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(各日付の最初にラベルを「211201」というような形式でつけていますので「URL+#日付(211201形式です)」で該当日の駄文に直リンできます)


2021/12/30

お題「今更ですがFOMCパウエル会見(その1):どう見ても最大雇用の判断が政策判断の後付けに見える件について」

もったいない精神ってのも程々にした方がよいのではないかと・・・・・・
https://news.yahoo.co.jp/articles/52b33404d9f315b85b700e3fa04567248a0b8bf8
布製マスク「廃棄もったいない」配布希望1万件超に
12/28(火) 21:12配信

見出しに「アベノマスク」と入っていないから産経かと思ったら産経でしたが、

『配布には、批判を浴びた高額な保管コストを解消する狙いがあるが、希望者が増えるほど国負担の配送料がかさむジレンマも抱えている。』(上記URL先より)

送料あんたら持ちまたは取りに来てください、ってなったらどの位希望が減るんでしょうかね、というか「もったいない精神」ってのは損切りの際に非常に足枷になる精神ですなあ、と高値掴みや大底叩きを日常業務のように行いながら損切りだけは早かった(という心境になるまで随分修行したような気はするが・・・・・)円債マーケットメーカー時代を思い出すアタクシなのでした(遠い目)。


〇来週の議事要旨が出る前にFOMCレビューの続きで今更ジローのパウエル会見をば

すいませんすいませんすいません。まあ既に色々な方が解説しとると思いますが、まあ全体的な話を先にしちゃうと「このバリバリな緩和解除モードの内容をよくぞ「織り込み済み」で通したよな〜」という所でありまして、(1)市場がFEDの見通しを舐め腐っている、(2)その前の時点での地均しが重機持ち込んで破壊するレベルだったので織り込み済みで済んだ、(3)単に12月後半特有の状況なのであってモノホンの反応はこれからよ!のいずれなのかはよくわからんのですが、まあこのオープニングリマークと会見QAの何処をどう見てもハトには見えない。

ということで淡々と鑑賞しますが、いつものノホホンというペースだと12月FOMC議事要旨に間に合わない可能性があるので、年末年始に書き溜めておかないといけないかなと思っている(やるとは言っていない)今日この頃。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20211215.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
December 15, 2021

オープニングリマークがバリバリの強気だというのは先週水曜日にしました(クリスマス跨ぐと1週間前がエライ昔に思えるのがクリスマスマジック(個人の感想です)ですな)のでQAを淡々と鑑賞するのである。


・「最大雇用の判断」はどう見ても「やりたい政策の後付けで決まる」としか見えない件について

『RACHEL SIEGEL. Thank you very much, Michelle. And thank you, Chair Powell, for taking our questions. The latest FOMC materials say that the FOMC thinks it will be appropriate to keep rates near zero until labor market conditions reach levels consistent with maximum employment. And there are also three rate hikes penciled in the projections for next year. In order to set up those hikes, what will maximum employment have to look like? When will you know that that threshold has been met? And how will that be communicated? Thank you.』

最初の質問は普通にそもそも論みたいな質問で、ドットが上方シフトしたのは雇用マンデートの達成が早まったということだと思うのだが、その時期とか判断の閾値とかはどのあたりでごわすか?という話ですね。

『CHAIR POWELL. So maximum employment, if you look at our statement of longer-run goals in monetary policy strategy, maximum employment it -- is something that we look at a broad range of indicators.』

この件、確かアタクシ何回か申し上げたと思うのですが、最大雇用のマンデートにスペシフィックナンバーを設けていない(物価はPCE指数で2%と明示)で、ブロードレンジがどうのこうのっていうのは、まあ確かにその方が実践的ではあるのですが、これをやると最後の最後の部分で「総合判断というと頭良さそうに見えるけど結局はジャッジメンタルなエイヤー決定」という毎度おなじみの物件になってしまう訳で、恐らくは物価上ぶれとの絡みで賃金がホイホイと上がりだしたら何のかんの理由を付けて最大雇用って言ってしまうんでしょうねえ、という感じですがな。

つまりですね、そもそもロンガーラン何とか自体出たのはコロナになってからではありますが、ベースとして考えていた時期というのは「どう見ても雇用が最大雇用を上回っているのに賃金が上がらんこともあって物価が全然アガランチ会長」という時代にこのストラテジーの作成に着手している筈なので、ベースの考え方が寧ろ「物価が上がらないのに金融緩和縮小する訳に行かないから、最大雇用を行ってないことにするために総合判断という文言を使って失業率の低さにだけフォーカスさせないようにする」という煙幕効果を狙ったもの(というのは個人の妄想ですが)と理解できるわけでして、明らかなコストプッシュ要因オンリーという状況でない限りおいて、物価がホイホイ上がったら「物価がこれだけ上がるような状況だと逆算すれば最大雇用が達成できているという意味ですよ」という屁理屈(総合判断)は作れるわけですから、そら物価のテンポラリーを引き下げれば今回のドットになる、ということですがな。

・・・・・・まあ何ですな、アタクシ的にはあのロンガーランなんちゃらが出た時に「雇用重視に舵を切った」とか講釈垂れた本職の何とかスト全員ちょっとそこに直れ、と思うのですけどそんなくだを巻いていると先にすすみませんので続きに参ります。

『And those would include, of course, things like the unemployment rate, the labor force participation rate, job openings, wages, flows in and out of the labor force in various parts of the labor force.』

『We'd also tend to look broadly and inclusively at different demographic groups and not just at the headline and aggregate numbers.』

『So that's a judgment for the Committee to make.』

一々小分けにしなくても良かったかも知れませんがアタクシ的にこっちの方が後で見やすいから小分けにしました。思いっきりジャッジメンタルと仰せですよね。

『The Committee will make a judgement that we've achieved labor market conditions consistent with maximum employment when it makes that it is admittedly a judgment call because it's a range of factors, unlike inflation, where we have one number that sort of dominates. It's a broad range of things. So, as I mentioned in my opening remarks, in my view, we are making rapid progress toward maximum employment. And you see that in -- of course, in some of the factors that I mentioned.』

ひたすらジャッジメントと連呼して回答をする、ということで「ワシらが決めるけんねー」と最終的には利上げをしたいのかしたくないのかから逆算して判断する、と言わんばかりの説明になっているのでありました。


・政策ビハインド批判に対して持ち出している理屈が金融政策論にも影響与えかねない地雷の可能性が

2番バッターはCNBCのリースマン記者。

『STEVE LIESMAN. All right. Thank you, Mr. Chairman. My question is if -- It's often said that monetary policy has long and variable lags, how does continuing to buy assets now, even though it's at a slower pace, address the current inflation problem? Won't the impact of today's changes not really have any impact for six months or a year down the road on the current inflation problem? Aren't you actually lengthening that time by continuing to buy assets such that it could be not until the long and variable lag after you end purchases sometime in March, that you will start to have any impact on the inflation problem?』

ちょwwwおまwwww何ちゅう煽り質問してますねんwwwww

ということで、スティーブちゃんは金融政策の効果が出るのにラグがあるっておんどれらは昔からゆうとるようだが、インフレがホイホイ上がっている中で、テーパリング加速って言ったってそれは(バランスシートの拡大が続くんだから)緩和のおかわり君をしている訳で、3月にテーパー終わるにしたってその間に更に物価にアカンタレな影響がでるリスクは無いのかよ、と思いっきりFEDはビハインドしているんじゃないか質問という無慈悲な砲撃がワシントンに降り注ぐのでありました。

『CHAIR POWELL. So, on the first part of your question, which is, why not stop purchasing now, I would just say this, we've learned that we're -- in dealing with balance sheet issues, we've learned that it's best to take a careful sort of methodical approach to make adjustments. Markets can be sensitive to it. And we thought that this was a doubling of the speed.We'll -- We're basically two meetings away now from finishing the taper. And we thought that was the appropriate way to go. So we announced it and that's what will happen.』

資産買入をいきなり止めるのは市場に対する悪影響がでかいからダメ!ゼッタイ!だそうな。まあことここに至ると9月会合で10月スタートのテーパーをビビらずにぶっこんでおいた方が良かった、と大後悔時代になっているかもしれないな、とは思うのですが。

『You know, the question of long and variable lags is an interesting one.』

金融政策の波及ラグを考えたら手遅れになるリスクがあるのではないか(要は「おんどれらはビハインド・ザ・カーブになってるじゃろオイコラ」という指摘だが)という質問はインテレスティングである(キリッ)、と煙幕を張りまして、

『That's Milton Friedman's famous statement.』

(フリードマンの感想です)って説明かいな(^^)。

『And I do think that in this world where everything is -- or the global financial connect-- markets are connected together, financial conditions can change very quickly.』

この理屈捻りだしてきたという感じですが、「世界的な金融の市場化および世界的な市場の連関性の高まりによって、現代においてはファイナンシャルコンディションが非常に速いスピードで変化する」(ので金融政策のラグは昔よりも短い筈である)ってまあ一面そうなんだが、そこ突き詰めだすと実体経済対比で金融市場がでかく成りまくっている中、実物景気サイクルと金融サイクルの関係はどうなのとかそっちの深遠な方向に話が飛んで、そうなると今度はインフレーションターゲッティング政策自体の枠組みの妥当性とか、運用における政策反応関数が実は金融指標なのでは、みたいな話になって、近年までの金融政策に関する諸々の前提(テーラールールみたいな話とかDSGEをベースにしたアプローチとか)に見直しを入れないと行けなくなるレベルの地雷のような気がするのはアタクシの気のせいでしょうかしら。

『And my own sense is that they get into -- financial conditions affect the economy fairly rapidly, longer than the traditional thought of, you know, a year or 18 months. Shorter than that, rather.』

しかし「金融政策がファイナンシャルコンディションを通じて経済にかなり早い勢いで影響を与える」って説明、単にビハインド批判を逃れるためだけにぶっこんでいるのか、ガチでそう思っているのかは正直良く分からん面がある(もしかしたらミニッツとかを熟読すると見えて来るかもですが)のですけれども、それ言い出すと「フォワードルッキングな対応」そのものが要らんとかそういう話になってしまいかねないので、まさに現代の金融政策論を帰るポテンシャルのある言い訳をしやがってるわ、と思うのでした。

『But in addition, when we communicate about what we're going to do, the markets move immediately to that. So, financial conditions are changing to reflect, you know, the forecasts that we made and -- basically, which was, I think, fairly in line with what markets were expecting.』

『But financial conditions don't wait to change until things actually happen. They change on the expectation of things happening. So, I don't think it's a question of having to wait.』

いやそこまで言わなくても、と思うのだが、更に今の説明の上乗せで、「金融市場は先を見て動くから、中央銀行が実際に何かの変化を行う前にそれを予期して動き出し、その時点でファイナンシャルコンディションが変化する」ってそらまあその通りではあるのですが、そこまで来ると今度は口先ペテン政策への道になりそうで何だかなーとは思う。


追加でスティーブちゃんがテーパリング終わらないと利上げしないの?と聞いていますが、まあこれは更問ではなくてオマケですね。

『STEVE LIESMAN. Can I just follow up, thinking about having to wait, is it still the policy or the position of the Committee that you will not raise rates until the taper is complete? Thank you.』

『CHAIR POWELL. Yes. I -- The sense of that, of course, being that buying assets is adding accommodation and raising rates is removing accommodation. Since we're two meetings away from completing the taper, assuming things go as expected, I think if we wanted to lift off before then, then what we -- you would stop the taper potentially sooner, but it's not something I expect to happen. But I do not think it would be appropriate and we don't find ourselves in a situation where we might have to raise rates while we -- while we're still purchasing assets.』

テーパー完了前の時点ではネットの資産買入は増加しているので緩和拡大中なので、その時点で利上げというのは逆のオペレーションになるから基本はそうはならん。でもって今の見通しだとテーパリング完了前に利上げが適切であるという状況になるとは思っていない。という説明なので、要はこれ本当の本当に泡吹きシチュエーションになったら利上げ開始していきなり資産買入拡大を停止する、というのもあり得ないわけでは無いということでしょうな。まあさすがに3月より前倒しになるには余程の事がないと、とは思うし、そもそもさっきの説明であったように「金融市場が中央銀行の政策を先取りしてファイナンシャルコンディションが変わるとそれで経済に影響がサクッと届きます」ってんだったら、タカタカ情報発信をバンバン行えば同じ効果がでるでしょう、って事になると思うのよね。

ということで、まあ是非という意味ではちょっと唸る面もあるのですが、利上げ加速の代わりにバリバリのタカ情報発信によってコントロールするとか、そっちの技巧方面に走る可能性ってのは十二分にあるので、FOMCSpeaks辺りはよく確認せんといかんですな来年は。


・テーパー終了と利上げのラグについて

というのを3人目は質問。

『COLBY SMITH. Thank you, Michelle. Chair Powell, I'm curious exactly how much distance you think there should be between the end of the taper and the first interest rate increase. Back in 2014, the guidance was -- that was given was for the Fed funds rate to remain at the target level for a considerable time after the end of the asset purchase program. Is that an approach you support now or does the current economic situation warrant something a bit different? Thank you』

まあこれは「物価の状況が違うから2014年のようなアプローチは採らん」でしょうなと思ったら、

『CHAIR POWELL. So we haven't made any decision of that nature. And so, no, I wouldn't say that's our position at all, we really haven't taken a position on that. I will say that we did talk today. We had our first discussion about the balance sheet, for example. And we went through the way the sequence of events regarding the runoff and that sort of thing with the balance sheet last time. And I think people thought that was an interesting discussion. They thought that it was informative, but people pointed out that this is a significantly different economic situation that we have at the current time, and that those -- the differences that we see now would tend to influence how we think about the balance sheet, and the same thing would be true about raising rates.』

決め打ちはしませんよ、と言いつつ、

『I don't foresee that there would be that kind of very extended wait at this time. The economy is so much stronger. I was here at the Fed when we lifted it off last time and the economy is so much stronger now, so much closer to full employment. Inflation is running well above target and growth as well above potential. There wouldn't be the need for that kind of long delay. Having said that, I -- you know, we'll make this decision in coming meetings and it's not a decision that the Committee has really focused on yet』

経済とか物価の状況が前とは違いますので、という回答をしているので、まあゆっくりとした対応をしてる場合じゃない、って感じじゃないですかねえと思うのだがどうっすか?


・結局の所「最大雇用」に関しては利上げ判断に対して後付けで決まるようなので物価と賃金見てれば良さそうですね

これは意地の悪い質問(褒めてる)。

『NICK TIMIRAOS. Thank you, Nick Timiraos at the Wall Street Journal. Chair Powell, in March, you answered a question about maximum employment like this.』

過去との整合性を聞くのは重要(なおどこかの中銀の場合は何故か過去との整合性を聞いても暖簾に腕押しの回答をするか逆切れ回答をするかの2択しかないのがオソロシスなんだが)。

『You said 4 percent would be a nice unemployment rate to get to but it'll take more than that to get to maximum employment.』

『More recently, you have hinted at a possible distinction between the level of maximum employment that's achievable in the short run versus in the long run.』

ほうほう。

『Has your view of the level of maximum employment changed this year? And if so, how? And how close is the economy right now to your judgment of the short-run level of maximum employment? Thank you.』

これはひどい(褒めてる)。でもってパウエルさんってこの手の整合性の質問に関しては割と必死こいて説明する傾向にあるようでして(個人の感想です)大演説が開始されるのでありました。

『CHAIR POWELL. Right. So the -- You know, the thing is, we're not going back to the same economy we had in February of 2020.』

今年の2月とは経済の状況が違います!という説明をしているんだが、もうその時点で「最大雇用ってのは結局の所景気と物価の総合判断から後付けでエイヤーと決めるもんです」と言ってるようなもんですな。割と正直者である。

『And I think early on, that was the sense was that that's where we were headed. The post-pandemic labor market and the economy, in general, will be different.』

ただそう言うと身も蓋も無いので「ポストコロナの労働市場や経済はそれまでと違ったものになっている」と構造変化を起こしたことにしてジャッジメンタルエイヤー判断を正当化すのですね!!!!!

『And the maximum level of employment that's consistent with price stability evolves over time within a business cycle and over a longer period, in part reflecting evolution of the factors that affect labor supply, including those related to the pandemic.』

ビジネスサイクルが循環する中での長期的な物価安定に対して整合的な最大雇用というのは、その一部にはパンデミックの影響による労働供給制約が影響しています、とか仰せになって、その後は数字を出しながらああでもないこうでもないと説明する個所ですな。要はコロナの影響などによって色々な労働市場の数字は過去見られていた時と水準が異なるよって話をしているようですので流してしまって宜しいかと。

『So I would say, look, we're at 4.2 percent now and it's been -- the unemployment rate has been dropping very quickly. So we're already in the vicinity of 4 percent. The way in which the -- The important metric that has been disappointing really has been labor force participation, of course, where we had widely thought, I had certainly thought that last fall as unemployment insurance ran off as vaccinations increased, that schools reopened, that we would see a significant surge, if you will, or at least a surge in labor force participation. So we've begun to see some improvement. We certainly welcome the 2/10 improvement that we got in the November report. But, I do think that it's -- it feels likely now that the return to higher participation is going to take longer. And, in fact, that's been the pattern in past cycles that labor force participation is -- tend to recover in the wake of a strong recovery in unemployment, which is what we're getting right now. 』

とまあ流しましたが、その次。

『So, you -- It could well have been if this cycle was different because of the short nature of it and a very strong -- the number of job openings, for example, you would have thought that that would have pulled people back in. But, really, it's the pandemic, it's a range of factors. But the reality is, we don't have a strong labor force participation recovery yet and we may not have it for some time.』

短期的なビジネスサイクルという意味では言えば労働参加率の改善がパンデミックの影響で更に進むでしょう、とかまあ今後改善しますよ的な話をしているのですが、その最後にしらっとこんなものを入れて来るパウエルはん。

『At the same time, we have to make policy now. And inflation is well above target. So this is something we need to take into account.』

我々は政策をやっているのだからwell above targetになっている物価の動向も同時に考慮に入れないと行けません。とぶっこんでいる訳で、これは最大雇用の定義についてああだこうだ言われてもそんなこと言ったって物価がwell above targetなんだからそこから見れば最大雇用ジャン、と言い張りますよと予告ホームランをしているようなもん、と思ったんですが。

『NICK TIMIRAOS. If I could follow up, you've talked recently about risk management. And so, does that mean that the Committee might feel compelled to raise interest rates before you're convinced that you've achieved the employment test in your forward guidance?』

従来ご説明されていたリスクマネジメントの観点からすれば(物価がwell above targetなのだから)雇用が完全にマンデートに到達したと判断する前に利上げを行う事にも説得力がある、とFOMCはお考えなのでしょうか?と更問を行ったところ、

『CHAIR POWELL. So this is not at all a decision that the Committee has made, but you're really asking a question about how our framework works. And, yes, there is a -- there's a provision, it used to be called the balanced approach provision that says, in effect, that in situations in which the pursuit of the maximum employment goal and the price stability goal are not complementary, we have to take account of the distance from the goal and the speed at which we're approaching it.』

その件につきましてFOMCでは何も決めてませんよ、と言いながらも、バランスアプローチというのはフレームワークの中にありまして、物価と雇用のゴールに対する矛盾が生じた時にはバランスアプローチするって言っておりますので、それはもう・・・・・・・・

『And so that is, in effect, an off-ramp which could in concept be taken and it's in our framework, it's been in our framework a long time. I've talked about it on a number of occasions. It is a provision that would enable us to, in this case, because of high inflation, move before achieving maximum employment. Now, we're -- as I said, we're making rapid progress toward maximum employment in my thinking, in my opinion, and I don't at all know that we will -- that we'll have to invoke that paragraph. But just as a factual matter, that is part of our framework and has been really for a very long time.』

「It is a provision that would enable us to, in this case, because of high inflation, move before achieving maximum employment.」とか思いっきりぶっこんでいる訳でして、これはもうとっとと利上げしたいです、と言ってるのか、実際に利上げするかはともかくとして(さっきの金融市場が中銀の先を読んでファイナンシャルコンディションを動かすという話からしますと)ブラフを掛けて金融市場に影響を与えておきたいのか、というのは微妙ちゃあ微妙ですが、少なくとも情報発信的には冒頭からここまで(ちなみにここで質疑パート26ページ中6ページだったりします)は進軍ラッパ鳴らしまくっておりますな、という感じですわな。


〇年末なのでご挨拶

といってもただの4連休なのですが(^^)、冬眠なのか仮死状態なのか、という円債やら短期ちゃんにしろ金融政策にしろ、来年は楽しくなる(ナンジャソラ)ことを期待しながら来年もご愛顧のほどを伏してお願いいたしますです。

ではよいお年をお迎えください!





2021/12/29

お題「基調的な物価の上昇がキタコレになる中での黒ちゃんの物価目標行かない発言とは/10月会合議事要旨ネタを今更恐縮ですが」

年末週が木曜日まである訳ですが、既に先週金曜から債先ちゃんの売買高が1万枚割れとるのでこの調子だと5営業日連続で4ケタかよと割と頭がクラクラしますな。

まあ虫干しネタの成敗には良いのですが(^^)。


〇やっとのことで基調的な物価の上昇キタコレなのだが直近の黒ちゃんの物価上がらん発言は・・・・・・・・

虫干しネタの成敗をするとか言いながらネタの先入先出法(誤用)によって直近ネタである。

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
消費者物価の基調的な変動

PDFの図表を見ただけでもキタコレとなっておりますが、エクセルの方をポチっとなとして中身を見ますと苦節何年やっと来ました(ただしコストプッシュ)という風情ですわよ。

折角だからコロナ直前からの2年間の推移を貼っておきましょう。暦年2020年は15年基準のCPI、2021年は20年基準のCPIがベースになっています。例によって例の如く左から順に刈込平均値、加重中央値、最頻値。

Jan-20 0.3 0.0 0.3
Feb-20 0.2 0.0 0.3
Mar-20 0.1 0.0 0.2
Apr-20 -0.1 0.0 0.3
May-20 0.0 0.1 0.3
Jun-20 0.1 0.1 0.3
Jul-20 0.0 0.1 0.1
Aug-20 0.0 0.1 0.1
Sep-20 -0.1 0.1 0.2
Oct-20 0.0 0.1 0.3
Nov-20 -0.1 0.1 0.1
Dec-20 -0.3 0.0 0.1

Jan-21 -0.3 0.0 0.0
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 -0.1 0.1 0.1
Apr-21 -0.3 0.1 0.1
May-21 -0.1 0.1 0.1
Jun-21 0.0 0.1 0.1
Jul-21 0.2 0.1 0.1
Aug-21 0.3 0.1 0.2
Sep-21 0.6 0.2 0.2
Oct-21 0.6 0.1 0.2
Nov-21 0.8 0.1 0.2

さあもりあがって参りました!!!!!と言いたいのですが、よく見ると加重中央値と最頻値が碌すっぽ上がっていない、というのが何かこうアレげなものを感じますが、ここは歳末でもありますので威勢よく(全然意味が違う)刈込平均が一気に1%に迫る勢いになっていることに万歳三唱しておきませう。ばんじゃーい。

更にシャレオツなのは上昇品目下落品目の構成の方でして、これまた基準年に関しては2020と2021の間で変更になっていますが、まあそれは兎も角として推移をみるとこの有様。左から上昇品目比率、下落品目比率、上昇品目比率−下落品目比率ですな。

Jan-20 61.8 36.5 25.2
Feb-20 60.0 38.4 21.6
Mar-20 57.9 40.5 17.4
Apr-20 58.3 39.2 19.1
May-20 59.1 38.6 20.5
Jun-20 59.7 38.0 21.6
Jul-20 54.9 42.4 12.4
Aug-20 53.7 43.6 10.1
Sep-20 56.0 41.3 14.7
Oct-20 54.9 36.5 18.4
Nov-20 51.2 40.2 11.1
Dec-20 48.0 43.6 4.4

Jan-21 46.7 44.6 2.1
Feb-21 49.0 42.7 6.3
Mar-21 51.0 41.0 10.0
Apr-21 50.2 41.8 8.4
May-21 51.1 41.4 9.8
Jun-21 50.6 42.0 8.6
Jul-21 51.9 41.0 10.9
Aug-21 56.1 36.2 19.9
Sep-21 57.1 35.1 22.0
Oct-21 58.4 34.1 24.3
Nov-21 59.2 33.3 25.9

何気に下落品目比率が着実に下がっているのがイイハナシダナーという風に思う訳で、個人的に言えば財布に全く優しくないので物持ちは良くなるわダイエットは進むわ(大嘘)とまあアレではあるのですが、こうやって物価がホイホイと上がってなんか2%達成したように見せかけてしまえば大勝利宣言と共にマイナス金利政策とかYCCとかリスク性資産の買入とかそういうものがさっくりと無くなり、円債村というよりも特に短期村と致しましては、「仕事するだけマイナスサムなのだが何もしないと人のマイナスもおっかぶされるので火の粉を無限に払い続けないといけない」という賽の河原の亡者モードで、そんなところに若いのを配置してくれないし年寄りは徐々に力尽きてしまうし、という悲しい状態からプラスサムのアリガタヤアリガタヤ時代になって頂ければお仕事も潤って誠に結構、とまあそういうとらぬ狸の皮算用をする訳ですな。

・・・・・・然るに、またもあの話となりますが、12月MPM後の総裁会見とその後の経団連講演で2%に行きません(キリリッ)とか威張って堂々と黒ちゃんが仰せになっているのは何ですねんというお話であります。

QQEの後ってなんか同じような感じで概ねコストプッシュ(円安と消費増税のドサクサと消費増税の対策で財政打ったりした影響)な物価上昇が起きておりましたが、あの時点で何か上手い事大勝利宣言をして足抜けしてしまえば良かった、と後付けでは思うのですが、まあ確かに途中まで調子よすぎの物価だったから、そらもうちょっといい数字見たい、とかそういう欲が起きてしまうのシャーナイナイと思うのですよね。

でもって、そこで引っ張っていたら結局あばばばばーとなり追加緩和となり謎の手直しをしたと思ったら逆切れマイナス金利からの惨状となった訳ですが、その時の教訓を生かすのであれば、そろそろ「ようやく日本でも物価安定目標に向けた前向きの動きが始まって来ました!!!!」とか鉦や太鼓で大宣伝することによって、任期の最後の最後で勝ち逃げという美しいフィナーレを迎えることができるかも知れないじゃないですか。もし美しいフィナーレ迎えたいなら本当は今辺り、まあ年初でも良いのかもしれないですが、早い時期に勝利への序曲を宣伝しておいた方が良い筈だし、そらアタクシのような市場の片隅のチンピラゴロツキですらそう思うんですから、日銀の中の人達(ただしボンクラ政策委員を除く)だってそういうのは分かっている筈なんですよね(個人の妄想です)。

しかしながら、ここに来てなんか黒ちゃんわざわざ「2%物価目標は物凄く遠いんです」と勝ち逃げをマッコウクジラで否定する発言するのの意図is何?というのが大変に不思議でありますので、これを考察(という名の妄想)すると(1)実は黒ちゃんもう1期総裁をやるので別に23年3月までに勝ち逃げをしなくてもよい、(2)新機軸は全部後任に放り投げる気満々で自分の代では方向性を出したくない、(3)風呂敷を広げ過ぎてしまってどう閉じて良いのか分からない、(4)そもそも緩和を縮小すると何が起こるか分からないから怖いのでビビりで問題先送り、等とパッと思いつくのですが、何ぼ何でももう1期はお身体的にちょっとアレでしょうから、張り込み過ぎて引くのが最早怖いという状況になってしまっていると妄想しておきます。

概ねこの辺りの数字ってのは当然ながら日銀の中でも総務省の公表数字を待つまでもなく調査統計局の方で分析してて、今回のMPMとかでもこれに近いものは周知されている筈なので、それまで踏まえてのあの物価に関する行きません宣言と考えれば意外に味わいの深い年末の黒ちゃんなのでした。


〇虫干しネタになりますが10月決定会合議事要旨

まあ今更ジローではありますが。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2021/g211028.pdf

・10月展望レポート時点での物価に関する記述を確認しておきましょう

というのは昨日になって遅ればせながらネタにした「12月会合主な意見」での物価に関する委員の意見と比較しましょうかってな話の為ですが。

『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』の『1.経済・物価情勢の現状 』における物価の話から。

『物価面について、委員は、消費者物価の前年比は、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響がみられる一方、エネルギー価格などは上昇しており、0%程度となっているとの見方で一致した。』

というのは良いとして現状認識に関しては、

『複数の委員は、携帯電話通信料やエネルギー価格を除いた、実力ベースでみた消費者物価の前年比は、小幅のプラスとなっていると指摘した。このうちの一人の委員は、短観の各種指標にみられるように予想インフレ率が持ち直しているとの評価を述べたうえで、経済再開に伴う需給ギャップの改善等も踏まえれば、基調的な物価上昇圧力は、わが国でも徐々にではあるが、高まってきているとの見方を示した。別の一人の委員は、消費者物価指数を構成する品目のうち、感染症の影響から価格が下落していたとみられる品目が、このところ上昇に転じていることに注目していると述べた。』

これが10月末時点での認識なので、さっきの基調的な物価で見れば、

Aug-21 0.3 0.1 0.2
Sep-21 0.6 0.2 0.2

Aug-21 56.1 36.2 19.9
Sep-21 57.1 35.1 22.0

って辺りの時点での話ですから、こういう認識を複数の委員が示していて、でもって12月を迎えた結果12月会合主な意見の方で物価の話が(相変わらず9人中6人しか書いていないのがムカツクんですがそれはそれとして)威勢良くなっているのは当の然ということになるんでしょうな。

でもって(そういえば1月展望まで3週間切ってるのに10月展望の基本的見解本文ネタをすっ飛ばしておりますすいませんすいません)『2.経済・物価情勢の展望』という項目、即ち展望レポートの検討での物価の話の所を確認しますが、展望レポートに書かれている部分(最初の方に書いてある)のはまあ既知の話なので飛ばして内訳部分を見ると、

『こうした物価見通しの背景について、委員は、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、足もとではマイナス圏で推移しているが、先行きは、潜在成長率を上回る成長経路に復していくもとでプラスに転じ、見通し期間の中盤以降はプラス幅の緩やかな拡大が続くとの見方を共有した。』

中盤以降のプラス拡大ってのが眉唾ですがまあ先に行く。

『また、委員は、家計の値上げ許容度は賃金上昇率の高まりなどを反映して緩やかに改善するほか、企業の価格設定スタンスも徐々に積極化することから、コスト転嫁と価格引き上げの動きが拡がっていくとの認識で一致した。』

いやーアタクシ近眼老眼乱視の三段重セットで字が読めないせいか「賃金上昇率の高まり」という文字列が認識できないんですけど(自爆)。

『そのうえで、委員は、現実の物価上昇率の高まりは、適合的期待形成を通じて、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率の上昇に繋がり、更なる物価上昇を後押ししていくとの見方を共有した。』

そら良いんだが、前回現実の物価上昇率の高まりによる期待は消費抑制につながった、というのは忘れないでもらいたい、と思ったがその時の当事者は当時の総裁の黒ちゃんと当時の理事の雨宮さんしか居なかったりするのでした。

『一人の委員は、世界的に気候変動問題への意識が高まり、石油・石炭が再生エネルギー等に代替される動きが続くもとで、エネルギー価格の上昇は長期間持続し、物価上昇圧力となる可能性があると指摘した。』

コストプッシュですけどね。

『ある委員は、経済正常化の進展に伴う需給ギャップの改善を背景に、既に大きく上昇している企業物価の消費者物価への転嫁が強まっていく可能性があるとの見方を示した。』

問題はここよ。この転嫁が回らないと賃金上げる原資が無いのですが、まあそれ以前の問題で企業が防衛的に動くと転嫁してもそれでホッとするだけでお賃金上げてくれないのよね。

『一方で、この委員は、日本では、コロナ禍でも企業が雇用をある程度維持してきたことから、米国のような人手不足による賃金・物価の急上昇が生じる可能性はそれほど高くないと付け加えた。』

と思ったらこの人賃金の指摘してるわ。ちょっと別ルートの理由だけど。

『別の委員は、輸入原材料の価格上昇を転嫁する動きが消費者物価を押し上げているが、わが国における賃金上昇や供給制約に起因する物価上昇圧力は弱いと指摘した。』

その通りなのだがそこを何とか持って行く話を日銀にはやってもらわんと困る。

『一人の委員は、消費者物価の前年比はプラスに転じたが、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると、予期できる将来において「物価安定の目標」の達成は難しいと述べた。 』

まあこれは片岡さんじゃないかな。

『こうした議論を経て、委員は、物価の見通しは、前回と比べると、消費者物価指数の基準改定の影響を主因に 2021 年度が下振れているとの見方で一致した。』

・・・・・・・・ということで、現状認識では割と威勢の良い意見が出るのだが、いざ展望レポートに落とし込むとなると、この時はCPI基準年改定によるマイナスがでかくてどよよーんとしていたから、というのもあるのかもしれませんけど、現状認識での威勢のよさはどこへやらという感じの尻すぼみになるのでありました。


・政策運営に関する部分で円安の影響の話があったとな

『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですが、最近はあまり揉める要素(ジンバブエ要因)が無いのでおもんないのですが、10月会合では何と「円安の影響」でコーナーが設けられております。(そのほかが商品価格の上昇と金融政策、という言われんでも結果はお察しの話なのでそこは割愛します)

『更に、委員は、為替円安の影響についても議論した。』

「為替円安の影響」に地の文章ではアンダーラインが引いてあります。

『何人かの委員は、為替円安の影響について、輸出を押し上げる効果は従来よりも低下しているが、海外収益の増加や株高を通じて日本経済全体に対してはプラスに作用しているとの見解を示した。』

ほうほうそうですかそうですか。ちなみに12月会合の主な意見でも為替円安の話で意見言ってる人いましたね。

『一人の委員は、金融政策運営の観点から、為替円安の影響を考えるうえでは、経済全体へのマクロ的なインパクトの見極めが重要であるとの認識を示すとともに、同時に、業種や規模、個々の経済主体によって、その影響が不均一であることも念頭に置く必要があると指摘した。』

そらそうなんだが結論が無い。やりなおし。

『別の委員は、このところ円安等に起因する物価上昇がみられるが、現状ではインフレ圧力の強まりが日本全体の経済厚生を低下させる可能性は低く、強力な金融緩和を維持すべきであると述べた。』

実際問題として円安ファクターってそんなに効いてるのかねというのが良く分からんので詳しい人教えてちょ。

『ある委員は、足もとの為替円安は、各国の物価上昇率や金融政策スタンスの違いを反映していると述べ、為替円安の影響を議論する際には、実体経済や金融市場を通じた様々な波及経路を総合的に考慮する必要があるとの見方を示した。』

そらそうなんだが結論が以下同文。

『複数の委員は、為替相場や資産価格は金融政策の重要な波及経路ではあるが、それ自体が目標ではないことにも留意すべきであると述べた。』


・そういえばどうでもよいですがマリーアントワネット理論がだんだん変わっていますね!!!

9月議事要旨では『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』の中に例のマリーアントワネット理論が有った訳ですが・・・・・・・・・

『また、ある委員は、余資を現預金で保蔵する家計が投資信託などに積極的に投資するようになれば、配当収入を通じた可処分所得の増加が期待されると述べたうえで、金融政策の効果波及を高める観点からも、金融資産投資についての理解浸透を図るべきであるとの認識を示した。 』(ここの部分だけ9月会合議事要旨より引用)

10月議事要旨では『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要 』の『2.経済・物価情勢の展望 』の方にこの理論が引っ越しをしていまして・・・・・・・・・・

『別の委員は、NISAや中小企業による確定拠出年金の利用促進等により、家計の金融資産を幅広い層の所得向上に向けて有効活用していくことが重要であるとの見方を示した。』

・・・・・・おや?「賃金が上がらないのならば株式投資をすれば良いのに、オーッホッホッホ」のマリーアントワネット理論がちょっと変わっておりますね。「家計の金融資産を幅広い層の所得向上に向けて有効活用していく」とは何の事ぞという感じでして、別に家計の預貯金だって退蔵物件な訳ではなくて、預貯金になっていれば預金金融機関による有価証券投資によって社会的には活用されるのであって、それを家計が直接やるのか金融機関が代わりに行っているのか、というだけの話だと思いますけどね。

でまあ昨日ネタにした12月会合主な意見では特にそのことネタにしませんでしたけど、そういやマリーアントワネット理論の意見が無かったですなあとか思ったりするわけで、いやーあっはっはっは(棒読み)と申し上げておきませう。


#なんかのんびりと虫干しやってるが年初には12月FOMC議事要旨だがね・・・・・・・





2021/12/28

お題「オペ紙とかオペの関連とか12月会合主な意見とか」

これはセキュリティも万全(違)。
https://mainichi.jp/articles/20211227/k00/00m/040/078000c
警視庁、フロッピーディスク2枚紛失 38人の個人情報入り
社会 速報
毎日新聞 2021/12/27 12:01(最終更新 12/27 12:01) English version 463文字

『警視庁は27日、東京都目黒区にある区営住宅の申込者38人分の個人情報が入ったフロッピーディスク(FD)2枚を紛失したと発表した。申込者が暴力団関係者かどうか照会するため、同区から個人情報を提供されていた。現時点で情報の流出や悪用は確認されていないという。』(上記URL先より)

物持ちが比較的良いと自称しているアタクシでもフロッピーディスクのリーダーはもうないですわ(なおフロッピーディスクの昔々のは確かにあった気がする^^)。


〇オペ紙変更なしと来ましたな&その他オペ関連メモメモ

・特に日銀何も勝負せずに輪番据え置きと来ました

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211227c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定(2022年1〜3月)

−1年:1500×1(前回1500×1)
1-3年:4500×4(前回4500×4)
3-5年:4500×4(前回4500×4)
5-10年:4250×4(前回4250×4)
10-25年:1500×1(前回1500×1)
25−年:500×1(前回500×1)
物価連動国債:600×1(前回600×1)
変動利付国債:300×1/4(前回300×1/4)

という事で変更なし。4月以降コロナオペの期落ちがバカスカ来る事が予想される中で、そんなに輪番目立つ減らし方するのもどうなの、という見方がある一方で、逆に4月以降はコロナオペ期落ちによるMB減少が見え見えなので、そこに減額ぶつけに行くとさすがに何か勘ぐられてしまうので減らすなら今回、という見方(個人の勝手な憶測です)かねとは思いましたが、何せコロナ対応各種臨時措置による日銀当座預金のアホウのような拡大があるので、MB的には輪番の方が誤差になってしまってて、今更ここを上げ下げするのがどうなのよというのもあるし、大体からして3か月ごとの公表に変更したってのは、毎月の上げ下げで色々とメッセージ出しているように言われたくないって事でしょうから、これが据え置きだからどうのこうのというのをあんまり評価する必要ってないんじゃないのとは思うのですけどね。

とは言いましても、目先の需給で価格ちゃんは動いてしまいますので、注目するなと言っても注目してしまうのが市場の中の人の仕様でありまして、まあどうせあーだこーだと講釈は出ると思うのですが、暫く前みたいに「市場を出来るだけかく乱しないようにしながらオペ減らしますわ」みたいな一本の流れみたいなのは無いんじゃないのかね、とは思いますけれども、むしろコロナオペの期落ちがある程度進んできた辺りから何かまた新たな意図を持った流れが出来るとオモロイかな、とは思います。(なのでコロナ対応のあれこれMB攻撃でアホラシカと思ってあんまり見て無かった国債買入残高の状況については年末分からまた定例の月初計数確認を再開しようと思います)

しかしまあ何ですな、物価連動国債の輪番はそろそろ減らしてもエエンチャウのという気がするんですが、ただのイメージの話で本当の所はよくわからんですけど、コロナオペも3月で多くの部分が打ち切りだというのに、こっちはコロナ対応(みたいなもん)で拡大したのが減りませんなあという所でありまして、物価ちゃんが珍しくもプラス圏で推移して来年とか見た目だけは更にドン、というご時世なんですから、ここ少しはいじるのかなとちょっとだけ思ってたんですけど据え置きなのね、そうですかそうですか。


・社債CP買入は3月までは既存通り(当たり前ですが)

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211227a.pdf
CP・社債等買入のオファー日程(2022年1月〜2月)

CPは5000×2、社債は1250(1-3)+750(3-5)ですが、まあ3-5年に関しては(いつぞやの指値オペと違って今度は本当の本当に)サイゴン陥落前に出る最終輸送機の1月は2便前と相成りますので、乗り遅れの無い様にという風情ですが、まあサイゴン陥落したからどうなのというと社債市場がカオス化する訳でもないでしょうから(個人の感想です)まあ別にね、といった所なのかもしれません、よー知らんけど。


・新コロオペ82兆円www

先週金曜ネタですが。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211224e.pdf
新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーションの実施結果

2.貸付予定総額
貸付予定総額 124,679億円
(参考)貸出残高(注) 821,939億円
(注)2021年12月27日時点の貸付残高の見込み。

ちなみに前回は
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211125a.pdf

(参考)貸出残高(注) 804,993億円
(注)2021年11月26日時点の貸付残高の見込み。

となっておりましてちゃっかりと増えているのがお茶目でございますが、まあ普通に考えて軽く半分は今後期落ちで落ちていくでしょうなあ(もっとかもしれんがよくわからん)ということで、一応この減少は「MBの拡大方針」というのには矛盾しない、という超越理論によって気にしないことにしているという話ではあるんですけど、よくよく考えてみますとそもそもQQEをおっぱじめた時にニバイニバーイと言いながら日銀当座預金が年間80兆円ペースで拡大(当時は日銀保有国債は50兆円ペースで拡大でしたなナツカシヤ)と仰せになっていたその80兆円分のオペがバカスカ期落ちが来て、どのくらい歩留まりするのかわからん(カテゴリーTの分は歩留まり間違いなしだけど後は他のオペに振り替えになったりするのも含めた意味での歩留まり状況はよくわからんですよね)ものの、例えばの話40兆円落ちても「一時的」と言えるのか、という問題は多々ございますわな。

でまあその話をすると「そもそも量とは」という話になるのでありまして、この政策において資産買入の結果として量が出る、というのはその通りであっても、量そのものを目標にするという事に何の意味があったのか、と言っても日銀公式はオーバーシュート型コミットメントなんぞを入れて置物理論の顔を立てるというイカサマ検証をしているだけに、まあ黒ちゃんのいるうちにここの見直しはせんのでしょうな、ナムナム。


あと、地味な論点ではあるのですが、このコロナオぺ、バカスカ出た理由は何といってもマクロ加算ニバイニバーイと特別付利というとってもスイーツな餌があったからホイホイと札が集まった訳でございまして(現にコロナオペ入れた当初はあっという間に札が頭打ちになったので、住宅ローン担保証券とかもはやコロナとどこがどう関係があるのかわからんもんまでコロナオペ対象にして数字作りに狂奔したのが昨年3月4月5月辺りのお話)、これって要はかつて「超過準備付利10bp(法定所要準備は無利子)」というエサがあったから超過準備が積みあがりました、というのと同じ話でして、じゃあその「奨励金レートで付利された超過準備」には何の意味があるのよという論点(ゆうてみれば不胎化された超過準備みたいなもんですから)とか、まあ色々なオモシロ論点が転がっているのですが、そういう点をつつくと蜂がブンブン飛んできて収拾がつかなくなるので放置プレイな日銀公式なのでありました。


〇そういえば気候オペもあったので後日の為にメモ

気候変動対応のためヒー〇テックの肌着を買ったんで補助金80兆円下さい。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211223a.pdf
気候変動対応を支援するための資金供給オペレーションの実施結果

1.概要
貸付実施の通知日時
2021年12月23日(午前9時30分)
貸付日
2021年12月24日
返済期日
2023年1月30日

何故か1年1か月なのね。

2.貸付予定総額
貸付予定総額 20,483億円

ほうほう2兆円ですかそうですか。

(参考)対象投融資の残高(注)
(注)今回の貸付にあたり、本オペの貸付対象先から報告された「わが国の気候変動対応に資する投融資残高」の合計。これが貸付限度額となる。

こういうの報告させるのね(全然真面目にオペ実施要項を見てない)

基準時点 2021年9月末
対象投融資の残高 24,761億円

ということで対象融資額が2.5兆円くらいで2兆もオペ入った(と言ってもこれ気候オペ先だけが報告しているので世の中全体の数字ではない筈)とは一応日銀としてはニッコリという所ですかね。まあ何でこんなの作ったかなあとは思いますけど。



〇前回の議事要旨ネタの前に順序が逆だが今回のMPM主な意見を拝見するが物価の話以外見るものは無い

基本的に議事要旨も主な意見も最近はオモンナイのですが、さすがに世界中銀ウィークともなりますと政策委員会の皆様もちったあ反応するでしょうと思って拝読。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2021/opi211217.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2021 年 12 月 16、17 日開催分)

・前向きの循環メカニズムが進むんじゃなかったんでしたっけ

最初の『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』に珍しいものが幾つか。

『・ 12 月短観では、設備投資の増加計画が確認されたが、イノベーションに繋がる成長投資や多くの国内従業者が働く非製造業・中小企業による設備投資の計画に力強さがみられない。』

何ですかね、またまた先日の黒ちゃん経団連講演との関連になりますが、黒ちゃんの説明だと成長投資とかが出てくることによって日本経済の成長力を高めて2%物価目標達成へという白川ドクトリン全開のお話をしていましたが、どうも現状ではこうではないですかねえ、という身も蓋もない指摘が。

