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2022/05/31

お題「ウォーラー理事の講演だがまあ「タカ派でもこの程度」という扱いになるのでしょうかねえ・・・・・・」

ECBの方はラガルドのブログポストに始まり、
https://www.ecb.europa.eu/home/html/index.en.html

今時点でトップを見るとレーンさんとパネッタさんの「金融政策正常化」ネタがあるわ、よく見るとFinancial stability, war and inflationとかいって

https://www.ecb.europa.eu/pub/financial-stability/fsr/html/index.en.html

などいうのはあるわで、こっちもネタ満載の巻ですが、タカ派のベンチマークが喋ったんでFEDちゃん、の前に日銀ですけどね。


〇どこで防衛線を引くのかをもうちょっと日銀の事務方は考えた方が良いと思うの

昨日もヘッドライン見てクソワロタ。
https://jp.reuters.com/article/kuroda-forex-idJPKBN2NG043
2022年5月30日11:55 午前
急速な円安、日銀の金融政策が要因とはみていない=黒田日銀総裁

『[東京 30日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は30日、参院・予算委員会で、3月以降急速に進んだ円安について「日銀の金融政策が為替に影響がないと言うつもりはないが、大幅な円安が一時急速に進んだ時の要因が日銀の金融政策であったとはみていない」と話した。』(上記URL先より)

「日銀の金融政策が為替に影響がないと言うつもりはないが、大幅な円安が一時急速に進んだ時の要因が日銀の金融政策であったとはみていない」とは日本語として何ぞやという感じですが、いやいやいやいや毎日指値オペアナウンスした時に為替幾ら動きましたねんという所でして、よく考えたら毎日指値オペなんてやらないでそのまま連続指値オペ続けて我慢しながら海外金利が低下してたらもっと対円のドルって安かったんちゃいますかという気はしますけど。

いやーなんでしょうねえ。そもそも円安上等で指値とかしてて、それがバンバン入るもんだから連続指値するわ毎日指値するわやってたんじゃないの、という気はしますし、さらにもっとそもそも論でいえば、4月の最初の時点での指値を入れる初動が遅かった(黒田総裁が国会に呼ばれてたもんでそのタイミングで指値入れて円安に振らせたくなかった、以外の理由が考えられない不可解な指値スルーでしたよね)のが後から指値をバカスカ入れないと行けなくなった原因の一つなんですよね。すっかり忘れそうになるけど。

ということで、日銀って今に始まった訳じゃないけど、防衛線の引き方が毎度どっちつかずになっているから困る訳で、毎日指値オペだって、今申し上げたように元をたどってみれば10年カレントが23bp位になった時に思いっきり指値ぶっこんでしまっていれば「ああまた25の指値ね」となっていたのに、24とかになっても指値入れるのか入れないのかわからんような状況を最初に作ったから「日銀のスタンスブレてね??」みたいな話になって、却って指値をバンバンやらないと行けなくなったという流れ(個人の感想です)。

ちなみにオペ関係に関しては歴代この調子でして、一番最初の10年指値だって、「中期輪番スキップ」というのをやったら相場が崩壊して(そら崩壊するわな)指値を入れなければ行けなくなったという代物だし、それまでは別に許容レンジがいくらかとかは曖昧に出来てたのに、最初の10年指値を相場コケて慌てて入れたもんだから当初もっと幅のある話だという理解もあったのに急に10bp近辺になったんですよね。だいたいオペ関係で「明確化」に追い込まれるのはその前に変な火遊びをした結果の自業自得というのが日銀クオリティ。

でもって為替ネタなんですが、何ちゅうかこのさすがに「円安が一時急速に進んだ時の要因が日銀の金融政策であったとはみていない」には無理があるというか、何でさらに追及しないのと思いますけど(記事にならなかっただけだったらすいません)、4/28の円安についてサラトイすれば一発ジャンと思うのですけど何なんですかね。(それに対する想定問答はだいたい思いつくけどw)

為替円安の件に関してもどこを防衛線にして説明をしているのかが良く分からん次第で、円安は良い事って話をしているんだったら、円安が日銀の政策のせいではないと言い張る必要もない(日銀が経済物価状況を鑑みて適切な政策を行っているのであって為替市場は勝手に動いているだけですがな、そりゃ急激な動きはいろんな迷惑あるよね、位の話でヨクネ??)と思いますし、急激な動きが困るんだったら何で毎日指値オペとかアナウンスしたんだよという話で、あんなの確信犯でやってるはずなのに、いざ追及されると「日銀の政策のせいではない」で逃げてしまうと、結局日銀のスタンスが良く分からんということになって、またどっかでアタック25が始まるんでネーノ(ECBが来週よほど過激な事でもしない限り6月はそう大した修羅場にはならんと勝手に思ってる平和ボケおじさんですけど)とは思う次第。

というただの感想でした。まあ結局のところ、あんまり思想とかそういうのは無くて、ただひたすら黒田様が任期を最後まで逃げ切るために事勿れ主義で対処しているだけなので、その場その場を何でも良いから切り抜けるという超目先主義的対処療法をしているだけ、とは思うのですが(身も蓋もない)。


〇たぶんタカ派ベンチマークに使えそうなウォーラー理事

タカ派と言えばブラードではないか、との指摘もあろうかと存じますが、あのおっちゃんは基本変態仮面なのでイマイチベンチマークとして見ずらい所もある、というのは単なる個人の感想です。

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-waller-idJPKBN2NG18U
2022年5月31日12:46 午前UPDATED
インフレ「大幅」低下まで50bp利上げ支持=ウォラーFRB理事

『同理事は「特にインフレ率が目標の2%に近づくまで、50bpの利上げを選択肢から排除するつもりはない」とした上で、「インフレが著しく低下するまで、毎回の会合で50ベーシスポイント(bp)刻みで利上げすることを提唱する。インフレが鈍化するまで、(利上げを)停止する理由はない」と述べた。』(上記URL先より)

まあこれを「75bpの利上げが排除されたヒャッホウ!」と解釈するのか「利上げの打ち止めがそんなに早くないのかショボーン」と解釈するのかはその時の地合い次第なので良く分からんのですが、まあとにもかくにもベンダーの記事だけだと(別にベンダーの記者の方々にその積りはないのでしょうが)記事に騙されてしまうリスクがある訳で、原文読まないで記事とか何とかスト講釈とかだけで判断してると、書いている人の理解がズレている時にそのままズレてしまう系のサムシングisあるからムツカシね、と偉そうに言ってるアタクシも結局自分の理解をここに掛け流しにしているだけですけどぬ(なのでツッコミが来るのは助かります)。


こちらが講演テキストのモノホン版。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20220530a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/waller20220530a.pdf
May 30, 2022
Responding to High Inflation, with Some Thoughts on a Soft Landing
Governor Christopher J. Waller
At the Institute for Monetary and Financial Stability (IMFS) Distinguished Lecture, Goethe University Frankfurt, Germany

引用はHTMLの方から行います。

・インフレについては今後のデータ見ながらではあるけど基本的に(タカ派だから)高くて怪しからんという話

最初のご挨拶と経済および労働市場情勢に関する現状の話をすっ飛ばして6パラ目の物価の話から。

『Let me turn now to the outlook for the Fed's top priority, inflation. I said in December that inflation was alarmingly high, and it has remained so. The April consumer price index (CPI) was up 8.3 percent year over year. This headline number was a slight decline from 8.5 percent in March but primarily due to a drop in volatile gasoline prices that we know surged again this month.』

4月のヘッドラインインフレちっと下がったんですがガソリン価格は直近の速報ベースではまたまた上がっているという認識を物価の話の最初に持ってくるのは流石のタカ派ベンチマークである。

『Twelve-month "core" inflation, which strips out volatile food and energy prices, was also down slightly to 6.2 percent in April, from 6.5 percent the month before, but the 0.6 percent monthly increase from March was an acceleration from the February to March rate and still too high.』

コア物価の4月ヘッドラインについても下がった件に関して前月比での上昇ペースが相変わらず高い、とタカ派だけに物価上昇方向のネタを拾ってケチをつけるの巻。

『Meanwhile, the Fed's preferred measure based on personal consumption expenditures (PCE) recorded headline inflation of 6.3 percent and core of 4.9 percent. These lower readings relative to CPI reflect differences in the weights of various categories across these indexes. 』

PCEだともうちょっと低く出るけどこれはインデックス対象品目の差などによるよ。

『No matter which measure is considered, however, headline inflation has come in above 4 percent for about a year and core inflation is not coming down enough to meet the Fed's target anytime soon. 』

どんな計測方法にしても現状の物価は4%以上の水準で推移して、コア物価が直ぐにはマンデート水準に戻るとは見えません、とまあここら辺は順当な説明。

『Inflation this high affects everyone but is especially painful for lower- and middle-income households that spend a large share of their income on shelter, groceries, gasoline, and other necessities. It is the FOMC's job to meet our price stability mandate and get inflation down, and we are determined to do so.』

インフレは相対的に経済的な弱者に厳しい現象で云々ですな。さらに物価の話は続く。7パラ。

『The forces driving inflation today are the same ones that emerged a year ago. The combination of strong consumer demand and supply constraints-both bottlenecks and a shortage of workers relative to labor demand-is generating very high inflation. We can argue about whether supply or demand is a greater factor, but the details have no bearing on the fact that we are not meeting the FOMC's price stability mandate. What I care about is getting inflation down so that we avoid a lasting escalation in the public's expectations of future inflation. Once inflation expectations become unanchored in this way, it is very difficult and economically painful to lower them.』

インフレのドライバーは昨年と特に変わらず、という話の後にインフレ期待のアンカーが外れて上に行ってしまうとエライコッチャだという話をしてました。8パラに進む。

『While it is not surprising that inflation expectations for the next year are up, since current inflation is high, what I focus on is longer-term inflation expectations.』

さらにインフレ期待の話。問題はロンガータームのインフレ期待だよときまして、

『Recent data that try to measure longer-term expectations are mixed. Overall, my assessment is that longer-range inflation expectations have moved up from a level that was consistent with trend inflation below 2 percent to a level that's consistent with underlying inflation a little above 2 percent.』

何か持って回ったような言い方になっている感じですが、どうも長期期待インフレはまだアンカリングされてはいるけど2%よりもちょっと高くなってね???という見立てになっているように読めますがそれでワシの英文読解あっとるかね???

『I will be watching that these expectations do not continue to rise because longer-term inflation expectations influence near term inflation, as well as our ability to achieve our 2 percent target.』

はいはい動向を注視している動向を注視している。

『When they are anchored, they influence spending decisions today in a way that helps inflation move toward our target. To ensure these longer-term expectations do not move up broadly, the Federal Reserve has tools to reduce demand, which should ease inflation pressures.』

はい来ました「FEDはインフレ圧力を軽減するために需要を減退させるツールを持っている」。

『And, over time, supply constraints will resolve to help rein in price increases as well, although we don't know how soon.』

ということで9パラに進む。


・50bpをダラダラ上げ続けるというお話のようで一気に75だの上げて様子見という発想はないようだ

ここからが政策の話。

『I cannot emphasize enough that my FOMC colleagues and I are united in our commitment to do what it takes to bring inflation down and achieve the Fed's 2 percent target. Since the start of this year, the FOMC has raised the target range for the federal funds rate by 75 basis points, with 50 basis points of that increase coming at our meeting earlier this month. We also issued forward guidance about the likely path of policy. The May FOMC statement said the Committee "anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate."』

9パラはこれまでにやった政策の話でしたのであんまり気にせず10パラへ。

『I support tightening policy by another 50 basis points for several meetings.』

2回じゃなくてもっと何回か、だそうですけど・・・・・・・

『In particular, I am not taking 50 basis-point hikes off the table until I see inflation coming down closer to our 2 percent target.』

これがベンダーヘッドラインになっていた辺り。物価が「2%にちかくなるのを見るまで」は50bp利上げを降ろすべきではない、なので延々と50bpで行けってことかいな。

『And, by the end of this year, I support having the policy rate at a level above neutral so that it is reducing demand for products and labor, bringing it more in line with supply and thus helping rein in inflation. 』

そらまあそうよという感じですが、そういう調子で利上げして行けば年末には中立金利と思われる水準よりも高い金利になっているので、需要抑制効果によるインフレ鎮静化が期待できる、ということなんですけど、ウォーラーでも75ぶっこみに行かないのをどう市場が解釈するのかですな。

『This is my projection today, given where we stand and how I expect the economy to evolve. Of course, my future decisions will depend on incoming data. In the next couple of weeks, for example, the May employment and CPI reports will be released. Those are two key pieces of data I will be watching to get information about the continuing strength of the labor market and about the momentum in price increases.』

今の見立ては上記の通りですが、今後の状況を見てスタンスは変えるかもしれません、特にこの先2週間は5月の雇用データと5月のCPIという「two key pieces of data」が出るのでそれ見て確認したいですよと。

『Over a longer period, we will learn more about how monetary policy is affecting demand and how supply constraints are evolving. If the data suggest that inflation is stubbornly high, I am prepared to do more.』

「inflation is stubbornly high」って前も言ってたかな。さらに政策の話が続き11パラ。

『My plan for rate hikes is roughly in line with the expectations of financial markets. As seen in slide 1, federal funds futures are pricing in roughly 50 basis point hikes at the FOMC's next two meetings and expecting the year-end policy rate to be around 2.65 percent. So, in total, markets expect about 2.5 percentage points of tightening this year. This expectation represents a significant degree of policy tightening, consistent with the FOMC's commitment to get inflation back under control and, if we need to do more, we will.』

というワシの政策金利見通しは概ね市場の今の期待と同じだよね、という話をしております。ただまあ50bpの上げでインフレが収まってくれなかったら「if we need to do more, we will」とはゆうとります。

・・・・・・つまりですね、まあさすがに現状では年末まで毎会合50bpっての以上をやるという感じではないということを意味するんだと思います。それでインフレがトマランチ会長とか、単に高原状態でヨコという感じが続くと、その時点で「やっぱ75やらないとダメじゃね???」という議論になって来る、という感じだと思いますので、次のFOMCまで2か月飛んでしまう7月FOMCの所ってのは年内残り時間におけるスタンスをどう設定するのか、というののある程度の判断が必要で、7月FOMCまでにインフレが全然下がらんとかの時に本当に50でエエのけ?とか、まあ9月以降の利上げ予告ホームランでも打つべよみたいな話になる可能性もありそうな気がしてきましたがただの幻覚かも知れませんので念のため申し添えます。


・需要を抑制してインフレを抑制させる政策をしているんだから金融環境のタイトニングは上等上等

12パラ目です。

『These current and anticipated policy actions have already resulted in a significant tightening of financial conditions. The benchmark 10-year Treasury security began the year at a yield of around 1.5 percent and has risen to around 2.8 percent. Rates for home mortgages are up 200 basis points, and other credit financing costs have followed suit. Higher rates make it more expensive to finance spending and investment which should help reduce demand and contribute to lower inflation.』

これまでの政策および今後の政策予想パスによって長期金利は上がるわホームモーゲージローンの金利は上がるわ、その他の借入金利も上昇しているけど、これは過剰な需要を減衰させるために良い事です!ときまして、まあこれ自体も普通の話ちゃあ普通の話しなんですけど、ここまででお分かりのように、FEDのタイトニングが日和るとすれば「実績値の物価指数が目に見えてホイホイと上昇幅を消していく」の1点張りであって、株がどうだとかそういう話はシランガナにも程がある、という何時もの話を確認できました、というところでしょうか。


・じつはもうちょっと本編があるんだが時間がないので・・・・・・・

ということで次のパラグラフがバランスシート政策の話になります。でもって話はその後も続きまして、世界的にインフレが起きてて各国中銀対応してるよね、という説明のあとに、

『Some have expressed concern that the Fed cannot raise interest rates to arrest inflation while also avoiding a sharp slowdown in economic growth and significant damage to the labor market.』

から「利上げバンバンやったら経済があばばばばーになるんでね???というツッコミに対するウォーラーさんの説明、即ち講演タイトルにある「with Some Thoughts on a Soft Landing」の説明が割と長々と続くのですが、ネタが無かったら続きやります(^^)。







2022/05/30

お題「展望レポートの物価見通し上方修正してね??(国会答弁)/金研国際コンファランスの挨拶が「鏡を見て言え」でワロタ件」

さあもりあがってまいりました!!!!!!orzorzorz
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220529/k10013648611000.html
“値上げの夏” 食品や飲料 6月7月で3000品目以上値上げ予定
2022年5月29日 18時23分

『穀物などの原材料価格の高騰を受けて、国内の主な食品や飲料のメーカーがことしに入ってすでに値上げしたか今後値上げする予定の商品が、8300品目以上に上ることが民間の信用調査会社の調べで分かりました。値上げ予定の商品は6月と7月だけで3000品目を超えていて、ことしは「値上げの夏」になりそうです。』(上記URL先より)

コストプッシュの上昇なので長続きしないといつまで言い張れるのか。


〇おやおや1か月で展望レポートの物価見通しを上方修正ですか(黒田総裁国会答弁)

えー。
https://jp.reuters.com/article/idJPL3N2XJ073
2022年5月27日10:43 午前
エネルギー下落しないと物価2%程度が12カ月は続く=日銀総裁

『[東京 27日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は27日の衆院予算委員会で、消費者物価指数(CPI)はエネルギー価格が大きく下落しない限り、今後最低12カ月は2%程度の水準の上昇が続くと述べた。階猛委員(立民)への答弁。』(上記URL先より)

とのお告げを頂いたのですが、いやまあ1.9%は2%程度だって話なんでしょうけれども、
「今後最低12カ月は2%程度の水準の上昇が続く」というのと、「2022年度+1.9%だけど2023年度と2024年度はコアCPIの年度平均は+1.1%」という展望レポートの見通しとは何か言ってること違くね???という感じが思いっきり漂ってくるわけでございます。

いやね、勿論経済は生き物だから1か月(展望レポート出してから)の間に物価が下がらないというような新しい材料が出てしまいました、というような例えばロシアの本格的なウクライナ侵攻始まりましたよ的な話が急に出てきたんだったらそらまあ見通しに変化が生じるちゅうのは仕方ないと思うんですが、この1か月で何かサプライズありましたっけ?????と考えますと、黒田さんあんさん何ゆうてますねんという話だし、そもそも展望で出している数字って「年度平均」なのですから、黒ちゃんの言うように「今後最低12カ月は2%程度の水準の上昇が続く」のに23年度の年度平均が+1.1%まで鈍化するって、それ年度替わりにコアCPIがいきなり+1.1%までワープしてくれなかったら何だよ年度内に0%近傍まで下がるってか???というような不思議な見通しになるんだが。

今年度途中で2%台半ばくらいまで上がるけど年度末にかけては失速して例えば+1.5%行くか行かないかくらいまでは鈍化します、とかいう見通しなら23年度の+1.1%もまあ分かるのですけれども、「最低12カ月は2%程度」で何で「23年度平均」が+1.1%になるのかちょっと物価上昇率のパスを図に示してくれませんかねえ・・・・・・・・・・・・・


まあ何ですな、政策の修正の話にされたくないもんだから展望レポートであんな変な数字を出す、という政策先にあり気のレポートを出す(という意味では今回の展望レポートって過去類例を見ないくらいに「政策から逆算しました」というのが露骨で作品として幾らなんでも酷すぎると思いました、出た直後はまいにちさしねおぺの方に目くらましされてあんまり気がつきませんでしたが、ここまで舐め腐った見通しはなかなかないですわ)ことをするもんだから、現実の物価に対するコメントが1か月、しかも別にその間何もサプライズもなく、世の中の皆様が想定していた通りの展開が続いていたというのに、はやくも展望レポートの物価見通し上方修正となるような答弁を堂々とする、という流れに繋がっている訳で、もはやこの人達整合性もへったくれも全くなくて、完全にその場だけ凌いでいればよいやという感じだし、黒田さんは黒田さんで逃げ切り態勢に完全になっているので、責任取ってもう1期やればいいんじゃないですかって感じですな(20%くらいマジ)。



〇特別付利バンバンキタコレ

お、そう来たか。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220527b.pdf
地域金融強化のための特別当座預金制度に基づく特別付利の実施について
2022 年 5 月 27 日
日本銀行

『「地域金融強化のための特別当座預金制度基本要領」および「系統中央機関の会員である金融機関による地域金融強化のための特別当座預金制度の利用に関する特則」に基づき、令和3年度に特別付利を行った金融機関は、以下のとおりとなりました。』

ということで見たらこれがまた物凄い勢いでロングリスト。

○ 特別付利を行った金融機関(228 先)

○ 特別付利を行った系統中央機関(4先)

信金中央金庫(2先(注))
労働金庫連合会(4先(注))
全国信用協同組合連合会(97 先(注))
農林中央金庫(308 先(注))

(注)系統中央金融機関を通じて本制度に基づく特別付利を行った会員金融機関数を表します。

ほうほうそうですかそうですか。

こちらはまあ合併だの経営改善だのという計画の下で特別付利って話でして、既に経営改善をしてしまっている先には何だよそれって感もぬぐえないと思いますし、大体からして「経営改善資金」みたいなもんって政府が出すなら話は分かるのだが、中央銀行が出すってのはやっぱり矩を越えている話じゃないかと思うのよね。何ぼ何でもマイナス金利のお助け策とは言え。というかそもそもこの手のお助け措置を次から次へと出さないといけないマイナス金利政策って何のためにやってるんだよ低金利で良いなら政策金利プラス方向のゼロでエエヤンとは思う次第であります。


〇黒田総裁の金懇コンファランスでの挨拶があったので市場はスルーしたが一応確認

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/ko220525a.htm/
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220525a.pdf
【挨拶】
日本銀行金融研究所主催2022年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2022年5月25日

・この1年間で対応すべき課題が増えたのに長期金利の0.25%は1年前と変化が無いんですねわかります

『1.はじめに』を見ると早速これは(゚д゚)とせざるを得ないwww

『1983年に始めて今年で27回目となるこのコンファランスは、長引く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあって、昨年に引き続いてのオンライン開催となります。昨年は、「ニューノーマルへの適応:COVID-19後の展望と政策課題」をテーマに広範かつ活発な議論を行い、非常に実りあるものになりました。』

ほうほうそうですかそうですか。

『しかしながら、その後、中央銀行を巡る環境は大きく変化しました。その結果、この1年間で、新たに議論すべきテーマが急速に拡大したと感じています。』

ほっほー。

『こうした課題について、まさに今、中央銀行、国際機関、学界で語り合うのに適したタイミングであると思います。』

と仰せなのですが、一方でおんどれらは1年前に決定した「10年金利の上限は0.25%」というのに対する議論も特に行わずに、「毎日指値オペ」という(札が入ってないからいいようなものの状況によっては碌でもないレベルの)政策をぶち込んでおる訳でございまして、いやお前その口でそれを言うのかと小一時間問い詰めたいですなwwwwwwwwwwwww

『このような問題意識を反映して、本年のコンファランスでは、「中央銀行の迎える新たな局面とフロンティア」をテーマに掲げました。以下では、中央銀行が直面している新たな局面と、近年拡大を続けているフロンティアに対する中央銀行のチャレンジについて、具体的に概観したいと思います。』

日本銀行様におかれましては別に新たな局面どころか1年間同じことしていますがまあいいです。


・「まるで予期せぬインフレ」みたいな言い方をする上に財政の話をしないのはどう見てもアカンじゃろ

『2.中央銀行の迎える新たな局面』ということで『最初に、中央銀行が現在直面している課題を2点挙げたいと思います。』からのインフレに対するお話。

『インフレの高進』という小見出しを見る。

『第1に、世界的なインフレの高進です。これは、多くの中央銀行および学界関係者にとって、COVID-19が発生した頃には予想することができなかった現象だと思います。』

って言ってますが、「発生したころ」というのがいつの時点を指すのかよくわからないけど、サマーズさん辺りはかなり早い時期から「こんな勢いで財政出動して金融緩和をしていたら飛んでもないインフレになるぞ」という指摘をしていた筈でして、「我々シランガナ」みたいな言い方をするのは反省が足りない。

『今回のインフレの大きな特徴は、供給と需要両方の押し上げ要因が同時に生じたことです。供給面をみると、生産原材料の物流停滞や半導体等の部品不足、労働供給不足など、生産能力にかかる制約がインフレ要因となっています。需要面をみると、昨年から世界的に経済活動の再開が進むもとで家計の旺盛な需要が顕在化し、長引く感染症を背景としたサービスから財への需要シフトと相まって、とりわけ資源価格も含めた財価格に対する上昇圧力が生じています。』

ファクターの中に財政拡大が入っていないので全くダメですよね。

まあアレです。何で財政と言わないかとゆーと皆様お察しのように、国会方面では最近は頭のネジがいかれてノーズロで財政垂れ流せという話が流行してて、どこぞの元馬鹿宰相のように日銀が買えば国債がチャラになるくらいの勢いの話をする馬鹿もおる、というような状況な訳ですから、そんな状況の中でうっかり「コロナ下における対策として大量に取られた財政措置がインフレの要因の一つになっている」などと国民の方をみなくても永田町の方は一生懸命見る黒田日銀様の口が裂けても言う訳がないんですよねー、あーやだやだ。

『もっとも、こうした供給と需要面の圧力は、各国で共通点もあれば相違点もあります。例えば、日本では、家計のペントアップ需要がこれまでは限定的なこともあり、総需要の回復ペースが欧米と比べ緩やかになっています。また、供給サイドでは、中間投入財不足の影響はみられるものの、感染症のもとでのいわゆる労働保蔵の影響もあって労働供給には比較的余裕があり、供給制約は米国ほど強くないとみられます。労働供給スタンスの違いは、各国の賃金動向にも差異をもたらしています。日本では、賃金は上昇しているものの上昇幅は穏やかな水準に留まっています。』

『また、最近の供給要因による資源価格高騰は、資源輸入国にとっては、家計の実質所得の減少や企業収益の悪化を通じた実体経済の下押しの影響が大きくなります。そのもとで、家計が受容できる価格を企業がどう見極め価格転嫁していくか注目されます。』

だから政策の修正は不要という話をちゃっかり入れていますが、同じ下押しの影響だったらユーロ圏だってそうだし、そもそもコストが上がっているのに価格転嫁しないのは限界有るじゃろという感じですが、まあこんな事を言ってその結果ジャパンは馬鹿緩和を継続する宣言が次に来ます。

『このような違いがあるもとでは、各国で適切な金融政策対応もまた異なり得ます。各国で、それぞれのインフレ圧力の大きさと持続力を見極めることが共通の課題となっています。』

は良いんだが、12カ月もCPI2%持続するのに持続力が無いってのもちょっとどうなんでしょうかね。

『その際、3つの価格、すなわち財・サービス価格、賃金、資源価格の関係をどうとらえるかが一つのポイントになると考えられます。』

ここで話が終わっているので、「じゃあ何なの?」というのは分からんですが、金研コンファランスでもしっかりと「財政出せ出せコールの政治方面を刺激しない」「自分たちの政策だけは変化させないのが正しいアピール」というのに余念ないという辺り、講演テキスト作るのもご苦労なこったという感じが思いっきり致しますなナムナム。


・構造変化っぽい言及をするもラガルドさんみたいな言及は当然無い上に最後の部分でワロタ

次の小見出しが『地政学リスクの高まり』なのですが・・・・・・・・

『現在直面しているもう一つの課題は、ロシアのウクライナ侵攻による地政学リスクの高まりです。これは、資源価格をより一層高騰させ、インフレ率をグローバルに上昇させています。加えて、地政学リスクに関する不確実性はきわめて高く、貿易の縮小やコンフィデンスの悪化を通じて、先行きの世界経済を下押しする可能性があります。』

二言目には経済の下押しリスクに言及するのは金融政策の修正論につながる話をしたくないからですねわかります。

『また、実体経済だけでなく、金融市場センチメントやグローバル金融システム、サイバーセキュリティの観点からも注視する必要があります。』

ふーん。

『さらに、地政学リスクに関する見方が恒常的に変化すれば、貿易や資本フローの構造変化を通じて、グローバル経済により長期的な影響をもたらす可能性もあります。』

というフニャフニャとした言い方しかしませんよね。先週ネタにしたようにラガルドさんは「これまで進んでいた世界的なディスインフレーショナリーな圧力が戻ってこないかもしれない」というように明言していた訳ですが、ここもそういう話を認めて「構造的なディスインフレ圧力の喪失」などと言い出しますとそらもう「じゃあ均衡イールドカーブの水準は引きあがるんじゃないですか」という恐ろしい話(こっちとしては大歓迎以外の何物でもないが、笑)につながるので、口が裂けてもそのようなことは言及しないという黒田日銀の気概を感じた極めてチャーミングな展開でした。

『こうしたきわめて不確実かつ流動的な状況であることを認識したうえで、適切な政策対応を行っていくことが中央銀行に求められています。』

「きわめて不確実かつ流動的な状況」なのに「毎日指値オペで10年金利0.25%は固定です死んでも上回らせません!!!!」という政策が「適切な政策対応」なんでしょうかねえ。不確実かつ流動的であったら、そういう硬直的な対応したらダメなんじゃないですか???不断の見直しが必要なんじゃないですか?????????


・経済の構造変化に対応するのが毎日指値オペなんですね!!!!!!!!!!!!!!!

と笑わせてもらった所で次の小見出し(つーかこれクッソ短い挨拶なのに一々混ぜっ返したくなるのが何とも)『3.中央銀行のフロンティア』に参ります。

『以上のような足もとの課題に加えて、中央銀行が切り開いていくべきフロンティアと呼べる課題についても、このところ急速に拡大しています。ここでは3点指摘したいと思います。』

ときまして最初の小見出しがまさかの『経済の構造変化』である。

『第1のフロンティアは、感染症の長期化に伴い、経済の構造変化が一段と加速していることです。』

えーっとすいません、おどれらのやってる金融政策決定会合とかいう所から出て来る文書を何回読みましても、「経済の構造変化が一段と加速している」とかそんな議論しているようには思えませんし、そんなに構造が変化しているのに何で1年前に決めた(以下同文)。

『感染症前から進行していた社会・経済のデジタル化やオートメーション化の動きは、感染症が長期化するもとで、さらに拡大・深化しました。これに伴って、サプライチェーン再編の動きも見受けられます。』

サプライチェーン再編の中で地政学リスクとかグローバル化の巻き戻しには触れないのがチャーミング。

『また、先進諸国で趨勢的に拡大傾向にあった所得格差は、感染症の影響が逆進的であったことからさらに拡大し、その対応のための財政負担も増加しました。これら進行中の構造変化は、経済学的に言えば、潜在成長率や自然利子率、フィリップス曲線の形状の変化などを通じて、金融政策の効果や望ましい政策対応に変化をもたらす可能性があります。』

おう、おどりゃ1年前から何も政策変えとらんじゃろうが。なにカバチたれとんのじゃ。

『そのため、中央銀行は、変容していく経済構造とそれが物価と実体経済に与える影響に注意を払う必要があります。』

まず鏡を見てからもう一度その発言をして下さい。


なお、以下は気候変動対応ネタでの手前味噌とCBDCの話なので飛ばしまして最後。


・ニンブルパクるのかよ・・・・・・・・・・・・

『4.結び』の最後でもズッコケましたが。

『急速に世界が変化し、かつ不確実性がきわめて高いもとで、如何に環境変化に適応するかは、中央銀行にとって共通の課題です。中央銀行が、nimble(敏捷)、agile(機敏)、smart(スマート)に、環境変化に対応してこの難局を乗り越えていくために、今回の会議で新たな知見が得られることを期待しています。』

ニンブルパクりかよ・・・・・・・

でまあ何度も言いやがるもんだからこっちも何度も申し上げますが、「環境変化に対応」するというののまるで正反対の方向性の政策を直近で打っておいてこの話は何なんでしょうかね、というのが最初から最後まで続く挨拶ではございましたとさ。


・そういやどうでもよいのだがモデレート出来たのかね

金懇コンファランスの式次第がこちらに。
https://www.imes.boj.or.jp/en/conference/2022confsppa.html
2022 BOJ-IMES Conference:
New Dimensions and Frontiers in Central Banking
May 25 - 27, 2022
Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan

これ見ると黒ちゃんのご挨拶は水曜の日本時間の夜8時からだったのね、と思いながら式次第を眺めていると最後に恐ろしいものを見つけてしまいました。

『Friday, May 27, 2022』の下の方ですが、

『20:35-22:25 Policy Panel Discussion

Moderator:
Masazumi Wakatabe, Bank of Japan

Panelists:
Pierre-Olivier Gourinchas, International Monetary Fund
James Bullard, Federal Reserve Bank of St. Louis
Philip R. Lane, European Central Bank
Benjamin E. Diokno, Bangko Sentral ng Pilipinas』

モデレーターェ・・・・・・・・・・・・

#月曜なのでヒマネタ状態のような気もしますなサーセン









2022/05/27

お題「FOMC議事要旨の続き:パーティシパントの議論を見るとそんなにヒャッホウするものとは思えんのだが」

うーんこの。
https://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPKCN2NC1W4
2022年5月27日5:42 午前
NY外為市場=ドル小幅安、米金融引き締め観測が後退

『OANDAのシニア市場アナリスト、エドワード・モヤ氏は「市場はFRBが引き締めに積極的になりすぎることはなく、株式などのリスク資産に見られた売りが行き過ぎだった可能性があると少し楽観的になっている」と指摘。これがリスク資産の上昇とドル売りにつながっているとした。』

『JPモルガンのストラテジストは顧客向けノートで「われわれの経済チームの基本的な見解ではないが、FRBは政策金利を1.75─2%に引き上げることで金融政策の正常化を終え、雇用とインフレへの影響を一時的に停止して評価する機会を提供すると主張するかもしれない」との見方を示した。』(上記URL先より)

どうもこう「中銀プット脳」が抜けきっていないような気がするアメリカンの皆様な訳ですが・・・・・・・・


〇FOMC議事要旨昨日の続きというか議論パートをちゃんと頭から読んでみる

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20220504.pdf
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20220504.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
May 3-4, 2022

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, May 3, 2022, at 10:00 a.m. and continued on Wednesday, May 4, 2022, at 9:00 a.m.1

今日は真面目(?)に『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の頭から読んでみる。

最初のパラは全体観の話で、これは声明文で書かれたことが大体書いてある、というものですので引用だけサラッと参ります。

『In their discussion of current economic conditions, participants noted that, although overall economic activity had edged down in the first quarter, household spending and business fixed investment had remained strong. Job gains had been robust in recent months, and the unemployment rate had declined substantially. Inflation remained elevated, reflecting continued supply and demand imbalances, higher energy prices, and broader price pressures. Participants recognized that the invasion of Ukraine by Russia was causing tremendous human and economic hardship for the Ukrainian people. Participants judged that the implications for the U.S. economy were highly uncertain. The invasion and related events were creating additional upward pressure on inflation and were likely to weigh on economic activity. In addition, participants judged that COVID-related lockdowns in China were likely to exacerbate supply chain disruptions. Against this background, participants stated that they were highly attentive to inflation risks.』

見覚えがあると思いますがよーするに声明文の第1パラグラフ部分です。ということで2パラ目からが色々な項目に対する色々なお話です。


・「金融政策で需給のインバランスに対応する」と堂々と言ってるんですが

『Participants commented that after its rapid growth in the last quarter of 2021, real GDP had declined in the first quarter of this year, with net exports and inventory investment making large negative contributions to growth.』

今年の1-3の減速はネット輸出と在庫減少が主な要因だそうです。

『They noted, however, that these volatile components tended to contain little signal about subsequent growth and that household spending and business fixed investment had remained strong in the first quarter.』

上記要因はボラタイルなもので別にこれが弱いからといって継続的に弱い訳ではなくて、一方で家計消費と企業固定資産投資の強さが依然として継続しているので、

『These advances and the further tightening of labor market conditions were judged consistent with significant underlying momentum in the domestic economy. In line with this judgment, participants expected that real GDP would grow solidly in the current quarter.』

今の四半期に関しては労働市場は今後もタイト化が続くし、国内経済の基調的なモメンタムは大変に強いでしょう、と来てます。

『In their discussion of the economic outlook beyond the near term, participants indicated that they expected that output would expand more moderately this year than in 2021, with growth this year likely near or above its longer-run rate, and that the imbalance between aggregate demand and aggregate supply would diminish over time.』

でもってその先ですが、今年の成長率は潜在成長率程度か若干上になり、需給インバランスは時間を掛けて解消に向かうでしょう。

『Participants saw an appropriate firming of monetary policy as playing a central role in addressing this imbalance and in supporting the Federal Reserve's goals of maximum employment and price stability.』

しれっとチャーミングな事をいってましてですね、「適切な金融引き締めによってインバランスに対処するのがマンデート達成に重要」とか言ってまして、つまりこれは潜在成長並みに景気を減速させるのは当然やらないかんじゃろという話をしておりますよって、「景気減速の兆候が見えた」くらいで引き締めが止まると思うのはちょっと楽観にも程があると思いますけどどうでしょうかね。

なんせ「インバランスに金融政策で対応」となると、供給に対応できるわけないので、需要を締めましょうという話をしている訳ですから、いや何でそう「金融引き締めの勢いが緩和される」とか読める訳この辺りを見て、とアタクシなんぞは思うのですが・・・・・・・・・

『An easing of supply bottlenecks, a further rise in labor force participation, and the waning effects of pandemic-related fiscal policy support were cited as additional factors that could help reduce the supply-demand imbalances in the economy and lower inflation over the medium term. 』

『That said, the timing and magnitude of these effects were uncertain. Participants recognized the need to adjust the stance of policy depending on how these and other factors played out over time.』

その他労働参加の上昇とか財政支出効果の逓減とか、サプライチェーンの復旧とかも需給バランスを適正化する助けになるけど、まあいずれにしてもいつ出てくるのかはよくわからんからよく見ないとね。でこのぱら終了。


・家計消費の強さに住宅市場の話が絡まれておりますな

3パラ目。

『In their discussion of the household sector, participants indicated that they expected robust growth in consumption spending. They pointed to several elements supporting this outlook, including strong household balance sheets, wide availability of jobs, and the U.S. economy's resilience in the face of new waves of the virus.』

家計消費が相変わらず先行きロバストな成長をしそうなのですが、家計のバランスシートが強いのと労働参加のアベイラビリティと新型感染症来ても米国経済が強いのが背景、と言ってますが、このうち家計のバランスシートって要は家計のウェルスで株価もそうだけど住宅がホームエクイティーローンヒャッハーとなってる件がインフレ押し上げてるじゃろ、とか思う訳ですが・・・・・・・・

『The considerable increases in Treasury yields across maturities over the intermeeting period were associated with rising interest rates faced by households, particularly rates on home mortgages.』

直後にモーゲージ金利上昇の話が。

『A couple of participants reported that their business contacts continued to see robust housing demand and elevated home prices despite higher mortgage interest rates.』

2名の参加者はモーゲージ金利が上昇しても相変わらずの住宅需要ヒャッハーが続いている事を指摘してこのパラ終了という余韻の残る(個人の感想です)引き方ですな。つまりこれは住宅市場の過熱をどないかせんといかんという話を書いてないけど、そういう感じを受ける引きに読めましたが、まあそれはアタクシの個人の感想ですあくまでも。


・企業部門は主に供給不足要因についての話ですな

4パラ目は企業部門。

『With respect to the business sector, participants cited robust consumer demand, healthy household balance sheets, and inventory rebuilding as factors supportive of business activity and investment. 』

何でさっきの部分の引きがああなってるかというと、そうは言っても正面切って住宅バブルで家計の資産が水膨れしててその水膨れでヒャッハー消費してる、というような指摘は現時点では行っていないのがFEDでございまして、でも現実にはホームエクイティーローンヒャッハー状態だったりするので、これはFED及び腰、って感じもせんでもないのですけど、まああくまでもいまは「healthy household balance sheets」によって企業部門の活動にプラス寄与しているという話のようだ。

『The ability of firms to meet demand continued to be limited by labor shortages and supply chain bottlenecks. Although some participants noted that their business contacts had reported an easing of supply constraints, participants assessed that supply constraints overall were still significant and would likely take some time to be resolved.』

ロバストな需要に対応する為の供給不足、という話でサプライチェーンが一部改善の動きもあるが全体としてまだアカンのと、労働供給が足りんという話になっています。

『In addition, the invasion of Ukraine by Russia and COVID-related lockdowns in China were seen as likely to exacerbate supply chain disruptions. A few participants indicated that some of their business contacts were reportedly hesitant to expand capacity or had postponed construction projects.』

さらにその状況にロシアのウクライナ侵攻と中国のゼロコロナ政策が拍車をかけてます。


・労働市場の話は無茶苦茶強くて多少減速しても失業率はあがらんわなという位の指摘まで

5パラ目は労働市場。

『Participants commented that demand for labor continued to outstrip available supply across many parts of the economy and that their business contacts continued to report difficulties in hiring and retaining workers.』

労働需要を満たすための供給が足りなくて企業部門はヒーコラ言ってる、という認識から始まり、

『They observed that various indicators pointed to a very tight labor market.』

「various indicators」が「very tight labor market」を示している、とタイトですよと強調。

『Employment growth had continued at a strong pace, the unemployment rate had fallen to a near-50-year low, quits and job openings had remained extremely elevated, and nominal wages had continued to rise rapidly.』

労働市場の様々な指標を見てもどれもタイトです。

『A few participants noted that there were signs that the pandemic-related factors that had held back labor supply might be abating further, especially in the case of prime-age workers.』

数名の参加者はプライム世代が労働市場に戻ってきている兆候があると指摘。

『In addition, a few other participants suggested that the unwelcome erosion of real incomes due to high inflation may have contributed to the increase in labor supply.』

別の数名の参加者はインフレの高進により実質所得が減ってしまうことによって労働供給が増えますわなと指摘(鬼ですな^^)。

『Many participants indicated that they expected the labor market to remain tight and wage pressures to stay elevated for some time.』

多くの参加者は今しばらくは労働市場はタイトでお賃金の上昇圧力は強いままじゃろと示唆。

『Several participants raised the possibility that, in light of the exceptionally high ratio of vacancies to job searchers, a moderation in labor demand might serve to reduce vacancies and wage pressures without having significant effects on the unemployment rate.』

何人かの参加者は、現状で求人の比率が求職者に対してクッソ高い状態になっていることから勘案すると、求人が埋まっていき、賃金上昇圧力が緩和する局面においても、失業率が盛大に上昇するような事を伴わないのではないか、となってこの雇用に関する部分が締まっていまして、まあ要は無茶苦茶強いし、多少景気抑制的な金融政策してもヘーキヘーキって話をしておりますがなどう見ても。


・物価の話だがピークアウトの指摘がどうのこうのというのは何ぼ何でも部分的な所に注目し過ぎじゃろ

6パラ目がインフレのお話でまあ今回ここがメインイベントかな。

『Participants observed that inflation continued to run well above the Committee's longer-run goal and that inflation pressures were evident in a broad array of goods and services.』

inflation pressures were evident in a broad array of goods and servicesですのでまあコリャアカンという話ですわさ。

『Various participants remarked on the hardship caused by elevated inflation and heightened inflation uncertainty-including by eroding American families' real incomes and wealth and by making it more difficult for businesses to make production and investment plans.』

物価上昇で一般のアメリカンの皆様の生活が実質的に悪化するといういつもの庶民の皆様向けサービスフレーズですね。

『They also pointed out that high inflation could impede the achievement of maximum employment on a sustained basis.』

ハイインフレーションは最大雇用の持続的な達成にもいくない、というのも毎度出て来る話。何でなのかはイマイチ説明ないけど。

『Participants noted that developments associated with Russia's invasion of Ukraine, including surges in energy and commodity prices, were adding to near-term inflation pressures. In addition, COVID-related lockdowns in China were likely to disrupt global supply chains, potentially adding further upward pressure on the prices paid by U.S. businesses and consumers.』

ロシアのウクライナ侵攻と中国のゼロコロナ政策の影響は物価押し上げ要因、という何時もの話。

『Most participants indicated that their business contacts had continued to report that substantial increases in wages and input prices were being passed through into higher prices to their customers.』

殆どの参加者は投入コストと賃金上昇が物価にパススルーされている事を指摘。

『A few participants added that some of their contacts were starting to report that higher prices were hurting sales.』

数名の参加者は、ヒアリングデータによれば価格上昇によって販売が厳しくなってきている指摘があるとのお話。

『A number of participants observed that recent monthly data might suggest that overall price pressures may no longer be worsening. 』

確か後付け記事とかみるとこの部分、「何人かの(A number of)参加者は最近のデータをみると全体的な価格上昇圧力はこれ以上悪化(上昇)しないだろうというのを示唆している、と観測している」というのに盛大に反応した感じがしますが・・・・・・・・

『These participants also emphasized that price pressures remained elevated and that it was too early to be confident that inflation had peaked.』

そこに続く文章がこれで「These participants」なんだから今上記の指摘をした人たちの事なんですけど、「price pressures remained elevated and that it was too early to be confident that inflation had peaked」と言っている訳で、水準はそうは言ったって高いし、ピークを打ったというには時期尚早って言ってますし、そもそもManyとかMostとかでもない人たちの指摘に何でお前らそのお釈迦様の蜘蛛の糸の如く群がるんだよどんだけ中銀プット待望脳なのかと小一時間問い詰めたくなるのですがまあ人の事はシランガナということで。

『Many participants commented that measures of short-term inflation expectations were elevated or that far-forward measures of inflation compensation were near the upper edge of their historical range.』

でもってここからインフレ期待の話になっていますが、ショートタームのインフレ期待は上がりまくってエライことになっとるというのが多くの(Many)参加者から指摘されている訳で、おどれらこのパラグラフ通しで読んだら今年後半になると様子見とかどういう希望的観測なんだよと思う訳ですアタクシは(あくまでも個人の感想です)。

『Several participants judged that measures of longer-term inflation expectations derived from surveys of households, professional forecasters, and market participants still appeared to be broadly consistent with the Committee's longer-run inflation objective, likely reflecting respondents' confidence that the Federal Reserve would take the actions necessary to return inflation to 2 percent.』

ロンガータームのインフレ期待は家計のサーベイ、プロフェッショナルフォーキャスター調査、市場参加者によるものなど、総てに渡って概ね2%程度に維持されており、これはFRBの2%インフレ目標に対する皆様の信認を意味するものです!とロンガータームの話になると手前味噌発言が出てきますな。複数名の参加者意見、ではありますが。

『They noted that, together with appropriate firming of monetary policy and an eventual easing of supply constraints, well-anchored longer-term inflation expectations would support a return of inflation to levels consistent with the Committee's longer-run goal.』

手前味噌軍団の仰せによりますと、適切な金融引き締めと、今後起こるであろう供給制約の解消、ロンガータームのインフレ期待が十分アンカーされていることによって2%に向けて物価は戻るでしょう、という話になっていまして、まあそういうことにしておかないと短期金利超低過ぎ問題があるのでございますからそういうのでしょうが、昨日引用したのがその先の部分になりますが、だからこそ中立金利に向かって「expeditiously」に進まないといけませんね、という議論になっております。という所なのでまあ昨日のをあえて今日は残しておくので続きも見てちょと思いますです。

