トップページに戻る
月別インデックスに戻る

(各日付の最初にラベルを「210503」というような形式でつけていますので「URL+#日付(210503形式です)」で該当日の駄文に直リンできます)


2021/05/31

お題「改めてオペ紙雑談(俺様用疑問点整理)/クオールズ副議長もテーパリングと利上げの分離工作に余念がありませんな」

そんな話の前に2%の物価安定目標を早期に達成する目先の話をしてくれませんかねえ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-05-28/QTLSPXT1UM0X01
気候変動問題、金融政策での対応を議論へ−日銀の黒田総裁インタビュー
伊藤純夫、Kazunori Takada
2021年5月28日 14:30 JST

まあ物価目標の達成がリームーだから気候変動とか仮想通貨とかCBDCとかそういう話をして目先を変えることによりまして以下自粛。


〇改めてオペ紙に関して(こういうのをウダウダ気にするのはアタクシくらいですけど)

鈴木審議委員の会見をネタにしたんですけど、まあ昨日とかベンダーコメント見てると(記事がネット版で拾えなかったので記事引用は割愛)今日のオペ紙変更に関してもあーでもないこーでもない、と普通に話をしていまして、いやまあ多分オペ紙の内容ってこれまでずーっと調節部門マターだったから足元で急に変わったりはせーへんやろとアタクシも思うのですが、やっぱり気になるので念のため確認。

まずはピンポイントオファーに関する説明。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210319d.pdf
2021 年3月 19 日
日本銀行
金融市場局
当面の長期国債等の買入れの運営について

点検MPMを受けて3月19日にこのように説明していまして、オペ紙に関して言えばこの公表文書の肩書が「日本銀行金融市場局」なので、現場マターであることを示しております(そうじゃない場合は単に「日本銀行」と記載される)。これを見ますと、

『── 2021 年4月の月間予定は、3月 31 日 17 時に公表します。同月以降の月間予定において、長期国債の利回り・価格入札方式での買入金額は、従来のレンジ形式ではなく、特定の金額で示すこととします。これに伴って、4月以降、下記1.(3)は、「月間予定において、市場の動向を踏まえて種類別・残存期間区分別の買入金額を公表し、当月中は、原則として、当該金額を買入れる。ただし、イールドカーブの水準が大きく変動し、長期金利(10 年債利回り)が変動幅の上限または下限を超える惧れがある場合などに、例外的に、買入金額を調整することがある。」に変更します。』

となっているので、この文章をまともに読みますと、『月間予定において、市場の動向を踏まえて種類別・残存期間区分別の買入金額を公表し、当月中は、原則として、当該金額を買入れる。』とあるので、市場の動向を踏まえてオペ紙の内容は月ごとに決定するが、いったん決めた当月予定額はよほどの動き(具体的にはプラマイ25bp)を超えない限り当月中の上げ下げは行わない、という風に考えるのが普通なので、まあそう考えればオペ紙時点での上げ下げはあり得る、ということになる筈。

然るに、何でそういう答弁になっているのかわからないのですが、4月MPMの黒ちゃんと先日の鈴木審議委員はいずれも(ちなみに3月会合後の会見では話題が大杉栄だったのでオペ紙まで質疑でカバーされなかった)・・・・・

4月MPMの総裁会見(6ページをご覧あれ)
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210428a.pdf

『こうした観点から、国債買入れオペの実務的な対応として、事前に示す買入れ予定額について、レンジから特定の金額に変更するとともに、長期金利が変動幅の上限または下限を超える惧れがある場合以外は、買入れ額を調整しないことに変更したわけです。』

5月鈴木審議委員の金懇後会見(2ページのケツから3ページの頭をご覧あれ)
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210527a.pdf

『こうした観点から、国債買入れオペの実務的な対応として、事前に示す買入れ予定額について、レンジから特定の金額に変更するとともに、長期金利が変動幅の上限または下限を超える惧れがある場合以外は、買入れ額を調整しないことに変更しました。』

って一言一句変わらん事を言ってますので、この文章自体が政策委員会ベースでの中の作文として出来上がっている、と考えるのが通常の判断であります。でもってこの日本語、日本語らしくて主語が分かりにくい文章になっているのマジ勘弁なのだが、「買い入れ予定額」が前半だけに掛かるんだったら「買い入れ予定額に対しての買入は調整しない」という日本語に読めるから従来通りなのですが、「買入予定額について〜買入額を変更しない」だとそもそものオペ紙を変更しないって日本語になりますし、確かニュースベンダーで最初に黒ちゃんが発言した時のヘッドラインも後者に読めるようなヘッドラインになっておったのよね。


・・・・・でまあこれ黒ちゃんになってからの非常にイカン傾向なのですが、「何が正本なのか」というのをキチンと順序付けがきちんとついていない場面が時々出て来る(黒ちゃん官僚オブ官僚だったんだからそういうの気にすると思うのですがナンデジャロ)訳で、最近言わなくなったから良いようなものの、一時黒ちゃんは「声明文の英文にこう書いてあるからこうだ」とか言い出したこともあったというのは皆様のご記憶に深い(かどうかは知らんが)と思うのですが、あの時もお前は何を言ってるんだという話で、声明文の正本は日本語なのですから(ちなみにECBの場合は何と英語が正本です、英語母国語国家が無いのに)、日本語と英語で文章上の解釈が異なるようなものが出る(のがそもそもアカンがそれはさておき)場合、日本語を正本としているのですから、つまりは総裁会見で「英文でこう書いてありますように」って説明するのは、ちょっとおかしいんですよね、というような感じ。

でもってですね、基本的に公表文書>会見での口頭なので、まあそれを踏まえればオペ紙は従来通り上げ下げある(と言ってもコロナでギャーとか言ってる中で日銀がわざわざ目立ちにいって雉も鳴かずば撃たれまいになるリスク取りに行く必要が1ミリも無いので今日は先月踏襲だと思いますけど)ということになるんですが、総裁と政策委員の会見での口頭説明が一言一句変わらずに上記のような解釈に困る説明をされますと困るのよね。時間が後の方が上書きするという機能があるのと、そもそも現場マターのものと言ったって政策委員会が「やっぱこれはワシらが指示出すよ」と言えば指示出せる訳ですからね。

まあ何ですな、これはそもそもこの文章を作ったどこの部局だが存じませんが、てにをは警察が一番五月蠅そうな日銀だというのに、微妙に日本語の作りかたが悪くて、この文章は「オペ紙の金額は変わり得るが月中の買入はいったん決めたら1か月固定、ただし10年金利が上下限を超えそうな時には別途調整」というのをもうちょっと文章として分かりやすくしてくれないと困るんですよね。つまり、例の文章については、前半は良いとして後半を「月中の買入額については」にすれば万事解決だと思うの。

でも、天下の日銀がそんな手抜かりをするとも思えない、という着眼点から、このダブルミーニングっぽいこの文章(オーラルだけど)って何なの???と斯様思うのですが、どうも金曜日の時点で「月曜に出る買入額の上げ下げについての予想」とかいうのがバンバン出ているので、みんな気にしないんだ〜と不思議に思う金曜の朝なのでありました(何らかのアナウンスしてるのかも知れませんけど・・・・・・)。

ま、金曜も申し上げましたが、最近の日銀は何か出て来る口頭のものを一々真に受けて反応していると全然違う事を平然をおっぱじめる、みたいな支離滅裂傾向が酷いのでそこはキニスンナと言う事なのかも知れませんけどね。


まあ何ですな、こういう解釈に頭を悩まさなくて良くってよとなるためには今月オペ紙を動かすと大変に結構なのですが(さっきも申し上げましたが予想は動かんですからね)。


〇クオールズ副議長が珍しく経済物価情勢の講演してましたので(先週水曜ですが、汗)

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/quarles20210526b.htm
May 26, 2021
The Economic Outlook and Monetary Policy
Vice Chair for Supervision Randal K. Quarles
At the Hutchins Center on Fiscal and Monetary Policy, The Brookings Institution, Washington, D.C. (via webcast)

だいたいこっち方面の話をするのはクラリダさんで、クオールズさんは金融監督とかプルーデンス系の話をするのが仕様なので、クララが立った!みたいな、というとそこまでのレアアイテムな訳ではないですが、まあ珍しくその話をしておりますなという所。

本来は経済物価情勢の部分から細々と見て行くのが吉なのですが、まずは手抜き読みで金融政策運営に関する現世利益部分から読みましょう、と言ってもまあこんなタイミングで何か地ならしをしてくるのは時期尚早にもほどがあるのでお察しの内容ではありますが何事も確認が大事。

これ小見出しが付いてないけど、内容としては「経済の現状と先行きとリスク要因」「マンデート達成状況に関して雇用編」「同じく物価編」「じゃあ政策はどうなるの?」「ファイナンシャルスタビリティに関して」という構成になっております。前段の部分をすっ飛ばして現世利益の話を見てしまうので前提条件が分からんとアレという部分はあるのですが無理矢理インスタント読みをしてみましょう。

『So, what are the implications for monetary policy? I am fully committed to the FOMC's new monetary policy framework and the two pieces of related guidance that we have put in place for asset purchases and the federal funds rate to implement that framework.』

最初の部分はワシは今の政策コミットメントを全面的にコミットしてますって当たり前の説明。

『The conditions required to change the pace of asset purchases and those required to increase the federal funds rate are sequential: The latter requires improvement in the economy that clears a much higher bar. Let me address each of those in turn.』

資産買入ペースの縮減着手、利上げ開始、というこれらの変更に着手する条件としてFEDがコミットしているものはシーケンシャルであって、テーパリングが先で利上げが後ですよ、という話ですが、まあこの辺に関しても先日来のFEDの主流派高官の発言にあるような感じですな。

つまりですね、しつこく申し上げますが、「テーパリング」と「利上げ」を分離して、しかもテーパーの方が利上げよりも前、というか「テーパーの後に利上げが必然的に続く、という訳ではないですよそこには差がありますよ」というような感じの話にして「テーパリング着手の議論が即座に利上げに関する思惑の前倒しに繋がらないようにして、テーパータントラムを回避する」という(ある意味虫の良い議論ではあるが)ことを考えているのであって、つまりはテーパリングに関してはどこかでぶち込み来るじゃろ(まあ普通に考えて急ぐ必要が無いのならジャクソンホールか9月FOMCまで待てば良いが)とは思いますな。

『The guidance on asset purchases, introduced in December, commits us to increasing our holdings of securities at least at the current pace until substantial further progress has been made toward the Committee's maximum-employment and price-stability goals.』

これはAPPガイダンスをただ朗読してるだけ。

『My personal view is that the rise in inflation-even after discounting temporary factors-and inflation expectations since December will prove sufficient to satisfy the standard for inflation in the guidance around asset purchases later this year, but improvement in the labor market has been slower than I would have liked.』

これは前段の部分の説明と合わせて本来は読まないと行けない部分になりますが、まあそこはネグって(というか後日ネタに出来たらする)しまいますと、物価の方はもうテーパリングしたってエエジャン(一時的要因で上がっているのを差っ引いたとしても)という所だが雇用はそうでもないですからねえ、という比較的新手の説明キタコレとなっているのがお茶目。

いやまあこんなこと言って今週末の雇用統計が馬鹿みたいに良かったらどうするんだよという所なのですが、まあそこまでの事は無いって事なんでしょうかね。物価が強い数字をバンバン出しる状況の中で、FEDの高官がテーパーだの利上げだのが前倒しにならん理由として説明していたのが「物価が上がっているように見えるな?あれは一時的だ」という論理展開でして、まあそれはそれで実際にどうなのかは兎も角、一時的と言い張っていれば申し開きが付かなくなるまで(1年以上延々と高かったらさすがに一時的って言い張れねえだとろ、とかね)はクソ粘りが可能ということになります。

一方で今回のクオールズさんの説明って、物価は強いよって言っちゃっている所でして、まあ雇用に関してはアンイーブンだのなんだの言い張って粘ることになるんでしょうが、物価が一時的アルねのほうを潰してしまっている辺りに良い味わいがありまして、エエノカソレデという気はするが、まあそんな説明をしちょりますわ。

『For instance, the unemployment rate has decreased only 0.6 percentage points to 6.1 percent, and the labor force participation rate is still nearly the same as it was at the time of the December meeting. Therefore, we need to remain patient in the face of what seem to be transitory shocks to prices and wages so long as inflation expectations continue to fluctuate around levels that are consistent with our longer-run inflation goal.』

雇用改善のペースも鈍化しているし内容もアカンタレなので我々はペイシャント、と結論は結局はいはいペイシャントペイシャントという所ですが、そこに至る説明のニュアンスが若干異なるのがオモロイ。


『For me, it is a question of risk management.』

次のパラグラフはリスクマネジメント的な課題が、と来まして。

『The best analysis we currently have is that the rise in inflation to well above our target will be temporary. But those of us on the FOMC are economists and lawyers, not prophets, seers and revelators. We could be wrong; and what happens then? Part of the calculus in balancing the risks of either overshooting or undershooting our 2 percent goal is that the Fed has the tools to address inflation that runs too high, while it is more difficult to raise inflation that falls below target. If we're wrong, we know how to bring inflation down. But if our assessment is correct that inflation is temporary, it would be unwise for us to take actions that might slow the recovery prematurely by trying to stay ahead of inflation, when our best estimate is that we are not far behind.』

なんのリスクマネジメントかというと、想定よりも物価の基調やインフレ期待が強くて、ワシらがペイシャントペイシャントと言っている間に物価の上振れがテンポラリーとか言ってる場合じゃなくてマジモンで上がってしかも盛大に上振れしたとき、というリスクを考える訳でが、この場合には「the Fed has the tools to address inflation that runs too high,」とインフレを鎮静化させるツールはある!と言っていまして(これが死亡フラグにならないことを祈りますけどね)、返す刀で同じ文章の中に「while it is more difficult to raise inflation that falls below target」と、下がった物価を上げる方が難しい、という説明をしていて、上振れした時の対処は楽勝で可能だが、下振れた場合には、いろいろと苦労しないといけないから、だからこそペイシャント節が流れる、というまあありがちな説明ではあるけど、そういう説明をしています。

とは言いましても次のパラグラフに行きますと・・・・・・・・

『If my expectations about economic growth, employment, and inflation over the coming months are borne out, however, and especially if they come in stronger than I expect, then, as noted in the minutes of the last FOMC meeting, it will become important for the FOMC to begin discussing our plans to adjust the pace of asset purchases at upcoming meetings.』

テーパリング着手議論に関しては排除しませんどころか、FOMCの議事要旨に在りました通りに、と言いながらも今後数回のFOMC(なので早くて7月普通で9月って所じゃないですかね)の時点でテーパー着手に向けた議論が行われるのは適切、とのお告げキタコレ。

『In particular, we may need additional public communications about the conditions that constitute substantial further progress since December toward our broad and inclusive definition of maximum employment. This standard presents inherent communications challenges because it cannot be summarized by a single labor market indicator, such as the unemployment rate thresholds used in the Committee's interest rate forward guidance between late 2012 and late 2013.』

でもって今回のAPPガイダンスにある「substantial further progress」に関して言えば、過去2012とか2013に行ったフォワードガイダンスにおける失業率ガイダンスと違って総合的判断の要素が強いので、この点に関しては更にクリアーなコミュニケーションが必要なんですってよ。

んな訳でこの現世利益コーナー最後のパラに参りますが、

『In contrast, the time for discussing a change in the federal funds rate remains in the future.i』

政策金利の引き上げのディスカスを行うのは依然としてもっと先の話でっせ、となっていまして、まあ明らかにこれはテーパーと利上げは別物だからテーパーするから必然的に利上げする訳ではないよ、という説明になっているし、そういうことからすると、過剰なバランスシートを持つことへの忌避感ってのはFEDには強いんだな、というのがわかるというものです。ちなみにこのiですけど、

『i. Note: This speech was updated on May 26, 2021 to match remarks made at the Brookings Institution. On page 2, the sentence should read, "First, I see increasing recognition by the private and public sectors that a broad reopening can proceed safely." On page 10, the sentence should read, "In contrast, the time for discussing a change in the federal funds rate remains in the future." 』

ページ何とかとあるのはPDFバージョンのページ(めんどいからURL入れなかったですな、汗)になりますが、実際のスピーチに合わせてこの部分は直したそうな。

『The guidance for the federal funds rate commits to maintain the current rate until labor market conditions are consistent with our goal of maximum employment and inflation not only has reached 2 percent, but also is on track to moderately exceed 2 percent for some time. In the FOMC's most recent Summary of Economic Projections, no participants-even those with optimistic growth forecasts such as I've outlined today-thought it appropriate that liftoff occur before 2022. Perhaps even more important than the timing of liftoff will be the expected trajectory of rate increases afterward, and you can see that even among participants with an earlier expected liftoff, those paths are quite shallow.』

『Thus, I expect that monetary policy will remain highly accommodative for some time.』

利上げ着手の条件を満たすのはもっと先の話です、よって金融政策は当面「highly accommodative」でっせ、という説明になっておりまして、利上げは後だよってのを強調しつつテーパーはまあやるんでしょうなという分離工作に余念がない、という感じを益々受けるのでありました。








2021/05/28

お題「鈴木審議委員会見だが結局オペ紙は政策委員会の介入するところになったのけ??」

あらま。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210528/k10013055491000.html
愛媛 今治市 90代女性に誤って新型コロナワクチン3回接種
2021年5月28日 0時07分

おじいちゃんさっきもお注射打ったでしょ、という新手のネタ爆誕ェ・・・・・・・


〇鈴木審議委員記者会見:オペ紙の扱いがうーむ

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210527a.pdf

・国債買入がいつの間にか話が違うんですけど状態になっているのはなにゆえ??

最初の質疑は「今日はどうでしたか」なので事実上質問じゃなくて、マジモンの質疑は2番目から始まります。

『(問) 午前の懇談会では一定の範囲内の金利変動は市場機能にプラスに作用するというような発言がありました。最近の債券市場ですけれど、再びまた長期金利の動きが小幅になってきています。こうした相場状況についての受止めと何らかの対応が必要なのかということについてのお考えをお願いします。』

途中の話が大本営発表ばっかりでしたから、まあここらしか聞き場が無いのですが、これは良い質問。でもってその答えですが、

『(答) 3 月の金融政策決定会合では、市場機能の維持と金利コントロールの適切なバランスをとる観点から、長期金利の変動幅について上下に±0.25%程度であること、これを明確にしました。』

はい。

『こうした観点から、国債買入れオペの実務的な対応として、事前に示す買入れ予定額について、レンジから特定の金額に変更するとともに、長期金利が変動幅の上限または下限を超える惧れがある場合以外は、買入れ額を調整しないことに変更しました。』

???????????????????????

・・・・・・これですね、以前黒ちゃんも何かの時(咄嗟に出てこないが確か4月会合)に発言していたのですが、この文章って日本語の構成をみると、主語が「事前に示す買い入れ予定額」で、述語が「特定の金額に変更」と「買入額を調整しない」っていう文章にしか読めませんよね、黒ちゃんもそんな話をしていましたが。

何ちゅうかそのナンヤソラとしか申し上げようがない話で、「予定額を調整しない」ってその部分は本来調節実務部署に委ねられていた筈ですが、何で急にこの部分に政策委員会が介入することになったのよ、という感じでございまして、4月の買い入れ予定額(つまり3月末)のピンポイント方式第1回の時に10年ゾーン大減額したのは何だったのかというか、あれだけ減額してもまだまだ市場からみたら買入がトゥーマッチだから相場が動かんのですけれども、あれとその後の黒ちゃんに続いて鈴木さんもこう説明しているので、決定事項に何も載っていないけどダマテンで政策委員会が介入するようになっている、という状況になっていますよね。

いやマジでこれ何なのって話で、価格形成を徐々に市場にゆだねて行くって形にしなかったら「市場機能の維持」できないだろうがこのウスラトンチキどもがといった風情なのですが、ダマテンで勝手にそういうの決めておいてなんの正式アナウンスもないってのは、最初の後付けで勝手に決まった長期金利プラマイ10bpみたいな風情なのですが、こっちの方は、従来「基本的に市場コントロールができるんだったら買入の額自体は減らせるもんなら減らす(ただしオーバーシュート型コミットメントとのコンフリクトは考慮)」って話だったと思うのですが、「何が何でも買入を減らさん」というのはどう見ても話が退化してるだろって問題なのでより一層トサカに来る案件ではございますな。

いやあのですね、「事前に示す買い入れ予定額に"対して"」だったら意味わかるのよ、事前に幾ら幾ら買うと決めていたけど、レンジぶち抜けそうだから今日の輪番は増額するよ、(まあそれしなくても連続指値オペとかいうオモシロオペあるんですけどね)というのならそらそうよなので全く仰せの通りなのですが、オペ紙を動かさないって話だと、それ買入自体がまあそれなりに市場の価格形成ができるような規模になっていればそれはそれで良いのですが、中期とか5−10とかまだまだ減らせるじゃん(というか超長期後半以外減らせるじゃん)という状況なのに減らさなかったらそら市場もおじぞうさんになるというものです。


・・・・・・・まあ何ですな、そもそも論として3月末の10年大減額自体が、その前のMPMで散々っぱら黒ちゃんが緩和バイアスみたいな物言いをしまくっていたのに、何もその舌の根の乾かぬうちに大胆減額せんでもよかろうよ、って感じだったし、そういう駄文を4月の頭から書かせて頂いたのですが、それに対しておイタが過ぎるって事になったので政策委員会がオペ紙にまで介入した、ってんだったらまあそうかもしれませんねとは思います(最終的にはどこまで政策委員会が細かくするかってのは、政策委員会って経営会議でもあるので、そこでこうするって決めればそうなるだけの話ですからね)けど、市場ちゃんとしては従来オペ紙の運営に関しては市場局が市況を見ながら適切に上げ下げしていくもんだというもんだったと理解していたので、変更したなら変更したってのもうちょっと分かりやすく説明してくれませんかねえ、と思うのでありました。

しかしまあ何ですな、点検会合をやる、という話を始めてからこの方というもの、何か日銀やってることが一々ちぐはぐというか、前に出てきたことを後で引っくり返すというクソの役にも立たないどころか有害な中間管理職みたいな状態になっていて、点検会合実施のアナウンスまでは「ほー」で済んでいたのに、その後時事通信砲を始めとした各種報道を通じて、金利がドタバタと振り回された挙句に、出てきた点検結果を受けた黒ちゃんの会見ではやたら緩和バイアス、と思ったら月末のオペ紙で10年大減額して、4月の展望レポートではやたらめったら威勢の良い先行き見通しを出したと思えば、オペ紙に関しては「減らさん」と黒ちゃんだけではなく他の政策委員も発言する、という形で、動きがチグハグというよりはギクシャクしているし、もっと言えば前に出したものとの整合性が取れていなくて、一体全体お前ら何をしたいの???ってのがさっぱり見えてこないんですよね。

まあ思いっきり個人の邪推になりますが、どうせ黒ちゃん任期中は何もしないで逃げ切ることしか考えて無くて、実は地蔵オブ地蔵なのですけれども、そういうと何やってるんだと言われるので、何かやった振りをしようとして、その結果が継ぎはぎ建て増し昭和温泉旅館金融政策運営になり、一連の右や左にヒロヒロと揺れる情報発信、というところなんでしょうかねえ、とアタクシの中では勝手に整理してはいるので、つまりは今の日銀って別に何か考えがあってやっている訳ではないので、一々言ってることを真に受けるとエライ目に遭う、というクソの役にも立たない中間管理職みたいなもんですな、と整理して達観する事にはしているのですけれども、本来は「中央銀行の出すメッセージなどを分析して考えないと」ってのがあるべき対応だったりするので、こういうのされると野良とは言え日銀ヲチャー(ウォッチャーではない)を勝手に野良自称するアタクシとしては甚だ遺憾の極みとしか申し上げようがありません。

・・・・・・・つい興奮して朝から大演説(無言でキーボードを打ってるだけだが)をぶっかましてしまいましたな、ほとんど鈴木さん関係ない話なのにまるで鈴木さんに盛大に悪態をついてるみたいになってしまいましたサーセン、というか会見の冒頭なのにこれはアカン(アカン)。



なお、発言はまだ続きます(アイヤー)。

『こうしたもとで、長期金利については、経済・物価情勢に応じて、明確化された範囲内で変動することを想定しています。もとより、日本銀行が、意図的に長期金利を変動させることはありません。』

そもそも「長期金利ターゲット」と「市場機能」ってのがほこ×たて対決な概念なだけに、どっちに説明のウェイトを掛けるかによって出てくる結果が逆になる、ということで、レンジが10×2bp、その後20×2の時にジャンジャン減額をしておいて、25×2bpに拡大したらオペ紙いじれなくなるってナンノコッチャとしか申し上げようがないムーブになってしまいましたな。まあ支離滅裂ってか根底の思想がないもんだから出て来る行動が市場的に意味不明ということですわな。出羽守でも何でもないけど、どこかのFEDとは大違いだわマッタクモウ。


・実は鈴木さんの応答は続いてますが話は金利が動かん背景への話になっております

さてさっきの質疑、ここで話が終わるのかと思えば更に鈴木さんの説明が続くんですけど・・・・・・・・

『ご質問の趣旨は、そのように変更したけれども実際には動いてないということで、個人的には残念な思いもするところではあります。』

オペ紙一切動かさんってなったらその時の買入が市場にとってTooMuchだったらそら動かんわ。

『ただ、長期金利の変動に影響を与える様々な要因、例えば一つには海外の金利の状況があり、海外の金利が上昇しますと、そちらの債券を買うために日本の国債を売るということで日本の金利が上がるという形で調整が図られるという、裁定取引の行動があるわけですけれども、』

えーっとすいません、現状ってほぼ皆さんがそもそも運用できないで困ってる状態で、コアのポートの有価証券残高が足りないわ困ったな状態だと思うのよね(個人の感想です)。よって、別に「そちらの債券を買うために日本の国債を売る」ってのって、何が何でもフルインベストしなきゃいけないから、キャッシュ潰しのつもりで日本国債持ってる、というような性質の国債だったらそら売りが出るでしょうが、コアのポートフォリオになっている部分を売ってまで買う行動ってのは起きないと思うんですよね、個人の感想ですけれども。

いやまあ大手とかだとそういうアーブみたいなのもあるかも知れないけど、いわゆる買い切り、売り切りのようなコアの根っこのポジションってのは何処でも残高足りなくて困っている筈ですから、根っこのポジションじゃなう上澄みの所が多少動いても、達観すればそれはレンジワークではないでしょうか、とまあそういう風に思うのですがどうなんですかね、ってアタシャ思うので、何ちゅうか昨日も日銀の資産買入で中銀の財務がどうのの話に噛みついたと思うのですが、話がテクニカルに走り過ぎ(婉曲表現)なんじゃないのって思うのよ。

『ご案内の通り、特に影響がある米国の金利は今年の年初から 3 月頃にかけて非常に上昇しましたが、ちょうど点検の発表をした頃から実は落ち着いて、やや低下傾向にあると、こういったようなことがありました。そうした意味から上昇するあるいは下落するといった外部的な要因はあまりなかったということ、それから国内においては、もちろん 12 月から 3 月に向けて点検ということで、その中において長期金利の変動幅がおそらく一つのポイントであろう、と事前には総裁、副総裁の会見などの中で、色々と憶測が飛んだような部分もあると思いますが、そうしたことによって、多少その動きがあったものが確認できて、落ち着いたといったようなことではないかと考えています。』

物凄く一杯説明していますが、別にそういう説明しなくても次に引用する最後の一文だけ説明すれば良いと思うの、政策委員会の政策委員なんですから。

『それからまだ 2 か月程度しか経っていない中において、もう少し動いてほしいような気持ちもありますけども、中長期的に動く要因があるときには動くのではないかなと考えています。』

いや結局の所これだし、水曜日ネタにした(ので火曜に出た)基調的物価で物凄く心配しているのですが、海外(特に米国)が一時的かも知らんけどこんなに威勢よく物価あがってきているのに、日本の基調的物価の方がまたお辞儀しだしているってのを見ると、物凄くイヤーな予感というか絶望がする訳で、要はおまいらがちゃんと物価目標を達成できると皆が思えるようになったら市場なんて暴れ馬になってくれると思うので、そういう話はいいから政策委員会は小手先の技術論を弄するのではなく、物価目標達成に向けて何がどうなのかを考えて頂きたいものだと希求して止みません。

え?物価目標行かないから小手先の技術論で誤魔化して(爆発音の為以下聴取不能)。



・コロナオペ延長関連なのですが別に気になることもありまして

さきほどの質疑の次がこれでした。

『(問) 現状のコロナの経済に与える影響の見通しについてなんですけれども、懇談の中でもお話がありましたが、やはり現在の緊急事態宣言の延長などの話なども受けて、鈴木審議委員自身として下振れリスクについてどのように考えていらっしゃるか、あとやはり今コロナオペの対応がかなり地域金融機関にも、影響、効果を与えているようですけれども、その延長について現時点では 6 月期限となっていますが、委員自身として、延長の考えについてどのように考えていらっしゃるか、その辺りの受止めをお願いします。』

答えが割と一々長いのが今回の会見の特徴ではあります。

『(答) まず、緊急事態宣言、これが更に延長されるのではないかという観測もあるわけですが、新型コロナウイルス感染症が変異株の増加を伴いつつ拡大する中で、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの公衆衛生上の措置が講じられているわけで、こうした中、当面は、個人消費は対面型サービスを中心に低めの水準で足踏みした状態が続くとみています。一方で、財の消費は堅調なほか、世界経済が総じてみれば回復しているもとで、輸出は増加、前回出た数字は伸び、金額とも非常に高いものでしたが、企業の収益が改善し、設備投資が持ち直すなど、所得から支出への前向きの循環メカニズムも徐々に働き始めていると考えています。こうしたもとで、当面の経済活動の水準は、対面型サービス部門を中心に、感染症の拡大前に比べて低めで推移するものの、その後は、回復していくだろうとみています。ただし、以上の見通しについては、感染症の影響を含めて、不確実性が大きいと認識しています。特に、当面は、変異株を含めた感染症の動向や、その経済動向への影響に注意が必要であり、下振れリスクが大きいと考えています。また、経済のリスク要因が顕在化すれば、物価にも相応の影響が及ぶ可能性があり、引き続き、経済・物価の動向をしっかりと注視していきたいと考えています。』

って説明が一々クッソ長いのですが、それさっきの金懇挨拶で全部説明してるやんという感じで、結局鈴木さんがどう見ているのかという判断に関する説明が無いようにしか見えんのですよ。だったらこんなに細かく説明せんでもよかろう、と思うんですが何でこんなに長広舌になるのかが良く分からん。新しい話で長広舌になるならまだ意味は分かるのだが、金懇挨拶の繰り返しを長広舌する意味is何??????

でもって後半のコロナオペ延長の件、

『コロナオペの延長ですけれども、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出されており、当面の経済活動は、低めで推移するとみられます。こうした状況で日本銀行では、感染症の影響への対応として、昨年 3 月以降、「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム(特別プログラム)」を含む強力な金融緩和措置により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めてきており、引き続き、これらの措置をしっかりと実施していくことが重要であると考えています。「特別プログラム」は、現時点では、本年 9 月末が期限となっていますが、必要があれば、更なる延長も検討します。そのうえで、具体的な判断のタイミングについては、今後の情勢を踏まえて適切に考えていきたいと思います。』

あんまり新しい事は言ってないのですが、まあこの部分に関しては「コロナモードだから延長方向のバイアスはありますなあ」というのは読み取れるので主張としては分かります。

ただですな、例えばFEDちゃんの場合って声明文冒頭にまだ「感染症が経済にアカンタレ」の文言を入れたままですが、(それはFEDの決定マターではないにせよ)パンデミック何とかプログラムが段階的に廃止され、んでもって威勢の良い見通しが出てきてて、でも金利は上げないと言いつつもテーパリングに関しては金利とは別という切断工作を絶賛実施中(かどうかはアレですが私はそう判断する)というので話が繋がっているのですが、日銀の場合、政策の方はというと3月には「追加利下げを可能にする政策決定」という緩和バイアス、4月の展望はやたら威勢の良い先行き見通し(前向きの循環メカニズムね)、コロナの話になると延長延長って感じの話、と結局おまいらは何をしたいのかというのがまー繋がっていないので、いやまあコロナオペ延長なら延長で良いのですが、7月の展望レポートでどういうの出してくるのかとの整合性というのをこれまたみてみたい気がしますな、あっはっは。

『午前中の懇談会の中でも、経済界、金融界、様々な方に共通してありましたのは、やはり足許の資金繰りは落ち着いていて、現時点における資金需要はそれほど強くないということですけれども、今後返済が始まる時期が近付いてきます。そうした時期に、実際にキャッシュフローが十分に戻ってきていない、そういう中で返済が始まるというのは当然また新しい資金繰りの厳しさというものが出てきますので、その際に、色々とサポートするような施策などを検討頂きたい、このようなお話もありましたので、そうしたことも踏まえて当面は 9 月に関しての延長云々ということを考えるのだろうと思います。』

まあ良いんですけど震災手形の二の舞は勘弁ね。

後の方でコロナオペの質問が再度出ています。

『(問) コロナオペなどの資金繰りについて追加の質問をさせてください。先ほど、返済期限が近付いてきた時にまだ十分売り上げなどが戻っていなくて、今は落ち着いている資金繰りが再び逼迫するかもしれないという声があったというご説明だったと思います。その場合、つまり中期的には資金繰りの支援が 9 月で終わってはまだ不十分で、また延長する必要性が高まっているというご認識なのかというところと、あるいは、何か新しい手立てが今後必要になってくるということなのか、その辺りについて鈴木委員のお考えを改めて教えてください。』

ふむふむ。

『(答) 昨年の春以降、急速に売り上げが減少し、常に出ていく支出があって、資金繰りに窮するという、特にサービス業を中心とした厳しい状況がある中において、政府・日本銀行では、企業の存続と雇用の維持ということを最大の目標として、資金の潤沢な供給、それから貸出の支援ということで、様々な施策をとってきました。ご質問のように、様々なリスク要因がありますが、今もワクチンが徐々に進んでいて、(65 歳以上の高齢者の 1 回目の接種率では)午前中に懇談会を行った山口県は全国第 2 位、第 1 位は確か和歌山県だったと思いますが、東京では私のところにはまだ接種券が届いていないですけれども、それでも(全国でみて 1 日当たりの接種回数が)100 万件にはまだ届かないにしても、50 万件を超えてくるとか、徐々に増えているということですので、いずれ収束に向かってくると思います。』

説明が長い。

『ただし、その時点で、先ほどのご質問にありますように、収束に向かってきても、従来の財務体質から比べれば借入が非常に多くなっている中において、キャッシュフローが従来よりも大きく増えていればいいですけれども、なかなかそうもならない状況になってきた時に、今までとは違う形での資金繰りの厳しさが出てきます。』

なるほど。

『その時点において、また違った形の様々な貸出促進支援といったようなことを、将来の政策がどうなるかは分かりませんし、現時点では何も決めておりませんので、申し上げられませんけれども、その時点で必要な政策を考えていくことになるかと思います。』

うーんこの、この思想って一歩間違えると震災手形だし、かといって何もしないとハードランディングになってしまうかも知れないのだが、この辺の話ってどういう整理になってるのでしょうかね。米国の場合はバジョット・レートで貸出をするけどアベイラビリティは提唱して進ぜよう、というスタンスで緊急なんとかパンデミックファシリティを設定しましたけど日本の場合はゼロセロ融資みたいにサービスレートでぶっこんでいるのが大違いなんですよね。


とか何とかやってたら最初のアタクシの与太演説が長くて時間が無くなったのでこの辺で勘弁。会見でも特にハッチャケることは無く、まあ普通に執行部寄りの発言をしてたな、って感じでした。






2021/05/27

お題「鈴木審議委員山口金懇は政策には無関係だが別の感想が起きたわ/指標金利改革関連メモ」

これは新手の文春砲・・・・・なのか??
https://bunshun.jp/articles/-/45703
IOC重鎮委員が独占告白「菅首相が中止を求めても、大会は開催される」
「週刊文春」編集部
source : 週刊文春 2021年6月3日号
genre : ニュース, 社会, 政治

しかしまあ何ですな、
https://jp.reuters.com/article/jp-economy-idJPKCN2D70YK
2021年5月26日6:26 午後
政府景気判断、5月は下方修正 緊急事態で消費に弱い動き=月例経済報告

4月に先走って展望レポートの経済見通しを上方修正させた日銀は何処に逝く??

#ちなみに「あれは中長期の見方なので足元は知らんがな」というのが日銀の回答になると思います

〇鈴木審議委員の金懇だが鈴木スペシャル部分だけしか鑑賞しませんよ!!!

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko210526a.htm/
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko210526a1.pdf
【挨拶】わが国の経済・物価情勢と金融政策
山口県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 鈴木 人司
2021年5月26日

ということで鈴木さんの金懇ですが、珍しくも既に今朝の時点でHTML版が出ているという素早い展開になっておりますが、このHTML版が出るタイミングって一定じゃないのがいつも不思議で、いや別に一定である必要は一切ないのですけれども、そうは言ってもタイミングが違うと何かその裏にあるんじゃないのとか思ってしまいたくなる程度には陰謀脳なので、この謎をいつか解明できたら、と思うのでありました。

以下引用は(テキストに落としやすい)HTML版の方から行います(HTMLでもPDFでも同じですが、半角数字とかの扱いが若干異なって出て来る)。

・経済物価情勢と金融政策の話の途中までは恐ろしい事に完璧な大本営発表

『2.最近の経済・物価情勢』ってコーナーがある訳ですよねこれが。でまあこの『(1)経済情勢』、『(2)物価情勢』と来るんですが、これがまあ見事なまでに大本営発表になっておりまする。でもって『(3)経済・物価の見通しとリスク要因』も完全に大本営発表に一致という代物。

そしてその次の『3.金融政策運営』ですが、これがまた『(1)感染症拡大の影響を踏まえた対応』ってのと『(2)より効果的で持続的な金融緩和』が完璧なまでに大本営発表になっている、という代物になっておりました、なんか鈴木さん元気が無いのか闘志失ったのか元々闘志無かったのか存じませんが、何ちゅうかもう無茶苦茶「枯れた」金懇挨拶になっているのよね。

まあ金懇挨拶の方で「枯れた」話をしておいて、会見Q&Aの方で盛大にぶっこんで来る(かつてで言えば亀崎審議委員辺りが得意技としていた印象がある)という可能性はあるにはあるのですが、不覚にも金懇挨拶見た時点で会見ヘッドラインを見る気を失っていて、会見ヘッドライン碌すっぽ見ていないので(でもまあ赤いフラッシュも出て無かったからお察しですかねえ)、一応会見テキストが出るまでその辺の判断は保留しておく。

で、これがまたPDF版で見た方が分かりやすいのですが、今回の鈴木さんの山口金懇ですけど、挨拶テキストが本文12ページと6行ありまして、うち最初から9ページまでが大本営発表のコーナー、10ページ目に鈴木さんのご見解がやっと入るのですが、最後の3行目からはご当地経済コーナーに入ってしまう、という構成になって、要するにPDFの10ページ目の部分だけしか読みどころがない、という全俺が泣く物件となっております(号泣)。

まあ気を取り直して鈴木さんの御主張を拝読する訳ですが・・・・・・・・・・・


・ということで鈴木さんスペシャルは1ページだけである

一応このコーナー、『4.「より効果的で持続的な金融緩和のための点検」を踏まえて』ということで、この金懇挨拶の構成上で言えば大項目の見出しになっていて、独立した章になっておりますので、それなりには書いてあるにはあるのですが、何せその前の(PDFベースで)9枚分に渡って延々と繰り広げられる大本営発表を読んでいると、それはそれで何かないかと鵜の目鷹の目で講演テキストを読む変態のアタクシとしては渾身のスイングが空振りして腰痛になるような感じでそこに辿り着くのでありました(ただの個人の感想です)。


『続いて、以上の政策対応についての私の考え方をお話ししたいと思います。感染症の影響もあり「物価安定の目標」の達成までにより多くの時間を要すると見込まれる状況にある中、金融緩和の持続力・機動性を高める今回の対応はいずれも望ましいものであると考えています。』

望ましいのかよ。ってか持続力高めたかったらマイナス金利のYCCなんて止めてゼロ金利政策に強力な時間軸で2%物価目標達成への強いコミットメント、に一本化した方が何ぼかええかと思いますがね。まあそれはそれとして。

『以下、(1)イールドカーブ・コントロール、(2)ETFおよびJ-REITの買入れ、(3)金融システムの安定、の3点について具体的にお話し致します。』

だそうなので聞いてみるのですが・・・・・・・・・・・・・


・YCCの説明がちょっと・・・・・・・・・・・・・

『まず、イールドカーブ・コントロールについて長期金利の変動幅が±0.25%程度であることを明確化したことは、債券市場における価格安定化機能を維持するうえで重要です。』

安定化どころか動きませんが。

『債券市場には、銀行や年金・保険のようにそれぞれの運用ニーズに応じた年限の債券を長期保有する参加者に加え、アービトラージャーやスペキュレーターなどの投資家が存在しますが、こうした投資家は、イールドカーブ・コントロールの導入により金利変動が小さくなったことで収益機会が失われ、かなりの数が市場から去ったと言われています。金利変動が戻り、こうした投資家が市場に留まれば、相場が大きく動く局面で価格安定化機能を果たすことになります。』

あのですね、そもそも論として債券市場(金利市場)の他の市場と違う所って、金を調達する方々が落として下さる金利というのがあって、それは何らかの形で市場の中の人に分配されて実はプラスサム、というのが金利市場のオイチイ所(なおここで債券ってデフォルトするじゃんと言われると話がややこしくなりますが、デフォルトするような債券の場合はそれに見合うより高い金利を払ってる、ということで強引に整理させてくれ、あとファンディングコストの話もパスさせてちょ、汗)でありまして、低金利政策やら、あまつさえマイナス金利政策ってえのは、その「市場全体に残るプラスサム部分」を著しく減らすことになる訳でして、市場全体としてそういうプラスサムが無くなれば、そらあーたキャピタルゲインで取返しに行くレッドオーシャンな世界に突撃するという事になりますが、別に債券でスペキュレーションなりアービトラージしなくたって、別のより稼ぎやすい市場があれば、そらおめーそっちに行くわ、という話しであって、ハナクソにもならない金利が高々50bp、しかも実際にはそんなにも動かん、という状況の市場に対して参加してもしなくても良い方が何でわざわざ参加するねん、と思うのですよね。

ついでに申し上げると、上記の鈴木さんの説明もナンジャラホイで、「プラマイ25bpの変動幅を明確化したのは価格安定機能に重要」→「価格が動くので(今価格安定機能に重要と言った口が急に動くと言い出す)スペキュレーターなどが参戦してくる」→「この人たちがいると価格が大きく変動した時にクッションになるから大きく変動しない(別にいつもクッションになる訳ではないんですけどねえ)」という三段論法になっていて、この理屈意味わからんとしか申し上げようがありませんわ。

しかしその次が更にイミフ。

『また、金融システムの安定にも資するものであるとみています。』

何でや、ローワーフォーロンガーはサーチフォーイールドの動きを招きやすいからファイナンシャルスタビリティの面からは副作用がある、ってのあのFEDですら(昨日ネタにした議事要旨の議論にありますように)ゆうとるやん。

『すなわち、預金の増加が貸出の増加を大きく上回っている状況が続き、国内銀行による余剰資金の運用ニーズが益々高まっている中で、10年物国債金利が±0.25%程度の範囲で変動することは、絶好の買い場と売り場があることを意味します。』

ちょwwwwwwwwwwwwwwwwww

え−っとすいません、相場ちゃんってのは売り手と買い手が合致しないと値段が付かんのですけれども、「絶好の買い場」「絶好の売り場」などというものが絶対的に存在するのであれば、その時には反対売買をしようとする人は居ないので取引が成立しない、つまりそのような「場」は発生しえないと思う、というのが現場叩き上げ(しかも叩かれているだけで上がっている訳ではありませんあっはっは)おじさんのワイ思うんですけどね。

まあこの面白記述を見て色々と思い出すトラウマも含めて(笑)、なんか色々な妄想が沸いて出てきますが、「絶好の売り場、買い場」とか言いますと、先物日計りで今日はレンジだ小動きだとか言って5銭10銭抜きをくりかえしていたら材料が出て1円持っていかれる人の姿を思い出してみたり、引け後にその日やられたディーラー捕まえてイントラデイチャートを見ながら「何だお前マイナスかよ、こういう相場はだな、ここで買ってここで売っておけば儲かるじゃないか何でやられるんだ」とか大真面目に(ギャグで言うのではない)言い出す偉大なる上司様(嘘のようだがガチでそういうのが世の中にはたぶんあちこちであった、今はどうだか知らん)とか、そういうのを思い出すわけでございまして、いや何か書いているうちに変な汗が出てきたから次に進むわw

『これをどう活かせるかは各金融機関次第ですが、市場機能が働く中で運用ニーズが満たされることは、金融システムの安定維持にも寄与するものと考えています。』

「これをどう活かせるかは各金融機関次第ですが」の言葉に、引け後にイントラデーチャートを見ながら部下に説教(以下同文)。


・ETFの買入で財務健全性の話をするのは良いのだがそもそも論が置き忘れられている件について

『次に、ETFおよびJ-REITの買入れについては、日本銀行の財務健全性にも配慮しながら実施していくことが重要であると考えています。』

はあそうですか。

『日本銀行では、2%の「物価安定の目標」を実現する観点からETFおよびJ-REITの買入れを行っており、もちろんこれは引き続き必要な施策です。』

全然達成していないのですから、もしかしたら不要なのではないか、という論点は発生しないのでしょうか??????

