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2023/09/29

お題「植田総裁記者会見(その3)やはり今回の会見は月曜の大阪懇談会との合わせ技で色々な味わいがありました」

いやー半期末ですなあ。でもって来月は展望レポートを月末に控える二日新甫ですがな。

と言っても別に債券先物は納会があるのは3か月に1回だし月の真ん中だしで、二日新甫もあるかーとは思うのですが、債券先物オプションの新甫発会は毎月の1営にあるので辛うじてセーフということにして来月もオモシロ相場を期待。

〇植田総裁定例記者会見その3

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230925a.pdf
総裁記者会見
――2023年9月22日(金)午後3時30分から約65分

・輪番オペに関して

『(問)二問お伺いします。一点目のオペレーションについてなんですけれども、7 月の金融政策決定会合後の記者会見で、総裁の方から市場の見方が長期金利に反映される余地を広げるとのご説明がありましたが、定例の輪番オペについては買入れ額が 7月会合以前の水準を維持する状況が続いています。大規模な国債の買入れが債券市場、その他金融市場に与える影響を、総裁ご自身どのようにみているのか、また足元円安も進んでいますが、市場でもちょっと期待が高まっていますが、今後の買入れ減額の可能性についてどのように考えてらっしゃるのかお聞かせください。(後半割愛)』

そもそも買いすぎなので金利が上がらないんですが、さてどう回答するのでしょうかというと、

『(答)一点目は依然として大量の輪番オペが続いているけれども、これについてどう思うかというご質問だったと思いますが、事実としておっしゃる通りかと思います。ただ今後の姿については、長期的な視点から検討していきたいと申し上げるにとどめたいと思います。(後半割愛)』

とまあこういう風に「長期的な視点から検討」という言い方ですけど、まあこう言ったら輪番についてはフローベースの買入を徐々に減らす方向性はあるんだな、と普通は思うのですけれども、7月の柔軟化公表⇒「市場に委ねて行きたい」的発言からの⇒翌営業日に早速臨時輪番というのは物凄いドッチラケにも程がありましたし、今回もこの発言が出て27日オファーの輪番減額でもするのかと思ったら減額しないし、ということで、植田総裁の発言を汲まないでオペが運営されている、という現地で勝手に満州事変を起こしている関東軍みたいなオペをやっとりゃーせんですかねえ金融市場局は、と思ってしまう訳でして、このオペに関しては7月会合以降の植田さんの発言に対してオペレーション部隊が勝手にハトハトジジイとなっているのかね、とかいう感じで、ここもと「ハトハトジジイは誰だ??」というテーマ、即ち植田総裁の考えと事務方の考え方にズレがあるんでネーノ、というのにもつながる部分だと思うのよね。

ということで本日はオペ紙、しかも四半期オペ紙の日になるんですけど、ここで何も変化なしという悪い悪寒は割としているのですが、一方で7月の柔軟化措置の趣旨を踏まえるのであれば、特に長期以下のアカラサマに買いすぎ状態になってる部分を是正するものを出すのが筋ってもんじゃないでしょうか、と思うのですが、はてさてどうなるんでしょうかねえ。

まあアレです、減額しなかった場合ですがこの時は「総裁会見での発言はあくまでも「長期的視点」と言ってますよね」で逃げることになるかと思いますw


・この半年での「想定外な経済物価情勢の進行」を明言するの巻

さっきの質疑の後半、回答のされかたによっては結果的にゴミ質問になってもおかしくなかったですが植田さんがキチンと回答したので良い質疑になりました。

『(質問前半割愛)二点目がちょっと離れますが、総裁が 4 月に就任されてからまもなく半年になります。7 月にはYCCの運用の柔軟化に踏み込みましたが、ここまでの任期を振り返られて、ご自身が就任前に思い描いていた金融政策がどの程度実現されたというふうにお考えでしょうか。二点お願い致します。』

『(回答前半割愛)後半の、ここ半年間を振り返ってどうだったかというご質問ですけれども、経済・物価情勢の動きは、もちろん半年前にある程度予想していたものとはやや違った動きをしているかと思いますが、それをとらえたうえで、ある程度適切に金融政策対応をできてきたかなというふうに考えてございます。』

>経済・物価情勢の動きは、もちろん半年前にある程度予想していたものとはやや違った動きをしているかと思います
>経済・物価情勢の動きは、もちろん半年前にある程度予想していたものとはやや違った動きをしているかと思います
>経済・物価情勢の動きは、もちろん半年前にある程度予想していたものとはやや違った動きをしているかと思います

物価の現状の話の時もそうなんですが、経済物価情勢、という括りにおいても「やや違った動き」をしているという話をしておりまして、まあそれはおんどれらの4月展望レポートの物価見通しが絶望的に間違えていたからだろアホウとか言いたくなりますが、それはそれとしてこのように「違っていましたなあ」攻撃をするメリットとしては、最初の頃に言ってたことを「あの時とは情勢が変化しましたので当然ながら政策に関する考え方や行動は異なるのが当たり前です(キリッ)」とすっとぼけることが可能になる事であります。

というわけでございますと、10月の展望レポートが黒田末期の残滓による無理矢理鉛筆舐め予想の流れを引き続くのか、それとも楚の荘公よろしく6か月鳴かず飛ばずでいた植田先生ついに覚醒して黒田からの流れをぶった切るのか、というある意味で定性的な部分に注目したいな、と思うのでありまする。

先日来ネタにしましたように、足元の植田さんの説明って黒田末期に「死んでも政策変更をしません」という強い意志によって次から次へと繰り出された無理筋屁理屈によってガッチガチに動けなくなっている政策屁理屈を徐々に解き掛けている、と見て取りました。昨日引用した「賃金改定を動かす変数に関する情報は連続的に入ってくるわけで、全体の判断も連続的に行い得るものだと思います。」というのが最も顕著に表れていると思いますが・・・・・・・・・・・


・黒田の呪縛「珍タゲ」を解きほぐす植田さんの作業??

こんな質疑がありました。賃金判断は連続的、という質疑よりもだいぶ前のタイミングになりますが。

『(問)繰り返しになって本当に恐縮なんですけれども、やはり不確実性が高いということでマイナス金利の解除を見通せる状況にはないと度々おっしゃられているんですが、長らくこうした会見を通じてみますと、マイナス金利解除に向けた鍵というのはですね、やはりこれは非常に簡潔に言っていいかは難しいところあるんですが、やはりここは継続的、持続的な賃金の上昇、この一点が一番大きなウエイトと考えていいでしょうか。』

この質問に対して植田さんの回答が味わいがあって、

『(答)それは端的にお答えすれば、物価上昇の継続性を判断するための最重要な要素の一つであるということになるかと思います。』

と言っていて、これまでのハトハトモードであれば「賃金が上がらないと2%達成とは言えない」という情報発信になっていましたが、この植田さんの言い方は賃金上昇に対して上記のように「物価上昇の継続性を判断するための最重要の要素の一つ」と言っている訳で、賃金上昇部分に何らかのメルクマールを設けてという話ではなく、あくまでも「2%目標達成」の部分を判断するためのコンポーネントという扱いであって、賃金の話は重要だけど別に珍タゲをしているわけではない、というのは示しちます。

・・・・・・・じゃああの4月会合の声明文は何だったんだ、という話になるのですが、まあ明らかにあれは(出たとたんからアタクシを含む全方位から「なんじゃありゃ」という意見があったと思いますが)やっちまいましたなあ感が強いのでありまして、植田さんあの声明文の珍タゲもどき文言についてはちょっと責任持って何とかしてくれませんかねえと思うのであります。

植田さんもあの時は来たばっかりだから、黒田時代のノリで政策変更しないための屁理屈デコレーションを持って来た事務方の振り付けにうっかり乗ってしまったんだろうなあとは思うのですが、こういう説明は基本的に黒田時代の屁理屈デコレーションを徐々に剥がしていく作業としては評価したいなと思うのでありまする。



・足元のインフレの高止まりあるいは上振れに関する説明

こちらの総裁会見ではこんな話になっていました。

『(問)(前半割愛)あと日銀はインフレ率ははっきり今後低下していくというふうに予想されて、以前から輸入物価が下がっているので今後下がっていくというふうにおっしゃっていますが、そうおっしゃってからずっと物価は下がっていないというような感覚があるんですけれども、なぜインフレ率は下がらないのかという点について、総裁のご見解を教えてください。』

『(答)(前半割愛)それからインフレ率の下がるピッチが遅いというのは、私も申し上げましたが、おっしゃる通りかと思います。現象面としましては、輸入物価が国内物価に転嫁される動きがある経済主体、企業については大体終了したんだけれども、次の瞬間になってみるとまた違う企業群が、輸入物価をここまで転嫁してなかったのを転嫁するという動きがやや続いているかなというふうに思ってございます。』

コストプッシュの転嫁が遅れてやってきた説のように見えますが、

『全体としてある種のインフレ期待の上昇とかノルムの変化、つまり、企業にとっては自分の価格を動かすことが難しい世界から、他の企業も動かしている中で自分も動かすことができるという世界に少しずつ変わりつつある中で、』

と微妙にノルムの変化の話をしながらも、

『少し遅れて価格の転嫁を自分もしてみようという企業が次々と出てきているという状況かなと思いますが、』

となって結局コストプッシュの転嫁、という話にまとめているので、、

『一応それも毎回の点検で、毎回同じことを申し上げているようで恐縮ですが、そろそろピークに近いのかなとは思ってございます。』


となっていますが、これは会見ネタを外れますが先日ネタにしましたように、大阪懇談会での挨拶テキストにおいてはこの点について、

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230925a1.pdf

『販売価格の設定という面でも、一部にこれまでにない動きがみられます。企業の方々からは、「長いこと販売価格引き上げをしてこなかったので、社内のノウハウ不足から、昨年はコストが上昇しても値上げに時間を要した」といったお話を伺うことがありました。もっとも、最近では、そうした状況に変化がみられ、価格の改定頻度は高まってきています。仕入価格を販売価格に反映するだけでなく、地域や時間帯によって価格を変更するダイナミック・プライシングを採用するなど、戦略的に価格設定に取り組む動きもみられています。一部ではありますが、将来の賃金コスト等の上昇を見越して、販売価格を予め引き上げるというフォワードルッキングな価格設定の動きが出てきていることも、賃金と物価の連関の高まりを示唆する重要な変化として注目しています。』(この部分だけ直上URL先の大阪経済4団体懇談会挨拶テキスト本文5ページより)

ということで、必ずしも輸入物価上昇を起点としたコスト転嫁だけではない動きがある、という事を説明していたりしまして、物価の先行きに関するトーンについても黒田末期の「とにかく見てれば下がるんだからまあ見てろや」状態ではなく、ちゃんと現実を直視した説明も行われている訳でありまして、この辺からも黒田残滓の払しょくを一気やるとハレーション起こるのが怖いんだと思うのですが、そうはいっても払しょくしないと何も動けないということになるので、ほぐしに掛かっているんじゃなかろうか、と何かついこの前まで昼はからっきしダメな夜の帝王とかハトハトジジイとか言ってたのにお前はいつ手のひら返しをしているんだと小一時間問い詰められそうですが、何ですかねえ、読売インタビューからの3連コンボをみていると、総裁就任前の植田先生に先祖返りしつつあるんじゃないかということで、まあそうなるとこっちの見方も徐々に先祖返りする、という流れになっているので勘弁してつかあさい。


・Y田さんとHらさん(伏字になってねえ)のツッコミに対して今回は丁寧に回答していましたね

前回はとにかく幹事社の差配が悪すぎでしたが、今回の幹事社は差配が絶妙で、確かにこの論点で植田さんに切り込みに行くには、Y田さんを先鋒突撃軍にして、そこで出てきた点を含めてHらさんが二の矢を放つ、という展開が一番綺麗に決まる、という気付きを得ました。

というのはさておきましても、今回植田さんこの点について割と丁寧(と言ってもまあ社会部系が束になってやってきたら全然説明として成立しなさそう)な説明をしてたのって、さすがに植田さんはこのまま漫然と従来通りの黒田路線をやっていると諸悪の根源である国賊日銀ということにいつの間にかなってしまうリスク、というのを感じているんじゃないかなと思いました。

『(問)金融緩和を粘り強く続けてる間に、更に円安が続いて今年最安値を記録して更なる輸入物価を招いて国民生活が苦しくなるということでですね、要は総裁の金融緩和修正のスピードがあまりに遅くて小規模だということを見透かされてるんじゃないかと思うんですが、国民生活のために金融緩和修正のスピードアップをされるお考えはないんでしょうか。』

ですよねーーーーーー。

『(答)先ほど来、複数の方からご指摘、ご質問がありました物価の下がり方が遅い中で、人々の実質所得が伸び悩んでるあるいは低下して家計に負担が重くかかっているということは重く認識してございます。』

というのは言うし、

『ただ、私どもとしましては、これも何回も繰り返し申し上げていますように、中長期的に持続的・安定的に 2%のインフレ率が達成される世界を目指して金融緩和を続けているということでございます。そういう世界に到達するということができる場合には、ヘッドラインのインフレについても短期的な上下はいろいろな要因であると思いますが、2%に収束していくというふうに思ってございます。』

なお、これではガチ社会部が来たら耐えられませんのでもう少し模範解答を考え直した方が良いと思います。


でもって切り込み第2弾。

『(問)先ほどから物価と政策の関係について縷々ご説明頂いてるわけですが、やっぱり足元で消費者物価が3%を超えているのに相変わらず物価を上げるための政策を続けているというのは国民にとってみると非常に分かりにくい政策だと思うんですね。』

これに尽きますよね。この点について一般からのツッコミに耐えられる説明を出来るのか、という話でありまして、まあそもそもの政策運営が黒田残滓のノリでやっているから、が身も蓋もない事実ベースの回答だとすると、一般からのツッコミに耐えられる説明が当然できないので、さて今はどうなんでしょというのは気になります。

『これすぐにまた物価が下がってくるという説明は日銀ずっと続けているわけですが、これは前回会見でも伺いましたが、前回から更に 2 か月足して 17 か月連続で 2%インフレを超えている状況が続いてるわけです。つまり日銀は物価見通しを外して誤った政策を相変わらず続けているんではないかという仮説が一つと、』

うんうん。

『あるいは展望レポートで来年度 1.9%の見通し、再来年度は 1.6%の見通しで、これ四捨五入するとほぼ2%なわけですよね。そうすると見通しはむしろ 2%インフレ目標を達しているという見通しを立てているのに、相変わらず日銀は理想とする世界を実現するための社会実験を続けるために足元で物価の番人としての役割をないがしろにしてるんじゃないかという、そういう見方もできるわけですが、その辺はいかがでしょうか。』

よすよす。

『(答)ご指摘の点は非常に重要なポイントだと思いますが、既に複数のご質問に対する答えの中にも含まれていたかと思いますが、終わりの方からお答えしますと、やはり私どもの問題意識としましては、長い間、インフレ目標 2%、あるいはより柔らかに言ってプラスで安定的なインフレ率というのを達成できてこなかったという経験に対する反省が強くあるというふうに思います。』

これではやはり弱くて「再びデフレに陥るリスクがあって、その可能性は下がっているかもしれないがうっかりそのトラップに嵌るとその時の国民厚生の損失は失われた30年の再来となることになるので、完全に大丈夫と見込めるまでは安心できない」とか言えばまだ分かりやすいんじゃないかと思います。

まあその時点までマイナス金利だの10年0%だのである必要もないとおもうんですけどね。

『足元、輸入物価の上昇に引っ張られまして、いったんやや高めのインフレ率になっているわけですが、それの助けも借りて長年達成できなかった 2%のインフレ率を持続的・安定的に是非達成したいなということで金融緩和を今のところは持続していますし、』

つまりはこの事ですけど多分この説明だと(聴いてた時の院長もそうなんですが)テキストに落とすと説明の論法が解りやすいのですが、口頭の説明だとなんか言い逃れしているだけにしか聞こえなかったので、もうちょっと想定問答の練りが必要だと思いました。

まあ想定問答練ってる暇が合ったらマイナス金利とYCCをとっとと止め太郎になって頂きたいのですけどこちらとしては。

『われわれのインフレ見通し(注)が四捨五入すれば、2%ではないかというのもある意味ではおっしゃる通りかとは思いますけれども、もう一つ、これで大丈夫というふうに必ずしも思えない最大の理由としましては、2%達成が持続的・安定的に回っていくためには、やはりある程度強い総需要に支えられたもとで、賃金と物価が好循環を続けるという姿が確認できることが必要だなというふうに思ってございます。そこの確認にちょっと時間をとっているということでございます。』

ここで植田さんが根拠として挙げているのは実は賃金じゃなくて「ある程度強い総需要」なので、経済動向そのものを指しているんですよね、この点も注目される発言で、植田さんの説明が明らかに「賃金ガー」離れをしているんですよね(もちろん賃金動向を無視するわけではないですけど)。

『そのうえで全体をみてみますと、基調的なインフレ率はそういう意味ではまだちょっと 2%に物足りない、それを上げていかないといけない。』

この説明、8月全国CPIも出たのですが、「基調的なインフレ率」ってどこのインフレ率がまだ
ちょっと足りないんですかねえ。

『しかし、全体のヘッドラインのインフレ率は 2%を大幅に超えている、これは下がっていくことが望ましい、』

しれっとこんなこと言ってるのが何気にチャーミングで聞いててアタクシ「ほえー」とか変な声出してました。

『この二つを達成していかないと、日本銀行としては評価されないということは十分承知しておるつもりでございます。』

とまあそういうことで、中々結構な質疑でございました。


ということで総裁定例会見で3回もやっている間にネタの渋滞がおきておる(アカン)どうもすいません。






2023/09/28

お題「植田総裁決定会合後の会見(その2):見ようによっては色々と味わいがあるようにも思えます」

ありゃまあ
https://jp.reuters.com/world/us/OFXBEN77CRNGPPWJZ7YDH47WTI-2023-09-27/
原油先物3%高、米原油在庫急減で供給逼迫懸念に拍車
Arathy Somasekhar
2023年9月28日午前 4:32 GMT+9

ドル高はホイホイと進行するわ米国長期金利は何か上がるわの今日この頃ですが、引き続き植田総裁記者会見の後には役に立たねえ雁首どもの意見がどうしたこうした案件という感じ(その後FED)で参ろうかと思いますです。


〇植田総裁決定会合後の記者会見(その2):聞き流しているとしょうもないハトハト会見に見えるが・・・・・

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230925a.pdf
総裁記者会見
――2023年9月22日(金)午後3時30分から約65分

いやまあアレですよ、声明文があの調子だったので会見の方で何かうっかり出るかもしれないリスクの方がありますから会見をクッソ真面目に聞いておりましたけど(まあ聞きながら作業は作業でしていたのでクッソ真面目と言ってもそのレベルですけど)、そうやって掛け流しで聞いているとしょーもねーハトハトジジイに見える(聞こえる)会見ではあったのですが、改めてテキストになったのを読むと微妙だなと思うのでございましてですな。


・すんげえ紛らわしい説明があったわ

昨日ネタにした「リスクマネジメントアプローチ」の質問の後半から参ります。

『(問)(前半割愛)もう一点なんですが、前回の会見で市場のボラティリティの抑制に為替市場を含むとの認識を示されましたけれども、7 月の柔軟化措置、これが為替市場のボラティリティ抑制に効果を発揮してるのかどうか、総裁のお考えをお願いします。』

為替市場のボラ自体は抑制されているような気がしますが、この質問自体がフワッとしてまして、イマイチ何を意図した質問かよくわからんように見えますけど、恐らくこういう質問ってフワッと聞くことによって向こうにある意味好きな事を言わせてしまってそこからネタが採掘できる(つまり想定問答に無さそうな回答を出す)ということなのでしょうかね、よくわからんかった。

『(答)(前半割愛)それから、為替のボラティリティに関する 7 月会合での措置ないしそれに関する発表ということですけれども、その時も申し上げたかと思いますけれども、7 月会合での措置は、将来、7 月会合時点でみて、物価見通しが上振れする、あるいはインフレ期待が大幅に上振れするということになってそれがYCCの修正という予想につながる、それが更に場合によっては、不要な金利や為替レートのボラティリティの上昇につながるということを、できれば前もって抑制したいというための措置でございます。』

なるほどここの説明は内容の妥当性は兎も角として屁理屈としては堅牢である。

『従いまして、そういう大幅なインフレ期待、物価見通しの上昇が 7 月から現在までの間に生じているというわけでは必ずしもないということだと思いますので、その効果がどれくらい表れてるか表れてないかという点をみるには、まだちょっと時期尚早かなとは思っております。』

ということで、これ聞いた時には「そういう大幅なインフレ期待、物価見通しの上昇が 7 月から現在までの間に生じているというわけでは必ずしもない」の主語が日銀なのかと思って、これで10月どのツラ下げて物価の見通し上方修正(をしないとどう見ても無理な情勢ですよね)するんだ、と思って聞いてたので、よーしパパ10月の展望が出たら9月の地蔵会合を引っ張り出して整合性について悪態をつくぞー、と思っていたのですけれども、こうやってテキストにされますと、ここの主語が「マーケット」であることに気が付くという事実。

いやこれ日本語の仕様だから仕方ないんですけど、植田さんの説明って基本丁寧なのはいいんですけど、書き言葉だと省略する方が重複表現じゃなくなるけど、話し言葉にするときは重複表現になってでも主語とか目的語とかその辺の割愛を避けた方が紛らわしくないなあ、と思いますが市場の片隅でそんなくだを撒いても植田さんには伝わ・・・らんわなorzorz

え、書き言葉で訳分らん表現してるお前が言うなって???いやまあそれは突っ込まないで下さい。


・とりあえず晒し上げ

この回の質疑応答、全般的に良かったんですがこの質問だけは何処の誰がしたのかは当然ライブで聞いているので存じ上げておりますが、社の方針で質問させられてるんだと思いますが、会社ごと義務教育からやり直してこいと。

『(問)7 月の政策の見直し以降、銀行が設定する住宅ローンの固定金利が上昇傾向にありまして、街で取材してみてもこれから固定も変動もどんどん上がっていくんじゃないかというふうに気にしてる人も増えてきているように感じておりまして、この住宅ローンの金利の上昇傾向の現状ですね、日銀としてどのようにとらえていて、この上昇ペースが続いていくのかどうかという点を、総裁のご見解頂ければと思います。』

あのさあ、1990年近辺みたいに長プラ8.9%短プラ9.125%(当時の住宅ローンに短プラは基本関係なかったけど)まで上昇する、というようなことになって想定外アイヤーっていう話だったら兎も角、長期金利が1%にもなっていない時点で住宅ローン金利が上がって大変とかいう奴はそもそも身の丈を遥かに超えた借入している(またはしようとしている)んだからシランガナとしか申し上げようが無い訳で、この住宅ローン金利ガーとか言ってる風潮を煽る連中は全員廃業して欲しいわ。猛省を促したい。


・基調的なインフレについて質問されましたが・・・・・・・・・・・

その次の質疑は物価で直球勝負。

『(問)先日、植田総裁は基調的なインフレ率は 2%を若干下回るということで総合判断されてると思うんですけども、日本ではなかなかザ・予想インフレ率というものがない中で、』

あ、あれ「ザ・予想インフレ率」だったのね(独り言)。まあ日本だけじゃなくてどこでも無いんですが。

『日銀が公表している基調的な数字ですね、先日ですと、最頻値と刈込み[平均値]と加重中央値で、前の日銀の分析だと[加重]中央値と最頻値は需給ギャップとの関係が薄いので、そこの数字が上がっていくにはノルムが変わらないと難しいということを言ってたんですけれども、』

この点に関しましては、
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/rev15j11.htm
消費者物価コア指標とその特性
景気変動との関係を中心に
2015年11月20日
調査統計局 川本卓司、中浜萌、法眼吉彦

なんぞをご覧になると吉(著者の1名であられる川本さんは2代前の政策企画課長でもあります)。

『足元の[加重]中央値が 1.6%ということは、2%を推測するうえで、その数字が最低でもやっぱり 2%にいかないと、なかなか安定的・持続的な 2%達成が難しいというふうに考えてよろしいのか、その点をお願いします。』

ということで、この質問2%判断の所で「賃金」じゃなくて「基調的物価」を持ち出して質問しているのが中々鋭いわと思う訳ですが植田さんの回答。

『(答)おっしゃってたのは、Weighted Median のことですかね。確かにそこはまだ 2%に達していないんですけれども、』

と言ったその舌の音も乾かない今週に幣駄文でも既報の通り全国CPIのWeighted Medianは1.8%まで上昇しましたが、まあ当然ながらそんなのは概ね合点承知の助(と言っても今回って東京対比上振れている感じがあって、東京って前半までの数字での速報値であることを考えると東京の数字で想定したより上振れているんじゃないかとも思いますけど)なので、以下の説明は、

『これは繰り返し申し上げてますように、やや紋切型で恐縮ですけれども、単一の指標で基調的な物価上昇率が判断できるというわけではないですし、現在、これがクリアされればそこのところが条件が満たされることになるというようなきわめて適切な指標があるかと言われますと、そうでもないということで、』

と言って煙に巻いておかないと同日に出ている全国CPIを真面目に見れば自分の説明で首を締めるのが間違いなしになるので、こうやって誤魔化すしかないですね。

今度は誰か記者さんから「日銀が公表する基調的なインフレ率を把握するための指標も含めて、何を見ても中々日銀の仰る「基調的な物価は2%に達していない」という説明が一般に理解されにくいと思うのですが、2%に達していないという根拠を、日銀の先行き見通しなどのような裁量的なものではなく、定量的な指標も含めて一般に説得力のある説明をしていただきたい」というように、物価をメインに攻めたてた方が話が早いんじゃないかな、とまあそう思ったりするのであります。

『そこは曖昧で申し訳ないんですが、以前より申し上げてますように物価変動の背後にある需給ギャップ、予想物価上昇率、賃金上昇率、これらを総合的にみて判断していくということになるかなと思います。』

これじゃあ全然説得力がないので、2%に達していないと判断している根拠になった指標などを出せ、という感じですな(・∀・)ニヤニヤ

『これも以前の記者会見で申し上げたと思いますが、そういうことを考慮に入れたうえで、われわれなりの物価の見通し、基調的部分に関する見通しのかなりの部分は、展望レポートで出している将来の物価見通しに反映されてくると思いますが、それも同じ数字であってもその背後にある姿次第で、どれくらい自信を持てるものかということは、変わってくるものかなというふうに考えてございます。』

この学者にアルマジロなインチキ話法で誤魔化すしかない、というのが物価の現実ではあります。ナムナム。


・物価上昇局面では賃金上昇が追いつかないという極めて真っ当な点からのツッコミ

ということでちょっと先に行って実質賃金に関するツッコミ。

『(問)(前半割愛)あともう一点なんですが、実質賃金についてです。これは 7 月の毎月勤労統計で、前年同月比−2.5%ということでマイナス幅が広がっていますよね。物価高になかなか賃金上昇、賃金の伸びが追い付かないという状況が続いている中で、足元では円安それからエネルギー価格の上昇というのがまた一段と進んでいるわけですが、この影響も今後出てくることを考えますと、総裁が考えていらっしゃる賃金上昇を伴う持続的な物価上昇というのと現状というのは、どのぐらいかけ離れているものなんでしょうか。』

どう答えるのかと思えば、

『(答)(前半割愛)それから、おっしゃいますように、実質賃金がなかなか上昇率でいってマイナスのままでプラスに転じないということは、私どもも非常に心配してみています。』

という説明をせざるを得なくなっている程度にヤバイ、という認識はもっておられるようですが、そもそも論と致しましてあの(別の意味で)伝説のハマコーインタビューにありましたように、実質賃金を引き下げることによって全体の雇用を拡大すれば、総雇用者の拡大になるんだからOKOK、というのが置物リフレの主張でもあったわけですから、置物理論を継承した植田さん、という意味では本来はこれは「望ましい展開」である筈なのですが、まあそんなこと言った日には次回の総裁会見に社会部系の記者が30人くらい押し寄せて人民裁判食らってしまいますから言えない、という話なので、是非ここはハマコー先生に「これはアベノミクスのもとめていた姿である」と喝破して頂きたいものですな(棒読み)。

『実質所得が低下するという中で、家計に大きなインフレが大きな負担となっているということだと思います。』

じゃあそのコストプッシュの原因の中で円安とめるのは政策で出来るだろ、と言いたくなりますねえ。

『この一つの背景として、先ほども申し上げましたが、ヘッドラインあるいは除く生鮮のインフレ率は低下し始めてるとは思いますが、低下のスピードが思ったよりは少し緩やかであるということが、一つあるかなとは思っております。』

この説明が今回アタクシ的には非常に耳障りな聞き苦しい弁明でして、昨日も申しげましたように、全国CPIの指数値そのものというのは本年1月から見たら、

総合  :104.7⇒ 104.0⇒ 104.4⇒ 105.1⇒ 105.1⇒ 105.2⇒ 105.7⇒ 105.9
コア  :104.3⇒ 103.6⇒ 104.1⇒ 104.8⇒ 104.8⇒ 105.0⇒ 105.4⇒ 105.7
コアコア:102.2⇒ 102.6⇒ 103.2⇒ 104.0⇒ 104.3⇒ 104.4⇒ 104.9⇒ 105.2

と上昇を継続している訳でして、確かに植田さんインフレ「率」は低下しているという説明なので嘘ではないのですけれども、インフレそのものは普通にホイホイと上昇しているので、これは見苦しい小手先の印象操作レトリックに見える話で、この手のレトリックって金融関係者相手にしている分には通用する理屈であっても、犬笛吹いて社会部系の方々が来た時には「誤魔化し」にしか見えないと思います(個人の感想ですけど)ので、まあこの調子でやってるとコンコルド広場に連行されて首チョンパの時も遠くないと思うからマジで懸念した方が良いと思うんだけどなあ、と思います。

『賃金は上昇しているわけですけれども、ただ今後、私どもの見通しではインフレ率がもう少しはっきりと低下していくというふうにみております。ここから先は、先ほど来議論に出ています来年に向けての次のラウンドの名目の賃金の上昇率がどうなるかということ次第でもありますが、賃金・雇用を掛け算した雇用者所得[の伸び率]が上がっていくという局面に至っていくというふうに考えてございます。』

って相変わらずの説明だが、インフレの数字自体全然下がって来る気配ない中で物価の伸びが弱くなるという見通しそのものを外したら(外しそうですが)その時点でこの弁明アウトになる訳で、何かまあその場しのぎ感はぬぐえませんな。



・私は黒田総裁とは違う、って言いたかったのかなあ・・・・・・・・・・・・・・

ちょっと先に行きまして、

『(問)マイナス金利のことについての質問なんですけれども、読売新聞のインタビューで年内という言葉が出たということで市場で早期の利上げの可能性っていうのは以前よりも高まったと思うんですが、総裁ご自身のマイナス金利の解除に関しての距離感というのは、物価が上振れしている中でも変化はないんでしょうかというのをお伺いできますでしょうか。』

『(答)そのインタビューの関連で。』

『(問)はい、そうですね。そういう憶測がちょっと高まったところはあるんですけれども、総裁ご自身の中で特に距離感というものは、以前まだまだ距離があるとおっしゃっていたので、それに関しては変化はないのか。』

別に市場云々は絡めなくて良かったんじゃないか、と思いますけれども、と申しますのは、これインチキ回答をしようとすると距離感云々の話をするのではなくて、市場の反応がどうのこうのという言葉尻の方に対して回答する、という余地を残してしまいますので、と思ったら植田さん結構真面目に回答してましてですね、

『(答)正直に申し上げて、そこの距離感がすごい動いたから、ああいうふうに申し上げたということではなくて、金融・経済情勢は、最初に申し上げた点ですけれども、毎回の決定会合で議論して、例えば物価目標が達成される見通しが立ったかどうかということを毎回毎回新しいデータに基づいてチェックしていくものだと思うんですよね。』

前回インタビュー時点で既に距離感が凄い動いたわけではない、と仰せですが動いてないとも言っていなくてここは玉虫色ですよね。

でもってこれは昨日もネタにしましたが、ここでも「データディペンデント」寄りの言い方をしておりまして、説明のトーンが結構柔軟になっている感はするんですよ、まあアタクシの願望込みの感想ですと言ってしまえばそれまでなんですけどね!

『従いまして、前もって年内はそういう可能性は全くないということを、例えば総裁の立場で言ってしまうということは、毎回の決定会合の議論にある種強い縛りをかけてしまうというリスクを伴っているものであると、そういうことは言わない方が望ましいなという趣旨の発言でございました。』

というのは、まあ読売インタビューの火消しをしているのですが、これ火消しはしているけど別に「この間にデータが揃って見通しに変化が生じたと判断したら政策判断も変わり得る」というのは留保している格好なのと、「毎回の決定会合の議論にある種強い縛りをかけてしまう」というのが黒ちゃん時代の賛成マシーン(一部外れ値あり)集めて先行きの政策も動かないで決め打ちしていたのと私は違う、って青年の主張をしているようでもあった訳で、中々味わいありますよねと思いました。


・でもって判断ですがやはり賃金ではなく物価に植田さんの考えは寄っているんじゃないでしょうか(本来そうあるべきですけど)

と思うのはちょっと飛ばしまして最後の方にあった質疑で中々良かったのがありまして、

『(問)総裁、先ほど決定に縛りをかけてしまうようなことは言わない方が望ましいとおっしゃったんですけれども、4 月以降コミットメントも整理されて、賃金の上昇を伴うかたちでということを明示されたとなると、日本の歴史的な経緯として、賃金形成にとっては年に一度の春闘が節目となるわけで、なるべく中央銀行として政策決定のフリーハンドを持ちたいということから、この縛りをかけないような、年末までに可能性はゼロではないという発言だったかと思うんですけども、同時に賃金を要因に挙げると縛りが生じてしまうという面があるように思うのですが、その点いかがでしょうか。』

これは良い質問でした。でもって植田さんの回答も中々味わいがあって、

『(答)国によって違いますが、日本の場合は労働者のかなりの部分が年 1 回の賃金改定であるということは事実かと思います。ただそうでない部分の労働者も、かなりの比率でいらっしゃいますので、賃金上昇率自体は連続的に動いていくものだと思います。』

>賃金上昇率自体は連続的に動いていくものだと思います
>賃金上昇率自体は連続的に動いていくものだと思います
>賃金上昇率自体は連続的に動いていくものだと思います

9月の頭に出ていた政策委員の金懇では(特に高田さんの会見が顕著でしたけど)完全に春闘の結果の話しからしか賃金の判断をしなくて、挙句に来年の春闘見ても分からん、とか高田さんとか発言して今となってはお前は何を言ってるんだ状態になっておりますけれども、この植田さんの言い方ですと言ってしまえば来年の春闘の結果を待たなくても判断ができる、という事を意味している(もちろん判断するのかという話は別問題ですが)のですよね。

これってどういうことかと言いますと、まあここからは足元の植田さんの説明のトーンからの類推になるのですが、やはり植田さんとしては物価が見通し対比上振れるわ、上昇率鈍化するとか言ってたのが鈍化はしても全然上の方にいるわ、政府方面からは遂に物価高から国民生活を守るとまで出られるわ、という状況を鑑みますと、物価に重点を置いて判断して行かないと危険な事に成り兼ねない、という意識があるなか、黒田末期からの流れで賃金ガーを連呼し過ぎて春闘まで動けないというような飛んでもない事態になっているのを修正しよう、とまあそんな感じでこの「連続的」発言をしたんじゃないかと思うのですよね。

その前の「縛りを掛ける」云々もそうですけれども、もちろん動くか動かないかは別にして、

『仮に年 1 回の賃金改定だと致しましても、最初の方で申し上げましたが、それに影響を与える要因は複数あり、ある程度は知られているわけですから、その賃金改定を動かす変数に関する情報は連続的に入ってくるわけで、全体の判断も連続的に行い得るものだと思います。』

という説明は、賃金ターゲットというどう見てもスーパービハインド・ザ・カーブのリスクをバンバンとるというスタンスの危険性を認識して、「連続的に判断可能」ということで、この質問者も指摘している「中央銀行として政策決定のフリーハンドを持ちたい」というのを主張したんじゃないかとアタクシは願望を込めて思った次第であります。


・・・・・・・とまあそんなこんなを考えると植田さんのハトハトジジイというのはどうも違うんじゃないか(ハトハトというか黒田時代の否定をすると自分の首が危ない人たちによるサムシングが働いているのではないか疑惑ね)ってな思いが強くなりますと、散々言ってたハトハトジジイ呼ばわりに関してはジャンピング土下座の練習でもしておこうかな、と思ったり思わなかったりする、という今日この頃でありました。

てな訳でこの会見があと少し(オペ関連)あるのと大阪懇談会の会見があって7月議事要旨ですが来週は短観に今回の主な意見と何でこうイベントが重なる仕様になっているのかと小一時間問い詰めたい(ない時はガチのネタ枯れするのに・・・・・・)


〇ちょっとおまけで日銀の「企画局スタッフ」がこんなのをだしておりますな

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2023/rev23j11.htm
わが国における社債発行スプレッドの動向

ということなのですが、よくよく見ますと右肩に

2023年9月27日
企画局 落香織、長田充弘

とありまして、『日本銀行から』にも、

『日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。』

といういつものがありまして、その最後に

『内容に関するご質問等に関しましては、日本銀行企画局政策企画課(代表03-3279-1111)までお知らせ下さい。』

ちょw政策企画課かよ、という物件な訳ですが、期末のクソ忙しい中碌すっぽ読めていないので中身の話はなんかありましたら別の機会に参ります。






2023/09/27

お題「遂に加重中央値も2%近傍/植田総裁記者会見から(その1)」

開成高校ってのは学校で何を教えているんでしょうか武藤敏郎さんちょっと教えていただけませんかねえ。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA25A6F0V20C23A9000000/
岸田首相「税収増を国民還元」 経済対策で「減税」強調
税・予算
2023年9月26日 0:30 [会員限定記事]

『岸田文雄首相は25日、経済対策の目的について「経済成長の成果である税収増などを国民に適切に還元する」と語った。具体策は賃上げ促進や特許など所得を巡る「減税」を列挙した。物価高への不満が募る世論に理解を得やすい説明に腐心した。税収の自然増を新たな政策の原資として掲げた。』(上記URL先の会員以外にも公開部分より引用)

この理屈だと税収が減ったらその分増税しないと間尺に合わなくなるんですけど、当然こんなの税収減の時に国債発行して行った経済対策の効果が後から出てきたんだからその時に出した国債を減らす努力しなかったらただの多重債務者じゃねえかというお話。

お前は借金して公営ギャンブルに行って儲かったら全部使って次の公営ギャンブルの原資をまた消費者金融に借りにいく生活破綻者かと小一時間問い詰めたい。

てかさ、こんなムチャクチャな説明がまかり通っている時点で「財務省の陰謀ガー」とか言ってるの馬鹿じゃなかったらインチキプロパガンダ以外の何物でも無くて、こんな無茶説明をださせちゃう財務省は何をやってるんだとも小一時間な訳です、まあ究極的には国民の選んだ議員がアホウばっかだから我々の自業自得なんだけど。

・・・・・・とさすがに呆れているので書いてみた。


〇日銀に問いたいのだが一体全体どこの数字が2%達成していないのかちょっと説明して欲しい(基調的物価)

いつものあれです
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm

昨年の1月から並べてみれば、

Jan-22 0.8 0.2 0.3
Feb-22 1.0 0.1 0.3
Mar-22 1.1 0.2 0.3
Apr-22 1.4 0.3 0.4
May-22 1.5 0.4 0.5
Jun-22 1.6 0.5 0.5
Jul-22 1.8 0.3 0.7
Aug-22 1.9 0.5 0.8
Sep-22 2.0 0.5 0.9
Oct-22 2.7 1.1 1.3
Nov-22 2.9 1.2 1.5
Dec-22 3.1 1.4 1.6
Jan-23 3.1 1.1 1.6
Feb-23 2.7 0.8 2.1
Mar-23 2.9 1.0 2.7
Apr-23 3.0 1.2 2.8
May-23 3.1 1.4 2.9
Jun-23 3.0 1.4 2.9
Jul-23 3.3 1.6 3.0
Aug-23 3.3 1.8 3.0

左からいつものように刈込平均値、加重中央値、最頻値の前年比%ですけど、とうとう加重中央値まで1.8%まで上昇してきまして、3指標ともに2%どころか2指標は3%状態が続いているんですが、「2%に行ってない」というのは何のどの数字をもって「2%行ってない」と言えるのか、ちょっと丁寧な説明をしていただきたいんですが植田総裁、というかこんなの国会で吊るし上げるとか、総裁定例会見だってもう日銀記者クラブのヌルヌルしつもんじゃなくて社会部の記者が大挙乗り込んでひたすら物価についての説明を延々と求め捲る吊るし上げ大会にしないと御殿生活の日銀はインチキ説明で通ると舐め腐った政策を継続するわと思う訳ですよね。いやまったくもって。

Jan-22 61.5 31.0  30.5
Feb-22 64.0 28.9  35.1
Mar-22 63.2 29.7  33.5
Apr-22 68.8 24.9  43.9
May-22 69.2 24.5  44.6
Jun-22 71.3 22.2  49.0
Jul-22 73.2 20.7  52.5
Aug-22 72.6 21.5  51.1
Sep-22 74.9 18.6  56.3
Oct-22 78.9 14.6  64.4
Nov-22 79.9 13.6  66.3
Dec-22 81.2 11.7  69.5
Jan-23 80.3 12.6  67.6
Feb-23 81.0 11.7  69.3
Mar-23 82.6 10.0  72.6
Apr-23 84.3 9.2  75.1
May-23 84.9 8.8  76.1
Jun-23 85.1 9.2  75.9
Jul-23 85.6 8.4  77.2
Aug-23 86.0 8.2  77.8