まあそういう身も蓋もない状況だからこそ企業の成長に向けた投資(それが何故かDXとカーボンニュートラルなのは正直謎なのだがまあそこはさて置くとしまして)が必要だと力説した、ということなら整合性が取れるのですが、展望レポートなんかでの読み筋だと既に企業部門で前向きの循環が回っていて、設備投資が強くて、その設備投資による資本ストックの増強とか生産性の向上によって前向きの循環メカニズムが持続するから持続的成長によって物価の基調も徐々に上がって行って2%達成だぜヒャッハーっていうのが中長期的な展望になっているのでありまして、これは中々身も蓋もない指摘で結構なのですが、じゃあ1月の展望レポートの時にこの辺りの見通しについてもイチャモンつけていただいて何なら展望基本的見解の記述に反対、とか残して頂けると大変に良いのではないかと存じますので是非お願いいたします。

『・ 交易条件の悪化に加え、物流の混乱や供給制約の長期化も企業収益を押し下げ得る。こうした中で価格転嫁が十分に進まない場合、利益から資本や労働への分配が滞るリスクが高まる。』

労働への分配が滞るも何もそもそも(ピー音)、というような個人の話はさておきまして(−−;、この部分に関してはまあそうですよねーって思うのだが、コストプッシュの転嫁ができないと企業収益をスクイーズするというネタは何故かこう「それはゆうはならん」みたいな感じがするというか避けて通っているというかな感がするので結構な指摘ですな。


と、褒めてみましたが、一方でいつものように大本営発表を垂れ流す委員もいます。

『・ 政府において賃上げ促進に向けた検討がなされている中、感染症への警戒が継続するもとでも企業活動が活発化し、賃金と物価が大きなタイムラグを伴うことなくそれぞれ安定的に上昇することで、前向きな消費活動に結び付く好循環に繋がることが期待される。』

大本営発表というよりも台湾沖航空戦幻の大戦果という風情ですが、誰が書いたか分からん作りになっているにしても、これだけの台湾沖航空戦モードを堂々と文章にして世に出してしまおう、という精神にはある種の感動を覚える(別に褒めてはいなくて面の皮の厚さに感心してるだけ)。


・今回の主な意見の経済部分ってちょいちょい先週の黒ちゃん講演のカウンターみたいなのがあるのよね

こんなのがあります。

『・わが国の企業が海外での地産地消を進めてきた結果、円安が企業業績や株価にもたらすプラスの効果は、かつてより小さくなってきている。』

まあこういう意見が出ていまして、いや何で12月会合でその話が出るのやらとは思うのですが、またまた先般の黒ちゃん経団連講演(ということであの講演は目先の政策云々では別にインプリケーション無いのですが、色々な意味で味わいのある講演だったっちゅうことですな)で為替円安のプロコン説明をしていたのに対するイヤミみたいなのが入っていますな。MPMの方が先にありましたので、黒ちゃん経団連講演の中でこの手のカウンターに対するお答えもしてた、という風に思えるのも経団連講演の滋味を増すことになっております。


・そんな話で「主な意見」の貴重な文字数を使わんでくれ

経済のパートの最後の意見だが。

『・人々が安心して経済活動を再開し、グローバル経済が安定的な成長軌道に復するためには、世界に広くワクチンが行き渡り、新たな変異株の出現リスクひいては感染・重症化を抑制していくことが極めて重要である。』

極めて重要なのはその通りなんだが、MPMの主な意見という場にこれ書くの何の意味があるんだよとこれ書いた人に小一時間問い詰めたい。ただの字数の無駄じゃろ。


・物価については上がる期待をしている人が多いですね

『(物価)』のパートですが、相変わらず6つしか意見が無いのは残念ではありますけど、内容は今回結構強気なもの、あるいは強気になれると良いなあ的なもの、という風情でして、威勢が良いまでいうと言い過ぎな気がしますが、まあ何か少しは希望の光がみたいな感じ。

『・ 消費者物価の前年比は、0%程度となっているが、目先、エネルギー価格の上昇を反映してプラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。』

これは大本営なのでどうでもよい。

『・ 原材料価格の上昇等を背景に企業物価が歴史的な伸びを続ける中、消費者物価についても、基調的な上昇圧力が徐々に高まってきているように窺われる。』

ほうほうそうですかそうですか。

『・ 12 月短観では、仕入価格と販売価格のギャップが拡大しているが、企業の物価見通しが上方修正されるなど、価格設定行動に変化の兆しが窺われる。』

と、この二つが「希望の光が見えてきたような気がせんでもない」タイプ。

『・ 予想インフレ率は中長期を含めて足もと上昇しており、物価上昇圧力は、先行き高まっていくと見込まれる。また、政府が賃上げの推進を行う中、来年以降の賃金上昇率が注目される。』

これは勇ましい。

『・ 需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると、2023 年度末に「物価安定の目標」を達成するのは難しいが、企業の価格設定行動や予想インフレ率の変化には注目している。』

期待度たっぷりの意見ですね。

『・ 次回展望レポートでは、最近の予想物価上昇率や原材料コストの上昇などを踏まえ、物価は下振れリスクが大きいとの従来のリスク評価の妥当性を点検する必要がある。』

最後がこれでして、こちらの人はリスクバランスの話ではありますが、下振れが大きいをそろそろ引っ込めるべきでは、という話。

まあそもそも展望レポートの見通しって成長見通しのリスクアセスメントと物価見通しのリスクアセスメントのアグリゲートしたものが整合的でない、という謎見通しになっているのは、今年4月の展望レポートで謎の成長見通し強気転換(前向きの循環メカニズムというパワーワードが復活した会合ね)以降ずーっとその状況が続いてて、物凄く違和感があるというか、強めの物価を出して緩和縮小観測が出るのがとっても嫌なのか、実際に物価が上がる現実が起きると「物価が上がれば世の中ハッピー」の邪宗置物理論の化けの皮がはがれてアベノマスクに続いて廃棄される惧れにビビってるのか知らんですが、この整合性の無さというのは前からナンジャソラ状態でございましたので、ここを修正してくると色々と日銀も味わいが出て来るし、そういう時に黒ちゃんの任期の残り時間カウントダウンとぶつかると更に味わいも出ようというもので、何か来年に向けて急にオラワクワクして来ただ!!と(たぶん錯覚か幻覚なのですが)思う年の瀬でございました。

なお、政策の部分に関する意見ですが・・・・・・・・

・コロナ臨時対応も通常の政策も区別が議論の上でどうなっているのかよくわからんのだが

MBとの関係はさすがにあれだけ言われているだけに・・・・・・・

『・特別プログラムの見直しに際しては、経済や物価に悪影響がないことやマネタリーベースの拡大方針との整合性を説明する必要がある。』

『・ 昨春以降のマネタリーベースの増加は、感染拡大による流動性需要の高まりに日本銀行が潤沢な資金供給で応えてきた結果である。今回の措置により短期的にマネタリーベースが減少しても、長期的な増加トレンドは維持されるため、オーバーシュート型コミットメントとは矛盾しない。』

と、言い訳に色々と苦慮しておられるようですがwwwそれはそれとしまして、

『・特別プログラムは、コロナ禍対応の政策であり、基本的にはコロナ禍が終われば手仕舞いさせるべきものである。特別プログラムを全て手仕舞いすることになったとしても、それはコロナ禍対応の終了であり、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとでの金融緩和の縮小を意味するものでは全くない。』

というのは話しは分かるのですが、

『・わが国の物価上昇は原油・資源価格上昇を受けた部分が相応にあり、中長期の予想物価上昇率は2%の「物価安定の目標」にアンカーされていない。現段階での金融緩和政策の修正は、コロナ禍からの回復に水を差し、景気後退と物価下落をもたらしかねず、時期尚早である。』

この「修正」ってのが今回のコロナオペ一部終了を意味しているのか、全体的な話で言ってるのかがわからんし、そもそもあまり過去の例がない政策をぶっこんでおいて、その効果の点検とかについて、政策のパーツパーツについて検討して必要なものは続ける、不必要なものは修正する、ってのは過去の類例の少ないような非伝統的政策を実施するにあたって当然行うべきことなのですが、よくわからんけど緩和っぽいからぶっこんで、それがどうなっても修正するのは緩和後退だからダメ、という姿勢の方がよっぽど非科学的にも程があると思うのだが、毎回よーゆーわという感じですな。







2021/12/27

お題「経団連での講演を見た後に改めて総裁定例会見を見ると「今マジ物価上昇するとマズー」という認識があるように見えます(小ネタで勘弁)」

道新インタビュー中々の味わい(全文は無料会員登録が必要ですので読んでない)。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/627638
<安倍元首相単独インタビュー>北方領土「2島返還軸」への転換認める 「100点狙って0点なら意味ない」
12/26 12:42 更新

100点を諦めて10点取りに行っても0点(もしかしたらマイナス点)だったようにしか見えませんが・・・・・・・

#ちなみに歯舞と色丹の合計は4島全体の1割くらいの面積だったのではないかと

千島列島に関しては代々木の人達の主張が一番強硬(平和裏に締結された千島樺太交換条約が有効なので千島列島全島が日本固有の領土である、という超原理原則論)ってのはいつ見てもオモロイですな。

・・・・・じゃあ安倍ちゃん、2%物価目標達成って出来もしないものを何であんなに言い出したのかと思ったのだが、安倍ちゃんに吹き込んだ連中は当座預金残高を70兆円にしたら達成とかほざいていたんですね!!!!!!。

〇MPM後の総裁会見と経団連での講演がどっちも物価2%到達を思いっきり否定していたのは何だったのか

という壮大な小見出しですけど(笑)、先週の総裁会見では物価の事結構聞かれてて、堂々の2%行きません宣言をぶっこんでいましたし、経団連の講演では遂に「成長力が上がらないと2%行きません」というあのーすいませんその話は9年前に白川さんが既にしてた話なんですけど、というのをぶっこむというこの連弾でしたが、まあよく見れば(よく見なくてもそうですが)MPM後の総裁会見って物価が上がるの質問やたら多かったのよね、ということで木曜の黒ちゃん会見ネタの残りを少々。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk211220a.pdf
総裁記者会見要旨
―― 2021年12月17日(金)
午後3時半から約60分

・よくよく読んでみると「物価が上がって目標達成が近づくと実は困る」という答弁をする黒ちゃんェ・・・・・・・・

『(問) 今の質問にちょっと重なる部分があるのですが、来年以降、欧米の中央銀行と政策のスタンスの差ができると、どうしても、最近の円安が金利差で更に進むとか、輸入物価の上昇につながったりとか、そういう必需品、一般の人への副作用みたいなものが膨らむ惧れもあるのではないかと考えますが、その辺りはどういうふうにお考えでしょうか。』

という質問が割と早い部分にあります。そういえば今回の会見ですが、質問が割と「今の質問に関連して」という枕詞の付く質問が出るのが目立っておりまして、質問する皆様の進歩を感じられるのは宜しゅうございますな、と思いました。なんだやればできるじゃん、という感じですが、多分今回のMPMは出てきた施策自体が玄人向けのしか無かったから記事にするなら海外との比較だ、ってのはあったんでネーノってのはあるけど。

ちなみに「今の質問に関連して」というよりも前の質問で黒ちゃんが説明した話に関連している質問って感じの方が多かったので、「今の総裁のご説明に関連して」って質問した方が綺麗なのと、そうやって質問すると黒ちゃんの方も安易な回答をすると別の人からの更問で苦しくなる、という緊張感が出るような気がするので、そうなるとあのやる気のない想定問答棒読みのポンポコリンな答弁も改善されるのではないでしょうか(個人の妄想です)。

『(答) 現在の輸入物価上昇の大きな要因として、石油、天然ガス、その他のエネルギー資源価格が国際的に非常に上昇している点があります。わが国は、エネルギー、石油や天然ガスを殆ど輸入に頼っていますので、それが企業物価の動向にかなり反映されてきています。更に、今、エネルギーだけではなく、鉄鋼などの価格も国際的に上昇し、それが影響しているということがあります。』

それは良いんだかじゃあ何で日本の消費者物価はそんなに上がってこないんでちゅかねえ、というような話をする訳は有りません。

『その資源高の原因をみると、やはり世界的に経済活動の再開が進んで需要が大きく拡大する中で起こっており、今のところ、輸出の増加あるいは海外収益の拡大といったプラスの効果の方が、原材料コスト上昇によるマイナスの効果を上回っていると考えています。』

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『それから円安云々についてですが、現在の交易条件の変化に円安が大きく影響していることはないと思いますが、もし為替相場が円安の動きになると、円建ての原材料コストを押し上げる一方、同時に、輸出金額あるいは海外子会社の収益を押し上げることもあります。』

この辺は数日後の経団連講演でも話をしておった。

『最近の企業収益の改善動向、あるいは消費者物価の落ち着きを踏まえると、若干の為替の円安は、これまでのところわが国経済にプラスに作用していると思います。』

おいこらちょっと待て、何だその「消費者物価の落ち着きを踏まえると」ってのは?????

『今後為替がどのように動くかは色々な状況によりますので、欧米が金融引締め、あるいは金利の引き上げを行ったとしても、必ず円安になるとも限りませんし、また、そうした状況で仮に若干円安になっても、先ほど申し上げたように、現在の状況をみると、むしろわが国経済にプラスに作用すると思います。』

コストプッシュを頑なに認めないと。

『ご指摘の欧米と日本銀行の金融政策スタンスの違いについては、確かに、欧米はかなりのインフレになっていますので、金融引締め、金融緩和の正常化に動き出しているわけですが、わが国の場合は、物価上昇率は 0%程度、色々な一時的な要因やエネルギー価格を除いても+0.5%程度と、2%にはまだ相当遠いわけです。』

ほうほうそうですかそうですか、ということはさっき「消費者物価の落ち着きを踏まえると、若干の為替の円安は、これまでのところわが国経済にプラスに作用」とゆうとったがその理屈からすると物価目標達成したら円安はマイナスに作用するんけ??

『従って、現在の大規模な金融緩和を粘り強く続けていくことは、わが国の経済・物価にとって必要なことだと思いますし、先ほど申し上げたように、それが交易条件の悪化を通じて、日本経済に大きなマイナスになるというような状況ではないと思っています。』

いやいやいや、だって「消費者物価の落ち着きを踏まえると、若干の為替の円安は、これまでのところわが国経済にプラスに作用」だったら物価が上がったら困るじゃん、だったら2%目標って達成する必要ないじゃん、という話になるんですが。

・・・・・と考えて金曜日にネタにした経団連での講演での「成長力の引き上げによって物価目標達成」という話を読みますと、つまりは成長力も上がらんで物価がホイホイと上がると、それは日本経済になんのプラスにもならん、即ち経済に見合った物価上昇目標というのがあって、今の日本経済はその段階に達していません、という結論になりまして、それってどこからどう見ても白川ドクトリンの世界(と急に真面目になって麿と言わないアタクシ)の話をしている、ということジャンと少々ビックリするのでありました。

まあ何ですな、是非これは次回の総裁会見で「前回の定例会見や年末の経団連講演などのお話を総合すると2%物価安定目標は日本経済の成長力引き上げが進む中で徐々に達成されていくもの、というご説明と理解しましたが、そのような趣旨で理解して宜しいでしょうか」と誰かぶっこんでみて、「然り」と来たら次の人が更問ですよ更問。


・でもコストプッシュしたらどうするの?の質問には忍法煙巻き回答の術を披露しています

物価絡みで後の方でこんな質疑が。

『(問) 先ほどの質問と少し重なるところもあるのですが、総裁にお伺いしたいのは、来年にかけて仮に物価がコストプッシュで上がっていって、CPIが色々な要因で動く中で、家計の実感が物価上昇を嫌悪するとか消費活動に影響するようなことになって、例えば消費が減少するとか弱まるといったときに、なかなか賃金はすぐには上がってこないと思うので、そういった状況になった場合は、日銀として対応する余地があるのか、それとも政府が対応すべきところなのか、お願いします。』

直球質問キタコレ。この直球への回答は苦しいわなと思ったら案の定ダラダラと長広舌の回答になっておる。

『(答) それは大変微妙なところであり、例えば、米国のFRBは、物価の安定とともに雇用の極大化も目標に入っています。他方で、殆どの中央銀行は物価の安定は目標に入っていますが、雇用の極大化は入っていませんし、日本銀行も入っていません。』

会見の映像を見ていないのでどういう感じでこの部分回答しているのかよくわからんのですが、この質問って普通に想定問答にぶっこまれている筈で、何でこんな斜め上から回答をおっぱじめているのか良く分からんのですが、もしかしたら事務方謹製の想定問答集が「斜め上の話しから回答を始めて煙に巻きましょう」とか書いてあるんですか????????????

『ただ、先ほど来申し上げているように、日本銀行法が「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を使命としていることから言って、ただただ物価が上がればよいということではなく、あくまでも賃金、物価の両方が上がっていく中で、2%の「物価安定の目標」が実現されることが好ましいわけです。』

何が何でも2%達成とか、むしろ以前は経団連の前で「2%への招待状」ということで、日銀が2%を達成する社会を作るからお前ら遅れるんじゃねえぞ、と仰せになっていた時のあの覇気は何処に逝ってしまわれたのでございましょうか(棒読み)。

『ここからは日本銀行政策委員会としての公式の議論ではありませんが、2%の「物価安定の目標」が実現されて、日本経済の成長率といいますか労働生産性上昇率が 1%強あるとすれば、賃金は 3%程度上がっていかないといけません。そのように物価が上がり、賃金も上がっていって、実質賃金も上がっていくという形で、2%の「物価安定の目標」が達成されることが望ましいわけで、』

さてここでアベノミクスの生みの親ともいわれておりました浜田宏一大先生によります2%物価目標の重要性についてのありがたいご説明を確認しましょう。え、「さてここで」の時点で何を引用するか分かるわお前はどこまで粘着質なんだですと???

・・・・ぐぬぬ、なんか例の名小見出し「名目賃金は上がらないほうがよい その理由はあまり理解されていない」がいつの間にやら会員じゃないと見れない記事になってやがるあんな貴重な歴史的資料を、と言ってもまあ金払えば読める(なお無料会員でも月5本の記事は読めるそうな)ので無くなってない訳だから文句を言う必要はないんですが、あれは歴史的に極めて重要な発言なのでダイヤモンド社におかれましてはきっちりと残しておいていただきたいですな。

『それに向けて私どもも努力しますが、やはり何といっても、賃上げ企業に対する法人税の減税など政府が様々な形で賃上げを促進しようとされていることは、非常に好ましいことだと思っています。』

まあ努力するのはエエンだが法人税が下がるとかそういうインセンティブで上げた賃金っていうのはサステイナブルじゃない気がするんだよなー。

『それから、ごく一時的な要因で物価が上がっているときに、すぐに金融を引き締めることは好ましくないと思います。やはり金融緩和によって経済活動が活発になり、企業収益も増えて雇用も増え、雇用が増えるところで賃金も上がっていくわけですから、そういう意味では、私どもとしては、やはり賃金、物価の両者がいわば好循環の中で上がっていくという形になるように、金融政策として最大限の努力をし、他方で、もちろんご指摘のような政府の政策も大変有効だと思いますので、それはしっかりと実施して頂くと有り難いと思っています。』

この回答自体は筋論としてその通りなのですが、問題なのは例えばFEDが直面している「コストプッシュの物価上昇がブロードベースになり、物価上昇に対する生活給要求が高まる上に労働供給に制約がある中で生産性の伸びを上回る物価上昇が起きている時にどう対処するのか」という話であって、質問もそっちの方の話の筈なんですが、そこについては回答をしたくないので、そもそも論をおっぱじめて誤魔化すの巻に出てきているようですが、この回答、冒頭の部分から斜め上の話しから始まっているので、恐らくこの点については日銀の恐れるシナリオになっているから正面から回答し難いんでしょうな、というのは把握しました。


・・・・・・・・・ということでですね、まあ日銀の政策自体はどうせ地蔵オブ地蔵ではあるのですが、来年になって年度が替われば2023年の黒ちゃんの任期までカウントダウンがおっぱじまる、という中で、先般のMPMにおける「政策手段を見ながら所期の効果を達成した施策を部分的に引っ込めるプレイ」とか、今引用した会見および先週木曜の経団連での講演における「2%達成は無理無理無理」と言いながら「達成するには成長力の強化が必要」などのように、だんだんポスト黒ちゃんというか、置物政策からの足抜けを着々と進めてきているのではなかろうか、と勿論これは置物政策被害者の会会員番号334番のアタクシのポジトー成分は入っておりますが、ただまあ来年に向けた変化の胎動みたいなのがだんだん見えて来たように思えるのですが、何せ日銀のことですからそうやって期待させておいても、アタクシが見たのはただの蜃気楼だったという事になるかもしれないので油断も隙もありません。

でですね、まあどうせ今週はFED高官が急に余計なことを言い出さない限りは中銀ネタの棚卸週間だと思いますし、年初にはFOMC議事要旨という大イベントがあるのでFED中心の成敗かもしれないですけれども、日銀もちょっとずつ微妙な足抜けっぽいのもないではない(実は完全にすっ飛ばしているのですが10月展望レポート(基本的見解)の本文の書きっぷりがだいぶ変わっているのもやっぱりこの流れになってみるとちゃんと整理しておいた方が良いのかと後付けで思うなどのように)ので、その辺も整理して行こうかと思います。

#とか先の話しばっかりしてるうちに時間が無くなったので今朝は甚だ簡単で恐縮ですがこんな所で






2021/12/24

お題「歳末恒例の黒ちゃん経団連講演ですが遂に金融政策で2%達成は無理ですに近い話にまで落ちぶれたか・・・・・・」

てっきりこのデリバリー会社中華資本だと思ってた・・・・・・
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC231FT0T21C21A2000000/
ドイツの料理宅配「フードパンダ」日本撤退 事業売却へ
ネット・IT
2021年12月23日 12:31

中華企業のパチモンになるのがcoolという時代にまでなったのか、と思うと大昔made in Japanが粗製乱造品の象徴だった時代があったそうですな(城山三郎さんの短編小説読んで味噌、なおワシが物心つく頃は国内の舶来信仰は強かったが日本製は世界に羽ばたく優秀な製品になってた筈です)という過去の歴史を思うと感慨深いものがありますなあ。

〇歳末恒例の経団連での黒ちゃん講演です

・何といっても今回はお題を見て吹いたのですが過去のお題を確認してみましょう

昨日は歳末恒例の経団連での黒ちゃん講演があったようですが、なんかヘッドラインが碌すっぽ無かったような気がする(アタクシの見落としなだけかも知れませんので念のため申し添えます)ので、後から「あ、そういや今日だったかしら」と思いながら講演のお題を見たとたんに爆笑の発作www

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko211223a1.pdf
金融政策と企業行動:
金融政策の効果波及経路と日本企業の構造変化
── 日本経済団体連合会審議員会における講演 ──

こwwwれwwwわwww

とうとう物価目標が行かないのは企業のせいと自分たちの無見識を棚に上げて責任転嫁をしだしたかと笑ってしまいましたが、言ってることはソフトだけど結構それに近い話をしているところもあって笑いました。

さてここで毎年年末に行われる恒例の経団連での講演、幣駄文でも恒例になっておりますが、こちらの黒ちゃん講演お題の推移を確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_all/index.htm/
講演・挨拶等
年別一覧

この辺りからピコピコと拾ってくるわけですが。

2013年12月25日 黒田総裁 【講演】「デフレ脱却の目指すもの」
2014年12月25日 黒田総裁 【講演】「『2%』への招待状」
2015年12月24日 黒田総裁 【講演】「転換点を迎えて」
2016年12月26日 黒田総裁 【講演】「世界経済の新たなフェーズと日本経済の課題」
2017年12月26日 黒田総裁 【講演】「人手不足を越えて:持続的経済成長への展望」
2018年12月26日 黒田総裁 【講演】「わが国の経済・物価情勢と今後の展望」
2019年12月26日 黒田総裁 【講演】「好循環の持続に向けて」
2020年12月24日 黒田総裁 【講演】「感染症への対応と中長期的な日本経済の課題:ポストコロナも見据えて」
2021年12月23日 黒田総裁 【講演】「金融政策と企業行動:金融政策の効果波及経路と日本企業の構造変化」

・・・・・・・まあどういう感想になるのか、ってのは人次第のような気がするのですが、最初の威勢のよさがだんだんトーンダウンしてきて、途中から持続的成長みたいな話になり、8年半経って何を今さらとしか言いようのない「金融政策の効果波及経路と日本企業の構造変化」とかそういうのは最初に考えてから政策導入しろよ馬鹿かお前らというお題になっているのがおとーちゃん泣けてくるわって感じでございますが、まあ皆様のご感想はどんなもんでしょうかね。


・金融政策の波及効果と言えば置物大師匠の図表www

何せ今回はお題の半分が「金融政策の波及効果」なので再掲しますが講演テキストの15枚目をご覧あれという感じですね。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko211223a1.pdf

こちらスライド15枚目の下半分が「図表2」になっていまして、『金融政策の主な効果波及経路』という図になっております。さてここで2013年に京都商工会議所で置物とかいう物体が能書きを垂れていた時の波及経路図を見てみましょう。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf

こちらは図表だけのページですが、スライド7枚目にあの伝説の風が吹けば桶屋が儲かる波及経路、『「量的・質的金融緩和」の波及経路』がございますが、まず笑えるのは最初の部分が、置物経路だとちゃんと「2%インフレ目標コミットメント」「マネタリーベース増加」とてめえらがやっている政策の看板を掲げていたのですが、今回のこの図表、スタート部分が単に「金融政策」となっているのみでありまして、個別の政策手段が何に影響するかという話を(一応してないわけでもないですが)かなりフニャフニャに説明していますし、何といっても「インフレ期待上昇」が片隅に追いやられるということで、物価安定目標を達成すると経済の好循環が起きるという本末転倒置物リフレ理論はどこに行ってしまったのでしょうか、って別に無くなっても構わんのだが、そういう邪教に則って展開した馬鹿政策の後始末と、関係者の責任の所在の追求と然るべき制裁を加えてから転向しろやこのクソボケがあああああ!と馬鹿政策の被害をモロに食らった円債村短期村の一村民としては申しあげたいところですな。


・金融政策の波及効果の説明が見苦しい言い訳にしか見えないのは気のせいですかそうですか

などという悪態はさて置きまして、こちらの本文、前半の構成が今申し上げました金融政策の波及効果のチャネルでして、説明が無駄にクッソ長い(個人の感想です)なので途中飛ばしつつ引用しちゃってスマンのだが(なんせ本文が11ページもありやがる)拝読しましょう。『2.金融政策の効果波及経路』って小見出しから参ります。

『はじめに、金融政策の効果が、企業等の資金調達や支出行動の変化を通じて、どのように実体経済に波及していくのか、その経路の全体像を概観します(図表2)。』

図表2ってのはさっきご確認いただいたフロー図ですな。

『金融緩和を例にとりますと、その効果波及には様々なチャネルが考えられます。代表的には、第1に、企業が必要な資金を必要な時に調達できること、すなわち資金のアベイラビリティが改善するチャネル、第2に、金利が低下し、企業の資金調達コストが低下するチャネル、第3に、内外金利差の拡大などを通じて、為替レートが円安方向に動くチャネル、があります。』

ほうほうそうですかそうですか。

『そして第4に、金利の低下に加え、リスクプレミアムへの働きかけなどによって、株価等の資産価格が上昇するチャネルも存在します。』

欧米では住宅価格の急騰という形でしょみーんの生活にまでモロに跳ねてきて(先般シュナーベルだかが言ってましたがラテン諸国と比較してドイツ様の持ち家比率低いからドイツ様にモロにレントの上昇が跳ねておるようですな)、資産価格のアカンタレな上昇で格差は拡大するわ生活必需のレント上昇が一般ピーポーの生活を圧迫するわ、というような論点が言われて問題視されている、という欧米諸国の潮流の中、ジャパンの中央銀行様は暢気でよろしゅおすなあ(はんなり)。

『第3の為替レートチャネルや第4の株価チャネルは、金利の低下が起点となっていることを考慮すれば、「金利チャネルの系」と言うことも出来ます。』

株価の方はまあ良いんだけど為替レートって別に内外金利差だけで起きるもんじゃないんですけどねえ、まあいいけどさ。

『以下では、日本企業の構造変化との関わりが相対的に大きいと考えられるアベイラビリティ、金利、為替レートの3つのチャネルに焦点を当てて、順にご説明します。』

という時点でお察しになられたかと思いますが、なんと今回のこの講演の前半でありますところの金融政策尾波及効果がどうしたこうした話は、上記の3つのチャネルを通じた波及効果が日本企業の構造変化によって小さくなっている、という説明をおっぱじめる事になる訳です。

いやさあ、別にそれ2013年以降に大きく変化した話じゃなくて、麿の時代からずーっと指摘されてて、麿日銀はそういう事もあるから金融政策単体で物価上昇率を飴細工みたいに変えられる訳ないですよね、そもそも金融政策単体で出来るのはマクロ経済の調整であって飴細工みたいに成長を思いっきり持ち上げるような事できませんよね、っていうような(直接言ってたかどうかは麿著作集と麿講演集を見ないといかんのでパスしますが少なくとも金融政策とはそういうもんです、という認識に立ったドクトリンを展開していたのは疑いない所です)ドクトリンをもって政策の運営に苦労していた訳ですが、えーっとすいませんあんたら8年半も政策大迷走して何を今さら構造変化で政策波及チャネルが弱まっているとか言うのかよとゆー所ですな。

では拝読。どうも読み進めると一々悪態を書きたくなるので結論に近い所から引用するようにしますね(^^)。


・企業が資金余剰の中ではアベイラビリティ・チャネルの効果は低くなる(キリッ)って何を今さらジロー

今の次が『(アベイラビリティ・チャネル)』って小見出しになります。

『まず、アベイラビリティ・チャネルです。このチャネルは、貸出市場やCP・社債等の資本市場で、企業が調達できる外部資金の量の変動を通じて、企業の支出行動に影響を与えるチャネルです。』

はい。

『企業の持つ内部資金が少ないほど、また外部資金への依存度が高いほど、効果が大きくなるチャネルと言えます。』

いきなりの出オチに草も生えないwwwwwwwwww

『中小企業を含めたわが国企業のバランスシートを長期的にみると、2000 年代以降、現預金の保有が大きく増加し、自己資本比率も内部留保の蓄積により趨勢的に上昇しています(図表3)。このため、少なくとも平時では、流動性制約に服している企業の割合は低下しており、アベイラビリティ・チャネルの重要性も、従来に比べれば低下していると考えられます。』

じゃあ金融政策効かないじゃん。という話ですが、転んでもただでは起きない屁理屈捏ね太郎なのが日銀クオリティでして、まあアタクシも屁理屈捏ね太郎の成分が一部に入っている(全部じゃないよ!)のでこの負け惜しみのような付け加えに泣いた。

『もっとも、リーマン・ショックや今回のコロナショックなど、大きなショックが発生した際には、不確実性の上昇に伴う予備的な流動性需要の高まりや、CP・社債市場の機能低下などを背景に、資金のアベイラビリティが低下し、企業の支出活動は大きく制約されます。このような局面では、中央銀行が、流動性の潤沢な供給を通じて、企業の事業継続を支えることが決定的に重要となります。』

節子、それ金融政策やない。

・・・・・いやまあ金融政策ちゃあ金融政策ですけれども、マクロ経済調整という文脈の金融政策で波及経路がどうのこうのという話をするときに、ウォルター・バジョット的な中央銀行のLLRの話をまじぇまじぇされましてもそれは話を混乱させるだけの事なんですが、この部分の続きの引用は飛ばしますが、お察しの通りコロナ関連措置を行って日銀頑張りましたアピールになるのでした。


・金利チャネルの効果を延々と説明しているが企業が資金余剰主体であるという話はネグるんですね

次が『(金利チャネル)』になります。

『続いて、金利チャネルに話を移します。金利チャネルには、まず、名目金利ないし予想物価上昇率への働きかけを通じて、実質金利を変化させることで、企業や家計の資金調達コストに直接影響を及ぼす経路があります。』

ほうほう。

『政策金利の変更に伴う貸出金利やCP・社債金利の変化は、その典型です。さらに、金利の変化には、株価や為替レートなど金融資本市場の変化を通じて、間接的に実体経済へと波及する効果もあります。』

と来て何の話をするのかと思えば(ちょうどここでページが変わる)次のページの冒頭でズッコケた。

『この点、日本銀行は、本年3月に実施した「金融緩和の点検」において、金利の低下が経済・物価に影響を及ぼす経路に関する実証分析を行いました(図表6)。』

お手盛り点検の話はクッソどうでも良いので飛ばしまして先に行きます。

『金融資本市場を通じる経路のうち、為替レートについては、この後詳しくご説明しますので、ここでは、まず、資金調達コストの経路に焦点を当てます。資金調達コストの変化は、具体的には、耐久財の消費や住宅投資、設備投資、在庫投資など幅広い国内民間需要に影響を与えます。』

『これらのうち、マクロ経済学の創始者であるケインズは、有名な『一般理論』において、長期金利から設備投資へのチャネルを最も重視しました。』

『現在、日本銀行は、イールドカーブ・コントロールという金融政策の枠組みのもと、伝統的な短期金利だけでなく、長期金利も低位で安定的に推移させることで、設備投資を中心とする民間需要を下支えしています1。』

ところで日本の長期金利と設備投資に関してここ20年くらいの間に何か相関関係が有意に取れるのでございましょうかねえ。

でまあ以下なんか設備投資がどうのこうのという話に流れて行ってしまいまして、最後には遂に気象変動対応オペの話まで行くのですが読んでてナンジャソラな話なので割愛します。


・為替チャネルについても変化があるような話をしれっと入れているのがチャーミング

次の小見出しは黒ちゃん大好き『(為替レートチャネル)』になります。

『次に、為替レートチャネルです。為替レートは、金融政策が直接目標とする対象ではありませんが、内外金利差の変化などを通じて、間接的に金融政策の影響が及びます。とは言え、どの年限の金利差が影響するかは、その時々の市場動向に大きく左右されるうえ、経済学者の間でも現実の為替レートの動きをうまく説明・予測できるモデルの構築は、理論的にも実証的にもきわめて難しいことが知られています。』

それなのに為替レートチャネルって言いきってるのナンジャソラという感じですが更に鑑賞。

『為替レートの変動は、貿易相手国との間で、財やサービスの相対価格を変化させ、ひいては企業の様々な意思決定に大きな影響を与えます。このため、為替レートは、経済や金融のファンダメンタルズを反映して、安定的に推移することが何よりも重要です。』

「ファンダメンタルズを反映して安定的に推移するのが重要」というのと「金融政策で為替レートに金利を通じて影響を与えて波及効果を出す」っての決定的に言ってることが矛盾しているんですけれども・・・・・・・・・・・・

『この点について、トリシェ元欧州中央銀行総裁は、日米欧の中央銀行が、同じ2%の物価目標を目指して金融政策運営を行っていることが、為替レートの中期的な安定に繋がっている可能性を指摘しました2。』

この辺から前任者罵倒タイムになります。見苦しいけど引用しておきます。

『たしかに、かつては、わが国企業が、為替レートの過度な変動に悩まされる局面が度々ありました。しかし、日本銀行が 2013 年に2%の物価目標を採用し、大規模な金融緩和を開始して以降、為替レートのボラティリティは低下しています(図表8)。このことは、企業の事業環境を巡る不確実性を低下させるうえで、重要な役割を果たしてきたのではないかと思います。』

為替レートのボラ低下とQQE政策導入の関係は疑似相関かも知れませんよね、という話はスルーするのが黒田日銀クオリティ。


でもって罵倒タイムはここで終わって説明タイムに戻りますが、

『そのうえで、為替レートは、大きく分けて3つの経路を通じて、経済・物価に影響を与えます。第1に、為替円安は、自国で生産する財やサービスの価格競争力を高めることで、輸出数量の増加に繋がります。第2に、為替円安により、名目の輸出金額や海外事業の円建て収益は増加します。第3に、為替円安は、輸入コストの上昇を通じて、家計の実質所得や内需型企業の収益を下押しします。』

でもってこのように来るのですが、

『このように、為替レートは、経済・物価に様々な影響を与えますが、それぞれの影響の大きさは、日本企業のグローバル化に伴って、中長期的に変化しています。以下では、この点を少し掘り下げてご説明したいと思います。』

「それぞれの影響の大きさは、日本企業のグローバル化に伴って、中長期的に変化しています」っていう時点で結論がお察しになれられるかと思います、掘り下げて説明しているのはめんどいのでパスしまして結論部分。

『以上のように、為替レートの変化がわが国経済に及ぼす影響は、構造的に変化しています。それでもなお、わが国における為替円安の動きは、方向としてみれば、経済と物価をともに押し上げるという基本的な構図に変化はない、と考えています。』

だそうです。

『そして、わが国の消費者物価の上昇率は2%の物価目標を下回っていること、また、わが国のファンダメンタルズに照らせば、資本逃避を懸念するような状況にはないことを踏まえると、わが国にとって、為替レートの円安方向の動きは、基本的にプラスの効果の方が大きいということになろうかと思います。』

と、微妙な言い方をして最後にこのヘッジクローズが来ているのがチャーミング。

『ただし、為替円安にはプラス、マイナス両面の影響があり、またそれらは個々の経済主体の事業内容や支出構造によって現れ方が様々であることには、十分な留意が必要であると考えています。』

(・∀・)ニヤニヤ


・次のコーナーでは企業が設備投資しろという話を延々と展開するのでありました

金融政策の波及効果の話は以上でしたが、この次のコーナーが『3.日本経済の成長力強化と物価安定目標の実現に向けて』というお題になっておりまして、従来は物価安定目標を実現するから皆さんも設備投資など行って行きましょうね消極的なスタンスだと置いていかれますよ(例えば2014年の「『2%』への招待状」辺りを見ますとよくわかるので是非ゲラゲラ笑いながら読んで頂きたい)という話でしたが、遂に説明が「成長力を強化すれば物価目標も行きまっせ」という何処からどう見ても麿ドクトリンに回帰する話に成り下がって(成りあがって)おりまして、ああ無情といった所でしょうか(・∀・)。

なんせ書き出しが、

『次に、これまでご説明してきた金融政策と企業行動の関係を踏まえ、ポストコロナにおける日本経済の成長力強化に向けた課題について、お話しします。』

って話でして、その続きが・・・・・・

『わが国経済は、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を開始した 2013 年以降、コロナショック発生直前の 2019 年まで、平均すると年+0.9%のペースで成長してきました。』

しょぼ過ぎる。

『この間、わが国企業は、政府の政策の後押しもあって、「働き方改革」など労働環境の整備に努め、女性や高齢者の労働参加を強力に促してきました(図表 13)。その結果、この間の雇用者数は、人口減少という逆風にもかかわらず、400 万人を超える大幅な増加を示しました。』

単に生活きつくなって働きに出ている人とかがこういう説明を見ると多分トサカに来ると思うのでこういう説明はポリティカリーな意味で控えた方が良いと思うんですが上級国民の巣窟にいると気が付かないのかな。

『もっとも、最近では、女性の労働参加率が既に米国を上回る高い水準に達し、人口の多い「団塊の世代」も 70 歳台半ばを迎える中で、女性や高齢者を牽引役に労働参加率をさらに上昇させていくことが難しい局面に入ってきています。』

60歳で定年になって夢の年金ジジイ生活を夢見ていた(出来るとは言ってないし過去形なのに注目して下さいorzorz)アタクシが絶望するような事言わんでくれ。

『そうした中で、わが国経済が成長力を維持・向上させていくためには、資本ストックの蓄積を図るか、生産性を高めていく必要があります。』

ということでその次が、

『この点で、設備投資や研究開発投資は、重要なカギを握ります。』

ということで設備投資しましょうねDX投資しましょうね脱炭素しましょうねリカレント教育しましょうね、という話が延々と続き、自分たちが2%物価目標を達成するから付いてきなさい!という気迫は完全に無くなって企業の皆様の設備投資によって成長力が高まらないと2%達成しません、という話になっておるのですが、だったらマイナス金利政策とかそういうの要るの??と思いますし、クレジットスプレッドやリスクプレミアムを無駄に潰すことによって、資源の適正配分という意味では無駄に不必要な所に配分が行われてしまうような弊害をもたらすリスクのある、過度なリスク性資産の日銀による買入とかを全面的に終了した方がエエんじゃないの、とかそんなツッコミをしたくなる結論部分でした。このコーナーの結論部分まで飛びますと、

『本日縷々ご説明したように、日本銀行の大規模な金融緩和は、アベイラビリティ・チャネルや金利チャネルを通じて、事業活動や投資に取り組みやすい環境を提供しています。また、為替レートの安定的な推移も、企業活動を巡る不確実性の低下に繋がっています。そして、金融政策判断の拠り所となる日本のインフレ率は、欧米と異なり、物価目標を下回って推移しています6。』

『このため、日本銀行の政策スタンスは、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」による強力な金融緩和を、粘り強く続けることが基本となります。』

はあそうですか。

『このように、現在は、わが国企業にとって、低金利とこれまでに蓄積した内部留保を有効活用し、デジタル化や脱炭素化に向けた投資を増やしていくのに望ましいマクロ経済環境と言えます。』

何でDXとカーボンニュートラルの限定列挙なのよ、と思いますがそれはさておき、

『企業の支出行動が積極化し、それに伴ってわが国経済の成長力が高まっていけば、金融緩和効果は一段と強まり、2%の物価目標の実現にも近づいていくことが期待できます。』

という結論になっておりまして、2%物価目標達成降参宣言をしているようにしか見えませんし、大体からしてここから先ってグローバルな物価上昇に伴うコストプッシュのインフレが先に来て2%達成とはこんなにアカンタレなものだったのか、と日銀が総叩きになるリスクがあったりすると思うのですが、昨日ネタにした総裁会見での「2%は行きません(キリッ)」と言い、今回の企業の設備投資が無かったら2%行かないもんね講演と言い、さてはお前らコストプッシュで物価が上がって日銀総叩き、岸田さんは当然の如く「日銀のチョンボですなあ」で梯子を外して日銀だけが大炎上(上手くすれば安倍ちゃんにも延焼)、という素敵な未来を意識しだしているんでネーノって気もせんでもないですな、というような妄想を逞しくしながら年末恒例の黒ちゃん講演鑑賞をするのでした。


#来週は直近および過去の中銀ネタのサルベージと成敗をするんでしょうがその間にFED高官は何か言いそうですね









2021/12/23

お題「黒田総裁記者会見ですがコロナ見直し以外の所でボロボロとボロが出ている希ガス」

これは大喜利が捗りますね!!
https://mainichi.jp/articles/20211222/k00/00m/020/298000c
「東急ハンズ」の名称変更検討 買収発表のカインズCEO
経済 速報
毎日新聞 2021/12/22 19:31(最終更新 12/22 21:34)

前々から採算がアレとかでしたし、東急としてもコロナで余裕をぶっかましている場合でもない、ってことなんでしょうけれども、南関東人をウン十年やっておりますアタクシ的には「東急」の何となくシャレオツな感じを象徴するのがハンズ(近年は微妙感ありますけど、昔の渋谷ハンズのワクワク感たるや・・・・)だっただけにまあ時代の変化ですなあとは思うのでした。


〇黒ちゃん会見である(出遅れてますが)

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk211220a.pdf

・幹事社の最初の質疑でとりあえず今回のコロナオペ見直しの説明は示しているの巻

最初は黒ちゃんの説明で、その次が多分幹事社の質問だと思うのだが(金曜は会見見てない)二つ質問があるのでまずは前半から。

『(問) 今日の決定会合で、資金繰り支援のコロナ対策について一部見直ししたわけですが、中小企業向け資金繰り支援コロナオペについては、来年 9 月まで延長ということでして、対面型サービスに一部厳しさが残っているとご指摘されていますけれども、具体的にどのような点をご懸念されているのかご説明ください。(後半割愛、というか次に)』

『(答) 中小企業の資金繰りは、先ほど申し上げたように、総じてみれば改善傾向にありますが、対面型サービスなど一部になお厳しさが残っているということだと思います。例えば、今週公表した 12 月短観の資金繰り判断DIをみますと、中小企業全体では+8 とプラスになっているわけですが、中小企業のうち、感染症の影響を受けやすい「宿泊・飲食」と「対個人サービス」については、それぞれ−33、−11 と、なお大きめのマイナスとなっており、改善が遅れています。こうした状況を踏まえ、引き続き、中小企業等の資金繰り支援に万全を期す観点から、コロナオペのうち中小企業支援に相当する部分を半年間延長することとしたわけです。』

実際には「一部の業種の為に何でマクロ全体政策を延長するねん」というツッコミはあるのですが、先日も申し上げましたように、アタクシ多分今回の決定に関しては評価する人なのですが、その評価するというポイントが全然人と違うみたい(アタクシがコミュ障なのもあるがオーラルで説明するとどうも別の解釈をされるのよこれがまた)でして、政策手段の中身をちゃんと切り分けた対応をした、つまりこの臨時措置だけじゃなくて他の施策についても(今のダマテンテーパーみたいな姑息な方法じゃなくてちゃんとした形で)政策手段の有効性、妥当性についての切り分けをすれば、無駄な政策や有害無益な政策が削除できませんかね、というのの小さな一歩になって欲しいと思っているんで、正直何で対面サービスのために中小企業全部の融資を優遇する政策継続するんじゃお前らは、というのはあるが、日銀としては「特定業種の中小企業向けプロパー融資だけインセンティブを与える」みたいな政策は出来ません(やるべきでもない)からこうなるのはシャーナイ位の事は分かっておりますわよオホホホホ。

『最近では、オミクロンという新たな変異株が発生するなど、感染動向を巡って不確実性の高い状態が続いています。こうした中、年内のこのタイミングでなるべく早く延長を打ち出すことが、感染症の影響を受けやすい中小企業やそれを支える金融機関の安心感につながると考えています。(後半割愛)』

バリバリの想定問答丸読みって感じですけど、まあ是非はさておき理屈は分かる。今後更に中小企業の全体としての資金状況が改善した時にこの施策どうしますねん、という課題は残り続けるでしょうな。


・海外との比較ですがここは切り分けて質問しないと絶対に日銀の蒟蒻問答で逃げられますわな

幹事社質問の後半。

『(問)(前半割愛)また、米国や英国の方で、物価の上昇を踏まえて金融引締めの動きがありますけれども、日本も原材料高や円安ドル高の進展で原材料価格の上昇が指摘されており、その物価上昇を背景に、日銀としては 2%目標を掲げているわけですが、今後どのように政策運営をしていくお考えかを教えてください。』

黒ちゃんの答え。

『(答)(前半割愛)次に、各国の金融政策に関することですが、各国の金融政策は、自国の経済あるいは物価の安定を目指して行っていますので、経済・物価情勢の差異に応じて金融政策の決定内容や方向性に違いが出るのは当然だと思います。』

まあこの答えも微妙ちゃあ微妙で、こういう回答をすると「ではなぜ海外では物価が政策当局が困るくらいまで上昇しているのに、日本では上がらないのでしょうか(という質問は既に前回の総裁会見でも出ているが)??その差の中には日本銀行の金融政策対応が不適切である、という点があるのではないでしょうか????」ってぶっこまれたときにどういう回答をするのか見てみたいんですよね。

『ご指摘の通り、今週、FRBは、資産買入れの減額のペースを加速する決定を行ったほか、ECBは、パンデミック緊急買入れプログラムのもとでの資産買入れの終了を決定しました。また、BOEは、政策金利の引き上げを決定しました。』

はい。

『もっとも、これら海外中央銀行の決定が直ちに日本銀行の政策スタンスに影響を及ぼすことはありません。』

この所よ。これを威張って(るかどうか知らんけど)言われましても、じゃあ何でお前の所だけ達成しないんだよ日銀の政策がヘタクソだからじゃないの???と思うんだが。

『海外のインフレ率をみますと、米国では 7%程度、ユーロ圏や英国では 5%程度に高まっています。一方、わが国の消費者物価の前年比をみますと、全体として 0%程度となっています。もちろん、その中には、携帯電話通信料の引き下げの影響が−1.5%程度の下押し要因になる一方で、エネルギー価格の上昇、昨年のGo To トラベルの裏要因など押し上げ要因が重なっているわけですが、これら一時的な要因やエネルギーを除いたベースの物価上昇率をみても+0.5%程度ということになっており、目標の 2%とはなお距離があります。』

特殊要因除いても+0.5って他国に対して死ぬほど劣後しているんですがそれを威張って(かどうか知らんが)言われましても困るんですけど。

『また、先行きの消費者物価を展望しても、前年比上昇率は、日本銀行の現在の見通し期間の終盤である 2023 年度にかけて徐々に高まっていくとはいえ、1%程度の伸びにとどまると予想しています。』

だったら上がるような施策を他国の状況を参考にしたら出来るんじゃないですかねえ(鼻ホジホジ)。

『日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくという方針です。』

と言ってるんだが、そもそも「現在の強力な金融緩和」が物価上昇に寄与していないから、世界的に物価上昇の流れが起きている中で日本だけ取り残されているんじゃないでしょうかねえ。つまり追加緩和なんんじゃなくて、そもそもの今の枠組みの設計に問題があるんじゃないですかねえ。


・質問はちょっと惜しいのだが黒ちゃんが謎に興奮(?)して回答でボロを出しておりますな!!!!!!!

