トップページに戻る
月別インデックスに戻る

(各日付の最初にラベルを「220901」というような形式でつけていますので「URL+#日付(220901形式です)」で該当日の駄文に直リンできます)


2022/09/30

お題「英国の首相想像以上のポンコツでワロタ/支店長会議云々/黒ちゃんの会見質疑最近ちょっと暴走が酷くないかという雑談」

日本も大概なのですが更に大概なのが出てきて世界のポンコツ政治家に絶好の隠れ蓑ですな。

〇英国のポンコツ首相華麗に台無し発言キタコレ

ふむふむ。
https://jp.reuters.com/markets/bonds/uk
ギルト債 利回り

イギリス3ヶ月 利回り GB3MT=RR +3.139 -0.002
イギリス2年 利回り GB2YT=RR +4.430 +0.187
イギリス5年 利回り GB5YT=RR +4.471 +0.199
イギリス10年 利回り GB10YT=RR +4.142 +0.135
イギリス30年 利回り GB30YT=RR +3.930 -0.004

・なんで年金基金とか言う一番のリアルマネーがスワップで膨大な追証食らうんだよと思ったら

あたくし英国の年金制度がどうのこうのとか不勉強にも存じ上げませんでしたので、そもそもBOEの国債買入の背景ちうことでこういうのがあると聞いてビビりました。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-29/RIY1GBDWRGG001
英中銀、年金基金の国債売りクラッシュ懸念−ファンドに担保請求
Loukia Gyftopoulou、Greg Ritchie
2022年9月29日 10:45 JST 更新日時 2022年9月29日 15:24 JST
→LDIファンドが追加担保差し入れを迫るマージンコールに直面した
→追加の担保請求が英国債相場のさらなる急降下を招く恐れがあった

『トラス英政権の450億ポンド(約7兆円)の大型減税案がポンドと英国債相場の急落を引き起こし、年金基金の顧客のために多額の資金を運用する年金負債対応投資(LDI)ファンドの脆弱(ぜいじゃく)性が露呈した。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほう。

『英国債価格の崩落で、LDIファンドは追加の担保差し入れを迫るマージンコールに直面した。』

は???

・・・・・この時点でワイ、年金がマージンコール掛かるって何でやヘッジで先物売りとかしてたら寧ろウマーじゃねえか、と思うのですが。

『イングランド銀行(英中央銀行)は、追加の担保請求が相場のさらなる急降下を招く恐れが出たため、28日に長期国債を無制限に買い入れる市場介入に踏み切ったもようだ。』

ということなのですが、以下引用端折りますけど、

『世界有数の資産運用会社である米ブラックロックやリーガル・アンド・ゼネラル・グループ、シュローダーが、年金基金の顧客のためにLDIファンドの運用を行っている。年金負債の現在価値の変動にマッチする年金資産の運用を行うため、デリバティブ(金融派生商品)などを活用する。』

ちょwwwwwwwwwwwお前らリアルマネーなのにデュレーションマッチングで現物債券使わないでIRS使ってたのかよナンジャソラという話なんですが、まあ確かに冷静に考えて見ると、アタクシキング総裁の頃は英国面白いなーと思って(当時も「インフレ上振れだが景気がアジャパー」という事象が起こったりしてた)見てたんですが、その時にふとギルト債のイールドカーブ見たら、かなりハチャメチャなカーブが引かれて、どうも現物国債市場の流動性に問題があるので需給の歪みがそのままヘナチョコカーブに反映されている、とか何とかいうのを理解したことがあったのを今更主出してしまいました。

これ現物でマッチングしていれば、そらまあ含み損ドドーンになるのですが、必殺技「売らなければ損ではない理論」を爆裂させることによって暫し気を失っていればよいのであって、マージンコールコワイコワイネーと改めて思うのでありました。


・トラスさんかなりのポンコツのようでここまでポンコツを極めると却って面白くなってきました(不謹慎)

まあそんなこんなで持ち直したのですが、昨日当欄で「それ一発目は戻ったにしても、財政懸念の方を何とかしないと却って倍返しで食らう話に成り兼ねなくてかなり危ない選択肢な気がするし、今のポンコツBOEがやってるというのがその不安に拍車を掛けますわ。」などと申し上げましたが、何と申しますか絵に描いたようなドリフのコントのような流れががががが。

https://jp.reuters.com/article/britain-economy-truss-idJPKBN2QU0OK
2022年9月29日5:05 午後
トラス英首相、経済対策を擁護 「適切な計画」

第一報は確か日本時間の1615位に出ていました筈ですが、このヘッドラインを見た瞬間に、「ダメダコリャ」といかりや長介さんの声と共にセットの壁が全部倒れていつもの盆回し音楽が流れて来るイメージになるのは昭和老人脳ですねすいませんすいません。


『[ロンドン 29日 ロイター] - 英国のトラス首相は29日、金融市場の混乱の原因となっている政府の経済対策について、適切な措置であり、経済成長を促すため「議論を呼ぶ」措置を積極的に講じると表明した。』(上記URL先より、以下同様)

まあこれ出る前から既に英国債怪しくて米国債にも波及してました(のが円債引け近くに先物が弱くなった理由なのかなと思ったが違ったらゴメン)のですが、これ出て英国債一段安になってて、さっきのロイターさんのアレだと引けではちょっと戻してるっぽいのと、BOEが買う20年超の掛かる30年の金利だけやたら底堅いとか、中々味わいのあるカーブになっていますな。

『地元BBCラジオとの一連のインタビューで「これは私たちが打ち出した適切な計画だ」と発言。「経済を成長させ、英国を動かし、インフレにも対応するため、緊急行動が必要だった。もちろん、それは議論を呼ぶ難しい決断を下すことを意味する」とした上で「私は首相としてこれを進める用意がある。なぜなら私にとって重要なのは国内経済を動かすことだからだ」と述べた。』

どう見てもポンコツです本当にありがとうございました。


しっかしこれ英国のカーブとかアタクシノーケア(すいません)のでアレなんですが、短期化したら何と食らってしまうという中銀買入攻撃ってのも何というか理不尽な話だなあと思いますし、まあこういうのやればやるほど海外の資金入らなくなるでしょうし、それで良いのか英国ってことですけれども、ここまでポンコツになると見世物としては秀逸(不謹慎発言)なので、今後の大英帝国のポンコツ祭りから目が離せませんんあ。


・英国の惨状を見ても何の教訓も得ない人、というのは世の中に存在します

https://jp.reuters.com/article/pm-kishida-comment-idJPKBN2QU0VB
2022年9月29日6:36 午後
岸田首相、物価高や円安「思い切った対策」 30日に指示

『[東京 29日 ロイター] - 岸田文雄首相は29日夕、総合経済対策の策定を30日に指示すると正式表明し、物価高や円安への対応で思い切った対策を打つと強調した。』(上記URL先より)

英国の状況を見て何か思わないのでしょうか。まあ思う位の知(内務省検閲により削除)。



〇ほうほう日銀支店長会議の議論内容の公開とな(ただし総裁挨拶の公表廃止)

https://jp.reuters.com/article/boj-report-idJPKBN2QU0IR
2022年9月29日3:35 午後
日銀、支店長会議での議論要旨を公表へ さくらリポートと同時に

『[東京 29日 ロイター] - 日銀は29日、10月6日に開く支店長会議に合わせ「各地域からみた景気の現状(支店長会議における報告)」を新たに公表すると発表した。黒田東彦総裁の開会あいさつ要旨に代わって公表し、情報発信の充実を図る。新資料は、会議での議論や報告の要約となる見込み。6日午後2時に「地域経済報告」(さくらリポート)と同時に公表する。』(上記URL先より)

・・・・・・いやあのですね、最初このニュースを聞いた時に「支店長会議って午前中に始まるものなのに、その議論内容が14時に出るってナンジャソラ」と思った訳ですよ。だって内部向けの議事メモだったらそら会議中にタイプ打ちする人が居れば終わってからしばらくしたらメモ来るかも知れんけど、日本銀行として公式に外部に出す議事要旨だと、内容について発言者の確認取ったり、表現についての点検行ったりしないと行けないと思うのでありまして、それが14時に出るって言われると、逆にそれって議論じゃなくて予定調和のただの発表会じゃねえの????って悪態をつこうかとおもったんですよね。

と思ったら、こちらのロイターさんの書きっぷりですと、『「各地域からみた景気の現状(支店長会議における報告)」を新たに公表する』ということですから、以前のさくらレポートで出ていた「地域の視点」コーナーの復活みたいなイメージになるんでしょうな、と思いました。

「地域の視点」の場合は、毎回その時のキャッチーな経済のテーマを二つくらいお題として出して、それに関するアネクドータルなヒアリング報告を各支店が行う、というものでした。例えば2016年辺りと直近を比較すれば変化がお分かりになると思います。

2016年10月
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer161017.htm/(要旨)
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer161017.pdf(全文)

2022年7月
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer220711.htm/(要旨)
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer220711.pdf(全文)

「地域の視点」的な特定のお題に関するものは最近では「別冊」ということで別途後日出される、という形式に代わっています。

https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/index.htm/
地域経済報告(さくらレポート)

・・・・・・まあ良く分からんですけど、今回に関しては記事にあるように、「各地域からみた景気の現状(支店長会議における報告)」というのが出るだけであって、報告を並べるんだったらそら事前に報告は用意しているから14時に出せるわな、と思いまして、「議論内容が公表される」っていうんだと、支店長の皆さんが経済物価情勢に対して議論を戦わせたものが出るのかとうっかり期待してしまいましたが、残念ながらそのようなものではなさそうです。期待して損したというか報道は正確に行っていただきたいものです。「各支店からの報告」をさくらレポートにつける、ってだけの話じゃんそもそもそれ大々的に公表しなくったって当日になって「今回からこういうの出しましたよ」で済む話じゃん、と思ってしまいました。

何ですかね、先般の決定会合で行われた「コロナオペ終了だけで済ませれば良いのに謎のバーター措置で共通担保オペに謎の意味合いをつけてフルアロットメント化」と同じような、なんかやったふりする為に一々変なバーターをして、やってることが昭和温泉旅館まっしぐら、というムーブと同じものを感じでちょっと笑ってしまいましたが、まあこれが今の黒田日銀の味わいというものです。


・・・・・・・まあこの報告自体は大した問題じゃないとは思いますが、一事が万事で黒田日銀、途中から何かいじるたびにバーターで変なものを入れて来る、というのをやりまくってしまって、当座預金の付利階層一つにしても何が何だか分からないし、フォワードガイダンスは総裁もうっかり間違える(確信犯かもしれないけど、笑)三段構えになっているし、一々全部を小手先の技術で複雑怪奇にしてしまう、という事には大変に卓越した才能を備えておられまして、いや真面目な話この政策を巻き戻して正常な世界に戻す時のこんがらがり方と言ったら後任これ大変でしょうなと同情の念に耐えないのでありました。




〇大阪での総裁会見は表示上35分なのですが中々の査問会議になっておりました(為替円安との関係ですけどね)

スイマセンやっぱり昨日の続き。溜まっているものはちょっと(週明け短観もあるし)土日にどないかせんといかんですね。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220927a.pdf


・碌でもない答弁をするから詰問トーンになってしまうんですよねー

昨日引用しましたが、実質的な質疑応答の2番目にこういうのあったじゃないですか。

『(問) 先ほどの為替介入の関連で、今回の政府の為替介入は、急速に進んでいる円安を円高方向に進める目的で行われたわけですが、その観点からみると、現在進められている金融緩和は、政策の方向性が異なっている、矛盾しているという指摘がマーケットから聞かれます。これについて総裁の見解をお伺いします。』


『(答) そのようには全く考えていません。財政政策と金融政策のポリシーミクスについて、財政政策と金融政策とは、それぞれ目的や政策の効果が異なっており、だからこそポリシーミックスが可能となり、効果を上げているわけです。(以下延々と続くが割愛)』

会見の中継画像見てても思うんですけど、「そのようには全く考えていません」って回答の時って(もともと最近は誠実に答えている感が全然ないけど)まあ「聞く耳持ちません」的な雰囲気を濃厚にだしていまして、これ言えば言うほど記者さんのイカリゲージを引き上げる効果になってると思うのよね。

いやまあこの「そのようには〜」って回答って言いがかりみたいな質問に対する答えとして黒ちゃん使っていた筈で、まあその時にはまあ紋切り型もありですよね、って感じだったのですが、これがエスカレートしてきて、完全に黒ちゃんの口癖になってて、言いがかりでも何でもなくごくごく普通の質問してるのにこの回答じゃあそら最近の記者の質問が(従来日銀ヨイショ質問方面の人ですら)厳しい物言いになるの当たり前で、ちょっと黒ちゃんに「その言い方は止めた方が良いです会見がギスギスするだけで何の効能もありません」って進言した方が良いんじゃないのと思いますが、たぶん進言したら以下自主規制って状態なんじゃなかろうか、とそっちの方が心配になって来ます。


ということで上記の質疑応答に対して、同じ人か別の人か知らないけど、更に噛み砕いて次に質問が入ったんですよね。

『(問) 二問お伺いします。為替相場の変動は望ましくないということですが、実際に起こったことは、先週木曜日の総裁会見での利上げはしばらくないという発言を受けて急速に円安が進み、その直後に為替介入で円高方向に急速に進んだということです。』

と指摘し、

『これは、それぞれの事情は分かるのですが、』

とまで丁寧に入れておいてから、

『海外からみると、政府と日銀の政策の方向性や対応の違いによって、却って為替の変動を高めてしまったのではないか、ボラティリティを惹起したのではないかという見方があると思います。それについての見解を頂きたいというのが一点目です。(後半割愛)』

この回答が開口一番これですよ。

『(答) まず、前段の質問については、それが海外で主流の意見だとは思いません。』

黒ちゃん、もしかして記者全員がB社のH高さんかA新聞のHさんと思ってるんじゃないか、という位に全員に攻撃的な回答してどうするんだよ・・・・・・・・・

まああとは引かれ者の小唄ですが引用しておきます。

『為替の一方的、急速な変動というのは、わが国の経済にとってマイナスであるということは従来申し上げている通りであり、財務省が、それを是正するために介入したことは適切であると考えています。一方、日本銀行の金融政策は、先ほど来申し上げている通りであり、日本経済の回復を支援し、資源価格の上昇による交易条件の悪化が経済を下押しすることを防止する観点から緩和を続けています。』

それ前営業日(総裁定例記者会見)にも何回も同じこと言ってるんですが。

『先ほど申し上げた通り、財政政策と金融政策は目的も経済効果も異なりますが、そういうものが組み合わされてポリシーミックスとなるように、為替介入と金融政策でも目的も効果も違いますが、それらが組み合わされてより適切な状況が実現されるというポリシーミックスで、相互補完的だと思っています。なんら矛盾するとか、方向が違うとか思いませんし、国際機関でもそう言っていません。(後半割愛)』

もう何ですかねこの無茶苦茶攻撃的だし、ただ単に「私がこう思っている」だけしか話をしていない内容。

せめて「矛盾していないということについて理解を頂けるように今後も丁寧に説明していきます」くらい丁寧に言えば良いのにとは思うのですが、議論の中で無駄に攻撃的になるのは概ね自説に無理がある方である、というのもこれまた事実としてあるので、結局これって黒ちゃん金融緩和政策を梃子でも動かさないという頑なな姿勢が円売りを誘発している事をキチンと分かっていて、分かっているけど今更引っ込みがつかないし、あと半年粘れば自分は逃げられると思ってるから攻撃的になってるんでしょうね、とまあ想像するのは難しくない訳で、酷い話ではありますな。


・先行きの物価見通しにここまで決め打ちをして外したらどうするんでしょうね

今の質疑の後半ですえけどね。

『(前半割愛、というかさっきの質問の続き)二点目は、やはり急速な変動には為替の介入をしつつ、景気を支えるために日銀は緩和政策を続けるという理解だと思うのですが、』

って質問者質問の所でフォローも入れてるのに、頭ごなしに、しかも単に「この黒田様が思ってるのと違うことはあり得ない」っていうロジカルでも何でもない全否定されたらそら記者さんも怒りますわな、と思います。

『仮に円安の進行によって、日本の物価が 2%を下回らない状態が来年起こった場合、消費者物価が 2%を超えた状態が続いても、賃金が然程上がらないとか、企業収益への悪影響が懸念されるような経済環境であれば、現行の低金利政策、あるいはフォワードガイダンスは一切変える必要がない、という理解でよろしいでしょうか。』

って質問なのですから、こんなの「その通りです」で良い筈なのに、前半の部分でヒートアップしたのか黒ちゃん後半の回答も暴走気味でして、

『(前半割愛、さっきの質疑の回答の続き)二番目の点については、来年には、物価を押し上げている要因が剥落する、ないし弱くなることで、2%を割ることが確実だと思っており、そういう意味で、賃金の上昇も含めて、2%目標が来年に実現するとはみていません。』

いやだからそうじゃなくて「見込み通りに物価が下がらなくても好循環が出来ていないんだったら緩和を継続するんだよね」って質問してるんで、ある意味助け舟だしている筈なのに、物価見通しを決め打ち発言してやってきた助け舟を追い返すような回答をしているの黒ちゃん大丈夫かレベルなんですよねこれ。

『従って、当然、2%の「物価安定の目標」が安定的・持続的に達成されるまで量的・質的金融緩和を続けるという考え方に変わりはありません。』

この回答の仕方だと、見通しよりも物価の落ち着きが遅れた場合(あり得る話でしょ)に、日銀は思いっきり申し開きがしにくくなるし、その時点で初めて「前向きの循環ガー」って言い出しても、またその場その場で適当な小理屈ばかり捻りだして政策ロジックに一貫性が無い、って話になるし、その時点で物価上昇批判が高まってたら日銀ただじゃ済まないだろ、と思うのですよね。


なお、以下も査問会議続くんですが時間もないし他のネタも満載なので割愛します(後日備忘代わりにこっそり追記するかもしれませんけど)。









2022/09/29

お題「黒ちゃんの大阪での講演と記者会見」

それは中々危ない橋ですが・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/article/idJPT9N2VJ02U
2022年9月28日7:34 午後
英中銀、市場安定へ長期国債を一時買い入れ 来週からの売却延期

『[ロンドン 28日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は28日、市場の安定化に向け、長期国債の一時買い入れを開始すると発表した。予定していた国債の売却は延期する。「9月28日から英長期国債の一時的な買い入れを実施する。市場の秩序を回復することが買い入れの狙いになる」との声明を発表した。』(上記URL先より)

それ一発目は戻ったにしても、財政懸念の方を何とかしないと却って倍返しで食らう話に成り兼ねなくてかなり危ない選択肢な気がするし、今のポンコツBOEがやってるというのがその不安に拍車を掛けますわ。


〇いろんなの沢山出てて全然追いつけないですが淡々と黒ちゃん(大阪講演)

・大阪の講演は内容がマジでなかった

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220926a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 大阪経済4団体共催懇談会における挨拶 ──
日本銀行総裁 黒田 東彦


まあこれ見事に読むところが無いのですけど、昨日ネタにした定例記者会見の話の延長でございますのでちょっとだけ。


・経済の先行き下振れリスクが高まっているという認識なんだったら追加金融緩和するもんじゃないんですかねえ

これは決定会合後の記者会見でも行ってたんですけど、『2.経済情勢』の先行きの話を見ると、

『わが国経済は、このような資源価格上昇の影響などを受けながらも、感染抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直しています。先行きについては、次に申し上げる3つの点を踏まえますと、今後も回復を続ける可能性が高いと考えています。』

とまあそういう話をしてて、その要素が、

『第一に、企業の輸出・生産や設備投資の改善です。』

『第二に、個人消費の底堅さです。』

『第三に、政府が入国制限の緩和を進めているもとで、今後、インバウンド需要の回復も期待されることです。』

という要素をだしている(細かい内容はめんどいから引用しませんよ)のですが、そこから返す刀で、

『そう申し上げたうえで、先行きを巡る不確実性、とりわけ下振れ方向のリスクが従来にも増して大きくなっているのも事実です。』

という説明がおっぱじまるのですよ。しかもそのリスクの内容が、

『そのようなリスクとしては、まず内外の感染症の動向が挙げられます(図表5)。』

『リスクの2つ目としては、海外の経済・物価動向が挙げられます(図表6)。』

ときたあとに、その海外に関しては、

『海外経済を巡るリスクは、他にも数多く存在します。欧州では、物価高や利上げの影響に加え、エネルギーの供給制約が強まるリスクもあります。中国の不動産市場の調整も懸念材料です。』

『IMFは、四半期ごとに世界経済の見通しを改定していますが、2022 年の見通しは、昨年秋以降、急速に下方改定されてきました(図表8)。それでも今年7月にIMFが公表した見通しでは、世界経済全体で3%程度の成長を見込むなど、引き続きソフトランディングをメインシナリオとしています。もっとも、世界的な利上げの動きがどの程度の減速をもたらすのか、といったことを含め、今ご説明してきたように、下振れリスクが大きい点には注意が必要です、』

とあって、いやあのですね、そんなに下方リスクが高いのに何で先行き回復のシナリオを維持できるのかというのがありますし、大体からして下方リスクが高いんだったらコロナオペを何で終了するって決めたんだかというのが話が繋がっていなくて、何と申しますかこの「エビデンスに基づく金融政策」になってねえだろう感が(今に始まった事では無いのですが)更に強まっている感がします。

まあ文章にすると色々とああでもないこうでもないと説明が入るのでそれでもまだマシに見えますが、この辺のポイントポイントがヘッドラインで出て来ると「インバウンド需要の回復も期待されている」と「先行きのリスクは大きくなっている、まずは感染症動向」というヘッドラインになってしまう訳で、フラッシュ見てると支離滅裂にしか見えないんですよね。


・そもそもこれは文章構成が悪いのであって校正がちゃんとできて無いのはどうなっとるんや

まあ何ですな、このリスクアセスメントに関して書き方考えろよと思った次第なので文章構成が悪いとか申しあげますけどね。

えっとですね、こちらの講演での「先行きリスクは大きくなっている」という話なんですが、本文読めばわかりますけど、文章の長さと書きっぷりから見て、明らかに「海外経済の下振れリスクが従前よりも高まっている」と言いたいんだと思うのですよ。

だったらリスクの最初に海外を書いて、コロナ感染症の話はあとのオマケっぽく書けばよいし、そうしないとその直前で「経済活動との両立によるインバウンドの期待」とか新しく上向き項目ぶっこんできているのに、その直後に「下振れリスク拡大」の「その1」に感染症入れてるから支離滅裂っぽく見える(個人の感想です)のですよ。

まあ何ですな、これ多分(以下アタクシの勝手な妄想なんですけど)インバウンドの話は現実の期待もそうなんですけど、円安メリットの例を挙げたくて入れた物件(現実問題として中国本土様がゼロコロナやってるのにインバウンドウハウハはどれだけ期待できるの感があるし)でして、リスクアセスメントのその1その2って、これ7月展望レポートでのリスク認識として挙げている順番をそのまま書いてるだけだと思うんですよ。

本来ならば、今回「下振れリスクが高まっている」と書くなら、どのリスクが高まっているのか、という点を鑑みたら最初に海外の説明を延々と行って、「それ以外にも感染症はリスクとしてまだありますね」って話にしないといけないのでありまして、(文章構成が毎度グチャグチャなアタクシが言うのも何ですが)もうちょっと文章構成考えて書いて頂きたいし、MPMで忙しいのは分かるんだけど、これヒラで読んだら読んでて違和感受けないの校正どうなってるんだよちょっとしっかりしてよ!!!!とかなり思いました、


・・・・・なんか悪態つくのが内容よりも文章構成になっているのって書いてるワイもどうかと思うんだが、まあ政策が支離滅裂だからこういうことになるとは言え何なんでしょうね。



・物価についても定例会見通りですが「来年度に2%割れ」を強調しすぎるのは如何なものかと

物価の部分、定例会見の時にも書いたんで細かくはみませんけど。

『この点を踏まえますと、国際商品市況が先行きも上がり続けるということでもない限り、そうした面からの物価の押上げ圧力は、年明け以降徐々に小さくなっていくと予想されます。』

という何時もの説明でして、

『また、こうした海外からのコスト・プッシュ要因を除いた物価の基調的な動きを規定する要因としては、景気の動向、すなわち需給ギャップと、人々の予想インフレ率の2つが挙げられます。』

以下でいつもの説明をしてます。下振れリスク高まっているって言ってるのに、

『わが国の需給ギャップはマイナスの領域にありますが、先行き、潜在成長率を上回る成長経路をたどるもとで、今年度後半にはプラスに転じ、その後もプラス幅の緩やかな拡大が続くと予想されます。』

って何の留保も付けずに説明するの意味不明なんですけど、まあそれはさておきまして、結論の部分では、

『ただ、先ほども申し上げたとおり、年明け以降、コスト高の押上げ寄与が一巡してくるため、来年度以降の消費者物価は、2%を下回る水準まで低下していくと予想しています。』

何時もの説明なんですけど、これ数字を出して話をしてるのって後で自分の首を締めるんじゃないか、と普通は思う訳で、定性的な意味で物価が下がりますよ、みたいな話なら後で何とでも申し開きが可能ですが、思いっきり水準に言及した場合、来年度になっても2%超えの数字がしばらく続いた時に、申し開きのしようがなくなってしまうのですが、まあ黒田さんその時は退任してるから後の事は知った事か感が強く出ていて、いや何ちゅうか無責任だよなーって思ってしまいます。

もちろんこの2%云々を言っておかないと「なんで2%が続いていく見通しなのに政策を正常化しないのか」という事を言われるために、その対策で言及している、というのは明らかにその通りなのですけれども、今年度の頭では展望レポートに新たにコアコアの見通しを入れることによって「ほら基調的な物価の2%は先の話しなんだから政策修正なんてもってのほかですよ」って話をしていたのが、だんだん苦しくなって別の説明を始める、という流れになっているのを考えると、おめら結局この2%割れ云々もエビデンスじゃなくて政策意図から逆算してるだろ、としか思えなくなってしまうのが悲しい所です。


・だからただのテクニカルな金融調節手段に変な意味づけするなよ後の人が困るだろ

まあこれに関しては声明文をネタにした時に散々悪態ついたんで繰り返しませんけど、金融政策運営のパート。

『企業の資金繰りについては、感染症の影響だけでなく、例えば原材料価格上昇に伴う運転資金の増加など、様々な形で資金繰りニーズが存在しています。そのような幅広い資金繰りニーズに対応する観点から、従来、隔週で上限2兆円の範囲で資金供給を行ってきた「共通担保資金供給オペ」について、金額に上限を設けずに実施していくこととしました。「共通担保資金供給オペ」は、幅広い担保を裏付けに資金を供給できる点で、日本銀行が有する様々な資金供給手段のなかでも最も汎用性が高い手段です。』

そもそも「従来、隔週で上限2兆円の範囲で資金供給を行ってきた「共通担保資金供給オペ」について」ってのが事実としてはそうなんだが、それはたまたま今はインターバンクの日々の資金需給調整が不能な中、そうは言ってもこのオペは先々でも使うし、GCレポとかの担保にならない有価証券で共通担保に放り込んでファイナンス付けるのもアリ、ってニーズがないわけでもないし、ということでやっているだけの話で、別に「2兆円の資金供給」を行おうとしてやっているのかというと必ずしもそうでは無い筈なのよ。

なのにこういう言い方をしていると、いかにも「幅広い資金ニーズにこたえるため(本当はただの短期金融市場の資金需給調節のためなのに)に2兆円だしてたのを拡大します」みたいな言い方になってしまいますが、こんなこと言われたら将来普通の金利操作に戻ったときに、共通担保資金供給オペを通常運転ベースで上げ下げするのが一々「金融緩和」「金融引き締め」みたいに取られるようになったらどうするんだよちょっとは後の人間の迷惑を考えろ、と思いっきり思う訳でして、まあどうせ平常運転の頃には皆忘れてるだろ、とタカを括ってこういう話をしている(というかさせているというか)んでしょうけれども、まあアタクシは魂魄になっても忘れませんからね、と謎の気合を入れておきます。


という位で基本的にわざわざ大阪に出張った割にはMPMでの会見と同じ話でした。



〇会見ですが2−3年はさすがに訂正しましたなあ

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220927a.pdf
総裁記者会見要旨
―― 2022年9月26日(月)
午後4時30分から約35分
於 大阪市


・想定問答の同じところを毎度同じように棒読みするのは印象が悪いので改善していただきたい

定例記者会見の後に為替介入ドドーンでしたので、最初の黒ちゃんの話の後に早速聞かれるのは「為替介入しながら断固とした緩和姿勢を強調するのは連携取れてないんじゃないですか」である。

『(問) 為替介入についてお伺いします。政府は先週、円買い介入に踏み切りました。円相場はその後一時 140 円程度まで円高が進みましたが、その後は円安圧力が強い状況となっています。今回の政府の介入について、どのような評価をされているのかを教えてください。また併せて、黒田総裁の会見では、現在の大規模な金融緩和を継続すると公言されています。この結果、為替介入の効果を阻害するのではないかという市場関係者の見方がありますが、これに対するご所見をお願いします。』

超順当。まあ事務方だって回答用意してたと思いますけど、これ以上答えようが無いのはわからんでもないのですが、全ツッパリ回答するもんだからどう見ても支離滅裂です本当にありがとうございました。

『(答) まず最近の円安の進行については、急速かつ一方的なものであり、こうした円安の進行は、企業の事業計画策定を困難にするなど、先行きの不確実性を高め、わが国経済にとってマイナスであり、望ましくないというのは申し上げてきた通りです。』

最初のうちは別に良いと思ったのですが、これ同じこと何度も何度も言ってると「原稿棒読み」「時間稼ぎ」の印象を与える(いやまあ記者がどう思うかはわからないけど、(この会見はライブ放送無いけど)ライブで定例会見とか見てる市場の中の皆さんって、「また同じ棒読みして時間稼ぎしている」って感想の方が流石に多いと思うんですよね)のでちょっと何とかした方が良いと思うんですけど。

『今回の為替介入は、財務大臣のご判断により、過度な変動に対する必要な対応として実施されたものと理解しており、適切なものであると考えています。』

これは原則論で順当。

『日本銀行としては、政府と緊密に連携しつつ、金融・為替市場の動向やそのわが国の経済・物価への影響を十分注視してまいる所存です。』

連携しているんだったら何で黒田さんが円安を煽るような発言をするのか、という質問何ですけどねえ・・・・・・・・・・・

『これまで繰り返し申し上げてきた通り、為替相場は経済と金融のファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが望ましく、これまでの急速かつ一方的な動きはわが国経済にとってマイナスと考えています。今回の為替介入は、過度な変動に対する必要な対応として実施されたものであり、適切であると考えております。』

で、この後また何を今さら言わんでもわかっとるわ話を続ける。

『わが国経済は、コロナ禍からの回復途上にあるうえ、ウクライナ情勢を背景とした資源高は、海外への所得流失につながり、景気の下押し圧力となっています。海外の経済・物価情勢や金融・為替市場の動向など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高い状況にあります。こうしたことを踏まえ、現在は経済を支え、賃金上昇を伴う形で2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することが必要であり、先週の決定会合において金融緩和の継続を決定したところです。日本銀行としては、今後とも政府と緊密に連携しつつ、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を十分注視していく所存です。』

これじゃあ回答を誤魔化した、という印象を与えたのか、すかさず次の質問が飛んでくる。


・だから何度も説明しているそもそもの話を想定問答棒読みしながら説明するの止めなさいと

直後の問い。

『(問) 先ほどの為替介入の関連で、今回の政府の為替介入は、急速に進んでいる円安を円高方向に進める目的で行われたわけですが、その観点からみると、現在進められている金融緩和は、政策の方向性が異なっている、矛盾しているという指摘がマーケットから聞かれます。これについて総裁の見解をお伺いします。』

これだけ露骨に「さっきの答えじゃ回答になってねえんだよ」というのも中々珍しくて、最初の回答からこの質問への流れを見ると、相当記者さんの方もトサカに来てるんじゃないかな、と思った(市場の中の人はとっくにトサカに来るどころか呆れている感じだけど)のですよね。

これってやっぱり良くない事でして、真面目に答えてないって記者の多くから思われれば、会見のやりとりが辛辣になるし、攻撃的になる(口調は兎も角として)し、報道のされ方だってどうしても悪意成分が入り安くなるわけで、以前は「もっと突っ込めよ」と思ってたヌルヌル記者会見がドンドンと針の筵になるのは、まあ面白いからもっとやれ黒田は立ち往生してろとは思いますけれども、そうは言ってもこれは日銀にとっても不幸な話なのでありまして、一度こじれだすと修復するのムツカシイのですけれども、せめて黒ちゃんには「誠実な回答」を求めたいですね。

ではどういう回答したかというと案の定のこれである。

『(答) そのようには全く考えていません。』

あーあーあーあーあー。ダメだコリャ。

『財政政策と金融政策のポリシーミクスについて、財政政策と金融政策とは、それぞれ目的や政策の効果が異なっており、だからこそポリシーミックスが可能となり、効果を上げているわけです。』

方向性が合ってないという質問なんだが。

『同様に、金融政策と為替政策も目的や効果が違っており、だからこそ組み合わせということが可能となっているわけであり、』

?????????????

『先ほど来申し上げている通り、これまでのような急速かつ一方的な為替の変動は日本経済にとって好ましくないというのは事実であるため、そうした観点から政府が介入されたことは適切であったと思います。一方、日本銀行の金融政策は、あくまでも物価の安定、それは単に輸入物価が上昇したということではなくて、あくまでも企業収益が改善し、賃金が上昇する中で、緩やかに物価も上昇していく、そういったかたちで 2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に達成されることを目的に行っています。』

以下延々と棒読み説明が始まる。

『足元では、ご承知の通り、GDPは、第 2 四半期は非常に大きく伸びましたが、レベルとしては 2019 年のGDPのレベルをまだ下回っています。従って、コロナ禍からの回復の途上にまだあります。そのうえ、資源価格の高騰は、交易条件の悪化を通じて、国民所得の海外への流出を招いており、景気の下押し圧力になっています。そうしたことを踏まえると、金融政策は、あくまでも経済の回復、成長を支援するための緩和を続けて、それを通じて、先ほど申し上げた通り、企業収益の好調な状況、そして賃上げが進むもとで、物価が安定的に上昇していくことを目的としているわけです。』

そういう想定問答棒読みはしなくて良いんだが。

『今のところ、足元で 2.8%の消費者物価の上昇になっており、年末に向けて更に上昇する可能性がありますけれども、年明け以降は物価の押し上げ要因がフェードアウトし、来年度には物価上昇率が 2%を割るという見通しです。これは、当方だけではなく、IMFとかその他の機関でもそうした見通しです。』

最早介入と政策の話になっていない。

『従って、現時点の金融政策としては、あくまでも経済の回復、そして交易条件の悪化に伴う下押し圧力によって経済が下押しされるのを防ぐという意味で金融緩和を続け、これによって企業収益が改善し、賃金が上昇していく中で、物価が安定的・持続的に 2%の上昇を達成するようにしていくということに尽きます。』

と、全然答えになっていないので、この後も同じ質問が続く、という状況になっていまして、中々読んでる方も頭抱えてしまうのですが、誠に申し訳ない事に時間がちょっと足りなくなったので明日続きやるかもしれませんけれども、基本的に延々とこの話なのでもしかしたら終了するかもしれません。

どう見てもここ数回の会見で記者のトーンが無茶苦茶厳しくなっているんですけど、その要因は黒ちゃんの上記のような不誠実答弁なんだよなー、と改めて認識するのでした。

最後に例の2-3年発言撤回部分を。


・やーいやーい撤回してやんのー

『(問) 先週の総裁の会見の中で、フォワードガイダンスの修正の考え方について、当面数か月の話ではなくて、2〜3 年の話と考えた方がいいとおっしゃいました。そうはいっても、経済・物価情勢に合わせて微調整はあるかもしれないともおっしゃいました。この点、現在、政策金利の見通しや新型コロナ感染症の影響についての記載がありますが、総裁の考え方について改めてお伺いできますでしょうか。』

丁寧ですが辛辣ですね。

『(答) 対外公表文では、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を、「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続するという点と、マネタリーベースは消費者物価の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続するという点、この二つのことを示しています。』

と言い出した時点で、まあこれは黒ちゃん本人も「やっちまった」というのを認識しているのが分かります。

『この点、直近 7 月の展望レポートでは、生鮮食品を除く消費者物価が、2023 年度でも、2024 年度でも+1%台半ばとなっており、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現する見通しとはなっていません。こうした期間については、金利・マネタリーベースの両面で、微調整はあるにしても、コミットメントに沿って金融緩和を継続する方針です。』

それは「金融緩和の継続j」であって「金利水準」ではない筈でして、今回は撤回の破目になります。

『なお、「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」という政策金利のフォワードガイダンスは、感染症に紐づいたものであり、ここでいう「当面」は「新型コロナウイルス感染症の影響を注視」しつつ政策を行う期間であり、必ずしも「2〜3 年」という長期ということではないと思います。』

最初からそう言えば良かったのですが、本音を引き出した定例記者会見の記者よくやった!!

『いずれにせよ、「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」という政策金利のフォワードガイダンスは、感染症に紐づいたものです。先行きの政策金利のフォワードガイダンスの取り扱いについては、感染症の影響を含めた経済・物価情勢を踏まえて、それぞれの決定会合で適切に判断していくことに変わりはありません。』

ではあるのですが、(咄嗟に何時だか出てこないけど多分4月会合の時)黒ちゃん以前の会見でも政策金利のフォワードガイダンスについて感染症ひも付きの筈なのに踏み込んだ話をしてたことがあるので、本人の本音が明らかに違う所にある、というのは明白な事だと思うんですよね。

だったら片岡さんに賛成しておけばいいのに、などとは思いますけど笑。









2022/09/28

お題「黒ちゃんスペシャル、の積りが定例会見ネタだけになってしまいました(すいません)」

えーーーー。
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-energy-denmark-idJPL6N30Y0EL
2022年9月28日4:32 午前
ノルドストリームガス漏れ、意図的な行為によるもの=デンマーク首相

『[コペンハーゲン 27日 ロイター] - デンマークのフレデリクセン首相は27日、ロシアと欧州を結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」と「ノルドストリーム2」で発見されたガス漏れについて、「意図的な行為によるもので、事故ではない」という当局の判断を明らかにした。フレデリクセン首相はその上で、意図的な破壊工作の「背後にいる存在を示す情報はまだない」とし、当局はデンマークに対する直接的な軍事上の脅威とは見みなしていないという考えも示した。』(上記URL先より)

こういうのを見ますと満洲事変という言葉が反射的に出てくるわけでしてですな(昭和脳)。


詳しい内容は分からんがガイダンスを廃止したECBは言う権利がありますね。
https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-villeroy-idJPKBN2QS1IX
2022年9月28日2:17 午前
「不確実性に拍車かけるな」仏中銀総裁が警告、市場変動受け


とまあそれは兎も角として出遅れて誠に申し訳ないのですが黒ちゃん会見と月曜の講演と会見と。


〇金融政策決定会合後の定例会見:

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220926a.pdf

最後ちょっと不規則質問もありましたが、全体的に結構記者の質問が(ものの言い方自体は詰問調じゃなかったけど文字起こしを改めて見ているとやっぱり)きつめに終始していました。

でもってですね、さすがに今回の会見、45分過ぎたところで幹事社(今回は毎日)の人も言ってたのですが、とにかく黒田総裁の応答がクッソ長くて、しかもその長いのに意味があればいいんですけど、「その話は前からしているんですが」というような内容をクドクドと繰り替えず、というもしかしておじいちゃん(2文字伏字)てるんじゃないの???って感じの棒読みを繰り返しておりましたし、一応会見のライブ中継は見てたんですが、きつい質問が来ると露骨に嫌な顔をするし、もしかしておじいちゃん感情の制御が(以下自粛)とか思って心配になってくる今日この頃でありました。


・だって最初からこの棒読みですよ

最初の説明のあとの幹事社からの質問があったのですけど。

『(問) 米国の利上げ観測から円安ドル高が進んでいます。この急速な円安が日本の物価や経済全般に与える影響をどうみていますでしょうか。また、総裁は従来円安が進むスピードについてマイナス面を指摘されていますが、24 年ぶりにまで達したこの円安水準そのものについても、日本経済へどのような影響を与えているか、ご見解を伺えればと思います。』

まあ物凄く優しい質問だなあ(日銀の強硬な緩和継続姿勢、と言わない点)と思ったのですが、

『(答) 為替円安の経済への影響、これは企業と家計、企業の中でも業種や規模により異なります。』

はいはいおじいちゃんその説明はもう何十回も聞きましたよ、って感じで、もう会見ライブ見てて冒頭のこれで「今回も酷い会見になりそうだ」と思った訳ですが。

『グローバル企業には収益押上げ要因となる一方、非製造業や中小企業にはマイナスの影響が大きくなります。また、物価面では、既往の資源高と併せて、輸入物価の上昇とその価格転嫁を通じ、足元を中心に消費者物価を押し上げています。』

何時もの話が始まるのだが、

『家計にとっては、賃金上昇につながるまでは、実質所得の減少などを通じて、個人消費を下押しする要因となります。経済全体として所得から支出への前向きの循環が強まっていくためには、円安によって収益の改善した企業が、設備投資を増加させたり、賃金を引き上げたりすることが必要です。』

日銀って最近はこの説明をしているんですけど、これも良く考えたら無茶な話で、「円安によって収益の改善した企業が、設備投資を増加させたり、賃金を引き上げたりすることが必要」って言ってるんですけど、その前段のところで、「グローバル企業には収益押上げ要因となる一方、非製造業や中小企業にはマイナスの影響が大きくなります。」と言ってるんだから、グローバル企業の従業員しか賃金上がらんという話だし、それが波及するのに何年かかるんだよという時間軸をお前らどう思っているのかって話。さらにグローバル企業の設備投資って別に国内にしなきゃいけない義理は無い訳で、寧ろ生産を海外にシフトしてたら生産設備の増強とかそのまま海外で継続するって話になったら国内の前向きの循環に回らんじゃん、という話であります。

だいたいからして「トリクルダウン」が今までまるで回ってこなかったのに、何で今回は回るという話になるのかがさっぱり分からん訳で、だったら金融政策の出番じゃないけど、円安税でも取って国内に強制的に再分配した方がエエンチャウノ(もちろん極論の暴論ですよ為念)位の話で、この日銀の理屈も「なんでそうなるのか」が示されないし、そもそも日銀が関与できない話ですがなと。

つーことで格差が拡大する方向に動きやすい円安を推進するのって、結局国内総需要が伸びにくくなるだけのデメリットしかねえんでネーノであって、別に緩和政策止めろというのではなく、相対的な緩和度合いを調整して、過度な円安を抑止し、黒ちゃんに猿轡でもかませて円安煽り発言を止めさせる、くらいのことはしてもいいんじゃないの、と思うのだが黒ちゃん一行に効く耳なし。

さて棒読み答弁はさらに続きます。

『また、現在の為替変動の背景として、市場では資源高に伴う需給要因に加えて、内外金利差に市場参加者の注目が集まっています。しかしながら、内外金利差拡大の背景には、米国のインフレ見通しの上振れがあり、また金融引締め自体は米国景気の下押しに働きます。こうした逆方向の要因も含めて様々な要因があるにもかかわらず、円安が進んできたことは一方的な動きであり、投機的な要因も影響しているのではないかと考えられます。』

おんどれが余計な事言って円安煽ってるんじゃろうがエエカゲンにせえよシゴウしたるぞワレ。

『こうした円安の進行は、企業の事業計画策定を困難にするなど、先行きの不確実性を高め、わが国経済にとってマイナスであると思います。望ましくないと考えています。日本銀行としては、政府とも緊密に連携しつつ、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視していく方針です。』

結局想定問答を読んだだけで、速度の問題と水準の問題、ろくすっぽ回答していないですし、ライブ見た時の感じですとこれがまた本当に「棒読み」感溢れる言い方になっていまして、ラガルドやパウエルと比較すると「真面目に答えていない」という印象が初手から強く出てしまっていまして、まあこの回答で「また今回もこれかよ」という失望感だして記者の質問が(ものの言い方はきつくなかったけど内容的に)きつい質問になったんじゃないのかと思うので、ちょっと企画だか政策委員会室だか知らんけど、黒ちゃんに会見時のあの舐め腐った態度改めさせた方が良いと思いますよ。安倍ちゃんの国会答弁やガースーの会見での態度が悪いとか言われてた時代もありましたけど、あれ以上でしょ今の黒ちゃん、しかも今はそういう態度でやってる人が減ったから余計に目立つんですけどね・・・・・・・・・



