トップページに戻る
月別インデックスに戻る

(各日付の最初にラベルを「200601」というような形式でつけていますので「URL+#日付(200601形式です)」で該当日の駄文に直リンできます)


2020/06/30

お題「債券市場参加者会合とかその他/オペ紙ですな/24日のエバンス総裁の講演は最近のFED高官講演の平均的な内容ですの」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200630/k10012488511000.html
東京都 新たなモニタリングの項目設定へ 新型コロナ
2020年6月30日 4時12分

・・・・・・・状況に応じて重点項目が変わっていく、というのであればそれはそれでわかるのですが、こちらの物差しがコロコロと変わる件に関しましては(以下の部分は内務省検閲により削除されました)。


〇債券市場参加者会合とか流動性指標とか

・債券市場参加者会合でも見てみましょうぞな(なお6/5のが昨日出るというのはちょっと・・・・・・)

https://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond2006.pdf
「債券市場参加者会合」第 11 回議事要旨

『1.開催要領

(日時)6月5日(金) 16 時 45 分から(電話会議形式)
(参加者)「債券市場サーベイ」等に参加する金融機関の実務担当者
(本行出席者)金融市場局長、金融市場局総務課長、同市場調節課長、同市場企画課長』

これテレカンなのは良いんですが、議事要旨を拝見するとその後は、

『2.本行からの説明等
・ 本行より、@債券市場サーベイの結果、A国債市場の流動性、B最近の金融市場の動向および市場調節運営、について説明した。』

なるほど。

『3.参加者の意見
・ 会合に先立ち、予め参加者から寄せられた主な意見は以下のとおり。 』

とあって以下意見が並んでいるのですが、えーっとすいませんその後の議論とかって無いのけ??という感じの出来栄えになっておりまして、まあ何ぼ何でも日銀からの説明に質疑応答くらいはあったんじゃねーかとか勝手に思ったんですが、事前に意見出させてるんですから、やはりここは参加者同士で仁義なきツッコミ合戦とかを(テレカンで顔が見えないだけに、と言っても普通は名乗りを上げるから誰に突っ込まれたか分かりますけど)やって頂きたかったと思いますし、別に説明するだけで終わりだったらテレカンする必要あるんけ???と思いました。ただ紙配って書面開催でエエヤン。

なお、せっかくのテレカンを活用して、参加者同士のフリーディスカッションの際に音声を全部ヘリウム加工してしまって誰のツッコミか分からなくしたら面白そう、とか不謹慎な事しか考えておりませんなアタクシ(←仮面舞踏会と勘違いしている)。



・・・・・・・と、一々悪態をぶっこんでおりますが、ご意見の方を念のため多少確認。


市場の見方とかどうでも良いので『債券市場の機能度・流動性についての見方』の小見出しから参ります。

『・ 政府の緊急事態宣言を受け、市場参加者の業務運営体制の変更(在宅勤務への移行等)がみられた。この影響もあって、市場参加者の売買が国債発行入札と国債買入オペに集中し、それ以外の店頭売買や業者間売買における注文量・取引頻度が大幅に減少するなど、全体として債券市場の機能度・流動性は低下している。』

仰せの通り。

『・市場参加者のリスク許容度の低下から、幅広い年限でビッド・アスク・スプレッドがワイド化している。』

リスク許容度なんですね、いやその辺はちょっと土地勘がイマイチなんでアレなんですけど、単に板がスッカスカなのと投資家の参加が少ないからマーケットメイクしたは良いけどポジション全然ほぐせないからコストしんどいのでオファービット広げるしかない、という方面の話かと思ってました。というかたぶん投資家サイドって3月末で一旦クリアしてからさてどうしたもんでしょと考えると、ドル円のヘッジコストは下がっているわ、各種資産価格は戻っていて期末対比で捕まっている資産ってそんなに無くて寧ろ余裕含みのスタートという感じで、リスクアピタイト自体はあるんじゃネーノっていう気がするんだが(個人の妄想です)。まあ業者の方は売買全然無くて、しかも同時期に同じフローが客から飛んでくるばっかり(入札と輪番)だと厳しいからリスク取りにくい、というのは分かる。

『・足もとの状況が長期化し、市場の厚みがなくなることを懸念している。当面、多くの市場参加者が在宅勤務等を継続するものとみられ、構造的な変化が生じるか注目している。』

どうなんでしょうね、まあこの会議やってるのが6月5日(もうちょっと早く出してくれんかのう、状況がこれだけ目まぐるしく変化する中では)なので、こういう感想が出てくるのは分かります。6月30日時点でこの方が今どのように思っているのか、というような話を聞かせてくれるとものすごくうれしいですよね。


でもってオペ運営の『市場調節運営等』って小見出し。

『・ 国債増発が予定されているもとで、低下した市場機能を補完する観点から、手厚めに、きめ細かく国債買入れを実施するとともに、市場参加者と密接なコミュニケーションを継続してほしい。』

まあ何ですな、「国債増発が予定されているもとで、低下した市場機能を補完する観点から、手厚めに、きめ細かく国債買入れを実施するとともに」って話の意味は良く分かるし、まあ現状そういう事だぞという話ではあるのですが、しかしまあちょっと別の角度から見ますと、「そもそも国債流通市場が消化するの大変だ」と言っているという状況がまさしく「市場による財政規律弛緩への反応」なのであって、財政規律が弛緩してる分だけそらお前国債発行利回りは上がって然るべきだし、そのことを前提にして財政の活用をノーズロズブズブではなくて、ちゃんと有効と思われるような使い方を考えてちょ、ともいえる訳でして(個人の妄想がかなり入っていますが、笑)、そこを日銀が叩き潰すのが「市場機能の維持」なのかというのは何だかちょっとねえ、という気もする訳ですよ。

というかですね、国債増発して本来ならば金利が上昇してしかるべきところ、日銀が市場を統制して金利を上昇させない、というのは「金利が上がらん」という意味では確かに緩和的なのですが、一方で「本来国が払うべき利払い負担を日銀によって人為的に引き下げている」と考えるとそれは市場機能だの何だのと言ってますがただの財政サポートではないか、とか、まあそれよりも本来あるべき水準を中銀パワーで抑制するのって、それは結局の所「資源の適正配分を阻害する」話しなのではなかろうか、などと、途中から全然上記意見のツッコミでも何でもないただのアタクシの演説になってしまいましたすいませんすいません。

『・ 超長期ゾーンについては、安定的な投資家層が存在することもあり、価格形成を市場に委ねてほしい。』

「安定的な投資家層」とのことですが、本来は10年程度の国債を買っていて然るべきな方々が低金利政策に加えてYCCによってあぶりだされて20年方面に行っておられる、という点も留意が必要ですな。まあYCC前提ならこういう話ですけど。

『・この間導入された、レポ市場の安定を確保するための措置(オファー銘柄の拡大、応募銘柄数の上限引き上げ)については、今後も継続してほしい。』

本来はこういうのはバジョット・ルール条件のファシリティにするのが然るべき姿だと思うのですが、日銀の場合はとにかく国債買いすぎなんでSCレポに関してはマーケットメーカーの皆様毎度ご苦労様としか申し上げようがない。

『・ 日本銀行による CP・社債買入れの増額等により、CP 発行レートや社債利回りは総じて低下するなど、企業の資金調達環境は改善している。もっとも、買入れ金額が大きいだけに、信用スプレッドの過度な縮小を招きかねない点には留意してほしい。 』

>買入れ金額が大きいだけに、信用スプレッドの過度な縮小を招きかねない点には留意してほしい
>買入れ金額が大きいだけに、信用スプレッドの過度な縮小を招きかねない点には留意してほしい
>買入れ金額が大きいだけに、信用スプレッドの過度な縮小を招きかねない点には留意してほしい

(;∀;)イイシテキダナー

どう見ても過度な縮小を発生させています本当にカムサハムニダ。


つーことでまあこの意見にツッコミ合戦でもあったら面白いのにとは思いながら『今後の債券市場の見方・リスク』っての見る。

『・ 引き続き、新型コロナウイルス感染症の動向とそれに伴う実体経済への影響が最大の注目点となる。その他、米国大統領選挙、米中関係、海外中央銀行の金融政策にも注目している。』

『・ 新型コロナウイルス感染症の影響が長引くと、市場参加者のリスク許容度や債券市場の流動性の改善には時間がかかる可能性がある。』

『・ グローバルな債券市場は、景気の落ち込みによる金利低下圧力と、各国の拡張的な財政政策による金利上昇圧力による綱引き状態となっている。円債市場は、日本銀行によるイールドカーブ・コントロールにより、落ち着いた推移が続くと想定しているが、いずれかの国で政府債務に対する懸念が強まった際にはその影響が伝播する可能性がある点に留意している。』

ということですが、リスク許容度云々の話はさっきと同じで、たぶんリスクは許容できるけど投資の意思決定に時間が掛かるとか、チケット枚数減らす必要があるからあんまり売買できないとかそっちのような気がします。

でまあ毎度のように割と皆さん「日銀によるYCCで市場が落ち着いている」っていうレビューを平気でしてしまいまして、まあそれもそうではあるのですけれども、「YCCで市場が落ち着いている」という話を真に受けて、量的政策が量増やしまくっても結局物価目標達成できず、このままでは爆発するからってんでぶっこんだマイナス金利で死期を早めたので、量的政策から撤収する目くらましにぶっこんだYCCだというのに、なんか市場安定化の立派な政策と勘違いする外野がウジャウジャと出てくるので、もっとこうズバッと「物価目標の達成はかなり長期間見込めず、さらに日銀も早期達成を完全に放棄しているので、長期金利の上昇は起きにくいと想定しているが」とかいう感じで意見をぶっこんでいただけると誠にありがたく存じます。いやマジでこのYCCってインフレ期待が全然あがらないし物価も上がらん日本だからワークする話で、下手にインフレ期待が高い国で実施すると市場コントロールできなくなって却って死ぬと思うのよね。


でまあ最後にさっきも申し上げたんですが、いやまあ従来その位のペースで出ていたから前例踏襲なのはわかるんですけど、これだけ外部状況がコロコロと変わる中ですと、せっかく行っている会合なのですし、大体からしてこれ「テレカン説明」と「事前に集めたご意見」だけだったら別に会議録編集の手間そこまで重くないじゃん(これがその場での一問一答ならしゃーないけど)と思うので、別にMOF並みとは申しませんけど、もうちょっと早く出てくれると嬉しいんですけどねえ、とは思いました。



・流動性指標はまあ一応回復だけど順当に投資家売買が沈滞を続けるのでありました

https://www.boj.or.jp/paym/bond/ryudo.pdf
国債市場の流動性指標

何せこちらは本年2月3月に盛大に外れ値が発生しておりますので、直近の変化を目の子で見るのは近眼で老眼のアタクシには中々アレな訳でございますが、


まあだいたい外れ値月間から見たら市場の流動性指標ってのは改善していますねって感じの表が並んでいるのですが、その中で見てて唸ったのは、『現物国債市場』の辺り。

その辺りなんですけど、ディーラー間の売買とか市場全体の売買に関してはボリュームも概ね改善していて、オファービットのワイドさも緩和されている、という感じになっているのですが、その中で、

(図表3)(ディーラー対顧客取引の取引高(volume))
(1)取引高(顧客の国債グロス買入れ額)
(2)顧客別にみた取引高(顧客の国債グロス買入れ額)

(図表4)(ディーラー間取引の取引高(volume))
(2)年限別にみた新発債の取引高

のあたりがアカンタレという感じでして、こちらは直近数値が4−5月との事ですので、まあお察しの背景ですから、順当と言ってしまえばそれまでではあるのですが、今ネタにした債券市場参加者会合ちゃんと同じ話になっていて、そらそうよという感じではありますな。まあシャーナイ。



〇さて今日はオペ紙

・・・・・・・ではあるのですが、今回に関しては増発に対応してどんだけ増やすかって話でして、何ちゅうかこうキャッキャしながらオペ紙の話をする気分にならんですなという感じです。つまり、今回って別にプロアクティブに動く話ではなくて、実質的にはリアクティブに動く話(まあ一応プロアクティブちゃあプロアクティブかも知れんけどさあ)でありまして、そういう所に別に意思を籠める必要って本質的には無いでしょうと思うので、そういう意味ではまあ結果見てから考えようかなとは思います。

なお、現世利益的にはオペ紙見て事前コンセンサス対比どうのこうのだから明日のカーブがどうのこうのみたいな話になるとは思うんですけど、というか昨日何か輪番増額期待あったんけ???10時10分過ぎたら先物ちーとだけ押してたんだが。

まあ何ですな、輪番を減らしていくときには「輪番拡大ペースを徐々に落として行きましょう」という日銀単独での話だったし、方向が正常化だったので毎度キャッキャしておりましたが、今回は日銀の意思があんまり働かない世界(とは言え最初から財政出せ煽りをして買入しますよと言っているので、方向性としての意思は働いている)なので、まあ精々超長期の所をどう調整するのかとかその程度の話じゃろと。

短国に関してはもう細かいことは書かなくなりましたけど、担保ニーズがある中で金利水準がそこそこ高め(と言っても▲10bpよりは低いけど)を保ってくれた方が皆さん幸せだと思うので、まあ日銀のオペがそうなってくれるかどうかは知らんですが、できればあまり買いすぎずに玉を残してやって頂きたいとか勝手に妄想しております。


〇エバンスの講演が久々にテキストになっていたので(と言っても先週のネタですが)簡単に

https://www.chicagofed.org/publications/speeches/2020/future-of-economy
Last Updated: 06/24/20
Some Thoughts on the Future of the U.S. Economy
A speech presented virtually on June 24, 2020, to the Corridor Business Journal Mid-Year Economic Review.

すいません先週水曜の物件ですし手抜き読みですいませんけどアウトラインを。

・最初の所にまとめがあるのだが物凄く経済見通しについては厳しい

『Introduction』の最後にまとめがありましてですね、

『In my remarks today, I will focus on three central messages.』

はい。

『●First, while I hope for a quick rebound in the economy, I expect broad recovery will take some time. Furthermore, the future is more uncertain now than at any other time in my professional career. The outlook depends on so many factors of a virtually unprecedented nature-we really are in uncharted territory.』

早く回復してくれるといいけどさっぱりそこは分からん、となっていまして、これその説明部分は手抜きなのですっ飛ばしますけれども、そこの小見出しも『Broad recovery will take time and the outlook is highly uncertain』ってなっていて長広舌が振るわれていますが、結構なレベルで暗い話を連発していて読んでて割と萎えますわ、いやマジで。

『●Second, the situation demands strong fiscal and monetary policy actions to help support households and businesses through these challenging times. Policy has already done a lot, but more may be necessary. For its part, the Federal Reserve is committed to using its full range of tools to support the U.S. economy through these difficult times.』

とありまして、ではその「モアサポート」とはナンジャラホイと思って『Policy actions』を見ますと、延々とこれまで実施した政策(特に何とかファシリティ関係)の話をこれでもか、とばかりぶっこんではいるのですけれども、それって既にぶっこんでいる話の宣伝に過ぎなくて、じゃあ先行きの話はどうなっているんですか、という事ですけれども、『Policy actions』部分のまとめパラと先行きパラを引用しますとこうなります。

FEDのやったのはこれです、という話で・・・・・・・・

『First, in order to address distress in the crucial markets for U.S. Treasury securities and mortgage-backed securities, we conducted repurchase agreements and purchased large quantities of these securities. These interventions were successful, and we were able to scale back purchases. In June we announced that over the coming months we would purchase these securities at least at the current pace to help foster the effective transmission of monetary policy to broader financial conditions.15』

APPですが相変わらずここは「effective transmission」であるという説明。


『Other programs have been designed to more directly support the flow of credit in the economy-for households, for businesses of all sizes, and for state and local governments.16 These include the Money Market Mutual Fund Liquidity Facility (MMLF), the Paycheck Protection Program Lending Facility (PPPLF), the Municipal Liquidity Facility (MLF), and the Main Street lending programs. Some of these programs provide backstops to key financial markets, which can increase the willingness of private lenders to extend credit. Others deliver more direct participation in loans to small and medium businesses, nonprofits, and state and local governments.』

次に上記の何とかファシリティ達の話をしまして、

『Many of these programs rely on emergency lending powers that require the approval of the Treasury and are available only in very unusual circumstances, such as those we find ourselves in today. We are deploying these lending powers to an unprecedented extent with the financial backing and support from Congress and from the Treasury.』

と、エマージェンシープログラムですよ貸出パワーは議会の負託によって財政によるエクイティが出たからだよ、という毎度の説明をしています。でもって・・・・・・・・・

『Despite all these efforts, more may be needed.』

キター、と言いたいのですけども・・・・・・・・・

『Further fiscal policy actions are under consideration. On the Fed’s part, as Chair Powell has emphasized repeatedly, we will continue to use our lending powers “forcefully, proactively, and aggressively until we are confident that we are solidly on the road to recovery.”17 And even after the recovery is well in train, we will use all of our tools to meet our dual mandate goals of maximum employment and symmetric 2 percent inflation.』

具体的な話は一切なくやる気だけ見せているという姿で特段の先行き政策追加の具体的示唆は無いですな。財政出たらお付き合いはしますよってなもんでしょうし、まあやる姿勢というかやるやる詐欺だけしておいて、あくまでも議会に下駄を預けるという形であんまり矢面に立たないようにしているように見えるのは気のせいでしょうか。まあトランプ政権も持つか分からんのに矢面に一緒に立って一蓮托生せんじゃろ常識的に考えて。


『●Third, while the economic impact has been catastrophic for an extraordinarily large number of people and businesses, sadly, the cost has fallen most heavily on some of our most vulnerable populations. No one could have adequately prepared for an event of this magnitude, but some, notably low-wage workers in exposed industries, have felt disproportionate pain.』

ということで、こちらの講演の最後の小見出しも『An unequal burden』というのになっていて、引用飛ばしましたがこの講演の頭の部分では例のGeorge Floydさんの件に思いっきり言及していますし、このコロナパンデミックが、米国の元々の医療体制のゲロゲロ状態の問題にモロにヒットして思いっきり格差問題に点火している面も大有りのようですので、まあこの部分も結構何とかせねば(と言って金融政策でという話は難しいのですが)という感じで最近のFED高官「コロナの影響度合いの不公平」についても言及するのがお約束、って感じですな。

てな訳で、特段目新しい話は無くて、最近のFED高官の平均的な話(景気に無茶苦茶厳しい、金融政策に関してはもうやることやったから後は追加で財政でたら必要なことをするかも程度、格差拡大に対する問題意識を示す)という感じになっておりますな、と思いました。中身そこそこ量あるんですけど、まあ「知ってるわ」という話が割と多いので盛大に手抜きをしてしまいましたサーセン。









2020/06/29

お題「まーた黒ちゃんが微妙な講演をしているが引っ込みがつかなくなるリスク大丈夫かね」

例のアレですが。
https://www.chugoku-np.co.jp/search/result.php?key_txt=%89%CD%88%E4%81%40%88%C4%97%A2
ニュース特集
河井克行・案里夫妻 買収事件

『克行前法相発言録 青年期から』ってバナーの所に、

『「日本人は政治家の腐敗を目にしてもあきらめてしまう」。青年期から政治に対する思いを語っていた河井克行前法相。28歳で広島県議となり、政界に入った後も「改革」の必要性を訴え続けた。公選法違反(買収)容疑で逮捕される直前までの歩みを発言で振り返る。』(上記URL先より)

ともうノリノリで特集している中国新聞、というか地元の新聞でここまでやられるというのに何か色々とアレなそれを感じてしまわまい事もないが。

〇黒田総裁がまた海外で調子に乗って要らん講演をしている模様だが

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/ko200626a.htm/
【発言要旨】新型コロナウイルス感染症のわが国経済への影響と日本銀行の対応
ハーバード・ロースクール、PIFS共催Virtual Eventにおける冒頭発言の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2020年6月26日

まあご時世的に短いのですが読んでて違和感が結構というか何というかでしてですね。

・経済の先行きの話だが政策を正当化するためにポイントがズレてないか

『感染症のわが国経済への影響』って小見出しの先行きの話なんですけどね、

『もっとも、公衆衛生上の措置が効を奏して、新規の感染者数は大幅に減少し、5月末には緊急事態宣言が解除されました。現時点で、日本の感染症による死者数は1,000人以下に抑えられており、経済活動も段階的に再開されています。とはいえ、それまでの経済活動の落ち込みは大きく、わが国経済は、当面、厳しい状態が続くと見込まれます。その後、本年後半にも内外で感染症の影響が和らいでいけば、ペントアップ需要の顕在化やマクロ経済政策の効果などを背景に、わが国経済は改善していくと考えられます。』

というベースラインシナリオはまあ別にそうですよねって感じなのですけどその次。

『もちろん、先行きの経済を巡る不確実性は大きいと認識しています。グローバルにみれば、未だ感染症の拡大に歯止めがかかったとは言い難く、最近では、感染の「第2波」への懸念もみられています。こうした状況下、感染症によるショックの二次的影響が経済を大きく下押しするリスクにも注意が必要です。』

それもわかる。

『とくに重要なポイントは2つあります。1つ目は、企業の資金繰りが確保されるか、という点です。そのためにも、金融システムの安定や緩和的な金融環境を維持し、金融面から実体経済への下押し圧力の強まりを回避することが重要です。』

うーんこの。資金繰り対策に関しては主要国がこれでもかとばかりに財政出している所であって、そっちで金融政策の役割みたいな話をするの物凄くどうでもいい話をしている感があるんですけど。というか、先行きの経済という意味での不確実性に関しては当面の資金繰りよりも経済の下押しが長引いて所得減少からの債務者属性の悪化の方が色々な面で問題になるんじゃなかろうかと。

『2つ目は、企業や家計の成長期待が低下し、支出スタンスが慎重化することはないか、という点です。わが国では1990年代の金融危機後、長期間にわたり企業行動が慎重化した経験がありますが、大きなショックの後には、ある種の履歴効果が働きうることには、注意が必要です。』

ここの説明、言ってることは分かるんですけれども、「1990年代の金融危機後、長期間にわたり企業行動が慎重化した経験がありますが」ってのも何か出す例としてどうなのという感じで、この時って金融危機が問題というよりはそれまでにあったレバレッジ(というか過剰というか)の縮小に時間が掛かり過ぎてしまったとかそういう話だし、この「90年代の金融危機」が90年台前半のバブル崩壊の話をしてるのか、90年台後半の金融機関あばばばばーの話をしているか、たぶん後者だと思うのですが、後者だとしたらその前からとっくの昔に過剰の整理というプロセスが延々と行われ、たまたま金融バブルっぽくなっていた東南アジアが金融バブル崩壊して、とかいうような感じで、随分と背景が違くね???って話。

今回ってどちらかというとITバブルあたりと比較するとか、まあリーマンショックと比較するとか、そういうのが適切じゃネーノ前提条件考えたらとは思うので、この90年台以降の企業行動が慎重化云々ってのだいぶ色々とズレていると思うのねん。

という部分はまあ前座でして問題は次。


・3本の鉛筆もとい柱が思いっきり講演録に出るという形で絶賛昇格中

『日本銀行の対応』の所を読んでのけぞってしまったんですけどねアタクシ。

『次に、日本銀行の対応についてお話しします。日本銀行は、3月以降、金融緩和を強化してきましたが、その内容は、次の「3つの柱」として整理できます。』

ちょwwwwおまwwwwwwという所ですが、ついに「コロナ対策3本の鉛筆」がこのように堂々と正式に3本の柱呼ばわりで登場しております!!!!!

でですね、まあ3本の鉛筆なんですが、ポンチ絵で書いている分については所詮ポンチ絵だからまだアレなのですが、こうやって堂々と「3本の柱」呼ばわりされてしまうと、要は皆様ご案内の鉛筆ちゃんが全部コロナ対策という扱いになります。

ということはですよ、一時的とか言って9月末までだったのが3月末までなし崩しにも程がある延長を食らっておりますけれども、どうせ政府の保証協会融資云々とか足が来た時に(かつての小渕パパさんの特別保証がどうのうこうのみたいなイメージで)延長されたりするとか、いろいろと財政の方が継続する中で、金融政策もお付き合いして長期化するんかいこのスットコドッコイというのが物凄く懸念される訳でありますよいやマジで。円債村クレジット集落のクレジット鍛冶職人の行く末はどっちだ、という感じになりそうで悲しいですし、大体からしてクレジットスプレッドを無茶苦茶叩き潰すのは新たな金融不均衡作るだけじゃんとかいう話。

社債CP買入の引っ込みがつかなくなるのが一番(自分的にも、笑)懸念される所ではあるのですが、まあそれだけではなくて、この鉛筆の中に輪番とドルオペが入っているのですが、ドルオペだって毎度申し上げておりますように、いつまでもサービスレートでやっていって良いものでもない訳で、その結果外国の金融機関に不必要な収益補填をしているだの、外国の金融機関がドルスワップにフリーライドした結果ドル資産価格の形成において金融不均衡発生のリスクが高まるだの、まあそんなことを言われだしたら(というか言われる前に)FEDはランボー怒りの条件変更とかしてくるじゃろ、と思っておるのですが、そうなった挙句にドルオペ残高減ったら、うっかり「第2の柱」とかにしてしまった手前日銀はその残高減少をどう申し開きする(本来は中銀ファシリティ使わないで市場調達が可能になっているという平常時に戻ったので良い事なんですが、残高をアピールするというトンチキな事をしているのが日銀クオリティ)のでしょうかねえと思うの。

ということで説明は引用するまでも無いのですが念のため引用するのだがこれも酷い。

『1つ目は、総枠約110兆円規模となる企業等の資金繰りを支援するための「特別プログラム」です。具体的には、(1)CP・社債について、日本の市場規模の25%に相当する約20兆円の買入れ枠を用意したほか、(2)金融機関の貸出を促すための約90兆円規模の資金供給手段を導入しました。後者には、金融機関の行う中小企業等向けの貸出について、政府が信用リスク等をカバーすると共に、日本銀行が有利な条件でバックファイナンスするスキームが含まれています。これは、政府と中銀が、それぞれの役割を明確にしつつ、連携して企業等の資金繰りを支援する取り組みといえます。』

>貸出について、政府が信用リスク等をカバーすると共に、日本銀行が有利な条件でバックファイナンスするスキーム
>貸出について、政府が信用リスク等をカバーすると共に、日本銀行が有利な条件でバックファイナンスするスキーム
>貸出について、政府が信用リスク等をカバーすると共に、日本銀行が有利な条件でバックファイナンスするスキーム

えーっとすいません、まあ米国で講演しているから米国の何とかファシリティを意識してそういう説明をしているんでしょうけれども、申し訳ないのだが説明が誇大広告にも程があるというか、意図的にあいまいな言い方をして誤魔化しているのが気に食わないので念のためちゃんと切り分けてみましょう。

新コロオペパート1ってのは「担保が企業金融に関する債権(その後住宅ローン担保証券も加わる)の時に、従来の共通担保貸出に比べて有利な条件(マクロ加算2倍2倍、その後付利10bpという奨励金も加わる)で資金を出しますよ」ってだけの話なのですから、これはただの既存担保の振り替えによる通常の資金供給と同じ。でもって別にこの担保に関して100%の掛け目で金が出る訳でもなく、おまけにこの共通担保貸出は普通の普通にリコースローンな訳で、何がどう「政府が信用リスク等をカバーする」のかさっぱり分からんのですけれども、新コロオペパート1で担保が飛んだら政府が買ってくれるとかそんな規程ありましたっけ???

でもって新コロパート2ですが、こちらは「今般の補正予算で予算化された、保証協会融資の中における危機対応などの制度融資の貸出残高、およびプロパー融資の中での同様の条件(というのが物凄く曖昧なのですが)の貸出残高に対応した額について、共通担保貸出形式での貸出を行いますが、この条件が通常の共通担保貸出に比べて有利な条件(マクロ加算2倍2倍、付利10bpの奨励金付き)で資金を出しますよ」って話ですな。

でもって新コロパート2ですけど、マル保制度融資なんで信用リスク等は(信用保証率に応じて)全部または一部の保証協会による代位弁済が行われますので確かに政府が信用リスク等をカバーしていますが、日銀のファイナンスは別にこの貸出に紐ついている訳ではなくて、普通に共通担保寄越せと言われていますし、ノンリコローンでも何でもない訳すがな。おまけにこれマル保の方は確かに保証協会の代弁スキームあるけど、普通にプロパー貸しで同様の条件だから新コロパート2の貸出っての受けても、プロパー貸しが飛んでも別に日銀は面倒を見てくれるわけでも何でもないのですよね。

然るに、米国のなんちゃらファシリティーってのは、基本的に政府がエクイティを出してFEDが流動性供給を行うSPCが作られて、そのSPCが金融機関からローンに対してノンリコースの紐付け融資を行う(まあ中小企業向けの場合は米国中小企業庁の保証付きとかの条件があった筈なのでそんなに条件が甘い訳ではないし、金利も普通にバジョット・ルール金利に設定されていますが)という物件であって、この表現で米国人が想像するFEDスキームとは似ても似つかない物件なんですよね〜。

でですな、別にそういうのを日銀がやれとかそういう意味で申し上げているのではなくて、何で今の日銀はこうやって無駄にしゃしゃり出てこようとしているのか、というのが訳分らんというか勲章でも欲しいのかとか悪態つきたくなってしまう次第でございまして、制度の建付け上の役割ってのは国によって違うんですから、何も日銀が目立ってこの対策は俺が育てた(ドヤ顔)みたいな感じで出る必要あるのかよ、とは思うのでありました。いやまあ全く引っ込んでいるのもアレですけど、ちょっと調子に乗り過ぎてプレゼンが雑になっていますよね、と思うのです。


・・・・・・などと盛大に悪態をついておりますが、この次以降もまあ同じっすけど一応引用と軽いジャブだけ。

『2つ目は、円貨および外貨の潤沢な供給です。円貨については、債券市場の安定を維持し、イールドカーブ全体を低位で安定させる観点から、金額に上限を設けずに、必要な金額の国債を買入れることを明確にしました。外貨についても、主要6中央銀行の協調にもとづき、多額のドル資金を供給しています。』

だから外貨は中銀ファシリティが使われていなくて、単にバックストップとして存在している、という方が重要なのであって、「多額のドル資金を供給しています」っ威張っているのは「日本は非常用ファシリティを沢山使っているのでまだアカン奴なのです」って言ってるようなもんですがな。あと輪番は最早この説明、「資金供給」なのか「金利を下げたい」のか分からんし、YCCと「イールドカーブを低位で安定させる」の住み分けも最早訳分らんのですよね。まあいつもの悪態ですが。


『3つ目は、ETFおよびJ-REITの積極的な買入れです。この措置は、金融市場の不安定な動きなどが、企業や家計のコンフィデンス悪化に繋がることを防止し、前向きな経済活動をサポートすることを目的としています。』

物凄い勢いで戻っていますのでそろそろ臨時措置を解除したらどうでしょうかねえ(ニヤニヤ)。

『金融緩和の強化に加え、金融システムの安定確保に向けた規制面での対応も行っています。国際的な合意に基づくバーゼルIII完全実施の1年延期や、資本・流動性バッファーの取崩しの奨励に加え、4月には金融庁とともにレバレッジ比率規制の緩和も公表しました。金融システムの安定は、企業等の資金繰りを支え、金融政策が最大限効果を発揮するための大前提です。』

うーんこの説明、最後の「金融システムの安定は、企業等の資金繰りを支え、金融政策が最大限効果を発揮するための大前提です」なんですけど、当然ながら金融機関の必要自己資本の規制やら、流動性バッファーの取り崩しの奨励とかをするのってえのは金融機関の資本構成の弱体化につながる話なんで、行った措置に関して自慢話をしている口から「金融システムの安定は〜」っておっぱじめちゃうの話が前後で矛盾していませんか、と思うの。今まさにその安定部分を取り崩させている最中なんですから。

もしそういう事を言うのであれば、「前回の金融危機による教訓によって、わが国だけではなく世界の主要国は、危機時に金融機関が金融仲介機能を維持できるように、金融機関の資本や流動性の充実を進めて来ましたが、今まさにその成果が出て、金融機関の資本などはこのような危機状況においても十分な厚みとバッファーを備えています」みたいな話をするんじゃないのかね、と思うのでして、何ちゅうかもうちょっと丁寧な話をして欲しいわ。

『これらの取り組みは、既に相応の効果を発揮しています。わが国の金融システムは全体として安定性を維持しており、金融機関の貸出スタンスは、積極的です。こうしたもとで、5月の貸出の前年比は、過去30年間で最も高い伸びとなり、CP・社債の発行も、大幅に増加しています。金融市場をみても、ひと頃の緊張が緩和しています。』

まるで金融政策が当を得ていたから貸し出しが伸びているかのような説明で、「ワシが育てた」モード全開になっていますが、いやそうじゃねえだろおいという感想しか起きない。金融市場の緊張緩和だって米国のお蔭じゃろうよ。


『日本銀行としては、引き続き、「3つの柱」に沿った措置を実施することで、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に万全を期していく方針です。そのうえで、感染症の経済・金融面への影響には大きな不確実性があることから、当面、感染症の影響を注視し、必要があれば、中央銀行としてあらゆる手段を、躊躇なく講じていく考えです。

ご清聴ありがとうございました。』

てな訳ですっかり「3つの柱」扱いになってしまいまして、臨時措置が恒久措置になりそうな悪寒しかしませんけれども、まあ一応可能性としては、「これらの3つの柱はコロナ対策の3つの柱なのでコロナも一段落したので全部見直しましょう」とか言ってどさくさに紛れてQQE政策の大幅な撤収をしてくれると、常盤橋公園で全身白塗りで暗黒舞踏を踊らさせていただきたく存じますという位ですな。



・なお原文(英文)は「3つの手段」ですな

こちらが元原稿と思われる物件
https://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2020/ko200626a.htm/
[Speech]
The Impact of COVID-19 on the Japanese Economy and the Bank of Japan's Response
Remarks at the Virtual Event Co-Hosted by Harvard Law School (HLS) and the Program on International Financial Systems (PIFS)

KURODA Haruhiko
Governor of the Bank of Japan
June 26, 2020


さっきの三本の柱の部分、『The Bank's Response』の最初になりますな。

『Next, I will talk about the Bank's response. The Bank has enhanced monetary easing since March, implementing three measures as follows.』

「three measures」でして、まあいずれにせよセットになっているからアカンのですが、ちなみに柱と言えば展望レポートでの「2つの柱」というのがあります(前回の展望で見事にすっ飛ばしやがりましたけど)が、こちらの「2つの「柱」に基づく経済・物価情勢の点検」は英文だと「Examining Economic Activity and Prices from Two Perspectives」と「パースペクティブ」になるんですよね〜。英語難しいというか日本語の方が難しいということですわな。

ちなみに念のため、展望レポートで出てくる2つの柱の発祥はこちらになります。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2006/k060309b.htm/
新たな金融政策運営の枠組みの導入について
2006年 3月 9日
日本銀行

英文はこちら
https://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2006/k060309b.htm/
The Introduction of a New Framework for the Conduct of Monetary Policy
March 9, 2006
Bank of Japan


〇しまった時間が無い

えーっとすいません、最近FED高官の発言にやっとテキストが付きだしたんでネタにと思ったのになぜかこの一件で時間を潰してしまいました月曜なので勘弁と言う事でよろしくお願いいたします(土下座)。







2020/06/26

お題「CP買入は穏当レート(マイナスですけど)/調節年報よりBOXを鑑賞/バーキン総裁(リッチモンド)のインタビュー記事から少々」

後付け理屈作るにしてももう少しなんとかならないのか。
https://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPL4N2E233R?il=0
2020年6月26日 / 05:20 /
NY外為市場=ドルに安全買い、コロナ感染拡大でリスク選好低下
Reuters Staff

『ニューヨーク外為市場では、米国の複数州で新型コロナウイルス感染が急速に拡大していることを受けリスク選好度が低下し、安全資産としてのドルに買いが入った。』(上記URL先より)

何でコロナ感染が急速に拡大している国の通貨が安全資産とかおじちゃん頭が悪くて仰っていることの意味がワカランチ会長なのですが。


〇CP買入今回は穏当なレート

昨日のCP買入結果(CPのみ)

落札結果 (6月25日<木>)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba200625.htm
CP等買入 13,394 5,981 -0.003 0.000 40.2

ほっほーという感じでして、前回のがこれでした。

落札結果 (6月12日<金>)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba200612.htm
CP等買入 12,864 5,980 -0.010 -0.006 60.3

まあこのCP買入に関しては(てゆーか社債買入もそうですが)入れられる銘柄の中で実勢レートが高いものあれば低いものがありやがりまして、入れるとお得感満載系の銘柄ってえのは大体枠いっぱいまでぶっこまれてしまいますので、そうなりますと償還が来ると枠が空くのでここぞとばかりにぶっこまれる、というのが仕様になっておりまする。

つーことで今回のCP買入は穏当なレートになったのですが(ってゼロ平均マイナス足切りを見て穏当とか言ってる時点でアタクシもパンチドランカーなのですが)、まあどっかの足が来て枠でも空いたか、あとあるのは月末近くの買入だと、そこまで現先玉とかにしていた銘柄を償還近くなる前に現先玉入れ替えするために新規購入して要らなくなった償還銘柄を叩きこみに行くとかそういうのがあるかなあと。

てな訳で社債より若干マシ感がありますけれども、ただまあそうは申しましても日銀のCP買入を充実させて企業の資金繰り支援ってえのも諸刃の剣なところがありまして、リーマンショックの時とかCP金利盛大に上がってエライコッチャになりましたし、ロールの時にやたら苦労させられてしまった発行体さんも散見されておりましたけれども(その後CP買入を開始しましたがあの時のは指値方式で結局所期の効果を発揮したと判断した所で終了した、終了まで時間かかったけど)、これ「短期的にCPでのファンディングによって一時的な売り上げ減などの繋ぎに寄与するため」というのであれば短期的にどどーんと枠を増やすのもある程度は仕方ないかなとは思うのですが(社債はクレジットスプレッドをゆがめるので却下)、そうは申しましてもこれを長期化させるということになると話は別。

申すまでも無い事ですが、「コロナ対策で支援だ〜」とか言いながらこの買いすぎとしか思えんCP買入を継続すると、発行企業の方としてはそらコスト削減したいですから調達がCPにシフトしっぱなし、とかそういうことが起きますと、それは企業サイドの長短ミスマッチというか資金ギャップというかレバレッジというか、という奴になりまして、これまた不均衡の種をまくことになります。まあ企業の財務さんの方が金融市場の有象無象よりもその辺は分かっていると思いますからそんなに過剰な短期調達シフトが起きるとは思いませんけれども、だいたい金融ショックで短期市場が枯渇するときってCP発行の所で金が詰まってしまうケースがあると碌な事が起きない(何せCPは直ぐにロールが来るのですが、平常時にはロールできるとか言ってるのが来るときには突如来やがるというのが短期の恐ろしいところ)ので、まあ何と申しますかこのオペもいつまでもダラダラとこの状態で継続するもんじゃないと思うんですよね、何でコロナオペとセットで鉛筆に入れたんだかという感じです、CP社債買入と、金融機関への資金供給オペは全然別の働きをするものなので一緒くたに一つの鉛筆に入れたのは禍根を残すと思います。


〇別に政策的インプリケーションとかではないが調節年報名物のBOXを鑑賞

昨日も申し上げたように今回の調節年報はBOXが1つしか無いのですが、まあ折角ではございますのでBOXを鑑賞。

https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/data/mor200624a.pdf
2019 年度の金融市場調節

本文11ページ(PDFファイルの12枚目)『BOX 新型コロナウイルス感染症拡大を受けた金融市場と市場調節運営』でございまする。

『この BOX では、新型コロナウイルス感染症拡大を受けた金融市場の動向と日本銀行の市場調節運営について概観する。』

あっという間に4か月前の話になってしまいました。

『まず、金融市場の動向を確認すると、2020 年2月以降、新型コロナウイルスの感染症が世界的に拡大するもとで、内外の投資家のリスクセンチメントが急速に悪化した。2月中旬に既往最高値を更新するなど底堅い動きを見せていた米国株価は、2月下旬以降、大幅な下落に転じた。日本の株価も年初来ピークである2月6日以降、最大で約3割下落した。』

そもそも春節前の時点で中国での感染ガーとか言っていたのに米国様は完全に対岸の火事というか、感染症→金融緩和→ヒャッハーとかそういう発想だった訳ですな、って今も同じか・・・・・・・・・

『リスクオフの進行に伴い、わが国の長期金利は、2020年初来▲0.05〜ゼロ%程度のレンジで推移してきたものが、半月の間に▲0.20%程度に低下した(BOX 図表1)。』

ここから3月に入る。

『3月入り後、世界的な感染症拡大が一段と進むなか、市場の流動性・機能度の低下度合いが強まった。多くの金融機関が、在宅勤務や代替拠点を活用したスプリット・オペレーションに移行するなど、事務運営上の制約が強まったことも、こうした市場機能の低下に拍車をかけた。』

印象としては途中からイタリアだのの動きから欧米の方が一気にアジアを追い越してしまい、欧州米国のマネーセンターバンクが開店休業とかになってまだ比較的普通(削減してたけど)にやっていたのでアイヤーって感じですかにゃあ。

『本邦債券市場では、海外投資家によるポジション圧縮の動きや、国内投資家による株価下落に伴う益出し目的の売却ニーズの高まりなどから、長期金利は、それまでの低下基調から一転して大きく上昇した。』

これは昨日引用した部分ね。

『年度末が近づく中、ボラティリティの上昇もあって、投資家・証券会社双方の追加的なリスクテイク余力が低下し、債券の買い手が減少したことも、こうした上昇に寄与した。これが債券先物・現物双方の一段のボラティリティ上昇をもたらし、市場流動性の低下を促す、という形で、悪循環が生じた(BOX 図表2、3)。』

図表を見ると味わいがあるのでぜひご覧ください。

『その後、長期金利は後述する金融緩和の強化や国債買入れの追加的な実施・増額によってゼロ%近傍に戻ったものの、債券市場の流動性が低下した状態は4月入り後も続いた。』

むしろ4月以降の方が酷かったですな。とは言いましてもまあ当局様的には相場がスッカスカの板の中で、連日気が触れたようにクッソ大暴れするような流動性皆無相場だとアカンとなりますが、そのままウゴカンチ会長で気を失っている分にはまあマシって認識になりますわな。投資家はそれでもキャリーがぱみゅぱみゅしてくれるからいいですけれども、業者は死にますわな何も動かんと。

『また、為替スワップ市場では、投資家の安全資産選好や欧米での新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた海外企業などの手許資金需要の拡大からドルのキャッシュ需要が世界的に大きく高まるもとで、市場の流動性が低下するとともに、ドル調達プレミアムが急速に拡大した。』

はい。

『その後、後述のとおりドル資金供給オペが拡充され、積極的に利用されることで、ドル調達圧力が緩和され、次第にプレミアムは縮小した。』

出口どうしますかねこのドルオペ。

『さらに、レポ市場では、債券市場の流動性が低下するもと、担保目的での国債需要の高まりや上述の事務制約もあって債券の出し手が減少し、同市場における国債の「モノ不足」が強く意識された結果、GCレポレートは一時大きく低下した(BOX図表4)。』

図表4を見ると懐かしさに吹いてしまいますわ。本文12ページに入ります。これからは日銀の施策の話、

『以上のような金融市場の動向を踏まえ、日本銀行は、3月2日に、潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく方針を示す総裁談話を公表し、3月 16 日には、金融政策決定会合を前倒して開催し、金融緩和の強化を決定した。』

はいはい。

『これを受けて、日本銀行は、市場調節運営面で様々な対応を行った(BOX 図表5)。具体的には、@円貨資金について、積極的な国債買入れを含め、一層潤沢な資金供給を実施したほか、A米ドル資金についても、3か月物資金供給オペを開始するとともに、1週間物資金供給オペの頻度を週次から日次に引き上げるなど、一層潤沢な資金供給を行った。また、B国債供給の面でも、レポ市場における国債需給の過度な引き締まりを抑制する観点から、国債補完供給の要件緩和や国債供給のための現先オペの実施などの手段を通じて、金融市場の安定確保に努めた。』

補完供給が物凄い勢いで出てきてビビりましたな。

『また、米ドル資金供給用担保国債供給が、2019 年度末時点で 18 兆円を超える規模で利用されたことも、金融機関に対する国債の供給、さらにはそれを用いた米ドル資金の供給を通じて、市場の安定に繋がった(詳細は、「4.金融市場調節手段の運営状況」参照)。』

まあこのドルオペに関してはレートがサービスレート(当初はまあ仕方なかった面はあるにはあるが)なのでフリーライダー感覚(タダじゃないけど)で乗っかって来る動きとか出だすとアカンってなりそうですね。

でもってこのオペとバランスシートの関係(MBも含め)の所ですが、ちゃんと個別オペとマネタリーベースがどう対応しているのかというのは本来ここで説明されるまでもなく金利村の村民なら分かってないと、などと大口を叩いてますが、まあそんなのは金利村の中でも変な集落の人たちだけですねすいません。

『最後に、以上のような市場調節運営がマネタリーベースや日本銀行のバランスシートに及ぼす影響について確認する(BOX 図表6)。』

まあ実務的にそんなに意味のある話ではないというか「犬が西むきゃ尾は東」位の話なんですが、そうは言いましてもマネタリーベース直線一気理論のようなゲテモノが大手を振って歩いているという状況を踏まえますと、この部分ちゃんとわかっている方がお得だと思います。

『まず、@の円貨資金の供給は、日銀当座預金の増加を通じてマネタリーベースを押し上げる方向に寄与した。実際、マネタリーベースの前年差の内訳をみると、国債買入れなどの資産買入れを通じた資金供給が着実に増加要因として働いている(BOX 図表7)。』

ここは誰でもわかりますな。

『他方、米ドル資金供給用担保国債供給をはじめとするBの国債の供給は、オペ利用先にとって、日銀当座預金と引き換えに国債の供給を受けるかたちになる。』

はい。

『そのため、日本銀行のバランスシートの規模(総資産)への影響は中立的である一方、日銀当座預金の減少を通じ、マネタリーベースに対しては減少要因として働いた。』

と来まして、

『上記に加え、A米ドル資金の供給は、日本銀行がニューヨーク連邦準備銀行との為替スワップ取極を通じて調達した米ドル資金をオペ先に供給するものであることから、資産サイドでは外国為替(オペ先へのドル資金供給)が増加する一方、負債サイドでは同連銀からの円貨預り金が増加することになる。これは、マネタリーベースへの影響は中立的である一方、日本銀行のバランスシートの規模を拡大させることになる。』

こちらではMBとBSの話になっていますが、これをインターバンクの資金需給で考え出すと割と良い感じで頭がウニになってくれます。

『これらの結果、3月中旬以降、マネタリーベースの伸び率に比べ、バランスシートの規模が大きく増加する姿となった(BOX 図表8)。』

というお話で、今回のBOXは解説記事初級編という感じでございましたが、全部をすらすらと引っ掛からずに読めるのは短期集落の人だけですかねやっぱり。


〇バーキン総裁(リッチモンド)の新聞(ポリティコ)インタビュー記事でちょっとオモロイのがあったので

今朝はジョージ総裁(カンサスシティ)の講演もあったようで、基本タカの人の講演とかだと見ておこうかという感じなのですがちょっと出てたの気が付いたのがさっきだったので泣く泣くパスしまして、今週頭のネタ(すいません)の方でちょっとだけ。

https://www.politico.com/news/2020/06/21/q-a-richmond-fed-tom-barkin-332855
Finance
POLITICO Pro Q&A: Richmond Fed President Tom Barkin
"More research, better communication on how to give us confidence that what we’re doing is safe would be a real stimulant to our economy," he said.

