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2023/11/30

お題「審議委員の金懇2営業日連続攻撃ねえ/輪番同額でしたね/ウォーラー理事の講演を追ってみました」

どうしてこうネタが出るときには同時多発で出るのかと小一時間問い詰めたい。

〇「2日連続で審議委員の講演を行う」という形式になっているのがそもそも・・・・・・・

昨日は安達審議委員の金懇でしたが、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko231129a.htm
わが国の経済・物価情勢と金融政策
愛媛県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 安達 誠司

本日は中村審議委員の金懇が予定されていましてですな、
https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
今後の講演・挨拶等の予定
    日程   講演者等    講演内容等
2023年11月30日 中村審議委員 兵庫県金融経済懇談会における挨拶

今回もまた2日連続で金懇が実施されるのですけれども、

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/index.htm
講演・挨拶等 2023年

3月からこの方、ヒラ審議委員の金懇って2日連続で実施、というのが通例になってしまっておりますが、例えば2019年だと、

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2019/index.htm
講演・挨拶等 2019年

金懇の場合は講演の頭に挨拶ってのがありますが、ちょっと見れば分かるように2日連続というのは基本あんまり多くは無かった(というか2019年だと無かった)んですし、

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2022/index.htm
講演・挨拶等 2022年

昨年だって日程接近している金懇は時々入っていますが、ゆうて今年のように毎回2人が連続して話をするとかいうようにはなっていなかったですわな。

金懇って基本的に各審議委員が年2回(今回の中村さん割とタイミングが早いのですが)実施するものなので、ヒラ審議委員が年に2回実施するとちょうど月1回のペース、ということになる訳で、そらまあ盆暮れとか期末期初とか決算発表時期とかそういう繁忙期は避けるとかいうのはあるにせよ、ある程度分散して実施することによって日銀の考えのアップデート、各審議委員独自の見解などを公表する、というコミュニケーションの場になっていますし、しかも金懇の場合は各地域の経済を代表するような方々との双方向のコミュニケーションをする場ですし、金懇後には記者会見まで付いているのですから、これは日銀からの情報発信と共に「双方向のコミュニケーションをする機会」ですわな。

でもって今年になってからこの双方向コミュニケーションの頻度を事実上減らす、という手段をぶっこんできた、というのは明確であって、つまりこれは日銀としては「双方向のコミュニケーションはやらん」というスタンスになっておられる、とまあそういう事だし、おまけに最近はメディアを使った謎のコミュニケーション(当然ながら日銀からの一方通行コミュニケーション)にはご熱心ということでして、デフレノルムからの転換(をするかもしれない)ということで物価情勢が極めて重要な局面で、金融政策運営に関しても極めて重要な局面だというのに、今年に入って殊更に双方向のコミュニケーションの機会を事実上減らす、という事をしているわけでして、まあこの人達「民は寄らしむべき知らしむべからず」っていう有司専制にも程があるスタンスでこの重要局面を運営して行こうっていう舐め腐ったスタンスだと断じざるを得ない訳ですよ。

まーどなたがこの舐め腐ったスタンスを主導されているのか存じ上げませんが、まあそのスタンスがふざけ切っている上に肝心の経済物価見通しを馬鹿みたいに外して政策運営をしてて政策ロジックも支離滅裂というのですから、つける薬もありませんわという感じでございますな。


なおアタクシと致しましては宦官趙高が鹿を連れてきてこれは馬ですって言ったら「そうですね馬ですね」といって賛成するような方の「主張」については優先処理が行われないというのがマイ仕様になっておりまして、FED高官発言ネタの方が重要なので後回しになりますので今日は涙を呑んで(ないけど)はパスします。



そういや話はワープしますが、連続で謎の勝負をかけていた日経新聞電子版の三部作、三回目はこれ金融政策直接ネタじゃなくなりましたかねw

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB261PQ0W3A121C2000000/
メガバンク、金利復活へ企業と交渉 貸出金利は上がるか
異次元緩和 近づく出口
金融政策
2023年11月30日 5:00 [会員限定記事]



〇輪番減額しなかったら債券市場ガッツリ上昇(米金利低下もありましたけど)とな

昨日の輪番
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of231129.htm
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,500 2023年11月30日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 5,250 2023年11月30日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2023年11月30日
国債買入(物価連動債) 600 2023年11月30日

昨日は輪番は前回と同額(物国は元々の確定額)だったのですが・・・・・・・・

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/QF3CB5AL4RMWRJODRDB34S5DG4-2023-11-29/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続伸、長期金利0.675%で2カ月半ぶりの低水準
ロイター編集
2023年11月29日午後 3:25 GMT+9

『[東京 29日 ロイター] -   <15:18> 国債先物は大幅続伸、長期金利0.675%で2カ月半ぶりの低水準 

  国債先物中心限月2月限は前営業日比77銭高の146円62銭と大幅続伸して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同7.5bp低下の0.675%と、9月8日以来2カ月半ぶりの低水準。米金利の低下や日銀の国債買い入れオペのオファー額が据え置かれたことがサポート要因となり、堅調に推移した。』(上記URL先より、以下同様)

ということで昨日の相場ちゃんですが、もちろん米国金利低下の影響もあるけど、米国金利低下でそもそも上で始まったというのもあって、これはお誂え向きの輪番減額チャーンスという見方もある訳で(というかアタクシもそう書いたんだが世の中的にはもっと減額の期待があったみたいですねサーセン)輪番オファータイムになって「あー同額かあ」とか思ったら先物がドスコイドスコイと上昇して大横綱の風格を示す怒涛の電車道って感じになりやがりまして、

『時間外取引の米10年債利回りは一時4.27%付近と、2カ月ぶりの低水準を付けた。米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事は28日、インフレ率が低下し続ければ、数カ月先に政策金利を引き下げる可能性を示唆した 。』

挙句の果てにアメリカン金利も一段低下していたので後場も結局強くてだいたい高値近辺で終了の巻。

いやまあ3週連続になるし、しかも金利1回上がった所ではあったので減らさなかったのも分からんではないのですが、だったら何で前回市場のサプライズで超長期後半減額しましたのんという感じでもありますし、結局のところ先週今週って超長期後半輪番のサプライズ減額で相場を押し下げて、翌週の輪番据え置きで相場を持ち上げてしまった、ということで、何が「市場による自由な価格形成を促す」だかという話で、まあそもそも論として輪番がクソ過大である、という事を如実に示したムーブでありましたとさという感じですけど、これやっぱり先週の超長期後半輪番でサプライズをしたのが話をややこしくした感が否めないですな、残念無念。

ま、今日のオペ紙でさすがにレンジ拡大(本来は下限だけ下げるべきなんですが、どうせその辺は下限引き下げだけだとインパクトがデカいからとか言って上限も上げるに100バーナンキ)はしてくると思いますがさてどうなるやら。

ちなみに

『TRADEWEB
    OFFER BID  前日比 時間
2年  0.033 0.044  -0.012 15:16
5年  0.256 0.266  -0.061 15:15
10年 0.668 0.679  -0.077 15:17
20年 1.414 1.427  -0.075 15:15
30年 1.623 1.639  -0.071 15:15
40年 1.889 1.899  -0.052 15:15』

とまあツエツエバエな相場でありましたという事で。


〇お前ら何でそうポンポン喋るのwwwww(FED高官発言)

昨日もそうなんですけど、どうも足もとロイターのアメリカンのデスクは「利下げバイアスの掛かったヘッドライン」を作ろうという感じになっていないかと今日のヘッドライン見てても思いました(といのはウォーラーネタをやるのでその辺でも)。

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/7TMJZO7CUFPJ3F2GCB22O4ZDYY-2023-11-29/
FRB、データに「機敏に」対応可能=クリーブランド連銀総裁
Michael S. Derby
2023年11月30日午前 5:32 GMT+9

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/7F766N23YBODRIJN3RAPTLJNNE-2023-11-29/
インフレ再燃に備え、再利上げの選択肢必要=リッチモンド連銀総裁
ロイター編集
2023年11月30日午前 1:39 GMT+9

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-29/S4W4EGT0AFB401
アトランタ連銀総裁、インフレの下向き軌道は続く可能性が高い
Reade Pickert、Catarina Saraiva
2023年11月30日 0:43 JST

・・・・・・すいません処理がオーバーフローですヘッドライン貼っただけwwwwwww


〇ところでウォーラー理事の講演なんだが別に利下げ決め打ちしていないし・・・・・・・・・

ということで昨日のアメリカン相場の主役(知らんけど)、ウォーラー理事講演なんですけどね

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20231128a.htm
November 28, 2023
Something Appears to Be Giving
Governor Christopher J. Waller
At the American Enterprise Institute, Washington, D.C.

Watch Liveってのがあって、そこをクリックすると(一度リンク先からサイト接続の安全性を確かめられてロボットじゃないことを確認されます、下記の(クソ長い)URL先は書いておくけど直リンはやめときますね)AEI(American Enterprise Institute)のサイトに飛びます。

https://www.aei.org/events/the-federal-reserve-and-the-economic-outlook-a-conversation-with-federal-reserve-governor-christopher-j-waller/
Tuesday, November 28, 2023 | 10:00 AM to 10:45 AM ET
The Federal Reserve and the Economic Outlook: A Conversation with Federal Reserve Governor Christopher J. Waller
With Michael R. Strain | Christopher J. Waller

でまあシンポジウムの動画も見れるのですが、その中に『Event Materials』ってのがあって、『Event Transcript』ってのがリンクになっております(こっちはURLで飛ぶの非推奨、さっきのページにあるリンクから飛んでください)。

https://www.aei.org/wp-content/uploads/2023/11/231128-The-Federal-Reserve-and-the-Economic-Outlook-A-Conversation-with-Christopher-J.-Waller-transcript.pdf

こちらは講演内容(FEDのページにあるのと同じ)と質疑応答の文字起こしがあるのですが、その中で「利下げ示唆」と思われるのはこちらの質疑応答になります。PDFの13枚目から14枚目に該当します。

質問したのまたWSJのニックなんですけどね。

『Nick Timiraos: Hi, Nick Timiraos, with the Wall Street Journal. Governor Waller, I want to ask you about something you said at the beginning of the year. At the beginning of the year, there was a disconnect between what you and your colleagues were saying about the path of policy for this year, and what the markets were pricing at.』

ふむ。

『And the markets were pricing in a lower policy rate by the end of this year, and you had said, you had kind of characterized this as a miraculous melting away of inflation that the market expected, that you didn’t see. Since June, we’ve now seen, with this week’s reading, perhaps five months of better behaved core PCE inflation could be annualized around 2.5 percent.』

『And so I’m wondering if that continues, if that would count in your book as this miraculous melting away of inflation. I guess the question I’m building up to is, at what point would you say maybe policy rates could be lowered, that a 5 3/8 percent policy rate wouldn’t be appropriate if inflation could be sustained at 2.5 percent core inflation? Thank you.』

あくまでもこれ「米国債券市場は政策金利が今の水準のままでなのが続くとは見ていない、という価格形成になっておりますが、インフレが順調に低下して行って2.5%程度のインフレが持続するなら今の政策金利は適切じゃなくなるっていうのはどうですか」って聞いているんですよね。

まあこれが引っ掛け質問なのか仕込み質問なのかによっても解釈が異なるというのはありますが、回答の方がまあウォーラー理事の発言でウヒョーとなった物件になる訳です。

『Christopher J. Waller: Yeah, so back in January, yeah, as Nick pointed out, there’s been a couple of disconnects between us and the markets over the last 18 months. And in January, I was saying this was just due to forecast. We just had different forecasts. It wasn’t like somebody was right or wrong, we just had different forecasts of what was going to happen. The market, I argued, as Nick said, you know, I viewed the market was thinking inflation was going to be at 2.5 percent by the summer. I didn’t think it was going to go down that far.』

『Where we’re looking at being for the 12 months at the end of the year is about what I thought it would be back in January, somewhere between 3 percent to 3.5 percent. That’s kind of what I had in mind back in early January.』

この辺は「今年の頭に市場は物価が早期に落ち着いてくるとみていて我々のビューとの違いがある、って話をしましたねえ」というまあ思い出話のマクラですな。

『So it’s kind of played out that way, but it’s been bumpy, you know? There have been months where it was much better, and looked like it was going to be a miraculous disinflation, and then it popped back up, like in September. So I think it’s heading . . . The inflation rate’s moving along pretty much like I thought.』

まあその間のインフレ動向も上げ下げありましたけど、と来て問題の部分になります。

『Now, if you think about in central banking, we talk about a Taylor rule, or various types of Taylor rules to kind of give us a rule of thumb about how we think we should set policy, and every one of those things would say if inflation is coming down, you don’t need to keep . . . You know, once you get rates or inflation down low enough, you don’t necessarily have to keep rates up at those levels.』

そらまあ物価が落ち着けばテイラールール的には今の金利水準は高すぎとなるのですが、この先がまあ問題の部分でして、

『So there are certainly good economic arguments from any kind of standard Taylor rule that would tell you if we see this inflation continuing for several more months, I don’t know how long that might be, three months, four months, five months, that we feel confident that inflation is really down, and on its way, that you could then start lowering the policy rate just because inflation is lower. 』

『It has nothing to do with trying to save the economy, or recession, it’s just consistent with every policy rule I know from my academic life, and as a policymaker, if inflation goes down, you would lower the policy rate. So yeah, there’s just no reason to say you would keep it really high, and inflation’s back at target, for example.』

ということで、これ結局「物価がこのまま無事に落ち着いてくれればテイラールールベースで考えれば今のような政策金利水準でいる必要はありませんよね」という話で、そりゃ当たり前だろという話でもあるのですが、まあその「無事に落ち着く」の判断が「I don’t know how long that might be, three months, four months, five months, that we feel confident that inflation is really down,」と言ってるので、まあここ捕まえると「今後数か月で利下げの可能性」ということになるのは話の上ではそうなる、ということですが、ちょっとそれは何ぼ何でもゴルディロックスヒャッハー勢の我田引水成分強すぎねえかって感じなんですよね。


ということでさっきの講演に戻りますけど、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20231128a.htm
November 28, 2023
Something Appears to Be Giving
Governor Christopher J. Waller
At the American Enterprise Institute, Washington, D.C.

まず第三パラグラフでは、

『While I am encouraged by the early signs of moderating economic activity in the fourth quarter based on the data in hand, inflation is still too high, and it is too early to say whether the slowing we are seeing will be sustained. But I am increasingly confident that policy is currently well positioned to slow the economy and get inflation back to 2 percent.』

ということで、「inflation is still too high, and it is too early to say」なのであって、別に先行き物価が落ち着くことに関しての自信がある訳でも何でもなくて、「自信があるけど確認作業に数か月」という話ではない、ということでありまして、あくまでも

『That said, there is still significant uncertainty about the pace of future activity, and so I cannot say for sure whether the FOMC has done enough to achieve price stability. Hopefully, the data we receive over the next couple of months will help answer that question.』

ということでして、確かに希望的観測で言えばこの先2カ月(というのは要は年末動向ってことですかね)のデータを見ていくと少し自信がつくのかもしれませんねえ、というれっべるの話ですよね。確かに「I am increasingly confident that policy is currently well positioned to slow the economy and get inflation back to 2 percent.」とは言ってて、それはどういうことですかということに関して、「there is still significant uncertainty about the pace of future activity, and so I cannot say for sure whether the FOMC has done enough to achieve price stability.」ということですから、別に利下げを示唆とかそういう話でもないとは思うのですよね。

でまあこの物価の話と政策の話、第13パラグラフ以降にあって、第13パラグラフの頭が『So, let's talk about that progress on inflation.』 で、ここからああでもないこうでもないと説明があるのですけれども、時間と量の関係で本日はこの辺で勘弁なのですが、すくなくとも講演本チャンでそんなに威勢よく物価の沈静化が自信ニキだからこの先利下げでっせ、みたいな話はしていないとしかアタクシには読めませんでして、何かこの全体見るとゲームチェンジャーでも何でもないと思うのですが、まあアメリカン市場自体が米国利下げを大いに期待しているので、隙あらばゴルディロックスヒャッハーをやりたがっている、というのにロイターの報道が見事にマッチしてしまいました、って感じじゃないですかねえ(ブルームバーグそこまで強く利下げ示唆って当初は報道してなかったと思うんだが・・・・・)。

まあ続きは金懇ネタとか他の高官発言ネタとかを見ながらできれば明日ということで勘弁。





2023/11/29

お題「本日の輪番が無駄に楽しみになって参りました/基調的な物価ちゃん/FED高官同時発言でクリップするので精一杯」

門間さんの無慈悲な砲撃・・・・・・・・・・
https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/column/research/executive/pdf/km_c231128.pdf

〇謎のコミュニケーションで益々本日の輪番が楽しみですなという雑談

・三部作シリーズとは言えこの裏口入学みたいなコミュニケーションは何なんですかねえ

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB095VR0Z01C23A1000000/
市場の一歩先へ、動き出した日銀 後手に回るリスク警戒
異次元緩和 近づく出口
金融政策
2023年11月29日 5:00 [会員限定記事]

『11月20日、日銀本店に金融機関の短期金融市場の担当者らが集まった。毎年1回、定期的に開いている実務者会合で、通常であれば大きな脚光を浴びることはないが、今回は違った。関係者によると、この日の会合でマイナス金利解除に向けた各社の準備状況などについて情報交換があったという。

「日銀は解除後の市場動向に目を向け始めている。解除はそう遠くないだろう」。ある関係者はこう話す。』(上記URL先より、以下は会員記事になります)

ってまあこれ上中下の三部作でたぶん明日の電子版にも出るんでしょうけれども、そんなの対応状況についての情報交換するの寧ろ当たり前で脚光も蜂の頭もねえだろという話ではああるのですけれども、殊更にこんな当たり前の出来事を「脚光を浴びる」とか言って記事の頭に持ってきている時点で何かもう変な大人の事情を感じてしまいますな。(まあ今回もアタクシ記事の全部を読んでないから断定はできないけど)この時期に解除に向けた準備状況おたくどうよ、という話をするの実務者として当たり前の話で、それが「脚光を浴びる」とか書いちゃうの書いた記者とデスクが実務を1ミリも知らないと宣言しているのと変わらんレベルで、何ぼ何でも日経新聞様がそのような事を分からん訳が無い筈なのですから、もうこれはアレですよアレ。

あとこの記事の題名の「市場の一歩先へ、動き出した日銀」ってのがこれまたヘソが茶を沸かすわけで、市場は今年の頭(まあもっと前の段階からですけど具体的には昨年12月のYCC上限サプライズ拡大以降ですよね)からずーーーーーーっとYCC解除とかマイナス金利解除とかそういうのを具体的なテーマにしている訳で、「市場の一歩先に動き出す日銀」とか日銀があたかもフォワードルッキングに先駆的な動きをするかのような提灯にも程がある見出しがこれまた見出し見た瞬間に腰を抜かすレベルでして、この見出しの書きっぷりもまた日経新聞様からの「お察しください」というメッセージなのかと思ってしまいましたwww

・・・・てか20日の会合が脚光浴びてたら何で21日にあんなに盛大に金利下がりますねん

しかしまあ何ですかねえこの裏口コミュニケーション。決定会合当日朝のアレもそうですけど、何か時代が30年くらい巻き戻ったようなコミュニケーションになっていますと、日銀がああだこうだ言ってるロジックを基に経済物価情勢(なかんずく今ですと賃金動向とかサービス価格とか)について分析しても全部時間の無駄っぽくて物凄く空しいんですけど。

そんな訳でございますので、本日の輪番減額があったら笑うしかないのですが、これがまたお誂え向きにイブニングの先物引けが30銭高とか値を戻しておられまして、これは減額しようと思えば減額できる水準に来てませんかってなもんですから楽しみになってきましたわよ。


・ちなみに12月会合は普通に考えれば無風だが捻って考えれば・・・・・・・・・・・

まあアレです。これかなり妄想に寄せて考えますと、マイナス金利政策解除の裏口からスタートする地均し、と読まれてもおかしくない流れになっておるわけですが、従来マイナス金利解除に関しては「物価目標達成判断」とリンクさせた説明をしていたので、その説明を前提とすると一番早くて1月、物価目標達成判断を春闘と絡めるなら常識的に考えて4月、とかまあ展望レポートでの経済物価見通しのリバイスアップに絡めてのアクションになるでしょう、という話になる訳ですなうんうん。

然るに、物価目標達成判断とマイナス金利解除をリンクさせてしまいますと、2%の物価目標が達成しているという時期にそもそも政策金利が0%とかいうのは緩和のやり過ぎにも程がある水準であることは間違いない(さすがにこれは断定できますよね^^)ので、マイナス金利解除のあと即座に次の利上げが展望される、という展開になるのは必定なわけですし、そうじゃないとロジカルじゃないんですよね。

という点を考えると、実はマイナス金利解除はするけど大規模な緩和政策はまだまだ続けますよだって2%物価目標達成という判断には至っていないんですから、という説明でマイナス金利を解除してしまえば、マイナス金利解除即次の政策金利引き上げの思惑、という流れにならず、利上げと分離してマイナス解除(マイナス解除も利上げだけどさ)をすることが出来まして、その後また匍匐前進で進むことができる、という事になる訳です。でもってこれまたお誂え向きに来週多角化レビューがあるので、「マイナス金利は導入当初は大きな効果を発揮してその後のデフレ脱却に寄与したがデフレはない状況になってくる中で弊害も大きくなっている」とかなんとか言う分析が出てきてそれにホイホイ乗っかって、物価見通しの上方修正と関係無い12月会合でマイナス金利解除、とか妄想すると話がうまく出来ているというのがナンジャソラというものな訳ですよ。

あ、念のため申し上げますがこれ豪快に妄想成分入れておりまして、12月にマイナス解除とかさすがにここからやろうとしたらブラックアウト期間も考えると12月会合まで時間もないので、かなり強引な地均しをしてくることになるし、そんなのわざわざやるのかというのはありますし、もっとそもそも論を言えばアタクシはそんな地均しする必要は本来無いという主義という人ではございますが、何せ説明のロジックが首尾一貫していないというのも首尾一貫という言葉に失礼なくらいに支離滅裂になっております日銀様(ちなみに指摘すると植田さんになってからの支離滅裂の方が酷くて、しかもそれが7月会合以降更に強力な滅裂ぶりになっておるんだが)でありますので、日銀のそれまでの説明のロジックを基にファンダメンタルズから真面目に考察する事から盛大に斜め上の施策しか出てこないから地均しが必要、みたいなことになるのかねえなどと思いながら、ここからのニュースフローを眺めたいと思います。

ああちなみに妄想妄想と申し上げておりますようにあくまでも妄想でありましてこんなのメインシナリオに置けませんというか真面目な顔してメインシナリオはこれですとか言ったら会議から叩きだされますのであくまでもただの怪電波という事でよろしくお願いいたします。


〇基調的な物価ですが今まで一番動かなかった加重中央値はまだ上昇してるんだよな

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

いつものように左から刈込平均値、加重中央値、最頻値の前年比%

Jan-22 0.8 0.2 0.3
Feb-22 1.0 0.1 0.3
Mar-22 1.1 0.2 0.3
Apr-22 1.4 0.3 0.4
May-22 1.5 0.4 0.5
Jun-22 1.6 0.5 0.5
Jul-22 1.8 0.3 0.7
Aug-22 1.9 0.5 0.8
Sep-22 2.0 0.5 0.9
Oct-22 2.7 1.1 1.3
Nov-22 2.9 1.2 1.5
Dec-22 3.1 1.4 1.6
Jan-23 3.1 1.1 1.6
Feb-23 2.7 0.8 2.1
Mar-23 2.9 1.0 2.7
Apr-23 3.0 1.2 2.8
May-23 3.1 1.4 2.9
Jun-23 3.0 1.4 2.9
Jul-23 3.3 1.6 3.0
Aug-23 3.3 1.8 3.0
Sep-23 3.4 2.0 2.8
Oct-23 3.0 2.2 2.6

はい、前回3指数ともにすべて2%乗せになりまして、今回って刈込平均が下がったとかヘッドラインにも出ていましたが、むしろ加重中央値という今まで一番動くのが遅かったものが相変わらず上がっている方がうへーって感じなんですけどね。だいたいからして伸び率下がったって言ったって刈込平均3%なんだし。

こちら例によって左から上昇品目比率、下落品目比率、上昇品目比率−下落品目比率です、

Jan-22 61.5 31.0 30.5
Feb-22 64.0 28.9 35.1
Mar-22 63.2 29.7 33.5
Apr-22 68.8 24.9 43.9
May-22 69.2 24.5 44.6
Jun-22 71.3 22.2 49.0
Jul-22 73.2 20.7 52.5
Aug-22 72.6 21.5 51.1
Sep-22 74.9 18.6 56.3
Oct-22 78.9 14.6 64.4
Nov-22 79.9 13.6 66.3
Dec-22 81.2 11.7 69.5
Jan-23 80.3 12.6 67.6
Feb-23 81.0 11.7 69.3
Mar-23 82.6 10.0 72.6
Apr-23 84.3 9.2 75.1
May-23 84.9 8.8 76.1
Jun-23 85.1 9.2 75.9
Jul-23 85.6 8.4 77.2
Aug-23 86.0 8.2 77.8
Sep-23 87.0 7.3 79.7
Oct-23 84.7 9.6 75.1

どう見てもインフレノルムです本当にありがとうございました(じっと給与明細を見る)。

いや真面目な話なんでこんな数字出しながら「2%達成はまだです」とか言い張れるのかというか言えば言うほど「日銀の言ってることの意味が分からない」という話になるだけだし、あの「第一の力」「第二の力」とかいうインチキ満載の説明が更に話を訳分らなくしているとしか思えないのですけれども、なんかもう最近のインチキまみれ状態は見てて悲しくなってきますわ。


〇お前ら同時に喋るな同時にwwwww(FED高官発言同時多発現象キタコレ)

おまいら感謝祭明けでFOMCが近いからと言って同時に喋るな同時にwww

・NY連銀ウィリアムズ総裁

https://jp.reuters.com/economy/federal-reserve-board/O4XTZHN3FVOUJDATCCAIKU356Q-2023-11-28/
米長期インフレ期待は安定、物価圧力低下を歓迎=NY連銀総裁
Michael S. Derby
2023年11月29日午前 5:32 GMT+9

『[ニューヨーク 28日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は28日、長期インフレ期待は心強く安定しているとし、インフレ圧力の低下を歓迎すると述べた。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほう。

『ウィリアムズ総裁は国際決済銀行(BIS)報告書の中で「米国のインフレ期待の安定化に関するこのところのニュースに安心感を覚えている。長期インフレ期待を示す指標は極めて安定している」と述べた。ウィリアムズ総裁は報告書の中で、金融政策の行方の手がかりを示すようなことは述べなかったが、インフレ率の低下傾向は心強いとしたほか、米連邦準備理事会(FRB)のインフレ目標達成に向けたコミットメントに言及。また、インフレの先行きに対する不確実性が高まっていることは、物価上昇圧力が増大すると予想されていると示すものではないとの考えを示した。』

金融政策の手掛かりになっとるやんという気もしますが、まあこんなのがあると思えば、


・ウォーラー理事

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/CCNWZTGY5FM4JJPCU5P46R4TZU-2023-11-28/
FRB、利上げ終了の公算 ウォラー理事は利下げの可能性示唆
Howard Schneider、Ann Saphir
2023年11月29日午前 3:52 GMT+9

『FRB内でタカ派として知られるウォラー理事は28日、インフレ率が低下し続ければ、数カ月先に政策金利を引き下げる可能性を示唆。「標準的なテイラールールに基づけば、あと数カ月─3カ月か4カ月か5カ月か分からないが─ディスインフレが続き、インフレ率が本当に低下方向に向かっていると確信が持てれば、景気回復などとは無関係に、インフレ率が低下したという理由のみで政策金利を引き下げ始めることができる」と述べた。』(上記URL先より)

でまあ記事中にもありますようにこれが一番反応あったっぽいですね。

ウォーラー理事の発言に関しましてはFRBのサイトの方で講演の原稿が出ておりまして、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20231128a.htm
November 28, 2023
Something Appears to Be Giving
Governor Christopher J. Waller
At the American Enterprise Institute, Washington, D.C.

でもってこちら、そんなに長くはないので読めそうなのですが、ちょっと今朝はここまで惜しくも手が回らないのですが、たぶん読んでおいた方が良さそうなので明日はネタにしておくべきだということでクリップしておきます。


・ボウマン理事

これアタクシがたまたま見つけた順番なので偶然とは思うのですが、ロイターの方ではハトネタばっかり引っ掛かって来るのですが、ブルームバーグは(重複になるのでウォーラー理事講演の記事へのリンクは貼りませんけど)ウォーラー、ウィリアムズ以外のタカ系の記事が拾えるというのがチャーミングでございます。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-28/S4UBZGDWRGG001
ボウマン理事、インフレ進展停滞なら利上げが望ましいと表明
Steve Matthews、Mark Niquette
2023年11月29日 1:27 JST 更新日時 2023年11月29日 1:55 JST

『理事はユタ州ソルトレークシティーで行われた講演で「私の基本的な経済見通しでは、インフレ率を2%の目標まで時宜を得て低下させる上で、十分に景気抑制的な政策を維持するにはフェデラルファンド(FF)金利のさらなる引き上げが必要だと引き続き想定している」と指摘。「しかし、金融政策はあらかじめ決まった軌道にはなく、経済見通しと適切な金融政策の道筋への影響を見極めるため、今後発表されるデータを注視していく」と述べた。』

『理事はまた「インフレの進展が停滞している、あるいはインフレ率を時宜を得て2%の目標まで低下させるのに不十分であることがデータで示されれば、将来の会合でFF金利の引き上げを支持する立場に変わりはない」と述べた。』(上記URL先より、以下同じ)

ということですが、

『米金融当内では、必要であれば追加利上げもあり得るが、当面は金利を据え置くとの考えでまとまりつつあり、ボウマン理事とのスタンスの相違が顕著になっている。』

という解説でして、こちらボウマンさんの講演に関してもFRBのサイトで見れまして、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bowman20231128a.htm
November 28, 2023
Reflections on the Economy and Monetary Policy
Governor Michelle W. Bowman
At the Utah Bankers Association and Salt Lake City Chamber Banker and Business Leader Breakfast, Salt Lake City, Utah

分量的にはさっきのウォーラー理事よりもちょっと多い(&リファレンスがやたら多い)です。


・シカゴ連銀グールズビー総裁

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-28/S4UBIPT0AFB401
シカゴ連銀総裁、インフレは低下しているが目標にはまだ戻っていない
Alister Bull
2023年11月29日 1:28 JST

『米シカゴ連銀のグールズビー総裁は「全体として、食品セクター以外ではインフレ面で進展を遂げてきた」と述べた。同連銀が主催した会議での冒頭で発言した。グールズビー氏は「下がってきているが、まだ目標にまで低下していない。しかし2023年はインフレ率の低下が過去71年で最大となる軌道にある」と指摘。』(上記URL先より、以下同じ)

ということなのですが、シカゴ連銀のサイトって肝心の総裁講演のアーカイブ探すのが面倒(トップのメニューから1階層下がった所に「Speech」がない地区連銀のサイトとか中々そういう不親切設計なところも珍しい)というようにエバンス総裁の後に改修されておりまして、ちょっとシカゴ連銀をスルーしている隙にこれ見つけるのが困難で時間もないのでパス)なのですが、この発言部分はオモロイナと思いまして。

『「米金融当局はエネルギーと食品のインフレに目を向けない傾向がある」とし、「それらはインフレの基調的な状況を最良の形で表すものではない」と語った。』

おーーーーーー。

ってこれですね、昔々のエネルギーインフレの時にあの変態仮面セントルイス連銀前総裁のブラードさんが「インフレの計測にコアを使うのは腐った概念」とぶっこんだことがありまして、これを思い出すわということで、まあ今朝は時間が無いのでアレなのですが、ちょっとシカゴ連銀のサイトから発掘しておこうかと思います。

なお話のついでですが変態仮面の「コアで計測するのは腐っている」はこちらになります(2011年かあ)。
https://files.stlouisfed.org/files/htdocs/publications/review/11/07/bullard.pdf
Measuring Inflation: The Core Is Rotten
James Bullard
An earlier version of this article was delivered as a speech to the Money Marketeers of New York
University, New York, New York, May 18, 2011.*





2023/11/28

お題「何かまた変なコミュニケーションが・・・・・・・・・/NY連銀スタッフによりますと引き締め効果はこれからガンガン来ると」

スポ末ということは3日後には12月ェ・・・・・・・・・・・・

〇色々と謎のコミュニケーションではある(日経謎の記事とか多角化レビューとか)

・なんじゃこの記事は(日経電子版だが無課金なので見れません)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB148410U3A111C2000000/
マイナス金利解除、日銀が地ならし ショック回避探る
異次元緩和 近づく出口
植田和男氏
2023年11月28日 5:00 (2023年11月28日 5:31更新) [会員限定記事]

『日銀のマイナス金利政策の解除が近づきつつある。日銀は春季労使交渉や個人消費などの動向を見極め、早ければ2024年前半にも解除を判断する。解除すれば17年ぶりの利上げとなり、脱デフレに向けて緩和一辺倒だった金融政策は転換点を迎える。日銀だけでなく政府も企業も、超低金利のぬるま湯から抜け出し、成長を取り戻す覚悟が問われる。』(上記URL先より、以下同様)

ときまして、次に

『マイナス金利の功罪を調査

「いよいよマイナス金利解除への地ならしが始まった」』(以下は会員限定記事)

ときていまして、トップページの方をみると「日銀の調査に政策変更の前触れではとの憶測広がる」とかありまして、まあ何なんですかねという感じですが、この日銀調査っていうの、本紙記事見ないで書くから(ドイヒーですすいません)間違ってたらゴメンやでなのですが、アタクシが夏休み中に実施のリリースがあったこれなんじゃないかなと思うの。

https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/bpr231110a.htm
「1990年代半ば以降の企業行動等に関するアンケート調査」の実施について
2023年11月10日
日本銀行

『日本銀行は、「金融政策の多角的レビュー」における意見交換等の取り組みの一環として、幅広い業種・規模の企業にご協力いただき、「1990年代半ば以降の企業行動等に関するアンケート調査」を実施いたします。』

いやあのですね、どうせ日銀の自己正当化のお手盛りのためになんでこんな大規模に世の中に負担掛かることするのよという話で、これでお手盛り分析しか出てこなかったら端的に言って罪万死に値するわ、と思ったけどネタにするの忘れてたわwww

『調査の概要は以下のとおりです。』

で???