・2発目も質疑応答が繋がっていない

2発目の質問。

『(問) このほど発表された 8 月のCPIでは生鮮を除くコアで前年同月比2.8%、エネルギーも加えて除いたコアコアでも 1.6%もの上昇率を示しています。また、本日の決定会合文書でも「基調的な物価上昇圧力は高まっていく」との表現があります。日銀として、現在の物価上昇への受止めや、今後の 2%目標達成に向けた地合いについて認識が変化しているということなのでしょうか。見解をお願いします。』

この質問に対して回答すべきなのは「直近に出した展望レポートにおける先行き物価見通しと比較して現時点では上振れ下振れオンラインのいずれなのか」「先行き見通しに変化を生じさせるような変化はあるか」という話なのですけれども、回答が7月展望レポートを棒読みしているだけなんですよね。

『(答) ご指摘の通り、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は+2.8%となっています。先行きは、携帯電話通信料の下押し寄与が剥落することに加え、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、本年末にかけて上昇率を高める可能性が高いと考えています。その背景としては、主として国際商品市況や為替円安の影響によって輸入品価格が上昇していることが影響しています。年明け以降は、それらの押上げ寄与が減衰することで、物価上昇率のプラス幅は縮小していくと考えています。こうした海外からのコストプッシュ要因を除いた物価の基調的な動きをみますと、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、物価上昇圧力は高まっていくと考えられます。このように、基調的な物価が緩やかに上昇していくという点は、7 月の展望レポートで述べた認識と変わっていません。ただ、先ほども申し上げた通り、年明け以降、コスト高の押上げ要因が一巡してくるため、来年度以降の消費者物価は、2%を下回る水準まで低下していくと予想しています。』

本人、「基調的な物価が緩やかに上昇していくという点は、7 月の展望レポートで述べた認識と変わっていません。」とは言ってるんですが、7月以降に色々とあった動きが見通しとどのような差分があるのかについて何も言ってない(足元のコアCPI+2.8%の数字がオンラインなのか上振れなのかすら言及しない)のですから、これでは「7月の展望レポート棒読み」と言われても仕方ないし、ライブ聞いてるアタクシも「何じゃこの回答になっていない回答は」という印象でした。

つーことでですね、そもそもこのおじいちゃん、聞かれたことに回答しないで過去に出した展望レポートに沿った話を延々と繰り返していまして、前回の展望レポートだしてから以降の差分の話しすら質疑に入ると言わなくなる、となってしまえばそら聞いてる方も「不誠実な答弁」って思うでしょ、ということで段々質問がこうなっていくのは仕方ない。


・これ聞いてるときは丁寧な物言いだったからあんまり強くは思わなかったが文字に直すと辛辣だな

『(問) 今の質問に関連してですが、物価の現状と日銀のマンデートとの関係についてお尋ねします。先ほど来言及されている通り、8 月のCPIは 2.8%、今後 3%に達するともみられています。総裁がかねておっしゃる通り、欧米のCPIに比べれば低いですが、日本のこれまでの物価の状況に鑑みると、家計の負担感というのは数字以上のものがあるかと思います。』

んだんだ。そもそもこの間のお賃金上昇率が全然欧米と違うし。

『金融政策の違いを背景とした円安の加速が物価高騰に拍車をかけている中で、今の大規模な緩和路線が物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するという日銀のマンデートと齟齬を生じさせていませんでしょうか。総裁のご見解をお聞かせください。』

ここで止めても良かったと思うのだが、さらにキツイ質問(口調は穏やか)で、

『関連でもう一つ、総裁は、前回 7 月の会見で金利を引き上げるつもりは全くありませんとおっしゃいました。緩和を維持するという強い姿勢を示されたものと理解しますが、こうした発言が外国為替市場で円を売りやすい状況を作っているという指摘もあります。こちらも総裁のご見解をお聞かせください。』

これは黒ちゃんを挑発しておりますwwwwwwww


『(答) 先ほど申し上げた通り、最近の急速な円安、それから既往の資源高、この両者が相まって輸入物価の上昇をもたらして、その価格転嫁を通じて消費者物価の押上げ要因となっているということはその通りです。そのうえで、やはりわが国経済は、コロナ禍からの回復途上にあります。第 2 四半期の成長率はかなり高かったですが、レベルとしてはコロナ感染症前の 2019 年のレベルにまだ達しておらず、まだ回復途上にあるということです。更には、ウクライナ情勢を背景とした資源高が、交易条件の悪化を通じて海外への所得流出につながって、景気の下押し圧力になってしまうということです。』

何度同じことを言うんでしょう、こうやって時間引き延ばすの止めて欲しい。

『こうした状況を踏まえると、現在は経済を支えて、賃金の上昇を伴うかたちで 2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することが必要であって、金融緩和を継続することが適当であると考えています。』

でも「相対的な緩和度合いの修正を頑なに行わない姿勢が急激な円安を招いている」んだったら緩和度合い修正すりゃ問題の急激な円安も是正されて良いじゃん、と思ってしまいますな。まあ聞く耳持たないからしょうがないけど。

で、次のヘッドラインが出だしたところから為替の円安が進みだしたような印象があります、個人の感想ですが。

『今回の金融政策決定会合における委員方の考え方も、全くその通りだったと思います。そうしたもとで、今申し上げた通り金融緩和を続けるということであり、冒頭申し上げた通り、必要があれば追加的な金融緩和措置を講じます。政策金利についても、現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移するということを想定しているということであり、金融緩和を当面続けるということには全く変わりありませんので、当面、金利を引き上げるというようなことはないと言ってよいと思います。』

さて来ました「当面、金利を引き上げるというようなことはないと言ってよいと思います」。

『れは先ほど来申し上げている通り、日本の経済・物価の動向を十分分析して、今後の展開も想定しつつ、最適の金融政策はどういうものかということを十分議論して、こういう金融緩和の継続という結論になったわけです。』

いやー人間嘘はいかんですよ嘘は。黒ちゃんの意地と面目のためでしょ(ゲス顔)。


・今回の会見の白眉で見事な誘導尋問である&物価が来年度になって2%割れを断言して大丈夫なのでしょうか

ちょっと話が進んだ所でこの見事な質問で、これは実にすんばらしい誘導質問で黒ちゃんまんまと引っ掛かるの巻。

『(問) 総裁は、先ほどからフォワードガイダンスと金利の利上げについて、当面は必要ないということをおっしゃっていますが、そうなると当面というのがどれくらいかということが市場の中で話題になるかと思います。前回の会見でも、冬のボーナスや春闘を挙げられていますけれども、当面というのは、3 か月とかそういうことではなくて、結構長いスパンのことをおっしゃっていらっしゃるという理解でよろしいでしょうか。』

どう見ても誘導尋問です本当にありがとうございました。

『(答) それはその通りです。というのは、前回の展望レポートでは、2022 年度、23 年度、24 年度と物価見通しを示していますが、2023 年度、2024 年度の物価上昇率は、やはり 1.5%くらい、1%台半ばというような見通しになっています。今年度の物価上昇率は、おそらく前回の展望レポートのときよりも高くなると思うのですが、基本的なメカニズムは同様であって、やはり来年度以降、物価上昇率が今年度よりも下がって、2%を割るということはほぼ確実だと思います。』

「来年度以降、物価上昇率が今年度よりも下がって、2%を割るということはほぼ確実だと思います」発言ですけどね、2−3年云々も激ヤバ発言なんですが、こっちもかなりヤバくて、(この点誰か次回の会見で聞いて欲しいんですけど)そもそも論として日銀って4月の展望レポートで2022年度の物価見通しを+1.9%とかいうひっくーーーーい数字で出している訳で、今年は日銀って物価見通し外しまくっている訳ですよどっからどう見ても。

今次物価上昇の見通しを外しまくっている日銀が、何でそんなに自信満々に「来年度以降2%割るのはほぼ確実」とか断言できるのかという話で、まあ確かに黒ちゃんは来年度のCPIが出るころ(4月の全国は6月下旬に出る)には退任してるから無答責かもしれませんが、これで来年度に入って物価の伸び鈍化がそこまで来なかったら何と申し開きするつもりでしょうか、というか政策委員全員辞任しろよというレベルなんですけど、ここまで自信満々に断言するのも無茶苦茶リスク高いと思います。

もちろん、これはよくあるスキーム「前任の相場観が下手くそで大変ご迷惑をおかけしました」攻撃によって、黒ちゃんの次の正副総裁が黒ちゃんを悪者にして誤魔化す、というのの布石で自爆してくれているんなら良いのですが、後任が雨宮さんになったら雨宮さん今の見通しの共同責任者なんで、申し開きが大変困難になってしまうじゃあーーーーりませんかと思うのですが、何ちゅうかそういう後の事考えてないだろ黒ちゃん、と思いました。


『そういった面で、フォワードガイダンスというのはあくまでも、もちろん経済・物価情勢に対応したものですので、』

ちょwwwwwwおまwwwwwwwwwwwwwwww

じゃあ今まで何で片岡さんが6月のMPMまで「片岡委員は、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。」ってなってたんだよ酷いじゃないですか片岡さん何のために反対芸人にさせられてたんだよ、と思いますと更にこの説明である。

『物価の情勢がそういうことであれば、フォワードガイダンスを変更しようというのは、それ自体としては、金利の見通しといい、マネタリーベースについてといい、』

ちょっとちょっとお兄さんお兄さん、片岡さんが「フォワードガイダンスは物価目標と関連付けるべきである」って言って反対して却下してたのは何だったの、というのをここで更に分かりやすく言っているのですが、いやマジでお前ら政策委員会で決定して声明文として出していることくらい守ろうよ、と思う訳で、片岡さんの提案を棄却しておいて、その直後と言ってもいい時期に片岡さんの提案と同じ話してるのはさすがに認知能力を疑ってしまうし、金融政策決定会合で何を議決してるんだワレという世界である。

『フォワードガイダンスというのは、やはり当面、当面というのは、数か月の話ではなくて、2〜3 年の話というふうにお考えになって頂いた方がよいと思います。』

言い切りましたね〜。まあもしかしたら言った瞬間流石の黒ちゃんもしまったと思ったのかもしれないが、その直後に、

『ただ、そうは言っても、その中で経済・物価情勢に合わせた微調整ということはあるかもしれません。』

おいこら、「先行きの政策をこうする」というのを事前に(条件付きで)示すのがガイダンス政策なんだから、そもそも「フォワードガイダンスの微修正」というのはその時点で政策変更を意味するんですけどお前何を言ってるのという感じです。ま、これは2−3年発言でしまったと思ったのの調整でしょうwwww

『ただ、基本的なフォワードガイダンスの変更というのは、やはりあくまでも経済・物価情勢の転換によって、金融緩和政策を
修正していくというような時点で考えられることではないかと思っています。』


ちなみに冒頭の「今日の会合の結果についてのお話」の中では声明文のフォワードガイダンス通りに、

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に 2%を超えるまで、拡大方針を継続します。そのうえで、当面、感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じます。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定しています。』

と説明していたのに、この質問した記者さん、うまいこと黒ちゃんの本音を言わせまして、まあこの前から円安の方は進んでいてこれで加速した感じは見受けられませんでしたけど、当日の夜から翌日に掛けて一般向けニュースも含めて「金利を2〜3年引き上げない」が思いっきりヘッドラインに載る、という大変にキャッチーなものを引っ張り出して爆釣爆釣。

これが3兆円ぶっこんだ円買い介入に繋がり、しかも3兆円ぶっこんでるのに結局1日も持たずに3日後には元の木阿弥になって却って介入パワーの無力さを浮き彫りにする、ということですので、円安阻止にはもう黒ちゃんがお遍路さん姿になって会見するしかないんじゃないですかねーという事態の進展に繋がったので実に結構結構。

とまあそういう訳で、今回の質紙応答の中で黒ちゃんを大暴走させた誘導質問GJ!という感じでありました。



・ずーっと聞かれてたもう一つのテーマも辛辣でしたよ

質問に対する応答の方はお察しのしょーもない回答しか無いので割愛しますが、質問の方はこの趣旨の質問多くて、しかも黒ちゃんがまともに回答しないもんだから何度も質問される、という割と査問会チックになっておったのが印象的でした。

まあ最初に引用した冒頭の2つの質疑の時点で「誠意を持って答えていない」って印象を与えたのも査問会議状態になる要因だったんじゃないか、って思いますよ真面目な話。もう残り半年で矯正不能化も知れませんけど、「ご飯論法」は安倍ちゃんやガースーの時代だから成立した話だ、というのを認識しないと、黒ちゃんの所に批判が集中する(黒ちゃんが自分に批判を一身に集めて武蔵坊弁慶になる気概でやってるんだったらそれはそれで評価できるかもしれないけど、そんな玉ではないでしょ黒ちゃん)ことになって日銀的にも良くないから主君押込はマジで考えておかないと藩ごと取り潰しになるで。

『(問)(前半割愛)そして物価の番人、日本銀行黒田総裁にお伺いしたいのですけれども、やはり消費者に近いところで下押し圧力、かなり値上がりで苦しんでいる人も多いのですけれども、今の現状で打つ手があるとすればどういうことが考えられますでしょうか。』

『(問) 物価に対する総裁の認識について、改めてお尋ねさせてください。市場では生鮮食品を除く消費者物価指数の伸び率が年内に 3%以上になる可能性があるとの予想もあります。物価上昇が続くことに国民の懸念が強まっている中で、物価は安定していると言えるのでしょうか。(後半割愛)』

『(問) 日銀は来月に創立 140 年を迎えますけれども、節目でもありまして、歴代総裁の中でも長く務められている黒田総裁にお伺いしたいのですけれども、日本の中央銀行としての主な役割、もっと言いますと、その存在意義のようなところに、どのような考えを持たれているのでしょうか。創立に至った背景とかは伝え聞きますけれども、時代が移り変わる中で、社会の要請などによって、そういった意義みたいなものは変わり得るものなのか、それともある程度一貫したものを堅持というか守り続ける必要があるのか、そういった観点も含めて伺えればと思います。』

まあ何ちゅうか、何のために金融政策やってるのか?????って言われちゃうのさすがにどうなのと思います。


・その後CPIがインラインなのかという質問があったのだが

CPIがインラインかどうか、って質問を仕方ないから後の方で明確に聞いた人が居るんですよね。

『(問) 8 月のCPIについてお尋ねをします。先ほど来、2.8%の上昇であったというお話がありますが、もう一つ特徴として、サービスも上昇に転じたということがあると思うのです。これも含めて、展望レポート等で示されています日本銀行の展望、想定の範囲内ということになりますか。見解をお聞かせください。』

ということでインラインかどうか、という質問をされているのですが、どうも黒ちゃんは先行きの政策運営について何か言われるのが兎に角ムカツクって事なのか・・・・・・・・・

『(答) 現時点で、前の展望レポートでみていたよりも、2022 年度の物価上昇率が高めに出てくるということは十分あると思っています。』

これが(ちなみにこれアタクシの記憶違いじゃなければ言ってた事のまんまです)意味わからなくて、「十分あると思っています」じゃなくて、出てきた数字がインラインなのか上振れなのか、上振れにしても想定範囲なのか範囲外なのか、という話を回答すれば良いのに、なんか今の話しじゃなくて先の話をしたがるんですよね。すっげえ不思議。

『ただ、そのことは、先ほど来申し上げている通り、基本的にはエネルギーや食品、耐久財──特に家電製品などは輸入が多いのですけれども──の価格上昇が一番効いているということは事実だと思います。欧米と比べますと、やはりサービス関係の価格の上昇というのは、まだ鈍いということは言えると思います。』

言いたいことは分かるんだが、質問に対する答えになっていなくて、結局の所「物価上振れというのを認めると政策変更の話に繋がるので、実際に物価が上振れしているのにそれを会見などでは意地でも言及しない」というスタンスである、ということだ、とでも解釈しないとここまでの意味不明回答の説明がつきません。


ということでですね、黒田さんが兎に角物価が上振れしようとも円安が進行しようとも政策をビタ1ミリとも修正する気が無い、という力強い気概だけは良く分かるか意見でした。



・あれーだったら広報さん記事に何で事実と異なるとか言わなかったのー(棒読み)

あ、それから今回の会見、これはさすがにズッコケた。

『(問) 総裁の物価認識について改めてお尋ね致します。8 月のジャクソンホール会合で、総裁は日本のインフレのほぼ全てが、商品価格の上昇によるものだと発言されたと報じられています。』

でしたなー。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-27/RHAL50DWLU6801
黒田総裁、日銀は金融緩和策を維持する以外ない−ジャクソンホール
Matthew Boesler
2022年8月28日 6:28 JST

まあこれに対して幣駄文では「これは日本の恥、内輪の話を外でしないでくれ」とか申し上げましたがw

『このことは、日銀が公表している輸入物価指数の足元の寄与度に照らせば、誤った表現ではないかと思います。その日本の交易条件の悪化に為替の要因が与える影響について、改めて総裁の見解を伺います。』

この答えが凄い。

『(答) 私はジャクソンホール会合でそういった発言はしていません。』

ちょwwwwwwwwwwwwwwwwww

『それで、為替の動きと輸入物価の動きは、色々な状況で変動しているわけですが、最近時点ではドル建ての資源価格の上昇とほぼ同じくらいの影響を対ドルレートの下落が与えていることはその通りだと思います。ただ、数か月前は 3 分の 1足らずだったわけですが、現時点では資源価格が下がり、石油も下がり、銅も下がり、小麦も下がっているということもあるとは思いますが、輸入物価に対して為替レートが影響しているということは事実であり、それを否定したことはありません。』

と言い訳をしていますが、いやーだったら何であの報道が出た直後にBBGに何か言わなかったんですかねえ。そこらの三流タブロイドなら兎も角、ブルームバーグとか金融市場的に重要なメディアの報道なんですけどねえ・・・・・・


〇すいません大阪の講演ネタ出来なかった

またうっかり途中からノリノリになってしまいまして、本来今日は全部成敗するつもりだった黒ちゃんネタが持ち越しになってしまいました。伏してお詫び申し上げます。










2022/09/27

お題「英国トリプル安でラガルドさんTPIについて発言とな/為替介入規模と外準の懐具合確認(黒ちゃんネタ明日ですすいません)」

あーあーあーあー。
https://jp.reuters.com/article/britain-sterling-reserves-idJPKBN2QR0WE
2022年9月26日8:20 午後
外貨準備、ポンド下支えには力不足=元英中銀副総裁

『[ロンドン 26日 ロイター] - 元イングランド銀行(英中央銀行)副総裁のジョン・グリーブ氏は26日、英国の外貨準備はポンドを下支えする手段としては有効でないとの見方を示した。BBCラジオに語った。』(上記URL先より、以下同様)

『トラス新政権が大型減税策などを発表し、財政悪化懸念からポンドは急落。この日アジア時間に最安値を付けた。』

はい。

『グリーブ氏は、外貨準備は通貨を支える2つの方法のうちの一つで、もう一つは金利だと指摘。「通貨市場の規模に比べれば、外貨準備はさほど多くない。したがって効果的な武器とは見なされないと思う」と語った。』

そらそうよ。

『英国の外貨準備高は8月末時点で807億ポンド(868億4000万ドル)。ドルやユーロに対するポンド下落で今月は外貨準備高が押し上げられると見られている。』

・・・・・ということで日銀ネタの前にどう見ても日本の先行事例と化している英国アイヤーのメモ。


〇インフレ抑制策に財政出しまくったらインフレ煽るという当然の話ではあるが(大事な事なのでメモだけでも)

https://jp.reuters.com/article/britain-economy-reeves-idJPKBN2QR0KW
2022年9月26日5:35 午後
ポンド安を非常に懸念、中銀に利上げ圧力=英労働党報道官

『[ロンドン 26日 ロイター] - 英野党・労働党のレイチェル・リーブス報道官(金融政策担当)は、ポンド安を非常に懸念していると表明、イングランド銀行(英中央銀行)に利上げ圧力がかかるとの見方を示した。ポンドは26日、対ドルで5%近く急落し、最安値を記録。新政権の財政政策に対する懸念が根強い。同報道官はタイムズ・ラジオに「私はイングランド銀行のエコノミスト出身だが、財務相のミニ予算に対する23日の市場の反応と前夜の反応に誰もと同じく非常に懸念している」と発言。「イングランド銀行に利上げ圧力もかかるだろう」と述べた。』(上記URL先より)

とまあそういうことで、インフレ抑制策として財政出しまくったら財政懸念から金利急上昇のポンド安になってしまって、金利上昇はさておきポンド急落はどう見てもインフレ加速要因です本当にありがとうございましたというおバカ展開ですし、だいたいからして財政出すってのは基本的に需要刺激策になるんだから、そらインフレ対策補助金出すなら別の所から召し上げをしないと財政散布超過になって民間需要刺激してインフレ加速要因になりますわなという話。


さらに「通貨防衛で利上げ」とか20世紀脳の老いぼれジジイには懐かしすぎる文言がががが。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-26/RITQ9HDWRGG001
英中銀、必要なだけの金利変更をちゅうちょしない−緊急声明
David Goodman、Philip Aldrick
2022年9月27日 1:15 JST 更新日時 2022年9月27日 2:02 JST

→金融市場の期待には及ばず、声明発表後に再びポンド売り
→緊急措置打ち出さず、「次回定例会合で入念な評価」

さあもりあがってまいりました!!!!!!!orzorz

とは言ってもやるやる詐欺ではかえって失望だったりするのですよね。まあBOEに関してはミーはマーヴィン・キング総裁のファンだったので、その後の蟹さんだのベイリーさんだのになってからこれはアカンという感じでしたが、アカンのも行き過ぎるとネタになる(悪い方のネタだけど)という順当なお話になって参りましたな。悲しい。



で、ラガルドはんが欧州議会で良い話をしているようです。

https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-lagarde-idJPKBN2QR1D8
2022年9月27日12:25 午前
食品・エネルギー高対策は一時的なものであるべき=ECB総裁

『[フランクフルト 26日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は26日、インフレ圧力抑制のため、ユーロ圏各国が実施する食料・エネルギー価格高騰の影響緩和に向けた財政措置は限定的かつ一時的であるべきとの認識を示した。』

『同総裁は議会の公聴会で「家計支援のための財政措置は、一時的かつ的を絞ったものであることが重要だ。そうすればインフレをあおるリスクは限定的となり、金融政策の遂行も容易になる」と述べた。』(以上、上記URL先より)

一方のジャパンでは原油価格上昇に対応する何とか調整金みたいなのがダラダラと継続しそうな流れになっている上に今度またGoToトラベルの変形バージョンやるとかやらんとか、お前ら財政撒くことしか頭の中に無いのかというアレっぷりでして、おまけに日本の場合は国賊が金融緩和を決定事項以上の勢いで強調するという有様。

いや真面目な話、日本の将来ってこの調子だと第二次大戦後に戦争に勝ったはずなのに気が付けばスッテンテンになってしまってそこから先長期的に悲惨だった英国みたいな感じになるんでネーノってイメージ(残念ながら南欧ほど日本の気候は甘くないし農業生産力だって南欧というよりも英国でしょ)だし(個人の感想です)、それでも英国の場合はコモンウェルスからの謎の上がりみたいなのあったんですが日本にはそれもない(強いて言えば今まで蓄積している対外投資の上がりが英国のコモンウェルスからの上がりに相当してくれると良いな、って感じですかね)ですしおすし、ということで、いやマジで日本もこの調子で能天気にやってて言い訳ないジャンと思うのでありまする。


でまあラガルドはん、さらにこんな事も仰せのようで、フラグメンテーションでどうしたこうしたの話は何処に逝ったんだという気もしますが、

https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-fragmentation-idJPKBN2QR1DI
2022年9月27日12:15 午前
新たな債券購入発動せず、各国の政策ミスで金利上昇なら=ECB総裁

ちょwwwwwwwwwwwwww

『[フランクフルト 26日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は26日、国債利回りの急上昇が加盟各国の「政策ミス」によるものである場合、金利上昇抑制に向けた新たな債券購入スキームは発動しない方針を示した。』(上記URL先より、以下同様)

なんでやという話ですが、

『欧州議会で、イタリアを支援するために伝達保護措置(TPI=Transmission Protection Instrument)」を発動することが可能かを問われた同総裁は、国名を挙げることは避けたが、この制度は財政的に慎重な国を支援する目的でのみ存在し、その他の国は救済を申請する必要があると答弁した。』

まあそらそうよという話ではあるのですが、結局変なお助けスキーム作るとフリーライダーが現れて碌な事にならんという話ですが、どっかの日本と違って箱は作るが発動しない攻撃というのがあって、一度やりだすとダラダラと継続することによって財政フリーライダーだらけになってしまうような状況は回避する姿勢を見せてますね、って感じです。何せ日本の場合は与野党揃って財政出せ出せの古事記議員(放送コード抵触回避)ばっかりですから頭が痛い。

『TPIは、イタリアなど債務負担を抱えた国とドイツとの国債スプレッドの拡大を抑制するため、7月に発表されたが、まだ使用されていない。同総裁は「(TPIは)ファンダメンタルズや経済政策の誤りによって正当化されない、無秩序な市場の動きがあるような状況で使われる」とした。』

『それ以外の状況では買い入れ額の上限を事前に定めない買い入れプログラムであるOMT(Outright Monetary Transactions)による支援がより適切だと述べた。これはユーロ危機の際に導入されたより厳しい方策で、当該国に対し監視を伴う経済調整プログラムへの参加を求める。』

ということで、欧州議会でのスピーチ自体はこちらですが、たぶん上記記事は質疑パートになるので載ってないんじゃないかなー、とか言ってる時点でラガルドスピーチまだ見て無いのがバレバレですがまあ備忘メモという事で勘弁してつかあさい。


https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2022/html/ecb.sp220926_1~0bd6fcc86c.en.html
Hearing of the Committee on Economic and Monetary Affairs of the European Parliament
Speech by Christine Lagarde, President of the ECB, at the Hearing of the Committee on Economic and Monetary Affairs of the European Parliament
Brussels, 26 September 2022


〇介入3兆円やってこれかよ・・・・・・・・・・・・・・・

えーっと、さっき適当に
https://jp.reuters.com/investing/currencies/chart
外国為替チャート

辺りを見たらどこからどう見てもドル円144円台後半に押し戻さていて、木曜の為替介入で戻した分がかなりご返品されている(1円ちょっと糊代残ってるけど)の図となっておりまして、いやおまいら介入するなら10円くらいはぶっ飛ばして円の売り方焼き尽くせよと思っていたらこの状況で、何のために介入やってるのかとかもしかしたら外準の利食いをしたかっただけなんチャウのかと小一時間ですけど。

ふむふむ
https://jp.reuters.com/article/intervention-idJPKBN2QR0OD
2022年9月26日6:30 午後
22日の円買い介入、規模3.6兆円か 財政等要因が市場予想下振れ

先週木曜の介入が3兆円と推定される、ってのはニュースヘッドラインでも出ていましたが、ロイターさんの説明が一番見やすいのと有料会員ページ記事じゃないので謹んで引用させて頂きます。

『[東京 26日 ロイター] - 政府・日銀が22日に実施した24年ぶりの円買い介入の規模について、市場では約3兆6000億円との推計が出ている。円買い介入としては1998年4月10日の2兆6201億円を超える規模となる。』

『日銀は26日、金融機関の手元資金の総量を示す日銀当座預金残高で、27日は財政等要因が3兆6000億円の不足になるとの見通しを公表した。東京短資など民間短資会社2社が予想する財政等要因の余剰・不足額はゼロ─1000億円の不足であり、27日が決済日となる22日の為替介入は3.6兆円規模にのぼったとみられている。』(上記URL先より)

資金需給の予想については各短資会社さんが出してます。ちなみに上田八木さんの予想だと27日の財政は7000億円の揚げ超(上田八木さんはHPで資金需給日足予想と毎日のレポートのアーカイブが見れるのでそれを見たら今日の当初予想は7000億円の揚げ超になってた)なのでもうちょっと為替介入の規模すくなくね??って思いますけど。

ちなみに22日時点での上田八木さんのデイリーシグナルはアーカイブでこちらですのでご覧ください。
https://www.uedayagi.com/dailysignal/2022-9-22/


日銀の資金需給予想、とかこうハイパー量的緩和になると全然見ることもなくなってたので久々に見てそろそろこれを毎日見る日も来るのかと楽しみにしたいんですけどアタクシが年金ジジイになる前に見れますかね。

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jp220927.htm
日銀当座預金増減要因と金融調節 (9月27日<火>分)

財政等要因
(受超=マイナス) -36,000

上田八木さんのをベースにすれば3兆円、という数字になりますけど、まあこれは類推した数字で、特に半期末近辺なので他の財政要因が急にブレることってあるので、本当の本当の数字は月末(の遅い時間に)出て来る財務省の公表数値をみないとわからないのですが、まあここでは3兆円程度ということに


ここで外準の懐具合を確認してみましょう。

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/official_reserve_assets/data/0408.html
外貨準備等の状況(令和4年8月末現在)

これ見ますと預金で持ってるの136,110百万ドルってんですから、1ドル=150円で計算したら(おい)20兆円しかねえじゃんと思ってしまいまして、直ぐにぶっ放せる砲撃ってあと何回とか計算すると実にアレ。

まあ「証券」ってので1,036,781百万ドルあるから、150兆円くらいは弾薬あるから、ヒャッハー言いながらマシンガンぶっ放す弾薬は豊富ちゃあ豊富なのですが、証券って米国債で、クッソ短い債券ならまあ別に無問題というか、そもそも米国債券市場担保不足でビル足り無さそうんだから売ったら喜んで市場が吸収しそうですけど、より長いのとか冷静に考えたら売ったら損出るんじゃネーノ説があるし、そもそも大規模に中期債とか売りに行ったら(あんまり米国の国債市場詳しくないけど)今のジャイアントスイング相場の中だと、億ドル単位で売りに行ったらそれだけで相場ぶっ飛んでしまって、米国金利上昇→ドル円で円安進行とかいう、ドル売り為替介入の原資を作りに行ったら金利が上昇してドルが上昇したでござるの巻になるんじゃなかろうか???

などなど、まあアタクシは為替の専門家でも何でもないのでさっぱりワカランチ会長ではございますが、そういうことは為替道免許皆伝の先生に聞きに行くとしますけど、、いずれにしましても先週末の介入でこれしか戻せないとなると、やっぱり黒田さんに詰め腹切らせるのが最も手っ取り早い(おまけに金もかからない)円安対策だし、もしかしたらそれしか手段残ってないんチャウの????とも思ってしまいましたとさ。


〇やっべー時間がないので総裁発言関連のネタができない

木曜日の記者会見
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220926a.pdf
総裁記者会見要旨

からの昨日は大阪経済4団体での講演
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220926a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
大阪経済4団体共催懇談会における挨拶
日本銀行総裁 黒田 東彦
2022年9月26日

とあったのですが、特に昨日の経済4団体での講演に関しては、ヘッドラインを見ているだけだと最早何を言ってるのかが支離滅裂状態になっていて、さすがに「為替介入と金融政策が相乗効果」とかいうヘッドライン(会見のヘッドラインだったとは記憶してますが)見た時は、「この爺さん自分で言ってること分かって発言しているの????」とマジで黒ちゃんの状態を心配するレベルではありました。

26日の方の挨拶には記者会見がセットになっていまして、その中では木曜のセンセーショナルかつ実に力強い勢いのあった「2−3年」発言について怒られでも発生したのか火消しに回る場面あり、さきほど申しあげた「為替介入と金融政策の相乗効果」みたいなお前は何を言ってるんだ発言ありと、大変に面白いものになっていると期待されますが、何せアタクシにも生業というのがありまして、半期末モードの中、このような大ネタをバンバンと同時にぶちこまれましても(おじいちゃん睡眠時間削ると死んじゃうから)中々成敗する方が追いつかなくて誠に申し訳ありません。

FOMCの会見も(掛け流し聞いてる感じだと)面白いのですが、黒ちゃんの方は別次元の面白さ(または日本国民としての悲しさ)がありますが、一応アタクシが勝手に掲げてる一枚看板は日銀ストーキング日記なので(ナンジャソラ)本日出る予定の昨日の会見含めて一気に明日成敗できたら(出来るとは言ってない)と存じますです誠にあいすみません。


ちなみに会見要旨が出るか出ないかはこちらで確認できます。前も紹介しましたけど改めて。
https://www.boj.or.jp/announcements/calendar/index.htm/
公表予定

『資料や統計などの公表予定、金融政策決定会合や総裁定例記者会見の開催日程などを掲載しています。原則として、毎週金曜日に更新されます (2022年9月22日更新)。』






2022/09/26

お題「基調的なインフレとか為替介入とかその手の日本ネタである」

折角渾身の介入をしたのに・・・・・・・・・
https://www.bloomberg.co.jp/quote/JPY:CUR

どう見ても木曜の朝の水準じゃん・・・・・・・・・・・何のための介入なんだよ。


〇総裁会見要旨が今日出ますけど・・・・・・・・・

公共放送が概要を報じておった。こりは便利。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220922/k10013830841000.html
【詳細】日銀 黒田総裁会見 「当面 金利引き上げない」
2022年9月22日 18時17分

まあ話題になったのはこの辺ですよね〜。

『「当面 金利を引き上げない」 円相場 145円台後半に値下がり

東京外国為替市場では日銀の黒田総裁が記者会見で、「当面、金利を引き上げることはない」などと発言したことを受けて円を売ってドルを買う動きが加速し、円相場は、記者会見の最中に1ドル=145円台後半まで値下がりしました。

市場関係者は「FRBの参加者による政策金利の見通しが引き上げられ、アメリカでは大幅な利上げが続くことが見込まれている一方で、日銀の黒田総裁が金融緩和を維持する姿勢を鮮明にしたことで、日米の金利差の拡大が強く意識されている」と話しています。』(上記URL先より、以下同様)

会見中にホイホイと円安進行している訳で、しかも公共放送ですら小見出しに採用したように、

『金融政策の方向性の変更 2、3年必要と考えていない

黒田総裁は金融政策の将来の方向性を示すいわゆる「フォワードガイダンス」の変更は当面、必要だと考えていないとしたうえで「当面というのは数か月という話ではなくて、2、3年の話といういうように考えてもらって大丈夫だ。そうはいっても、その中で物価情勢に合わせて微調整はあるかもしれない。ただ、基本的なフォワードガイダンスの変更はやはりあくまで経済物価情勢の転換によって金融緩和策を修正していくものだ」と述べ、いまの金融政策の方針は長期にわたって変わらないという認識を示しました。』

ということで、こんな発言するもんだから(その前の時点で円安に振れてましてこれはダメ押しっぽかったですけど)円安に行くわけで、その円安に進ませようという情報発信いい加減にしろと思いました。


しかしまあ何ですな、

『来年度以降 物価は2%を下回る

今後の物価の見通しについて「8月の消費者物価の前年比は、プラス2.8%となっていて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、本年末にかけては上昇率を高める可能性が高いと考えている。ただ年明け以降はそれらの押し上げ要因が減衰することで物価上昇率プラス幅は縮小していくと考えいる。来年度以降の消費者物価は2%を下回る水準までに下がると予想しております」と述べました。』

という説明で黒ちゃんの任期中は逃げ切る積りなんでしょうけれども、海外程ではないけど日本だって徐々に物価が見通し対比で上振れたり、物価上昇率が下がっていく予想時期が後ろ倒しになっている、という状況な訳でして、これ年度末に向けて物価上昇率が2%に向けて落ち着いていく姿が見えなくなった時にはどういう言い逃れをする気なんでしょうというのが無茶苦茶気になります。

まあ何ですな、その時は黒田総裁じゃない(どうせ4月の全国CPIが出るのは6月なんだし)ので、完全シランガナ状態なんでしょうなと思いますし、まあそんな事黒ちゃんが考えている訳はないとは思いますが、この「来年度の物価は落ち着ぎ過ぎて2%を割り込むだよ理論」で突っ張っていれば、来年度にこれが外れになった時に後任の執行部が「いやー見通し外したわメンゴメンゴ、ちょっと緩和政策の微修正しますわ」と君子豹変しやすくなるということまで考えていたらちょっとだけ面白いかなと。

この先も物価が2%を超えた状態が続くけどこれは物価安定目標達成じゃない、と言い張って突っ張られると引っ込みがつかないのですが、今のところは来年度に2%割れ、といってるので、それが外れた場合には引っ込みがつくし、その時には黒ちゃんはいない、という仕掛け・・・・・の訳はないとは思いますが、まあ期待だけはしておくわ。



〇基調的なインフレがどう見ても爆裂しているんですが・・・・・・・・・・

はい。
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

図表の
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
消費者物価の基調的な変動

の「刈込平均値」の上げっぷりも豪快ですが、何気に「最頻値」がボンボン上がっているのがうひゃひゃひゃひゃという感じなので、エクセルの方をDLして確認しましょう。

左から、刈込平均値、加重中央値、最頻値(前年比、%)

Jan-21 -0.3 0.0 0.0
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 -0.1 0.1 0.1
Apr-21 -0.3 0.1 0.1
May-21 -0.1 0.1 0.1
Jun-21 0.0 0.1 0.1
Jul-21 0.2 0.1 0.1
Aug-21 0.3 0.1 0.2
Sep-21 0.6 0.2 0.2
Oct-21 0.6 0.1 0.2
Nov-21 0.8 0.1 0.2
Dec-21 0.9 0.1 0.3
Jan-22 0.8 0.2 0.3
Feb-22 1.0 0.1 0.3
Mar-22 1.1 0.2 0.3
Apr-22 1.4 0.3 0.4
May-22 1.5 0.4 0.5
Jun-22 1.6 0.5 0.5
Jul-22 1.8 0.3 0.7
Aug-22 1.9 0.5 0.8

いやもう刈込平均+1.9だし最頻値は既往ピーク更に更新しているし、7月に一瞬おちたと見せた加重中央値も上がってるじゃん・・・・・・・・


左から、上昇品目比率(%)、下落品目比率(%)、上昇品目比率−下落品目比率(%ポイント)ですな。

Jan-21 46.7 44.6 2.1
Feb-21 49.0 42.7 6.3
Mar-21 51.0 41.0 10.0
Apr-21 50.2 41.8 8.4
May-21 51.1 41.4 9.8
Jun-21 50.6 42.0 8.6
Jul-21 51.9 41.0 10.9
Aug-21 56.1 36.2 19.9
Sep-21 57.1 35.1 22.0
Oct-21 58.4 34.1 24.3
Nov-21 59.2 33.3 25.9
Dec-21 58.8 34.3 24.5
Jan-22 61.5 31.0 30.5
Feb-22 64.0 28.9 35.1
Mar-22 63.2 29.7 33.5
Apr-22 68.8 24.9 43.9
May-22 69.2 24.5 44.6
Jun-22 71.3 22.2 49.0
Jul-22 73.2 20.7 52.5
Aug-22 72.6 21.5 51.1

上昇品目比率70%超えはこれで3か月連続ですし、大体からして4月5月もほぼ7割上昇なので、そう考えますと今年度入ってからずーっと上昇品目数比率7割をキープしてて、これで物価が上昇してないとか考える人はいないし、そらあーた生活給要請高まるわと思いますし、負担感高まるじゃろと思うのですけどねえ・・・・・・・・


まあ何ですな、今回の日銀の一連の措置を見ればわかるように(おまけに会見での暴言で更に分かるように)黒田日銀は自分の意思では死んでも動かないので(そこまで動かないんだったら逆に追加緩和でもしろよと思いますけどね〜(棒読み))あって、日銀の政策がどうなるか考えましょうって話をするのに「黒田総裁がこうだからこうです」というのはそらその通りなんですが、問題は黒田総裁がやろうとしていることが全然適切じゃないしロジカルじゃないことをしているって所でして、そういうのが日銀を仕切っている以上、ロジカルな予想しても無駄であり、黒ちゃんの首に鈴を付けに行かざるを得なくなる状況になるかならないか、というのがポイントであり、正直それ以上考える必要はないです。

じゃあ黒ちゃんが詰め腹切らされる局面は何か??って言ったら物価上昇と円安が今以上の政治的大問題になることであって、安倍ちゃんの国葬とか某団体との関係がどうのこうのの話が前面に出てるけど、これだけの動きになってくると物価問題って一般の皆様の懸念になってると思うんですけどねえ。FEDもそうでしたが、そもそもが金融回りの人間って株安みたいな資産価格の動きの方が多少の物価上昇よりも財布に堪えるもんだから物価上昇の話をあまり重視しない傾向にある(個人の感想です)ので、物価が政治から中銀への行動を促す、というルートを軽く見ているんじゃないかなあとは思ってます。まあだからどうしたと言われると困るけど、円安や物価高は政治的な問題になっていないので日銀安泰、という市場の中の人の論説には少々首をかしげざるを得ない第二種兼業主夫のアタクシなのでありました。



〇介入は良いんだが140円割れまで持って行かないのは怠慢の一言に尽きるし結局殆ど元に戻してるじゃん無能おぶ無能

木曜の介入のお時間、146円アルデーと言いながら画面見てたら急にすっ飛んだのでナンノコッチャと思ったら(最近突如日本の昼休みに急に為替がすっ飛んで戻ったりとかするので最初はそれかと思ったわ)エライことになってこれは介入キタコレかと思ったらすぐに「介入」のヘッドラインが流れて来ました。

ということで。
https://jp.reuters.com/article/idJPL4N30T19O
2022年9月22日2:54 午後
ドル乱高下、24年ぶり高値の後は140円前半に急反落 政府・日銀が円買い介入

この記事どうでもよい(よくない)のだがタイムスタンプおかしくねえか(22日の14時じゃまだ介入前じゃん)とは思うのですがそれはさておき。

『[東京 22日 ロイター] - 日米中央銀行の政策決定会合を受けた22日の外為市場では、金利差拡大が意識され、1ドル=145円台と24年ぶりのドル高円安が進行した。黒田東彦日銀総裁会見を経て、欧州時間序盤の取引で一段高となる気配を見せたが、政府・日銀が24年ぶりの円買い介入に踏み切り、ドルは145.90円から140.31円へと一気に押し戻された。』(上記URL先より、以下同様)

ということで円買い介入キタコレとおじいちゃんは懐かしくて懐かしくて涙が出そうなのですが、日本が3連休に入る前に指値オペ、みたいなノリで介入するの気持ちは良く分かるんだが、それやると対処するのが海外勢になってしまうので勘弁してほしいんですが堂々と東京の日中にやってくれよ(というか今日はどうするんでしょうかね)と思います。

ま、木曜の場合はそもそもが「どうせ黒田会見で余計な金融緩和継続発言をして(現に「2〜3年は利上げしない」というフォワードガイダンスも物価目標の早期達成もすべて無視した暴言が出ましたからね)一段と円安に振れてしまうので、会見終わってからじゃないと介入できんわな〜」というのがあったとは思うのでシャーナイちゃあシャーナイですが。

『<政府・日銀が実弾投入>

この日の金融市場で最も値動きが大きくなったのが為替だった。ドル円相場は正午前に日銀決定会合の結果が伝わった直後に24年ぶりのドル高円安水準となる145.40円まで上昇。為替介入への警戒感から2分後には143.50円に下落するなど荒い値動きをみせた。』

これこれ。まあMPMだったから画面見てたら昼休みタイムに突如為替が飛んで直ぐに戻ったんですよね。あれはいったい何だったのでしょうか・・・・・・・・・


『神田真人財務官は午後1時半ごろ、記者団の取材に応じ、為替介入はまだやっていないが「スタンバイの状態。いつでもやる用意はある」などとコメントした。

ドルは欧州取引の序盤となる夕方5時ごろには145.90円まで上昇、その後、神田財務官が記者団に対して「断固たる措置を実施した」と24年ぶりの円買い介入を実施したことを明らかにし、140.31円まで急反落した。』