『もっとも、日本銀行の負債の大宗は国民の預金を原資とする日銀当座預金や発行銀行券であることから、』

え???なんかそれ違くね????????(「国民の預金を原資とする」って部分ね)

『伝統的には、買入れる資産は元本リスクのない国債を中心としてきました。』

そうではなくて、中央銀行が個別資源の配分に関与するというのは、形を変えた政府部門による財政政策である、という観点からして、本来財政政策というのは選挙の手続きを経て国民の負託を受けた立法府がその内容を決定すべきものであり、そのプロセスをすっ飛ばして個別資産の購入、すなわち民間における個別資源配分に関与する、というのは宜しくないんじゃないの、ということから国債という個別資源の配分に関与しないものを買う、ってことでネーノと理解しておったのですが。

まあ散々ここまで買っておいてからそれを言い出すというのは、大和特攻菊水作戦とか言ってる時に、「そもそも北支介入工作を起こして日華事変を招いたのは間違い」とかいう位には手遅れの議論ではあるのですけれども、そもそも論としてそっちの方をもうちょっと議論してくれんかなと思いますし、そういう発想が無いから、次から次へと資源配分をゆがめるような面白付利制度みたいなものを突っ込んだ挙句に更に拡大とかするんでしょうなあと思うのであって、中銀としての矩がどうのこうのって意識皆さん(皆さんというのはポンコツの皆さんだけじゃなくて中にいる優秀なるスタッフの皆さんも含む)完全にすっ飛んでませんか、と外野から見てて心配したくなりますね。

『日本銀行では、引当金を計上する扱いにするなど財務健全性のための手当てを講じていますが、保有するETFやJ-REITの残高が増加するにつれ、財務面への影響は大きくなっていきます。このため、ETFおよびJ-REITの買入れについては、市場が大きく不安定化した場合には思い切って大規模な買入れを実施する一方、平時においては買入れを控えるという柔軟な運用を行うことで、残高の増加ペースを極力抑制していくことが望ましいというのが私の考えです。』

増えるなら結局駄目じゃん。

『この点、3月の点検の結果を踏まえ、市場の状況を見極めながら、従来以上にメリハリをつけた買入れを行う旨をより明確にしたことは適切であったと考えています。』

適切というより「やらないよりはまし」というだけの話ですけどね!!!!!!!!


・金融システムの安定って話まで見て思うんですけどね・・・・・・・・・・

『続いて、3点目の金融システムの安定についてです。』

へいへいそうですか。

『今後、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、「より効果的で持続的な金融緩和」を粘り強く続けていくこととなりますが、金融緩和政策が効果を持続していくうえでは、金融システムの安定維持が不可欠です。』

というのは理屈としてはそうなんですが、現実問題として今の金融政策が貸出ルートから効果が出てどうのこうのって話になってない(散々低金利政策をやっていて前借する需要も前借しきって100年後くらいの需要しか前借できんのとチャイマスカ状態)としか思えず、そらまあ金融機関が貸出しませんよ状態になったら困るのはそうなんだが、そこまで大仰に言う話でもなくて、単に「金融システムがおかしくなるとまた貸し渋り貸しはがし時代がよみがえるのでそれはアカンヤロ」位の話だと思いますな、まあどっちでも良いけど。

『このため、金融緩和が経済・物価にもたらす効果はもとより、時間の経過とともに累積していく金融仲介機能や市場機能への副作用についてもつぶさに評価を行っていく必要があります。』

先生!きちんと評価したらこんな政策になっていないと思います!!

『この点、3月の点検を踏まえ、先ほどご説明した3つの政策対応に加え、「展望レポート」を決定する金融政策決定会合において、金融システムの安定確保を担う金融機構局からも報告を求めることとしました。これは、金融システムの安定を考慮しつつ金融政策運営を図ることをより明確にする、大変重要な決定であったと考えています。「物価の安定」と「金融システムの安定」という、日本銀行の2つの使命を果たすべく、引き続き、適切な政策運営に努めて参りたいと思います。』

まあ組織として正式に会議体に加わったという意味では重要なんだが、仏作って魂入れなかったらそれはただの木偶の坊って奴なので(あんまり言ってると何なので以下自主規制)。


・・・・・・・とまあこれで鈴木さんスペシャルは終了してしまった訳ですが、うーんまあ何と申しますか、この一連のスペシャル見てて思うのですが、これは鈴木さんがどうこうというのではなく、全体としての日銀の今のボードとかの傾向だと思うんですが、「そもそも中央銀行のプリンシパルってナンジャラホイ」というような「中央銀行としての矩」みたいな議論が思いっきり欠如していて、そのために反対論についてもETF買入で中銀の財務健全性とか、いや本質的な問題はそっちじゃないだろ、というような感じで、話が技術論に走り過ぎ、というかまあ口悪く言えば枝葉末節のテクニックばっかりで、枝葉末節のテクニックが過ぎるもんだから、政策の方が昭和温泉旅館絶賛大建て増し建築になっている、というのもそういう所にあるんだろうなあ、と鈴木さんの金懇挨拶の鈴木スペシャル部分を見て思うのでありました。



〇そういやLIBORちゃん

https://www.boj.or.jp/paym/market/jpy_cmte/cmt210525a.pdf
「日本円金利指標に関する検討委員会」第22回議事要旨
(2021年4月27日(火)16時30分〜17時30分、電話会議)

何か今回の議事要旨盛り上がってるじゃんという感じで、ここもと何か淡々と報告って風情だったのですが、期日が近くなると急速に盛り上がるのは人間の本性なのでこれはこれでそういうもんです。

でまあこの辺の話はアタクシ的には正直知らんがな状態なのでアレなんですけど、議事要旨ちゃん読み物としては中の細かい意味が分からなくても2ページ以降は面白い(とかいうとちょっと不謹慎の香りはしますけれども)という感じでして、2ページ目の頭に『4.LIBORの算出・公表停止に向けた日本証券クリアリング機構の対応』ってのがあって、そこの意見がほっほーと思いました、引用しますとですね、

『● 証券会社メンバーからは、「LIBOR参照スワップのOISへの一括変換における、変換基準日を跨ぐ計算期間の取り扱いについては、JSCCとLCH、CMEとの間で相違がみられる。具体的には、変換前に対象計算期間のLIBORが公表されている場合、LCHとCMEでは当該LIBORで金利計算・支払いを行う方向で検討を進めているのに対し、JSCCではTONA OISで金利計算・支払いを行う方針としている。この点、JSCCは今後、LCH、CMEと平仄を合わせていくのか」との質問があった。これに対し、JSCCから、「ご指摘の点を含め、現在、市場参加者へのヒアリングを通じて検討を進めている」とのコメントがあった。』

ってのがありまして、この手のプロジェクトって雲の上の人たちは「LIBORのやりかたはアカンので直しましょう」の鶴の一言で済むのですが、実際にこういうのを移行する、と言う話になると、この手の細部の詰めが必要、というのがプロジェクト進んでいく内にボロボロと判明するんですよね。でまあそういうのが判明した時に、上記の件だと手戻り案件まで行かなさそうな気もします(ただのヤマ勘ですすいません)けれども、まあプロジェクト進めて行って実際のリリースに近くなって来るとボロボロと手戻り案件になりそうなもんが出て来たりする、というのが往々にしてある話で、やっぱり指標金利改革関連でもそうなるわなーとか思うのでした。

でまあその辺をちゃんと詰めないでエイヤーでぶっこむと、リリース直後にコケる方がまだマシな部類で、しばらくしてから重大な不具合が見つかるが今更これどうすんだよ状態、というのが起きたりするのが世の中オソロシスだったりするので、軽微と思われるのはシャーナイにしても、そうじゃ無いのにエイヤーは止めて下さいね、と申しあげておきたいです。

あとちなみに、こっちはニュースネタにもなっていましたが
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210519a.htm/
第2回LIBOR利用状況調査の結果概要について
2021年5月19日
日本銀行

『金融庁と日本銀行は、合同で、金融機関(銀行・証券・保険等)を幅広く対象とした「LIBOR利用状況調査」(2020年12月末基準)を実施いたしました。

「LIBOR利用状況調査結果概要」 [PDF 353KB]』

ってのがあって、調査結果概要に関してはこちらにございますな。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/data/rel210519a.pdf
LIBOR利用状況調査 結果概要
令和3年5月19日 金融庁・日本銀行






2021/05/26

お題「基調的な物価ェ・・・・・/FOMC議事要旨続きを読んだがこれ利上げとテーパーの分離工作してねえか(個人の邪推です)」

和歌山県クオリティ高す。
https://www.ktv.jp/news/articles/6af8b8fb_cc22_4707_a3d8_3e2ed2623f34.html
高齢者のワクチン接種率…全国1位は「和歌山県」 その理由に「診療所の数の多さ」が関係か
05月25日 18:58 (関西テレビ放送グループ カンテレ)

『【和歌山県 仁坂吉伸 知事】
「別にワクチンをたくさんくれたからこうなったのではなくて、くれたものを片っ端から打っているからこうなんです。どんどんやってやれるところは打って打って、どんどん打って(一般の接種まで)早く終わらせる」』

『【和歌山市新型コロナワクチン接種調整課 本間照生 課長】「配送計画を立てて、医療機関にどれだけのワクチンをお届けできるかというような情報も、細やかな部分で連絡をさせていただいている」

また、医療機関が少しでもスムーズにワクチン接種ができるよう、注射器や針などをわかりやすく袋詰めにして配送する心遣いも…』(以上、上記URL先より)


〇戻りかけていたようだった基調的物価ちゃんに暗雲がががががが

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

さてと長期時系列になっているから直近の動きがみにくいグラフでも見るか、とPDFちゃんの方をポチっとなとすると、

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
消費者物価の基調的な変動

・・・・・・なんか直近の数字が垂れてねえか???と思ってエクセルちゃんの方を落として数字を見ると以下の通りとなりまふ。

こちらの数字は左から順に、刈込平均値(前年比、%)、加重中央値(前年比、%)、最頻値(前年比、%)でありまする。コロナ前から出してみようと思ったので直近2年分、としましたけどダンダラが長くてサーセン。

May-19 0.7 0.2 0.3
Jun-19 0.6 0.2 0.3
Jul-19 0.6 0.2 0.3
Aug-19 0.4 0.0 0.2
Sep-19 0.3 0.0 0.2
Oct-19 0.3 0.0 0.3
Nov-19 0.2 0.0 0.3
Dec-19 0.3 0.0 0.2
Jan-20 0.3 0.0 0.3
Feb-20 0.2 0.0 0.3
Mar-20 0.1 0.0 0.2
Apr-20 -0.1 0.0 0.3
May-20 0.0 0.1 0.3
Jun-20 0.1 0.1 0.3
Jul-20 0.0 0.1 0.1
Aug-20 0.0 0.1 0.1
Sep-20 -0.1 0.1 0.2
Oct-20 0.0 0.1 0.3
Nov-20 -0.1 0.1 0.1
Dec-20 -0.3 0.0 0.1
Jan-21 -0.3 0.0 0.1
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 0.0 0.1 0.1
Apr-21 -0.1 0.1 0.1

こちらは左から、上昇品目比率(%)、下落品目比率(%)、上昇品目比率−下落品目比率(%ポイント)、となりますが、品目比率の方をみますと、プラス維持はプラス維持なんですが・・・・・・・

May-19 58.7 33.5 25.2
Jun-19 59.5 32.5 27.0
Jul-19 59.8 32.7 27.2
Aug-19 59.5 33.1 26.4
Sep-19 59.1 33.1 26.0
Oct-19 59.5 38.8 20.7
Nov-19 62.1 36.1 26.0
Dec-19 60.2 38.0 22.2
Jan-20 61.8 36.5 25.2
Feb-20 60.0 38.4 21.6
Mar-20 57.9 40.5 17.4
Apr-20 58.3 39.2 19.1
May-20 59.1 38.6 20.5
Jun-20 59.7 38.0 21.6
Jul-20 54.9 42.4 12.4
Aug-20 53.7 43.6 10.1
Sep-20 56.0 41.3 14.7
Oct-20 54.9 36.5 18.4
Nov-20 51.2 40.2 11.1
Dec-20 48.0 43.6 4.4
Jan-21 51.2 40.7 10.5
Feb-21 52.4 39.8 12.6
Mar-21 52.2 40.2 12.0
Apr-21 51.8 40.5 11.3

・・・・・・・昔は「4月は価格改定が行われるチャンスなのでどうのこうの」とか教わった気がしますけれども、最近はそういやそういう話もついぞ聞かなくなったなあという所(ちなみにアタクシは自分ではその経験がないですが、子供の頃毎年3月末に駅の定期券売り場が長蛇の列になるニュースというのを見ていたのは記憶にありますのでインフレを知る人間(キリッ)です)でございますけれども、昨年の終わりごろが一番アカンタレでそこから戻って来た!と思わせておいてのこのタレっぷりに落涙を禁じ得ませんが、物価に関するこの辺の数字は単月比較だけだとノイズが混じりやすいので、まあ今回のも一発だけなら誤射かもしれない理論を採用しておくとしますが、展望レポートで威勢よく前向きの循環メカニズムとか変なキノコでもキメたかのような景気の良い見通しをかくもんだからこんなフラグに以下いつもの悪態。



〇今更ネタばっかですいませんがFOMC議事要旨をもうちょっと読む

そういや何か先週水曜木曜の不具合は接続業者のところでトラフィックが輻輳してただのなんだのという話だったようでアタクシスペシフィックな現象では無かったようでした。一応対策はしたとサポセンは言ってたですわ。

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20210428.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
April 27-28, 2021
A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors was held by videoconference on Tuesday, April 27, 2021, at 9:30 a.m. and continued on Wednesday, April 28, 2021, at 9:00 a.m.1

毎度の『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』ですが物価の所はさすがに今回(というか暫く)は注目だから備忘の為に引用しておかねばなるまいて、と思うので、個別コンポーネントの話はさておいて労働市場と物価の議論部分を見る次第。

まずは労働市場。

『Participants commented on the continued improvement in labor market conditions in recent months. Job gains in the March employment report were strong, and the unemployment rate fell to 6.0 percent. Even so, participants judged that the economy was far from achieving the Committee's broad-based and inclusive maximum-employment goal.』

労働市場に関しては相変わらず「顕著な改善をしているがマンデート達成には程遠い」という出オチのような書きっぷりになっていますが、ここで最大雇用に関する文言が「inclusive maximum-employment goal」とインクルーシブが入っているのがお茶目。

『Payroll employment was 8.4 million jobs below its pre-pandemic level. Some participants noted that the labor market recovery continued to be uneven across demographic and income groups and across sectors. 』

アンイーブンリカバリーだからインクルーシブな改善が必要だという話ですな。

『Many participants also remarked that business contacts in their Districts reported having trouble hiring workers, likely reflecting factors such as early retirements, health concerns, childcare responsibilities, and expanded unemployment insurance benefits.』

この前のブレイナード講演(CBDC関連じゃない方)でやたらチャイルドケアの話をしていましたが、「働きにいけない制約」が労働者の方にあるので、雇用者のほうでも人を雇いにくいモードにある、とのお話で、その要因が早期退職制度、感染への懸念、子育て要因(託児サービスの停止)、失業給付の拡大で働かなくても良いや状態、というのを挙げていますな。

『Many participants noted as well that these factors were depressing the labor force participation rate, relative to its pre-pandemic level. Some of these factors were seen as likely to remain significant while pandemic-related risks persisted.』

このうちの一部の要因はパンデミックが収束すれば昔に戻るでしょう(ってことは裏を返せば戻らんファクターもあるちゅうことかよって感じですな)って認識。

『Based on reports from business contacts, some participants noted that the step-up in demand for labor had started to put some upward pressure on wages. Moreover, over the medium term, participants expected labor market conditions to continue to improve, supported by accommodative fiscal and monetary policies as well as continued progress on vaccinations, unwinding of social distancing, and the associated recovery in economic activity. A couple of participants remarked that businesses in industries severely affected by the pandemic were downsizing or that some businesses were focused on cutting costs or increasing productivity, particularly through automation.』

既に労働需給の逼迫から賃金上昇の圧力が見られる指摘が数名の参加者からされていたり、今後中期的に見れば労働市場は一段と改善するでしょう、その要因はコロナ関連の色々な制約が無くなっていくことによりますよね、とか先行きに関しては強気の話をしております。そらそうだって感じでかもしれませんけど。

最後の2名の指摘ですが、ここも書きっぷりに味わいがあるというか、そういう論点でぶっこんできたのだと思うのですが、一部のイカレポンチ状態のコロナ直撃チームにおいては、特にコストカットとか、自動化による生産性の向上を行っている、という話を入れてきてて、プロダクティビティーがアガランチ会長というのはプレパンデミック時代における物価がアガランチ会長自体のネタでもあったので、こういう表現をすると前向きに捉えている、という読み方になってしまいますなアタクシは(個人の感想です)。


では肝心の物価。

『In their comments about inflation, participants anticipated that inflation as measured by the 12-month change of the PCE price index would move above 2 percent in the near term as very low readings from early in the pandemic fall out of the calculation. In addition, increases in oil prices were expected to pass through to consumer energy prices. Participants also noted that the expected surge in demand as the economy reopens further, along with some transitory supply chain bottlenecks, would contribute to PCE price inflation temporarily running somewhat above 2 percent.』

てな訳で物価ちゃんの方は目先暫くはエネ価格の上昇がパススルーされることに加え、一部のサプライチェーンのボトルネックというテンポラリーファクターがあって2%を暫く上回る時期が続くでしょうと。

『After the transitory effects of these factors fade, participants generally expected measured inflation to ease.』

いつも通りの見通し。

『Looking further ahead, participants expected inflation to be at levels consistent with achieving the Committee's objectives over time. A number of participants remarked that supply chain bottlenecks and input shortages may not be resolved quickly and, if so, these factors could put upward pressure on prices beyond this year.』

今年中はさっき言った色々な一時的ファクターが続くでしょう、という見通しになっていまして、

『They noted that in some industries, supply chain disruptions appeared to be more persistent than originally anticipated and reportedly had led to higher input costs. Despite the expected short-run fluctuations in measured inflation, many participants commented that various measures of longer-term inflation expectations remained well anchored at levels broadly consistent with achieving the Committee's longer-run goals.』

サプライチェーンの問題が思った以上に長期化しそう、という企業からはコストカットの動き(=なので物価は上がらん)が見られるだの、様々な計測でみたインフレ期待は上がっていない、という話をしたりしていますな。

ただまあこれ中々解釈に困るのは、このように「2021年中の物価上昇はキニシナイ!」というメッセージが出ているのは良いんですが、まあこう言っている以上緩和縮小には慎重、というのは勿論分かるのですが、じゃあ年末までモノホンに何も出ないのか、という話になるとそれは別で、「顕著な改善に向けた進展」があれば落とす予定になっている買入ペースちゃん、即ちテーパリングに関してはこれ別問題だよね、という風に思えること。

というのは、さすがに今の状況が続いて年末までテーパリングの話が全くでない、というのはさすがに市場も思っていない(ですよね?)訳なので、そこで「しばらくの間」じゃなくて「年内いっぱい」とかまで話を伸ばしているのって、まあ物価が案外素直に下がってこないような感じがする、ってえのもあるんですが、この人たち「利上げ」と「テーパリング」を綺麗に分離しようとして工作してるな、とまあそんなことを思う訳ですよ(個人の感想です)。

これね、雇用も物価もまだまだだよ物価は今上がっているけどテンポラリーだからね、って話をするからには利上げが先である、というのは割と明確なメッセージで出しているのですけれども、逆に今までよりも物価の一時的上昇見込み感を長くとることによって、利上げ話を封印しておいて、でもテーパーはまた別問題、よってテーパーしたから利上げがもう直ぐみたいな事は無いって話しですよ!!!ってな整理に持って行こうとしているな、と思った次第です、まあ個人の感想ですがの世界ですけど。

でまあパーティシパントの雇用と物価の話はここまで、あとはリスクとファイナンシャルスタビリティの話があったから一応引用してみますね。

『Participants judged that uncertainty was elevated and that the outlook was highly dependent on the course of the virus.』

不確実性はウィルス感染症次第、とほぼ出オチですな。

『Amid considerable progress on vaccinations, the unwinding of social distancing, and strong policy support, participants assessed that risks to the outlook were no longer as elevated as in previous months. Nevertheless, some participants remarked that the pandemic continued to pose downside risks to the economic outlook and noted the potential for an uneven recovery in light of new virus strains and potential hesitancy regarding vaccination.』

はいはいコロナのせいで不確実コロナのせいで不確実。

『As upside risks, some participants mentioned that the release of pent-up demand, accumulated excess household savings, and rapid progress on vaccinations, amid continued fiscal and monetary support, could boost economic activity and bring individuals back into the labor force more quickly than currently expected. Some participants mentioned upside risks around the inflation outlook that could arise if temporary factors influencing inflation turned out to be more persistent than expected.』

しかしここで今回の議事要旨お洒落なのは、最初の出オチ部分でコロ助次第で不確実、と言う話をしておきながら、パラグラフ後半ではアップサイドリスクの話がシェフの欲張りサラダって感じで詰め合わせになっておりまして、ワクチンの方がご案内の状況にある(ジャパンじゃないよアメリカだよ)中で、これだけアップサイドリスクを並べるという事は・・・・・・ゴクリ


今回何気にファイナンシャルスタビリティも長広舌。

『Participants who commented on financial stability agreed that the financial sector had shown resilience during the pandemic, in large part reflecting strong policy support.』

金融機関に関してはこのパンデミックの期間中においてもストロングポリシーサポートが功を奏して頑健でございましたよ、だそうです。まあそうでしたな。

『Some remarked that the capital positions and loan loss reserves at large banks remained high, and earnings were strong. A few participants noted that vulnerabilities from both business and household debt were at a moderate level. Nevertheless, a couple of participants highlighted that forbearance programs instituted in response to the pandemic could be masking vulnerabilities among households and businesses.』

企業や家計の状況悪化に伴う債権の不良化などの動きもあるものの、基本的には大銀行中心に資産、資本の質は引き続き良好との認識ですが、一部の委員からは、貸出金のリスケプログラムなどの政策的配慮によって貸出資産の悪化が覆い隠されている可能性を指摘。

『Regarding asset valuations, several participants noted that risk appetite in capital markets was elevated, as equity valuations had risen further, IPO activity remained high, and risk spreads on corporate bonds were at the bottom of their historical distribution. A couple of participants remarked that, should investor risk appetite fall, an associated drop in asset prices coupled with high business and financial leverage could have adverse implications for the real economy. A number of participants commented on valuation pressures being somewhat elevated in the housing market. Some participants mentioned the potential risks to the financial system stemming from the activities of hedge funds and other leveraged investors, commenting on the limited visibility into the activities of these entities or on the prudential risk-management practices of dealers' prime-brokerage businesses. Some participants highlighted potential vulnerabilities in other parts of the financial system, including run-prone investment funds in short-term funding and credit markets. 』

何気にアセットプライスに関する記述が長かったのはちょっとお洒落(これ途中で切りにくい文章構成になっているのでこんな長引用になりましたサーセン)です。ああでもないこうでもないと色々な例を出してて、アセットプライスのバリュエーションがオカシクネ??ってのが色々な方向から指摘でれてますな、

『Various participants commented on the prolonged period of low interest rates and highly accommodative financial market conditions and the possibility for these conditions to lead to reach-for-yield behavior that could raise financial stability risks.』

でもってローワーフォーロンガーの論点について色々な(Various)参加者がコメントした、ってありまして、そうなるとまあやっぱり利上げは先の話と言いながらも、この辺の資産価格がヒャッハー化しないように(既になっている説は措く)となるとやっぱりテーパリングと利上げは別問題という広宣流布が行われた後におもむろにジャクソンホール辺りで来年頭のテーパリングの話が出てくるに10腕時計といった所ですか。


とまあそんな所で時間も無くなったのでご勘弁くださいませ。




2021/05/25

お題「金研コンファランス開催中/CBDCに関するパウエルとブレイナードのお話」

沈む船から真っ先に逃げ出すネズミ仕草にしか見えないですな。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210524/k10013048831000.html
高橋内閣官房参与 退職 「さざ波」「屁みたいなもの」と投稿
2021年5月24日 17時49分

わざと炎上発言を連発して辞職に持ってった、と真っ先に思いつく位には人間が捻くれているアタクシでして、他に動くネズミがでるのか、というのを楽しみに見たいと思います。

相場は動かないわけでもないが達観するとウゴカンチ会長だし、なんか色々と一口頂きましてからその後スルーモードのネタ(4月FOMC議事要旨など)があるような気がするのですが、先入れ先出し精神(ナンジャソラ)に則って流行りのネタ(ただし現世利益に関係ない系)を拾っておこうかと思います。


〇金研コンファランスでのご挨拶はまあネタにもなっていなかったのですが一発ギャグ

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko210524a.htm/
【挨拶】
日本銀行金融研究所主催2021年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2021年5月24日

毎年やっているコンファランスですが、
https://www.imes.boj.or.jp/jp/conference/conf_index.html
コンファランス

今年のお題は、「Adapting to the New Normal」ということで、黒ちゃんの講演も何かとりあえず今世間様的な流行りネタを一通り詰め合わせてお話にしました、って感じではあるのですが、「これを伝えたい!」みたいな気迫は相変わらず無くて、とりあえず通り一遍の話をしておしマイケル、という点検会合実施後から続く(その前からもそうでした、と言ってしまうと身も蓋もないが)消化試合感の強い挨拶になっていますな。

そのネタは後でちょっとだけ。せっかくなので今回の金研コンファランスのお品書きを見てみましょう。

https://www.imes.boj.or.jp/en/conference/2021confsppa.html
2021 BOJ-IMES Conference
Adapting to the New Normal: Perspectives and Policy Challenges after the COVID-19 Pandemic

May 24 - 25, 2021
Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan

・テレカンだから仕方ないけど海外時間に合わせてるのね

ドメドメジャパニーズのアタクシだから一瞬ひるんでしまいますが、(革命歌ではない方の)インターナショナルな皆さまにとっては当たり前じゃヴォケという所なんでしょうが、その代わり時間が短いですね。

『- Program -

Monday, May 24, 2021
Chairperson: Kazuo Ueda, Kyoritsu Women's University and University of Tokyo

20:00 Opening Remarks
Speaker: Haruhiko Kuroda, Bank of Japan

20:15 Mayekawa Lecture: Fiscal Policy under Low Rates: Taking Stock
Lecturer: Olivier J. Blanchard, Massachusetts Institute of Technology

21:05 Break

21:10 Session 1: A Goldilocks Theory of Fiscal Policy
Presenter: Atif R. Mian, Princeton University

21:50 Session 2: Debt as Safe Asset: Mining the Bubble - FTPL with a Bubble & MMT
Presenter: Markus K. Brunnermeier, Princeton University

22:30 End of First Conference Day』

ブランシャールにブルネンマイヤーですかそうですか、って感じでして、アタクシ基本的にドナルド・コーンとかアラン・ブラインダーとか大好きなタイプなもんで、まあ何ともかんともではあります。


『Tuesday, May 25, 2021

Chairperson: Masaaki Kaizuka, Bank of Japan

19:30 Keynote Speech: The Power of Central Bank Balance Sheets
Speaker: Athanasios Orphanides, Massachusetts Institute of Technology

20:00 Session 3: The Nature of Work After the COVID Crisis: Too Few Low-Wage Jobs
Presenter: David Autor, Massachusetts Institute of Technology

20:40 Policy Panel Discussion
Moderator: Kazuo Ueda, Kyoritsu Women's University and University of Tokyo

Panelists:
Gita Gopinath, International Monetary Fund
Charles L. Evans, Federal Reserve Bank of Chicago
Tiff Macklem, Bank of Canada
Philip R. Lane, European Central Bank
Stefan Ingves, Sveriges Riksbank
Masazumi Wakatabe, Bank of Japan

22:30 Concluding Remarks
Speaker: Carl E. Walsh, University of California, Santa Cruz

22:40 Conference End』

ということでノーマルな時だったらこれ1日分ですなと思いますが、それはそれとして1名を除いて錚錚たるメンバーで行われるパネルセッションですが、これはモデレーターの植田先生の差配がどうなるのか楽しみ(と言っても見る訳でもないしそもそもパネル自体は後になっても見れないと思うので知らんがなではあるのですが)ですなあという感じです。

#こういう時に中曽さんがいると非常に良いのですけどにゃあ(麿もなお良し)


で、我らが黒ちゃんのOpening Remarksですが、まあ別にどうという話もしておりませんで、ああそうですねってなもんですが、読んでてちょっとだけウケたのはここですな。

URL再掲
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko210524a.htm/

『私自身、この1年余りの間に数多くのオンラインでの国際会議に参加しましたが、デジタル技術によって、空間を超えて世界中の異なる場所にいる人々と同じ時間を共有し、議論できることの恩恵を強く感じます。実際、今回のコンファランスについても、オンライン会議だからこそ、これだけのメンバーを一斉にお迎えできたというのも事実だと思います。』

・・・・・・・日銀の金融政策決定会合はオンライン会議じゃないからドテカボチャが雁首揃えて愚にもつかない話をしているんですね、わかります!!!

実際問題としてオンライン会議のせいで国際会議みたいなのって無茶苦茶増えたんでしょうねえ、とは思います。

というどうでもよい小ネタでした。


〇またFEDがCBDCネタを連発して投下中の巻(この夏にCBDCについての大部なディスカッションペーパーをだすっぽいよ)

・金融政策に全然関係ないですがパウエル講演:CBDCの発行可能性に関するディスカッションペーパーを夏に出すそうな

先週こんなのがあったのですよ。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/other20210520b.htm
May 20, 2021

Federal Reserve Chair Jerome H. Powell outlines the Federal Reserve's response to technological advances driving rapid change in the global payments landscape
For release at 2:00 p.m. EDT

動画が貼られていて実は文字起こしもあるのですが、それは後程ということで上記の説明ページの方から。

『Technological advances are driving rapid change in the global payments landscape. The Federal Reserve is studying these developments and exploring ways that it might refine its role as a core payment services provider and as the issuing authority for U.S. currency.』

ほうほうそれでそれで?

『"As the central bank of the United States, the Federal Reserve is charged with promoting monetary and financial stability and the safety and efficiency of the payment system," Federal Reserve Board Chair Jerome H. Powell said Thursday in a video message. "In pursuit of these core functions we have been carefully monitoring and adapting to the technological innovations now transforming the world of payments, finance, and banking."』

ということでニューテクノロジーと来ましたので、

『This technology also offers new possibilities to central banks-including the Fed. In particular, it enables the development and issuance of central bank digital currencies, or CBDCs.』

はいはいCBDC。

『A CBDC is a new type of central bank liability issued in digital form. While various structures and technologies might be used, a CBDC could be designed for use by the general public.』

CBDCは一般の皆様の使用を前提にデザインされるものでしょう、と来てからの、

『As the Federal Reserve explores the potential benefits and risks of CBDCs, the key focus is on whether and how a CBDC could improve on an already safe, effective, dynamic, and efficient U.S. domestic payments system in its ability to serve the needs of households and businesses.』

キーフォーカスの中に通貨供給の二重構造の話が無いのはアカンヤロ。

『 "We think it is important that any potential CBDC could serve as a complement to, and not a replacement of, cash and current private-sector digital forms of the dollar, such as deposits at commercial banks," Powell said.』

・・・・・・・と思ったら「not a replacement of, cash and current private-sector digital forms of the dollar, such as deposits at commercial banks,」と仰せになっていて、これ本当の本当にそれでデザインできるのか、ってのがアタクシ的には????な訳ですね。

まあこの部分は人によって見方がかなり異なると思うのですが、まあ大体ご存知の通り何か考えだすと極端方向に振り切った想定を入れるのが仕様のアタクシは、やはり日本における金融機関の経営危機時代だのペイオフ解禁だのという間に、預金保険機構でカバーされるような額じゃない方の額をもったキャッシュリッチな皆様が色々と金融ショックの巻き添え食らうのを逃れようってことで色々な保全措置を使っていましたなあ、というあのもうふた昔前とかになってしまいますが、あの時期の動きってのが印象(トラウマ)として強い訳で、キャッシュリッチなマネーってゆうてみれば臆病ウサギさんみたいに危険を察知して物凄い勢いで早い逃げ足を使うのでありますからして、CBDCぶっこまれたら普通に普通の感覚でそっちにシフトするんじゃネーノとやっぱり思う口なのです。

ということで、最近はCBDCによる通貨供給の二重構造へのダメージは無い、というような話になっている(そらまあそこを壊してしまうと色々とややこしいことになるのでそもそもCBDCをぶっこめない、ということになってしまう)ということで話を進めて行くのが流行りなのかな、とか思っているのですが、いやそこはもうちょっと慎重に考えるべきだろ。

『 "The design of a CBDC would raise important monetary policy, financial stability, consumer protection, legal, and privacy considerations and will require careful thought and analysis-including input from the public and elected officials."』

うーんこの。まあCBDCに置き換わると資産の捕捉が物凄く便利になる、というのもあるのですが、そんなことを前面に押し出していくとアレなお方やソレなお方などの経済(?)活動に差しさわりが生じる、という事実もある訳でして(個人の妄想です)、その話って基本的にぜーーーーーったいに中銀の人達しませんよね。どうしてなんでしょうかねえ(カマトト)。

『Powell announced that the Federal Reserve plans to publish this summer a discussion paper that will explore the implications of fast-evolving technology for digital payments, with a particular focus on the possibility of issuing a U.S. central bank digital currency. The paper will complement Federal Reserve System research that is already underway.』

そしてここでニュースですな。FEDはこの夏にデジタルペイメンツ、特にCBDC発行の可能性にフォーカスしたディスカッションペーパーを発行するそうな。これは夏休みの読書課題になりそうですね(ってワイの夏休みゲフンゲフン)。

『The Federal Reserve System is focused on better understanding the full set of opportunities and risks associated with new digital payment mechanisms. More technically oriented projects, focused on specific tools and infrastructure, are underway at the Board and the Federal Reserve Bank of Boston. The Fed is also collaborating internationally in groups such as the Bank for International Settlements' CBDC coalition.』

技術的な問題に関してはボストン連銀が中心になって研究しているそうです。あと当然ながら国際的な協力もしているとな。

『A video message from Chair Powell on payment innovation can be viewed at: www.federalreserve.gov.』

ってのはこちらです。
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/payment-innovation-message-transcript-20210520.pdf
Transcript of Chair Powell’s Message on Developments in the U.S. Payments System
May 20, 2021

ただ、こちらの講演(というか時間が5分でPDFで3枚ですので講演という程のもんでもないですが)に関しては先ほど引用した纏めのページ(しらっと全文引用しちゃいましたが)の方にポイントポイントは全部書いてあるので、まあ別に読まなくてもエエンチャウノ、と読んだ結果思ったのですが、アタクシの英語力もアレでございますので気になる方は目を通してくんなまし。


・ブレイナード理事もCBDCネタですがこちらは主に論点のご紹介って感じのようですね

ブレイナード理事あっちこっちのネタに首をツッコミすぎィ!って感じですな。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20210524a.htm
May 24, 2021
Private Money and Central Bank Money as Payments Go Digital: an Update on CBDCs
Governor Lael Brainard
At the Consensus by CoinDesk 2021 Conference, Washington, D.C. (via webcast)

小見出しの構成を見ますと、

Sharpening the Focus on CBDCs
Policy Considerations
Technology Considerations
Banking Activities
Public Engagement

ということでして、最初のは最近CBDCへの議論が盛り上がってまっせその背景とは、って話で、Technology Considerationsはまあお察しの話。Banking Activitiesってのは民間金融機関が独自に作るデジタル資産(ステーブルコイン的なサムシング)の話でサラリと触れている感じ。

でもってPublic Engagementってのは実はさっきのパウエルのスピーチでもインクルージョンの話がありまして、最近FEDはこのエンゲージメント話大好きだよねーと思いながらチラ見しました。

てな感じでして、まあアタクシの趣味的にはPolicy Considerationsの所が重要(なお分量もこのコーナーがクッソ長い)のですが、『Policy Considerations』の頭を見ると、

『In any assessment of a CBDC, it is important to be clear about what benefits a CBDC would offer over and above current and emerging payments options, what costs and risks a CBDC might entail, and how it might affect broader policy objectives. I will briefly discuss several of the most prominent considerations.』

ということで最も重要なポイントってことで、こちらには更に小見出しがイタリックで示されていまして、小見出しの中の小見出しをちょっと拝読してみますとこうなります。

Preserve general access to safe central bank money
Improve efficiency
Promote competition and diversity and lower transactions costs
Reduce cross-border frictions
Complement currency and bank deposits
Preserve financial stability and monetary policy transmission
Protect privacy and safeguard financial integrity
Increase financial inclusion


でまあちなみにその中の「Complement currency and bank deposits」って所にさっきのアタクシの疑問の話があって、こちらでもパウエル話と同様に、

『A guiding principle for any payments innovation is that it should improve upon the existing payments system. Consumers have access to reliable money in the forms of private bank accounts and central bank issued currency, which form the underpinnings of the current retail payments system. The design of any CBDC should complement and not replace currency and bank accounts.』

という話になっているのですが、これって当局の方は割と簡単にこういうけど、マネー供給構造の二重構造ってよくよく考えてみると何でやんなシステムでもあって、そのよくよく考えてみると、ってのをしないで済んでいたもののパンドラの箱を開けるようなもんなんだよなーとは思うのでした。

