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2020/07/31

お題「中銀CDBC絡みのフォーラムで内田理事が挨拶/FOMCパウエル記者会見Q&Aより(どうせその1)」

言葉遊びは大概にしてくれませんかねえ。医療体制の整備早よ。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20200730/1000052093.html
小池知事「感染拡大特別警報だ」
07月30日 17時16分

最近の偉い人はヘタクソ広告代理店の振り付けかよってくらいのワンフレーズ政治にキャッチコピー政治でさすがにうんざりしますが、そもそもワンフレーズ政治と言えば小泉純一郎な訳でシバキアゲ政策と相まってあ奴はやっぱりケシカラン(個人の偏見です)。

さて本日は内田理事の講演ネタ、といっても現世利益な政策の話ではなくもうちょっとタイムスパンが先のCDBC絡みのネタがあったのでアタクシの備忘用リンクも兼ねましてそっちを先に。

〇「決済の未来フォーラム」に内田理事ご登場で関連ネタの備忘録というか何というか

・内田理事が決済関連のフォーラムでご挨拶とな

ほほう。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/ko200730a.htm/
【挨拶】ポストコロナの「お金」の姿
決済の未来フォーラム デジタル通貨分科会における挨拶
日本銀行理事 内田 眞一
2020年7月30日

PDF版はこちら。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/data/ko200730a.pdf


・なのですがその前にこのフォーラムの式次第の口上を見に行くのでした

そういや今月の頭に
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200702a.htm/
「決済の未来フォーラム デジタル通貨分科会:ポストコロナのデジタル決済」参加者の募集について
2020年7月2日
日本銀行決済機構局

ってのがあって何の気なしにスルーしておりましたが、良く良く見直してみると口上がクッソ長くてこれはフォーラム開催している人のやる気キタコレという感じでございますので遅ればせながら先に鑑賞しましょう。

『日本銀行では、7月30日、「決済の未来フォーラム デジタル通貨分科会:ポストコロナのデジタル決済」を開催いたします。』(7月2日公表の「決済の未来フォーラム」参加者募集文より、以下同様)

『新型コロナウイルスの感染拡大は、個人の決済手段の選択に大きな影響を及ぼしています。世界的にATMからの現金引出しが減少しており、これには外出自粛や在宅勤務に伴い個人消費支出が減少したことが大きく影響していますが、消費者が現金を介する感染リスクを懸念し、キャッシュレス決済やコンタクトレス決済へと決済手段をシフトさせている側面もあります。』

へーへーへー(常に現ナマをぶつける主義なハイパーアナログ人間がここにおります)。

『現金による感染リスクに関して科学的根拠はこれまでのところ確認されていませんが、新型コロナウイルスが消費者の決済手段の選択に及ぼす影響は、一時的ではなく、感染終息後も持続的に作用するという指摘やそれを裏付けるアンケート調査もみられます。』

この話、内田理事の講演にも出てくる(^^)。

『デジタル決済の普及・拡大は、決済の利便性や効率性の改善に資する一方、決済の安全性や強靭性の確保が重要な課題となります。』

はい。

『デジタル決済は、多くの場合オンライン利用が前提であり、自然災害の多いわが国では、通信・電力途絶時における決済の脆弱性が従来から課題とされてきたほか、サイバーリスクへの対応も重要です。』

ワシは後者の方を全然信用していないので現金その場限り主義。

『コロナ禍でデジタル決済が停電やサイバー攻撃等で利用不能となった場合には、経済活動はさらに大混乱となったと思われます。また、スマートフォンなどの端末を持たないユーザーはデジタル決済を利用できません。子供や高齢者でも簡単に操作できる、安価な端末も提供されていることが望ましいと考えられます。』

事故が続出しそうな気がしますが(とあくまでもアナクロニズムのアタクシ)。

『わが国では、現金流通高のGDP比が2割を超えており、国民の中銀マネーへのアクセスが困難になるような状況ではありませんが、将来、現金決済からデジタル決済へと消費者の選択が大きくシフトしていけば、現金流通のチャネル自体が次第に縮小していくことも考えられます。そうしたシナリオを想定した場合、デジタル決済へのユニバーサル・アクセスの確保が社会的に重要になってきます。』

まあ時代の流れはそうですからね。もしかしたらデジタル通貨逃れるために代替として現物通貨もどきが復活してそれがまた秤量通貨の丁銀とかで復活したら熱いですな(アタクシの言ってることがあたおか案件)。

『このような点を踏まえると、「誰もがいつでも何処でも、安全確実に利用できる」という現金と同等の機能をデジタル決済においても確保することが重要であり、新型コロナの感染拡大は、社会に対してよりスピード感を持ってこの問題へ対応するよう促しているといえます。中銀デジタル通貨について検討する際にも、ユニバーサル・アクセスや(オフライン決済を含む)強靭性、安全性の確保は重要な視点です。』(ここまで「決済の未来フォーラム」参加者募集文より)

てな訳で式次第が下の方にあるのですが、どうもパネルとかはやってて、ただし配信はオンラインって感じだったみたいですね。


・・・・・・と全然本題に入りませんが、CDBC絡みでは上記式次第の中にもリンクがありますが、同じく7月2日にこういうのが出ていたけど現金主義のアタクシなので華麗にスルー(というのはかなり冗談でCDBCの技術的な事を言われてもチンプンカンプンなのでワカランチ会長でネタにする能力が無かったというのが正しい、涙)しておりましたが、こんなのがありまする。


・さらに話が斜めの方に行きますが先般CDBCに関する決済機構局謹製のレポートが月初に出ていたのでその話を

https://www.boj.or.jp/research/brp/psr/psrb200702.htm/
中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題
2020年7月2日
日本銀行決済機構局

本文はアタクシが読んでも泡を吹くとので、誰か泡吹きジジイのアタクシに1から説明プリーズという状態ではあるのですが、こちらのHTMLの『要旨』を見ますと・・・・・・・・

(以下引用部分は上記URL先の7月2日日銀公表文書からになります)

『中銀デジタル通貨(CBDC)が現金同等の機能を持つためには、「誰もがいつでも何処でも、安全確実に利用できる決済手段」であることが求められる。』

なるほど。

『したがって、CBDCを検討する際には、CBDCが「ユニバーサル・アクセス(Universal access)」と「強靭性(Resilience)」という2つの特性を備えることが技術的に可能かどうか検討することが重要なテーマとなる。』

何となくわかる。

『ユニバーサル・アクセスの観点からは、多様なユーザーが利用可能な端末の開発が重要となる。』

うんうん。

『強靭性に関しては、通信・電源途絶への耐性を備えたオフライン決済機能を備えることが望ましい。』

うんうんうん。

『スマートフォンを用いたケースでは、オフライン決済に必要な機能の多くに既存技術を転用可能とみられる一方、実用化に際しては、機能の安定性や処理性能の確保、コストの面などにおいて課題も残る。ユニバーサル・アクセスの確保に関しては、スマートフォンを保有していないユーザー向けの端末の開発も検討課題となろう。』

なるほど。

『CBDCについて検討する際には、こうした技術的な課題に加え、セキュリティ確保のためのセーフガードや、プライバシーとAML/CFTの両立といったコンプライアンス上の課題への対応も重要である。』

この「AML/CFT」ってのアンチマネロンとテロ資金供与対策ってのの略称で、まあこの略称でグローバルにやっているからそれはそれでわかるんですけど、これ金融の人間以外が見たらAMLはアンチマネロンと言われればイメージ沸きますけど、CFTとかマジで字面からイメージが出てこない(combating the financing of terrorismなんですよね)と思うんで、(というか最初この略称見た時に通信プロトコルの一種かと思っちゃいました)と思うのでして、「マネーロンダリング等の防止」の方が意味がすぐ分かると思うんですが、国内で一般に使うんだったらこの略称はさすがにどうなのかねとは思います。いやまあどうでも良いちゃあどうでも良いですが。

『これらは、オンライン、オフライン決済にかかわらず重要な課題であるが、オフライン環境下ではより対応が難しくなるため、しっかり検討を行う必要がある。セキュリティに関しては、端末の定期交換などを通じて、オフライン環境におけるCBDCの偽造リスクに対応する必要があろう。また、オフライン環境では、管理者が脅威を常時把握できないため、CBDCの利用金額に一定の上限を設けて被害規模を予め限定することも一つの選択肢であろう。コンプライアンス面では、プライバシーの確保に向けた検討が重要である一方、AML/CFTの観点から不正リスクを抑制するために、決済情報の事後収集やオフライン利用金額の上限設定などを検討する必要がある。』

急にお経になってしまいましたナムナムナム。という事で、不肖このアタクシこの方面に関しては知見が1オングストロームもございませんので、レポートの本文のURLだけ付けておくだけということで。

https://www.boj.or.jp/research/brp/psr/data/psrb200702.pdf
決済システムレポート別冊シリーズ
中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題
日本銀行 決済機構局
2020 年 7 月

中身は当然の如くパス、というか詳しい人に伏してお教えを乞いたいのですが(平蜘蛛のごとく平伏しながらチラチラ辺りを見回す)。


・さてやっと内田理事の挨拶に戻ります

URL再掲しますね。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/ko200730a.htm/
【挨拶】ポストコロナの「お金」の姿
決済の未来フォーラム デジタル通貨分科会における挨拶
日本銀行理事 内田 眞一
2020年7月30日

PDF版はこちら。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/data/ko200730a.pdf

以下の引用は内田理事の講演(HTML版)より参ります。

まあこの講演ですが、むしろこの講演を読んでそういえばCDBCネタで決済機構局が何か出してたなと思いつつ何時だったけとかもう忘れていたので探し直してそっちを引っ張り出してネタにした(って内容がミーにとって分からないザンスなのでURL貼り付けているだけですが)という感じですけどね。

『はじめに』から。

『日本銀行の内田でございます。本日は、新型コロナウイルスを巡る厳しい情勢の中で、決済の未来フォーラム・デジタル通貨分科会にご参加いただき、誠にありがとうございます。本日の分科会では、第1に、今般の新型コロナウイルスが、個人の生活やビジネス・スタイル、さらにはリテール決済手段の選択や金融サービスの提供にどのような影響をもたらしているのか、第2に、そうした背景も踏まえて、デジタル決済には、どういった機能が求められ、これを現在あるいは未来の技術でどう実現していくのか、議論いただきたいと思います。』

ということですが、次の『現金』って小見出しの内容がオモロイ。

『わが国においては、対面でのリテール決済の主役は、ずっと現金でした。実際、現金の流通残高は100兆円を超え、GDPの2割にも上ります。これは諸外国と比べても突出していますし、歴史的にも高水準です。』

はい。

『過去100年間遡ってみても、銀行券流通残高の対GDP比率は、ほぼすべての期間でおおむね8%程度であり、例外は、第2次大戦前後と90年代中盤〜現在の2回だけです。』

過去100年だとそもそも通貨制度に対する、とか書こうと思ってよく考えたら100年前は大正9年で明治ですらなかったことに気が付き驚愕するアタクシ。

『このことは決済需要が経済規模との関係でおおむね安定していることを表しており、現在の現金流通残高の大きさは、何か別の原因によると考えられます。』

なるほど。

『その答えのひとつとして言えそうなのは、低金利環境の中で、人々が手元の現金をこまめに預金しに行かないという現象です。』

これな。金利がそれなりについている時代は漫然と現金有高を抱えていると機会損失が発生するというお話な訳ですわ。

『このことは、今般のコロナを巡る状況下でも生じているようです。6月の銀行券流通高は前年比4.8%に上昇しました。ただ、興味深いことに、券種別では千円札、五千円札はそれほど増えておらず、一万円札だけが伸びています。また、ATMの受け入れ・払い出し件数も激減しています。おそらく、決済手段としての現金需要は減少した一方で、銀行やATMに足を運ぶ回数を減らすために、手元に多めの現金を置いた――つまり広い意味の価値保蔵手段としての現金需要が増えた――ということでしょう。』

オモロイ。

『コロナと低金利という2つの環境がもたらしたものですが、これは日本だけでなく、程度の差はあれ世界的にも見られる現象のようです。』

でもって・・・・・・・

『「ようです」と歯切れの悪い言い方をしましたが、実は「現金」は、最も身近な決済手段でありながら、その振る舞いはいつも謎めいています。その根底には、現金の特質である「匿名性」があります。これはデジタル化の下での決済手段を考える際には、避けて通れない重要な課題のひとつです。』

というこの最初の部分が無茶苦茶面白かったのでネタにしました次第ですが、正直現世利益的にはあんまり関係ない話を延々とネタにしてましたなすいませんすいません。

ついでにこの部分もちょっと面白かった。次の小見出し『ポストコロナ』の中のお話ですが。

『第3の点は、デジタル化というものの性質のひとつを言い表しているように思います。それは、一度使うと戻らない(あるいは戻れない)ということです。ITリテラシーの高い皆様からは笑われるかもしれませんが、私は、これまで電子書籍を持っていませんでした。本屋さんで紙の本を探すから新しい発見があるのだ、というこだわりによるものです。でも、今回の件で電子書籍を使って、文字の大きさを変えられる、という57歳の私には極めて大きなメリットを経験した結果、今後は併用することにしました。これはコロナが収束しても不可逆的です。』

これは微笑ましい(^^)。

なお、さっきの現金の話でお察しの通り、不肖このアタクシ電子書籍とか全く利用してませんし、大体からしてPCで読んでると目がやられてアカン(あれ?)ということで。

『もう少し一般的な例を申し上げれば、いくつかのアンケートにおいて、コロナ禍でキャッシュレスを利用する人の割合は増加しており、その人たちは、「感染拡大が収束しても行動は変わらない」と答えています。』

だそうです。まあ何ですな、先般CDBCの専担グループ作って先代の政策企画課長という大物をグループ長にぶっこんできた日銀ですが、この挨拶している内田理事も理事として担当しているから(決済機構局は決済システム系と業務継続系で担当理事が違う)登場したとは言え先々代の企画局長ですし、中々味わいのあるラインアップですなあと思ったりもするのでありました(個人の感想です)。


〇パウエル議長のFOMC会見質疑応答が早速アップされているので(その1)

と言いつつ実は今朝はさっきまでの「決裁の未来フォーラム」ネタというかただ単に関連物件をペタペタ貼ってる方がノリノリに長くなってしまいましたので時間があんまりアレなのですが(滝汗)。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20200729.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
July 29, 2020

会見はZoomだか何だか知りませんが、Web会議方式で行われているので質問者の音が割れたりして聞くのが若干ストレスでした。やっぱ直接電話回線のテレカンの方が音声は聞きやすいわ。

・ドルスワップラインについての質問が真っ先にぶっこまれているのは甘く見ない方が良いかもしれませんぜ

最初の質問がFTの記者からなのですが・・・・・・・・・

『JAMES POLITI. Hi there, James Politi with the Financial Times. Chair Powell, the Fed today decided to extend dollar liquidity swap lines with a number of central banks around the world. Why was that important for the Fed? And how concerned are you about dollar shortages persisting for a time through the pandemic? 』

ということで中銀スワップラインに関してはFOMCの決定事項(6中銀スワップラインは毎年1月のFOMCで継続が承認されている)ですけれども、昨日もネタにしましたように、今回はパンデミック対策で新たに導入したその他中銀とのスワップラインが延長されていまして、これもFOMCの決定事項なので声明文と同時リリースって事なんでしょうけれども、「なんでこんなのがあるねん」という質問が真っ先に来る、というのはやはりジャパンの皆様におかれましては「いつまでも、あると思うな、サービス金利」ということを念頭に置かれた方が吉なのではなかろうかとは思います。今回だって「バックストップとしてのスワップライン継続」はしているけど、OIS+25bpという水準に関しては(今回は別にいじっていないからそのままですが)続くかどうかってのは別次元の問題ですからね。

ということで議長のお答え。

『CHAIR POWELL. So our dollar swap lines, we introduced those back at the beginning of this episode after the pandemic made itself present. And dollar funding markets were in very difficult shape at the time. And the introduction of the swap lines has really restored dollar funding markets around the world to fairly normal levels of activity. And so they kind of served their purpose.』

市場でのドルファンディングがコロナショックのストレスで(ノ∀`)アチャーになったからこれを導入しました。

『But we extended them I guess yesterday morning, really to facilitate planning by other central banks, and just so people will know that those facilities are still there.』

ほほう。FOMC初日に延長したんですね。まあ確かにFOMC議事要旨見ますと、1月FOMCって年次更新する物件(6中銀のスワップ協定とか)に関しては、事務方の報告とか委員会の政策議論とかの前の所に記載されていて、華麗に承認されているという書き方になっていますので、これもFOMCの初日の最初の段階で承認されたんでしょうね(確か6中銀スワップ協定の更新とかは一々アナウンスしていなかったような気がする)。

『We want them to remain in place and be available as long as they are needed. And since, you know, the crisis and the economic fallout from the pandemic are far from over, we're going to leave those in place for the time being. And we'll leave them in place until we're confident that they're no longer needed. There's nothing that's going on in the market right now that raises any concerns. It's just we want them to be there as a backstop for markets. 』

ということで、「本当の本当に無くても大丈夫となるまではバックストップで残しておく、という発想で延長しています。別に今現在ドル調達市場がアカンから延長している訳ではございませんのでご安心下さい」という回答を行っていますので、金利水準云々の事はまあどうだか分からんですな、たぶんそう簡単には上げに掛からんとは思うけどこれ議会がやいのやいの言ってくると話がややこしくなりますからね。

なお、この答えが質問の意図とマッチしているかは微妙に思えますが、まあスワップラインの必要性を一々説明して揚げ足を取られるよりは、微妙に斜め30度くらい論点をずらして答えたって感じですかね(^^)。


・バックストップは存在することが重要というどこかの中銀は耳の穴かっぽじって聞いて頂きたい件

次の質問ですが、

『STEVE LIESMAN. Steve Liesman, CNBC. I hope you can hear me. Mr. Chairman, given -- you've said several times now that you have lending not spending powers. Given that a lot of the capacity of these programs has not been used and really barely used, do you think that some of this money that has been dedicated by the Treasury to the Federal Reserve should be considered to be used by Congress as direct grants to businesses that are in need right now, or to households, given that Congress is now saying that the money is limited and they do not want to pass a very large stimulus bill? Is this money doing the best for the nation as a backstop for Federal Reserve programs that don't seem to be being used all that much right now? Thank you, and I have a follow-up, sir. 』

質問が長いよと思いました(おまけに追撃があると仰せ^^)が、要は何とかファシリティそんなに利用されてないのもあるんだがそれってどうなのよという質問ですよねこれ。

議長のお答え。

『CHAIR POWELL. So that's really a question for Congress. They appropriated that money, $454 billion for our facilities, and it's really a question for them. So you're right that our facilities have not -- we haven't done as much lending as we thought. But in very substantial measure, that's because markets started working again fairly soon after we announced the facilities, particularly in the corporate credit facilities, also in the muni space and also in the short-term funding facilities -- the three of those that we set up. So we didn't turn out to need the kind of funding that we thought we would.』

てな訳で、金融市場環境が好転してバックストップに駆け込まなくても回るようになって来たから利用が少ない、というのがありまっせという説明で、まあこれは以前からその趣旨の説明をしていますけれども、確かにアナウンスメントだけで戻すというのが一番ウマーなパターン(ただしこの場合一息置いて次に試練が来た時に本当の試練がやってくるというのはあるけど)ですからして、「市場が健全な状態に戻ってきているので利用が少なくてもヘーキヘーキ」というのは実に正しい説明で、どこぞの3本の鉛筆で額をアピールとかしている中銀は爪の垢を煎じて飲んで頂きたいと思ったら昨日ネタにしたようにしらっと鉛筆の絵が取り下げられた(のかどうかは今後を確認する必要がありますけど)ですなあっはっは。

んな訳ですから、

『On the other hand, it's important that the facilities stay in place and that's why we extended them yesterday. It's important that they still stay in place until we're, you know, very confident that the turmoil from the pandemic and the economic fallout are behind us. So I can't really speak to what Congress should do with it, but it's important that the facilities be there and be fully funded in case the needs do arise down the road. We don't see them now, but in case they do arise, they should be there.』

ということで、まだ今後のコロナちゃんがどうなるかは不確実という中においては、このバックストップが存在することが重要なので延長しました(予算を使い切ってたら延長するにも議会がお金だしてくれないと駄目ですけどね)という話をしていて、バックストップはそこにあることが重要、とイイハナシダナーな話をしておりますなあ。なお追撃の質問はナンジャラホイと思ったら、

『STEVE LIESMAN. Has any consideration -- thank you. Has any consideration been given to asking Congress to allow the Federal Reserve to lend to companies in bankruptcy? Thank you.』

『CHAIR POWELL. Not that I'm aware of, no. 』

ということで、あんまり追撃な質問ではありませんでしたが、まあこういう論点とかも浮上したりするんでしょうなあ、とは思いました。

でもって本日はうっかり前半で調子に乗って時間を掛ける、といういつもの奴をやってしまいましたので、続きは来週ですいません。







2020/07/30

お題「寝起きでFOMC関連/朝はFOMCなので夜なべで雨宮副総裁講演」

今朝はFOMCなのですがまあ見事なタイミングで雨宮副総裁の講演がぶっこまれやがっておりまして、寝起きでFOMCやると雨宮さんの講演が出来ないのは明らかなので、朝のドラめもんと言いつつよーしパパ夜なべで読むぞー、となっておりますのが本日の後半部分となります。さすがに朝この2本は無理です(笑)。

例によって声明文読み込み終わってから市場の動きでもみるべえかと思って
ニュースを見に行ったらこの記事に腰が抜けそうになった。

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4040897.html
【速報】アベノマスク 配布延期を検討
29日 22時43分

一昨日の官房長官会見で出てこれだったのが1日にして撤回クソワロタ。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/45502
アベノマスク8000万枚の追加配布に批判殺到 「ありがた迷惑」「税金の無駄遣い」
2020年7月29日 06時00分

なんでしょう東京オリンピックの代わりに馬鹿オリンピックでもやっているんでございましょうかそれなら金メダル目標30個ですからお肉券にGoToトラベルにアベノマスク×2に・・・・・・・orzorz



〇FOMCの前に火曜日に各種ファシリティの3か月延長があったのをスルーしてましたすいませんということで

なおお察しの通りこれも夜なべ。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200728a.htm
July 28, 2020
Federal Reserve Board announces an extension through December 31 of its lending facilities that were scheduled to expire on or around September 30
For release at 9:30 a.m. EDT

『The Federal Reserve Board on Tuesday announced an extension through December 31 of its lending facilities that were scheduled to expire on or around September 30. The three-month extension will facilitate planning by potential facility participants and provide certainty that the facilities will continue to be available to help the economy recover from the COVID-19 pandemic.』

一々タームシートまでチェックできてなくて申し訳ないのですが、ここまでの間に各種ファシリティの参加対象を拡大したりするアナウンスがちょいちょい出ておりまして、まあそういうのもあるし、感染は再拡大しているしということですから、延長待ったなしという感じだったかも知れませんが、FOMCの1日目にというかFOMCの初日は通常だと10時から始まるので9時半だとFOMC開催前にアナウンスされました。

『The Board's lending facilities have provided a critical backstop, stabilizing and substantially improving market functioning and enhancing the flow of credit to households, businesses, and state and local governments. Each facility was created under section 13(3) of the Federal Reserve Act with the approval of the Treasury Secretary.』

と、建付け上そうなっているから、というのもありますが、あくまでもこれらは議会様が通したコロナ対策特別予算案によるものです、という説明を入れていて、どこぞの中銀のようにワシが育てたとは言わない(ワシが育てて無いんだから当たり前だが)。

『The extensions apply to the Primary Dealer Credit Facility, the Money Market Mutual Fund Liquidity Facility, the Primary Market Corporate Credit Facility, the Secondary Market Corporate Credit Facility, the Term Asset-Backed Securities Loan Facility, the Paycheck Protection Program Liquidity Facility, and the Main Street Lending Program. The Municipal Liquidity Facility is already set to expire on December 31, with the Commercial Paper Funding Facility set to expire on March 17, 2021. Further details on each can be found here.』

hereって先にタームシートがあります。なぜかCPFFだけ来年3月17日とか謎の日付に延長しておりますな。なお詳しくは詳しい人の解説があると思いますのでそっちを見てちょ(と手抜きですが時間を取って読み込みはしておかないと、という意識は一応あります)。


〇てな訳で寝起きで毎度のFOMC:声明文は基本的に無風

今回はSEPが無いので声明文と時間が間に合えばオープニングリマークまで何とか。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200729a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200610a.htm(前回)

・第1パラグラフ:現在もパンデミック非常モードであるという認識を示していますな

『The Federal Reserve is committed to using its full range of tools to support the U.S. economy in this challenging time, thereby promoting its maximum employment and price stability goals.』(今回)
『The Federal Reserve is committed to using its full range of tools to support the U.S. economy in this challenging time, thereby promoting its maximum employment and price stability goals.』(前回)

という言われんでもわかっとるわという文言が今回も一発目にぶっこまれています。これは3月の23日(3月はFOMCを6回やっていて、うち声明文が出ているのが3回、でもって23日のは声明文の出ている3月最後のFOMCでして、その月の5回目になります)のFOMC声明文から1パラにぶっこまれております文言です。

てな訳ですので、今回この文言が継続的にぶっこまれていることに関して、特に何かFEDからコメントがあったとかそういうのは知らん(そこまで追いきれない)のでアタクシの勝手な解釈になりますが、この1パラ文言(本来1パラは今回や前回の2パラ部分であるところの、前回FOMC以降今回の経済物価情勢に関する現状認識を示すパラグラフに充当される)が残っているうちは「ワシらパンでみっく非常事態モードでやっとりますがな」という事を意味するんだと解釈しております。まあこれが残っているうちにドルスワップの金利引き上げは無いでしょうと言う事でシメシメという所ですな(何が?)。

#などと書いていたらその他中銀とのスワップライン3月末まで延長がありますな。詳しくは後で


・第2パラグラフ:現状認識は「底打ちのような気がするが水準はあばばばばー」

順当ちゃあ順当ですが。

『The coronavirus outbreak is causing tremendous human and economic hardship across the United States and around the world.』(今回)
『The coronavirus outbreak is causing tremendous human and economic hardship across the United States and around the world.』(前回)

という冒頭のコロナ認識(というか何というか)は同じ。

『Following sharp declines, economic activity and employment have picked up somewhat in recent months but remain well below their levels at the beginning of the year.』(今回)
『The virus and the measures taken to protect public health have induced sharp declines in economic activity and a surge in job losses.』(前回)

こちらの表現が変化していまして、経済活動と雇用が「picked up somewhat in recent months」と来たもんだという事ですが、「well below their levels at the beginning of the year」ってコロナ前をノーマルと見るのかよという論点はあるものの、水準の方は依然としてアカンという認識。

『Weaker demand and significantly lower oil prices are holding down consumer price inflation.』(今回)
『Weaker demand and significantly lower oil prices are holding down consumer price inflation. 』(前回)

物価の話で油価の話がありまして、「significantly lower oil prices」なのですが、先月のFOMC時点でもだいたい40ドル弱くらいはありましたので、まあこれは昨年対比って話なんでしょうな。いったん飛んでもない下を見ているから戻った戻ったと思ってしまうのですが(汗)。

『Overall financial conditions have improved in recent months, in part reflecting policy measures to support the economy and the flow of credit to U.S. households and businesses.』(今回)
『Financial conditions have improved, in part reflecting policy measures to support the economy and the flow of credit to U.S. households and businesses.』(前回)

ファイナンシャルコンディションに関する表現ですが言い方が変わっているちゃあ変わっているのですが、この「have improved」に今回「in recent months」が入っているのが上方修正なのか横ばいなのかが良く分からん。話の流れからすると上方修正なんでしょうが。


・第3パラグラフ:政策金利のフォワードガイダンスに変更なし

『The path of the economy will depend significantly on the course of the virus. The ongoing public health crisis will weigh heavily on economic activity, employment, and inflation in the near term, and poses considerable risks to the economic outlook over the medium term. 』(今回)

『The ongoing public health crisis will weigh heavily on economic activity, employment, and inflation in the near term, and poses considerable risks to the economic outlook over the medium term.』(前回)

皆様の健康に関する危機が近い将来の経済活動や雇用や物価に悪影響を甚だしく与えます、ってな話は同じなのですが、今回はそこに上乗せとして、「経済のパスはコロナウィルスの動向によって顕著に影響されます」というのを追加しています。先行き分からんって話を強調したいのでしょうかねえ、良く分からんかった。

『In light of these developments, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent.』(今回)
『In light of these developments, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent.』(前回)

そらそうよ。で問題はガイダンス文言ですがこちらも全文一致。

『The Committee expects to maintain this target range until it is confident that the economy has weathered recent events and is on track to achieve its maximum employment and price stability goals.』(今回)
『The Committee expects to maintain this target range until it is confident that the economy has weathered recent events and is on track to achieve its maximum employment and price stability goals.』(前回)

ご覧のように全文一致となっています。


・第4パラグラフ:先々の金融政策運営は云々も全文一致

『The Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook, including information related to public health, as well as global developments and muted inflation pressures, and will use its tools and act as appropriate to support the economy. In determining the timing and size of future adjustments to the stance of monetary policy, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(今回)

『The Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook, including information related to public health, as well as global developments and muted inflation pressures, and will use its tools and act as appropriate to support the economy. In determining the timing and size of future adjustments to the stance of monetary policy, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(前回)

引き続きここは当たり前の話をしているのみで新味はないのでベタ引用してしまうま。


・第5パラグラフ:APPと短期金融市場安定化に関する文言も全文一致

『To support the flow of credit to households and businesses, over coming months the Federal Reserve will increase its holdings of Treasury securities and agency residential and commercial mortgage-backed securities at least at the current pace to sustain smooth market functioning, thereby fostering effective transmission of monetary policy to broader financial conditions.』(今回)

『To support the flow of credit to households and businesses, over coming months the Federal Reserve will increase its holdings of Treasury securities and agency residential and commercial mortgage-backed securities at least at the current pace to sustain smooth market functioning, thereby fostering effective transmission of monetary policy to broader financial conditions.』(前回)

APP(なおCP買入等の話はここでは触れていないです、あれはあれで別件バウアーって事でしょう)の国債、MBS、CMBSの買入に関しては「少なくとも現状のペースでの残高拡大を向こう数カ月行い、市場の円滑な機能を維持する」という文言ですな、全文一致。


『In addition, the Open Market Desk will continue to offer large-scale overnight and term repurchase agreement operations. The Committee will closely monitor developments and is prepared to adjust its plans as appropriate.』(今回)

『In addition, the Open Market Desk will continue to offer large-scale overnight and term repurchase agreement operations. The Committee will closely monitor developments and is prepared to adjust its plans as appropriate.』(前回)

引き続き連銀デスクは大規模な翌日物およびターム物のシステムレポを実施しますよ、ああそれからその状況次第で適切にシステムレポを運営しまっせ、という事で。


・第6パラフラフ:引き続き全員一致

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; Richard H. Clarida; Patrick Harker; Robert S. Kaplan; Neel Kashkari; Loretta J. Mester; and Randal K. Quarles.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; Richard H. Clarida; Patrick Harker; Robert S. Kaplan; Neel Kashkari; Loretta J. Mester; and Randal K. Quarles.』(前回)


〇ディレクティブ内容やIOER金利、ディカウントウィンドウなどの内容も変化なし

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200729a1.htm
Implementation Note issued July 29, 2020
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation

前回がこちら。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200610a1.htm

でもって比較引用しても良いのですが、今回は前回からの変化が無いですので、今回の所からちょろっとポイントを引用しますわ。

『・The Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously to maintain the interest rate paid on required and excess reserve balances at 0.10 percent, effective July 30, 2020.』(今回)

IOER(正確には所要準備にも付利しているからIORと言った方が正しいような気がしますが)は10bp。

『Undertake open market operations as necessary to maintain the federal funds rate in a target range of 0 to 1/4 percent.』(今回)

これは当たり前ですな。

『Conduct overnight reverse repurchase agreement operations at an offering rate of 0.00 percent and with a per-counterparty limit of $30 billion per day; the per-counterparty limit can be temporarily increased at the discretion of the Chair.』(今回)

翌日物システムレポ金利の0.00%、1先辺りのリミットの300億ドルにも変更はない。

『・In a related action, the Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously to approve the establishment of the primary credit rate at the existing level of 0.25 percent.』

ディスカウントウィンドウのプライマリークレジットレートも0.25%で変更なし。



〇ドルスワップラインのうち緊急措置で追加されているその他中銀の分が3末まで延長とな

ちなみにFOMCの会見ですけれども、早起き(夜更かし?)してライブで聞かない場合、終わった後しばらくは「イベントは終わったよ」という18秒間の画像しか出てこないという悲しい事実があって、今朝の場合だと東京時間の6時ちょいすぎになるとQ&A付の会見映像が見れるという仕様になっています。

でもってそのQAの(確か)一発目に思いっきりスワップラインの話があって、その答えを聞いてたら延長がどうのとあったのでトップページを見たら確かにありました。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200729b.htm
July 29, 2020
Federal Reserve Board announces the extensions of its temporary U.S. dollar liquidity swap lines and the temporary repurchase agreement facility for foreign and international monetary authorities (FIMA repo facility) through March 31, 2021
For release at 2:00 p.m. EDT

ということで声明文と同時に公表されていました。

『The Federal Reserve on Wednesday announced the extensions of its temporary U.S. dollar liquidity swap lines and the temporary repurchase agreement facility for foreign and international monetary authorities (FIMA repo facility) through March 31, 2021.』

ほい。

『These facilities were established in March 2020 to ease strains in global dollar funding markets resulting from the COVID-19 shock and mitigate the effect of such strains on the supply of credit to households and businesses, both domestically and abroad. The extensions of these facilities will help sustain recent improvements in global U.S. dollar funding markets by maintaining these important liquidity backstops.』

でもって何でこのバックストップが必要か、というのを米国の利益に寄与するという説明をキチンと入れている辺りが味わいがあります。

『In addition, the FIMA repo facility will help support the smooth functioning of the U.S. Treasury market by providing an alternative temporary source of U.S. dollars other than sales of securities in the open market.』

これによって(海外投資家による資金繰りぶん投げが抑制されるので)米国債市場の安定化につながると。

『The extension of the temporary swap lines applies to all nine central banks previously announced on March 19, 2020. These swap lines allow the provision of U.S. dollar liquidity in amounts up to $60 billion each for the Reserve Bank of Australia, the Banco Central do Brasil, the Bank of Korea, the Banco de Mexico, the Monetary Authority of Singapore, and the Sveriges Riksbank (Sweden). They allow the provision of U.S. dollar liquidity in amounts up to $30 billion each for the Danmarks Nationalbank (Denmark), the Norges Bank (Norway), and the Reserve Bank of New Zealand.』

『The FIMA repo facility was originally announced on March 31, 2020. Its extension will allow approved FIMA account holders to continue to temporarily exchange their U.S. Treasury securities held with the Federal Reserve for U.S. dollars, which can then be made available to institutions in their jurisdictions.』

今回のは6中銀常設ファシリティじゃない分の話になります。あと金利水準については特段の記載がないので、まあそれはそれって感じでしょうけれども、この書きっぷりを見るに、米国債市場のスムーズファンクションニングというのがポイントなので、国債等の買入ペースについて何らかの変更があるタイミングが理屈としてはポイントになるでしょうな、というのが確認できたという感じです。


〇オープニングコメント:感染再拡大であじゃぱーというのと政策見直しの議論再開というのと

テキストは即時に出てくるのですが、音声付映像はライブ見逃すと日本時間6時ちょいすぎまでお待ちくださいって感じになりますな(質疑応答のTranscriptは最近のパターンだと今日の米国時間には出てくるでしょう)。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20200729.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference Opening Remarks
July 29, 2020

・経済物価情勢のここまでの動きに関して

『CHAIR POWELL. Good afternoon.
The pandemic continues to cause tremendous human and economic hardship here in the United States and around the world.』

から始まる最初のパラグラフはパンでみっくの一般的なお話をしているので割愛しましてその次、もあんまり変わった話をしている訳ではないのだが・・・・・・・・

『In recent months, economic activity picked up as the economy began to reopen. Many businesses opened their doors, factories restarted production, and more people left their homes to engage in various activities. As a result, household spending looks to have recovered about half of its earlier decline, although spending for services such as air travel and hotels has shown much less of a pick-up. The recovery in household spending also likely owes to federal stimulus payments and expanded unemployment benefits, which provided substantial and timely support to household incomes.』

『In contrast, indicators of business fixed investment have yet to show a recovery. Even with the improved economic news in May and June, overall activity remains well below its level before the pandemic, and the contraction in real GDP in the second quarter will likely be the largest on record.』

ということで声明文と同じですが、経済活動の再開に伴い色々と戻ってきたけれども、水準はアカンし、企業の固定資産投資に関しては依然として回復に向かっていませんという認識。次のパラグラフに行くと労働市場の話になりまして、

『The labor market has followed a similar pattern. 』から始まるのですが、まあそこの所はご案内の話になりますわな。でもって今回もそうなのですが、労働市場に関しては格差が生じているという話を加えていまして曰く、

『In addition, the downturn has not fallen equally on all Americans, and those least able to bear the burden have been the most affected. In particular, the rise in joblessness has been especially severe for lower-wage workers, for women, and for African Americans and Hispanics. This reversal of economic fortune has upended many lives and created great uncertainty about the future.』

という話をして次が物価の話、大した話でもないが一応引用。

『The pandemic has also left a significant imprint on inflation. For some goods, including food, supply constraints have led to notably higher prices, adding to the burden for those struggling with lost income. More broadly, however, weaker demand, especially in sectors-such as travel and hospitality-that have been most affected by the pandemic, has held down consumer prices, and overall, inflation is running well below our symmetric 2 percent objective.』


・新たな感染拡大が・・・・・・・・・

でもってその次のパラグラフ。ちなみに2ページ目の真ん中よりちょっと下の辺りになります。

『Along with the recent increases in economic activity have come new challenges. After declining gradually from a peak near the end of April, the number of COVID-19 cases has increased sharply in many parts of the country since mid-June.』

4月末にピークを打ったと思わせたコロナ感染は6月末に向けて盛大に再拡大しまして・・・・・・・・

『We have thus entered a new phase in containing the virus, which is essential to protect both our health and our economy.』

「We have thus entered a new phase」キタコレということで新たな感染の方のフェーズに突入しました、って認識ですからそら各種バックストップを延長しますわな、ということでして、「念のため」とかいう理由で延長していたどこぞの中銀はちょっと政策判断の理由をもうちょっとマシなものにして頂きたい。

『As we have emphasized throughout the pandemic, the path forward for the economy is extraordinarily uncertain and will depend in large part on our success in keeping the virus in check. Indeed, we have seen some signs in recent weeks that the increase in virus cases and the renewed measures to control it are starting to weigh on economic activity.』

ほほう。

『For example, some measures of consumer spending based on debit card and credit card use have moved down since late June, while recent labor market indicators point to a slowing in job growth, especially among smaller businesses. A full recovery is unlikely until people are confident that it is safe to reengage in a broad range of activities.』

てな訳で、感染再拡大の影響がクレジットカードやデビットカードの利用状況(利用額)などのような所から見るにまーたアカン方に出てきているようなのがありますがな、ということでコロナ退治大事という話になっておりますので感染再拡大の影響を懸念というか懸念しているものが既に出かけているわという認識キタコレでございます。


・コロナ対策は政府や議会様に負う所が大きいですなと毎度の説明

返す刀で次のパラグラフ。ちなみに3ページのだいたい頭。

『The path forward will also depend on policy actions taken at all levels of government to provide relief and to support the recovery for as long as needed.』

ワシが育てた位の言い方をするどこその中銀はちょっと考え直していただきたい。

『The Federal Reserve’s response to this crisis has been guided by our mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people, along with our responsibilities to promote the stability of the financial system. We are committed to using our full range of tools to support the economy in this challenging time.』

ということで以下はゼロ金利に下げただのAPPを再拡大しただのという話だが引用割愛して次のパラに行くと、

『The Federal Reserve has also been taking broad and forceful actions to more directly support the flow of credit in the economy for households, for businesses large and small, and for state and local governments. Without access to credit, families could be forced to cut back on necessities or even lose their homes. Businesses could be forced to downsize or close, resulting in further job losses and income losses and worsening the downturn. Preserving the flow of credit is thus essential for mitigating the damage to the economy and promoting the recovery.』

と、クレジットフローの維持が大事ですという話になって、

『Many of our programs rely on emergency lending powers that require the support of the Treasury Department and are available only in very unusual circumstances, such as those we find ourselves in today.』

危機対応の各種プログラムという話をしているが、あくまでも財政のサポートを必要としますよって話をしております。でもってそのプログラムがどうのこうのの話はいつも通りですが、前日に延長した件についてそのパラの最後に言及しているからその前後だけ引用。

『We will continue to use these powers until we are confident that we are solidly on the road to recovery. This week, we extended these programs through the end of the year. When the time comes, after the crisis has passed, we will put these emergency tools back in the toolbox.』


・我々は消費パワーではなく貸出パワーで対応

次のパラもいつも通りですがこの話。

『As I have emphasized before, these are lending powers, not spending powers. The Fed cannot grant money to particular beneficiaries. We can only create programs or facilities with broad-based eligibility to make loans to solvent entities with the expectation that the loans will be repaid.』

てな話で、財政資金を使うのは選挙で選ばれた方々が検討して決めるんですよ、という話を強調するの巻が以下続きます。引用しておきますと、

『Many borrowers will benefit from these programs, as will the overall economy. But for many others, getting a loan that may be difficult to repay may not be the answer. In these cases, direct fiscal support may be needed. Elected officials have the power to tax and spend and to make decisions about where we, as a society, should direct our collective resources.』

はい。

『The fiscal policy actions that have been taken thus far have made a critical difference to families,businesses, and communities across the country. Even so, the current economic downturn is the most severe in our lifetimes. It will take a while to get back to the levels of economic activity and employment that prevailed at the beginning of this year, and it will take continued support from both monetary and fiscal policy to achieve that.』

ということでこの辺でも俺が俺がとやらないのが素晴らしい、というかそれが正しい対応でどこぞの中銀の方がアレなんだが(次の夜なべシリーズでまた悪態入れてます)。


・政策枠組み論議再開だが「まだお話するような段階にはなっていない」だそうで議事要旨に期待

最後がこの話。

『Before taking your questions, I will provide an update on our review of our monetary policy framework.』

キタコレ!ちなみに5ページ目の頭になります。

『As a reminder, we began this public review of our monetary policy strategy, tools, and communication practices-a first for the Federal Reserve-early last year.』

フェドリッスンズですな。何もかも皆懐かしい。

『Our purpose has been to take a comprehensive look at how we can best meet our maximum employment and price stability objectives in the years ahead, particularly in light of the generally lower level of interest rates around the world. As is evident in our current situation, the lower level of interest rates has reduced the scope for the Committee to support the economy by cutting interest rates.』

低金利環境下における今後の政策フレームワークって話ですね。

『Our plans to conclude this review were, like so many things, delayed by the pandemic.』

そらそうだ。

『At this meeting, my colleagues and I resumed our discussions. Our focus was on possible enhancements to our Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy. This document states our goals, articulates our approach to monetary policy, and serves as the foundation for our policy actions. While I do not have any details to share with you today, I am confident that we will continue to make progress and will wrap up our deliberations in the near future. 』

ということで、まずはロンガーランゴールの建付けの話をしているという事だがさてどうなるのやら・・・・・・・・


#以下夜なべコーナーに戻ります


〇久々の日銀要人講演で雨宮副総裁講演

なるほど日本記者クラブか。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/data/ko200729a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 日本記者クラブにおける講演 ──

・先行き決め打ちできないので整理ということのようですが

『1.はじめに』を拝読しますとこんな話になっています。

『日本銀行の雨宮でございます。日本記者クラブでお話しする機会を頂きありがとうございます。本日は、内外の金融経済情勢に対する日本銀行の見方と、感染症の影響に対応してきた3月以降の金融政策運営の考え方についてお話しします。』

それは展望レポートといつもの話ということですな。

『ただし、新型コロナウイルス感染症を巡る今後の動向やその経済活動への影響については、まだ、きわめて不確実性が高い状況が続いています。金融政策面でも、今後の情勢の展開を踏まえて弾力的に対応していく必要があります。』

というと格好が良いのだが、過去の政策までまとめてごった煮にして「コロナ対応」とか言い出している時点で場当たりパッチワーク感しか漂わないのですがまあいいです。

『そこで、本日は、感染症の拡大が経済や物価に及ぼす影響や金融政策運営の考え方について、基本的な整理を行うことに力点を置いてお話ししたいと思います。』

となっているのですが、そもそもが毎度悪態をついておりますように、過去の政策までごった煮にしてコロナ対応とか言っている時点で基本的な整理も蜂の頭も無いわと思ったら大体そんな感じの整理になっているのが残念無念なのですがまあサラサラ参ります。


・現状は回復ステージということですとの認識のようです

『2.新型コロナウイルス感染症の影響を受けるもとでの内外金融経済情勢』って所が続くのですけれども、『(感染症の影響を受けた経済の特徴)』というのが最初にありまして、うだうだと説明があるのですが、まあ正直一般論なのでそこは飛ばしまして『(内外経済情勢と先行きの見通し)』というのを見るのだが、説明が丁寧ちゃあ丁寧なのだが、まあ一般ピープル向けなのか(日本記者クラブなだけに)どうか知らんが、今更言われんでもわかっとるわという部分が多くて途中までぶっ飛ばして現状認識のまとめ部分から入ります。ちなみに講演本文3ページ目の途中(PDFだと4枚目)からになります。

『現在も、内外経済はきわめて厳しい状態が続いていますが、多くの国が、経済活動を徐々に再開させる取り組みを進めており、状況は多少変化しています(図表2)。グローバルな企業の業況感は、なお改善・悪化の境目である50 を割り込んでいますが、4月をボトムに持ち直しの動きがみられます。わが国でも、5月下旬には全国的に緊急事態宣言が解除され、その後、経済活動が段階的に再開しています。6月短観をみると、企業の業況感は大幅に落ち込んでいますが、先行きをみると底打ち感がみられます。各種の高頻度データや業界統計、企業からのヒアリング情報などを踏まえると、6月以降、消費活動は、なお低水準にあるとはいえ、徐々に持ち直しに向かっているようです。』

はい。

『現時点で、世界的にみると感染症の拡大が収まっておらず、わが国も含め、感染拡大が一旦収まった国でも再拡大のリスクが懸念されている中で、内外経済の回復への道筋がはっきりと見える状況には至っていませんが、回復に向けた移行局面には入りつつあるように思います。』

だそうです。ホンマカイナというのはさて置きましてその続き。

『先行きについても、感染症の帰趨によって紆余曲折が予想されますが、大規模な感染症の第2波が発生しなければ、標準的なシナリオとしては、これから本格的に移行局面に入り、世界経済は回復に向かっていくと予想されます(前掲図表1)。』

まあ良いんですけどこの「感染症の第2波」って言い方あんまり好きじゃないんですよね。有効な治療法とかがある程度確立されたらエエンジャロというか、第2波が発生するしない(そらしないに越したことはないけど)という方面よりも医療体制の充実とか強化とか有効な治療法とかそういうのを確立する方にリソースを極力振れよって思う訳ですけどにゃあ。

というのはどうでもよいですけど、以下IMFの見通し(最初の所でもIMFのWEOベースの説明が出ています)に沿った見通しなのでそこはぶっ飛ばしまして・・・・・・・・・


・コロナ対応なのだが何で「俺が俺が」ってしゃしゃり出る必要があるんでしょうかというのが疑問

いやまあ毎度申し上げていますけどね。ちょっと飛ばして先に行きますとこんなのが。

『さて、移行局面においては、感染症の経済に対する大きなショックが、企業や家計の支出スタンスに与える影響に注意が必要であると申し上げました。この点について、新型コロナウイルス感染症が、企業収益や雇用・所得に影響を及ぼすことは避けられません。』

はい。

『しかし、今回の感染症の影響に対して、政府は、234兆円という、リーマン・ショック時を大きく上回る事業規模の経済対策を実施しています。また、後ほどご説明するように、日本銀行も金融緩和を大幅に強化して、資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めています。こうした政府・日本銀行の対応が、事業や雇用の継続を強力に下支えしています。企業部門、家計部門について、敷衍してご説明します。』

どうせコロナ問題ってそうホイホイと片付くものでもないし、そもそも日銀がコロナ対策に主体的に関わることとか無い訳で、あっという間に収束してやったぜとなったらそらオイシイですけど、世界的にも再流行してみたり、ジャパンの場合は輪を掛けて政府方面の対応が色々とトンチキなのが出ていて何とかキャンペーンに加えて8千万枚のマスクを出せば日本は戦争に勝てます(画像割愛)レベルの話が出てあじゃぱー状態なのに、何でまた乗らなくても良い船に乗って勝負するかねという感じですな。まあ出来もしないのに「物価は貨幣的現象」とか言って2年で2%達成を職を賭してぶっこみに行った反省がまるで生かされていないのが日本っぽくて良いですけどね(よくない)。

でもってこの続きの効果アッピールなのですが、話の内容自体に新味はないのですが割愛しまくっていると訳分らなくなるのでしゃーないから引用。

『まず、企業部門です(図表3)。感染症に伴う売上の減少から、企業収益は悪化しています。こうしたもとで、感染症の影響が深刻なセクターを中心に、設備投資の削減圧力は強いと考えられます。もっとも、6月短観の今年度の設備投資計画はプラスを維持しています。今後、感染症を巡る不確実な状況が続けば、計画が下方修正されていく可能性には留意が必要ですが、現時点では、収益の大幅な落ち込みに比べると、底堅いスタンスが示されています。』

さいですな。

『ヒアリング情報なども踏まえると、企業は、研究開発やIT関連といった中長期的な設備投資案件の多くを継続するスタンスにあるようです。この背景には、リーマン・ショック以降、企業の財務体質の健全化が進んだため、大きなストレスに直面しても、必要な成長投資を実施する財務余力がある企業が多いことがあります。』

そ、そうか????

『さらに、今回、政府・日本銀行の資金繰り支援措置のもとで、金融機関が企業の資金需要の増加に積極的に応えていることが、企業の設備投資の削減圧力を和らげていると考えられます。』

だからと言ってもソルベンシーの問題と資金繰りの問題は別ではなかろうかという気がするが次に行く。

『次に、家計部門です(図表4)。雇用・所得環境には、弱い動きがみられています。有効求人倍率は低下しており、失業率も3%程度まで上昇しています。一人当たり名目賃金の前年比も、足もとでは大きめの低下となっています。』

はい。

『先行きも、当面、雇用者数は減少傾向をたどり、名目賃金も前年比マイナスになるとみられます。もっとも、経済対策で拡充された雇用調整助成金が、雇用削減に対する歯止めとして働きます。また、政府や日本銀行の資金繰り支援策は、企業の倒産や廃業を抑制し、雇用を支える効果を持つと考えています。実際、これまでのところ、企業の倒産件数は増加していません。』

それは問題の先送りであって問題を先送っている間に情勢が好転するかどうかは不確実なのでは、などとツッコんではいけませんですかそうですか。

ということで、要するに問題の先送りをしているというのが成果の強調。いやまあ一過性のショックで終わるなら問題先送っておけばそれでええんじゃがのう・・・・・・・・


・結局は先行き決め打ちできませんという話なんですよね

でもってこの話の結論部分になりますが、

『このように、この間の積極的なマクロ経済政策は、感染症のショックの二次的な効果をある程度抑え、企業や家計の支出スタンスを下支えする効果を持っていると考えています。しかし、1990 年代の日本の金融危機の後、長期間にわたり企業行動が慎重化したように、大きなショックは、企業や家計の成長期待を低下させ、支出行動を慎重化させるリスクがあります。そうした点も意識しながら、今後の動向を注意深くみていく必要があると考えています。』

ということで、まあこれ日銀の話とは別になりますが、ショックのネガティブフィードバックループを抑制するにはどこからどう見ても新型感染症を「ちょっと質の悪いインフルエンザ」まで持って行く為の医療整備にリソースを全振りしている場合だろと思われる(個人の感想です)のに、何とかモデルが成功したのしないのだの何とかアラートだの何とかトラベルだのとかいう抜作な話しばっかり盛り上がっているの何なんでしょうかね、ナムナムナム。

まあ結局の所は決め打ちできんというか、ニューノーマルがコロナ前にできるだけ近くなるか否かという話ですわな、ということなんでしょう。以下展望レポートでの見通し数値の話がありますがめんどくさいので割愛。


・なんかリーマンショックとの違いという話をしているんですが

その後に『(リーマン・ショック時との違い)』という小見出しがありまして、まあお察しの通りの話をしていますけど途中から引用しますと、

『一方で、今回は、新型コロナウイルス感染症の拡大が原因です。需要の減少や生産活動の停滞を受けて、企業の資金繰りに影響が生じることや、経済の先行きに対する不透明感の強まりから金融資本市場の動きが不安定になりやすい点は、リーマン・ショックと共通しています。』

ほう。

『しかし、今回、金融システムが全体として安定性を維持していることは、リーマン・ショック時との大きな違いです。』

それはそうだがそもそもの発生源が金融不均衡是正によるショックじゃないんですから当たり前なのではないでしょうか。

『リーマン・ショック以降、国際的に金融システムの頑健性を高める努力が続けられてきたことから、金融機関は資本・流動性の両面で相応に強いストレス耐性を備えています。金融システムが安定していることは、民間金融機関を通じた日本銀行や政府の資金繰り支援策の効果を発揮させやすくします。』

って何か無理矢理な理屈でして、今回のショックの原因がそこに無いんだから、つまりは日銀のできることは間接支援に過ぎない訳で、効果を発揮させやすくする云々ってそれ随分と無理矢理な説明になっていませんかねえという話だし、今回は金融不均衡によるショックじゃないのだから、リーマンショック以降の国際的な取り組みが本当に金融不均衡発生時における金融システムの頑健性を担保するものかどうかは、やっぱり起きてみないと分からないという話になると思うんですよね。なんかこう説明の我田引水っぷりが甚だしくないですかという気がする。

って事ですから、

『そうしたもとで、企業等の資金繰りにはストレスが加わっていますが、銀行借入やCP・社債発行などの外部資金の調達環境は緩和的な状態が維持されています(図表6)。CP・社債市場では、一時的に拡大したスプレッドは縮小しており、発行残高は高めの伸びを続けています。銀行貸出も約 30 年ぶりの高い伸びとなっています。』

そうですか。

『リーマン・ショック時には、投資家のリスク回避姿勢の強まりからCP・社債の発行残高が前年を下回り、銀行の貸出姿勢が慎重化する中で、金融面から実体経済への下押し圧力が強まりましたが、現在、そうした事態は回避されています。』

だって今回のショックは金融から来てる訳じゃないんだから当たり前じゃん、ということでして・・・・・・・

『先行きも、金融システムの安定性が大きく損なわれず、金融面からの下支え機能が発揮されると考えています。しかし、実体経済の悪化が長期化すれば、それが金融システムに影響を及ぼし、先ほど触れたような負の相乗作用が始まる可能性もありますので、先行きの動向を注視していく必要があると考えています。』

って言う話なんですが、じゃあ負の相乗作用が始まったらあんさんら何をするのという話がまるで無い(手が無いから仕方ないのだが)訳でして、それだったらせめて金融システムに対して無駄に課税状態になっているマイナス金利政策をとっとと撤廃しろやと思うのですが、まあそれが出来ないから新型コロナ特別オペとか言って急に10bpの超過準備付利のおまけつきオペとかをおっぱじめているんでしょうけれどもね。

なお、その後に物価の話があるのですがまあどうでもいいのでパスしまして金融政策の話。


・3本の鉛筆の図表が無くなっている!!!!