とまあそういう事なのですが、ここは140円割れまで持って行って欲しかったですし、やるなら10円は飛ばさないとダメじゃん、と思っておった訳ですが、その後週末に米国金利が上昇(どうでもよいがFOMC直後の反応の一々逆に行く現象止めてくれませんかねえ米国債券市場)しやがった事もあって、今チラ見したら143円台の中盤辺りにドル円は居るっぽいですね。


でまあ今回って単独介入だし、米国にしてみりゃ自国通貨高はインフレ抑制できるチャンス(ECBは逆にユーロ安で物価上昇なのに困っていますよね)なんで、日本の介入にお付き合いする義理は一切ないし、もし協調介入するんだったら、「お前らの金融緩和政策を修正してからモノを言え」って話でしょう。

おまけに日本は黒ちゃんが言わなきゃ良いのに(今日会見要旨出るのでどういう事になっているのかが分かると思いますけど)2〜3年は金利を上げないとまで言い切ってしまいましたので、政府が何ぼ介入しても日銀が逆の動きをする、という有様になっておりますので、こりゃ一時的な速度調整はできたかも知れんけど、精々数週間の時間稼ぎができただけ、ということに過ぎないと思います(今日下手したらまた抜きに行くかもだしそうなったら介入しないと行けなくなるけど、そんな調子でやってたら弾薬すぐ切れそう)。

とまあそんな状況なのに日銀はのうのうと政策の調整(出口に行くのではなく単なる緩和度合いの調整)すらやらん、という威勢の良い姿勢を示していますので円売り(というよりドル買いなのか?)圧力止まらんじゃろうなとは思いましたですし、円安阻止の介入を実弾で遂に実施した、というのって、だったら日銀だってYCCのレンジ拡大とかマイナス金利政策(あっという間に世界の中でマイナス金利政策などというケッタイなことをしているの日本だけコースですからね)の撤廃とか、そっちもやれやという話が持ち上がる、というストーリーは書きやすくなった(日銀が自分からやる可能性はゼロだが)と思います。

しっかしまあ何ですな、介入しました、って言うんだったら10円くらい飛ばしやがれよと思うのは20世紀脳の相場ジジイではあるのですけれども、その位もっていく気概を見せないと直ぐに舐められてしまうんだけど大丈夫なのかなーとは思いました。



なお、クッソどうでも良いのですが公共放送ェ・・・・・・・・・・

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220924/k10013834841000.html
円安で24年ぶりの市場介入 海外からはどう見える?
2022年9月24日 15時11分

『急速に進んだ円安を受けて、政府・日銀は22日、24年ぶりにドル売り円買いの市場介入に踏み切りました。当局は、一方的な円安に歯止めをかけるため、さらなる介入も辞さない構えですが、海外からはこの市場介入、どのように見られているのでしょうか。エコノミストや専門家に話を聞きました。

(ワシントン支局 記者 小田島拓也/アメリカ総局 記者 江崎大輔/ロンドン支局 記者 松崎浩子)』(上記URL先より、以下同様)

ということなのですが、その後に出てきた専門家コメントに首をひねるワイ。

『アメリカ政府は日本の市場介入をなぜ容認したのか。

日本の金融政策に詳しいボストン大学パルディースクールのウィリアム・グライムス教授は次のように分析しています。

「市場介入を巡って日米で摩擦が起きたのは円安に誘導しようとしたときだ。円高誘導をねらった今回のようなケースでアメリカが文句を言うことはない。世界的に広がる過剰なドル高を考えるとアメリカにとってはむしろとてもありがたい動きだろう」』

?????????????????インフレで困ってるんだから過剰なドル高歓迎だと思うんだが。

『また、日本経済やアジア経済に詳しい南カリフォルニア大学のロバート・デックル教授もアメリカ政府が容認した理由について「強すぎるドルがアメリカの輸出に打撃を与えていると考えたからだ」と話しています。』

?????????????????インフレで困って(以下同文)

どういう取材してるんだか、とかなり頭を抱えてしまったんですけど、何で容認したのかって、そらまあ日本が勝手にやってる分にはさほど影響ないし、ウン十年前と違って日本が雑魚キャラになったからまあどうぞってなもんだからじゃないのかねーとしか思えないんですけど、今米国で問題になってるの別に強すぎるドル問題じゃねえだろと思うんですけどねえ・・・・・・・・・・・・







2022/09/25

お題「日銀ネタを成敗:共通担保オペに関する措置がアホすぎて言う言葉もない(言いまくってるけど)件」

連休最終日、南関東は台風一過だか何だか知らんけどやっと天候も回復しましたようですが、ネタが重なっておりますので何故か天気の良い日なのに更新である。

〇ただの短期金融市場の資金需給調節オペに「企業金融支援」とか言い出すまで追い込まれている日銀

木曜ってまあ実は4時起きしてあーでもないこーでもないと書き物をした訳ですが、まあFOMCは早起きして良かったって物件だった訳ですよ。ところが日銀は・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k220922a.pdf
当面の金融政策運営について

いやまあどうせ現状維持なのは織り込み済みだったのですが、これはアホとしか言いようがないものをぶっこんできました、というのが今回の決定でありまして、いやこれ全員一致ってお前ら金融調節理解してないのかよと小一時間問い詰めたい結果になって正直高田さんと田村さんにはがっかりですよ。

『1.わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にある。新型コロナウイルス感染症の影響は、中小企業等の一部になお残存しているものの、これらの中小企業等の資金繰りも改善方向にある。こうした情勢を踏まえ、日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、新型コロナ対応金融支援特別オペを段階的に終了しつつ、幅広い資金繰りニーズに応える資金供給による対応に移行していくことを決定した(全員一致)。』

スパッとやめねえのかよ、と思いましたし、「幅広い資金繰りニーズに応える資金供給による対応に移行していく」ってまたクダラネエオペを増やすのかよこの昭和温泉旅館野郎と思った訳でして、


『(1)新型コロナ対応金融支援特別オペの取り扱い

@ 感染症対応にかかる中小企業等向けのプロパー融資分は、期限を半年間延長し、2023 年3月末に終了することとする。この間、毎月1回、3か月物の資金供給を実施する。

A 感染症対応にかかる中小企業等向けの制度融資分は、期限を3か月間延長し、2022 年 12 月末に終了することとする。この間、毎月1回、3か月物の資金供給を実施する。』

わざわざ2回に分けるのも何の意味があんだよアホラシイと思いますし、来年の3月までコロナオペやるってことはつまり黒田総裁の任期まで何もしない(コロナオペがあるから金利のフォワードガイダンスの文言を変える必要が無くなる)宣言かよ!と思いました。

まあこれだけでもゲッソリしますが、次のはひどいとしか言いようがない。

『(2)金額無制限の共通担保資金供給オペの実施

上記オペの期限到来後も中小企業等の資金繰りを支えるとともに、より幅広い資金繰りニーズに応える観点から、幅広い担保を裏付けとして資金を供給している「共通担保資金供給オペ」について、金額に上限を設けずに実施することとする(9月 27 日に予定している次回実施分から変更)。』

・・・・・・・・はあああああああああ???????????バッカじゃねーの?????????????


えーっとですね、「共通担保資金供給オペ」ってのはそもそもインターバンクにおける資金需給を調節して翌日物金利を誘導目標に収めるための手段な訳ですよ。つまりこれは「単純な短期の金融調節手段」なのですよね。

つまりどういうことかと言いますと、今はマイナス金利政策になっていて超過準備が過剰にあっても別に問題ない状況になっていますけれども、本来の「政策金利=短期金融市場の金利調整によって中央銀行が誘導する金利」というごくごく通常の世界になった時ってのは、過剰な超過準備を何らかの形で不胎化(事実上の吸収となる)操作しないと、短期金利の誘導が出来ないわけですよ。よって過剰な超過準備を不胎化して短期金融市場の金利を誘導するために、預金ファシリティだったりリバースレポだったり当座預金付利をしたり、色々な手段をせざるを得なくなっているんですよね。

ということなので、当然ですが「通常の短期市場資金供給オペレーション」をフルアロットメントで実施するとなると、資金需給が超過方向に振れる上に、一般的な調節であれば供給額が決まっているので資金需給が読めますけれども、結果が出るまで資金需給が読めない、という調節実務上無茶苦茶な事態になるんですよね。

ついでに言えばフルアロットメントという位だから、競争入札方式にはなり得ず、固定金利方式になるんですけれども、中銀のオペが固定金利方式になると、それを受けた短期金融市場における市場における価格形成機能がいつまで経っても復活しなくて、市場が壊れっぱなしになるんですよね。

なので、まあ危機対応とかでフルアロットメント方式の資金供給オペをやっても、それは少なくとも危機対応終了したら引く、というのが常識なのですが、何とこの期に及んで「通常期に通常のインターバンク市場の資金需給を調節する手段」をフルアロットメント方式にするとか頭沸いてるのか以外の感想が起きない。


・・・・しかもですよ、更に今回の措置がいかんのは、本来が「単なるインターバンク市場の資金需給調節手段」であるはずの共通担保オペに対して、「中小企業等の資金繰りを支えるとともに、より幅広い資金繰りニーズに応える観点から、幅広い担保を裏付けとして資金を供給している「共通担保資金供給オペ」」と思いっきり「中小企業等の資金繰りを支える」という意義付けをしてしまっているのがまずいのですよね。

えーっとすいません、共通担保オペってマイナス金利だの量的緩和政策だのから普通の金利政策に移行したら金融調節の主要手段になるもので、その時に「フルアロットメント」を残してしまったら、おんどれらはどうやってインターバンク市場の資金需給を調節するつもりなんじゃと小一時間問い詰めたい訳でして、「中小企業等の資金繰りを支える」なんて立派な意味を付けてフルアロットメント始めたら、引くときに日銀は中小企業の資金繰りがおかしくなっても良いという事ですかって言われたらどうやってこのフルアロットメント方式を引くんだよ後先の事もうちょっと考えろや馬鹿としか言いようがない訳ですな。


まあそんな観点での質疑は当然ながら会見では無かったですけど、これはかの「3本の鉛筆」を上回るその場しのぎで無茶苦茶な話をする(「3本の鉛筆」では従来より行っていたオペまでひっくるめて危機対応扱いするわ、本来危機を克服すれば量が減る筈のドルオペまで「金額」アピールをして後で減ったらどう言い訳するんだよ、と幣駄文でも突っ込みましたが、それが聞こえたのかどうか知らんけどあっという間に「金額」アピールを引っ込めるという事をしました)の巻となっています。

まあどうせコロナオペの終了だけだと「店じまい」感だけしか出ないから、「金額無制限」とかいうのを入れて緩和アピールをしたい、とかいう実にクッソ下らない理由で今回のインチキ措置をぶっこんだのでしょうけれども、別オペ立てるんだったら兎も角、通常かつ平常時におけるインターバンク市場の金融調節手段に「中業企業等の資金繰りを支える」とかありもしない余計(しかも引くに引けなくなるような)理由を付けるのは流石に酷すぎて草も生えない。



いやあのですね、確かに現時点での共通担保オペって2週間物の固定金利全店オペの1本がロールされてるだけで、直近だと2兆円のオファーに対して恒常的に札割れ(8月末跨ぎに1.5兆円札が集まったけどそれ以外は基本4桁億円だし、ニーズがありそうならオファーを増やしてくるはず)なので、今回フルアロットメントにしたからといって実害(?)は無いんですけど、それはあくまでも「いまいまの時点での断面での話」であって、将来的に普通の金融調節に戻る気があるんだったら、通常の政策手段にこんなことしたら後で戻すときに理由付けだって大変ジャンと思うのですが、どうせこいつら後になったら最初の話を無かったことにするの得意技、という整合性もモラルもあったもんじゃない状態という黒田日銀になってからの無茶苦茶を発揮して「中小企業等の資金繰り支援」とかいう話は何も言わないで戻すんだと思うのですけど、アタクシはそういう筋の通ってない話が一番嫌いなので、このようにネチネチと書くわけでございまする。


まあ何ですな、会見で黒ちゃん(某B社だったかな、の)誘導尋問に見事に引っ掛かって「2、3年は金利を上げない」とか答弁して見事にあちこちのヘッドラインを飾ってしまったように、後の人間が収拾するのに苦労するとか何も考えずに後は野となれ山となれのヤケクソモード(どうでもよいが「2、3年も金利を上げられないような状況が続くのは良くないんじゃないでしょうか??なぜ今追加緩和をして早期の物価目標達成を目指さないんでしょうか??」って聞けよと会見聞いてて思いましたけどね、というかワイが会見場にいたら絶対聞く)になっているし、勝手に「平常時の金融調節手段に企業金融支援の意味づけをする」とかも、どっからどう見ても日銀が追い詰められてて、後先の事考えられなくなって通常考えるであろうことも考えられなくなっている、という事を意味しているのが今回の馬鹿決定だな、と思いましたし、出口の設計どころか後で明らかに引くときの理屈付けで窮するようなものを入れてしまうというのが相当な無責任モードで全米が泣きました。

・・・・・・・・と書きなぐった所でいったんサイトの方にアップします。続きは一息いれてから。

(以降25日夜にしれっとアップしたもの)

(25日の夜に追記)どうもウダウダ書いたらアタクシの言いたかった事の焦点が分散されてしまったっぽいので追記しますと、別にコロナオペ延長するならするでも良い(わざわざ2段階にすることはないと思うんだが)と私は思う(だってコロナ感染症が落ち着いたからと言って急に企業の資金繰りが好転する訳じゃない、と言ってしまえばそらそうよなので、別に政府がコロナ対策と経済の両立をしているのにコロナオペを続けるのイクナイとかそういう風には思わない)のです。

アタクシがトサカに来ているポイントは「共通担保資金供給オペという短期金融市場における資金需給調節の為に使われるテクニカルなオペ」に対して「企業金融支援」とか意味不明な意味づけをするような言い方をするのがおかしい。というのと、更にこの意味付けに紐付けてフルアロットメント方式にしてしまっていることで、正常な金利調節の世界に戻した後に、単なるテクニカルなオペとして機能しなければいけないものに対して、変な手かせ足かせを自分たちの目先の事だけしか考えずに入れてしまっている、ということでして、正直コロナオペの延長とかどうでもいいと思っておりますので念のため申し添えます。


〇一応経済物価情勢の認識部分を比較しましょう

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k220922a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2207a.pdf(7月展望レポート基本的見解)


・現状判断:判断は全般的に前進していますが「供給制約の影響」についてなんか独自見解ぶっこんでるの何なの????

『わが国の景気は、資源価格上昇の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している。』(今回)

『わが国の景気は、資源価格上昇の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症の影響が和らぐもとで、持ち直している。』(7月)

現状認識の総括部分ですが、今回「新型コロナウイルス感染症の影響が和らぐもとで」→「新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで」となっていまして(ホンマカイナという気はするんだが)判断を前進させています。アタクシの身の回り的には別に7月も9月もコロナとの両立問題ってそんなに変わって無い気しかしないんですけど、コロナ妖精さんの出現が下がっているからですかねえ。

まあそれはそれとして結構ビックリしたのが次の部分。

『海外経済は、総じてみれば緩やかに回復しているが、先進国を中心に減速の動きがみられる。輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響が和らぐもとで、基調として増加している。』(今回)

『海外経済は、一部に弱めの動きがみられるものの、総じてみれば回復している。輸出は、基調としては増加を続けているが、供給制約の影響を受けており、鉱工業生産は、その影響から下押し圧力が強い状態にある。』(7月)

海外については「先進国を中心に減速の動きがみられる。」と下げているのですが、一方で「輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響が和らぐもとで、基調として増加している。」と鉱工業生産についての判断を引き上げていまして、ナンジャソラという感じですが、それよりも何よりもこの部分ではしれっと、

「供給制約の影響が和らぐもとで」

って文言が入っているのにびっくりしまして、そもそも供給制約の影響が下押し圧力になっているのに、それが「和らぐ」という認識示しているの結構ビックリだし、海外の中銀って基本的にこの供給制約の要因について別に楽観している所って居ないし、寧ろ供給制約の長期化をリスクにしているいう状態なのに、日銀が率先して「供給制約の影響が和らぐもとで」ってぶっこむの何なのと思いました。

『企業収益は全体として高水準で推移している。こうしたもとで、設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している。』(今回)

『企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は横ばいとなっている。こうしたもとで、設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している。』(7月)

7月に業況感云々があるのは短観があったからです。ということで企業部門の判断は横ばい。

『雇用・所得環境は、一部で弱めの動きもみられるが、全体として緩やかに改善している。』(今回)
『雇用・所得環境は、一部で弱めの動きもみられるが、全体として緩やかに改善している。』(7月)

雇用と所得も同じ。

『個人消費は、感染症の影響を受けつつも、緩やかに増加している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『個人消費は、感染症の影響が和らぐもとで、サービス消費を中心に緩やかに増加している。住宅投資は横ばい圏内の動きとなっている。公共投資は弱めの動きとなっている。』(7月)

個人消費なんですが、「感染症の影響が和らぐもとで」→「感染症の影響を受けつつも」って最早上げてるんだが下げてるんだか訳分らんけど、緩やかに増加がサービス消費云々という限定文言が外れたから上方修正してるんでしょ。住宅は下げ、公共投資は上げちゃあ上げ。


『わが国の金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。』(7月)

コロナオペ延長したんだからここの文言は変わるとおかしいので全文一致は順当。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、2%台後半となっている。また、予想物価上昇率は上昇している。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギーや食料品の価格上昇を主因に、2%程度となっている。また、予想物価上昇率は上昇している。』(7月)

物価ですけど価格上昇の品目に今回は耐久財も入って来ましたが、これは既に7月展望レポートの先行き見通しの中で耐久財価格の今後の上昇について言及されているので見通し通り、という扱いだと思います。しかも2%台後半なのに何で緩和を継続というか強化チックな事をするんですかねえ。



・経済の先行き見通し:何か全然下がっていないのね、まあいいけどさ

『先行きのわが国経済を展望すると、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。』(今回)

『わが国経済の先行きを展望すると、見通し期間の中盤にかけては、資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。』(7月)

先行きに関しては声明文と展望レポートって基本的に見ている期間が違うので、表現に違いが出るのはまあわかるのですけれども・・・・・・・・・・・

『その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回)

『見通し期間の中盤以降は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが経済全体で徐々に強まっていくなかで、わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。ただし、ペントアップ需要の顕在化による押し上げ圧力が和らいでいくため、成長ペースは徐々に鈍化していく可能性が高い。』(7月)

まあ見通しが展望レポートと同じような話になっているのですが、これも何か??????な所がありまして、声明文での経済先行き見通しって基本的に1年程度のタイムスパンで話をしていた筈なんですよね(昔の金融経済月報がそんな感じだった)。でもって展望レポートの見通し期間って7月展望レポートだと「2024年度末まで」の期間なのですから、展望レポートで示している「見通し期間の中盤以降は」って表現は、2022年7月から2025年3月までの間の中盤ですから、単純に2で割っても2023年の終わりごろになる筈なんですよ。

然るに、声明文の見通しで「その後は」って書いてるんですが、いつの間に声明文と展望レポートの見通し期間一緒になったのよと小一時間問い詰めたいというか、そもそも展望レポートと同じ期間の見通しだしてるんだったら、別に展望レポートレベルのものを出せとは言わないけど、直近の展望レポート基本的見解とこのような差があって、実は前回の展望レポートで出した見通し計数にこんな変化があった(または無かった)っての出せやゴルァ!と思いました。ええクソ細かくて恐縮なんですけど、この辺の時間感覚も黒田日銀になってから色々とダマテンで勝手に変わっていまして、まあ政策ロジックがダマテンでホイホイと変わるという無原則野郎なのでその程度はお茶の子さいさいという事かも知れませんけど、今まで日銀が積み上げてきたもの全部壊してるんだよなー黒ちゃんは、と改めて思いました。

ええとすいません、何を言いたいのかと申しますと、声明文の「その後は」というのはいつを意味しているのかが不明確であって、この「その後は」が長いのか短いのかもさっぱり分からんでは先行きの政策変化の予想もできませんですけれどもどうなってるんですか、と質問したいんですよね。

まあ見通し自体は横ばいになっていますけど、FEDが足元の見通しをSEPで無茶苦茶下げたのに、日銀全然下げないのかよ!!!とビックリしてしまいました今回は。


・物価見通し:今回は展望時点と同じのようですね

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、これらの押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。』(今回)

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。』(7月)

今回は「これらの押し上げ寄与の減衰」って言い方になっていますね。まあホンマカイナって感じですが。


『この間、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、基調的な物価上昇圧力は高まっていくと考えられる。』(今回)

『この間、変動の大きいエネルギーを除いた消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、プラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(7月)

という見通しは同じなんですが、そもそも現状認識として予想物価上昇率が上がっている、というのをさっき出してたわけで、何でしょうねえそのファクターがあるのに書いてることが変わらないってのも何だかなあとは思いますが、何せ物価上昇が定着しますって書くと政策修正の話になるから死んでもそれは言わない、という姿勢だけは一貫していますな。


会見については週明けに出て来ると思いますが、フォワードガイダンスに関する説明が最初の辺りと途中で変わってて、完全に誘導尋問に引っ掛かっているのですが、「2〜3年利上げしません」とか威勢の良い事を言うもんだから会見中にもホイホイ円安になるの巻になっていたのは笑いました。

介入の話しとかその辺は明日にします(あんまり日曜の夜からハッスルすると期末の週を乗り切れんので)。









2022/09/22

お題「FOMCである」

えーっとですね、書きだしているこの時点では市場の動向を(為替やダウですら)見ても聞いても無いのですが、「2024年でも引き締め領域かよアイヤー」という反応なのか、「来年早々に利上げ停止で今次利上げ4.25%くらいだったらそんなに無茶苦茶上がらないじゃないですかホッと一息」なのか、「2023年から利下げに入って2024年には中立に近くなるのですねホッと一息」なのか、そもそもここもとのアメリカンマーケットが何考えてるのかわからんからマジで分からん(いやまあどっかのHP見りゃ答えはあるんですけど)。あとロンガーラン微かに上がっている(アタクシ的にはこれは上がった内に入らんと思うけど)のも材料にしたのかしないのか・・・・・・・・

でですね、真っ先にアタクシもこうやって書いてしまうんですけど、SEPのドットチャートって真面目な話出さない方が良いと思うんだが(どうしても今書いているようにドット見ちゃうもんね)どうするんだか。

なお、本当に注目した方が良いなとSEP見て思ったのは、その前の経済物価見通しの方でして、23年中までロンガーランの成長率を盛大に下回る状況が続く、という見通しに今回変更(前回は概ねロンガーラン近辺で推移)してて、それでも利上げは維持する、って言ってるんだから株の方が本来はしょんぼりした方が良いのですが、さてどうなったんでしょうかねえ(まだ見てない、書き上げたら見るかな)。

では参ります。

〇声明文:75bp利上げで足元の消費と生産の判断を引き上げた以外は同じとな

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220921a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220727a.htm(7月)

・第1パラグラフ:足元の消費と生産の判断を引き上げ

『Recent indicators point to modest growth in spending and production.』(今回)
『Recent indicators of spending and production have softened.』(7月)

と、前回から消費と生産の判断を引き上げましたが、そもそもこの次にありますように、前回もこの「ソフトになった」に引き続き「それにも関わらず」って感じでポジティブなお話をしておりまして、今回も結局の所同様に強い話をしておりますので、全体的な判断が(こっちの表現上では)大きく変わった訳ではないです。(その割にはSEPの方で足元の成長率エライ下げてるんですけどね)

『Job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has remained low. Inflation remains elevated, reflecting supply and demand imbalances related to the pandemic, higher food and energy prices, and broader price pressures.』(今回)

『Nonetheless, job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has remained low. Inflation remains elevated, reflecting supply and demand imbalances related to the pandemic, higher food and energy prices, and broader price pressures.』(7月)

ご覧の通りで頭についてる「にも関わらず」以外全部同じでありました。


・第2パラグラフ:ウクライナ戦争の影響を警戒しております云々に変化はない

『Russia's war against Ukraine is causing tremendous human and economic hardship. The war and related events are creating additional upward pressure on inflation and are weighing on global economic activity. The Committee is highly attentive to inflation risks.』(今回)

『Russia's war against Ukraine is causing tremendous human and economic hardship. The war and related events are creating additional upward pressure on inflation and are weighing on global economic activity. The Committee is highly attentive to inflation risks.』(7月)

全文一致である。


・第3パラグラフ:75bp利上げしたのですが今後も利上げが必要とかそういうの全部同じとな

会見の冒頭(テキストの方はオープニングリマークしかないですが、会見映像の方は全部聞けるので、さっきからBGMで掛け流しにしています)で「政策金利は今回から引き締め的になりましたぜ」って説明してますが、とりあえずそうなっても文言変えませんですかそうですか。

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(7月)

最初はいつものマントラ。

『In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 3 to 3-1/4 percent and anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate.』(今回)

『In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 2-1/4 to 2-1/2 percent and anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate.』(7月)

利上げ幅は100じゃなくて75でしたな。アタクシ的には別にここからは50を4回でも良かったと思ったんですけれども、威勢の良い事言いすぎたから75か100みたいになってしまった感はあります(個人の感想です)。

まあそれは兎も角として、相変わらず引き締め的水準になっても「ongoing increases in the target range will be appropriate」ですかそうですか。

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet that were issued in May. The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet that were issued in May. The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(7月)

これは次のインプリメンテーションノートにありますが、前回「9月からバランスシートの月当たりの縮小限度を引き上げ」したのをこの先も適用ですので、既存路線からの再加速とかそういうことはなく、引き続き今のペースを維持です。


・第4パラグラフ:今後の政策は状況をみてあんじょうようやっときますぜ、も全文一致

最近この4パラ目は見事に固定文言になっておりますな。

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(7月)

全文一致ですな。しかも言ってることは特に何か決め打ちする話はいつものようにありません。


・第5パラグラフ:ジョージ総裁も賛成ですね、全員一致

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Susan M. Collins; Lisa D. Cook; Esther L. George; Philip N. Jefferson; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Susan M. Collins; Lisa D. Cook; Esther L. George; Philip N. Jefferson; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(7月)

7月に続き今回も全員一致です。


・ファシリティ限度額に関しては金利にフルスライド、額に変更なし、バランスシートのランオフペースは維持です

声明文PDF版だと声明文のあと、HTML版だと声明文の最後にリンクがありますが、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220921a1.htm
mplementation Note issued September 21, 2022
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation

前回はこちら。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220727a1.htm

でまあ一々比較引用するほどの事はないと思うので、アタクシが一応慎重に目検した結果ですけど、各種ファシリティの内容については適用金利が全部フルスライドで上昇となりました。このため、IORとディスカウントウィンドウのいわゆる金利回廊幅に関しても変更なしになっています。

一応書いておきますと、

FF誘導金利:2.25〜2.50%→3.00〜3.25%
当座預金付利金利:2.40%→3.15%
翌日物システムレポ最低応札金利:2.50%→3.25%(限度額5000億ドルは同じ)
翌日物リバースレポオファー金利:2.30%→3.05%(限度額1600億ドルは同じ)
ディスカウントウィンドウ金利:2.50%→3.25%(プライマリークレジット適用の場合)

ディスカウントウィンドウ金利ってそろそろFF上限よりも上にすればよいのに(そもそもFF上限まで下げたのはパンデミック対応でペナルティ金利を取らない方が良いって話で下げたんだから)とは思いました。

あと、米国債とMBSの償還再投資の際に月額のバランスシート現象のキャップについては、前回にセットした「9月から倍速」をそのまま維持してUSTが1600億ドルまで、MBSが600億ドルまで、のままになっています。


〇みんな大好きSEP:来年の成長率見通しが「思いっきりロンガーランよりも低い」のにはメッセージ性があると思うけど

PDF版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20220921.pdf(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20220615.pdf(6月)

HTML版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20220921.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20220921.htm(6月)

引用はHTML版の方から行います。

・経済物価見通し:成長率や失業率がロンガーランよりも悪い状況を続けてでも物価を下げる宣言キタコレ!!!

・・・・とアタクシはここにメッセージを感じるのですが、相変わらず掛け流し(2周回目)の記者会見を流している(ほぼ聞いてないので意味なし芳一)だけのアタクシなので、これが市場に刺さったのかどうかは知らんが、とりあえずドットをチラ見した後こっちを見て「おおおおおお」と思った変態がアタクシです。

左から2022、2023、2024、2025(前回は無し)、ロンガーランですが、成長率の数字を見ますと今申し上げましたようにですね・・・・・・・・・・

Change in real GDP  0.2  1.2  1.7  1.8  1.8
June projection   1.7  1.7  1.9  ---  1.8

ということで、前回は「まあロンガーラン並みの成長率を維持しながら利上げしてって物価が落ち着くとその後は中立金利の方に戻していきまっせ」だったのですが、今回は明確に「ロンガーランの成長率を結構下回る水準で目先推移するけど今後も利上げするよ」ということで、もとよりそれは言ってましたが、「物価抑制大正義」を更に強調するムーブが来ております。

失業率も同じで、

Unemployment rate  3.8  4.4  4.4  4.3  4.0
June projection   3.7  3.9  4.1  ---  4.0

失業率の方は更に威勢が良くて、2025年になってもロンガーランよりも上の水準で推移するようなんですが、それってロンガーランの4.0っておきが間違ってるんでネーノって言いたくなりますけど、まあそれは兎も角として、失業率が自然失業率よりも高い状態が3年続かせてでも物価を落ち着かせに行きますよって話なので、これもこれで常識的には景気センシティブなアセットクラスにはしょぼーんって話だし、まあFEDもそういうのをアナウンスしたいってことで、隙あらばゴルディロックスをどうしたらもうちょっと大人しく出来るか、ってのを考えてるんだろうなあとは思いました(個人の妄想です)。


・SEPの物価見通しですが2023年ってこんなもんで良いのかしら????????

物価の見通しですが(コアPCEにはロンガーランの置きは無い(理屈上ヘッドラインと同じだから)です)、

PCE inflation  5.4  2.8  2.3  2.0  2.0
June projection 5.2  2.6  2.2  ---  2.0

Core PCE inflation 4.5  3.1  2.3  2.1
June projection   4.3  2.7  2.3  ---

2022年はまあ良いとしまして、2023年の見通しが+2.8%になっていて、これがホンマカイナというのはありまして、アタクシは何せ米国エコノミストでも何でもないのでシランガナという感想しか無いのですけれども、この数字の置きが願望成分満載の大本営発表ムーブになっている場合、当然ながら(この後にやりますが)ドットチャートで出ている「来年になったら0.25%か0.50%くらいしか利上げしないでその後は金利を維持して様子を見ます」というのが変わってしまって、更に利上げになるのか、あるいは2024年には引き締め政策の解除方向に行く、というのがズレてしまうんですよねー。

ということなのですが、2023年のPCE+2.8%、PCEコアが+3.1%って見通し数字の妥当性について考えるのダイジダイジネーとアタクシは思うのですが、まあそんなことを言う変態はアタクシだけの可能性も存在しますのでまあそういう事をいう人もいるということで勘弁。



〇SEPの金利シナリオ(出さなきゃ良いのに・・・・・)


・年末は概ね4.25%ですね

さすがに今回のドットを前回と比較するのあんまり意味が無いのでザックリとした比較イメージだけ書きながら今回のどっとを見ますが。

2022年末値ですが、ここからの利上げ幅で言うと以下の通り。

75bp:1名
100bp:8名
125bp:9名
150bp:1名

残りFOMCが11月(の頭)と12月の2回ですから、50×2か75+50ってのが殆どということですな。でもって出来上がり金利で言えば、4.00−4.25−4.50の所で17名、残りが外れ値という事ですが、まあこれなら今回の利上げでの到達点5%あるでとかいうのもあったくらいだからそんなに無茶な数字ではないですよね、という話だとは思います。

6月と比較するのあんまり意味ないですが、6月から100bp上振れって感じですかね。


・2023年は年初辺りに利上げしてその後年末までは維持って感じだが決め打ちし過ぎなのが非常に引っ掛かる

2023年末値も割と揃っていまして、「来年は利下げに転じネーヨ」というメッセージを感じました。とは言いましても6月のドットチャートも1名の変態を除いて23年に入っても利上げしますよだったんですけどね。

3.75-4.00%:1名
4.25-4.50%:6名
4.50-4.75%:6名
4.75-5.00%:6名

この分布を解釈すると、

年内75の人→2023年利上げ無しだが政策金利維持。
年内100の人→8名中6名が2023年は25bpの追加利上げの後現状維持、2名は50bp追加利上げで現状維持。
年内125の人→9名中4名が2023年は25bpの追加利上げの後現状維持。5名は50bp追加利上げで現状維持。
年内150の人→2023年は25bpの追加利上げの後現状維持。(なお後で書くけどもしかしたらちょっとだけ違うかも)

ということで、2023年の所でも意見があんまりばらけて無くて、こんな決め打ち出して大丈夫か(インフレが予想より素早く落ち着いてくれる分には問題ないと思うんですが、年末にかけて全然インフレがサガランチ会長で2023年のコアPCE+3.1%、ヘッドライン+2.8%なんて無理じゃん高いじゃん、という見方がうっかり強まるような経済状況になったらこんなに決め打ちしちゃうとまた「期待のシフトによる盛大なボラボラ相場」になってしまうんじゃなかろうか、と思うのでありました。

・・・・・と思ったら丁度掛け流し(何周回目か忘れた)中の会見でWSJのニックが(17分くらい)「インフレが期待通りに下がらなかったら政策金利引き上げをストップするポイントとかどうなるとか考えてるの」とか質問してる(なんか蒟蒻問答っぽかったが)。


ということで、まあ今年の年末は決め打ちモードになってるのまだ分からんでも無いのですが、来年の年末が決め打ち数字になっているのは最早これ予想じゃなくてただのメッセージじゃねえかという感じはだいぶするので、マジでドット出すのは考え直した方が良いと思うのだが・・・・・・・・・・・・・



・2024年:やっとここで見方がばらける

ここは無茶苦茶割れてて、24年末の段階で中立水準に近い所まで下がるという人あり、引き締め解消モードの途中というのもあり、あんまり下げないというのもありましてもう無茶苦茶で論評不能、というか現状で2年3か月後とか決め打ちできるかよという話なのでこうなるのが当たり前。



・2025年:そらまあ物価見通しがそうですから・・・・・ね

ここで中立金利により寄っているのですが、そらまあ物価見通しがそうなってるんだから2025年には中立に近い所に下がっている、という感じでしょう。

その中で1名だけとんでもない変態がいて、突然変異のように4.50-4.75%に置いてるのがいるので、もしかしたらこの変態は年末に4.50-4.75%(1票しかない)に上げた後延々と政策金利据え置きなのかもしれませんね。

ちなみに、各年末のドットは19票あるのですが、ロンガーランは18票しかなくて、この差分ですが、「ロンガーランのFFレートを出すのは意味がないから出さない」と公言してる変態仮面という某セントルイス連銀のいつものブラード仮面がいるんですよ。

でもってロンガーランでそういう上の票は無いので、この変態はもしかすると変態仮面ではないかと思ってしまうのですが、まあどうでもいいけど。


・ロンガーラン:ちょっとだけ上がっていると言えば上がっているけどアタクシは上がった内に入らないと思います

2.00%:1名→0名
2.25%:6名→6名
2.25-2.50%:1名→1名
2.50%:7名→8名
2.50-2.75%:0名→1名
3.00%:2名

そもそも今回は総数が17→18になっているのでアレですが、常識的に考えると2%の人と2.25%の人が0.25%上方シフトしただけ、って感じだと思うので(新顔が2.50-2.75に入れてきた)、まあこれは上がった内に入らないと評価するのが妥当だと思いますがどうでしょうかね。



〇そろそろ時間がアレなんですが会見の冒頭が出オチ過ぎてワロタ(詳しくは週末に更新できたら更新します)

さっきから何周か忘れたが延々とBGM(正直聞いてないので無意味)流してますが、会見ちゃんについてはオープニングリマークの最初の所が出オチ過ぎてワロタです。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220921.pdf(今回)
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220727.pdf(7月)

冒頭の所だけで時間が無いので勘弁。

「今回そういうことなんで75bpの利上げをしました」の前の冒頭部分だけですけどね。

『CHAIR POWELL. Good afternoon. My colleagues and I are strongly committed to bringing inflation
back down to our 2 percent goal. We have both the tools we need and the resolve it will take to restore price stability on behalf of American families and businesses. Price stability is the responsibility of the Federal Reserve and serves as the bedrock of our economy. Without price stability, the economy does not work for anyone. In particular, without price stability, we will not achieve a sustained period of strong labor market conditions that benefit all. 』(今回)

高インフレ鎮静化が大正義なのをしつこく説明しておりますね。前回7月ですけど、


『CHAIR POWELL. Good afternoon. My colleagues and I are strongly committed to bringing inflation back down, and we’re moving expeditiously to do so. We have both the tools we need and the resolve it will take to restore price stability on behalf of American families and businesses.

The economy and the country have been through a lot over the past two and a half years and have proved resilient. It is essential that we bring inflation down to our 2 percent goal if we are to have a sustained period of strong labor market conditions that benefit all. 』(7月)

もちろん7月も高インフレ退治は大正義である、という話をしているのですが、今回はSEPの見通しでもそうですし、そもそも今回から遂にガチの引き締め領域に入ったという認識だし、まあ更に「物価安定させないと何をやってもダメ」というのを強調する形になっていまして、まあそういう意味では出オチなんですが、ではQAにおいて先行きの政策に関しては何言ってるんだという部分まで手が回りませんので、週末に何か出来ればやりますわ。


なお、本日の日銀を前にまた指値オペぶっこまれとかそういう話も週末に成敗せんといかんかな・・・・・・・・

#結局答え合わせ(???)しないまま書き終わるのでありましたが、そもそも今回は市場が何考えてるかわからんからなorzorz






2022/09/21

お題「CPIがまた上振れしているので10月展望に向けた雑談と今回のプレビュー雑談と指値オペ8300億円」

よーしパパ明日の朝に備えて今日は物凄く早寝するぞー。

〇CPIがまた上振れているんですが

・年末どころか8月の数字でヘッドライン3%超えですよ

キタコレ!
https://jp.reuters.com/article/idJPKBN2QK1PX
2022年9月20日8:46 午前
コアCPI、8月は+2.8%で14年10月以来の伸び 携帯要因はく落で

ということで、こちらはロイターさんですけど、ブルームバーグさんの皆さんお馴染みのECO JNで見ますと、

ヘッドライン 8月実績+3.0%、事前予想+2.9%、7月+2.6%(遡及修正なし)
コア     8月実績+2.8%、事前予想+2.7%、7月+2.4%(遡及修正なし)
コアコア   8月実績+1.6%、事前予想+1.5%、7月+1.2%(遡及修正なし)

でありました。ロイターさん記事を引用しますが。

『[東京 20日 ロイター] - 総務省が20日に発表した8月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は102.5と、前年同月比2.8%上昇した。前月の2.4%上昇を上回って2014年10月以来の伸び率となった。携帯電話通信料の値下げの影響が一部はく落して指数を押し上げた。生鮮食品を除く食料も伸びが続いた。』(上記URL先より、以下同様)

『日銀が目標とする2%を上回るのは5カ月連続となった。消費増税の影響を除けば1991年9月以来の伸び率。ロイターがまとめた民間予測は同2.7%上昇だった。』

この民間予測自体は何処のベンダーが出しても同じような数字になりますな(聞く相手が同じだから当たり前ちゃあ当たり前ですが)。

『携帯電話の通信料は14.4%下落。前月の21.7%下落から下落率が大きく縮小した。総務省によると、コアCPIへの寄与度はマイナス0.24ポイントで10月にはく落する見通し。』

つまり携帯抜きでもコアで+2.5%以上、ヘッドラインで+2.7%以上ある訳で、これはもう大変な事ですよ。

でもって幅広い品目が上昇している訳で、

『コアCPIの対象522品目のうち、上昇が372品目、下落が110品目、変わらずが40品目。上昇品目数は前月の376品目を下回った。上昇品目が前月から減るのは9カ月ぶりだが、総務省の担当者は「引き続き幅広い品目で上昇が続いている」と話している。』

という数字になっておりまして、まあ色々と金融政策的に本来はどうなのよというのがボロボロと出て来る訳ですがな。


・10月の展望レポートでは2023年度の物価見通しに注目

今回の決定会合はどうせ無風ですので問題は10月の展望レポートという話になると思います。

・・・・あ、一応言っておきますと、本当の本当にYCCを止めたければノーマーク(と言いたかったが昨日指値にどばーっとはいってたのは気になるのであとで)である今月が騙し討ちの最後のチャンスでして、展望レポートだしたら「2%物価目標との関係がどうなっているの今の時点は」という話の説明がますます苦しくなり、苦しくなってしまうと当然ながら政策の持続可能性に対する疑問が起きやすくなって、MPMの前に市場が無茶苦茶な事になってしまい、実際に廃止したらその行為が明らかに市場に負けたことになってしまうので、黒ちゃんの意地ど面目モードが炸裂してしまう、ということになり、よって中々厳しいんじゃなかろうかという話になってしまうのだ。

然るに、今回は奇跡的に(というかあれだけ屁理屈捏ねられたらああそうですかとドッチラケになってしまうんですけえど)MPMは無風という評価が高まっておるので、事前アタックも大してネタにならず、「市場に追い込まれた系の変更ではない」変更が出来るんですが、ここから海外経済が失速していきなり利下げモードになって円安がとまりでもしない限り、先に行くほど問題は悪化するんで、当事者能力の欠片でものこっていればなんかする最後のチャンスだと思うんですけどね。

などと言っては見ましたが、所詮は空想の世界で、普通に考えて「次の展望レポートどうしよう」というのが一番の見どころだと思うんですよね。つまり・・・・・・・・・・・・・

7月展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2207a.pdf

これみると物価の見通しが

コア指数  4月予想    7月予想
22年度  +1.9%   +2.3%
23年度  +1.1%   +1.4%
24年度  +1.1%   +1.3%

コアコア指数 4月予想    7月予想
22年度  +0.9%   +1.3%
23年度  +1.2%   +1.4%
24年度  +1.5%   +1.5%

だった訳ですが、そもそも4月の予想からみて22年度の予想を大外ししている訳ですよね。まさか次回の22年度の見通しを上げないって訳にはいかないと思うのですが、そうなると年度頭時点での予想に対して4月の指数がここまで大きく上振れ、しかも日銀の目標である+2%を年度ベースで上回って推移する、ということですから、普通に考えて「4月の見通しをこれだけ外しているのに、4月に決めた政策の修正が行われず、むしろ毎日指値オペの実施などで事実上緩和の強化を行っている」というのは政策の理屈としておかしくないでしょうか、という話になりますわな。


さらにこのインチキ説明で使われるために4月に登場したコアコアですが、4月の時点では「22年度の物価は上がるけど一時的で、その後は+1%近辺で低空飛行」という見通しをだして、金融政策の緩和修正をしない言い訳にしているのですが、一方でこのコア見通しのままだと、逆に政策が効いていないのではないか、とか追加緩和しないと物価が2%に向けて上がらないのか、という風に突っ込まれることになります。

そこで取り出した新企画が「コアコア指数」で、より基調的な物価動向に近い、という屁理屈のもと、より基調的な物価、すなわち経済の実力部分での物価上昇力がこのように金融緩和政策の効果でホイホイと高まる、という図を出すために、4月にコアコアが+0.9→+1.2→+1.5と良い感じの角度で上昇する図がだされた訳です。


さて、7月になってみると(そもそも4月予想で民間エコノミストが概ね年度+2%乗せを予想する中で低めに出した)22年度+1.9%を上方修正せざるを得なくなり、23年度+1.4%ってどういうパスでそういう数字になるのか謎の見通しになっていますが、10月の展望レポートで23年度のコアCPI見通しをどう処理するのか、というのは楽しみでして、仮にこの数字が年度平均で+2.0%台、と言わなくても+1.8とかその辺の数字になったら「一時的」とは言えないわけですよね。

でもって7月のもう一つのオモシロ現象は「コアコア指数」でして、4月の時点で「追加緩和」を封じる意味もあって、24年度に向けて年平均値が+0.3%づつ上昇するという威勢の良い見通しをうっかり出してしまったので、22年度のコアコア指数を上方修正した所で、そのままの角度でコアコアを上昇させてしまうと2024年度のコアコアが+1.9%とどっからどう見ても物価目標達成の見通しになり、だったら今の政策は微修正が必要なんじゃないでしょうか、という理屈に対抗できなくなるので、鉛筆を舐めて急に上昇のモメンタムが下がるという謎の見通しをだしました。


