに対する進展については前向きな文言に変わった(モデストとはいえ)ので、別にハトハトではないけどタカではないですよね、という感じです。5月FOMCでそれまでの利下げそろそろでっせモードからの脱却を図って、まあその通りに市場も考えているから今更別にこれ以上ゴリゴリのタカを出すこともないでしょうってなもんですかねえ、知らんけど。


〇SEPも見通しほぼ変えずですがドットちゃんの方はちゃっかりタカで声明文とバランスとった積りなのかしら

みんな大好きSEP
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20240612.pdf(PDF)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20240612.htm(HTML)

ペタペタと磔刑にするのにはHTMLの方が便利だったりします

前回はこちら
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20240320.pdf(3月PDF)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20240320.htm(3月HTML)


・経済見通し:これがまたメディアン見ると見事に地蔵なんですねーーーーーー

『Table 1. Economic projections of Federal Reserve Board members and Federal Reserve Bank presidents, under their individual assumptions of projected appropriate monetary policy, June 2024』

手抜きなのでメディアンしか引用しませんw

                 2024    2025    2026    Longer run
Change in real GDP      2.1     2.0     2.0      1.8
March projection        2.1     2.0     2.0      1.8

Unemployment rate      4.0     4.2     4.1      4.2
March projection        4.0     4.1     4.0      4.1

PCE inflation          2.6     2.3     2.0      2.0
March projection        2.4     2.2     2.0      2.0

手前の物価見通しが若干上がっているのですが、3月対比ですんでそら手前は上がるわという話で、成長率とか見ますにまあこれは「基本的にカワランチ会長」と評価するのが妥当だと思うのよね。


・ドットチャート:年内利下げ回数減りましたねえというのとしらっとロンガーランが若干上昇しているのが注目ですね

『Figure 2. FOMC participants' assessments of appropriate monetary policy: Midpoint of target range or target level for the federal funds rate』

ということですが

年内利下げ回数

0回:2名→4名
1回:2名→7名
2回:5名→8名
3回以上:10名→絶滅

ということで、まあすでにそんなもんじゃろという市場だと思うのでこれ自体そこまでサプライズなのかは知らんし、何なら誰か変態が利上げ主張したら面白かったのに、と思いましたがそこまでファンキーではなかったけど、まあ強くなったのは強くなった。

でもって毎度申し上げますが、今のようなご時世、すなわちグレートも出レーションでも何でもないご時世で、先行きの経済物価見通しがさっぱり分からん、という中においては、フォワードガイダンス的なものは意味が無いと思っておりまして、2025年末だの26年末だのというような時点での政策金利見通しなんちゅうのはただの鉛筆舐め舐めで、こんな数字をありがたがってああでもないこうでもないと議論する必要は全くないという過激派のアタクシ(なおこの主張は市場からすると極端な外れ値なのは自覚していますので念のため申し上げます)なのでロンガーランに飛ぶ。

ロンガーラン

3%オーバー:4名→5名
3%:     3名→4名
2.75%:   1名→3名
2.50-2.75%:1名→1名
2.5%:    8名→5名
2.25-2.50%:1名→1名

合計が1票増えているのですがそれはさておき、何となく上にシフトした感じがありますな。メディアンだと2.6→2.8などと書いてありますがまあそれはメディアンの話ですけど、0.25まで上がった感じでもないようには見えますが上がったのは上がったということで、こちらの数字もまあゆうて鉛筆舐め舐めの世界ではありますが、一応この水準が中立的な名目政策金利、といy建付けの数字になっていますから、利下げ後の最終着地点が少しだけ上方シフトしました、っていうことでこれはタカ派もニッコリという話になりますな、うんうん。


#なお会見に関しては明日やってる余裕があったら


〇それよりもアメリカンCPIよ

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-12/SEYW8VT1UM0W00
米CPIコア、2カ月連続でインフレ抑制示す−FOMCに朗報か
Augusta Saraiva
2024年6月12日 21:42 JST 更新日時 2024年6月12日 23:48 JST

→5月のCPIコア指数、前月比0.2%上昇−市場予想0.3%上昇
→総合CPIは前月から横ばい、ほぼ2年ぶりの低水準

『米経済の基調的なインフレ指標は2カ月連続で低下し、利下げのタイミングを見極めたい連邦公開市場委員会(FOMC)にとって朗報となった。』(上記URL先より)

最近のBBGは記者の変なポエムが入ったりするので読むときに眉に唾をつけて読まないといけないというのが困りもんなのですが、まあ結果としては株も債券もニッコリで、別にFOMCもハトハトはしてないにしてもタゴリゴリのタカ派とかいうのではないし、まあどっちかと言われたら声明文のあの文言の方が重要(ロンガーランは所詮鉛筆舐め舐めだし年内の利下げ見通しは市場追認ですから)ということになったんですねなるほどなるほど。

と思ったところでまあ本日は勘弁していただきとう存じます。今日は3M短国があるのですが、ここもと短国アホみたいに堅調なのでさてどうなるのやら。




2024/06/12

お題「明日から中銀祭りですが今日は物価計測誤差に関する日銀スタッフレポートをば」

FEDでもそうなんですが
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-11/SEWP85T1UM0W00
ECB、いかなる金利の道筋も事前約束しない−フィンランド中銀総裁
Kati Pohjanpalo
2024年6月11日 17:38 JST

こういう「転換点」のような時って、引き締めの場合は最初だけは予告ホームラン打っておいた方が激変緩和措置に有用ではありますが、それ以外の場合って基本的に「決め打ちしたせいで後で面倒なことになる」デメリットの方が大きいんで、この際ドットチャートを無くして勝手に市場に考えさせた方が良いと思うんですよね。

なお日銀の場合は正常化決め打ち情報発信をある程度しないと為替は飛ぶ飛ぶ炎と燃えてしまうという悲しさがあるんですが、植田和男が闘魂込めてないのが悪いw

〇市場備忘メモ(小ネタっす)

・債券先物日中売買高が延々と小差のまま逆転しなかったが建玉から見て・・・・・・

昨日の債券先物日中
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_daytime
先物価格情報 日中
 
限月 24年6月限
取引日 06/11 
日中取引

始値 143.47(06/11)(08:45)
高値 143.64(06/11)(10:39)
安値 143.44(06/11)(08:55)
現在値 143.54(06/11)(15:02)
前日比 +0.06
取引高 15,218


限月 24年9月限
取引日 06/11 
日中取引

始値 142.80(06/11)(08:45)
高値 142.98(06/11)(13:14)
安値 142.77(06/11)(08:46)
現在値 142.87(06/11)(15:02)
前日比 +0.08
取引高 14,873

ということで、何ですかこの345枚差ってのはという感じですが(前日夜間を足すと割と大差になる)昨日一昨日(金曜もですけど)は先物のスプレッド取引の方が中心みたいな感じになってて、取引所のこの数字だとスプレッド分は反映されてませんがまあスプレッドなので両限月同額ということでさておきますが、何ちゅうこのほぼ並びの売買高と思ったのですけど、

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through
先物価格情報

夜間ではさすがに期先の方が売買高多いのですが、建玉残高みたら

24年6月限 52,392(06/11)
24年9月限 188,378(06/11)

ってなってて、9月限の建玉残高がすでに通常ベース(限月交代がらみじゃないとき)の先物建玉残高程度になっていまして、期近の5万枚って何だよという感じですけど、最近(ここ数年)期近の建玉がぎりぎりまでやたら残る傾向にあって(最後の最後は両建て解消なんだかしらんが急に無くなるが)分かりにくくて敵わんわと思いますがまあ昨日も謎の先物ちゃんでしたな。なお期近限月の先物最終日は明日になります。


・エネルギー特会の1年借入の金利が見て納得の利回り

昨日は地味に債券の人にはあんまり関係ないけど短期金利の人だと関係ある特会1年借入が

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/energy-result240611.htm
エネルギー対策特別会計の借入金の入札結果

『本日、借入金の入札について、下記のように募入の決定を行いました。
 



1.借入根拠法律及びその条項  特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第13条第1項
2. 借入日       令和6年6月20日
3. 償還期限      令和7年6月20日
4. 償還方法    令和7年6月20日に一括償還
5. 応募額        3兆2,445億円
6. 募入決定額      8,199億円
7. 募入最高利率     0.330%
8. 募入最高利率における案分比率    7.0000%
9. 募入平均利率     0.300%』

ご覧のように1年物の特別会計借入で、平均が0.30%、足切りが0.33%の極薄案分となっていますが、先週の交付税特会6Mが綺麗に7月31日決定会合で当預付利金利が10→25になるのを織り込む水準の結果になっていましたが、こちらのエネ特1年は出来上がりが平均で30ですから、向こう1年の間に0.25だけではなくて次の利上げもちゃんと織り込んでいるという納得感の高い利回りを示しておられます。

・・・・・・というかですね、なんで現物債券の利回りって「政策金利引き上げが何ぼのもんじゃい」というレート形成になるのよ(理由はいわずもがな)という話でして、利付債よりも短国よりも特会借入が一番見てて納得感のあるレートになっているっていうのが、各種規制による要因もあるのですが、日銀によるアホみたいな長距離オペの打ちすぎによる余計な担保ニーズがどの程度影響しているのでしょうかとかそういうのを考察してみたくなります。

まあ結局のところ、2年でも大概でしたがゆうて最初の頃の2年共担は年末から落ちるのでまだしも、5年共担オペとかあんなもんやって結局後になってこのように響いている(と思うんだが)訳でして、最近はハトハトチキン先生のご趣味によりまして異次元緩和は効果があったという結論先にありきのインチキレビューが行われている訳ですが、こうやって後遺症で面倒なことになっているのをちゃんと考察しろやこの提灯持ち茶坊主と思う訳だし、だいたいからして総裁が雨宮さんでも中曾さんでもないんだからその辺「ダメなものはダメ」と言えることを期待したんですけど植田さんには、と思う訳で、まあ立派なことを言ってたのは闘魂込めていたわけではなくて日銀総裁になりたいための商魂込めていただけだったということですな、しょんぼり。

と隙あらば悪態なのですが、


〇物価指数の計測誤差に関する豪華レポートは個別項目の話を見ているだけでも楽しめると思います

昨日紹介だけしたこれ
https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/24-J-10.html
消費者物価指数の計測誤差の改善状況と今後の課題―主要国における物価目標の根拠としての視点から―
小林悟、篠原武史、白塚重典、須藤直、竹内維斗文

本文はこちら
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/24-J-10.pdf

でもってですね、最近出てくる日銀のスタッフ(または共著)ペーパーって本文表紙にあります『多角的レビューシリーズ』ってのがあるのが結構出ているんですけど、いやあたくしとてこれ全部熟読しているほどの暇も読みこなす知能も存在しないので全部精読できているわけではないのですが、この「多角的レビューシリーズ」って銘打って出てきてるのって、結論がなぜかそろいもそろって「異次元緩和は効果があった」という話をサポートするような書きっぷりになっているので、表紙にあのロゴがあるだけでもうペーパー出てくると血圧が上がるんですよね。

でまあこのペーパーですが、昨日申し上げたように超豪華執筆陣でありますので、各論段階のところは物凄く興味深いので折角ですからご紹介したいのですが、最後の結論のところが謎のオブラートにw

・最後のまとめ部分から最初に読むけど斜め読みすると2%物価目標の数値は正しいと読めるのがニャンとも

『6.まとめ』って見出しで、本文41ページPDFの44枚目ですけど、

『主要国の中央銀行が物価の安定を数値目標で示す際、消費者物価指数が用いられることが多い。また、その目標物価上昇率を正の値に設定する根拠の 1 つとして、CPI の計測誤差(上方バイアス)が挙げられることが少なくない。そのため、本稿では、わが国に加えて、海外の事例も参照しつつ、CPI の計測誤差の種類や大きさについて、最近の研究動向を概観している。』

というのが内容なのですが、全体論よりも各論の方がアタクシにはおもろかった。

『「米国 CPI には+1.1%ポイントの上方バイアスがある」とした 1996 年のボスキン・レポートの公表から 25 年以上が経過し、同レポートで指摘された要因に由来するバイアスについては、米国だけでなく、わが国や欧州においても、各国間やバイアス間での違いはあるものの、全体としては縮小しているとみられる。』

であればそもそも物価目標2%って妥当なのか問題があるし、だいたいからしてCPI(でもHICPでもPCEでも)の計測だって違いがあるんだから2%が正しい理由の一つに挙げているボスキンバイアスが普遍的な定量数値として出るのかよという話になるような気がするのですが、惜しくもそういう話にはなっておりません、というかその話回避してるでしょw

『その背景としては、まず、品目指数を上位指数に集計する際に用いる支出ウエイトの更新頻度の引き上げ、指数を作成する際の算式の変更、品質調整手法の広範な品目への拡充等、各国の統計機関が、計測誤差の存在を意識しつつ、継続的に、指数精度の向上に取り組んできたことが挙げられる。』

『加えて、ボスキン・レポート公表当時に顕著であった ICT機器の価格下落がここ数年一服していることや、個人商店から GMS への店舗間代替の一巡等の経済構造の変化も寄与していると考えられる。』

話はそっちに行きまして、というかまあその話の内容はなかなかおもろい。

『もっとも、このことは、現時点において計測誤差が解消され、先行き再び拡大しないことを必ずしも意味しない。』

あら。

『例えば、幾つかの財やサービスの価格においては、観察される価格変動のうち、品質変動が十分に把握できていないこと等により、CPI に計測誤差が残存している可能性がある。』

『その理由としては、品質変動部分を抽出し、バイアスを除去する手法が、そもそも学術的に確立されていないか、あるいは定量評価を行う際のデータや人員等、実務上の制約があること等が挙げられる。』

『また、近年の E コマースの拡大等、ボスキン・レポート公表時には注目されていなかった商流の変化が、バイアスに影響を与えている可能性も指摘されている。この点についての研究・分析は、緒に就いたばかりである。』

なるほど、というかそういう話であれば、そもそも2%の物価目標を設定するに際して、本来は2%をマジックナンバーのように扱うのではなく、上記のような価格計測誤差があることを考えれば、2%という数値を絶対視するのではなく、あくまでも概念上の数字として「安定成長経済の結果として2%程度に物価が上昇しているようになっているんじゃなかろうか」というような概念で、幅を持った概念として考えていくべきという話になるんじゃないですかねえ、と思う訳です。

その意味では米国だって欧州だって足元2%を本当にマジックナンバーとするんだったら利下げとかもってのほか(欧州なんて経済見通し引き上げてるのに利下げしてるんですから)という状況でも金融引き締めの程度をどうしましょという話をしているのって、2%は看板としては残しているけど、事実上の「幅を持った概念としての2%」に運営を寄せようとしている訳ですわな。

『加えて、今後、経済のサービス化やデジタル化、人口の高齢化等、経済構造が一段と変化すると、既存の価格評価方法の適用が難しくなる等、計測誤差の大きさも影響を受ける可能性がある。このように計測誤差が解消し得ないことを踏まえると、CPI の計測誤差は、CPI についての数値的な目標を設定する際の根拠の 1つとしての妥当性を引き続き有していると考えられる。』

ということでして、これ結論の書き方が結局のところ計測誤差を厳密に計測していきましょう、の方向だからこういう風になる、と言ってしまえばそれまでなのですが、「そもそも物価統計それ自体に計測誤差が色々な意味であるのだから、物価目標を設定する際には、その目標値を絶対視することは好ましい結果を生まない可能性がある」って話になるんじゃないでしょうか、と思うのですな。

ただまあアレです、表面上は「ボスキンバイアスは依然として存在しますからバイアスの存在を一つの根拠にして物価目標設定しているのは正しい」と読めてしまうのがこの結論項の諸葛孔明の罠な訳でして、これ実施にこの豪華執筆陣の皆様としてはそもそも「ザ・物価」というのがあるのか問題と、物価目標の扱い方に関してどういうご所見なのかってのはお伺いしたいものであります。

もちのロンなのですが、物価の実態を正しくとらえよう、という研究をするなっちゅうような話をアタクシがしているわけではなくて、それはそれで大事な話なんですが、超豪華執筆陣の皆様におかれましてもいろいろと計測誤差があるんじゃなかろうかしかもなかなか分かりにくい、という物価指数について、特定数値を絶対視する思想ってのはアカンヤロというお話な訳ですな。


・個別コンポーネントに関する考察は一つ一つ興味深いと思うので読んで味噌(ここでは帰属家賃をご紹介)

まあちなみに見出しで言えば『3.計測誤差を巡る歴史的経緯と最近の流れ 』、『4.計測誤差に対する処方と最近の状況 』あたりから当たっていって読んでいくと興味がわきやすいんじゃないかと思いますが、この辺が財価格の話になりますので、個別財に関する話があって読んでて読みやすい(計算式とかを読みだすとアタクシの脳みそが溶解するのでその辺はかっ飛ばす)です。

でもって次の『5.残された課題と新たな新たな課題』のところをネタにするのですが、

『ボスキン・レポート公表後に行われた研究蓄積、各国での指数改善の試みや経済環境の変化等を踏まえると、同レポートで提起された論点についてみる限り、各国間やバイアスの種類ごとに違いはあるものの、計測誤差は、全体的に縮小しているとみられる。』

『もっとも、そのことは、現時点において CPI と COLI が一致していることを意味しない。本節では、「残された課題」として、まず、幾つかのサービス価格における計測誤差の議論を紹介する。次に、「新たな課題」として、ボスキン・レポート公表時点では存在しなかった電子商取引(E コマース)等、新たな商流の含意に関する議論を紹介する。』

ということでサービス価格ですが、『(1)サービス価格の価格調査や品質調整』という小見出しがありまして、

『サービスの価格調査における論点として、調査のカバレッジや、品質調整の問題というサービスの特性に由来する難しさと、デジタル化の流れがサービスにシフトしているという論点が存在すると考えられる。』

ほう。

『前者について、より具体的には、顧客の多様な選好を反映して様々な内容・条件で提供されること 38、サービス提供者の技量等、可視化できない要因によって品質が変わることが挙げられる。こうした特性は、調査すべきサービスの種類・内容の特定やヘドニック法等の品質調整法の適用を難しくすると考えられる。』

『また、後者について、財のサービス化というような経済構造の変化は、既存の手法を用いた品質調整や価格調査が困難化する契機となると考えられる。』

からの、

『本項では、まず、サービスのうち、ウエイトや寄与度の大きさを軸に、「家賃等」、「情報通信サービス」、「医療関連サービス」について、最近の議論を紹介する。次に、デジタル分野におけるサービス価格の計測の試みを紹介する。』

ということで家賃キタコレを本日はネタに、というか単にご紹介するだけですが、

『(持家コスト 39)

図表12はCPIのバスケットを示している。持家コスト(Owner Occupied Housing Cost)を含む家賃等は、家計の支出に占める割合が日本では 2 割、米国では 3 割であり(持ち家部分では、それぞれ 16%と 25%)、持家から得られる効用は、家計が消費から得る種々の効用の大きな部分を構成すると考えられる。このため、一般物価統計の集計対象において、持家が含まれるべきとの考え方は多いものの、現時点においては、ECB の物価目標である HICP 等、持家コストが本指数から除外されているケースもある。』

『計測方法についても、実際に取引されておらず価格が直接観察できないこともあり、国際的なコンセンサスがない、』

ということで、

『持家コストの算出方法について、IMF et al. [2020] にもとづいて整理すると、@「使用アプローチ(use approach)」、A「支払いアプローチ(payments approach)」、B「取得アプローチ(acquisitions approach)」、に大別される(図表 13)。3 つのアプローチは、異なる計測思想に立脚しており、それぞれ、家計が持家と同等のサービスを享受する際に必要なコストの変化、持家に係る負債の返済額の変化、住宅の取得時や保守に係るコストの変化、を捉える。』

で、日本の帰属家賃に関しては

『日米英等が採用する「近傍家賃法(帰属家賃)」は、使用アプローチに分類され、家計が持家から享受するサービスの価格を、類似の住宅の市場価格(貸家の家賃)で推計する計測方法である。家賃データを使用する必要があるため、十分な厚みや透明性を持つ貸家市場の存在等、採用のための必要条件はあるものの、比較的多くの国で採用されている 40』