『調査の概要

調査目的:1990年代半ば以降における企業の事業方針やその背景にある考え方、金融緩和に関する実感などについて幅広い企業に対して直接調査を行うことで、この間の企業行動の特徴や、それがわが国の経済動向および賃金・物価形成に及ぼした影響について理解を深めること』

お手盛りの結果しか出てこないんですけどね。

『調査内容:1990年代半ば以降の設備投資、価格設定、賃金設定に関する事業方針やその背景、物価動向と事業環境に関する考え方、金融緩和の効果や副作用に関する実感など』

どういう調査か知らんけど短観のノリで更に出させるのってどうなのと思うわ。

『調査期間:2023年11月〜2024年2月

調査対象:幅広い業種・規模の国内の非金融法人(2,000〜2,500先程度)

調査方法:訪問調査又は郵送・インターネット調査』

だそうで、1万社じゃないだけまだマシですが、どうせ今の政策正当化から始まって経済物価見通しをお出しになっておられる調査統計局と%物価安定目標達成定義をコロコロと変える企画局が照会先になっている時点でもうねというか、やるなら内輪だけでやってろ一般事業会社まで巻き込むなヴォケとしか言いようがないですわな。


しかしまあ何ですな、最近の日銀は日経新聞さんをスピーカーにして不規則発言を流すのがコミュニケーションポリシーなんですかそうですか面白いことしますねって感じでして、これで次の政策アクションの日の朝刊にまた日経の抜きが来たらさすがにちょっとおかしいにも程があるので、まあ次が12月なのか1月なのか3月なのか知らんですけど、楽しみにお待ち申し上げております。


・来週月曜が多角化レビューのパネルの第一回な訳だが

こんなページがありましてですね
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/index.htm
金融政策の多角的レビュー

『わが国経済がデフレに陥った1990年代後半以降、25年間という長きにわたって、「物価の安定」の実現が課題となってきました。その間、様々な金融緩和策が実施されてきました。こうした金融緩和策は、わが国の経済・物価・金融の幅広い分野と相互に関連し、影響を及ぼしてきています。そうした相互関係を念頭に置きつつ、この間の金融政策運営について、さらに理解を深め、将来の政策運営にとって有益な知見を得るため、日本銀行は、2023年4月の金融政策決定会合において、多角的レビューを行うことを決定しました。』

とまあそういうことですが、日経無課金(というかニュース系全て無課金ですけどね)のアタクシなので全然見ていないのですが、聞く話によりますと黒ちゃんの私の履歴書って自分の都合の悪いことはしれっと歴史修正が行われているとかいないとか聞いておる次第でして、まあ何と申しますかそういうのが大手を振って歩く状況の中で「この間の金融政策運営について、さらに理解を深め、将来の政策運営にとって有益な知見を得る」とかできるのかよという感じですが、何のかんのゆうて世間ではこういうのが話題になるみたいですね。

でまあ来週ワークショップあるんですけど、式次第はしばらく前に出ててネタにしましたのでリンクだけ改めて置いておきますが、

https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/data/bpr231020a.pdf
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第1回「非伝統的金融政策の効果と副作用」
開催日 2023 年 12 月 4 日(月)9:30〜18:00
場 所 日本銀行本店

まあこれで何が出てもあんまり関係ねえだろ、とはアタクシとしては思う訳ですが、一応最近はこれの問い合わせみたいなのを(他の部門の人から)受けたりする今日この頃なんで、その都度「こんなのどうせ自分たちの政策の正当化のお手盛りになるだけだから瞬間ヘッドラインで反応しても気にしない方が良いですわよ」と説明するんですけど、注目だけはされてるのね、ということで、なんか多角的レビューの1週間前とかいう所でさっきの記事(あの調査自体は第2回のワークショップに出すんでしょうね)が出て来たり、ということでとりあえず日銀ちゃんが盛り上げようとしているのは把握しました。


・そういや明日も定例輪番ですが

明日の輪番は3-5と5-10と10-25の予定(で今月まだやってない物国もあるでしょう)となっておる訳ですが、3-5と10-25はまだ減額の刑を食らっていないということもあって、何か昨日ベンダー見てたら減らすのかどうかみたいな何とかストコメントがいくつもニュースヘッドラインに並んでいてほほーと思う訳ですよ。

まあ何ですな、先週の超長期25年超輪番のサプライズ減額が尾を引いていて話題になるんだろうなあと思った訳ですが、金利が下がったから減額したと考えれば下がった金利がまた上がって昨日の引けは10年カレント(で見てもしょーがない説はあるけどYCCの長期金利のメルクマールは10年だから)で0.77%になっている(金曜と変わらずですけど)のですから、ここで明日減額したら逆にビビるわと思う訳ですよアタクシは(いやまあ今日また爆騰して10年カレント0.71%とかくらいまで金利低下するなら話は別ですが)。

逆に明日の輪番で下げてきたら今までの「金利が上がれば輪番拡大に長期共担実施、金利が下がっても何もしないの巻」とは何だったのかという話になるのですが、唯一違うのは10年金利の明確な上限が無くなっているということでして、あの半ギレ状態で黒ちゃんの時にぶっこんだ連続指値オペの呪縛がなくなったという事実でして、まあこれにより本来はYCCの長期コントロールって普通に形骸化しているという事になりますので、その本来の形骸化を具体的に示すと「輪番オペの段階的削減」になる訳ですよ。

そんな訳で明日の定例輪番、アタクシは減額しない方に100インドネシアルピアという所ではあるのですけれども、減らしたらまあそれ単体では評価したいとは思います。


・・・・・・・とは言いましても、だったら10月MPMの翌日に早速臨時輪番ぶっこんだのは何だったんだという話にはなる訳でして、最初から変な臨時とかするんじゃねえよってなもんなのですが、まあやる方の発想として考えてみれば「債券市場をコントロールしながらスムージングしたい」と思っているとああいうオペ運営になるんでしょうなあというのも発想としては分かる(こちとら市場の中の人なのでそういうオペスタンスには一切賛同しませんけどまあやりたいことの意味はそういうことなんでしょということで)ので、そのタイミングでどういう内容なのかは知らんけど日経が妙なもの出してくるし、また変な「コミュニケーション」でも始まるのかよと思うとさすがにもう食傷気味ではありますな。


〇NY連銀の金融政策の波及ラグのお題でスタッフペーパーが2本でてましたな(先週前半ですけど)

https://fedinprint.org/
Fed in Print
Explore research and publications from across the U.S. Federal Reserve System

セントルイス連銀のFOMCSpeakが無くなって(更新が止まって)こっちをチェックするようになったのですが、これスタッフペーパーから何でもかんでも出て来るから中々こうネタを厳選するのもめんどいといえばめんどいですが、

https://fedinprint.org/latest/system

で最近の一覧が見れて、誰が書いているの、お題は何かというのが分かるのでそこから勘で適当に見ていくのですが、ちょっと親切なのは紹介ページがある事ですかね。なお、これ毎日結構な勢いで新しいアイテムが登場するので、今回アタクシがリンク張っておく物件も昨日見た時はまだ過去ログ落ちするちょっと前くらいでしたけど、今朝の時点ではログの下から2番目と3番目なので多分明日の朝見たら上URLベースでは過去ログ落ちしてしまいます(たぶん他に検索方法あると思うけど)

「金融政策の波及ラグ」ということで2部作が出ておりまして、

https://fedinprint.org/item/fednls/97346
Discussion Paper
A Bayesian VAR Model Perspective on the Lagged Effect of Monetary Policy

Bibliographic Information
Provider: Federal Reserve Bank of New York
Part of Series: Liberty Street Economics
Publication Date: 2023-11-21
Number: 20231121a

『Abstract: Over the last few years, the U.S. economy has experienced unusually high inflation and an unprecedented pace of monetary policy tightening. While inflation has fallen recently, it remains above target, and the economy continues to expand at a robust pace. Does the resilience of the U.S. economy imply that monetary policy has been ineffectual? Or does it reflect that policy acts with “long and variable lags” and so we haven’t yet observed the full effect of the monetary tightening that has already taken place?』

『Using a Bayesian vector autoregressive (BVAR) model, we show that economic activity has, indeed, been substantially stronger than would have been anticipated considering the rapid policy tightening. Still, the model expects a significant slowdown in 2024-25, even though short-term interest rates are forecasted to fall.』

ということで、何でも利上げの効果に関してはまだ出て無くて、来年から再来年にかけては、短期金利の引き下げが行われたとしても経済にはsignificant slowdownをするということをモデルが示唆しております、ってなお話みたいですね。

本チャンは上記URL中にある「Access Documents」の所にリンクがありますが、NY連銀のリサーチブログみたいな「Liberty Street Economics」にポストされていまして(次のもそうです)

(URLがアホみたいに長いのでハイパーリンクはいつものように途中までの文字列に貼ります)
https://libertystreeteconomics.newyorkfed.org/2023/11/a-bayesian-var-model-perspective-on-the-lagged-effect-of-monetary-policy/
A Bayesian VAR Model Perspective on the Lagged Effect of Monetary Policy
Richard Crump, Marco Del Negro, Keshav Dogra, Pranay Gundam, Donggyu Lee, Ramya Nallamotu, and Brian Pacula

物凄い勢いで手抜きをしまして結論項だけ見ますと、

『Conclusion

Taken together, the results from the three forecasting exercises suggest that economic activity in 2022-23 was stronger than expected conditional on the path of interest rates and inflation. But this does not imply that more tightening is required to slow real activity and reduce inflation. While the lagged effects of monetary tightening were counteracted by positive demand shocks in 2023-24, the model still expects a slowdown in 2024-25.』

とまあそういう訳で、今年の米国経済はアホのように利上げをしたくせに強くて想定よりも強かったのですが、それは別に今後もインフレ抑制利上げが必要だということを意味しません(キリッ)。ということで、需要への影響は今年から来年にかけて表れて、それが25年くらいまで続くでしょう(キリリッ)、というお話。

『One limitation of our analysis is that the BVAR is a reduced-form model, which means that we cannot conduct a true counterfactual analysis. Said differently, we can’t answer questions such as: what would have happened if monetary policy-and only monetary policy-had been different since 2021? In our accompanying post, we will take an alternative approach that enables us to investigate these types of questions further.』

とは言えカウンターファクチュアルな分析はモデルの制約上出来ないので、もしここまでの金融引き締めが別の経路で行われていたらどうなったか、というのはちょっと計測できませんとか仰せですが、まあこういうのもFED地蔵モードのサポートになるペーパーですなあ、とは思う物件ではあります。


でもって2部作のもう一つはこちら。

https://fedinprint.org/item/fednls/97347
Discussion Paper
The New York Fed DSGE Model Perspective on the Lagged Effect of Monetary Policy

Bibliographic Information
Provider: Federal Reserve Bank of New York
Part of Series: Liberty Street Economics
Publication Date: 2023-11-21
Number: 20231121b

話の都合上本チャンを先に出しますとこちら
https://libertystreeteconomics.newyorkfed.org/2023/11/the-new-york-fed-dsge-model-perspective-on-the-lagged-effect-of-monetary-policy/
NOVEMBER 21, 2023
The New York Fed DSGE Model Perspective on the Lagged Effect of Monetary Policy
Richard Crump, Marco Del Negro, Keshav Dogra, Pranay Gundam, Donggyu Lee, Ramya Nallamotu, and Brian Pacula

でまあ本チャンの方ですがこっちは手抜き用の結論項が無いのでさっきのアブストラクトの方をみることになりますので元の方に戻りますけど、

(以下は「https://fedinprint.org/item/fednls/97347」から引用)

『Abstract: This post uses the New York Fed DSGE model to ask the question: What would have happened to interest rates, output, and inflation had the Federal Reserve been following an average inflation targeting (AIT)-type reaction function since 2021:Q2, when inflation began to rise-as opposed to keeping the federal funds rate at the zero lower bound (ZLB) until March 2022, and then raising it aggressively thereafter?』

こちらはFEDがアベレージインフレーションターゲットの話をおっぱじめた時の話についての考察でして、

『We show that actual policy was more accommodative in 2021 than implied by the AIT reaction function and then more contractionary in 2022 and beyond. On net, the lagged effect of monetary policy on the level of GDP, when measured relative to the counterfactual, has been positive throughout the forecast horizon, due to the initial boost associated with keeping the fed funds rate near zero in 2021.』

物価が上がりだした時期に平均物価目標の政策反応関数を導入したら更に金融政策が緩和的になりました、とまあ当然と言えば当然なのですが、しれっとAIT入れなかった方が良かったんでネーノというのが出てくるのがチャーミングだな、と思いました。

どちらもそんなに長くはないとは言いましてもまあサクサク読めるのかというと何となくわかったような分からんような感じなので、もうちょっと読んでみて面白そうだったらまた続編やるかもしれないけど多分やらないと思います(おい)、





2023/11/27

お題「全国CPIコアコアの前月比が鈍化/市場後講釈メモ/今さらですが展望レポートBOXから」

そういえば先週はこんなのもありましたな(無課金なので記事読めない)

https://mainichi.jp/articles/20231121/k00/00m/020/230000c
「物価上昇で豊かに」そんなことはない 白川元日銀総裁・講演詳報
経済 速報
毎日新聞 2023/11/21 18:21(最終更新 11/22 16:08) 有料記事 5063文字


〇コアコアCPIの伸び率(前月比)は低下しましたが

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)10月分(2023年11月24日公表)

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消費者物価指数
全 国 2023年(令和5年)10月分

『◎ 概 況

(1) 総合指数は2020年を100として107.1
前年同月比は3.3%の上昇 前月比(季節調整値)は0.7%の上昇

(2) 生鮮食品を除く総合指数は106.4
前年同月比は2.9%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は105.8
前年同月比は4.0%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の上昇』

ということでいつもの『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)』のコアコアを見ますと、なんと10月は前月比の伸びが+0.1%に鈍化しているじゃないですかヤダー。ということで、直近1年で前月比ベースの伸びが+0.1%になったの初めて、ということですし、4月から見ても、

0.5→0.3→0.2→0.4→0.3→0.2→0.1

という粋なので伸びが落ち着いてきた、と見るのかどうか分からんのですけれども、やっと年換算での2%割れになったじゃないですかーーーこれでまた日銀がクソ粘りする言い訳ができそうなのは怪しからんけど(笑)まあ物価上昇は正直もうちょっとマイルドになってくれませんかねえとは思いますので、というか総合の直近の数字って「107.1」な訳で、2020年対比でじゃあおんどれの収入7%も増えてますかってな話をしたら、どこの世界に「物価上昇に勝つ賃上げ」なんてあるんだよヴォケとしか言いようがないし、そもそも物価上昇って名目があがることによって経済のあちこちで実質ベースの調整をしやすくする(名目ベースで下げるというのは色々な所で色々なアレになるので)ものなので、物価が大幅に上昇する局面で所得調整を食らうのはシャーナイという話ではありますな、ナムナム。

・・・・・・・と、とりあえずコアコアの鈍化、というのをネタにしましたが、まあしかし冷静に考えますとこの前出てた東京都区部の10月は、

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf
2020年基準 消費者物価指数
東京都区部 2023年(令和5年)10月分(中旬速報値)

表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)

のコアコア前月比って

0.6→0.2→0.2→0.4→0.3→0.1→0.3

だったりしまして、この全国を見たからと言ってそのまま日銀大勝利なのかというとその辺はキチンと物価統計をみている人に聞かないとワカランチ会長だったりするのですが(汗)。


〇結局火曜日の上げは何だったのかと・・・・・・・・(市場後講釈メモ)

ロイターさん「マーケットアイ」で検索すると出て来るのを教わったので調べやすくなった、というかネット版ロイター記事検索を駆使しないとみたいものを自分から探すの苦労するんですよね(リニューアルでサムネゴテゴテになって1ページに表示される記事のヘッドラインが大幅に減ったのが要因)。

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/JVJQ4PHSYFPJ3ICYDIM36CCRTI-2023-11-24/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落、長期金利0.77% アジア時間の米金利高に追随
ロイター編集
2023年11月24日午後 3:17 GMT+9

『[東京 24日 ロイター] - <15:08> 国債先物は大幅続落、長期金利0.77% アジア時間の米金利高に追随

国債先物中心限月12月限は、前営業日比40銭安の145円66銭と大幅続落して取引を終えた。海外金利の上昇が相場の逆風となった。現物市場の新発10年国債利回り(長期金利)は同4.5ベーシスポイント(bp)上昇の0.770%。』(上記URL先より)

先物売買高金曜も結構あったんですよね〜。

『きょうの国債先物は、前日の欧州市場でドイツや英国の国債が売られて金利が上昇した流れを引き継ぎ、売り先行でスタート。さらに祝日のため前日は取引がなかった米国債の10年物利回りがアジア時間に上昇(価格は下落)したことから、円債先物は序盤以降に下げ幅を拡大した。』

うーん何か金曜のはよくわからんかったですよね。というかやっぱり水曜の超長期輪番減額の余波なんじゃないかねえという気はするんですが。

『   OFFER BID  前日比 時間
2年  0.056 0.066  0.019 15:07
5年  0.344 0.353  0.044 15:06
10年  0.763 0.771  0.04 15:02
20年  1.487 1.496  0.039 15:05
30年  1.673 1.684  0.031 15:05
40年  1.903 1.911  0.029 15:08』

ということで何気に中期ってここの所上がって下がっている間に金利上がってねえかってな感じではあるのですが、それはさておき先週火曜までのアゲアゲと水曜金曜のしょんぼりは一体全体何であったのでしょうかというお話ではあるのですが、まあ市場機能がどうのこうのって日銀は自分の都合の良い時だけ話を持ち出しますけど、やっぱりマーケットの厚みというかそういうのが無いのと、日銀の超長期輪番が250億円ぽっち(月額で750億円ぽっち)減っただけでこんな勢いでヘロヘロになる、という時点でセカンダリー市場でどんだけ日銀の存在感あるんだよということでありまして、いや真面目な話この存在感を何とかしないと正常化して馬鹿買いをする理由が無くなった時(なお正常化しても馬鹿買いをするのは「財政マネタイズ」と言います)にどうするんじゃよという話なので、とにかくまずは量をへらしていかないと行けませんわな。

その点では先週の超長期輪番減額は方向性は間違っているとは思わないのですが、何もサプライズで減額しなくてもよかった訳で、全部がそのせいとは言わないけど輪番減額ボーナスタイムがあっという間に終わってしまったのでサプライズな減額するからじゃろ、とは思ったので超長期減額したのは勇壮だったのですけど、勇み足感はぬぐえませんな惜しい。



〇ハイパー今さらジローですが10月の展望レポート全文のBOXは明るい分析をしているのだが政策地蔵も後押ししておるな

展望レポート全文ネタとかもちょうど月初1週間で夏休みなんぞに入ってしまったのでうっかりしてしまいましたが。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2310b.pdf
経済・物価情勢の展望
2023 年 10 月

でまあ巻末のBOXを見ると時々「まあ政策としてはこう言っているけれどもこんな要素もあるでよ」みたいな感じで、物価はやっぱり上がりますとかその手の話があったりしまして味わいがあるんですよね。

・・・・・・・と思って今回のBOXを見ますとそのお題は

(BOX1)2023 年春季労使交渉の振り返り
(BOX2)企業のコスト見通しと価格転嫁
(BOX3)賃金と物価の相互連関:現状整理と今後の論点

となっています。

ちなみに前回以前のはBOX部分だけ抜き書きしたものが
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/box/index.htm
経済・物価情勢の展望」(展望レポート)・BOX

としてあるのですがこれみると、

7月の展望の時のBOXが
(BOX1)海外経済の回復ペースを巡る不確実性
(BOX2)輸入物価上昇を起点としたコスト上昇圧力と消費者物価
(BOX3)今次局面における物価上昇の特徴とその背景:米欧との比較

4月の展望の時のBOXが
(BOX1)春季労使交渉の動向
(BOX2)賃金と物価の連関性:過去の経験と先行きの論点
(BOX3)人手不足と設備投資

になっていまして、最近の展望レポートBOXってそこはかとなく政策への提灯というか忖度のようなものを感じるお題が多いんですよね〜。まあ政策に忖度するから見通しがアホのように外れるんでしょうけどwwwwwwww

ということでBOX1から参ります(以下引用は10月展望レポートからになります)が、

・労働需給に関する言及が目立つようになりました

『(BOX1)2023 年春季労使交渉の振り返り 』

『2023 年の春季労使交渉では、多くの企業で高めの賃金改定が実現した。長期時系列データをもとにシンプルな賃金改定率(ベースアップ率)関数を推計すると、本年は、この推計値を大きく上回って着地しており、企業の賃金設定行動が従来よりも積極化したことが窺える(図表 B1-1)。』

ときまして、

『大企業の労働組合を中心とする連合加盟先について、個社の賃金改定率の分布をみると、今春ほどではないが全体として改定率が高まった 2015年頃や昨年は、そもそも賃金改定を見送った先が多かったほか、実施した先の改定率も0%台が中心となっていた(図表 B1-2)。他方で、今春は、製造業・非製造業ともに、雪崩を打ったように、幅広い先で高水準の賃金改定が実施されている。』

「雪崩を打ったように」って言葉があるのがチャーミング。

『より子細に振り返ると、多くの組合員を抱える「リーダー企業」が、高水準の賃金改定を実施し、それに多くの企業が追随する動きがみられた(図表 B1-3)。こうしたもとで、中小企業でも、アンケート調査等をみると、幅広い先で賃金改定が実現したとみられる19。』

イイハナシダナーという所ですが、4月の展望のBOXと比較してさらに目立つのは以下の部分です。

『このように、多くの先が積極的な賃金改定を行った背景には、物価上昇率の高まりに加え、少子高齢化にも起因するマクロ的な人手不足感の強まりがあると考えられる。とくに、若年層や高度人材については人手不足感の強まりが目立っており、これらの層を中心に、従来、流動性が低く、人材の確保・係留のための賃金改定プレッシャーが小さいとされてきた正社員についても、近年、転職市場が急速に拡大している(図表 B1-4)。』

ほうほう。

『人手不足感の強まりは、人材の確保・係留に優位性を持つと考えられる企業――上述のリーダー企業の多くが含まれるとみられる――にも及んでおり、こうした先の賃金設定行動の積極化につながったとみられる。』

つまり年寄りだわ高度人材ではないわという(爆発音)。

『実際、短観の個票を用いて分析すると、従来、マクロ的な労働需給がタイト化した場面であっても人手不足感を示してこなかった企業でも、足もとにかけて、人手不足感が急速に高まっていることが分かる(図表 B1-5)。』

一々比較引用しませんけど、この辺りの記述が4月展望のBOX対比で充実(人材確保のための動きがある、というような話は文章の中でさらっと書かれているだけでした)しているのが今回の特徴です。

『以上のように、2023 年の春季労使交渉では、各業種のリーダー企業を含め、多くの先で正社員の人手不足感が高まっているもとで、輸入物価の上昇を起点とする消費者物価の上昇が契機となり、企業の賃金設定行動が一斉に積極化したと考えられる。少子高齢化も背景としたマクロ的な人手不足感は続いていくと予想されるなかで、今後、賃金がどの程度上昇していくか、状況を注視していく必要がある。』

しかしこの結論になると何故か人手不足の方ではなくて「輸入物価の上昇を起点とする消費者物価の上昇が契機となり、企業の賃金設定行動が一斉に積極化したと考えられる」になっていまして、その後に人手不足の話はあるんですけど、何でそうなるって感じではありますなうんうん。


・コストの価格転嫁の話しは「これから下がります」一点張りでした

『(BOX2)企業のコスト見通しと価格転嫁』ですけど、こっちは完全に輸入価格の推移の話だけしておりまして。「そっちはこれからさがれりますけんのう」でおしまいなのですっ飛ばします。


・さて賃金と物価の云々ですが華麗なゴールポスト移動芸を今回も楽しめます

『(BOX3)賃金と物価の相互連関:現状整理と今後の論点』

何かすっかり今回の展望で前面に出てきた「賃金と物価の好循環」についてどういう話をしているか確認しましょう。

『賃金と物価の前年比は、2000 年代以降、いずれもゼロ%近傍で推移していたが、このところ、両者の伸び率が高まってきている(図表 B3-1)。安定的な物価上昇の実現に向けては、賃金と物価が相互に連関して緩やかに上昇率を高めていくことが重要である。本BOXでは、賃金と物価の関係について、現状評価を行うとともに、今後の論点を整理する。』

キタコレ。

『第1に、物価から賃金への波及については、BOX1のとおり、2023 年の春季労使交渉で物価上昇を賃金に反映させる動きがみられた。今後も、こうした動きが継続するか、来年以降の春季労使交渉も含め、確認していく必要がある。』

『第2に、賃金から物価への波及については、産出価格に占める人件費の比率が高いサービス価格の動向がとくに重要である21。』

という説明なんだが、だったら元々インフレ目標の計測するときに「サービス価格指数」で見ますって言えよという世界ですが、そもそも論に立ち返れば「国民厚生の最大化」のためにインフレ目標政策をしているのに、消費者物価全般にフォーカスしないで「サービス価格」にフォーカスして物価目標達成ガーとか言うのって、それ消費者物価指数が目標より低いならともかく、目標から大きく上振れて推移している中でそれを無視して「サービス価格ガー」っていうのは政策としての本来の仕事を放棄してねえか、と思えますなあ。

という事で以下はこんな記述になる。

『サービス価格の品目別変動分布をみると、分布全体が右方へシフトしている(図表 B3-2)。ただし、これには、外食や住居工事サービスなど、既往の輸入物価上昇の影響を強く受けて上昇しているサービス品目が少なくないことが影響している面もある。この点、「コストに占める輸入比率が低い品目」や「コストに占める人件費比率が高い品目」をみると、物価上昇は比較的緩やかとなっている(図表 B3-3)。』

はい新しいゴールポスト来ましたけど、こんな限定的なものを見て全体の消費者物価を無視するのは酷くないですかねえとは思う訳ですよ。

でですね、この「ゴールポスト変更」ですけれども、実は4月の展望レポートのBOXでも上記したように「(BOX2)賃金と物価の連関性:過去の経験と先行きの論点 」というのがあったのですが、そこでは「加えて、現在生じつつある賃金から物価への波及が広がるか、確認していく必要がある。その際の一つのポイントは(途中割愛)サービス価格が、持続的に上昇していくかである(図表 B2-4)。」(4月展望レポートBOXより)となっていまして、あくまでも「一つのポイント」だったのですよ。

しかし今回はさっきありますように「サービス価格の動向がとくに重要」と「特に重要」に格上げしておりまして、この点がまさに「ゴールポストの移動」というここ1年半の日銀の芸風をしめしております。

しかもこのゴールポストの移動の周到なところは上記引用部分にあるように、サービス価格が上昇したとしても、「既往の輸入物価上昇の影響を強く受けて上昇しているサービス品目」が上がっているのは輸入物価上昇の影響です、とか言う風に更にこのサービス価格上昇を受けてもまだ往生際悪く言い訳をすることができる説明をおっぱじめていることですな。

まあこの辺を見ますと政策への忖度すげえええええええと感心してしまう訳でして、先ほども申し上げましたが茲許その傾向強いとはいえ、中々の技術点の高いゴールポスト移動芸をしているなあと感心しました(悪い意味で)。


以下まあどうでもよいのですがせっかくなので最期まで引用します。

『輸入物価上昇の影響が一巡したあと、幅広い品目でバランスよく伸び率が高まっていくためには、賃金上昇の実績を物価に反映させる動きや、将来の賃金コストの上昇等を見越したフォワードルッキングな価格設定行動が、広がっていくことが求められる。』

この他人事っぽさが何とも。

『この点に関連し、企業に賃金を含めた幅広いコストを販売価格に反映できているか尋ねると、現時点では、原材料コスト以外の転嫁は難しいといった指摘も少なくないが、一部先からは将来の賃上げの原資を確保するべく値上げしたとの声も聞かれ始めている(図表 B3-4)。』

相互作用してるじゃん。

『なお、計量的な手法を用いて、賃金と物価の相互連関を評価すると、わが国では、長きにわたり、物価(賃金)が上昇しても、賃金(物価)が有意には反応しない状況が続いていたが、足もとにかけて、状況が変化しつつある可能性が示唆される(図表 B3-5)。』

変化しつつある可能性が示唆される・・・・・・ですかそうですか。

『まず、物価から賃金への波及については、足もとの弾性値は、安定的な物価上昇が実現していた 1990 年代前半の水準には届いていないものの、有意に上昇している。一方、賃金から物価への波及については、弾性値自体は上昇しているものの、現時点では統計的に有意な変化は観察されない22。今後、上述のような、一部で聞かれ始めている企業の価格設定行動の変化の動きが広がっていくか、確認していく必要がある。』

ということで、

『以上のとおり、わが国で長年みられてきた、賃金や物価が上がりにくいことを前提とした企業行動について、緩やかではあるものの、変化の動きが徐々に広がっている。先行き、景気の回復が続くもとで、賃金と物価の相互連関が一段と強まっていくか、注視していく必要がある。』

なのは分かったんだが、そのためにYCCとかマイナス金利とか必要なのか??????という話はどうなんでしょうかねえ。






2023/11/24

お題「超長期輪番減額とはこらまた思い切りがよろしゅおすな/FOMC議事要旨ネタ続き」

否定せんのかいwww
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/850957?display=1
馳浩知事「機密費でIOC委員に贈答品」発言、IOCバッハ会長「発言内容を聞いていないのでコメントできない」
2023年11月22日(水) 06:58

〇意表の輪番超長期減額(なお中期3−5は据え置き)

水曜の輪番(輪番のみ引用)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of231122.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,750 2023年11月24日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,500 2023年11月24日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 5,250 2023年11月24日
国債買入(残存期間25年超) 750 2023年11月24日

おーーーーーーーということで、

1−3年:前回3750(前回減額実施)→3750
3−5年:前回4500(前回は減額前)→4500
5−10年:前回5750(前回減額実施)→5250
25年超:前回1000(前回は減額せず)→750

というオファーになりまして、いやアタクシも当然のように超長期は減額せんじゃろ(15日に減額したのが1−3と5−10で超長期2本は据え置きだったから当然中期の減額が先にあって、長期も減額するといいんですけどねえ、というイメージでおりましたわ)と思っていたので、超長期減額は割とサプライズだったという感じですよね。

まあ落札結果の方を見ると、
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba231122.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 9,668 3,759 0.008 0.010 56.3
国債買入(残存期間3年超5年以下) 13,481 4,501 0.014 0.019 0.5
国債買入(残存期間5年超10年以下) 9,767 5,257 0.016 0.018 27.2
国債買入(残存期間25年超) 1,802 753 0.052 0.054 17.0

3−5が甘めに決着している(応札多いしテール長いし)ので中期が重くて輪番のニーズがあったということなのかも知れないのですが、何か別に中期3−5の減額は皆さん織り込んでいたと思うので、こういう時は普通に中期3−5減額で良かったんじゃないのとは思う次第でして、まあ需給のこと何も考えないで輪番上げ下げする、ってのも宜しくないのは宜しくないのですけれども、需給って短期的な需給ともう少し長い意味での需給(長い意味での需給は発行計画とかそっちのマターの方面が詳しいんですけど)の話があると思うのですけど、あんまり短期的に「今こうだから中期の輪番下げるの見送るけどその代わりに超長期減額すっか」みたいな感じで輪番上げ下げするのあんまりいい方法とは思えないんですよね。

超長期減額したのはおーやるじゃん、とは思ったのですけど、相場をそんなに崩さずに「量」を減らすんだったら中期3−5を500減らせば月額2000減らせるんだからそっちの方がデカいじゃんとは思った次第ですな。まあ5−10減らしたのもまだまだ全然減らしが足りないとはいえ、今まで金利が上がると増やすのに金利が下がっても減らさなかった輪番運営だったのでそこはよーやったと評価したいのですが、だったら普通に3−5と5−10を各500減らした方が、というのがちょっと惜しいんだよな〜と思いました。

結果論ではありますけど水曜の債券市況ちゃん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/RYW7T7STKVO5NFYTFDRVQZ6CWQ-2023-11-22/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落、長期金利0.725%に上昇 戻り売り優勢
ロイター編集
2023年11月22日午後 3:30 GMT+9

『[東京 22日 ロイター] - <15:12> 国債先物は反落、長期金利0.725%に上昇 戻り売り優勢 

国債先物中心限月12月限は、前営業日比24銭安の146円06銭と反落して取引を終えた。前日までの6連騰により割安感が解消され、戻り売りが出た。現物市場の新発10年国債利回り(長期金利)は、同3.0ベーシスポイント(bp)上昇の0.725%。

きょうの国債先物は、前日までの6営業日続伸を受けた高値警戒感もあって利益確定の売りが先行してスタートした。一巡後はプラス圏に浮上する場面もあったが、日銀が午前の金融市場調節で残存期間5─10年・同25年超のオペのオファーを減額したことが嫌気され、再び売り圧力が強まった。』(上記URL先より、以下同様)

という講釈になっていますが、たぶん5−10はアタクシも「あると良いですね」みたいな駄文で書いたわけですが、3−5と5−10だったらまあ予想の範囲内だったと思うので、やっぱり超長期の減額が効いたんでネーノと思うのは結局水曜のイールドカーブって、

『現物市場では、10年物以外の新発国債利回りも総じて上昇。2年債は前営業日比1.5bp上昇の0.045%、5年債は同3.5bp上昇の0.305%、20年債は同5.5bp上昇の1.450%、30年債は同6.0bp上昇の1.650%、40年債は同6.5bp上昇の1.870%。』

となって、

『 OFFER  BID  前日比  時間
2年 0.036 0.048  0.011 15:15
5年 0.3  0.311  0.035 15:15
10年 0.722 0.732  0.035 15:15
20年 1.442 1.454  0.056 15:15
30年 1.642 1.654  0.059 15:15
40年 1.871 1.884  0.055 15:15』

ということで、数字の方の何か前日比が微妙になっているけど、BB引値ベースとかで見ると見事に前日のブルフラットの全戻し近くに戻っていましたので(1毛位強いですが)、なんか超長期の後ろの輪番250(月間750)減らしてこれかよ(いやまあ率から言ったら25%減額ではあるけど)ということですので、まあつまり超長期の輪番って安易に増やすと後で減らすのが大変というご教訓にもなったのかとは思います。

ついでに言いますと、BB引値ベースでみると火曜のブルフラットと水曜のベアスティープの間にしらっと2年と5年のカレントって5糸甘で横綱は23銭高で10年カレントは2毛強とかいうチャーミングな事をしていまして(超長期は月曜引け対比で1毛〜2毛強)、まあ確かに需給でみたら3−5減らしたくなかったというのも分からんではないのですけれども、超長期減らして相場バサッと下げてしまったのはあの例の「なんで!なんでそう変な方向ばかり思い切りがいいのよ」の画像を貼りたくなってしまうような結果論になりましたな。


・・・・・・でですね、まあどの位意識しているのかが甚だ謎なのでもうちょっとこの先の輪番の状況をみたいのではあるのですが、今回中期じゃなくて市場の意表をついて超長期後半の輪番を下げに来たのは、これまで(10月決定会合翌日の臨時輪番まで)の「とにかく金利上昇は怪しからん」モードからの宗旨替えなのかどうか、というのについても考えておいた方が良いとは思うのですよね。

今までの意味不明オペ乱打を見ているだけに今回もまあ何かあんまり考えてなくて超長期減らした気もするので判断がムツカシイのですが、金利低下牽制。みたいに債券市場に取られるような輪番の調整を行ったのが、単に中期減らす代わりに超長期でも減らすかレベルのしょうもない判断では無かったという可能性があるかどうかですよね。一応先般のMPMで事実上10年金利上限撤廃したんですから、以前のように「連続指値にヒットしないようにシャカリキになって金利上昇を抑える」必要は建付け上無くなっていますからねえ。

ま、しかしこれで減った減ったと思って見ましても、昨年の1月とかまで戻ってみると5−10ってまだまだ買入過大なんですよね・・・・・・・・



〇FOMC議事要旨の続きである

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20231101.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20231101.pdf
FOMC Minutes
Minutes of the Federal Open Market Committee
October 31-November 1, 2023

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, October 31, 2023, at 10:00 a.m. and continued on Wednesday,
November 1, 2023, at 9:00 a.m.1

引用は例によってHTMLバージョンから実施します。いつもの手抜き読みで『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の全般部分をサクッと確認しておくの巻。

経済全般に関する部分は手抜きなのですっ飛ばして、労働市場、物価、金融市場に関するパートを見る訳ですな。4パラ以降。

・労働市場は沈静化してきているというビューですから指標がそっち方面じゃない時はアレかも

『Participants observed that the labor market remained tight. Payroll growth was unexpectedly strong in September, and the unemployment rate remained low. Nevertheless, participants assessed that labor supply and labor demand were continuing to come into better balance.』

政策に関する議論の所でも言及されていましたし、最近の高官発言でもおおむねこのトーンになっておりますが、「労働上は徐々に良いバランスに向かっている」ですね。

『Measures of labor supply had moved up, with the labor force participation rate for prime-age workers rising this year, especially for women, and immigration also boosting labor supply. A few participants expressed concern that the recent pace of increases in labor supply might not be sustainable in light of challenges regarding the availability of childcare and the uncertainty regarding the extent to which immigration would continue to boost the growth of labor supply. 』

供給面ではレーバーフォースのパーティぺーションが上がっている、特に女性や移民のレーバーフォースが上がっているという状況のようで。

『Regarding labor demand, various measures appeared to indicate some easing, including a downward trend in job openings, a lower quits rate, and reduced wage premiums offered to job switchers.』

需要面では色々な数値が需要がやや緩和していることを示している。

『Consistent with the gradual rebalancing of labor market conditions, participants commented that the pace of nominal wage increases had continued to moderate. A few participants noted, however, that nominal wages were still rising at rates above levels generally assessed to be consistent with the sustained achievement of the Committee's 2 percent inflation objective, given current estimates of trend productivity growth.』

よっておちんぎんの伸びも徐々に落ち着いてくると思うんだが相変わらず今の状況が高杉晋作だと。


・物価に関しても沈静化という認識だがやっぱり物価高批判に対する意識があるよねと思う書きぶりでして

物価に関して。

『Participants observed that inflation had continued to moderate since the middle of last year. Both the 6- and 12-month change measures of core PCE price inflation had come down somewhat in recent months, despite a less favorable monthly reading in September. Participants pointed to the softening of core goods prices in recent months, as well as the continued gradual decline in housing services inflation.』

『However, participants also noted that there had been only limited progress in bringing down inflation in core services excluding housing.