ということで米国の「POLITICO」紙の記事ですがインタビューの一問一答が見れるので助かる。


・どうもFEDにおける「ノーマル」とは株式市場様が高値をつけていたコロナ直前の辺りを示すようですなオソロシス

最初の記事部分より。

『Richmond Federal Reserve Bank President Tom Barkin has a seat at the table on the Fed’s interest rate-setting committee, where he provides the view on the ground on the economy in his East Coast region.』

バーキン総裁今年は「Alternate Members」なので、投票権のある地区連銀総裁が出席できないような時があった時の代打要因でございますな。なお、オルタナメンバーは基本翌年にメンバーになるという順番の筈。

『In an interview with POLITICO, Barkin pointed to positive signs in consumer spending but warned the recovery will only be gradual.』

経済の回復は「will only be gradual」ってのもFEDの方々みなさん同じように言いますな。まあそれを言い出すと緩和長期化→ゴルディロックス相場ヒャッハーといって株がホイホイ上がっているような気がしますがキニシナイ。

『He pointed to high joblessness as the number to watch, as the Fed tries to steer the country back to where it was in February, when the unemployment rate sat at just 3.5 percent.』

ちょwwwwという感じですが、この「the Fed tries to steer the country back to where it was in February」というちょっと待てその水準は多分金融緩和ヒャッハー相場成分が入っていて金融不均衡が結構溜まっていた時期(でもってコロナでその金融不均衡が弾けたのだが結局また緩和して金融不均衡の絶賛育成中としか思えんが)じゃろ、と個人の感想ですとしては思うのですが、この趣旨の話はタカ派ハト派問わず皆さん揃ってそういう話をしている、ということはまあそう言う事だぞという話で、いやー参りますなあとは思う(BISビュー人間ではないがFEDビューは絶対取らない個人の感想です)。

『“The American people really understand that 13 percent unemployment is not in line with our mandate, in a way that’s much more significant than their understanding of our miss on inflation,” he said.』

そら失業率13%がアカンのは分かるが、だからと言ってコロナ直前まで戻すのノーマルか???とは思うけど、まあFEDの連中がそう言ってるんだから仕方ない。

『“Now, that doesn’t mean you wouldn’t talk about inflation. Inflation is part of our mandate, but … I think for the American people, they want us to understand that employment matters.”』

ということで、まあ当たり前というか昨日悪態つきましたように、そもそもこの時期に物価安定目標がどうのだとかインフレ期待がどうのこうのだとか言うような段階ではない、ということでして、まあどこぞの中央銀行はバーキン総裁の爪の垢でも煎じて飲んで下さい。


・でもって時間が無いので(すいません)インタビューの最初の所だけになりますが結構オモロイ質疑があった

のでネタにしたかった、というのが本音です(^^)。

『This transcript has been edited for length and clarity.』

ということで始まりますが、

質問『Given that there is such uncertainty right now, when you’re assessing what you think is going to happen with the economy, how much of that is anecdotal versus data versus modeling?』

状況についてどのような経済モデルなど使って理解しようとしていますか?って話で、

バーキンさん『I’ve aggregated around myself a whole set of daily and weekly data that I find pretty useful in trying to understand the pace of recovery. … We do have a set of models that we use to forecast the economy. I mean, I’d be lying if I told you that, in this environment, I have a lot of confidence in those models.』

ってことで、

『We did a survey of 1,000 businesses. … It came back about two weeks ago in our districts and asked them questions like, how close are you to normal? When do you see normal? What [does] normal look like today versus what it looked like yesterday? Just to try to size the impact. And I would own the notion that it’s a very imprecise science, this forecasting. There’s a lot of judgment that goes into it. But … I am trying to parse the question of, in the first instance, how fast the economy is going to return toward normal. And in the second instance, what gap will we have when we’re “at normal,” versus the place we were before.』

We did a survey of 1,000 businesses.ってあるのでそ質問者興味を持ちまして、

質問『I am curious what data you’re finding most helpful.』

と来たらバーキンさんの回答が中々興味深いお答えでした。

バーキンさん『So, I’ve been able to get access to credit card spend data and debit card spend data across retailer type, which is very useful.』

と来まして、小売店でのクレジットカードの利用データがvery usefulだそうです。なるほど。

『You saw in early April, those numbers were down overall in the high 20s percent. … And then you can see the week-by-week return, both overall and you have the ability to cut it by state, so you can see states that reopened faster or slower.』

『You can even cut it by income level, so you can see that those at the lower income levels are coming back faster than those at the higher income levels. And those numbers which I said were down in the high 20s, if you look today are down in the mid-single digits.』

『I should add credit card spend obviously skews a little bit wealthier, debit card spend a little bit less wealthy, and so I like to look at both of them. Because if you just looked at how the wealthy were spending, I think you’d miss part of the story.』

ということで、いろいろな属性別の売り上げデータとか見れるそうで、ほほーと思うのでした(データ筒抜けかよともちょっと思いましたけどね)。

でもって以下もうちょっと話が続くのですが、本日はちょいと時間が無いのでパス。たぶんこのページ自体は普通に見れると思うので、ご興味のある方はどうぞ(広告が微妙にウザいけど)。







2020/06/25

お題「調節年報がでました(紹介だけ)/新コロオペ結果/6月会合主な意見が情けなくて泣きそう」

人数が増えた件のコメントが色々凄いのだが。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200624/k10012482021000.html
東京都 55人感染確認 夜の繁華街関係者は20人 新型コロナ
2020年6月24日 20時34分

『菅官房長官「積極的検査の結果含まれる」』
『西村経済再生相「前向きな取り組みの結果」』(上記URL先より、細かいのはURL先見てちょ)

ちょっとまて、おまえら新規感染者数が増えた減ったといって何とか宣言出したり継続してたりしてたのに、「検査を前向きに行った結果集団感染が見つかったのは前向きな話なのでセーフ」ってもうちょっと言い方というのを考えて頂きたいんですが。これじゃあ「検査実施に手心を加えていただろ」に反論しにくくなるぞオイ。(なお本文見てもヘッドラインと趣旨は同じ)

一部クラスターがあるが状況はきちんと把握できている、とか不特定多数への拡大が起きている訳ではない、とかそういう話をして欲しいんですけどねえ・・・・・・・


〇調節年報キター!!!(ほんのちょっとだけネタにしておく)

https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/mor200624.htm/
2019年度の金融市場調節
2020年6月24日 日本銀行金融市場局

ということで調節年報キタコレではあるのですが、これは若干ねじり鉢巻きをしないと読めない物件(FSRもねじり鉢巻きしていますが)なので実はまだ読めていないのですけど、

概要という名前のプレゼン用ポンチ絵
https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/data/mor200624b.pdf

全文(色刷りPDF57枚組)
https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/data/mor200624a.pdf

てな訳でして、まだ読めていないので何ともではありますが、今回は色々と最後の最後になってあばばばばーのばーになってしまって、しかも色々現在進行形で2020年度に突入してしまいましたので、いつものBOXが1個しかないのはまあ忙しかったということですね分かります。

ちなみにこのBOXですが、調節年報のBOXちゃんは短期マニアが唸るネタについて、それはもうマニアックな分析を投下してくる、という一部のマニア垂涎のネタがありまして、このBOXに関して短期の人に質問したらもう目を輝かせながら謎の早口ドヤ顔で説明がおっぱじまると思いますので、普段短期の人だけではなくて、隠れ短期マニアの検査キットとして有用(なんのこっちゃ)。


さて、今回のBOXは一つしか無くて、お題は『BOX 新型コロナウイルス感染症拡大を受けた金融市場と市場調節運営』となっています。本文11ページ、PDFの12ページにありまして、ざっくり読んだだけ(あとで数字合わせとか一応しながら見直しますが、別にハリボテをする必要のない文書なのでハリボテ疑惑で全部検証する必要はない筈)ですけど、ここの部分が読んでて気に入りました。金融市場動向の説明の中ですけれども。

『本邦債券市場では、海外投資家によるポジション圧縮の動きや、国内投資家による株価下落に伴う益出し目的の売却ニーズの高まりなどから、長期金利は、それまでの低下基調から一転して大きく上昇した。年度末が近づく中、ボラティリティの上昇もあって、投資家・証券会社双方の追加的なリスクテイク余力が低下し、債券の買い手が減少したことも、こうした上昇に寄与した。これが債券先物・現物双方の一段のボラティリティ上昇をもたらし、市場流動性の低下を促す、という形で、悪循環が生じた(BOX 図表2、3)。その後、長期金利は後述する金融緩和の強化や国債買入れの追加的な実施・増額によってゼロ%近傍に戻ったものの、債券市場の流動性が低下した状態は4月入り後も続いた。』(調節年報本文11ページより引用)

「海外によるポジション圧縮」「国内による益出しニーズ」で国内債券が売られた、という認識を示しておりまして、なにせ海外の当局者ってこの時期の説明をするのに(メディアがそういう説明をするのもあるんだが)「何でもキャッシュにする動き」って説明しちゃっていまして、いやだから今回は金融機関の流動性に問題が生じた訳ではない(ただし引用してない部分にあるけど「人が出勤できない」ための流動性低下というのは思いっきりあった)のであって、今回の金融面の動揺ってのは「完全に想定外の天変地異的リスクイベントが突如発生したため、これまで積みあがっていたゴルディロックスポジションの巻き戻しが急速に起こった」というお話(だからFFのサプライズ下げはボラを上げて市場のコリレーションぶっ壊してポジション投げに繋がったと思うのであのサプライズ利下げは評価したくない)だとアタシャ思うので、この部分が「世界的なキャッシュ化の動きが債券市場にも影響を及ぼした」とか言われたら小一時間問い詰めようかと思っていたので、これはアタクシニッコリという感じでありました。

とここだけ褒めましたが中身はまだ全然見れてない(50ページ以上の物件を夕方にリリースされましてもジンバブエ先生の金懇くらい楽しく成敗できるもんじゃない限りちょっと、であります)のでまた後日。



〇新コロオペ絶賛残高拡大キタコレ

ぐぬぬ。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200624b.pdf
新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーションの実施結果
2020年6月24日 
日本銀行

貸付日 2020年6月25日
返済期日 2020年12月25日
貸付予定総額 82,784億円
(参考)貸出残高(注) 208,352億円
(注)2020年6月25日時点の貸付残高の見込み。

20兆ですかそうですか90兆までの道はまだまだですなあという感じですが、そもそも今回のは3月24日に行った新型コロナオペ一発目であらされるところの、

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200324a.pdf
新型コロナウイルス感染症にかかる企業金融支援特別オペレーションの実施結果

貸付日 2020年3月25日
返済期日 2020年6月25日
貸付予定総額 33,968億

の折り返しも含んでいるので、8.3兆円のうちロールが3.4兆円(担保繰り上全部ロールしているとは限らんとは思いますけど)だとして、新規分が5兆円弱なのですが、何せ今回「一体運用」型になってしまったので、新コロパート1とパート2の区別が分からん(パート1は要件が担保、パート2は要件がマル保制度融資およびそれに準じる(というのがブラックボックス感満載なのだが)貸出実績、となっている)のがもうアレという感じですが、折り返し分はこの時パート1しかないからパート1としまして、増額乗換になった増額5兆円のうち何ぼがパート1で何ぼがパート2とか分からんですの。

これが何ぼ出るかという話は個別金融機関の懐具合とか、マクロ加算部分を活用した裁定取引とかのあたりが直接的に行動として跳ねるところでして、あとはパート2だと共通担保ぶっこみに行かないといけないのでその分の担保繰り、パート1の場合は既存担保の振り替えチックなところはあるのですが、振り替えになったらやっぱり担保繰りをその分圧迫するので、まあ金融機関の担保繰りどうするんでしょうかねえとか思いますけれども、幸か不幸か短国が大増発されていまして、短国買入の方で日銀が無茶買いをしなければ「オペに参加して10bpとマクロ加算2倍2倍をもらったが担保繰りが回らなくて短い国債買って結局儲かってないやん」というような残念な事案はそんなには起きないのかもしれませんので、短国金利が低い方に跳ねるようなオペレーションは是非とも回避する方向でよろしくお願いいたします(平伏)。


・・・・・しかしまあ何ですな、この新コロオペ、今回に限りマクロ加算2倍2倍でオペ分には10bpの付利までついて、貸出レートはこのお値段!(0bpです^^)ってことですが、しつこく申し上げておりますように、そうやって金融機関の政策金利適用残高を減らしてあげましょうとか、金融機関にプラス金利をボーナスで差し上げましょうって、よく言えば貸出に対する奨励策ですからこの奨励策で金融機関の貸し出し意欲を高める、って話ですが、まあ10bpしかも精々1年半くらいのもので意欲が無茶苦茶高まる話かよ(1%とかならともかく)というのは毎度悪態をついておりますが、それはそれとして別の観点から。

えーっとですね、この新コロオペちゃんなんですけれども、制度の建付け上どう見ても恩恵が来ない人というのがいると思うのよ。投信ちゃんとか年金ちゃんとかという話で、投信ちゃんにしろ年金ちゃんにしろ、これを担保に入れて金引っ張って来るって言い出した時点でレバレッジ掛けてる云々の話になってしまうので(現物のレポ使ってレバレッジ運用出来ますよというような特約でもあれば別だけど普通そんなことはしないでしょ)、自分らのポートに社債があるからと言ってよーしパパポートにある10年物社債を担保に〜とかできない訳でして、一方でこのような措置でマイナス金利政策の弊害を軽減しようって動きがある中、完全にそれに置いて行かれてしまっているというのが投信とか年金とかだったりするということでありまして、この辺にマイナス金利政策の皺寄せが来る、というのも「貯蓄から投資へ」の国策(?)の中でどうなのよ、という気はせんでもない。

#すいませんまた話があらぬ方向に(汗)


〇被災地オペ云々(メモ)

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200624c.pdf
「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーションにおける貸付対象先の選定に関する細目」の廃止等について
2020年6月24日 日本銀行

『日本銀行は、「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション基本要領」の一部改正等(2020年3月16日決定)に伴い、「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーションにおける貸付対象先の選定に関する細目」(平成29年1月31日決定)および「平成二十八年熊本地震にかかる被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーションにおける貸付対象先の選定に関する細目」(平成29年1月31日決定)を2020年6月30日限りで廃止するとともに、「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーションにおける貸付対象先の選定に関する細目」を別紙のとおり制定し、2020年7月1日から実施注することとしましたので、お知らせします。』

というのがあって、なんかこの前リリースあった(って上記引用にありますが)し何でしたっけと思いながらも他のネタに追われてもやもやしたままなのですが忘れないように備忘メモ。



〇6月会合主な意見を見たのだがこれまでにない脱力感というかソウジャナイ感が

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2020/opi200616.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2020 年 6 月 15、16 日開催分)1

2 0 2 0 . 6 . 2 4 日本銀行

ということで主な意見なのですが・・・・・・・・・・・・・


・そら物価目標掲げているのは分かるが今フォーカスするのは物価じゃねえだろ

という小見出しを作ってみましたが、とにかくまあ今回の「主な意見」を見ていて一番思ったのはこの点でございます。つまりですね、この新型感染症パンデミックから来た世界的な経済金融の状況ってのに対処する時に「物価の動きがここの所こうだから〜」とか言いながら金融政策運営するのか???って話でして、いやそら勿論物価動向を完無視する必要もないし、物価だって景気動向を見る中のファクターになり得ない訳でもない(超遅行指標のような気がしますが)んですが、今はマクロ経済の安定化と金融市場の安定化と金融仲介機能の安定化を行い、それが普通に落ち着いてくれれば、物価も然るべき所に落ち着くでしょっていう話だと思うの。

だってさ、最近はすっかりFED高官発言追いかける方が(ネタが投下されるのでそうなるんだが)多い気がしますが、FEDの高官ここもとの講演で物価動向の話とかインフレ期待の話とかをねじり鉢巻きで行っています??いないでしょ!!ってな訳で(ECBもまあそんな感じじゃなかったかしら)、そらもちろん物価目標あるんだから無視はしていないけど、基本的にマクロ経済の安定化と金融市場の安定化と金融仲介機能の安定化の方がメインおぶメインでしょ?と思うんですよ。

然るに今回の意見ですけど、『T.金融経済情勢に関する意見』の部分って、

(経済情勢)●8個(=意見が8個)
(物価)●5個

って何でそんなに物価の話がありますねん(しかも物価の方が長広舌なのが多いので字数を見るともうちょっと差が詰まる感じがするんだが)という所でありまして、いや今回なんて基本的に物価の話とか(展望レポート会合でもないんだから)●2個もあれば十分じゃネーノとか思ってしまうのよ。

しかもこの物価のご意見を見ますとですな、

『・消費者物価の前年比は、当面、感染症や原油価格下落などの影響を受けてマイナスで推移するとみられる。その後は、景気が改善していくもとで、プラスに転じたあと、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』

これは執行部の声明文用意見なのでただの念仏みたいなもん。

『・ やや長い目でみた物価の動向については、現時点では、需要の急速な回復が期待しにくいもとで、予測可能な将来に、物価がモメンタムをもって2%に近接していく姿を予想することは難しい。』

まあこれは長い話で、この辺りは海外中銀高官もだいたいこういう趣旨でインフレ爆発するような懸念もありませんよねこの壮絶金融緩和においても、という話になるので、まあこの辺は良いんですけど・・・・・・・・

『・物価上昇につながる好循環を支えてきた雇用・所得環境に、弱めの動きがみられる。リスクシナリオとして、消費者物価の低迷が長引く場合、予想物価上昇率の適合的形成に及ぼす影響が懸念される。』

前半の「物価上昇につながる好循環」って好循環しても物価上がらんじゃんとかありますが、「消費者物価の低迷が長引く場合、予想物価上昇率の適合的形成に及ぼす影響が懸念される」ってのは今この状況で何を平時のような話をしているんだという感じでして、何ちゅうかこの危機モード対応している感がまるで無くて、平時のサロンで話をしているのを聞かされるような脱力感が。

『・現時点では企業倒産の急増や深刻な雇用調整は発生していないが、中小企業を中心に雇用や設備の余剰感に強まりがみられる。今後、感染症の第2波により景気回復が遅れれば、雇用や資本ストックの調整を通じて、物価の下落に波及するリスクには留意が必要である。』

物価の前にマクロ経済の心配してください。

次のは長いので分割しますよ。

『・新型コロナウイルス感染症の深刻な影響が続いており、今後は流動性から支払能力へ課題がシフトする。』

と思うのならば流動性対策のオペで3本の鉛筆出してハッタリ数字だして威張っている場合じゃないと思うのですけどねえ。というか寧ろそっちの対策(日銀がでしゃばる必要とかでしゃばる権限があるかという話はさておくにしても)すること考えたらハリボテ政策も適当にしておかないと次に打つタマなくなりゃしませんかねえ。まあ知らんけど。

『感染症拡大の影響は、製造業からサービス業、大企業から中小企業・個人事業主まで広範囲に及んでおり、過去の危機でいわれた「too big to fail」というよりは「too many to fail」が懸念される。』

ナンヤソラという感じですが言いたいことは伝わる。

『企業の倒産・休廃業の増加は、雇用、物価と金融に悪影響をもたらしかねず、』

その通りでございます!と来るのですが最後の最後の結論で椅子から転げ落ちそうになった。

『再びデフレに陥らないように警戒すべきである。』

(ノ∀`)アチャー
(ノ∀`)アチャー
(ノ∀`)アチャー

・・・・・・・・なんでそこで「デフレ」になっちゃうのよそんなの結果じゃんと申し上げたくなるのですが、何せ置物リフレ理論だと「物価が上がると経済はウハウハ」という原因と結果を引っくり返した話になっているらしいのですが、そこは「デフレにならないように警戒」じゃなくて、そういうスパイラルが起きる原因となり得るものに対して日銀が何か出来ないのか、ということを考察して、政策をするなり、政府などの対策を要望するなり(経済財政諮問会議があるんだから)というお話であって、物価ガーじゃないだろうよお前という所ですな。


・金融政策運営の部分も仕方が無いので見る

まあ何ですよね、最近の議事要旨のシャンシャン振りもそうですし、この意見読んでいても何ちゅうかこう意見を言っている人の魂の叫びみたいなのが無いから(個人の感想です)、読んでいても心を打つものがなくて、なんかサロンで紅茶でも飲みながら(なのか鰻重でも食ってるのかしらんですが)上滑りのフワフワした話をして、執行部が持ってきたものにシャンシャンしているって感じを受ける訳ですよ(個人の盛大な偏見です)。

と思いまするに、ジンバブエ大先生の場合は、内容があの有様であっても、ご本人が色々と脳を絞って魂の叫びみたいなのは一応あった訳で、内容は兎も角というか論外でしたが、ちゃんと考えて別の視点から論点を提供しようってのはあったと思う(個人の感想です)ので、益々アカンわこのスリーピングボード、と思ってしまうのでした、なおジンバブエ先生渾身の論点提といってもただの迷惑行為ではありましたが。


てな愚感想はともかく、『U.金融政策運営に関する意見』をみたらこんなのがありました。執行部見解だと思いますが。

『・現在の3つの柱に基づく金融緩和は、様々な情勢変化に対応する余地が大きい柔軟な枠組みである。特別プログラムの総枠は、第2次補正予算による民間金融機関を通じた無利子・無担保融資の拡充などによって、約 110 兆円にまで大きく拡大している。』

>現在の3つの柱に基づく金融緩和

誰です!3本の鉛筆とか言ってるの!!柱ですよ柱!!!

#なお今後も鉛筆呼ばわりは変更する予定がありませんしオリジナル命名はアタクシではなくマイ師匠です

しかしまあ何ですな、

『・企業等の資金繰りには依然ストレスがかかっているが、間接・直接金融の双方で緩和的な資金調達環境が維持されている。3月以降の金融緩和措置は所期の効果を発揮している。』

って話だが、別にこれ無くても普通に株とか為替とか債券市場が落ち着いたらスプレッドは縮小してたし、金融機関の貸出態度は元々緩和的だったうえに制度融資とかをぶっこんで貸出促進策取られていたんで、あなた方の3月以降の金融政策が効果を発揮した訳じゃないというか、人の成果横取りにも程がある。

『・現行の枠組みの下であらゆる手段を果断に講じて、企業の事業継続・雇用維持、および金融市場の安定維持に資することが、現在の危機対応としてだけでなく、その後の回復のためにも必要である。』

どこまで臨時措置続けるつもりかよ、というか日銀の政策委員やってるんだったら震災手形の出口政策が全然出来ずに引っ張り続けたことが金融不均衡をもたらして昭和恐慌での傷を深めた(別に震災手形がメインな訳ではないと思いますが)だろって話知らんのかいな。

などと申しておりますが・・・・・・・・・

『・今後も、更なる政策対応の必要があれば、迅速に対応すべきである。その際、政府と中央銀行、および中央銀行間の緊密な情報交換や課題・認識の共有など、協力体制を堅持することが重要である。』

とかもう書くことが無いから何だか知らんけど空気みたいな文章が出てきている、というのはあるのかなと思いますが、書くこと無くて空気であっても、例えばその3本の鉛筆の数字の出し方とかそういうことでも突っ込みようはあると思うのですけど、ただのシャンシャン賛成マン&ウーマンやってるとそうなるんですかね、寂しい。


・最後にまた物価話が出ているのですが、何を今さら物価最大フォーカス何だよという感じです

『・予想物価上昇率が2%にアンカーされていないもとでデフレに陥ることは、「物価安定の目標」達成の重大な障害になりうるため、先を見越した追加緩和が現時点で必要である。』

片岡さんですね、でもって何をどうするんですか???というかデフレに陥るのが目標達成の重大な障害になりうるって物価目標が達成できないのが物価目標を達成できないことにつながるみたいな進次郎構文っぽく見えるのでもうちょっと書き方工夫してください、赤点再履修。

『・経済政策運営においては、まずはデフレが定着するリスクを最小限に抑制することが必要である。その後は、経済が、年率2%程度の物価上昇が持続可能となるような成長軌道に乗るまで、アベノミクスの3本の矢を最大限、継続して働かせることが求められる。』

これはまた死語と化した「アベノミクス3本の矢」、いったいいつの時代に生きてるんだという感じですし、大体からして「デフレが定着するリスク」を最重要に置くとか平時の話を何故ここでするって所で、マクロ経済の安定化と金融市場、金融仲介機能の機能維持だろ重要課題は。

ってな感じですかね。物価絡みでは次の人のもあるんですけど、

『・緊急支援から回復推進へと局面が徐々に移行する状況で、現在の金融政策の経済刺激効果を改めて検討すべきである。自然利子率、予想物価上昇率ともに下振れする可能性を踏まえながら、今後の物価動向に細心の注意を払うべきである。』

この書き方だと、足元の話はさておき回復推進に局面が進んでいく中での論点の話をしているように思われまして、まあそれなら平常時モードに近い話だから物価の動向に、というのはまだ分からんでもないが、アタクシ的には物価は結果なのであって、物価を気にするよりもマクロ経済の安定成長が先じゃろとは思いますけどね。

『・感染症により「物価安定の目標」の達成が後ずれし、金融緩和の一層の長期化が想定される中、副作用のさらなる累積にも配意しながら、実体経済の悪化が金融システムの安定性に影響を及ぼすことがないよう、これまで以上に慎重に検討していく必要がある。』

これは鈴木さんムエンゴの叫びで物価を注意するという話ではありません。まあ暖簾に腕押し委員会の中で大変ですわな。

あとこのコーナー、最後にこんなのがありましたが・・・・・・・・・

『・企業が利益を賃金や設備投資に振り向けずに内部留保として積みあげることがコロナ禍を乗り越えるための有効打として再評価されている。そうした内部留保至上主義が続く場合には、企業の投資スタンスが慎重化し、企業の資金需要に働きかける金融政策の効果は限定的となる可能性がある。』

資金繰りの話と収益の話をごっちゃにしてないかこの人???????????????

ということで、締めの意見が更にズッコケということで、もう何か今回のは見てて悲しくなった。どうしてここまでダメな状況にならんといかんのだ(人選が悪いというのに尽きるんでしょうが)。










2020/06/24

お題「社債オペとか基調的物価のメモ/4月5月の会合はまあ碌な討議はしていないのは良く分かった」

ほほう。
https://www.asahi.com/articles/ASN6R3JZYN6QUTIL01L.html
シャンシャン、久しぶり! 上野動物園が予約制で再開
会員記事 新型コロナウイルス
長野佑介
2020年6月23日 11時16分

日本橋本石町のシャンシャンだったら久しぶりどころかいつでも行われていますよ、見ても一切可愛くないですけどね!!!!!

#今日のちょっと長いダンダラになっているのはCPIのせいです

〇社債オペ3−5年はとりあえず入れるものがまだまだありまして

というかあっという間に枯渇されて落札レート国債並みとかになったら憤死する世界なのでまあこれはこれで。

(社債等買入のオファーと結果だけ)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of200623.htm
社債等買入(残存期間3年超5年以下) 2,000 2020年6月29日

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba200623.htm
社債等買入(残存期間3年超5年以下) 6,177 2,000 0.170 0.192 33.3

ということですが、前回の社債買入が5,920/2,001という応札落札状況で、レートの方が平均21.2bpの足切り17.0bpでして、今回も17bpで切れるとかなんという偶然というか、まあ前回がその数字だったからイメージがそこになったとかそういう感じですか良く分かりません。

一応日銀的には「応札が増えた」のを評価する(応札が増えたというのは、日銀の新たな買入によってこの年限の社債発行が活発化したという効果が出ている、という理屈になる)ことになりそうですな。なおこれを見ると足切り下限レートの事前提示はありませんでしたが、まあ何ぼ何でも新たに始めたばっかりの3−5年社債買入で国債フラットまで入れる札が無いってことはないでしょうと思われるので、だと思います。

なお、建付け的に言いますと、別に事前に下限とか上限とかの応札数値をアナウンスすることが無くても、募入予定額未満の所で「ここから先の利回り(価格)の買入は好ましくないのでぶった切りました」という措置は可能ですので念のため。ただまあそれをやるのはそこそこ説明付けできないといかんでしょうなあというのはある。

いずれにせよこの足切り17bpがこの2発によって(別に何で17かというと根拠のある話じゃないと思いますが)何となくマジックナンバーっぽくなってきた感じで、このレートが下がりだすと政策効果と言えば政策効果ですが、当方と致しましては社債買入がtoo muchであることが更に示されたのでどうしてくれると悪態マン、という段取りになるかと存じますです。さてどうなるやら。


〇基調的なインフレ率

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

グラフを見てもよー見えにくいのでエクセルちゃんをポチっとなとします。

刈込平均値(前年比、%)

Jan-19 0.5
Feb-19 0.4
Mar-19 0.5
Apr-19 0.7
May-19 0.7
Jun-19 0.6
Jul-19 0.6
Aug-19 0.4
Sep-19 0.3
Oct-19 0.3
Nov-19 0.2
Dec-19 0.3
Jan-20 0.3
Feb-20 0.2
Mar-20 0.1
Apr-20 -0.1
May-20 0.0

加重中央値(前年比、%)

Jan-19 0.1
Feb-19 0.0
Mar-19 0.2
Apr-19 0.2
May-19 0.2
Jun-19 0.2
Jul-19 0.2
Aug-19 0.0
Sep-19 0.0
Oct-19 0.0
Nov-19 0.0
Dec-19 0.0
Jan-20 0.0
Feb-20 0.0
Mar-20 0.0
Apr-20 0.0
May-20 0.1

最頻値(前年比、%)

Jan-19 0.2
Feb-19 0.2
Mar-19 0.2
Apr-19 0.3
May-19 0.3
Jun-19 0.3
Jul-19 0.3
Aug-19 0.2
Sep-19 0.2
Oct-19 0.3
Nov-19 0.3
Dec-19 0.2
Jan-20 0.3
Feb-20 0.3
Mar-20 0.2
Apr-20 0.3
May-20 0.3

意外なのか順当なのかとかそういう話は物価オタクいやすいません物価の方に非常にお詳しい方に聞くしかないので何ともかんともなのですが、上にも下にもまるっきり動意がなさそう。コロナちゃんの影響とか出てこないもんなんですかね。

左から

上昇品目比率(%)
下落品目比率(%)
上昇品目比率−下落品目比率(%ポイント)

の順。

Jan-19 54.9 37.1 17.8
Feb-19 54.1 37.9 16.3
Mar-19 55.6 35.6 20.1
Apr-19 58.5 33.3 25.2
May-19 58.7 33.5 25.2
Jun-19 59.5 32.5 27.0
Jul-19 59.8 32.7 27.2
Aug-19 59.5 33.1 26.4
Sep-19 59.1 33.1 26.0
Oct-19 59.5 38.8 20.7
Nov-19 62.1 36.1 26.0
Dec-19 60.2 38.0 22.2
Jan-20 61.8 36.5 25.2
Feb-20 60.0 38.4 21.6
Mar-20 57.9 40.5 17.4
Apr-20 58.3 39.2 19.1
May-20 59.1 38.6 20.5

正直何かこうコロナだからどうなったとかそういう感じがあんまり無いような気がする、そんなもんなんですかね・・・・・・・・専門家のコメントを聞きたい。



〇決定会合議事要旨ネタの続きですいません(まずは4月の積み残し)

4月会合の積み残し分があるのでまずはそこから

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2020/g200427.pdf

・今般の「中小企業向け融資の支援」という壮大なお題目が日銀の手に余るから理屈が無理くりになる

『X.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』の積み残しで、そもそも執行部はどういう説明であの建付けにしたのか、という部分から参ります。最後の大和魂理論(ちなみにあの珍理論はリフレ3馬鹿のうちの誰かであることは間違いないですが今のところ判断保留)。

『こうした委員の意見を踏まえ、議長は、執行部に対し、金融緩和を一段と強化する具体策として、どのような対応が考えられるか説明するよう指示した。執行部は、以下を主な内容とする政策案を提示した。 』

てなことで例の政策案。CP社債買入の方はパスしまして新コロの話。

『3月に導入・開始した特別オペの拡充策としては、次の3つが考えられる。』

ほう。

『@対象担保に家計債務を含めた幅広い民間債務を追加する。これに伴い、オペの名称は「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ」と改める。この結果、対象担保は、3月末時点でみて、約8兆円から約 23 兆円に増加する。』

いやあのですね、まあさすがにそれを言っちゃあ身も蓋も無いからその時は言わなかったんですが、結局あの3本の鉛筆のハリボテモリモリ数字を出したから遠慮なく申し上げますと、この話って自分等でも「対象担保は増えます(のでオペ残高も増えます)って言ってるように、ただ単に既存の共通担保オペなどからの振り替えが発生するだけの話で、何がどう企業支援なのか分からんし、こんなの住宅ローン担保証券を担保にしている額が割と多いからここの数字に目を付けたってそんだけの話で、そらまあ確かにこれやればオペの「数字」は稼げるかもしれませんが、元々日銀向け担保として使っているものが振り替えでこの新コロオペに振り替わったからと言って何の支援になっているの????その波及効果とか政策意図は???????って事をさすがにここまで堂々とハリボテだされると質問したくなります。

でもってどうせ質問すると企業の融資が伸びてるからこの効果ですって言うのですが、別にこのオペ関係なく融資伸びてるでしょちょっとその因果関係説明してみろやって話になって話は迷宮入りするのでしょうな、と想定問答まで思いついてしまうのが我ながら悲しい。

『A対象先に、系統会員金融機関および政策投資銀行を追加する。』

うーんこの。貸出増加支援みたいなのだったら話はまだ分からんでもないのだが、ただの既存担保振り替えで数字が出来ていく(いや確かに新規貸し出し分とか新規の社債購入分とかありますけどね)物件だとちょっとねえと思いますし、政策投資銀行の追加ってよく考えたら何の意味あるのかが分からん。

いやまあ当方も政策投資銀行様の資金繰りとかまで詳しくない(開示資料を細かく見ればわかるのかもしれませんがそこまでの興味は無かったですサーセン)のですが、基本的に政投銀が直接融資する場合って、財政投融資計画によってついてる予算から出すんだったらバックファイナンス要らんじゃろと思うし、もしかして財政投融資無関係で独自に社債発行(というのは都市再生機構みたいなところの場合だったような気がするが)したとしたって、やっぱりバックファイナンス不要だし、そもそも政策投資銀行が融資するような資金のバックファイナンスを日銀オペでやっていたら物凄い勢いで長短ミスマッチになってアカンやろと思うのですが、これ何で追加されているのか良く分からんのと、まあニーズがあるから追加されているとか何でしょうけれども、参加する意味合いは何なのってのが良く分からん。まあ人様の懐具合の話なのですけど。

『B本オペの利用残高に相当する当座預金へ+0.1%を付利する。 』

ということで、結局の所これをぶっこんだから対象先が盛大に増えて残高も盛大に増えてきたんですけれども、これはこれで数字が積みあがるのは良いんですけど、何だろうなあ、10bp付利があるから積極融資するぞーという因果関係というのはそんなの発生するのけ???って感はぬぐえないですな。

でもって続いて「新コロオペパート2」の概要の説明もありますがめんどいのでパス。

さて本提案に関する案山子じゃなかった政策委員の皆様のごたく。

『執行部が提示した政策案について、委員は、金融機関や企業等の資金調達の円滑確保や金融市場の安定維持の観点から、金融緩和を強化1するパッケージとして適切なものであるとの認識で一致した。』

ちょwwwwwwハリボテ数字を積み上げるのもほどほどにした方が良いんじゃないかとかそういう意見出ないのかよおいこの案山子共。

『ある委員は、経済情勢が厳しさを増す中、執行部の提案は思い切った施策であり、これを迅速に実行することは、国民の中央銀行への信認を維持することにも繋がるとの見方を示した。』

これは可愛くない方のシャンシャンですわ。

『一人の委員は、日本銀行が中小企業の資金需要を直接把握することが容易でないことを踏まえると、提案にあるように、系統会員金融機関と協力して中小企業を支援することは望ましいことであると述べた。』

????????????????????????????????????
えーっと何がどう中小企業支援になっているのかとかお分かりなのかね。

『複数の委員は、金融機関経営が厳しくなる中で、特別オペの残高に付利することは、金融機関の積極的な融資姿勢を後押しするために有効な手段であるとの見方を示した。』

別にこれがあるから後押しはされないけど、俄かに給付金がやってきました、ってなもんであって、それ以上の意味を籠めよう、というのはハッタリにも程がある。

『ある委員は、新たな資金供給手段については、議長から執行部に検討を指示し、改めて金融政策決定会合に報告する形にするのが良いと述べた。』

まあこれはどうでも良いのだが、まあそもそも中小企業融資とか分かってそうなのが鈴木さんと辛うじて布野さんかなって状態なので(ゆうてアタクシもそんなに詳しいとは思わんが金貸しの手先はやっていたので全く知らないわけではない、ただし知識と経験が大昔のものなのでまあね)、もうこういう話になるとシャンシャンちゃんになってしまうのはそうだろうなあとは思うがちょっとなんかもうちょっと冷静にツッコミとか入れてよとは思う。

とは言いましても、ほらまあこんな所で「このオペをやって何で中小企業融資の振興になるのか、という波及経路の説明が不十分であって、金融機関に向けた奨励金の性質が強すぎるので、もっと別のアプローチをすべきではないか」とかいうのが出たとか表に出ちゃうとアレだから、議事要旨の段階ではちょっとそこは伏せておいて(なおそのためには「主な意見」に出てこないことが条件になるが)10年後に実はこういう突っ込みもありました、って出てくる事を楽しみにとりあえず向こう10年間は頭の動いた状態で生き続けたいと存じます。


・鈴木委員の孤軍奮闘

というシャンシャンの後に昨日ネタにした国債買入の話からのガイダンスの話になって行くのですが、最後の最後に鈴木審議委員が一人空しくムエンゴ状態(個人の妄想です)でこの発言を。

『これに対し、一人の委員は、感染症に伴う経済の悪化により金融機関のバランスシートが毀損していくと考えられる中、既に貸出利鞘がきわめて小さくなっている状況で、金利がさらに低下することになれば、リバーサル・レートへの抵触が早まるとの見方を示した。』

でしたらCP社債買入の増額には反対して欲しかったなあと思いますし、まあこの回がアレであっても5月の方での期限延長は、その時点でCP買入レートがマイナス、社債1−3年の買入レートが国債フラットまで低下している、という事実を踏まえたら賛成する必要は無かったんじゃないでしょうかねえ、とは思うのでちょっとそこは残念ですな。



〇5月会合はですなあ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2020/g200522.pdf

提案はご案内の通りの提案なのですがさて何を討議したんでしょう???????

・何のツッコミも無く9月末までの時限措置を半年延長していますね

『V.討議』

『委員は、企業等の資金繰りを支援する観点から、執行部から提案があったように、新たな資金供給手段を導入するとともに、資金繰り支援のための各種措置の実施期限を半年間延長することが適当であるとの見解で一致した。』

CP買入や社債買入(1−3年)の状況を見てないんでしょうなこの人たち。いよーっパンダ審議委員!!


『新たな資金供給手段について、ある委員は、中小企業等への貸出比率が高い系統会員金融機関等を制度開始当初から対象に加えることは、中小企業等の資金繰りをさらに支援するために重要であると指摘した。』

色々とツッコミどころが大杉で頭が痛い。そもそも預資運用で困っている状態の地域金融機関が殆どの筈なのにバックファイナンスを付けようという発想がもうねという感じですわ。

『また、この委員は、最近の経済・金融情勢を踏まえると、今回、臨時の会合を開くことで、新たな資金供給手段を速やかに導入する意義は大きいと付け加えた。』

あーはいはい。

『別のある委員は、緊急経済対策における民間金融機関による無利子・無担保融資を一段と促進していくために、新しい資金供給手段で金融機関の取り組みをさらに後押しすることが適当であるとの意見を述べた。』

別に日銀のこれがあるから促進されねえだろ、時限的にたかだか10bpの付利だぞ分かってるのか??

『資金繰り支援のための各種措置の実施期限について、何人かの委員は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は長引く可能性があり、日本銀行として、企業等の資金繰りを、かなり長い期間にわたって支援していく必要が生じる可能性もあると指摘した。そのうえで、これらの委員は、こうした可能性を踏まえると、念のため、期限を延長することが適当であるとの見方を示した。』

>念のため
>念のため
>念のため

えーっとすいません、前から長期化するかも知れないって話でしたよね、この3週間で何が変わったんですか?それから社債CP市場のtoo muchの買入を「念のため」で延長されるの物凄い迷惑なんですけど。

『このうちの複数の委員は、今後、新型感染症の影響が長期化すれば、企業の資本が毀損したり、貸出債権が不良債権化したりするリスクがある点にも注意が必要であるとの見解を示した。』

と思うならマイナス金利政策止めれば良いんじゃないですかね。あと資金繰りじゃなくて資本の問題って話しだったらこの資金繰りとか流動性供給とか言ってるオペは、事態が長期化したら無用の長物になるって話しじゃないですかねえ。


・わかりやすく説明するのにペテンを混ぜて良いというのはさすがにちょっと終わっとるわお前ら

『続いて、委員は、新たな資金供給手段を含め、新型感染症の拡大を受けて日本銀行が採用してきた諸措置について、市場や国民から十分に理解されるよう、分かりやすく説明していくことが重要であるとの認識を共有した。』

まさかと思えばそのまさかが以下展開される。

『何人かの委員は、CP・社債等の買入れ(残高上限:約 20 兆円)と特別オペ(資金供給の対象となる日本銀行に担保として差入れられている民間債務:約 25 兆円<4月末現在>)に新たな資金供給手段(資金供給の対象となる適格融資:約 30 兆円)をあわせて、新型感染症の拡大に対応した、総枠約 75 兆円からなる資金繰り支援のための特別プログラムとして説明していくことが考えられると述べた。』

キター!!!!

『このうち、一人の委員は、日本銀行の資金繰り支援策は、大企業から個人事業主まで、幅広い先を対象としていることを、明確に示していく必要があると述べた。また、別のある委員は、3月以降の金融緩和の強化は、@上記の企業等の資金繰り支援を企図した特別プログラム、A金融市場の安定を維持する観点からの円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、BETFおよびJ−REITの積極的な買入れ、の3つの柱に整理されるとの見方を示した。 』

3本の鉛筆キター!!!!

『この間、委員は、当面の金融政策運営について、今回の会合では上記の執行部提案に関連する論点に絞って討議し、その他の論点については、6月 15、16 日に開催を予定している次回の金融政策決定会合で、改めて経済・物価・金融情勢を点検したうえで、しっかりと議論することが望ましいとの見解で一致した。 』

ってな訳で話はおしマイケルなのですが、3本の鉛筆に盛っている数字、もともとやっていたオペまで含めてコロナ対策と銘打って実施するのはおかしくないのかって誰も言わなかったのかとさすがに頭がクラクラするというかお前らパンダの赤ちゃんかと小一時間問い詰めたくなりますし、「わかりやすく説明するために話を盛った挙句に実際にコロナ対策じゃなかった数字まで盛って出す」というのを是とする姿勢というのは、物凄く壮大な悪態をつくと知の軽視であって誠実さの欠片も無い姿勢だと思うんですよね。

今回追加した分だけ出して、輪番とかは入れないというのならばともかく、何ぼ何でもあれは説明としておかしいだろということですが、まあその場しのぎで適当な事を言い出すというのは最近のジャパンの統治機構における仕様みたいになっていておじちゃんは悲しいんですけど、そーゆー不誠実なことやっていると後でしっぺ返しが来るんですよねー、しかもこれしっぺ返しが本人に来ればざまあなんですけど後任に来たりすると中々悲しい。

などとただの悪態になっていますが、要するに6か月延長は碌すっぽ議論もしないで決めていて、だったら4月の時点での9月末ってのは何だったのかという話だし、まあ色々とおかしいわという所でありまする。








2020/06/23

お題「新型コロナオペ先が何かエライ勢いで増えてますが/4月会合議事要旨は案の定の出来栄えで溜息しか出ない」

昨日はこのニュース、
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6363181
秋元才加が交際中の人気ラッパー、PUNPEEと天赦日+一粒万倍日の6・20に結婚

の『「元AB48の女優、秋元才加(31)』という数字にマジでビビってしまいました。え゛ーそんなに時間が経ってるのかよーと思ったのですが、よく考えたらQQEどころかマイナス金利が導入されて4年半近く経過してるんだわ(アカン)。


〇新コロオペ先絶賛増加中ですなあ(棒)

ほうほうそうですかそうですか。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200622a.pdf
共通担保オペ(全店貸付)の対象先公募の結果について

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200622b.pdf
新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペにおける 貸付対象先公募の結果について

ということで22先が増加しておりますが、まあ何と申しますかゆうてこれから9か月間の新型オペ(共通担保の方は常設ですけど)の為に次々とオペ先が増えてるのかよって感じではございますが、10bpしかも精々1年半とかそこら(新コロオペの貸出期間は建付け上1年ものまで出来る)なのですが、そのために何か色々と手間暇かけてオペにわざわざ新規参入するのってそれなりにスケール持って入らないと事務的なコストとかに勝てるんかいな、とは思うのですけれども、その割にはジャンジャンと追加されているというのに何やらキナ臭いものを直感的に受けるのですが。

もしかして新コロオペの期間を早速また延長する気満々とかそういうことなのかいな、とか何とか思ってしまいまして、いやまあ新コロオペの方はある意味どうでもいいちゃあどうでもいい(どうせマル保の制度融資だって残高自体は残るけど新規貸出がこの後何年も大規模ではよー実行せんじゃろ、予算どうするねんということで)のですけれども、これにCP社債買入を何故かセットでぶっこんでいるのが実にアカン話でして、今の日銀はクレジットスプレッドを叩き潰すことに関しては屁とも思っていない節がある(その割に金融システムレポートでは「不採算貸出」についてチェックが入るというこの矛盾)のですが、いやだからCP社債なんて国債フラットまで買入進んじゃっているのをあと9か月も続けるのかと思うだけで頭が痛くなるんですが、これを見てると買入も延長するのかよいい加減にしろ、という思いが。

いやですね、そもそもコロナ何とかというのがあると、行政庁様相手に(ピー)なのを伝統芸能にしている銀行業態って「日銀のオペも活用して低利融資」とか看板を出すという傾向がありまして、いやまあ低利融資すんなとは申しませんけれども、ものごとは程々にって感じで、低利融資積み増し&社債CP買入によるクレジットスプレッドの圧縮ってゆーのは、これはまあ普通に考えて銀行の預貸利鞘の一段の縮小に繋がるようなお話で、まーた銀行業態の収益構造がねえとか思ってしまうのは杞憂ですかそうですか。

てな訳で、まあ要するにCP社債買入は短期間の時限措置だったり、額が小さいのならまだ分からんでもないのだが、そもそもがコロナ前の時点でも社債買入によって買入ゾーンのスプレッド形成がおかしくなっていたり、CP買入によって上位格付けのCP金利が良くてゼロ、通常小幅マイナスみたいな金利になってしまい、当座預金マイナス金利適用の裁定取引以外のニーズを基本的に叩き潰しちゃうもんだから、金融危機が起きた訳でも無いのにCPの金利が一緒になって盛大に跳ねちゃう(普段から最終持ち切り投資家の層がそれなりに有れば最終持ち切り投資家の所がバッファーになるので上がるにしてももうちょっとマイルドだったんじゃネーノ、とはアタクシの勝手な妄想ですので念のため申し添えます)とか、いろいろと素敵なことが起きてしまっているんじゃねえのって思ったりするこのCP社債買入が今のスケール感でダラダラ延長されるのはマジで勘弁してほしいんですけどね、といういつもの話で終わるのでした。

しかしまあ何ですな、この新コロオペがどんどん増える(何せ日銀の鉛筆によれば90兆円)ということになりますと、日銀当座預金の10bp付利対象って基礎残高ベースで210兆円弱になるんですけど(基礎残高−所要準備残高)日銀様の触れ込みだとこれが更に90兆円増えるという話になりますと、もはやマイナス金利政策とは何なのかという世界になって来るような気がするんですけど、この「目先の処理は滅茶苦茶優秀」(ただしグランドデザインがないからやっていることがただの場当たりの積み上げ方式)というジャパンクオリティを見事に体現しているなあ、とかたかがオペ先増加だけで悪態を並べてしまいましたすいませんすいません。


〇そういえば金曜に日銀金融政策決定会合議事要旨が出ていましたな(なお討議内容がアレ)

もう優先順位がどうなってるんだかと自分に小一時間ですが、何せ中身がこれですよこれ。

てな訳で4月会合より。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2020/g200427.pdf


・承認事項を議長が勝手に事前発表するのは越権にも程があるのではないでしょうか

案の定であるが最初の部分でもうワロタ。冒頭に『T.金融政策決定会合の日程変更の趣旨説明および承認』があるのだが。

『冒頭、議長より、本日の金融政策決定会合の日程変更の趣旨について、以下のとおり説明があった。 ? 新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、政府の緊急事態宣言が 発出されている。こうした状況を踏まえ、今回の金融政策決定会合 については、感染症の拡大防止に万全を期す観点から、会合の時間を短縮することが適当である。 そのうえで、議長は、4月 27、28 日に開催を予定していた金融政策決定会合の日程を変更し、本日昼頃を目途に会合を終了するよう議事を進めることを提案した。本提案は、全員一致で承認された。』

まあ今更引っ張り出す程の事もございませんが何年か後に見る用にこれを貼っておきましょう。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200423b.pdf
金融政策決定会合の日程について
2020 年 4 月 23 日 日 本 銀 行

『政策委員会議長は、次回の政策委員会・金融政策決定会合について、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に万全を期す観点から、会合の時間を短縮するために、4月 27 日(月)9時に開催し、昼頃を目途に終了する予定とした。』(この部分だけ直上URL先の4月23日日銀公表文書より。

・・・・・・えーっとまあどうせ屁理屈は考えているんでしょうけれども、何で「全員一致で承認された」が行われるべきものを勝手に議長が承認前に公表できるんでしょうかどういう建付けになっているんでしょうかねえ。つーかですね、医療機関でもないし、直接予算付けるような所でも無い日銀が「感染症拡大防止に万全を期す観点」ってナンジャソラという感じでして、「結果を早めに出して市場の動揺を抑えたい」とかいうのなら百歩譲って分からんこともない(だからと言って討議もしないでエイヤーで出すとか執行部提案素通しするというのは委員会方式の根幹を破壊する行為なので行うべきではないと思う、民主政治における統治機関の意思決定プロセスを簡単に壊すのイクナイ)んですけど、そういう理由を入れて欲しかったですな。

というかこの時23日に先行発表した件については誰かツッコミ入れてないの??10年後に元気で生きていたら議事録見たいわ。


・金融政策議論なんだが何かこうフワフワしてるんだよなあ(個人の感想です)

でまあ展望レポートとかどうでもよい(何を言っても結論は「コロナ次第」になるからだし別に興味深い話がある訳でもない)ので『X.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』まで一気にワープする。

『金融政策面での対応の方向性について、委員は、内外における新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、わが国経済は厳しさを増しており、金融環境も企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下していることを踏まえると、金融緩和を一段と強化することが適当であるとの認識で一致した。』

そら方向性が引き締めの訳は無いんですが、さて何をどう緩和するんでしょうか。

『多くの委員は、感染症拡大の収束に目途が着くまでの間は、雇用や事業、国民生活を守ることが何よりも大事であり、金融政策の面からは、円滑な資金調達環境と金融市場の安定維持に全力を傾ける必要があると述べた。』

まあ思いっきり異論はあると思います(というかアタクシの方が変だと思うけど)けど、後段の話は当然なんですけど、前段の変な安物ヒーローみたいな文言必要なのか???中央銀行っていうのは信用秩序維持とか決済機能維持とか金融機能維持とか、そういう安定感が必要なんじゃないでしょうかねえ・・・・・・・・・・・

いやこれが総裁講演とかで話をするから一般向けに威勢の良い事言わないと、ってのなら話は分かるんですが、これ「政策をどうするかという討議」をしている所でしょ???何でこんな安物ヒーローみたいな前置きが入らんとアカンの???