まあ何ですな、何ぼ先読みをするのがマーケットの重要な点と言いましても、今時点で「もう直ぐ物価も景気も減速するから利上げペースはいずれ鈍化ですわ」という水準が手前に来るというのはさすがにちょっとヒャッハーし過ぎなのではないか、と不肖このアタクシは思うのですが、どうもFEDに散々煮え湯を飲まされてきた(というよりもFEDの出してる情報発信ちゃんと読み込んでないだけだ(という程アタクシも読み込めている訳ではないけどさ)とアタクシは言いたい)何とかストの皆様が狂喜乱舞して米国金利ピーク説とか利上げペース鈍化説とかでヒャッホウしているのをベンダーヘッドラインで眺めておりまして、何ともかんともと思ってしまった昨日なのでありました。

で、次のパラからが昨日インスタント読みした部分になります。見通しのリスク→金融安定に関して→政策スタンスです。



2022/05/26

お題「5月FOMC議事要旨である」

〇5月FOMC議事要旨だが既に散々前打ちされた話と同じではありますが色々と面白いし続きは明日で申し訳ない

寝起きで読み切るのはアタクシの知能では無理があるのでいつものようにインスタント読みになりますが(汗)。

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20220504.pdf
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20220504.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
May 3-4, 2022

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, May 3, 2022, at 10:00 a.m. and continued on Wednesday, May 4, 2022, at 9:00 a.m.1

3月FOMCからビデオ会議ではなくなりましたですな。

・今回の議事要旨めっちゃみじけええええええええ

と思いました。まあ短いから全文寝起きで成敗できるかというと出来ないのですが、のっけからスタッフ報告からスタートしまして、これまでちょくちょくあった金融政策正常化に向けたAPPをどうするだのバランスシートをどうするだのガイダンスをどうするだのという感じの議論やらスタッフ報告がない、という物件になっています。

5月FOMCではバランスシートの縮小に関するお品書きがご案内のように出た訳ですけれども、これが出たということでバランスシートの正常化に関する方法論が片付き、あとは政策金利調整をどこまでやっていくのか、という割とシンプルな話になって、つまりはあとは「経済物価(というよりもインフレ鎮静化するかどうか、だと思いますが)の動向によって政策政策を調整するけど、最早方法論の所では議論になる訳ではなく、経済物価の判断および先行き見通しの差によって政策金利水準の度合いが決まる」というステージになっている、ということなんでしょうな(個人の感想です)。

とか何とかえらそーに言ったら次回辺りにまた何か別の論点が出て来るのかも知れませんけれども(爆)。

んな訳で今回は『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の逆順読みという何時ものインスタント読みをするのですが、ちょっと新企画(というかそもそも逆順読みがインチキ読みなので正常化に向けた検討ですが、笑)で、議論のお題の逆順読み、ということで上記部分の最後に書かれています金融政策スタンスに関する部分の9パラ〜12パラを先に読んでまいります。

・ほうほう投票メンバーどころか参加者全員が合意とな&スタンスは「引き締め」だよでも合意

では9パラ。

『In their consideration of the appropriate stance of monetary policy, all participants concurred that the U.S. economy was very strong, the labor market was extremely tight, and inflation was very high and well above the Committee's 2 percent inflation objective.』

はいはい全員一致全員一致ということで、これはまーフツーに声明文その他でも示されていますが、米国の経済物価情勢は「過熱」であるという見解で「全参加者」が一致しているんですよね。

『Against this backdrop, all participants agreed that it was appropriate to raise the target range for the federal funds rate 50 basis points at this meeting.』

投票メンバーどころか参加者全員が50利上げで同意っていうのも威勢のよろしい事です。

『They further anticipated that ongoing increases in the target range for the federal funds rate would be warranted to achieve the Committee's objectives.』

更に今後も引き上げるべきですと考えています。

『Participants also agreed that it was appropriate to start reducing the size of the Federal Reserve's balance sheet on June 1, as described in the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet that would be issued in conjunction with the postmeeting statement.』

バランスシート縮小に関しては今回出したお品書き通りの実施で合意した。

『Participants judged that an appropriate firming of the stance of monetary policy, along with an eventual waning of supply?demand imbalances, would help to keep longer-term inflation expectations anchored and bring inflation down over time to levels consistent with the Committee's 2 percent longer-run goal.』

もう完全に政策スタンスは「firming」となっておりまして、インフレ期待を2%に維持するために政策の引き締めをぶっこみますという話になっておりますですわな。


・「迅速な」中立金利への移行とバランスシートの中立化が求められるということで一致してあと2回50bpの話も

では10パラ。

『All participants reaffirmed their strong commitment and determination to take the measures necessary to restore price stability.』

物価安定を確保するために必要なことを行うしそれをコミットするのが大事だよ、とあくまで物価抑制大正義論が続きます。

『To this end, participants agreed that the Committee should expeditiously move the stance of monetary policy toward a neutral posture, through both increases in the target range for the federal funds rate and reductions in the size of the Federal Reserve's balance sheet.』

迅速(expeditiously)に誘導目標金利とバランスシートのサイズを中立状態まで政策を戻すべきである、ってあって、バランスシートのサイズあのお品書きでそんなに迅速に減るのかなというのが良く分からん(アタクシ米国のAPPの細かい所までは不勉強ですサーセン)。

『Most participants judged that 50 basis point increases in the target range would likely be appropriate at the next couple of meetings.』

殆ど(Most)の参加者は今後2回のFOMCで各50bpの利上げが適切と判断。

『Many participants assessed that the Committee's previous communications had been helpful in shifting market expectations regarding the policy outlook into better alignment with the Committee's assessment and had contributed to the tightening of financial conditions.』

多くの(Many)参加者はFOMCのこれまでのコミュニケーションによって、市場への理解が深まったことによって市場の期待がシフトして、ファイナンシャルコンディションがタイトニングしたことに「貢献した(had contributed)」と表現していましてファイナンシャルコンディションのタイトニングを歓迎しておりますな。

ということで、何でしょまあFEDが迅速にインフレ抑制に成功するから10年金利とか中立金利に毛が生えたような水準で無問題でっしゃろ的な市場のプライスアクションが最近起きているような気もするけど、その割には短い金利も下がっているので単に今の状況で既に引き締めだと思ってるのかも知れないので、何をどう市場がインプライしているのかがさっぱり分からんのですが、まあそれは兎も角として、何かホイホイと金利が下がって金融環境がまたぞろルーズになってしまうと、FOMCパーティシパントから牽制球飛んでこねえかという気はする(ハト派の人の発言はさておき)のだがさてどうなるやら。


・バランスシート縮小に関してはMBSも売っちまえという威勢の良い人と縮小に伴う市場混乱を懸念する向きが

11パラはバランスシート縮小の話。

『All participants supported the plans for reducing the size of the balance sheet. This reduction, starting on June 1, would work in parallel with increases in the target range for the policy rate in firming the stance of monetary policy.』

もはや「firming the stance of monetary policy」の連呼である。

『A number of participants remarked that, after balance sheet runoff was well under way, it would be appropriate for the Committee to consider sales of agency MBS to enable suitable progress toward a longer-run SOMA portfolio composed primarily of Treasury securities.』

何人かの(A number of)参加者はバランスシート縮小が順調に進んで行った暁にはMBSの売却も行いましょうという威勢の良い(かどうかはさておき)話をしております。この辺りの大義名分はあくまでも「FEDのポートフォリオは国債オンリーであるべきという原則に立ち返るべき」という名分であって、決して「住宅バブルのホームエクイティーローンヒャッハー状態が物価押し上げ要因だから怪しからんのでMBS売って冷やしましょう」ではないのですけど、その辺をどの程度考えているのかというのはこの辺りの主張をする高官のコメントとかをみてみたいです。

『Any program of sales of agency MBS would be announced well in advance. Regarding risks related to the balance sheet reduction, several participants noted the potential for unanticipated effects on financial market
conditions.』

数名の(several)の参加者はバランスシート縮小で望ましくない金融市場状況が起きるリスクについて言及してます。



では最後の11パラ。

『Participants agreed that the economic outlook was highly uncertain and that policy decisions should be data dependent and focused on returning inflation to the Committee's 2 percent goal while sustaining strong labor market conditions.』

お、このパラグラフは重要な話をしてそう、というのが冒頭から期待できますがさて・・・・・・

『At present, participants judged that it was important to move expeditiously to a more neutral monetary policy stance. 』

さっきも「expeditiously」が出てまして、これは例のニンブルの後継バズワードかと思ってしまいますが(2音節以下じゃないとバズワードにしにくい気もしますけど)手元にある23年前のデイリーコンサイス英和辞典だと、この形容詞形の訳語が「迅速な、手早い」でlyつくと「てきぱきと」って書いてありますが、迅速に上げるのだったらもっと威勢よく上げた方がエエンチャウノとか思わんでも無いのですが、まあそこはこの程度ちゅう話かいな。

『They also noted that a restrictive stance of policy may well become appropriate depending on the evolving economic outlook and the risks to the outlook.』

ちょwwwwおまwwwwwww

「a restrictive stance of policy may well become appropriate」と来ましたよ勿論その後に「depending on the evolving economic outlook and the risks to the outlook」ってのあるけど。

『Participants observed that developments associated with Russia's invasion of Ukraine and the COVID-related lockdowns in China posed heightened risks for both the United States and economies around the world.』

でもってやっと最初のところにあった「the economic outlook was highly uncertain」ネタが回収されますが、じゃあ何かこの事に対する政策インプリケーションがあるのかというと、この先を見ると「状況をみてあんじょうようやっていきましょうや」以外の事が書いていなくて、不確実だから引き締めスタンスを強めなくてエエンデネエノというような殊勝な話は出てこないんですよねこれがまた。

『Several participants commented on the challenges that monetary policy faced in restoring price stability while also maintaining strong labor market conditions. 』

チャレンジングな状態なのは分かったがだから何なのかというのが書かれていないので、「おやおやこれはえらいむつかしい局面にならはりましたなあ」くらいにしか読めないんですが結局どうしたいのかというとアイデア無いのかな、うーむ。

『In light of the high degree of uncertainty surrounding the economic outlook, participants judged that risk-management considerations would be important in deliberations over time regarding the appropriate policy stance.』

ここでやっと「経済の先行きが不透明なのでリスクマネジメント的なスタンスが今後も重要です」というのが出て来ます。まあここを見て「先行きの利上げ慎重だヒャッハー」と喜んでも良いかも知れませんが、逆に「中立には物凄い勢いで持って行く」という話も一方であるし、まあこれは後ろから読んでるアタクシのせいだからアレなんですが、問題は「経済の見通し」的にはウクライナの話と中国の話は景気抑制的でも、物価に対してはハイパーアゲアゲタイムになってしまう所ですので、それまで踏まえると少なくとも目先の利上げペースが緩むちゅうのはちょっと無いでしょうし、イマイチちゃんと気にしてないけど何ぼ何でもそこが止まるみたいな価格形成までは行かんじゃろ債券市場も、とは思うのですがあくまでも個人の感想です。

『Many participants judged that expediting the removal of policy accommodation would leave the Committee well positioned later this year to assess the effects of policy firming and the extent to which economic developments warranted policy adjustments.』

今年の終わりごろには「the removal of policy accommodation」をしておくのが、今後のポリシースタンスを考える上でも重要になるでしょう、って話で政策議論の所は終わっていて、何かとりあえず中立金利に物凄い勢いで持って行きたいのだけは良く分かるのですが、その後はその間にインフレの勢いが収まって2%に向けてヘロヘロとなっていくのかどうかにほぼ掛かっている感じなので、まあそういう意味ではここではその後にFOMC高官から次々とでた「景気がコケてもインフレを下げないと」という熱量ではないのかもしれないです。いやこれ政策部分の話しでも前半の熱量と後半の熱量が微妙に違う気もしないでもないという読後感がして、微妙に困るんだが、何はともあれ中立「と思われる」所には物凄い勢いで利上げしていく(と言ってもまあ50bp連続って感じでしょうけど)のだけは把握したので、従来路線の確認でもありましたかね。うーんムツカシイ。


ここからちょっと逆順読みします。時間があんまりないのでちょっとだけで続きは明日ですけど(サーセン)。今回の議事要旨は政策のところの前提をどう認識しているのか、も確認が必要だと思いますので、まあ手抜き読みは時間の無い時にはシャーナイナイですが、この議事要旨の分量、ということで最初に申し上げましたように、ある意味今までとは違って普通の普通に「経済物価情勢に鑑みて政策金利の調整をしまっせ」状態になっていて、フォワードコミットメントとかその手の手段がどうのこうのという世界ではなくなっている(中立まで金利が戻ればなおさらなのですが今はまだ大きい緩和状態)なあとは思ったんですよ曲がりなりにもFEDのこの手のもの見てきた門前の小僧的には。

ということでちょっとだけ戻ると、政策の話の前の所では「タイトニングに伴う市場の混乱とそれに伴う金融機関や金融仲介機能に関わるリスク」の話がありましてですね、


・タイトニングに伴う市場や金融仲介機能の毀損リスクへの言及

『Several participants who commented on issues related to financial stability noted that the tightening of monetary policy could interact with vulnerabilities related to the liquidity of markets for Treasury securities and to the private sector's intermediation capacity.』

数名による指摘ですけど。

『A couple of participants pointed to increased risks in financial markets linked to commodities following Russia's invasion of Ukraine, which had led to higher prices and volatility across a wide range of energy, agricultural, and metal products. These participants observed that the trading and risk-management practices of some key participants in commodities markets were not fully visible to regulatory authorities and noted that central counterparties (CCPs) needed to remain capable of managing risks associated with heightened volatility or that margin requirements at CCPs could give rise to significant liquidity demands for large banks, broker-dealers, and their clients.』

2名の方の指摘なんですけどね。市場のボラが急上昇した時に金融仲介機能のどこかにほころびがでないかとか、中央清算機関ではちゃんとリスクのカバーしないといけませんねとか、そういう指摘がありますね。


その前の2パラがインフレの話なんだがこれがクソ長くて全部やってると時間が足り無さそうなので、2つ目の「インフレ見通しのリスク」の方だけ引用しますサーセン後は皆さん議事要旨をよんでつかあさい。


・インフレリスクはアップサイドだらけ

『In their discussion of risks to the outlook, participants emphasized that they were highly attentive to inflation risks and would continue to monitor closely inflation developments and inflation expectations.』

先行きリスクではインフレとインフレ期待リスク来ました。

『They agreed that risks to inflation were skewed to the upside and cited several such risks, including those associated with ongoing supply bottlenecks and rising energy and commodity prices-both of which were exacerbated by the Russian invasion of Ukraine and COVID-related lockdowns in China.』

ウクライナ戦争と中国のリスク、について最終パラでありましたが、FOMCオープニングリマークでも言及されていましたように経済がどうのこうのの前にインフレリスクのアップサイドでした。

『Also mentioned were the risks associated with nominal wage growth continuing to run above levels consistent with 2 percent inflation over time and the extent to which households' high savings since the onset of the pandemic and healthy balance sheets would support greater-than-expected underlying momentum in consumer spending and contribute to upside inflation pressures. 』

お賃金がホイホイ上がり過ぎるリスク、しかも消費がコロナ期にたまった貯蓄のせいで全然勢いが落ちないのも物価のアップサイドリスクに繋がるとな。

『In addition, some participants emphasized that persistently high inflation heightened the risk that longer-term inflation expectations could become unanchored; in that case, the task of returning inflation to 2 percent would be more difficult.』

上振れ物価が続いてしまってインフレ期待が上振れるリスク、ってまあ当然の指摘ではあるのですが、これって「平均インフレ目標」みたいなのをやっていて、「メイクアップストラテジー」をしてればそのリスクはあるんだから、ブランシャールなどの言う平均インフレ目標だのインフレ水準目標だのという考えは机上の空論、と盛大に副議長時代にバッサリと斬って捨てる講演をしていたドン・コーンの偉大さが良く分かるというものです。

『Uncertainty about real activity was also seen as elevated. Various participants noted downside risks to the outlook, including risks associated with the Russian invasion and COVID-related lockdowns in China and the likelihood of a prolonged rise in energy and commodity prices.』

おおやっとロシアと中国による経済下押しリスクの言及来たわ、と思ったのですが返す刀で「エネルギー価格と商品価格の高騰が長期化すると経済に下押しリスク」と結局物価を下げる方が喫緊の課題という認識(なのか、そういうメッセージ性を出したい書き方にしたということなのかはともかくとして)なのは示されましたな。


という所で惜しくも時間が無くなったので続きは明日。





2022/05/25

お題「基調的物価もきっちりと来ていますな〜/ECBは「タイトニング」ではなく「政策の調整で正常化」を志向なのを確認」

しっかしまあ相変わらず良く動きますのー。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N2XG34U
2022年5月25日5:20 午前
米金融・債券市場=利回り1カ月ぶり低水準、低調な住宅指標受け成長鈍化懸念

米国の住宅とか普通にバブルになっててホームエクイティローンでアメリカンドリームヒャッホウとかやってるのでそもそも住宅をコケさせないと話が始まらん、という整理をアタクシはしておったのですが、インフレ抑制する意思が強いというFEDへの信認なのかという辺りがさっぱり訳分らん。


〇基調的物価キタコレ

まあ全国CPIが出ましたんで恒例という事で出る訳ですが。
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/

ビジュアルにも分かりやすいですけど、
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf

データの方をメモっておきましょう。例によってエクセルからペタペタ貼っているだけで恐縮ですが。


・加重中央値+0.3%はこのデータ観測史上最高値となっております(2001〜)

左から

刈込平均値(前年比、%)
加重中央値(前年比、%)
最頻値(前年比、%)

な訳ですが、

Jan-21 -0.3 0.0 0.0
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 -0.1 0.1 0.1
Apr-21 -0.3 0.1 0.1
May-21 -0.1 0.1 0.1
Jun-21 0.0 0.1 0.1
Jul-21 0.2 0.1 0.1
Aug-21 0.3 0.1 0.2
Sep-21 0.6 0.2 0.2
Oct-21 0.6 0.1 0.2
Nov-21 0.8 0.1 0.2
Dec-21 0.9 0.1 0.3
Jan-22 0.8 0.2 0.3
Feb-22 1.0 0.1 0.3
Mar-22 1.1 0.2 0.3
Apr-22 1.4 0.3 0.4

キタ――(゚∀゚)――!!

えーっとですね、これは上記のHTMLの方からエクセルデータをDLしますと確認できますが、加重中央値のヒストリカルを見ますと0.3%という数字、なんと2000年基準CPIから見て初めて、つまり2001年1月以降で初の数字になっているんですよ!!!!!!!

最頻値の0.4については、過去2008年から2009年にちょっと0.4%ついたのと、2015年から2016年の半ばに掛けて0.4%〜0.6%というのがあって、それ以来に0.4%まで来ました、という事になっておりまして、「一部の品目だけ上がっている」といつまで言い切れるのか非常に楽しみになってまいりましたが、楽しんでばかりもいられないのがアタクシのお財布事情いやなんでもありません。


さて、ここで昨日ちょっとだけ引用した日銀様が斯界の立派な学者様をお集めになられて3月末に堂々実施されました物価に関するコンファランスの要旨を再読してみましょう。

https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2022/data/ron220523a.pdf
「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップ
第1回「わが国の物価変動の特徴点」の模様

本文10ページ(PDFだと11枚目、以下同様に本文とPDFでのページは1枚ズレます)から始まる『4.パネルディスカッション:ポストコロナの物価動向』ですが、こちらの本文13ページの真ん中辺りを拝見しましょう。

『パネリストの渡辺(努)は、エネルギー価格の上昇を放置した場合、家計の節約志向の高まりを通じて、物価は下押しされて、物価の分布におけるゼロ近傍の品目が増える、つまり、デフレ的な状況が強まるとの見方を示した。内田は、エネルギー価格高騰の影響としては、渡辺(努)が指摘したような可能性の方が高いと述べたうえで、仮に急性インフレが慢性デフレ解消につながるような「ブリッジ」があるとすれば、賃金を通じてサービス価格が上昇するという可能性であろうと付言した。』(この部分直上URL先の日銀リサーチペーパーより引用、以下暫く同様)

ちなみにこちら巻末に発言者やパネラーがだれかってのが出ておりまして、まあ言うまでもないですけど念のため引用しますと、『東京大学 渡辺 努』『日本銀行 内田 眞一』であります。


・・・・いやー何ちゅうかですねー。大先生方こんなに勝負しちゃって良いの??と思ってしまいますが、よく考えたら置物理論とかジンバブエ理論とかやってても別に首になる訳じゃないんだから、あのレベルが首にならんのに大先生が首になる訳なんぞない訳で、経済学のせんせーってのは一旦著名人になると気楽なもんなんでしょうな、裏山鹿裏山鹿。

あ、ちなみにどうでもよいですがこのページの次の所に昨日引用した内田さんが仰せになっていた「合理的無視」の元発言がありました。

『仲田は、わが国では物価安定目標を達成出来ていないものの、人々が無関心でいられる程度に消費者物価上昇率が安定していることを前向きに評価してもよいのではないかと指摘した。』

ちなみにこちらの方は『東京大学 仲田 泰祐』とのことで、某都の西北大学(仮称)はジンバブエ教授や若田部教授などの鬼才を教授として招聘されるという実績があられますが、いやーなんですかねーあんまり申しあげたく無いのですが(以下の発言は内務省検閲により削除されました)。


・上昇品目が間もなく7割に!

左から順に

上昇品目比率(%)
下落品目比率(%)
上昇品目比率−下落品目比率(%ポイント)

でありまする。

Jan-21 46.7 44.6 2.1
Feb-21 49.0 42.7 6.3
Mar-21 51.0 41.0 10.0
Apr-21 50.2 41.8 8.4
May-21 51.1 41.4 9.8
Jun-21 50.6 42.0 8.6
Jul-21 51.9 41.0 10.9
Aug-21 56.1 36.2 19.9
Sep-21 57.1 35.1 22.0
Oct-21 58.4 34.1 24.3
Nov-21 59.2 33.3 25.9
Dec-21 58.8 34.3 24.5
Jan-22 61.5 31.0 30.5
Feb-22 64.0 28.9 35.1
Mar-22 63.2 29.7 33.5
Apr-22 68.8 24.9 43.9

上昇品目7割ってのがやっぱり観測史上無くて、ただまあ今回の68.8近い数字を叩きだしている時期はありまして、2015年後半から2016年前半(途中でCPI基準年が変わっていますけど)になっておりますですな、はい。


・・・・・・・ということでですね、何と申しますか昨日ネタにした物価何とかフォーラムの議論のパートとかもそうですし、展望レポートの見通しが何故か2022年度平均のコアCPI+1.9%ということで、さっそく0.2%ほど上の方にゲタが発生してしまいましたが、ここもとの一連の日銀による物価ネタ投下に関しては、これ将来的に普通に日本でも物価が上がってるじゃん(少なくとも今年度前半から失速とかする感じはないですわな、個人の感想ですけど)という話になった時に、「日銀は物価見通しを外した」って非難されるための絶好の材料を今からご提供してまわっているように見えるのよ。

いやまあ勿論黒田さんの面目玉に皆さん阿るのがお仕事なんで、面目玉に整合的なストーリーをズラズラと並べる、というのも分かるんですけど、それにしても現実に数字から出て来るものは基調的物価だってこれ勿論数か月みないと分からんけど、もしかしてもしかしたら今回は違うんでネーノという雰囲気も醸し出し、しかも昨日ネタにしたラガルドはんのECBブログポストのように、今回は違う可能性がありんすとか主要中銀の偉い人まで言ってる中、従来のディスインフレワールドをベースにした主張をここまで自信満々にぶっこんでくるのも良く分からん所があります。

いや別にそんなに物価が弱いネタで勝負しなくたって良いとおもうのに、こんな所で突っ張って来るのって、時々申し上げるアタクシの妄想全開の陰謀論によりますと、後からこれを全部引っくり返して、その時に黒田さんに全責任をおっかぶせてしまい、「いや〜今度の日銀はちゃんとしてますからご安心くださいお客様!」というような攻撃を炸裂させる可能性を用意してて、だからこそ変な妥協(??)をしないで全ツッパリしてるんじゃなかろうか、と斯様思うのでありました。


〇ラガルドはんの続き

正直物価の所が一番読みたかったのと、ちょうど出ていた日銀様と日本経済学の最高の頭脳が集まった物価何とかフォーラムを絡めたかったので途中までで恐縮でしたが。

https://www.ecb.europa.eu/press/blog/date/2022/html/ecb.blog220523~1f44a9e916.en.html
The ECB Blog
Monetary policy normalisation in the euro area
Blog post by Christine Lagarde, President of the ECB
Frankfurt am Main, 23 May 2022

と思ったらふと時間をみたらあんまりないので「経済見通し」の所だけで勘弁してもらいますが、どこぞの中銀と違ってECBの場合は曲がりなりにも理屈の整合性はつけながらやっていく(ただし時々「メンゴメンゴさっきの無し」みたいなジャガーチェンジをするのはあるので要注意)ので、実は経済物価見通しのロジックを理解しておけばそんなに政策見通しで大外しはしないはず。

などと見苦し言い訳をしながら。『The uncertain growth outlook』をサラサラと拝見。

『We also have to take the growth outlook into account when calibrating policy normalisation.』

欧州の場合は経済がアイヤーなので中々難しいでしょうな。

『A number of forces have been underpinning growth in the euro area, including the continued tailwinds from the reopening of the economy, the high stock of accumulated savings and the fiscal support introduced to offset higher energy bills. The labour market has also rebounded much faster than expected, with unemployment falling to a historic low.』

成長見通しを強気にさせるファクターは、ということで経済の再開、貯蓄が増えている事、エネ価格高騰対応の財政支出をあげ、さらに労働市場のリバウンドが想定以上に強いことを指摘。

『However, the euro area is clearly not facing a typical situation of excess aggregate demand or economic overheating. Both consumption and investment remain below their pre-crisis levels, and even further below their pre-crisis trends. 』

じゃあ経済が過熱しているかというとそんなこたあない。

『And the outlook is now being clouded by the negative supply shocks hitting the economy. This is evident from the fact that, in the near term, inflation and growth are moving in opposite directions.』

しかしながらネガティブサプライショックによる暗雲がある。

『In particular, a large share of the inflation we are experiencing today is imported from outside the euro area. This is acting as a terms of trade “tax”, which reduces the total income of the economy - even if we take into account the higher prices being earned by exporters. 』

『Cumulatively from the second quarter of 2021 to the first quarter of this year, the euro area transferred ユーロ170 billion, or 1.3% of its GDP, to the rest of the world.』

交易条件の悪化によるユーロ圏のマイナスは21年の2QでGDPの1.3%におよぶ1700億ユーロになってるよ。

『Households are the ones suffering most from higher import prices, as rising energy and food inflation are eating into real incomes, and nominal wages are not yet catching up. In fact, real wage growth turned negative in the fourth quarter of last year - the last data point we have - and real wages are likely to be contracting even faster now due to rising inflationary pressures.』

家計は輸入価格上昇で最も食らっており、確認できる最新で昨年の4Qになるけど、実質賃金の伸びはマイナスになったよ。

『We do not yet have clear indications of how much consumption is being affected. But confidence indicators have reacted: households’ expectations of their future financial situation dropped to their second-lowest level on record in March and remained close to that level in April.』

まだ家計消費にどの位クリアなエビデンスは無いけど、消費者信頼感指数などを見ると、3月のデータでは将来のファイナンシャルシチュエーションの項目が過去2番目に悪いレベルまで落ち込んでいて、4月も似たような数字になっております。

『High energy costs and supply shortages are now also starting to be felt in industrial production, which contracted in nearly all major economies in March.』

エネルギーコストとサプライチェーン問題は企業の生産活動にも悪影響を与えている。


ということでやっぱり『The path towards policy normalisation』の頭だけ引用しますと、

『So what should normalisation mean in this context?』

『With the inflation outlook having shifted notably upwards compared with the pre-pandemic period, it is appropriate for nominal variables to adjust - and that includes interest rates. This would not constitute a tightening of monetary policy; rather, leaving policy rates unchanged in this environment would constitute an easing of policy, which is not currently warranted.』

ということで、FEDみたいに「インフレ退治大正義で経済が減速するのは寧ろ上等」というのとはスタンスは別でして、あくまでも「This would not constitute a tightening of monetary policy;」なのでタイトニングではなく、「rather, leaving policy rates unchanged in this environment would constitute an easing of policy, which is not currently warranted.」ということで、「寧ろ、現在の環境においては今の水準の金融緩和度合いが不適切なので調整します」という説明な訳ですな。

でもって以下、その考えに基づいてAPPのテーパリングをしましたよこれからこうしますよ、という話が続きますし、まあそこは既報の通りという感じなのですが、上記の部分、日銀はちょっと百回くらい音読していただきたいものだと思う訳ですが、どうせ日銀のことですから「2022年度でも2.1%だし2023年度には1.1%にコアCPIの上昇率鈍化するという我が国の状況では今の緩和度合いは適切である(キリッ)」って理屈捏ねるんだろうなあというのが見え見えなのが悲しいですね。

ということで本日はこの辺で勘弁してつかあさい。








2022/05/24

お題「ラガルドさんのブログポストネタを中心に少々ボスティックと日銀/キング元総裁のインタビィーもお勧めなので紹介だけ」

日本以外の当局者の発言が色々と出てるので面白いちゃあ面白いのだが、ワシはジャップランドの住民としてこの流れの中で日本が何の示唆も出せていないということに悲しさを感じざるを得ない。


〇米国ですがブラードの話も大概だったがこの理屈も理屈としては成り立つけど実際どうなのよ問題

ほほう。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-bostic-rates-idJPKCN2N91T7?il=0
2022年5月24日4:29 午前
米FRB、9月の利上げ一時停止「理にかなう」=アトランタ連銀総裁

ボスティックは基本的にハトなんで、ブラードの変態仮面と同様に話は半分で聞いた方が良いのですが。

『[アトランタ(米ジョージア州) 23日 ロイター] - 米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は23日、連邦準備理事会(FRB)の利上げの道筋について、6月と7月に0.50%ポイントの利上げを行った後は、インフレと経済への影響を精査するためにいったん利上げを停止することは「理にかなう」と述べた。』(上記URL先より)

だそうなのですが、9月くらいにインフレが劇的に沈静化している、という図は中々読みにくいと思いますし、そんなの今から9月の決め打ち発言できねえだろと思うのよね。

『ボスティック総裁はアトランタのロータリー・クラブで行った講演で、夏以降に政策の面でどこまで到達したか検証するとき、インフレと金利上昇による経済への影響の双方を踏まえる必要があるとし、どの程度のペースで、どの程度まで金利を引き上げる必要があるか決定する前に「9月にいったん停止するのが理にかなう」と述べた。』

言いたいことは分かるが米国の現状はそんなにのんびりした事言ってる場合なのかとは思いますが、どうも根拠はこういうことらしい。

『また、金融引き締め政策に対し金融市場が素早く反応したことを踏まえると、経済の他の部分も同様に素早く適応する可能性があると指摘。』

いやそのりくつはおかしい。

『経済が素早く適応すれば、需要とインフレが抑制される可能性があるとし、FRBは経済の反応次第で利上げのペースを速めたり遅くしたりしなければならないとの認識を示した。』

そんなに簡単に反応するんだったらこんなにインフレが上がる前に止まってたんじゃないの、と思いますけどどうなんでしょうね。


・・・・・・しかしまあ何ですな、昨日ネタにした変態仮面の「年内3.5%までFFを上げて物価がマンデート水準に落ち着くような動きになれば利下げ可能」というのに対して予防的な利下げに言及したみたいなコメントを見たような気がするんだが、いや金融政策を引き締め的にした後、物価が落ち着いて来ればそら中立金利水準に戻していくの当たり前だろお前は何を言ってるんだという感じですけど、まあここもとはベンダーチラ見していると、FEDの政策予想を外した腹いせなのかと思う位に「景気がコケるので云々」方面の何とかストコメントが多くて笑ってしまいます。

いやまあ利上げのケツが見えないので短い(2年とかですかね)の金利がブレるのは仕方ないのですけれども、ロングエンドの金利がこれだけブレるってのは、アメリカンマーケットでの見方がやたらブレている事を示している訳でございますからして(個人の感想です)、まあFEDのメッセージも中々信用されてないんでしょうし、マーケットの中の人たちも緩和政策脳から中々抜けれてないというのもあるのかねー、等と思ってしまいました。


でもってですね、ボスティックの話ってこれ9月時点でのインフレ率が足元対比で相当落ち着いてきているのなら話としてはアリエールだと思いますが、現下の懸念って(昨日ネタにしたECBの議事要旨でも指摘されてたように)供給制約の話が長期化するとか、既に高い水準にあるインフレによる2次的効果とかなんで、水準がそれなりに下がらないとこの話は絵に描いた餅になるでしょ、とは思うのですが、まあ米国経済に弱気だったらこの位の話がでるのもアリなのかな、とも思うのであります。

#ただ困るのはアメリカン経済が強いのか弱いのか市場を見てもジャイアントスイングばっかりするので分からんところ



〇キング元BOE総裁のお話ですがインタビューの全編というのがあります(ただし英語)

昨日のマクラでご紹介したキングさんのインタビューネタですけど。

(URL再掲)
https://jp.reuters.com/article/britain-boe-king-idJPKCN2N61NU
2022年5月21日2:12 午前
高インフレ、イングランド銀含む各国中銀に責任=キング元総裁

『キング氏はスカイニュースで「1970年代に発生し、現在も起きているように、政策の誤りでインフレが起き、そこで不運に見舞われると非常に不快な結果になる」と発言した。』(上記URL先より)

こちらなのですが、読者様から「こちらのインタビューはスカイニュースのユーチューブチャンネルでインタビュー全編が聞けますよ」という事を教えて頂きまして、さっそく聞きにいったら28分27秒の大インタビューで、結構良い事を言っておられました。と言っても字幕とかは無い(実際は自動生成で英語字幕を出せるが、自動生成の字幕を長時間読んでいると乗り物酔いを起こすので私にはちょっと無理ぽでした)ので掛け流しにして聞くこと何回とかいう修業が必要ですがアタクシの語学力だと。

でですね、ユーチューブへの直リンを張ってるサイトに対してセキュリティポリシー的にどうのこうのとかいうことがあるかもしれませんので今回はリンクとか張りませんけど、ユーチューブで「marvin king boe」で検索掛けるとスカイニュースのユーチューブがヒットすると思います(アタクシは一番最初にヒットしました、なお最初に「marvin king」だけで検索掛けてミュージシャンの方のキングさんばかりがヒットする、という間抜けプレイをしたんですけど)。

でまあやっぱりキング総裁良い事仰っているようなのですが、なにせちゃんと正確にヒアリング出来ているのかの自信がイマイチ無いのと(まあそこだけ字幕自動生成しながら見れば良い説はある)、そもそもそれを文字起こしする根性と時間がないという事でちょっとネタには致しかねるのが申し訳ないのですが、インタビューと言いつつこれ殆どキングさんの独演会状態で、お話をする内容はさすがキングさんだわという感じ(キングさんとかドン・コーンさんとかブラインダーさんとか麿とかの話は格が違いますよ格が)でありました、というのは個人の感想ですが、もっとたくさん記事にするところがあるような気がしますよいやマジで。

とまあそんなところでして、時間と根性とマニア的興味のある方には力強くお勧めしておきます。再度ご案内するとユーチューブで「marvin king boe」で検索するとヒットすると思いますが、スカイニュースの「In full: Former BoE Governor warns of a "very unpleasant period" ahead」というお題の物件になります。ちなみに2万回以上視聴されてます(うち3回はアタクシ)。


〇ラガルドはんの予告ホームランキタコレですがまあ最近言われている事のリコンファームみたいな感じですかな

今ECBのトップページを見ますとラガルドさんのサムネがドドーンと出てきます(^^)。

で、そこを踏みに行きますとECBブログのラガルドさんの投稿がキタコレでして、

https://www.ecb.europa.eu/press/blog/date/2022/html/ecb.blog220523~1f44a9e916.en.html
The ECB Blog
Monetary policy normalisation in the euro area
Blog post by Christine Lagarde, President of the ECB
Frankfurt am Main, 23 May 2022

・政策パスの前打ちとな

ということで冒頭のご挨拶だかマクラだかから参ります。

『Since December last year, the ECB has been starting the journey down the path of policy normalisation.』

ほうほうノーマライゼーションの旅。

『This process began with our announcement that we would end net asset purchases under the pandemic emergency purchase programme (PEPP) in the first quarter of this year. That has now been done.』

PEPPのテーパリングは終わりました。

『The process continued with our announcement of an expected end date for net purchases under the asset purchase programme (APP). And as the inflation outlook has evolved, we have also adjusted our communication on the likely timing of interest rate lift-off, in line with our forward guidance.』

APPのテーパー中ですが、この間に物価見通しが高まってきたので政策金利の引き上げタイミングに関するコミュニケーションもアジャストしてきました。

『As a result, investors have been progressively updating their expectations of the ECB’s policy intentions. This has been reflected in a revision of interest rate expectations and an upward shift in real rates at the longer end of the yield curve.』

金融市場がワタシらのスタンスを理解した結果長期金利などの上方シフトが起きてまっせ。

『A policy adjustment has thus already been working its way through the euro area economy over the past six months.』

で?

『But as the expected date of interest rate lift-off draws closer, it becomes more important to clarify the path of policy normalisation that lies ahead of us - especially given the complex environment that monetary policy in the euro area is facing.

This is the purpose of my blog post today.』

ということで、金融政策パスについて利上げの日も近くなったので前打ちしますよ!といういやお前さん総裁は総裁だけどそういうの前打ちしたら何のための定例理事会だよという気が全力でしますが・・・・・・


・物価上昇がブロードベースになっているという話ですがこの説明を聞くと確かにこれはイカンと思うネタで攻めて来る

小見出し『The changing environment facing monetary policy』の所は「これまでは物価が中々アガランチ会長なけいざいでしたなあ」みたいな話をしているのですがそこはすっ飛ばしまして、問題は物価ということで次の小見出しの『The new inflation landscape』から参ります。

『Today, the conditions facing monetary policy have changed markedly. Three shocks have combined to push inflation to record highs.』

はいはい物価物価。

『First, we have faced a series of shocks to input prices and food prices.』

投入物価と食料品価格のショックのシリーズに直面している。

『These include the failure of OPEC+ to meet production targets, rising natural gas and hence fertiliser prices, and now the ramifications of the war in Ukraine. All this has led to surging energy and food prices, with the relative price of energy rising far higher than the individual spikes experienced in the 1970s.[2]』

>with the relative price of energy rising far higher than the individual spikes experienced in the 1970s
>with the relative price of energy rising far higher than the individual spikes experienced in the 1970s
>with the relative price of energy rising far higher than the individual spikes experienced in the 1970s

ちょwwwwおまwwwwww

1970年台におけるオイルショックの時のような原油価格1点張り(スタート時点では、ですけど)のスパイクよりも相対的なエネルギー価格の上昇がでかいとな。

『Second, we have faced shocks to both the demand for and supply of industrial goods, which has shown up in record-high industrial goods inflation.』

個別の財における需給のインバランスで財のインフレーション、というのはこれはサプライチェーンの話でしょうな。

『Demand has been stoked by stimulus policies in major economies and the forced switch in consumer spending from services to goods during the pandemic. Supply, on the other hand, has been constricted by the sluggish rebound of industrial production from lockdowns, transport and logistics bottlenecks, and now “zero COVID” policies in China once again.』

と思ったら案の定で中国のゼロコロナ政策でサプライボトルネックが相変わらず解消されないと来ました。

『Third, we have had the shock from economies reopening after lockdowns, which has triggered a rapid rotation of demand back to services - all while input costs have been rising and companies in the services sector, especially in tourism and hospitality, have struggled to find staff quickly enough to meet rising demand. That has led to rising services inflation.』

経済のリオープンに伴いサービスセクターの需要が戻るも、必要な労働供給が進まないので、コスト(賃金)上げて需要に対応することになり、結果としてサービス価格のインフレーションも起きている、だそうでエライ勢いでブロードベースのインフレーションという話ですなこれは、と思ったら案の定その直後に、

『This unprecedented combination of shocks has been reflected in broader and more prolonged inflation pressures. Core inflation jumped to 3.5% in April. And because all sectors of the economy are being affected, 75% of items[3] in the core inflation basket are now recording inflation rates above 2%.』

ということで、コアインフレは4月に+3.5%だわ、多くの価格が上がっているので、コアインフレ指数を構成する75%の品目で既に価格上昇が2%を超えている、とキタコレとしか申し上げようのない話。


・構造的変化、というかグローバル化の逆戻りの話はこれまた重要なポイントですよね〜

『On top of these conjunctural shocks, we are also seeing a partial reversal in some of the structural trends that had helped hold down inflation over the past decade.』

過去数十年間に渡ってインフレを抑制していた世界経済の構造的な部分の一部に巻き戻しが入っている、ということで、まあ要するに「平和の配当」が一部で逆回転しているって話ですよね。

『The Russia-Ukraine war may well prove to be a tipping point for hyper-globalisation, causing geopolitics to become more important for the structure of global supply chains. That could lead to supply chains becoming less efficient for a while and, during the transition, create more persistent cost pressures for the economy.[4]』

と思ったら案の定でウクライナ戦争でサプライチェーンに毀損が生じた話から始まり、

『Moreover, it is not only where goods are being produced that looks set to change, but also how. The war is likely to speed up the green transition as a means of reducing dependence on unfriendly actors. This could keep up pressure on the prices of fossil fuels as well as those of rare metals and minerals, although it could also cause some other prices to fall.』

グリーン化推進に加えて「unfriendly actors」にエネルギー依存をすることを避けようという動きが今後も続くので、化石燃料、レアメタル、鉱物などの価格には上昇圧力が掛かり続けるでしょう。

『Indeed, green technologies are set to account for the lion’s share of the growth in demand for most metals and minerals in the foreseeable future. The faster and more urgent the shift to a greener economy becomes, the more expensive it may be in the short run.[5]』

長期的にはグリーン化の動きが大切だが短期的にはどうしてもお高くついてしまいますよね。


・インフレ期待については全体としては2%水準に近いがテールの広がりを注意している

『The combined effect of these shocks has been to raise inflation expectations from their pre-pandemic lows. Longer-term measures of market-based inflation compensation are now around 2.25%.[6] Survey-based measures of inflation expectations have also shifted upwards, with the median professional forecaster[7] and monetary analyst[8] now expecting 2% inflation over the longer term. And the inflation expectations of consumers have increased in parallel.[9]』

これらのショックでインフレ期待が上昇してますよ、という話が来ました。

『The bulk of the distribution of different measures of inflation expectations are becoming centred around our target, rather than at much lower levels like before the pandemic. However, the “right tail” of the distribution is widening, which is a development we are monitoring closely.』

今の所各種の方法で計測されるインフレ期待は概ね2%のターゲット水準で分布していますが、右側のテール、すなわちインフレ期待のテール部分ではかなり高い数字を見ている向きがあり、そのテールが物価の高い方に広がってきていることは、わたくしたちが注意してその動向をモニターしています、だそうです。


・「サプライショックが弱まってもかつてのようなディスインフレ圧力は戻らん」という割と強烈な結論で締めてる

『All this suggests that, even when supply shocks fade, the disinflationary dynamics of the past decade are unlikely to return. As a result, it is appropriate for policy to return to more normal settings rather than those aimed at raising inflation from very low levels.』

ということでですね、インフレーションのコーナーの締めなんですけど、「これらすべての事を勘案すると、たとえサプライショックが消えたとしても、過去に見られたようなディスインフレ圧力は戻ってこないのではないかと思われます」と、どこぞの極東の島国にあるポンコツ中銀はラガルドさんの爪の垢でも煎じて飲めという話をしておられるわけですな。

でもってその結果として「As a result, it is appropriate for policy to return to more normal settings rather than those aimed at raising inflation from very low levels.」にすべきである、という風に話をしている訳ですので、まあ何と申しますかインフレの所読んだだけでお腹がいっぱいになってしまいました。
いやー満腹満腹。


でですね、この次に『The uncertain growth outlook』というのがあるのですが、でもやっぱり『The path towards policy normalisation』でっせという話があって、正常化という位なので中立金利に向けて利上げをしていかないといけないんだけど、グロースアウトルックがハイリーアンサータンなので、そこまでバカバカ上げるという訳ではないですけど、まあゆうて利上げはしまっせ、という感じのお話になっていますが、続きは(必要なら)明日にしまして・・・・・・・・・・・・・・


〇さてラガルドはんのお話が良い所のようですがここで丁度良い比較物件がタイムリーに出ているポンコツの確認をしましょう

あ、ポンコツが何か言ってる。
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2022/ron220523a.htm/
「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップ
第1回「わが国の物価変動の特徴点」の模様
2022年5月23日
日本銀行企画局

上記の『要旨』から引用しますね。

『2022年3月29日、「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップの第1回「わが国の物価変動の特徴点」が、日本銀行本店にて開催された。コロナ禍で浮き彫りになった日米欧の消費者物価動向の違いを足掛かりに、わが国の物価変動の特徴点に関して、経済学や実証分析の専門家・学者を交え、活発な議論が行われた。』

ポンコツ学者とポンコツ中銀がポンコツ議論をしたようです。

『第1セッションでは、コロナ禍におけるわが国の消費者物価上昇率が米欧と比べて低い背景について、価格変動分布やコア物価指標等を用いた分析結果に基づき、わが国の特徴点が報告された。また、物価上昇の持続性という観点から重要と考えられる賃金と物価の関係について、わが国で両者の相互依存関係が弱いことを示す実証分析結果に基づき、議論が行われた。』

あれ?賃金上がらないと物価が上がらないんじゃなかったの???