当初「私らの政策は上手くいっている」アピールの為に急に持ち出したコアコア指数が、3か月後にいきなり説明の阻害要因になるという展開に爆笑を禁じ得ませんでしたが、コアコアだって既に実績値が上記のように+1.6%とかですし、年度末に掛けて上がりこそすれ下がる感じじゃないのですから、年度の見通し数字だって7月の+1.3じゃあ低すぎということになりますし、大体からして4月の見通しはわずか+0.9%だったのですから、「物価目標」を看板に掲げている日銀がこれだえ酷い物価見通しの外れをやったのに、なぜか政策の見直しを一切行う気もない、と表明するのはロジック的におあしくありませんかあああああああ?????となる筈ですしならなかったおかしい、


とまあそんな訳で、「4月に出した物価見通しとの乖離があまりにも大きすぎるのに「物価目標」を掲げた日銀が政策内容について点検や修正を行わないのはそもそも論として政策運営のPDCAが回っていない」というツッコミに対して耐えられるようなインチキ展望レポートがどの位のインチキ理屈ででてくるのか、というのが10月(明日じゃないよ)の金融政策決定会合の見どころだし、まあ幾ら大本営発表でも、物価動向とかは大本営情報操作で何とかなるものでは無いので、まあそんなこんなで考えると10月には説明で立ち往生する可能性というのはありますね。

とは言いましても、日本屈指の屁理屈捏ねまわし脳をお持ちでございまして、アタクシのような下々のものからしたら屁理屈のファンタジスタとしか思えない皆様のことですから、どうせ何か屁理屈を繰り出して来るとは思うのですが、なにせ物価が上振れ上振れで来ていて、粘っていても全然事態が好転してくれないという中で、来年4月まで持つのかよ、って感じは強くしますね(個人の感想です)。



・ところでオーバーシュート型コミットメントとかとの整合性はどうするんだろ

7月声明文
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k220721a.pdf

みんな大好きフォワードガイダンスの部分。(以下の『』は7月声明文より引用します。

『2.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。』

これはいつもの「賃金が上がらないと安定的とは言えない」という究極の後出しじゃんけんによってとりあえず誤魔化せています。でも最近のCPIって常に「民間エコノミスト予想よりも強い」の連続で来ていまして、賃金上昇を待っていたら、それこそ海外みたいに物価がトマランチ会長になりかねないし、そうなると資源も食料も国内自給できない日本って、第二次大戦で大勝利したのになぜか戦後になってスッテンテンになるわ深刻な燃料不足と食糧不足が起きて冬になると凍死者が続出するわの大英帝国モードになりそうでひじょーーーーーに懸念されますけど。

『マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』

次回の展望レポートはこの点ツッコミどころになる訳で、実績値が安定的に2%を超える、というのが22年度だけのテンポラリーと言い張るためには、23年度の物価見通しを+2.0%から下の方に遠めに置いておかないと行けないのですが、そうなるとこの見通しって年度平均になるので、発射台から考えたら23年度の物価が途中で0近傍まで下がらないと理屈に合わない、みたいな無茶苦茶な見通しをだすことになるんですよね。

まあさすがにそれは恥ずかしいのでやらなくて、恐らくは「安定的に2%を超える」というのは賃金の上昇が以下同文、という無茶苦茶な後出し条件をだして誤魔化すでしょ、というのに1万ジンバブエドル。

『当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』

コロナオペは延長しない(今さら9月エンドのものを急に延長するとか言うのも迷惑)のですが、この場合、「企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに」って文言がコロナオペ全廃になったのですから、あんたらそこに書いてること具体的に何やってるの??となったら説明できないと思うのですげ、どうするんですかねえ。しかも毎日指値オペとかやって少なくとも日本国債市場の安定は壊れてしまいましたからねえ。

『政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)。』

たぶんこれは昔あった例の「80兆円」並みにどうでもよい部分だと認識していると思います。


・・・・・・てなわけで、10月の展望レポートでは色々なイカサマ説明に早速無理が生じているのが展望レポートを示すことによって明確化する、という割と危険なタイミング。どうせ無茶苦茶な説明して誤魔化すんでしょうけれども、そこまでやって何の意味があるんだというか、おんどれらは黒田総裁のご機嫌取りが仕事なんじゃなくて、適切な金融政策と金融機能を支えることによって国民経済の健全な発展に資するのが仕事じゃろ、と毎度思うのでありました。



〇指値オペェ・・・・・・・・・・・

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba220920.htm

国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注6) 8,361 8,361
(注6) カレント3銘柄が対象。

先週もちょろっと札が入っていましたが、昨日はいきなりMPM直前の恒例行事なのか何だか知りませんけど、また8300億も入っているの巻。カレント3兄弟って銘柄ごとの需給が無茶苦茶になっているので、引け値も無茶苦茶になっててて、これたぶん新発でも前回債でもない奴が入ったんちゃうのかとは思ったのですが、まあいずれにしましても決定会合前にとりあえず宝くじ感覚なのかポジション整理なのか知りませんけど、また日銀への打ち込みである。

まだ今日も明日の午前もあるのに気が早いって気もしますが、まあまあ今回の場合はありがたいことにこの指値に札が入ったことが一般的な金融市場ニュースとしては円債村の村民くらいしか注目していない(のかどうかは知らんけど少なくとも以前の時のような大騒ぎにはなってない)ので、その意味では日銀もあまりピリピリして変な逆切れオペ強化とかしなくて良いでしょう。


・・・・・等と言ってますが、まあ海外の金利がアレで、今朝も何か米国金利様アジャパーなので、オペもさることながら、全般的には売り圧力在りますし、いまでさえこれなので、海外の金利上昇に対してある程度「この辺で打ち止め」みたいな「先が見える引き締めプロセス」が出てきて、(日銀にとって)運よく欧米金利の上昇の流れが収まってくれないと、10月に向けてこの調子だと日銀どうするんだというのと、この間あんまり日銀ネタが話題にならない、ってのもちょっと気持ち悪いです。



〇ああFOMCですが正直ノーアイデア(特に先行きのパス)

FOMCについてはどう思うかというのは聞かれるので一応書きますが、下手したらドットチャートを廃止(特に23年とか24年とかの数字)してもおかしくない、という位にフォワードガイダンス不要論が席巻しております。

同じ理屈なんですが、「先行きの決め打ちダメ!ゼッタイ!!!」という感じになってきた(当たり前なんですが状況が状況なだけに)ので、今回の会見でのコミュニケーションでもラガルドはんを見習って「データディペンデントです( ー`дー´)キリッ」と言い張って「我々は特にプレディクションなんぞありません」って言い張って先行きの金融政策について何も言わないのが一番吉だと思います。

というかですね、緩和時代のガイダンスに慣れ切って、ガイダンス無いと先行きのシナリオ書けないくらいの話になっている市場も市場ですが、まあガイダンスが市場をスポイルしたということで、ガイダンス政策は徐々に減らす方向で行くと思いますけどね。パウエルが利口なら。






2022/09/20

お題「短期金融市場が金融政策のトランスミッションメカニズムに戻るには色々とやることが多そうですね」

台風もいるようですし大ネタ前なので待ち状態ですぬー(しかし期末のこのタイミングで3営しかない週があるのは結構勘弁してほしい)。

〇ECBの利上げと一緒に実施されてた政府預金付利の措置についてレーンさんが解説してたので

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2022/html/ecb.sp220914~79c898d157.en.html
Monetary policy and the money market
Opening remarks by Philip R. Lane, Member of the Executive Board of the ECB, Meeting of the Money Market Contact Group
14 September 2022

先週水曜の講演で恐縮ですが。

・政策金利がプラスに戻って短期金融市場がやっと息を吹き返す欧州とか(順当だが)イイハナシダナー過ぎる

スピーチの前置きですけど。

『It is a pleasure to open this meeting of the ECB’s Money Market Contact Group (MMCG).[1] While the money market is always central to the transmission of monetary policy, its role is especially prominent when the set of policy interest rates is the main active monetary policy instrument.』

短期金融市場は金融政策のトランスミッションの常に中心である。とのことなのですが、ECBも当然ながら把握しておりますように、

『After an extended period in which policy rates were stable near the lower bound and asset purchasing was the marginal monetary policy instrument, the money market is now back to centre stage in the transmission of monetary policy and the MMCG is an excellent forum to collect feedback from you, the money market practitioners.』

マイナス金利政策を実施している間、金融政策のトランスミッションメカニズムはAPPが限界的な金融政策の道具でしたけど、今般政策金利の引き上げもしましたし、短期金融市場が金融政策のトランスミッションメカニズムの中心のステージに戻って来ました。

てな訳で、ECBにはMMCGとかいう短期金融市場とECBの会合みたいなのがあって、そこでそういうヨイショ(かどうか知らんが)をレーンさんが話すの巻ということで、

『In these opening remarks, I will first explain the monetary policy decisions we took last week, before turning to the transmission of our recent interest rate moves in the money market.』

てな訳で本題その1の小見出し『The September monetary policy decisions』に参ります。こちらは金融政策の話になっていましてマネーマーケットの話では無いのですが、現世利益的にはこっちの方がメインって感じですよね。


・期待インフレの上昇、賃金物価のスパイラルを懸念するわ「シンメトリック2%」を持ち出すわでタカ派

最初の方は金融政策決定に関しての説明です。

『The Governing Council last week decided to raise the three key ECB interest rates by 75 basis points. This major step frontloads the transition from the prevailing highly accommodative level of policy rates towards levels that will ensure the timely return of inflation to our two per cent medium-term target. Based on our current assessment, we expect that this transition will require us to continue to raise interest rates over the next several meetings. This policy path will dampen demand and guard against the risk of a persistent upward shift in inflation expectations. We will regularly re-evaluate our policy path in light of incoming information and the evolving inflation outlook. Our future policy rate decisions will continue to be data-dependent and follow a meeting-by-meeting approach.[2]』

『We took last week’s decision, and expect to raise interest rates further, because inflation remains far too high and is likely to stay above our target for an extended period. The new staff projections foresee inflation to average 8.1 per cent in 2022, 5.5 per cent in 2023 and 2.3 per cent in 2024. This is a substantial revision relative to the June staff projections: 2022 inflation has been revised up by 1.3 percentage points, 2023 inflation by 2.0 percentage points and 2024 inflation by 0.2 percentage points.』

9月の決定、という話ですが最初は利上げした話でこれはいつも通りの説明だし、その次は物価見通しで、要は今後も利上げしまっせインフレ高騰を抑制しませの話。

『The most important driver of these upward revisions is the exceptional increases in the assumptions for wholesale prices for gas and electricity over the coming months. In addition, faster growth in nominal wages - reflecting some catch up to the price level increases that have already occurred and also the improvement in the labour market - is also a significant contributor to higher and more persistent inflation, while exchange rate depreciation has also added to price pressures.』

インフレの要因についてのお話で、「faster growth in nominal wages - reflecting some catch up to the price level increases that have already occurred and also the improvement in the labour market - is also a significant contributor to higher and more persistent inflation, while exchange rate depreciation has also added to price pressures」と賃金のスパイラルの懸念ついでにユーロ安にも言及していますね。

『At the same time, the staff projections continue to see a steep reduction in inflation over the projection horizon. While core inflation is expected to remain at elevated levels until the middle of 2023, it is expected to decline thereafter as re-opening effects subside and as supply bottlenecks and energy input cost pressures ease. The projected decline in inflation is also supported by the indicators that suggest that most measures of longer-term inflation expectations currently stand at around two per cent, although recent above-target revisions to some indicators warrant continued monitoring.』

先行き見通しののところでは「今後はどどーんと落ち着いてくる」という何時もの大本営発表を出していますが、根拠が崩れるのはインフレ期待が上がりだすことなのでそれは注意、という説明でこれも従来通りですけど、最近の説明は概ねこの賃金問題とインフレ期待を先行きのウォッチ材料にしているのが目立ちますな。

『In terms of the risk assessment, the risks to the inflation outlook are primarily on the upside. The major risk in the short term is a further disruption of energy supplies. Over the medium term, inflation may turn out to be higher than expected because of a persistent worsening of the production capacity of the euro area economy, further increases in energy and food prices, a rise in inflation expectations above our target, or higher than anticipated wage rises. However, if energy costs were to decline or demand were to weaken over the medium term, it would lower pressures on prices.』

リスクの所の話をしていますが、短期的、中期的なリスクの話をしつつも、最終的には「インフレ期待」と「賃金動向」(まあどっちもコインの裏表みたいな話ですけど)がポイントになるって感じですよね。


・久々に聞く「シンメトリック2%」をベースにした解説だが後で自分の首を締めそうな説明である。

『This inflation outlook forms the context for the setting of monetary policy. Last week’s decision is closely linked to our monetary policy strategy, which stipulates that the appropriate monetary policy response to a deviation of inflation from the symmetric two per cent target is context-specific and depends on the origin, magnitude and persistence of the deviation.

ひっさびさにドラギ先生が大好きだった「シンメトリック2%」の話が出て来るとは!

『In the context of a long projected period with inflation far above target, the net upside risks to inflation and taking into account that the current setting of the key policy rates is still highly accommodative, it was appropriate to take a major step that frontloads the transition from the prevailing highly-accommodative level of policy rates towards levels that will support a timely return of inflation to our target.』

「a long projected period with inflation far above target」なので、シンメトリック2%の観点から今の超緩和政策から。「a timely return of inflation to our target」な政策に進めていかなければいけない、よって今回の措置ですよと来ましたが、そもそもシンメトリック2%ってのは「どうせ多少アバッブターゲットでもそこから物価がホイホイ上がる訳ではない」という暗黙の前提があっての話なので、頑張って下げますよ、という中でこの話を持ち出すのは危険な気もしますけどね。

『Moreover, all else being equal, in calibrating a multi-step transition path, the appropriate size of an individual increment will be larger, the wider the gap to the terminal rate and the more skewed the risks to the inflation target.』

なので先行きの利上げもエライやる気な言い方をしていて、先週後半はこれも影響してましたよね市場に。


『At the same time, it is crystal clear that the appropriate monetary policy for the euro area should continue to take into account that the energy shock remains a dominant driving force of inflation dynamics and the general economic outlook, including through the impact of the very significant terms of trade deterioration.』

『In particular, the inflation dynamics associated with the energy shock component, to which the euro area is particularly exposed, are of a different nature compared to demand-driven overheating dynamics.』

金融政策の最後の話の中で、「エネルギー価格ドリブンのインフレは需要ドリブンのインフレとは別個の性格があって、例えば交易条件の悪化を伴う、というようなこともあるのでそこは注視しないとね」というのが加わりますが、ゆうて物価上昇とインフレ期待抑えようって話を延々としているのでまあここはここで配慮はしてますよってヘッジクローズですな。


で、次が『The transmission of interest rate changes in the money market』という小見出し。

・7月の利上げ(預金ファシリティのマイナス解除)はフルスライドで効いたんですと

『The money market is key for the implementation and transmission of monetary policy: it acts as a seismograph for liquidity conditions and market expectations of future policy, while money market rates are central to the transmission of monetary policy through their impact on economy-wide financing conditions. It follows that it is important that money market rates adjust in line with changes in key ECB interest rates. This applies in particular to changes in the deposit facility rate (DFR), which represents the relevant policy rate in conditions of excess liquidity.』

預金ファシリティ金利のプラス化によって、短期金融市場が金融政策のトランスミッションのメインのメカニズムに復活しますし、短期金融市場が政策金利で意図するように価格形成してくれんとアカン、という話から始まり、短期市場関係者ニッコリの展開ですが、まあその前のマイナス金利の時に短期とか2年とかの国債の価格形成無茶苦茶でしたからねー。

『The available evidence suggests that our July rate hike of 50 basis points, which increased the DFR from -0.5 per cent to zero, has been well transmitted to money market rates overall.』

7月にマイナスから0に上げたら短期市場全体にそれは波及したそうな。

『In particular, the euro short-term rate (ESTR) moved up by the full size of the change in policy rates (Chart 1).』

チャート1を貼るスキルが無いので貼らんけど、『Chart 1 The July 2022 rate hike by 50 basis points and rate changes across money market rates segments』GCでほぼ50、1か月のビルで40くらい金利があがったんですと。

『This is especially important, since the ESTR is the basis for the overnight interest rate swap curve, along which the market prices expectations of future policy.』

でもってESTR金利(表示のEは本当はユーロの記号っす)はベース金利だから、これがスライドで上がるのは良い事だそうな。

『The reaction was similar across deposits by banks and by the different types of non-bank financial institutions that are active in the money market. The near-complete adjustment of repo rates for transactions based on a broad collateral pool - which are predominantly driven by a motivation to borrow or lend cash - was immediate.』

短期金融市場のレポとか、銀行以外のファンディングレートも似たように上がったよ。


・短期市場における特定国(要はドイツ様)国債が担保需要などでアヒャーな話

『At the same time, repo rates for transactions using specific collateral - which are driven by the need to source a specific security - have increased by slightly less than 50 basis points as collateral scarcity has implied some downward pressure on these rates. This collateral scarcity is reflected in persistent negative spreads of some short-term repo rates to ?STR, which is particularly pronounced for the non-general collateral (non-GC) rates (Chart 2).[3]』

『Chart 2 Average spread of short-term repo rates to ESTR over 2022』

ってのが割と面白くてESTRとレポ金利のスプレッド(レポ金利の方が低いから基本マイナスになる)んだが、ドイツ国債の特定銘柄レポ(どうも今引用したパラグラフの説明だと、ショートセールの穴埋めでのSCとはちょっと違ってて、「担保で使うからドイツ国債限定でレポするよ」みたいな話みたいに見えました、違ってたらすいません)のスプレッドが結構なマイナス方向に広い、特にドイツ様国債の場合で、これは担保不足に起因しているようで。

『Moreover, there has been a widening of the spread between short-term government bill rates and swaps with the same maturity (Chart 1). This can be mainly attributed to demand/supply imbalances in the market for short-term government bills, which is partially driven by the level of excess liquidity and increased demand for short-term high-quality assets.』

更に、特定国の国債については短期国債レートとスワップレートのスプレッドが拡大、つまり短国がモノ不足で金利が上がらんかったようで、これチャート3に3Mのビル、2年物国債と、同じ期間のOISのスプレッドを示したのがございますな。

『This increased demand is also motivated by the current interest rate uncertainty and high level of volatility. These demand/supply imbalances of high-quality collateral with short-term maturities can also be observed in other jurisdictions of major central banks for similar reasons.[4]』

『The increase of the DFR by 75 basis points to 0.75 per cent that we decided last week will only become effective with the start of the new maintenance period today.』

9月に+75まで利上げしてやっと金利が上がって来たようですな、ビルとか2年国債の金利に関しては。



・という訳ですが(めんどいからネタにしなかったけど)短期金融市場の過剰施策の廃止を色々と行った話

『To preserve the effective transmission of last week’s rate hike by 75 basis points and safeguard the orderly functioning of money markets, the Governing Council also decided last week to temporarily remove the zero per cent interest rate ceiling for remunerating government deposits held with the Eurosystem.

政府預金金利への付利上限金利(0%)廃止の話です。

『Until 30 April 2023, the remuneration ceiling government deposits will remain at the ESTR or the DFR, whichever is lower. This temporary adjustment was in recognition that the faster than initially expected pace of monetary policy normalisation gave only little time for government deposit holders to adjust and plan for alternative arrangements. The temporary adjustment allows the remuneration of government deposits to follow money market rates, which reduces the risk of an abrupt outflow of these deposits held on the Eurosystem balance sheet into the market - likely into repos or short-term government securities.』

政府預金の付利金利の上限を来年4月末まで「預金ファシリティとESTRの打ち低い方にする」という事にしました。

『This, in turn, could have created additional demand for highly-rated euro collateral, at a time when some segments of money markets, in particular the market for euro area repo and short-term government securities, are showing signs of collateral scarcity (Chart 2).

これは政府預金の不胎化みたいなもんで、市場の流動性を減らして金利の無駄な低下を回避するのと担保不足の解消を目指している(主に後者)話のようでして、

『The early indications are that the decision on the remuneration of government deposits has been effective. Following the announcement of the change in the remuneration of non-monetary policy deposits, the recent increase in the spread between the yield for short-term euro government securities and interest rate swaps has been partially reversed. (Chart 3). 』

『At the same time, as the change in the ceiling for the remuneration of governments will only come into effect today, the full effects of the measure may only become visible over time, and we remain attentive to the spread between different money market rates as well as collateral scarcity concerns.』

やったら早速効果が出てきたようで何より。

『The temporary change in the remuneration ceiling for government deposits gives government deposit holders extra time to undertake a smooth and gradual return of their deposits to the market. From the ECB’s perspective, it remains the case that encouraging market intermediation of these deposits remains desirable in the long term. In the meantime, the temporary change will allow us to assess the adjustments of money markets across market segments to the return to positive interest rates and thereby also reduce uncertainty about the pass-through of the changes in the ECB interest rates to money markets』

しかしまあ何ですな、「From the ECB’s perspective, it remains the case that encouraging market intermediation of these deposits remains desirable in the long term.」とレーンさん説明のように、ECBでもマイナス金利を撤廃していざ短期金融市場の金利メカニズムからの金利波及が、ってやろうとしたら市場のトランスミッションメカニズムそのものがおかしくなっている部分がありまっせ、という話な訳で(ここはマイナス金利を実施しなかったFEDとの大きな違いなんですよね)、ECBですらこんな話をしているのに、当座預金階層金利だけでもミルフィーユみたいになっている日銀の場合、マイナス金利解除しても短期金融市場が壊れてて金利のメカニズムが壊れっぱなしとか大いにありそうで、非常に懸念されるところであります。

とまあそんなレーンさんの講演をネタにだいぶメモと雑談でした。




2022/09/16

お題「マクロプルーデンス系で内容が重めのペーパーが2本金融機構局方面から出ておりますので連休前にご紹介」

アイヤー!
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022091500727&g=pol
内閣支持32%、発足後最低 国葬反対51%―時事世論調査
2022年09月15日23時40分

『時事通信が9〜12日に実施した9月の世論調査で、岸田内閣の支持率は前月比12.0ポイント減の32.3%と急落し、昨年10月の政権発足後最低となった。不支持率は同11.5ポイント増の40.0%で、初めて不支持率が支持率を上回った。安倍晋三元首相の国葬については「反対」が51.9%で、「賛成」は25.3%にとどまった。』(上記URL先より)

いやー岸田さんったら安倍ちゃんの評価を落とすのには成功したみたいだけど自分の首締めちゃってますなあ(あくまでも妄想です)。というかコロ助の第?波は有耶無耶のうちに収まってきているみたいなのですが、それと関係なく支持率下げってのがアレなのですけど、この記事(全文は上記URL先までどぞ)でみると円安と物価高の評価の項目が出てこないのですけど、いや真面目な話第二種兼業主夫なんでこの前最近ご無沙汰してた方のスーパー行ったら軒並み8%くらい値段上がっててげげげのげと思っておるワタクシとしては、そっちを調べろそっちをと思いました。

・・・・・・・ということで、これはもう岸田さん起死回生の一発は円安阻止でちょっと黒ちゃんの所にいっておどりゃ何をやっとるんじゃシゴウしたるぞ、と暴れこんで頂きたいところではありますが、まあこの辺りの批判ってどんなもんなんじゃろうのう、という加減次第で今後の政策修正からポスト黒田の路線修正から、という話につながるんでもっと物価高円安の項目を調査して欲しいもんじゃのう、と思うのでありました。


〇マクロプルーデンス方面から2本ペーパーがでております

・金融マクロ計量モデル

概要のご紹介ページ
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2022/ron220915a.htm/
金融マクロ計量モデル(FMM)
─2022年バージョン─

『要旨』ってのを拝読します。

『「金融マクロ計量モデル(FMM: Financial Macro-econometric Model)」は、日本銀行がわが国の金融システムの頑健性の包括的・定量的な評価をするために行っているマクロ・ストレステストに用いているモデルである。』

ということで、直後に出てきますが、FSRが出る中でマクロ計量モデル使ってシナリオ分析しているので、見てる人には毎度おなじみの奴のベースになっているものです。

『日本銀行は、モデルによる分析結果を年2回の「金融システムレポート」で公表している。』

はい。

『また、金融庁と定期的に実施している「共通シナリオに基づく一斉ストレステスト」にも、FMMを活用している。』

ということなので、この手の対応をしている大手金融機関のご担当の方などにもお馴染みということですよね。

『FMMは、(1)国内の金融機関部門と実体経済部門の相乗作用を明示的にモデル化していること、(2)国内金融機関部門全体の集計値だけではなく、個別金融機関の与信額や自己資本比率等も計算できることに特徴がある。2011年の開発後も、経済・金融環境の新たな進展を反映したり、金融面のショックの波及経路をより適切にマクロ・ストレステストに取り込んだりする観点などから、継続的に改良が加えられてきている。本稿は、マクロ・ストレステストやFMMの基本的な枠組みを概観したうえで、2022年9月時点でのモデル構造の詳細を解説する。』

『本稿の作成過程では、青木浩介氏(東京大学)、稲次春彦氏、鈴木公一郎氏、須藤直氏、玉生揚一郎氏、戸村肇氏(早稲田大学)、宮川大介氏(一橋大学)から有益なコメントを頂戴したほか、高野優太郎氏から多大な協力を得た。また、本稿で扱うFMMの開発・改良には多くの日本銀行スタッフが携わっており、とりわけ近年の見直しには、荒井勝己氏、片桐満氏、三浦弘氏も大きく貢献している。加えて、これまでの金融システムレポートの公表に際して、国際機関、国内外の公的機関、研究機関、金融機関などの外部有識者から頂戴したコメント・指摘からも多くの知見を得ている。記して感謝の意を表したい。残された誤りは全て筆者らに帰する。なお、本稿の内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行および金融機構局の公式見解を示すものではない。』

ということではありますが、まあモデル自体は日銀がオフィシャルに漬かっているものですから、公式見解を示すものではないってのはいつものヘッジクローズなんで入るのは分かるけど、それはチャウやろと思いました(^^)。


で、ここで本文はこちら、というURLはお付けしますが、なにせアタクシの数学力がハクション大魔王レベルなので、計算の方はさっぱりですけど、まあ置きの部分とかは何となく図を見ながらほほーんって思いつつまあ結局分かっておりませんという感じですなあっはっは(涙)。

https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2022/data/ron220915a.pdf
金融マクロ計量モデル(FMM)
―2022年バージョン―

『1.はじめに』の一部だけ引用します。

冒頭ページの脚注に良い事が書いてあって、何故か脚注だけ引用すると、

『1 個別金融機関が行うストレステストは、自行のポートフォリオのリスク特性の把握や、経営陣との間のコミュニケーション手段などとして位置付けられており、その性質上、分析枠組みも、マクロ経済へのフィードバック効果などを考慮していないなど、監督当局や中銀が行うストレステストとは異なる。』

『1990 年代における金融機関によるリスク管理手法の枠組みについては、例えば、金融機関によるストレステストの内容について、グローバル金融システム委員会(The Committee on the Global Financial System)が行ったサーベイを踏まえて、整理している Fender, Gibson, and Mosser [2001]を参照。』

というのが最初の脚注にあって、親切設計じゃんと思いましたが、この最初の部分の途中から鑑賞しませう。


『各国当局によるストレステストの活用方法は様々である。FRB、Bank of England(以下 BOE)、European Banking Authority(以下 EBA)/ European Central Bank(以下 ECB)は、当局がストレス・シナリオを策定したうえで、域内の金融機関を対象に、この共通のストレス・シナリオのもとで監督上のストレステスト(supervisory stress test)を一斉に実施し、その結果を、資本計画の承認プロセスなどの金融機関監督政策に役立てている3。』

ここで脚注3ってのがまた親切設計でして、

『3 FRB や BOE は年 1 回、EBA/ECB は隔年で、各々、法域内の大規模金融機関を対象に、資本計画等の承認プロセスの一環として、ストレステストを用いてきた。例えば、FRB は、ドッド=フランク法ストレステスト(Dodd-Frank Act Stress Test)や包括的資本分析・レビュー(Comprehensive Capital Analysis and Review)を通じて、各金融機関の資本の十分性の定量的な検証を行い、配当・自己株式取得を含む資本計画の妥当性の判断等に用いてきた。BOE は、ストレステストの結果を、個別行の資本バッファーの設定、配当・自己株式取得の適否の判断や、マクロプルーデンス上のリスクに備えるカウンターシクリカル資本バッファーの設定に活用してきた。EBA/ECB は、ストレステストの結果を、第 2 の柱に基づく監督上の資本バッファー水準の設定や配当・自己株式取得の適否の判断に活用してきた。』

と詳しい説明がありまして、まあこの辺りの話しって特に大手の金融機関でこの辺の対応を行っている皆さまに於かれましては先刻ご承知の介の話しなんだと思いますが、普段こっちを生業にしていないとこうやってまとまった説明があるのはありがたい。

『また、ECB は、監督上のストレステストを補完する位置付けとして、個別の金融機関とは別に、域内の金融システムをマクロプルーデンス面からモニタリングする観点から、ECB が構築したモデルを用いて、金融機関部門と実体経済部門の相乗作用などを織り込んだトップダウンのストレステスト4を定期的に実施し、Financial Stability Review で結果を公表している(ECB[2021a])。』

へーへーへー。

『日本銀行も、前述のとおり、トップダウンのストレステストの結果を、定期的に FSR を通じて公表しているほか、金融庁と合同で、金融機関の財務健全性に関する包括的な評価目標の構築、金融機関との間の対話を通じたリスク管理態勢の整備の促進などを目的として、2020 年以降、大手行を対象とした「共通シナリオによる一斉ストレステスト」(日本銀行・金融庁[2020])を実施している。』

はい。

『このように、ストレステストの活用範囲が拡がる中、主要国の当局は、ストレステストを行うためのモデルの開発・高度化を進めている5。日本銀行も、2011年に、実体経済が金融機関の自己資本に及ぼす影響や金融仲介活動が実体経済に及ぼす影響など、金融機関部門と実体経済部門の相乗作用を明示的にモデル化したマクロ経済モデルである「金融マクロ計量モデル(Financial Macroeconometric Model、以下 FMM)」を開発した(石川ほか[2011])。』

『そのうえで、その後も、経済・金融環境の変化や、理論・実証面での学術的研究の進展を踏まえて、様々な改良を加えている。』

『例えば、テールリスクの波及効果の計測を精緻化する観点から、2012 年に、個別金融機関や企業の高粒度の財務データを用いて、金融機関毎の貸出ポートフォリオのリスク特性の異質性を考慮できるようにしたほか、金融機関の資本・収益と貸出金の非線形な関係性の捕捉や自行の信用力(自己資本比率)低下時の外貨調達コストの上昇効果の捕捉など、既存のモデルの高度化も行った。』

『また、当初は資金利益や国内の信用コストのみをモデル化していたが、テールリスクが金融機関に及ぼす多岐にわたる波及経路を捕捉する観点から、2014 年に、有価証券関係損益・評価損益、海外信用コスト、非資金利益、リスクアセットもモデル化した。』

『これらの変更内容については、調査論文等の形で対外公表し、金融関係者や大学・研究機関の研究者とのコミュニケーションに活用している6。』

でまあこの辺りの分析結果の成果物がFSRに反映されている、ということでありますが、


『本稿では、2022 年 9 月時点の FMM のモデル構造を解説する。北村ほか[2014]などのこれまでの解説論文では、実体経済と金融機関部門の相乗作用や、金利リスク・信用リスクなど特定分野に焦点を当てているのに対して、本稿は、実体経済・金融市場面に生じたストレスが金融機関部門に与える影響は多岐に渡り得るという問題意識を踏まえて、国内金融機関部門のモデル構造の説明に重点を置いて、包括的かつ仔細な解説を行っている点に特徴がある。』

ということで内容についてこの後書かれていますが、本文44ページ、PDFで47枚目の下段の方から始まる、

『4.マクロ・ストレステストの具体例』

という所で、いつものFSRでの分析結果の新モデルバージョンが出てまして、これだけでも通常のFSRのマクロストレステストの部分と同等の内容になっていますので、結果だけ確認したい場合はこちら本文44ページからご覧になればよろしいんじゃないかと思います。書いてる方的にそれはちょっとと言われるかもしれませんけど。




・海外投資(ファンド、受益権などの形で)の状況と海外金融ショックの波及影響について

2発目はこちらです。(こちらは概要ご紹介ページ)
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2022/wp22j15.htm/
グローバルな投資ファンドと地域金融機関との有価証券ポートフォリオの重複度の高まりとその金融安定上の含意

例によって要旨を見ますけど。

『要旨』

『グローバルな金融市場において投資ファンドがプレゼンスを高めるもとで、わが国の金融機関は趨勢的に海外有価証券投資を積み増している。』

だってしょうがないじゃない。

『本稿では、わが国の個別金融機関とファンドの有価証券ポートフォリオの時価変動の相関を「重複度」と定義したうえで、過去20年について、この重複度の時系列を計算し、その性質やわが国の金融システムに与える含意を検証した。』

ほう。

『本稿での分析結果は、以下の通りである。』

ほうほう。

『第一に、リーマンショック期前からの時系列的な推移をみると、ファンドとの重複度が高い金融機関の数が増加していることが確認できる。この傾向は、特に、債券を運用するファンドと地域金融機関との間において顕著である。』

そらまあファンド組成するときに国内金融機関から資金集めたらそうなるわな。

『第二に、ファンドとの重複度の大きさの背景を検証すると、自己資本比率や預貸率、貸出利鞘が低い金融機関ほど、重複度が高い傾向があることが確認できる。』

これまあ結果そうなんでそうなんでしょうけど、体感的にはちょっと微妙な部分があって(これはFSRでも示されていると思いますが)地域金融機関の中でも、一般的な銀行業態と、組合金融機関組織になっている場合、配当(社外流出する方の配当)の扱いが画然と違っていて、その累積的な差によって(あくまでも平均値的な話になりますけど)組合金融機関の方が自己資本厚めになっている、というのは毎度のFSRで示されていると思うのです。

でですな、その辺りから見ていくと、確かに平均的にご指摘の通りなのかもしれないですけど、そもそも預貸率が低くて、有価証券投資に行ってるケースってのも有る筈で、なんかこの書き方だと海外ファンド投資している連中は経営があちゃーみたいなミスリードを誘わないのか、と思ってしまうんですよね。いやアグリゲートしてそうならそうだって話なんでしょうけども、金融機関の有価証券投資って特に地域金融機関になると個別性が強くなっている筈で、分散の多いものを平均値一発で纏めるのはちょっと唸ってしまいます。

『第三に、ファンドとの重複度が高い金融機関ほど、ファンドにおける大量償還の発生や米国金利上昇、あるいは、米国社債市場の変調といったグローバルな金融市場におけるショックに対する有価証券ポートフォリオの時価の反応が大きい傾向がある。』

しかしまあ何ですな、この「ファンドの重複度」という文言を重視しますと、つまりは「他所の金融機関が買っているからうちも買うぜヒャッハー」としているのがイクナイので、皆様もっと独自に尖った投資をしましょうとゆーはなしになるんでしょうか(ソウジャナイトオモウ)。


でもってここは吹いた。

『こうした結果は、潜在成長率の低下などのわが国の構造的要因が金融機関収益に対して趨勢的に下押しに作用するもとで、地域金融機関を中心に、海外の有価証券への投資が進んだ結果、』

いやいやいや他人事のように言わないで下さいよマイナス金利とか無茶苦茶な政策やって金融機関を海外投資に追い込んでいるの日銀じゃないですか。いや勿論プルーデンスの観点からご指摘しているのでマネポの話はシランガナってことでしょうけど。

・・・・と思いましたが、これ本文を見ると実はちゃんと本文のほうには「本稿の分析は、低低金利下における金融機関の利回り追求行動に関する実証研究とも関連している(後でURLつけますが本文5ページにあります)って書いてあるので、金融政策の影響による利回り追求行動がこのような結果を起こしている、というのはベースの認識にちゃんとあるんですけど、「要旨」の部分にその記述を行わない、という華麗な忖度が働いているのには思いっきり吹きました。

なんでしょうねえ、ほら戦争末期で負けそうになると急に潜在的な反政府分子とっ捕まえたくなるムーブとかそういうのがあるように、黒田日銀も・・・・・・・・・・というのはあくまでも個人の壮大な妄想ですので気にしないで下さい(^^)。

『ファンドとの直接的な取引がなくとも、ファンドの経済活動を契機とする国際金融市場におけるグローバルなショックの影響を受け易くなっている可能性を示唆している。』

『加えて、ファンドとの重複度が高い金融機関の数が増加している点を踏まえると、こうしたショックが、金融システムのより広い範囲に及び得るようになっている可能性も示唆していると考えられる。』

これは本文(時間が無いからネタにしないけど)に詳述されていますが、要はファンドが投げ売り→市場があばばばばー→ファンド形式で投資してない人も結局金融市場が大荒れになって一緒に巻き込まれる、という話をしております。


ということで、本文はこちらになります。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2022/data/wp22j15.pdf
グローバルな投資ファンドと地域金融機関との有価証券ポートフォリオの重複度の高まりとその金融安定上の含意

まあ別に地域金融機関だけの話しじゃないような気がしますし、これは本邦だけじゃなくて米国や欧州においてもクロスボーダーどころかあっちは法域内で流動性の低いもののファンド仕立て投資の話あるから、なんか日本の地域金融機関にフォーカスあてるのも何というかまあ日本のマクプル的には意味あるんだけど、最終的に指摘されているファイナンシャルスタビリティリスクの観点まで話を伸ばすと、一段先の考察をのっけて欲しいなあと無茶ぶりを致しまして(よろしくお願いします!!!)ご紹介にかえさせていただきます。

内容に関してはこっちも面白いし、ファンド関連の方々は売る人も買う人も企画する人も目を通しておくの悪くないと思いましたですよ。







2022/09/15

お題「本日は諸般の事情によりまして昨日のドル円と円債の市場備忘録メモで勘弁してつかあさい」

この「20安打6四死球13得点VS17安打8四死球13得点、ついでに両軍失策ありで結局延長12回引き分けの馬鹿試合」みたいな市場様のせいでちょっとヘロヘロになっておりまして今朝は俺様備忘メモで勘弁して下さいませ(土下座)。

〇レートチェックとかやるやる詐欺とかは実弾介入の効果を下げるだけなのですけどねえ・・・・・・・・

もはや因果関係がどっちなのか分からんのですが、昨日ドル円と債券先物ちゃんの日中足見てて思ったんですけど、円高の時に債券先物売られてて、円高止まってると債券先物買われる、みたいな感じになってまして、その間に超長期ロングエンドの方は馬鹿強とかになってて、10年カレントは堂々の25bpで指値に連日の応札、とかもう何をやってるのか良く分からん相場で、日銀がYCCを無理矢理続ける中で債券市場の価格形成機能が益々無茶苦茶になっていて、いやこれヘッジが全然ワークしねーだろと思いながら見てて気持ち悪くなる展開でした。ここもとずーっとそうですけど特に先週今週はひどい。


ということで米国CPIショック(正直お前ら何を織り込んでたのか、という位のショックデカメロン伝説でしたけど)でドル円がオーバーナイトで2円ぶっ飛んでしまい、月曜の黒ちゃん発言効果が全部お返しされた為替相場ちゃんのメモでも。


・レートチェックとはこれまた中途半端な兵力の逐次投入

https://jp.reuters.com/article/tokyo-frx-idJPL4N30L0WW
2022年9月14日1:39 午後1
〔マーケットアイ〕外為:ドル143円後半に下落、日銀がレートチェックとの報道で

『[東京 14日 ロイター] -

<13:38> ドル143円後半に下落、日銀がレートチェックとの報道で

ドルは一時143.67円まで下落。日銀が取引を前提に現在のレート提示を金融機関に求める「レートチェック」を実施したと報じられことから、ドル売り/円買いが一段と加速している。』(上記URL先より、以下同様)

ということでレートチェックをした、という報道。本来財務省の為替市場介入に関する個別の取引については守秘義務があるから(大昔のようにその辺がガバガバだった時代ならともかく)金融機関サイドの方からこういうのは表ざたにならないので、何でしょうかねーって感じ(もっと大昔、アタクシが債券ディーラーで2毛5糸甘!とか叫びながら仕事してた時で介入とかバカスカあった時代って、動くたびに介入かレートチェックかみたいな話で盛り上がっていましたけど、真相不明の中「と思われる」みたいな感じで値動きから後付けで想像してた感じだった気が)。まあいいですけどね。



その前の段階ではどうなってたかと言えば同じく上記のロイター記事から引用しますと、、

『<12:10> 午前のドルは144円前半に小幅下落、利益確定売りが優勢

午前の東京外為市場では、米連邦準備理事会(FRB)による積極的な利上げ観測を背景としたドル買いが一服し、利益確定売りが優勢となっている。正午時点では、前日のNY市場終盤時点(144.55/58円)から小幅に下落し、144.37/39円。 ドルは早朝に144.96円付近まで上昇した後は、神田財務官による円安けん制発言をきっかけにじりじりと軟化。仲値にかけては実需のドル売りフローが出たとみられ、一時144.08円まで下落した。市場関係者によると「145円を試すという動きよりも、145円手前は利食いのタイミングになっている」(国内銀行)との声が聞かれる。』


まあこれは良いのですが、

『ただ、日銀が国債買い入れオペで5年超―10年以下のオファー額を増額したことが材料視されたほか、時間外取引の米金利の上昇を背景に144円後半まで水準を戻す場面もあった。』

これわwwwwwwwwwwwwwww


何ちゅうかですね、その昔(QQE前)って円高→債券買い、という流れだったのですが、今や日銀がYCC死守→債券買い(かどうかは兎も角売られない)→円安、という流れになっておりまして、財務官が円安怪しからんと言ってる側から日銀がせっせと効果を消して回っているのが酷すぎますよね。「財政政策と金融政策の連携を深め」とか言ってた片岡某辺りにこの状況をおんどれはどう思っとるんなら、と小一時間問い詰めたい。


まあそんなのは兎も角として、このレートチェックっていうのは、基本的にちぇっくだけして満足してたらダメなものでして、チェックする→相場が反応する→やったぜ何もしないでも為替が戻ったぜ、と喜んでいると、だんだん狼おじさんになってきて、いざ実弾介入をした時にも最早サプライズでも何でもなくなるし、介入空振りした時の惨状が大きくなるし、惨状が大きくなると踏んだら金融市場の人達って基本的にハイエナかピラニアか知らんけど、惨状が大きくなりそうなところに寄ってたかって更に毟り取りに来る、というのが仕様なので、レートチェックしたからには介入をさっさとやらんと益々足もと見られて、ピラニアをより大量に引き寄せてくることになると思うんですよねー。



・やるやる詐欺、ダメ!ゼッタイ!!

https://jp.reuters.com/article/idJPL4N30L227
2022年9月14日6:49 午後
やるときは間髪入れずに瞬時にやる=為替介入で鈴木財務相

夕方に鈴木財務大臣が記者対応をする、ということでこのニュースが出ていましたが。

『[東京 14日 ロイター] - 鈴木俊一財務相は14日、為替介入について「予告的にやるものではない。やったかどうかも普通は言わない。やるときは間髪いれずに瞬時にやる」と語った。14日の為替市場でレートチェックを行ったかどうかは「あえてコメントしない」と述べるにとどめた。財務省内で記者団の取材に答えた。』(上記URL先より、以下同様)

またまたご冗談を(猫先生のアスキーアート割愛)。

いやあんたらレートチェックしたら介入予告でしょと思いますし、その前から「必要ならば介入も含め手段を講じる」って何度も言ってて、アタクシは外国為替市場の人じゃないからよく分からんけど、内野スタンドのB指定席あたりで見物している感じ(自称)のアタクシから言わせると「散々っぱら介入の事前予告しまくって、予告するのに全然介入しないのくり返しジャマイカ」としか思えないのですが(個人の感想です)レートチェックまでしておいて、連日やるやる詐欺ってのをFOMCと日銀が抜けても馬鹿の一つ覚えのようにやっていると、そろそろ為替市場様によるインドラの矢が飛んでくるんじゃなかろうか、としか思えません。

