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2022/03/31

お題「日銀、急にぶっ壊れてラリラリオペ乱打状態(個人の感想です^^)の巻のメモだけですサーセン」

朝から面白タレコミが来たので晒しておく。なお記事は読んでない(日経に課金してないから読めないというのはご案内の通り)が最初の一言でもう腰砕けた。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59518080Z20C22A3EE9000/
高い金利の「譲渡性預金」急増 みずほがけん引
保険料なく低コスト、銀行の採算確保策に 企業に元本割れリスク
2022年3月30日 2:00 [有料会員限定]

この記事の無料公開部分の書き出しが『「譲渡性預金」と呼ぶ聞き慣れない預金が急増している。』(上記URL先より)ってあるんだが、日経新聞の金融記事を書く記者が譲渡性預金についてこんな表記するのは仮にも「経済新聞」を名乗っている上に、銀行関連の記事を書くのにこの表現をしちゃう記者も記者だがそれをそのまま記事にしちゃうデスクもデスクで、どうもこちらの記事を紹介した方によりますと記事中のCDの説明が相当にアレなものらしくて、そらまあちゃんとした中の人が退(以下の記載は内務省検閲によって削除されました)。


〇日銀錯乱オペの話の前にメモだけおいとく(あとで成敗する)

・欧州もだんだん利上げ前倒しになってきて年内中にマイナス金利とかトンチキ政策やってるのは・・・・・・・

米国の次は欧州も徐々に正常化前倒しの話だというのに・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPKCN2LR2CB
2022年3月31日5:30 午前
NY外為市場=ドル2週間ぶり安値、ECB利上げ期待でユーロ高

『[ニューヨーク 30日 ロイター] - 終盤のニューヨーク外為市場では、ドルが約2週間ぶりの安値を付けた。ロシアとウクライナの和平交渉を巡る楽観的な見方が後退する一方、ドイツおよびスペインのインフレ指標を受け、欧州中央銀行(ECB)が早期の利上げを余儀なくされるとの見方が強まり、ユーロが買われた。』(上記URL先より)

という訳で、もともと日銀ネタと言えば決定会合議事要旨、決定会合主な意見、片岡審議委員の金懇などの大ネタが積み残しになっておる訳ですが、そのようなドテカボチャの意見などを見ている暇がない(と言っても俺様備忘録として残しておかないといかん)のですが、日銀がここ数日の相場展開で遂にパニクったのかラリったのか知らんですが、あたおかオペを乱打するのでそのネタを書かねばならん。


・あまりにもカーブが寝てしまうもんだからランボー怒りの長期債売却構想が超タカ派方面から出てきましたな

ああでもこれだけクリップ。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-george-idJPL3N2VX89E
2022年3月31日4:30 午前
米長短金利逆転は要警戒、資産縮小討議に反映すべき=カンザスシティー連銀総裁

『ジョージ総裁は、長短金利の一時的な逆転はそれほど懸念していないとし、FRBが短期金利を引き上げていく中、バランスシートの「大幅な」縮小を通して長期金利も引き上げない限り、利回り逆転が発生する可能性はさらに高くなるとの見方を示した。』(上記URL先より)

ほーら言わんこっちゃないフラットニングだの逆イールドだの利上げ最終局面でもないのにいきなり利上げ最終局面までワープするからこういう話が出て来るんだよな〜。

なお、カンザスシティー連銀は大化元年(嘘)からのタカ派連銀として名高いなので話しは半分程度に聞いておけばよろしあるが、なにせ今はタカ派がグイグイと来てますからにゃー。


・・・・・ということで昨日の日銀である。


〇対応が全く持って首尾一貫してないしパニックになってるとしか思えんのだが大丈夫か日銀

・臨時オペとか輪番増額するのはまあ良いんだが何で寄り前にやるんだよ・・・・・・・・

ロイターさんの記事、と思ったら適当なのが無かったのでとりあえずこれ。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2VX00R
2022年3月30日10:19 午前
〔マーケットアイ〕金利:日銀が指し値オペ通告、中長期債オペ増額と臨時の超長期債購入も

のちょっと下の方になりますが、

『 <08:48> 国債先物は反発で寄り付く、日銀オペの増額と臨時で買い戻し強まる

国債先物中心限月6月限は前営業日比20銭高・安の149円95銭と反発して寄り付いた。日銀が本日の国債買い入れについて、オファー額を増額したほか、臨時のオペも発表し買い戻しの動きが強まっている。また米金利は2年債と10年債の金利が一時逆転し、景気後退(リセッション)懸念が高まっている。』(上記URL先より)

リセッション懸念は高まってねえだろとは思いますが、まあそれはそれとして昨日は確か8時30分にこのアナウンスをぶっこんできました。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220330a.pdf
長期国債買入れのオファー日程の追加・オファー金額の増額について

2022年3月30日
日本銀行
金融市場局

『2022 年3月の長期国債の買入れについて、次のとおり本日オファー分を追加・増額することとしましたので、お知らせします。』

その次は表なのでこっちで直しますと、

中期輪番:もともと4500億円のところを6000億円
長期輪番:もともと4250億円のところを7250億円

超長期前半輪番:臨時輪番1500億円(通常1500億円でオファーしてる奴なので1回分追加)
超長期後半輪番:臨時輪番1000億円(通常500億円のところを謎(ではないが)の増額)

『なお、今後も、市場の動向等を踏まえつつ、必要に応じ、オファー日程の追加およびオファー金額の増額を実施します。』

と8時半にぶっこんできてまずこの時点で、前日の40年入札で捕まってしまった方は大歓喜ですが、たぶんPD以外は「お前は何をやってるんだ」となっていたであろうというのはアタクシが放った密偵(そんなものはいませんが)によりますとまあ「日銀は何を慌ててるんだ」という感じだったと思うの。


・・・・・・と申しますのはですな、確かに火曜の40年のあと(ノ∀`)アチャーな感じで後ろ弱かったし、0.245/0.250の板で引けは0.245(10年カレントの話ね)になっていたのに指値には前場も後場もぶっこまれて5000億円ほど札入ってしまった、というのはあるんですが、米債10年が盛大に金利下げて戻って来てたわけですわ。

でもってそもそもが水曜って輪番予定日だから、輪番があるのは分かっていて、まあさすがに増額だし臨時の年限追加もあるじゃろ、くらいは衆目の一致するところでしたから、まあ普通に考えて寄りから10年の0.25%ヒットじゃあああと叩き料理をする無謀な方もおらんじゃろ、という相場が予想され、10時10分に何かでるんでしょうねーと思ってた筈なのよ。

然るに、寄り前にこんなもんだすのって、「ボクちゃん昨日の相場怖かったでちゅー、10時10分まで怖くて待てないでちゅー」って泣き入れてるようなもんにしかアタクシには見えないし、オファーでお助けとなった人はわざわざ文句言わんと思いますが、まー「日銀は何を焦ってるんだ」という印象を強く与えるオファーになるんですよね。


・そもそもこんなのやるくらいだったら何で金曜の指値をスキップして月曜は10時10分まで指値を引っ張ったのか

という小見出しの通りなのでして、そもそも寄り付き前にぶっこむということをしなくたって、別に10時10分には何か来るでしょと皆さん思ってた中で、何をビビる必要があったのかビビって(個人の感想です)前打ちしてしまう、というのもある訳ですが、何がイカンと言って、その前からの対応との一貫性が無いから、「日銀は目先の事象に慌てて反応している」という印象を与え捲ってしまっていることなのです。

これがもし金曜日に10年カレントの指値オペを淡々と入れてるとか、オーバーウィークエンドで米国10年の金利とかが上の方にぶっ飛んで迎えた月曜の寄り前に指値オペのオファーをバシッとするとか、そういう事をしているんだったら別に昨日も寄り前に打っても全然変じゃないのですが、「金利が上がりそうなときにはノホホンと構えていたのに、金利が上がった後は金利が下がりそうな時なのに大慌てで対応」という、テンコシャンコにも程がある対応になっている訳でございまして、とにかく先週のケツからの日銀のオペ対応は個々に見るというよりも一貫した流れとして見た場合に、チグハグというよりも売ってやられてドテンしたら買ってやられて頭真っ白になってるディーラー(身に覚えは無茶苦茶あるのであんまりボロカス言いたくは無いのだが)としか申し上げようがない。

・・・・・・などと言ってたら後場寄りに驚愕のプレイが登場。


・後場の追加輪番はムキになっているのか頭真っ白なのかよくわからんが全く持って無駄だし害悪以外の何物でもない(個人の感想です)

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2VX1C9
2022年3月30日3:29 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は急反発で引け、長期金利0.210%に低下 日銀が臨時オペ

これまたちょっと下の方に行きまして、

『 <13:14> 日銀が長期・超長期債対象の臨時オペ通告、国債先物は上げ幅拡大

日銀は午後1時、臨時の国債買い入れを通告した。対象は「残存期間5─10年(訂正)(オファー額5000億円)」、「残存10─25年(同1000億円)、「残存25年超」(500億円)。

日銀の臨時オペ通告を受けて、国債先物は上げ幅を拡大している。中心限月6月限は前日比68銭高の149円71銭付近で推移。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.5bp低下の0.230%と、再び低下幅を拡大した。』(上記URL先より)

ということで、前場相場はきっちり上がった(金利は下がった)のは当たり前なのに、なぜか後場になってまた13時に追加輪番を売って来るという流石にこれは変なハーブでもキメてラリラリになってしまったのか、それとも寄り前に輪番オファーしたのに対して「日銀は何を慌ててるんだ」と悪評が立った(かどうか良く知らんがまあワシの周囲だと類は友を呼ぶのでそういう話しばっかりしてた)のに対してムキにでもなったのか、真意の程は全く持って理解しかねますが、オペ結果出て金利が下がらなかったとか上がったとでも言うなら別なのですがきっちり前場引けで横綱は41銭の貫禄の上昇を示し、超長期の後ろの方は7毛強だのなんだのとかやってて、当然10年カレントも2毛強くらいにはなっていたという相場付きだし、別に13時になるまでに何か債券が売られるネタがあった訳でもない、というのにこのオファー。

いやー寄り前のオファーってのも大概にアカンタレでしたが、まあビビったんでしょうしょうがないなあ小心者は、ってな感じで擁護の余地(擁護してないですかそうですか)も百万歩くらい譲るとバーナンキの毛髪程度の余地は無くも無いのですが、さすがにこの後場のオファーは一体全体何をしているのかという感じで、変なハーブを決めてラリラリのあんちゃんが両手に刃物もって広場の真ん中で暴れている風情を醸し出しておりまして、まあ何と申しますか処世術として近づきたくないというか武装警官の登場をお待ちしたいという感がする(個人の感想ですよ念のためしつこく申し上げますが^^)次第ですが、そうは言っても市場の中の人としてはこの相手しないといけないというのが実にアイタタタタという感じでございます。


・・・・・えーっとですね、金利押し下げたいんだったらそもそも何で先週金曜日の時点で以下同文な訳ですし、だいたいからしてこの程度で一々こんな勢いで実弾をぶっぱなしていたら、米国もそうですけど欧州の利上げも何か前倒しになりそうになってきているという海外金利上昇のもと、(まあ意味はないのだが言ってしまった手前引っ込められない)10年カレント0.25%を守るのにどんだけ実弾打たないといけなくなるんだよという話しでありまして、もうむちゃくちゃでござりますがな。



まあ何ですな、アタクシがディーラー(小僧に毛が合えた程度)の時は何度もテンコシャンコで頭真っ白、という事案をやっておったので、何かまあ足元の日銀オペテンコシャンコ見てると小僧時代を思い出して泣けてくる面は確かにあったりするのです。ちなみにアタクシのテンコシャンコなので一番笑い話にできたのは、当時本人頭真っ白(表面上は兎も角として)で泡吹き(表面上は兎も角として)モードなのを見て、債券部長様がアタクシのテンコシャンコの反対をマネージャーポジションで盛大なロットでアウトライトしてリバースインディケーターオイチイですとかやってくださって、それに気が付いたアタクシもやっと冷静さを取り戻す、などという懐かしい事案を思い出すわけですが、日銀のオペの場合は何せそうやってクールダウンしてくれる同僚やらシニアやらが居ない訳で、いやお前が頭真っ白になっても困るんだよなーと思いながらも、まあ変なもんをキメて暴れまくる人も体力には限界があるからどっかで大人しくなるだろう位の気持ちで遠巻きに見守りながら怪我しないように注意するくらいしか思いつきませんな、ナムナム。


・ところでオペ紙だが

ということで今日はオペ紙が17時にあるんですが、この際面白いから寄り前に出せや、というのは冗談ですけれども、まあこのオペ連打攻撃を見たら普通に増額とか回数拡大とかするんでしょ、位の事は想定できるし、さすがにそこまでは覚悟しているでしょ市場も、と思いますので、まーその辺はシャンシャンと終了するし、次に海外金利がドドーンと上がるまではそう無茶苦茶な事も起きないと信じたいのですが、なにせラリっておられる方というのは何をおっぱじめるか分からんので、その点での警戒は解かない様にしていきたいと思います。


・などとボロカス言ってしまいましたがそもそも悪いのは政策

えーっとまあメモとか言いながらただの悪態になってしまった気がするのですが、そもそもオペ云々よりも、政策の枠組みそのものがゲロゲロウンコ政策なのであって、そのゴミ政策の尻拭いをさせられてて、しかもそのゴミ度合いがあり得ないほどのゴミなので、あり得ないようなオペ運営になってしまいました、という事ではありますので、そういう意味ではちょっと悪態つきすぎたかな、と最後に一応フォローだけはしておきますが、そうは言っても日銀全体としての問題なのは変わらんので、まあちょっといいから何とか落ち着けとしか申しあげようがありません。どうなる事やら・・・・・・・・・・・・・・・・・


で、最後に面白いのでオペオファーを並べておく。
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of220330.htm

国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注4) 2022年3月31日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 6,000 2022年3月31日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 7,250 2022年3月31日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,500 2022年3月31日
国債買入(残存期間25年超) 1,000 2022年3月31日
国債買入(物価連動債) 600 2022年3月31日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分) 2022年3月30日 2022年3月31日 -0.350
国債買入(残存期間5年超10年以下) 5,000 2022年3月31日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,000 2022年3月31日
国債買入(残存期間25年超) 500 2022年3月31日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分) 2022年3月30日 2022年3月31日 -0.350


国債買入の並びに大草原不可避wwwwwwwww


〇期末の挨拶

という訳で何かとんでもない期末になってしまいましたし、どうせ期末期初ったって平日なのですが、明日からは期初になりますのでまたリセット(何を?)して今後ともよろしくお願い申し上げます(平伏)。







2022/03/30

お題「昨日の市場メモ/雨宮副総裁の日銀主催物価なんちゃらセミナーの挨拶が妙に味わいがある件について」

さ あ も り あ が っ て ま い り ま し た !!!!!!!!
https://jp.reuters.com/article/weak-yen-suzuki-idJPKCN2LQ03V
2022年3月29日10:43 午前
悪い円安にならないようしっかり注視=鈴木財務相

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220329/k10013556801000.html
岸田首相 物価上昇 来月末までに緊急対策の取りまとめを指示
2022年3月29日 19時20分

まあ思えばQQE2が空振りで、その後「政策の限界」と言われだした時に謎の補完措置みたいなのを入れたら「かえって政策の限界が明らかになった」などと言われ、そしてブチ切れた結果があのマイナス金利導入であったことを思い出しますと、こうやって梯子がジャンジャン外された我らが黒田大明神が次に何の自爆をするのか、というのは楽しみになってまいりました(白目)が、これまでは市場がウリャウリャとやってまして、今回も市場はウリャウリャやってますけど、それよりもバックアップしてくれるはずの政治方面が梯子外しに掛かってるのはマズーですわなー。


〇やっと指値連発になりましたが・・・・・・・・・(今日もオペメモ)

・ホワイトクリスマスが流れているような気もするが指値連発応札も前後場合計5000億円強とな

昨日のオペオファー、のうち指値ちゃん
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of220329.htm

国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注4)2022年3月30日
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注5)2022年3月30日

注4と注5は基準利回りからの固定利回り較差の話で昨日の場合だと363-365を引けで買うっていってるだけの話なので割愛します。

落札結果ですが、
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba220329.htm
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下) 2,426 2,426
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下) 2,860 2,860

前場2426億円、後場2860億円とあいなりまして、こちらには銘柄明細は出てこないですけれども、まあそこは(すっかり輪番自体がノーケアーしてたのでさぼりまくっていた)銘柄別保有残の差分を見ながらニヨニヨするという感じですかね。まあ出たら色々と感想でも起きそうです。

昨日の場合はなんせ40年国債入札様があらされたのですが、調整して迎えた割には結果的にはその後カーブの後ろがズッコケになってしまいまして、一方で10年カレントは指値攻撃でこのトリオだけは引けビット、横綱は叩き料理が入りやすいとは言いましてもカーブ上後ろにある10年金利がアガランチ会長の中どこまで売れますねんというか先物が5ケタの数字の皆様がカーブ上の割高とかそういう話をスルー気味に売って来る(そら流動性のある先物がここしかないからシャーナイ)のでそもそもが安いので盛大に叩きにくい・・・・んだかどうかその辺は良く分からんのですけれども毎度のロイターさんの市況ちゃん。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2VW1DR
2022年3月29日3:23 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、長期金利は0.245% 日銀が2度の指し値オペ

『[東京 29日 ロイター] -
<15:13> 国債先物は続落で引け、長期金利は0.245% 日銀が2度の指し値オペ

国債先物中心限月6月限は前営業日比12銭安の149円03銭と7営業日続落して取引を終えた。米金利上昇は一服しているが、朝から軟調な展開が続いた。 新発10年国債利回り(長期金利)は同0.5bp低下の0.245%。日銀が前日発表した連続指し値オペ(29─31日)の初日となる中、午前・午後と2度の指し値オペが実施された。』(上記URL先より、以下同様)

とまあそういうことでしたが、サイゴン陥落(またはホーチミン解放)時のアレというのがまた思い起こされるわけですが、今回の場合は他の年限がホイホイと売られておりますし、だいたいからして欧米の金融政策の方向性が変わってますしおすしなので、連続指値とかホワイトクリスマスの放送に聞こえてしまうのはおじいちゃん空耳にも程があるのですけど、0.245/0.250で板が出来てる中でしれっと前場後場共にぶっこみが入っている辺りが実に味わい深い。

TRADEWEB
    OFFER  BID   前日比 時間
2年  -0.029 -0.024   -0.004 14:50
5年  0.063  0.069   0.009 15:12
10年  0.245  0.249  -0.001 15:06
20年  0.808  0.814  0.025 15:14
30年  1.066  1.072  0.056 15:13
40年  1.132  1.141  0.086 15:12

昨日はまあ入札後の超長期ゾーンも冴えなかったので、後場も指値入れたという面もあるとは思いますが、いずれにしましても「連続指値」と言ったのに忠実に前場指値、後場指値、と入れたきたのは、それを何故金曜からやらなかったのかという辺りが謎おぶ謎というか実にもったいなかったわけで、あれが記憶にあるうちは(なお市場は健忘症なので忘れるのも速いんですが、笑)どこまで行っても「日銀は悪い円安批判を一手に受けるのをビビるんじゃなかろうか」という思惑、即ち円安が一段と進行した時に急に日銀の腰が砕けるんじゃないかという疑念が残ってしまうので、本日は米国長期債の方が金利低下して戻ってきておりますけれども、今日もマシンのように前場後場ともに指値オペをぶっこんでいただくことを強く期待致します。

というかですね、そういう意味では月曜に連続指値オファーしといたので、言った手前今日は間違いなく指値オペをぶっこんで来るのは確定していたのは結果的には良かった話で、これがちょっと米債が落ち着いたらヤレヤレとばかりに指値オペオファー見送りでもされたら、またぞろ大丈夫かよという話になってしまい兼ねなかったですな。ただまあ馬鹿っぽく見えて日銀的にはやりたくないかも知れないけど、今日も前場と後場の指値オペってのは相場水準が戻っていたとしてもやっておいて「姿勢」をみせるっしょ。


・それはいいんだが次のMPMが4月末なんだがそこまで持つのかいな

本日は元々輪番が予定されている日だし、中長期国債の入札も無いので、指値オペは前後場やるとしまして、輪番増額も追加年限もやりたい放題デーとなっております。まあどうするんでしょうねえとは思うのでして、やる気出したかったら増額するわ追加するわとかバンバンやって頂きたい所ですが、なにせ「やる気を出すと円安にぶっ飛ぶ」というのがあり、そこをどう折り合いを付けようとしているのか、というのはイマイチ良く分からんところなので、さてどうなんでしょうねという所です。

まあ確かに米国10年の金利とか下がって戻ってきてるのにいきなり今日輪番増額追加輪番とかやってると、また何かの拍子に米国の金利様が売られて戻って来た時に更におかわりしないといけなくなって、市場機能も糞も無くなる勢いまで買うのか、という話も湧いて出て来るので、さてよくわからん。

まあそもそも論に立ち返ってみますと、この「10年0.25%」を死守することに何の意味がありますねん、って冷静に考えて見るとかなりのアホラシサがある訳でして、これがリーマンとかコロナとかのショック状態の市場において「最後のマーケットメーカー機能」を果たすための買入みたいに、やることに意義が高いのなら兎も角、「10年0.25%」を守ることによって物価が2%に行くとかそういう意義の高い結論がまっている訳ではなく、単にマイナス金利政策の失敗の尻拭いでぶっこんだYCC政策の面目玉の為に死守しているだけ、というのが空しい話でございまして、別にこれを死守したから何か意義のある結果が待っている訳でもない、というのが日銀オペ担当各位におかれましては同情の念に堪えない所ですわな。へっぽこ政策のせいで傍から見て何の意味があるのかさっぱり分からんものの防衛戦させられてるんですから。


・・・・・・・ということで、やる気を出すのは良いんですけど、それやってて4月末まで持つのけ問題があって、既に市況の通りで10年陣地群を構成しても、防衛正面の年限が全部で1年分も無いわけですから、そんなもん防衛陣地を迂回して売り軍団が浸透して行ったら、「10年だけ防衛してて何の意味があるの他の年限ブタ売られじゃん問題」になってしまう訳でございますが、今申し上げたようにそもそも10年0.25%が何の意味があるのかというと何の意味も無いので、その無意味な物の為に日銀がここで全弾投入して4月末まで持たせる意義is何???となると今日は米国金利が下がったのを良い言い訳にして淡々と指値だけ入れる、ということになるかも知れず、まあ10時10分をワクワクテカテカして迎えようと存じます。


〇これ現場ではもう10年指値を次のMPMまで延々と指し続けるしかないと思うんだが

いやまあ何かの拍子に米国10年が2%近くまで戻るような天の助け(かどうか知らんが)が起きれば話しは別なのですが、なんかよほど相場様が戻らない限りは連続もへったくれもなくて、日銀はもう開き直って(昨日の感じだと少し開き直った感はあるのですが)次のMPMまで毎日馬鹿みたいに10年指値オペを入れ続けるしかやりようがないと思うの。

ここの指値水準自体は、確かにそれそのものはMPMマターじゃないのですから、理論的には現場の裁量がある程度あるんですけど、こういう感じになってしまうと現場の一存で指値の金利を柔軟化(なお金利下げてオペやる分には別に一存でやって無問題、問題は上げる方)するというのは、政策インプリケーションのある事項を現場に勝手にやらせてしまうというガバガバガバナンスになってしまいます(個人の感想です)。


となりますと、この辺の水準を変えるとか、0.25%超え容認しちゃうとかいう話をしたければ、オペが持つ持たないとかそういう問題があったとしても現場では容認できずなので、臨時の土下座MPMを実施するしかないという話になるので、来月は毎日楽しい相場(あんまり楽しい訳でもないが)が見れるのかどうか、結局海外次第な気もしますが(身も蓋もない)、まあどうなることやら。

なお、臨時の土下座MPMをする場合、その屈辱に黒ちゃんが耐えられるとは到底思えませんので、黒ちゃん繰り上げ償還の巻ということになろうかと思います(ので無茶苦茶ハードルが高い話になるでしょうから余程政治的にマズくならない限りは土下座MPMは想定できない)。



〇順序が逆だが雨宮さんが例の物価ワークショップで挨拶をしたみたいなので

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220329b1.pdf
コロナショックと物価変動
「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップにおける開会挨拶
日本銀行副総裁 雨宮 正佳

・マクラの部分だが食品価格の上昇に触れないのはさすが狸としか申し上げようがない

『パンデミックという異例のショックからの経済回復に伴い、先進国のインフレ率は、近年経験したことのないペースで高まっています(図表1)。実際、米国や欧州では、生産者物価、消費者物価ともに、このところ数十年ぶりの高い上昇率を記録しています。わが国でも、国内企業物価は、第2次オイルショック時以来の約 40 年ぶりの上昇率を示しています。』

『もっとも、わが国の消費者物価は、米欧との対比で上昇ペースの鈍い状態が続いています。4月以降は、昨年の携帯電話通信料引き下げの影響の剥落と、ウクライナ情勢にも起因するエネルギー価格の大幅な上昇が重なり、2%程度の伸びとなる可能性もありますが、それでもなお米欧との差は歴然としています。』

広範に食品価格が上がっている筈で、生活物価というか購入頻度の高い品目での物価上昇が結構来ている、という話を完全にスルーして説明するのがここでは重要(??)でして、うっかりそんなことを発言してしまうと「日銀は生活者の苦境を放置しており実に怪しからん」という格好のネタを提供することになってしまうのでこういうヘッドラインに使われそうな部分で言及しないというのがさすがとしか申し上げようがない。

『本ワークショップの狙いは、こうしたコロナ禍における内外の物価動向の違いを足掛かりに、日本銀行スタッフによる分析を叩き台にしながら、学界を代表する皆様方と議論を交わすことで、わが国の物価に関して理解を深めることにあります。』

まあそもそも論として2%の物価安定目標を仰々しく掲げて超ウルトラ大規模な金融緩和政策をおっぱじめて9年も経ってから「物価に関して理解を深める」とか言ってるのはどういう面の皮をしているのかと小一時間問い詰めたいのですが、こういう根性の強さがアタクシにも欲しかったですな。


・海外対比で日本の物価が弱い話についてだがどさくさに紛れて今さらおぬし何をゆうとりますねんというのがある件について

こちらのキーノートスピーチ、最初のマクラの次に欧米物価の話があって日本の物価話、という風に繋がるのでそこから引用しようかと思います。

でもって小見出しが『3.米欧対比でわが国の物価はなぜ弱いのか』とあるのですが、いやまあこういう付け方をするの仕方ないのかもしれないけど、この先の本文を見ると「考えられる仮説」という話になっているんですから、せめてここ最後にダッシュつけて「3.米欧対比でわが国の物価はなぜ弱いのか―考えられる3つの仮説」とかいう小見出しにしないと、なんか既に理由がわかっているのに「理解を深める」為のセミナーをやってる、とかいう間抜けな感じがするのですが、ってそんな細かい事を気にするのはアタクシだけかもしれませんが、どうもこういうのには一々引っ掛かるんですよね。

まあそれはともかく、

『次に、米欧対比でみたわが国の物価の弱さの背景について、考えられる仮説を3つほど提示しておきたいと思います。』

はい。

『第1に、先ほど米欧のインフレ高進の背景として指摘した要因が、日本ではさほど顕在化していないことが挙げられます。すなわち、日本では、家計のリスク回避姿勢の強さもあって、個人消費のペントアップ需要は、これまでのところ限定的です(前掲図表2)。その結果、日本の実質GDPは、いまだに感染症拡大前の 2019 年の水準を回復出来ていません。また、日本では、労働市場が米国ほど流動的でないうえ、手厚い雇用調整助成金の効果もあって、企業は労働保蔵を行いやすい環境が続いています(前掲図表3)。この結果、わが国では、正規雇用者を中心に離職する動きは目立っておらず、労働参加率の低下による供給制約は限定的です。さらに、わが国では、需要全体が弱めであるだけでなく、サービスから財への需要シフトの動きも鈍めとなっています(前掲図表4)。その結果、米国でみられるような財価格の急激な上昇も生じていません。』

それは分かったがその辺りの構造要因が物価が上がりにくい原因だというのであれば、そもそも超大規模金融緩和によってマネタリーベース直線一気理論で2%が達成できる、という話は何だったのかと小一時間問い詰めたいし、そういうのをQQEぶっこんだ当初からちゃんと研究していればもっと別のアプローチで2%物価目標の達成を進めることができたのではないでしょうか?????????

『第2に、物価が上がりにくいことを前提とした日本固有の企業行動、すなわち「ノルム」が、今次局面で改めて浮き彫りになった面もあるように思います(図表7)。』

これはいつもの言い訳なのですが、ただここで示している「ノルム」ってナラティブとしてはわかるのですが、例えば長期雇用云々の部分、自分が年寄りだからというのもあるんですが、少なくともアタクシが社会人になった時と今とでは企業の長期雇用だの何だのに対するスタンスって違っているような気がする次第でございまして、この「ノルム」の話はストーリーとして書きやすいからこの話がすぐ出るのですが、本当の本当に本当なのかという点は厳密な検証をした方がよくて、なんとなく物語としてしまうの思考停止になるリスクってあると思うの、とは自戒も込めまして思うのだ。

『例えば、半導体の調達難に伴う自動車の供給不足は、グローバルな現象ですが、自動車価格の上昇は、各国で一様ではなく、米国で顕著です。これには、PMIの入荷遅延指数が示すとおり、わが国では供給制約が米欧ほど深刻化していないという事情もありますが、わが国企業の慎重な価格設定スタンスも影響しています。米国企業は、ある財で供給制約が生じると、比較的速やかに値上げを行い、高い価格を払ってくれる顧客から、優先的に財を割り当てていく傾向があります。これに対し、日本企業は、顧客との長期的な取引関係を重視し、価格を据え置いたまま、顧客の需要に出来る限り応えていく傾向が強いように見受けられます。実際、入荷遅延指数と製品価格の時差相関係数を比較すると、日本は米欧と比べて有意に低く、供給制約が生じても日本企業はなかなか値上げに踏み切らない様子が浮かび上がります。こうした日本企業の慎重さは、労働市場でも同様にみられ、例えば、人手不足が生じても、わが国企業は長期雇用関係を重視し、賃上げに消極的です。』

というこの辺のナラティブね。

でもって3番目なのですが、

『第3に、物価指数の計測上の問題も、無視できない影響を与えている可能性があります(図表8)。』

ちょwwwwwおまwwwwwwwww

『近年、わが国のサービス価格のうち米欧対比で弱めの動きとなっている品目は、比較的大きなウエイトを占める家賃と携帯電話通信料です。いずれも、精度の高い価格の計測が難しいサービスの代表例ですが、統計実務面での各国の違いについても、理解を深めておく価値があるように思われます。』

要するに「日本はヘドニックの掛け過ぎ」という指摘なんですが、海外と日本で物価計測の物差しが違っているとなりますと、そもそも日銀公式の仰せになっている「2%はグローバルスタンダード(キリッ)」というのがそもそも大間違いのコンコンチキという話になるような気がするんだが、なんか盛大に置物政策の自己否定をしているような仮説が3本中2本(1本は一部インフレ期待と重なる部分もあるので2本という事にしたが、企業のノルムが違うならそもそも目指すべき物価指数の数値は別ジャンというのもある)ある訳ですよ。

ということでですね、なんかドサクサに紛れてポスト黒田の布石でも打ってるのかという味わいの深いネタだし、しかもこのネタを堂々と日銀公式に掲載(別にこのセミナー自体は公開じゃない(成果物は公開するとはアナウンスされているが)という建付けだった筈です)するのは何か怪しいと言えば怪しい話しでして・・・・・・・・・


・まとめの部分も何か微妙な味わいが

最後の小見出しが『4.おわりに』である。

『以上、今回のパンデミックを契機に、改めて浮き彫りになった米欧とわが国の物価動向の違いについて、お話させて頂きました。最後に、より長い目でみた日米間のインフレ格差について、私が長年抱いてきた疑問についても申し述べたいと思います(図表9)。』

まあこの辺は流し読みですが、

『日本のインフレ率が米国を下回る状況は、1990 年代後半のデフレ期から始まった現象ではなく、第2次オイルショック期以降、一貫して続いている現象です。1980 年頃より以前は、逆に日本の物価上昇率が米国を恒常的に上回っており、第1次オイルショック時に先進国中最も高い+20%を超えるインフレ高進に苦しんだのは、日本でした。2度のオイルショックとスタグフレーションという苦い経験を経て、学界では、インフレ予想に関する理論が急速な発展を遂げ、それが日本銀行も含む各国中央銀行の金融政策運営に多大な影響を及ぼしてきたことは、よく知られているとおりです2。』

『インフレ予想の重要性を考慮した金融政策運営が、1980 年代以降の日米におけるインフレ率の低位安定につながったことは、学界と政策担当者の密接なインタラクションの成果といってよいでしょう。しかし、もう一歩進んで、1980 年頃を境に、日米間でインフレ率の逆転が生じ、その後も 1980 年代後半の景気過熱期も含め日本のインフレ率が米国をコンスタントに下回り続けたのはなぜかについて、腑に落ちる説明はなかなか得られていません。』

先般ネタにした「1975年体制」でアタクシのような無知蒙昧おじさんは普通に腑に落ちておりました(滝汗)。

『コロナショックに伴う各国間の物価変動の違い、そして長期的にみた日米間のインフレ格差などをみるにつけ、物価に関する我々の知識は、依然として限られているという認識を新たにします。』

置物一派と黒田さんにその調子で説教してくれるとありがたいんですが。

『コロナショック以降、中央銀行の間では、「Humble」であるべき、という言葉がキーワードとなっており、こうした物価に対する私の認識は、各国当局者の間でも概ね共通しているのではないかと感じています。』

なるほど過去9年間はゴーマンかましてよかですかだったので謙虚に反省している・・・・とも思えんのだがまあ何か妙にしおらしいですな雨宮さん何か心境の変化でもありましたかしら(^^)。

『わが国の物価は米欧対比なぜ弱いのか、その要因は構造的なものか、それは将来変化しうるものか、といった点について、従来の見方にとらわれず、現実のデータに「謙虚」に向き合うことが重要だと思います。』

なぜそれを2013年にやらないで特攻したのかと小一時間問い詰めたいwwwww

『今回のワークショップを通じ、専門家や学者の皆様方と活発な意見交換を行いながら、これらの点を含め、物価に対する理解が前進することを期待しています。』

『ご清聴ありがとうございました。』

ということでネタにする順が完全に逆で申し訳ないのですが、どこまでガチなのかよくわからんのですが、何か妙に路線転換の布石っぽい弁が述べられているのはナンジャコラだったので早速ネタにしました。







2022/03/29

お題「日銀ちゃんチェックメイト状態でもりあがってまいりました(今日は昨日のメモだけですスイマセン)」

あらまあ(というか見てたが)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220328/k10013556221000.html
円相場 一時125円台まで値下がり 約6年7か月ぶりの円安水準
2022年3月28日 18時20分

〇金曜日に出し渋ったのが影響したかどうかは分からんですが引き付けすぎて防衛どうなるのやら

という訳で15時までの円債ちゃん。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2VV1HK
2022年3月28日3:32 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、長期金利0.25% 日銀は2度の指し値オペ

『[東京 28日 ロイター] -
<15:19> 国債先物は続落で引け、長期金利0.25% 日銀は2度の指し値オペ

国債先物中心限月6月限は前営業日比33銭安の149円15銭と6営業日続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.5bp上昇の0.250%と、2016年1月15日以来6年超ぶりの高水準をつけた。

日中には午前10時10分と午後1時30分の2度にわたり、日銀が10年利付国債(363・364・365回債)を対象に利回り0.25%で無制限で買い入れる「指し値オペ」を通告。このうち午前の実施分は、買入利回りが365回債で0.25%と実勢を上回って(価格は下回って)いたため、市場の予想通り応札は無かった。また午後の実施分については、応札額645億円・落札額645億円だった。』(上記URL先より、以下同様)

ということではあるのですが、(寄り付き前になると昨日の日中チャート消えちゃうのですが)
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 22年6月限

取引日 2022/03/28
立会区分 日中取引 
始値 149.31 (08:45) 
高値 149.51 (10:10)
安値 149.15 (14:59)
現在値 149.15 (15:02)
前日比 -0.33 (-0.22%)
取引高 23,260

ということですが、朝っぱらからとりあえず0.245%とかやっておった訳ですよ。でもってオペマダーって思ってたら定例タイムとなります10時10分に指値オペオファー入り、そこで149.43辺りだった債券先物がスコーンと51銭まで上がったんですな(その前に指値期待?で少し上がっていた)。

いやおまえ別に日銀は上買い上げてくれるんとチャウんだから別に先物買い上げなくてもエエヤン、などとナンヤソラ状態で先物を見る間もなくスルスルと先物が下がりだし、ベンダーのフラッシュを見るとその時日本円ちゃんが見事に全面安になって、ドル円とか40銭ほどだったかな?まあ飛んでしまった訳ですよ。

そんな訳で、指値オペオファー⇒円安進行⇒円安見て先物とか超長期とか弱いけど10年3銘柄要塞だけはサガランチ会長ということで、30年叩き料理(40年の叩き料理が足りないので3040がだいぶフラットしているような気がするんだ、流動性の差もあるので超長期売り相場の時に時々こういう謎フラットや謎インバートを目にすることがあるんだが今日は40年入札のような希ガス・・・・・・orz)というのがドイヒーな相場。

とは言ってもまあ10年はあと5糸しか無いじゃんという事なので、先物の叩き料理はさほどのこともなく、149円30銭台後半で前場終わって、こりゃ0.250%売るやる居ねえだろと思ったら前場の指値は坊主に終わりました。

・・・・・・という辺りで終わってくれないのが相場様のオソロシスな所で、なんせ円安の方がジャカジャカと進行するもんで後場に入ってまたぞろ相場下がりだして10年0.250%ヒット〜とかやるわ遂に先物も叩かれだして149円20銭台で推移とかおめー前場引け水準よりも1毛甘い7年かよとかで、どう見ても指値おかわり催促相場です本当にカムサハムニダという風情になったと思ったら14時を待たずして指値無制限オファーの午後版があったのですが、その間にベンダーの方には29日の指値予告がうーたらこーたらとあったのですが、日銀のHPとかにはそっちは告知されていない(オペ先向け告知)のでURLとか貼れないのですが、まあ兎に角おかわり君が登場した訳ですわさ。

しかし相場様というのは非情なので、指値追加⇒円安進行⇒債券売り(10年カレントを除く)という図が更に凶悪になってしまった上に、東京引け近く(=欧州勢のおはようディール時間)になったらドル円123円どころか123円20銭とかおいおいおいという円安になって来まして、先物ちゃん引け近くの15分ほどでダメ押しの下げをぶっこまれて33銭安の安値引け。

という訳で最初のURLのロイターさんの記事から引けの気配を引用しますが、

TRADEWEB
    OFFER  BID   前日比 時間
2年  -0.026 -0.02   0.005 15:20
5年  0.054  0.06   0.01  15:12
10年  0.245  0.25  0.011  15:02
20年  0.781  0.787  0.047 15:20
30年  1.01  1.017  0.047 15:20
40年  1.042 1.053   0.052 15:20

先物33銭安というのが無いから単にステープしているだけっぽく見えますが、10年カレント回りの手前のカーブは昨日の引け値が361〜363までの単利差が5糸まで詰まってきまして、363以降のカレント3兄弟は363〜365の単利差が5糸、1毛となっておりますけど、これは10年カレント3兄弟だけインバート相場が近づいてきましたとワクワクテカテカ(まあ寧ろゲロゲロマーライオンではあるけど気分的には)なモードになっておりますが、話しはそんな所では終わらず引け後の方がエグイ事に。

イブニングの東証ちゃん。
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_night

長期国債先物 夜間取引
22年6月限
取引日 03/29
立会区分 夜間取引
始値 149.21 (15:30)
高値 149.26 (16:04)
安値 148.72 (19:05)
現在値 148.86 (05:38)
前日比 -0.29
取引高 11,236

こちらは何の因果がよくわからんけど日中足(夜間足?)が出せないのでこの数字だけ並べる訳ですが、ドル円のチャートだけ見てると(アタクシも昔のように太鼓じゃなかった対顧ディーラーをしている訳では無いので、1日中板に張り付いてるわけじゃないので細かく見て無かったが)16時くらいから欧州勢寄付きディールなのか日本勢の海外マーケット開始に合わせた売買なのか知らんけど、ドル円で見ると円安一段加速しやがりまして、そら先物にも叩き料理が出るわなと下がっておりましたが、ここでさっきのNHKニュースサイトの記事を出すのでありました。

URLは再掲
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220328/k10013556221000.html
円相場 一時125円台まで値下がり 約6年7か月ぶりの円安水準
2022年3月28日 18時20分

『28日の東京外国為替市場は、円相場が一時、1ドル=125円台まで急速に値下がりし、およそ6年7か月ぶりの円安水準となりました。長期金利の上昇を受けて、日銀は28日実施した国債を無制限に買い入れる「指値オペ」に続いて、29日以降、3日間にわたって国債を無制限に買い入れる「連続指値オペ」を初めて実施すると発表しました。』(上記URL先より、以下同様)

2月にはあんなに勢いよく先制攻撃したのに今回は打つ手が一手一手少しだけ遅い。欧米金利があの有様だから金曜に指値やっても同じだったかもしれないけど、金曜に指値やらなかったのが為替配慮と受け止められやすい(実際は何考えてたのかは知らんけど)結果を招いたしまったので、指値オペと為替のリンクが逆にクローズアップされてしまった感は強いし、為替配慮で一旦見送りをした、という受け止めをされてしまいますと、市場というのは根っからの極悪いじめっ子なので、指値の円安を日銀が気にしてるんだったら指値いれたら大円安行くしかないでしょヒャッハー!となってしまうのが相場様の常というものです(一般的には「ペインな方向に行く」って奴ですな)。

まあ結果は同じだったかもしれないけど、金曜に指値を出し渋ったのは実に残念でしたわという所でございますが、まあ連続指値とかぶっこんできた訳ですよ(URLは後で)。しかも日銀のアナウンス見れば臨時輪番も辞さずというアナウンス付きという親切設計なのですが、上記のように・・・・・・・・

『これを受けて、東京外国為替市場では、日米の金利差の拡大が意識され円売りドル買いの動きが一段と強まり、円相場は午後6時前に1ドル=125円台に値下がりし、およそ6年7か月ぶりの円安水準となりました。』

この時点で125円は何か上ひげっぽい感じではあるのですが、その後も124円60銭近辺で推移してまして、引け後はショパンの事情(ただの生業の事情)でドル円の日中足とか見て無かったので、連続オペキタコレなのに先物下がる下がるクソワロタ、などと思いながら「そういえばドル円は・・・・うーん60銭かあまたドル上がったなあ・・・・・・・あれ?何か大台変わってね???」と不覚にも最初123円60銭なのかと思って途中で気が付いたのはワイ不覚にも程がありますwww

『市場関係者は「一連の指値オペの対応で、日銀が長期金利の上昇を0.25%までに抑え、金融緩和を継続する姿勢が明確になった。このため、インフレの抑制に向けて利上げの加速に前向きな欧米との間で金利差の拡大が意識されて、円はドルやユーロに対して大幅に値下がりする展開となった」と話しています。』

ということなのですが、これ10年カレントだけ抑制したってクソの役にも立たんというか、他年限がブタ売られしてしまったら、大昔の古き悪しき時代の「国債指標銘柄」という面白イールドカーブを彷彿させる「10年カレントオペ3銘柄だけイールドカーブ上で特異点を形成する円債村老人が懐かしさで笑い死にする夢のオモシロ相場」になってしまうと、そもそも10年金利抑制の意味がまるでなくなる、という事態になりかねないんですがどうなるんでしょうかね。

・・・・・・・とは言いましても、今更ここで10年のレンジをプラマイ50に拡大(50じゃやり過ぎだから30とか35とか)するにしたって、次の金融政策決定会合は4月末まで無いので、オペ部隊としては@真面目に金利全部を押さえようとして超長期も含めて輪番乱発して(というか超長期臨時輪番入れないと止まらんじゃろ)売りを全部受け止める、なお円安の一段加速による日銀批判は黒ちゃんをはじめとする政策委員会のせいなのでオラシランガナ、A不真面目の極みで10年3銘柄だけ次のMPMまで毎日指値25bp入れておけばそのうち市場の流通玉が完全枯渇するので、10年カレント3銘柄だけ引けが0.25%になっていれば7年10年がインバートしようとシランガナ、と無茶苦茶イールドカーブになるのを覚悟で4月末まで焼け野原の真ん中で指値オペを叫び続ける、の2択となる次第ですね。あああと「欧米金利の上昇が止まるのを日々神仏に祈り続けて何なら祈祷とか調伏を続ける」というのもあるのだが次のFOMCが5月頭まで無いのが激痛。


いやまあ別に黒ちゃん円安上等って言ってるんだから、円安上等に乗ってバンバンと指値臨時輪番なんでもござれと突撃するのかも知れませんが、しかし125円とか何か前回ついた時も物凄い勢いでやばみになったはずだし、あの時と違ってインバウンド様が大挙してジャパンに押し寄せて銀座で湯水のごとく消費して下さるお大尽様ありがてえありがてえ、というような事象が1ミクロンも期待できない上に今回はエネだけじゃない商品価格上昇とか来てまして、海外金利の影響があるにしたってまあ一般ニュースではどう見ても日銀が前面に出てきてしまう中、黒ちゃん以下日銀の面々はどうするんでしょうかねえ。なんか黒ちゃんに無理心中させられるの図というのが全く洒落にならなくなって参りましたが・・・・・・・・・・・・・


〇という訳でオペのメモを

指値を含む通常のオペ
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of220328.htm
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注4) 2022年3月29日
CP等買入(注5) 5,000 2022年3月31日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分) 2022年3月28日 2022年3月29日 -0.350
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注6) 2022年3月29日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分) 2022年3月28日 2022年3月29日 -0.350

(注4) 国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)の固定利回較差は、0.015%。この結果、10年利付国債365回の買入利回りは、0.250%となる。買入金額に制限を設けずオファー。
(注6) 国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)の固定利回較差は、0.015%。この結果、10年利付国債365回の買入利回りは、0.250%となる。買入金額に制限を設けずオファー。

落札結果
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba220328.htm
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下) 0 0
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4) 260 260 -0.350 -0.350
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注5) 25 25 -0.350 -0.350
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下) 645 645
CP等買入 12,287 4,995 -0.013 -0.010 42.5

2発目にご案内のように645億円の応札がありました。

しかしこの「固定利回り較差」方式なんですが、そんなことにならないとは思うのですが、カレント3兄弟がうっかりインバートでもした場合って、固定利回り較差はどう設定するんでしょうか。いやまあ多分365でやるんじゃなくて、買い入れ対象3銘柄のうち一番基準利回りが高いところから計算して0.25%になるように固定利回り較差を計算するんだと思うので、まあ最終系は363〜365が同じ引けとかなのかも知れませんが(ってその前にカレントが366に交代して363が指値オペから外れる方が先に来るのかな)、面白いからちょっとカレント3銘柄内で夢の逆イールドになった時を見せて欲しいものです(もはやヤケクソ)。


でもって連続指値のオファー連絡HP掲載版ちゃん。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220328d.pdf
連続指値オペの実施について

2022年3月28日
日本銀行 金融市場局


『日本銀行は、長期国債の買入れについて、次のとおり連続指値オペを実施することとしましたので、お知らせします。』

(図表なので体裁を直しております)

『長期国債の買入れ(固定利回り方式)
買入対象国債 :10 年利付国債363 回、364 回、365 回
買入日程: 3/29〜31
買入金額:無制限
買入を行う利回り水準:365 回債の買入利回り 0.25%(注)

(注)固定利回り較差は、オファー通知等で確認してください。』

というのに加えまして、

『なお、この間の長期国債の買入れ(利回り・価格入札方式)については、市場の動向等を踏まえつつ、必要に応じ、買入日程の追加・買入金額の増額を行うことがあります。』

ということで臨時輪番も辞さず、とぶっこんでいるのですが、これぶっこんだら一段と円が売られて債券先物が叩かれるという日銀\(^o^)/オワタの図になっておりますのは先ほど申し上げた通りでございまする、ナムナム。


・・・・・・すいません今朝は諸般の事情により昨日の市場のメモクリップだけになってしまいました。まあ今日も何がどうなるか分からん、という期末にこれは正直勘弁してほしいモードなのですが、まあ致し方ありませんですな南無大師遍照金剛南無大師遍照金剛。









2022/03/28

お題「指値オペ金曜にやらなかった意味が分からんのだが/黒ちゃんMPM会見だが謎の高姿勢は何なんでしょうね(ファイナル)」

いやー期末週になっちまいましたなあ。

〇前置きのつもりだった米債ネタがちと長くなったので小見出しをつけてみた

はい。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N2VS3TK
2022年3月26日6:10 午前
米金融・債券市場=利回り上昇、積極的な引き締め観測

『[25日 ロイター] - 米金融・債券市場では、米連邦準備理事会(FRB)がインフレに対応するために積極的な金融引き締めを行うとの観測から、国債利回りが上昇し、10年債利回りは約3年ぶりの高水準を付けた。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほうそうですかそうですか。

『10年債利回りは15.1ベーシスポイント(bp)上昇の2.492%。一時は2019年5月以来初めて2.50%を上回った。2年債利回りは18.1bp上昇の2.305%と、19年5月以来の高水準を付けた。』

アイヤー!