だそうです。でまあその途中の話は割愛しまして、帰属家賃法を使った場合にどうなっているのか、という話ですけど、本文32ページの途中からこの話があります。

『近傍家賃法を採用する場合、家賃の品質決定要因が数多く存在し、それらの組み合わせも複雑であるため、品質調整が容易ではない。』

ほうほう。

『もっとも、日本では、家賃の品質調整に関する研究の蓄積が進んでおり、例えば、総務省・統計委員会における問題提起に対して、尾中 [2022] ・総務省 [2021a] は、「住宅・土地統計調査」の借家世帯の調査票のデータを用いた分析を行っている。その結果、賃貸住宅の品質変化率は、木造住宅が年率−0.8〜0.9%、非木造住宅が−0.7%と推定され、いずれも、経年劣化方向だと識別されている。』

『これらの値を CPI の標本分布にあてはめると、品質調整後の民営家賃指数の前年比は品質調整前と比べて、木造が+0.8%ポイント、非木造が+0.7%ポイント、上振れることに相当する(総合指数への寄与度でみると、+0.1%ポイント程度)。』

ほっほー。

『限界家賃との乖離に由来する下方バイアスを指摘する研究もある(吉田,2023)。』

ということで、

『日本の CPI では、現在、民間家賃の「平均値」をもとに推計されているが、持家の帰属家賃は、概念上は、持家の機会費用、すなわち「現在、住んでいる持家を、新規に賃貸市場に貸し出した場合の賃料」であり、継続家賃ではなく、新たに賃貸借される物件にかかる家賃である「限界家賃」に連動させる方が適当と考えられる。』

そらそうだ。

『吉田 [2023] は、不動産・住宅情報サイトに掲載された賃貸・売買物件の月次データ(賃料・価格、面積、立地、築年数等を含む)に対して、傾向スコア・マッチング法とヘドニック法を用いることで、経年減価等を調整した品質調整済・限界家賃指数を推計し、限界家賃指数よりも CPI の帰属家賃指数の方が年率でみて約 1.3%ポイント低めに推計されていること、そのうち約 1%ポイントが経年減価により説明されることを報告している。』

へーへーへーという事ですが、しかし結構でかい家賃に関してこういう話があるのに2%絶対視というのも違くねって感じになりますわな、なお本文の続きは米国の話もあって、

『米国においては、ボスキン・レポート時に、リフォーム等と経年劣化に伴う品質調整は既に行われていたが、近年、異なる課題が提起されている。具体的には、米国の家賃調査法では、同一の賃借人に対して半年に一度家賃調査を行い、各月の賃料を加重平均し、2 時点間(半年間)の伸び率を月次換算している。この手法の利点として、同一の賃借人への調査であるため、貸家の特性が変化しないという点がある一方で、2 時点で継続調査できないサンプルが調査対象から外れるという選択バイアス(selection bias)が生じるという指摘である(吉田, 2023)。すなわち、継続的に協力的な賃借人にサンプルが偏るため、新規家賃よりも継続家賃の構成比が増加する傾向があるとされる 46。 』

なんかこう奥が深いので、「ザ・物価」の方はいろいろと研究を重ねていただきたいのですが、やっぱりこういうのを見ますと物価目標の数値はあくまでも概念としての話であって、1.7%だから未達だとか、そういう話ではないんじゃなかろうか、と思っていしまいますよねえというのが結論ですが、各コンポーネントの話、一つ一つ興味深い(まあアタクシの知能でちゃんと理解できているかというとかなり怪しいのだが)のでお勧めはお勧めですわよ。






2024/06/11

お題「市場備忘メモ/CPIの計測誤差/中村審議委員札幌金懇と会見」

〇市場備忘雑談メモ

・先物50銭安ねえ・・・・・・・

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/CSZSUQJOAROZRDTEAFHTKG4IPU-2024-06-10/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落で引け、長期金利1.015% 米金利上昇に追随
By ロイター編集
2024年6月10日午後 3:28 GMT+9

『[東京 10日 ロイター] - <15:18> 国債先物は大幅続落で引け、長期金利1.015% 米金利上昇に追随

国債先物中心限月6月限は、前営業日比50銭安の143円48銭と大幅続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同4.5ベーシスポイント(bp)上昇の1.015%と、今月5日以来の高水準をつけた。米長期金利が1週間ぶり水準に上昇した動きに追随した。』(上記URL先より、以下同様)

なんか輪番もなけりゃ入札もない1日でしたけど、米国金利が15毛上がったというだけで50銭下げをやりやがるのかよと申しますか、

『現物市場で10年物以外の新発国債利回りも総じて上昇。2年債は前営業日比3.0bp上昇の0.375%、5年債は同4.5bp上昇の0.595%、20年債は同6.5bp上昇の1.835%、30年債は同9.0bp上昇の2.180%、40年債は同10.0bp上昇の2.340%。イールドカーブはベアスティープ化した。』

ってなんでも売りになっているのですが、じゃあこの前の買いは何だったんだというお話で、まあ相場ムツカシムツカシネーと言ってしまえば身も蓋もないのですけれども、何がどうなるとこういう値動きになってしまうのやらという感じでわけわからん。

『TRADEWEB
      OFFER   BID    前日比  時間
2年    0.37    0.382    0.032  15:18
5年    0.593   0.603    0.047  15:15
10年   1.025   1.034    0.058  15:15
20年    1.83   1.839    0.066  15:15
30年   2.173   2.185    0.087  15:15
40年   2.326   2.338    0.094  15:18』

ということで盛大にスティープしていまして、ついこの前の戻りでブルフラットしてたのは何なのでしょうかと申し上げたくなるこの相場。市場がすぐに一方方向にぶれてしまうのってのは、売買高とかそいいう定量的な話ではない部分の定性的な部分で市場の厚みが乏しいんでしょうなあと相変わらず思う訳で、輪番の減額もべき論としては急務ですが、輪番減額するのを急に打ち出すのも中々理屈を見出しにくいんですよね。まあ何度か弊駄文では申し上げましたが、本来は25に利上げしてから「ゼロ金利状態から脱しましてこれから徐々に様子見ながらゆっくりとですが、各種緊急措置を無くしていきますので長期国債買入も四半期に1兆円減らして一旦月額1兆円までをゴールにして減らしますわよ」ってな感じで情勢判断と紐があまり付かない方法が良かったと思うのですが。

ちなみにこの次に昨日かっ飛ばしてしまった中村審議委員の金懇挨拶と会見ネタを入れましたけれども、中村審議委員の説明だと輪番に関しても経済物価情勢に紐がついている、という意識で説明していまして、まあそういう説明になるのもそうだろうなあとは思うのですが、もうこの時点で政策委員会の中で輪番の位置づけがちゃんと決まっていないというのが明らかになっているので、金曜日に本当になんか出るのかというと微妙。ただしゼロ回答をすると為替が飛ぶ飛ぶ炎と燃えて〜♪となるのはわかっていると思いますので、7月利上げを強く示唆するような声明文出してお茶を濁してくるんじゃないかに100アルゼンチンペソと言ったところです。



・債券先物この時期特有の謎の両建て(なのではなかろうかという)状態今回も

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through
先物価格情報

建玉残高を見ますと、

24年6月限:109,501(06/10)
24年9月限:153,055(06/10)

って両限月合わせて26兆円も建玉があるって数字になっているのですが、皆様ご案内の通り通常の債券先物建玉残高ってだいたい最近ですと19兆円を中心にプラマイ1兆円という感じになっておりまして、この限月交代の時だけ謎に両限月の建玉合計が増殖するという事案が発生するんですけど、7兆円ほど増えてるってナンジャソラと思いました。まあ思っただけなのでだからなんだというのは無いのですがメモメモ。



〇しかしよく考えてみたら今回の決定会合って事前のポロリがないですねえ・・・・・・・・・(という備忘メモ雑談)

今週金曜の決定会合、となりますとついこの前まででしたらもう金曜の夜とか土日とか昨日とか面白観測報道がバンバン出ていたりしていたのですが、今回の決定会合って割と重要(政策アクションよりもコミュニケーションの面で)だと思うのですが、よくよく考えてみると事前の変なのがまるで出てこないでござるの巻。

まあどっからどうみてもその方が健全な世界なのでそれはそれで結構な話なのでして、直近まで起きていた「事前に謎の織り込ませをさせるかのような報道が出る」っていう風潮っていうのもそもそも論からすると日銀の政策コミュニケーションがグダグダにもほどがあって、結局何をみてどう判断しているか、という事が毎度毎度「その場で思いついたような理屈」を持ち出してくるもんだから、市場としても事前に日銀がこういう感じで政策を考えているだろう、という事についてロジカルに考えれないというのがあったわけで、そうだからこそ毎回毎回直前に織り込ませるような変な報道が出てみたりする、という変な姿になっているんですよね。


でまあ何か急に変なものでも食ったのかもしれませんけれども、今回はしょうもない憶測報道はあってもボロリンと出てきました系の報道が今のところない(一応さっき日経とロイターとBBGは見ましたわ)というのが、「直前織り込ませを必要としないコミュニケーションへの移行」を意味するのであればこれは誠に慶賀すべき事態になります。まあ突然どうしちゃったの日銀ちゃん、とは思いますけど変なメディア報道で右往左往させられるのは勘弁してほしいのでぜひこの方向で。

・・・・とかフラグ立てると金曜の日経新聞朝刊イベントが発生したりしそうだがwwwwww


〇日銀多角的レビューシリーズの一環で物価指数の計測誤差の話を入れていますね

https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/24-J-10.html
ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2024-J-10

消費者物価指数の計測誤差の改善状況と今後の課題―主要国における物価目標の根拠としての視点から―
小林悟、篠原武史、白塚重典、須藤直、竹内維斗文

著者が豪華メンバーな上に本文の方でも

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/24-J-10.pdf

最初のエグゼクティブサマリーのところで脚注に謝辞があるんですが、

『本稿の作成に当たっては、北村行伸教授(立正大学)、中島上智教授(一橋大学)、若森直樹准教授(一橋大学)、ならびに開発壮平氏・白川遥大氏・平木一浩氏(日本銀行)、その他の日本銀行・金融研究所スタッフから有益なコメントを頂いた。ここに記して感謝したい。ただし、本稿に示されている意見は、筆者たち個人に属し、日本銀行の公式見解を示すものではない。また、ありうべき誤りはすべて筆者たち個人に属する。 』(本文PDFより引用)

ということでこれまた豪華なメンバーですな。


こちら個別のコンポーネントに関しての計測誤差に関していろいろと書いてあったりしまして、サマリーの方すなわちHTMLから引用しますと、

『物価の安定を数値目標で示す場合、主要国の中央銀行では、消費者物価指数が用いられることが多い。この点、1996年の米国ボスキン・レポートを契機として関心が高まった計測誤差の存在は、現在においても、目標物価上昇率を正の値に設定する根拠の1つとして挙げられることがある。』(ペーパー紹介のHTMLページより引用、以下同様)

『本稿では、わが国を含めた主要国における計測誤差についての議論・研究の状況を、同レポート以降に公表されたものを中心に、概観している。これまでの研究蓄積や、各国の指数精度向上の施策や経済構造の変化等を踏まえると、計測誤差の大きさは、地域差や誤差の種類ごとに違いはあるものの、レポートで提起された論点を中心に、全体でみれば縮小したとみられる。』

『もっとも、サービス価格を中心に、引き続き課題が残存する分野があるほか、Eコマース等、新しい経済構造の変化に伴う影響も勘案すると、先行き、経済のサービス化やデジタル化、人口の高齢化が一段と進む中では、計測誤差は、大きく変動する等、解消し得ない可能性がある。これらの点を踏まえると、計測誤差は、消費者物価指数についての数値的な目標を設定する際の根拠の1つとしての妥当性を引き続き有していると考えられる。』

なんか結論が提灯っぽいのはこのペーパーが多角的レビューシリーズの一環扱いになっているからというか、多角的レビューシリーズの印がついているペーパーって全般的に提灯の香りが漂うので唸ってしまうのですけれども、まあこれは本文の個別コンポーネントの話がお話として面白いと思うのですが、正直今の政策となんか関係あるかというとつながるような話にはならなさそうなのであくまでも暇人向けということで。




〇中村審議委員札幌金懇と記者会見

金懇挨拶
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240606a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 札幌市金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
日本銀行政策委員会審議委員
中村 豊明

まあ基本的に中村ワールドなんですけど・・・・・・・・・・・・

・家計消費を強くしたいという趣旨はわかるんだが話の展開に無理がある気がする

『3.金融政策運営と経済構造の変革』ってお題のところになりますが、『(1)家計の購買力強化の重要性』ってのがあるのに何で円安助長政策を良しとしているのか、というのは先週申し上げましたが、そのあたりをちょっと読んでみますね、本文3ページから4ページにかけて(PDFの4枚目〜5枚目になります)。

『足もとの物価と賃金の動きをみますと、4月の消費者物価(除く生鮮食品)は前年比+2.2%と 25 か月間2%以上の上昇率が続くなか、企業・家計のインフレ予想が高まり、好調な企業業績や人手不足等から大企業中心に持続的な賃上げ意欲の高まりも感じられます(図表4、図表5)。』

とのことですが、

『もっとも、足もとの消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の拡大は、政府支援効果の一巡による電気・ガス代のマイナス幅縮小が主因と考えています。エネルギー価格変動の直接的な影響を受けない消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)も8か月連続で伸びが縮小する等、ここまでの物価上昇は輸入価格高騰のラグを伴った影響が大きく、賃金から物価への波及はまだ弱いと思われますが、2024 年1Qはユニット・レーバー・コストが+2%に上昇しましたので、今後の変化に注目しています(図表6)。』

という説明になっているのですが、前年比伸び率で話をするんじゃなくて水準で話をしてほしいと思うのですよね、別に中村さんに対してというよりは皆様に対してなんですが。でもって前月比とか水準でみたらばっちり物価って上がってて下がらないって感じなんですよね。

まあそれは兎も角、家計の購買力が弱いという話がその後に出てきます。

『連合の春季労使交渉の回答集計結果では、2024 年度の賃上げ率が 5.2%と33 年振りの高さとなりましたが 1、主に大企業の回答集計結果ですので、今後、従業員の8割が働き、人件費の7割を占める中小・中堅企業への波及を確認してまいります。』

でもって、

『また、2023 年は、雇用者報酬が前年比+1.7%でしたが、家計の購買力を示す可処分所得は、社会負担の増加や前年の政府による住民税非課税世帯への給付金支給の裏要因等から+0.2%に止まりました。』

『こういった停滞感が残る所得環境のなかでも、家計最終消費支出は+3.7%増加しましたが、コロナ禍の時期に蓄積された超過貯蓄の取崩しが大きく、貯蓄率は前年の 3.4%から 0.1%に低下しました 2(図表2再掲)。』

『家計の購買力は依然として弱く、2023 年度の実質家計最終消費支出は前年度より 0.6%減少しました(図表7)。2024 年度は、所得税・住民税の定額減税の効果が期待されますが、貯蓄率低下の巻戻しや節約志向が高まる可能性も考えますと、所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まるには、実質賃金のプラス転化に加え、可処分所得の確りとした増加が必要と考えています。』

って話になっているのですけれども、そもそも論として節約志向が高まるのはデフレ脳のままだからなのではないかという気がだいぶするのと、実質賃金のプラス転嫁よりも成長期待というか所得が恒常的に上昇する期待が起きるかどうか次第なんじゃねえのと思うのよね。

ただ、この前ネタにしましたように中村審議委員って基本的にアメリカン的な雇用を是として説明をしていまして、うーんそれで本当に多くの人たちに恒常的な所得の増加期待って起きるのかなって思ってしまいますわ。

でまあその次は先日ネタにしたような結論になっているのですけれども、

『今年の春季労使交渉では、33 年振りの高い伸びとなりましたが、1990 年から 2023 年にかけて、生産年齢人口は9割に減少し、年金受給人口は 2.4 倍に増加しています。さらに、主婦・高齢者層等の「年収の壁」の問題や、後期高齢者が高齢者の5割を超えるほどの超高齢社会の進展等、追加的な労働参加率の向上を見込み難くなっています(図表8)。』

『家計調査によると、世帯主が 65 歳以上の家計では消費支出が大きく減少するため(図表9)、高齢化が進むとともに、家計の消費支出には下押し圧力がかかっていくことが予想されます。』

それ単に子供に金がかからなくなっているのと仕事しなくなって仕事に絡む消費(飲み会とか服買うとか)がなくなっているだけとチャイマスカと思うのですが。

なので、

『家計の購買力を強化し、個人消費を活性化するには、現役世代の高い賃上げ率が持続する必要があります。』

ではなくて単にそれは人口動態と家族構成の問題ではなかろうかと思うんだが。

『また、後ほど詳しく申し上げますが、日本の家計が米欧の家計と同様、上場企業の成長を通じて可処分所得を押し上げる金融資産構造へ変化していくことも、可処分所得の確りとした増加に有効だと思います(図表 10)。』

でもって最後のところがこの前引用したように、「給料が上がらないなら投資信託を買えばいいじゃない」の話なんだが、そもそも論として高い労働分配と高い株主分配を持続的に両立するのって無理じゃね??って話で、何ちゅうか中村さんの話って一面では言ってること分かるんだけど、全体を通してみるとやっぱり何か整合性の面で???なところがあるんですよね。


・2%物価目標に関連する話を読んでいるのに途中から経済構造の話になっていてタイムスパンがですねえ

ちょっと飛ばして小見出し『(3)2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成』という本文7ページの真ん中あたりからの部分に参ります。

『日本経済は、物価と賃金が漸く動き始めたことで(図表 15)、長い停滞の歴史から抜け出し、2%の「物価安定の目標」や持続的な経済成長を達成する千載一遇のチャンスを掴みかけており、重要な転換点に差し掛かっていると思います。』

中村さん、先ほど物価の話のところでは輸入物価発のコストプッシュが引っ張って、という話をしていますし、賃金のところでは労働市場の構造変化と(ホンマカイナというのはあるけど)インフレ期待がやや上昇している、という話をしていましたですな。

でまあここでは「長い停滞の歴史から抜け出し、2%の「物価安定の目標」や持続的な経済成長を達成する千載一遇のチャンスを掴みかけており」とのことになるのですが、いやまあ物価2%は良いんですけど、なんでコストプッシュと労働市場の構造変化が「停滞を抜け出す」とか「持続的な経済成長」になるのかというのが謎オブ謎な訳でして、きっかけは輸入物価であったとしても、物価上昇が継続する背景に需要要因があるって話じゃないと話に無理があるんじゃね、という感じな訳ですよ。

いやまあこれが「そもそも今の物価上昇は輸入物価上昇がラグをもって押し寄せてきているだけなので一過性なので物価目標達成なんぞする訳がありません」という話ならさっき引用した物価上昇の話と整合性が取れているのですが、なんでこっちでは明るい話になってしまうのかが謎。

『人手不足や更なる成長のために大企業が高い賃上げ率を主導するようになったことで、賃金水準を押し上げ、中小・中堅企業にとっても賃上げ分を価格転嫁するハードルが下がり始めています。』

この「労働市場の構造変化」って最近日銀が急によく言うようになってきましたけど、労働市場の構造変化でデフレ脱却というのであれば、そもそも論として少子高齢化万歳という話になってしまう訳でして、いやそれちょっと話として変じゃないのって思うのよね。

『このため、中小・中堅企業においても、販売価格引上げに必要な顧客満足度を高める様々な企業努力が行われ、経済構造に前向きの変化が起こっていると思います。』

『この努力が市場や企業で適切に評価され、顧客満足度向上に応じて販売価格が改善され、付加価値創造に貢献している従業員の賃金が上昇することで、エンゲージメントや成長期待が向上し、生産性やイノベーションの向上を伴って、物価から賃金、賃金から物価への好循環が回り始めます。』

何というか、これ某ジンバブエ先生とは別の意味で「風が吹けば桶屋が儲かる」的な決め打ち感が強くて、まあ話で聞いてていると「ふんふん」と聞いてしまいそうですが、こうやって文章になったのを見ますと、何ちゅうかこの決め打ちパスでエエのかという疑問が沸いて出てくる感。

『物価安定目標の持続的・安定的な達成とともに、企業活動が積極化し、家計も将来に希望を持てるようになることが期待されます。』

うーんこの桶屋。

『今後とも、成長志向の企業経営者の皆様の持続的な改革の推進を期待しております(図表 16)。』

と来てからの、

『もっとも、30 年続いた企業のコストカット志向が僅か2年で一気に変わるとは考え難く、私としては、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成のためには、経済の力強い回復への期待を確信に変える経済構造の変化が必要と考えています。』