『為替動向については「急激な動きは好ましくない」と語った。足元で激しい動きに転じたことで「政府としても日銀と連携して高い緊張感をもって市場動向を見守っていく」との考えも述べた。鈴木財務相は「(激しい動きが)継続するなら市場においてあらゆる手段を排除せず、やるべきことをやる」とも強調した。』

口車を回しておけば何とかなるのは国内ドメドメだけで完結しているものに限るんで、こんなの「介入倒れて円安の死体になったらピラニア食い放題ボーナスステージヒャッハー」とか皆に思われだして、ピラニアが世界から集まってくると死ななくても良かったものが死んでしまうリスクもありますので、いいからその口頭で何とかしようとするの大概にしてほしいですね。


・何という間が悪いというか間の抜けたというか

昨日の鈴木大臣の記者対応って何で会見じゃなくて記者対応だったのかと思ったら、どうも経済財政諮問会議の終了後にレクをしたとかそんな感じみたいでした。

でもって、情報ベンダー見てましたけどちょうど鈴木さんの発言が出てくる中で、経済財政諮問会議の会議内容についての報道が出てきたのが大変に笑ってしまったのですが。


https://jp.reuters.com/article/idJPL4N30L1WD
2022年9月14日6:14 午後
経済・財政計画の改革工程議論、円安メリット活用が必要=諮問会議


>円安メリット活用が必要
>円安メリット活用が必要
>円安メリット活用が必要

おいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

いやね、短期的な為替の話と中長期的な改革工程表の話は別なのは分かるし、どうせ円安ならそれをプラスにするようにしてメリット取ろうってのはその通りなんですよ。

しかしですね、今まさに「急激な為替変動はイカン」って通貨当局が連呼している中で、「円安メリット」とか政府の別の部署(正確には諮問会議なので政府の部署じゃないけど)が言い出したら、円安容認って取られたらどうするんだよ馬鹿という話で、別に趣旨が悪いとかじゃなくて、プレゼンの仕方に絶望的なセンスの無さを感じてしまいました。

まあ為替市場なので海外のハイエナの皆様がこれ見て反応しなければセーフ理論はあるので、それはそれでセーフっぽかった気がするので良かったねという感じですが。



〇10年指値にジリジリと札が入ってくるようになっておりますが

昨日の債券市場ちゃん。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N30L15H
2022年9月14日3:24 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅反落で引け、長期金利は3カ月ぶりに0.25%に上昇

『[東京 14日 ロイター] -
<15:15> 国債先物は大幅反落で引け、長期金利は3カ月ぶりに0.25%に上昇

国債先物中心限月12月限は前営業日比37銭安の148円72銭と大幅反落して取引を終えた。米消費者物価指数(CPI)の上振れを受けた米金利上昇が圧迫材料。現物市場の新発10年国債利回り(長期金利)は同1.0ベーシスポイント(bp)上昇の0.250%。6月17日以来3カ月ぶりに日銀の変動許容幅の上限に達した。』(上記URL先より、以下同様)

ということで10年カレント25bpキタコレな訳ですが、先物はぶっ叩かれるわ超長期は強いわで、前回の無茶苦茶相場の時とは違って、イールドカーブ全体が売られているというよりは、先物とかの中長期ゾーンが叩かれるの巻。お蔭で、

『現物市場で10年物以外の新発国債利回りはまちまち。2年債は前営業日比横ばいのマイナス0.080%、5年債は同1.5bp上昇の0.045%、20年債は同2.0bp低下の0.850%、30年債は同4.0bp低下の1.180%、40年債も同4.0bp低下の1.340%。』

と、最早何が何だか良く分からない世界になっておりますが、ロイターさん提供のTRADEWEBによりますと、


    OFFER  BID   前日比 時間
2年  -0.083 -0.071    0  15:14
5年  0.038  0.044  0.009  15:02
10年  0.244  0.25  0.005  15:01
20年  0.846  0.856 -0.025  15:10
30年  1.177 1.186  -0.044  15:09
40年  1.325 1.346  -0.044  15:15

ということでこの間の先物が37銭安なので先物から30年40年って8毛以上ツイストフラットしているという中々豪快な相場様。6月のアタック大会の時って超長期とかの他年限が無茶苦茶売られるという流れの中で10年カレント以外が売られていく中で先物も売りやすいもんだから極端に叩かれてランボー怒りのチーペスト指値オペというのが入り、その結果先物市場が無茶苦茶になってしまって、その後遺症が延々と続いて今でも先物の板って薄いし、引け前30分どころか下手したら引け前5分とかで突如ジャイアントスイングしたり、もう無茶苦茶という感じになっておりましてすべては日銀が悪い。

何か先物の話になってしまいましたが(笑)、単にアタクシが申し上げたかったのは今回の25bp金利上昇って、イールドカーブ全部が売られていくという感じじゃない中での金利上昇なので、確かに勢いという意味での迫力は無いのですが、逆に勢いもないのに金利がホイホイと上がって行く、というのには別の意味での(言語化できなくて恐縮ですが)気持ちの悪さがあるなーって思いましたです。


で、指値オペ結果
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N30L1EC
2022年9月14日3:49 午後
〔マーケットアイ〕金利:日銀の指し値オペ結果、1598億円が応札・落札 カレント3銘柄

『[東京 14日 ロイター] -
<15:41> 日銀の指し値オペ結果、1598億円が応札・落札 カレント3銘柄

日銀が本日通告した固定利回り入札方式による国債買い入れ(指し値オペ)の結果は、365回・366回・367回債のカレント3銘柄に対し、1598億円の応札・落札があった。356回債と357回債は応札・落札額ともにゼロだった。』(上記URL先より)

しかしこれやればやる程円安要因なのでして、もうやってることが支離滅裂なんですよね。そこまで円安嫌ならYCCを柔軟化させればいいじゃないと思いますけどねえ(ゲス顔)


ということですいませんすいまんメモだけでしたゴメンチャイ。







2022/09/14

お題「国内企業物価指数と為替(メモ)/ジョージ総裁の講演なので趣味のネタですすいません」

ひょえー
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220914/k10013816851000.html
米消費者物価指数の上昇で NYダウ一時1300ドル超の急落
2022年9月14日 4時58分

ここ数日毎日ソイヤソイヤとあめちゃんの株式上昇してた分の戻しと言ってしまえばそれまでなんでしょうが、どんだけCPI減速を期待してたんだとそっちの方が正直ビックラこいておる。


〇国内企業物価(メモ)

https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi2208.pdf
企業物価指数(2022年8月速報)

8月速 報

国内企業物価指数
前月比:+0.2
前年比:+9.0
(参考)夏季電力料金調整後 前月比:+0.2

輸出物価指数 円ベース
前月比:-2.3
前年比:+17.0

輸出物価指数 契約通貨ベース
前月比:-1.3
前年比:+3.5

輸入物価指数 円ベース
前月比:-2.3
前年比:+42.5

輸入物価指数 契約通貨ベース
前月比:-1.2
前年比:+21.7

(参考)為替相場 ドル/円
前月比:-1.1

・・・・・ということで、まあ相変わらず前年比+9.0%とか碌なもんじゃないのですけど、ドル円の前月比がマイナスで出たとたんに円ベースの輸入物価指数が前月比マイナス転換してまして、これは朗報なのか悲報なのかよくわからんですが、まあ円安の悪っぷりが分かりやすく出ましたなって感じなんでしょうかねえ。

輸入物価指数の円ベースと契約通貨ベースとドル円の欄(細かく貼るスキルが無くて恐縮ですが)の推移をざくっとみると、直近1年の推移って昨年の時点でも何だかんだ言って前月比の差分見てると、契約通貨ベースの価格上昇に対してジトっと進んでた円安が上乗せされてます、ってのはまあずーっとそうなのですが(計算上そらそうなるわな)、やはり円安ドドーンと進行した3月(ウクライナ侵攻開始以来の2月の終わりから、って感じですけど)以降、特に5月以降は契約通貨ベースの前月比の上昇が鈍化する中で円安進行で結局輸入物価が上がってます、という流れなのですからして、

物価高対策云々言うなら、どうせ円安になってもそんなにメリットが幅広くある訳じゃないんだから、円安促進政策止めろやとしか思えないのですけれども・・・・・


〇たぶんFEDの中では多数派にはならないと思うのですがカンザスのジョージ総裁の政策に関する考察

https://www.kansascityfed.org/Speeches/documents/9092/2022-George-PetersonInstitute-09-09.pdf
Constraints on the Economy and Policy
Remarks by Esther L. George
President and CEO Federal Reserve Bank of Kansas City

Constraints on the Economy and Policy

September 9, 2022
Peterson Institute for International Economics
Remarks delivered virtually

先週金曜の講演ネタで恐縮ですし、ジョージ総裁の講演自体は市場ネタにならんっぽいのであんまり現世利益が無い訳ですが(汗)、見識というのを鑑賞するのもダイジダイジネー、とかどう見てもただの個人的趣味です本当にありがとうございましたという風情で恐縮至極。

でもって以前にもご紹介しましたが、カンザスシティ連銀ってジョージさんの前任のホーニッグ総裁の時もバリバリのタカ派連銀で、ジョージさん実は時々穏健派になることもあったんで、前任対比ではそこまでタカではないってイメージではあったのですが、それでも伝統(?)に則って(??)基本的にタカ派で進んでいましたが、50上げるといっておきながら直前に強引な地均しをして75上げた会合でランボー怒りの反対票をぶっこんで「おー」と言わせたのはご案内の通り。

という方なので、たぶんこの方の金融政策に対する意見自体がFEDのメジャーにはならないと目先は思うのですが、こういう発信が出ておりますと、インフレ退治大正義でその他はインフレ下げてから考えましょう的なFEDの中心的見解でありますが、一方で冷静な意見もあって、どこかのタイミングでジョージ総裁の考えに寄ることもアリエールではあるかな、とか何とか思うのでありました。

でまあ全部読んでると長いので金融政策に関する話の所だけサラサラと。


・という前に講演の前置き部分は見ておきます

講演の題名が「Constraints on the Economy and Policy」ってジャクソンホールまんまやん、と思ったら

『Two weeks ago, the Kansas City Fed hosted its annual Jackson Hole Economic Policy Symposium. The theme of this year’s program focused on, “Reassessing Constraints on the Economy and Policy.”』

と来ました。

『An elaboration of constraints has been a valuable contribution of the field of economics. Opportunity costs, comparative advantage, and the Phillips Curve are all defined around the existence of constraints and limits. 』

『However, over the past quarter-century the economic conversation has been dominated by concerns over insufficient demand, and supply constraints faded into the background.』

今回のシンポジウムでの議論はここ四半世紀位すっかり言われなくなっていた話(供給制約など)の件でして、これまでは主に「需要が足りないからどうしよう」問題ばかりが議論されていました。

『Supporting this shift, recent recessions-up until the pandemic-have largely been attributed to financial disruptions related to demand being supported by unsustainable asset allocations. This is different from the supply shocks and inflationary dynamics that had driven earlier post-war recessions.』

しれっとここで「パンデミック以前の近年のリセッションって概ね金融ショック、つまり持続不可能な資産価格の上昇の破裂が引き金になっていましたよね、とか入れてるのがチャーミング。

『The economic recovery following the pandemic shock has brought supply considerations back to center stage. Bottlenecks and shortages related to pandemic disruptions have limited supply and driven up prices. More generally, strong demand,supported by a historic level of fiscal and monetary accommodation, has pushed on the capacity limits of the economy. With demand no longer insufficient, supply constraints have become a key factor in the outlook for economic activity.』

で、今回は経済活動の先行きを読むのには供給制約が重要、ディマンドの方は十分にある。

『The policy response to the pandemic raises additional questions about constraints. The extraordinary fiscal and monetary response to the pandemic appeared to redraw the boundaries of policy. Innovative and expansive fiscal programs pushed debt-to-GDP ratios to new highs as central bank balance sheets expanded rapidly with little discussion of constraints.』

その前の部分財政と金融の歴史的なレベルの拡張、というのに触れているのですが、こっちではこれまたしれっと「パンデミックの間に出した異例の規模の財政と異例の規模の金融緩和は、政策の境界線を引き直すことになった」とぶっこんだ挙句に「イノベーティブで拡張的な財政は、公的債務の対GDP比率を新たな高さまで引き上げ、中央銀行のバランスシートは大幅に拡大したが、この間供給制約に関する議論はほとんどなかった」と思いっきりコロナ時の政策について、実施において思慮を欠いていた点を明確にぶっこんできておりまして中々手厳しい。

『Against this backdrop, I’ll spend a few minutes on the current outlook for the economy and for policy. On the economy, I will argue that the constraints revealed by the pandemic are likely to be with us for some time, perpetuating imbalances, contributing to inflation, and requiring a sustained policy response. 』

『I will also argue that constraints continue to bind policy, with a focus on the balance sheet and efforts to significantly reduce it from its current elevated level. 』

ということで、金融政策に関してはバランスシートを元に戻そうという話をフォーカスするという話ですが、その間にも中々味わいのある話があります。

ということで時間と量の関係で経済の話は全部かっ飛ばしまして金融政策までワープします(すいません)。

4ページ(PDF5枚目)の『Monetary Policy Considerations』という小見出しのところまで飛びます。


・どの位のペースで利上げを継続すべきか

最初の2パラすっ飛ばして(バンバン飛ばしてすいません)この小見出しの3パラ目に参ります。

『Since March, the Federal Open Market Committee (FOMC) has increased the policy rate by 225 basis points, and, beginning this month, has accelerated the process of shrinking the Fed’s balance sheet. In response to these actions, and with expectations of further rate hikes, broader financial conditions have tightened, including mortgage and other borrowing rates.』

ここまでは今までやった事の話。

『However,with the policy rate still relatively low, the balance sheet still near $9 trillion, and imbalances in the economy still holding up inflation, the case for continuing to remove policy accommodation remains clear-cut.』

でまあ今でもまだ政策金利低いしバランスシートは馬鹿でかい、という事ですが、ここでジョージさんオモロイのは「continuing to remove policy accommodation remains clear-cut」と言ってることでして、現状の政策がまだポリシーアコモデーションと言ってる事なんですよね。ということは物凄い利上げ論者なのか、というとこれがまたさに非ずなのが味わいがありましてですね、

『The key questions are by how much and how quickly.』

『On the question of how much further tightening is required, I believe only careful observation of the economy will provide the answer.』

どの程度まで更なるタイトニングをするのか、については「only careful observation of the economy will provide the answer」ということで経済をちゃんとみましょう、と言ってるんですよ。すなわち・・・・・・・・


・中立金利水準は経済の金利感応度次第で後付けでしかわからないものである、という主張

『As unsatisfying as it might be, weighing in on the peak policy rate is likely just speculation at this point.』

はい。

『The often-discussed neutral rate of interest, or the tipping point between accommodative and restrictive policy, is an unobserved and potentially unstable benchmark, potentially undermining its value as either a guide for policy or public communication.』

中立金利については「観察できない」に加えて「potentially unstable benchmark」と言ってるのが興味深くて、寧ろFEDが特にそうなんですけど。「ザ・中立金利」みたいなのがあって、それに対して引き締めだ緩和だという話をする傾向が中銀にも市場にも(ワシらにも^^)あるんですが、そもそも中立金利は「潜在的に不安定である」と喝破しているのが(冷静に考えたらそらそうなのですが)今のFEDの中でこの考え方が如何程主流なのかはわからないですが、まあ良い事を言ってるなあと思います(個人の感想です)。

『Whether any level of the interest rate is accommodative or restrictive will depend on the interestsensitivity of the economy, which could vary for any number of reasons. For example, as spending shifted away from services toward relatively interest-sensitive housing and durable goods during the pandemic, the economy may have become more susceptible to higher interest rates. However, the significant accumulation of liquid savings during the pandemic could work in the opposite direction, dampening the effects of higher interest rates on spending and ultimately inflation.』

消費がサービス部門から相対的に金利感応度の他界住宅とか耐久財に向かっていたパンデミック時代では、高金利に対しての反応がデカかったと見られるし、パンデミックの期間中に積み上げられてきた手元流動性がパンデミック中と逆方向に動けば、利上げをしても中々消費抑制すなわちインフレ抑制に効きにくくなるんでネーノ、というお話で、金利水準が緩和的か引き締め的か、っていうのはそういう経済の状況によってことなりますよ、って話ですね。

『We will have to determine the course of our policy through observation rather than reference to theoretical models or pre-pandemic trends. Given the likely lags in the passthrough of tighter monetary policy to real economic conditions, this argues for steadiness and purposefulness over speed.』

ということなので、中立金利が何ぼかとう考えから政策やるの良くない、って言ってますな。


・バランスシート縮小の話をしながらしれっと金利政策の話も混ぜて居る

まあそんな訳で、「経済の状況を見て」って話っていうのをしているだけなのですが、これ自体は「経済が死んでも金利を上げて需要を止めるのが大正義」に直接文句言ってるわけでは無いのですが、まあこの説明をよむと、「そもそも中立金利の水準だってわからないんだから機械的に「この金利でOKOK」みたいなので政策するのマズくねえか」という話になっているとアタクシは勝手に解釈した訳です。

でもってこの後ですけど、最初の部分にありましたようにバランスシートの話になりまして、

『The path of policy is also likely to influence plansto shrink the Federal Reserve’s elevated balance sheet.』

というのが始まります。

『The economy is in unfamiliar territory, with a combination of high inflation and tight labor markets not seen in decades. Markets are understandably volatile as they grapple with the many unknowns surrounding the outlook for the economy.』

『Limiting the extent to which uncertainty about the pace of interest rate adjustments contributes to this volatility could be important as balance sheet runoff hits its stride. 』

ということでバランスシートの話をしているのですが、その中でしらっとまた金利の話もしてて、「利上げのペースが訳分らんことによる市場のボラって良くないですよねー」って入れているのがこれまたお茶目。

『Certainly, relative to the last time balance sheet reduction was initiated in 2017, market conditions are considerably more unsettled. To the extent that the strains in the Treasury market can be attributed in part to heightened uncertainty about the path of policy rates, a steady path of rate increases and predictably adjusting this path to incoming data could improve market functioning and facilitate balance sheet runoff.』

で、ここで 「a steady path of rate increases and predictably adjusting this path to incoming data could improve market functioning and facilitate balance sheet runoff.」と思いっきり言ってまして、バランスシートランオフ、という重要な案件を進めるためにも、利上げパスについては(何かその場のノリでエイヤーなのではなくて)データを見ながら「a steady path of rate increases and predictably adjusting this path」ということで、安定的なパスで利上げを行い、そのパスを修正するときはデータを受けて予見可能なパスにすべきである。と言ってまして、どっからどう見てもその場の勢いでエイヤー利上げを行っている現在のFEDの中心的な動きに対して結構な嫌味をぶっこんでるな、と思いましたのでネタにしてみました。

あと1ページ分「ではバランスシートのランオフってどうやるべきなの」という話があるのですが、時間が無くなってしまいましたのでここで勘弁させて頂きます。






2022/09/13

お題「ECBラガルド会見(その2):中立金利水準の話とQTの話に関する質疑についてまとめてみました」

おあおや
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220912/k10013814431000.html
岸田内閣「支持」40% 内閣発足後最低に 「不支持」40%
2022年9月12日 19時00分


〇ECBラガルド会見Q&Aの続きを少々

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2022/html/ecb.is220908~cd8363c58e.en.html
MONETARY POLICY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 8 September 2022

・さすがに「次回の利上げ幅」は誰も聞かないのだが中立金利の質問は多い訳で

あれだけ「フォワードガイダンスは止めました」といったのが効いているのか、次回の利上げ幅が幾らですかという質問が全く今回の会見で無かったのは聞く方もさすがだなと思いましたが、「インフレを引き下げる」と言いまくっている割に利上げしたと言っても金利水準が低くねえか???という質問は多い訳ですし、そもそも金利がどこにきたらそこから先は引き締め的、ってのを示さないとそもそも政策が今どの位置にいるのかもわからんよな。

ということで中立金利絡みの質問はバンバンと色んな方から出てました。昨日引用した一発目の方には見事な意味があるようで意味のない回答をしていましたが、その後も質問は出る訳で。

『I have two questions as well. One: I want to ask you about inflation and interest rates; you've said inflation is far too high, decisive action is needed. Do you expect from today's perspective - and I appreciate it's a difficult thing to say - that the ECB will have to go into restrictive monetary policy to get a handle on inflation?(後半割愛)』

どうなったらインフレを制御する水準になるんですかという見通しは如何?と来ました。

『To your first question: I think it's a process of normalisation that we have started. As I said, beginning in December, out of negative territory in July and moving with this frontloading step in our journey of normalisation towards such rates that will be compatible for us to deliver and ensure a return to our 2% medium-term target. For the moment, we normalise.』

また「昨年12月から正常化プロセスを開始した」とかいう説明ですが、「For the moment, we normalise」と言ってるんだから、これは最低でも正常化と言える所までは金利を上げるよ(ペースとかは知らんけど)という話。

『Once we have reached that level of normalisation that will enable us to have the confidence that we will return to the target of 2% in the medium term, then we will examine what is the situation on the basis of data, on the basis of what monetary policy can contribute to the economy.』

正常化が出来て、物価が2%目標に戻るという信頼が持てるようになれば、その先はデータをみながら、そして金融政策が経済にどのような影響を与えるかを考えながら政策を実施する。だそうですが、じゃあその正常化した水準っていくらなんですかねえ・・・・・・・・

『So we will cross that bridge when we cross that bridge. For the moment, we are actively busy and engaged in normalising our monetary policy and in making sure that we actually return to our 2% target.(後半割愛)』

何か謎に文学的っぽい表現をしているように見えますが、「今は正常化に向けて忙しい」だそうで、とりあえず今回の利上げ水準で正常化(中立金利)近くに来た、という認識ではないような言い方をしています。



後の方で別の方が質問してまして、

『Could I ask a question about the terminal rate? Have you identified the terminal rate? Can you share that with us now, and could you also talk about whether the increments of interest rate rises will get smaller as you get closer to the expected terminal rate?』

ターミナルレートについては定義したの??って質問が。ターミナルレートに近くなるにつれて利上げペースは落ちるのか?というのも聞いてますね。

『What I can tell you for sure is that as we are so far away from the rate that will help us return inflation to 2%, our hikes have to be not only timely but of a magnitude that brings us closer and more quickly towards those rates.』

「we are so far away from the rate that will help us return inflation to 2%」とかエライまた大きく出てますが、「so far away」ってホンマカイナとは思うのですが(欧州の中立金利米国ほど高くないだろと思うので)、利上げ打ち止め感を出したくないのと、中立金利が近いという話をしたくない、というのは分かりましたが、じゃあECBがこのままドンドコと2%とかまで金利上げるのかな???というのは実際に欧州の中立金利ってどの位なんでしょうというのをちゃんと試算してくれる専門家の方(なおこういう時ばっかりはECBのスタッフペーパー見ても真正直に書いているかどうかわからん(さすがに嘘は書かないけれども、真の試算値が政策遂行上不具合があった場合には忖度来るっしょ)のでピュアに中立金利試算している人いないかなーって思う次第です。

まあ一応付け加えておくと、この「we are so far away from the rate that will help us return inflation to 2%」って説明は一つ逃げ口上があって、今回ファーアウェイだと言ってるのは「rate that will help us return inflation to 2%」であって、必ずしも中立金利の事ではない(物価を下げるためなら引き締め的にする必要があるから)ので、結局中立金利に関しては答えない(答えられない、というのが正しいのかもしれませんが)ということなんでしょう。

『Now, a contrario, am I saying here that as we get closer to those rates the incremental interest rate increases will be smaller? No I am not saying that because we will proceed meeting by meeting and on the basis of data. So I don't want to prejudge and to anticipate.』

今後の利上げ幅が小さくなるか?という事に関してはMBMベーシスなのでそんなものは決め打ちできません。

『What I can tell you is that the further away we are, the larger the step we are taking. Which is why we are frontloading now.』

我々が物価を押し下げる金利からより遠い状態だと思えば、利上げのステップはより大きくなる、と言えます、とまあ威勢の良い事威勢の良い事、

『Do I know exactly what is the terminal rate? No. This is a matter that is going to probably agitate debate and everybody will have their view. But it's obviously one that we have to decide again as we get closer and as our forecast tells us whether or not we are reaching our goal; the 2% medium-term target inflation. This is what on every occasion will help us define whether we are at that particular rate.』

で、最後に肝心のターミナルレートですが、これは「皆が各人のビューを持ち寄って毎回の会合で議論していくことで、我々は毎回の会合で物価2%の目標に近づいていっているのか?ということを常に議論していき、その状況が近くなった時点でターミナルレートに対して改めて議論をする」という説明をしていて、何という出たとこ勝負って感じですな。

まあ良く言えば「中立金利水準については予断を持たず、物価動向の推移と先行き見通しを勘案しながら、その状況から政策金利がどの程度緩和的か、中立的か、というのを判断して行って、その判断が中立的な水準に近い、となったら改めて中立金利水準について考えます」って話なので、つまりは「中立金利水準とか言ったって幅のある概念なので、変にドグマを持つのではなく、経済物価状況のアウトカムを見て後付けで判断していくしかないですよね」という話をしております。

これって金融政策の波及ラグがどの程度で見るかによって全然話が違ってくる(特に足元のように利上げ幅が大きい場合)ので、それは今度引き締めからの転換がビハインドになるリスクないですかね???とは思うのですが、説明はそんな感じで「物価のアウトカム見ながら判断する」って話になっております。

そうなると米国と同じ話している感じではあるのですが、米国よりも欧州の方がコストプッシュ要因強い中で、これを文字通り受け止めると引き締め過ぎになってしまう可能性は米国よりも断然高いと思いますけどどうですかねえ・・・・・・・・


・量的引き締めについて

QTの質問も幾つか。

『I have a question on quantitative tightening because clearly that could be also a way to drain liquidity from the system and help you to tame inflation. Have you discussed it? Is that something you are looking at?(後半割愛)』

QTもインフレ抑制に効くと思うんだがそっちの議論はどないで??

『(前半割愛)On the issue of quantitative tightening: what we are focussed on at present is the most effective and most proportionate and most appropriate monetary policy instrument that we can use. We believe at the moment that it is the policy rate. So we are using the policy rate, we will continue using that policy rate in the next several meetings, as I have said, and of course we will look at other monetary policy instruments. At this point in time, it is still premature. It is a matter that we will of course debate amongst members of the Governing Council in due course.』

現在適切なツールは政策金利であって、QTに関して「At this point in time, it is still premature.」と、現時点では実施するのが時期尚早、という話をしています。

まあこれはTPIとかPEPPの再投資とかで欧州圏よわよわ国のお助けオペレーションを用意して、いつでも発動できるようにしている、という中でQTは時期尚早、って事なんでしょうね(そうは言ってないけど)。なお割と明確に否定してますが後で別の方がQTの質問しています。


『I have one additional question on quantitative tightening. Would it be possible for the ECB to end its reinvestments in the APP programme in the near future? The Bank of England, the Fed have initiated QT (quantitative tightening) already for some time.(後半割愛)』

APP(PEPP含めるんでしょうね)の償還再投資を停止してQTへのステップをするのは可能なのか??

『You remember that last July we decided to no longer rely on forward guidance on many aspects, and to work meeting-by-meeting on the basis of data, with the exception of the reinvestment programme on APP and PEPP, for which we still have some forward guidance. So the forward guidance that we have on APP is that maturing securities which were purchased under APP will continue to be reinvested, as long as is appropriate, in order to maintain ample liquidity conditions and an appropriate monetary policy stance.』

ここでナンジャソラとは思ったのですが、「政策金利のフォワードガイダンスは廃止しましたが、バランスシート政策のフォワードガイダンスはまだ生きています」ということだそうです。「先行きの政策の決め打ちするのはイクナイ」という観点で金利のフォワードガイダンスを廃止したんだったら、資産買入も同じ理屈にならんのかね、という気は思いっきりしますが、何か謎の理屈により資産買入のガイダンス、即ち「APPの償還再投資に関しては流動性を供給して、適切な金融政策スタンスを維持するために、適切な限りできるだけ継続する」というのを続けるそうです。いやいや金融引き締めようって言ってるのに何でAPPの償還再投資で流動性を供給するとか言い出しますん。

『For PEPP it's not exactly the same forward guidance, but we also have forward guidance, and we refer to at least the end of 2024 without interfering with our monetary policy stance.』

PEPPの償還再投資のガイダンスも生きてて、「金融政策スタンスを邪魔しない限りにおいて、少なくとも2024年末まではPEPPポートフォリオの償還分の再投資(しかも国別配分に関しては南欧お助けスキームが発動可能)を行う」というのは生きてるそうです。

『Having said that, what we are doing now is focusing and giving priority to the policy rate, because we believe that it is the most appropriate and most proportionate, most efficient instrument that we can use in order to return inflation to the 2% medium-term target.』

金利ツールを使うのはそれが適切だと思っているからです!という説明になっていない説明をしていますけど、まあ結局QT話をすると南欧売られてあばばばばーってなりかねないから、それはそれでマズい事になるので、そっちは変に刺激しない、ってのが本音と見ました。

『We, of course, examine all instruments, and the reinvestment policies that we deploy are part of the instrument, but now is not the time, and we would regard it as premature.』

さっきの質問と同じくで、QT着手は時期尚早(we would regard it as premature)、とまた割とスパッと明言しています。

『We are using the policy rate. It will happen, but on the basis of data, on the basis of our analysis meeting-by-meeting, and once we have determined that these policies of reinvestment, or discontinuing reinvestment, are going to be necessary and appropriate to help us return to the 2% medium-term target.』

今後MBMの精神で毎度確認を行っていって、そのうちに2%目標達成に適切と判断したら、償還再投資に関して、あるいは償還再投資を停止する、などの措置を取ることはあるかもしれませんけど、と留保は点けていますが、やはり南欧諸国売りみたいなのが来るのを防衛しないと行けない、という点は重要視しているのが見て取れます。

でもってですね、TPIについても別の質問が出ていまして、

『(前半割愛)Second question about the Transmission Protection Instrument (TPI): you unveiled details in the last meeting, but nothing has appeared in the Official Journal. Can the TPI be used for now, and if not, why take time to implement it? Is there any question about who bears the financial risk of these operations?』

7月にTPIやるって言ったのにその後実際の実施要項みたいなのが今回も出て無いんだがナンデデスカ??と来ました。

その答えですけど、

『(前半割愛)On your other question on TPI: you know, I don't have much more to say on TPI than I did last time around in July.』

7月から進展なしとな。

『I don't think that you should expect much more. I know that some would like to have masses of information on TPI. TPI has been debated at length, approved unanimously. It has some criteria and some eligibility dimensions. It has a termination point, too. If and when the criteria are met and the eligibility conditions were satisfied, we stand ready to use TPI, no question about it.』

まだ詳細を検討中です、って言ってるのですが、これうがった考えをすれば、やばくなったらその状況に応じたやり方で対処したいから、今時点で詳細なものを出してしまうと、その穴を突かれたときに困るので先出ししない、という後出しオペレーション(詳細だけなら決定会合の理事会を開く必要ないから)を狙ってるのかな、とも思いまして、この話とQTに関して明確に「時期尚早」って言ってるのを見ると、南欧国債叩かれの巻になることを相当警戒していて、そのために流動性供給するのも承知でAPPとPEPPの再投資もするし、TPIは市場の出方で内容を決めるということにしたのかなーなんて思いましたがどうでしょうかね????


ということでまあ会見ネタは(他にも為替とか政府預金付利とかTLTROが金利低すぎ問題とか、物価見通しを外してるだろお前ら問題とかありますが)一旦終わって次はFED前の発言ネタっすかね。

本日はこの辺で勘弁。







2022/09/12

お題「ラガルド会見のオープニングステートメントと会見(の最初だけ):案の定先行き金利の「数字」については一切触れませんな」

インフレで財政撒いたら更にインフレになるんですけどねえ・・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220910/k10013812121000.html
国民民主党 「インフレ手当」1人当たり10万円給付を
2022年9月10日 13時46分

まあアレだ。財政出す分金融を引き締める、っていうんだったら別にいいんですけどね(ニッコリ)。


〇ECBのステートメントとラガルド会見を行けるところまで

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2022/html/ecb.is220908~cd8363c58e.en.html
MONETARY POLICY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 8 September 2022

・ステートメント(のロングバージョン)

ステートメントの冒頭部分は決定事項のご紹介で重複になるので飛ばしまして、

『I will now outline in more detail how we see the economy and inflation developing and will then explain our assessment of financial and monetary conditions.』

のところから拝読。

・経済に関する説明

『Economic activity』から。

『The euro area economy grew by 0.8 per cent in the second quarter of 2022, mainly owing to strong consumer spending on contact-intensive services, as a result of the lifting of pandemic-related restrictions. Over the summer, as people travelled more, countries with large tourism sectors benefited especially. At the same time, businesses suffered from high energy costs and continued supply bottlenecks, although the latter have been gradually easing.』

現状認識についてもステートメントで説明合った通りで、コロナモード緩和による特にツーリズムなどの人間同士のコンタクトのある系のビジネスが好調ですが、一方でエネ価格と供給制約で企業は苦しい。

『While buoyant tourism has been supporting economic growth during the third quarter, we expect the economy to slow down substantially over the remainder of this year. There are four main reasons behind this.』

とは言え今年の残りの期間は「顕著にスローダウンする」よ4つの理由があるよ。

『 First, high inflation is dampening spending and production throughout the economy, and these headwinds are reinforced by gas supply disruptions.』

高インフレが消費や生産にダメージを与えます。高インフレは天然ガス供給の問題によって強化されちゃいます。

『Second, the strong rebound in demand for services that came with the reopening of the economy will lose steam in the coming months.』

パンデミックからの再開に伴う強い需要は向こう数か月で勢いを無くしてしまうでしょう。

『Third, the weakening in global demand, also in the context of tighter monetary policy in many major economies, and the worsening terms of trade will mean less support for the euro area economy.』

グローバル需要が弱まってきており、しかも多くの主要国でより引き締め的な金融政策を取っていることと、ユーロ圏における交易条件の悪化が経済にダメージを与えるでしょう。

『Fourth, uncertainty remains high and confidence is falling sharply.』

先行きが不透明なためコンディデンスが急速に落ちている。

とまあ威勢の悪い話を並べまして、

『At the same time, the labour market has remained robust, supporting economic activity. Employment increased by more than 600,000 people in the second quarter of 2022 and the unemployment rate stood at a historical low of 6.6 per cent in July. Total hours worked increased further, by 0.6 per cent, in the second quarter of 2022 and have surpassed their pre-pandemic levels.』

その一方で労働市場が強いよ(remained robust)と来まして、

『Looking ahead, the slowing economy is likely to lead to some increase in the unemployment rate.』

とは言え、先行きは経済のスローダウンに伴い失業率は若干上がるでしょうと。


・財政支出に対してはインフレ助長するんじゃねえぞって暗に(というか割とストレートに言ってますね

『Fiscal support measures to cushion the impact of higher energy prices should be temporary and targeted at the most vulnerable households and firms to limit the risk of fuelling inflationary pressures, to enhance the efficiency of public spending and to preserve debt sustainability. 』

インフレ対応で財政のお助けが出ていることに関して、しれっとインフレ助長するんじゃねえというのがあるのがお茶目。

エネルギー価格高騰に対する財政サポートは「should be temporary and targeted」とどこかの極東の国のスットコ政党はちょっとここの分をちゃんと読んどけと思う訳ですが、「一時的でターゲットを絞ったものになるでしょう」ってあって、「at the most vulnerable households and firms」最も脆弱な家計や企業に対して一時的でターゲットを絞る形で行う、ってのはなぜかと言えば「to limit the risk of fuelling inflationary pressures」ということで、「インフレ圧力に燃料をぶち込むようなリスクを限定するように」財政出すのもターゲットを絞って一時的にって言ってるわけですな。

でまあ欧米(特に米国)で財政の出し過ぎでいわゆる高圧経済やってたらインフレ止められなくなってしまった、というのがある中、日本はそこから何の教訓も引き出さないで全国民に給付金とか言ってるのが草しか生えないんですけど何なんですかねえ。

ああそれから話は変わりますが、MMTって言ってた人達、財政を引き締めろって話が聞こえてこないんですけどどうなってるんですかね。提唱してた皆さんちょっと学者名乗るの辞めてもらえませんですかねえ。

という悪態はさておきましてこのコーナー最後に、

『Structural policies should aim at raising the euro area’s growth potential and supporting its resilience.』

うーんまあそうなんだが何か空しい。


・物価に関してですが・・・・・・・・・

次は『Inflation』で物価に関して。

『Inflation rose further to 9.1 per cent in August. Energy price inflation remained extremely elevated, at 38.3 per cent, and it was again the dominant component of overall inflation.』

エネルギー価格38.3%上昇ェ・・・・・・でそれが全体のインフレの支配的なコンポーネントだよと。

『Market-based indicators suggest that, in the near term, oil prices will moderate, while wholesale gas prices will stay extraordinarily high. Food price inflation also rose in August, to 10.6 per cent, partly reflecting higher input costs related to energy, disruptions of trade in food commodities and adverse weather conditions.』

石油価格は今後モデレートになると見られるが、天然ガス価格がとんでもない高値を継続するでしょう。食料品価格については8月+10.6%(ひえー)ですが、燃料関連の投入コストや食品輸入の滞り、異常気象などが要因。

・エネ食品価格の上昇が幅広く波及していると言及、ユーロ安にも言及

『While supply bottlenecks have been easing, these continue to gradually feed through to consumer prices and are putting upward pressure on inflation, as is recovering demand in the services sector.』

供給制約が徐々に改善しているものの、エネ食品価格の上昇が消費者物価を押し上げて、インフレに上振れ圧力をかけております。

『The depreciation of the euro has also added to the build-up of inflationary pressures.』

ユーロ安も物価上昇圧力になっています。

『Price pressures are spreading across more and more sectors, in part owing to the impact of high energy costs across the whole economy. Accordingly, measures of underlying inflation remain at elevated levels and the latest staff projections see inflation excluding food and energy reaching 3.9 per cent in 2022, 3.4 per cent in 2023 and 2.3 per cent in 2024.』

「Price pressures are spreading across more and more sectors」と幅広に物価上昇が起きていると認識。


・賃金上昇圧力について・・・・・はこれから更に出るようで

『Resilient labour markets and some catch-up to compensate for higher inflation are likely to support growth in wages.』

労働市場が強くて、物価上昇のキャッチアップの為という要因もあるので、賃金上昇はサポートされることになるでしょう。

『At the same time, incoming data and recent wage agreements indicate that wage dynamics remain contained overall.』

とは言え、現状得られるデータによれば、直近の賃金上昇はそこまで大きくない、と来ているので、これ今後上がったら更にアチャーなのではないかという気がします。


・長期のインフレ期待は2%マンデートに整合的な水準で推移している

『Most measures of longer-term inflation expectations currently stand at around two per cent, although recent above-target revisions to some indicators warrant continued monitoring.』

ホンマカイナという感じですが、まあ確かにお賃金がそこまでホイホイあがっていないのであれば、「長期の」インフレ期待はまだそんなに上がっていない、ともいえますね。


・次がリスクについてだが経済下、物価上で書いてることは順当

『Risk assessment』である。

『In the context of the slowing global economy, risks to growth are primarily on the downside, in particular in the near term.』

経済のリスクは特にニアータームで主にダウンサイドである、と来ましてまあそらそうよという話なので以下引用だけ。

『As reflected in the downside scenario in the staff projections, a long-lasting war in Ukraine remains a significant risk to growth, especially if firms and households faced rationing of energy supplies. In such a situation, confidence could deteriorate further and supply-side constraints could worsen again. Energy and food costs could also remain persistently higher than expected. A further deterioration in the global economic outlook could be an additional drag on euro area external demand.』

ウクライナ戦争、供給制約、海外経済の悪化を挙げてます。

『The risks to the inflation outlook are primarily on the upside.』

物価のリスクは上。なおこっちはニアータームとかそういう話ではなく全般的にアップサイドなんでしょうね。

『In the same way as for growth, the major risk in the short term is a further disruption of energy supplies. Over the medium term, inflation may turn out to be higher than expected because of a persistent worsening of the production capacity of the euro area economy, further increases in energy and food prices, a rise in inflation expectations above our target, or higher than anticipated wage rises. However, if energy costs were to decline or demand were to weaken over the medium term, it would lower pressures on prices.』

ここでも(ECB間にネタにしたシュナーベルやビルロワガドローの話と同様に)インフレ期待のアンカーが上に外れるリスクを指摘しています。


・ファイナンシャルコンディションでは物価上昇に伴う企業の借入需要拡大の話がちょっと興味深かった

次の『Financial and monetary conditions』に行きます。

『Market interest rates have increased in anticipation of further monetary policy normalisation in response to the inflation outlook.』

市場金利が上がったよ。

『Credit to firms has become more expensive over recent months, and bank lending rates for households now stand at their highest levels in more than five years. In terms of volumes, bank lending to firms has so far remained strong, in part reflecting the need to finance high production costs and inventory building.』

貸出の状況についてほほうと思ったのは「In terms of volumes」以下の所で、企業は生産コストの上昇や在庫積み増しの為の資金需要が高まっており、それによって銀行貸出が伸びている部分があるとのこと。

『Mortgage lending to households is moderating because of tightening credit standards, rising borrowing costs and weak consumer confidence.』

家計向けモーゲージ貸出はモデレートしてきているそうです。


・でもってまとめ

『Conclusion』

『Summing up, we raised the three key ECB interest rates by 75 basis points today, and expect to raise interest rates further, because inflation remains far too high and is likely to stay above our target for an extended period.』

声明文(決定事項をご連絡した方)にもあったように、「物価が高すぎで相応の期間(for an extended period)目標水準よりも高く推移すると見込まれるので」「今後も利上げを継続する」との説明。

『This major step frontloads the transition from the prevailing highly accommodative level of policy rates towards levels that will support a timely return of inflation to our two per cent medium-term target.』

これまでの緩和的な金融政策から、インフレを2%に持って行く(=下げる)ための金融政策(=引き締め的な金融政策)への移行への道です、といってるので最低でも中立金利(ちなみにビルロワガドローさんによれな「1−2%」とかアバウトな数字になりますが・・・・・・・・)以上には上げますって言ってるようなもんです。

『Our future policy rate decisions will continue to be data-dependent and follow a meeting-by-meeting approach. We stand ready to adjust all of our instruments within our mandate to ensure that inflation returns to our medium-term inflation target.

We are now ready to take your questions.』

で、例の「データ次第だし、各会合毎に判断する」という出たとこ勝負という説明をして終了です。

質疑応答に入ります(ちょっとだけになって恐縮ですが)


・今回50とか100とかいう議論は無かったのか&今回の利上げでのターミナルレートは???