という悪態をついた所で話しの都合上質疑の後ろの方にワープしまして、こんな質疑がありました。

『(問) イールドカーブ・コントロールについてお伺いしたいと思います。この政策を導入してから既に 5 年以上経過したわけですけれども、この間、パンデミックの危機対応みたいなものもありましたが、欧米の中央銀行でこの政策を採用したところはありません。このイールドカーブ・コントロールがむしろ長期にわたって低金利予想を定着させて、それがその低成長・低インフレ・低金利のいわゆる「日本化」のようなものを深化させているという、そういう見方もできるわけですけれども、だから欧米の中央銀行は導入しなかったのではないかという見方もできるわけです。これについて総裁はどうお考えなのかということと、こういう問題意識で日銀の中で議論されていることはないのかお伺いします。』

うーん惜しい、そう決め打ちでぶっこまれてしまうと質問の決め打ちをマッコウクジラで叩き斬ってしまえば終わってしまうのでありまして、やはりここは「日本も他国も強力な金融緩和を実施し、パンデミック後に他国は大幅な物価上昇を示す中、日本は2%に程遠い物価上昇しか示していません。これは日銀の現在の枠組みに何か足りない事、あるいはやらなくて良い事があり、それによって物価上昇が他国に対して劣後する要因になっているのではないでしょうか」ってな感じで包括的にぶち込んでみたらどうでしょうか?「適切だと思ってる」だけで返すかも知れないけど。

ちなみに、そこで構造要因の話を延々とした場合、「そのような構造要因があるのであれば、金融政策単独では物価目標の達成が難しい、ということになるので、金融政策によって物価安定目標を達成しよう、という2013年の政府との共同文書にある役割分担に無理があるので、見直す必要があるのではないでしょうか」と斬り返すんですけどね!!!!!!!!会見で誰か連携プレーでやってくれませんかお願いしますお願いします。

なお、質問の聞き方がちょっとアレですが、今の政策の枠組みそのものについて何らかの検討をしないといかんのではないか、などという高尚な議論ができそうなのは(雨宮さんは普通に出来るんでしょうけど副総裁の立場でやるとは到底思えんし)鈴木さん位しか居なさそうだし、新入りはよくわからんけどリフレ馬鹿カルテットの若田部片岡安達野口にそのような見識があるとは1ミクロンも思えないのでまあ議論される訳はありません!!!


・・・・などと質問に文句垂れてしまいましたが、この回答が何か黒ちゃん無駄なキレ芸を示していまして、回答の方が結構なレベルの隙だらけという作品に仕上がっているので、これはこれで質問としては良かったのかもしれません。キレさせてボロださせるってのはあんまり好きじゃないけど。


『(答) まず、ご指摘のようなことは全く考えていません。今言われたようなことは、各国の中央銀行にせよ、様々なエコノミストでもそういう議論をしている人はいないと思います。』

こういう答え方をしたということは、この時点で「黒ちゃん入ってる入ってる」って奴です。

「いないと思います」は言い過ぎ。そもそもだいたいからして経済学者とか世の中のウケ狙いだか何だか知らんけど、とにかくトンチキ理論を捻りだしてくる人の多さと言ったら経済学ほど世に与える害悪は無いのではないか(他学問出身者による偏見ですので念のため申し添えます)というレベルな訳ですから、「いないと思います」まで断言するのさすがにマズいっしょ。なんせ世の中には「日銀当座預金残高を10%引き上げれば期待インフレ率が0.44%ポイント高まる」という珍説を唱える著名経済学者が発生するという位なんですから。

惜しくも会見見て無いから誰が質問したのかよく分からん(最期の質問、という順番と回答のキレっぷりからして何となく察しが付く築地新聞のあの人なのかなという気もするが)のですが、これは黒ちゃんが質問者よほど大嫌いなのか、それとも、「政策の枠組みがそもそも当を得ていないのでは??」というそもそも質問をされるのが黒ちゃん的には激痛なのか、まあ微妙に判断致しかねますが、マッコウクジラで否定するにしてもこんなキレ方することないじゃん、と思いました。

『それから、世界の中央銀行の中にはイールドカーブ・コントロールを入れたところもありました。ただ、その国の物価が非常に上がってきたので、金利を上げ、イールドカーブを低位に置くことをやめています。それはその国の経済・物価情勢に合わせて行われたということであり、イールドカーブ・コントロールが異常な政策ということでは全くないと思います。』

クソワロタ。じゃあ何で豪州は物価達成して日本は達成しないんだよ。10年なんて長い金利にフォーカスしたからダメだったんじゃないの???(10年という金利にコミットしたという事が10年間目標達成が出来ない、という期待を形成した。とか屁理屈は何とでも言えますからにゃー)

『ちなみに、量的緩和は日本銀行が始めて、その後、殆ど世界中の中央銀行が導入しました。それから、フォワードガイダンスも日本銀行が最初に導入して、世界に拡がりました。』

今まで前任をボロクソに罵っていた黒ちゃん、遂に自分の就任前の政策について世界の先駆けであると言い出す有様なのですが、おじいちゃん過去の日銀の業績否定して総裁就任したの忘れちゃったの???

『ただ、最近になって、途上国や一部の規模の小さなオープンエコノミーの中で、あまりフォワードガイダンスでコミットするのもどうかという議論が出ていることは事実です。従って、様々な金融政策のツールについて色々なことが言われることは当然だと思いますけれども、今言われたようなこと、つまり金利を下げると経済成長率や物価上昇率が下がるという議論をする人はあまりいないかと思います。』

あ、質問の趣旨捻じ曲げて答えてる。質問で行ってたのは「長期均衡」としての成長率とか物価の話しだったんですけどね。まあ何か回答の方がメロメロになっていたのが印象に残りますよねこれ。


・事実その通りだから仕方ないのは仕方ないけど目標達成しないのを堂々と言われましてもwww

こんな質疑がありました。

『(問) まず、物価見通しについてですが、メインシナリオは基本的に変わっていないということかと思いますけれども、海外ではインフレの圧力が一段と強まっています。日本の物価も、このメインシナリオよりも上振れるリスクが高まってきているのかどうか、また想定以上にインフレが上振れた場合は、政策対応の備えがあるのかについてお聞かせください。(後半割愛)』

想定以上にインフレが上振れたら、それは目標達成に近づくのでイイハナシダナーな筈なんですが、黒ちゃんこの回答はクソワロタwwwwwwwwwwwwww

『(答) まず、物価の上昇について、確かにわが国の場合は、ご承知のように、企業物価は相当に上がってきています。11 月には前年比+9%と 41 年ぶりの上昇になり、基本的に先ほど申し上げた国際的なエネルギーその他の商品価格の上昇を反映しているわけですが、そうしたもとで日本銀行の短観や民間の様々な物価の見通しなどをみますと、従来よりも見通しあるいは予想物価上昇率が少し上昇してきていることは事実です。来年 1 月の金融政策決定会合は、展望レポートをまとめる機会ですので、その際に政策委員会のメンバーから、経済・物価の見通しやリスクバランスを聞くことになります。』

ほうほうそれでそれで?

『前回の展望レポートですと、物価上昇率については、ダウンサイドリスクの方が大きいという見方が多かったわけですが、中心的な見通しがどのくらい上がるのか上がらないのか、仮に上がらないとしてもダウンサイドリスクよりもアップサイドリスクの方が大きいのか、あるいはニュートラルになるのか、今後の動向をみながら政策委員会で十分議論していくことになると思います。』

ふむふむ。

『先ほど申し上げた、足許、実力ベースで+0.5%、携帯電話通信料の引き下げやエネルギー価格の上昇その他全部を入れたところで 0%程度というものが、少しずつ年度末にかけて上がっていき、更に新年度からは、携帯電話通信料が今年 4 月に下がった分が剥げ落ちますので、その分、引き上げに効いてくる可能性もあります。』

イイハナシダナー(かどうかは知らんが)。

『他方で、エネルギー価格はどんどん上がっていくのではなく、だんだん上昇率も下がってきています。あるいは、Go To トラベルが再開されると消費者物価の引き下げの方に効いてくるなど、様々な要素がありますので、今から決め打ちはできません。』

そらまあそうなんですけど、この次がお前は何を言ってるんだ状態になります。さあご覧ください!!

『ご指摘の通り、これまでのように常に下振れるというダウンサイドリスクばかりではなく、アップサイドリスクがあるかもしれませんが、2%に及ぶもしくは超えるといった欧米のようなことになる可能性はまずないと思います。』

ちょwwwwwwおまwwwwwwww自信満々に物価目標未達宣言するなよwwwwwwwwwwwwwww

黒ちゃん就任当初は何が何でも2%だの2%への招待状だの色々と根性出した発言をしていたのですが、今や黒ちゃん自らが堂々の2%未達宣言をする訳で、いやあのお前さんが端から2%未達宣言してるのに、何で期待インフレが上がるんだよという話で、おじいちゃんフォワードルッキングな期待形成に働き掛けてフィリップスカーブをシフトアップさせるんじゃなかったのというお話でございまして、こんな自信満々に物価目標未達宣言するのはさすがに見識が問われると思うんで、ハッタリでも「2%に向けて着実に上昇していく」って説明しろよという所。

黒ちゃんがモルダーあなた疲れてるのよ状態なのか、それとも本格的に(ピー音)が来たのか、なんか良く分からんのですが、これもまたコミュニケーション的に今まで言ってた話とチャウやんという事。

まあどうせこの直後の、

『従って、欧米のように金融政策の正常化に向けて動き出すということにはならないと思います。(後半割愛)』

を言いたいからモルダーあなた疲れてるのよ状態になっているのだろうとは推察致しますが、そんなの「物価が上昇するのは望ましいですが、それが一時的上昇で2%を安定的に維持すると見込みにくい場合は残念ながら正常化に向けて動き出すという訳にはいかないと思います」位にしておけばよいのに、目先の正常化を否定するあまりに物価が行かないのを強調するとか本末転倒にも程がありまして、何ちゅうか黒ちゃん大丈夫かとしか申し上げようがないですな。

などとノリノリで悪態ついてたら時間が無くなったので本日はこの辺でご勘弁くださいませ。MPM議事要旨とかいうのもありましたが、ボンクラの議論を見るのは時間の無駄なのでネタにはしますが後回しです。










2021/12/22

お題「FOMCオープニングリマークも普通に絶賛大強気/日銀からペーパー2本ほど(メモ)」

前任者をチョイチョイと突けば支持率が上がる状況とはボーナスステージ。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/150271
アベノマスク、年度内めどに廃棄へ 岸田首相が表明
2021年12月21日 19時08分

ついでにアベノミクスの方も廃棄して頂けるとありがたいんですけどね、黒田とか岩田とか若田部とか(以下の羅列割愛)いうものですけどね。

ゴミマスクの方は「初期の目的が達成された」と岸田さんが仰せになったと記事にありましたが、黒田に関しては初期の目的が達成されておりませんので更にタチが悪いとも言えるでしょう。

まあ「初期の目的」は別にゴミマスクのお蔭で達成できたわけでも何でもないのに達成したって言ってる岸田さんも大概のアレなんですけど。


中銀祭りの中でしたがショパンの事情により2日ほど出遅れておりますが、どうせ来週になるとネタ切れモードになってくると思いますし、年内の相場は何か良く分からない馬鹿踊り(特に海外)になっていると思いますので、まあ年内ボチボチといろんなものを成敗して参りたいと思います(汗)。

馬鹿踊りの例
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2T6316?il=0
東京外為市場ニュース
2021年12月22日5:20 午前
米金融・債券市場=利回り上昇、オミクロン株の経済への影響限定的との見方

『午後の取引で、指標10年債利回りは5.6ベーシスポイント(bp)上昇の1.4754%。前日は今月3日以来の低水準を付けていた。』(上記URL先より)


〇FOMCレビューでオープニングリマーク:この強気内容を「織り込み済み」にしたパウエルすげええええ

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20211215.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
December 15, 2021

ボチボチ参りますので今日はオープニングリマークの部分で勘弁。

『CHAIR POWELL. Good afternoon. At the Federal Reserve, we are strongly committed to achieving the monetary policy goals that Congress has given us: maximum employment and price stability.』

これはいつもの挨拶。

・テーパリング加速は「労働市場の改善と物価の(怪しからん)上昇圧力による」

何時もの挨拶の後に決定事項の説明ですが、

『Today, in support of these goals, the Federal Open Market Committee kept interest rates near zero and updated its assessment of the progress that the economy has made toward the criteria specified in the Committee’s forward guidance from interest rates. In addition, in light of the strengthening labor market and elevated inflation pressures, we decided to speed up the reductions in our asset purchases. As I will explain, economic developments and changes in the outlook warrant this evolution of monetary policy, which will continue to provide appropriate support for the economy.』

冒頭の所で決定内容の政策部分に関する説明がありますが、「in light of the strengthening labor market and elevated inflation pressures」と思いっきりぶっこんできていまして、物価上昇だけではなくて労働市場の改善(というよりも語義的には「強くなっている」ですが)を受けて今回のテーパー加速を決定した、っていうんですから、単なる物価上昇がアイヤーなだけではないのですな。まあこの部分は声明文にも書かれていましたし、更に申し上げると声明文出た時に書いたと思うのですが、労働市場の記述が妙に今回詳しくなっていましたので、まあそういう事やぞという話。今日はパスしますけれども会見の方ではお賃金上昇からのブロードリーな物価上昇圧力、という話もしていますので、結構なタカちゃんなんですよねー。

『Economic activity is on track to expand at a robust pace this year, reflecting progress on vaccinations and the reopening of the economy. Aggregate demand remains very strong, buoyed by fiscal and monetary policy support and the healthy financial positions of households and businesses. The rise in COVID cases in recent weeks, along with the emergence of the Omicron variant, pose risks to the outlook. Notwithstanding the effects of the virus and supply constraints, FOMC participants continue to foresee rapid growth; as shown in our Summary of Economic Projections, the median projection for real GDP growth stands at 5.5 percent this year and 4 percent next year.』

でもって背景説明部分。まずは経済の状況と先行きですが、オミクロンの先行き経済へのリスクはあるものの、それも踏まえたうえで今回皆さんの見通しは強いですよと来ています。


・労働市場の現状認識がもう進軍ラッパバンバンですよ

でもってその次が労働市場の話しですがひたすら威勢の良い話を並べておりますな。

『Amid improving labor market conditions and very strong demand for workers, the economy has been making rapid progress toward maximum employment. Job gains have been solid in recent months, averaging 378,000 per month over the last three months. The unemployment rate has declined substantially, falling six tenths of a percentage point since our last meeting and reaching 4.2 percent in November.』

『The recent improvements in labor market conditions have narrowed the differences in employment across groups, especially for workers at the lower end of the wage distribution, as well as for African Americans and Hispanics.』

いままで毎度指摘していた黒人やヒスパニックの労働市場の回復の遅れについても、差がだんだん縮まって来ました的な威勢の良い話。

『Labor force participation showed a welcome rise in November but remains subdued, in part reflecting the aging of the population and retirements. In addition, some who otherwise would be seeking work report that they are out of the labor force because of factors related to the pandemic, including caregiving needs and ongoing concerns about the virus.』

労働参加率もa welcome riseと来ました。

『At the same time, employers are having difficulties filling job openings, and wages are rising at their fastest pace in many years. How long the labor shortages will persist is unclear, particularly if additional waves of the virus occur.』

そしてお賃金もwages are rising at their fastest pace in many yearsとか強い強い。

『Looking ahead, FOMC participants project the labor market to continue to improve, with the median projection for the unemployment rate declining to 3.5 percent by the end of the year. Compared with the projections made in September, participants have revised their unemployment rate projections noticeably lower for this year and next.』

このコーナー最後はSEPの話でした。


・物価についてはバリバリの警戒感だしここからお賃金上昇の影響が更に出るリスクまで見とるんですが

次が物価だが、これはもう思いっきり強いというか上がり過ぎ怪しからんモード。

『Supply and demand imbalances related to the pandemic and the reopening of the economy have continued to contribute to elevated levels of inflation. In particular, bottlenecks and supply constraints are limiting how quickly production can respond to higher demand in the near term. These problems have been larger and longer lasting than anticipated, exacerbated by waves of the virus. As a result, overall inflation is running well above our 2 percent longer-run goal and will likely continue to do so well into next year.』

現状はwell above our 2 percentだし、来年もその調子と。

『While the drivers of higher inflation have been predominantly connected to the dislocations caused by the pandemic, price increases have now spread to a broader range of goods and services. Wages have also risen briskly, but thus far, wage growth has not been a major contributor to the elevated levels of inflation. We are attentive to the risks that persistent real wage growth in excess of productivity could put upward pressure on inflation.』

でもって今の高い物価というのは主にパンデミックによってもたらされた供給要因によるものだったのですが、物価上昇は今や幅広い財やサービスに及んでおり、お賃金も勢いよく上がってきていて、しかもそれ自体はまだ物価のクソ上昇には主要な寄与をしていない、とぶっこんでいまして、最後が「We are attentive to the risks that persistent real wage growth in excess of productivity could put upward pressure on inflation.」で締めてて無茶苦茶強い見通しジャンということです。

『Like most forecasters, we continue to expect inflation to decline to levels closer to our 2 percent longer-run goal by the end of next year. The median inflation projection of FOMC participants falls from 5.3 percent this year to 2.6 percent next year; this trajectory is notably higher that projected in September.』

最後はこちらもSEPの見通しで締めていますが、その前の話が強すぎにも程があります。


・高いインフレが経済的に弱い人にとって厳しいというのを我々は理解している、といういつものエクスキューズだが・・・・

といういつものアレから次の段落が始まる。

『We understand that high inflation imposes significant hardship, especially on those least able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation.』

でもって、ここなんですけど、10月FOMCのオープニングリマークの該当する個所ではパウエルさんこう言ってたんですよね。

『We understand the difficulties that high inflation poses for individuals and families, particularly those with limited means to absorb higher prices for essentials such as food and transportation.』(この部分だけ11月FOMC後パウエル会見のオープニングリマークより引用)

ここの部分読んでて「あれ?」と思ったので確認してみたら案の定でありまして、今回しれっと「housing」というのが入っていて、住宅価格がヒャッホーと上昇してよーしパパホームエクイティでアメリカンドリームだ!の反対側でレントの上昇でカワイソスな事になっている方々というのに言及されている訳ですな。まあ暫く前からいろんな要人が住宅価格の急激な上昇怪しからんがなという話をしているので今突如出てきた話では無いのですが、それにしても住宅価格にこのリマークで触れているのは中々良い味わいを出しております。

『We are committed to our price stability goal.』

言われんでもわかっとるわ。

『We will use our tools both to support the economy and a strong labor market and to prevent higher inflation from becoming entrenched. We will be watching carefully to see whether the economy is evolving in line with expectations.』

今回はprevent higher inflationを露骨にぶっこんできました。声明文にあるように物価目標の2%は達成どころか超過しています、という認識(いままではテンポラリーだった)を示しているんですからそらそうよというところでもありますが。


・という訳で決定事項ですが金利の方の話

『The Fed’s monetary policy actions have been guided by our mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people. In support of these goals, the Committee reaffirmed the 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate. We also updated our assessment of the progress the economy has made toward the criteria specified in our forward guidance for the federal funds rate. With inflation having exceeded 2 percent for some time, the Committee expects it will be appropriate to maintain this target range until labor market conditions have reached levels consistent with the Committee’s assessments of maximum employment.』

ここらは声明文にもあった通りですが、

『All FOMC participants forecast that this remaining test will be met next year.』

その利上げの条件達成は(ドットチャートを見れば一目瞭然ではありますが)来年に試されるでしょうと来年利上げするぞ発言。

『The median projection for the appropriate level of the federal funds rate is 0.9 percent at the end of 2022, about a half a percentage point higher than projected in September.』

まあここのドットチャートのメディアンを出すのはお約束とは言え、これ出しちゃうと変態仮面がいる関係上高めに出てしまうので(アタクシは一応声明文とSEP見た時に「3回の方にかなり近い2.5回」って書いたんですよね、要はメジャーな札の入っている所を見てたので)単純に出すのどうなのかなと思ったのですが、全然委細構わず「3回利上げするぜヒャッハーと皆様は仰せです」みたいな言い方しちゃうのねーと。

『Participants expect a gradual pace of policy firming, with the level of the federal funds rate generally near estimates of its longer-run level by the end of 2024.』

しかもちゃんと「徐々に利上げをしていって2024年に掛けて中立金利近くにするとみている」まで説明するのがチャーミング。ここは別にネグっても良さそうなもんだが、この点もFOMCパーティシパントの総意として出したいですよ、ってのが現れているんでしょうね。

『Of course, these projections do not represent a Committee decision or plan, and no one knows with any certainty where the economy will be a year or more from now.』

勿論先行き次第で変わりますよという話。


・しかしテーパー決定した翌月に「やっぱペース2倍にするわ」を織り込み済みにしてしまったのすげええええ

と思う訳ですけれども、次がテーパリング加速に関する話。

『At today’s meeting, the Committee also decided to double the pace of reductions in its asset purchases. Beginning in mid-January, we will reduce the monthly pace of our net asset purchases by $20 billion for Treasury securities and $10 billion for agency mortgage-backed securities.』

『If the economy evolves broadly as expected, similar reductions in the pace of net asset purchases will likely be appropriate each month, implying that increases in our securities holdings would cease by mid-March, a few months sooner than we anticipated in early November.』

倍速をa few months soonerと言っちゃうとな(その前にはdoubleと入れてますが)。

『We are phasing out our purchases more rapidly because with elevated inflation pressures and a rapidly strengthening labor market, the economy no longer needs increasing amounts of policy support. 』

今回のテーパー倍速の背景に物価上昇問題だけではなく労働市場の盛大な改善を挙げているのが特徴的でありまして、まあお賃金はみておかんと行かんがね、という感じになりましたな。

『In addition, a quicker conclusion of our asset purchases will better position policy to address the full range of plausible economic outcomes.』

これはまあテーパー終わったら利上げするもんねと言ってるようなもん。ただ今から予告ホームランしてやっぱオミクロンキタコレなのでさっきのチャイとか言うのこっぱずかしいからそこまで言わないだけのことで、予告ホームランには近い感じではありますが、これを「織り込み済み」にしてしまった(んですよね?良く分からんけど)コミュ力の高さ(だか何だかよくわからんが)はコミュ障のアタクシとしては実にすんばらしいと思います。

『We remain prepared to adjust the pace of purchases if warranted by changes in the economic outlook. And even after our balance sheet stops expanding, our holdings of securities will continue to foster accommodative financial conditions.』

この辺の話はいつもしているエクスキューズ。でもってオープニングリマークの最後になります。


・という訳で最後はいつものご挨拶で終了

『To conclude, we understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We at the Fed will do everything we can to complete the recovery in employment and achieve our price stability goal. Thank you. I look forward to your questions.』

Q&Aもバリバリにタカっぽくて、いや確かにオミクロンアイヤーはあるのは分かるんですが、それにしたってあーたこの強気FOMC受けて(ベースの金利水準が高い所にあるならともかく)長い所金利下がるんかいな!と正直思いましたが、たぶん今の海外市場は勝利者が余裕ぶっこいてクリスマスヒャッハーってやってて何もせず、最終レースに有り金勝負となって目がガラス球になっている人たちがあばばばばーってなりながらタコ踊りしているので説明不能、ということで宜しいんじゃないでしょうか(個人の盛大な偏見です)。



〇その他日銀からなんか出ておるので(除く黒ちゃん会見関連)

・引き当ての問題は税務上の引き当てを認めてくれるかどうかでだいぶ違ってくると思うの

https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb211221.htm/
地域金融機関による引当方法の見直しと審査・管理の工夫
2021年12月21日
日本銀行金融機構局

こちらは例によって例の如くなのですが、PDFバージョンで使っているエディタがMSの普通のワードじゃないのか、それともフォントで通常のMSゴシックみたいなのを使っていないだけなのかよくわからんのですが、いずれにしましてもUTFフォントじゃないと外字扱いになってしまいまして、アタクシが普段使っているアップローダー(大昔の奴をそのまま使っているのですがテキストサイトのアップにはこの程度の単機能の方が楽なのでそのまま使うでござるの巻)だとそのフォントカバーしていないので、一々手で直すという苦行が待っておりまして、お蔭で最近はFSRの本文をネタに出来ないという実に怪しからん状態。

でもってこちらの本文もいつもと同じ(何故か機構局金融システム調査課案件だけこの現象が起きる)なので、HTMLの要旨だけ引用します。

『要旨

コロナ禍中にあって、取引先企業それぞれの財務状況に応じた与信管理の重要性が高まっている。そうしたなか、地域金融機関による引当方法の見直しが進展しているほか、入口審査や中間管理上の工夫もみられている。本稿は、前年のレポート「地域金融機関における貸倒引当金算定方法の検討事例」の続編として、こうした引当方法の見直しや審査・管理の工夫について、地域銀行・信用金庫の取り組み事例を紹介することを目的としている。本稿で紹介する事例は必ずしも全ての金融機関にとって合理的な選択肢になるとは限らないが、各行庫の貸出方針や貸出ポートフォリオの特性に応じた与信管理を検討していくうえで参考になると考えられる。』

これ、去年も同じこと書いたと思うのですが、管理会計上引き当て増やしても、税務上の引き当てを認めてくれないとやる方にメリットがないし、財務基盤の強化につながらない(そらまあ有税引き当てしたのが実現すれば後年に税効果出るけど)から、特に規模が小さくてそんなめんどい事やってられるか!って金融機関は多いと思うんで、高度化云々の話しはそれはそれで結構なのですが、そもそも実績ベースでしか税務上の引き当てを認めようとしないで税金を出来るだけ取ろうとする税務当局ってのを何とかして頂きたい所で、引き当てを積んでも後で否認されたら面倒なだけなんすよね。まあ税収をきちんと取ろうというインセンティブが税務当局にあって、自分の庭を綺麗にするのは大事な話だから税務当局の動き自体はそら組織としてそうなるだろうなあ、というのも分かるので仕方ないのはありますわな。

ということでですな、これ現状がどうなっているのかってのコロナ後で色々と変わったのかも知れないのですけれども、日銀とかはこうやって「適切な引き当て」というのも分かるし、事例紹介するのが無駄とは思わんのですが、この辺りは税務との調整、つまりはそこになると政治判断ということで高次の次元での決定が必要だと思うのですが、そっちを何とかしてくれや、と毎度のようにこの話が出るたびに申し上げていますが、現状はどうなっているんでしょうかしらねえ。

なお本文はこちら。話としては面白いですよ。
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb211221.pdf


・うーんこの英文ペーパー

日銀ちゃんの更新情報を見ていたらこれわwというのがあるのだが。

12/21(火)調査・研究 (論文)金融研究所DPS:中央銀行の透明性とインフレ期待の多様性

キタコレ!!!と思って喜び勇んでポチっとなとしたアタクシは絶望した!

https://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps21_e.htm/

2021-E-12/経済 米山俊一 中央銀行の透明性とインフレ期待の多様性/中央銀行の透明性、予測の多様性、インフレ動学、不完全情報 2021年12月21日 [PDF 666KB]

ほほう、と思ってよくよく一覧ページのタイトルを見ると『金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ(E-Series : 英語版)2021年収録分』という文字が燦然と輝くということは・・・・・・・

https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/english/21-E-12.html
Central Bank Transparency and Disagreement in Inflation Expectations
Shunichi Yoneyama

おーまいがー!!

本文はこちら。
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/english/21-E-12.pdf

あばばばばーということで、惜しくも読むのを断念しました。年末年始にでも読んでみるわ、と言いたい所だが今年の年末年始ってただの4連休しかないという事実に更におーまいがーとなるのでありました。

#今朝はこんなところでご勘弁







2021/12/20

お題「日銀決定会合レビュー:政策手段をキチンと切り分けた対応をしたのですが今後もこの調子で温泉旅館のシンプル化キボンヌ」

どもども、中銀祭りの中金曜日お休みしました中の人の事情によりまして、今日は浮上しましたが明日はまた潜航しまして明後日から平常運転に戻ります(予定です)。

ということで本来ならFEBの深掘りを先にしようかとかECBとかBOEとか思っていたら、意外な事に日銀が割と面白い事をして頂きましたので本日は主にそちらの話題から。


〇日銀決定会合レビュー:個別の政策手段について個別に達成状況を見ながら対応とは中々

・新コロオペのうちCP社債買入の停止までは読めた(12月とは思わなかった)がこのきめ細かい対応は読めんかった

てな訳で声明文。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k211217a.pdf
当面の金融政策運営について

『1.新型コロナウイルス感染症は、引き続き内外経済に大きな影響を及ぼしているが、わが国の金融環境は、全体として改善している。大企業についてみると、CP・社債市場は良好な発行環境となっているほか、貸出市場でも予備的な流動性需要に落ち着きがみられる。』

うんうん。

『中小企業の資金繰りについては、総じてみれば改善傾向にあるが、対面型サービス業など一部には、なお厳しさが残っている。こうした情勢を踏まえ、日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、中小企業等の資金繰りを引き続き支援していく観点から、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの一部について、以下のとおり、期限を 2022 年9月末まで半年間延長することを決定した。』

一部なのでCP社債だけ終了なのかな、と思ったら意外な事に細かい切り分けisある。

『(1)新型コロナ対応金融支援特別オペ(全員一致)

@感染症対応にかかる中小企業等向けのプロパー融資分は、現行の取扱いのまま、期限を半年間延長する。

A感染症対応にかかる中小企業等向けの制度融資分は、2022 年4月以降、貸出促進付利制度上の付利金利を0%(カテゴリーV)、マクロ加算残高への算入は利用残高相当額としたうえで、バックファイナンス措置として期限を半年間延長する。

B大企業向けや住宅ローンを中心とする民間債務担保分は、期限どおり、2022 年3月末をもって終了する。』

ここですが、日銀の出しているポンチ絵に則って後で詳しくですが、なんと今回ってコロナオペの中身について個別の内容をきちんと切り分けて精査し、役割を果たしたと判断された分についてきっちりと終了する、という事で、QQEおっぱじめて以降の日銀とは思えない細かいムーブをしておりまして、この点が今回良い意味で裏切られた(個人の感想です)点ですな。

『(2)CP・社債等の買入れ

CP・社債等の買入れ増額措置は、期限どおり、2022 年3月末をもって終了する。2022 年4月以降は、感染症拡大前と同程度の買入れペースに戻し、CP・社債等の買入れ残高を、感染症拡大前の水準(CP等:約2兆円、社債等:約3兆円)へと徐々に引き下げていく。』

CP社債の買入ですが、こちらは「感染症拡大前と同程度の買入れペースに戻し」ということですので、社債の場合は月2000億円(1-3年1250と3-5年750)が月1000億円(日銀保有銘柄の償還状況によって月単位では若干の上下がある)になり、CPは月1兆円くらいだったのが月5000億円くらい(これまた償還状況や季節性によって多少の上下がある)になる、ということですな。

でもってまあ元に戻すって言ってるんだから3-5年の買入は3末で終了ですよヤッホーという事になりました。発行体当たりの限度額に関しては若干ファジーな所があって、

https://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo83.htm/
コマーシャル・ペーパーおよび社債等買入基本要領

附則の項番4になりますが、

『4.一発行体当りの買入残高の上限は、CP等については令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間、社債等については令和4年4月1日から令和9年3月31日までの間、金融調節の円滑な遂行の観点から必要と認める場合には、基本要領5.の規定にかかわらず、3.本文またはただし書きに規定する水準から基本要領5.本文またはただし書きに規定する水準までの範囲内において決定し得るものとする。』(この部分は直上URL先のCP社債買入基本要綱から引用、以下暫く同様)

となっておりまして、では元々の額と変更後の額は幾らでしたっけというと、元々の額は本則の項番5になります。

『5. 一発行体当りの買入残高の上限

一発行体当りの買入残高の上限は、CP等については1,000億円、社債等については1,000億円とする。ただし、CP等、社債等のそれぞれについて、買入れの時点において、買入残高が買入毎に本行が別に定める時点における一発行体の総発行残高の2割5分を超えているものについては、買入対象から除外する。』

増額した額は附則の項番3でして、

『3.一発行体当りの買入残高の上限は、令和4年3月31日までの間、基本要領5.の規定にかかわらず、CP等については5,000億円、社債等については3,000億円とする。ただし、買入れの時点において、買入残高が買入毎に本行が別に定める時点における一発行体の総発行残高に占める割合が、CP等については5割、社債等については3割を超えているものは、買入対象から除外する。』

となっておりますので、基本的には残高1000億円になるのですが、特に社債に関しては期落ちで残高1000億円になるまでこの銘柄の買入はしませんよ、ということになると、うっかりすると数年のスパンで買い入れ対象から外れる、というお茶目なことが起きえるので、一応お助け措置は発動するということになるようで、この発動要件は明示されていないのでよー分からん所がありますけど、まあこの条項の趣旨から鑑みて、3月末の個別エクスポージャーが増える方向の買入はしてくれないんじゃないですかねえ(3-5年はどうせ2023年にならないと償還が来ないので、当面1000億円オーバーになっている銘柄でも1-3年の期落ち分見合いは買ってくれる(ただし足が2027年3末を超えるものは1000億円までで打ち止めになるのだがその話は2024年になってからの話だから今は気にしなくてよい)んじゃないかという想定だがあくまでも個人の類推だが制度の趣旨から言ったらそんな感じじゃないですかね)。

CPの場合も多分同じような感じで、個別銘柄に関しては1000億円超過銘柄については期落ち分までしか買わない。ただし足が2023年3末を超えるものが1000億円になったら打ち止め、という感じになるんですかねえ。もしかしたらそんな微温的なことしないでCPに関しては1000億円になるまで買い入れ対象外にしちゃうかも知れませんけど。



・今回の決定は雨宮副総裁の徳島金懇の会見に背景説明がありましたなというお話

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk211209a.pdf
雨宮副総裁記者会見要旨
―― 2021年12月8日(水)
午後2時30分から約25分
(徳島市・東京間オンライン開催)

こちらの5ページ(PDFも同じく5枚目)のケツの部分にある質疑応答から。

『(答)(前半部分割愛)本日の講演では、一種の特徴点をいくつか切り出してご説明しましたが、全体として金融環境をみると、大企業については、今ご指摘のあった通り、CP・社債市場は良好な環境ですし、貸出市場をみても、むしろ借入れは大企業については返済モードになっています。一方、中小企業については、総じてみれば改善していますが、対面型サービス業などに一部には厳しさが残っているということです。個人に目を転じると、個人事業主については中小と同様一部に厳しさは残っていますが、住宅ローン市場は安定しています。こうした金融環境全体を更に点検しながら、政策のあり方については検討していきたいと思っています。』(この部分直上URL先の12/8雨宮副総裁会見要旨より)

ここで、CP・社債だけではなく、大企業向け貸出、中小企業向け貸出、住宅ローン、というのを細々と説明していた伏線が今回回収された、ということになりますわな。なるほどなるほどと思いましたが、延長するのと延長しないのをセットで今回だす件については、延長しない方を12月に出して勝負してくる必然性が無いから、全部延長以外だったら1月かなと思っていたので、その点はちと踏み込んだ感がありますけど、それよりなにより今回は特別オペの中での切り分けをしてきたのがおーという感じでしたが、上記のように細かく分析した結果を細かく政策に反映させる、とか何でもどんぶり勘定で昭和温泉旅館絶賛大増築をして、しかも個別施策へのツッコミ(CPや社債のスプレッドが銘柄によっては国債アンダーになってるとか買入のやり過ぎじゃないでしょうか、みたいなツッコミ)が来ても、施策は全て一体としてQQE政策を構成している(キリリッ)というインチキ説明を繰り広げておりました、というあの日本銀行様とは思えない細かいものが示される
のでありました。


・コロナ特別オペをカテゴリーで切り分けたのは偉い!!!

12/17(金)金融政策 (参考)中小企業等向け資金繰り支援の延長 [PDF 79KB]

ってのをポチっとなとするとまたもポンチ絵が登場するのだが。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k211217b.pdf
中小企業等向け資金繰り支援の延長

『新型コロナ対応特別オペ』の所を切り分けているのが今回の決定見て「おー」と思ったことですな!!