『第2セッションでは、日米欧の消費者物価動向の違いをもたらしているサービス価格、その中でも家賃等が取り上げられ、その計測上の論点が議論された。そのうえで、測定方法次第では、コロナ禍における各国間の物価上昇率の格差も相応に変わり得る可能性が指摘された。』

何だよそれ。まあヘドニック問題とレントが無駄に下がる問題はどうなのかというのは分かるけど。

『第3セッションでは、パネルディスカッションが行われ、主として(1)わが国と米欧で消費者物価の動向が異なる背景、(2)今後の物価見通し、(3)物価の現状認識と見通しを踏まえた金融政策の課題、の3つの論点が議論された。』

ほうほう。

『(1)の論点について、米国では、需要の急回復や労働参加率の低下などがインフレ高進の要因となっている一方、わが国では、こうした要因が見受けられないため、米国対比で消費者物価が弱くなっているとの認識で概ね一致した。』

過去の話はどうでもよいのだが、

『(2)の論点については、わが国では、感染症拡大前から続く慢性的なデフレ要因や、感染症の影響長期化に伴う需要の減退を背景に、物価が再び低迷するリスクがある一方、商品市況の高騰を起点としたコストプッシュ・ショックによって、インフレが高進するリスクもあると指摘された。そのうえで、どちらのリスクが顕在化する可能性が高いかについては、今後の賃金動向の見極めがポイントになるとの見方が示された。』

ラガルドさんのブログポストとの違いがwww

『(3)の論点については、需要の弱さに対しては金融緩和を継続することが望ましいとの認識が共有された一方、エネルギーを中心とした一部の品目の価格上昇に対しては、金融政策以外の方法で対応することが望ましいとの見解が示された。』

ポンコツ同士で同病相憐れむと。まあこの時は3月末だから勘弁しますけど、既に日本だって価格上昇が大分広がってねえかという感じで、「エネルギーを中心とした一部の品目の価格上昇」だから政策修正しません、の理屈いつまでもつのやらとは思うのであります。


ということですが、まあ当然ながら本文を読むほうが面白いのですが、何せ最近は海外中銀の皆様のお話が勉強になるわけでございまして、こちらはツッコミどころを探す練習課題という感じだし、大体からしてさっき申し上げたようにアタクシ昨日はBOEキング総裁(元総裁なのだがつい総裁と書きたくなるくらいにその後の2名がポンコツなのがBOEクオリティ)のインタビューを(ドメドメジャパニーズの残念な語学力で)ヒーコラ聞くのを頑張ったので正直斜め読みしかしていないのだが・・・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2022/data/ron220523a.pdf
「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップ
第1回「わが国の物価変動の特徴点」の模様

何かね、どさくさに紛れてオモロイ事言うじゃんというのもあるようですが、最後のところのを見てズッコケた。パネルディスカッションの『4−3 パネリストによる総括』って所で本文14ページ(PDFの15枚目)のケツの辺りからなんですが、

『パネリストの内田は、今回のワークショップの中で、「人々がインフレに無関心である今の状況は望ましいのではないか」との見方が複数の参加者から示されたことを取り上げ、「ゼロよりも2%の物価安定目標の方が望ましい」ということは、名目金利の実効下限制約の存在や、中央銀行がグローバルに同じ目標を共有することによる為替の安定化で説明できると述べた。ただ、どのような政策にもコストがあり、効果とコストのバランスが取れているかが本当の問題であると指摘した。この点、金融不均衡が生じるリスクを挙げる識者も多くみられるが、現実の金融政策運営に活かすためには、より実践的で精緻な分析と理論の発展が望まれると述べた。』

>「人々がインフレに無関心である今の状況は望ましいのではないか」との見方が複数の参加者から示された
>「人々がインフレに無関心である今の状況は望ましいのではないか」との見方が複数の参加者から示された
>「人々がインフレに無関心である今の状況は望ましいのではないか」との見方が複数の参加者から示された

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

思わずワークショップの行われた日付を見返してみたんですが、どこをどう見ても「2022 年 3 月 29 日」としか書いていなくて、この複数の参加者というのは何か冷凍保存でもされてたんですか??????????と小一時間問い詰めたいんですが、どんなポンコツが集まってディスカッションしてるんだよという話で、小文ではありますがラガルドはんの説明とか、ネタにしなかったBOEキング元総裁のインタビュー(こちらは冒頭で「人々がインフレの話をするようになっているのはもうその時点でインフレ期待のアンカーがアカン」的な話をしておりましたですわな)、いやまあ欧州と日本は物価上昇の水準違いますけど、あんたらどこをどういう風に世の中を理解すると「人々がインフレに無関心である今の状況」とか言えるのよというお話ではありますがな。今はもっと話題ですけど、3月って2月終わりのウクライナ戦争以降の円安とかも相まって物価上昇が話題になっとったやん・・・・・・・・・・・・・・・








2022/05/23

お題「4月ECB議事要旨ネタの続きです」

また変態仮面か!
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-bullard-idJPKCN2N61UH
2022年5月21日4:22 午前
FRB、23─24年に利下げも 物価抑制なら=セントルイス連銀総裁

『[20日 ロイター] - 米セントルイス地区連銀のブラード総裁は20日、連邦準備理事会(FRB)は高インフレをより迅速に抑制するために年内に政策金利を3.5%まで引き上げるべきとの見解を改めて示した。

FOXビジネス・ネットワークとのインタビューで「インフレとインフレ期待を前倒しでコントロールできればより良い結果が得られる」と指摘。2023─24年にインフレが抑制されれば利下げが可能になると述べた。』(上記URL先より)

そらまあ理屈の上ではそうなのかもしれんが年内に3.5%まで上げるの無理ゲーちゃいますのん??


それはそれとしてマーヴィンキングさん。
https://jp.reuters.com/article/britain-boe-king-idJPKCN2N61NU
2022年5月21日2:12 午前
高インフレ、イングランド銀含む各国中銀に責任=キング元総裁

『[ロンドン 20日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)のキング元総裁は20日、英国のインフレ率が40年ぶりの大きさになるなどの高インフレに関し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後に量的緩和を過剰に実施した英中銀を含む中央銀行に責任があると発言した。

キング氏は2003年から13年まで英中銀総裁を務め、世界金融危機時の09年3月の量的緩和開始を率いた。しかし、近年は中銀の資産購入の規模について批判していた。』(上記URL先より)



〇4月ECB議事要旨ですが正常化路線では一致していて後先の問題になっているのは把握した

https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2022/html/ecb.mg220519~c9200dba08.en.html
Meeting of 13-14 April 2022
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council of the European Central Bank held in Frankfurt am Main on Wednesday and Thursday, 13-14 April 2022
19 May 2022

『Monetary policy stance and policy considerations』以下をちょっと真面目に読んでみます。金曜は超手抜きだったので『Monetary policy decisions and communication』という結論からよんでしまいましたが。

・インフレとインフレ期待の話で現状認識が埋まっておる

『Turning to the assessment of the monetary policy stance, members widely expressed concern over the high inflation numbers, which had become a major issue for households and businesses.』

高インフレが問題である、と端から出オチ状態。

『Both headline and underlying inflation were at historically high levels, with price pressures extending well beyond energy. If owner-occupied housing costs had been included in the HICP, underlying inflation would have been even higher, by 0.7 percentage points, in the fourth quarter of 2021.』

帰属家賃(HICPには今のところ含まれていない)を入れると更に0.7%上がるそうな。

『It was noted that various indicators of longer-term inflation expectations had been creeping up, with an increased risk of inflation expectations becoming unanchored from the target.』

色んな指標で見た場合のロンガータームのインフレ期待も動き出していると。

『At the same time, it was also argued that developments in market-based indicators of longer-term inflation expectations could still generally be interpreted as positive, suggesting it was more likely than a few months earlier that the Governing Council’s 2% inflation target would be met on a sustained basis.』

一方で金融市場から出て来るインフレ期待は2%のインフレ目標に整合的とのことですな。


・という背景があるから今の緩和スタンスは怪しからんという人の意見が次のパラグラフ

『Against this background some members viewed it as important to act without undue delay in order to demonstrate the Governing Council’s determination to achieve price stability in the medium term. Such action was deemed necessary to prevent the temporary bout of higher inflation from becoming entrenched and to prevent inflation expectations from rising further from the Governing Council’s target, which would make it significantly more costly to bring inflation back to the target.』

『These members judged that the highly accommodative monetary policy stance, which had been appropriate when inflation expectations risked becoming unanchored to the downside, was no longer consistent with the inflation outlook, which was characterised by high inflation levels and increasing inflation expectations. 』

『At present monetary policy was still contributing to stimulating the economy as real interest rates remained in deep negative territory.』

some membersの意見で1パラ使ってしまうの巻なのですが、書いてあることは数人のメンバーの意見ではあるのですが、やたらめったらやる気満々ですな。


・「見通しを外した」という指摘もぶっこまれるし、「戦争のせいだけじゃないよね」という指摘もある

次のパラである。

『Past projection errors, for both headline and underlying inflation, were contributing to these concerns.』

インフレ予想のアンカーが外れて上に行く、という懸念について、過去の見通しのエラーがこれに貢献するそうな。

『Many of the upside risks to the inflation outlook that the Governing Council had already discussed last summer had materialised even before the war started.』

そもそもウクライナ戦争云々の前から懸念してたアップサイドリスクがあって、それも顕在化してるよね。

『These included more persistent supply and demand imbalances, and the fact that the futures curve on which the energy price assumptions were based might not be a good predictor of future energy price pressures.』

需給のインバランス(サプライチェーンの問題)やエネルギー価格の高止まりなどはそもそもウクライナ戦争の前からアップサイドリスクとして指摘してたよね、というのがこのパラグラフ。


・まあそこまでしなくてもという他のメンバーだが実質金利がクソ低いので物価抑制に不十分なのは認めている

と、ここまで来たところで他の人たちのご意見コーナー。

『Other members argued, however, that adjusting the monetary policy stance too aggressively could prove counterproductive, as it would lower growth while inflation remained elevated because monetary policy was unable to address the immediate causes of high inflation.』

他のメンバーのご意見として、too aggressivelyに調整するのはアカンヤロということで、そもそも現在起きている高インフレの理由に対して金融政策が直接働き掛けれんじゃろというのが理由。

『The sequence of measures decided by the Governing Council at previous meetings to normalise the monetary policy stance were recalled. These measures included the decrease in net asset purchases; the phasing-out of the pandemic emergency purchase programme (PEPP), of the pandemic emergency longer-term refinancing operations (PELTROs) and of the special interest rate on the targeted longer-term refinancing operations (TLTROs); and the communication of the expected end of the APP in the third quarter of 2022. 』

APPとかTLTROの類の縮小を既に決めていていることだし、

『It was highlighted that the ongoing normalisation was visible in market interest rates and could be expected to weigh on the economy in the coming quarters. 』

それによって市場の金利は更なる正常化を見込んで引き締め的に作用しているでしょ、と来ますがこのパラの最後がしらっとこうなっている。

『However, the view was also expressed that real rates remained exceptionally low and the dampening of aggregate demand as a result of higher nominal rates would be insufficient to bring inflation back to 2% in the medium term without a further adjustment of the monetary policy stance.』

とは言っても、実質金利が無茶苦茶低い水準にあるので、2%にインフレを抑制するには不十分な水準である、とOther membersも認めている訳で、早いか遅いかの違いはあっても利上げせにゃおえんでよという話はこの時点で既に行われていましたな。


・・・・・・・とまあこういう議論があって、金曜にネタにした『Monetary policy decisions and communication』に繋がります。金曜引用した最初と最後(結局のところ段階的な正常化は必要だよね、の部分)は飛ばします。

『Looking ahead, members voiced some nuances related to the appropriate pace of the gradual normalisation.』

gradual normalisationは確定で、その度合いについての意見交換であります。


・正常化とっととしやがれの意見の人は当然ではあるがやる気満々

『On the one hand, some members viewed the higher than expected inflation figure in March and inflation expectations moving above the 2% target as requiring an adjustment of the monetary policy stance towards a neutral position sooner rather than later and a modification of the Governing Council’s inflation narrative in line with the stated data-dependency of its monetary policy.

最初は「monetary policy stance towards a neutral position sooner rather than later」とすべきというsome membersのご見解。

『This implied that net asset purchases should be ended as soon as possible, opening the possibility for a first interest rate hike shortly after.』

APPのテーパリングをとっとと終わらせてとっとと利上げ着手しろとな。

『It was noted that if the upside risks to the inflation outlook were confirmed in the June Eurosystem staff macroeconomic projections, the Governing Council would face the question of whether continuing net purchases beyond June could still be seen as proportionate.』

そもそも6月の見通しの時期になってインフレアップサイドリスクが更にコンファームされた日には6月の時点でネット買入まだ増やしてる場合か!となるでしょうと中々威勢が良い。

次のパラに行く、引き続き引き締め積極派の意見。

『A risk was also seen that, if the Governing Council did not signal a faster policy normalisation process, inflation expectations would continue to rise further from a level which was already above the Governing Council’s target.』

ECBがa faster policy normalisation processのシグナルを送らないと更にインフレ期待が(既に怪しからん状態なのに)上がってしまうんではないのか。

『It was stressed that the assessment of the outlook had evolved substantially since March and that, if these changes to the outlook were confirmed in June, concrete steps to accelerate the pace of policy normalisation would be required to ensure that inflation stabilised at 2% over the medium term.』

6月の見通し段階でアカンとなったら正常化に向けた強いステップが必要となるでしょう(こっちは仮定法、さっきの部分は普通のif構文なので、こっちは6月の話でさっきのは4月時点の今の話ですね)。

『Such a path was seen as safeguarding optionality while remaining within the boundaries of the Governing Council’s policy guidance and thereby avoiding an increase in perceived policy uncertainty. It would also help to demonstrate the Governing Council’s readiness to adjust its tools as appropriate, thereby strengthening its credibility to deliver on its mandate.』

そのようなスタンスを取ることによってインフレ目標達成に向けたクレディビリティ向上に寄与します。

ときまして次のパラ。

『In this context, it was also recalled that acting too late could lead to a materialisation of second-round effects and might have high economic, financial stability and credibility costs if the Governing Council were forced to tighten more aggressively at a later stage in order to re-anchor inflation expectations. 』

正常化着手に遅れを取ってしまうとセカンドラウンドエフェクトなどが起きてその後無茶苦茶引き締めないと行けなくなってイクナイ理論ですな。

『It was argued that, while it typically took some time for higher expected inflation to be reflected in wage-setting, the opposite process was also lengthy; if higher inflation expectations became entrenched in wage agreements, lowering inflation would become harder.』

現状では賃金がそこまで強くないけど、この調子を放置プレイしていると賃金が望ましくない上がり方してインフレ抑制が困難になると指摘してます。でもって1970年代の再来のリスクを指摘してまして、

『In this context, experience from the 1970s was referred to as having demonstrated how essential a commitment to price stability was for the ability of monetary policy to contain inflationary effects of adverse supply shocks.』

供給ショックによるインフレ圧力にも対応しないと行けないよね、とあるのが中々お洒落ですね。


・そこまでぶっこまなくても良いのでは派のご意見

グラデュアル派の意見が次のパラから始まる。

『Other members, however, maintained that the gradual normalisation process embodied in financial market expectations was consistent with longer-term inflation expectations remaining anchored at 2% and did not require a reappraisal of the monetary policy path.』

『This would not support accelerating the timing of any restrictive measures, including in relation to the end of net asset purchases. 』

今後のグラデュアルなノーマライゼーションを踏まえて金融市場のBEIは2%程度になっているんだからそれ以上過激にしなくてエエンチャウノ?と来ました。

『In view of the stability of the longer-term inflation outlook, embodied both in market-based indicators and the March baseline ECB staff projections, a shift in the monetary policy guidance from a gradual normalisation to a more aggressive and accelerated tightening did not seem justified.』

よって今以上に正常化を加速させるこたあねえと。

『Considering the high uncertainty surrounding the medium-term outlook for price stability, it seemed advisable to proceed with further actions very carefully. It was also noted that being too proactive in the normalisation of the stance could prove costly if it resulted in financial market turbulence or had to be reversed later.』

先行きの不透明感の高い中でそんなに決め打ちしたら下振れリスクが顕在化した時にマズくね?という主張ですな。これはこれで百里くらいある。でもって次のパラ。

『A gradual normalisation was also deemed consistent with the estimated low level of the natural interest rate in the euro area, which implied that even relatively small steps might be sufficient to turn the current accommodative monetary policy stance into a restrictive stance.』

自然利子率も低下しているんだからそこまで強気に引き締めなくても、というのが次の理由ですね、なるほど。

『Model-based estimates suggested that the natural real interest rate was still negative, although it had to be acknowledged that uncertainty surrounding the estimated values was high. Moreover, there was a gap between estimates for the US and euro area natural real interest rates, which might be explained partly by differences in productivity, labour supply and demographics as well as the level of excess liquidity. 』

米国と比較してみると自然利子率の水準とか、全要素生産性の水準とか欧州は低いんだからそこまでぶっこむ事はない、という辺り、慎重派は「米国の出方を見たい」というのもあったんでしょうな、と思う(FOMCの前にこっちがあった)。

『Notwithstanding the low level of the natural rate, it was recalled that the expected path of the nominal key ECB interest rates would approach a neutral level only at a very late stage of the policy normalisation process.』

政策金利が中立水準に戻るのは正常化の最後のステージとなるべき、だそうです。では次のパラグラフ。

『Overall, the view prevailed that, in the light of the heightened uncertainty resulting from the still ongoing effects of the pandemic and the war in Ukraine, optionality, gradualism, and flexibility remained important features of the Governing Council’s monetary policy conduct.』

さっきもあったけど、こちらではパンデミックやウクライナと例を出しながら、先行き不透明要因のある中では、optionality, gradualism, and flexibilityが重要でないのかとの指摘。

『In particular, it was seen as advisable to maintain optionality and defer a decision regarding the precise timing of the end of net asset purchases until the Governing Council’s June meeting, which would allow the Governing Council to benefit from additional data and the new Eurosystem staff projections.

『As uncertainty was exceptionally high, different scenarios for future developments in the inflation outlook could be envisaged.』

『It was also highlighted that Mr Lane’s proposal left all options open for decisions to be taken at the June meeting. In particular, the proposal was seen as consistent with the possibility of deciding to end net asset purchases already at the end of the second quarter or early in the third quarter.』

結局こっちの方が多数派で今回は現状維持で6月まで様子見、というレーンさんのプロポーザル通りになった訳でございますが、ゆうてこの人たちも「先行き不透明だからまだ出なくてよい」というだけの話であって、正常化路線がアカンとかそういう話ではない、というのは把握しました。まあ6月ECBに向けて(既に始まっているという説はあるけど)状況判断次第で威勢の良い正常化話が出るのか、不透明な世の中なので慎重に行きましょうが続くのか、どっちですかねーという感じですな。

以下が金曜に引用した結論部分になります。






2022/05/22

お題「虫干し企画:展望レポート基本的見解ですが「政策からの逆算」「妙な賃金推し」が目につきましたな」

何を今さら企画ですがやらないわけにもいかないので。でもって日曜にやると言ってましたが結局日曜の夜にやって月曜の更新と一緒に更新しますわ。

展望レポート基本的見解(4月今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2204a.pdf

前月声明文
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k220318a.pdf

展望レポート基本的見解(1月前回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2201a.pdf

まあ今更ジローでもあるのでサクサクと参りますね。

〇鏡の部分だが今更思うのだが見通しがこうなっているのに何で金利のFGはコロナなんじゃろ

本当の名前は『<概要>』ですが最早鏡としか呼んでいないアタクシ。

1ポツ目:これ先行き見通しはウクライナなんですよね

『・日本経済の先行きを展望すると、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。』(今回)

『・日本経済の先行きを展望すると、新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。』(1月展望レポート)

ウクライナが加わったのですが、出来上がりの見通し数字を見ると足元の成長だけ下げたので、まあこの書き方は分かるのですが。

『その後は、資源高のマイナスの影響が減衰し、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まっていくなかで、わが国経済は、ペースを鈍化させつつも潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回)

『その後も、所得から支出への前向きの循環メカニズムが家計部門を含め経済全体で強まるなかで、わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(1月展望レポート)

どう見ても威勢が良いのに何故か物価上昇は一時的と。


2ポツ目:物価見通しが経済見通し対比で弱いんだがよく見ると長い目で基調は上昇とか訳分らん

『・物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、携帯電話通信料下落の影響が剥落する 2022 年度には、エネルギー価格の大幅な上昇の影響により、いったん2%程度まで上昇率を高めるが、その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。』(今回)

『この間、変動の大きいエネルギーを除いた消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率・賃金上昇率も高まっていくもとで、食料品を中心とした原材料コスト上昇の価格転嫁の動きもあって、プラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(今回)

『・先行きの物価を展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、エネルギー価格が上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁も緩やかに進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、振れを伴いつつも、プラス幅を拡大していくと予想される。その後は、エネルギー価格上昇による押し上げ寄与は減衰していくものの、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどによる基調的な物価上昇圧力を背景に、見通し期間終盤にかけて1%程度の上昇率が続くと考えられる。』(1月展望レポート)

これも出た時は「ほうほう」としか思わなかったのですが、今になって読み直すと「物価上昇は一時的」という話をする割には「原材料コスト上昇の価格転嫁の動きもあって」プラス幅を拡大する、とかよくよく考えるとナンジャソラという説明で、いやまあこれ多分解きほぐすと、「一時的なエネ価格上昇があって価格転嫁が起きても、需給ギャップがマイナス水準にあるような現状ではその転嫁は一時的にすぎないので目先2%程度に上がってもその後はまた1.1%とかに戻ります。ただより長い期間で見た場合、金融緩和と財政による需給ギャップのプラス転化と、賃金の上昇による自律的なポジティブフィードバックループが働きだすので、物価の基調は徐々に上がるんです」という説明になる(と思う)んですけど、何ちゅうか説明に無理があるわなと思う。

まあこの点は再三再四申し上げておりますように、「2%台に乗る(目出度く全国コアCPI+2.1%、ヘッドラインは+2.5%だし、特殊要因の押し下げが残っているのを除けば+3%近い物価上昇で、最近は何処に逝っても「すいません値上げしますわメンゴメンゴ」という張り紙がある訳ですが)のに対して政策の修正を意地でもしたくない」というのと「金融緩和政策が失敗したと認めたくないから中長期では物価が上がることにしておく」という動機が先にあって、そこから逆算して屁理屈をこねているからこういうアクロバットな理屈になる。

そういう意味では1月の方がまだ普通の説明になっていて、「エネルギーのプラス寄与が剥落しながらも基調の物価が徐々に強くなるのでそれに取って代わられる」という形でした。


3ポツ目:成長見通しですけど成長軌道に復する時期は徐々に後ろ倒しになっているんですよね

『・2023 年度までの見通しを前回の見通しと比べると、成長率については、2021 年度と2022 年度が、感染再拡大や資源価格の上昇、海外経済の減速の影響などから下振れているが、2023 年度はその反動もあって上振れている。物価については、エネルギー価格上昇の影響などから、2022 年度が大幅に上振れている。』(今回)

『・前回の見通しと比べると、成長率については、2021 年度は供給制約の影響から下振れる一方、2022 年度は政府の経済対策の効果や挽回生産などを背景に上振れている。物価については、資源価格の上昇やその価格転嫁などを反映して、2022 年度が幾分上振れている。』(1月展望レポート)


4ポツ目:リスクにはコロナを入れておかないと金利のFG的にアカンのは分かるが

『・リスク要因としては、引き続き変異株を含む感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要である。また、今後のウクライナ情勢の展開や、そのもとでの資源価格や国際金融資本市場、海外経済の動向についても不確実性はきわめて高い。』(今回)

『・リスク要因としては、引き続き変異株を含む感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要である。また、供給制約の影響を受けるもとでの海外経済の動向に加え、資源価格の動きやその経済・物価への影響についても先行き不確実性は高い。』(1月展望レポート)

いや真面目な話、何で今回って金利のフォワードガイダンス文言にウクライナ入れなかったのか、というのはマジで謎で、一応無茶苦茶自分のポジトー的に解釈すると、ウクライナを入れるとガイダンス文言の差し替えが難しくなるから、コロナ終了したら終了させようという下心があるのかとも思うのだが、その割には毎日指値オペな訳で、この人たちは何を考えているのかよくわからんである。まあロジカルでは無いのは確かなので、あんまりこの辺りをロジカルには最近考えて無くて、単純に「コロナオンリーにしておけば今後変更できる」という含みを持たせただけ、というような感じで、「政策アクションに対応」で考えた方が良いんだと思う。


5ポツ目:物価のリスクって普通に考えて(足元だけじゃなくて)上振れだろうと思うが死んでもそうは書かない気概

『・リスクバランスをみると、経済の見通しについては、当面は、感染症やウクライナ情勢の影響を主因に下振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、当面は、エネルギー価格を巡る不確実性などを反映して上振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。』(今回)

『・リスクバランスは、経済の見通しについては、感染症の影響を中心に、当面は下振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、概ね上下にバランスしている。』(1月展望レポート)

ちなみにこれは基本的見解の本文の方に記載されていますが、物価がやや長い目で見てリスクが上下にバランスという理由は「賃金が思ったほど上がらんと値上げ許容がすすまんのでその後値下がりが起きる」という話なんだが、物価が上振れたのが定着するリスクの方が(経済の基調は強いって言ってるんだから)どう見ても上だし、賃金が上がらん云々のリスクがあるからバランスってんだったら成長見通しもっと低くねえかバランス的に、と思う次第ですが、物価にアップサイドリスクなどというと政策修正がどうのこうのと言われるのが必定なので、死んでも上振れリスクとは言わなという気概が伝わって来まして、大変に香ばしい。


〇めんどいので現状認識はかっ飛ばして先行き見通しに参ろうず

ということで『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し』である。


・経済見通しのだいたい見通し期間の前半分だけどよく見たら企業部門の記述がやたらクドクドと言い訳じみている

まずは『(1)経済の中心的な見通し』から。

『わが国経済の先行きを展望すると、見通し期間の序盤から中盤にかけては、資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。』(今回)

『3.先行きのわが国経済を展望すると、新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、資源価格上昇の影響を受けつつも回復していくとみられる。』(3月声明文)

『先行きのわが国経済を展望すると、新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。』(1月展望レポート)

ここは鏡の所と同じですわな。

『原油や天然ガス、石炭等の資源価格や小麦等の穀物価格は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた供給不安の高まりなどを背景に、このところ大幅に上昇している。資源・穀物価格の上昇は、これらの大部分を輸入に頼るわが国において、海外への所得流出(交易利得の悪化)をもたらし、エネルギーや食料品の価格上昇を通じて、家計の実質所得や企業収益に対する下押し要因として作用する。』(今回)

という能書きが暫くあって、これは前回は無い(声明文には当然字数の関係で入らん)話なのですが、これは仰せ御尤もなのですが、だったら円安の加速を招くような金融政策をやってて良いのか問題というのがある筈でして、YCCってのはそもそも論として「経済・物価・金融情勢を勘案して適切な程度の緩和水準」を目指すものだ、というのがYCCぶっこんだときの均衡イールドカーブとかの能書きでの説明だった訳ですな。でもって確かに単純に経済にプラスになるような情勢の中でYCCの緩和効果が強まる状況なら政策を維持することのメリットがあるのですが、「下押し要因として作用する」事案が生じているんだったらそれ加速させたらダメじゃんとしか思えませんな。

『もっとも、政府による原油価格高騰対策や、行動制限下で積み上がってきた貯蓄が、所得から支出へのマイナスの影響を緩和するとみられるほか、家計部門、企業部門ともに、感染症や供給制約の影響が緩和するもとで、ペントアップ需要を含めた自律的な需要の増加が継続すると予想されることから、景気の回復が続くと考えられる。』(今回)

という話になっているんだが、インフレ期待が上がってしまった場合に、行動制限化で積みあがってきた貯蓄をそう簡単に取り崩すかよ、とまあ思うんですけどねえしょみーんのアタクシとしては。

まあそんな能書きが入ってから各部門での見通しの話になるのだが、今回は書き方をだいぶいじっていて前回との比較が面倒である。

『すなわち、家計部門では、感染状況が改善し、ワクチンや治療薬の普及などにより感染抑制と消費活動の両立も進むもとで、個人消費は、ペントアップ需要の顕在化を主因に、回復していくとみられる。』(今回)

『家計部門では、感染症への警戒感や自動車の供給制約の影響が和らぐもとで、個人消費は、対面型サービスや耐久財を中心に回復していくとみられる。』(1月展望レポート)

ここ1月と記述の順序が変わっています。次の企業部門の説明がエライヤヤコシイ。

『企業部門をみると、海外経済が、ウクライナ情勢による減速圧力を受けつつも総じてみれば回復を続けるもとで、輸出や生産は、供給制約の影響の緩和が見込まれる自動車関連やグローバル需要が拡大しているデジタル関連を中心に、増加するとみられる。企業収益は、原材料コストの上昇が下押し圧力として作用するものの、内外需要が増加するもとで、為替円安もあって、業種・規模間のばらつきを伴いつつ、全体として高水準を維持すると予想される。そうしたもとで、設備投資は、対面型サービス部門の弱さは当面残るものの、緩和的な金融環境が下支えとなるもとで、供給制約の緩和もあって、増加傾向が明確になっていくと考えられる。この間、政府支出は、既往の経済対策を受けて感染症関連の支出が続く中、全体として高水準で推移すると想定している。』(今回)

『企業部門をみると、輸出や生産は、供給制約の影響が和らぐもとで、堅調な海外需要に支えられて、しっかりと増加していくとみられる。そうしたもとで、企業収益の改善が設備投資の増加につながるという、前向きの循環メカニズムは働き続けると見込まれる。』(1月展望レポート)

だいたいこういう感じでクッソ長くなっているのってのは碌なもんじゃないというのがあって、表現が前回から見て物凄いクドクド感が強くて、経済に対してお前ら本当に強気なのかよという感じで、ヘッジクローズ満艦飾となっているのよ。出来上がりの数字だとそんなに気にならなかったのですが、説明よく見たらエライヘッジ文言入りまくってますよね何じゃこら。


・もうちょっと先の話だと結局同じなんですけどね

『見通し期間の中盤以降は、資源高のマイナスの影響が減衰し、所得から支出への前向きの循環メカニズムが経済全体で徐々に強まっていくなかで、わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。ただし、ペントアップ需要の顕在化による押し上げ圧力が和らいでいくため、成長ペースは鈍化していく可能性が高い。』(今回)

『その後は、緩和的な金融環境などが下支えとなり、所得から支出への前向きの循環メカニズムが、家計部門を含め経済全体で強まっていくとみられる。そうしたもとで、わが国経済は、政府の経済対策の効果や挽回生産の影響などから、成長ペースを高めたあと、見通し期間終盤にかけては、減速しつつも潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(1月展望レポート)

ここはケツが1年違うので若干話が違っているが、結局前向き循環メカニズムがワークするという話をしている。


・部門別展開家計部門:消費の増加は賃金が上がるのが前提になっておりますな

これがまた順序が変わっているので今回のを基準にしてて前回展望は順序入れ替えて引用しています。

『家計部門をみると、雇用者所得は、対面型サービス部門の回復に伴う非正規雇用の増加に加え、労働需給の引き締まりや物価上昇などを反映した賃金上昇率の高まりを背景に、緩やかな増加を続けると予想される。こうした雇用者所得の増加に加え、エネルギー・食料品価格上昇による実質所得の下押し圧力の低下もあって、個人消費は、ペントアップ需要の顕在化ペースを鈍化させつつも、着実な増加を続けると予想される。』(今回)

『個人消費は、当面、感染症への警戒感などが重石となるものの、ワクチンの普及などにより感染抑制と消費活動の両立が進むもとで、サービス等のペントアップ需要の顕在化や政府の経済対策による後押しもあって、回復していくとみられる。その後は、ペースを鈍化させつつも、雇用者所得の改善に支えられて、緩やかな増加を続けると考えられる。雇用者所得は、内外需要の回復に伴う雇用者数の増加や、人手不足感の強い業種における賃金上昇を反映して、緩やかに増加していくと考えられる。』(1月展望レポート)

今回の特徴の一つはここで、見通しのベースに思いっきり雇用者所得が上がることを前提にした書き方になっていること(1月のは雇用者所得云々は見通しの中の一部要素)でして、いやそれはそれで別に良いんですけど、だったら何で「物価が上がっても一時的」って連呼するのかがさっぱり意味不明で、物価の上昇が一時的で先行きそんなに上がらんよ、という宣伝を日銀がしてるのを企業経営者が真に受けたら恒常的な賃金上昇につながるようなベースサラリーの引き上げとかせんじゃろと思いますよね。

ということで、とにかく今回の展望レポートと政策メッセージの大いなる矛盾はここにあって、いやおまいらそんなに賃金が上がって欲しいんだったら、政策の方も整合性取って「物価上昇はしばらく続きますよ」って何で宣伝しないのか(モチのロンだがその理由は政策の修正をしたくないという邪な心があるから)というお話。もうその時点で政策無茶苦茶じゃんと思うのですが。


・部門別展開企業部門:やっぱり説明が色々と変である

『企業部門をみると、海外経済が、減速しつつも長期平均並みの成長を維持するもとで、輸出や生産は、半導体等の供給制約の影響も解消に向かうことから、緩やかな増加を続けると考えられる。企業収益は、内外需要の増加が続き、原材料コスト上昇の下押し圧力も徐々に和らぐことから、改善基調に復していくとみられる。そうしたもとで、設備投資は、緩和的な金融環境にも支えられて、人手不足対応やデジタル関連投資、成長分野・脱炭素化関連の研究開発投資を含めて、増加を続けると考えられる。』(今回)

『以上の見通しを、やや詳しくみると、海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつも、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、先進国を中心とした積極的なマクロ経済政策にも支えられて、成長を続けるとみられる。そうしたもとで、わが国の財の輸出は、当面は、部品の供給制約の緩和から自動車関連を中心にはっきりと増加すると予想される。その後も、デジタル関連を含むグローバル需要の堅調な拡大を背景に、増加を続けるとみられる。』(1月展望レポート)

『サービス輸出であるインバウンド消費については、入国・渡航制限が続く間は、落ち込んだ状態が続くものの、その後は、回復していくと予想される。企業収益は、資源価格の上昇を受けた交易条件の悪化や供給制約の影響を受けつつも、内外需要の回復を背景に改善基調が続くとみられる。』(1月展望レポート)

『そうしたもとで、設備投資は、対面型サービス部門の弱さは当面残るものの、企業収益の改善や緩和的な金融環境、政府の経済対策にも支えられて、機械投資やデジタル関連投資、脱炭素化関連の研究開発投資などを中心に、増加傾向が明確になっていくと考えられる。』(1月展望レポート)

さっきの所でクドクドと企業部門の話を書いているので、こっちの方ではあっさり味になっているのですが、どう見ても1月の方がこれ説明(のロジック)がスッキリとしてて、今回の展望レポートって企業部門の記述が改めて見ると何か変調だし、大体からして今回の「輸出や生産は、半導体等の供給制約の影響も解消に向かうことから、緩やかな増加を続けると考えられる。」ってのがそもそもお前ホンマカイナという所で、まあよく見れば色々と変な説明になっております。

だったら最初から経済の見通しを引き下げてしまえば良いじゃんと思うのですが、それはそれで「スタグフレーション」って言葉がピッタリとあてはまってしまうという事実があり、日銀はそうは見せたくなかったので何かうにゃうにゃとした説明になっているのではないでしょうか(個人の妄想です)。

あと、さっきのコーナーの方で公共投資の記述が今回の展望だとあったのですが、個別項目の方に1月では示されておりました。一応再掲しながら引用しますとこうなります。

『この間、政府支出は、既往の経済対策を受けて感染症関連の支出が続く中、全体として高水準で推移すると想定している。』(今回ですが先ほどの再掲になります)

『公共投資は、国土強靱化関連工事などの進捗を反映して、高めの水準で推移すると見込まれる。政府消費は、医療費の持ち直しのほか、ワクチン接種・医療提供体制の整備などを反映して増加するが、その後はこれらの感染症関連支出の減少から水準を切り下げると想定している。』(1月展望レポート)


・よくよく見たら今回「金融環境」のコーナーが無くなっておる

でもって経済見通しの本文の終盤になりますが、

『以上の見通しの背景にある金融環境についてみると、日本銀行が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで、金融環境は緩和的な状態が続き、民間需要の増加を後押ししていくと想定している2。すなわち、銀行借入やCP・社債発行といった外部資金の調達環境は、先行きも緩和的な状態が維持されると考えている。また、企業の資金繰りについても、日本銀行の資金繰り支援策に加え、政府の施策や民間金融機関の取り組みが下支えとなるなかで、景気回復の進展に伴い、足もとで厳しさが残る中小企業も含め改善傾向が続くとみられる。』(今回)

とある部分、前回の展望レポートでは「(3)金融環境 」という形、即ちYCCの「経済・物価・金融情勢を点検して」という事になっていたのですが、そういや何で今回こうなってるんだというのも????ではあるが、金融環境の話をあんまりクロースアップしたくない事情があるのでしょうな。

『先行きは、日本銀行が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで、金融環境は緩和的な状態が続き、民間需要の増加を後押ししていくと想定している3。すなわち、銀行借入やCP・社債発行といった外部資金の調達環境は、緩和的な状態が維持されると考えている。また、企業の資金繰りについても、日本銀行の資金繰り支援策に加え、政府の施策や民間金融機関の取り組みが下支えとなるなかで、景気回復の進展に伴い、足もとで厳しさが残る中小企業も含め改善傾向が続くとみられる。』(1月展望レポート)

書いてあることは同じなんですが、前回はこの部分に加えて現状評価の話もあったのですよね。記述が簡素化されたのには何か理由がある筈。


・潜在成長率の話はいつも通りなのだがよく見たら謎の「人的資本投資」という文言が追加されとる

『この間、潜在成長率は、デジタル化や人的資本投資の進展による生産性の上昇や、設備投資の増加による資本ストックの伸びの高まりなどを背景に、緩やかに上昇していくとみられる3。政府によるポストコロナに向けた経済構造の転換のための施策や緩和的な金融環境は、こうした動きを後押しすると考えられる。』(今回)

『この間、潜在成長率は、デジタル化の進展による生産性の上昇や、設備投資の増加による資本ストックの伸びの高まりなどを背景に、緩やかに上昇していくとみられる2。政府によるポストコロナに向けた経済構造の転換のための施策や緩和的な金融環境は、こうした動きを後押しすると考えられる。』(1月展望レポート)

今更気が付いたんだが「人的資本投資の進展」ってナンジャソラ???


〇物価見通し:謎の賃金推しは何なんでしょうかねえ

続きまして『(2)物価の中心的な見通し 』に参ります。

・先行きの話で今月突如「一時的」が入るというご都合主義にも程がある説明

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、携帯電話通信料下落の影響が剥落する 2022 年度には、エネルギー価格の大幅な上昇の影響により、いったん2%程度まで上昇率を高めるが、その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、エネルギー価格が大幅に上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁も進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、プラス幅をはっきりと拡大すると予想される。』(3月声明文)

『消費者物価の前年比は、当面、エネルギー価格が上昇し、マクロ的な需給ギャップの改善を背景に原材料コスト上昇の価格転嫁も緩やかに進むもとで、昨年来の携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、Go Toトラベル事業等の一時的な要因による振れを伴いつつも、プラス幅を拡大していくと見込まれる。』(1月展望レポート)

今回思いっきり「その後下がる」というのが唐突に入った訳でございますな(ニッコリ)。


・結局のところ「基調的な物価」の話は前からしているのにわざわざコアコアの数字を出す意味あったのけ???。

『この間、変動の大きいエネルギーを除いた消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率・賃金上昇率も高まっていくもとで、食料品を中心とした原材料コスト上昇の価格転嫁の動きもあって、プラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(今回)

『この間、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調的な物価上昇圧力は高まっていくと考えられる。』(3月声明文)

『その後は、エネルギー価格上昇による押し上げ寄与は減衰していくものの、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に基調的な物価上昇圧力は高まっていくことから、見通し期間終盤にかけて1%程度の上昇率が続くとみられる。』(1月展望レポート)

という点に加えてさっきの所でも賃金の話がありましたが、ここでも予想インフレ率の上昇の他に「賃金」を思いっきり入れておりまして、今回の謎の賃金推しは何なんでしょという所ですな。


・需給ギャップの話でも賃金推しだが・・・・・・・・・

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、足もとではマイナス圏で推移しているが、先行きは、わが国経済が潜在成長率を上回る成長経路をたどるもとで、2022年度後半頃には明確なプラスに転じ、その後もプラス幅の緩やかな拡大が続くと予想される。こうしたもとで、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給の引き締まりは進み、賃金の上昇圧力は次第に強まっていくと考えられる。このことは、家計の値上げ許容度の改善に寄与するとともに、財・サービス需給の引き締まりと相俟って、物価上昇率の高まりにもつながっていくとみられる。』(今回)

『労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップをみると、足もとではマイナス圏で推移しているが、先行きは、潜在成長率を上回る成長経路に復していくもとで来年度前半頃にはプラスに転じ、その後はプラス幅の緩やかな拡大が続くと予想される。こうしたもとで、家計の値上げ許容度は賃金上昇率の高まりなどを反映して緩やかに改善するほか、企業の価格設定スタンスも徐々に積極化することから、コスト転嫁と価格引き上げの動きが拡がっていくとみられる。』(1月展望レポート)

この説明なんですけど、ここでも賃金推しなのは良いんだが、賃金が上がる背景がさっきの経済見通しの家計部門での話では「労働需給の引き締まりや物価上昇などを反映した賃金上昇率の高まりを背景に、緩やかな増加を続けると予想される。」と物価上昇による賃金上昇という話があったのに、ここでは労働需給引き締まりの一本足打法の表現、とさっきとゆうとることが違うとりゃせんか、と思うのですけれども、これはインフレ期待の部分の物凄く微妙な表現があってですね・・・・・・


・中長期の期待インフレが上がってるんだが上がってないんだか歯切れの悪い表現ですわな

『次に、中長期的な予想物価上昇率をみると、短期と比べるとペースは緩やかながら上昇している。企業の価格設定スタンスは、感染対策によるコスト上昇圧力が残っていることや最近の資源価格上昇を背景に積極化しており、先行き、財を中心に、コスト転嫁と価格引き上げの動きが拡がっていくとみられる。こうした現実の物価上昇率の高まりは、適合的期待形成を通じて、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率のさらなる上昇につながり、ひいては、サービスも含めた価格上昇の拡がりと賃金上昇率の高まりをもたらすと考えられる。』(今回)

『また、こうした現実の物価上昇率の高まりは、適合的期待形成を通じて、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率の上昇につながり、さらなる物価上昇を後押ししていくと考えられる。』(1月展望レポート)

1月の見通しだと普通に「物価上昇率が上がれば中長期的な期待インフレが上がりますよね」だったのに、いざ物価が本当に上がりだすと急にこの日和まくった表現になるのはなぜかと言えば話は簡単で、中長期的な期待インフレも上がっているんだったら適切な緩和度合いというのは変化し得るのであって、1年前に設定した0.25%をより強固に固定化するのは政策の方向性がおかしくないか、と言われたくないから以外の何物でもない、という具合になっています。

まあ展望レポート基本的見解は政策から逆算した作文の要素が混じるのは今に始まった事では無いのですが、今回はそれが露骨すぎて草も生えませんなという所でありましたwwwwwwwwwwww

リスク要因以下はめんどい(おいこら)から割愛します。










2022/05/20

お題「ロイター企業調査結果が何気に重い結果に見えるのだが/ECB4月議事要旨ですが「6月に決めるわ〜」という問題先送り感が」

何か例の藤巻大先生、ネットでツッコミ食らったのに逆上して更に斜め上の話を展開して馬鹿の上塗りをしているようで大変香ばしいらしいのですが、まあおヒマな方は探して味噌。

〇そりゃ企業物価指数10%ですからねえと思いますがこれは中々インパクトのある物件キタコレ

しらっと地味に流れてたような気がするこの記事ですが、円債村の村民のはしくれとしては気にせざるを得ない(反応するとは言ってない)。

https://jp.reuters.com/article/japan-economy-idJPKCN2N42AF
2022年5月19日10:12 午前
5月ロイター企業調査:円安進行で「大規模緩和修正が必要」6割

こwwwれwwwわwwww

ということで記事を拝読。

『[東京 19日 ロイター] - 5月のロイター企業調査では、円安が進む中、日銀による大規模な金融緩和政策を修正するべきとの回答が6割に達した。今すぐ出口に向かうべきとする企業も24%となった。昨年7月の調査では、超低金利の長期化はプラスに作用するとの声が72%にのぼり、今すぐやめるべきとの回答はわずか6%だった。円安進行により、企業の金融緩和策への見方が変化したことを表していると言えそうだ。

調査期間は4月26日から5月13日。発送社数は499、回答社数は230だった。』(上記URL先より、以下同様)

調査期間が絶妙で、「まいにち!さしねおぺ!!」の直後の回答が多かったのかどうかとかその辺は分かり兼ねますが、まあ足元の円安上等指値オペを受けておるでしょうな。

『金融緩和政策の修正を求める企業からは、これ以上の円安進行の経済への悪影響に危機感を訴える声が多くみられた。「ある程度のインフレ誘導を図ることと並行して金利もあげるべき」(機械)、「緩和政策はもう国力を落とすだけの愚策になっているから」(サービス)などの指摘が出ている。』

>「緩和政策はもう国力を落とすだけの愚策になっているから」(サービス)
>「緩和政策はもう国力を落とすだけの愚策になっているから」(サービス)
>「緩和政策はもう国力を落とすだけの愚策になっているから」(サービス)

(;∀;)イイシテキダナー

『大規模金融緩和をいつまで続けるべきかについては、今すぐ出口に向かうべきが24%、今年度前半までが23%で合わせて約半数となった。大規模緩和政策の指揮を執ってきた黒田東彦総裁の任期となる来年4月まででは計84%に上った。』

ということでございますが、まあこの数字自体だとうーむまあこんなもんかねーとか思ってしまうのですが、記事の冒頭にありますように、

「昨年7月の調査では、超低金利の長期化はプラスに作用するとの声が72%にのぼり、今すぐやめるべきとの回答はわずか6%だった。」

だったのが、

「5月のロイター企業調査では、円安が進む中、日銀による大規模な金融緩和政策を修正するべきとの回答が6割に達した。今すぐ出口に向かうべきとする企業も24%となった。」

となった訳でして、今引用した中でも指摘されていますように、

「円安進行により、企業の金融緩和策への見方が変化したことを表していると言えそうだ。」

輸入物価上昇の主な理由は日銀が指摘する「そもそも物の値段が上がっているので」というのがもちろん大きいのはその通りなんでしょうけれども、海外からの購入とか海外に投資するときに、いざコンペとなれば円安上等金融政策ファクターを抱えているワシらの方が不利に働いてしまうじゃろというような辺り、一般消費者の方はまだ「あー何か値下げ品減ったね」とか「値上げの話ある見たいだけどバーゲン品買っておくか」というような感じではなのかと第二種兼業主夫である所のアタクシは思う訳ですが(よって完全に個人の感想です)、企業物価指数に示されるように企業様の方から「だめだこりゃ」という話が出てくるのは誠に結構結構。

なんせ日銀の場合は本店でも全国の支店でも企業活動に関しては企業に対して直接ヒアリングなどをしておりますので、ワシら人民みたいにメディアとか政治とかでフィルタリングされまくった挙句にならないとよー日銀に伝わらん人達とは重みが違うところでもありまして、まあ円高の時の麿日銀も企業サイドからのダメ出しは多かったやに仄聞しておりますが、円安上等スタンスでの一連の動きも、円安で売り上げが円建てで勝手に増えたよやったね!の話の前にこんな感じで日銀にじわじわとプレッシャーになって下さるのは、マイナス金利+YCC政策とか言う盛大な兵糧攻めを食らって籠城すること何年目、という身にとっては援軍キタコレと大喜びしてしまうのでありました。


しかしまあ何ですな、こういう調査結果が出て来ると昨日ネタにしたアレの味わいというものにもう一つテイストが付きますよね、と思います。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202204.htm/
展望レポート・ハイライト(2022年4月)
経済・物価情勢の展望

こちらがどう見てもECBの「Our monetary policy statement at a glance」の完コピなのでございますが、ECBのこのポンチ絵に関しては、出だしたのが「物価上昇が宜しくないのではないでしょうか」みたいな感じになって、何回かネタにしたと思いますが、シュナーベル専務理事あたりが「高インフレの放置は格差の拡大を起こす」とかそっちの方からも批判食らってるのね、というようなタイミング(昨年ね)に入れられたんですよね。

でもってECBの場合一時は「インフレに関して」みたいな書き物や講演へのリンクをしたサムネでトップページが満艦飾、というような状況がありまして、この辺り、当時もネタにしましたが、元々政治家チックな方だけに世間様から食らう組織への非難に対応する嗅覚の鋭いラガルドさんが「ここはインフレ放置批判に対して何も答えないでいるとECBが政治的に持たなくなる」という判断を下したんだと思うの。その結果がインフレに対するお話だったのですな。