などと一々しょうもない所で突っかかってしまうのがアタクシのクオリティなので勘弁してつかあさい。


『ある委員は、今回も、流動性供給を中心としたさらなる緩和措置が必須であるほか、 一層の状況悪化の可能性にもしっかり備えておくことが肝要であると指摘した。』

流動性がボトルネックになっていましたっけ???という感じですし、流動性供給が緩和措置ってのも何だか微妙ですが。

『別のある委員は、大恐慌の再来を避けるべく、政策当局は果断に対応しなければならないと述べた。』

それ「円滑な資金調達環境と金融市場の安定維持」と何の関連が???

『一人の委員は、政策対応においては、政府と中央銀行間、および主要中央銀行間で緊密な情報交換を行い、課題認識を共有するなど協力体制を維持することが肝要であると指摘した。 』

言ってることは分かるのだが、これって問題が金融じゃなくて感染症なんで、協力体制っていったってクロスボーダーのカレンシースワップ以外になにをやるんだって感じですな。

・・・・・・という訳で、まあ結局の所政策委員の皆さんの話がフワフワしているだけ、というのは把握した。


・緩和手段の話だがその措置が何で緩和になるのかという考察が微妙にも程がある

『そのうえで、委員は、金融緩和の強化の手段について議論を行った。』

さっき「円滑な資金調達環境と金融市場の安定維持」という話をしていましたがさてどうなるやら。

『委員は、企業金融面でのストレスが強まっていることを踏まえ、CP・ 社債等買入れの増額や3月に導入・開始した特別オペなどを拡充すべきであるとの認識を示した。』

CP買入に関しては実際には4月14日には金利が跳ねましたが(0.164/0.106)24日には低下していて、(8.1/5.2)、(めんどいから飛ばしましたが)事務方報告でも何かこうエライコッチャみたいな言い方になっているのですが、3月会合でのCP買入(社債買入もそうですが)の臨時枠設定によって買入を増えた効果がしっかり出ている最中なので、別に見極めとけばエエヤンという感じだったのですけどねえ・・・・・・・・・・・・

『複数の委員は、CP・社債等買入れを増額するに当たっては、発行体毎の買入限度などの要件を緩和すべきであると述べた。』

なお、そのような現象についての考察などは一切顧慮されていなかったというのが良く分かります。

『特別オペの拡充について、複数の委員は、金融機関が、 企業を中心に幅広く民間部門に対する金融仲介機能を一層発揮する ことを、しっかりと支援するために、対象担保範囲と対象先金融機関を拡大するべきであるとの見方を示した。』

特別オペに関しては他の所で散々申し上げましたが、これは既存担保の振り替えでマクロ加算2倍2倍という話なので何だかなあって感じではあります、という所で。

『ある委員は、金融緩和の一 層の長期化が想定される中、厳しい状況にある金融機関経営を念頭に、 融資に対する金融機関の積極姿勢を後押しする措置を講じることが 重要であると指摘した。』

マイナス金利政策解除してください。それからクレジットスプレッドを叩き潰すのも同様。

『このほか、何人かの委員は、中小企業等の資金繰り支援の工夫を、政府の緊急経済対策における制度なども踏まえて検討すべきであるとの意見を述べた。 』

建付け上別にそこ日銀が出て行くところじゃないんですけどねえ、ということで謎の奨励金みたいなオペが出来たのはこの次の会合。


・どう見ても市場統制財政ファイナンスです本当にありがとうございました

でもって次。

『金融市場の安定維持に資する措置として、何人かの委員は、政府の 緊急経済対策を受けた国債発行の増加の影響も踏まえ、イールドカーブ全体を低位で安定させる観点から、国債買入れをさらに積極的に行うことが望ましいとの認識を示した。』

はあそうですか。

『ある委員は、イールドカーブ・ コントロールのもとで金利目標を実現していくために必要な金額の国債買入れを、上限を設けずに行っていくべきであると述べた。』

もともと上限は無いんですが馬鹿の人ですか??????

『そのうえで、この委員は、同措置は、政府と日本銀行が連携して厳しい経済情勢に対応していくという姿勢を訴える効果もあると付け加えた。』

しかもこのコーナーここでおしまいってナンヤソラ。財政ファイナンスとみなされないようにとかいうツッコミ無いのかよ。


・最後の方にさらにしょうもない議論内容が・・・・・・・・・・

でまあ執行部提案があるのですが、その先の方にああだこうだとあって、途中をちょっとだけ見ますと「モメンタム」文言の削除の話がありました。

『委員は、政策金利のフォワードガイダンスについても議論を行った。』

これな。

『ある委員は、「物価安定の目標」に向けたモメンタムは、いったん損なわれていると判断せざるを得ず、政策金利のフォワードガイダンスは 「感染症の影響」に紐付けたものに変更することが適当であるとの見方を示した。』

まあ何だかねって所ですが次。

『別の一人の委員は、政策金利のフォワードガイダンスは、 「物価安定の目標」に向けたモメンタムではなく、金融経済活動の下支えに資する対応を優先し、必要があれば政策対応するという、現在の政策スタンスと紐付けることが適切であると述べた。そのうえで、 この委員は、こうしたガイダンスは、企業や家計のマインドが急落するもとでは、人々の安心感に繋がる可能性があると付け加えた。』

節子、それただの文言削除や。何で安心感につながるんや??


そして、このガイダンス文言の直後の部分にこの前も何か出ていましたが、大和魂があれば竹槍でB29が撃墜できるという大和魂理論を今回もまた開陳するお方がおいでです。

『以上の議論に加えて、一人の委員は、大きな経済危機においては、 財政・金融政策の緊密な連携・協調が必要不可欠であるとしたうえで、 インフレ率の高騰リスクは、「物価安定の目標」が堅持されている限り制御することができ、現在はデフレが懸念される局面であるため、 更なる財政・金融政策の連携は十分に可能であると述べた。』

>インフレ率の高騰リスクは、「物価安定の目標」が堅持されている限り制御することができ
>インフレ率の高騰リスクは、「物価安定の目標」が堅持されている限り制御することができ
>インフレ率の高騰リスクは、「物価安定の目標」が堅持されている限り制御することができ

・・・・・・・・お前は何を言ってるんだ????????

まあ何ですな、4月会合がこの調子。5月会合ではCP社債の臨時措置期限延長という重い筈の事に関して案の定討議された形跡なし、という審議委員の皆様におかれましてはつば九郎とドアラとハリーホークとマーくんにでも交代した方がエエンチャイマスかというような光景が見られていたのですが、改めて書いているうちに念のため色々と他のも見ていたら時間が無くなってしまいまして、5月会合議事要旨ネタが持ち越しになってしまいました誠に申し訳ございません。







2020/06/22

お題「ドルオペの若干の緊急モード段階引き下げ/FOMC会見より(最終回)」

ちょっと愛機dynabookちゃんが勤続2年半なのですが最近機嫌が麗しくなくなる事案がたまに発生するようになりまして、経験的にこれが頻発すると突如クラッシュするのが仕様ですから、データのバックアップをせっせといくつかの方法で取りながら運用しています。

ということですので、本来の更新すべき日に更新が無い場合は、PCが飛んだか闇討ちにあったか疾病隔離でもされたか、などと想定していただけるとありがたく存じます。

と朝から碌な話をしませんがドルオペに関して。

〇1週間物の毎日オファーは6月末までとな

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200619a.pdf
2020 年 7 月以降の米ドル資金供給について

2020 年 6 月 19 日
日本銀行

『米ドル資金調達環境の改善や、最近の 1 週間物の米ドル資金供給における需要の低さに鑑み、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、スイス国民銀行はともに、米国連邦準備制度と協議のうえ、1 週間物の米ドル資金供給の実施頻度を日次から週 3 回に減らすこととした。この運用上の変更は、2020 年 7 月 1 日から適用される。3 か月物(84 日物)の米ドル資金供給は、引き続き週次で実施する。』

ということですが、まあこの毎日オファーに関しては当初決定時に「少なくとも4月末まで」となっていたのですが、5月、6月にも延長になっておりましたという代物でして、まードルファンディング市場が落ち着いてきますと、この措置も本来のバックストップ機能に戻していきましょう、という一種の緊急対応措置からの出口政策でそらそうよという話。

ドル資金オペで3Mが30bp台(タイミングによって違うが概ね30半ば程度)で取れるわ担保もあるしこれでファンディングコスト削減できるからもっと買えヒャッハーと来られてしまいますと、目先的には米国金融市場における資産価格の上昇(金利ものだったら金利の低下)につながるからそれはそれで良いのかも知れませんが、基本的に金融ショックを増幅するのはレバレッジであることは申すまでもない事でありまして、リーマンショックのお蔭で「長期の低流動性金融商品を購入する資金が短期調達」という調達ミスマッチや流動性に関する問題にはクッソ五月蠅くなりましたけれども、「ロングショート型ファンド」とか「普通にやってると利回りでないからオフバランス使ってレバ掛けて何倍運用」みたいなのもこれまたある種のレバレッジな訳でして、毎度毎度今回のコロナショックの時に起きたのは資金化でドルへの戻し、とは言われるのですが、それよりも拡大したレバレッジがこれまでの相関を無視した動きに盛大に食らってロスカットの誘爆になったんでネーノ的な気もするので良く分からんですな。

えーっと何位を言ってたんでしたっか話がそれましたが、まあこれまでも「ドルオペの予定」という表ですけど、1週間物のオファー日程に関しては「今の所実施が確定している所までは毎日オファーするけど、それ以降の所は週1オファーで予定表作っている」という仕様になっていました(見直しの可能性を常に入れていた)んですな。よって今回減ったのは減ったのですが、実を言えば例の表的にはそんなに減った気がしない、というのが味わいのあるところです。

『上記の中央銀行は、市場の状況に応じて、米ドル資金供給を再調整する用意がある。これらの中央銀行間の米ドル・スワップ取極は、利用可能な常設の制度であり、グローバルな資金調達市場の緊張を緩和する重要な安全弁として機能することによって、国内外で、こうした緊張が家計や企業に対する信用供給に及ぼす影響を軽減することに資するものである。』

という締めですが、これはつまり「本来この制度は市場混乱時のバックアップ装置なのであって、バックアップ装置があるから皆さん安心してグローバル市場で活躍してください(ただし自分のファンディング能力に応じてね)」という制度でありますわな。まあ3月の時はかなりどうしようもな状態だったから、FEDがこのスワップの金利を25bpだか何か引き下げを行っていましたが、上記の説明にもありますように、これはあくまでも市場がおかしい時の駆け込み寺なのであって、平常時からサービスレートで海外金融機関のドルファンディングを支援するというような金融緩和措置ではない、という建付けになっておりますので、まあ次に来るのは3Mの廃止(さすがに3Mは廃止する時にはやや前広にアナウンスすると思いますが)かレートの引き上げか、レート上げてくる方が先じゃないかな(個人の山勘です)。

まあこれ日本様の利用がやたら多いと御評判ですが、日本の機関投資家としては金利を潰すだけでは飽き足らず、社債市場のクレジットスプレッドまで破壊に掛かっている日銀がいるので、そらクレジットスプレッドがまだある(適正かどうかはパス)海外に行くし、市場の流動性から言ってそら米国に行くわな、ということでして、別にこれを厳しくされて大けがする人はいないでしょうけれども、折角のボーナスステージもさすがにそろそろ幕引きの方向ですな。

尚日程表はこちら。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200619b.pdf
米ドル資金供給オペレーションのオファー日程(2020年6月〜8月)[一部変更]

変更前のは先月末に出ていまして
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200529b.pdf
米ドル資金供給オペレーションのオファー日程(2020年6月〜8月)

変更前の方ですが、毎日オファーが確定している6月までは毎営業日のオファーになっていますが、特例措置がいつ切られるかというのは状況見ながら皆さんで相談していくということでして、今回は1wを回数を減少してきた(予定表見ると増えているように見えてしまいますが)、ということかと思います。最終系は昔みたいに「1Wのドルオペが週に1回金額無制限でオファーされるけど、金利自体が市場調達するよりも高いバジョット・ルール水準なので開店休業」になるかとは存じますが、このオペって確かに国際協調的な意義があるから重要は重要なのですけれども、別に実力以上にドルファンディングして米国に投資されましても、そういう投資は実は危機時の市場混乱の引き金を引く要因に容易になってしまいます、という意味でサステイナブルな投資じゃないので、当局としても「市場金利より有利だぜヒャッハー」と来られるのは本来の意味からすると好ましくないはずなんですよね。うんうん。

#その残高を嬉々として「コロナ対策をこんなにやりました」と鉛筆にする中央銀行のことは知らん

まあ要するに「いつまでも、あると思うな。サービスレート」って話で、よーしパパどんどんドルオペにシフトして大儲けだ〜とか喜んでいる方(がいるとすれば)はちゃんとコンチプラン考えてねという話なのでありました。


〇FOMC会見ネタの続きちゃんに戻りまして

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20200610.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference June 10, 2020

今朝見たらまだ最終バージョンにはなっておりませんな、うんうん。

・財政に関する質疑だが何故かパウエルの説明がやたら長い

これは16ページ目の所になるんですが、質問する方の質問が???ではあるのですけど、米国ではそういう見方をされているのかな、とか思ってしまったのがこの質問。

『SCOTT HORSLEY. Thank you, Mr. Chairman. I know you're loathe to weigh in too heavily on fiscal policy, but given your forecast for elevated unemployment rates, do you think it's important that Congress extend the $600 a week extra unemployment benefits? 』

質問の前半で、「議長は財政政策に重きを置きすぎることには乗り気ではないように見えますが」というのがあってうーんこのという感じ。むしろアタクシが見ていると「うちんちはやれることはもうやったんで後は議会と政府の方で何とかして下さいその時に必要な流動性なら出しますよ」って感じになっているように見えるのですが、こういう見方なのかね、とか不思議に思いながら、こんな悪い見通しだったら追加財政をしないと行けませんし、今出ている追加の話で足りると思ってるのという質問何ですが、これがまた突如そもそも論の大演説が始まるパウエルさん。

『CHAIR POWELL. I think we try to keep our comments on fiscal policy at a high level, and I'll -- I'll come to your specific question, but I would just say this, this is the biggest economic shock, in the U.S. and in the world, really, in living memory. We went from the lowest level of employ -- unemployment in 50 years to the highest level in close to 90 years, and we did it in two months, extraordinary.』

今回のコロナショックは経済に過去50年無いような大変な事が起きましたが、

『And appropriately, the response from fiscal authorities has been large, forceful, and very quick by -- by the standards of these things.』

過去の色々なショックと比べて財政のレスポンスは非常に早く力強いものでしたよ今回は。

『Roughly, $3 trillion Congress has authorized, and that's benefiting households, laid-off workers, small, medium, and large businesses, hospitals, state, and local governments, 14 percent of GDP, it is -- it's in a class by itself, in terms of both the size and the speed of it, and it's also pretty innovative.』

家計支援プログラムについて褒めています。

『You know, the -- both the PPP and the unemployment insurance are quite innovative in American contexts, and there were difficulties in implementing it, but that's really a function of -- of their novelty, I think. Those programs -- let me -- by the way, let me add, the Fed, also, we both innovated, and acted proactively, and aggressively, -- proactively and aggressively as well. If you put those together, all of that is making a difference now. You look at the income data, the expanded unemployment insurance and also the stimulus checks have gone a long way to replacing lost income from -- from job loss. I think you're seeing it in the job market data, many are giving the PPP credit on that front, and -- and in keeping small businesses going. So, it's -- so far, it's a good response and it's having -- it's having a big effect. You -- you get to -- the question is, it's big, everyone can see that it's big.』

この家計支援プログラムに関しては、規模も大きくプログラムの受益者も多くて、このおかげで家計が随分と助かっており、これ無かりせば米国経済はもっとぐちゃぐちゃになっておりました。とこれ最近のFEDの特徴で、デュアルマンデートの片方があばばばばーでもう一方はある意味無視可能な水準にあるという事を鑑みれば当たり前の話ではあるんですが、雇用の話を物凄い勢いでして、それに伴って家計のお助け話をこれまた物凄い勢いで行う、というのが仕様になっておりますな。

『Is it going to be big enough? And that -- that is the question, and -- and the question for -- for -- the question that I've been concerned about, really, is this issue of longer run damage to the economy.』

向こうの質問が「今度議論になっている追加財政の規模」の話なのに、パウエルさん見事に独自の説明をおっぱじめ出すの巻がここから。長期的な経済への影響の話。

『We're -- we’re -- we're doing a fair job of getting through these first few months -- more than a fair job. The question though, is, that group of people who won't be able to go back to work quickly, what about them? And that could be many millions of people, you know, in parts -- who worked in parts of the economy that will be the slowest to recover. And you know, we want those people back in the labor force, we want them getting jobs, so -- and -- and they're going to need, possibly, probably will need further support.』

長期失業が増えたりトレーニングの機会が無くなることによって労働者のスキル低下からのトレンド生産性低下を懸念、ともはや質問された話から踏み越えたパウエル演説モード。

『So, I will just say this. It's possible that we will need to do more, and it's possible that Congress will need to do more. In terms of the $600 unemployment insurance, I wouldn't -- I wouldn't try to give Congress advice on the specifics of that. I -- I know they're looking at -- I mean, I -- I know from both talking to people and -- and reading the papers that they're looking at a whole bunch of different possible approaches going forward, and some of those seem kind of promising. So, you know, we're happy to give advice if people ask for it, but -- but probably not -- not publicly. 』

なお、追加財政の額が適切かどうかという質問に関しては、それは私の立場での話じゃないですよと言いながら、しらっと「we're happy to give advice if people ask for it, but -- but probably not -- not publicly.」とかお茶目な。まあこれで言いたかったのは「労働者のスキルを落とさないための政策対応もしないといけませんね」ってのを言いたかったんジャマイカと勝手に想像します。


・経済見通しと財政について

あとは先日引用した辺りの質疑がありまして、他にはこんなのがありました本文23ページ。

『VICTORIA GUIDA. Hi, Victoria Guida with Politico. I just wanted to follow up on a couple of things that are -- have already been asked. First of all, on fiscal policy, you all obviously put out your summary of economic projections today and I'm curious to what extent future fiscal policy is factored in or not factored in to those projections, and -- and how, more or less, fiscal policy might affect those projections?』

『And then my other question is, on -- on Main Street, you've mentioned multiple times that you know, the Fed and Treasury are willing to expand the program further. So, my question is, what's the threshold for those types of changes? Is it just making sure that borrowers that want to borrow through the program are -- are --are able to do that? 』

前半がSEPの見通しにどこまで財政入れているのかという話ですが、

『CHAIR POWELL. In terms of the -- the way we do forecasts is we -- we don't -- the -- we don't tend to incorporate things we're highly uncertain about. So, I think the -- the forecast would not have included substantial, additional -- you know, big additional fiscal support for the economy, maybe -- maybe a modest amount, something that looks like a -- a low end guess on what might come out of the current negotiations, that's basically what would be in the baseline.』

要は何となく入れているけれどもそんなに無茶苦茶入れていないし、まあその影響はそんなにデカいという訳でもないですよモデストモデスト、と言ってますが、やたら微妙にうーんっとえーっとって感じになっていて、どう見てもこれはSEPの見通しで今回重要だったのは「2022年末まで利上げしません」というドットチャートだけで、経済物価の数字については「エイヤー」で腰だめの数字をぶっこみました、というのを示している、としか思えませんがどうでしょう(個人の感想です)。

『So, of course, if there were more fiscal support, you'd see -- you'd see better results sooner, but that's a question for Congress. You know, we're -- we're spending a lot and that's really what they get to decide.』

追加財政とかに関しては議会の決めることなんで、まあ決まった後からまた見通しに入れるでしょうな位の話で、それはまあそうするしかないので順当。


『In terms of Main Street and our willingness to expand it further, I think we're -- one thing we're looking at, very strongly looking at is -- is nonprofits, and is there a way to -- to incorporate them into that facility or a similar facility? So, that's another dimension. Not -- you know, if we had a great idea for changing Main Street, we would have done it, but -- and we -- and we have done some things that I think are really very positive lately here. But if we -- as we learn more, it could be -- it could be in terms of size, it could be in terms of lots of different things. But I -- I think we have a good product to go to market with now and I think it will -- it will get out there soon and you know, we'll see, and -- and we'll be willing to continue to adapt. 』

メインストリートレンディングプログラムに関しては、まあやっと先般始まったとか何とかでしたが、これは勢いよく箱を作ってみたは良いけれども、その施策が施策として機能するには、みたいな検討を後付けで色々とやっているんですな、というような趣旨だけは把握できました。

まあFOMC会見はこんな所で、総裁や副総裁スピーチ出ているのでその辺の変化があるか追っかけないとですね。








2020/06/19

お題「MPMレビュー雑談のつづきです」

地元紙(中国新聞)から無慈悲に砲撃を食らっていますな、前から砲撃急先鋒だけど。
https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=653886&comment_sub_id=0&category_id=256
【激震 河井前法相夫妻逮捕】絶頂一転、瀬戸際に 権力バックに慢心か
2020/6/19

〇飛ばしてましたがやはりMPMなので経済物価アセスメントの確認を

なにせ前回の決定会合では、
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200522b.pdf

にある通り、経済物価情勢に関する現状認識や先行き見通しを何も出さずにCP社債買入の期間を6か月延長という議決を行っておりまして、

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200522a.pdf
中小企業等の資金繰り支援のための「新たな資金供給手段」の導入

のところで新型コロナオペパート1の期限を延長しているのですが、こちらに関してもご覧の通りで経済物価情勢に関する現状認識や先行き見通しに何らかの変化があったのかというような話は皆無なので、何を根拠に期間を延長(しかも従来の期間の倍以上になる)したのかの説明が全くなかった(としつこくイヤミを言う)ので、比較するのは4月の展望レポートとなります。

ということで一々イヤミを言いながら始めますけど(^^)。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200616a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2004a.pdf(4月展望レポート)

・現状認識は多くの需要項目で下げています

『わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、きわめて厳しい状態にある。』(今回)
『わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、厳しさを増している。』(4月)

厳しさを増している→きわめて厳しい状態にある、ですから一応下がっているちゃあさがっているのですが、「増している」とあると状況が現在進行形で悪化している感じになるので、水準は下がっているけど方向性に関しては今回の方は現在進行の悪化なのか、悪化しきってあばばばばーなのかはこの表現だと良く分からん作りになっています。

『海外経済は、感染症の世界的な大流行の影響により、大きく落ち込んだ状態にある。』(今回)
『海外経済は、感染症の世界的な大流行の影響により、 急速に落ち込んでいる。』(4月)

海外経済の表現も総括判断と同じような形の表現変化ですが、

『そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は大幅に減少している。』(今回)
『そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は減少している。 』(4月)

ということで輸出と生産の現状判断を下げ。

『企業収益や業況感は悪化しており、設備投資は増勢の鈍化が明確となっている。』(今回)
『企業の業況感は悪化しており、設備投資はこのところ増勢の鈍化が明確となっている。』(4月)

企業収益ってのが入っているし、設備投資に関しては言い切り型になったのでこちらも判断引き下げ。

『感染症の影響が続くなかで、雇用・所得環境には弱めの動きがみられており、個人消費は飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少している。住宅投資は緩やかに減少している。この間、公共投資は緩やかに増加している。』(今回)

『感染症拡大の影響が強まるなかで、雇用・所得環境には弱めの動きがみられ始めており、個人消費は飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少している。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移しており、公共投資は緩やかに増加している。』(4月)

雇用の所も弱めの動きが見らえ「始めて」おり、の始めてが抜けましたし、住宅投資も判断下げ。個人消費のこの「飲食・宿泊等のサービスを」云々って要るのか?という感じですが、ここは判断維持、公共投資も判断維持。


『わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下している。』(今回)
『わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下している。』(4月)

んーっとですね、企業金融面での緩和度合い低下ですが、企業の資金繰り悪化というのは金融要因で悪化しているのではなくて、企業の所得というか売り上げというか、そっちの面から来ていて、金融環境は緩和している、っていう状況だったら、金融機関向けのサービスレート付き資金供給を拡大延長するのって、それ政策として何かズレてませんかという話。

むしろ(別にそんなことする必要はないと思いますが)企業の資金繰りが悪化しているので、企業のローンを直接買入するとか、そっちの方がこの現状認識だったら施策として適切なんじゃネーノと思いますし(そういう意味では3本の鉛筆中一番ダイレクトに近いのは何のことはないCP社債買入)、長期国債買入をコロナ対策に入れてしまっているのは何ぼ何でも無理があろうかと思われます。


『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、原油価格の下落の影響などにより、0%程度となっている。予想物価上昇率は、弱めの指標がみられている。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、弱めの指標がみられている。』(4月)

モメンタム諦めたとたんに予想物価上昇率のアセスメントがすっかり言い訳成分を削除しております。

でですな、こういう経済現状認識だから、9月末までの時限措置だとちょっと足りないかもしれない、とかいうことで期間を延長しますよ、ってのが5月会合で出てくれば話はまだ分かる(納得はしないが)のですが、5月臨時会合では何のアセスメント公表も説明も無く、一方で現状維持になっているのに、何故か追加緩和をしたかのようなオモシロポンチ絵を出した今回の会合では経済のアセスメントこんだけ下げて現状維持って、もはやロジックもへったくれも無いのだが、ロジックもへったくれも無いと正面から斬りかかっても、「何をおっしゃりたいのか分かりませんな」で済ませるのが、今の黒田日銀クオリティ(麿にこんな感じで斬りかかったら多分一刀両断できる)。


・先行きの経済物価見通しなのですがこちらは少なくとも下がっているようには見えません

先般の展望レポートは『(1)当面の経済・物価の見通し 』『(2)やや長い目でみた経済・物価の見通し 』になっているので4月の引用は適宜その辺りから拾う形になります。でもって総括判断。

『先行きのわが国経済は、経済活動が徐々に再開していくとみられるが、当面、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から、厳しい状態が続くと考えられる。 』(今回)
『当面のわが国経済は、内外における新型コロナウイルス感染症の拡大の影響から、厳しい状態が続くとみられる。 』(4月)

再開に関する言及はあるけど総括判断は同じ。

『その後、感染症の影響が収束していけば、ペントアップ需要(抑制されていた需要) の顕在化や挽回生産が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、わが国経済は改善していくとみられる。』(今回)

『やや長い目でみた経済の見通しについては、後述するように、きわめて不確実性が大きいが、今回の見通しにおいては、感染症拡大の経済への影響が、世 界的にみて、本年後半にかけて和らいでいくことを想定している2。 こうした想定のもとで、海外経済は、本年後半頃から、ペントアップ需要や挽回生産が押し上げに作用し、各国・地域の積極的なマクロ経済政策の効果も 発現すると予想されることから、成長ペースは高まっていくとみられる。 』(4月)

うーんこの。今回は展望レポートじゃないからこの今回の見通しホライズンと、ここで引用した展望レポート「やや長い目」のホライズンが定義上は異なる(通常会合の声明文で示している先行きというのは展望レポートのように3年とかそういう話ではなくて、まあ基本的に半年〜1年程度の期間を想定している)ので表現の差異をどうとらえるかというのはちと難しいのですが、日銀文学を曲がりなりにも15年以上鑑賞しております(解読できるとは言ってない)アタクシは、今回の先行き経済アセスメントは前回展望対比横這い、と読みます。


『消費者物価(除く生鮮食 品)の前年比は、当面、感染症や原油価格下落などの影響を受けてマイナスで推移するとみられる。その後は、景気が改善していくもとで、プラスに転じたあと、徐々 に上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)

『消費者物価の前年比は、プラスで推移しているものの、先行きは、当面、感染症の拡大や原油価格の下落などの影響を受けて弱含むとみられる。 』(4月)
『物価については、このように景気が改善していくもとで、消費者物価の前年比は、先行き、徐々に上昇率を高めていくとみられる。 』(4月)

物価に関しては展望レポートの方が2本立てになっているので分かち引用になってしまいましたが、言っていることは同じ。

・・・・・・ということで、先行き見通し同じならなぜコロナ対策を延長したり増額(実際は単にビルトインされている増枠が2次補正の成立によって発生しただけ)したりみたいな事になるんやという話で、最初の9月末までの時限措置を3月末まで半年も延長するのって、ただのコロナオペはどうでもよいちゃあどうでも良いのですが、CP社債買入はモロにクレジットスプレッドに影響する重い話の筈なんですが、ドル円を株式市場以外のマーケットを物凄く軽視するという姿勢は黒田日銀の仕様なのでまあいつもの事。


・リスク要因はまあ同じだわな

『リスク要因としては、新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさといった点について、きわめて不確実性が大きい。さらに、感染症の影響が収束するまで、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要である。』(今回)

『先行きの経済・物価の見通しは、新型コロナウイルス感染症の拡大が収束する時期や内外経済に与える影響の大きさによって変わり得るため、不透明感が きわめて強い。また、上記の見通しは、感染症拡大の影響が収束するまでの間、 企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下しないことや、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されることなどを前提 としているが、そうした前提には大きな不確実性がある。』(4月)

展望レポートはこの後に項目別の話が延々と続くのですが声明文ではこの程度でとどめるのが仕様なので、これはこれで横ばい。



・どさくさに紛れて元々の時限措置がなんとフォワードガイダンスになっているという無茶苦茶な話が!!!!

フォワードガイダンス文言ですが、5月会合ではえらい割愛バージョンで出てきていて、展望レポートは何せ「第1の柱、第2の柱に伴う点検作業」というのが抜けているという割と飛んでもねえ事をしらっとしておりまして、それに伴いガイダンス文言の記載も展望レポートには無い、ということでして、4月会合声明文を確認します。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200427a.pdf(4月声明文)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続 するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。』(今回)
『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続する ために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。』(4月会合声明文)

QQE+YCCの継続期間のガイダンスは同文。

『マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(今回)
『マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(4月声明文)

今更オーバーシュート型コミットメントかよという感じですがまあMBも同じ、でもって問題は次。

『引き続き、@新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、A国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、BETFおよびJ− REITの積極的な買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。』(今回)

ちょっと待て、何で時限措置の話がフォワードガイダンスに組み込まれているんだよ恒常化する気満々じゃねえかよふざけるなクレジット市場を(逆の方向に)破壊する気かてめえらは、という話ですが、では5月に何を言っていたかとゆーと、これがまた姑息なことに声明文の方にはガイダンスの記述が無いのですけれども、新コロオペパート2をぶっこむという公表の方にですね、

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200522a.pdf
中小企業等の資金繰り支援のための「新たな資金供給手段」の導入

の最後の項目になる項番4に、

『日本銀行は、引き続き、上記の措置をしっかりと実施していくことにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。そのうえで、当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる』(5月決定会合時の公表文「新たな資金供給手段」の導入関連文書より)

と書いてありますが、これって決定会合声明文本紙と違いますから、当然「新しいものも含めて公表したものはその通りにやりますよ」という普通の話をしていると思ったのですが、確かにその後段に追加緩和方向のガイダンス文言が入っていまして、言われてみればこれはフォワードガイダンスに読み替えることができるというか、それを狙ってステルスでガイダンス文言をいじる、ということで、こっそり公表した3本の鉛筆ポンチ絵と言い、正面からではなくて裏口から出してきて、いつのまにやら堂々と居座ってしまっている、という中々姑息な手段を使っているなあと感心する(褒めてない)次第。


『当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、 それを下回る水準で推移することを想定している(注 2)。』(今回)

『当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注 2)』(4月声明文)

ということで、必要なら追加緩和、というのと、政策金利のガイダンスに関しては(3月まで生きてましたが)4月会合でモメンタム云々を削除してしまったので、最早これ意味あるのかという感じですが、こちらは同文です。


・一応片岡先生の芸風も確認しておきましょう

今回の反対を確認しましょう。5月会合でも政策金利の維持は決まっているので政策金利の反対というのはちゃんと芸を示しています。

『(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、安達 委員。反対:片岡委員。片岡委員は、今後の物価下押し圧力の強まりへの対応と、企業・家計の金利負担軽減を企図して、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。』(今回)

『(注2) 賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、 安達委員。反対:片岡委員。片岡委員は、今後の物価下押し圧力の強まりへの対応と、企業・ 家計の金利負担軽減を企図して、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化すること が望ましいとして反対した。 』(5月)

5月と同じ理由なんだが、この理由の「金利負担軽減を企図して」というのが甚だしく芸がない訳でして、5月会合にぶっこまれて今回拡大された(ことになっている)新型コロナオペパート2に関しては、対象になっているのがコロナ対策制度融資に関わる民間金融機関による協会保証付きの実質無利子融資とか、それに準ずる(というのが実に怪しい、という良い質問をしている記者が会見でいたのをネタにするの忘れてたわ、正直スマンカッタ)貸出、になっている訳でして、「金利負担軽減を企図して」政策金利を下げるという提案は何とも間抜け感が漂う。

決定会合や会見で示されている理屈だと、企業の資金繰り問題は厳しいけれども貸出環境は大丈夫、という話になっている訳ですからして、(昨日だかさっきも申し上げましたが)そういう現状認識でMPMがいるのであれば、より企業の資金繰り改善につながるのは「売り上げの回復に資する政策」であり、それであれば総需要を引き上げるために利下げをすべき、と話を持って行けば(別にそれで総需要上がるとはアタクシおもわないけどね、為念)、MPMというか執行部謹製の屁理屈を逆手に取る形に少しはなると思うんですけどねえ。片岡大先生におかれましては、執行部の理屈を逆手に取ってぶっこみに行くという発想をして暴れないとただの面白くない提案芸人のまま終わってしまい勿体ないにも程がある。(と褒めてんだかけなしてんだか自分でもわからん話をする)


『(注 2)片岡委員は、新型感染症の深刻な影響を念頭におくと、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。』(今回)

『(注 2)片岡委員は、新型感染症の深刻な影響を念頭におくと、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。 』(4月)

この前半と後半の文章の脈絡のない反対意見いつまで続けるのやら。それに更なる連携とかこれ以上何をどう連携しろというのでしょうか???????


〇ところであの3本の鉛筆って・・・・・・・・・・

いやですね、あの3本の鉛筆前も見たぞという指摘は前からあって。6月1日付というのは一昨日指摘しましたが、なんとまあこんなページがありまして、。

https://www.boj.or.jp/about/bcp/corona/index.htm/
新型コロナウイルス感染症関連情報

『金融政策』って所を見ますと、

2020年5月22日中小企業等の資金繰り支援のための「新たな資金供給手段」の導入 [PDF 130KB]
(参考)日本銀行の新型コロナ対応 [PDF 199KB]

ちょwwww実は5月22日に出していたのかよ!!!「何か前回見た記憶がある」という証言を複数貰っていたんですけど、これかよとか思いました。なお5月22日になっていますが、上記先のリンクを見ると数字は最新のものになっています。ナンヤソラ・・・・・・・・・・・





2020/06/18

お題「総裁記者会見を鑑賞したがいろいろガバガバで見てらんない」

と言いつつ細々よんでるんですけどね、あっはっは。

〇総裁会見なんですが色々と質疑がガバガバでこれはツッコミの提供する孔明の罠か?

ヘッドラインを目で追っていた時よりはちったあマシなテキストになっているのだが、それにしても何だかなというのが結構あって大丈夫かオイという点が多々あるんですけどねえ(個人の感想です)。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2020/kk200617a.pdf

・誰も3本の鉛筆のペテンに突っ込んでいない・・・・・・・・・・・

ええまあ今回の会見テキストみて一番がっかりしたのはここでして、昨日アタクシが散々っぱら申し上げてまた無駄に全方面に噛みついてしまいました(という意識はあるが反省はしていない)あの3本の鉛筆の数字とか、そもそも輪番とドルオペのどこが「数字を示すような」コロナ対策だよヴォケ(バックストップとして作ったとかいうならまだしも)とか、元々やってる6兆円ちょいのETF、J−REIT買入までコロナ対策に入れるとか兎に角ハリボテで数字を大きくしようという意義は何ですかとかそういうツッコミは欠片も無かったんですね。


いや確かに紙出てから会見まで4時間しか無かったとはいえ、こんなのポンチ絵見た瞬間に輪番の所とかETFの所とか気が付くだろう(110兆円の数字の妥当性はさすがに即座に計算するのは難しいというか今でもまだ積算方法の裏の取り方がわからないのでまあシャーナイにしたって)という話で、その程度は頼むから4時間の間に気が付いてくれよプロの経済報道の記者だろお前ら何で誰も質問しねえんだよと実に悲しくなりましたが、まあそういう能力が欠如しているのを見切られているから今回のようなハリボテガバガバポンチ絵が堂々と出てきた訳ですよね。

だってさ、今回の会見で3本の鉛筆での数字のハリボテ振りに関してネチネチ突っ込まれると、一応アタクシでも屁理屈想定問答は作れと言えば詭弁学園状態で何とか作るかも知れないけど、かなりヤケクソな説明(ETF買入などは総額として政策効果を発揮するものであって、今回の増額分だけが効果を出すものではない、ということを踏まえて一体の数字を出しました(キリッ)、ですかねアタクシが作るとしたら)になると思うのよ。でまあそういうヤケクソな説明をしたら更に燃え上がってしまうとかいうようなリスクを普通考えると思うの。

でも今回平然とハリボテガバガバを出してきた、っていうのは、要するに記者会見の場でそんなツッコミが飛んでくることもないし、突っ込まれても簡単に受け流せるっていうのを見事に見切っていた、ということですので、ポンチ絵御担当(どなたなのかは存じ上げませんが)のこの見切り力の凄さというか会見にこれ出して大丈夫って判断する見極め力と胆力には不肖このアタクシなどは平伏せざるを得ません。別に褒めてはいないけど。

・・・・・とかそこら中に噛みついていると只で無くさえ存在しない人望アイテムが更に削られてしまいますので気を取り直して会見のツッコミを入れてみるだよ。


・オペ先が増えると新コロオペの理論上の可能額が増えるという謎理屈

毎度の事ですが最初は「今日の決定についてご説明下さい」なのでそこはまあ飛ばしまして、その次の質疑(実質最初の質疑)から参ります。

まあ正直質問はしょうもないんだが答えの方がオモロイので。

『(問) 今回、日銀が行っている企業の資金繰りを支援する「特別プログラム」 の総枠が 75 兆円から 110 兆円に拡大されましたが、日銀のコロナ対策としてはこれで取りあえずは十分なのかどうか、総裁のご評価あるいは更なる改善点について、お考えをお聞かせください。』

そもそも110兆円全部出るかどうか分からん(新コロオペは金融機関がオペに応札しないと出ないリクエストベースの物件)し、大体からしてどんだけ必要なのかという話は「それは今後のコロナの影響の大きさ深さ次第ですからその状況を見ながら対処します」でおしマイケルでしょうと思うのですけれども、答えの方がまた微妙にアレ。

『(答) 今回、第2次補正予算で拡充された民間金融機関を通じた無利子・無担保融資は、5 月 22 日に決定した「新たな資金供給手段」における適格融資の 要件を満たしており、資金供給の対象となります。第2次補正予算による民間金融機関の無利子・無担保融資が 28 兆円ほど拡充されるほか、特別オペのオペ先が従来に比べて倍増したことなどもあって、「特別プログラム」の総枠は 現時点で、従来の 75 兆円から 110 兆円まで拡大されています。』

ってまだ話は続くがここで一旦切りますけれども、この「28兆円」の根拠が良く分からんし、そもそも「第2次補正予算による民間金融機関の無利子・無担保融資」ってのがこれまた言い方として正確性を欠くように見えるのですが・・・・・・・・

と申しますのはですね、
https://www.meti.go.jp/covid-19/index.html#00
新型コロナウイルス感染症関連 経済産業省の支援策(2020年6月15日時点)

の「資金繰り支援一覧」の所が該当する筈なんですが、これは別に民間金融機関は無利子無担保で出すのではなくて、あくまでも「実質無利子」というのが利子補給がついていて、どうもこの辺りの中身を読みますと、補給するのは地方自治体で、もちろんその補給分に関しては補正予算から金が付くので、まあ事実上は補正予算の中から利子補給が出る話だし、「実質無担保」というのは保証協会の保証が付くんですけれども(保証責任率は100%のと80%のがある)、債務者が保証協会に支払う保証料に関して同様に全額(または一部)補給されるから「実質無利子無担保」(になり得る)なのであって、民間金融機関そのものは無利子無担保融資している訳では無いので、これはミスリードな説明なんですよね。

なお、政府系金融機関からの直接融資に関しては無利子だったり無担保だったりするものが当然あるでしょうけれども、それは予算なり財政投融資なりのバックがあるからやっているという話ですな。

でまあ相変わらずなのですが、この「28兆円拡充」というのの根拠は何処を見に行けば良いのかよく分からんところでして、利子補給と保証料補給用として確保された予算から融資可能額を逆算しているのかね、とは思うのですが、総額幾らってのが中々見つからずに苦労してます誰か教えてジェネラル。


・・・・・中々小見出しのツッコミ内容に到達しませんけれども(汗)、そこで不思議なのはこの説明の中で「オペ先が従来に比べて倍増したことなどもあって」という一節でして、そもそもが予算やら財政投融資やらで確保して実施可能になっている制度融資の総額から新コロパート2の総枠を計算している筈でして、当初の時点でオペ先の数制約とか別に無視して理屈上の総枠として30兆円というのを出していたと思いますし、今般75兆円→110兆円に増えてるので、28兆は良いけど残りの7兆は何処から出てくるんだ(一応説明する理屈は思いついたには思いついたけど、それってコロナ対策と言えるのか説はだいぶあるんですよね^^)という説明がこれだと何だか分からん、というか黒ちゃん分かってねえだろという感じですな。

いずれにしても数字の積算に関する話があったのってこの質疑位でして、何ちゅうかもうねという所ではあります。


・えーっとすいませんだったら何でこのオペが必要なんでしょうか

さてさっきの質疑の答えの続きの部分に参ります。

『(さっきの続きです)企業の資金繰りには依然として強いストレスがかかっていますが、政府による様々な措置や日本銀行の「特別プログラム」、更には民間金融機関の取組みによって銀行借入やCP・社債発行といった外部資金の調達環境は緩和的な状態が維持されていると理解しています。』

ちょwwwwおまwwwwww

えーっとすいません、資金の調達環境が緩和的な状態が維持されているんでしたら別にプログラム拡大しなくても現状の残高を維持すれば良いんじゃないでしょうか??????おじちゃん頭が悪いからさっぱりわからないんですけど、銀行の資金流動性にストレスが掛かっている訳でもなくて、企業の外部資金の調達環境が緩和的だったら問題はそこにあるのではないのでして、企業の資金繰りに掛かっているストレスの軽減、ってことになるんだったら、総需要に働きかける追加的な金融緩和政策でもやった方が気が利いてるんじゃないでしょうかねえ。個別産業の振興は政府の仕事に委ねる話だし、金融機関の流動性にストレスが掛かっていないのに何で増額だの無制限だのやる必要あるの????