インフレに関しても「落ち着いて来てるじゃんイーヨイーヨ」って感じのトーンが最初に入りますが、そのあとに毎度のハウエバーが来まして、コアサービス(なので賃金にセンシティブ)の物価があんまり落ち着いてこないよね、という話をしておりますな。

『Participants noted that longer-term inflation expectations remained well anchored.』

インフレ期待に関しては超あっさり味の記述でして、この辺りの表現はかなり安泰(というか何というか)な感じの書き方になっていまして、以前ですとインフレ期待が上振れてアンカーが外れる懸念に関する指摘とかあってインフレ期待の部分もそこそこ盛り上がりを示したのですけれども、この超あっさり味で「大丈夫です心配ありません」って感じの記述になっているので、まあこの辺りからも追加利上げのおかわりって意識は随分遠くなったなと思う訳ですが、

『Participants observed that, notwithstanding the moderation of inflation so far, inflation remained well above the Committee's 2 percent longer-run objective and that elevated inflation was continuing to harm businesses and households, particularly low-income households.』

わざわざ議事要旨に「elevated inflation was continuing to harm businesses and households, particularly low-income households」というのを入れている訳でして、水曜にご紹介したどっかの中央銀行の総裁からしたら物価が目標対比上振れているのに物価を上げる政策をしているのに比べてなんと普通の議論なんでしょと思うのか思わないのかwww

『Participants stressed that they would need to see more data indicating that inflation pressures were abating to be more confident that inflation was on course to return to 2 percent over time.』

でもって結論は物価動向を見極めるためにはもっとデータが必要、という様子見地蔵になるのでした。


・ファイナンシャルコンディションに関してですがそんなにタームプレミアムで金利上がったんけ???

次のパラが金融環境です。

『Participants noted that in recent months, financial conditions had tightened significantly because of a substantial run-up in longer-term Treasury yields, among other factors.』

来ました金融環境のタイト化、ということでアメリカン長期金利の上昇に伴うファイナンシャルコンディションに関する議論になります。

『Higher Treasury yields contributed to an increase in 30-year mortgage rates to levels not seen in many years and led to higher corporate borrowing rates.』

モーゲージの金利がここ数年で見られない上げになっておるし企業の資金調達金利も上がっておる。

『Many participants observed that a range of measures suggested that the rise in longer-term yields had been driven primarily or substantially by a rise in the term premiums on Treasury securities.』

茲許の長期金利上昇の主因はタームプレミアムの上昇によってもたらされたものであるということが示唆される、だそうですホンマカイナ。

『Participants generally viewed factors such as a fiscal outlook that suggested greater future supply of Treasury securities than previously thought and increased uncertainty about the economic and policy outlooks as likely having contributed to the rise in the term premiums.』

何かお前ら現状認識間違えてねえかという気もせんでもないのだが、どうも先月の長期金利急上昇は財政要因による国債需給への懸念がタームプレミアムを引き上げた、ってな整理になっていたようでございますな。

『Some participants noted that the rise in longer-term yields may also have been driven by expectations for a higher path of the federal funds rate in light of the surprising resilience of the economy or a possible rise in the neutral policy rate.』

さすがに何人か(Some)の参加者は茲許の金利上昇に関しては、経済がサプライズにレジリアントなことや、均衡金利が上がっているという認識から、先行きの政策金利パスが上方シフトしたことによるんじゃネーノという指摘が入っています。

『Participants highlighted that longer-term yields could be volatile and that the factors behind the recent increase, as well as their persistence, were uncertain. 』

この一文は議事要旨出すタイミングで金利下がっているから入れてやがるな感はありますね。

『However, they also noted that, whatever the source of the rise in longer-term yields, persistent changes in financial conditions could have implications for the path of monetary policy and that it would therefore be important to continue to monitor market developments closely.』

でまあ結論はこれまた「この影響については今後のデータを見ていく必要がある(キリッ)」と華麗に様子見地蔵なのですが、お前らそんなに財政リスクプレミアムのこと気にしてたんかいと思いましたが、文句はイエレンに言って下さいよろしくお願いします。


なお、この後に「不確実性」「ファイナンシャルスタビリティ」のパートがありますが手抜きなので割愛します。(単に時間がないだけだがw)







2023/11/22

お題「FOMC議事要旨は順当に地蔵モード/輪番どこまで減額しますかねえ/11月8日の衆院財金の委員会質疑が・・・・・・」

今朝はFOMC議事要旨ネタがあるのでそっちを先に書くわけですが別件もあるのでちょっと夜なべして(下書きの下書きしただけなので大して夜なべしてないけど)おりまして、議事要旨ネタの後にもネタを投下である。

〇ということで寝起きでFOMC議事要旨だが案の定で地蔵オブ地蔵という説明になっておる

ということでFOMC議事要旨。

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20231101.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20231101.pdf
FOMC Minutes
Minutes of the Federal Open Market Committee
October 31-November 1, 2023

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, October 31, 2023, at 10:00 a.m. and continued on Wednesday, November 1, 2023, at 9:00 a.m.1

引用は例によってHTMLバージョンから実施します。いつもの手抜き読みで『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の金融政策に関する議論部分のパートからまいります。9パラ〜12パラになります。

では9パラ。

・まあ当たり前なんですが先行きの金融引き締め終了の雰囲気は一切出さないの巻

『In their consideration of appropriate monetary policy actions at this meeting, participants noted that economic activity expanded at a strong pace in the third quarter and had been resilient.』

経済活動はストロングペースでレジリアント。

『While the labor market remained tight, job gains had moderated, on balance, since earlier in the year, and there were continuing signs that supply and demand in the labor market were coming into better balance.』

労働市場はタイトだが改善の傾向が続いている。

『While inflation had moderated since the middle of last year, it remained well above the Committee's longer-run goal of 2 percent, and participants remained resolute in their commitment to bring inflation down to the Committee's 2 percent objective.』

物価に関しては落ち着いてきているが相変わらず高い。

『Participants also noted that tighter financial and credit conditions facing households and businesses would likely weigh on economic activity, hiring, and inflation, al-though the extent of these effects remained uncertain. Participants commented on the significant tightening in financial conditions in recent months, driven by higher longer-term yields, with many noting that it was uncertain whether this tightening of financial conditions would persist and to what extent it reflected expectations for tighter policy or other factors.』

今回「よりタイトになった金融環境」の話が長めになっていて、どういう効き方をしているのかという定量的なことはよーわからん面があるものの、経済活動の抑制に繋がっている、という指摘がされておりますが、ここでわざわざ「Participants commented on the significant tightening in financial conditions in recent months, driven by higher longer-term yields,」について触れていまして、逆に足元ではヒャッハーと長期金利が下がってしまった訳ですが、この効果については「it was uncertain」となっておりまして、回答を濁してはおりますな。

とは言いましても、金融環境のタイト化の効果の話をババーンとだしているのはさすがにちょっと足もとの長期金利の下がり方が威勢良すぎるからちょっとこの記述厚くして見たんじゃなかろうかとアタシャ勝手に想像するんですが市場ちゃんの反応はどうだったのでしょうか(まだ答え合わせしてないです)。

『Amid these economic conditions, all participants judged it appropriate to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent at this meeting.』

政策金利据え置きはご案内の通り。

『Participants judged that maintaining this restrictive stance of policy at this meeting would support further progress toward the Committee's goals while allowing more time to gather additional information to evaluate this progress.』

今後の情報を集めて行きどういう政策をするか考える時間的な猶予がありまっせと。

『All participants agreed that it was appropriate to continue the process of reducing the Federal Reserve's securities holdings, as described in the previously announced Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet.』

バランスシートのランオフに関しては次のパラでもコメントがありました。

では10パラ。

・先行きに関しても利上げはしなさそうですがではすぐに利下げになるかというとそういう話ではなく要は地蔵

『In discussing the policy outlook, participants continued to judge that it was critical that the stance of monetary policy be kept sufficiently restrictive to return inflation to the Committee's 2 percent objective over time.』

ということで一発目にいきなり「the stance of monetary policy be kept sufficiently restrictive to return inflation」とゆうとりますのでまあ利上げもする感じではないけどじゃあ利下げにサックリと行くのかというとそうでもないでしょ、とは思うのですが、まあこれアメリカンマーケットも何を織り込んでいるのかが微妙に訳分らん(年末モードでのポジションクローズとかもあるみたいなので本当にコイツら早期利下げまでマジ織り込みしているのかが良く分からん面がある)のでどう解釈するのか、という感じですが、基本的に昨日一昨日にちょろっとネタにしたバーキンとか先々週のパウエルにあるように、「当面は地蔵」という話をしているんだと思うのですけどどうですかねえ。

『All participants agreed that the Committee was in a position to proceed carefully and that policy decisions at every meeting would continue to be based on the totality of incoming information and its implications for the economic outlook as well as the balance of risks.』

これ思いっきり9日の講演でパウエルちゃんが言ってた話じゃんという世界。まあ要するに地蔵宣言ですね地蔵。

『Participants noted that further tightening of monetary policy would be appropriate if incoming information indicated that progress toward the Committee's inflation objective was insufficient.』

というの一応つけてるけどどっからどう見ても全般的なトーンが「データを見ながら余裕をもって地蔵モードです次の決め打ちまではお時間が掛かります」なのでまあこれも別にね、って感じですか。3カ月くらいCPIが反転すると慌てだしそうですけど。

『Participants expected that the data arriving in coming months would help clarify the extent to which the disinflation process was continuing, aggregate demand was moderating in the face of tighter financial and credit conditions, and labor markets were reaching a better balance between demand and supply. 』

最近の動きは良い傾向である、と来ましたあとに、

『Participants noted the importance of continuing to communicate clearly about the Committee's data-dependent approach and its firm commitment to bring inflation down to 2 percent.』

とは言いましても今後もデータディペンデントでやっていくのダイジダイジネーと来ているので、どう見てもこのパラグラフの全体のトーンは地蔵宣言ですよね。あとは「in the face of tighter financial and credit conditions」ってあるのが反転している事についてどういう評価になるのか、まあ多分それが物価の反転上昇とかに繋がれば泡吹きだすでしょうけれども、今回はとりあえず利下げ転換とかそういう気配は出さないという所で止めている感がありますな。

では11パラ。

・バランスシート縮小も順調という話の頭にしつこくも引き締めスタンスの維持が適切という話が

『All participants judged that it would be appropriate for policy to remain at a restrictive stance for some time until inflation is clearly moving down sustainably toward the Committee's objective.』

なかなかしつこくて、またもパラを変えて「インフレがクリアリーに2%に向けて持続的に向かっていくまでは引き締め的な政策スタンスを継続するのが適切だと全パーティシパントが一致」とぶっこんでいますな。

『Participants also observed that the continuing process of reducing the size of the Federal Reserve's balance sheet was an important part of the overall approach to achieving their macroeconomic objectives.』

と思ったらこちらはバランスシートの話でして、

『A few participants noted that the process of balance sheet runoff could continue for some time, even after the Committee begins to reduce the target range for the federal funds rate. Several participants commented on the recent decline in the use of the ON RRP facility, noting that the use of the facility had been responsive to market conditions.』

バランスシート縮小の影響で翌日物RRPファシリティの利用が減ってきている、という指摘がありまして、まあこの辺の短期オペって超過準備がアホほどあるからそれを不胎化しないといけないためにコリドー作るためにファシリティ設けている訳なので、本来のバランスシート構成なら利用なくてもちゃんとマネーマーケットの金利が推移するのが望ましい訳ですからね。

では12パラ。

・リスクは物価が上で経済が下という順当な両論併記でこちらも地蔵モードを示唆する内容

『Participants discussed several risk-management considerations that could bear on future policy decisions.』

リスクマネジメントアプローチ・・・・・どっかの中央銀行のインチキ説明で使われますな。

『Participants generally judged that, with the stance of monetary policy in restrictive territory, risks to the achievement of the Committee's goals had become more two sided. But with inflation still well above the Committee's longer-run goal and the labor market remaining tight, most participants continued to see upside risks to inflation.』

リスクは両方あるけどやっぱり物価上振れリスクを見ると。

『These risks included the possibility that the imbalance of aggregate demand and supply could persist longer than expected and slow the progress on inflation, geopolitical tensions and risks emanating from global oil markets, the effects of a tight housing market on shelter inflation, and the potential for more limited declines in goods prices.』

どういう要因で物価が上振れる可能性があるのか、という要因を列挙してますね。

『Many participants commented that even though economic activity had been resilient and the labor market had continued to be strong, downside risks to economic activity remained. Such risks included potentially larger-than-expected effects of the tightening in financial and credit conditions on aggregate demand and on bank, business, and household balance sheets; continued weakness in the CRE sector; and potential disruptions to global oil markets.』

とは言え、多くの参加者は労働市場が強くて経済がレジリアントであるという現状においてでも、経済のダウンサイドリスクもありますよ、という話でこのパラは締まっていまして、要はこれも両論併記で地蔵地蔵地蔵ということを示しているのかと思います。まあ直近のFED高官の地蔵モードと同じって感じでしょうか。利上げ期待してた人(いるのか??)はしょんぼりですし、利下げ期待してた人(でもまさか今回その示唆が出るとは期待してないと思うけど)もしょんぼりという地蔵大勝利の内容ではなかったかと思われ。


〇さて今日は輪番ですが・・・・・・

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/H7YA7TGPYBKQXFNNRLCDCIIG3E-2023-11-21/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続伸で引け、長期金利は2カ月ぶりに0.7%下回る
ロイター編集
2023年11月21日午後 3:14 GMT+9

『[東京 21日 ロイター] - <15:07> 国債先物は大幅続伸で引け、長期金利は2カ月ぶりに0.7%下回る

国債先物中心限月12月限は、前営業日比47銭高の146円30銭と大幅続伸して取引を終えた。現物市場の新発10年国債利回り(長期金利)は同4.5ベーシスポイント(bp)低下の0.695%。一時0.690%と、9月11日以来2カ月ぶり低水準をつける場面もあった。好地合いの継続や20年利付国債入札の無風通過が相場を支援した。』(上記URL先より、以下同様)

ということで0.7%割れは草生えるの巻なのですが、まあ昨日はドル安が進行するもんでドル円眺めておりますとホイホイと円高になるのを見て久々に心が平和になりまして、あの円安が進行するときのこの世の終わり感が無いのが何と安心した事かという感じですが、対ドルの円安が止まると日銀が追い込まれなくなるのだけはムカつきますなwww

『現物市場では10年物以外の新発国債利回りも総じて低下。2年債は前営業日比0.5bp低下の0.035%、5年債は同3.0bp低下の0.275%、20年債は同6.5bp低下の1.395%、30年債は同7.0bp低下の1.595%。40年債はまだ売買が成立していない。』

ということで、サイトリニューアルされたら図表っぽくなって引用しようとするとしち面倒になった気配ちゃんを見ますとこの通り。

『   OFFER  BID   前日比 時間
2年  0.028  0.037  -0.005  15:04
5年  0.268  0.275  -0.035  15:04
10年 0.687  0.697  -0.047  15:03
20年 1.388  1.396  -0.07   15:04
30年 1.586  1.597  -0.073  15:03
40年 1.803  1.813  -0.084  15:04』

とまあそういうことで10年0.70%割れとなったわけですが、さてここで本日の輪番、まあ3-5がこの前の1-3と同様に500減額して先月末のレンジの下限になるのはまあさすがに確定としまして、このタイミングで5-10をもっと減らすとか、そもそもレンジだって別に下限割って減らすの罷りならんという決まりもないのですから、この千載一遇のチャンスに減額しないでいつ減らすのという話だし、ここでがっつり減らしたらちったあ再評価する気も起きるのですが、まあ本日はこれに注目、ということでここでさっきまでスルーしてたアメリカン長期金利を見て議事要旨の反応を、と思ってみたらそんなに動いてないようですからして、これはもう輪番減額大チャンスとしか言いようがありません。まあ四の五の言わずに1-3下限まで下げて3500にして3-5を4000にして5-10も5750とかいうのをもっと減らしておけと思うのですが、まあ何か3-5だけ500減らして大英断の積りになって終わるんじゃねえかというのが過去の実績からの悲しい予想では
ありますな。

とは言え、まあ実際問題としてはYCCの1%上限だって頑張って守らなくて良しということになったので、放置プレイも必要だし減額はガシガシやっておかないといけない訳でして、MPMの翌日に臨時入れるのが台無しではありましたが、ここのチャンスにどどーんと買入を減らせるのであれば、あの台無し輪番も成仏する(ナンジャソラ)というものでありまして、本日の輪番減額の程度に期待したい所ではあります。



〇11月8日の衆議院財務金融委員会での植田総裁へのツッコミが大変に強烈で鑑賞すべき素材である件について

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009521220231108002.htm
第212回国会 財務金融委員会 第2号(令和5年11月8日(水曜日))
第2号 令和5年11月8日(水曜日)

F5で窓を出して「植田」で検索すると早いのだが、この回の国会での植田総裁への質疑がなかなか辛辣でよろしかった(リフレ礼賛してるしょうもないのが一匹観測されましてお目汚しにも程があるのが残念ですがそんなものは当然スルー推奨)のですよ。

でまあこれだけでどんぶり飯三杯は軽く行けるのですが、ちょっと階委員の質疑を見るとすごいのよこれが。植田総裁への質問からですが、もはやこれはあたくしが変に合いの手を入れる必要が無いので、ひたすら貼っておきますね。なお他の委員(除く1名)の質疑も中々辛辣なので上記URL先(ある程度日程経過するとアーカイブ送りになるのでその場合は会議録データベースになりますが、現在ですと、

衆議院トップページ >立法情報 >会議録 >財務金融委員会 >第212回国会 財務金融委員会 第2号(令和5年11月8日(水曜日))

という階層で探すと出てきます(直リンしているから今は上記URL先で行けます)

・・・・・とは言えやっぱり長いので適当に引用は途中でインターバル入れますね(合いの手と言うほどではない)。

階さん、途中から植田総裁への質疑になります。

『○階委員 (前半割愛)

 日銀総裁にも来ていただいております。

 今日お配りしている資料の一ページ目ですけれども、先週の金融政策決定会合の公表文の一部を、前回、九月の公表文と比較したものをつけさせていただいております。

 ここの中ではちょっと取り上げていないんですが、別な部分で、長期金利の上限を厳格に抑えることは副作用も大きくなり得るという表現が出てきます。副作用には円安による物価高も含まれるかどうか、この点だけ端的にお答えください。円安による物価高は含まれますか。

○植田参考人 お答えします。

 私どもが申し上げている副作用と為替レートとの関係という御質問だと思いますけれども、私どもが副作用を抑えるというときに為替レートの関係で念頭に置いておりますのは、私どものYCCの運用がマーケットのボラティリティーを高め、それが為替レートのボラティリティーにもつながってしまう、そういう副作用を抑えることを念頭に置いているということでございます。

○階委員 ボラティリティーというのは変動性なわけですけれども、変動性が上方にずっと変動してきて、今、昨年の初めに比べると、物すごい、三〇%も四〇%も円安になっているわけですね。これは副作用だということでいいですか。

○植田参考人 常日頃申し上げておりますように、為替レートはファンダメンタルズに沿って安定的に推移するということが望ましいわけですが、そのファンダメンタルズに沿って安定的に推移するということが現実の為替レートの変化との相対でどこまでそうなのかということは、なかなか判断が難しいところでございますので、具体的に申し上げるのは差し控えさせていただければと思います。

○階委員 いや、具体的に聞いていません。一般論として聞いています。急激な円安は副作用に含まれるかどうか、結論だけお答えください。』

www


『○植田参考人 私どものYCCの運用がマーケットのボラティリティーを高めて、為替のボラティリティーも高まるという場合は、それは副作用に含めて考えているということでございます。

○階委員 副作用に含めて考えられるということです。

 政府は昨年来ずっと物価高対策を行っているんですね。物価高対策を行うということは、急激な物価高が進んでいるからなんですけれども。

 物価の番人というふうに日銀は言われます。その立場からすると、物価高の大きな要因となってきた、今、副作用を生んでいるということもお認めになった、長期金利の上限を抑え込んでいるイールドカーブコントロール、これは日銀としては、副作用をなくすために事実上放棄せざるを得なくなったのではないかと思いますが、違いますか。』

wwwwww

『○植田参考人 私ども、足下の物価高といいますか、高いインフレ率は、大まかに二つの要因で起こっているというふうに考えてございます。一つは、しばらく前までの輸入物価の上昇が国内物価に及んできているという動きでございます。もう一つは、国内で物価が少し上がり、賃金が上がり、それがまた物価に跳ねるという物価と賃金の循環、うまく回れば好循環でございますが、それが少しずつ起こってきているという部分でございます。

 私どもは、第二の部分がもう少しうまく回って、二%のインフレ率が持続的、安定的に達成されるということを目指してございます。この第二の部分がまだ少し弱いということを考えまして現在の緩和政策を維持しているというスタンスでございますし、イールドカーブコントロールも、その判断の下で、現状、維持しているところでございます。』

何じゃこの回答はw

『○階委員 第二の力が弱いから金融政策を維持しているというお話でしたけれども、今現在、仮にエネルギーの補助がなかりせば、物価は四%上昇なわけですよ。

 こうした現状に鑑みて、日銀としては、これから物価を上げたいのか下げたいのか、どっちなのかはっきり言ってください。』

正論。

『○植田参考人 これは非常に難しいところでございます。』

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

勿論さらに続きますので続きは以下の通り。

『 エネルギー補助金がなかりせば四%前後である全体のインフレ率、これは下がっていくことが望ましいと考えております。しかし、中長期的な観点からは、先ほど申し上げたような第二の力によるインフレ率が少しずつ上がっていくことが望ましいというふうに考えており、その上で、第一の力によるインフレは、輸入物価も減少に転じていますし、ということから、早晩勢いが衰えてくるというふうに判断しております。その下で、第二の力の方を育てていくために金融緩和を維持しているということでございます。』

『○階委員 要するに、将来物価を上げていかなくちゃいけないので、今は物価が幾ら高くとも我慢してくれ、今は本当だったら物価を下げるのが望ましいけれども、将来物価を上げていくために今は我慢してくれということを言っているんですか。』

『あるいは、将来景気をよくしていくために今は我慢してくれ、物価高だけれども、日銀としてはそれには手を出さない、我慢してくれということでいいんですか。』

物価の番人、で質問されると日銀は回答のしようが無くなるんですよね。

『○植田参考人 非常に悩ましいところでございますが、足下の物価高が家計や企業に大きな負担を強いているということは重々承知してございます。ただ、申し上げましたように、これがすごく長く続くというふうには考えてございません。

 他方、第二の力的なものがすごい弱い、しばらく前まではゼロあるいはデフレ的な環境にあって、それが二十数年も続いたということによる様々なコストもあったかと思います。

 その両方を鑑みた上で、後半の第二の力の方を育てていこうという観点から、緩和を維持してございます。』

『○階委員 明確にお答えになりませんけれども、今の金融政策を続けていくということは、将来はよくなるかもしれませんけれども、今は物価高につながるということを前提にしていますよね。それでいいですね。

○植田参考人 第二の力の部分については、プラスの影響を金融緩和政策が与えるということをもちろん念頭に置いてございます。

 第一の力の部分については、いろいろあるとは思いますけれども、大まかには、近いうちに水準が下がってくるというふうに思っております。』

と、ここまで来た所で必殺奥義登場。

『○階委員 三ページ目に日銀の物価見通しを出していますけれども、近いうちに下がってくるというのは昨年の春ぐらいからずっと言っていますよ。ずっと言って、その都度、三か月ごとに上方修正、上方修正、先週も上方修正。これって何なんでしょうか。国民にはもうすぐ下がるから我慢してくれと言っておいて、そして金融政策を漫然と続けていって、結局、物価高はどんどん進んでいく一方じゃないですか。

 日銀の誤った物価見通しとそれに基づく金融政策によって物価高が進む一方、そして、さっきも還元の話をしましたけれども、国はお金がないのに減税をやったり給付をやったりしなくちゃいけなくなっている。このことについて責任は感じないんでしょうか。』

当然だが極めて厳しい質問である、というかこういうの何で世の中でちゃんと報道されないの???

『○植田参考人 確かに、輸入物価、あるいはその元にあります国際商品市況自体は昨年の後半から下がる基調にございます。その下で、徐々に国内の物価、特に、先ほど来申し上げているような第一の力に関連する部分はインフレ率が下がってくるだろうという見通しを、ここずっと、先生がおっしゃるように出してきたわけでございますが、その部分について多少見通しが、その後上方修正を続けてきたということは事実でございます。

 どうしてそうなったかということを考えてみますと、輸入物価の国内物価への価格転嫁の率のところについて……(階委員「言い訳は聞いていません。それは聞いていないから。責任を感じないか。問いに答えてください」と呼ぶ)

 もちろん、上方修正につながったような見通しの誤りがあったということは認めざるを得ません。したがって、今後、いろいろなデータをきちんと分析して、見通しが適切に行われるように努めていきたいというふうに思います。』

降参キタコレwww


『○階委員 責任を感じているのであれば、直ちに検証すべきですよ、この物価見通し。私もこの場で前にも指摘していますけれども、毎回毎回なんですよ。その結果、物価高がどんどん続いていって、血税をどんどん物価高対策に投入しなくちゃいけなくなっている。責任を感じているんだったら、直ちに物価の見通しの在り方を検証して、そして、こうした、どうせ誤ってしまう見通しに基づいた金融政策を行っている、このこと自体も問題ではないか。』

さらに階さん続けて、

『 二ページ目に門間さんという元理事のペーパー、資料をつけましたけれども、過去に日銀は経済、物価情勢の判断を基にして金融政策を行ったことはないと。アベノミクス以降の話ですけれども。要は、まともな見通しをしていないから、金融政策も変更できないわけですよ。まともな見通しをしていれば、もっと早くに今回のようなイールドカーブコントロールの事実上の放棄みたいなことも出てきたと思いますよ。

 だから、まともな見通しができないことについて責任を感じるんだったら、検証をして、そして、今後こういった見通しに基づいて政策決定していいのかどうか、これも含めて総括をすべきだと思いますけれども、いかがですか。』


『○植田参考人 私ども、三か月に一回、将来の物価、経済見通しを点検し、発表するという作業をしてございますが、その際、毎回、できる限りにおいて、見通しが過去誤った場合には、それはどうしてかということのある種の検証作業を続けてございます。

 その上で申し上げれば、インフレ率全体の見通しを少しここのところ誤っているということは事実でございますが、先ほど来申し上げています、それを輸入物価の転嫁である第一の部分と、国内で賃金、物価が回るという第二の部分に分けた場合に、第二の部分がまだまだ弱い、少しずつ上がってきているけれどもまだ弱いという部分については、余り大きく外していないというふうに思っております。その部分に基づいて金融政策運営を行ってきたということについては、大きな誤りはなかったのではないかなというふうに考えております。』

何という往生際の悪い説明wwww

でまあ以下は蛇足っぽいのですが植田さんへの質疑部分を最後まで引用しておきますね。

『○階委員 今回のこの決定文ですけれども、イールドカーブコントロールのところで、金融市場調節方針というのがこの一ページ目の最初の方に書いていますけれども、長期金利については、十年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行うとしている一方で、その実際の運用については、長期金利の上限は一・〇%をめどとするということで、一%超えも容認しているわけですね。これは矛盾していますよね。

 さっき言ったように、物価を上げるのか下げるのか、これも明確にお答えにならないし、こうした公表文においても、ゼロ%程度なのか一%超えなのか、これもよく分からない。こうしたどっちつかずの曖昧な態度を取り続けた結果が、今回、政策決定でイールドカーブコントロールを抜本的に見直したにもかかわらず円安が是正されなかったということにつながっているんじゃないですか。そこはお認めになりますか。』

『○植田参考人 今回の政策、いわばイールドカーブ運営の柔軟化は、これまで長期金利について一・〇%を厳格な上限としてきたというところを、めどという、柔らかな上限ということに変えたということでございます。

 これは繰り返しになりますが、第二の力による物価が上がっていくという部分がまだまだ弱いという下で、イールドカーブコントロールを含めました現在の金融緩和を続けていこうという判断の下に行われた措置でございます。』

『○階委員 確認しますよ。ゼロ%程度で推移するというイールドカーブコントロールの方針と、一%超えも容認するという実際の運用の見直し、これは矛盾しませんか。』

『○植田参考人 全体として強い金融緩和を続けるという意味で、長期金利ゼロ%程度で推移するようにオペレーションを行うということでございます。ただし、その下で金利が変化するものですから、上限を設けようということで、上限を一%というふうに設定しているところでございます。七月との関係では、その上限を、非常に厳密なものから、めどというふうに、ややソフトなものに変えたというところが変更点でございます。』

『○階委員 これもさっきの還元と同じく、一般人には理解し難い話なんですよね。ゼロ%で推移するという範囲に一%超えも含むというのは、どう考えてもおかしいでしょう。そういう言い方をするから、日銀が信用されなくなるわけですよ。幾らマーケットに働きかけて円安を是正したいと思ったとしても、それは功を奏さないわけですよ。そういうことをもう少し真摯に受け止めたらどうでしょうか。

 私は、もう潔く、イールドカーブコントロール、目標としては実質賃金が上がる形で二%達成だけれども、道半ばだけれども、円安、物価高が進んでいるから、これはもう長期金利のコントロールはやめます、それでいいんじゃないですか。そういうふうに正直に言うべきだと思いますよ。その方が物価という意味ではプラスに働いたと思うんですが。

 こういう分かりにくい、矛盾をはらんだ支離滅裂なメッセージの発信は、非常に私はマーケットを混乱させるし、また、日銀が意図した方向と反して物価高を進めているんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。』

『○植田参考人 繰り返しになりますが、足下、まだ基調的な物価の上昇率が二%には少し距離があるという中で、大規模な金融緩和を続けてございます。

 イールドカーブコントロールは実質なくなってしまったのではないかという御意見かもしれませんが、そうではなくて、現在でも、定例のオペ、臨時オペを使ってかなり大量の国債を買い続けて、長期金利をある程度以上、現状では一%以上大きく上がらないようにするというオペレーションを続けてございます。』

・・・・・とまあこれだけでもご飯2膳は軽く行けるんですけど、この後他の委員からも結構ボッコボコにされておりますので、上記URL先をぜひご覧いただければと思うのであります。読む際にはF5で窓を出して「植田」で検索すると55箇所に文字列が登場しますので、順にみていけばよろしゅおすえ。







2023/11/21

お題「先週のネタ備忘&リッチモンドバーキン総裁もまあこれは様子見地蔵」

アタクシが夏休み取ると相場が暴れる(別に本人狙ってるつもりはないし、暴れた後に戻って来るとキャッチアップするのが結構な苦行だから休み中は無風相場が望ましい)という悪い傾向があるのですが、今回も頭の切り替えが中々できなくて困りますわ。

#もう4営業日目だろ何やってるんだと言われるとぐうの音も出ないが


〇そういや日銀やっと先週輪番減額してましたがまだ全然足り申さんのだが

アタクシの備忘用メモみたいなもんで恐縮ですが

オファー (11月15日<水>)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of231115.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,750 2023年11月16日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 5,750 2023年11月16日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2023年11月16日
国債買入(残存期間25年超) 1,000 2023年11月16日

1−3の輪番を4250→3750、5-10の輪番を6750→5750に減額してまして、明日は明日で1-3、3-5、5-10、25-の輪番が予定されているのですけれども、3-5が前回4500だったのでさすがに4000に減額するじゃろ、という予想をしてみてじゃあこれでどの位の買入になるのかと思いまして、しらっと買入が減っていた時代には面白がって国債保有残高をチェックしてたんですが最近絶望してチェック止めてたので数年ぶりに見てみた訳でございますよ。

https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

例によって公社債売買参考統計値の方から銘柄のデータ拾ってきて償還順にソートして確認したんですけど、アタクシの計算が間違っていなければ、2024年、2025年の国債償還額って、

2024年:696,533億円
2025年:690,490億円

という感じでだいたい70兆円弱の償還があるようですなうんうん。でもってその一方で今の買入のペースで、仮に明日の3-5が500億円/1回(なので月額で2000億円)減額になったと思って計算したら、

輪番(1年以下の輪番はすぐに償還が来るということで計算しないことにする)
1y-3y:3,750×4=15,000
3y-5y:4,000×4=16,000
5y-10y:5,750×4=23,000
10y-25y:2,000×4=8,000
25y-:1,000×3=3,000
JGBI:600×1=600

ということで、月額で65,600億円、年額で12倍だから787,200億円という結果。

・・・・・・・国債買入残高が減らないんですけどどういうことですかという感じでして、ざっくり考えてここから月額1兆円くらい減らしても年額の買入が66兆円とかですから碌すっぽ国債の残高が減らん、というお前らこの先の事考えてるのかという話になっておるわけです。

まあ黒ちゃん末期からはご案内のように臨時だの指値だの増額だのバンバンやった訳で、その辺のスポットが無くてしかも今月になってやっと少し減額して、何ぼ何でも明日も注記3−5は減額すると思いますが、それまで加味してもこの結果ではどうしようもないとしか申し上げようが在りません。

まあ大体からして5-10の輪番を1回1000億円、月額で4000億円減らす前って10年新発国債の月額発行予定分が丸々輪番予定額になっていて、財政ファイナンスにも程がある話をしていて、いまの2.3兆円だってむちゃくちゃ多すぎにも程があるんでもっと減らせやヴォケとしか言いようがないのですが、何か天の助けのように米国債券市場様もヒャッホウと言っているのですから、明日の輪番は何なら中長期全部おかわりで減らせやとしか言いようがありません。まあ3-5しか減らさないと思うけど。

そもそも輪番減らしても国内円金利下がってるのってアメリカン要因もあるし円安止まっている感じで売り込みにくい(政策修正の追い込まれの可能性が少し下がるから)というのもあるけれども、結局の所元々が超越買いすぎなので、その買いすぎ状態が金利低下をさらに促進するってなもんでしょうかね〜。

遅きに失してはいるのですが、金利が下がって落ち着いている時に通常輪番を減らしていく、というのは至極当たり前の話ではありますので、まあバンバン減らせやという所ではありますな、うんうん。



〇バーキン総裁も戦闘姿勢っぽいものは出すもののアンマリ戦意はなさそうで

こんなんありました。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-20/S4FNTHDWLU6801
リッチモンド連銀総裁、インフレでの「仕事は終わっていない」
Craig Torres
2023年11月21日 4:37 JST

『米リッチモンド連銀のバーキン総裁は20日、物価の伸びが減速しつつも景気は拡大していることが米経済指標では示唆されるが、こうした進展は金融当局がインフレに関して勝利宣言するには十分ではないとの考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)

ということなのですが、

『バーキン氏はFOXビジネスとのインタビューで、「米経済は依然として成長している。失業率はまだ3.9%で、インフレは落ち着きつつあるようだ。これらは全て良いことだ」と発言。「しかし、仕事は終わっていない。従って、仕事を成し遂げるまで続けなくてはならない。どこに着地するか見極めることになる」と述べた。』

『同氏はこの日、インフレを当局目標に戻すことに自身は注力していると改めて表明。「インフレは頑強だと私はみている。それはより高くより長くの論拠になる」と語った。』

とまあそんな話になっていますが、FOXニュースのインタビュー動画の方がこちらでして、(もしかしたらブラウザーかWindowsのバージョンによっては見れないかもです)

https://www.foxbusiness.com/video/6341495819112
Cavuto Coast To Coast
November 20, 2023
06:42
Inflation is coming down nicely: Thomas Barkin

『Federal Reserve Bank of Richmond CEO Thomas Barkin discusses the future of Fed rate hikes on 'Cavuto: Coast to Coast.'』

甚だ遺憾なことに文字起こしというのが存在しないようでして、番組自体は6分43分なのですが、FOXビジネステレビ(かな?)の方は元々このインタビューも全体として「市場は政策金利引き下げのサインをどん欲に待っております」みたいなコーナーの流れで出てきてまして、なるほどアメリカン市場は利下げコイコイ状態になっとるなあというのが分かってそれはウケました。

でですね、アタクシの怪しいヒアリングですと、バーキン総裁「ハイヤーフォーロンガーの度合いはどうなのよ、市場で考えているのに対して貴殿のご意見は」という趣旨の質問に対して、「経済次第ですからぬー」という回答をしているように見えまして、まあ少なくとも市場のヒャッハーに水を積極的にぶっかけに行く感じではありませんで、とは言えBBGの記事にあるようにインフレ退治が出来たというような楽観でもない、という風に聞こえました、順当と言えば順当ですけど、「今後のデータを十分に検討したい」ってのを強調してたので、まあ「様子見地蔵で行きます」ってのが一番近いのではないかと思いますが、聞き間違えだったらゴメンチャイなので上記のURL先を見てちょんまげという感じです。

しかしまあ何ですな、このネタに関して

ブルームバーグ:「Fed’s Barkin Says Inflation Job Not Done; Growth Easing to Trend」
FOXビジネス:「Inflation is coming down nicely: Thomas Barkin」

ってお題になっているのがこれまた味わいあるなと思う所でして、マーケットパーティシパントにより寄せていると思われるBBGの方が利下げに対しては距離を置いた書き方をしていて、FOXビジネスはインフレの低下がナイスですねーというのをお題にする、ってえのがオモロイナと存じましたがどうでしょうか(^^)。



〇先々週のネタなのでただのアタクシの備忘ですが9日のパウエルちゃん

これまたアタクシの夏休み中のネタなので皆様的には今更ジローで恐縮ですが

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20231109a.htm
November 09, 2023
Opening Remarks
Chair Jerome H. Powell
At "Monetary Policy Challenges in a Global Economy," a policy panel at the 24th Jacques
Polak Annual Research Conference, hosted by the International Monetary Fund, Washington, D.C.