『FRBのパウエル議長は21日に行った講演で、インフレ抑制にFRBは「迅速に」行動する必要があるとし、必要に応じて通常より大きな幅での利上げを実施する可能性があると表明。5月の会合で50bpの利上げを決定する可能性を示唆した。』

なのは良いんですけど、まあ16日17日の反応とかとのこの差よという感じでして、18日の金曜日にあまりにも訳分らんからポエム大会になってしまったのですが、結局のところFRBの16日の決定が「ダビッシュ」だと思われてしまっていたちゅうことで、それに対して牽制したら今度は薬が効きすぎたのかも知れませんが、この調子でドットチャートを積極的に形骸化するならもう次回のSEP(6月か)でドットチャート止めれば良いのにとは思うのですが。

まあしかし何ですな、

30年債 17時05分 2.6020% 前営業日終値 2.5120%
10年債 17時05分 2.4879%  前営業日終値 2.3410%
5年債 17時05分 2.5612% 前営業日終値 2.3740%
2年債 17時05分 2.2843% 前営業日終値 2.1240%

利上げの最終局面なら話は分かるんですが、利上げ始めたばかりの段階でこんなにフラットしてどうするんじゃろというか、こういうのが何かAI相場っぽいなあと思うのですけど(個人の偏見です)、別に中立金利が本当の本当に2%台前半なのかというと、別にそうとは限らんのにこういうカーブを引いてしまう辺り、おまいら大丈夫かと思ってしまう(個人の感想です)し、だいたいからしてこんな時点で今回の利上げサイクルのケツの決め打ちしてるかのような値動きしてるの見たら「長期債売るか」位の過激思想が出てきてもおかしくないのが今のFEDだと思うんだが、まあこれもドットチャートのもたらす悪事例という感じだと思うの(個人の感想です)。

つまりですね、ドットチャートに示されるような将来の金利パスがどうのこうのとか、ウッドワードとかスベンソンとかその手の流儀の「将来の状況から逆算して」というのは通用しないかもしれないような経済構想変化(というか逆流というか)が起きている可能性がある中で、政策当局の方も、そういう言い方をすると馬鹿っぽくなるからそうは言わないけど、結局のところ「さっぱり分からんから出たとこ勝負」って言ってるのに、市場ちゃんの方はその「さっぱりわからん」という要素を綺麗に無視している、というのは何かと申しますとイールドカーブ形成における投資時間の長期化に伴って発生する筈のリスクプレミアムを完全に無視して、「ターミナルレートは幾ら」ってのを決め打ちしまくったような価格形成をしていることでございまして(個人の感想です)、何だかなーって思ってしまいまする。

まあ何ですな、AIって完全ゲームには絶対の強さな訳ですが、今みたいにゲームの前提が完全に変わってしまうかもしれない(変わらないで元に戻るかもしれないけど)コロナだのウクライナ戦争だのという事案のある中では、そういう要素はどうせ組み入れないんでしょうから(個人の偏見です)まあこうなるのかね、などと勝手に妄想を逞しくしているんですが、いやまあ市場のゲームチェンジャーを認められなくてウダウダ言ってるアタクシの方が駄目駄目なのかも知れない程度には謙虚になりながらこの利上げ局面を見て行きたいものですな。

さて本題は何せ金曜の指値オペ無し攻撃でしょ。



〇金曜はまさかの指値オペ無しでしたが米債がぶっ飛んで帰ってきて・・・・・・

再掲しますが、
https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N2VS3TK
2022年3月26日6:10 午前
米金融・債券市場=利回り上昇、積極的な引き締め観測

10年2.48だの2.49%だのには笑ってしまうしかありませんが、それはそれとして金曜は何故か指値オペ無しの助でございまして、これまた市況はロイターさんと相変わらずの受け売りおじさんで恐縮ですが。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2VS1DW
2022年3月25日3:24 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は5日続落で引け、長期金利は一時6年超ぶり0.24%

『[東京 25日 ロイター] -
<15:08> 国債先物は5日続落で引け、長期金利は一時6年超ぶり0.24%

国債先物中心限月6月限は前営業日比16銭安の149円49銭と5営業日続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同0.5bp上昇の0.235%。取引時間中には一時、2016年1月15日以来、6年2カ月ぶりの高水準をつけた。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、昨日は何せ指値オペ無しというのが????でございまして、いやまあ0.230%から金利が下がったとかいうのなら兎も角、朝から弱めで0.235%マークするわ前場引け近くには0.240%マークするわなのに指値通告を出し渋るというイミフオペレーションが炸裂したものの、期末近い金曜日だからなのか、そこからここを先途と売り込むヤンチャな人たちも出て来る訳でもなく、なーにやってんだかという感じで生煮え相場という感じで1日が終わったのでありました。

『きょうの国債先物は前日の米国市場の債券安地合いを反映して売り先行でスタートし、終日、軟調な相場展開となった。10年金利が、日銀が前回「指し値オペ」の実施を予告した2月10日の水準である0.230%を上回って推移した中、市場の関心は日銀の指し値オペの有無に集まったが、同オペの通告は行われなかった。』

なんなんでしょうかね。2月10日なんてイブニングになって初めて0.230%マークしたと思ったら、金曜から3連休で東京に大雪警報も出るという日の夕方6時とかふざけた時間(こういうのがあるとその時間まで特に業者サイドだったら残ってないとまずいじゃんみたいになるんで、そらまあそういう事をしないと行けないような緊急事態が発生したなら仕方ないけど、そこまでの緊急事態でも無いのにああいうオペをするとうっかり早帰りもできないんで本当に困るんですよね、無限残業をしている人にはわからんかも知れんけど)に仰々しくオペやります通告をしたのに、今度は0.240%マークしたあとの後場ですら指値オペのアナウンス無し。

こういう一貫性の無さが一番困るのであって、0.25%の多少手前の方でオペ入れてシグナル打った意味を見事に無くしてしまっているのが金曜の謎のオペ無し。ちょうど金曜は10時半過ぎくらいから国会で黒ちゃん呼ばれてああだこうだと円安ネタだの物価上昇ネタだのが振られていたから、その国会やってるタイミングで指値オペオファーして円安が進んだら国会で余計な吊るし上げのネタを提供すると思って忖度したとしか客観的に思えないような事をするのが何ともかんともなのですが、「円安上等」って黒ちゃん言いまくってるんだから、別に指値して円安加速したって良いじゃないのそれで起きる批判は日銀全部受け止める覚悟があるから黒ちゃんに好き放題言わせてるんでしょと思うのですが、何ちゅうか黒ちゃんに好き放題言わせるのは止めないくせに、急に円安を気にするようなオペレーションを現場がおっぱじめてしまう、ってのが日銀の訳の分からん所ではありますな、うんうん。

あるいは、2月の時点では止めに掛ったけど今回は0.25%ワンタッチ容認しましょうとでも思っておるのか、とも思ったりする(まあ米債10年が14毛甘とかならさすがに今日は容認以前にワンタッチあるかもねー)のですが、まあ今の時点でカレントの0.25%を容認していると10年新発が新回号になった瞬間に0.25%突き抜けるという事実もある中、なにゆえ引っ張るのやらという中々不思議ちゃんでして、朝一または遅くとも1010のオペ時間には指値打つもんだと思っていたのに打たないでいたら米債m9(^Д^)プギャーというのが日銀らしくてチャーミング。m9(^Д^)

まあ何ですな、何で急に市場との駆け引きをおっぱじめたのかが結局全然わからんままに米債が盛大に売られて帰ってきて、念のため6時頃に日銀のHP見たら指値オペのご案内は無かった(当たり前だ)のですが、しかしまあ金曜日に指値をちゃんと打っておけば今朝変にドキドキ(不整脈ではない)する事も無くて、ああ今日も1日指値オペね、となるところだったのですが、朝から面白過ぎて寄付きが待ちきれなくなってしまいました。

なお、指値無しだった、という事実を受けてあの人がハッスルしてレポートの更新をしている姿が目に浮かぶ、と思っていた(ついでに人ともそういう雑談をしていましが^^)らあの人は期待にたがわずにレポートの更新をぶっこむのでありました。

https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2022/fis/kiuchi/0325_2
日本銀行の円安容認姿勢は修正されるか
木内 登英
2022/03/25

なお、冒頭にある小見出し『「指値オペ」見送りで円安が進む』(上記URL先より、以下同様)ってのは逆じゃネーノと思って読み進めていくと、後ろのほうではちゃんと『しかし、より日本銀行の事務方の裁量の余地が大きい「指値オペ」などのオペレーションでは、世論にも配慮して、長期金利の上昇阻止よりも円安阻止を重視する姿勢を見せるのではないか。』と直っておりまして、とりあえず木内さんオペ見送りを見て満面の笑みを浮かべながら物凄い勢いでキーボード叩いた結果、やっつけ作品になってしまった(まあ言いたいことの趣旨は最後の方にあることでしょうけど)という感じですが、もう「オペ見送り」を受けて嬉々としてレポートを書きました、というのが伝わって中々チャーミングではございました。

まあいずれにしましても謎に市場との駆け引きをやった理由はさっぱり分からんというか、客観的に見て円安加速にビビった以外の理由が考えられなくて、その時点で「指値オペで金利上昇を抑えるとは何だったのか」という話であって、何のために東京に大雪警報の出る3連休前の木曜18時に前回指値の予告をわざわざ告知したのかと小一時間問い詰めたい次第ではございました。

別に死守するの止めたなら止めたで良い(というかマイナス金利もYCCも糞政策なんでとっとと閉店しやがれというのがワイの主張である)のですが、そういうのは現場が適当にやるもんじゃなくて、政策委員会・金融政策決定会合として機関決定してから放棄なり何なりして頂かないと、お前の所のガバナンスはどうなってるんだという話に繋がりますんで何卒よろしくお願いいたします。


〇すいません他のネタ溜まっているのに相変わらずの黒ちゃんMPM会見で恐縮ですが

すいませんすいません何か沢山ネタあるのに。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220322a.pdf

とは思うのですが、まあ色々と今回のMPM会見って黒ちゃんの説明が破綻していて、まあこの政策自体がアレなんでしょうが無い面はあるにしましても、今回のMPM会見って今までにないレベルで説明が破綻しておりまして、まあ何ちゅうか「目標達成しそうになったら困る政策」という前代未聞の境地に達しておられるというのは良く分かりました。

金曜日に引用した質疑の人の後半の説明というのも酷いのですが、前半の方は「関係ない想定問答を延々と読みだして会見時間を無駄に浪費する」という安倍ちゃんみたいな事をしておりましたが、後半はそもそもロジックが無理くりしておるので更に悲しい。

・1月決定会合後の会見に引き続き声明文の政策金利ガイダンス文言を勝手に逸脱して踏み込み発言を継続するの巻

『(問)(前半割愛)もう一点、金融政策は 2%の安定的な達成までYCCを続けるとしています。4 月以降は当分 2%程度の伸びが想定されると冒頭おっしゃっていましたが、そういった中で長期金利をゼロ%に維持するということも続けるお考えでしょうか。』

これですね、政策金利のガイダンスはあくまでも「当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。」(声明文)と声明文にあるように、政策金利水準が横か下というのは「新型コロナウイルス感染症の影響を注視し」なのであって、新型コロナ感染症の影響についてあまり気にしなくて良いのであれば、ここの部分は(現実的には何か屁理屈捏ねてガイダンス文言を残すとは思いますがあくまでも建付けの上では)変わり得るという物件の筈です。


『(答)(前半割愛)それから、先ほど来申し上げている通り、欧米の場合と違って物価が足許 0.6%程度で、4 月以降 2%程度になる可能性はあるわけですが、その大半が国際商品市況といいますか、エネルギーや食料品の輸入価格が上昇することによって起こっているような状況ですので、当然金融を引き締める必要もないし、適切でもないと思います。』

ほうほうそうですかそうですか。政策金利のガイダンスに関しては1月会合でも同じように説明しているんですが、声明文での説明はあくまでも「感染症のリスクがあるので政策金利は上げませんし下げるかもしれません」という建付けになっているので、本来の説明は「コロナ感染症の下振れリスクを警戒しないといけない状況が続いているので物価が2%になったからと言って早急に金利を変更するのは適切ではない」というのが声明文で示した話なのであって、それ以上の話をするのは黒ちゃん勝手に踏み込み過ぎなのか、黒ちゃんの考えている事を事務方が声明文などの文章に落とし込むときに諸葛孔明の罠を勝手に作っているのかのどちらか、という話だし、まあこれだか全力で黒ちゃんが否定してるのに、なぜか金曜は指値オペ打たない、とかいうのって、黒ちゃん勝手に裸の王様にされてるんでネーノ疑惑を感じてしまいますわ(個人の妄想です)。


『もちろん、よく言われていますように、エネルギーなどの輸入価格が上昇し、それが物価を押し上げて、そのもとで予想物価上昇率も上昇していく、あるいは賃金もどんどん上がっていく、そしてそれが更に物価の上昇をもたらすという二次的な波及があるということであれば、金融政策対応ということもあり得ますが、』

(相変わらずまだネタにしていないのだが)1月決定会合の議事要旨ではやたらめったら賃金上昇が必要という話を連呼しているというのに賃金上昇は2次的波及で金融政策対応もあり得るとは何の判じ物なのでしょうか、まあいいですけど。

『日本ではそういう状況に全くありません。』

というのは良いんだが、同じ質問の前半では「まだ春闘全体の評価云々は時期尚早だと思いますが、これまでのところは比較的順調に賃上げが進んでいるようにみています。」という説明をしていまして、物価だけ上がって生活が改善しなかったらアカンのではないかという質問には賃上げが進むと説明しているのに、話が政策変更の可能性になってくると急に「全くありません(キリッ)」と全否定するとか、同じ質問(2つのパートに分かれているとは言え)の中で賃金動向に対する評価が真逆(なお声明文における雇用所得状況に関するアセスメントは1月会合と全文一致)というのは何ぼ何でも悲しすぎるのですが、黒ちゃんの頭の中ではどういう整理をしてこういう無理矢理な説明をしているのでしょうか。

『欧米、特に米国の場合はご承知のように、景気回復がきわめて急速で労働市場がタイトになって賃金も相当上昇していますし、予想物価上昇率も上昇しているというもとで、もともと金利を引き上げるということを決めておられたようですが、今回のウクライナにおけるロシアの侵攻でエネルギー価格などがかなり急速に上がっていることを踏まえて、金利引き上げに踏み切られて、更に今後も段階的に引き上げていくということを示されています。それは大変合理的で当然だと思いますが、』

米国は比較対象にならん、むしろ(この次にある言い訳の)コストプッシュ問題が大きいのは欧州なのだが、欧州の話を全然しないのは明らかにそれに言及すると説明が苦しくなるからですな。

『わが国の場合は先ほど来申し上げているように、仮に商品市況の上昇によって輸入物価が上がり、国内の物価も 2%程度になったとしても、それはまさにコストプッシュ型ですので、当然のことながら長期的には企業収益の減少や家計の実質所得の減少ということを通じて、景気をむしろ後退させる方向となり、物価を押し上げる方向にはならないと思います。』

「景気を後退させる」んだったら何で追加緩和しないんでちゅかねえ(鼻ホジホジ)。

『まだ 4 月の物価がどうなるか分かりませんが、2%程度になる可能性はあると思いますのでそう申し上げたわけですが、そのことは現在の金融政策を修正する必要性を全く意味していないと思います。』

わざわざ「全く」とか力込めている時点でまあ政策変更はしたくないのは良く分かります。


・財務省に聞けというのなら最初から為替の話するなやヴォケ

この質疑もまた酷かった。さすがに何なのでちょっと先に行く。

『(問) 先ほどお答えになった「そういったことは想定されていない」というお答えになるかもしれないのですが、円安について、今後円安が進んでいく、もしくは円安の日本経済に与える影響がマイナスで大きいとなった場合に、日銀が物価目標を達成していない状況の中で、それに対して何かできること、すべきことというのは、そもそもあるのでしょうか。』

という質問なのですが、まあ言い方がどうかなのは画像見て無いから知らんけど、字面みたら別に喧嘩売りにいっている訳でもなさそうなのに何か物凄い勢いで「売られた喧嘩は買う」という回答をしているのだが黒ちゃんマジで大丈夫なのか????

『(答) ご承知のように、為替政策は為替介入や外貨準備の運用も含めて財務省の権限であり責任であり、日本銀行が為替を上下させるような政策を採る必要もないし権限もありませんので、今の点はむしろ財務省の方にお聞き頂いた方がよいと思います。ただ、もちろん、先ほど来申し上げている通り、為替の動きは経済・物価に影響しますので十分注視していますし、従来から色々な分析をお示ししているわけです。それを超えてものすごい円高になったらとか、ものすごい円安になったらということは、財務省にお聞き頂いた方がよいのではないかと思います。』

じゃあ円安は善だの何だのとか言うなよ馬鹿としか思えん。


・なお質疑の最後の方は字面だけ見ると黒ちゃんが勝手に喧嘩を買っているような会話になっておる

この質疑の次がまた酷くて、

『(問) マーケットの中では根強く日銀が正常化に向かうのではないかという見方が一部にあるのですが、それというのは、やはりFEDとかECBをみていて、トランジトリーというのがあった後に、結局はタカ派的な方向に行ったことが背景にあるかと思います。もちろん、景気の強さとかそこは全く違うのですが、ただ二次的な波及効果は先ほど言及されましたけれども、今後日本なりに物価が高い、日本なりに賃金が、要するに 7%、8%とはいわなくても、良いとなった場合に、そういった状況に追い込まれた場合に、日銀が政策変更を強いられるような可能性については今の時点でどのようにお考えでしょうか。』

『(答) それはちょっとなさそうですね。』

もはやナンジャソラなんだが、「コストプッシュは長続きしないというのは本当にそうなのか」という比較的真面目な質問にも「私はそう思わない」で答弁してるのもドイヒーでして、

『(問) 先ほどのコストプッシュ型インフレは持続しないという総裁のご説明ですが、確かに日本ではインフレ期待とか賃金がつられて上がるというセカンド・ラウンド・エフェクトは直ちに起きないと想定される一方で、商品市況の高騰という、もっぱら外的な要因が持続することでコストプッシュ型のインフレが想定以上に続くということも可能性として排除できないと思います。その点を踏まえたうえで、コストプッシュ型インフレは持続しないとおっしゃる根拠をもう少しお伺いできますでしょうか。』

『(答) コストプッシュ型インフレは持続しないというのは、国際商品市況が急激に上昇して、その結果、輸入物価が上がり消費者物価にも転嫁されて上がっても、それは基本的に持続しないということを申し上げています。』

ほう。

『国際商品市況、エネルギー価格や食料品がずっと上がり続けていけば、それは消費者物価も上がり続けるのではないかというのはその通りですが、今、国際商品市況についてそのように考える人は殆どいないと思います。』

「殆どいないと思います」は何ぼ何でも言い過ぎ。すくなくとも「上がったままで下がらない」という構造変化の可能性というかリスクを見てる人はたくさんいるでしょ。もうこの時点で説明が無茶だし、別に狙って引用している訳では無いのですが、今回の黒ちゃんの会見ではこのような「ほどんどいない」だの「まったくない」だのそこまで何で断定的に言えるのかというような全否定コメントの量が(ちゃんと勘定してないからアレだけどだれか暇な人勘定して味噌)従来以上に目立っていて、何でそんなにイカってるのかが良く分からん。

『ご承知のように、原油価格についても、皆さん、原油価格の先物カーブをみて経済予測などをされているようですが、原油価格のカーブもなだらかに下がっていくとみていますし、様々な商品市況についても、この勢いがどんどん続くとはみていないと思います。もちろん、そういうことがあれば、それが続く限りインフレも続くでしょうということは言えますが、そういうことはまずは想定されないですし、過去においてもそういうことはなかったわけです。原油価格なども急騰した後、急激に下がるということの方がむしろ多かったわけです。純粋な思考実験として、どんどん上がっていったらどうなるかは、それは消費者物価も上がっていくということになると思いますが、そういうことは普通想定されないですし、想定する必要も特に今はあるとは思いません。』

結局「無限に商品価格が上がり続ける訳ではない」という回答にして誤魔化しているだけの回答なんですよね・・・・・・


とまあこんな感じで色々とドイヒー(他にもあるのだがもうさすがにいいや)な黒ちゃんの会見、いや何かこんなに謎の強気なのの意味がさっぱり分からなくて、もうちょっと大人しくしてりゃ良いのに何ちゅう高姿勢なんだよと思いながら鑑賞してました。

#虫干しネタで大変すいませんでした







2022/03/25

お題「10年23bpですから指値じゃろ指値(個人の感想です)/黒田総裁会見ですが読めば読むほど今回のは問題点が多いですな(その2)」

ほうほうそうですかそうですか。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N2VR3YX?il=0
2022年3月25日5:24 午前
米金融・債券市場=利回り上昇、失業保険申請改善でインフレ懸念

・・・・・しかし何ですな、ECBとFEDの高官発言も色々と出ていて(まあ出るからこそ海外金利上がるんだが)そっちも追いかけないと行けないですが、そういうことは3月期末のようなクッソ忙しい(生業が^^)時にやらんでいただきたい(無茶苦茶な個人の見解です)と思いますが、日本には10年0.23%問題がございまして・・・・・・・・。


〇また10年金利が23bpになったのですからそらもう指値じゃろ問題(個人の感想です)

・10年23bp来たものの昨日は指値オファー来ませんで

昨日の円債ちゃん
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2VR1CP
2022年3月24日3:19 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は4日続落で引け、長期金利0.230%に上昇 2月10日以来

2月10日と言えば3連休(金曜から)前で、しかも木曜の夜には米国CPIが待っていたので連休中に飛ばされるかもわからん、ということでイブニングで10年カレントの23bpを付けに行ったヤンチャな人が出たと思えば18時に「来週指値やるで」のオファーをした次第。

なお、その日は東京地方大雪で大雪警報が出るわ交通機関がアレになる可能性もあるわというのでハヨカエレという話になっていて、早帰りなども行われていて帰りの電車の中で知ってナンジャソラとイカリソースになられたお方も多かったのではないでしょうか、というしょうもない落ちまでつく指値オファー(の予告)があった時以来、となりましたな。

以下上記ロイターさん記事より。

『東京 24日 ロイター] -
<15:07> 国債先物は4日続落で引け、長期金利0.230%に上昇 2月10日以来

国債先物中心限月6月限は前営業日比12銭安の149円64銭と4営業日続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.0bp上昇の0.230%。日銀が前回の「指し値オペ」の実施を予告した2月10日以来の水準となる。』(上記URL先より、以下同様)

てなもんでして、

『現物市場では10年物以外の新発国債利回りは横ばいから上昇。2年債は前日比変わらずのマイナス0.030%、5年債は同0.5bp上昇の0.045%、20年債も同0.5bp上昇の0.715%、30年債は同横ばいの0.935%、40年債も同変わらずの0.965%で、ロングエンドの底堅さが目立った。』

ほうほう。でもっていつもの記事のTRADEWEB気配ですとこうなる模様(これも毎度の通り上記URL先から引用)。

TRADEWEB
     OFFER  BID   前日比 時間
2年   -0.032 -0.027  -0.002 14:56
5年    0.04 0.045  0.001  15:03
10年   0.225 0.23   0.005 15:02
20年   0.715 0.72  0.006  15:02
30年   0.934 0.94  0.005  15:06
40年   0.963 0.971  0.005  15:03

まあアレですかね、昨日の場合は後場場中にカレントの0.23%ついてはいたのですが、そんなに全体が全売りアイヤーってな感じじゃなかった(先物だけは叩き料理職人の叩きが隙あらば入る感が個人の感想です的にはあるようなないような気がしますが)のでオファーを見送ったのか何だか知らんのですが、まあ勢いついてなかったから気にしなかったんですかね、イマイチ謎ではありましたが。

でもって海外は再掲になりますが、
https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N2VR3YX?il=0
2022年3月25日5:24 午前
米金融・債券市場=利回り上昇、失業保険申請改善でインフレ懸念

『[24日 ロイター] - 米金融・債券市場では、米債利回りが上昇した。米新規失業保険申請件数が52年半ぶりの低水準に改善し賃金インフレの上昇が続く可能性を示唆したことを受け、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制に向け利上げ路線を維持するとの見方が強まった。』(上記URL先より、以下同様)

てな話ですが、

『10年債利回りは2.3ベーシスポイント(bp)上昇の2.344%。』

ってことで、東京時間で確かこの位は米金利上昇してたので、惜しくも(笑)寄りから下にぶっ飛ばすような売られ方するような金利上昇で帰って来たわけでもないですわな。

ちなみに、

『米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は24日、過去半年間でインフレに対する自身の見解が「劇的に」変化したとした上で、インフレ抑制に向け年内に0.25%ポイントの利上げが7回実施されるという見通しを示した。同時に、過度の利上げは禁物として注意を促した。』

カシュカリ大僧正のスタンスが「劇的に」変化しているのはクッソワロタとしか申し上げようがない。過去半年どころか過去2カ月くらいじゃねえかよ大僧正。

という別件面白ネタはありますがそれはまた後日としまして、

『30年債 16時08分 2.5212% 前営業日終値 2.5200%
10年債 16時07分 2.3553% 前営業日終値 2.3210%
5年債 16時08分 2.3865% 前営業日終値 2.3400%
2年債 16時05分 2.1262% 前営業日終値 2.1130%』

なので、だいたい昨日のアジア時間で既にこの辺やってた気がしないでもない(違ってたらすまねえ)ので、惜しくも寄りから飛ばしはしないんですかねえ、よー知らんけど。


・今日はやるんでしょうが通常のオペオファーなのかHPに何か告知するのか

前回の場合、「月曜日にやりますよ」というのを連休前の木曜日の18時にHPに告知する、という割と異例の対応(オーバーウィークかつ3連休で米国金利がぶっ飛ばされたら困るから、という背景自体はわかるんだがもうちょっとタイミングというのを考えて欲しいし、何なら国内の参加者がもう殆ど居ない時間帯に通知するなやこのスットコドッコイとは思いましたが)でした。

ただまあ普通に場中にオファーするとかだったら別に日銀のサイトにのっけてどうのこうのとかの話ではないですからして、いつものオペオファー時間とかに悠々と出してくるのかもしれませんけど、これ昨日の相場23bp付けた後特にオラオラ状態にならなかったのって、前回指値を25の前に打ってきた、という実績があるから、そこからこれを先途と23オールヒットして23.5まで値段付けに行ってやろうというヤンチャな人が出てこないというだけの話しであって、今日の円債ちゃんが金利低下してくれるなら別にどうということは無いのですが、金利がサガランチ会長で先物の叩き料理とかの風情になってきた場合、時間の経過と共に不安感が醸成されていくのではないか、という疑心暗鬼モードになってくるので、まあシグナルやる意思があるんなら寄りで金利ちょっと上がりそうならちゃっちゃとオファーしたら(個人の感想です)とは思うのでありました。


・なおカレント3か月伸びる問題は残る

ご案内の通りで、四半期末の次の月(ややこしい)の頭に出て来る新発中長期利付国債の主要年限に関しては新規発行銘柄になって、償還が従来のカレントから3か月伸びる問題がございまして、23で指値ハイランドとなって色々とトークのあるなか、そういやもう直ぐ4月で償還伸びたらカレントの利回りが自動的に上昇するじゃん25bpの扱いどうなるんじゃ問題が円債村の話題となったのが昨日のもう一つのハイライト。

これですね、今のカレントをせっせと25bpで止めましたって状況で新発の入札を迎えると、日銀様が25bpで無制限指値をして下さるのは結構なんですが、そのせいで既発とのロールダウンというのものが存在しなくなる、という「カレントプレミアム」みたいな古き悪しき時代のアホウな局地的イールドカーブが発生するとかいうトンチキなことになりまして、キャリーロールダウンとは何なのか問題が発生する新発クソ割高現象になってしまうんですよね。

ま、今のカレントが23くらいで止まってくれればロールダウンを持って入札迎えて、フロアが25bpですよとかいう面白新発になるのですけど、いやーこれどういう事になるんですかねえ(・∀・)ニヤニヤ


・・・・・・ということで、まあ1か月と15日ほどは指値砲撃(しかも重砲部隊を並べただけで売り軍団が尻尾を巻いて退散したので砲撃すらしていないのに大勝利という大戦果)の成果が出ましたが、本格的に利上げするぞ状態の米国に加え、欧州様もいやーなんかヤバいかも知れんけど物価の方がもっとヤバいから何かせんといかんぞな状態と時代は進歩し、円相場はどう見ても国力の低下です本当にありがとうございましたとばかりの円安ちゃんに進歩しましたので、まああんまり「前回あっさり戻ったからもうちょっと様子見ても良いかな」などとノホホンとしてない方が良いとは思いますけどね指値するんだったら(あくまでも個人の感想です)とは思いました。


〇1月議事要旨とか片岡さんの金懇とかどうでもよいので後にして黒田総裁会見見物会の続き

ちなみに昨日は片岡審議委員の金懇があったのですが、どうせこちらはカシュカリ総裁の毛髪程度にしか読んでる意味は無いと思われますが、最後の金懇だし卒論がてら出てくるのですから卒論はみておかないと、とは思っております。そんな訳で思っているだけで読んでないのですが、「好意の反対は無関心」って言葉ですけど、最近の日銀の政策方面から出してくる物件(さすがに声明文と展望レポートは読みますが)に対する我ながら冷淡すぎて野良日銀ヲチャーとは思えないスタンスを我ながら思うに(昔はその手の物件がでたら何はともあれ5秒後には読みだしていたし15分後には紙に出したブツに赤ペン引いていた、というあの熱意は何処に逝ってしまったのでしょうか・・・・・・寂しいことです)、まさに「好意の反対は無関心」なんだなーと思います。

どの位無関心かというと、今これ書いてて「あ、1月会合議事要旨もあったんだ」と思い出して小見出しを書き直したという位に無関心でございまして、そろそろポスト黒田を見据えてこの無関心をどないかせんといかんですな。


・・・・・・などという悪態は兎も角としてエンターテイメント性だけは高い黒ちゃん会見の続きである。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220322a.pdf


・雇用所得環境に対する質疑応答を見ても色々とおかしいわと思うものがありまして・・・・・・・・・

昨日は「円安の効果がこれからでて物価に影響するのではないか?」という質問に対して「上がりません」とか凄い回答をした所まででしたが、その次の質疑も中々笑えるというか、この会見、映像見て無いから何ともですが、文字起こししたのを見ると相手の質問に対して無茶苦茶な回答しかしてなくて、いやあの物価高怪しからん状態に政治的になっている中で、何ぼ何でもこの応対は日銀として無駄に敵を作るだけのようにしか見えないんだがマジで大丈夫なのかと思ってしまう今日この頃。

『(問) 二点お願いします。冒頭、所得と雇用について、改善は続いているけれども全体としては弱いというご評価をされていましたが、このところの春闘も含めて、総裁のご見解、評価を伺いたいと思います。(後半割愛)』

回答が何故か知らんがクッソ長い。もしかして想定問答の該当しそうな個所を全部棒読みしてるんじゃなかろうか、ってくらいの回答です。

というのはですね、雇用と所得の質問してるのに、明らかに聞かれても居ない項目について延々と説明をしだすんですよ。


『(答) まず経済全体の状況は、最初に申し上げた通り、「感染症の影響などから一部に弱めの動きもみられるが、基調としては持ち直している」ということで、「弱めの動き」というのは、典型的には感染症、いわゆるオミクロン株が今年に入ってかなり拡大して公衆衛生措置もとられ、それが特にサービス消費に下押し圧力として効いて、足許消費が弱めだったということが、このところの経済の弱めの動きを示しています。』

まずこれが「お前は何を言い出してるんだ」状態でして、質問している人は(一々URL示しませんが)今回の金融政策決定会合後の声明文の記述の中で「雇用・所得環境をみると、一部で改善の動きもみられるが、全体としてはなお弱めとなっている。」という評価を行っている事を踏まえて、春闘動向も踏まえた雇用所得環境についての見解を聞いているんですよね。

どうも黒ちゃん「弱めの動き」というワードをキーにして想定問答集を探してご回答されているようにしか見えなくて、そもそもおじいちゃん人の話聞いてるのかというのが心配になるレベルだし、もし真面目にこういう回答してるんだったらちょっと記者の方々を馬鹿にし過ぎなんじゃないですかねえと思う訳ですが、まあ黒ちゃん時代長い間にヨイショ質問ばっかりする馬鹿記者にすっかり甘やかされてしまっていざ記者のみなさんがちゃんとした質問をおっぱじめだしたらこの有様、ということなのかも知れませんが、それにしても全然聞かれていないことから話を始めるのは何なんでしょこの爺さん。

『他方で企業収益とか企業マインド、設備投資動向はかなりしっかりしています。そうした中で、まだ春闘は終わっていませんし、これから中小・中堅企業にどのように賃金上昇が波及していくかということをみていかなければなりませんが、これまでのところ製造業を中心に、大企業の春闘の賃上げは、久方ぶりにかなり高めになっています。これは経済が基調的に回復してくる中で企業収益も伸びたことも背景にあったのではないかと思います。まだ春闘全体の評価云々は時期尚早だと思いますが、これまでのところは比較的順調に賃上げが進んでいるようにみています。(後半割愛)』

あ、やっと答えた。こんなもの「そうした中で」の先だけ回答すれば良いのに何であんなの付けたんでしょうかねえとは思うのですが、「これまでのところは比較的順調に賃上げが進んでいるようにみています。」という認識なのに、何で声明文の現状判断が「雇用・所得環境をみると、一部で改善の動きもみられるが、全体としてはなお弱めとなっている。」のまま(というのは1月展望レポートの基本的見解で示されている現状認識の中の雇用所得環境の表現が(これまた一々URLのっけませんが引用しますと)「雇用・所得環境をみると、一部で改善の動きもみられるが、全体としてはなお弱めとなっている。」ということで、1月の展望レポートと表現全く同じで、何か黒ちゃんが言うような威勢の良い春闘の結果を全く反映していないという判断になっているんですよ。

この質問の人、「声明文における雇用所得環境の表現が相変わらず弱いままなのですが春闘に対する評価としてはあまり評価しないという理解なのでしょうか」みたいな趣旨で聞いていると思われる聞き方に見えた(個人の感想です)のであって、いや春闘をそんなに評価してるんだったら、声明文に何か反映させてくれないといかんでしょ。大体からしてお賃金上がるかどうかが重要とか政策委員の皆さんも連呼する重要項目なんだから、とうぜん3月会合のアセスメントで春闘の結果なども踏まえた判断を何らかの形で見せてくれないと、日銀の情報発信を見ている方としても困るんですよね。

ということでですね、この質疑応答から導き出される問題点は2つありまして、1つ目は答弁の最初の方に見られるように、「黒田さん人の話聞いてるの??もうちょっと真面目に回答しないと情報発信としてのクオリティもそうですけど、全方面に無駄な喧嘩を売ることになるよ」という話でして、2つ目は「雇用所得環境」という2%物価安定目標達成に向けた重要なキーとなる項目に対する日銀の情報発信が雑にもほどがあって、春闘のような雇用者所得にモロに響く事象の評価について高く評価しているなら高く評価しているというようなアセスメントを何故声明文に反映させないのか、というコミュニケーション上の問題がありますな。

などと書いていたらなんと酷いことに質疑応答の質問半分だけで時間が無くなってしまう(指値オペ雑談をダラダラやり過ぎましたサーセン)という実にトンチキな事になってしまいましたので今朝はここらでご勘弁頂くとして、週末更新とか言いたいですがちょっと無理かな〜。まあ書き溜めをしなきゃなあとは流石に思っております(欧米中銀ネタも早く料理しないと次の具材が出て前のが陳腐化してしまうから)。





2022/03/24

お題「3月MPM黒田総裁会見は政策インプリケーションは1ミリも存在しないが見世物としてはかなりのオモシロ物件です」

そうですかそうですか。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA233HK0T20C22A3000000/
首相「物価高対策の指示出す」 公明代表に意向伝達
参院選2022
2022年3月23日 14:08

項目にもう「参院選2022」があるのかよと思いましたが、まあそれは兎も角としまして、

『岸田文雄首相(自民党総裁)は23日、首相官邸で公明党の山口那津男代表と会談し、原油や食料など物価高対策の策定を政府に指示する意向を伝達した。「政府としてなんらかの指示を出すことも考えたい。しっかり臨んでいく必要がある」と山口氏に伝えた。山口氏が会談後、官邸で記者団に明らかにした。首相と山口氏は物価高騰やウクライナ情勢などの動向を踏まえ「追加的な経済対策についてもこれから検討していこう」と確かめた。』(上記URL先より)

という話をしている中で黒ちゃん今までの調子で今までのクオリティの会見をしてたとしか思えないのですが、マジで大丈夫なんでしょうかねえ日銀を引き連れて無理心中するのは勝手なのですが、せっかく色々と積み上げた野良日銀ヲチャーの知見が無駄になるようなことになったら悲しいのですが。


〇黒田総裁記者会見の続きというかほぼ本編(今日で終了の予定が後日に続くのでその1)

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220322a.pdf
総裁記者会見要旨
―― 2022年3月18日(金)
午後3時半から約65分


・ウクライナ戦争に対する棒読み答弁を確認しましょう

最初に延々と棒読み説明があって、その次に幹事社からの質問はいいんですが、その回答がこれまた延々と棒読みだったので(個人の感想です)聞く気を無くしたし通常業務だってヒマじゃないんでまあどうせどうでもいい会見だから華麗にスルーするか、と華麗にスルーしましたが、想定問答はこのようになっておられました。

『(問) 今回、公表文でもリスク要因として掲げられましたウクライナ情勢の緊迫化ですけれども、不確実性が高いということですが、世界経済や日本経済に与える影響、具体的にどういったリスクとして想定されているのか、お考えをお聞かせください。』

以下棒読み開始、としか思えない口調で棒読みをしていましたが、あの「私は棒読みをしています」という雰囲気を満載にした説明ってのもさすがに新法以降の日銀総裁の中でこの人圧倒的に棒読みだと思うのですが。

『(答) ロシアによるウクライナ侵攻と、それに伴う各国のロシアへの制裁等の動きは、様々な経路を通じて、世界の経済・物価動向に影響を及ぼすと考えられます。第一に、原油や天然ガス等のエネルギーや、小麦等の穀物、ニッケル等の金属を中心に、国際商品市況が大幅に上昇しています。第二に、ロシア関連の貿易取引の縮小や、サプライチェーンへの悪影響が予想されます。第三に、国際金融資本市場における不安定な動きや先行きの不確実性の高まりは、家計や企業のコンフィデンスの悪化をもたらす可能性があります。これらは、ロシアとの経済的な結びつきが強い欧州を中心に、世界経済の下押し要因になると予想されます。同時に、このところ高まっているグローバルなインフレ圧力が一段と増幅され得ると考えられます。』

そういうのをスタグフレーションって言うと思うのですがリスクが具現化したらどうするんでしょうか、というか既に進行中ですけどね。

『わが国経済への影響についてみますと、資源の大半を輸入に頼っているため、当面は、資源価格の上昇の影響が最も大きいと考えられます。すなわち、物価は、エネルギーや食料品等を中心に、当面はっきりと上昇すると予想されます。』

と来てからのコストプッシュガーという話なのですが、コストプッシュだからどうのこうの、みたいな理屈ってワンタイムの効果だったらコストプッシュに一々対応する必要はない、という話になりますが、米国にしろ欧州にしろ、ワンタイムとか言ってたらセカンドラウンドどころか12ラウンド位までやらかしている状況の中で、のうのうと「コストプッシュ」だけ言ってて大丈夫なんですかねえという話でして、

『こうしたコストプッシュ型の物価上昇は、企業収益の悪化や家計の実質所得の減少を通じて、やや長い目で見た景気の下押し要因として作用するとみられます。』

ここで想定問答集のズルいのは、「その結果物価はどうなるんですか」という話を綺麗にかっ飛ばしていることで、コストプッシュだと思うんだったら、その結果としてより先の基調的な物価押し上げの力が弱まる、という理屈になるわけですけど、声明文で見られた物価見通し(ただしあの見通しは目先半年程度の見通しだから、という言い訳はできる)では先行きの物価見通しが堂々の「この間、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調的な物価上昇圧力は高まっていくと考えられる。」(今回の声明文)のままでしたな。

つまりですね、緩和政策の(出口方向での)見直しという話を死んでもしたくないから、コストプッシュは景気の下押しで云々とか言うのですが、景気下押しのコストプッシュが起きるというのであれば、一方で景気下支えの強化(追加金融緩和)はしないのかという話になると、声明文の方にあるように「基調的な物価上昇圧力は高まっていく(キリッ)」となっているという二枚舌使うにしてももう少しエレガントに使ってほしい二枚舌スキームとなっておるわけですなこの想定問答集。もうちょっとエレガントに作ってください。30点。

『貿易活動を通じたわが国経済への影響については、ロシアやウクライナとの貿易量は小さいため、直接的な影響は限定的とみられます。』

というのは良いとしまして、

『もっとも、海外経済への下押し圧力や、サプライチェーン障害などを通じて、わが国の企業の貿易・生産活動に、間接的な影響が及ぶ可能性はあります。』

何かそんなのんびりした表現でエエンカイナ。

『マインド面への影響については、エネルギー・食料品といった必需品の価格上昇が、家計の支出意欲に悪影響を及ぼすことが考えられます。』

企業収益悪化で雇用所得環境が悪化するとか、そういう話は無いそうです。

『また、国際金融資本市場が一段と不安定な動きとなる場合には、企業の設備投資の先送りの動きにつながるなど、経済に影響を及ぼす可能性には注意が必要です。』

この「国際金融資本市場が〜」ってのが何を言いたいのかがわからなくて、確かにリーマンショックみたいな事案になればそらまあ「企業の設備投資の先送りの動きにつながる」のは分かるんですが、今回企業が設備投資の先送りをするとすれば、普通の普通にウクライナ戦争の影響による投入コストの上昇から来る収益悪化による投資余力の低下とか、ウクライナ戦争の影響による需要の落ち込みを受けた投資の先送りとか、そういう因果関係からの投資先送りになると思うのですが、今回の日銀の説明の中で物凄く謎なのがこの「国際金融資本市場の〜」が何故か「企業の設備投資」の方に影響するというお話でしてナンナンジャロマジでよくわからん。

いやね、もしかしてこのウクライナ戦争の影響で本邦金融機関の関連与信が盛大に毀損して、その結果金融機関の融資行動がシュリンクするので企業への融資態度が極めて厳しくなる、とかそういう聞いてねえよー的な事を熟知してこういう説明しているのかも知れないのですが(たぶん違うと思うけど)、何はともあれ全然ワカランチ会長な部分ですわ。

『いずれにせよ、ウクライナ情勢の帰趨を巡っては、きわめて不確実性が大きいと思います。日本銀行としては、この問題が、感染症からの回復途上にあるわが国経済に悪影響を及ぼさないか、内外の情勢を注視していくこととしています。』

悪影響を及ぼすようであれば断固として追加緩和措置を取るんじゃないのでしょうか(鼻ホジホジ)。


・何もしないという結論が先に決まっているので昔の理屈とも整合しないどころか直前の質疑とも整合しない理屈で対処とな

『(問) 先ほどウクライナ情勢に伴う物価のお話がありましたが、資源価格の高騰、また欧米との金利差もあって円安が進んでいます。今後、国内の物価の上昇が見込まれていて、2%を超えていく可能性というのも高まっています。現在、大規模な金融緩和を続けている日銀ですけれども、今後の金融政策のスタンスを改めてお聞かせください。』

と来ましたが、

『(答) 先ほど申し上げた通り、先行きの消費者物価の前年比は、当面、原油や天然ガスの価格高騰を反映して、エネルギー価格が大幅に上昇し、食料品を中心に原材料コスト上昇の価格転嫁も進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落することから、プラス幅をはっきりと拡大すると予想しています。』

『具体的には、4 月以降、当分の間は、今後の原油価格の動向やそれに対する政府の対応などにもよりますが、石油製品の上昇を主因に、2%程度の伸びとなる可能性があります。』

ここで勝ち逃げを何故かしないのが意味不明なんですがその点については後程か後日か。

『エネルギー価格の上昇は、コスト増を通じた物価の押し上げ要因になる一方で、家計の実質所得の減少や企業収益の悪化を通じて、わが国経済に悪影響を与えるものでもあります。』

ほうほう。

『こうしたもとで、日本銀行は、持続的・安定的な物価上昇を目指して、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適当であると考えています。』

さてここで2014年10月31日に公表された(しかも黒田総裁時代)金融政策決定会合声明文を確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf

『原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断した。』(この部分だけ直上URL先の2014年10月31日金融政策決定会合の声明文項番2より引用)

・・・・・・・・・原油価格が下がると緩和拡大、上がったら現状維持とは?????????

『もとより、日本銀行は、金融緩和による需要の増加を背景に、企業収益や雇用・賃金が上昇する中で、物価も基調として緩やかに上昇していく姿を目指しています。』

という説明ですが、さっきご説明されたようにコストプッシュ型の物価上昇が企業収益に悪影響を与えたり、家計の実質所得の減少による消費への悪影響などが想定されるのであれば、「〜緩やかに上昇していく姿を目指しています」とかノホホンと説明している場合じゃなくて、今まさに仰っているように「金融緩和による需要の増加を背景に、企業収益や雇用・賃金が上昇する」というのでしたら、一段と金融緩和を強化して需要の増加が起きるようにした方が良いのではないでしょうか!!さあ!!急ぐのです!!!!(白目)


・円安に対する質問は当然のように飛んでくる

『(問) 今の質問にもありましたが、円安の影響について改めてお伺いします。これまで総裁は全体ではプラスで、一方で最近は家計に対する物価の上昇が与える影響が大きくなっている可能性みたいなものを示唆されつつも、基本的には全体としてはプラスだというお考えを示されています。とはいえ、最近FRBの利上げも始まって、だいぶ金利差が開いて、円安が 119 円までいきましたというのもあって、割と急激な加速のようにみえます。あとは実効為替レートの方も 50 年ぶりの水準という中で、改めて円安というものに対して、総裁がどういうふうにお考えなのかをお聞かせください。』

それ来た。

『(答) 為替相場の具体的な状況についてコメントすることは差し控えたいと思いますが、』

おっさんコメントしまくってるやんwww

『いつも申し上げているように、為替相場は経済や金融のファンダメンタルズを反映して、安定的に推移することがきわめて重要だと思っています。』

直近どう見ても安定的に推移とは言い難い勢いで円安進行しているので、これは望ましくない展開なので日銀としては何か対処するんですよね!!!!!!!!!!、と絶対何もしないのを分かってて一々悪態をつくスタイル。

『そのうえで、一般論として申し上げますと、』

以下今後世の中的に円安マズかろうとなった時に日銀が圧倒的に悪者にされるための埋伏の毒が毒を放つのである。

『為替レートの変動がわが国経済に及ぼす影響は、経済・貿易構造に応じて変化しているわけですが、円安が全体として経済・物価をともに押し上げ、わが国経済にプラスに作用しているという基本的な構図は、
変わりないと考えています。』

輸出企業の業績ガーは分かるから良いけど、「円安で物価上昇」が「わが国経済にプラスに作用」って原因が円安の物価上昇ってどこからどう見てもただのコストプッシュにしか見えませんが、と思ったら自分で言ってることが明らかに直前と矛盾してるもんだから直後に慌てて言い直しているのはクソワロタ。

『ただし、円安の影響が、業種や企業規模、経済主体によって不均一であることには、十分な留意が必要です。その中で、円安は輸入物価の上昇要因となるわけで、輸入物価の上昇が、家計の実質所得の減少や企業収益の悪化を通じて、わが国経済の下押し要因となり得るわけです。』

基本的にプラスなのに我が国経済の下押し要因になり得るとはこれまたムツカシイネー。

『ただし、最近の輸入物価の上昇については、ウクライナ情勢を受けた国際商品市況の急激な上昇があり、円安というよりも、ドル建てでみた原油などの資源価格上昇の影響の方が圧倒的に大きくなっているわけです。』

円安のせいではない、といいたいそうだ。

『いずれにしても、原油や天然ガスの大部分を輸入に頼るだけに、これらの輸入価格の上昇が、わが国の経済・物価に及ぼす影響について、注意深くみていきたいと思っています。』

輸入価格上昇の影響を軽減するためには(円高政策取れとは言わんけど)円安ドライブが掛かるようなスタンスをちょっと考え直した方が良いんじゃないですかねえ。



・このような物価上昇の姿は望んでいた姿なのでしょうかという直球な質問に対しては無理筋説明で無理くり対応

『(問) 今の質問に関連することですけれども、今の日本の物価上昇、これは日銀からみて望ましい物価上昇、目指していた形での物価上昇なのでしょうか。』

これは火の玉ストレートwwwwwwwwwwwww

ソフトに質問したのか渾身のストレートで質問したのかの口調は重要かもしれませんが(笑)なにせ聞いてないのでシランガナ(←パウエルとラガルドのポストミーティング会見は全部聞くというのに野良日銀ヲチャーの風上にも置けない人(1人だから風上も風下もないけど))。

『おっしゃる通り、エネルギーそして食料価格というコストプッシュ型の物価上昇になっているところに、海外と日本の金利政策の違いによって円安が進むと、一層の輸入物価の押し上げということにつながります。こうした状況でも、日銀は動かなくてよいとみていらっしゃるのかどうか、ここをまず一点教えてください。(後半割愛、というか次に)』

という素敵な剛球が放り込まれましたが黒ちゃんの回答や如何に?

『(答) 物価上昇は、足許、生鮮食品を除いたところで 0.6%ですが、上昇要因としては、エネルギーや食料品の国際商品価格の上昇が非常に大きく効いているわけです。一方で、大規模な金融緩和のもとで、企業収益が大幅に拡大し、賃金も上がってきている中で、コロナのもとではあっても、基調的な物価上昇要因が少しずつ上がってきていたことは事実であり、それは非常に良いことです。』

えーっとすいません、雇用所得環境に関しては声明文で「雇用・所得環境をみると、一部で改善の動きもみられるが、全体としてはなお弱めとなっている。」って言ってるのに、「賃金も上がってきている中で」とか言っちゃうんですか黒ちゃん???

『他方で、先進国の中で資源輸出国というのは相応にありますが、そういう国と違って、わが国は資源輸入国ですので、最近の国際的な商品価格の上昇によるかなり急激な輸入物価の上昇は、交易条件の悪化などで経済にマイナスになるような、いわばコストプッシュ型の物価上昇であり、この点は好ましい物価上昇ではないと思っています。』

ほうほうそうですかそうですか。それは分かったんだがじゃあ何で2014年は原油価格の下落を受けて追加金融緩和したんですかしら???今度説明してもらえませんかねえ、というか誰か記者の人質問してみたらどういう回答するのか見てみたいですね(というかどういう想定問答が飛び出すのか、というのがより正確な表現ですがw)。

『ただ、その要因の中で、円安が影響している部分はきわめて小さくて、基本的にウクライナ紛争が激化する前から国際商品価格が少しずつ上がってきていましたが、更にロシアのウクライナ侵攻によって、エネルギー価格や食料品価格などはかなり急激に上昇しているということで、円安による要因はわずかであり、基本的にはドル建ての国際商品市況の上昇によるものだと思っています。』

円安の影響はこれから出て来るのですから、この説明はまあその場しのぎにも程がある説明ですわな。

『先ほど申し上げた通り、それによる物価上昇というのは好ましくないということですが、国際商品市況の上昇による影響は、輸入国としては避けがたいところがありますので、その状況は十分注視していく必要があると思います。』

だんだん何言ってるのか訳分らんくなって来たぞオイ。

『先ほど申し上げたように、コロナからの回復の中で商品市況が上がってきたところへ、ロシアによるウクライナ侵攻で、急激に上がってきていることが影響している点は大きいと思いますし、それはもちろん日本にとって好ましくない輸入価格の上昇であると思っています。』

それはさっき聞いた。

『なお、為替が変動する場合に、従来から様々な分析で申し上げている通り、輸入価格の上昇もありますが、輸出価格の上昇もあります。輸出数量効果は、最近では非常に小さくなっていますが、他方で、わが国の企業が海外で生産をして、本社に送金される円建ての収益の金額は、円安によってむしろ拡大するわけです。』

でもその総合的な効果は近年逓減してるって話じゃなかったかしらこの前の展望レポート全文。

『ですから、私どもの分析で申し上げている通り、全体としては、ファンダメンタルズを反映して安定的に推移している中で円安になることは、むしろ日本の経済・物価にとってプラスになるという基本的な構図は変わっていないと思います。(後半割愛というか次にネタにする)』

それは過去の話ですよね〜ってところなのですが、別にこんなの「メリットデメリットは色々とあるし、その時の経済構造によっても変化し得るものなので、経済に与える影響については様々な角度から分析して検討していきます」くらいにとどめておけば良いのに、黒ちゃんが円安万歳論を引っ込めたくないからかなり無理筋の理屈を繰り出さざるを得ないという事で、無理筋の屁理屈想定問答を一生懸命作成した挙句にボスと一緒に無理心中とか悲しい話ですねえ(棒読み)などと思いながらこの無理筋説明を読むのでありました。


・スタグフレーションに関しての質問で意地っ張りゲージが上昇しだしました

この質問の後半はスタグフレーション懸念ね。

『(問)(前半割愛というか上記部分)更に、今回、景気判断については、下方に修正をしていますけれども、物価は上がって景気は下がっていくという、いわばスタグフレーション的な状況というのを先行き警戒する必要が出てきているのかどうか、これについても教えて頂けますでしょうか。』

さっきのウクライナ戦争によるリスク要因の説明でまさしく「これらは、ロシアとの経済的な結びつきが強い欧州を中心に、世界経済の下押し要因になると予想されます。同時に、このところ高まっているグローバルなインフレ圧力が一段と増幅され得ると考えられます。」って回答したばっかりなんだから、素直に「リスクはあります」と言えば良いのですが、何でこんなにクソ意地だした回答をするのかがさっぱりイミフなんですけど黒ちゃんの回答。

『(答)(前半割愛というか上記部分)そこで、国際商品市況の急激な上昇や、その背後にあるロシアのウクライナ侵攻による貿易への影響が、スタグフレーション的なことをもたらす惧れがないかということですが、』

えーっとさっきの回答さっきの回答、と思いきやこの答えである。

『現時点で日米欧について、そうした惧れがあるとは思っていません。』

リスク要因として説明するってのは「リスク要因が顕在化したらそうなるよ」という事象のことを説明しているというのが通常の日本語(というかどこの言語でも)とアタクシは思っていたのですが、黒ちゃんの中でどういう整理をするとこういう回答になるのでしょうか?????