あと、この論点整理見てて思ったのですが、「Promote competition and diversity and lower transactions costs」って話も良く良く考えてみますと、銀行業のうち金貸しじゃなくて為替業務の方って隔地間の決済に対してサービスを提供する代わりに手数料取ったり、送金に関わる日数分の日掛けの預かりによる利息収入的なものがあったり、というようなのが両替商の時代からあった訳でございますし、まあそうなるかどうかは分からん所とは言え、うっかりするとCBDCによって銀行がノンバンクと同様の機能になってしまう可能性もある、というのを考えますと、銀行業務とは何ぞやという深淵(かどうか知らんが)かつ金融業界で飯を食っておりますアタクシとしては首筋の寒い話でもあるなあ、などと思うのでありました。

しかしこちらでもインクルージョンだのジェネラルアクセスだのという話がありまして、うーん銀行業の将来ェ・・・・・・と元々金貸しの手先から社会人生活をおっぱじめたアタクシとしては実家の村が廃村の危機みたいなそんな感慨を覚えるのですが、まあ今の本貫である円貨債券村の方が先に廃村になるからキニシナイ!ということにしておきます(ヤケクソ)。

あ、ちなみに一応ざっとは読んでみたのですが、ネタにすると微妙にダラダラしそうな感じがしたのと単にアタクシの時間の都合上パスします。まあだいたいパウエルの話で大まかなところは説明されているとは思いますし、だいたいさっきの小見出しを見れば内容はお察しって感じだと思いますが、そのお察しの事を説明している、って感じでパウエルの話から何か踏み込んだりパウエルを叩き斬りに行くというような事も無かったと思います(個人の感想です)。

#ということで全然現世利益に関係ない趣味ネタでサーセン






2021/05/24

お題「今さらですが黒ちゃんの内外情勢調査会講演ネタの続きというかただの悪態/その他メモ」

そんなモデルを作るって話じゃなかった気がするんですけどねえ・・・・・・・
https://news.yahoo.co.jp/articles/1bafcdaf467c3b8e2524b2f74fdd2dc13159b3da
平井デジタル改革担当相、東京五輪開催は「パンデミック下での開催というモデルを日本が初めて作ることができる」
5/23(日) 9:29配信

「2千万の特攻を出せば日本は勝てます」ですか、わかりません><;


〇黒ちゃんの講演は経済以外の所もアレなので今更ながらに続きを(汗)

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko210519a.htm/
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko210519a1.pdf
【講演】
経済・物価見通しと金融政策運営
内外情勢調査会における講演
日本銀行総裁 黒田 東彦
2021年5月19日

・その前に前座で先週ネタにした「国内の前向きな循環メカニズム」愚感想アゲイン

ということで今更ネタの続きで恐縮(ちょっと先週水木と朝のネット接続が不調だったもんでサーセン)ですが、HTMLの方にもテキストが上がって来たんで続きを。

先般は「国内の前向きな循環メカニズム」という4月展望レポートにおける強引な説明の根拠について何か言うのかと思った部分をネタにしたのですが、ちょっと前のネタになるので改めてアレをまとめると、「いやおまえ雇用者所得が上がってこないのに何で「”国内の”前向きな”循環”メカニズム」とか言いきっちゃうの??って感じの話が続いていましたですな。あの説明って基本が「外需がコロナからの回復で強いので国内企業部門の設備投資が出るよ」という話と「国内だって感染症の影響が弱まってくればペントアップ含めて需要が戻るから設備投資が出るよ」って話が基本で、別に雇用者所得が伸びてきているから云々みたいな根拠は示されていない、つまり国内の家計に回らなければワンオフじゃろそれ、って感じの説明だった訳ですな。

でまあ毎度のようにしつこく申し上げますが、何でそういう判断を慌てて4月展望でやらないといけなかったのか、という話でありまして、そんなのもうちょっと状況見て7月だってうっかりしたら10月だってエエヤン(どうせ政策が地蔵なんだから別にそこの判断をあえて上げに行く必要はない)という話だし、それが盛大なフラグ建築になったかのように緊急事態宣言が6月まで延長だの何だのという話になっているのでマジ勘弁にも程がある(八つ当たり)。

じゃあ何で4月展望で急に前向きの循環メカニズムとか日銀の中の人が変なキノコでも食ったかのような威勢の良い事を言い出したかと邪推すれば(以下個人の妄想ですよ念のため)、4月の展望って見通し期間が1年延びるわけですよね。でまあその時に何ぼ何でもコロナの影響は片付いてて、そうなったら経済はまあ巡航速度かそれ以上には上がってるだろ常識的に考えて、という見通しを出して数字を作るまではまだ(コロナの先行き勝負とは言え一応ワクチン接種は進むことになっていましたので)分からんでもないのですが、その数字を出した所で「ということはやはり見通しも前向きの循環メカニズムって感じですな」というような感じで、数字先にありきでストーリーを組み立ててしまったんでネーノという、まるで「2千万の特攻を(ここで通信が途絶える)。


・物価の説明部分の覇気のなさが酷すぎて論評に値しないのだが悪態には値するので読む

さて通信も回復したので(違)先週ネタにした部分の次の物価の話と金融政策の話でも拝読。『3.物価情勢』って所ですが、これがまた物価目標を何が何でも達成するとか言ってたはずの黒ちゃんとは思えん覇気の感じられない記述になっておりますので鑑賞しましょう。

『続いて、物価情勢です。わが国の消費者物価の前年比は、感染症や既往の原油価格下落の影響から小幅のマイナスとなっています(図表6)。今後も、当面は、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響などを受けて、消費者物価の前年比は小幅のマイナスで推移すると見込まれます。もっとも、携帯電話通信料の引き下げは一時的な下押し要因であり、こうした一時的な下押し要因を除いた基調的な物価の前年比は、底堅く推移すると考えられます。』

物凄くこう淡々と説明していますねえ。

『感染症のもとでの需要の弱さが影響するものの、企業ヒアリングなどのミクロ情報からは、需要減少の一因が感染症への警戒感であることや、感染対策に伴う供給制約やコスト増などから、企業が値下げにより需要喚起を図る行動が広範化している様子は窺われません。』

って言ってるんだが、なるほど一部業種で値下げ大会になっているのは広範化しない、ということですかそうですか。ふーん。

『また、昨年秋以降の原油価格の持ち直しを背景に、エネルギー価格の前年比は早晩プラスに転じるとみられます。』

節子、それただのコストプッシュや、というかさっきの携帯の話だって、昔だったら「携帯の通信料金引き下げは個人の消費余力の拡大につながるので寧ろ結構な事ともいえる」位の威勢の良い「個別物価と一般物価」の話をしていたというのにこれですよ。前の時は携帯じゃなくて原油価格が下がるのは云々でそんな話してたのにね。

『先行きの消費者物価の前年比は、経済が改善していくもとで、一時的な下押し要因が剥落することから、プラスに転じ、徐々に上昇率を高めていくとみています(前掲図表2)。』

理由の説明は何もない、というのが凄くて、従来なら「金融緩和によってどうのこうの」位はハッタリでも入れていたというのに、今回凄いのはさっきの部分まで含めましてこの先の部分に関しましても「日本銀行の金融緩和政策によって物価目標の達成に向けた動きが云々」みたいな金融政策に言及した部分が無いというところでして、どんだけ覇気が抜けてるんだよという感じでございます。

『「展望レポート」での政策委員の物価上昇率見通しの中央値は、2021年度が+0.1%、22年度が+0.8%、23年度が+1.0%となっています。前回見通しと比べると、2021年度は携帯電話通信料の引き下げの影響により下振れているものの、2022年度は概ね不変です。このように、物価が全般的かつ持続的に下落していくようなデフレの状況に再び戻ることはない、と考えています。ただし、当面、感染症の影響を中心に、経済の下振れリスクが大きいことや、企業の価格設定行動には不確実性があることなどを踏まえると、物価動向にも、引き続き、注意が必要です。』

と、このあっさり味で物価の話がおしまい。物価目標が一時的とはいえ上振れ状態になってハイシドウドウハイドウドウとかやってる米国の中銀よりも全然やる気を感じさせないこの物価面の記述って何なのマジでお前らやる気ないならマイナス金利だのYCCだの迷惑だから止めて貰えないかなあこっちは限界集落になって皆が出稼ぎに行ったり都会に出てって帰ってこなくなっている中で我慢してるの日銀様が物価目標を早期に達成して金利のある明るい村が戻って来るって信じてるからなんだけどさあ(棒読み)。


・経済見通しと金融政策のガイダンスが全然リンクしていないの何なの???

『4.日本銀行の金融政策運営』である。最初の『感染症の影響への対応』ですが、まあこれも変な話でして、

『日本銀行では、感染症の影響への対応として、昨年3月以降、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の潤沢かつ弾力的な供給、(3)ETF、J-REITの買入れの「3つの柱」による強力な金融緩和を行っています。こうした対応は、緩和的な資金調達環境を維持することなどを通じ、経済を支える効果を発揮しています。』

はあそうですか。

『昨年末には、特別プログラムを本年9月末まで延長し、引き続き、資金繰りを支援していくことを決定しました。感染症の影響を踏まえて、必要があれば、さらなる延長も検討します。』

って思ってるんだったら、何で展望レポートであんなに威勢の良い話を出来る訳なの??????意味わかんない。

『今後とも、特別プログラムを含めた現在の金融緩和をしっかりと実施していく考えです。また、感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる方針です。』

って思ってるんだったら以下同文な訳で、3月の措置に関してはまあ「追加緩和をしやすくするための措置を取ったが追加緩和はしない」っての意味不明で、追加緩和して物価目標の達成が早まるならとっとと追加緩和しやがれってなもんなのですが、そういうの出してわずか1カ月後の4月の展望レポートってエライ強いトーンでの見通しを出してきている訳で、そんな強いトーン出すのに何で追加緩和バイアスバリバリの表現をそのまま継続するんだか、というお話。まあ昭和の温泉旅館金融政策だから仕方ない、と言ってしまえばそれまでですが、もはやこれワシらも外の人に説明不能状態になっているの勘弁して頂きたい。


・より効果的で持続的な金融緩和の説明が苦しすぎて泣ける

『より効果的で持続的な金融緩和』という小見出しに入ります。そもそもより効果的な政策をするんだったら早期に目標が達成できる筈で、だったら別に持続性とかそんなに気にする必要があるのか、という時点で語義がおかしいんだがまあその話は何回もしましたですねそうですね。

『このように、当面、金融政策運営面では、感染症の影響への対応として、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが重要です。同時に、やや長い目で見ると、経済・物価への下押し圧力が長期間継続すると予想されるもとで、2%の「物価安定の目標」を実現する観点から、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくことが課題となります。日本銀行では、3月の決定会合で、そのための点検を行い、その結果を踏まえた政策対応を決定しました(図表8)。』

その結果が資産買入関連のステルステーパーなのはまあ良いのだがヘナチョコ付利とか何なんですかねえ。

『点検の結果、日本銀行では、「物価安定の目標」を実現していくためには、経済・物価の押し上げ効果を発揮している「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続していくことが適当であると判断しました。まず、こうした考え方の前提となる、2%の「物価安定の目標」の意義について、改めて述べておきたいと思います。』

達成しない目標を掲げることによって一定の過激層の支持を取りつけるとかそういう泡沫政治団体のような意義ですねわかります!!!!

『2%の「物価安定の目標」が重要であることは論を俟ちません。』

なら達成しろよ馬鹿。

『第1に物価指数が真の物価動向に比べて高めになりやすいという上方バイアスがあること、第2に景気の落ち込みに対して金利引き下げによる政策対応余地を確保しておくことが有用であること、そして第3に「2%目標」がグローバルなスタンダードになっていることが理由です。世界の主要な中央銀行が共通の目標を掲げることにより、為替相場を含む国際金融市場の安定がもたらされ、ひいては世界経済の安定にも資すると考えられます。』

『そうしたもとで、世界の中央銀行は、経済全体の需要と供給のバランス、すなわち需給ギャップを適正な水準に維持し、予想物価上昇率を適切なレベルにアンカーさせることで、物価目標を実現しようとしています。日本銀行も例外ではありません。長短金利を低位に安定させるイールドカーブ・コントロールにより、極めて緩和的な金融環境を提供することで需給ギャップのプラス幅の拡大を目指しています。また、物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで金融緩和の継続を約束するオーバーシュート型コミットメントにより、人々の予想物価上昇率にも強く働きかけています。実際、点検でも確認されたように、日本銀行の大規模な金融緩和は、これまで、プラスの物価上昇率を定着させるという効果を発揮してきました。』

お手盛り分析結果まで混ぜるな。

『ただ、3月の点検で同時に確認したように、わが国の予想物価上昇率の形成メカニズムは、適合的、かつ複雑で粘着的であることに留意が必要です。』

あのさあ、経済が複雑であるっての昔から言われてるしお前らそうじゃないって言って麿たちを追い出したんだから人間として恥を知るならそこにマリアナ海溝行き片道ドラム缶ツアーってのがあるからちょっと反省の為に行ってきたらどうなの???

『つまり、長期にわたるデフレの経験により定着した、物価が上がりにくいことを前提とした人々の考え方や慣行の転換には時間がかかります。』

それに直接的に働きかけるのが置物理論だった筈なのだが。

『このようなわが国の予想物価上昇率の形成メカニズムを考慮した場合、政策運営としては、平素はできるだけコストを抑制して持続性を高めつつ、経済・物価・金融情勢の変化に対しては、躊躇なく、機動的かつ効果的に対処できるよう、政策対応力を確保することが適切なアプローチとなります。こうした観点から、3月の決定会合では、大きく3つの政策対応を決定しています。』

段々悪態をつくのもめんどくさくなってきたのですが、次の『3月の政策対応』はご案内の通りなので割愛。


・今回の講演の白眉は何と言ってもこちら

既に皆様もベンダーのヘッドラインを見て爆笑の発作を起こしたり椅子から転げ落ちたりしたのではないかと愚考いたしますが、これはもうねというのが『5.おわりに』の冒頭にありましたな。

『以上、点検を踏まえた政策対応を中心に、金融政策運営の考え方についてご説明してきました。』

はい。

『今回の政策対応もそうですが、日本銀行は、金融緩和が長期間継続する中、緩和の効果だけでなく、副作用にも配慮しながら、丁寧に政策運営を行っています。』

マイナス金利とか乱暴なんことをしているのにどこがどう丁寧なのか全く分かりませんが、それよりも凄いのは皆様ご案内の次の一文。

『その結果として、政策手段が複雑になっている面はあります。』

ちょwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwww

さてここで黒ちゃん初代の就任記者会見を拝見しましょう。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf
総裁・副総裁就任記者会見要旨
―― 2013年3月21日(木)
午後6時から約1時間45分

こちらの6ページにこのようなお言葉がございますな。

『(黒田総裁) 1 点目について、日本銀行としても色々なことをやってこられたのでしょうが、その結果――先程、中曽副総裁も言われたように――、非常に分かり難くなっていると思います。バランスシートの負債側と資産側で、どのような動きになっているか、それをどのような方向に向けようとしているのかということが、もっと端的に分かるような金融政策を運営することが、やはり市場との対話を強化する意味でも重要だと思います。(以下割愛)』(直上URL先2013年3月21日黒田新総裁記者会見より)

wwwwwwwww


#なお、講演の方はここで以下割愛ってことで。



〇うーんこの分析

ところでこんなのが投下されていましたけどね。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2021/wp21j08.htm/
本邦国債レポ市場のネットワーク分析

・・・・・・・そもそもGC取引自体が参加者限定マーケットな上に金利水準がマイナスと来ている中でネットワーク分析とは??という気がだいぶするのですが、本文はこちら↓

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2021/data/wp21j08.pdf
本邦国債レポ市場のネットワーク分析

なお、要旨の方を見ますと、『結果からは、一部の重要度が高い金融機関が取引の仲介者として機能していることやそれらの先を中心にした継続的な取引関係が構築されていることが観察された。』って上記のHTMLにある「要旨」の中にあるのですが、そらそうよという感じではありますな、といいつつチラ見しかしてないのであんまりああだこうだいうのは控えておく。





2021/05/21

お題「FOMC議事要旨の金融政策部分を読んでみましたぞな(なおそこしか無いです今日は)」

どもども、ワイ今朝は接続の不具合は発生していないようで。

念のためと思って昨夜のうちにFOMCの議事要旨のうちネタにしそうな部分を全部テキストに落としておく、という涙ぐましい努力をして(接続業者にドウナットンノヤメールを送って)、てな努力がフラグになったのでしょう(自虐)。

黒ちゃんの講演の続きも中々味わいありそうですが、やはり人が寝起きでネタにできなかった(物理)時に限ってこれだよのFOMC議事要旨を先に参りたいと存じます。


〇いやーん1日出遅れましたがFOMC議事要旨

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20210428.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20210428.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee
April 27?28, 2021

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors was held by videoconference on Tuesday, April 27, 2021, at 9:30 a.m. and continued on Wednesday, April 28, 2021, at 9:00 a.m.1

日銀ってずーっと集合で会合してますけど、まあ確かに米国の場合は地区連銀総裁をテレカンにした方がスタッフも動かなくて済むとかそういう面もありますから一概に日本がトンチキとも言い難い(各審議委員のご自宅にスタッフが訪問したら却って移動が増えるwww)。


・例の部分ですが表現的に色々と味わいがありそうで中々ムツカシネ

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツのパラグラフから逆順読みをする、というのが寝起きでFOMC議事要旨を読むときのインスタント読みとしてアタクシが勝手に確立した(個人的にはお勧めなのだがちゃんとあとで頭からも読み直した方が良いとは思います、なおたまに普通の順で読むのと逆順で読むのと読後感の印象が違うこともあるのはオモロイナーと思っています)のをしますと、例のテーパリング云々のお話になるわけで始まり始まり。

『In their discussion of the Federal Reserve's asset purchases, various participants noted that it would likely be some time until the economy had made substantial further progress toward the Committee's maximum-employment and price-stability goals relative to the conditions prevailing in December 2020 when the Committee first provided its guidance for asset purchases.』

まあ今回話題になったらしいのはここから始まるパラグラフすよね。最近見るようになった気がする「various participants」ってのがこれどういう意味やねんと毎度思うのですが(普通ここは人数を示す言葉を使うのに、このvariousって定量じゃなくて定性のニュアンスだと思うので。定量の意味あるんだったら教えてちょ)、まあそのさまざまな参加者が今回例のAPPガイダンスにおける「substantial further progress」がどの辺で達成するのか、という話をおっぱじめた、ということでございます。

何となく思うのはこの場合の「various participants」ってのは意見が多様とかそういう意味なのかもしれませんが、別にvarious入れなくても意味は通じると思うので、何の理由があって入れているのかというのを知りたいのだがスーパードメドメザパニーズのワイが知る方法なし・・・・・・・|д゚)チラッ

『Consistent with the Committee's outcome-based guidance, purchases would continue at least at the current pace until that time.』

それは言われんでもわかっとる、なんでわざわざこのフレーズ入れてるんだ、というのも謎の文学。

『Many participants highlighted the importance of the Committee clearly communicating its assessment of progress toward its longer-run goals well in advance of the time when it could be judged substantial enough to warrant a change in the pace of asset purchases.』

テーパータントラムの再来を避けたいもんだから、APP拡大ペース縮減に繋がる「substantial further progress」については突如ぶっこむのではなくて前広にご説明申し上げますよ余裕を持って(well in advance of the time when it could be judged substantial enough to warrant a change in the pace of asset purchases)としている訳ですな今回は。

『The timing of such communications would depend on the evolution of the economy and the pace of progress toward the Committee's goals.』

そしてそのコミュニケーションのタイミングは経済物価状況次第ですよ、という話なのですが、ここまでの3文って別に議論内容じゃなくて、もとからそうじゃんという話な訳ですよ。

でもってですね、この書面って「議事要旨」ですし、しかもこの部分は「FOMCパーティシパントの議論」部分なのでありまして、こういう既知の説明文をわざわざ入れる必要って本来無い筈なので、まずアタクシはここを見て「なんでこんな言われんでもわかっとるわ」な文言がぶっこまれているのか、という所に???が飛び交うのですよ。まあその答えはこの先読んでみないと分からないかもだから後で出してみよう・

『A number of participants suggested that if the economy continued to make rapid progress toward the Committee's goals, it might be appropriate at some point in upcoming meetings to begin discussing a plan for adjusting the pace of asset purchases.』

数名(A number of)の参加者は、経済状況がこの調子で威勢よく上昇して行けば、今後のFOMCのどこかでAPP拡大入ペースの縮減を議論するのが適切になるんとチャイマスカ、という話をしました、ということでこの部分のお話は終了の巻となっておりまする。

・・・・・・・うーんこの。実は逆順読みしていると前のパラにこの前振りがあった、というようなしょうもない落ちがある場合があるんですけど、このパラグラフってよく見ると「In their discussion of the Federal Reserve's asset purchases, various participants noted that it would likely be some time until the economy had made substantial further progress」って要はAPP拡大ペース縮小(これ「買入縮小」ってアタクシも気を抜いてると書いてしまうんだが、ランオフとテーパリングは別物なので、買入縮小はおかしいし、買入ペース縮小ってのも期落ち見合いの分があるから必ずしも正確じゃないのよね、どうでもいいけど)を判断するタイミングについてノートしました、ってのがあるのですが、そっから先がずーっと説明文になっていて、最後に上記の一文になる、という構成。

つまり本来はこんなに長くしないで最初の一文と最後の一文だけで済ませても良かった筈のパラグラフを「説明しよう!」とヤッターマン(古すぎて分かりませんかそうですか)のアイテム説明みたいなのをおっぱじめ、しかも既知の話なので説明せんでヨロシというモノが書かれた後にこの一文になっているのですよね、うーん解釈に悩む所。

まあパウエルとかの発言などから勝手に推測すると、こういう意見があったのはもちろん書かない訳に行かないから議事要旨にぶっこんだのですが、既知の説明をクドクドとして、その内容が「この話は実際の買入ペース縮減に先だって物凄い前広に行うものでございますよ以前説明しましたよね!!!」みたいな感じになっている、というのは、まあこんなニュアンスを籠めたんじゃねえの、と思う訳ですよ。つまり・・・・・・・

「substantial further progressであるかどうか議論の開始をat some point in upcoming meetings(複数形なので別に次回とは言っていない)に行うことになるだろう、って指摘をしている人が数名います」「でも皆さん思い出してください!これは実際のテーパリング着手に対して物凄い前の時点から皆様に告知するものでありまして、現状では買入のペースを直ぐに落とすような事にはつながりませんよ、念のため再度説明させて頂きますね!!!!」

とまあそんな感じで、これを素で出すとアジャパーになってしまわないように、という配慮を存分に籠めた文学作品がこのパラグラフなんでネーノと思うのでありました(思いっきり個人の感想です)。


・・・・・まあ何ですな、今の所はそうやって粘るにしましても、実際に今後の物価指標が「いやこれテンポラリーファクターですって言いきれるのけ?」って話になって来ると、そらまた色々とさあもりあがってまいりました的な素敵展開(不謹慎)も期待できるとは思いますが、ただまあ現状は早期テーパーで債券市場がゲロゲロマーライオンになったりするのは避けたい、という所だとは思います。思いますけど、例えば来年の頭(一応まだアタクシはそんなもんじゃろとは踏んでいる)にテーパリングするとして、それをじゃあ3四半期も前から織り込ませに行くのって市場の面からも経済の面からも無理があって、もちろんその位前から織り込ませてしまえば実際のテーパーが軟着陸どころか着陸したのも分からん位のスムーズな展開になるとは思いますけど、織り込ませに行く段階で市場はその先の利上げを見に行ってしまうからそう簡単に行かない、だいたいからして余り早く決めうちして経済情勢がコケたら間抜けにも程がありますので、そんなこんなで色々とリスク伴うんだよなーと思うのですが、まあ中央銀行的には軟着陸させたいの一心でうっかり痩せ馬の先走りをしてしまう可能性もあるかもね、位には思っておこうかと存じます。

ただの1パラグラフで能書きたれ過ぎましたサーセン。


・2名がインフレ上振れ懸念の指摘キタコレだが文章構成自体は火消しを意識していると思う

逆順読みなのでその前のパラに参ります。

『Participants judged that the Committee's current guidance for the federal funds rate and asset purchases was serving the economy well. Participants also noted that the existing outcome-based guidance implied that the path of the federal funds rate and the balance sheet would depend on actual progress toward reaching the Committee's maximum-employment and inflation goals.』

その前のパラグラフではフォワードガイダンスによって(先行きの政策運営に関して早期の利上げやテーパーの観測の浮上が抑えられるため)経済に対して(緩和的政策が)有効に機能し、私たちのマンデート達成に向けた経済情勢の進展を支えています、となっておりますな。

でまあさっきのパラを先ほど申し上げたような解釈をしたからそう思うのもありますけど、このように1つ前でもプリエンティブな金利上昇が起きないのがイイ!ってのを最初にぶちかましておりますな、というのを踏まえますと、逆順で読んだ方が最後の、数名の参加者がテーパリング開始の議論に着手することになるんでネーノって指摘、というお話に対して中和剤がぶっこまれてますなあって読んでしまいますな、うんうん。

『In particular, some participants emphasized that an important feature of the outcome-based guidance was that policy would be set based on observed progress toward the Committee's goals, not on uncertain economic forecasts.』

ガイダンスがアウトカムベースなので将来の見通しとかいう不確実な物に依存しないのですがそれこそがこのガイダンスの重要な構成要素だ、と何人かの(some)参加者は仰せです、とのことですが、そもそも論からして例のテーパー発動要件(substantial further progress)って全然定量的な条件じゃないので、そこにはジャッジメンタルな要素が必ず入る訳で、ジャッジメンタルが入るということは、結局の所その当てっこをしないといけないから、やっぱりフォーキャストが必要になるんですけどね、とは思うので、これは何ちゅうかまあ微妙な感じだし、市場は結局先行き見通しで動くんだから短期金利は兎も角長期金利に関しては本質的にそんなに変わらんでネーノとは思う。

『However, a couple of participants commented on the risks of inflation pressures building up to unwelcome levels before they become sufficiently evident to induce a policy reaction.』

ここでしらっと2名ぽっちではあるのですが、望ましくない方の物価上昇圧力が実は積みあがってきている可能性だってあるんだし、もしそのような宜しくない方の物価上昇リスクが存在した場合って、アウトカムベースのガイダンスだから動かん、とか言って動かんでいると、マジモンで止めるのに苦労し、景気をオーバーキルするような金融引き締めが必要になるような状況になるリスクってあるんでネーノという指摘をぶっこんできておりまして、これまあインフレが一時的ではないリスク、への指摘よりも「金融政策が出遅れることによる物価の望ましくない上昇リスクの発生」と政策行動に絡めたリスクとして指摘しているだけに、指摘の意味合いとしては2名ぽっちの少数意見ではありますが、内容は重いんじゃないかな、と思います(個人の感想です)。

とまあここまで2パラグラフぽっちしか見ていないのですが、ここのラスト2パラ見ていると、執行部というかパウエル=クラリダのライン(ウィリアムズは完全に空気なのでどうでもよい、というかダドリーとの格の違いが余りにも禿し過ぎて毛髪が抜ける思いがしますな)では経済物価情勢は好転してるけどまだまだ今の政策続けまっせ、だから変なボヤには水をぶっかけて回りますぜ、って感じであって、議事要旨を書く際にも、政策は動かんよな説明を一々入れて回る感じがするのですが、そうは言ってもさすがに一部の(たぶん)地区連銀総裁などからは、うーんこのままでエエノカノウ、というのが出てきていますよ、ってのもお見せする(言ってるんだから書かないわけにもいかないのですが)ってスタイルになっておりまして、うーんこの健全な議論よという感じでして、どこぞの中央銀行の政策委員会とはラベルが違うわラベルが、という感じですな(一々変なところでポンニチ銀行に悪態をつくアタクシ)。



・金融政策最初の部分は物凄く穏当に地蔵スタンスの再確認だけ記述されている

実は金融政策に関するパグラフはさっきの2つとこれ一つの3つしか無かったりしまして、だったらよーしパパ能書きたれ過ぎて時間が微妙だけど頑張ってもう1パラ読んでみるぞー、と元気出してあと1つ戻るの巻。

『In their consideration of the stance of monetary policy, participants reaffirmed the Federal Reserve's commitment to using its full range of tools to support the U.S. economy during this challenging time, thereby promoting the Committee's statutory goals of maximum employment and price stability.』

まだ米国経済はチャレンジングな時間帯なので政策コミットメント政策は維持でしょうなあ、ということで合意しましたとな(モノホンの政策については次のコーナーに書かれている、まあ同じ話だけど)。

『Participants agreed that the economy was still far from the Committee's longer-run goals.』

ゴールには依然として遠いですよ。

『Moreover, the path ahead continued to depend on the course of the virus, and risks to the economic outlook remained.』

おまけにコロナちゃんの帰趨だってまだワカランチ会長だしその影響もワカランチ会長ですよ、ということですが雨人がこれを言うのは余裕のよっちゃん発言なのに対し、ジャパンの場合は以下自粛。

『Consequently, participants judged that the current stance of policy and policy guidance remained appropriate to foster further economic recovery as well as to achieve inflation that averages 2 percent over time and longer-term inflation expectations that continue to be well anchored at 2 percent.』

ということで金融政策の最初の所は淡々と地蔵モードの確認をしているだけの記載でした。

・・・・・まあ何ですな、これ逆順から読むと最初にインパクト来て徐々に中和される(なおインフレがアジャパーになって緩和縮小が手遅れリスクの指摘は実は重くて、テーパーの議論がどうのこうのよりも政策論としてはずっと重い話をしているんですが、昨日見た感じではそっちをネタにして市場が動いてはいなかったようですね、為念)という構成になるのですが、正しく読むと印象がちょっと違いそうですねえ、と思いました(個人の感想です)。

能書きのたれ杉で時間がアレなので本日は3パラグラフ読んだだけで勘弁して頂こうかと存じます(平伏)

#山のようにテキストに落としておいたのに結局3パラしかネタにしなかったな・・・・・・




2021/05/20

お題「寝起きでFOMC議事要旨と思ったら本日事情により黒ちゃん講演ネタで(汗)」

なんか2日連続で寝起きタイムのネット接続が微妙で、契約的には帯域制限掛かっている訳でもない(というか掛かっているなら昨日の時点で不具合生じている)のにFEDのページに朝イチでアクセスできませんでして、しかし日銀にはちゃっかりアクセスできるという素敵な状態なのですが、接続業者要因っぽい(困ったなあ)ので、寝起きでFOMC議事要旨はパスしまして何故か無事に繋がった日銀ちゃんネタで(大汗)。

#ヘッジの観点から議事要旨は後でローカルに保存しておきますわ

更に7時ちょい前に接続したら接続できてやがりまして、議事要旨は速攻で保存したが、これはどう見ても接続業者要因なので原因究明して、プランBなり接続業者お引越しなりを検討しないと行けませんな。



〇展望レポートでやたらめったら強気化した理由は「経済の前向き循環メカニズムがワークする」でしたなやはり

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko210519a1.pdf
経済・物価見通しと金融政策運営
―― 内外情勢調査会における講演 ―
日本銀行総裁 黒田 東彦


・経済見通しが今回の展望でやたら強くなった背景を確認しようじゃないですか

『そこで、本日は、「展望レポート」の内容に触れながら、日本銀行の経済・物価に対する見方をご説明するとともに、点検の結果とそれを受けた政策対応を中心に、金融政策運営の考え方についてお話ししたいと思います。』

と最初にありますので、『2.経済情勢』ですが、まあ現状の方はさておき先行きの方を確認しようかと思います。『(経済の先行き見通し)』から。

『このように、わが国経済は、感染症の影響から引き続き厳しい状態にありますが、基調としては持ち直しています。先行きを展望すると(図表2)、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、経済は回復していくと考えています。』

はい。

『その後、感染症の影響が収束していけば、経済はさらに成長を続けると予想しています。「展望レポート」の政策委員の実質成長率見通しの中央値は、2020年度の実績が▲4.6%と大幅なマイナスとなった後、2021 年度は+4.0%、2022 年度は+2.4%、2023 年度は+1.3%となっています。こうした見通しは、前回1月時点と比べると、2022 年度を中心に上振れていますが、その背景として、第1に世界経済の回復が続くこと、第2に国内において前向きの循環メカニズムが強まることが挙げられます。以下、順にみていきます。』

キタコレという感じですが、海外の方はまあ良いとしても、国内の「前向きの循環メカニズム」という無茶苦茶威勢の良い見通しは何なんですかそれ????

まあ一応海外も引用しますので『(世界経済の回復)』から参ります。

『第1に、世界経済は、感染症の影響により昨年前半に大幅に落ち込んだ後、総じてみれば回復しています(図表3)。地域別にみると、昨年、経済活動をいち早く再開した中国経済は、回復を続けています。米国経済も、大規模な追加経済対策に加え、ワクチンの接種ペースが加速するもとで、経済活動への制限措置が段階的に解除されていることから、目立って回復しています。』

さいですな。

『また、業種別には、製造業部門の回復が明確です。デジタル関連が好調なことから、グローバルな製造業の業況感は、はっきりとした改善が続いています。実際、世界の生産水準や貿易量は、感染症の流行前を明確に上回るレベルまで戻っています。』

これもまあその通り。

『先行きについても、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、先進国を中心とした積極的なマクロ経済政策にも支えられて、世界経済は成長を続けるとみています。IMFの見通しでは、世界経済の成長率は、2020 年に▲3.3%の大きなマイナスとなった後、2021 年は+6.0%の大幅なプラスとなる予想です。レベルとしても、2021 年中には感染症の拡大前を上回る水準まで回復する見通しです。さらに、2022 年も+4.4%と過去平均を上回る高い成長率が見込まれています。』

でもって、

『このIMFの見通しは、先進国における追加的な経済対策の実施とワクチン接種の進展を背景に、前回1月の見通しから上方修正されています。』

というのが背景にあるってのはまあ分かります。だいたいIMFが経済見通し変えて来ると日銀も海外の見通しを変えて来るって感じになっているのは今に始まった話ではありませんな。

『なお、世界経済の回復については、IMFが"divergent recovery"と表現しているように、今後も、国や地域さらには業種の違いなどによるばらつきを伴うと見込まれます。』

ここでワクチンの接種状況について言及したら神講演だったのですが、官邸様に喧嘩を売るような文言を入れてこないのは素敵な忖度なのですが、それこそ先般出てた主な意見での誰かの指摘の通りで、どこからどう見たってワクチン接種の普及度合いが思いっきり回復ペースに影響を与えているとしか思えん展開になっている訳でして、そーゆー状況なのに「海外が上方修正なので国内もしました(キリッ)」って言うの図々しくねえか??って感じがする次第。


『また、米国では、一部の経済学者や市場参加者から、インフレ圧力が高まり長期金利が急上昇すれば、景気回復の動きを妨げるだけでなく、国際金融市場も不安定化させるといったリスクへの懸念が示されています。』

急に何の話をおっぱじめているのかと思うのですが、財政大盤振る舞いして金融大緩和して、しかも経済の状況がウハウハという中でのインフレ圧力からの長期金利上昇単体でオーバーキルできる訳ねえだろと感覚的に思うんで、他国の話とは言え中銀の偉い人がこういう論を持ち出してくるのって藁人形論法の風情を醸し出すように思えます。

これがですね、例えばサブプライムみたいなオーバーバリューのものが修正されるとか、アジア通貨危機みたいにそもそも下駄履いて資本流入してたのが実態考えたらこれオカシクネ?ってなってリバースするとかいうのだったら、そらまあ景気をオーバーキルする可能性あると思いますし、政策当局がが急にインフレを強引に抑制しにいくような施策(形は違うけど不動産バブル退治みたいなのが極端な例)を取ってオーバーキルする、というのなら思いっきりそらそうよとなりますが、自然体で経済物価情勢の好転に伴う長期金利上昇それ単体で景気をオーバーキルするとか、そんな力は市場には無いでしょ、と思うのよね(個人の感想です)。

よってまあこういう話は無駄なんですが(個人の偏見です)まあ続きを見てみる。

『もっとも、FRBのパウエル議長は、経済再開に伴う支出の増加や感染症の影響から物価が大きく下押しされた昨年対比のベース効果からインフレ率の高まりは生じうるが、それは一時的な現象にとどまるとの見方を述べています。』

いやそれはそうかも知れんが、お前さん方ジャパンのインフレ期待を上げようとしているんだから、「FEDがインフレの上昇は一時的と言っています(キリッ)」とかご紹介してたらダメじゃんとしか申しあげようがない訳で、むしろ「米国が2%物価目標に向かって進展を続ける中で日本にも好影響を期待したい」くらい威勢の良い事言って置けば良い訳で、さっきの指摘に関しては「FRBはワシが育てたメイクアップストラテジーを取っていて金融緩和政策の継続をすると表明していることから、米国景気を悪化させたり、国際金融市場が不安定化するような市場の急変は考えにくいと見ています」とか説明すれば良いのに、と全力で思ってしまったんですけどね。

寧ろFEDって今インフレ期待の上昇に関して、先般のFOMC記者会見でのパウエルの説明だと「もう少し上がっても構わん、むしろ上がれ」ではあるものの、あのブレイナード理事ですら「望ましくない形で上に跳ねるかどうかはよく見ないと」と言ってて、インフレ期待が無用に上放れするのを牽制とまでは言いませんが黄色信号は出している状態なのですから、そういう所が発信するインフレ云々の話を、インフレ期待を上げなきゃいけない日銀がリファーするのはあまり賢い説明とは思えない訳で、なんか最近「コミュニケーションガー」とか議事要旨とか主な意見に出てくるのですが、そう思うならもうちょっとこういう所丁寧に作り込んで欲しいんですよね。なんか黒ちゃんになってからずっとそうですけど、特に2%の展望レポート期間内の達成見通しを取り下げてからこの方、緊張感無くなったのかドンドンこの辺りの造り込みが雑になってきているように思えます(個人の感想です)。

『いずれにせよ、引き続き、国際金融市場の動向や世界経済の動向を注視していく必要があります。』

ということで次がお待ち兼ねて無いかもしれませんが前向きの循環メカニズムですよ。


・ま、前向きの循環メカニズム???????????

次が『(国内の前向きな循環メカニズム)』でござりまする。

『第2に、国内の景気回復メカニズムの観点です(図表4)。』

キタコレ。

『これまでのわが国経済の持ち直しは、昨年前半に経済活動が大きく落ち込んだところからのリバウンドという面が強かったと思います。しかしながら、先行きのわが国経済については、所得から支出への前向きの循環メカニズムが拡がっていくもとで、持続的な成長経路に復していくことが展望されます。この点を企業部門、家計部門それぞれについてみていきます。』

「所得から支出への前向きの循環メカニズムが拡がっていくもとで、持続的な成長経路に復していくことが展望されます」って無茶苦茶強い表現で、国内で自律的にヒャッハーですよという話をしているんだが大丈夫かおい、ということで中身を拝読してみる。

『まず、所得から支出への前向きな循環メカニズムは、企業部門ですでにみられ始めています。』

いや確かに短観は強かったけどさ。

『すなわち、昨年 10〜12 月期の企業の経常利益は、感染症拡大前をやや上回る水準まで回復しています。企業収益の改善には、輸出や生産の増加に伴う売上高の回復に加えて、感染症を契機とした企業の経営効率化努力や政府による企業支援策も寄与しています。』

先生!「感染症を契機とした企業の経営効率化努力」って労働者への分配減るんじゃないでしょうか!!

『先ほど申し上げたように、こうした企業収益の改善が設備投資につながる動きが現れ始めています。』

設備投資に回っても家計に回らないと持続的な前向き循環にならないと思いますが???という話は後の方にある。

『短観の調査によれば、今年度の設備投資計画は、前年比+2.4%の増加となっています。この時期としては、過去の平均を上回る高めの計画です。今後も、企業収益が改善するもとで、機械投資やデジタル関連投資、Eコマース拡大に伴う物流施設への投資などを中心に、設備投資の増加傾向が明確になっていくと考えています。』

はあそうですか。

『さらに、感染症の影響が収束していけば、対面型サービス業を含めて、企業収益がしっかりとした改善基調を続けるもとで、幅広く設備投資が増加するとみています。』

完全に設備投資一本足打法ですな。

『このように、先行き、企業部門における所得から支出への循環メカニズムは強まっていくと考えています。』

うーん、設備投資一本足打法で循環メカニズムって言うのか???

『次に、前向きの循環メカニズムが家計部門でも働くためには、雇用者所得がカギになります(図表5)。』

やっと来ました。

『この点、雇用・所得環境は、弱い動きが続いていますが、大幅な悪化は回避されています。』

前向きチャウやん。

『失業率は、昨年、3%程度まで高まりましたが、このところ横這い圏内の動きとなっています。また、この春の賃金改定交渉をみると、現時点の暫定的な結果ではありますが、今年度の賃上げ率は、前年度との比較で小幅な縮小にとどまっています。』

賃上げが縮小しているのに前向き循環メカニズムとはこれ如何に??