『3.日本銀行の金融政策運営』の頭の部分に今回のクライマックスシリーズがございます(^^)。

『それでは次に、金融政策運営についてお話しします。日本銀行では、感染症の影響への対応として、金融政策面では、企業等の資金繰りの円滑を確保し、金融市場の安定を維持することが重要と考えています。そうした観点から、3月以降、金融緩和を強化してきました。その内容は、次の「3つの柱」に整理できます(図表8)。』

さてここで最初のURL先のPDFの本編および図表を含めた最終ページ、すなわちPDFファイルの17枚目を見てみましょう。

この図表8というのは『日本銀行の新型コロナ対応』というお題になっていますので、当然のように毎度おなじみの3本の鉛筆だの3匹の子豚の家だの色々と円債村の大喜利ネタになっておりました(前も申し上げましたが3本の鉛筆はアタクシのオリジナルではありません)例のポンチ絵かと思えばさに非ずでして、なんと今回の図表はごく普通の箇条書きになっているではあーりませんか!!!!!

(ご参考:6月会合後に出されたポンチ絵はこちら→https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/data/ko200729a1.pdf

で、そうなりますと何がどう違うかと申しますと、従来のポンチ絵ではやたらめったら数字を誇示するレイアウトになっていたのですが、今回は数字の強調度合いがだいぶ下がっているんですよ!!!!!!

でもって更に申し上げますと、今回『金融市場の安定確保』の部分、すなわち長期国債買入(輪番)とドル資金供給オペのところが、『無制限』となっているのは残っていますが、例のポンチ絵で表示されていた「実績:40 兆円(2月以降の増加額)」みたいな成果強調部分をしれっと引っ込めていますし、この小見出しにしても前のポンチ絵では「金融市場安定のための円・外貨供給」となっていまして、資金供給という部分もやや見出しから後退させているという芸の細かい所を見せています。

そらまあ冷静に考えればオーバーシュート型コミットメントもある国債買入は兎も角として、ドルオペなんて本来はドル円ベーシスが落ち着いていれば使われない物件ですから、そもそも増加額をアピールするのってトンチキな話でして、ドルオペ減ったら何て申し開きするんだろうと楽しみにしていたのですが、ポンチ絵そのものを変えてしまうという荒業をぶっこんで来るとは悪知恵もとい柔軟な対応っぷりに良くも悪くも感動しました!!!!!!!!!!

さらに追加すると、『資産市場におけるリスク・プレミアムの抑制』とかいう項目になっている部分ですが、ポンチ絵の時には「ETF等買入れ」となっていまして、例えばETFですと今回は『当面、上限年間約12兆円ペース』とかしらっと「上限」というのが入っているのですが、ポンチ絵ちゃんの方では「ETF :当面、年間約12兆円ペース」となっていまして、これもしれっと「上限」と入れるなど、悪ノリではないか位の勢いで広げた大風呂敷を、さすがにヤベーと思ったのかしらっと修正しているというのが今回の雨宮さんの講演の白眉と言える箇所ではないか、斯様アタクシは思う次第でございます。

なお、以下の話についてはまあ別に正直どうでもよさそうな話しかございませんのと夜も更けて参りまして明日はFOMCチェックですから朝は寝ぼけている場合ではありませんし、睡眠時間も確保したいので、この図表8をネタにした所でお開きとさせて頂きとう存じます(平伏)。



2020/07/29

お題「日銀のビックデータの活用云々(ロイター記事より)/FSBェ・・・・・/賃金がウゴカンチ会長だった件の考察ペーパーから」

これでこそ共和党。
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-usa-congress-idJPL3N2EZ46K?il=0
2020年7月29日 / 05:11
米コロナ追加対策、共和案に早くも党内から異論噴出

『[ワシントン 28日 ロイター] - 米与党・共和党の議会指導部が27日に提示した1兆ドル規模の新型コロナウイルス追加対策法案を巡って、早くも党内から異論が噴出している。党の上院議員らからは法案の規模が大きすぎるとの声が相次いだ。』

『焦点となる失業給付は、特例加算額を現行の週600ドルから200ドルに減額して2カ月延長し、その後は州政府が失業前の給与の70%を給付するとしている。党内では、従来の給与以上の額を給付として支払えば、労働者は職場に戻りたがらないとの声が根強い。』(以上上記URL先より)


〇などとロイター見てたら神山調査統計局長のインタビューを交えた記事があったので

https://jp.reuters.com/article/japan-economy-boj-bigdata-idJPKCN24T06L
2020年7月28日 / 10:54 /
焦点:ビッグデータで景気分析、日銀が本格化 次の一手に影響も
木原麗花 和田崇彦

次の一手に影響も、というのは大袈裟な話だとは思いますが記事自体はオモロイので鑑賞させて頂きたく存じます。

『[東京 28日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大が経済に大きな影響を与える中、リアルタイムで景気や物価の動向を把握できるビッグデータを日本銀行が積極的に活用している。消費者物価指数(CPI)など伝統的な指標とは異なる実態が浮かび上がることもあり、今後の金融政策運営に影響を与える可能性がある。』(上記URL先より、以下同様)

ど〜してこうメディアの手に掛かるとこういう大袈裟話になってしまうのかと小一時間というか、そらまあメディア仕草だから大袈裟にしてしまうのはいつもの事なんですけれども、何と申しますかですね、期待の若手選手をメディアを始めとした周囲の人たちがヨイショヨイショと無駄に持ち上げてしまって、実力以上に持ち上げすぎた結果として才能ある若手選手が伸び悩むとか潰れるとか、そういう某在阪プロ野球球団みたいな現象が起きてしまうの巻みたいな事にならんと良いなと思うのよ。

つーのはまあこの題名の時点で話の内容はお察しだと思いますが、要はビックデータ凄い凄いって記事になっているんですけど、あんまりビックデータに過大な評価を与えるとそれはそれで別の歪みが起きるじゃろ、ということでして、まあその点日銀の中の人たちはどこかの経済産業省みたいな足が浮ついているトンチキ官僚とは違うという信用はしておりますので、まあ「新しい情報ツールが増えた」という扱いをしてるんでしょとは思うのでありました。

などと微妙にロイターさんに悪態ついてないわけでもない書き方ですが、まあしょうもない何とかストの下らんコメント見てるよりもこういうのを見ている方が金融ニュースとしての存在価値が高いと思いますのでこういうネタはドンドンぶっこんでいただくように伏してお願い申し上げます(平蜘蛛のごとく平伏)、ってな訳で以下記事を鑑賞してみますと、

『日銀は7月に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で、スマートフォンの位置情報をもとに店舗や娯楽施設の混雑状況を提供するグーグルのサービスを使った。』

展望レポートの基本的見解じゃなくて全文の方にそういうのがぶっこまれておりまして、ネタにせねばならんと思いつつも緊急性がねえかとか言いながら流していたらすっかり世の中のネタになってしまうというこのトロさはアタクシの仕様です(涙)。

『そこからは、政府による外出自粛要請が5月に解除された後、家計の消費が他国よりも急速かつ顕著に回復したことが明らかになった。』

てな訳で展望レポートちゃん(全文)ですけど、
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2007b.pdf
経済・物価情勢の展望
2020 年 7 月

こちらはいつもの定点観測がずらーっと並んでいるのですが、最後にコラムみたいなのがありまして、今回のはこんなラインアップ

(BOX1)感染症流行下の海外経済の動向
(BOX2)感染症の影響を受けた企業行動
(BOX3)感染症が個人消費に与える影響
(BOX4)感染症が物価変動に与える影響
(BOX5)感染症の影響下でのわが国の金融環境

になっていますが、そちらで参照されているデータを見ますと(以下暫くの引用部分は直上URL先の2020年7月展望レポート(全文)になります)、

(BOX1)に『図表B1-5:米国の高頻度データ』とかがあったり、(BOX3)ではモロに『本BOXでは、新型コロナウイルス感染症が個人消費に及ぼしている影響について、高頻度データを活用しつつ、足もとまでの動きの特徴点を整理する。』ってなっていたりしてます。

なお、ロイターさんの触れ込みだとビックデータが従来の経済指標を凌駕するような勢いの話をしていますが、こちらのBOX3を見ますと(ちなみに本文41ページ、PDFファイルの43枚目からになります)、例えば『図表B3-4:人出と選択的サービス支出』というのが本文42ページにありますけれども、そちらのデータ系列の凡例を見ますと、

『選択的サービス支出(家計調査、左目盛)』
『小売、娯楽(Google、右目盛)』

ってなっていて、『(出所)総務省、Google LLC "Google COVID-19 Community Mobility Reports".https://www.google.com/covid19/mobility/ Accessed: 2020/7/15.』

『(注)1. ベースラインは、2020/1/3〜2/6日の該当曜日の中央値。
2. 選択的サービス支出は、交通、教養娯楽サービス(宿泊料等)、外食の合計。直近値は、5/31日。3. 小売、娯楽は、レストラン、ショッピングセンター、テーマパーク等の訪問者数を示す。直近値は、7/10日。』

ってな訳でして、既存データを補完拡充あんど速報ベースをより早期に知るために活用しているという感じになっているように見えまして、まあこういう感じならエエンチャウノ(アカンのは調子に乗ってビックデータ一本槍みたいになってしまうことだとアタクシは思うの)と思います。

このBOXでは『図表B3-6:家電販売額(METI POS)』というようにPOSデータ使ってみたり、『図表B3-7:飲食店への来店件数』では『(出所)TableCheck、Agoop』ってなっていて、その内容が、『1. 飲食店への来店件数は、1店舗当たりの来店件数。集計対象は、TableCheckが提供する飲食店予約顧客管理システムを導入している、約4,500店舗。直近値は、7/12日。』『2. 東京の繁華街における夜間人口は、銀座、新宿、六本木各駅を中心とした半径500mの領域における2 0〜24時までの滞在人口。2019年については、各駅を中心とした900m四方の領域のデータを用いて推計した値。直近値は、7/12日。』などとゆーのがあったり、『図表B3-8:スーパー販売額(日経CPINow)』ということでナウキャストの出してる日次データあったり、という感じでまあ色々とぶっこんでおりまして、特にこのBOX3の所が今回のロイターさん記事になっていますわな、というお話ではあります。


さて話を元のロイターさん記事に戻しますと、(以下引用部分は最初のURL先のロイター記事です)

『日銀は政府統計などの伝統的指標とともにこうしたデータを活用、日本経済がすでに底入れしており、直ちに追加の金融緩和策を行う必要はないとの結論を導き出した。』

なるほどそうですか(棒読み)。なおここでは「そもそも追加金融緩和ったってタマが無いしマイナス金利を深堀したら自爆テロになるだけなので底入れも蜂の頭も無くて追加緩和が出来んじゃろ」などという野暮なことを言ってしまうと日銀ビックデータの活用で正確な判断しゅごい!!!!!とかいうアリガタヤアリガタヤな話がダイナシーになってしまいますのでツッコミには慎重な配慮が求められるというものです(と結局台無しにしている人)。

『日銀の黒田東彦総裁は、金融政策の現状維持を決定した7月の金融政策決定会合後の記者会見で、「日本経済は緩やかではあるけれども、着実に回復していくとみている」と述べ、「サービス関係、観光やスポーツ、イベントなどは、 完全に戻るのはなかなか難しいが、緩やかに回復している段階で、物の消費や生産は、底を打ったと思う」とした。』

という話もありましたが、これ(当然中の人は把握しているでしょうが)日次のデータなんで情勢が変化し、外出また控えるわとなれば打ったはずの底が底抜け脱線ゲームになるかもしれないので、日次データって目先の情勢を過大に評価して振り回されてしまうリスクがあるんでネーノ(個人の感想です)とは思う。先物の1カイ2ヤリやっている人と、何年間かのスパンで考えながらポート組む人とでは見るタイムスケールが違う(別に長期的な視点で見ているから偉いというものではないというのは念のため申し添えます)のと同じような感じですな、たぶん(ただの印象論)。

でまあここからが日銀宣伝タイム。引き続きロイターさんの同期時から、

『日銀は世界の中央銀行の中ではビッグデータの利用に比較的慎重だった。だが最近では180人の調査統計局員を動員し、貨物輸送の動きやスマートフォンの位置情報、衛星画像による工場周辺の人の動きまで幅広く収集し、経済実態をより正確に把握する取り組みを進めている。』

ほうほう。

『日銀が掲げる2%の物価目標の達成に向けた進捗(しんちょく)度合いを測るうえでも、こうした非伝統的なデータが影響を与える可能性がある。』

進捗しないので関係ありません(台無し)。

『民間企業が提供するリアルタイムデータによれば、サービス価格が低迷する一方、製品価格については着実に上昇しているものもあり、物価の動きは総務省が発表するCPIが示すほどデフレ的ではない可能性もある。こうした情報も踏まえ、日銀は7月の展望レポートで、新型コロナウイルス感染症が物価に与える影響について、上振れ・下振れ双方の要因を注視する必要があると指摘した。』

つーかまあ昨日ネタにしましたけど刈込平均が底打ちしたり、モードやメディアンが水準はさておきながらもマイナスにはならずに安定しているというのを見ますと、別にビックデータじゃなくても行けるやんと思います。なお記事はこの後某東京大学の某渡辺先生のコメントがありますが、この某渡辺先生は統計と物価の話をしている分には物凄く良い話や良い取り組みをするのですが、金融政策提言になると一気に「最強の敵は無能な味方」になってしまうという非常に残念なお方なので引用は割愛しますが、結論が「伝統的なデータは使い物にならずすべてビックデータ」とか相変わらずの極論というかアジ演説状態になっていましてマジで勘弁してほしい。

気を取り直して記事の先に進む。

『主要国の中央銀行は、経済へのパンデミック(世界的な大流行)の影響をすばやく把握するため、リアルタイムのデータを重要視しはじめている。月次の小売売上高や失業率といった伝統的な指標は、新型コロナウイルス感染症の影響について正確な状況を把握するには遅すぎるからだ。』

『先行しているのは米連邦準備理事会(FRB)で、高頻度のデータを多数利用し、オンライン調査や人の動きの変化を測る指標の開発など新たな方法を探っている。』

『後を追うように取り組みを加速する日銀は、昨年プロジェクトチームを立ち上げ、高頻度データをより景気の情勢判断に活用する仕組みを検討してきた。伝統的に理論やモデルを重視してきた日銀の歴史からすると重要な一歩だ。』

へーそうですかーとは思いますが、いろいろとまた(ビックデータ煽り記事だからシャーナイけど)微妙な所があって、FOMC議事要旨とか、各地区連銀の講演とかを見ますと高頻度データ云々もさることながら、例の「FEDリッスンズ」でスイッチが入ったのかどうかは知らんですけれども、もちろん以前からその論点は言われていましたが、地区連銀総裁による管内のヒアリングなどによるアネクドータルな情報というのが結構なネタになっているし、コロナ云々とは別に、元々は別のネタだった気がするFEDリッスンズという公開ヒアリングによる現場の声が大事じゃん!みたいな話をするFRBの要人って増えたような気がするんですよね(あくまでも個人の印象ですけど)。

それに、「伝統的に理論やモデルを重視してきた日銀の歴史からすると重要な一歩だ」ってのも何かそこまで言うかという気はする訳で、ビックデータの活用をもっとやって行こう、というのは割と革新的な試みではありますけれども、「理論やモデルを重視してきた」とまで言い切るのは(先の方に記事があるんですけど)ちょっと行き過ぎだと思うの(いやまあ中の状況知らんのに言うのも何ですが)。つまり日銀って全国の支店での企業ヒアリングとかそういうの物凄い勢いで稠密にやっていますし、まあヒアリングと言えば市場モニタリングは調査統計とは違いますが、やっぱりこっちも色々とやっているように、景気判断においてはアネクドートも結構重視していると思うんですよね(なお景気判断と政策判断の間にはモゴモゴフガフガ)。

『こうした改革の陣頭指揮に当たってきた日銀の神山一成調査統計局長は、データ収集・分析を効率化するために、今後日銀でもデータサイエンティストの採用・育成を検討すべきとする。』

調統局長キタコレ。ちなみにQQE導入時の政策企画課長さんですな。

『神山局長はロイターに対し、「平時では経済見通しにもとづくフォワードルッキングな政策運営が可能になるが、危機時で日々急速に経済情勢が変化するとうまくいかなくなる。経済の現状や見通しの不確実性も高まる。真夜中にライトなしで運転を行うような状態になりかねない」と語った。「高頻度データを含め、非伝統的データがもつ速報性が大きな強みを発揮するのはそういう危機時だ」』

まあ仰せの通りだとは思いますが、結局そこの所を緻密に当てるよりも「正しい政策判断」をする方が大事だったりする訳で置物リフレ直線一気理論の総括が出来ないのでは豚に真珠で猫に小判ですなあ、などとツッコミをしますと全てが台無しですかそうですかすいませんすいません。まあ置物理論の呪縛が外れる日にはこの取り組みが一気に大輪の花を咲かせてくれることをお祈りします(皮肉じゃないよ)。

と、展望レポート全文のBOXネタをどう成敗したものかと思っている時だったのでロイターさんありがとうございましたこれはちょうど良かったわ(平伏)。


〇マジで何なのこの天候なんとかって

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200728a.htm/
金融安定理事会による「金融安定のモニタリングにおける気候変動に係る物理的リスク・移行リスクの考慮に関する金融当局の取組みの調査報告書」の公表について
2020年7月28日 日本銀行

『金融安定理事会(FSB)は、7月22日、「金融安定のモニタリングにおける気候変動に係る物理的リスク・移行リスクの考慮に関する金融当局の取組みの調査報告書」(原題:Stocktake of Financial Authorities’ Experience in Including Physical and Transition Climate Risks as Part of Their Financial Stability Monitoring)を公表しました。詳細につきましては、以下をご覧ください。』

全文とあるのがこちら
https://www.fsb.org/wp-content/uploads/P220720.pdf
Stocktake of Financial Authorities’ Experience in Including Physical and Transition Climate Risks as Part of Their Financial Stability Monitoring

目次(Table of Contents)とか見ると『3. Quantification of climate-related risks to financial stability』とか『4. Supervisory approaches to increasing financial institutions’ resilience to climate-related risks』とか何か頭がクラクラ来そうな話があるんですが、まあ昨日の今日で読んでいる訳もないので後日備忘用にメモって感じです。


〇賃金版フィリップスカーブというお題だが賃金がウゴカンチ会長という話のような気もするレポート

先日出ていた物件ですが。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2020/wp20j03.htm/
賃金版フィリップス曲線のフラット化と名目賃金の下方硬直性:2010年代の経験
2020年7月20日
平田渉*1
丸山聡崇*2
嶺山友秀*3


HTMLの方は『要旨』ということで要旨でいつもだとここから行くのですが、要旨を読むよりも序論を読んだ方が言いたいことが素直に伝わる(のは単にアタクシの頭が弱いからなのですがそれはさておき)ので本文の序論部分をちょっと拝読(なお時間が無いので多少手抜きになりますから興味のある方は是非ご覧になって)。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2020/data/wp20j03.pdf
賃金版フィリップス曲線のフラット化と
名目賃金の下方硬直性: 2010 年代の経験

本文2ページ(PDFファイル3ページ)の『1 はじめに』から参ります。

『先進国では、2010 年代を通じて、労働需給の改善対比でみて名目賃金の上昇が緩やかにとどまってきた。日本においても、2010 年代は息の長い労働需給の改善が続く中で、正社員(図1(1)の一般労働者に相当)の所定内給与の上昇は緩やかなものにとどまり、日本銀行 (2017) が指摘したように、同期間の賃金版フィリップス曲線は、それ以前と比べてフラット化しているようにみえる(図1(2))。』

とまあそういう結果になりましたな。そういえば何かQQEとかいう政策があって、その政策をおっぱじめた頃は「賃金の上昇に期待」というのを連呼していたような気がしますなあ、何もかも皆懐かしい・・・・・・・・・・

『こうした賃金版フィリップス曲線のフラット化の背景に関しては、近年盛んに議論されており、多様な論点が提示されている1。中でも、中銀関係者からは、名目賃金の下方硬直性の重要性が指摘されてきた。』

ほいな、ではあるのですが、本当に名目賃金の下方硬直性っての日本だけ強固なのか、というとこれまた違う気がしますな(給与明細を見ながら涙目で)。

『例えば Yellen 前 FRB 議長は、名目賃金の下方硬直性の存在により、企業は 2000 年代後半の世界金融危機時に賃金を下げられなかったため、その後の景気回復局面で賃金引き上げに消極的になった可能性(“pent-up wage deflation”)を指摘した(Yellen 2014)。』

『また、黒田 (2019) が指摘するように、企業は将来の賃金引き下げリスクを回避するため、目先の賃金引き上げより長期的な雇用安定を優先する可能性もある。とくに長期雇用という慣行を有する日本の正社員については、こうした要因が働きやすいと考えられる。』

ということで、今回の話は下方硬直性があるから賃金が下がらんのでデフレがイクナイ的な話ではなくて、賃金を下げにくい→この前の金融危機からの経済あばばばーってのがあったよね〜→好況だからって無闇にホイホイとお賃金を上げたら次のあばばばばーの時に困るもんね〜→そうだ!賃金を上げなければ良いじゃん、って話から始まるのでした。

『このような問題意識を踏まえ、本稿では、日本の正社員を念頭に置き、名目賃金の下方硬直性が上方硬直性を生み、賃金版フィリップス曲線のフラット化に寄与した可能性について、理論・実証両面から分析する。その際、名目賃金の下方硬直性が上方硬直性を生むメカニズムとして、次の二つに焦点を当てる。』

ほうほうそれでそれで?

『第一に、景気後退局面において賃金を十分に下げられなかったため、その後の景気回復局面で賃金引き上げに消極的になるメカニズム(「過去の賃金調整不足に起因するメカニズム」)である。』

『第二に、長期的な雇用安定を優先するもとで、将来の賃金引き下げリスクを意識する結果、景気拡大局面においても賃金引き上げを抑制するメカニズム(「将来の賃金引き下げリスクに起因するメカニズム」)である。』

なるほど。ただ最近は景気後退局面になると賃金が平気で下がるような気もせんでもないが・・・・・・・

『本稿の分析結果を予め要約すると以下の通りである。』

はい。

『まず、理論分析では、長期雇用を前提として、名目賃金の下方硬直性の存在が賃金版フィリップス曲線に与える影響について考察した。』

ほう。

『この結果、名目賃金に下方硬直性が存在する場合、賃金版フィリップス曲線は、過去の賃金調整不足に起因するメカニズムと将来の賃金引き下げリスクに起因するメカニズムの双方を通じて、下方硬直性が無かりし場合と比べてフラット化することが確認された。また、労働需給の改善が進むにつれて、前者のメカニズムの影響と比べて、後者のメカニズムの影響が大きくなる傾向があり、その程度は、期待成長率や成長の不確実性といった要因に大きく依存することも示された。』

直感的に物凄い勢いで同意できる結果ですな。

『次に、実証分析では、理論分析で示唆されるメカニズムが、日本の正社員について実際に働いていたかを、慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センターが提供する日本の個別労働者のパネルデータである「日本家計パネル調査(JHPS/KHPS)」(以下、慶應パネル)を用いて検証した。』

『その結果、正社員のうち名目賃金の下方硬直性の度合いが強い労働者の月給2上昇率は、下方硬直性の度合いが弱い労働者の月給上昇率と比べて、2010 年から 2017 年にかけての労働需給改善局面において、有意に低かったことが示された。』(脚注2:2本稿における月給は、賞与を除き残業代等を含む。)

ほっほー。

『この結果をもとに、名目賃金の下方硬直性の度合いが強い労働者の緩慢な月給の動きが、同時期のマクロでみた正社員の月給上昇率を、年平均でみて 0.4 %ポイント程度(下方硬直性の識別に関する不確実性を考慮した場合には 0.2〜0.6 %ポイント程度)押し下げたことが確認された。』

『また、この背後には、理論モデルが示唆するように、過去の賃金調整不足に起因するメカニズムと、将来の賃金引き下げリスクに起因するメカニズムの双方が作用しており、とくに労働需給の引き締まりが顕著になった 2010 年代後半には、後者のメカニズムの影響が相対的に強まっていた可能性が示唆された。』

なるほどと思うのだが、置物リフレ理論の波及メカニズムの前提条件が思いっきり否定されている気がするのはキニシナイでおきましょう。

『名目賃金の下方硬直性と賃金版フィリップス曲線の関係については、これまで理論面を中心に研究が蓄積されてきた。Akerlof et al. (1996) や Benigno and Ricci (2011)等の景気後退局面に注目した研究に加え、より最近の研究では、景気回復・拡大局面における影響についても分析が進んでいる。』

へー。

『例えば、Daly and Hobijn (2014) やIwasaki et al. (2018) は、名目賃金の下方硬直性の影響から賃金版フィリップス曲線の形状が L 字型(bending)になる、すなわち景気回復初期に名目賃金の伸びが鈍くなることを示している。』

『本稿の理論分析の貢献は、こうした先行研究を発展させ、下方硬直性が上方硬直性を生み、賃金版フィリップス曲線がフラット化するメカニズムを、過去の賃金調整不足に起因するメカニズムと将来の賃金引き下げリスクに起因するメカニズムに明示的に区別したことである。』

『これにより、景気の各局面における両者の相対的な重要性が明らかとなったほか、各メカニズムの決定要因の分析も可能となった。本稿の分析結果は、賃金版フィリップス曲線の傾きが各メカニズムを規定する様々な要因によって内生的に決定されることを示している。』

と中々意欲的なペーパーであるというお話です、更に・・・・・・・・

『このように名目賃金の下方硬直性が上方硬直性を生むことを通じて、賃金版フィリップス曲線のフラット化に寄与する可能性について実証的に検証した研究は、極めて少ない3。』

だそうですのでこのペーパーは英語版もありまして(というか英語版が本チャンなのかな)同時公表しています。ちなみにこちら→https://www.boj.or.jp/en/research/wps_rev/wps_2020/data/wp20e04.pdf

『数少ない例の一つが、日本の企業サーベイデータを使って分析を行った山本・黒田 (2016) である。山本・黒田(2016) は、過去に所定内給与を引き下げなかった企業は、引き下げた企業に比べて、2014〜2015 年の景気拡大局面において所定内給与や賞与の引き上げに消極的だったことを明らかにしている。』

ほっほー。

『本稿の実証分析の貢献は、山本・黒田 (2016) よりも長い期間(2017 年まで)をカバーした個別労働者のパネルデータを用いて、2010 年代における息の長い労働需給改善にもかかわらず名目賃金の上昇が緩やかにとどまった背景について、過去の賃金調整不足に起因するメカニズムと将来の賃金引き下げリスクに起因するメカニズムの双方に関して妥当性を検証している点である。』

ということで、当然ながら「ところで賃金の下方硬直性の話はどうなの?」という論点が残りますが、

『なお、名目賃金の下方硬直性の存在やその程度については、様々な角度から研究が蓄積されてきた。』

だそうで、

『例えば、Kim and Ruge-Murcia (2009) や Iwasaki et al. (2018)は、マクロデータを用いて一般均衡モデルを推計することで、他のマクロ変数との整合性を加味しつつ、名目賃金の下方硬直性の度合いを評価している。また、欧米諸国を中心に、1990 年代頃から個別労働者の賃金改定等のマイクロデータを用いた分析が盛んに行われてきている。Dickens et al. (2007) は、欧米 16 か国のマイクロデータを用いて包括的な検証を行い、国により程度の差は大きいものの、下方硬直性が存在することを見出している。とくに、米国では Fallick et al. (2020)、EU 諸国に関しては Branten et al. (2018) 等によって、世界金融危機時の大きな景気後退の中でも下方硬直性が相当程度残存していたことが指摘されている。』

へーそうなのね。

『日本においても、2000 年代以降、マイクロデータの拡充とともに、主として 2000 年代前半までを対象とした実証研究が蓄積されてきており、黒田・山本 (2003、2005)、山本 (2007)、神林 (2011) 等が、賃金変化率の分布の形状等から下方硬直性の度合いを分析している。』

ほうほう。

『こうした研究の中には、日本の労働市場では 1992〜1997 年頃までは名目賃金に下方硬直性が観察されたものの、日本の金融危機すなわち 1998 年以降は、フルタイム労働者の年間給与等について下方硬直性が観察されなくなったとの指摘がみられる(黒田・山本 2005)。』

うんうん(血涙)。

『もっとも、就業形態や給与項目ごとにみると、正社員の所定内給与については、国際的にみても強い下方硬直性が存在することも報告されている(山本 2007)。』

どっちですねん。

『本稿では、これらの先行研究や、2010 年代においては正社員を中心に所定内給与の上昇が緩やかなものにとどまっていたという事実を踏まえ、下方硬直性の度合いが強いと想定される正社員の給与に焦点を当てて分析を行っている。』

ということで、以下は本論に入るので、まあ数式とかそういうのをぶっ飛ばして(邪道にも程がある)ざっくりと読むのはオモロイかな、とは思います。数式関連はハクション大魔王なので勘弁してください。




2020/07/28

お題「基調的物価は徳俵から押し返した感が/7月会合主な意見という新ネタで参ります」

内閣の中では最もまともな部類に入るお方と思われるガースー先生までもが・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200727/k10012534331000.html
菅官房長官 「ワーケーション」普及で観光促進を
2020年7月27日 11時42分

『また、旅行や働き方の新しいスタイルとして、リゾート地や温泉地などで余暇を楽しみながら、テレワークで仕事をする『ワーケーション』や、そうした地域に企業の拠点を設置する『サテライトオフィス』を普及させるため、ホテルなどで仕事ができるようWi-Fiの整備の支援に取り組む考えを示しました。』(上記URL先より、以下同様)

何で休暇なのに仕事しないといけないんだよ労働基準法違反だろふざけるなだし、どう見たって家族旅行が台無しだし、しかも別にこれ自体が今の話ではないのは分かるけど、それにしたって東京から(通勤通学を除くんですよね)他県への移動が自粛だの言われる中でこの構想を打ち出して、しかもケチが付きまくっているGoToトラベルと関連して話をするというのがもうアホかと馬鹿かと。

『さらに、菅官房長官はインバウンド需要が回復するまでに、消費単価の高い外国人観光客向けに高級ホテルの誘致を進めるなど、受け入れに必要な環境整備を進めていく考えを示しました。』

インバウンド需要が回復すると思っている時点でもうねという感じですが、何はともあれこの振り付けしてるのどこのウスラバカなのか知らんけど、とりあえず馬鹿の限界にチャレンジする時には国民を巻き込まないで一人で勝手に自爆してくれ。

ガースー先生もこの構想を(ガースー先生が却下しないで)普通に発言しちゃうてのは、すなわち今の政権の人たちちょっとファンタジーな世界に逝っておられて世の中の状況を把握できてなさそうに見えてしまって怖いわ。


〇基調的なインフレ指標ちゃんは徳俵でのこったのこったという感じですかねえ

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

図表はこちら
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
消費者物価の基調的な変動

例によって図表見ても長期時系列でして、ここでちょっとお願いなのですが(ってそういうのはメールを日銀に送った方が良いような気がしますが、汗)、これ長期時系列を見るのは重要だし見ててイメージがつかみやすいのは掴みやすいのですが、この3つのグラフの直近1年なり6か月なりの拡大図みたいなのも付けて頂けると、長期的な動きと直近の動きがそれぞれ見やすくなるので(今の長期時系列グラフ自体は物凄く見やすいので残して欲しい)、ページ数増えちゃいますけど是非ご検討をお願いいたしたく、ってここで書くなって言われそうですがまあこの機会に。

という訳で直近をもうちょっと細かく見たいので、というか現世利益的に直近の方ばっかり見ている説is大有りですが、エクセルちゃんの方から数字を拾うとこうなる。昨年1月のところからの数字をただ貼っているだけです。

刈込平均値、加重中央値、最頻値の順です(前年比、%)

Jan-19 0.5 0.1 0.2
Feb-19 0.4 0.0 0.2
Mar-19 0.5 0.2 0.2
Apr-19 0.7 0.2 0.3
May-19 0.7 0.2 0.3
Jun-19 0.6 0.2 0.3
Jul-19 0.6 0.2 0.3
Aug-19 0.4 0.0 0.2
Sep-19 0.3 0.0 0.2
Oct-19 0.3 0.0 0.3
Nov-19 0.2 0.0 0.3
Dec-19 0.3 0.0 0.2
Jan-20 0.3 0.0 0.3
Feb-20 0.2 0.0 0.3
Mar-20 0.1 0.0 0.2
Apr-20 -0.1 0.0 0.3
May-20 0.0 0.1 0.3
Jun-20 0.1 0.1 0.3

刈込平均が急速にあばばばばーになって4月指数でマイナスキタコレになったのですが、何気にそこから反転攻勢に転じているというビューテホーな形、水準があばばばばーなのは見なかったことにする。なおモードとメジアンは相変わらずのクッソ安定っぷりですが、クッソ安定しているということはつまりデフレ傾向というのは観測されていないという話なのでこれまた日銀ニッコリ(なお水準ェ・・・・・・・・)


上昇品目比率、下落品目比率、上昇品目比率−下落品目比率の順です(%および%ポイント)

Jan-19 54.9 37.1 17.8
Feb-19 54.1 37.9 16.3
Mar-19 55.6 35.6 20.1
Apr-19 58.5 33.3 25.2
May-19 58.7 33.5 25.2
Jun-19 59.5 32.5 27.0
Jul-19 59.8 32.7 27.2
Aug-19 59.5 33.1 26.4
Sep-19 59.1 33.1 26.0
Oct-19 59.5 38.8 20.7
Nov-19 62.1 36.1 26.0
Dec-19 60.2 38.0 22.2
Jan-20 61.8 36.5 25.2
Feb-20 60.0 38.4 21.6
Mar-20 57.9 40.5 17.4
Apr-20 58.3 39.2 19.1
May-20 59.1 38.6 20.5
Jun-20 59.7 38.0 21.6

こちらも4月CPI時点から底打ち反転でこれから全勝すれば優勝や!!!ってことで(それは無理)まあ4月の数字見た時はかなり(ノ∀`)アチャー感が強かったですけれども、いやまあ現状水準自体はまだダメダメとは言え、これはデフレ方向への屈曲という感じではないというのがこの統計上は出てますね、という話かと思いますので日銀も徳俵で踏みとどまった物価にハッケヨイですな(謎)。


〇7月会合主な意見というフレッシュネタが投下されたので早速ネタにするのだが内容が・・・・・・

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2020/opi200715.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2020 年 7 月 14、15 日開催分)

・経済物価情勢に関する見解を渋々鑑賞するのだが

金融経済情勢の話ですけれども、例によって経済情勢の方はあんまり面白い話はない、と申しますかジンバブエ大先生が居なくなってから強烈なアレ枠の方が居なくなってしまっているので書いてあることがあんまオモンナイのよね。

『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』ですけれども、まあ別にあっそうという感じではありますが、最後のだけはちょっとおもろかった。

『・新型コロナ対応による民間金融機関を通じた中小零細企業向け実質無利子の貸出は、資金繰りに苦しむ企業の支援として大きな効果が期待できる一方、感染症の影響の収束後も含め、今後実行される一般の貸出に対してスプレッドの下押し圧力となる可能性がある。』

どう見ても鈴木審議委員です本当にありがとうございました。

でもって『(物価)』ですけど、今や物価どうでもよい位の感じになっておりますが、だからこそここを鑑賞する方がオモロイというものでありまして(謎の理論ですかそうですか)、こちらは何故か全部鑑賞。

まずもって楽しいのはこの物価の部分、意見が6つしかないのでして、つまり少なくとも3人は物価に関する主な意見が存在しない、ということですが、前回の時が5つなので前回よりマシ説もあるのですが、うちやる気のなさそうな意見が一個あるので相変わらずですよというのがもうね。

では鑑賞鑑賞。

『・消費者物価の前年比は、当面、感染症や既往の原油価格下落などの影響を受けてマイナスで推移するとみられる。その後、景気の改善などから、プラスに転じ、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』

はいはい大本営大本営。

『・時間はかかるが、物価は「物価安定の目標」に向けて上昇率を高めていく。』

大本営にしてもやる気のない見解過ぎてワロタ。

『・景気回復テンポが緩やかなもとで、見通し期間中に物価が2%に向けたモメンタムを取り戻す姿は想定しにくい。』

ここの所ずっとこれ出てて、決定会合議事要旨でもこれが出る(基本的に「主な意見」として政策委員が載せたものは議事要旨に漏れなく(てにをは程度の変更はあるけど)掲載されています)のですけれども、だから何なの????というのが無いからこの人は一体全体何を言って何をしたいのかが全く見えてこなくて、実は毎回読んでいて結構アタクシのトサカに来る物件です。

『・感染症の物価に及ぼす影響については、企業の価格設定行動や予想インフレ率の動向など、やや長い目でみた二次的な影響も含め、慎重に点検していく必要がある。』

QQE2とかいう何もかも皆懐かしい死語がありましたが、あの時は「予想インフレ率の低下が起きないように先制攻撃で金融緩和拡大」と大変に勇壮な掛け声の下で馬鹿拡大を行った訳ですが、今や予想インフレの動向をのうのうと見てから動こう(動くわけではない)という話になってしまうんですから隔世の感と申しますか、それよりもQQE2とかいう文字列を書いていると、あの時に追加緩和を絶賛しまくっていたのに今はすっかり弊害がどうのこうのとか平然とレポートを出して当時の自己批判は皆無という連中(以下の悪態は内務省検閲により削除されました)。

『・感染症の影響による需給の変調が物価の帰趨にどう影響するかは、上下両方向あるうえ、わが国固有の不確実性もあり、見極め難い。従来以上に予想物価上昇率などの形成メカニズムを丁寧にみていく必要がある。』

ということでこちらの方も「形成メカニズムを丁寧にみていく」とは言っているが先制攻撃の緩和を行うという話になっていないんですから世の中変われば変わるもんです。しかしこの「わが国固有の不確実性」ってナンジャラホイとしか申し上げようがないんですが、なんなんでしょうかね。

『・感染症に伴う経済ショックは負の需要ショックの面が大きいとみられる。経済の回復ペースが緩慢である見通しのもとで、需給ギャップの改善も緩慢と見込まれる。予想物価上昇率は、短期予想の低下が中長期に波及する兆候がある。こうしたことから、物価には、当面、下押し圧力が掛かりやすい。』

これ片岡さんの見解だったら順当なのですが、片岡さん以外でこの意見だとすると、えーっとすいません予想物価上昇率の低下を看過するんですか大丈夫ですかというツッコミになるのですけれども。いやまあ予想物価上昇率の低下を止めるというスペシフィックな政策手段はマネタリーベース直線一気置物理論が空理空論であることが判明した以上直接的な手は無くて、金融政策でできるのはマクロ経済の安定化(それも怪しいと言ってしまうと立つ瀬が無いのでそこはあることにしておく)によって期待が下方屈曲しなければ良いですね的な、あくまでも間接手段になってしまうので手が無いですなあってなもんなのかも知れませんけど、だったらそこはそういうのをキチンと総括して、そもそも置物理論はゴミクズカスダニでしたという自己批判をして頂かないと、結局の所置物リフレ理論に沿った馬鹿政策で馬鹿踊りをするという残念なことが続くんですよねえ。


・「サロンでアフタヌーンティーをしばきながらの優雅な雑談」にしか見えないんですが(個人の偏見です)

という訳で次が『U.金融政策運営に関する意見』でして、まあ確かに字数の問題とかあまり無茶苦茶書けない(無茶苦茶を書いている人はいたがアレは本人大真面目に書いている筈なので止むを得ませんというかアレを堂々と書く(今月号の証アナジャーナルも酷かったですけど)ことが出来るというある意味無敵の人としか申し上げようがない)とかあるのかも知れませんが、まあ読んでてこの小見出しみたいな感想しか起きないんでまたトサカに来る訳ですな。高血圧高血圧。

折角なので(何が折角なのか分からんが)全部鑑賞してやろうじゃないの。

『・3月以降の金融緩和の強化は、金融市場の安定維持と企業金融等の円滑確保の面で効果を発揮している。』

いやまあ良いんですけど、普通金融緩和の強化ってのはマクロ需要に働きかけるために実施するもんであって、米国だったら利下げが金融緩和の強化で何とかファシリティが危機対応って切り分けになっていますがな、という話で、まあCPと社債とETF等の拡大は金融緩和の強化と言えば強化なのですが、「金融緩和の強化」と来てマクロ経済の安定に効果を発揮した、と来ないのは微妙にもにょりますな。その点で申し上げますと次に出てくるところの、

『・金融資本市場や企業金融は安定を維持しており、本行の新型コロナ対応は有効に機能している。当面は、政策の効果をしっかりと見極めていくことが適切である。』

という意見の方がしっくりくるわけで、あくまでもこれは危機対応措置という切り訳をしないと、どう見てもこう何でもかんでもごった煮になってしまって、一部の取り出しが出来なくなるんじゃないかという懸念しか起きないわけですな、うんうん。

『・引き続き、@資金繰り支援の特別プログラム、A円貨・外貨の潤沢な供給、BETF等の積極的な買入れ、の3つの柱により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが重要である。』

こちらでもごった煮になっておりますがこれは公式見解がこうなのだからシャーナイ。

『・金融・為替市場は、迅速な政策対応もあって安定的な動きとなっている中、金融政策面の当面の最優先課題は、引き続き企業の資金繰り支援により、事業や雇用の維持に資することである。』

って言ってるんですが、まああんまりこういうの日銀は何でもできます的にハッタリをカマすのも大概にした方が良いと思うの。むしろうちらはサポートみたいな言い方をしていかないと、次の意見にもありますように、今後企業がソルベンシーの問題になっていく中で金融政策としてその対策を主導的にやるって訳にはいかない(やったら震災手形なので数年後に更なる大規模でドッカーン)のですから、こういう大口を叩いていると状況が悪化したときに日銀の首を絞めるだけでして、そういうのは政府にお任せして、日銀は金融システム及び金融秩序の維持、市場の安定化、決済システムの安定確保などの裏方に回ってフェードアウトした方が良い、というかフェードアウトしないとコロナがこれからこじれて政治方面が爆発したときに一緒に日銀が爆死するリスクが高まるんですが(個人の妄想です)。

『・現在の金融政策の方針を継続し、企業の資金繰りの問題がソルベンシーの問題に発展しないかなどを慎重に点検すべきである。』

てな訳でソルベンシーの問題に発展云々は分かるのですが、点検して日銀何するのとか、発展しないように日銀は何をするの、って話が無い(そもそも出来ないけど)ので、だから何なのとしか申し上げようがないこの見解ェ・・・・・・・・・

『・物価には短期的に低下圧力が強まるとみられるが、現時点では中長期的なインフレ期待は概ね維持されている。2%の物価安定の目標に向けた政策対応は、感染症の影響の収束がみえてきた段階で検討することが適切である。』

お、「2%の物価安定の目標に向けた政策対応」が来ました!!!!この部分、物凄くアタクシの希望的観測(妄想成分多め)を入れますと、コロナ対応フェーズが終了したので3本の柱はいったん成果も出たからお蔵入りにして、次は2%目標達成に向けた金融政策をスクラッチで組んでみましょう!となってドサクサに紛れてただのゼロ金利時間軸政策に戻る、というウルトラCあるで!!!とか勝手に妄想だけは逞しく働くのですが、ただの妄想ですので気にしないでください。

『・当面、政府と中央銀行、および主要中央銀行間での緊密な情報共有を継続し、既往の政策枠組みの十分性を見極め、政策対応が必要であれば迅速に実行することが重要である。その上で、政策が長期化した場合の金融システム面でのリスクには注意が必要である。』

「政策が長期化した場合の金融システム面でのリスクには注意が必要」ってんですから鈴木さんかなとか思いつつ(それ以外の方の意見なら結構狂喜乱舞してしまう)、まあこれ長期化とか言ったらとっくの昔に長期化していますけれども、だいたい日銀執行部の理屈を引っ張ってくると「これらの政策はパッケージとして効果を発揮している」とかいう怪しげな説明で誤魔化されてしまうのですが、やはりティンバーゲンルールの考えに則りまして、各種政策に対しましてどのような効果・副作用があるのか、という話をしていかないと、いつまでたってもパッケージ論で誤魔化されて何も解除できない、というのが続くと思います。

『・経済危機においては、財政政策と金融政策との適切かつ緊密な連携が必要不可欠である。』

あっそう。というか経済危機という認識だったらもっと何か対応無いの???

『・財政政策との間だけでなく、ニューノーマルへの対応に向けた構造改革政策との間でも、政府と本行がそれぞれの役割の下で連携することが重要である。』

尤もらしい事は言っているのですが、これぞだから何??って意見でして、でもって一体全体何をするんでしょうかというお話が何もなくてこれだけぶっこまれる、いやまあ字数の関係でこれ以外の意見を盛り込み過ぎたんでしょうけれども、それにしたってこれだけ単発で出されましても話がフワフワし過ぎておりまして、おまいら政策担当者なんだからもっと具体的な話をしろよサロンで雑談やってるんじゃねーぞと小一時間問い詰めたい。

『・フォワードガイダンスは、デフレの定着を容認せず、物価に紐づいた具体的な条件下で追加緩和措置を講じることが約束されている強力な内容に修正することが適当である。』

ここで片岡さん登場ですが、そこまで言うならそこの屏風の中にいる「強力な内容のフォワードガイダンス文言」というのをちょっと出してみてくださいお願いします。単発見解ならともかく、何度も強力なフォワードガイダンス云々っての反対理由にしているのにいつまでたってもその具体的な文言が出てこないのはさすがにお前は政策担当者としての自覚があるのかと小一時間問い詰めたい。もちろん「対案無しでも反対」ってのを否定する気は無いんですが、この人の場合ガイダンス文言を変えるべき、という具体論に踏み込んだ反対なのですから、対案出せるでしょうよ、と思うんですけどねえ。まさかとは思いますが「15年国債金利を0.2%未満」がトラウマに(銃声により以下聴取不能)。


『・経済を確実に回復軌道に乗せるためには、企業自身が成長戦略を立案・実行するマインドに早く戻す必要があり、中期的な視点から金融政策が企業経営に与える影響についても、慎重に点検すべきである。』

気を取り直してまた片岡さん以外に戻って参りましたが、片岡さんの前のさっきの意見もアレ感が漂いましたが、最早ここまで来ると何を言いたいのかが全く分からんのですが何ですかコレ???

『・今回の危機の経験を踏まえ、ウィズ・コロナ時代の金融政策のあり方について、検討を深めるべきだろう。物価や成長期待の更なる下振れと長期化のリスクに注意を払いつつ、政策の波及経路と効果の検証も必要である。』

何かこう政策の見直しでもするんでしたら歓迎しますけど、まあ今回の主な意見って特にこの最後の方に並んでいる3つ(片岡さんのを除いて)が思いっきり「貴族様がサロンでアフタヌーンティーを楽しみながら社会情勢について雑談をしている」みたいに読めてしまうのはアタクシの偏見ですかそうですか。

などと悪態をついていますが、なんかまあ要するにフワフワした話が多いわという感じが否めない(個人の見解です)次第でして、もっとこう円卓の中で殺気だった雰囲気の中丁々発止と意見が交わされるって雰囲気が漂ってこないもんですかねえ(少なくとも昔の議事録を見ると時には殺気だっていたようなのも見受けられる)、とは思いました。

まあ何ですな、ちょうど今日の駄文のマクラ事案(後日の為に補記しておくと『菅官房長官「ワーケーション」普及で観光促進を』というズッコケニュース)があって、先日も「Go To トラベル」キャンペーンとか、なんか政府全体が「パンが無いならケーキを食べればいいじゃない」みたいなアレ化著しいわとなっている(個人の偏見です)中でこれ見たから余計にトサカに来ているというのはあると思いますがちょっとねえ・・・・・・・・・・

などと言っていると最後の多分鈴木審議委員のご意見を飛ばしそうになりますな、トリはこの意見。

『・信用コストの増加、低金利下での貸出利鞘や運用収益の減少により、金融機関の自己資本利益率が低下する可能性がある。こうした中、金融仲介機能面への副作用の累積にも配慮しつつ、実体経済の悪化が金融システムの安定性に影響を及ぼすことがないよう、金融政策運営の観点からも、これまで以上に慎重な点検が求められる。』

まあこれ以上書きにくいというのはあるのかも知れませんけれども、そろそろもうちょっと剛速球を放り込みに行くというのはどうでしょうか???すなわち「現在の金融政策パッケージの中で、既に役割を達成したものを従来通り継続することは、金融不均衡の発生からの金融システムの安定性への悪影響が懸念されるため、個別政策手段にブレイクダウンした政策の点検が求められる」みたいな感じで、って書いててこれでは剛速球にはならんかな、と思いましたが、まあ火の玉ストレートじゃなくても良いですけど、もうちょっとぶっこんで頂きたいし、それによって金融政策議論をもうちょっと深めていただきたい(というかこれ以上浅くなりようがないですかそうですか)と存じます次第でございます。

#思わず長くなってしまいましたアタクシの無駄な愚意見が大杉勝男でしたなすいませんすいません



2020/07/27

お題「虫干しネタ成敗シリーズで展望レポート基本的見解だがネチネチ見ると多少のアレが」

ちょwwwww
https://news.yahoo.co.jp/articles/eb99a9b2a2a92a26a7f50132fa2917f3965e48e1
企業に「在宅7割」要請へ 大人数会合自粛を 政府
7/26(日) 21:02配信

『西村氏は会見で、通勤者は一時2〜3割にまで減っていたが、最近は7割程度に戻っていると強調。「(各企業は)後戻りせず、多様な働き方の中でテレワークの割合を維持してほしい」と訴えた。』(上記URL先より)

いやあのですね、アタクシらの関連する市場関連のお仕事って世の中的にはかなりリモートができそうな(気がする)業務ではありましたけど、緊急事態宣言中の金融市場のあのド閑散振りを見ますに、やっぱりこの業務でもこうなのですから、そもそも「在宅7割」ってのはあれは過去の蓄積がある中で一時的に回すから回っていたとしか思えんのよ(あくまでも個人の感想です)。

然るに「後戻りせず」って在宅7割が全ての企業で出来て、それで経済活動が普通に行えると思ってるとは馬鹿の三冠王の称号かこいつはと思ったが、それよりも頭おかしいのはGoToトラベルだの大規模イベントだのの方はそのまま放置というかトラベルの方今週から拡充するみたいなニュースをやっていた気がするという支離滅裂にも程があるんですけど。

・・・・・・と書いてて気が付いたのですが、先週は平日に何も言わなかったのに連休に入る時に突如外出自粛とか言い出した都知事がいたので、この馬鹿大臣は都知事の向こうを張って「休みは旅行に行きましょう平日は在宅で」って逆張りをしているだけなのかも
しれませんな、と考えたら益々情けなくなってきました。

とりあえずこの馬鹿大臣達への物流が7割止まりますようにお月さまにお願いしておくわwwww


などと連休明けのリハビリで血圧を上げてみたもののネタは虫干しネタですすいませんすいません。

#昨日こっそり更新した(ネタは6月議事要旨)のでこの文章の続きに載せたままにしておきますね

〇また虫干しネタで申し訳ないが今更の展望レポート基本的見解

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2007a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2004a.pdf(前回4月)
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200616a.pdf(6月会合声明文)

なんと鏡しかやらないうちにECBはあるわ総裁会見でついネチネチやったら長くなって時間を使いすぎるわとかやっておりまして色々溜まってしまってすいません(しかも連休中に成敗したの一本だけでした)。

・現状認識:水準は下がっているものの方向性が下向きではなくなっている(4月対比で)

『1.わが国の経済・物価の現状 』である。

『わが国の景気は、経済活動は徐々に再開しているが、内外で新型コロナウイルス感染症の影響が引き続きみられるもとで、きわめて厳しい状態にある。』(今回)
『わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、きわめて厳しい状態にある。』(6月声明文)
『わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、厳しさを増している。』(4月展望)

現状の総括判断を見ますと極めて厳しい状態ということで6月からヨコ、4月から水準は下がっていますが、厳しさを増している的な下向き方向の表現が外れていること、ついでにコロナの影響が「引き続きみられる」となっていて、こっちも横ばい(何をもって横ばいというのか表現が難しいが)っぽくなっているので、水準自体はあばばばばーだがちょっとこう底打ちっぽい表現にしています。まあ見通しがそうなのですからそうなんですけど。


『海外経済は、持ち直しに向かう動きもみられるが、感染症の世界的な大流行の影響により、大きく落ち込んだ状態にある。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は大幅に減少している。』(今回)
『海外経済は、感染症の世界的な大流行の影響により、大きく落ち込んだ状態にある。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は大幅に減少している。』(6月声明文)
『海外経済は、感染症の世界的な大流行の影響により、急速に落ち込んでいる。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は減少している。』(4月展望)

海外経済の判断も水準はあばばばばーですが6月には無かった「持ち直しに向かう動きもみられるが」というのをぶっこんでいるのが明るい材料。まあ折角の明るい話も緊急事態宣言を伴わない企業活動のロックダウン”要請”が上記ニュース(後日の為に追記しておくと7/26に西村担当相が「在宅7割」をまた言い出している件な)がぶっこまれるというこの悲しさですが、まあ15日の時点では知らんがなですわな。ナムナム。

『企業収益や業況感は悪化しており、設備投資は横ばい圏内の動きとなっている。感染症の影響が続くなかで、雇用・所得環境には弱い動きがみられている。個人消費は飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少してきたが、足もとでは、持ち直しの動きがみられる。住宅投資は緩やかに減少している。この間、公共投資は緩やかに増加している。』(今回)

『企業収益や業況感は悪化しており、設備投資は増勢の鈍化が明確となっている。感染症の影響が続くなかで、雇用・所得環境には弱めの動きがみられており、個人消費は飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少している。住宅投資は緩やかに減少している。この間、公共投資は緩やかに増加している。』(6月声明文)

『企業の業況感は悪化しており、設備投資はこのところ増勢の鈍化が明確となっている。感染症拡大の影響が強まるなかで、雇用・所得環境には弱めの動きがみられ始めており、個人消費は飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少している。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移しており、公共投資は緩やかに増加している。』(4月展望)

設備投資の評価については「増勢の鈍化」が「横ばい圏内」になっていますが、これってまあゆうてみれば「設備投資がネットマイナスになってきていない」という意味ではよく頑張った、感動したって奴です(だいたい日銀の評価的にも設備投資が底堅いとなっている)が、雇用所得の表現が6月と比較して下方修正、消費に関しては「足もと持ち直し」と上方修正していますが、そもそも雇用所得が悪化する中で個人消費がサステナブルに強い訳が無いので、どっちかに寄せられるんでしょうね。

『わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りは悪化しているなど、企業金融面で緩和度合いが低下した状態となっている。』(今回)
『わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下している。』(6月声明文)
『わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下している。』(4月展望)

金融環境では企業の資金繰りが悪化する→悪化しているということで、まあ水準がアカンのはアカンのですが、状況の悪化は止まって来ましたという感じになっています。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、原油価格の下落の影響などにより、0%程度となっている。予想物価上昇率は、弱含んでいる。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、原油価格の下落の影響などにより、0%程度となっている。予想物価上昇率は、弱めの指標がみられている。』(6月声明文)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、弱めの指標がみられている。』(4月展望)

鏡にもありましたので重複になりますが、ここがしらっと下がっているのが今回のチャーミングなポイントで、どうせ物価目標行かないんだし、2%のモメンタムというのを4月展望で削除した、ということで、モメンタムという無理くりな話をしなくて良くなり、しかも物価目標達成がどうのこうのとか言われなくなってきた所でしらっとインフレ期待の「弱含み」というのに堂々と言及、というのは要するにインフレ期待が下振れすることが即座に金融政策判断に結びつかない(というのも変なのでスルーされている状況という感じですかね)となったらさっくり判断を下げるというのがご都合主義にも程があって爆笑の発作を禁じ得ない。


