トップページに戻る
月別インデックスに戻る

(各日付の最初にラベルを「190603」というような形式でつけていますので「URL+#日付(190401形式です)」で該当日の駄文に直リンできます)


2019/06/28

お題「月末なので輪番注目される訳ですが(メモ)/若田部副総裁青森金懇である」

さあ今年も半分が終わってしまいましたが半年の成果はどうなっているでしょうか皆さん!!!!!!(白目)


〇長期SL輪番に輪番紙の日でございますが(俺様備忘メモ)

そんな訳で今月もまた月末を迎えてしまった訳ですが(白目)、本日は輪番の日であり引け後は輪番紙の日。

・・・・・・・でですな、なんかここのところ一部方面からは「今日こそ輪番減額」みたいな期待が毎度のように沸いてるっぽいんですけれども、確かに金利の絶対水準からしたら低い方ではありますけれども、▲20bpという訳でもなく(先週金曜に輪番減額されないでヒャッハーな時に▲19.5bpってのまで行きましたけど)おまけに先般の総裁会見でプラマイ20については柔軟な扱いということになったので、水準から機械的に減額をぶっこむ、ということにはならんと思うのよね。

でもって、オーバーシュート型コミットメントとの整合性という問題があって、ここまではだいぶ減額してきましたが、ここから先減額するにしても、中期みたいな額が大きいトランシェを減額するとそっちとの整合性問題に引っ掛かって来る可能性がありますので、まあ中々減らしにくくなっているという物理的な問題に加えて、気になる為替市場ちゃん(個人の妄想です)が微妙に微妙な水準にありますので、まあそんな中で減額あるいはオペ紙での回数変更(による減額示唆)ってやるのかねと思うと、減額は無いでしょと思うし、回数変更もちょっと唸りますなあ。

そらまあ減額してくれた方がアリガタヤなので、オーバーシュート型コミットメントなんぞ気にせずに(暴言)減額して頂きたいのですが、しかしあのオーバーシュート型コミットメントって一体全体何だったんでしょうかと思いますし、邪魔以外の何物でもないんですけど、とりあえずおためごかし(量から金利に本当は戻ったんだけどいきなりそれを言えないから量に関して入れていた文言な訳でして)に入れていた条文が後になって思わぬ手枷足枷になるという将来を考えた制度設計というのものの難しさを感じるのでございました。できるだけガチガチにしないとか、いざとなった時に柔軟に出来るように作りこんでおくという事が大事なんですなあ。

というただのメモでしたすいません。


〇若田部副総裁の金懇が色々と残念な件について

市場ちゃんの方は完全にスルーしておりましたが若田部副総裁青森にて金懇。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190627a1.pdf

・金融政策の効果について総括検証でのシミュレーションを劣化して焼き直してくるとは

『2.経済情勢』ってところの『(1)2013 年以降の経済情勢の変化』って小見出しなんですけどね。

『最初に、2013 年4月に日本銀行が導入した「量的・質的金融緩和」のもとで、わが国の経済がどのように変化したのか、確認したいと思います。』

ということでああでもないこうでもないと書いていまして、例によって物価の話はスルーという攻撃(つまらんので割愛)ですが、それでも金融政策の効果とか言ってその次の小見出しになっていくのです。

『(2)金融緩和の効果』というのですけどね。

『私は、日本銀行が進めてきた金融緩和は、こうした雇用・所得環境の改善を伴う、内外需のバランスの取れた成長の実現に大きく貢献してきたと考えています。以下では、この金融緩和の効果について、2013 年以降の金融環境の変化を確認したうえで、具体的に経済・物価情勢に及ぼした影響をお示ししていきたいと思います。』

『最初に、金融環境の変化について確認します。2013 年の「量的・質的金融緩和」の導入以降、わが国の金利は大きく低下しました。こうした金利低下は、民間の資金需要を刺激するとともに、金融機関の貸出態度を積極化させています。こうしたもとで、民間部門の資金調達量も、はっきりと増加しました(図表5)。このように、金融緩和のもとで、企業の資金調達環境が大きく改善したことは、随所で確認できます。』

そもそもQQEは期待インフレを引き上げるのが一丁目一番地な訳で、そっちの話をしない時点でお前は何を言ってるんだという所ですが、さすがにこの先の説明はちょっと呆れたんですけどね。

『次に、金融緩和の経済や物価への影響です。金融緩和は、今申し上げた金融環境の緩和や、人々の期待への働きかけ、更にはこれらに伴う資産価格の上昇などを通じて、経済・物価情勢を好転させたと考えられます。もちろん、現実の経済や物価は様々な要因で変動するものであり、金融緩和の効果だけを取り出して、定量的に示すことは容易ではありません。この点の難しさをお断りしたうえで、ここでは「仮に 2013 年以降の金融緩和がなかったならば、経済・物価情勢がどのようになっていたか」を示した一つのシミュレーションを紹介させて頂きます(図表6)。』

『この分析によると――試算結果は一定の幅を持ってみる必要はありますが――、1)「量的・質的金融緩和」は、金利の低下等を介して経済・物価を強く刺激しており、2)仮にこの政策が導入されていなかったならば、わが国では需要不足が続き、デフレでない状態も実現できていなかった可能性が高いことが示唆されます2。』

ということで図表6というのがあるのですが、

『2 図表6のシミュレーションは、マネタリーベースや各ゾーンの金利、需給ギャップや消費者物価(除く生鮮・エネルギー)、為替レートからなるVARモデルに基づき行っています。 シミュレーション結果は、このモデルにおいて、金利やマネタリーベースのショックがなかった場合の需給ギャップと消費者物価のパスを試算したものです。なお、日本銀行では、 2016 年9月に公表した「総括的な検証」の中でも、マクロ計量モデルに基づき、金融緩和 が経済・物価情勢に及ぼした影響を試算していますが、今回のシミュレーション結果は、 当時の試算と概ね整合的なものとなっています。』

ってなっているんですけど、図表6を見ますと「実績」というのと「金融緩和が無かった場合」という線が引いてあるという物件になっておるのですが、ここで総括的検証の時のシミュレーションを確認してみますと、

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921c.pdf
目で見る金融緩和の「総括的な検証」と「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」
2016年9月21日
日本銀行

こちらの本文1ページの所で『1.「量的・質的金融緩和」はどんな効果があったのか? 』ってのがありまして、そこには『 もし、「量的・質的金融緩和」をやっていなかったら、という仮定をおいて、経済や物価がどうなっていたかという試算(シミュレーション)をしてみま した。その結果、前提を変えた4つのケースのうち3つでは、デフレ状態が 続いていたとの結果になりました。』という風になっていて、『 ケース1』〜『 ケース4』という形で4つのケースを置いて計算したのが出ているのですが、若田部大先生の図表6だとそのような前提についての説明もなく説明している辺りが何だかなあという感じですな。

ま、それ以前の問題としてそのモデル自体の前提が反証に耐えうる物件なのかという話も思いっきりあるんですが、そこに関しては総括的検証の焼き直しという手を使っているのがまあねという感じではございます。


・物価は原因であるという置物理論に相変わらずのご執心のようですな

ただまあ何ですな、この辺りとかその後の『(3)経済の現状と見通し 』という辺りに関しては、インチキシミュレーションとは言え総括的検証の劣化焼き直しをしていたりして、ああ執行部っぽい説明になっていますかねえとか思う訳ですが、若田部副総裁の本領はこの後のほうから徐々に発揮されてきまして、その次の『3.金融政策運営』を見ますと、相変わらず物価が原因という置物理論を踏襲しているのが明らかでして頭が痛い。

その置物イズムは小見出し『(1)なぜ物価安定の目標2%が必要か』の所で遺憾なく発揮されていましてですな、

『次に、金融政策運営についてお話しいたします。現在、日本銀行は「物価安定の目標」として2%を掲げて、金融緩和政策を実行しています。なぜ、「物価安定の目標」を掲げているのかについては、昨年 12 月の新潟県金融経済懇談会での挨拶でも述べました4。』

『2%は、国際標準であり、この目標を切り下げたりすると、人々の期待や為替・資産価格等の変動を通じて、デフレ圧力がかかることになります。』

2%にして期待が上がったの???

『また、日本銀行は物価だけ上がれば良いと考えているのではなく、2%の目標を達成することが、名目国内総生産、企業収益、家計収入、雇用者数の増加、政府財政の健全化といった、「国民経済の健全な発展に資する」と考えています。』

経済が望ましい発展をした結果が2%なのではなくて、2%を達成するとこのようになる、という説明は古典的置物理論で久々に見たわという所です。あと超どうでもいいのですが「政府財政の健全化」という文言が入っているのが笑ってしまう所で、最近の置物大先生は置物金融政策理論が全然その通りにならなかったことを誤魔化すために「消費増税ガー」を連呼しておられて、最近は財政ガーという話もしておられる訳ですが、一方で古典的置物理論を信奉する説明をする若田部副総裁様が「政府財政の健全化」を国民経済の健全な発展の項目に加える、という財政緊縮モードになっているのは味わいがありますな。

『近年、モノの値段が上がる背景として、人件費の上昇を指摘する声が出てきました。人件費は賃金です。賃金が上がることで物価が上がるのですが、企業がモノの値段を上げられない環境ですと、賃金を上げることも困難です。』

という話から話が発展しないのがもう何だかねという感じです。

『そう申し上げたうえで、このご挨拶では、やや異なる視点から、金融政策について説明してみたいと思います。』

ほうほうそうですかそうですか。

『先ほど、令和最初のご挨拶と申し上げましたが、平成の大部分はデフレの時代であり、デフレとの戦いの歴史でした。この間、残念ながら、経済活動も停滞してしまいました。』

デフレが原因で結果が経済活動ですか面白いですね。

『デフレの経済学的原因については様々な説がありますが5、他の先進諸国が2%程度の物価上昇率を達成している中で、日本だけが長期のデフレに陥ってしまった事実は厳粛に受け止めざるを得ません。』

デフレ原因理論ですなあ。

『しかし、日本銀行が2%の「物価安定の目標」を掲げるもとで、デフレから脱却しつつあります。とりわけ、2013 年4月の「量的・質的金融緩和」の導入以降、平均的に見た物価上昇率は、それ以前の 0.5%程度のマイナスから、0.5%程度のプラスに上昇しました。先ほど申し上げましたように、この上昇は、2%の目標を明確に掲げ、そのもとで金融緩和を進めてきたことで実現しました(図表9)。』

何ねんやってこの程度の結果だと思ってるんだよ。


・藁人形論法キタコレ

でもって次の小見出しが『(2)自然利子率の低下が低金利の原因』という所になるのだがだんだん話がおかしくなってくる。

『とはいえ、現状の物価上昇率は、生鮮食品を除いたベースで0%台後半と、まだ2%には到達しておらず、金融緩和が長期化しています。』

左様でございます。

『一方で、金利引き上げを求める声があります。「日銀は中央銀行として金利を自由に操作できるのだから、金利を上げればよい」とお考えになる方もおられるかもしれません。』

????????????????????????????

『けれども、現実には、それほど単純ではありません6。』

お前の言ってる「お考えになる方」をちょっとその屏風の中から出してみろという所でして、そんな単純な批判してねえよという事で、お前の方は単純だわこのスットコドッコイと申しますか、置物一派お得意の「藁人形論法」が炸裂するの巻となるのでした。


・中立金利で云々というのは別に考え方の一つに過ぎないんですけど・・・・・・・・・・

でもってその続き。

『そもそもなぜ低金利が続いているのでしょうか。世界的にみても、先進諸国では低金利になっています。経済学では、「金利は上げたければ下げろ、下げたければ上げろ」という言葉があります。景気が後退し、デフレになる危険が高まるとき、中央銀行は金利を下げます。そうして景気が回復すると物価が上がってくるので、金利はそのうちに上げていくことになります。』

何を言ってるんだ?

『もう少し詳しく述べますと、』

今のをどう詳しく述べるの???

『現代の金融政策の基礎にあるのは次のような考え方です。』

大きく出たな。

『経済の貯蓄と投資を均衡させ、景気を加速も減速もさせない利子率を、自然利子率あるいは均衡実質金利といいます。中央銀行は、この自然利子率を一つの目安として、政策運営を行います。具体的には、中央銀行は、景気が悪い際には、自然利子率を下回るように実際の金利を誘導し、景気を刺激します。また、逆に、景気が過熱している際には、自然利子率を上回る水準に金利を引き上げていくことになります。』

これさあ、FEDのSEP見りゃ分かるように自然利子率自体が本当に分かるものなのかという話になっているし、(さすがにその先に記述ありますが)自然利子率自体に相当の幅があるとみられる状況で、自然利子率をベンチマークにして金融政策運営をするほど精緻なことが出来るのかよ、という話じゃないの、という話になりつつあると思うんですが最近は。

『もっとも、こうした自然利子率はあくまで理論的に計算された推計値ですので、不確実性があり、推計値は幅をもってみなければなりません7。そうした注意を踏まえて推計値をみますと、日本を含む先進諸国で、この自然利子率が低下しています(図表 10)。 』

政策運営の話をしていたのに何でそっちに話が飛ぶの?

『日本の場合、自然利子率は 90 年代の初頭に急激に下がりました。また、他の先進国では世界的金融危機以降低下しています。』

話が飛んだまま帰ってこない・・・・・・・・・・・・

『バブルの崩壊や金融・経済危機が、自然利子率の動向に影響を及ぼしていることがわかります。』

と思うのでしたら金融不均衡の発生にも目配りした方が良いと思いますよ。全然気にしてないと思いますが。

『一般的には、自然利子率が低下する原因は、1)貯蓄が多くなるか、2)投資が少なくなるか、3)あるいはその両方が起きるか、の三つが考えられます。』

はあそうですか。

『例えば、経済危機が起きて家計や企業が貯蓄を増やそうとすると、経済への資金供給圧力が増え、自然利子率は下がります。また、経済危機の発生、あるいは生産性の低下などによって将来の成長期待が下がり、企業の投資意欲が小さくなると、投資が冷え込み、自然利子率は下がります。その他、少子高齢化といった人口動態の変化が、自然利子率の低下に関わっているという意見もありますし8、世界的な貯蓄過剰、あるいは「長期停滞」が起きているという意見もあります9。』

説明がアバウト過ぎる。

『原因はともあれ、自然利子率が下がりますと、中央銀行はそれにあわせて金利を低下させなければなりません。自然利子率が低下するのに金利を下げずに放っておくと、経済にはデフレ圧力がかかるからです。』

だからそこはデフレ圧力じゃなくて下押し圧力でしょ、下押した結果デフレ圧力になるんですが、とツッコミたくなりますが、まあ古典的置物理論で物価が常に原因側に来るので致し方ない。


・兎に角説明がアバウト過ぎる

でもって続き。

『日本の場合は、90 年代以降、すでに短期の名目金利はゼロ近くになりました。そのことを踏まえて、日本銀行は、1)長期国債の買い入れによる長期金利の引き下げ、2)短期名目金利をマイナスに誘導するマイナス金利政策、3)物価上昇率が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続すること(オーバーシュート型コミットメント)、4)長短金利を低位に長期間続ける方針を表明すること(フォワードガイダンス)などを行っています。』

ふつうこういう時は90年代以降の政策推移の説明をすると思うんだが途中全部すっ飛ばしていきなり最近の話ってナンジャソラだし、最近の話だってこれ同時じゃなくて別々に入れていったものなんですけれどもその経過説明も無いってどんだけ雑なんだよ。

『ただ、デフレに陥ってしまうと、企業や家計はデフレが続くのではないかという、予想を強めてしまいます。ことに日本のように長期にわたってデフレが続くと、そうした予想が強くなります。そうすると、名目金利は低くとも、企業や家計が感じる金利はさらに高く感じられます。この物価変動予想を考慮した金利を実質金利と呼びます。』

それはいいんだが前段の政策との繋がりはどうなっているんだ、と聞きたくなるのにこの次に、

『日本銀行が「物価安定の目標」として2%を掲げていることは、企業や家計の間に、将来の物価が安定的に上がるという予想を根付かせるように働きかけ、実質金利を引き下げることにつながります。』

って説明になってしまい、最初に出ていた政策の話と物価目標云々ってのは何なんだよ、という話になってしまう、ということで、若田部副総裁の一連の説明って話がポンポンと飛んでいる上に説明が雑なので何を主張したいのか(まあ主張したいのは置物リフレ理論は正しいってことでしょうけど)がまるで伝わってこないという所でして、これでよく大学教授務まってたなと感心するのですが、まあ某W大学さんはジンバブエ師匠も教授になっておられたので、まあそんなもんですかそうですか。


・何を開き直っているんでしょうか

でもってこの続きだがまた話が飛んでしまう。

『よく金融政策の「正常化」という言い方があります。』

いきなりワープ。

『「正常化」というのは、定義のはっきりしない曖昧な言葉です。』

はあそうですか。

『金融政策の究極の目的は国民経済の健全な発展にあります。これは、経済・物価情勢が「正常化」しないならば、金融政策の「正常化」もないと言い換えられるでしょう10。』

そらそうですな。

『日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」の持続的達成に向けて必要な時点まで、金融緩和を維持していく方針です。』

えーっとすいません、マネタリーベースを拡大して大規模な金融緩和を行って2年を念頭に出来るだけ早期に物価目標を達成する、と大口叩いて無理矢理金融緩和を行った結果、政策目標の方は達成できていないのに無理矢理金融緩和の弊害はジャンジャン蓄積されているから文句が出ている訳で、つまりお前らの政策で経済物価情勢が正常化できていないのが諸悪の根源だろいい加減にしろという所ですし、また別の視点で悪態をつきますと、最初の方で金融政策に効果があったという話を延々としておった訳ですが、効果があって健全な経済が出来ているんだったら、別に正常化とやらをしてもエエのとちゃいまっかという所でもありまして、まあ何を開き直ってるんだこいつはという感想しかない。

この後『(3)金融政策の枠組み等を巡る議論 』という小見出しがあるのですが、そこの話はまあ見ても無駄なので割愛しますが、この中の最後の部分がベンダーヘッドラインに採用されておりましてですな、

『しかし、より良い金融政策を求めて、日本銀行も十分に研究しておく必要があると考えます。 』

というのに対して「お前は学者で入ってきているのに何がいまから十分に研究だふざけるな」というツッコミを画面に向かって行った金利関係者が多くいたのではなかろうか、と思料されるところではございます(個人の妄想です)。



・置物一派は簿記3級も知らんのか&生兵法は怪我の元

てな訳で次が『4.日本の地域金融 』だがこれがまた色々とアレ。

『次に、日本の地域金融機関経営についてお話しします。地域金融機関が地域経済において極めて重要な役割を果たしていることは言うまでもありません。緩和的な金融政策の長期化に伴い、日本の地域金融の抱える課題と、こうした金融政策が地域金融機関に与える影響について、関心が寄せられています。』

はあそうですか。

『日本の金融には次のような特徴があります。』

で?