『ご案内の通り、欧米の経済成長率は、最近でも依然として潜在成長率をかなり上回る状況が続くと予想される状況ですし、わが国の場合も、潜在成長率をかなり上回る成長が続くとみられていますので、スタグフレーションということにはならないと思います。』

今の時点での予想を基に話をするってそれメインシナリオの話で、「惧れは無いのか」ってのはリスク顕在化の可能性について聞かれてるんだがどういう誤魔化しかたをしてるんだこのおっちゃん。

『他方で、確かにこういった商品価格の上昇は、特に日本のような資源輸入国にとっては好ましくないことですから、経済・物価への影響は、十分注視する必要があると思いますが、』

と来ますが、

『欧米も日本もスタグフレーションになるというふうには思っていません。』

何でこんなに言い切ってしまうのかさっぱり良く分からんのですが、もしかして質問前半の火の玉ストレートがあったから丁寧に回答する気を無くして昨日ネタにしたH記者対応メソッドが飛び出してしまったのかもしれませんね。


・・・・・・と思ったらこの後の質疑がさらにこの「対H記者メソッド」が登場してしまうのです。



・今までは円安の効果は小さかったけど今後は違いませんかという尤もな質問に意地張って無理筋にも程がある回答

『(問) 同じような質問になってしまって恐縮ですが、先ほど輸入物価の上昇に円安が与える影響は今のところ小さいというお話でしたけれども、先ほど来お話にあるように、FRBもBОEも今年これから利上げしていくという中で、円安圧力というのは更に強まっていくと思われます。そうした中で、先ほど総裁がおっしゃられた円安の要因が輸入物価に与える影響が大きくなっていったときに、日銀として何らかの対応を検討する余地というのはあるのでしょうか。』

政策対応、という言葉でどうも意地っぱりゲージが急上昇したようでいきなりこの回答。

『(答) そもそも、そうなるとは思っていません。』

これはひどいwwwwwwwww

『もちろん全然関係ないとは言いませんが、色々な実証研究でも、金利差と為替レートの関係は、相関関係がそんなにはっきりしているというわけではないことも明らかになっています。』

どうも政策対応の前に円安にならんと言ってるようだがさっきおっちゃん円安はプラスって言ってたのに政策対応と絡められると急にジャガーチェンジしますな。

『今の時点で欧米の中央銀行が金利を引き上げていくのは、それぞれの国の物価状況、インフレが米国の場合は 8%近い、欧州の場合は 6%近い――わが国の場合は 1%未満というところですので――、そうしたところで金利を上げていく、緩和の程度を弱めていくというか正常化していくのは当然のことであり、それらの経済の成長をむしろ持続させる意味でも非常に重要だと思います。』

と思ったらやっぱり政策対応のことで瞬間湯沸かし器になったんですね!!!!!

『だからといって日本が金利を上げる必要は全くありませんし、そうしたもとで金利差が拡大したら直ちに円安になるということもないと思います。』

貴方の思いはどうでもよいのだがなったらどうするのかという質問なんですけどねえ。

『ご承知のように、少なくともこの 10 年といいますか、かなりの期間にわたって、日米欧の通貨間の為替はかつてのように大きな変動がなく、比較的、安定的に推移しているわけです。これはECBの元総裁のトリシェ氏やその他経済学者の方も言っておられますけれども、日米欧の中央銀行が 2%の物価安定目標を掲げて金融政策を運営していることが、これら三極の通貨間の為替レートが、比較的、安定を維持している一つの要因ではないかとも言われています。』

では直近の動きはどう説明するんでしょうかねえ??????

『いずれにしても、為替レートは経済や物価に影響を及ぼしますので、当然よくみていくつもりではありますが、ご懸念のような可能性が高いとか、それによって日本のインフレが非常に高まっていくとはみていません。』

勢いで「物価が上がらん」とまで言い切ってて、もはやおじいちゃんこの政策を変更しない事の為だけに意地になっているとしか思えない面白答弁になってしまいましたな!!!!!!!!!


・・・・・・・すいません、まだ続きがありまして、別に政策インプリケーションは全く無いのですけれども、見世物として無茶苦茶面白いので(こんなことならちゃんと会見聞けばよかったかもですね!!!)この後につきましても重要な欧米中銀ネタの合間に挟んで消化しようかと思います。







2022/03/23

お題「まあしょうがないので日銀の決定会合レビューもしましょうである」

https://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPL3N2VP3VK?il=0
2022年3月23日5:08 午前
NY外為市場=ドル小幅安、FRB議長発言後の上昇一服

とは言えとうとう

『ドル/円 NY

午後4時 120.75/120.78
始値  120.86
高値  120.93
安値  120.39』(上記URL先より)

日本がドンドン貧乏国に戻っておるようですな。しかもどう見ても今回は挽回が絶望的にしか見えないのがもう何ともかんとも。

でまあ過去を振り返ってどう見ても糞なのは安倍さんと黒田さんなんだが、何故かこれが岸田さんのせいにでもされたらタマランチ会長ですが、黒ちゃんが自ら積極的に自分と日銀のせいにして日銀と無理心中しようとしている、という陰謀論を仮定すると、黒ちゃん実は財務省の送り込んだ埋伏の毒(なお財務省にそんなつもりはない筈、と思いたい)になっているのがオソロシス。

という訳で野良日銀ヲチャー(自称)なのでちゃんと日銀ネタに遷移します今朝は。

#重要度から言ったらどうでもよいけど


〇決定会合声明文:

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k220318a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2201a.pdf(前回展望レポート基本的見解)


・現状認識:コロ助の影響による個人消費の下押しで下方修正なんだがそもそも1月の時に何でこの部分警戒文言足りなかったのよ

『わが国の景気は、新型コロナウイルス感染症の影響などから一部に弱めの動きもみられるが、基調としては持ち直している。』(今回)
『わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らぐもとで、持ち直しが明確化している。』(前回展望レポート)

総合判断を下方修正(「基調としては」というヘッジクローズが入った)ですかそうですか。でもって理由は「新型コロナウイルス感染症の影響などから一部に弱めの動きもみられるが」ということですが、まあウクライナ戦争の影響はこれからだからで、足元はコロナのせい、ということなのはわかるんだが(あとで再掲するけど)だったら何で1月の展望レポートの時点(既にコロナはアイヤーになっていた筈なのに)で「先行きのわが国経済を展望すると、新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。」って話だけして、足元のコロナの下押しの可能性はあるが、みたいなの入れなかったのかね(「個人消費は、当面、感染症への警戒感などが重石となるものの、」と個人消費の所にちょろっと入れてはいるのだが)と思いました、まる。

『海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつ、総じてみれば回復している。ただし、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、国際金融資本市場では不安定な動きがみられるほか、原油などの資源価格も大幅に上昇しており、今後の動向には注意が必要である。』(今回)

『海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつ、総じてみれば回復している。』(前回展望レポート)

うーんこの。下方修正するなら主に今回はウクライナ戦争の話しかねえと思うのだが、海外の認識のところが基本的に変わっていなくて、ただし以降のなお書きで示してるのはメッセージとして弱いのと、「国際金融資本市場では不安定な動きがみられるほか」って最初ロシアデフォルトでアイヤーというのはありましたが、国際金融市場はそっちよりも米欧中銀アクションで不安定化してるんでネーノとは思うのだがまあシランガナ。

『そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響を残しつつも、基調としては増加を続けている。』(今回)
『そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響を残しつつも、基調としては増加を続けている。』(前回展望レポート)

おなじですかそうですか。

『また、企業収益や業況感は全体として改善を続けている。』(今回)
『また、企業収益や業況感は全体として改善を続けている。』(前回展望レポート)

『設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している。』(今回)
『設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している。』(前回展望レポート)

いやまあ現状判断だからこうなのかも知れませんが、企業部門延々とこの調子なのも「そうなのかね」とは思ってしまうんですが、投入コスト上昇の悪影響とか無いの??

『雇用・所得環境をみると、一部で改善の動きもみられるが、全体としてはなお弱めとなっている。』(今回)
『雇用・所得環境をみると、一部で改善の動きもみられるが、全体としてはなお弱めとなっている。』(前回展望レポート)

そもそも雇用所得環境が弱めなのに物価が上がって誰が得するんでしょうかねえ。

『個人消費は、感染症の再拡大によるサービス消費を中心とした下押し圧力の強まりから、持ち直しが一服している。』(今回)
『個人消費は、感染症によるサービス消費を中心とした下押し圧力が和らぐもとで、持ち直しが明確化している。』(前回展望レポート)

オミクロンの影響で個人消費が下がったから下がった、という認識でいるのか。

『住宅投資は横ばい圏内の動きとなっている。公共投資は高水準ながら弱めの動きとなっている。』(今回)
『住宅投資は持ち直している。公共投資は高水準ながら弱めの動きとなっている。』(前回展望レポート)

住宅投資の水準は前回横ばいだけど方向性は上昇から横に下がりました。でも結局この現状認識を見ると「オミクロン拡大で個人消費が弱かったですので現状を下方修正しました」という事で、まあ最初の所にあります通りではあるんだが、1月に作った展望レポートでの見通し対比で今回の個人消費の弱さというのはどういう感じなのか、ってのは聞いてみたいんですけどねえ。想定の下限ならわかるが想定以上だったらさすがに1月の見通しが甘すぎでしょ。

『わが国の金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。』(前回展望レポート)

金融環境のこの部分、企業の資金繰りの厳しさって別に流動性不足で資金繰りが厳しいんじゃなくて、企業サイドのアベイラビリティの問題だと思うんですけどねえ別に金融機関の貸出態度が厳しい訳ではないんですから。まあこう書いておかないとコロナオペを一部残しておくことが出来ないから、という大人の事情は分かるのですが、そもそも論として企業サイドのアベイラビリティ問題によって資金繰りが厳しい、というのは金融の問題では無いし、金融環境を緩和すればアベイラビリティが改善するものでは無いし、そんなことしたら緩和する必要の無い部分を緩和するという無益かつ下手したら有害なことになるだけだと思う訳でして、この金融環境の認識に関しては、どうせ政策から後付けしてこういう表現になっている、という位は野良ヲチャーなので分かるんですが、中央銀行は企業のアベイラビリティーをどないかする必要は無いしやるべきでもない(やったら震災手形の二の舞)のでありまして、毎度毎度この文言が出ているのさすがに最近は如何なものかと思うようになっております。
(くどいですかそうですか)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、携帯電話通信料の引き下げの影響がみられるものの、エネルギー価格などの上昇を反映して、0%台半ばとなっている。また、予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、携帯電話通信料の引き下げの影響がみられるものの、エネルギー価格などの上昇を反映して、小幅のプラスとなっている。また、予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(前回展望レポート)

雇用所得環境が弱いのに予想物価上昇率が上昇するという状況は国民厚生的に如何なものか、と思うのですが、何せ置物理論によりますとかつてハマコー大先生が仰せになったように(そういや最近になって良い子の皆さんが蒸し返すもんだからダイヤモンドの例の記事会員向けになってしまってた気がするが気のせいかもしれないです)物価が上がって賃金が上がらない方が良いという珍説を提唱していたので、見事に置物理論通りの展開になって素晴らしいことですね(棒読み)。



・先行き見通し:主文を資源価格上昇の文言追加以外変えて無いのはさすがに草生える

『先行きのわが国経済を展望すると、新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、資源価格上昇の影響を受けつつも回復していくとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済を展望すると、新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。』(前回展望レポート)

先行き見通しの主文ですが、「資源価格上昇の影響を受けつつも」以外の文言追加が無いって何か凄いな。ウクライナ戦争は関係ないってか???大本営発表するにしてももう少し工夫の仕様は無いの??????

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、エネルギー価格が大幅に上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁も進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、プラス幅をはっきりと拡大すると予想される。』(今回)

『消費者物価の前年比は、当面、エネルギー価格が上昇し、マクロ的な需給ギャップの改善を背景に原材料コスト上昇の価格転嫁も緩やかに進むもとで、昨年来の携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、Go Toトラベル事業等の一時的な要因による振れを伴いつつも、プラス幅を拡大していくと見込まれる。』(前回展望レポート)

物価の見通しは引き上げになっているのだが、今回の場合は展望レポートじゃないから個別需要項目に関する展開が無くて、どういう図になっているのかが見えないのが残念無念なのですが、3月というこの時期において「雇用所得環境が弱め」ってどう見ても年度替わり前にここで強くならなくていつ強くなるんだという雇用所得環境様がアカンというのに、何で価格転嫁が「進む」とか上方修正してるんだよと思うし、コロナで落ちた個人消費が物価上昇を受けて回復鈍らんのかとか、まあ色々とどういう理由で物価が上がるのかというのがイミフ。

でまあ黒ちゃんは会見で(今朝の時間に間に合うとは思うのだが全部行けるかは不明)コストプッシュを連発していたんですが、「コストプッシュで物価が上がるのであるから別に緩和を縮小しません」というのなら言うので結構なんですが、だったら物価見通しも「上昇するが一時的なものに留まる」って見通しにしておけと小一時間問い詰めたい訳で、お前ら何でも良いんだけどもっと話の整合性を取ってくれないとそもそもツッコミをするのにこっちも超低レベルのツッコミしかできなくてクソ面白くないんですけど。

『この間、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調的な物価上昇圧力は高まっていくと考えられる。』(今回)

『その後は、エネルギー価格上昇による押し上げ寄与は減衰していくものの、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に基調的な物価上昇圧力は高まっていくことから、見通し期間終盤にかけて1%程度の上昇率が続くとみられる。』(前回展望レポート)

声明文と展望レポートでは予想の期間が違う(概ね半年程度で精々1年VS最長3年)ので、この辺りのちょっと先の話になると展望と声明文は表現が違うのは仕様なのですが、いずれにしましても「一時的な上昇に留まるから政策対応不要」というには何か説明だけは威勢が良いのですよね。いやまあ手前だけ上がりますって見通しは展望レポートの数字には出しているけど、一時的なら一時的というのをもっと明確に書かないと政策で梃子でも動かんというのとどうも整合性が取れんのだが。


・リスク要因:ウクライナよりも先に感染症なのか・・・・・・・・・・・・・

展望レポートのリスク要因はクッソ長いのでこちらは比較しませんが、

『リスク要因としては、引き続き変異株を含む感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要である。また、ウクライナ情勢が、国際金融資本市場や資源価格、海外経済の動向等を通じて、わが国の経済・物価に及ぼす影響についてもきわめて不確実性が高い。』(今回)

まあ良いんですけど、昨年はマンボウ出たーって言ってる時に景気判断を無茶苦茶強くして見たり、今回はマンボウ解除なのが見え見えの中相変わらずリスク要因の筆頭に感染症の話を入れて見たりと、何ちゅうか日銀の感染症に関する認識の示し方が毎度毎度ズレてるんだよなー。


・片岡審議委員の反対理由が変更になっていないのは間抜けに過ぎるのだがもうちょっと知能を使っていただきたい

いつもの片岡さんの反対理由には実は今回ちょっと楽しみにしていたんですよね。

『(注1)(途中割愛)片岡委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。』(今回)
『(注1)(途中割愛)片岡委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。』(前回声明文脚注より)

『(注2)片岡委員は、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。』(今回)
『(注2)片岡委員は、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。』(前回声明文脚注より)

まるで進歩していない・・・・・・・・・・・

まあ何ですな、どうせまるで進歩してねえだろうと思ったので想定範囲内ではあったのですが、1番も相変わらず間の抜けた話(これだけ下がった金利水準で金利が理由で設備投資できないのはさすがに前向きな設備投資チャウヤロ)ではありますが、まあそれはさておきまして2番目が相変わらず変わらないのはワロスワロス。

>財政・金融政策の更なる連携が必要であり
>財政・金融政策の更なる連携が必要であり
>財政・金融政策の更なる連携が必要であり

えーっとすいません、足もとでは財政出して物価上昇を抑える話をしているようですし、輸入価格の上昇を受けて更に物価上昇対策をしましょうモードに財政様の方でお話が進んでいるようなのですが、金融政策が連携するって事はやっぱり物価が上がらないためにどうしたらよいかとか考えないといけなくて、円高政策なんかでもおとりになるのでしょうかしら?????????????

ということでございましてですな、今や「物価上昇で発生する困窮者対策」とか言いながら補正を打つの打たないのみたいな話がある下で、前と変わらずに「財政金融政策の更なる連携」とかこのあんちゃんもしかして竜宮城にでも行ってらっしゃるのではないかと疑問に思ってしまう次第ではございまして、もういいからこの「財政と金融政策の連携」とか外せよと思うのです。単純に「政策金利のフォワードガイダンスを物価目標と関連付けたものに修正しないとコミットメントとして弱いから修正しろ」に直しておけばよいのですが、なんせ竜宮城でタイやヒラメの舞い踊りを見ながら金融政策判断をしておられるような風情なので仕方ないとしか申し上げようが無いが実に残念な方でこの人は5年間何をやってたのかと誠に遺憾の意を禁じ得ませんな。


ということで単にアタクシが茶々入れて悪態つきながら読んでるだけでした誠に申し訳ございませんが詫び石は出ません。



〇黒田総裁記者会見:なお時間が無いので今回の中で一番ドイヒーな質疑応答を1本で残りは明日以降で勘弁

なお会見ですがライブを聞き掛けたのですが、うっかり最初の説明と直後の幹事社の質問に対する回答が全部原稿棒読みモード(画面見るとトサカにくるから音だけ聞いてたので良く分からんが口調は完全に棒読みでパウエルとかラガルドの会見と比較して聞くとおっちゃん悲しくて悲しくて)だったので、幹事社の質問への回答の途中で聞く気を失い平常業務に戻ったので文字の方しか見てません。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220322a.pdf
総 裁 記 者 会 見 要 旨
―― 2022年3月18日(金)
午後3時半から約65分

冒頭あんな棒読みで65分もやったのか・・・・・・・・・


・順序は逆だが最後の質問の回答があまりにも酷すぎるので最初にネタに

まあどうせこれはA新聞のH記者が質問した(と会見の音声最後まで聞いた人から聞いただけで私は未確認なので「らしい」とします)らしいので、まあそうだったら例の売り言葉に買い言葉なんですが、買い言葉にしたってこの回答は無いわ、というのを真っ先にネタにした。

『(問) 二つ質問させて頂きます。この 9 年間、世界経済と日本経済は良い時も悪い時もあったわけですけれども、その間日銀はこの尋常ではないレベルの大規模緩和を一貫して続けて、一度も正常化させようという方針を示したことはありませんけれども、今振り返ってそれで良かったのかどうかということをまずお伺いしたいと思います。』

いきなり喧嘩を売るスタイルでどう見てもH記者です本当にありがとうございました。まあこの回答はどうでもよいのだがこの次の質問後半部分に対する回答が無茶苦茶。

『 もう一点は、日銀は、今も量的緩和ということを一応掲げているわけですが、実際にはこの 1 年間で日銀の保有国債残高は 10 兆円ほど減っています。これはマーケットなどではステルステーパリングと言われているわけですけれども、先週から今週にかけて欧米の中央銀行が色々金融政策の変更を発表しているわけですが、量的引締めということで、事前に計画的に保有資産を減らすようなことを、非常に透明性をもって発表しているわけです。日銀のステルステーパリングのような運用というのは、国民に対しても、あるいは国会や政府に対しても、説明責任という点で問題がないのでしょうか。』

喧嘩腰にも程があるが、言ってることは仰せの通りなのだがこれに対する黒ちゃんの回答が酷い。

『(答) 全くありません。おっしゃっていることは、イールドカーブ・コントロールの意味を全く理解しておられないわけでして、そういう議論は全く無意味だと思います。それから、これまで緩和を続けてきたこと自体は適切であり必要だったと思っています。』

えーっとすいません、オーバーシュート型コミットメントとの整合性について問われているのであって、YCCとの整合性を問われている訳ではないので、そもそも回答がまちごうとるとしか申し上げようが無いですわな。つーか質問する方は「量的緩和」について聞いてるのに「YCC」で回答してる時点でお前は何を言ってるんだという感じですけど。

まあ何ですな、3本の鉛筆からこの方「上限を設けない潤沢な資金供給」を謳っていますが、声明文でも今回もまた「引き続き、@新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、A国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、Bそれぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとでのETFおよびJ−REITの買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。」とAとしてわざわざ「国債買入やドルオペ」で無制限の「潤沢な供給」をすると言っている訳ですよ。

ここでドルオペに関しては国際的なドルファンディングの安定によって必要が無くなれば残高減るし、そもそもが日銀はこのオペに関してはオファーに対して応札有れば(適格担保の範囲内で)オールテイクンしちゃう受動的なものですからまあシャーナイのですが、冷静に考えれてみれば国債買入ちゃんの方は日銀が能動的に買入額を決定しているんですから、「国債買入れによる円貨の上限を設けない潤沢な供給」をすると明記しているのに長期国債保有残高が減少してるってのはダマテンにも程がある話ですので、説明責任とかどうなってるんだ、というのは仰せの通り以外の何物でもないのに、YCCガーとか思いっきり的外れな回答とか爺さん大丈夫かレベルの回答ですわな。

まあおじいちゃんとしては「YCCの方針に沿うように国債の買入をしたらこうなったのであり、YCC自体は方針通りに円滑に進んでいるんだから国債買入の残高がどうのこうのと言われる筋合いはない」と回答したつもりなのでしょうし、オーバーシュート型コミットメントも「量的」緩和政策の事もすっかり頭から飛んでいて、マネタリーベース直線一気理論などはどこかの彼方に飛んでるからこういう回答になった(あと質問者に対して売り言葉に買い言葉だった)という感じなんだろうなあという想像は出来るのですが、さすがに「おっしゃっていることは、イールドカーブ・コントロールの意味を全く理解しておられないわけでして、そういう議論は全く無意味だと思います。」は無茶苦茶回答にも程があって、幾らなんでも酷すぎますな。

などと書いていたら例によって時間が足りなくなりそうなので残りは後回しで勘弁してつかあさい。

なお、今回の会見自体はまあどうでもよい回答というか、毎度の如く不誠実極まる回答ばっかりしてるのでございますが、いずれこの回答が後で自分の首を締めるだろうなあというのも散見される気がしないでもないので、後日「あの時こう言ったよね」の参考にするためにきちんとネタにはしておく所存です(^^)。






2022/03/22

お題「FOMC会見QAネタの積りでしたがパウエル講演がぶっこまれたのでそっちを先に参ります」

結局詫び石更新は土曜の午前だけでしたなサーセンサーセン(ぐうたら)。

〇何か会見ネタのうのうと投下しようと思ったらパウエルはんが追加ネタぶっこんでるんだがwww

さてまあそんな訳で日銀はさて置きましてパウエルの会見の続きでも、と思ったら人の下読みを無駄にしていくスタイルキタコレ!!

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-powell-idJPKCN2LI1SK
2022年3月22日3:06 午前
FRB、通常より大幅利上げも インフレ抑制へ「迅速に」対応=議長

ちょwwwwwwおまwwwwwwwwwwww俺の下読みの手間返せwwww

と言ってもまあそれはそれで無駄にならない(昨日の夜はちょっと更新する気力が無かったのがアカンでしたな、というか講演あるのとかを事前にチェックしないワシがアレなんだが)ので良いのですけれども・・・・・・・・・

上記ロイターはん記事より。

『[21日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は21日、インフレ抑制にFRBは「迅速に」行動する必要があるとし、必要に応じて通常より大きな幅での利上げを実施する可能性があると述べた。』(上記URL先より、以下同様)

まあアレです、ドットチャートを積極的に空文化していくスタイルキタコレという作戦で来ましたなという感じですが、そもそも論からすると(今日できるか分からんけど)会見でも何回も「ドットプロットは別にプランでも何でもない」と連呼していたのですが、まあ積極的にドットプロットの空文化を図りに行ったのかいなという所ですが、だったらどっと出すの止めたら良いのにと思います。まあ次回のSEPはマジで何か工夫してくるかもしれませんね。(そのためには5月50上げて堂々と直近のSEPを裏切るのがある意味吉ではあるが)

『パウエル議長は全米企業エコノミスト協会(NABE)会合での講演で「労働市場は極めて力強く、インフレは高すぎる」と指摘。「物価安定の回復に必要なら、金融政策スタンスをより中立的な水準に戻し、その後、より制約的な水準に移行するために迅速に動く必要があるのは明らかだ」と述べた。』

『その上で「1回の会合、もしくは複数の会合で、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を25ベーシスポイント(bp)以上引き上げ、一段と積極的に対応することが適切と結論付けられれば、そのように行動する」と表明。』

後段の方は別に今に始まった話ではないが、前段の方は従来よりはもうちょっと強めの言い方をしていまして、まあモチのロンで言う事は先にほぼ作っていると思うのですが、FOMC後の反応を見た感じで、あまりにもドットプロットで示したメジャードペースに近い利上げの図を前提に市場ちゃんがトークをして価格形成をしているのを見て「金融緩和に漬かった人たちの目を覚ますバージョン」のテキストを突っ込んできたのではないかと愚考(個人の妄想です)。

まあ何ですな、こういうのが早速出てくれると、金曜日に皆様のお目汚しさせていただきました俺の話を聞いてくれなFOMC直後の何とかストコメンタリーに謎の悪態ついたのやっぱりあれで良かったんだなと思ってちょっとホッとしましたです(笑)。しかし今回のロイターさんもタカ派コメントって言ってるけど、金曜に申し上げたように、そもそもあのペースで利上げして行って物価が落ち着くとかどんだけ暢気な利上げペースなんだよという話であって、確かに元々が「テンポラリー」だったのを変更したからこの有様なのでFEDもヘッポコなのですけれども、あんなチンタラした利上げで間に合うかって話な訳ですから、まあ市場の後追いでのドット出しておいて、さらにこれから織り込ませに行く、という謎のプレイになるのでしょうなあと思いました。


・・・・・・・すいません前置きの能書きが長くなりました、パウエルの講演をちょっと寝起きで見てみませう。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20220321a.htm
March 21, 2022
Restoring Price Stability
Chair Pro Tempore Jerome H. Powell
At "Policy Options for Sustainable and Inclusive Growth" 38th Annual Economic Policy Conference National Association for Business Economics, Washington, D.C.

題名からして「FEDは物価安定(2%に落ち着かせる)に舵を切りましたよ皆さん宜しく」というだけにこれはもうキタコレな訳ですが、最初のご挨拶パートの最後のパラグラフからまずは参ります。

『At our meeting that concluded last week, we took several steps in pursuit of these goals: We raised our policy interest rate for the first time since the start of the pandemic and said that we anticipate that ongoing rate increases will be appropriate to reach our objectives. We also said that we expect to begin reducing the size of our balance sheet at a coming meeting.』

はい。そういや会見ではat a coming meetingの質疑無かったので、これは5月頭のFOMCでランオフ開始が決定されるという話でおけまるなのかな、と思いましたが・・・・・・・・・

『In my press conference, I noted that action could come as soon as our next meeting in May, though that is not a decision that we have made.』

5月にやるけどまだ決定ではない、という相変わらず謎の予告ホームランだったようです(あれ見落としたかな??汗)。

『These actions, along with the adjustments we have made since last fall, represent a substantial firming in the stance of policy with the intention of restoring price stability.』

以前は「緩和をリムーブする」とか「緩和の程度をリデュースする」とか言ってたのですが、思いっきり「a substantial firming」と言い出す(「タイトニング」と言わないのは定義上の話であって、中立金利水準よりも金利が下なら緩和だし、巨大なバランスシートを中銀が抱えているから緩和だし、なのでタイトニングとはよー言わん、という奴です)のがもうね。

『In my comments today, I will first discuss the economic conditions that warrant these actions and then address the path ahead for monetary policy.』

ということなのですが、どうせ背景説明を読んでいると時間が無くなるので、政策の方から読むという安直モードに入りますが、何で背景説明を飛ばすかと申しますと・・・・・・・・・・・


・雇用情勢と物価情勢の背景説明の小見出し部分の表現が強烈で草生えるwww

という訳でおっぱじまる背景説明なんですが、まず雇用情勢の説明パートの小見出しがこれよこれ。

『The Labor Market Is Very Strong and Extremely Tight』

www

まあ何ですな、この「The Labor Market Is Very Strong and Extremely Tight」自体は(下の方にのっけております土曜日に詫び石更新した)FOMC後の会見でのオープニングリマークの中でも思いっきり記載されているので、これ自体は既にご案内ちゃあご案内なのですが、こうやって独立して出されるとやっぱり見た目のインパクトが違いますな。

でもってVery Strong and Extremely Tightな労働市場の説明があるみたいなのですがアタクシの野生の勘がとりあえずすっ飛ばして先に行けと申しているので先に行きますと次が物価でこの小見出しがまた凄い。

『The Inflation Outlook Has Deteriorated Significantly』

ちょwwwwDeteriorated Significantlyって何だよそれという感じですが、当然これは下の方ではなく上の方に盛大に乖離してしまうま、ということを仰せになっているわけでございますが、Deterioratedって中銀がこの単語使う時って基本的に良からぬ事が起きているってのを強く表現するときに使っているものと認識しておりますので(個人の感想です)、これはもう「物価上振れがアカンタレで先行きも今のままではいかんですバイ」というのを強く示した物件。

ということで中身を読もうかと思わんでもないが、まあその先にある金融政策運営の部分が12パラグラフ分もありやがるので、どう見てもこっちに引っ掛かっていると最後に間に合わないと思うのでこれまた華麗に飛ばして金融政策パートに参りましょう。


・ということで金融政策対応の話という現世利益パートにワープするのでした

『The Policy Response』というド直球タイトルがついてるのが12パラグラフもありやがるので泡吹きながら鑑賞しましょうです。

『As the magnitude and persistence of the increase in inflation became increasingly clear over the second half of last year, and as the job market recovery accelerated beyond expectations, the FOMC pivoted to progressively less accommodative monetary policy.』

ここで「progressively less accommodative monetary policy」といってるのはこれまでの話のようで、昨年の6月以降このように先行きの政策金利見通しを変更しております(キリッ)という説明が続く。

『In June, the median FOMC participant projected that the federal funds rate would remain at its effective lower bound through the end of 2022, and as the news came in, the projected policy paths shifted higher (figure 5).』

図表5はこちらですが、どう見ても後追い対応です本当にありがとうございました。
https://www.federalreserve.gov/images/powell-fig5-20220321.png

『The median projection that accompanied last week's 25 basis point rate increase shows the federal funds rate at 1.9 percent by the end of this year and rising above its estimated longer-run normal value in 2023. The latest FOMC statement also indicates that the Committee expects to begin reducing the size of our balance sheet at a coming meeting.』

この辺は今回の政策対応と今回示したドットプロットの説明。

『I believe that these policy actions and those to come will help bring inflation down near 2 percent over the next 3 years.』

だそうですが・・・・・・・・・・・・・


・最初にドットチャートで説明をしておいて直後に積極的に空文化していくスタイルキタコレ

次のパラグラフに参ります。

『As always, our policy projections are not a Committee decision or fixed plan.』

だったら紛らわしいから出すなよと小一時間。

『Instead, they are a summary of what the FOMC participants see as the most likely case going forward. The events of the past four weeks remind us that, in tumultuous times, what seems like the most likely scenario may change quite quickly: Each Summary of Economic Projections reflects a point in time and can become outdated quickly at times like these, when events are developing rapidly.』

今までもそうでしたが状況が大きく変化していく中においては、先行きの対応などは状況の変化で大きく変化し得るものであり、あくまでも毎回のSEPはその時点での見通しに過ぎません、と積極的にドットチャートどころかSEPまで空文化していくスタイルですが、まあ実際問題として中銀だけが神の目をもってる訳は無いのであって、本来はこういうスタンスが謙虚なんですよね、冷静に考えてみれば。


・本日のメインメッセージが早速来ました!!!!!!!!!

次のパラグラフに参りますが、

『Thus, my main message today is that, as the outlook evolves, we will adjust policy as needed in order to ensure a return to price stability with a strong job market.』

だそうです。要するに「出たとこ勝負だよ」というのに加え「今の高インフレはケシカランので2%に向けてどないかせんといかん」という話も加わっているのですから、そらあーた1年かけて中立金利までチンタラ上げるスタイルで間に合えばいいけど、間に合わないようならちゃっちゃと上げないと行けないし、だとするなら前半強めに上げってって徐々に勢い落としていくって事になるんとチャイマスカ(というのは完全にアタクシの妄想ですけど)と思うんですけどにゃあ。

まあ何ですな、SEPというかドットチャートをベースにしたマーケットトークが思った以上に大杉栄だったので、これはちょっと市場の皆さんに積極的に冷水をぶっかけて目を覚ましに行かないとアカンじゃろというのがメインメッセージということですね、わかります!!!!

『Let me now turn to three questions about the likely evolution of policy.』

だそうです。では次に参りませう。


・ウクライナ戦争は「1970年タイプの価格ショック」の可能性があるようだ米国のマクロ的にはさほど問題なしとな

『How will fallout from the invasion of Ukraine affect the economy and monetary policy? Russia's invasion of Ukraine may have significant effects on the world economy and the U.S. economy. The magnitude and persistence of these effects remain highly uncertain and depend on events yet to come.』

ウクライナ戦争の影響についてというのが一つ目のお題のようです。

『Russia is one of the world's largest producers of commodities, and Ukraine is a key producer of several commodities as well, including wheat and neon, which is used in the production of computer chips. There is no recent experience with significant market disruption across such a broad range of commodities.』

幅広い国際商品市況への影響がありまっせ。

『In addition to the direct effects from higher global oil and commodity prices, the invasion and related events are likely to restrain economic activity abroad and further disrupt supply chains, which would create spillovers to the U.S. economy.』

国際的な石油価格と商品価格の上昇という直接的な影響に加え、ロシアへの経済制裁によって、経済活動やグローバルサプライチェーンへの悪影響もありまして、これが米国の経済にスピルオーバーするじゃろうな。

『We might look to the historical experience with oil price shocks in the 1970s-not a happy story.』

キタ-------------------------(゚∀゚)-------------------------!!!!!!!!

いやー遂に過去の経験という事で70年代を持ち出しましたよ!!!!!!!!!

『Fortunately, the United States is now much better situated to weather oil price shocks.4 We are now the world's largest producer of oil, and our economy is significantly less oil intensive than in the 1970s.』

そうなんですよ雨公のうらやまけしからんのは70年代みたいな状況になっても、価格ショックが国内生産でかなり吸収されちゃいますから(国内での所得移転は起きるけど)マクロ的に言えばどう見ても悲惨なのが欧州(一部の油田持ち除く)であり日本であったりするんですが、欧州はともかくとして日本の中央銀行総裁は寝ているとしか思えない発言しかしていないという太平の眠りなのか(内務省検閲により二文字伏字)ておられるのか。

『Today a rise in oil prices has mixed effects on the economy, lowering real household incomes and thus demand, but raising investment in drilling over time and benefiting oil-producing areas more generally. On net, oil shocks tend to weigh on output in the U.S. economy, but by far less than in the 1970s.』

ということで、パウエルはんもオイルの件に関しては価格ショックが影響するのは国内の所得移転とかですし、原油価格上がればシェールとかの開発が進んでそっちの需要が出る(゚д゚)ウマーなメリットもありますので、1970年代ほどのことにはならんじゃろ、というのが結論でした惜しい(ナンジャソラ)。


・リセッションを起こさずにソフトランディングできるかという件に関しては謙虚に頑張りますという以上の回答は無いようで

『Second, how likely is it that monetary policy can lower inflation without causing a recession?』

リセッションを起こさないようにしながら金融政策によってインフレ抑制が出来るのでしょうか???というお題とか火の玉ストレートなお題を自らぶち込んで来るスタイル。

『Our goal is to restore price stability while fostering another long expansion and sustaining a strong labor market. In the FOMC participant projections I just described, the economy achieves a soft landing, with inflation coming down and unemployment holding steady.』

『Growth slows as the very fast growth from the early stages of reopening fades, the effects of fiscal support wane, and monetary policy accommodation is removed.』

さっき「あれは今時点での見通しに過ぎません将来は変わるもんです」と言ってたSEPの見通しを基にソフトランディングしまっせというご都合主義な説明ですなうははははは。

『Some have argued that history stacks the odds against achieving a soft landing, and point to the 1994 episode as the only successful soft landing in the postwar period.』

SEPの説明だけしておいておしマイケル、というようなどこぞの思考停止中銀総裁のような不誠実な説明を
しないのがパウエルスタイルということで、過去そんなうまい話があったかよボケというツッコミに対する
お答えをします、とセルフ突っ込みをしていまして、そのお答えはと申しますと・・・・・・・

『I believe that the historical record provides some grounds for optimism: Soft, or at least soft-ish, landings have been relatively common in U.S. monetary history.5 』

『In three episodes-in 1965, 1984, and 1994-the Fed raised the federal funds rate significantly in response to perceived overheating without precipitating a recession (figure 6).6 』

過去3回のソフトランディングの例(とそれ以外の例)というのが図表6として出ていましてこれです。
https://www.federalreserve.gov/images/powell-fig6-20220321.png

『In other cases, recessions chronologically followed the conclusion of a tightening cycle, but the recessions were not apparently due to excessive tightening of monetary policy. For example, the tightening from 2015 to 2019 was followed by the pandemic-induced recession.7』

他のケースではタイトニングの後にリセッションが起きたのですが、そうは言っても全部がタイトニングのせいではありませんよ例えば2015〜2019のタイトニングの後に来たリセッションはコロナのせいじゃん、と微妙な言い訳をしております。

『I hasten to add that no one expects that bringing about a soft landing will be straightforward in the current context?very little is straightforward in the current context.』

『And monetary policy is often said to be a blunt instrument, not capable of surgical precision.』

『My colleagues and I will do our very best to succeed in this challenging task. It is worth noting that today the economy is very strong and is well positioned to handle tighter monetary policy.』

という訳で、自分でセルフツッコミした件に関しては、結局のところ「頑張ります!!!」という話ではありましたが、必ずしもリセッションになる訳ではないですよという話をしていまして、債券市場ちゃんが盛大に政策の失敗リセッション相場をやっているのに対しては反論したいけど、パウエルさんらしく大言壮語はしない、という感じでまあこれはこれでこんなもんじゃないですかねえ。


・必要ならば25以上の利上げもするし中立よりも高くしないと行けないなら高くするでよ攻撃はここにありました

では最後のお題ですが3パラあるうちの最初にロイターさんのヘッドラインにあった件がぶっこまれるのでした。

『Finally, what will it take to restore price stability? The ultimate responsibility for price stability rests with the Federal Reserve. Price stability is essential if we are going to have another sustained period of strong labor market conditions.』

『I believe that the policy approach that I have laid out is well suited to achieving this outcome.』

と、物価安定が大事ですよ物価安定のためには今お示ししたようなアプローチが重要ですよと言いながら・・・・・・

『We will take the necessary steps to ensure a return to price stability.』

necessary stepsとは???と来てロイターさんのヘッドラインネタキタコレに続きます。

『In particular, if we conclude that it is appropriate to move more aggressively by raising the federal funds rate by more than 25 basis points at a meeting or meetings, we will do so.』

キタコレ。

『And if we determine that we need to tighten beyond common measures of neutral and into a more restrictive stance, we will do that as well.』

さらに追い打ちキタコレ!!!!!!!!!ということでございましたな。


・長期のインフレ期待は安定してますがインフレの長期化は期待のアンカーを壊すリスクがあるでよという話で締め

『Our monetary policy framework, as embodied in our Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy, emphasizes that having longer-term inflation expectations anchored at our longer-run objective of 2 percent helps us achieve both our dual-mandate objectives.』

『While we cannot measure longer-term expectations directly, we monitor a variety of survey- and market-based indicators. In the recent period, short-term inflation expectations have, of course, risen with inflation, but longer-run expectations remain well anchored in their historical ranges (figure 7).』

ま、この点は今時点で既にアンカーされていないって認識だったら理屈の上では物凄い勢い(それこそ100bpとか)で利上げしないといけなくなるからこういうしか無い部分なのでこんなもんです。

『The added near-term upward pressure from the invasion of Ukraine on inflation from energy, food, and other commodities comes at a time of already too high inflation. In normal times, when employment and inflation are close to our objectives, monetary policy would look through a brief burst of inflation associated with commodity price shocks. 』

『However, the risk is rising that an extended period of high inflation could push longer-term expectations uncomfortably higher, which underscores the need for the Committee to move expeditiously as I have described.』

通常の状況なら多少のコモディティ価格ショックなどで一過性の物価上昇が起きたからと言って金融政策が盛大に反応する必要は無いのですが、長期間にわたって高インフレが続くことによって、ロンガータームのインフレーションエクスペクテーションが怪しからん程上昇してしまいますと、そらもうアカンじゃろという事になりますので注意が必要でっせ、という事で締めています。

最後に『Conclusion』というのがあるけど、まあ引用だけしておきます。

『The past two years have been extraordinarily challenging for many Americans. Two years ago, more than 20 million people were losing their jobs, millions were falling ill, and lives were being disrupted. We have made enormous strides since then. Today, as I have discussed, the labor market is very strong. But, to end where I began, inflation is much too high. We have the necessary tools, and we will use them to restore price stability.』

#ということで会見ネタの前にこっちを投下するの巻になってしまいましたアイヤー

↓以下の部分にFOMC会見のオープニングリマーク全文鑑賞の巻を土曜日に詫び石更新した分を載せておきます。合わせてご笑覧下さいませ。



2022/03/19

お題「昨日の俺様大演説でお耳汚しをしたので詫び石更新土曜日バージョンでFOMCオープニングリマークの確認会」

詫び石更新シリーズである。シリーズというから第2弾があるかというとそれはよくわからん(気まぐれおじいちゃん)。

〇とりあえずオープニングリマークを確認するの巻

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220316.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
March 16, 2022

なお、雇用と物価の部分などで1月FOMCのオープニングリマークを比較する場合がございまして、その場合は
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220126.pdf
から引用しております(バージョンはFINAL版の方から引用します)。


・最初の挨拶は順当にウクライナ

『CHAIR POWELL. Good afternoon. I want to begin by acknowledging the tremendous hardship the Ukrainian people are suffering as a result of Russia’s invasion. The human toll is tragic. The financial and economic implications for the global economy and the U.S. economy are highly uncertain.』

まあハイリーアンサータン以外言いようはないわな。

・利上げしましたよ今後も利上げするのが適切ですよバランスシートのランオフも近日公開だよ

『At the Federal Reserve, we are strongly committed to achieving the monetary policy goals that Congress has given us: maximum employment and price stability. Today, in support of these goals, the FOMC raised its policy interest rate by 1/4 percentage point.』

はい。

『The economy is very strong, and against the backdrop of an extremely tight labor market and high inflation, the Committee anticipates that ongoing increases in the target range for the federal funds rate will be appropriate.』

んだんだ。

『In addition, we expect to begin reducing the size of our balance sheet at a coming meeting.』

これってやっぱり5月に決定って事なんけ??まあどうせ後で誰かが質問してくれるでしょう(安直)。


・背景説明成長率編はあっさり味

で、背景説明とおもったら経済の説明で早速SEPの見通しまで出してきました。

『Economic activity expanded at a robust 5-1/2 percent pace last year, reflecting progress on vaccinations and the reopening of the economy, fiscal and monetary policy support, and the healthy financial positions of households and businesses. The rapid spread of the Omicron variant led to some slowing in economic activity early this year, but cases have declined sharply since mid-January, and the slowdown seems to have been mild and brief.』

と、現状が強いでっせコロナとか終わったもんねという話をして、

『Although the invasion of Ukraine and related events represent a downside risk to the outlook for economic activity, FOMC participants continue to foresee solid growth; as shown in our Summary of Economic Projections, the median projection for real GDP growth stands at 2.8 percent this year, 2.2 percent next year, and 2 percent in 2024.』

ウクライナ戦争の不確実性はあるものの高成長を見込みますよという話ですがまああっさり味。


・背景説明労働市場編ですがクッソ強い認識

『The labor market has continued to strengthen and is extremely tight.』

1月のFOMCのオープニングリマークではこの部分、「The labor market has made remarkable progress and, by many measures, is very strong.」と、1月の時点でも大概に強い表現になっていたのですが、「extremely tight」って寧ろ完全雇用を超えて過熱してるって感じまでする(まあそこまでではないということなんでしょうけど)表現で、お賃金の所は見るにしても他は余程コケ無い限りはもう全然気にしなくて良いのではないかってくらいの勢いです。

『Over the first two months of the year, employment rose by more than one million jobs. In February, the unemployment rate hit a post-pandemic low of 3.8 percent, a bit below the median of Committee participants’ estimates of its longer-run normal level.』

失業率はパンダミック前よりも改善してるし水準は自然失業率以下だよ。

『The improvements in labor market conditions have been widespread, including for workers at the lower end of the wage distribution as well as for African Americans and Hispanics.』

この部分は1月も同じ認識示してました。

『Labor demand is very strong, and while labor force participation has increased somewhat, labor supply remains subdued. As a result, employers are having difficulties filling job openings, and wages are rising at their fastest pace in many years.』

この辺の説明も1月でしめしています。でもって今回この労働市場編もそうですが、その前の成長率編でもそうなのですが、全般的にあーだこーだ行っていた説明をカットしていて、とにかくシンプルにしているのですが、これは洋の東西を問わず中銀文学鑑賞の際のポイントだと思うのですが、自信がない時はゴテゴテと色んなものを付けて来るのですが、自信ニキの時には素材勝負のお皿が出て来る、というのが仕様になっておりまして、とにかく今回は前回対比で(比較引用しだすとクッソ長くなって読みにくくなるからあんまりゴテゴテ比較引用しませんが)この辺りの分量が短い。まあ利上げしたからそっちに説明を割く必要があるってバランスもあるとは思いますが(実際に全体の量はそんなに変わっていない(若干今回短い程度)ので前回がゴテゴテしてた(利上げ予告ホームランの背景で説明しないと、ってのがあったからかね)という感じですかぬ)。

『FOMC participants expect the labor market to remain strong, with the median projection for the unemployment rate declining to 3.5 percent by the end of this year and remaining near that level thereafter.』

これはSEPの見通し。


・背景説明物価編はまあ普通に強いよ強いよ2%に落ち着かるが重要だよと

次は物価。

『Inflation remains well above our longer-run goal of 2 percent. Aggregate demand is strong, and bottlenecks and supply constraints are limiting how quickly production can respond. These supply disruptions have been larger and longer lasting than anticipated, exacerbated by waves of the virus here and abroad, and price pressures have spread to a broader range of goods and services. Additionally, higher energy prices are driving up overall inflation. The surge in prices of crude oil and other commodities that resulted from Russia’s invasion of Ukraine will put additional upward pressure on near-term inflation here at home.』

まあここはウクライナ戦争がニアータームのインフレーションに一段のアップウォードプレッシャーを掛けているというのが新ネタで他は元々強い認識のまま。

『We understand that high inflation imposes significant hardship, especially on those least able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation. We know that the best thing we can do to support a strong labor market is to promote a long expansion, and that is only possible in an environment of price stability. As we emphasize in our policy statement, with appropriate firming in the stance of monetary policy, we expect inflation to return to 2 percent while the labor market remains strong.』

この辺の趣旨も声明文にあった通りですな。物価を2%水準に落ち着かせることによって持続的な経済成長と現在の強い雇用環境が維持できる、ということで物価を落ち着かせるのが大正義というロジック。まあ前から物価重視のスタンスという話はしてたと思うのですが、ド正面からド直球を放り投げてきたのは今回からかしらん??

『That said, inflation is likely to take longer to return to our price stability goal than previously expected.』

まあ既にこの辺はゴメンチャイしていますけどSEPの見通しでたので改めて2%水準に戻るのにちと思った以上に時間が掛かりますサーセンと来まして、

『The median inflation projection of FOMC participants is 4.3 percent this year and falls to 2.7 percent next year and 2.3 percent in 2024; this trajectory is notably higher than projected in December, and participants continue to see risks as weighted to the upside.』

12月対比でnotably higherはシャーナイナイ。


・というわけで利上げについてのお話だがSEPの説明入れる必要あったんけ???