『日本銀行としては、今後とも企業等の資金繰りを支援していくために、現在の「特別プログラム」をしっかり 実施していくことが大切だと考えていますが、新型コロナウイルス感染症の影響がどのように続くのかにもよりますので、必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講ずる用意があります。「特別プログラム」についても、必要に応じて拡充・拡大を検討していくことになると思います。 』

なおこの「特別プログラム」ってのは三本の鉛筆なのですけれども、先月の臨時会合でこの特別プログラムの期間をしらっと延長しておられたと存じますが、その時の声明文には延長した背景となる説明は無かったし、そもそも会合後の定例記者会見もなかったわけでして、「拡充・拡大」が必要になった説明もしないでダマテン拡充しておいて何を言ってるでしょうかねえという感じではございますし、そもそも金融機関の資金流動性にストレスが掛かっていないのに特別プログラムがどのようなルートで企業の資金繰りストレス解消に寄与するかの説明してくれませんかねえ。

まあ後でもう一回ツッコミチャンスが回って来るので(^^)、そこでもう一回行きます。


・ETF買入などの説明に見る昭和温泉旅館ばりの継ぎはぎ金融政策

次の質疑、質疑自体はそんなに面白くないのですが、ETF買入の説明部分を前後の質疑と比較すると中々の味わいがある。

次の質疑ですが、その中で現在の政策について、

『現在行っている3つの柱のうち、企業等の資金繰り支援の総枠は、政 府の第2次補正予算を受けて、75 兆円から 110 兆円というかなり巨大なものになります。また、国債買入れやドルオペについては、上限を設けることなく潤沢に流動性を供給することにしていますし、ETF等の買入れも、年間約 12 兆 円と積極的に買い入れることにしています。』(本文4ページより)

となっております。ちなみにこちらでは110兆について「資金繰り支援の総枠は」と言ってますし、「政府の2次補正予算を受けて増えた」と言っているのですから、オペ先云々は理屈から言って関係ないじゃろとかいう微妙な齟齬もあるんですが、それよりもETFの所の説明が「年間約12兆円」となっていますよね。

これ冒頭説明の時はどう説明していたかと言いますと、

『ETFおよびJ−REITは、当面、年間約 12 兆円、年間約 1,800 億円に相当する保有残高の増加ペースを上限に、積極的な買入れを行います。』(本文1ページより)

となっていて、この表現は声明文における資産買入方針の項番1の表現と同じですが、この年間12兆円ペースというのがどういう位置づけなのか、という説明がふらふらとしているんですよね。

即ち、声明文の表現などでは、「このペースが上限」と言っているだけで、状況に応じてはそこまで増やさないで済むもんなら増やさんけど、6兆円というのは元々やっている基本的なペースなのでこっちはやりますよ、ってな感じなのかな、とも思う訳ですよ。ところがこの部分の最初に引用したような表現ですと、12兆円ペースは目標みたいな感じで、量をやります!って言っているような感じじゃないですか。しかもおまけにあの「3本の鉛筆」でも堂々と「12兆円」ってのが出ているんですからね。

てなことになるとこういう質問が出るんです。さっき散々悪態つきましたがこの質問の方は良いツッコミとしていると思います(と急に褒めだす)。本文の16ページの真ん中にやや短く載っています。

『(問) 3 月の会合で、当分の間、原則の 2 倍のペース、年間 12 兆円ペースでETFを購入すると決めていらっしゃいます。足許の株高もあり、実際には特 に 5 月以降、購入ペースあるいは一回当たりの購入金額も落ちています。そこだけみると、「 当分の間」は終わったのではないかとみえなくもないのですが、既に 18 年夏に弾力的に上下し得るとおっしゃっている中で、あえて 12 兆円という上限のめどを示す意味合いはどういうところにあるのでしょうか。』

現状は目先の危機がいったん終了したけれども、今後また必要になるかもしれないから、という整理にでもなるのかね、とは思いますが、よくよく考えてみますと、それならば「必要ならば年間6兆円の枠を超えて購入することもあります」とだけ言えば良いのでは???という気もしますよね、ということで中々の良問キタコレであります。良い質問だ。

『(答) 12 兆円を上限に積極的に買うと申し上げて、3 月の決定会合以降かなり積極的に買い入れてきていますが、実際の買入れ額は、市場の状況、特にリスク・プレミアムの動向に応じて、上下に変動し得ます。』

えーっとすいません、リスクプレミアムの動向に応じて変動しえますだったら従来と同じになりますし、そうだったら三本の鉛筆で「12兆円」とか決め打ちの数字出したポンチ絵を出したのは何なんでしょうかと小一時間ってことですよね。つまりこの12兆円は量をやりたいのか、市場に不安が発生して不必要にリスクプレミアムが拡大するのを止めたいのか、というのはどういう整理なんでしょう。

ま、それ以前のそもそも論として「買入6兆円(従来のペース)」を続けないとリスクプレミアムが拡大してしまう、って整理にならないと買入6兆円の維持が出来ないと思うのですが、そもそもそんなのを健全な金融市場というのかという気がしますな、ぎゃははははは。

『株式市場でもひと頃の緊張が緩和し、リスク・プレミアムが縮小しており、ETFの買入額は結果的には少なくなっていますが、新型コロナウイルス感染症の影響によって、引き続き内外経済の不透明性は高いですし、株式市場も依然として神経質な状況にあります。為替や金利と違ってボラティリティ指標なども、かなり高止まりして元に戻っていません。こうしたもとでは、ETF買入れを当面積極的に行う方針を維持することが適当だと思っています。』

それは分かったが、だったらポンチ絵で12兆円を決め打ちで出したのミスリードでしょ。ここでの黒田さんの説明だと、株式市場(やJ−REIT市場)が落ち着いて適正な(何をもって適正かという話は目を瞑るとしまして、笑)価格推移で安定していたら、この追加6兆っての使う必要なくなるんですし、そもそも論として当初の6兆だって本当に必要なのか、むしろリスクプレミアムを過度に潰しているんじゃないか、って話になる訳で、どう見てもこの政策運営方針に対してポンチ絵の整合性が取れないのですがちょっとポンチ絵の方ご説明いただけませんでしょうかねえ。

#数字を書かないで「3つの分野でサポートしています」だったら別におかしくはなかったのだが数字を出して「ほらボクたち頑張っているでしょ」という変なアピールをするからおかしくなる。


・なお唐突ですがここで雑談を挟む(ポンチ絵に裏の意味があったら凄いのだが多分ない、という件)

しかしまあ何ですな、さっきの質疑の話を平行移動して考えますと、危機対応で行った「12兆円」のETF等買入に関して、危機対応時期も終了し、リスクプレミアムの望ましくない拡大も観測されない、となったら、実は「12兆円」を(段階的に)引くことが適切、という話になると存じまして、このポンチ絵の意味があるとすれば、実は「従来拡大ばっかりしていて、もう引くにも引く理屈付けが不可能になってしまっている日華事変も裸足で逃げ出す長期戦になっている従来の資産買入」につきまして、コロナ対策の中にぶっこむことによって、コロナ終了判断と共に、「緊急コロナ対策が目出度く撤収できることになりましたのでこれから徐々に撤収していきますよ!!!良かった良かったニッポン万歳\(^o^)/」とか言いながら、減らすに減らせなくなっている既存部分のAPPについても適正規模まで縮小しよう、などという深慮遠謀があって、その深慮遠謀の為にわざとあのようなポンチ絵を描いて、既存のAPPまでぶっこんだのであって、「数字の水増しでイカサマアピール」しながらも実は「引けなくなっている既存APPをワンチャン縮小する下準備」だったとしたら、それはもう昨日から今日に掛けての悪態なんぞ全部お詫び申し上げて全身白塗りで常盤橋公園辺りで暗黒舞踏を踊りながらお詫びをしてやるわ位のお話(全身白塗り暗黒舞踏をするとは言ってないし、実際にやったら通報事案待ったなしなのでちょっと実践には課題が・・・・・・)となりますな、うんうん。

まあしかしこの後ネタにしますが、黒ちゃんがそんな出口考えた政策とかするようなタマではないのは後の方の質疑で明白なのでアタクシも別に暗黒舞踏の練習をする必要もペンキの調達も不要だと思うのですが、これが俊ちゃん総裁だったらワンチャンあるかなとかも思ってしまいました(麿総裁だったらこんなポンチ絵出したらその場で憤死するでしょ麿ちゃん)。


・総括検証2をしないのかという質問自体の筋は良いけどまあ今聞くのは時間の無駄だと思う

6ページの質疑ですが、まあ総括検証2をしたらという筋は良いんですが、政策の優先順位上中々その話をしても暖簾に腕押し糠に釘、というか最近の黒ちゃんは何を聞いてもそういう感じでして、2013年当初のあのヘッポコのコンコンチキ理論ではあったけど置物先生の置物理論に乗ってわりと丁寧に説明していた黒ちゃんはどこに逝ってしまったのと往時を思うと心が痛む。

『(問) 物価についてですが、総裁は 4 月の会見で、物価のモメンタムがいっ たん損なわれた状態にあるとおっしゃいました。4 月の会合の「主な意見」で も、デフレを避けるために現行政策の有効性の評価を踏まえた検討を行っていくべきである、という声があったと思います。現状、危機対応を優先している局面だと思いますが、2%の「物価安定の目標」に向けて、金融政策のレビュー等、政策枠組みの点検を行っていく考えがあるかについて教えてください。』

質問の筋は良いが答えが明らかに読めてしまうからねえ。

『(答) 当面、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムが失われた状況にあることは事実です。そういったもとで、新型コロナウイルス感染症対応で全力を挙げているわけですが、世界的にみて、感染症の経済への影響が本年後半 にかけて和らいでいくという見通しに立ちますと、わが国経済も、感染症の影響が収束していけば、緩和的な金融環境あるいは政府の経済対策にも支えられて改善していく、ということだと思います。当面、物価上昇率はマイナスになるとみていますが、経済の改善とともにプラスに転じ、その後徐々に上昇率を 高めていくと考えています。2%の「物価安定の目標」を堅持し、感染症の拡大の影響を克服して、経済を持続的な成長経路に戻し、そうしたもとで物価上昇 率が次第に高まっていくことを実現して、2%の「物価安定の目標」を追求していくことになると思います。 』

ただ、この答えもガバガバで、黒ちゃんここで物価見通しの話なんぞしたってしょうがない訳でして、まあこの後ゴリゴリと質問するならば、「コロナ前に経済拡大が続く中でも上がらなかった物価が何で今次コロナ問題を解決すると上昇するのでしょうか、そう考えるに足る根拠を示していただければ、経済主体のインフレ期待の引き上げにも寄与すると思いますので、是非ご説明をして頂きたい」とか何とか食らいついて欲しいのですが、質疑応答のリレーみたいなのが無いからなあ(海外の会見見て少しは学んで頂いたのか最近はリレー質問っぽくなっているのも少しはある、内容がしょぼいからネタにしないけど今後良くなることを期待したいですな)。

もし答えるなら、政策のレビューや枠組みの点検というのは、金融政策運営の中で常に点検を行うべきものであり、実際に私たちも常により良い政策運営の在り方について考えているので、現状はコロナ対策に重点ということだし、今後なにか殊更に改めて点検を行うということではなく、常にその点は念頭に置いて経済物価情勢の点検を行います、とでも言って物価見通しの話に関しては触れないでスルーしちゃうけどなーとか思いました。


・この質問をしたのは誰だぁあああああ(ガラッ)

本文8ページより。

『(問) 感染再拡大についてお伺いします。今、アメリカや中国などを中心に、 世界的に感染再拡大の懸念が高まってきて、株式相場もその影響を受けて不安定になっています。この感染再拡大が起こると、経済にどのような影響を与えると考えていらっしゃいますか。 』

日銀総裁に聞く質問かよ(答えは割愛しますよ)という所でして、これが財務大臣ローゼン閣下だったら「あんた当たり前の質問して時間の無駄だと思わないの?」とか言い出しそうですし、まあこの関連のヘッドライン見た瞬間にアタクシ不覚にも声がちょっと裏返ってしまいましたぜ。

その回答があった直後の本文9ページより。

『(問) 先ほど、ペントアップ需要や挽回生産の話を指摘されましたが、観光業とかは元の状態には戻らないのではないか、時間がかかっても元の経済規模 には戻らないのではないかという指摘も一部であります。総裁は、その辺りをどのようにみられていますでしょうか。』

個別の業種の話をしてどうするんだよということだし、だいたいからしてこれどっちも「そんなのコロナ次第だから分かるかヴォケ」以外の答えあるんかいなという質問でして、この2発の質疑が連続していた関係で、この質疑に関連する何とも脱力するようなヘッドラインがこの間延々と流れることになってしまいまして、情報ベンダーの前で正座待機して待ち構えているアタクシの血圧が盛大に上昇したのは言うまでもありません。


・イールドカーブの質問はさすがに飽きたけど説明が益々訳分らなくなっているのは笑うわ

本文10ページより。

『(問) イールドカーブについて、4 月の会見でもご発言されていますが、いまだにマーケットの中でどういったスタンスなのかという見方があります。7 月から政府の2次補正も伴って国債が増額されていきますが、低位に全体的に安定させることと、イールドカーブをできるだけ寝ないようにすることをどのように日銀としては両立させていくお考えでしょうか。』

あっはっは。

『(答) 2016 年 9 月の「総括的な検証」で指摘していますが、超長期金利の過度な低下は、保険や年金等の運用利回りを過度に低下させ、マインド面などを 通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性があり、日本銀行として、こうした認識に変わりはありません。』

ほうほう。

『他方で、新型コロナウイルス感染症の影響で債券市場の流動性が低下しているもとで、国債増発が見込まれている状況を踏まえると、債券市場の安定を維持し、イールドカーブ全体を低位で安定させることが大事な状況でもあります。』

債券市場の安定が大事なのは分かるが、それがイールドカーブの低位というのにつながるという理屈はおかしくて、本来市場の価格発見機能があるから、国債発行においても一定のディシプリンが確保される、とまあそういう話でしょと思いますが、まあそんなことは華麗に無視するのが黒ちゃん。

『このため、当面、国債の更なる積極的な買入れを行うことが適当と考えています。』

どう見ても財政ファイナンスです本当にありがとうございました。

『その際には、政府がどういう国債をたくさん発行するのかにもよりますが、短中期をたくさん出すという話もありますので、そういった場合には当然、そういった国債の買入れを増やして金利が上がらな いようにすることになると思います。』

市場の安定というのは統制市場とは違うんですけどねえ。

『「総括的な検証」の認識は変わっていま せんが、足許で一番重要なのは、イールドカーブ全体を低位で安定させることだと考えています。』

どう見ても説明が財政ファイナンスです本当にありがとうございました。


・色々とツッコミどころの多い回答を引き出したのでこの質問は優秀

ええ別に最初の所でちょっと罵倒しすぎたわと反省して軌道修正している訳ではありませんよ(キリリッ)。本文12ページから。

『(問) 今、コロナによる企業の資金繰り支援と市場の安定化を主眼に政策を運営していると思います。こうした緊急対応的な措置を少しずつ緩めていけるのでは、と考えられるようになるための基準について、今、どのようにみていらっしゃいますか。少し先になるとは思いますが、どういうものが満たされれば、という基準があれば教えてください。』

出口政策について質問する、というのは実に重要でして、この質問によってアチャーという回答を引き出したので優秀なんですよこの質問。でもって質問は後半がありまして、

『また、今回感染症という世界規模でものすごいショックを景気に与える、中央銀行にとってはかつてないチャレンジの中で政策運営をすることになりましたが、こういうことが起こり、── 一過性のショックと捉えられるかどうかにもよりますが──今後の金融政策の波及経路やチャネルおよびツール に対する議論に、どういう影響を及ぼし得るのか、もしご見解がありましたら 是非教えてください。』

後半はちょっとフワフワしているけどまあ回答を見ましょう。

『(答) 新型コロナウイルス感染症が拡大していく中で、欧米の場合はロックダウン、わが国の場合は、緊急事態宣言のもとで、店舗への休業要請や個人に対する外出抑制、 「三つの密」を避けるなどの形で消費行動が抑制されました。 企業の売上げが非常に落ち込み、資金繰りが困難になっていったため、資金繰 りを支援し、そして、そうした状況を反映して市場が不安定化することに対して、市場の安定を維持するための対策を講じてきました。感染症が収束して経済が正常化し、回復していくことになれば、資金繰り面での困難は減っていくと思います。ただ、感染症が収束したからといって、直ちに消費活動がフルに戻るかといわれると、中国が一番先行していますが、必ずしも 100%ではないですし、わが国の状況をみても、観光や外食などのサービス業についてはなか なか戻ってきていないようです。従って、それらについては、資金繰り面での困難が続く可能性もあろうかと思います。また、新しい生活様式という形で需要構造等も変わってくるかもしれず、その経過において、また資金繰り面で困難を抱える先も出てくるかもしれません。』

まあ一応整理して話しているつもりなんでしょうけれども、もうちょっとこうFED高官の説明みたいに「感染症拡大対応ステージ」と「経済の修復回復ステージ」に分けて説明できねえのか、と思うのですが、この「回復が始まっても資金繰りが〜」みたいな話をウダウダとしているのは当然ながらただの無駄口ではなくてこのようなオソロシスな説明の前振りですた。

『当然、必要性が薄れていけば、だんだんと出口ということになると思いますが、私どもとしては、ある程度長期的に、資金繰り支援なり市場の安定化に努めていく必要があるといいますか、そうなっても続けていく覚悟です。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

おいちょっと待て、最初にこのコロナ対策導入したのって4月27日の金融政策決定会合で、その時は「9月末までの時限措置」って話だったのに、何で何の検証結果も出さずに5月会合で半年も延長した挙句、今回はまた会見で勝手に期限延長の話をしてるんだよふざけるなと。

「2年で達成」とか言って開始したのに何だかんだと達成しない言い訳だけしながら泥沼の長期戦になっている政策をより派手に上塗りする勢いのこの発言、さすがに看過しがたい訳ですな。大体からして資金繰り支援だって何でもかんでも野放図に資金繰り支援してたら行きつく先は震災手形じゃろと思いますし、危機対応のため一時的に行っている国債買入拡大が危機終わっても続くっての「一時の便法」で始めた高橋財政がその後引くに引けなくなって高橋是清さん再登場して出口模索したら2.26事件ですよという話が思いっきりアタクシの頭の中にオーバーラップする訳でして、そこまでの覚悟と責任感持ってるのかと小一時間問い詰めるまでもなく、日本一の無責任男で後は野となれ山となれってな感じなんでしょ(個人の偏見です)。

などと悪態つきながら後半を見るとこれまた酷い。

『また、中央銀行の役割については、FRBもECBもBOEも、日本 銀行とある意味で同じように、企業の資金繰り支援と市場の安定化に注力しています。それぞれの制度的な枠組みの中で形は異なっていても、実際に行って いることや期待する効果は同じようなものだと思います。』

これはまた随分とFEDやECBに失礼な話でして、FEDにしろECBにしろ(BOEは細かくチェックし切れていないからパスな)まあクレジットグレード的にはユルユルの事をしているかもしれませんけれども、目的については明確化したものがある訳ですよ。

FEDだと従業員の給与維持とかいうような項目までフォーカスしているものがありますし、基本的にこれらの貸出や社債に関して、既存の金融機関プロパー貸しの旧債返済で全部費消されてしまうようなものは原則的に対象にしない(厳密にその使途を追えるかという技術的な論点はあるが、建付けとしてはそうなっているわな)とかになっていますぞな。ECBだってTLTRO3とかは銀行の貸出残高が伸びないとワークしないシステムになっていますがな。

然るに、本邦の場合って新コロオペその1は既存の共通担保に差し入れをしている企業向け貸出債権とか社債とかと振り返れば参加できる物件(だいたいからして新コロ1の可能額計算している時に日銀がその時点で受け入れている担保の額から計算している時点でお察し案件)だし、新コロ2に関しては確かに制度融資(危機関連融資)にはなるんですが、今回の場合は旧債返済も資金使途として認めていたり(まあそれは政策的にそうしているのだから仕方ない面があるが)とかになっていて、フォーカスの仕方が全然違うのに、同じとか言うのはさすがに図々しい。

例えばECBの説明ページはこれな。
https://www.ecb.europa.eu/home/search/coronavirus/html/index.en.html

さて話を戻しまして、

『ただ、このような新 型コロナウイルス感染症の拡大により需要も供給も減る中で、企業の資金繰りや市場の安定を保つという趣旨で様々なことを行っていますが、これが常態化すると考える必要もないと思います。』

つい今しがた如何にも常態化するような説明してませんでしたっけおじいちゃんさっき言ったこと覚えてないの??

『過去にも新型インフルエンザ、SARS やMERSなど、様々な感染症がありましたし、今後もあり得ると思います。また、自然災害等もあり得ると思います。しかし、それによってこのような対応が常態化するとか、中央銀行の政策対応やツールが基本的に変化すると考える必要はないのではないか、と思います。 』

お前は何を言ってるんだ・・・・・・・・・・・・


#あと財政ファイナンス絡みの質疑もあったがめんどくさくなってきたのでパスな



2020/06/17

お題「無風の筈の金融政策決定会合が何故ネタの宝庫にならんといかんのかと(涙)」

いやもうねという感じなのですが、その前にちょっとドルオペと業態別当座預金残高のメモを入れておきますね(忘れそうなので)。

〇業態別当座預金残高だけ見ても10bp適用残高分からんのね(半分俺様用備忘メモ)

https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/index.htm/
業態別の日銀当座預金残高

直近の分をエクセルにホイホイと出してみますと、というかこの話前回の業態別当座預金残高の話をした時に最初勘違いして書いて後からご指摘頂きまして訂正しましたけど、実はこれだけ見ても金融機関の10bp付利が幾ら入っているのかが直接的には分からんという作りになります(仕様上しょうがないのですが)。

エクセルの右側の「ref」ってタブ、『(参考)付利の対象となる当座預金残高(当月16日〜翌月15日の平均残高、適用金利別)1』の計数なのですが、「当座預金残高」が「プラス金利適用残高」+「ゼロ金利適用残高」+「マイナス金利適用残高」になるようになっていますが、その中の「プラス金利適用残高」が脚注3にありますけれども、

『3.当座預金残高から所要準備額を差し引いた金額のうち、2015年1月〜12月の積み期間における当座預金の平均残高(基準平均残高)から、付利を行う積み期間における所要準備額を差し引いた金額を満たすまでの金額。括弧内の計数は上限値。』

とありまして、マイナス金利政策導入当時に決められた10bp付利分の残高がここに跳ねてきておりまして、新型コロナオペ等で「おまけで10bp付利しますよ」という残高はこっちに計上されてこない(ので3月〜5月の積み期間において「プラス金利適用残高」が殆ど同じになる)という仕様になっていて、実際は「ゼロ金利適用残高」の中にコロナオペ等が入っているということになっている、という理解でこの表の読み方は良いんだと思うのです(が違っていたら直しますので教えてちょ)。

じゃあ10bpの残高は何ぼかというのを確認したければ、要するに基準平均残高の後からぶっこまれた特則部分のプラス適用分となるオペ残高を足し上げて行けば良いのですが、オペ残ちゃんの方の内訳は業態別に出ている訳ではないので、合計しか分からんですな、とか何とか思います。

ただですね、これ何とかオペをバカスカぶっこんでいくと、マクロ加算2倍2倍なので、ゼロ適用残高の使い残しが発生してくる(そうでなくても元々完全裁定していない金融機関はゼロ金利適用残高の使い残しがある)ということになるのかなーとか思って、大手行に該当しそうな「都市銀行」のゼロ金利適用残高の使い残しを見てみると、

3月:49,218
4月:48,300
5月:75,190

と来ていまして、たぶん完全裁定したつもりが、当座預金残高が超過してマイナス適用にはみ出ると間抜けですから、普通の感覚では微妙にゼロ金利残高が余るように運用する筈だと思う(個人の印象ですので実際の所は中の人に聞いて下さいな)んですが、5月積み期間で使い残しがジャンプアップしている(ように見える)のは、とりあえずコロナオペにぶっこんで付利10bpウマーにマクロ加算ウマーとかしてみた(付利適用は5月積み期間から開始)ものの、特に5月積み期間とかステイホームの嵐だったでしょうし、ゼロ金利適用残高の使い残しが増えてしまったのかな、などと思ったのですがどうでしょうかね。

てな訳で、マクロ加算の掛け目的には完全裁定後のマイナス適用残高が5兆円になるように設定されているのですが、今回はマイナス適用残高が26兆1,790億円になっていまして、こちらの数字は3月、4月の積み期間がそれぞれ23兆572億円、25兆260億円から増えてはいるのですが、そもそもがコロナオペがどの位入るのか、というのとドルオペ用担保供給売現先での吸収がどの位になるのか、というのが事前に読みにくいのに、よくもまあ見事に似たような残高で着地しているもんだ、とそっちの方に感心してしまいます。



・・・・・・・まあ何ですな、(あとの悪態コーナーに繋がる前振りになるんですけど)このコロナオペの付利10bpマクロ加算2倍2倍攻撃なんですが、今後特に大手行の計数見ておこうかと思うのは、ゼロ金利適用残高の使い残しが発生してしまいますと、コロナオペって担保が必要で、既存およびそれ以降の企業向けと個人向け貸し出し(個人向けは住宅ローン担保証券になりますけど)の適格担保はコロナオペパート1用の担保に使いますが、コロナオペパート2ってのはコロナ対策関連貸出の残高に対して実施されるのですけれども、別途適格担保が必要になるんですよね。

でですよ、適格担保が国債だったりしますと、今日び短い所の国債って終利▲10bpで買えるものなんぞは無い訳でして、コロナオペパート2ぶっこむのは良いんですけど、担保を別途買ってこないと行けなくて、しかもその終利が▲10bpより低かったりすると、付利10bp貰ってもそれだけだとマイナスで、マクロ加算2倍2倍で貰ったゼロ金利適用残高の所で裁定取引しないで使い残してしまうとやっただけ無駄足になってしまうという事になるし、かといって国債で0bpって事になると10年まで足を伸ばさないと行けなくて、それあんまり持っているとIRRBB的にどうよとかそういう話になるような気がするんですよね。まあ個人の感想なのですけれども。

とまあそんなことを考えまするに、この業態別当座預金残高の所で、特に大手行のゼロ金利適用残高の使い残しが優位に増えてくると、コロナパート1の方は別に既存担保振り替えでぶっこんでいけば良いだけ(それの何がコロナ対策なのかという話はさておきますけれども)なのですけど、パート2の方って、担保余っているところはまあ別に使い残しがどうのこうの気にする必要無いですけれども、そもそもが担保繰りが結構一杯で新たに担保ニーズが発生とかいう場合だと、わざわざコロナパート2に入れる経済的な意味があるのかどうかというのが怪しくなりますわな、とは思いました。

もちろん、こういう時にコロナパート2オペにぶっこんでますのでお国のために協力していますアピールとかそういう純粋経済的じゃない動機もあったり無かったりするでしょうが、その辺は大人の世界なので子供ちゃん中年男性のアタクシにはちと理解致しかねるところなんですが、少なくとも「コロナオペの枠が増えたので担保需要が高まるから中期ゾーンの買い圧力が」というストーリーって、マクロ加算2倍2倍部分まで裁定取引で全部使い切るとか、しかもその裁定取引もちゃんと鞘が取れますねとか言うのでなければ成立しないのではないか、って婉曲表現するのもめんどいから言いますと、単純にコロナオペの枠が増えたから担保需要増えるとかいう話しじゃねえだろうという話しっすな。


〇ドルオペちゃん

昨日のドルオペとドルオペ用担保オファー(補完供給は割愛)

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of200616.htm
米ドル資金供給 2020年6月18日 2020年6月25日 0.350
米ドル資金供給 2020年6月18日 2020年9月11日 0.340
米ドル資金供給用担保国債供給(国債売現先) 25,000 2020年6月17日 2020年6月26日
米ドル資金供給用担保国債供給(国債売現先) 20,000 2020年6月17日 2020年9月14日

先週の1wはどっちも33bpで先々週の1wはどっちも30bpですが、まあ今の所レート自体がサービスレート(ただし担保が必要だが国債売現先で担保は確保可能だけど、売現のレートが▲10bpなので担保のコストが掛かる、まあ直接このテナーの国債買うよりもコスト良いけど)になっていて、その結果ご利用額は、

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba200616.htm
米ドル資金供給(6月25日エンド分) 23,114 23,114
米ドル資金供給(9月11日エンド分) 17,044 17,044
米ドル資金供給用担保国債供給(国債売現先)(6月26日エンド分) 14,390 14,390 -0.100 -0.100
米ドル資金供給用担保国債供給(国債売現先)(9月14日エンド分) 8,821 8,821 -0.100 -0.100

1wが231億ドルもあるんかいな(先週の1wは79億ドル)という感じですが、3Mは170億ドルで、その前の折り返し分は3月24日に実施された3Mで、こいつが738億ドルもありましたので、一部3Mに振り替わって、一部1wに振り替わって、という感じになるんですかね、良く分かりませんけど。

まあレート自体は現状だとサービスレートになっておりますが、ゆうて担保要る分だけ担保繰りを圧迫しますし、あんまりサービスレートでやっていると、資金を出していてレート決めるのはFED(というかNY連銀)ですからして、先日も申し上げたように、他のオペがバックストップレート(なおMMFのお助けオペだけ比較的普通のレートだった気がする)になっているのに、これだけサービスレートのままで続いてくれるのかという問題isある訳で、議会が「なんで外国の金融機関を優遇レートでサービスする必要あるんだゴルァ」と言い出すと話がややこしくなるので、いつまで続くのかというのは大有りなんですよね、というのもこの後のMPMレビュー悪態のマクラになったりしますので乞うご期待(?)。



〇現状維持も現状維持なんですけどねえ・・・・・・・・・

んな訳でMPMですが、昨日は結果のエンバーゴが多分11時32分だか33分でして、そらまあ無風会合の現状維持様子見でしょうからそらそうよ、とおもっていたら「110兆円に拡大」とかいう謎のヘッドラインを見て「????」と思いながらリリースを見ると・・・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200616a.pdf
当面の金融政策運営について

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定 した。

(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注 1)
次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。
長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応 じて上下にある程度変動しうるものとする1。

(2)資産買入れ方針(全員一致)
長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

@ETFおよびJ−REITについて、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う2。

ACP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。 これに加え、2021 年3月末までの間、それぞれ 7.5 兆円の残高を上限に、追加の買入れを行う。』

・・・・・・・・どう見ても現状維持です本当にありがとうございました、という話だし、そもそも声明文の題名が上記にあるように『当面の金融政策運営について』であって追加金融緩和ではない(ちなみに前回も追加金融緩和では無かった筈なのですが会見のヘッドラインを見ると実にふざけた発言がありましたがそのネタは今日会見テキストが出る筈なので明日続きの悪態を)のですが、何が「拡大」だよ何をゆうとるんじゃと思ってよくよく見ると、新着情報の声明文の次にこんな項目ががががが。

『 6/16(火)金融政策(参考)日本銀行の新型コロナ対応 [PDF 199KB]』

?????と思いながらポチっとなとしますと、そこにはオマエナメトンノカという世界が繰り広げられるのでありました。

#なお経済アセスメントとかの話は明日しますわな


〇何ですかこのポンチ絵我々を馬鹿にしてるんですかおふざけにも程があるんですけど

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200616b.pdf
日本銀行の新型コロナ対応

ってのがまた説明も何もないただのポンチ絵で、白黒印刷するとそこまで気にならないんですけど、そのままの色で見ると色の趣味も何だこれって感じですし(というのは殆どトバッチリですがもうちょっと配色考えろよ)、しかも何ですかこの3本の矢ならぬ3本の鉛筆は、という所ですが、その絵もそうですが、中身がインチキの極みというのにもうおじちゃん血圧急上昇で、何でこんな超無風会合でイカらなければならんのかと思う訳ですよ。

#なお「3本の鉛筆」はアタクシではなくアタクシの師匠による命名を拝借させていただきました(平伏)

んじゃまあ鉛筆一本ごとに悪態をつきますがその前に全体の悪態を。

・ここに書いてあるの「総枠の額」と「実額」がごっちゃになっている上に元からやっているのもごっちゃなんですけど

いやあのですね、3本の鉛筆なら鉛筆でも良いんですけど、出している3本の物件の額って、一番左のが総枠の額(しかもその総枠が怪しいというのは後程)だし、2番目のはそもそも元から実施している輪番の話が入っているし、3番目のは確かに実額なんですが、コロナで追加する前から購入している分と追加分をごっちゃにして表示している、というのを何故が全部「日本銀行の新型コロナ対応」としているんですが、えーっとすいません長期国債買入って前から実施していましたし、コロナの前からコロナ対応のオペを実施していたとか日銀ってどんな預言者なんですかという話でして、もうその時点でインチキにも程がある訳ですよ。

いやまあ2年2倍2%とか言っている時も変なフリップ芸をしてましたし、その前後とかでもしょうもないスーパーの折り込みチラシみたいなしょうもないポンチ絵芸を繰り出していたのはあるんですが、例えばあの2年2倍2%にしたって、やっている政策自体はトンチキであっても、少なくとも嘘大袈裟紛らわしいというようなものは無かったんですけれども、今回はコロナ前から実施しているオペまで「日本銀行の新型コロナ対応」の数字にぶっこんでいるという事ですので、これを誤認勧誘と言わずして何を誤認勧誘というのでしょうかという世界。過大な底上げインチキ数字を出して宣伝するとか、金融商品取引業者が勧誘文書でそんなの書いたら金商法違反の有利誤認勧誘で一発お縄先生だし、だいたいからしてインチキ積算数値を出す行為自体が刑(以下の部分は禿しく自主規制されました)。



・110兆円の積算根拠は何なんでしょう?????

さて気を取り直して1本目の鉛筆を見てみましょう。曰く、『企業等の資金繰り支援』ということで、

『特別プログラム 総枠約 110 兆円 +α』
とか書いてありまして、内訳が

『CP・社債等買入れ :20兆円
新型コロナ対応特別オペ:90兆円(5月に決定した新たな資金供給手段を含む) 』

となっていますな。で良く良く前回の臨時会合で出た物件を読み直してみると、

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200522b.pdf(5月会合声明文)
当面の金融政策運営について

というこっちはやっぱりこの時も現状維持扱いでしたが、CP・社債買入の臨時拡大部分買入実施期限がそれまでの9月30日までから3月31日に延長しているのに、これは政策変更(=金融緩和の強化)ではないという建付けで実行しているんですよね。これは明日の悪態の伏線になる予定ですので乞うご期待。

でもって前回の臨時会合でコロナオペ2号の実施要領をぶっこんできたのですが、

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200522a.pdf(5月会合での新オペ導入のリリース)
中小企業等の資金繰り支援のための「新たな資金供給手段」の導入

『2.これにより、企業等の資金繰り支援のための日本銀行の措置として、@CP・社債等の買入れ(残高上限:約20兆円)、A新型コロナウイルス感染症対応金融支援特 別オペ(資金供給の対象<担保として差入れられている民間債務>:約25兆円< 4月末現在>)に、B新たな資金供給手段(資金供給の対象<緊急経済対策における無利子・無担保融資を中心とする適格融資>:約30兆円)、が加わることとなった。日本銀行は、この3つの措置をあわせて「新型コロナ対応資金繰り支援特別プ ログラム(特別プログラム)」 (総枠約75兆円)とし、期限を半年間延長して、2021 年3月末までとすることとした(全員一致)。』(ここだけは5月会合時のリリースとなる直上のURL先から引用)

ということになっていまして、まあこの時は「ああ数字を見せたいんですね」程度で流してしまったのですが、この流してしまったというのが我ながら痛恨だったなと思う訳ですよ。

その1:CP社債買入のインチキ上げ底&そもそも政策目的的にこれ全部買わなくても良かった筈ではないのか

つまりですね、この時点で既に「CP・社債買入」の中で、コロナ前から実施していたCP・社債買入が含まれていたので、ここで「インチキ上げ底数字」というのを指摘しないと行けなかった(と言いましても決定会合後の記者会見が無かったので指摘する場所も無かったんですけれども)訳で、もともと「20兆円」と書いてありますけれども、既存のCP・社債買入がそれぞれ2.2兆円・3.2兆円ありまして(今の声明文での表現は「約2兆円」「約3兆円」になっている)、増枠分は15兆円なんですよね。この経緯を詳しくレビューすると、

3月会合:各2.2兆、3.2兆円に9月30日までの臨時措置で増枠各2兆円(計4兆円)を実施
4月会合:上記臨時措置をさらに5.5兆円乗せて、各7.5兆円(計15兆円)に臨時措置を拡大
5月会合:上記臨時措置の買入期限を(緩和強化の定義つけを伴わずに)3月31日まで期限延長

とやっていまして、本来「日本銀行の新型コロナ対応」として書くならば20兆円ではなくて15兆円と書くべきだし、そもそもこのCPや社債の買入拡大は3月に入って、CPや社債の金利(対国債スプレッド)が上昇したことを受けた「企業の資金繰り支援」のために直接金融市場の安定化のため、ですので、コロナ対策であるのはその通りであっても、別に追加の15兆円を全部買わなければいけないという話でも何でもありませんし、現在の社債買入の利回りが1−3年でも国債フラット近くまで低下する(というか市場局が国債マイナスの利回りを買わないとしたから辛うじてそうなっているだけ)という状況になっていまして、そういう意味ではどこからどう見ても初期の目的は達成できているという話になるんですよね。

それがいつのまにやらこの額を買うという話になるわ、既存の買入まで何故かやってもいないコロナ対応になっているわということなので、『日本銀行は、この3つの措置をあわせて「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム(特別プログラム)」 (総枠約75兆円)』とか言ってるのがインチキなのを5月会合の時点で指摘しないと行けなかったんだ(まあアタクシが指摘してどうなるものでもないですが、笑)と大後悔時代ということで地団駄踏みながら、こうなってくると75兆円→110兆円の積算根拠もちゃんと確認しないといかんじゃないの!という風になる訳ですよ。どうせインチキがほかにもあるだろう、って感じでして、これって某ジンバブエ先生の金懇テキスト読むときに一々書いてあることが事実に立脚しているのかという事を裏を取りながら読まないといけない、というのとまあ同じような態度にこちらも出る訳ですな。


その2:トップページの新着情報に掲載しないでこっそりと作っていた3本の鉛筆ポンチ絵

一般的に私らって日銀のネタをチェックしに行くときってトップページの所にある新着情報と、そのログが見れるこちらをチェックしに行くわけです。

https://www.boj.or.jp/whatsnew/index.htm/
ニュース一覧

ところが、こちらの新着情報ってのは、例えば本店で内装工事する予定だからこれこれの日に競争入札するんで業者の方々の応札をよろしくお願いいたします、みたいな情報ってのはまあ出さないという仕様になっている訳でして、新しく日銀のサイトにアップされたのを全部見たければ日銀の新着情報メールサービス(トップページの右上の欄外にリンクがあります)を見る必要があるんですが、まあ官庁のメルマガも一々全部登録していると結構煩わしいので、最近は配信止めてたんですよ。そしたらですね・・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2020/index.htm/
金融政策に関する決定事項等 2020年

こちらなんですけれども、6月1日の所に、

2020年 6月 1日
(参考)日本銀行の新型コロナ対応(5月22日開催の金融政策決定会合において決定した内容についての参考資料) [PDF 197KB]
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200601d.pdf

というのがあって、なんと3本の鉛筆がこっそり6月1日に公表されていて(数字はこの時は5月会合時点の数字の75兆円になっている)、この上げ底だわ元々コロナ対策でも何でもないものまでコロナ対策にするわという酷い物件が目立たないようにしらっとリリースしていて、この75兆円が110兆円になったとかそういうのでヘッドラインが打たれていた、とまあそんな感じなんですよ。

でもってさっきも申し上げたけどしつこく申し上げますと、従来のしょうもないフリップ芸に関しても中央銀行としての品位品格に問題があるわとは思いましたが、まあ一生懸命感を出すとか、そういう芸ならそれはそれで・・・・・って感じではあったのですが、今回はとにかく「新型コロナ対応」としているのにもともとコロナ対応じゃないものを入れこんでいる、というインチキをしている訳で、2倍2倍みたいに政策の当否はさておき書いてあることは事実なのを必死にアピールする、というのと、今回の「もともとそうじゃないものまで勝手にコロナ対策として計上する」ってのはキツイ言い方をすれば「政策当局として越えてはいけない一線を越えた」って物件なのですが、それをこのように目立たないようにしながらこっそりとアップしていた訳で、もう無茶苦茶ということで更に湯気が上がる訳ですよ。


その3:110兆円の積算根拠は何ですか(そもそもその前の数字もそうですが)

今回は新コロオペパート2が35兆円増えましたってんで110兆円ですよ、って話になっているのですが、そもそもその35兆円とは何ですかという話ですがあ、そもそも新コロパート2というのは、その対象となる貸出金は


『2.対象となる適格融資

(1)制度融資緊急経済対策における無利子・無担保融資や新型コロナウイルス感染症対応として信用保証協会による保証の認定を受けて実行した融資

(2)(1)に準じるプロパー融資 プロパー融資のうち、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業等に対して行う、融資条件面で(1)に準じる融資(1先当りの上限:1,000 億円)』(5月22日決定会合声明文別紙より引用)

となっていて、この(2)がインチキ上げ底で大企業向け融資の方が多くならんかという話でしたが(信用保証協会の保証枠は特別の付加枠とかを駆使したって10億行くか行かないかというオーダーの話)、冷静に考えてみますと、この(1)で当初30兆円としていた積算根拠も良く分からん。

と申しますのは、上記(1)に関わる融資のうち保証協会融資は、全国信用保証協会連合会のサイトを見に行きますと、

https://www.zenshinhoren.or.jp/model-case/keiei-shisho.html
経営に支障が生じている方 新型コロナウイルス感染症対策を含む

を見ると分かりますが、今般のコロナ対応に関しては「経営安定関連保証」の4号認定と5号認定および「危機関連保証」が対象になるのですけれども、この総枠って何ぼですねんというのがちょっと調べ方が悪いんですけれども、予算にも財政投融資計画にも、対応する予算措置っぽいのはあるのですが、関連するマル保融資の総枠ってよー見えてこんのよね(大汗)。中小企業庁のサイトを見に行っても制度の説明とか個社の保証限度額とかはわかるけど見当たらないし。

まあ多分積算根拠は上記(1)の信用保証枠として確保してある全額で、細かい所は適当に丸めているとかそういう数字だとは思うのですが、積算根拠をちゃんと出してくれないと、そもそもこの110兆円(というか90兆円)のどこからどこまでが確実な数字で、それ以外のどの辺が張りぼてなのかというのがまるで検証できないので実にアカンという感じですわ。

つーかですね、そもそもそういうのを会見とかでゴリゴリと詰めて頂きたいし、どういう数字何ですかというのをもっとちゃんと説明してくれないとアカン訳ですよな。ちなみにコロナオペ1に関しては要件は「担保」だけなので、日銀が現状で預かっている担保の額から数字を出した、と言われているので信用していたのだが、こういう積算根拠が微妙な物件を出されると、そもそもこの辺の日銀の出す数字は眉に唾を付けて見ないとイカンとなりまして、今回はジンバブエ先生の金懇ばりに信用保証協会とか中小企業庁とかのページを夜なべで調べる羽目になりましたわwwww


でまあ積算根拠の数字をどこから積み上げてきたのかは、誰かレポートでも書いてくれやと思うのですが、(いやアタクシも調べるには調べるけど)既に75兆円とか言ってた時点でここの出す数字はちゃんと裏を取らないといけない!という事に気が付いてしまいましたので、そういう意味では今般の措置で75兆が110兆になったから日銀の企業金融への積極的な政策がどうのこうのとか言ってるメディアは政策検証能力に著しく欠如したものがあって、そういう方々はメディアの看板を下ろして「大本営報道部」でもやってろやヴォケと思うし、110兆円に飛びついて早速提灯レポート書いてたどこの誰とは言いませんが何とかストとかは政策検証もしないで当局発表のスピーカーだけやるならホームページのテキスト読み上げソフト程度の価値しかないんで何とかストの看板下ろせや、とまあ斯様に思う訳ですし、大体からしてこういうツッコミどころ満載のガバガバポンチ絵(2年2倍2%は別にその表記がガバガバな訳では無かった)を日銀が堂々と出してくるという時点で、日銀公表を見ているワタクシどもに検証能力が無いからガバガバな物件でも大丈夫だろと舐められている、という事でもございますので、当方腕力を用いない売られた喧嘩は買う主義ですので、まーたこの無風会合でスイッチが入ってしまった次第。

・・・・・すいません話が逸れました。

さて、この保証協会の融資なんですけれども、実はこの制度融資でも、経営安定関連保証の4号と危機関連保証については100%保証協会フルカバー貸し出しになるんですけれども、経営安定関連保証5号は保証責任率80%になるので、20%がプロパー扱いになってしまって、金融機関そこまでホイホイと出せるのかいなという話でして、本気の本気で日銀が中小企業融資の円滑化図りたいのだったら、保証責任率80%のマル保融資に関して残り20%を日銀が保証して差し上げるくらいの事をすれば、日銀には保証料が入るし、金融機関は全額が公的機関フルカバー保証になるからホイホイと融資できるし、借入人は借入しやすくなるし、皆めでたしめでたし(んな訳は無くて債務者がお父さんしたら日銀が回収しないといけなくなりますが、笑)という事でして、別に今の金融機関における貸出できるできないのネックが円資金の流動性では無い事は明らかで、問題はアベイラビリティーの方の話で、債務者のアベイラビリティー(マル保と言えどもまあさすがに。今は協会も銀行も融資審査は緩和しているでしょうけど)とか、金融機関の資本制約(しかも今後延滞だの貸し倒れだの出てくれば更に資本制約の問題が)とか、そっちが制約になって、新コロパート2の65兆円(5月会合で30兆円、今回65兆円と積算されている)って実際はどのくらい出るんかいな、というのがまるでワカランチ会長ではありますな。そもそも担保制約だってあるし。

#なお、さすがに金貸しの現場に立っていないので関連する制度融資の詳細に関しては見落としがあるかもとは思っていますので、その辺お詳しい方御指南プリーズギブミーチョコレート


その4:そもそも国債買入と外貨貸出は新型コロナ対策ではなかろうに

ということで前の方での繰り返しになりますが、国債買入ってのは「イールドカーブコントロール政策」の下で国債市場の金利を安定的に推移させるために実施していて、その安定操作のようなものをした結果が資金供給となる、という建付けで実施されていた筈なのですが、今回何と2本目の鉛筆ということで堂々と真ん中に掲載されている意味がさっぱりわかりません。

どうせ想定屁理屈問答は用意してあるでしょうし、なんとなくそれらしい質問もあったようには見えた(正直会見聞く気がおきないのでヘッドラインだけ凝視していた、何で聞く気が起きないのかは最後の方で更に悪態)のですが、これ「政府の経済対策で国債が増発されるのでイールドカーブを維持するために国債の購入を増やします」と言えばコロナ対策っぽく聞こえて一見良さそうに見えるのですが、それはどこからどう見ても「新規財源債を日銀が財政ファイナンスしています」という話になりまして、今度はそっちの方が問題というかジンバブエ先生状態というかな話になってくる訳ですな。

それに、コロナ対策で国債買入が拡大、とか言い出すと、何かの拍子に金利が過度に低下したときに国債買入を減らしたら、その時にコロナが片付いていればよいですが、片付いていない場合、「なんでコロナが収束していないのに国債買入が減るんですか」ということになる、という話でして、もう政策ロジックがガバガバなんてもんじゃないレベルに達しているので何を言っても暖簾に腕押し糠に釘かもしれませんが、ちょっとお前何言ってるのという感じです。

それにドル貸出まで新型コロナ対策になっているのですが、本邦の金融機関が海外資産(証券とか貸出)を持つから外貨借り入れのニーズが発生するんですけど、本邦金融機関の海外資産とコロナに何の関係があるのかさっぱり分からないのでちょっと教えていただけませんでしょうかね。

それに、これを鉛筆に入れ込んじゃっていますが、そもそも外貨スワップに関してはFRBはバックストップとしては必要でも日常のようにこれを当てにして使われる、というのは好まないし、FRBが問題ないと思ってたとしても、世の中がある程度落ち着けば議会が「なんで海外の金融機関を優遇する必要があるんだ」と怒りだすのは必定、というのは先ほどのドル貸出のネタの時に申し上げた通り(とここで伏線回収)な訳ですよ。

つまりですね、この外貨貸出自体、別にここから残高がホイホイ伸びるような代物ではない(大体からして日本が外貨スワップ利用が大杉栄とかいうネタがチラホラ出てくる有様)のですが、これを鉛筆に持って来るのはさすがに無茶しやがって・・・・・・・としか思えん。


その5:ETF等の買入もコロナ前からやっている上に臨時買入は「年額換算ベース〇兆円」なんですけど

さて、悪態ばっかり申し上げていますが一番右の鉛筆。既存の分までコロナ対策に入れている、しかもETF等に関してはもともとが年間6兆円ペースなので元の部分が大きい、というのもありますが、あと何気にこの鉛筆がガバガバなのって、

『@ETFおよびJ−REITについて、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う2。

ACP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。 これに加え、2021 年3月末までの間、それぞれ 7.5 兆円の残高を上限に、追 加の買入れを行う。』(今回の声明文より再掲引用)

となっているので、年間12兆円とはあるけれども、ETF等は「上限」じゃなくて「ペース」なので、1年間この臨時措置が継続しないと12兆円にならんのでして、そういう所もまたガバガバなんですよね、いやはやなんとも。


ところでそもそもの話:110兆円に拡大が補正予算対応ならば別に今回のMPM関係ないじゃん

・・・・・・とまあ文字通りの話でして、そもそも新コロオペパート2って関連する制度融資の総枠が増えれば新コロオペパート2の実施可能額が増える(ただし担保制約という重大な問題があって、そんなに出る訳ねえだろというのはありますがそこはさておき)ということになるので、別に今回のMPM何も関係なくて、制度上ビルトインされている増額なんですよね。だからこそ今回の政策決定会合は「現状維持」決定だった筈。

然るに、このポンチ絵でいかにも緩和拡大しましたみたいな書き方はするというのがまあアレなのですが、そのアレに見事なまでにコロッと騙されて緩和拡大みたいなニュースヘッドライン流す無能報道機関や低能何とかストがいるから舐め腐ったポンチ絵が出てくるわけですな。しかもその一方で先般の期間延長の時には何で期間延長したのかの根拠の説明も無ければ政策変更の扱いにもしていないわとか、ここに来てちょっと何ぼ何でも酷いんじゃないのという風になってきておりますわ。

ハリボテで大戦果!とか宣伝するのって、それほんの75年ちょっと前に大日本帝国とかいう所が散々やって、最後は引くに引けなくなって、たまたま陛下の御聖断があったから終了しましたが、うっかりしたら日本人全員死ぬまで負け戦を継続していたかもしれない、という事案があったと存じますが、ハリボテ大戦果宣伝っていうのはそういう事の第一歩だぞ、と斯様思う訳でありまして、誠にイクナイ事だと存じます次第です、はい。

なお、会見録を見ながらもう一回悪態が出る予定(会見で別の悪態論点が出てくる)ので宜しゅうに。





2020/06/16

お題「日銀グランプリ今年も実施ですよ(雑談)/デーリー総裁講演(メモ)/FOMCパウエル会見続き」

こちらが今日(というか昨日の夕方)の2コマ漫画になります。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020050800933&g=pol
イージス断念報道は「フェイク」 河野氏、事実関係答え避ける
2020年05月08日17時15分

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200615/k10012471181000.html
河野防衛相「イージス・アショア」配備計画停止を表明
2020年6月15日 20時50分

報道機関に向かって権力側の人間がフェイクニュースとか最大級の罵倒をしてからのこれというのがもうねという所で、野に居る時はちょっと注目されていた時もありましたけど、閣僚になってからは上に弱く下(正確には反対意見を言う人)に横暴という典型的なダメダメおじさんになりましたなこの人。しかも変な人気取りパフォーマンスだけは好きなのが更にアカン。


〇本当はこれがマクラの積りだったのですがまあ雑談(日銀グランプリ)

日銀グランプリってのやっているんですよ、というかこれからやるんですね。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200612a.htm/
学生向けコンテスト「第16回 日銀グランプリ〜キャンパスからの提言〜」の実施について
2020年6月12日 日本銀行

『日本銀行では、今年度も、大学生の皆さんを主な対象とする金融・経済分野の小論文・プレゼンテーションのコンテスト「日銀グランプリ〜キャンパスからの提言〜」(第16回)を実施します。』

ってな訳で今年は1か月ほど実施のアナウンスが遅くなりましたが実施のようですね。

『「第16回 日銀グランプリ〜キャンパスからの提言〜」募集要項

1.課題

「わが国の金融・経済への提言」

わが国の金融・経済・社会を取り巻く環境の変化、情報通信技術の発展等を踏まえた様々な観点から、わが国の金融・経済に関する提言を募集します。具体的なテーマの設定は自由です。過去の応募論文テーマを例示しますと、次のとおりです(より詳しく知りたい方は、過去の入賞論文をご覧ください)。』

ってな訳で、過去の物件とかご覧になりたいかたはそちらにリンクもあるので見てちょという感じですけれども、まあ別にたいして興味がある訳でもなかったので基本的にスルーすることが多かったのですが、何の気なしに下にスクロールしていくと募集要項の中にこんなのがあったのよね。

『9.注意事項

(途中割愛)
・以下の添付ファイルを必ずお読みいただいたうえでご応募ください。
小論文作成上の留意点 [PDF 124KB]』

・・・・・・・はてどういう留意点なんじゃいと思って開けるとこれが素晴らしい。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/data/rel200612a2.pdf
小論文作成上の留意点

#先に申し上げておきますが、この注意事項って別に今回初めて入った訳ではなくて、前回も入っています。使っている作文ソフトが違うのか何故か改行位置がズレているので同じ文章なのに今回は2枚組になっています


『(1)提言の前提となる現状把握にあたっては、事実関係の確認を行ってください。

── 提言を行おうとするテーマについて、多種多様の情報源を活用しながら事実確認を行ってください。この作業を怠りますと、見当違いの提言や陳腐化した提言になってしまう可能性があります。

(以下割愛)』

ちょwwwwおまwwwwww置物wwwwwwww


『(3)提言に十分な分量を割いてください。

(途中割愛)

── 論旨と論理展開が追いやすい文章作成を心掛けてください。』

── より良い論文を作成するため、提言について、グループ以外の方(大学の友人、ゼミの指導教員や先輩・後輩、調査先の企業の方等)に説明し、論理の一貫性が保たれているか、論理展開が結論に飛躍していないか、全体として説得的かどうか等について意見を聞くのも一つの方法です。』

じ、じんばぶえだいせんせい・・・・・・・・・・・・・・・


『(4)提言内容を具体的に示してください。

── 抽象的な内容では、提言の実効性や独創性について評価することが難しくなります。

(以下割愛) 』

かたおかせんせいのついかかんわていあんのことですねわかります。

・・・・・・・などと途中から思わず平仮名状態になってしまいましたが、その次の項目で腹筋が崩壊した。


『(5)提言の利点や効果だけではなく、コスト・副作用・課題も具体的に検討してください。』

これはアカンwwwwwwwwwwww


『── 誰が、どのように、どれくらいのコスト(金銭・時間)をかけるか、現在の法制度の枠組みで可能か(あるいは変える必要があるのか)等、実現に至る過程を丁寧に記述することは、提言の説得性を高めることになります。