さてさて一方の日銀ちゃんですが、そもそもECBの「Our monetary policy statement at a glance」ってのがあの伝説の「5分で読めるマイナス金利政策」のコンセプトを完全にパクっておられまして、でもって「5分で読めるマイナス金利」は皆様ご記憶に新しいかたもそうでない方もご案内の通り、マイナス金利政策ぶっこんでどやああああああ!ってやったら肝心の為替相場は円高に振れるわ、株式市場が下がるわ(これどっちが先かは微妙な話なんですが、マイナス金利に真っ先に反応したのが国内株式市場における銀行株の軒並みあばばばばーという極めて自然なものから始まっておったと思う)で、ドヤ顔で渾身のぶち込み(なおマイナス金利政策も一種の逆切れ政策でしたよね)をしたのに酷いことになってしまって批判轟轟、という中で投下したのが「5分で読めるマイナス金利」でございました。

つー訳で、今回のこれも逆切れぶっこんでしまったものの、我に返ってこれはちょっと説明をせねばならんのではなかろうか、という話になって後付けでぶちこんできた、とか、それこそ今しがたネタにした企業アンケートの回答のニュアンスは伝わっていてて、そーゆー辺りで日銀「ちょっとこれは丁寧な説明をせんとマズくねえか???」って認識が出てきたからこその展望レポート出てから3週間(連休あったから実質2週間)も経過する、という古くなった蛍光灯のようなタイミングで出してきたのかなー、と改めて思いました。

つまりですね、最初からこういうポンチ絵を出す気があるんだったら、それこそニバイニバーイのフリップみたいに事前に準備できていて政策決定後の記者会見でドヤ顔で出してくる筈なのでして、急に後付けでこういうの出すというのは、「やった政策のハレーションに対応した」のであって、当初想定の行動では無かったっていう話。まあ日銀ちゃん、毎日指値オペとりあえず金融市場は黙らせてみたものの、円安誘導批判だの川上側の価格上昇を受けた批判だのに対して「こりゃやべえ」と思ったのかな〜と改めて思いながら見るとしょうもないポンチ絵ですが味わいがありますな、と思ったので昨日の重複部分ありますけど改めて申し上げさせて頂きたく。

なお、以下はただの願望ですけど、マイナス金利特攻→なんかこれ説明しないとマズイんじゃねとあとから気が付く→5分で読めるマイナス金利、という流れと今回のこのポンチ絵の流れが相似形だとしますと、それは即ちその後に総括的点検からのYCCになったように、いずれは収拾しないと行けなくなる事態に追い込まれるのではなかろうか、などと考えるのはスーパーポジトーにも程がありますかそうですかすいませんすいません。



〇そうだECBの議事要旨の日だった(滝汗)

さて・・・・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-idJPKCN2N51AI
2022年5月19日11:31 午後
ECB、物価高を懸念 引き締めペースが唯一の議題=議事要旨

『[フランクフルト 19日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)が19日に公表した4月13─14日の理事会の議事要旨で、インフレの拡大に広範な懸念が示され、政策をどの程度速く、どこまで引き締めるべきかが唯一の主要な議題だったことが分かった。』(上記URL先より、以下同様)

欧州は普通にスタグフ直撃なのが痛いですよね。

『議事要旨で、超緩和的な金融政策を転換する時期が来たとの考えでは一致したものの、どの程度速いペースで引き締めを行い、どこまで踏み込むべきかについては見解が分かれたことが判明。』

あらあらそうですかそうですか、ということでECBである。

https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2022/html/ecb.mg220519~c9200dba08.en.html
Meeting of 13-14 April 2022
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council of the European Central Bank held in Frankfurt am Main on Wednesday and Thursday, 13-14 April 2022
19 May 2022

究極(自称)の手抜き読みでとりあえず勘弁してつかあさい。今回は上記のように近い将来の政策変更にからむ話があるので、そういう点では説明が凝縮されている部分が今回に関してはあります、とおもっておりますが。

『1. Review of financial, economic and monetary developments and policy options』というのが基本的には事務方説明に該当するんですが、そうは言ってもここの話をするのは(米日だとスタッフですけどそれとは違って)ECBの場合はチーフエコノミストのレーン専務理事がお話をします。

でもってまあ今回に関しては「政策に対してどういうインプリケーションが」の部分に話が詰まっておるので、上記の小見出しある中の最後の小見出しが『Monetary policy considerations and policy options』という部分になっています。

その部分の説明をまあ普通は最初から読むのが手抜き読みポイントになるのですが、今回は更にそれを端折って最終的にレーンさんの政策プロポーザルみたいな部分を引用します。

『Mr Lane stressed that the Governing Council should be very attentive to the current uncertainties and closely monitor the incoming data in relation to their implications for the medium-term inflation outlook.』

というところから始まるパラグラフで、次の見出し『2. Governing Council’s discussion and monetary policy decisions』に入る直前の2つのパラグラフだけ読むという究極手抜き亜空間殺法です。

『By the June monetary policy meeting there would be more information about the course of the war and its wider ramifications. This would allow the Governing council to assess more extensively the net impact on the economy and inflation dynamics.』

6月の定例理事会までに出てくる経済物価データを良く分析しましょう、というのは要は6月には決断の時来る、という時間軸ですわな。ここまでが1パラ。

『At the same time, Mr Lane highlighted that the Governing Council could conclude that the data available since the 9-10 March meeting supported the expectation that net asset purchases under the asset purchase programme (APP) should be concluded in the third quarter.』

次のパラはAPPの3Qには拡大止めまっせ話から始まり、

『Looking ahead, monetary policy would depend on incoming data and on the evolving assessment of the outlook.』

先行きの政策はデータディペンデントキタコレ。

『In the current conditions of high uncertainty, there was a need to maintain optionality, gradualism and flexibility in the conduct of monetary policy.』

high uncertaintyの時、まあそれがcurrent conditions ofということなので今まさにこの時、ということですが、政策にはoptionality, gradualism and flexibilityが必要ってんですからまあそこまで過激派では無い説明(この時点では)ですが、ただまあ何かしましょう見たいな話でもあります。

『In particular, Mr Lane stressed that the Governing Council should state its readiness to adjust all of the instruments within its mandate, incorporating flexibility if warranted, to ensure that inflation stabilised at 2% over the medium term.』

ということで、レーンさんの説明は(今回何か具体的な政策を導入するタイミングでも無かったから、ですけど)フワッとはしていますが、そうは言っても物価の上振れアカンのでそこは政策として対応するよその代わりに過激じゃないけど、というプロポーザルになっていますな。


・政策に関する議論はこちら以下を読むのが吉

ということでメンバーの議論パートになるのですが、これまた手抜き読みをするなら背景の経済物価の話をぶっ飛ばして(手抜きにも程がある)『Monetary policy decisions and communication』から読むのが吉であります。

・・・・ただここも全部読んでるとそこそこの量になります。こんどこそ3度目の正直で週末(と言ってもたぶん日曜になるので期待しないで下さい)にはこの辺りも含めて読んだものネタにせねばと思っていますが、本日は時間の関係でここ全部読みきれませんので(涙)、最初の出オチ部分を引用させて頂きます。

『All in all, members widely shared the view that the gradual normalisation of the monetary policy stance, which the Governing Council had started at its December meeting, should be continued and had to be adjusted to the medium-term inflation outlook, which had changed since that time.』

ということで、さっきのレーンさんのにもありましたが、この時点での話はあくまでもgradualであります。その後ECBの高官方面からおめーそれグラデュアルけ?という発言も出ているので若干微妙なのですけれども、4月会合の時点では「正常化はするよ」「でもグラデュアルだよね」という感じですか。

『Given the Governing Council’s current assessment of the medium-term inflation outlook and the highly accommodative monetary policy stance, there was broad agreement that the Governing Council should express its judgement that the data received since the last meeting reinforced its expectation that net asset purchases under the APP should be concluded in the third quarter.』

APPのテーパーリングを3Qまでに終わらせるという前回決めた方針を確認。

『The view that net asset purchases should end sooner rather than later in the third quarter was widely expressed.』

ということで、以下は「グラデュアルと言ってもバッチリとやるし早期にやるよ」派のご意見と「そのものずばりでグラデュアルに行きまっせ」派のご意見が並ぶのですが、これを引用しているとクッソ長くなってしまうのと時間がガチになくなるので以下日曜か月曜にとは思いますが、その話題をした後の最後の部分ではこうまとまっておりまする。

『All in all, members agreed that the monetary policy proposal by Mr Lane in his introduction was in line with keeping all optionality, in the light of the current high uncertainty, and would allow the Governing Council to reassess the inflation outlook on the basis of the incoming information at its June meeting.』

とりあえず6月会合までにアベイラブルなデータを見て考えましょうや、という忍法問題の先送りで一致。

『This approach implied, on the one hand, that the Governing Council remained on its course of a gradual normalisation of monetary policy, consistent with its forward guidance that interest rates would be raised some time after the end of net asset purchases.』

『On the other hand, considering that “some time” had been defined as a period between one week and several months at the March press conference, the approach did not prevent a timely rate rise if conditions so warranted.』

とございまして、何のことはない6月に出たとこ勝負するんだから、利上げ着手タイミングもAPPのテーパー終わって“some time”というのは数週間後でも数か月後でもどちらでもとか漫画のカイジで出て来る名セリフみたいな玉虫色決着をして、次回に持ち越しとなった、という事のようですね。

#詳しくはまた後日






2022/05/19

お題「日銀謎のコーナー新設/雨宮さん物価の話になると急にまともな話をするのは何でじゃろ/コア物価とヘッドライン物価とか」

藤巻某とかいう馬鹿が国会で馬鹿な事を言って話題になっておられるようですが、だいたい政治方面で「金融ナントカ」みたいなの言い出すのってこの手の軽薄なアホウと相場が決まっているのは熊手ヨッシー大先生を見れば一目瞭然だし、熊手大先生と言えば割と市場回りの人も好感してた方が多いがアタクシは当初より(大昔から幣駄文にお付き合いいただいているとお分かりのように)悪態つきまくっておった次第である。まあ今回のは馬鹿のホームラン王発言なのでそこら中から馬鹿呼ばわりされてるが。

しかも経済学んだって「中央銀行が国債を買うと政府債務がチャラ」というジンバブエ理論を堂々提唱する人が以前都の西北大学の教授やってた訳で、教える方がそもそもアレという極めて残念なそもそもの問題点がある訳ですな。


〇日銀が突如ECBのパクリを始めたのだが何か変なもんでも食ったのか?????

日銀の新着に謎の文字列

『 5/18(水)金融政策 展望レポートのハイライト(2022年4月) 』

???????と思ってハイパーリンクを踏んだら作業中なのに危うく茶を吹くところだったあぶねえあぶねえ。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202204.htm/
展望レポート・ハイライト(2022年4月)
経済・物価情勢の展望

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

どう見てもECBの丸パクリです本当にありがとうございました。

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2022/html/mopo_statement_explained_april.en.html
Our monetary policy statement at a glance - April 2022

でまあ体裁が丸パクリなのですが、後発でパクるんだったらECBよりも内容が充実しているのかと思えばさにあらず。ここでECBと日銀の比較をしてみましょう。


日銀の説明文章はこちら(以下上記掲載の日銀HPの方から引用します)。

『日本経済は回復に向かう

日本経済は、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇により下押しされますが、感染症の消費や生産活動への影響が和らぎ、海外経済の成長や緩和的な金融環境、経済対策の効果にも支えられて、回復していきます。』

『物価は上昇率を高めたあと減速する

消費者物価の前年比は、今年度は、世界的なエネルギー価格の大幅上昇からいったん2%程度まで高まりますが、その後は減速します。エネルギーを除くと、今年度以降、消費者物価の前年比は緩やかに上昇していきます。』

『感染症、ウクライナ情勢、市場動向に注意

経済・物価見通しのリスク要因としては、感染症の動向、ウクライナ情勢の展開、資源価格・金融市場・海外経済の動向に注意が必要です。』


『強力な金融緩和を継続する

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を目指しています。また、感染症からの回復を支援するため、資金繰り支援と金融市場の安定に努めていきます。』

と来まして最後に『政策委員の経済・物価見通し』が来るのでした。


一方のECBですが、(以下上記掲載のECBホームページの方から引用します)

『Our monetary policy statement at a glance - April 2022』

『What are the main points?』ってのが最初にあって、

『The war in Ukraine is severely affecting the economy

In the near future, the economy will grow more slowly. Very high prices for energy and raw materials are holding back production and reducing people’s purchasing power』

『There is high uncertainty about the near future

This makes consumers and businesses less confident.』

『The war is creating new supply bottlenecks

These add to the difficulties for supply chains caused by recent pandemic measures in Asia. This is disrupting production in some sectors.』

『But the reopening after the crisis phase of the pandemic is supporting the economy

Many employers are looking for workers and more people have jobs and income to spend. People’s savings during the pandemic and government support also help the economy.』

『Inflation has increased significantly and will stay high over the coming months

Energy prices are by far the most important reason for this. But prices for food and for a wide range of goods and services are also going up.』(以下今回の決定内容の説明のパートになるけど割愛)

まあこの見通しがどうなのという話はさて置くとしても、背景説明がちゃんとある訳ですなECBの場合はちゃんと。

一方で日銀の説明は再掲しますと、『日本経済は、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇により下押しされますが、感染症の消費や生産活動への影響が和らぎ、海外経済の成長や緩和的な金融環境、経済対策の効果にも支えられて、回復していきます。』っていや確かに展望レポートの冒頭にはそう書いてあるのは分かるんだが「なんで??」ってのをもうちょっと書けよと思う訳ですよ。

つまりですね、展望レポートでこういう結果が出ました、だけをポンチ絵にしたってしょうがない訳で、コミュニケーション取ろうと思ってるんだったら、「なぜそうなるのか」ということについて(ECBの説明も大概にラフだけど)もうちょっと説得力のある事書けよと小一時間問い詰めたい訳でございます。

まー日銀としては「5分で読めるマイナス金利政策」のプロットをECBがパクりやがった、と言いたいのは分かるし、アタクシもECBがこれを最初に出した時に「5分で読めるマイナス金利政策」のパクリキタコレと申し上げましたが、パクるにしたって完パクした挙句に説明文らしきものが何もないとか劣化コピー版みたいなの出すんじゃなくて「さすが日銀」と言われるような改良版を出して頂きたかったわけでございまして、何ちゅうかもうちょっと賢い物件は出来なかったのかと甚だ残念に思うのでありますし、白川日銀だったら、そもそもパクリをしないと思うけど似たようなものを出すにしても「おおこれはオリジナルを超えた良いポンチ絵だ」というような知性を感じさせる物件が出て来ると思うのですが、まあ何ちゅうか知性の後退(2年で2倍のQQE登場のフリップの時から覚悟してましたけどw)を感じさせる悲しい物件なのでした。

むしろ最近のコミュニケーション(まいにちさしねおぺも一種のコミュニケーションポリシーですわな)を見ると、知性がどうのこうのというよりはワザとやってるんじゃないかという気がしないでもないし、もし「わざとやってる」のであればその裏の意図は・・・・・・・・



〇政策の言い訳をしながらも物価に関してはどさくさに紛れて洒落たご説明の雨宮さん発言(一昨日のです)

ヘッドラインだけボーっとみてたのでふーんとしか思ってなかったのですが、いざ記事を見ると意外に味わいのある部分が物価の所だけは存在するのだが。

https://jp.reuters.com/article/idJPL3N2X905V
2022年5月17日10:19 午前
資源高続くと人々の物価観が変わる可能性=雨宮日銀副総裁

実はこれ日銀公式よりも若干ではあるけど踏み込んでいる説明なのよね。では記事を拝読。

『[東京 17日 ロイター] - 日銀の雨宮正佳副総裁は17日、衆議院・財務金融委員会で、足元の物価上昇をけん引しているエネルギーや資源価格について、物価への上昇寄与が「この後もどんどん大きくなるとは見込みにくい」と述べた。ただ「資源価格の上昇がある程度続くと、人々の物価観が変わっていく可能性もある」と指摘し、慎重に点検していく必要があるとの認識を示した。桜井周委員(立憲民主党・無所属)の質問に答えた。』(上記URL先より、以下同様)

ということで、金融政策運営に関する話は相変わらず碌な事を言っていなかった(政策がロクデナシなのでそうなるのは必然)のですが、物価に関するこの話ってしれっと日銀公式が説明でうにゃうにゃと誤魔化している部分について発言してるのよね(個人の感想です)。

日銀は何せ「資源価格や食糧価格の上昇で短期のインフレ期待は上昇するけど、長期のインフレ期待に関しては上昇していない」という説明をしていて、さらに「賃金が上がらんと物価が持続的に上がらん、すなわち長期のインフレ期待上がらん」というロジックを繰り出している訳ですよ。

つまりいつのまにやら日銀は「適合的期待形成のメカニズム」の話を誤魔化しにかかっているのが現状の有様でして、じゃあ何で誤魔化しているかというと、今後2%くらいの物価上昇が1年近くは続きそうなので、そうなりますと当然ながら「インフレ期待が適合的期待形成で上昇するならば今の政策はtoo muchなので調整すべきではないか」というツッコミが飛んでくるし、その時に「政策を変更しない」と突っぱねる事を考えると、「適合的期待形成メカニズム」はしばらく推せないロジックなんですよね。

然るにここの雨宮さんの発言は「資源価格の上昇がある程度続くと、人々の物価観が変わっていく可能性もある」と適合的期待形成の話(もともと日銀はそっちの線で話をしていたんだし)を持ち出している訳でして、この辺り、日銀もいつまでも突っ張ってられないという事を意識してるんだかしてないんだかわかりませんが、さっきの「ECBの劣化パクリのポンチ絵」という知的堕落もわざとだとしますと、これはもしや今後先考えずに全ツッパリ状態に見えるの今の状態というのは、突っ張った挙句に役満に振り込むかの如き事態になった場合に黒田さんに全責任をおっかぶせるパティーンを考えて敢えてのプレイに出ている・・・・・などというのは陰謀論にも程がありますが、まあそういう陰謀論を考えるのは面白い(基本的には時間の無駄なので前途明るい若人は真似してはいけませんぞ陰謀論ネタは)なあと思う今日この頃なのでありました。

#黒田さん逃げ切っちゃうとこのスーパー時限爆弾が後任に渡されちゃうんですから・・・・・・・

話を戻しまして雨宮さんの発言ですけど、

『雨宮副総裁は、日銀が掲げる物価安定目標はモノやサービスを包括的にカバーしている「総合指数」で2%の上昇を達成することだと説明した。その上で、物価の基調を見極めるため、変動しやすい生鮮食品を除いたコア指数などを総合的にみているという。』

というのは元より日銀というか世界の中銀のスタンダードは政策の目的が究極的には「国民厚生の最大化」なのであって、国民厚生という考え方からすれば、当然ながら家計の支出はコアコアでもコアでも無くて、総合物価指数で消費しているんですから、本来はこういう話になるんですが、一方で今回の展望ではわざわざコアコア出してきてよりコミュニケーションをややこしくしている辺り、今回のコアコア出しーのは例によって例の如く雨宮マジックショーかと思ってましたが、いやまあこれ質問に答えているだけなのかも知れませんけど、政策に関しての説明はハチャメチャですけど物価に対する説明がイカサマロジックじゃない!!!!!と思ったのでクリップしておくの巻です。これが何かの政策インプリケーションに繋がるかどうか、についてはちょっと判断しにくいけどこの段階では。


〇ついでに大昔「ヘッドラインインフレを考慮するのが大正義でコアで考えるのはクソ」という講演をしたのはあの人です

https://files.stlouisfed.org/files/htdocs/publications/review/11/07/bullard.pdf
Measuring Inflation: The Core Is Rotten
James Bullard
An earlier version of this article was delivered as a speech to the Money Marketeers of New York
University, New York, New York, May 18, 2011.*
Federal Reserve Bank of St. Louis Review, July/August 2011, 93(4), pp. 223-33

コア物価指数なんぞは腐れ指数である、とか昔からこの調子な変態仮面ブラード先生。これは以前ネタにしたことがあるのですが(たぶん出てそんなに経ってない時期だった気がするが)、ブラード総裁って物価重視おじさんで非常にその辺りは分かり易くて、これもコモフレーション的なのが以前あった事とかを踏まえてぶっこんできたんですけど、物価が上がりだすと無茶苦茶タカ派になりますし、今でも年末3.5%とか言ってるののベースには、こちらの本文9枚目のスライドの『WHAT SHOULD WE DO?』って小見出しに、

『The theme of my remarks has been that U.S. monetary policy needs to de-emphasize core inflation. Core inflation is not the ultimate goal of monetary policy. I have considered four classes of arguments for a focus on core inflation and found all of them wanting. For this reason, I think the best the FOMC can do is to use headline inflation when looking at the price side of the dual mandate.』

ってなことを言ってて、最近この話あんまりしてない(言い出すとタカ派どころかスーパータカ派になる)のですが、ゆうてセントルイス連銀の「変態仮面のお部屋」(とは記載されていません念のため申し添えます^^)の

https://www.stlouisfed.org/from-the-president/key-policy-topics
Jim Bullard's Key Policy Topics

の下の方に『Measuring Inflation』ってのがあって、きっちりと上記URLへのハイパーリンクが貼ってございますので、まあオマケという事で。


〇ということで展望レポートの今回のロジック変化をちゃんと確認しておいた方が良いのだが時間がないので明日

まあ変なポンチ絵も出て督促キタコレという気もしたので(大いなる自意識過剰マン)、すっかりサボって虫干ししないとガチで虫が湧いてるんじゃないかという位のタイミングになりましたが、まあ今回の展望レポートに関しては政策の話はまあさて置いても物価のロジックの所をよく確認しておく必要があると思います。

と申しますのは、要は今の日銀公式の説明ってそもそも「2022年度平均でコアCPIが+1.9%」という所が過小評価になってるでしょ、という所ですので、この過小評価を上方修正しないといけなくなった時、どうせ黒田さんは政治からネジ巻かれない限り(下手したら政治からネジ巻かれても意地になって、かもしれないですが)政策修正は1ミリも実施しない、という全ツッパリ体制で行くのですけれども、そうは言っても今回の4月展望レポートの見通しを積極的に否定するような事象が出るとか、誰がどう見たって見通しがこうとしか思えませんが、というようなある意味正統的な形で日銀が政策ロジック的に追い込まれる可能性はあるとおもってるんです。

となると、そもそもこの人たちのロジックって何だったっけ???というのを(イカサマロジックであってもなにはともあれ)確認するのが重要、となりますので明日は本日余計なことが無ければその辺りをやっとこさで参りたいと思います。


#なんかメモばっかで申し訳ございません








2022/05/18

お題「インフレ抑制大正義の説明に余念のないパウエルはん/ブラードは結局あとの100bp込みで賛成したんかいな」

昨日は手が滑って「白川」とかくべきところに「黒田」という正反対の文字列を入れてしまうという人間としてあるまじき失態をしてしまいましたすいませんすいません(汗)。

#パウエルと間違えてバーナンキと書くようなもんです

#あとで訂正履歴付きで過去ログの方を訂正します


〇インフレ抑制大正義の強調はまあ平常運転なパウエルさん

ほうほう。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-powell-idJPKCN2N31Y2
2022年5月18日4:09 午前
インフレ低下の確証なければより積極的な行動検討も=FRB議長

『[ワシントン 17日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は17日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル主催のイベントで、インフレ低下の確証を得られなければ「FRBはさらに積極的な行動を検討する必要がある」と語った。また、インフレが明らかに低下している証拠を確認するまで、FRBは金融政策引き締めを続けると表明した。』(上記URL先より、以下同様)

こちらはWSJ主催のイベントという時点で多分発言原稿とかかないだろうなあと思ってFRB見に行ったけど案の定ありませんでした。残念。

『さらに、物価上昇圧力がピークを迎えた可能性を示唆する心強い兆候が幾分存在するとしつつも、「期待できなさそうな兆候もある」と指摘。現在の状況はインフレの微妙な詳細を精査する時期ではなく、FRBはインフレが「納得できる形」で低下するまで、金融政策の引き締めを続ける必要があると強調した。』

というこのやる気満々という感じですが、オーバーキル懸念でより長い所の金利が低下するにしましても、絶対水準というのものがあって、10年で3%くらいの水準って普通に考えて中立金利にリスクプレミアムのっけたらもうちょっとしたって全然おかしくないと思うのですが、まあこれは自分も市場の中でおこぼれ拾って生きてるから感覚としては分かるのですけれども、「この話は上の材料か下の材料か」って考えるときに、ついうっかり発射台が幾らかというのを忘れがちになるのは市場の仕様。

確かに景気減速も辞さずでインフレ退治ヒャッハーなので長い金利に対してそのスタンスそのものは金利抑制に働くのはその通りなんですが、そもそも今のベースレート幾らだと思ってますねんという話で、利上げの最終局面まで来てるなら兎も角、中立金利よりも軽めに見たって1.5%くらい短期金利低いんだからちと待てと思うのですけどね。

でもって、これ中々アレなのはこうやって長期の金利下がっちゃうと肝心の引き締め効果が減殺されるんちゃいますかという所で、何がそうしているのかは正直良く分からんが、何かFOMCの手前以外になると隙あらば金利下げようとする、というのは(円債ちゃんも次の決定会合まで間があるせいか10年まで全然金利上がらないので似たようなもんなのかもしれないけど)なんとなく中銀の長期債買い過ぎ問題が根深い気がしてきました最近。


でもってこちらはネタにするのをうっかりしていましたが(さーせん)パウエル発言でやっぱりネタにされてたと思うのですが、他の高官も似たような事を言ってたので一緒に混じってしまった感のあるペインがどうのこうの発言。

https://www.marketplace.org/2022/05/12/fed-chair-jerome-powell-controlling-inflation-will-include-some-pain/
Fed Chair Jerome Powell: “Whether we can execute a soft landing or not, it may actually depend on factors that we don’t control.”
Kai Ryssdal and Marketplace Staff
May 12, 2022

最初の質疑応答が出オチのようにインフレ抑制大正義の話をしております。

『Ryssdal: Let me start with your most recent press conference. At the beginning, you went out of your way, I think it’s fair to say, to speak directly to the American people - you actually use those words. Do you think you’re getting through to the American people?』

『Powell: Well, I hope we are. So you know, most of the people who listen to the press conference and follow our communications very carefully are market participants or economists, Fed watchers of various kinds. And I thought it was important to try to speak directly to the public that we serve and tell them that we understand that inflation is very painful, that the Fed is accountable to get inflation down to 2%, and that we have the tools and we have the, you know, the strong desire to get inflation under control. And we’ll do that.』

毎度の会見で言ってるオールアメリカンとかそういうのは記者とか市場とかエコノミスト向けに言ってるのではなくてアメリカの国民の皆様に向けて話をしているということですよ、という話から始まりますが、「inflation is very painful」とか「the Fed is accountable to get inflation down to 2%」とか「the strong desire to get inflation under control. And we’ll do that.」とありまして、とにかくインフレ抑制大正義という話をしていますわな。

さすがにあれだけFEDの高官が連呼するからややそう言う向きも減って来たけど、相変わらず金融市場的には「株価が下がると引き締めの手が緩む」という中銀プット説は結構あるように思えるのですけれども、さっき引用したロイター記事でも「物価の落ち着きが確認されるまで」と逆方向のメイクアップストラテジー状態じゃないのかという発言をぶっこんでおられましたし、この時でも、今引用したところに、「we have the tools and we have the, you know, the strong desire to get inflation under control. And we’ll do that.」とあるのですが、「一時的」を連呼していた時期は「インフレはコントロールできます」位の勢いで話をしていたのですが、いつの間にかコントロールできる、ではなくて「the strong desire to get inflation under control」と現状があんまりアンダーコントロールではない事を素直に言っている辺りは実に正直ですし、まあその位の危機感はあるでしょう。

逆に市場ちゃんの方が「これだけ金利上げたら経済コケて物価下がるわウヒョヒョヒョヒョ」って感じでプライシングしているように見える(個人の感想です)のですよね。

『Ryssdal: I don’t doubt that they take you at your word that you want to get this under control, and that price stability, in Fed speak, is critical to this entire economy. I wonder what you say, though, to the person who - as you tighten up on interest rates and slow the economy down, right, which is the plan - what do you say to the person who’s going to lose his or her job, or maybe not see the pay raise that they ordinarily would get?』

なるほど質問の仕方が上手いと思いました。「さっきアメリカ国民にダイレクトにお伝えしたい、と言ってまたが、それじゃあ今後の更なる金融引き締めで景気減速した結果職を失う人に向けては貴方どう説明するの??」だそうです(仕込み質問なのかもしれませんけど)。

そしたら更にインフレ抑制大正義論をぶち込むという一連の流れになるのでして、

『Powell: So you can see that inflation is just way too high here in the United States. And by the way, the same all over the world, really, the global economies all around the world have been hit by a series of inflationary shocks and, pretty much, I just came back from a set of meetings with central bankers from around the world, and we’re all facing the same kind of issues and the public are facing the same kinds of issues.』

とにかく何が何でも高インフレが悪い、という話にしておるわけでございますな。


ちょっと飛びましてインフレのコントロールとリセッションリスクの関係についての話がその先にあるのですが、これ見るとしれっと1970年台の話をしてますよね。でもってまだインフレが一時的ですよという話でテーパリングの話ですらなかったころってこの1970年台ネタを振られると「またまたご冗談を(アスキーアート割愛)」という感じの応答だったことに思いをはせるとこれまた味わいがありますわな、とアタクシは勝手に思うのでした。

『Ryssdal: What keeps you up more at night: the prospect of inflation sticking around? Or the idea that you’re going to cause a recession?』

『Powell: Well, look, I think it’s a very challenging environment to make monetary policy. And we certainly, our goal, of course, is to get inflation back down to 2% without having the economy go into recession, or, to put it this way, with the labor market remaining fairly strong. That’s what we’re trying to achieve.』

リセッションに持って行かずして2%にする、その間労働市場は基本的に強い状態を維持したままでコントロールしていくというのがワシらの目標ですがなというのはFOMC会見でも仰せでした。

『I think the one thing we really cannot do is to fail to restore price stability, though. Nothing in the economy works, the economy doesn’t work for anybody without price stability.』

この物価大正義発言。まあ皆さんすっかり忘れているとは思いますが、2020年の9月にFEDが紙を出した時に「FEDは労働市場重視の姿勢を見せた」って解説した奴ら全員出てこいと思う訳でございまして、本欄ではあの紙について「物価が上がらない限り」という限定を思いっきりつけているのだから全然労働市場重視じゃねえよ、と申し上げたのが中銀文学読みマンとして正解で良かったわと今更ながらに思いますし、まああの頃そういう講釈してた人達の中銀文学読みは当てにならんとご認識頂けると誠に幸いでございますな(などと品の無い自分語りですいません)。

『We went through periods in our history where inflation was quite high. This was back in the ‘70s, and I was old enough to remember. I’m old enough to remember that very well. And we really, we can’t fail to restore price stability.』

1970年台のような事になってはダメ!ゼッタイ!!だそうですが、

『Ryssdal: How much do you think it matters, just on that idea of the 1970s, how much do you think it matters that there are generations of people in this economy who know nothing but 2% inflation or less for, like, 50 years now? And that’s why this is scary as hell, right?』

『Powell: Well, look, I would, I guess I would say it this way. You know, it’s a good thing that we haven’t had high inflation, really, in 40 years. It’s a great thing. You know, we … the ‘70s and the ‘80s, it’s a very unpleasant phenomenon.』

『And people are now, for the first time - many people, as you point out, are young enough that they haven’t experienced that, and now they’re seeing what it is. And it’s unfortunate, I wish they weren’t, I wish that all of this hadn’t happened and we still had 2% inflation. And we need to get back to 2% inflation, that’s the main thing. The main lesson is we must do whatever, you know, what we need to do to get inflation back to 2%. And we have the tools to do that. And we will.』

何かもう口を極めて70年代のインフレ(とその後の80年代の不況)にならないようにしないと行けないの連呼でありまして、何でしょうねえ「株価が下がったら何とかするんじゃないの」とかそういうレベルをどー見ても超越してますな。


あとこの先に75bp云々の質疑が直後にあるのでそれまで引用してみますね。

『Ryssdal: You’ve said you’re going to do whatever you need to do. At that last meeting, you specifically took a 75-basis point increase in the federal funds rate - that is to say, three quarters of a percentage point - you took it off the table. Why?』

何で75bp利上げをテーブルから外したの?という煽り質問。

『Powell: Well, actually, what I what I said was that we were, that the committee had decided ?』

『Ryssdal: “Not actively considering,” right? That’s -』

『Powell: I said we weren’t actively considering that. But I said what we were actively considering, and this is just a factual recitation of what happened at the meeting, was a 50-basis point increase, that’s a half a percentage point increase, the first one in more than 20 years.』

まあよく考えたら0.5%利上げだってここにあるように過去にない利上げ幅だったのですが、75を見せておいて50の利上げをして「想定よりもマイルド」とか思わせたのよく考えたら豪快なコミュニケーションだったわけですな。うんうん。

『And that we thought that if the economy performs about as expected, that it would be appropriate for there to be additional 50-basis point increases at the next two meetings, so. But I would just say, we have a series of expectations about the economy. If things come in better than we expect, then we’re prepared to do less. If they come in worse than when we expect, then we’re prepared to do more.』

必要ならば「もっとやる」用意はあるよ、と来たので、

『Ryssdal: Let me be clear, 75-basis points is “prepared to do more?”』

75bp利上げもあり、という意味ですよね?となって、

『Powell: What you’ve seen is, you’ve seen this committee adapt to the incoming data and the evolving outlook. And that’s what we’ll continue to do.』

と回答しているのが、報道の方では「75bpも必要ならばあり得る」みたいになっていたということですが、まあこれ話の流れからしたらそういう事で良いのでしょう。

という先週木曜のネタを今更になって確認で物凄く恐縮なのですが、まあ大体この辺りでFEDのスタンスはインフレ抑制大正義で兎に角インフレ下げてから後の事を考える、にしておかないと70年代型のインフレになって無茶苦茶引き締めをしないと行けなくなる、という危機感があるというのは良く分かりました(個人の感想です)。


〇結局ブラードは何で75bpに固執しなかったのかはよくわからんという話

ブラードの記事があんまり無かったなと思っていたらいつのまにやら(すいません)こんなの出てました。

https://www.stlouisfed.org/from-the-president/video-appearances/2022/bullard-yahoo-inflation-policy-rate
Bullard Discusses Inflation and His Views on the Policy Rate with Yahoo Finance
May 11, 2022

これまた先週のネタで恐縮にも程があるのですが、上記URL(HTML)先のサマリーみたいなのをちらっと読みますとですね、

『St. Louis Fed President Jim Bullard shared his views on the latest inflation data and Fed action needed to put downward pressure on inflation. During an interview with Yahoo Finance, he also said that the probability of a U.S. recession is not particularly elevated at this time.』

ということで、リセッションの可能性は低いとのお告げ。

『Asked about the latest CPI report, Bullard said, “my takeaway is that inflation is broader and more persistent than many have thought and that the Fed will have to act in order to keep inflation under control.”』

CPIデータに関してですが、市場ちゃんの反応は「市場予想よりも高くなかった」と言って何かヒャッホウしていましたが、さすがに物価重視おじさんだけにコンポーネントをみて「inflation is broader and more persistent than many have thought」とインフレ全然落ち着く気配無いがね、という評価を示しています。

『He added that the Federal Open Market Committee (FOMC) has a plan in place-a 50-basis-point increase in the policy rate at the last meeting and also teeing that up for future meetings.』

75を主張しなかった理由がこれではさっぱり分からんのですが、次回以降も連続で50bp利上げをして、5月6月7月で150bp利上げする、というのに満足したから賛成した、としか読めませんな。うーん謎。

『Bullard noted that he has been advocating a policy rate of 3.5% by the end of the year. “I think we’re going to have to do more than just get to neutral. We’re going to have to go above neutral in order to put downward pressure on the persistent component of this inflation,” he said.』

年末には3.5%は前からこの変態仮面が言ってる事なのでまあ別に新味はない。

『Regarding the effect of the Fed’s forward guidance since late last year, Bullard noted that the two-year Treasury yield-which is indicative of where the market thinks policy will go-has moved up substantially over the last six to nine months. (For more details, see his May 6 remarks at Stanford University’s Hoover Institution, “Is the Fed ‘Behind the Curve’? Two Interpretations.”)』

ここでブラードの面白い所が出るのですが、ブラードさんって以前も修正テイラールールの話をするときに1年のビルの金利を持ち出したりしてまして、今回もまあ金融政策見通しに直結する2年のノートの話をしてまして、量的緩和を唱えた時も別に長期金利が下がるからどうのこうのという話よりも、金融政策のフォワードガイダンス的な面からの長期債購入効果の方をよく説明していた感があって、そういう面では思いっきり「伝統的」なパスで考える人でもありますな、とか思いました。

ちなみに、6日なのでFOMC直後に実はこんな話をしていたのですが、これはさすがに見た瞬間に気が付きましたが、4月にも同じお題で変態仮面は紙芝居をしていて、その紙芝居のアップデート版ですので、まあ結局のところ「6月7月での100bp込みで賛成」って感じだったんですかねえブラードさん。

5/6の講演のサマリーはこちら(ハイパーリンクを途中までの文字列にしてますが、下記URL先に飛ぶはずです)
https://www.stlouisfed.org/news-releases/2022/05/06/bullard-discusses-is-the-fed-behind-the-curve-two-interpretations
St. Louis Fed’s Bullard Discusses “Is the Fed ‘Behind the Curve’? Two Interpretations” at the Hoover Institution
May 06, 2022

5/6の紙芝居はこちら。
https://www.stlouisfed.org/-/media/project/frbstl/stlouisfed/files/pdfs/bullard/remarks/2022/may/bullard-hoover-06-may-2022.pdf

とまあそういう半分ヒマネタになっておりまして申し訳ないのですが、更に展望レポートという暇ネタがこれから続くのでした。だって円債ろくすっぽ動かんもん。










2022/05/17

お題「黒田総裁「インフレ期待に前向きな動き」は良いんだが話の整合性は??/FOMC会見ネタ(今さらファイナル)」

こwwwれwwwわwww

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-05-16/RBZA8JT0AFB801
バーナンキ氏、FRBの物価対応は遅過ぎ−スタグフレーションに直面
Steve Matthews
2022年5月17日 0:49 JST

盗っ人モーモーしいとはまさにこの逆さ絵の為にあるようなものですが、猛々しいご意見を拝聴しましょう。

『バーナンキ元米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、現在のFRB指導部はインフレ高進への対応があまりにも遅過ぎたとし、結果として成長停滞と高インフレが同時進行するスタグフレーションの局面に直面すると指摘した。』(上記URL先より、以下同様)

そもそも「バーナンキプット」によって金融市場が常に拡張的になるような政策がメジャーになったのは誰のせいだと思ってるんですかねえ。

『バーナンキ氏はCNBCで16日放送されたインタビューで、「フォワードガイダンスが全体として、インフレ問題へのFRBの対応を遅らせたと考える」と発言。「振り返ってみると、間違いだったと思う。彼らも間違いだったと同意すると思う」と述べた。』

フォワードガイダンス系のコミュニケーションを散々使って、「緩和政策の継続」をコミットするために最適なコミュニケーションシステムを構築しまくったのはこの逆さ絵禿であって、この逆さ絵禿が「長期的な金融緩和をするのに便利なコミュニケーション手法」を導入しまくった結果出口のコミュニケーションを難しくした、という認識が無いのかすっとぼけているのか分かりませんが、これは物凄い盗っ人猛々しい発言にも程がありますね。

『パウエルFRB議長らはインフレ高進に段階的に対応することを選んだと、バーナンキ氏は指摘。自身が議長を務めていた2013年当時に起きた、米国債利回りが突然急上昇するいわゆる「テーパータントラム」の再発を避けたかったためだとの見方を示した。ただ、こうして対応が遅れた結果、景気が低迷することになると警告した。』

お前が余計な事をしたから後の人間をやりにくくした、ということだろうがこのウスラハゲ以外の言葉もなくて、何というか過去の反省の弁でも述べるのかと思えばこの面の皮の厚さよというところで、一度パウエル会見並みの査問会議やった方がエエンチャウノと思いました。


・・・・・・・・あ、すいませんマクラの積りがついバーナンキなもんでエキサイトしてしまいました。



〇あちこちで説明するのは仕方ないのですが全部言い訳から先にきているから整合性が取れない

昨日は国会で黒ちゃんの答弁があったようです。BBGニュースから。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-05-16/RBYLZLT0AFB501
インフレ予想に「前向きな変化」、大規模緩和で−黒田日銀総裁
伊藤純夫
2022年5月16日 14:36 JST 更新日時 2022年5月16日 16:22 JST

ほうほうそうですかそうですか。インフレ予想に前向きな変化が起きたと仰せのようですが、前向きな変化が起きている、という認識を示しているのに、何でああまで頑なに「物価上昇は一時的」を連呼するのでしょうか、と思いつつ記事を拝読します。

小見出しは、

・安定的・持続的な2%の実現、中長期のインフレ予想上昇が必要
・緩和粘り強く継続し、賃金と物価がともに上昇する好循環が重要

というまあいつものパティーンですが、かつて「日本のインフレ期待には適合的期待形成の要素が強く、過去の物価が上がらなかった履歴効果が強固に効いている」といって、元々言ってた「強力なコミットメントとそれを裏付けする大規模な金融緩和によってインフレ期待に直接働きかける」という政策がワークしなかった事の言い訳をしてたんですが、いざ実際の物価があがりだすと、今度は履歴効果によって短期のインフレ期待が上昇しましたが、これに対して今度は「中長期のインフレ予想上昇が」と言い出しております。

じゃあ日銀に聞きたいのですが、「中長期のインフレ予想」ってのはどうやって決まるのかという話で、例えば短期よりも若干長めの時間の実際の物価上昇が起きたら履歴効果が中長期にも波及するのか、それとも中長期はやっぱり日銀のコミットメントというようなフォワードルッキングな期待形成が大きいのか、とかそういう話をまだちゃんと日銀ってしてないんですよね。


でもって『・緩和粘り強く継続し、賃金と物価がともに上昇する好循環が重要』と寝言は寝て言え以外の感想が沸かないのですが・・・・・・・


『日本銀行の黒田東彦総裁は16日、2013年以降に日銀が2%の物価安定目標を掲げて強力な金融緩和を推進してきたことで「インフレ予想にもやや前向きな変化が生じている」との見方を示した。参院決算委員会での答弁。』(上記URL先記事より引用、以下同様)

という話で、「インフレ予想にもやや前向きな変化が生じている」というのが何を指してるのかと思わず色めき立ってしまったアタクシ。

・・・・・と申しますのはですよ、決定会合前後ずーっと「2%物価は定着しない、すぐ下がる」という威勢の悪い話ばっかりして、インフレ期待が上がっていないという話ばっかりしてた筈なのに、これはどうした事ぞ、とヘッドラインに盛大に釣られてみるクマーになる訳ですよ、


『総裁は前向きな変化について、インフレ予想を反映してデフレ期には見られなかったベースアップが9年連続で実施されており、今年の春闘の水準は「数年ぶりにかなり高いレベルになっている」と説明した。』

えーっとすいません、9年連続でベースアップが起きてるのに何で物価2%達成しないんですか。ただのゼロインフレ均衡なんじゃないですか?????????????