『第一に、間接金融優位の構造です。間接金融とは、企業の資金調達で、銀行などの金融機関の役割が大きい仕組みのことです。』

というのは良いのだがその次が驚愕の説明。

『第二に、ことに地域金融機関の金融負債においては預金の比重が大きく、社債や株式の比重が小さくなっています。』

株式が負債とはこれはまたバーゼル委員会も裸足で逃げ出す珍理論でして、ジンバブエ大先生の預金在庫論にも驚愕を覚えますが、まああっちは初心者の間違えそうなところではあるのでまだしも、株式が金融負債とか言い出すのはとりあえずお前は日商簿記3級からやり直して、銀行業務検定も基礎的なの全部受験してから出直してきやがれとしか申し上げようがないのですが、頼むから日銀スタッフスルーしないでくれよ恥ずかしいじゃないか、と思ったりする訳です。

『第三に、特に地域金融機関は、預金を集めて貸出を行なう、いわゆる預貸ビジネスに依存しています。 』

という状況だから厳しいですよ、というのを先般のFSRを元にしてこのあと話をしているのですが、そこである中で第二の部分っていうのは、先般のFSRの中で欧州金融機関との比較というのがあって、アタクシもネタにしましたが、あちらの中で「欧州金融機関は預金以外の社債などによる市場調達の金利が市場金利の低下で下がったことや、貸出金利が元々高くて、その分のマージンがある」というような分析を日本と比較して行っていたのですよね。

そうなりますと、マージンの縮小余地という意味では預金金利は既に下がっているから預金が多い方がマージン縮小余地が無いというのはありますが、一方で株式ってのは今やとんでもなく高コストの資金になっているので、それが多いから有利という話でもないのであって、地域金融機関の市場性調達及び株式の比重が低いから収益状況が厳しくなる、という話にはつながらないので、そもそもこの例示自体が問題設定として変でしょと思う訳ですよ。

さらに、「特に地域金融機関は、預金を集めて貸出を行なう、いわゆる預貸ビジネスに依存しています。」って話に関しても(これはFSR自体にも問題があるんですけど)別に好き好んで預貸ビジネスに依存している訳ではなくて、第2次大戦後の金融行政における業態別の割り当てというのがあって、長短分離に銀行証券信託の分離に業態別の割り振りとか規制金利とか出店規制とか兼業規制(兼業規制は預金金融機関の機関銀行化を防止するものなのですけど)とか、規制でガチガチになっていたという歴史的経緯をスルーしていきなりスクラッチで現状が預貸依存なのでケシカランとか言われましても、そんな乱暴な話は無い訳でして、だったらスクラッチで金融政策考えたらマイナス金利撤廃じゃとこちらも言いたくなる(だいぶ話の次元が違いますかそうですか)次第な訳ですよ。

などと湯気ポッポーしていたら時間も無くなってしまいましたのでこの先はほぼ飛ばしますが、今申し上げた辺りの事ってちょっと先の方にこう書いてありました。

『ここで参考になるのは、日本同様にマイナス金利が導入されている欧州の金融機関の事例です。『金融システムレポート』では、日本の金融機関と欧州の金融機関を比較しています。欧州では、マイナス金利政策が導入されていますが、金融機関は日本よりも高い収益を上げています。その背景としては、欧州では日本ほど長期にわたる低金利が続いておらず、預金金利の低下余地があったため、資金調達コストが低下していることがあります。また、欧州の金融機関は、金融負債の中に占める預金の比率が低く、社債などによる市場性資金の調達コストも低下しています。これに加え、手数料の多様化など金利変動の影響を受けにくい多様な収益手段を確保しています(図表 14)。』

ということでFSRの先般の話だったりしますが、これはやはりFSRの読み込みが足りないだろと思う訳でして、調達金利の低下があってカバーしているという話ではなくて、元々の預貸スプレッドが厚い方がファクターとして重要という結論になると思うし、さっきの「株式」は関係ないだろと思う。

じゃあ何で邦銀はという話になりますが、これも規制金利時代からの流れで、貸出金利についても低めに抑える(産業振興のため)というのがあった上に、政策的にも各種の低利措置とかが用意されていて、その辺まで含めた歴史的経緯をすっ飛ばしていきなりスクラッチで話をもってこられても何をゆうとるんだという話になるんじゃないですかねえ、とは思ったりするのでありました(個人の感想です)だから何もしなくて良いというような話ではないのはその通りですけれどもね。


とまあそんなところでしょうかね。





2019/06/27

お題「1日出遅れましたがパウエル講演とブラードのブルームバーグインタビューから」

ほうほうそうですかそうですか。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190626/k10011970271000.html
トランプ大統領 改めて持論 “日米安全保障条約は不公平”
2019年6月27日 1時27分

『アメリカのトランプ大統領は、G20大阪サミットを前にアメリカのメディアのインタビューに応じ、日米安全保障条約について「もしアメリカが攻撃されても日本はわれわれを助ける必要は全くない」と述べて、不公平だと不満を示しました。』(上記URL先より)

・・・・・・・・米国が攻撃された時に助っ人になれる位の軍事大国に日本がなってもよろしいとは太っ腹にも程があるのだが、言ってることが軍事的にモンロー主義な上に貿易戦争吹っかけまくるとか覇権国家交代して良いと思ってるのかこの爺さん。

#覇権国家交代のタイミングというのは世界恐慌みたいなのが起きたりするんですよねえ


〇一昨日のパウエルの講演である(出遅れすいません)

昨日は寝起きで読むパワーがなかったもんで。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20190625a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/powell20190625a1.pdf
June 25, 2019
Economic Outlook and Monetary Policy Review
Chair Jerome H. Powell
At the Council on Foreign Relations, New York, New York

・例の政治から独立発言は講演の頭に唐突にぶっこまれておりました

今月頭のパウエル講演から利下げカツアゲ祭りが一段と本格化した訳ですが、あの時もシカゴ連銀のコンファランスで中長期的な金融政策のフレームワーク(よく考えたら結局何をどうするという話はどうなったんだろう、まあ今回のFOMC議事要旨にちったあフィードバックありますかね)の話の中にいきなり足元の金融政策談義をぶち込む、という訳の分からんプレイをしておりましたが、さて今回の講演はと言いますとこれがまた同じパターンになっている訳ですな。つまり冒頭は普通にご挨拶なのですが、

『Good afternoon. It is a pleasure to speak at the Council on Foreign Relations. I will begin with a progress report on the broad public review my Federal Reserve colleagues and I are conducting of the strategy, tools, and communication practices we use to achieve the objectives Congress has assigned to us by law-maximum employment and price stability, or the dual mandate. Then I will discuss the outlook for the U.S. economy and monetary policy. I look forward to the discussion that will follow.』

とご挨拶と今日のスピーチの構成について話をしているのですが、その次に謎のぶっこみが来ます。

『During our public review, we are seeking perspectives from people across the nation, and we are doing so through open public meetings live-streamed on the internet.』

ここまでは普通だがこの先で妙なぶっこみis入る。

『Let me share some of the thinking behind this review, which is the first of its nature we have undertaken. The Fed is insulated from short-term political pressures-what is often referred to as our "independence." 』

・・・・・・池乃めだか師匠の「よっしゃ、今日はこれぐらいにしといたるわ」にしか見えないんですが。

『Congress chose to insulate the Fed this way because it had seen the damage that often arises when policy bends to short-term political interests. Central banks in major democracies around the world have similar independence.』

FEDについては議会に対して説明ちゃんとしてればヨロシがな、というのが基本の建付けでそこのところはジャパンみたいな議院内閣制の国と違うから議会と大統領の区別ってきっちりありますからね。ただまあこれを言うならもっと早くに言わないでここまで腰砕けになってから言ったってただの池乃めだか師匠にしか見えないし、めだか師匠のはギャグだから良いのですけど、米国様の中央銀行様がガチのめだか師匠になられますと大迷惑以外の何物でもないのですけれども勘弁してください。


・変なのぶっこんだ後は政策枠組み見直し企画と「Fed Listens」の説明

でもってその続き。

『Along with this independence comes the obligation to explain clearly what we are doing and why we are doing it, so that the public and their elected representatives in Congress can hold us accountable. But real accountability demands more of us than clear explanation: We must listen. We must actively engage those we serve to understand how we can more effectively and faithfully use the powers they have entrusted to us. That is why we are formally and publicly opening our decisionmaking to suggestions, scrutiny, and critique. With unemployment low, the economy growing, and inflation near our symmetric 2 percent objective, this is a good time to undertake such a review.』

この辺から普通に話が戻って政策枠組みの見直しをしていこうと思っておりましてコンファランスとかやっております、という話に戻って来ました。

『Another factor motivating the review is that the challenges of monetary policymaking have changed in a fundamental way in recent years. Interest rates are lower than in the past, and likely to remain so. The persistence of lower rates means that, when the economy turns down, interest rates will more likely fall close to zero-their effective lower bound (ELB). Proximity to the ELB poses new problems to central banks and calls for new ideas. We hope to benefit from the best thinking on these issues.』

でもって何で見直しをするかといえば、その理由は自然利子率が低下してきて金融政策運営上ゼロ金利制約に引っ掛かりやすくなっている、という経済ファンダメンタルズの変化があります、だそうな。

『At the heart of the review are our Fed Listens events, which include town hall-style meetings in all 12 Federal Reserve Districts. These meetings bring together people with wide-ranging perspectives, interests, and expertise. We also want to benefit from the insights of leading economic researchers. We recently held a conference at the Federal Reserve Bank of Chicago that combined research presentations by top scholars with roundtable discussions among leaders of organizations that serve union workers, low- and moderate-income communities, small businesses, and people struggling to find work.』

ということで先日シカゴで大々的なのもやりましたが、「Fed Listens」という企画で全国行脚してまっせ、だそうです。まあ当然上記パラグラフ部分では色々説明しているが要するにそういう話をしているだけで今更ジローの説明でして、あと3パラグラフほどこの「Fed Listens」をどう運営してその結果をどう反映させていくのかとかいう話があるのだがめんどいので割愛して現世利益コーナーに進みます。


・今後の金融政策の説明は基本的に先般のFOMCにおける冒頭ステートメントの内容に沿っています

3パラグラフほどぶっ飛ばすと現世利益コーナーになる。

『Let me turn now from the longer-term issues that are the focus of the review to the nearer-term outlook for the economy and for monetary policy.』

キタコレ。

『So far this year, the economy has performed reasonably well. Solid fundamentals are supporting continued growth and strong job creation, keeping the unemployment rate near historic lows.』

という状況で何で利下げしないといけないんでちゅかねえ。

『Although inflation has been running somewhat below our symmetric 2 percent objective, we have expected it to pick up, supported by solid growth and a strong job market.』

物価だってpick upするって見通しなんでちゅよねえ。

『Along with this favorable picture, we have been mindful of some ongoing crosscurrents, including trade developments and concerns about global growth.』

毎度おなじみのcrosscurrentsが登場。

『When the FOMC met at the start of May, tentative evidence suggested these crosscurrents were moderating, and we saw no strong case for adjusting our policy rate.』

5月1日のFOMCの段階ではこの障害物に関してはモデレートになって来ているので、別に金利を調整するような強い必要性を特に持っておりませんでしたとな。

『Since then, the picture has changed.』

ほほう。

『The crosscurrents have reemerged, with apparent progress on trade turning to greater uncertainty and with incoming data raising renewed concerns about the strength of the global economy.』

障害物が拡大してきまして、それは貿易問題の大いなる不確実性に加えて世界経済の強さに関して疑問を呈するようなデータが出てきましたがな、という説明になっておりやして、

『Our contacts in business and agriculture report heightened concerns over trade developments.』

FEDのヒアリングによれば企業や農業が貿易問題の進展に対して懸念を強くしているというのが現れている。

『These concerns may have contributed to the drop in business confidence in some recent surveys and may be starting to show through to incoming data. For example, the limited available evidence we have suggests that investment by businesses has slowed from the pace earlier in the year.』

でもってその懸念がコンフィデンスを下げて、その結果として例えば企業の投資拡大ペースが年初よりも落ちてきている、というような形で現れている、という説明ですな。

『Against the backdrop of heightened uncertainties, the baseline outlook of my FOMC colleagues, like that of many other forecasters, remains favorable, with unemployment remaining near historic lows. Inflation is expected to return to 2 percent over time, but at a somewhat slower pace than we foresaw earlier in the year. However, the risks to this favorable baseline outlook appear to have grown.』

でもベースラインシナリオに関しては変更が無くて、シナリオに対する下振れリスクが高まっているという説明。

『Last week, my FOMC colleagues and I held our regular meeting to assess the stance of monetary policy. We did not change the setting for our main policy tool, the target range for the federal funds rate, but we did make significant changes in our policy statement.』

ということで先般のFOMCの説明になるんですが、今回は「significant changes in our policy statement」を行った。だそうで、

『Since the beginning of the year, we had been taking a patient stance toward assessing the need for any policy change. We now state that the Committee will closely monitor the implications of incoming information for the economic outlook and will act as appropriate to sustain the expansion, with a strong labor market and inflation near its symmetric 2 percent objective.』

年初以来は金融政策の変更の必要性に関してpatient stanceだったけれども、今回は経済拡大を維持するために必要であれば必要な措置を取る、というスタンスに変えましたよ、という説明です。

『The question my colleagues and I are grappling with is whether these uncertainties will continue to weigh on the outlook and thus call for additional policy accommodation.』

ということで、これらの不確実性が続いて経済見通しに影響を与えることによって追加の金融緩和が必要になるかどうかの議論を行っております、という説明をしているので、基本的には利下げしますって話をしているのですな。

『Many FOMC participants judge that the case for somewhat more accommodative policy has strengthened. But we are also mindful that monetary policy should not overreact to any individual data point or short-term swing in sentiment. Doing so would risk adding even more uncertainty to the outlook. We will closely monitor the implications of incoming information for the economic outlook and will act as appropriate to sustain the expansion.』

この部分は思いっきりFOMC後会見(そういやまだ質疑応答をネタにしておりませんですすいません)の冒頭ステートメントのケツに出ていて、「お前は何を言ってるんだ」とツッコミを入れてしまいましたが、目先のセンチメントの変化に対して一々オーバーリアクションするのは良くないとか、お前が言うなお前がとしか申し上げようがない事をゆうとる訳でして、狸で言ってるんだったらまあ救いようがあるのですが、このジジイの場合は単にパニクって何を言ってるのか分からんという状態になっていそうな懸念がある(個人の妄想です)のがどうにもね、とは思います。でもって講演の方はここで終了の巻。


まーしかし確かに同情する面もあって、普通経済の不確実性云々って言ったら市場の急激な変動とかどっかの地政学問題とか自然災害とかそういう話なんですけれども、自分の所の大統領が狂犬のごとくあっちこっちに喧嘩を売りまくっているために経済の不確実性が高まっている、という状況に対処するって状態なので、この講演だって「不確実性の根源はトランプ」とは明言してないけど貿易問題を連呼しているので、要はパウエル的に言ったらトランプのケツ持ちを何でワシがやらにゃいかんのよと思ってるでしょうし、せっかくこっちがケツ持ちしているのに感謝どころか文句ばっかりつけられて心外、ということなのでしょうが、まあそれもこれも元々昨年の9月10月に(あれは市場の利上げ織り込みがあの時点で年に2回ですらなかったので、というのはあるにせよ)利上げ織り込みをさせるのは良いとしてもターミナルレートにまで言及して決め打ちしちゃった結果に市場をコケさせたという自業自得の面がある(あれが無かったらもうちょっとFEDに同情的なトーンになっていたでしょ)わけなので、まあ残念だがこの流れは当然という感じっすな。

しかしまあ何ですな、自分の所の大統領が狂犬状態になって暴れるのに対してFEDがケツ持ちをすると、ケツ持ちされてしまうので喜んでさらに狂犬の二乗になってしまう、という図になっている(日米安保とか言い出すのさすがに馬鹿の域に入ってるだろ)のでして、こういう「国の政策自体がおかしいので、金融政策運営でケツ持ちをすると結果としておかしい政策の推進装置になってしまう」というケースだと本当の本当にあるべき姿ってどういう事になるんでしょうかねえ、などと思ってしまうのでした。大きなお世話ではありますけど。


〇緩和芸人をやり続けていたらフロントランナーになってすっかり注目のブラード先生ですが

URLがクッソ長いので途中までのところでリンクしています。
https://www.stlouisfed.org/from-the-president/video-appearances/2019/bullard-bloomberg-monetary-policy-inflation-growth
Bullard Discusses Monetary Policy, Inflation, U.S. Growth on Bloomberg
June 25, 2019

これまた昨日のネタで恐縮ですが、ブルームバーグテレビでインタビューやっていまして、ブルームバーグネット版で見るのめんどくせー(広告がゴテゴテ貼っているのでクソ重いから)と思っていたらセントルイス連銀の方にちゃんと(?)掲載されるとか中々の親切仕様。

『St. Louis Fed President James Bullard discussed his dissenting vote at the FOMC’s June meeting and why he preferred a 25 basis point cut in the Fed’s policy rate instead of no change. During his interview with Bloomberg, he also shared his views on the U.S. economic outlook, low inflation and inflation expectations, the Fed’s monetary policy framework review, the yield curve, productivity growth, the global economy and other topics.』

ほうほうそうですか。

『Bullard was interviewed by Bloomberg’s Kathleen Hays. The full interview aired on Bloomberg Radio. Part of the interview also aired on Bloomberg’s Balance of Power, and the full show from June 25 can be found here. (Bullard’s interview begins about 10 minutes into the video.)』

親切仕様になっております。

『Part 1: FOMC Dissent』ということで反対理由。

『In explaining why he cast a dissenting vote at last week’s FOMC meeting, Bullard noted that inflation is running below the Fed’s 2% target and inflation expectations have declined. In addition, he cited an expected slowdown in growth and an inverted yield curve.』

物価は良いとしてイールドカーブがインバートしているから利下げというのはお前は何を言ってるんだという感は強い。

『“It seemed to me like this was a good chance to make an insurance rate cut and try to re-center inflation and inflation expectations back at the 2% target,” he said during this segment.』

insurance rate cutとか言ってそれがinsurance rate cutで済めばいいんですが大体そういうこと言ってやると碌な事にならないのは過去の経験則からすると言えるんですよねー。

『(For additional information, see President Bullard Explains His Recent FOMC Dissent, Federal Reserve Bank of St. Louis On the Economy blog, June 21, 2019.)』

とありますが、
https://www.stlouisfed.org/on-the-economy/2019/june/bullard-explains-recent-fomc-dissent
President Bullard Explains His Recent FOMC Dissent
Friday, June 21, 2019
The following is a statement by Federal Reserve Bank of St. Louis President Jim Bullard explaining his dissenting vote at the FOMC’s June 18-19, 2019, meeting:

というのが既にありまして(ネタにしてません、というかネタの成敗が追いつかんです涙)、そちらにも話があるのですが時間も無いのでその辺はパス。

『Part 2: Interest Rates』ってのが次のパートで、そこで例の50bpはやり過ぎという話が出るのだ。

『Asked about the possibility of a 50 basis point cut in the policy rate at the July FOMC meeting, Bullard said, “I don’t think the situation really calls for that.”』

キタコレ。

『He noted that U.S. economic growth is expected to slow down in the second half of this year. He also noted that inflation and inflation expectations are running low. “We’d like to push those up back toward 2%. I don’t think we have to take huge action in order to get this,” he said during this segment. “This is more in the realm of insurance, in the realm of ordinary adjustments to monetary policy that you should be making to be sensitive to market developments.”』

だいたいこのおじさんはロンガーランの金利についてSEPで示さないという変態おじさんでしたし、以前より利上げしていく中で毎度毎度SEPでのドットプロットを「今現在の金利をずっと継続する」という出し方をしていた、というおじさんでして、その「保険だから大きな動きは必要なし、だから50じゃなくて25が適切」とか言うのは、それ単体ではその理屈は分かるのですが、今まで言っていた話との整合性が全然取れていないようにしか見えませんでして、まあもしかしたらどこかでその背景説明をロジカルに行っているのかもしれませんが、このおじさん結構な謎理屈というか、単体では面白い理屈を唱えるけど全部を並べると何か整合性大丈夫かという話をおっぱじめる仕様があるので(個人の感想です)、この話も何でそうなるのという真意がイマイチ分からんですな。何となく市場がカツアゲ相場になりまくっているので腰が引けたんじゃねえのかとか思ったりもするけど。


『Part 3: Data Dependent』だそうで。

『Regarding his dissent, Bullard said, “We try to make the best decisions we can based on the data we have, and this is my judgment.”』

はあそうですか。

『Later in this segment, he said, “There’s been a sea change in U.S. monetary policy. I just want to play this as well as we can to keep the expansion going.”』

海の色が変わるって事ですかね。まあこれだけだとよー分からんけど利下げする方向になったぜ俺様大勝利とかそういう話なんですかねえ。

#ということで結論としてはリンク先にあるインタビューを動画で見た方が良さそうな気がする、という残念な結論ですいませんすいません




2019/06/26

お題「4月会合議事要旨なので情勢はだいぶ変わってしまいましたがそれでも鑑賞するのだ」

ふーん。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-powell-idJPKCN1TQ2EV
2019年6月26日 / 02:47
FRBは「政治圧力から隔絶」 パウエル議長、トランプ氏けん制

ほうほうそうですかそうですか(棒読み)。


〇4月決定会合の議事要旨なのですが一応出てきたので鑑賞

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2019/g190425.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2019年4月24、25日開催分)

本来でしたら展望レポートの会合なので細かく見ないと、という所なのですが、何せこの後貿易問題のテンションは上がるわイラン情勢は緊迫するわという状況なので、前提条件がだいぶ違ってきましたので経済のアセスメントとかの所を細かく見てもシャーナイかなと思いつつ鑑賞するのでした。

・と言いつつも当時の先行き見通しを確認しておく

『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要 』の『1.経済情勢 』の国内経済に関する部分から参りますが。

『わが国の景気について、委員は、輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大しているとの見方で一致した。』