── 将来的なコストや副作用の軽減などについても極力論文に盛り込み、実現性に配慮した内容となるように工夫してください。 』

・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー
・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー
・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

ええすいません、ただの与太ネタなんですけれどもね。なお、このような注意事項を基にした提言の審査委員長をするのは我らが若田部副総裁の筈、という所にも味わいを感じますが、まあ何せ今般は(5)の検討がまるでノーズロでCP社債の買入大幅拡大の時限をいきなり大延長するという位の物件が出たばかりなのでもう笑ってしまうしかありませんな。というか今日のMPM会見で誰か「何で期間延長が金融緩和じゃなくて現状維持なんでしょうか」って質問してくださいな。


〇FOMC会見ネタの前に少々

・SF連銀デーリー総裁の講演があったようで

https://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/mary-c-daly/2020/june/we-cant-afford-not-to/
We Can’t Afford Not To
National Press Club Virtual Event
Washington, DC
By Mary C. Daly, President and CEO, Federal Reserve Bank of San Francisco
For delivery on Monday, June 15, 2020 12:30PM EST

ってのがありましたが、FOMC会見ネタもあることですのでパスなんですけど、ロイターさんによりますと、

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-daly-idJPKBN23M2LJ?il=0
2020年6月16日 / 02:53 /
YCCに消極的、フォワードガイダンスなど検討を=SF連銀総裁

ってなっているのですが、講演テキストを超斜め読みした感じですと、その手の具体的な話というよりも、今般のコロナからの回復パスがどうなるとかそっちの方がメインで、「非常に時間がかかる可能性が高い」っぽい話をしているように見えましたが、超斜め読みした個人の感想ですなのであまりあてにしないでください。

ただまあYCCに関しては、そもそもアレとかそういう悪態は耳タコでしょうから割愛しますが、単に強力なォワードガイダンスをぶっこめばそれなりに金利低下効果出るじゃろという話だし、少なくともマイナス金利ぶっこんでるECBや、マイナス金利にYCCぶっこんでる日本が出口の端っこにも立てない(ECBは一応テーパリングっぽくなったりはしましたけど)のに、米国様はLSAPとフォワードガイダンスで一旦出口政策に着手できているんですから、何も成功例がある訳でもないYCCをわざわざぶっこむ必要性は感じてないんじゃないでしょうか常識的に考えて(個人の感想です)。

なお、日本のYCCですが、本来は物価安定目標達成のためにぶっこまれている政策なのであって、YCCの結果金利が低位安定しているから上手く行ってるとかいうのは手段と目的を取り違えた本末転倒にも程がある説明でして、とりあえず三途の川で競艇でもやってろと小一時間ですな。


・SMCCFキタコレ

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200615a.htm
June 15, 2020
Federal Reserve Board announces updates to Secondary Market Corporate Credit Facility (SMCCF), which will begin buying a broad and diversified portfolio of corporate bonds to support market liquidity and the availability of credit for large employers
For release at 2:00 p.m. EDT

何ぞこれということで説明文を見る。

『The Federal Reserve Board on Monday announced updates to the Secondary Market Corporate Credit Facility (SMCCF), which will begin buying a broad and diversified portfolio of corporate bonds to support market liquidity and the availability of credit for large employers.』

大企業の社債市場について市場流動性とクレジットのアベイラビリティを高めるために、「a broad and diversified portfolio of corporate bonds」も買うんですとよ。

『As detailed in a revised term sheet and updated FAQs, the SMCCF will purchase corporate bonds to create a corporate bond portfolio that is based on a broad, diversified market index of U.S. corporate bonds. This index is made up of all the bonds in the secondary market that have been issued by U.S. companies that satisfy the facility's minimum rating, maximum maturity, and other criteria. This indexing approach will complement the facility's current purchases of exchange-traded funds.』

詳しくはタームシートを見た方が良いのですが、FOMCネタの続きもあるのでその辺はパスしちゃいまして(面白かったら後日、というか日銀MPMネタがどうせ今回は下らんので直ぐにネタ切れるからもしかしたら明日のネタ鴨)、こちらの字面だけ見ますと、社債以外にインデックス形式になっている社債をブロックで買うみたいな事をするっぽく書いてありますな(元々社債と社債ETFは買入適格)。

『The Primary Market and Secondary Market Corporate Credit Facilities were established with the approval of the Treasury Secretary and with $75 billion in equity provided by the Treasury Department from the CARES Act.』

これは今に始まった話ではない。でもってタームシートはこちら。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/files/monetary20200615a1.pdf
Secondary Market Corporate Credit Facility

たぶんここの『Eligible Assets:』以下を読むと吉。できれば変更点も確認した方が良いですかね。


〇FOMC会見ネタの続きでございまする

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20200610.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference June 10, 2020

昨日の続きでその他の質疑です。今回はやはりFace to Faceじゃないせいなのか質問も回答も長めになってしまっている(おまけにこれ回線多分聞きずらかったんじゃないかという感じがするので、Webよりもテレカンにした方が良いんじゃねえのか今の技術だったら、とは思ったのですが)のと、微妙に話がかみ合っていない感もするのがありますが、続きはこんなのから参りましょう。

・ロンガーランの数値って今回下がっていませんけれども・・・・・・・・・・・

質疑で言えば前半にあたりますがこんな質問から(ちなみにPRELIMINARY版のPDFだと11ページ目)。

『CHRISTOPHER RUGABER. Hi, thank you for taking our questions. Well, in the projections, you have -- you didn't change the -- the Fed policymakers didn't change their -- the forecast for long run unemployment, so that suggests that you -- you know, the -- that all of you so far don't see necessarily prospects for long term damage.』

ということで、今般のSEPですけれども、確かに12月から比較してロンガーランの数字って失業率はメディアンが4.1%のままで変わらず、実質GDPが+1.9→+1.8なんですよね。なお物価は変えられないので+2.0%でして、政策金利はメディアンだと2.50%のまま(ドットはわずかに下方修正気味)ということで、実はロンガーランの見通しには影響が出ていないという結果になっておりまする。

『But still, what kind of data are you looking at here to gauge -- you know, the potential for longer term hits to the economy, even as we have some of these -- even as we have something like the May jobs report that still has at the same time people return from temporary layoff, there could still be permanent job losses? So, what kind of data are you looking at to gauge that potential impact and what is -- what is it telling us so far?』

しかしながら、今後このパンデミックちゃんの影響が長期化する、という見通しなのであれば、経済のポテンシャルにも悪影響を与えると思われますが、その辺はどのように観察して計測していこうとしておりますか?現状でどのようにお考えで??というまあ答えにくくて結局出たとこ勝負で逃げられそうではあるけど論点としては非常に重要な質問が登場。

でもってパウエルの答えですがこれがまたクッソ長くてA4丸々1枚半使って答えています。

『CHAIR POWELL. And I think it's -- it's not the risk for the next few months, but it's the risk over time of -- of lasting damage to the -- to these -- to the productive capacity of the United States.』

経済のポテンシャルへの影響云々は目先数カ月のリスクではなくてより長い期間の話である(キリッ)とか、そんなん言われんでもわかっとるわというそもそもの話から始めるから長くなるのだが。

『Typically, in two forms, one, through extended periods of unemployment, people lose contact with the labor force, they get out of touch with the skills and -- that they need and -- and they have a hard time getting back in, and that drive -- that -- that -- you know, it's very damaging to people's lives and their working lives, and it also just lowers -- in a way -- it can -- it can increase the -- the unemployment rate, but it can also lower the labor force participation rate, which is almost worse, in a way, to have people dropping out of the labor force where we need them in the -- in the labor force working.』

いちいちあーうー(大平首相とか言っても知ってるのは昭和世代ですねすいません)という感じで入っているのが良く分かりますが(FINAL版になると一部この辺綺麗になっている可能性あり)、労働者の方の話を先にしておりまして、定性的な話しかしていないですが、労働市場からの長期間の退出が発生すると、労働者のスキルも失われて生産性などに影響してくる的な話をしています。

『The other piece of it is just businesses. You know, a shock like this that just comes in, it's like a natural disaster. You wouldn't want a lot of perfectly good businesses, particularly the smaller and medium sized businesses that may not have a lot of resources to sustain them, to -- you know, to go out of business permanently in a situation like that, like this, where really, there was no reason for it.』

企業サイドの話になっていまして、企業サイドで言えば、今回のは自然災害の時と同じように、企業にダメージを与え、その際に体力のない小規模企業が事業継続を断念するようなことが起きるとこれまた長期的なアウトプットなどに影響が出ますねと。

『Of course, you know, businesses are going to go in and out -- or they're going to fail all the time, and that's a healthy thing in capitalism, that's something that has to happen, but this is different. This is a [inaudible] potentially, so those are the things we've been worried about.』

もちろん、健全な資本主義が機能するにあたって、企業の新規参入や退出が起こるのはフェアーなことなのですが、今回のように自然災害の類でこういうのが起きるのは話が違いますよね、と来ましてロンガーランの話になりますが、前段のマクラが何かマクラとして機能するのかこの文脈、と思わせる訳でして、

『We didn't change -- you -- you're right though, we didn't change our longer run estimate of -- of potential growth or of the unemployment rate and that's -- I would say, in my thinking, the reason I didn't change mine, is that I still -- I -- I think we can avoid that or avoid much of that, most of that even, and -- and we do that with measures that -- that -- you know, keep people in their homes, that -- that support hiring, that support growth, that avoid unnecessary avoidable business insolvencies and that's all the things that we're trying to do.』

ほんじゃまあ何で変わらなかったのか、という点ではパウエルが「私も変えませんでしたがその理由は」と自分の個人的見解と後々逃げを打てるようにして、FOMCの総意という形をとっていません(とれませんしね)のですが説明をしています。と言いましてもその説明は「我々はそのようなこと(今話をした頭の方にあるマクラのような現象)を避けることができるし、そのように経済が進展していくことを期待しているので」潜在成長率などの見方を特に変化させていない、という話になっていまして、なんかただの根性論になっているような気がしますが・・・・・・・・

『Basically, if you look at what's happened, as I mentioned, there's something -- somewhere short of 25 million people have been displaced, even after the good May employment report. What we're trying to do is create an environment in which they have the best chance to either to go back to their old job or to get a new job, that's -- that's kind of the most important part of this exercise. And maybe these -- it's probably hopeful, at this point, to say that -- that we won't have a longer run damage to the economy and these numbers won't change. So -- but I think it's way too early to be -- to be changing the longer runs. So, these are -- these are not meant to be short run numbers, they're called -- they're longer run assessments, so I -- I would -- I have not changed mine, and I'm hopeful that -- that I won't have to change it.』

ああだこうだ言ってますが、要はメイクアメリカグレートアゲインの根性があるからまだ潜在成長率や潜在失業率の数値はコロナ前の数値を維持していきます。まだ降参するには早すぎる、という割とただの気合論なのでありました。さてどうなるんでしょうかねえ・・・・・・・・・・・・・・・・


・市場機能の為は分かったんだが米国債券市場は既に機能を取り戻していると思うんですが

今の質問の次の人の質問です。PDF本体の13枚目。

『HEATHER LONG. Hi, good afternoon, Chair Powell. I'm struggling with two things that I'm hoping you can provide some clarity on.』

ほう。

『The first is the ongoing bond buying program. You say that it's needed to continue the smooth functioning of markets, but I guess most of us aren't really seeing instability in markets right now. So, if you could kind of give us some clarity of what you're seeing that needs to continue to be smooth at that level and that pace.』

市場機能の回復を目的として国債買入を実施している、ということですがどう見ても現状の米国債券市場に不都合な状況があるようには見えませんが、適切な買入量というのはどのようにして判断されているのでしょうか、とは良い質問。

『Second is, you know, you were just talking about Fed concerns about small and medium-size companies going out of business during this. And I guess, you know, the Main Street Lending Program still isn't running yet, when do you expect loans to start happening? And do you think that the two-month delay has -- has hurt the chances of some companies surviving?』

ちょwwwこれはイヤミという感じで、中小ビジネスについてご心痛のようですが、肝心のメインストリートレンディングプログラムまだ始まっていませんがな、というツッコミです。ちなみに、

https://www.bostonfed.org/supervision-and-regulation/supervision/special-facilities/main-street-lending-program.aspx
Main Street Lending Program

『Current Status

The Main Street lender portal is now open for lender registration. Lenders can begin making Main Street loans immediately - given the program’s intent to purchase 95% of each eligible loan submitted, as long as documentation is complete and the transactions are consistent with program requirements, found in published term sheets. Federal Reserve purchases of loan participations will commence when full program operations open. Subscribe for updates on the latest information related to the Main Street Lending Program.』(この部分だけ直上のボストン連銀ウェブサイトの上記URL先より引用)

だそうですな。さてパウエルさんの回答(相変わらず長い)。

『CHAIR POWELL. There have been gains in market function, although not fully back to where you would say they were, for example, in -- in February, before the pandemic arrived. We don't take those gains for granted though. This is a -- this is a highly fluid situation and we're -- we're not taking those for granted. And in addition, as I pointed out in my -- in my statement, those purchases are clearly also supporting highly accommodative -- or accommodative financial conditions, and that's -- that's a good thing, so that's why we're doing that.』

機能は戻ったが完全に戻った訳ではない、とかあまり数字も出さないで答えるのも何だよねと思いますが、どさくさに紛れて「国債買入は非常に緩和的な金融環境を作るのにサポートになっている」とか入れて来ていまして、まあこの正直者って感じはしますが、国債買入を危機対応以外の運用(結局バーナンキのQE1→QE2みたいになるのかね、とは思うが)でどうするの感は思った。

『Turning quickly to Main Street. So, I would say that the thing -- what we've done on Main Street, I think to a greater degree, is we've listened to feedback. So, we've been out repeatedly for feedback in trying to create a -- a much more difficult product than really the other facilities. And I think this -- this last set of changes we made have actually been very positive for the facility. I think it's going to be better able to achieve its goals, and -- you know, so we've used the time well, I think. And that -- we are now in the -- in the -- in the final run up to starting the facility.』

何か最終ローンチまでに色々と詰めることがあるみたいですな。

『What we did, as you saw earlier, I guess it's early this week or late -- whenever we did it, in the last few days, was we lowered the minimum loan size and we increased the maximum loan size. But I think even more importantly, we lengthened the maturity and we stretched out the repayment schedule significantly. So, borrowers will get a -- a two year delay until they have to make any principal payments -- repayments and a one year delay on interest. So, we had been hearing from both borrowers and lenders that these would be very helpful. We made the changes, we're putting them through the facility.』

何ちゅうかねえではありますが、導入決定後に対象も拡大しましたよとか言われましても質問する方は空砲じゃあかんやろという話をしているので何となくこれだと会話が成立していない感じがある。

『The next step will be to register lenders. At that time, loans can begin to be made. Shortly after that, the facility, itself, will be up, and those facilities can be -- those loans can be sold -- 95 percent of the loans, and it's 95 percent across the board now in the Main Street facility, can be sold. So, all of that should happen quickly now. And I do think this has -- this has been a challenging project, but I think we've come to a -- to a better place.』

ただし、このプログラムが実稼働する前から既に貸出の金融環境は好転しているという説明で、そらまあそうなんでしょうけれども、ただまあローンチが遅れているのは事実ジャンとか思ってしまう。

『And by the way, we're -- we're going to be prepared to adapt further, if we need to, and -- and that's true of all of our facilities. These are unique, there's no -- there's no playbook here. You -- you have to draw this up and then try it out. And we -- we've been, you know, very willing to adapt and will continue to be.』

まあ結局の所、遅れてスマンカッタ的な話はどスルーしている(せざるを得んというのも分かるけど)感じで、ああだこうだと状況の改善の話をしていくしかない、って感じのようでした。

#とまあそんなところで時間も無いので本日はこの辺で勘弁





2020/06/15

お題「FOMC会見Q&Aですが何故か最初と最後に味わいが一番あったのでそこから参ります」

あっそう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200615/k10012470361000.html
日銀 金融政策決定会合で新型コロナ対策の支援制度 効果点検へ
2020年6月15日 4時19分

『新型コロナウイルスの感染拡大で景気が急激に落ち込んだため、日銀はことし3月から先月にかけて政府の対策と連動する形で、国債を上限なく購入して潤沢な資金を供給する追加の金融緩和や、企業の資金繰りを支えるため金融機関に金利0%で資金を出して融資を促す新しい制度の導入などを相次いで決めました。資金繰りの支援策は先週12日、政府の第2次補正予算が成立したのに伴い100兆円規模にのぼります。』(上記URL先より)

>国債を上限なく購入して潤沢な資金を供給する追加の金融緩和
>金融機関に金利0%で資金を出して融資を促す新しい制度

大本営発表を鵜呑みにするとこういう説明になるんですねわかります。

しかし80兆円に全然行ってない状態なのに80兆円の文言を削ったら追加の金融緩和とか報道してくれるんだからチョロイとしか申し上げようがないジャパンの報道機関にはオラ情けなくて涙も出んわ。日本人の思考力を破壊する活動でもしてんのかこ奴らは。

などと月曜から血圧を上げると体に悪いので本日はパウエル会見ネタで参ります。なおFEDちゃんからは金曜日に(こっちの時間では夜)、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200612a.htm
Press Release
June 12, 2020
Federal Reserve Board releases a report, Fed Listens: Perspectives from the Public, summarizing the 15 Fed Listens events held by the Board and the Federal Reserve Banks since the beginning of 2019

と言いながら
https://www.federalreserve.gov/publications/files/fedlistens-report-20200612.pdf
Fed Listens: Perspectives from the Public (PDF)

などと140枚組の物件が出ているがまだ読めていない。


〇パウエル会見のQ&A

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20200610.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference June 10, 2020

今回のQ&Aですが、前回からリモート(3月15日のはテレカンで4月のからリモート方式)になったんですが(そういやドサクサに紛れて会見ネタあんまりやりませんでしたな、汗)になったのですが、どうもこう会見場の雰囲気みたいな感じが出ないのがアカンのか、これまでの会見だと割とこう質問する方が畳みかけるような感じで質問していてパウエルたじたじってのがあったんですが、リモート(テレカンもそうですが)だと質問する方に一体感が出ないのかなとか思ったりもしました。なお日本の場合は以下悪態の為割愛。


まあ今回に関して言えば新しい話が無かった事、冒頭説明の中で各政策の論点について割と明快に説明しちゃっていること、先行き見通しは「コロナ次第」としてしまえばそれまでなので何とも突っ込みようがない(突っ込んでも結局の所「そうは言いましても出たとこ勝負」になるので「ほー左様でおますなー、今日はエエ話を聞かせてもらいましたわ、ところでぶぶ漬けでもお召し上がりになりますか」で終わってしまうので斬りかかりようが無かったというのはあるかも知れませんが、総じてパウエルの演説会になっている感じがします。


・なんでそんなに見通しが悪いのに追加緩和せんのかという論点

最初の質問と2発目の質問がそういう質問になっています。

『MICHELLE SMITH. For the first question, Nick Timiraos.』

パウエルの脇にいて質問する人を当てる人がいまして毎回これが入りますが最初だけ引用しておきます折角なので(^^)。

『NICK TIMIRAOS. Yes. Hi. Thanks, Chair Powell. Nick Timiraos at the Wall Street Journal. I want to ask about the economic projections, and I realize these are more of an educated guess at this point, but they suggest the Committee sees quite a large output gap over the next two years. And yet, the Committee did not take any steps, to date, to -- to reinforce your forward guidance.』

SEPの見通しによればここから2年間ほど経済は大きなギャップを抱えたまま推移するとなっているのに、今回はガイダンス強化などのような追加施策を何もして居ませんよね。

『And so, my questions are first, what are you hoping to learn by waiting? Second, how might that change your response? And third, how close is the Committee to reaching a decision on a -- a more concrete forward guidance and whether yield caps might reinforce that guidance?』

ということで、追加策打たないで何もしないで何を待って学ぶんですか?何が起きたら追加策来ますか?それからフォワードガイダンスの強化、例えばイールドキャップ政策を入れるようなことはしないんですか?

だそうで、何でそう雨人はYCCが好きなのかという話で、そもそもYCCって量的拡大政策とマイナス金利政策が政策目標の2%物価安定目標達成する前に政策そのものが物理的に破綻しそうになったので、弥縫策としてぶっこんで、しかもぶっこんだのは良いけど丸で物価安定目標達成できないどころか遂に(コロナの前から)見通し期間中の達成は難しいとか言い出しているということで、ただのヘッポコ政策だというのを此奴ら解ってるのかいな(分かってないから言うんだが)という話ですが、さてこの答え。


『CHAIR POWELL. So, first, I would say that we think that monetary policy today is currently well positioned to support the economy in this challenging time. If we didn't think that, of course, we would change our policy now.』

今の政策が適切だと思っているから追加しなかった、という説明で、理屈としては分かるが質問の答えを妙に外しているじゃろとは思うのですけれども、ここで前回SEP(3月)を出さなかったことが光る訳でして、あの時点で見通し出すとなると足元はあばばばばーなので、そのままあばばばばーを出せば超悲観論になってしまいますし、超楽観論出してしまうと今回の会合でSEPの下方修正とかになっていたかもしれないし、まあ3月の半ばなので出せなかった、というのは一種のラッキーだったかね、とも思うのよ。

つまりですな、政策はこのように実行しましたというのがある中で、ベースになるコロナ以降のシナリオを最初に出したのが今回だから、前回との比較でどうのこうのとかいう話を突っ込まれないで済むので、何とでも言い逃れが出来るというのが実に素敵。その間にIMFとかOECDとかも出てますしね。

あと、これはリモートの特色なのかもしれないのですが、面と向かって会見している時に比べて、パウエルの説明がクッソ長いというのがありまして、まあ何となく気持ちは分かるのですが、対面でコミュニケーションしている時よりも説明を長くしないと真意が伝わりにくい、という心理があるんだろうなーとは思いましたけれども、お蔭でこの会見録はパウエルの長広舌がやたら目立ちます。

『As you know, we -- we lowered our policy rate very quickly, quickly than others, to the effective lower bound. And we said that we'll keep it there until the economy has weathered the effects of the virus and is on track to achieve our goals.』

『You can see that in -- in the dot plot, as I think you pointed out, that overwhelmingly, FOMC participants expect, as their baseline expectation, no rate increase at least through 2022. And if you look at surveys of more -- forecasters and market participants, financial market prices, etcetera, those also appropriately reflect a long spell with rates at the effective lower bound.』

直ぐに利下げしたよ(それが混乱を招いてあばばばばー相場を作ったのではないか、と今でも思うが)、でもって利上げは当分しませんよってメッセージだしたし今回のドットプロットもそうですし、市場の利上げ織り込みも我々と同様ですよね。

『So, the first thing is, monetary policy is in a good place and it's -- that's well understood in the markets.』

ということで、金融政策は良い位置にいるし、市場もそれをよく理解しているよ(まるで追加緩和を煽るのはお前ら外野じゃヴォケと言いたさそうですな、表情は変わらないで言ってたけど)。

『Secondly, we've also taken strong measures to support the flow of credit in the economy, as I mentioned.』

『And third, we're continuing asset prices in coming months at -- at a -- at a relatively high level.』

クレジットフローの為のサポートというのは良いんだが、しらっと「we're continuing asset prices in coming months at -- at a -- at a relatively high level」などとこの正直者!という説明をしているので後でツッコミを食らう。

『So, for all those reasons, we feel like policy is now in a good place. So, as we look ahead, we see the path for the -- ahead for the economy is highly uncertain and continues to depend to a really significant degree on the path of the pandemic. So, at this meeting, what we did was, as I mentioned, we -- we looked, in some depth, at forward guidance and asset purchases, and looked carefully at those. We also received a briefing on the historical experience with yield curve control.』

ほうほうYCCの過去の経験に関するブリーフィングをしたとな。

『And we'll continue those discussions in upcoming meetings and evaluate our stance and communications, as more in portion -- more -- more information about the trajectory of the economy becomes available.』

今後政策枠組みなどに関してはまた新しいものをお伝えすることが出来るかも、というので金曜のFEDリッスンズのまとめみたいなのが出たりしているのかね。

『I -- I would just say, in terms of -- of what we're looking for, we -- we expect to get a better understanding of the economy's trajectory. And particularly, how we should best deploy those tools to achieve those goals. So, that's really what we're looking to achieve and as you can see, we're -- we're actively at work on that. We're - we're actively at work on that. 』

今後はコロナちゃん次第の面が強いし、そもそもコロナちゃんの影響がどの位起きていたのか、というのも今後の経済データで徐々に明らかになるので、今はその状況を見ながら、どのようなツールで適切な対応ができるのかを状況の変化に応じて考えていきます。ってことで、まあコロナのせいにして状況を見極めるという話。とまあここまでがさっきの質問に対する答えでして、実にクソ長いのですが、今回の会見Q&Aはこんな感じなのが仕様です。

それはそれとして、これ会見記録の方を見ながら会見の画像音声を聞いてみました(ちなみに初稿の場合ほぼ文字起こし状態で出てくる)のですが、これ聞いている時には思いつかなったんですが、パウエルさん以前は「インシャランス」とかいって予防的な緩和をした(実際には金利上昇で株が下がってトランプにシバかれたとかそういう話はさておきますけど、笑)という実績があるんですから、だったら何で今回も「不確実なので予防的に追加緩和」をしないのか、とツッコんでみるのは良かったかもしれませんな(そういう質疑は無い)。

ま、実際には「インシャランス」が出来たのは緩和余地が大きかったからで、今回はうっかりインシャランスを投下しても、ガイダンス強化くらいしかやることは無くて、残っているなけなしのタマをここで使い潰したくない、という話なんでしょうかねえとか思いましたがどうでしょうかね。


でもって次の人も何で緩和せんのかという質問。

『JEANNA SMIALEK. Hi, Chair Powell. Thank you so much for taking our question. I’m -- I'm curious about your inflation forecast, which are -- are pretty low across the forecast horizon. I guess just, given how low you see inflation being over the coming years, why is policy appropriate now and why not just kind of throw everything you can and everything and the kitchen sink at it currently? And if -- if you could just talk a little bit about what urgency you see in returning it back to that 2 percent target? 』

SEPの物価見通しだと見通し期間中に2%に届かないというような状態なのに何で「今の政策が適切」なんでしょうか、とか実に良い質問なので是非今週の日銀金融政策決定会合でも聞いてあげて下さい。

『CHAIR POWELL. Our current policy stance is appropriate. And remember, we're using - we're using our -- our emergency 13(3) lending tools to an unprecedented extent.』

もう「適切だから適切」位の勢いで説明していまして、この先がまた延々と演説なのですが途中途中に面白い所がありますよ。

『We have asset purchases and we've now said that we won't go any lower than this, and -- but that we're prepared to adjust, as appropriate, and rates are at the effective lower bound. So, we have all of our tools in -- in use in a strong way.』

色々なツールを思いっきりぶっこんだわ既に、だそうで、

『And so, what we're -- what we're waiting for is to -- is to learn more. I -- I think, actually, if you look at the May employment report, it's a pretty good -- probably the biggest data surprise that anybody can remember. It's a pretty good illustration of just how uncertain these times are. The economy is reopening, we're going to learn a whole lot about the -- the path of the economy in the next incoming months, so that's really what we're -- what we're looking for.』

情勢には徐々にポジティブな変化が生じており、今は経済の状況をより深く知るための時期ですよ、とかまあさっきと同じお話をしていますが、次がちょっとオモロイ。

『In terms of inflation, you'll know that we -- we had a 128-month expansion and we never did quite get inflation back to 2 percent on a symmetric, sustained basis. We got close for the last couple of years, but we never did quite get there.』

物価が2%到達してねえじゃないか、というツッコミに関する答えの部分に入りますが、そもそもコロナちゃんが無かった時でも、10年間の回復が続く中で2%目標に明確には戻り切れていない、過去2年ほどはかなり近い所に来たが、まさに到達したか、と言われるとそうではない。

というお話から始まる次の部分はインフレ目標2%で日本は良くなるみたいな事を未だに唱えておられる方は是非音読を。

『So, I think we have to be humble about our ability to move inflation up, and particularly when unemployment is -- is going to be above most estimates of the natural rate for -- certainly above the median in our -- in our -- in our SEP, well through the end of -- past the end of 2022.』

>we have to be humble about our ability to move inflation up
>we have to be humble about our ability to move inflation up
>we have to be humble about our ability to move inflation up

・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

余計なものが微妙についていますが読みますと、潜在失業率を下回るとみられる雇用水準に長くいるにも関わらず、物価が上がっていなかったということを勘案するに、私たちは中央銀行の物価押し上げに対する能力に対して謙虚であるべきだ、とか言っている訳で、物価はいついかなる時でもマネタリーの現象であるので中央銀行だけで物価目標の達成が可能であるとか抜かしていた置物一派は今すぐ総退場するか転向宣言出せやと思う次第。

『So, I do -- I think we're in the right place now, we -- we are looking carefully at what the -- as we learn more and -- and better understand the -- the path of the economy, we will be assessing, what's the best way to deploy all of our tools to achieve our goals in the best possible way.』

えーっとですね、まあメディア的にはこの中では「deploy all of our tools to achieve our goals」ってのがヘッドラインになりがちだと思いますし、それだけ切り取れば追加緩和に積極的って事になるんですが、さっきの質問及びこの質問の答え(まだ終わってないけど)を読みますと、この「必要ならば可能なすべての政策手段を用いて我々のゴールを達成させていく」という部分ですけれども、まあ前後の文脈と質疑の感じを見れば、現時点では追加緩和は不要と思っているでしょ、と考えてしまうんですがどうでしょうかねえ。

『And I'll -- I'll just say again that we are -- the -- the May employment report, of course, was a -- was a welcome surprise, very pleased. We hope we get many more like it, but I think we have to be honest, it's a -- it's a long road, it's - it's -- depending on how you count it, well more than 20 million people displaced in the labor market, it's going to take some time, and we are going to be deploying our tools -- all of our tools to their full extent in pursuit of that -- of those goals, however long it takes.』

既に「ノーマルに戻るのに時間が掛かる」って言ってるわけで、その時点で追加緩和の残弾を確認して、そりゃまあ残弾があれば機関銃でもぶっぱなしてヒャッハーとか言えるのでしょうが、何せ金利はゼロと来てますし、社債とかに関してはあくまでも米国議会様が出してくれないと始まらないので、主体的に出来るのはガイダンス強化くらいしかないから、そらまあ追加のカードは切りにくいし、だからそれを正当化させるための理屈を延々と並べるんでしょうなあと思いましたが気のせいでしょうか。


・・・・・・ネタは他にあるので続きは明日にでもですけど、いきなりここで会見の最後に飛びます。


・「inequality」に関するオモロイ質疑

今般のパンデミック関連では影響をもろに食らった人とあんまり食らわなかった人がいて、相対的に社会的な弱者のほうが食らっている、というのはFED高官からもパウエルからも何度も強調されていまして、まあそこに関する質疑もあったりまして、最後の方に中々いい感じのツッコミがあったのでそちらを。最後の2本の質疑になります。

『NANCY MARSHALL-GENZER. [INAUDIBLE] Chair Powell, I’m wondering, I want to go back to the issue of inequality, and I’m wondering what more could the Fed do [INAUDIBLE]. I mean, I know that you said you don't target certain groups, but is there a way that you could use, for example, the black unemployment rate as -- as some kind of a benchmark to something you want to meet or something that you keep track of?』

ちょっと飛ばしてしまいましたが、質疑の中盤から「inequality」の話があって、曰く白人と黒人では失業率が大きく違う(高いのは黒人)とか、その手の話が色々とあったんですよ。それから金融政策と財政政策の話もあって、金融政策はピンポイントでどこかのセクターに対して行うようなもんではない、みたいな話もあったりしたのですけれども、最後の2名はこれらの説明を良い感じで逆手に取っていて実に美しい質問。

てな訳でこの質問、「ところで議長はinequalityについて強調しますが、そもそもFEDは特定の経済主体をターゲットにした政策は行わない、と仰せでして、だったら何で例えば今回のように黒人の失業率とかを引き合いに出すんですかねえ何かベンチマークでもあるんですか?と言われてみればなるほどという質問。

回答は1ページ半分くらいあります。

『CHAIR POWELL. We do track all unemployment by all kinds, as you know, all kinds of different demographics, including particularly the African-American unemployment rate, which reached an all time low since the data started being kept in the modern era. Of course, it's still close to twice the white unemployment -- it is twice the unemployment rate, or it was back then, it's certainly much higher now.』

何か話を誤魔化しにかかっているのは把握した。

『You know, the -- the best thing we can do with our monetary policy tools is to -- is to look at -- you know, the evidence of what we saw -- that we saw with our own eyes so recently, which is that the economy can have very low unemployment, very low unemployment, it could have been lower than we were, it could be lower than 3 1/2 percent without seeing financial imbalances, without seeing inflation go -- getting out of control.』

コロナ前の話をおっぱじめたが、物価が上がらんかったのはその通りだが、「without seeing financial imbalances」についてはダウトとしか申し上げようがない。

『We, frankly, didn't even get inflation back up to target, without seeing wages getting out of touch with -- with where they should be, so that's the -- that's the biggest thing we can do. 』

この辺は何かコロナ前の話になっとる、どういう前振りなんだか。

『You know, in -- in -- inequality is something that's been with us increasingly for more than four decades and it's -- it's not really related to monetary policy, it's -- or -- or -- it's more related to -- there are a lot of theories on -- on what causes it, but it's been something that's more or less been going up consistently for more than four decades and there are a lot of different theories, one of which is that just is that globalization -- globalization and technology call for rising levels of skills and aptitudes and education, and the U.S. educational attainment kind of flattened out, certainly relative to our peers, flattened out over that period.』

一文が長げえよという感じですが、この40年間にわたって不公平が拡大してきたけれども、それにはいろいろなファクターがあって、グローバル化とかテクノロジーの上昇による必要なスキルの上昇があって一方で教育の問題がとか、そういうのがありまして・・・・・・・

『And so a lot -- so that means, if you're -- if you're on the right side of those trends, then those things are good for you. If you're not, then your wages are going to stagnate and wages for the bottom -- you know, 10 percent, really haven't gone up in real terms in a very long time, and over a long period time, whereas the wages for the people at the top compensation, any way you cut it, before taxes, after taxes, after transfers, all of those, any way you cut it, wages have -- compensation has gone up a whole lot for people at the top, and it really hasn't gone up for people at the bottom. If you look more in the middle, then it's -- then -- then it has gone up for most other groups. But at the bottom, not so much in real terms, inflation adjusted terms.』

何か物凄くクドクドと説明しているんですが、そうは言いましてもこの間の賃金や所得推移を、課税や財政支出部分まで含めて考えると、相対的に中低所得者の方が伸びが大きいですよみたいな言い訳をしているっぽい。

『So, you know, we -- we call it out as an -- as an important factor in the economy, and we will use our tools to support maximum employment and take that -- you know, definition to heart. But obviously, that's something that's going to require -- and all of society, all of government response.』

でもってそのようになるためには、完全雇用と物価の安定というマンデートの達成が必要であって、FEDはそれに対して政策を行っています。と華麗に決まったかと思いきや次の質問が鬼。この会見の最後の質問になります。


『MICHAEL MCKEE. Mr. Chairman, Michael McKee with Bloomberg Television and Radio. I came across a statistic the other day that amazed me. Since your March 23rd emergency announcement, every single stock in the S and P 500 has delivered positive returns. I'm wondering, given the levels of the market right now, whether you or your colleagues feel there is a possible bubble blowing that could pop and setback the recovery significantly, or that we might see capital misallocation that will leave us worse off when this is over?』

SP500銘柄は3月23日の緊急事態宣言以降盛大に上昇しています。皆様の経済見通しが正しくて当面厳しい経済状況という中で株が盛大に上がるのはバブルだし、それは資本のミスアロケーションが起こり、バブルが終わった後にもっとひどいことが起きるのではないでしょうか?

と来てさらに追い打ち。

『Second, inequality is not just about wages, it's also about wealth, and a number of studies have suggested that by keeping rates low for so long and targeting the markets after the great financial crisis, that the Fed did contribute to wealth inequality in this country. And I'm wondering if you think there is some tweak or some message you could give that would affect that? 』

不公平の話をさっき賃金のことで誤魔化していたようだが、より重要なのは資産であり、その資産価格というのは長期間にわたった金融環境で上昇して、格差の拡大をFEDが後押しした、と言えるのではないか、というツッコミに対してどのようにお考えでしょうか??

と綺麗な返し技ですがパウエルの答え(クッソ長い)。

『CHAIR POWELL. What we've targeted is broader financial conditions. If you go back to the end of February and early March, you had basically the world markets realized at just about the same time, I remember that Monday, that there was going to be a global pandemic and that this possibility that it would be contained in one province in China, for all practical purposes, was not going to happen. It all -- it was -- you know, it was Iran, Italy, Korea, and then it became clear in markets.』

『From that point forward investors everywhere in the world for a period of weeks wanted to sell everything that wasn't cash or a -- a short term treasury instrument. They didn't want to have any risk at all. 』

この辺「市場機能」の話を延々としています。ちなみにこの間に市場で起きた現象を「sell everything that wasn't cash or a -- a short term treasury instrument」って言ってるし、まあ皆さんそう言ってるのですが、別に金融不安も無いのにキャッシュ化というのも変な話で、そうじゃなくて過剰に詰みあがっていた一種のレバレッジ(レラティブトレードとかVIXみたいなものも一種のレバレッジでしょ)がロスカット食らったということじゃないのかね、と今だに思うのですがその話はまたどこかで。

『And so, what happened is markets stopped working. They stopped working and companies couldn't -- couldn't borrow, they couldn't roll over their debt. People couldn't borrow. So, that's -- that's the kind of situation that can be fair -- financial turbulence and malfunction. A financial system that's not working can greatly amplify the negative effects of what was clearly going to be a major economic shock. So, what our tools were -- were put to work to do was to restore the markets to function. And I think, you know, some of that has really happened, as I -- as I mentioned in my opening remarks, and that's a good thing. 』

要するに市場があばばばばーになったから機能回復させたのですよ、という主張。

『So, we -- we're not looking to achieve a particular level of any asset price. What we want is investors to be pricing in risk, like markets are supposed to do. Borrowers are borrowing, lenders are lending. We want the markets to be working. And again, we're not looking to -- to a particular level.』

市場価格に一定の目標がある訳ではなくてあくまでも市場機能ですし金融仲介機能ですよ、と言ってるんだが、だったら何で最初の方の質疑の中で資産価格の話をしたのか、ってな話で、まあ説明がアカンかったですな。勿論本音は株価が戻って万歳三唱なんでしょうけどFEDは。

『I think our -- our principal focus though is on the -- on the state of the economy and on the labor market and on inflation. Now inflation, of course, is -- is low, and we think it's very likely to remain low for some time below our target. So, really, it's about getting the labor market back and getting it in shape, that's -- that's been our major focus.』

さらにそもそも論にして話を誤魔化しにかかっていますが、物価よりも雇用を重視しているような説明はオモロイ。

『And I would say -- you know, we -- if we were to hold back because -- we would never do this, but the idea that, just the concept that we would hold back because we think asset prices are too high, others may not think so, but we just decided that that's the case, what would happen to those people? You know, what would happen to the people that we're actually, legally supposed to be serving? We're supposed to be pursuing maximum employment and stable prices, and that's what we're pursuing. We're also pursuing financial stability, but there you have a banking system that is so much better capitalized, so much stronger, better aware of its risks, better at managing its risks, more highly liquid. You have all of those things and they've been lending, they've been taking in deposits, they've been a source of strength in this situation. So, I would say that we're tightly focused on our real economy goals. And -- and again, not -- we're not -- we're not focused on moving asset prices in a particular direction at all. It's just, we want markets to be working and I think partly as a result of what we've done, they are working and -- you know, we hope that continues.』

ということでうだうだと説明していますが、要はアセットプライスにコミットしている訳ではない、と説明しているんですけれども、最初の所でアセットプライスの話をしている時点でお前は何を言ってるんだという感じだし、アセットプライスを気にしているからこそ、そうじゃありませんよというためにやたら多弁にならざるを得ませんな、というのは把握しましたが、結局バブルかどうかの質問には答えずじまい、まあ答えられないからこうやって別の話を延々としてたんでしょうけどね。

#続き(というか途中の部分)は明日にでも






2020/06/12

お題「FOMC会見の冒頭説明は各種施策の役割について良く整理されています」

いやまあ確かにアタクシ9日の朝に米茄子が市場最高値を更新したのでヒャッハーとか言ったかもしれませんけれども(半泣き状態)。

https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-usa-kudlow-idJPL4N2DO3M0?il=0
2020年6月12日 / 05:10 /
カドロー氏、株急落で市場に冷静さ求める 「3月安値から4割高」

『[ワシントン 11日 ロイター] - 米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長は11日、新型コロナウイルス感染の第2波への警戒感が強まる中、株式相場が急落したことについて、3月下旬に付けた安値からは依然4割も戻しているとして、市場に冷静な対応を促した。FOXビジネス・ネットワークとのインタビューで述べた。』(上記URL先より)

ちょwwww引けに掛けて更にあばばばばーになっとるやないかアイヤー!


〇FOMC会見ネタだがオープニングリマークからで今日は勘弁

昨晩(といってもそんなに遅くは無い時点でした、汗)出した時にはまだオープニングリマークだけだったんですけれども、今朝見たら質疑応答入りの文字起こしが出ているという素敵な事になっています。

いやまあ流し聞き(?)で会見Q&Aは聞いてたんですけど、さすがに寝起きから成敗に行くのちとしんどいのでそっちはそっちで早急に成敗しますが、とりあえず冒頭のステートメントで勘弁ということで(大汗)。

ちなみに昨日申し上げたように動画が出る前にしょうがないからCNBCのサイトで見た(というより聞いた)のですが、FRBのサイトの方で見た方がパウエルの喋りが鮮明に聞こえる、という仕様になっています。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20200610.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference June 10, 2020

動画でみると全体が58分6秒。オープニングリマークは最初から10分41秒くらいまでです。


・最初はただの挨拶

『CHAIR POWELL. Good afternoon, everyone, and thanks for joining us. Our country continues to face a difficult and challenging time, as the pandemic is causing tremendous hardship here in the United States and around the world. People have lost loved ones. Many millions have lost their jobs. There is great uncertainty about the future. At the Federal Reserve, we are strongly committed to using our tools to do whatever we can, and for as long as it takes, to provide some relief and stability, to ensure that the recovery will be as strong as possible, and to limit lasting damage to the economy.』

このご挨拶の最後のところに「we are strongly committed to using our tools to do whatever we can,」ってありますが、これってもう最近必ず出てくる表現でして、ECBとかでも同じような表現が出てくるのですが、メディアの方がネタが無いのか何だか知らんですけれども、この手の「ご挨拶」文言を捕まえて一々ヘッドラインにしたがる(代表格はブルームバーグ)のですが、ECBにしろFEDにしろ、この「あらゆる措置を取る」ってのは、今や「コロナは大変ですねえ」位の話なんじゃネーノとは思うのですが、メディアは政策に何かチェンジが無いと商売にならんという意識が強いようで、どうもこの手のご挨拶文言に過剰反応するんじゃネーノ、というのは最近とみに思う(個人の感想です)。

『The most important response to this crisis has come from our health care workers. And on behalf of the Federal Reserve, let me express our sincere gratitude to those dedicated individuals who put themselves at risk, day after day, in service to others and to our nation. Let me also thank the many other essential workers across the country who have helped meet our basic needs for goods and services in these difficult times. 』

こちらは感染症の最前線で働いている人への謝辞。


・デュアルマンデートですがハードデータがアカン時には基本この人たち雇用の話をフォーカスする訳で

ということでご挨拶タイムが終了しまして始まるのが雇用の話。

『The virus and the forceful measures taken to control its spread have induced a sharp decline in economic activity and a surge in job losses.』

まあ何ですな、物価の方が上がったり下がったりというのがあんまりなくて何だかんだ言って落ち着いている、というのが背景にあるとは思うのですが、だいたいこういう状況になると(リーマンショックの時もそうでしたが)基本的には雇用の数字の話を思いっきりする、という優先順位になっているようですな。QE2導入の前の時は物価を気にする場面もありましたが。

『Indicators of spending and production plummeted in April, and the decline in real GDP in the current quarter is likely to be the most severe on record.』

消費や生産が最大にシビアなあばばばばーですよと。

『Even after the unexpectedly positive May employment report, nearly 20 million jobs have been lost on net since February, and the unemployment rate has risen about 10 percentage points, to 13.3 percent.』

でもって雇用ですが、先般の雇用統計に関しての言及が「unexpectedly positive」とは言ってますが、その後の説明が現状の雇用情勢がアカンという話を並べておりまして、順当と言ってしまえば順当なのですけれども、先日の雇用統計で喜ぶとかいうような説明をしない、というスタンスになっていますので、まあ普通に雇用情勢はとっても厳しい状態だよあかんよ駄目よあばばばばーだよ、ってな話をしております。まあこの時点で大喜びする中銀担当はおらんわなと思うので当然ですが。

『As was highlighted by the Bureau of Labor Statistics, this figure likely understates the extent of unemployment; accounting for the unusually large number of workers who reported themselves as employed but absent from their jobs would raise the unemployment rate by about 3 percentage points.』

おまけに出てきた統計がテクニカルに強く出すぎている件にも言及。


・コロナでの影響は相対的に社会的立場の弱い人達に厳しくなっているという言及

雇用情勢の説明の直後にこの話が来ます。ご案内のようにこの話はここもとFED高官で強調する人が多い話でして、一方で中小企業融資対象の新型オペとか言ってるのに対象になる融資の1社あたりの限度額が1000億円でどう見ても「等」の方で数字を作りにいってるだろうとかいうような事をしておられるどこぞの島国の中央銀行は(以下の悪態は削除されました)。

『The downturn has not fallen equally on all Americans, and those least able to shoulder the burden have been the most affected. In particular, the rise in joblessness has been especially severe for lower-wage workers, for women, and for African Americans and Hispanics.』

日銀もさることながらコロナのドサクサに紛れて訳の分からん我田引水や中間搾取(以下の悪態は削除されました)。


・改善の動きがみられるというパラグラフの締めは「とは言っても水準は全然アカン」になるのだ

と、掴みは厳しい話をしておりまして改善の動きへの言及に入る。

『In recent weeks, some indicators suggest a stabilization or even a modest rebound in some segments of the economy, such as retail merchandise and motor vehicle sales. Employment rose in many sectors of the economy in May, and the unemployment edged down as some workers returned to their jobs from temporary layoffs.』

キタコレですが、

『With the easing of social distancing restrictions across the country, people are increasingly moving about, and many businesses are resuming operations to varying degrees.』

当然ながら背景はロックアウトの段階的解除。

『At the same time, many households have been receiving stimulus payments and unemployment benefits, which are supporting incomes and spending.』

家計に政府部門からの各種お助け措置でお金が入ってきているので家計所得や消費を助けている、という何か物凄く裏山鹿な話がががが。USA!USA!ってな感じですな。

『Activity in many parts of the economy has yet to pick up, however, and overall output is far below earlier levels. Moreover, despite the improvements seen in the May jobs report, unemployment remains historically high.』

威勢の良さそうな話が続いていましたが締めは結局「そうは言っても色々な経済活動の水準は依然としてクソである」と一刀両断されているのでした。まあこの言い方ですから無茶苦茶慎重ですねということですけれども、そらまあ初期段階も初期段階で回復の傾向がみられますヒャッハーとか中央銀行が言い出したら緩和措置を引かれるとかそっちの懸念が出て市場壊れたら元も子もないですし、ここは慎重に行くでしょうし、そういう意味では(またぞろ金融バブルやって大変な結末を迎えるリスクは大有りなのですが)緩和はやはり引っ張られる傾向にあるでしょうなあ、とは思うのでありました(個人の感想です)。


・物価に関する話はあっさり味なのとロンガータームインフレ期待については堅調なんですってよ

『Weak demand, especially in sectors most affected by the pandemic, is holding down consumer prices. As a result, inflation has fallen well below our symmetric 2 percent objective. Indicators of longer-term inflation expectations have been fairly steady. 』

物価に関連する経済現状の話は冒頭ステートメントではこのようにあっさり味になっています。まあこれインフレ期待の数値が盛大に下がりだすとまた別の話になるんでしょうが、現状程度の状況ならそんなにこっちにフォーカスして何かがどうのこうのとはならんですかね。


・今後の事は不確実性が大きいというのをマクラにして実施してきた政策のアピール

『The extent of the downturn and the pace of recovery remain extraordinarily uncertain and will depend in large part on our success in containing the virus.』

そらそれ以外に言いようがないわな。

『We all want to get back to normal, but a full recovery is unlikely to occur until people are confident that it is safe to reengage in a broad range of activities.』

経済活動のフルリカバリーはコロナ感染症がただのインフルレベルになるまでは無理ですわな。

『The severity of the downturn will also depend on the policy actions taken at all levels of government to provide relief and to support the recovery when the public health crisis passes.』

と来たここで経済のダウンターンの厳しさは政策当局による政策行動によっても決まるとかになって以下FEDの政策のアピールタイム。

『The Fed’s response is guided by our mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people, along with our responsibilities to promote the stability of the financial system. We are committed to using our full range of tools to support the economy in this challenging time.』

またありましたな「using our full range of tools」。

『In March, we quickly lowered our policy interest rate to near zero, where we expect to keep it until we are confident that the economy has weathered recent events and is on track to achieve our maximum employment and price stability goals.』

『We have also been taking broad and forceful actions to support the flow of credit in the economy. Without access to credit, families could be forced to cut back on necessities or even lose their homes. Businesses could be forced to downsize or close, resulting in further losses of jobs and incomes and worsening the downturn. Preserving the flow of credit is thus essential for mitigating the damage to the economy and setting the stage for the recovery.』

ゼロ金利政策(IOERが10bpですけど)とクレジット支援策をしましたよ、というアピール。


・国債、MBS買入の目的は「市場機能」であるという説明

『Since March, we have been purchasing sizable quantities of Treasury and agency mortgage-backed securities in order to support the smooth functioning of these markets, which are vital to the flow of credit in the economy.』

声明文の方であって、何度もこの説明が行われていますが、米国国債やエージェンシーMBSなどのAPPは「in order to support the smooth functioning of these markets」であって、それは何のためにやっているかというと、そのスムーズファンクショニングが「vital to the flow of credit in the economy」という説明になっています。つまりマネタリーベースを増やすことによってどうのこうのとか、インフレ期待を引き上げるためにどうのこうのとか、そういう理屈を使っていない訳でして、理屈的な整理では実質的にはクレジットイージングをしていたQE1の理屈になっていますということです。リーマン後を思い出せば、このQE1がQE2になった時にはインフレ期待の低下を止める、という理屈がありましたがさて今後どうなるんでしょうかね。

『Our ongoing purchases have helped to restore orderly market conditions, and have fostered more accommodative financial conditions. As market functioning has improved since the strains experienced in March, we have gradually reduced the pace of these purchases.』

あばばばばーだった市場機能が回復すると金融環境は改善しますので、市場機能の回復に応じて資産残高拡大のペースを徐々に減らしました。

『To sustain smooth market functioning and thereby foster the effective transmission of monetary policy to broader financial conditions, we will increase our holdings of Treasury and agency mortgage-backed securities over coming months at least at the current pace. We will closely monitor developments and are prepared to adjust our plans as appropriate to support our goals.』

でもってこの買入なんですけれども、向こう数カ月の間は現状の拡大ペースを維持します。とこちらは声明文にもありまして、まあ拡大ペースが維持されますねってことではありますが、「We will closely monitor developments and are prepared to adjust our plans as appropriate」ってんですから必要に応じて上げ下げあるで、という話ですな。


・クレジットお助け策はバックストップという扱いですな

『The Federal Reserve is also undertaking programs to provide stability to the financial system and to more directly support the flow of credit in the economy-for households, for businesses of all sizes, and for state and local governments.』

今度はそっちの政策の話。

『These programs benefit the economy by providing financing where it is not otherwise available. In addition, by serving as a backstop to key credit markets, the programs can increase the willingness of private lenders to extend credit.』

バックストップとして機能することによって貸出者のクレジット拡大意欲を促進する、という建付け。

『Many of these programs rely on emergency lending powers that are available only in very unusual circumstances, such as those we find ourselves in today. We are deploying these lending powers to an unprecedented extent, enabled in large part by financial backing and support from Congress and from the Treasury.』

貸出パワーの源は財務省様からのエクイティ部分ですよ、って話をしながら、

『We will continue to use these powers forcefully, proactively, and aggressively until we are confident that we are solidly on the road to recovery.』

状況が落ち着いて回復が確実になるまで「forcefully, proactively, and aggressively」にこのパワーを使います、と威勢の良いことを言っているのですが、まあ実際は予算様が出てくれないと出しようもなくて、逆に言えばこの施策って予算がつく即ち議会の承認を受けているということで、他のFEDのアクションと違って議会で吊るし上げ食らう事も無いし、事実上は議会が判断する話なので、何ぼでも威勢の良い空手形を出せますなあ、などと斜に構えてこの部分を解釈してしまうのがアタクシのクオリティ(アカン)。

『When the time comes, after the crisis has passed, we will put these emergency tools back in the toolbox. 』

って出口(という程のもんでもないが)にも言及していて出口も無くどんどん増築をするヘボ温泉旅館のような政策をしている(以下暴言のため削除されました)。


・クレジットお助けプログラムに関する重要なそもそも論の展開

『I would stress that these are lending powers, not spending powers.』

最初からこの説明も一貫しています。

『The Fed cannot grant money to particular beneficiaries. We can only create programs or facilities with broad-based eligibility to make loans to solvent entities with the expectation that the loans will be repaid.』

「make loans to solvent entities with the expectation that the loans will be repaid」なのであって、ノリで3倍とか社債買入を拡大する(以下割愛)。

『Many borrowers will benefit from these programs, as will the overall economy. But for many others, getting a loan that may be difficult to repay may not be the answer. In these cases, direct fiscal support may be needed. Elected officials have the power to tax and spend and to make decisions about where we, as a society, should direct our collective resources. The CARES Act and other legislation provide direct help to people, and businesses, and communities. This direct support can make a critical difference, not just in helping families and businesses in a time of need, but also in limiting long-lasting damage to our economy.』

クレジットプログラムでやっているのはあくまでも議会で決めたコロナ対応方と予算に伴うものですよ、という話をそもそも論から展開しています。いつもの話ではあるのですが重要重要。


・ということで今回の政策決定についてですがYCCに言及キタコレ

『At this meeting, my colleagues and I continued our discussion of approaches for conducting monetary policy when the federal funds rate is at its lower bound. The measures we discussed included explicit forms of forward guidance and asset purchases; we used these tools in the aftermath of the global financial crisis, and they have become a standard part of our toolkit.』

てのはまあ良いとしまして、

『We also reviewed the historical and foreign experience with targeting interest rates along the yield curve.』

YCCについての海外での事例のレビューキタコレ!!!!