というのが一発目の質問です。

『Could you give us a flavour of the Governing Council's discussions, the arguments for and against, that led to today's decision to raise rates by 75 basis points and not for example by 50 or 100 basis points?』

『Then my second question: from the present standpoint how close to both the neutral rate of interest and the expected terminal rate does today's decision bring us, in your view?』

最初のはまあマクラみたいな感じですが、本命は後半の「中立金利っていくら??」「今回の利上げのターミナルレートはいくら??」ですな。


ラガルドさんの会合。

『I'll take them in turn. On your first question: the Governing Council unanimously decided to raise the three key ECB rates by 75 basis points.』

75は全員一致だそうです。

『We had different views around the table, a thorough discussion but the outcome of our discussion was a unanimous decision. So how did we come to that decision?』

参加者のビューは様々だったが結論では一致と。

『As I have said before, and as I have repeated in that monetary policy statement, since our last July meeting we are data dependent and operate meeting by meeting. This is the methodology that we adopt. So we were presented by staff with their projection. We had the inflation numbers and the growth outlook, of course. So in the face of these extremely high numbers - the last [inflation] reading was 9.1% [year-on-year] for a monthly reading, but if you look at the last ten readings, they were the last ten highest readings in turn - we had a good analysis of the decomposition of the sources of inflation. A good analysis of where the inflation actually lies and what products are particularly affected.』

出たとこ勝負アプローチですが、今回はスタッフの四半期定例の分析と先行き見通しがありました。ということでそこから以下延々と物価の現状について説明していますが、高インフレの数値を叩きだす要因は一部の品目の極端な上昇によるもの、という説明をしています。

『Of course energy is still the major source of inflation - [energy price inflation is] 38.3% compared with a year ago - slightly moving down in these August numbers, but it is still a dominant factor, as is in the increase in food.』

『But we also have an inflation that spreads across the whole range of products in particular in the service sector, where supply factors are less prevalent and where demand plays a role. So we have a range of products and services that are actually north of 4% [inflation rate].』

とは言えいろんな品目に物価上昇が広がっている、という話をしているのは声明文と同じ。

『In the face of an inflation that is extremely high, that is of a magnitude and persistence across sectors of that nature, obviously determined action had to be taken. This is very much in line with our determination to actually normalise monetary policy as we started back in December. So for those who consistently repeat that the European Central Bank is lagging behind, I contend that we are on a journey that started back in December where we decided to put an end to the asset purchases, the PEPP and then the APP, to move out of negative interest rates as we did back in July and now to continue on our normalisation path, with a frontloading exercise that we conducted today, because we believe that the deviation from target is such that it warrants this frontloading.』

物価が高いしそれが続きそうだから金融政策の正常化ステップを昨年12月から開始しており(PEPPなどのテーパーリング開始)、7月にマイナス金利を止め(と言ってるのでMRO金利ではなくて預金ファシリティのマイナスがマイナス金利政策です、って言ってるんですがこれは違和感ない、今後はまた別問題になりそうだが)、さらに今回の決定になりました。

『We also decided that this was not an isolated decision, but that we would raise interest rates further. We didn't say that we would raise interest rates by 75 [basis points], as if 75 was the norm; it is not. We will determine meeting by meeting on the basis of data how we reach that level of interest rates which will actually return us to the 2% target in the medium term. It is not there at the moment. Our forecast at the end of December [2024] - which is not the medium term but it's the end of our projection exercise - is at 2.3%. We are not there, so we have more journey to cover going forward.』

今回の決定が単品のものではない、と言ってるので今後も利上げするんだけど、別に75bpが標準でもないし、その辺は状況に応じて、とさすがにもう次回の予告ホームランは出さない模様。

『You were interested in the flavour of the Governing Council meeting; we had a very cordial, effective, deep discussion on all these matters and that certainly helped us on the basis of the proposals by staff and the recommendation by our chief economist Philip Lane, to actually go collectively in the direction of this 75 basis points hike.』

色々と議論しましたがレーン理事の提案する75に全員賛成しました。と何か分かったような分からんような回答をしております。


でもって問題の後半の中立金利ですが、前半にあれだけああだこうだ言っておきながら・・・・・・・・・・・

『Now, you asked me about how close we are to “the rate”. Whether you call it a neutral, a terminal is obviously different but I would like to say this:』

中立金利とターミナル金利は別物ですが私は以下のように申しあげます、っていや中立とターミナルどっちでもいいけど答えてっていう質問だったじゃろうに、とは思いますがその次。

『what I know today is that zero is not the neutral rate and that where we are is not the neutral rate.』

今私が分かっていることは、「0金利は中立金利ではないし、今の政策金利も中立金利ではない」ということである(キリッ)」というズコーとズッコケてしまう回答キタコレ。

『We are heading in that direction. It takes frontloading, it will take further hikes in the next several meetings of a magnitude and at a pace that will be determined meeting by meeting and on the basis of the data that we receive. But we are certainly heading there because that is where we believe that we will actually deliver on our 2% medium-term target as indicated in our strategy.』

今後さらに何回かの会合によって金利を引き上げる、ああその引き上げペースとかそういうのは出たとこ勝負なんですけどね、その数回の利上げによって、おそらくそっちの方に向かっていくでしょう。それについては我々がアクチュアルに2%の物価を皆様にお届けできるように行っていることなので、それに向かっているということです。


・・・・・・と先行きの話の方がどう見ても聞きたい質問ですが、案の定というか何というかで、先行きの質問にはまるで言質を与えない、というスタンスが一発目の質疑応答から非常に良く分かる内容でした。

というところで時間切れなので続きは明日か後日。





2022/09/09

お題「ECB75bp利上げで今後も利上げっぽいですな、説明ポンチ絵と声明文を確認しました」

謹んでおくやみ申し上げます。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220909/k10013810241000.html
イギリス エリザベス女王死去 96歳
2022年9月9日 5時30分

昭和天皇のご在位期間に摂政宮をおつとめになられていた期間を通算すると68年強少々、ということでありますので女王陛下の在位70年ってのもまた歴史一つ分くらいの長さでございますな。

〇ECB75bp利上げということでまずは「5分で読める今回の金融政策決定」

トップページを見に行くと必ずこの諸葛孔明の罠に釣られクマーとなってしまう今のページ構成(笑)。

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2022/html/mopo_statement_explained_september.en.html
Our monetary policy statement at a glance - September 2022

ときまして、

『We raised our interest rates by 0.75 percentage points

This is a major step to make sure inflation returns to our 2% target. More steps will follow. They will depend on how the inflation outlook develops.』

と始まりますが、まあ従来からこの絵柄は割と分かりやすかったのですけど、今回の絵は従来にも増して分かりやすくなっていまして、「高インフレ退治行くぜー」ってのを示していて大変に結構。普通真似っ子というのは内容がよりよくなったりすることが多い(ので日銀の「5分で読めるマイナス金利」が改善された真似っ子がこの説明ようブローシャーなのですが)と思うのですが、日本銀行の展望レポートの絵と比べてみた時に、何が言いたいのかが物凄く良く分かる絵柄になっている、というのがこれまた今回の特徴かなと思います。つまりこの分の絵柄はまあ微妙にナンノコッチャ(今後利上げの階段を上るよ」とはいってるけど)なのですが、この次の・・・・・・・

『What is going on in the economy?』って所の絵柄が大変結構でして、

『Inflation remains far too high and will stay high for a while』

とあって物価上昇に頭を抱える家計、というイラストがあって大変に結構であります。

『Extremely high energy prices, especially for gas, are pushing up inflation. Supply problems of firms, demand from consumers and a weaker euro are also driving up prices in more and more sectors of the economy.』

ガス価格を始めとするエネルギー価格がエクストリームにあがってて、企業の直面する供給制約、消費者の需要拡大、ユーロ安が価格を引き上げるドライバーになっており、しかも経済の数多くのセクターにその引き上げが及んでおります。ときまして右(って書いてもアレですけどURL先見て下さいませ)の絵になる、という大変に分かりやすいインフレ高騰に対する怪しからんというスタンス表明。


しかしながら経済の基調は強い、というのがあって、

『The economy is holding up for now, mainly because of tourism

People are travelling again and spending money on services. A record number of people have jobs. But businesses are suffering from high energy prices and remaining problems with shortages of materials and equipment. The outlook for the coming months is worsening.』

足もとでは観光を中心に経済が良くなっている、ってののイラストも中々お茶目。ただ企業の投入コスト上昇と供給制約問題は先行きの見通しを暗くしておりますよと。

ということでその結果、

『The economy will slow down substantially later this year

High inflation is dampening firms’ production and people’s spending. The supportive effect of the reopening of our economy will weaken. Less demand from the rest of world is weighing on the economy. People and businesses are much less confident because the outlook is very uncertain.』

一々付けてあるイラストがお茶目で、お先真っ暗という程ではないですが、まあ先行きどう見ても大雨です本当にありがとうございました、って絵を掲載してますな。絵に感心してないで説明文みますと、なにげに「高インフレは企業の投入コストの引き上げ」という説明が入っていまして、とにかく高インフレダメ!ゼッタイ!!というのが良く分かる内容になっております。


で。次が定例のスタッフによる四半期見通し改定の説明です。

『How do we see the economy developing?』ってところからです。

『We expect economic growth to slow down substantially before stabilising again.

Euro area economic growth in 2021 and projections for this and the coming years (projections from September 2022)』

22年(いうまでもありませんが暦年です、為念)+3.1%→23年+0.9%まで見ております。24年の+1.9%は願望願望。

『We expect inflation to remain high for now and to only slowly come down.

Euro area inflation in 2021 and projections for this and the coming years (projections from September 2022)』

22年+8.1%、23年+5.5%、24年+2.3%ってこれはまた辛い見通しですね・・・・・・・・



〇声明文を先に読んでみる

でまあ問題は75bp上げて様子見なのか更に行くのか、という話な訳ですが声明文に進みましょう。

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2022/html/ecb.mp220908~c1b6839378.en.html
PRESS RELEASE
Monetary policy decisions
8 September 2022

第1パラは決定内容の紹介。

『The Governing Council today decided to raise the three key ECB interest rates by 75 basis points.』

ということで、ECBのトップページの下にある各種主要金利の表は既に書き換えになっていまして、

『Interest rates

Marginal lending facility 1.50 %
Main refinancing operations (fixed rate) 1.25 %
Deposit facility 0.75 %

14 September 2022』(ここだけECBのトップページより引用

ということで、当座預金への付利金利が75bpまで上昇しました(と思ったらその中に一部超過付利の2層構造廃止があるけどそれは声明文の所の最後の方で)ので、ゼロ金利だのマイナス金利だのというのはこれで普通は過去の世界になるというものです。(ただ昔の日本の時みたいに、10bp当座預金付利があってもAPPの馬鹿拡大の影響でビルの金利がマイナスに突っ込む、という地獄のような事は物理的にはアリエールですが、今回は「利上げのステップ」にのるのでそんなことはないと思いますけど)。

『This major step frontloads the transition from the prevailing highly accommodative level of policy rates towards levels that will ensure the timely return of inflation to the ECB’s 2% medium-term target.』

思いっきり明確に「highly accommodative」から「the timely return of inflation to the ECB’s 2% medium-term target」への転換である、「This major step frontloads the transition」と明示的に謳っております。まあ前回までも威勢の良い言い方をしましたが。

でもって先日ネタにしたECB高官講演なんかを見てると、EU圏の中立金利は1−2%(って随分広いけど)程度じゃネーノ、なんてのもありまして、MRO金利が125なので、これで中立の下の方に掛ったか掛からないか、位の認識ですかね。

『Based on its current assessment, over the next several meetings the Governing Council expects to raise interest rates further to dampen demand and guard against the risk of a persistent upward shift in inflation expectations.』

でもって、この説明と、さっきの「major step frontloads the transition」という字面を見ますと、中立金利まで引き上げてから様子を見る、などという微温的態度は採らずに、「raise interest rates further to dampen demand and guard against the risk of a persistent upward shift in inflation expectations」と来ました。

7月利上げ時の声明文はこちらになりますが、
https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2022/html/ecb.mp220721~53e5bdd317.en.html

今引用している部分に相当する記述は7月声明文では以下のように記載されています。

『The Governing Council judged that it is appropriate to take a larger first step on its policy rate normalisation path than signalled at its previous meeting. This decision is based on the Governing Council’s updated assessment of inflation risks and the reinforced support provided by the TPI for the effective transmission of monetary policy. It will support the return of inflation to the Governing Council’s medium-term target by strengthening the anchoring of inflation expectations and by ensuring that demand conditions adjust to deliver its inflation target in the medium term.』(この部分だけ直上URL先7月声明文より)

前回の利上げは「to take a larger first step on its policy rate normalisation path」を早める一貫でございましたし、『It will support the return of inflation to the Governing Council’s medium-term target by strengthening the anchoring of inflation expectations and by ensuring that demand conditions adjust to deliver its inflation target in the medium term.』ということで、インフレ期待に対する文言が、「strengthening the anchoring of inflation expectations」ということで、「インフレ期待のアンカーを強める」だったのに対して今回「guard against the risk of a persistent upward shift in inflation expectations.」となっていて、「インフレ期待の上振れリスクに対してガードする」と明らかに言い方が強いというか警戒感満載という書き方になりました。

これは一昨日にネタにしてビルロワ・ド・ガローフランス中銀総裁のジャクソンホール講演でも「インフレ期待」の話がしれっと大きめの扱いになっていた事に一致しますな、という感じでして、ユーロ圏はインフレ期待の上振れによる「高インフレ体質」状態になる事を非常に強く懸念している、ということになります。

でもってこの「インフレ期待」ってのは厄介なことに実際の数字が幾らというのが出て来る指標なんぞもございませんですので、いったんこれを言いだすと結構引っ込みがつかなくなる代物だったりするので、結構なところまで物価がおちついてこないと「アンカーされているしヘーキヘーキ」って言いにくくなる気もしますが、まあその辺は裁量の世界になるな、って思います。

また、今回は明確に引き締め方向へのステップ、と言ってるし、高インフレに対する攻撃的スタンスはさっきのポンチ絵シリーズで良く分かりましたので・・・・・・・

『The Governing Council will regularly re-evaluate its policy path in light of incoming information and the evolving inflation outlook. The Governing Council’s future policy rate decisions will continue to be data-dependent and follow a meeting-by-meeting approach.』

でたなMBM。まあここは質疑応答を見ないと、次回の予告ホームランとかそういうのもうやらない方が良いし、多分そんなのラガルドも言わないと思うんですが、会見まで今朝は明らかに時間が間に合わないので勘弁して下さいすいませんすいません。

『The Governing Council took today’s decision, and expects to raise interest rates further, because inflation remains far too high and is likely to stay above target for an extended period.』

とは言え、何も書かないという選択肢もなくて、なぜなら今回インフレ「期待」を2%にどう縛り付けて、期待という一種の魔物を封じ込めるか、ということを言ってるんですから、打ち止めとか一旦停止感はまだまだ全然出せない、ということで、先行きも状況を見ながら上げていくよ、となる訳です。


でもってここからが定例のスタッフ見通し四半期改定の結果&近いタームの先行き見通しです、さっき5分で読める今回の政策決定のコーナーにございましたけどねー。

『According to Eurostat’s flash estimate, inflation reached 9.1% in August.』

ひえーーーーーー。

『Soaring energy and food prices, demand pressures in some sectors owing to the reopening of the economy, and supply bottlenecks are still driving up inflation. Price pressures have continued to strengthen and broaden across the economy and inflation may rise further in the near term.』

さっきのポンチ絵付説明にあった通りですね。

『As the current drivers of inflation fade over time and the normalisation of monetary policy works its way through to the economy and price-setting, inflation will come down.』

先行きインフレが落ち着くであろう、という見通しですけど、今の各種物価押し上げドライバーの要因が弱まって、金融政策の正常化がワークしていけば、とあるのがこれまた微妙だなと思いました。

つまりですね、ここで「ポリシー・ファーミング」みたいな言い方をするんだったら別にここの文言でアタクシは引っ掛かりはしないのですが「ノーマライゼーション」と書くとAPPは縮小するんですけど、政策金利自体はノーマライゼーション、即ち中立金利までの利上げの事を指しますわな。

確かに今回利上げしてもまだ中立金利水準に届いてない可能性の方が高そうなのですが、今後利上げしていくのであれば、ここの部分は「ファーミング」を使うとかより強く言いたければ「ファーザー・ファーミング」と入れるべきところなので、そう考えますとECBちゃんとしては、「インフレ期待の上昇は何としても排除しないといけないので威勢の良い事は言うんだけど、じゃあ引き締め水準をドンドン利上げして行けるか、ということになると一抹の不安があります」ってことで、ここの文言で「ノーマライゼーション」を使ったんじゃないかと思いました。まあ変に深読みし過ぎなのかもしれませんが。

とまあ妙に引っ掛かりましたが次はスタッフのマクロ経済見通しになります。さっきから物価の話が先に来ていますけどまずは物価。

『Looking ahead, ECB staff have significantly revised up their inflation projections and inflation is now expected to average 8.1% in 2022, 5.5% in 2023 and 2.3% in 2024.』

次は経済です。

『After a rebound in the first half of 2022, recent data point to a substantial slowdown in euro area economic growth, with the economy expected to stagnate later in the year and in the first quarter of 2023.』

年後半から23年前半までは景気の停滞を想定しています。その理由はさっきのポンチ絵のとおりで、

『Very high energy prices are reducing the purchasing power of people’s incomes and, although supply bottlenecks are easing, they are still constraining economic activity.』

さっきあった奴ですが、声明文ではこれに加えてウクライナ戦争にも言及しています、そらそうよ。

『In addition, the adverse geopolitical situation, especially Russia’s unjustified aggression towards Ukraine, is weighing on the confidence of businesses and consumers.』

でもってスタッフフォーキャストですが、数字自体はさっきのポンチ絵の通り。

『This outlook is reflected in the latest staff projections for economic growth, which have been revised down markedly for the remainder of the current year and throughout 2023. Staff now expect the economy to grow by 3.1% in 2022, 0.9% in 2023 and 1.9% in 2024.』

ということで物価見通し盛大に上げ、経済見通し盛大に下げ、なのに利上げだし今後も利上げ、というECB厳しい状況でございます。

最後にTPIとかのフラグメンテーション対策の話です。

『The lasting vulnerabilities caused by the pandemic still pose a risk to the smooth transmission of monetary policy. The Governing Council will therefore continue applying flexibility in reinvesting redemptions coming due in the pandemic emergency purchase programme portfolio, with a view to countering risks to the transmission mechanism related to the pandemic.』

説明文はここまで。以下は決定内容の紹介です。


最初は『Key ECB interest rates』です。

『The Governing Council decided to raise the three key ECB interest rates by 75 basis points. Accordingly, the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will be increased to 1.25%, 1.50% and 0.75% respectively, with effect from 14 September 2022.』

はいそうですね。

『Following the raising of the deposit facility rate to above zero, the two-tier system for the remuneration of excess reserves is no longer necessary. The Governing Council therefore decided today to suspend the two-tier system by setting the multiplier to zero.』

あ、預金ファシリティの2層構造・・・・・・・

預金ファシリティの2層構造、とか言い出すとさすがにそこを一瞬で思い出せないのですが、これ確か追加利下げした時のお助け措置だったと思うので、預金ファシリティがプラス付利になったんだから今更上乗せ金利もないだろ、って話だと思いましたが、ちょっと調べておきます今朝は時間が(汗)。まあ誰か説明してると思いますけど(安直)。


次がAPPの扱いです。『Asset purchase programme (APP) and pandemic emergency purchase programme (PEPP)』

『The Governing Council intends to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the APP for an extended period of time past the date when it started raising the key ECB interest rates and, in any case, for as long as necessary to maintain ample liquidity conditions and an appropriate monetary policy stance.』

今回の利上げ行われましたが、APPの償還再投資は継続のようですね。

『As concerns the PEPP, the Governing Council intends to reinvest the principal payments from maturing securities purchased under the programme until at least the end of 2024. In any case, the future roll-off of the PEPP portfolio will be managed to avoid interference with the appropriate monetary policy stance.』

PEPPの買入の償還再投資は少なくとも2024年まで継続するし、その後のロールオフにおいても市場に配慮してやっていくよ、というのも同じ。

『Redemptions coming due in the PEPP portfolio are being reinvested flexibly, with a view to countering risks to the monetary policy transmission mechanism related to the pandemic.』

これはTPIを投下する前に先に投下できるフラグメンテーション対応ツールで、PEPPの償還再投資でお助け買入を行う可能性がありまっせというこれも従来通りの話。


次がMROとか。『Refinancing operations』ってあります。

『The Governing Council will continue to monitor bank funding conditions and ensure that the maturing of operations under the third series of targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III) does not hamper the smooth transmission of its monetary policy. The Governing Council will also regularly assess how targeted lending operations are contributing to its monetary policy stance.』

この辺はTLTROの話で、特に何か決め打ちしている訳でもないですが、ファンディング市場の動向とか見ながら、ファンディング目詰まりでアイヤーみたいなことが起きないようにしまっせ、というような話をしています。

というわけで、最後がまとめ。『***』ってのがあって、

『The Governing Council stands ready to adjust all of its instruments within its mandate to ensure that inflation stabilises at its 2% target over the medium term. The Transmission Protection Instrument is available to counter unwarranted, disorderly market dynamics that pose a serious threat to the transmission of monetary policy across all euro area countries, thus allowing the Governing Council to more effectively deliver on its price stability mandate.』

まあこれは定型文的なエイエイオー!ってな感じです。

『The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 14:45 CET today.』

ということですが、以下時間が無いのでラガルドさんの会見はパスですスイマセン。







2022/09/08

お題「ブレイナード講演は普通の普通に「頑張って引き締めながら物価上昇抑制しますねん」だと思うのだが」

円高(と日本の高関税)を生かして週末香港弾丸買い物ツアーとかやっていた時代が昔はあってのう・・・・・・・
https://jp.reuters.com/article/japan-tourim-yen-idJPKBN2Q811O
2022年9月7日7:35 午後
アングル:円安でインバウンド期待、中途半端な水際対策に不満の声

『しかし、入国者にはビザ(査証)取得が義務づけられたままで、個人旅行もいまだ解禁されず、せっかくの円安が生かしきれないと不満の声が聞かれる。』(上記URL先より)

貧乏国になったもんですけど、輸入価格も上がるから食い物とかでも碌なもん食えなくなる前に美味いものくって冥土の土産にしないといけませんなあ。

〇市場雑メモ:ドル円ェ・・・・・・・・・・・

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220908/k10013808411000.html
円安進む NY市場 一時1ドル=144円台後半に 約24年ぶりの水準
2022年9月8日 5時35分

『7日のニューヨーク外国為替市場ではアメリカで大幅な利上げが続くとの見方から円安が進み、円相場は一時、1ドル=144円台後半と145円に迫る水準まで値下がりしておよそ24年ぶりの円安水準を更新しました。』(上記URL先より、以下同様)

だいたい昨日ふと見たら144円抜けてて、あれ何か大台の数字ってこれで良かったっけと( ゚д゚)と見てたらやっぱり1円以上動いてるじゃんナンヤソラ状態だったわけですが。

『7日のニューヨーク外国為替市場ではアメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会による大幅な利上げが続くという見方から、日米の金利差の拡大が意識され、円を売ってドルを買う動きが強まりました。このため、円相場は一時、1ドル=144円台後半と、145円に迫る水準まで値下がりして1998年8月以来、およそ24年ぶりの円安水準を更新しました。』

逆介入!逆介入!!と思いますけどしかしまあ何ですな、

『円相場は、今月1日に1ドル=140円台をつけたばかりで先月下旬にFRBのパウエル議長が講演で利上げを続ける姿勢を鮮明にして以降、円安が急速に進んでいます。』

とまあそんな有様ですが、さすがにここまで来ると輸入物価への影響だって甚大だし、そうなると食品とか家電とかの財がまたバコーンと上がって生活直撃だし、円安になると資材調達やら資源輸入だって通貨安のせいで確保競争の条件が苦しくなるしで、まあこれが安倍ちゃんの残して下さったレガシーな訳ですけれども、さて「梃子でも動かん」というのはこの数か月で市場に大認識された黒田総裁ですが、任期まで無事に逃げ切れるんですかねえ、って思います。

たぶんですね、安倍ちゃんの国葬までは安倍ちゃんの負の遺産とかそういう事は口に出さない(だしたら何で国葬するねん話になる)でしょうけれども、あまりんを表舞台に返り咲かせて早速ボロをださせて潰す、みたいな結構陰湿なプレイをする岸田さんのことですから、徐々にその陰湿パワーの矛先が日銀に向く(安倍ちゃん直接攻撃の前に「勝手に円安助長政策をした」という形で間接的に安倍ちゃん攻撃をする素材としては一番目立ちますからねえ)可能性あるんじゃなかろうか、と陰湿なアタクシは思う訳ですがさてどうでしょ。


・・・・・ま、今月のMPMはコロナオペ云々だけで逃げちゃうでしょうけど、問題は10月のMPMになります。

つまりですね、これもまあ「貧すりゃ鈍す」を絵に描いたような展開なのですが、展望レポートの物価見通しの推移ってですね、

4月:2022年度平均のコア見通しを2%に乗せておくと政策修正に関するツッコミを受けるから、それを回避するために+1.9%という低めにも程がある数値を置いた。あとコアコアCPIの見通しを出すことによって、コアCPI見通しが高いのはあくまでも一時要因というのをアピールしようとした

7月:足元物価上がってしまったので、低めに置いた4月の物価見通しを変更せざるを得なくなり、しかもそれまで言ってた資源価格や国際商品市況が4月→7月で商品ごとの入り繰りはあるけど概ね横ばい圏内で推移したし、企業物価指数などを見てもどっからどう見ても「為替円安」を理由にせざるを得なくなり「年度の3か月が終わる段階で年度の物価見通しを+0.3%の大幅引き上げをしなければいけなくなる。そしてコアコアの見通しが「4月の時よりも見通し期間中における上昇角度が平たんになる」という不自然な見通しをだす。おまけにコアコアも段々強くなってきたので、来年にならないと勝負がつかない筈の「賃金上昇」を連呼しだす

とまあこんな感じで、「黒田様が政策の微修正すら許さないと仰せになっているので、それに合わせた物価見通しを作らないといけない」というカルト教団もビックリのムーブをしているので、あれだけ4月にコアコア言って置いて7月になったら賃金賃金、とまあ一貫性は無く、政策反応関数も存在しない説明してるんですよね。


・・・・・・で、これ7月に上方修正し、しかもその要因が為替円安、ってのを認めてしまった以上、7月展望以降一段と円安になり、日銀集計の基調的な物価指数も上がる中、日銀は何といって屁理屈を付けて来るのか、というのは今から大変に楽しみにしております。

いずれにせよ、7月の展望レポートの時点で「円安の影響で物価見通しを手前だけ上方修正した」というのをやってしまった日銀ですので、今回物価見通しを引き上げたあと、23年度の+1.4に下がる(キリッ)ってのどう始末付けるんでしょうかねといのは楽しみですが、どうせ日本最高の屁理屈構成能力をお持ちの日銀様のことですから、前の屁理屈との整合性は碌に取らないで(というか取ったら説明できない)なんか美しい屁理屈を繰り出してくるんでしょうね、いや楽しみ楽しみ(吐血)。

などと楽しんでる場合も出なくて。こんなことしている間にも日本国の対外的にみた貧乏国家ムーブはさらに続いて行くわけでありまして、もはやここまで来ると国賊と申し上げたくなるし、国賊を全力でお支え申し上げてる家臣の皆さん本当に大事なのは何であるか(だいたいお前らの主君は政治的に押し込まれた落下傘じゃろ)というのをよくよく考えまして、日本の昔からある美しき伝統「主君押籠」を発動させた方がエエンチャウノと思ってしまいますが(全力で個人の妄想ですよ念のため申し上げますが)まあ無理じゃろな。



〇ブレイナード副議長講演をサラサラと確認

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20220907a.htm
September 07, 2022
Bringing Inflation Down
Vice Chair Lael Brainard
At the Clearing House and Bank Policy Institute 2022 Annual Conference, New York, New York

題名が豪快過ぎてこれは読めというお告げに違いないので読む。

・インフレ期待を2%でアンカーして、物価を2%に下げていく

最初のうちはご挨拶みたいなもんで、

『Over the past year, inflation has been very high in the United States and around the world (figure 1). High inflation imposes costs on all households, and especially low-income households. The multiple waves of the pandemic, combined with Russia's war against Ukraine, unleashed a series of supply shocks hitting goods, labor, and commodities that, in combination with strong demand, have contributed to ongoing high inflation.』

『With a series of inflationary supply shocks, it is especially important to guard against the risk that households and businesses could start to expect inflation to remain above 2 percent in the longer run, which would make it much more challenging to bring inflation back down to our target. The Federal Reserve is taking action to keep inflation expectations anchored and bring inflation back to 2 percent over time.1』

と最初のパラはご挨拶のマクラですが、この最後の一文、「The Federal Reserve is taking action to keep inflation expectations anchored and bring inflation back to 2 percent over time.」と来ているのがおもしろいかな、とアタクシは考えます。

つまり、以前はそんなにインフレ期待を連呼することは無く、物価をさげまっせ〜って感じだったのですが、ここには想像するに2つの要因があって、@インフレ期待の動向が怪しく(上振れ)なっているのがマズーである、A物価が中々思うように下がってくれないので物価を2%にするばっかり連呼していると「ゆうだけで結局できてないじゃん」という批判を食らいやすくなるのでインフレ期待の話も殊更に加えるようになった、の合わせ技なんじゃないかな、と勝手に妄想します。どうなんですかね〜。


・時間もアレなので手抜きですっ飛ばしまして物価の先行きに行きます。

2パラ目、『While last year's rapid pace of economic growth was boosted by accommodative fiscal and monetary policy as well as reopening,』から始まるところと、その先の第7パラグラフは、これまでの物価上昇のドライバーが何であったか、また重要な個別品目(エネルギーと食品)に関して何の要因でインフレになってそれが持続してるのか、というような話をしていますが、今日はそこを律義に読んでると時間が無くなると思うので飛ばしてその先に行きます。

『How long it takes to move inflation back down to 2 percent will depend on a combination of continued easing in supply constraints, slower demand growth, and lower markups, against the backdrop of anchored expectations.』

2%に向けて下がるまでどのくらい時間が掛かるか、ということで供給制約動向、需要の伸びの鈍化状況、インフレ期待がアンカーされている中でが企業の価格設定におけるマークアップの鈍化(するはずなのでその)状況、ってな話をしております。、

『With regard to supply constraints, a variety of indicators are showing signs of improvement on delivery times and supplies of some goods. In addition, labor force participation showed a welcome increase in the August employment data, particularly in the boost in participation among women in the core working years of 25 to 54 years of age. Even with this improvement, the participation rate is still 1 percentage point below its pre-pandemic level, well in excess of the decline in the participation rate that would have been expected due to retirements in the absence of the pandemic.』

供給制約、と言ってもサプライチェーンんのお話ではなく労働需給の方の供給バランスについて説明しているのが味わいあります。もはやサプライチェーン云々よりも労働市場動向の方が重要ということで、どう見てもホームメイドインフレです本当にありがとうございました。んじゃ次のパラ。

『Reductions in markups could also make an important contribution to reduced pricing pressures. Last year's rapid demand growth in the face of supply constraints led to product shortages in some areas of the economy and high margins for many firms. Although we are hearing some reports of large retailers planning markdowns due to excess inventories, we do not have hard data at an aggregate level suggesting that businesses are reducing margins in response to more price sensitivity among customers. At an aggregate level, in the second quarter, measures of profits in the nonfinancial sector relative to GDP remained near the postwar peak reached last year.7』

これはまあホンマカイナという話ですが、企業の価格設定行動として投入コスト上がるんだから販売価格引き上げるよ、てのがマークアップの大体の概念だと思いますが、「消費者のインフレ期待が低位で安定していると、マークアップでドカンと価格を上げてしまうと客離れを起こすので、企業もインフレ期待を大きく超えたマークアップできない(のえ物価がだんだん落ち着く)」という理屈で、じゃあ何で去年今年は強いのかというと、それはコロナ復興需要とか出し過ぎ財政とか超金融緩和とか家計のウェルスみたいなので下駄履いてて、そのせいでマークアップがバッチリでしたんです!って説明になっています。

・・・・・・・うーん、何というか希望的観測で、寧ろ適合的期待形成でインフレ期待が上振れる未来しか思い浮かばんが。

さらにマークアップの話が継ぐ居ていまして、マークアップって要は2次的効果の一種なのですから、そらまあ気にするわなと思いますが、なるほど企業の価格設定行動をかなり気にしている、というのが分かったのは収穫。

『Using the available macroeconomic data, it is challenging to measure directly how much firms mark up their prices relative to their costs.』

で、この以下は現状こういう風に見られます、ってデータ(図表は貼るスキル無いので最初のURL先にリンクがありますんでそれを見てちょ)を出しながら説明しています、ふーん。ちなみに例に出しているのは自動車と消費者向け価格(PPIとCPIの差)ですね。

『That said, there is evidence at the sectoral level that margins remain high in areas such as motor vehicles and retail. After moving together closely for several years, starting early last year, the new motor vehicle consumer price index (CPI), which measures the price dealers charge to customers, diverged from the equivalent producer price index (PPI), which measures the price dealers paid to manufacturers. Since then, the CPI has increased three times faster than the PPI (figure 4). This divergence between retail and wholesale prices suggests an unusually large retail auto margin. With production now increasing, and interest-sensitive demand cooling, there may soon be pressures to reduce vehicle margins and prices in order to move the higher volume of cars being produced off dealer lots.』


・リテーラーのマージンについても考察しています

ということで先行き物価の話(その前の現状もそうですが)今回のブレイナード副議長の話、割と細かくコンポーネントについて展開しているので、あたしゃ残念ながら米国何とかストでも何でもないので読んでて「はあそうですか」的な感じなのが残念無念でして、まあこの辺は米国の物価見ている人に意見を聞きたいですよね。

『Similarly, overall retail margins-the difference between the price retailers charge for a good and the price retailers paid for that good-have risen significantly more than the average hourly wage that retailers pay workers to stock shelves and serve customers over the past year, suggesting that there may also be scope for reductions in retail margins. With gross retail margins amounting to about 30 percent of sales, a reduction in currently elevated margins could make an important contribution to reduced inflation pressures in consumer goods.』

昨年は需要爆発ヒャッハーヒャッハーのドサクサに紛れてリテーラーのマージンが割と盛大に拡大していまして、実はマージンに縮小余地があって、消費者が値上げキビシーって客離れしそうになったらマージン縮小で対応が可能な状況になっているので、これが今後の物価上昇率鈍化に寄与するでしょう、って話のようです。


・労働需給は今年前半にピークを打った、と信じたいようです

次は労働需給。

『Labor demand continues to exhibit considerable strength, which is hard to reconcile with the more downbeat tone of activity.』

労働需給は相変わらず強い、という話を以下延々とデータ並べて説明しています。

『Year-to-date through August, payroll employment has increased by about 3-1/2 million jobs, a surprisingly strong increase given the decelerating spending and declining GDP over the first half of the year. The unemployment rate has fallen, on net, from 4 percent in January to 3.7 percent in August. Possibly the strongest indications that the labor market is tight were the first- and second-quarter readings of the employment cost index (ECI), which point to strong and broad-based growth in total hourly compensation. The 6.3 percent reading for the ECI in the second quarter was the largest annualized quarterly growth in compensation under this metric since 1982. The most recent reading of average hourly earnings suggested some possible cooling, decelerating from a gain of 0.5 percent in July to 0.3 percent in August, although it will be important to see additional data.』

色々数字出してるけど、「Possibly the strongest indications that the labor market is tight were the first- and second-quarter readings」で「The most recent reading of average hourly earnings suggested some possible cooling, decelerating from a gain of 0.5 percent in July to 0.3 percent in August, although it will be important to see additional data.」ということで、おそらく労働需給のひっ迫は今年の前半でピークアウトして徐々に落ち着いてくるのではなかろうか、と希望的観測を述べています。


・今年になって経済減速したのに労働市場強かったんだよなー

次のパラ行きます。

『The deceleration in economic activity thus far this year has coincided with only a slight easing in job openings, on net, since their peak in March. The current high level of job openings relative to job seekers remains close to the largest in postwar history, consistent with a tight labor market (figure 5). Businesses that experienced unprecedented challenges restoring or expanding their workforces following the pandemic may be more inclined to make greater efforts to retain their employees than they normally would when facing a slowdown in economic activity. This may mean that slowing aggregate demand will lead to a smaller increase in unemployment than we have seen in previous recessions, but it is too early to draw any definitive conclusions, and I will be monitoring a variety of labor market indicators closely.8』

相変わらず雇用情勢が強いと言いながらも、このケツに「This may mean that slowing aggregate demand will lead to a smaller increase in unemployment than we have seen in previous recessions, but it is too early to draw any definitive conclusions, and I will be monitoring a variety of labor market indicators closely.」とあって、これまでだと経済の需要が減速すると労働需給の緩和が進んだんですが、今回はその進み方が弱いかもしれん、とのお告げですので、これ裏を返せば「頑張って減速させないとダメじゃん」ってことですよね・・・・・・・・・・・



・という訳で金融政策は最後の方にちょろっとなのです

次が金融政策。

『As we follow through on our plan to move monetary policy to an appropriately restrictive stance, the effect of the increased policy rate and pace of balance sheet shrinkage should put downward pressure on aggregate demand, particularly in interest-sensitive sectors like housing.』

ということで金融政策を引き締め的にして需要さげるよ特に金利センシティブなセクターには効かせるよ。

『Continued improvements in supply conditions and a further rotation of consumption away from goods and into services should also help by reducing price pressures in goods. With regard to non-housing services, the magnitude of price pressure over the next several quarters will depend on an overall slowing in spending as well as the extent to which labor supply improves in these sectors.』

とは言え財だけじゃなくてサービスも物価上がっててこの上昇圧力が下がるには数四半期掛かるかもね。

『Since pivoting last year, our actions and communications have tightened financial conditions significantly and at a much more rapid speed than earlier cycles. So far during 2022, real 2-year yields have risen more than 350 basis points to about 1.2 percent, and 10-year real yields have risen almost 200 basis points and now stand at 0.85 percent-in the range of values for 10-year real yields from 2014 to 2018. The rapid tightening in monetary policy is also reflected in a significant increase in the projected real short rate: The Blue Chip Financial Forecasts has the expected short rate moving above 0.5 percent in real terms to a significantly higher level than pre-pandemic within the next 12 months (figure 6).』

これは昨年からの金融政策引き締めの行動とコミュニケーションでこんなに金融環境がタイト化しましたよ、という宣伝コーナーでした。

『It may take some time for the full effect of these tighter financial conditions to work their way through the economy. The disinflationary process here at home should be reinforced by weaker demand and tightening in many other countries. This is particularly the case as Europe contends with downside risks to activity and a severe energy shortage caused by Russia's war against Ukraine, and as China maintains its zero-COVID approach against a backdrop of weaker consumption.』

この金融環境のタイト化が経済全体に影響を及ぼすには「It may take some time」だよと。あとその間に供給制約問題のウクライナ戦争と中国のゼロコロナが解決するといいですね。


・どこかでリスクは「よりtwo-sided」になると

最後から2番目のパラグラフです。

『At some point in the tightening cycle, the risks will become more two-sided.』

まあ当たり前のことを言ってるだけ(引き締めバンバン進めて行けばリスクは上振れだけじゃなくて下振れも増えるわ)ではありますが、これ市場反応したのけ????

『The rapidity of the tightening cycle and its global nature, as well as the uncertainty around the pace at which the effects of tighter financial conditions are working their way through aggregate demand, create risks associated with overtightening. And if history is any guide, it is important to avoid the risk of pulling back too soon. Following a lengthy sequence of adverse supply shocks to goods, labor, and commodities that, in combination with strong demand, drove inflation to multidecade highs, we must maintain a risk-management posture to defend the inflation expectations anchor.9』

ただ、そうは言ってるけどジャクソンホールの時のパウエルと一緒で、ブレイナードも今回「if history is any guide, it is important to avoid the risk of pulling back too soon.」と言ってて、そう簡単に緩和サイクルには入らんですよ、というのは強調していますね。

『While we have no control over the supply shocks to food, energy, labor, or semiconductors, we have both the capacity and the responsibility to maintain anchored inflation expectations and price stability.』

ま、そらそうよ。あとさっきの中に「we must maintain a risk-management posture to defend the inflation expectations anchor.」とインフレ期待のアンカーの話も重要ってありましたな。


・まあ普通に引き締めるぞーって言っているように見えますが

ということで最終パラ。

『We are in this for as long as it takes to get inflation down. So far, we have expeditiously raised the policy rate to the peak of the previous cycle, and the policy rate will need to rise further.』

これからもバッチリ利上げしますよ。

『As of this month, the maximum monthly reduction in the balance sheet will be nearly double the level of the previous cycle.10』

今月からバランスシートのランオフを加速させるよ。

『Together, the increase in the policy rate and the reduction in the balance sheet should help bring demand into alignment with supply. Monetary policy will need to be restrictive for some time to provide confidence that inflation is moving down to target. The economic environment is highly uncertain, and the path of policy will be data dependent. While the precise course of action will depend on the evolution of the outlook, I am confident we will achieve a return to 2 percent inflation. Our resolve is firm, our goals are clear, and our tools are up to the task.』

引き締め政策によって過剰な需要を抑えて物価の過度な上昇も抑えて行きますよ、ってなまあ典型的な話をしていますが、締めの所だからまあこんなもんでしょ。まるで経済コケる方に対するビビりなし、というのはよくわかりました。




2022/09/07

お題「ECB前なので引き続きですがジャクソンホールでのフランス中銀ビルロワガドロー総裁の講演をば」

昨日の夕方確か141円台の後半になってて(゚д゚)となってた筈なんですが・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/quote/USDJPY
USDJPYJPY=X
現在値 142.7800
変化 2.2000(+1.5650%)
4:49 AM JST 9月 07日 - 約20分前の相場を表示しています。

よーしパパこのレートじゃ当分海外旅行できないからタンスにある使い残しのドルを両替してお小遣いにしちゃうぞ!!!!(昼飯代程度はあった筈ですwwwwwww)

・・・・・こうですか、わかりません(><)


〇引き続きECB前なのでECBだがジャク穴のフランス中銀総裁のパネルがおもろかった件について

ご存じ今年のジャクソンホール
https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-policy-symposium-reassessing-constraints-on-the-economy-and-policy/
Jackson Hole Economic Policy Symposium: Reassessing Constraints on the Economy and Policy
THURSDAY, AUGUST 25, 2022
12:00 a.m. , US/Central
The Federal Reserve Bank of Kansas City hosts dozens of central bankers, policymakers, academics and economists at its annual economic policy symposium.

の最終日の最後のセッションがパネルで、その中でフランス中銀ビルロワドガロー総裁のお話、というか話のペーパーというかがECB会合前でタイムリー(もっと前にネタにしろというツッコミはさておきまして)かと存じまして。

URLが馬鹿みたいに長いので、下記の先にリンクは貼りますが文字列の一部だけにハイパーリンク引っ掛けますね。
https://www.kansascityfed.org/Jackson%20Hole/documents/9049/2022.08.27_Jackson_Hole_speech_Fran%C3%A7ois_Villeroy_de_Galhau_final.pdf
Panel on Monetary Policy Post-Pandemic:
Balancing between Science and Art,
Predictability and Reactivity
Francois Villeroy de Galhau

サイエンスとアートのバランスを取るんです、って題名は金融政策はアート派のアタクシもニッコリですが、ビルロワドガロー総裁ってビルロワ・ガ・ドローだったのねフランス語ムツカシネ。

まずはご挨拶。

『This is the first time I have been able to attend the Jackson Hole symposium, but this renowned event epitomizes something I have always found of great value in the daily practice of central banking: the continuing conversation between policy makers and economic researchers. In this respect, the central banking world is a remarkable exception relative to most public policy making. This unique culture brings with it the recurring debate of how much of monetary policy amounts to science or art. This is especially the case at the end of a very uncertain summer: for Europe at least, growth prospects for next year have receded, and inflation prospects increased, due to energy and gas price pressures and additionally to the evolution of the exchange rate.』

この辺はまあご挨拶。ビルロアガドロー総裁も初登壇だったのね(同じパネルの李総裁も初登壇)。

『Today I would like to briefly look back at how useful science has been in the past (I). I will then offer suggestions on how to balance art and science in the current policy environment : in finding a “new predictability” despite the weakening of forward guidance (II), and in facing the unprecedented challenge of the positive remuneration of massive excess liquidity (III).』

最初のお題がこれまでの金融政策におけるサイエンスの振り返りで、次が今の環境下、すなわちフォワードガイダンスの重要性の低下という中でそれにかわる「新しい予見可能性」、最後が「極めて多くの超過準備がある時にどのようにして超過準備付利を行う(ってのは要するに不胎化するってことです)か、という点です。


・金融政策は新たな局面に直面するとアートに寄るのだが実はそれはリーマンショックからこの方ずっとそうですよ

最初が『I. Science did well both before and during the pandemic』って小見出し。

『The view that monetary policy consists of science was perhaps most prominent during the Great Moderation. But what about the Great Financial Crisis, the Pandemic and the Russian war? If, as Olivier Blanchard (2006) argued, “monetary policy must be closer to art when it is frequently confronted to new, poorly anticipated and poorly understood, contingencies”, the economic shocks of the past 15 years must surely have shifted the pendulum back to art.』

ブランシャールの発言を引っ張ってきてますね「金融政策は新たな局面に直面した場合、サイエンスというよりも寧ろアートになる」だそうで、何ちゅう出オチな上にいきなりブランシャールの言葉使うかよと思いましたが、よくよくみますと「the economic shocks of the past 15 years must surely have shifted the pendulum back to art.」と言ってて(pendulumってのは振り子って意味)、直近のコロナショックだけを指している訳ではなくて、リーマンショックからこの方15年間の金融政策は金融政策をサイエンスからアート寄りにしている、という認識なのでして、これは「世界標準の金融政策」とかほざいておられるどこぞの極東の島国のスットコドッコイ中央銀行涙目ですね!!!!!!!