ということですがその内訳を見ますと、

『何人かの委員は、1月に大きく減少した輸出や生産の反発は、足もとやや弱めであるほか、3月短観をみても、海外経済の影響を受けやすい大企業・製造業の業況感は悪化していると指摘した。もっとも、多くの委員は、輸出・生産面の弱さは、これまでのところ、設備投資や個人消費などにははっきりと波及しておらず、所得から支出への前向 きの循環が働くという景気拡大の基本的なメカニズムは維持されているとの見方を示した。そのうえで、何人かの委員は、先行きの景気をみていくうえでは、輸出や生産の減少が、国内需要や雇用・所得環境にどのように影響していくかがポイントになると指摘した。』

ちょうどうまい具合にまとまっておりますが、よーするに設備投資と個人消費が堅調なことが先行き経済について大丈夫大丈夫と言い張るための背景にあります。でもって先行き経済が大丈夫ということは、需給ギャップのプラス傾向が維持される、という事を意味するという扱いになっておりますので、需給ギャップのプラスが維持されることによって物価上昇のモメンタムが維持されている、と言い張ることが可能、という流れになります。

とは言いましても、追加金融緩和策なんぞ無いに等しい(個人の感想です)という現状の中、うっかり物価上昇に向けたモメンタムに疑義みたいな話をする訳にもいきませんので、設備投資や個人消費が怪しくなってきた場合には別の言い訳を持ち出す(なお追加緩和をするネタがある場合は別の言い訳を持ち出さないでサクッと追加緩和するかも知れませんけど)という事にはなると思いますけれども、ただまあ言い訳がドンドン苦しくなって追い詰められてきますわなあという所で。

つーことなので現状判断と先行き見通しは設備投資と個人消費の所だけ見るという手抜きプレイに出るのですが、

『設備投資について、委員は、増加傾向を続けているとの見方で一致 した。複数の委員は、支店長会議での報告などによれば、非製造業を中心に省力化・合理化投資が増加するなど、設備投資は、その裾野を拡げつつ堅調に推移していると述べた。』

『また、多くの委員は、3月短観における 2019 年度の設備投資計画をみると、輸出・生産の弱さにかかわらず、この時期としては、製造業を含めて高めの伸びとなったと指摘した。もっとも、このうちのある委員は、例年、この時期の投資計画は暫定的な性格が強いことには留意が必要であると付け加えた。』

一部留保入ってるけど基本的にエライ威勢が良いですな。

『先行きの設備投資について、多くの委員は、機械受注などの先行指標の動きを踏まえると、当面、海外経済の減速の影響から幾分減速する可能性があるとの見方を示した。その後の見通しについて、委員 は、景気拡大局面の長期化による資本ストックの積み上がりなどが減速圧力として作用するものの、良好な企業収益や緩和的な金融環境などを背景に、設備投資は緩やかに増加していくとの見方で一致した。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・・

『個人消費について、委員は、雇用・所得環境の改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加しているとの認識を共有した。』

雇用所得環境の改善とな(じっと手を見る)。

『先行きの個人消費について、委員は、消費税率引き上げの影響から下押しされる局面もみられるものの、雇用・所得環境の改善が続く中、株価上昇による資産効果もあって、緩やかな増加傾向を辿るとの見方で一致した。』

株価上昇による資産効果をここでぶち込んで来るとは。

『ある委員は、雇用者所得の増加がかなりの程度貯蓄に回っていることを踏まえると、足もとの生産の減少が消費の減少に繋がるまでには多少の時間があると考えられるが、一方で、消費税率の引き上げが消費の減少を早めてしまう可能性もあると指摘した。また、この委員は、財政赤字が縮小するもとで、家計貯蓄率が上昇していることは、 財政拡大の余地があることを示していると述べた。』

何じゃこの理屈は。

・・・・・ということで、まあ設備投資の方はアセスメント先行きともに威勢が良いのですが、個人消費に関しては先行きの見通しが堅調というのの根拠はナンデッシャロという感は拭えません。


・物価が上がらない理由の話がドンドン増殖しているようで

でもって『2.経済・物価情勢の展望 』の方ですけど、経済の方はさておいて物価の部分を鑑賞するのだ。

『続いて、委員は、わが国の物価情勢について議論を行った。まず、 景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて物価が弱めの動きを続 けている背景について、委員は、基本的には、長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした 考え方や慣行が根強く残っていることの影響が大きいとの認識を共有した。』

共有したようですが、そういうのはマネタリーベースを拡大するとホイホイと解消されるんじゃなかったでしたっけ???

『加えて、委員は、企業の生産性向上余地の大きさや、近年の技術進歩、女性や高齢者の弾力的な労働供給などは、経済が拡大する中にあっても、企業が値上げに慎重な価格設定スタンスを維持することを可能にしているとの見解で一致した。』

うーんこのという感じですが、物価が上がりにくい状況をポジティブに捉えるという荒業によって物価目標達成に時間が掛かるというのを前向きな話に持って行く、ということでドンドンと麿ドクトリンになっていくわけなのですが、いやまあ事実認定としてそうなのはその通りだとしましても、置物リフレ一派はこの話を認めたらダメじゃんと思う訳で、「見解で一致した」じゃねえだろおいこらと思うのだが。

『この点に関し、ある委員は、 非製造業へと裾野を拡げつつ、堅調な設備投資が続いていることは、 生産性の向上によってコスト上昇圧力を吸収する余地が引き続き大きいことを示唆しているとの認識を示した。』

これは1名の委員の指摘なので全体見解ではない(とは言え似たような話は多分複数名の委員が言及しているような気がする)のですが、「堅調な設備投資」→「物価が上がりにくい」という荒業の上塗りみたいな説明が議事要旨にも登場しております次第で、経済にプラスの要素を物価が上がりにくいという話に持って行く強引な展開キタコレという所でして、物価がアガランチ会長なのを如何にしてポジティブな話にするのか、という理屈の持って行き方に感心感心。

つーかですね、それはそれでまあ一つの理屈なのでありますが、さっき「設備投資と個人消費が先行き堅調なので経済が緩やかな拡大を継続」って言っていて、その緩やかな経済拡大が需給ギャップのプラス傾向から物価上昇のモメンタムが維持という話になっている筈なのに、その肝心の要素である設備投資の堅調さが実は物価上昇を抑制する可能性って話が(1名の意見となってはいますが)こっちでは堂々と展開されているのって、理屈としての整合性はどうなっとるんじゃ、という気はだいぶするのですがどういう整理になっているのでございましょうかねえこの辺の話って。でもって直後の先行き見通しの所には堂々と、

『次に、委員は、先行きの物価動向について、議論を行った。大方の委員は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくとの見方を共有した。これらの委員は、2019 年1月の展望レポートでの見通しと比べると、2020 年度までの物価上昇率は、概ね不変であるとの見方で一致した。』

となっているのがチャーミング。でもってこの次が、

『さらに、委員は、消費者物価の前年比が2%に向けて徐々に上昇率 を高めていくメカニズムを、一般物価の動向を規定する主な要因に基づいて整理した。』

という話が始まりまして、需給ギャップに関しては

『まず、マクロ的な需給ギャップについて、大方の委員は、労働需給の着実な引き締まりや資本稼働率の上昇を背景に、均してみればプラス幅を拡大してきているとの認識で一致した。また、 大方の委員は、先行きの需給ギャップについても、比較的大幅なプラスで推移するとの見方を共有した。』

といういつもの話なのですが、その次の要素については(物価が中々上がらん事への)言い訳成分満載になるのでして、

『次に、中長期的な予想物価上昇率 について、大方の委員は、先行き上昇傾向を辿り、2%に向けて次第に収斂していくとの認識を共有した。』

ほうほうそうですか(棒読み)。

『その背景として、これらの委員 は、@「適合的な期待形成」の面では、需給ギャップの改善などに伴う現実の物価上昇率の高まりが、予想物価上昇率を押し上げていくと期待されること、A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、 日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推 進していくことが、予想物価上昇率を押し上げていく力になると考えられることを指摘した。』

というのはさておきましてこの先を鑑賞しますと、

『何人かの委員は、需給ギャップはプラスの状態を続けているものの、多くの財・サービス価格が上向くほど、企業の価格設定スタンスは積極化しておらず、適合的期待形成の影響等を通じて、「物価安定の目標」を実現するには暫く時間がかかると見込まれるとの認識を示した。』

はいはい。

『一人の委員は、現状、現実の物価が上がらないから予想物価上昇率が上がらず、予想物価上昇率が上がらないから現実の物価も上がらないという膠着状態に陥っていないか、検証が必要であると指摘した。』

主な意見の方にもありましたな。ところでどう検証するんでしょ。

『この間、別のある委員は、需給ギャップの拡大が物価を押し上げにくくなっている可能性や、予想物価上昇率が弱めの動きを続けていることなどを踏まえると、現時点では、この先、 2%に向けて物価上昇率が伸びを高めていくとは判断できないと述べた。』

これは片岡さんですかね。

『このほか、日本経済の成長力と物価動向の長期的な関係について、 委員は、最近の女性や高齢者の労働参加の高まりや、生産性向上に向けた企業の取り組みは、短期的には、賃金や物価の上昇圧力を弱める方向に作用するが、より長い目でみれば、経済の成長力を強化し、賃金や物価の上昇圧力を高める可能性があるとの見方で一致した。』

これに関しては物価目標の達成時期がドンドン後ずれしてきてから言い出すようになった理屈というのが悲しい訳でして、最初からそういう認識を前提にしていたら「2年程度を念頭に出来るだけ早期に達成」とかいう話って無かったでしょうと思うと無念でなりませんな。


・相変わらずの置物理論がまだ出ますなあ

つーことで『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』に入ります。

『金融政策の基本的な運営スタンスについて、大方の委員は、「物価安定の目標」の実現には時間がかかるものの、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けるもとで、2%に向けたモメンタムは維持されていることから、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適切であるとの認識を共有した。多くの委員は、プラスの需給ギャップができるだけ長く持続するよう、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、現在の政策のもとで、きわめて緩和的な金融環境を維持していくことが必要であると述べた。』

というのはいいとしまして、

『ある委員は、当分の間、世界経済の動向と消費税率引き上げの影響を見極めつつ、金融機関や市場機能面への副作用にこれまで以上に留意しながら、現行の金融緩和政策を維持していく必要があるとの認識を示した。そのうえで、この委員は、従来と同様、今後とも金融と財政のポリシーミックスが維持されること が重要であると付け加えた。』

副作用の話をしつつ金融と財政のポリシーミックスの話をするとな、とちょっと興味深く思いましたです。

『一人の委員は、現在の政策枠組みは、市場の状況に対応するための一定の柔軟性を有しており、副作用を軽減しつつ、市場環境が変化するもとでも緩和的な金融環境を維持しやすい政策であると指摘した。』

という話をしていたものの、この後現実問題として米国利下げ砲(まだ下げてないけど)が出たらこのような悠長な話ではなくなっている(と市場の中の人的には思っていますが、まあ当局的には「プラマイ20bpは厳格適用するものでもない」みたいな話をしてやっぱり柔軟性あるでよとか思ってそうですが)のでした。

『この間、ある委員は、新しい時代に平成のデフレ不況を繰り返してはならないと述べ、物価安定の目標からまだ距離がある現状では、追加緩和論にも相応の妥当性があると指摘した。 そのうえで、この委員は、物価上昇のモメンタムが失われた時には、 機動的かつ断固とした追加緩和を行うべきであるとの認識を示した。』

まあこれ置物一派の誰か(ただし追加緩和しろというのが片岡さんなのでそれ以外)でしょうが、この「デフレ不況」というのが相変わらずのアレで、この前段での話にもありますように、好景気と物価が上がりにくいというのが併存できるという話をしている、すなわちインフレデフレは経済の上げ下げの原因なのではなく結果である、という議論を延々としてるというのに「デフレ不況」ってデフレが原因で不況になっているという話って置物理論の毎度の理屈なのですが、この話を依然としてしている、というのってお前さんは自分の言っていることの整合性をどう考えているのかと小一時間問い詰めたいし、整合性の無い理屈を振りかざしてマクロ政策の運営をしたら、そら効果が減殺されたり、理屈の整合性のあっていない部分の方で逆効果になる(それを「副作用」というわけですが)だろいい加減にしろと存じますんですけれども、いつまで置物理論を振りかざしてるんだと申し上げたい次第。

『別の一人の委員は、遅行指標である雇用や賃金をみても、景気の局面変化を事前に正確に見通すことは難しいことや、先行き、時間とともに金融緩和の副作用が累積していくことを踏まえると、2%の早期達 成に向けて、現時点で金融緩和を強化する必要があると述べた。』

でまあこれが片岡さんなのですが、雇用や賃金が遅行指標だったらそれを受けて上昇する物価ってもっと遅行指標なのに、何で2%の早期達成に向けて云々って話が出来るんだというお話でありまして、反対論陣張るにしたってもう少し考慮というものが必要なのではないでしょうか、と思いますし、大体からして前段の議論での景気の先行きの話って雇用と賃金だけで先行き見通しの話してねえだろ何を言ってるんだお前はという感じで、何か片岡さんも言ってることが妙になってきている感が(そもそも置物理論が妙なのだから仕方ない、という説もありますが)ありますな。

『このほか、ある委員は、2%の実現になお時間を要する見込みであることを踏まえると、現在の政策枠組みの持続性強化に繋がり得る取り組みを不断に検討していく必要があるとの認識を示した。また、別のある委員は、息長く経済の好循環を支えて、「物価安定の目標」の実現に資するべく、経済・物価・金融情勢を踏まえながら、適宜適切に金融 政策の枠組みに調整を加え、その持続性を強化するという、これまでの政策スタンスを維持することが重要であると述べた。』

まあこの辺は毎度の話です。


・フォワードガイダンスの明確化に関連して

『こうした議論を経て、委員は、強力な金融緩和を継続していくにあ たって点検すべき課題について議論を行った。多くの委員は、経済・ 物価の先行きを巡る不確実性が大きく、2%の実現にはなお時間がか かることを踏まえると、「物価安定の目標」の達成に向けて、現在の 強力な金融緩和を粘り強く続けていくという日本銀行の政策運営方針をより明確に示すことが重要であるとの認識を示した。そのうえで、 何人かの委員は、こうした金融緩和姿勢に対する信認の強化に資する よう、先行きの経済・物価見通しが1年延びるこのタイミングで、昨 年導入した政策金利のフォワードガイダンスを明確化することを検 討してはどうか、との意見を述べた。』

何この予定調和的な書き方。

『何人かの委員は、最近の海外経 済を巡る不確実性の高まりを踏まえると、その動向についても、フォ ワードガイダンスの判断要素に加えることが適切であると指摘した。 ある委員は、現行のフォワードガイダンスにおける「当分の間」が、 相応に長い期間を想定していることを分かりやすく示すため、海外中 銀の例を参考に、何らかのかたちで具体的な時期に言及することが考えられると述べた。』

でもってこの先は各種措置の話になるのでちょっと飛ばしまして、

『執行部は、まず、多くの委員が言及した政策金利のフォワードガイ ダンスの明確化に関し、一案として、現在の文言を一部変更し、「海 外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実 性を踏まえ、当分の間、少なくとも 2020 年春頃まで、現在のきわめ て低い長短金利の水準を維持する」とすることが考えられると述べた。 「少なくとも 2020 年春頃まで」という時期について、執行部は、海 外経済やグローバルなITサイクルが持ち直すタイミングや、消費税 率引き上げの影響を見極めるのに要する期間などを勘案したもので あると説明した。また、「少なくとも」との記述により、「2020 年春 頃」を超える可能性を示すことで、「当分の間」が相応に長い期間を念頭に置いていることを明らかにする効果があると述べた。』

ということだと、「いったん立ち止まって見直す時期がある」というような説明チックにも見えるのですけれども、どうせ10月の展望レポートに合わせてガイダンスの期間を半年延長して来年春ごろの見直しとかしないんでしょ、などと悪態をついてみる。

『執行部が提示したフォワードガイダンスの案について、多くの委員は、日本銀行の金融緩和姿勢に対する市場や国民からの信認強化に資するものとして、適切であるとの認識を示した。』

でもって、

『ある委員は、「少な くとも 2020 年春頃まで」とすることで、具体的な時期の情報を示しつつ、オープンエンドの要素も維持しているとしたうえで、コミット メントの実効性確保と政策運営の柔軟性確保という2つの要請がバランスよく考慮されていると述べた。』

「オープンエンドの要素も維持している」って最初からオープンエンドの積りだったの???

『この間、一人の委員は、フォワードガイダンスを明確化すること自体には賛成であるが、その場合には、 物価目標との関係をより明確化し、いわゆるデータ・ディペンデント な内容とすることが望ましいと述べた。』

これはジンバブエ先生。

『この点に関し、ある委員は、 その時々のデータや情報を用いて経済・物価の不確実性を判断するという点で、現在のフォワードガイダンスもデータ・ディペンデントで あり、今回の見直しも、そうした判断を行う時間軸を分かりやすく示すためのものと理解していると述べた。』

既存のガイダンス時期のエンド来る6か月以上前に延長しちゃっている訳で、「そうした判断を行う時間軸を分かりやすく示す」になっていない気がするのですが。

『ある委員は、物価上昇率に加速する気配がみえない中にあっては、現在の金融緩和を粘り強く続け ていくことを明確化することの意味は乏しいという見解を示した。そ のうえで、この委員は、「物価安定の目標」の早期達成のためには、 予想物価上昇率に直接働きかけることが重要であり、そうした観点から、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合 には追加緩和を行うことを約束するという、コミットメントの強化策が必要であるとの意見を述べた。』

片岡さんですな。でもって追加緩和の具体策の提示をお早めにお願いします。なお15年国債金利が0.2%を下回るというのは盛大に達成されているので使えません。

『何人かの委員は、消費税率引き上げ が予定されている 10 月が近付くにつれて、「当分の間」が示す時間軸が分かりにくくなり、市場参加者の見方が日本銀行の想定以上に短く なるおそれもあることから、このタイミングで、「当分の間」が相応に長い期間を想定していることを明確化することは、金融緩和の効果を持続していくためにも必要であると述べた。 』

なんだかなーという感じではある。


・議論の締めがジンバブェ・・・・・・・・・・

各種措置の話については盛大に割愛しながら進んでいますが、この政策議論の最後の部分を締めるのが・・・・・・・

『このほか、委員は、先行きの金融政策運営上の留意点についても議論を行った。』

というのでありまして、鈴木さん(と思われる方)にジンバブエ先生が不毛に絡む、という確か木内さんの時にもそんな議事要旨が毎回見られたと思うのですが、そういう残念な部分で締められております。

『一人の委員は、足もとの金融経済情勢をみると、金融政 策の効果が実体経済に波及していく時間軸とその副作用が累積的に強まっていく時間軸の両方に留意することや、そうした効果と副作用 を慎重に比較衡量することが、一段と必要な状況になってきていると の認識を示した。また、この委員は、金融機関の預金・貸出金利には 契約上、運用上のゼロフロアがあると考えられることや、民間部門の 資金の運用・調達構造を踏まえると、現状以上の金利低下は、実体経 済への効果よりも、副作用を助長するリスクの方が大きい可能性があ ると指摘した。』

(;∀;)イイハナシダナー

『一人の委員は、「量的・質的金融緩和」が銀行収益を 悪化させているという議論は、金融緩和による景気の改善、貸出の増 加、信用コストの低下、株式と債券に関する収益の増加を考えていな いと述べた。そのうえで、この委員は、そうした議論は、低金利政策 が銀行収益に与えた好影響を考慮せずに、貸出金利が低下しなければ、 もっと利益が上がっていたはずであるという想定に基づいた議論で あると指摘した。』

・・・・・・・・・・・・・もう溜息しか出ません。

#結局簡単にとか言いながら長々となってしまいました(大汗)






2019/06/25

お題「ボストン連銀のローゼングレン総裁が日本の金融機関がどうしたとか講演していたので」

ほうほう。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL24I1I_U9A620C1000000/
国債投資家懇、11月と3月の年2回開催に変更へ 従来は年5回
経済・政治2019/6/24 15:29

『財務省は24日、銀行や生保など国債を購入する金融機関などから国債市場の動向を聞き取る国債投資家懇談会を開いた。今後の開催日程について、これまでの年5回開催を年2回に減らす。機関投資家の運用計画策定のタイミングを考慮した。原則、入札計画を議論する11月と翌年度の入札方式を議論する3月の2回だが、発行計画の見直しといった大きな政策変更がある場合は臨時で開催するとした。』(上記URL先より)

「機関投資家の運用計画策定のタイミングを考慮した」って言ってるけど国債市場ちゃんの市場機能も低下しているので国債市場の話しても仕方ないから財務省が説明したい事があるタイミングに説明会をやるということですね、ナムナム。


〇本来ならFOMCパウエル会見のお時間の所ですがローゼングレン講演を先に

URLがクソ長い(ボストン連銀の仕様なので仕方ない)のでリンクに関しては途中の所までしか無いように見えますがちゃんとリンクしておきます。
https://www.bostonfed.org/news-and-events/speeches/2019/the-macroprudential-implications-of-the-1990s-japanese-financial-crisis.aspx
The Macroprudential Implications of the 1990s Japanese Financial Crisis
By Eric S. Rosengren
June 21, 2019

・まずはまとめから

本文の前にまとめがあるのでまずは上記URL先の所から。

『Four takeaways from Boston Fed President Eric Rosengren's June 21 remarks at the 5th Annual Macroprudential Conference held in Eltville, Germany Four takeaways from Boston Fed President Eric Rosengren's June 21 remarks at the 5th Annual Macroprudential Conference held in Eltville, Germany』

『1.Takeaway: The Japanese financial crisis of the late 1990s had significant implications for both the Japanese and global economies.』

どんなインプリケーションかといえば、

『Excerpt: "…Japan's domestic economy was severely impacted, with lasting effects. In addition, because of the global reach of the largest Japanese banks, the problems were essentially exported, as Japanese banks pulled back on foreign lending in order to bring assets better in line with their shrunken capital. Essentially, Japanese banks reduced their global footprint."』

と言われましても微妙にもにょる所がありまして、日本の金融機関が米国や欧州でジャンジャンローンとかぶっこんできたからBIS規制始めたんでしょプルバックして(おまいら的には)良かったじゃんという気はだいぶするのだが。

『2.Takeaway: Effective use of macroprudential tools - that is, banking regulations aimed at mitigating financial-system risk - could have lessened the crisis in Japan. Unfortunately, it wasn't until the financial crisis of 2008 that countries began to work on improving macroprudential policies.』

マクロプルーデンシャルツールを使っていればよかったですね、でも結局ワシらもリーマンショックになるまでこの重要性よー分かっていなかったですな、っていう結論になっているのですが、何でや日本関係ないやろ!