うーん何でしょうこの決め打ち感とソウジャナイ感は。いやまあ何となく言いたいことはわかるんですけど、その構造変化のタイムスパンと金融政策運営のタイムスパンとが全然あっていない話でして、じゃあそれまでの間超大規模緩和を継続するんですか??ってのがこれまた謎だし、

『こうした観点から、中小・中堅企業の価格転嫁努力の浸透状況や「賃上げ余力」の向上状況、設備投資や人財投資、研究開発投資、M&Aや第三者事業承継の実行状況等、事業構造強化や成長施策の進捗を丁寧に確認していくことが重要だと考えています。』

それを確認したいのはわかるんだが、それって超越金融緩和の環境じゃないとできないことなのか、というと全然そんなことないし、だいたいからして超低金利によって借入コストを下げてしまったら非効率な企業でも存続しやすくなってしまうっていう話になりゃあせんかという事ですし、先週ネタにしましたように、そもそも論としてアメリカン的な成長社会を中村さんは展望しているんでしたら、それこそ超低金利とガバガバの財政支出ってのは、経済の構造改革を遅らせてしまう効果というか副作用を発揮するんじゃなかろうか、と思うのですが、なぜか金融政策に関しては緩和継続万歳になってしまうのが摩訶不思議としか申し上げようがないですな。


でもって記者会見
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240607a.pdf
中村審議委員記者会見
――2024年6月6日(木)午後2時30分から約30分
於 札幌市


・とりあえず話が長いのとあらぬ方向にドンドン流れてしまうことは把握した

先ほどの金懇挨拶もそうなんですが、話が決め打ち調でどんどんと流れていくんですけど、さっきの話だって物価目標達成の話をしている筈が気が付けば構造改革の話になっていて、いやまあそっちが大事だと言いたいのはわかるんですが、それは金融政策運営のタイムスパンで話をする論点じゃねえだろというお話になるんですよね。

まあこの質疑を見ますと何となく伝わってくるのですが、(本文2ページから3ページ)

『(問)先ほどご紹介頂いた今日の懇談でも、なかなか賃上げのしづらさということを企業が訴えているというご見解でした。また、こういう中でも、これから個人消費が低迷してしまうと、2025 年度以降、2%の物価に届かない可能性もあるということでした。そうなると、年内もう一度日銀は利上げするのではないかという市場の見方もありますが、中村委員ご自身はこうした利上げのタイミングは早過ぎるという認識でいらっしゃるのでしょうか。』

まあ質問もちょっと余計なこと言いすぎではあるんですけど、

『(答)やはり賃上げのしづらさというのは中小企業においては、かなりまだまだ続いているなというのが私の見方でございまして、個人消費の低迷というのもなかなか[改善が]進まないなと。それは私の挨拶文にも記載致しましたけれども、人口動態の問題があって、なかなか賃上げの恩恵を受ける世代の数、世帯の数が減少していて、1990 年度のときと同じぐらいの賃上げ率が今年度出たと発表されているという事実もございますが、この影響を受ける世代、世帯の数は確実に減っていて、生産年齢人口の高齢者が 2.4 倍に増えているという状況でありますので、社会負担も勤労世帯には重くのしかかるという人口動態の問題もありますので、

あまりのクソ長さに句点ではなく読点のところで切ってしまいましたが、なんですかこの話の流れっぷりはという感じですが、何せこれ読点ですからさらに続いていまして、

『これを今、改革をしようということで、政府それから企業の皆さまが努力をされているわけで、その期待感はあるんですけれども、賃上げ、それから企業の改革努力というのが、なかなか個人の可処分所得に反映が遅れると、やはり縮み志向が 30 年間続きましたので、この 2年間程度の賃上げ率でこのマインドが払拭されて一気に変わるということは、なかなか難しいだろうということを考えております。』

途中から話がドンドンと明後日の方向に向かってしまって全然質問の回答になってない・・・・・・・・

『悪い方向をみれば、個人消費が一巡という可能性もあるんではないかというふうにみております。』

突然簡潔になったのですが、

『従いまして、利上げは早過ぎるのかというと、私は今のタイミングではちょっと早いだろうなという気がしますけれども、』

と、またも読点で切ってしまいましたが、なぜかといえばこの先がですねえ・・・・・・

『これから経済のデータがいろいろ出てくる。この前出ました法人季報でいいますと、営業利益がかなり増えました。一人当たりの営業利益を重視しているんですけども、これをみますと、年度で、全体では前年比 15%増えています。それから資本金が 1,000 万円以上 1 億円未満の中小企業は 13%増えましたし、中堅は 11%増えましたので、これは好調な数字にはみえます。ただ、よくみますと中小の場合は、コロナ前の 18 年度で、19 年度もコロナ禍前なんですけども 20 年の1〜3 月はもうちょっと影響が出ていましたので、フルで影響がなかった年という面で 2018 年度をみますと、そこに対しては 1%の増加なんですね、一人当たりの中小企業の営業利益が。しかしながら、中堅と大企業は2割から3割増えていますので、中小企業の一人当たりの営業利益、「稼ぐ力」がまだ弱い。設備投資が前年比で合計 7%増えましたけども、中小企業は前年度に比べて 3%減っておりますので、来年度以降、持続的な生産性の向上という点でいうとまだ課題が残るというふうに思いますので、次の法人季報ですとか、それから各社へのヒアリングなどを通じて、この設備投資の動きをもうちょっとモニタリングしていきたいなというふうに考えております。』

長い・・・・・・のもさることながら、営業利益の話を始めたのに途中から持続的な生産性の向上の話になって、最後は設備投資の動きを見たい、という結論になっていまして、お願いだからもう少し整理してしゃべってほしいと思いますけど、まあアタクシもこうやって半分脊髄反射で駄文書きをしていると話が勝手にドンブラコと流れていってしまうことがあるので人のことは言えない説はありますけど、いやこうやって文字起こしされると中々辛いものがありますなというところで。


・円安はよくないという話をしている割には金融緩和は万歳になってしまうしその根拠が何ちゅうか・・・・・・

こんな質疑がありました。なお上記ほどではないが回答はやたら長いのでソコントコヨロシク。本文3ページ。

『(問)朝の講演文を拝見しまして、消費が価格上昇分で縮むということを懸念されているようなんですけれども、この背景には円安で物価高につながったということがあると思います。この為替に関して、消費に影響するという文脈もあり、金融政策で対応すべきことなのかどうかといったところはどういったお考えでしょうか。』

と来まして、

『(答)円安というのがやはり、かなり大きな問題になってきていると思います。』

と言ってるんですが、

『まず前提として私の基本的な理解ですけれども、為替は経済のファンダメンタルズに沿って動くということが望ましいと思います。金融政策っていうのは基本的にいうと為替相場を直接のコントロール対象としているのではない。しかしながら、昨今の輸入物価の水準そのものが、海外で水準が高くなっていますので、経済と物価に影響を及ぼす重要な要因の一つになってきたという事実があると思います。それから金融政策は引き締めると国内需要を抑制する効果を持っているということも事実であります。』

で結局は何なのかが謎ですが先に進みます。

『そのうえで全体感を申し上げますと、急速かつ一方的な円安は、先行きの不確実性を高めてコストカットによる縮み志向を強めるというふうに思いますので、千載一遇のチャンスをつかみかけている日本経済にとっては、望ましくないというふうに思います。』

なのになぜ不必要な程度の金融緩和を継続しようとするのかしら??

『為替相場が経済に及ぼす影響というのは業種それから企業の規模によってまちまちでありますし、そこに勤める従業者への影響もまちまちであると思います。それから消費者物価上昇の影響を受ける家計にとってみると、やはり負担が増える、従ってマイナスの影響が大きいというふうに思われます。』

物価上昇の影響を受ける家計って話は部分的にはそうなんですけど、それ言い出すとそもそも物価目標2%って言ってるのは何なのよという話になってしまうんですよね。

『もう一つは購買力のもとになる賃金上昇率が米欧のように高くないという問題も日本にはございます。』

いやそれ言い出したらそもそも話が終わってしまうじゃんと思うのですが・・・・・・・・

『こういった中で、今掴みかけている千載一遇のチャンスを逃してしまうような悪影響が想定されて、金利だけでもう調整するんだということに経済全体がなってしまえばですね、私としては、日本経済はそんなに強くないと思っておりますので、需要抑制による相応のマイナスが日本に出るというこの影響も考慮しなければなりませんので、軽々に金融政策で対応できるというものでもないかなというふうに思います。』

いやだからなんでその結論になってしまうの、というか経済が弱いのになんで千載一遇のチャンスになってるんですか????というお話。

『一方で、高付加価値の製品の輸出が今後増加していきますので、』

その根拠は???

『そうしますと日本の国際競争力が向上していくということを考えると、』

いやだからそもそもどこから「高付加価値の製品の輸出が今後増加していきます」なのかがさっぱりよくわからんのですけど、

『日本の構造転換がようやく進み始め、大いにこの効果を期待できるような年が来るのではないかなという変化も期待しているところであります。現時点においては、私の状況認識というのはそういうものだと考えております。』

どういうものなんですか・・・・・・・・orzorz



・なんかさっぱり分からんのだがこれは今週輪番に関して何らかの話はある(決定するかは分からんけど)のかね

最後の方の質疑応答に飛びますけど、

『(問)今の国債買入れのところで、確認ということでお伺いできればと思います。ただ今ですね、ご回答の中では、経済の改善をみつつ国債買入れの扱いについても考えていく、というふうなご回答だったかと思います。一方でですね、基本的に、経済・物価情勢を踏まえた政策対応というのは短期金利の変更によって行うというふうなご説明を、総裁などはされているというふうに思います。委員はですね、国債買入れの扱いについてもですね、経済情勢というのを踏まえて判断していくべきものだというふうに考えていらっしゃるのか、改めてこちら確認できればと思います。』

この回答ですが余計なことをいろいろと言ってますけど、要は経済が強くないので国債買入の減額は慎重に、というのが回答になっています。

『(答)国債の買いオペを例えば減らすというときには、金利の変化というのは大きくなるので、それに対して、経済があまり強くないときにショックは起こすべきではないという考えでおりますが、今、非常に、法人季報をみますと、1〜3 月は、私の想定ぐらいの改善をしていましたし、コロナ前の前年度、平時のときに比べて中小は良くないんだろうなと思っていた通りでありましたので、経済そのものは、それほどまだ、アメリカのように強い経済情勢ではないというふうに思いますので、買入れのオペレーションでどういう影響が生じるのかというのを考えながら、慎重に考えていくことが必要ではないかなというふうに思っています。そういう関係で申し上げましたので、経済情勢といったデータをよくみながら考えていきたいなと思っております。』

そもそもそんな弱い経済状況なのになんで千載一遇のチャンスなのかがわけわからんとか、アメリカのように経済が強いわけではないってアメリカみたいに強かったらインフレが上振れするじゃろとか、まあいろいろとツッコミどころしかないのですけれども、要するに経済が弱いから国債買入は減額するな、というのが中村さんの主張のようですが、

『(問)シンプルにお聞きしたいんですけど、お話を聞いていると、追加の利上げも買入れの減額も、6 月の金融政策決定会合で決定するにはまだちょっと早いのではないかというご意見でよろしいですか。』

「シンプルにお聞きしたいんですけど」って枕詞クソワロタwwwwwwwwwwwwwww

『(答)来週ありますので、そういう話題も出るかなというふうに思いますけれども、利上げは早いと思いますね。それから買いオペの変化をどうするかという問題も、現実に私自身が真剣にそこまでは考えている状況では実はありません。』

『ですが、時間をかけて考えると、国債をずっと買い入れるということは、まだ異常な経済・金融の状況にあるということでもありますので、そこの評価・判断をどうするかということです。』

で話を終わりにすればよいのに終わりにしないのが中村審議委員のクオリティでして、

『今日の北海道のお話ですと、やはりまだそんなに強くないと、結構大変ですというようなお話の方が多かったような気がしますが、先を考えると明るい未来が待っているかもしれないというようなお話の状況だったような気がします。ですので、今、北海道もつかみかけている絶好のチャンスをですね、失わないようにしないといけない。日本も同様にそのチャンスを失わないようにしなきゃいけない。30 年ぶりにきたような、ようやくつかみかけていますので、慎重に影響を考えながら、方向を決めていくということだと思いますので、どちらともまだ言える状況ではないなと思っています。』

クソ長いwwwwwwwwwwwwwww

のはさておきますと、まあ途中に「時間をかけて考えると、国債をずっと買い入れるということは、まだ異常な経済・金融の状況にあるということでもありますので、そこの評価・判断をどうするかということです。」って言ってるんで、つまりは異常な状態ではないと認識するんだったら今のような規模での国債買入が必要なのかというと必ずしもそうではないのではなかろうか、という話をしている訳ですな。でまあそういううのを勘案すると、国債買入の減額に関してはそれなりの議論がある(決定するのかとか表に出てくるのかというとそれはそれで別問題と思われますが)ということですかね、知らんけど。





2024/06/10

お題「短国3Mが相変わらずの強さである/ECB決定ですが「なんで利下げしたか」の説明が必死ですな」

ほほー
https://www.agrinews.co.jp/news/index/237899
2024年6月9日
米スポット取引価格 高騰なぜ

あ、そう言や先週金曜日には週末更新とか大口叩いておりましたが、ぐうたら病を発症してしまいましてじぇんじぇん更新どころではありませんでしたすいませんすいません。

〇雇用統計ェ・・・・・・(備忘メモ)

ちょwwww
https://jp.reuters.com/markets/us/ARSIGHCYOFIZJI43YW2PLX7IJU-2024-06-07/
NY市場サマリー(7日)ドル反発、利回り急上昇 株は小幅安
By ロイター編集
2024年6月8日午前 6:43 GMT+9

『[7日 ロイター] - <為替> ドルが反発した。5月の米雇用統計が予想以上に強かったことを受け、連邦準備理事会(FRB)は年内の利下げを急がない可能性が高いことが示唆された。米労働省が発表した5月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比27万2000人増で、予想を大きく上回った。時間当たり平均賃金は前年比4.1%上昇と、伸びは前月の4.0%から加速した。』(上記URL先より、以下同様)

まあ利下げ始まるか始まらんか、という転換点だからしゃーないんですけど。

『<債券> 国債利回りが大きく上昇した。5月の雇用者数の伸びが予想を上回ったことを受け、FRBが9月に利下げに着手するとの観測が後退した。』

『終盤の取引で10年債利回りは15ベーシスポイント(bp)上昇の4.428%。2年債利回りも15bp上昇の4.87%。1日の上昇幅としては共に4月10日以来の大きさとなった。』

15毛甘って何ですのよwwwww

まー当たり前ですが
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through
先物価格情報

限月 24年6月限
取引日 06/10 

始値:144.04 (06/07)(15:30)
高値:144.17 (06/07)(21:29)
安値:143.59 (06/08)(04:53)
現在値:143.65 (06/08)(06:00)
前日比:-0.33
取引高:20,658

そらそうよという動きですな。ちなみに今週って先物当限最終日があるんで、

建玉残高
24年6月限
126,162
(06/07)
24年9月限
91,402
(06/07)

ほうほうそうですかそうですか。まあしかしここもとよく動きますわ。


〇3M短国入札などのメモ

・3M短国が週を追うごとに強くなっている件について

金曜の3M入札ですが
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240607.htm
国庫短期証券(第1236回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1236回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号    国庫短期証券(第1236回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日   令和6年6月10日
4.償還期限  令和6年9月9日

5.価格競争入札について
(1)応募額       16兆1,346億8,000万円
(2)募入決定額    4兆1,491億6,000万円
(3)募入最低価格    99円99銭4厘5毛
(募入最高利回り)    (0.0220%)
(4)募入最低価格における案分比率  71.5347%
(5)募入平均価格     99円99銭5厘7毛
(募入平均利回り)    (0.0172%)』

おいこらちょっと待て平均1.72bpってナンジャソラというところでして、なんか先週月曜も書いていた気がするんだが、

6/7日の3M(1236) 1.72bp/2.20bp(9/9足)
31日の3M(1234) 3.16bp/3.81bp(9/2足)
24日の3M(1233) 4.01bp/4.21bp(8/27足)
17日の3M(1232) 4.13bp/4.81bp(8/19足)
10日の3M(1230) 4.76bp/5.35bp(8/13足)

という推移でしてどんどこと3Mのレートが下がっているという珍現象が発生している訳でして、もはや7月利上げ無しでもそのレートって何なんだよという水準になっておりまして、何がどうなっておられるのやらという金利低下ワールドになってしまっていますな。まあ金曜日にネタにしましたように、特会借入6Mとかはちゃんと7月利上げを織り込んンだ利回りになっておられますので、これ単純に短国だけ異世界になっているという状況なので何ともかんともではありますけど。

まあ別に入札だけではなくて売参ちゃんをみても
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

国庫短期証券1234 2024/09/02:平均値単利 0.030
国庫短期証券1236 2024/09/09:平均値単利 0.018

ちゅうことで入札のほぼ平均落札レベルではちゃっかり引けているのでありましてナンジャソラという感じではありますけれども買う人がいるんだからこうなってしまうの仕方ないにしましても、3M短国って異次元緩和前は3か月の指標金利みたいな感じになってきてた市場だったので、異次元緩和以降のせいで短期のターム物市場のリスクフリーレートかつ指標っぽい市場が、その市場の指標としての機能を失ってしまいましたなという悲しい状態(まあこれから利上げパスがもうちょっと明確になってきた時には変化があるかもしれないですけれども・・・・・)で異次元緩和はクソ、というのがこんなところにも顕在化している次第ですな、とほほ。


・話変わって輪番ですが

ほうほうそうですかそうですか

落札結果 (6月7日<金>)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba240607.htm

国債買入(残存期間1年以下) 3,139 1,501  0.006 0.011 91.0

金曜日に申し上げた通りですが、木曜の引けの売参ちゃんが

中期国債 140(5) 2024/06/20 0.1:平均値単利= -0.036
長期国債 334  2024/06/20 0.6:平均値単利= -0.010
超長期国債 70  2024/06/20 2.4:平均値単利= -0.010
超長期国債 71  2024/06/20 2.2:平均値単利= -0.010

中期国債 438(2) 2024/07/01 0.005:平均値単利= -0.090

だったのでこれ長期超長期は謎ですが、5年と2年の期近が入った場合には出来上がりマイナスレートで入っているんじゃなかろうかという話なので今日基準の日銀保有国債残高は前回との差分取って確認でもしておきますか、という感じですわ。



〇出遅れにも程があるかECBですけど結局これなんで利下げしたのかとなるといろいろと謎ですわな

・なんで利下げしたのかまったく意味が分からんポンチ絵キタコレ

いつものこれ
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2024/html/mopo_statement_explained_june.en.html

前回4月がこれ
https://www.ecb.europa.eu/press/press_conference/visual-mps/2024/html/mopo_statement_explained_april.en.html

・前回予告ホームラン通りに利下げしたのは分かったが

最初の小見出しかつポンチ絵は

『We cut our key interest rates by 0.25 percentage points』(今回)
『We kept our key interest rates unchanged』(前回)

ですけど、

『Keeping interest rates high for nine months has helped push down inflation. Our future decisions will depend on how we see the economy and inflation developing.』(今回)

『Their current levels are helping push down inflation. If the incoming information makes us more confident that inflation is sustainably moving to our 2% target, we may not need to keep interest rates as high as they are now. But our decisions will depend on how we judge the situation based on the new information we receive over time.』(前回)

引き締め的な金融政策を9か月もしたから物価が落ち着いてきた、は良いんですよ。でもって前回は「If the incoming information makes us more confident that inflation is sustainably moving to our 2% target, we may not need to keep interest rates as high as they are now.」と利下げの予告ホームランしてたのでまあ利下げしたってのも分かるのですが、前回って同時に「our decisions will depend on how we judge the situation based on the new information we receive over time.」という状況判断次第という文言も入っているのですが・・・・・・・


・経済の現状判断と先行き見通し上がってるんですが

次からの説明、これポンチ絵にされると益々見やすくて、その結果として「なんで利下げするの」という話になるわけですが、

『The economy is starting to grow again』(今回)
『The economy remains weak but should pick up later in the year』(前回)

『Services are doing well. Lower inflation and higher wages mean that people can spend more. More demand from the rest of the world should also support our economy.』(今回)
『As inflation comes down and wages increase, people will have more to spend. With the world economy recovering, firms will export more. All of this will support our economy.』(前回)