・先行き見通し:回復が後ずれするが中長期的な見通しは同じ、ただし強めの前提あり

サクサクと『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し 』に参ります。前回の展望レポートは「目先の見通し」と「コロナがある程度成敗した後の見通し」に分かれていましたので、体裁が違って確認しにくいので何かその辺適宜やってみます。基本今回のに沿って行きますから『(1)経済の中心的な見通し 』から参ります。

『先行きのわが国経済は、経済活動が再開していくもとで、ペントアップ需要(抑制されていた需要)の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、本年後半から徐々に改善していくとみられる。もっとも、世界的に新型コロナウイルス感染症の影響が残るなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。その後、世界的に感染症の影響が収束すれば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、わが国経済はさらに改善を続けると予想される。』(今回)

『先行きのわが国経済は、経済活動が徐々に再開していくとみられるが、当面、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から、厳しい状態が続くと考えられる。その後、感染症の影響が収束していけば、ペントアップ需要(抑制されていた需要)の顕在化や挽回生産が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、わが国経済は改善していくとみられる。』(6月声明文)

『やや長い目でみた経済の見通しについては、後述するように、きわめて不確実性が大きいが、今回の見通しにおいては、感染症拡大の経済への影響が、世界的にみて、本年後半にかけて和らいでいくことを想定している2。こうした想定のもとで、海外経済は、本年後半頃から、ペントアップ需要や挽回生産が押し上げに作用し、各国・地域の積極的なマクロ経済政策の効果も発現すると予想されることから、成長ペースは高まっていくとみられる。わが国経済も、内外で感染症拡大の影響が和らいでいけば、改善していくと考えられる。』(4月展望)

分かち所が難しかったのでまとめてドンと引用してしまいましたが、要するにナローパスが前提となっていて、本年後半から改善していく(4月展望よりも少し後ずれさせている)という話でございまして、そらまあコケっぱなしというのは無いと思うのでそれはそれで良いのかなとは思いますが、ニューノーマル的な事になるというのはメインでは置いていない(リスク認識の方にはある)というのは注意が必要。

まー確かにマクロ的に見たら元に戻る話、ただしミクロ的には観光だの外食だのみたいに壊滅的に食らう所がありまっせ、というようなのが基本的な考え方なんでしょうね、ということですが、一番ありそうなのはこの「本年後半」が次の展望(10月)では「本年度後半」になり・・・・っていうパターンですかねえ。ナムナムナム。

でもって前回展望が何せ簡略バージョンだったので今回こんなのが入っている。比較対象は無いので引用だけ。

『新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行は、外出制限や営業・生産活動の停止といった厳格な公衆衛生上の措置の実施も伴うことで、世界経済に大きな影響を及ぼした。現在、感染症の拡大が収まりつつある国などでは、こうした措置が段階的に解除されてはいるが、感染症への警戒感から、企業や家計の経済活動は引き続き抑制的である。』(今回)

『今回の見通しにおいては、先行き、大規模な感染症の第2波が生じないことを前提としつつも、世界的に感染症が収束するまでは、企業や家計の自主的な感染防止への取り組みが、経済活動を抑制する力として、徐々に和らぎながらも、作用し続けると想定している2。』(今回)

ということなので、さっき申し上げたようにニューノーマルで潜在成長が下がるとか、そういう話は前提に置いてない。それから「大規模な感染症の第2波が生じないことを前提としつつも」云々ですけれども、まあ展望レポートはこう書くしかないのは分かるのですが、先週ネタにした総裁会見でも「でもって今は第2波でしょうか」みたいな愚問が登場する訳で、あんまりこうキャッチーで意味が微妙に取りにくい言葉をこういうレポートで使うのってどうなのかと思う訳で、「感染症の再拡大による大規模な経済抑制が発生しないことを前提としつつも」というように書いた方が良いのではないか、と思うの。つまり、通常のインフルだったら第2波どころか毎年第10波くらい平気で来ているけど別にそれで経済がロックダウンされるわけでも無かったら経済見通し的にはあんまり気にしなくて良い訳で、第2波が来たってその時に普通にちょっと質の悪いインフル状態にまでなっていたらバッチコーイ(来なくて良いけど)状態になってるから、第2波云々が問題なのではなく、それによって経済がシュリンクするかどうかが問題なのであって、そういう点、ここの「第2派」云々の表現は正直宜しくないと思ったのですけど毎度の個人の感想ですなので皆様どう思いますかねえ、と下駄を預ける。

その続きは需要項目別の話になるので前回展望と何となく比較もどきを。

『こうした想定のもとで、先行きの海外経済は、感染症の影響が和らいでいくのに伴い、積極的なマクロ経済政策にも支えられて、大きく落ち込んだ状態から回復していくが、そのペースは緩やかなものにとどまるとみられる。』(今回)

『こうした想定のもとで、海外経済は、本年後半頃から、ペントアップ需要や挽回生産が押し上げに作用し、各国・地域の積極的なマクロ経済政策の効果も発現すると予想されることから、成長ペースは高まっていくとみられる。』(4月展望、さっきの再掲)

文章の流れ上再掲になってしまいますが、先行きの見通しに関して「落ち込みからの復帰」のペースを後ずれさせています。なお最終的な所では似たような話になる、というのはそもそも前回展望でもそうですが、今回も「ニューノーマルで潜在成長などの経済構想に屈曲が生じない」というのが前提になっているからですな。

『わが国の輸出は、海外経済の回復に伴い、徐々に増加していくとみられるが、当面抑制された動きが続くと考えられる。インバウンド消費については、入国に制限がかかり続ける間、落ち込んだ状態が続くとみられる。』(今回)

『輸出は、海外経済の成長ペースが高まっていくもとで、再び増加に向かっていくと予想される。』(4月展望)

でもって国内ですが、

『国内需要は、感染症の影響が和らいでいくのに伴い、水準を回復していくと考えられるが、感染症の影響が残る間は、低い水準にとどまるとみられる。すなわち、個人消費などの家計支出は、経済活動の再開に伴い、ペントアップ需要の顕在化に加え、政府の経済対策や緩和的な金融環境も支えとなり、大きく落ち込んだ状態から持ち直していくとみられる。ただし、人々の感染症に対する警戒感が続くもとでは、抑制的な状態が続くと考えられる。設備投資などの企業支出は、輸出や消費の大幅な減少の影響を強く受ける業種を中心に減少したあと、感染症の影響が和らぐもとで持ち直していくとみられる。』(今回)

『また、国内需要は、ペントアップ需要の顕在化が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて持ち直しに転じ、先行き、増加していくと考えられる。』(4月展望)

今回のは説明が長くなっていますので比較しにくいのですが、まあ中期的に見たら別に何か変化をしている訳ではない、という感じだと思います。

『この間、政府の経済対策や緩和的な金融環境などによって、事業の継続や雇用の維持が支えられるとともに、わが国の企業や家計の中長期的な成長期待は大きく低下しないとみられる。そうしたことから、その後、グローバルに感染症の影響が収束すれば、海外経済の成長を背景に輸出は増加を続け、家計や企業の支出は、再び、安定した増加基調に復していくと考えられる。』(今回)

と、こちらにもありますように、そもそもがニューノーマルで経済構造に屈曲が生じないというのが前提になっておりまして、ってまあ屈曲するというような前提を置くのは、何とかストだったら自由気ままに置けますけれども、さすがに政策当局的にそこを決め打ちで置きに行くのは無理があろうかと思われますのでシャーナイナイ。


・物価見通し:よくよく見たら弱含んだインフレ予想が経済改善したら上昇するというアクロバット予想

『(2)物価の中心的な見通し 』に参ります。これまた前回展望との比較がむずいんですが。

『消費者物価の前年比は、当面、感染症や既往の原油価格下落などの影響を受けて、マイナスで推移するとみられる。感染症の影響から、経済活動の水準が低い状態が続くもとで、景気感応的な財やサービスの価格が下押しされるほか、ひと頃に比べて大きく下落した原油価格が、エネルギー価格を通じて消費者物価を押し下げると考えられる。そうしたもとで、中長期的な予想物価上昇率も、引き続き弱含むと考えられる。』(今回)

『その後、経済の改善に伴い、物価への下押し圧力は次第に減衰していくと予想される。加えて、エネルギー価格下落の影響も剥落していくとみられる。そうしたもとで、消費者物価の前年比は、プラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。中長期的な予想物価上昇率も、再び高まっていくと考えられる。』(今回)

声明文は体裁上短いのですが、前回展望も思いっきり物価の所は安直バージョンになっております。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、感染症や原油価格下落などの影響を受けてマイナスで推移するとみられる。その後は、景気が改善していくもとで、プラスに転じたあと、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(6月声明文)

『消費者物価の前年比は、プラスで推移しているものの、先行きは、当面、感染症の拡大や原油価格の下落などの影響を受けて弱含むとみられる』(4月展望)
『物価については、このように景気が改善していくもとで、消費者物価の前年比は、先行き、徐々に上昇率を高めていくとみられる。』(4月展望)

ということで、今回は物価目標達成について碌にツッコミが来ないであろうし、そもそもその点と金融政策判断のリンクを思いっきり外しまくっております状態になっている、というドサクサに紛れてエライ丁寧に説明していますなあっはっは。

でもって思うのですが、近い将来の見通しでは『中長期的な予想物価上昇率も、引き続き弱含むと考えられる。』となっていまして、その後が経済の改善に伴い『中長期的な予想物価上昇率も、再び高まっていくと考えられる。』となっているのですが、そもそもが予想物価上昇率がコロナ前でも全然アガランチ会長だからと言ってああでもないこうでもないと言い訳をしていたという事実が厳然としてあるのに、何で弱含んでしまった(というのは最初の現状総括判断にある通りですからして、この判断通りであれば既に弱含んでしまっている訳ですよ)予想物価上昇率が今回に限っては経済改善すると強含むとなってしまうのか、その根拠は何なんでしょと今更ながらに思いますな。

以下はリスク認識の話になりますが、まあ基本的に言っていることは同じで、今回はいったん第1波の目途が付いたので次は再拡大でのロックダウンを警戒、というのが入っている位の変化かなーというのと、4月にサボっていた第1の柱、第2の柱の点検が復活した件になりますが時間と量の関係上スルーします。たぶんネタにはしない予定。








2020/07/26

お題「6月会合議事要旨だが特に政策論議の部分が評論家チックなのが目につくんですけどね」

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020072400410&g=pol
安倍首相、1カ月超会見なし GoTo混乱も「閣僚が説明」
2020年07月25日07時33分

だって会見したら碌な事にならないし、引っ込んでいれば支持率が回復しちゃうんですから、そんなの支持率回復させる国民の方が問題だと思うわとしか申し上げようが無いですな。ワイドショーとかでガンガンネタにして支持率また下がって来れば出てくるんじゃないですかねえ(鼻ホジホジ)。

それよりもどう見ても現政権というかジャパンの馬鹿とか醜態を一手に引き受けて日々ヘイト集めに余念のない某N大臣様ですが、あれ自分が損害担当艦の積りでいるならまあ大悟の境地ということである意味立派とも言えるのですが、あのお方の今までの言動から察するに、本人は「最前線で活躍して国民からの期待を一身に背負っている俺氏カッコイイ!将来の総理にまた近づいた!!」と素で思っていそうなところが恐ろしいのでございますですよ。

なお、今朝は曜日を間違えている訳ではなくて、例によって連休最終日に慌てて証文を出す虫干しネタ成敗ですのでよろしくです。

〇6月決定会合と言えば3本の鉛筆が自動的に拡大された会合ですが議事要旨を拝読

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2020/g200616.pdf

6月15−16日の会合となると今やだいぶ前の話みたいになりますが、米国でコロナ再拡大とか、急に北京でコロナとかいう話が出た(そういや続報があんまりないまま中国の方は立ち消えになってしまいましたなあ)時期でしたの、なお東京の新規コロナ判明者は7月25日とかの今から見ますと桁が1個少ないというのがもうね。


・何ちゅうかさあそんなの見てるよりも大事なのがあるだろうと

いきなり6ページの『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』まで飛ぶんですが、議事要旨見てて???となってしまったアタクシがいる。最初の『1.経済情勢』のうち国際金融市場の話になるんだが。

『国際金融市場について、委員は、各国・地域の積極的な財政・金融政策や、先進国などでの経済活動再開に向けた動きから、ひと頃の緊張が緩和しているとの認識で一致した。もっとも、委員は、内外経済の不透明感が強いもとで、株式市場では、依然としてボラティリティが高い水準で推移するなど、引き続き、神経質な状況にあるとの見方を共有した。』

という話で、この「ボラティリティが高い水準」ってのですが、普通に「値動きが落ち着いていない」というのではない表現で、これはこれで微妙だな、と読んだ瞬間に思ったのですが、その次の部分で腰が砕けた。

『複数の委員は、米国株式市場のSKEW指数(市場参加者のリスク認識の偏りを示す指標)が高止まりしており、市場では下方のテールリスク(大幅な株価下落)が意識されていると指摘したうえで、実際、6月中にダウ平均株価が 1,800 ドル超急落する場面がみられるなど、不安定な動きとなっていると述べた。』

SKEWの話が出てくるとかワロスワロスとしか申し上げようが無いのですが、これってアウトのプットのオプションのインプライドボラがコールのそれよりも高いとかそういう奴の話だと思う次第で、確かにちゃちゃっと調べてみたらCBOEがご丁寧にもインデックス出しているようですけど、まあ別に意味のない指標とは言わんけど、ここまで底値からほぼ一方的に戻してる相場なんだからアウトのプットの方をちょっと抑えておくかっての別にテールリスク云々よりもここまでの底値からの戻りの勢いがあるからじゃネーノとか、まあ色々と解釈が出来る話だと思うのよ。

というかですね、今まで議事要旨でこんな話特に無かったと思いますし、いやまあ昔どっかであったのかも知れませんけど、この手のオプション市場からインプライされたなんちゃら指数って、正直申し上げて継続してウオッチしているとそれなりに意味のあるインプリケーションを出せるとは思うのですが、単発で急にこれだからどうとか言うのって典型的な生兵法は怪我の元の世界でございまして(個人の感想です)、いやまあ確かに国債の店頭オプション(当時の事情により国債の一部のマーケットメークもやりながら)やってた時には先オプのSKEWとか一応見ていましたけど、あれがこうなったから急に市場がテールリスクを意識して云々ってのはケースバイケースだったという記憶しかなくて、SKEWが高止まりしており(キリッ)とかいきなりそれでマクロ的な話をするというのはちょっと?????なんですけどね。

しかしまあ何ですな、これまた????だったのは「複数の委員は」とか言い出しておりまして、いやこれ毎回の会合でSKEWの話が出ているならともかく、いきなり今回単発で登場しかも複数委員ってナンジャラホイという感じでして、急に知った知識を振り回して楽しんでいるにしても何で複数の委員なんじゃろ、とまあ物凄い勢いで不思議だった部分でございました。


・実体経済比割高な資産価格の修正は本来望ましいのではないかと思うのですが・・・・・・・・・・

さっきの「ダウ1800ドル下げ」って6月10日木曜の米国相場でしたなそういえばとか思いながら折角なのでさっきの続きを見ますと、

『ある委員は、金融市場では、先行きへの期待から、足もとの実体経済の厳しさと比べると高値となっているとの見方を示したうえで、資産価格に修正が生じないか、今後の市場動向を注視する必要があると指摘した。』

という話なのですが、まあその後の状況はご案内の通りで確り戻っている訳でして、さてこの辺の評価が7月になったらどうなっているのかというのが楽しみとしか申し上げようがないですが、この部分もツッコミどころが実はありまして・・・・・・・・・・

えーっとですな、こちらの委員様、上記のように「先行きへの期待から、足もとの実体経済の厳しさと比べると高値となっているとの見方を示したうえで、資産価格に修正が生じないか、今後の市場動向を注視する必要がある」と仰せなのですが、冷静に考えるとそれも阿呆な論点でございまして、資産価格が実体経済の厳しさと比較して高値になっているんだったら、それは本来高値が修正されて然るべきなので、資産価格の適度な修正はむしろ望ましいと考えるのが中央銀行で政策をやっている人だったら通常なんじゃないの??????と思う訳ですよ。つまり「今実態を乖離した割高なプライシングが行われているなら資産価格の修正は望ましいのだが、割高修正が起きすに更に資産価格の上昇が進むのは宜しくない」という意味で話をするなら中央銀行家っぽくて(;∀;)イイハナシダナーになるのですが、この文章、どこからどう見ましても「修正が起こるのはアカン」という文脈にしか見えないのでありまして、ちょっとお前は何を言ってるんだという感じなのよ。


つーわけでね、さっきの唐突に登場したSKEWと言い、この「今実体経済よりも高いので修正が生じないか注視が必要」ってのも、どっかの証券会社の何とかストみたいな話になっていませんかという所でございまして、中央銀行ってのはもっと中長期的な視点で考えた話をしてくれよ何目先の金融市場に振らされてるんだよという所ではございます、とまあ意地悪くツッコミをしてみました。

あとこれは議事要旨の作り方の問題だと思うのだが、

『別のある委員は、原油価格の動向について、4月末にかけて急落したあと、産油国の減産の動きなどから、徐々に値を戻しているが、原油需要の本格的な回復は当面期待できないため、原油価格の低迷は長期化する可能性があるとの見方を示した。』

どの位の価格をもって低迷というのかが良く分からん。まあ今年(今年度ではない)の頭が60ドルだからそこから見たら40ドルは十分に低迷なのでしょうけれども、「低迷が長期化」とか言われるよりも「コロナ前の水準には戻らん」(たぶんそういう意味なんでしょうけれども)と書いてもらった方が言いたいことが伝わると思うんだが。


・高頻度データキタコレ

ちょっと飛んで海外経済の部分で米国経済みたらこんなのが。

『地域毎にみると、米国経済について、委員は、感染症の影響から、大きく落ち込んだ状態にあるとの認識を共有した。何人かの委員は、財政・金融政策の下支えのほか、経済活動も徐々に再開されていることから、5月の経済指標は予想以上のリバウンドをみせたが、失業率は依然歴史的な高水準にあると指摘した。複数の委員は、感染症の帰趨だけでなく、デモの発生など社会情勢にも不透明感が出てきている点に懸念を示した。一人の委員は、米国の高頻度データをみると、人々の移動自体は戻ってきているが、消費や雇用といった経済活動の戻りは鈍いことが特徴的であると述べた。』

まあどうでも良いちゃあ良いのですが、高頻度データって日銀結構大好物ですよね。最近は統計だけではなくて高頻度データを取って云々みたいなのもあったりしますし。まあそれはそれで良いんですけれども、だいたい頭の良い人の陥りがちな落とし穴は高頻度データだけじゃなくて新しいイノベーティブな何ちゃらみたいなのが登場すると、その新しいものが楽しいのでそっちに首ったけになってしまって従来の統計もそうだし、アネクドータル的なものを軽視しちゃったりしそうな気がする(個人の偏見です)のがアレなんですけど、最近は好きですよねビックデータ分析、というただの余談でした。


・まあ何にせよ雇用がアカンのだが

さっきの米国の所でも雇用がアカンというのがありましたが、さらにちょっと飛んで日本経済の所に進みますけれどもね。

『わが国の景気について、委員は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、きわめて厳しい状態にあるとの認識を共有した。』

てなところから始まりますが、

『多くの委員は、世界経済の落ち込みから、わが国の輸出や生産は大幅に減少しているほか、緊急事態宣言に基づく外出自粛を主因に、4月の消費関連指標は記録的な落ち込みとなっており、4月会合で懸念していたような状況がデータでも確認できたと指摘した。』

『また、何人かの委員は、4月の就業者数は非正規労働者を中心にはっきりと減少し、求職活動をやめた結果、非労働力人口も増加するなど、雇用・所得環境に弱めの動きがみられているとの認識を示した。』

ということで、まあ問題は雇用ですし、この後に出てきた6月短観も雇用関連DIがあばばばばーになっていた訳でもうねという所ですな。でもってその先に行きますと、

『もっとも、何人かの委員は、わが国では感染者数を他国比抑えることに成功したほか、5月には、緊急事態宣言も解除され、マインド指標も改善に転じるなど、ごく足もとでは、底打ちの兆しも窺えるとの見方を示した。』

「わが国では感染者数を他国比抑えることに成功した」とはこれはまた良いフラグですな、ナムナム。

『この間、一人の委員は、感染症の影響によって回収率が低下するなど、統計データの精度が落ちているため、経済の実態が掴みづらいことは悩ましいと述べた。』

ということでここでも高頻度データネタキタコレなのはちと笑ってしまいました。


・日本語で書け日本語で

まあさっきのと含めてこれも編集の問題のような気がするんですけどね・・・・・・・・・・・

でもって景気の先行きについてですが、中身はどうでも良いのですがこの部分はナンジャラホイなので。
『そのうえで、何人かの委員は、経済活動再開に伴い、今後は、やや長い目でみて、家計や企業のマインドセットや行動様式がどのように変化していくかといった、感染症のセカンド・ラウンド・エフェクトに注目していく必要があるとの見方を示した。』

いやそこは日本語で書けよ却って意味が分かりにくくなってるわという感じでして、要は感染症の後の「あたらしい日常」でも「ニューノーマル」でも何でも良いんですけど、そういう変化を注目する必要がある、って話を言いたいと思うんだが、何もここで横文字使わんでもええじゃろお前はルー大柴かと思ってしまいましたので敢えてツッコミを入れてみました。


・しかし高頻度データ好きやね

国内物価の話でも高頻度データネタが登場とかどんだけビックデータ推しになっとるねん、という印象を受けたのがこの議事要旨。引用しますと、

『物価面について、委員は、消費者物価の前年比は、除く生鮮食品、除く生鮮食品・エネルギーのいずれも、原油価格の下落の影響などにより、0%程度となっており、予想物価上昇率については、弱めの指標がみられているとの認識で一致した。』

というのは前座でして、

『もっとも、複数の委員は、スーパーなどを対象にした日次・週次のCPIや、最頻値などの基調的な物価指標の底堅さをみると、現時点では、日常的な財・サービスの分野で、値引きで需要を奪い合うというデフレ的な価格設定行動が拡がる状況にはなっていないと指摘した。』

日次データ好きやね、と思いました。


・でもって先行きの物価ですが

『先行きの物価について、委員は、当面、感染症や原油価格下落などの影響を受けて、マイナスで推移するとみられるが、その後は、景気が改善していくもとで、プラスに転じたあと、徐々に上昇率を高めていくとの見方を共有した。』

はいはいそうですかそうですか。

『そのうえで、ある委員は、やや長い目でみた物価の動向については、現時点では、需要の急速な回復が期待しにくいもとで、予測可能な将来に、物価がモメンタムをもって2%に近接していく姿を予想することは難しいと指摘した。』

片岡さんなら普通だがそれ以外の意見だったら笑う。

『別のある委員は、雇用・所得環境の改善と物価上昇の好循環に弱めの動きがみられる中、消費者物価の低迷が長引く場合には、予想物価上昇率の適合的形成に及ぼす影響が懸念されると述べた。』

ナンジャコリャという感じの意見もありまして、だから何かするのしないのとかそういう話ではある。


・リスク要因の話はちょっとおい的なアレが

『経済・物価見通しのリスク要因として、委員は、新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさといった点について、きわめて不確実性が大きいとの認識で一致した。』

というリスク要因の話ですが、

『更に、委員は、感染症の影響が収束するまで、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要であるとの認識を共有した。』

って金融システムの安定を維持したいと思ってるんだったらマイナス金利止めろやという話だし、さっき感染症による新しい日常の話してたのに、何で中長期的な成長期待が大きく低下しないという前提を置けるんだという感じでして、ちょっと飛ばしますとその先に、

『何人かの委員は、こうした感染症再拡大への懸念などから、企業や家計が防衛的な行動を続ければ、成長期待が下方屈折するとともに、需要が長期にわたり低迷する可能性もあると指摘した。』

ってあるんですが、感染症再拡大の前に新しい日常的な話の方がアレではないかと思います。まあそれをもって「感染症再拡大への懸念」って言ってしまえばそうなのです(そもそも新しい日常って感染症再拡大を避けましょうって話から来てるんだし)けどね。

ということで、リスク要因としている下方屈曲しない方のパスがナローパスにも程があるという気が。



・さて政策のパートに来ると色々とアレ

日曜なので時間があるということでいつもだと流すところもぐちぐちとネタにしてみましたが、政策の部分が本来のネタでして、『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』に入る。

『まず、委員は、3月以降、日本銀行が新型コロナウイルス感染症の影響への対応として、導入・拡充してきた措置について、議論を行った。』

ほーん。

『委員は、@新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、A円貨・外貨の上限を設けない潤沢な供給、BETFなどの積極的な買入れ、の3つの柱に基づく金融緩和措置は、所期の効果を発揮しているとの認識を共有した。』

「3つの柱に基づく金融緩和措置」であって、5月に新コロオペパート2を入れて既存オペの期限を延長ということで「導入・拡充してきた措置」だという事ですが、だったら何で5月の金融政策決定は現状維持扱いの声明文なのかと小一時間問い詰めたい、と何度同じ事を言うのかお前はと言われそうですけれども、こういう手続き論というのは元々民主的なプロセスを経て任命されていない中央銀行としては物凄く重要で、政策委員会の皆様が民選ではなく、独立性も担保されている以上は、その組織としての決定プロセスにおいて勝手気ままな事をするというのは、お前は関東軍かという話に通じる訳で、アタクシそういうのは無茶苦茶気にするんですよね。

『何人かの委員は、企業等の資金繰りには依然ストレスがかかっているが、間接・直接金融の双方で緩和的な資金調達環境が維持されており、企業は必要な資金を低利で確保できていると指摘した。また、何人かの委員は、金融市場をみても、株式のボラティリティはなお高めであるなど神経質な動きも残ってはいるが、全体としてはひと頃に比べ安定を取り戻してきているとの見方を示した。』

後半の金融市場の認識、さっきの部分で指摘されていることとちと違くねえかと思うのだがスルーして次。

『こうした認識を踏まえて、委員は、金融政策の基本的な運営スタンスについて議論を行った。多くの委員は、3月以降、感染症への影響に対する金融緩和措置を相次いで打ち出してきており、当面は、一連の政策の効果を丁寧かつ慎重に点検していくことが重要であるとの認識を共有した。』

>3月以降、感染症への影響に対する金融緩和措置を相次いで打ち出してきており
>3月以降、感染症への影響に対する金融緩和措置を相次いで打ち出してきており
>3月以降、感染症への影響に対する金融緩和措置を相次いで打ち出してきており

同じ話を何度するんだという件ですけど、逆に物凄い勢いで気になるのは、5月臨時会合で打ち出した物件が金融緩和なら金融緩和でも良いのですけれども、だったら5月会合における決定事項の公表プロセスがおかしくないか、ってツッコミを政策委員会の誰か行わないの???という方が気になる訳でして、政策委員の皆さんがどスルーしてしまっているとなると、それは政策委員会のガバナンス機能が効いていないって話になる訳でして、政策の是非以前にそっちの方もまた大問題だと思うのよね。

でまあ更に申し上げますと、金融緩和と緊急避難の一時的措置に関して混同した状態になっているのもそのままスルーになっていまして、いやだからそういうのを政策委員会の誰かが指摘して、コロナによって経済に発生した急性症状と、ニューノーマルになっていく過程での慢性というか長期的症状への対処をどうするのかとか、そういう論点で政策を切り分けないとイカン、とアタクシ何度も申し上げていますが、政策委員会の面々はその辺もここまでの所を見ると華麗にどスルーしていまして、お前らは何のためにそこに座っているのかと小一時間問い詰めたい訳ですよ。


・などと問い詰めてもこの時点で臨時措置を恒久化させる気が満々なのがもうアホかと馬鹿かと

でもってこの先も『現在の3つの柱に基づく金融緩和は、様々な情勢変化に対応する余地が大きい柔軟な枠組みである』とかいうオモシロ言説があるのですがそこはパスしまして、その先に行きますとこんなのがあって腰が抜ける訳ですよアタシャ。

『また、多くの委員は、現在の局面において、3つの柱によって緩和的な金融環境を維持し、企業の事業継続や雇用維持に貢献することは、危機への対応としてだけでなく、その後の回復のためにも重要であると指摘した。』

ちょwwwwwwwおまwwwwwwwwww臨時措置じゃないのかよwwwwwwwwwwwwww

ということで、まあ今回出てきた議事要旨見て一番ビビったのがここでして、お前ら3本の鉛筆をいつまで続ける気やねんというか、導入時に臨時措置だと言っていたのは何だったのかという話で、これはうっかり局地紛争を始めたら延々と戦争が続いて国土焼亡の巻っていうのに通じるんですけれども、今の政策委員会の皆様は頭の構造がどうなっているのかちょっと頭をかち割って中身を点検したいと思うんですけどねえ。


・片岡さんェ・・・・・・・・・・

という話の中で、片岡さんの意見があるんだが・・・・・・

『この間、ある委員は、予想物価上昇率が2%にアンカーされていないもとでデフレに陥ることは、「物価安定の目標」の実現に向けて重大な障害になりうるため、先を見越した追加緩和が現時点で必要であると述べた。』

うーんこの、でどうするの?????というか「予想物価上昇率が2%にアンカーされていないもとでデフレに陥る」という表現が言いたいことは分かるんだか何か妙。


・久々に見たアベノミクス

さらに続きますが、

『そのうえで、委員は、当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるとの認識で一致した。ある委員は、今後も、更なる政策対応の必要があれば、迅速に対応すべきであり、政府と中央銀行、および中央銀行間の緊密な情報交換や課題・認識の共有など、協力体制を堅持することが重要であると指摘した。』

あっはっは。

『別のある委員は、経済政策運営においては、まずはデフレが定着するリスクを最小限に抑制し、その後、経済が年率2%程度の物価上昇が持続可能となるような成長軌道に乗るまで、アベノミクスの3本の矢を継続して働かせることが求められると述べた。』「

アベノミクスの3本の矢(死語)wwwwwww

『一人の委員は、緊急支援から回復推進へと局面が徐々に移行する状況で、現在の金融政策の経済刺激効果を改めて検討すべきと述べたうえで、自然利子率、予想物価上昇率ともに下振れする可能性を踏まえながら、今後の物価動向に細心の注意を払うべきとの見方を示した。』

えーっとすいません、緊急対応とマクロ対策の切り分けなのか、自然利率の低下に対処したいのか、予想物価上昇率の低下に対処したいのか、物価の低迷に対処したいのか、何をやりたいのか分からんのですがもうちょっと何とか日本語としてまとめてくださいお願いします。編集が悪いのか発言が悪いのか良く分からんが、これでは物凄くフワフワとした話をしているようにしか見えなくて物凄い勢いで残念感しか漂ってこない。


・先行きの問題はソルベンシーになると

『委員は、先行きの金融政策運営上の留意点についても議論を行った。』

ということでその次になります。

『何人かの委員は、感染症の影響が長期化すると見込まれるもとで、今後は流動性の問題から、ソルベンシーの問題に移行する可能性があるとの見方を示した。』

ほうほう。

『この点に関連し、複数の委員は、政府が、信用保証や資本性資金の供給といった制度を拡充している点を指摘したうえで、中央銀行の基本的な機能は流動性供給であり、それぞれの役割を明確にしたうえで連携していくことが重要であるとの認識を示した。』

役割を明確にしているどころか、先般の総裁会見だと「日銀の政策が企業支援や雇用に効果を発揮した」という勢いで、回復はワシが育てた状態になっていましたが大丈夫でしょうか???????

『何人かの委員は、感染症の影響の長期化から、企業倒産が増加し、金融機関の信用コストが増加すれば、金融システム全体や金融仲介機能にも波及するリスクがあるため、丹念に点検していく必要があると指摘した。』

だからマイナス金利止めえや。

『一人の委員は、感染症により「物価安定の目標」の達成が後ずれし、金融緩和の一層の長期化が想定される中、副作用のさらなる累積にも配意しながら、実体経済の悪化が金融システムの安定性に影響を及ぼすことがないよう、これまで以上に慎重に検討していく必要があると述べた。』

マイナス金利の見直しを提案して下さいませ。

『この間、ある委員は、企業が利益を賃金や設備投資に振り向けずに内部留保として積みあげることがコロナ禍を乗り越えるための有効打として再評価されており、そうした内部留保至上主義が続く場合には、企業の投資スタンスが慎重化し、企業の資金需要に働きかける金融政策の効果は限定的となる可能性があるとの見解を示した。』

「企業の資金需要に働きかける金融政策の効果」とは????というかだったらどうするのかという話をしてよお願いだから、と思うのでありました。


とまあ連休最後の日曜日の朝なので延々とネチネチぶっこんでしまいましたが、何ちゅうかこの政策議論のパートを見ていて思うのですが、「だから何をすれば良いのか」という話の手前の評論家ベースの話で止まっているようにしかこの議事要旨を読むと読めない、というのが物凄く悲しいんですよアタシャ。

いやまあもしかしたらそういう議論もあって、あんまりそれを表に出しまくると政策への変な思惑が出るから抑えている、というのだったらごめんなさいなのですが、なんかもうこれだけ見てるとお前ら何他人事みたいに話してるの????と政策委員会の皆さんに小一時間な訳ですよ。という悪態なのでありました。









2020/07/22

お題「指標金利改革問題の進捗状況整理ペーパー来ました/FSR別冊は皆様お待ちかねの金融機関19年度決算に関して」

まあ理由があるのも分かるけどさあ・・・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20200721/1000051685.html
足立区の比パブ2店舗クラスター
07月21日 06時26分

歌舞伎町の「夜の街」の時には全く店名が公表されなかったというのに、竹の塚のフィリピンパブだとあっさり店名大公開するのは竹の塚とフィリピンパブに対する不公平な扱いですなムキーッ!!!

というかこういう件でも何の基準もないし、検査だの待機だのの基準もあるんだか無いんだかわっぱり分からんのだがどうなっているんすかね。

でもってまーた唐突にこれなんですけれども今日まで普通に通勤通学してて明日から急に大自粛とか極端から極端に振れ過ぎなんですがこの都知事は。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200722/k10012527261000.html
東京都 4連休の不要不急の外出自粛呼びかけへ 新型コロナ
2020年7月22日 5時17分

生活の際には三密を避けて新しい行動様式で云々って話をろくすっぽしないで、毎日違った時間に「今日は何人」ニュース出して(集計締め時間は一緒らしいですけど)急にこれですよ。つーかこんな事言い出したら今度は旅行そのものが罪悪みたいな雰囲気になりそうで、アクセル全開と急ブレーキを連発しているの図で事故らない方がおかしい。

と思ったら厭債害債さんのエントリーがありましたです。
https://ensaigaisai.at.webry.info/202007/article_2.html
2020年07月21日
GO TOキャンペーンの混迷

・・・・・・・ってどうでも良い前置きが長くて恐縮ですがあまりにも面白い(面白くないが)ので老いぼれ爺さんになった時に記憶を呼び起こす道具になればと書き残しておく。


〇指標金利改革の進捗状況ペーパーキタコレ

まずはご紹介ページ。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2020/rev20j07.htm/
LIBOR公表停止に備えた金融機関の対応と今後の取り組み
―金融庁・日本銀行の合同調査結果を中心に―
2020年7月20日
日本銀行金融機構局
金融庁総合政策局・監督局

機構局と金融庁の共同レポートキタコレという事ですがまずは上記HTMLのご紹介ページから。

『LIBORは様々な金融取引において幅広く利用されている金利指標であるが、2021年末をもって公表が停止される可能性がある。金融機関やその顧客である事業法人など全てのLIBOR利用主体は、2021年末まで残り1年半という時限性を意識し、準備を進める必要がある。金融庁・日本銀行の合同調査である「LIBOR利用状況調査」は、各金融機関が保有しているLIBOR参照の金融商品・取引等の残高やLIBORの代替金利指標の採用状況、金融機関における検討体制の整備状況等の現状を正確に把握するとともに、円滑な移行に向けた各金融機関の対応が一段と促進されることを期待し、実施するものである。本稿では、昨年10〜12月に実施した初回調査の結果を中心に解説する。』

ということで本文はこちら。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2020/data/rev20j07.pdf
LIBOR公表停止に備えた金融機関の対応と今後の取り組み
―金融庁・日本銀行の合同調査結果を中心に―
2020年7月20日
日本銀行金融機構局
金融庁総合政策局・監督局

以下本文から引用します。『はじめに』から参りますと・・・・・・・・・・

・これBBAの首根っこ押さえるとかBOEのタマ取りに行くとかできないもんですかねえ

という疑問が毎度あるのですが、真っ先にその回答があるのが素敵ちゃあ素敵(^^)。

『現状、LIBOR(London Interbank Offered Rate)は、貸出・債券・デリバティブなど様々な金融取引において、世界で最も利用されている金利指標である。しかし、金利指標改革に向けた国際的な取り組みが進むなか、LIBOR の公表は 2021 年末に恒久的に停止される可能性がある。』

その背景はというと、

『LIBOR は、「パネル銀行」として選定された複数の銀行が呈示するレートをもとに算出・公表されているが、英国当局はパネル銀行の要望も踏まえ、2021 年末以降はパネル銀行に対するレート呈示の強制権を行使しない方針にあり、その場合、LIBOR を算出・公表することは事実上不可能と考えられている1。』

でもってこの脚注を見ますと、

『1 金利指標改革の経緯や市場全体の取り組みに関しては、FSR2019 年 4 月号(BOX1)や日本円金利指標に関する検討委員会のサイトを参照。』

としか無いのですが、端折ってちょっと先に飛びますと、

『この点(引用者追記:LIBOR廃止に向けた対応への取り組みに関して)、足もと、金融機関では、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、企業や家計に対して積極的に資金繰り支援を行うことに、優先的に経営資源を割当てている。また、コロナ禍により、金融機関自らに加えて多くの取引先企業でも業務縮小を余儀なくされるなか、システム開発作業や顧客との対応協議など、LIBOR の公表停止に向けた準備にも一部で影響がみられている。』

ということなので、まあコロナという大事象が発生したのに予定通りとは何ぞやと言いながらFEDとECBとBOJがBOEとFSB(とIOSCOかしら?)にてめえらのタマ取ったるわ覚悟せえとか暴れ込みに行けばなんとかならんもんか、とまあ素人の浅知恵で思う訳ですが、こういうことのようです。

『もっとも、英国当局は引き続き、LIBOR が 2021 年末以降は公表されなくなることを前提に対応を進めるよう強く求めていること、また、仮に十分な備えのない状態で LIBOR が公表停止となった場合の影響は甚大であることを踏まえると、わが国においても、2021 年末以降の公表停止を前提に、所要の準備を進めていく必要がある2。』

ということでこの脚注ちゃんの方を見ますと、

『2 英国政府は 6 月 23 日、LIBOR 監督機関である英国金融行為監督機構(FCA)の権限を強化するための立法措置を行うことを公表。権限強化により、LIBOR の指標性の回復が困難であり、公正な市場取引の確保に必要と認めた場合に、FCA が LIBOR 運営機関である IBA(ICE Benchmark Administration)に対し、LIBOR 算出方法の変更を命じることが可能となる見込み。もっとも、算出方法変更後の LIBOR の利用については、契約当事者が多数存在する等の理由により、LIBOR からの移行やフォールバックが真に困難な一部の既存契約に限定されるため、LIBOR 利用主体は、引き続き、LIBOR からの能動的な移行を継続すべきことを強調している。』

もう面倒だからBOEが出せよBOEが、とか思ったりもするのですが、延期するにしたってもうそろそろそのスケジュール示さないと何とかトラベルみたいなアレ事案になる訳で、まあ1年半前になっても延期の話にならなかった時点(というかその辺りで何回かFSB方面から絶対実施絶対実施というキャンペーンが張られている次第)でちょっとこれは特攻事案への道という感じですなあナムナム。

んな訳で、

『こうした認識のもと、金融庁と日本銀行は合同で、LIBOR 公表停止に向けた民間の取り組みを促すための様々な取り組みを行ってきている。昨年実施した、幅広い金融機関を対象とする初回のLIBOR 利用状況調査もその一つである(図表 1)。』

『この調査は、わが国で活動する金融機関における検討体制の整備状況や LIBOR を参照している金融商品・取引等の残高(以下、LIBOR エクスポージャー)、LIBOR に代替する金利指標の採用状況等の実態を正確に把握するとともに、円滑な移行に向けた各金融機関の対応の促進を図ることを目的として実施した。』

『調査期間は 2019 年 10〜12月、LIBOR エクスポージャーの報告基準日は 2019年 6 月末、対象は銀行、証券会社、保険会社、系統上部金融機関等、合計 278 先である。以下では、その調査結果について詳しく説明する3。』


・サラッとは記載されていますが一部これは暫定手作業になりそうな悪寒(個人の印象です)

ということで小見出し『LIBOR 利用状況調査の初回調査結果の概要』ですけれども、

『LIBOR 利用状況調査は、検討体制や各部門の対応状況等の定性的な情報を確認するパートと、通貨別・商品別の LIBOR エクスポージャーの規模等の定量的な情報を確認するパートの 2 部構成となっている。』

はい。

『まず、定性パートの回答結果を順に説明する。』

『LIBOR の恒久的な公表停止に向けた対応を専門的に担当する部署やワーキンググループについては、2019 年 12 月時点で、全体の 3 割程度の先が設置している(図表 2)。業態別にみると、主要行等や外国証券では全先が設置している一方、保険や国内証券、地域銀行では設置予定がない先も多い。こうした業態間の違いは、後述する LIBOR エクスポージャーの多寡にも依存しているとみられ、部門横断的なプロジェクトチーム等の必要性も金融機関によって異なると考えられる4。』

まあこれはそらそうよという話で、貸出だとドメだったらTIBORだったりするでしょうし、LIBOR使ったデリバとかシンジケートローンとか仕組み債なり仕組み貸出なり仕組み預金なりみたいなのが少ないとかだったら、別にそらPT作ってどうのこうのみたいな話を一々せんでもよろしいですわな。

でもって今回のこれ見て最初にここの部分でイイハナシダナーと思ったアタクシなのですが、つまり何を申し上げたいかと言いますと、こういう時に「PTだけ作って満足」みたいなのが一番駄目なのであって、別にPTとか専門部署無くったって対応可能だったらそれはそれで良い話なのですが、なんかこういう時に妙に専担者が居ないだのPTが無いだのとか形式の所でああでもないこうでもないという話になる、というような弊害が発生していなさそうなのが実務寄りの話になっているなあと思いました(個人の偏見含む感想です)。

『LIBOR を参照している業務等については、全体の 8〜9 割の先が概ね特定済みである(図表 3)。』

イイハナシダナーなのですが、まあ後から見落としが出てくるのが世の常。

『もっとも、特定した個々の業務についての具体的な対応は、まだ緒に就いたばかりである。図表 4は、国内拠点における対顧客、システム、事務などの各部門の要対応項目の具体例と対応状況に関する回答結果を示しているが、』

ということでこの先がややシビれる記載。

『例えばシステム部門では、初期段階の検討項目である「要更新システムの洗出し」において相応の進捗がみられる一方、後続作業の「システム開発要件の特定」や「システム開発予算の確保」、「システム開発」では作業中または未着手という回答の割合が高い。』

アイヤー!!!!

『また、「システム開発」について、作業中と回答した先の作業完了予定時期をみると、8 割弱が 2021年中、特に 2021 年後半と回答した先の割合は 5 割強に上っており、多くの先で来年いっぱい作業が続くことが見込まれている(図表 5)。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・・

『なお、コロナ禍により、当初計画対比でシステム開発が遅延している先はあるものの、現時点で 2021 年末までの開発完了を懸念する声は聞かれていない。』

と言う事になっていますが、どうせこういうのは思わぬ見落としやら想定外やらが発生するのが世の常(しかも起きるのって工程の後期の後期位なんですよね〜あっはっは)でして、まあ何と申しますか、これは結局当初はパッチワークの間を手作業とか間に合わせEUCとかが活躍する図が浮かんできて、何故か目から汗が出て来たりトラウマを思い出したりするのでありました(−−;


・定量部分の話は以前雨宮副総裁の講演もありましたな

『次に、定量パート、即ち LIBOR エクスポージャーの規模を確認する。その前提として、金融機関における LIBOR エクスポージャーの把握状況をみておくと、ほぼ全ての先が少なくとも概数ベースでは把握できていることが分かる(図表 6)。こうしたもと、金融機関から報告された LIBOR エクスポージャー(2019 年 6 月末時点)の金額を単純集計したところ、貸出等の運用サイドで約 164兆円、預金や債券発行等の調達サイドで約 35 兆円、デリバティブについては想定元本ベースで約6,300 兆円となった(図表 7)。』

てな話ですがこの辺は本年1月末(よく考えたらこのタイミングを逃したら講演どころではなかった)の雨宮副総裁の講演(ネタにもしましたが)を見るとよろしアルね。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/ko200130a.htm/
【講演】「わが国の金利指標改革」
時事通信社「金融懇話会」における講演
日本銀行副総裁 雨宮 正佳
2020年1月30日


・でまあ話をすっ飛ばして結論の方に行きますと

『今後の取り組み』という所までワープします。

『今回の調査結果によれば、金融機関の対応は全体として、LIBOR 公表停止に起因する課題の認識、LIBOR 参照契約の特定などでは進んでいるものの、各部門における具体的な対応、既存契約へのフォールバック条項の付与などはこれからである。』

なおこれは昨年のコロナ前時点での話という事でんがな。

『各金融機関には、2021 年末をもって LIBORの公表が停止されることを前提に、顧客企業等も巻き込みながら、時限性を意識した対応の継続が求められる。』

というのはちょっとこの状況で、って思うのでどうせブレクジットすることだしこの際英国が言う事聞かなかったら永久出禁で英国はコモンウェルスで勝手に生きてろワシらは知らんとか一発ぶちかまして欲しい所ですが、まあFSBが何か物凄い勢いでLIBORはクソというキャンペーン張っているから無理という残念な状態。

でもってちょっと飛びますと、

『2020 年 6 月初には、両者の連名で主要金融機関に対して代表者宛通知(Dear CEO レター)を発出するとともに、レターの内容を金融庁・日本銀行のホームページを通じて公開したところである。』

これもネタにしましたが、こんなの多分初の話だったので結構ビックリしました。まあケツを叩かないとアカンのでこの際CEOにカチコミに行くか、ということなので問題意識として大きく見ているというのは分かりますし、とは言え変なハレーション起きても困るから、その辺はこういうレポートではそこまで過激に書かない、という辺りのバランスを取っていて、このコロナちゃんの中、国際的な話なので何とか現実との折り合い付けながら推進しないと、といろいろ工夫しているのは伝わります。まあそういうと語弊あるかもしれんけどこの件って日本は完全にただの貰い事故ですからねえ。

『本レターは、わが国金融当局として、LIBOR の公表停止に向けた対応の重要性を改めて金融機関の経営トップに示すものであり、経営陣の関与のもと、関連資料の提出を求めることを通じて、当該金融機関における対応が促進されること、また、本レターの直接の送付先とはなっていない金融機関においても、公開されたレターの内容を参考に対応を進めることを期待している。』

ちなみに、レターで「出せ」と言ってた話は割と無茶振り感があった(個人の感想です)ので、まあそれはビビったが、経営層のケツを叩かないと、という問題意識からの話なのは理解できました。

んな訳で最後を折角なので引用。

『LIBOR 公表停止への対応は、金融機関だけでは完結しない。金融庁・日本銀行は、様々な機会・媒体を通じて、この課題に関する社会的な認知度を高め、事業会社など金融機関以外の幅広い主体の協力が必要となることにも理解を求めていく。なお、LIBOR 利用状況調査結果を公表し、LIBORの代替金利指標の採用状況を継続的に示すことは、LIBOR 利用主体による代替金利指標の選択を容易にし、移行を促すことにも資すると考えられる。』

『2021 年末までに残された期間は 1 年半を切っている一方、金融機関が対応すべき項目は多岐にわたっている。金融庁と日本銀行は、新型コロナウイルス感染拡大の影響にも目配りしつつ、今後とも連携を深め、金融機関をはじめとする関係者の金利指標改革に向けた取り組みを後押ししていく考えである。』

ということですが、要するにケツ叩くという趣旨で今回ぶっこんできたんでしょうなあというのは把握しました。あとおまけで言えば、時期的に官庁の人事異動のタイミングでもありましたので改めて状況整理のために出したというのもあるかもしれませんね(個人の妄想です)。


〇FSRも大事ですがこの別冊は大変によろしい(なお時間の関係上細かい話はパス)

これまた先日出ているので既にご案内の事とは存じますが(大汗)。

https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb200717.htm/
2019年度の銀行・信用金庫決算
2020年7月17日
日本銀行金融機構局

ご覧の通り先週の金曜に出ているんだから土日に読んで何で月曜のネタにならん、というツッコミはあろうかと存じますが、まあその辺はゴニョゴニョということで上記ご紹介ページのHTML版から。

といっても『要旨』は無茶苦茶あっさり味です。

『2019年度の銀行・信用金庫決算の特徴は、次の3点である。』

『第一に、当期純利益は、大手行、地域銀行、信用金庫ともに、減益となった。いずれの業態でも、債券関係損益の改善が利益の下支えに寄与したものの、国内貸出利鞘の縮小が続いたことに加え、大手行、信用金庫では、信用コストの悪化も利益を押し下げた。』

信用コストに関しては本文の方を見ますと、って今日はちょっと時間がアレなので詳しく本文をネタにできないのですが(汗)、信用コスト率に関してみると大手行は上昇していて、地域銀行は横ばいという状態ですが、大手行に関してはコロナを受けた予防的引当の要因があるようですので、具体的に貸倒だの保全不能だのによってコストが上昇しているというよりは、現状(3月末)ではその前段階の予備役招集みたいな状態になっている、という感じのようですな。詳しくは後日やるかもしれませんしやらないかもしれません(をい)。

『第二に、基礎的収益力を示すコア業務純益は、大手行、地域銀行では減少が続いた一方、信用金庫では増加したが、総じてバブル崩壊以降のボトム圏の水準にある。いずれの業態でも、国内貸出利鞘の縮小に伴う貸出関連の利益の減少や投信・保険販売の不芳等が、引き続き下押し要因として作用した。信用金庫では、投信解約益の増加が収益を下支えした。』

ふむふむ。

『第三に、金融機関の自己資本比率は、総じて緩やかに低下したものの、規制水準を十分に上回っている。』

ということで本文はこちら。(色刷り38枚組です)
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb200717.pdf
2019年度の銀行・信用金庫決算

でもって例によって例の如くですが、トピックスを掲載したBOXってのがあって、まず話題のポイントをインスタントで読みたければBOX見ろや(かなり邪道なインスタント読みなのでちゃんと本文も読んでちょ)という話なのですが、今回のBOXは、

『BOX1 銀行の 2020 年度収益計画』本文25ページ(PDFファイルの27枚目、以下ページとの対応状況は同じ)から
『BOX2 銀行の株主還元』本文26ページ
『BOX3 大手行グループ会社の収益貢献』本文27ぺージ

とありまして、BOX2は毎度おなじみのお題になっていまして、まあ色々とアレなお話。BOX3は中々オモロイと思いながら読みまして、BOX1がオモンナイとかそういう訳ではないですが、こちらはコロナちゃんの影響で下方修正だけど今後も影響次第ではどうなるかワカランチ会長、という概ねそらそうよな話を整理して掲載ってな感じでした。


〇成敗が追いつかないので・・・・・・・・

ええすいません時間が足りないので溜まったネタは連休中に徐々に投下しようかとは思いますが、例によって気分屋さんのぐうたらなもんで、いつやるとかまではちょっとという感じですが、アタクシの頭でちゃんと整理しながらぶっこんでいかないとニワトリ脳なので覚えた側から忘れてしまってはいはいおじいちゃん朝ごはんはさっき食べたでしょ状態になり兼ねませんので、忘れる前にぶっこんでいく所存ですサーセン。





2020/07/21

お題「総裁定例会見をほじくり返すと意外に面白かったのでつい今日もそれだけに(超大汗)」

ニュースヘッドラインみた瞬間に声上げたわwwww
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200720/k10012524701000.html
「Go Toトラベル」東京対象外のキャンセル料 補償へ調整
2020年7月20日 17時41分

一瞬にして「キャンセル料をわざと高額にして関係者折半でウマー」とか思いついたわ(アカン)。

というかですね、学校の突然の休校もそうですし、予定通りだったら8/1から大規模イベント実施の緩和がぶっこまれる筈なのにまだうだうだ言ってるとか、こいつらロジというものを全く考えてないだろどこのお花畑にいるんだよと小一時間問い詰めたい。

しかし上記記事の最後は笑った。

『これについて共産党の小池書記局長は記者会見で、(中間割愛)東京を発着する旅行を対象外とすることに伴うキャンセル料について、「迷走につぐ迷走で迷惑をかけたにもかかわらず、生じた不利益を国民が負担するのは無責任の極みだ。予備費を活用し、国が負担するのが当然だ」と述べ、国が補償するよう求める考えを示しました。』(上記URL先より)

>生じた不利益を国民が負担するのは無責任の極みだ。予備費を活用し、国が負担するのが当然だ

代々木の頭によると国の予算は国民が負担したものではないそうです。アタクシが知らないうちに日本は石油王にでもなったんでしょうか???