『Excerpt: "…my own view is that with effective implementation of macroprudential policies, many of the issues would have been substantially mitigated."』

the issues would have been substantially mitigatedってホンマカイナと思いますが。

『3.Takeaway: Bank stress tests and the use of a countercyclical capital buffer (or CCyB) are two macroprudential tools that emerged from the financial crisis which could have reduced the severity of the banking crisis in Japan.』

ストレステストとCCYBが金融危機が起きた時の金融危機を軽減する、というのはまあそうだと思いますが。

『Excerpt: "Rigorous stress tests would have revealed emerging problems, required retention of more bank capital, and discouraged aggressive lending. A CCyB would similarly have brought about a larger capital cushion to absorb shocks, which would have reduced the need for such dramatic shrinkage of lending when asset prices declined."』

最初の「Rigorous stress tests would have revealed emerging problems, required retention of more bank capital, and discouraged aggressive lending.」ってのがホンマカイナというのがあって、確かにまあ理屈の上ではその通りになるんですが、じゃあ実際にそれがワークするのかという話になりますと、現実問題として暫く前には「そもそもボルカールールの厳格適用をすると米銀ばっかりハンデになるわ」とか言ってルールの柔軟化がぶっこまれたりしていたように、ストレステストやらないよりはやった方が有効かも知れませんけれども、やったからと言って金融分均衡の拡大を抑えることが出来るかどうかという点については疑問がございますし、CCYBも理屈通りの運営が出来るのか(今の時期にCCYBの賦課資本拡大している動きってありましたっけとかそういう話)というのがどうも。

『4.Takeaway: The Japanese banking system is again being affected by adverse economic conditions. Like the U.S., Japan might benefit from considering an expanded set of macroprudential tools.』

突然日本が槍玉に!ってこれがベンダーニュースのヘッドラインになっておりましたがががが。

『Excerpt: "Despite the passage of time and adoption of better policies, one could argue that the Japanese banking system is now, once again, being threatened by adverse economic conditions. A shrinking population, aging demographics, and very low interest rates provide very little room for Japanese banks to operate profitably. This of course provides an incentive to reach for yield, potentially implying additional risk-taking. …All this raises questions about how resilient the banking system is, or could be, in the face of some future global downturn."』

何でジャパンの金融システムがコケるとグローバル経済に影響を与えるのかはまるでよくわからんのですけれども、まあ話題のこの4番目の方から読むという手抜きににも程がある作戦で参ります。


・日本の金融機関云々とかいう大きなお世話な所から鑑賞してみましょう

本文はこちら
https://www.bostonfed.org/-/media/Documents/Speeches/PDF/062119text.pdf

図表はこちら
https://www.bostonfed.org/-/media/Documents/Speeches/PDF/062119figures.pdf

でまあ小見出しが
Macroeconomic Spillovers from Banking Problems
Macroprudential Tools
Japanese Banking Problems Today

とあって最後がまとめなのですが、この大きなお世話っぽい「Japanese Banking Problems Today」について鑑賞しましょうということで本文5ページの所から。

『Today, one must acknowledge that the state of the Japanese macroeconomy poses significant challenges for Japanese banks.』

まずは日本のマクロ経済状況が銀行セクターに厳しいですよという話はまあ毎度の指摘なのでサラサラ流しますが。

『The country’s aging population and very low birth rates reduce the available lending opportunities for banks. In addition, because these demographic features imply a lower real growth rate for the economy, they have contributed to very low term premia, and this makes less profitable the traditional role that financial intermediaries play in transforming short-term deposits into long-term loans.』

人口動態によって成長力が落ちて、それによってタームプレミアムが下がって云々でその結果短期から長期への期間変換による利益が出なくなる、という説明がジンバブエチックな言い方で気になるが、まあスルーしまして(してない)次。

『With monetary policy keeping both short- and long-term rates very close to zero, the spread of long over short rates that is normally an important source of profits for banks is almost nonexistent.』

矛先がYCCに向かっていてワロタ。

『As Figure 3 shows, the average return on assets for the largest banks in Japan is quite low, and significantly lags that of the largest banks in the U.S. and Europe.』

でもって先ほど図表のURLくっつけたのは図表を見てちょという意味でして、図表3というのが『Figure 3: Average Return on Average Assets for the Three Largest Banking Organizations 2018:Q1 - 2019:Q1 』ってなっていまして、泣けるようなグラフになっているのでぜひご覧あれ。

『As shown in Figure 4, the difficult lending environment has also resulted in an average price to tangible book ratio - a measure of the market value of the bank - which lags international peers.』

図表4の方では『Figure 4: Average Price to Tangible Book Ratio for the Three Largest Banking Organizations 2018:Q1 - 2019:Q1 』というのがありまして、Tangible Book Ratioってのは要するにPBRですが、貸出の環境が厳しいから株価にもはいこの通り、という泣けるグラフがある訳よ。

『Naturally, a prolonged period of depressed returns may encourage bank management to reach for yield.』

そして(伝統的な貸出の)リターンが抑圧されているんだからそら邦銀がサーチフォーイールドの動きに出ますわな、ということで・・・・・・・・・・

『One example of this reach-for-yield behavior might be seen in Japanese banks’ investments in tranches of collateralized loan obligations, or CLOs.』

矛先が突如CLO投資に!!

『Although the AAA tranches of CLOs receive high assessments from rating agencies, they also pay substantial premiums relative to U.S. Treasuries or the AAA tranches of other securitized products, reflecting the market’s assessment of their riskiness.』

CLOのAAAトランシェは他の証券化商品のAAAトランシェに対してプレミアムが高いですが、これは市場のリスクの相対評価を示していますとな。

『This raises questions not only about the comparability of ratings across asset classes, but also, more importantly, about how such positions will fare in the next downturn.』

いやそれはどうかという気もするが、次の経済があばばばばーの時にこのAAAトランシェは悪影響を受ける可能性が相対的に高いって説明になっとる。

『Figure 5 shows the CLO holdings of one large Japanese bank that publicly reports them.』

ということで図表5なのですが、『Figure 5: Example of CLO Holdings and Capital of One Large Japanese Bank』ってことで、CLOの保有額とCET1とを比較する、という割と悪意を感じるグラフになっておりますが。

『The data are drawn from the bank’s publicly available annual report. Over the past three years, the bank’s CLO exposure has risen - as reported in the financial press - and is now larger than the bank’s Tier 1 common equity.』

本文でもわざわざ言及。

『While CLO structures have improved since the financial crisis, the riskiness their large premiums reflect, as well as the lack of liquidity, could become problematic in a depressed global economy, should such a scenario emerge.12 Even if the tranches in question did not default, their ratings, along with their market valuations, would likely migrate lower.』

先般の金融危機以降、CLOのストラクチャー自体は改善しているので、デフォルトに関する問題や、市場価格の下落、格下げの問題などが以前よりも軽減されているとは言え、証券そのものには相変わらず流動性が無いので、世界経済が大きく悪化するような状況においては、問題になるでしょう、という解説になっているのだが、いやまあ前回の金融危機見てるんだから日本の金融機関だって流動性が枯渇する時のリスクは込みで考えるじゃろとは思うんですがねえ。

でもってこのジャパンが槍玉に上がっている章の最後じゃが。

『The combination of low returns and seeming reach-for-yield behavior raises important questions about whether Japanese banks will remain resilient in a possible future global recession, should one occur.』

大きなお世話な気もするのだが。

『How critical are more vibrant and profitable banks for dynamism in the economy? And how will Japan’s banks fare in an economic downturn given their current performance?』

ということで今は問題提起だけして終了という感じですな。でもって次の『Concluding Observations』が割と長いのですが、だいたいさっきまとめの所で引用していた抜粋とかいう部分と同じ話になっていまして、最後の所だけ見ますと、

『All this raises questions about how resilient the banking system is, or could be, in the face of some future global downturn. All in all, my view is that Japan, like the United States, might benefit from considering an expanded set of macroprudential tools to enhance the financial system’s resilience in the face of potential global economic scenarios.』

ふーん。

『Thank you again for the opportunity to discuss Professor Fukao’s paper and to offer these comments on the macroprudential implications of the 1990s Japanese financial crisis.』

って深尾先生のペーパーでディスカッションというのがあったのか、というオチが着きましたというお話。


・ところで何で日本の金融危機が世界経済に云々という話になっているんだか

というのが気になるので前の小見出し『Macroeconomic Spillovers from Banking Problems 』を高速で流し読みしますと・・・・・・・・

『At the time of the Japanese banking crisis, much of the focus among economists and policymakers was on avoiding the fiscal problems generated by bank bailouts. This focus resulted in significant work on incentives5 created by deposit insurance and bank bailouts, and the implications for taxpayers when these problems occurred. There was much less focus, however, on the macroeconomic consequences of banking problems. 』

日本の金融危機が起きた時に公的資金による資本増強などの着手が遅れましたよと。

『Once Japanese real estate prices and stock prices began to decline, the banking problems spilled over to the real economy. With non-performing loans rising, and capital eroding, Japanese banks tightened lending conditions.6 (Loans, of course, are assets for banks so in times of diminished capital banks pull back on lending to maintain capital-to-asset ratios.) At the same time, and somewhat to the contrary, some Japanese banks lent to weakened firms, temporarily propping them up so as to avoid (or at least postpone) realization of losses, to avoid further depleting bank capital. This resulted in the allocation of the already-reduced supply of loanable funds towards “zombie” firms,7 a significant misallocation of credit.8 This misallocation of credit even included firms focused on exports, as well as firms operating within the domestic economy.9』

説明の順序がおかしい気がするのだが、不動産や株価が下落してきてからの影響がどう広がったのかという話をしておられる。

『However, the problems did not only affect the Japanese economy. Because Japanese banks were actively involved in global markets, capital-constrained banks that needed to reduce assets often reduced their global lending before restricting domestic lending.10 This constituted an additional misallocation, as they often reduced lending to well-performing, collateralized borrowers in other countries that were not experiencing the sorts of difficulties that were being experienced in Japan.11 』

でもって経営が苦しくなった邦銀が海外のローンやら何やらを売却したり撤退したりして海外へもスピルオーバーしました、って言ってるんだがその時は海外の金融機関がおいしく頂きましたという現象が発生しただけで日本の金融危機が海外に伝播した訳ではないと思うのだが(アジア通貨危機は別に日本が引いたからでも無かろうよ)。

『The extent of the problems revealed by the Japanese banking crisis should have been sufficient to lead many countries to enhance their suite of macroprudential tools. Unfortunately, it took an even bigger and more global problem - the financial crisis that began in 2008 - before countries turned to the job of improving macroprudential policies. Given the policies that have been implemented subsequent to the global financial crisis, I think it is fair to ask whether such policies would have helped in the Japanese situation. While clearly speculative, my own view is that with effective implementation of macroprudential policies, many of the issues would have been substantially mitigated. 』

何かまるで日本の金融危機の教訓でマクロプルーデンスの強化を行ったのにリーマンショックは想像以上でしたみたいな言い方をしているのが歴史改変イクナイという感じで、おまいらFEDビューとか言って日本の教訓を「問題が起きたらとにかくさっさと焼き払うのが一番」というのにしてただろいい加減にしろ、とは思うのですが、まあそういう認識になっていますな。


・ということで関連して思ったことなのですが

このローゼングレンさんの講演って、日本の銀行が利回り追求でどうのこうのという謎の矛先の飛び方をしているのですが、つらつら考えてみるに、日本の金融機関が預貸スプレッドもねえ、クレジットスプレッドもねえ、タームプレミアムもねえ、短期金利どころか長期金利までマイナスだ、という状況に置かれる中で、米国なり欧州なりって預貸スプレッドがまだふんだんに残っている訳で、そういう所にローン関連商品への投資という形で突撃してきますと、これが短期間ならまだしも、長期化すればするほど米国や欧州のローンスプレッドに何らかの影響を与えると思われる訳でして、そうなってくると厚めの預貸スプレッドで基礎的な収益力を稼いでいる(この前ネタにしたFSRでの欧州と日本の差って思いっきり預貸スプレッドでしたよね)欧米の金融機関におかれましても、日本から日本化現象絶賛大輸出ということになりまして、それはもう対岸の火事では済まない、という事に成り兼ねない、とか何とかローゼングレンさんが懸念して(個人の妄想です)、ことさらにローン関連商品で残高増加的に目立っているところのCLOの話をぶっこんできたのではなかろうか(個人の妄想です)、などと思うとこの講演にも謎の味わいがあるんですが、単に深尾先生のディスカッションペーパーもあるから日本をネタにしただけに、ついでに最近のトピックスでも入れてくるかとかあんまり何も考えていない可能性もあるので、まあそこはどちらでもいいかなとは思います。

ただまあこのネタのニュースヘッドライン見てて思ったのは「日本化現象絶賛輸出攻撃」というもんだったので、ローゼングレンがそこまで指摘してたら面白いとは思ったのですが、まあさすがにそれはなかったですけどね、という雑談チックなネタではございました。







2019/06/24

お題「円債ちゃん大暴れしましたな/総裁会見の色々なグダグダを鑑賞」

MMTっていろんなのが出ていて誠にアレなのですが、結局のところそれを使って提言する人たちがMMT使って打ち出の小槌のジンバブエ理論で無限に財政出せるぜヒャッハーという方向にすぐ話を持って行こうとしているのがやたら声がデカイという時点で(個人の感想です)、刃物に罪はないけど使い方によって罪になるみたいなサムシングを思ってしまうのでした。


〇円債ちゃん日中暴れるの巻とな

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N23S1I4
2019年6月21日 / 15:24 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小幅続伸、最高値更新後伸び悩み 長期金利-0.165%に上昇

『<15:15> 国債先物は小幅続伸、最高値更新後伸び悩み 長期金利-0.165%に上昇

国債先物中心限月9月限は前営業日比1銭高の153円93銭となり、小幅に続伸した。金利変動許容幅を巡る前日の日銀総裁の発言が材料視されたほか、中長期対象の国債買い入れオペで買い入れ減額が見送られたことが支援材料となり、中心限月としての過去最高値を付けた。買い一巡後は利食い売りに押され下げに転じる場面があった。

10年最長期国債利回り(長期金利)は一時、マイナス0.195%に低下。その後、前日比0.5bp高いマイナス0.165%と上昇に転じた。』(上記URL先より、以下同様)

ということでご案内のように金曜日の円債市場ちゃんは特にカーブの後ろがよー値動きしまして、20年カレントの日中高安で5毛以上とか中々の暴れっぷりを示すでござるの巻。

朝方は米国金利の動き一服だか何だか知らんですが長いところ中心に弱めで始まっておった訳ですが、輪番オペが当然のごとく前回と金額同じでオファーが来たら早速前日比金利低下ソイヤソイヤとなって、おまけに昼頃(日本の昼休み)にはNYTの報道で「トランプがイラン攻撃の承認をしたんだけど数時間後に撤回したで」というのが出たからそらもう更なるソイヤソイヤになって長いところ強くなるし10年は後場寄りで▲0.195%(2.5毛強)ヒャッハーとかやりやがる訳ですよ。

でもって先物ちゃんも前日のイブニングに総裁会見の10年金利変動容認発言でつけた154円11銭を抜けて高値付けたりしていた訳ですが、なんか知らんが(というか売りが出たんでしょうけれども)後場途中から今度は急にヘロヘロモードになってしまうの巻。

財務省と日銀と金融庁の何とかは多分円債に影響ないと思うのですが、単純に金曜の場合は後場中盤からの勢いでそのまま長い所は甘となって終了の巻という図になりましたな。

まあ板の薄い中で高値波乱モードでやってるんじゃろ、とは思うのですが・・・・・・・・・

『日銀の黒田東彦総裁は前日の金融政策決定会合後の会見で、長期金利の変動容認幅に関連して「過度に厳格に捉える必要はない。弾力的に対応することが適当だ」と発言した。レンジ許容幅の下限とされるマイナス0.2%程度を下回る水準への金利低下を容認したとの見方が出る中、きょうの日銀オペで買い入れ減額が見送られたことを受け、国債先物は上伸。買い入れ結果も強めと受け止められ、一時154円13銭(同21銭高)まで上げ幅を拡大した。』(上記URL先より)

ってな話な訳ですが、金曜は輪番オファーでいきなりソイヤソイヤと金利が下がったのが正直ウヘーという感じでして、駄文でアタクシ申し上げましたように、金曜に関して言えば、@そもそも▲20bpまで下がっている訳ではない、A総裁会見で堂々のお墨付きが出た、Bドル円が107円台に突っ込んでいる、C輪番の減額余地がもとよりそんなに残っていない、という事を考えると、金曜の時点で輪番を減額するリスクを取る必要があるとは到底思えないのですが、とりあえず金曜に輪番減額とか予想していた何とかストは全員揃って(内務省検閲により削除されました)としか申し上げようが無いのですが、何とかストを名乗っているんですからもうちょっとストラテジックに考えて頂きたいものである、とまあ思ったりする訳ですよ、うんうん。


基本的にですね、この政策は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という政策であって、つまりは「緩和」政策をやっているのですから、その中にあるYCCって、緩和の反対側になってしまう金利急騰に対しては当然のごとく指値無制限ぶっこんだり増額ぶっこんだりして止めに行くことになるんですが、「緩和」政策なだけに緩和が拡大する分には元々そんなにナーバスになる必要は(金利上昇の時と比較して)ナーバスになる必要はないんですよね。

ただし、YCCのコンセプトとして、「金利が下がり過ぎるとイクナイ」ということで、(最近すっかり言及しなくなったのはツッコミに耐えられないからだと勝手に想像していますが)「均衡イールドカーブ」というのがあって、その均衡イールドカーブから見て金利を適度な具合に引き下げておく、でもってそれを短期金利だけじゃなくてイールドカーブの全体に直接手を入れていく、というのがYCCな訳で、その均衡イールドカーブからの下方シフトが大きくなりすぎると効果よりも副作用が大きい可能性があるので金利をジャンジャン下げれば良いものではない、というお話ですが、まあ屁理屈付ければ足元で海外の経済情勢に不確実性が高まる中で、海外の金融政策がやや緩和的にシフトしつつあるので、日本の金融政策も相対的に従来よりも均衡イールドカーブが下がる形になるのではなかろうか、と思うので投機的な動きで無い限りにおいて一時的な金利低下や多少の低下はキニシナイ、という理屈で通すんでしょうな。