今さらなのでちゃちゃっと参りますけど。

・要するに様子見地蔵と

最初のご挨拶飛ばして次のパラグラフですが。

『U.S. inflation has come down over the past year but remains well above our 2 percent target (figure 1).1 My colleagues and I are gratified by this progress but expect that the process of getting inflation sustainably down to 2 percent has a long way to go.』

2%が近い、とか言い出すとさあ引き締めの終了だ利下げだ利下げだ祭りになるからギリギリまでこれはこのままで行くでしょう。ということで問題は中身の話の方になるんですけど、

『The labor market remains tight, although improvements in labor supply and a gradual easing in demand continue to move it into better balance.2』

『Gross domestic product growth in the third quarter was quite strong, but, like most forecasters, we expect growth to moderate in coming quarters. Of course, that remains to be seen, and we are attentive to the risk that stronger growth could undermine further progress in restoring balance to the labor market and in bringing inflation down, which could warrant a response from monetary policy.』

労働市場が相変わらずアホのように強いことについて警戒しているようで。

『The Federal Open Market Committee (FOMC) is committed to achieving a stance of monetary policy that is sufficiently restrictive to bring inflation down to 2 percent over time; we are not confident that we have achieved such a stance.』

そら2%が見えてきたと言ったら利下げ着手ですからこういうのは当たり前。

『We know that ongoing progress toward our 2 percent goal is not assured: Inflation has given us a few head fakes. If it becomes appropriate to tighten policy further, we will not hesitate to do so. We will continue to move carefully, however, allowing us to address both the risk of being misled by a few good months of data, and the risk of overtightening.』

でもって先行き物価が上振れたら利上げおかわりあるでとか言ってるけど、ちょっと強いデータが出たからと言って利上げするとオーバータイトニングになるリスクを考える必要があります、って思いっ切り言ってまして、つまりはこの人達当面は様子見地蔵を継続するということになるでしょうな。

『We are making decisions meeting by meeting, based on the totality of the incoming data and their implications for the outlook for economic activity and inflation, as well as the balance of risks, determining the extent of additional policy firming that may be appropriate to return inflation to 2 percent over time. We will keep at it until the job is done.』

でもってデータ見て毎回ごとに検討していきます、とのことですが、この「検討します」はどう見ても毎回の会合がライブなのではなく、毎回の会合が地蔵の確認をすると言ってるようなもんですな。


・高インフレに関しては足元落ち着いてきているせいなのか何か平然とパンデミック(とウクライナ侵攻)による攪乱にしておるなオイ

でまあこのご挨拶は後半が「three broader questions raised by the historic events of the pandemic era.」ですけれども、最初のだけ見て見ます。

『With that, I will turn to three questions that have arisen from the receding but still elevated inflation we are experiencing today. The first question is, with the benefit of 2-1/2 years to look back, what we can say about the initial causes and ongoing policy implications of the current inflation.』

今のインフレの元々の原因とその後の政策のインプリケーションについて、だそうなので。

『After running below our 2 percent target over the first year of the pandemic, core PCE (personal consumption expenditures) inflation rose sharply in March 2021.』

2021年3月に話は戻ります。

『Economic forecasters generally did not see this coming, as shown by the February 2021 Survey of Professional Forecasters, which showed core PCE inflation running at or below target over the subsequent three years.3 The real-time questions for policymakers were what caused the high inflation and how policy should react. At the outset, many forecasters and analysts, including FOMC participants, viewed the sudden upturn in inflation as mostly a function of pandemic-related shifts in the composition of demand, a disruption of supply chains, and a sharp decline in labor supply.』

当初のインフレ急騰はパンデミック回復による消費急増とそれに関連する需給バランス、サプライチェーン問題などと言われていました。

『The resulting supply and demand imbalances led to large increases in the prices of a range of items most directly affected by the pandemic, especially goods.』

インフレは財に表れていましたよねと。

『In this view, as the pandemic abated, our dynamic and flexible economy was likely to adapt fairly quickly. Supply disruptions and shortages would diminish. Labor supply would rebound, aided by the arrival of vaccines and the reopening of schools. Elevated demand for goods would shift back to services. Inflation would ease reasonably quickly without the need for a significant policy response.4』

でまあそれならそんなに金融政策ガリガリ引き締め無くても要因が解消すれば落ち着くんじゃネーノと見られてました。

『Indeed, although monthly core PCE inflation spiked in March and April of 2021, beginning in May it declined for five consecutive months, providing some support for this view (figure 2).』

確かに2021年は3月4月にインフレがスパイクした後5か月間落ち着きだしたのですが、

『But in the fourth quarter of 2021, the data clearly changed amid waves of new COVID-19 variants, with only gradual progress in restoring global supply chains, and relatively few workers rejoining the labor force. That lack of progress, combined with very strong demand from households, contributed to a tight economy and a historically tight labor market, and more persistent high inflation.』

2021年4Qからニュータイプのコロナが出てきて、グローバルサプライチェーンの回復が遅れたり、レーバーフォースの伸びが止まったり、一方で家計の強い需要は続いたり労働市場は歴史的にタイトな状態が続いたということで高インフレが持続しましたと。

『The Committee signaled a change in our policy approach, and financial conditions began to tighten. A new shock arrived in February 2022, when Russia invaded Ukraine, resulting in a sharp increase in energy and other commodity prices.』

歩リリーアプローチを変えるというシグナルを我々が出してファイナンシャルコンディションはタイト化したのですが、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギーとコモディティ価格が急騰しやがりましたと。

『When we lifted off in March, it was clear that bringing down inflation would depend both on the unwinding of the unprecedented pandemic-related demand and supply distortions and on our tightening of monetary policy, which would slow the growth of aggregate demand, allowing supply time to catch up.』

でもって3月から利上げ開始しましたが、パンデミック巻き戻しの需要と、世界的なサプライチェーンの回復と、金融政策のタイト化による需要抑制によってインフレを引き下げることが出来るでしょうというのは明確でした。

・・・・・・ってそれは中々図々しい説明になっていまして、しかもこの話が直後に

『Today, these two processes are working together to bring inflation down.』

ちょwwwwwwいきなり今に飛ぶなよwwwwwwwwww

『The FOMC has raised the federal funds rate target range by 5-1/4 percentage points and reduced our securities holdings by more than $1 trillion. Monetary policy is in restrictive territory and putting downward pressure on demand and inflation.』

いやお前らここまで利上げしなくてもプリエンティブに対応できたんじゃないのって話が無いですなwwwwwwww

『The unwinding of pandemic-related supply and demand distortions is playing an important role in the decline of inflation. For example, wage growth has steadily fallen by most measures since mid-2022 (figure 3), despite continued robust job gains, reflecting a resurgence in labor supply thanks to higher labor force participation and a return of immigration to pre-pandemic levels.』

『While the broader supply recovery continues, it is not clear how much more will be achieved by additional supply-side improvements. Going forward, it may be that a greater share of the progress in reducing inflation will have to come from tight monetary policy restraining the growth of aggregate demand.5』

ということで、何か要因を「パンデミックの巻き戻しによる異例の勢いの需要サイドの急増と、パンデミックに伴う供給サイドの機能不全」を思いっきり理由にしていて、インフレと賃金のスパイラルとかそういう話は無いのかと思ってしまいましたが、うーんという感じです。ちょっと時間が無いので本日はここまでにしますが、こうなってくると2番3番も見ておいた方が良いですよね〜ということで。







2023/11/20

お題「国会半期報告も案の定突っ込まれていましたが・・・・・/ジェファーソン副議長学識は高そうなのだが理屈の構成には多少唸る」

いやもう12月が目の前ですなorz

〇国会半期報告ですが目立った記事は無いのですけど結構厳しい追及があったと思うんだけどなあ

まあ国会半期報告のテキスト自体は別にどうでもよいのですけれども。
https://www.boj.or.jp/mopo/diet/d_state/dst231117a.htm
【概要説明】
通貨及び金融の調節に関する報告書
衆議院財務金融委員会における概要説明
日本銀行総裁 植田 和男
2023年11月17日


えーっとですね、まあ午前の部だけ流して聞いてたり聞いてなかったりしましたが、一番面白かったのは前原さん(国民民主)の質疑でして、後日会議録出るからそれを楽しみにしようというかそこでネタにしようと思いますけどアタクシの備忘も兼ねて書いておきますね。

前原さん、円安によるコストプッシュで実質消費が弱い、ということで、円安が国民生活を苦しくしていますね、というぶっこみ方をしておりまして、さらにこの間の追及がヨロシカネーと思ったのは円安に関して「国民生活にマイナスじゃないですか」という突っ込み方に対して日銀は毎度おなじみの「円安は経済に全体としてプラスの効果もある」という言い逃れをするのに対して、「私は経済全体に対するプラスという話を聞いているのではない」と一刀両断して、さらに「経済全体にプラスになるけれども国民生活にマイナスということは、この政策はいったい誰のために行っているのか」というど正論をぶっこんできていまして、なかなかやればできるじゃんと思いました。

まあ前原さんはそもそもの「政府と日銀の共同文書」の前のバージョンをぶっこんだ人ということで、ゆうてみれば張作霖大元帥が乗車している列車を爆破したようなもんで一切論評に値しないというのがアタクシの基本スタンスではあるのですが、自分が引き金を引いたことが回りまわってこのような悲惨な状況を生み出したということを反省したのか(たぶんそんなの本人すっかり忘れている可能性の方が高そうだけど笑)ちゃんとやればできるじゃん、と思った次第であります。

通常国会の最終盤においても結構植田総裁への風当たり強かった筈なのですが、通常会閉会した後って延々と国会お休みで、今回の臨時会で復帰という感じなのですが、やはりかなり厳しいツッコミ(前回の委員会答弁の際には思いっきり「物価見通しを間違えた」と言わされてたし)を食らっている訳ですなこれがまた。

でもって先週ネタにしましたように、金融緩和に対してもっとも親和的な発言をしていた日商の小林会頭も円安ふざけるな金利上昇しても構わんから何とかしやがれ、と来ている訳ですし、円安なんとかしやがれという話に関してはまさに金融政策の正常化に向けた取り組みをここからおっぱじめれば米国長期金利もピークアウトしたようにみえないでもない今日この頃なのですから、これはこうかはばつぐんだになる可能性もある(効果があるとは言っていない)のですがまあそんな事する訳ないというのが10月MPMの後の各種情報発信でしたわな。

しかしまあ何ですな、

https://www.yomiuri.co.jp/election/yoron-chosa/20231119-OYT1T50121/
岸田内閣支持率は発足以来最低の24%、経済対策「評価しない」も66%…読売世論調査
2023/11/19 22:00

『読売新聞社は17〜19日、全国世論調査を実施した。岸田内閣の支持率は、2021年10月の内閣発足以降最低の24%となり、前回調査(10月13〜15日)の34%から10ポイント下落した。不支持率は62%で、前回調査の49%より13ポイント上昇した。』

『物価高への対応を柱とした政府の経済対策を、「評価しない」は66%となり、「評価する」は23%にとどまった。対策に盛り込まれた所得税など4万円の定額減税については「評価する」が29%で、「評価しない」が61%。「評価しない」の理由をみると、「選挙対策に見えるから」(44%)が最も高く、「家計の支えには不十分だから」(25%)、「財政健全化を優先すべきだから」(16%)などの順だった。』(以上上記URL先読売記事より)

財政健全化ってのに16%も札が入ってるのには少しイイハナシダナーと思いました。

https://mainichi.jp/articles/20231119/k00/00m/010/179000c
岸田内閣支持率21% 旧民主・菅政権以来の水準 毎日新聞世論調査
政治
速報
毎日新聞 2023/11/19 20:15(最終更新 11/19 21:21) 1046文字

『毎日新聞は18、19の両日、全国世論調査を実施した。岸田内閣の支持率は21%。これまで岸田内閣としては最低タイだった10月14、15日実施の前回調査(25%)から4ポイント下落し、過去最低を更新した。調査方法が異なるため単純比較はできないが、歴代政権で支持率21%は旧民主党・菅直人政権末期の2011年8月(15%)以来の低い水準となる。不支持率は10月調査比6ポイント上昇の74%。岸田内閣としては過去最高で、不支持率が70%台となるのは麻生内閣時代の09年2月(73%)以来、14年9カ月ぶり。』

『所得税・住民税減税を「評価しない」と答えた人は66%に上り、「評価する」の22%を大きく上回った。低所得世帯向けに7万円を給付する方針も「評価しない」が60%で、「評価する」は30%にとどまった。』(以上上記URL先毎日記事より)

毎日は理由についての回答の話が無いので面白くないのですが、まあこの有様な訳でして、この間物価高ってのが問題になっていて物価高の背景の一つに円安がある、くらいは流石に一般の皆様もご存知の状況になっている訳じゃないですか、そうなると今みたいにのうのうと2%には距離がありますとか言いながら円安放置政策をしていると岸田政権最後の悪あがきで日銀の梯子を外すとか、最悪のケースは岸田降ろしと共に日銀も政治的な轟轟たる非難の中で大きな傷を受けることになるんじゃなかろうかというのがまあ懸念される所ではあるのですけれども、10月決定会合の後のあのやる気のない展望レポートハイライトと言い、9月会合後に出てた主な意見対比でエライやる気のないトーンに仕上げた9月会合議事要旨と言い、どうも大本営におかれましてはその辺りに関してあまりにも楽観的なんじゃなかと思われます次第。

今回はなんせ「物価高」なので日銀金融政策のど真ん中の話しですから、この点で日銀批判が強まった場合、誰も助けに行かないで日銀が撃沈するのをナムナムと言いながら眺めるだけで終わってしまうと思うんですが、そこも日銀の現状認識が甘い気がしますし、まあどうなることやらと言う事で、幣駄文では今しばらくは賃金がどうのこうのよりもこの世論やら政治動向の方が政策に効くという観点で見ていこうかと思っております。



〇ぼちぼちFEDネタでもと言いつついつもの後入先出法でジェファーソン副議長の「不確実性への対処」を鑑賞

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/jefferson20231114a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/jefferson20231114a.pdf
November 14, 2023
Elevated Economic Uncertainty: Causes and Consequences
Vice Chair Philip N. Jefferson
At “Global Risk, Uncertainty, and Volatility,” a research conference sponsored by the Federal Reserve Board of Governors, Swiss National Bank and the Bank for International Settlements, Zurich, Switzerland (virtual)

引用はHTMLの方から参ります。FEDとSNBとBISの共済カンファレンスですね。

最初は「不確実性とは何ぞや」という話をしているのですが、その定義部分の話はかっ飛ばして現状認識がどうなっているのかを見ましょうず。


・現在の不確実性についての説明があるのですが全般的に議論に怪しさを感じるのはアタクシの気のせいかしら

『Current state of uncertainty』って小見出しから参ります。

『Based on the range of measures discussed above, what can we say about the current state of uncertainty?』

discussed aboveは今かっ飛ばした部分の話ですが以下3つのコンセプトということで話がありますのですが、かっ飛ばした部分では「risk, volatility, and uncertainty. 」ってな言い方をしていました。

『Figure 1 shows three measures of uncertainty.』

ということで図表1ってのはPDFの方にありまして、PDFの17枚目以降にあります。17枚目には

『Four Broad Categories of Uncertainty Measures』って見出しの下に、

『・ Text-based
・ Survey-based
・ Econometric-based
・ Financial market-based』

ってのがあります、ということで・・・・・・・・

『The red line is an econometric-based measure constructed by Federal Reserve Board staff (Londono, Ma, and Wilson, 2023) called U.S. economic uncertainty. According to this measure, U.S. economic uncertainty reached an all-time high at the onset of the pandemic, came down slightly after the pandemic, but has remained elevated ever since. Consistent with this measure, policymakers, including Federal Open Market Committee (FOMC) participants and central bankers around the globe, have been emphasizing the elevated level of uncertainty, especially related to inflation, and the challenge this poses for monetary policy.』

不確実性ってのをグラフ化しててこれ一体何ですねんという話なのですが一旦目をつぶって先に行きます。

『Since the onset of the pandemic, most FOMC participants have been indicating in the Summary of Economic Projections that they view uncertainty around their forecast of personal consumption expenditure inflation to be higher than the average level of uncertainty over the past 20 years. But we policymakers are not alone in this. The July 2023 and September 2023 issues of the Federal Reserve Beige Book, which summarizes the commentary on current economic conditions of businesses, repeat the words "uncertain" and "uncertainty" much more than the historical average and with much of the uncertainty associated with inflation.2』

先ほどのPDFなのですが、図表1から4まであるのですが、どうもこの説明にありますように、図表3にある「インフレーションの不確実性が2000年以降で見た場合に他のコンポーネント(ここで示されているのは労働市場と生産のコンポーネントです)の不確実性に対して大変に大きなウェイトを占めている」という図がありまして、その結果ここの文章の最後にある「"uncertainty" much more than the historical average and with much of the uncertainty associated with inflation.」ということを言いたいようです。なんかインチキ臭い気もするけど。

『In contrast to policymakers and commentary from businesses and the econometric-based U.S. economic uncertainty measure, the other two uncertainty measures in figure 1-the VIX index, the black line, and the news-based economic policy uncertainty measure, the blue line-declined quickly after the onset of the pandemic in 2020 and have remained relatively subdued since then.』

コロナの時に急激にあがった不確実性に関しては(不確実性はこれまでの動きからの外れ度合いで示されています)VIX指数推移とかニュースのサプライズ状況とかそういうのは落ち着いてきたんだが全体の不確実性はそこまで下がっていない、という話をしていまして、

『One interpretation of the divergence in the measures is that they are capturing different aspects of uncertainty. Over the past year or so, the lack of predictability of economic outcomes, as captured by the elevated econometric-based U.S. economic uncertainty measure, did not lead to heightened expectations of near-term equity market volatility by market participants or to a higher frequency of discussions of economic policy uncertainty in the news. This leads me to the next topics I want to discuss-namely, what causes uncertainty to increase, and does it matter that the harder-to-predict outcomes are not correlated, at least for now, with a higher VIX index?』

経済の先行きの見通しについては以前に比較して不確実性が高い(先行きの予測が難しくなっている)のに対して、株式市場のVIX指数とかはそうでもない、というようなことになっているので、VIX落ち着いているから不確実性が低いという訳では無い、というのが現状認識なんだそうです。いや株価はまた別もんじゃねえのと思うんだがまあそういう説明をしている訳で、何かこのジェファーソンさん結構怪しげだなというのが正直な印象である。


・結局のところパンデミックと地政学由来のインフレが不確実性の主因だという認識を示すのでした

でまあさっき散々先回りして先の図表をみてしまいましたが、その辺の説明が次の小見出しにあって、

『What causes uncertainty to increase?』ってなっていましてですね、

『Figure 2 shows the econometric-based U.S. economic uncertainty measure since 1960, scaled in standard deviations from its mean. The figure illustrates a certainty about uncertainty: Uncertainty tends to increase during recessions, the shaded gray areas in the graph. Economic theory offers four mechanisms through which bad events-such as recessions, oil supply disruptions, terrorist attacks, wars, and pandemics-can increase uncertainty (Bloom, 2014).』

でまあ図表2ってのの話になりますが、不確実性がどんな時に拡大するかという当たり前の話が掴みでして、

『First, it is easier to predict the future when "business as usual" prevails in a growing economy (Orlik and Veldkamp, 2022). Forecasting is harder during recessions and when bad events hit the economy. This was especially the case during the pandemic, a once-in-a-century disturbance of worldwide consequence. Some have even argued that the pandemic has caused structural changes that will make it harder to predict future economic outcomes. 』

『Second, when business is good, firms are trading actively, which helps to generate and spread information (Van Nieuwerburgh and Veldkamp 2006; Fajgelbaum, Schaal, and Taschereau-Dumouchel, 2017). Bad events disrupt trading activity and the flow of information, and this lack of information increases uncertainty. 』

「いつもと違う」状況の時やらビジネスが良い時にイベントリスクが発生した時の不確実性が高い、という話をしまして、

『Third, public policy that is unclear, hyperactive, or both may raise uncertainty (Pastor and Veronesi, 2013).』

政策が不透明なのは不確実性を高める、というのはほほーと思いました。

『Fourth, when business is slow, it is cheap to try new ideas and to divert unused resources to research and development; this dynamic leads to microeconomic uncertainty, which may in turn lead to macroeconomic uncertainty (Bachmann and Moscarini, 2011; D'Erasmo and Moscoso-Boedo, 2011).』

ビジネスの全般的な活動がスローな時は新しい動きをするのにコストが低くなるからマクロ的には不確実性部分を高める、というのはナンジャソラと思うけどそういう説明になっとる。

『Of these four theoretical mechanisms, the first one strikes me as a highly likely explanation for uncertainty remaining high today. We are still learning about the effects of pandemic-specific factors on the economy. Additionally, heightened geopolitical risks have recently contributed to increased uncertainty.3』

でまあ今は最初の「いつもと違う」時でして、それはパンデミックの影響が残る時だから、だそうな。

『In figure 3, I decompose the econometric-based U.S. economic uncertainty measure into three subcomponents to investigate which economic outcomes are harder to predict since the pandemic and after the increase in geopolitical tensions. The subcomponents are inflation indicators, the black line; labor market conditions, the red line; and economic output, the blue line. All three subcomponents rose significantly during the pandemic but have behave quite differently since 2021, with inflation uncertainty becoming the dominant source of aggregate economic uncertainty, especially since the Russian invasion of Ukraine. 』

『A message one could take from this is that, through the eyes of an econometrician with a rich set of predictors, inflation over the past two years was objectively difficult to predict.』

でまあさっきの部分に戻るのですが、図表3にあるように、足元では「インフレの不確実性が高止まりしている」というのが特徴だと。

『The rise in inflation and inflation uncertainty in the post-COVID era has been a global phenomenon. The left panel of slide 7, figure 4.1, plots an econometric-based foreign economic uncertainty index calculated as the equally weighted average of the measures of 38 foreign countries. As in the case of the U.S. economic uncertainty index, the foreign index spikes around the Global Financial Crisis and soars around the COVID pandemic, and it has remained quite elevated since, at around 3 standard deviations from its historical mean. The right panel of slide 7, figure 4.2, shows the components of foreign economic uncertainty: inflation, the black line; labor, the red line; and output, the blue line. Again, as in the U.S., foreign inflation uncertainty has become the dominant source of economic uncertainty.』

ここは海外でもそうですよ、という図表4の話をしています。

・結局はインフレ期待がアンカーされる状態を継続しますって話のようだ

次の小見出しをすっ飛ばして『What should policy makers do when uncertainty is high?』という小見出しに飛びますが、

『In 1967, William Brainard argued that uncertainty about the power of monetary policy implied that policy should respond more cautiously to shocks than would be the case if this uncertainty did not exist (Brainard, 1967). Brainard's attenuation principle is a classic example of what has come to be known as the Bayesian approach to uncertainty and is often cited as the foundation for gradualism in the adjustment of monetary policy: Calculate what you think your best policy response is for the economy you observe-and then do less.』

一々エライ昔からの事を引用してくる傾向がありますなこの人。

『It is often suggested, however, that the ambiguity aversion approach to uncertainty leads to anti-attenuation. That is, in the face of uncertainty over which a policymaker is unwilling or unable to attach prior probabilities, the appropriate response is to apply stronger monetary medicine than in the certainty equivalence case. For example, as Chair Powell mentioned in a speech in 2018 that, during crisis periods, words like "we will do whatever it takes" will likely be more effective than "we will take cautious steps" (Powell, 2018).』

不確実性の時には金融政策で強い対応をするのがよろし、というのだが引き合いに出しているのが2018年のどっちかというとデフレ懸念っぽい時期のパウエルの言葉というのも微妙感がある。

『Advocates for both approaches have their theoretical justifications. In practice, however, the best response to uncertainty can be context specific and can vary over time.5 Fortunately, sometimes the context leads to the same conclusion, broadly speaking, regardless of the approach. One case of perennial interest to central bankers is inflation persistence where both the Bayesian and ambiguity aversion approaches tend to lead to policy that is stronger than the certainty equivalent case to forestall the possibility of inflationary forces becoming embedded in inflation expectations.6』

ということで、色々と持って回って説明していますが結局は「インフレ期待の安定」が大事でっせみたいな話で、何かわかったような分からんような話をしていますが、うーんこの人副議長かーって感じで、たぶん学識は豊富なのでしょうけれども、何か現実との折り合い大丈夫なのかな的なものは感じました(あくまでも個人の印象です)





2023/11/17

お題「日商会頭も金利上昇阻止よりも円安阻止に傾くとな/9月会合議事要旨はイマイチ釈然としませんな」

アメリカン長期金利がピークからハゲしく低下しているのにドル円は150円をちゃっかりキープしている問題については深刻に考えた方が良いと思うのだが。

〇なにせロジカルな物価目標達成判断が見込めないのですから期待するのは・・・・・・・

・日商小林会長のぐうの音も出ない正論

ぐう正論キタコレ
https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000324511.html
「賃上げで物価高を追い越すことは不可能」日商会頭が政府・日銀の対策批判
[2023/11/16 18:19]

まあそうですよね。賃金の方が遅行するから物価の上昇ペースがピークアウトするところでやっと実質賃金がプラスになるんだし、だいたいからしてかのハマコー大先生がかつて「賃金はむしろ上がらない方がよい、そのことは知られていない」と仰せになったように、物価目標達成に向かう過程においては賃金が物価に遅行するの致し方ない話。

まあ日銀の場合は物価が目標よりも1%も上振れている状態を3年続いても物価目標達成していませんとかいう珍妙な事を言うから話がおかしくなるだけの事なんですけど。

『岸田総理が来年の春闘で今年を上回る賃上げを要請したことに対し、日本商工会議所の小林会頭は、賃上げしても物価の高騰がそれ以上で追い越すのは永遠に不可能な状況だとして、政府・日銀の物価対策を強く批判しました。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、一々全部が正論なので思わず記事をバカスカ引用してしますのですが、

『日商・小林会頭:「賃上げ努力してもね、物価の高騰がそれ以上に常になって、何というか賽(さい)の河原に石を積むような形で、賃上げすればそれに追っ掛けて物価が上がる。それでまた物価を追い越せということは、そういうスパイラルは永遠に不可能なわけですよね」』

正論。

『そのうえで、小林会頭は「物価が野放図で、円安は野放図で、値上がりしたものを『買え、買え』というのはちょっとおかしいんじゃないか」と政府・日銀の物価高対策や為替政策を厳しく批判しました。』

ということで、この次が中々結構だったのですが、

『小林会頭は、一番困っているのは円安であり、低金利を求める傾向にあった中小企業の間でも日米の金利差をもう少し縮めてもいいのではないかという意見が出ていることを紹介しました。』

小林会頭、以前は「金利が上がると中小企業が困るので緩和継続しろ」って話をして、いやこの鉋屑みたいな金利が上がっただけで困るのは普通に債務が過大なのか企業収益力が無いのかのどっちか(または両方)ではないでしょうかとかこちらでご紹介した覚えがありますが、遂に小林会頭も円安批判の方を優先するようになってきた訳でして、まあ結局の所今の日銀って「後で起こる事の責任を取りたくないから今起きている事を放置する」というムーブ(植田さんと田村さんはそうは思っていないように見えますが)になっているので、今起きている事の放置が罷りならんと言われて渋々政策の正常化に向かう、という形で追い込まれるというのが政策反応関数としか見えない(あくまでも個人の感想ですので念のため申し添えます)のですが、他の方なら兎も角「経済団体の偉い人の中で一番今の金融緩和の修正に難色を示していたように見えた小林会頭」がとうとう円安の方が怪しからんという話を突っ込んできたのはやはりポイント高いわと思ったのでニュースを貼ってみました。


・という中で本日は半期報告である

https://jp.reuters.com/business/OOFKPLZYPRJY5AIP5GFKAKQ424-2023-11-16/
17日の衆院財金委で日銀半期報告、植田総裁出席=国会筋
ロイター編集
2023年11月16日午後 6:37 GMT+9

今月の頭だったか国会での委員会質疑で(ネタにしませんでしたが)植田総裁思いっきり物価見通しを外したことを認める(そりゃそうだわな)という発言をしていましたな(その割にはその外したことに対して誰もイケニエール書記官が出てこないのが意味不明ですがそれは兎も角)という案件で、結構ボコボコになっていたと思うのですが(正直月末月初は超多忙で細かく見れなかった)。

『[東京 16日 ロイター] - 国会筋によると、日銀は17日の衆院財務金融委員会で「通貨および金融の調節に関する報告書」(半期報告)について説明と質疑を行う。植田和男総裁が出席する。植田総裁は午前9時半から報告を行い、9時35分から11時05分まで伊藤渉委員(公明)、野田佳彦委員(立憲)、沢田良委員(維新)、前原誠司委員(国民)、田村貴昭委員(共産)の質問に答える。』(上記URL先より)

まあどういう質疑になるのか(野田さんに一番期待したい)という所ではあるのですが、円安放置(どころか推進)批判とか、物価が高止まっているのに物価目標未達と言いながら極端な金融緩和政策を継続していることへの批判とか、まあこっちの方面からボッコボコにされるような流れになってケツに火が点かないと政策って変わらんだろうなあという事で、アタクシもその点では諦めの境地に達している訳です。

なお、足元で2%の達成が桃栗三年柿八年モード(展望レポートハイライトのポンチ絵ね)とのお告げをしていますが、なんせ先行きの自信度だの、好循環の確認と言っても(今回の主な意見にあるように)大本営の理屈は「好循環が起きていることを見極めるためには好循環が起きていることが必要」という進次郎話法を使う、ということで要するにこの人達、ある日突然不連続に「自信が高まりました、好循環が確認できました」と言ってジャガーチェンジして物価目標達成が視野に入ったので正常化、と言い出す準備はちゃんとできていますので、アタクシが思う所の政策反応関数、すなわち物価高放置批判とか円安推進批判とかが大合唱になって日銀は社会悪という話が人口に膾炙してくればノンリニアジャガーチェンジが発生しますので、そのタイミングがどういう風に起こるか、というのが一番大事、とまあそういうロジックもへったくれもない見通しになっておりますので、そーゆー意味では今後って益々経済指標とか見るよりもこの手の世論の流れの方が大事になってくるんじゃなかろうか、とまあ斯様に思う次第でございます(個人のかなり強いバイアスのある偏見です)



〇9月会合議事要旨を改めて見るのだが主な意見との間にギャップがあるようにしか見えないんだが

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2023/g230922.pdf
政策委員会金融政策決定会合議事要旨
(2023年9月21、22日開催分)

すいませんすいません先週月曜に出てた物件です。

・主な意見は何かホーキッシュだったのに何でこの議事要旨は緩和音頭なんでしょうか

主な意見って10月2日に出てまして、
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi230922.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2023 年 9 月 21、22 日開催分)1

あたくしも10月3日の駄文(http://www.doramemon7743.sakura.ne.jp/doramemon2310.html#231003)で何でこんなにホーキッシュなのに声明文は全くの現状維持だったのか、と書いたわけでございますけれども、今回の議事要旨を見ますと一転して政策の部分がやる気無し無しになっている、というどういう議論になってるんだよと謎オブ謎の議事要旨に仕上がっておられます。ナンジャコラ。

ということで政策の方に関する部分を先に見てみますね。

本文9ページ(PDFの11枚目)『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から参ります。

・主に物価に関して

『先行きの金融政策運営の基本的な考え方について、委員は、現時点では、賃金の上昇を伴う形で、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、イールドカーブ・コントロールのもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要があるとの見解で一致した。』

アタクシとしては一致すなと思いますが、まあ結果そうでしたからねえ。

『一人の委員は、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現するためには、賃金上昇を伴い、それが価格転嫁されることでサービス価格を中心とした物価上昇が定着することが必要であると述べたうえで、金融緩和の継続を通じて、賃上げのモメンタムを支えていくことが重要となると指摘した。』

そもそも金融緩和の継続を通じて賃上げのモメンタムっていうけどそれこそ小林日商会頭の指摘の通りで、円安が進んでコストプッシュが起きる中では賃上げのモメンタムが途切れるんじゃないでしょうかねえと思いますし、別に引き締め政策しろとはだれも言ってない訳で、マイナス金利だの10年1%キャップ(当時)である必要があるのか、というのはなんで議論しないんですかねえこの人達。

『別の一人の委員は、最近の企業の賃金・価格設定行動の変化は、タイトな労働市場に海外からのインフレ圧力が重なることで生じたものであり、この変化の芽を大切に育てていくべきであると指摘した。』

えーっとすいません、それって企業から見たらただのコストプッシュで、その変化の芽を育てたら悪循環にしかならないと思います。

『ある委員は、「物価安定の目標」の達成の期待が確信に変わるには、企業の改革への取り組みに加え、新陳代謝やスタートアップ企業の資金調達強化等の取り組みが必要であるとの認識を示したうえで、日本経済は今が正念場であり、企業の改革意欲を後押しすることが求められる局面であると指摘した。』

これ10月会合の主な意見にも似たようなの出てましたけど、だから何なのという話で、ウルトラ低金利で金融環境をガバガバにして非効率なセクターの温存をするような事はしない方がエエンチャウノという気がだいぶしますけどねえ。

『こうした中、何人かの委員は、先行き、中小企業も含めた来年の賃上げ動向や、その物価との相互関係をしっかりと確認する必要があるとの考えを述べた。』

しっかり確認していただいている最中かとは思うのですが、まさに小林会頭から「賃上げ努力してもね、物価の高騰がそれ以上に常になって、何というか賽(さい)の河原に石を積むような形で、賃上げすればそれに追っ掛けて物価が上がる。それでまた物価を追い越せということは、そういうスパイラルは永遠に不可能なわけですよね」「物価が野放図で、円安は野放図で、値上がりしたものを『買え、買え』というのはちょっとおかしいんじゃないか」とぶっこまれておるわけでして、この「何人かの委員」の皆様のご償還を伺いたい。

『このうち一人の委員は、予想物価上昇率に上昇の動きがみられ、やや距離はあるが、「物価安定の目標」の達成に近づきつつあるため、今年度後半は、来年に向けた賃上げ動向も含め、その見極めの重要な局面となるとの認識を示した。』

でもってこの意見、田村さんじゃないのは「別の人」として出ている次の意見がたぶん田村さん(なお植田さんなら熱いというのはいつも通り)なのですが、この意見がさて誰なんでしょというのは興味がありますな。植田さんじゃないなら山カンで高田さんに1万インドネシアルピアwww

『この間、別の一人の委員は、2%の持続的・安定的な物価上昇の実現が、はっきりと視界に捉えられる状況にあると考えており、来年1〜3月頃には見極められる可能性もあるとの見解を示した。』

これはまあ田村さんでしょうな、とこうやって並べると何か全然ホーキッシュじゃないんですよね。あの主な意見は何だったのかと。


・YCCに関して

『長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、前回会合で柔軟化した方針に従ってイールドカーブ・コントロールが運用されるもとで、長期金利は、金融市場調節方針と整合的に推移しているとの認識で一致した。』

は良いとしまして、

『大方の委員は、長期金利は比較的安定して推移しており、イールドカーブ・コントロールの運用について、追加的な見直しを行う必要はないとの見解を示した。』

えーっと、10月会合前も直前こそ日経新聞砲撃によって0.9%台になりましたが、それまでは長期金利普通に安定的に推移してたと思うのですが、9月は「長期金利は比較的安定して推移しており、イールドカーブ・コントロールの運用について、追加的な見直しを行う必要はない」だったのに何で10月に再度の柔軟化を実施したのか、というのがまるでロジカルじゃない訳でして、こうやって前回との差分を見ますと今の日銀が如何にその日暮らしで政策反応関数もへったくれもない政策運営をしているか、ということが伝わりますし、そういう運営してるから市場ちゃんの方も先行きの金融政策に関してロジカルに織り込むことが出来ないから、新聞報道とかでいきなりアホみたいに反応するような事になってしまう訳でして、YCC(というよりLSAP)による国債吸い上げ云々もあるんですけど、政策判断をする時に繰り出してくる理屈が毎回毎回別の物を出してきて全然首尾一貫していないから、債券市場としてはちゃんとファンダメンタルズをベースにした相場観が形成されず、結果として市場が不安定化するんですよね。困ったもんだ。

『このうち一人の委員は、運用柔軟化の意図は金融市場に概ね正確に伝わり、不連続を生じさせることなく、所期の目的を達成できたとの認識を示した。』

所期の目的って金利上昇なの??????とか不連続を生じさせることなくとか言ってるけどお前らの政策反応関数が不連続関数なのがそもそもの原因じゃヴォケなど、中々味わいの深い意見です。

『ある委員は、先行きの物価見通しが上振れるかが不透明な中、運用を柔軟化した現行のイールドカーブ・コントロールのもとで、物価動向を見極めることが重要であると指摘した。』

「先行きの物価見通しが上振れるかが不透明な中」wwwwwwwwwwwwwwww

『別の一人の委員は、前回会合以降、懸念していた運用の柔軟化に伴う金利の大幅上昇を含む金融環境の急激なタイト化はみられていないことを踏まえると、現在の運用方針を継続することが適切であるとの見解を示した。』

タイト化が嫌なら何で柔軟化したんだよw

『一人の委員は、前回会合以降、米国長期金利の大幅な上昇がわが国の長期金利の上昇圧力となったことも踏まえると、前回会合は柔軟化のタイミングとして適切だったと指摘した。』

言いたいことは分かるんだが、そもそも米国長期金利が上昇するからYCCを柔軟化するって理屈そのものがYCCを一体全体何のためにやっているのか意味不明にも程があるって話になるんですよね。

『この間、複数の委員は、8月の債券市場サーベイ等をみると、柔軟化もあって市場機能に一部改善の動きがみられるが、なお水準は低いままとなっているとの見解を示した。』

そらそうよ。

『このうち一人の委員は、この背景には、日本銀行が、引き続き巨額の国債を買い入れているため、流動性が低い状況には変わりがないとの見方もあると指摘した。』

仰る通りです!