つまり、特別オペの見合いになっている部分について元々そういう分け方なのだが3つに分けまして、

民間債務担保分→終了
制度融資分→マクロ加算2倍を1倍、この部分に関する特別付利0.1%を撤廃して付利0.0%(カテゴリーU→V)
プロパー融資分→従来通り

という形にしました、ということですが、この特別オペ、もとはと言えば昨年3月に導入した際には『民間企業債務を担保(約8兆円<2020年2月末>)に、最長1年の資金を金利ゼロ%で供給する新たなオペレーション(残高の2倍の金額を「マクロ加算残高」に加算)を導入する。』って物件だったのですが、残高があっという間に頭打ちになってしまったので数字を作らないとヤバいとでも思ったのか(個人の妄想です)、4月の会合で「オペ残高相当額に0.1%の特別付利(まだ分からんでもない)」「住宅ローン担保証券も担保に加える(コロナ対策に何の意味があるのか今でも全くの意味不明)」というような残高かさ上げ政策をぶっこんできた訳ですな。

でもってその後に5月に臨時会合ぶっこんで「制度融資分」と「プロパー融資分」を加えて、期限をしらっとその時に延長して、更に延長延長としながら、今年3月には『より効果的で持続的な金融緩和について』という意味不明なお題目によって付利制度の方を分離して『貸出促進付利制度』という最早何が何だかワケワカメの作品になり、カテゴリーTからVまでの制度になった、ということですな。

#不肖このアタクシでもこの部分一々確認しながらじゃないと書けないので、色々と確認してたら時間が段々怪しくなるの巻ですわよ奥様

・・・・・・でもってポンチ絵に戻りますと、そのポンチ絵にあるように、そもそもこの「民間債務担保分」ってのは、大企業向けの貸出債権や社債、CPを担保にぶっこんで特オペに参加するとマクロ加算が得られます、というだけの制度だったものに、ニバイニバーイが付くわ特別付利が付くわで謎に残高がバンバカと増えたものなのでありまして、確かにこのコロナオぺ導入当初、日銀はあの悪名高き「3本の鉛筆」のポンチ絵を出してきまして(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200601d.pdf)数字をアピールする、というのを特にFRBに対抗したのか額を出すためにナンジャソラなオペをぶっこんだわけですよ。

でまあコロナ対策、と銘打ったのでこれが引くに引けなくなって、しかも後になって付けた「中小企業資金繰り対応制度」の方とまとめてすべてが「新型コロナ対応金融支援特別オペ」になっていたので、日銀の謎理論「パッケージとして効果を発揮する」によって全部ダラダラと延長され、お蔭で特オペの残高が80兆円とかになって、当然ながら短期市場にも影響するわオペ先と非オペ先の待遇格差がでかくなるわという有様だったのですが、今回はこの特オペを「パッケージ」としないで「個別の政策内容をきちんと見て、それぞれの手段がスコープとしている対象における金融環境を確認」して、「必要なものと不必要なものの切り分けを行う」というよく考えたら当たり前の事なのですが、何せ前任者を口ぎたなく罵って今の座を確保しておられます黒田日銀と致しましては、謝ったら死ぬ病の重篤な罹患者として、一度突っ込んだ政策は止めない、という昭和温泉旅館政策スキームを建築しておられたので、今回のこの措置は(普通にやるべきことをしているだけなのですが)すんばらしい事だし、日銀の中の人が正常化してきてるじゃん、と思うのでありました。


つーかですな、そもそも論としてポンチ絵の方に『大企業向け・住宅ローン 中心』として示されているのが思いっきり「CP・社債買入」と特オペの「民間債務担保分」でありますが、どこからどう見てもCP社債に住宅ローン関係ないので、そうすると民間債務担保分の特オペの何ぼが住宅ローン担保証券見合いだったのよって話で、そもそもコロナ感染症全然関係ないやんというのをバカスカと実行してしかもマクロ加算ニバイニバーイに特別付利0.1%までついてたとか、どんだけ一部のオペ先優遇してたんだと小一時間問い詰めたい所ではありますな(インチキでもコロナ対応の残高を積み上げたい、という昨年3月時点での切迫感というお気持ち自体は分かるのだが、3本の鉛筆による残高アピールをあっという間に引っ込めたのに、こっちをダラダラ続けた辺りが謝ったら死ぬ病に特徴的な症状です)。

とか何とかまあそんな訳で、そういう阿呆な状況が是正されましたことは慶賀の至りですし、今後もこの調子で、昭和温泉旅館金融政策について、全部スクラッチでぶっ壊して作り直せとは思いますが、まあそれが無理にしても、温泉旅館の建て建てマシマシ建屋やそれを繋ぐ謎の渡り廊下などが、段階的に整理されて、令和にふさわしい温泉旅館へと改築されていくことを期待するのでありました。


・ところでカテゴリー別付利残高を確認してみる

直近公表されているのは9月積み期間に掛かる数字ですな。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211122b.pdf
貸出促進付利制度のカテゴリー別残高(2021 年 9 月)
2021 年 11 月 22 日
日 本 銀 行

カテゴリーT 51,334 億円
カテゴリーU 717,527 億円
カテゴリーV 594,270 億円

このカテゴリーT対象が「プロパー融資分」でして、カテゴリーU対象が「コロナオペ(除くプロパー融資分)」になっていますので、このうち制度融資分が何ぼかというのは公表されていませんが、制度融資として現在実行されている額から逆算すれば出て来る数字ですな、うんうん。

ということですが、マクロ加算だの特別付利だのという話においては、コロナオペ80兆円のうち5兆円だけが特別付利が残って、カテゴリーUに関してはカテゴリーVに降格するのとそもそも終了して残高自体が無くなるのと、ということになるので、付利ついてる当預が大きく減ることになります(とは言っても既存のオペ分の付利は突如無くしたりはしないでしょうから4月になっていきなり75兆特別付利の当預が落ちる訳ではない筈なので悪しからず)わな。

これMBは減るわ(オペ自体が終了する部分)、付利されてる当預残高が盛大に減るわ、コロナオペによるマクロ加算も減るわで、短期市場の金利形成が読みにくくなって(当預的にはそういうことになるけど、CP社債オペの縮小と民間債務部分の特オペが廃止になる事によって浮いて出て来る現物もあるから、そっちの兼ね合いもありそう)中々シャレオツな事も予想されまして、とにかく特別付利とか言う物件によって真面目に考える気力を喪失しておりましたアタクシにおきましても、おらワクワクしてきただ!という感じになるのかならんのか、ということでこれは3月くらいからハッスル(某証券ではない)できるかも知れませんな、うんうん。


#経済物価情勢の現状判断???そういやそういうのがありましたな・・・・・・・・・・・・・


#でもって色々とネタが山積する中ですが、中の人の事情によりまして明日はお休みの予定でございます。水曜には浮上しますのでよろしゅうに、と言いながら潜航潜航





2021/12/16

お題「FOMC寝起きで拝読のいつもの奴だが来年は3回寄りの2.5回ドットでしたな」

という訳でサラサラと参ります。

〇FOMC声明文:雇用マンデート達成まで利上げしないとは言ってるがSEPェ・・・・・・

声明文
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20211215a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20211103a.htm(前回)

・第1パラグラフ:コロナモードとの認識を示したパラグラフはそのまま

『The Federal Reserve is committed to using its full range of tools to support the U.S. economy in this challenging time, thereby promoting its maximum employment and price stability goals.』(今回)
『The Federal Reserve is committed to using its full range of tools to support the U.S. economy in this challenging time, thereby promoting its maximum employment and price stability goals.』(前回)

後の方でご紹介しますが、コロナに関しての表現は強まっている(オミクロン株出てるんだから当たり前ですけど)ので、そらこれは外さんわな。


・第2パラグラフ:インフレーションのトランジトリー削除と雇用に威勢の良い追加文言、コロナのアセスメントは悪化

『With progress on vaccinations and strong policy support, indicators of economic activity and employment have continued to strengthen.』(今回)
『With progress on vaccinations and strong policy support, indicators of economic activity and employment have continued to strengthen.』(前回)

という全体観に関しては同じです。

『The sectors most adversely affected by the pandemic have improved in recent months but continue to be affected by COVID-19.』(今回)
『The sectors most adversely affected by the pandemic have improved in recent months, but the summer's rise in COVID-19 cases has slowed their recovery.』(前回)

コロナの影響を食らっている業界云々の表現はコロナ再拡大を受けて過去の話しから現在の話に戻っていてこの部分は下方修正となっています。

『Job gains have been solid in recent months, and the unemployment rate has declined substantially.』(今回)

今回しれっとこの表現がぶっこまれてきました。前回はジョブの部分って最初にあった表現の所で示してただけでしたが、今回ジョブゲインがソリッドで失業率がサブスタンシャルに減少、と急に威勢の良いのをぶっこんできましたが、この伏線は4パラ(金融政策運営)で回収されます。

『Supply and demand imbalances related to the pandemic and the reopening of the economy have continued to contribute to elevated levels of inflation.』(今回)

『Inflation is elevated, largely reflecting factors that are expected to be transitory. Supply and demand imbalances related to the pandemic and the reopening of the economy have contributed to sizable price increases in some sectors.』(前回)

キャートランジトリーが消えましたわよおくさまー!ってことですが、まあこれは散々言われていたので違和感なしという所でしょうが、トランジトリーではない、ということは当然ながら延々と放置プレイと言う訳にはいかないということになりますな。インフレの水準は引き続き「elevated」ですが、今回は「sizable price increases in some sectors」の言及を止めていますけど、これはもはやインフレがトランジトリーだったりサムセクターの話しだったりではないでっせ、という意味なのかね、とかとも取れるので、まあ削除されたからといってどうかというとよくわからん。

『Overall financial conditions remain accommodative, in part reflecting policy measures to support the economy and the flow of credit to U.S. households and businesses.』(今回)
『Overall financial conditions remain accommodative, in part reflecting policy measures to support the economy and the flow of credit to U.S. households and businesses.』(前回)

ファイナンシャルコンディションの現状認識は従来通りです。


・第3パラグラフ:経済見通しの部分にはコロナのリスク言及が復活

『The path of the economy continues to depend on the course of the virus. Progress on vaccinations and an easing of supply constraints are expected to support continued gains in economic activity and employment as well as a reduction in inflation. Risks to the economic outlook remain, including from new variants of the virus.』(今回)

『The path of the economy continues to depend on the course of the virus. Progress on vaccinations and an easing of supply constraints are expected to support continued gains in economic activity and employment as well as a reduction in inflation. Risks to the economic outlook remain.』(前回)

ここのパラは先行きは結局コロ助次第よね、という表現ですが、今回は「Risks to the economic outlook remain.」の後にウィルスのニュー変異体について言及しています。


・第4パラグラフ:雇用がマンデート行くまでは利上げしませんと言ってるが&テーパリング加速して3月終了

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回)

これはいつも通り。

『In support of these goals, the Committee decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent. With inflation having exceeded 2 percent for some time, the Committee expects it will be appropriate to maintain this target range until labor market conditions have reached levels consistent with the Committee's assessments of maximum employment.』(今回)

『With inflation having run persistently below this longer-run goal, the Committee will aim to achieve inflation moderately above 2 percent for some time so that inflation averages 2 percent over time and longer?term inflation expectations remain well anchored at 2 percent. The Committee expects to maintain an accommodative stance of monetary policy until these outcomes are achieved. The Committee decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and expects it will be appropriate to maintain this target range until labor market conditions have reached levels consistent with the Committee's assessments of maximum employment and inflation has risen to 2 percent and is on track to moderately exceed 2 percent for some time.』(前回)

政策金利据え置き、は同じですが、金利ガイダンスにあたる部分に関しては、従来の「With inflation having run persistently below this longer-run goal, the Committee will aim to achieve inflation moderately above 2 percent for some time so that inflation averages 2 percent over time and longer?term inflation expectations remain well anchored at 2 percent.」が「With inflation having exceeded 2 percent for some time」ということで、インフレーションの方は完全にマンデート達成(どころかエクシード状態ですが)で、その次に「雇用がマンデート達成するまで政策金利を据え置きます」とは書いてますな。

とは言いましても、そもそも2パラで伏線張っているように、雇用の状況が大幅改善認識な上に、この後でネタにしますけれども、SEPでは来年の失業率見通しがロンガーラン4%に対してメディアンが3.5%なので、思いっきり来年は達成してまっせ状態でして、これは諸葛孔明の罠、とか思ったらその後のドット見たら全然普通に来年2回か3回の利上げだぜヒャッハーになっていたので、諸葛孔明の罠以前の問題でした(^^)。


次がテーパリング加速の件。

『In light of inflation developments and the further improvement in the labor market, the Committee decided to reduce the monthly pace of its net asset purchases by $20 billion for Treasury securities and $10 billion for agency mortgage-backed securities. Beginning in January, the Committee will increase its holdings of Treasury securities by at least $40 billion per month and of agency mortgage?backed securities by at least $20 billion per month. The Committee judges that similar reductions in the pace of net asset purchases will likely be appropriate each month, but it is prepared to adjust the pace of purchases if warranted by changes in the economic outlook.』(今回)

『In light of the substantial further progress the economy has made toward the Committee's goals since last December, the Committee decided to begin reducing the monthly pace of its net asset purchases by $10 billion for Treasury securities and $5 billion for agency mortgage-backed securities. Beginning later this month, the Committee will increase its holdings of Treasury securities by at least $70 billion per month and of agency mortgage?backed securities by at least $35 billion per month. Beginning in December, the Committee will increase its holdings of Treasury securities by at least $60 billion per month and of agency mortgage-backed securities by at least $30 billion per month. The Committee judges that similar reductions in the pace of net asset purchases will likely be appropriate each month, but it is prepared to adjust the pace of purchases if warranted by changes in the economic outlook.』(前回)

相変わらず表現が読みにくいにも程がありますが、インプリメンテーションノートを見ると(今日は時間が無いので飛ばすのですが、サーセン)、要は2月半ば〜3月半ばのセッションまではバランス拡大しますがそこでバランス拡大は終了になるということです。

『The Federal Reserve's ongoing purchases and holdings of securities will continue to foster smooth market functioning and accommodative financial conditions, thereby supporting the flow of credit to households and businesses.』(今回)

『The Federal Reserve's ongoing purchases and holdings of securities will continue to foster smooth market functioning and accommodative financial conditions, thereby supporting the flow of credit to households and businesses.』(前回)

ここはいつも通りです。


・第5パラグラフ:先々の金融政策スタンスは状況見ながら適宜適切に対応というのは同じです

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回)

同一文言ですな。


・第6パラグラフ:今回も全員賛成

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; Richard H. Clarida; Mary C. Daly; Charles L. Evans; Randal K. Quarles; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; Richard H. Clarida; Mary C. Daly; Charles L. Evans; Randal K. Quarles; and Christopher J. Waller.』(前回)

普通に全員賛成ですかそうですか。



〇SEP:22年にはマンデートバッチリ達成して来年は2〜3回利上げ(3回寄り)とな

今回のSEP
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20211215.pdf
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20211215.htm

前回のSEP(9月だよ)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20210922.pdf
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20210922.htm


・失業率見通しによりますと来年堂々のマンデート達成ですなあと思ったらドットが普通に利上げマンでしたがw

引用はHTMLの方から行います。例によってメディアン、数字は左から2021、2022、2023、2024、Longer runです。

Change in real GDP  5.5 4.0 2.2 2.0 1.8
September projection 5.9 3.8 2.5 2.0 1.8

何か上がったり下がったりで良く分からんが基本的には潜在成長よりも強いと。


Unemployment rate   4.3 3.5 3.5 3.5 4.0
September projection 4.8 3.8 3.5 3.5 4.0

これが兎に角ヒャッハーの強さな訳で、もとより22年の失業率見通しは4%より低かったのですが、今回は思いっきり明確に下げていますし、そこからヨコってことは基本的にこの辺でマックスですよ、って事を意味するのですから、そら「完全雇用まで利上げしません」って言ってるけどただの悪魔払いの文言位にしかなっておりませんでコミットメントというのにはあまりにもwww

PCE inflation     5.3 2.6 2.3 2.1 2.0
September projection 4.2 2.2 2.2 2.1 2.0

一時的というのを取り下げただけのことはありますな!!!!!!!


でもってドットですが、こちら今回の特徴は(1)来年は2−3回利上げ、(2)普通に中立金利までは利上げしまっせ、(3)でもロンガーランは変わらんよ、という辺りでしょうか。簡単に触れますと、

(1)利上げに関してですが、2022年末の見通しは

利上げ無し:9人→無し
1回利上げ:6人→1人
2回利上げ:3人→5人
3回利上げ:無し→10人
4回利上げ:無し→2人

ということで、どう見ても3回寄りの2−3回利上げです本当にありがとうございました、という結果。

(2)その後の金利ですが、2024年の分布が1.75-2.00〜2.25-2.50の所に合計13人、3%プラマイ0.25%の所に合計5人となっていて、中立金利が2.5%の所に山があるので、まあ概ねこれみると中立金利近くまでは利上げするけんねーというのを見せておりますし、だいたいからして2023年も22年から見たら概ね1%くらい(目の子ですけど)上にシフトしてますもんね。

(3)ロンガーランのドットは見事に同じです。


というところで、思いの外利上げに強気なもん出してきましたが、相変わらず相場ちゃんをみていないのと、まだ会見を見ていないので何ともかんともなのですが、まあ市場の期待(???)に乗っかって利上げモードがっつり出した感がございますな。


〇ちょいとお知らせ

この中銀ウィークの最中ではあるのですが、明日の駄文はお休みするかもしれません(しないかもしれないけど)。何卒宜しゅうに。







2021/12/15

お題「歳末中銀祭りプレビュー与太話/中銀祭りの前に日銀のペーパー2本をちょっと鑑賞とかご紹介とかの暇ネタで」

想定できそうなものを想定外にする。置物理論ですな。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211214/k10013387581000.html
五輪ボート会場 装置に“かき殻”で 国際大会誘致困難
2021年12月14日 18時45分

『東京都は「海の森水上競技場」の「消波装置」にかきの殻が付着する事態について「オリンピックの前に施設を設計した段階では想定外だった」と話していて、抜本的な対策を急ぐことにしています。』(上記URL先より)

ちょっと前の話だがカキに関しては東京湾で増えてるという話があった筈と思ってちょっと検索を掛けたら思いっきり東京都関連のサイトにこんなのがあったのですが・・・・・・

https://www.ifarc.metro.tokyo.lg.jp/archive/22,272,47.html
内湾調査平成17年7月 東京湾に復活したカキ礁

〇ということで歳末中銀祭りな訳ですが別に考えもまとまっていないが俺様メモ

・FOMC

何ですかね、今回ってほぼ何をするかに関するコンセンサスって出来ている筈だと思うのですけれども、「出た後の相場の反応が分からん」というめずらしやなパティーンになっておる気がするんですが。

えーっとですね、今までのFEDの方式が大きく変わらんとすると、パウエルのおっちゃんとしては「市場をクラッシュさせたくないけど、かといってゴルディロックスヒャッハー相場にはしたくない」ということと、インフレに関してはさすがに軟着陸させれないかなーって思ってて、あとは何気にこの株式と住宅がヒャッハーヒャッハーしてて年金のエクイティだホームエクイティだウヒャッホウってアメリカンクオリティでサステイナブルじゃない消費がフィーバーされても困る、とかそんな感じだと思うの(個人の感想です)。

ということで、まあテーパリング加速して3月末に終わるくらいの勢いにするじゃないですか、でもって恐らくは出てくる物件のタカ派度合いが声明文>SEP>ドット>会見QAって感じでトーン調整してくると思うのね。とは言えさすがに今から3回利上げ予告ホームランするメリットどこにもないから(やるならどんなに早くてもテーパリング終了直前とか直後)それを受けて市場ちゃんの方がどっちで反応するのかがワカランチ会長です正直。

だいたいですな、FOMC後にパウエル記者会見以外の高官発言がサクッと(翌日以降)飛び出してくると話は別ですけど、そうじゃない限りにおいて、だいたい市場様の反応って、声明文のトーンよりもSEP会合だとドットに反応して、その後会見QAのオーラルに反応するって感じだと思うのよ。でもってその反応が気に食わない(強気のトーン出している積りなのに市場がヒャッハーするようなケース)と高官発言で水をぶっかけに行くのですけれども、その位からやっと声明文とかのトーンも見直される、ってパターンが多いような気がするんですよねー。

あと、アタクシ的に気になっているのは、利上げはゆっくりやりながらもAPPの方を調整すれば穏健にリスク性資産の調整をしながら景気は冷やさんで済みます、って発想になるんでネーノという面かな、とは思います。まあFEDよりもそのスタンスが思いっきり出ているのはECBではあるのですが(先日のシュナーベルの講演などにあるように)。

ということでフラグ建築士としては、テーパー加速で1-3で完了位の勢いにするものの、ドットは来年2回行くか行かないか位で、でも成長と物価の見通しは上がる(物価を理由にして先の成長見通し下げたら味わい更に出るんだが)、なお会見では「利上げは別の話ですよ」を繰り返して、そんなにタカなのは出ないので市場ちゃんそっちに反応するけど、落ち着いて声明文読んだら普通にタカタカで後からありゃーとなる、というのに100ブラードと言った所でどうでしょう。


・ECB

まあ何ですな、PEPPの3月終了を決めて「でも利上げは別問題で来年上がられるような環境になるかどうかは分からんし今のマクロ見通しをベースにすると利上げなんてトテモトテモ」って話をするんでしょ、としか思えん。

つまり、BOEはちょっとわけわかめなのでパスしますが、ECBもFEDも資産買入の縮小の方を急いでくるというのを基本にしてくると思うんですよねー(個人の感想です)。ちがうのかなー。


・日銀

まあ何ですよね、先日の雨宮副総裁の金懇挨拶と会見を見るに、まー何か新しい機軸は出してくる気配皆無って感じですよね。3月期限のコロナオペの延長に関してですけど、こんなの3か月も前に決め打ちする必要はサラサラ無くて、1月会合で全然大丈夫。そのまま現施策延長なら12月会合で決める可能性はありますが、何らかの手直しをする可能性があるなら1月に決めるでしょうし、いずれにしても様子見したいでしょうから今回は普通にパスするんじゃないかなーと思います。

あと、短観ってアタクシ的にはつえええええと思ったのですが、なんか「先行き見通しが伸び悩み」みたいなヘッドラインが多いのね(←報道を真面目にチェックしていない人)と思いまして、9月短観で先行きそれなりに下だった(9月短観はコロナがかなり落ち着いてきてこりゃ10月には何らかの緩和措置来るかもね、という状況での調査でしたのでそれなりに下なのは仕様として)中で今回全然堅調な数字を叩きだしているのと、何といっても価格サーベイの部分がこれだけ強くなっているのですから、(それが国民厚生的に良いのかどうかは別にして)物価これは上がって然るべき位の勢い(上がるかどうかは知らんけど)に読めたんですよね(個人の感想です)。

日銀ちゃんがこの機を逃さずにQQE大勝利の宣伝をしながら、物価1%乗せの所で堂々の政策大成功ってアピールして、マイナス金利解除と言わんでも色々と政策を縮小する、でも緩和的なので無問題みたいな現実路線に走ってくれる(この機を逃したらまた政策戻せないっしょ)のを物凄い勢いで祈っておりまして、丑の刻参りでもしたい所なのですが、おっちゃんジジイだから丑の刻とか起きれないんで誰か代わりにお願いいたします。

まー今回は日銀ちゃん、1ミクロンも注目されていないから余計なことしないで色んな事は1月の展望レポートの時にぶっこめばいいんじゃないですかね。

という後日自分が思い出す用のメモでしたサーセン。


〇シャレオツなペーパーが出ていたのだがこれサンプルに偏りがあり過ぎなんとチャイマスカねえ

こんなの出てました。
https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/21-J-11.html
ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2021-J-11
全文 (PDF, 1,730 KB)
CO2排出量と企業パフォーマンス:Double Machine Learningを用いた日本の実証研究
有賀涼、五島圭一、千葉貴司

こらまたカーボンニュートラルなネタで日銀ちゃんったらアイキャッチなお話が好きですなあ、と思いながら上記URL先のサマリーページを拝読。

『本研究では、2011年度から2019年度においてCO2排出量が取得可能な東証一部上場企業を対象に、CO2排出量と企業パフォーマンスの関係について、長期パフォーマンス、短期パフォーマンスおよび資本コストの側面から実証分析を通じて評価を行った。』

ほうほう。

『その際、先行研究で用いられている手法の潜在的なバイアスに対処するため、Chernozhukov et al.[2018]が提案するDouble Machine Learningを採用したセミパラメトリック・モデルによる分析を行った。』

何かさっぱり分からないが凄いことをしているんですね!!!!!!!!!!!!!

『分析の結果、CO2排出量の少ない企業ほど(1)長期的な企業パフォーマンスが良好となること、(2)株主資本コストが低くなること、が確認された。』

ほっほー。

『これは、CO2排出量の少ない企業に対して投資家が将来の経営リスクを低く見積もり、リスク・プレミアムを低めに設定することで、当該企業の市場価値が高くなることを映じた結果と解釈できる。』

そ、そうなの???2019年度辺りならその話分かるんだが2011年度とかでカーボン何とかとかそんな主流の話でしたっけ??????と思いつつ、

『また、CO2排出量の少ない企業ほど短期的なパフォーマンスが高いことや、負債コストが低いことも示唆されたが、それと同時に、これらの関係性について、先行研究の多くで用いられている推計手法の結果はバイアスを含む可能性があり、その評価に注意が必要であることも示された。』

ということなのですが、アリガタヤな事に本文が日本語で書いてあるので字面ならアタクシでも読める(わかるとは言っていない)。

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/21-J-11.pdf
CO2排出量と企業パフォーマンス:
Double Machine Learningを用いた日本の実証研究

本文をちょっと拝見しますが、例によって序論と結論だけ見るので『1. はじめに』って所の途中から参りますが・・・・・・・・・・

『このような世界的な潮流を背景に、わが国においても、京都議定書の採択を受けて制定した地球温暖化対策推進法(1998 年 10 月公布)を皮切りとして CO2 排出量削減に向けた対応を進めてきている。2020 年 10 月には、2050 年までにカーボン・ニュートラルを目指すことを政府が表明するなど、本邦企業においてもCO2 排出量削減に対する社会的要請が一段と強まることが想定される。』

ふむふむ。

『しかしながら、企業による CO2 排出量削減の取組みは、社会全体にとっては価値があるものの、企業自身や企業に与信を行う金融機関、企業への投資家等にとって好ましいものであるか、換言すれば、CO2 排出量が少ない(多い)企業ほどパフォーマンスが高い(低い)かについては、学術的にコンセンサスが得られていない。』

そもそも業態によっても違うし、結局は「規制などで行動を制限されるようになるやならざるや」という話しのような気がするんですけどね。

『理論的には、CO2 排出量と同様の文脈で議論される企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility: CSR)活動に関する先行研究を援用すると、CO2排出量と企業パフォーマンスの関係は正負のいずれにもなり得る点が挙げられる1。』

CSRと違うのは今回の話が法規制の直接的な対象になると強い確度で想定されることでしょうかね。

『両者が正の関係であると主張するものは、環境対策投資等の企業の CSR 活動は企業にとっての追加的なコストであり、利益水準の低下を通じて、企業の価値を下押しすると考える立場に立っている(Friedman [1970])。両者が負の関係であると主張するものは、CSR 活動が、利害関係者との関係改善やエージェンシー費用の低下を通じて企業価値を高めると考える立場に立っている(Jensen and Meckling [1976]、Porter and Van der Linde [1995]、Ambec and Lanoie [2008]、Freeman [2010])。』

一瞬「逆じゃネーノ」と思ったが脚注に『1 正の関係とは、CO2排出量が少ない(多い)と企業パフォーマンスが低い(高い)ことを示し、負の関係は、CO2排出量が少ない(多い)と企業パフォーマンスが高い(低い)ことを示す。以降同じ。』とのことでした、ニホンゴムツカシイネ。

『さらに、CO2 排出量を削減することが、将来起こりうる移行リスクに先行して対処しているものだと考えれば、将来的な規制対応コストや訴訟リスクが抑制され、企業パフォーマンスが向上する可能性もある(Ambec and Lanoie [2008])。』

負の相関があるとすれば、企業に掛かる移行リスクを想定してるからじゃネーノというかそこしか考えないと思うんだけどなーというのはアタクシの個人的感覚なんだが。つまりは規制要因(想定されるものを含めた)を投資家が考えるからでネーノという割と身も蓋もないイメージ。

『CO2 排出量の削減が企業価値や利益率の向上につながるのであれば、企業にとっては、CO2 排出量を自発的に削減するインセンティブが存在する。また、投資家にとっても、CO2 排出量の削減を進める企業に投資するインセンティブが生まれ、グリーン投資が加速するきっかけとなり得る。』

『一方で、CO2 排出量の削減が必ずしも企業価値や利益率の向上に結びつかないのであれば、企業が CO2 排出量を主体的に削減するインセンティブは生まれず、投資家が CO2 排出量の削減に取り組む企業に投資するという行動にもつながらない。』

『このため、気候変動リスクを軽減するには、企業による CO2 排出量の削減を誘引するような枠組みを構築する必要があるだろう。』

までは話として分かるんだが、

『こうした点を踏まえると、企業の CO2 排出量と企業パフォーマンスの関係は、CO2 排出量の削減に向けた取組みの方向性を考えるうえで重要な論点といえる。』

ここがナンノコッチャという感じで、むしろこの点は市場の外部(政府)によるインセンティブ設計が効果的に機能しているのかどうかを測る指標として考えるものじゃないのか、というかノーインセンティブの状態では進みにくいから各国の政府などによる取り組みをしているのであって、何ちゅうかこれ話が逆になってねえかという気が凄いするんですが。

『そこで、本研究では、わが国企業を対象として、CO2 排出量と企業パフォーマンスの関係について、実証分析を通じて多面的な評価を行う。具体的には、東証一部上場企業のうち、CO2 排出量を開示している企業を分析対象とし、2010 年度から 2019 年度のデータを用いて、企業パフォーマンスとの関係を長期的なパフォーマンス、短期的なパフォーマンスおよび資本コストの観点から分析する。』

『その際、本研究では、多くの先行研究で使用されている線形回帰モデルの潜在的なバイアスに対処するため、Chernozhukov et al. [2018]にて提案された Double Machine Learning(DML)を実証分析手法として採用する。DML とは、セミパラメトリック・モデルに対して機械学習を利用して政策処置効果を推定する手法であり、特に、本研究で目的変数とする企業パフォーマンスのように、共変量として多数の候補が考えられる場合に有効な手法である。詳細は 3 節で説明する。』

なんか知らんが有効な方法らしい。

『本稿の構成は次のとおりである。2 節では、CO2 排出量と企業パフォーマンスに関する先行研究を概観する。3 節では分析に利用するモデル等について説明し、4 節では本研究で用いるデータと変数の定義を示す。5 節では分析結果を述べる。6 節では本稿のまとめを行う。』


ということですが、次の『2. 先行研究』を見ますと・・・・・・

『以下では、日本を対象とした研究、海外を対象とした研究、および資本コストとの関係に注目した研究に大別して結果を紹介する。結果を概観すると、日本を対象とした研究では、CO2 排出量は企業パフォーマンスと負の関係にあるという報告が多いものの、海外を対象とした研究では結果が一意ではなく、CO2 排出量と企業パフォーマンスの関係についてコンセンサスが得られていない状況となっている。なお、資本コストを対象とした研究では、CO2 排出量と概ね正の関係、すなわち CO2 排出量が少ない企業ほど資本コストが低い関係にあることが指摘されている。』

ということになっているのですが、先行研究の事例を見ますに、

『Nishitani and Kokubu [2012]、Fujii et al. [2013]および Lee et al. [2015]は、CO2 または GHG 排出量と企業パフォーマンスが負の関係を示すことを報告している。Nishitani and Kokubu [2012]は、東証一部に上場している日本の製造業 641 社を対象として、単位 CO2 排出量当たりの売上高とトービンの q の関係を分析している。同論文では、市場規範の影響を考察するため、ISO14001(環境マネジメントシステムに関する国際規格)の取得前後の企業パフォーマンスの違いに着目した分析を行い、分析対象企業が、ISO14001 を取得した後に単位 CO2 排出量当たりの売上高を向上させ、企業価値(トービンの q)を高めた可能性を指摘している。』

『Fujii et al. [2013]は、日本の製造業を対象として単位 CO2 排出量当たりの売上高と ROA の関係を分析し、CO2 排出量が少ない企業ほど ROA が高いという結果を報告している。』

『また、Lee et al. [2015]は、日本の製造業 362 社を対象として単位総資産額当たりの CO2 排出量とトービンの q や ROA との関係を分析し、いずれも、両者が負の関係を示すとの結果を報告している。』

『一方、Iwata and Okada [2011]は、分析対象とする指標により結果が異なることを報告している。同論文では、日本の製造業を対象として、単位売上高当たりのGHG 排出量と企業パフォーマンス(ROE やトービンの q など)の関係を分析し、GHG 排出量が ROE と負の関係を示す一方、トービンの q と正の関係を示す結果を報告している。』

との話なんですけど、

『以上で紹介した先行研究の多くでは、企業パフォーマンスと CO2 排出量以外の説明変数(コントロール変数)との間に線形性を仮定した、線形回帰モデルを採用している。』

おじちゃん頭悪いから良く分からんのだが実は全然違うファクターによって決まっている可能性って排除できるんけ???

『本研究では、企業パフォーマンスとコントロール変数の間の線形性の仮定によるバイアスに対処した分析を行うが、企業パフォーマンスと CO2排出量の関係については引き続き、線形性を仮定する(具体的な定式化は 3 節を参照)。』

うーんこの。

『なお、企業パフォーマンスと CO2排出量に非線形な関係が存在することを指摘する数少ない研究としては、Kimbara [2010]がある。同論文は、日本の化学セクターおよび食品セクターの上場企業を対象とした分析の結果、単位 CO2排出量当たりの売上高と ROA の間に逆 U 字型の関係が存在することを報告している。』

何かこういうの業種によっても違いそう(特に以前なら環境基準に掛かる規制が必ずしも一律では無かった可能性だってあるじゃんとかまあその手の諸々思うんですが)な気がするんですけどね。ちなみに海外だともっといろいろなバラエティのある結果が出ているようですが長くなるので飛ばします。


・・・・・でもってまあ結論に関してはサマリーにあった通りなのですが、最後の方に、『補論 4.分析対象企業と対象外企業の比較 』ってのがありましてですね・・・・・・・・・

『4 節(1)で述べたとおり、本研究は、2020 年 12 月時点で東証一部に上場している企業 2,186 社のうち、CO2 排出量のデータが取得できる 591 社を分析対象としている。現在、わが国では CO2 排出量の開示は各企業の自発的な取り組みに委ねられており、本研究の結果はサンプルの偏りを反映している可能性がある。』

そらそうよと思う次第で、当然ながら規制対応とかで意識しないと行けない業態とか企業と、そこまでまだ包括的な規制が来る前だったら一々だしてませんですよ、という所もあるでしょうし。

『そこで、本研究で分析対象とした企業と対象外の企業について目的変数の分布を比較し、選択バイアスの有無を検証した。具体的には、星野[2009]を参考に、本研究で分析対象とした企業を処置群、分析対象外とした企業を対照群とし、目的変数の平均値の差から算出される平均処置効果(ギリシャ文字がありましたが外字になったので割愛)のほか、逆確率による重み付け手法(Inverse Probability Weighting: IPW)や二重にロバストな手法(Doubly Robust: DR)から推定される平均処置効果(さっきと同じ)を検証した。なお、傾向スコアの算出に利用する共変量には 4 節(4)で示したコントロール変数を用いた。また、傾向スコアの外れ値による影響を避けるため、スコアが0.99 以上または 0.01 以下のデータは除外した14。』

『結果は表 A のとおりである。株価純資産倍率、トービンの q、ROE および ROAについては、対照群に比べて、処置群の値が低い傾向があることが示された。その一方で、資本コストに関しては、(これまたギリシャ文字ですけど株主資本コスト)と(負債コスト)では有意差がみられないうえ、差の水準自体も小さな値となっている。』

『したがって、特に CO2 排出量が長期と短期の企業パフォーマンスに与える影響について、本研究の含意を分析対象外の企業まで含めて一般化可能であるかについては、慎重に評価する必要があると考えられる。』

ということになっていまして、何ちゅうかこの規制対応要因がでかいってことで、そーゆー文脈で考えたらやはりカーボンニュートラル政策に関しては規制の制度設計無くしては中々進まん、という話な気がしました。


〇調子に乗って中銀ウィーク前の暇ネタシリーズやろうと思ったら時間がアレなのですが銀行券に関する日銀レビューもオモロイ

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2021/rev21j15.htm/
2021年12月10日
企画局 吉澤謙人、前橋昂平、柳原弘明、門川洋一
発券局 稲田将一

何故か発券局よりも企画局の面々の人数が多くて、しかも決済機構とか金融市場とかではないのね、という辺りに謎の味わいを感じますがサマリーページだけご紹介。『要旨』って奴です。

『近年、クレジットカード決済の拡がりなどから現金決済の機会が減少する一方、銀行券発行残高が増加する「銀行券のパラドックス」と呼ばれる現象が、グローバルに観察されている。』

ほうほうそうですかそうですか。

『背景として、低金利環境による現金保有の機会費用の低下や、経済の不確実性の高まりを受けた予備的需要の強まりなど、取引動機以外での銀行券へのニーズの高まりが指摘されている。』

そらそうよ。

『コロナ禍では、このパラドックスが更に強まった。すなわち、景気の悪化や、「巣ごもり消費」によるEコマースの拡大により、現金決済の機会は一段と減少したが、銀行券発行残高は増加した。実証分析によれば、公衆衛生上の措置は銀行券発行残高を有意に押上げたほか、その効果は昨春の感染症拡大直後が最大で、その後は縮小した。感染症に伴う不確実性の高まりを受けた予備的な現金保有ニーズが、銀行券の動向に影響したとみられる。』

これはそうでしょうなー、と思う訳で本文ちゃんはこちら。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2021/data/rev21j15.pdf
コロナ禍における銀行券の動向

中のグラフとか中々面白いのですが、地の文章だけ引用してもイマイチ面白さが伝わらんなあ、というのは時間が無いから引用しない言い訳成分は無いとは申しませんが(笑)それよりも何よりも、内容そのものは要するに上記の要旨の通りの話が展開されているのですが、それを実際の定量的な数値として可視化されているのがオモロイということです。

ということで是非上記PDFの日銀レビューみてくんなまし、とは思うのですが、この日銀レビューを書いているのが何故か企画局、というのにアタクシは謎の味わいを感じておりまして、発券局は当然分かるのですが、なぜ決済機構局ではないのか、というのは何で何ですか教えて教えてねえ教えてよ!!!!と思うのでありました(変なところを気にするアタクシ)









2021/12/14

お題「短観私家版分析ですが今回の短観はワシ的にはつえええええええええ!!と思うのですけどね」

これはノビテルもニッコリですね!!!!
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211213/k10013386271000.html
ことしの漢字は「金」 京都 清水寺で発表
2021年12月13日 18時27分

五輪だから金とか発想が安易すぎてアホラシイのでもうやめたら(何故か野球の話ばっかりになる流行語大賞についてはNPB大好きのアタクシが見てもあほらしいと思うのですからもっと世間的にアホだと思われてそう)。

「かね」と読むほうが今年の漢字、なら皮肉が色々と効いてて結構なんだが。


〇短観私家版分析ですが私家版分析によると無茶苦茶強いんですがががががが

短観(概要)
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2112.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2109.pdf(前回)


・業況判断DIの達成状況:何でこんなに企業部門は強いのよおおおおおおお

         (9月時点)       (12月時点)
         現状→12月予測    現状→3月予測
製造業大企業   +18→+14     +18→+13 
製造業中堅企業  +6→+1       +6→+5        
製造業中小企業  ▲3→▲4       ▲1→▲1

非製造業大企業  +2→+3       +9→+8
非製造業中堅企業 ▲6→▲7       +1→+0
非製造業中小企業 ▲10→▲13     ▲4→▲6

毎度この時は前回に書いた自分の駄文を改めて読み直しているのですが、長広舌の駄文で申し訳ないですが前回はこんなこと書いておりました。

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
いやー製造業強いっすねえ。まあ前回の見通し自体もそんなに弱くない(景気回復期における短観は基本的に先行きDIが堅めに出るので、若干下程度は基本先行き見通しは強め、だと思っています)のですが、きっちりとそれを上回る数字を出してきました。先行き予想DIを超過達成しているのはまあ今回も同じですが、ただまあ上記で書いておりますように、前回と前々回(3月6月短観)での超過達成が禿げ上がる程の(6月は製造業のみ)勢いだったのに対して今回はそこまででもないですが、この間延々と緊急事態宣言だの何だのとやっていた中でこれなので、(それは緊急事態宣言をしているけど外食とか飲み会とか大規模イベントだけ攻撃されているだけだったという尻抜け宣言だったから、という説はありますが)まあ強いんちゃいますか。
(引用ここまで)

でもって今回、前回製造業つええええええとか書いていたのですが、今回は製造業よりもむしろ非製造業の改善の方が目立ちますね。でも製造業も前回の時点では先行きやや弱めに出ている(ただこの先行きは業況DIが特にプラス圏に来ると先行き見通しが堅めに出る傾向があるのでそこは仕様の範囲内かもしれませんが)中で堂々の前回並みとなっている訳で、まあ9月短観見て強い!と思った水準維持なんだから強いでしょ。

という出オチのような短観ですが、個別の調査項目も今回は強いのよね〜。


・雇用判断DI:ここ2回ほど微妙な感じが漂っていたが再度人手不足モードへGO!

(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)

        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業   ▲5→▲6       ▲9→▲10
製造業中堅企業  ▲11→▲14     ▲14→▲16
製造業中小企業  ▲13→▲15     ▲17→▲21

非製造業大企業   ▲11→▲14    ▲15→▲19
非製造業中堅企業  ▲19→▲23    ▲24→▲28
非製造業中小企業  ▲24→▲24    ▲31→▲35

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
前回は「おや??こようのようすが・・・・・・・・・・・・」という小見出しをつけてみましたが、なんか業況感に対して雇用が絶対値自体は不足方向なので別に悪くは無いのですが、業況感の勢いに対してこっちの不足拡大がイマイチだよなーと思ったのですが、まあ今回に関しては「予測値未達」が殆どですけど、全てにおいて不足感が高まっているのでまずまずという感じですかね。まあこっちも雇用不足度合いの拡大に関しては製造業の方が大きいですね。
(引用ここまで)

いやーこでは強いですわ。前2四半期ちょっと(絶対水準としての不足は不足ですけど)状況が横ばいっぽかったのですが、ここにきて企業の人手不足感高まる、ということですから先行きの需要に自信ニキという所ですかねえ。

まあこういう景気の良い雇用の数字が出ているというものの、アタクシの懐具合は以下自主規制でございますけど、この業況判断の強さに雇用判断の強さの中で何でこうお賃金はそこまで伸びないのよと小一時間問い詰めたい。



・3月短観より私家版チェック新項目にした需給判断等の部分


国内需給判断
        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業   ▲2→▲3       +2→+1
製造業中小企業 ▲17→▲16      ▲12→▲13

非製造業大企業  ▲15→▲14     ▲11→▲10
非製造業中小企業 ▲20→▲20     ▲13→▲14



海外需給判断
        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測    現状→3月予測
製造業大企業  +7→+4        +8→+7
製造業中小企業 ▲7→▲6        ▲3→▲5


(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
何か前回に書いたの前々回の継続になってて何ですねんという感じですが、この推移を見ていると国内需給判断は供給超過(ただし実際にどうなのかというのはこれまた多分アンケートだから堅めに出しているんでネーノという気がする)になっているのですが、海外需要が何かやたらめったらこの3回の短観で強くなっている、というのを見るに、結局の所今までの回復は「海外需要が神風級に高まったので上がりました」がドライバーなんでネーノという気がががががが。
(引用ここまで)

これは日銀ニッコリの結果で、ここもとって上記の前回書いた時にありますように、主に「海外需給判断」が盛大に上がってひっぱっていた感のある需要も、国内の方が全体的に前回の見込み数字よりも強く、水準自体も前回から改善、というのが国内の方が顕著になっている訳でこりゃ強いわ。


さらにこのコーナーは3月短観から在庫水準判断(在庫水準判断は過大側がプラスなので数字が小さい方が強いっちゃあ強い、あとこちらは先行き判断の数値は無いので現状判断だけです、在庫の話だから製造業だけ)を見てますが、せっかくなので今回も見て見ますと、


製商品在庫水準判断
      (9月時点)  (12月時点)
        現状      現状
製造業大企業  +3      +5
製造業中小企業 +11     +9


製商品流通在庫水準判断
      (9月時点)  (12月時点)
        現状      現状
製造業大企業  ±0      ▲1
製造業中小企業 +7      +2

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
在庫に関しては相変わらず減っていて、と思ったら製造業中小企業は在庫水準上がっているのね。まあ流通在庫併せたら減っていないし、大企業は在庫不足に近くなってきている感じなのでこれ自体の流れは同じなのかな。
(引用ここまで)

大企業に関しては在庫増えているのですが、中長期業の在庫減っているし、流通在庫もかなり減っているので、相変わらず在庫が足り無さそうな感じでこれは供給制約ですね!!!!!


・価格判断が前回エライ強いと思ったが今回はその上を行くツエツエ蝿状態ですわ

同じコーナー(これは短観概要の2ページ目にさっきの需給判断、在庫判断と共にのっている)でこっちはもう少し前からの私家版分析ネタ。

販売価格判断
        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業  +10→+10       +16→+17
製造業中小企業 +9→+14        +16→+22

非製造業大企業  +6→+5       +10→+4
非製造業中小企業 +1→+3       +6→+5


仕入価格判断
        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測      現状→3月予測
製造業大企業  +37→+34      +49→+43
製造業中小企業 +50→+51      +60→+61

非製造業大企業  +17→+18     +25→+26
非製造業中小企業 +29→+31     +39→+41

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
いやー販売価格判断無茶苦茶上がっているじゃないですか〜全カテゴリーでプラスだし、しかも前回予測数値を超過達成して販売価格引き上げの動きですわよ日銀さんニッコリですね!!!!!

と言いたいのですが、見ればお分かりのように仕入価格判断の方が鼻血の出る勢いで上がっていて、前回書いた数値を引っ張れば昨年の12月短観から見て製造業企業が+5→+37、製造業中小企業が+15→+50ってナンジャソラ状態になっておりますな、ナムナムナム。

どうみてもコストプッシュです本当にありがとうございましたという風情なのですが、その割に消費者物価に統計上は跳ねていない(スーパーで一部葉物野菜の価格とか見ると卒倒しそうになるので見ないようにしておりますがそれは生鮮なのでキニシナイということでさておきまして)ようですけど、消費者物価の統計がアホほどヘドニックかけてておかしいのか、はたまた流通段階でコスト上昇が吸収されているのか、という感じですが、もしかしたら国内向けは値上げしにくいけど海外向けでそれは吸収してるとか????なんか難しくておじちゃんよくわからん。
(引用ここまで)

いやーまあコストプッシュの面が多分にあるのですが、まあそれはそれとしても販売価格判断だって上がっているし、この数字見て物価が上がらなかったらおかしいわ、というような数字になっております。コストプッシュだろうが何だろうが、来年は物価目標達成への展望が開けたと大嘘でも言い張れるタイミングがないですかねえ。前回の勝ち逃げ失敗の反省はここで行かされるでしょうか????????



・設備投資計画がこれまた全然コケる気配のない強さ維持sugeeeeeeeeeeee

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
今回も13ページに設備投資計画のグラフがありますが、見た感じ2018年度並みの推移をしていて、こっちは相も変わらず強いのですな。まあコスト増に関しても上述した販売価格のところを見ると転嫁の動きも出てきているんで、設備投資のここの数値強いと日銀は基本的に企業での前向き循環メカニズムがワークしている、という認識で押してくると思いますので、まあそういう事やぞという感じで。
(引用ここまで)

いつもの13ページの『▽設備投資額(含む土地投資額)の足取り』ですが、ご案内の通りだとは思うのですが、いつもならそろそろ下向きアイヤーとなる時期になってもさほど落ちるでもない、ということでいやもう何ちゅう企業部門の強さよ、というのが今回の短観ですわなと思うのですけれども、この企業部門の強さ、家計部門的には波及してるのやらしてないのやら・・・・・・・・・・



・何じゃこの銀行業のDI跳ねあがり??

業況判断DI

        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測    現状→3月予測
銀行業      +6→±0     +23→+13 
協同組合金融業  ▲5→▲3      ▲3→±0        
金融商品取引業 +14→+18    +10→+18
保険業     +20→+12    +25→+29
貸金業等     ▲5→+5      +5→±0

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
何と、2回連続で金融商品取引業があんまりウゴカンチ会長で先行き見通しもヨコっぽいのを出してきまして、雪でも降るんじゃないかと気にしておりますが、よくよく見れば先行き予測で今回よりも改善する、という能天気な見通しをだしてきまして、他の金融業の皆様が(基本的に堅めに出しているから、というのはありますけど)先行きを慎重に見る中でこのヒャッハーマインドには相変わらず敬服せざるを得ないのですが、これが変な死亡フラグになっていないことを祈りたいと思います。12月短観が楽しみだなー(棒読み)。
(引用ここまで)

金融商品取引業の見通しが外れましたというのを楽しみに見に行きましたら、銀行業が何か謎のDI大幅上方跳ねあがり、という珍しいものをやっています。これは何ですか????????