ってなってて、イラストの方もエライ明るい絵柄になっておりまして、見通し通りといえばまあ前回が「should pick up later in the year」なんで見通し通りなのかもしれないですけれども、「later in the year」がこんなにサクサクと訪れているのに利下げするんかいなインフレ再加速せんかいなと思ってしまいますし、


・物価に対する表現が別に進展しているわけでもない

『Inflation still needs some time to return to our 2% target』(今回)
『Inflation is still coming down』(前回)

『Prices for goods are no longer rising as much. But prices for many services have gone up markedly.』(今回)
『Prices for goods and food are no longer going up as strongly. Energy prices are lower than a year ago. But prices for services keep increasing a lot.』(前回)

イラスト見るとむしろ4月の方が物価が2%に向けてさがりまっせ感を出しているんですけど、それで利下げしてええんかと思ったりするのですけどねえ。


・賃金も表現は強いままだが小見出しとイラストが微妙に違うのが怪しさを醸し出している

『Wages are still rising strongly』(今回)
『Wages are still rising, but not as strongly as before』(前回)

『Higher wages are helping workers make up for past rises in prices. Firms are still looking for new workers, though less so than in the past. Unemployment is the lowest it has been in 25 years.』(今回)
『Paying workers more means higher costs for companies. But instead of passing the full amount of these costs on to customers in the form of higher prices, firms are raising their profits by less.』(前回)

これむしろ賃金の表現のお題が強くなってないかという感じでして、前回は賃金上昇は企業にとっての負担でもありますみたいなこと書いてたのにそういう表現も抜けているというお洒落な状態。

ただまあ芸が細かいなと思うのはイラストの方ではイラストの左側の方にある折れ線グラフ(賃金動向を意味するんだと思いますけれども)の折れ線の最後が上向きっぽい矢印になっているのが、今回って「高いところからちょっと下がって横ばいになっている」という折れ線矢印になっていまして、賃金物価のスパイラルにはならんじゃろ、というのを示した絵になってるな、とは思いました。


・・・・・ということでビジュアルステートメント見るとなんかこれなんで利下げしましたのやらという感じになっておりますが、今後物価の方が「2%に向けて下がるのが遅くなる」ケースについては、物価の表現でもヘッジ掛けていますし、賃金の部分でも何となく「スパイラルはありません」ってなっていますし、さらには「生活者のこれまでの物価上昇の影響に関しては賃金の上昇で取り戻せています」ってなっているので、まあ申し開きができるようになっております。

ただまあ何ですな、これ物価がまた一転して強いとかになってしまうと結構申し開きがしにくいのですけれども、ECBの場合は伝統芸能として「なんか金利上げてみたけどダメだったから戻すわテヘペロ」という驚異の芸風がありますので、その利下げバージョンもあってもおかしくないので「4月に予告ホームランした手前利下げした」って感じを醸し出しており、先行き中立金利に向けて利下げを継続する、というような決め打ちはしないということなんですかね、知らんけど。


・なんかもうわざわざ「なんで利下げしたのか」とか別紙を出すのがワロエル

https://www.ecb.europa.eu/ecb-and-you/explainers/html/interest-rates-changes.en.html
We have cut interest rates. Why did we do it and what does that mean for you?
6 June 2024

わざわざこんなのを決定と同日にだしているんですよね。

『Prices are no longer rising so fast, and inflation is on track to return to our 2% target. As a result, our Governing Council recently cut interest rates, after keeping them at high levels for nine months.』

「Prices are no longer rising so fast, and inflation is on track to return to our 2% target.」だから利下げしますって話ですが、

『Why did we cut interest rates?』

『We are the central bank for the euro, and our mandate is to keep prices stable. When inflation was too high- that is, when prices in our economy were rising too fast - we increased interest rates to help bring it back down. We started raising rates in July 2022 and kept doing so until September 2023.』

『Our goal is to keep inflation at 2% over the medium term. Now that inflation is coming closer to that target, we no longer need to keep interest rates quite so high.

『We will, however, keep rates at levels which ensure that inflation returns to 2% in due course and doesn’t become “stuck” at a higher level. This is very important, as high inflation makes life hard for people and businesses.』

ってあって以下説明があるのですが、そんなに具体的なこと(今後の見通しとかそういう話)書いてないなーと思っていたのですが、


・ついでにラガルド総裁がブログを追加投入

https://www.ecb.europa.eu/press/blog/date/2024/html/ecb.blog240608~aa46b5f2a0.en.html
Why we adjusted interest rates
8 June 2024
By Christine Lagarde

The ECB has cut interest rates. President Christine Lagarde explains why and sets out what still needs to be done to bring inflation back to 2% over the medium term.

ということですが最後の方になりますけど、

『Today, however, we are seeing progress on many fronts. Inflation has fallen to 2.6%, halving again. It is currently on track to reach 2% in the latter part of next year. And our monetary policy is making a strong contribution to returning inflation to our target. So, by cutting rates, we decided to moderate the degree of monetary policy restriction.』

ということで「引き締め度合いを緩めた」とは言ってるのですが引き締め水準であることは変わらん、という説明をしております(って会見の方でも当然していると思いますがそっちのネタはまた追って)。

『But there is still a long way to go until inflation is squeezed out of the economy. It will not be an entirely smooth ride. It needs vigilance, commitment and perseverance.』

今後の2%に向かう道筋はかならずしもスムーズではないよ。

『Interest rates will therefore have to remain restrictive for as long as necessary to ensure price stability on a lasting basis. In other words, we still need to have our foot on the brake for a while, even if we are not pressing down as hard as before』

ということなので、利下げのおかわりに関しての予告は一切なしと。

『Our future policy decisions will hinge on three things: whether we continue to see inflation returning to our target in a timely manner, whether we see overall price pressures easing in the economy, and whether we still see our monetary policy as effective in taming inflation. These factors will determine when we can take our foot further off the brake.』

『We have made major progress, but our fight against inflation is not over. As the guardian of the euro, we are committed to ensuring low and stable inflation for the benefit of all Europeans.』

やたらインフレ2%に向けての決意をしめしていまして、何ですかねえだったら別に利下げせんでもとは思うのですが、まあ利下げしたらインフレヒャッハーとなられたくないからキツいことを言っている感はあるのですけれども、いずれにせよ今後の物価次第(ただし「上向き」にならない限りは多少お時間かかるのはOKOKスタンス)という感じですか、どうなることやら。


中村審議委員ネタの続きですが時間の関係で本日はご勘弁いただきたくこれまた後日に(だから週末にぐうたら病を発症している場合ではなかったのですがorzorz)








2024/06/07

お題「市場がいろいろあったのでいろいろメモ/植田さんの両建て国会答弁何とかならんのか/中村審議委員札幌金懇(その1)」

ネタが同時に降ってくる現象について何か命名したいくらいに突如本日はネタがあって困りますわ

〇長期債も大概なのだが短期もいろいろと大概なので

・長期に関してはもうアレですのでロイターさんの市況解説を備忘に

こういうのをマジ卍って言うんでしょうか(知らんのだが)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/D6PSN4XLONILNL2SFMGSJM2NRA-2024-06-06/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続伸で引け、長期金利3週ぶり低水準の0.955%
By ロイター編集
2024年6月6日午後 3:20 GMT+9

『[東京 6日 ロイター] - <15:10> 国債先物は大幅続伸で引け、長期金利は3週ぶり低水準の0.955%

国債先物中心限月6月限は、前営業日比32銭高の144円15銭と大幅続伸して取引を終えた。米金利低下や順調な30年利付国債入札が買い材料となった。新発10年国債利回り(長期金利)は同4.5ベーシスポイント(bp)低下の0.955%と、5月17日以来約3週ぶり低水準をつけた。

きょうの国債先物は、米国市場で国債が買われて米10年国債利回りが2カ月ぶり低水準の4.2%台に低下した流れが追い風となり、買い優勢でスタート。また財務省が実施した30年国債入札が強い結果となったことも追加的な買い材料となり、1日を通じて堅調推移した。』(上記URL先より、以下同様)

半値戻しどころか4分の3戻し(10年金利的に)って風情で何をやってますねんというお話なのですが、昨日は30年入札がベンダー集計の事前予想から15銭とか上で切れる入札となりまして、いやおまいらこの前までの様子見地蔵は何だったのかと小一時間問い詰めたい訳ですが、こう上下に振れる相場とかみておりますと、やっぱりアタクシの感覚では輪番減額関連で言えば輪番の上げ下げが一々材料にならないような方法、ということで運営してほしいとしか言いようが無いですな。

ま、今週に関しては来週に決定会合あるし、それがいかほど影響するのかは知らんけど来週は先物当限の最終売買も控えている(限月交代は今日までに起こる感じは皆無)しと地蔵になる動機は他にあったのもあるのかも知れんけど動いてきたら急に動き出すみたいな加速装置が来てしまいましたねえというところで。

引けのカーブのトレードウェブさんが無いので以下記事からになりますが、

『現物市場では10年物以外の新発国債利回りも総じて低下。2年債は前営業日比2.0bp低下の0.330%、5年債は同2.5bp低下の0.540%、20年債は同78.0bp低下の1.755%、カレント30年債は同9.0bp低下の2.085%、40年債は同10.0bp低下の2.235%。』

超長期大フラットニングげげげのげというのもあるけど、何も中短期ここまで戻さんでも(まあ売る方もアレだったから仕方ないのかもしれんけど)という感じでして・・・・・・・・・・・・


・なんか利付の期近債の売参値がエライことになっているのが1年未満輪番どうするんでしょ

いつもの売参
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

昨日の引け基準の売買参考統計値を見ますと短いところが・・・・・・・・

中期国債 140(5) 2024/06/20 0.1:平均値単利= -0.036
長期国債 334  2024/06/20 0.6:平均値単利= -0.010
超長期国債 70  2024/06/20 2.4:平均値単利= -0.010
超長期国債 71  2024/06/20 2.2:平均値単利= -0.010

中期国債 438(2) 2024/07/01 0.005:平均値単利= -0.090

あーもしもし、なんか軒並みマイナス利回りに突っ込んでいていやお前ら短国との整合性はどこに(なお6/20償還だと経過利子の関係でクーポン高いとIRRがおかしなことになるので単利とIRRの乖離が発生しておりますわ)という話もあるんだが、それはそうと今日って輪番が予定されていまして、1年未満の輪番って日程事前公表されてないから今日かもしれないし今日じゃないかもしれませんけど、この平均値を基準に輪番やると「出来上がりマイナス利回り」というものが輪番に打ち込まれる可能性が発生すると思うんですが、マイナス金利もう止めて、しかも2か月半とか経過しているのに、これ出来上がりマイナスで買うんですかねえとかふと思ってしまいました。

なお、大昔のマイナス金利政策とかQQEとかじゃないゼロ金利政策の時って輪番で出来上がりマイナス利回りになる応札は受け付けてなかったはずでして、その後のQQE以降は(マイナス金利以前も)マイナス利回りの国債やら短国を買入していましたが、こういうの別に「怪しからん利回りだからこれは募入対象外」ってでやってよいという仕切りになっているのですが今ってどうなんでしょうかね。



・6Mェ・・・・・・・・・・・

6Mの入札もあったわけですが
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240606.htm
国庫短期証券(第1235回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1235回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号   国庫短期証券(第1235回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日     令和6年6月10日
4.償還期限   令和6年12月10日
5.価格競争入札について
(1)応募額        11兆8,556億円
(2)募入決定額    2兆8,121億6,000万円
(3)募入最低価格   99円95銭6厘
(募入最高利回り)   (0.0877%)
(4)募入最低価格における案分比率   99.7854%
(5)募入平均価格   99円95銭7厘
(募入平均利回り)   (0.0858%)』

となりまして、8.58bp平均の8.77bp足切りとなっておりまして、7月とか10月とかの利上げ観測がなんぼのもんじゃいという利回りになっているのですが、これがまたドイヒーなことに売参ちゃんをみますと、

国庫短期証券1235 2024/12/10:平均値単利= 0.045 

ちょwww4.5bpうええええええええwwwwwwwww

ということで、短国だけは利上げ観測何ぼのもんじゃいというプライスになっておられるのですが・・・・・・


・交付税特会6Mの利回りは思いっきり7月利上げ織り込みレートなんですけど・・・・・・・・・・

昨日実施された交付税特会6M借入の結果
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result240606.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の一時借入金の入札結果

『本日、一時借入金の入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.借入根拠法律及びその条項
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第15条第1項

2.借入日      令和6年6月14日
3.償還期限     令和6年12月13日
4.償還方法    令和6年12月13日に一括償還

5.借入利率競争入札について  
(1)応募額        6兆4,609億円
(2)募入決定額      1兆2,990億円
(3)募入最高利率      0.220%
(4)募入最高利率における案分比率  6.4870%
(5)募入平均利率      0.194%』

こちらなんですけど、6/14-12/13だから短国とちょっとだけ違いますがまあ6Mテナーでして、この足切り(極薄案分ですけど)0.22%って6/14-8/1-12/13って分けて計算してみると、手前が0.10%、後ろが0.263%と同じになるんですよね。

7/31に仮に利上げがあった場合、前回と同じ方式なら当座預金付利に関しては31日までが旧金利、8/1から新金利が適用されるはずなので、7/31じゃなくて8/1で分かち計算した方が良い筈なのだが(違ってたら指摘プリーズ)、これで計算しますと出来上がり0.22%は上記の通りで後ろが0.263%、出来上がり0.21%の場合は後ろが0.249%になりますですバイ。

・・・・・とまあそういうことで、何のことないちゃんと日銀当座預金金利と裁定してて、おまけに7月会合での利上げもかなりの度合いで織り込んでいるという結果になっておりまして、まあこちらは「借入金」であって「国債」ではないので参加できない人も多いというのがありますからこうなるんですけど、これ見ると「国債」に対するプレミアムがアホみたいにある、ということでして、「リスクフリー金利」の居場所がまるでよくわからんということになってしまっている訳ですな。

まあこれも日銀がへなちょこ長期共担オペ実施したり当座預金残高アホみたいに積み上げてしまっている弊害の一つでもあって、本来は短国3Mが短期の指標金利になっていて然るべきだとアタクシは思う(正直TONAR3か月よりも本来は短国3か月の方がふさわしいと思うんですけどねあたしゃ)のですが、この6Mのテイタラクを見ていると前途は遼遠なのかなと悲しくなってきましたとさ、というところです。


〇ところで植田総裁の国会答弁なのだがヘッドラインがアレでアレというメモ

こちらBBGさんの記事ですが
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-06/SD6X8AT1UM0W00
国債買い入れ、出口進める中で減額が適当と考えている−植田日銀総裁
青木勝
2024年6月6日 13:47 JST 更新日時 2024年6月6日 17:11 JST

→3月の金融政策の枠組み変更後の金融市場の状況を確認している
→4月会合では3月会合で決まった月間6兆円程度の買い入れ継続確認

『日本銀行の植田和男総裁は6日、金融政策の正常化を進めていく際には国債買い入れの減額が適当との認識を改めて示した。参院財政金融委員会で答弁した。植田総裁は3月の金融政策の枠組み変更後の金融市場の状況を確認しているとした上で、「今後大規模な金融緩和からの出口を進めていく中で、減額することが適当であるというふうに考えている」と述べた。』(上記URL先より、以下同様)

ってな発言をしているのですが、この「出口を進めるうえで減額が適当」ってお前はなんでそういう脇がガバガバな表現をするのかと小一時間問い詰めたい訳ですが、BBGさんの上記の記事だと「出口進める中で」ってちゃんと入っていたけど、最初ヘッドライン(どこのか忘れた)みたら「減額が適当」の文字だけどどーんと出てしまっている訳でして、「減額」と言わないで出口の話をできないのかと言いたいのですな。

でまあこの国会答弁中、ヘッドラインが当然出てくるのですが、出てくるヘッドラインだけで見ているとこの人出口やる気あるのかないのかさっぱり分からんというか、片サイドに寄っててくれるならまだマシな方で、へたくそコメンテーターが両建て予想をしているのかという位に両建てヘッドラインが出てくるという展開になっていまして(ヘッドラインがどうだったかとかは一々書きませんけど)、その結果ブルームバーグさんもこのようにご指摘。

『植田総裁の発言を受け、為替相場は上下に振れる動きとなっている。2%目標の達成を巡る発言が利上げに慎重と受け取られ、一時1ドル=155円90銭台まで円は売り戻されたが、国債買い入れ減額についての発言で円売り戻しは一服。その後、再び円売りが進み、156円台前半で推移している。』

ブルームバーグさんよくわかってらっしゃる、ということでこの説明が中々のヒットだとアタクシは一人で大喜びしておりましたが、とにかくこの総裁はハトハトなんだかチキンなんだか学習効果がないのか知らんけど、しばらく前から「機会ごとに発言がぶれる」という悪癖があったわけですが、ついに今回の国会答弁では「一つの発言機会の間に両建てを行う」という市場のボラをあげて喜んでるのかお前はというレベルの発言をぶっこむようになったわけでして極めて遺憾であります。

まあ円債先物とはは昨日の場合は上記のように大きな流れがあばばばばーの踏み踏み大戦争モードだったので植田発言どころではない、という説もあるのですが、まあいずれにしましても徐々にこの人の発言を一々真に受けて反応していると碌なことにならないし、何なら内田さんや氷見野さんの発言見てた方が有益、ということを学習してきたんじゃないかと思うと大変に結構なお話ではありまして、いいからこの植田とかいう博多人形は槍持って暴れだすと碌なことにならんので人形ケースに入れて床の間に置いて鑑賞物扱いしてくれと存じます次第(この前「就任時にあれだけ期待してたのは何だったのか」と突っ込まれましたがまあ完全に見間違えてましたわ本当にまいりました降参です)。




〇中村審議委員札幌金懇挨拶:言ってること自体それはそれで完結しているのだが中村ワールドが展開されておられますな

さーせん本当は今日はECBという大イベントもあったのですがそもそも中村さんの金懇挨拶ネタすら簡潔でそうもありません(じゃあお前なんで事前準備してないんだというツッコミはしないでください汗)。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240606a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 札幌市金融経済懇談会における挨拶要旨 ─

・経済の先行きで個人の実質所得が伸びない可能性を懸念しているのはわかるのだが・・・・・・・・・・

『2.内外経済情勢』のところ、まあ最初はおとなしく大本営発表の話をしているのですが、本文3ページ(PDF4枚目、以下同様の関係)の真ん中あたりから中村さんワールドが展開されまして、

『(引用者追記:この先は国内経済の先行きに関して、です)。もっとも、私が懸念している点としては、少子高齢化や人口減少等の構造的問題による社会負担や年金受給人口の増加、「年収の壁」等により、賃上げ率ほどには家計の可処分所得が伸びず、家計の貯蓄率低下の巻戻しや節約志向の高まり等に加え、中小・中堅企業の「稼ぐ力」の改革が遅れることも考えられ、その場合には、潜在成長率を下回る成長が続く可能性もあると考えています。この点については、後ほど私の考えを詳しく申し上げたいと考えています。』

『また、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、政策委員の大勢見通しにおいて、2024 年度に2%台後半となったあと、2025 年度、2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想していますが、私は、2025 年度以降については、家計の貯蓄率低下の巻戻しや節約志向の高まり等から個人消費が低迷し、値上げ鎮静化が進むと、2%に届かない可能性があるとみています。』

とまあそういう話をしておられるのですが、そもそも論として実質賃金伸びないとか、中小企業が収益上がりにくいとかいうのって多分に円安コストプッシュが寄与してるじゃろ、というのがあるわけでございまして、円安ムーブが消費の先行きへの懸念材料なんだったら、円安ムーブを強化あるいは加速させるような金融緩和プッシュをするのってどうなのよ、って思うのですよね。

あと後半の説明、言ってることはまあわからんでもない(なお内田さんの金研コンファランスのキメセリフには思いっきり喧嘩売ってますけどそこはご愛嬌)のですが、そもそも論としてこの「2%に届かない」っていう話ですが、展望レポートの基本的見解の図表「政策委員の経済・物価見通しとリスク評価」を見ますと、これ目の子で見た場合、2025年度1.7%、2026年度1.6%なんですよね中村さんの予想って。