『このように雇用・所得環境の大幅な悪化が回避されている背景には、政府などによる様々な支援措置が効果を発揮していることに加えて、長らく人手不足がビジネスの制約となってきた業種では、経済活動の持ち直しに伴って、求人意欲が高まっていることも指摘できます。』

何か前段で言ってる話と整合していない気がするんだが。それに有効求人倍率とか別に顕著な改善してる訳じゃなかろうに、と思う訳でして、企業部門の話をするときにしれっとコロナ直撃企業群の話をスルーしているのに、こっちでは人手不足の業種が、という話をするというこの使い分けよ。

『先行きの雇用者所得については、企業収益の改善を受けて下げ止まり、内外需要の回復にラグを伴って、緩やかに増加していくと考えています。』

そもそも論として言うようにコロナショックの間に雇用者所得をあんまり下げて無いんだったら上がるのに相当時間かかるって考える方が普通な気がするので、この「ラグを伴って」の期間が重要なんじゃないの、と思ってしまいます。

『さらに、感染症の影響が収束していけば、雇用者所得が改善するもとで、所得から支出への循環メカニズムが働き、対面型サービス消費を含め、個人消費の増加基調が明確になっていくとみています。』

というこの説明、うーん無理矢理っぽいというか、だったら毎度申し上げますように、4月の展望レポートでその話をするのではなくて、少なくとも3か月とか様子を見て、本当にその進軍ラッパモードの「前向きの循環云々が起きそうなのか、特に雇用者所得とか家計所得の方に跳ねないと話が進まんと思うのでして、さっきの企業の設備投資が出ます云々の話って、設備投資の結果キャパシティが充足してしまったらそこまでの話で、それが長続きするって言ったってちょっと海外が減速したら終了じゃんという話であって、持続的な循環になるには家計の方が重要でしょ、という見極めを待たない理由が未だにさっぱりワカランチ会長なのですよね。


・ジャパンのワクチンがワクワクしない件について触れないのは忖度忖(爆発音)

今朝も接続でジタバタしてたので経済見通しだけで勘弁してもらいますが。『(経済のリスク要因)』を駆け足で。

『以上、経済の中心的な見通しについてご説明してきましたが、こうした見通しの不確実性は大きいと考えています。』

と思うなら別に7月まで待てば良かったんじゃないですかねえ盛大な上方修正。

『最も大きなリスクは、感染症の帰趨とそれが内外経済に与える影響です。』

ほう。

『日本銀行の見通しでは、感染症の影響は、ワクチン接種の進捗などにより、2023 年度までの見通し期間の中盤に概ね収束していくと想定しています。しかし、ワクチンの普及ペースや効果には不確実性があり、その結果、経済活動への下押し圧力が強まるリスクがあります。』

「あります」どころか4月会合以降延々とリスクが拡大しているようにしか見えませんが。

『また、国・地域ごとにワクチンの普及ペースが異なるもとで、グローバルな経済活動にどのような影響が生じるかについても不確実性があります。』

まあ遅れてるの日本だけどな。

『そのほか、感染症の影響が収束するまで、成長期待が大きく低下せず、金融システムの安定性が維持されるかについても留意が必要です。一方で、感染症の影響への対応などから実施されている先進国を中心とした経済対策が、内外経済の回復ペースを想定以上に高める可能性もあります。このように様々な不確実性がありますが、経済の見通しについては、当面、感染症の影響を中心に、下振れリスクの方が大きいと考えており、今後の動向をよく見ていく必要があります。』

まあこの辺はどうでもよい。


・物価の話がすくねえええええええええええええ

次が『3.物価情勢』ですが、何がお洒落と申しまして、物価目標に向けた政策を全力で投下している筈なのに、その肝心の物価の話が1ページ分も無い、という構成になっておりまして、経済の話は今引用したように(というか現状認識の部分もこれに加わる)ざっくり4ページ半もある、という構成になっております。

従いまして物価安定目標達成に向けたメカニズムの話なんかも全然無くて、まあやる気あんのかっていうかやる気がないならマイナス金利とかYCCとかそういうの止めてくれませんかねえとしか申しあげようがないのですが、まあそういう構成に仕上がっておりましたです、はい。


#最初に申し上げた事情で本日は予定の寝起きシリーズ投下できず誠にあいすみません




2021/05/19

お題「今更虫干しネタですがFOMC記者会見で他の演説コーナーを鑑賞の巻」

朝っぱらからワシのネット接続がよろしくない(たぶんプロバイダーのせい)のですが、こんな事もあろうかと温存してあった(大嘘)4月FOMC会見ネタの続きを(会見要旨はローカルに保存してあった)とりあえず書いているうちに何とかなるだろう、と思いながら文章を書きだすのでありました。

スマートフォンでテザリング??ナニソレヨクワカラナイ(単にやったことがないだけ)。

#もしかしてこれhttpsで何かトラフィックの問題が起きてるのけ?(https化してないワシのページは見れる)

なお、お前最近FED要人発言見物ばっかりしてねえかというツッコミに対してはだって他にネタ無いじゃんというのと、はっきり言ってFED以外の雑魚キャラが何をしても影響が雑魚地帯だけに留まるから知らんがな、という判断(ただのヤケクソ)というのも一応真面目にあるにはある。


〇よく考えたらこの前物価に関する大演説の所までしかやってなかったので続きです(FOMC会見)

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20210428.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
April 28, 2021

なお、引用は手元で保存しているPRELIMINARYバージョンで行っておりますが、もしかしたらお日柄的に(今晩は議事要旨が出やがる)FINALになっているかもしれません。

先般(先週の火曜でしたなサーセン)は13ページのヘザー・スコット記者による「物価が上ぶれした時のコントロールが上手く行かなくて最終的にオーバーキルしないといけなくなる、っていう過去のような事が起きん、と仰せだがその根拠をもうちょっと説明せいや(意訳)」という質問に対して、まるで「ところでこの3層構造というのは」とかいう話題になって早口で得々と語りだすどこぞの村人のような勢いで(かどうかは知らんが)2ページにわたって演説の巻でした。


・物価ネタついでにインフレ期待に関する質疑応答を確認

まあインフレ期待に関しては(それは中銀じゃなくて財務長官の話に踏み込み過ぎじゃネーノって話をしてた)ブレイナード理事がインフレ期待の動向に注意、とか言ってましたが、それでは28日時点での議長はどういう話をしていたか、ということで18ページに飛ぶ。

『MICHAEL DERBY. Thank you for taking my question. I wanted to ask you another question about inflation, and it has to do with inflation expectations.』

イイヨイイヨー。

『Number of different surveys and market indicators are showing, you know, multiyear highs in inflation expectations ratings. So, I wonder, you know, if that was something that you saw consistent with your inflation outlook. Is that something that worries you, or do you see that as maybe, you know, the success of the Fed's new inflation framework, you know, making it out to the broader public?』

各種サーベイによるとインフレ予想がここ数年の最高値とかになっているのがぽろぽろと出ているんですがこれは懸念するべきなんでネーノその辺教えてちょ、という質疑でして、どこぞの国のようにインフレ期待が梃子でも上がらんのになぜか政策が成功していると大本営発表をしているような所の逆のような話になってきているのが美しい。

・・・・・でまあこれに関しては米国人の実感としてどうなのってのを米国在住の人に聞いてみたいので読者の方で米国在住の方がおられましたらちょっと教えろ下さいよろしくお願いいたします。

『CHAIR POWELL. Right. Inflation expectations before the pandemic hit, and here we think of survey market-based survey being either households or economists and market based. You look at all of those, and I would say that they were at the low end of what would have been consistent with a 2 percent inflation target, particularly our 2 percent inflation target which calls for 2 percent average inflation. So, they're at the low end.』

なるほどこの理屈で来るのか、という所ですが、パンデミックによってインフレが低下しまして、それがいま回復中、という状況なので・・・・・・・

『Inflation expectations actually went down a bit at the beginning of the pandemic, and now they've just moved back up to levels broadly that are where they were in 2018 or in some cases 2014. And I would say more consistent with our mandate.』

パンデミックの最初の頃にインフレ期待も若干低下して、それが戻ってきている状況であり、それが数字としては2018年とか2014年の所に戻ってきている、ということなので、今のインフレ期待の上昇ってえのは、パンデミックの始まりの時期から比較すれば、より我々のマンデートに近づいている、という事を意味する、とのお告げ。

てな訳ですので、これはつまり足元のインフレ期待はインフレ期待の跳ね過ぎによるアカン物価上昇を招くものではない、という理屈になっているのですが、よくよく考えてみるとマンデートに近づいて来ているんだったらハイパー緩和を正常化に向けて動いても良いという諸葛孔明の罠も仕組んであるという感じですが、でも説明でインチキを基本的にしていないってことでして、いや最初このオッサン大丈夫かとか思っておりましたが、パンデミックの初期を乗り切った以降(その前のはバタバタが酷くて市場に自分でボラを提供していたのはダメダメでしたけど)特に最近のパウエルの説明って、物凄くきっちりとロジカル(たまにインチキ屁理屈があるような気もしますが)になっていて、説明の明快さで言えば麿の生霊が乗り移ったのかという位には懇切丁寧に説明してるな、と思うのですが買い被り過ぎですかねえ。

『And we want them to be. We want them to be higher and, you know, on a persistent basis.』

ということなのでもうちょっと上がって欲しいし、それが持続的になって欲しい、との仰せですので、これはつまり目先ここからインフレ期待が上がってる、というようなサーベイデータとかが出てもFEDはテーパリング等を急ぎませんよ、というメッセージを出しているので、割と頑張って説明しているように見えます。まあもちろん今(というか4/28)の時点だからこう言っているだけの話であって、実際にそれが現出した時に涼しい顔をしていられるのか、というのは別問題ですが。

『We want inflation to run a little bit higher than it has been running for the last quarter of a century. We want it to average 2 percent, not 1.7 percent, and for that, we need to see inflation expectations that are consistent with that really well anchored at 2 percent.』

ということで、

『We don't really see that yet, but I would say that, you know, break evens have moved up in a way. Break evens are based on CPI, of course, but there are now at levels that are pretty close to mandate consistent.』

現状のインフレ期待水準では「We don't really see that yet」つまり「inflation expectations that are consistent with that really well anchored at 2 percent」には至っていない、という評価をしておりますので、ここから一段の上振れでも平然としている宣言ですが、この辺はもうしばらく強くなる可能性があるので、そういう風にいっておかないとヤバカロウと言う判断はあると思います。

でもって更に「BEIはCPIベースなので(CPIの方がPCEよりも高く出る)」と言ってBEIがこの程度に上がるのは寧ろ当然、も少し上がれやというぶっこみ方をしている訳でして、まあ物価の所で市場が動揺することに関してはちゃんと釘差してるんですよね。

『Whereas before, they were below. We monitor inflation expectations very, very carefully, as you would obviously know. So, that's where I would say it is.』

だそうですが、ここでマイケル・ダービー記者の更問が来る。

『MICHAEL DERBY. One small follow up. Do you have any red lines on inflation reading where if, you know, if you hit the certain number on, say, you know, core PC, that would be, you know, a trigger response from the Fed?』

現状に問題無いのは分かったがじゃあインフレ期待の観測される数値のレッドゾーンはどこやねん、という質問ですが、こういうのにうっかり数値を出すトンチキはいないので答えはこうなる。

『CHAIR POWELL. It doesn't work that way.』

じゃあ何でワークしないのかと言いますと、

『You know, we're, inflation measures are always going to be a bit volatile.』

ってな辺りで話を止めても良さそうですが、ここからページ3分の2くらいに渡って説明が延々と繰り広げられますので、さっきの質問とこの一言更問に対する説明でほぼ2ページ弱を使っています。先週火曜日にネタにたヘザー・スコット記者の質問もそうですが、今回のパウエル会見では物価とインフレ期待に関する質問には物凄い勢いで詳細に答えていまして、まあご案内の通りやっと今月になってから市場ちゃんの方は物価がマジインフレだったらどうなるのよ的な話になって参りましたが、実はこのようにパウエルは熱心に説明していたんですな、ということですの。では続き。

『We expect, as I mentioned, we expect core and in headline PCE to move up because of base effects, and you know, and we expect that to go away. We also expect these bottleneck effects to come in. We don't know how persistent they'll be.』

現状の物価上昇はベース効果や供給制約などによるもので、これがどこまで持続的かというのは今の我々には分からんですわな、と来て、

『We think they'll, you know, it's a matter of when they will pass through, not whether they will pass through. But we can't be confident about the exact timing of that or the size of them. They don't seem especially large at the moment, but, you know, we don't know. I mean, you know, this is all about the reopening of the economy. That's what's happening.

コスト要因がどのように物価にパススルーされるかされないか、ってな話とか、その規模とかタイミングとかもわからん、今時点では大きいように見えるけど、経済再開による要因が殆どですがな、からの

『We had it, we were in a deep, deep hole a year ago, and now, with a lot of help from fiscal policy, some additional help from monetary policy and, you know, a great deal of help from vaccination, we're seeing a strong rebound in activity. And what's happening is it's, demand can be spurred with fiscal transfers and the saved up fiscal transfers and people going back to work and things like that.』

大きな落ち込みからの現状の回復、って話をする際にパウエルさん中々謙虚でして、財政様にワクチン様のお蔭であって、金融政策に関しては「some additional help from monetary policy」と説明しているのがこれまたチャーミングでして、金融政策は主役から降りる格好にしておかないと、先々になって政策の自由度無くなるのを予期して話をしてるなって思いますし、ただ単に金融機関に10bpの補助金出しているだけなのに「回復はワシが育てた」とか言い出すどこかの中央銀行はちょっとパウエルさんの所に弟子入りして来いと小一時間問い詰めたいですな。まあそう考えると昨日ネタにした先週の(すいませんすいません)ブレイナード理事講演って中央銀行の理事の講演なのにチャイルドケアーがどうのこうのだの格差に対応する経済政策だの、お前は財務長官かというような話をおっぱじめているのは困ったなって思ってそうな気がします(個人の妄想です)。

『The supply side will take a little bit of time to adapt. New restaurants will have to be opened. The supply of various inputs into the goods part of the economy will have to be brought back up to speed. And again, you're seeing some of that. That'll happen over a period of time, over coming quarters. You'll see some of the bottlenecks resolved in, but the last one may not be resolved for some time.』

でもって供給制約の今後の話についても行っております。単に「レッドライン??そんな数値で自動的にはんのうするようなリアクションファンクションは設定しておりませんわ」で済ませても良いのに、なんか物価関連の話には大演説対応をしているし、よくよく見なおしてみれば中々キーになる話もしてるじゃん、とか後からゆっくりと読むのも会見の鑑賞的には結構ですななどと思うのでした(決して他のネタにかまけて後回しにした言い訳をしている訳ではありません!!!!)。なおどこぞの総裁記者会見は後で読んでも全くおもんないですけど、ブーメランのサルベージには使えますので念のため申し添えます。


・ファイナンシャルスタビリティに関して

『BRIAN CHEUNG. Brian Cheung with, yeah. Hi, Chairman Powell. Brian Cheung with Yahoo Finance. I wanted to ask about financial stability which is a part of the Fed's reaction function here. It seems like to people on the outside who might not follow finance daily, they're paying attention to things like GameStop, now Dogecoin. And it seems like there's interesting reach for yield in this market to some extent also Archegos. So, does the Fed see a relationship between low rates and easy policy to those things, and is there a financial stability concern from the Fed's perspective at this time?』

こちらの方のファイナンシャルスタビリティちゃんの論点は金融機関がどうのこうのというよりも、緩和的な政策によって一般ピープルの皆さんがサーチフォーイールドでバブルものにぶっこみに行くとか、あるいはアルケゴスちゃんのようなプロ向け方面でのサーチフォーイールドの典型的な事案を材料にしてますね。

これまたパウエルさんの答えが1ページを超えますw

『CHAIR POWELL. Right. So, we look at financial stability for us is really, we have a broad framework. So, we don't just jump from one thing to another. I know many people just look at asset prices, and they look at some of the things that are going on in the equity markets, which I think to reflect froth in the equity markets.』

多くの皆様が資産価格のみ、しかも株価ばかりを見ているというのは存じています、ってフレーズですが、まあ勿論上記の質問に対する答えの掴みとして適切な話の持って行き方ではあるのですが、これパウエル議長が言うと前大統領のパツキンヅラへの当てつけみたいに読めてしまうのはアタクシの心が濁っているからでしょうか?????

『But really, we try to stick to a framework for financial stability so we can talk about it the same way each time and so we can be held accountable for it. So, one of the areas is asset prices, and I would say some of the asset prices are high.』

しれっと「some of the asset prices are high」とか言っちゃうのもチャーミング。

『You are seeing things in a capital markets that are a bit frothy. That's a fact. I won't say it has nothing to do with monetary policy, but it also, it has a tremendous amount to do with vaccination and reopening of the economy. That's really what has been moving markets a lot in the last few months is this turn away from what was a pretty dark winter to now a vast, a much faster vaccination process and a faster reopening. So, that's part of what's going on.』

ワシらの金融安定の観点は色々なものをみていて資産価格動向はその一つに過ぎません、と仰せ御尤もな話をしまして、一方で今の資産価格上昇に関してはパンデミックからの回復、特にワクチン接種がジャンジャンすすんでいることによるものですよね、という説明。

『The other things, though, you know, leverage in the financial system is not a problem. 』

ほうほうそうですかそうですか。

『That was one of the four pillars. Asset prices was one. Leverage in the financial system is not an issue. We have very well capitalized large banks. We have funding risks for our largest financial institutions. They're also very low. We do have some funding risk issues around money market funds, but I would say they're not systemic right now. And the household sector is actually in pretty good shape. It was in very good shape as a relative matter before the financial crisis, sorry, the pandemic crisis hit.』

レバレッジ問題は金融安定の主要な論点ではなく、その点で言えば寧ろ金融機関や企業や家計のファンディングあるいはファイナンスがスムーズに回るのかが重要であり、現状そのリスクは金融機関にも家計にも見られないと。

『They were real concerns, of course, with high levels of unemployment and loss of wages and all that that the household sector would weaken dramatically. That hasn't happened. So, with the fiscal transfers, money that's on household balance sheets, they're in good shape. You see relatively low defaults and that kind of thing. So, the overall financial stability picture is mixed, but on balance, it's, you know, it's manageable I would say, and it's, by the way, I think it's appropriate and important for financial conditions to remain accommodative, to support economic activity. Again, eight and a half million people who had jobs in February don't have them now, and you know, there's a long way to go until we reach our goal. So, that's what I would say.』

んな訳で金融環境も良好だし、そんなことよりも問題なのは雇用や賃金だったりする訳で、そっちの方も最悪の事にはなっていないですな、でまあ金融仲介機能は良く働いているし、金融緩和のお蔭でファンディングのコンディションも良好です、ということなので特段問題ないよ、という話で締めておりますな。

なおこの記者さん、更問で急に短期市場について触れるという謎の振りをしています。

『BRIAN CHEUNG. As a follow up, you mentioned money market pressures, the Fed didn't make changes to interest on reserves or excess reserves. What was the logic behind that? It seems like SOFR has been drifting closer to zero. So, just hoping for clarification on that.』

超過準備の付利水準変えて無いけど、最近SOFRがゼロ近辺に下がってきていて、なんか対策した方がエエンデネエノという全然違う更問です、一応答えを引用だけ。


『CHAIR POWELL. Right. So, the federal funds rate has been well within target and at target range, and money market funds, money market conditions are fine. We have the ability to use our administrative tools to make sure that that remains the case. We do expect further downward pressure on rates through asset purchases and also the runoff in the treasury general account. But at this point, we didn't see a need for to deploy our tools to support rates. And of course, we will do so if the need does arise.』

ここはテクニカルな話で政策インプリケーションがある訳ではないですよってな感じでスルーしています。

#本日は朝ワイのネット接続の状況がアレ(接続自体はしているんだが)だったのでこんな所でご勘弁くださいませ





2021/05/18

お題「ブレイナード理事の安定のハト派を確認したがさすがに物価動向は気になるようですね」

ほうほうそうですかそうですか
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021051701055&g=pol
二階自民幹事長、1.5億円支出「関与せず」 河井夫妻による買収事件
2021年05月17日20時50分

幹事長に関係なく1.5億円も引っ張り出せるなんてそらまた随分と豪快なガバナンスですねえと思ったら記事の方には、

『会見に同席した林幹雄幹事長代理は、19年当時の甘利明選対委員長が広島選挙区を担当していたと説明を補足した。』(上記URL先より)

責任おっかぶせキタコレですが切るにはデカすぎませんかねえその尻尾。


〇ブレイナードはいつものハトに振り切ったハト派だが物価では微妙な部分も

今さらジローですが先週火曜日の物件
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20210511a.htm
May 11, 2021
Patience and Progress as the Economy Reopens and Recovers
Governor Lael Brainard
At "The Road to Recovery and What's Next," a virtual conference sponsored by the Society for Advancing Business Editing and Writing (via webcast)

今更ジローなのであんまり細々とは引用しませんけど、サクサクとネタにしてみます。

・経済に関しては来年の反動に注意という認識

最初に経済の現状と先行きの話でして、現状については結構ですなという話なので割愛しまして先行きの部分。第5パラグラフから行きます。

『While the incoming spending data, elevated household savings, and progress on vaccinations point to a very strong modal outlook, there is greater than usual uncertainty about the economy's path.』

ブレイナード理事は先行き経済に関して物凄い勢いで不確実性がありまっせ、というのを全面に出した説明をしておられるようです。

『For instance, the strength of domestic demand this year relative to next will depend on how quickly or slowly a large share of accumulated household savings is spent out. This, in turn, hinges in part on the distribution of household savings and how much is concentrated among households who are less likely to spend, perhaps because their services consumption returns only to pre-COVID levels or their near-term demand for durable goods has largely been satiated.4』

今年はワクチン接種によりそれまでの予備的な貯蓄拡大部分を取り崩してヒャッハーしていますが、その予備貯蓄部分終了したらどうなるねんというのが不確実性の一例と。

『There is also uncertainty about how much of the strong domestic aggregate demand will leak abroad rather than translating into domestic output. As supply chain and shipping bottlenecks ease, international spillovers could lead to some slippage between the increase in domestic demand and domestic resource utilization.』

国内の需要が国内の生産拡大ではなく、海外の生産へ漏出してしまう度合い。現状はグローバルにサプライチェーンや船舶輸送のボトルネックが生じているけど、これが解消されると国内需要が国内生産に全部跳ねてくれないよね、というようなお話のようだ。んなこと言われてもって気はするけど。

『In addition, some of this year's tailwinds are likely to become next year's headwinds. While the fiscal support provided to households is raising consumer spending and GDP this year, the absence of similar transfers will lower the growth rate of spending next year relative to this year. The boost to spending from pent up demand this year as the economy reopens is also unlikely to be repeated next year.』

今年の追い風は来年に向かい風の可能性、ってことで給付金などの終了やペントアップ特需の終了を挙げています。ということでさっきの需要が海外漏出っぽいお話(で良いんですよね?)以外の部分はFOMCパーティシパントの皆さんが散々指摘している事ですが、この点について「グレートな不確実性」という慎重表現を使ってせつめいしているのでいつものブレイナード音頭って感じですね。


・労働市場の評価

次のパラグラフからは労働市場の評価。まあお察しの通りの内容ではありますが。

『The latest jobs report reminds us that while there are good reasons to expect the number of jobs and the number of people wanting to work will make a full recovery, it is unlikely they will recover at the same pace. Over the past few months, the demand for workers has strengthened as COVID-affected sectors have reopened. Labor supply has also improved, with many people coming back into the labor force and others extending their hours of work, but there are indications that many other workers still face virus-related impediments. Although the fraction of the population ages 25 to 54 that is employed has improved in each month of this year, the current prime-age employment-to-population (EPOP) ratio of 76.9 percent is still far from the 80 percent level reached during both of the past two expansions.5』

ああでもないこうでもないと話していますが、要は労働市場に関しては需要サイドにおいても供給サイドにおいても、回復状況が一様ではありません、ということでして、業種ごとの違いとかそういうのはいつもの話だから良いとして、最後の所にある「Although the fraction of the population ages 25 to 54 that is employed〜」の部分を見ると、労働市場におけるいわゆるプライム層(25歳〜54歳)の総人口対比の就業率が毎月改善を続けているものの、現状76.9%でして、過去2回の経済拡大局面においてはこれが80%レベルにあったので、「still far from the 80 percent level」だと評価しているのがちょっと他のFRB高官とは一味違った指摘をしていますな。


その後労働市場の需要サイドと供給サイドに分けて状況についての評価があるんですが、需要サイドでは労働時間の確保が課題だったり、供給サイドでは労働に行けるコロナ前のような環境整備が課題だったり、という話をしていて、その次にこういう話をしているのが面白かったです。

『Childcare remains an impediment for many parents because the return to fully in-person school is still incomplete and childcare options are still limited in many areas.7』

面白かった、というよりも当然の配慮(中央銀行がそこまで言う必要あるのか、という話はありますが、ブレイナード理事は財務長官あるでって言われてた(イエレンに持っていかれましたが)お方ですのでまあこういう話もするんでしょ、という感じですかね)ではあるのですが、何と申しますか目の前に起きている事だけに反応しているだけで全体の整合性とか全体のデザインとか何も考えていないどっかの国のコロナ対応と比較して悲しみに耐えられませんな。

『At the time of the April jobs report, nearly two-thirds of students had yet to return to fully in-person schooling, and this share had only increased by 8 percentage points since March.8 Consistent with this, the labor force participation rate of women ages 25 to 45 was unchanged in April, after an increase in March that coincided with a surge in education hiring and school reopening. 』

依然として学校が対面授業形式でのフル再開をしていないので、25歳〜45歳の女性の労働参加率が中々アガランチ会長だと。

『Similarly, April saw a small increase in the number of women who reported that they wanted a job but were out of the labor force for family responsibilities, following a large decline in March.9 Recent research shows that the pandemic has taken a particularly significant toll on the labor market status of many Black and Hispanic mothers and mothers with lower incomes.10』

4月の雇用統計を見ると、就業の意欲はあるものの家庭の事情によって求人市場に参加しない労働者がいますよとか、社会的なマイノリティーで厳しい状態ですねとかそんな分析をしておりますな。

でもってその先はお賃金の話(これは良い伸びという評価)とか、コロナで打撃を食らっているのが低所得層に集中しているのが残念な事とかそういう話がありますが飛ばして結論。

『There is good reason to expect a strong rebound in employment over coming quarters, although the different forces affecting demand and supply may lead to uneven rates of progress.』

労働市場は確実にリバウンドはしているけどアンイーブンだったりしますよね、と来てからの、

『But today, by any measure, employment remains far from our goals.』

ブレイナード節キタコレで中々力強く「どこからどう見てもゴールからほど遠い」とのお告げですのでいつもの猛烈ハト派であることは言うまでもありません(個人の感想です)。

『The unemployment rate remains elevated at 8.9 percent when we adjust the narrow 6.1 percent U-3 measure of unemployment to also reflect workers who have left the labor force since the pandemic started and those who are misclassified. As of the latest reading, there is an employment shortfall of 8.2 million relative to the pre-pandemic level, and the employment shortfall is over 10 million if we take into account the secular job growth that would have occurred over the period since February 2020 in normal circumstances.11』

この辺はこれでもかとばかりにコンポーネントの話をしているのですが、さっきの一文で勝負付けは済んでいるので消化試合消化試合。


・物価に関してですがさすがに「一時的じゃない物価上昇」の可能性の点検は必要とな

さて物価。

『The path of inflation is also difficult to predict, although there are a variety of reasons to expect an increase in inflation associated with reopening that is largely transitory.』

いきなり「物価のパスはこれまた読みにくい」と来ていますな。

『Most immediately, base effects are likely to contribute substantially to the 12-month readings of headline and core PCE inflation in April and May as the price declines of March and April 2020 roll out of the 12-month calculation.』

『I also anticipate that the recent surge in energy prices, which contributed about 1/2 percentage point to the March 12-month headline PCE reading, will fade over time, although recent pipeline disruptions add some uncertainty.』

FRB高官の皆様がご指摘する要因をブレイナード理事も普通に指摘しています。

『It is much more difficult to predict the size and duration of supply-side bottlenecks and how these will interact with the pattern of demand to feed through into inflation.』

でもってここでオモロイのはブレイナード理事は供給制約の問題がどの位マジモンの影響を与えて来るのかというのは結構難しいんじゃないの、という至極全うだけどハト派にしては慎重な話を開始します。

『The production of certain semiconductors may take some time to ramp up, and the feedback effects between shipping delays and container shortages appear to be only slowly working themselves out. In contrast, the manufacturing capacity taken offline by the harsh weather in Texas in February is coming back online rapidly. If past experience is any guide, production will rise to meet the level of goods demand before too long.』

一部の半導体などについては生産の挽回に多少時間が掛かるとか、輸送の遅れやコンテナ不足問題などの解消にもやや時間が掛かる可能性がある、という指摘をしていますが、単に製造が遅れているだけ的な産品に関しては生産再開でサクサクと問題解決するっしょと。

『The supply-demand imbalances in the in-person services sector are expected to be resolved within a few quarters with progress on virus control and the return of in-person schooling. And demand growth itself is expected to moderate after a reopening surge, broadly coinciding with the time when some of the current tailwinds from fiscal support and makeup consumption turn to headwinds.』

サービスセクターに関する供給制約(人が出てこないとか)公衆衛生上の措置が緩和されて学校での対面式需要が復活すれば戻るからこっちは数四半期程度で回復するでしょうと。

『Of course, there may be additional demand and supply surprises that could further complicate the inflation picture.』

とは言え需給要因に関しては新たな問題も出てくるかもしれませんね、と物価に関しては何かちょっとトーンが違っていまして、

『To the extent that supply chain congestion and other reopening frictions are transitory, they are unlikely to generate persistently higher inflation on their own. A persistent material increase in inflation would require not just that wages or prices increase for a period after reopening, but also a broad expectation that they will continue to increase at a persistently higher pace.』

単に賃金があがっただの、経済活動が再開して物価が上がっただのというようなそれ単体では持続的な物価上昇につながる訳ではないです。持続的で顕著な物価上昇が起きるには、それだけではなくて、そこで起きている賃金上昇や物価上昇が持続的に高めの水準で続くであろうという予想を経済の幅広い主体が持つことが必要になります、ということでインフレ期待ネタキタコレです。

『A limited period of pandemic-related price increases is unlikely to durably change inflation dynamics. Past experience suggests many businesses are likely to compress margins and to rely on automation to reduce costs rather than fully passing on price increases.12 In the December Duke CFO Survey, roughly one-half of chief financial officers from large firms and about one-third of those from small firms reported "using, or planning to use, automation or technology to reduce reliance on labor."13 The pandemic-induced shift to virtual, or contactless, versions of many previously in-person interactions is likely to lead to some durable shifts in the use of technology.』

ああだこうだ説明していますが、物凄く意訳すると現状の評価をしていまして、これまでに見られた各種サーベイや企業行動などをみると、上記で言う「幅広いレベルでの持続的な賃金物価上昇予想」と言うものは広がっていません、という説明をしておりますね。

『Thus, there are compelling reasons to expect the well-entrenched inflation dynamics that prevailed for a quarter-century to reassert themselves next year as imbalances associated with reopening are resolved, work and consumption patterns settle into a post-pandemic "new normal," and some of the current tailwinds shift to headwinds.14』

ということで結論としては結局の所インフレーショナルなダイナミクスになっている訳ではない、というお話をしておりますな。とはいえ・・・・・・・・・・

『I will be carefully monitoring measures of longer-term inflation expectations to ensure they are well anchored at 2 percent.』

キタコレということでインフレ期待の話が続く。

『To date, various measures suggest inflation expectations remain well anchored and broadly consistent with our new framework. The Index of Common Inflation Expectations moved back to 2 percent in the first quarter, returning to its level in 2018, which is lower than its level prior to 2014.15 』

色々な指標で示されるインフレ期待が、と言う話でして、最初のが何か良く分からん(すいません)ですが「The Index of Common Inflation Expectations」って奴なんですが、これは2%水準まで上がって来ましたという話。2018年のレベルと同じですが、2014、15年のレベルよりは低いって言ってるんでこっちは懸念材料にはならないでしゅな。

『In addition, the term structure of market-based measures of inflation compensation is consistent with market participants expecting a limited period of inflation above 2 percent. A straight read of the difference between the forward nominal Treasury curve and the forward Treasury Inflation-Protected Securities curve implies inflation compensation is expected to be higher for the next two years and to decline subsequently and remain stable 5 and 10 years into the future.』

債券市場からインプライされる市場のインフレ期待に関しては、2%を多少上回る程度の水準で推移しておりますよと。

『I will remain attentive to the risk that what seem like transitory inflationary pressures could prove persistent as I closely monitor the incoming data. Should this risk manifest, we have the tools and the experience to gently guide inflation back to our target. No one should doubt our commitment to do so.』

ということでして、ブレイナード理事超ハト派なのにこのことを言うのね、とちょっと感心してしまいましたけれども(個人の感想です)、現在の物価上昇はトランジトリーだとは分析されますけれども、さはさりながらマジモンの持続的かつ(ノ∀`)アチャーなインフレーションプレッシャーであるリスクに対しては、今後の経済指標を注意深く観測していく必要がある、とぶっこんできておりまして、いやまあ中央銀行家としては物凄く当然のスタンスなのですが、ハトの過激派という風情まで出すこともあるブレイナード理事の口からこういうのが出るのってオモロイナーと思いましたよ、あんまり反応してなかったと思うけど市場は。

でもってその場合ですけれども、「we have the tools and the experience to gently guide inflation back to our target」とジェントリーに物価を抑制するツールがある、と言う風に言って、これって要はもしそうなっても政策運営でそんなに派手派手な締めをするとかそういう事は無いからご安心下さいませって話をしているんですな。まあそれはそれで良いのですが、インフレって経済遅行指標だから、実際にマジモンのインフレーションとかになったら(なったの最近主要国では碌に見ないけど)、悠長なことやってたら更にインフレ加速せんかねえとは思うのでこのあたりは虫の良い話をしている感はあります。

とは言いましても最後のところで、

『But recent experience suggests we should not lightly dismiss the risk on the other side. Achieving our inflation goal requires firmly anchoring inflation expectations at 2 percent. Following the reopening, there will need to be strong underlying momentum to reach the outcomes in our forward guidance. Remaining patient through the transitory surge associated with reopening will help ensure that the underlying economic momentum that will be needed to reach our goals as some current tailwinds shift to headwinds is not curtailed by a premature tightening of financial conditions.』

とまああくまでも我々は経済を吹かしていって回復に寄与していきまっせという話をしておりますので、2%のインフレ期待がどうのこうのって言ったってその辺あからさまに違うのでなければある程度何とでも言い張れるところがありますから、政策スタンス自体は相変わらずのハトではあると思います。

さらに最後の最後のパラグラフが、

『The outlook is bright, but risks remain, and we are far from our goals.』

から始まっていてやはり安定の大ハト派。

『The latest employment report reminds us that realized outcomes can diverge from forward projections and underscores the value of patience. As the economy reopens fully and the recovery gathers momentum, it will be important to remain patiently focused on achieving the maximum-employment and inflation outcomes in our guidance.』

てな訳でして、まあ物価さえ変な跳ね方をしなければ政策の地蔵スタンスは地蔵スタンスなんでしょう。よって目先物価上昇がマジモンなのかどうかの分析が無茶苦茶重要という話になりますね。


〇しまった時間がない予告編(ブラード総裁)

変態仮面ブラード総裁である。
https://www.stlouisfed.org/news-releases/2021/05/13/bullard-discusses-a-booming-us-economy
St. Louis Fed's Bullard Discusses a Booming U.S. Economy
5/13/2021
ST. LOUIS - Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard presented “U.S. Economy Booming” at a virtual event of the Greater Memphis Chamber’s Chairman’s Circle on Thursday.

これまた先週のネタで恐縮ですが、題名からして変態仮面の香りがする。ちなみに本編の方は動画しか無いのですが、54分とかいう表示を見た瞬間にそっと閉じました。

https://www.stlouisfed.org/from-the-president/speeches-and-presentations/2021/us-economy-booming
U.S. Economy Booming
Latest from President Bullard






2021/05/17

お題「ウォーラー理事の物価に関する考察を拝読しましたが今の所緩和縮小を急ぐ気配は無しと言う事で良さそうですね」

本編の中身読んでないから何ともかんともではありますが・・・・・・
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210514a.htm/
BISグローバル金融システム委員会報告書「変容する資本フローのパターン」の公表について
2021年5月14日
日本銀行

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/data/rel210514a.pdf
報告書要旨(Executive Summary)の和訳
グローバル金融システム委員会報告書
「変容する資本フローのパターン」
要旨(日本銀行仮訳)

『グローバル金融危機(2007-09 年)以降の 10 年間において、資本フローのパターン、特に内訳の構成には大きな変化がみられた。こうした変化によって、例外的に大きくかつボラタイルな資本フローが与える潜在的な影響に対する懸念は、和らぐことはなく、むしろ新たなものに変わった。特に、非居住者からの資本流入の極端な増減は、マクロ経済および金融安定に対して、深刻なリスクとなっている。』

『こうしたリスクは、自国経済が外国資本に依拠している一方、自国の金融システムがショックに対して脆弱である新興国において、取り分け顕著である。新興国から証券投資の流出が過去に例を見ないほどの速さ・量で進行したコロナ危機の初期段階において、資本フローの大きな変動がもたらす課題に再び焦点が当たった。今次危機は、各種政策ツールによって、資本フローの極端な変動に伴うリスクが有効に抑えられた点を浮き彫りにした一方、政策を実施するにあたって、その手段や枠組みはなお発展途上にあることを示唆している。』

要旨だけ見るとリーマンショックからこの方って話をしているのですが、新興国からの資金流出ネタではやっぱり1990年代のアジア通貨危機じゃろと思ってしまうんですけどねえ。なんか要旨だけ見ているとあの時代から言ってる話が本質的に変わって居ない気がするがちゃんとよんでない(のとその暇がない)のでパス。

と、結局パスなのでまあお題にはならないのでした。間違って読む余裕あったら読む。


〇理事連中(FRBの)がお話をしておりますが金曜の続きでウォーラー理事ネタ

土日に追加投入するつもりだったのだが読んでるだけで体力が尽きた(汗)。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20210513a.htm
May 13, 2021
The Economic Outlook and Monetary Policy
Governor Christopher J. Waller
At The Global Interdependence Center's 39th Annual Monetary and Trade Conference, The LeBow College of Business, Drexel University, Philadelphia, Pennsylvania (via webcast)

この講演テキスト「チャートによりますと」みたいな記述があるのですがPDFバージョンの方を見てもチャートが付いていないという割と不親切設計になっているのがアレですが、経済の見通しといいつつ雇用情勢と物価情勢の話を思いっきりしています。どういう構成になっているのかというと、

・経済のパート:パラグラフ2つ(最初の挨拶まで入れると3つ)
・労働市場のパート:パラグラフ6つ
・物価のパート:パラグラフ13個(一部に金融政策をどうのこうのお話あり)
・住宅市場のパート:1パラグラフ(なんでやねん)
・金融政策のパート:パラグラフ3つ(最後の1行挨拶まで入れると4つ、金曜にネタにした部分)

とまあそんな構成(PDFで展開すると10ページ)になりまして、どう見ても物価の話ですなって所ですが、何故か住宅市場の話がありまして、住宅価格が「Prices for lumber and other inputs for housing are skyrocketing, and while that occurrence is not having a significant effect on inflation, it is limiting the supply of new homes and helping feed the house price boom. 」などと住宅価格がバブっておられるのではないか(ただし銀行システムが健全でレジリアントなので現状金融危機などのような大問題を起こすものではない)とか仰せになっているのもちと気になりました。

んな訳でパラグラフ13個を鑑賞鑑賞。


・他のFRB主流派と同様に「足もとの物価上昇は一時的である」というのがベースです

『Now let me turn to the other leg of the Fed's dual mandate, price stability. That second thud you heard yesterday was forecasters' bodies following their jaws to the floor after the CPI report was released. It was a surprise, but a look at its causes doesn't alter my fundamental outlook, which is that the main pressures on inflation are temporary.』

物価の話をおっぱじめるにあたって、先日(講演したの先週目標)のCPIの上振れはおーと思いましたけど、それによって私の基本的見方に変化はありません足元の物価上昇は一時的、と来ました。

さてここで冒頭から話が若干脱線しますが、バーナンキのテーパリング云々の時には、直近で起用したスタイン理事がのっけから外れ値上等とばかりに、BISビューチックに足元の金融情勢などについて外れ値発言をおっぱじめ、何じゃこの人は(でも金利が無いと飯の種の無いワイは緩和縮小大歓迎なのでワイは賛同してたな)という感じでしたが、ある時から急にこのBISビューチックなのにバーナンキがホイホイと乗っかってきたように見えたと思えば正常化路線、となった訳ですよ。

そういう意味ではウォーラー理事とかも振り付け的には面白いポジションにいる(これがクラリダだと鉄砲玉をする訳には立場上行かない(クラリダの場合は鉄砲玉じゃなくて地均しつまりぶっこんだ時点でダンディール扱いになってしまう)し、ブレイナードみたいに既にポジションある人は別にまあそのまんまでしょというのがある)と思うのでして、いやまあ勿論クラリダがぶっこむとかだとそらもう大騒ぎなのですけれども、予兆管理的にはブレイナードが中立転換するとか、ウォーラーさんあたりのあんまり色がついてない(と思われる)理事が外れ値上等の鉄砲玉を買って出るか、という辺りが予兆管理に有効ではないか(個人の感想です)と思うのですよ。という訳で以下鑑賞するのはそういう訳ね。


・政策スタンスの説明部分も基本的に主流派通りですが

『First, let me address concerns that strong growth threatens to unleash an undesired escalation in inflation. In August 2020, the Federal Open Market Committee (FOMC) adopted a new policy framework that includes flexible average inflation targeting and a policy stance based on economic outcomes as opposed to economic forecasts.』(forecastsが斜字体です)

CPIが上振れました、という掴みから来るので成長の過熱が望ましくない物価上昇を起こすのではないか、という問題に関すしてご説明しましょうってお話から始まるようですな。