・そういや企業金融

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
などと書いたら7月MPMでちゃっかり来年3月までのコロナオペ延長が決まってしまいましたが、企業金融の方は相変わらず緩和的となっているし、業況感の改善も続いているのに、どこがどう企業金融がタイトでコロナオペを延長せにゃならんのよ、という感は大いにするんですけど、はてさてどうなる事やら。
(引用ここまで)

・・・・・・・ということで、そもそも9月短観の時点でこんなことを書いておりますが、物は試しに資金繰り判断DIの推移でも出して進ぜよう。2020年12月から並べるよ。

大企業:12月+11→3月+14→6月+15→9月+16→12月+16
中小企業:12月+4→3月+6→6月+8→9月+9→12月+9

ついでだから金融機関の貸出態度も去年の12月から並べると

大企業:12月+15→3月+16→6月+16→9月+17→12月+17
中小企業:12月+19→3月+19→6月+19→9月+18→12月+18

てな感じになっていまして、まあずーっと企業金融は緩めに推移している訳でして、このうち中小企業向けの金融機関の貸出態度がどの程度まで政策で下駄をはいているのか存じませんが、それにしましてもこの状況下で借入困難、という先で、まあその直撃ヒットバイコロナの方が厳しいのは分かるし、コロナ落ち着いたら何とかなるってのも分かるんだが、そうじゃなくて単に経営がアレなのがコロナのせいに出来てラッキー組がいるんでネーノとか思ってしまうようなこのゆるゆる企業金融ですわな。

まあここの数字、正直これ以上良く成りようがない位のレベルなので、単月の数字だけ見て3月のコロナオペ延長云々のインプリケーションは出せない(というか出すならどう見ても縮小)と思うのですが、なんせ雨宮さんがこの前「短観なども見る」とか言ってしまった手前確認するの巻となりました。



・今回の企業の物価見通しはさすがに話題になるじゃろ!!!!!!!!(強い!!!!!!!のですが・・・・・・)

例によって手抜きなので前回のに付け加えて9四半期(コロナ前の最後の短観から)にしますわw

販売価格見通し 全規模合計 全 産 業

1年後 12月:0.6%→3月:0.2%→6月:-0.3%→9月:-0.2%→12月:-0.1%→3月:0.2%→6月:0.5%→9月:0.7%→12月:1.2%
3年後 12月:1.0%→3月:0.9%→6月:0.5%→9月:0.6%→12月:0.6%→3月:0.9%→6月:1.1%→9月:1.3%→12月:1.7%
5年後 12月:1.4%→3月:1.4%→6月:1.2%→9月:1.2%→12月:1.3%→3月:1.5%→6月:1.7%→9月:1.9%→12月:2.3%

大 企 業 製 造 業

1年後 12月:0.0%→3月:-0.3%→6月:-0.5%→9月:-0.4%→12月:-0.3%→3月:-0.1%→6月:0.2%→9月:0.5%→12月:1.1%
3年後 12月:-0.2%→3月:-0.3%→6月:-0.6%→9月:-0.5%→12月:-0.5%→3月:-0.3%→6月:-0.1%→9月:0.1%→12月:0.6%
5年後 12月:-0.3%→3月:-0.3%→6月:-0.5%→9月:-0.5%→12月:-0.6%→3月:-0.4%→6月:0.1%→9月:0.2%→12月:0.7%

大 企 業 非製造業

1年後 12月:0.4%→3月:0.1%→6月:0.0%→9月:0.1%→12月:0.3%→3月:0.2%→6月:0.4%→9月:0.5%→12月:0.7%
3年後 12月:0.8%→3月:0.7%→6月:0.7%→9月:0.8%→12月:0.6%→3月:0.9%→6月:1.0%→9月:1.1%→12月:1.2%
5年後 12月:1.0%→3月:1.0%→6月:1.1%→9月:1.3%→12月:1.1%→3月:1.3%→6月:1.4%→9月:1.6%→12月:1.7%

大改善キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!って感じでございますが、なんかこうその大改善が製造業の方が大改善、というのを見るとこれはタダのコストプッシュなのではないか、という疑念も起きないわけではない(非製造業の上げがイマイチ)のですが、なんせ適合的期待形成という理屈によりますとコストプッシュでも何でもまずはアクチュアルの物価が上がらんと話が始まらん、という理屈になっておりますので、そう考えたらどこからどう見てもコストプッシュ起点にするしかないじゃん。。


物価全般見通し 全規模合計 全 産 業

1年後 12月:0.8%→3月:0.5%→6月:0.3%→9月:0.3%→12月:0.3%→3月:0.4%→6月:0.6%→9月:0.7%→12月:1.1%
3年後 12月:1.0%→3月:0.8%→6月:0.7%→9月:0.6%→12月:0.7%→3月:0.8%→6月:0.9%→9月:1.0%→12月:1.2%
5年後 12月:1.1%→3月:1.0%→6月:0.9%→9月:0.8%→12月:0.9%→3月:1.0%→6月:1.1%→9月:1.1%→12月:1.3%


物価全般見通し

中小企業 製 造 業

1年後 12月:0.9%→3月:0.6%→6月:0.3%→9月:0.3%→12月:0.3%→3月:0.5%→6月:0.8%→9月:0.9%→12月:1.5%
3年後 12月:1.0%→3月:0.9%→6月:0.7%→9月:0.7%→12月:0.7%→3月:0.9%→6月:1.1%→9月:1.2%→12月:1.5%
5年後 12月:1.2%→3月:1.1%→6月:1.0%→9月:1.0%→12月:1.0%→3月:1.1%→6月:1.2%→9月:1.4%→12月:1.6%

中小企業 非製造業

1年後 12月:1.0%→3月:0.7%→6月:0.4%→9月:0.4%→12月:0.4%→3月:0.5%→6月:0.6%→9月:0.8%→12月:1.2%
3年後 12月:1.1%→3月:0.9%→6月:0.7%→9月:0.7%→12月:0.8%→3月:0.8%→6月:1.0%→9月:1.1%→12月:1.4%
5年後 12月:1.2%→3月:1.1%→6月:1.0%→9月:0.9%→12月:1.0%→3月:1.1%→6月:1.2%→9月:1.2%→12月:1.4%

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
こちらもまた前回駄文は引用しませんが、今回は企業の物価全般見通しが見事にコロナ前を回復しておるのですが、まあゆうてコロナ前を回復しただけで、全然2%とか夢のまた夢という数字であって、こうなってくると麿が最初にしょうが無くぶっこんだ「目標は2%だが中間目標1%」っての妥当オブ妥当だったんですねえ、というのが分かるのですが、どうせ置物一派に言わせると「2%目標にしなかったら1%にも行ってない」みたいな理屈で正しいと言い張るに100ジンバブエドルですけどね。

なお、これは前回も書きましたが、皆さんすっかり忘れかけていると思うので(私もそうだが、笑)、しつこく申しあげると、コロナ前って「まるっきり物価がアガランチ会長なのですがそろそろ何と申し開きをするんでしょうか、まさか10年間達成しないとは言わないと思うので何かの落とし前(全面降伏かバンザイアタックの追加緩和)を」って感じの話しだったのがコロナで全部すっ飛んでしまって日銀にとってはすっかり有耶無耶に出来るという黒ちゃんの悪運の無駄遣いプレイになっていた、と言う事実はあるので、そこは忘れてはいけません。
(引用ここまで)

前回は「やっとコロナ前を回復しただけで、しかもあの時期って寧ろ「物価が全然上がらんですがどう申し開きするんでしょう」と言われてた時期でしたよね」ってな話を上記のようにしておった訳ですな、ついに!!なんと!!!物価見通しも1%台に全期間乗って来ましたよ!!!!!!!!!!!!

というこの短観数字を見ると物価上がらない訳が無いと思うのですがさてどうなるのでしょうか・・・・・・・・・・・・・










2021/12/13

お題「ECBシュナーベル理事の8日の講演を改めて確認したが資産買入の減額まで含み持たせながら利上げは先の話にしそうですな」

ほうほうそうですかそうですか。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2SV3AT
2021年12月11日7:07 午前
米金融・債券市場=利回り変わらず、米CPI受け

『[ニューヨーク 10日 ロイター] - 米金融・債券市場では、不安定な地合いの中、米債利回りはほぼ変わらずとなった。米インフレ指標がほぼ予想通りだったことを受け、米連邦準備理事会(FRB)がより積極的にインフレに対応しなければならないとの懸念が和らいだ。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほうそうですかそうですか。

『米労働省が10日発表した11月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前年同月比6.8%上昇と、伸びは10月の6.2%上昇から加速し、1982年6月以来約39年ぶりの大幅な伸びを記録した。ただ、予想とは一致した。』

前年同月比6.8%でも「予想と一致」ならFEDの早期対応懸念が和らぐのか・・・・・・・


〇金融安定化リスクの話をしつつ結局資産買入縮小の話になる8日のECBシュナーベル理事講演

こんなんございました。
https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2021/html/ecb.sp211208_2~97c82f5cfb.en.html
SPEECH
Monetary policy and financial stability
Speech by Isabel Schnabel, Member of the Executive Board of the ECB, at the fifth annual conference of the European Systemic Risk Board
Frankfurt am Main, 8 December 2021

お話はリーマンショックの対応というところから始まりまして、小見出しを見ますと、

An incomplete macroprudential framework in the euro area
Too hesitant implementation of existing macroprudential measures
Insufficient macroprudential powers over non-bank financial sector

という辺りは通常の(?)マクプル講演なのですが、この先の小見出しが

The need for monetary policy to take financial stability considerations into account

と怪しくなって来るのですが、この章においては惜しい(笑)ことに「ファイナンシャルスタビリティの問題があるから早期利上げ」というような話にはならないのでありました。この小見出しの頭から参りますと、


・マクロプルーデンスのツールが不完全なので金融政策においても一定の対応が必要と来ますが

『These shortcomings imply that monetary policy needs to take financial stability considerations into account for as long as the macroprudential framework in the euro area is incomplete and not fully effective.』

『The pandemic has shown that this argument cuts both ways.』

マクプルツールが不完全だから金融政策運営の方でもファイナンシャルスタビリティを意識しないと行けないそうな。

『When risks materialise in a procyclical manner, monetary policy needs to step in forcefully to secure price stability.』

リスクが経済の拡大と共に発生するなら物価安定のために行動すべき、というのはそらそうよではあるのですが、

『The announcement of our pandemic emergency purchase programme (PEPP) in March 2020 had a strong and immediate stabilising effect on financial markets. It instantly addressed illiquidity and instilled confidence, thereby reducing systemic stress (Slide 4).』

ここでPEPPの話が始まる。市場の流動性欠如に対応してコンフィデンスを戻し、システミックリスクの発生を抑制しました、という大きな効果がありました。

『To deal with the risks stemming from the non-bank sector, we also extended our purchases to commercial paper.』

『Many money market funds came under severe liquidation pressure as investors redeemed large amounts of shares (Slide 5, left-hand chart). This, in turn, led to a freeze in the demand for commercial paper and a measurable rise in their issuance rate, draining liquidity from the system at a time when it was most needed (Slide 5, right-hand chart).』

ノンバンクセクター(というかMMF)からくる短期金融市場のシステミックリスク対応にCP買入も拡大実施したよ。

『In such situations, targeted interventions by the central bank are needed to stabilise the financial system and help fix impairments in the monetary policy transmission mechanism.[7] 』

TLTROも銀行セクターの安定性に役だった(ホンマカイナ)だそうです。

『A failure to stabilise the financial system would severely jeopardise price stability.』

てな訳でパンデミックの際には緊急措置は約に立ちました、と言っているのですが、この先からはパンデミック臨時措置解除に向けた意思満々というのがおっぱじまります。

『During economic upswings, however, central banks must recognise that the actions they take to deliver on their price stability mandate have the potential to contribute to a build-up of risks to financial stability.』

どこぞの中銀に爪の垢煎じて飲ませたいですが、経済がアップスイングする中でにおいては中央銀行は(Weではない)緊急対応として物価安定のために実施したこれらの施策が金融不安定の潜在的なリスクを積みあげていることを認識すべきである、とかこの時点でキタコレ。

『These risks have arguably increased in the vicinity of the zero lower bound. The progressive decline in the real equilibrium interest rate over the past few decades has severely limited the space that central banks have available to maintain stable prices by changing their key policy rates.』

『As a result, central banks have to resort more often to balance sheet policies that entail the risk of contributing to the build-up of financial imbalances when the macroprudential policy framework is incomplete.』

『In our recently concluded monetary policy strategy review, we explicitly recognised the potential financial stability risks that may accompany our policy measures, in particular with a more forceful or persistent policy response close to the lower bound.』

『We therefore decided that, in addition to our economic analysis, our price stability assessment and proportionality analysis will now be based on an enhanced monetary and financial analysis.[8]』

しかも中立金利が低下する中においては資産買入政策に頼らざるを得なくなるケースが増えることから、どうしても資産買入のような政策を実施してしまいますが、金融安定の観点を考えて行かないといけませんですよね、というこのどう見てもPEPPは終わらせようというこの気概。


・一方でBISビュー的な予防引き締めは否定して早期利上げの思惑は封印したいようですね

更にですな、

『In practice, taking financial stability considerations into account does not mean that central banks should adopt a policy of “leaning against the wind”, whereby monetary policy is systematically tightened when systemic risk builds up. There is a large body of empirical evidence suggesting that the costs of doing so typically outweigh the benefits.[9]』

久々に“leaning against the wind”の文字列見ましたが、これは有名な所謂BISビューVSFEDビューって奴で、金融バブルのような事が起きる事が察知されたら風が来る前に立ち向かって金融引き締め、というBISビューのお言葉を思いっきり否定しております。

というのはどういうことかと言ってしまえば、こらもうどこからどー見ましても「金融バブル予防的利上げみたいなことはしないよ」という早期利上げ大否定攻撃。

『Instead, there are three complementary avenues available to monetary policymakers to manage the conflict that may, at times, arise between price stability and financial stability.』

その代わりに3つの論点ががありまっせ、ということですが、まあこの時点でほぼ内容はお察しということになるかと思います。


・早期利上げを否定する理由の持ち出し方が中々ユニーク

次の小見出しが『Adjusting the medium-term horizon』

『The first relates to the horizon over which monetary policy aims to bring inflation back to its target.』

中期的視点とは何ぞやということですが、

『The medium-term orientation of our monetary policy grants the flexibility required to tailor our policy response to the size, persistence and type of shock we are facing.』

『The current environment is a good example.』

今の環境が中期的なタイムホライズンを考えるのに良い例だとな。

『While a strong recovery in domestic demand and a rapid erosion of economic slack are expected to gradually bring inflation back to our target in the medium term, a combination of adverse supply-side shocks, mainly related to rising energy prices and supply chain disruptions, is now pushing inflation well above our target.』

現在の大幅にターゲット上回る物価上昇には供給要因がメインで需要要因については徐々に物価を2%に引き上げる程度のものだとのご認識。

『Responding to such supply-side shocks by raising policy rates prematurely would risk choking the recovery and, given the long lags in transmission, exert downward pressure on inflation at a time when the shocks are likely to have already faded.』

このような供給サイドのショックに利上げで対応するのはイクナイ!と来ましてまた早期利上げを否定。

『To prevent this outcome, supply-side shocks typically warrant a temporary deviation from the target, provided price stability is restored over the medium term and inflation expectations remain anchored.』

『The same logic applies to financial stability.』

金融安定と政策対応というのも同じ考え方だそうな。

『Take the Governing Council’s decisions of December 2020 as an example.[10]』

2020年12月の政策対応がこの中期的視点の参考となるそうですが何ですか?と見ると、

『At that time, the inflation outlook was fundamentally different from today. Consumer price inflation was projected to reach no more than 1.4% in 2023, well short of our 2% medium-term target. Vaccination campaigns had barely begun.』

ふむふむ。

『Standard textbook economics would have prescribed a further easing of the monetary policy stance. Instead, the Governing Council opted for a policy of “preserving favourable financing conditions”, meaning that we would purchase assets under the PEPP flexibly according to market conditions rather than absorbing assets at a constant pace.』

そう来たか!という感じですが、

『We did so, in large part, because there was a risk that pushing real and nominal interest rates even lower - in an environment where monetary policy was already highly accommodative - would have further fuelled emerging overvaluations in parts of euro area financial and real estate markets.』

昨年12月にまだ物価見通しが先の方まで低い時に、標準的な教科書的対応ならば「追加緩和」になりますが、我々は「利下げではなくPEPPの弾力的な活用(毎月一定の購入を行う訳ではない)」を行いましたが、この時の対応の理由の一つに「これ以上金利を下げると欧州の金融市場や不動産市場でのバブルを発生させるリスクがある」というのがあったそうな。ホンマカイナ。

『By tolerating a potential lengthening of the medium-term horizon, we effectively mitigated risks to financial stability which could have arisen from a more intense use of our policy instruments.』

でもって、これは「中期的な物価安定」の中期的というタイムホライズンを長期化した(つまり物価見通しが強くも無いのに利下げしない、という事は物価達成の後ずれ容認ということだから)のですが、背景にはこれ以上の利下げは金融不動産バブルになるから、というのがあったとのこです(マジか??)と眉唾感は拭えないのですが、まあそういわれると「お、そうか」と反応するしかない。

『In the future, challenges may reverse. For example, should inflation expectations become unanchored in response to a persistent period of inflation above our target, even if due to adverse supply-side shocks, this would call for a shortening of the horizon.』

「中期的」な物価安定のタイムホライズンを自由自在に変更するようです、うーんこのご都合主義。

『In this case, monetary policy must not be held hostage by fiscal or financial dominance - that is, even if financial markets have become more sensitive to changes in policy, central banks need to find ways to secure price stability without jeopardising financial stability.』

とは言いましても、これまたどこぞの中央銀行や中央政府の方々に爪を煎じて飲ませたいのですが、「monetary policy must not be held hostage by fiscal or financial dominance」ですよ!!!

『Reversing the communicated order of instrument sequencing is not an appropriate policy response in such circumstances. Maintaining a high volume of asset purchases merely to avoid adjustments in long-term yields in spite of imminent risks to price stability would give way to fiscal and financial dominance.』

ということで資産買入政策の話にまた戻りまして、

『That said, given its current architecture, the euro area remains vulnerable to fragmentation, meaning there is a risk that unexpected policy adjustments may be amplified in parts of the euro area, leading to changes in financing conditions that are sharper than intended.』

『A credible backstop that commits to counter such risks of fragmentation may help protect against disorderly movements and thereby allow the central bank to focus on its price stability mandate. The PEPP has effectively provided such a backstop function over the course of the pandemic.』

ユーロ圏のfragmentation(こらまたギリシャ危機とかの時によーゆーとりました言葉で)を予期しない金融政策調整によって起こすのはアカンし、そういう時のためにバックストップは必要で、パンデミックの中ではPEPPはそういうバックストップをもたらした、というので最初の1番地目終了。


・政策ツールの最適化ということでPEPPの縮小する気満々なのは把握した

『Prioritising the most efficient tool』という小見出しが続きます。

『The second avenue to incorporate financial stability considerations into the monetary policy decision-making process concerns the choice of policy instruments. In short, provided the instruments are similarly effective, policymakers should prioritise the use of those that have the least adverse impact on financial stability.』

金融安定に対するマイナスの効果を考慮して政策ツールを選ばないと行けない、と来まして、

『Asset purchases, for example, are an important tool for stabilising the economy at times of market turmoil or when the economy is at risk of falling into a deep recession, jeopardising price stability. But their cost-benefit ratio deteriorates as the economy gains ground, for three reasons.』

資産買入と思いっきり名指しして金融政策手段のプロコン分析とか言い出す時点でもうね。

『The first is moral hazard.』

まあ!モラルハザードですってよ奥様!!

『If the financial sector can systematically count on central banks to absorb large amounts of credit and duration risk on their balance sheets, even in good times, this will create bad incentives.』

ほう。

『For example, despite the traumatising events of last year, liquidity holdings of investment funds remain at alarmingly low levels, leaving the sector vulnerable to large-scale outflows (Slide 6, left-hand chart).』

投資ファンドの手元流動性、大口のアウトフローに耐えられないんじゃないか位に低いんですと。

『Liquidity risks are compounded by rising credit risks. Investment funds purchased around 70% of firms’ newly issued BBB and high-yield bonds, meaning they are exposed to the risk of substantial credit losses should conditions in the corporate sector deteriorate (Slide 6, right-hand chart). The average duration of their exposures has also increased during the pandemic, raising their vulnerability to a rise in interest rates.』

投資ファンドはクレジットリスクも盛大に取っているし、マチュリティトランスフォーメーションも積極的に行っているそうです。というのがモラルハザードとの説明。どこかの中銀以下同文。

『A second reason is asset valuations.』

資産価格のバリュエーションキタコレ。

『By removing safe assets from financial markets, central bank asset purchases incentivise investors to rebalance their portfolios towards riskier and less liquid assets.[11] 』

『These rebalancing effects are important when risk-taking is too low rather than too high, in particular when the economy is in the midst of a recession.』

リセッションの最中とかに中央銀行が資産買入を行う事は、金融主体にリスクを取らせるポートフォリオリバランス効果を付けるので良い事なのですが・・・・・・・・

『Over time, however, as the outlook gradually improves, the portfolio rebalancing channel may at some point result in excessive risk-taking and overvaluations. ECB staff estimates suggest, for example, that the return of a basket of global financial assets is currently far above its long-term average, while the likelihood of a costly downturn in economic activity has increased markedly over the medium term (Slide 7).』

経済物価情勢の見通しが改善する中でポートフォリオリバランスが過度に進むのイクナイ!!とかどこぞの中央銀以下同文。

『The experience of the past few years demonstrates that portfolio rebalancing effects also extend to real assets, including residential and commercial real estate.』

このポートフォリオリバランスの効果は不動産価格にも出てしまっている、

『New ECB research finds that monetary policy as well as mortgage supply have been major drivers of the recent marked rise in real estate valuations (Slide 8, left-hand chart). Unconventional measures, such as asset purchases, are likely to have contributed to these developments as they have been found to have a significantly larger impact on house prices than changes in short-term policy rates (Slide 8, right-hand chart).[12]』

これはまたシュナーベルさん思い切りがよろしゅおすなという感じですが、思いっきりECBの資産買入によって不動産価格の上昇が起きている一因、とか言っちゃってまして、PEPPちゃんエライ言われようですな。


『The final reason relates to market functioning.』

最後の理由は市場機能ということです。市場機能・・・・・・どこかの中央銀行がよく使いますな。

『Years of balance sheet expansion have caused the bond free float in some economies to decline to very low levels. In Germany, for example, our estimates suggest that less than a quarter of sovereign bonds are currently available for sale in financial markets (Slide 9, left-hand chart).』

『As such, the market is at risk of not having available the amount of safe assets that it requires to function well. Although recent developments in euro area repo markets reflect a variety of factors, the increasing scarcity of assets may have contributed to amplifying the marked decline in German repo rates (Slide 9, right-hand chart).』

国債買入のやり過ぎで市場のニーズに対して国債が不足しておる、とかそっちの系統の市場機能ですね。

『So, by gradually shifting the policy mix away from net asset purchases when the monetary policy objectives are within reach, central banks can mitigate financial stability risks effectively.』

これらの理由により、政策セットの中でネット資産買入を政策目標が達成されている時に脱却していくのは金融不安定化リスクを回避するのに有効です、とこれでPEPPの延長決めたら詐欺位の説明をしておりますな。


・金融安定化の為に必要な3番地では金融機関のマイナス金利預金者転嫁の話まで出されておる

次が『Mitigating risks through appropriate instrument design』で実質最終パラ(最後が纏め)。

『This brings me to the third avenue that is available to policymakers in responding to financial stability concerns, namely designing policy instruments in a way that mitigates the risks they may pose to financial stability.』

おおそうだ3番地まであるんでした。

『At the ECB, we have done so in a number of ways.』

ほー。

『For example, only a few weeks ago we doubled the limit on cash that counterparties can pledge under our securities lending programme, thereby supporting bond and repo market liquidity at a time when the demand for collateral is rising and supply is limited.

『A second example relates to the design of our targeted longer-term refinancing operations (TLTROs). The target for lending that banks need to achieve to secure the most favourable rates deliberately focusses on bank lending to firms and excludes housing loans. In doing so, we aim to steer bank lending towards firms, limiting additional upward pressure on house prices.』

市場のキャッシュの流動性問題に対応した証券貸出プログラムの変更、TLTRO適格からの住宅ローン資産の除外、と来まして3番目が金融機関の利鞘問題キタコレ!

『A third example concerns measures that protect the bank lending channel.』

『There is abundant empirical evidence suggesting that the pass-through of changes in the policy rate to deposit rates diminishes in a low or negative rate environment, thereby reducing banks’ lending margins and their shock absorption capacity (Slide 10, left-hand chart).』


『Even for deposits of firms, where the pass-through in negative territory has been strongest, the largest share is still accounted for by deposits with a rate stuck at, or slightly above, zero (Slide 10, right-hand chart).

『Two measures are contributing to offsetting some of the pressure that negative or very low rates imply for banks’ profitability and hence for the bank-based transmission of our monetary policy.[13]』

『One is the introduction of the two-tier system under which part of banks’ excess reserves are exempted from negative rates. The other is the favourable rate at which banks can finance themselves through our TLTROs.』

『Internal ECB analysis shows that, together, both measures broadly offset the costs banks incur when holding excess liquidity in a negative interest rate environment (Slide 11).[14]』

『And both of these tools can be adapted and recalibrated should we see risks to the bank lending channel emerging.』

政策金利がマイナスの中、預金金利にマイナスをパススルーするのが一部では出来ているものの難しいということで、それに対応してECBの当座預金付利を活用していますよ、という話を概ね(?)しておりますです、はい。



・最後の纏めパートを見ても結局これでPEPP終了しなかったら詐欺だよな〜という纏め方でした

『Conclusion』をついでに。

『All in all, and with this I would like to conclude, a thorough financial stability analysis is needed to inform the choice, design and calibration of the various monetary policy instruments that we use in the pursuit of our price stability mandate.』

しかしお前ら金融安定の話これまで大してしてなかったじゃん、という風に思いますとまあどう見ても単なるご都合主義にしか見えないがまあいっか。

『In doing so, we acknowledge that monetary policy itself may contribute to the build-up of financial stability risks, the potential societal costs of which are too large for central banks to ignore for as long as the macroprudential policy framework remains incomplete or not fully effective.』

金融政策そのものが金融不安定リスクを生み出すことがあり得る、とかAPP減らす気満々。

『Taking financial stability considerations into account does not mean that financial stability is itself an objective of monetary policy. But there is a broad consensus that it is a precondition for achieving price stability.

Thank you.』

まあ何ですな、この感じですとECBって基本的に利上げを思いっきり引っ張ろうとしながら資産買入は縮小の方向を強めに打ちだすという感じでお茶を濁そうとしてるんじゃないか、と思料しましたが、小職の個人的感想ですの世界なので当たるも八卦当たらぬも八卦。






2021/12/10

お題「盛り上がらん雨宮副総裁金懇会見だがコロナオペの質問はたくさん出ましたな」

ほうほうそうですかそうですか
https://jp.reuters.com/article/economy-imf-idJPKBN2IO1CA
2021年12月9日11:26 午後
各国中銀、緩和政策維持する余裕なし インフレ圧力で=IMF

その「各国」に日本は含まれますでしょうかしら????(溜息)


〇雨宮副総裁記者会見ですが

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk211209a.pdf
―― 2021年12月8日(水)
午後2時30分から約25分
(徳島市・東京間オンライン開催)


・しっかしこの会見質疑盛り上がらないことおびただしい

普段は冒頭挨拶部分に相当する最初の質疑はスルーするんですが、なんと今回の雨宮さんの金懇会見、7ページあるのですが、冒頭挨拶と最初の「ご当地経済質疑」でまるまる3ページ使ってしまってそれ以外の質疑が4ページしかない、という事で、現時点で日銀の政策について何か聞いて意味のある打ち返しが期待できるのが雨宮さんしか居ない(鈴木さんは良い話をしてくれるんですが如何せん他のヒラ審議委員(とあと一人の副総裁)がボンクラ揃いのため幾ら良い事を言っても遠吠えにしかなっていないのが惜しい所)のですから、もうちょっと質疑があって然るべき、とは思うのですよね。

しかしながら、まあ会見の方もこの調子というのは、まるで覇気のなさそうな金懇挨拶で今回再確認できましたように、足元の日銀様からは「とにかく大過泣く過ごして色々な問題を先送りしておこう」という感じで、余計な波風立てずにというムーブになっている、というのがそこはかとなく伝わって参りますので(個人の感想です)、まあそういうこっちゃぞ、って所になるんでしょうかね。

ま、大過なく過ごしたからと言ってその先に何か良い事があるかと言いますと別に何もない訳なのですが、元々マイナス金利ぶっこむ前の「補完的措置」が最初の問題先送りの術で、その時に政策の限界とか散々言われたら逆切れしてマイナス金利政策を導入したら、単なる量的緩和よりも政策の寿命が短くなり、その後は延命に次ぐ延命を各種の屁理屈を繰り出しながら粘っているだけの話しなんですが、この問題先送り力には感心せざるを得ませんなwwwwwww

と、話が毎度のように脱線転覆しておりますが、雨宮さんの会見で日銀の紙に残る質疑応答、というMPM以外の唯一の政策インプリケーション引き出してくる場ともいえる場でこの盛り上がらない質疑応答、という時点で、まあ質問する記者さんんの方でも日銀の方から何か主体的、能動的に何かやっていこうというテーマもなければパッションもない、という状況になっているんだなー、とは思いました、

まあそれはそれとして今回の会見要旨、最初の所でおおおお!!と思いました。



・何と対面で金懇やったのか!

という事でありまして、会見要旨の冒頭には「オンライン開催」とあるからそうですねーまたテレビ会議でございますよねーとか思っていたら・・・・・・・・

『(問) 本日の金融経済懇談会に出席されて、出席者からどのような意見や要望が出されたかという点と、懇談会で聞かれた意見を踏まえて、徳島経済の現状に対する認識と先行きの展望についてどのようにお考えかという点を教えて頂ければと思います。』

『(答) 私ども日本銀行が各地域で行っている懇談会ですが、コロナ禍の影響で、オンライン形式での開催を長い間余儀なくされてまいりましたが、今回徳島県には直接訪問することがかないまして、私にとっても大変久しぶりにこういう形で、対面形式で開催させて頂くことができました。やはり直接顔を合わせてお話しをさせて頂くと、地方経済の雰囲気や温度感がはっきりと感じられ、改めて、その有り難みを実感したところです。』

おおおお!!!!雨宮さん出張したのか!!!!!それは何よりでございました。折角徳島でやってるのに何か会見を東京とオンライン開催するのも何か妙ですけれども(一部がオンラインだったんでしょうけれどもそれならそう書いてもらった方が有難いんですけどねえ)。


・引用ついでに冒頭の雨宮さんの発言から雨宮さん安定の芸の細かさを確認

冒頭の雨宮さんのああだこうだという本日のご感想の話の先の方に参ります。(あまりにもネタがないので^^)

『ただ、先行きについては、各種部材の供給制約あるいは物流の混乱、更に原材料価格上昇による生産活動や企業収益への影響に対する警戒を強めておられるということのほか、やはりなんといっても、新型コロナウイルス感染症の動向や、今現在では、変異株の影響についても大変不透明感が強く、見通しが立てにくい状況にあるという認識が多く示されたように思います。』

ほうほう。

『こうした経済情勢に関する認識については、私どもの支店や事務所の認識と軌を一にするものかと思いました。』

金懇挨拶の時って「もっとも、私ども日本銀行の中心的なシナリオとしては、来年にかけて、わが国の景気の回復傾向が次第に明確になってくると予想しています。そのように考える理由は、3点あります。」って威勢のいいこと言ってたじゃん、と思って良く読み直してみると「こうした経済情勢に関する認識については、私どもの”支店や事務所の”認識と軌を一にするものかと思いました。」であって「私どもの」(=日銀公式)と言ってないのが雨宮さんさすがの芸の細かさ、と妙な事に感心してしまいました。


・何ちゅうかこの調子では物価安定目標の達成には無理があるわなと思った部分

更に雨宮さんの冒頭発言を引用します。

『また、多くの方がおっしゃったのは、原材料価格が上昇する中で、賃金を引き上げていくためにも、販売価格を引き上げる必要があるので、そうした企業の生産、収益、賃金、物価の好循環をもたらせるように、2%の物価上昇を目指した政策を継続してほしいとの声も聞かれたところです。』

うーんこのという感じでして、そもそも好循環をもたらすべき主体って企業なんですが、その企業の方々の言ってる感じが雨宮さんが説明するような感じですと、なんか突発性いかりや長介になってコリャダメダと言いたくなる感じのアレでございまして、前向きの循環メカニズムを企業サイドが主体的に回して行こうという気が無くて、天から2%物価安定目標の結果が降って来るとワシらも賃金上げれるんですが・・・・・みたいな感じでお話をされている、という企業マインドに悲しさを感じましたです、ナムナム。


・「デジタル化」と「DX」って若干話が違う気がするんだが

同じく雨宮さんの冒頭発言、今引用した前にこういうのがあって、

『ただこうした大変厳しい情勢の中でも、行政や金融界、経済界におかれては、様々な形での支援策を講じておられ、現在の状況という点について申せば、地元企業への資金繰り支援や、雇用維持の取り組みが進められていますし、中長期的な課題として、これは大変色々と示唆に富むご意見を頂いたのですが、DXの推進やSDGsを意識した対応といったことを強化しているとのお話を伺いました。』

てなのがあって、SDGsの話とかもあったのですがそっちはまあ良いとしましてDXの話が冒頭発言の後の方で出て来ましてですね、

『やや長い目で、展望ということで、本日伺った意見や、私どもの事務所・支店の調査も踏まえて申し上げますと、徳島県経済が持続的な発展を図るためには、人口減少あるいは少子高齢化といった構造的な問題に加えて、デジタル化という、これは以前からの課題ですが、感染症の拡大により更に浮き彫りになった課題に対処していきながら、地域の魅力や活力を向上させていくということが重要となると思います。』

ほうほう。

『この点、当地においては、様々な取り組みがなされていて、国内屈指のブロードバンド環境が早くから整備され幅広く活用されていますし、環境負荷の少ない街づくりですとか、LEDを中心とした産業振興の取り組みが継続的に行われています。』

うーむ。

DXってデジタルトランスフォーメーション(いまだに何でXなのかがワカランチ会長のアタクシだが慣れというのは恐ろしいもので最近は違和感なく使っておるな)ってことで、ビジネスのあり方とかそっちの方まで踏み込んだお話だと思うのですが、(まあ我々も人の事はあんまり言えないという説がオオアリクイなのですが)どうも省力化投資や人員確保難対策のデジタル投資と話がごっちゃになっているような希ガス。いやまあそこは定義の問題ちゃあ定義の問題ではあるんですが、日銀最近はDXをバズワードによく使うようになったので(もうちょっと前は「デジタル化の進展」みたいな言い方してた)そこは切り分けておかないと、なんか話がフワフワとしてしまうように思えます。


・コロナオペ関連の質疑で最初は決定時期だがどう見ても1月じゃろ

という訳でその次にもご当地質疑が続いた後、会見要旨3ページ目の最終行になって政策関連の質疑が登場する。

『(問) コロナ対応の資金繰り支援策の延長の是非について伺います。コロナの感染状況は、オミクロン株を含めて不透明感が引き続き強い一方で、支援策の延長の是非の決定が遅くなると金融機関の実務面の負担が大きいといった指摘もございます。今後、金融政策決定会合は、12 月、来年 1 月、3 月とありますけれども、延長の是非について決定するのはいつ頃が望ましいのか、特定の月日をお答えするのは難しいということは承知のうえですが、この支援策の趣旨ですとか、資金繰りの状況を踏まえて、副総裁は大枠でどのようにお考えを整理していらっしゃるのか、お聞かせください。』

雨宮さんのお答え。

『(答) ご指摘の「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム(特別プログラム)」につきましては、基本的な考え方としては、こうした緊急措置あるいは臨時措置については、制度を始めるときも終了するときも、あるいは場合によっては再開するときも、情勢次第で臨機応変に対応するということが大事だと思います。』

謝ると死ぬ病に罹患していて一旦始めた政策をダラダラと続けている割にはエライ威勢の良いお話でよろしゅおすなあ(はんなり)。

『従って、そこのポイントは情勢次第という、情勢の判断が大事になってくるわけです。』

ほうほう。

『今はご指摘の通り、色々不確実性が非常に高い時期ではありますが、そうはいっても、制度の予見可能性や安定運営という観点からは、3 月末に終了する措置について、ぎりぎりまで判断を先送りすることは適当ではないでしょうから、12 月か 1 月には判断をするということが基本になるかと思っています。』

12月の時点で「続けません」という結果を出すとは思えず、もし12月に出すならば「継続します」しか出てこないと思いますし、12月に特に判断が無い場合は、1月となりますが、だからと言って1月の時点でもやっぱり継続となる可能性は多分にある(というかダラダラと継続するのが黒田日銀クオリティと諦観しているから)ので、12月に何も出ないからと言って赤飯焚いてお祝いするのは時期尚早でしょうなw


・CP社債買入だけ分離(と言っても所詮はコロナ対応でマシマシにしたぶんだけでしょうけど)は引き続きワンチャン期待

『(問) 先ほどの日銀のコロナ対応策の延長の是非についてですけれども、今日の午前中の講演の中で、コロナ対策について、資金繰りの支援と、主に大企業のCP・社債の部分での支援策の二つで成り立っていて、特に大企業の方については、CP・社債の発行環境はきわめて良好であるというご認識を示されていたと思います。』

イイヨイイヨー。

『今、おっしゃったように臨機応変に対応することが重要ということとなると、二つの主な構成要素のうち、大企業については資金調達環境が良好になっているので、必ずしも二つまとめてどうこうということではなく、それぞれ個別に色々と判断していく可能性はあるのか、今日のご講演の中でもそういった可能性が示されているのかどうか、という点についてお伺いします。』

さっきの答弁を踏まえて、という聞き方が大変に良い質問であります。

『(答) 全体として、「特別プログラム」の来年の 4 月以降の扱いについては、今ご指摘のあった点も含めて、まだ取り扱いを決めているわけではありませんので、基本的には 12 月短観なども含めて──別にそれだけではないですが、それも含めて──、今後の企業金融あるいは金融仲介機能全般の動向を丁寧に点検したうえで、適切に判断していきたいと思っています。』

講演の方でも12月短観ってありましたし、まあそれ踏まえて判断するのに短観直後のMPMでは早すぎるから、これは12月には判断を何も出さず、質問されたら今出ているデータやこれからのデータなども踏まえまして対応を検討する、という説明をするための布石を打っている、と見ました。

『本日の講演では、一種の特徴点をいくつか切り出してご説明しましたが、全体として金融環境をみると、大企業については、今ご指摘のあった通り、CP・社債市場は良好な環境ですし、貸出市場をみても、むしろ借入れは大企業については返済モードになっています。一方、中小企業については、総じてみれば改善していますが、対面型サービス業などに一部には厳しさが残っているということです。個人に目を転じると、個人事業主については中小と同様一部に厳しさは残っていますが、住宅ローン市場は安定しています。こうした金融環境全体を更に点検しながら、政策のあり方については検討していきたいと思っています。』

まあこう説明しているので、分離してCP社債の買入マシマシ分だけ元に戻す可能性に期待しながら年越しを迎えたい(12月MPMで何も出ないと思いっきり決め打ちするアタクシ)。


・買入のし過ぎで市場機能を損ねているようにしか思えんのだが・・・・・・・・・

次も(というかこの会見の政策関連質疑パート、1つだけオミクロンの影響の質問があるのだがあとは全部コロナオペ関連の質疑という盛り上がらない事夥しい会見だった訳ですが)コロナオペの質疑なのですが、

『(問) コロナ対応は、昨年来、財政と金融の協調で民間部門の資金繰りを支援し、効果を発揮してきました。岸田政権のもとで打ち出された経済対策では、企業の資金繰り支援策の延長が盛り込まれましたけれども、日銀としては、金融緩和の継続で経済を下支えしていくということがコロナ対応として重要なのでしょうか。コロナ特別プログラムが来年 4 月以降も引き続き重要な役割を果たしていくとお考えでしょうか。この点についてお聞かせください。』

雨宮さんの答え。

『(答) 政策としては両方とも重要だと思います。大きく言いますと、金融緩和については、私どもはコロナ対応だけに限定せずに、まず基本的な日本経済の改善、具体的には、2%の「物価安定の目標」ということですが、そうした物価上昇や賃金の上昇、企業活動の改善がうまく好循環になるような経済を目指して金融緩和を行っているという部分があり、この金融緩和の継続で、経済を下支えするという政策は、コロナ禍でも効果があると思います。』

物価目標全然達成してないんですが・・・・・・・・・・

『それと並び、コロナ禍での緊急対応として私どもがよく申し上げているのは、企業金融の支援措置、円貨・外貨の大量の資金供給、そして、ETF・J―REITのオペレーションで、それぞれ金融仲介機能や市場の安定を維持するという政策を行っていますので、それぞれが重要な役割を果たしていると思っています。』

どう見てもCP社債市場の価格発見機能いやもう知らんわ。


・コロナオペとマネタリーベースなのだが80兆円落ちても「一時的な増減」で済むとは何事ぞ、の件

本件は前々から指摘されている件ですが、さて雨宮さん今回はどう答える?という質疑がございまして、

『(問) 引き続きコロナ対応で恐縮ですが、コロナオペは現在残高が 80 兆円程度に膨らんでおりまして、いずれかの段階で終了した場合、期日の到来とともに、マネタリーベースの大きな減少も予想されます。マネタリーベースの拡大方針を継続するとしているオーバーシュート型コミットメントとの関係を含めて、コロナオペの残高減少が日銀の金融緩和姿勢と効果に与える影響、そしてオペ終了を議論するにあたって、こうした残高減少というのは、今後、政策対応について考慮すべき事柄なのかどうか、この点についてご見解をお願いします。』

なお、この質問をしている記者さんもそうでしょうけれども、まあこうやって80兆円落ちたらどうなるんだと申しあげているアタクシも恐らく共通しているのは「MBに大した効果が無いんでしょ」と言わせたいという所だったりするんでしょうけどね!!!!!!!!!!!!!!!!

『(答) まず、ご指摘の通り、コロナオペは大きな残高になっていますので、どこかでこれを収めるとすれば、マネタリーベースは減少する可能性はあると思います。ただし、オーバーシュート型コミットメントは、ベースマネーの残高がトレンドとして伸びていくことを想定しています。そうした考え方に基づくコミットメントとの関係がどうなるかということは議論にはなると思いますし、色々な議論が出るかもしれませんが、基本的にはこのオーバーシュート型コミットメントは、今、私どもが行っている金融緩和政策の大きな柱の一つですから、そのもとで考えていくということになろうかと思います。』

何じゃこの蒟蒻問答という感じでして、ちょっとニュアンスとして違うのは「トレンドとして増やすというオペレーションをしている(国債買入などで)ので無問題ですキリリッ」っていう言い方を直接的にしていない事でして、何を言ってるんだかよくわからんヌエのような発言をしているのは若干引っ掛からないでも無いのですが、置物残滓がいる間にMBの話を全部引き上げてしまう、というのはたぶんできないと思うんですよねー。いやまあオーバーシュート型コミットメントをしらっと外したら感心する(一方で置物残滓に呆れる)という流れになりますが・・・・・・・・・・・・・・・


#今朝はこの辺りでご勘弁賜りたく









2021/12/09

お題「クオールズ副議長講演の続き/雨宮副総裁徳島金懇ですが今回も何かサラサラと流しておられましてネタが(涙)」

間違っていたと思ったら直す、という姿勢は謝ったら死ぬ病よりはマシなんですが・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211209/k10013380671000.html
10万円給付 自治体が全額現金給付も選択できるよう調整 政府
2021年12月9日 5時00分

いやまあ謝ったら死ぬ病のどっかの中央銀行よりマシかも知らんが、そもそも論として導入しようという時にもうちょっと考えてくれと小一時間。政府なんだから毎度毎度β版をリリースしてバグフィックスはユーザーにやらせるってわけにはいかんざき。


〇クオールズ副議長の講演での危機対応オペに関する論点整理(昨日の続き)

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/quarles20211202a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/quarles20211202a.pdf
December 02, 2021
Between the Hither and the Farther Shore: Thoughts on Unfinished Business
Governor Randal K. Quarles
At the American Enterprise Institute, Washington, D.C.

・「何でもあり条項」の正しい使い方について

昨日引用した最後の部分からが実は上記の話の始まりだったりするので(汗)昨日引用した最後の部分から再掲します。

『For all these reasons, I believe we should establish a clear understanding that, should the Fed ever again use its 13(3) authority to establish credit facilities similar to those of the COVID event, Congress will without delay create a structure to transfer the ongoing funding and governance of the credit facilities into a non-Fed vehicle that will fund, manage, and eventually wind down the extraordinary credit support.26』

何でもあり条項のようなものでFEDがバンバンとやっていくのは本来イクナイ!という話が始まる訳ですが、とは言えそのような緊急避難をした場合にどうすれば良いのか、という話に関してクオールズさん、「Congress will without delay create a structure to transfer the ongoing funding and governance of the credit facilities into a non-Fed vehicle that will fund, manage, and eventually wind down the extraordinary credit support.」と恐ろしく真っ当な話をしておりますが、ここでアタクシが真っ当だと思うの「Congress」ってところでして、日銀とかワイルドカード切っても財務大臣の認可でオッケーな訳でして、買入社債CPに穴が空いたりETFで大損こいたりしたらどうしますのんという話をまあ普通に時代に先送りしながらワイルドカードを切るわ、その手の話はツッコミを受けるまで自分からは死んでもしないわ(個人の感想です)というのと比較すると、真っ当、というよりも民主的手続きとは何ぞや、というガバナンスが確りとしている国なんですよね、というのが良く分かって実にイイハナシダナー。

『Section 13(3) creates a standing power of the Fed to act rapidly and forcefully to address a crisis. 13(3) allows the nature of that response to be flexible depending on the nature of the crisis. Financial market dysfunction can be addressed through 13(3) liquidity facilities that fit comfortably within the Fed's operations and expertise, and in many cases might not require any use of Treasury equity or other Congressionally appropriated funds.』

よって、クオールズさんとしては(昨日引用してた部分にありましたが)「流動性ファシリティ」については何でも条項ぶっこんで緊急対応するのが大事だし、市場機能が危機によって壊れているのへの対応は市場と対峙しているFEDの知見によって行われるべきだし、基本的にその対応でロスは出ないはずなのでFED単独で対応可能としていますわな。

『But if the shock is one-like the COVID event-that requires real economy credit support to address its root causes, the Fed can use 13(3) to provide the same rapid and forceful response (with appropriate Treasury equity for credit protection), but we should establish the expectation that this credit support will be moved into a separate, non-Fed structure as quickly as Congress can manage.