『別の一人の委員は、柔軟化を経ても、市場不安定化のリスクや市場機能面での副作用はなお残存していると指摘したうえで、イールドカーブ・コントロールが、この間の歴史をみても、多くの役割を果たした段階にある中、市場機能を重視した価格形成を行うことは、将来出口に向かう場合に、債券市場を中心とした流動性改善なども含め、市場参加者が適応していくための準備にも資するとの認識を示した。 』

「なお残存している」という現状認識が?????でして思いっきり機能面の低下の副作用は大きいんですけど、市場機能を重視した価格形成云々言うなら7月柔軟化直後にいきなり臨時輪番打ってきたこととかに対して意見はしないのかと小一時間問い詰めたい。

・・・・・・・しかし何ですな、「主な意見」ではもっと政策見直せ見直せという感じのトーンに見えたのに、なんでこんなに丸くなっているんですかねえこの辺りまでの話が。これ大本営が強引に現状維持一言半句変えず、次回の展望レポート会合で柔軟化するから勘弁しろ、ということでまとめ上げたんじゃネーノというような妄想が頭に浮かんで仕方がありません(個人の超妄想です)。


・コミュニケーションについてwww

次行きます。

『委員は、政策運営を巡るコミュニケーションについても、議論を行った。』

コミュニケーションは破綻してますが何か????

『委員は、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現が見通せる状況には至っておらず、日本銀行は粘り強く金融緩和を継続していく方針であることを伝えることが重要との認識で一致した。』

また出てきた。

『また、委員は、日本銀行は「賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指して」いるとしたうえで、イールドカーブ・コントロールの枠組みについて、「物価安定の目標」の安定的な実現に必要な時点まで継続すると対外公表文で約束していることを再確認した。』

賃金上昇云々はおめーらが勝手に付け加えただけで元々は「2%物価安定目標」だけだろいい加減にしろ。

『一人の委員は、情勢判断については委員間で多様な見方があるのは当然だが、こうした政策反応関数、すなわち先行きの政策運営方針については、全員一致で議決し、公表していると指摘した。』

政策反応関数が先行きの政策運営方針ってナンジャソラ??????

『また、複数の委員は、情勢判断においては多くの指標等を確認していくことにはなるが、金融政策運営を議論する際に基準となるのは、2%の「物価安定の目標」の実現であると述べた。』

その実現を判断する基準をこの1年以上コロコロと変え続けているのあんたらですがな。

『複数の委員は、イールドカーブ・コントロールの枠組みの撤廃やマイナス金利の解除は、あくまで、2%の「物価安定の目標」の実現との関係で、その成功とセットで論じられるべきであると指摘した。』

そもそも論として2%物価目標が達成した日には、名目中立金利って潜在成長率をゼロで置いたとしたって2%になる訳ですから、「緩和的な金融政策」が2%との達成とセットで考えていく、というのは分かるのですけれども、「マイナス金利」は2%との達成とセットで論じたらダメでしょという話でありまして、2%達成したら突如政策金利をマイナスから2%まで上げるのかお前はという話になるのでありまして、経済物価情勢に応じて緩和的な度合いを調整していかないと突如不連続に政策金利を大きく飛ばす必要が発生します(しなければビハインドのリスクが高まる)訳で、マイナス金利を何でセットにするのかが全く持って意味不明。

だいたいYCCって均衡イールドカーブの概念をベースにして作った(ということになっている)政策なのでありますから、経済物価情勢、というか物価情勢がYCC導入時点から大きく変化しているのに、物価水準が0%カツカツの時のマイナス金利をそのまま継続しているのがYCCのロジックと合ってないんですよね。その割に柔軟化するときだけ実質金利の話を持ち出すの、まあロジックの欠如にも程があるんですが。

『この点に関して、一人の委員は、マイナス金利を解除するという判断は、マイナス金利よりゼロないしプラスの金利が望ましいと判断したということを意味するが、2%の「物価安定の目標」の実現が見通せないもとで、そうした判断に至ることは考えられないと付け加えた。 』

見通せたら中立金利までガシガシ上げていく、というのも逆に非現実的じゃないのか、という考えには至らないのでしょうか?????????

『これらの議論を踏まえたうえで、委員は、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至れば政策の修正を検討することになるが、その時期や具体的な対応については、その時々の経済・物価情勢や見通しに依存するため、不確実性が大きく、現時点では決め打ちできないとの認識を共有した。』

そもそも判断基準がコロコロ変わるので決め打ちも糞もない。

『ある委員は、イールドカーブ・コントロールの枠組み等に関するフォワード・ガイダンスは柔軟性を確保したものであると指摘したうえで、経済・物価の不確実性が高い状況を踏まえると、様々なコミュニケーションを通じた実質上のガイダンスについても、政策対応の時期や順序についての自由度が過度に制約されないよう工夫していくことが望ましいとの見解を示した。』

「様々なコミュニケーションを通じた実質上のガイダンス」っての主な意見の時も書いたけど何かみょうちくりんな表現ではある。まあ言いたいのは後半なんでしょうけど。

『この間、一人の委員は、リスク・マネジメント上、市場流動性の確保・回復等による市場機能の改善に加え、出口を見据えた市場や社会とのコミュニケーション等、出口に向けた準備、環境整備を進めることが重要であると述べた。』

『また、この委員は、仮にマイナス金利を解除しても、実質金利がマイナスであれば金融緩和の継続と捉えられるとの見方を示したうえで、こうしたことを、丁寧に発信していくことが重要と述べた。』

言ってることは立派なんだが肝心の日銀の行動が・・・・・・・・

『これに対して、ある委員は、大恐慌時の米国等の事例を示しつつ、実質金利がマイナスであっても、金融緩和が修正に向かう動きが経済・金融に大きな影響を及ぼす可能性がある点には留意すべきと指摘した。』

大恐慌の時と比較するとかグローバルな経済物価情勢を考えてから比較しろどこの馬鹿だ(まあ大恐慌とかいうんだから置物一派のどっちかだと思いますけど)。


・・・・・・とまあそんな感じで、何かこう「主な意見」とトーン違くね、って感じですが、主な意見の場合はご案内の通りで9名の意見にウェイトが付かない。というのが議事要旨との違いな訳でして後はお察しということでしょうか、うーんしかし何ちゅうかこのという感じでした(声明文のトーンからしたらこっちの方が違和感がないと言ってしまえばそれまでですけど)。








2023/11/16

お題「展望レポートハイライトがますますひどいことに/10月会合主な意見より少々」

インバウンドの目玉に天守閣再建って何度も話があったネタですけど、補正予算だ経済対策だというこの時期にする話題じゃねえだろと思いました
https://news.yahoo.co.jp/articles/73272688f4b360de0be02d037f1d7c683a3017b0
「江戸城天守閣」再建論 菅前首相「大きな世論をつくらないと」
11/12(日) 9:17配信

振袖火事の時に江戸城の天守閣が焼亡して「天守閣の再建よりも江戸の復興が優先」としてそれ以降天守閣再建しなかった、って話は観光の目玉に云々の話の際に必ず引き合いに出される話だから一般ピープルならともかく政治家なら常識として知ってたほうが良いんじゃないかと思うんですがねえ。


〇展望レポートハイライトがますます劣化著しい件について

なんですかこれは
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202310.htm
展望レポート・ハイライト(2023年10月)
経済・物価情勢の展望

前回はこちら
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202307.htm
展望レポート・ハイライト(2023年7月)
経済・物価情勢の展望

ついでに前々回はこちら
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202304.htm
展望レポート・ハイライト(2023年4月)
経済・物価情勢の展望

・最初のイラストの意味がわけわからん件について

最初が経済の全般的な見通しなのですが、

『日本経済は緩やかな回復を続ける』(今回)
『日本経済は緩やかな回復を続ける』(前回)
『日本経済は緩やかに回復していく』(前々回)

『日本経済は、海外経済の回復の鈍さにより下押しされますが、消費の増加などに支えられて、緩やかな回復を続けていきます。』(今回)
『日本経済は、海外経済の回復の鈍さにより下押しされますが、消費の増加などに支えられて、緩やかな回復を続けていきます。』(前回)
『日本経済は、これまでの資源高や海外経済の回復の鈍さにより下押しされますが、消費の増加などに支えられて、緩やかに回復していきます。』(前々回)

ということですけどね、前々回はイラストに旅行のスーツケース持ってる人やらお買い物している人やらオープンカフェでお茶している人がいまして、前回は旅行とレジャーと外食(オープンカフェ)の絵になっていたのですが、今回の絵はマジで何を言いたいのかわからん絵になっていまして、消費の増加と書いているが全然消費をしている絵じゃないだろこの絵は、という物件になっております。

いやあのですね、こちらの物件って「一般の人々にわかりやすくビジュアルで示す」ってものだと思うのですけれども、紅葉の中をほっつき歩いている人のどこがどう「消費の増加などに支えられて」なのかと小一時間問い詰めたいとしか申し上げようがないわけで、このイラストを見て「消費の増加とは?」って一般の人たちがわかるのかよという話でして、「5分で読めるマイナス金利」も裸足で逃げ出す意味不明物件になっておられますな。


・賃金と物価の好循環がなんで6回も回転しないといけないんだよ舐めとるのか

『物価のトレンドは2%目標に向けて徐々に高まるが、賃金と物価の好循環が必要』(今回)
『物価は減速したあと再び緩やかに上昇していく』(前回)
『物価は減速したあと再び緩やかに上昇していく』(前々回)

物価に関しては何せ「減速する」という見通しを大外ししやがったので、今回「賃金と物価の好循環」とかいうのが入ったのですけれども・・・・・・・

『消費者物価の基調的な上昇率は、2%の「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていきますが、それには賃金と物価の好循環が強まっていく必要があります。』(今回)

『消費者物価の前年比は、これまでの輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が弱まることで減速したあと、経済が改善し、賃金上昇率も高まるもとで、再び緩やかに上昇していきます。』(前回)

『消費者物価の前年比は、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が低下し、今年度半ばにかけて減速します。その後は、経済が改善し、賃金上昇率も高まるもとで、再び緩やかに上昇していきます。』(前々回)

よくよく考えたら今回の説明って明らかに変でして、前回まではちゃんと「見通し」を書いているのに、今回って見通しを書いているのか「必要があります」を書いているのかがわけわからんという内容になっているんですよね。

そもそも論として「必要があります」ってんだったらそれがないと物価の基調が高まらないって話になるんだから、その場合は「徐々に高まっていきますが」って書くのがおかしいじゃないですか。これまではちゃんと「見通し」だったのに今回のってこれ見通しでも何でもないでしょという話、だって条件付きなんですもん。

でまあこのイラストもひどくて、「賃金と物価の好循環」とやらと思しき螺旋巻きのぐるぐるがなんか知らんけど6つもあって、お前ら好循環6回回らないと物価行かないのかよという図になっておるわけでして、そうなるとこのイラストの意味するのは「あと6年くらい経たないと2%に行きませんよ」にしか見えないんですけどもうアホかと馬鹿かと。

過去のイラストはまあ微妙な絵柄ですけどちゃんと「方向性」を示してたので、前回のがなんじゃこりゃでしたけど今回って前回に輪をかけてひどくて、いやお前らこれ誰に向けて出してるんだよという話で、一般向けにしては言いたいことがわけわからんわけで、何のためにイラスト説明作ったのかと小一時間問い詰めたい、というかこれ絵師が途中で変わったんじゃないかと思う位に過去との整合性が取れていないんですががががが。


・物価の見通しを上方修正に次ぐ上方修正をしているというのに何で2%達成時期がどんどん遠くなるんだよふざけてるのか

『強力な金融緩和を継続する』(今回)
『強力な金融緩和を継続する』(前回)
『強力な金融緩和を継続する』(前々回)

強力な金融緩和云々は今回だけ順序が手前になっていますのでそっちに合わせております、前回と前々回は次の経済物価の不確実性のほうが先になっています。

『日本銀行は、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指しています。粘り強く金融緩和を継続することで、経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていきます。』(今回)

『賃金の上昇を伴う形での、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せていないため、粘り強く金融緩和を継続していきます。』(前回)

『日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していきます。』(前々回)

でまあこのイラストが前回も舐めてるのかというイラストでしたが、今回さらにひどいことになっておりますわな。

前々回のイラストですと2%に向けてヨットが順調に向かっている図でしたが、前回が登山道のエライ先にある山の頂上を双眼鏡でみないと2%が見えない、という物価見通しを引き上げておいてお前らそのイラスト馬鹿にしてるのか、というものでしたが、なんと今回はその2%すら現実に見えていなくて、双葉に水やりをしている人たちの想像の中、しかも花とかならまだしも大木になってやっと2%の実が成ります、っての桃栗三年柿八年かよという話で、どんどん物価2%達成の絵が後退しているわけで、物価の現状認識と先行き見通しを上方修正しているのと一切整合性が取れないし、しかも「双葉が果樹に成長してやっと2%達成」ということですから、2%達成には数年単位(下手したらもっとか)の時間がかかるってメッセージを出しているんですけど、いやマジでお前らふざけてるのかとしか言いようがないわけで責任者ちょっと出てこいとしか言いようがない。


・不確実性は前回と同じ表現とイラストになっているのだが物価の上振れリスクを連想させる表現になっていないのはペテン

『日本経済・物価を巡る不確実性は高い』(今回)
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い』(前回)
『海外の経済・物価動向など不確実性は高く、市場動向に注意』(前々回)

『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(今回)

『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(前回)

『海外の経済・物価動向、ウクライナ情勢の展開や資源価格の動向など日本経済を巡る不確実性はきわめて高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(前々回)

とまあこういう風になっているのですが、物価は現実問題として前々回対比で前回、前回対比で今回、ともに上振れリスクが具現化しているのですが、そういうのを一切想像させないような表現とイラストになっているのはペテンですなペテン。


・YCCの運用をさらに柔軟化したイラストがもはや何を言いたいのかさっぱりわからないんですが

『YCCの運用をさらに柔軟化』(今回)
『YCCの運用を柔軟化』(前回)
前々回は該当文言なし

『今後状況が変わっても、金融市場で長期金利がスムーズに決まるよう、イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用において、柔軟性を高めることを決定しました。』(今回)

『イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用を柔軟化し、YCCによる金融緩和の持続性を高めることを決定しました。』(前回)

前回のイラストは「道幅を広くしました、でもガードレールはあるもんね」ということでまあ一応実際にやったこととの整合性が取れているのですけれども、今回のはもはや何が何だかさっぱり意味が分からないイラストなんですが、このイラストは何を言いたかったんでしょうか、いやマジで意味がわからんし、これ一般の方々もわかりやすいように、ってものとして出していると思うのですが、何の判じ物だよという図柄にもはやあきれてものも言えません(言いまくっておりますがw)


・とりあえず「物価目標達成というのを認めたくない」というのだけはよくわかったがただのリソースの無駄遣い

まあ何ですな、この謎のポンチ絵ですけれども、物価2%に関する表現がアホのように後退しているということで、植田総裁が会見などで物価目標達成に対して若干なりとも前進しているかのような情報発信をしているというのに、大本営ではそれを死んでも認めたくないので、植田総裁の意に反してでもこんなイラストをぶっこんで来た、というのだけはよくわかりました次第でして、大本営お前ら何様の積りだよというのがよく分かったのと、とにかく死んでも物価目標達成というのを認めない、ということでそれはすなわち「政策が成功して物価安定目標が達成したと認めたくない」という何故そのような倒錯したことになるのかわからんけど、謎オブ謎の大本営、というのは把握しました。

しかしですな、真面目な話これわざと意味不明のイラストにして「もう止めましょう」と言わせたいのとチャウのかと思ってしまう位に誰向けに出しているのかがさっぱり分からん訳でして、説明文とこの謎のイラストの整合性が取れてないし、前回と比較したら差分が無茶苦茶だし、こんなん手間暇人件費(絵師の人件費だけじゃなくてこれ作って外に出すまでには絵師以外にも手間暇掛かる訳だし)掛けて作る価値あるのかよ本家のECBの真似して本家よりも粗悪品を作る(しかも手間暇かけて)のは悲しいレベルになって参りますわ。



〇10月会合主な意見

夏休みに入ってしまってネタにするタイミングが大幅に遅れてしまいましたが(汗)

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi231031.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2023 年 10 月 30、31 日開催分)1

・中村審議委員みたいなのがもう一人いるのかしら

『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』ですけれども、最後の方の2つの意見が・・・・・・・

『・持続的な賃金上昇や成長と分配の好循環には、改革の遅れている中小企業を中心に、企業の稼ぐ力を強化し、賃上げ余力を高める必要があり、上場企業の中間決算発表での業績見通しの上方修正規模や、中小企業への波及拡大に注目している。』

まあこれはいつもの中村審議委員のご意見だと思うのですが、この「企業の稼ぐ力を強化し」ってのは一朝一夕にできるものではない話で、そういう構造論で勝負するんだったら超強力な金融緩和って必要なのかという話になりますわな、むしろ過度な金融緩和によって金融環境をガバガバにした挙句に、「稼ぐ力のない企業群」を温存する方が構造改革遅れるんじゃなかろうか(別にシバケばよいという話ではないけど)と思いますし、しかもこの「稼ぐ力の強化」という超構造的な話をしているのに、その後が「上場企業の中間決算発表での業績見通しの上方修正規模や、中小企業への波及拡大に注目している」ってこれまたエライ短期の話をしておりまして、結局この人の頭の中ではどういう整合性になっているのかがさっぱり分からん。

『・ 日本経済の成長率を高めるには、新たな市場を創造し、成長をリードするスタートアップの成長と資金調達環境改善が重要である。』

というのが次に来ていて、これまた金融政策とは別件の構造問題の話になっていまして、いやそんな話は経済財政諮問会議でやってくれという話でして、金融政策決定会合でする話チャウやろと思う訳ですよ。

でもってこれも中村さんのご意見ならまあ中村さんなら言う罠と思うのでサプライズは無いのですが、これ他の人が言ってるんだとするとこの決定会合どういう話をしてるんだよと頭がクラクラしてきますわな。


・昨年7月のMPMに継ぐ新たなオンパレードが発生

昨年の7月決定会合の主な意見、突如「賃金の上昇」というのが連呼されるという展開になりまして、皆様もアタクシもナンジャコリャと思ってみておった訳ですが、今回の主な意見を見ますと・・・・・・

『(物価)』の所ですけど、

『・ 物価見通しは上振れているが、その主因はコストプッシュである。2%の持続的・安定的な実現には、コストプッシュがなくなった後も、自律的に賃金と物価の好循環が回り続けることが必要である。』

『・ 賃金と物価の好循環の強まりを確認していくためには、来年の春季労使交渉と共に、賃金上昇が物価に反映されていくかも注視していく必要がある。』

『・ 賃金と物価の好循環の達成に向けて、来春の企業の賃上げ動向が大きな鍵を握っている。』

『・賃金動向を反映しやすく、粘着的な企業向けサービス価格の伸びが着実に高まっており、賃金上昇に伴う物価上昇圧力が中小企業を含めて一段と高まっていくかを注視している。』

ということで「賃金上昇と物価上昇の好循環」という新しい言い訳ワードが発生した訳です。これは本日前段でネタにした展望レポートのイラスト説明によっても良く分かりますよね。

さらに『U.金融政策運営に関する意見』の方でも

『・イールドカーブ・コントロールの枠組みやマイナス金利は、少なくとも、2%の「物価安定の目標」を安定的に持続するために必要な時点まで継続する方針であり、その判断には、今後の賃上げ動向をはじめ、賃金と物価の好循環を、双方向からしっかりと確認していく必要がある。』

『・賃金と物価の好循環を通じた2%目標の達成には未だ距離があるため、金融緩和の継続を通じて賃上げのモメンタムを支え続けることが重要である。こうした状況では、イールドカーブ・コントロールは運用を修正しつつも、枠組みとしては維持すべきである。』

とまあ「賃金と物価の好循環」とかいうワードの連呼になっていますが、欧州のように賃金と物価の悪循環が起きる件については完全にスルーしてこの話をしているのも奇妙な話でして、賃金と物価の悪循環に関して何らかの言及が一切ない、という時点でお前ら真面目に議論しているのか、というのが疑問に思えてしまいますよね。いや別に悪循環への懸念は極めて低い、でも良いんだけど、言及すらされていない、というのはやはりおかしくないですか、と思う訳ですよ。

でまあこの「賃金と物価の好循環」ってのどっからどう見ても2%物価目標達成判断を先送りするときにこれを使う大本営お得意の屁理屈なのは言うまでもありませんですが、この屁理屈にホイホイと皆が乗ってしまうってのもまあ情けない話ではありますな。

いずれにしましても、昨年7月の賃金連呼に継ぐ今回の「好循環」連呼になっているのは今回の展望レポート、数字は上方修正したけど物価目標達成を認めたくない(自分たちの成功を認めたくないって頭に虫でも湧いてるのかと思ってしまいますが)という意思に関しては好循環連呼で寧ろ現状維持バイアスの強化が行われている、というかなりすごい情報発信になっているなあ、とまあそのように思うのでありました。


・賃金と物価の好循環という新しい屁理屈はいつもの昭和温泉旅館理論なので

再掲になりますがこの意見はクソワロタ。『(物価)』のさっきの奴ですけど。

『・ 賃金と物価の好循環の強まりを確認していくためには、来年の春季労使交渉と共に、賃金上昇が物価に反映されていくかも注視していく必要がある。』(再掲)

これさ、「賃金上昇が物価に反映されていくか」に注視っていってるけど、それこそが「賃金と物価の好循環」な訳で(悪循環の場合も起きますけど、為念)つまりこの人は「賃金と物価の好循環の強まりを確認していくためには〜賃金と物価の好循環が強まっているかを注視していく必要がある」って進次郎話法丸出しの意見を書いているんですけど、まあ大本営の説明もこの進次郎話法丸出しの説明になっていますから大本営系のご意見なんでしょうな。

でまあ物価上昇のメカニズムとかをちゃんと考えてこの理屈が出てきているんだったら、本来はもっとちゃんと波及経路とかを考えた場合に、この「好循環」が現れて来る場所というのがあって、その場所に該当する経済指標なり何なりがある筈なんですけれども、今回の「賃金と物価の好循環」がいつもの「政策行動から後付けで作った屁理屈」な上に、ちゃんとメカニズムとか考えている訳でもないフワフワした話をしているもんだからこのように進次郎話法でしか説明できないと、という悲しい事態が生じる訳です。

まあこちとら市場の中の人として困るのは、日銀という肝心の政策の本家本元が政策運営に関するロジックをその場しのぎで適当に昭和温泉旅館にすることでして、こちとら自己勘定の純粋プロップでもない限り、投資戦略だの運用戦略だのとか言ってちゃんとロジカルに説明ができるような分析をベースに置いてさてどうやってポジション戦略組みましょうって事になるのですが、なにせこの2%達成の提議に関して昨年の頭からこの方、ゴールポストを目まぐるしく変えておりまして、さっきネタにした展望レポートのイラストでも2%のゴールポストが物価の現状認識と先行き見通しを上方修正しているのに4月対比でドンドンゴールポストを遠くする、という意味不明な事をしやがりますので、こちらとしても非常に対処に困る訳ですよ。お前らの屁理屈に付き合わされるこっちは金と生活が懸かってるんじゃヴォケとしか申し上げようがないのですが、御殿で屁理屈連歌に興じておられる大本営の皆様にはまあ分からんでしょうねそういうの、と思う今日この頃ではございます。


・メカニズムに関して考察が一応入っているので紹介して差し上げましょう

とまあそのように悪態ついたわけですが、その後の意見では

『・賃金動向を反映しやすく、粘着的な企業向けサービス価格の伸びが着実に高まっており、賃金上昇に伴う物価上昇圧力が中小企業を含めて一段と高まっていくかを注視している。』

『・ 企業は、@輸入物価の転嫁、A賃上げ、B人件費の転嫁、C価格戦略の多様化・商品の高付加価値化、を組み合わせて賃金・価格設定に取り組んでいるが、どの要素も依然まだら模様であり、物価の基調については引き続き注意深く見極めていく必要がある。』

とかいう形で意見が入っているのですが、この辺りのどこを見ると、みたいな話になると大本営が逃げるのは、今までずーっと「これこれの数値を見ますとこのような状況で2%達成には遠いです」と言ったものが悉くヒットしてしまうので、新たな「達成したとしない理由」を見つけて来るというのを連続しているからなので、まあこの辺の話をみましても、結局大本営はいざとなったら別の屁理屈を繰り出してくるんだよなあという不信感が拭えない。


・下半期と時期を明示しているのはこのご意見だけ

『・ベア交渉の出発点となる民間の物価上昇率見通しは、昨年の同時期と比べて本年の見通しが上回るなど、来年の賃上げ率は本年を上回る蓋然性が高い。予想物価上昇率や基調的な物価上昇率の上昇の動きも踏まえると、「物価安定の目標」の実現が視野に入ってきたと考えているが、今年度下期はその見極めの重要な局面である。』

たぶん田村さんだと思うのですが、これが植田総裁だと熱いんですけどね〜。言いそうなのは田村さんか植田総裁かのどっちか。

ということで続きまして『U.金融政策運営に関する意見』ですけどこれがもうアレ。

・勝手にフォワードガイダンス変えるな

『・イールドカーブ・コントロールの枠組みやマイナス金利は、少なくとも、2%の「物価安定の目標」を安定的に持続するために必要な時点まで継続する方針であり、その判断には、今後の賃上げ動向をはじめ、賃金と物価の好循環を、双方向からしっかりと確認していく必要がある。』

えーっとすいません、フォワードガイダンスに関しては

「「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。」

とありますが、マイナス金利を持続するとはどこにも書いていないんですが勝手に話を変えないで下さい。


・足元の金利上昇は全部米国のせいとする大本営とそれに対抗する見解

『・米国における長期金利上昇の影響を受けて、わが国の長期金利に想定外の上昇圧力がかかっている。粘り強く金融緩和を継続していく必要がある中、こうした状況を踏まえると、イールドカーブ・コントロールの運用のさらなる柔軟化が望ましい。』

っていうのは大本営だと思うのですが、こんな意見がありまして・・・・・・・・・

『・7月に決定したイールドカーブ・コントロールの運用柔軟化以降、債券市場の機能度は改善してきたが、足もとでは物価上昇により投資家の金利目線が高まっていることから長期の資金調達に影響がみられ始めている。また、長期金利の厳格なコントロールによって、ヘッジ取引が困難化するなどの副作用は避ける必要がある。』

>足もとでは物価上昇により投資家の金利目線が高まっていることから

いや普通にこっちでしょと思う訳ですし、大体からして今回の主な意見「実質金利」の話が何度も出てきている訳でして、経済物価情勢の好転を背景にして金利上昇圧力が掛かっているってのを何で大本営は認めないのかが意味わからん。しかも実質金利の事を言わないなら兎も角言っているのですから矛盾にも程がある。


・クソワロタというかウケたのが2本ほど

『・イールドカーブ・コントロールの柔軟化は、出口までの間、副作用の発現を抑制し、金融緩和を効果的に継続するため、そして、将来の出口以降は、金融緩和を維持しつつ、円滑に金融正常化を進める上でも、大きくプラスである。』

まずこれなんですが、「出口までの間」は分かるんですよ出口までは緩和的な政策を維持するんですから。しかし謎なのはその後の「将来の出口以降」の話でして、出口以降って出た後の話で、その時って「金融緩和を維持」する必要がないんじゃないでしょうかという話。日本語が下手なだけだと思うのですが、出口までの間って書いて出口以降って書くと出口の後にも金融緩和するとかいうアホアホ発言に読めてしまうのです。単なる表現力の欠如だと思うのですが、脳味噌の方が欠如していたら悲しい。

『・ 市場において無用の憶測を生じさせないためには、日本銀行の政策判断は、経済・物価の見通しに基づいて行っていることを対外的にしっかりと説明することが重要である。』

これはwwwwwww

いやこれ田村さんがぶぶ漬け話法で書いているんだとかなりウケるんですけど、いやお前ら経済物価の見通しを政策の後付けで作ってるじゃんというのが見え見えなこの状況の中でこの意見はマジでワロタwwwwwwww


・実質金利の話題が

『・昨年 12 月以降イールドカーブのコントロールの程度を少しずつ弱めてきているが、予想インフレ率が上昇し、実質金利が非常に低い中、緩和効果は十分保たれている。この段階での緩和効果と副作用のバランスとしては、今回柔軟化する運用が適切である。』

『・名目長期金利の若干の上振れが起きても、実質長期金利はマイナス圏にとどまり、緩和効果は強いままと見込まれる。他方、連続指値オペにより名目長期金利を厳格に抑制し続ける場合、市場機能や市場のボラティリティの面で大きな副作用が発生するリスクは高くなっている。』

とある訳で、一方で大本営はさっきのように「足もとの長期金利上昇は米国のせい」という話をしていて、いるのですが、実質金利についてこのような意見が複数あるんだったら、大本営の説明ってあれで良いのかよというのが疑問ではありますな。


・実質金利の話題があるのにこのご意見ねえ

『・物価上昇を上回る賃上げが実現するかはまだ不透明であり、このタイミングでイールドカーブ・コントロールを修正すると、金融引き締めと受け止められる可能性がある。賃金と物価の好循環を実現するチャンスを手放さないよう、当面は辛抱強く現在の金融緩和を続けることが適当である。』

という意見が相変わらずあるんですけど、経済物価情勢が好転しているのですから修正はできるでしょと思うのですけれども、まあこれが大本営の本音なんでしょうねと思わせるのが最後にありましたですな。


ではまあその他はボチボチ成敗して参ります。





2023/11/09

お題「植田総裁名古屋懇談会関連続き/お知らせ(中の人の夏休み)」

ほうほう
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231109/k10014251831000.html
岸田首相 年内の衆議院解散 見送る意向を固める
2023年11月9日 5時23分

『岸田総理大臣は、年内の衆議院解散を見送る意向を固めました。当面は物価高を受けた経済対策などに専念し、年明け以降の内閣支持率なども見極めながら、慎重にタイミングを探る考えです。』(上記URL先より)

物価高を受けた経済対策ですかそうですかそうですかw


〇植田総裁名古屋懇談会の続き:政策運営関連をみましょうずということで

昨日は物価に関する判断基準が益々あいまいになって最早日銀の匙加減で何とでも言える状態にしてしまっておる(のでまあある意味出口に向けて前進しているとも言える)というのをネタにしましたが、名古屋懇談の後半、金融政策運営の方もやっぱり会見とセットで確認しようかなってことで。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko231106a1.pdf

後半の『4.日本銀行の金融政策運営』ですな。最初の小見出しが『(金融政策運営の基本的な考え方)』でありますが、


・物価の説明もそうですが「先行きの政策自由度を引き上げる」というのが基本の意図としてありまして

『次に、日本銀行の金融政策運営についてお話しします。ここまで申し上げてきたように、消費者物価の基調的な上昇率が高まっていくという日本銀行の見通しは、今後、賃金と物価の好循環が強まっていくとの想定に基づいています。』

というこの「好循環が強まっていく」の定義が極めてあいまいで、じゃあ何の指標にこれが表れるのか、という話は完全にスルーしてひたすら総合判断みたいな言い方をして、しかも定義を曖昧にするために「第二の力」とか言ってしまっているわけですな。

でまあそれに関して昨日は悪態を申し上げておりますが、これ一応好意的に読み取ると、戦略的にあいまいにすることによって政策変更のハードルを下げているとも言える(逆に上げることもできるんですけどね)訳でして、とにかく色々な目くらましによって先行きの政策自由度を上げようとしている、という思想は伝わる訳です。

『この点、企業の賃金・価格設定行動の一部に従来よりも積極的な動きがみられ始めているのは好材料です。』

これも重複になりますが、第一の力の所で「競合他社を含めて値上げの動きが広がるもとで、新たに販売価格引き上げに踏み切る先もみられます。」とか言ってるくせに、この文章の流れで出て来る「企業の賃金・価格設定行動の一部に従来よりも積極的な動きがみられ始めている」のは明らかに「好循環が強まっていく」という動きの一環として評価している訳で、積極的なあいまいさによって早期の政策アクションも可能という形になった訳ですな。

『もっとも、先ほど申し上げたとおり、想定通りに好循環が強まっていくのか、なお不透明です。こうした状況下では、イールドカーブ・コントロールの枠組みのもとで粘り強く金融緩和を継続することで、経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていくことが政策運営の基本となります。』

とか何とか言ってるわけですが次の小見出しに行きます。



・実は今回って「副作用」の定義が無茶苦茶曖昧になっているんですよ

小見出し『(イールドカーブ・コントロールの運用)』に参ります。

『この間、イールドカーブ・コントロールの枠組みのもとで、粘り強く金融緩和を継続していくためには、長期金利を強力に低位で抑えることで経済を刺激する効果と、これに伴う副作用のバランスを取ることが求められます。』

そもそも論として物価2%だったら名目金利2%ないとおかしいだろと考えますと、コアコア物価が24年度25年度ともに1.9%の見通しの中での1%って死ぬほど低い訳ですが。

『先週の金融政策決定会合では、こうした考え方に基づいて、イールドカーブ・コントロールの運用の見直しを行いました。』

というのは分かったのだが、そもそもこの間の「効果」が何で「副作用」が何だったのか、というのは全く触れていないんですよね今回ってずーーーーっと。

『具体的には、長期金利の操作目標は引き続きゼロ%程度としつつ、その上限の目途を 1.0%とし、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に運用していくことにしました。』

というころで「目標」は0%のままなんですが、

『1.0%の利回りで毎営業日無制限の国債買入れを行う運用は取り止めます。内外の経済・金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、イールドカーブ・コントロールの運用において、柔軟性を高めておくことが適当であると判断したものです(図表9)。』

大体からして物価の見通しを大きく引き上げているのに長期金利の「操作目標」を据え置きとしているのは普通に緩和の強化じゃないですか、という話であって、操作目標は不変だけど金利の上限は撤廃って最早何を言いたいのか分からんですわな。

『金利上昇圧力がかかる局面において、長期金利の上限を厳格に抑えようとすると、そのことが債券市場の機能やその他の金融市場のボラティリティに影響を及ぼすおそれがあります。』

市場機能論は基本的にインチキであることは言うまでもありません。だからこそMPMの翌日に臨時輪番とか平気で打ってしまうんですけど。

『今回の見直しは、こうした副作用が生じることを和らげることに資すると考えられます。』

ということなのですが、じゃあ副作用ってどういう形で現れたのかってのも極めてあいまい(2022年12月のレンジ拡大の時には声明文の中できちんと「債券市場では、各年限間の金利の相対関係や現物と先物の裁定などの面で、市場機能が低下している。」ので「こうした状態が続けば、企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼす惧れがある。」という理由付けをしていたのですが、7月にしろ今回にしろ、副作用対応じゃなくて副作用の事前対応という謎の理由で金融政策の「運営の手直し」というのをしておるわけですな。

『新たな運用のもとでも、大規模な国債買入れは継続しますし、金利上昇局面では、引き続き、長期金利の水準や変化のスピード等に応じて、機動的にオペで対応します。』

そもそもこの「機動的にオペで対応」が市場機能を一段と低下させるのでヘソが茶を沸かすって話ではあるのですが、この植田総裁の説明の原稿って当然ながら声明文の表現を踏襲していますが、実を申せば「今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、長短金利操作の運用において、柔軟性を高めておくことが適当である。」「この点、現在の状況において、原則として毎営業日 1.0%の利回りで連続指値オペを実施し、長期金利の上限を厳格に抑えることは、強力な効果の反面、副作用も大きくなりうると判断し、」とあるように、そもそも「市場機能の低下が副作用」とは一言も書いてないんですよね。昨年12月の場合は「市場機能の低下によって金融政策のトランスミッションメカニズムに不具合が発生する」という形で明確に副作用を定義していたんですけど。

ということでありますので、実はこの「副作用」に関してもこの2回の修正の間に「副作用の定義」までもあいまいになっておりまして、この「長期金利の上限を厳格に抑えることの副作用」が何なのかも有耶無耶にしている、ということで今回っていろんなものを一段と有耶無耶にしている、というのが大きな特徴なんですよね。


・「金利がそこまで上がらない」は最初から金利上昇で追い込まれるのを狙っているのか???????