左からいつものように上昇品目比率、下落品目比率、上昇品目比率−下落品目比率ですけれども、8割方のアイテムが値上がりする(足元では9割に接近)、という状態が昨年10月から延々と継続しているのってどうなんですかというお話。

でまあ刈込平均とかの方なんですけど、これ最早物価上昇基調になっている中ですと、「前月比」の同じ数字を出して頂くと、この間の基調が更に見やすくなると思うんですよね、ということで全国CPIの話の続きをしますけど。

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消 費 者 物価指数
全 国 2023年(令和5年)8月分

季節調整済み前月比っての(とそもそもの原数値)を最近は毎回特に注目してみているのですがアタクシは。ということで『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)』になります1ページ目ね。

今年の1月からで見ますと、

総合  : 0.4⇒ -0.6⇒ 0.3⇒ 0.6⇒ 0.0⇒ 0.2⇒ 0.4⇒ 0.2
コア  : 0.3⇒ -0.7⇒ 0.3⇒ 0.5⇒ 0.0⇒ 0.4⇒ 0.3⇒ 0.3
コアコア: 0.4⇒ 0.4⇒ 0.5⇒ 0.5⇒ 0.3⇒ 0.2⇒ 0.4⇒ 0.3

2月は政府の例の電力料金等の措置があったから総合とコアが下がってますけどコアコアが堂々の前月比+0.4%だった訳で、物価の実力は強い強いということで、同じく1ページの『表1 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の指数及び前年同月比』の原数値を見ると、

総合  :104.7⇒ 104.0⇒ 104.4⇒ 105.1⇒ 105.1⇒ 105.2⇒ 105.7⇒ 105.9
コア  :104.3⇒ 103.6⇒ 104.1⇒ 104.8⇒ 104.8⇒ 105.0⇒ 105.4⇒ 105.7
コアコア:102.2⇒ 102.6⇒ 103.2⇒ 104.0⇒ 104.3⇒ 104.4⇒ 104.9⇒ 105.2

年初の時点であった2〜2.5ポイントの差が思いっきり詰まってきておりますが、さてここで2002年4月の黒田日銀総裁(当時)の説明を確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2022/kk220502a.htm
総裁記者会見要旨
2022年4月28日(木)
午後3時半から約60分

HTMLの方ですと画面のほぼ半分くらいの所でこのように当時の黒田総裁は説明していました。

『(答)(前半割愛)二点目はそれに関連するわけですが、エネルギー価格は大きく変動していますので、それを除いたところでみた趨勢という意味では、今回お示しした生鮮食品・エネルギーを除いた消費者物価指数で、2022年度は+0.9%、2023年度が+1.2%、2024年度が+1.5%ということで、確かに基調としての消費者物価指数が緩やかに上昇していくという見通しであることは事実です。』

(:∀:)ニヤニヤ

『けれども、1.5%でも2%にはまだ届いていませんし、除く生鮮食品の物価上昇率で言いますと、2024年度でも1.1%という見通しであり、今のところ、こういう見通しの通りであれば、金融緩和の出口を早急に探るということにはなっていないと思います。そういう意味では、粘り強く金融緩和政策を続けていく必要があると考えています。』(この部分直上URL先の2022年4月28日決定会合後の黒田総裁定例記者会見の発言より)

ということですが、この点について植田総裁におかれましては明確な説明をお願いしたい訳でして、ちょっと横田さんと原さんだけだと(更問ができない関係上)選手足りないからどっかから社会派の人を連れてきて物価に関する説明を連係プレーで畳みかけて頂きたい(今回の会見は連携したのかどうかは兎も角、流れは良い連係プレーになっていたので評価でしたよねー)と切に思う次第であります。

だってさ、この時の説明がただしいんであれば、コアコアがガンガンズイズイグングン上昇しだした今年の春先からは(ということは即ち黒ちゃん寸前で逃げ切れているのが悪運の強いことよ)昨年4月の説明が正しいのであれば「金融緩和政策の出口を早急に探ることが「ある」」って話になるわけですし、そこを賃金ガーだの何だの言い出して判断基準を勝手に変えるのは、自分たちがやってきた極めて罪深い極端な金融緩和政策の出口で起きる事が、これまでの自分たちのやった悪事千万を暴くことなってしまい、黒田緩和を推進した皆さんが断頭台に立たされるのを回避しないと行けない、という見苦しい動機でなかったら何なんですか、というお話になるとしか申し上げようが無いのですが、さてあんさんらどう説明するんですかねえという所ですが・・・・・・・・・・・・・・・


〇植田総裁記者会見2つ、といっても全然時間がアレですので今日は決定会合の方の会見から参ります(明日に続く予定)

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230925a.pdf
総裁記者会見
――2023年9月22日(金)午後3時30分から約65分

・読売記事の市場の反応についての質問に対する回答のトーンが「データディペンデント」寄りに見える件について

『(問)幹事社からの質問は二問です。まず、読売新聞がですね、先日総裁が、マイナス金利の解除に絡めてですね、インタビューで来春の賃上げが十分だと思える情報やデータが年末までに揃うことも可能性としてはゼロではないと答えたと報じ、市場では早期の利上げ観測が強まっています。市場の受け止めは総裁の意図された通りでしょうか。何か従来と姿勢が変わられたのか、総裁の考えをお聞かせください。(後半は次で)』

と、従来と姿勢が変わられたのか、という聞き方だったのでちと弱くて「リスクマネジメントアプローチ」についての回答は無かったのですが、この回答はこの回答でほほうと思いましたわ。

『(答)最初のご質問ですけれども、インタビュー後、読売新聞のですね、を含めて金融市場での短期的な資産価格の動き、あるいは市場参加者の見方について、個々具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。』

ほほう。

・・・・・いやまあこの発言自体は穏当というか順当な説明ではあるのですが、一方で例のブルームバーグ記事の火消しのトーンって、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-15/S0YVE0T0G1KW01
植田総裁発言と市場解釈にギャップ、日銀認識ほぼ変わらず-関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2023年9月15日 14:00 JST 更新日時 2023年9月15日 14:57 JST

『日本銀行の植田和男総裁の発言を受け、市場でマイナス金利政策の解除など早期の政策正常化観測が強まる中、日銀内では発言内容と市場の解釈とのギャップを指摘する声が出ている。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。』

『関係者によると、総裁発言は従来と比べ踏み込んだ内容ではないと日銀内では受け止められている。現時点では7月の金融政策会合における経済・物価情勢や先行きのリスクに関して認識を大きく変えるような材料は出ておらず、引き続き不確実性が高い中で上下双方向のリスクを意識して金融政策を運営していく姿勢にも変化はないとしている。』(この部分のみ直上URL先の9月15日ブルームバーグ記事より引用)

と思いっきり市場の動きに対してダメ出しをする(ということ自体がそもそも日銀の傲慢を示していますが平家物語にもありますように驕れるものは久しからずなので黒田残滓の皆さんが壇ノ浦で(以下自粛))内容でしたわな。では植田さんの話の続き。

『そのインタビューでは、現状、物価安定目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至っておらず、従って粘り強く金融緩和を継続する必要があるというふうに申し上げました。』

現状ね。

『そのうえで、先行き実現が見通せる状況に至れば、政策の修正を当然検討することになりますが、現時点では、経済・物価を巡る不確実性はきわめて高く、政策修正の時期や具体的な対応について到底決め打ちはできないというふうに指摘致しました。』

ということでして、これ説明のトーンが「関係者」と植田さんの言い方違いますよね、って話な訳ですよまあアタクシも流石に今回はライブで聞いてたんですが、ライブで聞き流していると聞きそびれそうなのですけれども、文字起こしを改めてみるとやっぱりこれニュアンスとしては「今の時点では」の話を強調していまして、「先行きの事は起こって見ないと分からない」ということで、データディペンデントと言い切るとスタンス変更って言われるでしょうから露骨に言わないにしても、植田さんのこの言い方はこれまでのように「データが揃うのはだいぶ先だからもう全然動きませんよ」というのから微妙にデータディペンデント方向によってきてませんか、と思ったんだがワシの希望的解釈じゃボケと言われるとまあサーセンと謝るしかないのですけど、何かこうちょっとトーンが違うんですよね。

『賃金上昇率あるいはインフレ率が目標に沿ったものとなる見通しになるかどうかということですけれども、これは以前からそうですけれども、当たり前のことですが、毎回の金融政策決定会合で、前回に比べて出てきた新しいデータとかその他の情報を丁寧に分析して決めていくものでございます。こうした政策運営の基本的な考え方については、従来から変化はございません。(後半は次に)』

ということでリスクマネジメントアプローチに関しては回答を逃げられましたが、こっちで言う「基本的な考え方」に関しても「新しいデータを見て判断」なのですよね。うーむ。


・物価について聞かれると「10月会合をお楽しみに」で延長戦に逃げ込むの巻

さっきの続きというか後半部分。

『(さっきの続きです)もう一問は物価についてです。本日発表された 8 月の消費者物価指数は前年同月比+3.1%で、日銀が目標とする 2%を 1 年半近く上回っています。前回の会合時より円安が進みですね、様々な物価に影響を与える原油価格も上がっています。物価が想定より上振れるリスクについてどうみていらっしゃるのか、またかねてから総裁ですね、物価の見通しが大きく変わるということであれば、それは政策の変更につながってくるとおっしゃっていますが、政策対応が必要になる可能性もあると考えているのか、お聞かせ頂けますでしょうか。』

総裁の回答の後半部分ですが、

『それから二番目のご質問ですけれども、7 月の展望レポートでは、2023 年度と 24 年度の物価見通しについて、上振れリスクの方がやや大きいというふうに判断致しました。先行きの物価を巡っては、先ほどもちょっと申し上げましたが、為替相場、資源価格の動向だけでなく、内外の経済動向や企業の賃金・価格設定行動に関する不確実性もきわめて高いと認識しています。』

知ってた。

『こうした点、次回の 10 月の展望レポートに向けて、ご指摘頂いた要因も含めて、更に政府のガソリン価格抑制策の延長の影響も考慮に入れて、様々なデータや情報を丹念に精査してまいりたいと思っております。』

そら良いんだがだったら今回の会合でその中間ラップの評価が出てこない(声明文が7月展望レポートの丸写し状態だった)というのは何でやと言いたい訳で、残り1か月で急に変化するとかいう不連続な変化するんじゃねえよバカチンが、とあらかじめ申し上げておきたい。

『そのうえで、日本銀行としては、情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、物価目標の持続的・安定的な実現を目指していく方針でございます。』


・リスクマネジメントアプローチのバランスがどうなったかの質問がさっそくありましてアリガタヤアリガタヤ

2番目の質疑で「見極め時期」についての質問があったのですがこれは植田さん回答を逃げてましたので割愛しまして3番目の質問、というかここで最初の重要ポイントが終わってしまうのですが、B社のI記者さんアリガタヤアリガタヤ。

『(問)総裁はかねて金融政策運営につきまして、物価目標との関連で、引き締めが遅れるリスクよりも拙速に引き締める、こちらのリスクの方が大きいとの趣旨の見解を示しておられますけれども、現在でも同様の認識を持っておられるのか確認させてください。そのうえでですね、物価上昇圧力が根強い中で引き締めが遅れるリスクを従来よりも重視する必要性、つまりリスクのバランスがですね、変化してる可能性についてはどのようにお考えかお願い致します。(後半割愛)』

完璧ですわさっすがー(^^)。

・・・・・とは言え、声明文が一言半句変更なしモードになっているのであまり回答の方は期待できないなと思ったら案の定の練り込まれた想定問答のお答えが炸裂するのでありましたorzorz

『(答)政策運営に関するリスクマネジメント・アプローチですけれども、』

これはライブで聞いてて吹きそうになったwwwそら想定問答用意しているわな。

『これについては、物価目標を下側に外してしまうリスクと上側に外してしまうリスクを比較して、これまで下側に外してしまうリスクの重さを重視して行動してきたということをご説明してまいりました。』

はい。

『繰り返しですが、その根底には、長い間のデフレやゼロ近傍のインフレの時期、その一つの原因となった金利をゼロ以下には十分下げられないという制約ということがございます。こういう認識は今のところ変わってございません。』

変わっていませんかそうですかということですが、上振れ放置のリスクについての認識には変化がないのか、という点につきましてですが、

『それを含めてどういうリスクマネジメントをとるかという点ですね。もしもその点についてバランスが変わるということがございましたら、またそれはきちんとご説明していきたいと思っています。(後半割愛)』

ということで上振れ長期化は無問題、といってるようなもんなのですが、まあ今後はこの点をもっとゴリゴリと突きますと、社会部系の記者の方々が総裁会見に大挙乗り込んできて、「物価高から国民を守るという政府の政策に対して物価上振れの状態で物価が更に上がるような大規模金融緩和を維持しているのは国民を守るべき日銀が本来の仕事をしていないんじゃないか」という突っ込み(まあ今回も突っ込まれていましたけど)やら、「物価上振れを日銀は積極的に容認している、という行動にしか見えないのだがその考えの背景には何があるのか」とか、要は物価の方でゴリゴリ聞かれたらどうするんだという話ですわな。

だってそもそも賃金何て物価が上がりだす局面では物価に遅れて上がるんだから、物価目標達成に向けて進んでいる時間帯は実質賃金下がるの当たり前で、寧ろ物価高が沈静化するときの方が実質賃金上がる訳で、賃金と物価の循環ってのは上振れスパイラルの方での循環になるんじゃネーノと考えますと、まあ今の「賃金ガー」の説明ってかなり危険な橋を渡っている訳でして、本来の世界に戻って物価で勝負すべきだし、まあそれなら中立金利に持って行くのかはともかくとして、YCCだのマイナス金利だのってのはどう見ても要らんという話になる筈なのですが、明日以降に続きますが、この点に関しても植田さんの説明にはちょっと味わいがあると思うのですよね。

という辺りの話を明日(で終わるか大阪会見もあるので謎なんだが)続きを参りたいと思う訳です。本日は時間もないのでこの辺でご勘弁くださいませ。






2023/09/26

お題「本当のハトハトジジイは植田総裁ではない疑惑が大阪懇談会の挨拶を見ると垣間見えるのだが」

さすがにこのすろーがんには笑うしかない
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/741847?display=1
【速報】岸田総理、物価高対策や賃上げ対応を柱とする経済対策を指示

『岸田総理は、物価高などに対応する経済対策の策定に向け、
▼物価高から国民生活を守る、
▼持続的賃上げ、所得向上と地方の成長、
▼国内投資の促進、
▼人口減少を乗り越える社会変革の起動と推進、
▼国土強靱化、防災・減災など国民の安心・安全の確保
など5点を柱とするよう、あす閣僚に指示することを明らかにしました。』(上記URL先より、改行は引用者による)

>物価高から国民生活を守る、
>物価高から国民生活を守る、
>物価高から国民生活を守る、

一段の物価高を進めるような政策をしている日銀をシバキアゲた方が良いんじゃないでしょうかと思うのですが、もしかして最近の日本は経済金融政策は馬鹿しか行ってはいけないという決まりでもできたんちゅかねえ。

あとさ、国内投資の促進とか言ってるけど新ニーサとかやると普通に海外物への投資が増えると思いますので、どっちかと言えば貯蓄奨励して貯蓄金融機関に国内向けの貸出を促進するようにさせた方が効率がよろしいんじゃなかろうか、と老婆心ながら思うのでありました。


〇結局大阪の懇談会はあったのね(なお公表予定の更新は行われず)

・ここもと急速に「マーケットとのコミュニケーションの後退」が進んでいるのはなあぜなあぜ???

懇談会はあったのねどころか某ベンダーでライブ中継やってました(絵柄は見たが音声はめんどくさいから聞かなかったわ)のですが、9月終わりになると実施される大阪経済団体との懇談会、結局昨日実施されてまして講演と会見が行われました模様。

まあこっちは公表されずじまい
https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm
公表予定

しかも昨日って内田副総裁が証券大会であいさつしてて、こっちのテキストも昨日出てたのですが、これもそういや植田さんの大阪出張の時に同時にベンダーのニュースになっていたので、日銀としては報道機関にだけはリリースしたけどHPで公開する気は無かった、というよくよく考えてみればかなり酷い話で、まあ証券大会の挨拶とかはホンマモンのただのご挨拶ではあるから扱いが軽いのは分からんでもないけど、大阪の懇談会っていうのは総裁参加イベントの主要なもの(きさらぎ会、内外情勢調査会、大阪懇談会、名古屋懇談会、年末の経団連挨拶)の1つだし、こんな重い行事なんだから当然ながら日程なんて無茶苦茶早い時期から段取りしている話なので、日程が直前にならないと分からないという訳はないんですよね。

しかしまあ今回は結局金曜の時点でも実施されるかどうかについてHPで何も知らせなかったということでありまして、いやあのさあ、この5本に関しては毎年実施されている重みのあるものなのに、遂にダマテンで実施するようになるとか、もう完全に一般向けコミュニケーション取る気なくて、日銀記者クラブの方だけに言えばよい位になってるでしょという風情にまあ憤怒な訳ですよ。

しかもですね、最近って7月の内田副総裁のインタビューとか9月の植田総裁のインタビューで重要な話をしやがる(9月のは何か金曜に火消しをしていたのですが)という流れになっていまして、突如奇襲攻撃のように予定外のインタビュー記事で情報発信するわ、こういう公式の場の公表日程は直前になってもHPでの公表をしないわと、まあ忌憚なく申し上げますとコミュニケーションに関しての態度がエライ傲慢になりやがったなという所でありまして、まあ甚だ遺憾の極みとしか申し上げようがないですし、その上物価高で国民生活を苦しめます政策を推進しているんですから、もうとんでもない話で、某Y田さんばりに文句言いたいわという世界になっておりますな。

まあそれは兎も角として会見の前に何故か今回の大阪講演を先にネタにするのですが・・・・・・・・・・・・


〇大阪懇談会の挨拶はしょうもないハトハト節に見えるがよく見ると巧妙な諸葛孔明の罠があるのではないかと

まあ個人の感想ですと言ってしまえばそれまでなんですが。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230925a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 大阪経済4団体共催懇談会における挨拶 ──
日本銀行総裁 植田 和男


・孔明の罠の前にまあ普通に読んでみますけど無暗矢鱈と海外先行きを懸念しておりますなあ

まずは『2.経済の現状と先行き』の所ですが、現状はまあどうでもよいので先行きを。

『(先行きのポイント)』ってところからですけど、

『こうした景気の改善傾向は、――第2四半期の実質GDPで内需はやや弱めとなりましたが――先行きも続くとみています。ただし、ここまで景気回復の原動力となってきたペントアップ需要や供給制約の緩和は、その性質上、いつまでも続くことは期待できません。これらの追い風が弱まった後の景気展開という点では、次に申し上げる2点を見極めることが、重要になります。』

ということですが、

『1つ目は、海外経済の動向です。』

アメリカン経済様が春先のSVBショックの時から比べて物凄い勢いで先行き見通しが明るくなっているというのにこの有様である。

『インフレ率がはっきりとした低下に転じるなか、米国等では実体経済も底堅く推移し、ソフトランディング期待も高まっています。もっとも、インフレ率は、現時点では目標対比でなお高めとなっています。先行き、インフレ率を目標に収束させるにあたり、景気後退を避けつつ、経済成長を持続させることができるのか、予断は許しません。』

どう見てもFEDに喧嘩を売っています本当にありがとうございました。

ちなみに先日ネタにしましたように、先日のSEPでは米国の成長率見通しに関するパーティシパントの皆様のリスク認識が6月の「ダウンサイド10、バランス7、アップサイド1」から今回「ダウンサイド8、バランス10、アップサイド1」とリスク認識もバランスに寄ってきております次第で、何で本家よりもこんなに警戒的な言い方になるのかと思うのですが、なにせ今の日銀の経済物価見通しは政策から逆算して作成されるという素晴らしい宦官仕様になっていますので致し方ない訳です。

『米国では、求人数の減少など労働市場の引き締まりの緩和を示唆する指標がみられる一方、賃金は高い伸びを続けており、インフレ率が想定ほど低下していかない可能性もあります(図表4左図)。また、これまでの急速な利上げの影響が、ラグを伴って実体経済面・金融面の双方で強く出てくるリスクにも引き続き注意が必要です。』

お前それパウエルの前で同じこと言えるの????

『米国の金融環境の動きが国際金融市場や為替市場に与える影響についても、十分注視する必要があります。』

為替市場への影響はお前さんがYCCとマイナス金利解除したら相殺できますけどね。

『中国経済の持ち直しペースが鈍化している点も気がかりです。最近の中国経済の弱さには、不動産市場の調整や高水準の若年失業率といった構造的な要因が影響している可能性もあります(図表4右図)。中国経済の回復力を巡る不確実性は大きいと思われますし、その動向をよくみていきたいと考えています。』

まあ米国をメインに言ってるけど、普通に考えて米国が大コケする感じの無い中、年内のどこかからは中国ガーの連呼に切り替わるに1万ドラクマと言った所であります。


『2つ目は、国内において、企業収益や家計所得が増加し、それが支出の拡大につながるという前向きの循環が強まっていくか、という点です。』

これなんですけどね、

『この点、企業部門では、高水準の収益が継続するもとで、それをデジタル・脱炭素関連など将来を見据えた投資に振り向ける前向きな動きが確認されています。家計部門でも、個人消費は、ペントアップ需要の押し上げ効果が弱まっていくもとでも、所得の増加に支えられる形で増加を続けると想定しています。』

『現時点では、物価上昇が重石となるもとで、値上がりが大きい食料品などでは、低価格帯商品への需要シフトといった生活防衛的な動きがみられており、これらを含む非耐久財の消費は伸び悩んでいます(図表5)。本年の春季労使交渉では高めの賃上げが実現しましたが、先行きも賃上げの動きが継続し、所得面から個人消費を支える力が強まっていくか、注視していきたいと考えています。』

だそうですが、そもそも賃金の方が基本的に後から上がるんだから(ハマコー先生がQQE始まる前に仰っていた通りの展開なのであって今物価高ガーとか言ってる人間で置物理論支持しているのがいたらちょっと義務教育から勉強をやりなおした方が良いですね)この説明も超恣意的に急に達成したとかそういう事になると思うのよね、まあ今に始まった話じゃないけど。


・なんだよこの「第一の力」「第二の力」ってセンスのねえネーミング

『3.わが国の物価情勢』ですが、最初の『(「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現)』はうんこみたいな話をしているだけなので割愛しまして『(物価の現状)』の部分。

『こうした昨年来の物価上昇には、二つの力が作用しています。「第一の力」は、2021 年以降の大幅な輸入物価上昇の価格転嫁です。消費者物価を品目別にみますと、食料品など輸入原材料を多く使う品目で上昇が目立っており、これまでの物価上昇の多くが、この「第一の力」によるものであることは明らかです。ただし、この「第一の力」自体は、輸入物価の上昇という一時的なショックを起点としたものであり、いずれは減衰する性質のものです。』

とか言ってるけどグローバル物価の上昇それ自体がグローバルな構造変化に起因して発生している可能性についてシントラでもジャクソンホールでも主要国の中央銀行の皆さんやアカデミアの方々は真剣に議論をしている、という状況だというのに、相変わらずこの理屈で押し通すというのがまずこの時点で現実を直視しようとしない太平洋戦争末期の昭和軍人ムーブなのか、屁理屈で通すしは無いのは分かっているけど新しい屁理屈を考え出すセンスすらないのかがよくわかりませんが、まあセンスが無いのもそうですし、物価がそんなに下がらなかった時の申し開きは出来ないので展望レポートの関係者一同まとめて東京湾海底片道ドラム缶クルージングツアーじゃなという感じですな。

『価格転嫁の大きさが過去を上回っており、2%を超える物価上昇率が長引いていることは事実ですが、これだけで、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現が近づいていると評価することはできません。』

それは良いんだが目の前の「物価高から国民生活を守る」との整合性を取って説明して頂きたい。

『目標に近づいたか評価するうえでポイントになるのは、賃金と物価の好循環につながりうる「第二の力」、すなわち景気が改善するもとで、賃金が上昇し、それが物価の緩やかな上昇につながるというメカニズムが強まっていくか、それに伴って、将来の価格上昇を見越したフォワードルッキングな賃金・価格設定が広がっていくか、ということです。』

しっかしだっせえなこの「第一の力」「第二の力」ってネーミングという感じでして、まあ金融政策点検の第一の柱と第二の柱ってのをもじったのは分かるんですけど、そもそもあの点検自体が完全に我田引水の点検になっていて真面目にワークしていないので、それをもじられましてもドッチラケという感じだし、これ「第一の力」として外生的な価格ショックを持ち出しているのって、そもそものQQEのコンセプトと全然違う話(QQEはインフレ期待に直接働き掛けながら総需要の喚起を促す金融政策を実施することによって自律的に物価上昇の経路に導こうという話で、外的な価格ショックといういわば神風期待の政策ではありません)を堂々としている時点でお前は何を言ってるんだという感じですし、まあとにかくセンスがないにも程がありまして、こういうネーミングセンスは福井の俊ちゃん(は単にルー大柴のパチモンなだけ説がありますが)か雨宮さんしか持ち合わせていないのであって、俊ちゃんでも雨宮さんでもない皆さんはちゃんと愚直にやらないとダメですよとご進言差し上げておきますわ。


『この点、最近では、企業の賃金・価格設定行動の一部に従来よりも積極的な動きがみられ始めており、「第二の力」が少しずつ物価に影響を及ぼし始めていると感じています。賃金設定面では、多くの企業が、より戦略的に人材確保を進める方向にシフトしてきました。春季労使交渉では、新卒採用を優位に進めることも念頭に、賃上げ幅を高めた先が相次ぎました。また、正社員の中途採用に本格的に取り組む先が増加するもとで民間の転職市場も拡大しており、人材獲得競争は激しさを増しています。経済活動の水準が高まり人手不足感が強まるもとで、先行き人口動態の変化もあって労働供給面の制約が強まっていくという課題が改めて認識されているようにも思われます。』

この部分、孔明の罠があるので改めて小見出しを変えて。


・金曜の総裁会見と説明が違くね???という諸葛孔明の罠その1

金曜の総裁会見を後回しにしちゃっていますけど、総裁会見やってるとそれで1回分の分量潰しちゃう(下手したら2回分)なので、その前にこの挨拶テキスト見て鮮烈に思ったのが2つあったのでそこをやりたかったわけですよ。

さて金曜の総裁会見なんですけど、
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230925a.pdf
総裁記者会見
――2023年9月22日(金)午後3時30分から約65分

最後の質疑でこんなのがあった訳ですね。

『(問)物価の見立てについて一問お伺いします。一部のエコノミストなどではサービス価格で特に帰属家賃を除いた数値の上昇率が相応に高いことなどを主な理由として、輸入物価上昇の転嫁にとどまらない内生的な物価上昇のメカニズムが働き始めているんじゃないかと指摘する声もあるんですけれども、それについて総裁の見解をお願いします。あともしそういう内生的なインフレ圧力が高まっているとすれば、それは好循環を目指すうえで、チャンスになる要因なのか、あるいは上振れリスクとみた方が良いのか、その見解も併せてお願いします。』

まさにこの「第一の力」「第二の力」の質問になっていますよね。

『(答)サービス価格のところは非常に注目してみております。おっしゃるように持続的・安定的なインフレが達成される、2%達成されるというケースでは、サービス価格もそれ相応の上昇率で、全てのサービス価格とは限らないですけれども、ある程度以上のサービス価格が上昇を続けないとそういう状態にはならないということで、ここは以前も申し上げましたが、大変注目して毎回点検しております。』(以上の部分のみ直上URL先9/22総裁定例記者会見より引用)

となっていまして、これ結論は言ってないのですけれども、聞いてた時の印象と全体的な質疑の流れからすると、「まだまだそんな段階ではない」と言わんばかりの感じだった訳ですよね。


然るに今回の挨拶では・・・・・・・・・・・・・(再掲します)

『この点、最近では、企業の賃金・価格設定行動の一部に従来よりも積極的な動きがみられ始めており、「第二の力」が少しずつ物価に影響を及ぼし始めていると感じています。』

と思いっきり言及している訳でして、おいお前どっちですねん、と思うのですが、更にとんでもない諸葛孔明の罠がこの挨拶のもうちょっと後にありましてですね・・・・・・・・・


・諸葛孔明の罠その2:賃金上昇と物価上昇の悪循環の可能性をしてきしてませんかこれ??????

さっき引用した続きの部分になるのですけど、

『販売価格の設定という面でも、一部にこれまでにない動きがみられます。』

ときまして、

『企業の方々からは、「長いこと販売価格引き上げをしてこなかったので、社内のノウハウ不足から、昨年はコストが上昇しても値上げに時間を要した」といったお話を伺うことがありました。もっとも、最近では、そうした状況に変化がみられ、価格の改定頻度は高まってきています。』

ナンジャソラというのはさておきまして、

『仕入価格を販売価格に反映するだけでなく、地域や時間帯によって価格を変更するダイナミック・プライシングを採用するなど、戦略的に価格設定に取り組む動きもみられています。』

これも軽い孔明の罠で、「物価統計上では必ずしも完全に把握できない値上げの動きがある」って話をしているのですが、その次がとんでもない孔明の罠でして、

『一部ではありますが、将来の賃金コスト等の上昇を見越して、販売価格を予め引き上げるというフォワードルッキングな価格設定の動きが出てきていることも、賃金と物価の連関の高まりを示唆する重要な変化として注目しています。』

ちょwwwwwwwww

これですね、「販売価格を予め引き上げる」動機が「将来の賃金コスト等の上昇を見越して」になっているのが明らかに孔明の罠でして、好循環の物価上昇というのは「将来の賃金上昇による需要の強さを見越して」販売価格をあらかじめ引き上げる動きなのに対して、この植田さんの説明ってバチクソ欧州タイプの賃金物価スパイラルの例を出している訳ですよ。

でもってもう一つ言えるのは「賃金の上昇を見越して価格を引き上げる」ということはこれ即ち賃金の上昇をがっつり確認しなくても物価上昇の定着化は判断できる、という意味にもなる訳でして、何かさっきの部分とこの部分って、この挨拶のテキストを作っている際に植田さんがしらっと入れ込んできたんでネーノとか思ってしまう訳ですよ。

と申しますのも、定例記者会見って当然のように想定問答集を読むわけで、孔明の罠その1で引用したあの第二の力??いえいえそれはまだですよ、みたいなのって事務方謹製の想定問答な訳で、一方でこうやって植田さんの講演(挨拶)として出している部分に関してこのような孔明の罠を設けている、ということは、これは即ち植田さんがハトハトジジイなのは事務方に無理矢理振り付けられていて、実際には正常化に対して前向きに考えている(元々の主張はそっちだったんだし・・・・・)という説を考えて見たくなるわけですね。


ちなみにどうでもよいのですが、たまたま今回はどこぞのベンダーさんがライブで放映してた(のでアーカイブも見れると思いますよ、Bから始まるベンダーさんですけど)のでこういうのを始めてみたから、通常がどうなっているのか分からんのですけれども、一般的に審議委員の金懇の場合はご当地の支店長は当然出席するとしても、あとはまあ秘書の方とか政策広報の方とかスタッフレベルの方々が随行すると思うのですが、今回の画像見てたら新旧企画局長(旧の方は当然ながら金融機構局長という肩書でご登壇してましたけど)と大阪支店長、という超豪華メンバーでございまして、これは何ぞと思ったのですが過去の大阪名古屋の懇談会がどうなっているのか知らんので判断保留。


まあそんな訳で、今回の挨拶の方が植田さんの意思がそれなりに入れられるもんだとしたら、巧妙に敷設された諸葛孔明の罠(これスーッと読んでるとクソ面白くないハトハト講演に読めてしま素んですよね)がある点、実は植田さんがハトハトジジイなんじゃなくて、植田さんは事実上の主君押し込めを食らって本来の主張ができなくなっているのではないか説も無くは無いのでは、と思ってしまう昨日の大阪懇談会(とその前の9月読売インタビューも併せて考えると)でありました。

まああくまでもアタクシの脳内妄想成分が結構ありますのでこの辺りの推測は話100分の1くらいにして聞いて頂ければとは思いますが。






2023/09/25

お題「益々コミュニケーション何やってるんだかのハトハトジジイアゲイン(決定会合レビュー)」

とまあそういう訳でハトハトジジイアゲインでしたのでサラサラと参りましょうず。

〇決定会合レビュー声明文:Youは何しに読売インタビュー???

という訳でご案内の通りでしたが。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230922a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2307a.pdf(7月展望)

展望レポート基本的見解の記述と比較しますね。政策決定内容は同じなので割愛しまして、

・現状認識:7月展望からほぼ2カ月経過しているのに同じですかそうですか

『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(7月展望)

はあそうですか。

『海外経済は、回復ペースが鈍化している。』(今回)
『海外経済は、回復ペースが鈍化している。』(7月展望)

と来まして、

『そうした影響を受けつつも、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響の緩和に支えられて、横ばい圏内の動きとなっている。企業収益が全体として高水準で推移するもとで、設備投資は緩やかに増加している。』(今回)

『そうした影響を受けつつも、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響の緩和に支えられて、横ばい圏内の動きとなっている。企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は緩やかに改善している。こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加している。』(7月展望)

業況感云々は短観直後の時だけ登場するのでここが前回対比無いことには意味はないです。

『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、緩やかなペースで着実に増加している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は緩やかに増加している。』(今回)

『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、緩やかなペースで着実に増加している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は緩やかに増加している。』(7月展望)

まあ全然現状認識変わってませんわ、という話で現状認識変わっていないというのはそれはそれでよろしいのですが、7月から9月までほぼ2か月あって、9月から10月って1か月しかないのに、これで10月の展望でいきなり認識を大きく変化させますと「お前らは9月に何を見ていたんだ」という事になるのですけれども、会見を聞いておりますとあのハトハトジジイ、「10月に詳しく点検します」の連呼で1回パス攻撃をしているように見えましたけれども、毎回真面目に点検しているんだったら3か月に1回突如不連続に認識や見通しが変化する、ってえのは意味不明にも程がある訳で、年4回しか見直ししてないんだったら給料4分の1に下げろや馬鹿と思ってしまう今日この頃。しかも次回の展望レポートから前回の展望レポートまでの間で言えば9月って中間点よりも後ろにある訳で、ここから1か月で突如認識が変化するとか、お前ら真面目にコミュニケーションする気あるのって思っちゃいますよね。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、ひと頃に比べればプラス幅を縮小しているものの、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足もとは3%程度となっている。予想物価上昇率は、再び上昇の動きがみられている。』(今回)

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、ひと頃に比べればプラス幅を縮小しているものの、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足もとは3%台前半となっている。予想物価上昇率は、再び上昇の動きがみられている。』(7月展望)

ということで相変わらず「既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から」としか書かず、サービス価格の上昇などによるホームメードインフレの可能性に関しては頑なに言及しない、というスタンスですね。

あと、7月の展望から「再び上昇の動きがみられている」という記述になった予想インフレなのですが、これそもそも何をもって「上昇の動きがみられている」というのか(寧ろ既に上がっていて高止まりだろと生活実感的には思うけど)というのが謎なのと、7月の時点で「再上昇」と言い出して2カ月も経過しているんだから、その上昇した予想物価上昇率とやらの水準がどの位だと思っているのか、ちょっと定量的に出してくれませんかねえ、と思いました。


・先行き見通し:今回なんも変えないで10月に突如変更したら逆に笑えるのだがやりかねないのが日銀クオリティ

『先行きのわが国経済を展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。』(今回)

『当面のわが国経済を展望すると、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果などにも支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。』(7月展望)

これちなみに私は基本的見解の鏡(<概要>)からは比較引用しない人なのですが、鏡の部分と本文の部分だと本文の方では書いてあるけど鏡では書いてないとか、書き方が微妙に異なる、とか変な事になっていてその点非常に引っ掛かっているのですけれども(しばらく前にネタにしましたけど4月の展望でそんなのがあった)、ここって鏡と本文何で合わせないんですかねえ。

でまあ「ペントアップ需要の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果」という中でメインはペントアップ需要の顕在化ということに相変わらずなっているのですが、これも段々そうなのか??って感じが漂う訳で、そもそもこの先の部分にもあるように、ペントアップ需要って先行きでは減衰するって見通しになっているのに、後生大事にペントアップ需要をメインにするのかよとは思う次第です。

『その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回)

『その先のわが国経済を展望すると、所得から支出への前向きの循環メカニズムが経済全体で徐々に強まっていくなかで、わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。ただし、見通し期間終盤にかけて、ペントアップ需要の顕在化による押し上げ圧力が和らいでいくもとで、経済対策の効果の減衰もあって、成長ペースは次第に鈍化していく可能性が高い。』(7月展望)

一応ですけど、過去どっかで説明してた筈(出所はちょっと出てこないけど)なのですが、声明文の場合は基本的に1年程度の先行き見通し、展望レポートの場合はもうちょっと長く、ということで2年から3年程度の見通しなので、「見通し期間終盤」云々はネグって比較して良いのですが、見通しはまあこういう感じで同じなんですけど、展望では延々と「所得から支出への前向きの循環メカニズムが経済全体で徐々に強まっていく」という見通しを出していますが、じゃあ進捗はどの位になっているのか、という話をちゃんとして頂きたい訳ですけれども、これもどうせどこかで不連続にいきなり「循環メカニズムが働いている」にワープするんでしょうねという感じです。


『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとでプラス幅を縮小したあと、』(今回)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとでプラス幅を縮小したあと、』(7月展望)

プラス幅縮小しませんけど何なんでしょうかね、という感じですが、これもまた後でネタにしますけど、消費者物価指数の前年比の話しじゃなくて原指数ベースでみたら今次物価上昇局面で当初出遅れていたコアコアがバンバン上がってきてヘッドラインに追いつきそうな勢いになっている訳で、どっからどう見ても物価強いだろという話なんだが、完全にこの説明を変える気が無いのは何なんですかねえ、プラス幅縮小するって見通し何回後ずれしていますか、ってなもんです。

ちなみに、前月比ベースでの上昇が変わらないままで推移したと置いてもこのあと「前年比で見た場合のプラス幅」は縮小するのですが、前年比のプラス幅が縮小したからと言ってもそもそも原数値の上昇ペースが(年率換算で2%をかなり上回る状態で)変わらないのに「物価上昇ペースが鈍化するからどうのこうの」とかいうのも話がおかしいんですよね。

『マクロ的な需給ギャップが改善し、企業の賃金・価格設定行動などの変化を伴う形で中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(今回)
『マクロ的な需給ギャップが改善し、企業の賃金・価格設定行動などの変化を伴う形で中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(7月展望)

寧ろ上がり過ぎですが何か。

ちなみに以上の部分、展望の基本的見解本文から比較引用しましたが、鏡から比較引用すると全文一致になりますですわ。


・・・・・・・とまあそういう事で、まあ見事に前回の展望レポートと事実上の全文一致な訳で、これで10月見通し大きく変えたらお前は9月に何の点検をしてたのかと小一時間問い詰めたいのですが、こんなの背景として「金融政策」があるのが明らかでして、とにかくハトハトジジイとそのなかまたちの皆さんとその手下何だか腹話術吹き込んでいる主体なんだか知らないけど事務方の皆様におかれましては、政策の変更を連想させるような事を何一つ事前に出したくなくて、自分の思うように長期金利が動いて欲しいとかいう傲慢ここに極まれりという発想で、そこを起点にコミュニケーションしているもんだからこういう「わざわざ読売新聞と単独インタビュー組んでスタンスについての修正を示唆したのに、決定会合終わってみたら一言半句変更の無いハトハトジジイモードに再度豹変」というこのジジイ人格が完全に2つあるんじゃないかという(実はまあその部分には議論の余地があるのだが詳しくは会見ネタの時に参ります)ハイパー二枚舌コミュニケーションが発生しておるわけで、結局お前ら何をどうしたいのというのが全くもって訳分らん状態になっておりますな、というのが今回の声明文の経済物価情勢の現状認識と先行き見通しの部分。

ガイダンス変更しないにしたってこの辺の認識を前進させるということだってできるだろうに、それすらしないとかいやマジでお前らコミュニケーション真面目にやる気あるのかよとしか申し上げようがありませんですわな。


・リスク認識:リスク認識も変わらないんですか随分米国様は成長見通しを上げましたけどねえ

リスク認識のところはさすがに展望基本的見解本文の方だと長すぎなので鏡から引用しますよ。

『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(今回)

『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(7月展望)

まあここに関してはそもそもリスクバランスの記載をしないからリスクバランスがどう変化したとかそういう話が記載されないというポンコツ仕様。


・政策ガイダンス:いやー変えないんですかそうですか9月9日の読売新聞インタビューは何だったんですかねえ

『日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。』(今回)

『金融政策運営については、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。』(7月展望)

そもそも物価上昇局面において名目賃金の上昇は遅行するものなので、実質賃金の上昇まで待っていたら金融緩和のやり過ぎによる弊害が発生(というか既に発生していますが)しますし、名目賃金であれば物価上昇には追いついていないけど上昇している訳で、このハトハトジジイがぶっこんできた「賃金の上昇を伴う形で」っての呪いの文言になっていますよね。まあこれは完全にハトハトジジイの罪なのでその罪はどっかで請求書が回って来ると思いますけど、その前にこっちに円安コストプッシュという形で請求書が回ってきておりますな。

『「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。』(今回)
『「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。』(7月展望)

ときまして、

『マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(今回)
『マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(7月展望)

実績値は3%超えだし、そもそも原数値の前月対比の上昇ペースだって年率換算で2%を盛大に超過している状態が続いているのに、なんでこの文言を削除しないのか全く意味がわかりません、今回の会見でも質問している記者の方がいてエライ!!と思いました。

『引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』(今回)
『引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』(7月展望)

そもそも2%物価目標達成に時間が掛かる、って認識だったら早期達成のために追加緩和措置をしろってんだよ馬鹿。

ということでこちらも変更なし、ということでまあ実は「今回変更ありませんでしたねえ」の3行コメントで済むものをお前は何をやっているんだという説はありますが、まあ備忘のために。


〇総裁記者会見:9月9日の読売インタビューで行ってた話はどうしたのやら

ということで会見の詳しいのは会見録出たらネタにしますが、きっちりと「リスクマネジメントアプローチ」に対する認識の変化はあったのかという問いがあってよかったよかったと思いました。でもってそれに対する回答が相変わらず「下振れの方が問題が大きい」という認識でしたので、これは物価高批判が起きたら日銀は八つ裂きにされてハトハトジジイは磔獄門、余の者終生遠島を申し付けられまして、とりあえず日銀から金融政策機能を召し上げて(現業部門は重要な社会インフラなので日銀自体は残る)金融政策に関しては昔のように大蔵省日銀局状態でやってりゃいいんじゃないですかねーという悲しい未来が待っているというのが確定しますなあ、という感じではありました。

とは言いましてもこのハトハトジジイ、今回の会見は声明文がご案内のようなゴミオブゴミだったために糞真面目に正座して(ウソ)拝聴しておりましたが(しかも画面はあんまり見てないで別の作業してましたけどwww)、今回は幹事社の差配が良かったのもあるけど、例のお二方の「物価高放置が国民生活にプラスになっていないだろ」というツッコミに対して(今回思ったんですけど質問の順は今回の感じで先鋒にY田さんを持って行く方が良いと思いました)結構丁寧かつ真面目に回答していたりしてまして、これハトハトジジイとかアタクシ勝手に二つ名を命名しておるわけですが、植田さんはさすがに物価高批判がこのままだと日銀にすべて向かってしまってエライ事になりかねない、って認識があるんじゃないのかという感じも受けたんですよね。

そういうの全然気にしないで信じる所の金融緩和でハトハト政策ヨ、ってな感じだったらもうちょっと雑な回答をする筈で、この部分が結構ちゃんとした回答をしていたのは、前回の展望でお見苦しい所をお見せした分のカバーという面もあるのかもしれませんけど、これ若しかしたらハトハトジジイ必ずしもハトハトジジイに非ずで、寧ろ振付師が危機感ナッシングの寝ぼけ野郎の集団なのではないか、という気もする訳です。

まあいずれにせよ、この辺「誰が何考えているのかさっぱり分からん」というのが植田体制発足して6か月目に入る今日この頃の特徴でして、とりあえずヒラ審議委員の情報発信をどうでも良いと思っているのは先般の4人連続金懇で良く分かったのですが、遊撃奇襲攻撃的に出て来るメディアインタビューと決定会合とその他偉い人の金懇系とで、同じ人なのに言ってることとやってることの整合性が取れないとかいうの、マジでお前らどういうコミュニケーションしてるんだと言いたい訳ですな、うんうん。


〇ところで今日って結局大阪出張してるのしてないの

うーん謎
https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm
公表予定

『資料や統計などの公表予定、金融政策決定会合や総裁定例記者会見の開催日程などを掲載しています。原則として、毎週金曜日に更新されます (2023年9月22日更新)。』

>2023年9月22日更新
>2023年9月22日更新
>2023年9月22日更新

でもって公表予定の最新版を見ますと、

9月25日(月) 【記者会見】植田総裁(9月22日分)
        実質輸出入の動向(詳細)
26日(火)   企業向けサービス価格指数(8月)
        基調的なインフレ率を捕捉するための指標
27日(水)   政策委員会・金融政策決定会合議事要旨(7月27・28日分)

これ見た感じだと大阪出張して懇談会やって会見するって雰囲気が漂ってこないのですけれども、まあ確かに昨年も9月の終わりに大阪での懇談会あったので時期的には別にあってもおかしくはない(決定会合の実質翌日にやるのはちょっとどうなのかと思うけど)のですが、これもし今日やるなら9日の読売インタビューや今回の会合との整合性をみれる(どうせ挨拶要旨は想定問答の作文なのでキモは会見になる筈)のですが、結局どっちなんでしょ。

いずれにせよ、大阪と名古屋の懇談会って当たり前ですけどかなり事前に日程を組んでいる筈で、何でこれ日程公表が毎度ギリギリになるのかが結構謎で、もっと早く出せよと思うんですけど(防犯上の問題とかならしゃーないけどそれならそうと言ってほしい)。


〇CPIェ・・・・・・・と思ったら時間がないわ(滝汗)

https://www.stat.go.jp/data/cpi/index.html
消費者物価指数(CPI)

ちょっと時間が無いので基調的な物価出た時にでもまたネタにしますが、

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)8月分(2023年9月22日公表)

≪ポイント≫
 (1)  総合指数は2020年を100として105.9
    前年同月比は3.2%の上昇  
 (2)  生鮮食品を除く総合指数は105.7
    前年同月比は3.1%の上昇  
 (3)  生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は105.2
    前年同月比は4.3%の上昇  

こちらなんですけど、まあ例によって報道資料の方を見た方がわかりよいのですけど、

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消 費 者 物価指数
全 国 2023年(令和5年)8月分

『表1 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の指数及び前年同月比』

の原数値の系列を見ますと、先ほど申し上げました通りで、コアコアCPIって昨年8月段階では総合が102.7、コアが102.5に対してコアコアって100.9だったんですよね。

でもってこの1年で何が起きているかというと、直近の8月は総合105.9、コア105.7、コアコア105.2と思いっきりコアコアが上昇してきている訳でして、日銀様に置かれましては昨年の4月展望レポートでわざわざ「ヘッドラインやコアでは一時的な物価上昇の影響があるからコアコアの見通しも参考に出します」とその時にまだ上がっていなかったコアコアを見通しの参考計数として加えた訳ですが、そのコアコアがホイホイと一時的要因であがっていた筈のヘッドラインやコアに追いついてきている訳です。

オイコラお前らどうやって説明するんだよこの現象オラオラちょっと出てこいやああああああ!!!!!!!