『Whether such an approach would usefully complement our main tools remains an open question.』

政策に関してはまだ使えるのかどうかは検討課題のままですよと。

『We will continue our discussions in upcoming meetings and will evaluate our monetary policy stance and communications as more information about the trajectory of the economy becomes available.』

ということで、これは「経済の次のステージ」になった所で改めてその他の金融政策運営含め、どういう運営していくか考えまっせ、という話なので今日明日の話にはならんじゃろ。


・SEPの話

『We also resumed our regular quarterly Summary of Economic Projections, or the SEP. The SEP is an input into our deliberations, not an outcome, and it does not represent a Committee view. Rather, FOMC participants write down their individual views of the most likely path for the economy, conditional on each participant’s view of appropriate monetary policy. We tabulate those submissions and we publish them as the SEP. 』

SEPって何じゃろというただの説明。

『Given the unusually high level of uncertainty about the outlook, many participants noted that they see a number of reasonably likely paths for the economy, and that it is not possible to identify with confidence a single path as the “most likely” one.』

FOMCの皆さん今回は何本もシナリオを考えていて、先行きの「most likely」を一つ出せというのはちょっと、だったようですがそれでも・・・・・・

『Nonetheless, we believe that regular publication of the SEP provides a useful perspective on the way FOMC participants are assessing the path ahead. What the June SEP shows is a general expectation of an economic recovery beginning in the second half of this year and lasting over the next couple of years, supported by interest rates that remain at their current level near zero.』

年後半から回復が始まるけど、実質ゼロ金利政策は再来年の終わり(だから2年半くらいですな)続くよという予想が大勢でした、というのが示されましたね、とな。

『Of course, my colleagues and I will continue to base our policy decisions on the full range of plausible outcomes, and not on a particular forecast. This riskmanagement approach is the best way we can promote our maximum employment and price stability goals in these unusually uncertain circumstances. 』

一応だしてみたけど先の事はこの状況では不確実にも程があるので別にこれが決め打ちでも何でもないよ、と仰せでそらそうよという所ですな。ここではあんまり0−0.25%が再来年末までっての強調しませんでしたね。


・最後はミネアポリスの警官による黒人男性殺害事件に関連する言及となります

きっちりこういう話をするのはパウエルですな、と思います。

『Finally, I want to acknowledge the tragic events that have again put a spotlight on the pain of racial injustice in this country. The Federal Reserve serves the entire nation. We operate in, and are part of, many of the communities across the country where Americans are grappling with and expressing themselves on issues of racial equality. I speak for my colleagues throughout the Federal Reserve System when I say there is no place at the Federal Reserve for racism and there should be no place for it in our society. Everyone deserves the opportunity to participate fully in our society and in our economy.』

『These principles guide us in all we do, from monetary policy, to our focus on diversity and inclusion in our workplace, and to our work to ensure fair access to credit across the country. We will take this opportunity to renew our steadfast commitment to these principles. We understand that the work of the Fed touches communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We are committed to using our full range of tools to support the economy and to help assure that the recovery from this difficult period will be as robust as possible.』

『Thank you, I look forward to our questions. 』

とまあ今日はここで勘弁。








2020/06/11

お題「寝起きでFOMCですがSEPのドットで疑似ガイダンスワロタ」

昨日の午前中からこんなニュース出ていましたが(最初に見たヘッドラインはテレ朝だったので敬意を表してテレ朝を貼っておく)、

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000185898.html
警戒呼び掛け「東京アラート」12日にも解除で検討
[2020/06/10 11:51]

『9日時点で「週単位の感染者の増加率」はアラート発動の基準を上回っていますが、都の関係者によりますと、3日連続で新たな感染者が20人を下回っていることや医療体制が確保できていることから、早ければ12日にも解除する方向で検討を進めているということです。』(上記URL先より)

アラート解除するのは結構なんですけど判断基準がガバガバ過ぎませんかねえと思いますし、だいたいからして水曜の時点で何で金曜の動きを決め打ちするかのような話になるんですかねえ。

まさかとは思いますがこのイベントに絡めてアラート解除日を計算(爆発音)

http://2020tochijisen.tokyo/
(謎のURLですがれっきとした東京都選挙管理委員会運営のページみたいです)



・・・・・・てな与太話はさておき、FOMCなのでよーしパパ会見ライブ聞いてやるぞーと意気込んで超早寝をしたんですけれども、夜中の1時に起きてしまいまして、それはまあ早いわと寝て次に起きたら会見はとっくの昔に終わっておりましたwwwww

しかも会見終わってから会見のオープニングステートメントが出るのにタイムラグがあって(会見終了が大体4時半ですが5時半から6時くらいにならないとテキストが出てこない)、しょうがないのでCNBCテレビが録画放送してたのを斜め聞き(?)しましたが、質問の音が聞きにくいのでフルテキスト出てからよくよく考えて明日のネタに投下の所存であります(さすがに今回のネタは週跨ぎするのは勿体ない)。

#既にQ&A付きの映像はFRBのトップにリンクがありますし、オープニングリマークのテキストもありますです

などと言い訳をまして結局いつもと変わらぬ寝起きFOMCですが・・・・・・・・・・


〇声明文比較は前回4月29日のと行います:臨戦モード継続も追加施策には触れず当面は政策効果確認タイムっぽい

今回声明文
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200610a.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/monetary20200610a1.pdf

前回声明文
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200429a.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/monetary20200429a1.pdf

・第1パラグラフ:前回に登場した臨戦モード文言を継続

『The Federal Reserve is committed to using its full range of tools to support the U.S. economy in this challenging time, thereby promoting its maximum employment and price stability goals.』(今回)

『The Federal Reserve is committed to using its full range of tools to support the U.S. economy in this challenging time, thereby promoting its maximum employment and price stability goals.』(前回)

本来1パラ目は「前回のFOMC以降に得られた情報によると」から始まって、経済物価情勢の現状アセスメントについて説明するパラグラフなのですが、今年に入ってからは1月はまあ普通にやってましたがそれ以降はあばばばばーの連続でそもそも声明文が「おう今日は利下げしたわ」みたいなのでおしマイケルってのが続き、4月になって戻ったのですが、一発目に戒厳令布告じゃないですけど臨戦文言をぶっこんでいるという作りになっていまして、今回もその形式が踏襲されています。

これはまだ各種情勢はコロナだパンデミックだあばばばばーだという認識でいる、って話なので、別に必要があれば何かのアクションをするのはやぶさかではありませんよ、まだ引くような段階じゃあありませんよ、というメッセージを出しているんですな。実際にぶっこむのかと言えば、最近のFED高官発言を綜合すれば、議会がおかわり予算を通してくれれば、その分に関する流動性供与とかは惜しまずに実行するよ、という感じに留まる、というかFEDが主体的に何かぶっこみに行く、というステージは終わっていて、もしやるならパンデミック関連が一段落したあとの話でしょ、とは思います(個人の感想です)。


・第2パラグラフ:臨戦モード継続も金融環境の改善に言及

『The coronavirus outbreak is causing tremendous human and economic hardship across the United States and around the world. The virus and the measures taken to protect public health have induced sharp declines in economic activity and a surge in job losses. Weaker demand and significantly lower oil prices are holding down consumer price inflation.』(今回)

『The coronavirus outbreak is causing tremendous human and economic hardship across the United States and around the world. The virus and the measures taken to protect public health are inducing sharp declines in economic activity and a surge in job losses. Weaker demand and significantly lower oil prices are holding down consumer price inflation.』(前回)

2パラが経済物価情勢のアセスメントになっていますが、ゆうてアセスメントっていったってコロナが大変ですね世界的に、という話をしているだけでして、はあそうですかって所ですが、文言に変更が無いのはこれまた臨戦モードの強調という意味もあるんでしょうかね、よー知らんけど。

『Financial conditions have improved, in part reflecting policy measures to support the economy and the flow of credit to U.S. households and businesses.』(今回)

『The disruptions to economic activity here and abroad have significantly affected financial conditions and have impaired the flow of credit to U.S. households and businesses.』(前回)

政策当局(FEDと政府)の取り組みによって経済とクレジットフローが改善されて、それが金融環境の改善に一部寄与している、ということでここの判断は引きあがっておりまして、物凄く素直に読むとこれは今の施策が効いているので、戦場の方で何か火を吹く事態がおきない限りにおいては様子を見ていくよー、という話だと思うのですがバイアス入ってますかにゃ(笑)。


・第3パラグラフ:金利政策に関しては据え置き、ガイダンス文言は変更なし(なおSEPでオルタナガイダンス登場しますが後で)

『The ongoing public health crisis will weigh heavily on economic activity, employment, and inflation in the near term, and poses considerable risks to the economic outlook over the medium term. In light of these developments, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent. The Committee expects to maintain this target range until it is confident that the economy has weathered recent events and is on track to achieve its maximum employment and price stability goals.』(今回)

『The ongoing public health crisis will weigh heavily on economic activity, employment, and inflation in the near term, and poses considerable risks to the economic outlook over the medium term. In light of these developments, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent. The Committee expects to maintain this target range until it is confident that the economy has weathered recent events and is on track to achieve its maximum employment and price stability goals.』(前回)

全文一致です。金利に関するガイダンス文言は(まあこれは拘束力のあるようなガイダンスじゃないからガイダンスというのもアレですが)「The Committee expects to maintain this target range until it is confident that the economy has weathered recent events and is on track to achieve its maximum employment and price stability goals.」のままです。

まあ何ですな、本来はこの文言って「it is confident that the economy has weathered recent events and is on track」って所が定性的かつジャッジメンタルな表現な上に、そもそも論として最初が「The Committee expects to maintain」であって、別にコミットするとは言ってないのですけれども、まあこういうユルユルの定性的な説明であっても、これまでの緩和実績があるので、これでも十分にガイダンスとして効いてくるわけですな。

・・・・・余談になりますが、まあそういう感じでフォワードガイダンス政策って言いましても、これがまた同じものを他国で移植したときにそのまま使えるのか、というのは実はガイダンス文言の強さだけではなくて、それまでの金融政策運営バイアスにも引っ張られるのがガイダンスの強さ弱さだとアタクシは思うので、今回ってさっきも言いましたしあとで出しますが、SEPでオモシロガイダンスもどきを出していまして、まあこれで効くだろうなあとは思うのは、それまでの実績がモノをいうと言う話ではないか(個人の感想です、あと市場の反応ガチで見てないから中短期金利跳ねてたらゴメンよ)と思うのでしたです。


・第4パラグラフ:今後の金融政策運営文言はまあここ変わりようがないのですがやはり全文一致

『The Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook, including information related to public health, as well as global developments and muted inflation pressures, and will use its tools and act as appropriate to support the economy. In determining the timing and size of future adjustments to the stance of monetary policy, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(今回)

『The Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook, including information related to public health, as well as global developments and muted inflation pressures, and will use its tools and act as appropriate to support the economy. In determining the timing and size of future adjustments to the stance of monetary policy, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(前回)

今後も経済物価情勢とか海外情勢とかコロナ情勢とか見ながら必要な時に適切な政策を行い、最大雇用とシンメトリックな2%物価目標のマンデートの達成に向けて取り組みますよああそれから経済情勢などを見る時には単一の指標に依拠するんじゃなくて経済物価情勢を幅広く見ますよ。というこのパラグラフは毎度同じ(昔から見てもコロナが入ってきた位の違いしかない)。



・第5パラグラフ:資産買入に関する文言:国債やMBS、CMBS買入は「smooth market functioning」だがペースは維持

『To support the flow of credit to households and businesses, over coming months the Federal Reserve will increase its holdings of Treasury securities and agency residential and commercial mortgage-backed securities at least at the current pace to sustain smooth market functioning, thereby fostering effective transmission of monetary policy to broader financial conditions.』(今回)

『To support the flow of credit to households and businesses, the Federal Reserve will continue to purchase Treasury securities and agency residential and commercial mortgage-backed securities in the amounts needed to support smooth market functioning, thereby fostering effective transmission of monetary policy to broader financial conditions.』(前回)

会見の方はオープニングステートメントの方はちょっとだけ真面目に聞いてみた(のだがテキストが無いで聞くとパウエルは発音が綺麗なのだがドメドメジャパニーズのアタクシにはちと速度が速いのでテキスト見直してネタにしたいが多分時間足りないので今日は勘弁ね)のだが、その後の会見でもやたらこの「market functioning」が出てきてたような気がする(聞き流しているので気のせいかもしれませんけど)ので、もしかしたらこの辺ポイントになるかもしれませんが気のせいだったらゴメンね。

てな訳でして、この辺の買入は引き続き「市場機能維持のため」の買入となっていて、つまりはこれ定義的にはQEじゃないから、市場機能維持に必要な程度しか買わんよという理屈も成り立つんですが、今回はこ奴らの買入について「at least at the current pace」と今回新たに文言を入れておりまして、先般来ペースを落とした買入はこれ以上ペース落とさんよ、と示して安心感、というのもあるでしょうし、あとはこの部分に関しては臨戦態勢解除となって、普通の金融政策で普通に経済サポートする、という時にQEとして使える余地を残しておく、というのは当然ながらあろうかと思います。まあ臨戦態勢解除になっている状況だったら現時点で吹かし過ぎになっている気もしますけどね。


『In addition, the Open Market Desk will continue to offer large-scale overnight and term repurchase agreement operations. The Committee will closely monitor developments and is prepared to adjust its plans as appropriate.』(今回)

『In addition, the Open Market Desk will continue to offer large-scale overnight and term repurchase agreement operations. The Committee will closely monitor market conditions and is prepared to adjust its plans as appropriate.』(前回)

短期金融市場に関しては、「closely monitor developments and is prepared to adjust its plans as appropriate.」とありますが、先般のFOMC議事要旨の中でも、ディスカウントウィンドウ(というかプライマリークレジット)の金利を引き上げてコリドアの幅を広げた方がエエンチャウノという意見が一部にありましたように、こちらに関して言えば、現状オペと常設ファシリティでガチガチにしちゃっているのですが、市場環境が改善してファンディング市場が正常化してくれば、ガチガチの措置については緩和していって、市場にその機能をゆだねる方向性を示している、と思いますし、まあこれは健全なスタンスだと思います。


・第6パラグラフ:全員賛成ですかそうですか

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; Richard H. Clarida; Patrick Harker; Robert S. Kaplan; Neel Kashkari; Loretta J. Mester; and Randal K. Quarles.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; Richard H. Clarida; Patrick Harker; Robert S. Kaplan; Neel Kashkari; Loretta J. Mester; and Randal K. Quarles.』(前回)


〇NY連銀へのディレクティブ等をちょっとだけ確認

PDF版だと声明文の次にそのまま記載されていますが、HTML版だと声明文の後にリンクがあります。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200610a1.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200429a1.htm(前回)

Implementation Note issued June 10, 2020
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation
June 10, 2020

『The Federal Reserve has made the following decisions to implement the monetary policy stance announced by the Federal Open Market Committee in its statement on June 10, 2020:

・The Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously to maintain the interest rate paid on required and excess reserve balances at 0.10 percent, effective June 11, 2020.』(今回)

IOERは前回も0.10%ですので変更なし。

『・As part of its policy decision, the Federal Open Market Committee voted to authorize and direct the Open Market Desk at the Federal Reserve Bank of New York, until instructed otherwise, to execute transactions in the System Open Market Account in accordance with the following domestic policy directive:』(今回)

ということで以下ディレクティブですが、変更点だけ引用しますと、2ポツ目に、

『〇Increase the System Open Market Account holdings of Treasury securities, agency mortgage-backed securities (MBS), and agency commercial mortgage-backed securities (CMBS) at least at the current pace to sustain smooth functioning of markets for these securities, thereby fostering effective transmission of monetary policy to broader financial conditions.』(今回)

『〇Increase the System Open Market Account holdings of Treasury securities, agency mortgage-backed securities (MBS), and agency commercial mortgage-backed securities (CMBS) in the amounts needed to support the smooth functioning of markets for these securities.』(前回)

となっておりまして、国債、エージェンシーMBSおよびエージェンシーCMBSの買入については「at least at the current pace」で行い、これらの市場機能が円滑に作用するようにしましょう、って部分は同じですが、そのケツに「fostering effective transmission of monetary policy to broader financial conditions.」ってのが入っておりますな。ちょっと気になったが意味合いを深く悩むにはちょっとディレクティブ文学の読み込みが足りないので判断保留。


あと、今回しらっとこの項目が入っていまして、

『〇Allow modest deviations from stated amounts for purchases and reinvestments, if needed for operational reasons.』

買入とか償還再投資において、オペレーション上の理由で額が多少程度アナウンスしている予定よりもブレることを許容する、ってのがあるのですが、これまたアタクシ国債とかMBSとかの買入のブレがどうのこうのとかまで細かいウオッチしてないので判断保留なんですが、まあ気になるのは気になった。

ディれぃてぃぶのその他の部分には変化が無いので、ONRRPは0.00%、1社あたりの応札限度とかも同じです。

それからディスカウントウィンドウのプライマリークレジットレートも0.25%のままで維持されています。



〇SEPのドットでフォワードガイダンスもどき攻撃キタコレ

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200610b.htm
June 10, 2020
Federal Reserve Board and Federal Open Market Committee release economic projections from the June 9-10 FOMC meeting
For release at 2:00 p.m. EDT

『The attached table and charts released on Wednesday summarize the economic projections and
the target federal funds rate projections made by Federal Open Market Committee participants for the June 9-10 meeting.』

『The table will be incorporated into a summary of economic projections released with the minutes of the June 9-10 meeting. Summaries of economic projections are released quarterly.』

ということで見る訳ですが・・・・・・・・

SEPのサマリー(本チャンは実は長いのよ、議事要旨と同時公表)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20200610.pdf

なお引用はこっちからします
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20200610.htm(HTML版)

・経済物価見通し

めんどいのでMedianしかみません(左から2020、21、22、ロンガーラン)。

Change in real GDP -6.5 5.0 3.5 1.8
December projection 2.0 1.9 1.8 1.9

Unemployment rate  9.3 6.5 5.5 4.1
December projection 3.5 3.6 3.7 4.1

PCE inflation      0.8 1.6 1.7 2.0
December projection 1.9 2.0 2.0 2.0

Core PCE inflation 1.0 1.5 1.7
December projection 1.9 2.0 2.0

ということで、まあ下がってるし先行きはコロナちゃん次第なので何ともですけれども、一応この物価見通しは目先は兎も角先はそこそこ持ち直す絵になっているのね、というのは把握した。


・でもってドットチャート

まあアレです。皆様見てウケた通りだと思うのですが、

2020年末:17名全員が0.00-0.25
2021年末:上に同じwwww
2022年末:17人中15人が0.00-0.25、1人が0.50-0.75、外れ値おじさんが1名いて1.00-1.25

ということで、これを疑似フォワードガイダンスにするという攻撃はワロタ。まあ柔軟で良いと言ってしまえば良いのだが、逆にホイホイとこのドットが動き出すとややこしいことになるので使い方が難しそうですなあ・・・・・・・・・・


ロンガーランですが

(今回)
3.00%:2名
2.75%:1名
2.50%:8名
2.375%:1名
2.25%:3名
2.00%:1名
(合計が16人しかいないのは変態仮面ブラード先生がロンガーランのFF金利を出さないから)


(前回)
3.25%:1名
3.00%:1名
2.75%:2名
2.50%:8名
2.375%:1名
2.25%:2名
2.00%:1名

となっていて、まあ微妙に下がった程度ですかそうですかってな所ですね。

#という所でとりあえず勘弁





2020/06/10

お題「予定が変わって社債オペ等のオペ雑談(超大汗)/FOMC直前なのでFEDのYCCに関して雑談」

ほうほう。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200609b.htm/
バーゼル銀行監督委員会による「バーゼル枠組みへのよくある質問(FAQ)」の公表について
2020年6月9日 日本銀行

『バーゼル銀行監督委員会(以下、「バーゼル委」)は、6月5日、「バーゼル枠組みへのよくある質問(FAQ)」(原題:Basel Framework frequently asked questions)を公表しました。』

とあるから「元本以上に損失が発生しない筈の有価証券で何でリスクウェイトが100%を盛大に超えるものがあるんですか」とか「その数字の根拠はなんですか」とかいうのがあるかと一瞬思ったら(無いのは分かっているがwww)、案の定ただの用語の定義の説明ですたww

https://www.bis.org/bcbs/publ/d503.pdf
Basel Framework frequently asked questions
June 2020


〇社債買入は同年限の国債よりも出来上がり金利が低くならない下限を入れましたか

昨日の社債オペオファー(オペオファーのうち社債だけ貼っておく)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of200609.htm
社債等買入(残存期間1年以上3年以下)(注4) 3,000 2020年6月15日
(注4) 応札レート(売買希望利回り)は、-0.14%を下限とします。

ほうほう▲0.14%、と見た瞬間に公社債売買参考統計値を見に行く位には訓練が出来ているので、早速9日付の売参を見に行っておりましたが、残存1年〜3年なので、2021年の6月償還から2023年の6月償還の銘柄をヘコヘコと見に行きますと、この辺のカーブは1年から2年くらいまでは若干のデコボコあるけどほぼフラットで3年にかけて物凄く緩やかに順イールドという感じでしたが、中期国債で見ますと残存3年の所が一番甘くて

中期国債 136(5) 2023/06/20 0.1 100.74 0 -0.143 -0.145

って感じ(左が複利右が単利)でして、10年債と20年債の残存3年は、

長期国債 329 2023/06/20 0.8 102.86 -1 -0.140 -0.140
超長期国債 62 2023/06/20 0.8 102.86 -1 -0.140 -0.140
超長期国債 63 2023/06/20 1.8 105.90 -2 -0.140 -0.140

ということですが、10年はともかく20年の残存3年とか流動性皆無(売りに行けば普通にビットでるけど買いに行っても偶々在庫ある所が在庫分出すだけじゃろ)なのでそこの利回りを参考にするのかという意見はありますけれども、まあいずれにせよ当該ゾーンの売参の平均値単利が一番高いのはこの辺の銘柄になります(気になるようでしたらご確認あれ)。

まあこの下限利回りをわざわざ5糸刻みで刻む意味もあんまりないですから、国債マイナスの出来上がり利回りで購入するのはさすがにアカンやろ、というメッセージというか何というかなのが今回の買入での下限設定、ということですので、まあ3−5年でも同様に当該年限の中で一番利回りの高い国債の金利水準を今後は下限利回り設定してくると考えるのが普通。

なお結果はご案内の通りですが、玉足りるのか位の話だったのでま札割れしなくて良かったですね(棒読み)な話。

(社債買入のみ)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba200609.htm
社債等買入(残存期間1年以上3年以下) 3,757 3,003 -0.140 -0.114 12.3

平均▲11.4bpとかナンジャソラではあるのですが、そらまあ札も無いんだからシャーナイナイとしか申し上げようがないのですけれども、それにしてもこんな金利日銀が買ってエエンカイというか、中央銀行が市場を歪めてどうするんじゃヴォケとは思う所ではありまする。

・・・と言いましても、まあこれは政策の建付けが悪くて、オペやる方としては如何ともしがたいというのもある話でして、「国債+〇bp」みたいな下限利回りの設定をすると、それは現場の方が勝手に定量的な価値判断示す格好になってしまいまして、それを決めるならばMPMが行うべきものでしょ(明示されていないからその辺グレーちゃあグレーですが)という話(実際にFEDの買入とか全部「OIS+何ぼ」とか「LIBOR+何ぼ」とかをFOMCで決めている)話ですし、まあ本当は名目金利ゼロの所で切っても良さそうなもんなのですけれども、悲しいかなマイナス金利政策とかいうゴミクズ政策を絶賛実施しているので、「社債だからマイナス金利は罷りならん」とも現場の判断で言う訳にもいかん、ということで、まあ「国債利回りよりも低くなるのはケシカラン」というところが現場で出せるギリギリのところですね、というのは分かります(量買わなくて良くてバックストップ、というなら別だがMPMはそうは言ってませんからね)。

なお、ここで突如そもそも論を持ち出して悪態シリーズになりますが、CP社債の買入を行うってことで買入の要綱とかが出来た時のMPMでこういうのが出ていたんですよね(2009年1月)

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/un0901d.pdf
企業金融に係る金融商品の買入れについて(注)
2009年1月22日 日本銀行

(注、といのは須田さんが反対して残りの委員(総裁は麿)が全員賛成した、ということです、以下暫く上記URL先の2009年1月22日公表文書から引用)

『1.企業金融に係る金融商品の買入れの性格』ってのには、

『・ 企業金融に係る金融商品の買入れは、これを金融機関に対する与信の裏付けとなる担保とする場合に比べ、民間部門の個別先の信用リスクを負担す る度合いが高い。このため、こうした政策手段は、損失発生を通じて納税者の負担を生じさせる可能性が相対的に高く、また、個別企業に対するミクロ的な資源配分への関与が深まるという特徴をもつ。』

とあったり、

『2.実施の必要性に関する判断 』には、

『@ 当該金融商品の市場金利が発行企業の特性如何にかかわらず全体として 高騰する、あるいは、当該金融商品の市場取引が成立しにくい状態が継続するといった市場機能の著しい低下が生じており、これが企業金融全体の逼迫につながっていること。 』

とあるわ、

『3.実施に当たって留意すべき事項 』には

『(2)必要な期間に限り、適切な規模で実施すること 』ってのがあって、その項目を見ますと、

『・ 必要な期間に限って実施する観点から、実施期限、あるいは終了の条件を設ける。』
『・ 日本銀行の買入れへの過度の依存による市場機能の一層の低下といっ た事態が生じないよう、適切な規模で実施する。』
『・ 市場機能の回復に応じて日本銀行への売却のインセンティブが低下していくような仕組みとするなど、適切な規模での実施や円滑な終了に資する買入れ方式を採用する。』

などという文言がありまして、涙無しには読めない文章が続いています。しかもMPMで議決して出した文書なんですよねこれがまた(ついでに申し上げるとCP買入は下限金利が設定されたのですがそれは上記URL先の続きのページで見れます)。いやはや何ともかんともとしか申し上げようがないのですが、兎に角泣けるわとしか申し上げようがない。


・・・・・・と、いつの間にか悪態になってしまいましたが、しかしまあこんなレートで3月まで買い続けるんですか??という話になりますわな。9月末までだからまあシャーナイかと思った矢先にいきなり金額は大拡大するわ期間は延長するわ、しかもそれを「政策現状維持」とか言いながら出すとかもう今の政策委員会の頭(以下の記述は内務省検閲によって削除されました)。


〇3Mドルオペ第1回目のロールが登場して半分ほどロールされましたな

昨日のオペオファーのうちドルオペ関連を引用しますね。
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba200609.htm
米ドル資金供給 2020年6月11日 2020年6月18日 0.330
米ドル資金供給 2020年6月11日 2020年9月3日 0.330
米ドル資金供給用担保国債供給(国債売現先) 10,000 2020年6月10日 2020年6月19日
米ドル資金供給用担保国債供給(国債売現先) 5,000 2020年6月10日 2020年9月4日

3Mのドルオペですが、6月11日スタートというのは、

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba200317.htm
米ドル資金供給(6月11日エンド分) 30,272 30,272

ということで、3月14日だかにあったG7を受けてドルスワップ拡充(結果的には拡充第一弾)に伴う措置で3Mのドルオペが週1オファーになった1発目が3月17日で、この時の3Mがドカンと3兆円という結果になった訳ですな、うんうん。ちなみに担保供給の方は1兆円のオファーで9333億円の落札な。

でもって昨日の結果。(ドルオペ関連のみ)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba200609.htm
米ドル資金供給(6月18日エンド分) 7,933 7,933
米ドル資金供給(9月3日エンド分) 15,890 15,890
米ドル資金供給用担保国債供給(国債売現先)(6月19日エンド分) 6,189 6,189 -0.100 -0.100
米ドル資金供給用担保国債供給(国債売現先)(9月4日エンド分) 1,027 1,027 -0.100 -0.100

ロールは半減して、担保の方も3000位減ったのねという所ですが、それでも1.6兆円分のオペが3Mで出ていまして、うーんこのという所ではありますな。まあこちらのオペに関してはコロナがパンデミックでとかやっているうちは盛大に維持されていてもあまり何も言われんとは思うのですが、米国の金融市場が落ち着いたりして、何とかファシリティのおかわりとか要らんじゃんみたいな話になってくると、どうせそのうち「なんで外国の金融機関のドル調達をFRBが助けなければいけないのか、米国の金融機関の収益機会を奪うとは怪しからん」とか議会方面からタマが飛んでくるのは必定なので、というか今でも言われてるはずだが、外国金融機関が資産投げ売りすると相場が壊れるからという言い訳をしているので、外国金融機関の資産投げ売り上等みたいな相場付きになった時は言い訳がしにくくなるわな、とまあ思いますので、そうなると危機以前のようにスワップレートがボッタクリレートになって誰も使えないモードになる可能性もあるから、当面は良いとしてもFEDの各種パンデミックプログラムのターミネート状況は見ないと行けませんね、とは思いますがどうでしょうかね。


〇コロナ対策オペ今回は1.5兆円とな

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200609c.pdf
新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーションの実施結果

1.概要
貸付日 2020年6月10日
返済期日 2020年12月25日

と、これは5月22日に既に公表されていましたけど、今回からテナーが従来の3M→6Mに伸びております(もともと1年までのテナーが可能にはなっている)がその結果は、

2.貸付予定総額
貸付予定総額 15,631億円
(参考)貸出残高(注) 159,536億円

ということですが、次回が24日のオファーで、24日の分からこの前ぶっこまれた「中小企業向け制度融資等を対象にしたオペ」と言いつつ「対象融資としてオペ適格になるのは1社あたり1000億円」と書いてあって、どう見てもそれ「等」の方が大きいだろいい加減にしろ日銀が誇大広告してどうするんじゃヴォケというオペも一緒にぶっこまれてしまいますので、まあ次回はその初回だからどうせ札ぶっこまれるんでしょうな、と思いまするに・・・・・・・・・・・・・


〇マクロ加算比率の運営でもはや「完全裁定後の残高」って意味あるんかいな・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200609a.pdf
日本銀行当座預金のマクロ加算残高にかかる基準比率の見直しについて
2020 年6月9日
日本銀行 金融市場局

『日本銀行は、日本銀行当座預金のうち、ゼロ金利が適用されるマクロ加算残高の算出に用いる基準比率(「補完当座預金制度基本要領」4.(3)イ.に定める 基準比率)について、次のとおり定めることとしました。

2020 年6月積み期間:28.5%』

ということで、遂に3積み期間をまとめて公表するの無理じゃろと言う事になりましたな。そらまあドルオペの担保オペだってここから過去の期落ちが何ぼロールされるかとか読みにくいし、 コロナ対策オペだって次回新オペも入って益々訳分らなくなるし、そら3積み期間の数字出せというのが無理難題なので1積み期間しか出てこないのはそらそうよと思う。

『これにより、日本銀行当座預金のうち、マイナス金利が適用される政策金利残高(金融機関間で裁定取引が行われたと仮定した金額)は、5兆円程度となる見込みです。』

お、おぅ・・・・・・・

いやこれ現実にはゼロ金利適用の2倍2倍とかが入ってきてもはやグチャグチャなので、まあこれ完全裁定がどうのこうのとか言われてもと思いますし、しかも10bp付利まで今度入ると、付利部分は当然抱えて寝てしまうでしょうし、まあ比率については資金需給動向と市場での裁定取引実施動向の読みで上げるか下げるか横ばいかをエイヤーで決める世界なんですかねえ(などと勝手に失礼な話をするアタクシ)とか何とか。

『次回は、2020 年7月積み期間に適用する基準比率を 2020 年7月9日 17 時に 公表する予定です。 』

ということで、まあ当面は1積み期間ごとに出すしかないですわな。


〇などと言っているうちに予告していた海外中銀ネタをする時間が無くなってしまいました

すいませんすいません計画性が無いもんで、というか社債オペがまた国債マイナス利回りになるか札割れして悪態を軽くついたらオペネタはおしマイケルかと思ったら、国債マイナス利回りを回避するという技が飛んで来たので、思わず別の調べものをしてしまったりしておりましたらこんなことにwww

てな訳ですが、よく考えたら(考えなくても)明日はFOMCの結果出るんですけど、何か知らんけど何であれYCCってやたら雨人話題にしたがるの馬鹿なのと思う訳で、そもそもジャパンのYCCって量的緩和したのが威勢よくやり過ぎて国債買入の限界ガーとか言われたので、補完措置とかいうのぶっこんだら更にQQEの限界観測が強まったのに対してブチ切れた日銀がぶっこんだマイナス金利が大失敗で、イールドカーブがどフラットしてどう見てもリバーサルレート(と言う言葉は当時はまだ言われてなかったけど)です本当にありがとうございました、ってなってどうしようもなくなった日銀が、国債買入という量的な縛りを無くすことによって国債買入ペースを下げて政策をクソ粘りさせるための敗戦処理で、敗戦を転進と誤魔化すためにYCCとか言い出した、というのがどこからどう見ても事実な訳で、つまりはYCCぶっこむには、前提として国債の馬鹿買入があって市場が壊れている、というのが無いとちと難しいじゃネーノと思うのよ。

それにジャパンの国債市場は当時はスーパードメスティック市場(今でもそうかね)でしたし、確かにこの前豪州が何かぶっこんでましたが、あれは小国なのであって、それらのような雑魚キャラと米国国債市場様を一緒に考えてはいけないでしょ常識的に考えて、と思うのですがねえ。

それに2年とかその辺YCCするとか言うんだったら強力なフォワードガイダンス文言をぶっこめば良いだけの話で、何もレートキャップ政策とかせんでもいいですし、大体からして日本のYCCが何となくワークしているのは、日銀がそもそも国債買いすぎというのもあるけども、それより重要なのは「インフレ期待が皆無」ということであって、本当の本当にインフレ期待が上がってきたら何ぼでも売り浴びせ食らう訳でして、そんなの中銀買い支えしたって米国債券市場様のようなオープンで巨大な市場じゃ無理よ無理、そら資本統制とか為替統制すれば出来るでしょうけどそうなったら最早米国が米国じゃなくなるわけですし。

てな訳で、米国(とか英国)みたいに基本的にインフレ期待がそれなりにある国で中長期金利のYCCとか言い出すのは基本無謀だと思うんですよね、まあ一瞬はイケルかもしれませんが多分後で死ぬと思うの。

・・・・・とFOMC直前に散々フラグをたててみましたが、アタクシのフラグは主に市場に効くので(爆発音と共に通信が途絶える)








2020/06/09

お題「ECBレーン理事がPEPP拡大に関する(ハト感がある)書き物をしていたので予定を変更して鑑賞(サーセン)」

ヒャッハー!
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200609/k10012463411000.html
米 NY株式市場 ナスダック株価指数が史上最高値
2020年6月9日 5時27分

いやー何と申しますかという感じですが、ITバブル崩壊に盛大に対処しに逝ったら更に大きなサブプライムバブルを作りに逝ったアレと重なると考えますと序章よ序章(フラグではありません、筈です)。


〇レーン理事がドヤ顔でPEPP拡大について説明しているようなのでそっちを先に確認

ECBのサイトですけど、
https://www.ecb.europa.eu/home/html/index.en.html

今時点でトップページを見に行くと物凄い勢いでドヤ顔した滅茶苦茶頭の良さそうなカワイイ顔したおっちゃんが観察できますが、レーン理事がPEPP拡大に関してECBブログにネタを投下しておりましたので、会見ネタの前にそっちを先に。なお投下したの金曜日(汗)。

https://www.ecb.europa.eu/press/blog/date/2020/html/ecb.blog200605~0ee256bcc9.en.html
THE ECB BLOG
Expanding the pandemic emergency purchase programme
Blog post by Philip R. Lane, Member of the Executive Board of the ECB

この前のラガルドのもそうでしたが、質疑応答無しで長文説明できるってことでこのECBブログを重宝しているっぽいのですが、まあこういう形で一方的に説明するだけだと困るので、本当はブログも背景説明みたいに入れてから会見して欲しい(という意味では展望レポート出してから会見(つーて全文が出てくるわけではないけどまあそこは置く)するというのはまあ良い事ではありますなという感じです。正直ECBの冒頭ステートメントって説明量はFEDや日銀の金融政策決定声明文程度の説明しかしとらんですけんの。

てな訳ですっかり政策変更の時の説明補助ツール化しているのですが今回はレーン理事の説明。

『In this blog post, I will discuss the outlook for economic activity and inflation in the euro area and explain the Governing Council’s decision to expand the size of the pandemic emergency purchase programme (PEPP) at yesterday’s meeting.[1]』

会見でやれ会見で、とは思うが無いよりは良いので鑑賞鑑賞(図表がでかいんでIEから標準的に印刷すると5枚組になるけど実質3枚程度のペラです)。

なお、タカハト分類するのもどうなんでしょとは思いますが、レーン理事って基本的に緩和政策に親和的な話をする傾向にあるとアタクシの印象としては思いますので、まあその分ちょっとハトの傾向が強いかな、とは以下の部分を読みまするに思いますよ、というのは先に断っておきます。

では始まり始まり。


・経済物価見通しの下方修正についての説明から始まる

最初の小見出しが『Macroeconomic outlook and financial conditions』ってことで現状認識から。

『The severity and duration of the pandemic macroeconomic shock will be primarily determined by the success of the public health actions to suppress the spread of COVID-19 and the impact of the associated social distancing measures on the level of economic activity.』

全く持って仰せの通りというかそれ以外言いようが無いですが、今回のコロナちゃんの影響って結局の所疾病の状況がどうなるか次第なので何も決め打ちできない、というのが特徴ですわなあ。

『It follows that the projections are surrounded by an exceptional degree of uncertainty. In recognition of this uncertainty, Eurosystem staff have compiled two additional scenarios in addition to the baseline projections.[2]』

これは会見の冒頭コメントでも言及されていましたが、ベースラインシナリオとコロナちゃん次第で2つのシナリオをたてていますということで。

『Chart 1 shows the output projections. The baseline scenario of the June Eurosystem staff projections foresees a steep decline in output of 13.0 percent in the second quarter of 2020, after a contraction of 3.8 percent in the first quarter.』

『This is projected to be only partly reversed in the second half of the year, with quarterly growth rates of 8.3 percent and 3.2 percent in the third and fourth quarters, respectively.』

『Annual growth is projected to average minus 8.7 percent in 2020, 5.2 percent in 2021 and 3.3 percent in 2022.』

チャート1というのを磔刑にするスキルがありませんので上記URL先を見てちょということですが、こちらは3月の見通しから今回どんだけ見通しを下方修正しましたか、という図ですのでビジュアルで一発で分かります。

と、このように下方修正したものの、

『It is important to emphasise that the downward revisions to the outlook for economic activity would be far more severe in the absence of the significant fiscal response to the pandemic shock and the stabilising impact of the monetary policy and financial supervisory actions that have been taken.』

なお、ここまでの財政措置と金融緩和が無かったら今回の見直しによってもっと見通しは悲惨になっていた、ということを強調するのは重要です、と思いっきりこれまでの政策対応を自賛するのが入っているのもこれまた会見でもそんな感じでしたのですが、やたらアピールしてきますな。まあこれは「下方修正するということは政策対応が当を得てなかったということではないか」とツッコまれるのの弾除けですね。

『Chart 2 shows the inflation projections. In the near term, headline inflation is dominated by the plunge in oil prices, while the initial reaction of underlying inflation is expected to be relatively muted. In the medium term, the net effect of the shock on inflation dynamics depends on the balance between anti-inflationary forces (such as rising slack and lower demand) on the one side and pro-inflationary forces (such as the possible near-term and medium-term adverse impact of the virus shock on supply capacity) on the other.』

『Taken together, the scale of the increase in economic slack means that the net impact on inflation dynamics is assessed to be substantially negative in the staff projections, even when allowing for the pro-inflationary impact of some damage to supply capacity.』

『The downward revision to the inflation outlook sees average headline inflation of just 0.3 percent in 2020, 0.8 percent in 2021 and 1.3 percent in 2022. The revisions to the projected outlook for core inflation foresee an even greater deterioration: core inflation is forecast to reach only 0.9 percent in 2022.』

次が物価見通しの下方修正ですが、こちらの理屈としては、足元は原油価格下落のせい(ボトムから戻している気もするんだがそこは置く)、先行きに関してはコロナの影響による需要減によってスラックが拡大する、なおサプライチェーンの毀損もあるけれども、それよりも需要減の方が大きくて、それによって基調的なインフレに下押し圧力が掛かるから、という説明ですがこれも大体会見等の説明と同じで、ちょっと丁寧に書かれているという感じで新しい説明ではありません。


・PEPPとTLTRO3とPELTROの役割の整理がありますな

『From a monetary policy perspective, it is essential that financial conditions are sufficiently accommodative to support the economic recovery and counter the substantial negative shock to the inflation trajectory.』

金融緩和のアナウンスによって金融環境はコロナのショックによる悪化から戻って参りました、という説明はこれまた共通って感じですな。

『The ECB’s measures since mid-March have acted as a stabilising force during the initial weeks of the pandemic crisis. The announcement of the PEPP has mitigated the risk of a sharp sell-off in bond and equity markets that was threatening to undermine our monetary policy stance and its effective transmission.』

PEPP実施のアナウンスで債券価格と株価がショックから立ち直ったので金融政策の効果波及ができるようになりました、ってんですけれどもその前のクレジット市場ってバブってませんでしたっけという気がだいぶするんだが、この理屈で行くと金融市場にショックが来る→金融緩和→戻るの繰り返しになって、最終的には大バブルを起こすことになってしまうとしか古参二等兵のアタクシは思ってしまうんですが気のせいですね気のせい(震え声)。

『The highly accommodative pricing of the targeted longer-term refinancing operations (TLTRO) III programme, in conjunction with the collateral easing measures, provide strong incentives for banks to maintain credit flows to the real economy.[3]』

この辺がホンマカイナ感はありまして、ジャパンにおりますといやいやいや流動性困らんだろとか思ってしまい、むしろ屁かも知れないけどCCyBの緩和とか資本制約の方が効くんとチャウかとか思ったりもするのだが、そもそも欧州と日本では銀行の資金構造が違うので、市場調達の代わりに魅力的な条件でTLTRO3をぶっこんだのはお助け措置として有効なんですかね。

でまあそんなことを考えますと、ジャパンの場合はとにかく何か緩和を出すとその後の状況改善時に引っ込めるとか徐々に撤収するとかいう知能を持っていないのだか度胸が無いのか知りませんけれども、ノーズロでダラダラと続けるもんだからだんだんとエフェクティブな手段が無くなってしまい、無意味施策をするか過激施策をするかの2択みたいになってしまっているのは悲しい限りですな、と謎の矛先。

話は戻りまして、

『In addition, the unconditional refinancing operations (including the pandemic emergency longer-term refinancing operations (PELTRO) programme) and the enhancement of international swap lines provide important backstops for the liquidity demand of the banking system. 』

PELTROと外貨スワップライン拡充は金融システムの「バックストップ」として定義されていますね、なるほどそういう整理ですかそうですか。


・金融環境の評価だがコロナ以前よりはまだ厳しいとのご説明

とは言いましても、

『Nevertheless, financial conditions remain significantly tighter than before the escalation of the pandemic (see Chart 3). 』

ECB謹製の「ファイナンシャルコンディションインデックス」の比較をしておりまして、3月19日(ジャパンでもこの日のREIT指数とか目を疑うアレでしたなあ、と遠い目)の水準とその前後を比較しています。ちなみにFCIは1年、10年のOISとユーロの実効為替レート、ユーロ圏株価指数を加工して作っているとのお告げが脚注にあって、その寄与度別にグラフは出ています。

『The downshift in risk-free rates has not been transmitted in full to the broader set of asset prices and yields that determine the funding costs faced by the real economy.』

ただし、リスクフリーレートが下がったからと言って全体にこれが効いているのかというとさに非ず、と来まして何を言い出すのかと思えば、

『In particular, Chart 4 shows that there has been upward pressure on average sovereign yields compared with the benchmark overnight index swap (OIS) yield curve. Given the tight links between sovereign funding conditions and private-sector funding conditions in each jurisdiction, this has contributed to higher corporate bond yields and bank bond yields and lower equity valuations, especially for bank stocks.』

『In addition, this tightening in financial conditions puts upward pressure on the lending rates charged by banks to firms and households. This is the opposite of what is required to counter the negative shock to economic activity and the inflation path. The role of extra monetary accommodation under these conditions includes countering the risk that the upward pressure on borrowing costs associated with the high rate of public debt issuance would crowd out the expenditure plans of businesses and households at a time when the euro area economy is experiencing an extraordinary recession.』

うーんこのという感じはするのですが、リスクフリーレートは下がったものの、ユーロ圏のソブリン金利は(域内のヘッポコ国家のスプレッドが拡大するから)リスクフリーレートとのスプレッドが開いてしまうので、せっかくの低金利政策がフルに効かない、という話をしているんですが、いやそれ言うんだったらそもそもユーロ圏内共通で国債発行しろやという話になってしまいますし、まあそんなこと言い出したらドイツ様が怒り心頭になるんじゃネーノと思うので、何ちゅうかまあこの説明、言いたいことは分かるのだが、そもそも通貨一緒で財政別の時点で、経済に危機みたいなのが起きたらそら弱い環は切れやすいじゃろとしか申し上げようがない。

まあここの部分をより穿って現世利益になるように読むとするならば、この理屈を通すとなりますと、やはりヘッポコ国家(どことは申しませんが)の国債スプレッドが過度に拡大(ってその過度の度合いが良く分からんですけど、まあ今般のピーク時みたいなのはダメだってことですかそうですか)するのはイクナイので、そうならないようにするためにはある程度ヘッポコ国家の国債買入が増えるのは止む無し、というような認識をレーン理事は示している、という風に読むと現世利益っぽくなりますがどうでしょうかね(^^)。

でもってコインの裏表みたいな話になりますが、そのヘッポコ国家のお助け措置でドイツフランス主導でEU委員会がぶっこんできたコロナお助け基金に関しては、ECBがヘッポコ国の国債買いまくるってのも色々と制約がある訳ですし、大体からしてECBが国債買っても別にヘッポコ国の債務が無くなって財政ポジションが改善する訳ではないのですから、こういう財政サポートを


・ということでPEPP拡大と期間延長の意義についての説明になります

次の小見出しが『The expansion of the PEPP』でこちらは図表無しの説明モード。

『In March, we decided to launch the PEPP “to counter the serious risks to the monetary policy transmission mechanism and the outlook for the euro area posed by the outbreak and escalating diffusion of the coronavirus, COVID-19”.[4]』

3月にPEPPをぶっこんだ理由は「金融政策のトランスミッションメカニズムに対する深刻なリスクと、コロナ感染拡大によって悪化した域内の経済見通しに対処する」でしたとな。

『In the current environment of elevated uncertainty and associated stress in financial markets, the PEPP has already proven to be an effective monetary policy tool by supporting market stabilisation and reversing adverse dynamics in overall financial conditions. 』

現状を見るにPEPPは初期の目的に対して効きましたね、という説明は会見でもラガルドがしていました。

『Two factors called for further policy action yesterday.』

ほうほうその2つのファクターとは???