話の流れ上さっきの所から続けます。

『(再掲)新たな運用のもとでも、大規模な国債買入れは継続しますし、金利上昇局面では、引き続き、長期金利の水準や変化のスピード等に応じて、機動的にオペで対応します。』

なので、

『そのため、長期金利に上昇圧力がかかる場合であっても、1%を大幅に上回って推移するとはみていません。』

とまあ今回もこれを言ってまして、7月の総裁会見で「今後、仮に 0.5%を超えて動く場合には、長期金利の水準や変化のスピード等に応じて機動的に対応することになります。そうしたもとで、長期金利が 1%まで上昇することは想定していませんが、念のための上限キャップとして 1%としたところでございます。」って言ったが為に事実上0.9%手前(MPMの2日目は日経砲の影響ですからね)の所で再柔軟化に「追い込まれた」格好になっていましたので、この人たちは何で同じことをまた言うのか、と思う訳ですよねアタクシも思いますもん。

しかしですな、これが「偽装ハト派」だとすると話が180度別になる訳でして、「市場が自然に金利上昇して行けばそれに乗った形でYCCを形骸化できるようにする作戦」と考えれば話は全然違ってくる訳でして、つまりは今後10年金利が「1%を大幅に上回って推移」した場合には、今回と全く同じ理屈で一段とYCCの形骸化が出来る(まあ現時点で既に形骸化していますが)ことになりまして、つまりは実は偽装ハト派なので、この「1%を大幅に上回って推移するとはみていません」というのはぶぶ漬け話法の一種で「金利上昇をお待ちしております」というのを示している、という見方もこれまた成り立つでしょうな。

だってさ、7月の「指値付かない」発言のせいで指値よりも10bp手前で今回の措置になっているのだから、真面目に再柔軟化の再柔軟化をしたくないんだったら7月と同じ発言したら今回と同じことがおきて再柔軟化のおかわりをしなきゃいけなくなるのアホでも分かる筈で、それを敢えて今回も言ってるのは「お坊ちゃん元気でよろしゅおすなあ」話法に他ならない、とまあこういう解釈も突っ込んでみようかと思う訳ですよ。


・実質金利を持ち出しているのもまあ妙な話でして

『長期金利が幾分上昇する可能性はありますが、金融政策が経済・物価に与える効果を捉えるうえでは、予想物価上昇率を勘案した実質金利が重要です。』

と仰せで、これは長期金利が幾分上昇しても無問題理論なのですが、

『先ほど申し上げたように、昨年以降、予想物価上昇率は緩やかに上昇しており、長期金利が上昇する中でも、実質金利はマイナス圏で推移を続けてきました。先行きも、実質金利はマイナス圏で推移するとみられ、十分に緩和的な金融環境は維持されるとみています。』

で金融政策運営の話を締めているのですが、実質金利持ち出して話をしだすと、そもそも今回ってさっきありましたように「長期金利の操作目標は引き続きゼロ%程度」なのですから、「昨年以降、予想物価上昇率は緩やかに上昇しており」というのを前提としたらこの操作目標水準維持ってのは追加金融緩和を行っている、ということになってしまう訳ですよね。

YCCの長期金利操作の話で実質金利の話をすると、経済物価情勢が好転したら均衡イールドカーブが上方シフトするんだから長期金利の「操作目標」が変化して然るべき、特に大きく好転しているのなら。とまあそういう理屈になってしまう訳でございまして、説明が矛盾しとるわヴォケとも言えますが「偽装ハト派の撤退戦」という解釈をすれば、これも長期金利操作(短期は別の話になる)の閉店に向けた準備、ともいえる訳で、まあマジのマジで今回展開されている理屈は「何とでも出来る超曖昧路線」になっている(ただし表面上はハト派満開)ともいえる訳でありまする。うーん何だこのカメレオン金融政策。



〇名古屋懇談の会見はまあほぼほぼ2%目標達成の判断基準は何なのか、でしたけど・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk231107a.pdf

政策に関する質疑は2つありました。どちらも実質金利に関して突っ込むのは当然に順当ですけど、

『(問)講演でですね、先行きも実質金利はマイナス圏で推移し、十分に緩和的な金融環境は維持される、というふうに発言されました。先般の会見で総裁は、長期金利につきまして、1.5%や 2%になるということはあまり考えていないと、そういう答弁をされましたけれども、総裁は長期金利が 1.5%とか 2%に上昇すれば、実質金利はプラスになってしまう、そのようにお考えなのか、今の実質金利をどの程度とみておられるのか、ということを併せてお願い致します。』

でまあこの回答ですが、

『(答)現状のところですね、私どもの前回のオペの柔軟化の影響も含めまして、長期金利、10 年物国債金利が 1%を大きく超えて推移するということは可能性が低いというふうにみてございます。すごい中長期的に 1.5[%]や 2[%]がないというふうに申し上げたつもりはございません。』

と完全に誤魔化しております、しかし何だこの「すごい中長期的」ってwwwwwwww


『(問)日本の今の中立金利がどれぐらいの水準なのかっていうのは、どれぐらいの金融緩和度合いが維持されているのかを測る上で非常に重要と思います。』

そら実質金利持ち出して説明すればこういわれるわけだし、ましてや均衡イールドカーブとか言い出してYCC導入してその政策が続いてるんだから言われるのは当然ですよね。

『総裁ご自身は、中立金利どれぐらいの水準と思われているのか、また、日銀として正式に中立金利の水準についての推計等を公表する計画はないのか、お願いします。』

まあこの答えはいつも通りではあるのですが、


『(答)おっしゃるように、中立金利の水準が、それこそある種の確度を持って分かれば、それと比べて緩和度合いがどれくらいかということの重要な判断材料になりますので、公表されることが望ましいわけですが、私どもはいろんな計算をしておりますが、計算の前提によってすごいばらつきが大きな結果になります。』

なんかこう語尾に(キリッ)って入れたくなりますが、だったら何で直前の挨拶で「金融政策が経済・物価に与える効果を捉えるうえでは、予想物価上昇率を勘案した実質金利が重要です」「昨年以降、予想物価上昇率は緩やかに上昇しており、長期金利が上昇する中でも、実質金利はマイナス圏で推移を続けてきました。」「先行きも、実質金利はマイナス圏で推移するとみられ、十分に緩和的な金融環境は維持されるとみています。って説明できるんだよ、という話でして、この「実質金利」の話ですらフィクションな訳ですよ。

『他の皆さんがやられても似たようなことだと思います。ですので、ちょっとこれはという自信を持って出せるものがない状態ですので、今のところは公表するに至ってないということでございます。』

自信をもって出せないのに「実質金利はマイナス圏で推移している(キリリッ)」って何で自信をもって言えるのかと小一時間問い詰めたい訳で、これは「自信をもって出せない」のが偽装なのか「実質金利が幾ら」という推計が偽装なのか、というお話になる訳で、この「緩和度合いがどうのこうの」もいずれかの時に急にノンリニアジャガーチェンジする日が来るのかもしれませんねwwwwww


・・・・・・・とまあそういう訳でして、7月の時もその傾向はありましたが、今回は何もかもがファジーになっている、というのが大きな特徴でして、これは積極的に捉えれば「偽装ハト派」で政策転換のチャンスを狙っている、とも考えられるし、「ひたすら説明を誤魔化すことができるのでハト派をクソ粘りしてもロジック面でおかしくなることはないハト派延命策」とも取れる、という融通無碍な状況になったなあ、と思うのでありました。


〇中の人よりお知らせ(夏休みの巻)

どうもどうも。

中の人はまあいつものように5営業日連続の休暇というのを取らないと色々とアレというのがありまして、とりあえずここで休んでおかないと先に行くと益々金融政策ワケワカメの風雲急になるかもしれない、と思いまして(というのがフラグになりませんようにナムナム)謹んで遅い夏休みと致しますであります。

来週目標日には再浮上します予定なのと、金融政策でクソ面白ネタでもあったら急に覚醒するかもしれませんけれども暫時休憩(9月会合議事要旨とFOMCはどうなったと言われるとぐうの音もでませんサーセン)とさせて頂きます。

浮上後もご愛顧賜りますようよろしくお願い申し上げます(土下座)





2023/11/08

お題「植田総裁名古屋懇談会関連:物価目標達成判断基準はただの主観ですか・・・・・・」

そらそうよ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231107/k10014248921000.html
9月の実質賃金 去年同月比2.4%減少 18か月連続でマイナス
2023年11月7日 17時33分

まあ毎勤が微妙にアレな統計ではありますが。

〇植田総裁名古屋金懇ということでまずは挨拶の方から

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko231106a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 名古屋での経済界代表者との懇談における挨拶 ──
日本銀行総裁 植田 和男

・物価を「第一の力」「第二の力」で説明する流れになっていますが・・・・・・

まあ基本的に展望レポートベースの話をしているので経済の部分はかっ飛ばして物価まで飛ぶ。

『3.物価情勢』のところですが、小見出しが

(物価の現状と見通し:「第一の力」を背景とした上振れ)
(「第二の力」と「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現)

という流れになっておりまして、この説明で突き進むのかよという所ですがまあ鑑賞してみましょう。


・「第一の力」に何で企業の価格設定行動とか練り込んでいるんでちゅかねー

(物価の現状と見通し:「第一の力」を背景とした上振れ)って奴から。

『続いて、物価情勢に話を進めます。今回の展望レポートでは、生鮮食品を除く消費者物価の前年比について、2023 年度と 2024 年度が+2.8%と高い伸びを続けたあと、2025 年度は+1.7%となる見通しです(図表5)。2023 年度と 2024 年度の見通しは、7月時点から上振れています。』

ってしらっと言ってるんだが今までの「今までの上昇は一時的であってこの後下がる」が無くなったのだから「一時的だから政策解除には向かわない」という前の理屈を勝手に無かったことにするの無茶苦茶なんですけどね。

『このように高めの物価上昇率が当面続く背景には、二つの力が作用しています。「第一の力」は、輸入物価上昇の価格転嫁による物価上昇圧力です。』

で???

『エネルギーや穀物等の輸入価格の上昇は、ラグを伴いながら消費者物価に波及しています。これに対して、「第二の力」は、景気の改善が続くもとで、賃金と物価が相互に連関しつつ高まっていくメカニズムを指しています。』

っていうことは2024年までの物価は「高めの物価上昇が続く」とのことなのですが、それは普通「持続的な物価上昇」というのではないでしょうか????????という話なのですが、このあとネタにする会見を見ればより分かりやすいのですが、この人たちの「物価目標達成」の基準って単純に「自分らがそうだと認定するから物価目標達成」というものであって、実はこの達成の認定に関して我々が賃金がどうとか賃金から物価への波及って何だよとか考えても政策の先行きパスを予想するのにはあんまり意味がない、という恐ろしい状態になっているのが今回の展望レポートと名古屋懇談で良く分かるんですよね。

ということで以下読み進めますと、

『今回、来年度にかけての物価見通しを大幅に上方修正した主因は、これらのうち「第一の力」が長引くと考えたことにあります。』

といってるんだが、

『食料品や日用品を中心に、既往の輸入物価上昇の販売価格への転嫁が一巡した品目や業種もありますが、』

はさておき、

『競合他社を含めて値上げの動きが広がるもとで、新たに販売価格引き上げに踏み切る先もみられます。』

えーっとすいません、それは「ノルムの変化」の話しですよね。何でこれが「第一の力」になっているんですか?????????

・・・・・とまあですね、そもそも論としてこの人達の「第一の力」「第二の力」って説明って、第一の力とか第二の力に色々な要素が入っていて、しかもこれが自分たちの都合の良いように中身を使い分けているという物件な訳ですよ。

この「ノルム」だってちょっと前までは散々「ノルムの転換」って話をしていたのに今回ノルムの話を後ろの方に追いやってこうやって「ノルムの転換」を示しているかもしれない動きを捕まえて「第一の力だからこれは目標達成とは別物」としちゃっているのは、要するに今まで「ノルム」を政策転換しない言い訳に使っていたのが使いにくくなってきたので「第一の力」に入れている、というまあ大本営のインチキ大王(昔だったら雨宮副総裁がこのインチキ大王のキングオブキングでしたなあ)の使うテクニックな訳ですな。

ということはですね、あとでネタにする会見での説明も含めて考えますと、この人達今はとにかく時間稼ぎして政策の本格的な転換という重要な決断を先送りしながら、徐々に長期金利目標を撤収していく(のですが結局アホみたいに輪番やら長期共担をやってるから現象面では却ってやってることが筋悪化しているのが酷いんですけどね)というような「技術的修正」しかしないのですけど、何らかの追い込まれが発生して最早持たなくなった場合には急に「物価目標達成が視野に入った」って非線形的にドテン引っくり返してくるに1万バーナンキと言った所でありまして(個人の感想です)、いきなり「第二の力が働いている」とか言い出すんですよどうせ。

なのでですね、まあそうは言ったってこの業界で金融政策のの話をする、ということになった時には日銀の屁理屈をベースに「賃金上昇の継続性が判断できるのは何時どうやって」とか「賃金と物価の好循環はどのように判断するのか」とかを考えないと行けないのが実に悲しい話でして、そうやって日銀の屁理屈をベースに折角分析しても、後から後から自分の政策運営に都合わるくなってくると新手の屁理屈を繰り出し、しかもそれがドンドン訳分らんファジーなものになってくる、というここ1年半くらいの傾向って非常に良くなくて、市場の皆さんだって日銀の屁理屈には一応対応しているものの「どうせこいつら後から理屈引っくり返すだろう」というのを何度もやられているうちに、「そもそも日銀はロジカルに政策運営をしている訳ではない」ってのが定着してしまう訳で、そうなったら将来日銀が真っ当な姿になろうとしても、「どうせ日銀の説明はその場しのぎだけ」という認識になってしまったら真っ当な姿に戻れなくなってしまうのを懸念しているわけですよ。まあ既にそうなっているような気もするけど。

あ、すいません話がそれました。続きに参ります。

『これに加え、このところの原油価格上昇は、政府の経済対策によるエネルギー価格押し下げ効果が来春に剥落することを前提とすれば、来年度を中心に、物価上昇要因となります。』

まあこれは前年比効果の話。

『ただし、「第一の力」の起点となる輸入物価の前年比は、昨年半ばにピークを付けたあとプラス幅を縮小し、本年春頃からはマイナスとなっています。』

『企業間物価の上昇率も本年入り後は明確に鈍化しており、最近では、スーパーなど小売店での食料品や日用品等の価格の前年比プラス幅も縮小に転じました(図表6)。』

その割に一般物価の方は下がらんどころか見通し対比上がっているんですから、それっていうのは・・・・・

『これらの点を踏まえますと、「第一の力」による物価押し上げ効果は、原油価格上昇もあって時間を要するにせよ、次第に減衰していくと考えられます。』

という話をしているのですが、さっきありましたように、そもそもこの「第一の力」に企業の価格設定行動とかまでぶっこんでいる、というめちゃめちゃ雑な話なので、輸入物価の前年比上昇率が収まって来るからと言っても、企業の価格設定行動とかが変わるのかはまた別問題の筈であり、第一の力、で割り切るような単純な話じゃないんですよね。

ああそれからここまでの説明で為替円安の話を一切いれていないのは明らかにこれ意図的で、今の金融政策が円安誘導的なものなので為替円安で物価高の話ができない(なお昨年の7月展望の辺りでは円安による物価押し上げを素直に認めていましたのでこれもドサクサに紛れて消えてしまった説明の1つですね)ということは明白なのですが、そうやって説明の筋をコロコロ入れ替えることによってコミュニケーションの信頼性を落としまくって将来大丈夫なのでしょうかねえ。

『2025 年度の生鮮食品を除く消費者物価の見通しが、2024 年度までと比べて低下するのは、こうした考え方に基づいています。』

でもコアコアは横ばいなんですけどね、とツッコミをいれようとしたら次に早速言い訳があるのが第二の力とやら。


・第二の力の中身って良く言えば融通無碍なので実はノンリニアジャガーチェンジの準備は整っているとも言える

『(「第二の力」と「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現)』って小見出しから。

『もっとも、2025 年度の物価見通しは、生鮮食品を除くベースで+1.7%、生鮮食品に加えてエネルギーの影響も除いたベースでは+1.9%です。「第一の力」が一巡したあとも、感染症拡大前のようにゼロ%台の物価上昇率に戻ることは想定していません。』

おやおや、デフレ完全脱却のための経済対策とか言いながら物価高対策を行う、というのを堂々と公式文書で発信している世界の恥の人達に喧嘩を売ってませんか大丈夫ですかwww

『これは、物価を押し上げる「第二の力」、すなわち、賃金と物価の好循環が強まっていき、消費者物価の基調的な上昇率が2%に向けて徐々に高まっていくとみているためです。』

第二の力ってのは結局何なんだよ、ということなのですが、

『従来から、日本銀行は、こうした「第二の力」が強まるもとで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していく姿を目指してきました。』

>従来から
>従来から
>従来から

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
「量的・質的金融緩和」のトランスミッション・メカニズム
ー 「第一の矢」の考え方 ー
京都商工会議所における講演
日本銀行 副総裁 岩田規久男

こちらのスライドの7枚目の風が吹けば桶屋が儲かる理論とその後の個別要素の説明をみても「賃金上昇」っての物凄くちょっと書かれているだけですけど、いつから「従来から」になったんでしょうか歴史改竄は程々にしないといけませんねえ。

『最近では、企業の賃金・価格設定行動の一部に従来よりも積極的な動きがみられ始めています。』

ちょwwwwwおまwwwwwwwさっきも第一の柱で価格設定行動を出していてここでも価格設定行動だすってお前舐めてんのかよwwwwwwww

という話なのですが、これはもう話は簡単でして、物価目標達成が視野に入ったとかいうのを言い出すときには企業の価格設定行動を全部「第二の力が働いている」にしてしまう、という説明がノンリニアにジャガーチェンジするための布石を打っているんですよね。

そういう意味ではこの「第一の力」「第二の力」って良く言えば融通無碍に運用できるものなので、ある日突然物価目標達成が視野に入ったって言い出す準備は実は万端整ったという状態になっている、ということも言えるわけでして、その点にフォーカスして考えれば今回のムーブメントも出口に向けた前向きな一歩と評価する、というのもおかしなことではない、ということになるんですよこれがまた。

『賃金面をみますと、本年の春季労使交渉では、物価上昇も背景に、30 年振りの水準となる賃上げが実現しました。』

『また、価格設定面でも、コストに占める人件費の比率が高い業界の一部からは、人件費の継続的な上昇を念頭に、値上げを実施したとの声も聞かれます。』

『短観の企業の販売価格見通しをみても、「1年後」の見通しは原材料コストの落ち着きから低下した一方、「5年後」の見通しは非製造業中心に幾分上昇しており、賃金等の上昇が続くことが予測され始めている可能性があります。』

『中長期的な予想物価上昇率も緩やかに上昇しており、賃金・価格設定行動に影響を及ぼしてきているとみられます(図表7)。』

これだけ並べておいて何で「今回の上方修正の要因はほどんどが第一の力」って決め打ち説明してるんだよという話ですよね。これは即ち、

『そうした中で、2%の「物価安定の目標」に向けた見通し実現の確度が少しずつ高まってきていると思われますが、先行き「第二の力」がどの程度強まっていくのか不確実性は高く、現時点では、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を十分な確度をもって見通せる状況には、なお至っていません。』

という結論にしているんですけど、結局「十分な確度かどうか」という極めて主観的な話が決定要因になっている、というインフレーションターゲッティング政策とは何だったのかという話になる訳でありますけれども、今の部分にありましたように、第二の力とやらだって強まっているという認識を示している訳で、これはどっかの金融政策決定会合で突然「こんなに第二の力が伸びてきているので確信が持てました」というのは実はそれこそ12月でも可能、ということになっているのですね。

しかもですな、この第二の力の説明、第二の力の構成要素がさっぱり分からん(そもそも賃金と物価の悪い循環を想定しないのか問題もあるし)という代物になっておりまして、これはもうある時急に「第二の力が強まりました」攻撃だな、と思う訳ですよ、だって中身をちゃんと定義してないんだもん。


まあどうせ今の日銀のパティーンですと市場に追い込まれる(だいたいの場合円安)とか、物価高放置や円安進行批判の声が大きくなってきて追い込まれるか、じゃないと問題先送りの微修正しかしないのでありますが、そうはいっても追い込まれリスクも相応に感じているからこそ、物価判断のこの第一の力、第二の力、という究極的にどんな結論でも捻りだせるインチキ説明をメインに持って来たんだな、とまあそのように思うのであります。


・でもって第二の力の説明が一応続くのですけどね

『わが国では、長期にわたる低成長やデフレの経験などから賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が社会に根付き、「第二の力」が働きにくい状況が続いてきました。今後、企業の賃金・価格設定行動の変化が広まり、賃金と物価の好循環が強まっていくか、丹念に確認していく必要があります。こうした見極めに際して、ポイントとなりうる点を2点申し上げます。』

ちょっと待てさっき第一の力で出てきていた企業の価格設定行動は何なんだと小一時間な訳で、つまりは今第一の力に入れてる要素もある日突然第二の力の構成要素にお引越しする可能性があるということであります、何だかねえ。

『1つ目は、先行きも賃上げが続き、社会に定着していくか、という点です。』

だそうです、以下の説明はまあはっきり言って蛇足。

『とくに来年の春季労使交渉は重要な点検ポイントであり、その動向を注視していく必要があります。賃金を巡る環境を確認しますと、まず、労働需給は着実に引き締まっています。短観の雇用人員判断DIは、「不足」超幅が感染症前のピークに迫る水準まで拡大しています。正社員の転職市場も拡大しており、労働需給の引き締まりが賃金に波及しやすくなってきている可能性もあります(図表8)。賃上げの原資となる企業収益も、全体としてみれば既往ピークを更新しています。ただし、収益の改善ペースは業種や企業規模間でばらつきがあります。中小企業を中心に、本年の賃上げは、収益力が必ずしも十分ではない中で実施したとの声も聞かれており、こうした先で、来年も賃上げの動きが継続するかは不透明です。労働需給や企業収益の動向を引き続き点検するとともに、マクロのデータとミクロのヒアリング情報の両面から企業行動を丁寧に分析し、賃金設定行動の変化を見極めていきたいと考えています。』

って一生懸命尤もらしくしているけど結局最後はお前らの主観的判断でしょ????

『2つ目は、企業が、賃金等の上昇を念頭に置きながら販売価格を設定するスタンスが強まるか、という点です。』

なんかもうなんとえも言えますよねこれって。なので以下の説明も全部蛇足。

『賃金と物価の好循環が実現していくためには、企業が、将来の賃上げの原資となる収益を安定的に確保していく必要があります。先ほど指摘しましたように、この面でも、一部でこれまでにない動きがみられ始めていますが、原材料コストと異なり、賃金等の間接費の上昇については、販売価格への転嫁は容易ではないとの指摘も少なくありません。企業の価格設定行動の変化が広がっていくか、今後の動向を確認していく必要があります。』

しかしこの「賃金と物価の好循環が実現していくためには、企業が、将来の賃上げの原資となる収益を安定的に確保していく必要があります。」ってまさに欧州で起きている「グリードフレーション」であって、賃金と物価の悪循環じゃないでしょうかねえ、と思う訳ですけどもう説明が強引すぎますな。


ということで物価判断の部分を改めて確認するの巻でして、


〇総裁記者会見ですが今回はこれも物価判断の質疑だけみてみますね

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk231107a.pdf
総裁記者会見
――2023年11月6日(月)午後1時10分から約35分
於 名古屋市

最初の説明部分の次からの流れが良かったので(^^)。

・物価目標達成の判断についての流れるような連続質疑が大変に良かったですね

『(問)物価目標達成の見通しについて、お伺い致します。今日の総裁のご講演の中でも、物価目標達成に向けた見通し実現の確度は、少しずつ高まっているという言及もありました。また、9 月会合、今日議事要旨公表されましたが、その中でも出口についての議論というのがされていることが明らかになりました。そうした状況を踏まえてですね、改めてになりますが、物価目標達成、そしてマイナス金利の解除も含めた政策の転換の時期について、改めて見通しについてお伺いさせてください。』

ときまして、

『(答)物価目標の達成が見通せる時期がいつ頃になりそうかというご質問だと思いますけれども、』

とわざわざ政策じゃなくてそっちの方に自分から話を持って行く植田総裁、というのがまず味わいがありまして、

『見通しがそういうふうにできるためには、これも何度も申し上げていますように、賃金が継続的に上昇していくということについて自信が持てる、それから上がっていく賃金が、物価に、特にサービス価格にですね、波及していくということについても、うまく起こっていくということについて自信が持てる、』

全部「自信が持てる」かよただの主観判断じゃねえか。

『更にその前提として、それを支える経済の総需要面が力強く推移するというようなことの確認が必要ですので、』

そもそも物価安定の定義って経済のサイクルの中で安定的に物価が2%で推移するってことなのですから、物価が目標数値を下回っている状況ならこの「需要が強いのが前提」ってのは話が分かるんですが、物価が目標数値を上抜けている状態で需要が強くないといかん、ってのはロジック的におかしいんですよね。今度誰か質問してみてくださいお願いします。

『これがいつになったら、十分自信が持てた、持てるような状態になったといえるかっていうのは、残念ながら現時点では私どもも分かっていないといわざるを得ないです。』

という回答ですが、

『(問)賃金についてはいかがでしょうか。春闘の時期であったりとか、そういったところが一つ、時期を判断する上でのポイント、焦点になってくるということでしょうか。』

となって、

『(答)賃金については、特に来年度の賃金ということでいえば、もう定義上 1 年以内に迫っているわけですけれども、これがどの時点で、物価目標と整合的な、あるいはそれに近い姿として確認できるかということは、その 1 年の中でも、様々な経済情勢の推移次第でいろんな可能性があり得ると思いますので、今の時点でいつかということはなかなか申し上げにくいと思います。』

wwwwwwwwww

『(問)少ししつこいようで恐縮なんですけれども、いつになったら見極めるかっていうのは到底分からないということなんですけれども、今年もですね、11 月に入って残り少なくなってきたわけなんですけれども、年内中にそういった賃金・物価の好循環、その安定的・持続的な物価見通しが見通せる可能性、蓋然性について、総裁ご自身は今、どのようにお考えになっているんでしょうか。』

いいそもっとやれw

『(答)常に新しいデータや情報が入ってきますので、どの会合でも、何らかの判断を前の会合に比べて進めるという可能性はあると思うんですけれども、今年ももう 2 か月弱になってしまったということは申し上げられるかと思います。』

というクッソワロタとしか言いようがない質疑になっていまして、これ決め打ちを絶対にしないのって「追い込まれて解除」というリスクが常にある(しかも状況としては高まりやすい)という中において、うっかり決め打ちしてしまうと追い込まれノンリニアジャガーチェンジの際にまた掘り返されると収拾がつかなくなってしまうから決め打ちから逃げている、ということでしょうな、というのは容易に想像できるわけですわ。

てなわけで、もはや先行きの政策パス全然予想できないのですが、方向として緩和の解除方向であることはまあさすがに外れは無いと思いますが、そのスピードに関しては「ひたすら時間稼ぎしながらゆっくり撤退したい」「でも外部状況がそれを許すかどうかは予断を許さないから何とでも言い逃れが出来るようにしておく」という事なんでしょうなあと思います。まあ自分から物価目標達成が視野に入ったとか言わないでしょうなこりゃという感じ(主体的に言うなら今回が最後のチャンスだった希ガス)ではありますなという所でござる。






2023/11/07

お題「総裁定例会見の続きである」

なんでこう同時に色んなもん出てしまうんですかねえ・・・・・・

〇大阪懇談に次いで今度は名古屋懇談がダマテン実施となるとこれは日銀の体質に変化が起きているとしか思えん

昨日急にヘッドラインで植田総裁のコメントが流れているから何だと思えば・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko231106a.htm
【挨拶】
最近の金融経済情勢と金融政策運営
名古屋での経済界代表者との懇談における挨拶
日本銀行総裁 植田 和男
2023年11月6日

おいこらちょっと待て、

https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm
公表予定

11月6日(月)8:50 ○ ● 政策委員会・金融政策決定会合議事要旨(9月21・22日分)
      8:50 ○ ● 日銀当座預金増減要因(11月見込み)
8日(水)  8:50 ○ ● オペレーション(10月)

・・・・・どう見ても闇討ちです本当にありがとうございました。

えーっとですね、9月MPMの直後(9/21-22の木曜金曜でMPMのあと月曜日に実施)も闇討ちで大阪懇談が行われまして、こちらとかベンダーとかでは大阪で講演が行われるみたいなのがちょっとありましたけれども、金曜日の時点で「公表予定」に出ないまま結局あるのかないのか謎のまま月曜になったらやってました、という感じでした。

一応ですね、1億歩くらい譲って考えますと、9月の大阪懇談会のタイミングは展望レポートの回じゃない時に決定会合の翌営業日に大阪懇談会、ということになるので、まあそのタイミングが事前に公表されたら「9月って決定会合の会でもないのに直後に総裁の懇談会って何かキナ臭い」とか言われるリスクを考えたくなるから、日程を公表しない(それにしたって金曜日にMPMの結果が出た後に公表予定に日程追加すれば良いじゃないとは思うけど)というのはまだ1兆歩譲れば言いたいことは分かるんですよね、あるべき姿だとは全く思ないけど。

然るに、展望の直後に一発目に行われる金懇などの行事では総裁か副総裁が説明を行う、ってのはこれ恒例行事(4月の時は植田総裁の内外情勢が5/19、7月の時は内田副総裁の千葉金懇が8/2に実施)なので、別に事前に日程を公表したから何がどうなる訳でもない平常運転なのに、直前まで公表しない(しかも名古屋懇談とか普通に中京地域の要人集まるんだから日程の段取りとか大昔からやっている筈で急に決まるもんでもない)って意味が分からないですな。

まあアレですよ、だいたいこう情報を出したがらないわ、その割にはどっかの新聞にはお漏らし記事が決定会合の直前に出るとか、現体制になってからの日銀(というか大本営)って何かコソコソと情報操作をしたがる悪い傾向にあるんじゃネーノと申しあげたくなってしまう訳でして、いや今回の懇談会の日程とか何で秘匿する必要があるんだ(そもそも出席する関係各位には分かっているのでセキュリティ上秘密にするとかそういう意味もないはずだし)というのが全く意味不明で、黒ちゃんの「市場は支配するもの」という悪いカルチャーが完全に定着しているからこそ、コミュニケーションとか情報公開とかの面でもやってることが恣意的かつ不透明になって来ているんでしょうなあ、とまあそのように思いました。

でもって他のネタもあるし大体からしてMPMとFOMCと月末月初の余波でクソ多忙でまだあまり読めていませんが、今回は大阪懇談会と違って「展望レポート」という物件が出てしまっているので、植田さんオリジナルの話をするのも中々難しい所なのではなかろうか、と斯様に思う次第でございますが、その意味では講演よりも会見の方がまだしも面白いかもしれません、ということで今日出るであろう会見も見ながら明日以降成敗して参りたい所存であります。


〇会見は会見でもMPM定例記者会見の続き

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk231101a.pdf
総裁記者会見
――2023年10月31日(火)午後3時30分から約70分

昨日はああだこうだ書いてたら幹事社質問だけで話が終わってしまいましたのでw

・ついてもいない指値の副作用に関して

『(問)今日の声明文の中で「1.0%の利回りで連続指値オペを実施し、長期金利の上限を厳格に抑えることは、強力な効果の反面、副作用も大きくなり得ると判断し」という表現があると思うんですけれども、ここでいう副作用なんですけど、債券市場の機能度等いろいろそういう部分があると思うんですが、ここの副作用という言葉、為替円安等についてはですね、意図があるのかどうかということを確認させてください。』

まあ為替円安って聞いちゃうと台無しなので、これは具体的に何を意味するのですか、とイエスノーで答えられない質問をするか、それとも指値が付くと問題になるなら何で指値オペを入れたんですかと聞いた方が良かったのではないかと思います。、

『(答)債券市場を含めた金融市場のボラティリティ、その悪影響というふうに考えてございます。その点は 7 月と同じです。』

で逃げられてしまいましたが、しかしこれ声明でもその前の幹事社質疑でも「金利上昇の背景が米国金利の上昇」という話をしていて、それって米国金利の上昇で弊害が起こるという話なので、もはや何が何だか分からんという理屈ではありまして、結局何が何だか分からん副作用話であります。


・一応「段階的に何か修正している」のは分かるのだがそんな悠長な修正をしている余裕は・・・・・・

ということでこの次の人がその点を聞いているんですけど、

『(問)二点伺わせてください。今回の長期金利の上限の見直しについては、先ほど不確実性が高いというお話があったんですけれども、その一方でその上限に辿り着く前に上限を見直していくということは、上限の持つ意味合いが形骸化していくということもあると思うんですが、その点をどう考えるかということが一つ。(後半割愛)』

結局のところ黒田時代に勢いというか売り言葉に買い言葉みたいな半ギレでぶっこんだ指値オペからの毎日指値オペがそもそも間違いだった、ということに帰着するんですよね。ちなみに半ギレでぶっこんだ施策の中で最大の悪行はマイナス金利導入であることは言うまでもありません。

植田さんはこの連続指値オペって先代の残しやがった粗大ごみなのでしらっと、

『(答)一点目ですけれども、上限に達していないのに何で動くんだというご質問だと思いますけれども、これも 7 月のときもほぼ同じだったと思うんですけれども、上限に張り付いて、強いオペを打って、連続指値オペですが、それで副作用が発生してからというよりは、その少し前の段階で動きたいという判断のもとに、今日も修正、更なる柔軟化を実行致しました。(後半割愛)』

だったら何で連続指値オペがあったんだよという話なのですが、まあこれに関しては黒田時代は指値オペヒット上等の精神でバンバンやっていたものが、植田総裁になってからヒットする前に後退を7月に行い、10月にしらっと連続指値オペを削除する、ということなので、まあ「段階的に連続指値オペを廃止した」という事は言えるには言えるんですけど、こんなチンタラと「段階的な修正」をしていて物価情勢と為替市場(と長期金利)が猶予を与えてくれるのかよ、という話ではありますな。


・ビハインドのリスクが上がっているのではないかという質問に対する苦しい答弁を鑑賞しましょう

その次は話が変わりましてこんな質問。

『(問)総裁は就任前から金融政策運営でリスクマネジメント・アプローチの話をされてたと思うんですけども、4 月に比べて 7 月、7 月に比べて 10 月、物価上昇、見方が上方修正されてるんですけれども、その中でビハインド・ザ・カーブのリスクも変わってきてると思うんですけど、FRBの教訓も含めてですね、やはりここまで物価が上がってきてる中で、ビハインド・ザ・カーブのリスクの大きさ、変化の度合いは 4 月から 7 月、7 月から 10 月と結構強まっている印象を持つんですけれども、その辺をできればお伺いしたいんですけど、よろしくお願い致します。』

大事な質問ですよね、この話を日銀側からあんまり言わなくなった(ように見える)のは「日銀は物価上昇を敢えて放置している」という解釈に繋がって日銀がタコ殴りにされるリスクがあるからでしょ。

『(答)物価全体の動きをみますと、どんどん上方修正してきていますので、おっしゃるような印象が出がちだと思うんですけれども、先ほど申し上げましたように、物価全体の動きを「第一の力」による部分と「第二の力」による部分に分けて考えますと、』

ビハインドのリスクについて聞かれているのに「第一の力」「第二の力」を持ち出すということで、この辺りの応対話法からもこの新語「第一の力、第二の力」というのが日銀お得意の屁理屈誤魔化し用のバズワードでありますので、この前も申し上げたかと思いますがワイはこの「第一の力、第二の力」という用語を使うのは屁理屈誤魔化し妖術に嵌りにいくようなもの、という認定をしますので使わないように心がけたいと思います、まあ何とかストレポートとかで使ってるの見たら悲しみと共にそっと閉じるという方向で参りますわアタクシ(個人の偏見です)。

#こんな場末でアタクシのような泡沫が言うよりも早川さんあたりがこのインチキ説明を一刀両断すれば一発な希ガス

『上方修正の全部というと言い過ぎだと思いますけれども、かなりの部分は、「第一の力」の上方修正あるいはそれが予想以上に長引いてるということに依存して出てきた修正でございます。』

とか何とか言ってるけど、先日来も申し上げましたように、そもそも輸入を起点とするコストプッシュの上方修正の背景には何があるのか、という分析をしないと、それが一時的なのか持続的なのかとかを見極めることができない訳でして、こうやってインチキバズワードを使う事によってそういうのを誤魔化すあるいは思考停止することができるんでかなりこの用語と用法は大本営の誰が考えたんだか知らんけどエライ筋悪なものを考え付きやがったなという意をさらに強くするのでありました(個人のかなり偏った偏見です)。

『これに対して「第二の力」は、見通し自体には織り込んでいます。以前より、「第二の力」、だんだん強まっていくという姿は。ただその部分についての上方修正は、ここのところ大きくはしておりません。』

とのことですが、じゃあこの第二の力って何ですかという話なんですけど。

『その「第二の力」は先ほど申し上げましたように、ある種、基調的な物価上昇率と呼んでるものに概念的に非常に近いもので、』

だそうですが、なんということでしょう

『そこの見通しの水準あるいは、むしろそれ以上に確度がまだまだ不十分というふうに思っていますので、』

???????????