『Flexible average inflation targeting means we aim to have inflation overshoot our 2 percent longer-run goal if inflation had been running persistently below target. Given that we missed our inflation target on the low side consistently for the past eight years or so, the FOMC has said that it will aim to moderately overshoot its inflation target for some period but then have it return to target.』

アベレージターゲットですがこの8年物価がマンデート水準を下回っていたのですから、多少のマンデート上振れは上等上等、という考えで行っているものですよ。

『Our willingness to aim for above-target inflation also means we will not overreact to temporary overshoots of inflation-we need to see inflation overshoot our target for some time before we will react.』

FEDの説明しているストラテジーというのは一時的な物価のオーバーシュートでは政策は過度に反応をしない(ってテンポラリーなのが明確だったら別にメイクアップ云々関係なく反応しないと思うがそこは措く)し、物価がオーバーシュートしていたとしても、我々は政策行動を起こす前に多少の時間を掛けるということです。

『An outcomes-based policy stance means that we must see inflation before we adjust policy-we will not adjust based on forecasts of unacceptably high inflation as we did in the past. Call this the "Doubting Thomas" approach to monetary policy-we will believe it when we see it.』

"Doubting Thomas"ってノンネイティブのミーには良くワカランチ会長ですが、過去のようにプリエンティブに対応する訳ではないですよ物価の状況を見てから慎重に判断しますよ、という解説が続きますの。

『We asked to see it, and lo and behold, we are now starting to see inflation exceeding our inflation target. But the critical question is: for how long? Although inflation is starting to exceed our 2 percent target, in my view, this development is largely due to a set of transitory factors that are occurring all at once. I can think of at least six.』

ということですが、ウォーラーさん途中途中に微妙な表現を混ぜてますなと思う所がありまして、しれっと「we are now starting to see inflation exceeding our inflation target」とかあれれ??となるような表現がちりばめられている印象は正直ある(個人の感想です)。

ただ、足元の物価上昇に関しては一時的であると言える理由が少なくとも6つある、とかその後にすかさずさっきの一瞬あれってなる文言を解毒しているので毒気をあまり感じないのですけどね。


・足元の物価上昇が一時的という説明に6つも理由をぶっこむのですがよく見るとうち4つは見通しの話だなこりゃ

という訳で理由の列挙が始まる。

『First, there is what we economists call "base effects," which is the simple arithmetic of what happens when the very low inflation readings of the first half of 2020 fall out of our 12-month measure of inflation. That adjustment will be over in a few months. A second temporary factor is higher energy prices, which have rebounded this year as the economy strengthens but are expected to level off later this year. Retail gasoline prices have jumped in some areas due to the disruption of the Colonial Pipeline, but the effect on inflation should be temporary also.』

何故か1と2だけ一つのパラ(残りはパラを分けてる)のですが、これは1と2が既に起きていること、3以降が今後のベースラインシナリオを踏まえた見通しの話をしているんですな。でもって最初の2つはベース効果とエネルギー価格の上昇の話です。

『A third factor is the significant fiscal stimulus to date. Stimulus checks put money in people's pockets, and when they spend it, there will be upward pressure on prices. But when the checks are gone, the upward pressure on prices will ease.』

3番目は財政大盤振る舞いをしたので物価に上昇圧力が掛かっていますが、この小切手大盤振る舞いが一段落すると物価上昇圧力は緩和されるでしょう、となっていて、この3番目から先はあくまでもベースラインシナリオによって経済が進んだ場合の話をしている、というのが微妙ちゃあ微妙でして、すなわち例えば上記3番目で言えば、バイデン大先生が威勢よく小切手ばらまきアゲインあんどアゲインとかやりだすとこのシナリオは崩れる訳ですな、まあそういう感じで見て行くのよ以下の理由は。

『A fourth factor is a reversal of the very high savings that households have built up over the past year. As households draw down these savings, demand for goods and services will increase, which again will put upward pressure on prices. But, just like stimulus checks, once the excess savings is gone, it is gone, and any price pressures from this factor will ease.』

パンデミックによって家計が防衛的になり貯蓄を増やしましたが、ワクチンヒャッハーとなってその家計の皆様がその時に蓄えた貯蓄を取り崩してヒャッハー消費にまわしているのですが、これも増えた貯蓄の分の取り崩しが終わったらおしマイケルなので一時的とな。

『A fifth factor is supply bottlenecks that manufacturers and importers are currently experiencing; supply chain constraints are boosting prices, particularly for goods-less so for services. One strength of a capitalist system is that markets adjust. If demand and prices rise for a product, supply will follow, and bottlenecks will dissipate. So once again, price pressures induced by bottlenecks should reverse as supply chains catch up and orders get filled.』

5番目の理由がサプライチェーンの毀損による影響ですが、これは需要が続くと見れば毀損したサプライチェーンも元に戻っていくような動きになるのでやはり物価上昇には一時的だぞと。

『Finally, the excess demand for labor I described earlier is likely to continue to push wages up in the next couple of months. How much of this increase gets passed through to prices is unknown, but some of it will. However, as I argued earlier, once labor supply catches up, this wage pressure should ease.』

ここは飛ばした労働市場の方をちゃんと見ないと行かんのですが、物凄くざっくりと読んだ感じですと、今回引用した物価の2パラ前の辺りから書いてあるのですが、今次コロナショックでは労働供給も大きく落ち込みました、理由は言わずと知れたパンデミックでありますが、こちらに関してはワクチン接種が進む中で戻って来るでしょう、ってな話をしています。

でもってそれを踏まえてこの一時的要因ちゃんは、労働供給府不足が賃金に上昇圧力を掛けていて、むこう2カ月程度はその賃金の上昇圧力が、どの程度販売価格にパススルーされるか分からないけれども、幾分かは転嫁されるので物価上昇圧力になるが、ワクチン接種の進展に伴い労働市場における労働力供給サイドの方が戻って来れば賃金圧力からの物価上昇は来ないじゃろ、という認識をしめしていまして、まあここの辺りも賃金動向などを見ながら注意なんだろうなあ、と思いました。


・物価話のまとめ部分でしらっと一時的要因だと思うがソウジャナイ可能性らしき言及もあったりする

『I expect that all of these factors will cause inflation to overshoot our 2 percent longer-run goal in 2021. But they will not lead to sustained, high rates of inflation. Financial markets seem to think the same-5-year breakeven inflation expectations are around 2.5 percent, and 5-year, 5-year-forward measures are around 2 percent, when adjusted for the difference between CPI (consumer price index) and PCE (personal consumption expenditures) inflation rates.6 Hence, markets do not believe the current factors pushing up inflation will last for long.』

ということで上記のファクターが物価上昇を起こすが一時的なので長続きしませんよ、という話をした後、市場での5年BEIおよび5年先の5年BEI(ってこれ分析の時によく使うんだが、アタクシは元々がセルの短期とマーケットメーク係上がりだからというのもあるんだが、このフォワードレート分析って短期に近い所なら分かるのですが、5年先5年とか10年先10年とかそういうのって、ただの曲率分析であって期待分析の意味は乏しいと思うんですけど、そういう事を言うと馬鹿呼ばわりされるから(まあ馬鹿なので仕方ないのですが)これを持ち出しまくるののってどうなのかねとは思ってしまう。曲率分析としては意味あるとおもう)を持ち出しまして、市場も同様に一時的と思っている、だそうです(そんなことになったら予想インフレがアンカーされなくなるんとチャイマスカと思うがその話は無いことになっている)。

ということでまとまっているのですが、

『While I fully expect the price pressure associated with these factors to ease and for some of the large increases in prices to reverse, it may take a while to do so.』

んな訳で今強めの物価というのは一時的でいずれ落ちて来ると思いますが、それには若干のお時間がかかるでしょう。

『Shortages give producers pricing power that they will be reluctant to let go of right away. Wage increases for new workers may cause firms to raise wages for existing workers in order to keep them. Consequently, there may be knock-on effects from the current wage increases.』

お賃金のここもとの上昇に関しては物価上昇に対するノックオン効果があるかも知れません、と来まして、

『The pandemic has also caused firms to restructure their supply chains, and, as a result, bottlenecks may last longer than currently anticipated as these supply chains are rebuilt. There are also asymmetric price effects from cost shocks-prices go up very quickly but often tend to come down more slowly, as consumers slowly learn that the bottlenecks have gone away.』

サプライチェーンは戻ると思うのですが、供給ショックによる物価の影響は非対称であって、供給ショックでコストが上がると物価には勢いよく跳ねますが、戻る方は時間が掛かるかもしれません、という微妙にキナ臭い表現が入っておりまして、この部分の最後のパラグラフに参ります。


・このあと金曜に引用した部分に続きますが金融政策へのインプリケーション

『For these reasons, I expect that inflation will exceed 2 percent this year and next year. After that, it should return to target.』

今年と来年が2%超え、その後2%に向けて低下していくでしょう、というのが見通しです。

ま、2.5%程度で済んでいるならFEDも涼しい顔できるでしょうが、3%越えが延々と続くような事になった時にFEDが涼しい顔をしていられるか、というのは見てみたいから米国物価上昇もっとやれって心境です(ただのワガママ)。

『And in my view, this fluctuation is okay-our new framework is designed to tolerate a moderate overshoot of inflation for some time as long as longer-term inflation expectations remain well-anchored at 2 percent.』

でもってこのような上昇は我々のアベレージターゲット的な長期的2%を希求するという点に整合的なので無問題、と来まして先週金曜にネタにした部分に繋がりますので、まあ基本的に今のところはウォーラー理事が緩和縮小早期化みたいな話に乗って来る感じはしません(この講演だけでは、ですけど)けれども、ただまあ前提になっている話の前提がどうなるかというのによってはFEDのおしりもムズムズしてくると思いますので、論点纏めてたんでなるほどと思いました。





2021/05/14

お題「クラリダはいつもの火消しだがウォーラー理事は火消しだが微妙な面もあるかもです」

ん??
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL4N2N049C?il=0
2021年5月14日5:22 午前
米国株式市場=ダウ急反発433ドル高、失業保険統計の改善で安値拾いの買い

インフレ懸念(=金融緩和政策の縮小)で株売りだったらイニシャルクレーム改善も金融緩和政策の縮小に通じるのに株買いになるのか、などと言ってもまあ仕方ないですかそうですか。


〇昨日のクラリダのテキスト短かったじゃねえかしまったわw(なお内容はまあ普通)

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/clarida20210512a.htm
May 12, 2021
U.S. Economic Outlook and Monetary Policy
Vice Chair Richard H. Clarida
At the "NABE International Symposium: A Vision of the Economy Post COVID," Washington, D.C. (via webcast)

昨日はロイター記事のヘッドラインだけ見ただけ、という手抜きプレイを行ったのですけれども、あとからFEDのサイト見に行ったら短かったじゃねえかこっちネタにすれば良かったとか思ってもアフターフェスティバルとはまさにこのこと。

ということでクヤチイので最初の挨拶除く全文読んでやろうじゃないの(努力の方向がおかしい)。


・経済の現状については「ここまで見通し通りのロバストな回復」と表現に工夫が見られます

『Current Economic Situation and Outlook』って解説がまず入る訳ですが。

『In February 2020, none of us could have imagined that in a few short weeks the COVID-19 pandemic and the mitigation efforts put in place to contain it would deliver the most severe blow to the U.S. economy since the Great Depression.』

と掴みがパンデミック襲来から入るのでこのあたりは基本流し読みでええじゃろ。

『Gross domestic product (GDP) collapsed by more than 30 percent at an annual rate in the second quarter of 2020; more than 22 million jobs were lost, wiping out a decade of employment gains; the unemployment rate rose from a 50-year low of 3.5 percent in February to almost 15 percent in April; and inflation plummeted in response to a collapse in aggregate demand that dwarfed the contraction in aggregate supply.』

エライことになりましたな、という話なのでどうでもよい。

『But with the benefit of hindsight, it is clear that the economy has proven to be much more resilient than many forecast or feared one year ago.』

しかし後から考えてみればその後の経済は皆が恐れていたような事にはならずに物凄い勢いでレジリアントであったというのが明らかになりましたよ、って話でまあこの辺も別に目を皿のようにして読まなくても良さそう(全文読むとかイキってた割には飛ばしまくるアタクシ)。

『With timely support from monetary and fiscal policy-unprecedented in both scale and scope-and the rapid development and deployment of several effective vaccines, the economy stabilized and began a robust recovery in the second half of 2020 that both we and outside forecasters expect to pick up steam this year.』

この辺までは今までの話なので斜め読み、さてここで「So far」から始まるのでもうちょっとちゃんと読む。

『So far, the economic activity data we have received this year is consistent with this outlook. For example, GDP rose by an impressive 6.4 percent in the first quarter, with real final sales to private domestic purchasers up an eye-popping 10.6 percent. Household spending on goods is rising robustly, and spending on services is also picking up as contact-intensive sectors begin to reopen and recover. Business and residential investment have more than fully recovered from the 2020 collapse and are operating above pre-pandemic levels.』

直近の経済に関してコンポーネントの説明をしながら結構な数字ですなという話はしておりますが、その直前の部分にありました「2020年後半にはFRBや民間フォーキャスターの皆さんが同様に見込んでおりました、今年の経済ロバストな回復(つーか拡大)を見込んでおりました」っていう見通しに対して整合的(is consistent with this outlook)であるという経済データが出ております、って説明していて、「上振れ」と言わない所が火消し精神に満ちていて気を使いましたなと言うのがわかります。


・やたら4月雇用統計の弱い部分を強調するのも火消し火消し

と強い経済の話をしつつも「ただの見通し通り」と火消しをしながら4月雇用統計を引っ張り出して今度はやや消火ちっくな説明をしておる。

『However, after looking at the details of Friday's disappointing employment report, the near-term outlook for the labor market appears to be more uncertain than the outlook for economic activity. Employment remains 8.2 million below its pre-pandemic peak, and the true unemployment rate adjusted for participation is closer to 8.9 percent than to 6.1 percent. At the recent pace of payroll gains-roughly 500,000 per month over the past three months-it would take until August 2022 to restore employment to its pre-pandemic level. But what this necessary rebalancing of labor supply and demand means for wage and price dynamics will depend importantly on the pace of recovery in labor force participation as well as the extent to which there are post-pandemic mismatches between labor demand and supply in specific sectors of the economy and how long any such imbalances persist.』

この部分ですが、例えばこの講演をしている足元で仮に金融市場ちゃんの方が「雇用統計がクッソ悪かったから利上げは遠いでヒャッハー」ってやっている最中だったら、最初の「金曜に出た雇用統計は悪かったですな」の言及をしても以下の詳細説明をしない、というパターンになると思われるわけでございまして(個人の妄想です)、ああでもないこうでもないと説明しまくるのは雇用統計が(ノ∀`)アチャーだったからおまいらが先走る程金融緩和政策の縮小(なのではなくて正確には「拡大ペースの縮小」であって、ガチの縮小はバランスシートのランオフとか利上げとかですので念のため申し添えます)は先の話だわ、というのを伝えたいから、という点では最近のFEDの執行部様って割とアカラサマなので分かり良い。


・でもって肝心の物価ですが(順当ですけど)先般来FED執行部が言ってる「ワンタイムです」という説明

次のパラが肝心の物価の話。

『Readings on inflation on a year-over-year basis have recently increased and are likely to rise somewhat further before moderating later this year.』

年後半にモデレートしてくる前に目先暫くは前年対比のインフレがあがるでしょうな、といういつもの話。

『Over the next few months, 12-month measures of inflation are expected to move above our 2 percent longer-run goal, largely reflecting, I believe, transitory factors such as a run of year-over-year comparisons with depressed service-sector prices recorded last spring as well as the emergence of some supply bottlenecks that may limit how quickly production can rebound in certain sectors.』

この前FOMC後会見の時にパウエルさんが大演説をかましていた話と同じ(サービス価格の前年比効果、とちょっと詳しくなっていますが)でして、前年比のベース効果と、一時的な供給制約と、昨年の戻しによる一時的なペントアップで下駄をはいた需要、という説明なのは同じです、まあ当たり前と言えばそれまでですけど。

『However, under my baseline outlook, these one-time increases in prices are likely to have only transitory effects on underlying inflation, and I expect inflation to return to-or perhaps run somewhat above-our 2 percent longer-run goal in 2022 and 2023.』

これらの一時的要因が去った後は2022年、2023年ともに「somewhat above-our 2 percent longer-run goal」に戻るというのがワシのベースラインシナリオである、と来ていますが、まあそんなに虫の良すぎる話になるかどうかは神の味噌汁。

『This outcome would be entirely consistent with the new framework the Federal Reserve unanimously adopted in August 2020 and began to implement at our September 2020 Federal Open Market Committee (FOMC) meeting.2』

でもってその見通しってのは(なぜそういう言い方になるやと思いますが)昨年お示ししたロンガーランゴールあんどストラテジーと整合的であります、と謎説明になっているのですが、この次のコーナーがそのロンガーランなんちゃらの説明になっているのですな。


・次が政策の説明と来ましたが基本的に従来の話を継続していまして「いいから落ち着け」と言いたいんでしょ

ここから『Recent FOMC Decisions and the New Monetary Policy Framework』という小見出しである。

『At FOMC meetings convened since the new framework was announced last August, the Committee made important changes to our policy statement that upgraded our forward guidance about the future path of the federal funds rate and asset purchases to bring it in line with our new framework.』

から始まるこの部分、要は毎度の説明をしているだけでして、「物価が継続的に上放れするようなインフレが起きにくいと考えられる中では、金融政策はメイクアップストラテジーを基本にして運営しますよ」という例によって例の如くの話ですな。

『As announced in the September 2020 FOMC statement and reiterated in the following statements-including the most recent one-with inflation running persistently below 2 percent, our policy will aim to achieve inflation outcomes that keep inflation expectations well anchored at our 2 percent longer-run goal.3 We expect to maintain an accommodative stance of monetary policy until these outcomes-as well as our maximum-employment mandate-are achieved. We also expect it will be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent until labor market conditions have reached levels consistent with the Committee's assessments of maximum employment, until inflation has risen to 2 percent, and until inflation is on track to moderately exceed 2 percent for some time.』

『In addition, in our December 2020 FOMC statement, the Committee combined our forward guidance for the federal funds rate with enhanced, outcome-based guidance about our asset purchases. We indicated that we will continue to increase our holdings of Treasury securities by at least $80 billion per month and our holdings of agency mortgage-backed securities by at least $40 billion per month until substantial further progress, measured relative to the December 2020 announcement, has been made toward our maximum-employment and price-stability goals.』

長えよって感じですが、現在ぶっこんでいるフォワードガイダンスについて説明していますが先刻ご承知のお話だと思うので次行きます。

『In our new framework, we acknowledge that policy decisions going forward will be based on the FOMC's estimates of "shortfalls [emphasis added] of employment from its maximum level"-not "deviations."4 This language means that, going forward, a low unemployment rate, in and of itself, will not be sufficient to trigger a tightening of monetary policy absent any evidence from other indicators that inflation is at risk of moving above mandate-consistent levels.』

相変わらずロンガーランうんちゃらの説明をしていまして、雇用のショートフォールに対応(だから緩和縮小は先)という話をしているのですが、今問題になり得るのは、第一段階が「一時的って言ってるけど本当に一時的で済むのけ?」って話でして、それこそ適合的期待が形成されてアイヤーってなるリスクをどの位考えているのかとか、供給制約が解消されなかったらどうすんのとか、一時的とか言いつつそれ以外のインフレも入ってねえかとか、そういう話であって、第二段階は「インフレと雇用のコンフリクトが起きた時にどうするのけ???(インフレ版)」ということでありまして、雇用が過熱してもインフレがアガランチ会長ならば緩和は継続、って言う方のコンフリクトのお答えはとっくの昔に頂いている訳で、今はその逆のコンフリクトにどう対応するのか、という話ですし、まあ普通に考えたらインフレの方がウェイト高かろうと思われる(先日のパウエル会見でもその質問は「適切に対応します(キリッ)」で逃げています)のでさてどうなのよ、という話なので、今更この説明をせっせとやってもそんなに釣れないと思います(個人の感想です)。

『With regard to our price-stability mandate, while the new statement maintains our definition that the longer-run goal for inflation is 2 percent, it elevates the importance-and the challenge-of keeping inflation expectations well anchored at 2 percent in a world in which an effective-lower-bound constraint is, in downturns, binding on the federal funds rate.5 To this end, the new statement conveys the Committee's judgment that, in order to anchor expectations at the 2 percent level consistent with price stability, it will conduct policy to achieve inflation outcomes that keep long-run inflation expectations anchored at our 2 percent longer-run goal.』

いやだからワシらの聞きたいのは物価と雇用のコンフリクトで物価側がアカンアゲアゲになってきたときにあんたらどうしますねんという話なんだが、まあ確かにこのロンガーランゴールあんどストラテジーでは、そういう場合を前提にした話というのは含まれていない、という事実isある(基本認識が「インフレが経済のギャップに碌すっぽ反応しない」だから)のでして、そっちの疑問へのお答えにはなっていませんですな。

まあ何ですな、それを言い出すとそもそもの昨年9月に考えたストラテジーの前提が音を立てて崩れるので、それを前提にした話をすると台無しおぶ台無しになってしまう、という面があるのでそこは触れない、と言う事なんだとは思いますが(個人の感想です)、普通に昨年のジャクソンホール以来の話を繰り返しているだけに過ぎないですな。

ま、ここで新しい情報がポット出てくるという訳にも行かないとは思いますが、何か出して欲しいな感もあるのですが、うっかり出すと変な思惑になってしまいますので、ここは従来見解を上記のように(というか下記にも続きますが)やたらめったらしつこく説明して、それによって「FEDの(まあFEDの、って言っても執行部の、ということですけど)スタンスは足元の経済物価状況によって変化する訳ではない」という火消しをしたいんでしょうなと思いました(個人の妄想です)。

『As Chair Powell indicated in his Jackson Hole remarks, we think of our new framework as an evolution from "flexible inflation targeting" to a "flexible form of average inflation targeting."6 While this new framework represents a robust evolution in our monetary policy strategy, this strategy is in service to the dual-mandate goals of monetary policy assigned to the Federal Reserve by the Congress-maximum employment and price stability?that remain unchanged.7』

ということで政策枠組み部分の締めが「ジャクソンホールでうちのシャッチョサンが説明した通り」になっておりますのも芸が細かくて何も変わってませんというのを主張してるんでしょこれは。、


・最後のまとめでは「APP見直し論議までは距離がある」がのっけからぶちかまされます

短いお話なので早くも『Concluding Remarks』です。

『Notwithstanding the recent flow of encouraging macroeconomic data, the economy remains a long way from our goals, and it is likely to take some time for substantial further progress to be achieved.』

キタコレという所でして、「it is likely to take some time for substantial further progress to be achieved」って言ってますが、この「substantial further progress」が達成されるのにお時間が掛かりますってのが例のAPP見直しのトリガーになっていますので、要はAPPのペース縮小はまだですよ(ましてや利上げなんてとてもとても)って話ですな。

『Our guidance for interest rates and asset purchases ties the path of the federal funds rate and the size of the balance sheet to our employment and inflation goals. We are committed to using our full range of tools to support the economy for as long as it takes until the job is well and truly done.』

まあ最後のところでも緩和の縮小に関する話で「until the job is well and truly done」までは金融政策のフルサポートをする、って話なんですが、現実に物価が上がってくる中でこの話をしても、さすがに「雇用重視だから物価の上振れはずっと放置プレイでしょ」というような話までは踏み込んでない(というか踏み込まないでしょうけど)のでは、火消しメッセージを出しているというのは伝わるでしょうが、市場が聞きたがっている物価とそれに関連した政策反応関数は如何に?ということには中々お答えにならんのかな、とは思います。



〇ウォーラー理事登場の巻だがこっちの方は火消し成分もあるが真面目に見ないと行けませんねって真面目な話です

しかし最近はオンラインだからなのかも知れませんが、講演の説明分量が以前より減っているように思えます、個人の勘違いかもしれないけど。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20210513a.htm
May 13, 2021
The Economic Outlook and Monetary Policy
Governor Christopher J. Waller
At The Global Interdependence Center's 39th Annual Monetary and Trade Conference, The LeBow College of Business, Drexel University, Philadelphia, Pennsylvania (via webcast)

小見出しつけろよと思ったのが第一印象ですw


・現世利益重視のインスタント読みでまずは途中を全部飛ばして結論を読む(ただの手抜き)

結論は「So, in summary」から始まる最後の4パラグラフ(事実上3パラグラフ)です。

『So, in summary, the economy is ripping, it is going gangbusters-pick your favorite metaphor. But we need to remember that it is coming out of a deep hole, and we are just getting back to where we were pre-pandemic. Labor market indicators are more mixed with 8 million workers still without jobs. But many of the problems holding back labor supply will dissipate over time, and we should return to the robust labor market we had in February 2020. Inflation is currently being driven above our 2 percent inflation target but is expected to return to target in subsequent years as transitory inflation shocks fade.』

まとめとして言ってる経済物価見通しの話は執行部見解と同様ですな。

『Highly accommodative monetary policy, in conjunction with unprecedented fiscal support, has supported a rapid recovery from a uniquely sharp, pandemic-caused recession. The improving economy is helping repair the significant economic damage suffered by individuals, families, and businesses, but there is still a way to go before we fully recover.』「

経済のフルリカバーまでは依然として距離がある(ロングウェイとは言っていない)ので大幅な緩和的金融政策は必要でっせとのお告げなので、

『In light of that fact, I expect the FOMC to maintain an accommodative policy for some time.』

と来ます。そりゃそうだ。

『We have said our policy actions are outcome based, which means we need to see more data confirming the economy has made substantial further progress before we adjust our policy stance, because sometimes the data does not conform to expectations, as we saw last Friday. The May and June jobs report may reveal that April was an outlier, but we need to see that first before we start thinking about adjusting our policy stance.』

この辺の話は本編の方にもあったりしますが、要するにウォーラー理事は「最低でもあと数カ月は経済データを見て確認しないと行けませんよね」とコロナ感染症の影響は多少拡大しても一時的とか言いながら展望レポートの経済見通しを盛大に上方修正したらフラグになったかの如くマンボーだ緊急事態宣言だと拡大するコロナちゃん、という結果をだしているどこぞの日本銀行は少し見習って頂きたいものでありますな。(まあこの場合足元の市場の先走りの火消し要素もあると思うけど)

『We also need to see if the unusually high price pressures we saw in the April CPI report will persist in the months ahead. The takeaway is that we need to see several more months of data before we get a clear picture of whether we have made substantial progress towards our dual mandate goals.』

でですね、足もとで市場が気にする物価ちゃんの方ですが、こちらに関しても「今後数カ月のデータをみていくことによってモノホンの物価上昇なのかワンオフの物価上昇なのか見極めて行く」という話になっているので、クラリダよりは真面目(というか何というか)な物言いになっておりまして、しかも本編の方では物価の見極めがどうのこうのというのを説明していて、PC右下に表示されている時刻を見て思うに、どうせクラリダは火消ししかしないんだからこっち先にやる方が吉だったかとまたまた大後悔時代なのですが、講演テキストのざっくり真ん中かちょっと上辺りに、『Now let me turn to the other leg of the Fed's dual mandate, price stability.』ってのから始まるパラグラフがあって、そこから下の方まで物価の話をしているので、まあこちらも早急にネタ投下します(できれば土日にするかも知れないですが何せ連休明けて久々の5日フル労働からの週末ですからねえ、と端から予防線)。

『Now is the time we need to be patient, steely-eyed central bankers, and not be head-faked by temporary data surprises.』

『Thank you for the opportunity to speak to you, and I would be happy to respond to your questions.』

ということで、ペイシャントと言ってもそのタイムスケールは数カ月のオーダーだったりするのがチャーミングなのですが、まあCPIがギャーとか言う前でも多分「ジャク穴か9月FOMCでテーパリングの頭出しが出て来年の頭から徐々にテーパリングして再来年に利上げ着手」っての普通にコンセンサスビューだったと思う(アタクシが思ってるだけで違ってたらゴメンよ)ので、別にそんなに突拍子もない前のめりでもないと思いますが、ただまあ全然考えてませんよ系の火消しのやり過ぎ系の話ではないですね、と思いました。




2021/05/13

お題「ここもと米国長期金利上昇(と言っても10年1.7手前ですが)が話題のようなのでメモメモ/主な意見続き」

この期に及んで未だにこの発想なのか・・・・
https://www.tokyo-np.co.jp/article/103782
ワクチン接種完了「絶対命題」と黒岩知事 理由は菅首相と河野担当相を輩出している県だから…
2021年5月12日 20時01分


〇CPI上振れするって前から散々FEDがゆうとるのですが(米国金利備忘メモ)

あらま。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2MZ4E8
米金融・債券市場=長期金利1.7%に迫る、CPI上振れでインフレ懸念台頭
2021年5月13日5:36 午前

30年債(指標銘柄)16時31分 2.4161% 前営業日終値 2.3520%
10年債(指標銘柄)16時31分 1.6952% 前営業日終値 1.6240%
5年債(指標銘柄)16時31分 0.8660% 前営業日終値 0.8010%
2年債(指標銘柄)16時18分 0.1668% 前営業日終値 0.1610%

まあ何ちゅうか色々と味わいがあるのでロイターさんの解説をよんでみませう。

『 米金融・債券市場では、消費者物価指数(CPI)が予想を大幅に上回る伸びとなったことからインフレ懸念が台頭し、長期金利は1.7%近くまで上昇した。4月のCPIは、総合指数が前年比4.2%上昇し、2008年9月以来、約12年半ぶりの大幅な伸びを記録。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比3.0%上昇し、1996年1月以来の伸び率となった。』(上記URL先より、以下同様)

ほっほー。

『10年債利回りは一時1.697%と、4月13日以来の高水準を付けた。その後は7.1ベーシスポイント(bp)上昇の1.695%。一日の伸びとしては3月18日以降で最大となる見込み。』

と言ってもまだ1.7に迫るって水準な訳でして、まあ市場だからシャーナイのですが、そもそも論としてFEDちゃんとしてはプレマチュアーな金融引き締め(というか緩和縮小)観測から金利が走るのを防ぐために、特に10年金利が1.6だ1.7だみたいな話になっているところからは重点的に、オーラルベースでハトっぽい発言をしてバランスを取っていたとアタクシは理解していたのですが、米国金融市場様におかれましては、何を思ったのかあの辺りの発言受けて金利がホイホイと下がったりして、おまけにそれみて株価がヒャッハーとかするからその分の反動が出たって話じゃネーノ(個人の感想です)と思うんですけど、まあそれは外野席で観戦しているだけだからそう思ってしまうだけですかねえ。

『米連邦準備理事会(FRB)当局者は、物価の高進が一過性にとどまるとの見方を繰り返し示している。クラリダ副議長はこの日、量的緩和縮小の検討を開始するほど米経済が「さらなる著しい進展」を遂げるには「時間がかかる」と強調した。』

ちょっとここまで手が回らんのだが、クラリダだから読んでおく、ただ内容は大体予想はつくわけで、先日のFOMC会見(今さらになって質疑応答をネタにしてて面目ない)でもパウエルが大演説しているようなファクターが一時的に押し上げをしているだけで、これはパーマネントな押上タワーではない、という話をしたんでしょ、と見もせずに勝手に妄想。


『インデックスIQの調査部ディレクター、ケリー・イェ氏は「インフレや金利上昇の可能性が高いと判断して先走りする市場と、なお多くの下振れリスクが残るとして忍耐を求めるFRBの間で駆け引きが起きている」とした上で、実際にインフレ高進が続いた場合、FRBの手に負えなくなるのではないかと投資家は不安を感じていると述べた。』

うーんこのという感じでして、毎度アタクシの駄文にお付き合いいただいているのでまたその話かって怒られそうですが(汗)、むしろ「実際に物価が上がった時にFEDが落ち着いて居られるかって問題があるのに何でその点を軽視して雇用指数ばっかり気にするの市場ちゃんは」とアタクシは思っております訳でして、なんかしつこくもまた申し上げておりますが、FEDが金融緩和縮小にペイシャントでいられるロジックはロンガーランゴール&ストラテジーで説明されているように「労働市場動向を含む経済の需給ギャップに対する物価の反応が乏しいのだから、多少経済を吹かしても物価が跳ねる懸念は無い」という現状認識のもと「そのような物価形成を前提にすれば、コロナショックの後だし経済回復が不均等な状況を踏まえれば、緩和を継続して経済を多少吹かし気味にした方がより多くの米国国民に景気拡大の恩恵が行き渡るし、かつ望ましくないインフレが発生する懸念も無いのだから高圧経済アプローチバンザイ」という話ですよね、この駄文をご覧になっている奇特な皆様におかれましては先刻ご承知だと思いますが。

でもって、米国金融市場様におかれましては、今年CPIが種々の事情で上に跳ねるのもご案内の筈だったのですが、CPI跳ねた時にFEDのケツがムズムズしてこないか、という問題に関して丸っきり無視して、むしろ雇用の数字で一々ヒャッハーしてた感があって、いやまあ目先のデイとかスイングとかするならそうかも知れんけど、今年の米国の課題って上がるの分かってる物価に対してFEDは地蔵を決め込むけど、外野(特に議会)から文句が来るとか、物価を真面目に分析したら実は基調的な部分も上がってるじゃん、ということになって今までの「ロンガーランゴール&ストラテジー」の前提がズッコケ三銃士になったらどうなるのとか、まあその辺を懸念しないと行けないのに何で金利がホイホイと下がりますねんという感じだし、先日来ネタにしているように、物価指数が目先上に跳ねるのはFEDも宣伝していたネタであって、その話出ている間に何も反応しなかったのに、いくら市場予想より上振れとは言え、実際に物価が出てから売りで反応するってナンジャソラではありますな。

つーことでですね、何とかストの皆様に於かれましては、ここに来ての米国物価指標の上振れについて、これが本当に一時的で済むのか、という分析をして頂きたい訳で、FEDのスタンスがどうのこうのとか解説するの今更ジローで新しい情報じゃないんだよなー、と思うのですが、どうせ物価指標のコンポーネントまでちゃんと見てる何とかストが碌すっぽ居ないに1万バーナンキ。

ちなみにアタクシは馬鹿だから良く分かりませんけど、さはさりながらこれだけ盛大に財政を吹かしている中ですからして、「物価の上昇が一時的でまだ基調は弱いので、来年になるとまたマンデート以下とかになりそうです(から緩和縮小はまだまだ)」というFEDの現在の中心的見解ってえのもホンマカイナという感じはする訳で、景気吹かして物価があがるんだったら、それこそ適合的期待形成が動くリスクって多分にあるんでネーノとは思うのです。ちなみにかつて英国が金融大緩和中に物価が景気要因じゃない所で上振れしていたことがありましたが、あの時は明らかに景気が今三歩位の状態だったので、BOEは毎回ペラ1詫び状を財務省に出すだけで動かんかったしその後物価弱くなりましたが、何せこれだけ財政吹かして需要を捏造もとい積み上げているんですからねえ・・・・・・・・(個人の感想です)


ということで一応関連ニュースも備忘で貼っておきましょう。ロイターさんの良い所はネット版でもかなり過去の記事まで残っていることで、お蔭様で置物大師匠の過去発言とかが何度もサルベージできて大変にありがたいです^^;

https://jp.reuters.com/article/usa-economy-inflation-idJPKBN2CT1WN
2021年5月12日11:26 午後
米4月CPI総合+4.2%、12年半ぶり伸び率 需要増や供給制約で

『[ワシントン 12日 ロイター] - 米労働省が12日に発表した4月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は、総合指数が前年比4.2%上昇し、2008年9月以来、約12年半ぶりの大幅な伸びを記録した。前年の弱い数字の反動が出たほか、経済活動の再開に伴う需要増大や供給の逼迫を背景に、上昇率は予想の3.6%を上回ったほか、前月の2.6%から加速。金融市場で長期にわたるインフレ高進に対する懸念が増大する可能性がある。』(上記URL先より、以下同様)

ですが返す刀で、

『連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、価格の高騰が一過性にとどまり、サプライチェーンの供給制約(ボトルネック)は緩和に向かうとの見方を繰り返し示しており、大半の専門家も同様の意見だ。ジョンズ・ホプキンズ大学金融経済センターのロバート・バーベラ所長は「インフレに問題の兆候は見られず、生産能力はあるが、軌道に乗せるには時間が必要だ」と述べた。』

と来ております。でまあ記事の先の方を見ますと、

『専門家らは、期待インフレ率の動向を注視している。ロヨラ・メリーマウント大学の金融・経済学教授、ソンウォン・ソン氏は「機器類からチキンウィングまで、あらゆるものが値上がりする中、これまでに打ち出された数兆ドル規模の大規模な景気刺激策に加えて、今後も何兆ドルもの追加支出が行われることから、インフレ圧力は強まるだろう」と述べた。』

だそうですな。何ちゅうか寧ろ米国金融市場様って少なくとも今年はコロナの影響の話がだいたい勝負着いたようなので(米国裏山鹿)、そうなったらCPIのチェック1点張りで良いんじゃネーノ(物凄く人間が雑にできているアタクシ)って感じじゃないかと思うのに色々考えすぎな気がします(個人の感想です)。


あとクラリダは後で読んでおく。

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-clarida-idJPKBN2CT1ZJ
2021年5月12日11:51 午後
米経済情勢、目標達成に程遠い 雇用回復はより不確定=FRB副議長

『[ワシントン 12日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長は12日、米経済情勢について、FRB目標の達成には程遠く、量的緩和縮小の検討開始に向けた「さらなる著しい進展」を遂げるには「時間がかかる」との見通しを示した。また4月の低調な雇用の伸びと力強いインフレ率はサプライズだったが、FEBの計画を損なうものではないと語った。』

『朝方発表された4月の消費者物価指数(CPI)は、総合指数が前年同月比で4.2%上昇し、2008年9月以来の大幅な伸びを記録。これを受け、クラリダ副議長は自身の予想を「はるかに上回る」数値だったと述べた。』(以上上記URL先より)

雇用の方の話をするのってのは、そらまあ緩和縮小で走る市場の火消しをしたいからそうなるのであって、それこそこれもネタにしたパウエルの先日の会見での質疑でもありましたように、物価と雇用のコンフリクトが起きた際には、仮に雇用が完全雇用前であっても、物価がバカスカ上がってインフレ期待に火がつくようになった(あるいは明らかになりそうという判断が共有されれば)緩和してる場合じゃなくなるので、ここで雇用雇用言うのは緩和縮小に対する牽制球をバシバシ放っているということを意味しますな(個人の感想です)。


#何せ米国金利が下がっても盛り上がらないけど上がると盛り上がるという脳内セッティングになっておりますもんで柄にもなく米国相場メモメモで失礼しました



〇どうせ何もやる気がない日銀の主な意見を読んでもオモンナイのだがそうは言っても読んでおく(昨日の続き)

昨日は柄にもなく成長見通しの所だけで終わってしまって何ぼ何でも後日見るときに困るので残りを成敗。珍しく前半を全部引用したからこの際今日は後半も全部(政府の意見は除く)引用じゃな。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2021/opi210427.pdf

・物価の部分の意見の覇気の無さに泣いた

昨日の続きで(物価)のパートですが、意見が5件しか無いのも泣けるが内容が泣ける。

『・ 消費者物価の前年比は、当面、小幅のマイナスで推移した後、経済の改善が続き、携帯電話通信料の引き下げの影響が剥落することから、プラスに転じ、徐々に上昇率を高めていく。』

いままでそうならなかったのになぜ今回そうなるのでちゅかねえ。

『・ 企業が値下げにより需要を喚起する動きは広範化しておらず、先行き、物価の底堅い動きが続く中、経済の改善とともに、徐々に物価上昇率は高まっていくとみている。』

VIPだから仕方ないのかも知れないけど、あたくしどものようなしょみーんの皆様御用達のお店の値付けの傾向を見た方がエエんでネーノという気はする。

『・ 付加価値の減少に繋がる値下げの動きが拡がっている状況にはないが、そうした動きが拡がるリスクに注意が必要である。』

「付加価値の減少に繋がる値下げの動きが」ってわざわざ頭に「付加価値の減少に繋がる」とつける理由が良く分からん。誰これ書いたの????????

『・ 物価は、当面は前年比マイナスが続くとみられる。既往のデフレの経験に基づく根深い適合的期待形成の影響もあって、物価上昇のペースは力強さに欠けるとみられる。』

これは同意するんだが、その期待形成に働きかけるのがQQEだったんですけど期待形成に働きかける工夫ってのを考えようって話にならんの??

・・・・・とまあここまで来て次のが物価パートの最後なんだが盛大に意味不明な物件があるので晒す。

『・ 早期の物価上昇に臨む種火を残しておくためには、現下のような厳しい経済環境にあっても賃金の安定的な上昇が確保されるとの経験を通じて、賃金上昇期待が維持されることが必要である。』

>現下のような厳しい経済環境にあっても賃金の安定的な上昇が確保されるとの経験
>現下のような厳しい経済環境にあっても賃金の安定的な上昇が確保されるとの経験
>現下のような厳しい経済環境にあっても賃金の安定的な上昇が確保されるとの経験

はああああああああ??????????????????????

そもそも所得の恒常的な拡大期待があったらもっと先にインフレ期待も物価も若年層の消費行動とかも上がってると思うんだが、なにがどうなるとこういう現状認識になるんだろうか。



・金融政策の部分だが新コロオペ絡みとみられる意見が展望での認識と不整合なものが続出する件

『U.金融政策運営に関する意見』ですが、最初の方は新コロオペ絡みの意見が並ぶんですが、これがまたイミフというか、まあ言ってることは分かるんだが、だったら何で展望レポートの記述に賛成したのと小一時間問い詰めたい。

『・企業の資金繰りにはなお厳しさがみられており、金融市場では引き続き様々な不確実性が意識されている。効果を発揮している「3つの柱」による金融緩和により資金繰り支援と市場の安定維持に努めることが重要である。』

えーっとすいません、今回の展望レポート基本的見解では金融環境の現状認識を引き上げていましたが何ですかこれ????