・・・・・・と与党も野党も令和の爆笑王大会になっているので血圧が今日も急上昇のあまりに余談が長くなりましたが、そんなことを言っている間にネタがバンバン打ち込まれるのでメモその他必死こいて追いつかないといけませんが、これはさすがに連休中のどこかでネタに追いつきに行きます(ガチ)。


〇まずは昨日の続きで黒田総裁記者会見ネタ

ハーイ。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2020/kk200716a.pdf

・書いてて後から気が付いたのですが・・・・・・・・・・・

えーっとですね、この会見ネタだけじゃなくて最近必ずこういう説明するじゃないですか。

『(答) 日本銀行は、3 月以降、「特別プログラム」、国債買入れやドルオペなどによる円貨・外貨の上限を設けない潤沢な供給、ETF等の積極的買入れの「3つの柱」で金融緩和を強化してきました。(以下割愛)』

これは昨日ネタにした分で事実上の最初の質疑応答回答の頭になりますけれども、よくよく考えてみますと、この「3本の鉛筆」なんですけれども、鉛筆の拡充が「金融緩和の強化」なのでしたらば、5月の臨時金融政策決定会合は、コロナオペパート2の導入と、従来のコロナオペおよび臨時資産買入の期間延長を行っているのですから、「金融緩和の強化」となって然るべきだと思うんですよ。

然るに皆様ご案内のように、当日の声明文は

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200522b.pdf
当面の金融政策運営について
2020年5月22日
日本銀行

というお題になっていまして、金融緩和の強化というお題になっていないのですよ。いやそういうのどうでもいいだろとか言われそうですが(というかここまでネチネチと言うのはアタクシ位しかいないのでは、という自負?だけはある)、仮にこの前の回にぶっこんだ施策が来年3月末までの臨時施策で、4月に導入検討指示をした施策を同様に来年3月末までぶっこむ、というのであれば確かに4月に決定されたことの具体化に留まっていますが、この時って同時に他の施策の期限を延長していますわな。

でまあそれ自体が「これらは臨時措置」という話になっているんだったらまあ1億歩譲っても良いのですが、こうやって「金融緩和の強化」ってプレゼンして回っていると、臨時措置の解除を行うとそれは「金融緩和の後退」になってしまうんですけれども、あんたらどうやって説明するねんと思うのでありました。

とか何とか書いていたら更に思い出しましたが、CP・社債の買入は上乗せ額部分が3月末まで買入延長なのですが、ETF・J−REITに関しては「買入ペースを当面拡大する」という謎の仕切りになっていまして、これ実は来年の3月末までなのかどうかも文面だけではさっぱり分からん、というオモシロ建付けになっておりまして、そもそもそれをコロナ対策というのか小一時間という世界になっております。

一方でFEDにしろECBにしろ、むろんファイナンシャルコンディションを緩和するとは言ってますけれども、あくまでも通常の金融緩和とは一線を画して、「危機対応」という形で説明している訳でございまして、そこの切り分けをちゃんとしているんですよね。日銀の説明は「危機対応」と「金融緩和」がごっちゃになっていまして、危機対応と称してぶっこんだものが長期化して金融不均衡の発生というか要するに震災手形化して将来の金融システムの安定に悪影響与えるだろうなあ、というのが見え見えの切り分けになっているのがアカン、とまあアタクシは思う訳ですよ。

ま、どうせ日銀に言わせれば「あの3本の柱(鉛筆)は説明をわかりやすくするためのもの」とか言うんでしょうけれども、いやそういうのは「わかりやすさ」とは違うんだし、ちゃんと説明して、ちゃんと報道でもそういうのをきっちりと切り分けた形での説明が出来る、という風にならんと、そもそも金融政策を巡る訳の分からん誤解というか曲解というか置物一派というか、まあそういうのが永遠になくならないと思うから、こういう所はきちんとして欲しいのですが、まあ最近の会見を見ますと説明する方は雑にも程があるし、質問する方は昨日のアレを見ればお察しですし、困ったもんだと思うのでした。

・・・・・・話がそれたのを強引に引き戻しまして昨日の続きに参ります。


・地方経済の状況について

まあ聞きたいことは分からんでもないんですがソウジャナイヨ感isある質問が続く。

『(問) 国内の感染者がまた増加傾向にあり、政府のGо Tо キャンペーンについても、今、議論が起こっていまして、賛否どちらの声も上がっているような状況になっています。そうした中で気になるのは、地方経済の状況です。現状、地方経済について、どのような認識をお持ちでしょうか。』

これ質問は兎も角答えの方は展望レポートを踏まえてというか簡単にブレイクダウンしているので答えの方が中々結構なのでネタにしたんですけどね。

『(答) この点は、先日も支店長会議で各地の支店長から報告を受けました。それぞれの地方の特色・特徴もあって、皆同じということではありませんが、ある程度共通してみられる傾向もあります。』

ということで展望レポートのブレイクダウンになっているのですけれども、

『その一つは、設備投資が今のところ非常に堅調という点です。前より見通しは若干下がっていますが、それでもプラスの領域にあって設備投資は比較的しっかりしています。それから消費は、特に観光など対面サービスは非常に大きく落ち込んで、それによってかなり影響を受けている地方もあります。他方で、物の消費は、かなり戻ってきています。物の消費では、小売はデパートやコンビニがやや低調ですが、スーパーやドラッグストアは好調です。地域によって若干違いはありますが、先ほど申し上げたような日本全体の動きと平仄が合っている感じを受けました。』

『ただ、対面サービス、特に観光のウエイトの大きな地域は、かなり影響を受けていると思います。観光に対する対応として政府が色々考えておられることは適切だと思いますが、いずれにしても、この感染を収束させる、特にワクチンや治療薬ができるだけ早くアベイラブルになることが、国民の不安を取り除いて、対面サービスについても需要が戻っていくことにつながるのではないかと思っています。』

ということで、これ答えの方では「観光などを除けば全国的には似たようなもん」として、むしろ需要項目にブレイクダウンした各項目の状況を説明している、ということで実はこの回答って展望レポートをすこし丁寧に説明した内容になっている(なお全文では詳述されていますが基本的見解ではちょっとしか書いていないのでこれは割と良い説明だったりする)のですね。

でまあその回答は良いんですけれども、この答えってよくよく考えたら質問に対する答えに全然なっていないという事実isある訳でして、会見の前半で昨日ネタにした中で、「CP社債買入の額が過大ではないか」という質問に対して最初の方で「FRBに比べると少なく見えるかも知れませんが市場規模対比ではかなりの額です(キリッ)」とか全然逆の話をおっぱじめて(ご案内の通りそのあと軌道修正して回答していましたが)たり、これまた皆さんご案内のようにこの後の質疑で超長期の質問があった時に全然質疑がかみ合っていなかったりしていまして、単に黒ちゃんがやる気無くてどうせ鬼ツッコミも飛ばないしと太平楽に構えているから斜め上答弁をしているだけなら良いんですけれども、もしかしてまさかとは思いますが黒ちゃん健康の方は大丈夫かいなとまで思ってしまうのでありました。いやまあ失礼な話で申し訳ないですけど。

さて、全然質問の答えになっていない回答が来たのですが、まあ折角だったらその回答に対してもっと良い質問があると思うのですが、惜しいことに(まあ咄嗟に反応するのは難しいと思いますけど)この次の質問(これはさすがに文面から見ると同じ人だと思うけど会見動画を見てないから知らん)は残念無念としか申し上げようがない。

『(問) 地方で特に困っているところに対して、日銀として特別な対策を考えていくことになるのでしょうか。』

実に惜しい。まあこれを聞きたかったんでしょうけれども、さっき黒ちゃん「観光のような一部を除けば全国的に同じ傾向」って言ってるんだから、ここでその質問はさっきの黒ちゃんの回答をちゃんと聞いていないということになるんですが。

折角上記のような説明があるんだから、むしろ「今の説明ですと従来の景気悪化と違うような状況だと思いますがどのような施策が有効と考えられるでしょうか」とかだったら良かったな。まあしゃーないけど。

『(答) 東日本大震災や熊本地震のような地域的な自然災害等で非常に大きく影響が出た場合に特別オペ等は行っていますが、経済の好不況が地域毎に違うということでの日本銀行の特別な対応はなかなか考えにくいと思います。』

そらそうよ。

『今のところ、各地をみても地域毎の差はあり、観光に依存している地域はやや大きく影響を受けていますが、それでも全体としての日本経済は、底を打って回復しつつあるということには違いがないように思いました。ただ、今後とも各支店を通じて、各地域の状況は十分注視していきたいと思っています。』

まあこれはこうなる。


・まーた無駄な質問を・・・・・・・・・

次の質問だが面倒なので回答は割愛するがよくこの質問に真面目に回答するわと黒ちゃんに感心しました。質問だけ晒し上げておくわ。

『(問) 新型コロナの発生責任の問題、あるいは、最近では南シナの問題などを巡って、米中対立が先鋭化しているようにみえます。新型コロナへの対応には、おそらく米中も含めた主要国の結束が非常に重要だと思うのですが、今の米中対立が今後の世界経済に与える影響についてどのようにご覧になっているかについてお願いします。』

そもそも何を聞きたいのかわからんし、米中対立したらそら悪影響あるだろ以外の答えがあるのかという感じですが、黒ちゃんの回答は、

『(答) 日本銀行総裁として何か申し上げるのはあまり適当でないと思いますが、かつてアジア開発銀行総裁や財務官を務めたことから申し上げますと、(以下11行に渡って説明があるが割愛)』


・状況が悪いままになるとソルベンシーの問題になるのだがその時に金融機関が梯子を外されそうな件について

質問が微妙にアカンのだが回答はオモロイ(って要するに質疑がかみ合っていないのだが)のでネタにします。ちょっと飛ばしまして先の方の質疑を見ますと、

『(問) コロナ対応策の効果については、一定の評価をされているかと思いますが、一方で、金融機関側、貸手側の融資審査であったり、あるいはいわゆるゾンビ企業の問題であったり、そのような指摘も出始めています。総裁は現在の緊急対応策の出口というものをどのようにお考えでしょうか。』

V字かL字かと同じだけど、こういうキャッチーだけど、キャッチーなだけに本来考えるべきことを思考停止っぽくしてしまうような言葉ってあんまり使わない方が良いと思うの。というかこの質問だと「政府の」対策の出口の話の質問になっているんですけれども・・・・・・・・・・まあ言いたいことは分かるんだがもうちょっと質問練ってください。

#って散々各方面に喧嘩を売っていて(いや売ってる訳ではないんだが)大丈夫か俺氏(^^)

ということですが回答の方が謎に丁寧なのでそっちを鑑賞しましょう。

『(答) 現時点で、金融機関は大変積極的に融資を拡大して企業の資金繰りを支援しています。これは金融機関自身の判断・決定によることもありますし、』

>これは金融機関自身の判断・決定によることもありますし

それはそうなのだが世の中が落ち着いたらまた金融機関が放漫貸出してケシカランとかいう話になりそうでオソロシスですな、いやはや何とも(^^)。

『政府および日本銀行が様々な形で資金繰り支援をしていることもあると思います。そのもとで、今何か具体的に問題が生じているとは考えていませんが、』

今からあったらヤバいわ。というか別に質問者は「今」の質問をしているのではなくて中長期的に「対策」が野放図に拡大したときの問題を質問しているんですけど何で「今」の話にして誤魔化すんでしょうかねえ(なおこの論法は後にも出てくる)。

『仮に新型コロナウイルス感染症が拡大あるいはその影響が長引き、経済に対する下押し圧力が予想以上に長くなることになると、確かに企業によっては資金繰りの問題ではなくソルベンシーの問題になっていくところが出てくる可能性はあります。逆にいうと金融機関にとっての信用コストが増大する惧れもあります。従って、現時点でそうした心配はありませんが、そういう可能性については常に注視して点検していく必要があると思っています。』

と、実にいい話をしていて、いやつまりそこで何だかんだ言って緊急支援を継続するとゾンビ云々の話になるんだから、質問している人の問題意識についてはその通りですねだからそうならないようにしましょう、って答えの筈なんですが・・・・・・・・・・・・

『ゾンビ企業云々というのは、今の時点でそうした議論が多いとは思いませんが、』

あのーすいません意見の多い少ないで金融政策運営するんならインターネットアンケートの集計係でも居れば十分なんですけど・・・・・・・・・・・・

『かつてもそうした議論がありましたし、外国でもそのような議論をする方がいます。』

でもって・・・・・・

『金融機関は積極的に資金繰り支援を行っていますが、その場合にも企業の長期的な持続可能性を十分に審査しながら行っていると思います。』

責任丸投げキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!!

・・・・・というかいやマジでこれ金融機関の経営者および経営予備軍の皆様におかれましては将来華麗に梯子外しが来るのをリスクとして見ないといけないですよね、というかまあ当然そのことは経営層は理解してそうな気がします(個人の感想です)。

『従って、退出すべき企業が退出せずにより長く生き延びてしまう、そして経済全体に結局マイナスになるという、いわゆるゾンビ企業論が、今の時点で議論になり深刻になるとは、私どもは思っていませんし、そうした議論も、今回はあまり出ていないと思います。』

ちょwwwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwww

誰が今の話をしているんだと小一時間だし、これ将来に渡っても起きないのは金融機関がちゃんと起こさないようにするから、って回答をしている訳でして、いやこれは当局おそロシアとしか申し上げようがないですが、まあこういうようなスタンスが垣間見れれば当然ながら保証協会保証責任率100%融資ならまあ良いとしても、そんなにバンバンと出せるかよって話になって来るんじゃないでしょうかと思う訳でして、当局としてこう言いたくなる気持ちはわかるのですけれども、もうちょっとものの言い方何とかならんのかね、とは思うのでした。

『当然のことながら、経済が回復し企業の収益状況も改善していくもとで、大規模な資金繰り支援の必要性が薄れていけば、当然政府も日本銀行も、出口ということになると思います。しかし、当面は、実体経済はかなりのスピードで回復しているようにみえますが、そのスピードでずっといくのではなく、全体として回復のスピード、テンポは緩やかということですので、資金繰り支援はまだかなり続ける必要があるのではないかと思っています。』

まあ最後はどうでも良いが、質問よりも回答の方が面白かったのでネタにしてみました、というか総裁会見って、出た瞬間にネタにした方があっさり味で片付けられるのですが、こうやってうっかり週末越えで熟成させてしまうと、その間に色々とツッコミどころを新たに見つけてしまい、クッソ粘着モードになって延々とネタにしてしまう、という新たな気付きを得られました(個人の感想です)。全然終わらないよーと泣きつつも手が止まらないのでしょうがない。


・ソルベンシーの問題は中央銀行はバンザイするしかないという話

気を取り直して次の質疑ですが、この人質問項目2つあるのでたぶんさっきの人とは別なんですが、この前半部分は咄嗟にぶっこんだのでしょうが論点整理に良い質問ですし、さっきの回答の流れで質問しているので実に良い質問ですな。

『(問) 先ほど総裁は今後のリスクとして、企業が資金繰りの問題ではなくソルベンシーの問題になる可能性があるというご発言をされましたが、仮にそうなった場合、日銀としてどういう措置がとれるのかとれないのか、その辺りをまず伺います。(後半割愛)』

まあこれは答え自体は当然の答えが返って来るのですけれども論点整理にはこういう質疑は必要だとアタクシは思います。

『(答) 今そういった心配をしているわけではありませんが、』

いちいち断りを入れるのが何とも。

『仮に新型コロナウイルス感染症の影響がより長引き、景気の回復が十分でない期間が非常に長引くことになると、企業の中には資金繰りではなくソルベンシーの問題が出てくる可能性はあると思います。』

はい。

『ただ、そういったソルベンシーを解決するのは、私ども中央銀行の役割ではなく、企業を取り巻く経済界あるいは政府による必要な場合の支援であると思っています。いずれにせよ、今の段階でその可能性が非常に大きくなっているということはありませんし、倒産自体も低い水準がずっと続いていますので、今の時点では心配していません。(後半割愛)』

何か将来の質問をしているのに「今は」を連発するの何なのとは思いますが、変なヘッドラインを打たれたくないから話を誤魔化しているんだったら良い(あまり良くないが)のですが黒ちゃんの健(銃声)。

しかしまあ何ですな、今回のコロナ景気って特色として「物凄い勢いで食らっている人とそれほどでも無い人の差が極端」ってのがあるじゃないですか。そうしますと、そもそもが総需要に働きかける(ことになっている)金融政策ってこういう経済状況の時に効くのかね(全く効かないとかじゃなくて効きが悪いとか余計なことが起きるとか)、というのって誰か次の会合後の記者会見で質問してくれないかな(金懇でも結構だが金懇自体が当分なさそうだし)と思いました。


・デフレ懸念について

さっきの質問の後半、たぶんこのお方は本来はこれを質問するつもりだったんでしょうね。

『(問)(前半割愛)また、予想インフレが足許は少し弱含んでいるということで、先行きもコロナで景気に下押しがかかる間はなかなか高まっていかないということだと思います。そうなると、需給ギャップの改善も進まない中、物価はかなりマイナスの状態が続くのではと思います。そういうリスクがどれくらいあるのかということと、それが金融政策に与える影響について、展望レポートの中で企業の価格設定行動の不確実性についても言及があったので、そういうことと絡めて、予想インフレの動きと今後の政策運営の関連をお願いします。』

これは前半に引き続きよい質問。ちなみに最近は急に日銀コロナのドサクサに紛れて「モメンタム」というのを言わなくなりまして、これは需給ギャップと期待インフレが物価を押し上げに行く、という理屈なのですが・・・・・

『(答) (前半割愛)足許の新型コロナウイルス感染症の影響や物価の弱さを反映して、短期の予想インフレ率はかなり下がっていますが、中長期はそれほど下がっていませんので、何かこれでデフレに陥るということは今のところ懸念していません。』

需給ギャップはどうした。

『展望レポートの見通しでも、今年度は物価上昇率がマイナスになりますが、来年度はプラスで、再来年度はプラス幅が少しずつ拡大しています。予想インフレ率が弱含んでいることは事実ですが、中長期はそれほど弱含んでいませんし、これが持続的な物価下落というデフレに陥るリスクを高めているとはみていません。』

企業の価格設定行動はどうした。という訳でこっちは回答がゴミにも程があるのですが、まあ回答が苦しいからゴミ回答しかできないんでしょうな。


・安倍論法再び

何だかほとんどの質疑をネタにしてしまっていますが更に続く。

『(問) 日銀が行っているイールドカーブ・コントロールは、政府の財政運営に影響を与えているのかどうか、ご所見をお願いします。』

ニヤニヤ(・∀・)

『(答) イールドカーブ・コントロールは、金融政策上、行っているもので、財政ファイナンスではありません。この点は、広く理解されていると思っており、イールドカーブ・コントロールに、特にそういった問題があるとは考えていません。』

と安倍論法アゲインキタコレなのですが、ここで少し飛ばして先の方でこんな質疑もありましてね。

『(問) 前回の記者会見で、総裁は国債の増発に関連して、増発した分については買入れを増やして、金利を上がらないようにするということをおっしゃいました。国債の買入れは、この後、更に増発が行われたときに、更に無限に増やしていくことは可能なのでしょうか。あるいは、国債の信認ということを考えた場合に、何らかの限界があるのでしょうか。』

と、限界論の方で攻めると味わいのある回答が返って来るのでした、質問者GJ!

『(答) 2016 年 9 月にイールドカーブ・コントロールを導入して以降、わが国の長期金利はゼロ%近傍で安定しており、貸出金利も既往最低水準で推移しています。日本銀行としては、この枠組みは、きわめて緩和的な金融環境を作るうえで、経済・物価を刺激する効果をしっかりと発揮してきたと考えています。』

はい。

『そのもとで、政府が必要に応じて国債を増発した場合には、金利が上昇することをイールドカーブ・コントロールのもとで防げるということで、財政政策と金融政策のポリシーミックスが、いわば自動的に実現することになります。』

ちょwwwwwwwwwそれを財政ファイナンスって言うんじゃないでしょうかwwwwwwwwwww

『それ自体、金融政策の観点から行っているイールドカーブ・コントロールの一つの効果だと考えており、これが何か国債の信認とか、国債の買入れを難しくするというようなことになるとは思っていません。』

財政ファイナンスがYCCの1つの効果って言っちゃってるようなもんじゃん。ということで金融政策の限界論から攻めると思いっきり口を滑らせてしまう、という重要な知見を得られましたな!!!!!!!


・超長期問答

これは酷い。

『(問) 債券市場について、前回、総裁は超長期の金利について、そこまで上昇しないというようにお答えをされていましたが、6 月以降も、超長期の金利は上昇傾向にあるかと思います。現在の水準についても、そこまで上昇していないとお考えでしょうか。それともお考えが変化されているところがあるのか、その点をお聞かせください。(後半割愛)』

『(答) 2016 年 9 月の「総括的な検証」でも指摘している通り、超長期金利の過度な低下は、保険や年金などの運用利回りを低下させて、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性があるといった認識には、変わりはありません。現在、感染症の影響で債券市場の流動性が低下しているもとで、国債増発が見込まれていることを踏まえると、債券市場の安定を維持して、イールドカーブ全体を低位に安定させることが最も重要な状況にあります。このため、当面、国債の積極的な買入れを行うことが適当と考えています。(後半割愛)』

まるで会話になっていない・・・・・・・・・・・・・


・ETFのペースについて

同じ質問の後半、これ質問は良いのに回答がゴミにも程があるんですが一応引用。

『(問)(前半割愛)次にETFの買入れについて、5 月や 6 月の買入れ額をみると、年間12 兆円のペースまで買入れが進んでいないように思うのですが、今回の決定でも、「当面 12 兆円のペースを上限に」という文言が維持されています。足許で買入れ額が減っていても、この 12 兆円という、ある意味目標というか上限の金額を設定することが必要であるとお考えでしょうか。また、当面の 12 兆円から本来の年間 6 兆円という数字に戻すタイミングというか、その基準について、お考えをお聞かせください。』

『(答) (前半割愛)ETFについては、リスク・プレミアムが過度に拡大することは良くないということで、リスク・プレミアムの状況を勘案して、弾力的に対応しています。12 兆円を限度として弾力的に対応するという考えは全く変わっていません。』

まるで会話になっていない・・・・・・・・・・・・・


・最後に謎の黒ちゃんブチ切れ答弁で締まるのでした

最後は大体某築地新聞のあの方が質問していると推測されますが(だいたい最近何故か最後になっていると思うので)。

『(問) 2%インフレ目標について伺いたいと思います。黒田総裁の下で 10 年間やってこの 2%目標はもうできないという予想を日銀自身がしているわけですが、10 年やってできない目標というのは、目標そのものが間違っているか手段が間違っているかどちらかですが、これだけの金融緩和をあらゆる様々な金融緩和手段を講じてきたわけですから、一つ目標が間違っていたという仮説が成り立つと思います。』

これわwwwww

『今やはり現実的なメルクマールが必要ではないか。というのは、そうでないと常に過度に金融緩和バイアスが掛かってしまうというのが今現状だと思いますが、もっと現実的なメルクマールというのを検討するお考えというか、今すぐ見直すお考えはないでしょうが、頭の体操をする可能性もないのかどうかをお伺いしたいと思います。』

『今、確かにコロナショックで現実はそういう状況ではないと思いますけれども、異常な事態だと思いますが、このパンデミックも、これからは 10 年に一度くらいはある、想定できるリスクだという専門家もいますから、それも含めて 10 年ということを考えて、実現できない目標というのは見直すべきではないでしょうか。』

どう見ても挑発です本当にありがとうございました。

『(答) 私は全くそういうふうに考えていません。目標も適切ですし、手段も適切であると思っていますが、様々な事情、状況によってこういう事態が続いています。ちなみに、多くの先進国でも 2%の目標を維持していますが、達成されていない状況が長らく続いているということは事実です。』

皆出来てないからボクが出来てなくてもいいんだよーというクソガキ論法ですねわかります。

『(問) 海外の中央銀行とともに見直すということを検討する可能性はありませんか。』

『(答) 全くありません。』

クッソワロタ。


〇などと本人が楽しくネタにしていたら時間が思いっきり無くなった件について(すいませんすいませんすいません)

ということでネタ帳。

・展望レポート基本的見解の続きと全文の中でオモロそうなもの

前回比較も含めてやらないとですね。

・デジタル通貨担当部署が出来た件について

何とグループ長が先代の政策企画課長様という大物就任(普通グループ長は企画役級が据わるもんだが偶に大物が来るのは重点項目だったりする筈、そこまで詳しくはないけどたぶんそんな感じ)。

・6月MPM議事要旨

これがまた酷いのよ・・・・・・・・・・

・日銀から色々とペーパーが出まくっている件について

賃金版フィリップスカーブとか前の審議委員の佐藤さんが得意なネタだった気がして懐かしい。その他色々とどばーっと出てていいからお前ら何で小出しにしないんだと小一時間。

それからしらっとLIBORの進捗状況ペーパーがでていたりもする

・ECBとかFED

レビューとプレビューをしないと・・・・・・・・・

ということで、不覚にも総裁会見ネタで2日も引っ張ってしまいましたのでこれはさすがに連休中にネタを投下する所存ですが(真顔)、いつ投下するかとか全然考えてませんので期待はしないでください。








2020/07/20

お題「総裁定例会見をサラサラ流すつもりが粘着して途中で力尽きるの巻(汗)」

あらまあ。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200719a.pdf
職員の新型コロナウイルスへの感染について
2020 年 7 月 19 日
日 本 銀 行

でもこのお方窓口とかをやっていた訳ではないんでしたら一々こうやって公表せんでもという気がするし、別にこの事案に限らずなんですけど、こうやって一々公表するもんだから必要以上に人々の行動が過剰なリスク回避的になったり、体調不良になった時に申告しないインセンティブを生むと思うの。本件はさすが日銀なだけに罹患した方のプライバシーは極力触れてないから良いですけど、「どこそこ行って感染した」系のニュース、あの報道じゃあコロナの前に報道で社会的にエライことになるし、そうなるんなら正直に行動の説明をしないインセンティブが普通に生じるじゃろうよ、というのは異論も多々あろうかと思いますが個人の感想です。


〇総裁会見の出来栄えが色々と酷いというのが最近の平常運転になっているのは悲しい

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2020/kk200716a.pdf
総 裁 記 者 会 見 要 旨
―― 2020年7月15日(水)午後3時半から約60分

・3本の鉛筆は臨時措置の筈なんだが何か全部まとめてごった煮になっている件について

最初は今回の政策決定(と言っても現状維持)と展望レポートの説明(体裁を元に戻したのでその説明もあって長い)がありますがそこはパスして実質最初の(たぶん幹事社の)質問。


『(問) 日銀は 3 月以降、新型コロナ対策として金融市場の安定維持と企業の資金繰り支援に向けた措置を相次ぎ打ち出してきました。その評価と、本日は現状維持ということでしたが、更に追加的な措置が必要なのか、お考えをお聞かせください。』

これに対する答えが微妙でして、

『(答) 日本銀行は、3 月以降、「特別プログラム」、国債買入れやドルオペなどによる円貨・外貨の上限を設けない潤沢な供給、ETF等の積極的買入れの「3つの柱」で金融緩和を強化してきました。』

おいちょっと待て、そもそも輪番なんて拡大してない(国債発行が増えた分以下の拡大はしたが、それは国債発行対比で言えば増えたという額ではないし、そもそもYCCによって受動的に増えたというものであって、量を目的としている政策になっていない)し、ドルオペはドルファンディングの流動性対策であって、それ一般的に金融緩和って言うか???という話でありまして、いやまあ確かに引き締め的ではないというのはその通りなんですが、「金融緩和」というのはさすがに話に無理があろうかと思われます。

・・・・・と申しますのは、ドル資金供給を捕まえて「金融緩和」とか言い出したら、期末になると良く行われる「期末に逼迫するレポ対策のためのSLF特例措置」とかまで金融緩和になってしまいますし、だいたいからして本来ドルオペとかはバックストップ的な措置(あとで総裁もそういう話をしている)なのですからして、その利用が無くて市場からのドル調達が円滑に進んでいる方が望ましい事態なのに、「ドルオペによる外貨供給は金融緩和」とか言い出したら、ドルオペの残高減ったら金融引き締めって話になるんですけど大丈夫かこのオッサン。

まあ百万光年ほど譲って3本の鉛筆もとい柱は「新型コロナ対応」というのはまだ理解できない訳ではない(元々やっていたオペの枠を拡大したのだけを示すべきな所、元々のオペまでぶっこんでごった煮にしているのは如何なものかとは思うが、一応3本とも新型コロナ対応で新設したり増額したり条件緩和したものだから)のですが、「金融緩和」とまで言い出すと、いやいやいやいやそれは違うだろ特に真ん中の鉛筆、という話になる訳ですよ。


もうね、黒田日銀になってからというものずーっとそうなのですが、遂に今回は、本来2%物価目標の為のYCC用にやっている筈の輪番をとっ捕まえて「コロナ対応」とか言い出す、ということで、一度おっぱじめると引くと言う事を知らずに戦線の拡大か転進と称して誤魔化していくか、というジャパンの官僚組織らしい大変に素敵な事になっているし、黒ちゃんこの説明素で本人そう思って説明しているならちょっとそろそろお歳もお歳ですので以下自主規制だし、分かっててこういう言い方してるんだったら悪質というか、どうせ総裁会見に来る記者共の知能では分からんだろと馬鹿にしているという話ではないか、とまで思ってしまう訳ですな。

でまあその続き。

『こうした対応は効果を発揮しているとみています。』

はいはい大本営大本営、というか効いてるのは財政だし海外の施策じゃろとは思いますけどね。CP社債買入は無駄に効果が出ているとは思いますけど。

『内外の金融資本市場は、なお神経質な状況にありますが、ひと頃の緊張は緩和しています。企業の資金繰りには依然ストレスが加わっていますが、外部資金の調達環境は緩和的な状態が維持されています。金融機関の貸出態度は緩和的であり、CP・社債の発行環境も一時的に拡大していた発行スプレッドが縮小するなど、良好な状態にあります。』

もともとのスプレッドが従来よりある日銀買入を前提にして歪んでいる話はスルーの模様です。

『こうしたもとで、銀行貸出残高は前年比+6%台半ば、CP・社債残高も前年比+10%を超える高い伸びとなっています。日本銀行としては、引き続きこの「3つの柱」により、資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく所存ですが、そのうえで、当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる方針です。』

必要があれば躊躇なくはどうでも良いのですが、その前の所で「「3つの柱」により、資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく」って言っていまして、さっきは「金融緩和」と言っているのに、ここでは「資金繰り支援と金融市場の安定維持」であって、別に金融緩和をして需要を引き上げようというような話をしている訳ではない、というのがまた酷い説明でして、一つの会見答弁の中で行っている施策について2種類の説明するってオマエナメトンノカという感じではありますな。


・メディアだからキャッチーな言葉を使いたいのは分かるが質疑で使うと本質が覆い隠されるから止めえや

次の質疑。後半の出来が良いのだが前半の質問が残念。

『(問) 景気の先行き見通しですが、いわゆるV字回復というのがなくなって、今回の展望レポートでも書かれているように、その改善のペースというのは緩やかなものにとどまると考えられるとの指摘があります。V字回復ではなくU字とかL字とか、そのようなイメージの回復になっていくということでよろしいのでしょうか。(後半割愛)』

U字だのL字だのってよく巷間言われるし、何とかストとかも良く使ったりするみたいですけれども、こういうのは向こうが言うのを勝手に言わせておいて、そこから「そのV字だとかいうのはどのような状況を指すのでしょうか」とツッコむなあ良いのだが、日銀の政策企画部門のようなあいえばこういう屁理屈をひねり出す方々を生業にしておられる相手にあまりこういうフワッとしたキャッチーな言葉での質問をしない方が良いと思うの。だいぶ後の方にも出てくるけど。

『(答) まず、経済の見通しですが、今回の展望レポートにも示している通り、既に足許で回復の様々な兆候がみられており、ある意味ではかなり急速な回復のようにみえます。しかし、それは非常に大きく落ち込んだところから急速に回復しているもので、今後もそれがずっと続くかどうかは、議論のあるところです。むしろ私どもとしては、その後の回復は緩やかなペースになるとみています。ただ、そうしたもとでも、展望レポートにもある通り、今年度はマイナス成長になりますが、2021 年度はかなり強く回復し、2022 年度も 1%台半ばということで、持続的な成長経路に戻っていくとみています。U字かV字かなど、様々な議論はあると思いますが、緩やかではあるけれども着実に回復していくとみています。(後半割愛)』

ということでほぼ不毛な質疑になっておりまして、もし聞くんだったら「見通しを見ると21年度は急速に回復するのに22年度はそのペースが一気に鈍化するというのはどういうメカニズムによるものと理解すれば良いのでしょうか」とかの方がもうちょっとオモロイ質疑応答が見れそう。


・CP社債買入の説明は酷すぎる

などといちゃもんを付けておりますが、このお方の質疑は後半が素晴らしい(というか当たり前のツッコミ)のとその回答がお前は何処の安倍晋三かという説明で血圧急上昇ですわ奥様。

『(問)(前半割愛)もう一点が、社債の買入れについてです。社債の発行高は 6 月はすごく増えており、社債市場の改善につながっていると思います。その一方で、いわゆる市場機能の低下という面では、日銀が大量に買い入れていることで、日銀が買い入れる社債がマイナス利回りになっているということで、リスクに応じた、いわゆる金利の調整という市場の機能が低下しているのではないかという懸念の声が聞かれます。この点について総裁はどうお考えでしょうか。』

(;∀;)イイシツモンダナー


『(答)(前半割愛)それから、社債についてですが、CPも社債も金額自体はFRBなどが買い入れる額よりも小さくみえますが、確かに、社債やCPの市場の大きさで比べると、日本銀行の買入れはかなりの規模になっています。』

そもそもFRBと比べてとか誰も聞いていないし、市場構成違うし、FRBの買入レートはバックストップのバジョットレートなのであって、日銀みたいに「総額何十兆円でござい」と鉛筆にして自慢するのとは全然違っているのに「FRBより小さく見えますが」とか頭に入れているの意味不明。

・・・・・・でですね、アタクシこれ結構この部分よくよく考えたら「おいおいおい」って思ってきたんですよ。つまりですね、最初のこの部分って、どこからどう見ても「FRBの買入と比較して日本のCP社債買入が少ないように見えますが一段の拡大は検討されないでしょうか」って質問に対する想定問答にしか見えない訳でして、ちょっとこれ黒田さん焼きが回ってきたんじゃないのかとか心配するところでもあるんですが、まあそんな深刻な話ではなくて、黒田さんは定例記者会見を舐め腐っているから緊張感が全然無くて、ついうっかり逆の話をおっぱじめてしまった、とかそういう事ではないかと思うのですけれども(全編において個人の偏見です)、さてどうなんでしょうかね。それにしても何だこの掴みは。

『そうしたことも、欧米と異なり、CPや社債のスプレッドが拡大したものが、全く元のように小さなものになっているという意味で、市場の安定化に非常に有効につながったと思っています。』

やっと話の方向性が戻った。そもそものCP社債買入が市場をゆがめていませんでしたっけという話に関する点は完全にスルーするのはさっきと同じなので驚きはしない。

『市場機能の低下云々というのは、確かに長期的にみてそういう議論があることは事実だと思いますが、足許で社債あるいはCPについて市場機能が大きく低下しているということはないように思います。』

〇〇には当たらない(キリッ)ってお前は安倍晋三かと小一時間。

『市場規模全体に対してのCPや社債の買入れは、米国よりも相対的に大きいわけですが、それ自体は、まだまだ市場規模全体からみるとそれほど大きなものではありません。』

購入適格銘柄で購入対象の残存年限の社債対比で比較しないと意味がないというのを意図的に誤魔化すのはもういつも通りなんですが、詭弁にしてももうちょっとマシな詭弁をして頂きたい。1−3年の社債買入で金利が堂々のマイナスになる現象について抗弁してみろやおい。

『国債については、市場規模の半分程度を日本銀行が買い入れているということで、そういう議論も一部にあることは事実ですが、社債市場について今、市場機能の低下云々ということで議論になっているとは思っていません。』

まさかとは思いますが、この「議論になっていない」というのは、あなたの想像上の市場にすぎないのではないでしょうか。もしそうだとすれば、(以下割愛)。


・そもそも総裁会見で聞く質問かよというのがやってまいりました!

何とかが戦車(タンク)でやっくるという日本映画がございましたが(−−;

『(問) コロナの第 2 波についてですが、前回の会見では第 2 波というよりも新興国の感染拡大の方が一番大きなリスクではないかというご指摘をされていたかと思います。一方で、その後をみていますと、国内外、日本であったりアメリカで、また感染者が増えているという話や、営業の自粛といった話もまた出てきているかと思います。この第 2 波のリスクに対するご認識、あるいは今後の政策的な備えをどう考えるかについて教えてください。』

とまあここまではまだ分かるのだがこの後半、

『また、香港を巡って、米中の対立が今激しくなってきているところかと思います。こちらについても、先行きによっては世界経済、金融市場を揺さぶるリスクになるのではないかと思うのですが、現時点のお考えについてお願いします。』

そんなの質問したって「そらまあ大問題になったら影響は大きいけどワシら当事者でもないのに知るかヴォケ」以外の回答しか出んじゃろ、赤点再履修。

なお、第2波云々に関する回答ですが、

『(答) 第 2 波云々が依然として一つの懸念としてあることは、感染症学者の方が言っておられますので、その通りだと思います。現時点で、日本を含むアジアの国で、一部で若干収束していた感染がまた増えていますが、第 2 波といった大きなものにはなっていないと思います。他方で、新興国は、ブラジルやインドで感染が引き続き拡大していますので、こちらの問題は依然として大きいと思っています。先進国では、米国を除けば、感染が収束した後で大きく再拡大しているということはないように思います。また、米国の場合も、第 2 波なのかどうかは定義の問題かもしれません。日本やアジアと違って、完全に収束させる前にまた増えてきていますので、まだ第 1 波の中の話かもしれません。(後半割愛)』

という風にただの言葉遊びの回答になる訳でして、そもそも第2波が起きるとしたって、普通のインフルがちょっと今年は大流行してますなあって言ってたって経済活動に影響が軽微なのであれば日銀としては特段見通しを変更するような話にはならない訳であって、第2波がどうのこうのとかいう話をするのは不毛オブ不毛なのでありまして、第1波であっても第3波であっても、問題はそれが経済活動にどのような影響を与えるか、または軽微なのか、という話なのですが、まあ見事に黒田さん言葉遊びにして回答をしていますな。

ちなみに質問者の方は「経済の活動に対しての影響」という観点もあったのですが、結局第2波とか新興国の流行と先進国の第2派みたいな話を始めてしまったので完全に本質と関係ない回答で誤魔化された感があります。

でもって今回の質疑応答で一番愚劣だと思った質問はこちら。この問答の直後になります。

『(問) 今の質問に関連して、第 2 波についてですが、今日、東京都が感染の警戒レベルを最も深刻な「感染が拡大している」というところに引き上げています。感染者数も一時 200 人以上続いたり、今日は 165 人を確認しているようですが、そういったものも踏まえたうえで、先ほどのような「大きなものにはなっていない」というご認識だという理解でよろしいでしょうか。』

あのさあ、それ日銀総裁に聞いて何の意味があるの???ちょっと義務教育からやり直してくれませんかどこの誰だか知らない(会見見てないからガチで知らんが)ですけど。回答を引用する意味もないので回答は割愛。


・金融機関の配当政策について

というお目汚しの質疑応答の後にこの着眼は悪くないなというのがあった。

『(問) 金融機関の株主還元についてですが、FRBやECBは銀行の配当に対して停止勧告も含めて言及していますし、日銀はこれまで金融システムレポートで配当性向の高まりを指摘されてきたと思います。昨今の情勢で利益の重要性が結構増していると思うのですが、改めて金融機関の株主還元に対する認識をお伺いできればと思います。』

金融庁に聞けって気もしますが、確かにFSRでもその話題しているので着眼点は悪くない、ただし金融機関の決算終わった直後に近い時期にこの質問をするのはタイミングがちょっと残念だが。


『(答) 欧米の企業、特に金融機関は、わが国の金融機関などに比べるとかなり配当性向が高いといいますか、様々な株主還元をかなり手広く行ってきました。他方で、わが国の企業あるいは金融機関の経営者の方々は、比較的慎重に行動してきて、資本や流動性を相当手厚く持ち、今回のような事態に対して、欧米の企業や金融機関よりもスムーズに対応できていると思います。』

まあそれは一般的にそうなんだが、ただFSRではコロナ前の時代から株主還元を無理して実施していないのか、という指摘はあったので、まあ本来はその辺の話もして欲しい所ですが、それをゴリゴリと突っ込むと収益見通しとかそっちに話が発展するのであまりノリノリになって説明できないというのは分かる。

『ただそのうえで、今後当面、新型コロナウイルス感染症が経済活動に深刻な影響を与えるわけですので、その状況が長引いたりすれば、企業ひいては金融機関の経営にも影響を及ぼす可能性があります。その辺りは十分慎重に状況をはかって、従来同様に慎重な行動をして頂くことが必要だと思っています。ただ、今の時点で、何か日本の金融機関に配当やその他の株主還元策をやめなさいという必要があるとは、必ずしも考えていません。』

とは言ってるものの、後の方でこの状況が長期化すると企業向け貸金がどうのこうのの話をもうちょっと行っています。


・景気のパスを聞くならまあこう聞くもんでしょ

U字だのV字だのL字だのというようなキャッチーだけどキャッチーなだけに本質をミスリードするようなのって正直あんまり好きじゃなくて、こういう質疑は良いと思ったので2本立て続けに引用する。特に茶々入れないのですが、まあこういう事だぞと思う。今の質疑の次。

『(問) 景気の現状認識のところですが、今回の展望レポートでも、年後半から徐々に改善していくとみられるというパスを描いています。今後のいわゆる感染拡大の状況次第かもしれませんが、いったん大きく落ち込んで、底打ち、あるいは底入れをしたと認識されているのでしょうか。』

L字だのV字だの言わないでこう聞くもんですよ!

『(答) 各国の経済によってそれぞれ事態が異なっているとは思いますが、わが国経済についてみると、設備投資は比較的しっかりしています。消費は、対面サービス関係は新型コロナウイルス感染症の心配がなくならない限り、完全には戻らないと思います。サービス関係、観光やスポーツ、イベントなどは、完全に戻るのはなかなか難しいですが、緩やかに回復している段階で、物の消費や生産は、底を打ったと思います。今は底を打って、ぐっと戻っているところですのでスピードも速いですが、その調子でずっといくというほど楽観しているわけではなく、その後の戻り、回復は、緩やかなものになるとみています。』

さっきのV字だのL字だのという質問に対する答えよりも中身がちゃんとあるでしょ??で次の質疑。

『(問) 展望レポートですが、数字だけ見ると前回の幅よりも下になっていますが、出し方が違うので下方修正したとは単純に言えないでしょうか。4 月時点から、景気の見通しに変化がないといいますか、大勢には変化はないとお考えでしょうか。』

これも悪くはない。

『(答) 前回は、緊急事態宣言が出されてそれがどのように解除されるかもはっきりせず、欧米でもロックダウンが続いている状況でしたので、非常に不確実性があるということで、各政策委員が経済・物価見通しを幅を持って出しました。今回は、緊急事態宣言も解除されましたし、欧米でもロックダウンが解除されて経済活動が再開している状況ですので、ポイントで出しました。』

はい。

『その結果は、今回の展望レポートの参考の表にある通り、概ね前回出した幅の中に入っていると思いますが、2020 年度は、前回出した幅よりも若干下の方にいっている面があります。これは、感染症の影響のデータがいくつか出てきて、消費、特にサービス関係に大きく影響していることが明らかになったことがあります。他方で、既に回復の兆し、特に物の消費などではっきりとした底打ちと回復がみられており、2021 年度あるいは 2022 年度については、前回の見通しの範囲よりも少し上の方にきています。従って、2020 年度、2021 年度、2022年度の全体としては、前回の見通しの範囲内に収まっているとみています。』

ということで、変にキャッチーな言葉を使わない方がちゃんとした答弁を引き出せる、という事例紹介でございました。


・雇用や事業継続はワシが育てた、というのは図々しいし何でそんなに目立とうとするのかが分からん

次の質疑。

『(問) 先ほど、一連の政策効果について評価、言及されていましたが、一方で、このコロナ対応にあたって、春先ですか、日銀の対応として事業・雇用を守ることが大事だと、最優先に取り組むべきだと発言されたと思います。この一連の日銀の政策が、倒産や失業者の増大に歯止めをかけるのに、どの程度の効果があったと評価されていますか。』

効果がありました(キリッ)と回答するのはまあ順当に考えてそうだろうなあと思いますが、それ以上に威勢の良い回答をしているのは何でなの?????何をそんなにアピールしたいの??????????

『(答) データが示している通り効果があったと思いますが、これは日本銀行の政策だけではなく、政府の 2 回にわたる大規模な補正予算、それによる企業・雇用・家計の生活に対する大規模な支援策というものも、大きな効果を持ったと思います。』

ちょwwwww普通言い方逆だろこれじゃあまるで日銀が主導的に効果だしてるみたいじゃねえかよ。普通はこれ「政府の政策が大きな効果を発揮し、日銀はこの政府の政策が金融面で円滑に機能するように金融市場の安定と資金繰り支援を行いました」となる、というかFEDとか思いっきりそういう説明にして議会と政治をヨイショしてるぞ。

・・・・・・というのは、結局中央銀行って本質的にこういう形で起きるあばばばばーに対処できるのって限定された局面しか対応できないのだから、そら普通の感覚だったら政府や議会に花を持たせて自分はあくまでもサポート役だ、ってやっておかないと、(そうなって欲しくはないが)コケた時に一緒になって沈没するんですけど大丈夫ですかって感じですが、この回答の後半でも、

『日本銀行が 3 月、4 月、5 月と行ってきた様々な政策と、政府の強力な政策が相俟って、企業の倒産は今のところ非常に少ない状況ですし、失業率も若干上がっていますが、諸外国に比べ、またリーマンショック後の状況に比べてはるかに良いという状況であり、その状況に日本銀行の政策も一定の貢献をしたと考えています。』

どう見ても言い方が日本銀行主体みたいな言い方になってるの大丈夫かというか、何でそんなに悪目立ちしようとするのか、数字を盛りまくっている3本の鉛筆然り、と思うのでありました。


・・・・・・・・・さて今回の総裁会見、ネチネチとツッコミを入れてみると意外にツッコミどころが多い、と申しますのは、聞く方を舐めているんだと思うんですけど、説明の理屈がガバガバになっていまして、まあガバガバというよりは「雑な説明に終始している」という感じでして、聞く方を舐め腐っているのでなければ黒ちゃんなんかやる気無いんじゃネーノって感じを(字面ベースでは)受けてしまうのでありまして、いずれにせよ何かこう怪しからん会見だなあ、と思うのでした(個人の感想です)。


という訳で、まさかの明日に続くでして、今週は何の因果か3営業日しか無くて来週はFOMCだというのにこんなにチンタラやってたらダメじゃんと思うのですが、泣く子と時間切れには勝てないので本日はここで勘弁して頂きとうございます。あとは超長期の話と財政ファイナンスの話と物価目標の話があって、最後とか良い感じで黒ちゃん意地になって発言している感があって鑑賞物としては笑えます。








2020/07/17

お題「寝起きでECBである(夜やれよというツッコミはしないでください)」

ウィリアムズが珍しく良い事を言っている!!!
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-idJPL3N2EN3UH
2020年7月17日 / 00:46 /
緊急融資策の低い利用率、順調な市場機能を示唆=NY連銀総裁

というこの講演自体は今日は読んでる暇が1ミリも無いのでスルーしますが、先日ご紹介しましたNY連銀副総裁の話などと同じでございます。まあECBちゃんはこのままPEPPやっていきますよ別に変更しませんよとは言っていますが別に拡大はせんと。

然るに、どこぞの中銀ちゃんに於かれましては海外中銀に対抗でもしたかったのか突然変なもん食ったかのように3本の鉛筆というフリップ芸で総枠だの実施額だの年間ETF&REIT買入ペースだのをアピールするわしらっと期限を延長するわとやっておりまして、パウエルが「パンデミック対応で積極的な施策を実施!」ってのに「何とうちはこんなにたくさんの額を実施して来年3月まで期限延長!」ってやったら「どうぞどうぞ」とか言われるダチョウ倶楽部スキームになりそうな流れ(あとはラガルド次第)ですな、ナムナムナム。


〇今日は寝起きでECB:決定事項に変化なかったが直近のTLTRO3に対する評価(自画自賛)が入る

まずは決定事項。

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2020/html/ecb.mp200716~fc5fbe06d9.en.html(今回)
Monetary policy decisions

前回はこちら
https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2020/html/ecb.mp200604~a307d3429c.en.html(前回)

『(1) The interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.00%, 0.25% and -0.50% respectively. The Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels until it has seen the inflation outlook robustly converge to a level sufficiently close to, but below, 2% within its projection horizon, and such convergence has been consistently reflected in underlying inflation dynamics.』(今回)

『(6) The interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.00%, 0.25% and -0.50% respectively. The Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels until it has seen the inflation outlook robustly converge to a level sufficiently close to, but below, 2% within its projection horizon, and such convergence has been consistently reflected in underlying inflation dynamics.』(前回)

政策金利系の金利は全て据え置き。金利に関するフォワードガイダンス文言にも変更なし、というか全文一致じゃん。なお項番が違うのは前回PEPPの増額があってそっちが先に出ているからです。

『(2) The Governing Council will continue its purchases under the pandemic emergency purchase programme (PEPP) with a total envelope of ユーロ1,350 billion. These purchases contribute to easing the overall monetary policy stance, thereby helping to offset the pandemic-related downward shift in the projected path of inflation. The purchases will continue to be conducted in a flexible manner over time, across asset classes and among jurisdictions. This allows the Governing Council to effectively stave off risks to the smooth transmission of monetary policy. The Governing Council will conduct net asset purchases under the PEPP until at least the end of June 2021 and, in any case, until it judges that the coronavirus crisis phase is over. The Governing Council will reinvest the principal payments from maturing securities purchased under the PEPP until at least the end of 2022. In any case, the future roll-off of the PEPP portfolio will be managed to avoid interference with the appropriate monetary policy stance.』(今回)

ええい長い、なおPEPP拡大と延長した前回のはこの部分が3項目組になっています。

『(1) The envelope for the pandemic emergency purchase programme (PEPP) will be increased by ユーロ600 billion to a total of ユーロ1,350 billion. In response to the pandemic-related downward revision to inflation over the projection horizon, the PEPP expansion will further ease the general monetary policy stance, supporting funding conditions in the real economy, especially for businesses and households. The purchases will continue to be conducted in a flexible manner over time, across asset classes and among jurisdictions. This allows the Governing Council to effectively stave off risks to the smooth transmission of monetary policy.』(前回)

『(2) The horizon for net purchases under the PEPP will be extended to at least the end of June 2021. In any case, the Governing Council will conduct net asset purchases under the PEPP until it judges that the coronavirus crisis phase is over.』(前回)

『(3) The maturing principal payments from securities purchased under the PEPP will be reinvested until at least the end of 2022. In any case, the future roll-off of the PEPP portfolio will be managed to avoid interference with the appropriate monetary stance.』(前回)

ということで、前回ぶっこんだ額、期間については変更が無くて、期間についての表現は前回の項番2と同様の書き方で、「少なくともPEPPによるネット買入2021年6月まで実施します、いずれにしましても政策委員会はPEPPによるネット買入をコロナウィルス危機のフェーズが終了したと政策委員会が判断するまでは継続する」という表現も同じですわな。


『(3) Net purchases under the asset purchase programme (APP) will continue at a monthly pace of ユーロ20 billion, together with the purchases under the additional ユーロ120 billion temporary envelope until the end of the year. The Governing Council continues to expect monthly net asset purchases under the APP to run for as long as necessary to reinforce the accommodative impact of its policy rates, and to end shortly before it starts raising the key ECB interest rates. The Governing Council intends to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the APP for an extended period of time past the date when it starts raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』(今回)

これまた長いのですが、APPの額とフォワードガイダンスの話をまとめてるから長くなっております。

ああそういえばアタクシ「ユーロ」が謎のカタカナになっていますが、この駄文を描くときにMSにデフォでついてるテキストを使っていまして、おまけに(始めたのが大昔だったから)Unicodeで作っていませんで、昔からのWin日本語テキストエディターのデフォがANSIでして、ユーロは外字なんですよ(ドルとかポンドはある)、ということでご勘弁ください(Win10になってからはデフォがUnicodeになっていてANSIは選択する形式になった)。

『(4) Net purchases under the asset purchase programme (APP) will continue at a monthly pace of ユーロ20 billion, together with the purchases under the additional ユーロ120 billion temporary envelope until the end of the year. The Governing Council continues to expect monthly net asset purchases under the APP to run for as long as necessary to reinforce the accommodative impact of its policy rates, and to end shortly before it starts raising the key ECB interest rates.』(前回)

『(5) Reinvestments of the principal payments from maturing securities purchased under the APP will continue, in full, for an extended period of time past the date when the Governing Council starts raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』(前回)

何故か今回項番2つ分をまとめられてしまいましたが、APPに関する話にも変更はありません。

『(4) The Governing Council will also continue to provide ample liquidity through its refinancing operations. In particular, the latest operation in the third series of targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III) has registered a very high take-up of funds, supporting bank lending to firms and households.』(今回)

何か前半が箇条書きとは思えないクッソ長い項番になっていると思ったら最後にこのようなものがぶっこまれておりまして、直近のTLTRO3の実績がでかかったのは金融機関の企業や家計向けの貸出の増加をサポートしております(キリッ)という謎アピールが入っていました。

『The Governing Council continues to stand ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation moves towards its aim in a sustained manner, in line with its commitment to symmetry.』(今回)

『The Governing Council continues to stand ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation moves towards its aim in a sustained manner, in line with its commitment to symmetry.』(前回)

最後の所も同じです。


〇ラガルド会見の頭のステートメントから

最近ECBは会見のQ&Aを出してくる速度が物凄い勢いなので既にQAがついとる(驚)。

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2020/html/ecb.is200716~3865f74bf8.en.html
INTRODUCTORY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 16 July 2020

ちなみに前回はこちら
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2020/html/ecb.is200604~b479b8cfff.en.html

今だとトップページに会見の動画(ユーチューブにECBの公式チャンネルがあります)へのリンクというか要はラガルド姐さんのご尊顔のあたりをクリックすると出てきますが、ラガルドさんの英語は発音が明瞭で、ドラギのおっちゃんみたいな癖も無く(おっちゃんは顔も声も一癖あるわ)、しかも(欧州のプレス相手にしている訳で相手の母国語が英語じゃない人が圧倒的なんだから当たり前ですけれども)ゆっくり目に喋ってくれるので、聞き取りやすくて物凄く有難いです。

なお、今回の会見は記者は遠隔っぽいのですが、会見場のひな壇にはドンブロスキ副総裁とあと一人(紹介されてないから広報か秘書の人ですかね、MichaelSteenって人です)出ていて、「同時に出ていますのでスプリットチームの状況がただいま無視された状態ですが皆さんはマスクして席に座っていて下さいね」とか(上記URLの中では出てきてませんけれども、21分33秒の辺りから聞いてちょ)言いながら質疑応答に入っているのがもう貫禄十分って感じでしたな。


・総括判断は引き上げ

『Incoming information since our last monetary policy meeting in early June signals a resumption of euro area economic activity, although the level of activity remains well below the levels prevailing before the coronavirus (COVID-19) pandemic and the outlook remains highly uncertain.』(今回)

『Incoming information confirms that the euro area economy is experiencing an unprecedented contraction. 』(前回)

第2(実質第1)パラグラフの頭の部分に総括判断がありますが、今回は前回(6月頭)対比で「signals a resumption」ということで経済活動の再開の兆候がありますな、ただし水準はあばばばばーですけど、というアセスメントになっています。まあ順当な評価でしょう。

『Both high-frequency and survey indicators bottomed out in April and showed a significant, though uneven and partial, recovery in May and June, alongside the ongoing containment of the virus and the associated easing of the lockdown measures. At the same time, actual and expected job and income losses and the exceptionally elevated uncertainty about the evolution of the pandemic and the economic outlook continue to weigh on consumer spending and business investment.』(今回)

『There has been an abrupt drop in economic activity as a result of the coronavirus (COVID-19) pandemic and the measures to contain it. Severe job and income losses and exceptionally elevated uncertainty about the economic outlook have led to a significant fall in consumer spending and investment. While survey data and real-time indicators for economic activity have shown some signs of a bottoming-out alongside the gradual easing of the containment measures, the improvement has so far been tepid compared with the speed at which the indicators plummeted in the preceding two months. The June Eurosystem staff macroeconomic projections see growth declining at an unprecedented pace in the second quarter of this year, before rebounding again in the second half, crucially helped by the sizeable support from fiscal and monetary policy. Nonetheless, the projections entail a substantial downward revision to both the level of economic activity and the inflation outlook over the whole projection horizon, though the baseline is surrounded by an exceptional degree of uncertainty. 』(前回)

ECBのINTRODUCTORY STATEMENTは割と奔放にこの辺りの書式をいじって来るので前回と比較するのがやや無理がある上に、6月会合はスタッフによるマクロ経済見通しの四半期改定が行われるので、その分も含めて比較されると何が何だかという感じになって恐縮です。

でもってまあこの辺ですが、物凄く手抜きして申し上げますと、6月の時点で底打ちの兆しがみられていたものが今回コンファームされましたって感じの評価になっていると思います。ただし雇用と、それに関連する個人セクターの所得に関してはアカンがね、という話。

『Headline inflation is being dampened by lower energy prices and price pressures are expected to remain very subdued on account of the sharp decline in real GDP growth and the associated significant increase in economic slack.』(今回)

『While headline inflation is suppressed by lower energy prices, price pressures are expected to remain subdued on account of the sharp decline in real GDP and the associated significant increase in economic slack.』(前回)

物価は当面アガランチ会長という見通しは同じ、ということで方向性は改善したけど水準はうんこだし、雇用が怪しいということで、一応上方修正は上方修正ですが見方は厳しいという感じじゃないでしょうかねえよくわかりませんが。

ということで経済の状況についてのアセスメントの所だけ前回と比較しましたが、以下は今回の冒頭ステートメントの方をサラサラと鑑賞の巻。


・政策決定に関する説明

以下断っていませんが今回からの引用を続けます。第3パラグラフ以下になります。

『Against this background, ample monetary stimulus remains necessary to support the economic recovery and to safeguard medium-term price stability. Therefore, we decided to reconfirm our very accommodative monetary policy stance.』