しかしながら、「クレジットファシリティ」については(それで最終的なロスが発生する場合に財政負担になるという意味から)民主的手続きに則った議会による承認が必要で、緊急性が高いのでFEDがクレジットファシリティを導入するにしても、クレジットサポートに関しては速やかに議会の承認を取ってFEDと隔離され議会がマネージするヴィークルに移転してすべきである、という切り分けをしておりますな。

『In the same way that the 13(3) facilities developed in 2008 served as templates in 2020, greatly increasing the speed of our response, the template outlined here that we create for the future here should ideally become the default expectation of Congress, markets, and the public should the Fed ever again be called upon to provide credit facilities under section 13(3).』

今回はこのヴィークル作りがリーマンショックの時より早かったですよね、という話のようですが、以下この手のヴィークルの話を世界大恐慌の後の対応で行ったニューディールだかにおけるなんちゃら開発公社(おじいちゃん固有名詞が全然出てこなくてすいません)設立の話からおっぱじめだすから説明が長いんですよね〜。

『There are many precedents for such an approach. During the Great Depression, for example, Congress created the Reconstruction Finance Corporation (RFC) to provide emergency credit to the real economy, expressly steering clear of the problems that would naturally have been associated with using the Federal Reserve for such a purpose.27 The RFC had a limited life, separately appropriated capitalization, and separate borrowing authority in order to fund direct lending to borrowers.』

というのが世界大恐慌後の対応の話。

『More recently, during the 1990s financial and economic crisis in Sweden, Norway, and Finland, after initial stabilizing responses from their central banks, these countries established new governmental agencies outside their central banks to manage the broader, continuing support programs. Measures such as these have a number of advantages:』

90年代の北欧というと何か北欧が通貨防衛で翌日物コール金利が1000%とかとんでもない事になっていた時期でしたっけ。

でまあクレジットサポートプログラムを中央銀行とは別途作ることの意味合いとか意義とかメリットについてこのように纏められますな、というお話が続く。

『1.A separate entity can be expressly stated to be an emergency vehicle with a limited life. It can be legally required to extend credit for a short, specified period and then be wound down.

2.Providing credit support through a separate vehicle establishes a clear division between fiscal measures and monetary policy.』

とりあえずクレジットサポートをダラダラと牛の涎のように続けているどこぞの中央銀行は剃髪して仏門に入って欲しい。

『3.Lending through a separate organization allows more flexibility on the interest rate and other terms of government-sponsored credit support. While we were lucky in the COVID event, one could easily have imagined the economic crisis deepening to the point where achieving the purposes of widespread credit support would have called for lending at a market or even subsidized rate, rather than the penalty rate required for central bank lending. Doing so is a decision that should be made by Congress, rather than the Fed.』

金利その他の条件を懲罰的なものにするのかどうか、というような話を決めるのには中央銀行はそぐわんというお話ですが、懲罰的どころかバンバンと買い進めてしまっているCP社債買入というのが存在するジャパン(ちなみにリーマンっショック後に市場安定化のために入れた時は「買入下限金利が市場安定化の暁にはペナルティレートになって札が入らん金利水準」に設定されていたのでその時はその点の自制はあったんですよね・・・・・・・・・・

『4.The separate incorporation and funding of a separate vehicle would give transparency and clear boundaries to the degree of government financial support being provided to the economy.

5.Placing the inherently political decisions around the allocation of credit in a separately governed entity will keep the Fed from being fundamentally transformed by efforts to politicize the credit-granting mechanism.

6.Finally, having a separate entity will facilitate hiring the necessary people with the necessary expertise, which will likely be quite different from the expertise usually found in either the Treasury or the Federal Reserve.

 a.In particular, the types of personnel and expertise required to work out troubled loans made with government credit support are very different from the personnel and expertise widely available in either the Fed or the Treasury.』

この辺はクレジットサポートファシリティにおける権能は本来金融政策の範疇じゃないよという話をああだこうだと説明している、というとザックリ杉ですがまあそういう感じで。

『This would not be a U-turn from our decisive response to the COVID event, but rather simply the logical next step. In addition to providing clarity for the public as to what to expect in future crises, adopting this model going forward could reduce concerns a future Fed might have that a forceful response could entangle it in difficult political problems.』

別にこれは危機対応への姿勢が後退したとかそういう話じゃないですけんね、と言いつつ次回起こる危機においてはこの辺りの原則を大事にして対応して欲しいって話で締めに入ります。

『This could help give a future Fed the freedom to determine what it believes is truly the right technocratic response to a particular future shock. Adoption of such a framework would also reduce the attraction of the Fed as a general purpose funder of credit-intensive political projects-we would have established that the piper will not only always have to be paid, but paid promptly. This framework also gives an appropriate role to 13(3), consistent with the clear authority granted to us, but also consistent with what we have learned about the entanglement of central banks with fiscal policy and politics in the years since 13(3)'s enactment. We would not be ignoring the credit support authority 13(3) gives us, rather we would be anchoring it in its appropriate emergency context.』

ということで、別にクレジットサポートファシリティが要らんとかFED絶対やらんとかいう話ではないが、ロスが発生する可能性のあるクレジットファシリティに関してはロスが出た時の支出の責任問題なども考えて、議会が原則的にマネージすべきものですよ、ということで子のコーナー締まっていますが、中々の銘演説だと思うのですが、こうやってテキストに落とされると話が微に入り細に入りって感じで、天性のおしゃべり好きのアタクシもこれわwとなる講演ではございますし、この調子で(ただしこのコーナーが一番長い)他の論点についても色々話をするので、そら25ページになるわという感じでした。まあお暇な方はご覧くださいませ。



〇雨宮副総裁の金懇ですが今回も「雨宮さんが主張したいことが見えてこない」という悲しくも無覇気講演の模様です

今回の金懇は徳島。(HTML版は後日)
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko211208a.htm/
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko211208a1.pdf
【挨拶】
最近の金融経済情勢と金融政策運営
徳島県金融経済懇談会における挨拶
日本銀行副総裁 雨宮 正佳
2021年12月8日

・うーんこの覇気無し講演

何かこの前もそういう話をした気がするんですが、今回の雨宮さんの金懇挨拶も「サラサラと流してみました」という感じでして、従来雨宮さんの講演って、その内容の是非はさて置いても大体「今回はこの点について伝えよう」という意思というか覇気というか、そういうパッションが見られたんですけど(個人の感想です)なんかもう今回の金懇挨拶、とにかくサラサラと流して事勿れって印象しか受けなくて、最近の日銀っぽくてまあそういう事やぞ、という風に思いました(個人の感想です9.

・・・・・・・と書くとそこで話が終わってしまうのですが(おい)。そうも言ってられないのでしょうがないから本文をちょっとだけ鑑賞。


・まあ日銀公式の説明だからこうなるのは分かるのだが金融と財政のポリシーミックスの説明が雑なんじゃないでしょうか

『2.経済情勢』の『(中心的なシナリオ)』の途中から。

『もっとも、私ども日本銀行の中心的なシナリオとしては、来年にかけて、わが国の景気の回復傾向が次第に明確になってくると予想しています。そのように考える理由は、3点あります。』

『第1に、供給制約の影響は一時的であり、そのもとで企業部門の前向きな循環は維持されると予想されることです(図表2)。輸出や生産は、このところ弱い動きとなっていますが、これは、あくまでも、部品不足という供給サイドの問題に起因しています。』

そうなの?

『海外経済は、先進国を中心に力強い回復を続けており、企業が直面している需要自体は、デジタル関連を中心に堅調です。このため、部品の供給が再開されれば、輸出や生産は、再びしっかりと増加していくと考えるのが自然です。実際、今回のサプライチェーン障害の直接の原因となっていた東南アジアの感染状況は改善傾向にあり、現地の工場では生産再開の動きが進んでいます。』

サプライチェーンの復旧が進んでいるのは分かるが、再開されたら輸出や生産が再び確り増加していくのは需要が維持されないとそうならん気が。

『今後は、需要を満たすための挽回生産に加えて、大きく取り崩された在庫の復元に向けた動きも、先行きの生産活動を押し上げていくことが期待されます。こうしたもとで、既に感染拡大前の水準を回復している企業収益は、先行き一段と増加していくことが見込まれます。』

ほうほうそうですかそうですか。

『また、企業の設備投資も、デジタル化や脱炭素化に向けた取り組みもあって、積極化していくと考えられます。』

脱炭素下で設備投資積極化でヒャッハーって説明はあんまり使わない方が良いんじゃないかと思うんですが。脱炭素のためにトランジションが起こる中ではこれまで行われた設備投資が行われなくなる部分だってある訳で、片面だけ捉えて話をするのはちょっと。


『第2は、個人消費が、長らく続いてきた厳しい局面を脱し、ようやく持ち直しつつあることです(図表3)。ワクチン接種率が米欧を超える水準まで上昇し、感染者数も減少する中、10 月からは、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった公衆衛生上の措置が解除されています。こうしたもとで、景気ウォッチャー調査や携帯電話の位置情報など、速報性に優れたデータによれば、個人消費は、飲食や宿泊などの対面型サービスも含め、10 月以降、回復に向かっています。』

で?

『この間、雇用者所得は、正規雇用の増加や人手不足感の強い業種の賃金上昇を反映して、増加に転じています。』

ワイの(ここで床に穴が開いて吸い込まれる)。

『また、感染症下で消費活動が制約された結果として、家計部門全体でみれば、かなりの額の貯蓄が蓄積しています。こうした所得や貯蓄が、これまで抑制されてきた対面型サービス等を中心に消費支出に向かっていけば、消費関連企業の売上の増加とそこで働く人々の賃金上昇をもたらし、これがさらなる消費の増加を後押ししていく、という前向きな循環に繋がっていくと期待されます。』

なんちゅう希望的観測。一方で先日鈴木審議委員は金懇で『(将来不安による個人消費の弱さ)』という小見出しをつけて色々と説明をしておりまして、どっからどうみても鈴木さんの指摘の方がメイクセンスする訳でございますが、そらまあ上級国民の皆さんから見たら前向きな循環に繋がるのかもしれませんが、例の10万円支給ですらあのテイタラクを見て「よーしパパ将来不安も無いからコロナで控えた分バンバン消費するぞー」となるとは上級じゃない国民の不肖このアタクシなどには到底思えないのですが、まあ日銀公式がこのような能天気な見通しなので雨宮さんの説明も能天気になるという訳ですな、って見通しを議決したの雨宮さんたちですけど。

というのは前置きでして、次のが何かもう雑な「ポリシーミックス」過ぎてどう突っ込んでいいのかわからないレベルのノーガード。

『第3は、先月に策定された政府の経済対策の効果です。具体的にどの程度経済を押し上げるかについては、今後、補正予算の内容なども見極めながら精査していくことになりますが、金融政策と財政政策の相乗効果、いわゆる「ポリシーミックス」の観点から、次のようなことが言えます。』

『すなわち、日本銀行は、現在、長短金利の水準が低位で安定的に推移するよう、強力な金融緩和政策を推進しています。こうした状況において、政府が財政支出を拡大しても、基本的に金利の上昇は抑制されますので、景気の刺激効果は大きくなります。今回の経済対策についても、このような効果が働いて、景気を下支えすることが期待されます。』

・・・・・・・・・・・・・・・・いやちょっと待て何ですかその説明?????????????


・パーツパーツは正しいのだが整合性がアレというのが日銀公式にも垣間見れますよね(物価見通しの部分から)

でまあ話の方はこんな感じで何か覇気が無く流しているだけの講演なのですが、ここで『3.物価情勢』でジャパンの物価が上がりにくい理由の説明を見てみましょう。

『わが国の消費者物価の弱さの理由を探ってみると、そもそも、需要の回復が、個人消費を中心に、米欧よりも遅れていることのほか、わが国特有の構造的要因も作用していることが分かります。』

といういつもの説明ですけどね、

『まず、わが国の企業は、米国などと異なり、感染拡大時にも、雇用調整助成金等も活用しながら、正規雇用者を中心に労働力を企業内に維持し続けました。』

とあって、その後が

『このため、日本企業には、需要が回復しても、速やかに製品やサービスの供給を増やす余地が残っています。(以下割愛)』

なので供給制約による物価上昇圧力が欧米対比弱い、という話をしているのはいつもの話しなんですけど、よくよく考えてみますと、おっちゃんちょっと前の方で「こうした所得や貯蓄が、これまで抑制されてきた対面型サービス等を中心に消費支出に向かっていけば、消費関連企業の売上の増加とそこで働く人々の賃金上昇をもたらし、これがさらなる消費の増加を後押ししていく、という前向きな循環に繋がっていくと期待されます。」とバラ色の話をしておった訳ですが、ここでは「わが国の企業は、米国などと異なり、感染拡大時にも、雇用調整助成金等も活用しながら、正規雇用者を中心に労働力を企業内に維持し続けました。」ってある訳で、そういう状況からの売上増加が何でそうホイホイと賃金上昇に繋がって前向きな循環に繋がるのか、という辺りがどう見ても整合性取れないと思うのですが如何でございましょうかしら????


・CP社債とコロナオペ分離ワンチャンあるか???

サラサラと流されているので雨宮さんの講演なのに碌すっぽネタにしない(会見を期待します)のですが、最後に『4.企業を取り巻く金融環境と日本銀行の金融政策運営』の『(金融環境)』の途中から。

『こうした日本銀行の対応に加え、政府の資金繰り支援や金融機関の取り組みも相俟って、企業の資金調達環境は、全体として緩和的な状態が維持されています(図表9)。大企業の有力な資金調達手段であるCPや社債の市場では、短観のCP発行環境判断等にみられるように、発行環境はきわめて良好です。貸出市場では、銀行の貸出残高の増加ペースは鈍化していますが、これは、大企業を中心に感染拡大後に予備的に確保した借入金の返済が進んでいるためであり、企業の資金繰りの落ち着きを示す動きだと考えています。』

大企業の資金繰り環境は良好と。

『一方、中小企業を取り巻く金融環境にも、改善傾向が窺えますが、一部では、資金繰りに厳しさが残っています(図表 10)。とくに、感染症の影響を強く受ける対面型サービスの中小企業は、資金繰りの改善が遅れており、短観の資金繰り判断の指標は、全産業と異なり、なおマイナスとなっています。これは、資金繰りが「苦しい」と答える企業の割合が、「楽である」と答える企業の割合を、上回っていることを意味します。』

本来は一部の話なのでマクロ政策で対応するんけ?というのはあるが、まあ中小企業に関しては一部で良くないと。

『こうしたもとで、企業からみた金融機関の貸出態度は、大企業・中小企業向けともに積極的であり、民間金融機関は、本年3月末に無利子・無担保融資の新規申込みが終了した後も、貸出運営などを通じて、取引先企業の資金繰り支援を行っていると認識しています。』

金融機関の貸出態度が積極的であり金融環境を支えているとな。

『以上のように、企業を取り巻く金融環境は、対面型サービス業など一部の中小企業になお厳しさが残っていますが、全体としては改善しています。日本銀行の特別プログラムの期限は、来年3月末となっていますが、その後の対応については、12 月短観等を含め、企業金融の動向等を点検したうえで、適切に判断していきたいと考えています。』

ということで、12月短観を見るって言ってるんだから短観直後にいきなり結論とは行かないでしょうとなって、これはコロナ緊急対応に関しては1月会合をお待ちください(その次は3月になるからピンポイントでそこしか無いですね)という話だし、この説明だとCP社債買入の縮小(といってもどうせ緊急措置で拡大と期限延長をした分を戻す程度しかしないと思うけど、完全撤廃してくれたら日銀北門前か常盤橋公園で提灯行列して差し上げるわ)はワンチャンあるかもしれないな、と期待に腹(誤字ではない)を膨らませるアタクシなのでありました。

#時間もないのでこの辺で勘弁






2021/12/08

お題「クオールズ副議長によるFEDの今般の緊急ファシリティに関する考察というか論点というか(その1)」

これわwww
https://dot.asahi.com/dot/2021120700080.html?page=1
【独自】石原伸晃事務所がコロナ助成金約60万円を受給 「確認の上で申請」と釈明するも専門家から疑問の声
岸田政権
2021/12/07 19:00
筆者:吉崎洋夫

ここまで来るとあまりんの幹事長起用も含めて岸田さん、わざと燃やそうとしてノビテルを内閣官房参与に祭り上げたんじゃないかと深読みしてしまうレベルではございますな(なんか色んな施策をみているとそんな知力が高そうには見えないが)。

しっかしまあこのノビテル、「最後は金目でしょ」って発言はやっぱり自己紹介だったし、生活保護受給者を馬鹿にする発言をしたりしてたり、お坊ちゃまが恥知らずのまま成長すると人生楽でよろしゅおすなあ。


〇クオールズ副議長の卒論から「緊急措置」の話が大変良い話なのでご紹介

卒論とか言ってますが、こちらは本人としては今後やるべき事がこんなにあるよ、って講演になっておりまする。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/quarles20211202a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/quarles20211202a.pdf
December 02, 2021
Between the Hither and the Farther Shore: Thoughts on Unfinished Business
Governor Randal K. Quarles
At the American Enterprise Institute, Washington, D.C.

本題に入る前のマクラの部分ですがマクラの最後を拝見しますと、

『Now, as my tenure as a member of the Board comes to a close, I would like to use this final speech to discuss issues that my successor, and his or her colleagues, will confront-areas of unfinished business.3』

ということですが、クオールズさんにそのままやってもらっててよかったような気はするのですがまあシャーナイ。

『In the near term, there will need to be further refinements to the bank supervisory and regulatory framework, based on the accumulating evidence and experience of how these ideas, rules, and procedures have worked in practice.』

という話はさておき、いろいろある中で本日ネタにしようと思ったのはこの論点について説明している所でして、

『In the longer term, the Fed will at some point need to grapple with the implications of some of the novel emergency lending facilities we established during the onset of the COVID event. I supported these facilities in light of the specific challenges the country faced that grueling spring, but I believe it is possible to draw some lessons from the experience and set out some principles for the Fed's emergency lending to prevent this precedent - or some vision of what it represents-from exceeding reasonable bounds in the future.』

今般のコロナ対応でおこなった緊急措置に対する考察、というのがありまして、最初4月に言い出した時には半年の時限措置とか言いながら早くも2年間まで期間が延びておられるどこぞの中央銀行などは爪の垢を煎じて飲んでいただきたいものであります、というのをこれからサックリとネタにしようかと。

『Finally, in my capacity as the outgoing Chairman of the Financial Stability Board (FSB), I have some reflections on the upcoming agenda for the FSB.』

FSBの議長も変わるんですよねー、何かちょっとどころではなくいやーな予感がするのですが。

ちなみに、上記論点についてですが、小見出しだけ並べておきますね。

Further Refinements to the Supervisory and Regulatory Framework
Leverage Ratio Fundamentalism
Basel III Reforms
Volatility in our Stress Tests
Cross-Border Resolution and Market Fragmentation
Supervision
Digital Assets
Lessons Learned from the Emergency Lending Facilities
The Future of the Financial Stability Board

となります。ちなみに最後の『Conclusion』ですが、

『I am told that Dan Tarullo's final speech as a Fed Governor was 26 pages long, and this one is only 25-consistent with my relentless quest to improve the Fed's efficiency and simplicity. Yet even at this Mahabharatan length, I have only hit the highlights of what my successor will need to address. Fortunately, he (or she) will benefit from the same principal advantages I have had over the last four years: the intellectual horsepower, analytical rigor, and disciplined expertise of the Federal Reserve's staff. These are powerful advantages indeed, even with so complex and sustained an agenda. I wish her (or him) well.』

最初にちょっとお茶目な事を言ってますな。


・・・・でもってこの『Lessons Learned from the Emergency Lending Facilities』がいい感じの論点整理をしております。


・次の危機発生時における教訓として今回のパンデミック対応を振り返るの巻

『To this point, I have been addressing issues that the Fed will have to deal with in the near term. Let me now turn to a longer-term challenge: the implications of our emergency actions in the recent crisis.』

ということで話が始まる。

『The COVID event caused an unprecedented- indeed, unimagined-shutdown of economic activity in the United States and much of the world. The Federal Reserve responded to the COVID event with the same vigor it showed when the Great Financial Crisis threatened a worldwide Depression, employing our ample emergency power under Section 13(3) of the Federal Reserve Act to stabilize the economy and financial system. 』

コロナ危機は前回の金融危機並みにエライコッチャでございましたので、

『In this case, we reactivated forms of the lending facilities employed during the Great Financial Crisis, and then went farther to create new lending facilities to support households, businesses, and state and local government entities that, it was feared, would be frozen out of credit markets.』

FEDはその対応で色々な緊急ファシリティを作りました。

『In all, the Federal Reserve created 13 lending facilities with the statutorily required approval of the Secretary of the Treasury. I supported these actions, and still do, as the right response when faced with the specific challenges we faced in the spring of 2020.』

13種類の貸出ファシリティを作りまして、これには私も賛成しましたし、今でもそれは昨年春の状況における正しい対応だったと考えています。

『But I did at the time, and still do, have concerns about the possible precedents that have been created by the novel facilities that we created.』

とは言え、その時もそうですし今もそう思っていますが、これらのファシリティによって起こり得る懸念、というのもこれまたあったりするんですよ、ということで考察開始。


・流動性ファシリティとクレジットファシリティとな

『It starts with a distinction between liquidity facilities21 designed to bolster market functioning by providing short-term loans to financial firms when such credit is suddenly not available, and what I would call credit facilities22, which support the extension of long-term credit to the real economy-households, businesses, and governments.』

今回のFEDの緊急ファシリティを「市場機能(特に短期金融市場)が機能不全に陥った事に対応する流動性ファシリティ」と「家計、企業、政府などの個別経済主体に対する長期のクレジットを支援するクレジットファシリティ」に分けて考えることから話が始まるとのこと。

『The two different types of facilities have materially different characteristics.』

この2つは大いに違う性質がある。

『The liquidity facilities are largely "wholesale"23; the term of the funding they offer is generally quite short; operating them calls on expertise that Fed staff either have or that is quite similar to existing expertise; the risk of loss is minimal, given the nature of the facilities; and withdrawing from them is relatively straightforward, either selling the assets or letting them mature, which happens quickly given the short term and penalty rate of the funding.』

『The credit facilities, by contrast, are largely "retail"24; the end-users of the credit support are households, businesses, and governments that attract significant political interest, meaning pressure for continued expansion of credit will be great; the credit facilities involve longer-term lending; operating the credit facilities requires expertise that the Fed does not have and that is not highly analogous to existing Fed expertise; the potential for troubled loans (and thus potential loss) is material, which will also require expertise and administrative attention that the Fed is ill suited to provide; the penalty rate needed for 13(3) lending can reduce the effectiveness of the facilities (and encounter significant political opposition), given the purpose of the credit support and the nature of the beneficiaries; and withdrawing from the facilities will involve telling specific beneficiaries that their funding will not be extended (another politically fraught event).』

これ後者の方が特に論点モリモリになっていて話の途中で段落が切れんがなというような感じですけれども、物凄く割愛してしまえば流動性ファシリティはマクロかミクロか、というような感じの分け方(クオールズさんの言い方だと「ホールセール」「リテール」って表現ですね)をすればマクロだし、市場流動性対応なので短期だし、期間が短いものですが、クレジットファシリティはミクロの話で、個別の話になるからFEDが全てちゃんと内容を把握できるだけの専門性は持っていないし、期間が長期になるので、その間に貸出のロスが出るかもしれない、ということ以外に貸出金利を(流動性ファシリティも同じくですが)ペナルティ金利(バジョット・ルール的な)にするのだが期間が長期になるってことでその点も時間の経過と主に問題視されたりとか、クレジットファシリティに関しては将来に向けた潜在的な問題点が存在しますよね、といったお話ですな(かなり雑ですいません)。


・そもそも財政政策に近いことをするのが中央銀行として適切なのか問題

『Equally important, from outside the technocratic halls of the Fed there will emerge, from many directions, persistent political pressure to pursue, through the ostensibly monetary mechanism of central bank emergency lending, fiscal policy objectives that ought-as a matter of fundamental economics and fundamental governance-to be decided upon by elected representatives operating within the budgetary constraints of the appropriations process. 』

『As a prospective shortcut around those constraints, extended provision of credit to broad sections of the economy through the mechanism of 13(3) without either a required appropriation or effective limit could easily prove an impossible lure for future Congresses to resist, under the guise of one "emergency" or another: having established the precedent that the Fed can lend to businesses and municipalities for the COVID event, there will inevitably be those whose plans are grand and whose patience with democratic accountability low who will begin to ask why the Fed can't fund repairs of the country's aging infrastructure, or finance the building of a border wall, or purchase trillions of dollars of green energy bonds, or underwrite the colonization of Mars. 』

『An entity that can do that without any need for Congressional appropriations, would have the vastest political consequence and political control of it would be a great prize. It would encourage dangerous fiscal irresponsibility, and the attendant pressures would turn us from a technocratic, nonpolitical institution with a crucial but focused mandate and great autonomy in the pursuit of that mandate, into the most politically entangled organization in the country-and the damage to our core monetary policy and financial regulatory mission would be great.』

次の所もクオールズさん説明が細かいので、パラグラフの中で段落分けるのが難しくて英文が一々クッソ長くなって恐縮なのですが、この部分を物凄くざっくりと読んでしまいますと、今般の緊急措置ってのは本質的には財政措置だが、コロナの急速な拡大という非常事態なので議会で細かく討議するんじゃなくて、ざっくりとした感じでFEDに権限を与える格好になったけれども、金融政策単体では政府の行うよううな分配とか社会構築などの政策が出来ないので、それ以上踏み込みはできんですし、あくまでも技術的かつ中立的な見地での政策となりますし、今後もそうしないといけませんよね、みたいなだいぶ端折った超訳モードですがまあお時間のある方は本文を詳しく読んでちょ。


『Fortunately, there were no major problems with the COVID credit facilities. While political pressure related to the credit facilities waxed and waned, the economy recovered quickly enough that the facilities could be wound down within several months with relatively little opera. However, these good outcomes had more to do with good luck than good structure.』

ここはちょっと段落を切ってみた。コロナの緊急ファシリティで現状特段の大問題は起きていない(巨大焦げ付きとか)が、この良い結果は、ストラクチャーが良かったというよりも幸運によるものの方が大きい(However, these good outcomes had more to do with good luck than good structure.)というのは謙虚でよろしいけど、まあ勝利者の余裕ってのもありますわな。

『While the economy and financial system were under intense stress for several months in spring of 2020, the reopening of the economy and rapid recovery that began in May of that year was a major reason that material losses, political pressures, and operational problems were avoided. To cite one example, the crisis in the municipal bond market, which seemed possible that spring, never materialized.25』

経済再開が早めにおっぱじまった事が今回色々なロスが出なかった要因ですよね、とゆうとる訳で、リスク性資産を無警戒ノーズロモードでせっせと購入しまくるどっかの中央銀行は爪の(以下同文)。

『We cannot undo the precedent we have established (nor should we-if we face a similar challenge in the future, the Fed should respond forcefully), but in breaching the long unbreachable firewall of offering direct lending to non-financial businesses, both large and small-as well as a wide range of state and municipal governments-we face a fundamental problem: the extension of funds to these borrowers, and management of these loans, inherently involve the allocation of credit, which is both a fiscal and a political action that is being made primarily by an unelected body.』

クレジットアロケーションに選挙などの民主的なプロセスで選出されていないワシら中央銀行が関わるという件についての問題点について再度述べていますな。

『For all these reasons, I believe we should establish a clear understanding that, should the Fed ever again use its 13(3) authority to establish credit facilities similar to those of the COVID event, Congress will without delay create a structure to transfer the ongoing funding and governance of the credit facilities into a non-Fed vehicle that will fund, manage, and eventually wind down the extraordinary credit support.26』

ということで、FEDが再度今回のようなファシリティを実行するような事があったとして、議会は遅滞なくクレジットファシリティの部分に関しては、FEDではないビークルを議会で決めて、そこに税金投入して引き継ぐべきであり、FEDはそれによって特例のクレジットサポートから手を引くようにすべきである、と仰せでして、どこぞの中央(以下同文)。


・しまった時間がなくなったけどこの思想自体は日本のコロナ対応オペの今後の扱いにも示唆が無い訳ではない

ということで話はお分かりのようにまだ全然終わっていないのですが、このFEDの緊急ファシリティ投下に関しては、本来このような考え方で突っ込むべき、というお話が以下まだまだ続くのですが、時間配分を完全にヘクってしまって、この先も結構あるのですが、本日はこれで勘弁してつかあさい(続きは明日)。


でですな、最後に蛇足になりそうですが申し上げますと、先般鈴木審議委員の金懇でコロナオペの今後について「CP社債市場は市場機能を十分に回復しているが中小企業の資金繰りは厳しい所もある」という形で分けた説明がありましたが、このクオールズ方式を応用すれば、CP社債買入っていうのは個別クレジットに直接日銀が買入という形でアロケーションしていくものですが、コロナ対応貸出等支援のバックファイナンス、というコロナオペに関して言えば、これは担保付で銀行向けに貸出をしているものであり、もちろんセクターとしてコロナ対応、というのに絞っているからその面でアロケーションに介入しているのはしているのですが、そうは言いましてもこちらの場合はクレジットアロケーションを行っているのはオペ先の金融機関でありますので、その点から言えば長期化することによる弊害はCP社債直接買入の方が大きい(特に短期で償還になるCPはまだしも社債なんて残存5年まで買ってるんですからね)ということになるので、分離して買入の方だけは縮小、という理屈は大ありでしょ、と思いますし良いからCP社債買入減らせというか何だったらゼロにしてくれやという感じではありますな(どうみても最後はポジトーですがあっはっは)。

んな訳でこの辺で続きは明日ちゅうことで(滝汗)。









2021/12/07

お題「ブラード先生のドヤ顔が見えそうなFOMC前の講演メモ/黒ちゃんの気候変動云々の話しだが何ちゅうか暢気でよろしゅおすなあ」

ほうほうそうですかそうですか。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2SR3NT
2021年12月7日4:26 午前
欧州株式市場=反発、オミクロン株感染でも軽症の期待感で

結局何がどうなっているのかがさっぱりワカランチ会長ではあります(滝汗)

最近というか初期コロナ相場一段落以降というかですけど、債券屋さんのアタクシが言うのも何ですが、過去のメリケン様は株よりも債券の方が冷静というかもっと言っちゃえば理知的に動いているというイメージが流布されておった気がするのですが、最近のメリケン金融市場ってはっきし言って債券の方が雰囲気で振りまくる馬鹿相場の連発してるようにしか見えず、訳分らなくなるととりあえず株式市場の反応を見るのでした(個人の偏見です)。

〇ブラードおじさん楽しそうだなおい(たぶんブラックアウト前の最後くらいですよね)

まあ変態仮面ブラード先生の話自体は「ブラード総裁が」の時点で皆まで言わなくても話しはお分かりなので何を今さら祐天寺という感じでしょうが、今回は何か「ほーら俺様の言ったとおりジャン」という雰囲気が紙芝居から垣間見えたので記念備忘メモですけど、「複数均衡論」に続く大ヒットになりやがって、まあこのおじさんネタになって面白いから嫌いじゃあないんですが、久々のブラード大勝利かよというのはちょっとムカツク面もなくは無い(^^)。


https://www.stlouisfed.org/news-releases/2021/12/03/bullard-discusses-the-inflation-shock-of-2021
St. Louis Fed’s Bullard Discusses “The Inflation Shock of 2021”
December 03, 2021

題名の設定の仕方に既に俺様大勝利感を漂わせておる。

紙芝居はこちら。(ハイパーリンクは文字列の途中までだがちゃんとリンクしている筈)
https://www.stlouisfed.org/-/media/project/frbstl/stlouisfed/files/pdfs/bullard/remarks/2021/bullard_mba_clayton_03_december_2021.pdf
The Inflation Shock of 2021
James Bullard
President and CEO
2021 Executive Management Conference
Missouri Bankers Association
Dec. 3, 2021
Clayton, Mo.

まずはHTMLのサマリーページちゃんの方から。

『CLAYTON, Mo. - Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard presented “The Inflation Shock of 2021” at a meeting of the Missouri Bankers Association on Friday.』

俺様大勝利ですかそうですか。

『Bullard told the association that there has been an unexpected inflation shock in the U.S. during 2021, and that U.S. monetary policy has so far remained very accommodative. He added that asset price inflation has been substantial as well.』

アセットプライスインフレーションの話、ようやくここもとFED高官からホイホイと出てくるようになりましたが、財政ばらまいた挙句にアセットプライスが上がるとよーしパパホームエクイティの余力が上がったからレクサス買っちゃうぞーと言い出すのがメリケンクオリティだからそらオミクロンごときで需要は落ちんわな、というお話なのであって、何やっても株が上がり住宅価格があがっちゃう状態なのは既にこの時点で米国金融政策は敗北しているという感じがせんでもない(個人の妄想です)。

『He said that U.S. real gross domestic product (GDP) has fully recovered and that labor markets are quite strong and likely to get stronger. He also noted that pandemic risk remains.』

となっているのですが、紙芝居の方を見るとパンデミックのリスクがリメインしている件はほぼ付け足し。

『“These considerations suggest, on balance, that the Federal Open Market Committee (FOMC) should remove monetary policy accommodation,” he said.』

というのが前置きでして、説明の方は最初の小見出しが『An Inflation Shock in 2021』と来やがりまして、

『Bullard explained that the inflation forecast in the December 2020 Summary of Economic Projections indicated that the median FOMC participant thought 2021 inflation would be 1.8% for both core and headline PCE inflation, which is below the FOMC’s 2% target. Measured from a year ago, headline PCE inflation is currently over 5% and core PCE inflation is over 4%-well in excess of the 2% target, he said. Furthermore, this is the highest inflation in 30 years for both measures, he added.』

物価上昇は予想外、とさすがに仰せですが(^^)。

『“Monetary policy has remained accommodative even in the face of the inflation shock. The recession ended about 19 months ago, but the FOMC’s policy settings are still largely the same as when the recession began,” he said. In particular, the Fed’s balance sheet is still growing, and the policy rate remains near zero, he pointed out.』

プレゼンの方の11枚目に『Monetary policy stance』ってのがあって、まあ見てちょという感じなのですが、政策金利とFEDのバランスシートに関して、パンデミック前の水準から方や0に下がって方や盛大に拡大、というビジュアルが分かりやすい図表をだしているのがお茶目で、既に1年以上前にリセッション終わってるのに、未だにバランスシート拡大継続中(テーパリングってバランスシート縮小じゃないですからねえ)というのは怪しからんと仰せ。


次の小見出しが『U.S. Real GDP Has Fully Recovered』ときたもんで、

『“Monetary policy this accommodative might be justified if the real economy had not yet recovered,” Bullard said. “However, real GDP has already passed the pre-pandemic peak and is slated to move considerably higher. In addition, many labor market measures indicate very tight labor market conditions.”』

ということで、経済はnot yet recoveredではないとの仰せで、上記と同じことがプレゼンの13枚目に箇条書きになった後、次の14枚目のスライドですけど、

『U.S. GDP poised to grow at an above-trend rate
・ Business cycles have a clear traditional definition. Periods of declining output are called “recessions.”
・ Periods of increasing output following a recession are called “recoveries” until the previous peak is attained.
・ Periods beyond the previous peak are called “expansions.”
・ The U.S. is currently in the expansion phase of the business cycle: National income is higher than it was at the previous peak and is poised to grow at an above-trend rate.』(この部分は上記PDFのスライド14枚目から引用)

ってのを並べています(その後に各種データをこれでもかと並べています。

『Bullard noted that the U.S. is currently in the expansion phase of the business cycle. “National income is higher than it was at the previous peak and is poised to grow at an above-trend rate,” he said.』

説明文の方にはこういう書き方になっているのですが、実際にこの辺りの部分に該当する紙芝居を見ると「ほうほうなるほどそうだな」と思わせるチョイスになっている訳で、ブラード先生の場合この手の講演紙芝居ネタは毎度使いまわしながらアップデートしている、という意味で日々ブラッシュアップしている、というのはあるにせよ、どっかの誰かさんも講演で図表出すならちゃんと練ったもの出してくれと思うのでした。ああちなみにブラード先生、真面目にカウントしてないけどこのオッサン多分FED高官の中で突出した紙芝居おじさんだと思います。


でもって次が『The FOMC’s New Monetary Policy Framework』つー小見出しで、

『Turning to the new monetary policy framework, Bullard said a key aspect of it is the desire of the FOMC to allow inflation to run above the 2% target for some time to make up for past misses of the inflation target to the low side.』

とあるこの部分、紙芝居だと20枚目になるのですけれども、

『The new monetary policy framework
・ The FOMC’s new policy framework was announced in Chair Powell’s Jackson Hole speech in August 2020.
・ A key aspect of the new framework is the desire of the FOMC to allow inflation to run above the 2% target for some time to make up for past misses of the inflation target to the low side.
・ It now appears that the FOMC will be able to achieve this result with an appropriate monetary policy over the next several years.』(この部分は上記PDFのスライド20枚目から引用)

ってありまして、21枚目の紙芝居が『Average inflation targeting』ってなってまして、何故か知らんが2016年からの年別コアPCEインフレ率をだしています。でもってそこを見ると、
2017-2021 average: 2.1%
2018-2022 average: 2.2%
2019-2023 average: 2.3%
というお茶目な凡例があって(2022と2023はSEPの物価見通しベースを使っておるな)ほらもう5年間平均でも2%じゃないですかアベレージ目標すら達成ですよ、と使えるものは何でも使うブラード先生の本領発揮ワロタです。ちなみに「The new monetary policy framework」のコーナーで出て来る図表はこの1枚しか無かったりするんですけどね。

説明文に戻りますと、

『“It now appears that the FOMC will be able to achieve this result with an appropriate monetary policy over the next several years,” he said.』

ということだぞ、だそうです。


次の小見出しが『Pandemic Risk Remains』でして、

『In discussing the pandemic risk, Bullard noted the arrival of the COVID-19 omicron variant.

“It is too soon to provide a meaningful assessment of the impact on the public health situation or on the economy in the U.S.,” he said.』

とは書いてあるものの、紙芝居ちゃんの方を見ますと紙芝居の24枚目に『Confirmed COVID-19 cases』というのがあって、オミクロン株のケースが増えてきたとは書いてあるものの、EUでは新たに発見された患者数が増えているけど米国はそんな訳でもない、という図表を出してあっさり味に仕立て上げていますので、まああんまり大ごとだとは思ってないな。

本文最後の小見出しは『Implications for Current Monetary Policy』でして、

『Bullard pointed out that U.S. inflation has “surprised substantially to the upside” during 2021, in an environment where measures of real economic activity are “generally robust.” Monetary policy settings, however, largely remain as set during the recession, when inflation was below target and measures of real activity were very weak, he said.』

まあこういわれてしまうと仰せ御尤もという感じになりますが、米国経済は物価が物凄い勢いでアップサイドに擦れて実体経済の活動も基本的にロバストだというのに、金融政策はリセッションの時の状態のまま、という状況になっているので、

『“These considerations suggest that the FOMC at upcoming meetings may want to consider removing accommodation at a faster pace,” he said.』

と纏められると、まあ仰せ御尤も以外の返しが出来ないのでして、今回はおっちゃん次回のFOMCに向けてテーパー加速大勝利宣言をしたって感じではないでしょうかねえと思いますし、そらまあオミクロンがどうのこうのあるにせよ、初期コロナショックみたいな事が起きないと見られる以上は、そらコロナ対応で馬鹿みたいに緩和したのは畳まないといけませんね、って話をされますと仰せ御尤もすぎるし、こうなると足元のオミクロンで一々上がったり下がったり毎日ラリラリモードになっている特に米債市場ちゃん(実際は多くのまともな人たちは感謝祭で閉店してその後の再開をどうしようか見てたると、通りの方では一部のやられポンチの人たちが最後にヤケになって集団タコ踊りをしているのでこんなのに巻き込まれたらアホラシカと開店を遅らせているから集団タコ踊りだけが目立っているのかもしれませんけど・・・・・・)まあ落ち着けというか、ごくごく普通にテーパリング加速というのが出て来るとしか思えんのですけどね(個人の感想ですが)。


〇そういや黒ちゃんが気候変動と金融の話をしていたのでこれまたクリップメモメモ

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko211129a.htm/
【挨拶】
気候変動問題における金融の役割 〜3つの不可欠な要素〜
パリ・ユーロプラス主催「東京・インターナショナル・ファイナンシャル・フォーラム 2021」における挨拶の邦訳

またこの会合か。

最初はどうでもよいので『2.気候変動問題に対する意識の高まり』から。

『気候変動問題は、日々の生活にも大きな影響を与えるようになっており、人びとの問題意識も高まっています。地球規模での気温上昇のほか、大規模な自然災害の深刻さや発生頻度が増しています。気候変動は長期にわたって社会や経済活動に広範な影響を及ぼします。しかしながら、個々の企業や家計が経済活動を行う際に、それらが排出する温室効果ガスが気候変動にもたらす影響が十分には考慮されていない結果、社会・経済全体として過大な量の温室効果ガスが排出されています。』

んだんだ。

まあそう言ってる黒ちゃんは社会的にまったく意味がないマイナス金利の押し付け合いという事の為に多くの人員がそこに張り付いて何かしている、という負の外部性みたいな市場を率先して作りましたけどね!

『気候変動問題に対応するためには、こうした「負の外部性」を克服すべく、グローバルな対応を長期にわたって継続して行っていくことが求められます。また、科学技術・研究、エネルギー政策、各種規制、カーボンプライシングなど多面的なアプローチが必要です。日本では、昨年秋、政府が2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言し、目標達成に向けた様々な検討が進められています。こうしたネットゼロ(二酸化炭素排出量の実質ゼロ化)の実現を目指す動きを持続させていかなければなりません。』

というのは分かるんだが、その次の小見出しに来ると・・・・・・・・・

『3.金融に期待される役割』って小見出しなんですが、

『こうした中で、金融セクターには、気候変動問題への対応において大きな役割が期待されています。サステナブル・ファイナンスの実現と促進です。そのためには、(1)気候変動に伴うリスクに対する金融システムの頑健性強化、(2)ネットゼロへの円滑な移行を支援するための金融資源の動員、(3)ディスクロージャーの拡充による市場機能の活用、の3つの要素が不可欠であると考えています。』

というのがあって、お話自体はありきたりなんですが「ネットゼロへの円滑な移行」の部分を読むと、いやあのすいません日銀さんちゃんと真面目に考えてるのかと小一時間問い詰めたくなるのよ。その部分引用すると・・・・・・

『(2)ネットゼロへの円滑な移行を支援するための金融資源の動員

次に2点目は、ネットゼロに向けた円滑な移行を支援するための金融資源の動員です。今後、中長期にわたって地球規模で脱炭素化の動きが大きく進んでいくと予想されます。そうした取り組みには社会全体で莫大な規模の資金が必要となります。たとえば、直近の国際エネルギー機関(IEA)の報告書によれば、2050年までにネットゼロを実現するためには、2030年まで世界全体で年間約4兆米ドルの投資が必要とされています2。これらを支えるためには、金融仲介機能が円滑に発揮されることが不可欠です。金融セクターは、自身が有する専門性や創意工夫によって、企業の脱炭素化の取り組みをバックアップしていかなければなりません。』

はあそうですか。

『実際の資金調達・供給にあたっては、各地域の市場構造に応じて、最適な方法を組み合わせていくことが重要です。たとえば、日本においては、グリーンボンドの発行額・件数は増えてきているものの、海外と比較すると規模・件数ともに小幅にとどまっています。そのため、金融資本市場を通じた資金供給に加えて、日本のような銀行中心型の金融システムにおいては、銀行を通じた気候関連投融資の促進が重要となります。銀行が自らの専門的知見を活かして、企業の脱炭素化に向けた取り組みを支援していくことが期待されます。これは欧州にもあてはまる点ではないかと思います。』

という話をしていまして、

『また、こうした背景から、日本銀行では、先般導入した「気候変動対応オペ」において、グリーンボンドを直接購入するのではなく、金融機関が自らの判断に基づき取り組む気候変動対応の投融資をバックファイナンスすることとしました。日本の市場構造を踏まえると、最も効果的な方法であると考えています。』

と来まして、

『加えて、産業構造によっても最適な資金支援のあり方は異なります。気候変動問題への対応は喫緊の課題ではあるものの、脱炭素化の取り組みには相応の時間がかかります。経済全体の脱炭素化を進めるうえでは、ただちに脱炭素化を実現することが難しい産業・業種に対して、それらの構造的な変化を安定的に支援していく取り組みも重要です。』

と最後にやっと書いてあるんですが、この「それらの構造的な変化を安定的に支援していく取り組みも重要です」とか暢気に言ってる部分ってそれこそ昭和の時代のエネルギー革命のときに三井三池を始めとして石炭産業での労働争議とか大変なものがあった訳じゃないですが、黒ちゃんのご年代なら同時代に見てたと思う(アタクシ位の年代でもさすがにこの時代の話は知識としてしか持ってない)訳で、経済があれだけ成長していた時ですら産業構造の転換って無茶苦茶大変で、そういうのは金融に求める役割とかじゃなくて、政府が主体となってやらにゃアカン話だし、それどころか既に原油価格が高騰したから産油国ちゃん生産増やしてよと言ったって「今後使うなと言ってるお前らの為に何で頑張って生産増強しないと行けないんだよ馬鹿」という話になっております次第で、トランジションの問題で政府というか国際的な仕組みも含めて色々とやれやと思うのですが、何ちゅうかこの暢気な説明は何なの(個人の悪態です)。


ということで、その暢気さはまとめにもありまして、

『4.むすび

最後になりましたが、気候変動問題への対応はコストや経済成長の制約と捉えるべきではありません。脱炭素化はイノベーションを誘発し、新たな産業や雇用を創出する大きな可能性を秘めています。気候変動問題に立ち向かっていくためには、社会を構成するすべての主体が、地球を救うために必要な責任ある行動を取っていくことが何より不可欠です。』

いや現実問題としてグリーントランジションの影響で化石燃料の生産増強とかの投資が進まなくなると現有燃料のコストが高止まりするんだし、産業構造転換って個別レベルになると大袈裟ではなく生きるの死ぬのの世界になるんだから、仮にも広義の政府部門の人間がプラスの側面の話しだけ暢気にしてる場合じゃないだろ・・・・・・・

『日本銀行としても、本日述べたような3つの要素を踏まえつつ、金融機関や市場参加者とともにネットゼロに向けた取り組みを強力にサポートしていきたいと考えています。

ご清聴ありがとうございました。』

はっきり言って何とかオペとかどうでもよい(そもそも新たな有望な投融資機会が出来るんだったら別に日銀のオペとか無くても民間は勝手に投融資をするんであって、日銀がああだこうだ言い出すのが邪魔)。

ということで、まあ何ちゅうか日銀はんは楽しそうでよろしゅおすなあ(はんなり)という感想でございました。









2021/12/06

お題「引き続き安達さんと鈴木さんの金懇ネタ/その他メモ」

先日のアレ、別に大谷さんでも良いんですけど・・・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211201/k10013369551000.html
新語・流行語大賞 年間大賞は「リアル二刀流/ショータイム」
2021年12月1日 17時03分

いやそのショータイムってのはワシNPB脳なので中田翔さんのイメージしか無いんですけど、これ単独でショータイムって言われたら田代祭りか川崎祭り(何のことか知らない若人はレッツ検索)でも起きたかと勘違いするのは極度のNPB脳になっておりますアタクシだけですかそうですかサーセン。


〇ただの前置き雑談だが長くなりすぎたので小見出しをつけた

・クオールズさんの卒業講演(後日読むと思う)

クオールズ副議長が副議長最後の講演ということでフェアウェル講演してますにゃ。
https://www.federalreserve.gov/

Departing thoughts by Governor Quarles
Speech - 12/2/2021

FEDのトップページ見たら上記のようなお題だから軽く読もうかと思ったら
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/quarles20211202a.htm
December 02, 2021
Between the Hither and the Farther Shore: Thoughts on Unfinished Business
Governor Randal K. Quarles
At the American Enterprise Institute, Washington, D.C.