いやお前らの出してる「基基調的なインフレ率を捕捉するための指標」はアホみたいにあがってるじゃないのよなんであれだけ上がっているのに上方修正にならないのよという話ですわな。もう無茶苦茶。

『そちらから判断しますとビハインド・ザ・カーブになるというリスクは、いまだにまだそれほど高くないというふうに考えております。』

そちらから判断したらリスクは上がっているように思えますけどね、と思いますけどこれ植田さんちょっとだけ良心の呵責でもあるのか「リスクは上がっていない」とは言ってなくて、「それほど高くない」と水準の話をしているのだけはまあ説明が苦しいのを自分で認識しているんだろうなあ(これが黒田だと平然と「特にリスクは上がっていませんが何か」と回答するであろうことは言うまでもない)と思いましたwwwww


『もちろんその前提として、「第一の力」は長引いてはいますけれども、いずれ近いうちに収束していくという見方を持っております。(後半割愛)』

いやその見通しが既に半年間の間に大外れしているんですけど・・・・・・・・・・・・


・なるほど先週水曜の金利上昇は投機的な動きによる金利上昇だったんですかー(超棒読み)

こんな質疑もありました。

『(問)(前半割愛)また、もう一つ、今回は、長期金利が 1%に近づいてきたところでのYCCの修正というかたちになりましたが、金利の水準が上がってくると日銀はYCCを徐々に変更していくんだというふうに市場に見透かされるといいますか、足元を見られるようなかたちになって、次の政策修正を迫るトライをされるのではないか、こういう懸念もあると思うんですが、そこはどうご覧になっているでしょうか。』

という質問に対しまして、

『(答)(前半割愛)それから長期金利の上限、厳格なものか、めどであるかは別にして、それを引き上げたりあるいは厳格なものからめどに変えるというような政策の柔軟化が却ってそういうことを更に引き起こすような投機的な動きを呼び込んでしまうのではないかというご質問だと思いますが、これも 7 月のこの席でお話ししましたように、言うは易く行うのは難しいですけれども、』

とまあここまではさて置きまして、

『そういうある種、根拠が薄い投機的な動きによる金利上昇については機動的なオペで抑える、』

ほう。

『もう少しファンダメンタルズに伴った実勢のある金利上昇については多少の上昇を許す』

ほうほうほう。

『というかたちで、うまく対応していけたらなと思っています。』

という説明になっているのですが、この間米国の長期金利上昇を言い訳にして連続指値オペを止めている訳でありまして、つまりは米国金利上昇を背景にした金利上昇というのは基本的にファンダメンタルズに伴った実勢のある金利上昇(だからこそ無理に止めるのは弊害があり連続指値オペを止めた)という認定になる筈なのですが、だったら何でMPM翌日に臨時輪番を入れたのか、発動基準が一切意味が分からないのですけれども、あの金利上昇は投機的な金利上昇という認定だったのでしょうかちょっと教えてくれませんかねえ(棒読み)


・直後に更問さすがですわ(債券市場介入の判断基準)

その直後の質問。

『(問)今もお話あったんですけど、上限の 1.0[%]のめどの狙いなんですけど、投機的にみえるその金利上昇については抑えると。一方で、例えば経済、少し温まってきたとか、物価上昇とか、それに応じた金利上昇というのを市場が選んでいく場合には、日銀がそれを邪魔せずに、ある種金利のある世界を認めていく姿勢を示すもの、そういうふうにとらえてよろしいでしょうかというのが一点目です。(後半割愛)』

念押しキタコレ。

『(答)まず前半ですけれども、長期金利が上がっていく場合に、実勢をなるべく見極めて、単に投機的なものであればそれを許さないように抑え込んでいくという、そういう理解でよろしいのかというご質問だと思います。』

で??

『繰り返しになりますが、理屈のうえではそういう姿勢でございます。』

ほっほー。

『ただし、現実問題として、オペを担当する[金融]市場局が、あるいは執行部が毎日というような短期の次元でその両者を的確に識別することは、なかなか難しいというふうに思います。ですので現実の運用としては、やはりそのときの長期金利の水準とか上がっていくスピード、これをみながら、少しずつ適宜ブレーキをかけて、ある程度、時間がたったところで全部まとめてみてもう一回判断するということを繰り返していくしかないのかなというふうに思います。(後半割愛)』

何だよ結局やること前と同じかよ、と思ったら案の定だったのはご案内の通りですし、スピードがどうのこうのゆうとるけどそもそも市場の期待っていつもグラデュアルかつリニアに動くわけではなく、何かのイベントでノンリニアに動くことだってある訳だし、それまで織り込んでいなかったものを経済指標見て一気に織り込みに行くことあってあるわけだし、値動きが大きいから全部投機的ってわけじゃねえだろとしか申し上げようが無い訳で、その結果市場から見たらナンジャソラという臨時オペが入るという流れな訳でまあ不幸としか言いようがありませんわな。


・債券市場介入の裁量がさらに現場に高まっている件について

少し飛んで後の方になりますけど。

『(問)二点伺います。一点目はYCCの再修正についてです。今回の見直しで上限に関しめどですとか指値オペの利回りの決定ですとか、結構曖昧な表現が目につきます。』

ですよねー。

『一方で、許容変動幅は撤廃されました。』

ということで、

『こういった変更内容を踏まえると、政策の意図として、政策委員会のディレクティブを緩めて、逆に日常的にマーケットと向き合う金融市場局ですとか執行部の裁量をより広げる手法で、市場調節の機動力を高めようとしてるのか、この運用見直しの狙いをより具体的に伺えればと思います。(後半割愛)』

重要な論点ですな。

『(答)まず、今回のYCCの見直しによって、厳密な意味で 1%を死守するというような部分がなくなって、やや曖昧さが上昇している、その狙いは何かというご質問だったと思いますが、』

はい。

『[金融]市場局の裁量あるいは執行部の裁量の部分を増やそうというのはもちろん狙いではありません。』

でも増えてるじゃん、と思ったら直後に、

『ただし、曖昧な部分が増えてるということは事実ですので、的確に運用していく際に、そうしたオペをする部隊の負担が増えるということは事実かと思います。』

オペ部隊の負担の前に裁量バリバリで市場介入されてポジション運営の困難さが更に高まっている市場の方を心配してくれませんかねえ。

『先ほどもご議論がありましたように、実勢に応じた金利の上昇なのか、単純に投機的な上昇なのかということをできれば識別してオペを打っていきたいということの判断の負担もあるということかなと思います。』

そんな打ち方してるようには見えませんけどねえwwwww

『むしろ狙いは、はっきりとした上限を置いておくことが、やはりそこに近づいたときに副作用を高めるということをなるべく避けたい、あるいは裏返して言えば、多少なりとも市場機能の回復につながることがあればいいなということも狙いの中に入ってございます。(後半割愛)』

最後の方は最早何を言ってるのか分からん状態になっておりましたwwwwwwwww


・地味にこの質問は注目した

従来「日銀の緩和政策が国民生活に負担になっているからいい加減にしろ」質疑はいつものご案内のお二方しか基本的にはしていなかったのですが、今回こんなのが飛んできました。

『(問)総裁に一点お尋ねします。大規模緩和を続けることによる家計へのコスト負担についてです。依然として物価安定目標実現へ見通しが立っていないというところで、大規模緩和の枠組みを維持されているわけですが、その間もやはり円安による物価高というかたちで家計には大規模緩和のコストがかかり続けています。見極めに時間がかかればかかるほど、家計の負担も増える可能性がありますが、総裁は政策を判断するうえでそういった家計への負担やコストというのをどのように考慮されていますでしょうか。』

まあ回答の方は(どうでもいい想定問答回答しかしていないので)引用かっ飛ばしてしまいますが、この質問をしたのが(日銀公式ユーチュブのアーカイブ見れば分かるので名前だしちゃいますと)TBSテレビの方(たぶん記者の方)が質問しておりました。

ということでこれはいやー遂に大手テレビ局がこの論点突っ込んできたかーーーーーと大変に心強く思う訳でして、まあ日銀ちゃんも今の調子でハトハト金融緩和音頭を踊り続けていると気が付いたら容赦なくシバかれて日銀は国民の敵、って世間認識になるリスクあるんだよねーーーーーって思ってしまいました。


・財政従属に関する質疑、というか質問だけ引用しておくわ

いつものお二方の1名による質問、今回のは出色の質問でした。

『(問)先ほど総裁、政府の経済政策との整合性の質問に対して、まだ全体像が分からないから答えられないというお答えでしたが、その答えでは全く納得できません。少なくともですね、詳細が分からないまでも、岸田政権が所得税減税を柱とする大規模な経済対策をやる方針は固めておりますし、これでおそらく兆円単位の、場合によっては十兆円単位の国債増発圧力になりますし、あるいは少子化対策とか防衛予算についての財源のめどがまだ全く立ってない段階で、今後著しい国債の増発が予想される中でですね、今、YCCを撤廃しないということは、その政府の国債増発を支えるというメッセージにならないでしょうか。共同声明の中でですね、共同声明にある 2%目標にこだわるんであれば、同じように共同声明の中に載っています持続可能な財政構造の確立ということにも、もっと責任を持つべきではないんでしょうか。財政構造の確立について総裁はどういうご認識でしょうか。』

いや本当の本当にこれは超重要な論点ですよね、なお完全に回答は逃げの一手だったので引用しませんが、この質問は本当に良かったです。






2023/11/06

お題「MPMレビュー(その1):今回のバズワードイカサマ用語っぷりが冒頭からよくわかりますね」

そういやまだ決定会合の議事録も出ないような時期なのにこんなのおっぱじまっているらしい(日経無課金だから詳しくは見てないけど)のですが・・・・・

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK315I40R30C23A8000000/
黒田東彦(前日本銀行総裁) 私の履歴書(1)国益を追って
黒田東彦
2023年11月1日 2:00 [会員限定記事]

えーっと、円安を推進して日本を貧乏国へと進めているののどこが「国益を追って」なのかと思ったのですが、きっとこの「追って」は国益を海外に追放したという意味なんですね!!!!!!!


〇総裁会見ですが今回の会見は随分と植田さんおかんむりのようでしたなあ(個人の感想です)

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk231101a.pdf
総裁記者会見
――2023年10月31日(火)午後3時30分から約70分

・これはまあ動画の方を見てちょんまげという感じですが・・・・・・・・

今回の決定会合の植田さんの会見、まーーーー最初から植田さんに覇気がなくて、しかも説明が雑(なんで雑なのかと言えばそもそも大本営のイカサマロジックが酷くて、植田さんはそれを延々と喋らせられているからですよね、大本営の詭弁度が一段と高まっているのは昨日ああだこうだ書いた通りで、今日の書き物の下の部分に付けています)であって、植田さん如何にも「意に沿わない説明をしている」感が満載でしたよね。

でまあそれはアタクシが思っただけではなく、会見見てた人達の多くが思っていたと存じます次第で、終わってから知り合いと会見について話をするとまあそんな話が多かったわけでございまして、9月の読売新聞インタビュー、という割と良いインタビューは何処に逝ったのかと小一時間問い詰めたい訳ですが、こんなのどう見ても回答は一つしか無くて、「今回の展望レポートの経済物価情勢判断の見直しを機に2%目標達成に向けて一歩踏み込んだ政策修正を行いたかったのだけれども、大本営(と多分官邸)に羽交い絞めにされてやりたいことが出来なかった」というお話なんでしょうな。

ま、そこでいきなりやってられるか辞任して今までの経緯を世に問うわ、というようなファンキーな事をするような人間はそもそもそんなに世の中で出世できない、というように社会はできているのでありまして、まあそんなロックンローラーを植田総裁に求めるのはさすがに無理、ということで苦悩の記者会見と相成るのでありました。

なお、この部分はあくまでもアタクシの妄想によるものであって事実確認はまったく取れておりませんので念のため申し添えます(−−)


・大本営のイカサマロジック「第一の力」「第二の力」に完全に翻弄された会見でしたな

物は試しに今回の会見、「第一の力」でテキスト検索掛けたら18個、「第二の力」でテキスト検索掛けたら21個も登場していまして、まあ大本営的な意味では完全にこの「第一の力」「第二の力」が大成功というのが今回の会見(なのでアタクシはトサカに来るわけですが、笑)という感じではございます。

しかしですな、そもそも論として今の物価状況に関しては「外生要因であった物価上昇が想定以上に長期化しており、内生的な物価上昇が起きているのではないか」とか「供給要因で発生した物価上昇がこれほどまでに長引いているのは供給要因が構造的、あるいは需要要因の物価上昇が起きているのではないか」というような非常に判断の見極めが難しい状況にある筈なんですよね。

然るにこの「第一の力」「第二の力」というのは「外生要因・内生要因」でもないし「供給要因・需要要因」でもないし、変なバズワード使って説明を単純にしていることによって、本来もっと複雑な背景が有る筈の物価メカニズムについてこの「第一の力」「第二の力」で思考停止をさせて背後のメカニズムに関する考察から目くらましをしよう、ってなもんですから、まあ黒田時代の詭弁学園は全然解散していなくて、今回もまたエライ出来の良いインチキロジック(1ミリも褒めてはいないがこういうインチキバズワードを考え付くのは天才以外の何物でもないのでその頭脳には感心するしかない)を新たに作りやがりましたなという所ですわな。

でですね、まあ植田さんもさすがなので、この第一の力、第二の力、の説明で割り切るのが乱暴なのは分かっているようで、だからこそ今回の説明が過去にもまして丁寧じゃないように見えたのってそのせいだろうなあと思うのであります。

ああそれから、展望レポート内の物価の記述でも見事に誤魔化されているものがありまして、それは円安による輸入物価の高止まり、という要因について触れていない事で、これもまた大本営の誤魔化し説明なんですよね。

と申しますのは、思い出していただきますと昨年の7月の展望の時には「エネルギー価格の高騰がいったん(ドルベースでは)落ち着いて寧ろ下がって来る」という中でも輸入物価が強い要因として為替円安の影響について認めていた筈なんですが、ここもとの円安進行というか円安定着というか、という状況の影響について今回の展望レポート基本的見解でも声明文でも見事にだんまりを決め込んでおりますが、円安自体がどっからどうみても政策要因で円安になっている訳でして、どうせこの点突っ込むと大本営は為替は外生変数とか言い出すわけなのですが、お前らの政策で円安が定着しているのを外生変数扱いにするなやヴォケという話になる訳です。

とまあそういうイカサマ説明を引っ提げて会見に出る破目になった植田総裁、元気がないのはそらそうよという所ではございます(個人の感想です)。


・今回の再柔軟化の背景について

最初が幹事社質問なのですが、質問聞いているときはなんかダラダラ聞いてるなと思ったがテキストで見るとちゃんとした質問になっていまして、ただ質問がアホのように長いんですよね。今回の再柔軟化の背景と物価に関する質問、というまあ基本部分の質問をしているのですが、どっちか半分にすればよかったんじゃないでしょうかねえ、どうせ他社だって質問するんだからそれで良いじゃんと思うのですが、メディアってそういう訳にも行かないのですかね、難しい所ですけど。

『(問)幹事社から二問質問させてください。YCCについてですが、7 月にですね、運用柔軟化した際、総裁は指値オペの 1%の水準を引き上げたことについて、長期金利が 1%まで上昇することは想定していないと、念のための上限キャップと説明されましたが、今会合での更なる運用柔軟化はですね、想定外の金利上昇を受けた追加的な措置と考えてよろしいでしょうか。』

『また、足元の国内金利の上昇は米国の長期金利の上昇、これによるところが大きいと思いますが、こういったことに対してですね、YCCの緩和効果と副作用のバランスをどう評価して、今回の更なる柔軟化に踏み切ったのかお教えください。』

『また、新たにですね、長期金利の上限を 1%をめどとしましたが、今後どこまで 1%を超える水準を容認していくのか。』

『今回の措置がですね、金融引き締めにつながるのか、つながらないのか、そういった点も含めて伺えないでしょうか。(後半割愛)』

ということで、前半だけで1問と言いながら4問聞いている訳で、そらその場で聞いててクソ長いわと思ったの当たり前でして、文章で読むからまだマシなんですがこれ動画見たら「質問が長すぎ」以外の感想が出てこない訳ですよ。でまあこんな感じの質問を最初にされると後続の質問も長めになるし、後半になって時間が無くなるの当たり前ですが、だいたい今回に限らず幹事社質問が毎回どこの社でも馬鹿みたいに長いのに途中で「質問は簡潔に」とか幹事社が言うのはお前が言うなと後半の質問者がイカるの当たり前だと思うので次回以降の幹事社はもうちょっと質問を自制しろと思いました。

まあそれは兎も角として回答。

『(答)まず前半ですけれども、今回の措置は、先ほど申し上げましたように、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、イールドカーブ・コントロールの運用において、柔軟性を高めておくことが適当との判断に基づくものです。』

と言った舌の根も乾かぬうちに臨時輪番を打ち込んで来る金融市場局だったりしましたが。

『現状において、原則として毎営業日 1.0%の利回りで連続指値オペを実施し、長期金利の上限を厳格に抑えることは、強力な効果の反面、副作用も大きくなり得ると判断し、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うことにしました。』

声明文棒読み。

『今後は1%の上限金利のめどのもとで、大規模な国債買入れを継続するとともに、長期金利の水準や変化のスピード等に応じて機動的にオペで対応することで、イールドカーブ・コントロールを運用していくことになります。その際、買入れ額の増額や臨時買入れなどの対応は、1%を下回る水準で行うこともあると考えています。』

まさかとは思うが水曜の臨時輪番は「植田総裁が1%を下回る水準で行う事もある」と言ったので1%を超える前に打っておかないと打ちそこなうかもしれないと思って実施したんでしょうか?????

『また必要に応じて指値オペも活用することがあると思いますが、その利回りは金利の実勢等を踏まえて適宜決定致します。長期金利の厳格な上限は設定しませんが、こうした調節運営のもとで、長期金利に上昇圧力がかかる場合であっても、1%を大幅に上回るとはみていません。』

って何でまた言ってしまう(言わせてしまう)のかねえという感じでして、これでまた金利が上がったら更なる撤退を行わないといけなくなるんですよね。

・・・・・・ただまあ今回そこは大本営も工夫を凝らしていて、展望レポートの物価見通しってコアCPIの方を24年度「+2.7 〜 +3.1<+2.8>」で出しているので、足元の物価高が多少継続しても、24年度の見通しの再修正をしなくて済むように作っているんですよね。これによって物価が高止まった場合でも政策修正の思惑から売り圧力が強まるという事態を避けることができるんですよ。

なお、コアコア24年度の「+1.6 〜 +2.1<+1.9>」については怪しげにも程があるのですが、これは参考計数として出している、ということで開き直り強弁となると思います。

『また、昨年以降、予想物価上昇率についても緩やかに上昇していると判断していまして、実質金利は短期・長期ともマイナス圏での推移を続けています。このため、十分に緩和的な金融環境が維持されているものと考えています。』

実質金利での説明をするなら均衡金利水準を示せ。

『質問の中にありました今回の運用柔軟化は、想定外の金利上昇を受けた追加的な措置かという部分ですけれども、4 月にみていたところから比べますと、可能性としては意識していたんですけれども、私どもの物価見通しが上振れてきたということ、それから、こちらの方が大きいかもしれませんが、米国の金利上昇が非常に大幅で、それがわが国の金利にも及んできたこと、こういうことも今回の措置の背景にございます。(後半割愛)』

ということで今回は米国のせいにしているんですけど、そもそも米国の金利が上昇したから政策の手直しをしないといけないって日本って通貨ベッグでもしてたんでしたっけ???というような言い訳でありまして、米国のせいにすることによって政策修正ではなくテクニカル、って話にしたいんだというのはこっちも大本営インチキ説明の付き合いをしているから良く分かるのですが、米国金利が急上昇したから日本の金利上限を引き上げるって最早日本もそこまでの地位まで下がってしまったかという悲しい説明ではございましたな、ナムナム。



・「第一の力」「第二の力」を使った説明が如何に雑なのかというのが早速幹事社質疑の時点で露呈とな

でもって質問の後半は幸いにして1つの質問でしたw

『(問)(前半割愛)二点目は、今回 10 月の展望レポートでですね、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が長引いてるっていう、そういう中でですね、夏場以降の原油高や円安の影響を含め、物価の更なる上振れリスクをどう評価されたのか、また総裁がおっしゃっている賃金と物価の好循環につながるような「第二の力」へのバトンタッチがはっきりと視野に入ってきたかどうかを含めて、前回 7 月の見通しから 2%物価目標の持続的・安定的な実現の距離感が動いたのかどうかを含めて伺えないでしょうか。』

こっちはまあ普通の質問で後半の部分になってうざくなくなったな、と聞いてて思ってたなそういや。

『(答)(前半割愛)後半のご質問ですけれども、今回の展望レポートでは、物価見通しが上振れています。ただ、その主因は、私ども「第一の力」、「第二の力」という表現を使ってきております。』

さあ早速大本営謹製インチキバズワードが登場しておりますよ!!!!!!!!!!

『「第一の力」は輸入物価上昇が国内物価に及んでいくというところ、「第二の力」は国内の賃金と物価が好循環で回っていくというところを意味します。』

という説明になっております。まあ植田さんもイカサマ説明なの分かってて説明するもんだから・・・・・

『そういう用語法におきまして、』

聞き流していたがテキストで見るとこの言い方はクソワロタw

『今回の見通し、上振れの主因は、「第一の力」が長引いていることや、このところの原油価格の上昇であると判断しています。』

そもそも論として外生的であろうと物価上昇が「持続的に起きている」という事に対してはインフレーションターゲットの下では政策対応を行う必要があるものであって、その内容がどうだから云々というのはインフレーションターゲッティング政策になっていない、という話だし、内容やら先行きの自信やらを理由にして対処しない、というのは(昨日も書いたけど)本来置物一派こそ問題視すべきなんですよね。


『この間、「第二の力」の話に近い消費者物価の基調的な上昇率ですが、見通し期間終盤にかけて2%の物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくとみています。』

ちょwwwおまwwwwww声明文(と展望レポート基本的見解)棒読みwwwwwwwww

しかもですよね、「「第二の力」の話に近い消費者物価の基調的な上昇率」って現状幾らなんだよちょっと説明してみろや、というかなり雑な説明になっていますね植田さん。

『マクロ的な需給ギャップの改善が続くもとで、予想物価上昇率は緩やかな上昇傾向を辿ってきていまして、そうした中で、見通し実現の確度が少し高まってきていることは事実であります。』

と来てからの、

『引き続き、「第二の力」、すなわち賃金と物価の好循環が強まっていくか見極めていきたいと思います。』

ということで、物価上昇の背景に関して「輸入物価」と今回新しくぶっこまれてきた「賃金と物価の好循環」だけで説明しようというのがそもそも無理があるのにこういう説明で押し通すのかねえ。

『ただ、こうした見通しを巡る不確実性はきわめて高く、現時点では、物価安定の目標の持続的・安定的な実現を十分な確度を持って見通せる状況には、なお至っていないと判断しています。日本銀行としては引き続き物価安定の目標の持続的・安定的な実現という観点から、賃金と物価の好循環など経済・物価情勢の変化を丹念に確認していく考えです。』

とまあそんな説明になっておりました。

・・・・・・しまった時間が無くなってしまいました。続きFEDネタと共に明日以降。


2023/11/05

お題「まずはMPMレビュー関連を」

いやしかし先週はめっちゃ疲れましたわというか何で4営業日しかなかったのかと。

〇声明文を改めて他のも見ながら確認しますが

改めて声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k231031a.pdf
当面の金融政策運営について

・7月の柔軟化の説明に比べると本来今回は「撃ち方止め」となっていても不思議ではない声明文なのよ

という訳で今回も7月の柔軟化と比較しますので7月声明文と対比してみます。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230728a.pdf

ここは項番2と重複になる部分もあるが項番1から

『1.日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、長短金利操作の運用をさらに柔軟化することを決定した。具体的には、長期金利の目標を引き続きゼロ%程度としつつ、その上限の目途を 1.0%とし、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととする。こうした運用のもとで、日本銀行としては、粘り強く金融緩和を継続する方針である。』(今回)

まずね、

『1.日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、長短金利操作の運用を柔軟化することを決定した。わが国の物価情勢を展望すると、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要がある。そうした中、経済・物価を巡る不確実性がきわめて高いことに鑑みると、長短金利操作の運用を柔軟化し、上下双方向のリスクに機動的に対応していくことで、この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることが適当である。』(7月)

まあ項番1の時点で雑なんですが、一応今回って項番2の方が長広舌になっていて、水曜にもネタにしましたが改めて。

『2.わが国の物価情勢を展望すると、物価見通しは7月の展望レポートと比べて上振れているが、その主因は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が長引いていることや、このところの原油価格の上昇である。消費者物価の基調的な上昇率は、見通し期間終盤にかけて、2%の「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくとみているが、その際には賃金と物価の好循環が強まっていく必要がある。

日本銀行としては、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで粘り強く金融緩和を継続することで、経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく方針である。引き続き、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、賃金と物価の好循環など経済・物価情勢の変化を丹念に確認していく。

また、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、長短金利操作の運用において、柔軟性を高めておくことが適当である。この点、現在の状況において、原則として毎営業日 1.0%の利回りで連続指値オペを実施し、長期金利の上限を厳格に抑えることは、強力な効果の反面、副作用も大きくなりうると判断し、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととした』(今回)


『2.海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。

わが国の物価は、4月の展望レポートの見通しを上回って推移しており、本年の春季労使交渉などを背景に、賃金上昇率は高まっている。企業の賃金・価格設定行動に変化の兆しが窺われ、予想物価上昇率も再び上昇する動きがみられる。今後も上振れ方向の動きが続く場合には、実質金利の低下によって金融緩和効果が強まる一方、長期金利の上限を厳格に抑えることで、債券市場の機能やその他の金融市場におけるボラティリティに影響が生じるおそれがある。長短金利操作の運用の柔軟化によって、こうした動きを和らげることが期待される。

一方、グローバルな金融環境のタイト化が海外経済に及ぼす影響を含め、わが国経済・物価の下振れリスクも高い。下振れリスクが顕在化した場合には、長短金利操作の枠組みのもとで、長期金利が低下することで、緩和効果が維持されることになる。』(7月)

ということで、長くて恐縮ですが、7月の項番1の後半部分は今回の項番2に入っている、ということになるのですが、この理由の説明が7月ってそうはいってもまあ何か一応まだ「らしい」説明になっていた訳ですよね。

つまりね、7月って

『経済・物価を巡る不確実性がきわめて高いことに鑑みると、長短金利操作の運用を柔軟化し、上下双方向のリスクに機動的に対応していくことで、この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることが適当である。』(7月再掲)

だったのですが、今回って、

『また、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、長短金利操作の運用において、柔軟性を高めておくことが適当である。』(今回再掲)

な訳でして、結論として「日本銀行としては、粘り強く金融緩和を継続する方針である。」の部分は同じなんですけど、今回はこの再柔軟化で「持続性を高める」とは書いておりませんでして、「柔軟化」の方しか書いていないのですから、本来的に言えばこれって「持続性」にフォーカスしていない、という事になる筈ですし、さらに今回は「今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう」という一文を入れているんですから、まあ本来はこれってYCCの再柔軟化を名目にした形骸化、の筈なんですよね。

でもまあ皆様ご案内のように、早速決定会合の翌日に臨時輪番やらかしてしまう、というオペレーションが発生しているわけで、声明文だけ見ると本来はこれ「撃ち方止め」と読んだって何らおかしくないのに実行部隊がこれ、というのってこれはもう明らかに金融政策運営方針の作り込み方に問題があって、政策委員会が機能しておらずに日銀の幕僚が好き勝手にやっている、というガバナンス不在になっているというのがまあアカンですよね、と思う訳です。


・・・・・・ということで、今回の「再柔軟化」ってのに対して水曜の駄文の時に「運営次第だけど」と申しあげた懸念が早速水曜の臨時輪番に出た、という訳でございまして、今回の決定って「従来以上に現場のやりたい放題を促進する」という割ととんでもないものでして、いやこういう運営はガバナンスとしてダメだろと思うのですが、たぶん植田総裁と田村審議委員(もしかしたらそろそろ氷見野さんが気が付くんじゃねえのという気がするが)しか分かっていない(内田副総裁にしてみれば幕僚やりたい放題状態って生え抜き(゚д゚)ウマーなんだから反対する訳がない)んだが、他のポンポコリンは兎も角としてすっかり空気になって債券市場からも存在を忘れられている高田とか言う置物はお前気が付かねえのかこのポンコツとしか申し上げようがないんだがどうなってるんですかあの役立たずは、と突如変な砲撃をしてしまいました汗。


・目標と程度と目途

しかしまあ何ですな、今回になっても変わっていないのは金利操作目標の、

『@次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする(全員一致)。』

『長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。』(今回)

なんですけど、そもそも「ゼロ%程度で推移するよう」といいながら全然0%で推移していない訳でして、いやまあ±0%台は全部「ゼロ%程度」とでも強弁するのかどうかは分からないのですが、このゼロ%程度っての「操作目標」の筈なんですけど、操作目標と程度と目途の関係が無茶苦茶にファジーになっていて、しかも国債買入に関して、例えば「年間何兆円の拡大」みたいなのがあるなら兎も角、何もなくて「上限を設けず必要な金額の」買入となっているのだが、じゃあ「必要な額」はどういう基準で判断しているのかも全く訳が分からないという代物、いやまあいまに始まった話ではないのですが・・・・・・・


・指値が任意で飛んでくるのは何ぼ何でも現場に投げすぎ

まあ今回更にたちが悪いのはこれですわな。

『A長短金利操作の運用(賛成8反対1)(注)

長期金利の上限は 1.0%を目途とし、上記の金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、大規模な国債買入れを継続するとともに、各年限において、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ1、共通担保資金供給オペなどを実施する。』(今回)

『1 指値オペの利回りは、金利の実勢等を踏まえて、適宜決定する。』

連続指値オペを止めた一方で、指値オペが残っていて、しかもその利回り水準が「金利の実勢等を踏まえて、適宜決定する」とかいう好き放題オペになっている訳でして、指値オペがいつ飛んでくるかわからなくて、しかも水準も勝手に決める、という状況であれば、マーケットメーカーとしてみたらマーケットメイクを行っている中で突如予期せぬ指値オペが入ってきてちゃぶ台引っくり返されるってことになったらマーケットメイクなんぞまともにできないから、そうなったらマーケットメイクの際にオファービットを離すとか、受ける売買高を減らすとか(あるいはその合わせ技)して対処することになり、まあそれでも日銀のオペ先で国債入札参加者であれば輪番と国債入札がポジションを捌く場所になり得ますけど、そうじゃない一般の債券投資家からしたらオファービットの拡大やアベイラビリティの低下が一段と進むわという話になる訳ですよね。

ということで、このようなディレクティブのどこがどう今回の声明文項番2にある、

『今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、長短金利操作の運用において、柔軟性を高めておくことが適当である。』

という問題意識と実際にやっている事が全然合致していない訳ですな。いやまあこの辺の「機動的な運営」が実はとりあえず投機的な動きへの「抜かずの宝刀」に留まって実際の運営では市場の動きを静観している、というのであればまだしもでしたが、しつこく申し上げますように早速MPM翌日に臨時輪番入れている時点で、今まで以上の勢いで市場に介入する気満々です宣言をしているのと同じようなもん、とまああの水曜のオペを見て市場ちゃんは思うのが普通だと思うのですけど・・・・・・・・・・


・そもそもお前らの考える「副作用」についてちょっと説明してくれませんかね

今回の声明文、先ほどの「再柔軟化の意義」に関しても前回7月の時よりも説明がだいぶ雑になっている訳ですが、今回やっぱりナンジャソラと思ったのはこの記述ですよね、水曜もちょっと書いたけど。

項番2のまたまた再掲になるけど、

『この点、現在の状況において、原則として毎営業日 1.0%の利回りで連続指値オペを実施し、長期金利の上限を厳格に抑えることは、強力な効果の反面、副作用も大きくなりうると判断し、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととした。』(今回再掲)

7月の柔軟化の時はもっとちゃんと説明してたんですよね。

『今後も上振れ方向の動きが続く場合には、実質金利の低下によって金融緩和効果が強まる一方、長期金利の上限を厳格に抑えることで、債券市場の機能やその他の金融市場におけるボラティリティに影響が生じるおそれがある。長短金利操作の運用の柔軟化によって、こうした動きを和らげることが期待される。』(7月再掲)

ついでですからこの続きも引用しますが、

『(承前)一方、グローバルな金融環境のタイト化が海外経済に及ぼす影響を含め、わが国経済・物価の下振れリスクも高い。下振れリスクが顕在化した場合には、長短金利操作の枠組みのもとで、長期金利が低下することで、緩和効果が維持されることになる。』(7月再掲)

となっていまして、7月の時はちゃんと説明していたのに、今回は「強力な効果」と「副作用」について書いているけど、じゃあ何が強力な効果で何が副作用だったのか、ということに関しての説明が何もなくて、効果があって副作用もある、という話をしている訳ですよね。

でですね、今回のこの文章って「現在の状況」において「1%の連続指値を実施」することが「強力な効果の反面、副作用も大きくなりうる」って説明しているんだが、じゃあその強力な効果と副作用はどのような形で起きたのか、ということを説明してほしい訳ですし、そして水曜にも申し上げましたが、そもそもヒットどころか決定会合の2日目の日経報道までは0.9%すら付いていなかった状況において、「副作用も大きくなりうる」とはどういう意味なのか、という事への説明が何もない訳ですな。

まあこれ一応文章としては効果は「強力な効果」となっているけど副作用は「大きくなりうる」なので、まだ大きくなっていない、という屁理屈で逃げることは可能なんだが、であれば連続指値がヒットするだいぶ前からシャカリキになって臨時追加輪番だの長期共担だのをバカスカとこの先入れ続けていくことが問題になり得るのか、それとも指値をヒットするのが問題になり得るのか、という評価も聞きたいですわな。

つまりですね、連続指値がバカスカヒットするのが問題なのであれば、今までの連続指値特に黒田時代のバカスカヒットしていた連続指値は政策手段として間違っていたという話だし、上限意識してバカスカ追加オペ入れ続けると弊害が起きうるというのであれば、早速翌日に臨時輪番やったのおかしいでしょ、というお話で、まあどっちにしても説明がつかないんですけど、ちょっともうロジック的に収拾が全然つかなくなっていますよね・・・・・・・・・・・・


・中村審議委員は相変わらず中村審議委員でしたorzorz

うーんこの反対理由。

『(注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員。反対:中村委員。中村委員は、長短金利操作の運用の柔軟化については賛成であるが、法人企業統計等で企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで行う方が望ましいとして反対した。』(今回)

まあ7月も同じこといってるんですけど、「企業の稼ぐ力が高まったことを確認」しないと長期金利操作の柔軟化が出来ない、というのは(この前の金懇でも説明してはいたけど結局あれ読んでも1ミリも説得力がなくて)一体全体どういうロジックで反対しているのかがわからんし、「企業の稼ぐ力」ってそれ構造的な話だから一朝一夕に改善するものでも無い種類の物であって、そんなの待ってたら10年かかるわと呆れる次第。

いやまあせめて「企業収益の一段の向上」とかいうならまだしも、何でここで長期的な「稼ぐ力」になるのか意味わからんし、大体からして足元の物価高の要因について声明文項番2で「既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が長引いていることや、このところの原油価格の上昇である」っていうことでコスト高が起きているって認識しているのに企業の稼ぐ力もへったくれもないだろと思うのですが、何かもう何でこの人審議委員になったのって不思議で仕方ない・・・・・・・・・・



・物価高の要因決め打ちできるほどお前ら物価の分析が出来ているのかと小一時間問い詰めたい(再掲)

これは水曜の再掲になるがまた言っておきましょう。

『.わが国の物価情勢を展望すると、物価見通しは7月の展望レポートと比べて上振れているが、その主因は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が長引いていることや、このところの原油価格の上昇である。』(今回再掲)

完全に供給要因だけで説明しているのは、需要要因もあるでよということにすると物価目標達成が視野に入っているのではとか、実はもう達成しているのではないか、とか言われると困るから逆算して供給要因一点張りで決め打ち表現にしている、という毎度おなじみの姑息な政策からの逆算分析をしている訳ですなハーコリャコリャ。