そらそうよとしか言いようがない話しですな。

『We will keep the key ECB interest rates unchanged. We expect them to remain at their present or lower levels until we have seen the inflation outlook robustly converge to a level sufficiently close to, but below, 2% within our projection horizon, and such convergence has been consistently reflected in underlying inflation dynamics.』

まずは金利の維持の話と金利政策ガイダンス。

『We will continue our purchases under the pandemic emergency purchase programme (PEPP) with a total envelope of ユーロ1,350 billion. These purchases contribute to easing the overall monetary policy stance, thereby helping to offset the pandemic-related downward shift in the projected path of inflation.』

PEPPについては金融政策スタンスを全体として緩和的にすることによって物価の先行きパスの下振れをオフセットすることを助ける効果を、という説明をしていますね。

『The purchases will continue to be conducted in a flexible manner over time, across asset classes and among jurisdictions. This allows us to effectively stave off risks to the smooth transmission of monetary policy. We will conduct net asset purchases under the PEPP until at least the end of June 2021 and, in any case, until the Governing Council judges that the coronavirus crisis phase is over. We will reinvest the principal payments from maturing securities purchased under the PEPP until at least the end of 2022. In any case, the future roll-off of the PEPP portfolio will be managed to avoid interference with the appropriate monetary policy stance』

PEPPは規程の範囲内でフレキシブルに実施します、というのを毎度のように強調してまして、これ質疑の方でも出ているのですが(今日は間に合わないからパス)、いろいろと便利に使える訳で、それこそイタリア国債買い増しも行けるし、逆に引く方も行けるというマジックワードになっていますな。なお会見でもその辺は上手い事両方の話をしながらも積極的に買うようなトーンの(そこまで細かく読んでないので会見の音での印象ですけど)話をしていますかね、とか思いました。

でもってPEPPの期間とかPEPPで購入した債券の償還再投資に関する話はステートメントの通りでございます。

『Net purchases under our asset purchase programme (APP) will continue at a monthly pace of ユーロ20 billion, together with the purchases under the additional ユーロ120 billion temporary envelope until the end of the year. We continue to expect monthly net asset purchases under the APP to run for as long as necessary to reinforce the accommodative impact of our policy rates, and to end shortly before we start raising the key ECB interest rates. We intend to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the APP for an extended period of time past the date when we start raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』

これはAPPの方の話ですが声明文通りだし従来通りの話。

『We will also continue to provide ample liquidity through our refinancing operations. In particular, the latest operation in the third series of targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III) has registered a very high take-up of funds, supporting bank lending to firms and households.』

こちらはTLTRO3ですな


・これまでの施策の暫定評価キタコレ

と来まして

『The monetary policy measures that we have taken since early March are providing crucial support to underpin the recovery of the euro area economy and to safeguard medium-term price stability.』

ということで今次危機においてぶっこんだ政策は「crucial support」だったそうな。

『In particular, they support liquidity and funding conditions in the economy, help to sustain the flow of credit to households and firms, and contribute to maintaining favourable financing conditions for all sectors and jurisdictions.』

特に短期金融市場(これはドルファンディングの話も含めるんでしょうな)のサポートが効いたと短期市場ファンディングの話をしています。

『At the same time, in the current environment of elevated uncertainty and significant economic slack, the Governing Council remains fully committed to doing everything necessary within its mandate to support all citizens of the euro area through this extremely challenging time.』

この不透明な中、今後必要ならば出来る事は何でもします(キリッ)。

『This applies first and foremost to our role in ensuring that our monetary policy is transmitted to all parts of the economy and to all jurisdictions in the pursuit of our price stability mandate. The Governing Council, therefore, continues to stand ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation moves towards its aim in a sustained manner, in line with its commitment to symmetry.』

まあこの辺はいつもの威勢の良い宣言(やるとは言っていない)って奴ですな。


・経済の現状評価と見通しについて

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis.』

ということで政策の話から情勢判断の話になる。

『Incoming data and survey results suggest that economic activity improved significantly in May and June from its trough in April, alongside the ongoing containment of the virus and the associated easing of the lockdown measures. At the same time, economic indicators remain well below the levels recorded before the pandemic, and the recovery is in its early stages and remains uneven across sectors and jurisdictions.』

最初の総括判断でも示されていますが、こっちの方が明快に表現しているので引用しました。5月以降は「economic activity improved significantly」というのが経済指標などから示されていますよ、でも水準はあばばばばーですけどね、というお話。

『After decreasing by 3.6%, quarter on quarter, in the first quarter of 2020, euro area real GDP is expected to have contracted even further overall in the second quarter, broadly in line with the June 2020 Eurosystem staff macroeconomic projections. Signs of a recovery in consumption have emerged, while there has also been a significant rebound in industrial output. At the same time, subdued labour market conditions and precautionary household saving are weighing on consumer spending. Weak business prospects and high uncertainty are dampening investment, while the weakness in the global economy is hampering foreign demand for euro area goods and services.』

つーことで成長率の話になりますが、現状に関する評価は「broadly in line with the June 2020 Eurosystem staff macroeconomic projections」と従来見通し通り。でもって労働市場がアカン事に関して先々への悪影響を懸念しているという説明になっています。

『Euro area activity is expected to rebound in the third quarter as the containment measures are eased further, supported by favourable financing conditions, an expansionary fiscal stance and a resumption in global activity, although uncertainty about the overall speed and scale of the rebound remains high.』

『In general, the extent of the contraction and the recovery will depend crucially on the duration and effectiveness of the containment measures, the success of policies to mitigate the adverse impact on incomes and employment, and the extent to which supply capacity and domestic demand are permanently affected.』

先行きは今後も経済活動の抑制が緩和されることを前提にしますと徐々に回復傾向を強めますねでも先行きは不透明さが大きいですね、るというまあそらそうよという話ですが、何でもかんでも感染症と言わないのがどこかの中銀とは違う所ですね。

『Overall, the Governing Council assesses the balance of risks to the euro area growth outlook to remain on the downside.』

リスクバランスは下方、そらそうですな。


・財政に関して

冒頭ステートメントは以下物価の話、マネタリーの話と続くのですがそこは時間の関係上すっ飛ばしまして財政の話。

『Regarding fiscal policies, an ambitious and coordinated fiscal stance remains critical, in view of the sharp contraction in the euro area economy. Measures taken in response to the pandemic emergency should as much as possible be targeted and temporary in nature.』

ということで財政出動が引き続きキモですよ、とくる訳です。

『The three safety nets endorsed by the European Council for workers, businesses and sovereigns, amounting to a package worth ユーロ540 billion, provide important funding support in this context.』

キタコレ。

『At the same time, the Governing Council urges further strong and timely efforts to prepare and support the recovery. We therefore strongly welcome the European Commission’s Next Generation EU proposal, which is dedicated to supporting the regions and sectors hardest hit by the pandemic, to strengthening the Single Market and to building a lasting and prosperous recovery. It is important for the European leaders to quickly agree on an ambitious package.』

ほほう。

『In order to reach its full potential, the European Union’s Recovery and Resilience Facility will need to be firmly rooted in sound structural policies conceived and implemented at the national level.』

つーことでEUのRecovery and Resilience Facilityがとても必要ですよとな。

『Well-designed structural policies could contribute to a faster, stronger and more uniform recovery from the crisis, thereby supporting the effectiveness of monetary policy in the euro area. Targeted structural policies are particularly important to rejuvenate our economies, with a focus on accelerating investment in priority areas such as the green and digital transitions.』

でもって最後はいつものように構造改革の重要性を強調するということで終わるのでした。QAは後日。


〇ということで他のネタェ・・・・・・・・・・・

・ラガルド会見

流し聞きしかしていないですが、ラガルドさんが聞きやすい喋り方しているから何となくの感じですが、オモロイ会見っぽいので早急にネタにしたいですねえ。

・日銀の続き

展望レポートの本丸がまだなのと、黒田総裁会見の方は最近聞く気も起きないのでヘッドラインだけ流して見ていますが、とりあえず記者のへぼい質問何とかならんの?と思いますし、ツッコミがアレだから答える方も舐め腐った回答してるだろ、というのもあるように思えた(個人の偏見です)がさて如何に。

何の因果か来週無駄に土日含んで4連休とかがありやがる・・・・・・って幻の東京五輪(80年ぶり2度目)の祝日でしたかそうですかなので、ネタの渋滞が懸念される昨今、土日になるとぐうたらしてしまいますが、自分に鞭打って成敗を心掛ける所存であります(やるとは言っていない)。








2020/07/16

お題「決定会合レビュー:しらっと予想物価上昇率の現状判断が下がっていますなあ」

ほーん。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200715/k10012517341000.html
小池都知事「感染拡大警報」発すべき状況 警戒レベル引き上げ
2020年7月15日 18時57分

フリップ芸飽きたし、この標語フリップの地色が都知事選の前は概ね緑だったのに対して選挙終わったと思ったら色が変わった(ように見える)のは何ですねんと思いますし、警報出して注視するだけなんでしょと思いますし、また電飾やるとかは(やらんみたいだが)電気代の無駄だから都知事様が自らチェレンコフ光出して警戒訴えたら如何ですかねえ(最後のは無理^^)。

つーか「東京アラート」って何だったの??選挙活動だったら公職選(爆発音)。


〇声明文:政策はそのままだし片岡さんは反対理由をもうちょっと練って欲しい

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200715a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200616a.pdf(前回)

今回は展望レポートの会合なので経済物価情勢に関するアセスメントは展望レポート基本的見解の方にぶっこんであります。よって何も変更がない訳でして・・・・・・・・・

政策は維持なのでガイダンス文言だけ見ますがご案内の通り全文一致。

『2.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(今回)

『5.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(前回)

項番だけ文章構成上違いますが、前回声明文と一言一句変わることなくついでに改行位置も同じと来ております。QQE政策、MB拡大のオーバーシュート型コミットメントの継続期間は同じ。

『引き続き、@新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、A国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、BETFおよびJ−REITの積極的な買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。』(今回)

『引き続き、@新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、A国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、BETFおよびJ−REITの積極的な買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。』(前回)

コロナ対策三本の鉛筆もとい三本の柱も同じです。


『当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)。』(今回)

『当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注 2)。』(前回)

躊躇なく緩和措置を講じるとのことですが、この後ネタにしますが、今回ってしらっと世の中の期待物価上昇率のアセスメントを下げているんですよね。となると本来は目標未達の状態が継続している中での期待物価上昇率が下がるのは阻止しないといけないんですから今必要じゃなかったいつ必要になるんだよ、という話ではあるのですけれども、どうせ物価目標の話がノーケアーだからということで、注目されないうちにしらっと期待物価上昇率のアセスメントを下げるというドサクサ紛れの作戦に出ているのがいじましい。

でもって政策金利のガイダンスもこう書いているのですが、そもそも論としてコロナ新型資金供給がバンバン出ると、その分だけプラス金利の当座預金残高が増える、という格好になっていまして、それって利上げなんじゃネーノとか思いますけど、まあそれで何か上手く回っている気がする(個人の感想です)ということは、これ即ちマイナス金利拡大とかマイナス金利政策というそのものが金融引き締め的であり、つまりは金利政策というのはゼロ金利の部分で金利上げ下げの効果が非対称になっているということを示すんじゃないんですかねえ、などと思いますし、大体からして日銀が率先してプラス金利の資金供給オペの参加を慫慂しているのですからして、つまりは日銀でも中の人(ただし政策委員会のカボチャ共はカボチャ脳なので分かっていない可能性が高そうではありますが)は金利の効果がゼロで非対称と内心思ってるんじゃないですかねえ、などと妄想は膨らむのでありました。

・・・・・・・すいません与太話が長くなりました。


『(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、安達委員、中村委員。反対:片岡委員。片岡委員は、今後の物価下押し圧力の強まりへの対応と、企業・家計の金利負担軽減を企図して、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。』(今回)

『(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、安達委員。反対:片岡委員。片岡委員は、今後の物価下押し圧力の強まりへの対応と、企業・家計の金利負担軽減を企図して、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。』(前回)

布野さんが中村さんに代わった(ちなみにこの委員の名前順ですが就任順です、櫻井さんと政井さんは同時ですけれども年齢とか考慮して櫻井さんの席次を先にしたんでしょうね)だけで何も変化ないのは良いんですけど、片岡さんの反対理由が全文一致とは提案芸人の風上にも置けません。

と申しますのは、今回って展望レポートの回であって、先出ししてしまいますと、展望レポート基本的見解における予想物価上昇率の現状認識は、

『予想物価上昇率は、弱含んでいる。』(今回の展望レポート基本的見解)
『予想物価上昇率は、弱めの指標がみられている。』(6月決定会合声明文)

ということで現状認識を下げているんですよね。そういう中なのに片岡さん何の芸も無く前回(の前もそうですが)、「今後の物価下押し圧力の強まりへの対応と、企業・家計の金利負担軽減を企図して」としか言わないのは提案芸人としては赤点再履修としか申し上げようがありません。

いや別にアタクシ追加緩和どころかマイナス金利撤回しろやヴォケという人だから片岡さんのこの提案に1ミクロンたりとも賛同はしないのですけれども(強いて言えばマイナス深堀して大爆発大焦土になって全員戦犯で吊るし上げて連中を一掃しないと永遠にこの調子なのかな、とも思うところはあるけど)、せっかく多数派の皆様が声明文の方で予想物価上昇率、という元々の置物理論、すなわちMB拡大で期待インフレを引き上げる、という理論はQQEの理論でもあった訳ですから(敢えて過去形^^)、その根幹部分の予想物価上昇率の弱含みを認めたとうのを捕まえて「予想物価上昇率が弱含んでいる状況を看過することは2%物価目標の達成を極めて困難にするから追加金融緩和」って主張しろよということで。

ガイダンスの方の反対意見も前と同じだがもうめんどいから引用だけ。

『(注2)片岡委員は、新型感染症の深刻な影響を念頭におくと、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。』(今回)

『(注 2)片岡委員は、新型感染症の深刻な影響を念頭におくと、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。』(前回)

#そういや置物で思い出しましたが、7月号の証券アナリストジャーナルにジンバブエ先生の見るに耐えない駄文(しかもいつものように無駄に長い)が掲載されていましたが、引用どこまでして良いのかとか考えているうちにネタにするタイミングを逸してしまいましたが、あんなのジャーナルと銘打ってる紙面に掲載すんなやそもそもジンバブエに寄稿依頼すんなやヴォケという所でして、ジャーナル編集委員は全員切腹して詫びろというのを一応申し上げておきましょう


〇展望レポート基本的見解:基本的な部分は前回同様で結局コロナ次第だから分からんとなっていますが・・・・・・・

経済物価情勢のアセスメントに関しては6月声明文でも記載されていますので6月声明文とも比較します。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2007a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200616a.pdf(6月声明文)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2004a.pdf(前回4月)

なお、一応展望レポートの建付けとしては声明文で示している見通し期間よりも長い期間をカバーしているので、その分での文言の相違というのもありますので、その辺は勘案して確認して頂ければと存じます。


・鏡の部分

まずは1ページ目の『<概要>』という鏡の部分から。最初は経済見通しの総括判断。

『日本経済の先行きを展望すると、経済活動が再開していくもとで、本年後半から徐々に改善していくとみられるが、世界的に新型コロナウイルス感染症の影響が残るなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。その後、世界的に感染症の影響が収束すれば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、わが国経済はさらに改善を続けると予想される。』(今回)

『先行きのわが国経済は、経済活動が徐々に再開していくとみられるが、当面、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から、厳しい状態が続くと考えられる。その後、感染症の影響が収束していけば、ペントアップ需要(抑制されていた需要)の顕在化や挽回生産が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、わが国経済は改善していくとみられる。』(6月声明文)

『わが国の経済・物価情勢を展望すると、経済は、当面、内外における新型コロナウイルス感染症の拡大の影響から厳しい状態が続くとみられる。また、物価についても、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、感染症の拡大や原油価格の下落などの影響を受けて弱含むとみられる。』(前回4月)

『その後、内外で感染症拡大の影響が和らいでいけば、ペントアップ需要(抑制されていた需要)の顕在化や挽回生産が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、わが国経済は改善していくと考えられる。物価も、徐々に上昇率を高めていくとみられる。今回の見通しにおいては、感染症拡大の影響が、世界的にみて、本年後半にかけて和らいでいくことを想定している。』(前回4月)

1ポツ目の経済の先行き見通しですが、「当面〜厳しい状態が続く」が削除されているので全体的な見通し自体は引き上げになっていますが、この部分は単にコロナ感染症に関連した経済活動抑制政策が一部緩和されてきている、というのを受けているだけの話で、本質的に上方修正したのか、というと言うなれば留保付き上方修正というか停止条件付上方修正というべきか、と思いましたです。

引用の所でお分かりのように、というか前回の展望を覚えておられればご案内の通り、前回の展望レポートでは先行き見通しの書き方をいつもと違って「コロナで経済活動が抑制中のうち」「無事になんとかなった後」の2段構えで示していまして、まあ一応コロナでの経済活動抑制が徐々に緩和され(たと思ったら怪しげな雰囲気も漂いまくっっていますがそこはさておき)て来ましたので、その部分を切ってみればまあ今回の展望レポートの見通しも前回からそんなに上方修正されている訳ではない、と思います。


次は先行き物価。

『先行きの物価を展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、感染症や既往の原油価格下落などの影響を受けて、マイナスで推移するとみられる。その後、経済の改善に伴い物価への下押し圧力は次第に減衰していくことや、原油価格下落の影響が剥落していくことから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、感染症や原油価格下落などの影響を受けてマイナスで推移するとみられる。その後は、景気が改善していくもとで、プラスに転じたあと、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(6月声明文)

先行きの物価については、4月展望では「とにかく今の緊急事態宣言だの世界的なロックダウンだのがある中で何も分からんがな」ということで、もちろん基本的見解の本文の方には記載がありますけれども、本文なのに2行コメントしかない、という有様なので鏡には記載されていません。

でもって6月のアセスメントと比較しますと、原油価格の部分で表現が違いますが、これは単に前年比効果の効き方が月を追うごとに変わってくる事を反映しているだけで、特にこの部分に何らかの思い入れのようなものがあるとは思いにくい文体になっている(個人の感想です)ので要するに見通しには変更なし。

『今回の経済・物価の見通しは、いずれも、概ね前回の見通しの範囲内である。』(今回)

声明文の場合この記載はそもそもなく、前回展望ではもはやそれどころではないし見通し大幅変更なのは言わなくても分かるだろうとばかりに記載されていないので空しく3ポツ目は今回のを引用するだけです。

『こうした先行きの見通しについては、感染症の帰趨やそれが内外経済に与える影響の大きさによって変わり得るため、不透明感がきわめて強い。また、上記の見通しは、大規模な感染症の第2波が生じないことに加えて、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下しないことや、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されることなどを前提としているが、そうした前提には大きな不確実性がある。』(今回)

『リスク要因としては、新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさといった点について、きわめて不確実性が大きい。さらに、感染症の影響が収束するまで、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要である。』(6月声明文)

『もっとも、先行きについては、感染症の拡大が収束する時期や内外経済に与える影響の大きさによって変わり得るため、不透明感がきわめて強い。また、上記の見通しは、感染症拡大の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下しないことや、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されることなどを前提としているが、そうした前提には大きな不確実性がある。』(前回4月)

声明文と鏡と微妙に別の論点なのは声明文と展望レポートの仕様の違いなので勘弁して頂くとしまして、見通しの前提が「感染症の第2波のようなものが来ない」すなわち「再度経済の大規模なロックダウンのような事が生じない」というのは基本的に言っていることは4月と同じですね。4月の場合は当時絶賛ワールドワイドにロックダウン中だったので、第2波云々とかいう話をしている以前の問題でして、まあそれが3か月(2カ月半ですが)後のコロナちゃんの状況を踏まえて表現が変わっただけで、見通しの前提に「コロナちゃんは経済の大規模ロックダウンを生じさせるようなレベルでの悪さはしないで済むでしょう」という割と強めの前提を置く(そらまあ政策当局的にはそう置くことになるのはシャーナイ面がありますから)というのがあるのがポイントだよ、という説明。

でもってコロナちゃんやっているうちに成長期待、金融システムの安定が維持されることが前提になっていて、まあ金融システムの方はしばらく大丈夫そうに見えます(個人の感想です)が、成長期待に関しても結構これは強めの前提を置いているでしょ、という話ですな。


『リスクバランスは、経済・物価のいずれの見通しについても、感染症の影響を中心に、下振れリスクの方が大きい。』(今回)
『リスクバランスは、経済・物価のいずれの見通しについても、新型コロナウイルス感染症の影響を中心に、下振れリスクの方が大きい。』(前回4月)

そらそうよ。


・現状のアセスメントで予想物価上昇率をしらっと下げているのがチャーミングというかドサクサ紛れというか

時間の関係で本文は最初の『1.わが国の経済・物価の現状 』だけという頭出しだけにも程がある上に明日はECBェ・・・・・・・・・・・・(すいませんすいません)

『わが国の景気は、経済活動は徐々に再開しているが、内外で新型コロナウイルス感染症の影響が引き続きみられるもとで、きわめて厳しい状態にある。』(今回)
『わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、きわめて厳しい状態にある。』(6月声明文)
『わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、厳しさを増している。』(前回4月)

6月声明文と横ばいですが、「経済活動は徐々に再開しているが」という部分が(単なる事実だけど)入っている分だけは少し光も見えないことはない、ってな感じでしょう。

『海外経済は、持ち直しに向かう動きもみられるが、感染症の世界的な大流行の影響により、大きく落ち込んだ状態にある。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は大幅に減少している。企業収益や業況感は悪化しており、設備投資は横ばい圏内の動きとなっている。感染症の影響が続くなかで、雇用・所得環境には弱い動きがみられている。個人消費は飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少してきたが、足もとでは、持ち直しの動きがみられる。住宅投資は緩やかに減少している。この間、公共投資は緩やかに増加している。』(今回)

『海外経済は、感染症の世界的な大流行の影響により、大きく落ち込んだ状態にある。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は大幅に減少している。企業収益や業況感は悪化しており、設備投資は増勢の鈍化が明確となっている。感染症の影響が続くなかで、雇用・所得環境には弱めの動きがみられており、個人消費は飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少している。住宅投資は緩やかに減少している。この間、公共投資は緩やかに増加している。』(6月声明文)

『海外経済は、感染症の世界的な大流行の影響により、急速に落ち込んでいる。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は減少している。企業の業況感は悪化しており、設備投資はこのところ増勢の鈍化が明確となっている。感染症拡大の影響が強まるなかで、雇用・所得環境には弱めの動きがみられ始めており、個人消費は飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少している。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移しており、公共投資は緩やかに増加している。』(前回4月)

海外経済は「持ち直しに向かう動きもみられるが」が入っている分だけ6月より上方修正、輸出と生産、企業収益と業況感の部分は同じ、雇用所得環境は4月からの推移が「弱めの動きがみられ始めており」→「弱めの動きがみられており」→「弱い動きがみられている」と時間を追うごとに悪化傾向を強めていますのでアカンですな、まあそういうことですが。

個人消費の所は今回「足もとでは、持ち直しの動きがみられる」と入れていて6月より上方修正、住宅投資と公共投資は同じです。

『わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りは悪化しているなど、企業金融面で緩和度合いが低下した状態となっている。』(今回)
『わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下している。』(6月声明文)
『わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下している。』(前回4月)

金融環境、6月声明文までが「悪化するなど」になっていて今回「悪化しているなど」になっているのですが、「する」が「している」というのだから多分「これまで悪化傾向が続いて居ましたが悪化傾向が増すことはなくなったです、ただし水準として状況が厳しいです」とでも言いたいんでしょうか良く分かりません。

でもって今回の白眉はこちら。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、原油価格の下落の影響などにより、0%程度となっている。予想物価上昇率は、弱含んでいる。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、原油価格の下落の影響などにより、0%程度となっている。予想物価上昇率は、弱めの指標がみられている。』(6月声明文)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、弱めの指標がみられている。』(前回4月)

どう見ても下方修正です本当にありがとうございました。まあ2%物価目標に対してどうのこうので追加緩和はどうなっている、とか言われない時期を狙って下げやがったなコノヤローなどと考えてしまうのは心が濁っておりまして、きっと予想物価上昇率がここ1か月弱で弱含んで来たんですよ!!!!(棒読み)


#という所で時間切れとなりましたので以下は勘弁







2020/07/15

お題「NY連銀副総裁の講演ネタ:ドタバタやっていたようで色々と考えたデザインになっているのに感心するのだ」

「ジョブ型」の話って最近コロナ便乗のように目立つのですが、
https://jp.reuters.com/article/hitachi-idJPKCN24F16C
2020年7月14日 / 19:33
アングル:日立が進める「ジョブ型」雇用、日本での普及に懐疑的見方も

『[東京 14日 ロイター] - 日立製作所(6501.T)は来春、各ポストの職務を明確にして最適な人材を充てる「ジョブ型」雇用を国内の全従業員約15万人を対象に導入する。日本企業で伝統的に採用されてきた一括採用・年功序列・終身雇用といった「メンバーシップ型」雇用からの大転換だ。新型コロナウイルスの影響による在宅勤務の広がりもあり、導入機運が高まる人事制度だが、日本の企業社会に根付いていくかは、懐疑的な見方もある。』(上記URL先より、以下同様)

その昔、アタクシhamachan(濱口桂一郎)先生の「新しい労働社会−雇用システムの再構築へ(濱口桂一郎著:岩波新書)」を読んでネタにした(過去ログ見たら11年前だったわ)のですが、最近のこの話が多くなって11年前に読んだ本を引っ張り出して読んだろかと思ったらhamachan先生のコメントがあるじゃん。

『産業による違いもある。日本でジョブ型の呼称を広めたとされる労働政策研究・研修機構(JILPT)労働政策研究所の濱口桂一郎所長は、電機産業でジョブ型の取り組みが進んでいるのは、工場の構内請負化が進み、現場労働力の多くが直接雇用ではなく外部化しているからだと指摘する。』

『欧米で典型的なジョブ型とされる工場作業員は、職務記述書に記された範囲に作業内容が限られ、企業側からすればむしろ日本型のシステムより硬直的とされる。自動車などの産業では、製造現場での正規従業員の比重は依然として大きい。濱口氏は「日本車メーカーが、GMやクライスラーのようなシステムを導入するだろうか」と指摘する。』

なるほどなるほどと思いながらhamachan先生のブログを久々に(大汗)ご紹介しよう、と思ったら先生の最新エントリーがロイター記事の話でした(汗)。今でも売ってるのかどうかは存じませんが、昔ネタにした上記の本はコンパクトなのですがいろいろ勉強になりました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/
hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)


〇昨日の続きでNY連銀副総裁のコロナ対策ファシリティのお話から(その2)

https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2020/sin200708
The Fed’s Emergency Facilities: Usage, Impact, and Early Lessons
July 08, 2020
Daleep Singh, Executive Vice President
Remarks at Hudson Valley Pattern for Progress (delivered via videoconference)

図表はこちら。
https://www.newyorkfed.org/medialibrary/media/newsevents/speeches/2020/sin200708/Singh_HVPP_exhibits_7.7.pdf
The Fed’s Emergency Facilities:Usage, Impact, and Early Lessons

昨日は『Usage of the Facilities』の最初の部分だけ頭出しした格好でしたのでその続きです。昨日の部分はファシリティの利用状況がピークでも(似たようなファシリティで比較した場合)リーマンショックの時よりも少ないのにこうかはばつぐんだ!になっているという話で、その背景に金融危機が生じていないことを説明していましたな。んでもってその続きになります。

『This resilience of financial markets is consistent with the trends seen in Figure 2, showing how facility usage has evolved over time.』

でもってこれまた図表2というのが図表PDFの3ページ目(1ページ目は表題ページです)にあたっていますが、『Figure 2: Outstanding Amounts in 13(3) Facilities』ってお題になっています。まあ見てちょという感じですが、『Outstanding Amounts in 13(3) Facilities』ということで、「MMLF」「PDCF」「CPFF」「PPPLF」「SMCCF」「MLF」「PMCCF」「MSLP」「TALF」の凡例あんど色付き残高グラフという物件がございます。まあそれ見りゃ一目瞭然ですが・・・・・・


・最初はホールセールの短期ファンディングのサポートから

『The first facilities to start operations were the Primary Dealer Credit Facility (PDCF), Money Market Liquidity Facility (MMLF), and Commercial Paper Funding Facility (CPFF)-the light blue, dark blue, and red areas, respectively.』

最初に運用が始まった各種ファシリティはPDCFとMMLFとCPFFです。

『These programs sought to repair short-term wholesale funding markets, which serve as the lifeblood of functioning markets.』

これらのファシリティは短期のホールセールファンディング市場を修復して市場機能を回復するものです、だそうな。

『As those markets recovered with overarching support from the Fed’s actions, usage of the PDCF and MMLF has declined. Similarly, with an easing of pressures in commercial paper markets soon after the CPFF’s announcement, this facility too has seen only limited take-up.』

これらのファシリティによって市場が沈静化しまして、その後市場が正常化していく中でこれらのファシリティの利用は減って来ました(というのは図表2を見てちょ)、CPお助けプログラムに至ってはプログラム入れるよと言っただけで市場が沈静化しました。

『This pattern reflects the “lender of last resort” design of these programs: they provide a relief valve if market strains re-intensify, but are not expected to be used heavily under less stressful conditions.』

これはLLR(というかバジョット・ルールというか)の考え方を反映した制度設計が功を奏しております。というお話でどこかの中央銀行は爪の垢を煎じて飲んで頂きたい。


・短期市場が落ち着いた後はPPPCFが大活躍

その次。

『The main source of growth in outstanding balances comes from the Paycheck Protection Program Liquidity Facility (PPPLF)-shown by the dark gray area. This program bolsters the effectiveness of the Small Business Administration’s Paycheck Protection Program by supplying liquidity to bank and nonbank financial institutions that originate PPP loans.』

ペイチェックプロテクションファシリティの利用がじゃんじゃか増えて他を圧倒する、という状況になっています。まあ図を見ればわかるのでとっととPDF開いてください(^^)。

『Since its launch in mid-April, PPPLF usage has risen steadily, and outstanding advances are about $70 billion. This amount is still well below the program’s potential take-up, which is equal to the amount of PPP loans extended, currently over $500 billion.』

ほう。

『Nonetheless, we have heard from PPP lenders that the program bolsters their confidence in making PPP loans to small businesses, as every PPP lender is eligible to use the PPPLF. Well over 600 PPP lenders are currently using the facility across all 12 Reserve Banks.』

ということで、ペイチェックプロテクションプログラム融資に伴うファシリティが一番出ているし残高多いしまだ出る余地があるようですな。ちなみに米国中小企業庁の関連サイトはこちら。

https://www.sba.gov/funding-programs/loans/coronavirus-relief-options/paycheck-protection-program
Paycheck Protection Program
An SBA loan that helps businesses keep their workforce employed during the Coronavirus (COVID-19) crisis.


・ちょっと前にぶっこんだファシリティ:MLFとTALF

『We have seen modest starts to several other facilities that recently launched and stand ready to support critical segments of the economy.』

はい。

『The gold area is the Municipal Liquidity Facility (MLF), which funded $1.2 billion of 12-month notes for the State of Illinois to assist with COVID-19 related cash flow pressures.』

ほとんど読めないのですが右端の上の方にちょろっとあるのが地方政府お助けファシリティらしい。

『Not visible is the Term Asset-Backed Securities Loan Facility (TALF), which is designed to improve lending conditions for a range of consumer, small business, and commercial loans. TALF launched last month and has lent about $250 million to date.』

これまた殆ど読めないのですが、物凄く拡大してみるとMLFの上にちょこっと載っている気がする。


・最近条件等が決まったファシリティ:MSLPとPMCCF

『Additionally, lending facilities are now available to help businesses maintain operations and keep employees in their jobs. The Main Street Lending Program (MSLP), which provides loans to small and medium-sized entities, including nonprofits, and the Primary Market Corporate Credit Facility (PMCCF), which provides bridge financing to large investment-grade corporate employers if they cannot secure adequate credit elsewhere, both recently opened.』

MSLPとPMCCFは最近ぶっこみましたんで、ということですな。


・社債買入(セカンダリーの方を買う奴、SMCCF)について:市場環境改善したらいったん止めるのもありとな

『More sizable, the pink sliver shows balances of corporate debt the Fed has purchased through its Secondary Market Corporate Credit Facility (SMCCF), about $10 billion so far.』

何かこう微妙な色の使い方なんですが(これユニバーサルデザインとか考えるとこういう組み合わせになるとか何でしょうかデザインの方にはすっかり疎いのでよくわかりません)ピンクシルバーって色なのかよ、というのがセカンダリー社債お買い上げプログラムの残高推移。

『Unlike the other facilities, which establish standing windows for eligible borrowers,6 the Fed sets the pace of corporate debt purchases based on market conditions.7 』

他のファシリティが常設(と言っても期限付きですが)ファシリティタイプになっているのに対しまして、これだけは市場からの買入で行っていまして、市場動向によって買入ペース決めてますよと。

『Since the SMCCF’s launch, as market functioning has improved, we have slowed the pace of purchases, from about $300 million per day to a bit under $200 million a day.8 If market conditions continue to improve, Fed purchases could slow further, potentially reaching very low levels or stopping entirely.』

しらっと言っていますが、市場環境が改善されていく中で買入ペースを落として行ってまして、今後市場状況の改善が継続すれば更に買入ペースを落としたり買入そのものを止めたりするよん、と軽くぶっこんでいますが、このお話って最初の日付にありますように先週水曜にぶっこまれているのですが、このコメントがあったからと言って別に市場があばばばばーになっていないというのがグレートですな。もちろんこのようなフォローもしているのがあるのかも知れませんが。

『This would not be a signal that the SMCCF’s doors were closed, but rather that markets are functioning well. Should conditions deteriorate, purchases would increase.9』

市場環境が改善してノーマルになったと判断したら追加購入は止めるけど、状況が悪化したらまた買入は実施するからビビらないでね、という注釈は勿論行っていますな。


・ファシリティの効果について

『Impact of the Facilities』って小見出しになります。まあ言うまでもないという感じですのでサラッと参ります。

『To reiterate the key point from earlier, despite low usage of the facilities, their impact has been large and sustained.』

自賛キタコレ。まあ自賛するだけの効果は出てるからな。

『In terms of liquidity and funding conditions, we’ve seen a dramatic recovery since mid-March, as seen in Figure 3.』

つーことでPDFの図表3が『Figure 3: Money Markets』でして、上の2つのグラフが『Current and Forward Measures of 3-Month LIBOR-OIS Spread』、『90-day Commercial Paper-OIS Spread』ですが、これは以前ネタにしたNY連銀ブログの方でもこれを引き合いにして短期金融市場の市場ストレス解消について説明していたのでご記憶にあるかと存じます。

『This improvement likely comes from a full array of policy actions deployed in quick succession-not only the facilities I just described, but also the lowering of the Fed’s policy rate to effectively zero, expanded repos and purchases of Treasury securities and mortgage-backed securities, more generous terms for discount window borrowing, and an expansion in the availability of cross-border liquidity.』

でもってここでは短期市場の改善についてはその他に大幅利下げによるゼロ金利政策復活、国債等の買入拡大、海外中銀とのドルスワップ拡大強化も寄与している、と付言しています。

あと、図表3には『Prime Money Market Mutual Fund AUM Weekly Changes』ということで、プライムMMFの設定解約フローも示していますね。

『In terms of credit conditions, as seen in Figure 4, we’ve also seen a sharp reduction of credit spreads that has broadened over time from investment grade debt, to high yield, to municipal bonds, and asset-backed securities, and this has triggered a surge of issuance across asset classes as borrowing rates have normalized.』

でもって図表4が『Figure 4: Credit Markets』ということでクレジット市場の指標として、『Fixed Income Security Spreads』、『Year-to-Date Cumulative Investment Grade Issuance Through June』、『Weekly Corporate Issuance』を示しています。

『While there are still pockets of strain in some markets, and in sectors where business models are directly challenged by the virus, even in these areas there are tentative signs of healing.』

一部そもそも業種的にコロナ直撃でスプレッド開いているのがあったり、一部の市場では幾らかのストレスが残っていたりしますが、それらの所でも最悪期からみたら改善の兆候がありますよ、ということでこれは暫く前にネタにしたNY連銀のブログでの総評と同じようなトーンではありますが、やはりこうかはばつぐんだという話っすわ。


・とりあえずの暫定評価とその教訓ということで・・・・・・・・・

『Early Lessons Learned』という所に参ります。

『Of course, there are limits on what the central bank can do, and only time will tell the ultimate impact of the facilities on supporting the Fed’s dual-mandate objectives, but I would attribute much of the facilities’ initial success to four main factors:』

4つのファクターとは?

『their size and scope, coordination across the government, flexibility, and sustainability.』

だそうで、

『First, the size and scope of the facilities have demonstrated the Fed’s capacity and resolve to blunt the initial economic effects of the pandemic shock. As I mentioned earlier, the potential lending capacity of the facilities is unparalleled. And critically, this lending capacity is being channeled to support a broad cross section of the financial markets and economy-supporting the availability of credit for households, helping small and medium-sized businesses maintain their payroll and employees through new and expanded loans, providing credit to large employers so they are able to pay suppliers and maintain their business operations, and supporting state and local governments experiencing cash flow pressures.』

サイズが十分でスコープが絞っていたのは良かったという評価ですかな。

『Second, the facilities represent a full partnership with the Treasury Department, signaling a government-wide effort to cushion the U.S. economy from the shocks caused by the pandemic. The Treasury Secretary approved the Fed’s use of emergency lending authority under Section 13(3) of the Federal Reserve Act to establish the programs, and the Treasury has provided equity investments in many of them, thus absorbing some of the risk of the Fed’s involvement in private credit markets. The close alignment of the Fed and Treasury served as a “force multiplier” in transmitting stimulus, especially at a time when investors, businesses, and the public at large were looking for signs of a coordinated government response.』

coordination across the governmentっていうと格好良いのですが、そもそもこれはFEDが制度上直接できない各種新ファシリティがあったので当たり前じゃんとか思うのですが、なんかもう勝てば官軍なのでここもエライ勢いで自画自賛している感がががが。

『Third, the facilities are flexible. Term sheets for each facility have been updated or amended since they were first announced, demonstrating a willingness to adapt program design in response to feedback and changing conditions, and to make the facilities more accessible and inclusive.10』

これまたthe facilities are flexibleとか言うと格好良いですが、条件とか途中で色々変更したのって、それはただの試行錯誤(まあ錯誤を認識したらさっくり直す、というのは良い姿勢ですが)じゃろとか思わんでもないですが、何せ勝てば官軍以下同文。

『As Fed policymakers have made clear, these programs can be ramped up or refined further as needed, depending on the impact of and lessons learned from the initial rollout.11』

今後も状況によって柔軟に変化させまっせ、だそうです。

『Lastly, a key success factor has been the sustainability of the facilities. Although the Federal Reserve has moved to implement the facilities at maximum speed, we’ve also done so with maximum care.』

>we’ve also done so with maximum care

ほうほうどういうことで??

『This means our efforts to launch and operate the facilities are guided by a set of principles that we believe will sustain the public’s trust and confidence in our actions. Transparency, inclusive access, good governance, and accountability are at the forefront of our work to implement the facilities, and I’d like to expand upon each of these principles. 12,13』

とまあそういうことで、以下『Transparency』、『Access』、『Governance and Accountability』の点についての説明があって最後に『Challenges and Opportunities』とあるのですがここで時間が無くなってしまいましたので以下は読んで下さいませ(余裕があったらネタにしますが今日からは金融政策大会になるのでちょっと出来るか分からん)。

#最後時間がアレでかなりヤケクソ気味に飛ばしてしまいましたサーセン








2020/07/14

お題「指標金利は意地でも予定通りに移行と/超長期失速なので備忘メモ/NY連銀副総裁の講演が面白そうなので(その1)」

ほうほうそうですかそうですか。

https://bunshun.jp/articles/-/38894?page=2
「テスラ」が時価総額トヨタ超え 巨額の報酬を得た日本人とは?
森岡 英樹
source : 週刊文春 2020年7月16日号

『「水野氏は環境などの持続可能性を重視したESG投資を積極的に推進し、昨年12月、空売りを行う投資家への外国株の貸出を停止した。自社株の空売りに悩まされていたマスク氏は、水野氏を〈ブラボー、正しいことをした〉と絶賛。ただ、水野氏はGPIFの高橋則広理事長(当時)との確執も囁かれ、今年3月末にGPIFを去った」(同前)』

『水野氏に聞くと「数年前からテスラへの参画を求められていました」と答えた。』(上記URL先より)

ほうほうそうですかそうですか。

〇意地でも指標金利移行ですかそうですか

昨日の相場レビューを見ようと思ってロイターさんの所に行ったら拾ってしまったのでメモメモ。

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-idJPKCN24E2GE
2020年7月14日 / 02:32
LIBOR廃止予定に変更なし、コロナ禍でも=NY連銀総裁

『[13日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は13日、新型コロナウイルス禍の中でも2021年末までのロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の廃止予定に変更はないとした上で、各行に代替指標への移行作業を急ぐよう求めた。』(上記URL先より、以下同様)

はあそうですか。

『ウィリアムズ総裁は「大手銀であろうと地銀であろうと、LIBORからの移行を準備する必要がある。穴から抜け出そうとしているのに、その穴をさらに広げることのないようにしたい」と述べた。』

意味わからん。

『また新たな指標金利としては、LIBORよりも取引規模が大きい「担保付翌日物調達金利(SOFR)」がより安定していると強調した。』

先日もネタにしましたが、FSBが突如「コロナショックでLIBOR金利が跳ねたのを見れば金利指標改革が重要なのが明らか」「LIBORは既に銀行の借入コストを反映していない」という何をブチ切れているのか良く分からない紙を出してLIBOR移行のケツ叩きをしておりましたが、これ実は読者様からご指摘を頂いて「確かに」と思ったのですけれども、よくよく考えてみれば今般のコロナショックだって普通にファンディングコスト上がった(から沈静させるためにFEDなどが手を打った)のであって、信用リスクが全体として上昇して銀行のファンディングコストが上昇した場合に、リスクフリーレートを指標にされてしまったりすると、それって信用リスク上昇分を銀行が被れって話になりゃあせんのかと思う所です。

という話をしているのですが、これまたアタクシ段取りの悪いことに、別件バウアーでNY連銀のサイトを見に行ってふむふむとか読んで居った中にSOFRとかのページがあって色々とデータが満載で便利だなあとか思った訳ですが、そこのデータを今から拾いに行くの時間がアレなのでちょっと今日はパスしますが、日本の場合だとリーマンショックの時にはGCレポレートもちゃっかり上昇してエライことになった(ピーク時にはGCレポ金利がロンバード貸出金利まで上がってしまって利下げしてるのに短期のレポ金利が上がって当然の如くCP金利などに跳ねまくった)というのがありましたが、さて米国の場合は・・・・・・・・

などと言いながらもワンチャンあるかと思ってNY連銀のサイトに行ったら案ずるより産むが易しでございまして^^;

https://apps.newyorkfed.org/markets/autorates/sofr
Secured Overnight Financing Rate Data

の中に『To access historical data, please see: Repo Rates Data Historical Search』ってのがありまして、そこのリンクがこちら。

https://apps.newyorkfed.org/markets/autorates/rates-search-page?rateType=R3
Repo Rates Data Historical Search
Data available from 04/02/2018 to the present

などというのがありますので、コロナ前後をポチっとなとしますと、なんか普通にSOFRって政策金利下がったら素直に下がって別に信用リスク云々関係ないのねという結果になっておりましたわ(2月終わりから最近までざっくり目検しました)、なるほどなるほど。

まあ実際問題として、今回はリーマンショックの時と違って金融機関があばばばばーだった訳では無いので、という要因はありますし、アタクシも別に米国のマネーセンターバンクの中の事情とか良く分からんので、実際問題としてのコストどうだったのよとかそういうのは分からんのですけれども、ただまあSOFRがオープン市場の金利指標にふさわしいのかというとこれまた微妙になる時もあって、ジャパンで言えばリーマンショックの時(というかその暫く後ですが)に利下げしてインターバンク市場尾のコールは下がったけどオープンの金利は上がったというのがあったので、そういう時にリスクフリーレートをそのままベースレートに使っていたら、信用コストが「市場全体として」上昇した場合のコスト上昇分がまともに銀行セクターにかぶさって来るという事になりゃあせんかね、とか何とかいう全然違う雑談になるのでございました。

ということで、ウィリアムズは上記引用のように「新たな指標金利としては、LIBORよりも取引規模が大きい「担保付翌日物調達金利(SOFR)」がより安定している」とか仰せですが、そもそも取引規模が大きいから良いのかというと、それもまた微妙なのではないかとは思うのですけれども、何せFSBが「指標金利改革においては実取引レートが重要」とか何とか抜かしやがるもんですからこういう話になるんですわな。

あと昨日はこんなのも。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200713b.htm/
金融安定理事会とバーゼル銀行監督委員会による「金利指標移行に関する監督上の問題−G20向け報告書」の公表について
2020年7月13日
日本銀行

『金融安定理事会(FSB)とバーゼル銀行監督委員会は、7月9日、「金利指標移行に関する監督上の問題−G20向け報告書」(原題:Supervisory issues associated with benchmark transition - Report to the G20)を公表しました。』

まあ中身見てないから良く分からんけど(サーセン)、どうせまあ意地でも指標金利を移行しますよLIBORは親の敵なので末代まで絶滅させますよって話だろうなあとか勝手に偏見を持っているアタクシ(かなりの偏見です^^)。


〇コロナオペとか市場雑談メモ

・さらにコロナオペ対象先拡大とな

次回のコロナオペ向けでしたっけな。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200713a.pdf
新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペにおける貸付対象先公募の結果について
2020年7月13日 日本銀行金融市場局

まーた対象先増えていますが、そもそもコロナオペって企業金融の円滑化という話だったと思うのですが、今や残高をかさ上げするのが目的化していませんかねえと思う次第でございまして、いやまああんまり悪態ついていると色々とアレなのでまあいいです。



・何かまたフラグをたてたのかという超長期失速

うむ。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2EK18D
2020年7月13日 / 15:16 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落で引け、株高に押され金利スティープ化

『<15:07> 国債先物は反落で引け、株高に押され金利スティープ化

国債先物中心限月9月限は前営業日比15銭安の152円07銭と反落して取引を終えた。株高のリスクオン地合いの中、売りが優勢な展開となった。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.0bp上昇の0.025%。』(上記URL先より、以下同様)

てな訳ですが何せ金曜と昨日は何か超長期ちゃんがスティープしてやがっていまして、水曜木曜のフラットニングを見て「まーた止まったら俺も買う俺も買うだわww」とかネタにしたらこの有様という所に落涙を禁じ得ません。

『 現物市場で新発債利回りは上昇。2年債は前日比0.5bp上昇のマイナス0.140%、5年債は同1.0bp上昇のマイナス0.105%。20年債は同3.0bp上昇の0.425%、30年債は同3.5bp上昇の0.595%、40年債は同3.5bp上昇の0.630%。』

ちょwwww

『TRADEWEB
     OFFER   BID    前日比  時間
2年   -0.142  -0.133    0.005  15:02
5年   -0.108  -0.099    0.011  15:02
10年   0.024  0.031    0.016  15:02
20年   0.418  0.425    0.03   15:04
30年   0.591  0.598    0.036  15:05
40年   0.627  0.636    0.04  15:04』

てなカーブになっていて、先週半ば(特に水曜日)の超長期(の特に後ろ)のフラットとは何だったのかと小一時間ですし、超長期が立って来ると急にまた「需給懸念ガー」とか言い出すの何なのと思いますし、更に輪番の日程もちだして需給懸念がどうのこうのとかいう何とかストに於かれましては、その日程月初の時点で分かっている筈なのに理由にすんなや貴様は朝三暮四のエテ公かと小一時間問い詰めたいが、まあアタクシも日々のマークトゥーマーケットでトレードらしきものもしていたので言いたい気持ちはわかるんですけど、やっぱトレーダーじゃねえんだからそこはもうちょっと上手い後出し講釈を考えて頂きたく存じます。



〇NY連銀の副総裁(かな)がこんな講演(ビデオですが)をしてます(先週水曜の講演で恐縮ですが)

https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2020/sin200708
SPEECH
The Fed’s Emergency Facilities: Usage, Impact, and Early Lessons
July 08, 2020
Daleep Singh, Executive Vice President
Remarks at Hudson Valley Pattern for Progress (delivered via videoconference)As prepared for delivery

慣れないアタクシにはちょっと読み方が難しいオッサンですが(昨日だとNY連銀のトップの方にこの講演のリンクがおっちゃん(若そう)のご尊顔写真付きであったのですが今日はウィリアムズになっている)、この肩書だから副総裁なんでしょうね。

でもっていきなりオチを付けてしまうと、この講演、最後に資料へのリンクがありまして、
そちらのパワーポイント紙芝居を見ますと・・・・・・・・・

https://www.newyorkfed.org/medialibrary/media/newsevents/speeches/2020/sin200708/Singh_HVPP_exhibits_7.7.pdf
The Fed’s Emergency Facilities: Usage, Impact, and Early Lessons

こちらのプレゼンの方に講演の内容となる今般の各種オペの残高推移、市場への効果などの図表が4枚組で綺麗にまとまっているので、実は講演そんなに読まなくても言いたいことは分かるという身も蓋も無いオチがあるのですが、こちらを貼り付けるのは多分アカンのとそもそもそんなスキルが(10ウン年テキストサイトをやっているのに)全然ないので、講演の方をちょいとだけ引用の巻。

最初の方はご挨拶とぶっこんだファシリティについての説明なのでパスしまして、『Usage of the Facilities』から。

『Four months in, all of the emergency credit and liquidity facilities are operational, and we can take stock of how the programs are being used and the impact they’re having. The bottom line is that the impact of the facilities has been large and sustained, while the usage has been generally low.』

ということで「ファシリティの利用額は少なかったがこうかはばつぐんだ!」という政策当局としてみたらどう見ても大勝利な結果になっている、というのが一番大きなまとめになっています。

まあどこぞの中央銀行のようにただのアピールとオペ先への10bpボーナスのためにオペをやっている方々はこの一文(というか二文か)を読んでちったあ反省して頂きたいものです。

『Figure 1 shows the outstanding balance of loans or asset purchases for each facility as of July 1, and peak outstanding balances since each program was launched. These peaks are well below those seen for similar programs deployed during the Global Financial Crisis.』

ということで、図表1ってのがさっきのPDFの方の2枚目のスライドになります。ピークから既に減っているし、リーマンショックの時よりも少ない利用なのにこうかはばつぐんだ!という話になっておりまして、そら自慢したくもなるわな。

・・・・・・とは思うのですが、まあこれって基本的には金融システムが動揺していなかったからこの額で済んでいるという話でもあって、つまりは信用創造をする主体の銀行システムが無事であれば、そもそもそのシステム維持のために何かやる必要性というのが相対的に小さくなるから、その分量が減るじゃろ、というのはあると思うのですがどうでしょうかね。

まあそれから、そもそもこの一連のファシリティって基本バジョットレートになっているので、(スワップラインは別)世の中が落ち着けば利用も減りますがな、という話であったりするという事もあるんでしょうな。

などとドヤ顔で申しておりますが、NY連銀でも同じ話をしています(滝汗)。

『The limited usage to date compared to the 2008-09 crisis can be explained in part by the fact that the core of the financial system was in much better condition entering into the current episode-banks themselves were well capitalized, for example. Because the crisis did not originate in the financial sector, markets were able to recover faster from the initial shock and have been highly responsive to the combined fiscal and monetary policy measures.』

『For their part, the backstops established by the emergency facilities have proved especially powerful in restoring confidence for private sector borrowing and lending to resume, which in turn helps the flow of credit to the economy.』

ということでして、まあ確かにそうですなって話。

・・・・・・さてここから個別のオペの話とかになるのですが、アタクシの諸般の事情(単に寝起きが悪くて調子が出た頃には時すでにお寿司だったというだけの事情ですサーセン)によりまして、単に頭出しだけで本日は勘弁させていただきとうございます(ここから続きをネタにするとどう見ても時間が足りない)。続きは明日(超大汗)。

#MPM???何も無いでしょ!!!