『First, without a sufficient policy response, the pandemic-related negative shock to the inflation path poses a threat to medium-term price stability.』

十分な政策対応が無いとコロナちゃんによる物価パスに対する府のショックが中期的な物価安定を阻害する、だそうですな。まあ今回経済物価見通しの下げに対応した形にもなっているので、この理屈は分かるのですけれども、じゃあそれがPEPP拡大なのか、という話になると、あまりこのリンクを強くしてしまうとPEPPが引くに引けなくなってしまうリスクがあるのでそのかじ取りは難しい。

『As indicated above, financial conditions for the euro area as a whole are significantly tighter today compared with the pre-pandemic period, whereas the outlook for economic activity and inflation calls for easier financial conditions.』

お、おぅ・・・・・・・・という感じではあるのですが、ファイナンシャルコンディションはパンデミックの前から比較すると「significantly tighter」だそうなのですが、いやその前ってクレジットバブってませんでしたっけという気がするんですけれども、まあこういう言い方になっておられますですので、少なくともレーン理事という割と枢要な方がそういう説明で緩和を正当化しているというのは覚えておかんといかんですな。

『Second, while conditions in financial markets have stabilised substantially since the PEPP announcement, the situation remains fragile.』

『This fragility underlines the continued need for the central bank to be flexible and exercise a market stabilisation function to the extent necessary.』

2番目の論点は、「ゆうても今の状況は依然fragile」なので緩和政策のサポートが必要ですよ、という事だそうな。

『To address these concerns, we decided to boost the envelope for the PEPP by ユーロ600 billion to a total of ユーロ1,350 billion, which both contributes to market stabilisation and eases the general monetary policy stance.』

よって今般のPEPP拡大を行いましたよ。

『In turn, this protects smooth policy transmission and supports lower funding conditions for the real economy, with the aim of lifting the medium-term inflation projection closer to the pre-crisis expected trajectory.』

この施策によって経済のファンディングコストを下げますよって話だそうな。でもってこれまた(まだネタにして居ない部分ですが)会見でラガルドも言ってたんですが、物価のパスについて「lifting the medium-term inflation projection closer to the pre-crisis expected trajectory」っていうことでコロナ前のインフレパスに近いところまで戻す、という説明していまして、いやまあその心意気は壮大なんですがそれは金融緩和のやり過ぎになりませんかねえとはちと気になる。まあ物価に来ないでまたぞろどこかのリスク性資産のバリュエーションが過大になって弾けたらあばばばばーって話になるのかね、杞憂であって欲しいが。

『Second, we also decided to extend the net purchase horizon of the PEPP to at least the end of June 2021.』

次が期間延長の話。

『This broadly aligns the purchase horizon with the horizons of our other monetary policy measures taken in response to the pandemic, such as the TLTRO III and PELTRO programmes. In any case, we will conduct net asset purchases under the PEPP until the Governing Council judges that the coronavirus crisis phase is over.』

期間延長は基本的に見通し下げ何ですけど、それによって積みあがった資産の償還再投資とかどうなるのかとか、PEPPとそれ以外のオペの位置づけとかに関してはフワッとしか話をしていませんな。まあここは誤魔化しておかないと後々の手足を無駄に縛るから分からんでもない。

でもって最後に、その償還再投資の件

『Finally, we will reinvest maturing principal payments from securities purchased under the PEPP until at least the end of 2022 (the end of our current projection horizon) and, in any case, the future roll-off of the PEPP portfolio will be managed to avoid interference with the appropriate monetary policy stance.』

2022年末、というのは現状でのECBのマクロエコノミックプロジェクションの期間のケツでもあるのですが、そこまではPEPPでの買入資産の償還が来たら再投資しまっせとのことで、その後ロールオフする時にも、ロールオフが過度に引き締め的にならないように注意する(ということは要するにテーパリングするにしてもゆっくり行いますってこと)との話ですが、まあそれで大丈夫なのか感はあるけどまあ知らんがなと言う事で。

『This reinvestment strategy for the PEPP avoids the risk of an unwarranted tightening of financial conditions at a time when the recovery from the pandemic shock remains incomplete, while also ensuring that the management of the wind-down phase will not pose obstacles for the ongoing conduct of monetary policy.』

PEPPの償還再投資計画は金融環境の無用なタイトニングを避けるものですよという話ですな。

『At the same time, it is appropriate that the reinvestment strategy for the PEPP reflects its temporary nature and link to the pandemic emergency.』

とまあこれだけ言って置きながら、PEPPは「temporary nature」で「link to the pandemic emergency」ってナンジャソラという感じなのですが、説明の最後にこれを入れているのは、レーン理事というよりはECBの中でやはりこのパンデミック関連の買入だのオペだのというのは、時限措置だしパンデミック終了したら引けよこのバカチンがという文句垂れている(というかそっちの方が筋論)向きもあるっちゅうことかな、とか勝手に妄想するとちょっとオモロイ。

最後は『Conclusion』です。

『In summary, the Governing Council’s decision to expand the PEPP at its June meeting is the proportionate response to the substantial downward revision of the economic and inflation outlooks and the significant deterioration in financial conditions. Looking ahead, the incoming economic and financial data and future projection rounds will provide essential guidance as to whether the pandemic-related negative shock to inflation dynamics has been sufficiently contained. In turn, once the negative pandemic shock has been successfully managed, the primary focus of monetary policy can return to its underlying strategic goal of robustly achieving our inflation aim over the medium term. Accordingly, the Governing Council stands ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation moves towards its aim in a sustained manner.』

これはめんどいのでだらっと引用しましたが、今までの説明があって、最後に「必要な時は適宜適切な施策を行う準備は出来ています(キリッ)」という毎度のアレで締めているのでした。

とまあそんな感じで短いのを良い事に結局全文引用していたら時間が・・・・・・・・・


〇ところで2次補正も目出度く国会提出されたのですが増発をかなり短国に頼ってエエノカイナという雑感(予告編メモですすいません)

今回の補正予算って、事業の多くが「出てみないと分からん」式の民間向け貸し出しとか、民間向け給付金的なものとか、そういうのが多い(おまけに2次補正は予備費が10兆)ので、何が何やら良く分からんので根詰めて確認する必要がありましてその辺も含めてボチボチ成敗しようかなとは思っているのですが・・・・・・・・・・・・・

https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/fy2020.html
令和2年度予算

https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/hosei0527.html
令和2年度補正予算(第2号)

https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/sy020407/hosei020527.pdf
令和2年度一般会計補正予算(第2号)フレーム

『1.公債金319,114(単位:億円)』

となっている中で、国債発行計画ちゃんを見ますと、

https://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2020/200527.html
令和2年度国債発行計画等を変更しました

https://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2020/issuanceplan200527.pdf
令和2年度国債発行予定額

2次補正で647,114億円の増発、うち新規国債319,114億円、財投債328,000億円なんですけれども、カレンダーベースの市中発行を見ますと、年度間調整があるので60兆円弱になりまして、

https://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2020/calendar200527.pdf
<カレンダーベース市中発行額>

となっているのですが、予算の国会提出ということで(そういう訳でもないが)、改めて見ると短国多いのは勿論これ今見た訳じゃなくて既に見ていますが、落ち着いて改めて見てみるとこんなに短国に頼ってエエノカイナという気がする、とは言いましてもこれ最初に申し上げた通りで、そもそもが橋とか道路作ったりするのと違って、当初段階では最終的にどの位出るか分からん、というのがあるから利付債出し過ぎて余ってもシャーナイというのは分かるんですが、それにしても何かこれ短国が大杉栄のような気がしてきまして、まあその辺ちょっと妄想してみようかなと思っている次第であります、という予告編でございました。

#ただの自分向け備忘メモですいません

まあこの辺りとラガルド会見の続きとかでFOMCまでは参ろうかと存じます。20年債カレントが0.40%でしたとかそういうフラグ建築はまだしないでおこうかと(超大汗)。





2020/06/08

お題「一般債と個人国債などの決済期間短縮は予定通り実施/ECB会見から(論点整理できてる質疑を拝読)」

法務省が責任おっかぶされそうになって梯子外しをする仁義なき戦いキタコレ。
https://mainichi.jp/articles/20200606/k00/00m/040/106000c
法務省「黒川氏の退職、捜査に支障ない」 定年で「重大な障害」だったのでは?
会員限定有料記事 毎日新聞2020年6月6日 18時21分(最終更新 6月7日 15時29分)

『賭けマージャンで辞職した黒川弘務・前東京高検検事長の定年延長問題を巡り、法務省の川原隆司刑事局長は4日の参院法務委で、黒川氏の退職により「捜査に特段の支障は生じない」と答弁した。「黒川氏の退職で捜査に重大な障害が生じる」(森雅子法相)として定年延長を決めた1月の閣議決定の根拠が大きく揺らいでいる。参院法務委のやり取りは以下の通り。【大場伸也】 』(上記URL先より)

民主政治ってプロセスが重要だから行政におかれましては筋を通した執行というのをして頂きたい、とまあ斯様に思う訳ですし、それが出来ないとなると有司専制になってしまうので、官僚の皆様におかれましては筋くらい通してよと思いますし、筋が通らないのを見るとアタクシのスイッチが点火して突然イカリポイントが妙なところでランボー怒りの土日更新とかをするのでありました。

さて金曜は寝起き(と寝る前の会見ライブ見学)でECBでそれ以外のネタをスルーしちゃったのでそこを多少。

〇一般債と個人国債の決済期間短縮とな

木曜にしらっとこんなものが出ておりましたが。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200604a.pdf
CP・社債等買入のオファー日程(2020年6月〜7月)[一部変更]

7月17日以降にオファーするCPと社債買入に関してT+3→T+2になるということのようでございまして、事務連絡の方まで見てませんので(手抜き)まあ恐縮ではありますが、さてこれ何でかというと木曜の昼にこういうのが出ていまして・・・・・・

日証協からこんなのが出たんですよね。そういやそうだったっけとか思いつつ日証協に(というかベンダーのニュースが昼に出てて日証協に見に行った次第)。

#どうでもよいのですが日証協のページってメニューバーってんですかね、あれにカーソルが行ってしまうとやたら巨大な緑色のバーが出てきて、あれが出ると中のメニューを見に行きにくくなって死ぬほど使い勝手が悪い(というか無茶苦茶イラつく)んですけどデザイン改善してくれませんかねえ


http://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/kessai/t2/index.html
国債のリテール取引及び一般債取引の決済期間の短縮化(T+2化)に係る実施日の決定について

『今般、「公社債の店頭取引等に関するワーキング・グループ」において、国債のリテール取引及び一般債取引の決済期間T+2化の実施予定日であった2020年7月13日(月)(約定分) をT+2化の実施日に決定しました。』

・・・・・・・いや出すのは良いんだが何でサイトのページに公表日付おかねえんだよおいこらふざけんなと思いましたが、リリース文書にはさすがに日付が入っていました。

●国債のリテール取引及び一般債取引の決済期間の短縮化(T+2化)に係る実施日の決定についてnew

ってのをクリックするとこちらのPDFが出てきます。

http://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/kessai/t2/files/t2_zissibi_kettei.pdf
国債のリテール取引及び一般債取引の決済期間の短縮化(T+2化)に係る実施日の決定について
2 0 2 0 年 6 月 4 日  日本証券業協会

『本協会では、2016 年6月 30 日に公表された「株式等の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ 最終報告書」1の提言に基づき、国債のリテール取引及び一般債取引の決済期間の短縮化(以下「国債リテール・一般債取引のT+2化」といいます。)について検討を行い、2019 年3月に国債リテール・一般債取引のT+2化の実施予定日を 2020 年7月 13 日 (月)(約定分)と決定しました2。』

コロナ云々とか知らんがなというその潔い姿勢ですが。

『上記決定において、国債リテール・一般債取引のT+2化の実施予定日における実施の可否については、「2020 年5月頃を目途に公社債の店頭取引等に関するワーキング・グループにおいて決定」とされていたことから、今般、同ワーキング・グループにおいて、本件につ いて審議を行った結果、実施予定日であった 2020 年7月 13 日(月)(約定分)3を国債リテール・一般債取引のT+2化の実施日に決定いたしましたので、お知らせいたします。』

とありまして、要するに昨年3月には実施自体の決定は行われていまして、当初は今年の7月13日約定分から実施のつもりでしたが、

http://www.jsda.or.jp/about/kaigi/jisyukisei/gijigaiyou/20111020095555.html
公社債の店頭取引等に関するワーキング・グループ

2020年5月19日 議事概要PDF 資料PDF

というのがありまして、議事概要の方をポチっとなとしますと、

http://www.jsda.or.jp/about/kaigi/jisyukisei/gijigaiyou/files/200519_gijigaiyou.pdf
『1.会合名   公社債の店頭取引等に関するワーキング・グループ(第 12 回)(書面)
2.日時    2020 年5月 19 日(火)
3.議案 (審議事項) 国債のリテール取引及び一般債取引の決済期間の短縮(T+2)化に係る実施日の決定について 』

となっておりまして、議事内容ちゃんによりますと、

4.主な内容 (審議事項) 国債のリテール取引及び一般債取引の決済期間の短縮(T+2)化に係る実施日の決定について

ってなことで、

『本協会では、国債のリテール取引及び一般債取引の決済期間の短縮(T+2)化(以下「一般債等T+2化」という。)について検討を行い、2019 年3月に一般債等T+2化の実施予定日を 2020 年7月 13 日とする旨を公表したところである。』

そういやそうでした。

『上記公表時において、一般債等T+2化の実施予定日における実施の可否については、「今後のアンケート結果等を踏まえて、2020 年5月頃を目途に公社債の店頭取引等に関するワーキング・グループにおいて決定」とされていたことから、先般、本ワーキング委員に対してアンケートを実施したところ、当初予定どおりの実施日とすることで問題ないことが確認できたため、改めて本ワーキングの書面開催により 2020 年7月 13 日を一般債等T+2化の実施日に決定することについて審議した結果、全委員の賛成により了承された。』

ほうほうそうですかそうですか大丈夫ですかそうですか。

『なお、本件については、公社債分科会、株式等の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ及び証券受渡・決済制度改革懇談会に報告のうえ、速やかに公表する予定である。』

でもってその結果が木曜の公表になりまして、それを受けて日銀のオペの受渡までの足が一日短くなりましたとかいう話ですが、オペの事務手続き的にどの位忙しくなるのかというのは事務連絡見てないから存じませんので、詳しい人に聞いてくらはい。


一般投資家向けリーフレットがあって、何気にこれが分かりやすいのでこれでも見てくんなましって感じですな。

http://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/kessai/t2/files/t2_leaflet.pdf
(たぶんこれお絵描きで作ったものを画像でぶっこんでいるみたいで中のテキストがコピペできん)

短縮化によって生じる事務スケジュールの変更に関してはこちらのケツの方にあるのと同じことなので、まあ一応1年前から話はありましたよねって感じですかそうですか。

http://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/kessai/t2/files/t2_yoteibi_kettei.pdf
国債のリテール取引及び一般債取引の決済期間の短縮化(T+2化)の実施予定日の決定について
平成 31 年 3 月 8 日  日本証券業協会

リテールの個人国債中途換金ってそんなにバカスカ発生するという事でもないイベントだと思いますけれども(個人のイメージですので違ってたらゴメン)、こちらの日銀ネットへの送信時限が21時から15時に前倒しになる所辺りにもしかしたら諸葛孔明の罠があるかも知れませんけれども、まあ大丈夫ですかね。

あと、社債買入とかCP買入で直接参加先に委託入札みたいなのをしているようなケースだと、これはオペの事務的にはまあ普通にやってりゃ大丈夫そうな気もしますが、うっかり八兵衛があった時にリカバー不能って感じになるので要注意とかそういう話ですかねえ良く分からん。まあ詳しい人に聞いてくんなまし。

しかしまあ何ですな、5月19日だから緊急事態宣言のケツも見えてきたときとは言え、予定通りとはやるなと思いましたが、まあここまで来ているのを今更延期する方が面倒とかそういう事なんでしょうかね、とは存じますが・・・・・・・・・・・

#短縮化は日銀の悲願??でもあるのですかさずCP社債を1日短くしているんだがそれは少し待ってあげて差し上げても良かったんじゃネーノという気がせんでもないけど、まあ合わせないのも理由付けがめんどいですからこうなるんでしょうなあとは思いました(個人の妄想です)


〇ECBラガルド会見から少々(というか質疑1個になっちゃいましたすいませんすいません)

雇用統計とか米国金利とかそういう話は今日の円債ちゃん見ながらボチボチと逝こうかと存じましてとりあえず金曜の続き。

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2020/html/ecb.is200604~b479b8cfff.en.html
INTRODUCTORY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 June 2020

金曜の続きって金曜の会見ネタでは「買入プログラムは量とか期間は延長したけどクレジット面での緩和はしませんよ(キャピタルキーに関しては事実上緩和しているけど)」というのを「私は私の会見スタイルがあるのよオッホッホ(爽やかな笑顔で)」というのだけでしたので会見の2番目の質問から成敗して参ります。

・記者の質問を利用して色々と論点整理をしてくれているのでその質疑を鑑賞

質問は2つ(だいたい2つするのがお約束みたいになっている)。

『Some of the reports before the meeting suggested that not all of the members of the Governing Council were ready to support an increase in PEPP today. Can you give us a sense of how wide was the support for the measures you adopted?』

PEPP(素直に「ペップ」と読めば良いのですねアタクシ一々「ピーイーピーピー」って読んでたわw)の拡大は全員一致でしたか、というのと、

『My second question is about your strategy for reinvestment under PEPP that you announced today.』

PEPPの話だが、

『You say they will continue at least until the end of 2020. Essentially, if everything goes according to the plan, the roll-off of those purchases could start at the beginning of 2023. Meanwhile the guidance for PSPP programmes says reinvestments will continue past the date of the first rate hike increase.』

『There is a discrepancy between these two programmes when it comes to the guidance for reinvestment. Does that imply that the roll-off of PEPP could actually start before the first rate hike?』

PEPPとPSPPで購入銘柄の償還再投資に関する記述にズレがあるように見えるがこれ如何に?という質問。


『Lagarde: Well, your question helps me, reframing a little bit for you, the cost-benefit - and I was tempted to say the benefit-cost because there are a lot more benefits than costs - of our PEPP.』

PEPPのメリットとコストに関しての説明をするのにちょうど良い質問だぜヒャッハーだそうで、

『First of all, I would observe that the PEPP has already demonstrated that it is a very successful programme.』

PEPPが活躍している宣言キタコレ。

『When we used it, actually very shortly after we announced it on the 18th March, it has prevented the downward spirals in financial markets and reduced any tail risks at the time without which we would have been in a seriously different situation in terms of both growth and inflation outlook.』

金融市場の下落スパイラルを止めることができた。これによって先行き見通しやインフレ見通しに対しても、実施しなかった時よりも改善することができた。やらなかったらエライことになっていたでしょう、ということですがそれは結果論の世界じゃ。

『There are two main factors that have led us to reconsider PEPP and certainly expand the size of PEPP as well as its duration.』

ほうほう。

『The first factor is that the outlook for price stability has been significantly affected by the fallout from the COVID-19 crisis. As I mentioned earlier on, we had to revise our inflation outlook and if you look at the medium-term horizon of our projections, which is 2022, we are now talking about 1.3 as opposed to 1.6, which was the horizon that we had back in March prior to the COVID-19.』

『The second factor that has also led us to reconsider PEPP and to increase its size and extend its timing, is that financial conditions for the euro area as a whole are significantly tighter today, as measured by average sovereign yields and broader metrics of financial tightness, in a situation where the economy needs easier conditions to achieve price stability. In that context, we judged that it was necessary to increase the size.』

PEPPの延長と期間拡大に関しては、コロナちゃんの影響による経済物価情勢に対応した観点と、金融市場の安定をもたらすという観点から行ったそうな。さて今後実体経済がアレでも株価がヒャッハーという中で(って欧州はそこまででもないか)今後のどう見ても金融不均衡一直線です本当にカムサハムニダ状態からどういう理屈をつけて緩和の一部引きを行うか、それともそのまま堂々緩和して金融不均衡上等作戦で行くか、というのはみものになると思います。

『I can assure you that there was a unanimous view in the Governing Council that action had to be taken. In the face of that inflation outlook, and given our mandate of price stability, action had to be taken.』

決定は全員一致だそうです。

『So, we decided to increase the size of PEPP in order to

1) ease aggregate financial conditions
2) safeguard the transmission of our monetary policy to all asset classes and jurisdictions thanks to one particular aspect
of PEPP, which is its flexibility in conducting our purchases and
3) help us back to what I would call the pre-COVID inflation path.

That justified fully the expansion of PEPP by the amount that I have mentioned, which is ユーロ600 billion.


見やすく分けてみましたが、金融環境と市場機能と物価情勢によって額を拡大しましたよと。この次が額じゃなくて期間の方。

『Why did we extend the horizon to June of 2021? It's because we have a sense that by then, inflation hopefully will start kicking in again and we will have a better visibility of the situation at that point in time.』

でもって会見のライブ聞いていてここはおーと思ったのですが、期間を延長した方の理由としては、見通し通りに推移するならPEPPのケツ(2021年6月)辺りから物価が上がりだすんですよとか抜かしておられまして、いやまあそういうこと言い出すとその時物価が上がりそうもない状況が続いてたらどうしますねんとは思うのですけれども、ただまあ別にPEPPだけじゃなくてTLTROなり資産買入なりはコロナと関係なく打てば宜しいとか思っているのかも知れませんし、良く分からんが、これが後で自分の足を引っ張ることになる可能性はあるなあとは思いました。

最後に質問にあったPEPPとPSPPとの償還再投資に関する違いの部分についての説明。

『It's also coherent with a lot of our other monetary policy tools, those that we have either determined in March, or fine-tuned and improved at our last April monetary policy Governing Council meeting. In terms of reinvestments that we have agreed to push at least until the end of 2022, we have determined that because it helps ensure that financial conditions remain sufficiently supportive over a possibly very protracted recovery phase.』

『It also reflects the nature of PEPP, which is different from the PSPP. If only for these two reasons we believe that giving a bit more visibility and certainty over that horizon was certainly a good decision to make.』

PSPPに関しては経済回復する中においても緩和的な効果を出すためにやっているので再投資は比較的長く行うけれども、PEPPはコロナ対策なのでちょっと違いますです、みたいな整理をしているように見えました。まあこの辺は割と整理していますなあとは思うのですが、いずれ物価が上がりにくい中で、アセットパーチェス拡大しまくったのをどう引くのかは難しいわなとは思います。


次の質疑も面白いと思ったのだが何か月曜なのでエンジンの入りが遅くて(毎日でしょとか言わない)、気がつけば時間があばばばばーなので続きは後日ヘロヘロと。あんまりヘロヘロしているとFRBがやってくる(特に何か決めることは無いでしょうがSEP見たいのとここまでの政策の論点整理を会見でやってくれそうなので楽しみにはしている、なお来週の日銀は知らんがまた悪態になりそうなので悪態の理論武装でも考えておく)ので早急に成敗します他に何もなければ(相場が一番ネタになる気がするがフラグ建築したくないのでスルー中)。







2020/06/05

お題「寝起き(実は会見ライブだけ昨晩聞いた)でECB」

よーしパパ会見聞いたら速攻で寝て早起きしてリリース読むぞ〜、と珍しくやる気を出してライブで聞いた結果どうなったかという話はあまり聞いてはいけません。

まあ何ですな、ラガルド総裁って静止画で見るよりも動画で見た方が映える人だなあと。英語が(アタクシ的には)物凄く聞き取りやすいから好意的に解釈するバイアスがありますけれども(^^)、笑顔が爽やか(というか何というか)で、前任のおっちゃんの笑顔がいかにもインチキ臭い笑顔だったのと比較するとやはり爽やかな上にバシッと説明してて、まー格好良いなあと思いました(個人の感想です)。

https://www.ecb.europa.eu/home/html/index.en.html

なお、質疑応答ですが、ビデオカンファレンスだったようですけど、回線だか機械だかには改善の余地があるんチャウノと思いました。何人かの記者が質問の冒頭に「私の声聞こえてますか?」と聞いてラガルドさんが「聞こえてるよ」とやってたり、質問の一部が聞こえなかったんだがとかいう感じで話をしてたりしてましたり、回線落ちている人がいたりでしたな。

あと、ライブの時は当然ライブなんですが、録画になっているのを見に行きますと会見がおっぱじまるまで8分20秒ほど掛かります(しかも6分40秒間は本当の空回し状態)ので録画を見る際にはご留意くらはい(ユーチューブで放映されてますので念のため申し添えます)。


〇PEPPの拡大と期間延長を行いましたが理由は経済物価見通しな所に味わいがある(個人の感想です)

1行でまとめちゃえばそういう感じですかねえと思いますけど。今回は経済物価見通しに紐付けてPEPPの拡大(ただし量だけで質は現状踏襲)と期間延長(半年)を実施しましたが、これ経済物価見通しでPEPPって事になりますと、物価目標が行かないうちに引っ込めにくくなってしまうリスクがあって、特にユーロ圏の場合は通貨が共通通貨なのに財政その他はバラバラ、という特異な事をやっているので、ユーロ通貨の信認みたいなのっていうのは割と簡単に壊れやすいと思うのよね(他の大経済圏の単独通貨と比較して)。

経済の先行き見通しが復活して、物価見通しを屁理屈でも良いので上がっていく、という絵が描けないとPEPPの出口が無い、という風になりますと、ガダルカナル攻防戦と化して大消耗モードになった挙句に、ってな図式が頭の中をチラチラせんでもないのですけれども、今後どういう風にこれを捌いて元に戻していくのでしょうかって感じですね。

てな訳でまずは声明文から。

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2020/html/ecb.mp200604~a307d3429c.en.html
PRESS RELEASE
Monetary policy decisions
4 June 2020

At today’s meeting the Governing Council of the ECB took the following monetary policy decisions:

決定事項は以下の通りということで・・・・・・・・・・・

・PEPPの規模を拡大、背景は経済物価見通しの下方修正によるもの

『(1) The envelope for the pandemic emergency purchase programme (PEPP) will be increased by ユーロ600 billion to a total of ユーロ1,350 billion. In response to the pandemic-related downward revision to inflation over the projection horizon, the PEPP expansion will further ease the general monetary policy stance, supporting funding conditions in the real economy, especially for businesses and households.』

PEPPの全体額を従来の7500億ユーロ→13500億ユーロ(+6000)にしましたよ。と来まして、返す刀で「In response to the pandemic-related downward revision to inflation over the projection horizon」ということで、パンデミックに関連してインフレ見通しを下方修正しましたのに対応しまっせ、と来ました。

『The purchases will continue to be conducted in a flexible manner over time, across asset classes and among jurisdictions. This allows the Governing Council to effectively stave off risks to the smooth transmission of monetary policy.』

資産買入に関してはこの間「in a flexible manner over time, across asset classes and among jurisdictions」で行います、と来まして、これはつまりPEPPやっている間には域内でも特にコロナちゃんの影響を食らっている国の国債をキャピタルキーからの乖離に対して柔軟対応しながら買いまっせ、と言っているようなもんですので、そらまあイタリアとかスペインとかの国債がニッコリですわなという事ですが、そういう説明。


・PEPPの期間を半年延長なのだが、こっちの記述にはコロナの影響がどうのこうのが残っている

『(2) The horizon for net purchases under the PEPP will be extended to at least the end of June 2021. In any case, the Governing Council will conduct net asset purchases under the PEPP until it judges that the coronavirus crisis phase is over.』

PEPPの期間を半年延長は(1)と連動していますが、この期間に関するちなみに前回の声明文での当該部分ですけれども、

『The Governing Council will conduct net asset purchases under the PEPP until it judges that the coronavirus crisis phase is over, but in any case until the end of this year.』(4月30日声明文)

って書いてあって、こっちの記述に関しては(語順が違うけど)言ってることは同じでケツだけ延長しておりまして、PEPPがコロナの影響の危機フェーズに対応しているのか、経済物価見通しに対応しているののどっちですねん感はややある(個人の感想です)。まあ「コロナの危機フェーズが続くと見込まれる間は経済物価も浮上してこないんだから同じですがなガハハ」と言われてしまえばそうですかってことになるのかも知れませんけれども、ここの理屈をどのように制御していくのでしょうかね。

まあ勝手にアタクシ思ったのは「コロナの危機フェーズがどうのこうの」という理由だと年末の足になっているPEPPを6月頭という今の時点で延長するというのはさすがに理由として無茶振りにも程があるので、延長の理由を出すとなったら、経済物価見通しのダウンリビジョンってことにするしかなくて、そのスタッフ経済物価見通しってのは4半期ごとに出てくる物件なので(→https://www.ecb.europa.eu/pub/projections/html/index.en.html)、今回延長しないと9月までやるタイミングは無いし、PEPPは順調に残高積みあがっている(というのが良い話かはさておき)し、ということで今回やっておかないと拡大する理由付けに困るから、ということなのかも知れません。

ということで、このあたりの理由付けってのは最初に申し上げましたように、経済物価見通しに完全に紐付けでやってしまうと(どうせ物価がそう簡単にアガランチ会長なので、という前提条件付きですけれども)コロナちゃんが徐々に片付(あるいはただの冬の通常行事になる)中で、パンデミックの経済悪化対策買入と銘打った買入だけ続くというトンチキな事になってしまい、どこかで金融不均衡の何かが炸裂するという絵になってしまい兼ねませんので、引く時の理屈はちゃんとコロナというのを残しておく、という事なのかも知れません。

ただ、会見の質疑応答を何となく聞いておりますと、経済物価見通しは無茶苦茶厳しいので、まあ緩和政策自体は継続するんでしょうけれども、PEPP以外にも政策ツールやってまっせとかそういう説明をしてバランス取っている感じもするので、現時点でガダルカナル化してしまうという所まで気にしなくても良さそうには思える(個人の感想です)には思えるかなとか、まーいずれにせよ今後どのようにこの風呂敷を畳んでいくのかという方にあっしは興味津々となっている次第。

・PEPPで購入した債券の償還再投資にも言及

『(3) The maturing principal payments from securities purchased under the PEPP will be reinvested until at least the end of 2022. In any case, the future roll-off of the PEPP portfolio will be managed to avoid interference with the appropriate monetary stance.』

でもってPEPPで購入した債券の償還再投資に今回言及していて(従来はAPPの償還再投資の話だけ)、2022年までは償還再投資、その後のロールオフに関しても金融政策スタンスと矛盾しないように運営する(つまり緩和政策が続いている場合は一部なり全部が償還再投資に回るでしょうという話をしている)そうな。


・APPは変更なし

『(4) Net purchases under the asset purchase programme (APP) will continue at a monthly pace of ユーロ20 billion, together with the purchases under the additional ユーロ120 billion temporary envelope until the end of the year. The Governing Council continues to expect monthly net asset purchases under the APP to run for as long as necessary to reinforce the accommodative impact of its policy rates, and to end shortly before it starts raising the key ECB interest rates.』

200億ユーロのAPPプログラムとテンポラリーの1200億ユーロのAPPおかわりの扱いについては変更有りません。

『(5) Reinvestments of the principal payments from maturing securities purchased under the APP will continue, in full, for an extended period of time past the date when the Governing Council starts raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』

APPプログラムにおける償還再投資に関しても変化はない。


・政策金利と政策金利のガイダンス文言にも変更はなし

『(6) The interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.00%, 0.25% and -0.50% respectively.』

はい。

『The Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels until it has seen the inflation outlook robustly converge to a level sufficiently close to, but below, 2% within its projection horizon, and such convergence has been consistently reflected in underlying inflation dynamics.』

こちらも同じ。


・最後の文言の威勢はやや弱めている

とまあ決定事項についての説明がありまして、最後にまた文言があるのですけど。

『The Governing Council continues to stand ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation moves towards its aim in a sustained manner, in line with its commitment to symmetry.』(今回)

というのが今回で、前回4月は、

『The Governing Council is fully prepared to increase the size of the PEPP and adjust its composition, by as much as necessary and for as long as needed. In any case, it stands ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation moves towards its aim in a sustained manner, in line with its commitment to symmetry.』(前回)

となっていまして、PEPPを拡大する用意があります(キリッ)ってのが抜けていまして、そらまあ拡大した直後ですから文言削除するのは当たり前ちゃあ当たり前ですけれども、一応この辺ちゃんとバランスはとっておりますなあとは思いました。


〇会見がエライ素早い時間にQ&Aまでぶっこまれておりましてですな(汗)

物は試しにリロード掛けてみたら、日本時間の朝6時過ぎ(というか7時前というか)にQ&Aまで更新しているという早さ。(今までのケースだと当日は冒頭スピーチだけで翌日に上がって来るのが平常運転)

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2020/html/ecb.is200604~b479b8cfff.en.html
INTRODUCTORY STATEMENT
PRESS CONFERENCE

Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 June 2020

サーセンこっちはQ&A聞くだけは聞いてましたが当然ながらアタクシの語学力では何となく聞いていた位の話なので、ちょっとそっちのネタをたくさんぶっこむわけにもいかない(そもそも時間が無い)のですが(汗)。


・冒頭ステートメントの冒頭ですけどね

『Incoming information confirms that the euro area economy is experiencing an unprecedented contraction. There has been an abrupt drop in economic activity as a result of the coronavirus (COVID-19) pandemic and the measures to contain it. Severe job and income losses and exceptionally elevated uncertainty about the economic outlook have led to a significant fall in consumer spending and investment. While survey data and real-time indicators for economic activity have shown some signs of a bottoming-out alongside the gradual easing of the containment measures, the improvement has so far been tepid compared with the speed at which the indicators plummeted in the preceding two months.』(今回)

冒頭ステートメントの最初は経済物価情勢に関する全体感の話になりますが、書いてあることは極めて厳しいという感じですわな。前回4月30日のINTRODUCTORY STATEMENTにおける上記引用に該当する部分を見ますと、

『The euro area is facing an economic contraction of a magnitude and speed that are unprecedented in peacetime. Measures to contain the spread of the coronavirus (COVID-19) have largely halted economic activity in all the countries of the euro area and across the globe. Survey indicators for consumer and business sentiment have plunged, suggesting a sharp contraction in economic growth and a profound deterioration in labour market conditions.』(前回)

ということで、コロナちゃんの影響の結果が出てきましたよやっぱ駄目ですよという話を散々っぱら行って、最後の方には一応「some signs of a bottoming-out」とはありますが、結局のところは「the improvement has so far been tepid compared with the speed at which the indicators plummeted in the preceding two months」ということで、この2か月のあばばばばーと比べてみれば底打ちのサインとか言っても改善状況は屁のようなもんであるとのお告げになっております。でもって今回はさっき申し上げたようにスタッフ見通しのリバイスが行われておりますので、

『The June Eurosystem staff macroeconomic projections see growth declining at an unprecedented pace in the second quarter of this year, before rebounding again in the second half, crucially helped by the sizeable support from fiscal and monetary policy. Nonetheless, the projections entail a substantial downward revision to both the level of economic activity and the inflation outlook over the whole projection horizon, though the baseline is surrounded by an exceptional degree of uncertainty.』

『While headline inflation is suppressed by lower energy prices, price pressures are expected to remain subdued on account of the sharp decline in real GDP and the associated significant increase in economic slack.』

ということでアカンという話になりまして次のパラグラフが、

『In line with its mandate, the Governing Council is determined to ensure the necessary degree of monetary accommodation and a smooth transmission of monetary policy across sectors and countries.』

ということで、このような状況なのでPEPPのおかわりをぶっこみましたよという話。

『Accordingly, we decided on a set of monetary policy measures to support the economy during its gradual reopening and to safeguard medium-term price stability.』

とまあそういう感じなので、先ほどの声明文と同様に中期的な経済見通しに紐ついてPEPPの拡大延長をしている形になっていまして、さてこのPEPPの扱いが泥沼化するか否かというのは、中長期的には面白い(悲劇が起こっても面白くはないので不謹慎にも程があるが)話になるかな、とか勝手に思っていました。


・会見から最初と最後の部分だけ拾っておきますね

会見の続きは多分週明けのネタの予定です。

『The first question is about the composition of PEPP. I'm wondering if you've discussed including junk bonds into PEPP, and if not, why not given that your own stability report highlights the risk of downgrades to stability.(後半割愛)』

今回の一発目の質問がこれでした。つまり「金額と期間は延長したけど買入範囲は変わらんのけ?」という質問でしてそのお答えは・・・・・・・・

『Lagarde: On your first question, which has to do with whether or not we include junk bonds, as you call them, in our purchase policies. We have defined parameters for our purchases. We want to insulate the way we conduct policy from the effect of the pandemic and avoid self-fulfilling pro-cyclicality. We will continue to observe the situation and take appropriate and proportionate action. Aside from that, the Governing Council has not discussed this matter.(後半割愛)』

そもそもそんな議論をしてませんが何か?だそうな。まあその辺はあまり首突っ込まないで金融機関にやらせとけってなもんですかそうですか。


最後の質問の後半はただのヒマネタなんですけどこれはワロタ。

『(前半割愛)Second question - allow me, please - but you are often seen today reading notes in response to questions of journalists. Is it your own style that you wanted to print in the ECB communication?』

この質問聞きながらラガルドさん「ヘッ(鼻で笑う感じ)」って声出してましたように聞こえたんですが^^

『(前半割愛)First of all, you don't know what I'm reading. There are certain segments of my communication where I want to be very, very specific. When I describe for you, for instance, the flexibility as we apply it, I want to cover all items of flexibility. Or if I am quoting specific references from a particular decision that has been made, or from a Governing Council statement, I don't want to betray them. So now and again, I hope you don't mind not seeing my eyes too clearly. In any case, you don't miss much, I can assure you. I will occasionally take the liberty to read things, yes. That's my choice.』

ちなみにこの時の笑顔が何ともいい味を出していました。







2020/06/04

お題「債券先物とか輪番とかの世間話メモ/日銀さらに悪ノリモードの悪寒が/米国地方債お助けプログラム拡充とな」

第一報を聞いた時はビビりましたが感染→無症状→回復とな。
https://www.yomiuri.co.jp/sports/npb/20200603-OYT1T50209/
巨人の坂本・大城、PCR「陽性」…無症状のまま回復
2020/06/03 20:24

職業野球の選手だから検査する動機がありましたけど、そういうの無いまま感染無症状回復ってのどの位のケースになるんすかねえ。というような事も未だによくわかっていなくてやれ何人だという話ばっかりで進んでいるから何をすれば良いのかが分からんわ。


〇債券先物の売買高が1万8千枚とかこれはこれは

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_daytime
先物価格情報

例によってですがこれリアルタイム(ただし20分ディレイ)なので、債券先物の今日の立ち合いが始まるというか多分寄り前のどこかでデイタイムのデータは昨日のではなくて今日のになりまする。

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 20年6月限

取引日:2020/06/03
立会区分:日中取引

始値:152.14(08:45)
高値:152.16(08:45)
安値:152.04(14:15)
現在値:152.05(15:02)

前日比:-0.14

取引高:18,126
取引高:18,126
取引高:18,126

ザラ場で1兆8000枚キターーーーーーーーー(・∀・)−−−−−−−−−−−−−!!!!!

ええまあだから何だよとか言われましてもアレですが、やはり緊急事態宣言の全面解除がキタコレとなって、徐々にアクティビティが上がると申しますか、大体からして4月5月が開店休業に近かったので、そろそろポートフォリオのメンテナンス以上の動きもしていかないと今年度の運用が始まりませんがな、という事ではあると思いますし、またこれが天の助け(なのか孔明の罠なのかわかりませんが)のように円債ちゃんの(海外もですけど)イールドカーブがスティープ気味に推移して、20年が30bp台後半だの30年が50bp台だのというようなちったあ見られる水準になってきましたし、ってなことで昨日は別に入札があった訳でもないのに(輪番はあったが)少しはアクティビティが出てきたんでしょうか、などと勝手に希望的観測で物を言っていますが、これが現物はそんなでもなくてマルチアセット先物部隊が暴れているだけだとイマイチつまらんのですがさてどうでしょうかね。

とまあそんな中で30年国債入札を迎える次第でありまして、事前のセットアップは進んでいるような感じだし絶対水準もまあ見れないことはない水準だし、海外の金利だってまあこの財政ネタでスティープはしやすいかも知れんけど足元の所は寧ろガイダンス強化の方に進んでいくと思われますので、後ろが上がるにしたって限界あるでしょ、ってなもんで(個人の感想です)。

最近すっかり円債ネタ(厭債ネタならやりましたが)がアレで先物いつみても152円台前半だしということで、やっと円債ネタ来たわとか嬉しくなっているのですが、よくよく考えるとアタクシ相場ネタで愚見の披露とかしてなくて、フラグ建築パワーを溜めて居るような気がしてならないので、入札についてあんまりああだこうだ申し上げるとフラグになりそう(超大汗)。

なので当たり障りのない言い方をすれば、だいたい2次補正云々から来ているスティープちゃんですけれども、これが天の助けなのか孔明の罠なのかの一端が垣間見れる入札になるんとちゃいますかね、よー知らんけど。


〇輪番中期後半は結局「2カ月かけて月間2400億円の増額」でしたな

昨日の輪番オファー(輪番の所だけ引用します)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of200603.htm
国債買入(残存期間1年以下) 800 2020年6月4日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,200 2020年6月4日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,200 2020年6月4日
国債買入(変動利付債) 1,000 2020年6月4日

ということで、3−5年に関しては3200億円になりまして、こちらは前月が3500×5だったのが3200×6になりまして、17500→19200なので月額1700億円、年額換算したら20400億円の買入拡大になりましたな、うんうん。

でもって4月は2800×6だったので、結局2か月かけてレンジを500億円ずらして、400億円拡大ですかそうですかという感じですが、素直に3300にしなかったの何でですかねとか思ったんですけど(というか別に今月拡大せんでも良かろうという気もするんだが)、3300×6だと19800になって、先月の5年143回債の入札での募入額が19863億円(15403+3589+871)なのでそれに揃ってしまうのを避けたんですかね、とかいう割としょうもない事を思いついてしまいました。だから何なんだと言われますと困るのですけど。

償還が幾らで云々のいつもの奴は何せ増える方になってしまっているのであんまりおもんないわという感じですが、そうはもうしましてもせっかく作っていたものですので、数字の確認をしながらまた作りたいと思います。


〇これは何ぞ?(MPMネタがエライ早いタイミングで)

昨日の時事通信。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020060201084&g=eco
日銀、企業支援100兆円に 中小資金繰り策を拡大―コロナ対応で政府と協調
2020年06月03日08時17分

MPMの2週間前に打って来るとはこらまた前打ちにも程があるとおもったのですが同記事から。

『日銀が5月に決めた中小企業の資金繰り支援策の大幅な拡大を検討していることが2日、分かった。現在約30兆円の支援枠を倍増する方向で、日銀の新型コロナウイルス対応策は総額100兆円規模に膨らむ見通し。新型コロナ感染拡大に伴い資金繰りに苦しむ中小企業支援で、政府との協調姿勢を改めて示す。』(上記URL先より、以下同様)

だそうでして、何でまたこのタイミングで「分かった」のかと思えば・・・・・・・・・

『政府が閣議決定した2020年度第2次補正予算案で、実質無利子・無担保融資を増額したのに伴う措置。早ければ15、16日に開く次回の金融政策決定会合で決める。』

つまり補正がここまでに通らなければその次になってしまいますが、通常国会の会期末が17日で、延長する気が無いらしいのでまあそこまでには通るって目算ですかね、あの予備費10兆というのは唸ってしまいますが。

さてここれ2次補正を確認しますと、
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/hosei0527.html
令和2年度補正予算(第2号)
令和2年5月27日

https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/sy020407/hosei020527b.pdf
令和2年度補正予算(第2号)の概要

『(2)資金繰り対応の強化 116,390億円』ってなっていて、たぶんMETIの方にもうちょっと詳しいのがあるはず(というかある)んですけえど、まあ確かに利子補給をする形だったり、信用保証協会の保証を拡大する形だったらレバレッジが効くので事業規模が大きくなるとは思うのですけれども、11.6兆まるまるがそれに充当されるものでもなくて、この中って政投銀の直接融資とかあると思うんですが、何で30兆円も増やす必要があるんでしょうかと小一時間。

つーか大体からしてこれ確かに10bpの金利貰えるからオイチイにはオイチイですけれども、担保を調達するとなるとその担保の価格変動リスクがありますし、うっかり▲20bpだのの国債を担保にしたら10bp貰っても間尺に合わんじゃろとか、いろいろと微妙感があるんですけれども・・・・・・・・・

なんつーかですね、「さあ初めての新郎新婦の共同作業です!」みたいなノリノリ感を出すのと、とりあえず「2倍」と言って置けば良い、という何も考えていないノリノリというか悪ノリ感が物凄い勢いで漂ってくる次第。


そもそもですよ、このオペがあるから各種制度融資を積極的に行うという金融機関がいるとは全く思えない(時限的に0.1bp如きの補助金が入って来るのは来ないよりはマシだけど、それが制度融資を増やすインセンティブになる可能性は皆無である、と言い切れる自信はあります)、即ち、現実問題としてはこれが中小企業融資の促進に寄与するようなもんでもない訳で、どこぞのFEDのようなメインストリートレンディングファシリティだのペイチェックプロテクションプログラムなどとは全然質が違う訳ですよ。

いやまあ何もしてませんってのもアレだから何か折角の機会に融資やってる金融機関にインセンティブを与えましょうってのまで否定するつもりはないのですが、このプログラムに関しての動きについては、さすがに昨日のこのニュースを見て「悪ノリにも程がある」以外の感想が起きないですし、大した効果があるとも思えん(なお10bp貰える金融機関は下手にいちゃもんつけて10bp貰えなくなったら残念無念だから提灯コメントをするでしょうなあというのも読み筋にはある)施策で日銀がシャシャリ出てきてアピールするのってあざとい、というか最早浅ましいという感じではございます。

今次のあばばばばーでは当初FEDのサプライズ利下げ連発でのボラ発生で怒り心頭モードでしたが、その後のFEDって風呂上がりのオッサンの如く落ち着いている感じでして(昨晩は地方債プログラムの手直しが出てましたな)、何が良いといって「シャシャリ出ないように注意している」感が強くなってきたいる所でして、こんなん確かに財政のステージなんだから中銀はサポート側に徹して黒子さんになっておけばよいと思うのですが、まだ始まったばかりのスキームを連発して拡大していって100兆円でござるとか言い出す日銀ちょっと焼きが回ってないか、という感じではありました(個人の偏見です)。


〇一応メモだけですがFEDの地方債お助けスキームが更に拡充のようで

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200603a.htm
June 03, 2020
Federal Reserve Board announces an expansion in the number and type of entities eligible to directly use its Municipal Liquidity Facility
For release at 1:00 p.m. EDT

『The Federal Reserve Board on Wednesday announced an expansion in the number and type of entities eligible to directly use its Municipal Liquidity Facility (MLF). Under the new terms, all U.S. states will be able to have at least two cities or counties eligible to directly issue notes to the MLF regardless of population.』

『Governors of each state will also be able to designate two issuers in their jurisdictions whose revenues are generally derived from operating government activities (such as public transit, airports, toll facilities, and utilities) to be eligible to directly use the facility.』

共同発行債のうち人口の少ない所は直接買入対象外(そういうのは州の方で調達してくれというスタンスでした)だったのを緩和したのと、レベニュー債で共同発行みたいなのも買入ファシリティ対象にします、ということだそうです。

『In addition to the expanded terms outlined above, the MLF continues to be directly open to U.S. states, the District of Columbia, U.S. cities with a population of at least 250,000 residents, U.S. counties with a population of at least 500,000 residents, and certain multistate entities.』

これは元々からそうですよという端伊s。

『The MLF was established under Section 13(3) of the Federal Reserve Act, with approval of the Treasury Secretary. It will offer up to $500 billion in lending to states and municipalities to help manage cash flow stresses caused by the coronavirus pandemic.』

こちらもマクラみたいなもんで、結論が先にあってマクラが後に来る文章構成になっています。

詳しいタームシートはこちらだが読めてない(アカン)。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/files/monetary20200603a1.pdf

まあ何ですな、アタクシ米国地方政府事情とかちょっとそういう話はまるで追っかけられませんのでよー知らんのですけれども、この辺の措置が後からホイホイ出てくるってことは色々とややこしい状況になっている地方自治体とかがあるんだろうなあ、というのは何となく想像しましたです、実際どうなんでしょ詳しい人教えてジェネラル!