・とはいえサイエンスも重要な役割をこの間果たしました(と言わないと話が続きませんわな)

『I would actually argue that, even then, science served us well. Let me here cite Olivier Garnier, chief economist of the Banque de France (Garnier, 2022).』

フランス中銀のチーフエコノミストの(フランス語読めないから読み方良く分からんが)オリビエ・ガルニエ氏のコメントもリファーしたようで。

『I believe we central bankers can be proud of the joint achievements of policy and research in dealing with the Global Financial Crisis and its aftermath: acknowledging common mistakes in forecasts on the current level of inflation doesn’t imply becoming self-critical on policies. In the euro area, thanks to our “new conventional” tools, inflation is estimated in 2019 to have been around 75 basis points higher, and GDP growth 110 basis points higher than it would have been in the counterfactual.』

リーマンショック以降の金融政策については経済にプラスの効果がありました。


・インフレのリスクをとったのかデフレのリスクを取ったのか

『Furthermore, nobody can seriously pretend that past accommodative policy is the primary factor to blame for the current return of inflation.』

さっきの所でもそんな話がありましたが、ここで明確に「これまでの緩和的な政策が今の高インフレを招いた張本人であるとして真剣に過去の緩和政策を非難する人はいませんよね」とぶっこんでいます。しかしですねえ・・・・・・・

『This would be forgetting how deep the deflation risk was in 2020 and the pandemic, and being mistaken about the present inflation surge: it finds its origins not in excessive liquidity but in supply bottlenecks arising from the fasterthan-expected rebound from the pandemic, and the sharp increase in energy and food prices, much aggravated by the war in Ukraine.』

この部分、最初の一文がポイントで、「パンデミック時にデフレーションになるリスクが大きかったということを忘れるとそういう非難が起きますが」ってな感じで話をしてますけど、まあこの言い方は別にアタクシのオリジナルじゃなくて人の受け売りになるんですけど、今回の緩和政策正常化の遅れってのは「インフレのリスクを取るかデフレのリスクを取るか」という金融政策によって発生し得るリスクシナリオのどっちがマシか、というバランスを考えた時に、過去に強引でも何でもインフレ制圧できた、という実績(およびその後のグレートモデレーションで当時のペインを忘れてしまっていたという点も含め)と、デフレ、というかゼロインフレですけど、その状況が延々と続いた日本のケースが目の前にある、という点を比較して、リスクとしてどっち取るか、となった時にデフレのリスクを必要以上に恐れた、あるいはインフレのリスクを軽視した(またはその合わせ技)によって、インフレのリスク取ったからこうなったのですよね、と思うのですよ。

然るに、ビルロアガドロー総裁はインフレリスク軽視自体はまあ認めてますけど、今回のインフレの原因は過剰流動性ではなくて、供給制約や、パンデミックからの想定以上に早い回復、そしてウクライナ戦争による食糧エネ価格の急速な上昇とゆうてます。


・物価を安定させてインフレ期待を安定させ続けることが重要

『The core principles of the science’s consensus remain valid today. In particular the two first principles-central bank independence and the primacy of price stability-remain essential for the credibility of the central bank. We are benefiting from it today through the-so far-relatively firm anchoring of long-term inflation expectations despite the surge in current inflation.』

でもって話は別の話にしれっとなってしまいますが、「サイエンス」のコンセンサスとして、物価の安定が重要であり、インフレ期待を安定化させるのが重要だ、ということだそうです。段々「プレディクタビリティ」の話が回収されていく感じですが。

『This being said, we should acknowledge that new questions have arisen with the unexpected return of high inflation. Let me highlight three.』

ということで、この高インフレの中で起きている課題が3つある。

『A first question is the slope of the Phillips curve. To the enduring debate of whether it had flattened since the 1970s we must now add the question of whether it could be steepening again in the current inflationary environment. The question is central to assess how to quell inflation without engineering a harder than necessary landing of economic activity.』

フィリップスカーブの傾きがどうなっているか、即ち経済活動を過度に締めずに物価を下げる水準(または経済活動をどの位締めないと物価が下がらんのか、ではあるけど)とかを見極めるのダイジネーとのことで、物価が重要とはいえ、オーバーキルは(というか欧州の場合はオーバーキル以前に景気がそこまで良いわけでもないが)したくない、と言ってるようにも読めますな。

『Second, we still have to understand better how inflation expectations influence actual inflation.』

インフレ期待が実際の物価にどのように影響を与えるのか、ということについてもっと理解しないといけない。となんか泥縄な感じもしますが、まあ分からんのをすっとぼけて政策するよりは誠実か。

『In recent years, we have made considerable progress -including at the Banque de France-in measuring the expectations of firms and households, which are the ones that matter for price-setting and spending decisions. But there is still relatively little empirical work on how their inflation expectations map into their actual pricing and spending decisions. What the extent of pass-through from inflation expectations to inflation is, or whether past inflation plays a role beyond inflation expectations remain open questions.』

じつはここ脚注が3つくらい入ってて、「インフレ期待の変化がどのように物価にパススルーされていくのか」という研究がここもと進んでいるそうです。

まあそれはそれで言いたいことは分かるんだが、そもそものインフレ期待というのがきちんと計測できない話であって、日銀ちゃんが良く言ってる「ノルム」こそがインフレ期待の本質的な部分(だと私も思うんですけど)だとすると、ノルムって結局企業の価格設定行動やそれを受けた家計の消費行動に現れた結果を見てしか判断できないのですから、このパススルーガーとかいうの本末転倒の議論しているように思ってしまいますが、まあよみゃしないと自分でも思いますが、最近のペーパーが紹介されてます。


・ウッドワード流のフォワードガイダンスは先行きが不透明な時には役立たずキタコレ!!!!

で3点目ですがここでフォワードガイダンス要らんじゃろ議論、まあ要らんじゃろというのは7月の定例理事会後の会見でラガルド総裁が明示的に言ってましたので、これ自体はサプライズではないのですが、「エッガートソンとウッドワードの提唱した」フォワードガイダンスって名指しでぶっこんでるのはちょっとウケました。

『Third, what about forward guidance?』

キタコレ。

『It was a decisive input of science, thanks to Eggertsson and Woodford (2003).』

ハイ名指し。

『But at present, in a very uncertain situation, we all tend to move away from it, and even to distrust it because it would tie our hands.』

今のようにベリーアンサータンな状態ではそもそも決め打ちした通りに事態の推移が嵌るわけではないので、適切な政策を取ろうとすると、ガイダンスを遵守できない事もあります。

『Does it mean that we also abandon predictability?』

それは予見可能性を捨てているということを意味するでしょうか?

『I will here come to my second part, and focus the art/science nexus on the reactivity/predictability trade-off, if you allow me to assimilate the former to intuition and art, and the latter to rationality and science.』

何ちゅうか謎の締め方でこのコーナー終わって次の予見可能性の話になるのですが、そもそも決め打ちしなきゃ良いじゃんとしか思えないのですが、まあ出たとこ勝負と言っても何も基準無しで出たとこ勝負はできません、ということで次の章になる。


・新たな予見可能性だそうですよ

『II. Four possible lights for a new predictability』だそうです。

『Should art now play a bigger role? At a minimum we should acknowledge the need for modesty, agility and nimbleness. But this is not an argument for returning to the secrecy and unpredictability that characterized central banking until the 1990s.』

『There is no room for what Brunner (1981) ironically described forty years ago as “thriving on a pervasive impression that Central Banking is an esoteric art, [whose] esoteric nature is revealed by an inherent impossibility to articulate its insights in explicit and intelligible words and sentences.” 』

『Instead, we should aim to build a “new predictability”, a different one suited for uncertain times. Let me propose, with humility, four possible lights in approaching it.』

要するに言いたいのは小分けした3番目の部分で、政策に関する「新しい予見可能性」ということで、それは何ぞと言えば、政策反応関数を明確化する、ということに尽きる訳でして、そういう話が以下展開されているので、ビルロワガドロー総裁の個人的見解です(キリッ)って奴ではあっても読むわけですよ(前振り余計だった説は言わないでちょ)。

で、以下小見出しが更についてるんだが、


・フォワードガイダンスは当面要らないよ

ということで最初の小見出しが。『II.A. Forward guidance on the path is today less important than commitment on our end objective』って出オチにも程がある小見出し。

『First, in the current normalization phase, there is much less need and space for detailed forward guidance: we are no longer at the effective lower bound and are coming back to our more normal reaction function-all the more so in the current uncertain environment. Accordingly, in our ECB July statement President Christine Lagarde emphasized optionality dependent on economic data, and taking decisions on a meeting-by-meeting basis. More importantly still, we strongly reiterated our commitment to our end objective of bringing inflation back to 2% in the medium-term, i.e. 2024 in our present forecasts. The more open we are about the path, the more committed we must be about the destination of the journey.』

「a meeting-by-meeting basis」はラガルドさんも言いましたし、昨日ネタにしたレーンさんもいってますし、完全にECBのバズワード化してますな。出たとこ勝負ってのを綺麗にいうとこうなりますね、って感じでございますが、「現在の正常化プロセスの間は明示したフォワードガイダンスは要らん」「既に政策金利は下限制約にある訳ではない」だそうです。

『Don’t get me wrong: market expectations of future policy rates remain a key driver of long-term interest rates, which are what matters most for investment and spending decisions. But forward-guidance-at least in the form of a commitment to an unconditional and/or prolonged path for the policy rate-is today an unadvisable way of steering market expectations.』

先行きの政策金利パスの予想によって市場の金利が動き、それが経済に影響をする、というのは重要なパスであることは間違いありませんが、そのパスいついて、無条件でこうなるとか、先行きの長い期間におけるパスを示すとか、そういうのは市場の期待を制御するためには望ましくない方法です。

・・・だったらもう次回会合の利上げ幅についても言及するなよこのオッチョコチョイ共めがと思うのですけれども、今週のECB終わった後に「我々は先行きの政策金利パスを明示的に示すフォワードガイダンスは現状の環境でそれを出すメリットがないと認識しているので、次回会合での政策金利引き上げ幅について質問しても金輪際お答えしません」くらいぶっこんでほしい、とアタクシは思います(まあアホウな決め打ちしてくれた方が見世物としては面白いけど)。

『If you go to the hospital, it is certainly unpleasant not knowing how long you will stay there. But you certainly do not want a doctor who decides to keep you 7 days regardless of how your health evolves. Without question, you would rather have a firm commitment that he will cure you of your ailment!』

何じゃこの例えば・・・・・・・・w


・正常化はチンタラとやってる場合じゃない&域内特定国の国債が極端に叩かれた場合のお助け措置おかわり発動の可能性

フォワードガイダンスは出さないよ、という別に先行き予想の屁にも役立たない弁明の次の小見出しはちょっとインプリケーションがあります。

『II.B. Being gradual is less important than being orderly』

だそうです。お前ら全然オーダリーにやってねえじゃん、という気もしますが、「グラデュアルであることはオーダリーであることよりもその重要さは低い」と言ってるので、とりあえず物価安定を図るという中で、景気配慮で緩和正常化をチンタラと実施する、という選択肢は取らないよ、って言ってますね。

『As Brainard (1967) famously argued more than 50 years ago, gradualism is appropriate where we face large uncertainty. However, the Brainard principle was formulated before monetary economics understood the importance of inflation expectations. Research at Banque de France shows that a central bank facing instrument uncertainty is bound to be overly cautious if it fails to appreciate that being gradual runs the risk of moving inflation expectations adversely (Dupraz et al 2020). We can be gradual, but we should not be slow and delay normalization until higher inflation expectations force us into aggressive interest-rate hikes.』

「先行き不透明な時はグラデュアルに政策を行うのが正しい」とは昔から言われていて、それはそれで正しいのですけれども、「インフレ期待が不安定になりそうな時」には金融政策正常化をグラデュアルにやっていると、インフレ期待のアンカーが外れてしまうリスクがあるので、それはイクナイ、だそうな。

『What remains essential however is to be orderly, in order to avoid undue market volatility and ultimately economic volatility.』

んじゃあオーダリーとはどういう事じゃい、と言いますと、それは「市場や経済の過度な振幅を避けるように」という意味です、とまあ割と虫の良い話をしています。

『Like a gradual normalization, an orderly one has a time dimension, as we should avoid putting risks on financial stability through unnecessarily brutal interest rate changes (Cukierman 1991 and Stein and Sunderam 2018). But it also has a cross-country dimension, as it also implies avoiding within the euro area unwarranted country-specific spikes in borrowing costs that only emerge from the echo chamber of financial markets.』

このオーダリーにはユーロ圏の場合構成国単位で考えた場合に国ごとにもオーダリーである必要がありますので、

『In this respect, our new Transmission Protection Instrument (TPI) is a very powerful tool for an orderly path forward.』

TPIを入れました、だそうですが、なんかホンマカイナとは思いますけど、とりあえず加盟国の中で金融市場的にアイヤーな国債が発生するような事態は今後も避けたいというのは把握したので、ある程度以上一部の国債へのイジメ(程度がどの程度の加減なのかはよーわからんですけど)が進むと、ECB先生が出てきてお助けスキームが出るんじゃなかろうか、というのを把握した。

ということで、「チンタラと正常化をやっている場合じゃない」という認識と「どっかの国の国債がこれから先過度に叩かれた場合には何かのお助けスキームをまた捻りだしてくる」というのは把握できたと思います。


・政策反応関数について、と来まして・・・・・・・・・・

次の小見出しが『II.C. How to deal with surprises: a reaction function』なんですがここはオモロイ。

『So far, so good about being orderly or predictable… but uncertainty means surprises, and we have had to deal with many bad ones on inflation figures.』

『In such cases, we could not avoid reacting by surprising markets rather than being behind the curve. This is what a sound risk-management approach calls for: weighting seriously the long-term risks to price stability in the case of persistently higher inflation. 』

政策がビハインド・ザ・カーブに陥ることを回避しながら市場のサプライズを回避して政策運営をすることは不可能です。リスクマネジメントの観点から言って長期間の高インフレを放置して物価の安定を失うのが一番ダメダメ(なので市場の期待を裏切った利上げを行う事も残念だが当然行うことですよ)。

とヘイヘイピッチャービビってると言われないような話をおっぱじめてて、最初の方で経済の話をすると微温的なアプローチ来るかと思わせますが、結局この高物価に直面すると中央銀行ちゃんとしては高インフレ退治モードになる、ということですな。まあ分かる。

『We rightly had to give priority to risk management on inflation, over expectations management on interest rates. It is paramount, nevertheless, that financial markets and economic actors understand our reaction function in order to avoid unwarranted volatility: if inflation-and especially core inflation-is higher than what we expected, we are likely to raise rates more quickly, although never following a mechanical rule.』

ということで、インフレのリスクマネジメントが最優先の政策反応関数だよ、っての市場も理解してちょんまげ、だそうです。


・政策反応関数のコーナーの最後が無茶苦茶おもしろいのだ!!

で。これに続く部分が面白いというか何というか。

『And we should preserve some short-term signaling-or guidance-in our new “meeting-by- meeting” approach: this is somewhat new territory for us, where as much as possible (i) guidance if any should come from explicit statements from the top rather than from unsourced leaks, (ii) multiple and somewhat disorderly expressions of personal wishes should be more restrained, and the silent period should obviously be respected』

こwwwwれwwwwwwわwwwwwwww飲んでる茶を吹きそうになりました。

MBMアプローチっていう新しいアプローチになったんだから、先行きの金融政策の決め打ちに関しては、短い期間のシグナリングやガイダンスの余地は残るけど、(1)声明文などに明示的な記載されているものがガイダンスであり、書いてもない話とかのリークみたいなことで示されるのはダメ!ゼッタイ!!、(2)複数から無秩序に個人的な希望を表明することは、(1)以上に禁止されるべきであり、政策決定会合までのブラックアウト期間は明らかに尊重されるべきである。

とまあこのコーナーの最後に何ちゅうかもう凄いのをぶっこんでまいりましたですな。



・次が「中立金利の概念は政策運営において依然として重要」という話でビルロワガドローさんの見る水準は1〜2%の間とな

『II.D. R* remains useful to delineate normalization and tightening』

ということで、Rスターの話ですので、要は中立金利の概念。

『To be sure, R* is unobservable and its estimation remains surrounded by uncertainty. But I believe it remains a helpful concept in the current normalization.』

の時点で出オチなのですが、以下時間が無いのを言いわけに簡単に。

『According to me, for the euro area, until we are around R*, the neutral rate -which possibly lies between 1 and 2% in nominal terms-the road ahead is clear and we can go in a sustained and determined way, including through some guidance. Doing so is normalization, lifting our foot from the accelerator pedal.』

中立金利は1−2%の間にあるんでネーノ、だそうだ。

『In my view, we could be there before the end of the year, after another significant step in September. Only beyond R* could tightening-actively pushing the brakes-begin; we will then have to discuss and decide, based on our assessment of actual inflation and the future outlook, focusing in particular on its core part and on wage developments. 』

さっき決め打ちすんなとかいってるのにしれっと「after another significant step in September」と言ってるのはご愛敬ですが、今年の年末前には政策金利が中立の水準に行くんじゃなかろうか、とかさらに言ってるのもお前は何を言ってるんだという感じですが、まあそうなった所で今後の政策をガンガン引き締めるかどうか考えて行きますよ、だそうです。

『The US is obviously closer to tightening due to several differences in the nature of inflation there. But have no doubt that we at the ECB would if needed raise rates further beyond normalization: bringing inflation back to 2 % is our responsibility; our will and our capacity to deliver on our mandate are unconditional.』

雨ちゃんはその域に達してますよね。まああっちの方が物価高いですから、ということを加えた後、ECBについても中立以上に金利を引き上げるのは必要と判断したらやるよ、とまあやる気はあるのを出してて、最初ちょっと微温的なこと言ってた気もしたのは気のせいだったのか何だか良く分からんが、ここまでの読後感はなるほど利上げしてインフレ抑制頑張るのね、というかんじですね。


・当座預金付利問題はパスしますね

まあこの講演あとちょっとで、当座預金付利の問題の話がありまして、これ自体は当然ながらユーロ圏の短期金融市場とかに大きな影響のある話なんで大事は大事なのですが、まあ政策の方向性とかそういう話で言いますとユーロ圏にポジションある人向けの話になるから時間が無いのを言い訳にしてパスします。




2022/09/06

お題「ECBも近いのでレーンさんの講演でも(ただし8/29)」

あとでじっくり読む(ただし英語)かもしれない。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2022/wp22e14.htm/
ノンバンク金融仲介機関の拡大と市場性ショックの波及のグローバルな構造変化について
2022年9月5日
法眼吉彦*1
小出桂靖*2
篠崎裕司*3

全文掲載は、英語のみとなっております。
全文 [PDF 1,028KB]

『分析の結果、国際金融危機(GFC)以降、日本の金融システムのみならず、海外の金融システムにおいても、連関性効果が大幅に増幅していることが分かった。このようなNBFIと様々なタイプの主体との連関性の増幅は、市場性ショックの波及において、グローバルな構造変化が起きていることを示唆している。』(上記URL先より)

ってのは良く指摘される話なのですが、そもそも米国の取引所が何でもかんでもETFの上場を許可しまくってて、本来流動性がない筈のものに流動性を付けてしまう、というムーブをするもんだから実際は流動性の無いものなのに流動性があるかの如く平時に売買される結果、平常じゃない時にファイヤーセールが加速される、って話で、おなじノンバンク(というか投資信託みたいなもの)であっても、流動性のないものをファンド(でも受益権でも良いけど)仕立てにするときに「ガチガチの解約制限」をきっちりと設けている人達だっているんですよね。

で、いざこの手の話に規制監督することになると、ノンバンク規制ということで、きちんとそういう流動性管理をしていてファイヤーセールリスクを仕組み上極力回避している商品も十把ひとからげでワーワー言われるのでありまして、まず米国の何でも上場ETFにするの止めさせろや、と毎度思うアタクシなのでした。(これ遠因を言えば取引所そのものが上場企業になっている、ということによる利益相反(規制強化と上場促進)問題が根底にあって、取引所はコーペラティブ組織に戻すべきだと思うんですよね、個人のやや極端な感想ですけど)


・・・・・・とマクラが長くなりましたが、まあ後日読む余裕があれば(期末月に3連休を2回セットするのは仕事の邪魔にも程があるし暇が無くなるので連休はもうちょっと分散して欲しいわ)読もうかと思う物件ではあります。



〇レーンさんの8/29の講演って利上げ云々で強硬な言い方はしてないけど背景理論ではタカ派というか何というか

ECBも近いのでレーンさんの直近、といっても29日なので恐縮ですが講演を。多少重いのでアタクシの独断と偏見で思いっきりサラサラ参りますコースにしちゃいますが、詳しく見たい方はURL行って確認してくんなまし。

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2022/html/ecb.sp220829~b9fac50217.en.html
Monetary policy in the euro area: the next phase

Remarks for high-level panel “High Inflation and Other Challenges for Monetary Policy” by Philip R. Lane, Member of the Executive Board of the ECB, Annual Meeting 2022 of the Central Bank Research Association (CEBRA), Barcelona
Barcelona, 29 August 2022

・マイナス金利終了までは第一フェースだったそうです

冒頭の部分ではこのお題の「the next phase」についてのお話がちょろっと。最初から引用しますけど第1パラグラフはまあ流す。

『The period December 2021 to July 2022 constituted a distinct first phase in the normalisation of the monetary policy of the ECB. Starting with the announcement that net purchases under the pandemic emergency programme (PEPP) would conclude in March 2022 and followed by the curtailment and the eventual cessation of net purchases under the asset purchase programme (APP) by the start of the third quarter, this phase was completed with the lifting of the key policy rates out of negative territory at the July meeting.』

資産買入の拡大停止とマイナス金利脱却、というのが正常化の第1フェーズで、これが7月に達成されました、ということでして、結局9月にやろうとしたものを2カ月前倒ししたんですが、そもそもこれは別にアタクシがって訳じゃなくて結構多くの論者言ってたと思うんですが、もともと9月にマイナス解除をする前提で7月中途半端に上げる、ってのも気持ち悪かったので、要はシントラとかで余計な25bp押しをしたのがECBのコミュニケーションをゲロゲロにした訳ですよ。まあその結果フォワードガイダンスを明確に破棄せざるを得なくなった(直近でコロコロと変わるECBを誰が信じますのん、というのがあるからFG自体が空文化したでしょうけど)のは怪我の功名かもしれんけど。


・この間の長期金利の変化、イールドカーブの変化が「レジームチェンジ」との認識

『This period saw a remarkable regime change in the behaviour of the euro area yield curve, with a very significant upward shift and an increase in volatility, as markets responded to the implications of the new inflation and cyclical environment for the future path for monetary policy, including the exit from “lower bound” monetary policy calibration.』

まあ小見出しの通りっすが。そこまで盛大に話をするのかー、って思いました。


・フォワードガイダンスはもうやらないよ出たとこ勝負だよ

第2パラグラフに行きますと、

『Having completed this initial stage of monetary policy normalisation, our upcoming September monetary policy meeting will be the start of a new phase.』

いやーお前ら7月会合の時にそんなに大層な言い方してたっけ???って感じなのですが、何故か知らんけど、いつのまにやらECBは「マイナス金利政策解除という金融政策正常化の最初のステージをコンプリートしました!!!!」って説明になっていますね。

いやおまえらさあ、7月会合の直後には「25にするか50にするか検討しまして50になりました(それ自体は嘘でも何でもないけど)」って幅の問題みたいな言い方してたくせに、舌の根が乾いたかなーって感じで夏の終わりになるとしれっと「7月の決定は正常化の第一ステージ完了」ってエライ話が大きくなっている、というのは笑ってしまうしかない。

『 Our over-riding goal is to make sure that monetary policy will deliver the timely return of inflation to our medium-term two per cent target.』

で。2%に戻すのが金融政策のゴールだよ。

『In terms of execution, this new phase will consist of a meeting-by-meeting (MBM) approach to setting interest rates.』

ただの出たとこ勝負を「MBMアプローチ」とか物凄く洗練された手法のように飾り立てるのは如何なものかと思いますが、レーンさんちゃんと説明しているのが良くてですね、

『At a basic level, the transition from rate forward guidance to the MBM approach is in line with our monetary policy strategy, which assessed that forward guidance was primarily an appropriate response to the lower bound constraint. As policy rates move away from the lower bound, the inherent flexibility of the MBM approach is better suited to calibrating monetary policy in a highly uncertain environment.』

フォワードガイダンス政策っていうのは、「政策金利が下限制約にある中、追加的な緩和効果をだすために実施していたもの」である。と明確に認めまして、MBMアプローチ(書いててうさんくせえって思うこの略語ェ・・・・・)になったのは、@政策金利水準が下限制約から遠くなった(と言ってますが今の金利って十分にlower boundなんじゃないのかと小一時間問い詰めたい)、A先行きの不透明感が炸裂する現在の環境では、今後の金融政策の決め打ちが困難だし、決め打ちしないで変化していく状況に対応しないといけないし、という理由だと言ってます。ローワーバウンド云々はFEDが言うなら分かるけど、ECBがいうのはナンジャラホイなんですけど、要は「先行きの緩和政策決め打ちを示すことによって緩和効果をだすような時代ではい」って話ですよね。


・出たとこ勝負のメリットとは????

次のパラに参ります。

『Since monetary policy works through its influence on the entire yield curve, it is important to appreciate that MBM monetary policy essentially has two elements.』

出たとこ勝負にエレメンツも蜂の頭もあったもんじゃないと思うが。

『First, it allows for meeting-by-meeting re-assessments of the conditionally-expected medium-term path for interest rates that is required to deliver the two per cent target, in line with the incoming data and evolving outlook. The terminal rate over the projection horizon is widely used as a short-hand summary indicator for the orientation of interest rate policy.[1] It follows that a primary influence on the interest rate decision in any one meeting is the size of the gap between the prevailing interest rate and the assessed terminal rate.』

出たとこ勝負の最初の要素(ってナンジャソラですが)としては、会合毎に先行きの中期的な政策金利パスについて、2%達成に向けた適切なパスの見直しが行われることである(キリッ)。だそうですが、なんかレーンさんが言うと物凄く尤もらしく聞こえるのですが、要するに毎回状況次第で中期的な金利見通しが変わるってんだから、今回の正常化から引き締めまで行くかどうかは分からんですけど、毎回の点検ってターミナルレートと現在の金利のギャップと経済物価状況見ながら適正化どうかを判断する、だそうですけど。

『Second, at a tactical level, the exact calibration of the interest rate decision should also take into account the appropriate speed to close that gap. Especially under conditions of high uncertainty, each of these factors can shift in a material way from one meeting to the next: first, there may be a revision in the projected terminal rate; and, second, the appropriate speed in closing the gap may accelerate or decelerate.』

毎回の状況次第で、このワシらのアセスメントするターミナルレートに対してどのような速度で利上げしていくか、というのは経済の状況見ながら出たとこ勝負でっせ、という話なんだが、ここで出て来るターミナルレートというのは、概念上の中立金利なのかというとどうもそうでもなさそうで、さっきのところに、「The terminal rate over the projection horizon is widely used as a short-hand summary indicator for the orientation of interest rate policy.」とあって、中立金利がターミナル金利でもなさそうな言い方で、寧ろ中立金利よりも高かったり低かったりする、という意味でロンガーランの話しとは違う、となっています。


・・・・・・・・・・うーん何ですかね、これレーンさん説明を美しく飾り立ててるんですが、ゆうてることは「全然わからんから一切決め打ち不可で先の事はその場で考えます」というただの丸腰宣言じゃねえの、と思いますので、まあそう考えますとECBの政策読むの益々面倒になるなあ、とか思ったり思わなかったり。


・「中期的なターミナルレート」という謎概念を出してきて「丸腰で出たとこ勝負」を美しく表現するレーンさん

1つパラをすっ飛ばしましてその次に行きます。

『In assessing the terminal rate, both structural and cyclical factors are relevant.』

と、こっちではターミナルレートを中立金利っぽく言ってますよね。さっきの所では「見通し期間のケツでの政策金利」だったんですが。

『In the long-term steady state (with no shocks hitting the economy), the equilibrium nominal risk-free interest rate will be the sum of the two per cent inflation target and the long-term equilibrium risk-free real interest rate.』

これはロンガーランのターミナルレート、即ち中立金利の話。

『However, within the medium-term horizon of monetary policy, time-varying cyclical factors may require interest rates to move above or below that long-term equilibrium level in order for inflation to stabilise at two per cent.』

と思ったら結局「medium-term horizon of monetary policy」となったので、これはさっきの見通し期間(3年弱)の話に戻るんですが、「景気循環的な要因によって、物価を2%に安定させるのに適切な金利水準というのは中期的な観点では。中立金利の上になったりしたになったりします」と来やがりました。

『It follows that, meeting-by-meeting, an important element of the monetary policy debate will be the discussion of our latest assessment of the appropriate terminal rate that takes into account the evolution of cyclical factors, in addition to assessing a potential role of structural forces in shifting the underlying long-term equilibrium real interest rate.』

物凄く立派な言い方をしてますが、「中期的な適正政策金利水準は状況によって変化し得るものなので」というさっきの部分を枕詞にして、返す刀で「会合毎に状況を精査して、見通し期間中における適正なターミナルレートを求めていく」と言ってるんで、なんかもう物凄く尤もらしい説明ではあるんですけど、結局これ身も蓋もない言い方をすれば、完全なるでたとこ勝負(だって毎回の会合で中期的なターミナルレート(ってのも変な表現だけど)を決める、って言ってるんですもんねー。これは中々のヤケクソ丸腰勝負。


・インフレ動学の話も面白いのですが時間が無くなりそうなので敢えてインフレ期待の方に行きます

レーンさんのこの講演、今引用した先は景気循環的な要因がインフレ動学にどのように作用するのか、みたいな話が始まりまして、その次のパラの頭が「Let me highlight some of the major open questions about current cyclical conditions. 」って書き出しから始まって、最近のEU圏におけるインフレ動学やら、中期的な適正政策金利と今の政策金利のギャップのはなしやらがあるのですが、やってると絶対終わらんのと、それよりもこの小見出しにした「インフレ期待」の方が従来あまり言及されてなかった(個人の感想です)ネタなので、そこまでワープします。

講演の終わり3分の1あたり(脚注があるので画面的には真ん中あたり)になります。

『The incoming data on inflation expectations play an important role in our integrated assessment of economic, monetary and financial conditions.』

インフレ期待の話です。

『All sources - market-based data, the Survey of Professional Forecasters (SPF), the Survey of Monetary Analysts (SMA), the Consumer Expectations Survey (CES), the partial data on firm-level expectations from the Corporate Telephone Survey (CTS), the Survey on the Access to Finance of Enterprises (SAFE) and national sources, the surveys of the European Commission, and a range of external surveys - are closely examined in relation to the formation of near-term, medium-term, and long-term inflation expectations. We also assess, where available, expectations about macroeconomic indicators (and the reported individual prospects of the surveyed households and firms).』

山のように指標の名前を並べてますが、これは「インフレ期待の真の値をみるためにワシらいろんな指標をみてますもんね」というアピールですね。


・長期の期待がアンカーされてる、だけではセーフではないとの見解のようですな

『Even under scenarios in which long-term inflation expectations are firmly anchored, the evolution of near-term and medium-term inflation expectations and macroeconomic expectations play important roles in determining inflation and macroeconomic dynamics over these horizons.』

長期のインフレ期待が安定している、というシナリオにおいても、中期や短期のインフレ期待や成長期待動向は、見通し期間におけるインフレーションや経済の動学に対して影響を与えます。

『Clearly, the worst-case scenario would be characterised by the de-anchoring of long-term inflation expectations, which would be very costly to fix.』

でもって長期の期待インフレのアンカーが外れるのがワーストケースで、この場合はそれをまた戻すのにエライ苦労しないといけないですよ、という話をしております。


・・・・・・・ということですね、長期の期待がアンカーされている、というのはそもそもが大前提であって、中期や短期の期待インフレが高くなってしまうのも、それだけでインフレ爆発って話では無いにしても、物価に対して影響を与える、という話をしているのが味わいがありまして、これは即ち中短期のインフレ期待ですら(ある程度の期間を持って、だと思うけど)高止まりするのイクナ、という話でして、とにかくレーンさん、インフレ期待の沈静化ダイジダイジネーといってるのが味わいあります。。


・適合的期待形成に関するお話

次のパラで適合的期待形成の話がおっぱじまります。

『Except under very artificial model specifications, inflation outcomes and macroeconomic outcomes will be important factors in determining inflation expectations and macroeconomic expectations, as individuals update their beliefs based on realised inflation and economic developments.』

「individuals update their beliefs based on realised inflation and economic developments」というのはいわゆる「適合的期待形成」って話ですね。日銀が最近その話をすっかりしなくなった(うっかり適合的な期待形成の話をちゃんと始めると「じゃあ2%超えの物価が1年近く続いてるんだからインフレ期待も上がって政策の修正も必要になるんじゃないでしょうか」というご尤もな話になってしまうので、口が裂けてもその話をしない、という屁理屈の権威だけの事はありますね!!)のですが、ECBこれを言い出しますなーって話です。(FEDの方が物価あじゃぱー期間が長いからFEDはこの論点をあまりにも盛大に言い出すと自分の首を締めることになりそう)

『By and large, the market-based indicators of inflation compensation and the expert surveys indicate that long-term inflation expectations remain close to the two per cent target, while near-term inflation expectations are quite elevated.』

市場ベースのインフレ期待あるいはBEIの話ですね、長期は2%に整合的、短期は上がってる。

『In the CES, the medium-term inflation expectations of households also remain well below the near-term inflation expectations.』

CESの調査によれば家計のインフレ期待も中期ではまだ短期のインフレ期待よりもかなり低い水準にある。


・現状で市場も家計も高インフレが中期的に持続するとは考えていない

『Across all available sources, macroeconomic expectations (and prospects at the individual level) suggest a high degree of concern about a potential economic slowdown, a general recognition that supply shocks will generate both near-term inflation surges and a decline in the economic outlook, which in turn will constrain the persistence of inflation.』

これらの調査のアベイラブルなソースを見ると、家計レベルも含めての物価先行きの認識は、「今のインフレの要因として起きているのは主に供給制約要因であって、先行きの経済がスローダウンすると想定される中で、は物価はいずれ落ち着いてくる」ということになっておる。、

次のパラ行きます。

『This profile is consistent with a profile in which market participants, experts and households broadly understand (albeit to varying degrees) that supply shocks and temporary factors have pushed inflation up to the current high levels but that these factors are expected to fade over time, reinforced by the understanding that monetary policy actions (as captured by the expectations of substantial rate hikes in the coming months) will ensure the return of inflation to target.』

これは市場やエコノミストや家計が、サプライショックはテンポラリーファクターで以下同文であるというプロファイルであって、というのまでは良いんですが最後にしれっと「reinforced by the understanding that monetary policy actions (as captured by the expectations of substantial rate hikes in the coming months) will ensure the return of inflation to target.」とあって、ECBが今後大きな政策金利の引き上げを行うこともインフレの沈静化に寄与する、という想定をしているからです、とかぶっこんでいまして、確かこのレーン講演のヘッドライン自体は「利上げをアホみたいに急ぐのもチンタラやるのもイクナイ」みたいな穏健派の説明っぽい報道だったと記憶していますが、ベースとなる理論に関しては結構元気に利上げする、って話になっているんですよね、とアタクシはおもったのですがどうでしょうか??????


・ということなのでインフレ期待のフィードバックループに関しては「中長期上がってないからそこは平気よ」だそうな

『In terms of the feedback loop from inflation expectations to nominal and real dynamics, it is important to appreciate that, for any given nominal yield curve, if high near-time inflation expectations are accompanied by expectations of a deteriorated macroeconomic outlook and significant uncertainty then the inflation cycle is less likely to be amplified through an endogenous increase in consumption, investment and credit compared to an alternative scenario in which high near-term inflation expectations are accompanied by macroeconomic optimism.』

『Put differently, cost-push inflation shocks are less likely to give rise to a pro-cyclical real interest rate channel compared to demand-driven inflation shocks.』

ホンマカイナとは思うけど、市場金利から市場の短期、中期、長期のインフレ期待についてこういう感じよ、という話をして、今回はインフレ期待のアンカー外れは起きてませんという話をしておられます。


・しかしながらこれらの期待の分布の右側(高い数字)のテールが伸びてきているのは注意を要する

『At the same time, market-based indicators of inflation risk and the right-tail of responses in the expert and household surveys also clearly show that the risk of inflation not returning to target in a timely manner is priced by market participants and feared by some survey respondents. As indicated in our recent monetary policy statements, such above-target revisions to some indicators of longer-term inflation expectations warrant close monitoring.』

段々時間がアレになってきたので端折りますが、ここでは「インフレ期待の分布」について説明してて、この右側のテール(つまりインフレアイヤーあばばばばばーって見通しの人)が拡大している点は要注意と仰せ。

『In tracking these right-tail indicators, two conjectures are especially relevant. In one direction, more attentive traders, experts and individuals may identify more quickly a persistent shift in inflation dynamics, while inattentive participants adjust more slowly. Under such scenarios, as highlighted in the pioneering work of Ricardo Reis, right-tail measures will be leading indicators for a generalised revision in long-term inflation expectations.[2] 』

『However, under other scenarios, the right tail might be populated by those who over-react to high spot inflation readings and mis-perceive as permanent what turns out to be a temporary increase in the inflation rate. In these scenarios, the right-tail will not serve as an accurate leading indicator of generalised long-term inflation expectations.[3] 』

『Accordingly, the interpretation of right-tail measures is closely bound to the general analysis of the relative contribution of temporary and persistent forces in inflation dynamics.』

この部分(1パラを3分割しました)は、その右側のテールをどう見ていくのか、という話をしているのですが、時間が無いのですっ飛ばしまして次に行きます(こら)。


・最後は出たとこ勝負アプローチのコミュニケーションなのですが政策金利のパスはまだ示すらしい(しなきゃいいのにとは思うけど)

『Finally, the meeting-by-meeting approach to monetary policy certainly poses communication challenges for central banks.』

はい。

『Directional and qualitative communication about the gap between the current policy rate and the terminal rate can foster market dynamics that reinforce and underpin the desired monetary policy stance. However, it is debatable whether more quantitative signalling of the meeting-by-meeting assessment of the prevailing terminal rate is necessary or helpful. The open status of this issue is reflected in the range of approaches across central banks, from those that emphasise the value of reporting their expected future path of rate decisions to those (including the ECB) that just incorporate the observed market yield curve as an external benchmark. While, in principle, communicating the most likely path for future rate hikes could be an effective monetary policy tool, the potential downside is that it adds to the complexity of communications, especially if there are material revisions to the expected policy path from one meeting to the next.』

超端折りますけど、ああだこうだ言ってますけど結局レーンさん「in principle, communicating the most likely path for future rate hikes could be an effective monetary policy tool,」と言ってるので、MBMアプローチ、と言いながら先行きのパスは示しながらやる、という目先安定するけどMPMの前になるとボラが高まる毎度のあれを続けるっぽいのがちょっと唸ります。

『There are two clear communication priorities.』

重要なコミュニケーションの優先なことあるそうです。

『First, especially when inflation is both high and expected to remain above target for an extended period, the central bank must provide the re-assurance that it has the capability and determination to deliver its price stability mandate. For the ECB, our symmetric two per cent inflation target provides a clear, unambiguous anchor and our monetary policy decisions should be forcefully explained as ensuring the delivery of our target over the medium term.』

『Second, the highly uncertain environment means that, more than ever, the ECB should offer clear and comprehensive explanations of our meeting-by-meeting integrated assessments of the evolving outlook for economic, monetary and financial developments, with a particular focus in explaining how the incoming data are incorporated into our views on the central likelihoods and risk patterns for near-term and medium-term inflation dynamics and thereby shape our monetary policy decisions.』

・・・・・・ちょっとガチで時間が無いのもあるんだが、これ読んでても「2%に向けて頑張りまっせ」「そのためにはこのようにやってって結果こうなって最終的に2%になるんです、みたいな説明をしまっせ」としか言ってないように見えますが、まあこれはもっとちゃんとした意味があるかもです(汗)。



2022/09/05

お題「債券市場の機能度・・・・・・・orz/第2回の物価に関するワークショップが意外とまともだった件について」

週の真ん中で月が替わるとなんか気分がアレで今日から月初の積り。

#なお今日から月初とか言ってると締めきりに間に合わない模様orz

〇債券市場サーベイですが(メモメモ)

https://www.boj.or.jp/paym/bond/bond2208.pdf
債券市場サーベイ
<2022年8月調査>

回答期間:2022年8月1日〜8月5日

調査対象先数:69先
(「調査対象先数」は、国債売買オペ対象先のうち調査協力を得られた先、および大手機関投資家<生命保険会社、損害保険会社、投資信託委託会社等>)

ということでサーベイがあったのですけどね。ちなみに前回は社数は同じで、期間は「回答期間:2022年5月2日〜5月11日」でした。


『(1)貴行(庫・社)からみた債券市場の機能度』の所でもう出オチ。

(現状)
機能度判断DI(現状)-27→-40
1. 高い       3→1    1先(前回2先)
2. さほど高くない  67→58   40先(前回46先)
3. 低い       30→41   28先(前回21先)


(3か月前と比べた変化)
機能度判断DI(変化)   -28→-42
1. 改善した        0→1   1先(前回0先)
2. さほど改善していない 72→55   38先(前回50先)
3. 低下した       28→43   30先(前回19先)

ということでありまして、指値オペアイヤーって言ってた5月の頭よりも金利が(ほぼ海外のせいですが)下がって10年カレント20bp割れとか言ってた8月頭の方が機能度が低いって結果なのですが、じゃあこれは単に金利水準の問題かと言いますと、
5月の時は、

(5月調査)
機能度判断DI(現状):2月 -21→5月 -27
機能度判断DI(変化);2月 -4→5月 -28

と悪化してまして(5月は申すまでもなく4月のMPMで逆切れの指値強化を行い、事実上緩和強化をした会合の直後)、要するにこれ「日銀が何がどうあっても政策の修正を一切行わない」というのを強硬に言い出すようになり、その後CTD指値とかドンドンと日銀は深みにはまり、市場の方はファンメタ見ても絶対に動かない(最遅行指標が動くまで動かない、という姿勢を示している中央銀行がファンメタ見て動くわけは無いので)円債市場になってしまったことに悲しみを覚えている回答、というところですか良く知らんけど。


特に泣いたのは次の設問『(2)債券市場の機能度・流動性に関する各論@貴行(庫・社)からみたビッド・アスク・スプレッドについてご回答下さい』でして、

ビッド・アスク・スプレッド判断DI(現状):2月 -1 →5月 -17 →8月 -28
ビッド・アスク・スプレッド判断DI(変化):2月 -9 →5月 -20 →8月 -41

ということで、ファンダメンタルズを丸無視して政策を1ミリも修正(だれも引き締めしろとは言ってない、ファンダメンタルズが変化したら適正なイールドカーブは変化する、ってのがYCCの導入した時の話しだったんじゃないですかねえ)しようとしない、という日銀の無茶苦茶な態度によって、確かに円債の金利は上がらなくなりましたが、オファービットが拡大しているという事は、それは市場本来としての意味付けは明らかに問題ありなのでありまして・・・・・・・・

『A貴行(庫・社)からみた市場参加者の注文量について、板の厚み(注)等を念頭においてご回答下さい。』

注文量判断DI(現状):2月 -20 →5月 -27 →8月 -50
注文量判断DI(変化):2月  -6 →5月 -19 →8月 -48

ということで、板もスッカラカンになってきている、というかなり悲惨な状態でして、経済物価情勢を受けて先行きを想定して価格形成が行われる、という市場の機能を4月以来のYCCのヤケクソ強化によって相当におかしくしている、というのが良く分かる結果だと思います。しかもこれが相場の荒れている時期だったら兎も角、海外金利の神風という話はありますが、まあ一応相場自体は落ち着いてて、指値とか全然かかる状況でもない、という水準に居る時に起こっているというのがヤバい以外の何物でもありませんわな。

まあ如何に今の日本国債市場の価格形成がファンメタから乖離しているか、ってのがここに如実に示されていると思いますし、ファンメタから乖離した価格形成が行われる市場で国債の安定消化がいつまでできるのか、というかまあ基本的に累卵の上にのっているようなもんなんですけど、そっちの面からもYCCの逆切れ強化は罪が重かった、というのが決定から3か月経過(今は4か月だけどサーベイは8月頭だったので)した所で明確に示されたってことだと思いますがどうでしょうかね。



〇たった2カ月で豹変するものなのか・・・・・・・(物価に関するワークショップだか何だか)

先日これが出てたんですよこれが。
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2022/ron220831a.htm/
「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップ
第2回「わが国のフィリップス曲線とコスト転嫁」の模様
2022年8月31日
日本銀行調査統計局

ちなみに本文はこちら。
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2022/data/ron220831a.pdf

要旨の方は大本営が要旨作っているから相変わらずの提灯臭が漂うのですが、(要旨はHTMLの紹介文から引用しています)

『要旨』

『2022年5月30日、「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップの第2回「わが国のフィリップス曲線とコスト転嫁」が、日本銀行本店で開催された。最近の原材料コスト高や為替円安をきっかけとしたコストプッシュ圧力の強まりの物価への影響や、やや長い目でみて物価形成に影響を及ぼす諸要因等について、感染症下での経済構造の変化を踏まえてどのように考えるべきか、経済学や実証分析の専門家・学者を交え、活発な議論が行われた。』(今回5月末)

さて、ここで第1回の要旨をもう一度見てみましょう。
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2022/ron220523a.htm/
「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップ
第1回「わが国の物価変動の特徴点」の模様
2022年5月23日
日本銀行企画局

・・・・・・・おや???所管の局が違っていますね??????????