という感じでありますな、というのだけ書いておきますよ今日は。




2023/09/22

お題「さて日銀決定会合/SEPの分布図を見ますとメディアンの数値よりも「景気にもインフレ鎮静にも自信ニキ」さが」

いやまあさてどうなるんでしょ。

〇日経の記事のリードだけだと決め打ちしてないのかしら(無課金なのでその先は知らんのだが)

まあ抜くとしたら読売が日経のようなきがするのですが、読売は全然そういう記事がないっぽい
https://www.yomiuri.co.jp/
(「経済」で見てもなんもない)ので日経ちゃんを見る。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB213PE0R20C23A9000000/
日銀、YCC修正後の市場動向を点検へ きょう決定会合
金融政策
2023年9月22日 5:00 [会員限定記事]

『日銀は22日に開く金融政策決定会合で7月の政策修正後の市場や経済・物価の動向を点検する。物価高の長期化で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正やマイナス金利政策の解除、政策金利のフォワードガイダンス(先行き指針)の変更が選択肢として考えられる。現時点では大きな政策変更を予測する市場関係者は少ない。』(上記URL先より、以下は会員記事になります)

ということで、今回は一切の決め打ち無し、ということでそらまあ今日いきなりYCCのレンジが再拡大だの0%目標が引き上げだのというようなお茶目な事はないでしょうと思うので、大きな政策変更というようなものはねえだろとは思いますが、ゆうて日経もガイダンス文言なども含めた変更一切無しとの決め打ちもしないで「市場関係者」をダシにして一応の選択肢を並べるにとどめるということなので、これは決め打ちをパスした、って感じですかねえ。よー知らんけど。

まあ決定会合で何もなかった場合、会見でハトハトジジイが復活する可能性もありますし、そうじゃなくて9月9日の真人間としての植田先生がそのまま登場する、となるとこれまた10月に向けて期待値高まりますわという話なので、まあ何ともかんともよくわからんではありますな。

結局これ先日来申し上げておりますように「リスクマネジメントアプローチ」が拠って立つ基本的なスタンスに変化があるのかどうかというのが一番大事な話になりますから、何月になると見極めができますかとかそういうクソクダラナイ質問じゃなくて、物価高放置と物価下振れとを比較した場合に国民厚生に対してより悪いのはどちらか、という点に関する見方が5月から足元までの金融経済物価情勢の変化を踏まえても全く変化がないのか、それともある程度変化があるのか、というのさえ回答して頂ければ今回の決定会合の会見はおしマイケルって感じだと思うのですが、さてどんな感じになるのやら・・・・・・・・・・・・・・・・・・


しかしまあ何ですな、昨日は寝起きFOMCがあったからネタにしませんでしたが、

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230920/k10014200741000.html
財務官 “円安 米当局と極めて緊密に連携”
2023年9月20日 12時41分

『こうした中、財務省の神田財務官は20日に財務省内で記者団の取材に応じ、「海外の当局、とりわけアメリカの当局とは極めて緊密に意思疎通を図っており、過度な変動は経済に好ましくないという認識を共有している」と発言しました。そのうえで、「為替市場の動向を緊張感を持って注視し、行きすぎた動きに対しては、あらゆる手段を排除せずに適切な対応をしていきたい」と述べ、市場の動きをけん制しました。』(上記URL先より、以下同様)

ということなのですが、水準は確かに円のジリ安シーザーな訳ですが、別に動き自体は全然大したことはなくて、匍匐前進か牛歩戦術かってなもんな中で「過度な変動」を連呼されると違和感が結構あるなあと思う訳ですし、

『外国為替市場で円安が進む中、アメリカのメディア、ブルームバーグは19日、イエレン財務長官が日本の当局による円買いの為替介入の可能性について、「為替相場の水準に影響を及ぼすのではなく、為替の過度な変動を抑える目的であれば理解できる」と述べたと報じました。

ニューヨークで開かれている国連総会に出席しているイエレン長官は記者団から、「日本の当局が外国為替市場で円買いの為替介入を行った場合、理解を示すか」と問われたのに対し、「詳細な内容次第」だとしたうえで、「こうした介入については日本とふだんからコミュニケーションを取っている」と述べたということです。』

ということで、アメリカン当局様のご理解を得るためには恐らくドル円がぶっとんでくれないと介入が出来ません、というお話になる訳ですが、一番碌でもない妄想として思いついたのは、今日の会合で何もしない上に総裁会見でいつものハトハトジジイに戻って政策修正軟化するかよヴォケとぶっこんでしまう→ドル円ぶっ飛んで150円を軽く抜ける→「過度な値動き」なのでアメリカン当局様の理解も得まして介入、というマッチポンプ介入というのを思いつくわけですな。

しかしまあこれは流石にカシュカリ総裁の頭髪並みに不毛な話で、今日ハトハトジジイがハトハト音頭を踊って円安が飛ぶのかとかまあ分からん(と言ってもさすがに飛びそう)のですが、150円抜けて来て介入したって売られた分が戻るだけで、ただの介入原資の無駄遣いと、介入をしました的なやってるふりアピールの場に留まってしまうんなじゃネーノとしか思えない訳でして、おめーそれって意味があるのけと思ってしまうのですが、今の日銀やってることが支離滅裂だから何やりだすがさっぱり分からんですが、そんなクッソ下らない茶番劇の可能性もワンチャンのワン位はありそうですな、南無阿弥陀仏。



〇FOMCレビューなんですがちょっとSEPをもうすこし見て見ようかとおもった

えーっとすいません。昨日のFOMCって全体的に順当オブ順当で、確かにドットチャートの2024年とかが50bp引き上げになっているのですが、あれはそもそも6月のドットがおかしくて、6月のドットって年内ガリガリ利上げしたと思ったら来年になるとガリガリ利下げするという図式になっていまして、そもそも6月のドットが何でそんなキチガイじみたものになっていたかというと、皆さんが年内の引き締めについてのみ引き上げを行ったもんだからそういう変なものになった、という形だったんでございまして、真面目に政策パス考えたらどっからどう見ても9月の方が自然体に近いだろと思うのであります。

とは言えなんか知らんが答え合わせしてみたらアメリカン金利がそこそこ上昇していて、お前らどんだけ早期利下げ転換を期待してたんじゃ(と思ったら今日もアメリカン金利上昇しているのかよ)というお話なんですが、こちとらメリケン人じゃないのでこの辺りのノリはさっぱりワカランチ会長。



で、SEPなんですがこれは「展望レポート」みたいなもんですので、本当は太古の昔からちゃんと読むべきなのは分かっているんですが、英文でそこそこの量を読むのはワイの英語力では無理があり過ぎのありなのと、会見である程度状況説明があるのと、データディペンデントの出たとこ勝負になったの最近なので、というのもありまして。

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20230920.htm
September 20, 2023: FOMC Projections materials, accessible version
Accessible version
For release at 2:00 p.m., EDT, September 20, 2023
Summary of Economic Projections

ドットチャートとかの場合PDF見るの一択なのですが、数字的に見たい場合はこっちのバージョンお勧め。

・成長率見通しはメディアン見て上がっているのもそうですが分布をみると更に分かりやすい

上記のHTMLバージョンをブラウザーに出しますと恐らく上4分の1くらいになるんですけど、

『Figure 3.A. Distribution of participants’ projections for the change in real GDP, 2023-26 and over the longer run
Histograms, four panels.』

ってのがあります。例によって図表を貼りつけるのはしませんので上記URL先を見に行ってちょという話になるのですが、これを見ますと、

2023年見通し:物凄い勢いでジャンプアップ(6月対比の話です、以下同様)
2024年見通し:メディアンも1.1→1.5で結構あがりましたが、内訳を見ると上方にティルトしててメディアンで見るよりも強いイメージ
2025年見通し:メディアンで見ると変わらず(ロンガーランに収斂するという見通し)だけどざっくり見るとやっぱり少し上にシフトしている

ということでまあ成長見通しに関しては強い上に、ちょっと下にスクロールして画面で言うと多分真ん中辺りになるのですが、

『Figure 4.A. Uncertainty and risks in projections of GDP growth』

というコーナーがありまして、

『FOMC participants' assessments of uncertainty and risks around their economic projections
Histograms, two panels.』

ということで、パーティシパントによる不確実性の認識と上下リスクの認識の分布がしめされているのですが、

『Uncertainty about GDP growth

Number of participants
              Lower  Broadly Similar  Higher
September projections     0      5      14
June projections        0      4      14  』

先行きの不確実性は高い、と仰せになっておられまして、

『Risks to GDP growth

Number of participants

             Weighted to Downside Broadly Balanced Weighted to Upside
September projections        8         10         1
June projections          10          7         1  』

となっていまして、ダウンサイドが減ってバランスが増えていますし、この間に成長見通しが上がっているのですからこれは結構な強さじゃん、という話になると思うんですよね。


でもって物価の方ですけど、こちらの分布の方は

『Figure 3.C. Distribution of participants’ projections for PCE inflation, 2023?26 and over the longer run』
『Figure 3.D. Distribution of participants’ projections for core PCE inflation, 2023-26』

と総合とコアの分布が出ていますが、図表はちょっと見ていただくと分かると思うのですが、SEPのメディアン見通しで見た場合はそんなに下がっていない見通しになっているのですけど、分布の表を見ますと前回対比で明らかに2023年、2024年ともに収斂する格好になっており、ヘッドラインのPCEインフレで言えば、2023年のメディアンって6月の+3.2が今回+3.3になって一見すると上がったように見えるのですが、分布をみると回答が(そらまあ年の半分以上終わってるんだから収斂するのは当然とはいえ)3.1−3.4の間にほぼ収斂される格好になっていて、前回の場合は3%割れ位まで見ている人も結構(6人)居る間に3.5%から上絵見ている人も結構(7人)いる、みたいな感じでしたので、見た目よりも物価の見通しに関してはインフレ鎮静化に自信を深めている感を受けました(個人の感想ですが)。

ああそれから2024年のヘッドラインについては2.3−2.6のところで合計14人が集中していて、こちらも収斂した感じになっております。

でもって

『Figure 4.C. Uncertainty and risks in projections of PCE inflation』

ですけれども、

『Risks to PCE inflation

Number of participants

             Weighted to Downside  Broadly Balanced  Weighted to Upside
September projections        0          5          14
June projections           0          6          12 』

見通しは収れんしたけどアップサイドリスクの認識は若干増えたという感じですかそうですか


『Uncertainty about core PCE inflation

Number of participants

                  Lower   Broadly Similar  Higher
September projections        1        2       16
June projections           1        1       16 』

不確実性は相変わらず不確実性のようですな。


『Risks to core PCE inflation

Number of participants

             Weighted to Downside  Broadly Balanced  Weighted to Upside
September projections         0         5         14
June projections            0         5         13 』


このヘッドラインとコアでリスクバランスの回答が違う人が6月にはいた(今回はいない)というのもナンジャソラ感はありますけどご参考までに。

ということで会見ネタは日銀ネタと合わせて来週ボチボチ成敗するか、まあ何か面白政策あったら明日の朝ちゃんと起きれたら更新するのもやぶさかではないがやぶさかではないと言っているだけなので結局日曜の夜に帳尻更新とかになりそうですわ(アカン)。







2023/09/21

お題「毎度の寝起きでFOMC」

アタクシは原始人仕様なので起きた時にお日様が出ていると出ていないのでは活動のパワーが違ってくるのでこれからの季節は春まで朝がきつくなるのが仕様ですorz


〇声明文比較:声明文の基本的なトーンは動かしてないけど経済は好ましい方向になっているという感じかしら

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230920a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230726a.htm(前回)

・第1パラグラフ:経済活動は上向き、雇用情勢はクールダウンとか理想の展開じゃん

『Recent indicators suggest that economic activity has been expanding at a solid pace.』(今回)
『Recent indicators suggest that economic activity has been expanding at a moderate pace.』(前回)

経済の現状についての現状認識を上方修正していますが、そもそもSEP今回出ていますけど、SEP見ますと2023年の実質成長見通しが6月SEPの1.0%から今回2.1%に上がっているというジャンプアップぶりでございまして、ちなみに3月SEPでは0.4%だったので、どんだけあの頃の金融機関問題にビビっていたのかがよくわかりますなあ、という話だしアメリカン様がこんなに経済の認識引き上げる中で明日の日銀が「海外経済の下振れリスクガー」を連呼するのFEDに喧嘩でも売るんですかねえ(いやまあどうせ中国ガーなんですけど)というお話ですな、はっはっは。

『Job gains have slowed in recent months but remain strong, and the unemployment rate has remained low.』(今回)
『Job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has remained low.』(前回)

一方でインフレの助長物質であります労働市場の認識に関しては、経済の認識を引き上げているのにもかかわらず雇用増加の部分について下方修正している(リメインストロングだから水準自体は強いままでありますが)のが味わいがあって、これは(まだちゃんと会見見てないけど)基本的な線としては「経済の減速が無くても雇用市場の沈静化に向けた動きがみられますなあ」という認識になりますので、FEDウハウハというか大勝利というか、とまあそんな認識になっていまして、あとで出て来るSEPだとあと1回利上げの方が多いですけど、まあこの認識が続くんだったら別にガリガリ利上げせんでも現状維持で良かろうって話になるんでネーノと思いましたがどうでしょうかね。

『Inflation remains elevated.』(今回)
『Inflation remains elevated.』(前回)

まあゆうてここの認識はいつも通り、というかこれ下げたら利下げ来るでヒャッハーになるので本当の利下げ開始になるまで上記のままなんでしょうね、と思います。


・第2パラグラフ:実は2パラ以降は全部同じなんですよね〜

とはいえめげずに比較引用しますが。

『The U.S. banking system is sound and resilient.』(今回)
『The U.S. banking system is sound and resilient.』(前回)

2パラは全文一致なのですが、全文一致にも見どころというのはあって、最初のUSバンキングシステムの話、まだ引っ張ってるのかいというのが1点。

『Tighter credit conditions for households and businesses are likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation. The extent of these effects remains uncertain. The Committee remains highly attentive to inflation risks.』(今回)

『Tighter credit conditions for households and businesses are likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation. The extent of these effects remains uncertain. The Committee remains highly attentive to inflation risks.』(前回)

金融引き締めの効果について「何ちゅうかこの効果っちゅうのはどういう出方になるのか不透明ですなあ」という文言も維持していまして、SEPでもそうなんですけど、今回って基本的には「金融引き締めの効果が良い感じで出てきて経済をコケさせることなく物価上昇を徐々に沈静化させてきている」というのが本線になっている(と思った)ので、この辺りの文言についてもうちょっと「金融引き締めの効果が出てきた」みたいな書き方をすると大勝利宣言になるのですが、まあそう言ってしまうと隙あらばヒャッハーしたがる金融市場がヒャッハーするのを懸念してるんじゃなかろうかとは思いました。


・第3パラグラフ」金利は据え置き、BS縮小作戦は継続、文言は前回と同じ

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run. 』(前回)

3パラの頭はいつもの開経偈。

『In support of these goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent. The Committee will continue to assess additional information and its implications for monetary policy. 』(今回)

『In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 5-1/4 to 5-1/2 percent. The Committee will continue to assess additional information and its implications for monetary policy. 』(前回)

今回は据え置きですね。

『In determining the extent of additional policy firming that may be appropriate to return inflation to 2 percent over time, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』(今回)

『In determining the extent of additional policy firming that may be appropriate to return inflation to 2 percent over time, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』(前回)

でもって今後の話の部分ですが、今回も「In determining the extent of additional policy firming」から始まっておりまして、今後の追加引き締めをするかどうかについては以下の事を考慮に入れて判断しますわ、という書き方になっておりまして、そらまあSEPで過半数が年内利上げおかわり1回あるで、と言ってるんだから当たり前ですけれども、今回は打ち止め文言も出していないというのがこのパラの見どころ。

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in its previously announced plans.』(今回)
『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in its previously announced plans.』(前回)

BS縮小(ちなみにこれQTって一般には言うけど、そもそもこれは「緩和の縮小(正常化)」なのであってバランスシート自体はずっと緩和的なのですから、あんまりタイトニングという言葉は使いたくないアタクシ)については淡々と同じように続けます。

『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(前回)

この3パラは最初と最後にいつものキメ文言を入れるという形式です。


・第4パラグラフ:これも全文一致ですがそもそも言ってること当たり前の話

などと悪態をついていますが比較引用。

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回)

まあここはガイダンス文言みたいな先行きの政策決め打ちを入れたり何だりというのがありましたが、先行きの政策は状況を見て判断、という当たり前の話をしているだけに過ぎないパラグラフになっていますので、何かもう今更残さなくてもとは思うので。3パラと統合して簡素化すればよいのに。



・第5パラグラフ:全員一致ですね

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Patrick Harker; Philip N. Jefferson; Neel Kashkari; Adriana D. Kugler; Lorie K. Logan; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Patrick Harker; Philip N. Jefferson; Neel Kashkari; Lorie K. Logan; and Christopher J. Waller.』(前回)

先だっての9月7日議会でやっと人事案が承認されて13日から活動開始となりました、Adriana D. Kugler(クグラーと読むのか??)理事が投票メンバーに増えましたな。


・ディレクティブの各オペレーションに関しての金利回廊や応札限度額など変わらずですね

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230920a1.htm
Implementation Note issued September 20, 2023

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230726a1.htm
Implementation Note issued July 26, 2023

こちらは一々引用しているとクソ長くなるので引用は飛ばしますが、各種オペレーションに関しての変更はありませんでした(と思う)。



〇SEPは順当に前回よりも利下げ着手が後ろ倒しになっております&足元の成長見通し大幅引き上げと物価見通し引き下げキタコレ

PDF版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20230920.pdf(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20230614.pdf(6月)

HTML版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20230920.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20230614.htm(6月)

・成長率見通し:足元大幅に引き上げキタコレ

今回は予想期間が2026年に伸びているので、左から順に2023、24、25、26、ロンガーラン、ですな

Change in real GDP  2.1  1.5  1.8  1.8  1.8
June projection   1.0  1.1  1.8      1.8

どうみても上方修正です本当にありがとうございました。


・失業率見通し:雇用見通しは強くなっていますが・・・・・・・・・・

Unemployment rate  3.8  4.1  4.1  4.0  4.0
June projection   4.1  4.5  4.5      4.0

成長見通しが上がって雇用の見通しが強くなっている、という状況ですけれども・・・・・・・・・・・


・物価見通し:足元は下がって先行きは変化なしというかお気持ちだけは強めかもですけどつまりは・・・・・・・

PCE inflation     3.3  2.5  2.2  2.0  2.0
June projection    3.2  2.5  2.1      2.0

Core PCE inflation4  3.7  2.6  2.3  2.0 (コアPCEにはロンガーラン無し)
June projection    3.9  2.6  2.2

とまあそういうことで、足元のコアPCEについては引き下げ、先行きに関しては横ばいだしまあ気持ち上かもしれませんという感じですよね。

本来成長見通しは上がるわ雇用見通しは強くなるわですから物価の見通し理屈としては上がっても不思議ではないのですが、物価見通しがこうなっている、というのは即ち「私たちの金融引き締め政策が良い感じで進んでいるので、景気をガリガリ減速させなくてもインフレの鎮静化が進んでいくでしょう」という話になったということですから、これはまあ先行きに自信ニキ、ということでしょうな。

とは言いましてもこのメディアンってあくまでもビューをかき集めた中央値であって、一本の見通しのパスがここから描けるわけでもない(日銀の展望レポートと同じですね)ので、あくまでもこれは中央値から無理矢理捻りだしている話ということでよろしゅうに。


・政策金利見通し:年内は利上げするかもしれませんなあ&来年の利下げ開始もさすがにちょっと先のようで

2023年
1回利上げ:12人
利上げ無し:7人

ということになりました。まあ順当ですかねえ。

2024年
ここから先はばらけているので細かく書いているとしち面倒なのでざっくりと目視した感じで書きますけど(雑でスイマセン)、今回のを見ますと目の子で来年は3回程度の利下げを見ている人が多い感じがしますので、毎回の会合で利下げおっぱじめるなら秋口、インターバル入れながら利下げするならもうちょっと早めになるでしょうけれども、利下げ着手の時期は6月SEPに比べて遅くなったと読むのが普通だと思います。

まあそもそも論として6月のSEPの見通しって2023年はガリガリ利上げして、2024年はホイホイと利下げに着手する、という見通しで、いやおまえその見通し無理があるだろという風情が思いっきり漂っておりましたので、まあ常識的な感じになったんとチャイマスカねえと。

なお、水準的にもこれちょっと上方シフトしていると思いますですな。はい。

2025年はパスしてその後の2026年ですが、

ロンガーラン近辺(3%近辺も含む)の人:12人
4%台にとどまっている人:7人

となっていまして、まあ「ハイターフォーロンガー」って感じですかねえ。

ロンガーランに関しては

2.275%:3人→2人
2.500%:7人→8人
2.575%:2人→2人
2.750%:2人→0人
3.000%:1人→1人
3.250%:1人→1人
3.500%:0人→1人
3.575%:1人→0人
3.750%:0人→2人

ということえお気持ち上がっているのと、高めの球を投げる人が増えましたなという感じではありますな、うんうん。

あと、HTML版の方を見た方が見やすいのですが、より詳しい内容があって、リスクバランスの所で成長見通しのリスクバランスがダウンサイドからバランスになっていたり、色々と味わいがあるのですがお時間というものが足りなくなってしまいましたので明日の朝変な記事でも出なければw続きは明日。






2023/09/20

お題「25日に総裁の会見???(報道見たが確報見れてないので違ったらゴメン)/私家版9月会合で見るべきポイント」

どこにそんな金があるんだよ
https://jp.reuters.com/world/japan/3WYBC2CTO5KT7MW5R2RCD3YLIQ-2023-09-19/
経済対策は少なくとも15兆円、できれば20兆円規模必要=自民・世耕氏
内田慎一
2023年9月19日午後 4:04 GMT+9

〇なんか記事がネットで拾えなかったんですが25日に植田さん大阪出張は事実ならマジウケるんだが

昨日の17時3分に時事通信が「植田総裁、24−25日に大阪市出張して25日に地元の有力者の皆様と懇談会を行って記者会見をする」ってヘッドラインと速報が出てたんですよ。ただまあその後ネットの方の時事通信ニュースみても引っ掛からないし、日銀の「公表予定」って基本的に金曜日に更新だからクソの役にも立たない(案の定予定は更新されていなかった)、ということで今朝もこれ調べ直して無駄に時間を潰したので、肝心なニュースを載せない時事通信は謝罪すべきと思いましたが(なんでそこに矛先が行くのよ)まあそれは兎も角。

とまあそういうことでこれってマジなんだったら滅茶苦茶いろんな論点があってクソ面白い話だというのに何で誰も報道しないのという感じでして、単に時事が誤報したんだったらまあシャーナイですけれども、ここは仮にこの出張とやらがあるとしたらの話でちょっと一席書いてみますね。

まあ完全な誤報でしたとか実は10月の話しでしたとかいうオチだったらそれはそれで無駄話にも程があるという話なんですけどね。

しかしまあ何ですな、国際会議とかとぶつかってそれに関連する会見とかならまあ話は分かるのですけれども、今回のが事実だとすると全然そういう話じゃなくて、わざわざ設定したという事になりますが、金曜のMPMでの決定に関する説明は総裁記者会見がある訳で、そんなに会見をしたいなら総裁記者会見3時間でも4時間でも(別にトイレ休憩とかおやつ休憩とか入れながらだって良いじゃないですかにんげんだもの)やりゃいいじゃんと思うのですが、ナンジャソラという話ではあるんですけど・・・・・・・・・・・・


・もしこれが事実なら日銀の「自身の無さ」に起因する火消しの場の設定にしか見えませんな

これですね、もしこれ事実だったらこんなのどっからどう見たって「決定会合の結果起きる市場の反応に対して火消しの場を用意しておきたい」以外の理由が思いつかない訳でして、決定会合でなにもしないで円安にかっ飛んだ時の弁明をするのか、はたまた何かやって(アタクシは願望込みでガイダンスの一部変更などをみているけど会見で明示的に5月の内外情勢調査会で示した「リスクマネジメントアプローチの軸足を動かす」でも良いと思います)金利がかっ飛んだ時の火消しをするのか、の二者択一にしか見えない訳でございますよええこれは。

でまあ翌営業日に火消しの舞台を事前に用意するってのはもう初手から「私たちの説明が訳分らない事になっているので決定会合の声明文と定例記者会見だけでは説明が通じないんですぅ」と白旗を挙げているようなもんでして、コミュニケーション崩壊が9月の読売のアレで更に加速しちゃってもうカオス、という話になっているかと思うと落涙を禁じ得ません。


・火消しは良いんだがこれヒラ審議委員を無茶苦茶コケにした話なんだがマジでやるのかしら

そしてこの日程、まあ市場の反応見て火消しが必要なら火消しをしたい、となると翌営業日にご説明の場を用意しておく、という気持ちはわからんでもないのですが、それって決定会合との関係はどうなっているのかという話でして、地元の有力者の皆様との懇談会、というのに実は挨拶は伴わないで本当の本当に茶話会をするので原稿も何もなし、というのならまだ話は分かるのですが、これで何かちゃんとした挨拶でもするんだったら、その挨拶はいつ作るんだよという話になるわけですけどどうなってるんでしょうかしら、というツッコミが当然ある訳ですよ。

何せ決定会合の直後になるんですから、決定会合での議論や決定を踏まえた内容の話をしないといけない筈でありまして、そのためには挨拶作るのにどうするつもりですねんという話だし、まさかとは思いますが、執行部が出す案でどうせ賛成マシーンのポンコツ連中(除く田村さん中村さん)が賛成するからそれをベースに挨拶の原稿はMPMの前に完成しているってことです、ってのは実情として裏側でそうであっても、物事の建付けとしてそういうのが表に透けて見えてしまうようなこの設定はアカンですよという話になりますわな。

何せ今月は2週間の間に4人の審議委員が立て続けに金懇を行う、ということで、審議委員の発言なんぞは邪魔くさいだけだからまとめて同じ時期に押し込んでしまえば執行部様の発信だけが世の中に伝わることになるしそれで全く問題ない、という態度を露骨に出している時点で政策委員会の存在を無視した幕僚ファッショみたいな事が起きているとしか申し上げようがない事案があった上に、決定会合の結論はあらかじめ決まっているんだから土日跨ぎとは言え決定会合の翌営業日に別途総裁が挨拶したり会見するのは全然大丈夫、と露骨に表明しているようなもんで、ガバナンスはどうなっているんだというか、少なくとも金懇を押し込められた4人の審議委員は激怒すべき案件だと思うんですけどね、本当に来週月曜の懇談会と会見が予定されているんでしたら。というかワイなら決定会合でいきなりフィリバスターぶっこんだ挙句に執行部提案に全部反対して全部に対案だして決定会合終了時刻を18時くらいまで引っ張って差し上げるわwww


・ということで本当にこのイベントがあるのかどうか知らんけどあるなら深刻なコミュニケーションの混乱を示している

展望レポート会合の場合、その後の一発目の正式な対外講演みたいなのは総裁か副総裁が実施(4月の場合は植田総裁の内外情勢調査会、7月の場合は内田副総裁の千葉金懇)しまして、展望レポートの説明を詳しく行いながら政策のはなしがあったら政策の話もする、というのがいつもの黄金パターンなんですよね。

ということなので、決定会合の後にその対外説明用に金懇などがセットされるのは別にまあ違和感はないのですけれども、現状で予定されている金懇の日程が10月12日の野口審議委員の金懇でして、まあ9月会合を受けて何か説明するなら野口さんの金懇でも無問題なはずだし、大体からして決定会合終わってから市場がそれを消化するのを待ってから改めて背景説明とかすりゃいいだけの話であって、「翌営業日にいきなり説明のおかわりをする」というのはさすがに例を見た記憶がないんですよ。

まあ先ほど申し上げましたように、9月会合って何かあっても何もなくても(その前のFOMC次第だったりもするのですけど)もしかしたら大きく動くかもしれない(動かないかもしれないしよくわからんけど)という危機感があるんだとは思うのですが、それにしてもこれは日銀自らが「自分たちの対外公表文と定例記者会見だけでは説明しきれないと恐れている」ことを表明したようなもんでして、なんでそうなるかと言えばハトハトジジイと9日公表された読売新聞インタビューでの植田先生、という同一人格が発したとは思えないレベルの説明のブレっぷりによって最近はマーケット何とかストのコメントとか見てても何かもう日銀の考えている事に対しての解釈もバラバラだし、そもそも何がポイントなのかという話まで訳の分からない事になっております。

まあこれは植田さんのブレブレとかいうのが直接には効いてますけど、それ以前の問題として黒ちゃんの末期から見てみますと昨年3月くらい(グローバルに物価が一段高になった時期な、ウクライナ侵攻と円安)から順に、「コアコア物価の方がトレンドをとらえる(と言って展望レポートの見通しの表の中にコアコアを加えた)」から始まりまして「賃金がー」「持続的な賃金上昇ガー」「サービス価格ガー」「先行きの不確実性ガー」「リスクマネジメントアプローチガー」などなど、ゴールポストをドンドン動かして行ったので、もはや日銀が何をメルクマールにしているのかもよく分からん(のでアタクシはもう「こいつらは政策が先にあって後付けで屁理屈を捏ねているだけなので今の屁理屈を基に政策の先行きを考えてもどうせ状況が変わったら屁理屈そのものが変わってしまうので意味がない」という発想になっている次第)というのがある訳でして、いやーなんかこの来週の大阪での懇談会ってマジでやる気なのかよと思いましたし、マジでやるというので(一応時事のも日銀が公表したって報道だった)あれば、これって色々とヤバいインプリケーションしか無い出来事なので、物凄くポイントの大きな話でございまして、何でこういうのが大事なポイントって感覚になってくれないんでございますかねえメディアの皆さん、と思ってしまうのでした。

いや単に時事の誤報だったら以上の話はただの笑い話になるんですけどね、さてどうなんですか。



〇ポイントが完全にボケボケになっているようなのだが今回会合のポイントは「5月のアプローチからの変化はアリや無しや」だよ

金曜のブルームバーグさんによる火消し報道を受けましてその後読売新聞が日曜に昨日ネタにした記事を書いてましたが、月曜になると各社決定会合に向けた記事が出てきましたですな。

でもって一々URL出さないのですけど、日経にしましても毎日や産経にしましても、皆さん今回は決め打ち報道はしていなくて、一般的な解説っぽい記事になっていたような印象を受けましたので、まあ7月の時点で煮え湯飲まされた格好になった社もいらっしゃいましたし、何か下手に事前に決め打ちするのがリスクという感覚になっておるようで、それはそれで健全で結構なお話ですなと思いました。

それからまあベンダーの方で紹介してくれる何とかスト様のレポートとかコメントとかもチラ見した訳ですけれども、そっちの方はチラ見だけだけどチラ見しててお前ら何を祐天寺と思ったのは、年内利上げガーとかそういう時期の話ばっかりやたら多い事でして、いやそうじゃねえだろ今回のポイントは、というお話。

つまりですね、先日来申しあげていると思うのですけど、9日の読売のインタビュー、と言ってもアタクシも本紙査収しそこなっているので全文読んだわけではないのですが、その中での最重要ポイントというのは、5月の内外情勢調査会講演で植田さんが言ってた、

『この点、金融政策運営にあたって、経済に不確実性があることを前提として、先行きの様々な経済の経路ごとに社会厚生を考慮することが重要という考え方があります。これは、かつて米国FRBの議長を務めたグリーンスパン氏が提唱したことでも知られる、リスクマネジメント・アプローチと呼ばれる考え方です。これをわが国の現状に引き直しますと、拙速な政策転換を行うことで、ようやくみえてきた2%達成の「芽」を摘んでしまうことになった場合のコストはきわめて大きいと考えられます。逆方向の、政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまうリスクもありますが、こうした2%の定着を十分に見極めるまで基調的なインフレ率の上昇を「待つことのコスト」は、前者に比べれば大きくないと思われます。そうした意味で、先行きの出口に向けた金融緩和の修正は、時間をかけて判断していくことが適当だと考えています。』(2023年5月19日内外情勢調査会における植田総裁講演より)

この時からもう4か月が経過している訳でして、この間の経済物価情勢の動向を踏まえた場合に、この時に示していた「リスクバランス」は変化したのかしていないのか、あるいは決め打ちは出来ないのだが全く変化なしとは言い切れないという段階なのか、というのが今回の決定会合で質問されるべき一番のポイントでありますし、9日の読売インタビューの説明を総合的に判断すると、「バランスは変化した」と表明して居るように見えてしまうんですよね願望込みですけどアタクシなんぞは。

つまり、「先行きの様々な経済の経路ごとに社会厚生を考慮することが重要」という観点の下で5月(というか4月の展望レポートを出した時点と言うべきが)には「政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまうリスクもありますが、こうした2%の定着を十分に見極めるまで基調的なインフレ率の上昇を「待つことのコスト」は、前者に比べれば大きくないと思われます。」と言っていた「待つことのコスト」がこの間の経済物価金融情勢の進展を踏まえた場合に社会厚生的なリスクは大きくなってきている、という認識になっているのであれば、この時に示したハトハトスタンスではなくて、経済物価金融情勢を踏まえて上下双方向のリスクに機動的に対応、という形になって、先行きスタンスの決め打ちが無くなる訳ですよ。

でもって先行きスタンスの決め打ちが無くなれば、その場合には従来のように(政策を動かさないという)決め打ちスタンス先にありきでああでもないこうでもないと屁理屈捏ねていた話は前提が全て崩壊しますので、つまりは来年の春闘が出てもまだ分からないとか、そういうようなタイムコンシステントな話って全て意味が無くなってきて、あくまでもステートコンティンジェントな事で考えていくことになる訳でして「何月になると材料が揃う」みたいなその「何月」という議論自体は議論の主ではなくなるはずなんですよね。

よって、重要なのはこのスタンスというか軸足が、今まで思いっきり乗っかっていた(というか今も乗ってる)政策変更なし先にありきのリスクマネジメントアプローチから、フラットに近いものになるかどうか、という話なのであって、その話をしないで「何月にならないと材料は揃わなないから政策変更の時期はどうのこうの」とか言うのは肝心な所を外していますな、と思う訳でございます。

と昨日はベンダーに出て来るコメントを見て思っておりました。


#すいません最初の記事調べで無駄に時間を空費してしまったので今日はこんな雑談だけで申し訳ない





2023/09/19

お題「7月会合の再来なのかどうかは知らんけど金曜からの事前報道が何かデジャブっぽい件について」

9月も下旬になろうかというのに何ですかこの暑さは(南関東)

〇またMPM前にブルームバーグが「政策変わらず」記事を打ってくるの巻

金曜の昼下がり、突如為替が円安に飛び横綱が躍動したので何じゃ何じゃと思ったら(ってちゃんとベンダー見てろよヴォケと言われるとぐうの音もでませんけど)今回もブルームバーグさんから例の記事が出たのでした。こちらはネット版のタイムスタンプ14時ですけれども、ベンダーに記事が出たのも14時ジャストなので日中足を見ると見事にそこでスパイクしています。まあこれはあ14時ジャストに出すつもりで準備してたんでしょうが、最初急に何か変な臨時輪番でも入れたのかとおもったわw

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-15/S0YVE0T0G1KW01
植田総裁発言と市場解釈にギャップ、日銀認識ほぼ変わらず-関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2023年9月15日 14:00 JST 更新日時 2023年9月15日 14:57 JST

謎の関係者キタコレという感じですが、これ出て横綱躍動して高値付けに行きましたが、その後別に追いかけて買う人もいなかったのか二の矢は無いわ引け後イブニングになったら横綱腰砕けで下がるわ、何だったのよという感じでしたが、まあ3連休前の引け前だったからポジションの閉じもあったのかね。