『・ 4都府県を対象に緊急事態宣言が再々発出されるなど、わが国では対面型サービスセクターを中心に改めて下押し圧力がかかっている。当面の金融政策運営については、こうした情勢を総合的に勘案し、しっかりと感染症の影響への対応に集中することが適当である。』

じゃあ何で今回の展望レポート基本的見解であんなに先行き成長見通し強くしてるの????

なお次のはまあ良い。一応引用する。

『・本年9月末に期限を迎える「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」の延長については、企業金融の環境変化などを踏まえつつ、議論を進めていく必要がある。』

ま、これは延長しない含みの話だったら展望の現状認識と整合的だし、その辺は今後も様子を見て判断というのならそらそうよという話ですな(ただまあ当たり前の話をわざわざ「主な意見」に書くのも何だよそれとは思うけど)。

『・ 当面は、感染症の収束、さらには経済の正常化に向けて、金融・財政政策の両面から、粘り強く支援を継続する必要がある。』

いやだから9月までの延長は既に決めているんだから、これは何を言いたいのよという話で、それ以降の話しも含めているんだったら展望で示している見解と不整合だし、手前の話だったらそれは既に政策として継続決めている案件なんだからただのオペレーションの話でわざわざ書く意味がないんですが。


・財政となんちゃらの話が2人ですな

さっきのもまあ「財政を出しましょう」というだけの話だったらまだ分かるのですが、そうやって財政財政というのがあと1名います。確か「物価はいついかなる時も貨幣的現象である、とミルトン・フリードマンが言っているように、物価目標は金融政策で達成できるもので、それができないとかいうのは只の無知蒙昧」とか仰せになっていた筈の方々が「財政ガー」となるのはお前らどんだけ転向してんねん(しかも転向するのに自己批判は無いのが何とも)という話ですな。

『・ 感染症収束まではワクチン接種が最良の経済政策であるが、マクロ経済政策の支えも依然として重要である。現在の政策フレームワークの下では、財政政策と金融政策の緊密な連携・協調が「物価安定の目標」に寄与する。』


・3月点検会合に対する市場の反応が主な意見に出るのかよ(困惑)

『・市場動向を見ると、3月の決定について、政策の持続性・機動性を高めるという意図は誤解なく浸透したと考えている。』

『・ 3月の政策対応に対する市場の反応は総じて落ち着いたものであったほか、金融機関の受け止め方も概ね想定していた範囲内のものであったとみている。』

その前に散々っぱら事前に右に振り左に振りまくったことはお忘れの模様です。


・展望会合に金融機構局が正式に参加した件について

『・「物価の安定」の実現には、「金融システムの安定」が前提となる。この点、金融システムは、全体として安定性を維持しており、金融仲介機能は円滑に発揮されている。今回から金融機構局の報告を受けることになったが、決定会合で金融システムの動向を定点観測する意義は大きい。』

寧ろ今まで定点観測していなかったことをばらしてるような気がするんだが。


・コミュニケーションとは?

『・ 感染症収束後に向けて、2%の物価安定目標に向けた道筋について引き続きしっかりと考えなければならない。コミットメントとともに、国民各層に金融政策への理解を促進する効果的なコミュニケーションがきわめて重要である。』

コミュニケーションの話、3月議事要旨にも出ていましたが、あの総裁会見とか、先般の点検会合前のお漏らし大会(しかも右にお漏らしたと思ったら今度は左にお漏らしというスカトロコミュニケーション)やってるのをまず反省して頂きたいのだが。


・これは片岡さんですね

『・ 「物価安定の目標」の達成は容易ではないからこそ、金融政策運営においては、先行きの景気回復という追い風をうまく捉えて、金融緩和を強めることで、目標達成につなげることが必要ではないか。』

だから想定される政策の波及パスと共に具体策を出せ。


・金融財政の大風呂敷を広げたものの回収ネタ

『・ 現在、各国の大規模な財政対応が、マクロ経済に大きな影響を与えつつある。中長期的には、安定的な成長の実現に向けて金融・財政政策をどのように調整していくか、政府とより緊密に連携しつつ考えていく必要がある。』

金融財政の大風呂敷を広げたものの回収ネタだと思って読みました。まあそうですねとは思うのですが、字数が足りないからシャーナイのですがもうちょっと絞って欲しかった。


・最後の方はオモシロ意見

『・ 感染症を契機に経済のデジタル化がさらに加速し、有形資産から無形資産へのシフトが進むことで、金融経済や金融政策の効果にどのような影響がもたらされるか、さらに理解を深めていく必要がある。』

まあ何となく言わんとすることは分からんでもないがやっぱりわからん。

『・ 気候変動は、経済や金融システムにも影響する重要な要素であり、引き続き行内連携を強化し、中央銀行のマンデートに即して、必要な対応を検討することが重要である。』

えーっとすいません、行内連携の話は通常会合でやっていただけませんでしょうか?こちらは金融政策決定会合なのですけど・・・・・・・・・・・・・


ということで最後にまたズッコケさせるというオチまでつけていて、これ編集するのは政策委員会議長、即ち黒ちゃんという建付けになっているので、黒ちゃんって笑いを取りにいくセンスはあるんだよな(かつてはジンバブエ先生のジンバブエコーナーを必ず最後に持って行ってたように)と思いました。

#今朝はバックグラウンドでウィンドウズアップデートが回りやがってややスタック気味でしたサーセン





2021/05/12

お題「4月決定会合主な意見:展望レポートがアレだったので珍しく経済情勢の意見を見学してきました」

ほほう。
https://this.kiji.is/764692762964492288
高橋内閣参与「さざ波」を釈明
ツイッターで、撤回や謝罪はせず
2021/5/11 12:35 (JST)5/11 18:22 (JST)updated
コピーライト 一般社団法人共同通信社

『内閣官房参与の高橋洋一嘉悦大教授は(途中割愛)「世界の中で日本の状況を客観的に分析するのがモットーなので、それに支障が出るような価値観を含む用語は使わないようにします」とツイッター上で釈明した。撤回や謝罪はしなかった。』(上記URL先より)

>客観的に分析するのがモットー

これはまたデカい釣り針wwwつ、つられないんだからね!!!!

・・・・・・・なお、よくよく記事の下の方を見ますと、

『加藤勝信官房長官は記者会見で「参与は非常勤。コメントは差し控えたい」と述べるにとどめた。』(上記URL先より)

とあるのですが、社外取締役を起用することによってコーポレートガバナンスの質を高めようとしているのに、非常勤なので知らんがなという発言を官房長官様が行うのはどうなんでしょうかねえ(棒読み)


・・・・えっとすいません、主な意見出る日を1日勘違いしていた(ただのうっかり八兵衛)ので先に主な意見の方を成敗させて頂きとう存じます。

〇4月会合の主な意見と言えばあの上方修正感満載の展望レポートを通した背景なので

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2021/opi210427.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2021 年 4 月 26、27 日開催分)1

しかしまあ何ですな、コロナでまんぼうNo.5からの緊急事態宣言4都府県に発出、という中でどう見てもコロナの目先リスクが拡大しているのに、ワクチンでワクワク(4文字伏字)という見通しや、海外特に米国のワクチン接種でヒャッハーという状況を受けて、かどうかは知らんですけど、謎に強い見通しを出していた4月の展望レポートだったので、この展望を通してしまう思考回路がどうなっているのか、というのを知りたかったのですな今回は(政策は地蔵だからどうでも良い、本当は良くないのでマイナス金利解除しやがれだけど)。


・まあ経済>>物価の意見数ってのはそれはそれでアリとは思いますがね

さて前半の『T.金融経済情勢に関する意見』ですけれども、今回は『T.金融経済情勢に関する意見』のポツが(経済情勢)が16個、(物価)が5個となっていまして、3倍の差とか笑うしかありませんし、物価安定目標達成のために政策やってるのに物価の話をしない政策委員が9名中4名というのもお洒落ですが、まあ要するにそういう事やぞという感じで、もはや物価目標の達成云々とかよりも、とにかく今の政策をだましだまし続けて行ってそのうち何とかなると良いですね状態になっている、という覇気の欠片も無いのが今の黒田日銀なのはまーいつもどおり。

ま、早期達成に向けた工夫を放棄(この前実施したのは「早期達成に向けた工夫」ではなくて「今の政策枠組みを延命させるための工夫」)しているので、そうなのであれば経済情勢の話をしましょうって事なので経済>>物価になっているのは別にまあ(早期達成とかそういう看板下ろせやとは思うけど、そこはさておいて)そういうもんじゃろと思いますが、しかし16ってことは皆さんがほぼ2件の意見を経済には上げているというのに物価に対する熱量が笑えますね。

では意見を拝読。

『・ わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。』

『・ わが国経済は、感染症の影響が対面型サービス消費を下押ししているが、製造業を中心に持ち直している。』

お、おぅって感じですが、まあこれは現状認識(4月時点の)だからまだ話は分からんでもない。


『・ 日本経済は、好調な外需などに支えられて持ち直しているものの、ワクチンの普及ペースや効果に不確実性があるもとで、感染症の再拡大による景気の下振れリスクには引き続き注意が必要である。』

えーっとすいません、その感染症の再拡大ってのがまさにマンボウに緊急事態宣言として具現化しつつあったのですが、まさかとは思いますがそれはGW終わったらパーッと終了だからモウマンタイとでもお考えだったのでしょうか???

いやまあそんなの関係ねえってんだったらまだしも、「ワクチンの普及ペース」に加えて「感染症の再拡大」のどちらも暗雲垂れ込めまくっている状況で「引き続き注意が必要」とかのんびりしたコメントしてるのどういう思考なんだと思うのですが、上級国民の皆様におかれましては(内務省検閲)。


『・ わが国経済は、感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直しの動きが続いている。ただし、4都府県を中心に公衆衛生措置が強化される中で、感染症の帰趨と、経済・物価の下振れリスクには注意する必要がある。』

と思ったら次の人はもうちょっと問題意識もってそうですな(ちなみに日銀文学野良教室教頭と致しまして解釈すると「注意が必要」と「注意する必要」では「する」という行為文言がある分だけ後者の方が警戒度が高い、と解釈しておきますが、実際にこの方々の思考がどうなのかは知らん)って感じですが、でもまあ警戒じゃないんだよな。なお、経済の現状認識に関しては惜しくも皆さんと同様に「基調としては持ち直し」なんだよなー、まあいっけど。


『・ わが国経済は、海外経済の回復から、外需中心の回復経路を辿るとみられるが、感染症やワクチン接種の動向など、先行き不透明感は強い。』

のにあの展望レポートで良いんでしょうかねえ。


『・ わが国経済は、対面型サービスを中心に感染症に左右される状況は続くものの、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、回復していくと考えられる。』

でもってどうせ日銀の理屈からすると、見通し期間が1年延長⇒コロナの影響を受ける期間が見通し期間の中で前回より短い⇒つまりコロナの下押しはその分減るから全体的な見通しは上振れ、っていうことなのでしょう。確かにコロナの方が一進一退程度だったらそれで特に問題が無かったのかも知れませんが、今回の展望ってベースラインシナリオが思いっきり「足もとのコロナ拡大は多少は警戒するけど先に行けばコロナの影響は減衰するってのは同じだからヘーキヘーキ」って話になっている訳ですよね。

然るに、まあそれがフラグで今日からまた緊急事態宣言が増えまっせとかいうのもさることながら、そういう理屈で見通しを立ててしまった手前、7月展望で「やっぱコロナの影響がデカかったわ」と出すと「なんであの状況で上方修正したのアホじゃないの」って話になるし、まあそっちは止めて頂いた方がアリガタヤなので別に良いんですけど、9月に期限の来る延長されたコロナオペに関して、コロナの影響はそんなに長くは無いので2022年度で上方修正だし23年度も堅調という見通しを出しているのに、コロナオペは延長となるとこれまた政策と経済物価情勢判断との整合性が取れない、というオモシロ事案が発生してしまいますので、何も今回の展望で勝負をしに行く必要は無かったんでネーノと思うのよ。


『・ ワクチン普及後に感染症がある程度収束すれば、これまで抑制されてきた消費需要の顕在化等が、日本経済の持続的な回復に繋がる可能性がある。』

これは雨公のヒャッハーを日本にも、って感じなのでしょうが、飲み会の滞留在庫の処理でネーノと思ったが、よくよく考えたらインバウンド様が復活したらヒャッハーヒャッハーなんですね。まあそれは期待できるかも知れないけど、国内単体で考えると一連のコロナの動きによって、政府の対応能力の低さを如実に見せつけられてしまうと、家計ってより防衛的になるんじゃネーノという悪寒がします(個人の感想です)。


『・ 企業部門における前向きの循環メカニズムが徐々に働き始めており、感染症の影響が収束していけば、経済全体での好循環が強まり、わが国経済はさらに成長を続けると見込まれる。』

前向きの循環メカニズムキター!ではあるのですが、従来日銀様が仰せだった「前向きの循環メカニズム」ってえのは企業の所得向上⇒家計の所得向上というパスモ重視されていまして(ちなみにそれは賃金上昇からの物価上昇というメカニズムの説明もビルトインされていた)、企業が儲かる⇒設備投資などを拡充する⇒ウマー、で終わってしまいますと持続的なサイクルにならんのでありまして、企業部門⇒家計部門からの内需による回転が回るかって話は別問題何じゃネーノと思うし、これって輸出がドライバーになっている話ですが、それが家計まで回ってこないと持続的循環にならんと思うのだがいつの間にか定義変えて無い????


『・ 家計の現・預金残高は、この1年間で約 50 兆円増加しており、感染症の影響が収束すれば、サービス消費でも大きなペントアップ需要が生じるとみられる。』

しません(じっと財布を見る)。インバウンド様のペントアップは期待でしょうが。


この辺からもうちょっと全体感的な先行きの話を編集していまして、

『・ わが国経済の見通しについては、当面は、足もとでの変異株の流行や緊急事態宣言の発出を含め、感染症の影響を中心に、下振れリスクの方が大きいものの、見通し期間の中盤以降は概ね上下にバランスしている。』

『・ 今年度については、ワクチン接種の進展や感染症の帰趨などには高い不確実性が残っており、リスクは依然として下方に厚いと判断している。』

と思うんだったら展望の鏡の部分、何であんなに勢い込んで威勢の良い表現にするんだが、って所ですが、次の意見は中々結構な物件でございまする。


『・ 海外でワクチン接種が進む中、わが国での接種が順調に進まないことになれば、経済成長の面でも取り残されていくことが懸念される。』

良く言った!!!

これが次回会合でも7月展望でも問題になりそうな所で、どこからどうみてもスタック気味になっている上に、緊急事態宣言とかでまたまた経済活動を弱めに掛かっているのが重なって本当に回復するのけ??ってのがありますし、その辺が遅れて日本だけちゃっかりと取り残される中で「基調的には回復」を言い続けるのは無理があると思うのですが、今日になって緊急事態宣言拡大とかやっている中で4−6大丈夫じゃなかったりすると最早理由はこのご意見通りの話になりますので、そこをバシッと言及して認識を下げれるのか、はたまたウニャウニャと誤魔化して「基調としては回復しているし、ワクチン進むから結局回復ですよ回復」と言い張れるのか、もちろんその時点での状況次第なので今決め打ちはできませんけれども、日銀の芸風から考えて7月の展望レポートは苦しい判断を強いられそうな悪寒がします。


『・ 世界経済は回復基調にあるが、ワクチン接種、政策対応の相違を映じて、地域・業種別の回復の違い、不均一性といった K 字回復の様相が強い。また、回復の息切れ、政策の時期尚早な打ち切り、政治・地政学リスクも相応にある。』

さっきのようにズバッと言ってくれませんと。これだと何か難しい話をしているように見えるけど結局何も言ってないじゃんという感じですな。


『・ 日本経済を早期に成長軌道に戻すためには、消費者マインドの悪化や金融市場の変調を食い止めつつ、ワクチンの接種を加速していくことが重要である。』

結局ワクチンなのですからして、そういう意味ではワクチンの状況が見通せそうな7月展望まで先行きの強気判断を引っ張って、ワクチンが誰の目にも進捗してきた、と言える7月(その時難しければ10月)展望のところで「ワクチン接種も進みこれからはコロナの闇が徐々に晴れて行くと見込めますので我々の先行き見通しもガッツリ上方修正ですよ皆さん喜んでください!」て出した方が、どう見ても見せ方が美しかった(美しいから良いってもんじゃないですけど)と思うんだよな。

それに美しい美しくない問題は別にしても、目の前で明らかに短期的かもしれないけど大きめのリスクが動く中で、中期見通しを平然と引き上げてしまうってのは、今回は別にそれが政策対応に直結しないから実害が発生しませんが、本来的に言えば経済物価見通しに対して金融政策がフォワードルッキングで対応する、というのが筋なのでありますからして、目の前でリスク要因拡大中の中でこういう見通しが出て、それに沿って政策アクションをした、となりますと、あっという間に逆をやらないと行けなくなったらアホの極みっぽくなるわけでして、その点からしても何だかなあという感じがします。最近は政策対応が無いからその辺の判断に脇の甘さみたいなのがあるのかも知れませんね。

ところで、「金融市場の変調」って何ですか???マイナス金利政策とYCCで円債村が消滅の危機を迎えている方がよっぽと変調なんですけど???????????


『・ 業績回復を受けて企業の成長や変革に向けた取組みが先送りされると、中長期の経済成長や物価安定の実現に悪影響が生じかねない。』

????????????

『・ 米国における特別買収目的会社のリスク顕現化や、ファミリーオフィスと呼ばれる投資主体の破綻について、類似の事例が続くことがないか注視が必要である。』

あの案件はちょっと特異事例っぽい気がするんだが。

・・・・・とまあそういうことで、この意見の出方から勘案するに、足もとの感染拡大話はあるものの、何か普通に執行部だか事務方だかが出してきている楽観(というか足元は一時的説)にあんまり批判無く乗っかっている感じがしまして、まあ大体そうだろうなと思ったが、それにしてももうちょっとこう緊張感を感じさせる内容が出て欲しかったです、はい。

なお、いつもだと『U.金融政策運営に関する意見』も見どころになるはずなのですが、今回は兎に角展望レポートのあの威勢の良い経済見通しの上方修正(なのに物価は上げないのもアレですけど)に対してどういう見解が出ているのかと思いましたので、そっちの方ばかりやっておりましたら時間が無くなってしまいました(その割に短いとかいうツッコミはしないでちょ)ので、積み残しネタと共に残りは明日続けて成敗して参りたく存じます(平伏)。





2021/05/11

お題「FED執行部の物価動向に関する見立てを先般のパウエル記者会見における大演説回答から拝読」

ヨーイチ先生が公共放送ニュースページのアクセスランキング1位とな!!!
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210510/k10013021491000.html
高橋内閣官房参与 日本のコロナ感染者数を「さざ波」と投稿
2021年5月10日 17時58分
(ちなみに確認したのは5/11の朝5時です)

それよりもサムネの穏やかな感じのご尊顔にビックリで、だいたいヨーイチセンセってもっと攻撃力の高そうな(個人の感想です)サムネで登場するんですが、もしや表舞台でご出世して角が取れたとかだったらビックリなのですが(我らがヨーイチ先生はどこまでも攻撃力が高くないといかんがね)。

で、よく記事を見たら・・・・・・

『内閣官房参与の高橋洋一氏は9日、みずからのツイッターに、各国の新型コロナウイルスの感染者数のグラフとともに「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止とかいうと笑笑」と投稿しました。』(上記URL先より)

ちょwwwおまwww自分の公式垢で「笑笑」とか書いちゃったのかよ、そういうのは匿名垢か無責任民間人のうちだけにしておけと。

・・・・・・というか「さざ波」ごときでこの大わらわ状態だったら大波来たらあっという間に転覆でそっちの方がヤバイ気がする。



〇超今更ジローで甚だ申し訳ないのですがFOMC会見ネタの質疑応答シリーズ

よし!まだバージョンがPRELIMINARYだな!!
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20210428.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
April 28, 2021

まあアレです。そもそも論としてパウエル議長がちゃんとロジカルに答える、というのがある(イエレンさんもバーナンキさんもまあロジカルに回答してくれます、バーナンキの場合はしれっとロジックをジャガーチェンジしていることがありましたが途中で政策がジャガーチェンジしたせいもあるので・・・・)のですが、記者の質問の方も割とこうオモロイし、市場で気になっている部分についてというのと、世間的に気になっている部分についての質問がバランスよく行われていて、どこぞの総裁記者会見とは大違い。

まあ質問する気を無くさせるようなロジックの片鱗もない回答を黒ちゃんがするのがアカンので、質問者くじ引きで3人くらいに絞って共同会見にして、その代わりにその3人は更問しまくって1名20分くらい使ってゴリゴリ攻めてみたらジャパンの場合は面白いんじゃないですかねえ、最早会見と言えるのかどうか知らんけど。

すいません話がつい逸れました。だいぶ前にネタにしたのは最初から3番目にあったジーナスミャレック(って読むのかな)さんの質問「インフレ期待が先行してホイホイと上がりだしたらどうするんの」という質疑で終わってしまいましたが、実は「インフレが跳ねた時に本当に大丈夫なのか」質問は他にも出てきておりまして、どこかのようにデフレがどうのこうのというデフレな質疑が飛び出さないというのが実に美しい。

ちなみに他にも住宅市場が強すぎでネーノとか、サーチフォーイールドの動きとか大丈夫け?というような質疑もあって、まあこの辺は経済状況の好転が見えている中で政策が地蔵を決め込んでいるもんだから、その地蔵を動かそうとして質問するのでそっちの方向に寄った質疑になりやすい、というバイアスはあると思うのでそこは頭の中に入れながら鑑賞をしようかなって所ですぬ。


・物価が上方にアウトオブコントロールにならんのかという問いに対してまさかの大演説で詳細説明キタコレ

まずは12ページの質問な。ヘザースコット(と読むのかね)さんもいつもの質問者である。

『HEATHER SCOTT. Thank you. Good afternoon, Chair Powell. I wanted to ask you. You know you've been hearing, of course, these concerns raised by Larry Summers and others about inflation and the fact that they think the Fed might be, might let things get out of hand with the new policy stance.』

『So, my question is can you tell us what is different this time versus previous periods like in the 60s when inflation got out of control. Why are you confident with the lags in monetary policy that the Fed can get ahead of inflation and make sure it doesn't go too far above the 2 percent target? Thanks. 』

今回は(メイクアップストラテジーの要素を入れているだけに)インフレが上振れしすぎてアウトオブコントロールになる(結果オーバーキルの引き締めをしなければいけなくなる)ような1960年代のような事が起きない、という認識だと思うのですが、その根拠は如何に?てなことを聞いているように見えますな、というまあ政策枠組みの肝に当たる部分だからというのはあるのですが、それにしてもこの質問に対するご回答が、延べ2ページを超える大演説になっておりまして、どこぞの中銀総裁の「ご指摘は全く当てはまらないと思っています」とは人間の格が段違いだわと感心する次第。

#まあどこぞの中銀の場合はロジカルに説明できないからインチキ説明するか回答しないかの2者択一になって、麿だったら一生懸命ロジック立てて回答するし俊ちゃんなら理屈があれば理屈を捏ねるけどそうじゃない時は貫禄のインチキロジックソードを振り回して斬りまわりますな

しかもこれ段落分けがされていない(確か初稿版だと基本的に段落分けしてなかったと思う、ファイナルはうっかりネタにするのを忘れた時しか読まないので覚えてない)ので字面を追うのが目検だとめんどい。

『CHAIR POWELL. So, I actually have a couple things I'd like to say about inflation, including addressing your question.』

2点話すのに2ページ超かよ。

『So, let me start with just saying that we're very strongly committed to achieving our objectives of maximum employment and price stability. Our price stability goal is 2 percent inflation over the longer run, and we believe that having inflation average 2 percent over time will help anchor long term inflation expectations at 2 percent with inflation having run persistently below 2 percent for some time. The committee seeks inflation moderately above inflation for two times, above 2 percent for some time. 』

まずはマンデートの話から始まりました。オーバーザロングタームでの2%物価、というのがマンデートで、それに加えて現状では暫くの間2%以下の期間が長く続いていたこと踏まえ、「平均的に2%の物価」となることによってインフレ期待が2%近辺でアンカーされることに寄与する、と考えています。よってインフレは2%をモデレートリーに上回る状況が2度(ってのは手前で一時的に上がるって事の話ですなたぶん)あることを希求しておりますぞな。だそうで。

『So, with a little bit of context, we're making our way through an unprecedented series of events, really, in which a synchronized global shut down is now giving way to widespread reopening of economies, many places around the world. In the United States, fiscal and monetary policy continue to provide strong support.』

この辺からは経済の話になります。コロ助のせいでグローバルシャットダウンからの回復、という経済の状況のお話ですが、何で経済の話をするかというと後で分かりますが、さっきの「two times」の説明をしているようですお。

『Vaccinations are now widespread, and the economy is beginning to move ahead with real momentum.』

イイハナシダナー、どこかの国ではそのうち「ワクチン接種の遅れが我が国経済の世界的な回復に対する遅れに繋がっている」とかド直球の経済認識出すんじゃネーノと恐れる次第ですが。

『During this time of reopening, we are likely to see some upward pressure on prices, and I'll discuss why. But those pressures are likely to be temporary as they are associated with the reopening process.』

話が見えて参りましたな。コロ助の悪さによってアイヤーになった経済が再開して、その再開において物価上昇圧力がかかるのですが、その動きってのは一時的(落ちた分の取返しプロセスであって、ドテン倍返しプロセスではない)ですよという話。

よって、

『In an episode of one-time price increases as the economy reopens is not the same thing as and is not likely to lead to persistently higher year over year inflation into the future, inflation at levels that are not consistent with our goal of 2 percent inflation over time.』

経済活動の再開に伴うワンタイムの物価上昇圧力は、持続的にジャンジャンと物価が上昇して、ワタシらのマンデートとして求められている物価上昇を超えるアカン奴の上昇につながるものではありません(キリッ、というお話ですね。これが多分「ツータイムス」の1回目って事なんでしょう。

でまあ一々話が横に逸れて恐縮ですが、「適合的期待形成が強いので実際の物価上昇が起きるように緩和を続けて期待形成よ動け」ってシャーマン状態になっておられるどこぞの中銀ちゃんなのですが、実際の物価が上がりだして適合的期待形成が動き出す、というロジックを持ち出しますと、実はこの米国で今言ってるような話とコンフリクトするんじゃネーノ(なおそこを突っ込んだ場合、日米ともに2%の物価目標があって、米国の場合はその2%にインフレ期待がアンカーされているのでフォワードルッキングの期待形成が強固で日本とは議論のステージが違う、と回答するという位は咄嗟に思いつくアタクシ)という気がして中々興味深い。

ただまあインフレ期待そものもが何が何だか良く分からんフワッとした概念であって、実際の物価上昇を見て適合的にインフレ期待が動くもんだったら、何で日米では非対称になるのよというのがありまして、実はインフレ期待と今まで言われていたものは、単なる「将来における恒常的な名目所得(実質ではない)の上昇期待」というもので、それが消費や投資の行動を決定する要因になっているんじゃネーノという気がするので、そうだとすれば多少の物価のブレでインフレ期待(実は名目所得の上昇期待)はそんなに変わらんし、逆に名目所得が上がらんぞという話ばっかり聞かされるとそら期待は動かんわ、となる気がします(思いっきり個人の妄想です)。

・・・・・・すいませんまた話が逸れましたが、とりあえずFEDの主流チームとしては今年の段階で物価が多少上にぶれてもそこは「一時的」で押し通すことを想定、即ちテーパーは兎も角として利上げをそう簡単にぶち込んでこない、ということになると思います(個人の感想です)。

よって順当に進んでいる場合、利上げ云々ってのは今年の「テンポラリー」とされる物価上昇の裏が出る来年の所で、「あれま物価下がりませんなあ」となるか「裏が出る以上に物価が下がってるじゃんアカーン」となるか、という辺りが面白ポイントになると思うのですけどどうでしょうかね(個人の感想です、ってしつこいですかそうですか)。

大演説はさらに続く。

『Indeed, it is the Fed's job to make sure that that does not happen. If, contrary to expectations, inflation were to move persistently and materially above 2 percent in a manner that threatened to move longer term inflation expectations materially above 2 percent, we would use our tools to bring inflation and expectations down to mandate consistent levels.』

たぶんFOMC会見ってダビッシュという市場の初期反応(特にアタクシの場合先に声明文だけ読んでから会見テキストを時間差攻撃で読んだので、最初あの声明文で何で長期金利下がるねん(というほど下がった訳でもないが)とビビりましたが、まあそれを見て「こりゃ会見がダビッシュだわ」となりましたな、うんうん)でしたが、一応こうやって言う事はちゃんと言っているんですよね。ただ、声明文のテキストも今回は強かったので、プレマチュアーな緩和縮小論議で市場が走らない(というか走るの意識する向きは増えているきがするが)ようにということでオープニングリマークとQAの最初の方で中和してるんですよね。

この部分も、あくまでも「我々は今年に起きる物価上昇はペントアップ要因とその他(商品価格とコロ助による稼働低下に起因する供給制約)によるものでどちらも一時的だから、別に足元の物価を受けて政策は反応しないよ」という大宣伝がベースにあるのですが、そうは言いましても上記のように、見込み違いで上振れあばばばばーだったらそれはそれ、というお話をしておりますな。出口についての会話をするだけでアカンみたいなシャーマン中銀とは大違い。

でもって

『And I would say, if I may, that is a principal difference from, we're all very familiar at the Fed with the history of the 1960s and '70s, of course.』

『And we know that our job is to achieve 2 percent inflation over time. We're committed to that, and we will use our tools to do that. So, that's a very different situation than you had back in the 1960s. Or many, many differences actually.』

質問への返しになっていますが、足元の物価上昇は1960年代や70年代のそれとは思いっきり違いますよそれはテンポラリーのワンオフだからです、よって引き締めも別にやらんでヨロシという話でして、まあ結局はダビッシュに寄せて話をしていますが、ただまあ入れるべきフレーズはちゃんと入れてますね、という感じです。

話はさらに続く(長い)。

『So, let me talk quickly about the two reasons, two or you could say three, but really two main reasons why we think inflation will move up in the near term.』

テンポラリーでワンオフ、で片付けるだけではなくて更にこのディテールを説明していくという念の入りようなのですが、アタクシ例によって雨人じゃないのでさっぱりその辺がワカランチ会長なのですが、今回の質疑ってインフレ上振れ系の質問が多くて、FEDとしても世の中(や特に議会)から物価上昇を放置するFEDは怪しからんって弾が飛んでくるの事前に回避しようとしているのかね、という風には思ったのですが、こればっかりは生活実感を見ないと何とも。

まずはベース効果の話。

『The first is the base effect. Twelve-month measures of inflation are likely to move well above 2 percent over the next few months as the very low inflation readings recorded in March and April of last year drop out of the calculation. That process has already started to show up. You saw it in the March CPI reading, and you'll see it later this week in the PCE price data. These base effects will contribute about one percentage point to headline inflation and about 7/10 of a percentage point to core inflation in April and May.』

『So, significant increases, and they'll disappear over the following months. And they'll be transitory. They carry no implication for the rate of inflation in later periods. So, that's base effects. 』

昨年物価が落ちた分で下駄が発生していて、その下駄がヘッドラインインフレで1%、コアで0.7%ということですよ。既に3月4月の数字として出ていますね。でもこれは一時的であって、将来的なインフレに直結するものではないですよ、という懇切丁寧な説明キタコレ。


次が供給制約の話。コロ助起因による各種の行動規制などによる供給制約が発生しており、これが物価を一時的に押し上げるってお話。

『The other big one I would talk about is bottleneck.』

はい。

『So, this is what we're seeing in supply chains in various industries, and we're in close touch with all of these industries. You know, the Fed has a network of contacts that is unequaled in businesses and in nonprofits for that matter, too. So, what do we mean by a bottleneck? A bottleneck really is a temporary blockage or restriction in the supply chain for a particular good or goods, something that slows down the process of producing goods and delivering them to the market. We think of bottlenecks as things that, in their nature, will be resolved as workers and businesses adapt and we think of them as not calling for a change in monetary policy since they're temporary and expected to resolve themselves.』

話の切れ目が無いから何か結論まで全部区切ってしまいましたが、要するに今起きている供給制約はコロ助起因による移動制限とかのサムシングなので、これらの要因はいずれ解消に向かう、よって今回の場合は供給制約要因による物価上昇に対する金融政策の反応は必要なし、という認識ですな。

ここはホンマカイナ部分が確かにあって、アフターコロナだのウィズコロナだのの話があったり、カーボンニュートラルへの道の話があったりで、たまたまコロナが切っ掛けだったとしても、コロナ前後で別の世界になっていたりした場合、その影響は持続的になり得ると思うんですがさて・・・・・・・・

『We know that the base effects will disappear in a few months. It's much harder to predict with confidence the amount of time it will take to resolve the bottlenecks, or for that matter, the temporary effects that they will have on prices in the meantime.』

と思ったらパウエルも「ベース効果は数か月で解消するのは明らか」としながらも、供給制約要因がいかほどのもので、持続的な影響がありやナシやみたいな点を判断するのにはまだお時間が掛かるですわなあという話をしております。

『So, you know, I'll just sum up and say we understand our job. We will do our job, and we are focused, as you've seen, for many years, we've been focused on inflation deviating below 2 percent, and we used our tools aggressively to keep it back up at 2 percent. If we see inflation moving materially above 2 percent in a persistent way that risks inflation expectations drifting up, then we will use our tools to guide inflation and expectations back down to 2 percent. No one should doubt that we will do that. This is not what we expect, but no one should doubt that in the event, we would be prepared to use our tools.』

ということで、先々週(4/30・・・・)にネタにした方の質疑では「望ましくないオーバーシュートには対応しますし対応できます」程度で済ませていた感はあるのですが、まあ言ってみれば更問が飛んできまして、むしろ「目先の物価上昇は持続性に欠ける物価上昇であり、金融政策で対応する必要がない」と言う方を丁寧に説明する感じになった結果がこの大演説、ということですが、まあ米国物価動向において、FEDがどのようなポイントで見ているのか、と言う事を端的に説明しているので大演説を拝読という感じでして、まあ米国の物価指標見る方におかれましては、この部分(特に供給制約要因)が解消するものなのか、はたまた解消しないで結局経済構造にビルトインされてしまうのか、という辺りを見ると米国の金融政策動向と言う現世利益の話に直結するんでネーノ、と思いましたが、アタクシは米国物価とかまで見れるほど頭良くないのでそこは専門家の方よろしゅうお願いいたします(平伏)。


・・・・・・などと書いてたら時間が無くなってしまいました。質疑応答1問だけで終わってしまってその他のネタがもうちょっとだけあるので明日か明後日辺りに残りを成敗します(超大汗)。




2021/05/10

お題「うーんただの追認機関ェ・・・・・・・・・・・(3月点検会合議事要旨ネタ)」

大型連休中に2回休日更新したというのに全然成敗が追いつかないのですが、泣きを入れる前に何で土日更新してないのよ、というツッコミはお許しを(平伏)。

ショパンの事情でネタが渋滞中ですが大型連休モードもそろそろ終了で(そういや電車今日は通常ダイヤで良いんだよな)徐々に渋滞解消への所存。


〇3月議事要旨:点検会合で何を点検していたかを拝読しようじゃないの

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2021/g210319.pdf

・ちょっとだけ経済情勢の検討部分をみてみましょう

珍しく『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』を見てみます。『1.経済情勢』から参ります。

『国際金融市場について、委員は、2月中旬にかけて、景気回復期待の高まり等を背景に、市場センチメントは改善傾向を辿ってきたが、その後は、米国の長期金利の急上昇などを受け、神経質な動きがみられているとの見方を共有した。』

うむ。

『ある委員は、米国の長期金利の上昇について、大規模な財政出動やワクチン接種の拡大に伴う経済の持ち直し期待の高まりが背景とみられるとの意見を述べた。』

というのはさておきまして、

『複数の委員は、今後、米国の長期金利が過度に上昇する場合には、住宅投資の減少を通じた米国経済の下押しや新興国からの資金流出等が生じるリスクがあり、注意が必要であるとの見方を示した。』

という所なんですけど、この辺りの「見方を示した」のを見てて思いまするに、政策委員の皆さん何気に日々のプライスアクションを一生懸命見過ぎなんでネーノ(あるいはそういう報告を読み過ぎ、でも同じだけど)という気がするのでありまして、これまあ3月時点での話でその後落ち着いてるから後付け大将で思う面もあるんですけど、米国の長期金利上昇即こういう話なの???ってのがちょっと目先の動きを過大に評価し過ぎちゃんで、確かにバーナンキの時にテーパータントラム起きて新興国から資金が抜けてアイヤーってなったけど、あれは金融緩和縮小の話を急にFEDがやる気満々でおっぱじめたという背景があって、一方で今回ってのは明らかに背景が違うんですから、そらまあFEDが急に目先の状況で盛大に強気になってテーパーだ利上げだって言い出したら上記のような話になるかも知れませんが、今回は経済の拡大(と財政大盤振る舞い)で素直(というか何というか)に金利が上がっているのですから、経済拡大→金利が上昇→住宅市場がコケて経済下押し、ってそれ起きたとしても、ただのビルトインスタビライザーであって、FEDが自ら金利を上げにいったバーナンキのテーパータントラムと同じような「注意が必要」ってのは何かこう的が外れている気がするのよね、というのが気になったので書いてみた。

『一人の委員は、米国の長期金利について、わが国と同様に預貸率と貸出利鞘の低下が進んだ米国の銀行による債券需要が旺盛になることで、今後の上昇幅は限定的となる可能性があると指摘した。 』

ここの意見も言いたいことは分かるのだが、なんかソウジャナイ感があって、銀行の行動がどうのこうのっていうのって市場ベースで考えるとそうかも知れんけど、銀行(というか金融)の動きって基本的には経済全体における動きの反映として出てくるものだから、銀行の行動ガーではなくて、資金循環とかそっちの方から考えた方が良いんジャマイカと思うんですよね。なんかこう議論が細かい袋小路に入り込んでいる気がします。

なお、フラグにならないといいなあと思うのは、為替市場に関する話が最近の議事要旨で全然出てこなくて、いやまあリスクリバーサルが一方方向に傾いているからどうのこうのみたいなクソ細かい話(しかも的外れ)をする人が黙った(ちなみに10月会合を最後にその指摘無くなりました)のは結構なのですが、為替のかの字も出てこないと変なフラグにならんかねとかつい天邪鬼な感想が。

金融市場の話が独立しているから金融市場ベースで話をしていて、だから細かいネタが出てくる、というのはまあ分からんでもないのですが、以前出てたリスクリバーサルだのVIX先物だのみたいなクッソ細かい話が良く出てくるのって、スタッフ報告で出てくるのはまあ分かるけど、政策委員がああだこうだ言わんでもエエノニ、とは思うのでありました。


ついでに海外経済。

『海外経済について、委員は、一部で感染症の再拡大の影響が残るものの、持ち直しているとの認識で一致した。』

まあこの辺、4月会合議事要旨が出るのを楽しみに(その前に主な意見でネタが出る説はありますけど)しておりますが、4月に急に威勢が良くなった見通しと比較確認してみたいなとは思っておりまする。まあ海外よりも国内って感じではありますが。

『何人かの委員は、国・地域によって、感染症やワクチン接種の状況に差異がみられており、持ち直しの動きは不均一であるとの見方を示した。ある委員は、大きく落ち込む業種は、限定的かつ固定的になっていると付け加えた。』

『一人の委員は、世界生産や世界貿易量は、感染症拡大前の水準を上回るほど、改善が進んでいると指摘した。』

はい。

『海外経済の先行きについて、委員は、感染症の影響が次第に薄れていくもとで、先進国を中心とした積極的なマクロ経済政策にも支えられて、改善していくとみられるが、ワクチンの普及ペースの違いなどを背景に、改善ペースは各国間で不均一なものとなる可能性が高いとの認識を共有した。』

しかし何ですな、3月会合の時にこのように「ワクチンのペースによって改善ペースが」という話をしていて、一方で4月会合の時点でどこからどうみてもジャパンのワクチンのペースが全然進まなくて、進まないもんだから河野太郎大先生とかすっかりダンマリさんだったりしますが、そういう状況が顕在化していたのに何であんなに強い見通しになったのやら。

なおワクチンに関して日本の場合は、ワクチンバンバン打った米国が楽しいヒャッハー生活アゲインというのを見せてもらっているので、おっぱじまればおっぱじまりそうなもんですが、地方自治体にマルナゲータとかしててリソース投下が中途半端なのがアカンとは思うのですよね。米国がヒャッハーしてるの見せられたらお注射チューの方は進むと思うんですけどね。フロントランナーはやらないけど追走して流れ込んで5着まで確保ってのは得意ですからねえ。

『何人かの委員は、先行き、感染症の帰趨に加えて、米国の積極的なマクロ経済政策が及ぼす影響、米中間の緊張関係などのリスク要因があり、不確実性が高いと指摘した。』

米中に関してはトランプの時よりも読みにくいというか、そもそも米民主党って原理原則でガンガン押してくる(オバマはどちらかというと外れ値に近い)ので札束攻撃が効きにくいですからどうなるのやら。


・さて点検の点検はどうなっているのやら

ということで『V.「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」に関する執行部からの報告および委員会の検討の概要』に飛びますが、「点検会合」とか言ってるとあんまり違和感が無いのですけれども、正式名称の「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」って見れば見るほどナンジャソラなオモシロ題名ですよね(白目)。

大本営発表の方はどうでも良いので『2.委員会の検討』って所から参ります。

『委員は、以上の執行部からの報告を踏まえ、「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」に関する検討を行った。 』

点検の点検ですね。

『政策効果について、委員は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、想定したメカニズムに沿って効果を発揮しているとの認識で一致した。』

ちょwwwwおまwwwwwwwwwテラ出オチwwwwwwwwwwwwwwww

と、大草原不可避なのですが、想定したメカニズムに沿って効果を発揮しているんでしたら、とうの昔に2%の物価安定目標を達成している筈なんですけど。

さてここで黒ちゃんの会見ネタの時にも引っ張り出してきたQQEの想定する波及効果メカニズムを再度の再度の再度位になりますが確認してみましょう。

2013年8月の講演
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
「量的・質的金融緩和」のトランスミッション・メカニズム
ー 「第一の矢」の考え方 ー
京都商工会議所における講演 
日本銀行 副総裁 岩田規久男(肩書は当時)

こちらの6ページ目(PDFの7枚目)に『「量的・質的金融緩和」の波及経路』ってのがあって、どこからどう見ても「2%インフレ目標コミットメント」+「マネタリーベース増加」⇒『予想インフレ率上昇』にしか見えない波及経路があるんですが、一方でさきほど華麗にスルーした大本営発表部分では、

『物価上昇率が高まりにくい状況が続いた要因としては、予想物価上昇率に関する複雑で粘着的な適合的期待形成のメカニズムが根強いことが確認された。』(これは今回の議事要旨から)

ってある訳で、全然想定したメカニズムに沿っていないんですが、想定したメカニズムはYCCを導入した時に差し替えました、というのであったら、きちんとその旨をアナウンスして、当初の目論見が空振りに終わった、ということを明示的にして頂かないとアカン訳で、それ無しでQQEの最初から今まで「想定したメカニズムに沿っている」って事をやっているからキメラの怪物みたいな政策になる次第で、先般の総裁記者会見で「演説」とか言って却下してたけど、あの演説自体は(盛り込み過ぎたのは上手くなかったかも知れんけど)やっぱりそうですよねと思う所大で、そこを却下する姿勢という時点でこりゃダメだ感は高い。


・・・・・・・でですね、まああの点検結果が出ている時点でそらまあ「想定したメカニズムに沿って」という話が出てくるのは明らかなのでそれはまあ良いんですけど、この出オチ部分、再掲しますと、

『政策効果について、委員は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、想定したメカニズムに沿って効果を発揮しているとの認識で一致した。』

>との認識で一致した

ってのがもうねという感じで、誰か「当初想定していたインフレ期待の押し上げに効果を発揮できず」とゴネて大暴れする政策委員はおらんのか、と思うのでありまして、執行部が出してくるものを追認してばっかりのボードだったらガバナンスもあったもんじゃないと思うんですけどねえ。


『ある委員は、感染症の収束後も金融緩和を粘り強く続け、プラスの需給ギャップを維持し、賃金上昇を促していくことが重要であるとの意見を述べた。』

コロナ前の状況でも賃金上昇が進まなかったのですけどねえ。

『一人の委員は、需給ギャップの押し上げには、金融資本市場を通じた経路が相応に寄与していると指摘した。』

え??????