2020/07/13

お題「コロナオペは2.3兆円追加実施/支店長会議総裁挨拶は定型文に戻るとな/銀行の顧客情報活用に関するペーペーご紹介」

現役の2期目が負けるのか・・・・・・・
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61430810S0A710C2000000/
鹿児島県知事選、塩田氏が初当選 現職三反園氏ら破る
政治 九州・沖縄 鹿児島
2020/7/12 23:11 (2020/7/13 0:17更新)

『任期満了に伴う鹿児島県知事選は12日投開票され、無所属新人で元九州経済産業局長の塩田康一氏(54)が、無所属で現職の三反園訓氏(62)=自民、公明推薦=ら6人を破り、初当選を決めた。投票率は49.84%で、前回の56.77%を6.93ポイント下回った。』(上記URL先より)

まあかごんまのことは良く知らんのですが経産省出身という文字列を見ると最近はこの人大丈夫かというのが先に出てくる位に経産省の文字列に対する拒否反応がががが。


〇一応コロナオペ結果のメモを

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200710a.pdf
新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーションの実施結
2020 年 7 月 10 日 日 本 銀 行

貸付日 2020年7月13日
返済期日 2021年1月27日
オファー金額 無制限

貸付予定総額 23,333億円
(参考)貸出残高(注) 226,057億円

ということで今回は2.3兆円の応札が入りまして総額が22.6兆円になりましたぞなという結果だった訳ですが、相変わらずアレなのは、このオペってコロナオペパート1とパート2の合算になっておりまして、まあ数字デカいの出したいから全部まとめて合算しているってくらいはアタクシも大人なので分かってはいるのですが、それにしても本来の中小企業支援という意味で言えば、コロナオペパート2のうち、「緊急保証関連の制度融資に紐付きになっている額」というのが何ぼなのかというのを知りたいんですよね。

まあ何となく個人の感想かつ妄想かつ悪寒なのですが、新型コロナオペ90兆円だのと言って物凄い勢いで数字を見せてしまったのですが、そもそもその数字行くんかいなというのもありますし、大体からして中小企業融資とかの方じゃなくて、ただのコロナオペパート1の方で数字稼いでいるんだったら、それって中小企業の資金繰り支援にも何にもなってねえじゃんという感じですので、この内訳という奴を是非みてみたいもんですけれども。

まあそれにしましても、そもそも信用保証協会付きの制度融資に対するバックファイナンスをした!と言って数字をアピールすると、政府が後押しした制度融資の実行額とバックファイナンスのダブルカウントになっている辺りが一粒で成果を2倍強調ということになりますので、ただのペテンじゃろという話でして、いやまあマネタリーベース直線一気理論とかもあたおか理論でしたけれども、あたおか理論でも置物大先生の無い脳を振り絞って考えているので、空理空論だけどペテンかというと結果的にペテンでも本人一生懸命考えてあの理論(よって日銀で「進化」することになる)なのですけれども、これ「バックファイナンスするから日銀が企業金融支援を何兆円実施」って言うのは、単純な買入ならともかく、マル保の制度融資に共通担保出すのって、それは政府の対策の数字に乗っかって同じものを数字に出しているだけじゃんという意味で同じペテンでも明らかに分かってペテン数字を出しているのがタチ悪いですな(数字をこれでもかとアピールしないんだったら別にペテンではない)。

・・・・・・・あれ?また悪態になってしまいましたなナムナム。


〇支店長会議総裁挨拶ネタをすっ飛ばしておりましたのでそちらから

支店長会議挨拶である。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/siten2007.htm/(今回)
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/siten2004.htm/(前回)

『(1)令和2年7月豪雨により、広範な地域で甚大な被害が生じている。犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災者の皆様に対して、心よりお見舞いを申し上げたい。日本銀行は、災害の実体経済への影響を注視するとともに、金融機能の維持と資金決済の円滑の確保に努めていく。』(今回)

というのが今回は入っておりますが、これは読んで字のごとくのお話。でもって今回の挨拶を見ますとあれ?という所でございまして・・・・・・・・・・・

『(2)わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、きわめて厳しい状態にある。先行きについては、経済活動が徐々に再開していくとみられるが、当面、内外における感染症の影響から、厳しい状態が続くと考えられる。その後、感染症の影響が収束していけば、ペントアップ需要(抑制されていた需要)の顕在化や挽回生産が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、わが国経済は改善していくとみられる。』(今回)

『(1)新型コロナウイルス感染症が拡大し、世界経済の先行きは強い不透明感に覆われている。感染症の拡大防止のため、各国で、外出制限等の措置が取られている結果、グローバルに経済活動が大きく制約されている。新型コロナウイルス感染症の拡大は、わが国経済にも、輸出・生産やインバウンド需要、個人消費の落ち込みなどを通じて、深刻な影響を及ぼしている。グローバルな感染症拡大の収束時期には不透明感が強く、経済の先行きは不確実性が極めて高い。』(前回)

一読してお分かりのように、書いてあることが何か大変だぞ緊急事態だぞという表現じゃなくなって、ただ単にコロナで経済がアカンですなあという話になっております。

つまりですね、
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/siten2001.htm/(1月支店長会議総裁挨拶)

『(1)わが国の景気は、海外経済の減速や自然災害などの影響から輸出・生産や企業マインド面に弱めの動きがみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している。先行きについては、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的となり、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる。』(1月支店長会議総裁挨拶)

という文章の構成がまあ大体毎度の仕様になっているのですけれども(つまり展望レポートの基本的見解や声明文での表現の構成と同じ、ということです)、前回の支店長会議挨拶はいつもの定型様式を使わないで表現していた訳ですよね。でもって今回の支店長会議挨拶は、コロナ云々というものはありますけれども、よくよく読みますと、この(2)(今回は事情につき(2)になっているが事実上の従来の(1)文言)の文章構成が通常モードに戻っている、というのが今回の支店長会議総裁挨拶の最初の見どころ(??)ですな。


『(3)物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。先行きについては、当面、新型コロナウイルス感染症や原油価格下落などの影響を受けてマイナスで推移するとみられる。その後は、景気が改善していくもとで、プラスに転じたあと、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)

『(2)この間、内外金融資本市場では、投資家のリスクセンチメントが悪化し、急速に不安定化した。各国の中央銀行による積極的な対応のもとで、金融市場は一頃の緊張が幾分緩和しつつあるが、引き続き、神経質な状況にある。わが国の金融システムは全体として安定性を維持しているものの、金融環境をみると、企業の資金繰りは悪化している。』(前回)

ということで、2番目の項目が全然違いますがな、という感じですのでこれは同様に1月のを見るとしましょう。

『(2)物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台半ばとなっている。先行きについては、当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(1月支店長会議総裁挨拶)

ご覧の通りでして、表現は「いつもの支店長会議挨拶」になっているんですよね。

『(4)わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下している。』(今回)

『(3)こうしたもとで、政府は、4月7日に緊急事態宣言を発出するとともに、今回の危機の克服に向け、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を策定した。同対策では、企業の資金繰り支援が柱の一つとなっている。日本銀行も、3月の金融政策決定会合において、企業金融の円滑確保と金融市場の安定維持の観点から、金融緩和の強化を行った。企業金融支援のための新たなオペの開始やCP・社債等買入れの増額といった措置をしっかりと実施することで、企業金融の円滑確保に貢献していく方針である。また、緊急事態宣言が発出されたもとで、日本銀行は、指定公共機関として、金融機能の維持と資金決済の円滑確保といった、中央銀行として必要な業務を継続して行う体制を整備している。』(前回)

『(3)わが国の金融システムは、安定性を維持している。金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(1月支店長会議総裁挨拶)

とまあこんな感じでして、こちらも(景気の状態はさておきまして)平常運転様式に戻っている訳です。

『(5)金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETFおよびJ−REITの積極的な買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。』(今回)

『(4)日本銀行としては、当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』(前回)

最後の項目は要するに金融政策決定会合の声明文の最後の項番に出てくる話で、今回の挨拶は6月会合の声明文と一緒ですな。

・・・・・・でですね、まあ6月会合の声明文だけでしたらば、この(1)〜(3)は当面の「企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持」という話になっているのですが、ご案内の通り実はこっそり5月臨時会合以降に出ていた「3本の鉛筆」によりまして思いっきり「国債買入」だの「ETF買入」までもが何故か「コロナ対策の3本の柱」にされているんですが、既にこの支店長会議挨拶を見ますと、緊急危機モードは脱却しているかのような表現で、確かに経済情勢は厳しいって言い方になっているのですが、書いてあるものは平常時と同じ表現を使っている訳ですな。いやまあ確かに緊急事態宣言も解除されましたし、何とかアラートとかそういうの別に出ないし、新コロ感染者発見数の数がレコードハイになっても涼しい顔しているので、緊急モードは脱却ということなのでしょうけれども、緊急モード脱却したのにまだコロナ対策をやる気満々みたいな表現になっているのはちょっと・・・・・・


とまあそういう訳で、今回の総裁挨拶ってしらっと「挨拶要旨の文章構成がいつものに戻っている」というのがアレでして、つまりは今回のMPMって危機モードじゃないから今は様子見って話になるんでしょうかね、まあよー知らんけど今回こそ無風なんでしょと思いますし、まあここでこのように通常モードの文体使っているということは、政府がここから水曜日までに何か余程変な事をおっぱじめない限りにおいて、日銀が突如しゃしゃり出てマイクパフォーマンスをすると言う事もないでしょう、と思いたい。



〇これは面白そうなペーパーだが理解するのに歯がががががが

こんなん出てました。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200710d.htm/
金融サービスにおける顧客情報の利用を巡る法律問題研究会」報告書
――顧客情報の利活用に関する行為規範のあり方――
2020年7月10日
金融サービスにおける顧客情報の利用を巡る法律問題研究会

面白そうなので紙に打ち出して読んでみた(行きつ戻りつ前の部分とかを参照するとかしてる分には紙じゃないとめんどいのと書き込みができるのが紙のメリット、とか言ってるけどただの昭和ジジイですサーセン)のですがアタクシの知能ではちょっとアレですけど、内容としては興味のあるものだと思うのよ。基礎知識弱いからアレですが。

という訳で中身のネタに踏み込めないので要旨で勘弁。『要旨』から参ります。

『本稿は、日本銀行金融研究所が設置した「金融サービスにおける顧客情報の利用を巡る法律問題研究会」(メンバー〈50音順、敬称略〉:井上聡、加毛明、神作裕之、神田秀樹〈座長〉、事務局:日本銀行金融研究所)の報告書である。』

ということで、

『近年、情報通信技術の飛躍的な発展等を背景に、業種・業態を問わず幅広い主体で情報を利用しようとする動きが進展している。こうした変化に対応していく環境を整備するため、2019年に銀行法が改正され、銀行は従前許容されていなかった顧客情報を第三者に提供することを目的とする業務を営むことが可能となった。』

さいですな。

『改正銀行法のもとで、顧客の権利利益の保護や利便性の向上を図りつつ、情報の利活用を促進していくためには、銀行がこうした業務を営む際に遵守すべき行為規範を明らかにする必要があると考えられる。そうした行為規範としては、銀行の守秘義務や個人情報保護法に基づくものが想定されるが、改正銀行法における顧客情報の第三者提供業務において、それらがどのように機能するかは、現状、必ずしも明らかではない。この点に関する検討を深めることは、銀行が顧客情報の第三者への提供を行っていくうえでも、重要な視点を提供すると思われる。』

結局この手のって判例が出ないと分からんし、従来法で想定していないエアポケットに入っているような案件だと下級審と上級審で判断が異なったり差し戻されたりして、結構オモロイ(というと不謹慎かも知れないけど)のですよね、と言ってもそんなに詳しい訳ではないし、金貸しの手先とか宅建の勉強とか金融取引における法令云々とか確認している中の門前の小僧モードなだけですサーセン。

『以上のような問題意識を踏まえ、本報告書では、認定情報銀行制度といった足許の顧客情報の第三者提供に関する動きも視野に入れつつ、顧客情報の第三者提供業務の銀行法上の位置付けや同業務における銀行の守秘義務および個人情報保護法の適用関係を整理したうえで、それらの行為規範の内容について検討するとともに、新たな行為規範の必要性およびそのあり方について論じている。』

ということで本文はこちら。
https://www.imes.boj.or.jp/japanese/kenkyukai/ken2007.pdf
「金融サービスにおける顧客情報の利用を巡る法律問題研究会」報告書
―顧客情報の利活用に関する行為規範のあり方―

でまあ先ほど申し上げましたように一読しても文字列が頭の中を通過するだけというアタクシの知能の問題上、こちらからは最後の部分をご紹介させていただくということで勘弁。

『7.おわりに』というまとめの所です。本文31〜32ページの部分(PDFで36〜37ページ)。

『本報告書では、改正銀行法により可能となった、銀行が保有する顧客情報を第三者提供する際、銀行が遵守すべき行為規範について検討した。以下では、検討の結果を総括することで、本報告書の結びとしたい。』

ということで手抜きも手抜きで結果の部分だけ引用しますが、興味が出たら中身も読んでちょ。

『まず、2節において銀行法改正の経緯や概要について整理し、続く3節では、個人情報保護法上、個人情報を第三者に提供する場合は、原則として本人同意を得る必要があることや、これに上乗せした義務を課している金融ガイドラインでは、情報の提供先である第三者等を認識させたうえで書面により本人同意を得る必要があることを確認した。また、足許の動きとして、認定情報銀行制度を取り上げ、個人情報保護法との関係を整理した。』

この辺は現状の説明だったような気がしますな。

『4節では、銀行が顧客情報を第三者に提供する場合には、個人情報保護法と守秘義務が重畳的に適用されることを指摘し、同法の規制対象や規制内容との相違を示しつつ、守秘義務の内容を検討した。』

そらそうよ。重畳的とか元金貸しとしては懐かしの言葉(いや金融実務でも使うけど)。

『規制対象の違いについては、同法が対象を個人情報に限定しているのに対し、守秘義務は、個人情報であるか否かを問わず、法人顧客情報を含む顧客情報を広く対象とすることを指摘した。また、規制内容の違いについては、同法が事前の本人同意の取得の有無のみを問うているのに対し、守秘義務については、その解除のための要件として「正当な理由」を要するとしたうえで、その判断に当たっては個別具体的に考慮する必要があることを指摘した。』

という事ですので・・・・・・・・・・

『5節では、4節で指摘した正当な理由の有無の判断のための個別具体的な考慮要素として、全銀協報告書が提示する5つの要素(@情報開示の目的、A開示する情報の内容、B顧客に及ぼす影響、C情報の開示先、D情報の管理体制)を挙げ、これらの要素を参考に、第三者提供業務における銀行の守秘義務について、個人顧客情報と法人顧客情報とに分けて検討を行った。』

という内容ですがアタクシは読み込み不足なので詳しくは読んで下さいすいません。

『続く6節では、今回の銀行法改正で可能となった銀行による顧客情報の第三者提供業務は、従来の銀行固有の守秘義務の延長線上で論ずることは難しい可能性があることを指摘した。』

これなんですよね〜。

『そのうえで、改正銀行法が、銀行が保有する情報の利活用の促進に寄与することを目的としていることとの関係から、その前提となる情報の正確性確保に関する行為規範や本人のコントローラビリティを高める行為規範を考える必要性を示した。』

つまり、

『銀行が顧客情報を第三者提供する際、銀行が遵守すべき行為規範について考える際には、銀行固有の守秘義務の枠にとどまらず、情報の利活用に関する新たな行為規範も考慮に入れる必要があると考えられる。こうした行為規範が不明確なもとでは、顧客が自らの情報が第三者に提供されることに過度に保守的になったり、銀行が必要以上に第三者提供業務に慎重になったりするおそれがある。』

そらそうよ(携帯の位置情報もオフにしたがる人がここにいる)。

『こうした事態を回避し、改正銀行法の目的である、銀行が保有する情報の利活用の促進を達成するためには、例えば、銀行と顧客間のモデル契約の策定や、業界関係者による自主ルールが市中慣行として定着していくことなどによって情報の利活用に関する新たな行為規範を明確化していくことが期待される。』

と、美しくまとまっていますが、まあその慣行定着のためには訴訟がバンバン出て判例が出てこその慣行定着でしょうな、とか思うのでありました(個人の感想です)。


#月曜なのでこの辺で勘弁








2020/07/10

お題「さくらレポートとか市場メモとかでだいたい備忘メモオンパレードで恐縮至極」

何が起きてるんですか本件は。
https://jp.reuters.com/article/southkorea-politics-idJPKBN24A1IZ
2020年7月9日 / 20:00 /
行方不明のソウル市長、遺体で発見 元秘書がセクハラで告訴

『聯合ニュースによると、市長の娘が同日午後5時過ぎ、市長の所在が分からなくなり、携帯電話の電源も切られていると通報。朴氏は「遺書のような」メッセージを残したという。』(上記URL先より)

〇さくらレポートは連発で全地域現状判断引き下げですかそうですか

まあそれ自体は別に驚きでも何でもないのですけれども・・・・・・・・・・・・
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer200709.htm/
地域経済報告―さくらレポート―(2020年7月)

全文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer200709.pdf
地域経済報告── さくらレポート ──(2020年7月)

前回の概要はこちら
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer200409.htm/
地域経済報告―さくらレポート―(2020年4月)


基本的に引用は断りのない限り今回の概要説明となりますHTML版のページから引用します。


・下方修正をしても何も言われないとなるとあっさり味で下方修正する日銀クオリティ

日銀、というよりは大本営クオリティと言った方が正しい気もしますが、『I.各地域の景気判断の概要』の『(1)各地域の景気の総括判断』から。

『各地域の景気の総括判断をみると、新型コロナウイルス感染症の影響により、前回(2020年4月時点)に続き、全ての地域が判断を引き下げており、「悪化している」または「厳しい状態にある」などとしている。』

ちなみに前回は、

『各地域の景気の総括判断をみると、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などから、前回(2020年1月時点)以降、全ての地域が判断を引き下げており、「弱い動き」または「下押し圧力が強い状態」などとしている。』(前回さくらレポート概要より)

となっていて、ちゃんと大本営に合わせて日銀も「感染症拡大」→「感染症」という風に表現をきっちりと変更するのとか、まー当たり前ではありますがこういう所はきちんと行っています。拡大が止まったように見えないとかそういう話は(爆発音)。

何せこちらですけれども、なおもしつこく古傷をほじくり返すのがアタクシの仕様となっておりますが、本年1月のさくらレポートにおいては、

(1月さくらレポートに関する1月16日に書いた駄文の再掲)
ってな訳で『▽各地域の景気の総括判断と前回との比較』というのがあるんですけど、そこをよくよく拝見しますと・・・・・・・・・・・(前回→今回です)

東北:一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな回復を続けている→弱めの動きが広がっているものの、
緩やかな回復を続けている
関東甲信越: 輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、緩やかに拡大している→海外経済の減速や自然災害などの影響がみられるものの、基調としては緩やかに拡大している
四国:回復している→一部に弱めの動きがみられるものの、回復している

ってなっていまして、この3地区の矢印は「判断不変」を示す横向き矢印になっているのですが、えーっとちょっと待てそれ判断不変というアセスメントにして良いのかって内容な訳ですが、これはきっと「6地域で判断引き下げ」という見せ方をすると「すわ追加緩和」という話が盛り上がるのを嫌って横向きと言い張っているんですねわかります、という風情を感じる物件になっておりまして実に味わい深い。
(ここまで1月さくらレポートに関する駄文の再掲)

という事案がありましたが(粘着質)、これは必殺の矢印マジック(書いてあることが下方修正といってもおかしくないものを方向性を示す矢印の向きを横にしてお茶を濁すという殆どアレな手順)という奴ですが、政策意図的に動きたくないし追加緩和とか言われたくない時にはこの有様だったのが、ここに来てもう一気に下方修正の連発。そらまあ現状判断と先行き判断はまた別物、と言ってしまえばそれまでなのですが、景気ウォッチャーは直近だからさておくとしましても、短観だって絶対水準はうんこオブうんことは言え先行きにそこまで絶望を覚えさせる内容ではない(と思ったのだが)とかなのですが、まあとにかく景気判断を下げられるうちに豪快に下げておこうということですか良く分かりません。

しかも、どうせ今の時点でコロナ特別体制を変更する気もない(どころか他国の中銀対比引っ張る気が満々でやっていいものと悪いものがあるだろうと思うアタクシ涙目なのですが)次第なのですからして、そらもう下げるの平気なら下げまっせという事ですな。

じゃあ引き下げたから追加緩和なのか、というと(今朝どこかが何か書いていたらゴメンやでなのですが)、さすがに今回はヘタクソマイクパフォーマンスがぶっこまれるリスクはありますけれども、何ぼ何でもスルーだろと思いますし、世間的に追加期待もないと思うので、つまりは政策変更云々とかいうのが関係ないとなると、急にこういう感じでしらっと見方を変えてくるのでありますな、という感想。

・・・・・・・こちらに関しては、確かにまあさくらレポート自体が展望レポートを含むMPMの直前に出てくるから、そこであんまり派手に経済アセスメントをいじってしまうと金融政策の方に直結して連想されてしまう(まあ展望レポートの前提の一つになる地域経済の話をしているんだから政策と結び付けられて考えてしまうの当たり前なんですけど)ので、あんまり派手にいじりにくいというのもあるのは分かるんですけど、これ逆にさくらレポートを展望レポートの中間時期に出してみる、っての駄目なんですかねえ、とは何となく思っている今日この頃です。


・地域ごとに確認すると東海ってこれ下方修正なのか微妙ですな(下方修正なんでしょうけど)

さっきの再掲しますけど、

『各地域の景気の総括判断をみると、新型コロナウイルス感染症の影響により、前回(2020年4月時点)に続き、全ての地域が判断を引き下げており、「悪化している」または「厳しい状態にある」などとしている。』(今回さくらレポート概要より)

『各地域の景気の総括判断をみると、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などから、前回(2020年1月時点)以降、全ての地域が判断を引き下げており、「弱い動き」または「下押し圧力が強い状態」などとしている。』(前回さくらレポート概要より)

となっていて、「拡大」と日付以外は同じ文言で今回も全地域下方修正なのですけれども、よくよく見ますと次に『各地域の景気の総括判断と前回との比較』というのがありまして・・・・・・・・・


北海道:新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響により、下押し圧力の強い状態にある
→新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、大幅に悪化している

東北:新型コロナウイルス感染症の影響などから、このところ弱い動きとなっている
→新型コロナウイルス感染症の影響などから、悪化している

北陸:新型コロナウイルス感染症の影響などから、弱めの動きとなっている
→新型コロナウイルス感染症の影響などから、大幅に悪化している

・・・・・ん???ここまでコロナに関して「拡大」文言の判断の入り方前回と変わってないぞな。


関東甲信越:新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響により、このところ弱い動きとなっている
→内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、きわめて厳しい状態にある

・・・・・・関東甲信越は「拡大」文言が外れとるな。


東海:新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、下押し圧力の強い状態にある
→改善に向けた動きがみられ始めているが、厳しい状態にある

ちょwwwwこれは下方修正の矢印になるのか????????????もしかして「全地域下方修正」としたかっただけなのか??????

近畿:新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、弱い動きとなっている
→新型コロナウイルス感染症の影響により、悪化した状態が続いている

・・・・・・ほうほう近畿も「拡大」文言が外れとるな。


中国:新型コロナウイルス感染症などの影響から、このところ弱い動きとなっている
→新型コロナウイルス感染症の影響から、大幅に悪化したあと、厳しい状態が続いている

四国:新型コロナウイルス感染症の影響から、このところ弱めの動きとなっている
→新型コロナウイルス感染症の影響から、一段と弱い動きとなっている

九州・沖縄:新型コロナウイルス感染症などの影響から個人消費や輸出・生産を中心にこのところ弱い動きとなっている
→新型コロナウイルス感染症の影響から悪化している

となっていまして、実はコロナ拡大云々の文言をいじっているのは「関東甲信越」と「近畿」だけだったりします。いやまあ人口比とかGDP比でみたらそこで文言削っているから削るとかいう話になるんでしょうけれども、北海道とか「拡大」がそのまま残っていまして、まあ何と申しますかそっちの方がいや何でもありません。

総裁挨拶とかその辺とその他アネクの話はまた別途。


〇マクロ加算の掛け目でました

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200709a.pdf
日本銀行当座預金のマクロ加算残高にかかる基準比率の見直しについて
2020年7月9日 
日本銀行 金融市場局

『日本銀行は、日本銀行当座預金のうち、ゼロ金利が適用されるマクロ加算残高の算出に用いる基準比率(「補完当座預金制度基本要領」4.(3)イ.に定める基準比率)について、次のとおり定めることとしました。

2020 年7月積み期間:31.5%

これにより、日本銀行当座預金のうち、マイナス金利が適用される政策金利残高(金融機関間で裁定取引が行われたと仮定した金額)は、5兆円程度となる見込みです。

次回は、2020 年8月積み期間に適用する基準比率を 2020 年8月7日 17 時に公表する予定です。』

ということで掛け目ちゃんですが、前月の公表から基準比率に関して「四半期ごと」から「月次」という言い方に変えて来ましたが、さて今回もそうだよねと思ったらまあそうなりましたがな。現状ではコロナオペとかドルオペ用担保用国債売現先とか、やってみないと分からん上に額が巨大なのがあるからまあシャーナイナイ。

しかしまあこの「5兆円」も最早意味があるんだか無いんだか良く分からなくて、短期市場の取引状況見ながら適当に基準比率を調整するしかない状態だとは思いますので、どこからしらっとこの5兆円も削ってしまいますと、何かと先行き便利な事になるのではなかろうか(ここに目を付けて変な金融政策アピールのネタにされるのは正直タマランチ会長である)と思いますがどうですかね。

ま、先月の公表時は初回だったからこのまま月次公表方式にしらっと移行するのか多少不透明な感じは無かったわけでもないのですが、まあ今回も素直に8月積み期分を来月公表と出ましたので、このまま月次公表になるんでしょうね。



〇止まったと思うと買いが続く円債クオリティ・・・・・なのかな(市場メモ)

例によってロイターさん。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N2EG1JL
2020年7月9日 / 15:19 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸で引け、中期・超長期債が金利低下

『 <15:11> 国債先物は続伸で引け、中期・超長期債が金利低下

国債先物中心限月9月限は前営業日比7銭高の152円10銭となり、続伸して引けた。5年債入札結果が好感され、中期ゾーンや先物は強含みで推移した。超長期ゾーンは金利低下が継続した。10年最長期国債利回り(長期金利)は前日と横ばいの0.015%。』(上記URL先より、以下同様)

ということで昨日は5年入札が強い結果で続伸の巻ですが終盤はちょっと長い所の勢いが落ちた感もという感じですが、まあ5年国債入札も無事通過。しかしまあ何ですな。

『5年債入札は強めと受け止められた。市場では「日銀による国債買い入れオペが手厚いゾーンであることから、買い安心感が広がった」(国内証券)との声や「超長期債のスティープナーの動きが一服し、当面先物は売られにくいとの見方から、買いやすさがあったのではないか」(別の国内証券)との声が聞かれた。』

って別に晒し上げする積りではないのですけど、5年ってここもとマイナス一桁台BPとかまでジリジリと金利上がって来てて、その間って輪番の増額がイマイチだのとか言われていた筈でして、増発がこれだけあるのにブーブーって感じだったような気がだいぶする(個人の印象です)のですけれども、いざ入札が確りすると輪番が手厚いゾーンとかいう評価になる辺りが微笑を禁じ得ない所ではございます。まあゆうてドンドン金利が低下するかどうかは知らんですけど、確りしだすと今度は「担保需要ガー」とか言い出すレポートが登場するに100ジンバブエドル。

5年入札はベンダー集計の事前予想足切りが100円98銭の所、平均101円01銭で足切りが101円00銭でまあ強い入札でした、って所ではありましたが、それよりも超長期が30年入札を通過して、というかそのちょっと前からっぽいですがそれは兎も角としまして戻っておりましたし、発行増の入札ガーというのも結局毎度おなじみの「バサッと買いが入って相場が止まると急に俺も買う俺も買うモードになる」というパターンになっておられるようで、円債ちゃんの様式美としか申し上げようがありませんが、増発ネタをこなしてしまうと次に金利上昇させるネタってワクチン開発大成功でパンデミック対応モード終了の巻くらいになるんですか(ジャパンの財政云々は悲しいので想像しない、という現実逃避モード)、よー知らんけど。


でまあこれは別にこのコメントとかの人たちを揶揄するとか晒し上げるとかいう意図でネタにしている訳ではないのはしつこくも申し上げますが、上記ロイターさんの記事で続きが超長期な訳ですよ。

『超長期ゾーンは、40年債主導で金利が低下した。40年債は2カ月に1度の発行に加え、他年限と比較すると発行額も少ない。また、超長期債のカレント債は国債買い入れから除外しており、日銀は保有していない。このため、レポレートが低下し、買い戻しが入ったとみられている。』

前半はさておきまして、「超長期債のカレント債は〜」の部分、さっきは中期が日銀の輪番が厚いので買い安心と来ているのに超長期のカレントは日銀が買わないから強いとかいう話になりまして、いやまあこれしばらく前からずっとある説明なので円債村の皆様としては何を今さらジローですけれども何年か後に忘れないためにメモっておくと、このご都合主義の理屈こそが金融市場という感じでアタクシ良い悪いの価値判断は別にして楽しいですなと思う所ではありまして、超長期スティープしていた時には輪番が足りんという話なのに、強い時には日銀が持っていないからSLFが出来ないのでレポが云々とか、もっと面白い時期には日銀の輪番が減りようがないので需給がこれ以上悪化する懸念が無いとか、まあ要するに屁理屈は何とでも付けられますわな、というお話ではございまして、月初からここまでの感じを見ていて今回は(変な意味で)おもろかったですなと(個人のかなり無責任な感想です^^)。

『現物市場では、新発2年債が前日比0.5bp低下のマイナス0.140%。新発5年債は同1.0bp低下のマイナス0.115%。新発20年債は前日と横ばいの0.395%。新発30年債は同1.5bp低下の0.550%。新発40年債は同1.5bp低下の0.580%。』

10年カレントは何か入札以降そこだけ妙に動いたりするので良く分からんですが、60bp台で入札とか言ってた(というか60bp台でしたが)30年ちゃっかりと強くなっておられまして、結局の所需給がどうのこうのネタの場合、よほどのことがない限り、今のように結局運用する金がどこかに転がっている状態だと、「下げ止まりを確認したら買いが入って何か知らんが金利が低下」となるの巻というパターンでしたな。これどうせ一段高になったら「カレント銘柄は輪番対象じゃないのでSLFが」とかになるんですかね。

んな訳で。

『TRADEWEB
    OFFER   BID    前日比  時間
2年  -0.145  -0.136   -0.004  15:09
5年  -0.117  -0.108   -0.009  15:03
10年  0.013   0.02   -0.002  15:02
20年  0.387  0.393    -0.009  14:56
30年  0.548  0.554    -0.017  14:55
40年  0.574  0.585    -0.018  15:02』

というただの備忘メモでしたすいません。






2020/07/09

お題「景気ウォッチャー調査の政策期待(金融政策ではない)っぷりに泣いた/ブルフラットェ・・・・・(市場メモ)」

中国新聞(広島・備後・防長)のヘッドラインですが今朝念のため確認したところ・・・・・
https://www.chugoku-np.co.jp/
中国新聞

ニュースヘッドラインが以下の通り

『・【激震 前法相夫妻起訴】受領者不問に疑義の声 「もらい得」検察批判も(7/8 23:04)
・買収原資どう解明 1億5000万円なお使途不明 河井前法相夫妻起訴(7/8 23:04)
・ 自民内、説明不足に不満 野党、首相の責任追及へ 公明は議員辞職要求 河井夫妻起訴(7/9 0:45)
・【1億5000万円を聞く 前法相夫妻起訴】責任取らぬ安倍政権、背景に 法相起用はブラックユーモア 東京大名誉教授・御厨貴さん(7/8 23:37)
・河井前法相夫妻を起訴 100人に2901万円買収の罪 克行被告が「総括主宰者」(7/8 23:04)』(上記URL先より)

中国新聞社ノリノリであるwwww


〇物凄い勢いで観光キャンペーンの期待が上がっていて泣けるウォッチャー調査

景気ウォッチャー調査(6月)
https://www5.cao.go.jp/keizai3/2020/0309watcher/menu.html

でまあ『調査結果(全体版)(PDF形式:336KB)PDFを別ウィンドウで開きます』をポチっとなと致しますとこちら。

https://www5.cao.go.jp/keizai3/2020/0708watcher/menu.html
景気ウォッチャー調査
Economy Watchers Survey
令和2年6月調査結果

鏡の部分には『今月の動き(2020 年6月)』ってのがありますのでそっちでも良いのですが、この際すっ飛ばして本文の方に飛びましてので本文6ページ(PDFだと8枚目、以下PDFから見るとか紙から見る場合そこの所補正して読んでちょ)奴を見ますと、

『I.全国の動向』ってのがありまして、最初が『1.景気の現状判断DI(季節調整値)』である。

『1.景気の現状判断DI(季節調整値)

3か月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは、38.8 となった。家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのDIが上昇したことから、前月を 23.3 ポイント上回り、2か月連続の上昇となった。』

そういや何かドタバタして忘れてたような気がしますが、業種別の所で4月調査の「飲食関連」の現状判断DIが▲3.1とかいうオモシロ数字になっていて、この調査って本文4ページのケツの所に
『DIの算出方法
景気の現状、または、景気の先行きに対する5段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各回答区分の構成比(%)に乗じて、DIを算出している。

評価(現状、見通し、前回からの変化、の3種の表現がありますが2つ割愛しています)
良くなっている
やや良くなっている
変わらない
やや悪くなっている
悪くなっている

点数
+1
+0.75
+0.5
+0.25
0』

なので、現数値だとマイナスってあり得ないのですが、季節調整が掛かったらマイナスとかいう異次元な数字が出てしまっていたのはオソロシス。まあそうなったのもむべなるかなではあるけど。

てな余談は兎も角として、ここの数字、エコノミスト予想の中心(としてブルームバーグが報道していたもの)よりも強いというのもさることながら、5月調査の先行きDIが36.5(家計動向関連38.9、企業動向関連31.3、雇用関連31.5)に対して、今回の現状判断DIが43.3なので絶賛大達成というのが結構な数字。

これじゃないですけど、短観の場合って回復期において「先行き見通しDIを超過して達成」というのがやはり回復の持続性とか強さとかがある時の特徴(だと思っているのだがアタクシなので別にちゃんと統計取って確認している訳ではなくて、門前小僧が数字を出るたびに眺めているだけの印象論なので違ったらゴメンやで)でして、これはイイハナシダナーにも程がある、と言いたいのですけれども・・・・・・・・・・・・・

今回の現状判断DIですが、5月時点の先行き判断DIに対する比較を()で示しますと、
合計43.3(36.5)
家計動向関連43.3(38.9)
企業動向関連30.4(31.3)
雇用関連27.4(31.5)

となっていまして、まあアタクシこのウォッチャーはそこまで根を詰めてみたことがあまりなかった(節目節目で見る程度)ので、門前小僧にも程があってあまり素人分析をしてもしょうがないかなとか思いながらも愚感想を申し上げますと、要するに家計の所は上振れて良いのですが、企業動向は期待から今一歩、雇用に関してはアカンという図になっていますので、まあこれって一時的に在宅によって生活パターンが変化したことによる特需部分とか、定額給付金効果とかその手の話で上振れしているだけ、とも言えないこともなさそうな気はしまうので、あまり大喜びはしてはいけないのかね。とは何となく思いました。

でもって次のページの『2.景気の先行き判断DI(季節調整値)』つーことで先行き判みますと、

『2.景気の先行き判断DI(季節調整値)

2〜3か月先の景気の先行きに対する判断DIは、44.0 となった。家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのDIが上昇したことから、前月を 7.5 ポイント上回った。』

でもって各項目ともにすべて上昇しているからまあ良いんですけれども、その中身の個票の話になると色々とアレだったりする物件がある訳でして・・・・・・・・・・・


・結局の所財政で上振れさせているので回復しているだけという話だし・・・・・・・・・・・

さっきのは季節調整入りの数字で、現数値に関する話とかがさっき引用した本文に続くのですけれども、まあ何のかんの申しましてこの調査の見どころは本文11ページ以降の『III.景気判断理由の概要』である。アネクドータルなものを見るという点では実にオモロイ。

でまあ例えば『全国』の頭の部分は現状判断の理由になりますが、

家計動向関連で〇になっているのの一発目がこれ、

『・新型コロナウイルス対策に伴う外出の自粛が6月 19 日に解除されたことで、客の動きが活発になってきている。特別定額給付金として 10 万円が支給されていること、キャッシュレス・消費者還元事業が6月で終了することも後押しとなっている(北海道=百貨店)。

・特別定額給付金の支給により、高額商品が動いている。特に白物家電が好調で、ちょうど梅雨の時期であるため、エアコンの販売が増えている(近畿=家電量販店)。』

どう見ても政策下駄履き経済です本当にありがとうございました。


まあそれよりも今回のウォッチャー見て思いっきり誰もが思うと存じますが、とにかく先行き見通しの中での政策期待の象徴ともいえるパワーワードがこれでもかと出てくる事。

同じく『全国』の先行き判断部分になりますが、

『・政府、観光庁が行うGo Toキャンペーンが8月より始まる。現在、県で行っているキャンペーンも含めると、状況は良くなると見込んでいる(東北=観光型旅館)。

・月末から通常業務に移行できたので、自動車業界全体も動き出すとみている。イベント開催等も随時計画されているので、少しずつ良くなると考える(北陸=乗用車販売店)。』

強盗もといGo Toキャンペーンキタコレということで、いやー第1次補正予算に組んだお蔭で期待が大変なもんでよかったですなあ(超棒読み)という所なのですが、こちらの理由付の方を読まれた方は皆さんこの「Go Toキャンペーン」連呼の数を勘定したかと思います(^^)。

えーっとですね、これ『全国』のあと地域展開して同じように色々なコメントが出てくるのですけれども、「Go Toキャンペーン」の「Go」という文字列で引っ掛けると9個出てきますし、他にも北海道で『各種助成金』(北海道の場合は別の助成金もありますもんね)というのが出て来たりと、最早落涙を禁じ得ない状況。

それから、ここの現状、先行きのコメントを見てますと、こりゃ余程の事が無ければ経済ロックアウトとかやったら死ぬわみたいな感じのコメントがモノの見事にズラズラ並んでいまして、普段ウォッチャー調査は面白くて割と先行性があって良く当たるとかそういう扱いなのですが、今回はコメントから経済活動をロックダウンした時の影響たるやあばばばばーというのが物凄い勢いで伝わって参りましたです。

まあ当然ながら防疫との絡みでどうすんの的な話がある筈なのですが、これを突き付けられますとじゃあ再度ロックダウンもどきをした場合はどうなのみたいな話しと、政策が無いとあばばばばーな話というのがあって、まあ想定はしていたものの、現実に文字列をこれでもかと並べられると中々壮観なのでお忙しくない時にご覧あれ。


〇5年入札を前にブルフラットしてしまいましたがががが

メモだけ。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N2EF0ZI
2020年7月8日 / 15:13 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸で引け、超長期ゾーン中心に金利低下

『 <15:07> 国債先物は続伸で引け、超長期ゾーン中心に金利低下

国債先物中心限月9月限は前営業日比16銭高の152円03銭と続伸して取引を終えた。152円台は6月30日以来。新型コロナウイルス感染再拡大への懸念が再び台頭し、リスク警戒度が強まった。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.5bp低下の0.020%。超長期ゾーン中心に金利が低下した。』(上記URL先より、以下同様)

んな訳でございまして昨日はブルフラット。

『本日、現物市場で強かったのは30年債だ。前日比3.5bp低下と新発債の中で最も金利低下幅が大きかった。前日の入札を順調に通過し、「とりあえず増発懸念はいったん後退したようだ」(国内証券)との声が出ている。』

の次の書き出しが上手過ぎて感心した。ロイターさんやるじゃん!

『しかし、前日の入札結果発表後の30年債は伸び悩んでいた。このため「本日の円債市場は、入札よりも株安や米金利低下など世界的な流れの影響を受けているのではないか」(別の国内証券)との声も多かった。』

昨日の落札後に伸びないで何で1泊2日すると伸びるんだよ宿屋で回復コマンドでも使ったのかよという所でございますし、確かに前夜の米国金利下がったんですけど、急にコロナとか言い出して(どうもUAの記事とかで寄り前から威勢よくUAの株が下がって航空が全般下がってショボーンとかいうのがスタートみたいですが)、コロナネタも何ぼのもんじゃいと普段スルーしているくせに、たまに思い出したようにショボーンとなってしまうという意味不明の米国市場(日本市場も似たようなもんなので人の事は言えないですけど)という感じではございまして、それに引っ張られてどうのこうのってのもうーんと唸ってしまいます。

まあいずれにせよ、

『現物市場で新発債利回りはフラットニング。2年債は前日比0.5bp低下のマイナス0.140%、5年債は同1.0bp低下のマイナス0.105%。20年債は同3.0bp低下の0.400%、30年債は同3.5bp低下の0.575%、40年債は出合いがみられなかった。』

ということで毎度恐縮の引用ですが、

『TRADEWEB
     OFFER   BID    前日比  時間
2年   -0.142  -0.132   -0.004  15:05
5年   -0.108  -0.099   -0.005  14:52
10年   0.014   0.02   -0.015  15:07
20年   0.394   0.401   -0.034  15:05
30年   0.562   0.568   -0.041  15:07
40年   0.589   0.599   -0.053  15:07』

と盛大にブルフラットしていまして、おいこらこれで5年入札かよとは思いますが、なんか変なフラグをたててばっかりいるとそのうち馬にでも蹴られてしまいそうなので、ここはダメダメポイントのチャージを回避するためにも入札については傍観者モードで後出しじゃんけんもする予定なしという事にしておいてください(メモ雑談はすると思うけど)。


#しまったラガルドのFTだったかインタビューネタができなかったけど、あのヘッドラインは「日米欧3極の中銀は目先様子見姿勢で財政に下駄を預けたステージ(ただし出しゃばり好きの日銀は無駄なマイクパフォーマンスをするリスクあり)」というのがインプリケーションだと思います、というような話は明日にでも






2020/07/08

お題「30年入札も終わったので備忘メモ/生活意識アンケート:ヘッドラインは悪いのだが中身に味わいがあると思う」

ほほう。
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-brazil-bolsonaro-idJPKBN248291
2020年7月8日 / 00:33 /
ブラジルのボルソナロ大統領、新型コロナに感染 発熱の症状

『[サンパウロ/ブラジリア 7日 ロイター] - ブラジルのボルソナロ大統領は7日、新型コロナウイルス検査で陽性反応が出たと明らかにした。発熱の症状があるものの、健康状態は良好という。同国では新型コロナ感染者が160万人超、死者が6万5000人超に達しているが、ボルソナロ大統領は新型コロナの脅威を軽視し、専門家の提言を否定していた。』(上記URL先より)

御快癒を願いたい所ではあるのですが、あっさり味で回復するとこのオッサン「俺様も感染したがあっさり治った。ただしい生活をしていれば大丈夫なので問題ない」とか言い出して益々アレになりそうなのが釈然としない所で・・・・うーん。


〇30年入札でしたので久々に相場備忘メモ雑談

相場メモ雑談と言えば毎度のロイターさん恐縮です。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N2EE103
2020年7月7日 / 15:17 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発で引け、増発後の30年債入札も順調

『<15:07> 国債先物は反発で引け、増発後の30年債入札も順調

国債先物中心限月9月限は前営業日比12銭高の151円87銭と反発して取引を終えた。中国発のリスクオンが一服し、買いが優勢となった。30年債入札が順調だったことも好感された。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.0bp低下の0.030%。

きょうの30年債入札は、今回から2000億円増額され9000億円の発行。一方、日銀の国債買い入れオペで、現時点では超長期債は増額が見送られていることから、入札が注目されていたが、順調な結果となった。』(上記URL先より、以下同様)

てな訳で30年国債入札で、前場からサガランチ会長っぽかったからうーんこのとか思ったものの、そうは言いましてもさすがに2000億円増発って要するに30%近い増発でございますので先回りしてショートカバーさせてヒャッハーみたいなのを突撃する向きも無く(というかまあこんだけ国債一気に増えてきたら買い上げてヒャッハーってのはさすがに体力の使い方が今までと違うからまあ最初はよー行かんということっすかね)前場引けを迎えまして、

ちょっとここで落札結果直後の方のニュースを確認しますと、

『 <12:45> 30年債入札結果は順調、国債先物は上げ幅拡大

財務省が午後0時35分に発表した30年利付国債の入札結果は、最低落札価格が99円60銭(最高落札利回り0.615%)となった。平均落札価格は99円68銭(平均落札利回り0.612%)で、落札価格の平均と最低の開き(テール)は8銭と、前回(11銭)から縮小した。応札倍率は3.92倍で前回(2.84倍)から上昇した。

市場では「順調。7月から2000億円増発されたことで懸念もあったが、新発債であったほか、金利水準が高かったことで投資家需要がしっかりみられたようだ」(国内証券)との見方が聞かれた。

入札結果を受けて国債先物は強含み。中心限月9月限は前営業日比12銭高の151円87銭付近と、前場終値水準を上回って推移している。10年最長期国債利回り(長期金利)も同1.0bp低下の0.030%と水準を切り下げている。新発30年債は同0.5bp低下の0.625%と前場と変わらず。』

てな訳で一応市場予想とか言われるベンダー集計の足切り予想が50銭とかだったので、10銭とは言いましても30年ですからまあ穏当に確りだし、誰かが上で札を切りに行ったような入札でもなくて、強めの結果ながら変なショートカバーモードにもならずという割と皆さん困らない感じの結果だったのではないかと勝手に思っているんですけど、ただまあそのあと全然ブルフラットとかしなかったというのもうーんこのという感じではありました。何か一応先物90銭台までは上がったりしてたんですけど後続の買いでブルフラットヒャッハーとかならないですな。

最終の気配がまたまた上記URLのロイターさんで恐縮ですが、

『 TRADEWEB
     OFFER  BID   前日比  時間
2年   -0.137 -0.128   0.005 13:55
5年   -0.103 -0.094  -0.005 15:02
10年   0.029 0.035   -0.006 15:04
20年   0.428 0.436   -0.003 15:07
30年   0.618 0.625   -0.007 15:04
40年   0.643 0.653   -0.012 15:02』

つーことで入札後盛り上がった訳でもなく、入札前も別にヘナチョコな動きになる訳でもなく淡々と消化という感じで、増発後の長い所の10年30年と通過しまして、まあ何となく大丈夫でしたね感はあるものの、そもそも論として上記の引用した記事にもありますように、金利水準をこの間にしれっと調整(上昇)させているので無事に捌けたというのはありますので、入札後に誰かがバサッと持って行ってやったぜブルフラットヒャッハーみたいなのが無いと買い出動を試しにじりじりと、という感じになるんですかよくわかりません><;

まあこういう時って、金利がジリジリ上がっている時には何か買い意欲があんまり無えなあとかいってるのに、誰か大手がバサッと買いに来て止まって反転しだした途端に俺も買う俺も買うというパターンになるのが円債ちゃんの仕様と理解していますが、さてどうなるのでしょうかね。まあいずれにせよ大物2発片付いたので俺様後日備忘用メモでした。


ところで今週はこの後、というか明日ですけど5年ちゃんがいらっしゃいまして、こちらも最近はイマイチという感じでマイナス一桁BPとかが時折チラチラと見えたりしておるわけですが、そもそもマイナス金利の深掘り観測がすっかりどこかに逝ってしまわれている昨今でどマイナスをやっている方がアレなのですが、何せ5年は水準が水準なので超長期みたいに満期保有ずればプラス利回りとか開き直る事も出来ないのですよねえ。まあどうせ10年のYCCがあるからそんなに上がるにしても限界あるし、大体からして10年の水準を崩すような中期のコケ相場が発生したら日銀が止めに掛かるの図というのが想像できる(どう止めるかは知らんが)ので、まあこれも「水準調整をしたのでなんとかかんとか」の図に持って行かれるのかねえとか勝手に妄想しておりますがただの妄想なので投資は自己責任でお願いします。

つーかまあその付利下げヘッジというか付利下げ食らった時の申し開きというか、それはそれで分かるのですが、さすがに茲許の世間の潮流ってマイナス金利じゃなくてアセットパーチェスだしフォワードガイダンスだし(豪州の3年金利YCTってものあれはまあフォワードガイダンスの変形っぽい感じがしますし)という流れがだいぶ明確化していると思うんですよね。まあ中期方面は昨年夏位の付利下げ祭りでウホウホやっていた時の名残が中々消えませんなあという風には思います(個人の感想です)。

と、久々に市場メモ雑談でお前に言われんでも分かっとるわヴォケという話を連ねてしまいまして誠に恐縮至極に存じます(土下座)。



〇生活意識アンケート

https://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki2007.htm/
「生活意識に関するアンケート調査」(第82回<2020年6月調査>)の結果

図表付き全文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki2007.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第82回<2020年6月調査>)の結果

図表付き全文の方から引用しますが図表は引用しません。なお、調査期間は『調査実施期間:2020年5月8日〜6月3日』とのことで、うーんこのという時期ですなナムナムナム。


・景況感の現状判断はご案内のように大きく下がりましたが・・・・・・・・・・

『1.要 旨』の最初、『1-1. 景況感等』の『1-1-1. 景況感』です。

『景況感のうち、現在(1年前対比)については、「良くなった」との回答が減少し、「悪くなった」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。先行き(1年後)については、「良くなる」との回答が増加し、「悪くなる」との回答が減少したことから、景況感D.I.は改善した。

なお、現在の景気水準については、「良い」、「どちらかと言えば、良い」との回答の合計が減少し、「悪い」、「どちらかと言えば、悪い」との回答の合計は増加した。』

基本的にここのDI自体は毎度碌でも無い数字になる(マイナスなのは当たり前)のですが、問題は「悪くなった」の数値で、今回は、
12月:33.0→3月:39.6→6月:72.1
と盛大に悪化していて、ベンダーのヘッドラインでも「リーマンショック以来」みたいな書かれ方をしておりました。まあ確かに『<景況感D.I.の推移>』という長期時系列グラフが全文の方にはありまして、これを見ても現水準はアカンわという数字。


・・・・・ではあるのですが、<1年後を現在と比べると>の方になりますと、

「良くなる」というのが
12月:6.5→3月:5.8→6月:19.3
となっていまして、まあ願望成分も強そうですけど、ここの数字が威勢よく上がっているので、長期時系列のグラフを見ると現状判断急降下、先行き見通しが元気に上昇というオモシロ結果になっておりまして味わいがある。なお、コロナちゃん関係ない12月調査の数字が6.5でその前の9月調査で6.1だったりしまして、3月の5.8って数字が12月からあんまり変わっていないように見えるのは、まあこの調査の癖みたいなもんだと思います(基本的に景況感の絶対値自体は常に悪めに出るのは仕様です)。

ついでに「悪くなる」は
12月:39.1→3月:48.0→6月:47.0
となっています。3月の水準から意外に下がりませんなあとも思います。そりゃまあ現状判断の方が盛大に下がっているんだから当たり前じゃんと言われればその通りなのですが、これ見てるとそこまで何かマインドが大崩壊しているようにも見えないんですけれども・・・・・・・・・・・・


『1-1-2. 景況判断の根拠』の所が面白いんですよ今回。

『景況判断の根拠については、「自分や家族の収入の状況から」との回答が最も多く、次いで「マスコミ報道を通じて」、「勤め先や自分の店の経営状況から」といった回答が多かった。』

全文の方の本文3ページを見ますと『(図表2)景況判断の根拠(2つまでの複数回答)〔Q2〕』ってのがありまして、まあこれをご覧いただければ一目瞭然なのですが、今回ってこの判断根拠の傾向に従来と思いっきり変化があるんですよ。

つまりですね、この回答の選択肢って、「自分や家族の収入の状況から」「マスコミ報道を通じて」「勤め先や自分の店の経営状況から」「商店街、繁華街などの混み具合をみて」「景気関連指標、経済統計をみて」「その他」になるんですが、まあ基本的にそのうちの収入状況、経営状況、混み具合、ってあたりが上位御三家になることが多いんですけれども、今回って明らかに前回対比の変化が出てまして、

「自分や家族の収入の状況から」、「勤め先や自分の店の経営状況から」というのが減っていて(特に前者)、一方で「マスコミ報道を通じて」というのが盛大に増えているという感じになっております。あと「景気関連指標、経済統計をみて」ってのも増えていまして、この辺の結果はオモロイというか、綺麗に言えば実は雰囲気先行で実態は思っているよりも悪くないのかも、という言い方もできると思いますが、まあそれよりも、FEDの方々とかも良く指摘していますように、恐らく今回のコロナショックって「(色々な意味で)食らっている人と被害が少なめの人の差が極端にでかい」というのがあって、その部分がこの結果に表れているんじゃなかろうか、という風に勝手に思いました。


と申しますのはちょっと飛びまして5ページの『1-2. 暮らし向き、消費意識』の『1-2-1. 現在の暮らし向き』を見ますと、

『現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりが出てきた」との回答が減少したことから、暮らし向きD.I.は悪化した。』

とはあるものの、変化ってゆとりが出てきたが1.1ポイント減ってゆとりがなくなってきたが0.4ポイント減るとかいうようなあんまり動きのない結果になっていますし、

更に飛んで9ページの『1-2-3. 雇用環境』を見ますと、

『1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「あまり感じない」との回答が増加したことから、雇用環境D.I.は改善した。(注)勤労者:会社員・公務員(会社役員を含む)およびパート・アルバイトなど。』

ということで(まあこちらもそんなに改善したという程のもんでもないですが悪化はしていない)、マジかというような数字が出てきていて思わずアタクシの首筋を(爆発音)。


とかいうような感じでして、景況感が盛大に悪化というヘッドラインで見るのに対して個別項目はナンヤソラ感のあるものが出ているというのが中々奥が深い。

ただし収入の部分に関しては6ページの『1-2-2. 収入・支出』に戻りますと、

『収入については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が減少し、「減った」との回答が増加したことから、現在の収入D.I.はマイナス幅が拡大した。先行き(1年後)については、「増える」との回答が減少し、「減る」との回答が増加したことから、1年後の収入D.I.はマイナス幅が拡大した。』

『(図表5)収 入〔Q7、8〕』を見ると明らかに下向きになっている上、長期時系列グラフを見ると、実はその傾向はコロナと関係ない時から始まっているという非常に残念なものを見ることができます。

収入がこれなのに何で個別項目でああいう数字になるんや!という所ですが、

『支出については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が減少し、「減った」との回答が増加したことから、現在の支出D.I.はプラス幅が縮小した。先行き(1年後)は、「増やす」との回答が減少し、「減らす」との回答が増加したことから、1年後の支出D.I.はマイナス幅が拡大した。』

となっていて、先行きの支出を抑えるってのは明らかに跳ねていますな、というのもありますし、そもそも実はコロナ前から所得の推移が怪しかったので、その前までは収入とか待遇とかの辺りでうーんこのとか言っていたのに、コロナショックによってすっかり何でもコロナのせいと言う事になってしまい、その辺の事をすっかり忘れているのではないか、とか何とか勝手に妄想しながら読んでみるとオモロイというものです。


・なおインフレ期待

本文10ページ『1-3. 物価に対する実感』を一応見ましょうな。

『1-3-1. 現在の物価』

『現在の物価(注1、2)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注3)と回答した人の割合が6割台前半となった。

1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.8%(前回:+4.0%)、中央値は+3.0%(前回:+2.0%)となった。』

というの踏まえまして、

『1-3-2. 1年後の物価』

『1年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が6割台後半となった。

1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.3%(前回:+3.4%)、中央値は+3.0%(前回:+2.0%)となった。』

『1-3-3. 5年後の物価』

『5年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が7割台半ばとなった。

これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.0%(前回:+3.7%)、中央値は+2.0%(前回:+2.0%)となった。』

と来やがりまして、やったね!!!インフレ期待が維持されているし若干上昇したよ!!!!!という日銀が物価目標のぶの字も言わなくなって(という訳ではないがコロナで鉛筆自慢するようになって)からインフレ期待があがったじゃんこのまま2%目標黙ってた方がインフレ期待上がるんじゃないですかねえ(皮肉)という所ですな。

という所で時間もアレなので本日はここで勘弁。




2020/07/07

お題「輪番アナウンス額は超順当に来ましたな/ジャクソンホールの今年のお題(メモ)/今更ですがパウエル議会証言から」

うむ。
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-usa-idJPKBN247223
2020年7月7日 / 00:36
米、新型コロナ死者13万人突破 NY知事らトランプ氏対応を批判

しかしながら、
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL4N2ED3IF?il=0
2020年7月7日 / 05:27
米国株式市場=大幅続伸、好調な非製造業指標や中国景気回復への期待で

ということなのでトランプ大先生どうせ能天気モードで進行するに1万ジンバブエドル。

〇輪番額出そろいましたなの巻

昨日の輪番オファー(輪番のみ引用します)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of200706.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,200 2020年7月7日

つーことで、これで(25−はまだですがどうせ同額でしょ、ということにしまして)主要年限の輪番額が出そろいまして、結局全部レンジの中央、100億円未満の端数部分は切り捨てと来ました。まあ順当ちゃあ順当ですし、先に増やしちゃうと減らすのが面倒なのはご案内の通りなので、そこまで派手に増やさなかったという感じですかね、よー知らんけど。

でもってこれだと新発対比シェアどの位なのかとか、年間の国債買入の拡大はどのくらいなのかとかそういうのを計算しないと、と思いつつどうも輪番が増える方はあまりオラワクワクしないだなので、放置していますがそのうちやります。

まあそれよりも30年入札ですかそうですか。10年は事前に調整したのもあって入札そのものは強い結果扱いになりましたが、さて30年どうするんでしょうかねえ。まあ発行も増えるし30年どころは輪番が増える訳でもないので、そんなに先回り買いをして自分の首を絞めてもしょうがないとは思うのですが、はてさて・・・・・・・・・・・・・・


〇そういや今年のジャクソンホールってどうするんだと思ったのですが(どうでも良いネタですかそうですか)

https://www.kansascityfed.org/publications/research/escp
Economic Policy Symposium Proceedings

『The 2020 Economic Policy Symposium will be conducted online, Aug. 27 to Aug. 28. Learn more about this announcement here.』

でもってhereってのをポチっとなとすると、

https://www.kansascityfed.org/newsroom/newsreleases/2020/jacksonhole2020
2020 Economic Policy Symposium to be virtual event
June 11, 2020

すいませんとっくの前に日程出てました(土下座)。

『FOR IMMEDIATE RELEASE
June 11, 2020
CONTACT: Bill Medley

KANSAS CITY, MISSOURI - The Federal Reserve Bank of Kansas City announced today the 44th annual Economic Policy Symposium will be conducted online, Aug. 27 to Aug. 28. The year’s theme is “Navigating the Decade Ahead: Implications for Monetary Policy.”』

ということでお題は「“Navigating the Decade Ahead: Implications for Monetary Policy.”」だそうです。

なお、『The event will be live streamed to the public. Additional details will be shared at a later date.』だそうでその後のお沙汰はまだ出ていないようです、ただの備忘メモですいません。



〇今更何ですが先月末のパウエル議会証言を念のため確認しておく

https://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/powell20200630a.htm
June 30, 2020
Coronavirus and CARES Act
Chair Jerome H. Powell
Before the Committee on Financial Services, U.S. House of Representatives, Washington, D.C.