#なおECBについては各種オペの実施状況とかの月末値が先日出ていましたが、ここの数字を今まで細かく追ってなかった(すいません)ので、今回の定例理事会出てから腰を入れて色々と論点整理してみたいと思います





2020/06/03

お題「日銀レビューのある意味特別版で金融庁と共にレバローンとCLOについての話だが現状は悪くはないって評価かな?」

例の米国のアレ。アタクシは基本的に米国というのは行ったことがほぼ皆無という貫禄のドメドメジャパニーズだわ理解が足りてない人だわなので時々起こるアレかとつい思ってしまいがちなのですが、「今回は大統領がアレなのでアカン」というご指摘を在住等された方がほぼ皆さん仰せなのはほほうと思うのでありました。

ということで厭債害債さんのコメント。
https://ensaigaisai.at.webry.info/202006/article_1.html
2020年06月02日
米国の状況を憂う


〇レバローンとCLOネタの日銀レビュー特別バージョンキタコレ

皆様ご案内の通りとは存じますが昨日はこれが出て早速ヘッドラインになるのですが、コロナで商売が上がったりだか何だか存じませんが、最近ベンダーのヘッドラインが釣り要素ばっかり多くて記事の字面を見ただけでも騙されそうな案件が多くて、こちらを紹介しているニュースでも釣りヘッドラインの方が目立つという甚だ残念な状況ですな。

まあ何せ最近は、先日ネタにしたメスターとウィリアムズのブルームバーグインタビューでもそうでしたけれども、うっかりするとインタビュー映像でも、ヘッドラインの文字(インタビュー中に時々ヘッドラインみたくして「ひとこと」が出てくる)までが切り取りテクニック状態になっているケースがありまして、先般ネタにしたブルームバーグ(米国)のメスターとウィリアムズのインタビューは、マジで全部聞いてみると記事で書かれているYCCへのスタンスがまるっきりミスリードである(個人の感想です)と申し上げたくなる出来栄えなんですよねー。

てな余談はさておきまずは紹介のページ。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2020/rev20j04.htm/
本邦金融機関の海外クレジット投融資の動向
―日本銀行と金融庁の合同調査を踏まえた整理―
2020年6月2日
日本銀行金融機構局
金融庁監督局

金融庁まで参戦しとるがな。でもって『要旨』ってのがありまして、

『近年、米欧では、レバレッジド・ローンと、これを裏付け資産とする証券化商品であるCLOの市場が拡大しており、本邦金融機関による保有残高も拡大してきた。昨年来、日本銀行と金融庁は、本邦金融機関におけるこうした海外クレジット投融資の実態についてきめ細かく把握し、金融機関における適切なリスク管理を確保するとともに、その金融安定面への影響に関する適正な評価の共有を図ることを目的として、合同調査を行っている。本稿では、初回調査の結果に基づき、特にエクスポージャーの大きい大手行の投融資の規模や特徴について整理を行った。』

要旨見ても皆目見当がつきませんので全文の方を見るしかございませんですわ。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2020/data/rev20j04.pdf
本邦金融機関の海外クレジット投融資の動向
―日本銀行と金融庁の合同調査を踏まえた整理―
日本銀行金融機構局
金融庁監督局
2020年6月

最初の方はどういう調査しましたかとかそういう話です。

・基本的に大手行の扱いが多いそうな

本文2ページ(PDFでも2枚目)から参りますが『調査結果の全体観 』ってのから。

『以下では、まず調査結果の全体像を概観した後、 対象を大手行に絞ったうえで、融資(特にレバローン) 、投資(特に CLO 投資)の順に、より詳しく見ていくこととする。』

ほいな。

『本邦金融機関における 2019 年 3 月末時点の海外クレジット投融資残高は、融資が約 160 兆円、 投資が約 100 兆円であった(図表 2)。』

ほー。

『これを業態別にみると、融資・投資のいずれについても、大手行3が大きな割合を占めており、他の業態に関しては、大手行に比べて残高が僅少であることが分かった。 』

図表2を見るとガチで僅少ですな。あと大手行の定義ですが、脚注3というのがありまして、

『3 大手行は、みずほ、三菱 UFJ、三井住友、りそな、埼玉りそな、 三菱 UFJ 信託、みずほ信託、三井住友信託、SMBC 信託、新生、 あおぞら、ゆうちょ、農林中央金庫の 13 行庫』

だそうです。

『内訳をみると、融資・投資いずれについても、 投資適格企業向けのエクスポージャーが約 7割と大部分を占めているが、レバローンを含む非投資適格企業向けの融資や、そうした非投資適格企業向け融資を裏付けとする証券化商品である CLOへの投資、非投資適格企業の社債であるハイイールド債への投資なども 3 割程度を占める。CLO に ついては、グローバルな市場における本邦金融機 関のシェアが 2 割弱に達しているとみられる4(図表 3)。』

まあそうじゃろうな。という訳でまずはレバローンの話になるんですが、その次の所でも説明あるように、そもそもレバローンって定義がフニャフニャなのでアタクシあんまりその用語好きじゃなくて、そらまあ話の流れで使うことはありますけれども、フニャフニャな定義を基に話するの好かんのよね。単に低格付け先向けのローン、って思いながらいつも考えていますわ。


・大手行のレバローンの状況

んな訳で次が『大手行によるレバローンの保有動向』でお題になりまして、『(レバローンの定義)』という今申し上げた話になります。

『「レバローン」は、先述の通り、「相対的にレバレッジが高く信用力の低い企業向けの融資」を指す用語であるが、厳密な意味で統一された定義は 存在しない。米欧の監督当局は、レバローンに関するガイダンス5の中で、 「レバレッジ比率 4 倍超 の企業向け融資」と、主にレバレッジに着目して 定義している(図表 4)。他方、非投資適格企業向けのシンジケートローンが「レバローン」と呼ばれるように、主に信用力に着目する定義も見受け られる6。』

企業の財務レバレッジにしたって、商業と製造業、商業だって卸と小売りではそもそも適正と言われるレバレッジ違うでしょとか20世紀の終わりごろに金貸しの手先をやっていたアタクシとしては思う訳ですが、まあだいたい企業買収の資金を(全部じゃなくて一部でも)使途にしてたらレバローンとか、そういうレベルでの財務レバレッジの掛けかたとかそういうレベルの企業に対するローンをレバローンって言いますよってな話だとは存じますので、よーしパパ社運を掛けて新工場作るぞくらいの話を突き抜けた話だよね、とは思われますが、まあ何にせよレバローンって一緒くたにするよりはバイアウトローンだの何だのともうちょっと細分化して定義してほしいなとは毎度思っています。

『今回の調査では、米欧の監督当局の定義 を参考に、レバレッジ比率 4 倍超の融資について 幅広く調査対象としたが、本稿では、そのうち「レバレッジ比率4倍超かつ非投資適格企業向け融資」 を「レバローン」と定義する。』

なるほど。でもってその結果は『(レバローンの残高)』ですが、

『2019 年 3 月末時点の大手行の海外融資のうち レバローンの残高は 1 割程度の約 14 兆円であり、 このうち BB 格が約 7 割、B 格以下が約 3 割であ った(図表 5)。融資先企業のレバレッジ比率別に みると、6 倍超が 6 割弱、5〜6 倍が 2 割弱、5 倍 以下が 2 割強であった。』

だそうな。ここで話はCLO方面に飛ぶ。


・CLOの所は話題になりやすいので丁寧に説明していますな

次が『大手行によるCLO投資の動向 』となっていまして、

『大手行による海外クレジット投資は、投資適格 債が中心ながら、近年はそれ以外の投資商品の割合が徐々に高まっている。特に 2019 年前半にか けて、CLO を中心に残高が大きく伸びている(図 表 6) 。』

てな話から始まっていますが、まあここは話題になりやすいのでやたら丁寧に説明していまして、文章の長さが何とも言えない味わいを感じますが、端的にまとめてしまいますと「CLO満期保有ならほぼ平気、期中の含みは動くけどな」(狂歌のつもりだが字余り能力足らず)ということで宜しいんじゃないでしょうか(個人の感想です)。では拝読拝読。

『(格付別残高) 』という小見出しですがまあこれが長い。

『大手行の保有するCLO を格付別にみると、99% 以上が AAA 格トランシェに集中している点で特徴的である。これは、米銀の 77%、英銀の 50%強 7と比べても際立って高い水準である(図表 7)。』

キタコレ!!!!

まあ別の言い方をするとAAAトランシェってリターンが小さいので、そういうリターンを組成しても買ってくれるのは、自国内のクレジットスプレッドやら預貸スプレッドやらそもそもの国債金利やらが、CLOのAAAトランシェもビックリする鉋屑のようなスプレッドだったりマイナス金利だったりというように国内の金融機関を盛大に迫害している金融政策を取っている日本の人たち、という背景があったりなかったりするような気がしますが気のせいと言う事にしておきましょう(個人の感想です)。

『CLO は、信用力が相対的に低い融資を裏付け資産とする証券化商品であり、市場残高が急速に拡大してきていたことから、リーマンショック前に 同じく市場残高が急拡大し、その後の金融危機拡 大の一因となった、サブプライムローンを裏付け資産とする証券化商品との類似性を指摘されることがある。』

と来ていますのでこの文章は次に「そうではない」と来るのは分かりますね。

『もっとも、@リーマンショック時に 大きな損失に繋がったのはデリバティブを組み込んだ仕組みの複雑な再証券化商品(CDO、CDO スクエアード等)が中心であり、当時も AAA 格 の CLO について元利払いが毀損した例はなかったことや、Aリーマンショック時は、CDO 等の証券化商品自体を担保とするレポにより投資資金を調達していた投資家が多く、証券化商品の価格下落が資金調達難、ひいては投売りに繋がりやすかったのに対し、CLO 自体を担保とするレポにより投資資金を調達している先は余り見られないことなどは、意識しておく必要がある。』

全然違うからヘーキヘーキとは書いていません(というか立場上そうは書けない)がまあそう言ってるようなもんじゃろこれ。

『また、CLO の商品設計についても、リーマンショック以降、AA 格以下のトランシェの割合(信用補完水準)が拡大している。このため、裏付け 資産の一部でリーマンショックと同程度の信用力の劣化が生じた場合でも、AAA 格部分の元利払 いが毀損するリスクは、当時よりも抑制される構造となっている。』

イイハナシダナーなのですが、こっちに関して以前FSRで説明していた件に関しては何故か今回の参考文献に入っていないのが意地悪ちゃあ意地悪。

『また、後述するように、大手行 では CLO のリスク管理の一環として、裏付け資産ポートフォリオのデフォルト率や回収率に、リ ーマンショック並みかそれを上回る深度の危機を想定したストレスを与えてキャッシュフローを分析し、保有トランシェの元本毀損の可能性を 確認している。』

イイハナシダナー。

『従って、期中における時価評価額の変動は相応に大きいものの、満期まで持ち切っ た場合の損失率は抑制されていると評価できる。』

満期保有大勝利ということですねわかります。ということで次は『(保有目的区分別残高)』という話。

『今般の調査においては、金融商品に関する会計 基準に基づく保有目的区分も調査項目の一つとした。』

ほうほう。

『その結果、大手行の保有する CLO の約 4 分 の 3 は、「満期保有目的」に区分されていることが 確認された(図表 8)。この点、海外クレジット投資全体の大部分を占める投資適格債については、 その殆どが、期中の売却も念頭に置いて「その他」 目的に区分されていることとは対照的である。 』

「4分の3」がその他有証ではなくて満保になっているということですかそうですか。


・でもってリスク管理の話が続くのですがこちらでも管理出来てますね的な評価をしているように見受けられる

次の小見出しが『リスク管理の状況 』でして、最初がレバローンの話なので『(レバローンのリスク管理)』となります。

『レバローンのリスク管理に関して、大手行では、 企業規模や業種に応じた与信上限額の設定のほか、レバレッジ比率(企業の総負債/利益)やエクイティ比率の基準を設けるなど、レバローンに伴う信用リスクを抑制するための特別な融資基準を設けている先がみられる。』

ほうほうそれでそれで?

『このうち、レバレッジ比率については、近年、買収効果等を勘案した先行きの利益の増加を織り込むことで同比率を低く見積もる、いわゆる「アドバックス」を行う例もみられるが、大手行では、こうした不確実性の高い利益の増加見込みに対して一定の上限を設けるなどの調整を行い、保守的にレバレッジ比率を算出したうえで与信判断をしている先が多い。』

『また、レバローンの中でもリスクの高い LBO ローン等や、一部の地域について、財務コベナンツの妥当性等、融資規律を評価する基準を設 けこの基準に抵触する案件を一定比率以下とする管理を行う先もみられる。』

イイハナシダナー。

まあこういうの渦中の当事者だと渦中のヒャッハーユーフォリアに一緒になって巻き込まれて与信審査が大甘の王子になるというのは80年台後半にジャパンがやらかしていましたな(昔は金貸しの手先だったので一応何となくはそういうの分かる)ということで、日本よりも向こうのローンマネージャーの方がネーとか思ってしまうま。

『このほか、レバローンに付随する様々なリスク に関しては、例えば、引受にかかる時価変動リスクを適切に管理する観点から、ストレス時損失額 を計算し、一定のリミット内に収まるよう残高をコントロールする先や、一定期間における価格下落率に応じて、与信管理面で取るべき対応を予め定めている先などもみられる。』

ほーん。まあ決め方もあんまりガチガチにやってしまうとファイヤーセールに巻き込まれるというお馴染みコースになるんでその辺も兼ね合いが難しい(ファイヤーセールでも何でも売った方が負けを減らせることもあるし)。


で次がCLOになって『(CLO のリスク管理) 』である。

『CLO のリスク管理に関して、大手行では、外部格付を参照した投資基準(例えば、投資可能銘柄 を AAA 格に限定する等の基準)を設けつつ、これとは別に自らストレステストを実施すること で、投資トランシェの償還蓋然性を確認している。』

ほう。

『具体的には、裏付け資産ポートフォリオのデフ ォルト率や回収率に、リーマンショック級の危機 やそれを上回る深度の危機を想定したストレス を与えてキャッシュフローを分析することで、保有トランシェの元本毀損の可能性を確認している。』

ほうほう。

『また、裏付け資産の格下げや、業種分散、業種相関の強まりなどを踏まえたストレス分析を追加的に実施している先も多く、入口審査だけで なく、期中管理においても、ストレステストをリスクの定量把握に活用している。』

ほうほうほう。

『米欧で CLO を運用するマネージャーは、2018 年時点で約 130 社に及んでいたとされる8。したがって、リスク管理に関しては、入口審査における マネージャー選定のためのデューデリジェンス の実施が第一歩となる。』

ですよねー。いやマジでこれ重要っつーか、流動性が相対的に無い(低い)物件に外部マネージャー使って投資する、って話の時は1にも2にもアセットマネージャーのデューデリで、そこがポンコツだと以下何やっても上手く行かないですわな。

『この点、大手行では、投資銘柄を選定する際に、 マネージャーの過去のパフォーマンス、金融危機時の運用実績、運用態勢、投資スタイル等に関するデューデリジェンスを実施している。また、特定のマネージャーへの集中リスクを回避すべく、 銘柄単位の管理だけでなくマネージャー毎に「名 寄せ」を行った上で、マネージャーの分散を図っているほか、デューデリジェンス結果を踏まえて マネージャー毎の投資上限額を管理する取り組みを行っている。』

仰せの通り。で、その次の話が期中管理の話になる。

『リスク管理の次のステップとして、償還までの期中において裏付け資産のクオリティが適切に管理されるよう、マネージャーに対する牽制を働かせることが重要である。』

ほう。

『この点、大手行では、 マネージャーに運用制約を課す「投資ガイドライン」について合意し、期中においては、同投資ガ イドラインで定めたトリガーの抵触状況や、抵触 時のポートフォリオのリバランス状況について、 適切にモニタリングする態勢を確保するよう努めている。』

まあ当然ですな。大手行関係ないっしょ。

『銘柄毎の投資額に関しては、期中での売却を想定する場合、売却によって自ら市場を崩すリスクを回避する観点からも、銘柄毎の投資額を抑制することが一般的である。もっとも、満期保有目的 で CLO を保有する場合には、むしろ特定銘柄のAAA 格トランシェに集中的に投資して過半を確保することが、リスク管理上選好されているケースが広く確認された。』

満保だったらそれもありですわな。

『これは、投資ガイドラインに関する調整や期中のモニタリングにおいて、マ ネージャーに対する強い交渉力を確保することを目的とするものである9。 』

どういうことかというのが脚注9にあって、

『9 発行されるトランシェの過半を有するメリットについては、大 きなロットで投資することによるマーケティングコストの削減 や業務効率性の向上、当該銘柄に関する各種ドキュメンテーショ ンに対する投資家要望の反映等も指摘されている。』

だそうです。続きまして、

『本年 3月半ばのクレジット市場の調整局面でも、 保守的な投資ガイドラインのもとで運用される CLO ほど、価格調整が相対的に小幅だったことが 報告されている。』

と締められていまして、現状の部分をみるとまあ特に懸念する話はないでしょ、となると思う(個人の感想です)のですけれども、当然ながらメディア方面ではこの先の『今後の留意点 』の方ばっかりネタにする訳で・・・・・・・・


・今後の留意点、の中で出てくる話のうちそらまあそうですよね話を割愛して蓋然性とかで見るとこの辺ですかねえ

『今後の留意点 』のところ、ああでもないこうでもないとありますが、「最近は落ち着いているけど今後の海外クレジットは業績悪化とかこれから来るんだから要注意」などのような話はまあ当然の話なんで良いとしまして、アタクシが読んだ中ではまあこの辺は気にしておくネタなんだろうなあというのが幾つか。なおアタクシの感想なので飛ばしたところに実は当局懸念の論点があるかも知れませんのでご注意くらはい(汗)。


5ページ目右側のケツ

『また、レバローンのうち満期一括償還型のロー ン(いわゆるタームローン B)については、償還期に多額のリファイナンス(借換え)が成立する ことが重要となる。特に、シンジケートローン形 態のものは、機関投資家の保有割合が高いが、こうした投資家の多くは市場性調達への依存度が 高い上、レバローンの借り手との関係性も希薄で あることから、今後、市場でストレスが再度強ま る場合には、リファイナンスに応じることに慎重 となる可能性がある。レバローンの市場全体の償 還スケジュールをみると、2022〜24 年にリファイ ナンスが集中する格好となっている(図表 10)。 レバローンを保有する金融機関としては、可能な 限り償還時期の分散を図ることも重要である。』

リファイの話はローン市場のリスクって話の中でいつも出てくる説明ですわな。


7ページ左側の頭

『また、期中での売却を想定しない場合であっても、保有銘柄の格下げが起きた場合には、市場価格の大幅な変動による減損損失の発生リスクが 存在する10ほか、リスクアセットの大幅な増加(自 己資本比率の低下)に繋がり得る。特に、投資家 からの換金請求に随時応じる仕組みの「オープン エンド・ファンド」による CLO やレバローンの保有が拡大するなど、資金調達基盤が相対的に脆弱 なノンバンクの役割が高まっている。こうした市場構造のもとでは、本年 3 月に一部でみられたよ うに、ストレス時にファンドから短期間に大量の資金流出が生じた場合などに、CLO やレバローン の市場流動性の著しい低下を契機とする価格の 大幅な変動や、リファイナンスの困難化が生じ、 その結果、デフォルト率が想定以上に高まる可能性がある点は、十分警戒する必要がある。 』

まあこれは一番の論点でしょうなあ、と思います。なおどうせメディアの取り上げだと別の部分になるんでしょ、とは思いますけれども、まあ注意はするようにとは言っているけど、現状に関してはコロナストレスで今の所特段懸念するようなシステミックな問題が発生している訳ではないって見てるんじゃないですかねえ、というかそういう風に説明しますよ、って話をしていると思います。


#おお計数ネタが時間なくなって出来ないがそもそも輪番増えてるんで買入額が幾らとかあんまり話題性が無くなってますな(涙)









2020/06/02

お題「債券市場サーベイは順当に壊滅とな/LIBOR廃止対応とっととやりやがれというケツ叩きキタコレ/その他メモ」

これわwww
https://this.kiji.is/640105347811198049
トランプ氏、地下に避難
抗議デモ激化受け一時
2020/6/1 17:35 (JST)
6/1 17:43 (JST)updated コピーライト 一般社団法人共同通信社

『ニューヨーク・タイムズ紙は実際に危険が迫ったという事実はないが、トランプ氏やその家族はデモに「動揺した」と伝えた。CNNテレビによると、近くで炎が上がった31日夜にも避難したという。米誌アトランティックは「トランプ氏は怖がっている」などとやゆした。』(上記URL先より)

ツイッター内弁慶ですかそうですか、などと言いながら鏡を見たら急にブーメランが飛んできた気がするので回避行動を取る(キリッ)。

〇債券市場サーベイェ・・・・・・・・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/paym/bond/bond2005.pdf
債券市場サーベイ <2020年5月調査>
2020年6月1日 日本銀行金融市場局

回答期間:2020年5月7日〜5月15日
調査対象先数:67先 (「調査対象先数」は、国債売買オペ対象先のうち調査協力を得られた先、および大手機関投資家<生命保険 会社、損害保険会社、投資信託委託会社等>)

という訳で5月の数字が出たが壊滅的な結果になったので久々にネタになるわw

『1.債券市場の機能度の状況(長期国債の流通市場を念頭において、ご回答下さい』

『(1)貴行(庫・社)からみた債券市場の機能度(注)    
(注)債券市場の機能度は、(2)@〜Fの質問項目への回答内容等を総合的に勘案して、ご回答下さい。』

(現状)
機能度判断DI(現状): ▲27→▲45

と来まして内訳を見ますと、

高い:1→0
さほど高くない:70→55
低い:28→45

(という数字は全回答に対する百分比ですな)となりまして、今まで延々と「高い」という謎の提灯回答をしておられたお方まで遂に「高い」を取り下げているんですからこれはもう大変な話ではありますが、とは言いましても今回の機能度DI低下はコロナが悪いよコロナが、という話に収斂してくれますので、日銀が悪い訳ではなく、むしろオペの回数を増やしたりして市場機能を維持したのは日銀である(キリリッ)と自画自賛が出来るので日銀ある意味大勝利なのですが、まあそれにしてもFED辺りが「市場機能を維持するためにこのような措置を実施」というのをやたら特筆大書して説明しているという今日この頃という状況の中で、「うちの債券市場の機能低下は5月になって盛大に悪化しましたてぺへろ」とか出て来ちゃうの如何にも間が悪いですが、唯一の救いは前回サーベイが2月で、相場が壊れたのが3月なので「その時よりは改善している」と言い張れることですな!!!!!

しかしまあ何ですな、

(3か月前と比べた変化)
機能度判断DI(変化) :+6→▲50

と来まして、そうか2月対比だからシャーナイわなとは思いますがこれまた悲しい数字ですが、「改善した」という謎の回答が1社あるのがチャーミング。まあ2月って言ったって前半と後半では市場の様相が違っていたから(あばばばばーになったのは3月頭のFED緊急利下げからとは言え)どこを基準に考えるかというのはあるけれどもさすがに改善したというのは謎。


珍しくも『(2)債券市場の機能度・流動性に関する各論』もネタにします(普段から確認はしてますよ)が。

『@貴行(庫・社)からみたビッド・アスク・スプレッドについてご回答下さい』

って質問がありまして、

ビッド・アスク・スプレッド判断DI(現状):▲6→▲27

ってなっていましてこの背景には、

『A貴行(庫・社)からみた市場参加者の注文量について、板の厚み(注)等を念頭においてご回答下さい。』

注文量判断DI(現状):▲26→▲63

とかいう壊滅的なのがあって、さらに

『B貴行(庫・社)の取引頻度についてご回答下さい。』

取引頻度判断DI(現状):▲19→▲42

とかいうそらそうよではあるのですが残念な数字があります。プライスはアクションしてないけどそもそも参加者がアクションしてなくて、参加タイミングが入札と輪番しかありませんでした、という状況なのはロックアウトみたいな事してたんですからシャーナイナイではありますな。。

しかしまあタイミングが悪いとは言え、相場が落ち着いている筈なのにこういう数字が出て来ちゃうのはちょっと運が悪いですわ・・・・・・・・


〇LIBORキタコレですがまあこれは要するに対応を危機感とスピード感をもって行えという事ですな

何かキナ臭いものが。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200601b.htm/
LIBOR公表停止に向けた対応状況の確認等を目的とした代表者宛通知の発出(Dear CEOレター)

その愛称がキモいんですけど(個人の偏見です)、と思ったら海外ではそういう愛称になっている、との説明がありましたが、まあそういう物件が出ている。まずは上記URL先から。

『日本銀行は、金融庁と合同で、主要な金融機関の経営トップに対して、LIBOR公表停止に向けた対応の促進および対応状況の確認を目的とした通知を発出しました(諸外国では「Dear CEOレター」と呼ばれています)。』

あっそう。

『本通知は、一部の金融機関に対して発出したものではありますが、受け取っていない金融機関に対しても、本通知の内容を踏まえながら対応状況を確認してまいります。LIBORを利用している金融機関においては、経営陣による主体的かつ積極的な関与のもと、本通知の内容も参考にしつつ、LIBORの公表停止に向けた対応をより一層進めていくことを期待しています。』

だそうで、その下に『代表者宛通知「ロンドン銀行間取引金利の恒久的な公表停止に向けた対応について」 [PDF 134KB]』ってのがあるからポチっとなとするとこちらに飛ぶ。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/data/rel200601b.pdf
ロンドン銀行間取引金利の恒久的な公表停止に向けた対応について
令和 2 年 6 月 1 日

でまあその宛先と差出人が

『金融機関 代表者 殿

金融庁総合政策局長 森田 宗男
金融庁監督局長 栗田 照久
日本銀行金融機構局長 高口 博英 』

となっているから何とかレターというそうな。

『 ロンドン銀行間取引金利(London Interbank Offered Rate,以下、 「LIBOR」という。 )は、 金融商品・取引において参照しているだけでなく、様々な制度・慣行とも相互依存の関係にあることから、仮に十分な備えのない状態で LIBOR が恒久的に公表停止された場合の影響は非常に大きいため、2021年末以降、恒久的に公表が停止されることを前提に、所要の準備を進める必要がある。』

世界的なコロナ対応が急がれる中、世界的にこれを何とか延期しようという動きにはならんのかねとは思いますが、まあだいたいこの手の物件はいったん走り出すと外部情勢の変化に構わず突撃して行って所定の期日で完了する、という謎の仕様になっている(古くは登録社債の電子化導入(これは前世紀の話)とかもそうでしたが、決済期間短縮化とか、MMF改革とかその手の案件って一度期日決めて動き出すとまず止まらんのよね)のですが、LIBORは何せBOEが急に君子豹変して「うちんちがコロナで大変で移行作業できないからやっぱLIBORあと1年出すわ」とかギリギリに近い所でズコーとなってしまうリスクはあるので、BOEに梯子を外されないように願いたい。

『従って、2021 年末まで残り2年を切っている中、下記1のとおり、各項目について時間軸を意識した対応が求められる。 ついては、取締役会あるいは経営会議等の構成員が、各金融機関の業種や特性等に応じ て、LIBOR 公表停止に伴うリスクを十分かつ正確に理解・評価し、当該リスクを低減・制御 するための措置を講じているか、また、LIBOR から代替金利指標への移行、あるいはフォールバックに向けて適切な対応をとっているか確認することとしたいので、下記2及び3の とおり関連資料を提出されたい。』

さあもりあがってまいりました!!!!!!!!!!

『記

1.求められる対応

以下に記載している事項については、LIBOR が 2021 年末に恒久的に公表停止されることを前提とした場合に、各金融機関の業種や特性等によっては一律に求められるもので はないものの、一般的に求められる対応として考えられる内容を示したものであり、当該対応が、示した時期までに完了していないことをもって不適切と判断するものではないことを申し添える。 』

でもどうせ(ここで爆発音と共に回線が途絶する)。

『(1)移行計画 』ですけど、

『@ LIBOR 参照商品・取引の「移行」または「フォールバック」に向けた対応(スケジュールを含む)に係る計画(以下、「移行計画」)を、すでに策定していること

A 移行計画について、取締役会あるいは経営会議等が、すでに承認していること

B 取締役会あるいは経営会議等が、移行計画の進捗状況について定期的に報告を受け、必要な指示をしていること』

ちなみに最後に出てくるんですが関連資料を提出されたい云々は7月10日となっておりまして、現時点で移行計画って線表の絵コンテはあると思うのですが、何せRFRの参考値がつい最近出てきたばっかりという中ですと、役会に出すレベルで精緻な資料を作りにくい(ラフデザインで役会通るならまあ良いんでしょうけど)んじゃネーノという気がせんでもないですが、まあこれは精緻な計画を役会で通せという話ではなくて、こういうケツカッチンの課題があるということを役員レベルで情報共有しろ、ということだと解釈しておきましょう(棒読み)。


『(2)顧客対応 』に関しては、

『@ 職員が、LIBOR 公表停止に係る影響・リスク等について顧客に説明できるようにするため、また、契約変更に向けた手続きを遂行できるようにするため、すでに研修等を実施していること

A 今後、満期が 2021 年末を越える LIBOR 参照契約・商品を新規に締結・発行する場 合には、頑健なフォールバック条項を導入すること

B 満期が 2021 年末を越える既存の LIBOR 参照契約・商品については、可能なかぎり 早期に移行またはフォールバックの対応を図ること

C 満期が 2021 年末を越える LIBOR 参照の商品(貸出、債券)の新規契約・発行を停止する目標を設定すること

D 各種条件が整い次第、速やかに顧客交渉が開始できるよう態勢を整備すること 』

A〜Dはまあ言いたいことは分かるのですが、@についてはRFRの参照値というのがつい最近出たばっかりという状況で、しかもこれ思いっきり暫定版という状況の中ですと「じゃあ現実問題としてどういう変更をすれば良いのでしょうか、って顧客に聞かれたらどうするんだよオイコラ」とか営業員に聞かれても答えられないと思うんですよね。よー知らんけど。まあこれもLIBOR公表停止というイベントがあるというのを顧客に周知しろという事だと解釈しておきますが。


まあここまではまだしもですが次がアレ。

『(3)システム対応 』

『@ リスク・フリー・レート(以下、「RFR」)を参照した商品について、2021年初めに はシステムにて取扱いが可能となること。』

うーんこの。

https://www.boj.or.jp/paym/market/jpy_cmte/cmt200526a.htm/
ターム物リスク・フリー・レート(参考値)の公表開始について(日本円金利指標に関する検討委員会)
日本円金利指標に関する検討委員会
2020年5月26日

『「日本円金利指標に関する検討委員会」(以下、「検討委員会」)は、本年2月に、円LIBORの代替金利指標として検討委員会の市中協議で最大の支持を得ている「ターム物リスク・フリー・レート 」の参考値(実際の取引での利用を前提としないレート)の算出・公表主体として、株式会社QUICK を選定しました。本日、株式会社QUICKより、同参考値の公表が開始されましたので、お知らせします。』(ここだけ直上URL先の5月26日日銀公表文より引用)

って現状で参考値も参考値、週に1回しか公表されていない物件しか出てきてないのに本年末にシステム対応間に合わせるとか出来るんけ??しかもコロナで色々なもんが渋滞している中ですが。いやまあ大丈夫ならいいんですけど・・・・・・・・・・


さらに『(4)事務対応 』に参りますと、

『@ 上記(3)−@において、全ての商品・取引がシステムにて取り扱えない場合(商 品・取引の一部が、システム対応できない場合) 、2020年末までに手動で対応可能 となるよう事務規程・事務フローを見直すこと』

手動なのに1年前には間に合わせよとな。

『A 関係する職員に対して、上記見直し後の事務規程・事務フローに基づくオペレーションが対応可能となるよう、2020 年末までに研修等を完了すること』

お、おぅ・・・・・・・・・

『 B 上記@以外の事務規程・事務フローにおいて、LIBOR を参照している事務規程・事 務フローを 2020年末までに見直すとともに研修等を完了すること』

そもそもRFRですけど、上記のようについ最近お試し版で出ているのが「火曜日になったら先週のデータが出てくる」という事務フローを作るという事に関して言えばミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の毛髪程度にしか機能しない状況な訳でして、本番版が出てくるのって年内間に合うんでしたっけとか思いまするに、それはさすがに事務フローを作れというのがちょっと・・・・・・・・・・・

まあそれよりもいざとなったら手動対応できるフェイルセーフ体制を作っておきながらシステム対応を何とか間に合わせないと一撃必殺な部分は間に合わせる(アタクシもそんなに詳しくないから知らんけど例えば勘定系に絡む所は何としてでも間に合わせないといけないけれども、直接的に勘定とリンクしていない所は当初はパッチワークで済ませる代わりにフェイルセーフの仕組みを頑健に作っておくとかそんな感じですかねえ、よー知らんけど)とかそういう事になるんじゃないですかねえ、特に大手以外だったら。


なお、最初に書かれていました報告云々ですが、

『2.提出依頼内容

取締役会あるいは経営会議等が承認した下記関連資料を提出されたい。』

役会承認取りに行けとの事ですよ!!!

『 @ LIBOR 公表停止対応に関するガバナンス体制(責任役員、責任部署、関連部署との 連携態勢、経営陣への報告等の枠組み等)

A LIBOR の恒久的な公表停止に伴い影響が及ぶ業務範囲(LIBOR を参照している具体 的なシステム、事務規程、事務フロー等を含む)

B 移行計画の内容(スケジュールを含む)

C 経営陣が定期的に移行計画の進捗状況を管理する仕組み、及びその実効性の確保 の状況

D 金融庁・日本銀行が令和元年 10 月に合同で実施した LIBOR 利用状況調査の結果及 び移行計画を踏まえた経営資源(人員・予算)の確保・配分状況、及び移行計画の 進捗状況に応じた機動的な経営資源の見直し状況

E 移行あるいはフォールバックに伴うコンダクト・リスクの特定・評価、及び低減策

F LIBOR 参照商品・取引の市場流動性の低下に伴う実質的な LIBOR 参照取引停止時期 の前倒しに備えた対応方針

G 財務諸表等での開示方針、投資家向けIR・ディスクロージャーにおける取扱い方針』

だそうです、ナムナム。なお、『3.上記2に関する資料の提出期限及び提出先』は『@ 提出期限:令和 2 年 7 月 10 日(金)』だそうですわ。

まあ対応を急がないといけないからケツを叩きたいというお気持ちは非常に良く伝わって参りましたので、危機感とスピード感をもって対応しやがれと飛んできたムチということで解釈しておきますです、はい。



〇本来はこっちのネタをやりたかったんだが読み込み不足の物件がありまして(汗)

とこう書いて自分のケツを叩く事によって読み込みを進めたいのがこちら。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/other20200529a.htm
May 29, 2020
Federal Reserve Board releases results of survey of senior financial officers at banks about their strategies and practices for managing reserve balances
For release at 2:00 p.m. EDT

先週の木曜に出ていたんですけれども、こちらのサーベイが中々興味深い(マニア向けですが)ですなと思いましたが、実はこれ第2回サーベイで、第1回というのがあったのですが不覚にもちゃんと読んでいませんでしたので(大汗)、まあ近いうちにネタにする内容ならネタにします。あまりもマニアックだったらパスしますけど、まあマニアには面白いんでしょうな。

#どこかの更にマニアな人が解説してくれるかも知れませんが、と謎の召喚呪文を唱えておく









2020/06/01

お題「各種オペ紙/引き続きFED高官発言のウォッチでも(汗)」

その面子なら台湾が入るべきと思うのだが。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200531-OYT1T50078/
入国制限緩和4か国で検討…タイ・ベトナム・豪・NZ、夏以降実施へ
2020/05/31 18:21

〇各種オペ紙:中期後半がこりゃ増額ですかそうですか

・輪番:中期3−5年が増額の模様

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200529c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の月間予定(2020年6月)

0−1年:500-1000、月3回(変更なし)
1−3年:2000-5000、月6回(変更なし)
3−5年:2000-4500、月6回(月5回、2000-5000から変更)
5−10年:2000-5500、月5回(変更なし)
10−25年:500-2000、月2回(変更なし)
25−40年:0-500、月2回(変更なし)
物価連動国債:300、月2回(変更なし)
変動利付国債:1000、隔月1回(変更なし)

んな訳で中期後半が拡大。何だよ結局6回に戻してんじゃん何だったのよ先月の回数削減は、と思いまして、6回の時っていくらだったっけと思ったら。元々6回でやっていた時って中期前半が2000-4500→2000-5000(5月に上限引き上げ)、中期後半が5月のをすっ飛ばしてしまうと、1500-4000→2000-4500となりました、ってなもんですな。出来上がりを幾らにするんじゃろとは思いますが、まあ5月のを飛ばしてしまえば要するに1回500億円増えて、月3000億円、年間3.6兆円増えますよって事になるんでしょうかね、よー知らんけど。

2次補正の件もあるからそろそろ増やしますかとかそういう話なのか何だかイマイチ良く分からんですけれども、そもそも論を申し上げますと本来は「政府が国債発行を増発したから日銀が買入を拡大する」というロジックで拡大をするというのは、「財政ファイナンス」を思いっきり想定させるものですので、本来の日銀的なスタンスでは、事実がそうであってもそこは必ず別の言い訳を持ち出してくるのが通貨価値の適切な維持という存在意義からして必要になるスタンス、という原理原則があった筈なので(すが最近は原理原則が大体ハチャメチャになるし、しかもそれを恥ずかしげもなく出してきた、というのが5月臨時会合のアレ)、まあ増発にぶつけて拡大するにしても段階的に実施するとかそういう事でございますかねえ、よー知らんけど。

イマイチここで動かないといけない理由が良く分からんかったのでメモメモ。


・CP社債買入:社債のおかわり期間延長は追加緩和措置になってしまうんだが

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200529a.pdf
CP・社債等買入のオファー日程(2020年6月〜7月)

こちらは事前にアナウンスされている6月買入分に加えて7月買入分が出ていまして、1回辺りのロットについては同じでございます。

・・・・・・・・・いやあのですね、CPはまあ足が短いから別に1回辺りの買入額って変更するような話しでもないんですけれども、社債って1年を超える足のものを買うんですけれども、追加買入枠部分の期間が従来の9月末だったのを来年3月末とかまでしらっと延長しているのに1回辺りの買入額が減らないのってロジックおかしくないですか???

などと申しておりますが、まあ元々これ1回辺りの買入額を積み上げて行っても9月末の時点で買入おかわり予定額に満たないのが見え見えだったという買入になっていまして、元々が社債買入ってコロナ前が月1000億円〜1500億円程度だったと思うのですけれども(保有社債の償還スケジュールによって異なる)、3月に追加枠をCP社債各1兆円拡大、4月に1兆円だったのを各7.5兆円に拡大、という悪ノリとしか思えない増やし方をした次第でしたが、まあこの調子だとざっくり追加買入分が月に4000億円としまして、実はこれでも7.5兆円には行かないんで、まあここの数字を下手にいじるとそもそも7.5兆円買入というのが空砲であるのがバレてしまうのもイクナイとか思ったんですかねえ、まあ何だか良く分からんけど。

いやまあ前々回(4月27日)のMPMで「なんじゃこの7.5兆円ってのはふざけるなよ」と思った訳ですが、ゆうて9月30日までだし、その後出てきた買い入れ予定の表を見ると社債は合計月5000億円なので実質4000億円増額としてまあ2兆とかそこいらですかという風に思って納得してたら、追加緩和でもないのに延長とかになりまして先週の週末は突如謎のポイントで湯気ポッポーだった次第ですけれども、いや確かにこのままでも7.5兆円のおかわり分はショートしそうではあるのですけれども、逆に言うとどうせ枠超えないんだったらとか言い出して漫然と期間を延長して、社債市場の機能を壊すだけ壊して焼け野原にして下さる懸念の方が気になってくるのは、「何か良く分からんけどとりあえずあんまり問題出てなさそうだから拡大するか」ってなノリで直ぐに悪ノリしてしまう今の黒田日銀体制のうちは悪ノリで変な事やって引くに引けなくなるとかいういつもの仕様への懸念があるから、てな訳でございます。


・ドルオペはそのまま実施

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200529b.pdf
米ドル資金供給オペレーションのオファー日程(2020年6月〜8月)

まあこれに関してですけれども、「マーケットファンクショニング」が進んで来たらFEDは国債買入のスケールバックを行う構えも見せている(というか幾分か減らしましたが)というのがありまして、この適用金利に関しても、いずれペナルティーレートに寄せてくる可能性はありますなあと思います(個人の感想です)。現状ではIOERが10bpでディスカウントウィンドウ(正確にはプライマリークレジットレート)が25bpというガチガチコリドアになっていますが、このコリドアが拡大(ディスカウントウィンドウのレートを上げるのかね、とは思いますが)されたときは要注意というか、その時には中銀ファシリティのドルスワップ金利も変更される可能性はあるかなとは思っています、個人の山勘ですが。



〇相変わらずFEDネタになってしまいますがYCC云々って某社が勝手に煽ってるのではという気が(個人の感想です)

・クリーブランド連銀メスター総裁ブルームバーグインタビュー

メスター総裁のブルームバーグインタビュー(URLがクッソ長いので例によって途中の所まででフルにハイパーリンクしてます以下同様)
https://www.bloomberg.com/news/videos/2020-05-29/fed-s-mester-on-economic-recovery-policy-support-yield-curve-control-video
Fed's Mester on Economic Recovery, Policy Support, Yield-Curve Control
Bloomberg The Open
May 29th, 2020, 11:11 PM GMT+0900

『Federal Reserve Bank of Cleveland President Loretta Mester says another phase of monetary policy support may be needed and doesn’t think the central bank is close to a decision on targeting Treasury yields, a policy known as yield-curve control. She speaks with Bloomberg's Jonathan Ferro and Mike McKee on "Bloomberg The Open." (Source: Bloomberg)』

こちらなんですけど、残念ながら文字起こしは無いので、まあヤケクソになって聞いてみたんですけれども、ということなので裏を取りたい方は視聴推奨(11分ある)なのですけれども、ブルームバーグの上記ご紹介にもありますし、ご丁寧にもブルームバーグニュースさんその部分だけ別建てで一部紹介しているのもある(ちょっとURLが見つからん)のですが、イールドカーブコントロールについて質問しているんですよブルームバーグが。

でもってだいたい上記インタビューの質問が8分30秒くらいの所からになっていまして、アタクシが聞いた感じだと、まず入り口の時点で「セカンドフェーズの話で今どうこうという議論ではない」として、「YCCに関しては検討課題ではあるけれども、フォワードガイダンスなどのツールもあるし、どのようにYCCが効くのか、プロコンはどうなのか、Exitの際にどうするのか、ということを検討する必要がある」って話っぷりで基本的にはあんまり積極的ではないと感じました。「ポテンシャルにはポジティブツール」というようなことは言ってますが、まあ普通にフォワードガイダンスするんじゃないですかねえ、と思わせてくれましたがアタクシの聞き間違いの可能性がありますのでご確認ください。


あとですね、以下2名の高官発言を簡単にネタにしますけど、先般ネタにした高官発言も含めまして、皆さんの整理がきっちりと揃っていてFEDにしては珍しいというか、パウエルとクラリダがちゃんと統制してるじゃん(個人の妄想です)と思ったんですが、以下の人たちも含めまして最近のFRB高官から聞こえてくる整理ってのは、

「FEDの資産買入は「ファンクショニング」の為に行っている」
「現在はコロナ対策の時で、今後経済活動が戻った時に、経済がどう推移するかというのが次のステージ」
「次のステージでは経済の回復がどの程度進んでいるかに対応した通常の金融政策が行われる」
「コロナの影響は一様ではなく、雇用に関しては低学歴、低収入層への打撃が大きい」
「影響が一様ではない事を意識した政策対応(説明ではだいたいPPPとMSLFが引き合いに出される)が必要」

ってな感じで、この辺りは見事に皆さん揃ってるな、と思いましたです、はい。


・ウィリアムズのブルームバーグニュースインタビュー

こちらは金曜にネタにしようとしたがとても寝起きでは無理と申し上げた物件ですな(汗)。
https://www.bloomberg.com/news/videos/2020-05-27/fed-s-williams-on-economic-recovery-yield-curve-and-monetary-policy-video
Fed's Williams on Economic Recovery, Yield Curve and Monetary Policy
Bloomberg The Open
May 28th, 2020, 12:02 AM GMT+0900

『Federal Reserve Bank of New York President John Williams discusses the outlook for the U.S. economy and monetary policy amid the Covid-19 pandemic. He speaks with Bloomberg's Jonathan Ferro and Mike McKee on "Bloomberg The Open." (Source: Bloomberg)』

こちらでもウィリアムズはさっきのメスターと同様のポイントでは同様の話をしていまして、これがまたブルームバーグの方からYCCについて質問していまして、だいたい本編の9分50秒くらいになっていますが、回答はさっきのメスターと大体同じなのよね。つまり「ポテンシャルツールとしては有りだと思うけど検討すべき点が多い」ということで、まあそうなると普通にフォワードガイダンスで対処するって話をしているように思えまして(個人の感想です)、むしろこれメディア的にオイチイネタだからメディア側が煽っている(もしかしたら何とかスト的にもオイチイから何とかストも煽っているの鴨)のではないか、という気がしてきましたが気のせいだったらゴメンチャイ。まあ聞いてちょという所でありまする。

ちなみにブルームバーグさんはこのYCCの部分だけ切り取ったので一発おかわりニュースをしている(メスターのもそういうのがあったんだがURL忘れたのでパス)のですな。

https://www.bloomberg.com/news/videos/2020-05-27/fed-thinking-very-hard-about-yield-curve-control-williams-says-video
Fed ‘Thinking Very Hard’ About Yield-Curve Control, Williams Says
Bloomberg The Open
May 27th, 2020, 11:44 PM GMT+0900

『Federal Reserve Bank of New York President John Williams says the Fed will use all of its available tools to best achieve its maximum employment and price stability goals. He speaks during an interview with Bloomberg's Jonathan Ferro and Mike McKee on "Bloomberg The Open." (Source: Bloomberg)』

この書き方だといかにも導入に向けて検討中、みたいな感じに見えますが、メスターのも含めて全編聞いてみると(さっきのウィリアムズの長い版は多少長くて16分弱ある)そんなに前のめりの印象は無くて、やるならガイダンスだな、と思いましたが如何でしょうか。


・デーリー総裁のPBSインタビュー(文字起こしあり)

https://www.pbs.org/newshour/show/why-u-s-economic-policy-needs-to-support-all-americans-to-be-successful
Why U.S. economic policy needs to support all Americans to be successful
May 28, 2020 6:40 PM EDT

こちらは文字起こしがありまして、文字起こしを見ながら画像を見たのですが、文字起こし通りの
質疑応答が展開されています。

『The economic toll of the pandemic and the ensuing shutdowns continues to grow, with more than 40 million people losing jobs so far. Although economic activity will pick up as businesses reopen, there is growing debate about how government policy can support struggling Americans and a fragile economy. Judy Woodruff talks to Mary Daly, president of the Federal Reserve Bank of San Francisco.』

でもってこちらではコロナの影響が「一様ではない」という話をしていて、PPP(ペイチェックプロテクションプログラム)とMSLF(メインストリートレンディングプログラム)の重要性をアピールしていたりしまして、あまり先の金融政策の話は無いので、まあ単にそのせいで話題になっていなかったというのはあるかも知れませんけれども、ブルームバーグがやたらYCCについて聞きたがっていたのとは全然違うじゃん、とか思うのでしたが、時間がちと無くなってしまったので詳しくはパスしますサーセン。まあ文字起こし見ながらインタビュー聞くと読みやすいです。