『The Fed’s monetary policy actions have been guided by our mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people. Our policy has been adapting to the evolving economic environment, and it will continue to do so. As I noted, the Committee raised the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point and anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate.』

そんな背景のもとで利上げしましたでっせ。

『The median projection for the appropriate level of the federal funds rate is 1.9 percent at the end of this year, a full percentage point higher than projected in December.』

先行きなんかどうせ出たとこ勝負だからこの説明しなくても良いのに、とは思うのだがまあ今まで通りに説明しちゃうんですよね。

『Over the following two years, the median projection is 2.8 percent, somewhat higher than the median estimate of its longer-run value.』

24年の段階でも物価2%には近くなるものの若干上(そもそもアベレージターゲットだのメイクアップストラテジーだの言ってた時の「多少の上振れ容認」は精々2.5%くらいまでの話でしたから、23年の2.7%は明らかに容認できない上振れで、2.3%は一応許容範囲内とは言え、アベレージがどうしたこうしたの観点で言えばその前がクッソ高いのですからまだ高い方になる、という自分等の前の説明が首を絞めるの巻。

『Of course, these projections do not represent a Committee decision or plan, and no one knows with any certainty where the economy will be a year or more from now.』

プランですらないし、この先経済がどうなるか分からん、っていう位なら、そもそもドットチャートは今後出しません、とかにすればよいのに、とは思うんですが、そこは市場にあんまり喧嘩を売りたくないという(別にパウエルが弱腰なだけではなくて今の主要国の中銀はどこも市場に喧嘩売りたくないという意味では弱腰ですが、ああ日銀というマンデート達成してもいないのに偉そうに「政策は上げない」とか威張っているスットコドッコイがおるわ)腰の弱さが出ておりまして、今後のコミュニケーションがどう進むのか、中々オソロシスな気はします。まあ昨日の俺の話を聞いてくれの通りで、先行き政策の期待パスが不連続にジャンプしてアイヤーアイヤーの連続相場が期待できるんですが(吐血)。



・APPの取り扱いについてだが「BS縮小は重要な役割を果たす」の出オチに爆笑の発作を禁じ得ないwww

『Reducing the size of our balance sheet will also play an important role in firming the stance of monetary policy.』

おwwwwまwwwwえwwwwwwwwwwww

バランスシート拡大するときは重要な拡大みたいな話(をしたのは逆さ絵ハゲだが)をして、テーパリングおっぱじめようとかそういう段階になると急に「金利がメインツールでバランスシートはおまけ」と説明し、今回はいきなりバランスシートの縮小は金融政策の締めていくスタンスの中で「also play an important role」ってお前は何を言っているのかと一時間問い詰めたいんだがwwwwwwwwwwww

『At our meeting that wrapped up today, the Committee made good progress on a plan for reducing our securities holdings, and we expect to announce the beginning of balance sheet reduction at a coming meeting.』

これは単数形だからやっぱり次回の会合って事なの??ネクストって書いてないからいつか来るという話なの??おじちゃんドメドメジャパニーズの座学イングリッシュばっかりだからさっぱりこういうのワカランチ会長なんですよぬ。

『In making decisions about interest rates and the balance sheet, we will be mindful of the broader context in markets and in the economy, and we will use our tools to support financial and macroeconomic stability. 』

一応ファイナンシャルスタビリティの話もあるが言ってみただけ感の強い一般的文言じゃな。誰かこれは具体的に何を指してますねんとか質問してるかな?してないと思うけど(ちゃんとQAを聞いてないこれから真面目に聞きます大汗)。


・再度ウクライナの経済物価に対するリスクについて

『As we noted in our policy statement, the implications of Russia’s invasion of Ukraine for the U.S. economy are highly uncertain. In addition to the direct effects from higher global oil and commodity prices, the invasion and related events may restrain economic activity abroad and further disrupt supply chains, which would create spillovers to the U.S. economy through trade d other channels. The volatility in financial markets, particularly if sustained, could also act to tighten credit conditions and affect the real economy.』

まあここは一般的に妥当と思われる話をしてるだけですな。


・ニンブルにデータディペンデント来ました!

『Making appropriate monetary policy in this environment requires a recognition that the economy often evolves in unexpected ways.』

と思うならドットチャート廃止すれば良いのに(でもマジでこれそのうち廃止するんでネーノというか変態仮面辺りが言い出しそうな希ガス)。

『We will need to be nimble in responding to incoming data and the evolving outlook.』

ニンブルキターーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーー!!!

『And we will strive to avoid adding uncertainty to what is already an extraordinarily challenging and uncertain moment. We are attentive to the risks of potential further upward pressure on inflation and inflation expectations.』

と思ったらしれっと「We are attentive to the risks of potential further upward pressure on inflation and inflation expectations.」とぶっこんでいて、どこからどう見ても今出ているSEPのパス通りにのうのうと25bp毎回利上げとかじゃない可能性アリアリという感じを示している、と思うのはアタクシが利上げ脳なのでバイアスが掛かってい説isあるwww

『The Committee is determined to take the measures necessary to restore price stability. The American economy is very strong and well positioned to handle tighter monetary policy.』

そらまあ2%に上げたって中立金利より低い位でしょうからぬ。


・最後のまとめ

『To conclude, we understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We at the Fed will do everything we can to achieve our maximum employment and price stability goals. Thank you. I look forward to your questions. 』

まあここもいつものご挨拶。最終的には前回のオープニングリマークよりも数行短くなった程度(PRELIMINARY版を自分のローカルに保存してたのでPRELIMINARY版で比較した結果)ですな。

#とりあえず追いつき作業と詫び石ということで朝と言いつつ昼ですが入れておきます(昨日書いたのはそのまま残して下にのってておきますね)







2022/03/18

お題「本来ならパウエル会見のオープニングリマークから会見QAに入るところ謎の雑談となってしまうま(すいませんすいません)」

日銀ちゃんがある気がするのだが、最近良い感じで連続して手厳しい質問を浴びせかけるようになっている記者の皆様の売り言葉に買い言葉で黒ちゃんがどのくらい円安は絶対善と言い捲るかを楽しみにしております。

・・・・・いやあのですね、黒ちゃんの面目玉とか、今更9年間やった政策の事実上敗北宣言するのはリアル切腹級の恥辱とか、そういうお気持ち自体は理解できないこともないんですけど、このままの調子で黒ちゃんがやってると、情勢が落ち着いてくれれば別だけど、食料エネ価格の国際価格上昇に円安が来て、肥料だの飼料だのだって上昇とかなりだした時、黒ちゃんだけではなく、黒ちゃんによって日本銀行そのものが無理心中させられる事になりやしませんかねえ、というのがだんだん座談の上のネタじゃ済まなくなってくると思うんですけど。

という位しか今日のMPMのネタは無いのでFOMCレビューでごんす。

・・・・・・と思って書きだしたのですが、なんかアタクシの愚見解をダラダラとまとまりもなく垂れ流すというしょうもない企画になってしまいまして、本当に申し訳ないのですけれども、まあアタクシの愚意見にお付き合いいただけるお暇がありましたら以下よろしくです。

(この辺りの部分書き上げた後書いてるんですが、笑)さすがにちょっと書き上げた後思ったのは、会見ネタねえじゃんは如何にも申し訳ないので、期末のクソ忙しい中3連休とか言うへっぽこイベントがあって甚だ遺憾にも程がありますから、今回は頑張って土曜か日曜にパウエル会見ネタを投下するように努めて見ます(日銀はどうでもいいので週明け以降)。



〇(珍しく真面目に)マーケットトークを色々とチェックしたが違和感受けまくっているので

まあアレですよ。昨日はそもそもあんまり事前予想してなくて、市場に関しては7回をフルオリコミなんだがその後は景気がコケる方を気にしている、くらいまでは理解してFOMCに臨んだわけね。

でまあ結果見て(案の定その話だれも面白がってくれなかったけど)SEPの経済物価見通しと政策金利見通しに整合性(これ一定部分だけの整合性で本来は怪しいんですが、昔の政策金利見通しが何せ全然リンクしていなかったですから)が取れてるじゃん、という話をした訳ですが、変人で人の言う事シランガナのアタクシもさすがに今回はマーケットトーク調べようと思って何とかストのレポートやらコメントやら、ベンダーで出て来る色んな各位のコメント何かをせっせと真面目に調べてたんですよ。

・・・・・・・なにこの違和感の多いコメントは(しかも特に金利債券系ェ・・・)ということで、危うく知恵熱出すんじゃないか位に無い脳味噌を絞ったし、たぶん今日もFOMCのネタで悩むのは必定なので、MPMはどうでもいいやと思っている次第です(−−;


・そもそもお前ら何でドットチャートを前提に色んなトークしちゃうの??????

と、初手からいきなり無茶苦茶なぶちかましをする訳ですが(^^)、なんか今回のFEDのレビューでああだこうだとコメンタリーが米国だけではなくジャパンの皆様からも当然他のお国からもホイホイと出て来るのですよね。

で、それを見たり聞いたりしている中でアタクシが最大限に唸ったのは「SEPのドットプロットをお前らナイーブに信じすぎじゃろ」という点だし、今回のこのアタクシが違和感覚えたコメンタリーの集合体こそが、一昨日(当然の如く大外れしましたが)SEPの中でドットチャートだけは廃止すべきだし廃止したら大英断、と申し上げた理由でもあるんですよ。


・・・・・つまりですね、そもそも1月FOMCで「データディペンデント」「ハンブル&ニンブル」ということで、まあ事実上の「出たとこ勝負」と今後の政策運営について説明していまして、この時点(その前の時点で覚悟はしていたと思うのですが前面に打ち出して堂々と言ったのは1月ですわな)で、従来のような「フォワード時点でのゴール(あるいは中間目標)に向けてそこから逆算して政策運営を行っていく」という政策スタンスから180度転換しているんですよ(個人の意見です)。

一方で、この「先行きの政策金利水準予想を示して市場の期待の安定化をする」というのはこれ明らかに「中間目標なりゴールなりが明確に見通せる状況でそこから逆算する」という時代にはマッチしているのですが、そもそもが出たとこ勝負なのに、2年先の話とか知るかボケという話であって、知るかボケなのですから、経済物価見通しと合わせた時に何となく説明がつくようなプロットでも出しますか、ってなもんが出ているだけでしょこれは(個人の盛大な妄想です)という位に読むべき物件だと思うのですが、今回のドットチャート見て既に政策金利の上限この辺ですなーみたいな解説も随分出てて、だから何でこれをそんなに大々的に信じるのよと小一時間問い詰めたいし、まあドットチャートのコミュニケーション上の弊害が出てるなーと思った次第です。



・そもそも過去1年間ほど物価見通しを盛大に外しまくっている中銀の出すドットプロットはクソの役にも立たんじゃろ

つまりそういうことでありまして、ドットチャートって別に「FOMCの総意として先行きの政策パスとしてこのように行いますよ」というようなガイダンスではなくて、FOMCの各パーティシパントが「現時点における先行きの経済物価予想を基にして将来のある時点で適切と思われる政策金利水準を示したものの集合体」な訳じゃないですか。でもって従来みたいに経済物価情勢がグレートモデレーションしている時だったらまあそれでも予想が当たる蓋然性が高かったりするから何かフォワードガイダンスっぽく見えてしまう訳ですし、これまでは物価が経済全体のギャップに碌すっぽ反応しないで推移してたから多少経済が予想よりブレてもマンデートとして設定されている物価の方が大して動かんから、まあ結果オーライで問題が起きにくかったわけです。

然るに、コロナ後の諸々とかその他の要因もあるのかもしれませんが、明らかに現状ってグレートモデレーションじゃなくなっている訳ですし、まあ当初はFEDもグレートモデレーション脳で「テンポラリー」を繰り返してましたが、どうも違くね???となりながらも結局現実の物価上昇の後追いなビハインドで見通しを変えて、スタンスもやっと「出たとこ勝負」に変えた訳ですわ。

つーことでですね、先行き(特に物価の)ダイナミズムがどっちに転ぶかさっぱり読めないという中で出すドットプロットとか、クソの役にも立たない訳でして、それこそ今回のドットプロットでみたら23年の途中で利上げが打ち止めになって、まあ精々2.5%だかそこらが上限と書いてありますけど、じゃあそれをナイーブに信じて「政策金利がどうせ2.5%くらいまでしか上がらないしその後ちょっと下がるっぽいからどうのこうの」みたいな前提でポジション組んじゃうと、まあ今回出したFEDの見通し通りに経済物価状況が推移すれば仰せの通りの展開かもしれませんけれども、実は物価が全然下がらんどころか更にホイホイ上がりだした、となったらFF金利もっと上げないと行けないかもしれないし、逆にちょっと利上げ開始した途端に物価が大失速を開始したらあっという間に利上げ停止の刑に追い込まれるわけでしょ、って話なので、なんかこうソウジャナインダヨナー感が非常に強い。

まあね、とは言っても先行き分からんから相場勝負師(勝負師じゃなくて負師ではないかというツッコミは却下)何もしないで良いって話ではないですから、まあ皆さんがそういう前提で価格形成をおっぱじめればドットチャートを前提にした価格形成がおっぱじまる、というのが相場様の常なので、それはまあそういうゲームになりそうなんですが、このゲームの恐ろしい所は「前提となる経済物価見通しが変化すると先行きの政策金利パスが(梃子のしくみみたいな感じで)不連続にジャンプしてしまう」という点にありまして(個人の妄想です)、何がどうなって変化するのかと言えば結局ドットチャートそのものであったり、FEDのパーティシパントの発言であったり、というのが一番効いてしまいそうな感じを受けるのですよ、よーわからんけど。

いやまあもちろん中銀のコミュニケーションポリシーダイジダイジネーなのはその通りではあるのでございますが、やることなくなって困ったからと言って逆さ絵ハゲが安直に導入したドットチャートによって、コミュニケーションのサービスステージみたいになってしまい、それが引き継がれてしまった結果として今起きている事ってのは、本来の姿としてあるべき金利債券の市場ちゃんの参加者が自分たちでそれぞれ経済物価情勢を分析して、その結果として政策金利パスがどうなるか、政策スタンスがどうなるかを想定してポジショニングを行い、状況の変化に応じてそれを変更する、という点が弱くなって(無くなったとはさすがに思わないですけど)、中銀の一挙手一投足に過剰に反応するようになるし、市場サイドは中銀に対してサービスの充実ばっかり求めてしまうし、というようなコミュニケーションになる。でもって中銀も市場に喧嘩を売りたくないから求められるとついホイホイといい顔をしてサービスしてしまうという悪循環になっているように思えます(個人の偏見です)。

・・・・・とまあそんなことも前々から思ってて、さきゆき訳分らん状態で経済物価の数値ならともかく、足もとの状況によって先の方で振幅をもって変動し得るようになった先行き政策金利を示すなどというやってるうちにドンドン自分のクレディビリティ落とすリスクを内包しており、かつコミュニケーションの結果として市場のボラを高めてしまうことになるリスクのあるドットチャートなんだから、そんなの無くして先行きパスは市場に考えさせるように突き放した方が当初混乱するかもしれないけど、より多くのビューがぶつかるようになって、価格形成がより自然なものにとなれると思うんですよね。まあこの調子でドットチャート出るたびにアヒャーとかいうようになるとボラ高いからおもろいけど中銀の発言ばっかりで動く相場になったらやっぱりつまらないかなー。


・ところで何で年内残り全部25bp利上げが「アグレッシブ」になるわけ???

まあ上記のように「そもそもFEDが物価見通しを外しまくっているのに」という話をした後にこの話をするとじゃっかん前の話と矛盾する説明になりそうでアレですが(^^)。

いやまあ勿論12月のSEPから見たらとんでもなくアグレッシブになっているから「アグレッシブ」と言いたいのは分かるんですが、そもそも論として12月SEPの時点ではまだ「ちょっと長引くかもしれんけど物価上昇はテンポラリーやで」と言ってた時点のパスであって、今回は「物価を2%の水準まで落ち着かせるのが最優先課題(キリッ)」とジャガーチェンジもジャガーチェンジしている訳ですよFEDのスタンス。

でですよ、じゃあ物価を落ち着かせましょといってるわけですが、SEPの今年と来年の見通し(さっき外しまくり見通しとか言ってこれかよとツッコまれるとちと困るのだが、まあ今年の部分は足もとを踏まえているし経済の方はそれなりに当たるじゃろ位で勘弁してちょーだいませ汗)と申しますか、まあそもそもの足もとでの状況がどうでしたか、って話を考えないといかんと思うのですよ。

即ちですな、現状は経済が巡航速度(ロンガーランの成長率と目される水準)を上回って推移しておりまして、今回のSEPではウクライナ戦争を背景にだいぶ下げてきているとは言え、それでもロンガーランよりは高めの成長を見込んでいますわな、でもって雇用は完全雇用にかなり近い水準にある(から利上げするんだし)という認識、そういう中で物価ちゃんの方は上振れとかそういうチャチな単語を笑い飛ばすような勢いでのマンデート対比上にある、という状況なのに、政策金利水準は25bp(今回上げて50bp)とかな訳じゃないですか。

そーゆー状況の中でちんたらと25bpづつ利上げしていきますと、年末2%(1.75-2.00)になるとは思うのですが、2%ってそもそも論として中立金利水準またはそれより若干したかもしれない、という水準な訳で、上記のような経済状況なのにのうのうと中立金利よりも低い水準でタラタラ利上げしてって物価って本当に止まってくれるんですか??????と考えるに、今回だしてきた利上げパスってエライ悠長な利上げペース、と中央銀行のロジックを踏まえるとそうなると思うの。

とは言いましても、まあ今回のだいたい残り6回から若干多いかもしれない程度っていうのはどうせ市場の後追いでぶっこんだだけだと思うのですよ。だって先行き分からんのにわざわざ「お前らの織り込みじゃあ物価が止まらんかもしれんじゃろオラオラオラ」と更に強いドットプロット出したって、そもそも見通しが当たるかどうかわからんのにFED自らが相場を張って外したら信認ガタ落ちになってしまいますから、そら市場後追いで出しておいて、そのあとは経済物価見通しに何となく整合するようなもんでも出してお茶濁すか、となると思うのよね。

何か話がそれてしまいましたが、そもそも論として完全雇用ほぼ達成状態、景気は潜在成長率上回る速度で拡大中、でもって物価が盛大にマンデートを上に逸脱、という状況で発射台が0.00-0.25%とかいうとんでもない低金利なのに、ちんたらと1年かけてようやっと中立金利近辺までしか利上げしない、というパスはどこからどう見ても積極的な利上げとは言えないですよね、という事を思いながらベンダーのコメンタリーとか見て悶々としてたら、昨日の午後だから向こうの朝になってすこし「いやこの金利パスはダビッシュだろ(もっと上振れあるで)」というコメントも聞こえてきた気がするので(幻聴かもしれないけど)ちょっとだけ心強く思ってしまいました。


・・・・・ということで時間が無くなって全編「俺の話を聞いてくれ」状態になってしまったことを深くお詫びするので、詫び石はお出ししないですが3連休の前の方(あとの方に出してもしょうがないですし春のお彼岸というイベントもあるのでした、汗)に詫び石のつもりでFOMCポストビューの続きで会見オープニングリマークとできればQ&Aも突っ込んで行こうと大いに反省しているので勘弁して下さい(とここまで大口叩いたのでさすがに明日は頑張る)。







2022/03/17

お題「FOMCだが声明文にもいろいろと味わいがあって声明文とSEPで時間無くなってしまうま(汗)」

日の出前に自主的に起きるのが不得意(夏はクソ早く起きる)なので、本日もまたまた寝起きで見たのでとりあえず声明文とSEPの鏡まで。

しかしまあ何ですな、ドットチャート無くせやと申し上げましたが、さすがにそんな蛮勇は振るわなかったのですが、(残念だが順当)今回のSEPって経済物価見通しとドットプロットが突如「整合性のあるもの」に大変化しまして、あたくしは「おおおおおおおお!!!!」と結構興奮してしまいました。なるほどねー。

うだうだ能書きたれてると時間が無くなるのでちゃちゃっと参ります。

〇声明文:ウクライナ問題は不確実性の塊だが正常化に向けていろんな文言が正常化して声明文全体がシンプルになるの巻

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220316a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220126a.htm(前回)


・第1パラグラフ:2パラ含めてコロナ文言完全削除でシンプルに雇用グッドで物価が上にアイヤーという表現に

『Indicators of economic activity and employment have continued to strengthen.』(今回)
『Indicators of economic activity and employment have continued to strengthen.』(前回)

という威勢の良い経済全体の認識の文言は変わらず。

『Job gains have been strong in recent months, and the unemployment rate has declined substantially.』(今回)

『The sectors most adversely affected by the pandemic have improved in recent months but are being affected by the recent sharp rise in COVID-19 cases. Job gains have been solid in recent months, and the unemployment rate has declined substantially.』(前回)

雇用の所の前にあった「The sectors〜」のパンデミック影響のネタが全部カットされています。雇用に関する表現も前回同様強い認識のまま。

『Inflation remains elevated, reflecting supply and demand imbalances related to the pandemic, higher energy prices, and broader price pressures.』(今回)

『Supply and demand imbalances related to the pandemic and the reopening of the economy have continued to contribute to elevated levels of inflation. Overall financial conditions remain accommodative, in part reflecting policy measures to support the economy and the flow of credit to U.S. households and businesses.』(前回)

物価についての文言も、前回まではパンデミックの影響に関わる部分は物価上昇に寄与してますという表現でしたが、今回はパンデミック云々の他にエネルギー価格があり、もっとキタコレなのは「broader price pressures」という文言がぶっこまれておりまして、まあこの認識自体は既に色々なところでFEDの高官が行ってるから目新しい事ではないものの、ステートメントに堂々とこう書いた、というのはもう「高インフレ対応をしますよ」という話をしているのに他ならないのですが、だから正常化というお話ではありますわな。

でもって今回って全体もそうですが1パラがエライ短くなったなと思ったら、パンデミック関連のゴテゴテデコレーションが無くなったのもあるのですが、ファイナンシャルコンディションに対する言及がバッサリと切り落とされていまして、これは何ぞやという話ですけど、金融政策の正常化を行う段階に入ったからファイナンシャルコンディションについても別に緩和的である必要が無くなって来る訳で、雉も鳴かずば撃たれまい、とばかりに利上げのドサクサで削除したんですかねえ。まあ質疑で誰か聞いたでしょうかね(まだオープニングリマークすら読めていないのがバレますが^^)。


・第2パラグラフ:先行き見通しはコロナ次第→ウクライナ次第に変更だが物価上昇景気下押し要因と明言

このパラは全面書き換えになってしまっているので前回との比較と言われましても並列で全部見るしかなかとよ。

『The invasion of Ukraine by Russia is causing tremendous human and economic hardship. The implications for the U.S. economy are highly uncertain, but in the near term the invasion and related events are likely to create additional upward pressure on inflation and weigh on economic activity.』(今回)

『The path of the economy continues to depend on the course of the virus. Progress on vaccinations and an easing of supply constraints are expected to support continued gains in economic activity and employment as well as a reduction in inflation. Risks to the economic outlook remain, including from new variants of the virus.』(前回)

リスクがどうのこうのとかそういう話も削除して「ハイリーアンサータン」攻撃ですが、物価と経済活動への影響については言及してます。そらまあ言及しないと先行き見通しパラグラフとしての用をなさないから当然ですけど。


・第3パラグラフ:ここからの利上げによって安定成長が維持される(キリッ)なのですがfirmingを使うのはチャーミング

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回)

ここはもうお経の最初みたいな感じでいつも同じ。

『With appropriate firming in the stance of monetary policy, the Committee expects inflation to return to its 2 percent objective and the labor market to remain strong.』(今回新設)

利上げ開始宣言がこのような文言で表現されていますが、語順に見て行きますと、最初の「With appropriate firming in the stance of monetary policy」がタイトニングとかノーマライゼーションとかじゃなくて「firming」となっているのが成程と思った所でして、もちろん中立金利よりもクッソ低い上にインフレヒャッハーの状態ですからここで25bp利上げしたからと言ってタイトニングでも何でもないのでタイトニングという表現も回避していますし、ポリシーノーマライゼーションはもしかしたらオープニングリマークの方では言うのかもしれませんが、ノーマライゼーションと言った場合、ノーマルの所に向けて利上げをしていく、みたいなニュアンスが強くなって、現状の「データディペンデントでハンブルあんどニンブル」の話とはちとニュアンスが違ってくるわけですな。

ということでこの言葉を使ったんだなあ、くらいは中央銀行文学検定2級(大嘘)のアタクシそういう意図だと思ったのですが、まあ実際どうなんでしょうかね。

でもってこの分の後段、「the Committee expects inflation to return to its 2 percent objective and the labor market to remain strong.」もこう来るだろうなあという理屈構成になっていて、まず物価について「return to its 2 percent objective」とリターンという単語をぶっこんでいますし、SEPの物価見通しも上方修正されて正式に「23年も2%に戻りませんわメンゴメンゴ」となっているように、インフレを2%に向けて下げるというのを明確化したことと、あとは物価が下がることによって(経済にプラスに働き)最大雇用のマンデートも維持できる、というインフレ対応大正義モードとなっております。

まあそうは言っても先行きハイリーアンサータンだからとりあえず25bp上げてさてどうなるじゃろとなるのでございましょうが、今後淡々とやるのか途中前倒しするのか、とかその辺の話は声明文の中ではニュアンスを一切出さない(ドットチャートの方では前倒し感がでてしまってるようには見えますが、こっちはコレクティブビューじゃ無くてインディビヂュアルビューを並列集計しているのでシャーナイナイ)という感じですな。まあ出たとこ勝負なんだから仕方ないけど、ただまあこのように「物価を2%マンデートに落ち着かせるのだが大正義」というモードになって来ると、物価が上がり続けるとかになれば途中の利上げが大きくなるかもしれませんよね、というのは示した積り(どうせ記者会見で質問されていると思いますが)なんじゃネーノ??と思いましたがこれまた個人の感想です、でございますのでどうっすかね。

さて、ダラダラ書いてしまいましたが3パラ比較に戻ります。

『In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 1/4 to 1/2 percent and anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate.』(今回)

『In support of these goals, the Committee decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent. With inflation well above 2 percent and a strong labor market, the Committee expects it will soon be appropriate to raise the target range for the federal funds rate.』(前回)

前回は予告ホームラン文言がありましたが、今回は利上げ25bpを行いまして、今後もホイホイと上げまっせとしておりますが、メジャードペースだのモデレートリーだの余計な事は言わないのは大変結構であります。もちろん、そもそも出たとこ勝負政策なのですからそういう決めうちすら出来ないはずなので書くわけがないと言ってしまえばそれまでですが。

『In addition, the Committee expects to begin reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities at a coming meeting.』(今回)

『The Committee decided to continue to reduce the monthly pace of its net asset purchases, bringing them to an end in early March. Beginning in February, the Committee will increase its holdings of Treasury securities by at least $20 billion per month and of agency mortgage-backed securities by at least $10 billion per month. The Federal Reserve's ongoing purchases and holdings of securities will continue to foster smooth market functioning and accommodative financial conditions, thereby supporting the flow of credit to households and businesses.』(前回)

おじいちゃんドメドメザパニーズにも程があるので、今回の「at a coming meeting」が次回の事なのか今後のどっか(そう遠くは無いでしょうが)の事を言ってるのかが良く分かっていないのですが、まあ5月6月7月ってFOMCぶっこまれているからそんなに大差なしと言ってしまえばそれまでですが、50bp上げれなかった代わりでバランスを取ったのかどうかとか、バランスシートのランオフに関しては(どうせやるとはいえ)利上げとのバランスでどういう調整するのか、という辺りはオープニングリマークからのQAでどうせ話はあるんでしょうかね。

でもって、今回もう一つチャーミングなのは、FEDのAPPで保有する債券が「smooth market functioning and accommodative financial conditions」というのを削除していることでして、さっきも1パラ(現状認識部分)でファイナンシャルコンディションのアセスメント文言を削除していまして、実は今回の声明文でこの部分も密かにポイントじゃんと思っているのですが、ここら辺の表現変化(というか削除)を見ると、もはやファイナンシャルコンディションが緩和的である必要はない、というメッセージも出している、と思うのよね。

もちろん、わざわざファイナンシャルコンディションを意図的に締めてシバキアゲに行くとかそういう話では無いのでしょうけれども、少なくともこの辺の削除からFEDの声明文文学見物芸歴10ウン年(覚えてない)のアタクシが思いましたのは、「おうお前ら中銀プットとかもう無いんだぞ分かってるな」ということなんじゃなかろうか、と思うのですがどうでしょうかしら????????


・第4パラグラフ:ここは平常運転

とまあ3パラまでが今回色々と面白くて、4パラはいつもの表現で全文一致です。

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回)

まあここは「今後の政策運営は色々な状況を幅広く観察しながら塩梅よう運営しますわ」という話をしているだけなのであんまりいじりようは無かったりする(もっと猛烈なボルカーショックみたいなことになったら変わるかもしれませんが正常化程度では変わらん罠)。


・第5パラグラフ:貫禄の変態仮面が50bpの利上げを提案

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; Esther L. George; Patrick Harker; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Esther L. George; Patrick Harker; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller. Patrick Harker voted as an alternate member at this meeting.』(前回)

おや?今回は変態仮面の名前がありませんね、と思うと貫禄の50bp利上げ提案でしたwww

『Voting against this action was James Bullard, who preferred at this meeting to raise the target range for the federal funds rate by 0.5 percentage point to 1/2 to 3/4 percent. Patrick Harker voted as an alternate member at this meeting.』(今回)


・ディレクティブに関しては全てのオペと常設ファシリティについてフルスライドで金利水準25bp上げで他条件同一

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220316a1.htm
March 16, 2022
Implementation Note issued March 16, 2022

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220126a1.htm
January 26, 2022
Implementation Note issued January 26, 2022

えーっとすいません、ミーのPCの画面の右下にあるお時間表示が時間足りなくなるので飛ばせと命令しておりますので、細々引用するのはかっ飛ばしますサーセン。

小見出しにあるように、今回は各種オペ金利、IOR金利、ディスカウントウィンドウ金利などが全部フルスライドで25bp引き上げになっていましたが、1先辺りのオペ限度額とかその辺に関する変更はありませんでした。NY連銀向けディレクティブでは、このほかに(テーパー完了したから当たり前ですが)APPの拡大に関する文言は全部削除されているのが変更点です。ではSEPに。


〇SEP:色々と見どころは有るけど「やっと経済物価見通しと政策金利見通しの整合性が取れた」って最初に思いました

アタクシも大概に変態なので見て唸った後に思ったのが小見出しの如しwwwwww

SEP
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20220316.pdf

前回12月
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20211215.pdf


・成長見通しは足元だけ下げてあとはヨコ、失業率見通しは不変(メディアンベースの話です、以下同様)

『Table 1. Economic projections of Federal Reserve Board members and Federal Reserve Bank presidents, under their individual assumptions of projected appropriate monetary policy, March 2022』から参ります。

左から2022、2023、2024、ロンガーランです。

成長率
Change in real GDP 2.8 2.2 2.0 1.8
December projection 4.0 2.2 2.0 1.8

さすがにウクライナ受けて足元下げたか。パンデミックもあるかもしれんがその辺は会見で説明あったじゃろ。

失業率
Unemployment rate 3.5 3.5 3.6 4.0
December projection 3.5 3.5 3.5 4.0

どう見ても雇用マンデート達成です本当にありがとうございました。


・物価に関しては(既に口頭では認めてたが)2023年も高い状態だわメンゴメンゴと公式に降参の巻

PCE指数総合
PCE inflation    4.3 2.7 2.3 2.0
December projection 2.6 2.3 2.1 2.0

足もとの数字を(12月から比べるから当たり前だが)クッソ引き上げ、23年の2.7なんですが、そもそも2%のマンデートに整合的な水準ってのは概ね2.5%くらいまで、というのは公式な閾値とかないけど、だいたいエバンス辺りを始めとした物価重視おじさんたちがゆうとる水準でして、2%台後半というのはFED文学で言えばインフレーションが上にディビエーションしている状態を意味する筈(と思うのですが違ってたらゴメンね)でして、23年になってようやく2.3なのでまあ2に近いと言える所に落ち着きますよ、という話。

まあこれまでの「サガランチ会長だわメンゴメンゴ」というのと、「そうは言ってもそんな1年で物価一気に下げさせるようなヤンチャはしないつもりだよ(しないとは言ってない)」と言ったあたりが行間から読み取れましたでございます(個人の感想です)。

PCEコア(ロンガーランの数字のアンケートはとらない)
Core PCE inflation 4.1 2.6 2.3
December projection 2.7 2.3 2.1

ヘッドラインとだいたい同じですね。


・ドットチャートによりますと大体1年と少々使って中立金利より若干上まで上げるとそれが効いてきて23年にはマンデートに戻るという図になる

スイマセン小見出しがクソ長くてゴメンチャイ。

さすがにこれ前回と比較するのロンガーランくらいですのでなんですが・・・・・・・・・・

2022年末までのあと残り利上げ回数、なお1回25bpで計算するからFOMCの残り回数よりも多いのがある^^)

あと4回:1名
あと5回:3名
あと6回:5名
あと7回:2名
あと8回:3名
あと9回:1名
あと11回:1名

さすがにあと11回は草生えるが、まあ何か市場にある程度織り込んでいるよりも強めに寄ってる気もするが。


2023年の途中で打ち止めになるようでして・・・・・・・・・

ちょっと文字で書きにくいし皆様ドットプロットミルからお分かりとは思うのですが、先の方での特徴は@23年末と24年末のドットはほぼ同じ水準あるいは一部の人が23年末からさげてる、Aただしその水準自体は24年末になっても中立金利より若干高めに置いてあ、という所ですな。

つまり、23年の途中で利上げは打ち止めになる、ただし物価自体は23年で2.7%(コア2.6%)とまだマンデートよりも高い水準にあるので、この時点では中立金利よりも政策金利は若干高く小幅引き締め的、そしてその効果が出てくるので24年には2.3%水準に物価が下がって来る、その時点で中立金利水準まで下げると言っている人が少しいるが大勢はまだ若干引き締め的な水準に政策金利をとどめる。

・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!

ということでですね、とうとう経済物価見通しと政策金利見通しの整合性がとれるような図が出てきた、というか一気にここまで変えたのは中々面白かったです。まあ出て見ればなるほどと納得は行く(ただしいのかどうかは知らんけど、笑)図ですね。

あと、ロンガーランに関しては下がっているようにも見えるのですが、そもそも今回前回から投票数が2つ減っているのでありまして、この分があるから基本的には「中立金利の判断は横ばいだった」ということで解釈した方が正しいんだと思います。個人の感想ですけど。


てなわけでオープニングリマークとどの辺まで行けるか分からんQAと何か抜けがあったりしたらその補足なども明日ということでご勘弁下さえ御代官様よろしくお願いいたします。





2022/03/16

お題「FOMCプレビュー雑談/ラガルド会見続き(と言っても昨日ネタにした質疑の補足質疑みたいなもんですが)」

悉皆調査キタコレ。
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-russians-banks-idJPKCN2LC2DB
2022年3月16日3:55 午前
ECB、ロ・ベラルーシ全顧客の取引精査を銀行に指示=関係筋

悉皆調査したのに後からホイホイと出てきたりすると地獄絵図が待っているし、今回は案件が案件だけにこりゃ全集中で悉皆調査しないと行けないでしょうし・・・・・・


〇FOMCプレビュー雑談:奇策があると思うんだが蛮勇振るってぶっこみは・・・しないわな

さてさて今晩(というか昨晩からだけど)はみんな大好きFOMCなのですが、最早25bp利上げが織り込まれていて、とりあえず2%までは利上げしていく(=7回)でしょうというのは現状でインプライされている、というのがコンセンサスビューで、インフレ抑制ダイジダイジネーで来るのは明白。

とまあそれはそれで良いんですけど、案の定というか惧れていた通りというか、今回はSEP回でもあって、とにかくSEPで出て来る「FOMC参加メンバーが考える各年末の政策金利推移およびロンガーランの政策金利」という毎度おなじみドットチャートが無茶苦茶注目されるの図になってしまいました。

・・・・・・・でもってですね、まあそれやったらコミュニケーションポリシー的には素晴らしい英断(個人の感想です)だと思うのですが、蛮勇振るいすぎなのでそこまでの腕力を出してくるかというと無理ぽだと思うのですが、今回のFOMCこそ「ドットチャートを廃止(またはほぼ廃止みたいな見せ方に変更する)」最後のタイミングだと思いますし、ここからの金融政策コミュニケーションを考えると、ドットチャートって百害あって一利くらいしか無いので(個人の感想です)、利上げ着手開始(と思われる)の今回にバサッと廃止する位の事をしたら、一生パウエル様に足を向けて寝ないし、何なら自宅にパウエル大明神を祭ってもよい位の勢いなので、自宅にあるテディベア(BOEの博物館で買ってきた奴なのでBOEのロゴ入りシャツをお召しになっているのだが)を勝手にパウエル様のご神体扱いして毎日拝んでもよろしくってよ、とまあそのように思いまする。


何回か申し上げたかとは思うのですが、そもそもあのSEPで経済物価見通し出すまではまあ良いとして、逆さ絵ハゲがおっぱじめた(で良かったですよね)ドットチャートにつきましては、「現時点でのワシらの金融政策のフォワードガイダンスを(単一のコレクティブビューとして文章に明示するような形を避けながら)ビジュアルに示す」という物件なのでありまして、つまりあくまでもあれは「グレートモデレーション」だったり「緩和政策の長期化待ったなし」という状況だったりするときに有効なコミュニケーションツールで、グレードモデレーション状態で先行きの決め打ちが可能である、という時に更にこのドットチャートで世の中の期待をグレートモデレーションすることができる、という使い方と、ゼロ金利制約に引っ掛かって更に追加緩和をしたいときに将来の政策金利維持を事実上コミットすることによって追加緩和効果を出す、という緩和政策長期化待ったなし、の時には効果が出る訳ですよ。

然るに、足元の物価見通しですら碌すっぽ当たらん、というグレート不確実性の時に、そもそも先行きの政策金利水準を(数カ月程度なら兎も角2年以上に渡って)決め打ちで出す、というのは土台無茶な話なのに加えまして、当然な話ですけど足元のところで経済物価情勢の先行き見通しの向きについて、その向きの角度が手前でちょっと変わっただけで、2年後3年後に出て来るものって先では大きくぶれてしまう、というのがまあ本来の見通し(そうならないように「これは一時的」だの「中長期的には」とか言って色々と誤魔化すのが中銀コミュニケーション)な筈ですから、現在のように何が何やらよくわからんという時に2年も3年も先の政策金利水準を示すという方がミスコミュニケーションと言いますか、足元の情勢変化に無茶苦茶振らされてしまうコミュニケーションになってしまうから、どう見たってドットチャート自体が害悪なんですよね。

あとですね、ずーっとパウエルさん言ってるように「データディペンデント」で「ハンブル」で「ニンブル」って言うのがここから暫くの政策運営になる訳ですから、そもそもドットチャートを出していること自体が政策運営の「ハンブル」だの「ニンブル」に思いっきり矛盾しているんですよね。

とまあそんな訳ですので、12月の時はまだそうじゃなかった、と考えますと、今回政策金利引き上げのついでにSEPにおけるドットチャートを思い切って廃止する。まあロンガーランは残すかもしれない(ただそれは別にドットで示さなくてもSEPの鏡に載っているので要らんかったりする、ちなみに我らが変態仮面ブラード先生は「ロンガーランの政策金利水準を明示的に出すことはできない」と主張してずーっとロンガーランだけだしてません)けど、このタイミングを逃すと、毎度毎度これからSEPの度に謎のゲームを市場としないといけなくなるんで、今こそ「先行きの政策金利水準なんてもんは経済物価情勢を考えてお前ら自分で考えろやカス」、というスタンスをどどーんとぶっこんで来たらパウエルを神として崇めて米国の東の方に行く際には(いつになったら行くのか行けるのか知らんけど)FRBの前で土下座してくる所存(パウエルはんがその時FEDに残ってたら)でありまする。

廃止する名目としては「不確実性が極めて高い状況であり、緩和政策の正常化についても情勢の変化に応じて機動的に対応する方針であるので、中期的な先行きの政策金利予想を示すことは、却って市場に余計な情報を与えることになります。ワタクシどもはあくまでもデータディペンデントでハンブルかるニンブルに今後の情勢に対応して参りまして〜」みたいな感じなんですけど、まあそんな蛮勇は振るわないとは思うのですが、今回のFOMC前のマーケットコメントとか見ても、やたらめったらSEPの見通しを重要視している、まあそれって言っちゃあ悪いが市場が経済物価見通しから考えられる適切な政策スタンスとは何ぞや、という思考をしないでFRBにクレクレ言ってるってえのと大差ないと思うんで(個人の感想です)、市場が市場らしくなるためにはこの手のもんは排除して頂きたいところではあるんですけどね。

初回利上げという今回のFOMCでドットチャートを変えられなければ、正常化サイクルが終わるまではいじれなくなってしまうと思いますので、今回そのまま漫然と同じようなのが出てきたら(まあ別に変えるの期待はしてないけど私家版べき論をいってるだけなので)まあ残念だけど順当ですな、というお話になって当分このネタが書けないなと思ったので滑り込みで書いてみました。



〇ラガルドはんの会見続き、といっても昨日の補足質疑みたいなのでサーセン

と思ったらなんか講演があったが30秒目を泳がせた結果別に目先の金融政策に直接言及していないように思えた(間違ってたらゴメンやで)のでURLだけはっておく。
https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2022/html/ecb.sp220315~c861c9d88f.en.html
Remarks on the euro area economy
by Christine Lagarde, President of the ECB, at the “Wirtschaftsgipfel” of Welt/Axel Springer in Berlin
Berlin, 15 March 2022


という訳で、会見続きなんですけど
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2022/html/ecb.is220310~1bc8c1b1ca.en.html
MONETARY POLICY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 10 March 2022


・1番目の質疑の補足みたいな感じですがまあこの2つの質疑の話が今回のポイントでネーノとは思うのだが

政策スタンスに関する話は実際問題として今回はステートメントに結構書いてあるのと、昨日ネタにした最初の質疑で論点網羅しているような気がするんですが(明日から米国祭りなのに最初の質問までしかネタにしなかった言い訳ではないです笑、次の質問がまあ補足ちゃあ補足。

一つ目の問いは、

『I would like to ask you a question on the surprise factor you actually introduced today, because most of your watchers were completely convinced that you are going to pause and not change anything because of that heightened uncertainty. Perhaps you could elaborate a little bit on the thinking in the Governing Council on that issue to now reduce the pace of the APP, and why didn't you wait another month?』

ということで、今回は様子見でウゴカンチ会長だと多くのECBウォッチャーが思っていた(正直ワシもまあ別に動かんでもええんじゃネーノとか安易に思っていましたし、そもそもプレビュー雑談すら書きませんでした反省)のですが、今回APPのテーパーリング加速に踏み切った理由は何ぞ?

『Then I'd like to go back as well to the rate question. Of course “some time after” could mean anything, but I would like to bring you back to that question whether you see a rate hike if things develop according to your dominant scenario now in the course of this year.』

でもって利上げに関連する文言の変化についての質問なのですが、これ声明文引用した時にアタクシ「変化なし」と申しておりまして、実際問題として「フォワードガイダンス」としての声明文にある政策金利部分の文言って変化無いからアタクシはどうしても「変化なし」としか読めないので「利上げを判断するに十分な経済物価情勢判断とはどういうものか」という定義が変わっていない以上ガイダンス不変、って読んじゃうんですよね(法学部みたいな言い方ですが法学部ではありません)、あくまでも今回はAPP拡大が終了するタイミングが変わったことに加え、APP拡大終了と利上げをリンクさせない、つまり従来は「利上げ直前までAPP拡大を続ける」だったのを、APP拡大終了を前倒ししたことによって利上げタイミングと関係なくAPPをいじれるようになった、というあくまでもAPPの方の都合による文言変更だと思うのよね。

まあそんなのを口頭で説明すると無茶苦茶説明しにくい(書いてても説明しにくいけど、滝汗)のと、小理屈捏ねているようにしか客観的には見えないと思うのでここでウダウダ書いてるだけですが、まあその質問なので最初の質問の繰り返しになります。


ラガルドはん。

『I will have difficulty addressing your second question because I don't know what is my dominant scenario.』

これは大草原不可避な回答wwwwwwwwwwwwww

・・・・ではありますが、まあ何ですかねこの「I don't know what is my dominant scenario.」というのは、この先さっぱりわけわからんから出たとこ勝負です決め打ちはしたくないんです、という話をしているんだとワタクシは思う訳なのですがどうでしょうか??

『We have a baseline and we have two scenarios; one is adverse, one is severe, and you will have all the details of those scenarios tomorrow. Suffice to say that watchers are not those who make Governing Council decisions. It is the Governing Council, 25 sensible people around the table, who look at what the mandate is, what the projections deliver, what the medium-term outlook for inflation looks like, what the risks are, what the uncertainty is, and on the basis of all that, who are trying to deliver a predictable course while being very cautious. That's really what we did and doing what you have to do should be the predictable thing.』

そもそも私たちはこのような形で情勢判断を行っておりますがな、と説明し、

『Adding uncertainty to an uncertain situation would not have been the right answer.』

というぶっこみ方をしているのはこれはキレッキレで宜しいと思うのですが、さっきのFEDプレビュー雑談に引き直して見ますと、2年とか3年先の政策金利水準がどうしたこうしたというのをぶっこんで来るドットチャートがまさにこの「Adding uncertainty to an uncertain situation would not have been the right answer.」ですよね、という話だったりするのですが、パウエルが同じこと言ってドットチャートの決め打ち度を下げるなり廃止するなりしたら面白いですね(と無理矢理話を自分の雑談に引っ張るワイ)。

『Now, you're coming back to this “some time after”. We came from a “shortly before”, because it addressed actually one end of the spectrum relative to the others. In other words, the time it takes to purchase assets relative to the time when interest rates could be hiked, and it did say “shortly before”. 』

文言変更の理由はさっきウダウダと書いたアタクシの整理で問題ないと思うんですよね(APP拡大時期のケツを政策金利引き上げとリンクさせなくなったのとAPP拡大時期のケツが動いたためのテクニカルな話)。これ見て「政策金利引き上げの時期が後ろ倒し(前倒しならまだ分かるが)になった」とか解説する人は(確固たる物価見通しが背景にあるのなら無問題ですが)ちょっと中銀講釈をするのは向いてないと思うの。

『So there was an assumption that there would not be such a long period of time between when net asset purchases would stop and when there would be a rate hike. It was decided, and we debated that indeed, to replace it with “some time after”.』

とは言いましてもですね、「So there was an assumption that there would not be such a long period of time between when net asset purchases would stop and when there would be a rate hike.」って言ってるんですから、まあ利上げする時期について早める(2月の時点では10月からの20ビリオンが続いて利上げ直前に20ビリオンを止める、というようなニュアンスで書いてあったので、事実上4−9は利上げ絶対無しモードだったのですよね)ことは出来るってお話ではあります。やるかどうかとなるとこれはかなり微妙だとは思うのですが、APP拡大は止めたかったのと、10月まで動けないという状況からの脱却を行い早期に政策のフリーハンドを確保したい、という最初の質問での回答と同じことだと思うんですよね。

『That respects the sequencing that we had, which is net asset purchases and subsequently, the Governing Council looks at all the data to determine whether it is time to hike rates or not.』

ということで、順序としてAPP拡大停止からの利上げ、というのは同じなのですが、利上げ時期の判断は利上げ時期の判断として別途行う(そしてその判断根拠となる政策金利のガイダンス文言は2月と同じですよね)というお話。

『Clearly, “some time after” is all-encompassing.』

“some time after”は総てを含んで(all-encompassing)おります(キリリッ)と来ているのでどうせ碌なこと言わないだろうと思うと案の定のトネガワ方式が続くのである。

『It can be the week after, but it can be months later, and by that I think we want to indicate that the time horizon is not what is going to matter most.』

利上げを行う!・・・・行うが・・・・・今回はまだその時と場所の指定まではしていない。どうかそのことを諸君らも思い出していただきたい。つまり・・・・我々がその気になれば利上げは10年後20年後ということも可能だろう!