・・・・・ここで急に話が飛びますが、これ書いてて今更気が付くのが不覚にもほどがあるのですが、展望レポートの「大勢見通し」って「最大値と最小値を1個ずつ除いて、幅で示したものであり」となっていまして、この時の物価見通しで言えば実は2025年度と2026年度って中村さんと同じところにプロットしているのがもう一人いまして、これ数値で言えば「最小値1個除外」なんですけど、意見で言えば「下の委員を2名削っている」ということになっていて、いやおまえそれおかしくないか(例えばFEDのSEPの場合は上下何人除外、で計算してますし、全員のレンジも示しているのですが、展望レポートっていつの間にやら全員のレンジも出さなくなっているんですよね、プロットあるからそれを見ろということでしょうけど)と思いました。

まあそれはともかくとして、この「2025年度コア1.7%、2026年度コア1.6%」という数値なのですが、確かに2%よりは低いから「物価安定目標2%を厳格な数値目標として考えれば」未達って話になって、だから緩和継続が大正義って話になっているのですが、そもそも物価安定目標がなんのためにあるかといえば国民厚生を最大化するためのメルクマールなわけであって、物価目標の数値を厳格な大正義数値として扱った結果、過剰な緩和により過度な円安や資産価格のバブルを発生させてまでその大正義数値を達成する必要があるのか、というのをちょっと考え直していただきたいと思うのですよあたしゃ。

もしここで中村さんの見通しが2025年度コアCPI1%行くか行かないかだし26年度に至っては0.5%とでもいうのであれば話は分かるんですけど、その1.7%だの1.6%だのが厳格に2%に行ってないことによってどんだけの国民厚生へのマイナスがあるのですかねえ、というお話な訳ですな。

次のコーナーでも中村さん(本文3ページ)、『3.金融政策運営と経済構造の変革』という小見出しに続きまして、『(1)家計の購買力強化の重要性』というのがあるのですが、いや家計の購買力強化したいんなら少なくとも円安ドライブを招くようなレベルの金融緩和政策は必要ないんじゃないですか(別に円高にするために物凄い勢いで利上げしろとかいう話ではないですよ為念)と存じますけど、そっちの方の話は華麗にするーされておられる(そら言わんわなと思うけど)次第でありましてうーん何というかというところです。


・いやまあアメリカン格差拡大社会で良しと言われてしまえばぐうの音もでないのですが・・・・・・

会見が今日出ると思うので週明け(もしかしたらECBも成敗できてないから週末かもですがそれは期待しないでください)にでももうちょっとこの講演詳しくネタにしたいのですが、時間もないので(サーセン段取り悪くて)もう一つ中村さんの今回の金懇で思ったこと。

さっきの『(1)家計の購買力強化の重要性』のケツのところ、本文4ページのケツから5ページにこんな記述があって、

『家計の購買力を強化し、個人消費を活性化するには、現役世代の高い賃上げ率が持続する必要があります。また、後ほど詳しく申し上げますが、日本の家計が米欧の家計と同様、上場企業の成長を通じて可処分所得を押し上げる金融資産構造へ変化していくことも、可処分所得の確りとした増加に有効だと思います(図表 10)。』

これ、中村さんが就任以降言ってた「給料が上がらないなら投資信託を買えばいいじゃないか」というマリーアントワネット理論だったりしますが、こちらでは図表10とありますが、話を一気に飛ばして『4.構造的問題を克服する持続的経済成長に向けて』の『(2)「家計のダイナミズム」向上への期待』ってところ、本文10ページになりますが、

『さらに、経済成長をリードする上場企業からの配当収入を増加させる投資が拡大する等、「家計のダイナミズム」が生まれています(図表 22)。リスクを相応に考慮する必要がありますが、「長期・積立・分散」を前提とし、個々の家計の生活の余裕度に応じて「貯蓄から投資」へのシフトを進め、「配当収入等による収入基盤の拡大」を継続していくことは、重要な経済の成長要素であり、高齢者を含め、経済成長による豊かさを実感することに繋がると思います(図表8再掲、図表 10 再掲)。』

でまあ図表22を見ていただきますと家計に入ってくるのは配当とかそっちの話で利息の話が無いというのがこれまたお洒落。

・・・・・いやまあそれ自体は主張として完結しているんですけど、これって結局労働分配じゃなくて株主分配で家計所得をダイナミックに強化しましょうって話で、いやそれはもろに格差拡大方向の話でそういうアメリカン経済ちっくなことを日本でする必要が本当にあるのか、もちろんそういうのが必要ですよって意見は一つの意見としてあっても結構なんですけど、ちょっとアタクシはそれが「国民厚生の最大化」につながるのかというと違うんじゃないかなーって思うんですよね。


つまりですね、さっきの4番の前半には『(1)成長への「憧れ」と「企業と雇用のダイナミズム」の醸成』という小見出しがあるんですけど、

『大企業はコア事業に経営リソースを集中し、「ジョブ型雇用の導入」や生産性に比べて低位に抑えていた若年層の所定内給与の引上げを積極化し始めました。さらに、リスキリングや専門人財のキャリア採用等人財投資を強化し、人財にやりがいと活躍の場を提供することにより、個々のイノベーション創出力を強化し、製品・サービスの顧客満足度を高める等、「稼ぐ力」を強化するために人財に焦点を当てた経営努力が積極化していると感じています。また、キャリア採用を行っている大企業の割合が検討中を含め5割を超える 6等、人財獲得競争が強まっており、成長を続け賃金水準も高い大企業に人財が移動している様子が窺われ、G7の中で最下位の賃金水準(図表 17)を押し上げる力が労働市場で増してきていると思います。もっとも、ジョブグレードに応じた賃金水準の上昇カーブは、アジア主要国に比べても緩やかですので(図表 18)、個々人の成長努力が適切に評価され、今後も大きな賃上げや賃金カーブの改革が進められていくことが必要です。』

まあ言いたいことはわかるしこれはこれで意見としては完結しているんですが、こういうのを見ますとこれまた格差拡大の話でして、これをアタクシが言いますとマーケットの中の人的にはアホ呼ばわりされそうなですけど、中村さんのこういう主張って中村さん自体が日本を代表する超大手製造業の経営まで行うような高度な人材なのでその生存バイアスが思いっきり掛かっている話に見えるわけでして、まあ何ちゅうかもっと平凡な人が平凡に仕事をして平凡な生活を安心して送れるような社会(この「平凡」ってのがフワフワした言い方で必ずしも適切な表現とは言い難いのはゴメンナサイなのです)ってのは無いのかね、とは考えちゃうんですよね。

・・・・・・と最後の方は変なアタクシのポエムになってしまいましたことを深くお詫びいたしますが反省はしません(^^)。

もうちょっと読みたいのですが時間もないので本日はここで勘弁。








2024/06/06

お題「5.13事件からの下げを半分戻しましたかそうですか/ボウマン理事のバランスシート政策に関する講演から」

ほーん
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-05/SEM5ROT0AFB400
カナダ中銀、政策金利を4.75%に下げ−追加利下げも示唆
Erik Hertzberg、Randy Thanthong-Knight
2024年6月6日 1:05 JST

どっかの中銀はハトハトチキンとかやってる場合なんですかねえ。(さすがにまたマイナス金利とかされたら死ねるわ)


〇そんなにショート溜まってたのかよという動きですな(市場備忘メモ)

なんなんですかねえ
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/2EBIBISYYNI2XJUKZHNWUGR2G4-2024-06-05/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続伸で引け、長期金利は一時2週ぶり低水準の0.99%
By ロイター編集
2024年6月5日午後 3:18 GMT+9

いやもうなんちゅうかですけど。

『[東京 5日 ロイター] - <15:10> 国債先物は大幅続伸で引け、長期金利は一時2週ぶり低水準の0.99%

国債先物中心限月6月限は、前営業日比32銭高の143円83銭と大幅続伸して取引を終えた。日銀の政策正常化観測が相場の重しとなった。新発10年国債利回り(長期金利)は同3.0ベーシスポイント(bp)低下の1.000%。取引時間中には、5月23日以来約2週ぶり低水準となる0.990%を付ける場面もあった。きょうの国債先物は、米国市場で長期金利が低下した流れから、朝から買い優勢の堅調な展開が続いた。』(上記URL先より、以下同様)

相場の重しになっているのに大幅続伸ってロイター編集さんも相場様のあまりの展開に泡を吹いておられるようで何よりです(白目)。

『現物市場では10年物以外の新発国債利回りも総じて低下。2年債は前営業日比3.0bp低下の0.350%、5年債は同3.5bp低下の0.565%、20年債は同3.5bp低下の1.830%、30年債は同4.5bp低下の2.175%、40年債は同5.0bp低下の2.335%。』

ちなみにめんどいから一々引用しないですけど、利付の超短いところもなんか知らんがこの流れで引けが強くなっていまして、短国の方はずっと3Mの辺りまで3bpで引け変わらずだし、1年短国が20bp水準にちょっと毛が生えたくらいで安定推移しているのに、利付の引けって2年以降の利回りの動きに引っ張られて強くなったり弱くなったりしているんだが、整合性というのをもう少し考えて頂かないと。

ということで

『TRADEWEB

     OFFER   BID   前日比 時間
2年   0.343   0.351   -0.034 15:00
5年   0.558   0.565   -0.035 15:02
10年  0.995   1.004   -0.03  15:08
20年  1.828   1.835   -0.028 15:06
30年  2.173   2.18    -0.04  15:08
40年  2.333   2.342  -0.046  15:03』

10年1.1%とかやってるときにちょっと勢い良すぎだし短国とか毎度毎度強くなっているし、(待機資金が来てるとしたら)なんかショートっぽくなってないのかねとは申し上げた気はするのですが、何ぼ何でもここまで数日で一気に巻き返すとはお前らどんだけショートに傾いてたんよということで、あたくしの想像力全然足りませんでしたサーセン。

まあゆうても水準は結局10年1%な訳でして、5.13事件の前の10年カレントが0.90%水準だったことを考えると、事件による下げを半値戻ししましたという中々美しい展開になっているのも事実でして、半値戻しはしたもののさてどうなる(と思ったらイブニングでまた先物が上昇しておられるようですが)ということですか、知らんけど。

まあアレです。そもそも論として一応6月7月会合って、7月会合が展望会合で、前回の展望レポートで「見通し通りなら徐々に緩和度合いの調整を行う」って言ってるんだし、そこはさすがのハトハトチキンちゃんも「見通し通りに推移していくなら金利はゆっくりだけど引き上げ」って言っているんですから、7月の展望で見通しを下振れさせない限りは普通に考えて何らかのこと、利上げするのか利上げ予告ホームランするのか、というのはあるでしょって感じだったと思いますので、冷静に考えてみれば5.13事件以降の金利上昇ってこれ「日銀が闇討ちで輪番減額して発生したリスクプレミアム」だったりする訳で、それに利上げ予想の強化とか輪番減額アナウンス前倒し観測が乗っかってきているのですから、普通に日銀が輪番と政策に関して、「どういうロジックで変化させるか」の考え方を明確に示す、しかもその示し方って「確度」だの「基調的物価」だの「インフレ期待」だのというようなお気持ちの入ったふわふわしたものではなくて、もうちょっとロバストな話をしてほしいんですよね。

もちろん経済は生き物ですから状況の変化によってまた変わるのは万やむを得ないにしましても、経済の情勢が変化したのでそれに応じて判断基準が変わった、というのではなくて、日銀の場合は「今までの説明だと今度の政策決定に対して整合性が取れないから新しいゴールポストを出してきて話を誤魔化す」というのをやり続けて来たのが邪悪なんですよね。

まあこの点に関しては実際問題として「これからインフレーションダイナミクスがどう動くのかということが近い過去の日本に例がないからさっぱり分からないのでどう判断すればよいのか非常に難しい」というのがあって、チキン総裁もそれがあるからチキンちゃんってのはあるんだろうなあってのは何となく推測できるんですけど、だったらフォワードガイダンスみたいなことを言わないで「決め打ちできませんゴメンチャイ」って言えばいいのに、やれ「当面は緩和的な金融環境が続く」だの「非常にゆっくりと調整」だの余計な先行き決め打ちコミュニケーションをするのやら、という感じですな。


・・・・・と脱線しまくっておりますが、昨日のBBGの観測記事の内容がまあある程度中の人の考えを反映しているのだとしますと、どうも日銀ちゃん、政策やオペレーションに対する自由度の確保を優先しているようで、いや別にロジカルにやってくれれば決め打ちしなくてもよいのですけれども(むしろ本来は決め打ち不要なんだし)、自由度確保のためにいろいろな屁理屈を手を変え品を変え出してくるという七色の変化球ロジックを続けそうなので、これは6月会合ってあんまり期待しない方がエエンチャウノという感じですよね(個人の感想です)。


あ、あと急に話がワープしますが、今日は6Mの入札があるのですが、今月は各回3000億円の減額となっておりまして、今回の入札4兆じゃなくて3.7兆になるんですよね(明日の3Mも同様に発行減額)。しょぼーん。

6Mとかいう一番中途半端な年限ですが、このテナーの短国って強いときはアホみたいに強いし弱いときはアホみたいに弱いという割と結果がぶれやすい(もちろん短期政策金利のパスが明確な時はそういうことにはならないんですけど今みたいなときはぶれやすい)のでございますが、この入札が1年の方に寄るのか3Mの方に寄るのか、テナーが12月10日とこれまた微妙なテナーなのでどういう結果になるのかちょっと楽しみにしております。


〇輪番減額がすっかりホットイシューになってしまっているのでバランスシートの話をしているボウマン理事の講演でも

日銀の金研国際コンファランスでの講演ですが
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bowman20240528a.htm
May 28, 2024
The Federal Reserve's Balance Sheet as a Monetary Policy Tool: Past Lessons and Future Considerations
Governor Michelle W. Bowman
At the 2024 BOJ-IMES Conference, hosted by the Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan, Tokyo, Japan

『Lessons Learned from Past Uses of the Federal Reserve's Balance Sheet as a Monetary Policy Tool』って小見出しですけど、こちらが『Post-2008 financial crisis balance sheet policy』と『COVID-19 pandemic balance sheet policy』って話をしてて、まあものすごくざっくり言ってしまうとGFCの時のバランスシートポリシーはQEではあるけれども市場安定化策でもありましたね見たいな話をしててて、コロナショックの時はGFCの経験から「勢いが大事」という教訓を得たのでGFCの時よりも盛大に資産買入などの施策をしました、という話をしております。

でまあバランスシート政策の話をしているのですが、最初の方は飛ばしまして途中から参ります。

『The pace of asset purchases during the pandemic period was much greater than in the previous QE episodes. Conditions in the economy and financial system were also different than those that prevailed following the 2008 financial crisis in significant ways. The stabilizing actions taken by the Federal Reserve to restore market functioning and to support financial stability in the first half of 2020, in addition to the much higher capital levels in the banking system relative to 2008, enabled the financial system to remain resilient. Credit continued to be available to households, businesses, and local governments following the pandemic's onset.』

この部分がさっき申し上げた「過去の経験があったのでコロナショックでは勢いよく政策をしました」の部分です。

『The U.S. Congress and the Administration also provided extraordinary fiscal support in response to the pandemic-which included stimulus checks sent to households, expanded unemployment insurance, and the Paycheck Protection Program-that bolstered household and business balance sheets.11 』

これは財政措置の方でやったという形になっているお助けプログラム実施の件ですが、

『The housing market-recently recovered from the buildup of poorly underwritten mortgage debt in the lead-up to the 2008 financial crisis and a subsequent steep decline in house prices-remained in sound condition. And as households and families sought larger living spaces and amenities as they worked from home during the pandemic, house prices increased sharply.』

なぜか知らんが住宅価格を政策効果のメルクマールにして説明しておりますがこの伏線は間もなく回収されます。

『In hindsight, the sharp contrast between the economic and financial system conditions during the pandemic period and those following the 2008 financial crisis raise questions about the similarities in the response of the Federal Reserve and FOMC to these events. 』

でもって以下、後から考えて政府とFEDの対応がどうだったか、といのを考えないといかんよね、と言っていくつかの論点を提示していまして、

『Was such a strong balance sheet policy response during the pandemic appropriate, and to what extent did such a strong balance sheet policy response contribute to the buildup of inflationary pressures and the post-pandemic inflation surge? 』

やりすぎて余計なインフレ圧力を高めたんじゃないか?

『Given the underlying strength in the housing market, should the FOMC have conducted such large purchases of agency MBS into late 2021? 』

住宅市場が強い中で2021年の遅くまでMBSの大量購入する必要があったのか?

『Given the strong fiscal response to support spending by households and businesses and large issuance of Treasury debt, should the FOMC have conducted such large purchases of Treasury securities into late 2021? 』

財政がバカスカ出ている中でFEDは国債買入を2021年の遅くまで続ける必要があったのか?

『I look forward to our conversation today and to future studies on these questions, such as those conducted regarding the effectiveness of balance sheet policies following the 2008 financial crisis.』

でですな、

『My own view is that the FOMC would likely have benefited from an earlier discussion and decision to begin tapering and subsequently end asset purchases in 2021 given the signs of emerging inflationary pressures.12 Doing so would have allowed the FOMC the option to have begun to tighten monetary policy earlier by raising the target range for the federal funds rate. 』

『While a robust and rapid response by the FOMC was appropriate in 2020, I think it is worth asking whether such a robust response for so long was appropriate. The economic and financial system conditions were very different during the pandemic and included a strongly accommodative fiscal backdrop.』

やったこと自体はよかったんだが、そもそもGFCの時は金融システムのバックストップが脆弱だったから安定化が必要だったけれども、そうじゃない状況下で強力な安定化策を長く続ける必要があったのか、ということは考え直す必要がありますよね、と。

『Could the FOMC have reduced its pace of asset purchases earlier once it was clear that market turmoil had subsided, just as the 13(3) emergency lending facilities established in 2020 were allowed to expire and exit plans developed for those programs? 』

エマージェンシーレンディングファシリティの終了の頃にはすでに経済システム不安的なものは終わっていた(から延長しなかったわけだし)のだからそのタイミングでFEDの買入も縮小できたんじゃないのか?という論点もあるわけで、

『A thorough discussion of these questions will be a useful reference for the FOMC and other central banks as they consider future use of QE as a monetary policy tool.』

これですよこれ。いや当たり前の話なんですけど、ちゃんこういうレビューをすることによって、QE政策を将来使わないといけないときに政策ツールとして有効に活用できますよね、って話を思いっきりしている訳で、どこかの中央銀行の多角的レビューみたいにフォワードガイダンスもゼロ金利も国債買入もマイナス金利も長期金利ペッグもリスク性資産買入もなんでもかんでも一緒にして「非伝統的金融緩和は効果があった」とか言ってると将来においてなんの役にも立たないし、挙句にまた将来マイナス金利だの長期金利ペッグだのという狂気の政策をやりだしかねないのですよ、まあ多角的レビューでキャッキャウフフしているハトハトチキンはちょっとボウマン理事の爪の垢を煎じて飲んでいただきたいものです。

『This perspective would be helpful for historical reference when formulating appropriate balance sheet policy as a monetary policy response to future episodes when the conventional interest rate tool is near zero.』

ということですな。次にやらざるを得なくなった時のためにレビューをするのであって、ボクのゼロ金利解除は正しかったしクロダくんのQQEは大変正しかったとかいうためのレビューなら百害あって一利もないわけです。

『Another important difference between the FOMC's balance sheet policy following the pandemic and its balance sheet policy following the 2008 financial crisis was the speed and timing of the subsequent reduction in the size of the Federal Reserve's securities holdings during the period of QT.13』

でもってもう一つの話としてはQE巻き戻しのやり方が前回と今回で違いますって話ですが。

『This difference reflects the larger amount of securities purchases compared to the earlier periods of QE as well as the quite different economic conditions facing the FOMC at the start of QT post-pandemic. These conditions included too-high inflation and a desire by the FOMC to tighten monetary policy through both the federal funds rate and the balance sheet tools』

まあ当然ですが背景となるインフレ状況が違いますねんということをゆうとりますな。

『So far, the rapid and sustained pace of the Federal Reserve's securities runoff has proceeded relatively smoothly. A useful question for further inquiry is to what extent during the post-pandemic period has QT served to further tighten financial conditions.』

なおここからはお前インフレ抑制かなりチョンボしてるのに何ゆうてますねんという感じの話になっているのと時間も押してきましたので、このコーナーの最後まで引用だけしておきます(適当に段落をぶつきりしておきます)

『With the understanding that QT is a tool employed beyond conventional monetary policy restriction, how does one measure the incremental increase above the FOMC's concurrent increases in the target range for the federal funds rate and related forward guidance regarding its policy rate?』