議会証言のご挨拶テキストちゃんは29日に出てたような気がせんでもないがそれはさておき。


・ご挨拶の中で議会へのヨイショを怠らないパウエル先生

最初の方はただのご挨拶なのですが、その3パラグラフ目がこれ。

『The crisis was met by swift and forceful policy action across the government, including the Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act (CARES Act). This direct support is making a critical difference not just in helping families and businesses in a time of need, but also in limiting long-lasting damage to our economy.』

ということでコロナ法案のお蔭です(まあ事実そっちが完全にメインなのだが)という話をしておりまして、議会に対してアリガタヤ節を唱えております。

でもってその次のパラグラフ(最初から4パラ目)からが経済情勢の認識。


・経済の現状についてだが結局「パンデミック前に戻っていない」とかいう図々しい説明で緩和長期化を示唆

『As the economy reopens, incoming data are beginning to reflect a resumption of economic activity: Many businesses are opening their doors, hiring is picking up, and spending is increasing. Employment moved higher, and consumer spending rebounded strongly in May. We have entered an important new phase and have done so sooner than expected.』

>We have entered an important new phase and have done so sooner than expected.

とは大きく出たなおい。

『While this bounceback in economic activity is welcome, it also presents new challenges-notably, the need to keep the virus in check.』

大きく出ておいてからウィルス次第話をこの次にしますよってなもんで次のパラグラフに進む。

『While recent economic data offer some positive signs, we are keeping in mind that more than 20 million Americans have lost their jobs, and that the pain has not been evenly spread.』

さっき「重要な新しいフェーズに思ったよりも早く入った」とか物凄い勢いで威勢の良い話をしている割りには最近の経済データは「some positive signs」程度にしれっと穏当になっていますが、それはまあここの掴みにありますように、

『The rise in joblessness has been especially severe for lower-wage workers, for women, and for African Americans and Hispanics. This reversal of economic fortune has caused a level of pain that is hard to capture in words as lives are upended amid great uncertainty about the future.』

議会証言、ってのもあるとは思いますが、一発目に茲許のFEDが良く強調する「コロナの影響は社会的弱者に対して大きくかかっている(=格差拡大)」という話を入れていまして、

『Output and employment remain far below their pre-pandemic levels. The path forward for the economy is extraordinarily uncertain and will depend in large part on our success in containing the virus. A full recovery is unlikely until people are confident that it is safe to reengage in a broad range of activities.』

「パンデミック前の水準」というのも良く出てくるキーワードなのですが、いやその水準ってヒャッハー水準なんとチャイマスカという気が外野席から見ていると思うのですけれども、何か知らんけどこの「パンデミック前の水準」の話はやたら出してくるので、そこがノーマルでそこまで戻そうというのだとそら金融緩和長期化だわと思ってしまうのですが、先にゴルディロックスヒャッハー相場になってまたぞろ金融市場がやらかしそうな悪寒もするのですけど(個人の感想です)、まあそういう話やぞということで。


・先行きはコロナ次第ですが必要な予算は議決して下さいお願いしますという議会に玉投げ体制キタコレ

その次が先行きの話をちょろっとだけしていますけど、

『The path forward will also depend on the policy actions taken at all levels of government to provide relief and to support the recovery for as long as needed.』

先行きのパスは「at all levels of government」による施策によります、とか自分等の政策で引っ張りますよとは口が裂けても言わない辺りに(昨日ネタにした議事要旨もそうですけど)FEDの様子見姿勢というか、議会に玉投げモードというか、まあ変に主導的に動いた結果大統領が変わって意趣返し食らっても馬鹿馬鹿しい(と思っているのかどうかは知らんけど、まあパウエルさんだったらそういう感覚で来そうに思えますが個人の感想です)とか、いろいろと大人の事情もあるのかね、と思いつつ。

『The Federal Reserve's response to these extraordinary developments has been guided by our mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people as well as our role in fostering the stability of the financial system. Our actions and programs directly support the flow of credit to households, to businesses of all sizes, and to state and local governments. These programs benefit Main Street by providing financing where it is not otherwise available, helping employers to keep their workers, and allowing consumers to continue spending.』

ここでFEDの施策についての話をしていますが、予算によって行われている各種ファシリティの方を持ち出している辺りがチャーミング。

『In many cases, by serving as a backstop to key financial markets, the programs help increase the willingness of private lenders to extend credit and ease financial conditions for families and businesses across the country.』

ここはイイハナシダナーなのですが、これらのプログラムに関しても「by serving as a backstop」なのであって、施策に関しては主にバックストップ(確かにそうで各種ファシリティは一部を除いて基本的にバジョット・ルールレートになっている)として機能することによって、民間の貸出意欲を促進しようというものです、という説明をしていまして、どこぞの中央銀行のように民間が貸出を行ったのに対して尻馬のように奨励金もどきを付けて「民間貸し出しの伸びはワシが育てた」とか図々しく出しゃばる、というようなスカタンな説明になっていないのは中々結構結構。

『The passage of the CARES Act by Congress was critical in enabling the Federal Reserve and the Treasury Department to establish many of these lending programs.』

これらの貸出が出来るのは議会様のお蔭です!

『We are strongly committed to using these programs, as well as our other tools, to do what we can to provide stability, to ensure that the recovery will be as strong as possible, and to limit lasting damage to the economy.』

相手が議会だからファシリティの方を前面に出すのは分かるのですが、利下げとかAPPに関しては「as well as our other tools」呼ばわりしていまして、そっちの説明が以下始まります。

『In discussing the actions we have taken, I will begin with monetary policy. In March, we lowered our policy interest rate to near zero, and we expect to maintain interest rates at this level until we are confident that the economy has weathered recent events and is on track to achieve our maximum-employment and price-stability goals.』

利下げとフォワードガイダンスもどきの話。

『In addition to these steps, we took forceful measures in four areas: open market operations to restore market functioning; actions to improve liquidity conditions in short-term funding markets; programs, in coordination with the Treasury Department, to facilitate more directly the flow of credit to households, businesses, and state and local governments; and measures to encourage banks to use their substantial capital and liquidity buffers built up over the past decade to support the economy during this difficult time.』

オペレーションによる市場機能の確保、ということで短期市場オペと、スワップライン拡充の話とAPPの話と銀行の資本規制の一部緩和を並べていまして、以下説明に入ります。


・国債とMBS買入に関してはコロナと直接紐付けない事によって先々の柔軟性を確保していますな

『Let me now turn to our open market operations.』

とオペの話が始まる。


『As tensions and uncertainty rose in mid-March, investors moved rapidly toward cash and shorter-term government securities, and the markets for Treasury securities and agency mortgage-backed securities, or MBS, started to experience strains. These markets are critical to the overall functioning of the financial system and to the transmission of monetary policy to the broader economy. In response, the Federal Open Market Committee purchased Treasury securities and agency MBS in the amounts needed to support smooth market functioning. With these purchases, market conditions improved substantially, and in early April we began to gradually reduce our pace of purchases.』

国債とMBSの買入の話ですが、さっきの所でもありましたが、何度も「smooth market functioning」的な表現をぶっこんでおりまして、APPについては「市場機能の確保」というのを前面にだしています。前面に出しているので、ここの最後にありますように、「With these purchases, market conditions improved substantially, and in early April we began to gradually reduce our pace of purchases.」と「買入によって市場機能が顕著に改善したので、4月の初めから徐々に買入ペースを減らしています」と出来るのであって、これをうっかりコロナ対策と言って始めないで、ちゃんと市場機能という話で整理するのは、引けるタイミングがある時に引く準備をしておくという事だし、引けるときに引いておけば次に何かあった時にまた買入を増やせるから使えるタマを温存できる、というのもありますわな、とか何とか思いますと、どこぞの常に前進しか知らないで困るといきなりそれまでのロジックを盛大に切り替えてしまうインチキ中銀はパウエルの爪の垢でも煎じて飲んでろという所ではありますな。

『To sustain smooth market functioning and thereby foster the effective transmission of monetary policy to broader financial conditions, we will increase our holdings of Treasury securities and agency MBS over the coming months at least at the current pace. We will closely monitor developments and are prepared to adjust our plans as appropriate to support our goals.』

当面数か月程度は今のペースで買入を継続します。必要な際には必要な調整を行います、とのことですが、あくまでも「sustain smooth market functioning」なのでコロナがどうしたこうしたと直接関係なくても引けるときは引けるし、まあ出す方はコロナのせいで出すことになるんでしょうが、ホイホイ出すこともできる、というこの柔軟性はたいしたもんです。なんか3月の頭あたりはパニクリ緊急利下げとかしていた感が強かったのですが、どこでどうなったのかアレですが最近は(単に株が戻っているから冷静になっているだけなのかも知れないので油断はなりませんが)エライ勢いでこの辺の切り分けを綺麗に分けて、ゼロ金利政策と政策金利のフォワードガイダンスで基本的には乗り切って行こうという感じになっていますわな。

もちろん本当にやばくなったら今度はQE型の説明をぶっこんで来る可能性はありますけど、現状では市場機能対策ということにして柔軟性を確保しているのは随分と態勢が建て直されているわなと。


・その他施策の説明

『Amid the tensions and uncertainties of mid-March and as a more adverse outlook for the economy took hold, investors exhibited greater risk aversion and pulled away from longer-term and riskier assets as well as from some money market mutual funds. To help stabilize short-term funding markets, we lengthened the term and lowered the rate on discount window loans to depository institutions.』

ディスカウントウィンドウのコリドア縮小の説明ですな。

『The Board also established, with the approval of the Treasury Department, the Primary Dealer Credit Facility (PDCF) under our emergency lending authority in section 13(3) of the Federal Reserve Act. Under the PDCF, the Federal Reserve provides loans against good collateral to primary dealers that are critical intermediaries in short-term funding markets. Similar to the large-scale purchases of Treasury securities and agency MBS that I mentioned earlier, this facility helps restore normal market functioning.

PDCFに関しての説明ですがこちらも「normal market functioning」に向けての施策とな。

『In addition, under section 13(3) and together with the Treasury Department, we set up the Commercial Paper Funding Facility, or CPFF, and the Money Market Mutual Fund Liquidity Facility, or MMLF. Millions of Americans put their savings into these markets, and employers use them to secure short-term funding to meet payroll and support their operations. Both of these facilities have equity provided by the Treasury Department to protect the Federal Reserve from losses. After the announcement and implementation of these facilities, indicators of market functioning in commercial paper and other short-term funding markets improved substantially, and rapid outflows from prime and tax-exempt money market funds stopped.』

CPFFとMMLF、MMLFは特にMMFの短期資金流動性枯渇によるあばばばばーを防ぐお助けスキームですの。こちらは過去にも実施していた案件ですな。


・ドルスワップラインに関する議会向け説明は要チェックなのですわよ奥様

『In mid-March, offshore U.S. dollar funding markets also came under stress. In response, the Federal Reserve and several other central banks announced the expansion and enhancement of dollar liquidity swap lines. In addition, the Federal Reserve introduced a new temporary Treasury repurchase agreement facility for foreign monetary authorities. These actions helped stabilize global U.S. dollar funding markets, and they continue to support the smooth functioning of U.S. Treasury and other financial markets as well as U.S. economic conditions.』

これがドルスワップライン拡充の説明。ここにありますように、この施策の目的は「stabilize global U.S. dollar funding markets」とグローバルなドル調達市場の安定化を行うことによって、「to support the smooth functioning」と米国の金融市場の市場機能の円滑化を図るもの、という事になっています。

でもってその市場ってのは「U.S. Treasury and other financial markets」とややフワッとした書き方になっているのでそこは解釈の余地というか、ジャッジメンタルな部分は残っているのですが、基本的にはこの市場機能に関して問題ないと言う事になれば、条件が変更される可能性というのは多分にある、と理屈上は見た方が良くて、ただまあ現状ではさっきの国債・MBS買入に関して「over the coming months at least at the current pace」で買い入れるって言ってましたから、目先数カ月程度の所で「市場機能も回復したのでサービスレートは用無し」とはならないようには見えます(個人の感想も感想なのであっさり用無しにされても苦情は受け付けません悪しからず)けれども、APPに関する理屈を見るに、次に国債買入やMBS買入のペースを落とすとかいうような、オペ関連における条件変更(厳しくなる方向)の時は注意なんですかね、とか何とか(個人の感想です)。


・ここからが今次危機における新型ファシリティに関して(ここは後日用備忘に引用した部分なので途中から読み飛ばし推奨)

『As it became clear the pandemic would significantly disrupt economies around the world, markets for longer-term debt also faced strains. The cost of borrowing rose sharply for those issuing corporate bonds, municipal debt, and asset-backed securities (ABS) backed by consumer and small business loans. In effect, creditworthy households, businesses, and state and local governments were unable to borrow at reasonable rates and other terms, which would have further reduced economic activity.』

ほうほう。経済状況の悪化で借入コストが上昇するとな。

『In addition, small and medium-sized businesses that traditionally rely on bank lending faced large increases in their funding needs as measures taken to contain the spread of the virus forced them to temporarily close or limit operations, substantially curtailing revenues.』

特に中小企業などはその傾向が強くなるということで、

『To support the longer-term financing that is critical to economic activity, the Federal Reserve, in cooperation with the Department of the Treasury and using equity provided for that purpose under the CARES Act, announced a number of emergency lending facilities under section 13(3) of the Federal Reserve Act. These facilities are designed to ensure that credit would flow to borrowers and thus support economic activity.』

でもって議会のコロナ法案を受けた予算によって以下のファシリティが出来ました、という話になるのでした。以下の部分、各種何とかレンディングファシリティについての話になるのですが、ここに関してはまあ別に新しく何か話をしている訳でもないので、すっ飛ばしても良いと思うのですが、一応各種ファシリティに関してああだこうだという説明が一堂に会しているので、後日アタクシが読むときにここを見ますかってなもんでそれ用に残しておきますので別に読み飛ばしても無問題だと思います。

以下暫く延々と引用はしますが備忘用ですすいません。

TALF

『On March 23, the Board announced that it would support consumer and business lending by establishing the Term Asset-Backed Securities Loan Facility (TALF). The TALF is authorized to extend up to $100 billion in loans and is backed by $10 billion in CARES Act equity. This facility lends against top-rated securities backed by auto loans, credit card loans, other consumer and business loans, commercial mortgage-backed securities, and other assets. The TALF supports credit access by consumers and businesses and provides liquidity to the broader ABS market. The facility made its first loans on June 25, and, to date, has extended $252 million in loans to eligible borrowers. Since the TALF was announced, ABS spreads have contracted significantly. Thus, the facility might be used relatively little and mainly serve as a backstop, assuring lenders that they will have access to funding and giving them the confidence to make loans to households and businesses.』

PMCCFとSMCCF

『To support the credit needs of large employers, the Federal Reserve also established the Primary Market Corporate Credit Facility (PMCCF) and the Secondary Market Corporate Credit Facility (SMCCF). These facilities primarily purchase bonds issued by U.S. companies that were investment grade on March 22, 2020. The two facilities have a combined purchase capacity of up to $750 billion and are backed by $75 billion in CARES Act equity. Final terms and operational details on the PMCCF were announced on June 29, and it stands ready to purchase newly issued corporate bonds and syndicated loans, serving as a backstop for businesses seeking to refinance their existing credit or obtain new funding. The SMCCF buys outstanding corporate bonds and shares in corporate bond exchange-traded funds (ETFs) to facilitate smooth functioning of the secondary market. The SMCCF complements the PMCCF, because improvements in secondary-market functioning associated with the SMCCF facilitate access by companies to bond and loan markets on reasonable terms. The SMCCF launched with ETF purchases on May 12. Earlier this month, the facility began gradually reducing purchases of ETFs as it started buying a broad and diversified portfolio of individual corporate bonds to more directly support smooth functioning and market liquidity in the secondary market. Purchase volumes are tied to market functioning and are currently at very low levels. The facility currently holds a total of about $10 billion in bonds and ETF shares.』


ここはPMCCFとSMCCFの導入アナウンスをしただけでクレジットコンディションが顕著に改善したぜって話です。

『Following the announcement of the two corporate credit facilities in late March, conditions in the corporate bond market improved significantly. Credit spreads on investment-grade bonds retraced much of the widening experienced in February and March, and issuance in the primary market rebounded strongly. In the secondary market, liquidity also improved, and by mid-April, flows out of mutual funds and ETFs specializing in corporate bonds reversed.1』


MSLP(メインストリートレンディングプログラム)

『The Federal Reserve also launched the Main Street Lending Program, which is designed to provide loans to small and medium-sized businesses that were in good financial standing before the pandemic; such firms generally are dependent on bank lending for credit because they are too small to tap bond markets directly. Under the Main Street program, banks originate new loans or increase the size of existing loans to eligible businesses and sell loan participations to the Federal Reserve. The facility is backed by $75 billion in CARES Act equity and can purchase up to $600 billion in loan participations. The Federal Reserve has published all of the legal documents that borrowers and lenders will need to sign under the program and lender registration began on June 15. Loan participations will be purchased soon. Additionally, the Federal Reserve recently sought feedback on a proposal to expand the Main Street program to include loans made to small and medium-sized nonprofit organizations, such as hospitals and universities. Nonprofits provide vital services around the country, and the program would likewise offer them support.』


PPP(ペイチェックプロテクションプログラム)

『While businesses in certain sectors that were particularly hard hit by the pandemic have reported continued difficulty in accessing credit, the Small Business Administration's Paycheck Protection Program (PPP), which draws from existing bank lines, has apparently met the immediate credit needs of many small businesses. In the months ahead, Main Street loans may prove a valuable resource for firms that were in sound financial condition prior to the pandemic.』

『To bolster the effectiveness of the Small Business Administration's PPP, on April 16, the Federal Reserve launched the Paycheck Protection Program Liquidity Facility. The facility supplies liquidity to lenders backed by their PPP loans to small businesses and has the capacity to lend up to the full amount of the PPP. As of last week, the facility held over $65 billion in outstanding term loans to participating financial institutions. The most recent monthly survey from the National Federation of Independent Business released in May indicates that small businesses have been able to meet their funding needs in recent months largely due to the PPP.2』


MLF(地方政府お助けプログラム)

『To help state and local governments better manage cash flow pressures in order to continue to serve households and businesses in their communities, the Federal Reserve, together with the Treasury Department, established the Municipal Liquidity Facility (MLF). The MLF is backed by $35 billion of CARES Act equity and has the capacity to purchase up to $500 billion of short-term debt directly from U.S. states, counties, cities, and certain multistate entities. The facility became operational on May 26, and, to date, the MLF has purchased $1.2 billion worth of short-term municipal debt. With the MLF and other facilities in place as a backstop to the private market, many parts of the municipal bond market have significantly recovered from the unprecedented stress experienced earlier this year. Municipal bond yields have declined considerably, issuance has been robust over the past two months, and market conditions have improved.3』

以上、クッソ細かく書いてあるので説明しているとめんどいし引用どうしようかと思ったのですが、後日アタクシが閲覧用にということでベタ張りしておりますサーセン。


・これらのファシリティは緊急措置だよという説明

以上のクッソ長い説明の後このような話が。

『The tools that the Federal Reserve is using under its 13(3) authority are for times of emergency, such as the ones we have been living through. When economic and financial conditions improve, we will put these tools back in the toolbox.』

毎度の説明ですが、これらは緊急措置で危機が片付いたら仕舞いますよ、というのを明確にしておりまして、時限措置と言いながら実質5カ月の期間で始めた施策を導入後1か月も立たないうちに期限を半年も伸ばすわ、その時の情勢判断は何も示さないわ(なお5月会合議事要旨によると「念のため」だそうですけど)というどこぞの中央銀行は一日1回ワシントンの方を向いて三拝九拝すべきである。


・金融機関の自己資本等の規制緩和

『The final area where we took steps was in bank regulation.』

はい。

『The Board made several adjustments, many temporary, to encourage banks to use their positions of strength to support households and businesses. Unlike the 2008 financial crisis, banks entered this period with substantial capital and liquidity buffers and improved risk-management and operational resiliency. As a result, they have been well positioned to cushion the financial shocks we are seeing. In contrast to the 2008 crisis when banks pulled back from lending and amplified the economic shock, in this crisis they have greatly expanded loans to customers and have helped support the economy.』

というあっさり説明で終了。


・最後の部分になりますが議会が御承認される予算様によるエクイティが重要ですよと強調するのは・・・・・・・・

『The Federal Reserve has been entrusted with an important mission, and we have taken unprecedented steps in very rapid fashion over the past few months. In doing so, we embrace our responsibility to the American people to be as transparent as possible.』

なのですが、

『With regard to the facilities backed by equity from the CARES Act, we have conducted broad outreach and sought public input that has been crucial in their development.』

議会様のお蔭ですキタコレ。

『For example, in response to comments received, the Treasury and the Federal Reserve have made a number of changes to expand the scope of the Main Street Lending Program to cover a broader range of borrowers and to increase the flexibility of loan terms. And we are now disclosing and will continue to disclose, on a monthly basis, names and details of participants in each facility; amounts borrowed and interest rate charged; and overall costs, revenues, and fees for each of these facilities.』

MSLPについても色々と改善をしております。貸し出し状況に関してはマンスリーにディスクローズをおこなっています。

『We recognize that our actions are only part of a broader public-sector response. Congress's passage of the CARES Act was critical in enabling the Federal Reserve and the Treasury Department to establish many of the lending programs.』

「Congress's passage of the CARES Act was critical」と議会様によってこれらの措置をするパワーを賜りましたと説明していて、どこぞの中央銀行のように「中小企業支援はワシが育てた」とか育てても居ないのにしゃしゃり出るような下品なことはしておりません。

・・・・・・・というか上品下品の問題ではなくて、中央銀行が出来ない(FEDの場合は日欧対比制約厳しいので)事に関してはサポートはするけど矢面に立つ必要はないので立たない、というスタンスが良く見えます。ただあまり矢面に立たない感を出し過ぎると消極的と言われるので、そこは程々にしていますけど。

『The CARES Act and other legislation provide direct help to people, businesses, and communities. This direct support can make a critical difference not just in helping families and businesses in a time of need, but also in limiting long-lasting damage to our economy.』

議会をヨイショしまくっとるな。

『We understand that the work of the Federal Reserve touches communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We are committed to using our full range of tools to support the economy and to help assure that the recovery from this difficult period will be as robust as possible.』

ということでした。途中の所すっ飛ばす予定だったのですが備忘用に引用したので水増しになってしまいましたすいません。







2020/07/06

お題「指標金利改革でFSBがリリース/マルチアセット商品に関するFSR別冊とな/FOMC議事要旨は急いでる感皆無ですな」

ほうほうそうですかそうですか。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200705/k10012497581000.html
東京都知事選 現職の小池百合子氏 2回目の当選
2020年7月6日 3時01分

自粛要請ただし補償なしなお言う事聞かないと晒し上げ、ってのが早速飛び出すに350万百合子といった所ですかな。しかし対抗馬のタマが碌なの居ないとは言え7つのゼロとか全然達成しなくてもテレビに出てやってる感出してれば圧勝するんですからチョロいもんですな。

#まあこの方の場合自分のお考えで自主的に動き出すと碌な事にならんから公約達成しない方が結果的には良いのかもしれませんけど

などと書いていたらPC様のご機嫌が益々怪しくなってきたのですが、もしかして近いうちに突如更新が止まったらそれはPCの事故だと思って頂きますと(金融系のツイッターの誰かに連絡して告知はお願いしますけど)恐縮に存じます、たぶん(汗)。

#テレワーク特需でPCちと高いんですよね(PC怪しいので調査はしている)


〇指標金利改革関連で何かよくわからんリリースキタコレ

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200703b.htm/
金融安定理事会による「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がグローバルな金利指標改革にもたらす影響に関するステートメント」の公表について
2020年7月3日 日本銀行

ほほう。

『金融安定理事会(FSB)は、7月1日、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がグローバルな金利指標改革にもたらす影響に関するステートメント」(原題:FSB statement on the impact of COVID-19 on global benchmark reform)と題するプレス・リリースを公表しました。

詳細につきましては、以下をご覧ください。』

とありまして、

原文
https://www.fsb.org/wp-content/uploads/R010720.pdf

仮訳
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/data/rel200703b.pdf

なのですが手抜きで仮訳を拝読しましょう。

『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がグローバルな金利指標改革にもたらす影響に関するステートメント

(仮訳)2020 年 7 月 1 日』

ってな訳で。

『金融安定理事会(FSB)は、これまで、新型コロナウイルス感染症がグローバルな金利指標移行にもたらす影響について議論してきた。』

はい。

『FSB 傘下の公的部門グループ(Official Sector Steering Group)では、その推移を注視しており、企業の移行計画には継続可能なものがある一方、一時的に混乱や遅延が生じうるものがあることを認識している。』

へいへいそうだっか。

『FSB は、すべての法域における金融セクター・非金融セクターの企業が、適切な場合には IBORs(銀行間取引金利)への依存を低減し、とりわけ 2021 年末までに LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)への残された依存を取り除くために、リスク・フリー・レート(RFR)のより広範な利用に向けた取り組みを継続すべきとの考えを維持している。』

そう仰せですな。しかし次の段落が・・・・・・・・・

『LIBOR からの移行は、引き続き、グローバルな金融システムを強化する不可欠な作業である。』

はい。

『新型コロナウイルス感染症は、LIBOR 算出の裏付けとなる市場がもはや十分に活発ではないことを明らかにした。』

ん????

『さらに、これらの市場は銀行による資金調達の主たる市場ではない。』

ちょwwwwwwそんなのコロナ関係なく前からそうやん。それにコロナ云々は短期市場の値付けを全部直撃しただけの話でLIBORだけ関係ない訳でもないんですが。

『3 月にみられた、最も広範に用いられているLIBOR 金利の上昇は、LIBOR を参照する金利を用いて調達を行っている主体の調達コストに対する上昇圧力となった。』

そらしゃーないでしょ。

『これらの借手は、中央銀行が政策金利を引き下げた法域では、これにより、利下げ効果の大部分が相殺された。』

それはインターバンクとオープンの違いなんだから仕方ないし、大体からして企業のクレジットだって下がっているんだから仕方ないやん。

『各国の検討体は、グローバルな協調を確実にするため、適切な場合には、移行計画における中間目標の見直しについて協調している。金融機関およびその他の企業は、引き続き、移行計画が 2021 年末より前に LIBOR の代替指標に移行できるようにするものであることを確保するべきである。』

ちょwwwww前倒ししろってのかよ。というかですな、そもそも論として申し上げますと、LIBORってトレーダブルじゃない金利ではありますけれども、基本的にレポ金利とかそっちの金利を参考にして値付けするもんだと思っているんで、レポ金利とかをリファレンスにすると同じようなことが起きると思うんだが、いやまあいいけどさ。

『LIBOR からの移行は G20 の優先課題であり、2020 年 2 月の G20 共同声明は、FSBに対し、2020 年 7 月までに指標の移行に関する残された課題を特定するとともに、それらに対処する方法を模索することを求めている。FSB は、これらの課題に関する報告書を今月中に公表する。FSB メンバーは、他の基準設定主体や国際機関と協働し、引き続き進捗状況を注視していく。』

ということで、コロナという文言を見た瞬間にやっと延期の話かと思ったら、なんとコロナの影響でLIBORが跳ねたのを理由にLIBORは役立たずキャンペーンをするという大技に出てきましたな、オソロシス。


〇FSR別冊キタコレ

何か急に何とかレポート別冊というのが2本も出てきておりますが、決済の方はクロスボーダー決済のコストとかそういう話なのでパスしましてこちら。

https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb200703.htm/
マルチアセット型の投資信託の特徴とリスク管理上の留意点
2020年7月3日 日本銀行金融機構局

ということで全文もあるんですが斜め読みしかしていなくて、斜め読みだと何かネタにしにくい感じのする物件なので上記URL先にある要旨でとりあえず勘弁なんですが(大汗)。

『新興国を含む国内外の債券や株式等の幅広い資産を投資対象とする「マルチアセット型」の投資信託(以下、マルチアセット型投信)のなかには、価格変動リスクの抑制を目的として、投資ポートフォリオに組み入れる資産の配分比率を市場の変化に応じて随時変更するタイプも多い。』

ふむふむ。ただまあどうなんでしょう確かにマルチって物凄い勢いで色々なものをぶっこんで目標リスク対比の最適リターンを出すべくバカスカ最適化するものと、もっとザックリとした感じでアセットクラスも絞っているのと、何となく二極化しているような気もしますが、アタクシも別に世の中動向が見えている訳でも無いのですが、まあ確かに上記のような物件はありますわな。

『本稿では、こうしたマルチアセット型投信の特徴を踏まえ分析を行い、(1)市場の不確実性が高い局面では、投信のリスク抑制とリターン追求双方の面で比較的良好なパフォーマンスを発揮してきた(ただし、リーマンショック時は例外)、(2)一方、市場が落ち着いている局面では、ポートフォリオのボラティリティを高める方向で資産の入れ替えを行っていたものの、結果としてのリターン面のパフォーマンスは低めにとどまっていた、との示唆を得た。』

当然ながら本文の方では(こちらの要旨でもその辺は伝わるような書き方をしているけど)言及されていますが、割とアセットの組み換えを頻繁に行うものと、そうじゃなくて配分比率(というかアセットアロケーションというか)のコンセプト勝負でそんなにホイホイと入れ替えを行わないものだと全然また違うアプローチですよね、というような話がありますし、現実問題としてマルチの中でもその手のハイテク駆使型って最近そんなにウケ良いのかね的なサムシングはあるのですが、そっちの方面の話によってしまっている気はしました。

いやまあ確かにアロケーション勝負型のマルチアセットだと単に投信(とか金銭信託とか)で特定の投資比率配分をまとめているという性質が強いから、それだと中身をバラで見れば良いのでそんなに複雑な話では無い、という事になるんでしょうけれども、話がややこしくなるのは「マルチアセット」という言葉が一人歩きすると、コンセプトとして全然違うものまでこの論考で分析されているような商品だとか言い出してやれ期中管理が足りないだの何だのという話に発展しかねない所がまあ何だかね、とは思いますし、そういう風な話が蔓延するとそもそも資産複合型そのものが当局対応うざいからやらないとかいう悲しい話になってくるのですよね(個人の偏見です)。

しかし上記の部分、しらっと「(1)市場の不確実性が高い局面では、投信のリスク抑制とリターン追求双方の面で比較的良好なパフォーマンスを発揮してきた(ただし、リーマンショック時は例外)」とか記載しているのがチャーミングですが、マルチ買う方もさすがに「リーマンショックの時のトラックレコードはあるの」というのは定番のツッコミだと思うのですけどにゃ。そんな文脈で「今回のコロナショックのトラックレコードは」という検証をすると色々な味わいが出てくる事でしょうな(個人の感想です)。


『今回の分析結果が金融機関のマルチアセット型投信のリスク管理にもたらす含意は大きく次の2点にまとめられる。』

ほうほう。

『第一に、資産の入れ替えがより頻繁に行われ、中核資産を特定することが困難な銘柄に対しては、通常行われる頻度でのルックスルーが、必ずしも有効なリスク管理手段とはならないため、リスク管理上、保有限度額やロスカット基準の設定など追加的な枠組みが必要である。』

バカスカアロケーション変更するようなマルチの場合、バカスカ変更するだけに普通流動性のクッソ高いものを使わないといけないと思うんで、その場合ってルックスルーは勿論するんですが、ルックスルーした先の資産ってインデックスとか先物とかであって、お手盛りインデックスの場合はちゃんと確認した方が良いかもしれませんが、上場先物とか使っているような場合は、個別銘柄属性をそこまで気にする必要あんのか??とこれ見て思ったのですが、どうも本文の方を見ますとルックスルーを『個々の組入資産の属性や残高の把握』としているので、最近よく投信などで言われるルックスルーまで行って云々という話だと「単にどこどこの運用する米国ハイイールド社債というのではなくて、その中の個別銘柄まで確認しましょう」っていうような話なので、上記のように言われますと一瞬???と思ってしまう。

保有宣言やロスカットとかではなくて、なんとなくそれは「アロケーション変更について良く確認してね」って話のような気がするんだが。まあ何を言いたいのかは分かるのですけれども、なんとなくこの書かれっぷりには違和感がある(別に間違えとかそういう意味ではない)。


『第二に、マルチアセット型投信の多くは、ミドルリスク・ミドルリターンを狙った商品設計と考えられるが、リーマンショック時のように市場全体にストレスがかかる局面においては、資産の入れ替えを頻繁に行い得るとしても、リスクの遮断に至らないケースがあり得る。』

どうでしょう。さすがにそれ分からないで投資する人がそんなに多いとは思わないし、売る方も「リーマンショックの時はどうなりますか」というツッコミは食らっていると思うし、実トラックじゃない時には「本当にこれで売買できるんですか」ってツッコミも食らうと思うんだがどうなんでしょうかねその辺。まあそういうのも分からんで投資するという人にはちゃんと言わないといけないから書いている意義は物凄い勢いで良く分かるのだが何となくコケにされた感はなくはない(個人の偏見です)。

『新型コロナウイルス感染拡大の影響から、金融市場における先行きの不確実性が依然として非常に大きい状況下において、将来再びボラティリティが拡大する場合に、予期せぬ損失が発生する可能性については、引き続き留意する必要がある。』

むしろ今般のコロナショック時における期中の状況についてご投資している物件に対してゴリゴリと検証をする方が色々な味わいが出てくるような気がするんですけどね。


でもって本文はこちら。
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb200703.pdf

本文は10ページあります。



〇FOMC議事要旨ネタ続き

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20200610.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20200610.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee
June 9-10, 2020

案の定ですが、金融政策の『Discussion of Forward Guidance, Asset Purchases, and Yield Curve Caps or Targets』とかいう話を延々と行っていた方に出た朝にきっちりとつられました所、いつものパーティシパントの議論部分での金融政策話が物凄い勢いであっさり味になっておりましたのでご報告がてらサラッと参ります。

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の最後から4つのパラグラフが今後の金融政策運営に関する議論のパラグラフになります。インスタント読み逆順ではなくて普通に出てきている順に読みますとこんな感じ。

『In their consideration of monetary policy at this meeting, participants reaffirmed that the Federal Reserve was committed to using its full range of tools to support the U.S. economy in this challenging time, thereby promoting its maximum-employment and price-stability goals.』

だいたい最初の所で、「政策のデュアルマンデートを達成するために必要なツールはドンドンぶち込むことを再確認」とか言っている時点で、つまりは目先やる気がないって話なのを示しているようなもんでして、「ドンドンぶち込む」の具体策が目の前にもう明らかになっているような状況ではこんなことを一々いう必要はない。

・・・・ですし、最近FOMC議事要旨は、政策に関するご説明ツールというのを意識した作り、というのが更に(イメージイエレン以降ですけれどもパウエルになって更に)進んでいる感じで、時々そのやり過ぎでインチキ臭くなっている場合があるのですが、だいたいこういうのが先に出てくるのは「目先追加は議会から予算のおかわりが来ない限りやらん」というような時に、それを露骨に出すとまたクレクレ市場共が勝手に大失望すると困るので、適当にその辺市場のお気持ちに忖度する、ただしやる気がないのに忖度しすぎると自分らが追い込まれてしまうので、そこに関しては火消しをする、ってのが今回FOMC議事要旨で木曜にネタにしたYCC(FED的にはYCT)に関する割とケチョンケチョンな言い方に現れていると思います。と勝手読み。

『In light of their assessment that the ongoing public health crisis would weigh heavily on economic activity, employment, and inflation in the near term and posed considerable risks to the economic outlook over the medium term, all participants judged that it would be appropriate to maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent.』

政策金利は維持。

『Keeping the target range at the ELB would continue to provide support to the economy and promote the Committee's maximum-employment and price-stability goals. Participants also judged that it would be appropriate to maintain the target range for the federal funds rate at its present level until policymakers were confident that the economy had weathered recent events and was on track to achieve the Committee's maximum-employment and price-stability goals.』

現状の金利政策ガイダンス文言も維持。

『Participants also agreed that, to support the flow of credit to households and businesses, over coming months it would be appropriate for the Federal Reserve to increase its holdings of Treasury securities and agency MBS and agency CMBS at least at the current pace to sustain smooth market functioning, thereby fostering effective transmission of monetary policy to broader financial conditions.』

米国債とMBS買入に関しては引き続き「smooth market functioning」をして、その結果「effective transmission of monetary policy」を行うもの、と定義。

『In addition, the Desk would continue to offer large-scale overnight and term repo operations. Participants noted that it would be important to continue to monitor developments closely and that the Committee would be prepared to adjust its plans as appropriate.』

なお、システムレポについては「大規模に行う」のは継続ですが、適用金利に関しては市場の動向によってアジャスト(要は市場が落ち着いたら引き上げ)するという話がしれっと入っていますがまあ従来路線のまま。

『Participants also commented that the lending facilities established by the Federal Reserve under the authority of section 13(3) of the Federal Reserve Act were supporting financial market functioning and the flow of credit to households, businesses of all sizes, and state and local governments. Several participants commented further that it would be important for the Federal Reserve to remain ready to adjust these emergency lending facilities as appropriate based on its monitoring of financial market functioning and credit conditions.』

各種何とかファシリティについても従来通りの見解です。

『Participants agreed that the current stance of monetary policy remained appropriate, but many noted that the Committee could, at upcoming meetings, further clarify its intentions with respect to its future monetary policy decisions as the economic outlook becomes clearer. 』

ここで木曜にネタにしました最初の議論部分の伏線が回収(伏線と言うにはアカラサマですけど)されるのでありました。まあフォワードガイダンスをやるんでしょう。コンディションにするのかカレンダーにするのか、今はコンディションの方が有力っぽいけれどもジャッジメンタルなのか指標なのかもよくわからんですね。そこで決めきれないと折衷案としてのカレンダーもあり得るかもね、とは思います。

『In particular, most participants commented that the Committee should communicate a more explicit form of forward guidance for the path of the federal funds rate and provide more clarity regarding purchases of Treasury securities and agency MBS as more information about the trajectory of the economy becomes available.』

LSAPに関しても何らかの明確化に向けたコミュニケーションが必要でねえの、という指摘が多くの参加者から。

『A number of participants judged that it was important for forward guidance and asset purchases to be structured in a way that provides the accommodation necessary to support rapid economic recovery and fosters a durable return of inflation and inflation expectations to levels consistent with the Committee's symmetric 2 percent objective.』

マンデート達成のためにはもっと急速な回復をサポートしないと、と数名の方が仰せで、ガイダンスもそれに合わせてみたいな話をしているようですな。

『Many participants remarked that the completion of the monetary policy framework review, together with the announcement of the conclusions arising from the review and the release of a revised Committee statement on its goals and policy strategy, would help clarify further how the Committee intends to conduct monetary policy going forward.』

多くの人は今やっているストラテジー見直しなども含めて、今後そういうのを明快にしていきましょうねというようなことをゆうとるってので締めていて、このパートこれで話が終わっていまして、まあ何というかのんびりした感じというと怒られそうですが、「今すぐ何かしなければいけない感が丸で無い議事要旨」であることは確かではないかと思いますし、まあそういう風に見せたいんでしょFRBとしては、と思いました(個人の感想です)。







2020/07/03

お題「中村審議委員就任会見:割と話をしてくれそうなので今後に期待します」

「夜の街」って何だよその雑な言い方は。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200702/k10012492981000.html
東京都「感染拡大しつつある 夜の街への外出控えて」コロナ
2020年7月2日 17時17分

別に「夜の街」だから感染する(んだったら主要ターミナルの乗換で駅構内あるいてたって同じようなもんじゃろ)とかいうんじゃなくて、「このような行動をすると感染しやすい」ってのを説明しろってなもんだって事でして、そういう説明をしないもんだから「夜が駄目なら昼のスナックで健康カラオケならいいじゃないか」とかそういうことになるんでしょと。

何かこうなってくるとクラスター発生事案が多分ないのに名指しでボコボコにされたパチンコ店があまりにもカワイソス。


〇中村審議委員就任記者会見

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2020/kk200702a.pdf

まあ最近は就任記者会見ではっちゃける方も少なくなりまして、というかどこかの誰かさんは棒読み&回答は控える攻撃で色々とビックリさせてくれましたけど。

『(問) 本日、日銀の審議委員に就任されました。今の率直な気持ちと、抱負をお願いします。』

ということではじまりはじまり。

『(答) 今日が日本銀行の審議委員の初日ということで、色々と考えを巡らせてきたのですが、私は、産業界の出身で、45 年間日立製作所で主に経理や財務を担当してきました。こうした企業経営の経験を踏まえて、日本経済の成長に向かって貢献できればと思っています。』

ふむ。

『私は、2008 年のリーマンショック時に日立でCFOを務めており、あの時は本当に大変だった記憶があります。資金が枯渇するとか、需要が蒸発するといったことを経験し、7,873 億円の大赤字を計上しました。』

先に金融が飛んでそっちが実体経済に波及したから大変でしたわな、CPレートとかの上昇を思いまするにまあ分かりますわ。

『その原因がどこにあったのか、20 年間を振り返り反省をした結果、どうあるべきかということを行ってきました。』

ほうほうそれでそれで?

『そうした構造改革は、コストを下げるだけでは済まず、事業のポートフォリオを変えていかなければなりません。こうしたことを日本の経済でも行っていくのだろうと思います。産業界でのこうした経験を貢献につなげていければと思っています。』

アホのように金融緩和をすれば良いのではなく、そもそも経済の成長力を高めないといけないということですね、と勝手に解釈しておりますが、少なくともデフレが悪いのでまず物価を上げろとかそういう金融面(ですらないが)に偏った思想は出てこなさそうで何より。ただ折角の御見識が今のシャンシャン政策委員会の中で生かせるのかというと、鈴木審議委員と一緒に暴れて頂く(たぶん櫻井さんも物は分かっていると思う、惜しいことに来年任期満了だが)のが望ましいのですけれども、などと好き勝手言ってるが、まあ愚劣なシャンシャン会合にならんように(5月臨時会合とかあれ馬鹿にしてるの??としか申し上げようがない)していただければと存じます。



・金融政策全般に関する質問は無難に答える中で一部味わいのある回答も

最初がコロナ関連質問でしたがこちらは一般的な回答で返されましたのでその次の直球質問から。

『(問) 金融政策全体に対してはどのように評価されていますでしょうか。もともと物価の 2%の上昇を目的として、国債を大量に買い入れて、金利を低位に安定させるという金融政策を日銀がとっているわけです。これに対する副作用というのも、例えば日銀の国債保有がどんどん増えるとか、指摘されているところではあるのですが、今の金融政策についてはどのように評価されていますでしょうか。』

さて中村さんのお答えは。

『(答) 現在の金融政策のもともとの目標は、日本の経済が陥っていたデフレから早く脱却し、ある程度の物価上昇が期待できる経済にもっていこうということだと思います。昨日まで企業の側にいた経験からすると、デフレ経済の中では、企業は非常に投資しにくいです。』

ほうほう。

『経済というのは、企業活動が付加価値を創出して成長していき、その成長の果実が個人消費支出に跳ね返っていくという正のスパイラルになっていくはずです。』

ふむふむ。

『しかし、デフレになると、企業は生産性を向上させる活動を行わなければなりませんが、これは投資を行わなければできません。習熟率を上げるだけで生産性が上昇していくかというと、途中ですぐ頭打ちとなってしまいますので、どうしてもIT投資、研究開発投資、設備投資といった未来への投資を行わなければなりません。』

うむ。

『この際、先に投資を行いますので、その 1 か月後、2 か月後に物価が低下し続けると、投資が非常に回収しづらくなります。逆に、物価がある程度の上昇率であれば、少なくとも投資したときよりも物価が上がっていれば、回収しやすくなりますから、経済が順調に成長していく中では、インフレでなければなりません。』

何か卵と鶏みたいな話になっていまして、そもそも論として企業が上記のような投資を行い、既存設備に関しても生産性というか稼働率というかを上げるという活動をしている経済においてデフレになるというのはどういう状況なの???というかそれ経済全体でやっていたら基本的にデフレになりにくいように直感的には思えるのよ。

成長期待、というのも漠とした概念でアレですが、成長期待が無いと投資って中々しにくいんですからそっちじゃないのかねと思います。まあ確かに名目の数値が+になっていると貨幣錯覚みたいなもんで、名目のプラスで実質はゼロ成長でも成長しているように見えて、投資意欲が損なわれにくくなるから名目をプラスにしておく方が都合が良い、とかその程度のもんじゃネーノって無学のアタクシは思ってしまうのですが。

『ただし、あまり高いと購入のための所得がなくなるのでだめです。』

って一瞬何のことかと思いましたが、ハイパーに上がってたら販売した後に仕入価格が更に上昇みたいな話の事ですね。

『2%とピンポイントでいう必要はないと思いますが、2%程度の緩やかなインフレが続く世界は、企業経営にとってみると非常に望ましいです。』

ということなのですが、果たしてそれ本当にそうなのか、そもそもジャパンの経済で「2%程度の緩やかなインフレが続く世界」ってあったんでしたっけ、と存じますのでありまして、本当に企業経営にとって望ましいのか、って実は未体験ゾーンなのでやってみないと分からない筈なのに何かの桃源郷のように吹きこまれているのではないかという気がせんでもない(個人の妄想です)。

『従って、設備投資が増えていくような順回転の経済になるには、金融政策では、資金を目詰まりさせず、物価が2%程度上昇していくのが良いと思います。』

と、何か知らんが2%物価目標の話を延々と行いましたが更に説明は続く。

『もともと、プラスの効果を出そうと思って政策を行っていますので、効果の部分と副作用の部分とを見計らっていかなければなりません。』

さっきの2%物価目標の辺りはメカ中村って感じでしたが、ここで急に「効果と副作用」とか言い出すのがチャーミング。

『私も、日本銀行は相当先駆的な政策を打ってきたと思います。2001 年から、大量の国債を買うという量的緩和を行ってきました。』

2013年ではなく2001年と言っているのがこれまたチャーミング。

『デフレに近い低成長下、低温経済というのでしょうか、そうした世界になると、目詰まりをさせないような施策と、緩やかな物価上昇が続く世界を実現するために、どこの中央銀行も日本銀行と同じことを今行っているわけです。』

お、おぅ・・・・・・・

『日本銀行が 2001 年から行っている施策が、今の米国でも行われているわけで、』

うーん・・・・・・・

『過去の実証からいくとプラスの面の方が多かったのだろうと思います。』

んなもんマイナスとかいう実証出すのって余程とんでもない間違いしない限り無くて、どこでもてめえらの政策の実証分析をすると基本プラスに出してくるのが優秀な中央銀行のリサーチャー(イヤミ)。

『日本銀行は現在、国債の半分程度を保有しており、今後どういう方向になるのかはよくみていかなければならないと思いますが、経済が持続的な成長を遂げていく中で、必要な部分については行っていくのだろうと思います。』

要するにここは現状ノーアイデアですなわかります。で次がお洒落な部分。

『私の持論では、国が様々なサポートを行って企業が活動しやすくなるのは良いのですが、企業が国の政策支援を待たないと何もやらないといった待ちの姿勢になっているような文化は良くありません。こういったマインドセットを変えていくうえでも、資金の目詰まりがない状況をまず作っておくことが大事だと思います。』

何か前半と後半のロジック的なつながりにややアクロバット性が感じられますが、要するに前半の事を言いたいということでしょうと思いますので、中村審議委員におかれましては是非震災手形の経緯とその処理の長期化とそれによる結末という辺りから政策インプリケーションを引き出していただきますと大変にありがたく存じます。


・財政ファイナンス問題に関しては回答を回避

そらそうよという感じですが、

『(問) 日銀が国債の半分くらいを持っているというお話がありましたが、政府がコロナ対策で財政拡大に舵を切る中で、日銀も積極的に国債を買い入れていく方針を示しています。これまでの大規模な国債買入れを含めて財政ファイナンスではないかという指摘がありますが、委員はどのようにお考えでしょうか。』

ちなみにアタクシは今回の「コロナ対策で国債買入」という3本の鉛筆を出したことが「日銀が財政マネタイズを事実上公式に表明している(これまでの建前を崩した)」という整理をしています。それまでは嘘でも財政との連関性での説明はしてなくて、2%物価目標達成のための買入として建前を崩していなかった、という解釈ですが個人の感想とかどうでもいいですねすいません。

『(答) 見方によるのだろうと思います。過去のやりとりをみていると、こちらから見ると財政ファイナンスではないか、こちらから見るとそうではない、とすれ違っているような感じがします。』

これは回答回避ですな。

『政府と日本銀行は、目標は同じなわけです。』

?????????長期的には同じでも短期的には違くね?????

『日本経済がデフレから脱却して、緩やかな成長を持続的に実現するような世界にしようということで、そのために必要なのが金融政策であり財政政策です。』

うーんこの。

『財政政策だけでそういう経済になるかというと、それはできないでしょうし、金融政策だけでできるのかといえば、それもできません。』

置物理論は盛大に無かったことになっているようです。まあ当の置物が自分がウン十年間主張していた意見を「進化した」とか言って引っ込めて自己批判も総括もしないんですけどね。

『また、財政政策と金融政策が違う方向では、アイドリングしているような状況になって、エネルギーばかり使いますが効果は出ません。』

別に違う方向だってあり得ると思いますよ。財政政策と金融政策ではフォーカスしている時間軸が違うんですから。

『方向を同じようにしているので、独立性がないように受け止められるのかもしれませんが、日本銀行の金融政策は、経済の目詰まりを起こさず経済成長できるような 2%程度の緩やかな物価の上昇ができるような世界に持っていく、他方、財政政策は需要のサポートや構造を変えていくために様々な施策を行っているということです。』

『私は財政ファイナンスではないと思いますが、ずっと言っておられる方は全然そうした考えを変えていないので、それは見方の差かという気がします。私は、日本銀行にきてまだ半日ですので、これから職員の皆さんとよく議論しながら、再来週の金融政策決定会合に向けて、よく話を聞いてみたいと思っています。』

うーんこの、だったら今の3本の鉛筆で「コロナ対策で長期国債買入」とか言ってるのは何なのという話になるんですし、アタクシのように「これまで日銀は国債買入を少なくとも建前上は2%物価目標達成の為としていて、財政マネタイズとは一線を画す説明をしていたが、今般のコロナ関連の財政支出に合わせた形で遂にその建前まで外してしまったんだが大丈夫かこいつら」というような整理をしている人って日銀見てる人の中では別にアタクシオリジナルな考えでも何でなくて、素直に日銀の言っている事を読み込むと「今まさに従来の大原則を踏み外している」という状態だって主張は多いと思うんですが気のせいじゃないですよね??????????いやマジで。

ということでですね、「財政ファイナンスとか言ってるのは昔からそういっているトンチキの集団なので相手にする必要なくてワシらが財政ファイナンスじゃないって言い続ければ大丈夫」理論を早速中村審議委員も説明しておられるようですが、そうは言ったって長期国債買入の拡大を物価目標達成以外の話で使っている時点でもうフンドシは外れていると思いまっせ(なおFEDは国債買入を「市場機能の維持」としているので、市場機能が維持されてるんだったら国債買入は減らすがな、とやってくる訳です)。



・金融システムの話になっておりますが中村さん預保の運営委員会の委員だったのですね

2%物価目標達成はどうしますという質問が前半にありましたがそこの質疑応答は割愛(今は2%云々よりも蒸発した需要をどうするとかの平常に戻すのが先ですよ、という順当な答えでした)しまして質疑後半を。

『(問) (前半割愛)また、中村さんは預金保険機構の運営委員会の委員をしていらっしゃいますけれども、特に地方銀行の財務健全性について、今どのようなご認識をお持ちかをお聞かせください。』

ほほう。

『(答)(前半割愛)地銀の財務健全性については、様々な雑誌が定期的に百二十数行全てを表にして、ここが危ないとか書いています。私は表しか見ていないのですが、やはり厳しいところは厳しいだろうと思います。』

そういえばFace to Faceの取材が難しくなった昨今、雑誌(だけじゃないけど)の記事って物凄くスッカスカになって、記者の脳内で作り上げた思い込み(ただの偏見)まっしぐらという物件が増えてきましたなという印象はある、というか某雑誌(どことは言わない)とかあれコラムまで含めてゴミばっか、というか経済雑誌のコラムってゴミじゃないのを探すのが大変(個人の盛大な偏見です)。

『預金保険機構の運営委員会委員は昨日までで退任しましたが、今の預金保険機構の考え方は、今すぐ何か起きるといったことではないと思います。地銀がこれからどうやって地方の経済に貢献できるか、彼らのビジネスモデルを変えていくことが必要です。そういうことを今しており、その効果がいずれ出てくると良いと思います。』

気持ちは分かるのですが預保のやる仕事じゃないんでは???そうやって仕事増やすのはまさかとは思いますが(ここで爆発音と共に声が途絶える)。

『地方において在宅でできる仕事が相当増えるなど、新型コロナウイルス感染症はチャンスだと思います。今までは地方に人がいなかったのですが、今は地方に人がいるようになりつつあります。』

そ、そうですか・・・・・・・・・ザイタクデハイミガナイキガスルガ

『銀行が企業と色々つないだり情報を提供することで様々なチャンスが生まれ、これをしっかりと行うことで違う時代がくるのではないかと期待しています。』

まあ難しいとは思いますけど最初からあきらめる程の事もありませんので・・・・・・・・・・・


更に金融システムの質問がありましてそこにマイナス金利を絡めているのですが・・・・・・・・・・

『(問) 金融システムについて、地銀も含めて、メガバンクから信金、場合によっては信組まで、広い意味での金融システムの現状をどうみていますか。また、金融機関の経営にも影響があると思いますが、現行のマイナス金利政策について、効果も含めた認識をお伺いできればと思います。』

話を広げすぎ。もうちょっと絞って欲しい。

『(答) 日本銀行が今回の対応にかなり早く動きましたので、金融システムの大きな混乱は現場で生じていないような気がします。資金が目詰まりを起こしていないように感じています。』

そら今回の原因金融要因じゃないもん。

『2008 年のリーマンショック後、2009 年の第 2 四半期くらいまでは結構厳しい状況でしたが、今回はそれが起きていないので、あのときよりは良い状況だという気がします。』

うーんこの。金融要因だったら金融の所を何とかすればというのがあるんですが、今回は感染症からの需要喪失なので今回の方がタチ悪くなる可能性がありませんかねえと。ああだこうだやっていますけど、「コロナ感染症はちょっとキツイ肺炎などを伴う可能性のある流行性感冒なので罹患したらとっとと医療を受けて治しに行かないと人には移すわ重症化して最悪死ぬから注意してね」っていう状況まで来てしまえば(という為の医療の充実が大変で何せその手のは年単位以上のスケールで主要国ってどこでも削りまくってましたからねえ)、という所なのではないか、などとアタクシの拙い知能では思うのでありまする。なのであの時より良いのかというと金融面は良いけどそれだけの話なのでは??

と思ったらそういう話に進んでいましたわ(汗)、

『ただ、需要が蒸発している中で、今度は金融システムではなく、生産ができないとか出勤ができない、買い物に行けないという状況が起きています。ここを早く直さなければいけないと思うのですが、そのためには、「耐性を作る」、「ワクチンを作る」の二つです。』

その通りですね!!!!!!!!