・・・・・・こうですか、わかりません><

『It's the data that will support the decision that is made by the Governing Council to assess the medium-term inflation outlook and whether a rate hike is warranted. You will have noted, by the way, that we have removed the bias that we had by eliminating “lower” in relation to our interest rates.』

あーーーーーーー!!!!これ見落としてたーーーーーーーー!!!!!!(つうこんのいちげき)

まあ正常化局面だから今更意味は無いと言ってしまえばそれまでなのですが、

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2022/html/ecb.mp220310~2d19f8ba60.en.html
PRESS RELEASE
Monetary policy decisions
10 March 2022

の金利の部分、

『Accordingly, the Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present levels until it sees inflation reaching 2% well ahead of the end of its projection horizon and durably for the rest of the projection horizon, and it judges that realised progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at 2% over the medium term.』(この部分直上URLの3月決定事項公表文より)

2月は、
https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2022/html/ecb.mp220203~90fbe94662.en.html
PRESS RELEASE
Monetary policy decisions
3 February 2022

『In support of its symmetric 2% inflation target and in line with its monetary policy strategy, the Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels until it sees inflation reaching 2% well ahead of the end of its projection horizon and durably for the rest of the projection horizon, and it judges that realised progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at 2% over the medium term. This may also imply a transitory period in which inflation is moderately above target.』(この部分直上URLの3月決定事項公表文より)

これフォワードガイダンスまで含めて1文なのでクソ長い引用で恐縮ですが、確かに「to remain at their present or lower levels until」だったのが「to remain at their present levels until」になって利下げバイアスが無くなっておるわ、いやーこれ気が付かなかったです(超滝汗)。

ということで、なんか2日で質問2つやっておしマイケルになってしまいました(時間の都合もあるので)のは恐縮でございますが、まあ今回ってゆうてここのスタンスをどう説明しているかが重要であとは情勢次第でシランガナだと思います。まあ他に読むならば今回のスタッフプロジェクション(https://www.ecb.europa.eu/pub/projections/html/index.en.html)かなとは思いますが、こういうの何回か継続して読まないで初見で見てもあんまり良く分からんかったりしますからぬ。


#では今晩(明朝)を楽しみに待ちましょう






2022/03/15

お題「気候変動ネタでスタッフペーパー2本投下の日銀/ラガルド会見:先行きのオプションを増やしたいけど決め打ちは全く不能状態ですなこりゃ」

ほうほう一周してFOMC前に2.1%とな。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N2VH3K8
2022年3月15日5:19 午前
米金融・債券市場=利回り2年半ぶり高水準、16日の米利上げ想定

『[ニューヨーク 14日 ロイター] - 米金融・債券市場では、米債利回りが2年半ぶりの高水準を付けた。インフレ抑制に向け米連邦準備理事会(FRB)が16日に3年ぶりの利上げに踏み切るとの見方が広がっている。

TDセキュリティーズの金利ストラテジスト、ゲンナジー・ゴールドバーグ氏は「先週の米消費者物価指数(CPI)を受けて、市場は国内のファンダメンタルズ(基礎的条件)により注目しており、利上げを一段と織り込んでいる」と述べた。

米ニューヨーク連銀が14日公表した2月の月次調査によると、米消費者の1年先のインフレ期待が中央値で6.0%と、前月の5.8%から上昇し、昨年11月に付けた水準に戻した。消費者は今後、食品やガソリン、家賃の支出が大幅に増え、家計を圧迫すると懸念している。』(上記URL先より)

は良いんですけど、結局回りまわって今月25bpの利上げ確実って話だと50もあるでよの時よりも今回の利上げ想定幅が少ない気がするんですが、先行きの利上げ織り込み回数が違いますかそうですか・・・・・・・・・・・・

〇そういや気候変動ネタで日銀がスタッフペーパーをだしております

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2022/rev22j04.htm/
気候変動に伴い日本の金融機関が直面する物理的リスク
―水害が実体経済・地価・金融機関財務に及ぼす影響を中心に―
2022年3月14日

金融機構局 芦沢拓郎、古川角歩*、橋本龍一郎、小出桂靖、仲智美、西崎健司、須藤直、鈴木源一朗**
*現・調査統計局
**現・総務人事局

HTMLの『要旨』を拝読。

『本稿では、気候変動に伴い日本の金融機関が直面する物理的リスクについて、水害が実体経済・地価・金融機関財務に及ぼす影響を中心に考察した。水害は、人的・物的資源の損失を伴う。過去のデータを用いた実証分析によれば、こうした水害被害による実体経済や地価、金融機関財務に対する二次的な悪影響は、標本期間内の水害でみる限り、必ずしも大きくなく、中期的には復興の進展とともに剥落してきた。』

そらそうだろうなあというのは何となくイメージがつくが。

『もっとも、将来の気候変動とこれに伴う水害被害額の増加を勘案したシミュレーションからは、長期的にみれば、水害被害が実質GDPや金融機関全体の自己資本に相応の影響を及ぼす可能性が示唆される。ただし、物理的リスクの先行きについては、世界が脱炭素社会へ移行するスピードや、世界平均気温と災害の頻度・規模や生産性との関係など、さまざまな要因に大きく依存しており、不確実性がきわめて高い。』

そらまあ水害が一発芸で終われば復興需要とか、復興に合わせて交通網の効率化みたいな事をする(旧東京市の東側の道路が綺麗に碁盤の目のようになっていてそこそこの広さを持ってるのは関東大震災後の帝都復興事業による要因が大きかったりしますし)とかあるでしょうが、これが一発芸じゃなくて常に来るならそもそもそこでの生活活動できませんからねえ。

などと思いつつも日銀レビューはこれから読む。本文はこちら。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2022/data/rev22j04.pdf


でもってもっとひょえーと思ったのはこっちのスタッフペーパー。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2022/wp22j06.htm/
水害被害の実体経済・金融仲介部門への波及:DSGEモデルを用いたシミュレーション分析
2022年3月14日
橋本龍一郎*1
須藤直*2
*1日本銀行金融機構局 
*2日本銀行金融機構局

DSGEモデルを用いたシミュレーション分析とな!!!!まあ要旨を拝読。

『本稿は、水害発生が民間資本ストックなどを毀損するメカニズムを組み込んだ動学的確率的一般均衡モデル(DSGEモデル)を構築し、水害統計から得られる水害の直接的な被害額等(直接効果)を用いてモデルを推計することで、水害発生が、わが国の実体経済や金融仲介活動に与える二次的な効果(間接効果)を定量評価している。分析結果は以下の通りである。』

ほうほう。

『第一に、水害発生に係るショックは、物理現象の結果として資本ストック投入量を減少させることで、まず、供給サイドからGDPを押し下げる。加えて、こうしたGDPの下落が、企業部門・金融仲介部門のバランス・シートの経済的価値を毀損させることを通じて、円滑な金融仲介活動を妨げ、企業の経済活動を需要サイドからも押し下げる。『仮に、水害の直接的な被害額が保険によって全てカバーされる場合であっても、直接的被害による経済活動への下押し圧力は、企業部門・金融仲介部門のバランス・シートを内生的に毀損し、同じメカニズムを顕在化させる。』

『第二に、2019年時点までのデータを踏まえる限り、水害発生に係るショックがGDPに与える間接効果の規模は、マクロ経済学における既存研究で重要とされているTFPショックや主観的割引率ショックといった標準的な構造ショックの影響と比べて限定的である。ただし、外部機関から公表されている先行きの気候変動シナリオのもとで、分析で得られた水害発生と実体経済や金融仲介活動との定量的な関係を前提として、仮想的に先行きの水害ショックの実体経済への影響を試算すると、将来における影響は足もとよりは相応に大きくなる可能性が示唆される。』

まあこれはふーんそうですかとしか申し上げようが無いのですが、当然中身なんぞ読んでいる訳も無いのですけれども、こっちはペーパーになっているので結構読みでがありそう。

全文はこちら(ワーキングペーパーシリーズ)
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2022/data/wp22j06.pdf


・・・・・・・まあこういう分析やるなとは言わないのですが、んなもん「自然災害がバカスカ増えれば経済にマイナス」って犬が右向きゃ尾は左みたいな話で、まあこういう数字をどどーんと出して、だから地球温暖化対策しっかりやっていきましょうねえというような話をする為のデータとしては大変に結構な意味があるとは思うのと、なんせ最近は気候変動リスクを定量化して開示するみたいな話もあるので、日銀としても出してみましたというか、民間がそういうの出すときのたたき台になるべく出したんだろうなーというのはまあ良く分かる。

いや良く分かるんですけど、何ちゅうかこの足もとでエネルギーと国際商品市況、なかんずく食糧価格が値上がりして、おまけに通貨安政策の方は漫然と行っている、というような事が起きてるタイミングでこういうの出ちゃうの間が悪いわなーと思ったし、そもそもこの分析、2番目の方はマクロ経済への分析だからまあ良いとして、1番目の分析が金融機関経営と話を絡めているのが若干トサカに来る話で、いやお前らのマイナス金利政策とか言う金融仲介機能に対する盛大な課税措置のせいで金融機関の基礎的な収益力削いでるんだよおまけにCP社債の購入をしてリスクプレミアムの適正な水準を破壊して何年経ってるんだよとか、そっちの方を先に心配して欲しい訳で、まあテーマとしては分かるがこんな分析してる暇があったら今の政策をどうしたらマシに出来るのかの研究を是非お願いしたい所ではございますな(暴言)。

いかんいかん、ついトサカに来てしまったが、まあ気候変動ネタでも日銀色々と頑張ってますよと言いたいのは把握しました。読んで面白かったらネタにします。



〇ラガルドはんの会見ですが「状況の変化が分からんから先の政策の決め打ちができないから」の措置という事ですな

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2022/html/ecb.is220310~1bc8c1b1ca.en.html
MONETARY POLICY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 10 March 2022

ということでやっと会見のパートである(すいません)。


・「先行きの決め打ちが出来ない情勢なので」テーパリングの前倒しを実施した、と考えるのが妥当かな(個人の感想です)

ラガルドはんの会見はだいたい早めの質疑を読んでおけば良いというのが概ねのパターンでして、基本的にはあんまり話を誤魔化しには掛からないのがラガルドさん(パウエルも割とそうです)なので、だいたい最初の方で来るジェネラルクエスチョンに対して政策のアウトラインを説明してくれるという感じだったりするような気がします。

でもって今回の最初の質問ですが、何なら質問読まないで回答だけ読んでも良い位のラガルドさんの説明の分かりやすさ(アタクシ個人の偏った感想ですが)という感じでして・・・・・・・・・

『A lot of the recent communication from the ECB has been about how supply driven the current inflation and even core inflation surge is, so how much agreement was there in the Governing Council about accelerating the pace of normalisation now?』

物価がホイホイと上昇してサガランチ会長の中、今回は金融政策のノーマライゼーションの加速をどの程度行うかということについて合意があったんでしょうか??

『Secondly: your new guidance states that interest rates will follow some time after net bond buying ends so does that mean that we are back to excluding rate hikes later this year, or how does that square with the significantly higher inflation projections you just presented?』

さてここでニューガイダンスという文字が出てきて(ノ∀`)アチャーと思ってしまったアタクシですが・・・・・・・・

・ちょっとここで途中の埋め込みで「利上げタイミングに関するオープニングリマークでの表現変更」について

政策公表文のステートメントの方では政策金利ガイダンスについて、
https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2022/html/ecb.mp220310~2d19f8ba60.en.html

『Accordingly, the Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present levels until it sees inflation reaching 2% well ahead of the end of its projection horizon and durably for the rest of the projection horizon, and it judges that realised progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at 2% over the medium term.』(ここは直上URL先の今回の政策公表文より)

となっているのは前回も今回も同じなので、ガイダンス不変って書いてしまったのですが、前回の声明文でのAPPの説明に、
https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2022/html/ecb.mp220203~90fbe94662.en.html

『From October onwards, the Governing Council will maintain net asset purchases under the APP at a monthly pace of ユーロ20 billion for as long as necessary to reinforce the accommodative impact of its policy rates. The Governing Council expects net purchases to end shortly before it starts raising the key ECB interest rates.』
(ここは直上URL先の前回の政策公表文より)

とあるのに対し、今回会見冒頭のオープニングリマークの所での表現が、

『Any adjustments to the key ECB interest rates will take place some time after the end of our net purchases under the APP and will be gradual. The path for the key ECB interest rates will continue to be determined by the Governing Council’s forward guidance and by its strategic commitment to stabilise inflation at two per cent over the medium term. 』(ここで当初のURL先のラガルド会見からの引用に戻って以下同様です)

となっている訳ですよ。

でですね、この部分何ですけど、なんかこれを捕まえて「利上げ時期が先になった」とか珍説を唱えていたベンダーヘッドラインを見た(中身は見てない)ような気がするんですが、これ話が全然違くて、「利上げタイミングのガイダンス」自体は、再掲になっちゃいますが、

『Accordingly, the Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present levels until it sees inflation reaching 2% well ahead of the end of its projection horizon and durably for the rest of the projection horizon, and it judges that realised progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at 2% over the medium term.』

で不変なのでありまして、前回2月会合に関してはAPPのテーパリングが進むものの、10月以降の買入ペースに関しては当初20ビリオンでスタートするけど、利上げ開始することになったらその直前に終わりにするわ、という話をしていた(つまり利上げ開始するまでは2022年10月以降ダラダラと月額20ビリオンのAPP拡大が続く)のに対して、今回はAPPのテーパリングを前倒ししてケツが明確化(と言っても7−9月期の中で、みたいな感じですがまあ9末には終わってますわな)されたため、2月までの説明とは違ってくるのは当たり前だのクラッカーで、同じ表現残してたらテーパー終了即利上げになってしまいますがな、という話。

それに対して、FEDみたいに利上げぶっこむ気満々だったらまあこの時点で先の予告ホームランをかっ飛ばしてくるんでしょうけれども、今回はとにかく(特に欧州はウクライナ戦争の影響もろ被りなんですから)先行きの決め打ちが全く不可能、という状況なので、とりあえず目先もしかしたら早期利上げ必要かもしれないし必要では無いかもしれない、さっぱり分からん状態だけど、少なくとも2月決定のままだと、今年10月まではどこからどう見ても利上げに動けないことになる(テーパリングが全然終わってないから)ので、それはいかんだろ、ということで今回このような措置になったんでしょう、という説明が以下のラガルドはんの答えにあるのですよ。


・ラガルドさんの回答:とにかく先の事が訳分らなくて何の決め打ちもできないから先行き政策の選択肢を狭めることはしたくない

さてラガルドはんのお答え。

『Thank you very much for your three questions. First of all, in terms of Governing Council: we had very intense discussions about the current economic situation, about the outlook, about the uncertainty. And as with most institutions, communities, families - and probably you all - the war of Russia against Ukraine has tainted and overshadowed a lot of those discussions.』

『There were different views around the table - in all directions. But after those good discussions there was a determination by all Governing Council members to rally the proposal that was put together by the Executive Board and presented by our Chief Economist.』

『It takes a balanced approach. It delivers on the mandate that we have, which as you know is price stability in the face of what we are seeing.』

最初の質問ってあったっけ(2番目の質問への回答として「正常化加速の有無」を答えている)って感じですが、これは正常化加速の決定をどの程度しましたか?という質問の間接的な、というか本質的な意味での回答になっていて、「要はバランスアプローチですがな」という回答をしています。これどういう意味で言ってるのかと考えるに、まあ先行き分からんから状況見てリアクティブに反応していくしかないっしょサーセン、というのを綺麗な言葉にしているだけだと思うの。つまりこの次に、

『Your second question related to accelerating normalisation. That was not the decision that was made today. The decision that was made was to progress step by step, to acknowledge the added uncertainty that we are facing and to therefore have added optionalities so that we can in all circumstances respond in an agile way.』

正常化の加速は決定していない、という説明になっていまして、何でやテーパリング前倒ししとるやん!と言いたくなるのですが、そこはこのあと説明があるんですけど、「政策のフリーハンドを確保する」ということです。その代わりに従来は「利上げ直前まではAPP拡大を続ける」としていたのを削除した訳ですな。

しかしまあこの「The decision that was made was to progress step by step, to acknowledge the added uncertainty that we are facing and to therefore have added optionalities so that we can in all circumstances respond in an agile way.」って何か格好いい表現ですけど、結局のところ言ってることは「状況に応じて出たとこ勝負!」と言ってるのと同じですわな、まあ仕方ないんでしょうけどwwwwwww

『You will have noted that our decision in relation to asset purchases under the APP is conditional and clearly states that we have a declining pace of purchase for Q2 and that for Q3, if the outlook for medium-term inflation is confirmed by the data, we will indeed end asset purchases. But if on the other hand the data - which are critically important because we are data dependent in our decisions - do not support this medium-term outlook as we see it now, then we indicate very clearly in the monetary policy statement that I have just read that the Governing Council stands ready to revise, both in terms of timeline and in terms of volume, its purchases.』

そもそもテーパリングに関しても今回完了時期前倒しにしますが、その途中であっという間にアイヤーということになった場合にはテーパリング完了どころかAPP再拡大だってしますがな、というこの出たとこ勝負感満載の説明だが、まあ要するにそういう事なんで、こういう時って中銀が何考えているかって考えるのが割と徒労でして、それよりも物価動向真面目に見た方が良いと思う。これ完全なるリアクティブ宣言のようなもん(と正面切って問い詰めると「金融政策はフォワードルッキングに行う(キリッ)」と反論してくるんですけどね)ですわな。

『So it is a conditional provision that you see in our decision and we are not in any way accelerating.』

it is a conditional provisionと来ました。まあ結果的に加速するかもしれないししないかもしれない、それは今後の状況次第だからシランガナ、とのお告げですな。

『This was in line with our December meeting, with our February meeting and press conference, and what we are doing is confirming our step-by-step approach, our maximum optionalities in the face of maximum uncertainty, but also delivering on our mandate which is price stability.』

さすがにこの「This was in line with our December meeting, with our February meeting and press conference」はコーヒー吹いたわ。まあこういっておかないと格好つかないからだと思うのだがあまりにも無理のある体面取り繕い。

『The medium-term inflation outlook both in the baseline delivered by staff and in the scenarios that you will see tomorrow in detail, which are all of course a worsening of the situation, there is not a positive and a negative. They are both more negative. But in all those baseline and two scenarios the medium-term inflation outlook arrives roughly at target.』

これはスタッフ見通しの話12月対比で経済下の物価上、ただしベースラインシナリオには大きな変化なし、とのこと。

『I think in terms of optionalities, I'll be happy to expand a little bit because this is clearly what has guided us, added uncertainty, added optionalities. So what are we doing? We are clearly identifying the pace, we are procuring a situation where we can decide some time after net asset purchases what decision we should make in relation to rates. In terms of timeline, we're also saying that we will end net asset purchases under those data that I have just described in the course of Q3.』

『Q3 is three months, so we tried to have as much optionality in order to deal with the situation. I have underlined in my response to you “some time after”, which is a substitute to “shortly before”. Obviously “some time after” is an open time horizon which will be data dependent; the occurrence of which will be data dependent. I think that was your third question; “some time”. I think I have explained it with this response. I hope so.』

最後の所でin terms of optionalitiesということで、おぷしょなりティーが今回の結果によって広がったという話をしております。要はAPPのテーパリング終了した後でしたらさっくりと利上げも可能だし、まあその時の状況がイマイチならば利上げは先送りするし、さらにアイヤーだったらAPP再開するし、という選択が可能ですが、APPが終わるまでは利上げが出来ないので手段が1個無いという事になります。でもってQ3(APPのテーパリング完了しようとしているのがQ3の間に、って感じ)には政策の選択肢が拡大する、拡大するからやるという訳ではないのでその点は悪しからず。という話ですがな、と思いました。

最後に表現変更の話がありましたが、この部分の説明はさっき勝手連代打によってアタクシが説明した感じでして、APPのテーパー前倒しは利上げ時期の判断とは別になりました(従来は利上げ直前までAPPの拡大が続くというしきりだった)という説明になっておりますな、うんうん。


・・・・・・いかん、いつもの事だが冒頭質疑を細々とやってたら時間が。明日の夜にはFOMCなんだから明日は頑張る(やるとは言っていない)。






2022/03/14

お題「債券先物のヒマネタ/ECBレビューで引き続き会見のオープニングステートメントから」

最初マクラにするつもりが書きながらちゃちゃっと調べたら長くなったので最初は全然どうでもよいヒマネタである。

〇昨日の中心限月の終値と先物清算価格が違うのですな(って自分用メモです)

まあどうでもよいちゃあどうでもよいのですが。
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_daytime
先物価格情報(寄り前15分くらいになると確か14日のになってしまうはず)

22年3月限 03/11 150.55(15:02) 150.55(03/11)
22年6月限 03/11 150.41(15:02) 150.39(03/11)

左が最終取引価格(1502なのでザラ場引けではない)右が清算価格なんですが、この日カレンダーの最終価格(カレンダーは大引け板寄せ無し)が16銭だったので清算価格のスプレッドが16銭なのは良いんですが、11日の夜間取引から限月交代したんだから6月限+16銭で3月限の清算価格決めるもんだと思ってたのだが元々勘違いしてたのかしらアタクシ。それとも制度変わった??

http://jpx-gr.info/rule/dsho_dreg_201412010004001.html
清算・決済規程(大阪取引所)
(国債証券先物取引の清算値段)

第4条の3
国債証券先物取引の清算値段(Mini取引にあっては、清算数値。以下この節において同じ。)は、クリアリング機構が、国債証券先物取引の清算値段として定める値段(Mini取引にあっては、数値)とする。

・・・・・うーんこの。

https://www.jpx.co.jp/jscc/seisan/sakimono/acceptance_debt/cimhll0000000g4r-att/cimhll00000017g7.pdf
先物・オプション取引に係る清算値段等の決定方法等

を呼んだが、何日制定という文字が無いのと、もしかして変わっているにしても前回のドキュメントが無いのでよくわからんですな。

何か見た感じ「最終日以外は第1限月を基準にして出す」っていうことなのかしらん(@とA)とは思いましたし、まあアタクシが何か思い違いしていただけならゴメンやでという話ですけど、これ終値と清算値段違うから現物債の値付け師(カレンダースプレッド見りゃ清算値段分かるにしても)面倒ですなあしかも今回2銭という中途半端なズレなのがまためんどい。

#まあどうでもよいと言えばどうでも良いのですがアタクシが知らないだけ説がありますのでご存知の方教えてジェネラル!!


〇淡々とラガルドさんの会見を見物する企画である

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2022/html/ecb.is220310~1bc8c1b1ca.en.html
MONETARY POLICY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 10 March 2022

金曜日は項目ごとの話の手前までで終わってしまうまでしたが、項目ごとの話、といっても特にここでは新しい要素は無くて最初にラガルドさんが説明した話をもう少し詳しくは話しているけど新しい話は無いです(ので省略しようかと思ったがあとで自分で見る用に貼っておく)。

・成長見通し:はいはいウクライナウクライナなのですがウクライナ無かりせば結構強く見てたのね

『Economic activity』

『The economy grew by 5.3 per cent in 2021, with GDP returning to its pre-pandemic level at the end of the year. However, growth slowed to 0.3 per cent in the final quarter of 2021 and is expected to remain weak during the first quarter of 2022.』

昨年はホイホイ成長してコロナ前の水準を回復したものの21年4Qから滑ってしまってアイヤー。

『The prospects for the economy will depend on the course of the Russia-Ukraine war and on the impact of economic and financial sanctions and other measures. At the same time, other headwinds to growth are now waning. In the baseline of the staff projections, the euro area economy should still grow robustly in 2022 but the pace will be slower than was expected before the outbreak of the war. Measures to contain the spread of the Omicron coronavirus variant have had a milder impact than during previous waves and are now being lifted. The supply disruptions caused by the pandemic also show some signs of easing. The impact of the massive energy price shock on people and businesses may be partly cushioned by drawing on savings accumulated during the pandemic and by compensatory fiscal measures.』

思わず1パラまとめて引用しちゃいましたが、要は「ウクライナ戦争無かりせば本来はオミクロンのインパクト軽減とサプライチェーンの回復でロバストな経済活動が予想されていたもののアイヤー」という話で、戦争の影響は経済制裁だけではなくて、エネルギー価格のショックによる投入コストの悪化、消費者の購買力の低下なども含めて様々な影響があるでしょう、だそうな。

『Over the medium term, according to the baseline of the staff projections, growth will be driven by robust domestic demand, supported by a stronger labour market. With more people in jobs, households should earn higher incomes and spend more. The global recovery and the ongoing fiscal and monetary policy support are also contributing to this growth outlook. Fiscal and monetary support remains critical, especially in this difficult geopolitical situation.』

とは言え中期的なベースラインシナリオでは域内について労働市場が強くなって内需が強いでしょう、という見通しの下、何か威勢の良い話をしています(出ている数字自体はそんなに威勢が良いとも思えんが)。


・インフレーション:何といっても今回のポイントは「2023年の見通しがクソ低いままで大丈夫か」である(個人の感想です)

『Inflation』である。

『Inflation increased to 5.8 per cent in February, from 5.1 per cent in January. We expect it to rise further in the near term. Energy prices, which surged by 31.7 per cent in February, continue to be the main reason for this high rate of inflation and are also pushing up prices across many other sectors. Food prices have also increased, owing to seasonal factors, elevated transportation costs and the higher price of fertilisers. Energy costs have risen further in recent weeks and there will be further pressure on some food and commodity prices owing to the war in Ukraine.』

物価タカイタカイネーなのですが、エネルギーは言うまでもなく食品価格は上がるわだし、この先輸送費用や肥料価格が上がって更に食品価格が上がりそうだし、エネルギー価格は戦争の影響で更に上がるし、戦争の影響で幾つかの食糧(小麦とか大麦とか)価格やコモディティ価格も上がるわな、と上がる話ばっかりなのですが、

『Price rises have become more widespread. Most measures of underlying inflation have risen over recent months to levels above two per cent. However, it is uncertain how persistent the rise in these indicators will be, given the role of temporary pandemic-related factors and the indirect effects of higher energy prices. Market-based indicators suggest that energy prices will stay high for longer than previously expected but will moderate over the course of the projection horizon. Price pressures stemming from global supply bottlenecks should also subside.』

先行きの見通しに関しては色々な上昇要因は持続性があるものではないし、パンデミック関連で発生したコスト上昇圧力に関しては緩和の動きが続いておるし、マーケットベースのインフレ期待もエネルギー価格の影響がやや続くものの、先の方に行けばその影響も緩和されるという数値になっている。と来まして、

『Labour market conditions have continued to improve, with unemployment falling to 6.8 per cent in January. Even though labour shortages are affecting more and more sectors, wage growth remains muted overall. Over time, the return of the economy to full capacity should support somewhat faster growth in wages. 』

労働市場に関しては改善するし、参加率の回復も賃金上昇が速い事によって早まるでしょう。

『Various measures of longer-term inflation expectations derived from financial markets and from surveys stand at around two per cent. These factors will also contribute further to underlying inflation and will help headline inflation to settle durably at our two per cent target.』

さまざまな指標によりますとインフレ期待は2%にアンカーされている(キリッ)だそうです。

・・・・・ただですね、金曜も申し上げたと思うのですが、例の「5分で読める今回の金融政策決定」
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2022/html/mopo_statement_explained_march.en.html

がビジュアル的に分かりやすいんですけれども、物価見通しって2023年が2.1%になっていまして、それって年内ずーっと高いまま推移して言った場合に申し開きが付きにくくなる水準で、金融政策運営の変更(よりタカ派)に追い込まれてしまう事になり得るので、FEDみたいに「いやー間違えたわサーセン2023年も物価高いっす」と言ってしまった方が、足元物価が高いままでも「まあこんなもんですサーセン」で済ませられる(政治的に済ませられるかは別だがとりあえず先に高い話はしているので申し開きはしやすい)んですが、まあそういう意味では夏から秋に掛けて物価がサガランチ会長のまま推移した場合のECBの申し開きがどうなるかが楽しみですね。


・リスク認識:全部ウクライナ戦争ですがそりゃそうですわな

『Risk assessment』である。

『The risks to the economic outlook have increased substantially with the Russian invasion of Ukraine and are tilted to the downside. While risks relating to the pandemic have declined, the war in Ukraine may have a stronger effect on economic sentiment and could worsen supply-side constraints again. Persistently high energy costs, together with a loss of confidence, could drag down demand more than expected and constrain consumption and investment.』

ウクライナ戦争のせいで経済へのリスクはダウンサイド。理由が並べてあるが言うまでもないご案内の通りの話ですな。

『The same factors are risks to the outlook for inflation, which are on the upside in the near term. The war in Ukraine is a substantial upside risk, especially to energy prices. If price pressures feed through into higher than anticipated wage rises or if there are adverse persistent supply-side implications, inflation could also turn out to be higher over the medium term. However, if demand were to weaken over the medium term, this could also lower pressures on prices.』

物価に対するリスクは「ニアータームではアップサイド」としてしかも「a substantial upside risk」とぶっこんだ挙句、まあそうくるでしょと思いますが、エネルギー価格がぶちあがった状態が続けば、そらーあーた欧州のユニオン様が手ぶらで帰って来る訳にはいかず(どこぞの国のナショナルセンターは生活給要求の話も出来ない無能オブ無能な上にトップはアホウと来ているのでインフレ圧力が起きなくて良かったですね(白目)!!!!)、生活給要求をドカンとぶっこんできますからそら賃金上がるわという話で、生活給要求の結果としてのお賃金上昇からのサプライサイドのコスト高からの物価高からの生活給要求からのお賃金上昇、というのはそらもう1970年台タイプのアレですがなというお話。

というのを書いた後に最後にハウエバーと来て需要が落ちてくれば物価低下圧力になる、という話が一応あります。


・金融環境:現状で厳しい話はあんまり無かったりするししれっと個人の住宅購入が強い話をしておられる

『Financial and monetary conditions』である。

『The Russian invasion of Ukraine has caused substantial volatility in financial markets. Following the outbreak of the war, risk-free market interest rates have partially reversed the increase observed since our February meeting and equity prices have fallen.』

まずは市場のボラが盛大に上がったという話ですね。

『The financial sanctions against Russia, including the exclusion of some Russian banks from SWIFT, have so far not caused severe strains in money markets or liquidity shortages in the euro area banking system. Bank balance sheets remain healthy overall, owing to robust capital positions and fewer non-performing loans. Banks are now as profitable as they were before the pandemic.』

ロシアへの金融制裁、スイフト除外を含め、この動きはユーロ圏の銀行システムに対してシビアーな短期市場や流動性の問題をおこしている訳ではない。金融機関のバランスシートは全般的にはロバストであり、金融機関の収益性も維持されているので現状大きな問題ではない、と来ました。

『Bank lending rates for firms have increased somewhat, while lending rates for household mortgages remain steady at historically low levels. Lending flows to firms have declined after increasing strongly in the last quarter of 2021. Lending to households is holding up, especially for house purchases.』

銀行貸出金利は若干上昇したがヒストリカルには依然として低水準。企業向け貸出は昨年4Qに大きく伸びた反動で足もと減少したが、家計向けの貸出は住宅購入向けを中心に強い。


・でもってまとめ:APP前倒しは物価上振れと先行き見通しの不透明化によるもの

『Conclusion』である。

『Summing up, the Russian invasion of Ukraine will negatively affect the euro area economy and has significantly increased uncertainty. If the baseline of the staff projections materialises, the economy should continue to rebound thanks to the declining impact of the pandemic and the prospect of solid domestic demand and strong labour markets. Fiscal measures, including at the European Union level, would also help to shield the economy.』

良く分からんくなったけどベースラインシナリオでは云々という話。

『Based on our updated assessment of the inflation outlook and taking into account the uncertain environment, we revised our schedule for net asset purchases over the coming months and confirmed all our other policy measures.』

APPのテーパリング前倒しをしたのはあくまでもインフレーションのせいだそうです。まあその後の要人発言を見れば分かりますように、今回は「物価見通し的に目先マズーなのでAPPテーパリングの前倒しは行う」のだが、「そうは言っても先の事がさっぱり分からん」ということでありまして、つまりは物価がマズーなシナリオがガチになった場合の為にはAPPの(ランオフは兎も角としても)テーパー完了をしておかないと、APP拡大しながら利上げというような何をやってるのかわからんことはしたくない、という事ですし、まあそもそも利上げしないでランオフを先にするという手も出来る、というような事ですな。

つまりですね、まあこれ米国もそうなんですが、「出たとこ勝負」をするためにはフリーハンドを得ておかないといけない訳でして、それを考えると従前の予定のように10月以降も20ビリオンのAPP拡大を続けます、などというようなのんびりした話をしてられない(そもそもさっき申し上げたように2023年の物価見通しを勘案すると今年の10月とかうっかりしたら重大判断しないと行けないのにその時期にのうのうとAPP拡大してる場合ではない)のであって、まあそんなこんなを考えて前倒しという話。

ということで、利上げが早まったか早まらなかったかと言えば、原則論としてはこれ単体では早まっていない(利上げとは別物の話だから)のですが、そうは言ったって物価の足元の見通しが上がっており、しかも今回って2023年の物価見通しがほぼ同じ(1.9→2.1)な訳でして、この見通しを更に上にすることになった場合、政策対応をどうする、という話になるのですから、やっぱり可能性としては前倒しになっているんでしょう。

ただし、これ何とかストとかはそういう言い方をしないと商売にならないから言うのですので、その立場は分かるのですが、「ECBが利上げ時期をどう示したか」というような言い方ってのは今回の局面ではあんまり適切じゃなくて、米国もそうなんですが、フォワードルッキングに政策してるんじゃなくて、ゆうてみれば物価に対してリアクティブに動いているような運営をしており、リアクティブに動くからこそできるだけ先行きは決め打ちしないし、ついこの前のFEDや今回のECBのように、政策オプションの幅を狭めてしまうAPP拡大はとっとと止める、ということになるんだと思いますが、まあ「今の欧米中央銀行は物価に事実上リアクティブに動いているので、そういう人たちの先行き予想とか知らんがな」などと書いてしまったら商売にならないですから何のかんのとこねくり回して書いておられてご苦労なこったと思うのですが(個人の偏見です)、誰かシランガナ仲間が増えないかなーと日々楽しみにしておるのでありました。

すいません雑談が長くなりました。

『We are very attentive to the prevailing uncertainties. The calibration of our policies will remain data-dependent and reflect our evolving assessment of the outlook. We stand ready to adjust all of our instruments to ensure that inflation stabilises at our two per cent target over the medium term.』

これね、「data-dependent」というと格好がええのですが、要するに出たとこ勝負というのを美しい言葉で言ってるに過ぎないですよね、と思うのですがどうでしょうかね。

『We are now ready to take your questions.』

よーしQ&Aが始まるぞ〜、と思ったらここで時間切れであることに気が付きました、飛ばそうとか言ってたのに結局こっちだけになってしまいましたなサーセン。

#FOMCまでに会見の方はパパっと終わらせる所存






2022/03/11

お題「ECBインフレがサガランチ会長を受けてテーパリング前倒しと来ましたかそうですか」

おじいちゃんやっぱり日本時間の22時半とかオフトォンの中で盛大に落ちておりましたわよガッハッハ(ぐうたら)。朝からラガルドはんの会見をBGMにしながら書くの巻(おもわず最初の10分位正座で聞いてましたが)。

ああそれから5分で読める(わかるとは言ってない)決定内容
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2022/html/mopo_statement_explained_march.en.html
Our monetary policy statement at a glance - March 2022

というのがあるのですが、これ見る前にテキストも見ないでラガルドはんの演説を聞いてしまったのでこれは飛ばすけど後の事を考えて貼るだけ貼る。

#会見をダラダラと流して(さすがに最初の演説のあとは段々聞くのは段々お留守にw)いるのですが、何か質問者の質問がツナガランチ会長になる事案がポコポコと出て来やがりますな。日本(の都市部だけなのかもしれないけど)の接続環境の優秀さはありがたいです


〇決定内容:APPテーパリングのケツを事実上1四半期(以上?)前倒しに

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2022/html/ecb.mp220310~2d19f8ba60.en.html
10 March 2022

なお、決定内容自体は別に22時半まで起きなくても見れますw

『The Russian invasion of Ukraine is a watershed for Europe. The Governing Council expresses its full support to the people of Ukraine. It will ensure smooth liquidity conditions and implement the sanctions decided by the European Union and European governments. The Governing Council will take whatever action is needed to fulfil the ECB’s mandate to pursue price stability and to safeguard financial stability.』

と、最初にご挨拶のような感じでウクライナ情勢に関しての話をして「to fulfil the ECB’s mandate to pursue price stability and to safeguard financial stability」と仰せですが・・・・・・


・資産買入について(最初の小見出しの通り)

『Asset purchase programme (APP)』

『Based on its updated assessment and taking into account the uncertain environment, the Governing Council today revised the purchase schedule for its APP for the coming months.』

APPのスケジュールを変更したのですが・・・・・・

『Monthly net purchases under the APP will amount to ユーロ40 billion in April, ユーロ30 billion in May and ユーロ20 billion in June.』

ちょwwwwwwwwwwww

2月決定時点でのはこれでした
https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2022/html/ecb.mp220203~90fbe94662.en.html
『monthly net purchases under the APP will amount to ユーロ40 billion in the second quarter of 2022 and ユーロ30 billion in the third quarter. From October onwards, the Governing Council will maintain net asset purchases under the APP at a monthly pace of ユーロ20 billion for as long as necessary to reinforce the accommodative impact of its policy rates.』(ここだけ直上URL先の2月3日決定公表文書より引用)

2月の時点では少なくとも9月まではちんたらとAPPのペースを落とし、10月からは20ビリオンに下げて、政策金利変更への環境が整うところまでそれで引っ張るわ、という説明でしたが、今回はいきなりそのケツが6月末にぶっこまれまして、3か月以上APPのケツを手前に盛って来ました。

背景は(さっきからラガルドはんの会見をBGMにしながら書いているので、これ後で引用する話からのネタになってしまいますが、汗)インフレーションが思ったよりサガランチ会長なので、APPのケツを早めましたということで、APPのケツが早まるというのは「利上げのタイミングが早まるかもしれないよー」という奴ですけど、この先にひたすらコンディショナルって話をしているのでありまして、まあこれは「利上げをするかもしれません(利上げをするとは言っていない)」というのをカマすことによって、市場ちゃんがまた流動性相場ヒャッハーと言い出すのはアカン、という話。

じゃあ最初の所で言ってる「It will ensure smooth liquidity conditions」「to safeguard financial stability.」と話が違くね?というツッコミをしたくなるかも知れませんが、ウクライナでどうのこうのに関して、経済への影響云々はコンディショナルに政策を決めますよの話だし、リクイディティというのは短期金融市場の資金繰りがサウンドな金融機関でも回るように注意するよ、という短期金融市場のお話であって、より長期の資産の買入であるAPPの話しはこれまた別問題、という整理になるんですよね。どうも「流動性供給」と聞くと何故か長期資産の買入の方に連想が行ってしまうのはバーナンキのQE以来の市場ちゃんの悪い癖。

『The calibration of net purchases for the third quarter will be data-dependent and reflect its evolving assessment of the outlook.』

10月以降に関しては別に9月の20ビリオンで打ち止めではなくて今後の状況を見て考えます、と言っているので、結局後になってみたらやっぱり10月以降も毎月20ビリオンで推移してました、という可能性はあるのですが、

『If the incoming data support the expectation that the medium-term inflation outlook will not weaken even after the end of its net asset purchases, the Governing Council will conclude net purchases under the APP in the third quarter. If the medium-term inflation outlook changes and if financing conditions become inconsistent with further progress towards the 2% target, the Governing Council stands ready to revise its schedule for net asset purchases in terms of size and/or duration.』

ということで、今後のデータと連発していますが、基本的なトリガーは「インフレーションアウトルックが」でありまして、とにかく物価が高いんだから、物価サガランチ会長だったら6月末で打ち止めじゃあ、という事だそうです。

『The Governing Council also intends to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the APP for an extended period of time past the date when it starts raising the key ECB interest rates and, in any case, for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』

ここは従来通りですけど、ECBの場合はテーパリング完了→利上げで、利上げする中でも当面は償還分の再投資を行うということなので、バランスシートのランオフにはまだ入らないということのようですな。


さて、ここで話を戻してさっきの「5分で読める今回の政策決定」に参ります(URL再掲)

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2022/html/mopo_statement_explained_march.en.html
Our monetary policy statement at a glance - March 2022

真ん中あたりの「What did we decide?」ってところから下を見るあるよろしアル。

(以下暫くは直上URLの「5分で読める今回の政策決定」から引用します)

『We are gradually reducing our net asset purchases』

横のイラストが謎の味を出していますが。

『We may conclude them in the third quarter if the data show that the outlook for inflation will not weaken. Any change to our interest rates will only come some time after the end of our net asset purchases and be gradual.』

とありますが、じゃあこの人たちの物価の見通しなんですけど、その下にありますように

『Inflation will remain high for longer than expected but eventually come down to our 2% target.』と仰せになっておりまして、その『Euro area inflation in 2021 and projections for 2022 and the coming years(projections from March 2022)』が

2021年:2.6%
2022年:5.1%
2023年:2.1%
2024年:1.9%

となっている訳でして、来年には落ち着いているという中々素敵な見通しを維持している(そりゃまあ維持しておかないと利上げ時期との整合性がつきにくくなるからシャーナイのだが)のであって、FEDみたいに2023年の見通しでだいぶ降参気味になっている(まだ降参見通しではない)のと違って、来年には落ち着くという物件なのには注意が必要ですね。


では元に戻ります(以下の引用は最初の「政策決定ステートメント」からに戻ります)。


・政策金利に関する言及は前回と同様(まあ当たり前だ)

『Key ECB interest rates』ですが、

『The interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.00%, 0.25% and -0.50% respectively.』

政策金利は据え置き(テーパリング終わらないと動かないと明言しているから当たり前)。

『Any adjustments to the key ECB interest rates will take place some time after the end of the Governing Council’s net purchases under the APP and will be gradual.』

利上げをおっぱじめたとしてもその先のパスはグラデュアル、というのは引き続き同じことゆうとるんだが、まあこの辺に関しては「ああはいはいグラデュアルグラデュアル」て感じで聞いておきべき物件である、ということは、既にFEDが次々と前惜しで泡を吹きながら利上げパスを前倒しして、今回のECBも結局は供給制約だろうと何だろうと、アバッブターゲットでしかもそれがマテリアリーにアップワードになっているアクチュアルのインフレーションを前にしてしまえば、これがサガランチ会長になるとインフレーションエクスペクテーションの錨が外れてインフレ期待というお船が走錨をはじめ、最悪転覆トリオになってしまう、ということな訳ですからして、正直この「グラデュアル」をナイーブに信じない方が良いと思う、というのは曲がりなりにも中央銀行見物という珍芸の芸歴20年だか何だか自分でも忘れましたが芸歴による霊感ですのでまあ話半分に聞いて下さい(なんのこっちゃ)。

『The path for the key ECB interest rates will continue to be determined by the Governing Council’s forward guidance and by its strategic commitment to stabilise inflation at 2% over the medium term.』

総合判断という逃げの言葉を使わないで「中期的に2%で物価上昇率を安定させるというストラテジックコミットメントに基づいて決定しますよ」というのは、FEDと違ってシングルマンデートだからというのはあるけど、総合的判断のような逃げ口上使わないだけに、物価がサガランチ会長になった場合にはやっぱり何らかの形で締めていくしかありませんわなあ、という事にもつながると思います。

『Accordingly, the Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present levels until it sees inflation reaching 2% well ahead of the end of its projection horizon and durably for the rest of the projection horizon, and it judges that realised progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at 2% over the medium term.』

最後にいつものフォワードガイダンスだが、まあこのガイダンス出た時から(一々しつこいアタクシ)このガイダンスは見通しベースのものばかりをトリガーにしているから鉛筆舐め舐め可能と申し上げていましたが、何せ足元の物価がアイヤーアイヤーな訳ですから、更にその辺はウクライナ問題で欧州景気に打撃があるのが見えている中でも物価が下がらんどころかむしろ上昇加速しちゃう中だと、色々と言い訳大変だなと思います。


・PEPPについても変更なし

『Pandemic emergency purchase programme (PEPP)』です。

『In the first quarter of 2022, the Governing Council is conducting net asset purchases under the PEPP at a lower pace than in the previous quarter. It will discontinue net asset purchases under the PEPP at the end of March 2022.』

3月末でPEPPプログラムに伴う買入拡大は終了。

『The Governing Council intends to reinvest the principal payments from maturing securities purchased under the PEPP until at least the end of 2024. In any case, the future roll-off of the PEPP portfolio will be managed to avoid interference with the appropriate monetary policy stance.』

ただし少なくとも2024年末まではPEPPで購入した分の買入残高は維持するし、その後のロールオフにおいても金融政策運営の邪魔にならないように(金利が無駄に跳ねないように)します、というのも同じ。

『The pandemic has shown that, under stressed conditions, flexibility in the design and conduct of asset purchases has helped to counter the impaired transmission of monetary policy and made the Governing Council’s efforts to achieve its goal more effective. Within the Governing Council’s mandate, under stressed conditions, flexibility will remain an element of monetary policy whenever threats to monetary policy transmission jeopardise the attainment of price stability. In particular, in the event of renewed market fragmentation related to the pandemic, PEPP reinvestments can be adjusted flexibly across time, asset classes and jurisdictions at any time. This could include purchasing bonds issued by the Hellenic Republic over and above rollovers of redemptions in order to avoid an interruption of purchases in that jurisdiction, which could impair the transmission of monetary policy to the Greek economy while it is still recovering from the fallout from the pandemic. Net purchases under the PEPP could also be resumed, if necessary, to counter negative shocks related to the pandemic.』

ここの能書きも前回通りです、ギリシャ国債に対する扱いについても前回ああだこうだ書いてるのと同じ(と手抜き)。


・LTROなど&ユーロ通貨以外の中銀とのスワップライン

『Refinancing operations』である。

『The Governing Council will continue to monitor bank funding conditions and ensure that the maturing of operations under the third series of targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III) does not hamper the smooth transmission of its monetary policy. The Governing Council will also regularly assess how targeted lending operations are contributing to its monetary policy stance. As announced, it expects the special conditions applicable under TLTRO III to end in June this year. 』

『The Governing Council will also assess the appropriate calibration of its two-tier system for reserve remuneration so that the negative interest rate policy does not limit banks’ intermediation capacity in an environment of ample excess liquidity.』

ここも従来通りです。最後に今回は『Liquidity lines with non-euro area central banks』というコーナーができていまして、

『In view of the highly uncertain environment caused by the Russian invasion of Ukraine and the risk of regional spillovers that could adversely affect euro area financial markets, the Governing Council decided to extend the Eurosystem repo facility for central banks (EUREP) until 15 January 2023. EUREP will therefore continue to complement the regular euro liquidity-providing arrangements for non-euro area central banks. Together, these form a comprehensive set of backstop facilities to address possible euro liquidity needs in the event of market dysfunctions outside the euro area that could adversely affect the smooth transmission of the ECB’s monetary policy. Requests from non-euro area central banks for individual euro liquidity lines will be assessed by the Governing Council on a case-by-case basis.』

最初の1文を読めばお分かりのように、ウクライナ戦争によるユーロ通貨の市場での目詰まりが発生した場合に備えて、ユーロシステム内における非ユーロ通貨国の中銀との間のスワップラインを今年いっぱい延長しておりますよ(来年の1月15日まで延長)ということのようです。

あとはご挨拶みたいなもん。

『The Governing Council stands ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation stabilises at its 2% target over the medium term.

The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 14:30 CET today.』



〇ラガルドはんの会見ですがこの時間に既にQAの文字起こしまで出来ているとな

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2022/html/ecb.is220310~1bc8c1b1ca.en.html
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 10 March 2022

ということで会見ですが、ECBは公式のユーチューブチャンネルがあるのでそっちで聞きながら読むととりあえず1時間で読み切る事が可能です(理解できるとは言っていない)。

時間の関係上会見の頭の演説の各要因の話の前の所で終わると思うのでQA含めて続きは週明けで勘弁なのですがまあ何とかその前までは行きたい。

『Good afternoon, the Vice-President and I welcome you to our press conference.

The Russian invasion of Ukraine is a watershed for Europe. The Governing Council expresses its full support to the people of Ukraine. We will ensure smooth liquidity conditions and implement the sanctions decided by the European Union and European governments. We will take whatever action is needed to fulfil the ECB’s mandate to pursue price stability and to safeguard financial stability.』

これはさっきの政策決定事項公表文書の最初のパラグラフと同じ。


・ウクライナ戦争の影響はメインシナリオの場合は足元のインパクトで終わる(ただしシナリオはたくさんあるようだ)

『The Russia-Ukraine war will have a material impact on economic activity and inflation through higher energy and commodity prices, the disruption of international commerce and weaker confidence. The extent of these effects will depend on how the conflict evolves, on the impact of current sanctions and on possible further measures. In recognition of the highly uncertain environment, the Governing Council considered a range of scenarios in today’s meeting.』

当たり前ですが影響についてはまだまだ良く分からんし、影響するところはエネルギーや商品価格、世界的な商業への悪影響やコンフィデンスの悪化などで、これらは今後の推移次第でハイリーアンサータンである。ということですが、経済活動とインフレーションに顕著なインパクト、ということで経済コケても物価がグイグイ上昇という悲しい事もアリエールなのですが、今回は「a range of scenarios in today’s meeting」という話をしていまして、どこかのボンクラ中央銀行のように「スタグフレーションが起こるとは考えていない(キリッ)」とか言いきっちゃうような目標全然達成しないくせに態度だけは偉そうなボンクラ集団とは大違いですね!!!!!!!!!!!!!!