『Evidence to date suggests that QT exerts an independent effect on tightening financial conditions, though in some cases it may be asymmetric to the effects of QE.14 Quantifying the effects of QT as well as QE will be helpful to policymakers in their future deliberations regarding use of the balance sheet in setting monetary policy.』

うーん謎の理屈。

ということで本日はこの辺で。






2024/06/05

お題「BBG砲が出たものの空砲でしたかそうですか/調節年報出ましたね/政策ツールキットを分けてプロコン比較しないのはなぜですかねえ」

なんなのこの二コマ漫画はw

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-03/SEH7SLT1UM0W00
インド株が最高値更新、モディ首相率いる与党連合圧勝の見通し
Alex Gabriel Simon、Chiranjivi Chakraborty
2024年6月3日 10:24 JST 更新日時 2024年6月3日 23:23 JST

『3日のインド株式相場は上昇し、過去最高値を更新。通貨ルピーとソブリン債も値上がりした。投票が1日に終了した総選挙の出口調査でモディ首相率いる与党連合の圧勝が示唆され、投資家はこれを歓迎している。』(上記URL先より)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-04/SEK6IPDWRGG000
インド総選挙、与党が単独過半数割れ−モディ氏は続投の意向表明
Swati Gupta、Dan Strumpf
2024年6月5日 1:08 JST 更新日時 2024年6月5日 2:22 JST

『4日に開票が始まったインド総選挙では、モディ首相率いる与党・インド人民党(BJP)は議会で単独過半数を失う見通しだ。10年にわたり政権を握ってきたモディ氏は与党連合による政権樹立を余儀なくされる。』(上記URL先より)

投票数日前の世論調査とかならともかく出口調査からひっくり返るってどういう出口調査してるのやらwww


〇ブルームバーグがなんか打ってきましたが反応は瞬間芸に終わったようで

昨日の夕方こんなのが
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-04/SEJJB3DWRGG000
日銀、早ければ今月会合で国債購入減額を具体的に検討も−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2024年6月4日 18:20 JST 更新日時 2024年6月4日 19:18 JST

→緩やか・段階的な減額方針の公算大、金利形成を一段と市場に委ねる
→市場動向などを直前まで見極めて判断、大きな変動の回避にも配慮

でまあこれ出たときに債券先物下がってそれまで153円60銭台後半だったかな、まあその辺にいたのが153円40銭レベルに下がっておーとか思ってたらしばらくしたら東京引けの51銭の辺りに戻っててまあそうだよねと思いましたが。

毎度おなじみの謎の「関係者」談ですし、まあヘッドラインの時点で「早ければ」「減額を具体的に検討も」ってんですから、これよくよく考えたら市場での「6月会合でなんか出さないとグダグダが一段と悪化する」という見方が基本的にコンセンサスの意見に違いと思う訳で、6月会合で長期国債買入減額方針を明確化して買入の段階的な減額を行う模様、くらいじゃないと円債市場ちゃんのご所望するレベルにならんのよね。

ということで記事になりますが、

『日本銀行は早ければ来週に開く金融政策決定会合で、長期国債の買い入れの減額についてより具体的な方針を示すことの是非を含めて議論する可能性が大きい。複数の関係者への取材で分かった。』

早ければ是非を含めて議論する、じゃあ遅きに失しているし、まあこの時点で「関係者」とやらがこんな話しかしていないようでしたら、市場のグダグダに対して全然危機感を持っていないというのがよくわかるわ、と思う訳で大丈夫かねと心配になります。

『関係者によると、13、14日の会合では月間6兆円程度の買い入れを継続するとしている現在の長期国債の買い入れについて、減額が適切な市場環境かどうかを慎重に見極める。新たな方針の下で購入を縮小する場合でも、市場の大きな変動を回避する観点から、緩やかで段階的な減額の方向性が示される公算が大きい。』(上記URL先より、以下同様)

もともと「現状程度の買入」であって月間6兆円は脚注だったし、何なら4月会合では声明文の脚注から6兆円文言を落としているのですが、結局この「月間6兆円」がデフォになってしまっているのがそもそも論としてアカン奴だった訳ですが、まあ5/13のわけわからん輪番減額攻撃を見ますと現場に勝手にやらせても碌なことにならないのが(過去のYCC時代の市場介入からも)見え見えなので政策委員会でガシガシに決めてやるしかないと思いますが。

何ちゅうかですね、

『関係者によると、日銀は減額によって金利形成を一段と市場に委ねていきたい意向だ。ただ、減額ペースは米連邦準備制度理事会(FRB)のような厳格なものにはならないとみられ、長期金利が急激に上昇する場合には機動的なオペ運営で抑制する方針は維持される可能性が大きいという。』

まあこの関係者とやらがどこのだれかは知らんのでただの関係者という名前の観客席でヤジ飛ばしてるおっさんなのかもしれませんけど、「FRBのような厳格なものにはならない」の次に出てくるのが「長期金利が急激に上昇する場合には機動的なオペ運営で抑制」と来ているのが、ああ日銀って問題の根っこが分かってないなあという話でして、今問題になっているのは「市場局の裁量」って部分でその裁量の発動基準が全く意味不明な発動のされ方をしているから市場が疑心暗鬼になっている、ということなんですよね。

つまりですね、金利が急騰したら介入が入るくらいは皆さん先刻ご承知の話で、減額ペースを明示化したら介入できないとはだれも思っていないのですから、上記コメントのように言ってる時点で問題分かってないわこいつら、となるわけです。

まあこの「金利急騰時の介入」も1回目を入れるタイミングや入れ方(臨時輪番なのか通常の輪番を増額なのか指値オペが飛んでくるのか)によっては5/13事件と同様な「何だこの発動基準は」という事になってしまうリスクは多分にあるんですけどまだやっていないから一応平和を保っているだけのことだったりしまして、とにかくマーケットドミナントプレーヤーが入れる輪番が突如予見可能性がない形で金額変更になる、というのを回避しろという話なんですけれども、まあ上記ブルームバーグ記事を見ますと、どこの馬の骨だかよくわからん「関係者」が日銀の中の人だとしたら、まあこりゃ大丈夫かよ、ってなってしまいますな。

一時輪番をバカスカ減らしていた時代がありましたが、あの時って基本的にYCCがあったのと、それに加えて「隙あらば減額」というのが明示はされていなかったですけれどもオペレーションとして確立されていて、オペ紙で示されていた訳だし、オペ紙自体も毎月でてたのですよね。

ということはですな、まあそうやりたくないのかもしれませんが、これだけ輪番の曖昧さが問題になっていて、しかもYCCの時と違って金利水準の目安だってないのですから、せめてオペ紙の四半期方式でクソ広いレンジというのを改めて、オペ紙は月次で翌月の数値を出す、レンジ出すにしてももっと狭いレンジにして、金利急騰時は臨時オペ入れますよ、というような感じで(ってこれがベストかどうかは分からんけど)で、「平常時の予見可能性を高めろ」ということでありますな、とアタクシが勝手に思っているのですがどうでしょうか。

まあそういうことで書きながら頭の整理をしているというロクデナシのアタクシですが、どうも「関係者談」を見ますと、市場の「輪番の予見可能性」に関する理解と日銀の中の人なのか知らんけどまあ日銀の中の人と強引に仮定しておきますが日銀の中の人の理解にものすごい勢いで齟齬があって、市場の中の人たちって「平常時に突如訳の分からん輪番の上げ下げが飛んでくるようではまともにマーケットメイクや投資判断ができない」とゆうとるわけでして(と思うんだが)、関係者様の方はどうも金利急騰時の対処の予見可能性の方を気にしていて、それがこういう微妙な話に反映されているんじゃないかなあ、という風に思った次第です、まあBBGの「関係者」とかいうわけわからんソースから話を膨らませているので、そもそものソースがアレだった場合はただの的外れ雑談になってしまいますがその時はアタクシを笑ってやってくださいませwww


〇なお輪番がどうしたこうしたのBBG砲よりもアメリカン金利様の方が偉かった模様

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through
先物価格情報
(日通しで取ると寄り以降は日中含むになりますわよ)

長期国債先物
日通し

限月:24年6月限
取引日:06/05
始値:143.50 (06/04)(15:30)
高値:143.83 (06/04)(23:02)
安値:143.37 (06/04)(18:21)
現在値:143.77(06/05)(05:11)
前日比:+0.26
取引高:26,695

夜間取引は東京の朝6時が引けだったはずなのでこれは引け前ですというのは勘弁して頂くとしまして、安値18時21分ってのが上記BBG砲が出たタイミングなのですが、アメリカン金利が連日の低下を示したらBBG砲が何ぼのもんじゃいということになって債券先物結局のところ月末辺りの徳俵(153円割れ)から怒涛の巻き返しでがぶり寄りという久々に横綱の風格を示して大暴れという図になっておられるようで横綱こえええええと思いました(なんのこっちゃ)。

まあBBG記事もよくよく見ますと「あれ日銀って政策修正する気が本当にあるの??なんか及び腰じゃないのこの記事に出てくる関係者談だと」というお話でもあったりしまして(というのは先ほど申し上げた通りです)、まあ反応が瞬間芸で終わったのもしゃーなしというところでしょうか、知らんけど。


〇調節年報が出たよ(なお読んでない)

https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/mor240604.htm
2023年度の金融市場調節
2024年6月4日
日本銀行金融市場局

これなんで一々頭に(論文)ってつくのかが未だに意味わからんのですがそれはさておき。

全文
https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/data/mor240604a.pdf

紙芝居方式の「概要」
https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/data/mor240604b.pdf

があるんですけど、まあ月初なんぞに出されますと読んでる暇はないので(貧乏暇なし)斜めよみすらしていないのですが、調節年報の仕様として紙芝居の方を眺めただけだと自分に関連するもの(長期債の人なら輪番、みたいな)以外の話ってやっぱり全文と併用して読んだ方が分かりやすいですし、まあ何ならそっちの市場の人に話聞きながら読んだ方が良いと思います。

と読んでない人が言うのもなんですが、まあ年報の読み方のコツってそんな感じだと思うので一応ご参考になれば幸いです。


〇金研国際コンファランスって日銀の3大やらかし政策ツールの話をしてたのかしてないのか分からん件について

ということでアタクシしつこいので金研コンファランスネタですけどね。

https://www.imes.boj.or.jp/en/conference/2024confsppa.html
2024 BOJ-IMES Conference
Price Dynamics and Monetary Policy Challenges
-- Lessons Learned and Going Forward --

これなんですけど、2日目のお題が

Theme B: Effects of Conventional and Unconventional Policy Instruments

ってなっている訳でして、つまりは非伝統的金融政策の個別政策ツールについての効果もそうだがプロコン比較も含めてお話をする、という事だと思うんですよね。

でまあ相変わらずまだハンドアウトが出てこないから(後日出てくると思う)あれなんですが、最後のパネルの部分に関してはこっちにハンドアウト出てきてないけど、どういう話をしたのかはパネリストの方のページに行くとありまして、ってのこの前もご紹介しましたので重複恐縮ですが、

13:55
Policy Panel Discussion II

Moderator:
Markus Brunnermeier, Princeton University

Panelists:
Michelle W. Bowman, Board of Governors of the Federal Reserve System
Thomas J. Jordan, Swiss National Bank
Loretta J. Mester, Federal Reserve Bank of Cleveland
Isabel Schnabel, European Central Bank
Ryozo Himino, Bank of Japan

ジョルダン総裁に関しては
https://www.snb.ch/en/news-publications/news
を見てもそのあと5月30日に韓国中銀の国際コンファランスで行ったスピーチのテキスト(ちなみにその時のお題は『The natural rate of interest (r*) as a reference point for monetary policy - a practitioner's view』しかHPに出てこないので残念無念なのですが、

メスター総裁
https://www.clevelandfed.org/collections/speeches/2024/sp-20240528-forward-guidance-and-monetary-policy-communications
Forward Guidance and Monetary Policy Communications: Use Your Words and Connect the Dots

ということで、非伝統的政策のツールキットに関する話として。フォワードガイダンスとガイダンスもどき物件のSEPでのドットチャートについての話をしております。中身までやってる時間がないのですが小見出しだけ並べますと、

Forward Guidance as a Policy Tool
Challenges to Using Forward Guidance as a Policy Tool
Enhancements to Monetary Policy Communications in Normal Times

とガイダンス政策の話をしていまして、


ボウマン理事
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/bowman20240528a.pdf
The Federal Reserve’s Balance Sheet as a Monetary Policy Tool:
Past Lessons and Future Considerations

ということでバランスシートの話をしているのですが、

Lessons Learned from Past Uses of the Federal Reserve’s Balance Sheet as a Monetary Policy Tool
(ちなみにこの小見出し部分でPDF8ページ分以上あります)
Future Considerations regarding the Federal Reserve’s Balance Sheet Policy

という小見出しですな。


シュナーベル理事
https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2024/html/ecb.sp240528~a4f151497d.en.html
The benefits and costs of asset purchases

こちらは資産買入の話をしておりまして、これがまあ一つミソでもあるんですけどまずは小見出し

Why central banks use asset purchases
How do asset purchases work?
Asset purchases are powerful in periods of stress
Effects of asset purchases are weaker outside crises
The impact of QE on the economy is state dependent
Taking stock of the costs of QE
QE increases the risks of central bank losses
Long periods of QE may adversely affect market functioning
QE poses financial stability risks and may exacerbate inequality
Reversing the effects of QE may take a long time
Conclusion

ということで小見出しが親切設計にもほどがあって何となく何を言ってるのかが分からんでもないくらいの細かさなので思わず読みたくなってしまう(ということで読んで味噌)のですが、シュナーベル理事のこの「非伝統的政策のツールキット」の話でおもろいのは、明示的にプロコンの話をしている(まあそんなに精緻なプロコン分析してるわけではないですけど)のに加え、「最初から最後までマイナス金利の効果と副作用の話はスルー」というのが味わいが深いなと思いました。

でまあ昨日も申し上げましたが、日銀の場合はマイナス金利、長期金利ペッグ、満期のないリスク性資産の大量購入、という品の無い3大悪徳政策を実施した訳ですが、マイナス金利に関してはECBの方がむしろ先駆者なんだからなんか言えよと思うのですが、まあプロコンで見たら碌なもんじゃ無かった、ってことで日銀もマイナス金利やったから今回は触れなかったのかね、とか思いながらこのシュナーベルさんの小見出しを見ると味わいを感じるわけです。

然るに、日銀ちゃんこの前の多角化レビューにおいても弊駄文では30回くらいは申し上げましたように、3大下品悪徳政策も、一般的で他国もやってた非伝統的政策も全部まとめて「非伝統的政策は効果がありました」で済ませているのって何なの、というお話なんですが、逆に植田さんがこの3大下品悪徳政策をぶっこんだわけじゃないんだから、なんでこの悪徳政策のプロコンについての分析をしないのか、ってのが不思議で不思議でしょうがないんですよね(雨宮さんだと「お前がやった政策だろ」と特大ブーメランが眉間をたたき割ってしまうのでよーできんというのはまあ話としてはわからんでもないのですけど・・・・・)。

とまあそういう話で、多角的レビューにしても今回の金研コンファランスにしてもなんでそう過去の政策ツール分析から逃げを打っているのかというのが疑問だな、という昨日の話をさらに焼き直したような話になって恐縮ですが、まあそんなこんなでちょっともにょってしまう今の日銀のスタンスなのでありまする。






2024/06/04

お題「債券市場サーベイは当然改善/内田副総裁の金研講演の中身を読んで勝手に含意を探してみる企画」

〇債券市場機能度上昇ってマイナス金利解除してるので当然ですが・・・・・

https://www.boj.or.jp/paym/bond/bond_list/bond2405.pdf
債券市場サーベイ
<2024年5月調査>

回答期間:2024年5月1日〜5月9日
調査対象先数:71先

(「調査対象先数」は、国債売買オペ対象先のうち調査協力を得られた先、および大手機関投資家<生命保険会社、損害保険会社、投資信託委託会社等>)

ということで前回が2月で、1月の決定会合を受けて3月か4月にはマイナス金利解除あるでという話になっていた時期なのですが、それにしてもマイナス金利だった訳で、さてどうなったかと言いますと、

機能度判断DI(現状) 前回 -29 ⇒今回 -24
(3か月前と比べた変化) 前回 -5 ⇒今回 +7

ということで改善してますよ良かったですねというところですが、マイナス金利解除しても全然変わらなかったら涙出てしまいますので改善してくれないと困ります。

・・・・とは言いましても3枚目の時系列グラフ、『参考図表:機能度判断DI』を見ますと、黒田末期の物価上昇局面&金融政策修正(当初はYCC修正)期待の盛り上がりからおっぱじまった日銀の市場介入開始からバンバン下がって、YCCの最初のレンジ拡大とその後の超越大介入で市場機能度サーベイ値ってボトムを迎えまして、その後足元に向けて戻ってはいるのですが、よくよく見ますとマイナス金利時代の長期国債市場への大介入大会開始前の水準をまだ回復していない、というのが悲しさ満点であります。

これしかも回答期間を見ますと見事に5/13のサプライズ輪番減額の前という計ったようなタイミングになっておりまして、別に示し合わせたわけでも何でもないのは重々承知しておりますが、結果的にあまりの面白タイミングになっている辺り、日銀の伝統芸能が脈々と生きているなあと感心してしまいました(ニヤニヤ)。

個別の方(『(2)債券市場の機能度・流動性に関する各論』)を見ますと、

@貴行(庫・社)からみたビッド・アスク・スプレッドについてご回答下さい。
A貴行(庫・社)からみた市場参加者の注文量について、板の厚み(注)等を念頭においてご回答下さい。
B貴行(庫・社)の取引頻度についてご回答下さい。
C貴行(庫・社)の実際に取引した相手の数についてご回答下さい。
E貴行(庫・社)の概ね意図した価格で取引ができているかご回答下さい。

の各項目が改善しているのですが、

D貴行(庫・社)の取引ロット(1回あたりの取引金額)についてご回答下さい。

が改善していないというのはちょっとだけ気になりました。まあこの時点だとマイナス金利解除したものの輪番も減らないし発行は減るし植田さんは相変わらずのハトハトだし、ということでそもそも論として相場がまだ落ち着いていた時だったので、売買自体をそんなにガッツリとする必要がない時間帯だったということを反映しているだけかもしれませんけど。

まあこれをもし先週にやってたらどうなのかって思いますけど、たぶんスプレッドが拡大して売買のアベイラビリティが下がって、という感じになるんじゃないですかねえ。


〇内田副総裁の金研国際コンファランスの基調講演の中身の方をちょっと読んでみますとですな・・・・

あ、HTML版の本文がアップされていますね、ということで基本的にHTMLから引用します

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240527b.htm
【講演】
わが国における過去25年間の物価変動
日本銀行金融研究所主催2024年国際コンファランスにおける基調講演の邦訳
日本銀行副総裁 内田 眞一
2024年5月27日

なおモノホンはこちらですがめんどいので基本日本語から、英文引用した場合(結局しませんでした笑)はこちらからです
https://www.boj.or.jp/en/about/press/koen_2024/ko240527b.htm
[Speech]
Price Dynamics in Japan over the Past 25 Years
Keynote Speech at the 2024 BOJ-IMES Conference Hosted by the Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan
UCHIDA Shinichi
Deputy Governor of the Bank of Japan
May 27, 2024

とりあえずこの前は冒頭と最後の例の「This time is different」のところだけ読んで「これは植田総裁の冒頭挨拶を思いっきり粉砕に掛かっている鬼講演」という感想を述べさせていただきましたが、あの日の債券市場の反応に関しても植田さんのあいさつでは碌すっぽ反応しなかったくせに内田さんのこの講演出た(のは昼休み)後の後場寄りから債券市場華麗に下落した、という植田さんにとっては無慈悲な反応を示していたのはご案内の通り。

でもって目先の市場というか目先の金融政策修正おかわりに関してはあの講演って最初と最後だけ見てりゃ無問題なのですが、もうちょっと金融政策のロジックについて考える場合は中身も読んでおかないと、ということで時間たってしまいましたが中身の方を鑑賞の巻です。


・原因の原因に言及しないとか途中の政策で「ほかにやりようがあったのか」を言及しないのですね

『2.日本のデフレの原因』って見出しの部分ですけどね。

『資産バブルの崩壊と慢性的な需要不足』ってのが最初の小見出しでして、

『そのためには、まず、1990年代にまでさかのぼって、日本のデフレの原因を探ってみる必要があります。デフレが生じた背景として、実体経済面では、日本経済が、「成長トレンドの低下」と「慢性的な需要不足」という2つの事象を経験した点が挙げられます(図表2)。』