しかしですな、お前ら1年半にわたって延々と物価見通し外しているのってそもそも現状の認識がちゃんとできていない、というのが根本にある筈(だってちゃんと現状認識していればここまで外しまくることないでしょ)という話な訳で、今まで物価見通しを盛大に外している分際が何でこんなに供給要因決め打ちの現状認識を声明文という一番重い公式文書で発出するのか、ということでまあふざけるのもいい加減にしろとしか申し上げようがない酷いものな訳ですな。

だいたいからして「価格転嫁の影響が長引いている」とかいつまでも供給要因のせいにしているけど、価格転嫁が延々とできる背景には需要の底堅さがないと続かないでしょという点だけでも、この供給要因一点張りの説明はおかしいし、要するにお前ら価格転嫁の持続性を完全に読み間違えていただけだろと思うのですが、この人達自分たちの現状判断が間違えていた、というのを認めると死ぬ病にでもかかっているようなので、これまでの状況認識が間違えていたのを認めず、「影響が長引いている」というようなまるで外生要因かのような往生際の悪い説明をしてしまうのは全く持って浅ましいとしか申し上げようが無いのは何度でも伝えるべきなので、改めて記述させて頂きました。


・・・・・・・とまあそんな感じで3連休最終日にソロリと始動していますが、ゆうてまあアタクシも所用というものもあるので一旦午前の部はここで勘弁して頂きまして続きは午後(夕方??)にでも。


2023/11/05(その2)

お題「MPMレビュー:展望レポートって改めて読むと詭弁のガイドラインみたいな作品で落涙を禁じ得ない」

ということで第2弾、ということで展望レポート基本的見解を中心に参ります。

〇展望レポート基本的見解:例によって政策から逆算しているのと目先の申し開きだけは余念がない

展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2310a.pdf

前回7月分
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2307a.pdf

今回は時間と量の関係もあるから基本的見解本文全部じゃなくて鏡と主要部分だけにします。

・経済見通し:経済見通しに変化なしなのだが足元の大幅引き上げが一切影響ないってのは・・・・・・

まずは鏡の1ポツですけどね。

『日本経済の先行きを展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回)

『日本経済の先行きを展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(7月)

ということで全文一致なのですが、最終ページの「2023〜2025 年度の政策委員の大勢見通し」を見ますとご案内のように、

実質GDP
2023 年度 +1.8 〜 +2.0<+2.0>
7月時点の見通し +1.2 〜 +1.5<+1.3>

って0.7%ポイントも上方修正になっていまして、でまあ基本的見解の本文の『1.わが国の経済・物価の現状』、本文2ページを見ると、経済の現状判断部分は

『わが国の景気は、緩やかに回復している。海外経済は、回復ペースが鈍化している。そうした影響を受けつつも、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響の緩和に支えられて、横ばい圏内の動きとなっている。企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は緩やかに改善している。こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加している。雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、緩やかなペースで着実に増加している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は緩やかに増加している。』(今回)

となっていまして、7月が

『わが国の景気は、緩やかに回復している。海外経済は、回復ペースが鈍化している。そうした影響を受けつつも、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響の緩和に支えられて、横ばい圏内の動きとなっている。企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は緩やかに改善している。こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加している。雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、緩やかなペースで着実に増加している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は緩やかに増加している。』(7月)

っていうことで現状認識の部分に関しての表現が何も変わっていないんですよね。いやそれで0.7%ポイントの成長率上方修正って何だよという話なんですが、同じく2ページの『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し 』『(1)経済の中心的な見通し』を見ると、

『こうした見通しを前回の展望レポートにおける見通しと比較すると、2023年度は、輸入の減少等を受けた実績の上振れを反映する形で、上振れている。』(今回)

という形で片づけているんですけど、輸入が減少したんだったらその影響って何かある筈じゃないのよという話で、なんかもう実績値で輸入が大きく減ったから成長率足元だけ上げました、ってすごい雑な片付け方をしているのですけど、輸入減の背景の要因によって話が色々と変わって来るんじゃないの、と思う訳ですが、この一言で片づけるの何ぼ何でも雑じゃねえのと思う訳ですよ。

さらにアタクシは粘着してしょうがないから展望レポート全文を読むと、

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2310b.pdf

こちらの本文18ページ(PDFの20枚目、以下対応関係は同様です)から(輸出入) の項目が始まりまして、本文19ページに

『輸入は、ワクチン購入の反動からひと頃に比べて水準を切り下げたあと、振れを伴いつつも横ばい圏内で推移している(図表 9)。先行きは、国内需要や輸出の増加に伴う誘発需要の動きを反映して、緩やかな増加傾向をたどるとみられる。』(今回の展望レポート「背景説明」(いわゆる「全文」)

という説明になっているんですけど、ワクチン購入の反動で減っているんだったら、ワクチン買うのに出した金って財政資金なんですから、これが浮いた分って財政支出余力が増えている筈で、しかも政府は経済対策やるって意気込んでいるんですから、輸入減が実質GDPを大きく押し上げる効果があった分って相当の分じゃないのかねとか思う訳ですが、とにかくGDPの足元の見通しを無茶苦茶引き上げた背景の説明がここまで見に行かないと書いてないってナンジャソラ(なおアタクシはエコノミストじゃないからこの日銀の説明で正しいのかどうかは知らん)という感じですな。

まあそれにしても足元の成長率引き上げが輸入減の一言で片づけて、しかもそんなにデカい輸入減があったのに現状認識と先行き見通しの文言が何も変わらんって何なのよとしか申しあげようがないですよね。

でまあ更に申し上げると、「ワクチン購入の反動から」ってことで輸入減の話をしているのですけれども、ワクチンの購入が減るというのは4月なら兎も角コロナが第5類に移行したあとの7月だったら分かる話で、何で7月の展望の時は2023年度の実質GDP見通しの中心値が4月の+1.4から下がって+1.3になったのよという話でもありまして、何かそもそもお前ら物価の認識もさることながら経済の現状認識ですら外してるんじゃないのかと小一時間問い詰めたくなるわけですな。

まあ色々と細かい説明をしだすとちゃんとした説明になるのかも知れませんが、ここに出ているのだけ読んでも全然釈然としないものが出て来るってのが納得いきませんわな。実質ベースのマイナスって円安のせいで数量減ったとかそっちの要因はどうなんでしょうね、知らんけど。



・物価見通し@:そもそも「持続的」に2%を上回っているのに政策対処をしないのって何なんでしょ

ということで鏡の2ポツ目に参ります。

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、来年度にかけて、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が残るもとで、このところの原油価格上昇の影響等もあって、2%を上回る水準で推移するとみられる。2025 年度については、これらの影響の剥落から、前年比のプラス幅は縮小すると予想される。』(今回)

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとでプラス幅を縮小したあと、マクロ的な需給ギャップが改善し、企業の賃金・価格設定行動などの変化を伴う形で中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(7月)

ということで、今回とうとう「プラス幅を縮小」を降参しまして、見通しの数字もひきあがってはいる訳ですが、まあこれも色々とツッコミどころがあって、まずコアCPIの見通しは

2023 年度:+2.7 〜 +3.0<+2.8>
2024 年度:+2.7 〜 +3.1<+2.8>
2025 年度:+1.6 〜 +2.0<+1.7>

となっているのですが、ご案内のように2022年度も3%な訳でして、3年連続で2%を大きく上回るの巻になっている訳です。

7月は
2023 年度:+2.4 〜 +2.7<+2.5>
2024 年度:+1.8 〜 +2.2<+1.9>
2025 年度:+1.6 〜 +2.0<+1.6>

であって、しかも見通しの中に「プラス幅を縮小したあと」上昇する、ということになっていましたので、まあ2%物価安定目標が達成されてないから緩和政策を変更しない、という説明はまあ強引ながらも一応筋は通っていたんですが、今回の場合は2025年度とかいう鉛筆舐め舐めの世界の数字を基にして緩和政策を変更しない(今回も前回も「柔軟化」であって「政策変更ではない」のです)というのはかなり無茶がありますわな。

というのもありますけど、そもそも論として物価上昇の背景が何であれ、目標を大きく上回る物価上昇を3年も続いているんだったらそれはどう見たって一時的な物価上昇じゃないんだからインフレターゲット政策しているんだったら政策対処しなければいけないという話ですよね、というのもある訳で、インフレターゲット政策の本来の原則すら知らんぷりをしてしまう、というのは今回ロジックが一段とおかしくなっているんですよね実は。

てかさ、置物一派って日銀がこの逆の時に「将来物価が上がるから、という恣意的な見通しを出して必要な追加金融緩和を行わない」って物凄い勢いで日銀を罵倒していたんですから、本来この見通しが出るならば金融政策の修正を真っ先に求めないと行けないのって野口とか安達とかいうポンコツの皆様のお仕事の筈なんですけどね・・・・・・・・・・



・物価見通しA:基調的物価が徐々に上がるとか言ってるんだがどこの数字が徐々にあがっているの???

でもって今回の物価見通しの鏡にはこのような文言がついております。

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まるもとで、見通し期間終盤にかけて「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくと考えられる。』(今回)

じつはこの「基調的な物価」の見通しですが、7月の展望レポートでは先行きの物価について、鏡の部分では先ほどの引用のように、「消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、・・・・・・・・・再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。」ですし、展望レポート基本的見解の本文でも同様に記載されており、物価のトレンドに関しての記載がある部分でも「物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、・・・・・・・・先行きについては、現実の物価上昇率がプラス幅を縮小していくなかでも、需給ギャップが改善し、企業の賃金・価格設定行動や労使間の賃金交渉が変化していくもと、見通し期間終盤にかけて予想物価上昇率が緩やかに上昇していくことで、賃金の上昇を伴う形で、物価の持続的な上昇につながっていくと考えられる。」となっていまして、基調的な物価云々って記述は無いんですよね。

でもって今回は恐らくコアCPIの見通しだけですとさっきの@で示したようなツッコミが飛んでくるので、「基調的な物価」の方で勝負しようということでこういう書き方をしてきたと思うのですよ。

じゃあ基調的な物価ってどうでしたっけと見ますと、

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

については皆様ご案内の通りで既に物価目標から上にぶち飛んでおられる指標が多々見られるうえに、今回の見通しにしたって、

2023 年度:+3.5 〜 +3.9<+3.8>
2024 年度:+1.6 〜 +2.1<+1.9>
2025 年度:+1.8 〜 +2.2<+1.9>

となっている訳で、24年度と25年度は年度平均で同じ数字になっておりまして、これそもそも23年度の数字からの四半期展開を整合的に出したらどういう推移になるんだよ、という位に謎の数字になっています。

もちろんこれは特殊要因(政府の補助金要因)によるものがあるからですよ、というのでしょうけれども、その場合でも今度疑問なのは2024年度と2025年度って別に「見通し期間終盤にかけて「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくと考えられる。」と整合的ではない推移になっていますよね。

いやですね、7月だと
(7月見通し)
2023 年度:+3.1 〜 +3.3<+3.2>
2024 年度:+1.5 〜 +2.0<+1.7>
2025 年度:+1.8 〜 +2.2<+1.8>

になっているので、23年度は特殊要因で上にぶれているけれども実力は24年度、25年度と徐々に上昇していきます、って説明に強引と言えども見通し数値との整合性があったんですけど、今回はその整合性すらこれ見ても分からん、という凄いことになっていまして、いやせめて説明の整合性位つけてくれよって世界な訳でして、説明の無理矢理さは黒田末期から更に悪化してるんじゃなかろうか、という世界でありますが植田総裁のご所感を伺いたい。


物価見通しそのB:そもそもコアコアがこんなに落っこちるんだったら「躊躇なく追加緩和」してみやがれってなもんで

という小見出しの通りなんですけどね、コアコア物価の推移が、

(今回コアコア見通し)
2023 年度:+3.5 〜 +3.9<+3.8>
2024 年度:+1.6 〜 +2.1<+1.9>

(7月コアコア見通し)
2023 年度:+3.1 〜 +3.3<+3.2>
2024 年度:+1.5 〜 +2.0<+1.7>

ということで、+3.2→+1.7ってのも大概に酷かったのですが、今回って+3.5→+1.9だから中心値ベースでみたら前回以上の▲1.9%ポイントもコアコア物価が下がるとか言う(前回の▲1.5%ポイントも大概でしたが)ことで、前回対比で0.4%ポイントも落ち込みが大きくなるという見通しになっているのですよね。

さて、ここで奇しくも同じくハロウィンの時に黒田日銀が行った事例として2014年10月会合での事案がございますので確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2014/k141031a.pdf
「量的・質的金融緩和」の拡大

この時の緩和拡大、即ち追加緩和の実施における背景説明が声明文の項番2に記載されていますので、目ん玉よく見開いて確認してみましょう。

『2.わが国経済は、基調的には緩やかな回復を続けており、先行きも潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。ただし、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断した。』(直上URL先2014年10月31日決定会合声明文より)

「短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。」ので追加緩和をしたのですから、コアコアCPIが▲1.9%ポイントも低下するようなとんでもない落ち込みが発生するのでしたら益々「躊躇なく追加緩和」をしないといけないんじゃないでしょうかねえ、としか申し上げようがないのですが、この整合性の無さについてどのようにご説明いただくのか、何でしたら25年間の政策レビューでこの点について徹底点検していただけるもんだと期待します(だってこの時の追加緩和が正しいのであれば今回の見通しだったら益々追加緩和しないとおかしいでしょ???)がどうせやる訳はないので煽ってみただけです。


・・・・・・・・ということでですね、経済と物価の基本的な見通しの部分だけでもこの有様なのですが、午後の部とかいって書き始めたのに(休みだからチンタラ書いているのもあって)気が付いたら夜の帳が下りてしまっています(いちおうまだ夕方)ので、展望レポートネタはいったんこの辺にしておきます。全文のコラムとか中のメカニズムの話とかに関しては(どうせ暫く政策は地蔵でオペはちょこまかとやるんでしょうから)ボチボチ成敗して行こうかな、と思います。






2023/11/02

お題「FOMC声明文比較を簡単に(汗)/午後に早速の臨時輪番ェ・・・・・・・・・」

ちょっとまあ今日もサラサラと参ります。

〇寝起きでFOMC声明文:金利の上昇によるタイト化に言及はメッセージですわな

声明文
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20231101a.htm(今回)

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230920a.htm(前回)

・第1パラグラフ:全体観の表現が強いんだが現在進行完了形から過去形に戻るという微妙な文学

『Recent indicators suggest that economic activity expanded at a strong pace in the third quarter.』(今回)
『Recent indicators suggest that economic activity has been expanding at a solid pace.』(前回9月)

ここの部分、時制が変わったなと思って
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomccalendars.htm

の今年の声明文の頭だけポチポチとみたんですけど、2月3月は「経済のモデストな成長をデータは示唆している」で5月から「経済はモデスト拡大した」の過去形になって7月から現在進行形に昇格して「モデレートに拡大して現在に至る」になって9月が「ソリッドに拡大して現在に至る」だったのですな。

でもって今回は上記のように「ストロング」とさらに強い表現にしているのは上方修正なのですが、表現が「第三四半期はストロングでした」という過去形になっておりまして、現在完了進行形から過去形になったのはたぶん降格なので、水準は上方修正だけど方向性は横ばいに下げた、みたいな文学の香りを感じました。

『Job gains have moderated since earlier in the year but remain strong, and the unemployment rate has remained low. Inflation remains elevated.』(今回)
『Job gains have slowed in recent months but remain strong, and the unemployment rate has remained low. Inflation remains elevated.』(前回9月)

同じようにジョブゲインの所も、ストロングという水準の表現自体は同じなのですが、こちらも「ここ数か月」の現在完了形から「年初より」の現在完了形になっていて、モデレートという表現なので一瞬ジョブゲインの判断引き上げかと思わせるのですが、対象期間が違っているのでこれまた微妙。

ただまあいずれにしてもこれって2パラの表現と合わせて考えると「望ましい方向に向かっている」という現状認識を示しているんだとアタクシは思いましたがどうでしょうかね。


・第2パラグラフ:足もとにおける金利上昇が経済活動に対して抑制要因となるという文言追加キタコレである

当然ここが一番注目されたと思いますし、まあ今回の声明文のキモはさっきの1パラとこの2パラですね。

『The U.S. banking system is sound and resilient.』(今回)
『The U.S. banking system is sound and resilient.』(前回9月)

相変わらず載せてますな、別にもう外してもエエンチャウノとは思うのだが。

でもってポイントは次。

『Tighter financial and credit conditions for households and businesses are likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation.』(今回)
『Tighter credit conditions for households and businesses are likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation.』(前回9月)

キターーーーーーーーー!!!!!!

ということで、今回「Tighter financial conditions」が加わった訳でして、リスク資産価格自体は別に大コケしているというほどでもないのですからこのTighter financial conditionsはどう見ても最近の金利上昇です本当にありがとうございました。

『The extent of these effects remains uncertain. The Committee remains highly attentive to inflation risks.』(今回)
『The extent of these effects remains uncertain. The Committee remains highly attentive to inflation risks.』(前回9月)

でもって釈迦に説法で恐縮ですが、さっきの「最近の金利上昇が経済の抑制要因」ってのはここにあるように今は高インフレ怪しからんのでオーバーキルにならないようにしながら高インフレの成敗をしていく、という金融政策のステージにありますので、極めて当たり前なのですが、足元の「Tighter financial conditions」は高インフレ成敗モードの中ではポジティブに評価されるべきもの、ということになりますわな。

従ってこの部分は「インフレの落ち着き傾向はワシの金融引き締めが育てた」という話になりますので、引き締めをこれ以上ガシガシやるかというとそうではなくて、利上げするよりも今の状況を継続して「Tighter financial conditions」の効果を見守っていきまっせ、というのが基本ですよ、という話になりますが・・・・・・・・・・・


・第3パラグラフ:1パラ2パラだけで締めると隙あらば利下げヒャッハー組がヒャッハーするので水もぶっかける

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回9月)

これはいつもの文言。

『In support of these goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent.』(今回)
『In support of these goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent.』(前回9月)

前回に引き続き政策金利据え置き。

『The Committee will continue to assess additional information and its implications for monetary policy.』(今回)
『The Committee will continue to assess additional information and its implications for monetary policy.』(前回9月)

というのもまあいつもの文言ですが次ですな次。

『In determining the extent of additional policy firming that may be appropriate to return inflation to 2 percent over time, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』(今回)

『In determining the extent of additional policy firming that may be appropriate to return inflation to 2 percent over time, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』(前回9月)

書いてあることに変更なし、ということで先行きの話が今回も「In determining the extent of additional policy firming」であって、状況次第では再利上げあるで、という表現は残しております。

まあ何ですな、これを入れておかないと隙あらば利下げ開始ヒャッハーのアメリカン金融市場がヒャッハーして長期金利をホイホイ下げてしまうとタイトニング効果が減殺するから、ということでのファイティングポーズの維持というところでしょうな。つまり2パラを見て長期金利がホイホイと下がりだすとまたぞろFEDの要人が「お前ら調子に乗るんじゃねえ」とさらに水をぶっかけに行く、という展開が予想されるのでヒャッハーは程々に、と思うアタクシでありました。

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in its previously announced plans. The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in its previously announced plans. The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(前回9月)

バランスシート縮小に関する施策は同ペースで継続、というのはいつも通りですね。


・第4パラグラフ:こちらは全文一致

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回9月)

先行きのスタンスに関しては全文一致、というかフォワードコミットメントをしなくなっているんだから基本この4パラって要らない気がするんですけどね。


・第5パラグラフ:今回の据え置きも全員一致

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Patrick Harker; Philip N. Jefferson; Neel Kashkari; Adriana D. Kugler; Lorie K. Logan; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Patrick Harker; Philip N. Jefferson; Neel Kashkari; Adriana D. Kugler; Lorie K. Logan; and Christopher J. Waller.』(前回9月)

ということで。


・ディレクティブには変化有りませんでした

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20231101a1.htm
Implementation Note issued November 1, 2023
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation

前回はこちら
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230920a1.htm

こちらはディレクティブが記載されていますが、各種ファシリティの適用金利、応札限度額、バランスシート縮小ペースに関する表現には変化がありませんでした。


・・・・・・・でまあいつもだとオープニングリマークまで行けたら行く、というところ(会見動画は既に全部出ているのでBGM代わりにしているけど所詮はBGMなので何も聞いていないただの自己満であるorzorz)ですが、本日は悪い方の期待を裏切らない日銀のエンターテイメントが発生して下さりましたのでそちらを参りますね!!!!!!!!!!!



〇いやーーーーーー臨時輪番早速やりやがりましたなあwwwwwwwwwwwww

昨日の債券市場ちゃん、朝10時の段階で先物は前日よりも10銭ちょい安、という展開になっておりましたが、10時10分のオペ通告時間帯に臨時オペの通告なし、ということであたしゃ「なんだちゃんと我慢できるじゃん」とちょっとだけ感心したんですけどね。

前場引け頃になりますと先物30銭くらいの下げとかになるわ、10年は0.97%になるわ、ということでしたけど前場我慢してるんだから後場も我慢だろ、と思ってたら13時に臨時輪番オファーである。

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of231101.htm
(引用は臨時輪番だけ)
国債買入(残存期間3年超5年以下) 1,000 2023年11月2日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 3,000 2023年11月2日

・・・・・・・・いやー7月決定会合に引き続き。MPMで柔軟化を決定し、植田総裁をして金融市場で円滑な長期金利形成が行われるように今回の措置を実施しました、っていうような発言をさせておいて、その翌営業日には早速植田総裁の話を引っくり返しに行くというこの昭和陸軍もかくありなんという幕僚ファッショ状態に涙がどうのこうのの前に呆れてものもいえませんわな(言ってるけど)。

でもって今日って10年新発の入札なのに、入札の前日に臨時輪番入れてしまうとか、相変わらずプライマリーディーラーが入札の準備を出来なくするプレイを一発目からかましてしまいますと、結局今回の措置は「柔軟化」と言っているけどやっていることは「機動的なオペレーション」であり、しかも1%の上限無くなった分どこで何が飛んでくるか訳分らんという更にタチの悪いものになっているんじゃないですか、とまあそういう話になる訳ですよ。

まあ何ですな、昨日申し上げましたし皆様もご指摘だし何なら記者会見でも指摘された例のポンチ絵

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr231031d.pdf
イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用のさらなる柔軟化

における<さらなる柔軟化後の運用>の吹き出し「機動的なオペで対応」の吹き出し元(というのか何というのか)が1%の破線の上と下にあったので、1%になる前に臨時輪番打つんとチャウかというのは皆で意識していたと思いますが、10時10分こそ我慢できたものの、やっぱり13時に臨時輪番、ということで市場の皆様すっかりズッコケとなられたことかと思いますし、しつこく申し上げますが、これでは何も変わっていないようなもんでして、上記ポンチ絵の最初のボックスで説明している今回の再柔軟化の趣旨の筈の、

『内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、イールドカーブ・コントロールの運用において、柔軟性を高めておくことが適当と判断』

とは何だったのかと小一時間問い詰めたい訳ですが、この調子で介入大会を延々としていると将来の金融政策運営に物凄い足枷になる訳で、なんかこの「仕事してる振りのために203高地に援護なしの歩兵を銃剣突撃させていくモード」ってやってる方はマヒしているのだろうなと思うけど、ドンドンバランスシート拡大してるし市場の流通玉を吸い上げているし、結構酷い事しているという意識が抜けてしまっているのはちょっと悲しいです。


#色々積み残しは3連休で少しは成敗できたらと思う(成敗できるとは言ってない)






2023/11/01

お題「MPMレビュー:色々中途半端な「再柔軟化」でありますな」

という訳で皆さん11月ですよ11月。

〇まず喫緊の課題は今回の「再柔軟化」の中身を読むことなので声明文とオペ紙とポンチ絵から

・いや今回ってぱっと見よりも精読していくと謎のツッコミどころが大杉栄ですわ

・・・・・でですね、最初にお断りしますと(昨日夜なべやれれば良かったのですが昨日は昨日で電池が切れてしまったのでそんなに夜なべも出来ず)今回の決定ってお題に申し上げたように「色々と中途半端」でありまして、その分ツッコミどころが満載という実にアレな金融政策決定会合だったので、今日は声明文の所(なお今回は声明文の項番2に展望レポートの鏡の部分の定性的な評価と同じことが書いてある)だけしま間に合わないと思います。

明日は寝起きでFOMCの日なので、総裁会見とかもひっくるめて週末(金曜の朝と言いたいがそもそも金曜がバタンキューになっていると思われなので期待しないで下さい)にある程度成敗したものを更新しようと思います。誠に申し訳ないのですがまあ展望の数字よりもオペレーションの方が喫緊の重要課題ですからそういう順序で勘弁してちょ。


今回
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k231031a.pdf

9月
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230922a.pdf

7月
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230728a.pdf


・声明文項番1:大規模国債買入を継続する宣言をぶっこむのが危うさを感じますね

項番1ですけどね、

『1.日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、長短金利操作の運用をさらに柔軟化することを決定した。具体的には、長期金利の目標を引き続きゼロ%程度としつつ、その上限の目途を 1.0%とし、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととする。こうした運用のもとで、日本銀行としては、粘り強く金融緩和を継続する方針である。』(今回)

前回の柔軟化、7月の項番1と比較してみましょう。

『1.日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、長短金利操作の運用を柔軟化することを決定した。わが国の物価情勢を展望すると、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要がある。そうした中、経済・物価を巡る不確実性がきわめて高いことに鑑みると、長短金利操作の運用を柔軟化し、上下双方向のリスクに機動的に対応していくことで、この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることが適当である。』(7月)

と、並べてから比較しますが、第一文は同じような話ですが第二文。

『具体的には、長期金利の目標を引き続きゼロ%程度としつつ、その上限の目途を 1.0%とし、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととする。』(今回)

『わが国の物価情勢を展望すると、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要がある。』(7月)

まず第2文の所で、7月柔軟化時には「物価目標達成が見通せない」というのを思いっきり書いておりまして、今回は書いていないので、この点若干前進しているようには見えるのですが、残念ながら項番2の方での物価の評価が決め打ち的に「コストプッシュの物価上昇で賃金と物価の循環が高まる必要がある」という言い方にある意味進歩、要はハードルを上げた形になっているので、ここの物価目標見通せない云々の一文についてあんまり手放しで評価することはできません。


でもって今回ヤバい奴だと思うのは今回の第2文に書いてある「大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととする」でして、第三文をここで比較しますと、

『こうした運用のもとで、日本銀行としては、粘り強く金融緩和を継続する方針である。』(今回)

『そうした中、経済・物価を巡る不確実性がきわめて高いことに鑑みると、長短金利操作の運用を柔軟化し、上下双方向のリスクに機動的に対応していくことで、この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることが適当である。』(7月)

こちら、7月は「金融緩和の持続性を高める」が目的だったのですが、今回は「粘り強く金融緩和を継続する」と持続性を高めるとは一言も言ってないのは、これまた金融緩和継続先にあり気から半歩くらいは前進したように見えますが、一方で今回「大規模な国債買入と機動的なオペ運営を中心に」ということで、従来だと「通常の大規模買入に加えて連続指値で止めます」だったものが、急に「機動的な大規模買入」ということで、運用のやりかたによっては従来以上にこの世の物とは思えない狂気の市場介入が展開されるこんじゃないか、というかそれに普通にお墨付きを与える表現になっていて、いやーこれは実際どっちに転ぶのかは今日以降のオペ運営を見て行かないとさっぱり分からないのですが、やり方を間違えると一段のキチガイ運営がおっぱじまる可能性を秘めた危ない文言だと思います。

でもって、今回は全体のトーンとして、第3文にあるように「粘り強く金融緩和を継続する方針である。」は何ら変わっていないので、つまりは目標達成が見えてきましたので今後の運営は徐々に出口シフトになると思うのですが、そうはいってもまだ確信持てないからちょっと出口シフトに時間が掛かる、というようなメッセージではない、というニュアンスなのですが、それが良く分かるのが項番2の方になります。


・声明文項番2(その1):物価判断を間違え捲っているのにに対して真摯に向き合っていない日銀の姿勢が酷い

項番2の冒頭からクソワロタ。

『2.わが国の物価情勢を展望すると、物価見通しは7月の展望レポートと比べて上振れているが、その主因は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が長引いていることや、このところの原油価格の上昇である。』(今回)

これはクソワロタwwwwwwwwwwww

凄いですよね、内生的な物価上昇の可能性について一言も書かないであくまでも外生的コストプッシュが長引いている上に原油価格が上がった、ですませ、しかもそこに為替円安を書かないのが一段と芸が細かくてお父さん涙がちょちょ切れちゃうんですけど、まあ総裁会見でも延々と「第一の力第二の力」とかいうインチキレトリック使って説明してましたけど、あのさあ、お前らって何で「輸入物価の価格転嫁を読み間違えましたすいません」って素直に謝らないで変なレトリック繰り出して話を煙に巻こうとするんだよ、と思った次第。

でまあ内生的な物価上昇(インチキレトリック的に言うと第二の力とか言う奴だがワイはこのインチキに乗ると狸の呪文を一緒に唱えて嵌められてしまうのが明白なのでりたくないから基本使わんのでヨロシクお願いします)についてはこの一番重要な「声明文」では一言も出さない、というこの往生際の悪さがもう泣けてくるわけでして、内生的な物価上昇のメカニズムが働いている、というのを認めないとそもそも日銀の仰る所の物価目標達成のメカニズムに乗らない、ということでありますので、このレトリックは何を示すかと言いますと、今回のYCC再修正が物価目標達成との関係で決定した訳ではない、という事を示しているんですね。

ということで、昨日の朝アタクシ申し上げましたが、今回のポイントとして「YCCの修正が物価目標の達成への展望が進んでステージが変わったという認識を示すかどうか(あんまり期待してないけど)」というのがあったと思いますが、この項番2が最初に目につきまして(「物価情勢」という言葉が冒頭にあるから観光釣り堀園の魚の如く即座に釣られました)読んだ瞬間に「こりゃだめだ」と盆回りの曲が頭を流れるの巻でありましたとさ。

しかも小見出しで申し上げております通りで、この人達今までも思いっきり物価の現状認識を間違えてそのたびに上方修正を繰り返している、という状況なのに、事ここに至っても内生的な物価上昇について声明文で触れない、というのどういう面の皮をしているのかと小一時間問い詰めたい訳でして、せめてここに内生的な物価上昇の動きが見られるかもしれないくらい書けばまだこう足元の物価情勢が想定よりも強いことに対して真摯に向き合っているな、というのが伝わって来るのでありまして、まあ今回の日銀のスタンスって結局この部分にすべてが集約されており、即ち何もこの人達「ワシら何も悪くないもんねー」というスタンスである、というのが如実に示される不誠実極まりない表現ですな、という印象しか受けませんわ。

まあ一応フォローしておくと(これだけバチクソ暴れてフォローも糞もないがwww)植田総裁の会見では内生的な物価上昇が起きていることも一応は認めていたような発言があったのが辛うじて救いなのですが、まあこの声明文単体で出されたら「こいつら全然物価情勢に対して謙虚になっていないよね」としか評しようがない文章でありますな。


・声明文項番2(その2):賃金から物価への波及とか言う新しいハードル設置キタコレ

でもって項番2のその次ですけどね、

『消費者物価の基調的な上昇率は、見通し期間終盤にかけて、2%の「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくとみているが、その際には賃金と物価の好循環が強まっていく必要がある。』

っていうことですが、従来から「賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現する」という表現は例えば今回の項番3にもありますし、さきほど引用した7月声明文にも「賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現〜」とありますように、あくまでも「賃金の上昇を伴う形」という説明だったのですが、「賃金の上昇」だけだとどんなに遅くても来年の春闘が出たら申し開きが付かなくなるのが明らかなので、「賃金と物価の好循環」という形、総裁会見で植田さんが「賃金が物価を押し上げる」という表現を使って説明していましたが、もはやそれどうやって計測するのかというと完全に日銀の恣意的な判断だろというのを持ち出してくるのが、これまた「こいつら政策を正常化する意思がねえな」というのが満々に伝わって来る表現で、何かこれだと7月より言ってることが後退してねえか、とまあそのように思いました。

てかさ、賃金から物価への波及ってそれ欧州で発生して、賃金物価のスパイラルもそうだし、企業がマージンを必要以上に確保する動きから「グリードフレーション」とかいう動きになって、挙句の果てに経済はアカンわ物価は強いわというスタグフレーションになっている状況を招いて誰得状態になるリスクはないのかね、と思う訳でして、この理屈ってかなり危険な可能性を孕んでいて、使うべきではないレトリックだと思うので、この点でも日銀って益々ヤバい方向に進んでいるとしか思えませんな。

でまあ次の

『日本銀行としては、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで粘り強く金融緩和を継続することで、経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく方針である。引き続き、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、賃金と物価の好循環など経済・物価情勢の変化を丹念に確認していく。』

にもまた「賃金と物価の好循環」が出ていますが、欧州の例をみれば「賃金と物価の悪循環」というものも普通にある筈なんですが、そっちの話を完全スルーするというのがわざとなら不誠実だし気が付かないなら馬鹿なのですが、まあ普通に考えて前者の不誠実、ってことでしょうwww


・声明文項番2(その3):全く遠くで付かなった指値オペの副作用が大きくなるとはこれ如何に

さて次がYCC柔軟化云々ですけどね、

『また、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、長短金利操作の運用において、柔軟性を高めておくことが適当である。』

そもそも「金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう」にするなら市場介入は極力減らして行くべき、としか申し上げようがないのですが、日銀の皆様は本質的には統制経済主義者なんでしょうね、って思うのはさっきの項番1にあったように「大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととする」というのがどっからどう見たって矛盾なのですが、こういうのが平然と出て来るところでして、まあこれも黒田とかいうゴミクズの悪影響なんでしょうけれども、ゴミクズのヤローは明らかに国債市場は支配するもの、というスタンスで臨んでいたので、重度のストックホルム症候群に罹患しておられるようで、「市場での円滑な価格形成」と「大規模で機動的な市場介入」が両立するもんだと思っている時点で救いようがない。

でもってさらに訳分らんのは、

『この点、現在の状況において、原則として毎営業日 1.0%の利回りで連続指値オペを実施し、長期金利の上限を厳格に抑えることは、強力な効果の反面、副作用も大きくなりうると判断し、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととした。』

ということですが、1%の連続指値オペは全然ヒットしていなくて、それよりも1%の連続指値オペヒットさせまいとアホのようにバカスカ介入をしていた訳ですよね7月以降特に9月10月。

であれば副作用が大きいのは連続指値オペなのではなくて、この四半期散々やってた不規則市場介入になる訳ですけれども、何故か連続指値は撤廃するのに介入はさらに強化するような表現になっていて、何を考えているのかさっぱりわからんですな。

いやまあこれオペ運営で何とでもなる面があるので、このようにブラフは掛けるけど実際は市場の価格形成に対して通常の輪番(これだけでもアホのように介入している大規模介入なのですが)を淡々と実施する、というのであればまあ話としては矛盾しないので、総ては今日以降臨時輪番などがどこでビビリンチョして入るか次第ですよね、と思います。

そこで・・・・・・・・・


〇運営のポンチ絵によると1%の手前でも市場介入するとか抜かしているので早速今日から楽しみな訳で

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr231031d.pdf
イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用のさらなる柔軟化

こちらのポンチ絵の<さらなる柔軟化後の運用>にある吹き出し「機動的なオペで対応」を見ますと1%よりも低い金利での「機動的な対応」が書かれている上に、総裁会見でもこの点質問されて、1%より低い水準での「機動的な対応」ありうべし、となっていました。

また、
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr231031b.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定
(2023年10〜12月)[一部変更]

の「1回当たりオファー金額」のレンジも別に下がる気配がないですし、まあこれはあとはどこで臨時輪番等の介入があるかって話ですが、再三再四申し上げておりますように、臨時輪番アナウンスとか来ますと普通に円安圧力掛るし、10月の介入実績がゼロだったのでお分かりのように、日銀のスタンスがすくなくとも変わったって話にならない限り米国様が為替介入をうんと言う訳もなく、そうなると今回の決定はスタンス変更じゃないので介入できず、ですから、「機動的な対応」→「円安圧力」→「長期金利上昇圧力」→「機動的な対応」という日銀死のスパイラルがいつ始まるか、というのにワクワクがトマランチ会長ですし、

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through

イブニング、いったん踏み上げっぽい動きもありましたが結局のところ、

143.74(11/01)(05:05)-0.01

なんて数字(拾ったのは朝5時半くらいなので最終とは違うかもですが、とおもってリロード掛けたら76銭でしたね最終は)になっていて10年カレントの昨日の引けは0.950%なのですからこれはもうアーニャもわくわくが止まらないという所でございましてはてさて何時から日銀オペ地獄が開始されるか、というのを楽しみに(いや全然楽しくないけど)見たいと思います。

ということですので、オペ地獄に嵌って日銀自分から追い込まれる流れになったな、と思いました。その他の点はまた連休中に参りたいと思います。