『The impact of the Russia-Ukraine war has to be assessed in the context of solid underlying conditions for the euro area economy, helped by ample policy support.』

実はアタクシ今回会見の音源流しながら各種の紙を読みだして、紙読む前にここに来た時に、「helped by ample policy support」が耳に入り、おやこれは緩和的な金融政策を縮小することなく続けるって話かと思えばさにあらずだったのはご案内の通りでして、この話でもその直後に、

『The recovery of the economy is boosted by the fading impact of the Omicron coronavirus variant. Supply bottlenecks have been showing some signs of easing and the labour market has been improving further.』

あら明るい話、と思ったら(この辺は読んだ時じゃなくて聞いた時の感想になっている気がするがキニシナイ)。

『In the baseline of the new staff projections, which incorporate a first assessment of the implications of the war, GDP growth has been revised downwards for the near term, owing to the war in Ukraine. The projections foresee the economy growing at 3.7 per cent in 2022, 2.8 per cent in 2023 and 1.6 per cent in 2024.』

12月のスタッフ見通しと比較しますと、2022年が4.2→3.7、23年が2.9→2.8、24年が1.6→1.6となっていて、これは要するに「ウクライナ戦争で足元の経済にはネガティブインパクトがあるが、中期的見通しはほぼ変わらんよ」という話ですね。

『Inflation has continued to surprise on the upside because of unexpectedly high energy costs.』

物価はまたもサプライズが続く、とサプライズ来たからスタンス変えたもんねーの2月と同じことを言って(まあ実際もそうだからしゃーないけど)おりまして、まあAPPのテーパー完了前倒しについてはこれが原因です、ってことでしょうな。

『Price rises have also become more broadly based.』

さらに物価上昇がbecome more broadly basedって言ってるんだからインフレがアチャーという認識はさらに強まっている、というメッセージキタコレです。

『The baseline for inflation in the new staff projections has been revised upwards significantly, with annual inflation at 5.1 per cent in 2022, 2.1 per cent in 2023 and 1.9 per cent in 2024. 』

景気の方では前回比較の言語による説明が無かったのにこっちはアップウォーズシグニフィカントリー来まして、2022年が3.2→5.1、23年が1.8→2.1、24年が1.8→1.9と上昇。ちなみに12月のスタッフ見通しの時にも「significantly higher than in the previous projections」って言ってるんですけどねwww

『Inflation excluding food and energy is projected to average 2.6 per cent in 2022, 1.8 per cent in 2023 and 1.9 per cent in 2024, also higher than in the December projections.』

コア指数も2022年が1.9→2.6、23年が1.7→1.8、24年が1.8→1.9と上昇してますが、まあヘッドライン同様足もとだけ盛大に上げているというべきか、先行きをあんまり上げずにクソ粘りしているというべきかwwwww

『Longer-term inflation expectations across a range of measures have re-anchored at our inflation target. The Governing Council sees it as increasingly likely that inflation will stabilise at its two per cent target over the medium term.』

インフレ期待は(一時期下がってたのから再度アンカーされて)2%にアンカーされています(キリッ)って所ですが、まあそこに関しては震え声って所ではありますな、ナムナム。


・メインシナリオ以外の話

『In alternative scenarios for the economic and financial impact of the war, which will be published together with the staff projections on our website, economic activity could be dampened significantly by a steeper rise in energy and commodity prices and a more severe drag on trade and sentiment.』

今まで正直言ってECBのスタッフプロジェクションの中とか細かく見てない(SEPだってそうですが)のですが、これらはちゃんと公表されているのですけど、今回は幾つかのシナリオライティングがあるんだったらちゃんと読んだ方が良いかもしれませんね。

『Inflation could be considerably higher in the near term. However, in all scenarios, inflation is still expected to decrease progressively and settle at levels around our two per cent inflation target in 2024.』

しかしまあ物価の見通し、悪い方のシナリオではさらに上がるという話をしながら、「in all scenarios, inflation is still expected to decrease progressively and settle at levels around our two per cent inflation target in 2024.」とまだ降参しないで粘っておりますので、逆に言うと降参モードになった場合は政策の方でもう一発対応加速しないと行けない、という理屈になるので要注意ですな、うんうん。


・政策決定の説明

『Based on our updated assessment and taking into account the uncertain environment, the Governing Council today revised the purchase schedule for its asset purchase programme (APP) for the coming months. Monthly net purchases under the APP will amount to ユーロ40 billion in April, ユーロ30 billion in May and ユーロ20 billion in June. The calibration of net purchases for the third quarter will be data-dependent and reflect our evolving assessment of the outlook. If the incoming data support the expectation that the medium-term inflation outlook will not weaken even after the end of our net asset purchases, the Governing Council will conclude net purchases under the APP in the third quarter. If the medium-term inflation outlook changes and if financing conditions become inconsistent with further progress towards our two per cent target, we stand ready to revise our schedule for net asset purchases in terms of size and/or duration.』

ということで政策決定の説明部分ですが、さっきのステートメントと同じ文章ですから貼り付けだけして飛ばします。

『Any adjustments to the key ECB interest rates will take place some time after the end of our net purchases under the APP and will be gradual. The path for the key ECB interest rates will continue to be determined by the Governing Council’s forward guidance and by its strategic commitment to stabilise inflation at two per cent over the medium term. Accordingly, the Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present levels until it sees inflation reaching two per cent well ahead of the end of its projection horizon and durably for the rest of the projection horizon, and it judges that realised progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at two per cent over the medium term.』

『We also confirmed our other policy measures, as detailed in the press release published at 13:45 today.』

『I will now outline in more detail how we see the economy and inflation developing, and will then explain our assessment of financial and monetary conditions.』

以下見通しとかの話がおっぱじまるのですが、ここで時間という事でご勘弁下せえ・・・・・・・すいませんすいません。








2022/03/10

お題「ECBプレビュー兼ねて昨日のレーン理事の講演の飛ばした部分を鑑賞/円安は常に善とか言ってる場合なのかしら雑感」

つい先日マイナスに突っ込み直したドイツ様10年だがナンジャコリャ
https://jp.reuters.com/markets/bonds/germany
ドイツ10年 利回り 
DE10YT=RR +0.215 +0.105

・・・・・ウクライナの方は毎日毎日何かもう不規則に飛び出してくるので起こったことを消化する前に次のが飛んでくるというわんこそばもビックリの状態になっていますからちょっとなんでしょうもうさっぱりついていけましぇんすいませんすいません無理無理無理。


〇やっぱり読んでおいた方が良いと思うので昨日のレーン理事の講演ぶっ飛ばした部分を鑑賞

まあ諸々に関しては今晩の会見でどういうスタンスで、どういう考え方で、というのが出て来るとは思うのですがその前に見ておいた方が良いので(直前ではありますが)。

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2022/html/ecb.sp220302~8031458eab.en.html
The monetary policy strategy of the ECB: the playbook for monetary policy decisions
Speech by Philip R. Lane, Member of the Executive Board of the ECB, at the Hertie School, Berlin
Berlin, 2 March 2022

最初のウクライナ云々の所はパスしまして

・今回のECB定例理事会で渾身の現状分析先行き見通しを出すぞと息巻いておられるようですが

『Today, I wish to frame the current monetary policy debate in the context of the monetary policy strategy of the ECB.[1] 』

というのは昨日引用した部分(最後のファイナンシャルスタビリティを飛ばしちゃったんですが)。

『I will not dwell on the latest conjunctural developments or speculate on the evolution of the medium-term outlook for the economy and inflation. Our monetary policy meeting next week will provide the best opportunity for a comprehensive assessment of economic and financial developments and the implications for near-term and medium-term inflation dynamics.』

今晩のECB会合は正座して待機した方が良さそうな気がしますがおじいちゃん早く寝てください状態のアタクシとしては寝起きで対処のような悪寒がしますが、まあレーンさんが物凄い勢いで3月定例理事会で我々のアセスメントや考え方をだしまっせ!という位ですから、政策変更云々に関わらず聞いておかねばならん会見になりそうですな。

『In this respect, the schedule for the March staff projections exercise has been revised in order to take into account the implications of the Russian invasion of Ukraine. The revised schedule also means that today’s Eurostat inflation release will be incorporated in the projections that will be considered at next week’s monetary policy meeting.』

ということで今回の定例理事会で出て来るスタッフ見通しはできるだけ最近の状況を盛り込んだ上に出て来るというお話もしていますので、なんかすごいやる気(政策のやる気ではないが)満々という感じですので更に期待してしまいますが、欧州中央時間午後2時半の時点で既にねむねむジジイと化している悪寒しかしないアタクシ。


・2014年以降のヘッドラインとコアインフレ

『Chart 1 provides some empirical context for the discussion by showing the evolution of headline and core inflation since 2014.』

こちらはHTMLページの埋め込み画像になっているので、磔刑にするスキルはワシには無いのだがリンクが貼れるけど直リンはしません(理由は特にないが何となく)。
https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2022/html/sp220302/ecb.sp220302.en_img0.png?528d4a209ac043854e176840f2b8d9b8

ヘッドラインの6%、コアの3%が完全に視野に入っていますな、ナムナム。

『It underlines that, until quite recently, the euro area has been confronted with a low-inflation problem, with inflation persistently well below two per cent. At the same time, Chart 1 also shows the sharp increase in inflation in recent months.』

ついこの前まで低インフレの環境でアイヤーだった、とか最初に入れている時点で大体お察しという感じがしますが、

『The flash inflation estimate for February that was published today stands at 5.8 per cent. The upward pressure on overall inflation from the extraordinary 31.7 per cent rate of energy inflation is operating through both direct and indirect channels, since the increases in the sectoral inflation rates for food, goods and services in part reflect the impact of higher energy prices for production costs in all sectors of the economy.』

『In recent weeks, I have emphasised that much of the sharp increase in the last six months can be attributed to the large-scale shock to energy prices and pandemic-related factors (including supply bottlenecks).[2] In any event, it is essential for a central bank to ensure that its monetary policy stance fully takes into account the implications of the shift in the inflation environment.』

とまあ物価上昇の多くの部分がエネルギー価格とサプライボトルネック、という話をしていますが、ゆうてここのケツの締めは「it is essential for a central bank to ensure that its monetary policy stance fully takes into account the implications of the shift in the inflation environment.」なので、元に戻るかどうかという件についてはさすがに「元に戻るからヘーキヘーキ」とは言ってられないというのも伝わります。

もちろん今回のスタッフ見通し改定でこの辺りの認識を変えるかどうかというのは難しくて、たぶん決め打ちしないで今後の進展を注意深く分析するというのにとどめるとは思うのですが、昨日引用した辺りもどっちかと言えばハト部分の分量多いですし、冒頭にあたるこの部分もハトというか物価上昇テンポラリー理論ではあるのですが、色々と留保を付けているのはさすがにここまで物価が上がられて、しかもコア物価が上がってきているからなんでしょうかね。


・自然利子率についてとストラテジーレビューについての前振り

『Chart 2 shows the dynamics since 1999 of the estimated equilibrium nominal interest rate, which is constructed as the sum of the two per cent inflation target and the equilibrium real interest rate, which is the real interest rate that is consistent with full utilisation of available resources and inflation steady at the target.』

次は自然利子率についてですな。埋め込み画像のリンクは下記のURL先です。(さっきと同じで直リンはしません)
https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2022/html/sp220302/ecb.sp220302.en_img1.png?6ae46693c1aa7a8176173beeb9b009e2

『The trend decline in equilibrium interest rates was a first-order issue in the strategy review exercise.』

ということで、ストラテジーレビューの前提に自然利子率の低下がある、と来まして・・・・・・・・・

『In particular, a low equilibrium interest rate means that any robust monetary policy strategy must take into account the effective lower bound on policy rates.』

でここに図があって次のパラグラフ。

『A monetary policy strategy serves two main purposes: first, it provides policymakers with a coherent analytical framework that maps actual or expected economic developments into policy decisions; and, second, it serves as a tool for communicating with the public.』

で、ここからストラテジックレビューの説明(から昨日引用した部分に繋がる)になります。

『A strategic approach to monetary policy is especially valuable when confronted with possible shifts in the underlying forces shaping inflation dynamics.』

前後の文脈からすると別にキナ臭い話をしているつもりではなさそうなのですが、この一文だって「じゃあ足元で基調的なインフレのダイナミクスが過去から変わった、という話になったら今のストラテジックレビューに伴う政策ガイダンスとか全部引っくり返す気かよ」というツッコミをしたくなる部分でした、ただ前後および全体の文脈を読むと、別にタカだったり政策のベースを変えて見たり(パウエルみたいにロンガーランゴールは同じだけどストラテジーは変わったよ前提が変わったんだもん当然だよね!というようなイメージね)するとかそういう雰囲気は漂わないのですが、微妙な所に微妙な感じで埋設地雷があるような気もします。レーンさん狙ってやってるのかどうかが(数こなしてないのもあって)ミーにはちと良くワカランチ会長なところはあります。

『Rather than policymakers having to search in the dark for the appropriate policy response, a robust monetary policy strategy provides policymakers with the playbook for handling a wide range of scenarios.』

と次の一文が続いていまして、今のストラテジックレビューはロバストなものですよって言ってて、それは即ち「いやーちょっと前提条件が変わっちゃったからメンゴメンゴ」という話が出てきて君子豹変ジャガーチェンジとはならないという事のように読める(気がする)のですよね。

『The extensive Eurosystem monetary policy strategy review exercise during 2020 and 2021 considered a vast array of factors relevant for the conduct of monetary policy: the work of the Eurosystem staff was organised into thirteen workstreams and their many individual background notes are synthesised in the 18 Occasional Papers released in autumn 2021.』

『Of course, the strategy review did not start from scratch: there was much to retain from the earlier phases in the development of the ECB’s monetary policy strategy, both in terms of the initial design in 1998 and the review in 2003.』

ということで先代からの蓄積を基に今回物凄い勢いで頑張って作ったと言わんばかりの話をしているので、やっぱりあれは微妙な地雷臭は無くは無いのですが、普通に「今のアプローチを続けます」なハトちゃあハトな話だとは思うのですよねー、うーん難しい。

『Rather than trying to provide a comprehensive overview of all of the dimensions of the entire strategy review, I will focus today on the guidance it provides for the conduct of monetary policy in pursuit of the two per cent inflation target over the medium term.』

ということで以下昨日引用した最初の方が思いっきりハトというか政策変えんで〜のオンパレードだが後の方になると微妙に微妙な鉛筆舐め舐め可能判断基準であるところのインフレ期待がどうのこうのという怪しげなコンポーネントが入る、という物件でして、まあ素直に読めば「政策スタンスは変わらんよ」なのですが、意地悪く読むと「基調的な物価のダイナミズムが変化したら今までの話はチャイしますんでヨロピク〜」にも見て見れない事は無い訳ではない、位の感じのさくひんになっているのではないか、と思います。


まあいずれにせよ本日の会見で何がでるか、必殺技「よくわからんから判断先送り」かもしれないですけどね!




〇経常収支は真っ赤だわ輸入価格は上がるわですが円安は常に国益とか言ってる場合でしょうかねえ

いやまあ雑談ネタではあるんですけどね。

・輸入物価上昇は単純に投入コストの上昇になるんだが円安国益論を意地になって引っ張ると日銀炎上せんかね

昨日は前日のこれ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220308/k10013519591000.html
1月の経常収支 1兆1887億円の赤字 原油価格上昇で輸入額が増加
2022年3月8日 11時23分

に引き続きまして
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/boeki/220309.html
輸入小麦の政府売渡価格の改定について
令和4年3月9日

『輸入小麦の直近6ヶ月間(令和3年9月第2週〜令和4年3月第1週)の平均買付価格は、(1)昨年夏の高温・乾燥による米国、カナダ産小麦の不作の影響が大きく、9月以降も小麦の国際価格が高水準で推移したこと、(2)米国、カナダ、豪州の日本向け産地における品質低下等により、日本が求める高品質小麦の調達価格帯が上昇したこと、(3)ロシアの輸出規制、ウクライナ情勢等の供給懸念も、小麦の国際価格の上昇につながったことから、前期に比べ上昇しました。

この結果、令和4年4月期(令和4年4月〜)の輸入小麦の政府売渡価格は、直近6か月間の平均買付価格を基に算定すると、5銘柄加重平均(税込価格)で72,530円/トン、令和3年10月期と比べて17.3%の引上げとなります。』(上記URL先より)

なおCPIへの影響試算があるのですがこの試算でエエノカというのは知らん(多分少ない希ガス)こちらの5枚目辺り。
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/boeki/attach/pdf/220309-1.pdf
輸入小麦の政府売渡価格について(価格公表添付資料)

とか来やがりまして、やったね!!2%マークしちゃうよ!!!でもって確か2%が達成したら皆様の生活も一変して良くなる、というのが置物教の教えだったと思います(因果関係が逆なんですけどねー)し、そもそも浜田大先生のように「賃金が上がるよりも先に物価が上がるのが望ましいし寧ろ賃金が上がらない方がよい」(企業の雇用コストが下がることによって雇用拡大のインセンティブが生じる、という消費者の存在を忘れた〇呆理論)と仰せになっておられることまで続々と達成しそうになっておられますが、さてご所感や如何に、というのがちょうどこれが都合の宜しい事に4月のケツに展望レポートがまっているので今から楽しみですね。

・・・・・・・いかん話が物価になってしまいましたが、まあそれ以前の問題として昨日も申し上げましたけれども、資源と余計なことに食料品価格も輸入物に関しては上昇(国内物だって資源価格上がれば投入コストが上がる)となる中でしたら経常も赤が続く、というような国が自国通貨安を志向するってどこのエルドアン大統領だよという風情を醸し出している今日この頃なのですが、いやー黒ちゃん今の調子で延々と「円安は常に日本にとってプラス(キリッ)」って言い続ける気なのかなー。


とは言いましても、だから過度な円安進行を防ぎたいからあんまり緩和緩和言わなくなる、などという見通しは甘いにも程があって、どうせ日銀の事ですから輸出業の大企業様が円高で困るんじゃこのダボがとぶっこんで来るのには弱いようなのですが(個人の感想です)、民草がピーピー言う事なんざあシランガナというのが仕様になっておられるようですので(個人の感想です)、そんなこと考えて何かする訳でもなく、霞が関とか永田町とかそういう方面からぶっこみがこないとシュンとならないという仕様なので(あくまでも個人の感想です)、まーキッシー次第ではありますわなー。うんうん。

よって今回のMPM後の会見で円安と輸入物価高は国内の窮乏化に繋がるので輸入物価はどうしようもないのだからせめて円安が常に日本にプラスという認識を改めた方が良いのではないか、などと質問をすると黒ちゃん寧ろムキになって円安は絶対善くらいの事を言い出して、後日国会でつるし上げの刑を食らうという流れになる、に100リラと言ったところで。

まーこの状況の持続性も良く分からん(というかこんなの持続的におこったらガチでマズーなんですが)のですが、どうせ黒ちゃんの事だから直ぐにムキになって円安礼賛→日銀批判という流れになっていただけるとマイナス金利政策とかいう大失敗政策とその大失敗を誤魔化すために導入したYCC政策とかいうのが撤廃される方向になって(別に引き締めろと言ってるわけではない、量的緩和を伴わないで低金利政策取ってくれれば無問題)欲しいなあと思う次第であります。

しかしまあ何ですな、基軸通貨国でもないのに経常の真っ赤っ赤を延々と垂れ流すの全然サステイナブルではない筈なんだが、なにせ基軸通貨国の米国様と同じ理屈を振りかざしてきたりする(だいたいあの手の理論というのは「自国通貨が世界的に常に流通可能である」という通貨の面で言えば特殊国家である米国様の議論を肝心の前提条件を作為的に(悪質)または無意識のうちに(知能不足)無視して話をおっぱじめている)から、楽して財政撒きたい馬鹿政治家がそれに乗って馬鹿の大合唱が始まったりするわけですよ永田町の辺りから。まあ勘弁してほしいですね、と何故か昨日の話に戻ってしまいましたすいませんすいません。


・日銀様におかれましては棒読みのオンパレード時代がやってきているようですな

あと昨日はちらっとこんなニュースフラッシュも。
https://jp.reuters.com/article/idJPL3N2VC0CJ
2022年3月9日10:38 午前
UPDATE 1-物価、プラス幅をはっきり拡大していくと予想=清水日銀企画局長

『[東京 9日 ロイター] - 日銀の清水誠一企画局長は9日、衆院財務金融委員会で、ウクライナ危機による資源価格の大幅上昇などで先行きの物価はプラス幅を「はっきり拡大していく」と述べた。ただ、先行きの景気回復シナリオは維持され、物価高とマイナス成長が併存する「スタグフレーションのような状況に陥るとは考えていない」と話した。沢田良委員(日本維新の会)の質問に答えた。』(上記URL先より、以下同様)

ロイターさんじゃないところのベンダー(婉曲表現)では「スタグフレーションのような状況に陥るとは考えていない」だけ唐突に企画局長のコメントとしてヘッドラインが打たれていて後続もなかったのでナンノコッチャ感があったのですが。

『清水局長は「消費者物価の前年比は当面、エネルギー価格が大幅に上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁が進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落することから、この後はプラス幅をはっきり拡大していくと予想している」と述べた。資源高の経済への影響については「短期的にはエネルギーや食料品を中心に物価の押し上げ要因となる一方で、やや長い目で見れば家計の実質所得の減少や企業収益の悪化を通じて経済の下押し要因となる」とする半面で、先行きの日本経済は「感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らいでいくもとで、外需の増加、緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて回復していく」と述べ、1月の金融政策決定会合でまとめた「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)における経済の中心的シナリオをなぞった。』

あたしゃ国会中継は見て無いから実際のやり取り知らんのですが、まあロイターさんがこの記事でしれっと「1月の金融政策決定会合でまとめた「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)における経済の中心的シナリオをなぞった。」と棒読みをして帰って来ましたという雰囲気を出した記載をしておりますのを信じますと、つまりは展望レポートを棒読み(まあ相手が議員様なので露骨な棒読みはしないでしょうけど)してるのと変わらん、ということで何ちゅうかこの確かに何がどうなるか分からないから何とも言えない、というのは分かるのですが、大丈夫なのかね、とは思ってしまいます。

しかしまあ何ですな、これは質問側にも工夫が必要だと思うのですが、「スタグフレーションになるとは考えていない」というような回答をさせるんじゃなくて「スタグフレーションのような事が起きないためには今後どのような点を警戒していくのか、どのような対処が考えられるか」みたいな話をしないと、それこそ3月11日が近いから「全電源喪失はあり得ない」というのが言霊になってしまったあの事案などのようなサムシングを思い出すんで、こういう発言はちとご勘弁願いたいもんですな。


・・・・・・・・さてそういえばなのですが、先日の前代未聞な「前回の展望レポートから1か月半経過していてその間海外情勢を中心に大きな動きがあったのに一切そのアップデートをしないで経済物価情勢と金融政策の話を棒読みする中川審議委員の金懇挨拶」というプレイに関しても、日銀ここで下手に突っ込みを食らうと色々とボロが出るからひたすら安全運転した結果、京都の政財界を代表する方々を招いて金返せレベルの講演をさせたのは、そろそろやべえと自己防衛本能が働いて中川さんに事実上の箝口令をひいた、という事かも知れませんね!!!!!!(なお会見での「想定問答を聞かれもしない部分まで全部朗読してたんじゃネーカ」疑惑(あくまでも個人の妄想ですので念のため)応答を見るとそんな高度な作戦ではなくて単に中川さんの(内務省検閲により削除されました)

まあここに来てただで無くさえ口数の少ない日銀の口数が減っているのは、とりあえず今の状況を頭を低くしてやり過ごして頭上で起きてる波乱が通り過ぎるのを待つ、という利口ではあるが何だかなあという日銀様の姿勢をしめしたものと理解しました。3月会合ガチで何にもないのかなあツマンネ。








2022/03/09

お題「レーン理事の先週の講演を見てみたが案の定決め打ちできずに渾身の両建て説明ですな」

あちゃー
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220308/k10013519591000.html
1月の経常収支 1兆1887億円の赤字 原油価格上昇で輸入額が増加
2022年3月8日 11時23分

とまあこういう状況の中、相変わらず日銀保有の国債を永久国債化(それは日銀が永久負債を発行しているのと同じことになるので、つまりは紙幣増発であって、インフレが高進しだしたらその紙幣回収しないとインフレがトマランチ会長になるんですけどどうやって回収するんでしょ??)とかいうジンバブエ理論の話を質問しだす政党がいてみたり、円建の国債はデフォルトしないからバンバン国債をだせ(日本円そのものが紙屑になるリスク、という認識が無い理論で論外)と言い出す元偉い人がいてみたりしますが、アホウがそういう話を堂々とする背景にはイカサマ理論を吹き込んで回っている輩がおる訳で、この手の話を素人政治家どもに吹き込んで回っているイカサマ連中というのが最大級にトサカに来る次第でありますな。どこの誰とか何とかストとか言わないけど。

ちなみにこの辺の「財政無限に出せる理論」は「最終形がかなりの高インフレによるインフレタックスか何らかの形を使った民間からの強制接収(ハイパーインフレもまあ似たようなもんだが)になりますけどそれは責任のある人の取る政策なんですかねえ」が一番素直な対抗方法なのだがイカサマ理論サイドもインチキ理論を色々と構築していたりして穴を突くのは割とホネ(−−;


〇レーン専務理事のECB政策スタンス原則の説明が先週有りましたが渾身の両建てですなこりゃ

こう連日展開が凄まじくて、昨日の引け後はえーっとEUが共同EU債をどどーんと出してエネルギーと防衛対策に使うとかいうの出たなーと思えば、その一方でバイデンがロシアの原油の輸入をストップしますと正式にぶっこんできたとかいうのがあったような気がしますが、もうむちゃくちゃでござりますがなの展開でちょっとヘロヘロでありまする。

ということでここは現実逃避(ではないけど)にレーン専務理事が「ECBとしてはこのようにして動きますよ」という説明の講演を先週の水曜日(例によって今更ジローですいません)にしておったのですが、まあ目先ウクライナの方であちゃーうひょーとやっているのでこれ自体が話題になってましたっけ位の気もするけど、そもそも読むと見事な両論併記になっている、という知見が得られました(ような気がする)のでまあメモっておこうかと思いまして。

といいつつ本編は割と長め。
https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2022/html/ecb.sp220302~8031458eab.en.html
The monetary policy strategy of the ECB: the playbook for monetary policy decisions
Speech by Philip R. Lane, Member of the Executive Board of the ECB, at the Hertie School, Berlin
Berlin, 2 March 2022

「the playbook for monetary policy decisions」と来たからにはこれは今後の政策の示唆があるのか、と湧きたってもおかしくは無いのですが、あんまり沸き立った気がしないのは今申し上げたようにどう見ても両建てです本当にありがとうございましたという物件だったから、なのかな(もはやおじいちゃん先週水曜日の海外市場とか言われても咄嗟に出てこないですよ)とは思いました(個人の感想です)。


・現世利益のお話「フォワードガイダンス」の説明の所から参ります

最初に現在の状況の話をしてて、まあそっちもネタにした方が良いのかもしれませんが、今後の政策で何を見て行きますねん、という話をしている部分がアタクシ的には興味があったのでそっちからという事で、途中から参ります。

フォワードガイダンスがそもそも何のためにあるのか、という部分から引用開始しますけど。

『The forward guidance provided by the ECB on asset purchases and interest rates reflects the instrument hierarchy outlined in the strategy review.』

とありまして、例のストラテジーレビューの話を含めてその前にある(シンメトリー2%とかのお話)のですが今回はそこまでやってると長くなりすぎるのですっ飛ばしました。

『In relation to net asset purchases under the asset purchase programme (APP), the forward guidance is that these will be maintained for as long as necessary to reinforce the accommodative impact of policy rates and that these are expected to end shortly before the key ECB interest rates are raised. This forward guidance clearly expresses that net asset purchases are designed to supplement the primary role of the set of policy rates (in recognition of the limitations associated with the effective lower bound) but that net asset purchases would cease if the inflation environment no longer required the accommodative impact of policy rates to be reinforced. 』

最初にAPPのガイダンスの話があって、政策金利が下限制約にある中においては緩和度合いはAPPによって調節されているので、APPのガイダンス作るの重要重要アルねーという話をしていますな(超雑な意訳)。

『Moreover, this also implies a clear sequencing: the end date for net asset purchases is naturally earlier than the date at which it would be appropriate to raise the key policy rates. Introduced in September 2019, the guidance that net asset purchases are expected to end only shortly before the key ECB interest rates are raised provides the reassurance that net asset purchases would not be prematurely terminated.』

でもってAPPのテーパリングが完了するまでは利上げしない、というのがクリアーですよ、と来てから、じゃあ何でガイダンス入れてるかというと「net asset purchases would not be prematurely terminated」であることを改めて示すためですよ、と言ってるんだから入り口はハト派っぽい説明ですな。まあ元々このガイダンス自体が「見通しベース」のガイダンスだから出した時はハト派寄りだったので普通に当時の話をおっぱじめるとハト派になってしまうんですが。

『In relation to interest rate forward guidance, three key conditions should be met before interest rates are raised:』

利上げするためには以下の3つの条件が必要ですよ、と来まして・・・・・・・・・・・


・(3/2時点の)政策金利引き上げを可能にする3条件とは??

『The first condition “until we see inflation reaching two per cent well ahead of the end of our projection horizon” provides reassurance that the convergence of inflation towards the new target should be sufficiently advanced and mature at the time of policy rate lift off. Moreover, requiring the inflation target to be reached “well ahead of the end of the projection horizon” helps to hedge monetary policy against the risk of relying excessively on inflation projections at the long-end of the projection horizon, where forecast errors tend to be larger under typical conditions.[3]』

一時的なインフレ上昇によってホイホイと上げるのではなくて、あくまでも2%物価目標が中期的に安定的に達成できるという確固たる見通しの下で引き上げを開始するのであって、目先の高インフレには必ずしも反応しないしうっかり早まって利上げしません、と言ってるようなもんですな。

『The second condition -- that we expect inflation to reach two per cent not only well ahead of the end of the projection horizon but also “durably for the rest of the projection horizon” -- telegraphs that inflation reaching the target should be lasting and not just be the result of short-lived forces that lead to one-time increases in prices that are unlikely to lead to persistently higher year-over-year inflation.』

2番目も同じような話なんだが、これでもかとしつこいまでに「安定的な物価2%の達成が見通せる」の説明をしていまして、短命に終わるような要因とか、ワンタイムエフェクトで物価があがるだけで持続的な物価上昇に繋がらないような要因による物価上昇ではその条件は満たさないから利上げしないもんねー、と更にハトハトな話をしておりまして、

『The third condition, which requires “progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at two per cent over the medium term”, signals that policy rates should not be lifted unless underlying inflation is also judged to have made satisfactory progress towards the target. This condition is based on realised data and provides an extra safeguard against a policy tightening in the face of cost-push shocks that might elevate headline inflation temporarily but fade within the projection horizon.』

ガイダンス文言を敷衍しながら説明しているのですが、ここの部分も最後の一文「This condition is based on realised data and provides an extra safeguard against a policy tightening in the face of cost-push shocks that might elevate headline inflation temporarily but fade within the projection horizon.」に思いっきりあるように、ワンタイムエフェクトのコストプッシュインフレーションに対応して利上げするのは怪しからんくらいの勢いで、「an extra safeguard against a policy tightening in the face of」と仰せです。


・ということでそうホイホイと利上げしませんという話を以下も延々と続けるわけだが

という3つのコンディション、というかまあ声明文にあるガイダンスの説明があった訳ですが、その続きはどうなっておられるかと言いますと、

『It is important to recognise that underlying inflation is a broad concept and refers to the persistent component of inflation that filters out short-lived movements in the inflation rate and that provides the best guide to medium-term inflation developments.』

基調的なインフレというのは幅広いコンセプトでアリ、そのインフレーションは「refers to the persistent component of inflation that filters out short-lived movements」とかまたまたここでも「一時的な短命物価ムーブになるコンポーネントは除去する」と何回このおっちゃんはワンタイムだのショートリブドだのをくり返すねん、という位にしつこく繰り返している訳で、まあこの状況下で追加緩和というのをしにくい(インフレ加速させる気かコノヤローと言われると結構ぐうの音も出ない)ので、利上げ観測を後退させることによって市場金利の上昇を抑えて、口先介入で緩和効果を強めようとしているんじゃないのかなーとは思いましたがあくまでも個人の感想です。

『In the current context, two factors make it especially difficult to interpret standard indicators of
underlying inflation.』

基調的な物価の推移を読みにくくしている2つのファクターとは?

『First, the scale of the energy shock means that the producers of many goods and services that are included in the core inflation measure face higher energy input costs and are passing these cost increases on to consumer prices. To the extent that the increase in energy prices is a level effect, it follows that the knock-on impact on core prices is also primarily a level effect, rather than necessarily representing a shift in the persistent component of inflation.』

『Second, the bottlenecks generated by the sectoral shifts in demand and supply associated with the pandemic are currently generating temporary inflation pressures, which also do not necessarily constitute a source of persistent inflation pressure.』

先に2番目を見るとこれは供給制約問題で持続化する話ではない、と言ってるのですが、エネルギーの所に関してはエネルギーがワンタイムかもしれんけど、一方でこのエネルギー価格上昇がトリガーになってコア物価の方にも効くわな、という話をしています。とはいえこの効果についても基本的には持続的な物価上昇には繋がらんじゃろ、と引き続きハトな言い方をしていますわな。


・この辺から段々話がハト一辺倒じゃなくなって来るの巻

とまあそういうハトハトモードだったレーンさんの講演、ここらあたりから段々雲行きが怪しくなって来るのだ。

『Policymakers must strike the right balance in responding to shifts in projected inflation. In one direction, if forecasts indicate that the inflation target will be reached within the projection horizon, waiting for realised inflation to converge to the target before tightening might be excessively costly, especially if inflation expectations become de-anchored to the upside. Under this scenario, excessive delay in monetary tightening runs the risk of a sharper subsequent hike in interest rates and a greater loss in output.』

物価目標が達成できるという見通しがあるのにも関わらず、実際のインフレが目標に達するまで利上げを開始しない、というのは「excessively costly」になるかもしれない、特にインフレ期待のアンカーがアップサイド方向に外れてしまった場合(especially if inflation expectations become de-anchored to the upside.)、と来やがりまして、さっきまでのハトハトおじさんの風向きが微妙に変わって来るのである。

『In the other direction, if current inflation is above the target level but the forecasts indicate that inflation will fall below the target level over the projection horizon, tightening policy in response to temporarily-high inflation would be counterproductive. Under this scenario, premature monetary tightening runs the risk of an economic slowdown and a reversal in the medium-term inflation dynamic, de-railing the prospects of ultimate convergence to the inflation target. Of course, assessing these different types of policy errors is especially difficult in the current context of high uncertainty, the unique circumstances of the pandemic and policy settings that have long been driven by the twin challenges of excessively-low medium-term inflation pressures and the constraints associated with the effective lower bound.』

このパラグラフちと長いのでどっかで分けようと思ったが話しの連続性から見てぶつ切りできなかったので長くてすまんやでなのですが、さっきの怪しい風向きを再度元に戻すべく、どう見ても今の状況がこうですよといわんばかりの「if current inflation is above the target level but the forecasts indicate that inflation will fall below the target level over the projection horizon」ってイフもへったくれもなくて今の状況ジャン、という話をおっぱじめてまして、ここでは「premature monetary tightening runs the risk of an economic slowdown and a reversal in the medium-term inflation dynamic」とまたまたプレマチュアーなタイトニングダメ!ゼッタイ!!って話を始めて話を元の路線に戻しております。


・結局「インフレ期待のアンカー」ですかそうですか(・・・・でもそれってリアルタイム計測不能ですよね〜)

でもってその次のパラですが、

『An important element in the strategy review was to re-confirm the medium-term orientation of the ECB’s monetary policy. In line with the Treaty mandate and without prejudice to price stability, the medium-term orientation allows for inevitable short-term deviations of inflation from the target, as well as lags and uncertainty in the transmission of monetary policy to the economy and to inflation. It also provides room for monetary policy to take into account considerations such as balanced economic growth, full employment and financial stability. Under many scenarios, these are mutually consistent objectives. In particular, so long as longer-term inflation expectations are anchored at the target level, inflation will be at the target level if economic activity and employment are at their potential levels.』

金融安定の話しとかもしてたりしますが、まあ要するにこのパラで言いたいのは最後の一文、「so long as longer-term inflation expectations are anchored at the target level, inflation will be at the target level if economic activity and employment are at their potential levels.」で、インフレ期待大事大事ネーと仰せになっているわけでございますが、次のパラが大体お察しのようにハウエバーから始まりまして・・・・・・・・・

『However, in the event of an adverse supply shock, the horizon over which inflation returns to the target level could be lengthened in order to avoid pronounced falls in economic activity and employment, which, if persistent, could jeopardise medium-term price stability. This consideration is relevant in developing the appropriate monetary policy response to the current energy shock and pandemic shock. In particular, it should be recognised that the prevalence of downward nominal rigidities in wages and prices means that surprises in relative price movements should mainly be accommodated by tolerating a temporary increase in the inflation rate, rather than by seeking to maintain a constant inflation rate that could only be achieved by a substantial reduction in overall demand and activity levels.』

『At the same time, it is essential to avoid that a spell of temporarily-high inflation pressures - even if arising from a supply shock - becomes entrenched by permanently altering longer-term inflation expectations. Accordingly, central banks must closely monitor the evolution of indicators of longer-term inflation expectations. From a policy perspective, the clearer is the commitment to the medium-term target of two per cent, the less likely is the de-anchoring of inflation expectations, since everyone should recognise that the central bank will take decisive action to ensure that deviations from the inflation target do not last too long and do not put at risk the stabilisation of inflation at two per cent over the medium term.』

時間がアレなので(すいません)英文べたべた貼ってしまうという手抜きモードになっていますが、インフレ期待がアンカーされているのが重要アルネという話の後に並べているのは現状の資源価格上昇を踏まえてどうなのよという話しなのですが、これがまた見事なまでに両建てになっていて、そらまあ決め打ちできないのしょうがないのでこうなるしかない、ってのも分かるのですが、まー見事な両建てですわ。

つまりですね、最初の方ではパラの真ん中辺りからの「it should be recognised〜」以下の主張になるんですが、一時的な高インフレに関しては経済活動を抑制するような施策(つまり金融政策の引き締め方向)を行うのではなく、一部のコンポーネントの値上がりによって他のコンポーネントの価格押し下げに繋がって、総合的に見たらそれが全体に波及するって事にはならんじゃろといういわゆる一般価格と個別価格の話っぽいネタに持って行って早まった引き締めイクナイ、と仰せになっていますわな。

その一方で次のパラではサプライショックによる一時的とは言え高いインフレ圧力が起きた時に、それが長期化することによってロンガータームのインフレ期待を引き上げてしまう、という事も回避しなければならない、とこっちは寧ろインフレ期待が上抜けしないために金融政策で何をすべきか、という話になっておりまして、その「インフレ期待」ってのが究極的に言ってしまえば鉛筆舐め舐めの世界である以上(後付けでは分かるかもしれんが政策運営的に後付けで分かっても意味は無い)、これは結局の所レーンさんとしても、というかECBとしても、超目先の明日とかにどうのこうのというのは無いものの、そうは言ってもこのインフレ期待の所を気にしました、と言いながら政策締めていく余地も残す。ただ目先直ぐに大きな動きはしないしできないからハトの話が多め、とかそんな感じで両建てして決め打ちしないようにしてるんだな、とは思いましたがどうでしょうか???

なお、以下話は続いているのですがまあ一般的なそもそも論の話が多いので以下割愛ということでご勘弁。





2022/03/08

お題「ECBはさっぱり分からんがAPP縮小はしないのかねえ/変態仮面ぶれずに盛大な緩和縮小の主張を続けてますね」

そ、そうなのか・・・・・・・・・・
https://www.agrinews.co.jp/economy/index/61710
2022年3月8日
米需給見通し指数横ばい 引き続き「緩む」見方 米穀機構
ビジネス| 米需給問題

『米穀機構が7日公表した2月の景況調査(DI)によると、向こう3カ月の需給見通し指数は32と前月から横ばいだった。基準点の50を下回ったままで、産地や流通業者には引き続き「需給が緩む」とした見方が強い(以下は有料会員記事になります)』(上記URL先より)

大麦小麦トウモロコシとかが上昇しそうだし、飼料価格上がってアイヤーだし、A重油(だったけ?)をバンバン食うハウス物果物とかコスト上がりまくりの中、国産米を食えばよいのではないでしょうか(水田でも農機具使ったりするので燃料価格上昇は厳しいんだが)???

しかし「パンが無いならなぜ米を食べないのだろう??」byマリーアントワネットの時代が遂に来ますよそもそも国内の米生産って昭和40年台がピークなんで増産余地あるはずだから(とは言え一旦止めた水田をまた復活させるのシムシティーみたいに直ぐに出来る訳ではない)稲作復活で食糧問題緩和、とつい考えてしまうのですが、需給見通しは弱いままなのか・・・・・・


〇ECBプレビュー雑談にしてもウクライナ情勢が連日のアレなので何も分からんですサーセン

https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N2VA3NN
2022年3月8日2:07 午前
ユーロ圏金融・債券市場=独物価連動債利回り過去最低、スタグフレーション懸念

『[ミラノ 7日 ロイター] - ユーロ圏金融・債券市場では、ドイツのインフレ連動債利回りが過去最低を更新した。ロシア産原油に対する制裁が発動されればインフレが一段と上昇し、欧州経済がスタグフレーションに陥るとの懸念が高まっている。』(上記URL先より、以下同様)

これはもうまんま1973-1975の世界じゃないのという流れになっておりまして、まああれはあれで参考にはなるんですが、いかんせん世界貿易量とか、グローバルな分業化の進展とか、さすがに50年違うと全然違うのがどういう働きをするのか。何となく思うのはグローバル化とかその他諸々で物価がアガランチ会長になる圧力があって、だからこそフリップスカーブが効かないとかそういうのがあったんで、その点ではドンパチモードになると今まで履いてた逆下駄が無くなるんでそもそもベースで上がりやすいということになるわなーくらいしか脳味噌が働きません。

欧州の場合は組合強い筈なので、ヘッドラインの物価がこれだけ上昇すると「生活給確保」と言って暴れるの当たり前で、むしろ暴れない方が意味不明というか存在価値無しという所でございます。でもって人間別にコアCPIで生くるのみに非ず、というか寧ろ食品とエネルギーダイジダイジアルネなので、どう見たってこんなの賃金上昇圧力に直結するし・・・・・・・・

『米国と欧州の同盟国が対ロシア制裁措置の一環としてロシア産原油の輸入禁止を検討する中、北海ブレント先物は2008年以来の高値を更新。MFSインベストメント・マネジメントの債券リサーチアナリスト、アナリサ・ピアッツァ氏は「エネルギー価格の高騰によるインフレ急騰のリスクが織り込まれつつある」とし、「市場ではスタグフレーションのリスクが意識されている」と述べた。』

スタグフ&賃金物価のスパイラルがトマランチ会長になった場合って結局の所高インフレを放置しておくわけにはいかないので、最終的には引き締めをしないといけなくなると思うのですが(個人の感想です)、特に欧州の場合はロシアとの関係が相対的に多いので経済へのマイナスも中々のもんですが、何せ追加緩和の余地なんてない状態な訳で、緩和縮小を引っ張るという選択肢しかなさそうですが、一方でその緩和縮小遅れが更にインフレを加速させるとなりますと、中央銀行の存在意義が問われる展開。

『欧州中央銀行(ECB)が10日に開く理事会について市場の見方は割れている。シティのアナリストは、ECBは特に資産購入プログラム(APP)を巡りタカ派化すると予想。一方、ドイツ銀行のエコノミストは「ウクライナ危機を受け、ECBはAPP縮小は現時点では控える」との見方を示している。』

まー出て見ないと分からんとしか申し上げようがないですが、アタクシがここで華麗にフラグを立てて見ようと思うんだが(フラグとか自嘲しているが一応本人としては真面目に考えた積り)、景気減速懸念はあるにしても、インフレの方もかなり何とかしないとマズイという状況で、やれるのってやっぱりAPPの縮小なんじゃないかなーって思うの。

元々足もとの状況っていうのは、その前段階でじゃぶじゃぶ金融緩和があって、そこに更に財政をバカスカぶっこんでしまっていた(コロナのせいとは言え)所にきて、供給ショックが発生して物価が上昇しだすってえのがあった訳で、まんま70年台パターンジャン、という風には思ってしまう(個人の感想です)のですが、APP引いて実際に止まるかというと多分止まらないにせよ、投機的資金が利益求めてコモディティーにGo!という雰囲気くらいは出来るだけ水をぶっかけたい、でも景気腰折れは怖い、ってことになったら、(それが本当に正しいかはよくわからないけど今の中銀界隈の整理としては)景気にダイレクトに効きやすいとされている政策金利操作じゃなくて、APP縮小によってせめて「流動性相場」の方は何とかしないと、って思うんじゃないかな、って感じです(個人の感想です)。

#APPの縮小とか言っても心理的インパクトはあってもそこまで有効なのかは???ですけど



〇なんやブラードとバーキンしか話をしとらんやんこの数日

そりゃまあ情勢が情勢なだけに、こんなタイミングであんまり発言しても「ウクライナ情勢なのでシランガナ」以外の回答が出来ないからシャーナイナイ、と思ったら・・・・・・・・・

https://www.stlouisfed.org/fomcspeak
FOMC Speak
A repository of speeches, testimony, interviews and commentary by FOMC participants

直近の発言としてこっちにリンクページなどがあるのが以下の並びwww

Thomas I. Barkin
March 03, 2022
Essay,Federal Reserve Bank of Richmond,Breaking Down the Labor Shortage

James Bullard
March 02, 2022 (09:30 AM ET)
Presentation,at Greater St. Louis, Inc., St. Louis, Mo.,Removing Monetary Policy Accommodation

Thomas I. Barkin
March 01, 2022
Essay,Federal Reserve Bank of Richmond,Investing in Rural America

Thomas I. Barkin
February 28, 2022
Essay,Federal Reserve Bank of Richmond,Making It Work

James Bullard
February 25, 2022 (12:00 PM ET)
Radio Interview,with Wharton Business Radio’s Behind the Markets program,Inflation, Policy Rate, Fed Balance Sheet

wwwwwこれはひどいw


・変態仮面ブラード総裁の発言は変態なのですが嗅覚は良さそうなおじさんなのでチェックチェック(3/2の講演です為念)

https://www.stlouisfed.org/from-the-president/speeches-and-presentations/2022/removing-monetary-policy-accommodation
Removing Monetary Policy Accommodation
March 2, 2022
Presentation (pdf) | Press Release

まずはこの鏡のページから。

『During a presentation for Greater St. Louis, Inc., St. Louis Fed President Jim Bullard said that the U.S. real economy has more than fully recovered from the pandemic recession and is expected to grow faster than its longer-run potential growth rate in 2022. Meanwhile, U.S. inflation is running well above the FOMC’s target.』

米国経済はパンデミックリセッションから全戻し以上に回復しとるし、今年も潜在成長率以上の成長をすると見られるが、同時に米国のインフレはターゲットを大幅に上回って推移している、ときまして、

『Current U.S. monetary policy is set at peak accommodation, which is putting upward pressure on inflation, Bullard said. “This situation calls for rapid withdrawal of policy accommodation in order to preserve the best chance for a long and durable expansion,” he added.』

金融緩和政策は緩和の頂点の状態であり、これがインフレ上昇圧力を高めているので、長期的かつ持続的な米国の経済成長の為には今の緩和政策を物凄い勢いで縮小しないと行けない」となっていまして、上記の所のプレスリリースってのを見ますと話の概要が出てきますのでポチっとな。

https://www.stlouisfed.org/news-releases/2022/03/02/bullard-discusses-removing-monetary-policy-accommodation
St. Louis Fed’s Bullard Discusses “Removing Monetary Policy Accommodation”
March 02, 2022

ちなみに紙芝居はこちら(フルカラー22枚組ですのでダウンロード注意、長いから途中まででハイパーリングしてます)
https://www.stlouisfed.org/-/media/project/frbstl/stlouisfed/files/pdfs/bullard/remarks/2022/mar/bullard-greater-st-louis-02-mar-2022.pdf


最初の部分は今引用したので割愛してトピックごとの部分から拝見します。

『U.S. Economy More Than Fully Recovered』という小見出しです。

『Bullard noted that the U.S. is currently in the expansion phase of the business cycle, with national income higher than it was at the previous peak. He also noted that, with respect to the level of real personal consumption expenditures, the economy has even surpassed the trend line drawn from 2011, indicating that the U.S. economy is doing better in terms of real consumption than it would have had there been no pandemic at all.』

既に米国経済成長は2011年からのトレンドライン以上に成長している、という奴なのですが、URLだけさっき乗っけた紙芝居の方で6枚目のスライド「Output in the expansion phase」とか7枚目のスライド「Consumption in the expansion phase」にあります。いやーそれらしい数字がサクッとでて来るのがさすがの変態仮面クオリティ過ぎる。

『“Not only is the U.S. currently in the expansion phase of the business cycle, but real GDP is poised to continue to grow at an above-trend rate in 2022,” Bullard said. “Accordingly, as measured by key metrics, labor markets are very robust and are likely to improve still further in 2022.”』

2022年の米国は成長率だけではなくて労働市場も強いぜよ、とウハウハな見通しを示していますが、ではウクライナはどうなのよという話が次にあって、

『Bullard noted there are risks to the growth forecast. Developments in the Russia-Ukraine war will have to be monitored closely but will likely impact Europe more directly than the U.S., he said. Also, he said global energy markets will be impacted over the short-to-medium term, which may lead to increased U.S. production of oil and natural gas. In addition, he pointed out that the omicron wave of the pandemic appears to be fading, suggesting further reopening of the U.S. economy in the second and third quarters.』

(1)ウクライナは注意が必要、ただし直接のインパクトが先に来るのは欧州じゃろ(とまあ普通この程度で話を止めるもんなのですが、日本のどこかの審議委員は質疑応答の想定問答の想定回答部分を質問されてもないことまで全部朗読しちゃったんじゃないかという勢いで能書きを垂れていたのが居ましたなあ、誰とは言わないけど)。

(2)世界のエネルギー市場は短中期的に大きなインパクトとなるが、これは我がステイツにおける原油や天然ガス算出を拡大させる(とここで寸止めしててるのがチャーミングで、ここを続けて行ってしまえばだから実は(゚д゚)ウマーなどなってしまいますので、それは謹慎と炎上するの待ったなしで、寸止めで回避する流石の変態仮面です)。

(3)オミクロン株の流行に関しては今後ピークアウトして、経済のさらなるリオープニングが今年の春から夏に掛けて期待できる。

とリスク要因並べている割には結論が威勢が良い(除くウクライナ)ということですな。


次の小見出しが『An Inflation Shock』というお洒落な小見出し。

『Bullard explained that when measured from a year ago, headline PCE inflation is currently 6.1% and core PCE inflation is 5.2%-well in excess of the FOMC’s 2% target. He added that this is the highest inflation in nearly 40 years for both measures.』

「this is the highest inflation in nearly 40 years for both measures.」と来ましたが、その後の話は政策の方でやっていて、ここではインフレが中低所得の家計に打撃という毎度の話をして次のコーナーに向かっています。

『“Inflation is especially hard on low- to moderate-income households, as wage gains have not kept up with inflation for many workers,” he said.』

次が『The Monetary Policy Response』ですな。

『At the time of the pandemic recession, the FOMC moved the policy rate to near zero and began large outright purchases of Treasury securities and agency mortgage-backed securities, Bullard pointed out. “These policy settings largely remain intact today, and this is putting upward pressure on inflation, exacerbating the inflation problem,” he said.』

パンデミック対応でぶっこんだ政策が概ね手つかずで残っている状態なので物価上昇圧力を掛けている。

『However, the FOMC agreed to phase out asset purchases by mid-March, and public commentary has suggested more policy rate increases for 2022 than previously anticipated, he said. These steps have had an impact on financial market pricing, according to recent trading, as 2-year and 5-year Treasury yields have increased about 100 basis points in the last five months or so, he said.』

とは言えワシらがテーパリング始めたり、利上げしまっせな政策スタンスへの考えが広まることによって市場金利が上がった(ので引き締め効果が出た、と言いたいんでしょう)。

『“The FOMC has recently taken some steps to be in a better position to control inflation over the forecast horizon, and this has been reflected in market pricing. This has been helpful in tightening financial conditions,” Bullard said. “However, the FOMC must now follow through with policy rate increases and balance sheet runoff or risk squandering policy credibility. In addition, the FOMC may have to move more aggressively going forward if inflation increases or does not moderate as much as expected.”』

でもってこの市場金利上昇はワシらのインフレ抑制の助けになる、といってまして、そこだけ切り取ると市場金利が上昇してくれればオイチイので実際に上げるかどうかよりも市場の期待で金利が上がる方が重要、と言っているのかと思いきやそんな事は無くて、その直後の「はうえばー」以降についてはバンバン金融政策の引き締め志向を強め、もし物価がサガランチ会長だったり上がりだしたりした日には更に厳しいスタンスで政策をすべきですな、という話をしておいでです。

ちなみに細々と昔から見てるんですけど、ブラードさん(とかエバンスさんとか)って物価動向については真っ先に政策どうするかのベースにぶっこんで来る人(個人の感想です)なので、米国物価がこの有様だったらフツーに物価重視スタンス(即ち早期緩和縮小)に走るだわな、と思いますし、経済に対してもややホンマカイナ感はあるけどやたら強気ですので、まあ普通にインフレファイティングポーズだと思いますよ。


最後の小見出しが『Removing Monetary Policy Accommodation』ですが、まあここまでで話の勝負?はついてますのでサラサラと、

『Bullard noted that U.S. inflation “has surprised substantially to the upside” in an environment where measures of real economic activity and labor market performance are, despite geopolitical risks, expected to remain robust. There has been an initial, implicit U.S. monetary policy response to the ongoing inflation shock, he said, and this response is already reflected in financial market pricing. He reiterated that the FOMC must now follow through in terms of policy rate increases and balance sheet runoff.

“Forthright and transparent actions designed to keep inflation under control will give the U.S. economy the best possible chance at a long and durable expansion,” Bullard concluded.』

とりあえず当面のインフレに対しては緩和縮小についてはとっととやれやコノヤロー、というのは把握しました。

んな訳で何を今更ジローではありますが、ECBはさっぱり分からんけどUSは別にここからFOMCに向けて多少の事があっても金融緩和縮小を引っ込めるのは難しいかな、というのを再確認するの巻でした。




2022/03/07

お題「中川審議委員京都金懇記者会見:2%物価目標が「結果」的なニュアンスの発言をしているのには期待したい(と無理矢理フォロー)」

停戦する気がねえええええええええorz
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-putin-erdogan-kremlin-idJPKBN2L30DO
2022年3月6日10:41 午後
ウクライナが抵抗をやめ要求のめば戦闘停止=ロシア大統領

『[ロンドン 6日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は6日、ウクライナが抵抗をやめてロシア側の要求を満たした場合のみ、軍事作戦を停止すると述べた。プーチン氏はトルコのエルドアン大統領との電話会談で、交渉に臨むウクライナの担当者は現場の実情を考慮して「建設的」な対応をすべきと指摘。ウクライナでの「特別作戦」は計画・予定通りに進んでいると述べた。』(上記URL先より)

まーこれは効いてる効いてるって事でしょうな(個人の妄想です)。


〇中川審議委員金懇初戦の会見はだいたい金懇と同じでしたがちょっとだけ光明が無いわけでもない

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220304a.pdf

幹事社冒頭の「今日はどうでしたか」は割愛しましてその次から参ります。

『(問) 先ほどおっしゃって頂いた懇談の内容と重なる部分もあるのですが、日本銀行の金融政策についての意見があったということでしたけれども、具体的にどのような要望や意見があったかということをお伺いしたいと思います。そして、ウクライナ情勢に絡んで、出席された方から各国のロシアへの制裁の影響も含めて具体的にどういった意見や質問があったかを教えて頂けますでしょうか。』

まあ回答に関して中川さんの知見についてはどうでもよいのですが、出席者からの意見についてオブラートにくるむという作業をしないようなのでこれは中々の逸材(婉曲表現)ですな、と思いましたというのは以下の回答部分を見て思いました(個人の感想です)。


・確かにコロナオペをやっているとは言え日銀にケツを持ち込む話でもないとは思うんですけどね

『(答) 金融政策に関しては、現状の政策に関して私からご説明しました。それに対して、政府の支援制度のサポートによる融資やプロパー融資を活用している顧客の現状を踏まえて、ポストコロナに向けた返済に関してどのように考えていくべきなのかというご質問とともに、引き続き日本銀行にもサポートしてもらいたいというご要望と、それからいわゆる「ゼロゼロ融資」の返済期を迎える中で、それに対する不安の声もあるというご意見を賜ったということに尽きると思います。非常に貴重な生のお声ですので真摯に伺ったところです。』

・・・・・・・orz

いやまあ確かに非常に貴重な生の声ではあるんだが、中川さんがお話した「ポストコロナに向けた返済に関してどのように考えていくべきなのかというご質問」ってのこの説明だと債務者(企業)がしてるのか債権者(銀行)がしてるのかちと不明なんですが、債務者に関してはそんなの借りた金なんだから約定弁済しろよ出来なきゃ銀行取引約定書第5条の期限の利益の喪失じゃんという話だし、債権者に関してはそんなの自行の経営判断の問題で、日銀の政策委員に質問してどうするんだろ、という話でして、当然ながらこの辺の会合でのお話は公開されていないので何が何だか分からないのですが、なーに聞いてるんだか、って思いました。

んでもって、「引き続き日本銀行にもサポートしてもらいたいというご要望と、」ってあるので、まあそれを出しにしてコロナオペの特別金利(゚д゚)ウマーをもっと続けろという話でもしたのかもしれませんけれども、まあ何はともあれ日銀へのクレクレ体質って昔は為替市場や株式市場でクレクレという位の話でしたが、ついに民間金融機関あるいは民間企業までクレクレかよって話で、先般中村審議委員が仰っていたような「日本経済のダイナミズム」などというのには世の中は程遠い、という事実がこの説明で浮かび上がってきたのは実にイイハナシダナー(良くないけど)である。

ああそれから、「それからいわゆる「ゼロゼロ融資」の返済期を迎える中で、それに対する不安の声もあるというご意見」ってそりゃおめーゼロゼロ融資(保証協会の100%保証で物上担保や第三者保証を立て必要がない上に、支払利子相当分が自治体から利子補給されて実質ゼロ金利で融資受けれるやつ)がいつまでも続く訳ねえ訳で、まあ半年前に言うなら兎も角、この期に及んで「それに対する不安」とかマジで不安なのでしたらそれは銀行取引約定(以下同文)。

不肖このアタクシ、別に大して金貸しの手先やった訳でもないし大昔の話だから知らんけど、4月から融資の弁済が来るわーって話を3月の時点で頭抱えている状態って普通の債務者だったらそんなその日暮らししてねえぞ(口では大変だー(棒読み)とか言って銀行の同情を引こうとはする場合もあるのはあるけど)と思うんだが最近の金貸し事情にはトンと疎いので良く分からん。

ということでまあこの辺も日銀に対するクレクレの一環でそういう話をしている、というだけの話だとは思うのですけれども、こういう話のケツが日銀に持ち込まれる、ということ自体が日銀の政策が本来の業務から逸脱してますよねーと思う中々味わいのある回答でした。

なお、質問の回答はなお続く。


・あれ??ウクライナ情勢の話をしたの???????