からの、

『そうなった原因は複合的なものですが、最も重要な要因は、1990年代初頭の資産バブルの崩壊だと考えられます。』

というのには全く異論はないのですが、この先って

『バブル崩壊後、金融システムの混乱や、企業部門における痛みを伴うバランス・シート調整のプロセスが生じました。企業は、過剰設備、過剰雇用、過剰債務への対応を余儀なくされました。こうしたもとで、企業は、次第にリスクテイクに慎重になり、新興国の台頭に伴うグローバル化の潮流に対応して、自らの事業展開を迅速に変化させることができませんでした。貯蓄投資バランスをみると、企業部門はこの頃から貯蓄超過に転じました(図表3左パネル)。また、企業は限られた資金の大半を海外投資に振り向けました(図表3中央パネル)。この結果、国内資本ストックの蓄積および労働生産性の上昇率が低下し、潜在成長率が下がりました(図表3右パネル)。』

ってサラサラと説明しているのですが、そもそもバブル崩壊がなぜ起きたかといえばバブルをじゃんじゃん発生拡大させたその前のマクロ政策の行きすぎが問題なのですから、それって資産価格は上がるわおまけに物価まで上がっているのに短期政策金利をゼロ近辺に維持して、財政は垂れ流しという政策を依然として続けている今にだって話が通じる可能性大ありなのに、そこは完全にスルーするのがお茶目ですね。

でまあこの中にISバランスの話がありますが、これとて「企業が貯蓄超過に転じました」なのですけれども、その反対側で財政をバカスカ打っていた訳でして、それが企業の貯蓄超過にマクロ的にはつながっている話でありまして、そう考えると当時財政をバカスカと打ちまくって居たのが本当に適切だったのか(=と書くと財政出すなと言ってるのかとツッコミをされそうなので言っておくと「出すにしてもやりようがあったのでは」という意味ね)というお話になるわけですよ。

この講演もそうなんですけど、多角化レビューのこの前のワークショップでのスタッフ報告の紙芝居でもそうなんですけど、今回って金研国際コンファランスではありますが、内田さんの基調講演のお題が「過去25年」ってなっているから多角化レビューの一環のとりまとめみたいな感じのするお話になっているんですけど、読んでて非常に気になるのは、(1)現象面の説明はしているのですがその間の政策対応に関しての詳細な評価がない、(2)そもそも原因についての考察を敢えてしていないし、人口動態などのいうなれば対処不能な話をメインに持ってきている、(3)1番と同じちゃあ同じですけど、金融政策運営に関しての説明が雑で、本来はツールキットごとに、そのプロコン評価をすべきところを多角化レビューWSでの紙芝居では「非伝統的金融政策」、今回の内田さんの基調講演では「高圧経済アプローチ」で一緒くたにしているというかなり雑なくくり方をしている、というのが気になるわけですよ。

つまりですね、非伝統的政策ったってフォワードガイダンスあり大規模資産買入あり、資産買入の中にも長期国債の他の物の買入あり、加えてマイナス金利があって、長期金利ペッグ政策もあったわけで、この中のツールキットの中でプロコン考えたら結果的に見たら本来やる必要がなかったんじゃないのか、という政策があるはず(まあマイナス金利と長期金利ペッグと満期のないリスク性金融商品の買入ですけどね)なのですが、そういう検討を一切したくありません、という気概が多角化レビューでも満艦飾だったのですが、内田さんのこの講演も物価の話がメインとはいえ、政策に関して「高圧経済アプローチ」(後で出てきます)で一緒くたにして政策ツールの評価をしない、ってのが日銀大丈夫かというか、これ将来に禍根を残す(効いたことにされてまたマイナス金利だの長期金利ペッグだのやられたらたまらんわ、ということですな)んじゃなかろうか、と心配するところではあります。

『こうした中、自然利子率(r*)は、他国対比で、より早くかつより大きく低下しました。よく知られているとおり、r*を計測することは容易ではなく、足元の推計値も、モデルによって、-1.0%から+0.5%の範囲でばらついています(図表4)。ただ、いずれにしても、わが国のr*は低く、かつ、趨勢的に低下してきたことは確かです。そうでなければ、この20〜30年間に起きた事象を説明することはできません。』

まあ自然利子率の話は話として面白いのと、政策先にありきの後付け屁理屈に強力な効果を発揮するという便利な道具でありまして、国際コンファランスで学者相手だからまあこの自然利子率の話はしてくるかなと思えばやはりしておりました。


・労働市場の構造で説明するのはなんかそれ妖刀っぽい理屈ですよね

次の小見出しが『人口減少・高齢化と自然利子率の低下』でして、

『バブル崩壊に加え、人口減少・高齢化もr*の低下に影響した可能性があります。人口動態がr*に及ぼす影響は理論的にも単純ではありません。r*は、一人当たりGDP成長率に関連付けられることが多いですが、労働投入の変化と経済規模の変化が同じペースであれば、人口減少がr*を低下させるわけでは必ずしもないはずです。もっとも、従属人口比率が上昇すれば、一人当たりGDP成長率は低下することになります(図表5)。』

ということで少子高齢化が自然利子率の押し下げに寄与した、という話をして構造問題に持って行っているのですけれども、だったらお前ら2013年に「物価はいついかなる時も貨幣的現象だから金融政策で2%の物価安定目標を達成するのは世界標準の金融政策」とか言ってたのは何だったのかと小一時間問い詰めたい訳です。

『この従属人口比率の問題に対する解決策は明らかで、長く働けるようにすることです。この点、シニア層は昔よりもはるかに健康であるわけですが、2010年代に入るまで、このことは一般的にならず、シニア層の労働参加率は、2012年頃になって、ようやく上昇し始めました(図表6)。その時期、QQEやその他の政策による積極的な経済刺激のもとで、わが国は、バブル崩壊後初めて、人手不足を経験するに至りました。つまり、それ以前は、企業がシニア層の労働力に頼る必要が必ずしもなかったということです。』

って説明しているんですけど、単純に「働かないと生活厳しい高齢者が増えただけ」とかそういう可能性はないのかと思う訳でして、高齢者の労働参加率が趨勢的に増えているのを「金融緩和などの政策による経済刺激によるもの」って単純化して良いんですかねえ、と申し上げたいわけで、この説明も全然ロバストには見えない。(図表6というのは最初のHTMLのところにある図表のPDFへのリンク踏んで見に行ってください)

『ご存じのとおり、日本は高齢化が最も進んだ国の1つです。2019年に日本がG20の議長国を務めた際にも、「高齢化」は優先的な検討事項の1つでした。出席者たちが様々な角度から議論してたどり着いたのは、当然とも言える結論ですが、高齢化の影響は複雑だ、ということでした。シニア層がライフサイクルに応じて貯蓄を取り崩すのであれば、r*は上昇するはずですが、一方で、人々がいわゆる長生きのリスクを強く意識する場合には、若いうちからより貯蓄し、老後も取崩しペースを抑えることになります。私は、人口減少・高齢化自体が問題であると言いたいわけではありません。むしろ、人口減少・高齢化に起因する問題に対して、社会がうまく対応できなかった、あるいは、対応が緩慢であったようにうかがえる、ということです。』

とこのように滔々と説明しているのですが、これって「物価は常に貨幣的現象だから以下同文」と言って「期待に直接働きかけるためにその裏付けとなる異次元の金融緩和を行う」と称してQQEをおっぱじめたことと全然違う話をしている訳でして、いや今更何をゆうてますねんという感じなのですが、

『わが国では、人口問題はネガティブな意味合いで議論されることが多いように思います。企業は、需要サイドに注目して、国内市場の縮小を心配する傾向が強かったですが、一方で、人口減少は労働力の減少も意味します。もっとも、こうした労働供給サイドの含意は、デフレ期には、あまり意識されてきませんでした。これは、企業にとっては、ある意味当然のことで、自社の雇用を過剰だと考えていたからです(図表7青地部分)。この点については、後ほど触れたいと思いますが、ここでは、労働市場が鍵であるとだけ、申し上げておきます。』

ということで「労働市場が鍵」ということで「ワシらのせいじゃないもんね」という話をしている訳で、いまさら何を言い出しておりますのやら、という話ではありますな。


・高圧経済アプローチにマイナス金利だの長期金利ペッグが必要だったのかという点は丸無視ですかそうですか

でまあこの先いろいろとあるのですが時間が無くなってきましたのでかっ飛ばしまして、いきなり『4.デフレ的な状況からの脱出』にワープしますね。

『こうした状況から抜け出すためには、2つのことが必要でした。第1に、デフレのそもそもの原因、すなわち、需要不足とその結果として生じた過剰な労働供給という問題を解決しなければなりません。第2に、メニュー・コストの閾値を超えること、より根本的には、デフレ的なノルムを克服しなければなりません。』

相変わらず「メニューコスト」を一般的な経済学での使い方と違う使い方しているの何なんでしょと思うのですがその辺はかっ飛ばした部分にありますので興味のある方はご覧あれ。

『前者に関しては、QQEやその他の緩和的な金融政策手段が、政府による様々な施策と相まって、経済に強力な刺激効果をもたらし、女性やシニア層を中心に500万人以上の新規雇用を創出しました(図表20)。これらは、基本的には、高圧経済の戦略です。』

でた高圧経済。

『図表21が示す通り、QQEの時期の労働市場では、雇用者報酬の前年比が概ね2〜3%で安定的に推移していました。その内訳をみると、感染症拡大前までは、雇用者数の伸び(青棒グラフ)がけん引するかたちでしたが、その後は、女性やシニア層による追加的な労働供給の余地が限られるもとで、賃金の上昇(白棒グラフ)がけん引するかたちに変わりました。このように、感染症拡大以降、労働市場の構造は変化したと考えられ、この先も賃金は上昇していくとみています。』

というのは良いんですが、この説明って結構雑な話でして、じゃあ裏を返せば少子高齢化が継続していないとデフレに戻ってしまうんでしょうか、ってなもんでして、労働市場の構造が変化したからデフレ脱却という説明は、少子高齢化人口減少を是認しているって言われかねない妖刀の理屈なんですよね。

でもってこの次がまたアレでして、

『また、このことは、裏を返せば、2013年にQQEを始めたときには、日本経済にはまだ大きなスラックが残っていたことを意味します。』

は??

『その当時は、女性やシニア層からこれほどの規模の追加的な労働力が供給されることは、予想されていませんでした。』

おいこらちょっと待て何今更後出しじゃんけんで「僕悪くないもん」になるんだよ。

『もちろん、この事実は、わが国の人口動態についての課題に対処するうえでは、好ましいことです。また、別のタイプのスラック、いわば隠れたスラックとして、顧客に対する過剰なサービスを、企業が無償で提供していたということも挙げられます。これは、個々の企業に雇用面の余剰があってこそ可能になったことです。日本銀行は、10年間にわたって経済に高圧をかけ、ようやくこうしたスラックはなくなっていきました。』

何ちゅう屁理屈という感じですし、そもそも「高圧経済アプローチ」が正しかったとしても、それはQQEやらマイナス金利やら長期金利ペッグやらを行ったことに対して費用対効果を考えたときに正しかったかという設問の回答にはなっていない訳で、通常の低金利政策の長期化(と何なら長期国債の多めの買入)でよかったんじゃないか、という話を丸無視しているんですよねこれ。

それってこの前の多角レビューのWSでの日銀スタッフ紙芝居でもそういうのがあって、「非伝統的緩和」ですべての政策を一緒くたにして効果があった、って説明になっていて、何のための多角化レビューやってるんだよと小一時間問い詰めたいしょうもない紙芝居出しやがってコノヤローと思ったわけですが、この内田さんの説明も政策ツールのプロコン分析を全然しないで「高圧経済アプローチを10年(ふつうそんなに掛からんので高圧経済じゃなくて単に人口減少と一段の少子高齢化による構造変化が効いただけではないでしょうかねえ)かけてスラック解消」とかいう屁理屈も根っこは同じでして、この雑なレビュー何とかしてくださいってなもんです。

まあそんなわけで、これ結局のところ黒田緩和の問題点を指摘する気がない、って話につながる(それこそ今の円安は長期金利ペッグが出口になって起こす弊害なのにそれを絶対言おうとしないのが今の日銀)のですからして、そこがベースにあるとお前ら正常化プロセス大丈夫かってのと、どこかで通貨安爆発しないかってのが不安になって来ますな、というのがこの内田講演のもう一つの含意だと思いましたがどうでしょうかしら。

ということで本日はここで勘弁。





2024/06/03

お題「市場メモ雑感/6月会合の情報発信大事ですね/安達審議委員会見(その2)/吉川先生さすがです」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0934P0Z00C24A5000000/
投資不動産ローン、3年連続増 富裕層の相続対策で復調
金融機関
2024年6月3日 5:00 [会員限定記事]

『相続対策や資産形成への需要の高まりを背景に、一時下火になっていた個人向け投資用不動産ローン(アパートローン)が再び伸びている。2023年度の国内銀行の新規貸出額は3兆円を超え、3年連続の増加となった。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほうそうですかそうですか。

『大都市部を中心に価格上昇が続く不動産市場の活況を映しているが、今後金利が上昇していけば貸し出しが鈍り、不動産価格にも影響を与える可能性もある。』(以下の部分は会員記事)

えーっとすいません、日経新聞様におかれましては不動産価格高騰は続くべきなので金利が上昇するのは罷りならんとでも言いたいのでしょうかこの表現ですと、と記事全文を読まずに悪態を書いているアタクシなのでした、


〇金曜日の債券とか短国とかそのへんの備忘メモと雑感

・うーむ金利上がっちゃうのか(海外で戻ってくれましたが)

あ、ちゃんと[マーケットアイ]を入れてくれましたね(なぜなら毎度マーケットアイで検索しているから)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/GST3DTBCY5OCLCJEW4KPUYZLOE-2024-05-31/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落、長期金利1.07% 超長期債金利に上昇圧力
By 坂口茉莉子
2024年5月31日午後 3:21 GMT+9

『[東京 31日 ロイター] - <15:13> 国債先物は反落、長期金利1.07% 超長期債金利に上昇圧力

国債先物中心限月6月限は、前営業日比21銭安の142円99銭と反落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.5bp上昇の1.070%。現物市場で超長期ゾーンを中心に金利上昇圧力がかかった流れが波及し、国債先物は弱含んだ。』(上記URL先より、以下同様)

木曜は2年国入札の前に前場から10年1.1%とかやってたらさすがに反動が来まして、ついでにアメリカン金利が下がって戻ってきたから金曜は輪番あるしエクステンションあるし、とか思っていたのにこれである。

『前日の米長期金利が4.55%付近まで低下した流れを引き継ぎ、国債先物は小幅高で始まった。その後、現物市場で超長期ゾーンを中心に金利が上昇。これを受けて、長期ゾーンも金利上昇圧力がかかったほか、国債先物もマイナス圏に沈んだ。後場に入り、超長期ゾーンは一段と金利が上昇。「業者のポジション調整が入ったようだ」(国内証券債券セールス担当)という。ただ、同時に「月末の年金勢による年限長期化の買いが入ってきているとみられ、相場は下げ渋っている」(同)との声が聞かれた。』

輪番の長い方がいまいちで後場になってからホイホイと売られましてなんのこっちゃという相場になっておられた訳ですが、日銀の政策先行きが不透明だの輪番が不透明だの、とかいうのが後講釈的にはネタになっているのですが、さすがにどこまでも売り(というか買い控え」をこのネタで引っ張るのはどうなんでしょうかねえとは思うのですが、日銀の政策がどうしたこうした、というのが買い控えの言い訳に使われているなあと金曜は短国の結果とかも見てても思ったりする次第なのですが、先週末にネタにした安達審議委員の記者会見での発言などから類推にするに、日銀大本営ちゃんってオペの機動性とか自由度に固執しておられるなあ、というのが見て取れまして、うーんだからそれが買い控えを招いているんだよな、ってのに対する認識が足りんのとチャウのかとは思ってしまいます。


・一方で3M短国は今回もまた先週より強いという恐ろしい結果

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240531.htm
国庫短期証券(第1234回)の入札結果

『本日実施した国庫短期証券(第1234回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。


1.名称及び記号       国庫短期証券(第1234回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日   令和6年6月3日
4.償還期限  令和6年9月2日
5.価格競争入札について
(1)応募額          15兆6,754億8,000万円
(2)募入決定額        4兆4,040億4,000万円
(3)募入最低価格        99円99銭0厘5毛
(募入最高利回り)        (0.0381%)
(4)募入最低価格における案分比率 15.7949%
(5)募入平均価格        99円99銭2厘1毛
(募入平均利回り)        (0.0316%)』 

ということでですね、金曜の3Mなんですが3.16bp/3.81bpという結果になったわけですが、

31日の3M(1234) 3.16bp/3.81bp(9/2足)
24日の3M(1233) 4.01bp/4.21bp(8/27足)
17日の3M(1232) 4.13bp/4.81bp(8/19足)
10日の3M(1230) 4.76bp/5.35bp(8/13足)

ってな訳で、3M(13週間物)なので後に行けば行くほど7月会合跨ぎ以降の時間帯の方が長い、という債券になっているのに、7月利上げ観測が何ぼのもんじゃいという金利低下を毎回示していまして、特に24日に関してはショートカバー祭りになったのか入札当初は2bp割れの引値とかになったりしまして(後述しますが先週金曜のはそこまで引けでは行ってないです)、担保ニーズの玉とかも含めて皆さん金利リスク取りたくないでござるの巻で2年すら要らんわ短国じゃ短国、ということで短国に来るもんだから(という理解なんだが違ってたらゴメンチャイ)短国の金利だけは利上げ織り込みが剥落してきているようなお値段になっているのですが、これはまあ短期金利と勝負しているわけではないニーズによって強いんだからシャーナイというものです。


なので売参ちゃん見ますと、
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

国庫短期証券1211 2024/08/13:平均値単利 0.030
国庫短期証券1230 2024/08/13:平均値単利 0.030
国庫短期証券1232 2024/08/19:平均値単利 0.030
国庫短期証券1176 2024/08/20:平均値単利 0.037
国庫短期証券1233 2024/08/26:平均値単利 0.030
国庫短期証券1234 2024/09/02:平均値単利 0.030
国庫短期証券1236 2024/09/09:平均値単利 0.030(今週金曜に入札される3Mの新発WI)
国庫短期証券1217 2024/09/10:平均値単利 0.055
国庫短期証券1183 2024/09/20:平均値単利 0.055
 
1年短国の成れの果て(1176と1183)と6か月短国の成れの果て(1217)の単利が3M短国から引いたカーブから見てナンジャソラで一応売買参考統計値と名乗ってるんだからもうちょっと何とかならんのかとは思うには思うのですがそれはまあさておきまして、今の短国ちゃん、基本的に足元から3Mカレントまで売参ベースでは3bpで並んでいて、7月決定会合とか全く無関係という面白カーブになっている訳ですが、短国で毎週どばーっと発行されているの3Mなので、この利上げ何ぼのもんじゃい状態を引き起こすのは短国への物としてのニーズが強い即ち資金がドンドン疎開してきているというわけですので、日銀がちゃんとした予見可能性およびロジカルな政策金利パスの考え方や輪番に関する考え方を示して、いま疎開ブーム状態になっているのの反動来ないですかねという話になるんですが。

ああそれからどうでもよいのですが売参の利付の方

中期国債 438(2) 2024/07/01:平均値単利 0.064
中期国債 439(2) 2024/08/01:平均値単利 0.073
中期国債 141(5) 2024/09/20:平均値単利 0.088

・・・・・・まあこの辺の銘柄は短国対比流動性全然ないのは存じ上げておりますし、2年や5年の金利が上昇しているからということでカーブ引くと引っ張られてしまうのも分かるのですが、いやあの売買参考統計値を名乗っている以上はもうちょっと短国との整合性というものを考えて頂いたほうがよろしいんじゃなかろうかと思うのですが(ここもと中期がよわよわなのでカーブ上引っ張られてしまっておられるんですよねえ)。