ということで記事になりますが、

『日本銀行の植田和男総裁の発言を受け、市場でマイナス金利政策の解除など早期の政策正常化観測が強まる中、日銀内では発言内容と市場の解釈とのギャップを指摘する声が出ている。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。』(上記URL先ブルームバーグ記事より、以下同様)

でたな「事情に詳しい複数の関係者への取材」。

『関係者によると、総裁発言は従来と比べ踏み込んだ内容ではないと日銀内では受け止められている。現時点では7月の金融政策会合における経済・物価情勢や先行きのリスクに関して認識を大きく変えるような材料は出ておらず、引き続き不確実性が高い中で上下双方向のリスクを意識して金融政策を運営していく姿勢にも変化はないとしている。』

というこの謎の関係者発言なのですが、残念なことにインタビューの読売本紙を査収しそこなったのでまた聞きになってしまいますが、物価見通しを下に外していた話や、リスクバランスの話など従来とチャウやろと思いますので、この「日銀内では」ってのは関係者と称する人個人の考えなんじゃないでしょうかと言いたくなりますし、

「現時点では7月の金融政策会合における経済・物価情勢や先行きのリスクに関して認識を大きく変えるような材料は出ておらず」というのは何ですのという話で、まあ「大きくは変えていないが変わっていないとは言っていない」って話ですかまたペテン話法ですかと言いたくなるし、「引き続き不確実性が高い中で上下双方向のリスクを意識して金融政策を運営していく姿勢にも変化はない」って言ってるけどそもそも5月の内外情勢調査会での植田さんの「リスクマネジメントアプローチ」って「物価上振れ上等スタンス」だった筈で政策運営におけるリスクバランスは緩和バイアスの強いものだった筈で、この言い方はつまりは「7月に味方を実は変えている」って意味でもあるんえすよね。

『植田総裁は9日付の読売新聞が報じたインタビューで、賃金と物価の好循環を見極めるのに十分な情報やデータが年末までにそろう可能性もゼロではないとの認識を示した。賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、マイナス金利政策の解除を含めていろいろなオプションがあることにも言及した。』

で、これについて「関係者」はこう語ったようでして、

『関係者は「ゼロではない」との発言について、一般論にすぎないと指摘した。』

ぷぷぷ。

なお先日申し上げましたように植田さんインタビュー当日の金懇会見で「来年の春闘見ても分からん」とか言ってしまった高田さんって見事に梯子外されてしまったので面目丸つぶれの腹いせに真人間に戻って頂きたいものですな。

『物価の上振れリスクを引き続き警戒しつつも、賃金・物価にはようやく好循環の兆しが見られ始めた段階であり、需要を抑制するマイナス金利の解除といった利上げのタイミングを見通せる状況にはないという。』

とのことですが、そもそもYCCを導入した時の基本的な考え方として、「YCCによって長期金利を含めた市場金利を適正な水準になるようにするのだが、その水準というのは均衡イールドカーブに対して極端に低すぎても良くなく、過度な市場金利の低下は副作用が大きくなる惧れがある」というのがある訳でして、「需要を抑制するマイナス金利の解除といった利上げのタイミングを見通せる状況にはない」と言っても、均衡イールドカーブ対比で金利が大きく低下する状態、即ち市場金利が低下する場合もそうですけど、均衡イールドカーブの方が上方シフトしていれば、別に市場金利の上昇を容認しても本来全く無問題だし、何なら長期金利のターゲット引き上げたって良いのですよね。

と思ってよく見るとこの記事も「マイナス金利の解除」を否定しているけど長期金利の一段の上昇については何も言ってないという事実もある。


・・・・・とは言いましても3連休前の金曜の引け近くだったから(引け前15分くらいにヘッドライン打ったら激怒するところだったが1時間前なのでまあ許容範囲内)当然ながら反応したので、記事にありますように


『ブルームバーグの報道が伝わると、ドル・円は一時147円69銭までドル高・円安に振れた。債券相場は上昇し、長期金利は前日比0.5ベーシスポイント(bp)低い0.7%。東京株式市場では銀行株が上げ幅を縮小し、TOPIX銀行株指数は下落に転じた。』

と相成りました、というのが第一弾だった訳ですが、結局引け後になってみたら横綱ちゃんズルズルと土俵を割ってしまいましてイブニングの引けはというと

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_night
先物価格情報(直近のデータに更新されますので今日の引け後以降はリフレッシュされます)

長期国債先物

限月:23年12月限
取引日:09/19
夜間取引

始値:145.71(09/15)(15:30)
高値:145.72(09/15)(15:30)
安値:145.56(09/15)(21:38)
現在値:145.56(09/16)(05:54)
前日比:-0.16
取引高:6,415

どう見ても寄り天です本当にありがとうございました、という結果になったのですが、日曜日にまるでこの「関係者」記事に対する返歌みたいなのが読売新聞から出てきたのが雅を感じる(ウソです感じません)展開でございましたのでセット販売で次に参ります。



〇そのお答えなのか読売新聞日曜朝刊(ただし内容は会員限定記事なので読売本紙買ってきたわ)

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230916-OYT1T50363/
日銀 金利動向点検へ…21、22日決定会合 市場自律性を重視
2023/09/17 05:00
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でまあこちらですが中身は見事に有料会員記事ですし、先日も申し上げましたようにアタクシ読売新聞に関してはプロ野球上贔屓球団の理由により年間購読するなんぞ以ての外ではありますが、個別に買うのはアリという理屈を作成して日曜の朝に読売本紙を買ってまいりました。

延々と引用してしまいますと何ですのでちょこっとだけ引用しますが、たぶん宅配やってる新聞販売店に行くと数日程度のバックナンバーはあると思うので買う事が可能な気がしたのだが最近はどうなってるのかとか店によって違うかもとかあるのでそこはニャンとも。

でまあ以下は9月17日読売新聞朝刊4面記事から引用しますが。冒頭が見出しの通りで、

『日本銀行は、21、22日に開く金融政策決定会合で、最近の金利動向を点検する。前回7月の会合で長期金利の上限を0.5%から事実上1.0%に拡大し、市場金利は0.6〜0.7%で推移している。緩和的な金融環境を保ちつつ、経済・物価情勢に整合して市場が自律的に動く環境を整える。』(2023年9月17日読売新聞朝刊4面記事より引用、以下同様)

となっていて、以下あーでもないこーでもないと説明があるのですが、記事の後半部分には、

『日銀は、市場参加者による取引で、より自律的に金利が決まる環境に移行したい考えだ。』

という一節がありまして(記事は4パラグラフありまして、この部分は第3パラグラフの最後になります)読売新聞の記事のポイントになるのはこの部分(と小見出しの「市場自律性を重視」)になろうかと思います。まあ読売の言ってるのがズレていないのであれば、ということですが。

つまりですね、こちらの記事中でも「金融政策は維持する見通し」という記載はありまして、今回金利のターゲット自体は相変わらず変更なし、ってえのはまあそらそうよという感じではあるのですが、この「市場自律性を重視」といううので具体的に何かする、となりますとこれはまあ普通に「国債買入を減らしていくようにする」という話になろうかと思ったのでございますがどうですかねえ。

ということですが、オーバーシュート型コミットメント(そもそもあれは物価の実績値なんだからとっくの昔に達成していて今更残っているのがおかしいのだがそれはさておき)ですけど、一応大予想で「頑張って踏み込めば撤廃」と先週書いてみましたが、日銀の得意技、「なお書き修正」というのがあったわなーと思い直しまして、オーバーシュート型コミットメントに関しては残したままにしておいて、「なお、国債市場の自律的な価格形成を妨げないものとする」みたいな文言を加えてオーバーシュート型コミットメントを骨抜きにする(そもそもコロナオペで増えすぎたのの反動の時もそうですが、その前だってしらっと国債買入がネット0近くにまで減っていた時があったのですからそれ以前から空文化してると言えばしているので結局は関東軍もとい金融市場局の一存の世界ではあったのですが)というのもアリエールかなと。

でまあ流石に今回これで手ぶらだとまたぞろ円安爆裂日銀吊るし首になると思うので金利ガイダンス文言の緩和バイアスは削除するとか、先行きの「躊躇なく追加緩和」も単純に「we will act as appropriate in a timely manner」みたいな文言にするとかは何ぼ何でもするんじゃネーノとは勝手に想像しているのですが、植田総裁が楚の荘公よろしく名君伝説の始まりなのだとしますと(希望的観測)植田さんこういう文言ゴテゴテのデコレーションは好まない筈なので、もう追加緩和云々はバッサリ切る(だって「適切な措置を機動的に実施」って当たり前のことですから)のかもしれない、とかまあ期待はしておきます。裏切られるかもしれないけど人生には希望というものが必要なのです(−−;

ま、あとは会見が重要で、会見でまたぞろハトハトジジイに戻ってしまいますと台無しの3乗くらいの世界になりますけれども、先般来申し上げている「リスクマネジメントアプローチ」のリスクの考えがどう変わったのかという辺りについては露骨に言っていただければ大変に結構ですが、そうじゃなくても分かるように説明して頂きたいし、そうしないと円安止まらず誰得コストプッシュが止まらないという国民厚生悪化の一途をたどることになるのですな。

しかしタイミング的には「読売の単独インタビュー」⇒「ブルームバーグニュースの謎の火消しのような関係者発言記事」⇒「読売新聞のMPM見通し」と来てるので、これは謎の火消しに対する読売のご回答、ってな感じで中々味わいがありますし、しかもこの記事は3連休中の日曜日の朝刊という他社が追随しにくいわタイミングとしてクソ地味だわという感じで、これ見よがし感が無いのが何か色々と面白いなと思いました。



〇さてこの様式ですがどっかで見た気がすると思えば7月会合の前週末の流れなんですよね〜

さてこの様式、よくよく考えてみたら7月決定会合(7月29日金曜日が2日目)の時の前週末にまあ見苦しい事前報道合戦が展開されていた訳ですよ。ということでアタクシの過去ログがたまには参照できるわけで、その週明けの7月24日に書いた駄文へのリンクというのを置いてみる。

http://www.doramemon7743.sakura.ne.jp/doramemon2307.html#230724
(7月24日に書いた駄文です)

でまあこちらにありますように、7月MPMの場合は

ブルームバーグ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-07-21/RY49W3DWX2PS01
日銀は現時点でYCC副作用に対応の緊急性乏しいと認識−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2023年7月21日 16:35 JST 更新日時 2023年7月21日 18:11 JST

→市場機能に大きな問題生じていないとの見方は変わらず−関係者
→報道を受けて21日夕の日本国債相場は上昇、円安・株高も進む

ロイター
https://www.reuters.com/markets/asia/boj-leaning-towards-keeping-yield-control-steady-next-week-sources-2023-07-21/
Bank of Japan leaning towards keeping yield control steady next week, sources say
By Leika Kihara and Takahiko Wada
July 21, 20234:39 PM GMT+9U

『TOKYO, July 21 (Reuters) - The Bank of Japan is leaning towards keeping its yield control policy unchanged at next week's meeting, five sources familiar with its thinking said, as policymakers prefer to scrutinise more data to ensure wages and inflation keep rising.』(上記URL先より)

(ちなみにこれだとブルームバーグの方が早い時間に出ていたように見えますが、実際にはロイター英語版の方が10分ほど早く出てて、ロイター英語版7月21日金曜日16時25分、ブルームバーグ同16時35分でした)


ときた挙句に土曜日の読売朝刊が
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230721-OYT1T50363/
長期金利上限 議論へ…日銀決定会合 大規模緩和は継続
2023/07/22 05:00
[読者会員限定]

だった(そういやこの時も読売を駅売り(というかコンビニ売り)で買いましたなあ)のですが、この合戦が展開されたあと、最後の最後にMPM2日目の朝刊で日経がぶっこ抜いてきまして(どこの未開国家の中央銀行なのかという悲しさはさておきまして)結果は皆様ご案内の通り、となった訳ですな、うんうん。


・・・・・・・まあ読売の日曜日のはさっき申し上げたように返歌なのかも知れないですけど、先週末からの展開がまるで7月会合の丸写し(今回はロイターさんは書いてないのが前回との違い)という格好になっておりまして、これまた中々味わいが深すぎて何かのサムシングを感じてしまいますよねーーーーーーー(あくまでもサムシングを感じる、と言っているだけで何かがどうだとは言ってませんのでそこんとこヨロシク!)というお話。



〇ちなみに他紙は追随しない模様なのも7月と同じですな

念のため日経を確認してみた。まあ満を持して直前に出て来るのかもしれないけど今朝の段階では、

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1391J0T10C23A9000000/
日米中銀、「次の一手」への距離焦点に 今週相次ぎ会合
FOMCと日銀決定会合のポイント
金融政策
2023年9月19日 5:00 [会員限定記事]

【この記事のポイント】
・日米の中央銀行が今週、金融政策決定会合
・市場はFRBの利上げ見送りを確実視
・日銀はマイナス金利解除に向けた総裁発言に注目

となっておりまして、会員限定記事で日経無課金おじさんのアタクシは記事の内容ワカランチ会長ではありますが、まあこの感じだと決め打ちは無くてヘッドラインにあるように説明記事みたいに思えますね。



・・・・・・・ということで今週は楽しめそう、というか疲れそうですなwww





2023/09/15

お題「ECBですが今朝は時間の都合でポンチ絵の比較鑑賞でご勘弁つかあさい」

阪神優勝!!!はさておきまして・・・・・・・・・・

〇マクラにしてたんだがちょっと長くなったので(物価への世論と日銀)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA137PF0T10C23A9000000/
内閣支持横ばい、改造効果乏しく 「派閥均衡」評価せず
日経世論調査 優先課題は物価対策

内閣改造・自民党役員人事
2023年9月15日 5:00 [会員限定記事]

>優先課題は物価対策
>優先課題は物価対策
>優先課題は物価対策

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

いやーこうなって来ますと5月の内外情勢調査会で植田さんが言っていた

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230519a.htm
『これをわが国の現状に引き直しますと、拙速な政策転換を行うことで、ようやくみえてきた2%達成の「芽」を摘んでしまうことになった場合のコストはきわめて大きいと考えられます。逆方向の、政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまうリスクもありますが、こうした2%の定着を十分に見極めるまで基調的なインフレ率の上昇を「待つことのコスト」は、前者に比べれば大きくないと思われます。』(上記URL先5月19日植田総裁講演より)

という話、いまはもう前面に押し出したら普通に八つ裂きの刑にあってしまうんでネーノって話だし、そもそも論として「2%達成していない」という既に2%超えを1年半継続しているという現実を踏まえるとお前は何をいってるんだという説明に関しても、今の説明は金融市場の人間とかには理解できても、どっからどう見たって世間一般向けになっていないし、何なら日銀は現実を把握していないんじゃないのと言われてしまいかねないのですよね。

つまり読売インタビューに立ち返る訳ですので、来週はどう見てもライブ会合です本当にありがとうございました、で良いんですよね????



〇ECB政策決定本家本元のポンチ絵より

今回
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2023/html/mopo_statement_explained_september.en.html
Our monetary policy statement at a glance - September 2023


前回7月
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2023/html/mopo_statement_explained_july.en.html
Our monetary policy statement at a glance - July 2023


前々回6月
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2023/html/mopo_statement_explained_june.en.html
Our monetary policy statement at a glance - June 2023


最初は政策決定の所なのでそんなに実はポンチ絵的には同じなのですが説明文の方はと言いますと見出しは、

『We raised our key interest rates by a further 0.25 percentage points』(今回)
『We raised our key interest rates by a further 0.25 percentage points』(前回)
『We raised interest rates by 0.25 percentage points』(前々回)

とありまして、文章の方が

『This will help to bring down inflation further. Our past interest rate hikes are already having an effect on the economy. Our future decisions will depend on how we see the economy and inflation developing.』(今回)

『Our past interest rate hikes are already having an effect on the economy. Our future decisions will depend on how we see the economy and inflation developing.』(前回)

『Our future decisions will depend on how we see inflation developing and how well our past rate hikes tame inflation.』(前々回)

となっていて、読めばお分かりのように段々と文章が増えてきている、というのがチャーミングでして、前回も「利上げが効果をあげてきている(ドヤァ)」ってのが入ったのですが、さらに今回は上乗せ措置で、「利上げでインフレの鎮静化が起きて居る(ドヤドヤァ)」というのが入りまして、利上げ効果でインフレの落ち着きが進んできました、という認識をしめしておりますので、そらまあ素直に読むとこれは利上げの到達点がドンドン近くなった、という言い方ですよね、という話でまあ会見でもそっちの方は説明しておるでしょう。



次の経済の所も中々面白くて、『What is going on in the economy?』から下になりますが、

『The economy will stay weak for a while』(今回)
『The economy is weak now but should recover over time』(前回)
『The economy is weak now, but should recover later in the year』(前々回)

6月は実は最初の項目がインフレなので順不同になっているのですが、近い将来の経済見通しに関する文言は徐々に先行きが明るくなってきていて、ポンチ絵の方もそんな感じでちゃんと時系列を追って整合性が取れる内容になっている訳でして、突如2%が死ぬほど遠くに表示されたポンチ絵を出すわ、そのわずか1か月後に親分が2%達成に関する見極めは材料が年内にだって揃う可能性ワンチャンのワンくらいはあるかもしれませんよね発言をぶっこんで来るというどこぞの中央銀行はECBの絵師の所にいって雑巾がけから修行してくるべきだと思います、

こちらの説明文ですけど、

『Businesses are investing less and their exports are down. Manufacturing is struggling, and services are now starting to falter. But over time, lower inflation and higher incomes should help the economy recover.』(今回)

『Right now, consumers and businesses are spending less. Over time, lower inflation, higher incomes and better supply conditions should support the recovery.』(前回)

『Lower inflation and fewer supply problems will help. Services are doing well, but manufacturing is weak, partly because borrowing is more expensive.』(前々回)

前回から「インフレの鎮静化と所得の増加が経済回復を支えていくでしょう」ってのが入っているんですよね。でもってサプライチェーン云々は今回削除されています。

経済の部分、前回だけおまけ機能として『The economy shows a mixed picture』という見出しのポンチ絵が1枚多く入っているのですが、これはスタッフ見通しが出ない会合となる7月の場合、最後のところに先行き見通しの計数を出せないというのがあるので、その分のおまけイラストとなっていると思われます。

3つ目のイラストが『The jobs market is still strong』となっていまして、こちらのタイトルですけど、

『The jobs market is still strong』(今回)
『Lots of people have jobs』(前回)
『Almost a million new jobs were created in the first three months of the year』(前々回)

説明文の方が、

『Although the economy is cooling, unemployment remains at a record low. Many people’s wages are going up. But now fewer jobs are being created, even in services.』(今回)

『The strong job market is keeping unemployment at its lowest level since the start of the euro. Many new jobs have been created, especially in services. But this strong demand for more workers will gradually cool down.』(前回)

『The strong jobs market is keeping unemployment at its lowest level since the start of the euro. Wages are going up for many workers.』(前々回)

労働市場に関しては前回「この労働需要は今後クールダウンするでしょう」ってのがあったのですが、今回しらっと無くなっていまして、寧ろ書きっぷり強くなっている感じもしますけど、おそらくこれは次のインフレの部分の記述(というかポンチ絵)の変化に示される物価に対する評価の変化が影響していましてですね・・・・・・・・・


4つ目のイラストが『Inflation is falling but is still too high』なんですけど、

『Inflation is falling but is still too high』(今回)
『Inflation has come down further but is still too high』(前回)
『Inflation has been coming down but is still too high』(前々回)

こちら、前回のポンチ絵の時にお話をしたかもしれませんが、前々回までは3本の矢印みたいなのとか3本の温度計みたいなの(もうちょい前)でこの品目の物価が高くてこの品目の物価はそうでもなくて、みたいな感じの絵だったんですね。

一方で前回の7月会合の時のポンチ絵って、家計簿ソフトでも使っているのかノートパソコンを前にアチャーって感じで頭抱えているおねいさんなのかリーゼントのおにいさんなのか謎ですがまあそういう人の姿になっていたんですね。

ということで前回はこのイラストが「物価高はまだアカンですバイ」認識を強いトーンで示すものとなっておりまして、このインプリケーションはまだ利上げのおかわり有るでというのを示すもの、とまあそういう解釈をするのが順当だった訳です。

でですね、今回のポンチ絵は2本の温度計になっていて、食料とかは相変わらず高いんだけどサービスの価格も落ち着いてきましたよ、みたいな絵になったんですね。これはどういうインプリケーションかと言えば、前半の方の政策の話の中でも「インフレ鎮静化はワシが育てた」という感じの記載があった訳でして、この記載にあるようにインフレ沈静化に向けて進んでいまっせということになったので、(ノ∀`)アチャーって感じ(まさに7月の物価のイラストはこのアスキーアートみたいな感じですw)の絵から淡々とした絵の方に戻した、ということが言えるかと思います。

ではこの部分の説明文ですけど、

『Food is still getting more expensive, even though prices are not rising as much as before. Prices for services, especially holidays and travel, are keeping inflation high. In the coming months, inflation should drop further.』(今回)

『Energy prices have dropped further. But food prices are still going up, though not as much as before. Holidays and travel, especially, are more expensive. Profit margins and higher wages are driving inflation.』(前回)

『Prices are no longer rising as much for many goods and services, though food is still getting a lot more expensive every month. Higher wages are increasingly driving up inflation.』(前々回)

ここなんですけど、前々回、前回と比較して「賃金がインフレを加速させている」というようなインフレをこいつがドライブしております怪しからんですなあ、みたいな文言が外されていまして、賃金インフレの正でインフレがトマランチ会長という話がこのポンチ絵(の説明文書)の上からいなくなってしまうまということがありまして、この事がさっきの雇用の部分での説明文とも繋がっていて、雇用は強いけどインフレを爆発させるほどではない、という中央銀行にとっては最もウハウハな展開であるという認識をしめしたものでもありますので、そらまあ確かに急に緩和に舵を取る、となるかは微妙な気がしますが、この辺を見ると「助さん格さんもう(追加引き締めは)良いでしょう」とそろそろこの紋所が目に入らぬかじゃなくて追加利上げは打ち止めってメッセージにはなっていますよねこの一連の変化は、と思うのでありました。


5番目のイラスト、金利が上がってますので積極的な借入は抑制されますな、の部分は

『People and businesses are taking out fewer loans』(今回)
『Higher interest rates mean that fewer businesses want loans』(前回)
『Getting a loan is the most expensive it has been in more than a decade』(前々回)

とあって、

『As loans become more expensive, people and firms are borrowing less.』(今回)

『Demand from businesses to borrow money for investments and other expenses is dropping sharply. Fewer people want mortgages, given that they are also more expensive.』(前回)

『As interest rates are going up, fewer firms and households are taking out loans. We are closely watching how higher interest rates affect the economy.』(前々回)

まあ目論見通りにインフレの鎮静化がみられる、というアセスメントを反映しているのか利上げで借入が減りましたがインフレ抑制進んでいるので問題ありません、みたいな感じを受けました(^^)。


でもって最後がスタッフ見通し、これは前回7月は出ていませんので前々回会合6月との比較。

『We expect the economy to be weak for now but to recover slowly in the coming years.』(今回)
『We expect the economy to recover slowly in the coming years.』(前々回)

成長率見通し

6月:3.5⇒0.9⇒1.5⇒1.6
9月:3.4⇒0.7⇒1.0⇒1.5

まあこういうのは物価低迷時代だとエライコッチャ見通しなのですが何せインフレ退治大正義時代なので、

『We see inflation falling from high levels. Over time we expect it to move back towards our 2% target.』(今回)
『Inflation is still very high but, over time, we expect it to come much closer to our 2% target.』(前々回)

物価見通し

6月:8.4⇒5.4⇒3.0⇒2.2
9月:8.4⇒5.6⇒3.2⇒2.1

見通し数値自体別に大して変わっていないのですが、小見出しの表現は変わっておりまして、これって会見の方では詳しい説明があると思う(のだが今朝はショパンの事情で時間が無いのでパスしますさーせん)のですが、まあ一連のポンチ絵の構成と説明文の書きっぷりをみますと、先行きのインフレ鎮静化に関してはちょっと自信ニキになってきた、ということではないかと思いました。まあその自信ニキ度合いはラガルドはんの説明やら(最近サボり気味の)ECB高官発言で補えるものと思います。


ということで今朝はこの辺で勘弁させていただきとう存じます(ジャンピング土下座)。






2023/09/14

お題「米国CPIから結局決定会合プレビュー雑談/中川審議委員会見って高田さんの会見と重要な1点でトーンが違うのよね」

文春が今回の改造&党役員人事の流れを見ながらニヤニヤしながら温めていた記事をどう書くか楽しみにしている光景が目に浮かびますな。

https://bunshun.jp/articles/-/65745
“ドリル事件“以来9年ぶりの要職 「ファミリー企業に1400万円超」 小渕優子・
選対委員長(49)に不透明な政治資金処理が発覚
「週刊文春」編集部
source : 週刊文春 2023年9月21日号
genre : ニュース, 政治

ドリル優子ってもう一生ついて回りそうですよね、語呂が良すぎるし。

#なお阪神優勝ネタが来るでしょうからこのネタの消化に時間が掛かる可能性がありますね

〇なかなか下がりにくいインフレのようで(米国CPIメモだけ)

ほうほうそうですかそうですか
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-13/S0XC44T0AFB401
米コアCPI、前月比で予想上回る伸び−年内追加利上げに道
Augusta Saraiva
2023年9月13日 21:38 JST 更新日時 2023年9月14日 0:47 JST

→コアCPI、前月比での伸び加速は半年ぶり−前年比は予想に一致
→総合CPI、前月比の伸びがここ1年余りで最大−ガソリン高を反映

『8月の米消費者物価指数(CPI)統計では、食品とエネルギーを除くコア指数が前月比で予想を上回る伸びとなり、米金融当局による追加利上げに余地を残す格好となった。』

『コア指数の伸びが前月比で加速するのは6カ月ぶり。前年同月比の伸びは市場予想と一致し、約2年ぶりの小幅な上昇率にとどまった。』

『今回の統計は、米経済の勢いが増し、物価上昇圧力が再燃しているとの懸念を強める内容だ。米金融政策当局者はリセッション(景気後退)に陥ることなくインフレを抑制できるとの楽観的な見方を強めているが、インフレが再び加速すれば、さらなる利上げを余儀なくされ、その過程で景気低迷を招きかねない。』(以上上記URL先BBG記事より)

とまあそういう事のようで、ドル円ちゃんも読売新聞インタビューも空しくまた147円台後半になっちまってやがるし、いやーどうするんでしょうねという所ではありまする。

今回の記事(ロイターからブルームバーグに巡回サイトの乗り換えを試行中)ですけど、ちゃんと対前月比の加速が(前年比が予想通りだったからそっちしかネタにならないというのはあるにせよ)注目されているのがポイント高めで、ジャパンの方では相変わらず前年同月比の数字しか物価統計の時に話題にならないんですけど、前月比の話を日本でももっとして欲しいなと思います、というかそもそも論として米国の場合PPIにしろCPIにしろ、おじいちゃんが小僧だったころには逆に前年同月比ってヘッドラインのオマケ扱いで、第一報で出るフラッシュは常に「前月比幾ら」でありまして、これ前も申しあげたと思うのですが、日本でも実際に物価上昇率が出てくるようになって参りますと、体感的に「前月比どうなった」って方が気になって来る筈なんですよね第二種兼業主夫やってると思う訳ですし。


まあそれは兎も角として、確かに米国要因でホイホイと円安に行くので折角の読売インタビューも何だったのかという話になりますので、まあ実は多少の小手先をしたと言っても円安傾向を中々止めるのムツカシアルネーなのは実際の所そうなので、ここで「円安対応と言ったってマイナス金利解除如きで円安が止まる訳もないので日銀は円安を受けて政策修正をするのかというとそれは怪しい」という理論は成立すると思うのですけれども、なにせガソリン価格の話がこれだけ政治イッシューになってしまい、しかも国際商品市況よりも円安の方がガンガン効いている、ってのが人口に膾炙してきますと、日銀の組織防衛的な観点で考えますと「引き続き漫然とハトハトジジイを継続していて円安がトマランチ会長」というのと、「円安も意識しながらハイパー緩和政策の修正に着手したけど米国要因で円安がトマランチ会長」というのを比較しますと、どっからどう見ても前者の場合は日銀が第一位の戦犯扱いになり、ハトハトジジイは市中引き回しの上打ち首獄門、余の者終生遠島を申し付ける、って事になるリスクが高いわけですよ。


ということで(何か米国CPIの話じゃなくなってしまいましたがそこはご愛嬌)昨日の雑談に戻りますと、「円安放置プレイ」に対するいろんな方面からの評価が植田さん就任の4月くらいと足もとの状況とを比較してどうなっているのか、という政治マターというファクターを考えないと行けなくなっているとも思うんですよね今って。

まあ安倍ちゃん残党の皆さんがガーガー言いますように、おそらく今年の春先とかは「そうは言っても円安って企業にとってプラスだからわざわざ円高を誘発するようなことはダメ」みたいなところは政治方面には根強かったと思うのですが、その流れがどうなっているのか、ということが重要ですし、もしこれ以上の円安阻止が政治的に大正義、ということになった場合、日銀は手をこまねいている場合じゃなくて「やったふり」でも何でも良いからアピールをしておかないと、足もとの問題は植田日銀が悪いという事で全ての問題を押し付けられていばら姫に成敗されるイケニエール書記官コースになってしまいかねないと思うのですよね。



〇「2%達成の見極めの材料ガー」という日銀の説明にあんまり乗るべきではないと思うの

これ最初にBBGのベンダーの方に記事が出てた時から題名が差し替わっている気がする(アタクシもジジイなので記憶が怪しいのですが、最初の時点でのヘッドラインは「全員が9月現状維持を想定」となっていたと思うの)けどまあそれは兎も角。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-13/S0UTEET0G1KW01
マイナス金利の解除予想が前倒し、植田日銀総裁の発言受け−サーベイ
伊藤純夫、Cynthia Li
2023年9月13日 9:15 JST

→4割が来年4月までを想定、為替動向次第では年内解除の見方も
→市場反応は行き過ぎとの声も、全員が今月会合で政策維持見込む

『日本銀行が早期にマイナス金利政策の解除に動くとの見方が、植田和男総裁の直近の発言を受けて広がっている。来年4月までに解除すると想定するエコノミストは約4割に達した。今月21、22日の金融政策決定会合については全員が現状維持を見込んでいる。』(上記URL先より、以下同様)

ということなんですが、これ「現状維持」というのを何をもって現状維持としているかの定義によって回答が変わりますから、実際のサーベイの質問を見ないと何ともかんともなのですよね。だって7月の「YCC運営の柔軟化」だってあれ日銀の正式な意味で考えた場合、定義としては「政策は現状維持」になるんですから。

『ブルームバーグがエコノミスト46人を対象に6−12日に実施した調査によると、日銀が現在マイナス0.1%の短期政策金利を引き上げる時期は、来年4月の会合までの予想が4月会合の28%を筆頭に39%となった。11%はその次の6月会合を想定しており、合わせて50%に達した。前回の7月会合直後の調査では、来年4月会合までの解除が21%で、6月会合を含めても31%だった。』

そらそうなるわな、という話なんですが、以下引用すると思いっきり個別の何とかストのお名前が出てきてしまいまして、別に個人を砲撃するのがアタクシの趣旨ではないので以下あんまり引用はしないのですが、これ面白いのは皆さんの説明が概ね「2%物価目標達成の有無を見極める時期」から政策修正のタイミングを相変わらずコメントしている事でありまする。

ああちなみに以下引用しないけど記事中に約1名思いっきり為替をポイントに挙げておられるかたが居るので全員が全員という訳でもないですけど・・・・・・・・・・


そもそも論として7月会合前の流れって急に内田副総裁が投げ込みを行い、その間に財務官様の異例ともいえる発言でどう見ても差し込みです本当にありがとうございました、ってのがあり、途中で植田さんがハトハトジジイ発言をぶっこんで話をややこしくしたものの、終わってみればYCCの柔軟化がぶっこまれた訳ですが、どんなに話を言いつくろってもどう見たってこんなの為替円安の加速をどないかせんといかん、という話からのムーブなのは明らかな訳ですよね。

でもって今回だって財務官大明神の「あらゆる選択肢」からの同日に植田さんの読売インタビューがありました、ってなもんだし、この間にガソリン価格対策補助金の延長が決まり、おまえらこんな大規模な補助金ダラダラ出してどうするんだよという流れが出来つつあるように、円安からの災厄がだんだんヤバくなっている訳でして、これはどーーーーーー考えたって為替円安問題が先にあって、「2%物価安定の達成が見極められる」云々ってこんなの政策からの後付けで言ってるに過ぎないですよ、ってのを植田さんの読売インタビューで示されたようなもん(個人の感想ですので念のため申し添えます)な訳ですから、為替がヤバくなったら日銀は組織防衛上の観点もあって(いや正面からそんなことは死んでも言わないけど)なんか「やる」のか「やった振り」をするのか、いずれにしてもアクションしないとイケニエール書記官になるリスクが高まるという意味で追い詰められていくと思うんですよね〜。


だってさ、そもそも論として1年半以上に渡ってコアCPIは前年同月比2%を上回って推移していまして、コアコア物価なんて前年同月比4%水準まで上がっているんですから、とっくの昔に日銀が大勝利宣言と共に物価2%達成を宣言したって別に見切り発車の謗りを受けることもないでしょうし、こんなん明日にだって達成宣言できるはずなんですよね。

でまあ達成宣言しないのは政策修正を入れたくなくて、そこから逆算して黒ちゃん末期からの屁理屈投下⇒その屁理屈も達成⇒新しいゴールポストの作成、と来て今に至っている訳ですから、政策を変えないとアカンとなったらまた変な理屈を総動員してくると思うんですよね・・・・・・・・


とまあそんな身も蓋もない読み筋を書いてみましたけど、まあさすがに日銀様はアタクシのような愚昧な者ではありませんので、物価目標達成への判断みたいな時にはビューテホーな理屈をまた繰り出してくるとは思うのですが、なんせ高田さんに「来年の春闘を見ただけで判断できるかどうかはよくわからん」と言わしめておいてからの植田さんのインタビューな訳でして、賃金連呼のトーンをちょっと下げて物価そのものの話にシフトしてしまえばあっという間に物価目標達成という話にできますから、正直あの日銀が言っている「物価目標達成見極めのために何が必要」みたいな話、あんまり真に受け過ぎない方が良いと思うんですよね〜〜〜。


・・・・・・とか書いてる自分もなんちゅう身も蓋もない話というか、こういう読み筋で政策を考えてしまうと、全然ロジカルじゃなくなってしまうので、確かにそれを何とかストレポートで出してしまうと全く持ってロジカルじゃないレポートが完成して、「お前は何を言ってるんだ」状態になるからよー言わんわという所でしょうね。


ああちなみに9月会合の大予想しろと言われたら(1)金利のガイダンス文言の中から緩和バイアスを外して単純に「必要な時には適切な対応を機動的に行う」みたいな無害文言に変更(本命)、(2)オーバーシュート型コミットメントの形骸化あるいは撤廃(やや踏み込み感あるので8月は無理かな)、(3)総裁記者会見でのメッセージの出し方がハトハトジジイモードから人間様に戻って発言トーンの変更(出すものによりけりで(2)まで出しちゃったらそんなにトーンを変更しないかもですよね)というコンボになっております。




〇ノーケアーで無問題とは言え政策委員なので会見発言を読んでみようじゃないの(中川さん金懇会見)

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230908a.pdf
中川審議委員記者会見
――2023年9月7日(木)午後2時30分から約35分
於 高知市


・何ちゅうかこの説明・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3ページ目から参ります。

『(問)二点あるんですけれども、一点目、講演の中で物価の見通しについてのリスクについて言及されていまして、想定以上に物価上昇が加速するリスクと逆の動きが起こる可能性の両方述べられているのですが、リスクのバランスとしては、どちらの方がより大きいとご覧になっているのか、同じぐらいなのか、その辺りのバランスと、実際に持続的・安定的な物価目標の達成ができたと、見通せるようになったと判断するまでに、どれくらい時間がかかりそうなのか、その辺りをまず伺いたいのが一点目です。(後半割愛)』

王道の質問ですね。

『(答)まず、物価のリスク、私あえて今回、いつも金融[政策]決定会合等々でも総裁の会見でもお伝えしている通り、上下ありますということで、改めてこの本日の席上でもご説明をしたわけですが、』

何ちゅう日本語だ。

『どちらのリスクというと、この足元までみますと、ご承知の通り 4 月の展望レポートから 7 月までの展望レポートの動きだけ、この足元をみますと、上振れの勢いの方がやはり大きかったというふうには思っています。』

4月から7月(まあ上記の定義からにいうと5月頭から7月終わりだが)は物価の上振れが大きかったと。

『ただ、この先というふうになりますと、私はどちらも同じ確率というか、リスクの大きさとしてはみています。』

7月末までを見たら足もとの走りは上振れだったけど今後は上下バランスとな。

『どうしても価格の改定のタイミングですとか、価格改定の可能性、こういったものに関しては、非常にセンチメントといいますか、』

センチメント?????いやまあ言いたいことは伝わるんですけどナンジャソラ。

『企業側の行動もそうですし、それを受け入れられるか、ないしは受け入れることはなかなか難しいけれども、それでもなんとかそれを乗り越えていくというような消費者側の需要の強さ、』

すまん、言いたいことは分かるんだが文字起こしされたの見るとかなりクラクラしてくるから、先に頭の中で文章を作ってから喋って欲しい(ってまあ自分もその傾向があるから余計に気になる)。

『この辺りは本当にいろんな周囲の環境ですとか、企業側にとりましての海外の経済情勢とか、こういった多くのものが絡み合って、これがまた日々非常に変動しやすい環境に、』

いやまあ中川さん「色々な変数によって企業の行動が変化し得るんだが、その変数が足元では色々と変動する状況にある」って言いたいのは何か分かるんですけど、もうちょっと整理して喋って欲しい。

『常にそうだとは思いますが、特に今、いろんな新しい環境や情勢が生まれてきている中ですので、』

なんでこんなに重複表現するのよ。

『上下同じようにリスクとしてはあるのかなというふうにとらえています。』

と言ってからの、

『理由に関しましては、』

ちょwwwwwおまwwwwwww今までの理由なんじゃないのか、とズッコケてしまいました。

『事前におそらくお渡したと思いますが、講演の中で触れさせて頂いた通りです。』

講演読んでない私も何なんですが、講演の中で触れた通りなんだったら講演での話をそのままいえば良いだけなんじゃないカナー(棒読み)。


『2%達成のめどというか、それが出てくるタイミングというご質問だったかと思います。』

これは1問目の質問が事実上2問分なのでこうなるのでこれはまあこれでよろしいんですけど、

『こちらに関しては、私はまだ、今見通せる状況にはなっていないというふうにお答えします。』

ほほう。

『理由は今物価リスクの上下に対してどちらのリスクが大きいかに関してほぼ同等にあるとお伝えした、これがもう全てに尽きると思います。』

?????????????????????