『物価2%の安定的・持続的な実現には、デフレ経済下で根付いた物価や賃金が上がらないことを前提とした商慣行や労使交渉の転換が必要と主張。賃金上昇が所得の増加を通じて家計の値上げ許容度を改善させるには、「物価上昇の持続力を高めて、中長期的なインフレ予想の上昇につながることが必要だ」と語った。』

色々と言ってることがおかしくて、「物価上昇の持続力を高めたい」のであれば、4月からの見事な物価上昇に「一時的」とかケチ付けないで、「持続的な物価上昇のきっかけになる事が期待される」くらい威勢の良い話をしやがれってなもんで、自分らが下がる下がる連呼して「物価上昇の持続力を高めて、中長期的なインフレ予想の上昇につながることが必要」とか何真逆の話をしているんだよと小一時間問い詰めたい。

それにですね、この記事の流れだと直前直後になっているけど、まあ実際にどういう流れで説明をしているのかわからんけど、

『総裁は前向きな変化について、インフレ予想を反映してデフレ期には見られなかったベースアップが9年連続で実施されており、今年の春闘の水準は「数年ぶりにかなり高いレベルになっている」と説明した。』

からの

『物価2%の安定的・持続的な実現には、デフレ経済下で根付いた物価や賃金が上がらないことを前提とした商慣行や労使交渉の転換が必要と主張。』

っていやだからどっちですねんという話で、ベースアップが9年連続で実施されていて、この記事のタイトルにある『インフレ予想に「前向きな変化」』をアピールしたその舌の音も乾かないうちに『物価や賃金が上がらないことを前提とした商慣行や労使交渉の転換が必要』って言ってるんだから、最初の「9年間でインフレ期待に前向きな変化」ってのが単にQQE政策の正統性をアピールする為の方便であって、実際は期待に働きかける政策は大失敗だったという話なんじゃないですか、と思うのですが、とにかく失敗すると新しい目くらまし理屈を出してきて前の話を忘れさせようとするからこうなる。

『金融政策運営では、現在の金融緩和を粘り強く継続してコロナ禍からの景気回復をしっかり支え、「労働需給の引き締まりを伴いながら、賃金と物価がともに緩やかに上昇する好循環の形成を促していくことが重要」と指摘した。時間はかかるが、2%の物価安定目標は実現できると改めて表明した。』

9年間同じことを手を変え品を替えやってきて全然達成できていないわけですよね。そう考えると、今回世界的な大財政パワーと供給制約のお蔭で一次産品価格が上がるという思いっきり神風が吹いているこの時期に2%達成できなかったら、今のやり方だと一生達成できないと思うんですけどねえ(個人の感想です)。


しかしまあ何ですな、今までの政策の効果が無かったからいつまでも物価が上がらないんじゃないですか?と聞かれると「9年連続ベア達成(キリッ)」という訳ですが、それなら賃金も上がるし物価上昇も定着するんじゃないですか?出口マダー???と聞くと「賃金が上がらないと物価も上がらない(キリッ)」と回答するという黒田日銀、いやーひどいひどい。

そらまあ「世界標準の金融政策理論」とか言って黒田(当然ですがこれは「白川総裁」とすべきところでした、以下同様)白川総裁や山口副総裁を石礫をもって追い出した人達でございますからして、自分たちのやってた事に穴が開いていたと認めることは黒田白川さんや山口さんに公開焼き土下座とか公開鋸引きとか、その位の詫びをしないといけないレベルになるので、間違ったと認めたら死ぬ病になるのは分かるんですが、昨日ネタにした内外経済調査会でも言ってることが前半と後半で矛盾しているとか、こちらの答弁で一連の説明の中で矛盾しているとかですわな。

実際の国内物価が出てきて日銀の出してる(どう見ても低すぎ見通しの)「2022年度コア+1.9%」がそんなもんじゃ済まないよねとか、国内物価がコアで2%台が全然下がらんのが半年とか1年近く続くとか、出口政策の絶好のチャンスが来るはずですが、まあ海外からの金融市場による金利上昇プレッシャーの他には「実際に物価が上がって来る」という現象の中でマイナス金利だの10年0%だのという異例なことをしてられるのか、というような話になる、といった感じでどうせまた日銀泡吹きの巻になると思いますが、それらには多少日柄調整が必要な感じですかね、よー知らんけど。



〇FOMC後の会見ネタを更に今更パート2ですがこの会見がダビッシュ扱いにするのはちょっとそれは違うじゃろ(気持ちは分かる)

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220504.pdf

まあ多分あの時の市場のセンチメントってもっと勢いの良い利上げのぶっこみがあるかも知れんでー状態だったから、そこまで過激ではないというのでダビッシュという話だったんでしょうけれども・・・・・・・


・インフレ退治をやるのはうちらの仕事ですけん

この前は最初の3つやりましたが、まあ大体傾向としては最初のいくつかが共通して重要なものを聞いてる感じで、その後はテーマごとに質問が来ますが、今回のFOMC会見って基本的にオープニングリマークと最初の3質疑で主要ポイントカバーしてて後は各論点の敷衍って感じを受けました。

んな訳で一気に16ページに飛ぶ。

『STEVE DORSEY. Thanks, Steve Dorsey, CBS. You mentioned earlier just now, fading fiscal policy. Do you feel that the Fed has been supported enough from policies at the White House and in Congress in combating inflation?』

インフレ退治に関する財政との協力や如何に?という話でしたが、

『CHAIR POWELL. You know, it's really the Fed that has responsibility for price stability. And we, you know, we take whatever arrives at the Fed in terms of fiscal activity, we take it as a given and we don't evaluate it, we don't, it's not our job, really. We don't have an oversight function there. And we look at it as our job to what given all the factors that are happening to try to sustain maximum employment and price stability. 』

『So if Congress or the administration has ways to help with inflation, I would encourage that, but I'm not going to get into making recommendations or anything like that. It's not -- it's really not our role, we need to stay in our lane and do our job.』

『When we get inflation back under control, then maybe I can, you know, give other people advice. Right now we need to focus on [laughs], just focus on doing our job. And I'll stick to that. Stick in our lane. 』

うだうだと説明していますが、財政がどうのこうのはそらまた別の政策割り当てに対する話なので、ワシらはワシらの仕事をしますし、それがまさにインフレ退治って話ですがな、という話をしてまして、もとよりそういう話をしていましたけど、完全に「インフレ退治大正義」という話をしております。



・ボルカーを引き合いに出してツッコミをしたら

こんな質疑もありました。

『STEVE MATTHEWS. Steve Matthews with Bloomberg News. A number of your colleagues have said that rates will need to go above neutral into a restrictive territory to bring down inflation. One, do you agree with that? And two, you've recently spoken great praise of Paul Volcker, who had the courage to bring inflation down with recessions in the 1980s. And while it's certainly not your desire, the soft landing is the big hope of everyone, would this FOMC have the courage to endure recessions to bring inflation down if that were the only way necessary? 』

「you've recently spoken great praise of Paul Volcker」キタコレというかどう見ても誘導尋問です本当にありがとうございました、と思ったら何か回答がクッソ長い。

『CHAIR POWELL. So I think it's certainly possible that we'll need to move policy to levels that we see as restrictive as opposed to just neutral. We can't know that today. That decision is not in front of us today. If we do conclude that we need to do that, then we won't hesitate to do it.』

まあ何ですな、最初は威勢いいんですけど。

『I'll say again, there's no bright line, you know, that you're stepping over. You're really looking at what our policy stance is, and what the market is forecasting for. You're looking at financial conditions, and how that's affecting the economy and making a judgment. You know,we won't be arguing about whose model of the neutral rate is better than the other one. It's much more about a practical application of our policy tools. And we're absolutely prepared to do that.』

とは言え、(この説明はこの質疑の前からずーっと言ってるんですが)この先経済を大コケさせることなくインフレを退治するのは結構難しい道ですよ、という話はしているのよ。まあそこら辺を受けて「ああこれは引き締めだけど慎重的に行くのか」という解釈になるのは有りちゃああり何ですけど。

『It wouldn't hesitate if that's what is taken. So I am, of course, who isn't an admirer of Paul Volcker. I shouldn't be singled out in this respect. But I knew him just a little bit and have tremendous admiration for him. And I would phrase it this way. 』

でもって引っ掛け質問、ボルカーさんに対する所感の話になる。

『He had the courage to do what he thought was the right thing. That's what it was. It wasn't that he -- it wasn't a particular thing. It was that he always did, he always did what he thought was the right thing. If you read his last autobiography that really comes through. So that's the test is, it isn't will we do one particular thing. 』

ボルカーやった事結果については正解でしたと言ってますな。

『I would say, we do see though, we see restoring price stability as absolutely essential for the country in coming years. Without price stability the economy doesn't work for anybody, really. And so it's really essential, particularly for the labor market. If you think about it, like if you look at the last cycle, we had a very, very longest, longest expansion cycle in our recorded history. In the last two, three years, you've had the benefits of this tight labor market going to people in the lower quartiles. And it was, you know, racial wealth and income. Not wealth, but income gaps were coming down, wage gap. So it's a really great thing. We'd all love to get back to that place.』

物価の安定無くして労働市場は安定しないよ、という文脈でインフレ退治大事だねって話をしているのではあるのですが、その割には物価安定の話しよりも労働市場が近年大幅に改善して、いままでFEDが事あるごとに言ってた「オールアメリカンに回復の恩恵を届ける」が近ごろ達成できた、というような宣伝をしておりまして、わざわざ労働市場がこんなに改善しました、って話すのは、勿論デュアルマンデートの労働市場も過熱してるんだからインフレ退治大正義、という話をしているからではあるのですが、そうは言っても労働市場がまた変調になるとFEDも「ぐぬぬ」となる(ブラードみたいなインフレ至上主義だとならないかもしれないけど)のかな、とは思わせてくれますので、やっぱり雇用統計ダイジダイジネーと終わってから言うな終わってから。

『But to get back to anything like that place, you need price stability. So we've been -- basically we've been hit by historically large inflationary shocks since the pandemic. It's not --this isn't anything like regular business. This is we have a pandemic, we have the highest unemployment, you know, in since the Depression. Then we have this outsize response from fiscal policy and monetary policy. Then we have inflation, then we have a war in Ukraine, which is cutting the commodity, you know, patch in half. And now we have the shutdowns in China. So it's has been a series of inflationary shocks that are really different from anything people have seen in 40 years.』

えdもってまた物価の話だが、要はインフレ圧力が過去40年にないほど高まっていると言ってる。

『So we have to look through that and look at the economy that's coming out the other side. And we need to get, we need to somehow find price stability out of this. And it's obviously going to be very challenging, I think, because you do have, you know, numerous supply shocks, which are famously difficult to deal with. So, I guess that's how I think about it. 』

よって物価を見ますということですが、今回の会見でインフレ退治に関しては「obviously going to be very challenging」とか「famously difficult to deal with」とか、まあ色々と大変だという言い方をしていまして、少なくとも会見のオーラルでは(会見の冒頭ステートメントではない)声明文やオープニングリマークよりもマイルドなインフレ退治スタンスを示していましたな、というのが見えてくるのですが、やっぱりこの辺りはパウエル独特のパターン、「FOMCでは出て来るもののトーンを適宜調整して見た目を過激にしない」をやった結果なんだろうなあと思いましたし、その後色々なFRB高官が「景気減速止む無し」という話をしているのは、パウエルの説明だと減速避けてインフレ退治の手を緩める可能性というのも解釈されやすそうなのを中和している、ということなのでしょうなあ、と後付けで解釈するのは簡単なんでまあ偉そうに解釈してみました。

#FOMCシリーズはまあこんなもんですな。MPMの展望レポートが残っておるのでそっちを成敗に参ります














2022/05/16

お題「黒田総裁講演だが講演の中で話が矛盾してるのがウケるのと10年0.25%に対する異常な拘りは把握した」

連日値動きが理不尽なジャイアントスイングだから相場後追い記事もどう書いていいか大変ですわな、とは思うのだがさすがにこの題名は(まあ連日の動きから考えると意味はわかるが)ナンジャソラである。

https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N2X53CL
2022年5月14日6:25 午前
米金融・債券市場=利回り上昇、物価上昇などの懸念緩和

「利回り上昇、物価上昇などの懸念緩和」ってもう何が何だか・・・・・・・・

#いやまあ言ってることの意味と現象はわかるんだけどさ


〇内外経済調査会で黒ちゃんの一段のヤケクソ講演が登場しました

なんでしょうね、それまで色々と小理屈捏ねてたのに、ある時突如暴走機関車モードになりだすと、何かに吹っ切れたかのように突撃モードになってしまう(しかも大体それは裏目にでるのがどっかの中銀とは違う日銀の華麗なる芸風)、というのを何回か見ておりましたが(マイナス金利の時が特にそうでしたわな、ちなみに珍しく成功したのは俊ちゃんの時のマイナス金利解除前(追加緩和して3か月だかで急に地均しモードに一大豹変した奴)でしたが、まああれも本当に成功したのかは良く分からんところではありましたな。

という訳で、逆切れ毎日指値オペの導入で、市場ちゃんの方も「触らぬアレに祟りなし」とばかりにブチ切れ日銀に触らないようにして指値オペにも応札しない、という大人の態度を取っている(まあ次のMPMまで大分間があるし、米国金利も円安も一旦お休みみたいだし)ようですが、そんな中、更に調子に乗ったのかどうかは知らんのですが、黒ちゃん講演で逆切れ芸を更に披露するという面白パティーンになってまいりましたので鑑賞鑑賞。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220513a1.pdf
経済・物価見通しと金融政策運営
―― 内外情勢調査会における講演 ――

・展望レポートの説明(そういやまだ成敗してなかったのを今思い出したorz)部分を読むのだが

最初はどうでもよいのと、『2.経済情勢』の海外の所もどうでもよいので国内の所をよもうず。

『(わが国経済の中心的な見通し)』でまずは最初の部分は現状認識。

『次に、わが国経済の動向です。わが国経済は、相次ぐ感染拡大の波を受けて、行きつ戻りつを繰り返しながらも、基調としては持ち直しを続けています。昨年 10〜12 月は、感染の落ち着きにより、前期比年率+4.6%とかなり高い成長となりましたが、本年1〜3月は、半導体や部品などの供給制約の影響が長引く中で、オミクロン株流行によるサービス消費への下押し圧力が強まったことから、はっきりと減速しました。春先以降は、ウクライナ情勢を受けた資源価格の上昇の悪影響が、企業の業況感などにみられ始めていますが、3月下旬のまん延防止等重点措置の解除に伴い、個人消費は再び持ち直しつつあります。』

という評価ですね。

『そうした現状を踏まえたうえでのわが国経済の先行きですが、今回の「展望レポート」では、2024 年度までの3年間の見通し期間を、2つのフェーズに分けて説明しています(図表2)。』

これさあ、いやまあ時間制約あるからシャーナイのは分かるんだけど、定例会見の時にこういう説明してくれた方が助かるんですけどねえ。いやまあ以下の説明だと結構細かくなっているのでそこまではいいんだけど、せめてこの2つのフェーズがある、という話くらい冒頭の説明部分でしてくれないのかなあと思うんですけどね。


・先行き見通しの作文なんだが経済見通しと他の話が整合性取れていないようにしか見えない

『最初のフェーズは、見通し期間の序盤から中盤にかけてです。この局面では、資源価格上昇による海外への所得流出が下押しに作用するものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、緩和的な金融環境等にも支えられて、ペントアップ需要の顕在化の動きが続くことから、高めの成長率になると見込んでいます。』

ほうほう。

『もう少し詳しく申し上げますと、原油や天然ガス、石炭等の資源価格や小麦等の穀物価格は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた供給不安の高まりを背景に、振れを伴いながらも、大幅に上昇しています(図表3)。資源や穀物の価格上昇は、これらの大部分を輸入に頼るわが国において、海外への所得流出、つまり交易利得の悪化に繋がります。このことは、エネルギーや食料品の価格上昇を通じて、家計の実質所得や企業収益に対する下押し要因として作用します。』

ということであるものの・・・・・・・・・・

『通常であれば、こうした所得への下押し圧力は、国内需要を抑制する方向に働きますが、今次局面では、そうした中にあっても、国内需要は比較的しっかりとした回復を続けると予想しています。』

ほうほうそうですかそうですか。

『その理由として、第1に、感染状況が改善し、ワクチンや治療薬の普及などにより感染抑制と消費活動の両立が進むもとで、外食や旅行といったサービス消費分野では、行動制限下で積み上がった貯蓄の取り崩しを伴いながら、相応の規模でペントアップ需要が発生すると想定しています(図表4)。』

実際問題どうなのか、という話はまあ経済データ分析している人の方がお詳しいとは思いますが、ただ状況として物価の構成品目の中でも割と幅広いベースで物価が上昇しているというのがある、ってえのはペントアップかどうかはさて置いても、需要が底堅いという状態というのを意味していると思いますので、まあ需要が強そうだ、というのはまあそうかもしれませんねと思ってしまう訳ですな。

『足もとの外食や旅行は、依然として、コロナ前の7割程度という低水準にとどまっていますが、このことは、逆にサービス消費には比較的大きな「伸びしろ」が残っていることを意味します。』

どうなんですかね。まあコロナを機に「別になくても良かったサービス消費」に目覚めた説もあるけど、まあ何もかも溜め込むかというとそれもそれでよくわからんし。


『第2に、政府による「総合緊急対策」も、ガソリン補助金や低所得世帯への給付金を通じて、家計の実質所得への下押し圧力を和らげる効果を持つと考えられます。』

日銀の円安政策の尻拭いをしているんですねわかります。

『第3に、サプライチェーンの正常化や部品不足の緩和も、抑制されてきた生産の増加を通じて、自動車などの耐久財消費の回復や、進捗が遅れていた設備投資の増加に繋がると予想しています。』

第3については寧ろ海外中銀が正常化の遅れについて懸念していると思うのだが何でこういう見通しをだしているんでしょうね。



・・・・・・・でですね、いやまあこの見通しは良いんですよ見通しとしては。

一方で今回の展望レポートでも金融政策決定会合の決定内容もそうなのですが、まいにちさしねおぺはさて置くにしたっててですね、

政策金利のフォワードガイダンスは、

『当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)。』(こちらは4月会合声明分より引用しています)

ってなっていて、さっきの再掲になりますが、このコーナーの最初に

『最初のフェーズは、見通し期間の序盤から中盤にかけてです。この局面では、資源価格上昇による海外への所得流出が下押しに作用するものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、緩和的な金融環境等にも支えられて、ペントアップ需要の顕在化の動きが続くことから、高めの成長率になると見込んでいます。』

って言ってるのと全然整合性取れないわけですよ。せめてガイダンスの方に「ウクライナ情勢などの地政学的リスク」とか入れ込むなら話はわかるのですが、経済(成長率)見通しがあれだけ威勢がよくて、しかもコロナの影響は軽減モードだって言いきってるのに何でこのフォワードガイダンスになったのかが全くイミフ。

でもって更にアレなのは、またまたさっきの再掲すると、

『ウクライナ侵攻を受けた供給不安の高まりを背景に、振れを伴いながらも、大幅に上昇しています(図表3)。資源や穀物の価格上昇は、これらの大部分を輸入に頼るわが国において、海外への所得流出、つまり交易利得の悪化に繋がります。このことは、エネルギーや食料品の価格上昇を通じて、家計の実質所得や企業収益に対する下押し要因として作用します。』

『通常であれば、こうした所得への下押し圧力は、国内需要を抑制する方向に働きますが、今次局面では、そうした中にあっても、国内需要は比較的しっかりとした回復を続けると予想しています。』

という見通しになっている訳ですよね。そういう状況だと認識しているのに、なぜ物価上昇は一時的と自信満々に連呼するのかがさっぱり分からんし、そらまあ日銀の言う事なんぞ誰も聞いちゃいないからどうでもよいのかもしれませんが、日銀が率先して「物価上昇は一時的」って連呼したら、フォワードルッキングな期待形成において、「ああなるほど我慢してれば物価上昇は止まるのか」という認識が広がって消費が手控えられるという自己実現的な物価アガランチ会長になりませんかね、という話でございます。

物価がコストプッシュ的な交易利得の悪化を伴う上昇をした場合においても、見通し期間の中盤に掛けての需要が強い、という見通しなんだったら、普通の見通しを立てれば「従来と違って今回の物価上昇はそれなりに定着する」と想定して話をするのが普通じゃないのか、と思うのですが、何せ物価上昇が定着するという話をすると政策の修正とか出口という話になるのが嫌、という不思議な理屈によって物価は何故か一時的になってしまう、というのもこれ無茶苦茶矛盾しているんですよね。

いやまあ展望レポートでもそこは指摘できる(ネタにする前にこっちが先に来てしまった)部分ではあったのですが、ちょうど読みやすい体裁で出てきたのでここぞとばかりに疑問をぶっこんでみるのであった。


・後半の見通しに繋がっていくんだがやっぱり物価見通しとの整合性がおかしい

『次のフェーズは、見通し期間の中盤以降です。この局面では、ペントアップ需要の顕在化による押し上げ圧力は和らいでいくため、成長ペースは鈍化することが予想されます。』

『もっとも、資源高に伴う所得流出には歯止めがかかり、緩和的な金融環境が維持されるもとで、所得から支出への前向きの循環が徐々に強まっていくことから、潜在成長率を上回る成長が続くとみています。』

そもそも論として、緩和的な金融環境を散々維持したが、その間に「所得から支出への前向きの循環が徐々に強まっていく」という現象がコロナ以前に持続的に発生した、という事実がない(あったらとっくの昔に物価目標達成が視野にはいっていた筈である)のに、なぜそうなるのでしょうか。屁理屈大魔王の日銀の皆様の屁理屈を見てみましょう。

『なわち、家計部門では、雇用者所得の改善が、個人消費の増加を支えます。雇用者所得は、対面型サービスの回復に伴う非正規雇用の増加に加え、労働需給の引き締まりを背景とした賃金上昇率の高まりを背景に、緩やかな増加を続けると予想しています。』

どこの世界の話をしているのかがさっぱり良く分からんのですが。寧ろ賃金上昇が定着するチャンスとしては、今年度ヘッドラインの物価が2%をさっくりと超えた状態がそこそこ(1年くらいですかねえ)継続するのですから、この機を使ってインフレ期待を高めるようにして、それによって賃金の上昇が定着する、というような「期待形成の変化によるフィリップスカーブの上方シフト」の方が可能性あるじゃろと思いますし、労働需給の引き締まりって言ったってアフターコロナでまた外国人労働者カモーンとかやってコスト削減しようという動きは相変わらずな訳で、労働需給で賃金上昇を待つのとか百年河清を待つような話よりも、実際の物価上昇を背景とした「生活給」の考えからの賃金上昇が定着化するの方が速いじゃろと思うのですが、何故かこういう話になるんですよね。

『こうした雇用者所得の増加に加え、エネルギー価格上昇による実質所得への下押し圧力の緩和にも支えられて、個人消費は、ペントアップ需要の鈍化を伴いつつも、着実な増加を続けると想定しています。』

だったら何で2024年度のコアCPIって上がらんって見通しになるのよ。23年度は分かるけど。

『企業部門でも、原材料コストの上昇圧力が徐々に和らぐことから、収益は改善基調に復していくとみています。こうした企業収益の増加は、緩和的な金融環境とも相俟って、人手不足対応投資やデジタル関連投資、成長分野や脱炭素化関連の研究開発投資を後押ししていくと考えています。』

人手不足対応投資をするってそれ労働需給を緩和する話じゃろと思いますが、そんなに物凄い労働需給の逼迫が起きるという見通しなのかよと?????感が拭えないというか、だったらもっと日銀は「これから労働需給はジャンジャンタイトになりますよ」って宣伝した方が良いんじゃないですかねえ。

『以上の見通しを、政策委員見通しの中央値で申し上げますと、2022 年度は+2.9%と高い成長率となったあと、2023 年度は+1.9%、2024 年度は+1.1%と、ペースを鈍化させつつも、潜在成長率を上回る成長を続けると見込んでいます(前掲図表2)。前回1月時点の見通しと比べますと、2022 年度は、資源価格の上昇や海外経済の減速の影響から下振れていますが、2023 年度は、その反動もあって上振れています。』


・物価が案の定上がっていないアピールをしているのだがそれを言い出すと何で今後物価が上がるのかの説明ができないのでは

リスク要因はすっ飛ばして物価の話に行きます。

『3.物価情勢』の『(消費者物価の中心的な見通し)』ですな。

『続いて、物価の見通しです(図表5)。生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、携帯電話通信料の下落の影響が剥落し始める4月以降、エネルギー価格の大幅な上昇を反映して、はっきりとプラス幅を拡大する見込みです。実際、全国に先行して公表される東京都区部の消費者物価をみると、生鮮食品を除いたベースの前年比は、3月の+0.8%からプラス幅を拡大し、4月には+1.9%となりました。』

ヘッドラインの+2.5を言わない辺りがセコさ爆発で、2%への招待状とか言ってた頃だったら絶対ヘッドラインを言ってた筈、という辺りから早くも姑息なものを感じます。

『こうしたもとで、2022 年度の消費者物価の前年比は、政策委員の中央値で+1.9%と、1月時点から大幅に上振れ、2%近い上昇率になる見通しです。』

いや普通に2%超えるだろ年度平均で見ても、という話なのですが、とにかく政策修正の話にしたくないから2%割れの数字を出した、というのが日銀らしい姑息なプレイとなっていますが、金曜日にネタにしました「主な意見」では財務省から『G20・G7では、ロシアのウクライナ侵略がエネルギー・食料価格の高騰等に繋がっていると指摘した。』(4月決定会合「主な意見」の財務省からの意見より引用)とぶぶ漬け話法でイヤミをぶっこまれておりまして、まあこれは「お前ら物価見通し甘くね?」と財務省にぶっこまれている、という意味において中々画期的な突っ込まれなんですよね。

『もっとも、当面の物価上昇の主因は、原油等の資源価格の動きが、政府の補助金分を除き、ほぼ機械的に反映されるガソリンや電気代・ガス代などのエネルギー価格の上昇です。原油等の資源価格については、海外中銀や国際機関と同様、先行き同じペースで上昇を続けるとは見込んでいませんので、前年比でみたエネルギー価格の押し上げ寄与は、徐々に減衰していきます。このため、2023 年度の物価上昇率は+1.1%と、プラス幅をはっきりと縮小する見通しです。』

えらい自信満々に下がるという話なんですが、経済見通しの方ではさっき散々申し上げましたように、コロナだウクライナだ交易条件悪化を伴う物価上昇だ、というのがあるにしても経済は強いです、って言ってったのに、何で物価見通しにその経済の強さが反映されないんですかねえという話だし、それに対してコアコアの見通しを出しましたって事なんですけどね今回は(そこがまた日銀らしい姑息な部分なのよね)。


・最頻値をいきなり持ち出すんだがそれを言い出したらそもそも物価上昇目標は永遠に達成できない話になるんだけど

『このように、2022 年度の消費者物価は、エネルギー価格の上昇が牽引する形で前年比こそ2%程度へと高まりますが、品目間の拡がりには乏しい上昇になると考えています。』

いやいや品目広がってるだろ、とは思いますがそこで日銀この屁理屈を持ち出す。

『この点、消費者物価指数を構成する品目別に価格変動率を並べた分布を描いてみますと、足もとでは、ガソリンや電気代等のエネルギー関連品目が突出してかなり高い上昇率を示していますが、それ以外の大半の品目はゼロ%程度の変化率に集中しています(図表6)。』

ということでまあ図表6というのは最初のURL先で講演の全文見るとあるので見てちょということですが、この最頻値を持ち出して物価が上がらんという話をしているのですが・・・・・・・・・・

『こうしたゼロ%近傍に分布のピークがくる姿、つまり「値札」を変えない品目のウエイトが最も多い姿は、コロナ前から大きく変化していません。』

(キリリッ)と来まして返す刀で、

『一方、米国についてみると、分布自体が、より大きなプラス方向へとシフトしていることが分かります。最近の米国におけるインフレ高進は、エネルギーなど一部品目だけに牽引されたものというよりは、幅広い品目の価格上昇を反映したものであると言えます。』

と仰せなのは良いのですが、ここでコロナ前後ではなくもう少し長期間の推移を見てみましょう。

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
消費者物価の基調的な変動

最頻値は破線で示されていますが、コロナ前から上がっていないも糞も、その前も全然上がっていない訳でありまして、だったら何で今後は物価が上がるんでしょうかねえ、ということでコアコア見通しの説明がおっぱじまります。


・コロナ前後で最頻値が動いていないのが「基調的な物価が上がらん」を示すんだったら今後も物価上がらんじゃろ

『(エネルギーを除くベースでみた消費者物価の見通し)』という今回新設の見通しに関してのコーナーが続きます。

『もっとも、一時的な攪乱要因を除いた基調的な上昇率でみれば、わが国の消費者物価は、見通し期間を通じて、緩やかながらも着実に前年比プラス幅を拡大していく、と予想しています。』

で?

『もとより、日本銀行の「物価安定の目標」は、家計が消費する財・サービスを包括的にカバーしている消費者物価の「総合」ベースで、2%と定義しています。しかし、わが国の生鮮食品の価格は、天候要因等により一時的に大きな変動を示すため、日本銀行の「展望レポート」では、従来から、生鮮食品を除くベースで、消費者物価の見通しを公表しています。最近では、エネルギーの価格も、ウクライナ情勢に伴う国際商品市況の上昇を受けて、わが国の景気実勢から乖離する形で、大幅に上昇しています。こうした状況で、物価の「基調」に関する日本銀行の見通しを定量的に分かりやすく説明するためには、生鮮食品だけでなくエネルギーも除いたベースについても、消費者物価の見通しを「展望レポート」で公表することが適当であると判断しました(図表7)1。』

作文の為に出したのは明らかですがまあそこは突っ込まないでおきましょう。

『この「除く生鮮食品・エネルギー」のベースで、日本銀行の消費者物価の見通しをご覧頂きますと、2022 年度は+0.9%、2023 年度は+1.2%、2024 年度は+1.5%と、緩やかに上昇率を高めていく姿となっています。』

その背景は????

『このように、一時的に大きく変動しているエネルギー価格の影響を除いたベースでみれば、基調的な物価上昇率は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、見通し期間を通じてプラス幅を緩やかに拡大していくとみています。』

ズコーって感じですが、そもそもマクロ的な需給ギャップ云々言いますけど、

https://www.boj.or.jp/research/research_data/gap/gap.pdf
需給ギャップと潜在成長率

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
消費者物価の基調的な変動

さっき「コロナ前との比較で物価の基調は上がっていません」という説明で出していた消費者物価指数の最頻値の部分ですけど、コロナ前の需給ギャップの推移に対して消費者物価指数の最頻値って全然反応していなかったのですけれども、何で今回は「基調的な物価上昇率は〜見通し期間を通じてプラス幅を緩やかに拡大していくとみています」となるのか、その根拠が1ミクロンも示されていませんね!!!!!!!!!!


・インフレ予想上がらんと賃金があがらんのに何でおんどれらは「一時的を」連呼するんじゃ

次が『(中長期のインフレ予想と賃金)』という小見出しになります。

『基調的な物価上昇率が高まっていくためには、エネルギー価格が主導する物価上昇から、企業収益の増加や賃金の上昇を伴った「拡がり」と「持続性」のある物価上昇へと移行する必要があります。この点、家計や企業、市場参加者等の短期のインフレ予想は、エネルギー価格等の上昇を反映した適合的期待形成のメカニズムを通じて、このところ、はっきりと上昇しています(図表8)。先行きは、こうした動きが、中長期のインフレ予想へと波及し、ひいては賃金上昇率も高まっていくかどうかに注目しています。』

と思うなら物価上昇が一時的を連呼して中長期のインフレ予想を引き下げる情報発信してどうするんだよこのボケとしか申し上げようがありませんが、次が賃金の話。


・賃金が上がると良い事があるという説明なんだがじゃあ賃金を上げるものは何かという話が無い

『賃金は、企業にとって「コスト」ではありますが、家計にとっては同時に「所得」になるという二面性を持っています。これは、単なるコストに過ぎない輸入原材料との大きな違いです。すなわち、賃金は、あらゆる財やサービスの生産に必要となる労働力の対価です。このため、賃金の上昇は、人件費の上昇を通じて、幅広い財やサービスの販売価格の上昇圧力に繋がっていきます。』

『この点、わが国のサービス価格は、頻繁に改定されることがなく、景気感応的な財価格と比べて、上昇しにくい状態が長らく続いてきました。しかし、賃金がしっかりと上昇していけば、労働コストの割合が高いサービス価格についても、上昇圧力が強まり、物価の上昇にも「拡がり」が伴ってくると考えられます。』

『同時に、賃金は、家計の所得の源泉でもあるため、その上昇は、家計の値上げ許容度の改善にも繋がります。すなわち、賃上げによって家計の実質購買力が高まり、値上げが受け容れやすくなれば、物価上昇の「持続性」も増していくことになります。こうした形で実現する物価の上昇は、企業にとって販売価格の上昇を通じた収益の押し上げ要因となり、さらなる賃上げの原資を生み出します。』

わかったんだがじゃあ何で賃金が上がるのか、という最初のドライバーの話が皆無な時点で話がオワットル。挙句にこれである。

『このような賃金と物価の相互依存関係を踏まえると、賃金と物価は、ともに上昇する必要があります(図表9)。やや長い目でみると、日本の時間当たり労働生産性は、平均して年率1%程度のペースで上昇しています2。また、日本銀行が目指している消費者物価の上昇率は2%です。したがって、生産性と物価の上昇率と整合的で、持続可能な名目賃金の上昇率は3%程度ということになります。日本銀行としては、2%目標を持続的・安定的に実現する観点から、単に物価が上昇するだけでなく、実質賃金や実質所得が増加する中で物価も上昇するという好循環が形成される必要があると考えています。』

だったらそのために何をすれば起きるのか、という話が無い。やりなおし。


・という訳でやっと政策だが早速藁人形キタ――(゚∀゚)――!!!!!!!

『4.日本銀行の金融政策運営』である。最初の小見出しが『(持続的・安定的な2%目標実現のための金融緩和)』です。

『米欧での金融緩和縮小の動きや、わが国の消費者物価の上昇率も当面2%程度で推移すると見込まれることを受けて、日本銀行も金融緩和を縮小すべきではないか、という声も聞かれます。しかし、日本銀行は、現在の経済・物価情勢を踏まえると、強力な金融緩和により、感染症の影響からの景気回復を支えることが必要であると考えています。』

>現在の経済・物価情勢を踏まえると

えーっとすいません、経済物価情勢は足元で随分変わっているのですから、そもそもその間に金融政策を変えていないと結果的には緩和を無茶苦茶拡大していることになるし、YCC政策を導入したのは「緩和政策もやり過ぎては良くない」という考えのもとに実施した筈ですよね。(ちなみにここで「金融」を入れないのは細かいけどセコイテクニックです)

ですからそもそもこの黒ちゃんの言う「金融緩和を縮小すべきではないか、という声も聞かれます。」というのが言いがかりであり難癖であり藁人形論法でありまして、YCCの趣旨に鑑みて「経済物価金融情勢を点検して、もっとも適切な状況にすべきである」という話をしている訳でして、このように「縮小」と反対意見にネガティブなレッテルを貼るのは置物一派の得意とする藁人形論法のテクニックで、ああ黒ちゃんもこういう言い方をするようになったか(昔から置物一派とかジンバブエは良くこういう言い方をしていましたよね)ともう出オチにも程があるこの置物宣言。


『すなわち、わが国のGDPは、既にコロナ前の水準を回復した米国やユーロ圏と異なり、コロナ前の水準をなお2%強下回っています(図表 10)。経済全体の生産要素の稼働状況を表す需給ギャップの推計値をみても、依然としてマイナスです。加えて、先ほど詳しく説明したとおり、最近の資源価格の上昇により、相応の規模で海外への所得流出が起こっています。つまり、感染症からの回復力が米欧対比弱い中で、所得面からの下押し圧力に直面しています。』

という説明をおっぱじめているんだが、じゃあ何で最初の経済見通しはあんなに強いんだよという話。いや追加的な緩和が適切なら適切でもそら判断の世界だからああそうですか、ってなもんなのですが、おどれの政策が失敗したと言われたくないから経済見通しは威勢良くて、そんなに経済の先行きも強くて足元の経済物価金融情勢も変化してるんだからYCCの趣旨を鑑みれば適切な金融緩和度合いは異なって来るよな、という質問には急に下振れ満開の話をするとか、1つの講演の中で矛盾する話を堂々と持ってくるという意味ではジンバブエをも下回ると言っても過言ではない。

『さらに、目先の物価上昇は、エネルギー主導の持続性に乏しいものであり、中長期のインフレ予想が急激に上昇している訳でもありません。』

いやそれを下げるような情報発信してるのおんどれらじゃろ。

『こうした状況における金融政策の役割は、緩和的な金融環境の提供を通じて、総需要の回復をしっかりとサポートすることです。そのもとで、労働需給が引き締まり、賃金が上昇しやすいマクロ経済環境を創り出すことで、実質所得が増加する好循環の中での持続的・安定的な2%目標の実現を目指していきます。』

今までそれやって成功していないし、そもそも「緩和的な金融環境」も経済物価金融情勢を鑑みてやり過ぎは良くない、というのがYCC導入の理由だったのに何でここで0.25%を硬直的にしたのかさっぱり分かりませんな。


・マイナス金利政策よりも10年0.25%で勝負するつもりなのかこれ??????

さらに次の小見出しが『(明確な金融緩和スタンス)』と毎日指値オペの話。

『こうした金融緩和の具体的な手段として、日本銀行は、イールドカーブ・コントロールのもと、「10 年物国債金利でゼロ%程度」という現在の金融市場調節方針を維持することが適切であると考えています。』

確かに短期金利は「政策金利残高に対する付利金利」であって誘導目標がある訳では無いのですが、金融調節方針は短期と長期の2本立てなのに長期の話だけするの何か????なんですけど、まあそれだけ「10年0.25%」に対する意地張った拘りによって頭に血が上ってるということなんでしょうね。

『また、金利コントロールと市場機能の維持のバランスを図る観点から、長期金利の変動幅は「上下に±0.25%程度」が適当であると判断しています。』

節子、それ去年の3月に決めた数字や。状況変わってんねんで。

『こうしたもとで、10 年物国債金利が「ゼロ%±0.25%」のレンジ内で推移するよう、必要な金額の長期国債の買入れを行っています。』

はあそうですか。


・毎日指値を市場のせいにしているがそもそも指値の打ち方が変だったのお前らなんだぞ

『最近は、米欧の長期金利上昇の影響から、わが国の長期金利にも上昇圧力が波及する場面もみられました(図表 11)。こうした場合でも、10 年物国債金利が 0.25%という上限を上回ることがないよう、日本銀行は、従来より行っている、予め指定した金利で金額の制限無しに国債の買入れを行う「指値オペ」や、これを複数日に亘って連続して行う「連続指値オペ」などを実施してきました。先月末の決定会合では、この日本銀行のスタンスを明確にするため、10 年物国債金利について 0.25%の利回りでの「指値オペ」を、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施することを決定しました。』

『市場の一部では、これまで「指値オペ」の実施の有無から、日本銀行の先行きの政策スタンスを推し量ろうとする動きもみられていましたが、指値オペを基本的に毎営業日実施することを予めアナウンスすることにより、市場の安定性が確保されるのではないかと考えています。』

って毎度言ってるんだが、そもそも「指値オペがあるだろ」とみんなが思っている時に打たなかったのおんどれらであって、別に市場は最初から「ああ0.23%まで来たか〜そろそろ指値打ってくるだろうな〜」ってな感じで構えていた訳で、「あれ??今日は国会があるから避けたのかな????」みたいな思惑を生んだのはおんどれらの一定しない打ち方であったのに、まるで市場が悪いような言い方をするのはバッカじゃなかろかルンバ♪って感じですよねー。


まあいずれにしましても、何か知らんけどこの「10年0.25%」に対する異常なまでのこだわりをお示しした、というのが今回の総裁講演のインプリケーションだと思います。













2022/05/13

お題「4月会合主な意見をみたがそもそも「まいにちさしねおぺ」の意味をおどれら分かっとるのかと小一時間」

おぅ・・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/article/usa-economy-unemployment-idJPKCN2MY1JT?il=0
2022年5月12日11:49 午後
米卸売物価、4月は前年比11%上昇 予想上回るも前月から減速

『[ワシントン 12日 ロイター] - 米労働省が12日に発表した4月の卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は前年同月比11.0%上昇した。エネルギー高が緩和したことで上昇率は3月の11.5%から減速したものの、予想の10.7%は上回った。』

『変動が大きい食品とエネルギー、貿易サービス部門を除いたコア指数は前月比0.6%上昇と、前月の0.9%上昇から伸びが鈍化。前年同月比でも前月の7.1%上昇から6.9%上昇に減速した。』(上記URL先より)

うーんまあ減速はしているんですけどねぇ・・・・・・・・水準が。


〇「まいにちさしねおぺ」をまるで疑問に思わないってどういう知的水準なのかと小一時間

だいたい読むと絶望する主な意見ですが、昨日も昨日とてトサカにくるどころか、おどりゃなにをやっとるんじゃという感じの香ばしい物件が仕上がりましたので見てみましょう。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2022/opi220428.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2022 年 4 月 27、28 日開催分)1

最初一部引用しながら、と思ったのですが、今回は全体を俯瞰しないとツッコミどころが分かりにくい物件に仕上がっておりますので、こんなしょうもないのを延々と引用するのも本意では無いのですが、延々と引用します。

まずは『T.金融経済情勢に関する意見』をちょっと見ますとですねえ・・・・・・・

・経済の先行きはウクライナと感染症関連以外はイケてる、というのは良く分かったんだが・・・・・・

『(経済情勢)』です、まあ意見はどうでもよいので並べるだけ、後のツッコミのマクラです。

『・ わが国の景気は、基調としては持ち直している。先行きは、資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していく。』

『・ わが国経済は、家計のマインド悪化等に注意が必要だが、ペントアップ需要の顕在化に向けた環境が整いつつあり、旅行関連消費を中心に持ち直していくとみられる。』

『・ 3月のまん延防止等重点措置の解除以降、人の動きが活発化している様子が窺われるが、大型連休までの期近な予約が中心であるほか、米欧において昨年以降顕在化した需要と比べてまだ差がある。2年以上抑制されてきたわが国の消費活動は、今後拡大する余地はあると期待している。』

『・ 交易条件の悪化や家計の購買力低下の主因は契約通貨建ての輸入価格上昇であり、これは円安による価格上昇とは異なることをしっかりと説明する必要がある。』

『・ 需給ギャップや失業率ギャップが未だに大きく、インフレの基調がきわめて低い現状に対しては為替円安がプラスに働く。』

『・ 世界経済は全体として回復しつつも、ウクライナ情勢、インフレ、供給制約の3つの逆風で減速している。』

『・ ロシア・ウクライナ情勢により国際金融市場に想定外のテールリスクが引き起こされることがないか、警戒が必要である。』

とまあそういうのが並んでいるのですけど、何のかんの言って先行きってウクライナと感染症はリスクとなってるけど回復するとなっているし、なかんずく家計消費に関しては回復を見込んでいる訳ですよね。まあ展望レポートもそうなっていますが。



・であれば何で物価は「2%が定着しない」の連呼になり、さらに何故コアコアが2024年度に向けて上昇するのか

『(物価)』のパートですけどね。

『・ 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、先行き、携帯電話通信料下落の影響が剥落する 2022 年度には、エネルギー価格の大幅な上昇の影響により、いったん2%程度まで上昇率を高めるが、その後は、エネルギーの寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していく。』

はまあどうでもよいのですが、

『・ わが国でも、エネルギー価格上昇に伴う物価の上振れが生じているが、欧米のような高インフレの状況ではなく、エネルギー等を除いたインフレの基調は未だきわめて低い水準にとどまっている。』

いやいやいや食品上がってるだろうし、3月全国CPIベース時点での消費者物価の基調的な変動の図表(→https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf)を見たら刈込平均はバンバン上がっているし、品目数で見たって物価上昇が広がってるだろ、しかもこれ3月全国CPIベースで、直後に出た4月東京都区部だって上昇してるだろ、と思うのだが、

『・ 現在、低インフレと資源価格上昇が共存しているが、負の需給ギャップが存在しGDPも雇用も感染症前に戻っておらず、物価の基調は上がっていない。』

4月の東京都区部のヘッドラインは2.5%だったと思うのですが。いやMPMの時点で参考計数としてその位の数値の見通しは分かってたんじゃないの?????

『・ 消費者物価は、4月から当分の間は2%程度で推移するものの、家計の予算制約の下で2%を超える上昇は持続しないとみられる。』

まあこれを書いた人が経済見通しの方で意見書いているとは限らないからその点は割り引くんだが、「家計の予算制約の下で」って意見するならその前の『(経済情勢)』のコーナーで先行き経済に対しても「家計の予算制約」の話を書けよと思うのですが、経済情勢の方は「ウクライナで下振れはあるけど先行きはプラス」という話ばっかり掲載されているのに、急にこんなのばっかり並んでくる訳で、おどりゃ何を考えとんのじゃと小一時間問い詰めたい。

『・ 消費者物価の前年比は、2022 年度前半は資源価格の高騰等によって2%近傍で推移するとみられる。ただし、2022 年度後半以降は、資源価格が反落した場合における下振れリスクにも注意が必要である。』

来年になると今年のかさ上げ分が剥落する話じゃなくて、資源価格急落の話ってナンジャソラと思いますし、そもそも景気の基調は強くなっていく、って見通しで前半の所で意見がおおむね一致しているようにしか見えないのでありまして、景気の基調が少なくとも堅調に推移する中であれば、資源価格の反落はコストの改善につながってどっからどう見ても経済にプラスで、「下振れリスクに注意が必要」っておどりゃ何をゆうとるんじゃと。

『・ 物価上昇率が2%に達する蓋然性は高まっているが、それは輸入価格上昇に伴う一時的なものであり、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると「物価安定の目標」の安定的な達成は難しい。』

そもそも景気の基調は強くなっていく(以下同文)だし、予想インフレも改善しているし、それ以前の話でおんどれらは2024年度に向けてコアコアCPIが徐々に上がっていく、という威勢の良い見通しを出しているのに、何で物価安定目標の達成は難しい、という話になるんじゃ。

『・ 変動の大きいエネルギーを除いた消費者物価の前年比は、需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率・賃金上昇率も高まっていくもとで、食料品を中心とした価格転嫁の動きもあって、プラス幅を緩やかに拡大していく。』

というのはええんじゃが、おどれらの出したCPI見通しってコアCPIが2022年度から+1.9%→+1.1%→+1.1%となってて、+1.9→+1.1の部分のエネルギーの前年比効果剥落は分かるんだが、その翌年度は+1.1%→+1.1%になっとる訳よ。

ほいじゃがコアコアの方は2022年度から+0.9%→+1.2%→+1.5%となっとって、おどりゃコアコアが上がるのに何でコアが上がらんのじゃその差分はどこに行きよったという話で、定義上で言えば、エネルギー価格が前年比で2024年度更に下がるとかいう見通しにならんとそうならんのじゃが、0.3%分も寄与するマイナスを決め打ち予想する根拠について小一時間。

ということで、最後に

『・ エネルギー価格の変動により、ヘッドラインと基調的な物価の動きが大きく乖離する情勢では、展望レポートで「除く生鮮食品・エネルギー」の具体的な見通しを示すとともに、その評価を丁寧に説明することは適切である。』

とあるんだが、2022年度〜2023年度の話は分かるけどその先の話って書いてあったっけ状態でございますな。

『・ 先行きの基調的なインフレ率は、企業による資源価格の高騰の小売価格への転嫁の拡がり、企業や家計の物価観の変容、人手不足感が強まるもとでの賃金上昇圧力の強まりの可能性から、緩やかに上昇していくとみている。』

その割には展望レポート基本的見解(→https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2204a.pdf)の最終ページにあるコアCPIの見通しの分布図、何故か2023年度と2024年度は横ばいなんですよね。

『・ ウクライナ情勢に伴う貿易や物流における非効率な状況は、資源価格等の高騰とも相俟って、わが国でも幅広い財の価格に影響を及ぼし続ける可能性がある。』

あ、やっと普通の意見が出たけど、だから何なのかを書けよおんどれは評論家じゃねえんだよ。

『・ 賃金と物価の持続的な上昇には、大企業の賃上げ等の動きが全国の中小企業にも拡がることが重要であり、人流の回復状況や国内投資の動向、成長力強化に向けた取り組み状況を注視している。』

そもそも「物価が上がれば賃金も上がる」という触れ込みだったのに、完全に「賃金が上がらないと物価が上がらない」に説明が変わっております。ここで2014年末に経団連で黒田総裁が行った講演、しかもそのお題は堂々の「「2%」への招待状」を確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/ko141225a.htm/

『3.2%の「物価安定の目標」の実現と日本経済の転換』という小見出しの冒頭を見ますと、

『そこで「量的・質的金融緩和」についてお話しします。「量的・質的金融緩和」のメカニズムは、日本銀行が2%の「物価安定の目標」の早期実現に向けて強く明確なコミットメントを示し、人々のデフレマインドを変えることを起点としています。』(ここから暫くは直上URL先、2014年12月25日の黒田総裁講演テキストから引用します)

とインフレ期待への働きかけが起点である、と話をしまして、

『同時に、巨額の国債買入れによって、長期金利を含めてイールドカーブ全体に低下圧力を加え、名目金利をさらに低下させました。その結果、実質金利が低下し、名目だけでなく、実質でみても、「金融が緩和している」と感じて頂ける状況が生まれているはずです。その金融環境のもとで、他の政策などとも相まって、民間需要が高まり、経済全体としての需給ギャップが改善し、現実の物価も上昇しました。』

『企業や家計が実際に物価上昇を経験すれば、「物価は上がるものだ」という実感が生まれるため、予想物価上昇率は、さらに上昇することが期待できます。』

ということで、お賃金はと申しますと、その次の『4.デフレ経済からの転換にあたって』というコーナーの第3パラグラフにこのような記述がございます。

『また、デフレマインドの転換は、着実に進んでいます。今春の賃金交渉において物価上昇を意識した賃上げ要求が行われ、10数年振りにベースアップが復活したほか、企業がデフレのもとでの低価格戦略を転換し、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる動きがみられるなど、企業の賃金設定や価格戦略にも影響を与えています。さらに、来春にかけての賃金交渉においては、いくつかの労働組合が2%程度のベースアップを要求することを決定しています。』

『中央銀行が設定する物価安定目標が労使間の賃金交渉において意識されているという点で、注目すべき動きと言えます。日本銀行としても、強い関心をもって、今後の交渉の帰趨を見守っていきたいと考えています。』(以上ここまでが直上URL先の2014年12月黒田総裁講演からの引用でした)

とありますように、インフレ期待と実際のインフレが上がることによって賃金なども上昇する、という話をしていたのに、何故か今の日銀は「2%は定着しない」と連呼して折角のインフレ期待上昇のムードを一生懸命壊す側に回り、「賃金が上がらないと物価が上がらない」と従来の逆の話を連呼する、ということになっておるわけでございます。全く困ったもんですね(棒読み)。


・・・・・すいません悪態がながくなりました。戻りますね。

『・ 家計のインフレ実感が消費者物価上昇率以上に高まっている可能性がある。賃金上昇のペースがインフレ実感に追いつかないもとでは、インフレに対する否定的な見方が家計に拡がる惧れがあることから、物価動向や金融政策に関して、従来以上に丁寧な情報発信に努めていく必要がある。』

えーっと、それでしたら「聞け万国のろ〜ど〜しゃ〜♪」ってメーデー歌でも流しながら「こちらはにっぽんぎんこうです!労働者の皆さん!!賃金上昇を実現させましょう!!!にちぎんも賃金上昇の取り組みを支援しています!!!!!」て日銀が街宣すればいいんじゃないですか〜(棒読み)。

というか、家計のインフレ実感が上がっているんだったらインフレ期待があがっているんでから良い事じゃないですかー(超棒読み)。

『・ わが国経済の回復は感染症の動向次第だが、今後「待機資金」が活用されない中で、中長期の予想インフレ率や賃金上昇率、中長期の成長期待が十分に上がらない場合、物価が下押しされるリスクもまだある。』

と思うなら追加緩和すれば、と思いましたが、まあ今回のまいにちさしねおぺもある意味での追加緩和みたいなもんですからまあいっか、ということで政策に参ろうず。


・今回のまいにち!さしねおぺ!!の意味を全然解っていない・・・・・・・・・・・・

『U.金融政策運営に関する意見』のコーナーですが。

『・ わが国経済は、依然として感染症からの回復途上にあるうえ、資源輸入国であるわが国では、資源価格の上昇は、海外への所得流出に繋がるため、経済に下押しに作用する。こうした経済・物価情勢を踏まえると、現在の強力な金融緩和を続けることで、わが国経済をしっかりと下支えする必要がある。』

『・ 需給ギャップがマイナスで、企業の経営判断が慎重化するリスクが大きい現状では、現在の金融緩和を継続し、経済を下支えする方針を明確にすることが適当である。』

そりゃまあそれでいいんですけどじゃあ何で先行きのところでは基調的には強いって話になるのよと思いますけどまあこの辺は良いとしまして次から徐々に泣けてくる。

『・ わが国の金融政策上の課題は、インフレの抑制ではなく、依然として低すぎるインフレからの脱却にある。』

4月の東京都区部CPIはヘッドラインが+2.5%でして、さすがに「低すぎるインフレ」はちょっと・・・・・・

『・ 従来からある下振れリスクにロシアによるウクライナ侵攻が加わり、さらに情勢が大きく変化する中で、金融政策に変更を加えるのは適当ではない。』

えーっとすいません、今回変更してるんですけど大丈夫ですか????