まあ何はともあれ、短国引き続き(長いところから見た場合の)金利リスク回避の人気を集めておられる、と思われるムーブを示しているのが(そりゃ10年20年とかから見たら金利リスク無いようなもんですから足元金利との勝負の短期の人から見たら太刀打ちできませんわこのムーブ)かなり露骨に見えてきておるわけでして、これこの後雑感っぽく書きますけど、6月の金融政策決定会合での情報発信って非常に大事になっている(正直アクションの方はどうでも良くて情報発信が大事だと思うの)んじゃないのかね、って思います(あくまでも個人の感想です)。


なお東京レポレートちゃんですけど。
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html

2024/5/29 0.047 0.051 0.057 0.058 0.058 0.058 0.083
2024/5/30 0.039 0.033 0.055 0.058 0.058 0.057 0.083
2024/5/31 0.018 0.071 0.056 0.058 0.057 0.057 0.085

月末月初が先月は3日あったので、ただでなくさえ月末要因下がりやすいに輪をかけて末初のGCレートが下がったのですが、一応東京レポレートベースでは月末明けのレート上がったことになっておられますな。まあ3Mあれだけ堅調だとマーケットメーカーの持ちにあんまりなっていない気もせんでもないのですが、まあ今週は6Mもありますのでどうなんでしょうね、とか言っているうちに地味に3Mは8.5bpですかそうですか。


〇オペ紙は順当に前月と同じになりましたのですが決定会合でのコミュニケーションだいじだいじネー

みんな大好きオペ紙
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/mpr240531c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定
(2024年4〜6月)[一部変更]

1年以下: 1500×1    (前月1500×1で変わらず)
1-3年:  3000-4500×4 (前月3000-4500×4で変わらず) 
3-5年:  3500-5000×4 (前月3500-5000×4で変わらず)
5-10年  4000-5500×4 (前月4000-5500×4で変わらず)
10-25年: 1000-2000×3 (前月1000-2000×3で変わらず)
25年超: 500-1000×2 (前月500-1000×2で変わらず)
物価連動: 600×1    (前月600×1で変わらず)

ということで今回はレンジ変更なし。5-10年の買入は4250なのでレンジの中央よりも低い数字になっていたのですが、追認でレンジを変更することもなく、という結果になりましたが、まあここで5-10を中心4250になるようにレンジいじってきたら流石にそれはインパクト大杉栄になりますので、そらいじらんわというのがコンセンサスだったと思うのでコンセンサス通りだったと思います、知らんけど。

・・・・・・・でもってオペ日程的には6月会合まで2回、会合後に3回ってな日程になっていてこの前札割れしてた1-3年の買入は7日と12日に入っていますが、これ7日の輪番で1-3どうするんでしょうかねえ。

需給状況を勘案したら、という意味ではこの前の1-3が札割れなんですから減額しても全然おかしくないというか、減額しないと逆に10年なんでこの前減額したのって話になるのですが、まあ謎ですわな(たなたま札割れした程度で一々減額することはあろうかいやありません、という考えにも百理くらいあるので)。


まあそれはそうとしてさっきの雑感の続きなのですが、とにかく足元で「日銀が何しでかすかがまるで読めない」というのを大義名分にして、というか何しでかすのか分からん状態の日銀がいるのにそんなときに金利リスク取って逆行ったら末代までの語り草になってしまいかねませんからねえ、という事で金利リスク回避の面々が多いと思われる状況なのですから、とにかく輪番にしろ政策金利にしろ、もうちょっとこう筋道立ったロジックで動いて頂く、輪番の減額に関してもできるだけオートパイロットに近いような考え方、というのを出していただかないといつまでたっても「金利リスク回避ムーブ」が収まらないと思うのですよ。特に木曜にさすがにコツンと行ったかなと思ったら(抜けはしなかったけど)結局また金利上がったりするのを見ていますと(つまり根拠はワシの感覚でしかありませんけどねwwwwww)。

なので、今月の決定会合ではその辺のコミュニケーションの立て直し必要なんですが、輪番に関しては結構微妙なところがあって、例えばの話今月の会合で今後の輪番を基本オートパイロットの減額で行けるんだったらよいのですが、そうじゃないとなって7月は7月で利上げ、みたいな話になりますと、輪番に関するアナウンスが金利政策とリンクする、ということになってしまって、もともとの話(輪番は金利の上げ下げという金融政策のメインとは別で考える)と違ってくるので、実は今月の会合って輪番の話をしにくい面もあって、中々困るんですな。

まあそう考えますと、輪番オートパイロット減額のアナウンスができればベストですけど、それは無理っぽいとなれば、輪番についてなんか触るよりも、7月会合の利上げ予告ホームランを比較的露骨に入れた方がまだ無難なのかもしれませんね。

いずれにしましてもある程度予見可能性を高める、データディペンデントで出たとこ勝負になるにしたって、そもそもその出たとこ勝負の判断基準が黒田末期以降コロコロと変わっている(最初はコアコア物価でしたが、その後賃金とか言い出して、そのうち持続的な賃金上昇とか言ってるとおもったら、好循環とか言い出すわ第一の力第二の力とか言い出すし、しかも目標達成の確度とかお気持ち満開の判断基準になる、というようにご都合主義でコロコロと判断基準を変えていた訳ですな)ので、まあ政策調整を行う判断基準に関してのコミュニケーションは既に破綻しててどうしようもない説は結構ありますけどね。


〇安達審議委員金懇会見ネタの続き

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240530a.pdf
安達審議委員記者会見
――2024年5月29日(水)午後2時30分から約30分
於 熊本市

金曜は輪番の質疑だけしかネタにしなかったのでその他のトピックにつきましても。

・為替について「長期化すれば対応」を言ってるのだが腰が定まっているかというとそうでもなさそう

ご案内の通り、今回の金懇では経済物価情勢や金融政策の話をする前にわざわざ為替の話をおっぱじめる、という謎プレイがあったので当然為替についても質問されるわけでして、こちらの質問は本文3ページ(本文のページのPDFの枚数は同じです)にあります。

『(問)二点お願いします。今日の挨拶の中で為替についても言及されてますが、この足元の円安が金融政策を変えるまでの影響を物価には及ぼしていないとお考えか、ちょっと改めてお考えを伺えますか。(後半割愛)』

『(答)まず為替レートにつきましてはですね、具体的にどの水準が良いとか悪いとかという水準感に関しては、コメントは差し控えさせて頂くということで、』

まあいつものことなんですがわざわざ金懇挨拶で為替の話ぶっこんでいるのにコメントしないってのも何なんですかねえとは思うのですが、この先が中々でして・・・・・・・

『将来の物価に関する影響が今そんなに出ないのかどうなのかという話なんですけども、この今の状況がもし長期化するならば、当然出てくるはずですので、』

ここはほうほうと思いましたが、と申しますのはこれまでの植田さんとかの説明だと「為替の円安で物価が上がるのは一時的な話、なぜなら為替が無限に円安になるわけではないので前年比で見た影響はワンタイム」という理屈を捏ねておった訳ですけれども、冷静に考えてみれば為替で上がった物価って逆に下がる要素が為替が逆に行かない限り無い訳で、それって物価の「水準」自体を変えている話なんですけど、大本営の理屈は必ず「前年比」の話にしてしまって水準の話をしない、というのが仕様だったのですが、上記のように「長期化すれば影響が出て来る」という言い方になっているのですな。

『それは実際の統計なりですね、あとわれわれ企業の方々を中心にヒアリングする機会もありますし、あと短観等のサーベイ調査もありますので、その辺で具体的にやはり影響が、このまま続くと当然出てくる可能性がありますので、出てくればそれはもちろん対応しますし、』

ということでして、何か知らんけど円安が長期化して定着したら物価に影響が出て来るかもしれないので対応する、とか言ってるのは従来の「為替が物価に与える影響はワンタイムだからそれで直接政策はいじらないよ、基調的物価に影響するなら別だけど」というのから円安対応に一歩踏み込んでいる訳ですな。もちのロンですがこの次に、

『今の動きが、それに向かって動いてるかどうかというのは、これは当然注視していかなければならないので、現時点で影響ある、ないという話はできないというふうに考えております。』

という結論になっているので、今すぐ対応する訳ではないのですけれども、今回しれっと「為替の状況が長期化するようなら対応の可能性も」ということで、これまでの説明からそこそこ踏み込んでいまして、しかも安達さんとかいう大本営のホーンスピーカーがこれを言っている、というのは結構味わいあがると思います。


・・・・・・なお、ここで注意しておきたいのは、今回の大本営もとい安達さんの表現はあくまでも「物価に」影響がある、と言っているだけというのが曲者でして、最近前面に出している「基調的物価すなわち第二の力ガー」という説明からしますと、本来は「基調的物価に影響がある」のであれば対応するし、そうじゃないものは全部ワンタイムだから対応しない、というのが本線であります。すなわち「物価に影響があるなら対応」ってのも実は説明としては例の基調的物価ガーからすると変な説明になっていまして、これって後になってから「基調的物価に影響を与えている訳ではないのでやっぱり対応しなくても良いですねテヘペロ」とか言い出すリスクがあるんですよね。まあ安達さんだってそこ分かって「基調的」を使わないで答弁しているんですよ。

ということでその点は留保しておいて、単にこれが足元の円安牽制のためにお為ごかしに言っているのか、それとも円安対応(とは正面切って言わないけど)で何かしなきゃいけないという認識の元に話をしているのかは決め打ちしにくいな、と思いました。

・・・・・・・・・・というのは後の方(4ページ)の質疑でですね、

『(問)(前半割愛)もう一つは円安についてなんですが、やっぱり長期化すると当然物価の方に影響が出てくる。あと今回の講演でも状況によってはその度合いの、利上げによって度合いのペースを速める可能性があるっていうふうにおっしゃられていますが、やはり今、先ほど現時点で為替は判断できないとおっしゃられていますけども、やっぱり円安基調がずっと続いている状況を踏まえると、こういった度合いを早めるということに関しても、しっかり考えていかなきゃいけないというふうにお考えでしょうか。』

と踏み込みの更問が来ました。これに対しての回答ですが、最初前半の部分だけしか回答してなかったもんでもう一度質問の巻になって、

『(問)円安が進んでいますけれども、結構押し上げられていますけれども、早める必要性は。 』

と質問が簡単になったので安達さんすかさず

『(答)それは実際のインフレ率とかですね、あとわれわれは最近基調的な物価上昇率と言ってますけども、例えば予想インフレ率の長いところが、上振れたりとかということがもし状況として出てくれば、それは考えるということであります。 』

と簡潔に回答の巻いうことで、しかもここではさっき言ってなかった「基調的物価」を出して誤魔化している訳ですな。さっきの所では円安が長期化したら対応の可能性がある、ってのをプンプン匂わせていたんですが、こうやって更問されるとしれっとトーンダウンしておりまして、まあさっきの回答がちょっと言い過ぎだからメモかブロックサインでも飛んできたのかどうかは分からんですけれども、さっきの質疑応答からはトーンが後退しているのが見て取れますね。


・政策金利に関しても結局どうしたいのかの腰が全然定まっていないのは伝わりますな

為替に関しては上記のような感じ、輪番は金曜にネタにした通りで、では政策金利はどうなのでしょうかと言いますと本文5ページに質疑がありまして、

『(問)(前半割愛)二点目なんですが、そのうえで総裁は物価の上振れリスクが高まる場合に政策対応も考えるというふうにお話されてるんですけども、安達委員も先ほど円安により早期の物価加速のリスクもあるような話もされておられまして、来月にMPMあるわけですが、ちょっとそれはあれとしましても、将来の急激なですね、引き締めに晒されるリスクについて、早めに対応すべきなのかどうか、その点について今、安達委員どのようにお考えか、よろしくお願いします。 』

これは良い質問ですね。では回答。

『(答)(前半割愛)二つ目の話としてはですね、今、物価安定目標に向かってというか、持続的・安定的な物価上昇がもう実現する世界に入ってしまうと、政策金利は理論的にはいわゆるテイラールールみたいなかたちで運営をしていくことになると思うんですけども、』

お、まともな話になっているので期待期待。

『そこの状況、実際に本当に 100%実現するという世界になるまで、例えば現状の0.1[%]を維持して、実現した瞬間にじゃあ 2%にポンと飛ぶという政策判断は、そこまでの急激な利上げっていうのは、逆に経済を傷めてしまうわけなので、それは避けなければならないということです。』

でですね、この次がまた重要でして、

『2%を実現してからもゆっくりとしたペースで利上げをすると、これはインフレ率が上振れる可能性が出てくるわけですので、』

はいそうですよね。なんか今までの植田さんの説明だと「待つことのリスクは大きくない」だったのですが、待つことによって上振れのリスクが生じるって言ってるので、これは昨年5月の内外情勢調査会での植田さんの主張をやんわりと否定(強く否定ではない、という意味ね)している事に他ならないんですよね。

『消去法としては非常に緩やかなペースで、これは景気の状況とかをみながら段階的に調整していくというのが、多分、今の時点では最も蓋然性が高いといいますか。』

ってことでまあこんな説明しているんですけど、じゃあこの「非常に緩やかなペース」って何の事じゃいという話になる訳でして、この前の展望レポートの説明だと見通し期間の終盤前には2%物価目標達成しているというはなしになるんですから、であれば本当は半年に25bpでは遅くねえかという話でもありますが、まあ結局近くなってから利上げペースを上げていくことになるんじゃないでしょうか(物価が強いのが続けばの話ですが)ということかと。しらんけど。

『ただ、前提としては、やはり順調に基調的な物価上昇率が上がっていって 2%に向けて着実に上がっているという状況のもとでは、非常にゆっくりとしたペースで金利を調整していくというのが一番適しているんじゃないかなというのが私自身の見方です。』

非常に緩やかなペースで、のあとに非常にゆっくりとしたペースで、と繰り返していますが、今申し上げたようにそもそも論として例えば2026年の後半には物価目標達成してて政策金利は中立的な水準にあって然るべき、となったらその「非常に緩やか、ゆっくり」では間に合わない筈なんですよね。

『ただ、それは非常に、いつ実現する状況が 100%確定するかというのが、今のところまだその 100%になる時期というのは見通せない状況ですので、だったらその次もやるのかとか、やらないとかというような具体的な政策論にするにはまだ話は早いのかなということで、非常にちょっと曖昧模糊としてますけども、やり方としてはそれがいいんじゃないかなというふうに考えているということです。 』

いやそれやり方でも何でもないじゃん、と思う訳ですが、この引用部分の説明が最早何が何だか良く分からない混乱状況という感じでして、これは即ち大本営におかれましても先行きの政策金利をどうしていくべきなのか、という点について腰が定まっていないというか泡吹いているとかまあそんな状況なんだろうなあと想像しました。

ただまあ非常にゆっくりした云々とは言ってますが、物価目標達成の時分には中立金利に近い所になっていて然るべき、という認識を出している訳ですので、そこから考えたら少なくとも今ってアホのように超緩和的なのは「見ればわかる」状態なのですから、そう考えますとやっぱり10月展望まで今のゼロ金利状態、ってのは如何なものかという話になるんじゃないですかねえ、知らんけど。


・ターミナルレートの質疑の中でしらっと「2%物価目標が妥当なのか問題」を喋っている安達さん

この質疑、まあそもそも中立金利が何ぼかというのは政策の正当性を言い張るための方便だとアタクシは思っている(個人の偏見です)のでそっち自体はどうでもいい話ではあるんですけど、ということで本文6ページ。

『(問)あともう一点、ちょっとややばくっとした質問で恐縮なんですけれども、最終的な利上げのいわゆるターミナルレートっていうのは、どのぐらいの水準にあるのかというふうにみてらっしゃるのかっていうのを、もしお考えがあれば教えてください。 』

『(答)そこはですね、私はまだ全然そのイメージがないという状況でして、これは最近ちょっとそういう話というのは、いろんなところで聞かれるようになってきましたけども、望ましいインフレ率+中立金利で名目の政策金利という関係だと思うんですけども、それを多分考えるためには、最終的に物価安定の目標が実現したときの実体経済の絵を描かないといけないわけですけども、』

まあそれはそうなんですが、

『そこが例えば人口動態とかそういうのを考えると、かなり潜在成長率が低い世界、潜在成長率がそのままイコール中立金利ではないんですけども、大きなウエイトを占めているので、』

という所から段々味わいのある話になって来まして、

『すると、非常に低い中立金利に 2%のインフレ率が乗っかる世界なのか、それとも、例えばデフレ以前の世界に戻るというふうに考えると、90 年代前半ぐらいの潜在成長率に日本経済は戻らないと、2%の物価安定目標実現は無理だというふうに考えると、もうちょっと高い金利になるわけですけども。どっちの世界が実現するのかとか、どっちを目指すのか、これは政府の経済政策との絡みもありますけども、ちょっとまだ私自身ちょっとそこは整理しきれてない部分があるので、そこのターミナルレートが何%かということについては、ちょっと私はまだ具体的な意見は持ってないというのが現状です。』

これ話の切れ目がないから切りにくくてゾロっと引用してしまいましたが、どさくさに紛れて安達さん「潜在成長率が非常に低い状態では2%の物価安定目標の実現が無理という可能性もある」というニュアンス(無理と決め打ちしている訳ではないですよ為念)の発言をぶっこんでいる訳ですね。

いやあのすいません、物価安定目標の2%って北極星みたいなもんでこれは経済の状況がどうのこうのとか関係なく目指すもの、というのが黒田以降の日銀のスタンスだし、置物一派もそういう触れ込みで説明していたと思うのですが、何かいきなり真人間になったような説明になっていまして、いや安達さん何か変なもんでも食ったのかよと思ってしまいましたが、なんと経済の構造次第ではそもそも2%の物価目標ってのが適切じゃない可能性があるというニュアンスの発言してるのには結構たまげました。

というのがこの部分の趣旨でして、ターミナルレートはまあどうでもよいのですが折角引用しているので最後まで引用しますねこの応答。

『まだ多分そこまで行くには、かなりのやっぱり距離があると思いますので、そこは現実的な調整をやる時間というのがありますから、そこの時間的な猶予の中でですね、考えていきたいなというふうに思っております。 』

とまあそういうことでありますが、2%物価目標が経済の構造からみた時に本来目指すものなのかというような事について可能性として挙げているだけであっても、こういうのが安達さんなのか大本営の代弁なのかは知らんけど出てきているというのは大変に味わいの深いものを感じました。


〇吉川先生と山口(廣秀)元副総裁がしれっと強烈なものをぶち込んでおられる件について

https://www.nikko-research.co.jp/release/13803/
理事長室研究レポート「物価とインフレーションのメカニズム」を公表

『当社理事長室では、研究顧問の吉川 洋 東京大学名誉教授、理事長の山口 廣秀、前室長代理の阿部 將の3名の共著として、研究レポート「物価とインフレーションのメカニズム」をまとめた。本レポートでは、2020年以降の日米欧の物価動向を整理し、物価の決定とインフレーション発生のメカニズムについて、経済理論を基に跡付けている。』(上記URL先日興リサーチセンターさんのHPリリースより引用、以下同じです)

とありまして、サマリーですけれども、

『サマリー

世界経済は、2020年以降低インフレから本格的なインフレの時代に突入した。こうした物価上昇の背景を探るため、2020年以降の日米欧の物価動向を整理すると、いずれも国際的な資源・穀物価格といった国際商品市況の上昇が、川上、川下といった連関を通じて、消費者物価に波及している。また、賃金の変動も、生産コストの変動を通じて物価形成に影響を与えている。こうしたことを踏まえると、最近の物価の研究でみられるような、「人々のインフレ予想」が物価を決定するということではなく、物価はあくまでも一次産品の価格や賃金といった生産コストと、企業の利潤であるマークアップ率によって決まると考えられる。』

てな訳で、「最近の物価の研究でみられるような、「人々のインフレ予想」が物価を決定するということではなく、物価はあくまでも一次産品の価格や賃金といった生産コストと、企業の利潤であるマークアップ率によって決まると考えられる。」ということでこれはまた強烈なのをぶっこんでこられました。

ということで、本文の方は
https://www.nikko-research.co.jp/wp-content/uploads/2024/05/2024_article_01.pdf

にございまして、前半が根治物価上昇局面におけるファクトの整理、後半が「物価の決定に関する経済理論」という見出しで始まっていますが、実に仰せご尤もな上に、インフレ期待がどうのこうのという理論を一刀両断しておりまして、その流れで某どこぞの誰かさんがものすごい勢いでフルボッコにされていて実に心が温まるのではないか、と存じます。御用とお急ぎでない方は是非ご一読を(別に回し者ではありません)。