・・・・・・・とは言いましても、これ金曜の10年水準だったら(▲17とかその辺)金利低下を容認するから輪番減額が無いとか決め打ちするのもまた素人感が出る訳で、金曜の場合は米国が動き出して為替が動いているからそこれリスク取って減額する必要性が無かったという部分もあると思われる(個人の妄想です)訳で、これが何となくドル安モードが落ち着いて、米国金利もカツアゲ祭り(まあカツアゲ祭り自体長引きそうですからあまり想像として現実的かというとそれはサーセンではある)が落ち着いて来たりした場合、輪番減額余地そのものは少しとは言えども残っていますので、やはり減らせるときにはしらっと減らしておいた方が後々金利上昇(が来るのかどうか分かりませんが・・・・・・涙)の時の対応糊代が大いに稼げるので、そら減らせる環境なら減らせるじゃろと思うので、金曜に減らさなかったから未来永劫この金利水準で減額しないという訳でもないでしょうな、とか思う訳で何とかスト以下自主規制。


しかしまあ金曜日の相場後講釈に関してはヘッドラインだけ並べても味わいがあるので引用させていただきます。

『<15:15> 国債先物は小幅続伸、最高値更新後伸び悩み 長期金利-0.165%に上昇
<14:30> 長期金利が上昇に転じる、急ピッチな金利低下受け利益確定売り
<12:55> 長期金利が-0.195%に低下、国債買い入れ結果は「強め」
<12:35> 3カ月物TB入札結果は弱め、在庫状況などを反映
<11:07> 国債先物は続伸で前引け、最高値更新 長期金利は-0.180%に低下
<10:14> 日銀オペで買入減額見送り、国債先物は最高値更新
<09:01> 国債先物は反落で寄り付く、米金利の低下一服で売り先行』(最初のURL先より)


〇総裁会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190621a.pdf

・最初の質問が追加緩和ではなくて2%物価目標の話なのは良いことです

まーご案内の通り今回の会見は追加緩和の話に対してゼロ回答というのが繰り広げられる基本的にはインプリケーションを与えない会見(ただし質疑は延々と続く)という感じではございましたが、最初の質疑の出来が良いので褒めてつかわす(ってお前は何様の積りだと言われますなすいませんすいません)。

『(問) 2%の物価安定目標についてお尋ねしますが、先日の国会で安倍総理は、もう既に完全雇用を目指すという意味においては、金融政策も目標を達成しているという答弁をされていて、その前の麻生大臣も、2%の目標にこだわる必要はないという趣旨の発言をしておられます。こうした発言からみると、 政府側の 2%の目標達成に向けた意思というのが薄れているようにも感じられるのですが、日銀として、達成の実現に時間がかかるもとで、この目標の実質的な位置付けというのに変化がないのかどうか、改めてご見解をお願いします。』

(;∀;)イイシツモンダナー

・・・・・・・・イイシツモンダナーではあるものの、そうは言いましてもこの口車に乗る訳には立場上行かない日本銀行としてのお答えというのは大体お察しではありますが。

『(答) この 2%の「物価安定の目標」は、2013 年 1 月に日本銀行政策委員会で決定した目標ですが、』

冒頭の所で「2013年1月に」という説明が入っているのが微妙な怪しさを感じるところでして、元々QQE以降の政策に関する話をするときに、常に黒田総裁の説明は「俺の緩和」(キリッ)という説明を行っており、白川ドクトリンに関しては当初は完全に足蹴にしておりましたし、まあ最近足蹴までは無いもののの、そうは言いましても基本的に知らんがなという扱いになっておりましたのに対しまして、今回物価安定の目標に関して「2013年1月」ということで「白川時代に作りました」という説明をしている所にいきなり引っ掛かってしまう次第。

『これは第 1 に統計上のバイアス、第 2 に政策対応力の確保などを考慮したうえで、第 3 にいまや2%の「物価安定の目標」というの はグローバルスタンダードになっていますので、その目標を目指すことが長い目でみた為替レートの安定にも資することから、決定したものです。』

しかし歴史改変イクナイ。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122b.pdf
2013年1月22日 日本銀行
金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について

『4.従来は「中長期的な物価安定の目途」として、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域、当面は1%を目途」としていた。今回、「目途」 から「目標」という表現に代えたうえで、その目標を消費者物価の前年比上昇率で2%としたのは、以下の認識に基づく。 日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体 の取り組みの進展に伴い、持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。現在の予想物価上昇率は長期にわたって形成されてきたものであり、今後、成長力の強化が進展していけば、現実の物価上昇率が徐々に高まり、そのもとで家計や企業の予想物価上昇率も上昇していくと考えられる。先行き、物価が緩やかに上昇していくことが見込まれる中にあって、2%という目標を明確にすることは、持続可能な物価上昇率を安定させるうえで、適当と考えられる。』(この部分は上記URL先の2013年1月22日文書より引用)

ちなみにこの時の白川総裁会見がこちらにあって、グローバルスタンダードだのというような話は白川さんから出ていたわけではございませんですな(長いので引用しませんけどまあ見てちょ)。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1301a.pdf
総裁記者会見要旨
―― 2013年1月22日(火) 午後3時半から約70分

・・・・・・・という訳で、2年で達成だの達成できなかったら最高の責任のとり方は辞任だのグローバルスタンダードだからとにかく2%だのというような話は黒田ドクトリンになって勝手におっぱじめている事なのは明白なのではございますし、今引用した2013年1月の物価安定目標に関する説明って今やまんまその通りの言い訳して2%物価目標達成に時間が掛かるとか抜かしている訳でして、そもそも論として検証も糞も最初からそういう指摘があったのに「白川ドクトリンはクソ」とか言って執行部を石持て追い出して挙句にこの有様なのですが、そこまで全部言ってしまうと身も蓋も面目玉も無くなるので、物価目標に関する話をする中で「2013年1月」というのを持ち出してきて、しかも2%目標の説明の方は黒田ドクトリンベースの話をする、という辺りにインチキの香りが濃厚に漂ってくる次第でございます。

さて、質疑応答に戻りまして以下この項の最初にあります今回の総裁定例記者会見のURL先からの引用に戻ります。

『物価の安定という日本銀行の使命を果たすためには、その実現を目指すことが必要と考 えていることに変わりはありません。 もちろん、日本銀行も、これまで何度も申し上げてきた通り、単に物価だけが上がれば良いと考えているわけではありません。企業収益や雇用の改善、賃金の増加とともに、物価上昇率が緩やかに高まっていく好循環が続いていく状況を作り出すことが、物価安定のもとでの持続的な成長にとって重要と認識しています。 こうした認識のもと、日本銀行としては、引き続き現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適当と考えています。』

兎に角物価を上げれば良い、というのが置物リフレ理論だった筈で、なにせハマコー大先生におかれましては、

https://diamond.jp/articles/-/30804?page=6
2013.1.20
浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー
「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換
インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」

『名目賃金は上がらないほうがよい その理由はあまり理解されていない』(直上URL先ダイヤモンド社記事より)

でしたからもうねという所でして、まあ兎にも角にもこの辺の落とし前というのを全部つけて頂きたいのですが、この質疑にありますように今度は「物価目標2%を設定したのは白川総裁の時代」というのを言い出すようになってきて、でもって微妙に黒田ドクトリンと混ぜ混ぜする、という技を用いておりまして、落とし前をつけずに何とかこの辺の話を融合させていって置物ドクトリンを有耶無耶にしていこう、という基本方針があるんだろうなー、というのを想像するに難くない質疑応答が最初にあったのは中々結構でございました。


・追加緩和に関して

まあ延々とその質疑でしたけど最初の方にある奴を。

『(問) 追加緩和の手段についてですが、FRBによる利下げの観測も拡がる中で、本日、日本の長期金利は−0.17%まで一時下がり、為替も 107 円台半ばまで円高が進んでいます。こうした中で、日銀として採り得る追加緩和についてですが、大規模緩和の導入から 6 年以上が経って、金融機関の体力も低下している中、新たな追加の措置に対する耐性というのが低下しているようにも思えるのですが、コストに照らしてベネフィットが大きい、そういう手段の余地は限られているようにも見受けられるのですが、その辺りのご見解を改めてお 願いします。』

無いです、とは口が裂けても言えませんがさてどういう答えをするのか。

『(答) 日本銀行は、従来から政策の効果とともに、金融仲介機能や市場機能 に及ぼす影響なども考慮しながら、金融政策を運営してきています。こうした点に関して、現状、金融機関は充実した資本基盤を備えていますし、現時点で は、低金利環境の継続によって、金融仲介機能が停滞方向に向かうといったリスクは大きくないと判断しています。』

ほーん。

『また、国債や株式市場の機能度も、全体として維持されていると考えています。』

ほーん。

『その一方で、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みは、名目金利から予想物価上昇率を差し引いたいわゆる実質金利を引き下げることによって、経済活動の改善に大きく寄与していると考えています。』

ほーん。

『日本銀行は、これまでも、政策のベネフィットとコストを比較衡量しながら適切に対応してきていますし、これからもそういった対応は可能であると考えています。』

ほーん。

『この点は、仮に将来、2%に向けたモメンタムが損なわれて、追加緩 和を検討するような場合も同様であり、これまで申し上げてきた通り、追加緩和の手段としては、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、 資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速など、様々な対応が考えられますが、日本銀行としては、これらを組み合わせて対応していくことを含め、その時々の状況に応じて適切な方法を検討していく方針に変わりはありません。』

この棒読み感。まあとりあえず「モメンタムが損なわれたら追加緩和」という話をするしかないのでこうなるんでしょうなという感じです。この後もこの手の質問に対しては「モメンタムが損なわれたら躊躇なく追加緩和」の一点張りですな。


・副作用軽減策があるとは思えませんが

後の方でこんな質疑が。

『(問) 躊躇なき追加緩和を実行される場合の副作用対策をセットされるかについてのお考えと、もしされる場合の具体的な方法について教えてください。』

『(答) 2%の物価上昇に向けたモメンタムが損なわれるということが起これば、当然、躊躇なく追加緩和を検討するということですが、その場合に、経済・ 物価・金融情勢に即して、4 つのオプションのどれをどのように、更には組み合わせて行うかについては、効果と副作用のバランスをとり、ネットで最も効 果のある措置をとることになると思います。どのような対応がとられるかとい うのは、そのときの経済・物価・金融情勢に合わせて最も適切な措置をとるということに尽きると思います。』

『(問) 副作用対策についても検討されているということですか。』

『(答) 当然そういうことを行う際には、副作用が小さくなり、ネットで緩和 の効果が最も大きくなるような措置を検討するということです。』

・・・・・・・副作用軽減策があるなら出し惜しみしないで今出せよオラオラオラという所でして、要するに軽減策は無いんですよこれは(絶望)。


・10年金利のお墨付き

これは割と早いところで出ましたな。

『(問) 長期金利が本日、−0.16%と 2 年 10 か月振りの低水準をつけたわけ ですけれども、現在の金融調節方針ですと、±0.1%の倍程度という表現をされていましたが、このレンジを超えることは許容され得るのか、お考えをお願いします。』

実際にはディレクティブには倍とかそういうのは無くて、声明文の表現は「10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを 行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動し うるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約 80 兆円を めどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」となっていて、この「ある程度」に関して総裁会見で従来の±0.1%の倍程度、とした訳ですな。

『(答) ご指摘のように、金融市場調節方針に関して、長期金利の水準については、経済・物価情勢に応じてゼロ%程度から上下にある程度変動し得るとい うこと、その変動幅については、概ね±0.1%の倍程度というものを念頭に置いているということを申し上げています。このように、そもそも金利のある程度の変動を許容しているのは、金利形成の柔軟性を高めることで、強力な金融緩和による市場機能への影響を軽減し、現在の政策枠組みの持続性を強化することが狙いです。何か金利変動の具体的な範囲を過度に厳格にとらえる必要はなく、上下にその倍程度と申し上げている通り、ある程度弾力的に対応していくことが適当だと考えています。』

上がった時にあんなに物凄い勢いで止めに掛かったのに、などというツッコミをしてはいけません(上下は非対称なのは政策が緩和なのだからある程度シャーナイナイなところはある)が、まあこれがお墨付きになって良かったですねという話だし、それこそ質問でなかったら自ら説明してたんじゃないですかね。


・一応こんなのもある

これもヘッドラインになっていて、ヒャッハーが一段落した要因(か単にあの時間の米国金利の動向のせいなのかは謎ですが)かも知れません。

『(問) イールドカーブ全体のフラット化についてなのですが、2016 年 9 月の総括検証で、日銀は過度なフラット化は広い意味での金融機能の持続性に対す る不安感をもたらし、マインド面等を通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性 があるとしています。それでイールドカーブ・コントロールを導入したと思うのですが、今そのときくらいにフラット化していて、もちろん要因は違うので すが、これについてどのように総裁はお考えになっているか、何かすべき必要性を感じていらっしゃるかどうか、お願いします。』

『(答) 「総括的な検証」で指摘しています通り、特に超長期金利が過度に低下すると、保険や年金等の運用利回りが低下し、これがマインド面等を通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性には留意が必要だと思っています。現時点で、 そういった悪影響は明確にはみてとれませんが、日本銀行としては、今後とも 経済・物価・金融情勢を総合的に勘案しつつ、2%の「物価安定の目標」の実現のために、最も適切なイールドカーブの形成を促していく方針です。現状や やフラット化が進んでいる点は注視しており、適切なイールドカーブを実現し ていくという「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の趣旨に沿って、必要があれば適切に対応していきたいと思っています。』

金曜は浅川財務官から為替市場について「凝視している」という新手のパワーワードが投下されましたな、全然関係ないですが。


・これはクソワロタ

『(問) 決定会合のスケジュールについてですが、Fedの来月の決定会合というのは、1 日日本銀行よりも遅いですね。Fedの利下げというのは、マー ケットの 1 つの指標では 100%織り込まれています。何か前もってできるのか どうかということなのですが、総裁としては何か必要であれば緊急の決定会合を開けば良いというお考えなのか、それとも何かリスクがあるとしたら、迅速 に早めに前もって対応すべきというふうにお考えなのか、お願いします。』

『(答) FRBのFOMCの日程と日本銀行の金融政策決定会合の日程は、シンクロナイズしていません。両者とも、年 8 回の金融政策決定会合、FOMC ということですが、それぞれの国の色々な統計や、その他の発表のスケジュール等によって、あるときは金融政策決定会合がFOMCより前になったり、またあるときは後になったりするということは自然だと思いますし、それで何か 特別なことがあるとも思っていません。(以下割愛) 』

ヒント:FOMCの日程発表よりも日銀のMPM日程発表は後です


・これはちとやっちまった感のある説明

こんな質疑がありまして、

『(問)(前半割愛)増税に絡んで個別にコメントすることはないということでしたが、政府として、リスクが顕在化する場合には機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実 行していく方針であるということは、安倍首相もおっしゃっているわけで、例 えば増税によって政府が補正予算なり経済対策を打つとなった場合、日本銀行にもあわせて緩和や、同じように足並みを揃えてやっていってほしいというよ うな声が、政治の方から高まる可能性もあるかと思います。そういう事態とい うのは想定されたり、考えられたりしていますか。』

『(答)(前半割愛)それから、政府が機動的なマクロ政策運営をするというのは、骨太の方針の原案に出ていたと思いますが、それ自体は当然の話だと思いますし、何 かそれが問題だとも思いません。またご指摘のように、政府が景気対策で歳出 を増やすというようなことがあったときに、日本銀行として何か協力するかということですが、もちろん政府と中央銀行の間で政策の協調を行うことは日本 銀行法にも書いてありますし、何も問題ないと思います。仮に政府が国債を増 発して、歳出を増やすということをやったとした場合にも、イールドカーブ・コントロールのもとで金利が上がらないようにしていますので、インプリシットにそういう事態には協調的な行動がとられる形になっていると思います。(後半割愛)』


という話に対してこんなツッコミが入りました。

『(問) 先程の発言で、総裁は政府が経済対策を打った場合に日銀も足並みをそろえるのか、という質問に対して、それは当然協力するという中で、イールドカーブ・コントロールというのは、政府が国債を増発して歳出を増やす場合に、金利が上がらないようにしているとおっしゃられましたが、私の理解では、イールドカーブ・コントロールは金融政策としてやっているのであって、政府 が国債を発行しても金利が上がらないように助けるということではないので はないかと理解しています。つまり財政拡張的になるのを、通常は金利が上がってヘジテイトするところを日銀がそれを抑えているから、財政拡張してし まうのだという批判に対して、日銀の通常の答えは、いやそういうことではな いのだということだったので、先程のお答えについてもう一度お願いします。』

このツッコミは見事ですな。

『(答) 現在のイールドカーブ・コントロールの下で 10 年物国債の操作目標 をゼロ%程度としているのは、あくまで金融政策として行っているものであり、財政ファイナンスを助けるという趣旨でないことは事実です。ただ、財政政策 と金融政策のポリシーミックスという点で捉えてみれば、仮に、日本銀行とし て現在のイールドカーブ・コントロールを維持する必要性があって、その間に国債の増発によって長期金利が上がるということが防止されるという意味で は、結果的に財政政策と金融政策の協調というポリシーミックスになり得ると いうことです。あくまでも財政のためにやっているということではないということはおっしゃる通りです。』

これは説明がグダグダ・・・・・・・・・・・・・・・

つーことで、まあ特に日銀動きようが無いので何かの政策インプリケーションは無いのですが、いろいろとドンドンとグダグダになっているのは、まあ元々のQQEにいろんなものを継ぎはぎしている上に、本家のQQEの置物リフレ理論がゴミクズオブゴミクズだったので、ゴミクズに何を継ぎはぎしてもゴミクズには変わらん、という悲しい状況を示しているんでしょうなあ、と思ったりもしました(個人の悪態です)。








2019/06/21

お題「決定会合レビュー雑談など」

今度は別の所から年金燃料ですか・・・・・・・
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20190620-00419548-fnn-bus_all
「年金給付低下見込まれる」文言削除 「財政審」意見書の原案から
6/20(木) 12:15配信

『6月6日に開かれた会合で示された原案には、「将来世代の基礎年金給付水準が、2004年(平成16年)改正時の想定よりも低くなることが見込まれている」といった文言が盛り込まれていたということだが、提出された意見書には入っていない。夫婦で95歳まで長生きすると、さらに2,000万円が必要などとする金融審議会ワーキンググループの報告書の受け取りを、麻生大臣が拒否したことなどが影響したとみられ、財務省は「事務局として、お答えできる立場にない」とコメントしている。』(上記URL先より)

良く燃えますなあ全く(ねんきん定期便を片手に涙目になりながら)。


〇決定会合レビューだが会見の方が面白そうですので本日はサラサラと

声明文今回
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k190620a.pdf

声明文前回(4月)
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2019/k190425a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k190425a.pdf

展望レポート基本的見解(4月)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1904a.htm/
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1904a.pdf

今回は平仄を合わせようとおもいますので前回分の引用もPDF版から参ります。


・景気認識は下がっているちゃあ下がっているけど達観すれば横這い認識

政策変更は無かったので項番2から参ります。

『わが国の景気は、輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している。』(今回)

『わが国の景気は、輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している。』(前回展望レポート)

「基調としては緩やかに」という相変わらずの往生際の悪さを維持しながら判断を維持していますので横這い。


『海外経済は、減速の動きがみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は、弱めの動きとなっている。』(今回)

『海外経済は、減速の動きがみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は、足もとでは弱めの動きとなっている。』(前回展望レポート)

輸出と生産の判断は元々「弱めの動き」になっていましたが、従来は「足もとでは」ということで現状の弱めの動きが一時的であるような文言を入れて往生際悪く粘るものの、今回はその文言を削除ということで主要需要項目の判断を下げるの巻。


『一方、企業収益や業況感は、一部に弱めの動きがみられるものの、総じて良好な水準を維持しており、設備投資は増加傾向を続けている。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。住宅投資は横ばい圏内で推移している。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。この間、労働需給は着実な引き締まりを続けている。』(今回)

『一方、企業収益や業況感は、一部に弱めの動きがみられるものの、総じて良好な水準を維持しており、設備投資は増加傾向を続けている。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。住宅投資は横ばい圏内で推移している。公共投資も高め の水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。この間、労働需給は着実な引き締まりを続けている。』(前回展望レポート)

てな訳で今回は輸出と生産の判断を下げた(というかクソ粘りしていたのが降参したという所ですか)のですけれども、そのほかの需要項目に関しては見事に全文一致。

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(今回)

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。 物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%台後半 となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(前回展望レポート)