物凄い勢いの卒業論文になっていてクッソ長いのでFOMC前にネタ切れた時のためのストックじゃな(別に慌てて読まないと行けないテーマではないがプルーデンス関連の論点について一つ一つネタにしてああだこうだと話しているような気がしますねん)。


・日銀のサイトは古いブラウザーで読めなくなりますだそうな

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211201b.htm/
日本銀行ウェブサイトの「TLS1.0/TLS1.1」による暗号化通信の無効化について
2021年12月1日
日本銀行

『日本銀行ウェブサイトは、セキュリティ強化のため、2022年2月25日から、「TLS1.0/TLS1.1」による暗号化通信を無効化する予定です(注)。「TLS1.2」については、これまで通り利用可能です。

これにより、「TLS1.2」に対応できていないブラウザや、「TLS1.2」を有効に設定していない端末等からは、日本銀行ウェブサイトを閲覧できなくなります。』

だそうです。


・そういえば月末月初のドサクサに紛れて(紛れた訳でも無いのでしょうが)日銀レビューシリーズでESGキタコレ

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2021/rev21j13.htm/
ESG投資の発展に向けた実務的な課題とその克服に向けた取り組み
2021年11月30日
金融市場局 森駿介、長谷部光*、石川篤史
*現・金融機構局

ご紹介ページの方の『要旨』を見る。

『近年、環境・社会・ガバナンスといった要素を投資判断に組み込むESG投資がグローバルに拡大している。わが国においてもESG投資残高は増加しているが、まだ発展の途上にある。市場参加者からの指摘をもとに、わが国におけるESG投資の発展に向けた実務的な課題を整理すると、(1)企業のESG情報開示の拡充、(2)ESG評価に関する透明性向上、(3)ESG投資における投資目線の確立、の3つにまとめることができる。本稿では、3つの課題の現状と、課題克服に向けた最近の取り組みを紹介する。』

ということで本文があるのだが、

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2021/data/rev21j13.pdf
ESG 投資の発展に向けた実務的な課題とその克服に向けた取り組み

うーんまあ良いんですけどどっかのESG何とかストのレポートみたいな話なので、まあ良くも悪くもこれは社内の御進講用には使い勝手が良さそうな日銀レビューですな、という感想しか起きなかった、というと何かボロカス言ってるみたいで申し訳ないのですが、そもそも本件に関して中央銀行が価値判断を示すのはどうなのか、ってのは昔も今も思っている(別にESGが良い悪いの話ではなくて中央銀行の矩という話)し、これも価値判断を回避しているからただのご紹介レポートになっているんでしょうな、シャーナイ。

まあそれはそれとしまして、大体からしてこういう研究してる暇があるんだったら何で物価2%目標が行かないのか、というのを今の政策を是とした屁理屈大建築ではなく、事実を直視してスクラッチで研究して頂く方が気候変動対応でどうのこうのよりもよっぽど金融安定化にも資する訳で、物価安定目標が達成できていないのにダラダラと屁理屈つけてマイナス金利政策とYCCを牛の涎の如く垂れ流している時点で日銀は何をやってもポンコツのカスダニなので頼むからそっちの研究して下さい優秀な頭脳使って。



〇やっぱり虫の居所が悪いので安達審議委員の大分金懇ネタ続き

安達審議委員大分金懇
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko211201a.htm/
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko211201a1.pdf

HTML版が出てきたのでHTML版の方から引用します。

・為替市場の円安の悪影響に関する話をしているのだが論拠が案の定ペラペラ

『(3)為替相場の物価等への影響』って小見出しがありまして、

『このところ、為替相場の物価等への影響がメディア等で話題になっているため、その点についてお話したいと思います。』

というのがあるので読んで差し上げる。

『最近、円安の動きがわが国のインフレ率上昇に繋がることに関して、「悪い円安によるスタグフレーション」のリスクを指摘する声や、その流れを止めるために日本銀行は早急に金融政策の修正を図るべきであるとする声がメディア等で聞かれます。』

「早急に金融政策の習性を図るべき」という表現に悪意を感じますね。

『スタグフレーションの定義は、論者によってまちまちではありますが、一般には、持続的なインフレ率の上昇と、景気の悪化が同時進行する現象を指すと思われます。』

ほうほう。

『10月28日に公表した日本銀行の展望レポート(「経済・物価情勢の展望2021年10月」)における、景気とインフレ率の見通しの中央値を確認すると、実質GDPは、2021年度が前年度比+3.4%、2022年度が同+2.9%、2023年度が同+1.3%、また、消費者物価指数(除く生鮮食品)は、2021年度が前年度比0.0%、2022年度が同+0.9%、2023年度が+1.0%となっており、現状も今後も、スタグフレーションとは程遠いと考えています。』

それはただのお前らの見通しの話でファクトベースの話しじゃないんですけど。

『これは、例えば、第1次オイルショック時に実質GDPがマイナス成長となり、消費者物価が前年比20%を超える上昇率を示したような状況とは全く異なります。』

これはただの高インフレじゃろ、スタグフだったら第2次オイルショックの方が適切な気がするんだがまあそれは良いとしまして次に行く。

『為替相場の水準について具体的にコメントすることは差し控えますが、一般論としては、円安がわが国経済に与える影響は、様々な要素の相互作用の結果として決まり、その時々の内外の経済物価情勢によって変化し得ると言えると思われます。そう申し上げたうえで、私自身は、このところの為替相場の動きが、例えば、スタグフレーションに繋がるような「悪い円安」の状態にある、とは考えていません。』

おんどれが考えていないのは分かったんだがその根拠がおめえらがお手盛りで出していて、しかも特に物価見通し全然当たっていない展望レポートってのは何なんでしょうか、せめてファクトベースで輸入品の最近の価格動向とかそういう話をしてくれませんかねえ。

『むしろ、このところの円安は、日本企業の海外子会社の収益の増加や輸出企業の収益への寄与を通じて、企業の設備投資を下支えしたり、海外企業による日本での工場建設等の「企業立地」の検討を後押ししたり、わが国にとってプラスをもたらしている面があると思います。』

先日ネタにしたように、最初の部分でも「企業の設備投資スタンスの積極化に裏打ちされる成長見通しの改善」について言及していたので、お前は何を言ってるんだという気はするけれども、まあ前半の方で話をしていることと話が繋がっているのでこれは一つの意見ですが、輸入物価が今後どうなるとか資源エネ価格がどうなるとかそっちのコストプッシュの話は「ぼくたちのかんがえるしょうひしゃぶっかしすうのさきゆきみとおし」だけが根拠とは情けない。


・「金利平価説」とか日銀の政策委員が堂々と口に出すなよ

でもってその次。

『なお、円相場は、中長期的なタイムスパンでみると、比較的狭いレンジ内で推移しているとみています(図表11)。』

という所なんだが、

『「金利平価説」的な考え方でみると、市場において、わが国と米欧の間の金利差が大きく拡大するとみられておらず、そのもとで円相場が比較的狭いレンジで推移している状態にあるとも言えると思います。』

ちょwwwそこらのヘッポコ何とかストかよって感じなのですが、インフレ国の方が金利が高くて、価格平価的に考えたらインフレ国の方が通貨安になる、ってかそもそもお前ら日銀が円高放置してたからデフレが止まらんとか言ってた話しはどこ行ったって問題で、現在って資本取引を背景にした通貨取引の方が貿易為替よりも格段にデカいから、平時の短期的にはキャリートレードの方が大きくて、んでもって見かけ的に金利先高観が出るとその通貨が上がる、とかそういう現象が起きているってだけの話で、中長期的に見た時に金利平価とかナンジャソラの世界なので、民間ヘッポコ何とかストが言うのなら兎も角、中央銀行のお方が「金利平価説」とか言わないで欲しい。

いやこんなの「市場において〜金利差が大きく拡大するとみられておらず、そのためにキャリートレードのような資本取引をドライブとした為替トレンドが起きにくくなっている事が為替市場の安定に繋がっていると思います」みたいな感じで、そんなヘナチョコ用語使わんでも説明できるじゃろ、と思うんですけどねえ。

『日本銀行を含む多くの中央銀行は、為替相場の水準を金融政策の目標とせず、あくまでも2%の物価安定の目標に向けて金融政策運営を行っていますが、主要先進国がともに2%の物価安定の目標を目指していることは、為替相場を安定させている一因になっているとも考えられます。』

ってこの説明も、消費者物価指数の実績値がここまで違ってきてしまうといつまでも言えるかどうかは分からんので、何とかの一つ覚えのようにこれを連呼するのもどうかと思いました。


・コロナオペの延長に関してのご説明だがそもそも論の方がアレ

『3.金融政策』のパートに参る。最初はどうでもよいので飛ばして、

『コロナオペの来年4月以降の取り扱いについては、今後、日本銀行において、新型コロナウイルス感染症の動向や、それが企業金融面に及ぼす影響等を丹念に点検しながら、検討していくことになります。』

『そう申し上げたうえで、私自身が感染症への政策対応として意識すべきと考えている論点についてお話させて頂きます。』

『まずは、当面、感染症の影響を注視し、必要があれば、企業による事業の継続を支援する観点から、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる姿勢にあることを指摘しておきたいと思います。今後、もし、感染が再拡大し、公衆衛生上の措置を再び取らざるを得ない状況になった場合等には、企業の資金繰りを支える必要が生じる可能性があります。コロナオペのあり方は、感染症の動向に依存するところが大きく、その動向や企業金融面への影響を見極める必要があります。』

そらそうなんだが、マクロ的にそれ必要なの??って話は無いんですよね。大体からしてこれ「企業の資金繰り支援」って言ってるんですが、実際には金融機関向け貸し出しに対してのオペであって、別に資金繰り困難企業のケツ持ちをする訳ではないですし、そういうのはケツ持ちをする公的金融やら制度融資やらの方でカバーできる問題ではないかと思うんですけどね、まあいいですけど。

『一方で、コロナ禍の前から収益性が低く、将来的に債務返済が滞るリスクが高かった企業が延命しているのではないか、といういわゆる「ゾンビ企業論」の意見が、識者の間にあることも承知しております。仮にそれが現実に起きてしまうと、産業の新陳代謝、及び、新規開業などが阻害され、特に地域経済において、経済活性化の妨げになることが懸念されています。』

何で「特に地域経済において」なのかの理由がさっぱり分かりませんが、それよりも何よりも「懸念されています」じゃ無くてそういう問題が起きてるから潜在成長率は下がりっぱなしだし、物価目標は全然達成しないし、なのではないかと思うのですが、そういう考察は無いんですね。

『コロナ禍入り後の2020年以降の企業の倒産件数について、歴史的な低水準で推移していることは良いことと言えると思いますが、あわせて、成長が期待できる分野において新しい企業が誕生することも意義のあることと考えます。さらに、金融システムの観点からは、コロナ禍に累積した企業債務が、将来、不良債権となって、金融システムのリスクとして顕在化しないかといった視点も意識する必要があるように思います。この点は、地域金融機関の経営上も重要な論点であり、与信先企業の健全性の見極めにあたっては、特に、地域に密着した営業基盤を有する地域金融機関の役割が大切なように思います。低採算企業の再生がテーマになる場合は、企業再生ファンド等の民間資金の役割も重要と思われます。』

何かフワッとした事しかお話してませんよねーと思うのですが、これを鈴木審議委員の金懇テキストと比較すると良く分かると思いますので続いて鈴木審議委員(金曜は時間がマジでなかったので単にベタ貼りばっかで恐縮至極でございました)の金懇ネタの続きに参ります。



〇鈴木審議委員の金懇と比較してみる企画(再掲)と会見要旨を拝読の巻

実際問題としては金懇が2日連続とか中1日置いて九州と西日本(だったかな?)などのような金懇会見まで乗り込んで質問ぶっこむ某記者さんや某記者さん泣かせの日程ってのも何回かあったのですが、オンラインになってその辺の物理的移動制約が無くなったので大分と神戸とか割と移動が七面倒な日程も余裕のよっちゃんイカソーメンなので、別にそういうイヤガラセを考えたのかどうかは存じませんが、どうもアタクシには日銀の事務方様が安達さんと鈴木さんを比較しろと言ってる気がするので比較するのでありまする。

鈴木審議委員兵庫金懇(HTML版はまだです)
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko211202a1.pdf

・再掲ですがさっきの安達さんの部分と比較すると問題意識の深さがだいぶ違いますな。

金曜日に時間が無くて無理くりベタ張りしたものの再掲になりますが、『4.「物価安定の目標」の実現に向けて』の『(賃金上昇に向けて)』という所になります。金曜にもベタ貼りしましたので再掲恐縮ですが。

『こうした状況から賃金を高めていくうえでは、企業が成長分野の事業に資源を機動的に振り向けていくとともに、労働者が必要な再教育も受けつつ、より付加価値の高い仕事を求めて企業内あるいは企業間を柔軟に移動できるようになっていくことが必要です。』

まあリカレント教育で柔軟な移動、とかいうワードを見ると昭和40年代かつ1960年代生まれという設定になっている中の人としては首筋が寒い方ばっかり(以下の文言は内務省検閲により削除されました)。

『この点、感染症の影響により、そうした経済構造の変革が遅れることとなった可能性には、留意が必要です。』

ということで、

『経済活動が大きく下押しされているもとでは、政府や日本銀行が、企業の存続と雇用の維持のために積極的な政策対応を取ったことで、企業倒産数や失業率の上昇は限定的なものにとどまっています。これにより、わが国の経済は、ある種の連続性を保つかたちで回復に向かうことができていますが、他方で、感染拡大以前から存在していた非効率な事業の存続も可能になっている面もあるものとみています。』

この問題認識の時点で鈴木さんと安達さんのラベルの差が出る訳でして、鈴木さんはきちんと「感染拡大以前から存在していた非効率な事業の存続も可能になっている面もある」と認識しているのに、安達さんの場合は初手から「一方で、コロナ禍の前から収益性が低く、将来的に債務返済が滞るリスクが高かった企業が延命しているのではないか、といういわゆる「ゾンビ企業論」の意見が、」という形で一々悪意のあるレッテルの貼り方をしていて、貫禄の差を感じますな。

『このため、感染症の経験を経て、デジタル化や脱炭素化に向けた世界経済の潮流が一層加速する中で、成長分野へのシフトを促すかたちで、わが国の経済構造の変革を進めていくことの重要性はより高まっています。こうした中で、金融政策面からも経済を下支えすることで、事業転換を含む社内資源の再配分や他社との提携・統合などを通じて、企業がより生産性の高い分野に資金や労働者を振り向けていく動きを支援していきたいと考えています。』

もうちょっとあるのですがここで切ってしまいますけど、まあ鈴木さんのお話自体も御伽噺っぽい所は多分にありますけど、安達さんの何かとりあえずいろんな言葉を並べてみたって感じの話ではなくて、ちゃんとロジック繋がって説明しておりまして、どっちが本職の何とかストなのよって世界ですな、うんうん。


では会見に参りますが。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk211203a.pdf
鈴木審議委員記者会見要旨
―― 2021年12月2日(木)
午後2時30分から約30分
(神戸市・東京間オンライン開催)

日銀の金融政策的に言えばコロナオペ絡みの各種オペの扱いしかネタが無いので質疑が特におもろいわけでもなかったりするのですが備忘も兼ねてメモっておく。

・卒業(ちと早いけど)の辞が色々と悲しそうですな

『(問) 来年の 7 月に任期満了を迎えられますけれども、もしかしたら今回が最後の記者会見の機会になるかもしれないので伺いたいのですが、ボードメンバーとして日銀の意思決定に関わられてきましたけれども、就任前に抱いていた日銀のイメージと比べて、何か発見があったこと、印象に残っていることなど、この 4 年半ほどの在任期間を振り返ったご所見をお聞かせ頂きたく思います。』

8か月も前なのに早くも卒業の辞を聞かれるのは金融政策が悪い意味で無風なので致し方なし。


『(答) 40 年間、民間の金融機関にいて、一般の方と比べれば日本銀行を訪れる機会があり、日本銀行の役職員と接する機会もあったということですし、一方では過去に審議委員をやられていた方など様々な方から前もって教えて頂いたこともありますので、そうした意味において想定の範囲内だったということです。』

誰に聞いたんだろう(ニヤニヤ)。

『個人的には 2017 年 7 月に就任して、当時は景気も非常に順調な状況で、除く生鮮の消費者物価上昇率も、確か着任時が 0.4%、毎月上昇して、2018年 2 月には 1%に達していました。結果的には、その後、0.7%と 1%の間を行き来しながら、その後は残念ながら下降していくわけですが、そうした中において、1%をみた段階から、2%には遠かったにせよ、例えば米国が前回利上げしているのは 1.3%くらいの物価からですので、ようやく金融政策の正常化に向けた議論ができる可能性があるのではないかと期待した時期もありました。』

おー。

『世の中、様々なことが起きるのが常なわけですが、様々なことがあって、現在に至っているということです。』

ほうほうほうほう。

『日本銀行の政策委員会では、きわめて活発な議論を行っており、』

??????????????

『様々な意見の方がおられて、様々な議論において、健全に議論していると思いますが、』

??????????????????????????

『世の中の様々な事情があったにせよ、結果的に日本経済、金融経済、物価情勢が必ずしも良くなることなく任期を終える可能性が高いということについては、残念に思うところです。』

何か別にさっきの????の所って言わなくても話が繋がる部分なのですが、これはいわゆる一つのぶぶ漬け話法って奴ですよね!!!!!鈴木さん!!!!!!!


・とりあえず鈴木さんにはCP社債買入の縮小と(社債の)買入年限の短縮化(元に戻すだけだが)は頑張って欲しい

『(問) 今の質問に関連して、大企業の資金繰りが改善しているという現状があるわけですけど、社債・CPの買入れについては、市場機能とか年金などの運用に与える影響への懸念も聞かれています。その点については、鈴木委員はどのようにお考えでしょうか。』

運用に与える影響ってまあそれは金融市場的には重要だけど、それよりなにより「資源の適正配分を阻害する」という観点でツッコミを入れて欲しいんですけどまあいいです。

『(答) 社債・CP市場については、発行の環境やレート、投資家の動向といった全体感からすると、昨年の春先のような状況からは大きく改善して、それが継続しているという状況にあると考えています。一方で、ご質問にあったような年金や保険会社といった投資家の方々からしてみると、一部、日本銀行の買入れによって、スプレッドがかなり縮小しているといった声もありますので、基本的には、市場の動向、それから資金繰りの動向をみて、これから判断していくということだと思います。中小企業向けでのコロナオペよりは、その辺がもう少しはっきりしてくるのではないかと個人的には考えています。』

微妙な表現をしていますが、中小企業向けのコロナオペは継続するけど、金融市場からの各種買入措置については、大企業などの資金繰りに特段の問題が発生している訳でもないので縮小する、という理屈付けをするなら、まあ話としての筋は通っている(是非の問題はさておく)ので、そっちの方向になるんかいなと思いますけど、いずれにせよ12月会合で結論出すとは思われません(継続するなら12月決定はあり得るが縮小するにしても別に1月会合まで待って何ら問題は無い)。


・気候変動対応と中央銀行

金懇挨拶のテキストでも色々と良い話をしていましたが。

『(問) 本日、午前中の講演でも取り上げていらっしゃった気候変動対応オペですが、金融面では市場中立性への配慮が重要で、気候変動対応融資を金融機関の判断に基づいた融資にバックファイナンスするので、そういう中立性は保てるのだというご解説だったかと思いますが、気候変動に対する投融資に日銀がバックファイナンスすること自体が中立的ではないのではないかという疑問があったりするのですが、どのようにご説明になっていらっしゃるのでしょうか。』

これは無慈悲な砲撃wwwというかまあ鈴木さんに日銀公式じゃないものを喋らせようという諸葛孔明の罠。

『(答) 先ほども申し上げましたが、日本銀行から金融機関への融資、バックファイナンスというのは、コロナオペが 80 兆円くらいで、そのほか全部合わせて百数十兆円あります。今回の気候変動対応オペは、資金供給といってもゼロ%ですので、そんなにインセンティブがあるということではないですが、』

しれっとお茶目な事を(ちなみに成長基盤オペの場合は4年間固定金利でしたが、コロナオペは1年ごとに金利がリセットされてしまうという違いも何気にある)。

『例えば気候変動対応に物凄く大きなインセンティブがあるような形で資金供給を行うとすると、中立性に関して疑義が生じる可能性があるかと思います。あるいはグリーンなファイナンスであれば有利なものだが、ブラウンなものはだめにするとか、そういうことをすると中立性に影響がありますが、』

ほうほうそうですかそうですか。

『金融機関では今TCFDなどがあり、グリーンボンドにも様々な国際的な基準がありますので、それらに基づいて判断されたものについてバックファイナンスをさせて頂くということで、ある意味で金融機関を通じて気候変動問題への関心を広めていこうという内容ですので、』

日銀公式を踏まえながらも、チョイチョイと「盛大に旗を振るべきなのは日銀ではなくて他の所でしょ」という主張が行間からあぶり出しのように上がって来るのはアタクシの錯視ですかそうですか。

『中立性に大きな疑義が生じるような取り組みにはならないと考えています。』

なお、これに対して更問がありまして、

『(問) 全て金融機関の判断に任せるということであれば、普通のオペと変わらないのではないかという気もするのですが、どのようにお考えでしょうか。』

これは無慈悲wwww

『(答) 実態として、中央銀行が全て 1 件 1 件の取引について判断や審査をするのは、現実的ではないと考えています。』

完全に蒟蒻問答で逃げておりました。



〇安達審議委員の記者会見は冒頭の所で読んでるアタクシが固まってしまってその先が頭に入らないんですが・・・・・・・・・・

さて安達審議委員の記者会見なのですが。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk211202a.pdf
安達審議委員記者会見要旨
―― 2021年12月1日(水)
午後2時30分から約30分
(大分市・東京間オンライン開催)

冒頭の所で物凄く意味がよくわからない話があってその後を見ても内容が頭に入らない(まあ内容は無いんだけど)という珍説明があってですね・・・・・・・・・・・

最初の、

『(問) まず、本日の懇談会でどのような内容をお話しされたのか、教えてください。』

ってのの回答なんだが、ここは基本斜め読みしかしないんですけど、途中で物凄い勢いで引っ掛かってしまったアタクシがいる訳ですよ。即ち上記URLの2ページ目の第2パラグラフの冒頭なんですけど、こんな説明がありましてですね、

『こうしたもとで、都市部への人口流出が続く大分県においては、今後、DXの推進等を通じてサービス産業の生産性を上げる必要がある、つまり「人への投資が重要である」という意見も伺い、非常に印象に残りました。』

??????????????????

DXの推進って基本的に省力化とか効率化の話であって、人手を減らして生産性を上げましょうって話だと思うのですが、この接続詞の「つまり」というのはどういう事でございますでしょうか???????????????

いやさすがにここまで堂々と言われると、言われたアタクシの方が何か間違っているかと思ってしまう位なのですが「つまり」って接続詞は前後がイコールとか前の話をサマライズしたものが後ろの部分とか、そういう言葉だと思うのでして、DX推進と「人への投資」って寧ろ相反する概念とチャウの???と思うんですが。

そらまあ人間だから言い間違えってのは存在するんで、単なる言い間違えなのかも知れないと思ったのですが、これって会見「要旨」であって、単なる言い間違えしてたら要旨をテキストに落とすときにチェックが入って訂正される(実際問題として映像確認できる総裁記者会見の映像を見ればお分かりになると思いますが、言葉使いとかは要旨になった段階で発言意図を損なわないようにしながら修正されることはしばしばある)と思うのですが、訂正入ってないのが不思議ちゃんなんですがどういうことなのこれ?

いやまあDXの推進等、の「等」の部分にDX推進して効率化したので人材の再教育を行うとかそういう話が含まれている、ってことなのかも知れないけど、これは「つまり」ではなくて「それに加えて」とかそういう話しなんじゃないかと思うのだが、何ちゅうかこれだと「DX推進が人への投資」と言ってるとしか読めなくて、お前は何を言ってるんだ状態になるんですけど、ここ何とかならなかったのかしら、と思いました。

なお、他の内容は特に見ることも無いのでパスします。







2021/12/03

お題「安達審議委員金懇続き&鈴木審議委員金懇」

ほうほうそうですかそうですか。

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-barkin-idJPL4N2SN3R7?il=0
2021年12月3日4:43 午前
FRBの金融政策正常化を支持=リッチモンド連銀総裁

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-daly-idJPKBN2IH23Q?il=0
2021年12月3日3:33 午前
FRB、利上げ計画の策定開始する時期の可能性=SF連銀総裁

という昨今ですがよく考えたら(よく考えなくてもそうですが)安達さんに続いて鈴木審議委員の金懇があったのでそちらとかも含めまして少々。


〇安達審議委員大分金懇:これは翌日の鈴木さんと比較させるための日程ですか(個人の妄想です)

ということでまずは昨日の続き。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko211201a.htm/
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko211201a1.pdf
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
大分県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 安達 誠司
2021年12月1日

・(続きの前に)相変わらず審議委員の金懇日程の組み方に・・・・・・・・・

今申し上げましたように、よく考えたら翌日に鈴木審議委員の金懇がぶっこまれていまして、さはさりながら展望レポート出たのはだいぶ前だし、12月のMPMったって別に何かある訳でもない(コロナオペに関しては何も考えずにノーズロ延長するなら12月にやってもおかしくは無いのですが、欧米主要中銀が金融緩和縮小(しかしどうでもいいのですが、正常化路線で金利が1%かそこら上がるのを「引き締め」っていうの止めてもらえませんですかねえと思うんですよね、1%の政策金利が引き締め的って資本主義の敗北じゃろ)の流れとなる中、空気だけは読む今の日銀がコロナオペカードを12月に切る訳が無いと思いますので(個人の妄想です)。

という訳で、まあ12月半ば過ぎになると金懇やりにくいというのはあるので昨日一昨日と連発だったんでしょうけれども、次にネタにします通りで、今回の鈴木審議委員の金懇は(ちょっと前回の出来がやる気ナッシングというかな感じの残念感漂うものだったのに対しまして)まあ審議委員の講演としてのクオリティに仕上がっているだった訳ですな。

然るに、安達大先生の金懇、何せ昨日ネタにしましたように、「直近のサプライチェーン問題が特定の業種を中心に広がりを見せつつ影響しています」の説明の図表で示している鉱工業生産とか世界貿易量のグラフが2008年からの時系列、しかも産業別でも何でもないという、わざわざ大分県地元経済界の重鎮に集まって(オンラインとは言え)頂いて話すにしては、そこらの駆け出し小僧何とかスト見習いでもそんな図を使って説明せんじゃろ、というレベルの作品を出しておりまして、内容云々以前の問題だし、わざわざ時間を割いて下さっている地元経済界に対して失礼極まりないような物件なのですな。

・・・・・・ということで、今回の無駄に2日連続金懇とかいうプレイ、これは「安達さんと鈴木さんの金懇の内容を比較して下さい」という金懇日程組んでる中の人たちのイヤガラセプレイキタコレと懐かしく、と申しますのは一時期木内さんの金懇が計ったかのように、FOMCしかもライブ会合となりそうなところの翌日にばかり設定される(ので注目されない)、というようなプレイがあって、こんなの「計ったように」じゃなくてどう見ても計って設定してるじゃろ、というような陰湿プレイが垣間見れて大人の世界コワイヨーと思った(個人の感想です)のですけれども、さては今回はわざと安達さんと鈴木さんの出来の違いを比較しろという企画を練ったな、などという妄想を逞しくしてしまうアタクシは陰謀脳にも程があるので今の話は全部アタクシが夢の中でみたせん妄ということでよろしくお願い申し上げます。


さて、せん妄から目覚めたことですので(^^)昨日の続きから少々(なお政策インプリケーションは無いので、単にアタクシの悪態節の鑑賞にしかならないので飛ばして頂いて結構ですわよ)。

昨日は『(2)物価情勢』の『(わが国の動向、見通し)』というコーナーで、『しかし、最近では、次に述べる幾つかの要因を踏まえて、物価上昇率が高まっていく可能性が高まったと考えています。』というののその1の謎説明の何と途中で話が終わってしまいましたのでその続きからになります。

・高付加価値云々の話ってまあ言いたいことは分かるんだけど微妙にポリティカリーにアレな感も

要因その1、ってのが企業の価格設定行動の変化、って話なのですが、その背景にコストプッシュに堪えられない、というのが何故か無くて、前半では今回の需要喪失には価格弾力性がある訳ではないので値下げが起きなかった(という所までは良いとして)。さらに政府日銀の資金繰り支援策で値下げをして売り上げを確保する動きが起きなかった(その説明はどうかと思う)、というのがあったのですが、それに加えてこういう説明が。

『また、コロナ禍が落ち着きつつある現在、企業が自社の財・サービスの価格を引き上げる動きを徐々に見せ始めています。コロナ禍をきっかけに、特に消費関連業種では、顧客ニーズの構造的な変化を見極め、過去に多くみられた「薄利多売」のビジネスモデルを転換し、高付加価値でマージンの厚いビジネスの展開を志向する先が増え、しかも売上を伸ばしている、という話も聞かれるようになりました。これらの動きは、企業の価格設定行動の変化を示しているように思われます。』

って言ってるんですが、そらまあ一つの考え方ではあるかも知れないけど、依然として食品スーパー行けば頑張って安売り目玉商品ぶっこみながら商売している訳で、確かに巷間聞くお話では高級腕時計(置き引きをしてはいけません)やら高級車やらが売れる、みたいな高級品売れてます話もありまして、それって単なる格差拡大チャウのとかって気がするのよね。いや個別企業の行動で高級品志向しましょうって動きが起きるのは別にそらそういう企業もいるわなという話だと思うのですけれども、高級品バカ売れで(日本はそういう意味では物価が大して上がってないから良いようなものの)一方でCPIが5%とか言い出されると、そら政治的にフリクション起きるわ、となっているのが米国であり欧州であったりするわけで、何ちゅうかまあ別に良いんですけど、この例を安易に持ち出すのってそろそろポリティカリーに微妙な時間帯になっている気がするんですよね、というのは個人の感想ですが。

まあそれよりなにより、企業の価格設定行動の変化、という話の中にコストプッシュの影響の言及がないってのがもうその時点でなんだそれって感じはします。


・12月の短観での設備投資のところは注目せんといかんなこりゃ

物価上昇率が高まっていく可能性というののその2です。

『第2の要因は、経済情勢のところで指摘した点とも重なりますが、企業の設備投資スタンスの積極化に裏打ちされる成長見通しの改善です。』

何か無茶苦茶大きくでたぞオイ。

『最近の企業の設備投資は、「資本ストック循環」(図表9)という観点からみると、将来の収益見通し、より専門的な言葉では「期待成長率」、の上方修正を伴った積極的なスタンスに変わってきている印象を受けます。』

だそうなんだが、その割には一斉賃上げのご要請(まじでこの「ご要請」攻撃止めろやボケと思うけど)に対して結局経済界猛反発してたりする訳で、本当の本当にそんなに企業のスタンス強いのけ???????

#ちなみに図表9を見てもどこがどう期待成長率が上がっていると読めるのかがさっぱり分からないのでだれかこの表の見方教えてくださいアタクシ経済学という学問は大学で何もしてないもんで

『企業が、自社の経営環境について、前向きな見方をするようになっているということは、自社の財・サービス価格の引き上げを通じた利益率の上昇も視野に入れた、収益から設備投資への「前向きな好循環」が起きつつあるといえるのではないでしょうか。』

仰ることがその通りだったらその通りなのですが、それならもっとお賃金に反映しても良さそうなもんだと思う訳ですけど、まあ設備投資スタンス云々って言ってるので12月短観の設備投資計画でもじっくりと見るように楽しみに待っております。

『企業が価格の引き上げを通じてマージンを拡大させることは、今後賃金の引き上げにも波及する可能性があり、2%の「物価安定の目標」を実現するための大きなカタリスト(触媒)になることが期待されます。』

ということなのですが、結局これ「私はこう思っています」だけの話しだったような気がせんでもないですな。


・節子、それはただのコストプッシュだし非資源国から資源国への所得移転や

次のは仰ることはその通りなのだがズッコケ三銃士な説明。

『第3の要因は、エネルギー価格が高止まりする可能性があることです。』

いや確かにそれは物価上昇要因だがただのコストプッシュなので実質成長の下押し要因になると思うのですが・・・・・・・

『他国においてもエネルギー価格の上昇が足もとインフレ率上昇に大きく寄与していますが、日本においても、携帯電話通信料等の影響を除くベースでみた足もとのインフレ率の上昇の約半分はエネルギー価格の上昇によるものです。先行きのエネルギー価格は、不確実性があり、どこかのタイミングで反転し、インフレ率の低下要因になる可能性はあります。』

でもってこの後が中々お洒落で・・・・・・・・・

『しかし、現在のエネルギー価格の上昇は、従来とは異なり、比較的長く持続する可能性も否定できないと考えています。』

ほうほうそれでそれで???

『その要因として、世界的な気候変動リスクへの対応によって代替エネルギーへの転換を志向する動きが指摘できると思います。』

ちょwwwwwwwwwwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwwwwwwwwww

『主要国は、気候変動リスクへの対応として、二酸化炭素排出量の大幅な削減にコミットしようとしています。そのもとで、世界的にエネルギー源を石油や石炭といった化石燃料から、太陽光、風力、水力、地熱といった代替エネルギーへ転換する必要性が各国の共通認識となっています。そのため、従来は、原油需要が拡大した局面では、原油供給量が増えることでエネルギー価格の上昇が抑制されましたが、今次局面では、代替エネルギーを模索する動きがあるもとで、原油需要に見合うかたちで原油供給量が増えず、結果としてエネルギー価格の上昇が続いています。こうした動きは、今後も長く続く可能性があるように思います。』

現象としては全くその通りなのですが、グリーントランジションを推進してオペまでぶっこんでいる日銀の中の人、しかもそのオペぶっこむのの決定に参画した張本人がこれを正面切って言ってしまうのってさすがにマズくねえか、と思うのですよ。

だってね、エネ価格高止まりが続きます、ってのは日本の場合は単純にコストプッシュ要因になる話で、そら物価にはプラスかも知れんが、実質成長にはマイナス要因になる話な訳で、こういう説明すると、「私は日本の実質成長にマイナスになる事を分かっていますがグリーントランジションを推進しております」って正面切って言うようなもんな訳でござんして、いやそういうの民間金融機関の何とかスト辺りが言うなら別に結構なんですが、政策当事者としてグリーントランジションの旗振り役の一翼を担っているんだったら、こういう他人事みたいな説明するのはちょっとまずいんじゃないでしょうかねえ、と思うのですよね。

つまりですな、グリーントランジションって日本にとっては目先はコストプッシュになる話なんだけど、それを上回る日本経済へのメリットがあって旗振りをしているんです、って言わないと「経済下押ししてまで物価目標達成したいのか」と逆ねじ食らわされるじゃろ、と思うのですがどうでしょうかねえ。


・ポストコロナの物価がどうしたこうしたという能書きがあるのだが・・・・・・・・・

さっきのところはその後とってつけたように中長期的なインフレ期待の言及がありますがどうでもよいので飛ばしまして次の小見出し『(ポストコロナの物価情勢の注目点)』に参ります。

最初の時点から色々とおかしくてデスネ、

『以上のように、先行き物価上昇率が高まっていく可能性についてお話ししましたが、物価上昇が日本国民の大多数のみなさんにとって「良いインフレ」になるためには、賃金上昇率が高まっていくことが必要になると考えられます。』

この時点で既に「お前は何を言ってるんだ」状態でして、そもそもさっきの説明にあった「その2」にあるように「企業の期待成長が高まっているように見受けられる」というのが正しいんだったら、賃金上昇が当然ながら追随していかないとおかしい訳でありまして、その2で見ている要因の通りだったら「賃金上昇率が高まっていくことが必要になる」もへったくれもなく、高まるのが自明ですわな。

さらにですよ、「物価上昇が日本国民の大多数のみなさんにとって「良いインフレ」になるためには」って言ってるんですが、「その3」で示した資源価格の高止まりってどこからどう見ても日本国民の皆さんにとって悪いインフレにしかなり得ないものでありまして、さっき言ってたことと全然話が違ってるのは何ぼ何でも酷くねえかってお話。

まあこれ置物一派によくみられるパターンなのですが、説明のパートパートで言ってる部分部分ではそんなに変な事を言っている訳でもないのですが、全体を俯瞰してストーリーを構築している訳ではないために(個人の想像です)、一つ一つのパーツレベルではあっていても、全体を構築すると前後の話が全然整合しない、という物件の典型が今回の安達さんのこの説明だわ、と思う訳ですよ。

確かに単独で今の部分、すなわち「物価上昇が日本国民の大多数のみなさんにとって「良いインフレ」になるためには、賃金上昇率が高まっていくことが必要になると考えられます。」というのはこれ単独で見れば仰せの通りなので、置物一派の説明ってボケーっと読んでいるとパーツパーツでの説明は部分的には仰せの通りだから、ついうっかり読み流してしまうんですよ。でもってこうやって一歩一歩立ち止まって読んでみると、改めて話の全体に整合性が無いのが分かる訳です。

・・・・・・ただこれって置物一派にとどまらず、近年ジャパンのあちこちで見られている事案だったりする気がしまして(個人の感想です)、それがモロに良く見えたのが近年のコロナ対応なんかだったりするんじゃないのかねえ、とか思うと、ジスイズザパニーズクオリティなのかもしれないな、とため息が出てしまう所です。


まあ一応その先を読んで進ぜよう。

『現時点では、残念ながら、賃金上昇率が高まっていく動きはまだ明確にはみられていません。しかし、私としては、コロナ禍を通じた企業・家計の行動変容が、人々の「物価観」を変え、それを通じて企業による賃金設定にも、賃金の上昇に繋がり得る変化が生じる可能性に注目しています。』

『新型コロナウイルス感染症は、いつかは収束するとはいえ、当面、ウイルスが完全に撲滅されることは想定しにくい状況です。ワクチンの効果が相応に期待できるとはいえ、感染症との共存を余儀なくされる状況においては、特に飲食・宿泊・娯楽といった対面型サービス業で感染抑制に相応のコストをかけ続ける必要が生じる可能性があります。また、わが国における高齢化の進行を踏まえると、価格が高くても付加価値が高い財・サービスの消費が、個人消費全体を牽引していく可能性も考えられます。このような高付加価値の財・サービスを提供するため、企業が従業員により高い賃金を支払う動きが出てくる可能性があるのではないかと考えています。』

『これらを踏まえると、ポストコロナという局面は、企業、とくにサービス業が、販売価格を引き上げ、さらに従業員の賃金も引き上げるうえで良い機会になるかもしれないと考えています。』

うーんこのフワフワした説明。そもそも企業の価格設定行動(その1ね)成長期待が上がるから物価上昇が定着するかもしれないってさっき言ってたのだから、「コロナ禍を通じた企業・家計の行動変容が、人々の「物価観」を変え、それを通じて企業による賃金設定にも、賃金の上昇に繋がり得る変化が生じる可能性に注目しています。」ってのさっきと逆の話をしているようにしか見えなくて、何ちゅうかこの話をするならどっちかにしてくれよという感じなんですよねー。単にこれだと循環論法になっているようにしか見えない。


・・・・・・・などとネチネチやってると時間がいくらあっても足りない、という恐ろしい状況になっているので、どうせ政策インプリケーションも無いので安達さんの金懇講演ネタはこの辺にして(虫の居所次第では続きをやるかもしれませんが)鈴木さんの金懇ネタに参ります、と言っても大分時間が怪しいが。


〇鈴木審議委員の今回の金懇はまずまずでございましたです(個人の感想です)

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko211202a.htm/
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko211202a1.pdf
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
兵庫県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 鈴木 人司
2021年12月2日

経済物価情勢に関する説明部分は基本的に展望レポートに沿った日銀公式見解になっていますので、もう面倒だからそこは全部ぶっ飛ばして政策の話になります。


・グリーントランジションと金融政策の話の途中から面白くなります

『3.感染症と気候変動問題への金融政策面での対応』という小見出しまでワープします。

『次に、世界が直面している2つの重要な課題である、新型コロナウイルス感染症への対応と気候変動問題について、金融政策面での取り組みをお話ししたいと思います。』

ということですが、最初はこれまた日銀公式の話をしているだけでおもんないわーと思いながら読むのですが、小見出し『(2)気候変動問題への対応』の途中から面白くなります、ちなみにこれ講演テキストの本文7ページの頭からになります。

『そのうえで、気候変動問題への対応を進めていくことが今後のわが国の経済にとって如何に重要であるかについて、新たな資金供給制度に対する見方と併せて、私の考えをお話ししたいと思います。』

はい。

『気候変動問題に対する意識が世界中で高まる中、デジタル・トランスフォーメーションに加え、今後はグリーン・トランスフォーメーション、すなわち、温室効果ガスの発生による気候変動を抑制し経済成長に繋げるような産業構造や社会経済の変革への対応が、企業価値を決するとも言われています。企業活動を取り巻く環境の変化として、今後、温室効果ガス排出量制限などの規制に加えて、炭素税や排出権取引といった「カーボン・プライシング」の導入が、各国・地域で進んでいくものとみられます。これにより、企業活動が気候変動に与える影響がコストに明示的に反映されるようになると、企業はそうしたコストをより意識して意思決定を行うこととなります。その結果、例えば、製造業を中心に、使用エネルギーを化石燃料から電力に切り換えるとともに、より安く、より環境に配慮した電力が利用できる立地に活動拠点を移転する動きが拡がっていくものと考えられます。』

ほうほうそれでそれで??

『こうした中、わが国では、東日本大震災後の原子力発電所の稼働停止もあり、欧米諸国と比較して電源構成における化石燃料による火力発電の割合が高い状況にあります。また、わが国の産業用電気料金は世界の主要国の中でも高水準にあり、再生可能エネルギーから生み出されるものに限ればさらに割高となります。』

なるほど。

『このような状況が続けば、これまで人件費や為替変動リスクを削減する観点からグローバルに地産地消を進めてきたわが国の企業が、電力にかかるコストと調達可能量の制約を避ける観点から、工場等の海外移転を加速させる可能性があります。』

さっきの誰かさんの「グリーントランジションで燃料価格高止まりが定着するかも知れませんので物価上昇しまっせ」という考察と比較するのが失礼になるくらいちゃんとした考察がここにはございますね!!!!!!!