今の回答は更に続いてウクライナの話。

『それから、ウクライナ情勢に関しましては、私なりの見方をご説明しました。』

ちょwwwwwwwおまwwwwwwwwwww金懇挨拶要旨に1ミクロンも記載が無かったやんけwwwwwwww見方があるならテキストに書いておけよこのスットコドッコイ。

『これに対し、この情勢を踏まえて金融政策に何か変更があるのか、という金融政策に関連付けたご質問等もありましたが、これに関しては注視していくとお答えした次第です。』

ということなので金懇挨拶の後だか前だかしらんけど意見交換会みたいな場での質問だったのかもしれませんけれども、ちゃんとした見解があるなら金懇テキストに掲載しやがれとしか申し上げようが無いのは、

『ウクライナ情勢に関しては、後ほど他の方からもご質問があるかと思いますので、少しお時間を頂いて現時点の私なりの整理をお伝えしたいと思います。』

以下、ほぼ分量2ページに渡る説明をしておりまして、だったら何でその話を金懇挨拶の方でしないんだよというか実はアドリブでしました、って言うならそれでも良いんですけど、後に残るのは金懇テキストの方がメインなんだからきっちりそっちに書いて欲しいんですけど何ですかこの人???


・金懇挨拶で1ミクロンも取り上げらえていなかったウクライナ情勢に関する長広舌の鑑賞

では以下演説を鑑賞しましょう。

『先に結論を申し上げますと、ご想像に難くないと思いますが、日々、刻々と状況が変わっていますので、その状況を注視するしかないというお答えにならざるを得ない状況です。』

『また、制裁の範囲についても、ご承知の通り、地域によって多少の差があることと、まだ確定していない部分もあることから、こちらに関しても同様に注視するしかない状況です。』

まあそりゃそうだ、としか申し上げようが無いのですが、例えば先日ネタにしたパウエルの議会証言とかでは(冒頭挨拶だからそんな長話できない、という制約はあるのですがそれにしても)「わからんのだから状況をケアフリーにウォッチして状況に応じてニンブルに対応する」で話を済ませておりますが、何故かここで急に中川さんハッスル(D証券ではない)して以下謎に大演説が始まる。

『そのうえで、影響に関しては当然いくつかの波及経路が想定されますので、この先の影響をみていくうえで参考にしていこうと思っている点についてご説明したいと思います。』

から始まるんだがこれがまた良く言えば丁寧な説明なんだが、別にそんなのはお前に説明されんでもわかっとるわという話で、だから政策インプリケーションは何なの、という話が中々出てこないのでありまして・・・・・・・・・

『まずロシア・ウクライナといいますと、原油、天然ガス、小麦辺りを皆さんも思い浮かべられると思いますが、資源や穀物の価格上昇です。』

『それから、当然のことながら貿易活動、物流、それに関わる金融というモノの流れ、お金の流れに変化が生じることになります。』

はあそうですか。

『そして、それらは世界経済および需給環境、物価動向、ひいては各国の金融政策運営や国際金融市場にも影響を与え得るということです。』

そんなのは言われんでもわかってるんだが、だからどうなるのかという話は??

『この辺は既にご案内のことかと思いますが、少しまとめさせて頂くと、』

ちょっと待てさっきの前置きだったのかよ!

『経路については、まず貿易面では、わが国との直接的な貿易量の輸出入全体に占めるロシアとウクライナの割合は、通関ベースでみると、現時点においては然程大きくない数字となっています。従って、この視点のみでは直接的な影響は限定されているように見受けられます。』

『ただし、この視点と申し上げたのは、当然のことながら、日本企業は現地生産・現地販売をしているところもあり、また海外の日本企業同士の取引等も相応にあります。この波及経路による影響は、非常に短時間では見極めにくいでしょうし、他の波及経路による影響と時間差を伴う可能性があると思います。』

やっと話が始まったのだが何かもうちょっと具体的な話は無いのかしら。

『また、国際商品市況では、先ほど申し上げた天然ガスの価格変動が原油以上に非常にスパイクしたものになっているのも目にとまります。天然ガス価格は、著しく上昇した後下落するなど乱高下しており、国際金融市場では、これを見て価格が下落する資産がありリスク資産からの退避がみられるなど、非常に神経質な動きとなっています。』

はいはい。

『それをアセットとして持つバランスシートに対しての影響は、特に 3 月決算が多い日本においても注視するべきだと思いますが、ロシアの天然ガスへの依存度が高く縁も深い欧州においては、経済活動に下押し圧力がかかるというのがもう一つの波及経路になると思います。』

『それから、わが国では、資源と穀物の価格上昇によりエネルギーや食料品を中心に物価が押し上げられる一方で、企業収益の悪化、家計の実質所得の減少などが起こると国内の景気の下押し要因として作用するというのが懸念点と注意点になります。』

うーん何ちゅうか総花的な話ですなあ。

『そしてもう一つの経路としては、先ほど申し上げたように天然ガスを中心としてロシアへの依存度が高い欧州の経済活動に下押し圧力がかかってくるということですが、欧州経済から間接的にわが国の経済に影響が及び得るというのがもう一つの波及経路と考えています。』

さっきと同じやん、いやまあ良いけど。

『このように、多岐にわたる経路がありますので、その範囲は想定し得る限りでは相当広いものです。』

結局何がポイントになるのかとか金融政策のインプリケーションは何なのか、という話は全然無くて、いやそれ別にあんさんに言われんでも皆さん整理しとるわ、という話なのでした、残念無念。

『ただし、足許の紛争の状況は、ご承知の通り、その帰趨自体きわめて不確実性が高いものとなっています。』

それは最初に聞いた。

『日本銀行としては、この問題が新型コロナウイルス感染症からの回復途上にあるわが国経済へ悪影響を及ぼす、及ぼさないという点に関して情勢を注視していくことになると思います。』

いやあの別にさっきの説明もっと簡単で良かったんじゃないですか結論がこれなら・・・・・・・・・

『長くなりましたが、ご質問の京都経済については、やはり実際に影響を感じている取引先企業ないし経済団体の会員があるという声を頂いています。当然、具体的な話はこの席上ありませんでしたが、やはり注視されているというところに関しては意を同じくしたところです。 』


うーんこの大演説。


・政策の肝心な質問の方には大演説は適用されないようです

と、長々と説明のあった後に次の質問は「コストプッシュインフレにどう対応するか」という根源的質問ですが、

『(問) 委員は挨拶の中で、金融政策を通じて影響を及ぼせる範囲と効果を確認しつつ、持続的な成長に向けて適切なサポートを行っていくという趣旨の発言をされました。ウクライナ情勢の激化もありますが、コストプッシュ型インフレに対して金融政策で対応することの是非について、中川委員はどのようにお考えでしょうか。』

とまあ直球ストレート質問が飛んでくるのですが中川さんの回答は・・・・・・・・・

『(答) 状況をよく見極めて都度適切に判断したいということに尽きます。ウクライナ情勢を受けてということでしたが、刻々と状況が変わっています。コストプッシュ型と端的に言って頂いた趣旨も理解しているつもりですが、その背景はやはり様々な状況と切り離して考えられるものではありません。わが国の現状については、本日の挨拶の中でご説明しましたが、その前から色々な形で物価の変動等も起こってきた中で、まだコロナ禍からの回復期にあるという認識でもあります。こうした点を総合的に踏まえて、都度適切な判断をしたいという意味です。』

何じゃこの回答はという感じですが、ウクライナの質問の時は無駄にそもそも話(しかも別にそれ自体新たな知見を加えるような話ではない話)を延々と大演説していたのに、肝心の金融政策のインプリケーションがこれかよという所でありまして、いやまあ何と申しますか・・・・・・・・・・・・・・


・物価についての質問への回答は一転してクッソ長いのですがよく見ると既にご案内の話を延々としているだけな件について

物価と来たので次の質問も物価です。

『(問) 先ほど、ウクライナ情勢の経済、物価情勢への影響について、波及経路を含めて色々ご説明頂きました。物価への影響ですが、日銀ではエネルギー価格等の上昇による物価の上昇が一時的なものであるというように総裁含めて説明してきていると思うのですが、今般のウクライナ情勢の影響等を含めて一時的とは流石に言えない状況になりつつあるのではないかと感じています。エネルギー価格、資源価格上昇を受けた物価の上昇というものが本当に一時的なのかどうか中川委員のご見解をお願いします。』

むしろこれは「本当に一時的なものではない、という場合には2%達成が視野に入ってくると思いますがその場合の金融政策への影響はどうなるでしょう」の方が面白いんですけどね。ああそれから黒ちゃんにこれをぶつけても「それはその時になって考えることでいま議論することではない」というインチキ回答を即答してくると思うので、そういうボスキャラには効かない質問です、と念のため申し添えます(^^)。

ここでまた謎の大演説が開始されるのだがよく見ると既にご案内の話を延々としているだけというのが残念無念。

『(答) 物価、原油価格は、過去、シクリカルに振れを伴って変動していたと私は記憶しています。例えば昨日、10 年 10 か月ぶりの高値であったということは、10 年 10 か月前には、ドルベースでは近いレベルにはあったということで、ずっと右肩上がりないしは富士山の頂上のように平らで安定して上がってきているという状態ではないという事です。』

「富士山の頂上のように平らで安定」とか登山愛好家の全員を敵に回しそうな例えをだしてしまう辺りが脇が甘いですな。と言ってるアタクシは自力で登るのは上野の山でもヒーコラ言う程度に根性は無いのですが富士山頂が平らどころの騒ぎじゃないというのは一応知っとるで。

まあそれはそれとして、

『また、過去には、需給バランスのみではなく地政学的な要因でも動いたことがありますが、それが長期ではなかったことが多いと私はとらえていました。』

でもトレンドでは上がってますよね。

『この点、ロシア・ウクライナを巡る情勢は、過去に対比できるものがないと私は思っています。』

え??そうなの???????中東戦争とか知らんの????????????

『従って、これを除いた状態で、足許の少し前までの状況を振り返ると、繰り返しになりますが、欧米の消費者物価の上昇率は、米国では 7.5%、8%に近づくのでないかと思っている方も多くなってきています。ユーロ圏では足許 5.8%で、食品とエネルギーを除いても 2.9%程度かと思います。英国でも 5%台という状態です。これに関しては、二次波及的な要素も見受けられるという意見もあり、予想物価上昇率や賃金上昇率がインフレ目標と整合的な水準から上振れていると評価され、リスクとしても認識されている状態です。』

やたら数字出して他国の話をしていて、急に何か変なもんでも食ったのかというような感じですね。

『これに対してわが国は、消費者物価の前年比は、──皆さま、分析等々、非常に分かりやすい報道に努めて頂いていますので、感謝を申し上げたいと思いますが──携帯電話通信料引き下げの影響が 1.5%程度の下押し要因になっており、それに対してエネルギー価格の上昇が今までは相応に打ち消していました。これらが打ち消し合った状態であるがゆえに、0%台半ばということであるのですが、』

うーんここまでの話結局全部既に知っとるがなネタですな。

『これが足許 1 月、つまりウクライナ情勢が緊迫化の度合いを高める直前ですが、本年 1 月の数字でみると、挨拶の中にあるかと思いますが、前年同月比の上昇率は、エネルギー価格は 17.9%、食品工業製品では 1.4%となるなど、影響がエネルギー以外の物価の方にも少し波及していることが見受けられる状態です。』

つーかエネルギーと食品しか動いてねえだろ日本の場合。

『もちろん、携帯電話料金が剥落すると 2%に近いということは算数的には想定できるところであるものの、経済のファンダメンタルズが十分に備わっているかというところに、もう一つの大きな視点があると考えています。』

ナンノコッチャというか欧米対比で経済のファンメタが十分に備わっていないんだたったら、そもそもコロナ前までの政策に遡って見直しをしないとダメじゃん、ってどうせ見直しする気無いのは分かってるけど。

『ですので、今申し上げた通り、数字の水準自体もそうですし、物価情勢としてわが国は欧米とは同じ状態でないという認識です。』

なるほど。

『前置きが長くなりましたが、』

吹いたカフェオレ返せwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

『ウクライナ情勢という見通しが立たない状況が不確定要因としてありますので、注目していくことは当然に必要ですし、それが波及していった時の特に悪い方への影響は踏まえたいと思いますが、今の時点で大きな変化、金融政策の方に変化を起こす条件としては、もう少し注視をするところと考えているということです。』

結局意見は無いというのは把握したんだが、どうも金融政策運営に関する質問になると極端に口数が少なくなるし、既に先刻ご承知の質問に対しては物凄い勢いで饒舌になるが、話す内容は既に先刻ご承知の話であって、新たな視点での解釈とかそういうものは一切ない、というのはここまで読んで把握しました。

つまりそこから導出されるインプリケーションは金懇挨拶を見た時に漂うある種突き抜けた感もある棒読み感に示されておりまして(以下の部分は表現に不穏当な点があると認められるので内務省検閲により削除されました^^)。



・とは言え「2%はゴールではなく経済の姿」という発言をしている点についてはちょっと期待したい

この次の質疑なんですけどね。

『(問) ウクライナ情勢についての関連の質問ですが、現時点では大きな金融政策の変更になるかどうかというのはまだ注視する必要があるという趣旨のご発言でしたけれども、』

質問する方がフォローしてるわw

『やはり今後注視していった場合に、金融の緩和方向なのかあるいは引き締め方向なのか、どういった経路というかシナリオというかルートが想定されるとお考えでしょうか。』

こんなの「情勢の変化次第だからシランガナ」としか答えようが無いので回答は当然シランガナになってしまうのは順当なのですが、よく見るとちょっと良い事を言っているので、まあ散々前代未聞の棒読みだのと申し上げておりましたけれども、この回答には少しだけ光明が無いわけでもない、と頑張って褒めるところを探し出した俺様を褒めてやりたい。

『(答) これもまとめてみると同じような回答になってしまうので誠に恐縮なのですが、情勢が過去に例がないものであること、そして、特に金融市場そのものにも影響が及ぶようなものに対しての制裁も見受けられること、それがこれから拡がる可能性もゼロではないという中にあっては、軽々にシナリオを立てるのは、たとえいくつかであってもなかなか難しいというのがお答えになります。』

まあそらそうだ。でもってこの次にちょっとだけこの金懇の中で唯一と言っても良い素晴らしい話がある。

『ただその中で、わが国において、金融政策をどう考えるかということについては、やはり経済に十分な力が備わっているかが重要です。』

そらそうよ。まあ政府日銀が寄ってたかってお注射ばっかりするもんだからリハビリが進まんのだが。

『つまり物価2%を安定的に実現するというのは、繰り返し申し上げている通り、物価上昇率が 2%に達すればゴールということではありません。理想に聞こえるかもしれませんが、ある程度振れはあるものの継続的にそれを維持していくだけの力が生み出され、経済成長を伴って好循環が生まれているという状態を望んで今の金融緩和政策を行っているわけです。』

ほほう。

『これに対して、ウクライナ情勢がそれ自体または様々な波及経路を通して水を差すような状態になるか、幸いにも企業、各関係者、そして政府等の頑張りによりある程度限定された影響にとどまるかが、大きな二つのシナリオではないかと思います。』

というのは良いとしまして、

『その時にわが国経済が示す指標がどのように表れているかによって、その時に一番良い方法で判断して採用していくということになると思います。直接のクリアな回答にはなっておりませんが、ご容赦頂ければと思います。』

という回答をしていまして、いやまあこれは中川さんそこまで意識した発言かどうかは分からんですけれども、「経済情勢が望ましい姿になった結果としての2%」という話にやや寄った説明になっておりまして、なんかとにかく物価は貨幣的現象だから2%目標達成、みたいなどこぞのゴミクズカスダニ一派の説明とは路線が微妙に違う訳でございまして、金融政策を2%と紐付けるのではなく、あくまでも「総合として望ましい経済物価情勢を目指してその結果2%になるんですよ」という感じのフワッとした運営、即ち2%行くか行かないかが政策のメルクマールになるのではなく、あくまでも経済物価情勢を総合的に判断する、みたいな「目標は残るんだけど別にそれが絶対の指標じゃないよ」という意味での2%離れに向かう場合には、普通にそっちに賛同するだろうなあ、という意味での常識人であることは判明したのではないでしょうか(個人の妄想です)。

まあ後は悲しいまでの棒読みを何とかしてくれれば、ということで今後の展開がどうなることやらですな、と最後の最後にやっとフォローを入れて見るアタクシなのでありました。





2022/03/04

お題「中川審議委員金懇初戦:最初から最後まで大本営発表棒読みで終始するわ大本営のアップデートもないわ・・・・・・・」

そら「わからん」以外に何を言えとゆーのかという感じで。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-senate-powell-idJPKCN2L02HB
2022年3月4日3:38 午前
ウクライナ情勢の影響「不透明」、米支出や投資に影響も=FRB議長

〇中川審議委員の金懇デビュー戦がある意味前代未聞だった件

いやー最近って某Bとかいうベンダーでニュース一覧見てると、ニュースカテゴリ「債券市場」で流してると恐ろしい事にヒラ審議委員の金懇ってまるでニュースヘッドラインに流してくれないんですよね(カテゴリを「日本銀行」にすればさすがに流れる)。

まあ雑魚キャラの発言なんぞわざわざ大きなカテゴリーのヘッドラインに出すこたあねえ、という皮肉が効いてて面白いちゃあ面白いのですが、お蔭で中川さんの金懇あるのをすっかり忘れて知り合いから「あれどうだった」と聞かれてあったことを思い出した次第です。

まあつまり何のインパクトも無かったのですが、今回ある意味驚異のインパクトを覚えたのは・・・・・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/ko220303a.htm/
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
京都府金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 中川 順子
2022年3月3日

PDF版はこちらですがHTMLの方が引用楽なので本日はHTMLから引用します。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220303a1.pdf


・「最初から最後まで大本営発表を棒読み」とはこれまた恐ろしいものが出てきました

まあ何ですわ、そもそも論として翌営業日の寄り前の時点でHTML版が既に出ている、という時点で大体お察しな訳ですが、毎度ネタにするから自分の経験上良く分かるのだが、例えば先日ネタにした中村さんとかの場合でもそうですけど、PDF版はエンバーゴと共に出て来るけれども、HTML版はうっかりすると数日のラグがある、というのが仕様になっていまして、このタイミングには結構ムラがあるにせよ、だいたいジンバブエ先生みたいな場合には時間が掛かる、ということで概ねお察しできるかと思います。

でですな、昨日の金懇ですが、正直昨日あるのをすっかり忘れてた(3月の頭にあったなあと先週辺りは認識してたんですが、笑)のですが、昼になって人様から「今日の中川さんのはどうでしたか?」と言われて気が付き読んでみた(人様の方には平謝り^^)訳なのですが・・・・・・・・・・


昨日のワイの中川さん金懇テキスト読みの経緯:「ああ最初は大本営の説明しているのね」→「うーん見通しも大本営か〜」→「政策の話も大本営??」→「あれれ、ご当地経済の話になったゾ」→「ご清聴ありがとうございました」→「」

いやもう凄くてですね、最初から最後まで徹頭徹尾大本営発表の九官鳥状態でして、中村さんが物凄い勢いで一生懸命色々な努力をしている(結果が出ているとは言っていない)金懇テキストを渾身のパワーで打ち出している(努力だけで評価されるのは義務教育までだけど)というのとちょうど比較できてしまうので更に目立つのですが、いやあーたちょっと何ぼ何でも差が凄すぎませんですかねえという所でありまする。


・これは猫を被っているのかはたまた・・・・・・・・・・・・・・

まあ何ですな、中川さんにおかれましては記者会見で何かこうぶっ放す代わりに、金懇の方ではおとなしくしておく、というスキーム(過去にもそういう審議委員は何人かいました)なのかも知れませんが、そもそも就任会見も何か棒読み感のする(個人の感想です)代物だった上にデビュー戦の今回の金懇テキストが徹頭徹尾大本営発表で、中川さんが思う所とかオリジナリティのようなものがまあ見事に行間から伝わらん、という大本営発表棒読み感満載の挨拶とくると、猫を被るにしても着ぐるみ何重に着用してますねんという感じなのですが、なにせ「債券市場」のカテゴリで某B社のニュースヘッドラインを見ていても会見が出てこなかったので(分かっててやってるんですが)昨日は結局会見のチェックをスルーしまして本日出る会見要旨を見たい訳ですが、マーケットインパクトのあるような発言をすればさすがにヘッドラインの扱いも大きくなるということは・・・・・・・・・・・


ちなみに、金懇で自分の考えが一切出てこなかった、と言えば12月1日の安達審議委員の金懇がまさにそれで(https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko211201a.htm/)ございましたが、安達さんの場合は猫被っているのか、あるいは置物一派としてノミネートされているはずなのに置物色を消そうとして生来の主張を引っ込めているのか、はたまた政策委員に出世したので後は余計なことしないで安全運転、なのか存じませんが、まあ何かすっかり何も言わない状態になっておりますけれども、そうは言っても安達さんの場合は置物一派というのがあるのでまあ何か大人の事情があるんだろうなあ、というのはうかがわせてくれる訳です。

然るに、中川さんの場合、別に置物一派で入った訳でもなく、確かに何とかストとかとの系譜とは違いますが、(名門国立大学出身ではありますが)一般職から野村に入社して経営層まで出世されたという立志伝クラスのお方であらされますので、当然の如く立志伝の中で獲得された色々な知見を活かした興味深いお話(別に金融政策直結ネタじゃなくてもジェンダー問題とかキャリアパス多様性の話(中川さんの場合は途中で出戻りとか更に先進的なキャリアパスをたどっておられたのですからなおさら期待しちゃうじゃないですか)とかだって良いんですけど)をお伺いできるものと大いに期待しておった訳でございますよ。置物一派じゃないんだから置物話縛りになる訳でもないので、まあいろんな話が出るのかなーと。

・・・・・・などとブーブーとアタクシが申し上げているのをお読みになられてもアレなので、別に見るべきところは1文字たりとも無いのですが、そうは言いましても失敗した実験だって「この反応は上手くいかないという知見が得られた」ということで意味がある事なので、まあそんな感じでご覧あそばせ。


・情勢が1月展望レポート時点から変化しているのに堂々の1月展望レポート棒読みとな

気を取り直して『2.経済情勢』を読むのだが、この先行き見通しを見て泣いた。

『先行き』って小見出しの所なんですが、

『次に、先行きの見通しですが、感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らいでいくもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみています。』

展望レポート通り。

『やや敷衍しますと、企業部門では、今年度末から来年度初にかけて自動車関連の減産の影響は解消に向かい、グローバルなデジタル関連需要の拡大を背景とした資本財や情報関連の増加も相俟って、輸出・生産は再びはっきりとした増加基調に復していくとみています。設備投資についても、供給制約が緩和に向かうもとで、高水準の企業収益や緩和的な金融環境に支えられて、機械投資やデジタル関連投資、脱炭素化関連の研究開発投資など、広範な分野において増加傾向が明確になっていくと予想しています。家計部門では、感染症対応による行動自粛や供給制約の影響が和らいでいくもとで、ペントアップ需要(いわゆる強制貯蓄の取り崩し)の顕在化もあって、個人消費は回復していくとみています。』

これまた展望レポート通り。

『これらに加え、昨年末に決定された政府の経済対策(事業規模78.9兆円、財政支出55.7兆円)が順次執行されていけば、2022年度を中心に経済を上押しすると考えられます。具体的には、子育て世帯への給付金などの後押しによる個人消費、3度目のワクチン接種などによる政府消費、経済安全保障の強化に向けた設備投資の増加などが見込まれます。』

うーんこれも1月の展望レポートの見通しに入ってるんだよなー。

『以上を踏まえた1月の展望レポートにおける政策委員の実質GDP成長率の中心的な見通しは、2021年度が+2.8%、2022年度が+3.8%、2023年度が+1.1%となっています(図表7)。なお、2022年度の政策委員の大勢見通し(+3.3%〜+4.1%)には0.8%ポイントの幅がありますが、これは昨年4月展望レポートにおける2021年度の大勢見通し(+3.6%〜+4.4%)以来の大きさです。このように、2022年度の成長率の見方は、政策委員間でばらつきがあります。』

それは分かったんだが中川さんのご意見とかそういうのは・・・・・・・・・と思うじゃないですか。そうするとその次には・・・・・・・・・・

『リスク要因』

あれれ?次のコーナー?????

『次に、こうした中心的な見通しに対するリスクについてお話ししますと、感染症の影響を中心に当面は下振れリスクの方が大きいとみていますが、その後は概ね上下にバランスしていると評価しています。』

ということで、見事に展望レポートの棒読みが続くだけという展開になっておりまして、その先もひたすら・・・・・・

『やや詳しく申し上げますと、企業部門では、デジタル関連需要の急拡大という潮流に変化がない中、グローバルに半導体等の需給がタイトな状況は継続しています。そうしたもとで、昨年夏頃のASEAN地域での感染拡大に伴う部品供給制約のように何らかの供給ショックが生じた場合、サプライチェーン障害を通じて、輸出・生産が再び下押しされるリスクがあります。』

『家計部門では、変異株を含む感染症の動向によっては、高齢者を中心に消費活動が再び抑制されるリスクがあります。ただその一方で、ワクチンや治療薬の普及により感染症への警戒感が大きく後退すれば、サービス消費のペントアップ需要の増加が想定以上に大きくなる可能性もあります。』

『また、国際金融市場において、インフレ率の高止まりが続く先進国の金融緩和縮小に向けた動きが意識されているもとで、グローバルな金融環境が想定以上に引き締まると、新興国を中心に海外経済が下振れるリスクがあります。もっとも、各国の家計部門では、感染拡大時の行動制限を受けて貯蓄が大幅に積み上がっていますので、その取り崩しが急速に進み、海外経済が消費活動を中心に上振れる可能性もあります。』

『このほか、感染症の影響が長期化する中、Eコマースの拡大といった個人の消費行動の構造的な変化や、既存事業の規模縮小等による供給制約、業種・企業規模間での労働力の偏りなどにも注意が必要だと考えています。』

なるほど1月の展望レポートの話なんだが・・・・・・と思いますとお察しの通りこの次は、

『3.物価情勢』『現状と先行き』

という小見出しがおっぱじまるという凄すぎる作品。


・全編大本営であっても鉄砲玉をやるならそれはそれで意味があるんですけど・・・・・・・・・・

いやあのちょっとですね、見通しとかリスク要因の話で大本営棒読みするならするでも良いんですけど、1月展望レポートの時から物凄い勢いで外部情勢が動く(BOEやECBのスタンスだってすっかり飛んでしまったけどまあそうだし、何といっても地政学的リスクの盛大な拡大が目の前で起きてるじゃん)中で、1月展望レポートの話を棒読みしておしまいって、それは木戸銭返せ(別に金懇では木戸銭取ってないけど地元の経済界の重鎮を集めている、という時点で物凄い勢いで社会的に見たらコストが掛かっている話)ってレベルなんですけど。

そんでもってですね、いやまあ別に執行部の腹話術人形なら腹話術人形でも、かつての櫻井審議委員のように執行部の鉄砲玉として政策運営に関する考え方とか方向性とか、そういう話を前広にしてくれるような機能を果たしてくれるならそれはそれで意味あるんで、じゃあ金融政策の方の話に飛んでみようじゃないですか、と思いますが、それにしても「経済の見通し」の辺りに関する話なんて、一番オリジナル成分を混在させやすい部分なのに、ここが今は情勢がだいぶ変わってしまっている6週間前の展望レポートの棒読みって何なの一体、という感じでありますな。

#まあさすがにウクライナ情勢に関してのアップデートは会見質疑で質問出てると思いますけどね


・もう一度気を取り直して政策運営の部分を読んでも一切何もないのがこれまた凄い

『4.日本銀行の金融政策』の部分ですけどね・・・・・・・・

最初の小見出しが『新型コロナ対応』である。

『次に、日本銀行の金融政策についてお話しします。』

以下埋め草の如く全部引用して進ぜますが、どこにも何か独自の視点とか何か鉄砲玉による瀬踏みとか、そういう新たな知見の得られるものが一切ない、という物件で、これを堂々と講演しちゃうのはある意味才能かも知れない、という位にアタクシの頭の中がエッシャーのだまし絵状態になっておりますwwwwwwwwww

『日本銀行では、2020年3月以降、感染症への対応として、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム──(a)新型コロナ対応特別オペと(b)CP・社債等の買入れ増額の2つで構成──、(2)国債買入れやドルオペ等による潤沢かつ弾力的な資金供給、(3)ETFおよびJ-REITの買入れの「3つの柱」からなる強力な措置により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めてきました(図表9)。こうした日本銀行の対応は、政府の施策や金融機関の積極的な取組みとも相俟って、効果を発揮してきました。ここにきて、大企業を中心に予備的な流動性需要に落ち着きがみられるようになるなど、わが国の金融環境は全体として改善しました。中小企業の資金繰りについては、総じてみれば改善傾向にあるものの、対面型サービス業など一部になお厳しさが残っています。こうした情勢を踏まえ、昨年12月の金融政策決定会合において、引き続き中小企業等の資金繰り支援に万全を期す観点から、本年3月末までの時限措置としていた新型コロナ対応特別オペのうち、中小企業支援に相当する部分を半年間延長することを決定しました(図表10)。他方、同オペのうち、大企業向けや住宅ローンを中心とする民間債務担保分については、期限通り本年3月末で終了するほか、CP・社債等の買入れ増額措置についても終了し、4月以降は、感染症拡大前と同程度の買入れペースに戻します。』

アホラシイのでパラグラフ丸々引用。どうでもよいんですけど、CP社債買入に関して「4月以降は、感染症拡大前と同程度の買入れペースに戻します」と言ってるのに何で社債の1社あたりの買入上限がちょっとしか下がらないんでしょうかという件についての申し開きなどがある訳もないのであった。

『とはいえ、さらなる変異株出現の可能性もあるなど、感染動向を巡る不確実性は引き続き高い状態が続いています。京都府内の総生産に占める飲食・宿泊サービス業のウェイトが全国平均と比べて高い点を踏まえると、当地でも資金繰りの厳しい先は少なくないのではないかと推察します。こうした状況を踏まえると、延長した特別プログラムのもとで、4月以降も中小企業の資金繰りを丁寧にフォローしていく必要があると考えています。』

そして次の小見出し『気候変動対応』になる。

『次に、日本銀行の気候変動対応についてお話しします。気候変動問題への国際的な関心が高まる中、わが国政府は、2050年までのカーボンニュートラルの実現を目標として掲げています。こうした目標に向けた政策対応は、基本的には政府・国会の役割ですが、気候変動およびそれへの対応は、中長期的に、経済・物価・金融情勢に極めて大きな影響を及ぼしうるものです。このため、日本銀行としては、民間部門による気候変動への対応を支援し、長い目でみたマクロ経済の安定に貢献することは、「物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資する」という金融政策の理念とも整合的であると考えています。』

『こうした基本的な考え方のもと、昨年6月の金融政策決定会合において、金融機関が自らの判断に基づき取り組む気候変動対応の投融資をバックファイナンスする新たな資金供給制度(気候変動対応オペ)を導入することを決定しました(図表11)。その後、制度の詳細を固め、12月下旬に初回のオペをオファーし、2兆円を超える資金供給を実施しました。現在、同オペの貸付対象先には、当地の金融機関を含む計43先が選定されています。また、投融資目標額など一定の開示を行っている金融機関は、同オペの導入を決めた昨年夏頃と比べてもはっきりと増加しており、金融機関の関心の高さが窺えます。』

『わが国の気候変動対応は緒についたばかりです。そうした中で、この気候変動対応オペは、長い目でみて、中央銀行のマンデートを遵守しつつ、マクロ経済の安定に資する息の長い取組みと考えています。今後も、気候変動関連分野での民間部門における多様な取組みを金融面からしっかりサポートするとともに、気候変動問題に対する日本銀行の考え方や取組み方針について、内外の市場関係者はもとより、国民一人一人に正しく理解してもらえるよう、適切な情報発信に努めていきたいと思います。』

凄い棒読み感(個人の感想です)。

そして最後の小見出しが『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』である。

『続いて、ポストコロナも見据えた金融政策運営についてお話ししたいと思います。日本銀行では、2013年4月以来、2%の「物価安定の目標」の早期実現を目指し、大規模な金融緩和を続けてきました。現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」(イールドカーブ・コントロール)については、2018年8月に別の政策委員が当地にお邪魔した際に詳しくご説明したと聞いておりますが、その時から基本的な枠組みは変わっていません。ただ、2%目標の実現には時間がかかることが予想されるもとで、昨年3月、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくために、それまでの施策の点検を実施しました(図表12)。点検の結果、(1)2%を実現するためには、引き続き、経済・物価の押し上げ効果を発揮しているイールドカーブ・コントロールを継続していくことが適当であること、(2)そのためには、持続的な形で、金融緩和を継続していくとともに、経済・物価・金融情勢の変化に対して、躊躇なく、機動的かつ効果的に対応していくことが重要であることを確認しました。こうした基本的な考え方のもと、例えば、金利引き下げ時の金融機関収益へ及ぼす影響を当該金融機関の貸出の状況に応じて一定程度和らげる措置(貸出促進付利制度)を導入しました。また、イールドカーブ・コントロールでは、長期金利(10年物国債金利)が「0%程度」で推移するように長期国債の買入れを行っていますが、その際、ある程度変動しうるとしていた長期金利の変動幅は「±0.25%程度」であることを明確化しました。さらに、ETFやJ-REITの買入れについても、市場が大きく不安定化した場合に大規模に買い入れるのが効果的であるとの点検結果を踏まえ、メリハリを付けて買入れを行うこととしました。』

昔の話はもう結構なんですが何だこのクッソ長い説明は。

『このように、持続性と機動性が増したイールドカーブ・コントロールのもとで、強力な金融緩和を粘り強く続けることが、時間はかかるでしょうが、2%の「物価安定の目標」の達成に向けて必要な政策であると考えます。もっとも、単純に2%を実現すればよいとも考えていません。目指しているのは、緩和的な金融環境が企業収益の増加や労働需給の改善を促し、その結果として、賃金と物価が持続的に上昇していく好循環の形成です。そのためには、家計の間で値上げ許容度が高まり、物価がある程度上昇するとの物価観が、経済主体の間に定着することが必要となります。言い換えれば、物価上昇を上回る経済成長の良さ・利点を国全体で享受し、実感できる社会を実現することが重要です。』

だったら物価目標は「目標」じゃなくて「適切な政策を実施した結果を示すメルクマール」なんじゃないですかねえ。

『当地企業もそうだと思いますが、生産・販売・投資・資金管理など海外での活動を拡大・多様化・高度化させている本邦企業では、アジアなどの新興国の成長を肌で感じておられることと思います。競争が激化する中での本邦企業の成長や、わが国全体の成長のためのデジタル化・脱炭素社会の実現に向けて、産業構造や社会システム・経済構造の変革は待ったなしとなっています。』

「アジアなどの新興国の成長を肌で感じておられることと思います」って何を今さら。

『日本銀行としても、物価の安定と金融システムの安定というマンデートのもと、金融政策を通じて影響を及ぼせる範囲と効果を確認しつつ、わが国の持続的な成長に向けて適切なサポートを続けていく必要があると感じています。』

ということで、もう最初から最後まで棒読みなんですが、アタクシが棒読み棒読みと悪態をつくだけでもアレですので、こうやって棒読み振りの記録を残しておくのはやっておかねば!と思いまして棒読み記録を残すのでありました。


・・・・・いやまあこれが全部猫かぶりで会見ではキレッキレの話をしていた、というのだと上記の悪態は撤回して伏してお詫び申し上げる所なのですが、なにせ「債券市場」のヘッドラインに出て無かったし他のベンダーでも別に取り上げられてる雰囲気も無かったし、誰か話題にしてたような感じは無かったし・・・・・・・・・・・・・


・安達さんと中川さんが揃って大本営棒読みというのはちょっと・・・・・・・・・・・

まあ別にどうでもいいちゃあどうでもよいのかもしれませんけど、安達さんにしても中川さんにしても概ねキャリアはセルサイドというか証券のキャリアが長いお方である、と存じておりますが、いやもうこの2名が揃いも揃って大本営発表棒読みしかしない、って話になりますと、証券業界のレピュテーションにも差しさわりのある世界になってしまうんでマジでもうちょっと何とかして頂きたいんですけど、まあ高田さんが今後名誉挽回して下さるとは大いに期待はしておりますけれども、いやもうちょっと参りましたって感じです。





2022/03/03

お題「パウエル証言は一応ウクライナの留保はあるけど3月利上げは予告/インフレ実感という分析スタッフペーパーが早速登場とな」

もうあんたたちなんなのよ!!(急にカマキャラになる)
https://jp.reuters.com/markets/bonds/us

米国債3ヶ月 利回り
US3MT=RR +0.335 +0.003
米国債2年 利回り
US2YT=RR +1.492 +0.187
米国債5年 利回り
US5YT=RR +1.732 +0.178
米国債10年 利回り
US10YT=RR +1.839 +0.128

いやーもう何をやってるんだか・・・・・・・・

〇パウエル議会証言は「まあ事態がよっぽど急変しなけばやっぱり3月利上げよ」とのお告げ

https://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/powell20220302a.htm
March 02, 2022
Semiannual Monetary Policy Report to the Congress
Chair Pro Tempore Jerome H. Powell
Before the Committee on Financial Services, U.S. House of Representatives, Washington, D.C.

うっかりしておりましたがパウエルはん、
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/other20220204a.htm
February 04, 2022
Federal Reserve Board names Jerome H. Powell as Chair Pro Tempore, pending Senate confirmation to a second term as Chair of the Board of Governors
For release at 3:00 p.m. EST

議長再任に関して上院での承認がペンディングになっている(けど理事の任期はまだ2028年まである)から、やってることは議長のまんまだけど仮の議長だか何だかなのね。

さて、まあ寝起きでもあるので手抜きで金融政策の所だけざざっと読むのですが、まあ小見出しの通りだったように思えます。

#米国債券が売られたのはこれじゃなくて停戦交渉が始まる方なんですかよくわかりません

まあ手抜き申しましてもそもそも経済の部分も少しだけしかなくて、ほぼ金融政策のお話になります。ということで以下の引用は最初に示した方の議会証言冒頭挨拶の方からの引用になります。宜しゅうに。

『Monetary Policy』ってところから。

・出オチのように高インフレはアカンという話を始めている時点であとはお察し

『We understand that high inflation imposes significant hardship, especially on those least able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation.』

金融政策というパートの一発目がいきなりこれである。平常運転は平常運転なんですけど。

『We know that the best thing we can do to support a strong labor market is to promote a long expansion, and that is only possible in an environment of price stability.』

物価安定無くして長期の景気拡大や雇用の最大化は無い、とのお告げ。

『The Committee will continue to monitor incoming economic data and will adjust the stance of monetary policy as appropriate to manage risks that could impede the attainment of its goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』

普段の声明文で言ってるような表現ですな。

『We continue to expect inflation to decline over the course of the year as supply constraints ease and demand moderates because of the waning effects of fiscal support and the removal of monetary policy accommodation. But we are attentive to the risks of potential further upward pressure on inflation expectations and inflation itself from a number of factors. We will use our policy tools as appropriate to prevent higher inflation from becoming entrenched while promoting a sustainable expansion and a strong labor market.』

もう全然通常運転でこの前のFOMCの声明文やオープニングリマークで言ってたようなことをなぞっておりますが、まあここら辺に関しては「おまいらウクライナがどうのこうのゆうても利上げは(50にはならんのでしょうけど・・・・・・)やるぞコノヤロー」というのを示すためにも、わざと前回FOMCの後を思い出させるように同じ表現使ったんでネーノとおもいました(個人の感想です)。


・でもって3月利上げ予告

『Our monetary policy has been adapting to the evolving economic environment, and it will continue to do so. We have phased out our net asset purchases. With inflation well above 2 percent and a strong labor market, we expect it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate at our meeting later this month.』

はい今月利上げ宣言来ました。そらまあウクライナ情勢がここからとんでもなく悪化して世界大金融危機とか、(どういうパスかは分からんが)米国経済大災厄モードとかにならん限りは利上げするとの事です。まあコンセンサス自体は「そうは言っても米国は50はやらんにしても25はやるじゃろ」という辺りだとは思うので。コンセンサスビュー通りではあるんですが、利上げ見通しを物凄い勢いで剥がしながらの相場でございましたのでそのカウンターパンチの影響ってのは昨晩の市場にあったのか無かったのか(わからん)。


・利上げとバランスシート縮小の話についても従来通りのお話

『The process of removing policy accommodation in current circumstances will involve both increases in the target range of the federal funds rate and reduction in the size of the Federal Reserve's balance sheet.』

はい来ました。

『As the FOMC noted in January, the federal funds rate is our primary means of adjusting the stance of monetary policy. Reducing our balance sheet will commence after the process of raising interest rates has begun, and will proceed in a predictable manner primarily through adjustments to reinvestments.』

これまでと全く同じ話ですね。


・ウクライナ情勢に関してのコメントは「とにかくよーわからんので情勢によってニンブルに反応するわ」でした

そらまあそういうしかないという事かも知れませんが、明白な景気下押しみたいな言い方はしておらず、まあもともとが出たとこ勝負でやっていきますよ今回のインフレ対処利上げ、というのがあるのでそれが更に出たとこ勝負になった、という話だと割り切ってしまう訳ですが。

『The near-term effects on the U.S. economy of the invasion of Ukraine, the ongoing war, the sanctions, and of events to come, remain highly uncertain.』

でもってその影響がどうのこうのとかそういう話は一切なく(そもそも議会証言冒頭挨拶だから分量が少ないせいもあるのかも知れませんが)、その次には、

『Making appropriate monetary policy in this environment requires a recognition that the economy evolves in unexpected ways. We will need to be nimble in responding to incoming data and the evolving outlook.』

と、最近はやりのパワーワード(かどうかは知らんが)「ニンブル」を持ち出していますが、要は「出たとこ勝負」ということでありまする。まあそういう意味では相変わらず政策ネタで何とかストが「先行きの政策金利パスがー」みたいな話をしたがるのは、ウッドワード論文の呪縛だか何だか知らんけど、「政策の先行きパスを明確化するのが良い」みたいなのに毒されてますなあと思う訳で、そもそも経済がダイナミックにああだこうだと動く中、見通しだって当たりもしないのに、先行きの政策金利パスとか決め打ちできる訳ないじゃん(個人の感想です)という話しなんですが、そうは言っても「FEDの政策は出たとこ勝負」とか言ってると多分頭が悪そうにしか見えないでしょうから看板背負ってる何とかストさんはご苦労なこったと思うのでありました。


・メンバー個人の金融商品取引に関する倫理規定新ルールに関して

以下は議会証言的には大事な話だがワシらの現世利益に直接かかわる話とはちとずれるので引用だけ。

『Maintaining the trust and confidence of the public is essential to our work. Last month, the Federal Reserve finalized a comprehensive set of new ethics rules to substantially strengthen the investment restrictions for senior Federal Reserve officials. These new rules will guard against even the appearance of any conflict of interest. They are tough and best in class in government, here and around the world.』

「They are tough and best in class in government, here and around the world.」ってなーにハッタリかましてるんだか、とルールを見もしないのに思っているアタクシ。

でもって最後はご挨拶です。

『We understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We at the Federal Reserve will do everything we can to achieve our maximum-employment and price-stability goals.

Thank you. I am happy to take your questions.』



〇物価のなんちゃらかんちゃらスタッフペーパーが早速出ているのですが・・・・・・・・・・・・・・

いやー昨日ネタにしておいて良かったわもうスタッフペーパーが出て来るとは。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2022/wp22j02.htm/
わが国における家計のインフレ実感と消費者物価上昇率
2022年3月2日
高橋悠輔*1
玉生揚一郎*2

インフレ「実感」キタコレという感じですが、ここで今回のスタッフの皆様の所属を拝見しますと(脚注に掲載される、ああ一応メールアドレスの記載はこっちでは割愛しておきます)

*1日本銀行企画局 
*2日本銀行企画局

とあるので、昨日ネタにしまして今般より実施される予定の『「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップ』の話だし、企画局様が色々と素材を出すと思われます「第1回「わが国の物価変動の特徴点」」に関連する奴じゃんまさに、と思ったので、まあ数学的分析の部分を全部ぶっとばしてそれ以外の所を読んでみた。

本文の前に要旨の方を先に読むので上記HTMLから引用します。

『要旨』

『本稿では、わが国における家計のインフレ実感の形成メカニズムに関する分析を行い、インフレ実感が消費者物価上昇率より高い背景について考察した。』

日本の物価統計はヘドニックが無駄に効きすぎているのと、購入頻度の高い生活物価的な部分で日常の消費の実感と乖離があるから、の2点しかあり得んじゃろ、などとドシロートの第2種兼業主婦のアタクシとしては思うのですが、などと勝手に結論付けてはいけないので以下読んでみましょう。

『個票データを用いたクロスセクション分析からは、家計の消費パターンに影響を及ぼしうる社会人口学的な属性のほか、センチメントや日本銀行が掲げる「物価安定の目標」の認知度など、様々な要因がインフレ実感に影響していることが示された。』

何か胡散臭い・・・・・・・・・(個人の感想です)

『また、こうしたインフレ実感は、センチメントや「物価安定の目標」の認知度などとともに、家計の値上げ許容度に影響を及ぼすことが示された。』

いや別にワイは値上げ許容しとらんぞ(そんな話はしていない)。

『さらに、集計データを用いて個別の財・サービスの価格変動がインフレ実感に与える影響について分析したところ、インフレ実感の変化の大部分は、食料工業製品や石油製品に加え、わが国の消費者物価指数では集計対象に含まれていない住宅価格によって説明可能であることが示された。』

住宅価格?????