金融環境と物価とインフレ期待に関する文言も実質全文一致(以下同じがあるのは文章構成上の問題)。


・先行き見通しもカワランチ会長

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる。』(今回)

『わが国の景気は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、先行き、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる。』(前回)

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、2021年度までの見通し期間を通じて、拡大基調が続くとみられる。 』(前回展望レポート)

展望レポートとMPM声明文では見通し期間のタイムホライズンが違うので直接比較すると微妙な部分がありますが、前回MPMでガイダンス文言いじったり幾つかの施策を入れてきたので、先行き見通しの文言があまりなく、声明文との比較に合わせて展望レポートと比較をしますが、声明文の文言と比較すると先行きの経済見通しに関しては不変というのが読み取れますな。


『国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や 政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。輸出も、当面、弱めの動きとなるものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくことを背景に、基調としては緩やかに増加していくとみられる。』(今回)

『すなわち、当面のわが国の経済を展望すると、海外経済の減速の影響を受けて、輸出が弱めの動きとなるほか、設備投資についても、幾分減速することが見込まれる。もっとも、個人消費は、雇用・所得環境の改善が続くもとで、 2019 年 10 月に予定されている消費税率引き上げ前の需要増もあって、増加を続けるとみられる。公共投資も、オリンピック関連需要や自然災害を受けた補正予算の執行、国土強靱化等の支出拡大から増加すると考えられる。』(前回展望レポート)

『その後についてみると、海外経済は、中国などにおける景気刺激策の効果発現やグローバルなIT関連財の調整の進捗などを背景に幾分成長率を高め、総じてみれば緩やかに成長していくとみられる。こうしたもとで、わが国の輸出は緩やかな増加基調に復していくと見込まれる。国内需要は、消費税率引き上げなどの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(前回展望レポート)

とまあそういう説明になっておりまして、「所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続」とか「海外経済が総じてみれば緩やかに成長」という肝心の部分に関しては前回展望レポート基本的見解に織り込まれているストーリーと同じになっている(まあこれを下向きに変えたら追加緩和がどうのこうのという話が出てくるのだが)のでカワランチ会長ということですな。


『消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる(注2)。』(今回)

『物価も、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて弱めの動きが続いているものの、先行き、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることなどから、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。もっとも、海外経済の動向をはじめ経済・物価の先行きを巡る不確実性は大きい。また、「物価安定の目標」の実現には、なお時間がかかることが見込まれる。』(前回)

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることな どを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。なお、 2020年度までの物価の見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である6。 』(前回展望レポート)

ということですのでこれまた同じという事になりまして、まあ今回は追加緩和をしそうな雰囲気をうっかり出すと市場にカツアゲを食らうのでそんなものは出さん!というのがきっちりと示されていて誠に結構でございます。


・反対理由に工夫の跡が見られない、やり直し

YCCにいつものように反対2名。

『(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対: 原田委員、片岡委員。』(今回)
『(注2)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対: 原田委員、片岡委員。』(前回)

はい。

『原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、 政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。』(今回)

『原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、 政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。』(前回)

それは分かったんだがじゃあどうしろという話が無くオートリバーステープのように延々と同じ文言を垂れ流すとかいうのは家電量販店だけで勘弁して下さい。それに金利が下がっているということは金融緩和的になっているのですが、それでも怪しからんと仰せになっているのでしょうかジンバブエ先生は???

『片岡委員は、 先行きの経済・物価情勢に対する不確実性がさらに強まる中、金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。 』(今回)

『片岡委員は、 先行きの経済・物価情勢に対する不確実性がさらに強まる中、金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。』(前回)

具体策を出すのです!!さあ、急いで!!!!(山寺宏一風に)

・・・・・・というかですな、遂に20年金利が0.20%以下に低下しているんですが一向に物価上昇が加速する気配が無い訳でして、15年国債の金利を0.20%未満に引き下げることによって何で2%物価目標達成が確実になり、その達成時期が前倒しになるのか、という点についてとっとと落とし前つけやがれコノヤローといったところでして、この人たちの言ってるのって「物価目標を達成するようにすれば物価目標を達成する」とか言ってる程度に意味が無いんですがどの面下げて(以下不穏当文言の可能性があるので割愛)。

『(注3)原田委員は、政策金利については、物価目標との関係がより明確となるフォワードガイダンスを導入することが適当であるとして反対した。

片岡委員は、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が重要であり、日本銀行としては、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとのコミットメントが必要であるとして反対した。』(今回)

『(注1)原田委員は、フォワードガイダンスを見直すにあたっては、物価目標との関係がより明確となるガイダンスとすることが適当であるとして反対した。

片岡委員は、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が重要であり、日本銀行としては、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとの コミットメントが必要であるとして反対した。 』(前回)

これも相変わらずなんですが、片岡さんのは相変わらずフワッとしていて具体的政策論に落とし込めない話のままですし、ジンバブエ先生の反対なんですが、物価目標との関係が明確になるガイダンスって例えば「全国消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年同月比伸び率が安定的に1.5%に達するまで現状の政策金利水準を維持する」とか具体的な提案できるじゃろ何でやらんのじゃ、とさすがに最近は思うのですけどねえ。

まあどうでも良いんですが悪態という事で。


〇今日の輪番は減額しないで済みますな(白目)

まずは昨日の債券市場ちゃんbyロイター。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N23R1TW
2019年6月20日 / 16:07 /
〔マーケットアイ〕金利:長期金利が-0.185%に低下、日銀総裁発言に反応

総裁発言云々の前に大引けの方を拝見しますと、

『 <15:09> 国債先物は続伸で引け、長期金利は-0.170%に低下
 
国債先物中心限月9月限は前営業日比28銭高の153円92銭となり、続伸して引けた。米連邦公開市場員会(FOMC)の結果を受けた米債高の流れを引き継ぎ、朝方から堅調に推移。引けにかけても上げ幅を拡大し、高値圏で取引を終えた。10年最長期国債利回り(長期金利)は前日比3.0bp低いマイナス0.170%と、2016年8月以来の水準まで低下した。』(上記URL先より、以下同様)

前場は中短期がヒャッハーと金利低下していたんですけど、後場になって先物ちょっと押したじゃんという辺りから中短期が急速に失速して(というか2年とかが滑った方がドライバーなんでしょ、よー知らんけど)ほほう少し落ち着いたのかと思えばさに非ずで後場途中からは長期超長期がソイヤソイヤと強くなって結局この有様。

『現物市場では、超長期ゾーンはしっかり。アジア時間で米10年債利回りが2.0%を割れて推移していることも、超長期債の買い材料となった。新発20年債は前日比4.0bp低い0.175%と、16年7月29日以来の水準まで低下。新発30年債は前日比4.5bp低い0.290%と、16年8月2日以来の0.3%台割れとなった。新発40年債は同3.5bp低い0.335%と、16年7月29日以来の水準まで低下した。』

ということで15年国債どころか20年カレントが0.2%割れで片岡審議委員様の追加緩和は熨斗を付けて達成されている訳でそらもうアヒャヒャヒャヒャというかパウエルが悪いよパウエルがというこの有様。


・・・・・・・とまあこうなりますと、超長期のフラットニングもどう見てもいつか見たナイトメアなのでございますが、それはそれと致しまして10年▲0.170%とかこれは0%±0.2%に遂にアタックですよという流れな訳ですわな。

でもって会見については(まあ今回は一応チェックしてましたけど)今日質疑応答が出てくるので詳しくはそれを受けて週明けにでもという感じではありますが、質問が追加緩和に関する話が沢山あった中で、市場が盛大に反応したのが先ほどのロイターさんの債券市況のヘッドラインにありますように・・・・・・・・

『<16:05> 長期金利が-0.185%に低下、日銀総裁発言に反応
 
夜間取引の国債先物が黒田東彦日銀総裁の発言を受けて、上昇している。先物中心限月9月限は一時154円11銭まで上昇した。10年最長期国債利回り(長期金利)はマイナス0.185%と、2016年8月以来の水準まで低下した。黒田日銀総裁は会見で、「物価目標のモメンタム損なわれれば、ちゅうちょなく追加緩和を検討」とした上で、「長期金利の変動幅を過度に厳格に捉える必要ない、弾力的な対応が適当」と発言した。現在、長期金利のゼロ金利目標からプラスマイナス0.2%程度としている許容変動幅を事実上、広げることを示唆したと市場では受け止められる可能性がある。』(この小見出し最初のURL先ロイター記事より)

>長期金利の変動幅を過度に厳格に捉える必要ない、弾力的な対応が適当
>長期金利の変動幅を過度に厳格に捉える必要ない、弾力的な対応が適当
>長期金利の変動幅を過度に厳格に捉える必要ない、弾力的な対応が適当

キターーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーー!!!

ということでキタコレで先物154円台に乗せるわ10年▲18.5bpになるわとアヒャヒャヒャヒャという感じではございますが、その後イールドカーブとか金利水準の話になった時に微妙に牽制ともとれる発言があったのとか(たしか少し米金利も戻していた気がするが忘れた)があったのでその後153円台に戻したりはしていますが、長期の▲20bpを止めに行くわけではない、というのを示した格好。


今日は中期長期対象の輪番が予定されていまして、昨日の引けの時点ですとさてあと3毛行けば10年▲20bpですけれども米国市場次第ではここをオラオラオラとトライしに行った時に長期輪番減額とか札を切る(現行の制度上別に輪番は買い入れ予定額を募入する必要はなくて、落札金利が実勢から著しく乖離していると日銀の調節担当部門が判断すれば、適宜募入金額を減額することが出来る(要はレートを途中で切れる)という精度になっている)とか、そういうのを試しに行く展開も予想されますし、まあ今日じゃなくても今後普通にアリエールな話なわけよ。

然るに、昨日の会見でこのようなお墨付き(そもそも20bpというのもディレクティブに明示されたものでは無いのですが、そうは言いましても会見で±10の倍とか言ったのでそれがお墨付きっぽくなっているのは事実)が出てくださいましたので、これで今日慌てて長期輪番を減額する必要もないですし、まあ為替が別に輪番に反応するとも思えませんが、米国がこの有様でドル安に振れやすい中、輪番減額とドル円をリンクしたような事態を起こすこと自体が日銀にとってリスクになる(個人の感想です)と思われる中ですし、もっとそもそも論を言い出すと、先般来申し上げていますように輪番減額したのは良いんですがオーバーシュート型コミットメントとの関係でここから輪番減らすにしても年間一桁兆円の前半位しか減らせないんじゃネーノ(個人の勝手な推測です)ともろもろ有りまして、YCCの許容幅とのコンフリクトで調節部署泡を吹くという展開になりそうだったのを綺麗に回避することが出来て調節部署もニッコリ(個人の妄想です)という所ですな、うんうん。

しかも(まあそうなってくれるかどうかは知らんけど)こうやってどさくさに紛れて±20の形骸化が少し進んだ訳でして、出口、というよりも弊害防止とかマイナス金利撤回とかになるようなとき(黒田さんの時にそれが起きるとは中々思いにくいけど今のところ)にはYCCと言いつつも金利を無理くり止めに行かなくても済むかもしれない(かもしれない、と言ってるのは多分急騰の方は止めるんだろうなあと思うから)というメリットも発生してこれはドサクサ紛れにイイハナシダナーという所ではあります。

まあ詳しくは会見要旨と共に。


〇米国カツアゲェ・・・・・・・・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/idJPL4N23R4JE?il=0
2019年6月21日 / 05:08 /
米金融・債券市場=米10年債利回り、2年半ぶりに2%割れ

30年債 2.5258% 前営業日終値 2.5400%
10年債 2.0043% 前営業日終値 2.0270%
5年債 1.7497% 前営業日終値 1.7680%
2年債 1.7427% 前営業日終値 1.7660%

https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL4N23R4KA?il=0
2019年6月21日 / 05:28
米国株式市場=S&P最高値で終了、来月にも利下げとの観測で

・・・・・とまあそういうことのようですが、今朝はそうでもないですけど昨晩って2年の金利が物凄い勢いで低下していまして、あのーすいません50bpしか利下げしないと2年の1.76%ってブレークイーブンしないんですけど大丈夫ですかという風情になっておりまして、カツアゲ相場にも程があるというこの展開に落涙を禁じえません。まあ祭りだ祭りだという奴で今回のお祭り会場はこちらってもんですからそらもうシャーナイナイ。

でもってまあこうなりますと、やれG20だやれ雇用統計だというのがありますが、パウエルが利下げをする理由にならない経済指標がボンボン出てきて、ついでに通商問題が悪化しなかったり改善したりする方がFRBの梯子が盛大に外されるので面白い(不謹慎)ので、どうせならここから先は強い経済指標と貿易協議の進展でパウエルがどうなるかというのを見てみたい所ではありますなマッタクモウ。






2019/06/20

お題「市場の反応を見ず(マジです)にFOMCレビュー」

おじいちゃん4時に起きれた(天気のせいで思ったより暗いわ)ので時間に余裕があるから、今日は他の何のページも見ないでニュースも聞かないで作ってみるとこうなります、という新機軸にチャレンジしてみる。

#いつもは極力聞かないで比較だけしてから何となく市場がこう反応するだろうなあと想像してから市場のリアクションを見る、で駄文書きというメソッド

声明文
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190619a.htm

SEP
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20190619.pdf

記者会見の冒頭ステートメント
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20190619.pdf


前回分はこちら
声明文(5月)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190501a.htm

SEP(3月)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20190320.pdf


〇声明文比較:不確実性の拡大と市場のインフレ期待低下を理由にしておりますな

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190619a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190501a.htm(前回)

・第1パラグラフ:現状判断は下がっているが拡大判断維持

『Information received since the Federal Open Market Committee met in May indicates that the labor market remains strong and that economic activity is rising at a moderate rate.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in March indicates that the labor market remains strong and that economic activity rose at a solid rate.』(前回)

総括判断は下がっていまして、労働市場は強いというのは同じですが、経済活動については従来のソリッドレートからモデレートレートに下げているのですな、とはいえ経済活動が拡大していることには変わらないのですけどね。

『Job gains have been solid, on average, in recent months, and the unemployment rate has remained low.』(今回)
『Job gains have been solid, on average, in recent months, and the unemployment rate has remained low.』(前回)

よって雇用絡みは文言変更なし。

『Although growth of household spending appears to have picked up from earlier in the year, indicators of business fixed investment have been soft.』(今回)
『Growth of household spending and business fixed investment slowed in the first quarter.』(前回)

家計についての判断はしらっと上がっているのですが、企業支出の判断がスローからソフトという微妙な表現変化になっていますが、この後出てくる話から勘案すると、これは現状判断を引き下げていると見るのが妥当かと思われます。

『On a 12-month basis, overall inflation and inflation for items other than food and energy are running below 2 percent. Market-based measures of inflation compensation have declined; survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed.』(今回)

『On a 12-month basis, overall inflation and inflation for items other than food and energy have declined and are running below 2 percent. On balance, market-based measures of inflation compensation have remained low in recent months, and survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed.』(前回)

物価については引き続きrunning below 2 percentでパッとしませんなあというのに加え、今回は市場ベースのインフレ期待について、もともと低いというこれまでのアセスメントから「低下した」ということでここもまあ後の方で説明のポイントにはされている感じでした。


・第2パラグラフ:利上げにpatientさようなら、必要ならば利下げこんにちわ

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

これはいつもの呪文。

『In support of these goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 2-1/4 to 2-1/2 percent.』(今回)
『In support of these goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 2-1/4 to 2-1/2 percent. 』(前回)

金利据え置きは金利据え置き。

『The Committee continues to view sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective as the most likely outcomes, but uncertainties about this outlook have increased.』(今回)

『The Committee continues to view sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective as the most likely outcomes.』(前回)

はいはいキタコレキタコレという感じですが、今回いつもの文言に加えて「but uncertainties about this outlook have increased」と従来考えている経済物価見通しシナリオに関してその不確実性が高まった、というのが入って来まして、まあ皆様もこの理屈で来るじゃろと思っておられたと存じますので、お約束のが入りましたというところですし、まあ今回はこの理屈で行くしかないですから順当オブ順当。

『In light of these uncertainties and muted inflation pressures, the Committee will closely monitor the implications of incoming information for the economic outlook and will act as appropriate to sustain the expansion, with a strong labor market and inflation near its symmetric 2 percent objective.』(今回)

『In light of global economic and financial developments and muted inflation pressures, the Committee will be patient as it determines what future adjustments to the target range for the federal funds rate may be appropriate to support these outcomes.』(前回)

今後の政策に関する部分では先ほど申し上げましたようにfuture adjustmentsに対してpatientという正常化利上げコースの話から、今回は will act as appropriate to sustain the expansionと言っているので、それはまあ普通の人間が読むと「金融緩和の必要があれば金融緩和を行います」という説明になりました(なお無茶苦茶屁理屈を捏ねれば、sustain the expansionの為には緩和でブーストし過ぎるのはイクナイので正常化、というアクロバットロジックを飛ばすことは可能は可能ではありますが、まあそんなスカタンなことはしないでしょ)ので方向性は利下げするか現状維持か、という話になりますが、まあこの辺は既に市場ちゃんが散々カツアゲをしているのでこれが出てきても既存予定通りってところでしょう。


・第3パラグラフ:資産買入に関する部分は変更なしなのでAPPランオフの方はそのまま

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(今回)

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(前回)

ご覧の通り全文一致、特にランオフを前倒しで終わらせるみたいなのは考えていないようですし、まあ先般のミニッツで将来の政策余地考えたらランオフした後のポートフォリオ構成って短期化しておいた方がエエンチャウノみたいな話もあったくらいですから、手前でランオフを止めてしまうと、将来APPを政策ツールにしたいときに発動余地が小さくなることは避けるということですし、金利ツールで行けるうちは金利でやるってことでしょうな、まあ順当オブ順当。


・第4パラグラフ:変態仮面ブラード先生ですが利下げ幅が小さい、やりなおし

票決である。

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; Richard H. Clarida; Charles L. Evans; Esther L. George; Randal K. Quarles; and Eric S. Rosengren.』(今回)

『Voting against the action was James Bullard, who preferred at this meeting to lower the target range for the federal funds rate by 25 basis points.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Richard H. Clarida; Charles L. Evans; Esther L. George; Randal K. Quarles; and Eric S. Rosengren.』(前回)

ということで前回据え置き賛成だった変態仮面ブラード先生は目立ちたがり屋の本性を遺憾なく発揮して利下げ主張して反対しているのですが、利下げ幅が25bpというのは変態仮面にしては中途半端にも程がある訳でして、ここは50bpで出してこそ稀代のエンターテイナー変態仮面の名を欲しいままにすることが出来る(そんなのは要らないですかそうですか)のであって、砲撃に火力が足りないのでやり直しですなやり直し(^^)。


・・・・・・・ということで声明文に関しては、この先が「必要ならば利下げ」だし「不確実性強調」だからこの程度のものでも十分というか、まさか不確実性、しかもそれが金融ショック的なものならば経済ハードデータ見る前に予防利下げとか普通の話ですけど、要因がホワイトハウスのパツキンヅラのクソジジイという時点で予防的利下げとかさすがにやる理屈がちょっと難しいので、ハードデータをもうちょっと見るということになるかと思います(だから7月予告ホームランも声明文には入れにくい)が、まあこういってとりあえず状況の好転を待つし、まあその間に経済がコケ気味になったら追加緩和でっせ、となりますよ、という感じの声明文になっています。ほかの物件はまた別のものだったりするのでそれはこの次。

しかしまあ何ですな、状況がこうなってくると金融緩和のサポートによって結果的にホワイトハウスに鎮座するパツキンヅラクソジジイの傍若無人モードをサポートしているとも言えるわけで、金融政策のプリンシプルってちゃんとした経済社会政策が行われていることが暗黙の前提にあると思う訳で、そんな中で金融政策は経済物価をサポートしますって話だと思う訳でして、結果的に金融緩和が貿易問題(およびその他)で世界中に傍若無人に喧嘩売りまくりとかいう行為をサポートするのが社会的厚生に資する行為なのか、って話になると中央銀行の独立性とはみたいな話になったり、まあ色々とややこしい話になると思うのですが、ビューローとして結果的に馬鹿政策のサポートをするというのが何だかなあとは思わないのかな、って感じるのでした(個人の感想です)。


〇SEP:見通しは大して変えていないのにドットプロットが盛大に利下げとかワロスワロス

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20190619.pdf(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20190320.pdf(前回3月)

Economic projections of Federal Reserve Board members and Federal Reserve Bank presidents under their individual assessments of projected appropriate monetary policy, June 2019
Advance release of table 1 of the Summary of Economic Projections to be released with the FOMC minutes