『複数の委員は、現在の金融緩和政策が効果を発揮するもとでも、物価上昇率が高まりにくい状況が続いた主因は、複雑で粘着的な適合的期待形成が強いもとで、デフレの期間中に根付いた物価観の転換に時間がかかることにあるとの見方を示した。』

QQEの目論んでいたインフレ期待の押し上げに失敗したからなのではないでしょうか、というかだったら他の方法でインフレ期待を押し上げる工夫をするのがQQE導入当初の考えに立ち返ったら検討すべきことであって、過去の施策を正当化するための点検(金曜にネタにしたように、実質長期金利1%下げたら物価が0.7%上がったんだったら実質長期金利あと2%下げれば良いのでマイナス深堀すれば良いのに(棒読み)それは実施しないんですから何の点検だよという感じでありますわ)をして良しとしている場合じゃないと思うんですが。

『このうち一人の委員は、適合的期待形成が強いということは、実際に物価上昇の経験が続けば、人々の物価観がそれに応じて転換しうることを示すものでもあると指摘した。』

だって物価が上がりにくいんでしょ???だったら強引に円安に振るとかしたら如何ですか??ってそれやったら結局消費がコケて、その前の駆け込み分も含めて反動が来たってのを既に2014年辺りにやってた気がするんですが。

『ある委員は、自身の分析結果によると、物価上昇率が1%を上回ってくると、フィリップス曲線の傾きがスティープ化して、需給ギャップに対する感応度が高まることが想定されるとの考えを示した。』

これは斬新!!!!!!!!ちょっと面白いから今後の金懇に期待しましょう。


『国債市場の機能度への影響について、何人かの委員は、イールドカーブ・コントロールの持続的な運営には、市場機能の維持と金利コントロールのバランスが重要であるが、ある程度の範囲内の金利変動は、金融緩和の効果を損なわないことを改めて確認できたとの認識を示した。』

何でこの話が出るのかと思ったらよく考えたらプラマイ25bpを明示化したんだった。しかし国債市場の機能度云々ってのもマイナス金利だのYCCだの散々やっておいて市場叩き潰して(おまけにクレジットスプレッドも叩き潰して)おいて何かやりたいことが出来ると急に言い出すんだよな〜。

『複数の委員は、2018 年7月に長期金利の変動幅の柔軟化を図ったことで、いったんは金利変動幅が拡大し、国債市場の機能度が改善したが、その後、再び変動幅は狭まっているとの意見を述べた。ある委員は、変動幅については、あくまで実体経済の回復を阻害しない範囲内とすることが
重要であると指摘した。 』

金利が変動すれば国債市場の機能度回復ってのも物凄い勢いで違和感のある議論ですな、とだけ申しあげておきましょう。


『金融仲介機能への影響について、何人かの委員は、金融システムへの副作用は時間の経過とともに累積していくため、金融システムの動向をつぶさに評価していく必要があるとの考えを述べた。』

してねえだろ。

『ある委員は、「物価安定の目標」を早期に達成することが、金融緩和の副作用を抑える最善の処方箋であるとの意見を述べた。この委員は、追加緩和に際して副作用が懸念されるのであれば、その副作用を緩和する措置を予め示すことも考えられると付け加えた。』

というか追加緩和すれば良いじゃん。目標を早期に達成する方策を考えるのがオメーらの仕事だろこのダボが。


『ETF等の買入れについて、何人かの委員は、分析の結果は、市場が大きく不安定化した場合に、大規模な買入れを行うことが効果的であることを示しているとの見解を述べた。 』

って事になっているのですが、市場が不安定化した時のバジョット・ルール的な考え方とか、QE1時代の実質クレジットイージングの考えからすると、ETFの買入が効果的ってのは何か違う気がします。


『オーバーシュート型コミットメントについて、何人かの委員は、金融緩和を長い期間にわたって継続することを明確にするうえで、「埋め合わせ戦略」としてのオーバーシュート型コミットメントは非常に重要であるとの見方を示した。』

おいこらちょっと待て、何で勝手に埋め合わせ戦略になってるんだよ。単に「2%を達成する前にプレマチュアーにマネタリーベースの拡大方針を変更しない」だろうがあのコミットメントは。

『このうち一人の委員は、デフレのリスクの方を懸念せざるをえない現状では、出口には容易に向かわないという日本銀行の強いスタンスを示す役割を担っていると付け加えた。』

「物価安定目標の達成に失敗し続けているから出口が見えない」の間違いではないでしょうか????

『この間、ある委員は、「埋め合わせ戦略」を掲げていれば「物価安定の目標」が達成されるわけではないと指摘した。 』

珍しく良い意見だ。


『この他、複数の委員は、グローバル・スタンダードである2%の「物価安定の目標」の必要性やその実現に向けたメカニズム、そのもとでの各種施策の位置づけについて、国民の理解深耕に繋がる情報発信や広報活動が重要であるとの考えを述べた。』

2013年から足掛け8年、まあ2020年以降はコロナで勘弁してやるとしても7年間全然達成してないのに国民の理解深耕って何を深耕させるんだよと思いますし、だったらあの木で鼻をくくったような黒田総裁の定例記者会見でのスタンスをもうちょっと何とかしろと小一時間問い詰めたい。

と言ったところですかね。『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』とか次にあるのですがまあどうでもよいのでパス。





2021/05/07

お題「点検シリーズの政策効果検証というのをいちゃもんつけながら鑑賞してみる(超僭越)」

ステイツのタカ派おじさんとハト派おじさんが競演(共演ではない)していますね!!!

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-kaplan-idJPKBN2CN217
2021年5月7日2:01 午前UPDATED
早めの緩和縮小議論を、ダラス連銀総裁「来年に利上げ条件整う」

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-bostic-jobs-idJPKBN2CN2B9
2021年5月7日4:51 午前
米4月雇用100万人以上増加へ、緩和縮小議論に及ばず=アトランタ連銀総裁

とりあえずタカハト両芸人が芸風をそのまま出して両論併記ステージということですかしら。まあその前にパウエル会見も成敗していませんのでアレですが、どうせ次回FOMCでいきなりその辺の話が出てくるわけでもない(個人の憶測です)でしょうからじっくりと各芸人がビューとするベースを確認して参りたいと思います(と言って寝起きネタにするのを回避)。


〇GWにぶつけるかのようにペーパーがでていましたが(点検会合関連)

2本ほど出てましたがこちらでも。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2021/wp21j07.htm/
「点検」補足ペーパーシリーズ(2)
マクロ経済モデルQ−JEMを用いた「量的・質的金融緩和」導入以降の政策効果の推計

こちらはエグゼクティブサマリーなのですが、

『要旨

本稿では、日本銀行の「量的・質的金融緩和」導入以降の一連の金融緩和がわが国の経済・物価動向に与えた政策効果について、日本銀行の大型マクロ経済モデルQ−JEM(Quarterly Japanese Economic Model)を用いて推計した。』

出たなQ-JEM。

『具体的には、実質金利をはじめとする主要な金融変数について、日本銀行による金融緩和が実施されなかった場合の「仮想的なパス」を想定し、金融変数がその「仮想的なパス」を辿った場合の実質GDPや消費者物価等の推移を、Q−JEMのカウンターファクチュアル・シミュレーションにより試算した。』

毎度の得意技なのですが・・・・・・・・・

『そのうえで、実績値とシミュレーション結果の差を、実質GDPや消費者物価等に与えた政策効果とみなした。』

まあ何とでも言えるわな、という身もふたもない話はさておきまして、

『計測された政策効果の大きさをみると、「量的・質的金融緩和」導入から2020年7〜9月までの期間において、実質GDPの水準で平均+0.9〜1.3%程度、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比で平均+0.6〜0.7%ポイント程度の押し上げ効果があったという結果となった。』

というのは点検の紙の所でもありましたが、それをクッソ細かく計算しているのが今回のペーパーで、まあ要するに点検の舞台裏でこういう分析をしていましたよ、という大公開シリーズですな、なぜならその後の補足っぽい所に、

『本稿は、2021年3月に日本銀行より公表された「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」の内容を補足するものである。』

ってありますので。では本文を読んでみましょう、と言ってもアタクシはご案内の通り四則演算を超える計算式を見ると突発性マーライオンになってしまうという程度には数学が苦手(とは言え一応高校生の時は共通一次レベルの知能はあったので只の退行と言われるとぐうの音も出ない)なのですが、計算式読めない分バックグラウンドの前提条件とか再現性とかそういうのを読み取ろうとする読み方をする訳ですな(開き直り)。

本文はこちら。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2021/data/wp21j07.pdf
「点検」補足ペーパーシリーズA
マクロ経済モデルQ−JEMを用いた「量的・質的金融緩和」導入以降の政策効果の推計

最初に要旨ってのがあるけどそこはさっきのHTMLの要旨ご紹介ページの通りでございますのでそれはスルーして『1.はじめに 』という所を読む(というか最初と結論しか読む知力が無いのだが、汗)。


・毎度の「政策が無かった場合のカウンターシミュレーションとの差を取って政策効果」という話だが

『本稿では、「量的・質的金融緩和」(Quantitative and Qualitative Monetary Easing、以下、QQE)導入以降の金融緩和政策が、わが国の経済・物価情勢に与えた影響について、日本銀行の大型マクロ経済モデル「Q−JEM(Quarterly Japanese Economic Model)」を用いて推計する。』

ということで次がキュージェムの宣伝なので割愛しようと思ったが引用しておくわ。

『Q−JEMは、日本銀行調査統計局が持つ、日本経済を描写したマクロ計量経済モデルであり、数百本の方程式から構成されている。各方程式は、過去20〜30年程度のマクロ経済変数の四半期データを用いて推計されている。各方程式は、最新のデータを用いて定期的にアップデートされており、その定式化自体も、経済構造の変化に合わせて、適宜見直しが行われている。Q−JEMは、日本経済の主要なマクロ変数間の過去平均的な関係を捉えた計量モデルとなっており、日本銀行における政策効果の検証や各種のリスク・シミュレーションにも活用されている(一上ほか(2009)、Fukunaga et al. (2011)、Hirakata et al. (2019))』

で、

『実際、2016年9月の「総括的検証」の際には、QQE導入から2015年度末までに実施された日本銀行の金融緩和について、その政策効果をQ−JEMを用いて推計した(日本銀行(2016)、菅ほか(2016))。そこでは、主要な金融変数について日本銀行の政策が実施されなかった場合の「仮想的なパス」を想定し、金融変数がその「仮想的なパス」を辿った場合の実質GDPや消費者物価等の推移について、カウンターファクチュアル・シミュレーションを行っている。そのうえで、実績値とシミュレーション結果の差を、金融緩和政策が実質GDPや消費者物価等に与えた効果とみなしている。本稿でも、基本的に、これと同様の考え方に則って、QQE導入から2020年7〜9月までの金融緩和の政策効果を推計する(図表1)』

だそうなのですが、これ出てくる数字自体は尤もらしいのですが、結局結論先にありきなんじゃネーノ感は拭えないのですけどねえ、と読んでる人が心の中でツッコミを入れるのを想定しているかのように次のパラグラフにこんなものが。

『金融変数の「仮想的なパス」の作成に当たっては、@各金融変数について金融政策の直接的な影響を受けにくい経済変数で説明する回帰式を推計し、その外挿推計値を金融緩和が実施されなかった場合の値とみなす方法や、Aイベントスタディの考え方を応用し、政策変更直前の水準を金融緩和が実施されなかった場合の値とみなす方法など、複数のアプローチを採用した。』

これは毎度キュージェム使っている時にやってる件なのですが、

『金融緩和が実施されなかった場合の「仮想的なパス」は、実際に観察できないため、その作成にはどうしても分析者の裁量が入り込む余地が生じる。このため、本稿では、幾つかの異なる前提のもと、各金融変数の「仮想的なパス」を複数設定し、それぞれについてカウンターファクチュアル・シミュレーションを行うことで、政策効果の推計値に関する頑健性をチェックすることとした。』

ということでロバストネスチェックをしている、とのことですが、さてここで急にワープして巻末の図表5以降のグラフを見てくんなまし。なお図表を磔刑にするスキルは無い(だいたいからして文章の引用はともかく図表の磔刑が良いのかどうかがわからんので貼る気もないのだが)ので、上記URL先のPDF24枚目から先をご覧いただきたい。


・QQEなかりせばという推計値のご紹介コーナーにワープして拝読してみる

例えば(図表 5)が『(1)名目長期金利の推移』、『(2)名目長期金利の推計値の要因分解』ってのがあるんですが、この(1)ちゃんを見ますとQQEが実施されず、麿ドクトリンの政策が継続していると、2013年中盤から10年金利が上方シフトしだす、という何をどうするとそうなるのか、当時も当然の如く前線兵士として攻撃したりされたりしておりました不肖このアタクシにはナンヤソラとしか思えん「QQEなかりせば」の推移。

でもってこの(2)ちゃんの要因分解とやらを拝読しますと、米国長期金利が上がるから上がるみたいな話になっておるのですな。ふーん。


次の買入効果の話は、たぶん日銀としては主張したいんでしょうが、これこそ何とでも言えるのでそういうお手盛り物件に関しては斎藤道三が手ずから点てて頂いたお茶並みのサムシングを感じるのでパスいたしましてPDF26枚目の(図表 7)『中長期の予想物価上昇率と実質金利』なのですが、上段の『(1)中長期の予想物価上昇率の推移』を見ますと、QQEなかりせば何故か2012年の4Q以降の予想物価上昇率が横ばいになっておりまして、それ以前のグラフを見ると一応その前も動いているし、なんとなく米国長期金利が上昇するような時には中長期の予想物価上昇率(とされるもの)も上がってねえか、という感じがするんですよね。

なお、この3ページ分見てて思うのですが、シミュレーションしているグラフの起点が、最初の『名目長期金利』が1997年、次の『名目長期金利における国債買入れの効果』が2012年、今見ております『中長期の予想物価上昇率と実質金利』が2009年、と思いっきりバラバラになっていて、グラフを見た時にお題別の横比較が一見するとできない、というのもポイントが高くて、何でそんなに分かりにくくしてるんでしょう(棒読み)と思ってしまう訳ですな、うんうん。

まあそんな計算をしながら実質金利がQQE無かった時とちがってこんなに下がりました(キリリッ)って説明をしているのですが、今申し上げましたように図表7で中長期の予想物価上昇率が何故か外部要因関係なく動かん、という前提にたっているのに、図表5では米国金利上昇、つまり普通の場合は(この時もそうでしたが)米国経済が回復なり拡大なりをしていて、世界経済の状況が良いという背景の元では日本の長期金利も上がって然るべき、というようなカウンターファクチュアルシミュレーションをしていて、それを比較して実質金利をこんなに押し下げました、とか言ってるのってどうなんでしょうかねえ数学の知識が数V(歳がバレるがワイの時は実は微分積分/確率統計である)で止まっているのでさっぱりわかりませんが(棒読み)。

さらに追い打ちを掛けると、この中長期の予想物価上昇率、脚注を見ると、

『(注)中長期の予想物価上昇率は、2014年以降は短観における5年後販売価格予想の規模別・業種別系列の主成分分析に基づく試算値、2013年以前はコンセンサス・フォーキャスト(6〜10年先)。』

になっているのですが、何で途中(しかも分析の肝になるタイミング)で使ってる数字変えていますねんと小一時間問い詰めたい訳でして、まあ何と申しますか既に知識が退行して数Tも怪しい不肖このアタクシなので、分析の数学的手法とかよりも、その分析の前提条件がどうなっているのか、という方に興味があるので頭が無いなりに読んでみると何だかなと思ってしまう訳ですよ。


・などと言ってるだけだとカワイソスなので本文に戻って宣伝文句を引用しておく

その先のカウンターファクチュアルシミュレーションにも色々と唸る点があるような気がするのですが、まあそこはさておいて本文に戻ります。さっきのPDF3枚目(本文1ページ)に戻ります。最下段の所から進みます。

『金融政策効果の推計は、とくに非伝統的な金融政策が主要国で相次いで実施されたグローバル金融危機以降、中央銀行エコノミストやマクロ経済学者を中心に、精力的に行われている。Q−JEMのような大型マクロ経済モデルを用いた研究としては、Engen et al. (2015)が挙げられる。彼らは、米国連邦準備制度(FRB)の大型マクロ経済モデル「FRB/US」を用いて、FRBが行った2008〜13年の非伝統的金融緩和の政策効果を推計している。また、Mouabbi and Sahuc (2019)は、動学的一般均衡モデルを用いて、欧州中央銀行(ECB)が行った2008〜17年の非伝統的金融政策の効果を推計している。』

だそうですが、

『彼らは、カウンターファクチュアル・シミュレーションの結果に基づき、仮にECBが非伝統的金融政策を実施しなかった場合、ユーロ圏経済は深刻なデフレに陥っていたと報告している。』

とまあそういう訳なので別に日銀だけがお手盛りパーティーをやっている訳では無いのですが、何せ日銀ちゃんの場合はこのお手盛りパーティーを実施しながら何か変な事をする、というのが仕様になっていて・・・・・・・

2016年9月:「総括的な検証」(量的目標からYCCへの変更)
2018年7月:「金利賃金・物価に関する分析資料」(フォワードガイダンスの強化およびその他と長期金利の変動幅の口頭ベースでの0.10%程度の2倍攻撃)
2019年10月:「「物価安定の目標」に向けたモメンタムの評価」(この時は何もなし)
2021年3月:「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」(謎の付利制度から始まり各種の謎施策の投下)

ということで、お手盛り分析を政策をいじるのに使っているとしか見えない(個人の偏見です)のが、お手盛りm9(^Д^)プギャーと笑ってみてるだけでは済まないのが実にアレという感じですな。

・・・・・・しまったサラリと引用するつもりがまた茶々を入れてしまいました次行きます。

『小規模な時系列モデルを用いた研究としては、Kim et al. (2020)がある。彼らは、ベクトル自己回帰(VAR)モデルの推計結果と、イベントスタディで抽出した金融政策ショックを組み合わせて、FRBによる2008〜15年の資産買入れとフォワード・ガイダンスの効果を推計している。その結果、彼らは、これらのFRBによる非伝統的金融政策は、米国の物価上昇と失業率低下に相応に寄与したと主張している。』

はあそうですか、ってなもんですが、

『本稿の構成は以下のとおりである。第2節では、QQE導入以降の日本銀行の一連の金融緩和が金融資本市場に与えた影響を概観したうえで、Q−JEMで想定している金融政策の波及経路について説明する。第3節では、シミュレーションの前提となる金融変数の「仮想的なパス」を作成する。第4節では、シミュレーション結果について説明する。第5節は結びである。』

ということでお話があるのですが、今回のこのペーパーはアタクシの程度の知能でも定性的な部分に関しては何が言いたいのかは何となく分かるような気がする(分かるとは言っていない)という感じがするのですが(たぶん気のせい)、まあその辺は読んでいただくのが吉と思いますので良いからおまいら読んで味噌と思いますが(知恵熱が出る可能性があるので体調不良の方にはお勧めしない)、一気にワープして結論らしき部分に参ります、と言ってもまあ結論は3月会合時の点検ペーパーに出ていますけど謎施策散々ぶっこまれた挙句に張居正スキームをされますとちょっとアレ。


・結論はわかったのだが再現性あるんけ???

ということで一気に『4.シミュレーション結果 』にワープします(結局こうなる)。PDFの15枚目、本文13ページに飛びますけど。

『本節では、前節で想定した金融変数の「仮想的なパス」をQ−JEMに実際に代入し、カウンターファクチュアル・シミュレーションを行う。シミュレーション期間は、2013年1〜3月から2020年7〜9月までである。Q−JEMの関数については、2020年7〜9月までのデータをサンプル期間として推計した結果を用いる。具体的には、金融変数の「仮想的なパス」について、次表のような組み合わせを設定し、5つのカウンターファクチュアル・シミュレーション(A〜E)を行った。』

って組み合わせの図表を貼るスキルは無いので本文見てちょという感じです。なお、ここで話は余談というかこの結果以前の部分に関する脚注になるのですが、ちょっとこの脚注8に味わいがあったので引用します。

『8 2016 年初のマイナス金利導入後の円高・株安方向の動きには、当時の新興国経済の減速や、それに伴う原油価格の大幅下落によるリスク回避的な投資家行動が、無視できない影響を及ぼしているとみられる。マイナス金利導入時に限らず、本稿のようにイベント発生後、比較的長めの期間における金融変数の変化幅をショックとして捉えると、金融政策以外の様々な要因が、ノイズとして混在してしまう可能性がある。』

マイナス金利導入→銀行株下落→TOPIX下げを見て円高、というような効果は存在せず、あくまでも「当時の新興国経済の減速や、それに伴う原油価格の大幅下落」が原因である、という事になっておりまして、さすがのお手盛りだわと感心する次第ですが、何ちゅうかこれだけの分析するマンパワーと頭脳をコロナワクチン開発にでも振り向けた方がいや何でもありません。

話は戻しましてPDF16枚目、本文14ページに戻りまして結論っぽい部分を見ますと最初が成長率押し上げ効果の話、次に物価押し上げ効果の結果がでております。成長率押し上げの方は飛ばして物価押上タワー効果を見ますと、

『次に、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の政策効果をみると、QQE導入以降、押し上げ効果は有意に拡大しており、2015年以降は、前年比+0.6〜0.8%ポイントの押し上げ効果を維持している(図表14(1))。』

ほうほうそうですかそうですか(棒読み)。

『この押し上げ効果をフィリップス曲線の説明変数別に要因分解すると、QQE導入直後は、中長期の予想物価上昇率と需給ギャップの寄与が大きくなっている。その後、2015年頃以降は、ラグ項で表される適合的期待の寄与が最も大きくなっている。』

『フィリップス曲線のラグ項に需給ギャップと中長期の予想物価上昇率を逐次代入した、出尽くしベースの要因分解をみると、QQE導入から2020年7〜9月までの約7年間のうち、前半は主として中長期の予想物価上昇率の上昇が、後半は主として需給ギャップの改善が、消費者物価を押し上げていることがわかる(図表14(2))9』

ナンジャソラ。

『図表15では、5つのシミュレーション(A〜E)について、政策効果の推計結果をまとめている。需給ギャップに関する政策効果をみると、仮にQQE導入以降の金融緩和が実施されなかった場合、いずれのアプローチでみても、ごく一時期を除けば、マイナスの需給ギャップが継続していた可能性が高いことが示唆される(図表15(2))。消費者物価に関する推計結果をみても、急速な円安が進んだ2014〜2015年は一時的に前年比プラスとなったが、それ以降は、金融緩和が実施されなければ、前年比マイナスが一貫して続いていた可能性が高いことが示唆される(図表15(3))。』

何をおっしゃるウサギさんという感じですがそうなんですってよ奥様〜♪

『なお、需給ギャップ、消費者物価のいずれの推計結果をみても、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大以降も、実績値はカウンターファクチュアル・シミュレーションの値をはっきりと上回っており、金融緩和効果が発揮されていることが確認できる。』

ということで結論なのだが、

『これらの5つのシミュレーション結果を踏まえると、QQE導入以降の金融緩和は、実質金利の低下や株価上昇、為替円安、貸出市場のアベイラビリティ改善を通じて、需給ギャップと消費者物価を強力に押し上げる効果を発揮してきたと言える。政策効果の大きさをみると、QQEの導入から2020年7〜9月までの期間において、実質GDPの水準を平均+0.9〜1.3%程度、消費者物価の前年比を平均+0.6〜0.7%ポイント程度押し上げる結果となっている(図表15(4))』

だそうなのですが、さっきちょっと飛ばしたどのファクターが効いてるか問題に関してはPDF16枚目、本文14ページの下段の方に、

『各金融変数の波及チャネル別にみると、実質金利の低下を通じたチャネルの寄与が最も大きい。加えて、株価上昇や為替円安を通じたチャネルも、GDPの押し上げに相応に寄与している。』

『時系列的にみると、まず、2013年のQQE導入直後は、実質金利チャネルのプラス寄与が大きく拡大した。その後、ETF買入れ額の倍増やYCCの導入が行われた2016年以降は、実質金利チャネルのプラス寄与の拡大がやや鈍化する一方で、株価チャネルのプラス寄与が徐々に拡大している。貸出市場チャネルの寄与は、2019年頃まではさほど大きくないが、2020年に、感染症拡大を受けた政策対応が講じられてからは、プラス寄与が大きくなっている。』

だそうで、ETF買入ってのは確か「リスク性資産における”過度なリスクプレミアム”の解消を促す」ものであって、株価押し上げ効果を狙ったものでは無かった筈ですし、分析の部分では別にETF買入の定量的な効果を示している訳ではなくてQQE政策そのものが株価を押し上げる効果みたいな分析になっているのですが、何故か堂々とETF倍増が株価効果に寄与しているような書きっぷりになっているのも何だかなという感じですね。

なお、長期金利に関しては分析中にあるPDF11枚目、本文9ページの冒頭辺りにこのように記載されています。

『式(1)から求めた実質金利の「仮想的なパス」は、QQE導入以降、0〜0.5%程度で推移している。他方、日本銀行の国債買入れに着目した式(2)に基づく実質金利の「仮想的なパス」は、それよりやや低めの−0.5〜0%程度で推移している。実質金利の実績値は、QQE導入以降、−1.5〜−1.0%程度まで低下しているため、政策効果による実質金利の押し下げ幅は、採用する回帰式により多少の違いはあるが、−1.5〜−1.0%程度であったと推計される。』

・・・・・ということで、実質長期金利低下によるプラス寄与が成長率やCPI上昇に対して大きい、という結果が出てるんだったら、今からとっととマイナス金利を盛大に深掘りして、10年金利をここから200bp位下げたら物価目標楽勝ジャン、という話になるのかと言うとそれは成らん、というのが実にアレでして、いやあの効果が無かったとまでは別に申し上げませんけれども、これだけ盛大に検証して定量的な数字出しても、その定量的な数字が次の政策に結びつかない再現性のない分析をして何の意味があるねんと正直思う訳でございまして、「実質金利を1%少々引き下げて物価がこれだけ上がりました!」と言われて、じゃあもう1%下げればエエヤン、が通用しないんだったら何のためにシミュレーションしてるんだか、とか何とか無知蒙昧な下々の者が申すのも甚だ僭越ではあるのですが、まあそんなことを思いながらこの作品を眺めてしまっているアタクシだったりするのでありました。

ということで3月議事要旨があった気がするが今日はパスね。




2021/05/06

お題「黒田総裁定例記者会見から少々」

結局今年のGWはぐうたら病が再発して水曜の朝にぶっこんだ(のと昭和の日の朝に寝起きFOMCやった)に留まりましたなサーセン。

しかしまあ何ですな、
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210506/k10013014531000.html
緊急事態宣言 政府 関西延長視野に 東京は知事意向踏まえ判断
2021年5月6日 4時52分

まあどうせどうなるわとは思いましたが、ここで2週間前の状況を確認してみましょう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210423/k10012992681000.html
菅首相「強力な対策を短期集中的に実施しウイルス抑え込む」
2021年4月23日 12時53分

『この中で菅総理大臣は、4都府県への緊急事態宣言について「ゴールデンウイークという、多くの方々が休みに入る機会を捉え、強力な対策を短期集中的に実施し、ウイルスの勢いを抑え込む必要があると判断し、きょう、分科会に諮問した。宣言の影響を受ける方々への支援策をしっかりと講じつつ、感染拡大を食い止めるために対策を徹底していく」と述べました。』(直上4/23ニュースのURL先より)

「強力な対策を集中的に実施」と大口を叩いたのに結局延長。何なんでしょこれと思いましたが、よく考えたら安倍ちゃん肝いりの施策でも強力な政策を集中的に実施したのに当初言ってた2年たっても達成できず、その上職を賭すとか何とか大口叩いてたのにのうのうと任期を全うした方がいたような気がしますので、やはりケジメを有耶無耶にしたということが将来こうやって皆さんに振りかかって来るってもんですな(個人の感想です)。


〇黒ちゃんの定例会見である

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210428a.pdf


・メディア的には2%相変わらず達成できないのはネタになるわな

既に行かないのはもうどうしようもないのですが、ワシらの困るのは2%早期達成をするとか言ってぶっこんだ政策(QQEもそうだがマイナス金利なんてその最たるもの)を「早期達成が難しいから長期化できるように工夫する」って方でして、「早期達成は難しいですので、短期間で達成するように考えて投下した措置を手直しします」と言ってマイナス金利とYCC止めて、その代わりにゼロ金利政策継続のコミットメントを強力かつ明確にして頂けるだけで今の問題のうちの幾分かは軽減できそうに思えるんですが、何せどこぞの緊急事態宣言のようなもので、「短期決戦」だの「勝負の何とか」だの言って空振りしても責任は取らんわ原因追及はしないわですから困ったもんなんですよ。

ということで2発目の質問から早速ぶっこまれる。

『(問) 今回、展望レポートで、初めて 2023 年度の数字が公表され、物価上昇率は 1.0%が中央値となっています。総裁は就任当初、2 年で 2%を達成すると宣言していましたが、大規模緩和から 10 年が経過しても 2%を達成できない現状をどう受け止めていますか。また、金融政策で、そもそも物価を上げるということは可能だと現在も考えていらっしゃいますか。』

黒ちゃんの回答は言い訳しかありませんが言い訳を拝読しましょう。

『(答) 2%の「物価安定の目標」の実現には時間がかかっており、そのこと自体は残念なことであります。』

なにが「残念なことであります」だこのクソボケ。残念で済んだら警察要らんわこの阿呆という感じですが、アタクシが小僧で金貸しの手先をしていた時代に支店の営業会議(という名のトレース会議)で以下のような言い訳してたら(以下の描写の中に現代の基準に照らし合わせると不適切な部分があるので割愛されました)。

『3 月の点検で確認した通り、この主たる理由は、予想物価上昇率に関する複雑で粘着的な適合的期待形成のメカニズムが根強いということにあると思います。』

だったらお菊先生の某年某月某日の講演資料にありました
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf

の6枚目の図表(スライド7枚目)にある『「量的・質的金融緩和」の波及経路』の図は間違いでしたという話になりますな。まあ物価目標達成しない理由に最近は(この前の点検結果を受けてという建付けだと思いますが)この「予想物価上昇率に関する複雑で粘着的な適合的期待形成のメカニズム」を曳かれ者の小唄の如く歌っているのですが、まあ分析の結果そうなったのであれば、お菊先生のこれは間違っていた、ということで宜しいでしょうか??って誰か次回(でも7月展望でもいいけど)の会見で質問して下さいよろしくお願いいたします(平伏)。

『もっとも、このことは、人々が実際に物価上昇を経験すれば、物価上昇が徐々に人々の考え方の前提に組み込まれていくことも意味しています。』

ということなのですが、これもまた怪しくて、現実問題として2013年から14年(暦年)に関しては消費増税駆け込み需要を狙って価格設定行動が強気化したり、円安やら何やらのコストプッシュ要因で物価指数自体は上がったりしたのですが、コストプッシュで上がった物価はその後どうなったかと言いますと、という話。

つまり物価云々じゃなくて問題なのはそれこそ日銀様が今回の展望レポートで図々しく復活させた所得から支出ヘの循環メカニズムなのですけれども、賃金が上がりにくい状況が続いているのがもうその時点でダメじゃんねという感じですな、ナムナム。

『また、点検でも確認されたように、これまで、大規模な金融緩和は、金融環境を改善させ、需給ギャップのプラス幅拡大とプラスの物価上昇率の定着という効果を発揮してきています。』

これ、点検会合のレポートみたいなのが出てやがるから後でネタにしますが、本当にそういう効果を発揮しているんだったら大規模な金融緩和で0%台後半(コロナ云々を置くと)まで上がったんだったら、素朴に言って緩和を今の3倍の規模にすれば2%達成するんじゃないの???って話になるはずなんだが、点検の分析ってレビューはしているけど別に再現性のあるような分析じゃないただの不毛な言い訳分析でしかありません(個人の意見です)のでして、それが何より証拠には緩和を3倍にしようという話が出てこないんですからね、というか片岡さん点検結果を逆手にとって緩和規模をこれだけにしろって提案したら屁理屈合戦で勝負に持ち込めるチャンスだと思うんだけどなあ。

『実際、新型コロナウイルス感染症の影響を受けるもとでも、物価上昇率は、一時的な下押し要因を除けば小幅のプラスで推移しており、経済の落ち込みに比べれば底堅い動きが続いています。』

それは経済が伸びている時に物価が上がらなかった事の単なる裏返しなのでは無いでしょうか(白目)。

『先行き、経済の改善が続くもとで、徐々に物価上昇率が高まっていくと考えられます。日本銀行としては、3 月の点検を踏まえた政策対応によって、持続性と機動性が増した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」により、強力な金融緩和を粘り強く続けるもとで、見通し期間を超えることにはなりますが、2%の「物価安定の目標」は達成できると考えています。』

>持続性と機動性が増した

ここは笑いどころですかね????


さて、2%未達の話は先の方でも蒸し返されますので先にそっちの質疑から参ります、会見要旨の8ページどすえ。

『(問) 2%の物価目標についてお聞きしたいのですが、相当長く、総裁が就任してから 8 年達成できなくて、本日の展望レポートでも 2%に届かないということで、長期化が予想されます。そうした中で 3 月、点検して、副作用に対する対策も打ったということなのですが、2023 年度以降となると、総裁の任期が終わった後達成するということになるのですけれども、3 月に手当てした副作用対策で、もう暫く今の金融政策を粘り強くやることで、2%達成できるのでしょうか。その辺りのお考えをお願い致します。』

出口がさっぱり見えない、という点ではコロナ感染症対応のロールモデルが既にここにあったんですな(吐血)。

『(答) 金融政策は、その時々の経済・物価動向に応じて金融政策決定会合で決定するわけですので、2%の「物価安定の目標」の達成のために必要となれば、先ほど申し上げたように、躊躇なく追加的な金融緩和を講じます。』

だったら「点検」会合で何故そのような必要な措置が研究されていないのでしょうか??????????

『そうしたことができるような機動性、持続性を高める点検も行いました。』

そもそも今の政策を強化すれば達成が出来るのであればやれば良いのだし、ただ単に緩和を継続しているうちに外部環境が改善するのを待つというだけの話なのであれば、変な宣伝とか要らないんで地道に無理のない金融緩和を継続すれば良いだけの話で、複雑怪奇なオペレーションの為に人を貼り付けて結局のところゼロだのマイナスだのという金利の押し付け合いだけやってるのって社会的に壮大な不毛仕事で、これを簡素化して張る人員をDXとか生産性向上につながる業務に皆で回した方がなんぼ金融の将来に貢献するかと小一時間問い詰めたい。

『そのうえで、現在の政策委員見通しの中央値では、確かに 2023 年度でもまだ物価上昇率が 2%に達しないことは事実ですので、この見通しの通りであれば、2%の「物価安定の目標」の達成は、2023 年度ではなくて 2024 年度以降になると思います。』

2024年度、と言い切れないのもいと悲し。

『私の任期は 2023 年の 4 月と思いますが、任期内かどうかということではなく、いずれにせよ、最大限の努力を払っていきますし、その結果として達成が 2024年度以降になったとしても、それは致し方ないというように思います。』

まあそう言っちまったんでしょうからしょうがないのですが、これ会見要旨の書き起こしをした日銀のスタッフの方も(ノ∀`)アチャーって感じで書いたんじゃないかと勝手に推測して心中いかばかりの物かとゆー所ですが、「致し方ない」って何なのその物言いはとしか申し上げようがない(憤怒)。


さらに2%の質問であるが13ページまで飛ぶ。

『(問) 2%の目標についてなのですけれども、時間はかかるけれども、物価目標は達成できると考えているとおっしゃっているのですが、既に 8 年、残りの任期を合わせて 10 年で政策を総動員しても困難であるということが分かってきたという中で、今後、更に、コロナの下押し圧力があったり、政策の幅も今までよりも限られてくるであろう中で、今までよりももしかしたら困難ではないかという気もするのですけれども、それでも達成できるというふうにおっしゃる、その根拠がどこにあるのかということの説明をお願いします。(後半割愛)』

無いのを分かっていて質問するスタイルですね!!!!!

『(答) 2%の「物価安定の目標」についてですが、これまでの金融緩和政策がどのような効果を持ってきたかは、点検でかなり定量的に詳しく分析しており、一定の効果を持ってきたことははっきりしていますので、金融緩和策を粘り強く続けることによって、2%の「物価安定の目標」を達成できると考えています。』

根拠レス・・・・・・・・

『2%に達していないことだけでいえば、リーマンショック後、10 年程度経っても、主要国の多くで 2%に達していなかったわけですが、だからといって、2%の目標をやめようとか、金融政策の効果がないという議論は全くありません。(後半割愛)』

海外の中銀は最近「2%になるけれどもこれは持続的な2%とは違うとみられるので金融緩和の縮小は行いません」と寧ろインフレ期待の期待形成にマイナスになりそうな事をせっせと言って緩和縮小の火消しをしていると思いますので、この「隣のパウエル君がニンテンドースイッチ持ってるのだから僕にも買ってよ」スキームが通用しなくなる日が来る(と米国の金利も上がってくれるので更に結構)のを心待ちにしておりまして、その時に何という曳かれ者の小唄が出てくるのかを楽しみにしておりますので米国物価オーバーシュートバッチコーイって感じですな。

ああそれから2%を下げれば?って質問があったんですが、それは聞くだけ無駄な質問な上に、「批判する中に2%を下げるという論外な議論をするアホウがいる」という感じで質問者の知能を疑うような言い方をされるだけなのでして、そうではなくて「現実に2%まで相当の時間が掛かる見通しなのを踏まえると、未達の期間が長くなって日銀の信認を毀損するリスクを考え、2%目標は短期目標ではないということを明確にすべき」という話しから持って行かないと、また今後の講演とかで「2%を下げろというような方もいますが」と話のマクラにされるだけだから、もうちょっと質問工夫して頂きたいですな。



・2%ついでに演説キタコレ

めんどいしつまんないし他の中銀のQA動画見てる方が有意義だから黒ちゃんか意見の質疑応答ライブ(も録画も)全然見てないから良く分からんのですが、これ字面だけ見ると話は長いが別に演説じゃないじゃん(ポイントはこれです、1、2、3みたいな言い方をすればよかったんだと思う)と思うのですが、編集時に読みやすくするために文章としてスッキリさせている可能性もありますな。毎度おなじみのA新聞のHさんでしょ????