『・ 金融政策運営にあたっては、資源価格や為替相場の変動そのものではなく、あくまでもそれらが経済・物価に及ぼす影響を考える必要がある。「物価安定の目標」を安定的に持続するためには、金融緩和を継続する必要がある。』

そもそもQQEって円高是正で始めたような気がしますけどねえ。

『・ 金融政策と為替の関係については対外的なコミュニケーションが重要であるが、為替円安の原因のひとつにはわが国と欧米諸国との景況格差があり、為替レートのコントロールを目標にした政策変更は適当でない。』

・・・・今回の指値オペこそが「為替レートのコントロールを目標にした政策変更」なんですけどねえ。

『・ 0.25%を上回る長期金利の上昇を容認しないとのこれまでの姿勢を明確にして、日々のオペが無用に材料視される事態を避ける観点から、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、0.25%での指値オペを実施することを予め宣言しておくことが適当である。』

どうでもいいんだがどうせひたすら続けることは債券市場は既に先刻ご承知の介なので、この「日々のオペが無用に材料視される」のは主に為替市場なんですから、つまり今回のまいにちさしねおぺは為替レートのコントロールを目標にした政策変更になりますわなあ(鼻ホジホジ)

『・ 物価と賃金が共に上がる好循環を伴う「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成するまでは淡々粛々と金融緩和を持続すべきである。そうした政策スタンスを誤解なく伝えるため、指値オペの運用の明確化が有効である。』

指値オペ0.25%の水準が物価目標達成のために適正な水準なのかどうか、という検討をしてからその話はしてもらわなないと困る訳で、昨年決定した時と経済物価金融情勢に明らかに大きな変化の生じる中で、何で0.25%が適切なのかの点検もしないまま、言霊信仰の如く0.25%遵守に拘るのは全く意味がわかりませんですねえ。

『・ 長期金利操作目標に沿った金融市場調節の継続姿勢を改めて示すことは、適切なイールドカーブ形成や緩和姿勢の明確化に資すると考えられる。』

どう見ても10年カレント近辺がゆがんでいますが。

『・ 当面、感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるべきである。政策金利のフォワードガイダンスも、従来の方針を継続することが適当である。』

まあここはどうでもよい。今さら感染症かよとは思うが。

『・ 金融政策運営では、需給ギャップと予想インフレ率を高めるべく緩和姿勢を強めることで、経済の回復と「物価安定の目標」の達成を早期に実現する必要がある。』

と思うなら2%は安定的に行かないで直ぐに下がってしまいます、って強調しまくるのはアカンじゃろという意見が何でおんどれは出せないのかと小一時間問い詰めたい。

『・ 見通し期間内に2%の「物価安定の目標」を達成することが困難な中、目標の位置付けや実現への道筋を整理して丁寧な説明を行うとともに、金融緩和がさらに長期化するもとで持続性がより重要となっていくことを引き続き意識していく必要がある。』

これはもしかしたらSZK(仮名)審議委員のぶぶ漬け話法なのかも知れない、と思いましたが、「持続性がより重要になっていく」に明らかに反している今回の決定に対して、正面切って反対とは言わない(最後なんだからぶちかませばよかったのにとは思うので残念だが)代わりに、このようなぶぶ漬け話法を用いる事によってイヤミをぶっこんだ、ということなのでしょうかねえ、などと思いました。

ということで、たぶんこれ確信犯で打ち込んでいる執行部は兎も角として、後の人達多分SZKさん以外まいにちさしねおぺの意味を分かってないんじゃなかろうか、と暗澹たる気持ちになるのでした。


・・・・・・といつもだとここで終わるのですが、実はこの後の財務省と内閣府の意見、普通の意見のようではありますが、読みようによってはこちらもぶぶ漬け話法成分が入っているのではないか、と読んでしまいたくなるので、最後の最後まで引用になるのでした。


・ちなみに最後の政府の意見での財務省の意見に微妙に違和感のある物件があるのがきになる

最後の『V.政府の意見』は普通かっ飛ばすのですが。

『(財務省)』

『・ G20・G7では、ロシアのウクライナ侵略がエネルギー・食料価格の高騰等に繋がっていると指摘した。』

『・ 政府は、「総合緊急対策」を策定した。新たな財源措置を伴うものは予備費を活用して対応したうえで、今後の予期せぬ財政需要に対応するため、補正予算を今国会に提出予定である。』

『・ 日本銀行には、政府と連携し、ウクライナ情勢や感染症の影響も踏まえ、持続可能な物価安定の実現に向け、適切な金融政策運営を期待する。』

『(内閣府)』

『・ 原油価格の高騰等が生活や経済に及ぼす影響に緊急かつ機動的に対応するため、「総合緊急対策」を速やかに実行する。』

『・ 新しい資本主義のグランドデザインや実行計画、骨太方針 2022の取りまとめに向けた議論を進め、中長期的な課題に対応し、「成長と分配の好循環」を実現する。』

『・ 日本銀行においては、今回の指値オペの運用明確化の趣旨について対外的に丁寧に説明いただくとともに、引き続き、経済・物価・金融情勢を踏まえ、適切な金融政策運営を期待する。』

となっているのですが、財務省の一番最初の部分、わざわざこんな事を言う必要があるとは思えないものが入っているのに違和感を感じまして、一時的連呼している日銀に何かイヤミ言ってる感がしないでもないのですが、どういう意図でこの文言を入れたのかというのにちょっと引っ掛かりました。


という訳で。









2022/05/12

お題「今さらジロー企画ですがFOMC後のパウエル会見から(しかも最初の3問だけですいません)」

ほうほうそうでっかそうでっか。
https://jp.reuters.com/article/idJPL3N2X31SA
2022年5月11日5:43 午後
ECB、資産購入は第3四半期初めに終了、その後数週間で利上げも=総裁

でまあ10年入札も終わって米国CPIも終わったのですが、何か今日は日本の30年がある気がするのですがまあそれは出てから考えるとしまして(ナマケモノ)、日米中銀イベントが盛り沢山だったので今さらながら確認作業でもしようかという企画、というのは名目で単に連休中サボった分の回復運転企画です。

〇超越今更FOMC後のパウエル会見なんですが何でダビッシュ扱いになったのやらというのを読んでみましょう

はいすいません、もう1週間経過していますね(滝汗)。まだFINALになってなくて良かった(これをネタにするときにFINAL版になっているのはワイの名折れと思ってるので)。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220504.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
May 4, 2022

まあその後色んな人(そういや変態仮面珍しくまだ静かだな)のご発言などもあって多少今更感があるのですが、落ち着いた(?)ところでもあります(かどうか知らんが)のでちゃちゃっと確認しようかと思います。

・労働市場のひっ迫の改善は賃金上昇を受けたレーバーフォースへのカムバックだという迂遠な話をしておる

一発目は毎度おなじみニックティミラスさんですが。

『NICK TIMIRAOS. Nick Timiraos, the Wall Street Journal. Chair Powell, the unemployment rate at 3.6 percent in March is now essentially at the level that the Committee had expected would prevail over the next three years. And at the bottom end of FOMC participants’projections for the longer run rate that you submitted in the projection to the last meeting. How has your outlook for further declines in the unemployment rate changed since March? What does this imply for your inflation forecast? And how has your level of confidence changed with the regard -- with regard to the feasibility of slowing hiring without pushing the economy into recession? Thanks』

失業率が完全雇用とみられる水準から一段と低下して足もと更に低下してるんだが、これはどう評価して、インフレに対してはどういうインプリケーションがあるのか、と来まして、そんなに労働市場が過熱している中でインフレを抑制するって経済を相当殺しに行かないとダメなんじゃないの、というのを踏まえて「how has your level of confidence changed with the regard -- with regard to the feasibility of slowing hiring without pushing the economy into recession?」と纏めました。

『CHAIR POWELL. Thank you. So, you're right, 3.6 percent unemployment is just about as low as it's been in 50 years. And I would say that I expect and Committee members generally expect that we'll get some additional participation. So people will be coming back into the labor force. We've seen that particularly among prime age people. And that will, of course tend to hold the unemployment rate up a little bit.』

『I would also expect though, that job creation will slow. Job creation has been, you know, more than half a million per month, in recent months, very, very strong, particularly for this stage of the economy. And so we think with fiscal policy less supportive with monetary policy, less supportive we think that job creation will slow as well. 』

『So, it is certainly possible that the unemployment would go down further. But so I would expect those to be relatively limited, because of the additional supply and also just the slowing in job creation. 』

労働市場がクッソ強い事は認めてますが、プライム層が労働市場に少し戻ってきていることと、ジョブクリエーションが鈍化している事を踏まえて、目先は失業率(怪しからん水準に向けて)下がるけどその後は徐々に上昇するでしょう、という見通しですな。

まあホンマカイナというか、失業給付貰ったらもうヒャッハーって労働市場から盛大に退出するアメリカンだけに、資産市場がバブっていると例によってヒャッハー働かなくてもいけるぜーとなるアメリカンの皆さまというのもあって、そんなこんなを考えると住宅市場と株式市場は適度に調整してくれないと労働市場の過熱が収まらん、という発想になっていそうな気がします(個人の妄想です)。

『Implications for inflation really the wages matter a fair amount for companies, particularly in the service sector. Wages are running high, the highest they've run in quite some time. And they are one good example of or good illustration really of how tight the labor market really is. The fact that wages are running at the highest level in many decades. And that's because of an imbalance between supply and demand in the labor market.』

お賃金がご覧の通りのアゲアゲなので、そらもう労働市場逼迫って事ですよ。

『So we think through ourb policies, through further healing in the labor market, higher rates, for example of vacancy filling and things like that, and more people coming back in we'd like to think that supply and demand will come back into balance. And that, therefore, wage inflation will moderate to still high levels of wage increases, but ones that are more consistent with two percent inflation. That's our expectation. Your third question was? 』

お賃金上がってるんだから労働市場に人々が戻って来ればもっとバランスの取れた状況になるでしょう、という話なんですが、そこは労働市場に人々が戻らんからお賃金上げざるを得ないのであって、労働市場に戻らん理由って普通に考えたら家計のウェルスが拡大して、まあ働かんでええわ暫く、となっているからではないかという気はするんですけどねえ。


・景気を殺さずに労働市場の逼迫を緩和する自信のほどや如何にという質問に対しては・・・・・・・

あまりにも長い回答だったので最初の質問の最後の部分を聞き返されまして、

『NICK TIMIRAOS. Your level of confidence that you can slow hiring without pushing the economy into a downturn.』

と来てからのパウエルさんの答えが長い長い。

『CHAIR POWELL. So I guess I would say it this way. There's a path. There's a path by which we would be able to have demand moderate in the labor market, and have, therefore have vacancies come down without unemployment going up, because vacancies are at such an extraordinarily high level. They're 1.9 vacancies for every unemployed person, 11 and a half million vacancies, six million unemployed people. So we haven't been in that place on the vacancy, you know, sort of the vacancy unemployed curve, the Beveridge curve. We haven't been at that sort of level of a ratio in the modern era. So in principle, it seems as though by moderating demand, we could see vacancies come down. And as a result, and they could come down fairly significantly. 』

お、久々に見たBeveridge curveという感じですが、色々なものを引っ張り出してきて「労働市場のひっ迫を緩和するパスはある」と仰せなのは分かるのですが、じゃあ一体何がどうなったらそうなるのかというと、「There's a path by which we would be able to have demand moderate in the labor market」と微妙な言い方しているけど、結局の所景気の過熱(かどうか知らんが定義的には)を抑制して労働需要を下げるという話になりましたな。

『And I think put supply and demand at least closer together than they are. And that that would, that would give us a chance to have lower, good to get inflation down, get wages down, and get inflation down without having to slow the economy and have a recession and have unemployment rise materially. So there's a path to that.』

でもってそれによって賃金上昇もモデレートになって物価上昇もモデレートになってめでたしめでたし、という虫の良い話をしているんですが、

『Now, I would say I think we have a good chance to have a soft or softish landing or outcome, if you will. I'll give you a couple of reasons for that.』

その虫の良い話には理由が2つある(キリッ)。

『One is households and businesses are in very strong financial shape. You're looking at, you know, excess savings on balance sheets, excess in the sense that they're substantially larger than the prior trend. Businesses are in good financial shape.』

企業と家計の金融的な状況が大変に強いから、多少の景気減速があってもヘーキヘーキって話なのだが、寧ろそのvery strong financial shapeによって無駄に需要が強いし、労働市場に中々人が戻ってこない理由の1つなんじゃなかろうかという気がするんだが。

『The labor market is, as I mentioned, very, very strong. And so it doesn't seem to be anywhere close to a downturn. therefore the economy is strong, and is well positioned to handle tighter monetary policy. 』

ということなのでよりタイトな金融政策によってこれらの状況を達成する、と言ってますがさすがに虫の良い話であるのは認識してて最後に、

『So, but I'll say I do expect that this will be very challenging, it's not going to be easy. And it may well depend, of course on events that are not in our under our control. But our job is to use our tools to try to achieve that outcome. And that's what we're going to do. 』

と、中々大変です、と仰せになっておられます。まあ確かにここの説明だと「景気をやや冷やしながらやっていくとインフレ抑制できるけど、必ずしも簡単な話ではない」と、景気減速させる宣言をしながらも及び腰感もあったりするから、声明文やオープニングリマークの威勢のよさからしたらちょっと冷静(というか何というか)ですな。


・75bpに積極的な論議は無かった発言だがよく見るとインフレがピークアウトするという条件付きですな

しかしまあ何ですな、オンライン会見やってた時にそういう風になってしまったのが引きずられている感じで、一本一本の質疑応答が長いですわ今回も。

『STEVE LIESMAN. Steve Liesman, CNBC. Thanks for taking my question, Mr.Chairman. You talked about using 50 basis point rate hikes or the possibility of them in coming meetings. Might there be something larger than 50? Is 75 or a percentage point possible? And perhaps you could walk us through your calibration? Why one month should or one meeting should we expect a 50? Why something bigger? Why something smaller? What is the reasoning for the level of the amount of tightening? Thank you.』

オープニングリマークの方で「次の2会合で各50bp」というのがでたので75とかそういうのは無いんかいという質問が。

『CHAIR POWELL. Sure. So 75 basis point increase is not something the committee is actively considering.』

と話した(これ2発目の質疑応答でその頭になりますわな)のが例のアレですね。

『What we are doing is we raised 50 basis points today. And we said that, again, assuming that economic and financial conditions evolve in ways that are consistent with our expectations, there's a broad sense on the committee that additional 50 basis increases should be on, 50 basis points should be on the table for the next couple of meetings.』

しかしまあ「75bpは我々が積極的に検討している訳ではない」と言いながら「今後2回の会合で計100bp利上げする」ってしれっと言ってるんですが、それをもダビッシュ扱いにしてしまう、って何かパウエルお上手と言えばお上手ですよね。

『So we're going to make those decisions at the meetings, of course, and we'll be paying close attention to the incoming data and the evolving outlook, as well as to financial conditions. And finally, of course, we will be communicating to the public about what our expectations will be as they evolve. 』

『So the test is really just as I laid it out, economic and financial conditions evolving broadly in line with expectations. And, you know, I think expectations are that we'll start to see inflation, you know, flattening out. And not necessarily declining it but we'll see more evidence. We've seen some evidence that core PCE inflation is perhaps either reaching a peak or flattening out. We want to know, we'll want to know more than just some evidence. We'll want to really feel like we're making some progress there. And but I mean, I -- we're going to make these decisions, and there'll be a lot more information. I just think we want to see that information as we get there.』

ただこの部分、その後を見ますと「状況を見ながら適切に判断する」と言ってて、50bp2回というのはどうもこの説明だと「インフレがピークアウトするという我々の見通し通りに推移した場合のお話」ということなんですよね。

『It's a very difficult environment to try to give forward guidance, 60, 90 days in advance.』

いやそうだったら何でお前オープニングリマークで7月FOMCまでの話をしとんねんという話でして、今回のFOMCは事前に段々エクストリームな利上げの織り込みになってきたので50bp×2というのを出しておいて、いったん走る市場を止めようとしたとかそういうことなのかね、何かよー分からんですな。

『There are so many things that can happen in the economy and around the world. So, you know, we're leaving ourselves room to look at the data and make a decision as we get there.』

結局先々の事はその時のデータで判断、という話をしているので、結局の所「ガイダンス」と「現時点での見通しを前提にするとこうなる」というのを意図的か意図的じゃないかはわからんが(たぶん意図的)まじぇまじぇして、例の50bp×2ってのになって、今は75bpについての積極的な意見は無いって言ってるんでしょうな、とは思いました。

『STEVE LIESMAN. I'm sorry, but if inflation is lower one month and the unemployment rate higher, would that be something that we would calibrate towards a lower increase in the in the funds rate?

1か月のデータでインフレ下がって失業上がったらどうしますの?利上げ幅が縮小することあるの?と来ましたが、まあこれは聞く方分かってて以下の回答を引っ張り出そうという質問ですね。

『CHAIR POWELL. I don't think the one month, one month is not, no. No. One month reading would not -- doesn't tell us much. You know, we'd want to see evidence that inflation is moving in a direction that gives us more comfort. As I said, we've got two months now where core inflation is, is a little lower, but we're not looking at that as a reason to take some comfort.』

『You know, I think we need to -- we need to really see that our expectation is being fulfilled. Inflation, in fact, is under control, and starting to come down. But again, it's not like we would stop. We would just go back to 25 basis point increases. It'll be a judgment call when these meetings arrive. But my, again, our expectation is, if we see what we expect to see, then we would have 50 basis point increases on the table the next two meetings. 』

インフレについて「Inflation, in fact, is under control, and starting to come down.」と仰せになっておりまして、それであれば75利上げじゃなくて50利上げなのですが、そのあと、「But again, it's not like we would stop. We would just go back to 25 basis point increases.」と説明してて、インフレのピークアウトが思いっきり明確になれば25bp利上げにしていく、という話なんでしょうが、逆に言えばこれ物価がピークアウトしたですなあ程度では50bp利上げをダラダラ続けるという話をしとりゃせんですかねえという感じでして、その直後に「 It'll be a judgment call when these meetings arrive. But my, again, our expectation is, if we see what we expect to see, then we would have 50 basis point increases on the table the next two meetings.」とあるんですが、つまりは物価のピークアウトが見えてるのを前提に50bp利上げ、明確に物価上昇率が低下してきたら25bp利上げ(中立と思われる所まで)という話をしてて、「75を積極的に議論していません」と言っているので、幻惑されますが、これ結局の所前提が「近いうちにインフレ上昇率の勢いがピークアウトする」というのがあるという中々見事な諸葛孔明の罠。

ですから、見通しと違ってインフレがピークアウトしない、ということになれば75だってアリエールの世界な訳でございまして、その意味で昨日クリップだけしたメスターの説明もそらそうだという話になるという次第だったりするんじゃないですかねー。


・中立金利がどうのこうのというのは理念のお話ではあるがそんなの数字分からんがなというプラクティカルな態度

3本目の質問までやりますね本日は。

『COLBY SMITH. Thank you. Colby Smith from the Financial Times. Given the expectation that inflation will remain well above the Fed's target at year end, what constitutes a neutral policy setting in terms of the fed funds rate? And to what extent is it appropriate for policy to move beyond that level at some point this year?』

ということで中立金利水準で利上げ止めるのか、その水準ってそもそもいくらなの問題の質問ですが、

『CHAIR POWELL. So, neutral. When we talk about the neutral rate, we're really talking about the rate that neither pushes economic activity higher, nor slows it down. So it's a concept really. It's not something we can identify with any precision.』

と、中立金利水準を事前にこれ幾らとか言って出すのはお話の世界であって実務の世界ではないと仰せです。この辺は経済学者じゃないパウエルさんらしいわと思います。

『So we estimate it within broad bands of uncertainty. And the current estimates on the Committee are sort of two to three percent.』

FOMCの今の想定は2−3%ですな、と幅広回答な上に、

『And also, that's a longer-run estimate.』

と、そもそもその数字ですらあくまでもロンガーランの推測よ、と数値については決め打ちしないスタンス。

『That's an estimate for an economy that's at full employment and two percent inflation. So really the way, really what we're doing is we are -- we're raising rates expeditiously to the -- what we see as the broad range of plausible levels of neutral.』

『But we know that there's not a bright line drawn on the road that tells us when we get there. So we're going to be looking at financial conditions, right. Our policy affects financial conditions and financial conditions affect the economy. So we're going to be looking at the effect of our policy moves on financial conditions. Are they tightening appropriately? And then we're going to be looking at the effects on the economy. And we're going to be making a judgment about whether we've done enough to get us on a path to restore price stability. It's that.』

『So if that path happens to evolve levels that are higher than estimates of neutral, then we will not hesitate to go to those levels. We won't. But again, it's it there's a there's a sort of false precision in the discussion that we as policymakers don't really feel. You know, you're going to raise rates, and you're going to be kind of inquiring how that is affecting the economy through financial conditions. And of course, if higher rates are required then we won't hesitate to deliver them. 』

色々と話をしているものの、結局のところ「状況をよく見てあんじょうよう判断しますわ」という話をしているに過ぎないという説明になっておりまして(超意訳ですいません)、特定のナンバーを出さない、まあ実際に内部では議論はしていると思うのですが、意見がまとまってないのか、今決め打ちでだすと結果外れだとあばばばばーになるので出さないのか、まあその辺は良く分からんですが、いずれにせよ現時点であんまりターミナルレートに決め打ちはできない(2%は少なくともあるのは明らかとしても)なんでしょうね。


#ということで虫干し企画恐縮至極でした







2022/05/11

お題「毎日指値オペはこれまでの路線の真逆であることを再確認/メスターェ・・・・・/そういえば理事人事ありました」

本家のBloomberg見ろと言われそうですが、ブルームバーグのWeb版って(ロイターの広告貼り貼りも大概なもんですけど)クッソみたいに大きなサムネとか広告とかがバカバカ貼ってあって旧型PCだとサイト開けるだけでストレス全開なんすよねー(あと記事検索がクソオブクソ)。

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-mester-bloomberg-idJPKCN2MW1RU
2022年5月11日1:23 午前
米経済、インフレ抑制で混乱も 75bp利上げ永久に排除せず=クリーブランド連銀総裁

そらそうよ、とか書いてると長くなりそうなので後で要人発言クリップメモします。


〇今回の毎日指値オペは従来のYCC政策の持続性強化の真逆であるというのを問わず語りに説明されてますな

昨日は国会で安倍ちゃんの例の馬鹿発言関連で色々ありましたな。

ちなみに時事の記事とかだとそこまで書いてなかったけど、安倍ちゃんはようつべちゃんねる(アクセス数増加に貢献したくないから基本見ないのだが)では「日銀は紙とインクで紙幣を印刷して国債を買う」と錬金術発言をしてたらしいんだが、だったら税金とか取らないで全員に毎月1億円でも配れば日本人全員働かなくて済むんじゃないですかねえ、という時点で馬鹿発言していることに気が付かないのが一国の宰相として度し難いレベルの知的水準なのですが、そういうのの制御装置を持たない(というか小選挙区制度と政党助成金によってどこの政党でも民主集中制みたいなのが進んでしまったのでこうなった訳で、お繩一郎は亡国の徒だし、その民主集中制を思いっきり利用したのが小泉純一郎なのでこれも亡国の徒なんですけどアタクシに言わせると)で長期政権になってしまったというのはもうね。

なお、合議制で政策を決めている筈なのにボンクラのイエスマン(&ウーマン)を集めてしまって、総裁の意地で政策を継続する、というのが止められなくなって昭和温泉旅館政策を次々導入した挙句についに毎日指値オペとかが堂々と導入されてしまうという別の方法で制御装置を壊してしまっている事例もありますけどね。

さてそんな昨日の国会ですが、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-05-10/RBN7PVDWX2PT01
長期金利の変動幅拡大、事実上の利上げで変更考えず−日銀内田氏
伊藤純夫、伊藤小巻
2022年5月10日 10:48 JST 更新日時 2022年5月10日 11:38 JST

『日本銀行の内田真一理事は10日、現在の金融・経済環境を踏まえると、長期金利のゼロ%中心に上下0.25%の許容変動幅は適切とした上で、変動幅の拡大は「事実上の利上げであり、日本経済にとって好ましくない」と述べた。参院財政金融委員会で答弁した。』(上記URL先より)

>変動幅の拡大は事実上の利上げ
>変動幅の拡大は事実上の利上げ
>変動幅の拡大は事実上の利上げ

ほうほうそうでしたか。

さてここで2018年7月の長期金利変動幅拡大の時における黒田総裁の説明を確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2018/kk180801a.htm/

『(問)(前半割愛)もう1つ、先程、金利が上下に変動することについて、倍程度というお言葉がありましたが、これは要するに、−0.2%から+0.2%までの変動で推移するように操作するということでよろしいでしょうか。』

『(答)(前半割愛)2番目の、長短金利の幅が上下に変動し得ることについては、国債市場の機能度を高めるためにある程度の変動を容認するということであり、従来±0.1%くらいの狭い幅で動いていましたが、その倍くらいの幅を念頭に置いて考えていくということです。ただ、先程も申し上げていますように、金利水準の上昇や引上げを意図しているわけではありませんので、金利が急上昇したような場合には、迅速にオペなどで対応していくということです。金利水準を引き上げようという意図は全くありません。』(直上URL先の2018年7月31日金融政策決定会合後の黒田総裁定例会見より、以下同様)

2018年の時は利上げではないと仰せでしたし、そのほかとしてはこんな説明をしていました。

『(問)今回政策を修正した理由について伺います。当初は2年で実現するという考えのもと、短期決戦で異次元緩和を始めたわけですが、ここまで物価2%の実現が見通せないとなると、前提が変わってしまって、今までのやり方では間違っていたということなのでしょうか。また、今回の措置により持続性を強化したということですが、具体的にどの部分で持続性が増したのでしょうか。』

『(答)間違っていたとは全く思っていません。2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した頃には、物価上昇率は−0.5%くらいでしたが、1年程度で1.5%程度まで、消費税率引上げの影響を除いても上昇しました。その意味で、かなり物価上昇率が調整されていったことは事実です。(引用者追記:途中の説明がクソ長いので割愛しますが、重要なのは以下の部分です)そうした経済・物価の状況に合わせて政策を調整してきたわけです。毎回の公表文でも申し上げているように、常に経済・物価・金融情勢に応じて調整するということです。』

>常に経済・物価・金融情勢に応じて調整するということです
>常に経済・物価・金融情勢に応じて調整するということです
>常に経済・物価・金融情勢に応じて調整するということです

なるほど0.25%を決定したのは2021年3月でしたが、2022年の4月との間で経済物価金融情勢、特に物価と金融情勢は随分変わっていると思うのですが、2018年7月は調整をしたのに今回は調整をしないと仰せで。

『持続性については、最初に申し上げた通り、色々な要素があります。長期金利についてはゼロ%程度を操作目標にしていますが、実際の変動幅が±0.1%と非常に狭い範囲で動いているため、時々国債の取引が成立しないなど、国債市場の機能がやや低下しているということがあります。そこで、±0.1%の倍くらいを念頭に置いて、少し変動幅を大きくすることで市場の取引も機能も改善し、それによって現在の大幅な金融緩和を粘り強く続けられる、より持続性が増すと考えています。(以下割愛)』

なるほど、つまりYCC政策の持続性を考えれば変動幅を拡大して然るべき所を今回は「事実上の利上げ」だから拡大しない、すなわちYCCの持続性はもうシランガナ、というスタンスに変更された、という理解でよろしいかな?????


・・・・・・などと一々掘り返して回らないと行けないこの金融政策の悲しさたるや、書いてるアタクシも「ワシは本当はこんなことはしとうなかったんじゃ」と言いたくなるのですが、とにもかくにも支離滅裂過ぎる訳で、過去からの流れで言えば(しつこく申し上げてますが)今この時期こそ「我々の粘り強い金融緩和の効果と海外経済の追い風に乗って2%物価目標が視野に入って来ました!」と堂々の勝ち逃げが出来て、マイナス金利とかそういうあほ政策(そもそもマイナス金利だって「QQEの限界」とか言われた黒ちゃんが逆噴射してぶっこんだ政策でYCCはその大失敗を誤魔化して政策を延命させるための弥縫策に屁理屈をデコレーションしたもの)を止めるチャンスなのに、逆切れ緩和みたいな毎日指値オペぶっこんでしまった訳ですな。

でもって2018年の変動幅拡大は思い起こしてみれば上記のように「YCC政策の延命」のために突っ込んだのですが、今回は逆をやったうえに、内田理事が国会で堂々と「変動幅拡大は利上げ」と言ってしまったので、これはもうYCCの退路を完全に絶ってしまった状態になっておるわけでございまして、変動幅をこれ以上拡大するのは政策変更、であるならば、まあ今後(巷間で言われてたような)YCC政策の微修正、みたいなの無理(金利水準にしろターゲット年限の短期化にしろ)という話になりますので、あとはもう大爆発炎上コースか誤魔化し切れるか、で中間の妥協策なし、ってな事に自分たちを追い込んでしまった、ということでございますなナムナムナム。

しかしまあ何ですな、さっきの内田理事(兼企画局長)発言に戻りますと、

『円安が進行している為替相場については「経済、金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい」と指摘。最近の短期間での変動は「先行きの不確実性を高め、企業の事業計画等の策定が難しくなり望ましくないと考えている」と改めて表明した。』(当コーナー最初にあった内田理事の国会答弁に関するブルームバーグ記事URL先より引用)

とのことですが、いやいやいやどっからどう見ても「毎日指値オペ」をぶっこんで為替の大台が飛んでしまったし、断固たる意思をわざわざ示したんだから為替市場が反応するじゃろというお話で、オトボケ答弁にも程がありますな南無大師遍照金剛。


〇FEDの高官がやかましいので確認しておくわけだがメスターさんの発言はまあそうじゃろうなと思うので

という訳でさっきのURL再掲ですが。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-mester-bloomberg-idJPKCN2MW1RU
2022年5月11日1:23 午前
米経済、インフレ抑制で混乱も 75bp利上げ永久に排除せず=クリーブランド連銀総裁

『[10日 ロイター] - 米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は10日、高インフレ抑制に向けた連邦準備理事会(FRB)の取り組みによって、経済が混乱にさらされる可能性があるものの、FRBは現在の軌道を維持する必要があると言明した。また、75ベーシスポイント(bp)の利上げの可能性を永遠に排除することはないという認識を示した。』(上記URL先より、以下同様)

というお話ですが、惜しくもBBGTVのインタビューなので音は多分聞けるのですがトランスクリプトがクリーブランド連銀の公式から出て来るとは思えない(一応後で確認はするけど)のですが、なんせBBGはネット版がアレなのでそっちを見る気があんまり起きなくてロイターさんの記事を見るというこのインチキおじさんなアタクシ。

ということでですね、何か未だに「株が下がったら利上げペース緩めるんじゃないか」という「中銀プット」に期待する向きがあるような気がするんですが、どこからどう見てもインフレ抑制という大正義の為には多少の事はキニシナイ、というスタンスなのずーっと示されているんだし、そもそも論として資産価格が無駄に高いからヒャッハー消費がトマランチ会長で需要が無駄に強い、というのが米国のお姿なのでございますので、先般のFOMCで見られたように、ちょっと会見での言い方が大人しいだけで「ダビッシュ会見だぜヒャッハー」とリスク資産価格が盛大に上がってしまうような地合いが続くようだと、「お前らいい加減に中銀プットなんてない事に気が付けや」という強めのぶっこみが飛んで来るの気が付けよと思う次第(個人の感想です)。

よって、

『最近の株式市場の振れについては、「最大雇用と物価安定という長期目標の達成に向けたわれわれの焦点を変えるものではない」と強調した。』

となるのは必定というか、むしろ株式市場調整しろとか住宅市場調整しろと思ってるでしょという話だし、まあその間FEDはどうせ「ほどよい調整」をしろと思ってるんでしょうが、その通りに世の中行くのかというとこれまた別問題で、大クラッシュしたらどうなる(と言っても2割3割下がるくらいではクラッシュでも何でもないでしょその前に散々上がったんだから、というのが多分FEDの発想だと思う)というのはありますが、資産価格ヒャッハー状態の方も問題視している筈だし、そろそろミニッツでもその辺りをもうちょっと言及してくるんでネーノってな気はする(根拠はないけどアタクシの霊感)のよねー。


あ、それからおまけですがさっき出てきたこっちはソースがあるっぽいのでちゃんと確認しておく。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-mester-balancesheet-idJPL3N2X2457
2022年5月11日6:18 午前
FRB、損失覚悟でMBS売却も=クリーブランド連銀総裁

『[アメリアアイランド(米フロリダ州) 10日 ロイター] - 米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は10日、連邦準備理事会(FRB)が保有する住宅ローン担保証券(MBS)を損失を覚悟で売却せざるを得なくなる可能性もあると述べた。』(上記URL先より)

ってのはバランスシートの正常化というのもさることながら、住宅市場の過熱を抑制することを考えているような気がするんだが元発言の全体に当たらないと良く分からんので判断保留。


・ウォーラー理事も最近ちょくちょく言うようになっておりますけど

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-waller-idJPKCN2MW21E
2022年5月11日3:28 午前
米インフレ高すぎる、労働市場は「正常でない」=ウォラーFRB理事

『[10日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事は10日、高すぎるインフレと「正常ではない」労働市場の状況に対応するため、利上げする時期にあるという見解を示した。』(上記URL先より)

これは講演からみたいなので元発言が取れると思うのですがお前ら色々と喋り過ぎでこっちの処理能力が追い付かん。


・あ、ウィリアムスが喋った

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-inflation-idJPKCN2MW1JB
2022年5月10日11:53 午後
米経済「軟着陸」でも成長鈍化・失業率小幅上昇へ=NY連銀総裁

『[エルトフィレ・アム・ライン(ドイツ) 10日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は10日、インフレ抑制に向けた連邦準備理事会(FRB)の措置によって、短期間、経済成長が鈍化し、失業率が小幅上昇する可能性があるという認識を示した。』(上記URL先より)

この人もある時から急に空気になってしまってクラリダ(当時)とパウエル見てればいいや状態になったと思ったらそもそも発言すら出てこなくなったお方なのですが、イエレンの子飼いだったんで実力以上に出世された方ですな、うんうん。


・でもってバーキン総裁

サムネェ・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-barkin-idJPKCN2MW1IJ
2022年5月10日11:43 午後
米FRB、中立水準達成後に一段の措置必要か判断=リッチモンド連銀総裁

『バーキン総裁は「中立金利に達した時点で、インフレが経済にブレーキをかけなければならない水準にあるかどうか判断できる」とし、そうすることで、連邦準備理事会(FRB)は1980年代のようなリセッション(景気後退)を回避できると述べた。』(上記URL先より)


とまあそんな感じで、経済多少殺してでもインフレ抑制大正義、と言ってるのでまあその30年とかの金利が下がるのは分からんでも無いのですが、10年とかもっと短い金利とかは判断ムツカシネという気はするんですけど、とりあえず米国債券市場も何か雰囲気でやたらジャイアントスイングするので市場が何をどう織り込んでるのとかよくわからんのがオソロシスでございます。


〇月曜の話を今更ですが清水企画局長が理事に昇任したのをメモっておく

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220509c.htm/
理事の発令について
2022年5月9日
日本銀行政策委員会室

『次のとおり発令がありました。

清水 誠一
日本銀行理事に任命する

令和4年5月9日
財務大臣 鈴木 俊一

なお、山田 泰弘 理事は、5月8日任期満了により退任しました。』

ということで、後任の企画局長誰かと思ったら内田理事が兼務ということですが、昨日の国会答弁にありますように、「政策の持続性が毀損されるのも厭わずに逆切れ毎日指値オペ」というのがぶっこまれた直後に理事が局長兼務とか中々大変じゃネーノと思うので、まあそんなに何年もこの状態って事でも無いのでしょうが。

まあしかし何ですな、内田さんがそのままやるにしても、他の誰かが内田さんの後に企画局長になるにしても、黒田総裁の退任時期と被る訳でして、いやまあその後何も考えずにYCC継続できるのでしたら運営上は無問題、2%目標は達成できないって話でそっちの方が問題なのですが、まあそれはそれとしまして、誤魔化し誤魔化しの延命(によって変な特別付利という補助金を出したりやってることもう無茶苦茶ではあるのですが)が出来るのかと言いますと、正攻法の話で言えば、そもそも今回の展望で出している「2022年度のコアCPIが年度平均で+1.9%」というのが嘘つけもっと上じゃろというのがあって、どう見ても10月の時点で見通しを上方修正しないといけないし、下手したら次回になるかも知れず、その時に「物価上昇はコストプッシュで一時的」というのがどこまで言い張れるかというのもそうですし、そもそも論として今回の物価上昇ってそれなりに広がりが出てきてるわけで、まさに欧米と一緒で最初「一時的」と言ってたのがそうじゃないですよね的な話になるやも知れず、まあ変に意地張ってしまっているので色々とその時第変ですよね、というのが一つあり、更に申し上げますとさっきネタにした通りで、毎日指値オペはYCC政策の爆発(するならば)時期を前倒しする手段であって、その点からも黒ちゃん任期とか言う前に政策が詰んでしまう可能性高い訳ですな。

ということで、局長ポストの最右翼みたいなポストだというのに、今回に関してはどこからどう見ても罰ゲームなポストということですが、まあどういう人選になってくるのか、あるいは内田さんご多忙を厭わずにそのまま兼務を続けるのか、楽しみにしたいと思います。








2022/05/10

お題「またも安倍ちゃんのジンバブエ理論/レッツゴー三匹がドリフターズに昇格/3月会合議事要旨の賃金と物価の議論を見てみた」

最初マクラに書くつもりだったのですが何か引用してたら大部になってしまったので(笑)コーナーが設けられるの巻でして何の話かと言えば日銀は政府の子会社理論。

〇これがのさばっているうちは何をやってもダメ

お、また言いやがったか。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022050900963&g=pol
「日銀は政府の子会社」 自民・安倍氏
2022年05月09日18時49分

『安倍氏は「(政府の)1000兆円の借金の半分は日銀に(国債を)買ってもらっている」と指摘。「日銀は政府の子会社なので60年で(返済の)満期が来たら、返さないで借り換えて構わない。心配する必要はない」と語った。』(上記URL先より)

ふーん、「子会社が買ったら債務が消滅する」というジンバブエ理論はさすがに突っ込みを受けて変更したみたいだけど、日銀が子会社だったら日銀に国債を買わせるせるのはただの債務付け替えにしか過ぎないから問題の解決になんもならんのですけどね。リフレ派と諸共滅んでくれないと日本円紙屑モードをマジでやりそうだから困るわ。


さてここで4月5日の国会における黒ちゃんの発言を確認してみましょう。手抜きでソースはロイターですけど。
https://jp.reuters.com/article/idJPKCN2LX00J
2022年4月5日9:20 午前
最近の為替変動「やや急」と日銀総裁、緩和継続は改めて強調

『安倍元首相は「日銀は政府の子会社」とし、市場経由で日銀が国債を買い入れることで、国債を増発しても「連結決算」では対外債務は増えないと主張している。黒田総裁は、政府は日銀に出資しているが議決権はないと述べ「日銀は政府の子会社ではない」と述べた。』(上記URL先より)

しかしよく考えたら安倍ちゃんの発言、「日銀が政府の子会社」だったら子会社が親会社の債務を引き受けたら「連結決算」では債務変わらんだろという所でして、簿記3級、というか簿記持ってなくても分かりそうな理屈なのですが、なにせかのジンバブエ理論によりますと・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/idJPKBN0KM0FA20150113
2015年1月13日3:33 午後
インタビュー:日銀は景気重視を、国債買入増も選択肢=早大教授

『一方、国債買い入れの増額について「国民の借金を日銀が減らすことだ。誰も困らず公平である」とした。さらに「金融政策には経済を刺激する効果がある。財政政策の効果は小さいから、金融政策のみ実施して、財政発動をしなければ、金融政策の効果で税収が増大し、結果的に財政再建につながる」と主張した。』(上記URL先より)

で、これだと「早大教授」となっていますが(ナンデジャ)言わずと知れたジンバブエ大先生でございまして、日銀が国債を購入すると政府の債務が減る、という理論を持ち出してるのこの大先生なのですが、まあしかしこの経済関連の大学教授っての碌でも無いのが沢山いて(ネタにしなかったけどこの前ツイッターランドで全編間違い、と解説記事を指摘されていた某オバゼキはジンバブエの逆サイド側のあたおかですね、そういえば)こういう無茶苦茶なのが教授とか出来てしまう日本の学問の情けなさだし、学者という触れ込みで日銀の政策委員やってたお方で評価に値するのは須田さんまで、というこの事実。


なお、引用部分にありますように、リフレ理論によりますと「金融政策には経済を刺激する効果がある。財政政策の効果は小さいから、金融政策のみ実施して、財政発動をしなければ、金融政策の効果で税収が増大し、結果的に財政再建につながる」ということでしたが、最近のリフレ派は何故か財政ガーばっかり言ってる、という時点でまあどんだけインチキ学問というか学問の名に値しないか、というのが良く分かるというものであります。


・・・・・・すいません話のマクラの積りがつい興奮しまして(^^)。


〇レッツゴー三匹からドリフターズに昇格するとはたまげたなあ(円債雑メモ)

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2X10SN
2022年5月9日3:16 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、4月米雇用統計後の金利上昇傾向続く

『[東京 9日 ロイター] -
<15:10> 国債先物は続落で引け、4月米雇用統計後の金利上昇傾向続く

国債先物中心限月6月限は前営業日比9銭安の149円09銭と続落して取引を終えた。4月米雇用統計後の金利上昇傾向が続いた。新発10年国債利回り(長期金利)は同0.5bp上昇の0.245%。あすの10年債入札を控え、後場は様子見ムードも広がった。』(上記URL先より、以下同様)

ということでしたが、「まいにち!!さしねおぺ!!!!」ぶっこみの前日であるところの4月27日も10年新発0.245%(実は1銘柄手前が0.250%)で単利ベースの話になるけど20年が0.755%で30年が0.975%で40年が1.070%だったのですが、

『TRADEWEB
     OFFER  BID   前日比 時間
2年   -0.052 -0.047  -0.002 15:00
5年   0.014  0.019  -0.001 14:55
10年   0.24  0.245   0.005 14:47
20年   0.778 0.785   0.014 15:05
30年   1.029 1.035   0.025 15:02
40年   1.122 1.132   0.025 15:02』

などとなっておりまして、4/27の中期って5年の引けが1bpだったのでまあそんなに上がってないのでございますし、まあここそんなに売り込まんじゃろというのもあります(プラスになればニーズもあるでしょうし)けど、超長期ちゃんは20年がざっくり3毛、30年と40年がざっくり5毛ちょい金利上昇しておりまして、中期がそんなに売られないで超長期だけ、というのならまだ屁理屈はつけられるのですが、何せ我らが横綱様におかれましては4/27の終値149.31から昨日の終値は149.09まで下がっておりまして、7年金利もちゃっかり2毛5糸甘くなっているのがチャーミング。

ということで売買参考統計値の「平均値単利」を見ますと先物チーペストから10年カレントまでの引けが昨日はこうなっておられますwwww

https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

長期国債 355 2029/06/20 0.175
長期国債 356 2029/09/20 0.190
長期国債 357 2029/12/20 0.205
長期国債 358 2030/03/20 0.215
長期国債 359 2030/06/20 0.225
長期国債 360 2030/09/20 0.235
長期国債 361 2030/12/20 0.240
長期国債 362 2031/03/20 0.245
長期国債 363 2031/06/20 0.245
長期国債 364 2031/09/20 0.245
長期国債 365 2031/12/20 0.245
長期国債 366 2032/03/20 0.245

指値対象のレッツゴー三匹が同じ利回りだと思ってたらここに来まして指値対象から外れた2銘柄まで金利上昇して後ろに並んでしまいまして、イールドカーブを引くと9年から10年がフラットになってしまって、見事な階段のようになってしまっておりますこれはドイヒー。

5銘柄だとフィンガー5(歳がバレる)とか思ってしまいますが、やはりこの場合は「ダメだこりゃ」というニュアンスも含めるとドリフターズ(日本の方)ということになろうかと存じますが、確かに10年0.25%の死守は(ここ数日は指値も入らないので目出度く日銀買わずして)できていますけれども、別に売る方は10年じゃなくたって同じような経済効果があれば良いのですから、売りが出る局面で他年限に売り圧力が掛かって超長期は甘くなるわ横綱はドンドン土俵際に押し込まれるわということで、楽しいイールドカーブが形成されて参りましたが、このようなどう見ても経済合理的に変だろ(例えば10年以降もどフラット、みたいな感じでフォワードレートが形成されているのなら兎も角、先の方はまた順イールドになってるんですからこれはどこからどう見ても不合理カーブ)というイールドカーブが形成される中、YCCとは何ぞや??「均衡イールドカーブ」とは何ぞや??と言ったあたりに思いをはせながら昨日の引けを笑いながら眺めるのでありました。

しかし夢の7年10年インバートまであと7毛ですかあ。横綱が1円下がってくれれば明確なインバートなんですが、別にその7年の金利水準には意味がなくても、「5ケタの数字」としてだと毎度大台ドタの所は抵抗線になるからなー、今日の10年入札とか補完供給がアホほど出てるのを見ると普通にカバーニーズあるんでしょうしー。入札結果が良かったと出ると横綱はすぐ戻ってしまう癖があるからなー。

などと思いながらも、米国債券市場様が10年3.5%くらい思い切りよくやっていただけると、夢の7年10年フラットとかインバートとかになって、YCCって何でしたっけという根本的な話が蒸し返され、そうすると、どうも日銀的に黒歴史になっているのかも知れないのですが、すっかり言及をしなくなっている「均衡イールドカーブ」の話が話題になり、そうなりますと「そもそも均衡イールドカーブの概念って経済物価情勢によって幅を持ちながら変化し得るもの」ということが思い出されまして、外部環境も物価情勢も大きく変化する中でなぜ25bpに固執しなければいけないのか、という理屈を一刀両断する概念になる。とまあそういう面白話になってくるので、面白いから(不謹慎)もっと歪め歪めあーはっはhっはhっは(錯乱)という感じでございまする。


〇読む価値がないとか言ってそういや金懇も飛ばしてたわと思いながら読む価値のない議事要旨を鑑賞

ボンクラが集ってボンクラ話をしているのを鑑賞するのは無駄の極みだし、同じ理屈でそういや金懇もすっ飛ばしたりしてて大変に遺憾なのですが、ちょっと陽気も良くなってきて朝の寝起きも良くなってきた(単に日の出と寝起きが連動しているだけなのでここから7月までは基本的にあたくし絶好調になるのが仕様)ので過去のすっ飛ばし分を頑張るとしまして。

3月会合議事要旨
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2022/g220318.pdf

まあそれよりも4月会合での主な意見で「まいにち!!さしねおぺ!!!!」に関してどのような意見が出ているのかを見て、ボンクラのボンクラぶりを涙しながら確認しつつ、はやく2名交代して欲しいもんだと思う訳ですがちょっくら確認してみる。


・3月という事もあって賃金の話を一生懸命しているようですな

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』の部分、まあ読んでて通り一遍過ぎて面白くないのでございますが、賃金の所については少し話題の分量が多めになっていました。本文10ページ(PDFの12枚目)に参ります(ってどんだけ読むところがないのかと)。

『雇用・所得環境について、委員は、一部で改善の動きもみられるが、全体としてはなお弱めとなっているとの見解で一致した。』

ということで、そういやまだちゃんと話題にしていない4月展望レポートでも先行きのメカニズムの話に賃金の話が新しく設置されまして、「賃金が上がらないと2%の物価目標の安定達成は困難」というロジックを最近展開するようになりました。

なお、ここで浜田宏一大先生の「名目賃金はむしろ上がらない方が良い」という名言を・・・・・ってやろうと思ったらダイヤモンド社のヤローあのインタビュー記事の肝心な部分を会員限定にしやがって実に怪しからん。
https://diamond.jp/articles/-/30804
浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」2013.1.20 0:00

まあそういう話からも置物一派が如何に愚劣であったかというのが分かるのですが、その置物理論が根幹にあるんだからそら金融政策運営がどんどんグダグダになるのは仕方ありません。

という悪態は兎も角として、

『何人かの委員は、3月 16 日に集中回答日を迎えた春季労使交渉の状況について、好調な企業業績を反映して、大手企業の賃上げにも明るい動きが出始めているとの見方を示した。』

『先行きの雇用者所得について、委員は、感染症などの影響の緩和に伴い景気が改善するもとで、緩やかな増加を続け、水準も明確に切り上がっていくとの見方を共有した。』

何でですかねえ?