うーん謎の理屈だ。先行きのリスクバランスが同じで不透明でわかりにくいから2%達成とは言えない、っていうのってよくよく考えたらそれベースの物価が1%でも5%でも同じように達成とは言えない、っていう理屈を使えるんですが、そもそもの物価水準の問題に触れないで達成してないと言い張るのは如何な物かと思います。

『ある程度は上の方が大きいんだと思えば、こういったかたちで達成のタイミングが近いというふうにお答えできるというのが、回答の一つの例だと思いますが、上下方向同じですので、今お答えするのは難しいと思います。(後半割愛)』

えーっとすいません今の物価がそもそも2%を大きく超えている事に関してはスルーですかそうですか。


・見るべきものは実は1か所あったんですよねーーーーーーーーーーー

まあ何か上記のような感じの微妙なグダグダ質疑が続いていたのですが、最後の質疑が結構味わいあるので、やっぱり諦めずに読んでよかったということであります。

どういう質疑家と言いますと・・・・・・・・・・・・・・・

『(問)先ほど、金融政策に関するお答えの中で、2%の物価安定目標の達成を見通せる状況にはなく、マイナス金利解除には循環的な賃金上昇の期待が高まることが重要だと、そういう認識を示されましたけれども、中川委員は来年の春闘でですね、一定の賃上げが実現したとしても、やはりそれだけでは、材料としては不足で、もう少し先を見極める必要があると、そういうふうにお考えをされているということでよろしいのか、ということが一点目です。(後半割愛)』

こちらの質問は、前日に行われた高田さんの金懇でも同じような事を聞かれていましたけど、高田さんはこの時に「来年の春闘を見ただけでは不十分だと思う、ここから1年間(なので来年の夏)までが判断をするのに重要な時期」と発言してみたら実は当日に行われていた植田総裁の読売新聞インタビューで梯子を外されるの巻になっていたんですよね。

では中川さんの金懇会見、これは冒頭にありましたように7日ということで、植田さんの読売インタビューの翌日に実施されたものですけれども・・・・・・・・・・・・・


『(答)来年の春闘が必要条件か十分条件か、というご質問なんだと思います。お答えとしては非常につまらないというか、まっすぐのお答えになっていないかもしれませんが、それ以外の情勢について見極めたいというふうに思っています。』

>それ以外の情勢について見極めたい
>それ以外の情勢について見極めたい
>それ以外の情勢について見極めたい

中川さん、どうも会見慣れしてないようで説明が基本的にグダグダで以下の部分も凄いグダグダなんですけど、まあ金懇テキストが展望レポート背景説明の見事な切り貼りであったことから分かるように、基本的に大本営執行部のイタコ芸をやっているとしか思えませんが、ここでの回答って「それ以外の情勢」という言い方で、賃金一点張りの説明から大本営執行部がしらっと足抜けを画策している、ということだとアタクシは想像いたしました(個人の感想なのでまあいろんな解釈はできますからそこは宜しく)。

つまりですね、賃金連呼って基本的に物価2%達成した、というのを後に持って行く屁理屈な訳で(本来は物価より遅行する指標の賃金を物価の判断に使うということ自体が理屈として無茶苦茶なので、賃金連呼はただの方便なのは言うまでもありません)これを連呼することによって本来政策の正常化に着手していてもおかしくない物価情勢なのにマイナス金利を継続できる、というメリットが大本営執行部にはあったんですよね。

然るに、植田さんのあの読売インタビューが差し込まれて気が付く自分の立場の危険さ、ということでのジャガーチェンジである、となって来ますと今度は「賃金」の連呼をしていると逆に「春闘まで動けない」ということになってしまい、手をこまねいているうちに日銀がイケニエール書記官コースになってしまうリスクが高まる、というのは日銀的に明らかにマズい訳ですよね。

とまあそう考えると「賃金」の連呼からそろりと「物価」というまあ本来そうあるべき王道の方に話をシフトしていく、というのは政策(やった振り政策も含む)の自由度を確保し、イケニエール書記官とならずに済む逃げ道を確保する、という意味でも賃金連呼から引いていくのは大事なポイント、

でもって高田さんの会見は6日でしたので植田さん読売インタビュー当日でしたが、翌日の中川さんの方ではこういうトーンの物件が出てきており、しかも中川さんは大本営執行部のイタコ芸を得意としておられる(個人の印象です)、となればこれはもうアレですよアレ。

と思ったので、まあ見るところもあったかなーと思いました、なお以下の中川さんの説明が相変わらずグダグダな説明なのですが、何ぼ何でもさっきのだけで切る訳にもいかないので引用しておきますね。

『春闘と言いましても、大手から、中小企業、零細企業まで幅広い方々がおられますので、一律ということにはならない可能性もありますし。ですので、必要条件としてはあるんでしょうけれど、十分かということに関しても慎重に見極めたいと思っているので、』

と、ここでは慎重派に寄った説明をしているのですが、この後が高田さんの会見と違ってて、

『二つちょっと矛盾するようなことをあえて申し上げるのですが、先ほどちょっと冒頭申し上げました通り、上下、物価に関してリスクがあると申し上げた中で申し上げた通り、賃金に関しては企業業績、特に賞与の部分、臨時報酬に関してボーナスと言われる、あちらに関しては特に企業業績に対して連動性が高くなっています。』

『ここは金融政策ということだけではおそらく助けに十分にはならず、企業の努力によるところも大きいというふうに思っていますので、この辺りは上下ありますけれども、企業が、全部が全部、全体として良かったとは言える環境であることはもちろん望みますが、全ての企業が良いということは非常に難しいので、この辺りは個々の情勢もみながら判断していくことであろうというふうに思いますし、』

すいませんここまではグダグダ鑑賞会です、ポイントはこの次。

『一方で、少し逆のことを、逆に聞こえることかもしれませんが、必ずしも賃金の上昇、ベアが全部みえるまではできませんということを意味しているわけでもないと、自分としては思っています。』

はい、当然この時はパブリッシュされる前だから知る由もなかったですけど、ここは植田さんの読売インタビューに通じますよね。

『なぜなら、来年のことをみたら多分その次の冬のボーナスのことをみなきゃいけない、それをみたら次またもらった方は、次のことが気になる。だから、ある程度物価が特に上昇した局面において、自分の給料、ボーナスがそれにある程度遅れるにしてもついていって変動するものだ、ないしは企業側からすると年に一回、物価等々、情勢をみて賃金改定について検討しなければならないということを習慣付くということがまず重要かなというふうに思っていますので、それが一点目のお答えにさせて頂きます(後半割愛)』

なぜなら、以下の説明が何か全然説明になっていない気がするんですが、まあそれはそれということで。








2023/09/13

お題「長期共担はなぜ封印しないのかという話を改めて/昨日の悪態から一転して植田先生名君クラスチェンジ説を披露してみるwww」

しっかし来週のMPMはどう見てもライブだし10月の展望も面白くなってまいりましたし、いろんなものがやっと本来のスケジュールに戻ってきている感じがするのは中々結構とは言え急に変えるなよという所ですが・・・・・・・・・・・


〇5年入札はとりあえず順調だったが別に長期共担関係ねえだろ

中々良い素材だったロイターさんの市況ページが掲載を止めたんだか何だか知らんけど、ネット版のトップページから全然探せなくなった(前は「金利」カテゴリー選択してニュース一覧を見ていくと簡単に出てきたというのにニュース検索機能がゴミ以下になったので朝の巡回サイトからロイターを除外する5秒前ですこのアタクシ)のでまあシャーナイから落札結果でも貼りますが。

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20230912.htm
5年利付国債(第161回)の入札結果

6.価格競争入札について
(1)応募額    8兆9,137億円
(2)募入決定額   2兆190億円
(3)募入最低価格  100円02銭
(募入最高利回り)(0.295%)
(4)募入最低価格における案分比率  81.7630%
(5)募入平均価格  100円04銭
(募入平均利回り)(0.291%)

ベンダーの報道ベースだと足切り100円予想だったのですが、足切りはその2つ上になりまして、0.3%100円とはならなかった訳で、これを受けまして中期や横綱中心にホイホイと相場は戻り基調になったんですけど、結局終わってみれば中短期は強くなったものの長期から超長期は引けからちょち甘で終わっておりましたの巻。

そういやあVaRショックの時って5年の0.3%水準でいったん止まって戻った(がその後中期から改めて売られだしてもっと凄い事が起きましたが)というのをほうふつとさせるサムシング、って感じでしたが、月曜にアナウンスされていましたように明日は久々の長期共担がありまして、あれは黒ちゃん最後に残した聳え立つクソ案件だから植田さんになって封印したと思ったのにまたクソタワーの建立を行ってしまうようで甚だ遺憾なんですけどね。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230911a.pdf
共通担保資金供給オペレーションの実施について
2023 年9月 11 日
日 本 銀 行
金融市場局

『日本銀行は、2023 年9月 14 日に、次のとおり共通担保資金供給オペレーションを実施することとしましたので、お知らせします。

貸付利率:入札方式
貸付店:全店貸付
オファー金額 :オファー時に通知
期間:
2023 年9月 15 日〜
2028 年9月 15 日』

ということでまた5年の共担をやる訳ですが、つい先週水曜日(表に出たのは先週土曜日)にも植田総裁が「もしかしたら来年頭どころか年末にだって物価目標達成が近いという判断ができるようになるかもしれないですよね、政策の極端なビハインド・ザ・カーブは良くないよね」という話をしている訳でして、これ即ち5年というような長期タームで見た場合にマイナス金利政策がそのままでいる訳はどっからどう見ても無い、ということを総裁が高らかに(かどうかはともかく)宣言している訳ですよ。

そんな中でまたぞろ関東軍じゃなかった金融市場局が「5年」とかいう期間で「固定金利貸出」を行うのって、確かに制度上市場局の一存で打てるにしたって、向こう5年間の日銀のバランスシートにこの貸出、しかもマイナス金利が解除された暁には明らかに「掴み金レートの固定貸出」となるものが残るという物件なのですから、これ授権上では確かにオペができるにしたって、やってることの経済効果は越権行為に近い所を堂々と踏みに行っている話(そもそも政策委員会が出している経済物価の見通し期間すら超過しているんですからねえ)であって、お前は何をやってるんだというお話になる訳ですよ。

ということなので、まあ黒田末期にもうヤケのヤンパチの毒ガス攻撃を行っていたのはまあ末期症状における毒ガス攻撃炸裂なのでヤケクソの一発ということになる(全然良くないけど)のでございますが、新体制になってまさかこれをぶっこむとは、という話でありまして、これ植田さんがインタビューで説明していたと報道されている「これからはよりデータディペンデントの度合いが高まる」という話に対しての整合性って考えてますか?????と小一時間といたい訳で、何か上層部がポツダム宣言受諾って言ってるのに一部の不満な将校が宮城に突入してクーデターやろうとした案件何じゃネーノ位に深刻に受け止めるのがアタクシの仕様。

だいたいからして、この低利融資、まともな世界になって金利が付く時代になった時に目ざとい人が「なんでこんな超低金利の融資を日銀は行っているのか、これは利益供与じゃないか」とかゴリゴリとツッコんで来たらどうするんだよという話で、まあその時は植田さんが腹を切って詫びるということになるんですかねえ、よー知らんけど。

なお、それを言い出したら10年債買ってる方が期間が長いじゃないか、という話はあるのですけれども、長期国債に関しては完全に形骸化しているけど銀行券ルール、まああれは究極的には日銀の長期負債(銀行券と所要準備が事実上の永久負債みたいなもんだから)に見合うだけの長期資産を持つのは財務のバランスから言って別に変な話じゃない、というのがある上に、国債の場合は将来において市中売却が可能だからその点でも言い訳はできなくもないし、しかも国債の場合は貸出と違ってどこそこの先に対して利益供与もどきを行っていると論点が後になって出て来るというのが無い訳でして、そもそも論としてこの長期共担って無茶苦茶筋悪のオペレーションなので、やっちまったもんんはしゃーないけど、将来日銀の首を締めるのは間違いありませんので、本当の本当に封印して欲しいんですよね。


でもってこれやったら5年の金利が紐付きで下がるのかと言えば、以前も何度も申し上げていますように、5年新発入札で入れて5年共担の担保にしたら見た目としてはマッチングしてさや取れて(゚д゚)ウマーって話なのですが、これ会計的にはひも付きヘッジ会計にならない筈(筈というのはアタクシも経理実務まではさすがにやっていないからなので違ってたら教えてくらはい)で、保有国債の方は持ち切るまで持っていると途中で時価評価食らったときにその他有価証券で持っていたら時価評価と価の乖離を注記しないと行けないし、減損レベルまで食らったら(5年債だから普通は食らわんけど)PL直入しちゃうし、たかが10bpや20bpのスプレッド(共担レートが幾らになるか次第ですけど)取りにバランスシートを使ってこんな事するかよというお話なので、5年共担を打って5年国債入札が好調になったとかコメントするのは、朝ドラで「あまちゃん」の放映が始まったら株高になりましたというようなもんですな、うんうん。


と、話が長期共担に対する悪態方面に向かってしまいましたが、まあとりあえず5年の0.30%でいったん止まる、的なこういうのがあるわけで(しかしマイナス金利解除の先まで見据えていとなると5年の0.30%って政策金利幾らまで耐えられるんでしたっけ問題が浮上するんだが)ちゃんと市場に価格形成をさせれば、然るべきところではちゃんとした買いが入って(かどうかは知らんが今回のはそういう事にしておく)適正かどうかは知らんけどちゃんと相場は下げ止まるもんです、というのを示した訳で、いいからもっとジャンジャン買入を減らせという話になる訳ですな、マッタクモウ。



〇改めて植田総裁の読売インタビューを考えてみますがポイントは「ビハインド上等姿勢の後退」だと思うの

昨日の雑談というか悪態というか愚考察というかの続きですけど、

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230908-OYT1T50393/
金融緩和「静かな出口」探る、賃上げ見極めは「年末」…日銀・植田総裁インタビュー
2023/09/10 02:39

これですね、時期の事が現世利益的にもニュースワイヤー的にもどうしても注目されるんですけど、読売さんの書いた記事中のこの部分がやっぱり一番の重要事象ですよね、というのはこのニュース出てからアタクシもいろんな人と議論して思った話なんですよね、ということなので今更書かなくても合点承知の介と言われそうですが備忘で書いておく。


・時期がポイントなのではなく「リスクマネジメント・アプローチ」の注意すべきリスクの変化が最重要

『「ある種、(時々の経済状況で判断していく)データディペンデント(データ次第)な度合いは上がった」

これまで日銀は、強力な金融緩和がこの先も続くと市場に浸透させることに重きを置いてきたが、今後は、経済・物価情勢を踏まえた政策運営に軸足が移る。』

『植田氏は「バブルのような不均衡はいまのところない」とする一方、緩和を続けつつも「(金融政策が後れをとる)ビハインド・ザ・カーブは、積極的に許容するというわけではない」とも語った。』(直上URL先読売新聞記事より)


当然ですがこれは5月19日に行われた内外情勢調査会でのハトハトコンセプトとは整合性が取れていないんですよね。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230519a.htm
【講演】
金融政策の基本的な考え方と経済・物価情勢の今後の展望
内外情勢調査会における講演
日本銀行総裁 植田 和男
2023年5月19日

この講演の衝撃のラストがこれでしたよね。

『この点、金融政策運営にあたって、経済に不確実性があることを前提として、先行きの様々な経済の経路ごとに社会厚生を考慮することが重要という考え方があります。これは、かつて米国FRBの議長を務めたグリーンスパン氏が提唱したことでも知られる、リスクマネジメント・アプローチと呼ばれる考え方です。』

でもって、

『これをわが国の現状に引き直しますと、拙速な政策転換を行うことで、ようやくみえてきた2%達成の「芽」を摘んでしまうことになった場合のコストはきわめて大きいと考えられます。逆方向の、政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまうリスクもありますが、こうした2%の定着を十分に見極めるまで基調的なインフレ率の上昇を「待つことのコスト」は、前者に比べれば大きくないと思われます。』

ということで以下、

『そうした意味で、先行きの出口に向けた金融緩和の修正は、時間をかけて判断していくことが適当だと考えています。この「芽」を大事に育て、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指します。』(以上5月19日の植田総裁講演より)

となっていて、「社会厚生を考えた場合にビハインドしてインフレ上振れをすることはさほど重大な問題ではない」という認識をあの時点では示していた(まあその後もシントラとかでそういう発言していましたけど)のでありまして、これに対しまして、今回は「(金融政策が後れをとる)ビハインド・ザ・カーブは、積極的に許容するというわけではない」となったので、これは基本路線の大きな変化を表明したことになります。

さらに付け加えますと、この内外情勢の講演で植田さんの引用したリスクマネジメント・アプローチの前提には、上記引用部分にありますように「先行きの様々な経済の経路ごとに社会厚生を考慮する」というのがある訳で、植田さんは今回の読売新聞のインタビューによって「政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまう」ことの社会厚生へのマイナスが内外情勢の時点(つまり5月)に考えていたよりも大きくなっている、と判断した、ということになりますので、まあこれはやっとちゃんとした見識に戻ってきてるじゃん、というお話になる訳ですし、そういうコンセプトになるんですからこれまでの「なんでも屁理屈つけて緩和修正の先送り」というのが先にあって動くこととは全然違う話になった、ということになる筈なんですよね。

とまあそういうことですので、勿論見極めたと言い出す時期が何時なのか、というのは重要であることには(わたくしらポジションの世話をしないといけないんですから当然なのですが)変わりないのですけれども、より大事なのはこの「高インフレ放置のリスクが社会厚生的にも問題である」という話、ちょっと昔の流行語で言えば「高圧経済アプローチ」路線からの修正を図っている、というのが大事だと思うんだけど違うかなー、って思うのでありまする。


・あまりにも差し込み説ばっかり言うのも何だから「植田先生が遂に本領発揮して名君モードに戻った」という読み筋を書いてみる


でまあこの基本路線の大きな変化なんですけど、植田さんの発言が突如盛大にブレてるじゃんという悪態は悪態であるんですけどそこをさて置きますと、「就任当初の時点では物価の上振れをそこまで重大に懸念する必要はないと判断していたが、その後の経済物価情勢を分析した結果、「待つことのリスク」が当初考えていたよりも高い事が分かったので基本コンセプトに修正を加えることになった」とまあそういう説明になるんじゃないかと思うんですよね。

なのでハトハトジジイの植田総裁、というのは実は事務方のポンコツ経済物価情勢判断を信じたために騙される、という宦官趙高に壟断された二世皇帝胡亥モードで、元はと言えば二世皇帝胡亥のような暗君ではない植田先生、どうも宦官どもの言ってることを真に受けてはいけない、ということに暗君じゃないだけに気が付いて覚醒がおっぱじまって、名君モードにクラスチェンジが急に行われた、という美しい(かどうか知らんが)ストーリーが起きているのではないか、という急に植田先生賛美モードという掌返しの予行練習をしている訳ですが(^^)。

まあアレですよ、植田先生、もともと名君の素質は有る筈(だってそうだから期待したんだもん)な訳で、ここに来てポンコツ見通ししか出さない事務方をうのみにしないで、自らもちゃんと経済物価情勢について分析を行った結果、二世皇帝胡亥モードから名君モードにとクラスチェンジしたと考えれば、今までのハトハトジジイは世を忍ぶ仮の姿で、実際は読売インタビューで示されたような本来ならごく普通なので別に褒める話でもないのですけれども、その前のベースがアレだったので立派に見えてしまう、というモードにギアを入れてきた、という名君植田先生という読み筋も考えてみたいな、と今年の2月頃に思っていたことを思い出しながら書いてみました。

しかしまあハトハトジジイの植田総裁と読売新聞インタビュー(と言っても結局読売本紙を査収しなかったので肝心の全文は読んでないのですが、滝汗)の植田先生、どっちが植田さんの真意なんでしょうかねえ。


ま、褒めてみたけど一連の発言の振れ幅の大きさに関しては植田さんちょっと猛省をしていただきたいし、何ならちょっと次回の会見で丸坊主になって詫びてくれませんかねえ位には思うのでありました。


ということで、来週の決定会合ではこの「リスクマネジメント・アプローチ」をもちいた先行きの金融政策運営のコンセプト、リスクバランスに関して5月に示した事と今とでは考えに変化が生じたのか、生じたとしたら何がその背景にあるのか、というのを説明して頂きたいし、植田さんからの説明が無かったら誰かお願いだから質問してくださいよろしくお願いしますという所ではありまする。

#まあその結果ズッコケ会見になったらまた前言撤回モードでもう無茶苦茶なんですけどさてどうなるやら


〇あ、中川審議委員金懇会見

・・・・・まあ多分この究極のポンポコリン委員の金懇とか今回1行も引用しなかった(図表の対照表を作っただけだがテキスト読んでネタにするよりも労力的には力作だったんですよ!!!!!!)のですが、当然なながら会見もポンポコリンなのは読む前から明らか、とは言いましても実験において「この条件では反応が進まない」というのを確認することも重要な知見を得ることに繋がるように、「読む価値がない」というのも確認することが重要なことですので、ちゃんとやります予定ですすいませんすいません今日は時間がない。









2023/09/12

お題「日銀の金融政策に関するコミュニケーションが完全に破綻している件について(読売インタビュー)」

プロ野球贔屓球団の関係上100年前から(嘘)読売新聞というのはアタクシ基本的に読まないものとされているのですけれども、それにしても土曜の記事についてシランガナ状態で全然ノンビリ高田さんの金懇会見ネタをやっておるとはこりゃまた大変に恥ずかしいにも程がありましてアタクシの情報感度がアレなのを皆様にお示ししてしまいました誠に申し訳ございません(ジャンピング土下座)

なお、題名は別に読売記事に気が付かなかった腹いせで書いている訳ではなくて、真面目な話今回のインタビューは何なんだお前という意味でありまして・・・・・・・・・・・・


〇植田総裁読売新聞単独インタビュー(土曜の朝刊ネタでしたすいませんすいません)

ということで誠に申し訳ございませんし今さらご案内のネタではありますが。

・読売新聞単独インタビューが唐突にキタコレだった訳ですが

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230908-OYT1T50416/
マイナス金利解除「物価上昇に確信持てれば選択肢」…植田日銀総裁インタビュー
2023/09/09 05:00

ちょwwwwwwおまwwwwwwwwww

『日本銀行の植田和男総裁は、読売新聞の単独インタビューに応じた。賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、大規模な金融緩和策の柱である「マイナス金利政策」の解除を含め「いろいろなオプション(選択肢)がある」と語った。現状は緩和的な金融環境を維持しつつも、年内にも判断できる材料が出そろう可能性があることも示唆した。』(上記URL先より、以下同様)

とまあそういうことで植田総裁、突如のジャガーチェンジを敢行してしまうの巻なのですが、

『植田氏が今年4月に就任して以来、報道機関の単独インタビューに応じるのは初めて。現状、「物価目標の実現にはまだ距離がある。粘り強い金融緩和を続ける」との立場は維持した。』

報道機関ってのは新聞社とかテレビ局って意味ですかね。

『植田氏は、短期金利をマイナス0・1%とするマイナス金利政策の解除のタイミングについて、「経済・物価情勢が上振れした場合、いろいろな手段について選択肢はある」と回答。さらに、「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば、(解除を)やる」と述べた。』

この字面を見ますとゆうとること自体は至極当たり前の話なのですが、何せ植田総裁はつい2週間前のジャクソンホールでも果敢に「基調的インフレは2%に行ってない」とか思いっきり言いまくっていた訳で、

『具体的な時期は、現状では「到底決め打ちできる段階ではない」とした。来春の賃上げ動向を含め、「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」とした。』

ちょwwwwwおまwwwwwwwww

「先行きが決め打ちできない」のに何で同じインタビュー内で「物価目標の実現にはまだ距離がある。」って話をするんだよ決め打ちできないなら最初からそんなこと言わないで「物価の先行きは確実に言えることが少ないのでデータを謙虚に分析しながら適切な判断をしたい」って言い続けれてればよかったのに、お前がそもそも論として先行き決め打ちしまくって「まだ距離がある」って言ってたんじゃねえか名に急に前言翻してるんだよこのハゲとしか申し上げようがない。


・「あらゆる選択肢」キタコレでどう見ても差し込まれです本当にありがとうございました

とまあそういう訳で今回の読売新聞のインタビューですが、上記URLの最後に大変に良い事が書いてあるのは皆様もお気づきになったかと思います。

『インタビューは6日、日銀本店で行った。』(ここまで上記URL先の読売新聞記事(その1)より)

>インタビューは6日、日銀本店で行った
>インタビューは6日、日銀本店で行った
>インタビューは6日、日銀本店で行った

・・・・・・・・・ゴクリ

さて、ここで6日の朝に報道された誰かさんの発言を報じる記事を再掲してみましょう。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-05/S02NP6DWLU6801
「あらゆる選択肢排除せず」と財務官、円は安値更新で効果限定的
占部絵美、横山恵利香
2023年9月6日 8:05 JST 更新日時 2023年9月6日 11:30 JST

『神田真人財務官は6日、外国為替市場での円安進行について「急激な変動が起こっている」と述べた上で、「こういった動きが続くようであれば、政府としてはあらゆる選択肢を排除せずに適切に対応していきたい」と市場をけん制した。財務省内で記者団に語った。』(上記URL先より)

でですね、アタクシ7日の駄文でこのように申し上げましたのですが、うれしはずかしということで再掲させてくださいな。

(7日のアタクシの駄文から)
と仰せなのですが、まあこの「あらゆる選択肢」は別に外国為替市場に対する選択肢だけじゃないわけでございまして、つまりは7月に見られたアレ、という偉大なる選択肢があるわけで、しかもこの偉大な選択肢、それこそ金融政策の違いによる円安圧力、という為替市場のファンダメンタルズにも影響するということで大変にグレートな選択肢である、とまあそのように考えるのって別に無理のない発想だと思うのですが、まあ昨日の債券市場ちゃんはそーゆー反応してなかったなあと思いましてうーんと唸る今日この頃です。

アタクシはこの「あらゆる選択肢を排除せずに」を見た瞬間に「今から内田さんの所に行って差し込んで来るのでそこんとこヨロシク」と言っているようにしか見えなかったのですが、金融政策修正願望からくる幻覚という説は大いにあるものの、それだけじゃない気もするんですけどねえ、どうでしょうか。
(ここまで7日のアタクシの駄文)

とまあそういうことで、6日にランボー怒りの差し込み⇒読売新聞呼ばれて急遽単独インタビュー実施⇒土曜の朝刊という週末タイミングでぶっこむ、という妄想が満開になってヒャッハーとなった訳でございますが、まあそれは妄想かも知れませんけどインタビューのタイミングがあまりにも絶妙なのでもはや爆笑の発作を禁じ得ない世界でございます。


〇2%物価目標達成判断が突如(本来そうあるべきだった)データディペンデントにジャガーチェンジとな

こちらの解説記事もあります(インタビューの一問一答と思われる記事は会員限定記事なのでパス)。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230908-OYT1T50393/
金融緩和「静かな出口」探る、賃上げ見極めは「年末」…日銀・植田総裁インタビュー
2023/09/10 02:39

ということで、日曜の朝刊向けだと思うのですが、10日にはこんなのもあったようですね。

『「(来春の賃上げが)十分だと思える情報やデータが年末までにそろうことも可能性としてはゼロでない」

 物価上昇の定着においてカギを握る賃上げの動きを見極める時期として、年末の可能性を挙げた。植田氏は、海外経済も含め「見えない部分がある」とも語り、慎重に考える姿勢を示した。』(上記URL先記事より、以下同様)

この点、たまたま読売新聞記事などシランガナおじさんのアタクシが昨日の朝に高田審議委員の金懇会見をネタにしておりましたのが期せずして良い材料になりましたので後程この部分についてもお話をしようかと思います。

『「ある種、(時々の経済状況で判断していく)データディペンデント(データ次第)な度合いは上がった」

これまで日銀は、強力な金融緩和がこの先も続くと市場に浸透させることに重きを置いてきたが、今後は、経済・物価情勢を踏まえた政策運営に軸足が移る。』

ここは流石読売新聞(プロ野球応援的な意味ではアレにも程があるけど総裁記者会見での質問とか立ち居振る舞いに関して全国紙では読売毎日は評価されるべきで残りは記者が前面に個性(婉曲表現)を出し過ぎなので会社としてなってない)という解説でして、まあここで読売さんが指摘する通り。

まあアレですよ、だいたいからして7月の展望で物価に関する判断を強くした上に、「物価に関しては上振れの可能性も多い」って話をしているんですから、本来は「先行きに不確実性が強い」のであれば「2%達成にまだ距離がある」とかそういう決め打ちが出来なくなった、というのは本来7月展望の時点でそうなっていないとおかしかったわけなのですよね。

然るに皆さま記憶に新しいように、8月14日には日銀様はこのようなポンチ絵をお出しになられて
おった訳ですよね。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202307.htm
展望レポート・ハイライト(2023年7月)
経済・物価情勢の展望

思いっきり話題になった小見出し「強力な金融緩和を継続する」のポンチ絵が、

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202304.htm
展望レポート・ハイライト(2023年4月)
経済・物価情勢の展望

の小見出し「強力な金融緩和を継続する」から見たらとんでもなく遠くに後退する、というかなり驚愕な物件を出して、2%物価目標達成が程遠いアピールをしまくったのは何だったのでしょうかとしか申し上げようが無い訳で、まあ酷いコミュニケーションにも程がある訳です。


では何でこんなにジャガーチェンジしたのかと言えばそらまあ先週金曜のNYでは

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230909-OYT1T50120/
NY円が一時1ドル=147円80銭台、10か月ぶり円安…金融引き締め長期化懸念(引用者追記:これは週末のNY市場の話です)
2023/09/09 10:07

とかいうような円安モードになっていましたし、まあそれ以前に先ほどネタに致しました神田財務官ランボー怒りの「あらゆる選択肢」モードというになる訳ですよ。


〇植田日銀はコミュニケーション上の問題が大杉だし原因の大半が植田さんの決め打ちキャラにあるとしか言いようがない

そもそもですよ、今申し上げましたように7月の決定会合での長期金利変動幅の拡大容認に加え、物価の現状判断と先行き見通しの変更、リスクアセスメントにおける物価上振れリスクの認識を強めたこと、というセットは、本来的に言えば2%物価目標達成の判断を従来の全然行きません先にありきの決め打ちモードからデータを慎重に判断しながら達成に向けた動きになっているのかどうかを見極めていくステージに変化した、というものだった筈なんですよ。

然るにその後の日銀のコミュニケーションって、内田副総裁の金懇はあれ実はエライしつこく「今の時点では」を連発していてさすが内田さんきっちりヘッジ入れてるわと、常に退路を確保するその姿勢に感心する次第だとは思ったのですが、その後があのポンチ絵ですからねえ・・・・・・・・・・・・・・

まああのポンチ絵に関してはスタッフが植田さんの意を汲んだのかそれとも類推したのかワカランチだったりしますし、あれ自体は政策委員会議決事項でもない(はず)だからまだしもなんですけど、なにせ植田さん、この記事の僅か2週間前、しかもインタビューしたタイミングから見たら10日程度しか前じゃないジャクソンホールシンポジウムで、シンポジウムの流れもまるで読まない「我が代表堂々と退場す」」をぶっこんで、他の人達が「世界の経済物価を巡る情勢には構造的な変化が生じており、従来のグローバル化によるディスインフレーショナリーな経済からの変化が起きてる」って話をしているのに、

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230828a.htm
【講演】
カンザスシティ連邦準備銀行主催シンポジウムパネルセッション:「変曲点にあるグローバリゼーション」 における講演の抄訳(8月26日、於・米国ワイオミング州ジャクソンホール)

では、

『結論を先取りいたしますと、アジアにおける貿易や直接投資の構図は、地政学的な緊張の高まりを受けて、部分的にではありますが、変わりつつあります。日本の貿易活動や直接投資をみても、生産拠点を中国からその他のアジア地域へ、さらには一部を北米や日本へと多様化する動きがみられています。こうした動きはしばらく前から進んでいるものであり、その一部は、従来からのグローバル化の取り組みが続いている結果とみなすことが適切です。』(上記URL先のジャクソンホール植田総裁講演より、以下同様)

などと思いっきり議論のテーマに水をぶっかけるプレイをした挙句に、日本の物価に関しても

『物価面では、2021年から2022年にかけて輸入物価の上昇が、国内物価に波及しました。消費者物価(総合除く生鮮食品)の前年比は7月には3.1%になりましたが、年末頃にかけて低下していくとみています。物価の基調をみると、なお2%の「物価安定の目標」に達していないと考えており、こうしたもとで、日本銀行は、従来からの金融緩和の枠組みを維持しています』

とまあ全然やる気も糞もなくて判断する気ナッシングというスタンスを示しましたし、大体からしてこの植田さんの一連のやる気ナッシング発言って9月オペ紙(をネタにするの忘れましたが)でのレンジ変更なしとか10年入札の前の日に主要年限の輪番を全体としてぶち込むというプレイにより踏み上げ誘発させてたわとか思いまするに、まあ何やってるんだよって感じではありまして、そもそも論として植田さんがこんな決め打ちスタイルをしなければ余計なことにはならなかったとしか申し上げようがなくて、お前は何でそう決め打ちをするのか、そして差し込みが入ると急に折れるのか(急に折れるくらいなら最初から決め打ちするなよこのハゲとしか言いようがない)という話ではありまする。


〇たぶん誰も指摘しないと思うので指摘して差し上げますとこの植田総裁インタビューで一番恥かかされてるの高田さんですね

しかしまあ何ですな、ちょうど昨日アタクシ高田さんの金懇会見をネタにしましたが、金懇会見で得られたメイントピックは「日銀またも物価目標達成判断のゴールポストを移動する準備を開始」だった訳ですよね。

昨日ネタにしたので再掲ですけど
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230907a.pdf
高田審議委員記者会見
――2023年9月6日(水)午後2時00分から約40分
於 下関市

この3ページの部分にクッソ長い高田さんの説明があるので端折って引用しますけど、

『(答)物価目標のところの芽ということに関しては、いろんな見方があると思うんですけれども、私自身は、今日の講演の中において、三つのステージみたいなかたちで申し上げました。(途中を思いっきり割愛しまして)そういう意味からすると、やはりまだ距離があるというふうに私は判断しているという、そういうかたちでこちらの懇談会でも申し上げています。(またも途中を割愛しまして)ただ、予想物価上昇に影響を与えるというところは、やはり賃金上昇っていう部分が大きいというふうに私はみてます。』

『(さらに途中割愛しまして)そうすると、時期はどうかっていうことになるんですけれども、私は特定の、例えば、何月から何月っていう時期にという議論ではないと思います。ただ、一つ言えるのは、これからこの 1 年間でしょうか、そういう意味では、よくみておかなければいけない時期なのかなと。(またも途中割愛)本当に第三段階のところの持続性ができるかどうかというのを見極めるにはこれからの 1 年間というのがやはり重要になってくるだろうし、とりわけ、来年の春闘のところ辺りをベースに、どうでしょう、この半年間というところはよくみておかなければいけない時期なんじゃないかなというふうには思っています。そこには、まだまだ今日の先ほどの懇談会での議論でも、不確実性は大きいかなというふうには認識しています。(以下割愛)』(この部分上記URL先高田審議委員9/6金懇会見より)

・・・・・・・・・えーっとですね、高田さんは思いっきり「来年の春闘を見れば判断できるかというとそういうもんじゃないんじゃないですか」と必殺奥義ゴールポスト動かしのための理屈を大本営に代わりまして展開しておられるんですよこの金懇会見で。

でもってこの金懇が行われたのが9月6日な訳だったのですが、金懇挨拶の方はネタにしましたようにあまり特筆すべきことも書いてなかったとは言え、

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230906b.htm
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
山口県金融経済懇談会における挨拶要旨

『1つ目は、足もとの物価上昇率は2%を上回っているものの、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現にはまだ距離があると考えられることです。足もとの企業の価格転嫁の動きにはコストプッシュ要因が大きく影響していますが、輸入物価は既に前年比マイナスに転じており、こうした要因は徐々に減衰していくと考えられます。』(この部分上記URL高田審議委員山口県金懇挨拶より)

って思いっきり言ってまして、まあこの金懇テキストを当日に差し替えって訳に行かないからシャーナイにしたって、会見で思いっきり「今後1年間は見て行かないと」というようなハトハト発言を高田審議委員にさせておいて、同じ日の読売新聞のインタビューで植田総裁はこの高田さんの梯子を盛大に外すことを平然と行っていた、ということになる訳ですよ。

ということでハトハト発言をしてた高田さん、せっかく一生懸命大本営執行部の九官鳥をやっていたのに、結果としては思いっきりピエロにされてしまった、ということになりまして、こういうインタビューがあるならあるで、金懇挨拶の方は動かせないにしたって、会見の方でもうちょっとトーンを変えて、さっきの回答の件だって「時期に関していつ、というのは言えませんが慎重に物価上昇基調の定着を見極めていく必要があると思います」とかそういうような毒にも薬にもならない言い方をしてもらう事は可能だった筈で、おまえら日銀としてのコミュニケーションはどうなっているんだ、というお話な訳ですよいやマジで。(中川さんの方はさておく)


まあこれを機に高田さんがイカって大本営の九官鳥を卒業して真人間に戻ってくれることを期待したいですね!!!!!!



〇という訳で何なんだこの植田日銀のコミュニケーションは

という話になる訳で、まあ7月決定の時点で多くの方が思ったとは思いますが、今回もまたとんでもない豹変をしやがった植田総裁、ということですし、その前にはどっからどう見ても円安からくるアレがあった訳で、こうなってくるともう植田総裁の発言を額面通りに受け止めて政策インプリケーションを得るのは間違いの元、というのが誰もが思う話でありまして、まあ正直言ってそんな総裁は置いておくだけなら別に良いのですが、喋ると有害無益にも程がある、ということですので、やはりこれは床の間のガラス張りの人形ケースに飾られた博多人形として奉っておいて、多角的レビューとか言う日銀の自画自賛大会という無害無益なイベントに閉じ込めて表に出ないようにしておいた方が安全、ということで宜しいんじゃないかとおもうのですよね(個人の偏見です)。

ま。博多人形云々は冗談にしましても、真面目な話ちょっと植田さん余計な発言しすぎだし、しかもその余計な発言があっという間にチェンジしてしまうのは何ぼ何でも酷すぎるので、とにかく黙ってろと思います。



〇ということで9月はライブですねー

いやはや何ともという感じですが、さっきの読売さんの解説記事の方で引用しなかった部分にあるのが、

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230908-OYT1T50393/
金融緩和「静かな出口」探る、賃上げ見極めは「年末」…日銀・植田総裁インタビュー
2023/09/10 02:39

『日経平均株価は今夏、3万3700円台と、バブル後の最高値を更新し、不動産価格なども上昇している。植田氏は「バブルのような不均衡はいまのところない」とする一方、緩和を続けつつも「(金融政策が後れをとる)ビハインド・ザ・カーブは、積極的に許容するというわけではない」とも語った。』(直上URL先の読売新聞記事その2より、以下同様)

ということで、まあ9月になんかする(いずれにせよ手ぶらは許されませんわ)として、この辺りがポイントになりそうで、ビハインドを容認するオーバーシュート型コミットメントのガワは残すけど「なお書き修正」でMB拡大しないことも正式に容認するとか、再掲しますと


『「ある種、(時々の経済状況で判断していく)データディペンデント(データ次第)な度合いは上がった」

これまで日銀は、強力な金融緩和がこの先も続くと市場に浸透させることに重きを置いてきたが、今後は、経済・物価情勢を踏まえた政策運営に軸足が移る。』

ということで、データディペンデントという文脈で考えた場合、フォワードガイダンスという決め打ちを回避する、という意味でガイダンス文言のガワは残すけど「躊躇なく追加緩和」を止めて「適切な対応を取る」みたいな文言に変更するとか、

まあそんな感じになって、かつ10月からは輪番を少し減らすとか、まあそんな感じになるんじゃないかなーというのが今の時点でのアタクシの直感的なイメージです。


〇あ、それから何ですかあの5年共担は

という話が合ったのだが時間がないのでその話はまた別途。







2023/09/11

お題「高田審議委員金懇会見ですが2%見極め時期のゴールポストを大本営が動かしだしてますね」

これはなかなか興味深い記事(のイントロです)
https://www.agrinews.co.jp/news/index/181893
2023年9月8日
[農家の特報班]路上販売の桃どこから(上)ガード下で「7個300円」
| ニュース| のうとく

『駅前で桃を売る軽トラックを見かけますが、購入しても良いものなのでしょうか」

東京都内の女性から本紙「農家の特報班」に調査依頼が届いた。価格が妙に安く、桃の盗難のニュースも聞くため、心配になったという。交流サイト(SNS)上でも、価格を理由に「盗品では」との推測が飛び交う。桃の出どころを探った。』(上記URL先より)

いかご興味のある方は読んでみてちょ。取材しているのは日本農業新聞さんなのでガチ。


〇高田審議委員会見:大本営は「賃金」一点張りから新しい政策変更しない屁理屈を考えておられるようです

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230907a.pdf
高田審議委員記者会見
――2023年9月6日(水)午後2時00分から約40分
於 下関市


・物価目標達成の見極めはいつごろできるのか問題だが大本営は「来春の賃金」のゴールポストを浅ましく移動中

実質最初の質疑から。

『(問)講演の中で、物価目標の達成に向けた芽が出てきたりと、対してまだそこには距離があるというお話でした。そこの部分の距離についてお伺いしたいんですけれども、物価目標を達成したと判断できる時期ですね、判断し得る時期というんですかね、それについて、どれくらいの時期をみていらっしゃるのかと。例えば、春闘がみえてくる来年の 1 月から 3 月という声もありますけども、その辺り、おっしゃる距離っていうのがどの程度あるのかというのをお伺いしたいのが一つ。 (後半割愛)』

高田さん、回答がクソ長い。

『(答)物価目標のところの芽ということに関しては、いろんな見方があると思うんですけれども、私自身は、今日の講演の中において、三つのステージみたいなかたちで申し上げました。』

っていうのが説明上重要なんだったら説明しても良いんですけどね。

『一つは、ビッグ・プッシュという言い方を申し上げたんですけれども、一つは去年から、原材料、海外を主因にという状況の中で、こちらが上がってきたというコストプッシュという部分があるということ。』

カッコイイ言葉使ってますけど要は供給ショックですよね。

『それから、今年、特に今年度、この春以降といった方が良いと思うんですけれども、賃金上昇、特にこの春の春闘から、ある程度、サービス価格のところに少し変動が出てきたというところが、第二段階なのかなと。』

で?