『それまでの間は、金融システムに影響が出ないように支援をしていくことが日本銀行の大きな役割だと思っています。今のところ、リーマンショック時と比べると当時の経験が活かされていると評価しています。』

>金融システムに影響が出ないように支援をしていくことが日本銀行の大きな役割だと思っています
>金融システムに影響が出ないように支援をしていくことが日本銀行の大きな役割だと思っています
>金融システムに影響が出ないように支援をしていくことが日本銀行の大きな役割だと思っています

全く仰せの通りでして、つまり日銀は主役面をして「コロナ対策3本の鉛筆」とかお笑いポンチ絵を出すような出しゃばり行為をするのではなく、地道に金融市場の安定化と短期金融市場の取引円滑化(をしたければ実はマイナス金利撤回した方が円滑化するじゃろと思いますがそれはさておき)と金融機関の資本状況のモニタリングをしておけばよいのであって、政府と一緒に何かやってますとかアッピールするのは最初の3月4月くらいまでで十分なのに6月になっても鉛筆出してくるのが黒田日銀の悪ノリクオリティ。

などと悪態をついている場合ではなくて中村さんの発言はなお続く。

・マイナス金利について

『マイナス金利の政策については、イールドカーブからいうと短期金利がマイナスで、長期金利は若干のプラスとなっていますが、マイナス金利は結局、金融政策を行っても需要は増えないという流動性の罠に陥っているような経済状態となります。』

ほうほうそれでそれで?

『いつかはマイナス金利ではない時代にならないと、インフレにはなかなか戻らない気はします。』

イイハナシダナー、と思ったのだが次のは残念無念。

『ただ、今は需要が喪失している状況なので、ここで金利をプラスにしたら良くなるのかというと、これは逆効果になるのだろうと思います。』

民間分門が企業まで含めて資金余剰、政府門が資金不足、という状況なのですから、マイナス金利というのは資金不足主体から資金余剰主体への所得移転が行わている状況。これで民間企業部門が資金不足なのであればまだしも意味はありそうですが、民間企業部門まで資金余剰なのですから、このマイナス金利は政府部門に対して民間部門のどこかが食らっている、という話でして、金融仲介機能の所で食らうか非金融部門に転嫁されるかという話でして、現状だと元々は銀行でした、最近は新コロオペとかの銀行お助け策が来ているので、むしろ年金投信の方がマイナス金利での直接のやられを受けている気がしますな。

ということでして、金利をプラスにしたら逆効果、というのはそこはそう言い切ってしまってよいのかは微妙だと思います、というかワシはマイナス金利解除した方がマインド面も含めてプラス(政府部門は知らんがな)と思いますけどね、まあいいですけど。


・経済の改善は結局感染症対策&オモシロコメント発見

話はさらに続く。

『経済情勢がいかに改善するかということになりますが、新型コロナウイルス感染症がなくなってくると、人々は明るい気持ちになります。これが大事で、緊急事態宣言を解除したら、みんな買い物に行ったり、インタビュー記事をみると、とても幸せそうな表情が出ていました。』

そらそうよ。

『経済というのは、そういう明るい気持ちが続くことが大事です。』

そこでマイナス金利解除ですよ(ただの我田引水)。

『新型コロナウイルス感染症の対策が進んで、人々のマインドセットが変わってくれば、そのチャンスは来ると思いますが、なかなか直ぐには、とも思っています。国際的な人の移動が止まっていますので、これが元に戻るにはやや時間がかかります。当面、この状況は続き、それは世界も同じです。世界全体がこの経済環境を直そうとしているわけで、――日本銀行が金融政策面では先生をやっているような気がしますが――そのときに同じようにやっていくことが解ではないかと思っています。』

どうも早速初日から日銀のスタッフに悪い教育でも受けているようですが、昨日ネタにしたFOMC議事要旨もそうですけれども、FEDにしろECBにしろ(ECBやや微妙なところもありますが)コロナ対策措置に関しては「目的を絞った形」で「その目的にピンポイントで届くような政策」を「時限的措置」で実施しておりまして、まさにティンバーゲンルールキタコレという所なのですが、日銀の場合は従来の措置を勝手にコロナ対策とか言い出すようなガバガバぶりでして、これを先生とか言ってFOMCで発表したら爆笑の発作でパーティシパントの皆さん笑い死にするんじゃないでしょうか????

「しくじり先生」も先生だ、というのであれば(ここで穴が開いて床に吸い込まれる)


・緊急対策のサステイナビリティについて

とまあだいたいこんなもんかなとは思いますが最後にこんなのでも引用します(なお質疑はもうちょっと量がありまして今回はそこそこ割愛しています)。

『(問) 今おっしゃったように厳しい状況が続くので、続く限りは対策を打たねばならないとは思います。一方で、政府の財政がどんどん拡張しており、これが一体どこまで持続可能なのかということについて、ちょっと心配にもなります。今のコロナ対策が一体いつまで続けることができるのか、状況が良くならなくても、持続可能でなくなってしまって日銀の打つ手がなくなってしまうという惧れはないのかということについてお伺いします。』

まあこれは「そうですね」とは言えないので答えが限定的になるのは仕方ないですけど前半に味わいがある。というかそういう意識して回答している訳ではないと思うけど。

『(答) 経済がずっと回復せずに財政支援を国がずっと行っていくということは、無理がありますし、そのような経済はあり得ないと思いますので、それはないのだろうと思います。』

物価目標2%ェ・・・・・・・・・・

『対策はやはり必要ですし、それには目標を定めて、今やるべきことをやり、そしてPDCAをきちんと回すのだろうと思います。』

まるでそうなっていないような気がしますが・・・・・・・・

『今ご心配されたような、ずっと政府がお金を出し続けたら経済は戻るのかというと、こうしたマインドセットに陥ってしまったら、日本経済は元に戻らないと思います。経済は、国が運営しているのではなく、結局、企業が活動をすることによって付加価値を創出して成長していくものです。』

さいです。

『そうでなければ、お金をいくらヘリコプターマネーでばらまいても需要はそこまでにしかなりませんので、正の循環でスパイラル状に需要が増えていくことはありません。』

さりげなくヘリマネ系の話を一刀両断しているのが味わいがあります。

『従って、企業のマインドセットを変えないといけないと思います。今、新型コロナウイルス対策を行って、人によっては再開が早かったのではないかとか、感染が拡大してしまうのが心配だという声があります。これもそうだと思います。一方で、新型コロナウイルス感染者がゼロ人という状況が一年間続くまで再開をしなくてよいのかというと、そうすると新型コロナウイルス感染症は克服できても、企業、ひいては経済が死んでしまいますので、頃合いをみながらやっていかなければいけないと思います。』

『従って、感染者が出た場合には、その方が回復するまで支援をするような医療体制を構築するとか、その際の医療の費用負担をどうするかということはあると思います。』

『一方で、民間の企業活動が元へ戻るよう各企業自身が施策を考えて実行していくというマインドに早く戻るべきだろうと思います。こうした点は各経済団体も言っていますので、そのような順回転になっていくことを期待しています。』

『いつまでかというのは、企業と個人のマインドセットをポジティブに変えていくというふうに、徐々にそうなってきていますので、未来永劫続くということはないと思います。』

ということで。まあ順当にそうですなという話ではありましたが、割と色々と喋ってくれそうなので今後に期待したい所ではあります。一部早速執行部の屁理屈に影響されているのではないかという辺りは気になりますけどね!!!!!!!!


ということで、FOMC議事要旨とか先日のパウエル議会証言ネタとかあったのですが思いの外時間を使ってしまったので本日は中村さんの就任会見で勘弁ということで(超大汗)。












2020/07/02

お題「寝起きでFOMC議事要旨(ガイダンスとかYCCの部分)/布野さん退任/日銀短観私家版チェック(の2つは夜なべ)」

あのさあ・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200701/k10012490321000.html
レジ袋 欧米は再び無料化の動き 新型コロナ感染対策で
2020年7月1日 6時38分

7月1日になってからこういうのを得々と報道するとか「私言いましたよね」スキームにも程があるし、公共放送だったらこういうのを事前に報道して本当に必要かという論点を大上段から提起しやがれって所でして控えめに言ってクズオブクズ。


〇寝起きでFOMC議事要旨だが先行きの政策の話の前にこっちに食いつくでしょうということで・・・・・・・・

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20200610.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20200610.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee
June 9-10, 2020

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors was held by videoconference on Tuesday, June 9, 2020, at 10:00 a.m. and continued on Wednesday, June 10, 2020, at 9:00 a.m.1

なるほどビデオ会議で実施とな。

・食いつく本題の前にこんなのがありまして(ミネアポリスでの件について)

議事要旨の頭の部分って出席者(スタッフとか報告者とかそういう方々の名前が全部あってそれだけで平気で2ページとかになるのですが、その最後の部分に普段無い物件がありまして・・・・・・

『The Chair opened the meeting with an acknowledgment of the extraordinary and deeply troubling events of the last two weeks. Injustice, prejudice, and the callous disregard for life had led to social unrest and a sense of despair. The Chair noted that it was incumbent upon the leaders of the Federal Reserve System to continue to communicate with force and clarity about the Federal Reserve's core values, and to reaffirm its unflinching commitment to those values in pursuing the Federal Reserve's mandated goals.』

ということで・・・・・・・・

『In that spirit, the Chair noted that he intended to offer the following remarks at the end of the postmeeting press conference. All participants supported the statement affirming the Federal Reserve's core values and its commitment to do everything it can to foster racial equality as well as diversity and inclusion both within the Federal Reserve System and in society more broadly.』

以下の文言、確かに会見の冒頭ステートメントの最後にありましたよね。その時に読んだのですがFRBのスタンスに敬意を表して再掲します。

『I want to acknowledge the tragic events that have again put a spotlight on the pain of racial injustice in this country. The Federal Reserve serves the entire nation. We operate in, and are part of, many of the communities across the country where Americans are grappling with and expressing themselves on issues of racial equality.』

『I speak for my colleagues throughout the Federal Reserve System when I say that there is no place at the Federal Reserve for racism, and there should be no place for it in our society. Everyone deserves the opportunity to participate fully in our society and in our economy.』

『These foundational principles guide us in all we do, from monetary policy to our focus on diversity and inclusion in our workplace, and to our work regulating and supervising banks to ensure fair access to credit around the country. We will take this opportunity to renew our steadfast commitment to these principles, making sure that we are playing our part.』

『We understand that the work of the Federal Reserve touches communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We are committed to using our full range of tools to support the economy and to help assure that the recovery from this difficult period will be as robust as possible.』

ちなみにポストミーティングステートメントの文字起こしの方では一部単語に抜けがあったりする(3つ目のThese foundational principles の foundationalが抜けてるとか)のですがまあそこはキニシナイと言う事で。


・冒頭に巨大な釣り針がありましてこの釣り針に俺様がクマーという奴なんですが

ということで始まるFOMCですが、最初の小見出しがどう見ても巨大な釣り針。『Discussion of Forward Guidance, Asset Purchases, and Yield Curve Caps or Targets』と言われたら読まないわけにはいかない。

『Participants discussed tools for conducting monetary policy when the federal funds rate is at its effective lower bound (ELB).』

まあ昔からの話ですが現状がELBな訳で、さてそれでは名目ゼロ金利制約に引っ掛かった場合の追加緩和はどうしますか、という話に関してもすっかり現世利益の話になってしまいますのでそれはもう全力で釣られクマー(インターネッツ老人語)。

『The discussion addressed two topics: (1) the roles of forward guidance and large-scale asset purchase programs in supporting the attainment of the Committee's maximum-employment and price-stability goals and (2) in light of the foreign and historical experience with approaches that cap or target interest rates along the yield curve, whether such approaches could be used to support forward guidance and complement asset purchase programs.』

今回の論点は2つ。1つ前は毎度おなじみのフォワードガイダンスとLSAPを行うとしてその効果や如何にというので、2つ目はイールドカーブキャップ政策、またはイールドターゲット政策で、このイールドキャップがフォワードガイダンスやLSAPの効果をサポートできますか、って話だと読みましたがさすがにこれは誤読していないでしょう。

・フォワードガイダンスは効くんだが他に重要なことがあると来ておりましてですね・・・・・・

早速読み進めますとスタッフのブリーフィングが始まる。

『The staff briefing on the first topic focused on outcome-based forward guidance for the federal funds rate-which ties changes in the target range for the federal funds rate to the achievement of specified macroeconomic outcomes, such as reaching a given level of the unemployment rate or inflation-and asset purchase programs of the kind used during and following the previous recession.』

まずは特定の経済指標(だと裁量の余地がない)、あるいは特定の経済状況(まで来ると裁量の入る余地がある)に紐付けをした形での政策金利はAPP継続のガイダンスについて。

『The staff presented results from model simulations that suggested that forward guidance and large-scale asset purchases can help support the labor market recovery and the return of inflation to the Committee's symmetric 2 percent inflation goal. The simulations suggested that the Committee would have to maintain highly accommodative financial conditions for many years to quicken meaningfully the recovery from the current severe downturn.』

まあこの方々は前回これでうまくいっているのでこういう話になりますが、この手のガイダンスは効きましたよねって話をしております。ただし・・・・・・・・

『The briefing addressed factors that might alter the potency of forward guidance and asset purchase programs, along with a number of considerations for the design of these actions. The staff cautioned that businesses and households might not be as forward looking as assumed in the model simulations, which could reduce the effectiveness of policies that are predicated on influencing expectations about the path of policy several years into the future.』

フォワードガイダンスがあるから世間様の期待がそのフォワードガイダンスに沿ってくれるのか、と言いますと必ずしもそうではなくて、企業や家計の行動は(前回の経験によれば、ってことでしょうね)必ずしも我々が示すガイダンス通りにフォワードルッキングに動いてくれていなくて、その分はガイダンス政策の効果を減殺することになりますよと注釈が入りまして、この次の説明が中々味わいがあるんですよ。

『Alternatively, prompt and forceful policy actions by the Committee might help focus the public's expectations around better outcomes or reduce perceived risks of worst-case scenarios, which could generate more immediate macroeconomic benefits than those featured in the staff analysis.』

よってフォワードガイダンスだけではなくて、重要なのは「prompt and forceful policy actions」でして、そういう政策をぶっこむことによって世の中の期待を引き上げることが出来る、という話になっておりまして、ああなるほどそれで何か物凄い勢いで追い詰められたんかというような利下げとかやってたのね、と納得するんですが、どう見てもあの時の緊急FOMC利下げ大会は市場のパニックを煽ったとしかこちらからは見えないのですが、この評価に関しても恐らくはFEDのスタッフは「prompt and forceful policy actions」で市場が落ち着いた、とか評価してるんじゃねえのかと非常にオソロシスな気がする。こちとら盛大なマッチポンプにしか見えなかったんですが(ペイチェックプロテクション何とかとかの資金繰り対策以降はよくやったと思うが利下げはもうちょっとやりよう無かったのか、と今でも思う)。


・YCCじゃなくてYCTって言ってるのがチャーミングなイールドカーブターゲットまたはキャップ政策については・・・・・・・

『The second staff briefing reviewed the yield caps or targets (YCT) policies that the Federal Reserve followed during and after World War II and that the Bank of Japan and the Reserve Bank of Australia are currently employing.』

キターーーーーーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

なのですが、第2次大戦後のFEDのイールドキャップ政策と今日本と豪州(は始めたばかりですが)が行っている政策について、なのですが日銀様渾身の命名であらされるところのYCCではなくて「YCT」とか言われているのがチャーミング。

『These three experiences illustrated different types of YCT policies:』

ほうほうそれでそれで?????(身を乗り出す)

『During World War II, the Federal Reserve capped yields across the curve to keep Treasury borrowing costs low and stable;』

『since 2016, the Bank of Japan has targeted the 10-year yield to continue to provide accommodation while limiting the potential for an excessive flattening of the yield curve;』

『and, since March 2020, the Reserve Bank of Australia has targeted the three-year yield, a target that is intended to reinforce the bank's forward guidance for its policy rate and to influence funding rates across much of the Australian economy.』

おーこれはだいぶ良いじゃん!!!!!

・・・・・米国の昔やったイールドキャップ政策は、国債金利を低位にして財政負担を減らすため、日銀の10年ターゲットは「極端なイールドカーブのフラットニングの可能性を抑制しながら金融緩和を継続するため」、豪州の3年ターゲットは、「フォワードガイダンスを強化して中短期金利の抑制を行い経済における主要な調達金利に影響を与えるため」と分類しています。まさかLSAPのやり過ぎで政策が破綻するのを回避するため苦し紛れにやったとは言えんわなと思いましたが、こういう言い方をしているのを見ると、FEDのスタッフは日銀のYCCに関してはまあそこそこは理解しているのかな、とちょっと安心させてくれるような表現ですわな。

『The staff noted that these three experiences suggested that credible YCT policies can control government bond yields, pass through to private rates, and, in the absence of exit considerations, may not require large central bank purchases of government debt.』

えーっとここの部分ですが、「出口に対する意識が無い状況においては」「国債買入の量がそこまで多くなくても債券市場の金利をコントロール可能のようですな」という風に分析していると読みましたがそれで良いんですよね。結構キモの部分なので、もうちょっとアタクシの知能レベルに合わせた作文にして欲しかった(血涙)。

でもまあそらそうよという話で、YCCがワークするのって「インフレ目標がその間行かない」ってのが前提になっている訳でして、日銀が10年金利コントロールできてるとか威張る(威張ってないと思いますが)のとか、コントロールできてるから成功とかいうの(さすがに日銀も言ってなくて言ってるのは外野のトンチキか日銀ヨイショマン)は、それインフレ期待が全然上がらなくて物価安定目標2%の達成が全然できないって状況だからコントロールできているに過ぎないんですから普通に政策の大敗北なんですよね。

という悪態は兎も角次に行くと更に良い分析がある。

『But the staff also highlighted the potential for YCT policies to require the central bank to purchase very sizable amounts of government debt under certain circumstances-a potential that was realized in the U.S. experience in the 1940s-and the possibility that, under YCT policies, monetary policy goals might come in conflict with public debt management goals, which could pose risks to the independence of the central bank.』

とりあえずYCC連呼している馬鹿雨公どもはここの文章を百万回読んでみろと申し上げたい訳でして、スタッフの分析ではきちんと「YCT政策は中央銀行による物凄い量の国債買入を必要としますし、その例は既に米国が昔やったイールドキャップ政策に現れていますが、この政策をつき進めていくとイールドキャップ政策および国債管理政策と中央銀行本来の政策目標(物価安定)とのコンフリクトを起こし、その結果中央銀行の独立性に関するリスクを高めることになる」と思いっきりぶっこんできております、実に素晴らしい。

まあ本当はジャパンで物凄い勢いで同じことやっているとしか思えませんが、そこはさすがに武士の情けで過去の米国における「国債管理政策の為のイールドキャップ政策」で説明しているのはチャーミング。


・ということでFOMC参加者の議論に移ります

『In their discussion of forward guidance and large-scale asset purchases, participants agreed that the Committee has had extensive experience with these tools, that they were effective in the wake of the previous recession, that they have become key parts of the monetary policy toolkit, and that, as a result, they have important roles to play in supporting the attainment of the Committee's maximum-employment and price-stability goals.』

そら(やったことがあるんだから)そう(その政策を採用する)よという話で、FOMC参加の皆様は過去におこなったフォワードガイダンスとLSAP政策がELBの際には有効ですよ、という点で同意と来ました。結構結構。

『Various participants noted that the economy is likely to need support from highly accommodative monetary policy for some time and that it will be important in coming months for the Committee to provide greater clarity regarding the likely path of the federal funds rate and asset purchases.』

「Various participants」ってオモロイ言い方じゃなと思う(あんまり出てこない)のですが、今後も緩和政策のサポートが必要な状況が続くので、向こう数カ月の間にガイダンス政策ぶっこみに行く必要あるんじゃネーノという指摘をしています。

『Participants generally indicated support for outcome-based forward guidance.』

その際のガイダンスは「アウトカムベース」だそうな(時間ではない、って事ね)。

『A number of participants spoke favorably of forward guidance tied to inflation outcomes that could possibly entail a modest temporary overshooting of the Committee's longer-run inflation goal but where inflation fluctuations would be centered on 2 percent over time. They saw this form of forward guidance as helping reinforce the credibility of the Committee's symmetric 2 percent inflation objective and potentially preventing a premature withdrawal of monetary policy accommodation.』

数名(A number of)の参加者はアウトカムをインフレの数字、それも2%よりちょっと上とかにしておくことによって、緩和効果出るし「シンメトリックターゲット」への信頼も高まるんチャイマスカ、premature withdrawal of monetary policy accommodationもしなくなるという事になりますし、と提言。ただしこれはインフレの勢いがついた場合に時間的不整合の問題が起きるんですがそれは今まで無かったし大丈夫でしょ、ということでしょうな。

『A couple of participants signaled a preference for forward guidance tied to the unemployment rate, noting that it would be more credible to focus on labor market outcomes that have been achieved in the recent past or that-given how high the unemployment rate currently is-such guidance would clearly signal a high degree of accommodation for an extended period.』

2名は失業率紐付けガイダンスを主張。失業率紐付けでも長期間の金融緩和をするのが明らかになるじゃろ、とまあ実践的にはこっちの方がありかもしれませんが、前回の時も何気に物価は上がらんのに失業率だけはホイホイと下がってしまってさてどうしましょという事になったので、そこがどうなるのかはありますけど、まあその時はその時で新しいの入れれば、という風に考えればこっちの方が先にターゲットに行きそうなので使い勝手は良さそう。

『A few others suggested that calendar-based guidance-which specifies a date beyond which accommodation could start to be reduced-might be at least as effective as outcome-based guidance.』

・・・・・・などと言ってたらそうじゃない数名(A few others)が「カレンダーベースのガイダンス」が適切と主張。

『They noted that calendar-based guidance had been very effective when the Committee used it in 2011 and 2012 or that it would be very challenging to provide credible outcome-based guidance in light of the substantial uncertainty surrounding the current economic outlook.』

2011年とか2012年の時もそうだったけど、経済物価情勢の先行きに不確定要因が多すぎな時には、アウトカムベースで勝負するんじゃなくてカレンダーにしておいた方が無難じゃねえのって感じですかね。まあその理屈も分かる。

『Regardless of the specific form of forward guidance, a couple of participants expressed the concern that policies that effectively committed the Committee to maintaining very low interest rates for a long time could ultimately pose significant risks to financial stability.』

最後にこの意見があるのが物凄い勢いでチャーミングなのですが、2名の参加者が「それはそれとして長期間に渡って大規模緩和政策をしていると金融不均衡が発生する点が懸念される」とぶっこんできているのが素敵ですね。だれだかよくわからんけどあてずっぽうでローゼングレンとメスターと見た(^^)。


・APPの話

『Participants agreed that asset purchase programs can promote accommodative financial conditions by putting downward pressure on term premiums and longer-term yields.』

ということでAPPの話。

『Several participants remarked that declines in the neutral rate of interest and in term premiums over the past decade and prevailing low levels of longer-term yields would likely act as constraints on the effectiveness of asset purchases in the current environment and noted that these constraints were not as acute when the Committee implemented such programs in the wake of the Global Financial Crisis.』

『These participants noted, however, that large-scale asset purchases could still be beneficial under current circumstances by offsetting potential upward pressures on longer-term yields or by helping reinforce the Committee's commitment to maintaining highly accommodative financial conditions.』

数名(Several)の参加者は自然利子率の低下によって資産買入による金利低下とかリスクプレミアム低下の効果が以前(しかも引き合いにだしているのは前回リーマンショック後の金融緩和)よりも効果が下がっているのではないか、という論点を提示したうえで、まあそうは言いましても今の所さすがにLSAPは有効でしょ、という話をしています。

『A few participants questioned the desirability of large-scale asset purchases following the current purchases to support market functioning, noting that they likely would lead to a further considerable expansion of the Federal Reserve's balance sheet or have potentially adverse implications for financial stability.』

これまたチャーミングというか、どっかのパンダ決定会合がトンチキなのですけど、このLSAPに関しても「既にこんだけ買っている中でのおかわりってのは市場機能の低下とか中銀バランスシート拡大に伴う金融分均衡の発生とかにならんのか大丈夫か」という指摘をする数名(A few)の少数意見をぶっこんであります。


・YCTの話

『In their discussion of the foreign and historical experience with YCT policies and the potential role for such policies in the United States, nearly all participants indicated that they had many questions regarding the costs and benefits of such an approach.』

>nearly all participants indicated that they had many questions regarding the costs and benefits of such an approach.
>nearly all participants indicated that they had many questions regarding the costs and benefits of such an approach.
>nearly all participants indicated that they had many questions regarding the costs and benefits of such an approach.

・・・・・・・・これはどう見てもYCTがそう簡単にぶっこまれないと言う事を示しております、としかアタクシには読めないのですがどうでしょう。

『Among the three episodes discussed in the staff presentation, participants generally saw the Australian experience as most relevant for current circumstances in the United States.』

日本のは見事に却下(当たり前ですが)でやるなら豪州方式(3年金利)が一番近いじゃろと。

『Nonetheless, many participants remarked that, as long as the Committee's forward guidance remained credible on its own, it was not clear that there would be a need for the Committee to reinforce its forward guidance with the adoption of a YCT policy.』

これまた当たり前の話で、そもそもフォワードガイダンス政策ぶっこんで、その政策の遂行に信頼が置かれている状況なのであれば3年金利にわざわざキャップとかせんでもええじゃろ、入れたからと言ってガイダンス政策の強化になるかは怪しくありませんか、とこれも多くの参加者が指摘。

『In addition, participants raised a number of concerns related to the implementation of YCT policies, including how to maintain control of the size and composition of the Federal Reserve's balance sheet, particularly as the time to exit from such policies nears;』

(;∀;)イイシテキダナー

というか日銀が出口何も考えない(ように見えるのですが)でバカスカ政策を継ぎ足し継ぎ足ししているだけの話で、普通はこういう事を考えるじゃろ常識的に考えて、という話です。一応何言ってるかというと、YCTぶっこむにしたってその後のバランスシートをどうやってコントロールしていくか、特に出口に近くなった時にどうするんだ、というのが無茶苦茶難しいじゃろと。途中で切って恐縮ですが以下続き。

『how to combine YCT policies-which at least in the Australian case incorporate aspects of date-based forward guidance?with the types of outcome-based forward guidance that many participants favored; how to mitigate the risks that YCT policies pose to central bank independence;』

>how to mitigate the risks that YCT policies pose to central bank independence
>how to mitigate the risks that YCT policies pose to central bank independence
>how to mitigate the risks that YCT policies pose to central bank independence

円債村の住人が泣いて喜ぶ指摘キタコレ。

『and how to assess the effects of these policies on financial market functioning and the size and composition of private-sector balance sheets.』

>how to assess the effects of these policies on financial market functioning
>how to assess the effects of these policies on financial market functioning
>how to assess the effects of these policies on financial market functioning

(;∀;)涙で前が見えません。

『A number of participants commented on additional challenges associated with YCT policies focused on the longer portion of the yield curve, including how these policies might interact with large-scale asset purchase programs and the extent of additional accommodation they would provide in the current environment of very low interest rates.』

『Some of these participants also noted that longer-term yields are importantly influenced by factors such as longer-run inflation expectations and the longer-run neutral real interest rate and that changes in these factors or difficulties in estimating them could result in the central bank inadvertently setting yield caps or targets at inappropriate levels.』

ほどんど日銀がディスられているように見えますが(^^)、そもそもより長い金利になるとそれは自然利子率とかインフレ期待とかのファクターがでかいんで、それを中銀が決めるってのは不適切な水準を設定する可能性ありますわなとか良い指摘過ぎて泣くわ。

『A couple of participants remarked that an appropriately designed YCT policy that focused on the short-to-medium part of the yield curve could serve as a powerful commitment device for the Committee. These participants noted that, even if market participants currently expect the federal funds rate to remain at its ELB through the medium term, the introduction of an effective YCT policy could help prevent those expectations from changing prematurely-as happened during the previous recovery-or that the size of a large-scale asset purchase program, which also poses risks to central bank independence, could be reduced by an effective YCT policy.』

中短期のYCTならば回復に時間が掛かるという見通しのもとであれば道具としてありかね、という見解を述べていますな。メリットとしては金利キャップぶっこむことによって前回の時みたいに状況が順調に改善したときに、はやまった出口観測の浮上を抑えることができますよね、という話をしています。ただ、例の中銀の独立性問題とのコンフリクトとか言われだすとYCTの有効性って減退するよね、とも。

『All participants agreed that it would be useful for the staff to conduct further analysis of the design and implementation of YCT policies as well as of their likely economic and financial effects.』

ということで、更に検討しましょうねというスタッフへの宿題は降りているのですが、途中のこれを見るとどう見てもYCTってやらんじゃろ(やったとしてもフォワードガイダンスの補完程度の屁な年限での実施)という感じですな。


長くなりましたがこのコーナーの最後。

『A number of participants emphasized that, when assessing the potential roles that different monetary policy tools might play to support the attainment of the Committee's goals, it was important to think about how various policy tools could be used in coordination as part of the Committee's overall strategy to achieve its dual-mandate objectives. In addition, various participants noted that clear communications with the public are central to the efficacy of all policy tools and that, therefore, the Committee should complete its monetary policy framework review in the near term, including revising the Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy. Such a revised statement would communicate to the public how the Committee views its policy goals and provide additional context to the Committee's policy actions.』

まあここは一般論に近い話で締めています。


なお、寝起きでFOMC議事要旨、と申し上げましたのでお察しの通り、以下の部分は今朝のFOMC議事要旨ネタの為に昨晩夜なべした(今朝一応見直したけど)物件でございます(^^)。


〇布野さんの後任中村さんご就任でした

すっかり忘れておりましたサーセン。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200701a.htm/
審議委員の発令について
2020年7月1日 日本銀行政策委員会室

『次のとおり発令がありました。

中村 豊明
日本銀行政策委員会審議委員に任命する
令和2年7月1日
内閣

なお、布野 幸利 政策委員会審議委員は、6月30日任期満了により退任しました。』

布野さんの場合出身母体が物凄い勢いでグレートでしたし(別に中村さんの日立がグレートではないという訳ではないですが)、まあ布野さんの出身母体から日銀政策委員ってのも(旧法時代は知りませんけど)初のケースだけにあまり外向けに目立ったりするのも何だったというのがあったとは存じまして、まあ日銀の方も黒ちゃん体制で政治的なサムシングも強まってしまったという中で審議委員をされていたという事もあったでしょうな、とは思いますけれども、まあそんなこんなで空気に成らざるを得なくなってしまったのかなとは存じますが、特に最後の方空気っぽくなってしまわれたのが惜しくて、もっともっとオリジナルな話を色々と金懇などでぶっこんで頂きたかったなあとは思っております。

でまあ今度は日立製作所さんご出身の方となりますが、新法日銀でも(中原信之さんは例外なので除外しましても)メーカー出身の三木さんとか議事録とか今拝見すると無茶苦茶良い着眼点で色々な話をしていたりしまして(そもそも新法初代の政策委員は皆さんキャラが立ってて滅茶苦茶オモロイ)、実はメーカー出身の方の視点って物凄く大事だと思うので(個人の感想です)、まあそのサムシングなアレもございますので最初から飛ばす訳にも行かないとは存じますけれども、どこかの段階で何かイイハナシダナー(イヤミとかではなく真面目な意味で)をお願いいたしたく存じます。



〇短観私家版チェック、と言いたいが今回はさすがに前回と比較とか言いましてもアレですかねえ

短観概要
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2016/tka2006.pdf

前回はこちらですが・・・・・・・
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2016/tka2003.pdf

前回の調査期間が『< 回 答 期 間 > 2月25日 〜 3月31日』でして、基本前半2週間で回答がほぼ返って来るとのことですので、前回って学校の一斉休校とかがおっぱじまった直後くらいで、世の中は色々と買い溜め騒動とかやっていましたが、金融市場があばばばばーになったのは3月半ばだし、五輪が延期と思ったら偶然のように緊急事態宣言(最初は一部でその後全国)に至ったのは4月になってからでしたので、前回との比較とかほぼ意味はないのですがヤケクソでこちらだけ確認しておきましょう。

・先行きDIの達成度合い

         (3月時点)     (6月時点)
         現状→6月予測    現状→9月予測
製造業大企業   ▲8→▲11      ▲34→▲27 
製造業中堅企業  ▲8→▲20      ▲36→▲41        
製造業中小企業  ▲15→▲29     ▲45→▲47

非製造業大企業   +8→▲1      ▲17→▲14
非製造業中堅企業  ±0→▲14     ▲27→▲29
非製造業中小企業  ▲1→▲19     ▲26→▲33


まあ3月時点の予測が全然達成できないのは当たり前だし、水準に関してはあんまりこれだからこうとかいう話をするのもちょっと(業種別計数とかを見るとそれはそれで面白そうなのですが、毎回細かくそこまで見切れていないのに今回だけ門前の小僧モードで話をしてもアレなのでパス)とは思うのですが、おそらく問題はこの先行き予測DIだと思うのです、と勝手に思っているだけですけど。

先行きに関しては大企業が改善(といっても水準はうんこですけど)を見ていて、中堅中小は更にアカンと見ているという二極化も駄目バイとか思うのですが、大企業が上向きになっているのは果たして本当に底打ち示唆なのか、というと、まあ底打ち示唆っぽい気もせんでもないけど、まあ微妙ですわな。

ちなみにリーマンショックの後の短観、となりますと2008年9月なので9月短観、と言いましてもまあ実質的には12月短観以降かなという感じですけどこの時は・・・・・・・(数字は過去の短観概要からアタクシが数字を目検で拾ってきて転記しているので合ってると思うけど間違ってたらゴメンナサイ)

         (2008年9月時点)
         現状→12月予測    
製造業大企業   ▲3→▲4      
製造業中堅企業  ▲8→▲12              
製造業中小企業  ▲17→▲25     

非製造業大企業   +1→▲1      
非製造業中堅企業  ▲12→▲17     
非製造業中小企業  ▲24→▲31     

         (2008年12月時点)
         現状→3月予測    
製造業大企業   ▲24→▲36      
製造業中堅企業  ▲24→▲45              
製造業中小企業  ▲29→▲48     

非製造業大企業   ▲9→▲14      
非製造業中堅企業  ▲21→▲32     
非製造業中小企業  ▲29→▲42     

         (2009年3月時点)
         現状→6月予測    
製造業大企業   ▲58→▲51      
製造業中堅企業  ▲57→▲61              
製造業中小企業  ▲57→▲63     

非製造業大企業   ▲31→▲30      
非製造業中堅企業  ▲37→▲45     
非製造業中小企業  ▲42→▲52     

         (2009年6月時点)
         現状→9月予測    
製造業大企業   ▲48→▲30      
製造業中堅企業  ▲55→▲46              
製造業中小企業  ▲57→▲53     

非製造業大企業   ▲29→▲21      
非製造業中堅企業  ▲36→▲32     
非製造業中小企業  ▲44→▲45     

ってな推移をしていまして(イマイチ見にくくてすいません)、この時は金融ショックからラグをもって実体経済に跳ねておりまして、今回のようにそもそも需要消失みたいな動きではないので、あんまり安易に比較するもんではないとは存じますが、一応「大企業の先行きDIを見ると現状よりは少しマシになっている」というのが出てきたのが大底の時なので、その点で言えば希望が持てるんですけれども、まあいずれにせよ次回短観で現時点での見通しDIがどの位達成できているか、という話になるかと。

#超どうでもよいのですがこの当時の短観概要のフォントがオモシロフォントなんですよね

基本的に短観はずーっと(ボーっとしか見てませんが)数字は追っかけているつもりなのですが、「先行きDIが達成できていない時」で絶対水準がマイナス圏内の時ってのはまああんまり経済が宜しくない時で、逆に回復期になってくると、常に先行きDIが慎重に出るようになってくる、という風な印象(個人の印象です)がありますので、これが底打ち示唆なのか、実は大企業の先行き見通しが願望成分が強くて二段底へアイヤーとなるのかは何とも言えませんぞな。

まあいずれにせよ、相変わらず短観はデータの揃いが宜しいですので、こういう時は頼りになりますなあとか思ってちょっと他にも見てみます。


・販売・仕入価格判断・・・・・何気にマージン改善してるじゃん(現状だけは)

販売価格判断(「上昇」-「下落」)

        (3月時点)      (6月時点)
        現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業  ▲7→▲10       ▲10→▲8
製造業中小企業 ▲5→▲8        ▲8→▲11

非製造業大企業  +2→+2       ▲5→▲5
非製造業中小企業 ▲1→▲4       ▲8→▲9


仕入価格判断(「上昇」-「下落」)

        (3月時点)        (6月時点)
        現状→6月予測       現状→9月予測
製造業大企業    +5→+7        ▲3→+2
製造業中小企業  +19→+22       +12→+17

非製造業大企業  +11→+12       +3→+6
非製造業中小企業 +17→+21       +9→+15


ここの絶対値だけ見ると交易条件無茶苦茶にしか見えませんが、まあこれはバイアスがあるのであまりキニシナイことにして差分の方だけみてみると、なんと今回って販売価格判断下がっている以上に仕入価格判断が下がっていまして、マージンだけ見ると何と改善、というオモシロ数字になっています。

つーて何ぼマージン上がったって稼働率が下がってしまったら意味なし芳一なのでまあこれだけ見て喜んでもシャーナイのですけれども、ここは「へー」と思いました。先行きに関してはマージンが減る予想になっていますが、だいたいこのDIは年がら年じゅう先行きのマージンは悪化するという悲観的というか保守的な見通しになっているのでそこはまあそこという感じかと思います。


・雇用判断DI(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)

        (3月時点)      (6月時点)
        現状→6月予測      現状→9月予測
製造業大企業  ▲11→▲11      +9→+3
製造業中堅企業 ▲15→▲15      +11→+7
製造業中小企業 ▲10→▲23      +13→+8

非製造業大企業   ▲30→▲27    ▲14→▲16
非製造業中堅企業  ▲37→▲39    ▲17→▲20
非製造業中小企業  ▲39→▲43    ▲17→▲21

当然ながらこれを見る訳ですが、まあこれは悲しい数字の一言に尽きますな。先行きは現状よりも改善という数字になってはいますが、さすがに製造業がどの規模でも余剰に転じてしまったのは(まあそうだろうなあとは思ってはいたものの)見せられますとかなり(ノ∀`)アチャーな数字。非製造業も大幅にマイナスが縮小していまして、これはアカンという感じです。


・珍しく企業金融を確認しておく

そらまあ今般の場合はここを見ないと。

資金繰り判断(全産業)
(「楽である」-「苦しい」・%ポイント)なので+の方が良い数字。

     3月時点→6月時点
大企業   +18→+10
中堅企業  +19→+7
中小企業   +8→▲1

製造業   +11→+1
非製造業  +15→+5

金融機関の貸出態度判断(全産業)
(「緩い」-「厳しい」・%ポイント)なので+の方余裕ぶっこき状態な数字。なお、金融機関の貸出態度が緩いのが必ずしも良い事ではないと思うので良い悪いとは言わない。

     3月時点→6月時点
大企業   +22→+16
中堅企業  +23→+21
中小企業  +18→+19

製造業   +18→+17
非製造業  +22→+20

となっていまして、中小企業の資金繰り判断がマイナスというのがどうせヘッドラインになるのですが、貸出態度を見ると大企業から順に規模が小さくなると貸出態度の厳しい方への(と言っても水準そのものはユルユルですけど)変化度合いがマイルドになっていて、中小企業では何と貸出態度更に緩くなっている、ということでして、これはどう見ても各種制度融資パワーです本当にありがとうございましたという話だし、資金繰り悪化は金融要因ではないという話なので銀行業態はよく頑張った!感動した!!と言われてしかるべき(まあ制度融資要因デカイでしょうけど)。

#所得要因で資金繰り悪化、というのはアカン話ですけどね

では日銀様のアレはどうなのかと言いますと、まあ各種制度融資パワーを後押ししていますね凄いですね、とか何とか読むことも可能ちゃあ可能なのですが、日銀の新型コロナオペってパート1に関しては共通担保のうち企業向け、その後住宅ローン担保証券が加わりますが、そっちの担保に紐付けの新オペで優遇措置って話だし、買入拡大しているCPやら社債は当然大企業の話になっておりますので、大企業向けの貸出態度の方が中小よりもやや悪化(というほどの水準ではないですけど)しているということは、主に大企業向けにフォーカスした後に、まあ新コロオペパート2もぶっこまれましたが、これを見ますと大企業向けの方は変化幅的にはマイナスが大きいのですからして、どう見ても日銀の施策は不発で、当たっているのは政府の緊急保証とか昔の国民公庫貸出とかそっちのほうでしょという意地の悪い解釈をしておきます。

てかそもそも論として日銀が中小企業金融支援策をやる、というのが建付け上無理があって、そんなのは政策金融に任せておけば良いのに、何でそうしゃしゃり出て来るんでしょうかねえ。


おまけですがCPの発行環境が、

    3月時点→6月時点
大企業   +30→+8

ってエライ後退しているんだがホンマカイナという感じはする。発行枠使い果たしてしまっているので、厳しいですがな、とか言うのならわかりますが金利水準自体は6月以降って別に厳しくないじゃろ。


・調子に乗って企業の物価見通し

めんどいので前回のコピーに今回のを加えるから堂々の6回分の数字です。

販売価格見通し 全規模合計 全 産 業

1年後 3月:0.8%→6月:0.7%→9月:0.6%→12月:0.6%→3月:0.2%→6月:-0.3%
3年後 3月:1.2%→6月:1.2%→9月:1.0%→12月:1.0%→3月:0.9%→6月:0.5%
5年後 3月:1.5%→6月:1.5%→9月:1.3%→12月:1.4%→3月:1.4%→6月:1.2%

大 企 業 製 造 業

1年後 3月:0.1%→6月:0.1%→9月:0.1%→12月:0.0%→3月:-0.3%→6月:-0.5%
3年後 3月:-0.3%→6月:-0.1%→9月:-0.1%→12月:-0.2%→3月:-0.3%→6月:-0.6%
5年後 3月:-0.5%→6月:-0.3%→9月:-0.3%→12月:-0.3%→3月:-0.3%→6月:-0.5%

大 企 業 非製造業

1年後 3月:0.5%→6月:0.6%→9月:0.4%→12月:0.4%→3月:0.1%→6月:0.0%
3年後 3月:0.9%→6月:1.0%→9月:0.8%→12月:0.8%→3月:0.7%→6月:0.7%
5年後 3月:1.0%→6月:1.1%→9月:1.0%→12月:1.0%→3月:1.0%→6月:1.1%


非製造業が下がっていませんね!!!(白目)とか言ってる場合ではなく、製造業ちゃんですが、前回は1年後の所だけ盛大に下がった感がありましたが、今回は3年後の所まで下がった感が波及していまして、回復に時間がかかるぞなもしというのがもうねという感じです、合掌。


物価全般見通し 全規模合計 全 産 業

1年後 3月:0.9%→6月:0.9%→9月:0.9%→12月:0.8%→3月:0.5%→6月:0.3%
3年後 3月:1.1%→6月:1.0%→9月:1.0%→12月:1.0%→3月:0.8%→6月:0.7%
5年後 3月:1.1%→6月:1.1%→9月:1.1%→12月:1.1%→3月:1.0%→6月:0.9%

何かズルズル下がっている感じですが、まあ一応ヤケクソになって言えば短期的な物価見通しが下がっているだけだな!!!!とこれまた白目を剥きながら言い張ることが不可能ではない。

なお、相変わらずネチネチと古傷を掘り返す訳ですが、この調査を開始した当初にやたら数字が高めに出ていて「大企業などは報道や証券会社のエコノミスト見通しなどに影響されやすいが中小企業のインフレ目標がより実際に感じるものに近い(キリッ)」と日銀が言っていた中小企業の物価観を今回も。

物価全般見通し

中小企業 製 造 業

1年後 3月:1.1%→6月:1.0%→9月:1.0%→12月:0.9%→3月:0.6%→6月:0.3%
3年後 3月:1.2%→6月:1.1%→9月:1.1%→12月:1.0%→3月:0.9%→6月:0.7%
5年後 3月:1.2%→6月:1.2%→9月:1.2%→12月:1.2%→3月:1.1%→6月:1.0%

中小企業 非製造業

1年後 3月:1.1%→6月:1.1%→9月:1.1%→12月:1.0%→3月:0.7%→6月:0.4%
3年後 3月:1.2%→6月:1.2%→9月:1.1%→12月:1.1%→3月:0.9%→6月:0.7%
5年後 3月:1.3%→6月:1.3%→9月:1.2%→12月:1.2%→3月:1.1%→6月:1.0%

・・・・・・・・うーんこのという所ですな。







2020/07/01

お題「各種オペ紙/ジンバブエ先生もマイナス金利深掘りに否定的見解とな」

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200630f.htm/
「おうちで、にちぎん」(オンライン本店見学)の公開について
2020年6月30日 日本銀行

ということでこんなのが出てましたが、
https://www.boj.or.jp/announcements/education/ouchi.htm/
おうちで、にちぎん(オンライン本店見学)

の中の『宝物さがし!』ってコーナー、『重要文化財に指定されている本館には、貴重なものがたくさんあります! 本館3D・VR映像を見て、5つの宝物を探してみてください。』ってのがあるじゃないですか。

最初にあるのが『(1)馬の水飲み場』なんですが、これは「馬を水辺につれていけても水を飲ませることはできない」(You can take a horse to the water, but you can't make him drink.)ということで置物リフレ理論に対する反論あるいは金融緩和の限界を含意する物件を敢えて筆頭に持って来るという話、とアタクシは一瞬で理解しました(個人の感想です)が、先般ネタにした日銀グランプリの例の注意書き(あれ自体は前からある)と言い攻めてますな(個人の妄想です)。



〇オペ紙キタコレ

オペ紙長期国債版
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200630d.pdf

同じく6月分
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200529c.pdf

国債発行計画カレンダーベース市中発行額(2次補正後)
https://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2020/calendar200527.pdf

でもって7月の買入ですが、

0−1年:500-1500、月3回(500-100から変更)
1−3年:2500-6000、月6回(2000-5000から変更)
3−5年:2000-5000、月6回(2000-4500から変更)
5−10年:2500-6000、月5回(2500-5500から変更)
10−25年:500-2000、月2回(変更なし)
25−40年:0-500、月2回(変更なし)
物価連動国債:300、月2回(変更なし)
変動利付国債:1000、隔月1回(変更なし)

ということで、これはレンジの真ん中を取りますと1回辺りの買入が、
短期:800→1000
中期前半:3400→4250
中期後半:3200→3500
長期:4000→4250

になりまっせという話になると思うのですが、最近の傾向は端数切捨てなのでまあ中期前半4200で長期4200なのかねとか、中期前半の方は増やす気満々なレンジの上げ方したからそっちは4300とか、まあその位は気になりますが、いずれにしましても国債発行計画の2次補正後の増発が今月から始まりますけど、月間増発額が

2年:10000
5年:6000
10年:5000
20年:3000
30年:2000
(40年と物国は不変、短国は見なかったことにしておく)

で、あんまり発行増をカバーしていなかったりしますけど、まあそもそも増発分を全部輪番増やしていたら財政ファイナンスとか言われちゃいますし、国債増発したって今回のって一定のラグを置いて財政散布される筈だから、どうせ市中で金余って来る話だし、だいたいからしてこの経済状況で金利が持続的に上昇する話でもないですし(思いっきり個人の感想なので投資は自己責任でおながいしますw)、ということで若干抑制的な買入増にしたんですかねえ、よー知らんけど。

#とは言えそもそも補正増発前に輪番拡大しているのである程度段階的に拡大したという話ですけどね

でもって(正直日銀が能動的に輪番減額する方は「オラワクワクしてきただ」状態なので毎度不毛な予想を楽しんだ挙句に20年の国債買入残高の増加がこんなもんになって80兆円どころかマイナスェ・・・・とか言って楽しんでいましたが、日銀のバランスシートが増えてもおもんないわという所であんまり詳しくは見てませんでしたけれども、大汗)だいたい市場コンセンサス的には超長期の輪番は増額しない(しても僅少)という所で、中長期に関してはもうちょっと多いかなという感じだったと思う次第ですので、まあこれ見てちったあ金利上がるのかも知れませんというか、超長期がなんかジリジリとスティープしてやっと来ましたよ20年カレント40bpとかいう感じですが、まあ今月は増発後1発目になるので、最初のうちは少し様子見とかになるとかそういう話になるんかいな??良く分からんですけど。

ただですね、たぶん7月に入って20年度最初の四半期も終わってしまいましたところで、昨今のコロナ情勢は微妙にアレとは言え、社会経済活動再開の流れの中でございますので、そらまあ投資家も業者もさて今月から本格的なスタートとねじり鉢巻きモードにそろそろ入ってもおかしくはないと思うので、そういう状況の中で金利がちったあ上昇してるということですし、そもそも経済物価情勢自体が本格的な金利上昇を呼ぶようなものではない(個人の感想です)でしょという中ですし、金利が値を飛ばして上昇するようならランボー怒りの輪番増額とか臨時輪番とかホイホイと登場するでしょうから、まあそういうことだぞとは思うのでありました(個人の感想です)。

まあ何ですな、そもそも論として財政ファイナンスネタで売られたら日銀が買い増しすると更に財政ファイナンスヒャッハーってなるんで、本格的に財政ファイナンスネタで売られだしたらその時点で負け確定なんですよね。

本当は当初予算時点での国債発行計画対比で各年限の新発対比日銀買入シェアとかを比較計算すれば格好良いので計算しかかったのですが、そもそもコロナ相場の買入とかが混じってしまっているのでその計算で合っているのか良く分からなくなってしまいましたのでパスします(涙)。



〇CP社債買入&ドルオペ

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200630b.pdf
CP・社債等買入のオファー日程(2020年7月〜8月)

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200529a.pdf
CP・社債等買入のオファー日程(2020年6月〜7月)

こちらは従来の買入をそのまま横に引っ張っている形になって特段の変更はありません。まあそれよりも社債買入1−3年が早く札割れして社債買入の意義について悪態をつけるような状況になって頂きますと(ヤケクソ)。


ドルオペ
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200630c.pdf
米ドル資金供給オペレーションのオファー日程(2020年7月〜9月)

ドルオペに関しては金額は青天井だしレートは出たとこ勝負なので日程だけ確認ということになりますけれども、とりあえず9月末までの週1の1w3m物両方のオファー自体は確保されています。問題はその金利ちゃんについてどうなるかですが、まあこっちは分からんです。

一応ドルオペの追加措置に関しては、

3月16日日銀公表文書
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200316c.pdf
グローバルな米ドル流動性供給を拡充するための中央銀行の協調行動

の時に行ったのが「ドルスワップ金利の25bp引き下げ」と「3か月物(84日物)ドルオペのオファー実施」でして、その後に

3月20日日銀公表文書
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200320a.pdf
米ドル流動性供給を一層拡充するための中央銀行の協調行動

が「1週間物ドルオペを毎営業日オファーする」だったのですが、この毎営業日の方が外れた次第となっていますけど、サービス金利と3Mがセットになってぶっこまれたので、外すときにもセットなのかも知れんなあとは一応は思っています。金利だけ上げるのもありだとは思うけど。

なお、この時期のFOMCはもう何か色々なもんを連発して出しているので、一度このタイムラインを自分で整理しておかんといかんなあ、と3月のこの辺りのFEDの出している文書連発を見て思うのでありました。


〇何とジンバブエ先生がマイナス金利深堀に否定的な発言をされておられるとな!!!!!

昨日の朝にこんなのがあったようで気が付いていなくて昼前になって気が付きました。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-29/QCOA5ZDWLU6A01?srnd=cojp-v2
マイナス金利より量拡大を、コロナ対応の日銀追加策−原田前委員
伊藤純夫、藤岡徹
2020年6月30日 6:00 JST

→当座預金のプラス金利下げも選択肢、日銀はやるべきことやっている
→再デフレリスク「常にある」、企業の現預金選好は続く可能性

ほっほーと思いながら上記記事を拝読いたしますと・・・・・・・

『3月まで日本銀行の審議委員を務めた原田泰・名古屋商科大学ビジネススクール教授は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が長期化した場合、日銀が取るべき追加緩和策としては、マイナス金利の深掘りよりも、国債買い入れの増額など量の拡大の方が望ましいと指摘した。』(上記URL先より、以下同様)

名古屋商科大学といえばいやなんでもありません。

『原田氏は29日のオンラインでのインタビューで、日銀が3月以降、相次いで打ち出してきた企業の資金繰り支援策や、金融市場の安定化策を中心とした一連の政策対応について、「金融政策によって銀行に資金を供給し、銀行が企業や個人にお金を貸すのを助けている。また、コマーシャルペーパー(CP)や社債などの買い入れで企業の直接金融も支援している。国債を買うことで政府の支出も助けている」とし、「日銀はやるべきことをやっている」と評価した。』

「金融政策によって銀行に資金を供給し、銀行が企業や個人にお金を貸すのを助けている」とか相変わらず信用創造をご理解いただいていないようで誠に遺憾の極みですし、まあ確かに都市銀行がオーバーローンで常に市場調達(短期のね)しているような20世紀の日本の銀行における資金構造であれば資金供給オペの拡充はお助けになりやすいのですが、今は預金超過な上に超過準備が増えすぎるとマイナス付利なんですが。

おまけに「国債を買うことで政府の支出も助けている」とか財政マネタイゼーションを堂々と主張していますが、結局の所統合政府でみたら政府の調達が日銀による調達に振り替わっているだけなんですけど、まあ毎度の「中央銀行が国債を買うと政府債務が消滅する」というジンバブエ理論なんだろうなーとか鼻をホジホジしながら読む次第。

『ただ、制約された経済活動が続いていることで「支出も需要も落ち込んでいる状況の中では、デフレに戻ってしまうリスクは常にある」との認識を示し、日銀の金融政策運営は「現在の緩和的な金融政策運営を続けていくしかない」と強調。影響が一段と長期化した場合は「必要があれば、国債をもっと買うことができるし、CPや社債、上場投資信託(ETF)などの買い入れを可能な範囲で増やすこともできる」と語った。』

デフレ云々とか言っている辺りがもうねという感じですが次を見てワロタです。

『一方で、マイナス金利の深掘りは「多くの国民に嫌がられる」とし、金利を引き下げるのであれば、日銀当座預金におけるプラス0.1%の付利の引き下げが「有効だと思う」と主張。プラス金利の引き下げによって「銀行は別の投資先を探す必要に迫られ、一部は海外に流れることになるだろう」と述べ、「量を拡大する方が穏当な政策と言えるが、そうした手段を確保しておくことも大事だ」との考えを示した。』

ちょwwwwwおまwwwwwww片岡さんの立場wwwwwwwwwww

まあ後半の説明もアレで、新型コロナオペで量を稼ぐためにせっせと10bp付利拡大しているの知らんのかとか思いましたが、まあジンバブエ先生退任後から付利の話になっているのでそれはさておいときますが、

>マイナス金利の深掘りは「多くの国民に嫌がられる」
>マイナス金利の深掘りは「多くの国民に嫌がられる」
>マイナス金利の深掘りは「多くの国民に嫌がられる」

ということで遂に片岡さんの梯子が外されてしまいました。

まあジンバブエ先生の発言が金融政策にどの位影響があるかと言えばアレでございますが、置物一派のそれなりに重鎮と思われる大先生ですらマイナス金利の深掘りに否定的な話をしますとなりますと、こりゃマイナス金利の深掘りって相当距離遠いわな(置物一派くらいしかこの話しないんだし)と思うのでした。

しかしまあ何ですな、「多くの国民に嫌がられる」から政策の選択肢から外します、とかおおよそ中央銀行の人間として不適格な発言もない訳でして、何のために中央銀行が独立しているのか、短期的な政治圧力とか、そういうものに左右されず、専門的な見地から短期的に不人気であっても実施すべきことを実施する、というのが中央銀行の独立性の意義じゃなかったっけと思う訳で、同じ言うにしたってもうちょっとものの言いようというものがあるでしょうと思うのですが、まあこういう言い方をしてしまう辺りがジンバブエクオリティと相変わらずのご健在っぷりに落涙を禁じ得ません。

なお、こちらはブルームバーグの記事引用になりますので、ブルームバーグの記者さんが大先生の発言を端折ってこういう書き方をしてしまっていた、というのですと直上の段落に記載されている悪態は思いっきり的外れになりますので、その場合はお詫びして撤回の予定です、念のため申し添えます。

#しまった時間が無くなってしまったので本日はこれで勘弁