『これを防ぐためには、国内において、気候変動対応にかかる様々な技術の研究開発投資や、そうした技術を用いるための設備投資を拡大していく必要があります。』

そのために気候変動オペを入れたんですよ、という説明をする訳ですよ。誰かさんの金懇とは大違い。

『具体的には、@使用エネルギーを化石燃料から電気や、水素等のカーボン・フリーな代替エネルギーに切り換えていくとともに、A再生可能エネルギーによる発電能力の引き上げや、B二酸化炭素の回収・再利用等を並行して進めていくことが期待されます。そのためには、産学官が一体となった取り組みが不可欠です。グリーン・トランスフォーメーションで世界に後れを取ることでわが国の産業の空洞化が加速することのないよう、財政・制度面での政府の一層の取り組みに期待するとともに、日本銀行としても新たな資金供給の仕組みを通じて気候変動関連分野での民間金融機関の多様な取り組みを、しっかりと支援していきたいと考えています。』

まあこの辺りははいはいそうですかって話ですけど。


・グリーンオペとミクロ資源介入問題

今の続きになります。

『そのうえで、こうした取り組みを進めていく際には、金融面では市場中立性への配慮が重要となります。』

全くで。

『特に、わが国の産業は相当規模が間接金融で支えられており、その背後では、融資先企業とのきめ細やかなコミュニケーションに基づき、変化する資金ニーズに柔軟かつ適切な範囲で応えるという、金融機関の目利き力が重要な役割を果たしています。』

節子、それは昭和時代の話や、と思いますがまあ先を読んでみましょう。

『こうした中、中央銀行が個別の資源配分に直接介入する形で、グリーンな経済活動を支援し、ブラウンな経済活動を抑制するといった政策を進めていくと、金融システムに様々な歪みが生じる可能性があります。』

ほいほい。

『この点、今回の資金供給制度では、金融機関が自らの判断に基づいて行う気候変動対応投融資をバックファイナンスする形をとっていますので、そうした金融システムへのマイナスの影響を回避できるものと考えています。』

何か無理矢理な説明なのですが、この考察をするだけでもまあ良しとしましょう。



・物価見通しの話も誰かさんとはラベルの違いを見せつける

次が『4.「物価安定の目標」の実現に向けて』という小見出し。

最初のうちはまあどうでもよいので途中のコーナーから参ります。『(将来不安による個人消費の弱さ)』という部分で、その前までは物価が上がらん理由の日銀公式ベースの話をしていて、ここからが鈴木さんの話になります。

『私は、これに加えて、人々が将来の増税や年金受給額の減額等への不安を抱いていることや、賃金上昇への期待が高まらないことが、家計の消費意欲、ひいては値上げに対する許容度が高まっていかないことに繋がっているものとみています。』

イイハナシダナー。

『こうした観点から、まず財政政策と経済活動の関係について、私の考え方をお話ししたいと思います。』

ここの話自体は仰せ御尤もなのですが、将来不安の話と中期的な財政健全化の話を結びつけるのは基本的にあまり筋が良くないというか、セクト的な反対を食らう論旨構成だと思う。まあ引用しておきますけど。

『感染症の影響により経済が大きく下押しされる中、わが国をはじめ、各国で大規模な財政支出が行われています。これが、景気の底割れを防ぎ、経済を成長軌道に戻していくうえで必要不可欠なものであることに、疑う余地はありません。そのうえで、その財源は将来にわたって確保していく必要があることに留意しなくてはなりません。例えば、英国では、感染対策の財源確保を目的として、2023 年に約 50 年振りとなる法人税率の引き上げを行う方針が発表されています。また、これまでにはわが国でも、東日本大震災からの復興にかかる財源を、所得税などに上乗せする形で確保してきています。今回の感染症対策にかかる財源を将来確保していく過程では、経済活動に大きな影響が及ぶ可能性があると考えられることから、財政健全化を巡る今後の議論を注視していく必要があります。』

別にここのコーナーで話をせんでも良かったとおもう。

『次に、賃金に関するお話をしたいと思います。』

ここからですな。

『2013 年以降、日本銀行による大規模な金融緩和と政府による機動的な財政政策のもとで、需給ギャップが改善し、労働需給がタイト化したことで、女性や高齢者の労働参加が進みました。その結果、感染拡大前までは、就業者数が増加し、これに伴い雇用者所得も増加を続けていました。他方で、一人当たりの賃金の上昇率は、2013〜2019 年の平均で、名目ベースで+0.5%、実質ベースでは−0.5%にとどまっています。2014年以降は8年連続でベースアップが実現しており、感染症の影響を受ける中にあってもこの動きが途切れていないことは喜ばしいことです。』

『もっとも、ベースアップの水準については、連合が発表している集計が可能な企業の結果では8年間の平均で+0.5%程度と、2%の物価目標と比較すると低い水準にとどまっています。』

と来てからの小見出しが『(賃金上昇に向けて)』です。

『こうした状況から賃金を高めていくうえでは、企業が成長分野の事業に資源を機動的に振り向けていくとともに、労働者が必要な再教育も受けつつ、より付加価値の高い仕事を求めて企業内あるいは企業間を柔軟に移動できるようになっていくことが必要です。この点、感染症の影響により、そうした経済構造の変革が遅れることとなった可能性には、留意が必要です。』

微妙に突っ込みたいこともあるが時間がないので飛ばして次。

『経済活動が大きく下押しされているもとでは、政府や日本銀行が、企業の存続と雇用の維持のために積極的な政策対応を取ったことで、企業倒産数や失業率の上昇は限定的なものにとどまっています。これにより、わが国の経済は、ある種の連続性を保つかたちで回復に向かうことができていますが、他方で、感染拡大以前から存在していた非効率な事業の存続も可能になっている面もあるものとみています。』

誰かさんの金懇とだいぶ格が違う。

『このため、感染症の経験を経て、デジタル化や脱炭素化に向けた世界経済の潮流が一層加速する中で、成長分野へのシフトを促すかたちで、わが国の経済構造の変革を進めていくことの重要性はより高まっています。』

『こうした中で、金融政策面からも経済を下支えすることで、事業転換を含む社内資源の再配分や他社との提携・統合などを通じて、企業がより生産性の高い分野に資金や労働者を振り向けていく動きを支援していきたいと考えています。』

『これにより、企業収益の増加が賃上げに繋がり、先行きも賃金が着実に高まっていくという期待を家計が抱くようになれば、将来への不安が和らぐことで安心して所得を消費に回していけるようになります。その結果、家計の値上げに対する許容度が高まることでコストの価格転嫁が容易となった企業の収益力が高まり、さらなる賃金上昇に繋がっていくことを期待しています。』

・・・・・・いやーさっきの誰かさんの金懇は何だったのか、という感じですな。

#時間もないのでこの辺で、会見と補足は週明けで勘弁してつかあさい






2021/12/02

お題「安達審議委員大分金懇は特に政策へのインプリケーションも無いのだがネチネチ読んでたら不覚にも明日に続いてしまった(その1)」

尾身クロンキタコレ
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20211201/1000073272.html
ペルー滞在歴ある20代男性オミクロン株感染確認 国内2例目
12月01日 17時18分

キタコレはまあいいとして(よくないが)南アで発見されたとか言ってたのに何故ペルーに早速輸入?さているアルね。


〇安達審議委員が金懇をしていたのだがヘッドラインも碌になかったので気が付かなかった訳だが

まだHTML版は出ていないのでPDF版の方から引用しますけど。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko211201a.htm/
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko211201a1.pdf
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
大分県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 安達 誠司
2021年12月1日

まあ前回の安達さんの金懇読んだときも思ったのだが、こんなつまらん話しか出来ない人だったのだったっけと大変にガックリする内容で、そらヘッドラインも碌に出ないわ(いやまあワシが月初だから忙しかったのはあるんだけど)という感じですよねー。


・経済の3つの特徴という事ですが・・・・・・・・・・・・・・

最初のご挨拶はすっ飛ばして経済物価情勢の説明からまずは参りましょう。『(内外経済の現状)』ってところなのですが。

『新型コロナウイルス感染症を巡る状況は、引き続き不確実性を伴っておりますが、先ほど申し上げたような明るい兆候もみられるもとで、経済情勢にも変化の兆しがみえつつあります。以下では、最近の日本を含む世界経済に共通していると考えられる3つの特徴についてお話ししたいと思います。』

ということで話があるんですが、これがまた内容がありきたりすぎて貴方マーケットエコノミストだか何だかやってたのに小僧が相場コメント書いてるような話しか出来んのかよと思いました。

『第1の特徴は、サービス消費の底打ちと持ち直しです。これまでの新規感染者数の増加局面では、多くの国・地域において、人流抑制を目的とした公衆衛生上の措置が講じられたため、飲食・宿泊・娯楽等の対面型サービス業の多くが事実上の営業停止状態を余儀なくされました。しかし、ワクチン接種の進展等によって、それらの業種における営業活動は多くの場合は再開され、業況は持ち直しつつあります(図表2)。』

まあ状況説明だからここは勘弁するけど、

『この点は経済にとって明るい材料といえますが、感染症の動向は不確実性が高い状況にあり、サービス消費がすぐにコロナ禍前の水準に戻ると考えるのは楽観的だと思われます。』

以下の部分が浅すぎにも程があるんだが。

『実際、日本の状況をみると、一部で期待されていたような「リベンジ消費」、すなわち、コロナ禍で抑圧されていた消費が経済活動の再開を機に一気に拡大する現象は、今のところまだみられていません。』

これが「コロナの先行きが不確実性が高い状況だから」で片づけるのは表面的過ぎにも程がある訳で、生活様式に変化が起きている可能性(即ち構造的な変化の可能性)とか、日本の場合特にそうだと思いますけど、コロナ対応の一連のドタバタで政策に対するコンフィデンスって相応に落ちていると思うのですけれども(個人の感想です)、それによって個人の消費支出が防衛的になっている可能性は無いのかね、とか、米国におけるリベンジ消費どころではないヒャッハー消費の要因っていうのは、そもそも論としてコロナ感染症の今後の動向云々よりも、財政バラマキまくった結果の家計へのウェルスの拡大に加え、株高とか住宅価格上昇による家計資産ウハウハのヒャッハー消費とか、そういう要因があるのではないかと思われる(個人の感想です)のであって、ジャパンとはまた状況が全然違うのに「リベンジ消費が出る」とか考えたオメーらが楽観にも程がある、とかそういうような論点が経済学部すら出ていないドシロートのアタクシでもホイホイと論点として思いつくのですが、そういう考察は一切ないというのが大変に素敵ですね!


・DXはまだしも気候変動関連が成長力のある設備投資に直結するという話に無理があるのではないか

以下続きます。

『第2の特徴は、企業の設備投資の積極化です。世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大は、家計や企業の行動様式、例えば人々の働き方等に大きな変容をもたらしました。また、それはデジタル・トランスフォーメーション(DX)に代表されるような企業の新たな設備投資需要を生み出しました。』

『加えて、今年のノーベル物理学賞で気候変動問題に関連する研究に賞が授与されるなど、気候変動問題に対する世界的な意識の高まりもあり、企業によるカーボンニュートラルに向けた設備投資需要も今後大きく拡大する可能性が出てきたと考えられます。』

ってのもこれ日銀公式の説明をダダ流ししているだけなのですが、DXったって本格的な意味でのDXというよりは単なる情報化投資だったりするんでネーノとは思いますが、まあDXで投資が出る話はまだ勘弁するにしても、気候変動問題に関する云々ってあるけど、カーボンニュートラルに向けた設備投資需要で成長戦略、みたいな話を日銀はやたら推す(どころかオペまでおっぱじめる)のですが、そもそも何で政府が推進しないと行けないのかという時点で、このマターは市場原理に任せてやって行くと進展しない、という話なのでありますからして、それは即ちこの関連で出るかもしれない設備投資って、市場原理的な意味では微妙なアレな設備投資ってえことじゃなかろうかとか、そういう話になるんでネーノという気がふつふつとする訳でございまして、こんな「気候変動関連で成長」みたいなのを政府部門が言うのって何なのよ、と思う。

民間の一企業が「乗るしかないこのビックウェーブ」って言って気候変動対応に関する政策対応の変化がビジネスチャンスってのは思いっきりよく理解できるんですけど、政府としてアグリゲートしてみたら、気候変動対応におけるトランジションによって(実際の真相はわからんけど)昨日ネタにしたラガルドインタビューでドイツの新聞ちゃんが指摘していたように、「グリーントランジションでエネルギー価格が高止まり」みたいに、トランジションされる方が今度は設備投資を抑制したりする(から価格が上昇しても増産されない)んだし、そこらの民間企業みたいに「よーしパパビジネスチャンスだぞー」などというノリでこの話をするのって広義の政府部門としてその姿勢は如何なものかと思うのですけどまあ個人の感想です。

『わが国の視点では、設備投資は足もとまで持ち直しの動きをみせていますが(図表3)、先行きも設備投資需要が堅調を維持するならば、資本財の分野で高い国際競争力を有する製造業にビジネス機会をもたらし、企業の輸出や生産の拡大にも寄与するものと思われます。』

『また、日本銀行が、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、現行の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、強力な金融緩和を粘り強く続けていく局面にあることも、こうした新たな設備投資需要を支える一因になると思います。』

あーはいはいって感じですが、そもそも物価目標の実現はできるだけ早期に達成する、という政府との共同文書はまだ存在しておりますし、日銀様におかれましては何でこんなややこしい政策をするのか、という問いに対しては「このやり方をするのが一番早く、かつ望ましい方向で物価目標を達成できると考えています」っていう嘘八百でも良いんですが、そういう前提がある訳でして、目先の景気とか目先の消費みたいな話にこの金融緩和による効果がどうのこうのという話をするのは結構なのですが、DX推進だの気候変動対応だの(特に後者)というような壮大かつ時間もかかるテーマに対する設備投資が、QQEによって推進されるってのは、お前さん物価目標を早期に達成する気無いんですね、という事につながると思うんですけどどうなんでしょうかねえ。


・供給制約云々の説明部分が色々とみてらんない件について

『これまでお話しした第1と第2の特徴は、経済にとって明るい話題でした。一方で、次にお話しする第3の特徴は、今後の経済情勢を考える上での懸念材料とも言えるもので、今後も注意深くみていく必要があると考えています。』

ほうほうコロナかなんかですかねえ。

『第3の特徴とは、経済における供給制約の影響です。』

さっきは需要が出るという話をしていて今度は供給制約がマイナスとの事ですが。

『昨年来、日本を含む世界経済は、様々な供給制約に直面してきました(図表4)。2020 年度後半頃からは、自動車用の半導体不足が大きな問題となってきました。コロナ禍で、当初、自動車販売が急減するもとで、世界の半導体メーカーは、比較的マージンが薄いと言われる自動車用の半導体の生産を抑制していました。』

ふーん。

『一方で、自動車自体の需要は、コロナ禍で「人との接触機会をなるべく減らす」という人々の行動変容もあり、予想外の急激な増加を見せました。こうした中で、自動車用の半導体の供給不足が発生しました。』

と、この説明だけですと単に今まで適正価格じゃなかった半導体価格が適正な水準に上がるという動きであって、そらまあ自動車産業的には痛いかも知れんけど、経済全体で見たらツーペーなんでネーノ、と思ってしまうような説明から始まる時点で読んででどうもこう(ノ∀`)アチャー感が抜けない。

『その後、本年入り後には、自然災害や工場火災などの影響により、供給不足はさらに強まりました。本年夏にかけては、自然災害や工場火災に起因する供給不足の問題は緩和したものの、主に東南アジア諸国での感染症急拡大に伴う工場閉鎖等から、半導体だけではなく、他の自動車部品の生産も止まり、新たな供給制約が顕在化しました。』

何ですかね、安達さんのこの説明って上記部分から先の話を単純にすれば良いだけの話じゃないの、と思うのでありまして、少なくとも最初の自動車半導体の生産が減った後に需要が来たんだが、の部分って、単純に元々マージンの薄い商売をしていたものの需要が無くなったから生産を止めた、っていう話にしか読めない訳で、それは供給制約の話ではないんじゃないでしょうかねえ。

『供給制約がみられる産業は、自動車に限らず、白物家電等の他の財にも波及しつつあり、企業の輸出や生産の下押し要因となっています(図表5および6)。』

という話は良いんだが、この図表5および6ってえのを是非とも最初のURLのPDFの方をポチっとなとしていただきまして、講演テキスト本文のケツにある図表5と図表6というのを見て頂きたいのでございますのでURL再掲しておくわ。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko211201a1.pdf(URL再掲)

図表5ってのが本文図表込みで20枚ある今回の金懇挨拶要旨の16枚目で、図表6が17枚目にあたるのですが、図表5ってのが『世界貿易量(季節調整済、2010年=100)(注)世界貿易量は、世界実質輸入。2021/3Qは、7〜8月の値。(出所)オランダ経済政策分析局』ってあって2006年以降の世界貿易量総額の推移が一本の線で表示されているだけの物件、図表6ってのが『鉱工業生産(季節調整済、2015年=100)(出所)経済産業省』というこれまた2006年以降の鉱工業生産の推移を一本の線で示したものになっております。

・・・・・・えーっとすいません、このコーナーってコーナーの冒頭の所で、「最近の日本を含む世界経済に共通していると考えられる3つの特徴についてお話ししたいと思います。」って言って話をおっぱじめていて、その中で供給制約の話をしていて、主に半導体を中心にした話を今してたと思うのですが、その説明を補強するための図表として何で2006年からの時系列を引っ張ってきているのか全く意味が分からんし、しかも「供給制約がみられる産業は、自動車に限らず、白物家電等の他の財にも波及しつつあり、企業の輸出や生産の下押し要因となっています」ってあるなら、もうちょっと個別の産業にブレークダウンした図表出してくれんと、全然話に広がりが出てこないんですけど、こんなプレゼンで良く今まで何とかストやってたなと感心してしまう図表のチョイスに腰が砕けました。

『供給制約の影響は、予想外の需要の急拡大により深刻化したわけですが、港湾労働者における感染症の拡大に起因した港湾機能の低下による物流面での制約も影響しており、その背景は複雑です。』

その辺の話しであれば全部感染症が原因なのではないでしょうか(鼻ホジホジ)。

『また、供給制約の解消の見通しは、今後の感染症の動向次第でもあり不確実性が大きくなっている印象を受けます。現時点で、このような供給制約は一時的との見方を維持していますが、今後の動向を注意深く見ていきたいと考えています。』

ということで、何ちゅうかまあ日銀公式見解を垂れ流すにしても、垂れ流し方というのがある訳で、こんなんだったら展望レポートの説明を延々としてた方がエエンでネーノと思ってしまいました(個人の感想です)。



・海外金融当局の物価上昇定着警戒についての言及が半年ほどアップデートされていないような気がしますが

次の『(2)物価情勢』という小見出しから少々。『(海外の動向)』の中身はどうでもよいのですが、結論が泣けた。

『次に物価情勢についてお話しします。このところ、米欧諸国では、インフレ率が中央銀行の目標値である2%を上回る状況が続いています(図表7)。このインフレ率の上昇には、先に述べた世界的な供給制約に加え、原油や天然ガスをはじめとするエネルギー価格の上昇等が影響していると考えられます。また、特に米国では、コロナ禍入り後に労働市場から退出した「無業者」の労働市場への復帰が予想以上に緩慢となっており、足もとでは労働需要の拡大に労働供給が追いついておらず、これにより賃金の上昇圧力が高まっています。』

『もっとも、米欧諸国のインフレ率の上昇については、需要・供給サイドともに、コロナ禍における一時的な要因が影響しており、それが中長期的な物価上昇圧力、例えば、中長期の予想インフレ率の上昇に波及していく可能性は小さいというのが米欧当局の現時点の中心的な見方となっています。』

「可能性は小さい」とのことですが、別に今から始まった訳ではなくて、しばらく前のブレイナード、クラリダ連続攻撃の辺りから、「期待インフレのアンカーが外れるとは見ていないけれども、リスクには注意しないといけない」という情報発信をFEDは行っている訳で、「メインシナリオとしては見ていないが、可能性が小さいと楽観している訳でもない」というのが今の米欧当局の中心的な見方にしかアタクシには見えないのでございますが(賃金の急速な上昇に言及したパウエルとかね)、アタクシいつの間にパラレルワールドの向こう側に飛ばされてしまったんでしょう、と思いました(個人の偏見です)。



・企業の価格行動変化云々の部分で無駄に日銀政策アピールをしているんですが・・・・・・・・・

でもってその先は日本の物価の話で、『(わが国の動向、見通し)』というコーナーになるのですが、最初の現状の数値の説明部分はさておくとしましてその先を拝読。

『私自身は、コロナ禍入り前は、わが国の物価の先行きについて、慎重な見方を持っていました。すなわち、わが国経済は、もはやデフレではない状況にはあるものの、相応のデフレ圧力は残っており、インフレ率はゼロ%近傍で推移するのではないかと考えていました。』

まあその話の前にこの説明も無茶苦茶で、デフレではないけどデフレ圧力で物価はゼロ%近傍っての、それあんたら置物一派が散々罵ってた麿時代と同じ状況なんですけど、としか申し上げようがないのであって、アタクシも鋼鉄の面の皮と心臓を持ちたかったなあとここまで来ると羨ましくなるような説明はクソウケタ。

というのは兎も角として、

『しかし、最近では、次に述べる幾つかの要因を踏まえて、物価上昇率が高まっていく可能性が高まったと考えています。』

ということで、

『第1の要因は、企業の価格設定行動の変化です。コロナ禍において、企業、特に消費関連サービス業は、急激かつ大幅な需要減少に直面しましたが、過去の大幅な需要減少局面でみせたような激しい価格競争を今回は行わず、価格低下を小幅にとどめたり、価格を据え置いたりする行動をとっていると考えられます。』

『これは、今回の需要減が公衆衛生上の措置という人為的な要因や感染症への警戒感によるものであり、企業経営者は、価格を下げても売上増加につながらないと判断したことが一因と推測されます。』

まあ日銀公式もこれなのですが、そもそも論としてこの間のコストプッシュ要因の話をしていないのはインチキ成分が強くて、この間にコストプッシュが起きていて、そもそも下げようにも下げれません状態だったという話をスルーしているのは毎度気になる説明ですな。

とは言えここまではまあ勘弁するんだが、

『政策面では、政府による各種支援金や実質無利子・無担保融資、および、日本銀行による新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ(以下、コロナオペと言います)といった資金繰り支援策が、事業の継続を支え、企業による激しい価格競争を回避させる要因となった可能性もあると思われます。』

????????????????????

いやあの企業が多く存続したら競争圧力のこるじゃん、という話はどこ行ったって感じですし、話しの都合上先の方にワープしますが、後の方の政策に関する部分の中で、

『一方で、コロナ禍の前から収益性が低く、将来的に債務返済が滞るリスクが高かった企業が延命しているのではないか、といういわゆる「ゾンビ企業論」の意見が、識者の間にあることも承知しております。仮にそれが現実に起きてしまうと、産業の新陳代謝、及び、新規開業などが阻害され、特に地域経済において、経済活性化の妨げになることが懸念されています。』(これは金融政策に関するパートからの引用です)

ってのを言っている訳でして、何ちゅうかこの説明自由自在って感じが何とも。

いやまあ行間を読めば「企業の資金繰りを支援することによってヤケクソ倒産セールのようなダンピングを起こさせなかったので価格競争が起きなかった」という事を言いたいのかなとも思うのですが、その前段で「これは、今回の需要減が公衆衛生上の措置という人為的な要因や感染症への警戒感によるものであり、企業経営者は、価格を下げても売上増加につながらないと判断したことが一因と推測されます。」というのを入れてしまっている以上、同じ理屈で倒産セールしたって売れないものは売れない、って事にならんかと思うので、なんかこの我田引水説明をわざわざする必要がないと思うんですよねー。


・・・・・・・あらま、内容が無いとか言いながらネチネチと読んでいたら時間が無くなってしまいました。下準備しとけという声が飛んできそうですが(すいませんすいません)、どうせ大したことのない記者会見とまとめて明日成敗致します。別に政策インプリケーションは1ミリも存在しなくて、単にアタクシがネチネチと悪態を書くというだけの読み物になりそうで読者の皆様には甚だ申し訳ない物件になる気しかしません(だから最近はFRB7割ECB2割って感じのローテーションになってしまうのです)けれども、何卒ご容赦の程をお願いいたします(ジャンピング土下座)。




2021/12/01

お題「パウエル議会証言(の冒頭説明)を確認/ラガルドさんドイツの新聞インタビューでインフレに対してゴリゴリ質問されるの巻」

まあいいんですけど。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-clarida-inflation-idJPL4N2SL49E?il=0
2021年12月1日4:51 午前
FRB当局者、インフレの高止まりに満足せず=クラリダ副議長

近年の流れから「下がらないといけない」って言う話をしているのは分かるのですが、「高止まりに満足せず」って日本語にすると「もっと上がれ」という意味に読めてしまうのではないかと思うのだが、なんでこう妙な日本語使いをするんでしょうかしら(ロイターだけじゃなくて他もそうなんだが)。

ちなみに記事によりますとパネルディスカッション(ただしリモート)でそういう話をしているようですが、FRBちゃんのサイトでは惜しくもそっちではなくて普通の講演の方の話をしていて、イマイチ現世利益感に欠ける感じがします(と一見して思ったのでちゃんと読んでません面白かったらネタにします)。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/clarida20211130a.htm
November 30, 2021
Federal Reserve Independence: Foundations and Responsibilities
Vice Chair Richard H. Clarida
At the Federal Reserve Bank of Cleveland, Cleveland, Ohio (via livestream)


〇パウエル議長議会証言の冒頭挨拶(既にご案内のことかとは思いますが俺様備忘用に中身を鑑賞しておきます)

へいへいそうだっか。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-powell-inflation-idJPKBN2IF1ZH
2021年12月1日2:56 午前
FRB、テーパリング加速検討すべき 次回会合で=パウエル議長

『[30日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は30日、上院銀行委員会で証言し、経済が堅調でインフレ高進が来年半ばまで持続すると予想される中、2週間後に開かれる次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大規模な債券買い入れプログラムの縮小加速を検討すべきと述べた。』(上記URL先より)

ということですが、本チャンの方を見ますとFRBのページにのっておりまして、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/powell20211130a.htm
November 30, 2021
Coronavirus and CARES Act
Chair Jerome H. Powell
Before the Committee on Banking, Housing, and Urban Affairs, U.S. Senate, Washington, D.C.

相変わらずお題はコロナウィルスとコロナ対策予算(によって実行した各種貸出プログラムの状況報告)に関するご報告っぽいお題になっております(というか最後の資料集がもろにそれですけど)が早速拝読。

・経済の現状部分の説明はかなり威勢がよい

『The economy has continued to strengthen. The rise in Delta variant cases temporarily slowed progress this past summer, restraining previously rapid growth in household and business spending, intensifying supply chain disruptions, and, in some cases, keeping people from returning to work or looking for a job. Fiscal and monetary policy and the healthy financial positions of households and businesses continue to support aggregate demand. Recent data suggest that the post-September decline in cases corresponded to a pickup in economic growth. Gross domestic product appears on track to grow about 5 percent in 2021, the fastest pace in many years.』

直近までの米国の経済状況の話ですが威勢が良い内容ですな。

『As with overall economic activity, conditions in the labor market have continued to improve. The Delta variant contributed to slower job growth this summer, as factors related to the pandemic, such as caregiving needs and fears of the virus, kept some people out of the labor force despite strong demand for workers. Nonetheless, October saw job growth of 531,000, and the unemployment rate fell to 4.6 percent, indicating a rebound in the pace of labor market improvement.』

『There is still ground to cover to reach maximum employment for both employment and labor force participation, and we expect progress to continue.』

というのが労働市場の話で(本当は1つのパラグラフですが途中で切ってます)途中、といっても殆どケツですが、切る前までの話が基本的にこれまたエライ威勢の良い説明になっていますわな。ただし、現状はまだ「There is still ground to cover to reach maximum employment」であって、それは雇用に加えて労働参加がコロナの影響で戻っていない部分がある(つまり隠れたスラックがある)という説明をしていますが、この留保入るのかなり当たり前だのクラッカーでして、威勢の良い話だけで止めたらマンデート達成だーになってしまうので、それはさすがによー言わんじゃろと。

『The economic downturn has not fallen equally, and those least able to shoulder the burden have been the hardest hit. In particular, despite progress, joblessness continues to fall disproportionately on African Americans and Hispanics.』

威勢の良い話をしたあと、いつものように入るこのフレーズ。「経済の落ち込みを食らった人は一様ではなく、社会的経済的な立場の相対的に弱いカテゴリーの人たちが苦労している」というのをここで入れ込んできました。でもって次からが物価のパートになります。


・物価上昇の話の中でしらっと労働市場とお賃金が威勢良くなっているという地雷を投下するパウエルさん

『Pandemic-related supply and demand imbalances have contributed to notable price increases in some areas. Supply chain problems have made it difficult for producers to meet strong demand, particularly for goods. Increases in energy prices and rents are also pushing inflation upward. As a result, overall inflation is running well above our 2 percent longer-run goal, with the price index for personal consumption expenditures up 5 percent over the 12 months ending in October.』

前年比5%はいかんよね5%は・・・・・・・・・(給与明細を見ながらしみじみと)。で、見通しの部分はパラグラフをぶつ切りにしてお送りしますが、

『Most forecasters, including at the Fed, continue to expect that inflation will move down significantly over the next year as supply and demand imbalances abate.』

もはや来年の物価見通しが「will move down significantly over the next year」とか段々ヤケクソ気味になっているんじゃないかというような表現だが、「significantly」 位威勢の良い(?)ことをいっておかないと政治的に色々とマズーなんですねわかります。

『It is difficult to predict the persistence and effects of supply constraints, but it now appears that factors pushing inflation upward will linger well into next year.』

「来年に渡ってインバランスが解消に向かい物価は顕著に下がっていく(キリリッ)、よー知らんけどな」

こうですね、わかります!!!!

でもってそのよー知らんけどな、に含まれる物価がサガランチ会長になるファクターとは何ぞやというと、これがまた何と労働市場キタコレでして、

『In addition, with the rapid improvement in the labor market, slack is diminishing, and wages are rising at a brisk pace.』

スラックがディミニッシュイングしていてお賃金がブリスクペースで上がってるってこらまたエライ威勢の良い表現だし、そもそもお賃金と物価のスパイラル作用でインフレアイヤーってのは、まさに流動性じゃぶじゃぶの中で1次産品価格(というかエネルギー価格)が産油国要因で暴発した第一次石油ショックとその後のスパイラルって感じの話になりますので、このぶっこみはアタクシが殊更にいうまでもなく地雷ぶっこみでありますな。

『We understand that high inflation imposes significant burdens, especially on those less able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation. We are committed to our price-stability goal. We will use our tools both to support the economy and a strong labor market and to prevent higher inflation from becoming entrenched.』

過度な物価上昇はペイン、という話をしておりますのは同じですが、その次の分ではおもいっくそ「We will use our tools both to support the economy and a strong labor market and to prevent higher inflation from becoming entrenched.」という無理ゲーな話をしておりますが、ワシらは経済をサポートして強い労働市場をサポートして、しかもより高いインフレは阻止するとかどうするんでちゅかねえ。


・コロナの再々々・・・拡大は経済にマイナスだが物価には無駄な上昇圧力を掛けやがるという説明で締め

で、次のパラに進むと、

『The recent rise in COVID-19 cases and the emergence of the Omicron variant pose downside risks to employment and economic activity and increased uncertainty for inflation.』

先日のFOMC議事要旨読みの中でスタッフの先行き経済リスクの中で思いっきり書かれ、パーティシパントの議論パートでは何故かやや隠れた感じでちょろっと出ていただけの「コロナがアイヤーとなると経済にはマイナスだわ物価には無駄なプラスだわで良い事がないんですけど」の件が堂々と示されております。

勝手に深読みしますと、まあそもそもの来年3回利上げ織り込みが最大オブ最大の織り込みにも程がある、というファクターはあるものの、オミクロン先生の登場でいきなり利上げ織り込み1回分剥がしてきた債券市場を見て、いやお前らインフレリスクの方は高まっているんだよ、というメッセージを出したかったのかな、とか思ったりもしましたが、まあこれは議会証言なので素直にこういう話をしているのと、物価がサガランチ会長で推移した時の言い訳を用意した、と考えた方が無難ですかね〜。

『Greater concerns about the virus could reduce people's willingness to work in person, which would slow progress in the labor market and intensify supply-chain disruptions.』

で、その物価が無駄に上昇圧力掛る理由に触れた所で証言は終了するのでありました。

『To conclude, we understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We at the Fed will do everything we can to support a full recovery in employment and achieve our price-stability goal.

Thank you. I look forward to your questions.』

つーことなので、さっきのロイターちゃんの記事は質疑応答の中で出た話って事だと思います。



〇ECBがインフレに関して色々とつっこまれておるわけですが

・ECBがインフレに対して風当たりが強くてラガルドはん早速それに対応した見せ方を工夫するの巻ですな

ECBのトップページ
https://www.ecb.europa.eu/home/html/index.en.html

昨日の午後にデギンドス副総裁がインタビュー受けていてトップページの構成がちょっと動きましたが、トップ下にある3つのお勧め新着みたいなものが、

INTERVIEW 30 November 2021
We need to remain vigilant

The factors behind the high rate of inflation we’re experiencing will not last and we should see them fade next year, Vice-President Luis de Guindos told Les Echos on 24 November. But there’s a risk that inflation will not go down as quickly and as much as we predicted.


INTERVIEW 26 November 2021
Keeping a close eye on inflation

We are monitoring inflation very closely, President Lagarde tells Frankfurter Allgemeine Sonntagszeitung. We do not expect the current high levels of inflation to last, she says, and adds that raising interest rates now would only have an impact when inflation is expected to have fallen anyway.


EXPLAINERS 16 November 2021
Why is inflation currently so high?

After years of very low inflation, euro area prices are rising at the fastest pace in more than a decade. Why is this happening, and what does it have to do with droughts in Brazil, shipping containers and the pandemic? Find out what we expect to happen to inflation next year.

って並んでいまして、昨日はEXPLAINERSの奴とラガルドはんのINTERVIEW 26 November 2021の中でAPP(というかPEPP)に関する部分をネタにしましたが、デギンドスさんのインタビューは「物価は来年下がって来るから拙速な利上げはしませんよ」という話が概ねなのですが、紹介コーナーの方を見ると、上記のように「But there’s a risk that inflation will not go down as quickly and as much as we predicted.」ってのがきっちり入れ込まれています。

ちょっと今日そこまで手が回るかわからんのですが、このデギンドス副総裁のインタビュー紹介サムネ、それほど物価が下がらんリスクの話をしていない(と思った)のに配慮しているような言い方になってみたり、よくよく見れば昨日ネタにしてこれからネタにするラガルドさんのインタビュー、インタビューの内容ページの見出しは「Interview with Frankfurter Allgemeine Sonntagszeitung」なのにトップページは「Keeping a close eye on inflation」とか、中々考えて作ってあるわと感心する(半分呆れてるけど)次第です。


・ラガルドはんのインタビュー続きで物価に関する質疑がオモロイ

と、前おきが無駄に長くなりましたが昨日の続き。

https://www.ecb.europa.eu/press/inter/date/2021/html/ecb.in211126~80dc9eeac7.en.html
Interview with Frankfurter Allgemeine Sonntagszeitung

Interview with Christine Lagarde, President of the ECB, conducted by Gerald Braunberger, Dennis Kremer and Christian Siedenbiedel on 23 November and published on 26 November 2021


・ドイツの新聞(だと思った)さん、ラガルドさんに対する物価上昇怪しからんの波状攻撃が素敵です

冒頭からどう見ても査問会議という風情の質疑が続くので面白い。

『(質問)Madame Lagarde, inflation rates are increasing around the world. Inflation in the United States is 6.2%, while in Germany a rate of close to 6% is expected for November. Is inflation spiralling out of control?』

ちょwwwいきなり喧嘩腰(かどうか知らんが)。

『(回答)At the European Central Bank we are of course monitoring that very closely. And not only because our primary objective is maintaining price stability and inflation is a crucial indicator of that. But also because we know that inflation affects people. Those who are less privileged and less well off are the ones who suffer the most from inflation. That’s why we need to keep looking at it very carefully.』

我々は物価目標がマンデートであるだけではなく、物価上昇が人々の生活に多くの影響を与えることを理解しているので物価を注意深く見ている、という答えなのだが、質問が「Is inflation spiralling out of control?」と(ドイツの新聞なだけに)豪快に喧嘩を売っている事に関しては無回答ワロタ。

『(質問)Do you feel any effects of rising inflation in your own daily life?』

回答が得られないと見て今の説明を梃子に砲撃をしておりますが、物価上昇が「in your own daily life」で何か影響を感じてますかあああああ?????って質問と勝手に妄想すると面白くて(個人の妄想です)、これはドイツの新聞様、「ラガルド様のようなスーパーおエリート様にはお分かりじゃないでしょうけど」物価上昇で人々が苦しんでいるんですよ、って言ってるように読みましたが妄想が過ぎますかね???

『(回答)Of course, the rise in energy prices is the most noticeable. After all, energy price inflation now accounts for around half of the high inflation rates. You can’t help noticing the price increase when you fill up your tank at a petrol station or buy heating oil for the winter.』

燃料価格の話をしまして、

『As a French person, I keep a close eye on the prices for good bread at the bakery.』

アテクシもおフランス人としてパンの価格が上がっているのを注視しておりますわよ。とフランス人とパン価格、とかアイキャッチな説明がサックリと出てくるのがさすがラガルドはん。

『That stands out at the moment and is making many people worried - but we expect that this rise in inflation will not last. It will subside next year. We expect that the inflation rates will start to fall from as early as January.』

来年の1月からは物価は下がりだします(キリッ)と締めるのですが、そんなもんで許すわけは無くて、

『(質問)What makes you so sure? Won’t there be second-round effects, if the trade unions demand higher wages to compensate for the higher prices?』

セカンドラウンドエフェクトとかサラリと質問にぶっこんで来る上に、最初の質問で無回答をされた「物価のスパイラルが起きていないか?」のネタに自然と話を戻してくるとは中々の手練れ(^^)。

『(回答)Judging by what we know from surveys of employers and trade unions so far, no strong inflationary pressure is to be expected from that front for the time being. The negotiated wage settlements have been very moderate so far.』

今のところは労働組合もそこまで強烈な賃上げ要求を出していないし、現状のサーベイを見るとそこまでの賃金上昇圧力が起きる感じはなさそう、だそうです。

『For next year, somewhat higher wage demands are partly to be expected. But based on what we are seeing, the settlements should not be on a scale that might trigger a wage-price spiral.』

来年は若干高めの賃金交渉になるかとは見ているが、賃金と物価がスパイラルを起こすようなレベルの賃上げには至らないだろう、ということだそうです。


・・・・が、それでも許さんと追い質問が来るのがドイツクオリティ(^^)。

『(質問)Do you not think that employees could become nervous and nonetheless demand compensation for inflation if inflation rates now hit a level that has not been seen for many years?』

過去長い間無かったインフレを見て労働者が不安になって賃金もっと上げろと言い出さない、とでも仰せで(意訳)???

『(回答)That does not seem to be the case at the moment. And if we look at inflation expectations, both those which can be derived from the financial markets and those resulting from surveys, then most people do not expect higher inflation in the longer term. Inflation expectations have risen, but they are below our inflation target of 2%. We don’t see any de-anchoring of inflation expectations.』

インフレ期待は依然としてアンカーされております(キリッ)とここは相手の土俵に乗らないで躱す一手とばかりに忍法煙に巻くの術。


そしてまた角度を変えて更問。

『(質問)Do you personally never have any doubts that inflation might persist for longer than your experts are currently predicting?』

いやそれはイエスとは回答できんじゃろwww

『(回答)I ask myself this question again and again. To answer it you have to consider what is driving the current high rates of inflation. I would distinguish three groups of driving factors. The first are statistical base effects which are related to the pandemic, such as the VAT reduction in Germany last year and its reversal,which are now sharply pushing up the price increase relative to the previous year. Similar passing pandemic effects can be seen in respect of package holidays, for example. These factors will automatically disappear next year, as they will fall out of the year-on-year comparison. Supply bottlenecks are a second group of drivers. Demand surged after the end of the first lockdown whereas supply is still constrained. These bottlenecks in, say, computer chips, containers and road haulage capacity are obviously persisting for longer than we had initially thought. But the situation will gradually improve next year in that respect too. The third group is energy prices. We expect that energy price developments will at least stabilise next year.』

単純にイエスと回答したらどうせ何か罠が用意されているだろう、とばかりに物価上昇の背景説明を延々と開始して更に煙幕を張って諸葛孔明の罠を回避するラガルドはんさすがです(背景説明と今後の見通しはいつも通りだからあんまり気にしなくてよい)。

とおもったらファクターの3番目のエネルギー価格に噛みつかれる。

『(質問)But surely nobody can know for certain how oil prices, say, will develop next year?』

『(回答)We at least see good reasons why the strong price increase in energy will not last into the second half of 2022. There is in any case no expectation in the oil futures markets that the price increase will continue. But we are seeking to evaluate and consider as many sources of information on this topic as we can.』

先物市場の価格などで説明して防戦に回りましたら、質問はここでまた別の角度になる。


・ドイツからやってくる利上げ圧力世論ですかそうですか

『(質問)Do you understand the special concerns in Germany about the high inflation rates?』

これはワロタwwwwwwwwww

『(回答)Yes, I understand these concerns very well; inflation in Germany is higher than in some other countries - in Italy or France for example. In addition, there are cultural differences and a special history with inflation in Germany in the 1920s. The collective experience of inflation in Germany is a different one to that of France or Italy. I understand all that. That’s why we have to thoroughly explain why we nonetheless think our strategy is correct and that we are following price developments very carefully.』

VATのベース効果とかの話をしないで、ドイツ様の場合はフランスやイタリアと違って1920年代のハイパーインフレという歴史的に大変な経験をしておりますので、ドイツの皆様がインフレに対して特にナーバスになることはわかっておりますし、現状でもフランスやイタリアよりもインフレが高いのも良く見ておりますので、価格動向については十分に注意してみております、と低姿勢と言えば低姿勢ですし無回答と言えば無回答www


『(質問)Many people in Germany have long been calling for signs that the ECB will tighten its monetary policy strategy.』

ドイツの人々はECBが金融政策をタイトニングするサインをずーっとまっているんですが、と言われましてもwwww

『(回答)If we were to tighten monetary policy now, we would expect it to have an impact in 18 months. That is the extent of the time lag before our monetary policy measures take effect. According to our forecasts, however, inflation would have fallen back again by then. We would cause unemployment and high adjustment costs and would nonetheless not have countered the current high level of inflation. I would find that wrong.』

18か月ほどラグがあるので、今やっても来年物価が下がると見ている中でやったら景気にマイナスになる、という謎の論法を最近よく使いますな。まあ良いんだけどだったらプリエンティブに行動しないとだめで、経済の指標紐付きフォワードガイダンスなんて以ての外じゃんという話になるから、この論法はむやみやたらと使わない方がいいと思うんですけどね。

ああそれから超どうでもよいのですが、18カ月もラグがあるんだったら「2年で2%」ということを言ってたどこぞのスットコドッコイは基礎的な知識もない馬鹿のバロンドールだったということで良いのですな!!!!


・そして再度インフレネタに戻す

『(質問)Prominent economists like Charles Goodhart think that the whole world is about to enter an era of higher inflation. Does that not worry you?』

今度はグローバルインフレと来たか。

『(回答)It goes without saying that we think about longer-term inflation developments. The issue is whether factors which have so far dampened inflation, such as demographic developments or globalisation, are now reversing and could lead to higher rates of inflation. There could be changes; after the pandemic firms may think differently about globalisation and relocating production to cheaper countries. Globalisation will change, but it will proceed and will in all likelihood continue to temper inflation.』

まあこの質問に関しては「そうじゃないよ」と回答するもんなんでしょうけれども、回答の中で「パンデミック要因を除き、近年インフレが世界的に上がりにくいトレンドに長期的になっている」という話をしていて、その中に人口動態とグローバル化のファクターを挙げています。でもって人口はさておきサプライチェーン云々はグローバル化の逆なのでそれは物価を上げることになるけど、グローバル化自体は中長期的に見たら変化はないのであって、やっぱりトレンドとして物価は上がりにくいんですよ、という説明をしているのはまあちゃんとした回答ですな。

『(質問)But many firms have been talking about deglobalisation since the outbreak of the pandemic.』

『(回答)People have been talking about that for around a year, but it is not really observable in practice. The incentive for firms to cut costs will remain stronger than their desire for independence from suppliers and control over the supply chains. I don’t see any sustainable price-increasing development. By contrast, in my estimation, the changes in demographic developments could have an impact on the future path of inflation, as indeed could digitalisation. But all in all, I see factors that will suppress inflation in the longer term rather than factors that will drive it up. In any case, monetary policy has enough time to respond appropriately to such longer-term trends.』

それに対して「今起きてる逆の現象については?」と来まして、再度「長期的にグローバル化は進む」という回答をしております。



・物価への査問のケツのところで割ととんでもない地雷ネタをぶっこんでくるとはwww

ということで攻め手は終わったかな、と思いきや続いてとんでもない地雷質問をぶっこむの凄いわ。

『(質問)But are climate policies themselves not going to make energy more expensive and push inflation up, at least temporarily?』

ちょwwwwwwおまwwwwwwwwwwそれは聞いてはならんねたじゃああああああああ(いいぞもっとやれ)

『(回答)This could indeed be the case. If the governments keep their commitments on the Paris Agreement and the recent climate conference in Glasgow, it will have an impact on energy prices. Studies show that energy prices react to climate protection measures by increasing significantly at first. However, when demand falls, the price will drop significantly. This effect will materialise.』

グリーントランジションがエネルギー価格の上昇圧力になる、という話ですが、何せ欧州勢が推進しているネタなだけに、この点で攻められると何かこの回答もウニャウニャと誤魔化している回答にしかなっていませんが、中々困る質問なだけに散々突っ込んで、さらにこの件で追い打ちとか中々面白かったです。

#ということでデギンドスさんのインタビューはできませんでしたサーセン