『ただ、問題はやはり、持続性っていう点だと思うんです。』

ほうほう。

『そういう意味からすると、ちょうど三段階、三つのステージと申し上げているんですけれども、やはり予想物価上昇率が持続的に上がっていくかどうかというところ、この段階については、やはりまだ課題が残るなということなんだと思います。』

むしろ上がり過ぎてねえかという気がするんだが。

『そういう意味からすると、やはりまだ距離があるというふうに私は判断しているという、そういうかたちでこちらの懇談会でも申し上げています。』

期待インフレ率がまだ上がっていない、という認識を示しているんですが、上がってないのって物国のBEI(のうち5年ゾーンより後ろ)とESPフォーキャストくらいじゃネーノって気もしますが、じゃあ期待インフレはあんさん何で測ってみていくんでしょうかという話を聞きたい。

『今のご指摘の中で、どういう時期なのかと、どういう判断なのかということになるんですけれども、なかなかこの予想物価上昇率のところの持続性っていうのは、これは結構難しい議論だと私は思っています。』

そらだって「ザ・期待インフレ」みたいなのが直接計測できないんだから当たり前。

『ただ、予想物価上昇に影響を与えるというところは、やはり賃金上昇っていう部分が大きいというふうに私はみてます。そういう意味からすると、先ほどの二段階目のところも賃金上昇ということがきっかけだったわけですけれども、やはり相応の持続性っていうようなこと、また、逆に戻らないというようなことも含めた持続性ということを考えると、やはりその賃金環境のところ、もしくは場合によってはそれを巡る企業環境というか、そういうところ辺りがやはり重要になってくるということなんだと思います。』

このスタンスって世界的にも物価上昇がモデレートで推移してたときだったらこんな感じでじっくり構えるのは大有りだったと思うのですが、世界的な構造の変化が起きて従来のディスインフレーショナリーな構造から過去のインフレーショナリーな構造に変化が起きているかもしれない、という現在の状況において、このような思考停止で時間稼ぎをすれば良いって話じゃなくないの?????という話って田村審議委員がそういう問題意識を持っているように見えますけれども、高田さんが本来こういうことに対して世界経済の構造変化の可能性についての話をしていかないといかん人だと思うのですが、従来の流れの線上でしかものを考えない直線理論の番長になってしまわれたようで、高田さんのこれまでの人生とは何だったのかと憧れのスターが晩節であんなことやそんなことをしてアレになってしまう姿を見せられているようで甚だ遺憾ですな。

『そうすると、時期はどうかっていうことになるんですけれども、私は特定の、例えば、何月から何月っていう時期にという議論ではないと思います。』

あれだけ賃金賃金と連呼していた日銀ですが、どうも来年度の賃金改定でも強い数字が出る(そら実質消費見れば名目賃金上がらなかったら死ぬわって状態になっているのが良く分かるですから当たり前に強いでしょ)のが見え見えになってしまいまして、この調子では来年の4月、うっかりしたらその前の1月の時点で勝負あったとなるのが読めて来ました、という状況になってきましたので、上記のように来年春の賃金改定ガーを誤魔化す方向に大本営が向かっている事は明々白々。

『ただ、一つ言えるのは、これからこの 1 年間でしょうか、そういう意味では、よくみておかなければいけない時期なのかなと。』

よく見ていく時期、なんていつもそうだろ何言ってるんだこのハゲと言ったところですが、このようにしらっと「これからの1年間」とか言い出しておりまして、春の賃金改定という戦場では負ける(本来は目標達成なのだから勝ちなんだが何故か最近の日銀は物価目標を達成すると負けたかのような説明になっているのは新館7階の瘴気に当てられているとしか思えません)のがほぼ明らか、という状況になってきたので戦線をバックさせよう、という説明になっています。

『すなわち、先ほど申し上げました三つの段階の中での、ある程度、第一段階、第二段階のところは変化が出てきたけれども、本当に第三段階のところの持続性ができるかどうかというのを見極めるにはこれからの 1 年間というのがやはり重要になってくるだろうし、』

はい、「来年の賃金改定」の説明だと来春には物価目標達成で政策の正常化に進むことになるので、来年の賃金改定というゴールポストを無かったことにして「この1年」とか判断時期をまた先送りにしておりますね。

『とりわけ、来年の春闘のところ辺りをベースに、どうでしょう、この半年間というところはよくみておかなければいけない時期なんじゃないかなというふうには思っています。そこには、まだまだ今日の先ほどの懇談会での議論でも、不確実性は大きいかなというふうには認識しています。(後半割愛)』

なお、この最後の部分がちょっと面白かったのですが、説明の最後(質疑の方は後半もあるのでここで終わりではないですが)の方にきて高田さん急に。「とりわけ、来年の春闘のところ辺りをベースに、どうでしょう、この半年間というところはよくみておかなければいけない時期なんじゃないかなというふうには思っています。」って言ってるじゃないですか。

この部分に関して、全くのアタクシの妄想の世界になりますけれども、日銀大本営は今申し上げましたように、「賃金上昇の持続性」という「持続性」を理由に2023年の物価目標達成とそれに伴う出口政策を回避するための理由を使って今年も続く物価上振れから目を逸らして生きてきた訳ですよ。

でまあ「持続性」といっておけば2024年頭までは逃げ切れる、という理屈だったものの、さすがに半年後にその24年度春闘、というのを前にしてみると物価が全然押そうとしない中で賃金どうやったって上げるしか無いでしょという状況になっているのが明白で、このままだと2024年に決断をしないと行けなくなる、ってなもんで今高田さんが説明しているような「持続性を確認するためにこれから1年間見ていく」という謎理屈を繰り出してきた。というのが今回の高田さんの説明によって今月のMPM後の会見でハトハトジジイがこの理屈繰り出して物価目標を達成していないことにすると思うんですよね。

んでもって高田さん、まあ金懇挨拶が完全に「昔の高田さんはどっかに行ってしまったのかしら状態」の大本営の九官鳥になっておられた訳でございますが、九官鳥と言えども一応何かがあるようで、

「とりわけ、来年の春闘のところ辺りをベースに、どうでしょう、この半年間というところはよくみておかなければいけない時期なんじゃないかなというふうには思っています。」(さっきの再々掲)

ってのは、「ここから1年間見極める」という大本営方面によります新手のインチキ理屈に対して、いくら大本営の瘴気に当てられてアレになってしまったとしても本来の高田さんのソレはわずかに残っていて、「いや大本営ゴールポスト移動の理屈にはちょっと無理がねえか」ってのが意識のどこかにあって、やっぱり春陽の見極めだよね、もともと大本営が最初にいってたように、って意識が言わせたんじゃないか、とまあその位楽しい妄想をさせていただくことをお許し下さいませ(土下座)。



・機動的に対応と言ってることは格好が良いんだが結局YCCのなかでの話しか念頭にないという大本営

次の質問(これも前半だけ)

『(問)高田審議委員は講演の中で、経済・物価情勢に応じて、不確実性に対応した機動的な対応をとることも考えられるというようなお話をされてました。先ほど、1〜3 月というお話がありましたけれども、例えば年末の段階でも、例えば海外経済が想定より強いですとか、あるいは企業経営者の方から持続的な賃金上昇に向けた前向きなメッセージが目立つようになるとか、そういったことがあれば、年内でも政策修正の可能性があるっていうふうにお考えでしょうかというのが一点目です。(後半割愛) 』

ちなみに毎回回答がクソ長いんですよね。中村さんのもそうでしたけど。

『(答)不確実性で機動的というようなご指摘で、私もこちらの今回の挨拶要旨の中にもそういうことも申し上げているんですけれども、基本的に私自身、念頭に置いていますのは、金融政策におけるリスクマネジメントっていう観点だと思うんです。』

おーーーーー立派なこと言うじゃん。

『そういう意味からすると、当然のことながら、様々なリスクに対応したやり方をこれから考えていくということが、やはり必要になってくると思いますので、そういう意味から常に、様々な選択肢の中での対応というのはあると思います。』

で???

『例えば、7 月の時にYCCの弾力化を行ったわけでありますけども、これもある面で言えばリスク管理ということだと思います。』

えーっとすいません。「金融政策におけるリスクマネジメント」ってのは、「現状では問題が無いように見えても政策によって将来起こり得る大きなリスク(だいたいの場合政策のやり過ぎに起因する大問題)に対してフォワードルッキングに対応する」って話であって、指値オペがテクニカルにどうだとかそういうのリスク管理でもなんでもないんですけどねえ。

『そういう意味では、これから場合によっては、物価の上振れみたいなことがあるリスクがあって、例えば予想物価上昇率が上がりやすいというような状況の中で、備えをしておくというようなかたちで今回 7 月の対応を行ったということだと思います。』

そもそも予想物価上昇率が上にぶれるんだったら2%物価目標達成とか行き過ぎとかそっちの話であって、長期金利ペッグ政策の是非そのものが問題になる訳で、10年0.5%が1%になったからどうこうというレベルの話ではない筈なんですが。

『それは場合によっては逆に下振れの場合もあり得るわけなんですけれども、そういう意味での選択の幅を広げるために今回の対応を行ったということでもあるんですけれども。当然のことながら、そういうことというのは、今後についても常に考えておかなければいけない論点であるというふうには思ってます。』

完全に話が「YCCのなかでの調整」でしかないという時点で「機動的対応」というのが機動的対応でも何でもない、という事を示しております。

『ですから、そういう中で言えば、時期をいつに限定するというようなことにはなかなか、一般的に申し上げにくいということだと思うんです。ですから、常にこの金融政策ということからすれば、上振れも下振れも当然起こり得るということなわけでありますから、そういう状況に応じて毎回毎回の決定会合の段階で対応していくというかたちをとっていきたいなというふうに思っている次第であります。(後半割愛)』

まあしかし何ですな、先般来申し上げていました通りという感じでして、とにかく日銀大本営は何があっても屁理屈を捏ねまわして2%物価目標達成を認めようとはしない、なぜなら今の政策の正常化路線とか出口政策というのをやる気が一切ないから、というのは明確にこの九官もとい審議委員の会見における説明(ったって質疑2本しか引用してなくて恐縮ですが)で更に明らかになりましたな、と言ったところです。


・・・・・・とは言いましても、もはや皆まで言わなくてもお分かりのように、大本営がどんだけ事勿れ問題の先送りを貫こうとしましても、あの方面からの差し込みが来ると突如政策が君子豹変のジャガーチェンジになってしまいますので、そういう意味ではこいつらが「2%物価目標達成の判断」について説明するカメレオン屁理屈に関しましては、政策の先行き予想をするにあたって1ミリくらいしか参考にしてはいけなくて、「日銀がこういうのだからこの辺りの経済データに注目」とかいうような素直なインプリケーションを得ても(いや本来はそういう方が正しいですよ念のため申し添えますけど)ことこの局面においては無駄だし判断間違えるリスクの方が大きいので、まあコイツラの話は「ああまた新しい屁理屈が出てきましたねwwww」というような感じで、屁理屈鑑賞会というエンターテイメントをやっている、と思う程度にしておくのが良いかと思います。


#本当は中川審議委員会見と同時成敗の予定だったのですが月曜いつものアレで時間が・・・・・・・







2023/09/09

お題「中川審議委員金懇挨拶がある意味斬新だったんですが・・・・・・・・・」

もともと重めだったロイターネット版のサイトがサムネゴテゴテのせいでクソ重くなってしまって最近型PC使っていない人には見るなと言ってるようなもんなので(軽量バージョンのページって作らんのかね)朝の巡回サイトを何にしようか検討しておりますなう。

〇中川審議委員の高知金懇ですが案の定の内容ですがこれは凄いと思ったのが・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230907a.htm
わが国の経済・物価情勢と金融政策
高知県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 中川 順子
2023年9月7日

HTML版はこちら
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230907a1.pdf

図表はこちら、と何故かご紹介
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230907a2.pdf


・小見出しを見ると何の変哲もない説明に見えますが・・・・・・・・・・

今回の挨拶の構成が小見出しを見ますと、

1.はじめに
2.経済・物価の現状
(1)海外経済の現状
(2)国内経済の現状
 企業部門
 家計部門
(3)国内物価の現状
 企業物価
 消費者物価
3.経済・物価の先行き見通しとリスク
(1)経済・物価の先行き見通し
(2)経済・物価見通しにおけるリスク
 経済見通しにおけるリスク
 物価見通しにおけるリスク
4.日本銀行の金融政策運営
 イールドカーブ・コントロールの運用見直し
 「多角的レビュー」の実施
5.高知県経済について

とまあこういう構成なのですが、金懇テキスト出たあとに早速「何か展望レポートそのまんまじゃね」というような指摘を読者の方から頂いたりして、ねじり鉢巻きで読んでみると確かにひたすらどっかで見たことのある話が延々と続いているのですな。うーむ。


・図表がまさかの展望レポート全文と同じものばっかり(さすがにデータは更新されている)という驚異の講演

でまあうーん何だろと思いながらPDFバージョン(の方が紙に出して読みやすいから紙に打ち出す時はPDFです。PDF版だと図表も後ろにくっついてくるのでなお好都合)を見直していたら、図表の部分を見て「あれこの図表見たことあるな」と思って図表の3番目4番目くらいを見て気が付いたんですよ。

・・・・・・・もしかしてこの金懇の図表って全部展望レポート全文(決定会合の次の日に出る奴で、「背景説明を含む全文」ってやつなので正確には「全文」というより「背景説明」になりますが)の図表の使いまわしをしまくってるんじゃねえの????とおもってちょっと確認してみますたwwwwwww

でまあ不肖このアタクシ、こういうの気が付いて調べだすとやたら情熱をもって確認するので、以下対照表を作成しましたので皆様も是非ご確認痛ければ(そんな暇はないですかそうですか)と存じます。

中川さんの金懇挨拶図表集(再掲)
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230907a2.pdf

7月展望レポート全文(基本的見解+背景説明)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2307b.pdf

(図表1)海外経済
左の<世界経済見通し>
=展望17ページ(PDF19枚目、以下は本文のページのみ記載しますね)の図表5、なおグラフの系列は2項目削って1項目だけになっています

右の <グローバルPMI>
=展望18ページの図表6、グラフの系列項目も一致


(図表2)国内経済(企業部門)
左の<企業収益>
=展望21ページの図表16@、グラフの系列項目も一致

右の <業況判断>
=展望22ページの図表17、フラフの系列項目も一致

・・・・・・でですな、先ほど申し上げましたように、アタクシこの図表集を確認しだして実はこの図表2の所で「あれあれ」と思ったんですよ。というのはこれ「グラフの系列項目も一致」なのですが、グラフの色使いまで完全一致になっていて、そら見たことあるわwwwと思いながら見てたんですが、この前の図表1も以下のもそうなんですが、基本的にグラフの色使いまで一致していまして、この辺りで急に別の意味でやる気元気井脇になった訳ですよ。ということで以下もそうなんですけど、グラフの色使いまで一致という見事な使いまわし感満載の図表が続くんですけどね。

(図表3)国内経済(企業部門)
左の<設備投資一致指標>
=展望23ページの図表18、グラフの系列項目も一致

右の<設備投資計画>
=展望23ページの図表20、グラフの系列項目も一致

ちなみにこの2本のグラフが一番わかりやすいですが、さすがにデータは直近のものを反映して更新されていますので、そこにつきましてはご安心(??)頂ければと思いますw

(図表4)国内経済(企業部門)
左の<鉱工業生産>
=展望21ページの図表15、グラフの系列項目は1つ減らしている

右の <実質輸出入>
=展望19ページの図表9、ぐラグの系列項目も一致

(図表5)国内経済(企業部門)
左の<地域別実質輸出>
=展望19ページの図表10、グラフの系列項目も一致

右の <財別実質輸出>
=展望19ページの図表11.グラフの系列項目も一致

(図表6)国内経済(個人消費)
左の<個人消費とマインド指標>
=展望28ページの図表32と27ページの図表28の合体作品(やっと加工品登場w)
こちらは展望の図表32のグラフの系列項目のうち、「消費者態度指数」を図表28の「消費活動指数」に置き換えたものです

右の<消費活動指数(実質)>
=展望27ページの図表29、グラフの系列項目も一致

(図表7)国内経済(雇用・所得環境)
左の<名目賃金>
=展望25ページの図表25、グラフの系列項目も一致
なお詳しく見ると凡例の表示箇所がこのグラフと次のグラフでは置き場所動いていますねwwwww

右の <雇用者所得>
=展望26ページの図表27、こちらグラフの系列項目を一つ外しています。ちなみに外しているのが「実質雇用所得」なのはちょっと味わいがあるので、展望のグラフとの見栄えを比較してみてください(まあ項目のお名前で察することができるとは思いますがwww)


(図表8)企業物価
左の<輸入物価>
=展望33ページの図表44、グラフの系列項目も一致

右の<財・サービス物価>
=展望30ページ図表35なのですが、展望全文の中でこの図表35はグラフ仕立てになっていなかったもので、ここで表示されている中にある「国内企業物価指数(前期比)」と「企業向けサービス価格指数」をグラフ化した物件になっています、やったね!新しいグラフだ!!!!(そうなのか????

(図表9)消費者物価
左の<CPI(除く生鮮)>
=展望30ページの図表36、グラフの系列項目も一致

右の <CPI(一時的な要因を除く)>
=展望30ページの図表37、グラフの系列項目も一致

なお、先ほどと同じですが、さすがに直近のデータは更新された形で入っているのは大体目視で確認できますので(他のものでも直近数字があるのは同様)しつこいですが申し添えます。

(図表10)国内経済・物価見通し
<展望レポートの経済・物価見通し(2023年7月)>
=こちらは政策のお話なんでさすがに展望レポートの背景説明に図表はありませんが、基本的見解のケツにあるものですけど、まあこれはこれでいいでしょう

(図表11)物価を取り巻く環境
左の<販売価格判断>
=展望33ページの図表42、グラフの系列項目も一致

右の <予想物価上昇率>
=展望32ページの図表41@から、グラフの系列項目のうち「エコノミスト@、A」(のインフレ見通し)の2項目を割愛したもの

(図表12)イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用の柔軟化=こちらも図表10と同様に政策の話なんでまあいいんですけど、こちらは決定会合当日に出てた「(参考)イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用の柔軟化」(https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230728d.pdf)のポンチ絵から物価見通しと予想物価上昇率のグラフを取っぱらってデザインを調整した物件ですが、まあ政策の説明ポンチ絵だからこんなもんと言えばこんなもん。



・・・・・・・・でですな、見てお分かりの通りで、図表が結構一杯ある金懇挨拶なのですが、よくよく見ますと「中川さんの金懇だから出て来る中川さんなりの説明」というのがまるでないというのが今回の中川さんの金懇挨拶の割と前代未聞に近い所があるんですよ。

と申しますのは、直近ここまで田村さん、中村さん、高田さんと金懇ありましたけど、

田村さんの金懇の図表
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230830a2.pdf

中村さんの金懇の図表
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230831a2.pdf

高田さんの金懇(図表が別ファイルになっていないので図表付本文を)
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230906b1.pdf

となっていまして、さすがに「7月展望レポートの中にあった図表だけでおしまい」という訳ではなくて、何らかの加工があるんですけど、まあ実際に見て横比較するとわかるのですが、中川さんのは単にデータをアップデートしただけで図表のデザインすらほぼ同じという豪快な使いまわし感満載で、使い回しするにしてもせめて直近のアップデートが良く分かるようにするとか何とか工夫しているならまだしも・・・・・・・ねえ。


とまあそういうことなので、中川さんの金懇に関しては、いやこれならチャットボットで用が足りるし、何なら調査統計局の局長と課長とスタッフが来て説明した方がよっぽど御来賓の方々にとって有益な話が出来たんんじゃないでしょうかって思ってしまう次第なので、本文に関して論じる気はありません、というのをお示しするために図表の比較対照表というのを作ってみました(ちなこれってもちろん下調べするんですけど、実際に書き物にするときに再度画面に並べて目検するから意外に手間がかかるんですよね〜笑)。

なお、中川さんの講演本文の論ずるに云々を示すよりもテメエの粘着気質を示したのではないか、というツッコミに関しては聞こえなかったことにしておきますw


・ああ一応ここだけ引用しておきましょう

なにせ上記のような金懇挨拶の図表を出している時点、中川審議委員はオリジナル見解を一切お持ちではありませんと宣言しているようなもんなので、そういう意味ではもしかすると執行部の鉄砲玉になり得るかもしれないのですが、なんかまあそうな感じもしないでただのチャットボットにしか見えないのですが(個人の偏見です)、まあ一応政策の所だけ引用しますわ。


『4.日本銀行の金融政策運営』の『イールドカーブ・コントロールの運用見直し』(の部分もまあクッソ短いんですけれども)の4パラから。

『当時は、昨年12月ほどのストレスが国債市場にみられていたわけではありませんが、市場参加者の一部には、先行きの金利動向を巡る不確実性が高いとみて、債券投資を控える動きもみられていました。経済・物価を巡る不確実性がきわめて大きいことを踏まえますと、先行き、物価や予想物価の上振れ方向の動きが続き、こうした動きが強まることも考えられます。こうした中で0.5%での「連続指値オペ」で金利を厳格に抑えつけようとした場合、昨年12月と同じように、イールドカーブの歪みや、意図しない混乱を金融市場に引き起こしてしまう可能性があります。今回の措置は、そうした状況における市場機能面での副作用の軽減に資するものと考えています。』

まあこの辺はどうでもよいのだがこの次ですねポイントは、

『長期金利の上昇を許容することは、事実上の金融引き締めではないかという意見も聞かれますが、長期金利上昇の背景で中長期の予想物価上昇率が上昇しているならば、実質金利でみた金融緩和の度合いは弱まるわけではありません。市場機能にも配慮しながら、緩和的な金融政策を粘り強く行うことは両立するものと考えています。』

という屁理屈、高田さんもこの理屈繰り出していましたけれども、執行部腹話術人形がこれを言いだしている、というのはまあいつものお察しのアレでして、長期金利の上昇容認をしなければいけなくなる(主にあの方面からの差し込みに起因すると思われますがw)場合の逃げ口上をこのような形でチラチラと出している、という辺りはまあ実際には日銀驚異の事勿れ主義にしか見えないから政策修正したがらなくても、どうせ差し込まれたら泣きながら政策修正するんでしょうから、その可能性を踏まえて腹話術芸を行っている、ということではなかろうかと思いますが、どうでしょうかねえ・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・しまった時間がアレだし一応台風だしなので高田さんの会見ネタは中川さんの会見ネタと一緒に週明けに(その他積読ネタとかFED人事ネタも)。










2023/09/07

お題「神田財務官の「あらゆる手段」とは??l/高田審議委員山口金懇挨拶より」

〇「あらゆる手段」と言われますとやっぱりですねえ・・・・・・(神田財務官発言)

昨日はドル円が147円後半で朝を迎えていた訳ですが、朝も9時前から神田財務官のランボー怒りのけん制発言がキタコレだったわけですな。

あ、ロイター記事の一覧性がBBG並みというか多分それ以下に悪化したので今後はBBG記事の引用が増えると思うのですがBBGからね。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-05/S02NP6DWLU6801
「あらゆる選択肢排除せず」と財務官、円は安値更新で効果限定的
占部絵美、横山恵利香
2023年9月6日 8:05 JST 更新日時 2023年9月6日 11:30 JST

こちらのスタンプにありますように早い時間から出てた訳ですが。

『神田真人財務官は6日、外国為替市場での円安進行について「急激な変動が起こっている」と述べた上で、「こういった動きが続くようであれば、政府としてはあらゆる選択肢を排除せずに適切に対応していきたい」と市場をけん制した。財務省内で記者団に語った。』(上記URL先より、以下同様)

まあ何ですな、「急激な変動」ってほど急激に変動してるかよという話でございますし、

『神田財務官は、為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいと強調。足元では「投機的な行動、あるいはファンダメンタルズで説明できないような動きが見られており、高い緊張感を持って注視している」と述べた。』

そもそも欧米主要国が「インフレとの戦いはまだ終わっていない、中央銀行総裁の次回作をお待ちください」ってやっている中で、日本の中央銀行総裁だけが「2%物価目標よりも物価が低いので金融緩和継続」って思いっきり言っている訳でございまして、それを受けて徐々に円の独歩安が進行して、その間に財政垂れ流しの話しばっかりがバンバン出て来る訳でして、しかも円の独歩安と言ったって別に毎日何円も動いている訳でもない、ということでどこからどう見てもファンダメンタルズを反映して安定的に円安に推移しているだけにしか見えませんけどねえ。

ということなので、

『神田財務官の発言を受け、6日の東京外国為替市場の円相場は対ドルで一時前日比0.2%ドル高の1ドル=147円37銭を付けたものの、その後147円82銭と対ドルでの年初来安値を更新し、口先介入効果は早々に消失する展開となっている。』

そらそうよという話で、植田総裁がわざわざ海外に行って金融緩和継続、日本の物価は強くないって吹聴しているんだから、そんな状況で為替介入しますったってカウンターパートの通貨当局からは「お前らアホなの??」と一蹴されておしマイケルな訳で、単独介入どころかそもそも介入のOK貰えるのかも怪しい、という話になりますな。


しかしですね、さっきの再掲しますとですよ、

「「こういった動きが続くようであれば、政府としてはあらゆる選択肢を排除せずに適切に対応していきたい」と市場をけん制した。」(再掲)

と仰せなのですが、まあこの「あらゆる選択肢」は別に外国為替市場に対する選択肢だけじゃないわけでございまして、つまりは7月に見られたアレ、という偉大なる選択肢があるわけで、しかもこの偉大な選択肢、それこそ金融政策の違いによる円安圧力、という為替市場のファンダメンタルズにも影響するということで大変にグレートな選択肢である、とまあそのように考えるのって別に無理のない発想だと思うのですが、まあ昨日の債券市場ちゃんはそーゆー反応してなかったなあと思いましてうーんと唸る今日この頃です。

アタクシはこの「あらゆる選択肢を排除せずに」を見た瞬間に「今から内田さんの所に行って差し込んで来るのでそこんとこヨロシク」と言っているようにしか見えなかったのですが、金融政策修正願望からくる幻覚という説は大いにあるものの、それだけじゃない気もするんですけどねえ、どうでしょうか。


〇高田審議委員の金懇挨拶は特筆すべきこともまるでないのですが気合でネタにしてみましょう

まあ予想通り何も読むべきところが無い金懇挨拶でしたが。
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230906b1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 山口県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

マジで読むところが無くて困るんですけどまあ少々。

・高田さんの金懇なのになぜかここで中村さんの金懇会見ネタが蒸し返される(実質GDPの話)

『2. 経済・物価情勢』の『(1)経済・物価の現状』のところなんですけど、読んでて引っ掛かったのがここであります。

『わが国経済は、緩やかに回復しています。図表2では、実質GDP成長率と、GDPを構成する民間最終需要、公的需要や外需(純輸出)などの寄与度を示していますが、設備投資や個人消費といった民間最終需要が緩やかに増加してきたもとで、直近4〜6月期は、純輸出による押し上げが寄与し、年率+6.0%の成長となっています。』

『図表3のとおり、わが国の実質GDPは、コロナ禍前である 2019 年の水準を上回った水準にあります。』

でまあ図表3見ても仰せの通りだし、そもそも4−6で実質が2019年上回ってましたわな、とまあ本職の何とかストでもないのでそこまでちゃんと覚えていないとか言い訳をするアタクシも大概にアカンタレなのですが、ここで昨日ネタにした中村審議委員の金懇会見での説明を再掲しましょう。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230901a.pdf
中村審議委員記者会見
――2023年8月31日(木)午後2時30分から約30分
於 岐阜市

こちらの2ページの下の方にある質疑の中での中村さんの発言、ページ中の最終パラグラフの頭からになるんですけど、

『次のマイナス金利を変えていく条件ですかね、それでいうと、経済が回復をするということだと思います。名目GDPでいうと 2019 年度を超えまして良くなっているんですけど、まだ実質GDPでいくと良くなってないとか、2019 年度を超えていないということ。』(この部分だけ直上URL先8/31中村審議委員金懇会見より)

・・・・・・・ん?????

まあアタクシも昨日これ引用している時点で気が付けよと言われるとぐうの音もでないのですが、実質GDPの数値とかまでちゃんと頭に叩き込んでいないので申し訳なかったのですが、いやこれは何ぞという話ですが、例えば先日の田村審議委員の金懇会見では、

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230831a.pdf
田村審議委員記者会見
――2023年8月30日(水)午後2時から約40分
於 釧路市

5ページの4パラ、6行目からの部分にある田村さんの応答部分にこういうのがあって、

『あと、来年 1〜3 月になれば、今年後半のCPIの動きというのを確認できると申し上げましたけれども、来年の 1 月頭(注)に東京の 12 月のCPIが発表されるわけですので、』

会見録の最後に脚注がついているんですが、

『(注)会見では「今年の 12 月」と発言しましたが、正しくは「来年の 1 月頭」です。』(この一連の部分だけ直上URL先8/30田村審議委員金懇会見より)

と入るんですよ(文字起こし方式になってから時々発生している事案で別に今回が初めてではない)。


・・・・・ということで何なんでしょこれはと物凄く謎なんですけど、まあ田村さんの説明の場合はここに正誤を入れたからといって回答の意味合いが大きく変わるような話ではないのですが、中村さんの場合はここに正誤を入れると説明の根幹部分に関わる、ってことなのかもしれないけど、いやちょっとど〜なってるのよこれ、と高田さんと全然関係ない所で「???????」となったのが今回の高田さんの金懇挨拶の最大のトピックでございました。


・経済物価の先行きの話が凄まじくスカスカな件について

とまあそんなことはさて置きまして、現状の話と来ましたら先行きの話になるのですが、肝心の『(2)経済・物価の先行き』の説明が『(1)経済・物価の現状』の半分くらいしか記述が無くて、いやちょっとやる気あんのかよと思いました。まあ一応その後の金融政策運営の所で変化の兆候だのみたいな能書きはあるんですけれども、先行き見通しの所って展望レポートの中心的見通しの朗読でしかないというのは何ぼ何でもちょっと酷くないかと思いました、まあやる気無いんでしょうけど。

『ここで、わが国の経済・物価の先行きに対する日本銀行政策委員の中心的な見方をご説明します。わが国経済は、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられ、緩やかな回復を続けると予想されます。図表5は、本年7月に公表した展望レポートにおける経済・物価見通しですが、実質GDP成長率は、政策委員見通しの中央値で 2023 年度+1.3%、2024 年度+1.2%、2025 年度+1.0%と予想しています。』

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、政策委員見通しの中央値では、2023年度+2.5%、2024 年度+1.9%、2025 年度+1.6%と予想しています。本年4月時点の見通しと比べ、2023 年度は既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁が想定を上回って進んでいることなどから、大幅に上振れています。 』

この背景が何なのかとかいう話がさっぱり無い、というのが凄まじくて、『(2)経済・物価の先行き』をこれだけの記述で済ませた金懇挨拶は私も初見じゃないかと思う。


・リスク要因は下向きの話しばっかりですね

次が『(3)先行きのリスク要因』なのですが、

『以上、経済・物価の先行きについて政策委員の中心的な見方をご説明しました。続いて、先行きの経済のリスク要因を幾つかお話ししたいと思います。』

幾つか、と言っても2つしか話しません。

『1つ目は、海外の経済・物価情勢です。感染症の展開や金融政策面の対応の違いもあり、足もと、内外の景気サイクルは大きく異なります。1970 年代の変動相場制への移行後、先進国の金融政策スタンスとそれに対応する景気サイクルは、概ね連動していました。もっとも、2022 年以降、わが国では金融緩和が継続していますが、米欧では、インフレ高進への対応のため大幅な金融引き締めを余儀なくされました。わが国経済は、大規模な金融緩和の効果もあり、先行きも緩やかな回復を続けていくとみられますが、海外経済が金融引き締めの影響等から減速度合いを強める場合、わが国経済を下押しする力が強まるリスクがあります。』

下押しリスクだそうです。

『2つ目は、各国のマクロ経済政策の影響、特に米国や欧州を始めとしたグローバルな金融引き締めが資産市場に及ぼす影響です。』

実質同じ話じゃねえかよと思いますが我慢して先を読みましょう。

『米国の利上げは、国際金融市場の資本フローを通じ、新興国市場にも影響を及ぼします。3月に生じた米国の銀行破綻の事例では、金利が急上昇するもとで適切なリスク管理ができていなかったことが一因であったことにも留意が必要です。また、伝統的な金融機関以外の「ノンバンク金融仲介機関」と呼ばれるセクターに隠れたリスクが蓄積されていないかという点も注目されます。』

はい下振れ。

『このほか、昨年来のウクライナ情勢などの地政学的リスクが資源・穀物価格、世界経済や国際金融市場に及ぼす影響についても注視が必要です。』

これでおしまいでした、はい。


・金融政策で物価の話をしていますが先月の内田さんの説明より心持ち上振れ要素が練り込まれている件について

まあこの経済物価に関する説明の時点で、高田さんの経済物価と金融政策に関する説明は基本的に執行部の九官鳥である事が大いに想定される(個人の感想です)訳ですので、次のコーナーの『3. 最近の金融政策運営 』もどうせ大本営発表になる、というのが想定できます(個人の感想です)が、その中で物価に関する記載をちょっと見てみましょうず。本文5ページ(PDFだと6枚目)の第3パラグラフからの部分に飛びます。

『このように、「芽」は漸く見えてきたところではありますが、きわめて高い不確実性のもと、私は、以下の2点から、現行の大規模な金融緩和を粘り強く続ける必要があると考えています。ただし、同時に、現在、前向きな好循環の「芽」もあるなか、先行きの経済・物価情勢を踏まえたうえで、不確実性に備えて機動的な対応をとることも必要と考えております。』

って言ってますけど、さっき引用したように先行きのリスク要因が下向きの話ししかしていない訳で、機動的な対応って何だよそれ追加緩和でもする気かよ、と言いたくなりますなwww

『1つ目は、足もとの物価上昇率は2%を上回っているものの、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現にはまだ距離があると考えられることです。足もとの企業の価格転嫁の動きにはコストプッシュ要因が大きく影響していますが、輸入物価は既に前年比マイナスに転じており、こうした要因は徐々に減衰していくと考えられます。』

ときましたが、さらにこういうのが入っていまして、

『ただし、各品目の物価上昇率の分布をみると、なおゼロ%近傍の「山」が引き続き存在していますが、最近では、米国でもみられるように、分布が右側にシフトして全体として上昇率を高める品目も増えています(図表8)。また、賃金上昇分の価格転嫁をみる観点でサービス価格の動向に着目していますが、米欧と比較して、足もとの消費者物価上昇率のうちサービスの寄与度は依然として小さい点が確認できます(前掲図表4)。足もとの消費者物価上昇率のうち、エネルギーと食品を除いた財とサービスの寄与度に占めるサービスの寄与度の比率(サービス比率)を試算すると、米国 96%、ユーロエリア 66%に対し、日本は44%と低水準です。もっとも、サービスの前年比は、携帯電話通信料の影響が概ね剥落した昨年4月のマイナス 0.3%から足もと 2.0%に上昇してきていること、サービス比率はマイナスであった状況が、1年程度で 44%まで上昇してきた点に注目しています。』


ここで大本営もとい内田副総裁の8月頭の金懇での説明を確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230802a.htm
最近の金融経済情勢と金融政策運営 
千葉県金融経済懇談会における挨拶
日本銀行副総裁 内田 眞一
2023年8月2日

こちらの『3.物価の現状と先行き』の第3、4パラグラフを引用しますね。

『先ほど申し上げた通り、今のところ、物価上振れの主因は「財」です。また、「サービス価格」のうちで上昇が目立つのも、外食や住宅リフォームのように輸入原材料を利用しているものです(図表9)。これらは、前者の仮説、すなわち、これまでの輸入物価上昇の規模や範囲が大きかったことから、価格転嫁が過去の経験則よりも長く、大きくなっている、という見方に適合します。一方で、予想を上回った春季労使交渉の結果やアルバイト時給の上昇などを受けて、企業が将来の賃上げの可能性も踏まえた価格設定を考えはじめたというのも、十分にありうる企業戦略のように思えます。また、ひと口に「財」と言っても、物流過程や小売りの現場など、消費者の手に渡るまでには人手を要するため、賃金上昇の影響を受ける部分があります。これらの点は、予想よりも早く企業行動が変わってきたという仮説を支えるものと言えます。』

『当然のことながら、どちらかの仮説が100%正しいということはなく、答えはその中間にあるのでしょうが、現時点では、企業の賃金・価格設定行動に「変化の兆し」が出てきている、というのが私の判断です。中途半端に聞こえるかもしれませんが、「デフレ期に定着した企業行動の変化」という大きな変曲点を捉えようとしているのですから、ミクロ・マクロの情報を精査し、慎重に判断していかなければなりません。特にこういう変化の時こそ、本日のように企業の皆様の声を直接お聞きするなど、本支店を通じたミクロの調査が重要だと思っております。』(この一連の部分直上URL先の8/2内田副総裁金懇挨拶より引用)


となっていまして、まあお気持ちくらいの世界だとは思いますが、物価に関する記述が若干前進しているように見える訳でして、ここくらいですなあ今回の金懇挨拶のインプリケーションあるとすれば。


・なお返す刀で下振れリスクに思いっきり言及しているのですけどね

でまあさっきの続きの2点目はこれです。

『2つ目は、先行きの海外経済の減速リスクです。先ほど申し上げたとおり、米欧での利上げにより、海外経済が大幅に減速すれば、わが国経済への下押し圧力が強まるリスクがあります。 』

だから政策修正すらしませんよ、という話なのですが、海外の下振れリスクとか一生言ってろという感じですな。


・債券市場に関する話も通り一遍でこの人は一体全体今まで何をやってきたのかと小一時間

その先ですけどね。

『以上を踏まえると、「物価安定の目標」の実現に向けた変化の兆しが生じているだけに、粘り強く金融緩和を続けていく必要があります。物価上昇率を規定する要因としては、図表9のとおり、需給ギャップが、コロナ禍で大きくマイナス方向に拡大したあと、足もと、ゼロ近傍まで改善してきました。この先、本年度中には再びプラス圏に戻り、緩やかな拡大が続くと見込まれます。また、低金利環境が維持されるなか、予想物価上昇率の上昇から、図表 10 のとおり、短期・長期の実質金利は低下を続け、金融緩和度合いは強まっていると考えられます。』

だったら金融緩和のやり過ぎのリスクを考えないのかと小一時間だし、そもそも高田さん自分で以前そういう点にも言及してただろと思う訳で、立派な事を言ってた過去の自分から見てこの腑抜け説明を何と思うのか、というのをちょっと過去から高田さんを召喚してきてご感想を伺いたいもんですわ(溜息)。

『なお、日本銀行は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という枠組みを続けるにあたって、常にその効果と副作用を検証しつつ政策運営を行ってきました。』

政策行動の結論から逆算した屁理屈を検証というのであれば行ってきていましたね!!!!!!!!!!!