『2022年3月29日、「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップの第1回「わが国の物価変動の特徴点」が、日本銀行本店にて開催された。コロナ禍で浮き彫りになった日米欧の消費者物価動向の違いを足掛かりに、わが国の物価変動の特徴点に関して、経済学や実証分析の専門家・学者を交え、活発な議論が行われた。』(前回3月末)

何かこう前回は「他の国はともかく我が国は違うよ!!!」ということで物価が上がらんという話をしておった訳でして、お蔭でネタにしましたようになんか物価が上がりにくい話のオンパレードだったのですけれども、今回は「最近の国内物価上昇を受けてどうでしょうか」みたいな話になっているのが中々味わいがあるのですが、更に凄いのがこの間ってたった2カ月しか空いてないこと、おまいらどういう認識の豹変なんだよという所ですが。


今回のに戻りまして・・・・・・・・

『第1セッションでは、最近のコストプッシュ圧力の消費者物価へのパススルーについて、海外の動向や過去の局面と対比しつつ、その特徴点が報告された。従来パススルーが限られていたわが国でも、中間需要段階等を中心にパススルー率が高まっている可能性を示す分析も示され、これらを踏まえたうえで、最近の企業の価格設定行動等について議論が行われた。』(今回5月末)

何で3月の時にそういう話をしなかったんですかねえ。いやまあ学者だからバックワードルッキング、って言ってしまえばそれまでなんですが、そもそも遅行指標である物価の話について後付けでああでもないこうでもない、という話をするのは暇人の茶飲み話であって、状況をフォワードルッキングに把握して、必要であればプリエンティブに対応するってのが金融政策運営なのですから、別にやるなとは言わないし他にこういうの出来る能力がある主体が居ないから仕方ないのも分かるんですが、日銀がわざわざ本店で雁首揃えてやるもんなんですかねえ、とは思ってしまうけど、ECBにしろFRBにしろ、各国中銀なり地区連銀でこういうセミナーやってるけど、日本の場合はまさか支店でこういう企画やる訳にもいかないから本店で、ってことになるんでしょうけど、何ちゅうか他の主体でこういうの出来ないのかね、と思ってしまいますな。

『第2セッションでは、まず、フィリップス曲線の枠組みに基づき、コストプッシュ圧力やインフレ予想等の諸要因が物価に及ぼす影響についての分析が示された。そのうえで、やや長い目でみて物価形成に大きな影響を及ぼすとみられるインフレ予想の形成メカニズムや賃金動向等についても報告され、その含意等を巡り議論が展開された。』(今回5月末)

QQE政策、当初はフィリップス曲線を上方シフトさせることによって物価安定目標が具現化する、ってやっていたんですから、フィリップス曲線との関係で話をする、というのは筋の通った話で、前回の「日本の特殊性ガー」よりもかなりマシな話をしている感が見れますな。

『第3セッションでは、パネルディスカッションが行われ、感染症下の構造変化も踏まえつつ、先行きの物価動向についてどのように考えるか、議論された。』(今回5月末)

『第1に、最近のコストプッシュ圧力の強まりは、当面の物価を上押しすると見込まれる一方、やや長い目でみれば、実質所得の押し下げを介して経済・物価を下押しすることに注視する必要があると指摘された。この点、生活必需品を中心とする最近の物価上昇は、所得の低い家計により大きな影響を及ぼすとの見方も示された。』(今回5月末)

だから何なんでしょうかね。

『第2に、現在のコストプッシュ型の物価上昇から、先行き物価の安定が実現していくかについては、(1)企業の価格設定スタンスが徐々に変化し、そうしたスタンスが社会に定着していくか、(2)そのためにも賃金がしっかりと上昇し、家計の所得が維持されていくかが、重要なポイントになるという見解が示された。』(今回5月末)

さて、このディスカッションの部分、前回どうだったかと言いますと・・・・(以下書いてるけど第1回から引用ね)

『第3セッションでは、パネルディスカッションが行われ、主として(1)わが国と米欧で消費者物価の動向が異なる背景、(2)今後の物価見通し、(3)物価の現状認識と見通しを踏まえた金融政策の課題、の3つの論点が議論された。』(前回3月末)

『(1)の論点について、米国では、需要の急回復や労働参加率の低下などがインフレ高進の要因となっている一方、わが国では、こうした要因が見受けられないため、米国対比で消費者物価が弱くなっているとの認識で概ね一致した。』(前回3月末)

『(2)の論点については、わが国では、感染症拡大前から続く慢性的なデフレ要因や、感染症の影響長期化に伴う需要の減退を背景に、物価が再び低迷するリスクがある一方、商品市況の高騰を起点としたコストプッシュ・ショックによって、インフレが高進するリスクもあると指摘された。そのうえで、どちらのリスクが顕在化する可能性が高いかについては、今後の賃金動向の見極めがポイントになるとの見方が示された。』(前回3月末)

『(3)の論点については、需要の弱さに対しては金融緩和を継続することが望ましいとの認識が共有された一方、エネルギーを中心とした一部の品目の価格上昇に対しては、金融政策以外の方法で対応することが望ましいとの見解が示された。』(前回3月末)

ということで、総じて前回の方が提灯議論成分が高かった事が分かると思います。たった2カ月で豹変するのって何だよそれって感じですが、もしかしたら主管部局が「企画局」→「調査統計局」になった事も影響しているのではないかとか直ぐに邪心が芽生えるのがアタクシの仕様となっております。まさかとは思いますが学者先生がそんなに阿世の徒であるとは思っておりませんけどね!!!!!!!!!!(棒読み)



ということで要旨はおしまい。本文をネタにする時間は無いのでパスというか気が向けば後日なのですが・・・・・・・・


えーっとですね、更にこの今回(と言っても5月末だが)の要旨の味わい深い所なのですが、要旨はさっきの所で終わっているのですが、今回は閉会挨拶が植田先生だったんですよ植田先生。

再掲します。5月30日ワークショップの内容についてのレポートPDF
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2022/data/ron220831a.pdf

本文14ページ、PDFで15枚目からの「閉会挨拶」なんですけどね。

『6.閉会挨拶

閉会にあたり、植田は、今回のワークショップを振り返り、感染症拡大前後におけるわが国の物価変動の特徴点について、非常に有意義な議論が行われたと総括した。』

で?

『パススルー率の非線形性、サービス価格の硬直性とインフレ予想との関係、賃金変動率分布の変化等をセッション報告で示された興味深い点として指摘した。そのうえで、パネルディスカッションで議論された物価の先行きを巡る議論に関連して、過去20年以上続いているわが国の低インフレの背景と先行きの物価を考えるための追加的な論点をいくつか示した。』

!!!!!!!

『第1に、過去 20 年の趨勢的な(実質為替でみた)円安進展と交易条件悪化の経済・物価への影響という論点を指摘した。』

キタコレ!

『具体的には、@円安の進展が輸出の増加につながれば、国内の物価や賃金上昇につながると考えられるが、なぜこうした動きが生じなかったのか、A円安に伴う本邦企業の海外保有資産のキャピタルゲインの影響や、円安に伴う海外勢の本邦への投資増加がわが国の資産価格に及ぼす影響をどう考えるか、B交易条件悪化に伴う実質所得の棄損が、サービスを中心とした国内価格を下押しする影響をどのように評価するか、といった点を課題として示した。』

ほうほう。まあこれ挨拶なんで「だからこうです」みたいな話にはならんのですが、植田先生の上記の指摘を念頭にワークショップの様子を示した上記PDFを読むと吉です。


『第2に、インフレ予想や賃金上昇率がどのように決定されるのか、という論点を指摘した。』

ほうほうほう。

『これらは、@一気に急低下した 1990 年代後半のように動くときには急激に動くこともあるが、A2000 年代以降は低迷を続けており、その決定メカニズムが分かりにくくなっていると述べた。』

うむ。

『そのうえで、セッション報告等で示された最近の賃金動向等の変化が、20 年以上の長期に亘る調整が終了しつつあることを示しているのか、更なる研究が必要と指摘した。』

>最近の賃金動向等の変化が、20 年以上の長期に亘る調整が終了しつつあることを示しているのか、更なる研究が必要
>最近の賃金動向等の変化が、20 年以上の長期に亘る調整が終了しつつあることを示しているのか、更なる研究が必要
>最近の賃金動向等の変化が、20 年以上の長期に亘る調整が終了しつつあることを示しているのか、更なる研究が必要

!!!!!!!!!!!!!!!

『第3に、低インフレ・低金利の長期化自体が、わが国経済にマイナスの影響を及ぼしているのか、という点を挙げた。』

ほほー。

『低インフレ下での相対価格調整の遅れや、いわゆる「ゾンビ企業」の存続、分配への影響などは、経済にマイナスの影響を及ぼしてきた可能性があるが、この点についても議論を深めていく必要があると述べた。』

でまあこれはさておき最後にさらにシレっと爆弾を投下しているのが植田先生流石です。

『そのうえで、最後に、米国における最近の供給制約を起点とする物価高騰を予見できた人が殆どいなかったように、先行きのわが国の物価を巡っても不確実性は大きいと指摘した。』

キタキタキタ!

『わが国の長期に亘る低インフレ環境は、これまで議論してきた点も含め様々なプラス・マイナス要因が打ち消しあった結果として成立してきた可能性もあり、今後、思わぬ要因が強まることでそのバランスが崩れ、物価上昇率が急激に高まる可能性も否定はできないと指摘した。』(以上この部分直上URL先の今回分の本文から)

いいですねー植田先生。でもこういう指摘は要旨の方には出てこない、というのがこれまた味わいがあるというか大本営発表というか大本営に都合の悪い事はわざわざ自分からは書かないという忖度炸裂なのか、まあそんなのはさておきまして、大変結構なご挨拶でした。

なお、比較するのも無駄なので比較しませんが、前回の閉会挨拶は雨宮さんじゃない方の副総裁ということでまあお察しの内容でした。






2022/09/02

お題「時間の無駄などのご指摘を賜りつつも中川審議委員の会見を追いかけて函館(^^)」

最近更新をサボって(??)いたセントルイス連銀のFOMC Speakですが、ふと見ると怒涛の更新をしておられる。
https://www.stlouisfed.org/fomcspeak

ジャクソンホールからのがドバーっと更新された結果これである。

Lael Brainard   August 29, 2022 (02:15 PM ET)
Loretta J. Mester August 26, 2022 (11:45 AM ET)
Patrick T. Harker August 26, 2022 (10:25 AM ET)
Raphael Bostic  August 26, 2022 (10:01 AM ET)
Jerome H. Powell August 26, 2022 (10:00 AM ET)
Patrick T. Harker August 26, 2022 (09:42 AM ET)
James Bullard   August 26, 2022 (09:15 AM ET)
Raphael Bostic  August 26, 2022 (08:26 AM ET)
James Bullard   August 25, 2022 (02:00 PM ET)
Esther L. George August 25, 2022 (11:25 AM ET)
Patrick T. Harker August 25, 2022 (10:00 AM ET)
Esther L. George August 25, 2022 (07:52 AM ET)
Esther L. George August 25, 2022 (07:30 AM ET)
Esther L. George August 25, 2022 (06:30 AM ET)
Raphael Bostic  August 25, 2022 (06:00 AM ET)

何か同じような人しか話をしていない説は若干ありますが(^^)。


〇中川審議委員函館金懇だが講演だけで大概ではあるものの会見も凄い

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220901a.pdf

例によってご当地質問で延々3ページ使っています。なお先に申しておきますが、この会見6ページと3行しかありませんので、そもそもが全体の金融政策等に関わるパートは3ページしかない、という代物になっておりましてその時点で凄いというか、3ページなら全部ネタにできるわ、と思ってしまいました。

・・・・・・昨日の中川審議委員の金懇挨拶ネタで頂きました反響としては「この人の発言を追いかけるの完全に無駄じゃねえか」というのが誠にアタクシもコンプリートりーにアグリーするものでありますが、そうは言っても何にも無いから見ない、というのは、そういう存在を肯定する事にもつながりますので、ちゃんと晒し物にすることによって反省と成長を促したり任命責任を問うてみたりという意義もあろうかと思いまして、まあネタにするのです。

これが先日の中村審議委員の場合、「現在の黒田執行部が捻りだしている屁理屈体系を一番近い所で見ていて、それを(変に金融政策ネタでスレていない)フラットな目で見た場合どういう屁理屈を組んでいるのかを咀嚼した結果を説明している」という立ち位置なので、話の内容の当否は兎も角として、読んでて読み甲斐がありますわな。


・前回展望から1か月経過のアップデートすらしない「説明」とは???

ということで4ページ目の質問になります。

『(問) 物価動向でお伺いします。足元で食品などへの価格転嫁の積極化や再び円安が進行していることもありまして、物価は 7 月に日銀が示した見通しよりも既に上振れて推移している可能性が高いように思われるのですが、先行きの見通しも含めて現在の委員の見方を教えてください。(後半割愛というか次でやる)』

この回答が凄すぎる。

『(答) まず物価に対する見方ということですが、7 月の委員の中央値に関しましては発表させて頂いている通りです。』

誰もそんなことは聞いてねえよさっきあいさつで説明しただろうが。

『足元で+2.6%という数字も出てきていますが、やはりウクライナ情勢の緊迫の継続、それに伴う物流関係の滞留、こういった非効率さも相まって、非常に高い水準で、海外、特に欧米において高いインフレ率がみられ、それが時間差を生じて日本にも波及しているという見方ではあります。』

金懇挨拶もウクライナだったのですが、欧州の天然ガスとかは大きく影響しているけど、直近の特に米国のインフレってウクライナとかよりも別のファクターの方が大きくなっていますよねえ。質問者は7月以降の変化についてどう思うか、って聞いてるんですけど、何でその前の話を延々とするんだか。

『ここに関しては 7 月に出しました想定を、次回 9 月を迎える中で、色々な面から点検していきたいと思っています。』

質問者は7月以降に起きた変化についてどう思うのかを聞いているんですけど、やっとそれらしい話になってきたかな、と思うのは中川ウォッチャー入門試験落第レベルでして、

『物価指数は、皆さまにとってはご承知のことばかりですけども、多くの方があらゆる検討を重ねたうえで作られているわけですが、』

突然何を言い出すんだ?????????

『その内容を子細にみていくと、非常に動きやすいものであると思いますので、』

物価指数が安定してゼロ近傍で動かない、って問題にして今の政策やってるはずなんですが・・・・・・・

『その辺りは日々の動きというよりは少し長い目線でデータをみながら判断をしていきたいということで、』

物価指数の「日々の動き」って何だよ?????????

『一部にはたしかに3%という声もあると聞いておりますが、今の時点では 7 月の見通し以上の情報というのはここではお伝えすることはありません。』

散々意味不明な説明にもなっていない説明をした挙句に、

>今の時点では 7 月の見通し以上の情報というのはここではお伝えすることはありません

と来たんですが、この1か月ちょいの間に主に金融政策面で実に色々な事が起きたのに、アップデートすらしない、と来たもんでして、YOUは何しに函館へ?????


まあ回答は続きまして、

『ただ、環境としては物価が上昇基調にあるということは、他の指標──例えば刈込平均値ですとか最頻値──をみても、傾向としてはその通りであると思います。』

それを敷衍して説明すりゃいいんだよ。

『ただ、今後中期的にみたときにどうかということに関しては、今のご質問から外れているかもしれませんが、やはりエネルギー価格などが前年比といったときに、多少影響が緩和されてくるということを想定しているのが今のシナリオということです。』

これはひどいwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

とにかく7月展望レポートで教え込まれたこと以外は絶対に発言しない、という自分の意思皆無というこの堂々たる姿勢なのでして、九官鳥もビックリというこの回答。

『もちろん、やはりその不確実性が項目としては非常に大きいので、今後引き続き慎重にみてまいりたいと思います。(後半割愛)』

色々と発言をしているけど何も喋っていない、という意味で話を誤魔化す能力は高いから頭は良いんだろうなあと思いましたけど(皮肉)、誤魔化すにしたってこれだと「質問されても私に意思はありませんので公式見解以外の回答は出来ません」って言ってひたすら逃げ回っているだけという代物で、何ちゅうかノミネートする際にどういう背景があったのか下々のアタクシなんぞは知りようもない訳ですが、こんな対応ばっかりやってると各方面に失礼に当たるとおもうんだけど。


・物価が今後想定以上にあがった時に政策を見直さなくても良いのかという質問にはまるで回答をしないという作戦に出ました

さっきの質問の続きですが、前段のレベルの質問で上記の回答な時点で後半の質問に対する回答はお察しの通り。

『(問)(前半はさきほど引用したものです)加えて、消費者物価が先行き 3%程度まで上昇する可能性も指摘されているわけですけれども、そうした場合でも、むしろ現在では消費への影響が懸念されるということを委員おっしゃっておられますけど、そういう状況でも緩和を継続すべきということでよろしいのか、その辺の確認も含めてお願いします。』

こういう質問をしてもああだこうだと何か言っているように見えるけど全く何も言ってない、という回答を繰り返すって事になるので、次回の金懇の際には「イエスかノーでしか答えられない質問、できれば逃げ道を全部丁寧に塞いでからその質問を行うようにする」ってのを励行しないと時間の無駄になると思います。

ということで時間の無駄の回答なのだが、晒し上げはアタクシの任務である(ナンジャソラ)。

『(答)(前半割愛というかさっきの部分です)この環境下で緩和策についてどうかというご質問を頂いたのが2 つ目だったと思います。こちらは繰り返しになるかもしれませんが、物価 2%の安定的な目標ということに関しては、2%に達することでもって到達したということではないというのは繰り返しお伝えしている通りです。賃金も含めた形で好循環が生まれているというのが、1 つの目標とするところであります。』

質問に答えているようで全く答えていない。

『今日の席上でもやはり為替への影響があるのではないか、金融政策の各国の差によって、ということの反面、利上げの可能性に対する不安の声も頂きましたので、この辺りは十分に私自身で消化をしていきたいと思いますが、今の状態ですと、前回 7 月の決定会合の内容以上の形では、お伝えするべき変化というのはないと思います。』

先行きの物価が想定以上に上昇しそうな中で、金融政策運営の判断に影響が起きないか?って質問に対してこれは回答していないのと同じですね。


・・・・・いやあのですね、「物価 2%の安定的な目標ということに関しては、2%に達することでもって到達したということではないというのは繰り返しお伝えしている通りです。賃金も含めた形で好循環が生まれているというのが、1 つの目標とするところであります。」という「目標とするところ」は分かるんだが、その「目標とするところ」まで今の極端に大規模な金融緩和を継続して行くのが妥当なのか、とかそういう論点での話は無いのか?って事が質問の肝な訳で、分かってて回答してるのか分からないで回答しているのかが謎なのですが、この会見、なんせ実質3ページで終わってしまっているという位の代物なので、質問側が完全に呆れているんだろうなあ(そらまああの金懇挨拶要旨を出されたらまともな回答が期待できないから端から呆れてたのは予想つくけど)って感じだと思います。



・あとはコロナオペの質疑が2本で会見が終了しちゃうと言う記者にも見放されている中川さん

という小見出しの通りでして、先週の中村さんの場合は、質疑がかみ合っていないという問題点はありましたけれども、質問に対して色々と自分の見方も含めながら一生懸命回答しているという姿勢は見られた(なお、一生懸命やった、だけで評価されるのは義務教育までなのでだから評価するとかは別問題)中村さんだったので、質疑もそこそこあって、全体で9ページある中でご当地質問2ページだったのですが、中川さんのは全体で6ページと3行しかなくて、ご当地質問3ページなので、実質的には中村さんのオリジナル質疑応答7ページ、中川さんのオリジナル質疑応答3ページという事で、中村さんの半分も仕事をしていない、というこれはまさしく給料(以下の単語は不穏当と判断されたため内務省検閲局により削除されました)。

ご当地質問後の最初の質疑がさっきのだったのですが、その次がこれ。

『(問) コロナオペについて伺います。現時点で 9 月まで中小企業の資金繰り支援を延長するとなっておりまして、次回の会合の方で今後の継続の必要性を含めて判断されていくと思うのですけれども、今回は地方の函館という都市で中小企業の方とも会ったと思うのですけれども、そういったお話を伺う中で必要性についての現状認識、または足元のまだコロナ感染者が収まらない中で企業からの継続を求める声があったかどうかというのも含めてお伺いできればと思います。』

なんかだから何なのって質問で聞く方も覇気がないなあって感じですけど。

『(答) 席上での細かい具体的なお話に関しては控えさせて頂きたいと思いますが、もちろん感染症の拡大とその影響が残っているという声を頂いています。これはこの地に限らないわけですが、引き続きこの影響というのが──第 7 波と言われているものが──まだ収束しきらない中で、非常に留意が必要であるという点は認識しています。』

で??

『また、企業の資金繰りに関しましても、いわゆるゼロゼロ融資の元本の返済が迫っている、ないしは迎えているという企業もある中、中小企業中心に感染症の影響を受けている対面型サービスでは、総じて回復基調にあるというところも増えてまいりました。』

何かとりあえず頭に浮かんだ順に話をしてないかこの人???もうちょっと筋道立てて話をしてくれ。

『ただ、もちろん、第 7 波による影響が今、読み切れない中にあっては、安易な判断はできないと思っております。』

結局どっちなんだよ頼むからそう右行ったり左行ったりしないで纏めてくれ。

『コロナオペに関しては、一定の利用がまだみられていまして、ご活用頂いているようですが、ご承知のとおり残高自体は減ってきています。10 月以降のコロナオペの扱いに関しては、引き続き今後の感染状況とそのもとでの中小企業などの資金繰りの動向を引き続き情報収集しながら、9 月の決定会合で判断したいと考えています。』

ああでもないこうでもないと雑に並べ立てた挙句に結局なんの回答にもなっていない回答でありました。


これあ話にならんので更問が来る。


・ガイダンスの質問をするときに利下げバイアスの削除を質問するのは悪手なんですけどね

『(問) 先ほどのコロナオペの扱いについての質問の続きということになりますけれども、今、日銀として、金融政策の先行きについて、「当面コロナの影響を注視し」という文言で始まるのですけれども、9 月会合でコロナオペの扱いについて決めた際に、この文言「当面コロナの影響を注視し」というところも、連動して変えてくる必要があるのかどうかというのが一つと、』

悪いんだがここで止めてくれればよいのに、なぜか記者の方々(この質問でも触れてますけど)中村さんの時もそうだったんですけど、「緩和バイアス文言」の見直しについて執拗に聞きたがるんですけど、これは効くだけ逆効果になって回答の引き出しに失敗する要素なので勘弁してほしいのですよ。まあこういう質問するんですけれども、

『先日、中村審議委員の会見でも出ていましたけれども、その先の政策金利のバイアスのところ、利下げバイアスが今あるわけですけれども、この扱いについて、利下げバイアスを取って中立にするべきかどうか、中川委員のお考えを聞かせてください。』

そもそも中川さんにお考えがないので聞かせて下さいといっても無い、というのはご愛敬としまして、ここのバイアス変更とかって話は、「1ミクロンたりとも修正する気が無い」という今の黒田日銀にとっては全力でノーという回答をする質問になってしまいますので、この質問を加えることによって、前半の「いつまでコロナ感染症紐付けの政策金利フォワードガイダンスを継続するのか」という質問に対する回答が得られなくなりますがな、ということでおやめ頂きたい。

と申しますのは、あの懐かしの「80兆円」にも通じる話で、コロナ対応のどさくさで輪番オペに対して「無制限」という誤魔化し文言を入れるという火事場になってやっとこっそり全く意味が無くなった80兆円文言を取り外したように、日銀の執行部って声明文の主要な文言に関しては大事に扱いますが、この緩和バイアスなんて最早完全に「YCC導入後の80兆円文言」と同じで、まともにとりあう必要はない(たぶん本当に政策修正する瞬間まで残すんじゃないかと思います)んですよ(個人の感想です)。まあそもそも緩和バイアス文言って置物とゆかいな仲間たちとその上の安倍ちゃんの為にあるようなもんですからねー(個人の妄想です)。

では回答。

『(答) 冒頭の「コロナの状況を注視し」という部分に関しては、その先行きの政策運営とかその方向性ということも含めて、決定会合で議論していくことになるのであろうと思います。必ずしも、コロナオペと直接連動させるべき、もしくは連動しているものではないと理解しております。』

これさあ、せめて「今のコロナオペはコロナで影響を受けた中小企業への資金繰り対策のサポートの一環として行われているものであり、政策金利のフォワードガイダンスにおけるコロナ感染症に関する言及は特定セクターの話ではなく、日本経済全体に対する感染症の下振れリスクを注視すべき、ということなので、コロナオペ終了の判断と、コロナ感染症の経済全体への影響をリスク要因としてあまり注視しなくてよい、という判断は必ずしもタイミングが一致する訳ではない」ってちゃんと説明して欲しいんですよね。

というかですね、記者会見なんだからちゃんとそういう説明しろや(自分語りで恐縮だがワイ同僚にこの質問されたら今アタクシが言ったような説明で日銀は整理している、それが正しいか正しくないかというのはさて置きますけど、って説明してるぜ)と思う訳で、せめてこの程度の話くらいちゃんと丁寧に説明しろやと思うのですが、説明が紋切り型過ぎてこれじゃあ何で別なのかが明快に説明されてないんですよね、いやまあ本人は説明しているつもり(「その先の政策運営とか〜」の部分で説明しているつもりなんだと思う)だと思うんですけど。

『それから今、中村審議委員のお名前を頂きましたけれども、他の委員の方のご発言に関しては、具体的にコメントするのは差し控えさせて頂きたいと思います。』

そう来ると思った。

『先行きの政策運営の方向性に関して、どのような表現、また情報発信を行うか、という点ですけれども、これも繰り返しになって申し訳ありませんが、毎回の決定会合で議論しますので、次回 9 月の決定会合で経済・物価情勢を丹念に点検したうえで、判断していくことになると思います。』

そんなことは分かっているのであなたさまの意見が、と思ったら一応大本営棒読みだけど意見があった。

『こちらに関しては、先ほど冒頭のところでお話ししましたとおり──皆さんのご認識も同じだと思いますが──依然として新型コロナ感染症による下押しの圧力を受けているというところで、引き続き注意が必要であるという状況ではあると思います。』

『ですので、今、フォワードガイダンスを含みで言って頂いたと思いますので、これも含んで、7 月の決定会合において決定したとおり、今の時点では、この緩和バイアスというのは維持するのだろうと思いますが、この先、今後の出てくるデータや情報、ヒアリング等々で、9 月にまたきちんと議論したいと思っております。』

やっと「今の時点での判断」という言葉が会見の最後の最後に出てきましたが、惜しくも会見はここでおしまいになってしまいました。もしかしたらこの先続けて行ったらもう少し中川さんの「私の見解」が聞けたかもしれない、と思うと残念なのですが・・・・・・・・・・・・・・


と、2日間にわたって時間の無駄にお付き合いさせてしまいまして誠に申し訳ございませんでした(土下座)。





2022/09/01

お題「中川審議委員の函館金懇挨拶だが見るべきものがない所を無理矢理鑑賞してみましたよ」

えーーーーーもう9月なのかよーーーーーーーーorz

〇大本営の話ししかしないのはともかく政策ロジックの部分とか何も話さないのは如何なものかと

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220831b1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
函館市金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 中川 順子
2022年8月31日

前回の中川さんの金懇挨拶はものの見事に大本営発表棒読みという代物だったのですが、ちったあ変わったかと思ったらこれがまたアレでございました。どーなってんのよ・・・・・・・

・最初の挨拶の時点でオリジナルな話をしない意思がつたわっておる

『1.はじめに』ってほぼ定型文に近い所なのですが、このようになっています。

『日本銀行の中川です。本日は、当地の行政および金融・経済界を代表される皆様との懇談の機会を賜りまして、誠にありがとうございます。今回、リモート形式ではなく、実際に当地を訪れ、皆様と対面で懇談できますことを大変嬉しく思います。皆様には日頃より、函館支店の業務運営に多大なご協力を頂いておりますこと、この場をお借りして御礼申し上げます。今後とも何卒ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。』

まあこれは一般的な謝辞である。

『本日は、最初に私から、わが国の経済・物価情勢や日本銀行の金融政策運営などについてご説明させて頂き、その後、皆様から当地の実情に即したお話やご意見をお伺いできればと存じます。』

普通じゃん、と思われると存じますが、ここでつい先週の中村審議委員による金懇挨拶の冒頭と比較すると分かりやすい。同じく『1.はじめに』ですけどね。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220825a1.pdf

『本日は、内外の金融経済情勢や金融政策、日本経済の持続的成長に向けた私の思いなどについてお話させて頂き、福岡県経済の現状と期待される取り組みに触れさせて頂いた後、皆様から率直なお話を承りたく存じます。皆様との懇談を通じて、地域経済の現状や課題に対する理解を深め、頂いたご意見を日本銀行の業務や政策判断に活かしてまいりたいと存じます。』(この部分だけ中村審議委員による8/25福岡金懇挨拶より引用)

「日本経済の持続的成長に向けた私の思いなどについてお話させて頂き」ってありますよね。

ついでなので申し上げますと直近の安達さんの金懇挨拶の冒頭を見ますと、
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220602a1.pdf

『本日は、わが国の経済・物価情勢と日本銀行の金融政策運営につきまして、私の考えを交えつつお話しします。その後、皆様から、北海道経済の動向や日本銀行の業務・金融政策に対する率直なご意見をお聞かせ頂ければと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 』(この部分だけ安達審議委員による6/2札幌金懇挨拶より引用)

「私の考えを交えつつお話しします」って入ってますね。

野口審議委員も、、
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220407a1.pdf

『本日は、まず私の方から、国内外の経済動向と日本銀行の政策運営、さらには脱コロナ禍に向けた金融政策の展望について、私見を交えてお話しさせて頂きます。その後は皆さまから、当地の経済状況についてのお話、さらには私どもの政策・業務運営についての忌憚のないご意見を承りたく存じます。』(この部分だけ野口審議委員による4/7熊本金懇挨拶より引用)

「私見を交えてお話しさせて頂きます。」ってありますね。

・・・・・とまあこれを見た時点で、あのーすいません中川さんのご意見はあるんでしょうか???と大変に懸念を持ってしまう、というのが金懇挨拶を読み続けてウン十ウン年の自称日銀ヲチャー(しつこいがウォッチャーではない)としてのアタクシの感想でして、これはネタにならん!!!と見た瞬間にがっかりしたので思わず余計な比較をしてしまいましたが、内容も期待通りの作品に仕上がっております。


・経済物価情勢は大本営発表なので見る部分無しな上に・・・・・・・・・・

『2.経済・物価の現状と見通し』というのが続くのですが、小見出しを並べて見ると、

『(1)7月展望レポートにおける経済・物価見通し』
『(2)海外経済の動向』
『(3)国内経済の動向
(企業部門)
(家計部門)』
『(4)国内物価の動向』

とあって、最後に
『(5)物価上昇が個人消費に与える影響』

というちょっとだけ面白そうなのがある(なお読むと失望します)のですが、これを中村審議委員の金懇挨拶の大本営部分と比較してみるとこうなります。

『2.内外経済情勢
(1)経済・物価の現状と展望
(2)経済・物価のリスク要因』(さっき紹介した中村審議委員の8/25福岡金懇挨拶より)

と来ますがこの間で冒頭のあいさつも含めて使われているのが2ページ半相当、この後直ぐに『3.金融政策運営』となってここが2ページ半、『4.日本経済の持続的な成長に向けて』という渾身のオリジナル部分が4ページ弱の構成になっております。

一方で中川さんの金懇挨拶ですが、『(5)物価上昇が個人消費に与える影響』の手前の所までで堂々の6ページ(冒頭あいさつ含め)消費し、『(5)物価上昇が個人消費に与える影響』ってのが1ページ、次に『3.日本銀行の金融政策』が1ページ半しかなくて、その後はご当地経済の話になる、というほぼ全編大本営発表の棒読みとなっている次第でして、いやあのちょっとですねえ・・・・・・・・・・・・


で、気を取り直して堂々の6ページご紹介しようと思ったのですが、マジのマジマジでただの展望レポートの話を延々と展開しているだけで、さらに言えば7月の展望以降のアップデートすらない、というナメトンノカという内容になっております。

例えば、『(1)7月展望レポートにおける経済・物価見通し』のところに先行きリスク要因のことが辛うじて最後に入っているのですが、

『先行きのリスク要因について、展望レポートでは、内外の感染症の動向とその影響、今後のウクライナ情勢の展開、資源価格や海外の経済・物価情勢、国際金融市場の動向などを挙げています。』

・・・・・(゚д゚)

えーっとすいません、7月展望レポート以降において欧米の金融政策当局がよりインフレ抑制姿勢を示し、特に直近のジャクソンホールにてパウエルさんが景気減速してでも物価を2%に押し下げるのが大正義で、プレマチュアーな緩和なんぞするかボケ(ってゆーのは元々言ったけど露骨に言わないと市場に伝わらないというので明確化しただけですけど)という風に、明らかに今後のリスクは特に米国のインフレ抑制の金融政策がオーバーキルになるやならざるや、またはインフレ抑制が相変わらず上手くいかなくて手前で物価が更に跳ねたり全然サガランチ会長になったり、という話だと思うんですが、そーゆーのを1ミクロンもアップデートしないのって何なんですか??????????

ということで、大本営発表であったとしても、せめて直近情勢のアップデートでもしてくれればよいのに、それすらない、というのが悪い意味で凄くて、自分の意思で話が出来なくなる変な妖術でも掛けられてるんじゃないかと心配してしまうレベルに見えてしまいますな(個人の感想です)。

同じような話ですが『(4)国内物価の動向』って所でも、

『このような展望レポートの中心的な見通しに対して、物価を上振れ、下振れさせる要因はいくつか存在しますが、』

ってあるんですが、

『要素の一つとして挙げているのが資源価格の動向です。』

ってありまして、いやまあ要素の1つかも知れんけど、例えば直近の国内物価で言えば、輸入物価の上昇って為替要因の寄与の方がドンドン拡大しているし、そもそも4月展望→7月展望の間で22年度の物価見通しが上方修正された要因ってどっからどう見ても為替(国際商品市況は総じていえばこの間横ばい推移)だったし、さっき書いたように、欧米の物価上昇がトマランチ会長の中で金融政策の引き締め意欲が高まる、というような動きになっているのが今後世界的にどういう影響あるの、とかそっちの方がどう見てもポイントになる話だと思いますし、この先の部分が、

『例えば原油の動向についてみますと、代表的な油種であるWTIは、3月に一時 130 ドルをつけたあと、暫くの間 100 ドル強が続き、その後は景気減速による需要減少の見方から足元では 90 ドル台で推移していますが、依然として高い水準にあります。世界経済の景気減速に伴う需要減少が価格下落をもたらすリスクがある一方、供給サイドの問題で国際原油市場の需給がさらに引き締まるリスクもあると考えています。』

例に挙げるのに原油ってのは今の話題から言ったらやや離れてて、寧ろ冬場にかけては天然ガスだろとか思いますし、食料とかそっちの方もあるじゃろ、と思うのですが未だに原油ってアップデートが足りんアップデートが。


・小見出しを見て期待して損したコーナーを皆様にも鑑賞してもらいましょう(−−;

本文7ページ(PDFの8枚目)に『(5)物価上昇が個人消費に与える影響』というのがありまして、やっと読めそうなコーナー来たじゃん、とまあアタクシはウキウキしながら読み始めたんですよ。

『続いて、物価上昇が個人消費に与える影響についてお話ししたいと思います。』

ワクワクテカテカ。

『感染症や供給制約の下押し要因が剥落し、景気が回復していくためには、物価上昇による個人消費への悪影響が軽微にとどまることが必要であると考えています。』

で、その影響は???

『物価上昇の影響を受けつつも、感染抑制と消費活動の両立が次第に進み、雇用・所得環境も改善していくもとで、個人消費も緩やかに増加していくことが基本シナリオです。ただし、そうしたシナリオには一定の不確実性があることも事実であり、物価上昇が家計の消費に与える影響は注意してみていく必要があると思います。』

いやだからその影響は??????

『この際、ひとまとめに家計といっても、収入、家族構成、居住地域などにより異なる特徴を有しており、実際に今の環境下で直面する物価上昇率は各家計で違いがあります。』

はあ。

『例えば、地域別では、1年を通してみると、北海道、東北、沖縄では全国平均に比べて光熱費の支出割合が高いことが知られており、最近の環境下での物価上昇率も相対的に高くなっています。』

はい。

『家計所得でグループ分けをしますと、所得の低いグループの方が、高いグループよりも相対的にエネルギーや食料品への支出ウエイトが高く、物価上昇の影響が大きくなっています(図表 10)。』

そんなことは言われんでもわかっとる。

『また、物価上昇が消費マインドに与える影響を内閣府の「消費動向調査」でみますと、相対的に所得の低い家計で、暮らし向きに対する判断がより慎重化していることが確認されます。』

だから何なんですか???????????

『この間、政府は、本年4月に燃料油補助金の拡充・延長のほか、低所得の子育て世帯に対する給付金の実施などを盛り込んだ「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」を策定しました。こうした的を絞った施策は、物価上昇の影響を強く受けている家計に対して効果的であると考えられます。』

それは分かったから話の続き・・・・・・

ええええええええ!!!!!このコーナーこれでおしまいなのおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!

ということで、事実としてこのコーナーは終わって、この直後に小見出し『3.日本銀行の金融政策』というのが始まる、というワタシのウキウキやワクワクを返せとしか言いようがない何のインプリケーションも出さないという何のためにこのコーナーがあったのか、ということすら分からない物件が仕上がっておりまして、甚だ遺憾の意を強くするものでありまする。



・金融政策の説明がこれまた何か言ってるようで何も言ってない記述が続く

ということで最後のご当地経済の手前が金融政策の話になりますが、

『次に、日本銀行の金融政策について、お話ししたいと思います。』

と来るのですが、延々と話をしているのがなんと、

『まず、2020年3月以降に行ってきた、感染症拡大への対応について簡潔に振り返ります。』

あのーすいませんコロナオペ以外終わった話なんですけど今更なんの振り返りをしますねん、と思うのですが、以下毒にも薬にもならないレビューが続くが、「見どころが無い」と言ってぶった切っているとこの人の金懇、引用箇所が無くなるという前代未聞の金懇挨拶になるので、さっきから無理矢理引用しているのがお分かりになっているかと存じますが(^^)、ネタにすらならないものをネタにするのは大変で、中村審議委員の金懇挨拶微妙に悪態つきましたけど、どっからどう見ても中村さんの金懇挨拶の方が良かったとしか申し上げようがありません、個人の感想ですけど。

『日本銀行では、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、国債買入れやドルオペ等による潤沢かつ弾力的な資金供給などの措置により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めました。こうした日本銀行の対応は、政府の施策や金融機関の積極的な取組みとも相俟って、効果を発揮してきました。』

『この結果、大企業を中心に予備的な流動性需要に落ち着きがみられるなど、わが国の金融環境は全体として改善してきました。ただし、中小企業の資金繰りについては、総じてみれば改善傾向にあるものの、一部では依然として厳しい状況が続いていると判断されたことから、昨年 12 月の決定会合において、本年3月末までの時限措置としていた新型コロナ対応特別オペのうち、中小企業支援に相当する部分を本年9月まで再延長しました。これらの対策については、感染症の影響について見極めたうえで、次回9月の決定会合で取り扱いを検討することになります。』

もっと根本的な部分で金融政策について話すべきことがあるんじゃないですかねー(鼻ホジホジ)。

『続いて、金融政策運営について、もう少し長い期間を振り返りたいと思います。』

と思ったらやっと来たか。

『日本銀行では、2013 年4月に、2%の「物価安定の目標」の早期実現を目指し、「量的・質的金融緩和」を導入しました。そして、2016 年9月には、金融緩和の効果について検証を行なったうえで、長短金利の操作を行うイールドカーブ・コントロールを含めた「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入し、金融緩和の強化を行いました。しかしながら、2%目標の実現には時間がかかることが予想されたもとで、昨年3月、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検を実施しました。点検の結果、経済・物価の押し上げ効果を発揮している金融緩和を持続的な形で継続していくことが適当であること、経済・物価・金融情勢の変化に対しては、躊躇なく、機動的かつ効果的に対応していくことが重要であることを確認し、現在に至っています。』

何ですかこのどうでもいい記述は。

『消費者物価指数の前年比は、4月以降の携帯電話料金の値下げの影響の剥落と、資源価格の上昇や為替円安などによる価格転嫁の動きから、7月は+2.6%と、目標である+2%を超える水準で推移しています。もっとも、単純に2%を実現しさえすればよいとは考えていません。目指しているのは、緩和的な金融環境が企業収益の増加や労働需給の改善を促し、その結果として、賃金と物価が持続的に上昇していく好循環の形成です。』

それは分かったんだが現実問題として供給ショックその他要因によって物価が先行して上がっているのですから、じゃあ「緩和的な金融環境が企業収益の増加や労働需給の改善を促し、その結果として、賃金と物価が持続的に上昇していく好循環の形成」したかったらまずは物価上昇止めてリセットでもするんですかーってなもんですな。

『こうした好循環が実現し、賃金上昇を伴う形で「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現できるよう、引き続き金融緩和を継続する必要があると考えています。』

と言ってるんだが、欧米では物価上昇が先に来る中で「物価上昇は一時的」を連呼して物価上昇を放置して金融緩和続けたら望ましい水準をぶち抜けて物価が上昇した訳で、日本は今物価上昇が先行して起きてる中で、「緩和的な金融環境が企業収益の増加や労働需給の改善を促し、その結果として、賃金と物価が持続的に上昇していく好循環の形成」とか言ったって、そもそも好循環の前に悪循環の可能性にある「物価が先行して上昇」がスタートしているのだから、そのまま巨大な金融緩和を継続した時に、言ってる好循環が起こる前に別の循環起きるリスク無いの???それについてはどう考えているの????位の話をしてくれないと、前提条件を無視した話をしているだけにしか見えないんですよねー。

ということで、さてこの先は、と思うと・・・・・・・・・・・やっぱりここで終わっているのでした!!!!!!!


見どころの無い金懇でネタを頑張って捻りだしてみるとこのようになります。ってなもんですな、オペ関係の話は別途また。