『一人の委員は、最近の企業からの聞き取り調査などを踏まえると、企業の価格設定スタンスは全体として前傾化しているように窺われ、こうした価格面の前向きな動きが賃金の上昇に繋がっていくかどうかに注目していると述べた。』

まあこれ一人の委員の意見だからどうでもよいのですけど、「コストプッシュでの価格上昇は持続的にならない」と全力で黒ちゃん主張している訳で、そもそも「価格面での前向きな動き」っていう評価は委員会としてはしてない筈なんですけど、とは思いました。

つーかですね、アタクシ再三再四申し上げておりますように、コストプッシュだろうが何だろうが価格転嫁が進むタイミングを捕まえて「価格面での前向きな動き」という方が本来今まで日銀が言ってた「強い履歴効果を受けた強固な適合的期待形成を打破するもの」ではないのかと思うし、すくなくとも一人の委員かもしれないけど、価格転嫁の動きを前向きの動きと捉えているんだったら、「コストプッシュだと一時的」を連呼しているのはやっぱり整合性が取れて無くて、単に政策修正の話をしたくないから極端な言い方をしているだけ、としか思えないわけですよ。

『別の一人の委員は、政府による賃上げ優遇税制等も活用しつつ、消費者物価の上昇を賃金の上昇に繋げていくことが重要であるとの見解を示した。』

節子、それ持続的なつながりになるんかいな???

『ある委員は、女性や高齢者による労働供給の更なる増加が難しい中、経済の回復とともに労働市場の需給が引き締まっていけば、中間層の賃金が上昇しやすい環境になっていくとの見方を示した。』

ほうほうそうですかそうですか(じっと給与明細を見る)。

『一方、別のある委員は、「企業行動に関するアンケート調査」では、企業の成長期待に上方修正がみられず、先行き、賃上げが持続するかどうか、不透明感があると述べた。』

まあこっちでしょうかねー。という所ではあるのですが、物価の話をする中で以前から「ノルム」を変えないと行けないというような話をしていた割には、「雇用者所得の上昇」の部分での話に「ノルムが変わる」という観点からの指摘が見られないのも何だかねーって感じです。


・でもって物価の部分

次が物価の部分です。

『物価面について、委員は、消費者物価の前年比は、携帯電話通信料の引き下げの影響がみられるものの、エネルギー価格などの上昇を反映して、0%台半ばとなっているとの認識で一致した。』

この辺は現状の話になります。

『一人の委員は、企業物価が歴史的な伸びを続ける中、消費者物価についても基調的な上昇圧力が徐々に高まってきているように窺われると述べた。別の一人の委員も、企業が原材料コストの上昇を小売価格に転嫁する動きが拡がっているように見受けられると指摘した。この委員は、その背景として、同業他社の値上げやエネルギー価格等の上昇といった消費者に理解されやすい事象が増えているため、企業が、以前よりも値上げに対する消費者の納得感を得られるだろうと考えていることが影響しているのではないかと述べた。』

別に納得はしてませんけどね。

『これに対し、複数の委員は、エネルギー関連や食料品等で値上げが確認されるものの、企業物価の上昇に比べれば、小売価格への転嫁は現時点で限定的であるとの見方を示した。このうちの一人の委員は、その背景として、内需の回復が十分ではなく、企業にとって製品価格へのコスト転嫁が難しいマクロ経済状況が依然として続いていることを指摘した。』

ほうほう。

『この間、予想物価上昇率について、委員は、緩やかに上昇しているとの見方で一致した。一人の委員は、インフレ予想は、家計、企業、エコノミスト、市場参加者のいずれの指標をみても、このところ上昇していると述べた。』

もっとも重要な期待インフレの話がこれだけか・・・・・・・・


でもって先行きですけど、

『物価の先行きについて、委員は、消費者物価の前年比は、当面、エネルギー価格が大幅に上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁も進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、プラス幅をはっきりと拡大するとの見方で一致した。』

『また、委員は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調的な物価上昇圧力は高まっていくとの認識も共有した。』

この次の会合の展望レポートでも上記のような話になっていますし、まあだいたい今までもずっとそのお絵描きできてますな。

それはそれで良いんですが、一方で今の日銀の説明って、「今の上昇はコストプッシュ」「需給ギャップがマイナスなので今の物価上昇が持続性がない」という話をしていて、しかも上記の所得の話をみるとそんなに所得が威勢よく上がる話もなくて、そういう状況で何で需給ギャップが改善したり中長期的な予想物価上昇が高まるという見通しがサクッと出てくるのか、という所に論理の飛躍がある訳ですよ。

これは何でかと言えば、毎度申し上げているように、足元の物価上昇について全然ポジティブに言わないのは政策修正の話に繋げられたくないから、先行きはメカニズムが働くと言ってるのは政策運営そのものが間違えていないことにしないと行けないから、というロジック的に繋がらないものを繋げてから現状判断と見通しを作るから訳の分からんことになるんですよね。

『複数の委員は、消費者物価の前年比は、原油価格の動向や政府の対応次第ではあるが、エネルギー価格の上昇を主因に、4月以降、はっきりとプラス幅を拡大し、当面、2%程度の伸びとなる可能性があるとの見方を示した。』

えーっと、そういう人が複数いるのに何で4月展望の大勢見通し中央値は1.9%という芸術的な数字になったんでしょうかねえ。

『そのうえで、このうちの一人の委員は、2022 年度の物価上昇はコストプッシュ型になると予想されるため、その後には相応の反動が生じる可能性があると述べた。』

という割には23年度の見通しそこまで劇的に下がらないんですよね。

『別の複数の委員も、家計の予算制約や企業の競争環境なども踏まえると、足もとの輸入原材料価格の高騰が、消費者物価の持続的な上昇に繋がる可能性は低いとの見方を示した。』

というのはいいんですが、じゃあ何でお前らさっき「委員は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調的な物価上昇圧力は高まっていくとの認識も共有した。」って認識を示してるんでしょうか??????と甚だ疑問に堪えない訳で、もしかしてボンクラの皆さん「三歩歩くと前の事を忘れる」って奴でしょうかと小一時間。

『このうちの一人の委員は、消費者物価の持続的な上昇には、賃上げによる家計の購買力の引き上げが必要であると付け加えた。もう一人の委員は、賃金と物価の持続的な上昇には、就業者の7割が働く中小企業を含めた企業の生産性向上が欠かせず、人的資本投資等によるイノベーション力の強化や、スタートアップ育成等による新陳代謝の活発化と企業の構造改革を支援する地域金融機関の取り組みが重要であるとの見方を示した。』

金融政策で2%達成という話と全然違いますけど政府との共同文書見直した方がいいんじゃないのですか???

『ある委員は、わが国に根付いているとみられる値上げに否定的な同調圧力が薄れ、値上げ許容度の改善が拡がっていくかに注目していると述べた。この点について、別のある委員は、1970 年代の世界的なインフレ局面において、日本の消費者物価の上昇率は、主要先進国の中で最も高かった事実を指摘したうえで、わが国企業にみられる同調圧力は、ひとたび値上げの動きが生じれば、次々と連鎖的に拡がっていく可能性を示唆しているとの見方を示した。』

同調圧力とか品の無い言葉使うなよ(と品の無いアタクシが言うのも何だがあっちは公文書ですから)何言ってるんだお前は。

『この間、一人の委員は、企業の価格設定行動や予想インフレ率に変化がみられるものの、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると、2023 年度末に「物価安定の目標」を達成するのは難しいと述べた。』

片岡さんかな?


なお、一般的にはここで政策に関する議論の部分をネタにするのが妥当と思われますが、読んでみても別に心に響く話もないし、ニワトリの皆さんの話を人間様である皆様が読んでもしょうがないと思うので割愛します、というか4月の方を読むほうが面白そうなのでそっちの時に楽しみにしようかなと。






2022/05/09

お題「主にECBの要人発言備忘用クリップ/黒田総裁会見がひたすら見苦しい件について(その2)」

土日に更新すると大口を叩いておりましたが、いつものぐうたら病が発症してしまいましてぐうたらするだけで終わってしまいましたすいません。

〇何か次はECBの方もアレですな(ただの発言クリップですすいませんすいません)

欧州の場合は景気がアイヤー気味の中でインフレ退治しないといけないというのがあるから米国よりも大変ですわな。

これは金曜に出てたんですが。
https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-holzmann-idJPKCN2MR1PT
2022年5月6日2:44 午前
ECB、6月に利上げ決定の公算=オーストリア中銀総裁

『[ウィーン 5日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのホルツマン・オーストリア中銀総裁は5日、ECBは6月の理事会で利上げを決定する公算が大きいとの見方を示した。ホルツマン総裁はオーストリア紙ザルツブルガー・ナーハリヒテンが開催したイベントで、ECBはいつ利上げに踏み切るのかとの質問に対し「ECBは利上げを計画しており、6月の会合で検討し、実施する可能性が高い」と述べた。』(上記URL先より)

ホルツマン先生は過激タカ派なのでまあ話10分の1くらいに聞くとしても、6月利上げはおめー話が違くね?って感じでそれをぶっこんできたのはおうおうと思いましたが、このオッサンの発言は後から飛んでくる高官発言の露払いだったみたいですな。


でもってこの発言も金曜に見ましたな。
https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-villeroy-idJPKCN2MS0NA
2022年5月6日6:19 午後2日前更新
ECB、中銀預金金利を年内にプラスにすべき=仏中銀総裁

『[フランクフルト 6日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのビルロワドガロー仏中銀総裁は6日の講演で、中銀預金金利を年内にプラス圏に引き上げるべきだとの認識を示した。まず6月末で債券買い入れを中止し、「その後数回の」理事会で現行マイナス0.5%の中銀預金金利を引き上げるべきだと発言。「予想不能な新たなショック要因がない限り、年内にプラス圏にすることが妥当だと考えている」と述べた。』(上記URL先より)

過激派ホルツマンの6月はちょっと過激派ですけど、まあこれは分からんでもない、というかもうこうなると7月利上げは待ったなしですわなECB。


レーンじゃない方のレーン総裁(^^)。
https://jp.reuters.com/article/ecb-rates-rehn-idJPL3N2WY2W0
2022年5月7日2:35 午前
ECB、7月利上げへ 年末にはプラス圏=フィンランド中銀総裁

『[ザルツブルク(オーストリア) 6日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのレーン・フィンランド中銀総裁は経済セミナーで、ECBが「7月に利上げを開始し、今秋までに(政策金利を)ゼロ%に引き上げ、年末ごろにはプラス圏になる」と述べた。』(上記URL先より)

ビルロワドガローさんと同じこと言ってる感じですな。

ツイッターでいうなツイッターでwwww
https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-elderson-idJPKCN2MS1BH
2022年5月7日12:20 午前
ECB、高インフレの期待への定着避けるべき=エルダーソン理事

『[フランクフルト 6日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のエルダーソン専務理事は6日、ユーロ圏のインフレ率について「非常に高い」とし、ECBは高インフレがインフレ期待に定着しないようにする必要があると述べた。ツイッターで「利上げのタイミングは今後のデータ次第だ。6月(9日)の理事会で詳細を議論する」と指摘。「高インフレが市民の期待に定着しないようにしなければならない」と語った。』(上記URL先より)


バイトおじさんの後だから存在感がイマイチなんですけどドイツ様
https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-bundesbank-idJPKCN2MS1BS
2022年5月7日12:20 午前
ECB利上げへの時間枠、「徐々に狭まっている」=独連銀総裁

『[フランクフルト 6日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのナーゲル独連邦銀行(中銀)総裁は6日、過去最高水準となっているインフレ率に対応するための利上げを行う時間枠は徐々に狭まっているとし、早期利上げへの支持を示唆した。』(上記URL先より)

他のECB高官のニュースのURLが「article/ecb-policy-名前」なのに本件だけブンデスバンクになっている辺りにバイトおじさんの存在感強すぎでナーゲルさんの空気化を感じてしまいますw


まあ欧州の場合、景気が怪しいのでコケる前にマイナス金利とかいうクソ大失敗政策を解除しないといかんがね、というのはあるのかも知れませんですよね。別に欧州の場合は中立金利まで金利を上げましょうとかそういう話じゃなくて、APPとマイナス金利を終了して「普通の金利政策」に戻したい、ってのはあるかも知れませんな、欧州そんなに詳しくないから知らんけど、景気がアイヤーで物価が落ち着いて来ると見るんだったら、確かに物価が下がりだす前にAPPの終了とマイナス金利の撤回をぶっこんでおくと、「政策の大敗北を誤魔化しながらしれっと転進」という事ができる上に「インフレ鎮静化はワシが育てた(ドヤ顔)」というプレイが可能になるとゆーメリットもあるから、むしろ欧州の方が切迫感強いのかもしれません。


そういや蟹総裁になってからこの方イマイチ面白くなくなった(キング総裁の時は色々と見ごたえがあったんで、今にして思えばマーヴィンキングは偉大だったということです)BOEちゃんですが、ご案内の通り、

https://jp.reuters.com/article/britain-boe-pill-idJPKCN2MS0OR
2022年5月6日7:04 午後
英中銀、金利設定で難しい判断に直面=チーフエコノミスト

『[ロンドン 6日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)のチーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏は6日、景気に打撃を与えず高インフレを抑制するため、どこまで金利を引き上げるべきか、難しい判断を迫られているとの認識を示した。同氏はCNBCテレビに「現在の困難な状況でバランスを取ることは難しい。そうしたバランスを取るために金利をどこに設定すべきかという議論そのものが、非常に微妙なバランスの上に成り立っている」と述べた。』(上記URL先より)

英国の場合はリーマンショック以降の時期でも平気で物価が2%を超えまくって、しかし経済が全然強くないのがアカラサマなので金融緩和政策は続けないといけないので毎回のように財務大臣に向けて詫び状を書く、とかいう時期があったくらいにはインフレ体質が凄い国なのですが、さすがにダブルデジットインフレとなるとどうしようもないし結局お前らまた英国病かよwwwww

とか草を生やしている場合でも無くて、我がポンニチ国におかれましても狂信者かという信念の元で自国通貨安政策を必死こいて推進する中央銀行総裁様がいらっしゃるので、英国病wwwとか言ってる場合じゃないかもしれないのがシャレにならんのですな。まあ何かの参考になるのかも知れませんが、なにせキング総裁の頃は色々と読み応えあったんですが、蟹さんから徐々に劣化傾向にあり、今の総裁はボンクラと来ているのでどうもねー。


なお、クリップついでにカシュカリ大僧正
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-kashkari-recession-idJPKCN2MS1K2
2022年5月7日2:25 午前
供給網の問題解消必要、不況回避に向け=ミネアポリス連銀総裁

『[6日 ロイター] - 米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は6日、サプライチェーン(供給網)の問題の自律的な解消が始まらない場合、米連邦準備理事会(FRB)はより積極的に利上げを実施し、リセッション(景気後退)のリスクを負わなければならないだろうと述べた。』(上記URL先より、以下同様)

そうなるわな、と思いますし、そうなったら日本だけマイナス金利脱却できないまま次のサイクルに入るんですがおい黒田てめえはもう来年退任だから逃げ切りしか考えてねえのは分かるけど後の事か日本の事とか考えてねえのかこの糞野郎今すぐ(以下の記載は内務省検閲によって削除されました)。

『ミネソタ大学でのイベントで「インフレ率を2%に回帰させなければならないことは認識している」とした上で、労働市場がやや軟化したとしてもインフレを抑制させる効果はそれほど大きくないとの見方を表明。「サプライチェーンの問題が自律的に解消されず、われわれの追い風とはならずにインフレ抑制に向け積極的な金融政策(の引き締め)を実施せざるを得ないのなら、その時は失業率の上昇につながり、リセッションに陥る可能性がある」とした。』

まあでも中央銀行としてインフレ放置プレイはあり得んのでそうなるリスクあるわなと思いますし、もうこの際日本が手を挙げて「通貨も安いし物価水準も低い我が日本国が世界の工場に戻ればサプライチェーンの問題とか起きませんよ」とでもやればどうやと思ってしまいますな。

などという中ですが、金曜の続きで総裁様の意地と面目の為にヤケクソ政策をぶっこむ、という官僚制の一番悪い所がもろに出ている中央銀行総裁会見ネタの続きをば。


〇総裁会見は結局全編に渡って見苦しい物でしたしテキストに落とすと更にひどさが目立ちますね(その2)

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220502a.pdf


・コアコア物価が順調に上がるというインチキ見通しに関する質疑

金曜にネタにした2番打者(幹事社の質問の次の次の人ね)の次の打者も中々辛辣な質問をしておりました。

『(問) 二点お願いします。資源高の影響が減衰した後には、価格転嫁と賃上げによって基調的なインフレが加速するというのが展望レポートの基本的な見通しだと思うのですが、資源高の影響は交易条件の悪化を通じて、日本経済にとってはマイナスに作用しますし、ウクライナ情勢を受けて、IMF等も世界経済に下振れリスクが出ているとして見通しを下方修正しています。』

そもそも「コストプッシュだから政策の修正すら不要」という言い方をしているのですよね日銀は。

『そうした中、日本経済には相当下振れリスクが今後高まるようにも思われるのですが、そうした中でも 2023 年度、2024 年度に需給ギャップの改善に支えられて基調的にみたエネルギーを除く物価が 1.3%、1.5%と高まっていくとされる根拠を教えて頂きたいというのが一点目です。(後半はこのあとで)』

そらそうよという質問でして、先日も申し上げましたように、今回の展望レポートの見通しって「ここまでの究極な『政策から後付けで作った見通し』があろうか」という位に前代未聞の物件で、22年度のコア物価が+1.9%というのがもう+2.0%よりも下だと言って物価が上がらんから政策の修正をしない、と言っているのが見苦しい所に来て(本当の本当にコストプッシュで一時的でそこまで物価が上がらんと思ってるんだったら別に+2.1とか出しておいても「これは特殊要因で嵩上げされているだけですからこれだけを持って政策の修正は行いません」と言い切れる筈なのですが、そこで2%台の数字を出さないで寸止めする所が「木っ端役人」という言葉がこれほど当てはまろうかという小役人根性旺盛な数字の出し方)、「そんなに一時的なんだったら追加緩和すれば良いじゃないか」と言われたり、「日本だけ物価が上がらないのはそもそも今の金融政策が間違っているんじゃないですか」と言われたりしたくなくて、今の政策が適切だとアピールしたいがために、コアコア物価が徐々に上昇する、という鉛筆舐め舐め見通しをだすという物件で、アタクシも10年どころじゃなく日銀ネタ見てますが、ここまで見苦しい見通しは中々みた事がないという恥ずかしい物件なので、そらまあこういうツッコミが飛ぶのは当然。


黒ちゃんの回答が全然回答になっていませんが引かれ者の小唄を確認しましょう。

『(答) 一点目については、コロナ感染症の完全な収束に至っておらず、その影響が続いているということで、消費などに下押しの圧力がまだ残っています。しかし、趨勢としては消費の動きも持ち直しつつあり、特にまん延防止等重点措置が解除されて以降、人の動きもだいぶ増えてきており、サービスに対する需要も高まってきています。それから設備投資は堅調な企業収益に支えられてしっかりしているということもあります。』

『従って、経済が回復していくというシナリオ自身は変えていませんが、展望レポートでも示されている通り、2021年度と 2022 年度の実質GDPの成長率は下方修正しているわけです。他方で、その反動として 2023 年度の実質成長率は上方修正したということで、IMF等が世界経済について当面の成長率を下方修正したこととも平仄はとれていると思います。』

「当面は下押ししているが先行きは堅調」なのであれば、そもそも「コストプッシュだから物価上昇が長続きしない」という理屈の方がおかしいということになりますけど・・・・・・

『そうした意味で、今回の政策委員の大勢見通しは、そういったことも反映しつつ、基調としての回復は変わっていないという考え方に基づいて、見通しを示しています。もとより、当面、成長率について下振れリスクが残っていることは、この政策委員の見通しでも示されているところですので、ウクライナ情勢や感染症の動向、その他の状況についても十分注意していく必要があると考えています。』

アタクシにしては珍しく今回はライブ映像みてました(最近は質問が良くなって来たので見る気が起きます)が、この辺り完全に棒読みテイストを醸し出してダラダラと話しておりましたな(個人の感想です)。

『なお、賃金についても、堅調な企業収益を反映して、これまでのところ春闘のベアも数年ぶりにかなり高い水準になっていますので、そうしたことが今後続いていけば、適切な物価上昇率になっていくと考えています。(後半部分は次に)』

ということなんですが、「適合的期待形成」の力が大きいと今まで主張していた件との整合性が全然取れていない訳でして、経済がコケるなら兎も角、先行きの経済が堅調に推移するのであれば、背景がコストプッシュであったとしても、実際の物価上昇がインフレ期待にフィードバックするループが回り、しかもその間に経済が順調に成長する(2023年度は経済見通しを上方修正している)んだったら、日銀のコアコア見通しのような一次関数的な上昇にはならんじゃろ、という話ではありまして、まあ元々過去との整合性が無茶苦茶な政策の継ぎ足しをやっているのですが、それにしても今回の場合は「政策の修正をびた一文行わない」という目的から後付けしているだけに展望レポートの中でも整合性が取れておらん訳ですよ。


・そもそも2024年度のコアコアが+1.5%なら引き締めは兎も角正常化模索するもんじゃないでしょうか

というご尤もな質問がこの質問のお方の後半にありまして、質問が仰せ御尤もなだけに回答が酷いんですよね。

『(直前で引用した質疑の続きです)二点目ですが、そうした長期的には望ましい形での物価上昇で、中長期的な予想インフレも高まっていくというのが展望レポートの見通しだと思うのですけれども、2024 年度、仮に今想定しているように、基調的にみて 1.5%まで物価が上昇する姿になる頃には、今のようなコストプッシュのインフレではないので、今の緩和的な金融政策、イールドカーブ・コントロールの修正を議論する余地が生まれるのでしょうか。』

ちなみにこの質問、惜しかったなと思うのは「基調的に見て1.5%まで」だとパンチ不足な事。日銀の展望レポートの見通しは「年間平均」ですので、基調的な物価見通しが22年度以降+0.9→+1.2→+1.5となっておりますので、実際には24年度の後半になると+1.5%を超えるという事になっていないとこの見通しと整合性が取れなくなるので、「2024年度後半には+1.5%を上回るような状況になると見込まれます」って言いながら「その位まで上がれば修正の可能性はありますよね」と聞けばなお完璧でしたが、まあこの質問も実に素晴らしい。

しかし黒ちゃん、もう本人が逃げ切った後の話しであっても「政策修正」という言葉を使うとその瞬間に石にでもされてしまうとでも思っているのか頑なにも程がある発言をするのでありました。

『(直前で引用した質疑の続きです)二点目はそれに関連するわけですが、エネルギー価格は大きく変動していますので、それを除いたところでみた趨勢という意味では、今回お示しした生鮮食品・エネルギーを除いた消費者物価指数で、2022 年度は+0.9%、2023年度が+1.2%、2024 年度が+1.5%ということで、確かに基調としての消費者物価指数が緩やかに上昇していくという見通しであることは事実です。』

『けれども、1.5%でも 2%にはまだ届いていませんし、除く生鮮食品の物価上昇率で言いますと、2024 年度でも 1.1%という見通しであり、今のところ、こういう見通しの通りであれば、金融緩和の出口を早急に探るということにはなっていないと思います。そういう意味では、粘り強く金融緩和政策を続けていく必要があると考えています。』

足もとでは除く生鮮のCPIが上がっているのをネグり、将来では基調的なCPIが上がっている、しかも見通しが「一時的」じゃないのですから、普通に2025年度になれば目標達成が見えるというような状況なのに、その時は基調的なCPIをネグる、とか兎に角「政策修正」という言葉を絶対に使わない、というのだけは良く分かるんですが、いやいやいや基調的な物価が1%台後半まで上がってるのにマイナス金利に10年0%のYCC継続してたら無茶苦茶な金融緩和になるだろお前は何を言ってるんだお、というお話でございますな。

もしかして黒ちゃんの体内には闇の組織の陰謀か何かでいつのまにか政策修正と言った瞬間に大爆発するような爆弾でも埋め込まれてしまったんじゃないかと思う位に理屈も何もあったもんじゃない頑なな態度は、さすがにちょっと黒ちゃんの頭(以下の記述は内務省検閲によって削除されました)。


・まいにち!さしねおぺ!!で為替市場が動かなかったと言い張るのは幾らなんでも見苦しいのではないか

という質疑の次が金曜にネタにした2番打者の質疑のフォローアップでしたが、その後でも当然為替の質問が来るわけで、

『(問)(前半割愛) また、先ほど、指値オペの明確化について、市場の憶測を払拭して変動を抑制するためと、そのようにご説明されたのですが、むしろ、イールドカーブ・コントロールの厳格な運用自体が過度な円安とか変動を招いて、先行きの不確実性を高めているということは考えられないのか、その辺について総裁のお考えをお願いします。』


『(答) (前半割愛)指値オペ自体がマーケットを大きく揺らしているということはないと思います。』

いきなりのゼロ回答wwwwwww

「我々が物価目標達成のために長期金利を抑制する姿勢を明確に示したことが理解された」くらい堂々と言えばよいのですが、さっき悪態ついた「2022年度のコアCPI見通し+1.9%」と根っ子の部分が同じで、政策修正の思惑とかで円高になるのを止めようとしたらこうなるのは明らかですし、さすがに日銀もそこまで馬鹿じゃないから分かっている筈なのに、「指値でマーケットが動かん」とか言い出すとさすがに中継聞いてた(見てた)アタクシも椅子からコケそうになりましたし、大体からしてこんな回答したら不誠実の極みな訳でして、そら記者会見の質問も段々辛辣になるわ。

結局ですね、さっきの2022年度+1.9%と一緒で、後から「なんで2%超える見通しなのに政策の修正どころか指値オペの運営強化をしたんですか」とか「円安進行を招くのが分かっているのに何で指値オペの運営強化をしたんですか」と言われたくない、という小役人根性によってこういう不誠実回答になる訳なんですが、黒ちゃん不誠実回答なの分かってて回答してるのか分からないで回答しているかがどうも謎なのはある意味大物ではありますなwww

さてその続き。

『そもそも欧米の金融政策もありますし、ドル建ての資源価格の大幅な上昇等によって為替市場を含む市場が影響を受けるということは十分考えられます。そうした中で、日本銀行は、金融政策として、10 年物国債金利をゼロ%程度に維持し、変動は±0.25%の範囲内であると明確にしています。』

この後がまたも「今回の指値オペ運用明確化は外野からの煽りにブチ切れて実施しました」というのを正直に表明する発言が飛び出しておりまして、まあ何回もこれ言ってるだけに心底そう思ってぶっこんだのだろうなと思うのですが、そんな理由で金融政策やるなよと思いますし、それを一切止めないボンクラ共は何をやってるんだと思いますが、まあそもそもリフレ派委員とかいうゴミクズを送り込んだのは以下同文。

『それにもかかわらず、時折、憶測とともに色々なことが起こったので、指値オペを実施しましたし、毎回指値オペを実施するか否かについての憶測が生じないように、今回、日本銀行の考え方をきわめて明確にして、基本的に必要があれば毎日でも実施することをはっきりさせました。』

ここまで堂々と「逆切れ宣言」をするのはあたおかを通り越していっそ清々しいですけどね。

『従って、指値オペ自体もそうですし、今回の決定もそれがマーケットを過度に変動させることにはならず、むしろ、より安定させると思います。』

>今回の決定もそれがマーケットを過度に変動させることにはならず
>今回の決定もそれがマーケットを過度に変動させることにはならず
>今回の決定もそれがマーケットを過度に変動させることにはならず

これは記者の皆さんカチンと来ますわな〜。もはやアタクシは抱腹絶倒モードでしたがこの辺。

『マーケットが日銀の金融政策に関する憶測を巡って揺れ動くのは適切でなく、』

>マーケットが日銀の金融政策に関する憶測を巡って揺れ動くのは適切でなく
>マーケットが日銀の金融政策に関する憶測を巡って揺れ動くのは適切でなく
>マーケットが日銀の金融政策に関する憶測を巡って揺れ動くのは適切でなく

おどれらの政策が合理的じゃないし、過去言ってたことと違うロジックで結論先にあり気の政策をしているからおんどれの意に沿わない動きをするだけの話しなんですけどねえ・・・・・・・・・・・

『それを抑制するための措置ですので、そういったことはないと考えています。』

しかしこれも聞いてるときは笑いながら聞いていましたが、文字に落とすと無茶苦茶な説明になっていまして、いやーこの会見要旨作ったスタッフの方の感想を聞きたいくらいですわ(無茶ぶり)。


・YCC政策と短期金利操作の出口着手の差について聞かれて「同じ」とか言い出す珍回答

この質疑の回答は酷かったですよね。会見の最後の方になります。

『(問) 日銀が再三にわたって金融緩和政策を維持する意思を強調しているにもかかわらず、総裁もおっしゃる通り、市場に政策修正を巡る憶測・観測が消えない背景として、長期金利操作に関する政策の変更というのはなかなか事前に市場に織り込ませる手法が使いにくい点があると指摘されます。』

さいですな。

『短期金利操作や量的緩和と違って、長期金利を操作対象にする政策の場合、事前に政策修正に関する情報発信をすると、すぐに操作対象である長期金利が変動してしまう、上がってしまうという事情があるということですが、イールドカーブ・コントロールというのは、前もって円滑に市場と対話をしつつ政策修正に向けて準備していくという手法が果たして使える政策なのかどうか、その点についての総裁のお考えをお聞かせください。』

と比較的穏当な質問をしていたのですが、何をトチ狂ったのか無茶苦茶な回答をおっぱじめる黒ちゃん。

『(答) なかなか理論的に難しいご質問ですけれども、短期金利だけを政策手段として長期金利は一切タッチしないという政策は、短期金利を操作することによって、短期金利の将来の動きの期待が変わって長期金利が変わるということでしょうけれども、むしろそちらの方がマーケットがどうとらえたらいいのかというのは簡単ではありませんので、よりマーケットとのコミュニケーションがスムーズだとも言えないと思います。』

・・・・・・・おいこらこの想定問答だれが作ったんだよさすがにちょっとマリアナ海溝ドラム缶ツアーもんだろ。

『それから、欧米もわが国と同じように長期国債やリスク資産の買入れを行っていますが、明らかに長期金利をコントロールしようということで行っているわけで、その長期国債の買入れを減らしていくこともマーケットにどう取られるかというのは、そんなに簡単ではないと思います。』

もう無茶苦茶なのですが以下更に無茶苦茶回答が続く。

『従って、イールドカーブ・コントロールだと特にマーケットとのコミュニケーションが難しいとか、調整が困難になるということはありません。』

何でそんなに自信満々に全否定できるのか、という所でして、ごく穏当な質問に対してこの全否定しかもハチャメチャな回答をしてたらそら記者会見が回を追うごとにツッコミ大会になりますわな。

以下、ひたすら無茶苦茶な回答が続きますので一応貼っておきます。

『元々「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の前は、短期金利と長期国債等の買入れという欧米の中央銀行と同じようなことを行っていました。その中で、経済に最も適切なイールドカーブを実現するためには、直接的に長期金利の目標を定めて、それに必要なだけの長期国債の買入れを行うということにしたわけです。』

じゃあ欧米と違うじゃん。

『というのは、ご案内の通り、各経済主体の経済行動に影響するのはやはり金利であって、長期国債の買入れ額が幾らかということは報道されているので分かりますけれども、各経済主体の経済計算上はあくまでも金利が第一です。』

マネタリーベースは何処に???オーバーシュート型コミットメントまだ生きてるんですけど??????

『アベイラビリティももちろん影響しますが、そういう意味で、日本銀行としては短期金利操作と長期国債等の買入れを含む「量的・質的金融緩和」から「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に転換した、つまりイールドカーブに変えたということは、金融政策の効果をより明確にする、』

日本銀行の「明確にする」で出てきたものに碌なものはない、これは常識として覚えておきましょう。

『その効果の程度を中央銀行としてもよく理解し、それをマーケットにもよく理解してもらい、より効果的・持続的な形にしたということです。イールドカーブ・コントロール自体が調整が特に難しい、先ほども申し上げた短期金利操作と長期国債の買入れというかつて日本銀行が行っており、欧米の中央銀行が行っている仕組みと比べて、コミュニケーションがより難しいとか、あるいは政策の調整が難しいということはないと思います。』

くり返して全否定、しかも理由に1ミクロンも説得力がないとかこれは味方をドンドン無くす手法ですね。

『難しいときは同じように難しいですし、市場とのコミュニケーションは引き続きどちらにしても努力していく必要があるということだと思います。』

>市場とのコミュニケーションは引き続きどちらにしても努力していく必要がある
>市場とのコミュニケーションは引き続きどちらにしても努力していく必要がある
>市場とのコミュニケーションは引き続きどちらにしても努力していく必要がある

wwwwwwwwwwwwwww

#政府との整合性の質問もあったのだが時間がないのでこれにて勘弁








2022/05/06

お題「FOMC当日と翌日の反応が何でこう違うんだか/黒田総裁会見(その1)」

いやーすいません。3連休中にやるとか言ってたの結局寝起きのFOMCネタワイドバージョン(さすがに休日だったからいつもより多く更新しました。今朝の駄文の下にFOMCレビューを並べておきます)になったのですが、天気は良いわ色々とやることがあった(外出だけど)わで、結局大して更新できませんでしたすいませんすいません。


〇FOMC当日の反応が当てにならん米国市場なので「答えを見ないで結果を読む」のを推奨したい

もうね、アホかと馬鹿かと・・・・・・・・・・・・・

FOMC出た水曜の米国株式市場ニュース
https://jp.reuters.com/article/NY-STX-US--idJPL3N2WW2X2
2022年5月5日6:18 午前
訂正-米国株式市場=急伸、想定通りのFRB大幅利上げ受け

『決定発表直後は株価は一進一退だったが、FOMC後のパウエルFRB議長の記者会見を受け上昇。S&P総合500種は約3%高と、2020年5月18日以来の大幅な上昇となった。』(上記URL先より)

その翌日の米国株式市場ニュース
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-5-idJPKCN2MR1XQ?il=0
2022年5月6日5:29 午前
米国株式市場=急落、一段の大幅利上げを懸念

『[5日 ロイター] - 米国株式市場は急落して終了した。米連邦準備理事会(FRB)は前日に0.50%ポイントの利上げを決定したが、インフレ抑制には十分ではないとの見方から一段の大幅利上げに対する懸念が出ていることが背景。』(上記URL先より)

・・・・・おまいら毎回FOMC直後に反応したのの逆を翌日(以前はそれでも翌々日位だったと思うのだが)にやるとか、どんだけニュースワイヤーの出すヘッドラインに脊髄反応してるんやと小一時間問い詰めたいんですよね。、

まあアレです。ジャパンの場合は結果が出てから会見までの時間が4時間近くあるので、その間読む時間がある、とかそもそも論として日本の場合ってかつては会見のベンダーヘッドラインの中で一部にウソツキヘッドラインがあって(それもあって会見にカメラ入れてライブ中継ありになった、というのはあるような気がする)ウソツキヘッドラインに騙されて売買すると死ぬとか、そもそも総裁会見が引け後に行われるので、会見のヘッドラインで一々バカスカ売買するにはちょっと板が少な目(いやまあやる時はやりますが)だとか、まあそういうので一々脊髄反射しなくなったというのはあるのですが、それにしてもアメリカンのこのムーブは一体全体何なのよ!!!!!!という感じですな。

まー昨日も(って下の方にあるからご覧いただけると幸いです)申し上げましたが、基本的にFEDの情報発信って声明文>=オープニングリマーク>>>>>FOMC後の議長会見、でありまして(別にFEDだけじゃなくてどこの中銀もそうですけど)、まあ議事要旨の政策決定部分(普段はネタにしてませんけど)を読めば分かるのですが、FOMCの場合機関決定しているのは基本的に「声明文」「NY連銀宛てに出している金融調節方針(ディレクティブ)」でして、FOMCメンバーが議決しているのですから、この文章が一番重い。

オープニングリマーク(ちなみにECBとFEDにはあるがBOJとBOEには相当する物はない)に関しては別に議決事項じゃないのですが、議事要旨の中で「このような感じで公表時に説明した方がエエンデネエノ」みたいな意見が入っていたりしますし、ここでは議長のパーソナルビューは出さない建付けになっていますし、特に最近はこちらの内容が「声明文補足文書」っぽくなっているので、まあそれに次ぐ感じかなと思います(なお法定でやってる議会証言はこれはこれで重い)。

まあ何ですな、確かにこれまでは「さてこの政策はこれからどうしましょうかねえ」というのが声明文では分かりにくく、オープニングリマークでも何か微妙で、会見の方でニュアンスを読み取る必要があった、という事実は事実としてあるのですが、状況として「インフレ退治大正義」となっているのが明確で、方向性が明らか。しかも今回のFOMCは声明文やオープニングリマークベースでその辺「綺麗に吹っ切れた」感が強い(個人の感想です)物件に仕上がっておりまして、そっちで方向性が確り出ているんですから、まあ会見は補足オブ補足なんですよ本来は。

でもって、毎度指摘している筈なんですが、パウエル議長は声明文がタカだと会見の時にそのトーンを意図的にマイルドになるように調整しているようでして(個人の感想です)、会見のヘッドラインがバンバンと出るからそっちに反応しちゃうってのはまあお気持ちとしては分からんでもない(というかワイもかつては日本国債現物対顧ディーラーやってたから、場中にステートメントとか細々読み込むのは中々しんどいものがありましたわ)のですけど、明らかにトーン調整しているのここ数回の実績で見え見えなんだから、ちったあ学習すりゃ良いのにと思ってしまうのでありました。

アタクシの場合はドメドメ円債おじさんだったり円金利短期おじさんだったりなので、まあ別にFOMC出たからと言ってリアルタイムで会見を追っかけないと行けないほど忙しくはない(というか寝てる)のと、FEDのページに出てくるのは当日の場合「オープニングリマーク」だし、朝は諸般の事情(^^)でテキスト無いのに英文QAを根詰めて聞く暇は無いので、毎度のFOMCって初手では会見をスルーして内容を分析しているのですな。

でですね、これはいつものFOMCの時でもそうですし、時々申し上げておるので読者の皆さまご案内の通りで、アタクシはFOMCの結果を読み込む朝に関しては兎に角真っ先にFEDのサイトから必要なものを紙に出して、余計なニュースは一切見ない(ラジオのニュースも聴かない)で読むようにしてまして、これは「結果に対する先入観を持たない」で分析するというのに役立つと思うのですよ。でもって最近は会見で意図的なトーン調整が行われている(と個人的に思っているだけですが)から、これも一種のノイズだと思うし、まあそもそもそこまで聞けないから別にキニシナイのですが、真面目な話、今のFOMCの場合は会見内容を読むのは1泊置いてから詳しく読むのをオヌヌメ致します(個人の感想です)。

・・・・・・手が勝手にキーを打っていてワシャ何の話をしてるんだだ???という感じですが、まあ米債10年がめでたく3%台に戻して終了しておられまして、日銀ざまあ味噌汁な展開になっておりますので、まあ頑張れ米債と思うのでした。


〇日銀MPMレビューネタで先に総裁会見から参りますわ

今回は展望レポートネタの続きよりも先に総裁会見レビューで参ります。というのもまあ見通しに関しては先日申し上げたように「政策は動かないもんね」という結論が先にあって、それに整合する見通しをお出ししました、ってのがここまで露骨に分かる見苦しい物件は前代未聞と申し上げておきたい(ちなみに麿総裁時代とかの展望レポートは「願望レポート」だったかも知れないけど別に政策から後付けして出しているものという物件では無かったのだが、今回のは明らかに政策から後付けして作成しているのが見え見えな見苦しいもので、よくもまあこんな汚いレポート出すわと感心するのですがそれを言い出すと時間がまた無限に使いそうなので週末にやりますね!!!)。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220502a.pdf


さてそれでは総裁会見は何だったかと言いますと、今回の説明を要約しますと、(1)「まいにち!!さしねおぺ!!!!!」は皆に煽られた日銀が逆切れしてぶっこんできたヤケクソ政策、(2)黒田総裁にとっては債券市場なんぞシランガナであり為替市場の方が大事である、という2点が鮮明に示されているという感じでありますな。

・・・・と書くと実はそこれ話が終わってしまうのですが、従来の総裁記者会見では、提灯質問とか他の人がそれはもう聞いたわという質問(ただし他の人の回答が意味不明なのでサラトイツッコミをするというのは重要な話なのですが、そういう更問の名に値しない質問の事です)だったりで、回答する方もやる気無し回答という感じでクッソつまらなくてネタにも出来んわという感じでございましたが、ここに来て聞く方が俄然ちゃんとした質問をぶっこんで来るようになり、それに対する黒ちゃんの回答がこれまた誠意の欠片もない(政策が無理矢理建て増し昭和温泉旅館なのだから誠意をもって回答するとその場で死ぬから無茶苦茶な回答をせざるを得ないというのはあるけど)ので、次回の会見でのツッコミが更に辛辣になる、という前向きの循環メカニズム(日銀からしたらネガティブフィードバック)が発生していて鑑賞物として実に素敵なのでまあ鑑賞しましょう。


・「まいにち!!さしねおぺ!!!!」で為替がぶっ飛んだ件についてと過去発言の整合性について

幹事社の質問が2つあってその次の人の質問がありましたがそこはすっ飛ばして5ページ目に登場した某テレビ局の某O江さん(と聞き取りました、なお表記は仮名ですのでよろしく)がいきなりキツイ質問。いいぞもっとやれ。

『(問) 今回、連続指値オペの運用の明確化というのが盛り込まれています。これは、日銀として金融緩和継続の姿勢を改めて明確にしたということなのかもしれませんが、先ほど為替が 1 ドル 130 円を超えました。実際にこういう文言を盛り込むことによって、円安容認と受け止められて円安を加速させる可能性があるというのも認識なさったうえでのことだと思うのですが、あえてこの文言を盛り込んだ理由というのを教えてください。』

当然の質問ではあるが辛辣であるし、こういう質問をすれば後の人が更問で別のツッコミができますな。優秀優秀。

『もう一点ですが、今、総裁としても円安のメリット・デメリットのバランスをご覧になっているところだと思います。以前、2015 年 6 月、総裁自らが、更に円安に振れていくことはありそうにない、とおっしゃった時が 1 ドル125円前後でしたから、そこから比べても5円程度円安が進んでいる状況です。』

基本的に今の日銀の政策って最初だけは置物理論(まあゴミ理論だったのですけど)で一応それはそれで(内容の是非はともかくとして)話の筋は通っていたのですが、それが上手く行かない(置物理論なので行くわけがない)となった後、「間違えたという事を認めないでその場を兎に角凌ぐために色々な奇策あるいは屁理屈を捻りだす」という昭和温泉旅館も裸足で逃げ出すダンジョンを作成した結果がこうなっておりますので、過去との整合性を捕まえてああだこうだと聞くのは良い質問の手法ですな(^^)。

『まだこの水準でも、日本経済にとってはメリットの方が大きいとみていらっしゃいますか。メリット・デメリットのバランスが変わっていくのは、どのくらいの水準、もしくはどういう状況だとみていらっしゃるのでしょうか。』

ということで黒ちゃんの回答だが、こんな火の玉ストレートの質問にはまともに回答すると即座に引火爆発炎上待ったなしなのでまともに回答しないのであります。

指値オペの意図についてはちゃんと回答しておりますが、その意図を見ますとそらもう国内債券市場の片隅でおこぼれを頂戴して生きている人間にとっては直球で死ねと言われているような回答があってもうこの時点でアイヤーですよアイヤー。

『(答) まず、今回指値オペについて明確化したというのは、指値オペ自体が何か変化するということではなく、』

じゃあわざわざ声明文に書くなよ柔軟な対応ができないじゃないか馬鹿、と思ったら・・・・・・

『あくまでも従来申し上げている「10 年物国債金利がゼロ%程度」というイールドカーブ・コントロールの操作目標のもとで、金融市場調節を実施しており、昨年 3 月の点検でも、長期金利の変動幅は「上下に±0.25%程度」であることを明確化したわけです。』

そもそも経済物価情勢が内外共に大きく変化しているのに何で1年前と同じ数字が適切なのか、ってのちゃんと検討してるのお前ら?????