『その過程で、市場機能の低下などに対し、現行の枠組みによる大規模な金融緩和の持続性を高めるため、昨年 12 月、イールドカーブ・コントロールの運用を一部見直しました。その後、本年7月にも、図表 11 のとおり、イールドカーブ・コントロールの運用柔軟化を行いました。今後も物価や予想物価上昇率の上振れ方向の動きが続く場合、長期金利の上限を 0.5%の水準で厳格に抑えることで、債券市場の機能やその他の金融市場におけるボラティリティに影響が生じるおそれがありますが、この措置は、そうした動きを和らげることを意図したものです。』

『ただし、前掲の図表 10 のとおり、短期や長期とも実質金利は歴史的にみてもきわめて低く、強力な金融緩和が続いている点は変わりません。今後も、イールドカーブ・コントロールによる効果とその副作用に留意して金融政策運営を行うとともに、債券市場の安定性確保のため、モニタリング等を通じて市場の状況をきめ細かく把握して参ります。』

他の素人がお為ごかしに言うなら兎も角、高田さんがきめ細かく把握して問題ないとか思ってるんだったら貴殿の半生は何だったのかと説教部屋で12時間くらい説教をしたいですわ。


・多角的レビューに関する私見とかいうコーナーは論じるに値しないので割愛

最後に『4. 「金融政策の多角的レビュー」についての私見』というのが6ページ半もあるのですが、大規模金融緩和の弊害とか、2%物価目標がそもそも日本の実力にあっているのかとか、物価目標の数字に過度にこだわる政策運営の是非とか、そういう政策の本質論の話は一切なくて、今までの大規模緩和は効果があったことを前提にああでもないこうでもないと述べているだけで、まあ読む価値は一切無いと思いますので引用しませんが、論じるに値しないというのはアタクシの個人の意見ですので、まあ折角だからおヒマなら読んで差し上げるのも一興ではないかと思います。

というか財政の健全性の話しとかも含めて、あれだけ立派な事を言ってた高田さんはどこに行ってしまわれたのでしょうかねえというか、この方の今までの人生は何だったのかと、人の人生だからどうでもいいんですけど、アタクシとしては高田さんのような存在を債券の片隅で光を仰ぐように遠くから眺めておりましたので、足もとのテイタラクに悲しさしか起きない、という金懇挨拶でございました。任期中に手のひらクルクルが出来る日が来てほしいです。

#あ、しまったラガルドはんの続きやってる時間がなくなった









2023/09/06

お題「流れたが皆が警戒したので何とかなった10年新発/ジャクソンホールのラガルド講演(その3)」

ほうほうそうですか
https://jp.reuters.com/markets/currencies/POVMZSFEINL2JCPGIMJK6FZLCU-2023-09-05/
ドル一時147.71円、10カ月ぶり高値更新 世界経済巡る懸念で買い
Saqib Iqbal Ahmed
2023年9月6日午前 12:08

ところでロイターさんネット版のデザイン変えましたけ??URLクソ長くなるわ画面構成が見にくくなるわ(トップページの情報量が減った)でまあ慣れの問題かもしれないが正直使いにくい(トップページで一覧できる所にあるニュース見出しの本数が減ったから)。

・・・・・・・ちなみに何で一覧性が下がったかというと、今までは記事見出しの列が「文字で見出しを並べていた」ものだったのに、新バージョンではサムネ付きで一つの見出しに使うスペースが大きくなった、というのとそもそも論としてサムネをゴテゴテと貼るとパワーの弱い(またはちょっと前の世代の)PC使っているとそれだけで負荷が大きいから画面を見る気を無くす、という弊害があるので、これマジで引用するの止めるかもしれんわ(と言ってBBGのネット版はサムネ多用がもっとアレだったので見て無かった訳で、単にロイターさんが折角の独自性を捨ててBBGに寄った画面構成にしたというのがアタマイタイから元に戻してくれませんかねえ)。

なお、幣サイトはどんな世代のPCスペックでも簡単に見れる、というのを標榜しております(ただのテキストサイトだから当たり前www)


〇債券市場サーベイも出たし10年入札もあったのでメモ

・10年国債入札も流れましたがもう流れるの覚悟してたからそこまでの惨事にはならないの巻

さていつもですとここでロイターさんの市況解説が出てくるのですが、何せロイターさんサイトリニューアルしたら分野別(債券とか株式とか外国為替とか)の記事一覧がまるで見えにくくなったうえにそこに乗ってる記事の数が減っているようにしか見えないというアカンタレぶりで、もしかして記事掲載止めたのかと思う位のアレで、5分探して見つけられなかったので憤怒しながら落札結果でも貼っておく。

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20230905.htm
10年利付国債(第371回)の入札結果

『6.価格競争入札について

(1)応募額    8兆7,307億円
(2)募入決定額  2兆1,722億円
(3)募入最低価格 97円53銭 (募入最高利回り) (0.668%)
(4)募入最低価格における案分比率 74.9127%
(5)募入平均価格 97円63銭 (募入平均利回り) (0.657%)』

ニュースベンダー集計の足切り予想が97円61銭とかだったので、アベレージ自体はそこまでコケてないんですけど足切りが8銭下なので8毛位安いところになりましたよ、という話ではあるんですけど、今回の入札はなんせまだ押し目が足りな申さんということで、入札あばばばばーの懸念もあるところでしたので、この程度流れるのはシャーナイナイという感じで、落札結果後に別に下を叩いたりぶん投げたりする訳でもなく、といって安い入札をみたから投資家の買いが入って威勢よく戻る、などという威勢の良い事も起きずに終了の巻と相成ったようです。

しかしまあ何ですな、10年入札の前日に主要年限殆どの輪番をぶっこんでくる(というアナウンスをしたのもあって先週金曜の債券市場が無駄に踏みあがってしまった訳ですが)とかいうのをしてメジャー年限の入札を高値で迎えさせようという日銀のオペ日程の組み方、これ入札前に無駄に相場を持ち上げることによって投資家のニーズを減らして、入札が流れやすくなるという弊害しかないんだから日程的に詰まっているにしたって長期の入札の前にあんまり長い年限の輪番入れないとかそういうのをしておかないと、柔軟化以降の入札が毎度毎度イベント化していく、という流れが定着しかねないし、そうなるとマーケットメーカーは通常時にポジション益々取りにくくなるからちょっとしたフローで市場があっち行ったりこっち行ったりする、というのが全然治らんのよね。

まあ本質問題はいつもいうように買入を減らせや、という話なんですけど。


・そういえば債券市場サーベイ

https://www.boj.or.jp/paym/bond/bond_list/bond2308.pdf
債券市場サーベイ
<2023年8月調査>
回答期間:2023年8月1日〜8月7日
調査対象先数:70先

これ調査期間が8/1-8/7とか政策修正直後でして、この時はYCC柔軟化したらもう少しマーケットが活発になると思っていた時期もありました(遠い目)という感じだったんじゃなかろうかという気がだいぶするのですよね。まあそんなのもありまして、

(1)貴行(庫・社)からみた債券市場の機能度(注)
(注)債券市場の機能度は、(2)@〜Fの質問項目への回答内容等を総合的に勘案して、ご回答下さい。

機能度判断DI(現状)-46⇒-40

と改善してて、「低い」の回答が減った訳なのですが、3か月前との比較でみると

機能度判断DI(変化)14⇒15

となっているのですが、よく見たら「改善した」は減ってまして、単に「低下した」がそれ以上に減っているだけ、という結果で、8/1からなので先行きの期待込みになっているのか、それともこの週にいきなり入った臨時輪番2発で皆様早速アイヤーとなったのかは知らんですけど、まあ所詮そんなもんではあります。

でまああんまりネタにしたこと無かったと思いますが、これ3ページ目に『参考図表:機能度判断DI』ってのがあって時系列グラフがあるんですけど、2022年に物価が上がりだす中で日銀が2%物価目標達成を認めない屁理屈を次々と繰り出す中で、理由が何だかさっぱり分からないけど物価目標達成の勝利宣言をしようとしないで、政策を変えたくないでござるに一点張りした黒ちゃんのまいにちさしねおぺのような無茶苦茶な企画がおっぱじまったあたりからの水準で見てみますと、2022年の初頭の状況を遥かに下回る状況であることは変わりなく、即ち経済物価情勢に見合った金利形成が行われているなどとはとても言えない状態にある、ということではなかろうかと思います(個人の感想です)。


でまあ他の回答ですと、

A貴行(庫・社)からみた市場参加者の注文量について、板の厚み(注)等を念頭においてご回答下さい

の現状判断って「多い」が一人減っただけでほぼ変わらず状態の、

注文量判断DI(現状) -45⇒-46

な訳で、しかも3か月前比較だと、

注文量判断DI(変化) -2⇒-5

で横ばいどころかやや下向きということで、そら入札も流れますわという世界ですし、

D貴行(庫・社)の取引ロット(1回あたりの取引金額)についてご回答下さい。

の現状判断は

取引ロット判断DI(現状) -22⇒-20

なのですが、これも良く見ると「大きい」がしらっと減ってて、ただし「小さい」がもっと減ってるからカバーされているだけの話で、3か月前比較だと

取引ロット判断DI(変化) -1⇒-6

とちゃっかり悪化しているのがチャーミングというかゲロゲロというか、そらまあ日銀が未来永劫何が起きようとも政策変更する気が無いっていう国賊行為に励むんでしたら問題ないかもしれませんが、普通の経済物価情勢になることを目指しているんだったら普通の金融政策に戻すときがやってくる筈で、債券市場をこの調子でぶっ壊したままにしておいてどうやってあんたらが目指している経済物価情勢に見合った金融政策を遂行できるんですか、とまあ小一時間問い詰めたい訳で、とにかく輪番はもっと減らせとしか申し上げようがないし、減らした時の用心のために指値があるんだろうがボケという話ではあります。


〇すいません金懇ネタやってて途中まででした今や虫干しのジャクソンホールラガルドはんの講演を(その3)

まあ田村さんのは兎も角、次のはネタにするまでもなかったとはいえるのですが、どんな碌でもない話をしたのか、というのを備忘に残しておかないとこっちも一々全部覚えてられないのでネタにさせていただいた次第。


でもってラガルドはん

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2023/html/ecb.sp230825~77711105fe.en.html
Policymaking in an age of shifts and breaks
Speech by Christine Lagarde, President of the ECB, at the annual Economic Policy Symposium "Structural Shifts in the Global Economy" organised by Federal Reserve Bank of Kansas City in Jackson HoleJackson Hole,
25 August 2023

先般(先週の木曜)は小見出しの『Shifts in the global economy』までネタにしましたが、グローバル経済の構造的変化が発生してインフレーショナリーな構造に変化した、という話をしていましたな。なおその構造変化は3点あって、労働市場の構造変化、エネルギーシフト(脱炭素化含む)、地政学的なグローバル経済の分断、というのが挙げられていまして、一方で植田さんの翌日のスピーチでは「アジアではグローバル化の動きは今でも進行している(キリッ)」とカジュアルにラガルドはんに宣戦布告を行う、という「我が代表堂々と退場す」の風情を醸し出すとは植田さんやるじゃん見直したわ(なお宣戦布告だと思わないでぶっこんで居るならただの抜作先生)という話をした訳ですな。

ということえその続きから参ります。『Two questions about key economic relationships』ですが、今申し上げた部分が前提項みたいなもんで、だから何なのかという話がここから、というかこの項長い。

『The first question is whether the shocks driving economic fluctuations will change.』

というのは何かと言いますと、

『In the pre-pandemic world, we typically thought of the economy as advancing along a steadily expanding path of potential output, with fluctuations mainly being driven by swings in private demand. But this may no longer be an appropriate model.』

パンデミックまでは先進国経済はポテンシャルアウトプットの緩やかな拡大をベースにして推移する、と考えていて、民間部門の需要のサイクルによってその中での変動が生じる、と見ていたのだが、今やそのモデルは適切ではない、と思いっきり今までのモデルに依拠した経済物価の見通し作成に対してダメ出しをするところからおっぱじまっております。

『For a start, we are likely to experience more shocks emanating from the supply side itself.[13]』

『We are already witnessing the effects of accelerating climate change, and this will likely translate into more frequent supply shocks in the future. More than 70% of companies in the euro area have been estimated to be dependent on at least one ecosystem service.[14] The shift in the global energy mix is also likely to increase the size and frequency of energy supply shocks, with oil and gas becoming less elastic[15] while renewables still face intermittency and storage challenges.』

気候変動とエネルギーシフトを最初に題材にして説明していますが、気候変動に伴う(異常気象の頻発による)生産ショック発生頻度の上昇、再生可能エネルギーシフトの移行期間における供給ショックの発生、と来まして、

『Reshoring and friend-shoring also imply new supply constraints, especially if trade fragmentation accelerates before the domestic supply base has been rebuilt. ECB research finds that, in a scenario where world trade fragments along geopolitical lines, real imports could decline by up to 30% globally and could not be fully compensated by greater trade within blocs.[16]』

世界貿易における分断化も供給ショックを発生させやすくなりますよ、という話をしておりますな。

『At the same time, our higher exposure to these shocks can trigger policy responses which also move the economy. Most importantly, we are likely to see a phase of frontloaded investment that is largely insensitive to the business cycle - both because the investment needs we face are pressing, and because the public sector will be central in bringing them about.』

でもってこれらのショックが起きると政策対応が必要になり、公的部門がビジネスサイクルに非感応的な投資を行うことになります(で良いのか私の読み、汗)

『For example, the energy transition will require massive investment in a relatively short time horizon - around ユーロ600 billion on average per year in the EU until 2030.[17] Global investment in digital transformation is expected to more than double by 2026.[18] And the new international landscape will require a significant increase in defence spending, too: in the EU, around ユーロ60 billion will be required annually to meet the NATO military expenditure target of 2% of GDP.[19] Even if carbon-intensive capital is written off more rapidly,[20] all this should lead to higher net investment.』

でもってどういう事に長期的かつビジネスサイクル丸無視の公的支出が出ますって話をしてて、エネルギートランジッションにDXに軍事支出に脱炭素に、というようなものが景気サイクルと関係なく出ていく投資なので、

『Such a phase of higher structural investment needs will make the economic outlook harder to read. In the euro area,for instance, investment rose in the first quarter of this year amid stagnant output, in part because of pre-planned investment spending under the Next Generation EU programme.』

主に公共部門からの支出になるけど、そういう景気サイクルまるで関係なくバカスカと投資が出ていくというのが従来とは異なる構造的要因になりますよ(つまり景気が強いから金融引き締め、といってもシクリカルじゃないこれらの投資支出は減らないので、その分だけ金融引き締めによる景気押し下げ効果が弱まります、って言いたいんでしょうね)。



でもって2点目は、

『The second question concerns how these shocks transmit through the economy.』

ショックの波及メカニズムとな。

『The new environment sets the stage for larger relative price shocks than we saw before the pandemic.』

ということで価格ショック来ました。

『If we face both higher investment needs and greater supply constraints, we are likely to see stronger price pressures in markets like commodities - especially for the metals and minerals that are crucial for green technologies.[21] And relative prices will also need to adjust to ensure that resources are reallocated towards growing sectors and away from shrinking ones.[22]』

前段であったような投資ニーズが続くと、供給制約が発生した時にコモディティ価格中心に従来よりも厳しいインフレ圧力にさらされる(なぜなら投資ニーズの方がノンシクリカルだから)、だそうです。なんかまあ判じ物のような理屈ではありますが。

『Large-scale reallocations can also lead to rising prices in growing sectors that cannot be fully offset by falling prices in shrinking ones, owing to downwardly sticky nominal wages.[23] So the task of central banks will be to keep inflation expectations firmly anchored at our target while these relative price changes play out.』

そういやさっきの話も相対価格の話だったのですが、まあそういうような環境においては、インフレ期待のアンカーが外れるとエライことになるので、インフレ期待をキープするのダイジダイジネーと仰せです。

『And this challenge could become more complex in the future because of two changes in price- and wage-setting behaviour that we have been seeing since the pandemic.』

でもってそれが非常にムツカシイし、更に複雑になっている、というのは最近の賃金および価格の設定行動の変化を見ていただければ分かると思います、とかなり今大変ですよという話を結構ぶっちゃけているというか泣きを入れているというか。

『First, faced with major demand-supply imbalances, firms have adjusted their pricing strategies. In the recent decades of low inflation, firms that faced relative price increases often feared to raise prices and lose market share.[24] But this changed during the pandemic as firms faced large, common shocks, which acted as an implicit coordination mechanism vis-a-vis their competitors.』

『Under such conditions, we saw that firms are not only more likely to adjust prices, but also to do so substantially.[25] That is an important reason why, in some sectors, the frequency of price changes has almost doubled in the euro area in the last two years compared with the period before 2022.[26]』

従来は企業の価格引き上げが慎重だったけど最近はバシバシ上げるし、何ならコスト以上にホイホイ値上げする(グリードフレーションとかいう奴ですな)ようになったよ、という話をしまして、

『The second change has been the tight labour market, which has put workers in a stronger position to recoup real wage losses. Previously, even when shocks did feed through to prices, the risk of second-round effects was contained as we were mostly operating with persistent labour market slack.[27] But as we are seeing today, when workers have greater bargaining power, a surge in inflation can trigger “catch up” wage growth which can lead to a more persistent inflation process.[28]』

賃金に関しては労働市場がタイト化して、労働者がこれまた直近の物価上昇だけではなくタイト化する前の労働市場において賃金上昇を我慢していた部分のキャッチアップも要求するようになっているという動きが起きてまして、これらが物価と賃金の二次的効果になってインフレ圧力を高めていますと。

『We certainly cannot exclude that both these developments are temporary. In fact, we are already seeing some evidence in the euro area that firms are changing prices less frequently, although in an environment with falling energy and input prices.[29] And it is possible that the tightness in the labour market will unwind as the economy slows, supply-demand mismatches created by the pandemic fade and, over time, digitalisation leads to higher labour supply, including by reducing entry barriers.[30]』

これらの動きは一時的なのかという点については、その兆候があるようにも見えるし、経済が減速して労働需給のタイトさが解消されたり、DX推進などで労働需給の構造が変わればら元に戻るようにもみえるが・・・・・・・

『But we also need to be open to the possibility that some of these changes could be longer-lasting. If global supply does become less elastic, including in the labour market,[31] and global competition is reduced, we should expect prices to take on a greater role in adjustment. And if we also face shocks that are larger and more common - like energy[32] and geopolitical shocks - we could see firms passing on cost increases more consistently.』

世界貿易の変化などによって上記の動きがより長期化する可能性も否定できませんよね、と来ましてこのコーナーの最後になりますが、

『In that setting, we will have to be extremely attentive that greater volatility in relative prices does not creep into medium-term inflation through wages repeatedly “chasing” prices. That could make inflation more persistent if expected wage increases are then incorporated into the pricing decisions of firms, giving rise to what I have called “tit-for-tat” inflation.[33]』

ということで、インフレ圧力がより構造的なものであるかどうか、ということについて極めて注意深く分析をしていかなければいけないですよね、という話をしておりまして、もう植田さんったら翌日にこのラガルドはんの講演に対してアレをぶつけるとか中々いい感じで喧嘩を売っていてすげえええええ、と思いましたとさ。

でもって政策インプリケーションの話になるのですが続きは明日(今週も金懇あるけどどうせポンコツの金懇だからそっちは適当に流します、ああ中村さんの場合は珍獣枠なので真面目に読みましたけど)。





2023/09/05

お題「山本元理事が良い説明をしているのでご紹介/中村審議委員会見の話がフワフワで誠にアレ」

ぐぬぬ・・・・・・・
https://www.agrinews.co.jp/opinion/index/181024
2023年9月5日
[論説]豚熱九州で発生 拡大防止へ対策徹底を

〇中村審議委員の金懇講演の話に????感だったのですが山謙さんの論考で整理できたわ

ということで元日銀理事の山本謙三さんのコラムなんですけどね。

https://www.kyinitiative.jp/
金融経済イニシアティブ

https://www.kyinitiative.jp/column_opinion/2023/09/01/post2392/
賃金と物価は本当に「好循環」なのか?
〜日銀のレトリックに潜む危うさ
2023.09.01

『日本銀行は、2022年春に物価が目標の2%を超えて以来、物価と賃金の「好循環」を見極める姿勢を強調してきた。現在の基本方針も、「賃金の上昇を伴うかたちで、2%の 物価安定の目標を持続的・安定的に実現することを目指す」だ。』(上記URL先より、以下同様)

ということで、

『事実上、「物価2%の安定的な達成」に、「物価と賃金の好循環の確認」という条件が加わった。おかげで、消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下同じ)が11か月連続して前年比3%を超えても、日銀は金融緩和の修正に踏み切らない。実際、実質賃金は前年比マイナスが続き、到底「好循環」とは言えない状態にある(参考参照)。(引用者追記、上記URL先にはこのページに「(参考)名目賃金、実質賃金前年同月比の推移」という素敵なグラフがあります)』

『しかし、過去、中央銀行を悩ませてきたのは賃金と物価の「悪循環」の方だった。その可能性には一切言及しないまま、あたかも「好循環」だけが起きるかのような説明を繰り返すのは、なぜだろうか。』

いやほんとそれですよ。でまあこの調子ですと全部をベタ貼りしそうになるので途中を適当に端折ると、

『ところで、賃金と物価の「好循環」が見極められた時点で、日銀はどう動くのか。当然、金融緩和の修正が始まるというのが市場の理解である。』

『では、見極められなかった場合はどうか。(引用者追記:前の部分からの流れなのでここだけ切ると分かりにくいのですが「物価上昇が悪循環であった場合」です)このまま放置することは、ありえない。放置すれば、悪循環のリスクが一段と高まるからだ。むしろ金融緩和の修正を急がねばならない。』

ねー。

『つまり、好循環、悪循環のどちらであっても、金融緩和の修正が前提となる。』

確かにそらそうだ。

『ならば、日銀がいま見極めようとしているのは、「好循環」の有無ではないはずだ。晴れであろうと雨であろうと外出するというのであれば、「晴れるかどうかを見極める」のは無意味である。』

ということで、

『日銀が見極めようとしているのは、あくまで「物価が半永久的に2%を超えるかどうか」の1点に尽きる。そのためには、賃金と物価の「悪循環」も厭(いと)わないというのが本音だろう。だからこそ、「悪循環」には一切言及しない。』

これはまた身も蓋もない事を・・・・・・・・・

『では、なぜ「好循環を見極める」などと言うのか。物価上昇への国民の批判をかわしつつ、金融正常化を先送りするためのレトリック(言辞)と考えるのが自然だろう。耳に心地よいレトリックを、異次元緩和以来、日銀は多用してきた(2022.10.03「なぜ日銀はここへきて「賃金」を持ち出すのか〜繰り返される異次元緩和の「新たな説明」」参照)。』

ちょwwwwwwwwwww

『そのおかげか、メディアが物価上昇に伴う痛みを取り上げる機会は少ない。しかし、政府は、ガソリン価格は、これ以上の上昇を抑制するため補助金を出し続けるという。政府と日銀の物価政策は、なんとも一貫性を欠く。』

とまあそういう事で、以下も続きますし、まあこの先も読んでちょという話ではあるのですが、この「賃金と物価の好循環」もそうですし、中村審議委員の「稼ぐ力」もそうですけど、一見耳ざわりの良い表現を使っているものの、そもそも論として物価以上に賃金が上昇し続けるってのはかなりのナローパスで、山謙さんのコラムをお借りしますと(さっき飛ばした部分になるんですけど)

『一方、賃金と物価の「好循環」の実現には、いくつかの厳しい条件がある。第1に、企業の生産性(付加価値)が高まり続けること、第2に、物価が安定し上振れしないことである。』

というお話なのでして、やれ補助金だ低利融資だとかやっててこんな事になる訳ねーだろというのをやっているのに「稼ぐ力」とか何ゆうてますねんという話で、「稼ぐ力の高めるために(この理念自体が間違っているとは思わんが)大規模金融緩和政策を継続する必要がある(という結論が無茶苦茶)」という話をしている中村審議委員の説明はナンジャラホイ以外の何物でもありませんわ、ということになる訳でございまして、まあ山謙さんのコラム読んでみてちょんまげという雑談です。

ああそれから最後の一文、日銀の7階の皆さんはちょっと毎朝朗読した方が良いんじゃないかと思いますので引用しておきますね。

『金融の正常化に早く着手すべきだ。これは、金融政策を「短期の経済変動を均す手段」という本来の姿に戻す話に過ぎない。金融政策は、レトリックを排し、ストレートに語ってほしい。』

>金融政策は、レトリックを排し、ストレートに語ってほしい
>金融政策は、レトリックを排し、ストレートに語ってほしい
>金融政策は、レトリックを排し、ストレートに語ってほしい

(;∀;)イイシテキダナー


〇それでは中村審議委員の会見を拝見しましょう

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230901a.pdf
中村審議委員記者会見
――2023年8月31日(木)午後2時30分から約30分
於 岐阜市

・結局このおじさんは何の理由で反対をしているんだか全く意味が分からない件について

最初の今日はどうでしたか質問(+ご当地質問)の次に出てきたのがご尤もすぎる2つのお題。

『(問)7 月の金融政策決定会合の時のお話でお伺いしたいんですけれども、一点目がYCCの柔軟化について、中村委員は企業の稼ぐ力が高まってきたら、それが確認できるまではということで反対されたと思うんですけれども、これは中村委員としてはYCCの柔軟化という 7 月の決定内容が引き締めの一手だったというご認識で反対されたのかどうかというのをまずお伺いさせてください。』

『二点目が、企業の稼ぐ力が高まったことを確認するってなかなか難しいと思うんですけれども、次に日銀がマイナス金利の解除にいけるとすれば、どういったことが確認できれば次の政策修正ができるのか、この二点を教えて頂けますか。よろしくお願いします。』

後半は「稼ぐ力」をどうやって確認するのか、という極めて当然だが重要な質問ですね。まずは前半から。

『(答)柔軟化自体に私は反対したわけではなくて、それは[金融政策決定会合結果の公表資料の]脚注に書いてあった通りなんですけれども、出口戦略の一環ではないというふうなことで、方法論としては先々のリスクを考慮して対処するためのツールということで考えられたものでありまして、柔軟化の方法自体は私としても反対するものではなくて賛成を致しました。』

じゃあ反対する理由ないじゃん。

『ただ、市場参加者がわれわれの意図に反して上限を1%に引き上げたとかですね、ということで市場が意図に反して動いて混乱をしてしまうと、』

いや意味が分かんない、大体この人達全員分かっていない(田村さんともしかしたら内田さんは分かっていそうだけど)ですけど、柔軟化した後の国債入札が割とホイホイと「流れる」入札になっているのって、これ市場の価格発見機能がおかしくなっていることを意味している(ので今日の10年国債入札がどうなるのかも地味に重要なんだが)のでありまして、経済物価情勢に相応しい金利の形成がちゃんとできていない、という意味では柔軟化後の市場だって「静かな混乱」状態なんですよね。まあこいつらにしてみたら金利が上がって無ければ混乱していないって程度の認識しかないポンポコリンのデクノボーだから仕方ないけど。

『ようやく中小企業の方もこのインフレ、コストアップの中で賃上げもし、それから設備投資もしようという意欲が生まれてくる中で、その前向きな気持ちを削いでしまうっていうのは全く誰も希望しているものではないので、』

????????????????????

『タイミングとしては今じゃないんじゃないかということを考えまして、私としては 7 月のタイミングでの柔軟化の発表は反対を致しました。』

その理屈言い出したら一生柔軟化すらできないんですけど。

『説明に対して市場がなかなかわれわれの考えていることをご理解頂けないということをかなり懸念したということでありまして、』

だってお前らの説明毎回コロコロ言ってること変わる一貫性の無さだし(最近では遂に展望レポートの説明用ポンチ絵すら前回との整合性が取れない絵になっているという恐ろしいまでのその場しのぎ説明)無理筋な屁理屈ばっかりしてるのをどうやって理解しろっていうんだよ大体昨年からお前ら何回ゴールポスト動かしてると思ってるんだよ。

『少しずつ、市場環境としては中小企業の業績ですとか賃上げの状況が、これから法人季報ですとか毎勤統計なんかでみえてきますので、そういったところでよく確認してみたいと思いますが、今はこの柔軟化での影響が大きく市場混乱をきたしてはいないかなという感じは、今しております。』

柔軟化には賛成だけど金利が上がるのは反対、とかもう言ってることの意味が分からん。


・稼ぐ力の見極め方について

でもって後半の質問の回答になる訳ですが、柔軟化の部分ですら上記のような回答をしている訳で、さっきの「企業の稼ぐ力が高まったことを確認するってなかなか難しいと思うんですけれども」の部分、どう回答するか非常に興味があるじゃないですか。

で、いきなりこうである。

『次のマイナス金利を変えていく条件ですかね、それでいうと、経済が回復をするということだと思います。』

ちょwwwwwwww「稼ぐ力」の高まりを確認するんじゃないのかよwwwwwwwwww

『名目GDPでいうと 2019 年度を超えまして良くなっているんですけど、まだ実質GDPでいくと良くなってないとか、2019 年度を超えていないということ。』

『それから需給のギャップが、まだ今GDPでいうとマイナスになっているということは、物価[上昇]の中身がディマンド・プル型にまだなっていない。』

需給ギャップとか計測方法によって随分差の出る概念ですけどねえ。

『今の物価の上昇が輸入コストプッシュ・インフレの状況からディマンド・プル型へまだいってない状況なので、需給ギャップがマイナスということになるんだろうと思いますけれども、そういった点ですとか、』

うーん何か違和感がある説明だ。

『持続的に賃金がちゃんと上がり続けるという、物価に負けない賃金上昇というのが見通せるとかですね、』

だからそれを判断するのに何を材料にするんだよ・・・・・・・・・・・・・

『そういうような状況を確認する、そういう方向に着実に歩んでいるなという状況変化っていうのが大事であると思っています。ですので、デジタルにこれっていうよりも、状況の変化をみながら確認をしていくということだろうと思います。』

結局「稼ぐ力の高まり」は何で判断するのかさっぱりわからんままで「稼ぐ力」推しをされましても政策のPDCAのPすら回せないという恐ろしい状況であるという事は把握したんですが、いやあのそういうフワッとした雰囲気みたいな話で政策運営されても困るんですけどねえ・・・・・・・・・・・・


・この質問は性格が悪くて大変よろしいのでもっとやれ

一つ飛ばしてこんな質問がありました(前半だけ引用します)。

『(問)先ほどYCCの柔軟化の件についてですね、市場の混乱をきたしているわけではないというふうにおっしゃられましたけれども、柔軟化から 1 か月が経過して、その効果とか、心配された稼ぐ力の低下とか、そういったものに対して、今どのようにYCC柔軟化が効果を発揮しているか、稼ぐ力の低下につながっていないかをどのように評価しているかということを教えて頂きたいというのが一点目です。(後半割愛)』

「稼ぐ力」の質問に対する回答があまりにもフワフワしているもんだからイヤミ質問をぶっこんできた、としか思えませんなこれ。いいぞもっとやれ。

なお、この質問に対して中村さんいきなりの大演説がおっぱじまります。

『(答)YCCの柔軟化については、今のところ大きな市場の混乱は起きていないかなというふうに思っています。このYCCの柔軟化によっての効果といえば、市場の機能が再び悪化をしてしまう、低下をしてしまうというようなことは今避けられているんではないかなというふうに思います。市場の社債の起債なんかにも大きな影響は出ていないかなというふうに思っています。』

柔軟化をせっかくしたのにその翌営業日に臨時輪番やってすっかり台無しになったんですけど、まあどうせそういう話は政策委員に伝わっていなくて、耳に心地よい話しか聞いてねえんだろうなあというのは把握した。

『企業の稼ぐ力がどうかということについては、まだ法人季報が出ていないんで、ちょっと分かりませんけど、大手の企業自身は、決算発表の内容なんかをみますと、これまでに構造改革をしてきた成果が業績に表れているなというふうに思います。』

「中小企業の稼ぐ力」が重要って話を講演でしていたというのに何で大企業??

『これは、デフレ期にやった構造改革っていうのは、コストカットの構造改革が主だったので、固定費を減らすっていうことで、事業のポートフォリオを変えてこなかったっていうのが一般的でした。従って、利益は出るようになった、当時はなったけれども、稼ぐ力が増えなかったということで、97 年度の名目GDPを超えるのに 19 年も当時かかっていましたが、そこからの構造の変化をやってきた成果でですね、今回のコロナショックでいうと、3年で、要するに 22 年度で 19 年度の名目GDPを超えています。』

何で名目GDPで話をするんだよ。さっきの質疑で経済がまだ2019年レベルに戻ってないという話をした時に名目は戻ったけど実質は戻っていない、って言ってたのと説明が矛盾してるんですけど・・・・・・・・・・・・

『従って、構造改革っていうのは進んだなっていうふうに思うんですけれども、業績の、過去の法人季報なんかをみますと、強くなっているのは大手の企業で、一人当たりの経常利益でみると、中小は、製造、非製造ともに結構効率は改善してないっていうふうにみえています。』

『大手はそれが改善しているっていうことで、大手の方は賃上げをする余力がまだあるっていうふうにみえますし、積極的にもう既に大手では相応に来年度の賃上げを多めにするっていう記事も確かあったと思いますけども、そういうことが言えるような企業の力は日本の大手企業の場合は出てきていると。』

と、中小企業の稼ぐ力とチャウやろという話が延々と続いたあとやっと、

『ただ、まだ中小のところはそこまではまだいっていない、まだデータが法人季報の 22 年度までなので、そのデータがみえないと中小の力が、一人当たりの経常利益が増えているかっていうところがまだみえていないんですが、』

ちょっと待て、そんなバックワードのデータ見て金融政策判断するのかよ・・・・・・・・・・

『本日の皆さんの金融経済懇談会でのお話の中で言うと、苦戦はしておられるというところもありましたが、頑張っておられるというところも結構あって、悪い方向にはいっていないのかなっていう感じは持ちました。ですので、稼ぐ力をどう評価しているかっていうと、悪い方向にはいっていないかもしれないと、大手は着実に改善をしているっていうことが出てるっていう感じだなと。これからは中小のところのデータと、それからヒアリングですとか、それから民間の情報などもみながら、どちらの方向に行っているんだろうかっていうのをみていきたいと思っています。(後半割愛)』

・・・・・結局「稼ぐ力」とやらがどういうもので、どういう風にしたらわかるものなのか、というのがフワフワし過ぎてて、とりあえず尤もらしい耳障りの良い言葉だという事しか分からんかったわ。


・と思えば統計が出て来るのを全部待つとも言ってなくて結局ただの恣意的判断かよと言いたくなる

こんな質問もありましてですね、

『(問)今日のご挨拶を踏まえて考えますと、来年の 1−3 月というタイミングで、例えば来年の春闘どうなるかとか、あるいは、中小企業含めて企業の収益、増益なのか減益なのかとか、来年の 1−3 月というのは非常にデータが揃ってきて、一つ重要な時期になるんじゃないかなと思うんですけれども、中村委員は条件が好ましいものとなれば政策修正が可能となるとお考えなのか、それとも丁寧に状況を分析して、慎重に判断していくことが政策修正には必要だとおっしゃいまして、そういうことを踏まえると、来年 1−3 月はまだ政策修正というのは難しいんじゃないかとお考えなのでしょうか。その点をお願い致します。』

まああんまり質問の筋は良くないけど、こうでも突っ込まないとフワフワな回答しか返ってこないのだからこういう聞き方をせざるを得ないという所じゃないのかな、と記者の方の心中を想像するのですが、

『(答)確かに 1−3 月というタイミングというと、春闘の状況は 3 月ぐらいにはかなり出てきますかね。それで、中小のP/Lの状況は、1−3 月のデータって 1−3 月には分かんないんですよね。法人季報でいうと 5 月くらいになっちゃうんじゃないかと思うんですけど、データが揃うかというと、なかなか日本の公式データって出るの遅いので、そういうタイミングでもないなと。』

いやそんな遅いデータ見て政策判断してたらダメだろ、と思ったらですな。

『私自身は、当年度の結果がどうであるかというのも非常に大事なんですけれども、稼ぐ力そのものが付いたかどうか、従って、企業の事業の強みが活かされているのか。』

また内容が良く分からんフワフワキーワード「稼ぐ力」が来ました。

『例えば、ドイツの中小企業なんかでいいますと、結構稼ぐ力がニッチの市場で強い。それは、技術力があって、価格決定力を持っているという企業が、全部ではないですけれどもあって、平均すると高いんですね、利益率が。それは、その時々で上がったり下がったりというよりも、結構安定している。これは強みを持っているということなので。』

金懇挨拶でもしていましたが、なんかこの話好きですねえ。

『今の日本の中小企業の一人当たりの経常利益が上がるのかどうかということが、今後の持続的な賃金上昇に大きな影響を与えますので、従って、今後出てくる法人季報の途中途中のデータが出てきますから、そういうものであったり、毎勤統計での中小企業での給与の状況がどうなのかとか、』

とまあここまでは良いのですが、

『それから持続的な賃上げができる事業構造に変えるには、日本型の職務給のあり方をどうやって自社に取り込んでいくかという各企業の取り組む姿勢の変化というものがないと、』

ちょwwwwいきなり長期視点の話ぶっこまないでくれwwwwwww

『過去のデータだけでいっても市場の環境でまたガクッと変わることもありますので、やはり、変化に対応できる事業構造というか、稼ぐ力に変わっているかということをみていかなきゃいけない。』

ちょっと待て結局長期視点の話しかよしかも金融政策でどうこうできる話じゃないだろ雇用形態の話しなんて。

『だから、統計の公表データっていうのも大事ですし、それから企業とのヒアリングの結果で出てくる情報の把握、分析だとかというところも非常に大事なので、公式統計だけではなくて、やはりナラティブな情報を認識しながら考えていくと。それによって、ムードがどうかというのも結構大事ですのでね、ムードに流されちゃいけないというのもありますけれども、成長期待が日本に広がっていくかどうかが一番大事なんですね。』

俺たちは雰囲気で情勢判断をしている(キリッ)

・・・・・・こうですか、わかりません(><;

『これが、過去、四半世紀の中でいうと、日本の中でいうと成長期待というのがあまりみえず、非常に暗い過去があったわけですけれども、今少し、成長期待というものが、少しずつ、少しずつ広がってきているような気がしますので、そういったものがどうかということも確認しながらみていきたいなということでありますので、』

結局長期的な話に戻ってはいるものの、まあ直上にあったように結局「俺たちは雰囲気で情勢判断をしている」というのをゲロってしまっている訳ですし、そもそもそ雰囲気というのもあんなところやこんなところから差し込みが入るとあっさり味で雰囲気の認定が変わる、という素敵なものであることは6月7月の植田総裁の発言と7月のYCC柔軟化決定という一貫性の全くない動きから明らかなので、まあこの人達「差し込まれたら動くしそうじゃなかったら事なかれ主義」ってことで、情勢判断や先行き見通しはそこから逆算して作成している、と思って置けば問題ないと思います、政策の予見可能性が一切ないのが困るんですけどwww

『私は、必ずしも 1−3 月にスティックする必要はないかなという気はしていますが、それよりも、毎回毎回の変化が、どう変わっているかということで、常に上昇、改善しているかというところを私としてはみていきたいなというふうに思っています。』

だそうです。


・なんかもうこれ記者の皆さん回答のツッコミどころを突っ込んで楽しんでないですか

中村さんの回答が基本クッソ長いので実は質疑のかなりを引用する結果になってしまいましたが最後の質疑。

『(問)今の質問に関連して、同じような質問になってしまって大変恐縮なんですけれども、状況の変化、ムードの変化をみるとおっしゃった中で、どれくらいのスパンを考えていらっしゃるのか、1−3 月期、その先に出てくるデータをみるというお話はされてたと思うんですけれども、長くて数年間、この先数年も今の金融緩和の姿勢というのは、もしかしたら続ける必要があるかもしれないとお考えかどうかをお伺いできればと思います。』

今回の質疑応答、中村さんがフワフワした説明をするもんだから、そのフワフワ部分にツッコミが入ると新しいフワフワ説明が出て来るのでさらにそのフワフワ部分に、というループになってて政策インプリケーションは一切ないのですが鑑賞物件としては中々笑えます。

で、「状況の変化、ムードの変化をみる」という何ともフワフワした説明に対してのツッコミキタコレな訳で、これがまた嘘のように回答が長いwww


『(答)非常に難しい質問なんですけど、』

いやお前が説明した言葉について質問してるんだが何で「非常に難しい」んだよクソワロタwwwwwwwwwwwww

『確かに状況があんまり良くないのであればそういう可能性もまああるなというふうにも思いますし、今の状況を考えた時に、過去にない成長期待が生まれてきているように感じています。』

はて??

『それはやっぱり、名目GDPが成長を続けているということがあって、その名目GDPが成長するっていうのは、企業の収益、利益が増えているっていうことになるわけで、そこが増え続ければ、当然ながら賃金は増えていくんですよね。』

実質GDPの話はいずこへ????

『だから本当は、名目GDPをリアルタイムに把握できればいいんですけど、これはなかなかできないので、従って企業の業績をみていきたいと。おそらく上場企業は、多分全体で平均すれば良い方向に成長を続けるっていう方向になると思います。私が経営しているのではないので分かりませんが、構造改革の成果が表れてきていますので、ここは多分いくんだろうなというふうに思います。』

『中小企業のところのデータがやはり、これはそんなに出てこない。2 か月くらい遅れてきますので、そこもみますし、それからやっぱりヒアリングだとか、民間のメディアの情報なども把握しながら、その状況がどちらへ動いているのかなということは、やはり重要な、国内の労働市場での成長期待が生まれてるかどうかにもつながりますので、そういった指標は、大事にしてみていきたいなということです。』

その割にはさくらレポート別冊なんかで示された地域経済の労働市場の話とかがお話に反映されていない気しかしないが。

『3 年というと、私としては、個人的には、3 年はちょっと辛いよねと思いますが、じゃあ次の時にもう大丈夫なのかっていうのもまだそこまで確信が持てるデータ一つも出てないので。一番分かりやすいのはこの前の 4−6 月のGDPデフレーターが出ましたけども、』

今度はGDPデフレーターを持ち出してきたんだが結局何をもって見極めをしたいのかがさっぱり分からん。

『あれをみると、日本のGDPデフレーターの中身を分解しますとね、かなりの部分が、ユニット・プロフィットのプラスで物価の上昇に繋がっているんですね。今までの 1−3 月まではそのユニット・プロフィットの影響っていうのはマイナスだった。それは、各企業が、言われてたように、輸入コストの価格転嫁ができていない、だから自分の利益で吸収していたっていうことが如実に出てるんですけども、23 年の 4 月から 6 月期をみると、私の資料に入れておきましたけど、図表の 6 くらいだったと思うんだけれども、そこにはようやくユニット・プロフィットの部分の影響が大きく出ています。』

なんか話がだいぶ明後日の方角に進んでいますが読んでいきましょう。

『ヨーロッパは、グリーディって言われているみたいに、ユニット・プロフィットとユニット・レーバー・コストがずいぶん増えているんですね。アメリカは、ユニット・プロフィットよりもユニット・レーバー・コストが大きいんですよ。ヨーロッパは、ユニット・プロフィットとユニット・レーバー・コストのそれぞれが結構大きく押し上げてるんですが、日本はようやくユニット・プロフィットがGDPデフレーター[上昇]のかなりの部分を占めるようになって、これ久方ぶりで、これは企業の価格反映の仕方が変わってきたということを表しているんで、今度の 7−9 月期のGDPデフレーターの中身が、アメリカなどのようにユニット・レーバー・コストも入ってくれば、企業の業績とともに賃金も価格転嫁され始めるのではないかと。』

うーんこの。

『最近は、輸入物価が今年の 4 月くらいからですかね、伸びの鈍化が出てきて、CPIにもその影響が少しずつ出てきているというふうにみえて、その影響の代わりに、今度は賃金の上昇の部分が、要するにユニット・レーバー・コストの部分が価格に反映されるというふうになってくれば、いよいよコストプッシュ・インフレからディマンド・プル型のインフレに変わると、これは持続的な形になりますので。そういったところを本当はずっと確認したいんですけど、』

じゃあ「今年度後半に物価の上昇率が鈍化して2%割る」ような事にならなければ確認完了じゃネーノとおもうのですが
何故かそこは、

『出てくるのが遅いので、やはりこれは日本の国民の成長期待というのがどういうふうに高まっているのかなというナラティブな部分での把握というのも大事なので、』

と、突如フワフワ概念に逃げまして、

『何年というのは言えないですけど、できれば早くそういう欧米型のGDPデフレーターの中身に変わってもらえれば、われわれとしても政策を正常化するということはできるのではないかと思いますが、』

節子、欧米型のデフレーターになったらそれは正常化の手遅れで国民厚生に大変なマイナスになるんや。

『まだそれが続くがどうかという問題もありますので、四半世紀ずっとデフレから抜け出していないので、少し判断には時間がかかるかなというふうに思います。』

結局何だかんだと演説をしたのだが、ただの判断先送りって話のようですな、いやはや何ともフワフワした会見で・・・・・・・





2023/09/04

お題「中村審議委員岐阜金懇挨拶より:稼ぐ力推しなのは分かったのだが・・・・・・・・・」

9月だというのに寧ろ梅雨の末期みたいなジメジメ・・・・・・・


〇中村審議委員金懇&会見:「稼ぐ力」が必要だという主張は分かるんだが何故その結論に???

まずは中村審議委員金懇挨拶から参りましょうず。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230831a.htm
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230831a1.pdf
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
岐阜県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 中村 豊明
2023年8月31日

引用は基本HTMLバージョンから行います。


・米国経済が景気後退回避の期待が高まっているのに海外経済の下振れリスクが高いとはどういう意味なの???