ということで、引用の方は引用しやすいHTML版(https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20190619.htm)の方から行います。つーても数字ひろってくるだけですが。

手抜きなのでMedianしか引用しません。
数字は左から2019年、2020年、2021年、ロンガーランでしゅ(PCEコアはロンガーランなし)。

Change in real GDP
今回:2.1 2.0 1.8 1.9
前回:2.1 1.9 1.8 1.9

Unemployment rate
今回:3.6 3.7 3.8 4.2
前回:3.7 3.8 3.9 4.3

PCE inflation
今回:1.5 1.9 2.0 2.0
前回:1.8 2.0 2.0 2.0

Core PCE inflation
今回:1.8 1.9 2.0
前回:2.0 2.0 2.0

となっておりまして、成長予測は変わらず(ちなみにめんどいから引用とばしていますけどCentral tendencyを見たら寧ろ上がっております)、失業率は下がっているのですが、これはロンガーランの方も同じだけ下がっているので、自然失業率に対する乖離から出てくる需給ギャップの推測とかいうような政策論の話に関連する部分では差し引きチャラみたいなもん。でもって物価ですけれども、PCEヘッドラインはこれまた手前が若干下がっていますが、先の方が著変している訳でもないのと、コアはそんなに下がっていないという事で、これまた見通しがそんなに下がっている訳ではないのですな、その一方で・・・・・・・・・・・

Figure 2. FOMC participants' assessments of appropriate monetary policy:
Midpoint of target range or target level for the federal funds rate

こちらの方はHTML版引用した方が読みにくいのでアタクシのお手製集計でゴーということですが、もはや2020年の金利予想とかマジでどうでも良いステージになっている(目先の金利上げ下げの方が焦点になっているのでその先のドットを見ても正直あまり見るものは無い)ので2019年とロンガーラン(は中立金利なのでこれは見る)を確認。

2019年末の政策金利見込み

前回

現状維持:11人
1回利上げ:4人
2回利上げ:2人

今回

1回利上げ:1人
現状維持:8人
1回利下げ:1人
2回利下げ:7人
(なお2回利下げの意味は当然ですが50bpなので一発50bpというのもこれに含まれるでしょう)

ということで笑ってしまうしかない利下げ見通しキタコレになっておりまして、まあこれを評価するとなりますと、年内50bpまでの利下げのプロバビリティーは上がったでしょ、とは思う(ただし実際に利下げするとなると理屈をちゃんと組んでおかないと連続利下げを織り込みに行かれてしまって更にハンドリングが出来なくなるリスクが高いと思う、まあ今のところはステートメントやSEPの見通しの部分で連続利下げまでは織り込ませないような感じになっているけど)ので、これ見せられたらまあとりあえず75bp位の利下げを織り込む勢いだった2年金利とかは微妙かも知れんが、そんなに市場が失望するこたあねえだろ(なお会見の冒頭ステートメントも降参モードなのでそっちの要因も効くと思う)とは思いました。

ただし、このドットチャートですが、2020年、2021年も(あんまりあてにならんとは言え)足元から50bp下げのドットの人たちはそれ以上の下げをしていない(が維持してるのが2021で5人ってのもお前らの経済物価見通しおよび中立金利との整合性どうなってるんだよと小一時間問い詰めたいけどそれはさておき)ので、75bp位までカツアゲしている向きからしたらカツアゲが足りんカツアゲが、となるのでしょうかねえ(と書きながらまだこの時点でガチで株価も為替も金利も見ないで書いているアタクシ)。

ロンガーランの政策金利水準

前回
3.50%:1名
3.25%:1名
3.00%:4名
2.75%:4名
2.50%:5名

今回
3.25%:2名
3.00%:2名
2.75%:3名
2.50%:8名
2.375%:1名

一人2.25-2.50という現状の政策金利水準が中立金利、という変な答えの人がいますがそれはさておきまして、今回は明確に「今の政策金利水準がロンガーランの金利水準ですな」というのが過半数確保という感じになりまして、現状の金利が中立金利で、経済は潜在成長率を若干上回る成長を続け、失業率は自然失業率をそこそこ下回る水準で今後2年間推移する(3年目の成長は潜在から若干下)という見通しになっているのに、何でお前ら利下げ予想なんやねんという話で、整合性が全然取れていないのですが、まあ「不確実性が高いけれども現状は若干の減速程度の反応しかしてません」って状態なのだからこういうのになるのはシャーナイナイではあるんですが、なんかもうSEPとかドットプロットとか整合性がグダグダになるので、少なくともドットプロットは出すの止めた方が良いと思いますな。


〇冒頭ステートメントも(早起きしたので)読んでみた

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20190619.pdf
Opening Statement
Transcript of Chair Powell’s Press Conference Opening Remarks June 19, 2019

時間がだいぶ押してきたのでちょっとザックリ目になるかもしれませんすいませんすいません。

『CHAIR POWELL: Good afternoon, and welcome. My colleagues and I have one overarching goal: to sustain the economic expansion, with a strong job market and stable prices, for the benefit of the American people.』

これはただの挨拶。

『At the Federal Open Market Committee (FOMC) meeting that concluded today, we maintained our policy interest rate, but made some significant changes to our statement.』

さっき見ておりました声明文ですが、「some significant changes to our statement」だそうな。

『Since the beginning of the year, we have judged that our current policy stance was broadly appropriate, and that we should be patient in assessing the need for any changes.』

ほーん。

『In light of increased uncertainties and muted inflation pressures, we now emphasize that the Committee will closely monitor the implications of incoming information for the economic outlook and will act as appropriate to sustain the expansion, with a strong labor market and inflation near its 2 percent objective.』

声明文の所にあった通りで「正常化に向けて調整」から「経済拡大のサポートのために必要な時は行動」にジョブチェンジ、と申しましてもまあその辺の話は先月末から今月頭にかけて散々出ていたし、市場はカツアゲモードに入っているから、これでどうという事は無いでしょう。

というか、緩和方向って別に地均しする必要ない訳でして、地均しなんぞ下手にしたら先に全部織り込みに行った挙句に更にクレクレ状態になってしまうから、そういう点でパウエルFRBってアホとちゃうかとは思うんですが、それはさておきこの続き。

『I’d like to step back and review how the changing economic and financial picture brings us to today’s decision.』

ほう。

『So far this year, the economy has performed reasonably well, with solid fundamentals supporting continued growth and strong employment. Inflation has been running somewhat below our objective, but we have expected it to pick up, supported by solid growth and a strong job market. Along with this favorable picture, we have been mindful of some ongoing crosscurrents, including trade developments and concerns about global growth. At the time of our last FOMC meeting, which ended on May 1, there was tentative evidence that these crosscurrents were moderating. The latest data from China and Europe were encouraging, and there were reports of progress in trade negotiations with China. Our continued patient stance seemed appropriate, and the Committee saw no strong case for adjusting our policy rate.』

クドクドと状況説明というか言い訳というかをしていますが、5月頭のFOMCまでは経済物価状況の好調さが続いていて、先行きの不透明要因の筆頭格となる貿易問題も何か良い感じになってきたので、先行きの金融政策に関しては上下ともにペイシャントなスタンスでよろしかったんです、とか抜かしておりまして、

『In the weeks since our last meeting, the crosscurrents have reemerged. Growth indicators from around the world have disappointed on net, raising concerns about the strength of the global economy. Apparent progress on trade turned to greater uncertainty, and our contacts in business and agriculture report heightened concerns over trade developments. These concerns may have contributed to the drop in business confidence in some recent surveys and may be starting to show through to incoming data. Risk sentiment in financial markets has deteriorated as well. Against this backdrop, inflation remains muted.』

先般のFOMC決定以降に悪化要因が拡大しまして、海外経済の経済指標が失望的で海外経済への先行き懸念が起きたり、貿易協議の先行きがますます不透明になったりして、その結果各連銀からは企業や農業関係者からの先行き懸念が聞かれるようになり、いくつかのサーベイではコンフィデンスの悪化として表れている。金融市場のリスクセンチメントも悪化している(ってのはさすがにお前は何を言ってるんだという感じですがそれはさておき)し、そんな背景の中で物価はあまり強くないですな、という言い訳なのでした。

『While the baseline outlook remains favorable, the question is whether these uncertainties will continue to weigh on the outlook and thus call for additional monetary policy accommodation. Many FOMC participants now see that the case for somewhat more accommodative policy has strengthened. Let me explain the basis for this judgment, starting with the outlook for jobs and growth. 』

ということで、ここで「additional monetary policy accommodation」を明言しているので、まあ市場ちゃんは満足はしたんじゃネーノ(まだ市場の反応をみていない)とは思うのですが、ここからの課題はこの不確実性が継続していくかどうか、そしてその結果として経済物価情勢の先行き見通しが悪化するかどうか、でもってその悪化が追加金融緩和を必要とするかどうか、ということが今後の焦点、って話ですから、まあ追加緩和するかしないか、という方向性になっている訳ですが、本来ならこれで市場ちゃん特に不満は無いと思うのですけれども、問題なのは事前に散々地ならしをするという間抜けプレイをしていることなんですよね・・・・・・・・

でもって判断の背景がどうのこうのゆうてるのでみてやろうじゃないの。

『Participants see unemployment remaining low this year and next. Monthly job gains in May were lower than expected, however, and in light of recent developments this bears watching. Still, many labor market indicators remain strong. Community, business, and labor leaders all tell us that the prospects for job seekers have seldom been better, and that this is true even for those who have traditionally struggled to find work. Wages are rising, and this is particularly so for lower-paying jobs.』

雇用情勢と賃金情勢の話はどう見ても威勢が良いんですが。

『Committee participants’ growth projections from 2019 are little revised from March, with a central tendency of 2.0 percent to 2.2 percent, just above their estimates of longer-run normal growth rate. The growth projections for the year as a whole mask some important details about the composition of growth. Annual growth will be boosted by the surprisingly strong first quarter, which had just been reported at the time of the May FOMC meeting. As I noted then, the unexpected strength was largely in net exports and inventories--components that are not generally reliable indicators of ongoing momentum. The more reliable drivers of growth in the economy are spending on consumption and business investment. While consumption was weak in the first quarter, incoming data show that it has bounced back, and is now running at a solid pace.』

成長率見通しに関してはSEPの数字を出していまして、コンポーネントの話をしているんですが、1Qの成長率がサプライズに良かったのはネット貿易と在庫なので割り引いて見る、むしろ先行きのモメンタム見るには消費支出と企業投資を見ていくのが良い、というような感じで、現状の強さに留保を置いた説明をしていますが、ここまでの部分で全体的に見てそんなにここから大コケみたいな話はしていない(というかそれなら今追加緩和だし)。

『In contrast, the limited evidence available at this time suggests that growth in business income has slowed in the second quarter. Moreover, manufacturing production has posted declines so far this year. Thus, while the baseline outlook remains favorable, many FOMC participants cited the investment picture and weaker business sentiment, and the crosscurrents I mentioned earlier, as supporting their judgment that the risk of less favorable outcomes has risen.』

ただし2Qの企業収益の伸びが弱まっており、鉱工業生産が弱まっている、という指摘をしていて、ベースラインシナリオは引き続き順調な成長を見込むが、さきほど言及した阻害要因に関して今後の大きなリスクになるのかどうかを見ていく必要がある、という説明。

『After running close to our symmetric 2 percent objective for most of last year, inflation declined in the first quarter. Data since then show some pickup. Participants broadly see inflation moving back up toward our 2 percent objective, but at a slower pace than had been expected. The central tendency for 2019 core inflation--which omits volatile food and energy components--is between 1.7 and 1.8 percent. 』

ここから物価の話。この部分は現状の話とSEPの2019年でのコアPCEの見通しについて。

『Setting aside short-term fluctuations, Committee participants expressed concerns about the pace of inflation’s return to 2 percent. Wages are rising, as noted above, but not at a pace that would provide much upward impetus to inflation. Moreover, weaker global growth may continue to hold inflation down around the world.』

見通しの話ですが、これもSEPの方では何か別に大問題ある感じの見通しになっていませんが、こちらの説明では「Committee participants expressed concerns about the pace of inflation’s return to 2 percent」と説明していて、物価の上昇率が中々伸びないことについて懸念を示しているFOMC参加者がいますよ、とハト的な説明をしています。

『We are firmly committed to our symmetric 2 percent inflation objective, and we are well aware that inflation weakness that persists even in a healthy economy could precipitate a difficult-to-arrest downward drift in longer-run inflation expectations. Because there are no definitive measures of inflation expectations, we must rely on imperfect proxies. Market-based measures of inflation compensation have moved down since our May meeting and some survey based expectations measures are near the bottom of their historic ranges. Combining these factors with the risks to growth already noted, participants expressed concerns about a more sustained shortfall of inflation.』

でもってインフレ期待の話。インフレ期待に関してはリアルタイムで正確には分からんのだが、まあ説明の通りで出ている数字自体そんなに強くはないので、これまた最後の一文「Combining these factors with the risks to growth already noted, participants expressed concerns about a more sustained shortfall of inflation.」というので、ハト的な説明になっています。

『Overall, our policy discussions focused on the appropriate response to the uncertain environment.』

てな訳でまとめに入りますが、我々の議論は「不確実な環境下での適切な政策レスポンス」とかキタコレですね。

『The projections of appropriate policy show that many participants believe that some cut in the federal funds rate will be appropriate in the scenario that they see as most likely.』

このため自分の先行きシナリオから考えると利下げが適切という人が登場しておりますよドットチャートにある通りですな、だそうな。

『Though some participants wrote down policy cuts and others did not, our deliberations made clear that a number of those who wrote down a flat rate path agree that the case for additional accommodation has strengthened since our May meeting.』

据え置き主張した人と利下げ主張した人がいますが(と1名利上げ主張している人が完全にハブられているのが笑えますが)、いずれにせよ「5月1日のFOMC時点よりも、先行きの金融緩和が必要になる可能性が高まった」という点では我々の議論の中で明確になった、だそうです。

『This added accommodation would support economic activity and inflation’s return to our objective.』

ふーん。

『Uncertainties surrounding the baseline outlook have clearly risen since our last meeting. It is important, however, that monetary policy not overreact to any individual data point or short-term swing in sentiment. Doing so would risk adding even more uncertainty to the outlook. Thus, my colleagues and I will be looking to see whether these uncertainties will continue to weigh on the outlook. And, we will use our tools as appropriate to sustain the expansion.』

最後の所の「重要なことは金融政策が個別のデータポイントや短期的なセンチメントのスイングに対して過剰反応しないようにすることだ、もし過剰反応してしまえば、経済物価の先行き見通しをより不確実にしてしまう(キリッ)」とか言ってるのはお前が言うな以外の何物でもなくて、ブーメランが武蔵坊弁慶仁王立ちという感じになっているようにしか見えませんが、まあこういう説明をしているのは、「そうは言いましても7月予告ホームランではありません」と言いたいのかもしれんし、ただの自虐なのかは会見の質疑の方でまたあるのかもしれません。

『Thank you. I will be pleased to take your questions. 』

さすがにこの先までは無理(まあ質疑応答は早くて今晩遅くて明日にならんと出ないと思うが)なので勘弁。

・・・・・・結局市場の反応見ないままで全部作ってしまいました(マジ)。株は素直に上がって債券はややツイスト気味にフラットドル円は結果が概ね予想の範囲内だから横ばい108円半ばとか?

#と書いてから答えを見ました、うーん株高しか当たらんか織り込み度合いと先の期待が。









2019/06/19

お題「ドラギ先生の畜生講演ェ・・・・・・・・・」

はい?
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-06-18/PTB2JH6TTDS401?srnd=cojp-v2
ホワイトハウス、パウエル議長解任の適法性を模索した−関係者
Saleha Mohsin、Jennifer Jacobs
2019年6月19日 4:35 JST

『ホワイトハウスは2月に、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長を降格させることの適法性を模索していたと、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。この少し前には、トランプ大統領がパウエル氏解任を検討していると報じられていた。関係者によると、ホワイトハウスの法律顧問の事務所では、パウエル氏から議長職を剥奪しFRB理事のみにとどめることの法的意味合いを検討した。実際に降格となれば前例のない動きとなる。FRB議長交代の場合、後任はトランプ大統領が指名し、上院が承認する必要がある。』(上記URL先より)

解任とかされる位なら死なばもろとも差し違えの精神でこの際・・・・・・・・・・


〇6月FOMCはそこまでの荒れ要素にならない筈だったのですがドラギ畜生プレイェ・・・・・・・・

確かに今週はシントラでのECBフォーラムでして、ECBフォーラムで変なのが出るという仕様があったのをうっかりしておりましたというのはあるので誠に恐縮至極ではございますが、

https://www.ecb.europa.eu/pub/conferences/html/20190617_ecb_forum_on_central_banking.en.html
ECB Forum on Central Banking 2019
20 Years of European Economic and Monetary Union
Sintra, Portugal, 17-19 June 2019

毎度この時期にシントラで実施なのですが、昨日アイヤーとなったのは、この

Tuesday, 18 June
9:00
Introductory speech
・Mario Draghi, President, European Central Bank

っていう18日の開会の辞のドラギ総裁のスピーチだったりしましてですね、上記URL先をクリックして表示されるプログラムの中の・Mario Draghi, President, European Central Bankってのの名前の所をクリックするとこちらの講演に飛びます。

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2019/html/ecb.sp190618~ec4cd2443b.en.html
Twenty Years of the ECB’s monetary policy
Speech by Mario Draghi, President of the ECB, ECB Forum on Central Banking, Sintra, 18 June 2019

でまあ20年間のECBの金融政策、というお話をしている筈なのですが、最後の方に現世利益にも程がある話がありましてですな、(以下上記URL先より引用)

最後の小見出しが『Current challenges for monetary policy』ってなっていてですな、

『In this environment, what matters is that monetary policy remains committed to its objective and does not resign itself to too-low inflation. And, as I emphasised at our last monetary policy meeting, we are committed, and are not resigned to having a low rate of inflation forever or even for now.』

という掴みにありますように、その前の部分ではこれまでの金融政策という話の中で、インフレが弱い状態が続いてきていた現状に対してECBがどのような考え方で政策対応しましたかみたいな話があるのですが、めんどいのでその辺の話はパスします。

『We have described the overall orientation of our monetary policy as being “patient, persistent and prudent”』

ほーん。
.
『Patient, because faced with repeated negative shocks we have had to extend the policy horizon.』
『Persistent, because monetary policy will remain sufficiently accommodative to ensure the sustained convergence of inflation to our aim.』
『And prudent, because we will pay close attention to underlying inflation dynamics and to risks and will adjust policy appropriately.』

3つのスローガン、“patient, persistent and prudent”ってな事のようですが、続けて起きる経済のネガティブショック(って程のショックかよ、と思うけど)に対して我々は政策のタイムホライズンを延長してきた、ってのがpatientですよって言って、persistentってのは政策の期間とかではなくて、十分な規模の緩和を行い続けているって話をしていて、prudentってのは基調的なインフレ動向について十分注意し、経済のリスクにも注意し、それによって我々は必要な政策調整を行う、と来ておりまして、もうこの時点からハト派満艦飾の状態になっているのがドラギクオリティ。

『This orientation is expressed in our current policy framework, which allows us to adapt our forward guidance and react flexibly as the macroeconomic situation evolves. That was illustrated by the monetary policy decisions taken at our meeting earlier in June. 』

という考えが6月のフォワードガイダンスなどに示されている、とか言ってまして、ついこの前はガイダンス延長をしてみたものの、TLTRO3自体は前回よりも条件を厳し目に作っていたし、物価見通しは特に引き下げることもなく、リスクについての話は強調しているものの、基本的な経済の見方は変わらん、という話をして、早期利下げとかそういう話が出てこないのでハト派成分が思ったより足りない、という評価になっていた訳ですが、いきなりこの威勢のよいハト派ラッパが出てくる、ということで結論の方は皆様ご案内の流れなのですが鑑賞を続けましょう。

『Looking forward, the risk outlook remains tilted to the downside, and indicators for the coming quarters point to lingering softness. The risks that have been prominent throughout the past year, in particular geopolitical factors, the rising threat of protectionism and vulnerabilities in emerging markets have not dissipated. The prolongation of risks has weighed on exports and in particular on manufacturing.』

先行きに関してはリスクはダウンサイドに寄っていて、この先数四半期に渡って弱めの状況が続くことを示唆する指標が出ています。でもってリスクは昨年よりも顕在化していて、特に地政学要因、保護主義の問題、新興国の脆弱性などは消えていない、リスクの長期化が輸出や製造業に悪影響を与えている、って話をしていますが、まあこれ自体はこの前のECB定例理事会での冒頭ステートメントや会見で示されているのと同じなのでそこまでビビる話ではないのですが・・・・・・・・・