『(問) 2%目標についてお伺いしたいと思います。今日、たくさんの記者の方から既に 2%目標の質問が出ていますが、ここで重ねて質問するのは、総裁が2%を達成できなかった理由として挙げられている根拠というか理由が、あまり説得力がないと思うからです。』

これがポイント1ですわな。「今まで行ってなかったのに何で行くんですか」ですよね。

『例えば、原油価格の下落とか、携帯料金の値下げというのは、2、3 年の間にそれが理由として挙げられるのだったらともかく、10 年間達成できない理由にはならないと思うのです。10 年間あれば、その間に携帯料金の値上げもあれば、値下げもあれば、原油価格の下落もある。パンデミックの 1 回は起きる。10 年あれば色々なことがあって、それを前提にした政策決定だったはずです。全くそれが 10 年間できない理由にはなっていないのと、』

ここをシンプルにするなら「今の政策を続ければ行く、と言っても時間が掛かるのであればその間に景気サイクルも動くでしょうし、コロナのような不測の事態も起きますが大丈夫なんでしょうか」って事ですな。ポイント1のオマケですな。

『もう一つは粘着的で適合的な期待形成があるということも理由に挙げられていますが、これも、そんなことはとっくの昔から皆分かっていたよ、という話だと思うのです。それは、黒田総裁が着任される前の白川日銀時代から既にそういうものはあったわけです。』

『それを突破して、黒田バズーカで風穴を開けるというのが異次元緩和だったはずなのに、今更それを粘着的で適合的な期待形成を理由に挙げられても、あまり説得力がないというふうに思います。』

これがポイント2で、この回答だけはある。答えになってないけど。

『そもそも、2 年で 2%を達成するという目標そのものが、無理があったのではないかということと、』

ポイント3ですがまあ盛り込み過ぎだなあ。

『2013 年の 4 月 4 日の記者会見で、総裁は、質的・量的緩和でマネタリーベースを目標にするのはなぜかといえば、分かりやすいからだとおっしゃったのですが、結果的には今、イールドカーブ・コントロールやマイナス金利も含めて、これだけ複雑で難解で、とても普通の国民では理解できないような政策枠組みになっているわけです。』

ポイント4でして、これは聞かれると結構苦しい筈で、案の定回答していないのですが、こっちをもう少し敷衍した質問をして頂きたいですね。

『最初の 2013 年 4 月 4 日の記者会見のときのお考えに立ち戻って、改めてそこに無理があったのではないか、見立てに間違いがあったのではないか、振り返ってどうお考えでしょうか。』

これは蛇足。結局の所蛇足なのが「例えば原油価格の〜」と最後のこの部分で、ポイント4点(3番目は1に応えると必然的に結論が出ると思うのでそれも削れば良いと思うけど)ですわな。

まあ何ですね、総裁記者会見ってサラトイ(更問)ができないのと、記者のレベルがアレなのでどうしても聞きたいことを全部盛り込みたくなってしまうんだろうなあと思う訳でして、会見の記者が「スティーブのフォローアップだが」とか言いながら事実上の更問をして突っ込んでいく、というような姿にはまあならんのでしょうな、とちょっと悲しくなりましたこれ見てて。

なお回答ですが、実際はもっとイヤミタラタラ最初に言ったんでしたっけ黒ちゃん。

『(答) 演説でなくてご質問だけをお受けしますが、点検の中でもかなり明確に申し上げているように、やはりこの粘着的な適合的期待形成というのは、かなり明確になったということは事実です。これが根っこにあって、様々な一時的な要因が起こったときに、実際の物価上昇率が下落して、それが粘着的な適合的な期待形成と相俟って、一時 1.5%程度の物価上昇率、予想物価上昇率になったわけですが、その後低下して、今現在に至っているということでありまして、ご指摘のことは全く当たらないというように考えています。』

おいこら、何が「ご指摘のことは全く当たらないというように考えています」だのお前はガースーかという感じですが、質問の方では、

「これも、そんなことはとっくの昔から皆分かっていたよ、という話だと思うのです。それは、黒田総裁が着任される前の白川日銀時代から既にそういうものはあったわけです。それを突破して、黒田バズーカで風穴を開けるというのが異次元緩和だったはずなのに、今更それを粘着的で適合的な期待形成を理由に挙げられても、あまり説得力がないというふうに思います。」(再掲)

って質問なんだから思いっきりご指摘あたってるじゃねえかよ・・・・・・・・・・・・・・・



・経済見通しの盛大なる引き上げについての質疑があんまり無いのが残念なのですが

いやあのですね、今回の会合って政策は下馬評通りに地蔵で、2%行かないなんて今に始まった話じゃないし言い訳(ただの屁理屈)だけは死ぬほど用意されているので、寧ろ聞きたいのは「なんでこのコロナ再拡大ど真ん中のタイミングで経済見通しを盛大に引き上げたのか」という点なんですよね。

展望レポートネタで(って3日に更新したのは下に置いてますので超ダンダラ(いつもの3日分くらいの分量になってしまうま)になりますがご覧くらはいませ)申し上げた通り、そらまあ海外とかもそうだしIMFも直近のWEOで見通し上げていますし、米国の状況を見れば時間が多少掛かったとしてもワクチン接種がコンプリートすればヒャッハーV字回復待ったなし、ということで上方修正をしたくなる気持ちはわからんでもないのですが、別に先を急ぐわけでもない(どうせ物価見通しは上がっていない)のですから、なぜ3か月待てないのか、というのが不思議おぶ不思議なんですよね。

『(問) 2022 年度のGDPの成長率予測、随分上方修正されていますが、──2021 年度は 1 月対比ではそれほど修正されていません──この割と強めな2022 年度のGDPの予測の背景について伺いたいと思います。(後半割愛)』

なおこの質問だけだったかなピュアに成長率見通しの方の話をしてくれたの(リスク要因とかの話はあった)。

『(答) 成長見通しは 2021 年度、2022 年度と上方修正しており、特に 2022 年度の成長見通しは、前回の見通しに比べますと+0.6%ポイント上方修正ということで、かなり上にいっているわけですが、』

ここまではわかる。

『それでも+2.4%の成長ですので、非常に強い見通しをしたというよりも、かなり自然な形でこのようになっていくとみていると思います。』

ちょwwwおまwwwwチミたちが展望レポートで示している日本の潜在成長率と比較して見ろや。

『冒頭申し上げたように、世界経済の回復の傾向がかなり明確になってきて、世界貿易、あるいは世界生産は新型コロナウイルス感染症前の水準に達しているわけですが、そうしたもとで、わが国の輸出、生産は増加を続け、企業収益も改善し、設備投資も底堅い状況が続いています。このため、2021 年度は 2020 年度のマイナスからの回復ということもあって+4%の成長になっており、2022 年度は+2.4%になっています。いわば 2020年度に落ち込んだ分を 2021 年度に取り返して、そして更に+2.4%の成長と見込んでいます。それは、今述べたような世界経済の回復状況、あるいはわが国の生産、企業の設備投資等の動向を踏まえて見通したものと考えています。(後半割愛)』

これ更問ができるんだったら「外需がメインドライバーとの事ですが、所得から支出への前向きの循環メカニズム、という記述は内需主導の回復あるいは拡大を連想させますが、その点についてはどういう認識なんでしょうか」という所ですな。


・なんかまた変な説明してやがる(輪番に関して)

これ質問した方としては望外の当たりだったかもですね。前半の方の質問ですが、

『(問)(前半割愛)また、長期金利について伺いたいのですが、前回の会合で変動幅を明確化しましたが、その後 1 か月余りが経過して、総裁は長期金利の変動や市場機能の確保の効果について、どのように評価されているのでしょうか。市場では、変動がその後あまり大きくないということで、日銀が更に国債の買入れオペを減額するのではないかという見方もあるようですが、そういう措置の必要性について、総裁はどのようにお考えでしょうか。』

これまあ黒ちゃん質問の意図を「緩和縮小」と勘違いして回答しているんでしょうな、とは思いますが、思いっきりヘッドラインに乗ってしまったので(ノ∀`)アチャーって感じの回答です。

『(答) 次に、長期金利の変動幅の明確化ですが、これは 3 月の金融政策決定会合で、市場機能の維持と金利コントロールの適切なバランスを取る観点から、長期金利の変動幅について上下に±0.25%程度ということを明確化したわけです。こうした観点から、国債買入れオペの実務的な対応として、事前に示す買入れ予定額について、レンジから特定の金額に変更するとともに、長期金利が変動幅の上限または下限を超える惧れがある場合以外は、買入れ額を調整しないことに変更したわけです。』

え???????????そんな決定してないでしょ???????????????

『こうしたもとで、長期金利については、経済・物価情勢等に応じて、この明確化された範囲内で変動することを想定しています。もっとも、日本銀行が意図的に長期金利を変動させるということではなく、経済・物価情勢に応じて、この明確化された範囲内で変動することを想定しているということです。』

まあただの勘違いだと思うのですが、というかこれこそ誰か更問しろよという感じで、だったら何で3月末に公表された4月の買入を見たら3月よりも買入が減っていたんでしょうか?って質問しろよと思いましたけど、これ黒ちゃんが何か質問の意図を思いっきり勘違いしているんじゃなかったら、何のためにオペ紙毎月出してるんだよの世界でありまして、そこは市場局にお任せの筈なのにちょっと不用意にも程があるという感じですな。


なお、それのせいかどうかは知らんけど
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210428c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の月間予定(2021年5月)
2021年4月28日
日本銀行金融市場局

ちゃんの方は前月比カワランチ会長になっておりました。これ黒ちゃんがこう言ってしまった手前6月の輪番もいじりにくくなってしまいましたが、建付け上はここの部分は市場局が市場動向見ながら変化させることもある、という話の筈なので動かしても無問題だとは思いますが、黒ちゃんが食言したことになってしまうのでどうするんでしょ????

ということでネタはまだ積みあがっているんですが本日はこれで勘弁(大汗)。





2021/05/03

お題「展望レポート基本的見解本文の逐語チェックシリーズだが見通しが強いの強いの(ダラダラ長いですサーセン)」

大型連休中ですが如何お過ごしでしょうか。ちょっと何ぼ何でもネタが昨日や一昨日の中央高速下り元八王子バス停付近並みにに渋滞しておりますので、本日はだんだらシリーズで展望レポート基本的見解本文の主に見通し部分につきまして前回展望あるいは3月声明文との比較を成敗してまいります。だんだらシリーズなのでまあ無駄に長いから休日にやるのに最適ネタではある。

〇という訳で展望レポート基本的見解の続きです

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2104a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k210319a.pdf(3月声明文)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2101a.pdf(前回1月)

MPMレビュー雑談の時に現状認識まで成敗したので『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し』から参ります。まずはメインシナリオの『(1)経済の中心的な見通し』から。

・鏡で示されている通り現状認識が強い上に先行き見通しもトーンが上がる

最初の先行き総括判断の最初の部分は既にネタにした鏡の1ポツと同じなので再掲になります。

『先行きのわが国経済を展望すると、当面の経済活動の水準は、対面型サービス部門を中心に、新型コロナウイルス感染症の拡大前に比べて低めで推移するものの、回復していくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の回復や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、改善基調を辿るとみられる。』(3月声明文)
『先行きのわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の回復や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、改善基調を辿るとみられる。』(前回1月)

再掲ではありますが、3月までが「改善基調」だったのがいきなり今回「回復」という文言に変更になっておりまして何と判断が引き上げ。これ3月時点で引き上げているんだったらまだ話は分かるのですが、3月ってその前までが緊急事態宣言でMPMの時が全面解除とかやってワクチンもという時期、4月は変異型の拡大も含めた再拡大からの緊急事態宣言がまさに発出された時期、ということで、まさかとは思いますが日銀ちゃんは先行きの見通しを出すときに直近での情勢変化について何も考慮に入れないでバックワードルッキングで経済見通しを出しているんじゃなかろうか、と言いたくなるような面は多々ある。

いやまあこれ日銀の為に言い訳をしておくと、目先に関しては確かにそうかも知れんけど、まあゆうて感染症自体は再拡大とかしても何とかなるぜよという話で、確かに再拡大するから足もとでの停滞期間が長引くかも知れないけど、海外の状況を勘案すればワクチン接種が広がれば経済の再開からの拡大への確信度が高まっており、なおかつテクニカルにここもポイントになるのですが、今回から見通し期間が1年長くなって2023年度という何ぼ何でもアフターコロナのニューワールドになっているだろう、という時期まで含めて考えたら「回復」にステージを上げても良かっぺな、という理屈はそれはそれで理解できないわけでもない。

しかしですな、別にその判断を今回急いで出す必要あったのかね、というのはありまして、今回って中心の成長率数字が22年度にどどーんと上がっているけど、リスク要因のコロナ再拡大でジャパニーズクオリティでやらかしの期間長期化するかも知れない(というかその雰囲気更にアレ)という中で、何度も申し上げておりますように、7月会合まで「様子見」をする余地はあったんじゃないですかねえと思いますし、日銀の天災的な間の悪さというフラグ建築技術からすると、コロナ感染症の足元再拡大をキニシナイ!って感じの見通しを出すのは死亡フラグにしか見えないからマジで頼むから大人しくしてろ、と思うのですが、何か先週末には屁理屈の上塗りみたいな点検の屁理屈理論をどう屁理屈づけているのか、という屁理屈ペーパーを2本も打ち込んできておりまして、どうもアタクシが日銀様に「お前のような悲観論者はGoToヘル」とか罵倒されているように思えますな(自意識過剰)。

まあそれは兎も角としてコンポーネントの説明。

『すなわち、感染症の影響が徐々に和らぎ、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果が経済を支えるなかで、所得から支出への前向きの循環メカニズムも働いていくと考えられる。その後、感染症の影響が収束していけば、所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まるもとで、わが国経済はさらに成長を続けると予想される。』(今回)

『もっとも、感染症への警戒感が続くなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。特に、目先は、昨年秋以降の感染症再拡大の影響から、対面型サービス消費における下押し圧力は続くとみられる。その後、世界的に感染症の影響が収束していけば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、わが国経済はさらに改善を続けると予想される。』(3月声明文)

『もっとも、感染症への警戒感が続くなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。特に、当面は、感染症の再拡大の影響から、対面型サービス消費を中心に下押し圧力の強い状態が続くとみられる。その後、世界的に感染症の影響が収束していけば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、わが国経済はさらに改善を続けると予想される。』(前回1月)

こちらも3月声明文で引き上げを一切しないで今回盛大に引き上げているというのが分かると思います。でまあ凄いのは2点あって・・・・・・・

一つ目として前回まであった「感染症再拡大の影響」云々という文言をバッサリと削除してまして、足もとで起きている感染症再拡大の影響なんぞは一時的ですがなガッハッハ、と豪快にぶっ放していることであります。この点は先ほど来申し上げておりますように、3月の緊急事態宣言全面解除の時に文言変更しているのならまだ話は分かるのですが、足元でまんぼうからの緊急事態宣言発出という事態になっている中で「再拡大の影響」についての文言を総括部分でバッサリと削除するのは、悪性の能天気ウィルスにでもやられて脳内がお花畑になっているのか、さもなければまんぼうの前に作った原稿がそのままどスルーして通ってしまう、というような状況、つまり中央の作戦参謀が現地の状況変化を何も見ないで、作戦策定当時の状況を前提にした作戦をそのまま現地軍に押し付けてくる、というような大日本帝国末期症状のような状況が日銀の中で起きているのか、のいずれかと断じざるを得ないと思うので、今回のは能天気とかそういうのだけではない、思考の硬直化みたいな良からぬものを感じちゃうんですよね。杞憂おぶ杞憂かも知れないけどさ。


でまあ二つ目がこの点も多くの方がご指摘だと思いますが「所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まる」という話。そもそも論として前向きの循環メカニズムって相当強い言葉なんですがそんなに日本経済強いのかよ?????というのもあるのですが、3月声明文(でも1月でも同じですが)の書きっぷりと比較すると分かりますように、3月までの経済の先行き見通しについては、「海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、わが国経済はさらに改善を続ける」という言い方になっていて、海外の成長がドライバーになって、そこから改善(回復)していく、って話になっているのですが、今回は「所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まるもとで、わが国経済はさらに成長を続ける」になっておりまして、「外需主導の回復」という図から、「内需による自律的回復」になっている訳でして、回復のメカニズム自体にも変化が生じている訳でして、何ちゅう強い見通しになるんじゃ、ということでありますな。

これまたさっきと同じ理屈で見通し期間が1年延長になっている中で、23年度まで外需主導の回復、というのはサステイナブルじゃない、というような理屈を言いたいのは分からんでもないのですが、だからと言って「自律的な成長メカニズムが働く」ってどんだけ日本経済をレジリアントにみているんだよというお話でありまして、このメカニズムの部分についてはコロナ云々よりももっと長い期間様子を見てからじゃないとこんな自信満々な物出せないのではなかろうか、とまあ下級国民の不肖このアタクシなどは思ってしまうのですが、何でこんなにフライングで内需主導の自律的回復みたいな絵が描けるのかそのセンスがさっぱり分からん所ではございまする。



・メインシナリオの想定にはワクチン接種の進捗などで感染症の影響が云々とあるが判断時期尚早じゃろ

次のパラグラフはメインシナリオが想定している前提。声明文は見通し期間がそもそも展望と違うので、3月声明文で示している「リスク要因」というのは必ずしも1対1対応にならんので引用はしますが、比較の方は1月展望と比較します。

『この中心的な見通しでは、感染対策と経済活動の両立が図られるもとで、感染症の影響は、ワクチン接種の進捗などにより、先行き徐々に和らぎ、見通し期間の中盤に概ね収束していくことを想定している。さらに、わが国において、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮される、と考えている』(今回)

『リスク要因としては、新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさといった点について、きわめて不確実性が大きい。さらに、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要である。』(3月声明文)

『この中心的な見通しでは、感染対策と経済活動の両立が図られるもとで、感染症の影響は、先行き徐々に和らぎ、見通し期間の終盤にかけて概ね収束していくことを想定している。さらに、わが国において、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮される、と考えている。』(前回1月)

1月は前回の緊急事態宣言中なのでまあそこからある程度上方修正されるのは分かるのですけれども、今回は「感染対策と経済活動の両立が図られるもとで、感染症の影響は、ワクチン接種の進捗などにより、先行き徐々に和らぎ」って大きく出ておりまして、感染対策と経済活動の両立して良いんだったら何で大型百貨店が1階と地階だけしか営業していないんだよと小一時間問い詰めたいのですが、とにかくここの言ってること、既に足もとで話がおかしくなってねえかって指摘されませんかねえって所でございまして、何でこの前提を今回堂々と置いちゃったの7月会合まで待てば良いのにという思いは拭えませんですわな。

中期的な成長期待とか金融システムとかは文言一緒ですが、いやまあそら確かにワクチンが到着したりしておるという状況変化は分かるのですが、現実問題として感染症再拡大しかも変異型ウィルス付、という状況が足元で起きているのに、今回の先行き見通し判断の前提でコロナ感染症の悪影響に関する前提を強気化させてしまうのはさすがにやり過ぎじゃないのかね、と思います。3月声明文でも新型コロナの影響について「きわめて不確実性が大きい」って言っててまんぼうからの緊急事態宣言だというのに・・・・・・・・

あと、コロナの収束時期の表現が変化しています(見通し時期の終盤に掛けて→中盤に)が、これは基本的には見通し期間が延びたことが影響していて、もしかしたらワクチン接種が海外で進んだことも反映しているかなとは思います。


・個別需要項目の見通しもジャンジャンと上がっています

この次が個別需要項目の話。これは3月声明文には記載の無い部分なので1月展望との比較になります。1月対比だから強くなるのはまあ分かるんですけど・・・・・・・・・

『こうしたもとでの見通しを、やや詳しくみると、まず、海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつも、先進国を中心とした積極的なマクロ経済政策にも支えられて、成長を続けるとみられる。』(今回)
『こうしたもとでの見通しを、やや詳しくみると、まず、先行きの海外経済は、積極的なマクロ経済政策にも支えられて、改善を続けるが、感染症への警戒感が続くなかでは、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。』(前回1月)

海外経済の判断が上がるのは分かる。

『こうしたもとで、わが国の輸出は、財については、当面、自動車関連を中心に増勢は鈍化するものの、世界的な設備投資の回復やデジタル関連需要の拡大に支えられて、しっかりとした増加を続けるとみられる。サービス輸出であるインバウンド消費については、入国・渡航制限が続く間は、落ち込んだ状態が続くものの、その後は、回復していくと予想される。』(今回)

『わが国の輸出は、財については、ペントアップ需要の一巡から自動車関連を中心に増勢は鈍化するものの、世界的な生産活動の回復などを背景に、資本財や情報関連なども含め、幅広く増加していくとみられる。サービス輸出であるインバウンド消費については、わが国での入国制限や海外での渡航制限がかかり続ける間、落ち込んだ状態が続くとみられるが、その後は、これらの制限が徐々に緩和されていくのに伴い、回復していくと予想される。』(前回1月)

財の輸出の判断引き上げですがこれもまあ順当。

『設備投資は、対面型サービス部門の建設投資の弱さは続くものの、企業収益が改善するもとで、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、機械投資やデジタル関連投資を中心に、増加傾向が明確になっていくと考えられる。』(今回)

『設備投資は、対面型サービス業の建設投資の減少は続くものの、輸出や生産の増加を受けた製造業の機械投資を中心に、持ち直していくとみられる。その後は、緩和的な金融環境や政府の経済対策、企業収益の改善に支えられて、増加していくと考えられる。』(前回1月)

設備投資も引き上げ、「増加傾向が明確になっていく」とか強くなっています。まあ短観強かったからね。


『個人消費は、当面、感染症の影響から、対面型サービスを中心に低めの水準で足踏みした状態が続くが、その後は、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、政府の経済対策などにも支えられて、再び持ち直していくとみられる。その先、感染症の影響が収束していけば、雇用者所得が改善するもとで、対面型サービス消費を含め、個人消費の増加基調が明確になっていくと考えられる。』(今回)

『個人消費は、政府の経済対策などにも支えられて、基調としては持ち直しを続けるとみられるが、当面は、感染症の再拡大の影響などから、対面型サービス消費を中心に下押し圧力が強い状態が続くと予想される。その後は、感染症の影響が徐々に和らぐもとで、雇用者所得の改善にも支えられて、増加基調が次第に明確になっていくと考えられる。』(前回1月)

個人消費のこの部分だか何故か足元の感染症再拡大を受けて「当面は足踏み」に下方修正されておりますが、ここもよくよく見ますと主語述語の構成が、

今回4月:個人消費は〜再び持ち直していくとみられる。
前回1月:個人消費は〜基調としては持ち直しを続けるとみられるが、当面は、〜下押し圧力が強い状態が続くと予想される。

という構成になっていて、何のことはない結局強くなっているんですよね〜。


『雇用者所得については、企業収益の改善を受けて下げ止まったあと、内外需要の回復にラグを伴って、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

『雇用・所得環境については、政府の経済対策や緩和的な金融環境などが雇用を下支えするものの、低水準の企業収益や労働需給の緩和を背景に、当面、下押し圧力がかかるとみられる。その後は、内外需要の回復に伴い、雇用・所得環境も改善基調に転じていくと考えている。』(前回1月)

何気に雇用所得の所の表現がシンプル化してこれまた盛大に強くなっている、というか前回の1月の時点では先行き見通しに何重にも留保が入っていたのがバッサリ削除されていて、いやそうなのか?????感が無茶苦茶するのですがそういうことらしい。(じっと給与明細を見る)


『この間、公共投資は、災害復旧・復興関連工事や国土強靱化関連工事などの進捗を反映して着実に増加したあと、高めの水準で推移すると見込まれる。政府消費は、医療提供体制や検査・ワクチン接種体制の整備などを反映して、本年度にはっきりと増加するが、その後は、水準を切り下げると予想される。』(今回)

『政府消費は、追加経済対策における医療提供体制や検査・ワクチン接種体制の整備などを反映して、来年度にかけてはっきりとした増加を続けると見込まれる。』(前回1月)

ここは概ね同じかな。

・・・・・・・ということで全体的に各需要項目ともに判断が概ね引き上げになっております。次は物価見通しに参ります。


・物価見通しでも色々と謎なのだが企業の値下げ行動に関する懸念が本文に移動しているのは何ぞ??

『消費者物価の前年比は、当面、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響などを受けて、小幅のマイナスで推移するとみられる2。もっとも、携帯電話通信料の引き下げは一時的な下押し要因であり、これを除けば、消費者物価の前年比は、底堅く推移すると考えられる。感染症のもとでの需要の弱さが影響するものの、需要減少の一因が感染症への警戒感であることや、感染対策に伴う供給制約やコスト増などから、企業が値下げにより需要喚起を図る行動は、今後も広範化しないと予想される。また、昨年秋以降の原油価格の持ち直しを背景に、エネルギー価格の前年比はプラスに転じるとみられる。そうしたもとで、中長期的な予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移すると考えられる。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、感染症や既往の原油価格下落の影響などを受けて、マイナスで推移するとみられる。その後、経済の改善に伴い物価への下押し圧力は次第に減衰していくことや、原油価格下落の影響などが剥落していくことから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(3月声明文)

『消費者物価の前年比は、当面、感染症や既往の原油価格下落、Go Toトラベル事業の影響などを受けて、マイナスで推移するとみられる2。感染症の影響から、経済活動の水準が低い状態が続くもとで、景気感応的な財やサービスの価格が下押しされるほか、既往の原油価格下落も、エネルギー価格を通じて消費者物価を押し下げると考えられる。そうしたもとで、中長期的な予想物価上昇率も、引き続き弱含むと考えられる。』(前回1月)

展望レポートの場合、物価見通しが「当面」と「その後」の2本立てになっていて、声明文と体裁が違いますのでそこは勘案して頂くとしまして、前回1月の時点では「目先マイナス推移でシャーナイ」という話をしているのですが、今回4月の場合、足もとの見通しに色々とゴテゴテと装飾品が増えておりまして、読みにくい事鬼の如しという感じでございますけど、よく見ますと「消費者物価の前年比は、底堅く推移すると考えられる」となっていまして、携帯料金要因はあるけど、基調は強くなっているという見立てになっています。

おまけに「中長期的な予想物価上昇率」が今回弱含みから横ばい圏内に判断引き上げになっておりまして、これまたホンマカイナという感じですが、3月会合の時点で「追加緩和がやりやすいように」と銘打って政策のヘナチョコ見直しを行ったんですが、あの時から何で今回は盛大に見通し引き上げに転じたんですかねえという感じでして、じゃああの見直しは何だったのかという感もぬぐえません。

でもってさらに今回????だったのは「感染症のもとでの需要の弱さが影響するものの、需要減少の一因が感染症への警戒感であることや、感染対策に伴う供給制約やコスト増などから、企業が値下げにより需要喚起を図る行動は、今後も広範化しないと予想される。」という文言なのですが、これって従来は「物価固有のリスク要因」の中で「感染症の影響が、経済活動の需要・供給両面に及ぶもとでの、企業の価格設定行動の不確実性」として説明していた話だったのですが、今回いきなり本文でこのような記述になっています。

ということは、企業の価格設定行動がそんなに弱気化しない、という点について自信を深めた、ということのようですが、ちょっとこの判断も時期尚早じゃないのと思いました。

『その後、経済の改善が続くことや、携帯電話通信料の引き下げの影響が剥落することなどから、消費者物価の前年比は、プラスに転じ、徐々に上昇率を高めていくと予想される。中長期的な予想物価上昇率も、再び高まっていくと考えられる。』(今回)

『その後、経済の改善に伴い、物価への下押し圧力は次第に減衰していくと予想される。加えて、原油価格下落の影響なども剥落していくとみられる。そうしたもとで、消費者物価の前年比は、プラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。中長期的な予想物価上昇率も、再び高まっていくと考えられる。』(前回1月)

「その後」は経済の方が上方修正されていますね。


・金融環境の見立て文言もチマチマと上方修正されているんですよね〜

『日本銀行は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を推進している。加えて、昨年3月以降は、感染症の影響への対応として、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に向けて、各種の強力な金融緩和措置を実施している3。政府も企業等の資金繰りを支援するための各種の施策を講じている。民間金融機関は積極的に金融仲介機能を果たしている。』(今回)

『日本銀行は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を推進している。加えて、昨年3月以降は、感染症への対応として、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に向けて、各種の強力な金融緩和措置を実施している3。また、政府は、信用保証協会による保証を利用した融資制度や資本性資金を供給する制度など、企業等の資金繰りを支援するための各種の施策を講じている。こうしたなか、民間金融機関は積極的に金融仲介機能を果たしている。』(前回1月)

1月は「感染症への対応」だったのに今回は「感染症の影響への対応」となっていて、ワンクッション文言が入っているのはつまりは感染症対応云々に関しても少し一歩引いた表現をしました、という話ですが、政府の方の施策に関する説明もあっさり味になったのは何でなんですかね。


『そうしたもとで、企業の資金繰りには厳しさがみられるが、銀行借入やCP・社債発行といった外部資金の調達環境は、緩和的な状態が維持されている。』(今回)
『わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りに厳しさがみられるなど、企業金融面で緩和度合いが低下した状態となっている。』(3月声明文)
『そうしたもとで、企業の資金繰りには厳しさがみられるが、銀行借入やCP・社債発行といった外部資金の調達環境は、緩和的な状態が維持されている。金融市場も、ひと頃の緊張は緩和している。』(前回1月)

金融環境に関する表現はイミフで、3月って「企業金融面での緩和度合いが低下した状態となっている」に変更になっていて、それが4月にまた元に戻っているんですが、これは何ぞ??????


『先行きも、日本銀行による強力な金融緩和の継続や政府の措置、民間金融機関の取り組みから、緩和的な金融環境が維持され、金融面から実体経済への下押し圧力が強まることは回避されると考えている4。』(今回)
『先行き、景気の改善ペースが緩やかなもとで、当面、企業等の資金繰りにはストレスがかかり続けるとみられるが、日本銀行・政府の措置や、民間金融機関の取り組みから、緩和的な金融環境が維持され、金融面から実体経済への下押し圧力が強まることは回避されると考えている4。』(前回1月)

今回は「今後も企業等の資金繰りにはストレスが掛かる」云々が削除されているということですな。一応3月会合以降のステルス(でもなくて堂々とだけど)CP社債ETFの買入ペースが落ちていることを正当化させるためにこういう表現変更になったのけ????よくわからん。


・経済のリスク要因でもコロナ感染症の不確実性に関しての表現を緩和するという謎の勝負をする日銀ェ・・・・・・・

では『3.経済・物価のリスク要因』に参ります。まずは『(1)経済のリスク要因 』ですの。

『第1に、新型コロナウイルス感染症による内外経済への影響である。』(今回)
『第1に、新型コロナウイルス感染症による内外経済への影響である。』(前回1月)

という項目は同じですが、

『感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響については、不確実性が大きい。』(今回)
『感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさについては、きわめて不確実性が大きい。』(前回1月)

ご覧の通り、感染症の悪影響リスクに関する表現が緩和されています。何でこのタイミングで勝負を
しないと行けないのかさっぱり分かりません。変な所で思い切りが良いのよね。

『中心的な見通しでは、感染症の影響は、ワクチンの普及などによって収束していくと想定しているが、
その普及のペースや効果には不確実性があり、その結果、経済活動への下押し圧力が強まるリスクがある。
また、国・地域ごとにワクチンの普及ペースが異なるもとで、グローバルな経済活動にどのような影響が
生じるかについても不確実性がある。一方で、感染症の影響への対応などの観点から実施される、
先進国を中心とした経済対策が、内外経済の回復ペースを想定以上に高める可能性もある。』(今回)

『世界的な感染症の流行がどのように展開していくかは、非常に不透明であり、感染症の拡大により経済活動
への下押し圧力が強まる可能性がある。この間、ワクチンの普及によって、感染症の影響が想定以上に早期に
収束する可能性はあるが、その普及のペースや効果には不確実性がある。』(前回1月)

前回はワクチンの普及で上手く行くかも知れないけどまあ今からそれを見に行くのはちょっと、という
感じでしたが、今回ってワクチンがワクワクして上方修正もあるでよ!!!というのが随所にちりばめ
られていまして、いや何ちゅうかその何でここでそんな勝負するのよ7月の展望レポートになれば
その辺もっと先見えて来るんだからそこまで何で待てないのよ、という毎度の悪態になるのでした。


ではその2ですが、

『第2に、企業や家計の中長期的な成長期待である。』(今回)
『第2に、企業や家計の中長期的な成長期待である。』(前回1月)

項目は同じでして内容も同じです。以下念のため比較引用します。

『感染症による経済への大きな下押しというショックによって、企業や家計の中長期的な成長期待が
低下する場合には、感染症の影響の収束後も企業や家計の支出意欲が高まりにくくなるリスクがある。
一方、今回の問題を契機に、感染予防のための情報通信技術の活用や新たな需要に対応した投資等が、
イノベーションの促進を含め、経済活動にプラスの影響を及ぼせば、中長期的な成長期待を高める
可能性もある。政府によるポストコロナに向けた経済構造の転換のための施策や緩和的な金
融環境は、こうした動きを後押しすると考えられる。』(今回)

『感染症による経済への大きな下押しというショックによって、企業や家計の中長期的な成長期待が
低下する場合には、感染症の影響の収束後も企業や家計の支出意欲が高まりにくくなるリスクがある。
一方、今回の問題を契機に、感染予防のための情報通信技術の活用や新たな需要に対応した投資等が、
イノベーションの促進を含め、経済活動にプラスの影響を及ぼせば、中長期的な成長期待を高める
可能性もある。政府によるポストコロナに向けた経済構造の転換のための施策や緩和的な金
融環境は、こうした動きを後押しすると考えられる。』(前回1月)

何ちゅうかホンマカイナ(上方修正の方)とは思いますがキニシナイ。その3は金融システムで
これも同じです。

『第3に、金融システムの状況である。 』(今回)
『第3に、金融システムの状況である。』(前回1月)

『感染症の影響は金融面にも及んでいるが、日本銀行や政府は、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持のために、積極的な対応を講じている。また、金融機関は資本・流動性の両面で相応に強いストレス耐性を備えている。こうしたもとで、金融システムは全体として安定性を維持しており、金融仲介機能は円滑に発揮されている5。ただし、感染症の影響が想定以上に大きくなった場合には、実体経済の悪化が金融システムの安定性に影響を及ぼし、それが実体経済へのさらなる下押し圧力として作用するリスクがある。現時点で、こうしたリスクは大きくないと判断しているが、先行きの動向を注視していく必要がある。』(今回)

『感染症の影響は金融面にも及んでいるが、日本銀行や政府は、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持のために、積極的な対応を講じている。また、金融機関は資本・流動性の両面で相応に強いストレス耐性を備えている。こうしたもとで、金融システムは全体として安定性を維持しており、金融仲介機能は円滑に発揮されている。ただし、感染症の影響が想定以上に大きくなった場合には、実体経済の悪化が金融システムの安定性に影響を及ぼし、それが実体経済へのさらなる下押し圧力として作用するリスクがある。現時点で、こうしたリスクは大きくないと判断しているが、先行きの動向を注視していく必要がある。』(前回1月)

ということで第1以外は棒読み感の強い話ですな。では物価のリスクですが、先ほど物価見通しの中で申し上げた企業の価格設定行動に関する部分が変更になっています。

『第1に、感染症の影響を受けるもとでの、企業の価格設定行動の不確実性である。』(今回)
『第1に、感染症の影響が、経済活動の需要・供給両面に及ぶもとでの、企業の価格設定行動の不確実性である。』(前回1月)

そもそもこの文言自体が変化していて、前回は感染症の影響が需要供給チャネルを通じて企業の価格設定行動に変化を与えるかもしれませんという警戒感が強く出る表現だったのが、今回はエライ勢いであっさりしてきておりますが、内容説明の部分に更にそれが良く表れています。

『中心的な見通しにおいては、前述のとおり、企業が値下げにより需要喚起を図る行動は、今後も広範化しないと考えているが、その点も含め、企業の価格設定行動には不確実性がある。』(今回)

『感染症の影響による需要の減少は、景気感応的な財やサービスの価格に下押し圧力を加えると考えられる。一方で、需要減少の一因が感染症への警戒感であることや、感染防止のための客数制限のような供給面からの制約や感染対策に伴うコストの増加も生じていることなどから、現時点では、企業が値下げにより需要喚起を図る行動は広範化していない。こうしたもとで、今後、企業がどのような価格設定行動を取るか、さらに、それがマクロ的に物価にどのような影響を及ぼすか、不確実性が大きい。』(前回1月)

どこからどう見ても警戒度が下がっておりますがな。エエノカソレデ???


『第2に、今後の為替相場、国際商品市況、輸入物価の動向およびその国内価格への影響は、上振れ・下振れ双方の要因となる。これらの点については、引き続き注意してみていく必要がある。』(今回)
『第2に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向およびその輸入物価や国内価格への波及の状況は、上振れ・下振れ双方の要因となる。これらの点については、引き続き注意してみていく必要がある。』(前回1月)

表現が何か微妙に違ってきているんですが、基本的に言ってることはあんまり変わっていないですかね。


・金融政策運営の文言ですがリスクバランスが上方修正されています

クッソ長いダンダラになって恐縮ですが(逐語比較するとどうしてもこうなる)金融政策運営に関しての部分です。『4.金融政策運営 』ですな。

まず第1の柱。

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、時間はかかるものの、先行き、「物価安定の目標」に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。当面は、感染症のもとでの需要の弱さが影響するほか、中長期的な予想物価上昇率は横ばい圏内で推移すると考えられる。その後、経済の改善が続くもとで、物価上昇圧力は次第に高まっていき、物価は徐々に上昇していくとみられる。また、中長期的な予想物価上昇率も、再び高まっていくと考えられる。』(今回)

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、時間はかかるものの、先行き、「物価安定の目標」に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。当面は、感染症の影響から、経済活動の水準が低い状態が続くもとで物価には下押し圧力がかかり、中長期的な予想物価上昇率も弱含むと考えられる。その後、経済の改善に伴い物価への下押し圧力は次第に減衰していき、物価は徐々に上昇していくとみられる。また、中長期的な予想物価上昇率も、再び高まっていくと考えられる。』(前回1月)

ここはメインシナリオなので既にネタにした通りで、感染症の下押し圧力云々の表現が「需要の弱さが影響」と表現を緩和しているのと、中長期的な予想物価上昇率の見通しが上方修正されています。


第2の柱。

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検する。先行きの経済・物価の見通しは、感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響によって変わり得るため、不透明感が強い。』(今回)

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検する。先行きの経済・物価の見通しは、感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさによって変わり得るため、不透明感がきわめて強い。』(前回1月)

不透明感が「きわめて強い」からただの「強い」に判断上方修正。これまでの部分と同じ話ですね。

『また、今回の見通しでは、感染症の影響は、先行き徐々に和らぎ、見通し期間の中盤に概ね収束していくと想定していることに加えて、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されると考えているが、これらの点には大きな不確実性がある。』(今回)

『また、今回の見通しでは、感染症の影響は、先行き徐々に和らぎ、見通し期間の終盤にかけて概ね収束していくと想定していることに加えて、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されると考えているが、これらの点には大きな不確実性がある。』(前回1月)

例の「終盤→中盤」が変化していますがこっちは何故か表現無変化。次がリスクバランスですが。

『リスクバランスは、経済の見通しについては、感染症の影響を中心に、当面は下振れリスクの方が大きいが、見通し期間の中盤以降は概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、下振れリスクの方が大きい。』(今回)
『リスクバランスは、経済・物価のいずれの見通しについても、感染症の影響を中心に、下振れリスクの方が大きい。』(前回1月)

経済見通しのリスクバランスが驚異の上方修正ですな。なぜ7月まで様子見をせんのじゃ。

・今回はFSRを踏まえたご報告が機構局から正式に入るのを反映させています

更に続く。

『金融面の不均衡について、現状をみると、経済規模との対比でみたマクロ的な与信量が過去のトレンドを大きく上回って拡大している。ただし、これは、感染症の影響による企業等の運転資金需要の高まりに金融機関が応えた結果であり、金融活動の過熱感を表すものではないと考えられる。』(今回)

こちらは今回新設文言。

『そのうえで、より長期的な視点から点検すると、低金利の長期化や人口減少、企業部門の貯蓄超過といった従来からの環境に加え、今般の感染症の影響もあって、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクがある。一方、こうした環境のもとでは、利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もある。現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、これらのリスクは大きくないと判断しているが、先行きの動向を注視していく必要がある。』(今回)

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、低金利の長期化や人口減少、企業部門の貯蓄超過といった従来からの環境に加え、今般の感染症の影響もあって、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクがある。一方、こうした環境のもとでは、利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もある。現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、これらのリスクは大きくないと判断しているが、先行きの動向を注視していく必要がある。』(前回1月)

新設文言以外の金融システムに関する部分は同じでした。


・最後に政策運営ですが、こちらはいつも通りの文言ですので前回との比較は割愛します

なお前回1月と今回の差はAPPに関して「年間増加ペースの上限」という謎システムに変更したのでその部分が反映されているだけでガイダンス文言などに変化はありません。

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(今回)

『引き続き、@新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、A国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、Bそれぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとでのETFおよびJ−REITの買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。』(今回)

『当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。』(今回)


という訳で毎度おなじみのクッソ長い逐語比較でした。また別ネタは別途アップする所存です。