『日本銀行は、今後ともこうした金融市場調節方針を実現するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行っていきます。』

『その際、海外要因等によって長期金利に上昇圧力がかかった場合でも、金利変動幅の上限をしっかり画する観点から、10年物国債金利について 0.25%での指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除いて、毎営業日実施することにしたわけです。』

全然質問に対する答えになってないじゃん、と思いながら読み進めますと、この次に「ボクちゃんYCCを絶対に変えないんだもんねー」ということで、外野の煽りがうるさいから、という無茶苦茶な理由で債券市場機能破壊になる毎日指値オペをぶっこみました、という説明をしております。

『これは、金融資本市場の一部で、このオペ実施の有無から日本銀行の政策スタンスを推し量ろうとする動きもみられていたわけですけれども、そうした憶測を払拭して、日本銀行の従来からのスタンスを明確にすることが、市場の不安定性を減じることにつながると考えて行ったわけです。』

これは酷いwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

えーっとですね、政策がちゃんと整合的かつロジカルに実施されていれば、きちんと日銀の政策スタンスとか意図とかを理解できるわけですし、市場だって馬鹿じゃないんですから、ちゃんとしたロジックのある政策を実施していればご指摘のような事は起きないわけですよ。

然るに、例えばの話YCC導入時に言ってた「均衡イールドカーブ」の概念からしたら、本来ある程度の幅はあると言っても、この1年間の経済物価情勢の変化において目標とすべき均衡イールドカーブの形状が一切変わっていない、というのも変な話だし、他に例えばの話0.10%から2倍程度にした時だって、適切な緩和度合いと市場機能のバランスを考えて2倍程度にしたはずなのに、何で今回はその逆で固定化するのか意味不明だし、というように、過去の日銀の説明および論理展開を徹底してなかったことにしてその場だけ整合性のある屁理屈を繋げて政策の延命をしているからこういうことになる訳ですね。

すなわち、今の黒田日銀にしてみれば債券市場機能とか当然どうでも良くて、むしろ2%物価目標達成よりも、今の政策をびた一文変化させない(で自分の任期を逃げ切る)、というのが目的になってしまっているんですが、まあ昭和違法建築建て増し建て増し温泉旅館政策だから仕方ないですね!!!!!!!


と悪態が長くなりましたが後半の「おんどれの政策で為替飛んだんだが急激な変動はイカンって言ってたのは何だったのか(意訳)」の回答です。

『為替相場の水準については、従来申し上げているように、色々なことを具体的に述べるのは差し控えており、』

いやおんどれの馬鹿政策のせいで為替が飛んだやんけって質問にこの回答は無いだろおいこら。

『あくまでも為替相場は、経済・金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいと考えています。』

何時ものセリフなんだが、ふと疑問に思ったんですが「ファンメタを反映して推移するのが望ましい」んだったら円安円高はあくまでもファンメタの「結果」なのですから、円安になろうと円高になろうと経済に対しては中立ということになるんじゃないんですかねえ。まあどうでもいいけど。

『そうした意味で、為替相場が短期間に過度に変動することになると、先行きの不確実性を高めて、企業の事業計画の策定等が難しくなる面がありますので、日本銀行としては、今申し上げたような考え方に沿って、為替相場の変動が経済・物価に与える影響を十分注意してみていきたいと思っています。』

だからおんどれがその急激な変動を起こしとるんだが。

『なお、現状、全体として円安がプラスという評価を変えたわけではありませんが、過度に急激な変動は、今申し上げたように、不確実性の高まりを通じて、マイナスに作用することも考慮する必要があると考えています。』

さすがは意地っ張りの黒ちゃんだけの事はあって、最後に捨て台詞のように「円安はプラス」とぶっこんでくる辺り、頑固に意地を張っているし、その結果が今回の毎日指値オペですなあと思うと連休の谷間(と言っても生業は暇では無いのだが)なのに血圧が上がりますね。


・しまった時間がないので今の質疑の実質更問(質問してるのは別の人でした)を鑑賞しましょう

いやーもっとサラサラやるつもりだったのですが、思わず米国市場に反応して余計な長広舌を振るったのと、折角良い質問をしているO江さん(仮名)に全然まともに答えてないわということでトサカに来て時間が無くなって来ましたので今の質問に関する更問みたいなのがあったのでそれを鑑賞しましょう。

良い質問にちゃんと答えないと更問が飛ぶ、という見本のような質疑が8ページにありましてですね、

『(問) 二点お伺いします。一点目が連続指値オペの件ですけれども、総裁は、指値オペについて、強力な金利を抑える手法ということでおっしゃってきましたけれども、ラストリゾートという言葉も使ったことがあったかと思います。それを常態化させる今回の方針というのは、市場機能を阻害することにならないのか、もちろん金融政策は効果と副作用の衡量で決まるとは思うのですが、その辺りをどのように考えているのか、ご解説ください。』

しれっと過去の発言を蒸し返すのがチャーミング。でもって後半はおんどれの政策のせいで為替がネタ。

『二点目ですけれども、過度な為替相場の変動というのは好ましくないというご説明を繰り返されていますが、結果として今日の決定内容が市場に急速な変化をもたらして、20 年ぶりの 130 円台をつけているわけですが、この動き自体をどう評価されるか、ご見解をお聞かせください。』

良い更問である(^^)。

でもって黒ちゃん。

『(答) まず、連続指値オペ、指値オペについて、今回のような明確化をしたのは、あくまでも連続指値オペをするかしないかということで、毎回市場に余計な憶測を招いて市場が変動することはあまり適切ではありませんので、』

そんな人はいないと思うんだが。というか別に明確化しなくたって毎日指値すりゃ良いだけじゃん。

『私どもの基本的な考え方――当面ゼロ%程度といった場合には±0.25%の範囲内での変動ということで、それを超えた変動は指値オペも使って防止するという考え方――をより明確にしたということです。』

まるで答えになっていない・・・・・・・・

『なお、市場の機能度云々という点は、変動は一定の範囲内であれば金融緩和の効果を損なわずに市場の機能度にプラスに作用するということではあるのですが、それを超えて金利が上昇してしまうと、ゼロ%程度の長期金利という状況を超えてしまって経済にプラスの影響を与えません。』

そもそもその水準自体が経済物価情勢や海外経済情勢、金融市場情勢によって変化しないのかという説明には絶対に触れないですね、そらまあ触れたら説明不能だから仕方ないけど。

『市場機能の維持と金利コントロールのバランスを取るという観点から、先ほど申し上げたように、昨年 3 月の点検で、長期金利の変動幅について上下±0.25%であることを示したわけであり、今回もそれに沿ったものであるということです。』

もはや0.25%がどうのこうのではなくて単に意地になってやってるだけですな。さて次は為替。

『それから日々の為替の変動については、あまりコメントするのは適当でないと思いますので、コメントを差し控えますが、先ほど申し上げた通り、今回の指値オペに関する明確化というのは、長期金利が 0.25%に近づいた時に、指値オペをするのかしないのかといった市場の憶測を回避して、金融緩和政策をより明確にする意味で行ったことであり、これにより、連続指値オペないし指値オペをやるかやらないかでマーケットが動くことは避けられると考えています。』

毎日指値オペを打つ!でマーケットが動いたんですがという質問の回答に全然なっていない・・・・・・・・・


#ということで続きは週末ですわサーセン







2022/05/05

お題「とりあえずFOMC声明文とランオフ計画書とオープニングリマーク」

という訳でまずはそちらから参りますわ。

〇FOMC声明文:インフレ退治は大正義というのを明確化しておりますな

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220504a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220316a.htm(前回)

・第1パラグラフ:足元は若干下がるが強いという全体観

『Although overall economic activity edged down in the first quarter, household spending and business fixed investment remained strong.』(今回)
『Indicators of economic activity and employment have continued to strengthen.』(前回)

足もと1Qの経済については経済活動がエッジダウンしたものの、家計消費と企業の固定資産投資は強いですよ、という全体観を示しまして、

『Job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has declined substantially.』(今回)
『Job gains have been strong in recent months, and the unemployment rate has declined substantially.』(前回)

雇用に関してはジョブゲインがストロングからロバストになっているので多分こっちの方がニュアンス強いと思うんだが。

『Inflation remains elevated, reflecting supply and demand imbalances related to the pandemic, higher energy prices, and broader price pressures.』(今回)
『Inflation remains elevated, reflecting supply and demand imbalances related to the pandemic, higher energy prices, and broader price pressures.』(前回)

インフレに関する文言は同じ。


・第2パラグラフ:インフレ退治は大正義スタンスを明確に示すわ中国要因は物価上昇要因という話をするわ

『The invasion of Ukraine by Russia is causing tremendous human and economic hardship.』(今回)
『The invasion of Ukraine by Russia is causing tremendous human and economic hardship.』(前回)

というのは同じで、

『The implications for the U.S. economy are highly uncertain. The invasion and related events are creating additional upward pressure on inflation and are likely to weigh on economic activity.』(今回)

『The implications for the U.S. economy are highly uncertain, but in the near term the invasion and related events are likely to create additional upward pressure on inflation and weigh on economic activity.』(前回)

ここがやたら芸が細かい所で、ウクライナ戦争の影響に関して(まあ3月はまだ始まったばかりというのもあるけど)3月は「近いタームでは追加的な物価上昇圧力と経済への悪影響があるかもしれませんなあ」という表現だったのが、今回って「インフレには追加的な上昇圧力」と言い切りスタイルになってて、経済に関しては前回同様「are likely to」になっていて、物価には明確な上昇圧力、経済には下方圧力かも知れませんなあ、という表現になっているのは面白いんですけど、今回は更に、

『In addition, COVID-related lockdowns in China are likely to exacerbate supply chain disruptions. The Committee is highly attentive to inflation risks.』(今回)

というのが加わりました。これに対応する文言は前回なくて、中国のコロナ対応がサプライチェーンへの悪影響を高めるかもしれません、というのをぶっこんでいます。この部分、勿論サプライチェーンの悪影響→経済へのマイナス、という文脈もアリエールなのですが、この後の会見でのオープニングリマークを読みますと、中国云々の話しは物価上昇リスクの方で意識されておりましたな。

でもって今回「The Committee is highly attentive to inflation risks.」と、まあ今までもそういう話はしていたので今更ジローではあるところでもございますが、あくまでも説明の中でそういう話をしていただけなので、声明文の中にぶっこんできたのは、スタンスを明確に示しましたよということでしょう。まあ実際問題としてこの辺はさすがにあれだけ散々インフレ退治大正義って話をしてたので市場としても織り込み済みだとは思うのですが、経済強いよインフレ退治は大正義だよ、という話を明確化しているというのがまあこの声明文って事ですな。

・第3パラグラフ:50bp利上げ&バランスシート縮小6月頭より実施

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回)

これはいつもの呪文。

『With appropriate firming in the stance of monetary policy, the Committee expects inflation to return to its 2 percent objective and the labor market to remain strong.』(今回)

『With appropriate firming in the stance of monetary policy, the Committee expects inflation to return to its 2 percent objective and the labor market to remain strong.』(前回)

3月から「firming」となっていましてこれまた同じ。

『In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 3/4 to 1 percent and anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate.』(今回)

『In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 1/4 to 1/2 percent and anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate.』(前回)

50bp利上げですな。

『In addition, the Committee decided to begin reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities on June 1, as described in the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet that were issued in conjunction with this statement.』(今回)

『In addition, the Committee expects to begin reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities at a coming meeting.』(前回)

6月よりバランスシートの縮小を開始します、詳細別紙ということで別紙は後程。


・第4パラグラフ:今後の政策スタンスはどうのこうのというのは前回と全文一致

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee’s goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回)

ここは前回と同じで全文一致。


・第5パラグラフ:ブラードは75bpと言わずに普通に50に賛成したのね

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Esther L. George; Patrick Harker; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller. Patrick Harker voted as an alternate member at this meeting.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; Esther L. George; Patrick Harker; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller. Voting against this action was James Bullard, who preferred at this meeting to raise the target range for the federal funds rate by 0.5 percentage point to 1/2 to 3/4 percent. Patrick Harker voted as an alternate member at this meeting.』(前回)

ほうほうそうですかって感じですが、後でネタにしますが会見のオープニングリマークで6月7月も各50bp利上げの予告ホームランをしれっと入れていましたので、まあそこも加味してじゃあ良いですかとなったのか、まあ変態仮面がどういう説明するのか(とは言え今回は反対した訳ではないから直ぐに何か紙をだしたりはしないと思う)見てみたい所ではあります。


〇バランスシート縮小のお品書き:とりあえず「じゃんじゃんと減らしまっせ」という意思は分かった

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220504b.htm
May 04, 2022
Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet
For release at 2:00 p.m. EDT

こちらに関してはアタクシ米債専門じゃないのでここで示されているプランが市場的にどうなのかというのは詳しくないアルね。

『Consistent with the Principles for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet that were issued in January 2022, all Committee participants agreed to the following plans for significantly reducing the Federal Reserve's securities holdings.』

「significantly reducing」というのを入れておりまして、やる気満々振りを示しています。まあそのやる気と数字の差異は米債専門の方に聞いて下さいませ(無責任)。

『・The Committee intends to reduce the Federal Reserve's securities holdings over time in a predictable manner primarily by adjusting the amounts reinvested of principal payments received from securities held in the System Open Market Account (SOMA).』

「in a predictable manner」で実施し、「primarily by adjusting the amounts reinvested of principal payments received from securities held in the System Open Market Account (SOMA).」なので基本は償還によって自然減するのを狙っていますよという話だが、あくまでもそれは原則的にという話なのでまあ今後売るという話が状況(インフレがサガランチ会長の場合、ですけど)によっては出る可能性はあろうかと。

『Beginning on June 1, principal payments from securities held in the SOMA will be reinvested to the extent that they exceed monthly caps.』

月額の償還が何ぼか以上にある場合はスムージングの為に償還が大杉の分だけについては再投資するざます、ということでまあこれも事前に言われてた通り。

『・For Treasury securities, the cap will initially be set at $30 billion per month and after three months will increase to $60 billion per month. The decline in holdings of Treasury securities under this monthly cap will include Treasury coupon securities and, to the extent that coupon maturities are less than the monthly cap, Treasury bills.』

米国債については当面300億ドル、3か月後(9/1〜)は600億ドルがキャップですよ、ということでござんすが、何かその後に書いてある英語がアタクシ頭弱いから理解が怪しげなんですが、この額を算出するときには利付債の利金と保有する短期国債の償還額も加えて計算するということのようですな、と読んだのだがそれで良いのかしら?

『・For agency debt and agency mortgage-backed securities, the cap will initially be set at $17.5 billion per month and after three months will increase to $35 billion per month.』

エージェンシー債とエージェンシーMBSについては当面のキャップが175億ドル、9月分からは350億ドルになるようですな。

『・Over time, the Committee intends to maintain securities holdings in amounts needed to implement monetary policy efficiently and effectively in its ample reserves regime.』

これも前々から言ってますが、アンプルリザーブレジーム、つまり超過準備をある程度抱えた状態で金利調節をしますよ、ということになるので、つまりはIOER(米国の場合には所要準備にも付利しているので正確にはIORか)とシステムレポとリバースレポとディスカウントウィンドウを調整の補助ツールとして残す形での運営になりますわな。

『・To ensure a smooth transition, the Committee intends to slow and then stop the decline in the size of the balance sheet when reserve balances are somewhat above the level it judges to be consistent with ample reserves.』

アンプルリザーブレジームに適正と思われる水準よりもちょっと高い所まで来たらバランスシートの縮小に関してはペースを落としていって最終的には縮小を止める形になるでしょうと。

『・Once balance sheet runoff has ceased, reserve balances will likely continue to decline for a time, reflecting growth in other Federal Reserve liabilities, until the Committee judges that reserve balances are at an ample level.』

国債MBSのランオフは本来よりも若干高めの水準までしか減らさないで終了させるんですが、時間の経過と共にFEDの負債が増える(=基本的には銀行券が増えるということですな)によって市中のリザーブバランスは適切なアンプルリザーブレジームの水準になると見ているようです。

『・Thereafter, the Committee will manage securities holdings as needed to maintain ample reserves over time.』

それらの一連の動きによって目標水準にするそうです。

『・The Committee is prepared to adjust any of the details of its approach to reducing the size of the balance sheet in light of economic and financial developments.』

ただし状況次第では変更するかも知れませんのでよろしく、というヘッジ文言入りですな。


〇ディレクティブ関連:金利をフルスライドした以外の変更はないです

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220504a1.htm
May 04, 2022
Implementation Note issued May 4, 2022
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation

PDFバージョンですと声明文と一緒に出て来るインプリメンテーションノートですが、こちらは前回と比較してみますと金利が全部フルスライドになっただけですな。念のため引用しておきます(前回比較はめんどいからパス)。

『The Federal Reserve has made the following decisions to implement the monetary policy stance announced by the Federal Open Market Committee in its statement on May 4, 2022:』

『・The Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously to raise the interest rate paid on reserve balances to 0.9 percent, effective May 5, 2022.』

当座預金の付利金利は0.40%→0.90%

『・As part of its policy decision, the Federal Open Market Committee voted to authorize and direct the Open Market Desk at the Federal Reserve Bank of New York, until instructed otherwise, to execute transactions in the System Open Market Account in accordance with the following domestic policy directive:』

明日から有効のディレクティブです。

『"Effective May 5, 2022, the Federal Open Market Committee directs the Desk to:』

『・Undertake open market operations as necessary to maintain the federal funds rate in a target range of 3/4 to 1 percent.』

FF誘導金利は0.25-0.50→0.75-1.00

『・Conduct overnight repurchase agreement operations with a minimum bid rate of 1.0 percent and with an aggregate operation limit of $500 billion; the aggregate operation limit can be temporarily increased at the discretion of the Chair.』

翌日物オペ金利は0.50%→1.00%、1社あたりの限度額5000億ドルは変わらず。

『・Conduct overnight reverse repurchase agreement operations at an offering rate of 0.8 percent and with a per-counterparty limit of $160 billion per day; the per-counterparty limit can be temporarily increased at the discretion of the Chair.』

ONRRP金利は0.30%→0.80%、1社あたりの限度額1600億ドルは変わらず。

『・Roll over at auction the amount of principal payments from the Federal Reserve's holdings of Treasury securities maturing in the calendar month of June that exceeds a monthly cap of $30 billion. Redeem Treasury coupon securities up to this monthly cap and Treasury bills to the extent that coupon principal payments are less than the monthly cap.』

『・Reinvest into agency mortgage-backed securities (MBS) the amount of principal payments from the Federal Reserve's holdings of agency debt and agency MBS received in the calendar month of June that exceeds a monthly cap of $17.5 billion.』

『・Allow modest deviations from stated amounts for reinvestments, if needed for operational reasons.』

この辺が償還再投資の話で、最初が国債で次がエージェンシー債とエージェンシーMBSの話、3番目はいつもの「細かいこたあ気にしなくていいんだよ!」文言。

『・Engage in dollar roll and coupon swap transactions as necessary to facilitate settlement of the Federal Reserve's agency MBS transactions."』

と、ここまでがディレクティブ。

『・In a related action, the Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously to approve a 1/2 percentage point increase in the primary credit rate to 1 percent, effective May 5, 2022. In taking this action, the Board approved requests to establish that rate submitted by the Boards of Directors of the Federal Reserve Banks of Boston, New York, Philadelphia, Cleveland, Richmond, Atlanta, Chicago, St. Louis, Minneapolis, Kansas City, Dallas, and San Francisco.』

プライマリークレジットレートは0.50%→1.00%。

『This information will be updated as appropriate to reflect decisions of the Federal Open Market Committee or the Board of Governors regarding details of the Federal Reserve's operational tools and approach used to implement monetary policy.』

『More information regarding open market operations and reinvestments may be found on the Federal Reserve Bank of New York's website.』


〇オープニングリマーク:声明文と同様でインフレ退治大正義&6月7月で合計100bp利上げの予告キタコレ!

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220504.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference Opening Statement
May 4, 2022

今朝のバージョンですとQAはまだでして、オープニングリマークまでが取れます。会見の動画自体は見れますから、QAは掛け流し状態で聞いてるんだか聞いてないんだかよくわからん感じでBGMにしておりました。

・・・・・でですね、まあそこまでやってるから答え合わせしようかと思って市場データ見たら何か会見がハト派だったという評価になっててドルが下がって株が上がって黒田総裁もニッコリの展開になっているようなのですが、うーんまたいつものかー、とアタクシは思ってたりしました。

と申しますのは、声明文とバランス縮小のお品書きと、オープニングリマークって全編これやる気満々の表現になっている訳でして、いや確かに「年内全部50bp利上げ」とか「5月6月7月75bp上げるんじゃねえか」みたいな話は無かったからそこまで過激な話では無いのですよね。

というか寧ろ「インフレ退治は大正義」というのを連呼している(特にこのオープニングリマーク)なのでありまして、そらまあインフレが盛大にここから下がってくれるなら別なのですが、現状はマンデートに対して物価もそうだし「雇用も」著しく上振れしていて怪しからんって話をしているのですから、別にハト派になるこたあねえんですよ。

ただですね、以前より申し上げておりますが、最近のFEDちゃんって声明文とかオープニングリマークで威勢の良い話をしておいて、会見ではそれを中和するような感じで穏当な事を言って、でもって相変わらず中銀プット好き好き大好きコールをしたがる金融市場の皆様がいやっほうううううううううう!!!!!とリスク資産の価格を上げると、タカ派の鉄砲玉(執行部以外)が水をぶっかけて回る、というパターンになっていて、今回もまたそれかよ!!!!って思ったんですよね(個人の感想です)。

でですね、原理原則論からして、同じようにFEDのページに掲載されてはいますけど、掲載されている物の重みというか正式文書度合いというかって、当然ながら声明文>=オープニングリマーク>>>>>>会見のオーラル、という重みで、声明文とディレクティブがFOMC会合での決議事項であって、決議事項じゃないけど補足文書みたいな感じなのがオープニングリマークという位置づけの筈でして、会見のオーラルってもちろん嘘八百は言わないけど、トーンについてはバランス取るから会見の発言に重きを置いて反応するのアカンヤロ、と毎回思って毎回極東の片隅からグローバルに通用しない特殊言語を用いて発言しているのでございますが、いやマジで何なんでしょうね。

という話はさておき参りましょう。


・どうでもいい話だが今回から会見場での会見に戻りましたね

『CHAIR POWELL. Good afternoon. It’s nice to see everyone in person for the first time in a couple years. Before I go into the details of today’s meeting, I’d like to take this opportunity to speak directly to the American people.』

だそうです。

『Inflation is much too high and we understand the hardship it is causing, and we’re moving expeditiously to bring it back down.』

>Inflation is much too high

という認識をだしまして、かつ

>we understand the hardship it is causing

と来て、その後に、

>we’re moving expeditiously to bring it back down

ということで、インフレ抑制大正義を冒頭から高らかに宣言の巻となっているのでありました。

『We have both the tools we need and the resolve it will take to restore price stability on behalf of American families and businesses.』

そしてツールもありまっせやりまっせ、という事を仰せになっているのでした。

『The economy and the country have been through a lot over the past two years and have proved resilient. It is essential that we bring inflation down if we are to have a sustained period of strong labor market conditions that benefit all.』

ここの「proved resilient」という辺りも「いやー当初の見通しよりも強かったですねー」みたいなニュアンスを感じたのは個人の感想です。


・現状の経済についての話では労働市場も物価もマンデート超過状態をのっけからぶっこむ

『From the standpoint of our Congressional mandate to promote maximum employment and price stability, the current picture is plain to see: The labor market is extremely tight, and inflation is much too high.』

>The labor market is extremely tight, and inflation is much too high
>The labor market is extremely tight, and inflation is much too high
>The labor market is extremely tight, and inflation is much too high

『Against this backdrop, today the FOMC raised its policy interest rate by 1/2 percentage point and anticipates that ongoing increases in the target rate for the federal funds rate will be appropriate.』

ということで50上げましたよ今後も上げますよ。

『In addition, we are beginning the process of significantly reducing the size of our balance sheet. I’ll have more to say about today’s monetary policy actions after briefly reviewing economic developments. 』

でもって今回はバランスシートの縮小を開始しまっせ、と来ました。


・1Qの足元での弱さに関しては「先行きの見通しに影響するものではない(キリッ)」と威勢の良い話

ご挨拶の後は経済物価情勢に関する説明が始まる。

『After expanding at a robust 5-1/2 percent pace last year, overall economic activity edged down in the first quarter. Underlying momentum remains strong, however, as the decline largely reflected swings in inventories and net exports, two volatile categories whose movements last quarter likely carry little signal for future growth. Indeed, household spending and business fixed investment continued to expand briskly. 』

でもってここもオモロイナと思ったのですが、1Qにおける景気の減速要因が「as the decline largely reflected swings in inventories and net exports,』であることに言及し、返す刀で「two volatile categories whose movements last quarter likely carry little signal for future growth.」とぶっこんでおりまして、1Qにおける減速要因が別に先行きの経済見通しに影響を与える訳ではありません、と堂々と言ってることでして、つまりは経済は強いよって話をしているんですな、味わいが深い。


・労働市場は強いという話を連呼して最後に賃金が大上げの話までする

次が労働市場。

『The labor market has continued to strengthen and is extremely tight.』

さっきも言ってた「extremely tight」再掲ですな。

『Over the first three months of the year, employment rose by nearly 1.7 million jobs. In March, the unemployment rate hit a post-pandemic and near five-decade low of 3.6 percent.』

ここはデータ数字の話ですが、「the unemployment rate hit a post-pandemic and near five-decade low of 3.6 percent」としっかり威勢の良い説明をしております。

『Improvements in labor market conditions have been widespread, including for workers at the lower end of the wage distribution as well as for African Americans and Hispanics.』

以前は「経済改善の恩恵が中々低所得者層やマイノリティーの皆さんに届かん」という話をしていた訳ですが、今回は労働市場の改善が幅広く広がった結果、その辺りの皆様にも(゚д゚)ウマーという状態になっているという説明があってこれは威勢が良い。

『Labor demand is very strong, and while labor force participation has increased somewhat, labor supply remains subdued. Employers are having difficulties filling job openings, and wages are rising at the fastest pace in many years.』

労働需給がタイトで、供給が若干増えたとはいっても需要がつえええええなので「wages are rising at the fastest pace in many years.」とお賃金キタコレとなっております。このコーナー全般に渡って強いわ。


・中国のゼロコロナ政策は「物価に上振れ」のみ説明してて経済に下振れという話が無いのがチャーミング

次が物価。

『Inflation remains well above our longer-run goal of 2 percent. Over the 12 months ending in March, total PCE prices rose 6.6 percent; excluding the volatile food and energy categories, core PCE prices rose 5.2 percent.』

というのは数値ですが、

『Aggregate demand is strong, and bottlenecks and supply constraints are limiting how quickly production can respond.』

需要が強い、と言っててどこぞの中銀のようにコストプッシュがどうのこうのみたいな事は言わないですな。でもって需要の強い中で供給制約があって供給が伸びないのでアイヤーである、ということで、

『Disruptions to supply have been larger and longer lasting than anticipated, and price pressures have spread to a broader range of goods and services.』

供給制約が「have been larger and longer lasting than anticipated」と来まして、このちょっと後にはこの伏線が回収されます。

『The surge in prices of crude oil and other commodities that resulted from Russia’s invasion of Ukraine is creating additional upward pressure on inflation.』

は従来通りですが、今回声明文の方にもありましたように、

『And COVID-related lockdowns in China are likely to further exacerbate supply chain disruptions as well.』

と中国様のゼロコロナ政策は「追加的な物価上昇圧力」と認定しているのがこれまたチャーミング。


・ウクライナ情勢の経済活動への悪影響については言及していますけど

次はウクライナ情勢。

『Russia’s invasion of Ukraine is causing tremendous loss and hardship, and our thoughts and sympathies are with the people of Ukraine.』

これはご挨拶。

『Our job is to consider the implications for the U.S. economy, which remain highly uncertain. In addition to the effects on inflation, the invasion and related events are likely to restrain economic activity abroad and further disrupt supply chains, creating spillovers to the U.S. economy through trade and other channels.』

という所で経済物価情勢の話は終わって、以下政策の話になりますので、つまりさっき出てきた中国の話はあくまでも「物価上振れ要因」の方でしか説明してないちゅうことやな、うんうん。


・「インフレ抑制大正義」の話がまた行われるわけだが

政策の話になります。

『The Fed’s monetary policy actions are guided by our mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people. My colleagues and I are acutely aware that high inflation imposes significant hardship, especially on those least able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation. We are highly attentive to the risks that high inflation poses to both sides of our mandate, and we are strongly committed to restoring price stability. 』

要約すると「インフレ退治は大正義」ですな。


・6月7月も50bp(計100bp)引き上げ予告ホームランとな

その大正義の下で今回利上げとバランスシート縮小を決定しました、という御託が並べられます。

『Against the backdrop of the rapidly evolving economic environment, our policy has been adapting, and it will continue to do so. At today’s meeting the Committee raised the target range for the federal funds rate by 1/2 percentage point and stated that it anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate. We also decided to begin the process of reducing the size of our balance sheet, which will play an important role in firming the stance of monetary policy.』

でもってこの次にしれっと「今後2回のFOMCで各50bpの利上げを行うことが議論のテーブルに乗るだろう、という認識を幅広く得た」とか予告ホームランをしれっとぶっこんで来るパウエルさんキタコレ。

『We are on a path to move our policy rate expeditiously to more normal levels.Assuming that economic and financial conditions evolve in line with expectations, there is a broad sense on the Committee that additional 50 basis point increases should be on the table at the next couple of meetings.』

おー、7月FOMC終了の時点で1.75-2.00ですかー。

『We will make our decisions meeting by meeting, as we learn from incoming data and the evolving outlook for the economy. And we will continue to communicate our thinking as clearly as possible. Our overarching focus is using our tools to bring inflation back down to our 2 percent goal.』

とは言え会合毎にデータ見ながら検討しますし、何考えてるのかはコミュニケートしまっせ、ああそれから2%目標に物価を落ち着かせるための手段はありまっせ。


・バランスシート縮小の話はお品書き通りですな

次がバランス縮小の話ですがここはお品書きの通りなので流す。

『With regard to our balance sheet, we also issued our specific plans for reducing our securities holdings. Consistent with the principles we issued in January, we intend to significantly reduce the size of our balance sheet over time in a predictable manner by allowing the principal payments from our securities holdings to roll off the balance sheet, up to monthly cap amounts.』

『For Treasury securities, the cap will be $30 billion per month for three months and will then increase to $60 billion per month. The decline in holdings of Treasury securities under this monthly cap will include Treasury coupon securities and, to the extent that coupon securities are less than the monthly cap, Treasury bills.』

『For agency mortgage-backed securities, the cap will be $17.5 billion per month for three months and will then increase to $35 billion per month. At the current level of mortgage rates, the actual pace of agency MBS runoff would likely be less than this monthly cap amount.』

金利上昇しちゃったのでMBSの償還速度が遅くなっていて、基本的にMBSは175億ドルって訳にはいかないとみているようですが、だからどうする(って売るの一択しかないが)という話には全く触れませんね。

『Our balance sheet decisions are guided by our maximum employment and price stability goals, and in that regard, we will be prepared to adjust any of the details of our approach in light of economic and financial developments.』

状況によっては変更もあるでよ、もさっき聞いた。


・状況は不透明だから「ニンブル」にやります来ましたですぜニンブル

今後のスタンスの話ですが、

『Making appropriate monetary policy in this uncertain environment requires a recognition that the economy often evolves in unexpected ways. Inflation has obviously surprised to the upside over the past year, and further surprises could be in store.』

しつこく何度も来ますが「Inflation has obviously surprised to the upside over the past year, and further surprises could be in store.」と物価上振れリスクへの言及がしつこいしつこい。

『We therefore will need to be nimble in responding to incoming data and the evolving outlook.』

ニンブルキタコレ。

『And we will strive to avoid adding uncertainty to what is already an extraordinarily challenging and uncertain time. We are highly attentive to inflation risks. The Committee is determined to take the measures necessary to restore price stability. The American economy is very strong and well positioned to handle tighter monetary policy.』

何度言ってますねん「We are highly attentive to inflation risks.」を。


・ということで纏めですがこれはいつも通りの挨拶

『To conclude, we understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We at the Fed will do everything we can to achieve our maximum employment and price stability goals. Thank you, and I look forward to your questions.』

でもって会見がおっぱじまりますが、そっちは今晩になったらフルテキスト出て来ると思います。




2022/05/02

お題「MPMレビュー雑談の続きです」

ふーん。
https://jp.reuters.com/article/soba-inflation-idJPKCN2MK07Q

2022年5月1日10:35 午後7時間前更新
アングル:かき揚げそばが映す世界経済、庶民の味にインフレ圧力
基太村真司

『[東京 28日 ロイター] - 日本の食文化を代表するそば、とりわけ安さが売りの立ち食いそばは原材料の多くを輸入に依存し、その一杯はインフレに直面する世界経済の今を凝縮している。すでに値上げに踏み切ったチェーン店もある中、「ロシア」、「円安」という要因が加わり、一段のコスト上昇圧力を受けている。関係者の間では「いつでも気軽に食べられるものではなくなってしまうかもしれない」(製粉大手)との危機感が広がる。』(上記URL先より)

蕎麦が無いなら米を食べればいいじゃない(byマリーアントワネット)ってしかし汎用性の高い煽り文句ですな。

あ、29日の昼にちょっくら更新したのでそれを下に乗っけておきます。


〇指値オペですけれどもインバート対策とかそもそもワークしなくなるケースとかどうなるのやら

お、久々にこれ出ましたな。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220428f.pdf
当面の長期国債等の買入れの運営について
2022年4月28日
日本銀行
金融市場局

『日本銀行は、長期国債等の買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2022年5月2日より適用)。

── 四半期の買入予定は、3、6、9、12 月末に公表する「長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定」により別途お知らせします。』

という物件で、これは先日ちょろっとネタにしたような気がしますが、基本的な数字を四半期ごとに公表して、日程だけ毎月パターンになって以降久々に見ますなというアップデート版になります。面白連続指値オペが来ました、ということでリバイスされたのかしらと思ってみる訳だが。


・通常の輪番増額は「10年金利が抜けそうだったら」との文言が変わっていないのはチャーミング

『1.長期国債の買入れ(利回り・価格入札方式)(注)』

の所を見ますと、書いていることは同じなんですけど・・・・・・

『(3)買入金額

四半期予定において、市場の動向を踏まえて種類別・残存期間区分別の買入金額を公表し、当四半期中は、原則として、当該金額を買入れる。ただし、イールドカーブの水準が大きく変動し、長期金利(10 年債利回り)が変動幅の上限または下限を超える惧れがある場合などに、例外的に、買入金額を調整することがある。』

とあるのは変わっていないんですよねー。いやあのむしろ問題になりそうなのって7年10年インバート、みたいなオモシロカーブになった時の方なのですが、「長期金利(10 年債利回り)が変動幅の上限または下限を超える惧れがある場合などに、例外的に、買入金額を調整することがある。」とあって、この表現だと10年の金利さえ止まっていたらシランガナと言っているように見えます。

ただまあ実際問題として7年だとわかりにくいけどそれこそ5年10年インバートとかになったら入札でアカラサマになるので、それを放置プレイって訳にもいかないと思うのですけど、何故かここの表現が、「イールドカーブが調節方針に対して整合的ではない状況になる惧れがある場合」などと書かないで、10年金利水準の話を引き続き書いていて、昨年6月30日に出ているのと文言が同じなのはほほーと思いました。

まあ何ですな、万能ワード「など」があるから7年10年インバートとかそういう場合も別に増額できるという建付けではあるのですが、「ワシら10年金利の事しか指示受けて無いもんねー」という声なき声が行間から漂ってきていてチャーミング。



・指値オペですが各カレントで行うという運用を継続すると夢の7年10年インバート対策が不十分ですな

『2.長期国債の買入れ(固定利回り方式)(注)
── 別途「連続指値オペの運用等について」もご参照ください。』

の方に飛ぶ、別紙の方はとりあえず後で。

『(1)買入対象国債

利付国債(2年債、5年債、10 年債、20 年債、30 年債、40 年債)のうち、各年限のカレント銘柄を中心とする。』

ここを変えてこなかったのですが、この場合夢の7年10年インバートの時って7年に指値を打たないって言ってる(ただこれは金融市場局の出している紙なので金融市場局の一存で変更はできる)ので、10年を頑張って止めたとしても、先物適格ゾーンに売りが出て10年と手前がインバート、とかになった時には「臨時輪番」か「輪番増額」をするしかありませんが、ここで問題になるのは長期輪番が「5−10年」で打っている事でして、「前日引けからの利回り変化で一番安いゾーンが撃ち込まれる」という輪番の性質上、長期輪番の日に先物主導で売られているような事がないと中々適格ゾーンが輪番に入ってくれない訳でございますな、うんうん。

昔みたいに輪番日程事前に出て無いのであれば相場が下がっている日を狙って輪番ぶっこむ(大昔はそのせいで償還銘柄ばっかり輪番に入るというインチキプレイが起きたりしていましたな)という技は使えたのですが、今は日程が事前公表なだけに、意外にこれ7年10年インバート対策が足りない説がありますな。まあ5−7と7−10に分けて輪番打てば少しは対策になる気はしますけどね。


でもって、今回はこの文書の付属文書みたいな感じで、
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220428e.pdf
連続指値オペの運用等について

が出ています。以下暫くは直上URL先から引用します。

『日本銀行では、本日公表した「当面の金融政策運営について」にあるとおり、連続指値オペの運用等について、下記のとおり行うこととしました。

1.指値オペの毎営業日オファー
10 年物国債のカレント3銘柄を対象とする指値オペ(10 年債指値オペ)について、以下のとおり実施します。』

とありまして、カレント3銘柄というのをわざわざ明記しちゃっています。まあ別に今までの連続指値もそうですがなとかいうのもありますし、金融市場局の紙だから後からひっくり返すことは可能なのですが、手前とのカーブがおかしくなった時に指値範囲を拡大するという選択肢を端から放棄しているのね、という感じは受けます。

『2.長期国債の買入れ(利回り・価格入札方式)の買入金額の増額等

指値オペの応札状況等も踏まえ、必要に応じ、「長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定」で公表した長期国債の買入れ(利回り・価格入札方式)の買入金額の増額や買入日程の追加を行います。』

わざわざこっちに書くことかという気もしますが、従来の連続指値で書いてあるから書いたって事なのでしょうかね。何だかねという感じですが。


・ところでSLF使って輪番入れるのダメとなると浮動玉が無くなったらそもそもオペ参加できる人がいなくなる説

元の紙に戻りまして(以下の引用部分は最初のURL先の文書に戻ります)、

『(注)国債補完供給(SLF)の利用を前提とした応札はできません。日本銀行が適当と認める場合には、国債買入、国庫短期証券買入または国債補完供給に対する応募の全部または一部を募入外とすることがあります。』

というのがあります。まあこれ自体は前からありまして、何で明確化されたかというと最初の10年レンジ拡大の時に、指値オペのレンジが変わったら行けるやん、ということでSLF借りてまで指値に突っ込む動きがあって、それは怪しからんとばかりにこの挙に出たという経緯がありました筈です。

・・・・・・これ自体はご尤もちゃあご尤もなのですが、「発行量全部買ってでも止めます」という意気込みを示した今回の「毎日指値オペ」の場合これはこれでマズーな事態が起きやせんかと思うの。


つまりですね、そもそもポートに入れたら持ち切りマンというのは一定量投資家の中に居ますし、しかも別に10年指値ったって「金利の上限」が決まってるだけでこれやるから上を買い上げるというようなものでもない(別の要因で買われるのは別の話)ので、まあいわゆる「その他有価証券」で保有してると、(なんせ現状ロールダウンしない債券なだけに)10年カレントって売ると基本的に損出しになってしまうので会計上の都合で損出し上等な時なら別ですが、おいそれとホイホイ出てこない部分、というのがある訳でございますわよ。

その一方でやはり10年が必要、という人もいる訳なので、日銀がバシバシと吸い上げてしまった場合、レポに出てこない人が買ってしまったりする玉だけで満杯になってしまいますと、SLFを使わざるを得なくなる、ということになったらどうしますねんと思うのよ。

つまりですね、指値オペ自体は玉持ってて入れた積りでも、場中に投資家からの引き合いが来て玉をだしたらレポが出来なくなってしまいました、みたいなことになるとか、そもそももうこれ以上レポできんのに投資家からの引き合いでレートだしたらあっさり味で決まってしまった、となってしまいますと、これSLFに行かざるを得なくなり、そうするとその瞬間から当該オペ先は指値オペにその銘柄を入れられなくなる、という面白事態が発生する訳ですな、うんうん。

でまあ一人や二人がそうなら別に市場全体ではどうっって事は無いのですが、なんかの拍子でオペ先全員がSLF借りないと行けなくなってしまったりしたら、そもそも応札できない事案が発生してこれはオモロイお話になりますな(と言っても売りが一定以上出たらショートが埋まるんだからそこからは指値オペに応札可能だが)。


・・・・・まあ現実問題としては、SLFじゃないとカバーが出来ん、という事態になるのを避けるために、日銀の買入が増えて来るとカレント3銘柄だけオファーがドン引きレートになってしまう(別にビットは強くならない)、という事になってしまうんでしょうけれども、まあ何か碌でもない事になりそうな気がせんでもないのですけど、とりあえず今急にの話では無いとは思うのですけど、やっぱりこれやってるとだんだん引値がバーチャルになっていくということなんでしょうな、ナムナム。


・ちなみに売買参考統計値でございますが既にオモシロカーブになっている説isある

https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

昨日の引けの売参(今日付け)はと言いますと・・・・・・・・・・・

カレントレッツゴー三匹とその1銘柄前の平均値単利をエクセルでホイホイとDLして張るとこうなる。

長期国債 363 2031/06/20 0.215
長期国債 364 2031/09/20 0.220
長期国債 365 2031/12/20 0.225
長期国債 366 2032/03/20 0.215

・・・・・・・・おいこらちょっと待て。10年(366)と9年3か月(363)がレート並びで、366と365って1毛インバートしてるじゃねえかどういう事や。というかまあレポのタイトさとかを反映した結果だとは思う(よー知らんけど)のですが、何が恐ろしいって指値オペやってると、例えば今日なら0.25%となるのって一番近いのが365だから、364〜366まで2.5甘で指値が入る格好になって、ここの逆イールドがレポ状況でも盛大に変わらない限り(日銀が買ってしまうので)維持されてしまうし、たぶん今日は大丈夫でしょうけれど、海外金利が上昇してオペにポンポコと玉が打ち込まれて366のレポが一段とタイトになる(まあ今回は来週火曜の入札に向けての準備でショートが深めになっているだけだとは思いますが)と、極端な話365が0.25%で引けて366が0.20%で引けているとどっちも指値のビットは引けになってしまうんですが、えーっと何ですかそういう仕組みでエエノカイナという疑問はある。

まあ全銘柄0.25%ってやってると366ばっかり入ってしまう問題があるからこういう工夫をしているのは分かるんだが、今の方式だとカレント3銘柄のカーブが不自然になってしまった場合に、その不自然がそのままオペで強化されてしまうリスクがありますなあ、と思ったのですが、まあ細かいことだからどうでもいいんですねわかります。



〇展望レポート基本的見解だが見通しの出来上がり数値がインチキすぎて泣ける

などとくだを巻いてたら時間がアレなので(ほら月初だし)展望レポートの話はまた連休中に続きをやりますが、まあ何と言っても今回の展望レポートの白眉は9ページと10ページでございますな。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2204a.pdf
経済・物価情勢の展望(2022 年4月)
【基本的見解】

9ページ。

(参考)
2021〜2024 年度の政策委員の大勢見通し
――対前年度比、%。なお、< >内は政策委員見通しの中央値。

・2022年度のCPI見通しの数字にクソワロタ上に政策委員は何考えてるんだと小一時間

『消費者物価指数(除く生鮮食品)』の22年度の部分に燦然と輝く数字を見て「ナメトンノカ」と思ったアタクシですけどね。

>2022 年度:+1.8 〜 +2.0<+1.9>
>2022 年度:+1.8 〜 +2.0<+1.9>
>2022 年度:+1.8 〜 +2.0<+1.9>

・・・・・・もうね、アホかと馬鹿かとという数字でして、中央値を+1.9として+2%に乗せないのって、これまあアカラサマに「2%物価目標を達成している訳ではないので政策の修正の必要は微修正であっても必要ないです」というのを表明している、という小役人の小賢しさが大爆発して爆笑の発作を禁じ得なかったですけれども、よくよく見ますと、中央値の+1.9に作為しか感じないのはさておき、よく見たらレンジが

>+1.8 〜 +2.0

という無茶苦茶狭いレンジになっているのにはお前らナメトンノカ以外の感想が起きません。


いやあのですね、ここ数カ月って本職のエコノミストの皆さんだって日本の物価見通しがどうなるのかというのが中々不確実性が高くて難しい、って感じで見通しを出したり修正したりしている筈でして、こんなにクッソ狭い所になんで集中するの、というお話。

全体の数字は基本的見解では出ませんけど、10ページを見ますと『政策委員の経済・物価見通しとリスク評価』というのがあって、これを目の子で見ますと、上下1名の数値も+2.1%と+1.7%にしか見えないという纏まり方で、これだけ不確定要素が多い中で何でこんなクッソ狭い所に集約できるのかが意味不明ですし、まあ何で集約できるかと言えば(爆発音)。

だってさ、例えば3月のFOMCでのSEPだと、
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtable20220316.htm

2022年のコアPCEの見通し、上下3人切って3.9-4.4、全員の数字が3.6-4.5となっていますし、レンジ自体は寧ろ先に行くと狭まって来るのに、ジャパンの場合は何故か10ページを見ればわかりますように、23年とか24年の方が見方がばらけている(幅自体は似たようなもんだけど)というのが実にアレでございまして・・・・・・・・・・・


・コアコアを出して「物価が上がらない連呼ばっかりするの何でや」にお答えしているようですが

あとですね、今回は『(参考)消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)』というのが出てて、これがまた計ったように+0.9→+1.2→+1.5という数字になっていて、「緩やかに基調的な物価が上昇する」という話になっているのだが、GDPとの整合性が全然無くて徐々に上がるという図を出しているように見えてしまいまして(まあ日銀は「GDPも基調の部分は基本的に上昇するんです」とか言うんでしょうけど)、「物価が上がらんという連呼をしているのはインフレ期待を下げるのではないか」という悪態が聞こえたんだか何だか知りませんが、これまた何かこのもう政策先にあり気で見通しが出来ました感がプンプンしますし(個人の感想です)、この2ページのアカラサマ感があまりにもアレなのですが、まあ「まいにち!さしねおぺ!!!」と一緒で、開き直りの産物だと思えば不思議ではありませんな。


という感じで何かこう呆れてものも言えない(言ってるけど)日銀の今回の開き直りっぷりでありますなあ、という話の続きは3連休にでも(いつアップするかは知らんので期待しないで下さい。寝起きでFOMCはやりますけど)。