『2.内外経済情勢』の『(1)経済・物価の現状と展望』なんですが、基本的にこれは日銀の展望レポートで示されたお話をする(本来ならば前回の展望レポートよりも1か月経過しているので、その間のアップデートについてはそんなに記載がないなあという感じではありますけれども。

『海外経済は、グローバルなインフレ圧力が残存し、各国中央銀行による利上げが続く中、G10通貨国中8か国で逆イールドとなり1、ウクライナ情勢も重石となる等、回復ペースが鈍化しています(図表1)。』

逆イールド云々の所に脚注があって、『1 8月24日確認時点。』ってことなんですけど、そもそも「逆イールドだから回復ペースが鈍化」というのも何ちゅうか微妙な話で、逆イールドは先行きの金融引き締めが緩くなる期待の話なので、回復ベース鈍化とは関係ないけれども、原因と結果を取り違えている説明に見えて引っ掛かっちゃうんだよな。

こういうのは普通「回復ベースが鈍化した結果、インフレの鎮静化が進むという期待からイールドカーブが逆イールドになった」という風にあくまでもカーブ変化は結果論で説明するもんだと思うの。市場の片隅でおこぼれ拾って飯の種にすることうん十うん年のワイ的にはどうもこういう「イールドカーブがこうだから経済がこう」という説明には正直違和感しか感じない。

『米国経済は2021年後半以降4%を超える賃金上昇が続き個人消費に底堅さがみられ、第2四半期の実質GDPは前期比年率ベースで+2.4%2と予想を上回る伸びとなる等、物価上昇や利上げの継続の影響はあるものの、景気後退回避の期待が高まっています。』

ここでも『2 1次速報値。』とアップデートがございます。

『欧州経済は、ひと頃に比べてエネルギー供給懸念は和らいでいるものの、ウクライナ情勢の影響や加盟国間のインフレ格差が広がるもとで、利上げの継続を受けて減速しています。』

『また、中国経済は、サービス消費は増加していますが、財消費が低迷しています。政策面の下支えもあって、持ち直しの動きが続くとみられますが、不動産市場の低迷、若年層の高失業率、輸出減速、米中対立、外資の投資減少等の長期化により、成長期待の低下や景気回復の減速も懸念されます。』

『総じてみれば、海外経済は下振れリスクが懸念されます。』

という結論なのですが、最大の米国様において、「米国経済は・・・・・物価上昇や利上げの継続の影響はあるものの、景気後退回避の期待が高まっています。」ってアセスメントをしておいて「海外経済は下振れリスクが懸念されます」というのは何の判じ物なのでしょうか??????????



・日本経済の話になったら早速今回中村さんが一押しの「稼ぐ力」シリーズキタコレ

『日本経済は、緩やかに回復しています。企業部門では、海外経済の回復ペース鈍化の影響を受けつつも、供給制約の影響緩和に支えられて、輸出や生産は横ばい圏内の動きとなっています。また、企業の「稼ぐ力」の強化や価格決定力の改善から、企業収益が高水準で推移する中、成長期待や、予算の単年度主義の弊害是正による国の政策の予見性向上もあって、設備投資意欲が高まっています。』

>企業の「稼ぐ力」の強化や価格決定力の改善から、企業収益が高水準で推移する中、

なんですかこの「稼ぐ力」の強化ってのは、という話ですが、ご案内のように前回のMPMで稼ぐ力がまだ足りないからYCC柔軟化は時期尚早、として政策据え置きを言い出していた訳で、はてさてこの稼ぐ力とは何ぞやという話ですよな。

あと、謎にも程があるんだが「予算の単年度主義の弊害是正による国の政策の予見性向上もあって」って言ってるけど、いや最近のアホみたいな補助金大会とかのどこに「政策の予見性向上」があるんだよという気はするんだが、これは具体的に何を言いたいんでしょうおじちゃん馬鹿だからよくわからない。

『家計部門の個人消費は、労働市場逼迫による賃上げ圧力の継続や輸入物価の高騰一服等、雇用・所得環境の改善とともに、緩やかに増加しています。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果等によって、直近ピークの2023年1月の+4.2%からプラス幅を縮小していますが、7月も+3.1%と2%を大きく上回っています(図表2)。』

大きく上回っているのに何で物価目標未達扱いになるんでしょうねえ。

『日本経済の先行きを展望すると、当面は海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、行動制限下で積み上がった貯蓄にも支えられたペントアップ需要の顕在化、緩和的な金融環境や経済対策の効果、企業の「稼ぐ力」の強化努力等から、緩やかに回復していくとみています。』

展望レポートの説明に「稼ぐ力」を一々加えております。

『その後は海外経済が持ち直すもとで、所得から支出への好循環が徐々に強まり、潜在成長率を上回る成長が続くと期待しています。また、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、輸入物価の高騰を起点とする価格転嫁の影響が徐々に減衰し、プラス幅を縮小していくと予想しています(図表3)。』

まあこの辺は大本営。



・ひたすら「稼ぐ力」シリーズなんですけどその前の説明がこれまた色々とツッコミどころがあって困る

ちょっと飛ばして『3.金融政策運営』の所ですけど、ここでも謎の「稼ぐ力」推しが続いて段々胸焼けがしてまいりますわよ正直言って。

『足もとの経済・物価情勢を踏まえ、当面の金融政策運営に関する私自身の考えについてお話します。主に以下2点から、2%の「物価安定の目標」のもとで、当面は現在の金融緩和を粘り強く続ける必要があると考えています。』

ふーん。

『1点目は、賃金上昇を伴う物価上昇の実現についてです。』

何でマイナス金利とYCCでそれが実現できるのか、というか寧ろ円安を助長して賃金上昇が追いつかないリスクを高めていませんか、と思うのですが中村さんのご説明は何故か「稼ぐ力」になってくる。

『日本経済の大きな問題として、1990年代後半以降、物価・賃金・金利という3つの重要な経済・金融指標が殆ど上昇しなかったことが挙げられます(図表4)。』

で??

『販売価格の変動率分布は長年ゼロ近傍に集中し(図表5)、回収の難しさから投資が抑制され、企業のイノベーション創出力や「稼ぐ力」が低下し、労働生産性の低迷に陥りました。』

販売価格が動かないから回収が難しくて投資が抑制されてイノベーションが創出されなくなる、ってそれ理屈がおかしくないかという話で、販売価格の変動率云々とイノベーションってまるっきり別の問題じゃないでしょうか。経済の成長期待が無かったから投資が控えられたとか、そういう話ならまだ分かるんだけど。

『この停滞した経済活動の変革を後押しするため、日本銀行は金融緩和を継続し、政府の施策とも相俟って、日本経済はデフレではない状況になりましたが、リーマンショックやコロナショック等が起き、デフレマインドの払拭には至っていません。』

ちょwwwwwwww、リーマンショック前はデフレじゃなかったのかよwwwwwwwwwwこれは斬新。

『金融政策の理念は、物価の安定を図ることで国民経済の健全な発展に資することですので、安定的に物価が上昇する中で賃金も増加し、投資や消費等の経済活動が活発化し、これに連れて金利も上昇するという好循環の形成が重要です。』

「安定的に物価が上昇する中で賃金も増加し、投資や消費等の経済活動が活発化し」って説明がそもそも間違いで、安定的に経済成長が行われている社会においては、過熱にならない程度に「投資や消費等の経済活動が活発化」しており、その結果として物価や賃金が上昇するのであって、物価と賃金を上げると好循環が起きる、というのは例によって原因と結果を取り違えた置物理論に他ならないんですけど。

『この好循環の形成には、米欧のように経済成長とともに賃金も増加する経済・賃金構造への変革が必要です。』

そんなややこしいこと言わなくても経済が安定的に成長するという期待が共有されれば良いんですけどねえ。

『米欧では、現在の経済・賃金構造を前提としつつ、需要を抑制し、高インフレを鎮静化するための金融政策運営が行われていますが、日本は停滞した経済・賃金の構造変革が必要であり、物価目標がその変革の進捗を測る基準にもなっているように思います。』

進捗し過ぎてませんかねえ。

『足もとの消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は16か月連続で2%を上回り、人手不足により賃上げ圧力も高まっていますが、国内で生み出される付加価値の価格変動を示すGDPデフレーターでみると、米欧のようなユニット・レーバーコストの大幅な拡大は確認されておらず、現状の物価上昇は、主に輸入物価の高騰を起点とするラグを伴う価格転嫁の影響とみられ、賃金上昇を伴う物価上昇の形成には至っていません(図表6)。』

もう完全にこの「現実の物価が3%(コアただし政策要因による押し下げあり)だ4%(コアコア)という状況なので他の理屈を繰り出してああ言えば上祐方式で物価が言ってない事にするイカサマ説明」は勘弁して貰えませんですかねえ。じゃあ最初からULCとGDPデフレーターを目標にしておけばあああああって感じですわ。


・はい来ました稼ぐ力

『2点目は、物価上昇に負けない賃金上昇を可能にする中小企業を含む企業の「稼ぐ力」の強化についてです。』

そらまあ強化できたら強化するのが良いんでしょうけど、そういうのは基本的に資本主義社会なんですから市場(金融市場じゃないよ)競争によって磨かれていくもんだと思うんですけど、さて中村さんは何を言う。

『6月短観によれば、販売価格判断DI4のプラスが9四半期連続し、仕入価格判断DI5とのギャップも2022年第1四半期をピークに縮小しており、価格転嫁の継続が窺われます。』

『そして、賃上げが従業員エンゲージメントを向上させ、付加価値を価格に反映できるイノベーティブな製品・サービスが創出される等、「稼ぐ力」が高まるという好循環が生まれつつあるように思われます。』

何か話がエライ飛躍してないかと思う訳で、この行間にどういう説明があるのかよく分からんぶっ飛び方is何ぞ??

『しかし、従業者の7割弱が働く中小企業は、大企業と比べ、「稼ぐ力」が強くありません(図表7)。』

はあそうですか。

『ドイツの中小企業は、大企業と比べて見劣りしない利益率を維持するもとで成長を続けており、日本とは状況が大きく異なるとみています6。』

そもそも論として一国の経済社会構造のありかたとかそっちの話をしないで「ドイツの中小企業はこんな成長をしているから日本も」とか言い出したってあんまり意味が無いんですよね。教育制度だって社会制度だって全然違うものを持ち出してドイツの中小企業を見習えったって見習えるものと見習えないもんんがある訳で「同業他社横並び」みたいな言い方をされましても困りますわおじいちゃん。

『中小企業の経常利益は価格転嫁の進展もあり、2022年度は前年度比+3.9%と3月短観の見通しから上振れて増益で着地しましたが、2023年度はまだ減益の計画で、中小企業の賃上げ原資確保に繋がる「稼ぐ力」の強化の進捗はなお不透明な状況ですので、2%の「物価安定の目標」達成に確信を持てる状況には至っていません。』

いやあのですね、中小企業の企業収益とか経済に対して遅行して上がるものの中でも恐らく遅行度が高い訳で、そういうのを待ってたら必要以上に経済を過熱させてしまい「景気循環の山や谷を適宜平準化して経済の安定成長に資する」という中央銀行の役目を果たさないことになるんですけどねえ・・・・・・・・・・・・・

『報道によれば、既に来春の賃上げの意向を固めている大手企業も相応にあるようですが、物価上昇に負けない賃金上昇を可能にする「稼ぐ力」の強化が、中小企業を含め着実に進捗しているか、見極めていく必要があります。』

そもそもほとんどの中業企業の収益が「物価上昇に負けない賃金上昇を可能にする」になるというんじゃなくて、これは別に中小企業も大企業も関係なくて、「物価上昇に負けない賃金を出せないような稼ぐ力の無い企業はご退出頂く」というのが本来の資本主義のダイナミズムだし、それを無くしてしまって、稼ぐ力もないのにダラダラと延命しちゃっている企業による過剰生産力が経済のスラックを生むんじゃないですかねえというお話。もちろんこのご退出によって失業などの問題が社会問題化しないように、というのはあるので、そっちは政府による社会政策が担う話ですよね。

つまりですね、中村さんのこの理屈って「稼ぐ力を強化」と言っているのですが、過剰な金融緩和によるガバガバの金融環境によって、本来退出すべき稼ぐ力の無い企業を温存することによって、社会全体としての稼ぐ力の足を引っ張っている、という理屈に他ならないという風にアタクシは思う訳ですよ。

いやなんですかねえこの中村さんの理論、かつての(この講演でも出て来るけど)「給料が上がらないなら株や投信を買えば良いじゃない」というマリーアントワネット理論(最初「主な意見」に出た時に中川さん(野村出身)の発言かと思って(ノ∀`)アチャーと思ったら何と中村さんの意見だったのには腰抜かしてワロタですな)をぶっこんでみたり、何か色々と勉強をしているのは伝わって来るんですけど(今回の金懇のここまでの部分だって通り一遍の説明にとどまらず中村さんの意見が練り込まれている)中村さんの非常に惜しい所は「勉強をしている方向性が致命的に筋が悪い」ということでして(個人の感想です)、何ちゅうかアレですよ。ユーチューブにある変な陰謀論チャンネルとかニセ科学チャンネルとかああいうのを見て「ネットde真実」に目覚めてしまう善男善女みたいなアレを感じてしまし、何と申しますかそういう意味では極めて惜しいお方がアチラの方に行かれてしまいました、と思いますし、日銀のスタッフは審議委員(特に非金融出身の人に対して)へのレクとか勉強サポートとかちゃんとやれよなと思うのでありました。


ということで悪態が長くなりましたがその続き。

『現状の物価上昇はまだ輸入コストプッシュインフレの色彩が強いため(図表6再掲)、販売価格の上昇が賃金上昇に繋がる前に金融引き締めに転換すれば、需要が抑制され、企業の「稼ぐ力」が再び低下しかねません。』

この理屈がアレで、今までの説明だと「企業の稼ぐ力」ってのは需要が抑制されたから無くなるとかそういう循環的なもんじゃない、もっと構造的なもんだと思うのですが、何で循環的な要因で「稼ぐ力」が低下するのか、というのがもう意味がわからない。

だいたいですね、景気循環の中で稼ぐ力が無い企業が景気後退期に退出し、稼ぐ力のある企業が相対的に伸びていく、ってのが資本主義におけるサイクル(それをレッセフェールにしておくと社会厚生の悪化に繋がる可能性があるので、そこは政府による社会政策という形での介入が入る)じゃないのでしょうかと思う訳で、むしろ経済をアホのように吹かしていくのは企業の「稼ぐ力」を強めるのに本当に役にたっているのでしょうか、と思う訳ですよ。、

『人々の成長期待も再び低下し、回復に多大なコストと時間を要することとなりますので、金融政策の修正には、丁寧な状況把握と慎重な判断が必要です。2023年度の政策委員の物価見通しの中央値が+1.8%から+2.5%へ大きく上方修正される等、経済・物価を巡る不確実性が極めて高いことから、イールドカーブ・コントロールの枠組みの中で運用を柔軟化しましたが、現状では、賃金上昇を伴う2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、金融引き締めへの転換にはまだ時間が必要です。』

そもそも「稼ぐ力」が重要ならば2%達成しているのか居ないのかに意味があるとも思えないですけどね。



・稼ぐ力シリーズですけど何かねえ・・・・・・・・・・

次が今回の中村さんの一番ねじり鉢巻きで作成したと思われるコーナーになります。

『4.経済・賃金構造の変革』って見出しになるんですけど、たぶんこれ中村さん物凄く気合を入れてこの部分を作っていまして、こういうのを熱心に作るのって今や中村審議委員だけしかいない(田村さんですら金懇挨拶はあっさり味、ただし会見で戦闘民族になるけど)という訳ですよ。

とは言いましても、

『(1)日本経済の構造的な課題』というのが最初の小見出しですが、ああそうですか以外の感想が湧き起こらないのでここは残念ながらパスせざるを得ませんですし、さらに次の、

『(2)労働生産性の向上―企業の「稼ぐ力」の強化―』のコーナーも文字列は色々と並んでいるのですが、何ちゅうか通り一遍の評論が並んでいるだけで結局何をどうしたいのかがちょっとフワフワとした話しか見えてこない訳でして、こういうのはそれこそ日本を代表する大企業のメーカーさんの経営をされていたのですから、その経験に根差した説明でもしてくれると面白いのですが、何かこう〇洋〇済とかプ〇ジ〇ン〇とかダ〇ヤ〇ン〇とかを見ている気分になってしまうのがどうも(個人の感想です)。


でもって政策の方でもしつこく説明している「中小企業の稼ぐ力」が次にあるのですが、

『(3)中小企業の「稼ぐ力」の強化』

『物価上昇に負けない賃金上昇が実現するために、中小企業の「稼ぐ力」の強化は大変重要です。』

稼ぐ力のある企業が伸びていくような環境整備が重要じゃないかと思いますけどねえ。

『日本の中小企業の現状をみると、売上高輸出比率は3%と大企業に比べて低くなっています(図表16)。こうしたもと、中小企業の従業者は全体の7割弱を占めますが、経常利益は全体の約4分の1で、一人当たりでは大企業の5分の1〜6分の1と賃上げ余力が乏しい状況です(図表17)。』

ふーん(まあここもツッコミどころのような気がするがパス)

『また、国内市場での過当競争環境から価格決定力も弱く、賃金を上げられない悪循環に陥り易い構造です(図表14再掲)。』

それは過剰な企業延命政策を取ったりするから過当競争環境が改善されないんじゃないでしょうかねえ。

『例えば、中小企業の多くが活動する国内市場では輸入品との競争にも晒され価格競争に陥りやすく、「稼ぐ力」の強化が難しい状況が続いてきましたが、人口増加に伴い成長している世界の様々な需要を取り込むことで、ドイツのように成長する中小企業が増えていくと期待しています。』

てか海外の需要云々に関しては言われなくても結構やってると思うんですけど、製造業の場合。

『ドイツの中小企業は売上高輸出比率が20〜から30%11、税引前利益率も6%程度12と、政府等の競争力強化支援機関の活用等により、ニッチ市場での技術力や競争力、価格決定力が強い特徴があります。日本の多くの中小企業では、経営リソース不足と過当競争により、製品・サービスの競争力や輸出の強化策の実行が先送りされてきたように思います。しかし、近年、世代交代や事業承継、スタートアップ等によって、経営リソースや技術力等の強化を図る成長への挑戦が始まっています。将来に向けた研究開発力や市場対応力が強化され、政府・自治体・大学等の中小企業・スタートアップの成長力強化支援策の活用も可能になり、自立性の高い事業運営への道が広がると期待しています。こうした中小企業等の挑戦を後押しするには、地域を良く知る地域金融機関の伴走支援が必要不可欠だと考えています。』

なぜその結論になる・・・・・・・・何か毎度なんですがこの人の話がヘボコンサルみたいな方向になっちゃうの何でやねんと思います。


でまあ最後に家計でいつものマリーアントワネット理論登場。


・家計の利子配当収入を増やしたかったらマイナス金利を止めた方が良いと思います!!!!!!!!1111

最後の小見出し(この後ご当地経済ネタがありますので実質最後)が、『(4)家計の「稼ぐ力」の強化』ですわ。

『持続的な日本経済の成長を実現するためには、企業の「稼ぐ力」の強化とともに、家計の「稼ぐ力」の強化による可処分所得の安定的な増加が必要です。』

これは久々にマリーアントワネット理論が登場しますわよ奥様。

『日本の家計は、可処分所得に占める勤労所得の割合が94%13と米国に比べ極めて高く(図表18)、配当・利子収入は4%と少ないため、勤務先企業の「稼ぐ力」に大きく影響を受けます。』

マイナス金利にしているてめえらのせいで利子が入らないんですけどねえ。

『日本では、従業者の7割弱が中小企業に勤務し、1つの企業に長く勤めますが、その中小企業の6割が赤字法人14で持続的賃金上昇の期待が低い等、多くの家計は将来に備え、現預金の保蔵志向を高める傾向があります。』

この現状認識にはかなり?????なものを感じるのですが。それに中小企業の赤字法人って真の意味での赤字垂れ流しな訳じゃなくて(以下大人の事情の話になると思われるので矯風会による自主規制が行われました)。

『家計の「稼ぐ力」を強化するうえでは、米欧と同様、リスキリングによる能力向上と能力に見合ったより高い賃金の獲得やそのための転職等は有効なオプションだと思います(図表19)。』

はあそうですか。

『日本の転職率は米欧に比べて低い状況が続いてきましたが(図表20、図表21)、現在の完全失業率が2.5%15と歴史的にみて低い水準にある等(図表13再掲)、労働市場は逼迫しています。より高い賃金を支払い従業員の価値を高める能力開発投資にも積極的な成長産業への円滑な労働移動が進めば、地域全体の付加価値が高まり、「成長と分配の好循環」が進み、物価上昇に負けない賃金上昇への期待が確信に変わっていくと考えています。』

『5月に公表された政府の「三位一体の労働市場改革の指針」では、個々の企業の実態に合った職務給の多様なモデルを年内に政府が取り纏めるとともに、多様な働き方や労働移動の円滑化の観点から、助成金や税制改革等も予定されており、企業や家計の前向きな対応に注目しています。』

何だかねえ・・・・・・・・って感じです。何か話がひたすらフワフワとしているんだよなー。


でまあこの次が今回の白眉。

『また、家計の「稼ぐ力」を強化するうえでは、配当・利子収入を増やすことも重要です。』

じゃあマイナス金利止めろやwwwwwwwwwwwwwwクッソワロタwwwwwwwwwwww

『日本の家計の金融資産の構造をみると、現預金の割合が54%、株式等・投資信託の割合が15%となっており、米国やドイツに比べて現預金保蔵志向が強い特徴があります(図表22)。「お金を保蔵する」デフレ思考から「お金を活用する」成長思考へマインド変化が進めば、貯蓄の一部が「長期・積立・リスク分散」に基づく投資にシフトされ、投資先の多くの上場企業からの配当金獲得による「稼ぐ力」の向上と投資先の成長による将来の資産形成が促進されます。』

でたよ「給与が上がらなければ株や投資信託を買えば良いじゃないか理論」

『現預金の保蔵だけでは、家計は多くの企業の事業活動による日本経済の成長の果実から遠い存在になってしまいます。2001年以降のTOPIXの株価指数や配当利回りをみると、リーマンショック等の大きなショックを経ても上場企業の成長とともに資産価値が増加し、リーマンショック以降、配当利回りは2%程度を維持しています(図表23)。』

ってさあ、このマリーアントワネット理論って結局格差が拡大するだけの話なんですよね。そもそも投資に回すだけの余裕のない家計はいつまで経っても追いつけないってことになるんですから。

『経済は多くの企業活動によって成長を続けます。昭和の時代は、日本経済が輸出によって成長し、産業クラスターが形成され、家計の自身が勤務する企業からの勤労所得をベースに「1億総中流」と言われる社会になりましたが、プラザ合意以降の円高や人口減少とともに企業の「稼ぐ力」が弱まり、賃金が低迷し、家計の「稼ぐ力」の構造変革も必要になっています。株式等・投資信託への投資によって多くの上場企業との繋がりを持ち、名目GDP成長とともに賃金と金融収入が持続的・安定的に増加し、資産形成も促進する構造に変革していくことが重要だと考えています。』

何か昭和に勝って逃げ切り組が好き勝手言ってやがる感が強くて。そんなに家計の利子収入増やしたかったら、物価がこんなに上がっているのにマイナス金利とかいう無茶苦茶な政策止めろや以外の感想はありませんな。


ということで会見までやろうと思ったら思わず時間が無くなってしまいましたので、積み残しネタと合わせて明日にでも。




2023/09/01

お題「田村審議委員記者会見を鑑賞しましょう企画である」

ほうほうそうですかそうですか
https://jp.reuters.com/article/usa-economy-spending-idJPKBN3061HF
2023年9月1日12:17 午前
米PCE価格指数、7月は前年比3.3%上昇 個人消費旺盛

『[ワシントン 31日 ロイター] - 米商務省が31日発表した7月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比3.3%上昇し、伸びは前月の3.0%から加速した。前月比では0.2%上昇と、伸びは前月から横ばいだった。』(上記URL先より)

前月比ベースの話をするのに「伸びは前月から横ばい」って非常にイミフな表現で、横ばいって書いたら普通は前月比伸び率が0.0%の事を意味するだろと思うので、綴り方教室からやりなおして頂きたいと思うのですがアタクシの方が細かいのかね。


〇田村審議委員会見である

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230831a.pdf
田村審議委員記者会見
――2023年8月30日(水)午後2時から約40分
於 釧路市

・タイムリーマナーに政策対応すべきという話を植田総裁も思い出してほしいものですな

最初の質疑はすっ飛ばしましてその次から。

『(問)二点お願いします。一点目は、講演の中で、来年の 1〜3 月頃には2%の持続的・安定的物価目標の達成についての情報の解析度が上がるのではというご発言でしたが、そうなるとすなわちその頃には現在の大規模な緩和の縮小をすることが可能になるのか。』

『そしてその場合がどういう手段になるのかというのが今二点目なんですけれども、市場では 10 年金利の上限といったYCCを残したままマイナス金利を撤廃するというのは難しいのではという声がある反面、10 年金利の上限とかYCCといった枠組みがある程度あった方が仮にマイナス金利を撤廃した場合、長期金利の急騰を避けられる、防ぐツールがあるので有効であると、いろんな議論があると思うんですけれども、田村委員の中ではどういうシークエンスが最もふさわしいと考えられるのか、緩和の縮小について、具体的な手段のイメージがあればお願いします。 』

これ、後半の質問なんですけど「長期金利ターゲットしかも0%(ですよ一応)を残してマイナス金利解除」ってそれ短期政策金利と10年金利のターゲットが同じレート(今でも0%ですからね長期のターゲットは)になるという話でして、長期金利のターゲットを0%プラマイ2.5%にでもするなら別だけど、そうじゃなかったら絶対あり得ない議論だと思うんだが何でこういう質問が出るのか、マジのマジでこんな話真面目に言ってる人いるのかよとビックリしました。

でもって田村さんの説明。

『(答)まず、一つ目のご質問、来年 1〜3 月頃には金融緩和の縮小、あるいは金融の正常化が可能なのかというご質問でございます。私自身は2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現が、もう既にはっきりと視界にとらえられる状況になったと考えておりますが、』

まあ何ですな、あの展望レポートのポンチ絵は別に金融政策決定会合議決事項じゃないと思うので中々難しいのかもしれませんけれども、できることなら「このポンチ絵はあり得ないので私は許さん」と暴れて頂きたかったんですけど(まあ暴れても関東軍の幕僚共が勝手に出してしまう、という幕僚ファッショが発生しているのかもしれませんけどね!!!!)。

『物価見通しは上方向にも下方向にも不確実性があって、状況の見極めにはもう少し時間が必要であると考えています。こうした中で来年の 1〜3 月頃になれば春闘に向けた労使のスタンスが明確になってくると考えられること、』

『また、当面CPIはプラス幅を縮小していくとみられますが、そのCPIが実際にどのようなパスを辿っているかも確認することができると。』

プラス幅縮小ったって前月比のコアコアとか順調に上がり続けているんですけどね。

『従いまして、こういう意味で、解像度が一段と上がることが期待できると述べた次第です。』

でまあこの次ですよ植田さんがすっかり忘却されておられることは。

『大事なことは正確な状況判断を行って、それに応じてタイムリーに遅からず早からず的確な政策を行っていくことでありまして、それは出口についても同様だと考えております。』

とりあえず植田総裁は田村さんのこの言葉を紙に貼って毎朝百回朗読してから出勤しろと言いたい。

まあでも植田先生、学者の時は「プリエンティブな対応が必要」とか言ってたくせに日銀総裁に収まった途端にチキンのハトハトジジイにすっかりクラスチェンジしてしまった訳で、やっぱり学者ってのは自分の主張を守るための勇気と責任に耐える胆力が無いんだなあ、というのは置物が2年で辞任しなかった醜態を晒した事に引き続いて思ってしまうわけで、幾ら立派な学問的なキャリアがあってもやっぱりそういう責任に耐える局面の経験がない人にはこういう重責を担わせたらダメなんだな、ってのを強く思う今日この頃。


と、田村さんの会見なのに何か明後日の方向を砲撃しておりますが話を戻しまして、

『その時点で金融正常化を進めるべき状況になっているのか、あるいは、粘り強く金融緩和を継続すべき状況が続いているのか、その時点その時点で得られるデータ、情報を踏まえながら判断していきたいというふうに考えております。なので縮小が可能なのかどうなのかというご質問ですけれども、それはもうその時点のデータ次第というふうに考えております。』

そらそうですわな。さて後半の質問に対する回答。


・ちゃんとバランスシートの縮小について言及しているのがポイントが高いのですよ

ということで続きです。

『二つ目に、仮に出口に向かうとなった時の手段については、一般論として申し上げると将来の出口局面で、政策金利の調整と、拡大したバランスシートの縮小というのが重要なポイントとなっており、その点については様々な対応が考えられます。』

>拡大したバランスシートの縮小というのが重要なポイントとなっており
>拡大したバランスシートの縮小というのが重要なポイントとなっており
>拡大したバランスシートの縮小というのが重要なポイントとなっており

これはマジでポイント無茶苦茶高いんですよ!!!!!

『もっとも、それらの適切な順序やペース、組み合わせなどは、その時々の経済・物価・金融情勢に応じて異なり得るものだと考えています。いずれにしても、現在の状況を踏まえますと、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた状況の見極めには、もう少しだけ時間を要する状況でありますので、そういった実現が見通せるようになれば、その時点の情勢を踏まえて、金融政策決定会合で議論して適切な出口戦略を実行していくことになると考えています。』

と、ポイントの高い話をしたと思ったらまた穏当な話に戻るのですが、

『その場合の手段について、田村は現時点でどういうふうに考えているのかというご質問でしたけれども、それについても、その時点で考えるということでございますが、』

この辺から何か謎にギアが入り、

『マイナス金利の解除ということも当然選択肢の一つですし、この間言われておりますYCCを残したままなのか、YCCも撤廃してしまうのかということについても、それぞれが選択肢で、その時点の状況を踏まえて考えていきたいというふうに考えております。』

おや来年の頭にはっきり見えてきたらマイナス金利の解除もアリエールですかそうですか(まあそれでも実は時すでにお寿司になっている可能性はあるんですけど)、

『仮にマイナス金利、解除したとしても、その後、金利を低位に抑え込む、抑えていくということであれば、それは金融引き締めとか、金融緩和の縮小というよりは、金融緩和を継続しているということだというふうに理解をしております。』

均衡イールドカーブでも中立金利でも良いのですが、まあそういうごく常識的な考えを持ち出せば、現在の経済物価環境において「マイナス金利解除が金融引き締め」というのは脳味噌が蒸発でもしてないと言えない話なので、これ自体は田村さんごく普通の事をごく普通に言っている話ではあるのですが、何故かあのポンポコリン集団の中では脳味噌が蒸発していないと政策委員をやってはいけない伝染病でもあるのか、マイナス金利解除が金融引き締めとかいういつまでお前らゼロインフレ時代の話をしているんだ(だいたいお前らのクッソ低い展望の物価見通しだって3年後まで+1.6%以上の物価上昇はしてるだろうが)という脳味噌スッカラカン議論が横行しているので、大変に立派な説明に見えてしまうのがエッシャーのだまし絵の状態。

でまあその極めて常識的な言葉が田村さんの口からしらっとギアが上がって出てしまう辺り、ポンポコリンが如何にポンポコリンな話をしているのか、というのが何となく想像できておじちゃんは悲しいものを感じるのでありました。


・最初の質疑でしれっとマイナス金利解除がアリエールと来たので以下マイナス金利の質問だらけ

そらそうですなと思います。田村さんの作戦だったのかな???

『(問)今のお話にもありました、マイナス金利について伺いたいんですけども、今日の講演では修正前のYCCのですね、副作用について言及されていました。その副作用と効果を比較衡量して決めたというお話でしたが、現状マイナス金利についてですね、これまでもお話はされてるかと思うんですけども、副作用についてどのようにお考えなのか、伺いたいです。』

『もう一点はマイナス金利の見直しの判断について、内田副総裁はですね、距離があるといった表現をされているわけなんですけども、今も少しお話しがありましたが、時期的なもの、距離があるとお考えなのか、それとも今すぐにでも見直す必要があるとお考えなのか、その点はいかがでしょうか。』

まあマイナス金利の場合は「副作用対応」というよりも単純に「経済物価情勢から考えて過剰な金融緩和をすることによって経済の振幅を却って大きくすることに繋がるので、マクロ経済の安定化のために行う金融政策の意義に反する」という王道の対応になると思いますし、そうじゃなかったら議論に耐えられないと思うんですよね。

では田村さんの回答を拝読。


・マイナス金利の話を聞かれるもそもそもの大規模緩和の副作用に堂々言及するという華麗なぶっこみキタコレ!

『(答)一つ目のご質問がマイナス金利に関する副作用ということだったと思います。マイナス金利というか、今続けてきた大規模な金融緩和についての効果と副作用というご質問ということで答えさせて頂きますと、』

ちょwwwww踏み込む踏む混むwwwww

『大規模金融緩和を始めて 10 年、わが国経済はデフレではないという状況を実現し、成長の観点、雇用の観点からも大きく改善した、これが事実だと思います。』

まあ別に2013年に始まったものだったら「あまちゃん」のお蔭かも知れませんけどね!!!!!!!!

『こういうふうな改善には、民間経済主体の行動、それから政府の経済政策、あるいは世界経済の動向など様々な要因が影響しているというふうに考えますけれども、大規模金融緩和もそれを後押しする要因の一つであったと考えております。』

金融政策が2013年以来の好転を生んだ、という置物あるいは黒ちゃんの我田引水な主張に対してしれっと嫌味を垂れているのも田村さん抜け目がない。

『物価については、まだ2%目標の持続的・安定的な実現がはっきりと視界にとらえられる状況になったとはいえ、その状況の見極めにはもう少し時間が必要であると考えているところです。』

「もう少し」ですかそうですか。

『副作用については、これまでも申し上げておりますけれども、主なものとしては、市場機能の低下、それから金融仲介機能に悪影響を与える可能性、これは可能性ですけれども、こういうものがあります。この点、市場機能については、日本銀行が講じてきた様々な措置の影響もあって国債市場の機能度に、足元半年みたら改善がみられますけれども、その水準は低いままだと考えております。また、現状、金融機関は充実した資本基盤を備えており、金融仲介機能は円滑に発揮されていると考えております。』

という話をするのもまあ田村さんだけですな、と思う訳ですが、やっぱりでも最も大事なのは田村さんの言う次の部分だと思うの、ということで本来だったらこっちをメインに説明した方が良いんじゃないかなと思うの。

『この他にも、よく指摘される副作用として、長期にわたる大規模な金融緩和が、本来市場から退出を余儀なくされるような企業を存続させるなど、経済の構造改革を遅らせたり、生産性に悪影響を及ぼしたりしているのではないか、という指摘もありますが、この点については、一義的には市場原理のもとで企業や金融機関などの経済主体に委ねられるべきものだと考えています。あくまで金融は経済の黒子であって、大規模な金融緩和がこうした事象の張本人というわけではないと考えています。』

いや負債コストをあり得ないくらいに引き下げた状態を継続するのは市場を通じた資源配分に歪みを生じさせるんだからやっぱりダメでしょ。本来社会政策が担うものを金融政策にやらせることによる弊害って大きいと思うの。おっちゃん馬鹿だからよくわかんないけど。

『ただ、長期にわたる大規模な金融緩和が、発揮されるべき市場原理の効果を抑えてしまっている面もある、そういうことは否めないと考えております。』

と思ったら締めはこういう説明になっておりました。でもって後半の質問への回答(長いですな)。


・マイナス金利の解除への決断には(田村さんに限るけど)にはそんなに距離はありませんかそうですか

『それから二つ目のご質問で、マイナス金利の解除まで距離があるか、内田副総裁は、「距離がある」とおっしゃっていたということで、まず最初に申し上げておくのは、他の政策委員の個別の発言についてコメントをすることは差し控えさせて頂きます。』

しかしここで止まる事をしないでぶっこんでいくのが戦闘民族の真骨頂(勝手に戦闘民族認定してサーセン)。

『そのうえで、私自身の考え方を申し上げますと、2%の物価安定目標の達成で、そこで出口に向かうかどうかを見極めるには、もう少し状況を見極めたいということですので、そういう意味では距離があるといえばあるし、ただそれが来年の 1〜3 月ぐらいには解像度が上がってくるというふうに考えております。』

どう見ても半年しか距離がありません本当にありがとうございました。

『先ほど申し上げましたけれども、もしも仮に来年 1〜3 月あるいはそれより前かも、それより後かもしれませんけれども、』

さらに追い打ちをかけるように「それより前」の可能性にも言及キタコレ!!!!

『そういったときに持続的・安定的な物価上昇の実現が見通せた場合には、当然、マイナス金利の解除も選択肢の一つとして入ってくるというふうに考えておりますし、そのマイナス金利の解除というのが即金融引き締めかというと、非常に低位に維持するのであれば、それは金融緩和の継続だというふうにとらえております。』

(;∀;)イイハナシダナー


・「その前」部分に念押しをされて別に口が滑った訳でも何でもない事を堂々と説明するの巻

次の質問(の前半だけ)から。

『(問)二点お願いします。先ほど委員がご指摘された来年の 1月から 3月ぐらいにその2%達成、それが解像度が上がるというお話しありましたけれども、逆に言うと年内という観点からすると、そこまでその解像度が上がるということはなかなか難しいとお考えでしょうか。 (後半割愛)』

『(答)一つ目は来年 1〜3 月に解像度が上がるという意見だけれども、年内難しいのかということでございますが、年内は難しいというわけではないと考えております。』

これは田村抜刀斎ですわ。

『なぜ来年の 1〜3 月かということの説明として、企業の賃上げに関するモメンタムなんかが見えてくるんじゃないか。仮に今年の 11 月、12 月辺りにいろんな企業経営者のご発言等から賃上げのモメンタムというのを感じ取れる可能性は、それはもちろんあると思っています。』

うんうん。

『あと、来年 1〜3 月になれば、今年後半のCPIの動きというのを確認できると申し上げましたけれども、来年の 1 月頭(注)に東京の 12 月のCPIが発表されるわけですので、そこで確認できる可能性というのはもちろん否定はできません。』

物価はそこまで待っててエエノカイナというのは多々ある。

『従って、こういう意味で来年 1〜3 月になれば解像度が高まるというのが私のベースの考えですけれども、それよりも前倒しになることもあるだろうし、あるいは逆に後ろ倒しになることも有り得るというふうに考えているところです。(後半割愛) 』


でまあ大体この辺で田村剣心(CV:涼風真世)もとい田村審議委員の質疑の主要部分は終わっている感がする訳でございますが、あとは最後の方のこの質疑でも。


・どう見てもコンセンサスがないのを分かって質問するプレイキタコレ

前半のはワロタ。

『(問)先ほどのマイナス金利についてなんですけれども、その目標の達成時点、その後の見通し、様々なことを考慮してその扱いを決めるということですが、少なくとも現時点ではボードの中に、こういった状態ならこうするというコンセンサスはないという理解でいいのかどうか、田村さんの見方を教えてください。(後半割愛、というかこの次に) 』

まあ「あるのでしょうか」と聞かないだけマシかw

『(答)一つ目、マイナス金利の解除等について、ボードの中で、コンセンサスはあるのかというご質問でございますが、ボードの中のことについては基本的に 10 年後の議事録を見て頂くことになっていて、それまでは審議委員は一切喋ってはいけないということになっておりますので、この場では控えさせて頂きたいというふうに思います。(後半割愛) 』


・市場が機能を取り戻すのを期待するなら通常輪番減らしてくれませんかねえ

『(問)(前半割愛、というかさっきの部分)もう一つは、長期金利について、先ほど、YCC柔軟化後も安定しているということですけれども、どのレベルで落ち着くんだ、どういった水準だとか、まだ市場の中では、ヒントがほしいというんですかね、何らかまだ落ち着かないところもある部分があるようなので、その点について、何か田村さんの方からご見解お願い致します。』

いや別にヒントなんていらんから1%の指値だけしてりゃよくて臨時輪番とかいらねえし通常輪番の買いすぎも止めて欲しいんですけど、まあ何とかストとかはそのヒントを充てるのが商売のタネになるからクレクレ言うんですよね。

『(答)(前半割愛)二つ目、YCC修正後、市場がどのぐらいに落ち着くのかヒントをほしがっているという、もちろんそういう意味だと、金利が動くなかで、皆さん、日銀がどこでオペ入ってくるのかということを気にしておられるんだろうと、そういう面があることは事実だと考えております。』

はい。

『一方で、先般のYCC修正後のオペレーションにつきまして、私が思っておりますのは、三つ思っておりまして、』

ほう。

『一つは今後、基本的には市場に金利形成を委ねることが重要、』

『二つ目には市場の流動性の確保、回復を図っていく、ニアリーイコール市場機能を回復していくことが重要、』

イイハナシダナーと思うのですが、

『三つ目として、ただし金利の急激な変動を避けること、この三点が重要であるというふうに考えております。』

どう見てもほこたて対決です本当にありがとうございました、とズッコケてしまう訳ですよ。いやまあ言いたいことは分かるんだけど、こういわれると結局3つ目の点でしかオペ入れてこないんだもん。

『マーケットにおいても、この市場に金利形成を委ねられた時に、どのぐらいが適正な水準なのかということについては、物価・経済の状況をみながら、様々な市場参加者が自然と、どこかの水準というところに落ち着いていく、まさにそれが市場機能だろうというふうに考えておりますし、そういう機能が早く回復していくことを期待しているところです。 』

通常輪番を最低でも半減の勢いで減らして下さい。


〇中村審議委員の金懇とかラガルドはんとか色々積み残しちゃいました

どうもすいませんすいません。

そういや今回社債買入オペの1社あたり上限について、従来向こう6カ月の上限だったのが3か月になったのってあれ何の意味あいなんでしたっけ???まあ上限額自体はいじってないんですけどね。