『このことは、家計がインフレ実感を形成する際、消費者物価指数とは異なる財・サービスのバスケットを念頭に置いている可能性を示唆している。』

という結論になっていて、じゃあ政策インプリケーションは何なのよという話になるんですが、これだけだと何を言ってるのかわからんから仕方が無いので本文を読む破目になる、というのが今回のわけわからん要旨の諸葛孔明の罠である(ソウジャナイ)。


本文だが堂々の日本銀行ワーキングペーパーシリーズであった。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2022/data/wp22j02.pdf
わが国における家計のインフレ実感と消費者物価上昇率

最初は今引用した要旨なので、さっそく本文に入るが、だいたいこの手のWPは仕様として最初の部分を読むとだいたいの筋書きが明らかになり、分析項については数Vまでで頭が止まっており、しかも恐らく数Tも覚えていないであろうアタクシが読んでも意味がないので目を泳がせ、最後に結論項を読む、というのがいつものパターンなので真面目に読みたい方は上記URL先にいってくだせえ。


・いきなり凄い出オチがぶっこまれるのだが、本来はここから導出されるのは・・・・・・・・・・

『1 はじめに』から。

『金融政策で目標とされる物価指数は、国民の実感に即していることが重要であると指摘されている1。』

ほうほう。しかもこの脚注、『1例えば、European Central Bank (2003) や日本銀行 (2013) を参照。』と中央銀行が仰せの用ですよね。

でもってですね、なんか微妙に良く分からんさっきの「要旨」の結論っぽい部分にさっき引用したように、「このことは、家計がインフレ実感を形成する際、消費者物価指数とは異なる財・サービスのバスケットを念頭に置いている可能性を示唆している。」ってあるんですから、ここから導出される結論は、

「そもそも現在のCPI統計を使って物価目標2%を設定しているというのが正しいのかどうかは再検討の必要があるのではなかろうか」

という話になるんじゃないですかねえ、などと値がミジンコ脳の単細胞生物な不肖このアタクシなんぞは思ってしまうのですが、まあ読んでみましょう(なお結局細かくは読めていないので詳しくは皆さんご覧になって欲しい所です、後でも申し上げるがオモロイのはオモロイ)。

・インフレ予想とインフレ実感というお話が始まるのだが

『もっとも、わが国では、図 1 にみられるように、家計のインフレ実感が消費者物価上昇率より高くなっている。こうしたインフレ実感と統計上の物価上昇率の差異は、多くの先進国で共通してみられているものの、その要因については未解明な部分が大きい。そのため、こうした事象は「インフレ実感の難題(inflation perception conundrum)」とも呼ばれ、近年、注目を集めている(Abildgren and Kuchler 2021)。』

不肖このアタクシ、頭が悪くてさっぱり分からんのだが、それは「インフレ時間の難題」ではなくて、金融政策のメルクマールとしている物価統計の方に何らかの欠陥があるから、なのではないかと、そっちの方を疑ってしまうのですが、どうもこの「インフレ目標ハ神聖ニシテ侵スベカラズ」みたいなものがあるらしく(個人の妄想です)、何故かそっちは所与で話が行われるのは不思議で仕方ない。

・・・・・・でですよ、その辺に関連して物価目標の使い方についてパウエルさんになってから徐々に「総合判断」の比重が上がっているような感じになっている(個人の感想です)ってのは、インフレ目標2%にすべてを合わせに行く、ということが本末転倒になりかねないという事を考えだしてるんでネーノとか思ってしまうのですが、まあ何せ黒田日銀は2%教の熱烈な信者(その割には全然達成しないのを威張る有様なのが訳分らんが)なので仕方ない。

でもって本文では図表が貼られていますがそんなものを貼るスキルはアタクシにはないので本文を見てちょんまげでありその次に進む。

『現代のマクロ経済理論では、インフレ予想の物価上昇率に対する影響の重要性が指摘されるなど、インフレ予想は学界や中央銀行界において中心的な関心事の一つであり、先行研究が数多く存在する。』

ふーん(棒読み)。

『対照的に、インフレ実感については、これまであまり関心が寄せられず、先行研究の数も限られている。』

そもそもそれを分けてるのが何が何だか良く分からんですけどね。

『わが国を対象とした先行研究では、家計の消費パターンに影響を及ぼしうる社会人口学的な属性に加え、購入頻度の高い財の価格変動が、インフレ実感に影響していることが指摘されてきたが、インフレ実感と消費者物価上昇率の差異については、これまであまり分析されてこなかった。』

だって日本の物価統計ってヘドニックアホみたいにかかってるんだもん品質調整についてもうちょっと考え方を改良した方がエエンチャウノ??などと素人は思うのですが・・・・・・・・・


・生活意識アンケート使って分析したようですな。

『そこで、本稿では、日本銀行が実施している『生活意識に関するアンケート調査』(以下、『生活意識調査』)を用いて、インフレ実感の形成メカニズムに関する分析を行い、インフレ実感と消費者物価上昇率の間に差異が生じる背景について考察する。』

あのアンケートの回答って傾向見るのには良いと思うんだが一目見て回答に癖がかなりあると思うんだが、と一応曲がりなりにも毎回確認している素人のワイとしては思うのですが、まあそういうのは超優秀なスタッフの皆さま(別にイヤミを言っている訳ではない)がよしなに分析されていると存じます、というか分析項を見ろという所ですかそうですか。

どのように分析しているかというのは日本語で以下のように記載されているがちんぷんかんぷんである(無学)。

『まず、『生活意識調査』の個票データを用いたクロスセクション分析によって、先行研究で指摘されてきた家計の社会人口学的な属性を含む、インフレ実感に影響を及ぼす要因を明らかにする。次に、集計データを用いて、個別の財・サービスの価格変動がインフレ実感に与える影響について、LASSO(least absolute shrinkage and selection operator)による分析を行う。』

興味のあるかたは分析項をよんでちょ。

『本稿の主な分析結果は、以下の 2 つにまとめられる。』

以下はさっき要旨で書いてあったことと同じです。

『第一に、クロスセクション分析からは、家計の消費パターンに影響を及ぼしうる社会人口学的な属性のほか、センチメントや日本銀行が掲げる「物価安定の目標」の認知度など、様々な要因がインフレ実感の形成に重要な役割を果たしていることが示された。また、こうしたインフレ実感は、センチメントや「物価安定の目標」の認知度などとともに、家計の値上げ許容度に影響を及ぼすことが示された。』

『第二に、インフレ実感の変化の大部分は、食料工業製品や石油製品に加え、わが国の消費者物価指数では集計対象に含まれていない住宅価格によって説明可能であることが示された。このことは、家計がインフレ実感を形成する際、消費者物価指数とは異なる財・サービスのバスケットを念頭に置いている可能性を示唆している。』


・さらに何か能書きが続く

まあ上記の所でぶった切っても良かったんですが、以下一応引用します。今回の研究がどのような点で新しい知見を示すことが出来ているか、という宣伝文句(とか言うと怒られますが)になります。

『本研究は、家計の属性に着目してインフレ実感の異質性が生じる要因を追究してきた一連の学術研究に関連付けられる。これまでの研究では、家計の社会人口学的な属性をはじめ、様々な属性がインフレ実感に影響を及ぼすことが明らかにされてきた(Jonung 1981、Bryan and Venkatu 2001、Christensen et al. 2006、Del Giovane et al. 2009、末廣ほか 2018)。』

『本稿の貢献は、社会人口学的な属性のほか、センチメントやインフレ目標の認知度などが、インフレ実感に影響を及ぼす重要な要因であることを、わが国のデータを用いて示した点である。』

『また、先行研究では、家計のインフレ実感の変化にも注目し、購入頻度の高い財・サービス、典型的には食料品やエネルギーの価格変動が重要な要因であることが明らかにされてきた(Ranyard et al. 2008、Georganas et al. 2014、鎌田ほか 2015、Abildgren and Kuchler 2021)。もっとも、最近の研究では、住居費を含むより広範な要因が、家計のインフレ実感に影響を及ぼすと主張されている(Ha lka and Lyziak 2015、Stanis lawska 2019、Zekaite 2020、European Central Bank 2021)。』

『本稿の結果は、わが国についても、家計が食料品やエネルギーだけでなく住宅価格を物価変動の重要な要因とみなしている可能性を示すことで、既存の研究に新たな知見を加えるものである。』

でもって更に宣伝は続く。

『最後に、本研究は、人々が価格の変化をどのように認知するのかという点について、消費者行動の観点から分析した学術研究と結び付けられる。先行研究では、値上げは、しばしば消費者からは不公平だとみなされ(Kahneman et al. 1986)、後悔や怒りといった感情を引き起こすこと(Rotemberg 2009)が指摘されている。』

この点にも貢献しているのかよ!

『本稿の貢献は、インフレ実感やインフレ目標の認知度が、消費者の値上げ許容度に影響を与えることを明らかにした点である。』

なお、この部分に関しては面白いのだが謎の結論になっておりまして後でちょっとネタにします。

『本稿の構成は以下の通りである。まず、2 節では、『生活意識調査』の概要を解説する。続いて 3 節では、どのような家計の属性がインフレ実感の異質性につながるのかを分析し、こうしたインフレ実感が家計の値上げ許容度に及ぼす影響について検討する。4 節では、インフレ実感の変動要因について検証するため、消費者物価指数の財・サービス分類に住宅価格を加えた推計を行う。5 節はまとめである。』

ということで、チラ見しても面白い(ただし数学的な分析の話はアタクシ全部飛ばしている事をご了承ください)のですが、見ててホゲーと思ったのはこの「インフレ目標の認知度とインフレ実感」の話。


・インフレ実感が高くない方が値上げ許容度が大きいとはまあ何となく言いたいことは分かるが判じ物のような話だ

『3 家計のインフレ実感と値上げ許容度』という所なんですけどね・・・・・・・・・本文6ページ、PDFの7枚目の所の部分が中々の判じ物。

『3 家計のインフレ実感と値上げ許容度

本節では、家計が消費者物価上昇率よりも高いインフレ実感を形成する傾向について、家計の属性に着目したクロスセクション分析を行う。』

ほう。

『まず、インフレ実感と、様々な家計の属性の関係について分析を行い、家計の消費パターンに影響を及ぼしうる社会人口学的な属性のほか、センチメントや「物価安定の目標」の認知度など、様々な要因がインフレ実感に影響を及ぼすことを明らかにする。』

ほうほう。

『そのうえで、インフレ実感の低下やセンチメントの改善、「物価安定の目標」に対する認知度の向上などが、家計の値上げ許容度を改善することに寄与することを提示する。』

ほえ???

ナンジャソラという感じで、この次に『3.1 インフレ実感と家計の属性』というでのああだこうだとがあるのですが、その結論を全部すっ飛ばして『3.2 値上げ許容度とインフレ実感』に飛びますと、本文13ページまで飛ぶんですが、

『これまでのクロスセクション分析からは、家計のインフレ実感は、社会人口学的な属性のほか、センチメントや「物価安定の目標」の認知度など、様々な要因の影響を受けることが明らかとなった。続いて、本小節では、インフレ実感が家計行動に影響を及ぼしうるチャネルの一つとして、値上げに対する許容度に着目して分析を行う。』

ということで分析しているのですが、この「値上げに対する許容度」として本文17ページ以降を見ますと、

『こうした観点について、『生活意識調査』は、家計が値上げを好ましいことと考えるか否かを調査している。そこで、本稿ではこの設問を利用し、値上げが「好ましいことだ」と答えた回答者の比率から「困ったことだ」と答えた回答者の比率を差し引いて、家計の値上げ許容度(DI)を算出している。』

ということで回答をしとるのですが、うーんそれが本当に家計の値上げ許容度なんかい、とは思ってしまうのですけど、今のに続いて、

『図 6 は、DI の推移を示しているが、2000 年代半ばの資源価格上昇にともなって値上げ許容度は悪化をはじめ、その後、世界金融危機の発生とともにボトムをつけた後、緩やかに上昇している。こうした値上げ許容度の動きについて、日本銀行 (2018) は、インフレ実感やインフレ予想の大幅な上昇は、家計の値上げ許容度の押し下げに寄与する一方、雇用や賃金、景気の現状や先行きに対する見方の改善は、許容度を押し上げる方向に作用しているとの実証結果を示している。こうした知見にもとづき、本小節では、家計の様々な属性が、値上げ許容度にどのように影響を及ぼすかを分析する。』

って分析しているんですが、その結論が本文19ページにあって、

『3.2.2 推計結果

推計結果は、表 3 に示された通りである。ベースラインの推計結果をモデル (A) として示しており、一列目は「好ましいこと」、二列目は「困ったこと」という選択肢にかかる係数の推計結果を示している。』

『まず、インフレ実感について係数を確認すると、興味深い結果が得られている。すなわち、インフレ実感の上昇は、「好ましいこと」と回答する確率には有意に影響しない一方、「困ったこと」と回答する確率を有意に上昇させる。図 7 では、ベースラインの推計結果にもとづき、「好ましいこと」または「困ったこと」を回答者が選択する平均的な確率を、インフレ実感別に示している。』

『ある家計について、インフレ実感が 10% から 2%に低下した場合、「好ましいこと」を選択する確率は 1.8% ポイント上昇し、「困ったこと」を選択する確率は 7.9% ポイント低下する。こうした数字を足し合わせると、値上げ許容度(確率の差分として算出)は約 10% ポイント改善するとみられる。』

お、おぅ・・・・・・

いやまあ何となく言わんとしているのは分からんでもないのですが、なんか従来の適合的な期待形成の話とか、インフレ予想に直接働きかける云々の話との整合性が(あるにはあるように確かに読めるのですが)物凄く複雑怪奇になっておりまして、それだったらややこしい話を振り回すんじゃなくて、単純に「雇用や賃金、景気の現状や先行きに対する見方の改善は、許容度を押し上げる方向に作用している」によって物価安定目標を達成する。つまり物価に過度にフォーカスするんじゃなくて国民厚生考えて総合判断すれば結果として物価2%は達成できる、というように「ターゲット」なのではなくて、「望ましい政策を行った結果としてこうなるというメルクマール」という形に変更した方がエエンチャイマスカ、という結論になると思うのですが、はてさてこれをどう料理するんでしょ日銀は。








2022/03/02

お題「エライ早くに審議委員人事のノミネート/怪しげな企画があるようですが/中村審議委員ネタのオマケ(忘れてた小ネタ)」

うひょー
https://jp.reuters.com/markets/bonds/us

米国債3ヶ月 利回り
US3MT=RR +0.325 -0.035
米国債2年 利回り
US2YT=RR +1.313 -0.115
米国債5年 利回り
US5YT=RR +1.573 -0.146
米国債10年 利回り
US10YT=RR +1.722 -0.117

いやーウクライナ云々の話は展開が速すぎだしそもそもアタクシ知見がある訳でもないので(独ソ戦の大戦場だったくらいしか知らんという知見の無さ)何が何だかではあるのですが、スタグフレーションとかやだなあとか最早小学生並みの感想しかないですすいませんすいません。

まあ良く分からんからポジション巻き戻しなんですよねこれ(と言ってるがそれすらも良く分からんがな・・・・・・)。

〇日銀審議委員人事から正常化とな(鈴木さんと片岡さんの後任ノミネート)

来年度予算案の年度内成立が確定したから、というのは分かるのだが今回はまたエライ早くに出ましたな。

https://jp.reuters.com/article/idJPT9N2UC00J
2022年3月1日11:20 午前
日銀審議委員に岡三・高田氏と三井住友・田村氏=政府内示

『[東京 1日 ロイター] - 政府は1日、今年7月23日に任期を迎える日銀審議委員2人の後任として、岡三証券の高田創グローバル・リサーチ・センター理事長と三井住友銀行上席顧問の田村直樹氏を充てる人事を、国会同意人事案として衆参両院に提示した。』(上記URL先より)

ということで、最初高田さんの名前の方だけどこぞのヘッドラインで出てきて。「はて高田さんは片岡さんの後任(何とかスト)なのか鈴木さん(銀行経営者)なのか???」と思っていたのですが、よく考えたら2人同時に就任するのに何で一人の名前しかでませんねんと更に???と思ったら田村さんの名前が出てきたんだが、もうちょっとこうヘッドラインの打ち方を考えて頂きたい(ちなみにロイターさんでは無いのでご安心?下さい)。

高田さんはご案内の通り、ではあるのですが、ちょっとだけ気になるのは最近ウケ狙いなんだか知りませんけど結構素っ頓狂な事を言ったり、リフレ寄りのコメントしてたりして(よって実は最近はあんまり高田さんのコメントとか追ってないんですサーセン)、何ちゅうかこう人生というのは大変なもんですなあ(婉曲表現)とかそういう感想をアタクシ的には持っておったりするのでその辺が微妙なのですが(個人の感想です)、その前は皆さまご案内の通りの普通にまともな事をまともにお話して下さる安定と信頼の方である、というようなイメージが強いのでまあ良かったんじゃないですかねえ、というか片岡さん→高田さんって格付けアップ利回りアップの夢の入れ替えみたいでよかったよかったよかった。

でもって田村さんに関しては存じ上げません(というかアタクシ概ね円債村の隅っこの方でクダ巻ながらゴロゴロしてるだけの人なので偉い人の話しとか全然知らんので端から当然なのですが)のですが、報道などを拝読するに銀行の本流も本流をやっておられた方のようで、経営の手腕も含めて金融政策もそうですけど、何か浮ついてフワフワしている(個人の感想です)今の日銀の政策委員会、本来は取締役会なんでちゃんとガバナンスを効かせて頂きたいのですが、ずーっと日銀を野次馬として眺めておりますアタクシの個人の感想です的には「新法以来で最大のガバナンスガバガバ状態」となっている(理由は無能を安倍ぴょんがバンバン送り込んだから)という状態のタガを締め直して頂くことも期待できるのではないか、と思ってこれは良い人事、と思っておる所でございます(今の所の感想ですが)。

・・・・・まあ何ですな、とりあえず置物一派とかいう元々碌でも無いのに後から送り込まれる物体が更に碌でもないという「馬鹿を部門長に外部からスカウトしたら馬鹿なもんだから自分より馬鹿ばかりを連れてきて部門崩壊」みたいな悲しい負の連鎖が岸田さんにチェンジして強制終了していただけた(高田さんについては最近のコメントがちょっとアレなので若干判断を留保したい所はあるのですが・・・・・・)というのはアリガタヤと存じます。

正常化の第一歩は人事から、ということでまあこれによって黒ちゃんの下で正常化の道が展望できるなどというような甘い事は別に考えておりませんので、まあ「直ちに影響はない」って奴ではあるのですが、とりあえずまともな議論が出来て、決定会合の主な意見だったり、決定会合の議事要旨が悪態の練習ではなくて、鑑賞に耐えられるような物件に戻って頂けるようになることを心より期待いたしますし、まあこれでさすがにリフレ路線終了の巻だし、マイナス金利だの、マイナス金利の失敗を誤魔化すためにぶっこんだYCC以降の昭和温泉旅館金融政策(その前からそうでしたけどYCCからが本格的な昭和温泉旅館ですな)も是正への道になって頂きたく祈念するところ大であります。

という訳で別に今すぐどうだこうだという事は無いと思うのですが、置物路線バイバイというのが実に結構で岸田政権になった効能が出ましたわという所でありまする。


〇ところでこのワークショップは何ぞ???

先週金曜日に出てたやつなんですけどね。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220225h.htm/
「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップの開催
2022年2月25日
日本銀行

えー、オーバーシュート型コミットメントによってインフレ期待が上がって、マイナス金利とQQE+YCCを継続すると2%物価目標に行くんじゃなかったでしたっけー(棒読み)、などと言ってる場合じゃないのはわかるのですが、突如何をおっぱじめたのかと思って内容を拝見すると・・・・・・・・・・

『新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、米欧諸国では消費者物価が大幅に上昇するなど、世界的に物価情勢が大きく変化しています。わが国でも、国内企業物価が約40年振りの上昇率を示すなど物価上昇圧力は高まっていますが、消費者物価は、依然として「物価安定の目標」である2%を下回る状況が続いています。日本銀行では、こうしたコロナ禍で浮き彫りになった内外の物価動向の違いも含め、最近のわが国の物価変動とその背景について、改めて分析を深める必要があると考えています。』

遂に「海外だって物価が上がらなくなっているのだから日本が中々2%行かないのも残念だが止むを得ない」などという言い訳が通用しなくなってケツに火が点いたのでしょうかかねえ、と思いますが、「改めて分析を深める必要がある」ってお前ら何年物価目標未達やってて今更話をしてるんだという事で、まあこういうのを公言してしまう時点で「2年で2%」とか言ってたのただの根拠のない話でしたと告白しているようなもんですわな。

・・・・・というとただの悪態になってしまうのですが、別の言い方をしますと、とうとう表立っても「2年で2%とかあれは全くのハッタリで根拠のない話でした」という事を言うようになっている、ということでもありますので、これを好意的(??)に解釈すれば、ソロリソロリと黒田レジームからのシフトを日銀の中でも行っている、ということでもありますわな。

『本ワークショップは、日本銀行の役員・関連部署だけでなく、経済学や実証分析の専門家・学者などの方にも参加していただくことで、コロナ禍における物価動向を巡る諸問題について、幅広く討議し、外部の知見も取り入れながら、理解を深めることを目的とするものです。』

ポスト黒田時代の理論武装に向けた動きと仲間集めですねわかります。

『本年3月29日(火)に第1回、5月30日(月)に第2回を開催し、その後も、必要に応じて、追加の会合を開催する予定です。各回の暫定的なテーマは次のとおりです(プログラム案 [PDF 101KB] )。

第1回 わが国の物価変動の特徴点(担当:企画局)
第2回 わが国のフィリップス曲線とコスト転嫁(担当:調査統計局)』

そもそも第1回が「担当:企画局」ってのがナンジャソラな所がございまして、企画局というからには政策インプリケーションがありますよって自分からゲロってるようなもんなんですけど。

『なお、参加者間の活発な討議を行う観点から、外部からの参加は招待者限りとしますが、』

残念無念w

『各セッションの報告内容は原則として論文・レポート等のかたちで公開し、議論の概要についても、日本銀行のホームページに掲載する予定です。』

だそうなので楽しみにしたいのですが、式次第の案というのがあるようですね。

式次第の案
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/data/rel220225h.pdf
「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップ

案とか言いながら思いっきり細かく書いてありますね。

『第1回「わが国の物価変動の特徴点」
開催日 2022 年 3 月 29 日(火)13:00〜18:00
場所 日本銀行本店


<第1回プログラム(予定)>
開会挨拶 雨宮 正佳 日本銀行副総裁

第1セッション 近年のわが国インフレ動学の特徴点
報告者 日本銀行企画局スタッフ

指定討論者 塩路 悦朗 一橋大学教授
森川 正之 一橋大学教授・RIETI 所長

第2セッション 消費者物価におけるサービス価格――家賃等を中心に――
報告者 日本銀行企画局スタッフ

指定討論者 宇南山 卓 京都大学教授
清水 千弘 日本大学教授

第3セッション パネルディスカッション:ポストコロナの物価動向
モデレーター 青木 浩介 東京大学教授
パネリスト 小林 慶一郎 慶應義塾大学教授
渡辺 努 東京大学教授
内田 眞一 日本銀行理事

閉会挨拶 若田部 昌澄 日本銀行副総裁』

この「企画局スタッフ」の報告ってのは多分後日スタッフペーパーということで、日銀レビューかワーキングペーパーシリーズで出て来ると思うのですが、調査統計局じゃなくて企画局が書くのが味わいがあるというものです。


『第2回「わが国のフィリップス曲線とコスト転嫁」
開催日 2022 年 5 月 30 日(月)13:00〜17:50
場所 日本銀行本店

<第2回プログラム(予定)>
開会挨拶 貝塚 正彰 日本銀行理事

第1セッション わが国のフィリップス曲線(仮)
報告者 日本銀行調査統計局スタッフ

指定討論者 青木 浩介 東京大学教授
敦賀 貴之 大阪大学教授

第2セッション 川上コストの消費者物価へのパススルー(仮)
報告者 日本銀行調査統計局スタッフ

指定討論者 渡辺 努 東京大学教授
陣内 了 一橋大学准教授

第3セッション パネルディスカッション:経済主体の行動変化と物価変動(仮)
モデレーター 塩路 悦朗 一橋大学教授
パネリスト 福田 慎一 東京大学教授
阿部 修人 一橋大学教授
亀田 制作 日本銀行調査統計局長

閉会挨拶 植田 和男 共立女子大学教授・東京大学名誉教授』

何か第2回の話をする頃には既にスタグフレーションがどうのこうのみたいな事になってて、今更ジローな話題になっていないことを祈る所ではあるのですが、元々QQEぶっこんだときって「期待に直接働きかける金融政策」ってのを看板にしていて、それをフィリップス曲線で表現すると「フィリップス曲線の上方シフトを意図した金融政策」という触れ込みだったのですが、ぶっこんで9年経過して未だにフィリップス曲線について知見を深めるとか言ってるのは何なんでしょとは思うのですが、翻って考えるにこれまではとにかくその手の話を誤魔化し誤魔化しで各種の屁理屈を繰り出しながらも元々の置物理論のベース部分を全否定するような事は死んでもしなかったというか、否定したら死んじゃう病に明らかに罹患していたのでありまして、今回のこれ等の話の中で(そらまあ流石に真正面から置物理論を否定はするとは期待しないですけど)従来の話がどの程度「無かった事」になるのかというのを見るのは楽しみにお待ち申し上げておりますので宜しゅうに(何を?)。


〇そういやすっかり忘れていたのですが中村審議委員金懇会見での賃金ターゲットの部分を

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220210a.pdf
中村審議委員 記者会見要旨

ウクライナの急展開の前の話(2/10)なので質疑ともに今の話ではない点についてはご留意頂きたく。

・とりあえず無茶苦茶勉強熱心なのと人が良さそうなのは何となく把握した

『(問) インフレ対応で海外の主要な中央銀行が金融緩和からの転換に乗り出している中で、市場では日銀も政策修正に動くのではないかといった思惑が拡がっています。中村委員は、現時点でのご自身の経済・物価見通しやリスクを踏まえて、市場のそうした思惑をどのようにみておられるのか、また、どのような情勢になれば、委員として政策修正や金融正常化といった議論が可能になるとお考えなのか、ご見解をお願いします。』

例の賃金ターゲットみたいなヘッドラインが出ていた質疑なんですけど、この回答がまたとんでもなく長いんですよ。まあ読んで味噌。

『(答) FRBやECB、英国のBOEといった海外中銀、特にBOEは 2 回金利を上げ、米国も 3 月には上げるのではないかという方向で、ECBのラガルド総裁も否定されなかったので、環境的にいうと、米国や欧州の金利は上昇する条件が整いつつあるような状況かと思います。』

『輸入原材料、コモディティの価格は、世界共通に使われているものなので同じように上がっていますが、日本と欧米で状況が大きく違うことのひとつは、日本では残念ながら消費者物価が上がっていないことで、直近で 0.5%くらいの上昇です。米国の 7%や、欧州の 5%とかなり違うのは、おそらく輸入原材料のコストアップを、企業が川上から川下の過程の中で吸収しているということだろうと思いますが、ここのところが、まだ日本は需要がそれほど強くないのかもしれないという気がします。』

ほうほう。

『私が更に違うと考えているのは、賃金が上がっていないことです。』

そらそうなんだが中村さんついこの前まで日本を代表するメーカーさんの経営者だったんですからあんまり他人事のように言わんで欲しいのですけれども・・・・・・・・・

『生活必需品はかなり物価が上がっていると思いますが、消費者の可処分所得は増えないので、生活必需品を買えば、値上がりした分、その他のモノを買う余裕が減っていき、他の需要が落ちていきます。結局、日本全体の需要を平均すると、一方では上がるものの、一方では上がらないということになって、なかなか消費者物価が上昇していかないのだろうと思います。』

勉強熱心なんだろうなあというのは分かる。

『ただ、これからは、徐々に転嫁が進んでいきますので、その過程で賃金が持続的に上がるようになってくれば、欧米の状況と似た形になってくるのだろうと思います。』

勉強熱心なのは分かるんだが、「ただ、これからは、徐々に転嫁が進んでいきます」の根拠は何なのか、という点について、特についこの前まで日本を代表するメーカーさんの経営者としては、どのような根拠があるのか、どのような条件が整うと転嫁が進んだり賃金を上げられるのか、という話をして頂きたいんですけど・・・・・・

『賃金が上昇しないと、物価は一回上がったとしても持続的に上がるというところまで行きませんので、日本はなかなか政策修正まで至る条件に届いていないと思います。』

いやそれは分かってるのだが、じゃあどういう条件になったら(以下同文)。

『今は賃金が持続的に上がるような状況になるまで、粘り強く金融緩和を続けていきます。その中で、経済政策や企業の投資が増えてくることによって、賃金が上がってくるだろうと思います。』

それを9年前、というかもっと昔からやっているのですが何で今後そうなるのか、という話でも、必要な条件でも良いのですが、その話をですねえ・・・・・・・

『そこまですぐにはいきませんので、日本銀行としても 2022 年、2023 年の物価上昇率は 1.1%くらいとみているということです。』

うーんこの。

『先ほど申し上げた通り、人件費が上がらないと、需要の上限が決まってしまいますので、なかなか持続的な賃金上昇につながりません。』

循環論法ェ・・・・・・・・

『全ての企業が、現在求められている 3%を平均して上げていくということは、各企業にとってみると状況が違いますので、現実的ではないと思います。しかし、成長著しい企業や、業績が堅調でその先も堅調といった企業は、人的な投資を強化していかないと、経営を支える重要なリソースが集まりませんので、持続可能な経済成長や事業成長が実現できません。ですから、そうした面では、まずはリーディングビジネスが引っ張り、そこから徐々に拡がっていくことを期待しています。』

うーんこの・・・・・・・・

『30 年くらい日本国内での投資は低調でしたが、デジタルや気候変動を中心に、いよいよ国内での投資が拡大してくるはずです。そうしないと、おそらく企業は世界で生きていけなくなりますので、待ったなしでやるだろうと期待しています。そうした投資が始まるとの期待のもとに、そうした動きが拡がっていけば、政策の変更ができるようになるだろうと思いますが、今はまだそこまでいっていません。』

なんちゅう希望的観測・・・・・・・・

『この段階で金利を上げる、賃金が上がる前に金利を上げるということは、賃上げの原資を金利で食ってしまい、その分賃上げができなくなることになりますので、順番が違うと思います。』

いやあのそんな規模で利上げしろという話じゃないし、大体からして今日本企業ってアグリゲートすると資金余剰じゃん。まあ成長企業は借金超過だから成長企業の為に云々、って事なのかもしれないがそういう話をしているようには思えん。

『欧米は先に賃金が上がっていますので、その分金利を上げて、スパイラル状に上がっていくことを止めようとされていると思います。そうした日本経済が早く来てほしいと思いますが、これは各企業の努力次第と思います。』

ということで話が終わっていて、結局何をどうすれば良いのか、という話を日本を代表するメーカーさんの経営者であった方から聴く、という事がまるで出来ない割には大演説、という感じですが、話を誤魔化すために長広舌を振るっている訳ではないというのは伝わるので、悪党じゃないのは良く分かる(個人の感想です)のですが、うーんそういう話をして欲しいんじゃないんだよなあ立ち位置的には・・・・・・・・・

とは思っているのですが、これも今の政策委員会が碌な議論をしてないからではなかろうか、というのは何となく主な意見だの議事要旨だのを見ていると伝わってくるサムシングはありますので、田村さんと高田さんというしっかりとした方が地に足のついた議論をリードして頂けるようになると、中村さんも本領を発揮してくれるのではなかろうか(何せ勉強熱心なのは伝わるのだが如何せん方向性がちょっとアレという状態に見えるので)、とまだ辛うじて期待をしたい所ではございまする。


#市場ネタはもう何だか訳分らんからすっかりパス状態ですな(超滝汗)




2022/03/01

お題「ウクライナもよー分からんので今日はPDファンドなどの日銀レビューを鑑賞する企画である」

ほうほう。
https://jp.reuters.com/markets/bonds/us
米国債3ヶ月 利回り
US3MT=RR +0.322 -0.026
米国債2年 利回り
US2YT=RR +1.454 -0.132
米国債5年 利回り
US5YT=RR +1.755 -0.130
米国債10年 利回り
US10YT=RR +1.870 -0.114

円債先物の連日の同じ場所でのシマウマ相場っぷりにアイヤーでございましたが今日はシマウマ脱却ですな。とは言え債券ちゃんが陽線2本引くの別にめでたくもなんともないんですけど。

・・・・というか、これで(実際には物価高要因だからしばらくしたらまた復活すると思うのですが目先リスクオフの方で反応しているから)金融政策正常化に対するどうのこうのがジャパンの場合は後退に次ぐ後退という風情になっているようですので(個人の感想です)、黒ちゃんって要らんところでツキがあるようですが、そのツキは金融政策をクソ粘りする方ではなく、物価目標を達成して大手を振って正常化する方で使ってほしいんですけどねえ。


FEDとかECB高官の発言をチェックする、というてもウクライナの方がちょっとよく分からんにも程があるので、もうちょっと見えてこないと前に出てた話と皆さんジャガーチェンジしたりしなかったりという感じになると思いますし、それこそ今後の場合は1970年代タイプのコストプッシュからのスタグフレーションみたいな時にどうなるのでしょうか(前回の最終系は結局ボルカーショックであり日本で言えば総需要抑制政策みたいなのとかいわゆる雇用の1975年型体制であったりした訳ですが)とかいう話になると、今の時点で要人の皆様もちょっと迂闊な話はしにくいと思うんですよねー。

とか何とか言って更に急がなさそうなネタに走るアタクシ(アカン)。


〇プライベートデットに関して2本ほどペーパーが出ていたので今さらですがネタに

・PDファンドとダイレクトレンディング

先に出てたのがダイレクトレンディング。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2022/rev22j01.htm/
プライベートデットファンドの融資手法
─ ダイレクトレンディングの特徴 ─

本文の前に上記HTMLの要旨を拝読。

『要旨』

『プライベートデット(PD)ファンドは、主に信用力の低い企業への直接融資を行うファンドであり、その運用資産残高はグローバルにみて1.1兆ドルまで拡大している。他のデット性商品に比べてリターン水準が高く、キャッシュフローが安定していることなどから、機関投資家からの人気が高まっており、今後も拡大が見込まれる。』

キャッシュフローが安定しているってのはどういう意味で書いてるんだろ、と本文の方が気になるのですけど(ダイレクトレンディングって物凄く雑に言っちゃうと結構な高金利取るので早期弁済(なお早期弁済するのにもフィーを取る)されることが多かったりすると思うんですが)それはさておきまして、

『金融システム全体において、PDファンドは、中堅・中小企業(ミドルマーケット)に対するデット供給者として、バンクローンを補完する機能を有している。ただし、PDファンドの多くがレバレッジドバイアウト(LBO)ファイナンスに融資案件を見出している中、被バイアウト企業のレバレッジは高い水準にある。今後は、被バイアウト企業のデフォルト増加などのリスクに留意が必要である。』

ふーん。ということで本文を拝読。今年の一発目(と次のも同じ人が書いているので二発目も)となる日銀レビューですね、だからどうしたと言われても困りますがw

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2022/data/rev22j01.pdf
日銀レビュー2022-J-1
プライベートデットファンドの融資手法
―― ダイレクトレンディングの特徴 ――
金融機構局 直野未悠*、渡邊真一郎
* 現・岡山支店

ご覧になりますと分かりますように、この手の分析は「市場局」ではなく「機構局」が行っておりまして、つまりは金融市場動向分析よりも、これら商品への投資による金融機関経営への影響とか、全体として金融システムへのリスクがどうのこうのみたいなところをポイントにしている、というのが伝わる訳ですよ。

鏡の部分は今引用したので『はじめに』ってところからホイホイと引用してみる。

『プライベートデット(PD)ファンドとは、比較的リスクの高い企業への直接融資を行うファンドであり、プライベートエクイティ(PE)ファンド1をはじめとするプライベートキャピタルファンド2の一種である。また、プライベートキャピタルファンドは私募形式のクローズドエンド型の形態をとるケースがほとんどである。すなわち、投資資金の流れは、@ファンドレイズ(資金調達):ファンドが投資家からコミットメントを募集、Aキャピタルコール:ファンドが待機資金(ドライパウダー)からの資金を引き出す、B案件への投融資・運用、C投資家への分配の順となり、ファンド運用期間中の解約は原則として認められない(図表 1)。』

へいへいそうですな。

『近年、PD ファンドは運用資産残高3(AUM)を大きく伸ばしており、足もとではグローバルにみて 1.1 兆ドルに達している4(図表 2)。これは、PDファンドと同様に比較的リスクの高いデットファイナンス商品であるレバレッジドローン(3.2 兆ドル5)や CLO(0.74 兆ドル6)の残高と比較しても相応の規模といえる。』

はい。

『また、投資家の投資意欲も旺盛であり、ファンドレイズの規模も年々上昇傾向にある。このように金融システム上、新たな存在として規模を拡大しつつある PD ファンドについて、投資先としての特徴、運用手法、抱えるリスクを中心に論じていく。』

ということで『投資先としての PD ファンド』という話になるんですが、最初のところで微妙に引っ掛かるんですよねー。いやまあ言ってることはその通りなんだが。

『まず、投資先としての PD ファンドの特徴をみていく。PD ファンドは 5〜10 件程度の融資案件を取り扱い、案件あたりの運用期間は 4 年程度、ファンド運用期間は 8〜10 年程度である。』

まあ大体ファンド運営自体はもっと多くの案件扱ってたりすると思うのですが、それを幾つかのタイミングに分けてファンドレイズして、エンドになる頃にはまた別途ファンドレイズする、みたいな感じでやっている筈です。書いてあることは仰せの通りですけど。

『クローズドエンド型ファンドへの投資一般に言えることであるが、一度投資を行うと中途解約ができないため、投資家にとっては長期間資金を固定することになる。また、投資家がファンド持ち分を売却できるようなセカンダリー市場も小さい7。そのため、流動性が低いことは PD ファンド投資においての制約となる。』

いや確かにそれは制約は制約なんだが、そもそもPEとかPDみたいなのとかオルタナ系でこの界隈への投資をするときは、「流動性を捨てることによって利回りを高くする」というのをやっているのであって、確かに仰ることは正しいんですけど「制約となる」(キリッ)と言われましてもそもそも投資する方だってそれを覚悟で投資してるので、ちょっとこういう表現にはもにょってしまう。

『このため、PD ファンドの主要な投資家は、年金基金など長期投資が可能な機関投資家である(図表 3)。これらの投資家層は、低金利環境下、オルタナティブ投資のシェアを上げている。その中でもプライベートキャピタルファンドへの投資を増加させており、PD ファンドへの投資もその一環と考えられる。』

まあ何ですな、キャッシュフローとか考えて10年流動性ぶち殺して無問題、という資金であればキニシナイキニシナイって話だと思いますが、「大学基金など」ってのはアタクシその界隈に全然詳しくないから別に良いんですけど、大学って寧ろ設備更改とかで金がドバーっと出たりするもんじゃないのかねえとか思いました、よー知らんので知らんですけど。

でもってその次を見たらですね・・・・・・・

『こうした中で、PD ファンドを投資先に選択する投資家の間では、@リスクをある程度抑えつつ有利なリターンを狙える、A安定したキャッシュフローを確保できる、Bポートフォリオの多様化の一環となるといった期待がみられる。』

「リスクをある程度抑えつつ有利なリターン」ってのが中々不思議ちゃんなのですが、

『実際に、PD ファンドのパフォーマンスをみると、PE ファンド等には劣るものの、デット性商品としては非常に高いリターン水準を実現しており、プライベートキャピタルファンドの中ではリスクも小さい(図表 4)。』

うーんこの図表4.

『こうした特徴は、債券利回りが低いなかで、リスクを中程度に抑えつつ高めのリターンを狙う資産をポートフォリオに加えたいと考える投資家には魅力的であろう。』

・・・・・・・orz

うーん何と申しますか、PDとかPEとかって「資金の流動性を完全に放棄することによってリターンを狙いに行く」って話であって、そらまあアグリゲートしたら図表4(ファンド間の標準偏差と内部収益率のマトリックス)になるので、そらまあ無茶苦茶分散できるようなとんでもない運用規模があればそうなのかも知れないけど、投資判断するって事になると「資金の固定化がガチになるけどよろしおすか」という話と、個別の粒粒になるアセットマネジャーの選定をどうしますかって話になると思うのよね。でもってその時ってリスクリターン云々もさることながら、資金の流動性をゼロにしてしまう、っていう点を最も注意しないといけないと思うの。

と思ったらその後に、

『ただし、こうしたメリットの一方で、いくつか留意すべき点もある。まず、PD ファンドの融資先は信用力が低いため、景況が悪化する局面ではデフォルト率が高まりやすい。このことを背景として、PD ファンドのパフォーマンスは同様に景気の影響を受けやすい株式との相関があり、インデックス間の相関係数は 0.78 と高水準である8。そのため、PD ファンドへの投資には、十分な分散効果が期待できない可能性がある。』

そもそも分散効果期待して投資はせえへんやろと思うのだが、まあ何とかポートフォリオ理論とかに影響されると分散効果あるとか言い出すのかも知れませんね、あたくし頭が悪いからよー知らんけど。

『また、PD ファンドの損失(投資元本割れ)発生率は 6.2%と、PE(バイアウト)ファンドの 3.1%と比べて 2 倍の水準である9。デットとエクイティの優先劣後関係から、案件毎にみれば PD ファンドはPE(バイアウト)ファンドと比べて損失が発生しにくいと考えられる。しかし、PE(バイアウト)ファンドと比べてリターン水準が低い PD ファンドは、一つの融資先で大きな損失が発生した場合、他の融資先からの収益でそれを埋め合わせることが難しい。これが、PD ファンドの損失発生率が高い理由である。』

うーんこの。トータルリターン比較は無いのか。

『従って、融資審査を適切に行いつつ、多様かつ十分な数の案件に分散して融資を行う実力がファンドマネージャーに備わっていないと、PD ファンドは他のプライベートキャピタルファンド対比リスクが低いという本来の特徴を発揮できない場合があることには注意が必要である。』

なるほど、とは思うのだが「他のプライベートキャピタルファンドと比べてリスクが低い」というのそこまで大々的にオルタナぶっこんでれば別だけど、うーんそこはどうなんでしょう。

『これまで述べたことを踏まえると、PD ファンドはミドルリスク・ミドルリターンを志向する投資家のニーズに概ね沿ったパフォーマンスを挙げているといえる。』

アタクシは(短期資金繰り上がりだからバイアスがあるんですけど)資金の流動性を完全に殺してしまう、というのは物凄いリスク取っている、という認識なので、何ちゅうかこのリスクリターンプロファイルだけで話をされるのどうも引っ掛かる(いやまあ今回の図表4のマトリックスはプライベートキャピタルファンドを並べているから全部流動性を完全に犠牲にしたファンド同士の比較ってのは勿論分かるのですが)んですよね。まあゆうて「資金を完全に固定化することによるリスク」ってのはリスクリターンプロファイルの形で一義的に計測化できるものではないから、だいたいこういう分析になると思いっきりスルーされてしまう、というのがあるんですけど。

『その一方で、PD ファンドをポートフォリオに組み入れる際には、分散投資効果が見込めるかといった点や、投資先のファンドマネージャーが十分な融資スキルを有しているかといった点をよく吟味する必要がある。』

分散投資効果なんて見極めんじゃろ。アセットマネジャー選択でほぼ決まりですよプライベートキャピタルファンドは、というのは偏見ですかそうですかすいませんすいません。


でもって次の『PD ファンドの融資手法』の中でダイレクトレンディングの説明があってこれは中々よろしい説明になっておりますので更にネタにするのでして、ちょっと飛びましてダイレクトレンディングの説明をしている辺りから参ります。


『ダイレクトレンディングには厳密な定義はないものの、一般的にはノンバンクによる中堅・中小企業(ミドルマーケット)への相対型ローンを指す。』

はい。

『ダイレクトレンディング戦略をとる PD ファンドの特徴として、多くの場合、融資時に外部機関による格付を利用せず自ら詳細な融資審査を行うことや、担保を確保するとともに厳格なコベナンツを設定することが挙げられる。』

そらそうよ、ということで融資中にコベナンツに引っ掛かるのは日常茶飯事の話だし、コベナンツ抵触しましたからちょっと貸出金利の方が上がりますねー残念ですねー(棒読み)などというのはよくある話である、と認識しております。寧ろコベナンツ抵触しないのを自慢にするダイレクトレンディングとか聞いたことない。

従って、

『また、融資後のモニタリングも綿密に行い、破綻時の回収も迅速である。』

となる訳でして、

『こうした特徴は、貸し手と借り手が一対一であり、融資先との密接な交渉を行いやすい相対型ローンならではの利点といえる。』

ということですな。

『一方、ダイレクトレンディングには社債やバンクローンのような流通市場が無いため、ほとんどの場合償還まで持ち切らなければならないという短所も存在する。』

節子、それ短所ちゃうわ、と思いますし、何のかんの言って早期償還フィー貰いつつ早期償還される貸出も多いし、社債やバンクローンの場合はコベナンツがダイレクトレンディングから見たらガバガバにも程がある訳なのですからして、まあ

『ダイレクトレンディングの融資先は、信用力が低い企業向けデットファイナンス商品であるバンクローンやハイイールド債の利用先と比較しても、小規模で信用力がさらに低いケースが多い。そのため、PD ファンドがコベナンツの設定や融資後のモニタリングを厳格に行うことは、デフォルト発生率の低下や、破綻時回収率の向上を目指す上での重要なポイントとなる。』

そらそうよというか、そこが基本的にアセットマネジャーの最大の差別化要因ですもん。

『なお、小規模で信用力の低い企業の方がダイレクトレンディングを利用する傾向は、借入を行う企業側のインセンティブからみても合理的であるといえる。すなわち、規模が大きく、格付を取得している企業であれば、コベナンツなどの制約が緩やかな社債やバンクローンが有利な調達手段となり、規模の小ささなどから格付取得やシンジケート団の組成に見合わない企業にとっては、相対型のダイレクトレンディングが利便性の高い調達手段となる。』

『こうした点を踏まえると、PD ファンドによるダイレクトレンディングは、社債やバンクローンといった他のデット性商品を補完するような立ち位置にあるといえる(図表 8)。』

んな訳でちょこちょこツッコミを入れたのですが、図表8の纏めが簡潔明瞭で誠に結構ですな、とか思いましたでございます。

しかしまあ何ですな、日本の場合この手のデット市場がいつまで経っても動かんのは、法体系の違いなどもあると思うのですが、そもそものクレジットスプレッドが低すぎることにありまして・・・・と書くと以下お察しだと思うのですけれども、何せ日銀様に於かれましては、高格付けを取得できるような企業のCPや社債をホイホイと、しかもその価格はバックストップとしてのペナルティレートでも何でもない水準(サービスレート、とは書かない程度には手加減して差し上げよう)であったりしますし、しかも1部上場できるような企業の株式バスケットをホイホイとこれまた別にペナルティーでも何でもなくて普通に市場でホイホイと購入してしまう、というようにクレジットスプレッドの頂点部分でスプレッドをじゃんじゃんと縮小するような措置をおとりになっておられる訳でして、いいからおまいらそういうの止めないと日本のクレジットが市場としての成熟を何時まで経ってもしないし、イノベーションだって起きんわボケと思うのでありました、と本稿に全然関係無い悪態で締めてしまってすいませんすいません(著者に謝ってるつもり)。


・私募インフラファンド

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2022/rev22j02.htm/
私募インフラファンドの特徴・リスク

またもHTMLの『要旨』の方から。

『近年、インフラ整備のための資金需要の高まりを背景に、インフラ事業に民間資金を導入する動きが活発化している。その中で、発電設備や道路などのインフラ資産を投資対象とするインフラファンドに注目が集まっている。』

はい。

『このうち主流は私募形式・クローズドエンド型のファンドであり、その運用資産残高は急拡大し、グローバルにみて8,000億ドルを超える規模となっている。』

うむうむ。

『投資先としてのインフラ資産の特徴は、耐用年数が長く、安定した収益を生むことである。インフラファンドに投資する機関投資家の多くも、主に安定したキャッシュフローを期待している。しかし、インフラファンドの資産運用期間はプライベートエクイティ(PE)ファンドと同程度であり、長期運用ではないため、期待するほどの収益安定をもたらさない可能性がある。』

ふーん。

『また、インフラ資産の売買は、取引主体が少なく流動性が低いため、金融ショックに対する脆弱性も懸念される。』

まあ言いたいことは分かるのだが、そもそも(さっきの話と同じなんだが)資金出す側が流動性を完全に捨てることによって投資するファンドちゃんなのですから、金融ショックに対する脆弱性っていうのもナンジャソラな所があって、そらオープンのミューチュアルファンドで超足の速い資金が出入りするようなファンドですと、金融ショックに対してAUMの大きな変動が発生して、流動性リスクが顕在化する、というのはあるのだが、インフラファンドの場合はファンドの調達サイドで流動性リスクが起きにくい(起きないとは言ってない)商品設計をしていると思うんだが。

『このため、インフラファンドへの投資に際しては、ファンドの収益安定性・インフラ資産の流動性に留意が必要である。』

まあそれよりも何よりもアセットマネジャー(以下同文)。ということで本文ですが、

書いている人はさっきのPDファンドの人と完全一致です。そらまあテーマ的にそうなるわな。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2022/data/rev22j02.pdf
日銀レビュー 2022-J-2
私募インフラファンドの特徴・リスク

最初の方は飛ばして『資産としてのインフラ』って所から。

『インフラの多くは生活に不可欠であるため、インフラ資産の収益源となる利用者からの料金収入が変動しにくい。また、行政からの一定の補助金を収益源とできる場合も存在する。こうしたことから、投資先としてのインフラ資産は安定した収益・キャッシュフローをもたらしやすい。また、インフラの供給者は行政の規制などによって独占・寡占的環境下にあるケースが多く、これもまた収益動向の確実性を高める効果を持っている。』

まあこの点に関しては裏を返すと政治的にいきなり案件の梯子外されるリスクがある、ということでもあるので、政治的な安定性というか継続性というか、そこのリスクをどのように認識しているのか、っていうのは特に公益系のインフラ投資のアセットマネージングの際には一つ注意しないといけない話しだったりするような気がします(個人の感想です)。

『これらに加えて、インフラ資産が実体経済に根ざした安定的な収益源を持つことから、金融市場の動向に左右されやすい株式や債券などとの値動きの相関が低いことも推測できる。さらに、インフラの利用料金は概ね物価に沿って変動するため、インフラはインフレの影響を減殺できる資産であるとも考えられる。』

まあそのインフラ次第だったりしますけどね。実体経済がコケれば人流物流だって低調になるんだし。

『他に、インフラ設備は耐用年数が長いものが多く、資産として急激な陳腐化が考えにくいことも特徴の一つに挙げられる。』

ふむ。

『以上に述べたような特徴は、インフラ資産を投資先とする上で有利な点である。とりわけ、収益・キャッシュフローの安定性や株式・債券等との低相関が予測できることなどは、分散投資先としての大きな魅力となり得る(図表 5)。』

さっきのPDと比較しての個人の感想ですなのですが、どうもリスクの小さいアセットクラスとリスクの高いアセットクラスの説明を比較すると、(日銀だし機構局だからやむを得ないのかもしれないが)リスクの小さいアセットクラスに対する説明の方がお優しい気がします(個人の感想です)。

もちろんこの後にデメリットの話もありまして、

『ただし、これまで述べた利点は、インフラ資産への投資全てで等しく享受できるものではない。例えば、インフラ資産が全体的に安定した収益性を有していることは事実であるが、より詳細にみれば、インフラ資産の種類によって収益の確実性は異なる。』

『すなわち、行政からの保護が強く、利用者からの需要が一定であるインフラ資産は収益の安定性が特に高くなるが、比較的規制緩和が進み、利用者からの需要や利用価格が変動しやすいインフラ資産は相対的に収益の安定性が低くなる。水道は収益の安定性が特に高いインフラ資産の一例である。一方、発電設備などのエネルギーを扱うインフラは収益が変動しやすく、投資先として比較的リスクが高い。』

とあるんですが、そこで続けて「規制当局のスタンスの変化によって行政からの保護について投資期間中に変化が生じる可能性について」とかは書かないのね、と思いましたがさすがに最後にそれは書いてあります。ちょっと飛ばしまして、『(インフラ固有のリスク)』というところでして、

『本節の最後として、インフラ資産固有のリスクについても説明する。先に述べているように、インフラ資産の収益性は行政の規制などに依存する。そのため、法制度の改正などによってインフラを取り巻く社会的環境が変化することは、インフラ資産の収益性を大きく変動させるリスクとなる。』

キタコレ。

『こうしたリスクは、政情が不安定な新興国や、政権交代が起こったタイミングにおいて大きくなりやすい。特にグリーンフィールド案件に投資する場合、規制改正によってインフラ建設プロジェクトが中止になってしまうリスクに注意を払う必要がある6。また、行政の動向以外にインフラの開発・運営に影響を与えやすいものとして、近隣住民との社会的摩擦(開発案件への反対運動など)も挙げることができる。』

とあるのですが、引用ぶっ飛ばしたブラウンフィールドとグリーンフィールドの部分読んでても思ったのですが、上記の部分って別にブラウンフィールドだって急に規制緩和がおっぱじまるリスクがあるし、ブラウンフィールドの方が安定収益狙いの意味合いが強いんだから、そっちの方だって結構な痛手になると思うのですよね。

でもってすっ飛ばしてしまったブラウンフィールドとグリーンフィールドの所ですが、

『(投資フェーズ)

また、投資フェーズの違いも収益の安定性に大きな影響を与える。インフラ投資には、@開発・建設の途上段階にある案件(グリーンフィールドと呼ばれる)、A既に完工されて実用段階にある案件(ブラウンフィールドと呼ばれる)の 2 つのフェーズが存在する。』

『グリーンフィールド案件に投資した場合、インフラ資産の特徴である安定したキャッシュフローが発生するのは建設完了後である上に、そもそも建設が予定の費用や期間では完了しないというリスクを抱えることになる。そのため、グリーンフィールド案件は、比較的リスクの高い投資先である。』

『一方、ブラウンフィールド案件は、既に実用段階に入ってキャッシュフローを生み出しているインフラを運営するため、収益やキャッシュフローに関するリスクはグリーンフィールド案件に比べて小さい(図表 6)。』

というのはまあ確かに一般的にはそうでしょうけど、グリーンフィールドの場合基本的にブラウンフィールドに移行するときにイクジットしてしまうのに対して、ブラウンフィールドって長期間にわたってコミットしながら安定利回り取りましょう、という物件なのですが、上述のようにブラウンフィールドと言えども期中に政治的なリスクのようなもんがある訳で、期間が長いだけに偶発的リスクという地雷は有るんでネーノ、とかそういう事をアタクシなんぞはヒネクレモノなので思ってしまうんですけど、どうもやっぱり日銀なので仕方ないと思うのですが、リスクの低そうな方と高そうな方を比較した話をすると、どうもリスク低い方に点が甘いように思えます(個人の感想です)。

というような相場風雲急を告げているのにヒマネタっぽくてすいません。ネタにしておきたかったので。