『In the absence of improvement, such that the sustained return of inflation to our aim is threatened, additional stimulus will be required. 』

キターーーーーーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

ということで、これが思いっきりベンダーヘッドラインに出てドイツ10年国債はレコードロー(金利の)を更新ですよ、という話なんですが、これベンダーヘッドラインだと「improvementが無ければ追加緩和」というノリだったと思うのですが、よくよく見ると本来の部分は「the sustained return of inflation to our aim is threatened」になっていて、持続的に物価が2%に戻るパスの展望が損なわれる時には追加緩和、という文章になっているように見えるのですが、まあこれはドラギ俊彦先生の毎度おなじみインチキスキームでして、以下の部分を見ますとハト派色を全開で打ち出すためにこの話をしたのは明らかであると思われますので、そういう意味ではハト派なのですが、ハト派満開の話をしながらもどさくさに紛れて「持続的に2%に物価が戻るパスの展望が損なわれる時には追加緩和」とよくよく考えたら当たり前の話をしているだけで、不透明要因が解除されなかったら緩和するとは言っていないので、後で逃げを打つのは可能なような、完全な決め打ちになっていない、というのがドラギ俊彦先生の狸っぷりを遺憾なく発揮しています。

まーよく考えてみればドラギ総裁も任期というのがある訳ですし、先行きの政策に関してあまりガチガチな話が出来ないので、こういう逃げが可能な言い方をしないといけないんでしょうが、しかしそういう逃げを入れておいてもこうやってハト感を思いっきり出すのがドラギ中々の畜生。

『In our recent deliberations, the members of the Governing Council expressed their conviction in pursuing our aim of inflation close to 2% in a symmetric fashion. Just as our policy framework has evolved in the past to counter new challenges, so it can again. In the coming weeks, the Governing Council will deliberate how our instruments can be adapted commensurate to the severity of the risk to price stability.』

どのようにすれば我々の政策ツールが物価安定に対するリスクのシビアさに対して適切に対応することができるかどうか、という事に関して今後数週間で政策委員会は討議をするそうですが、次回の政策決定会合が7月25日なので、如何にも7月に向けて準備しますと言わんばかりのこの威勢のよさ。

『We remain able to enhance our forward guidance by adjusting its bias and its conditionality to account for variations in the adjustment path of inflation.』

『This applies to all instruments of our monetary policy stance.』

『Further cuts in policy interest rates and mitigating measures to contain any side effects remain part of our tools.』

などと並んでいまして(この次に資産買入もあるのですが長いので一旦ここでコメントを入れてみました)、ツールはこんなにあります(キリリッ)という話をする中で、どこぞのベンダーはFurther cuts in policy interest ratesの所が思いっきりハイライトされてヘッドラインに載っているもんですからそらもうユーロは下がるわドイツ金利は下がるわという事になるんですよ。

でもって割とチャーミングなのは、レートカットの中に並べてmitigating measures to contain any side effectsってことで「副作用を軽減する手段」というのをandで繋いでいることで、利下げと同時に何らかの副作用軽減策をぶっこみます、というような話をしている時点で、「もしかしてそれはリバーサルレート問題に抵触しているのではないか」とツッコミを入れたくなるようなところではありますし、まあ薄々なのか思いっきりなのかは存じませんけれども、金利引き下げも実を言えば下げて効くのか問題に漂着しているのはドラギ総裁ご一行も理解しているんだろうなーとは思います。

で続いての手段で資産買入(APP)ね。

『And the APP still has considerable headroom. Moreover, the Treaty requires that our actions are both necessary and proportionate to fulfil our mandate and achieve our objective, which implies that the limits we establish on our tools are specific to the contingencies we face.』

ほーん。

『If the crisis has shown anything, it is that we will use all the flexibility within our mandate to fulfil our mandate - and we will do so again to answer any challenges to price stability in the future.』

って言ってるんだがそんな資産買入で危機脱出みたいな「危機」って起こるのかよ、とか平和ボケのアタクシが申し上げてみるのだが・・・・・・・・・・・・

『All these options were raised and discussed at our last meeting.』

確かに質問でそういうの無かったから答えていなかったというのはあるかもしれませんが、前回の会合ではこれらの政策ツールオプションに関して討議されました、とか今更言われましてもという感じではありますけれども、とは思うのですがまあハト派全開スピーチをする、ってコンセプトなので致し方なし。

『What matters for our policy calibration is our medium-term policy aim: an inflation rate below, but close to, 2%. That aim is symmetric, which means that, if we are to deliver that value of inflation in the medium term, inflation has to be above that level at some time in the future.』

これは物価目標が中期的だから短期的に多少のブレはあるでよ、という当たり前ちゃあ当たり前の話になりますが、ここで言いたいのは物価が多少上がったからと言っても政策を調整する訳ではない、つまり2%は上限ではなくてシンメトリックターゲットに割と近いんでちょっと良くなったからと言って政策調整を急がないよ、という話をしていると見ました。この辺からは現世利益話から離れだす。

『But fiscal policy should play its role. Over the last 10 years, the burden of macroeconomic adjustment has fallen disproportionately on monetary policy. We have even seen instances where fiscal policy has been pro-cyclical and countered the monetary stimulus.』

財政政策についてですな。

『If the unbalanced macroeconomic policy-mix in the euro area in part explains the slide into disinflation, so a better policy mix can help bring it to a close. Monetary policy can always achieve its objective alone, but especially in Europe where public sectors are large, it can do so faster and with fewer side effects if fiscal policies are aligned with it.』

財政政策と金融政策のポリシーミックスのバランスが大事なんですと。

『Recreating fiscal space by raising potential output through reforms and public investment, and respecting the European fiscal framework will maintain investor confidence in countries with high public debt, low growth and low fiscal space. But as fiscal expansion in the other countries may have limited spillovers, national fiscal policies remain constrained. So work on a common fiscal stabilisation instrument of adequate size and design should proceed with broader scope and renewed determination.』

ただし、財政吹かせという話をしている訳ではなくて、財政健全化を維持しつつ財政発動の余地を作って、それをもって有効な財政政策、という話になっているのはEUしぐさなのでまあそうなるな、ということでこの辺の話は先ほどの現世利益路線から離れておりまする。


・・・・・・・・ということでですな、まあ一応適宜逃げ道は用意しているので、これをもって早期利下げがダンディールという話ではない(何か市場金利ちゃんの方はさっそく預金ファシリティ引き下げヒャッハー(またはアイヤー)になっていたみたい、というのだけは夕方確認した)のですが、盛大に緩和的なトークだけはぶっこんできましたという所で、先般のECB定例会合での会見があまりハトっぽくなかったと市場が評価したことに対して、この機会にそれを修正しようって話なのかもしれませんが、それにしてもFOMCを直前に控え、しかも米国市場が金融緩和カツアゲ相場になっているという中であり、その中でもやっと「まあ6月は利下げしなくても勘弁したるわ」となってきたこのタイミングでドラギがハト派丸出しで追加緩和を辞さずという講演をぶっこんで来る、というのは流石は人の迷惑顧みずのぐうの音も出ない畜生プレイキタコレという感じでございまして、ドラギ俊彦先生の畜生振りに落涙を禁じ得ないという所ではございます。


ということで今晩のFOMCが楽しみになって参りましたし、時あたかも夏至の時期になりますので(今週末でしたっけ)特に日本の東の方では朝もはよから煌煌と明るくて読み物もはかどりますなあ(アタクシが3時4時に起きるとは言っていないので念のため申し添えます^^)という感じではございますな、うんうん。

でもってそのFOMCなのですが、まさかのドラギ総裁からのフレンドリーファイヤーキタコレという事でして、市場にホワイトハウスにECBからまで利下げ催促されるという攻撃になってしまいまして、とは言ってもさすがに今利下げするのは中央銀行の理屈構成から考えるとちょっと無い(これで景気悪化の兆候みたいな指標が並んでくればまだ別なのですがハードデータが控えめに言ってもまちまち程度にしかなっていないのに利下げとか何ぼ何でも余程飛んでもないネタを引っ張ってこないと無理がある)ので、「将来の緩和の可能性を示唆」でお茶を濁すしかないですし、まあそれが出てくれば市場は別に失望はせんじゃろと思うので、そこまでの波乱にはならんとは思うのですが、わざわざFOMCがおっぱじまろうかという所でドラギ先生の見事な砲撃が着弾するとかいうのに最早笑ってしまうしかありませんな。

#昨年12月の再来でパウエルが会見でチョンボして株が下がって追加緩和に追い込まれる、というのが一番間抜けですがまあさすがにそれは・・・・・・・・・


〇その他関連メモだけで勘弁

ということでドラギ俊彦先生の畜生フレンドリーファイヤーがありまして、最初のマクラの所にあったパウエル解任ネタって、これだけカツアゲを食らった挙句の解任検討なわけで、カツアゲされて着てた服を川に流されて河原でパンツ一丁で泣き崩れているパウエル君の図とか想像して(想像しなければ良いのではという気がしますがそれはさておき)悲しくなりますが、パウエル解任検討のただの報道にドラギだけで雨株がそこまで上がる訳でもなかったので備忘メモ替わりに。

https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL4N23P403?il=0
2019年6月19日 / 05:29
米国株式市場=大幅上昇、米中通商協議や米利下げに対する期待で

『[18日 ロイター] - 米国株式市場は大幅上昇して取引を終えた。年内の米利下げに対する期待感の高まりに加え、米中通商協議再開を巡るトランプ米大統領の発言を受け、センチメントが改善した。』(上記URL先より)


https://jp.reuters.com/article/us-china-g20-idJPKCN1TJ1XP
2019年6月18日 / 23:54
米中首脳会談、G20で実施 通商巡る事前協議開始=米大統領

『[ワシントン 18日 ロイター] - トランプ米大統領は18日、中国の習近平国家主席と電話会談を行ったことを明らかにし、米中首脳会談を今月末に大阪で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)に合わせて実施すると述べた。首脳会談に先立ち両国は通商問題を巡る事前協議を開始する。

トランプ大統領はこれまでに、対中関税を「少なくとも」さらに3000億ドル分上乗せする可能性があるとし、G20首脳会議後に決定すると表明。G20開催中に米中首脳会談が実現することで、追加関税措置の発動の公算は小さくなった。

トランプ大統領は「習主席と非常に良い電話会談を行った。来週に日本で開催されるG20首脳会議の際に引き続き会談を行う。これに先立ち、われわれの代表団は(通商問題を巡る)事前協議を実施する」とツイッターに投稿した。』(上記URL先より)

と言ってもトランプの威勢のいい話はどこまで信用できるのかというのはありますが、一々飛びつきたくなるというのもまあ市場心理なので致し方なしですな。








2019/06/18

お題「スイス中銀のターム金利誘導って何だったんだっけというマニアックネタを突然ですが投下します」

ほーん。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20190617/0031370.html
老後いくら必要? セミナー人気
06月17日 19時30分

でまあそういうのを見ると例の報告書のメンバー(報告書の受け取りはどうのこうの言われながらもまだサイトに載っておりますぜよ)にFPみたいなのを商売にしている系っぽい方々が名を連ねている件について少々唸ってしまうんですよねアタクシはどうも。


〇スイス国立銀行(中銀)の金融市場調整でLIBORを使っていた件に関するお話をば

先般スイス中銀は「そのうちLIBORが無くなってしまいますから」とか何とか言いながら従来金融調節のベンチマークにしていた「スイスフランの3M−LIBOR」を変更して、「SARON」っていうと何か高級石鹸の店みたいなお名前ですが「Swiss Average Rate Overnight」の事でして、翌日物レポ金利を目標にするってえ話だったのですな。

でもって元々この中銀どうやってLIBORに合わせに行ってたのよという事を金曜の駄文で書いておりまして、調べてみようかななどと申しつつ涎を垂らしてグダグダしておりましたら、読者様からこのような資料がありまっせとご指摘を受けまして、面白い(かどうかは人次第だと思いますけど、汗)ので折角なのでご紹介するということで。

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/FOMC20100805memo03.pdf
The Swiss National Bank’s Three-month Libor Target

Authorized for public release by the FOMC Secretariat on 01/29/2016
John Schindler August 5, 2010
The Swiss National Bank’s Three-month Libor Target

どうもこの表題とURLを見ますに、2010年8月のFOMCにおけるスタッフメモという形でFOMCでの検討に使ったのでは、と思いましてFRBのページを漁っているとこういうのが出てきました・・・・・・・・ってガチのFEDウォッチャーだったらこういうのを確認するのも当然やっていることなのだろうなあと思いまするに、まだまだ精進が全然できていないという事に気づかされるアタクシなのでありました。

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomc-memos.htm
FOMC Memos

『Preceding each FOMC meeting, the FOMC Secretariat distributes to the Committee memos covering a range of subjects. A selection of these memos is available on this site.』

2013年以降となっているのは、議事録(議事要旨ではない)公開の時にこのような論点メモも公表するということになっているようでして、2010年8月のFOMCでのメモは、

『August 5
Cover Memo: Foreign Experience with Monetary Policy Options (PDF)
- The ECB's Use of Term Refinancing Operations (PDF)
- The Swiss National Bank's Three-month Libor Target (PDF)

August 5
Cover Memo: Options for Further Monetary Policy Stimulus (PDF)
- Reducing the IOER Rate: An Analysis of Options (PDF)
- Potential Enhancements to FOMC Communication (PDF)
- The Effects of MBS Paydowns and Potential Reinvestment Options (PDF)』

などというのがありまして、追加緩和のオプションやターム金利操作について色々と研究していたんですなあ、というのが分かりますので、まあこれ他のものも含め、ついでに当時の議事要旨などを見ながら色々と思い出すと面白いのかなあとか思いますが、そこまでの温故知新ネタをやるほどの下準備はしておりませんので今日は本題(?)のスイスの3か月LIBOR金利操作というどうやってやりますねんというお話に関するネタで勘弁ということで。

なお、このメモ書いている「John Schindler」さんですけど(ジョンシンドラーさんですか)、
https://www.federalreserve.gov/econres/john-w-schindler.htm

とこちらに思いっきり掲載されているんですよね。FRBはこの手の資料を読み込んでいくと物凄い深い迷宮に入り込む感がするのでして、公開資料を丹念に読み込んでいけば多分相当のレベルのFEDウォッチャーになれるのではないかと思うのですが(やるとは言っていない)さて・・・・・・

#なお、どこぞの中央銀行とは違いまして、FRBの場合、過去の議事録(Transcript)を含めまして、こちらのメモに関しましてもテキストに落とせる仕様になっておりまして、議事録全文を印刷した紙を画像の形で上げるというような嫌がらせプレイを行っていない点、どこぞの中銀は情報公開の観点から見習って頂きたいものだ、と思うのでありました


ではまあ本題に戻りましてスタッフメモに関して(URL再掲)

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/FOMC20100805memo03.pdf
The Swiss National Bank’s Three-month Libor Target

Authorized for public release by the FOMC Secretariat on 01/29/2016
John Schindler August 5, 2010
The Swiss National Bank’s Three-month Libor Target

以下引用は上記URL先から行います。でもって元々の資料が2010年8月FOMCで出されたものなので、市場環境の話とかはその時の物になりますので、直近の市場環境とは違うという点をお含み置き頂きまして、以下のお話をご確認いただければと存じます。

『Since the beginning of 2000, the Swiss National Bank (SNB) has used a range for the three-month Swiss franc Libor as its announced target for monetary policy. The SNB’s current target range is 0 to 0.75 percent and is shown by the blue lines in the top panel of the first exhibit. The SNB also indicates where within the range it will attempt to guide the three-month rate; the current point target is 0.25 percent, as shown by the dashed red line. 』

これPDFの4枚目と5枚目がグラフになっていまして、『Exhibit 1』というのが4枚目になっていまして、そちらには『Swiss Monetary Policy Variables』となっていまして、その中で上の方のグラフの凡例を見ますと、
・3-month Swiss franc Libor
・SNB point target
・SNB Target range
ってなっていて、実際の3mLとターゲットレートおよび許容レンジが示されていますが、2010年時点だと誘導目標金利が0.25%でレンジの下限が0%で上限が0.75%という設定になっていたようですな。

『As seen in the exhibit, three-month Swiss franc Libor has almost always remained within its target bands and, at least until the eruption of the global financial crisis, has typically been very close to the point target. 』

そら(ワイドレンジなんだから)そう(レンジの中に収まっている)よと思いますが、確かにそのワイドレンジ云々の前にグラフを見ますと概ねターゲットの近辺に収束しております(期間は2000-2010)。

『Although the SNB targets the three-month rate, it does not inject or drain three-month funds in its monetary policy operations.』

3mLをターゲットにしているんですがスイス中銀は3mの資金供給や吸収を行っている訳ではない、ということでそこがアタクシも何でじゃろと思っていたわけですよ。

『Instead, the SNB normally conducts fixed-rate repo operations on a daily basis and almost always at a maturity of one week or less, with one-week repos the most common. The one-week repo rate is shown as the red line in the lower panel. The SNB generally decides on the maturity of repo transactions in such a way that the banking sector has to obtain liquidity through those transactions on a daily basis to fulfill its payment and minimum reserve obligations. This demand for liquidity from the banking sector helps the SNB to influence money market rates.1 』

スイス中銀は日次で1週間またはそれ以内の期間を中心(最も多いのは1週間物)に固定金利のレポによる資金供給を行っていて、その金利と3mLの関係がさっきの4ページの下段にあるグラフになっておりまして、3mLよりは低い金利になるようになっておりますが、インターバンクの資金不足をこのオペによって調整することによって、市場金利を概ね誘導しましょう、という形でのオペレーションをやっていたそうな。

『The SNB also has a standing lending facility that provides overnight financing to eligible banks at a penalty rate to help reinforce the upper end of its target band. The SNB, however, does not have a standing deposit facility to reinforce the lower end of the band, though it is authorized to create such a facility.』

常設ファシリティについての話ですが、(2010年当時の話なのでしつこく念のため)翌日物の貸出ファシリティはあって、それは市場金利の上限を画するための物(なので高率レート適用)として存在していて、預金ファシリティは(2010年当時は)なかったようですが、ここの説明から類推する限りにおいて考えてみますと、当時はインターバンクが基本的にSNBのレポオペに依存する形になっていたために、特段預金ファシリティを設置する必要が無かったんでしょうかねえと思うのでした。


『Before 2000, the Swiss National Bank officially targeted monetary aggregates, using a medium-term target for the seasonally-adjusted monetary base.』

ここで前史の説明も入るのがマニア向けにはイイハナシダナー(別にこのメモマニア向けのものではないが^^)でして、2000年の前のスイス中銀の金融市場操作は「季節調整済みのマネタリーベースの中期的なターゲット」が金融市場操作対象になっていたそうな。

『The SNB primarily used foreign exchange swaps to affect the monetary base.2』

でもって通貨スワップを使ってこのマネタリーベースの調整を行っていたそうですが、脚注2を見ますと、

『2 While the targeting of monetary aggregates was the official Swiss policy, debate swirled around whether the SNB also placed significant weight on keeping the exchange rate from trending and putting significant upward or downward pressure on inflation.』

とありまして、マネタリーベースを操作目標にするのは良いんだが、為替レートの安定を取るとインフレが振れたりするのでそのウェイト付けってどうなのよという議論は起きていたそうな。その結果・・・・・・・・・

『In 2000, the SNB adopted an explicit definition of price stability (an annual inflation rate below 2 percent) and announced that it would rely on a conditional inflation forecast to guide policy decisions.』

2000年にスイス中銀は物価安定の定義を示して、年率2%以下の物価、というのを物価安定の定義にして、政策決定においては先行きの物価見通しに依存する形で政策決定を行います、というのを示したそうな。

『To achieve its inflation goals, the SNB switched its intermediate target from the monetary base to three-month Libor.』

でもってそのインフレーションゴールを目指すための中間目標をマネタリーベースから3mLに置き換えたんだそうでござます。

『This was reportedly chosen because it is the main reference rate to which the pricing of Swiss franc credit is linked, including many mortgages. Moreover, the Swiss domestic repo market was not (and is not) sufficiently developed and lacks the liquidity to support operations in very short maturities, such as overnight.』

でもって、何で3mLにしたのかと言いますと、第一にこの3mLがスイスにおける貸出金利やモーゲージ金利の多くのベースレートになっていた(ので金融政策の波及メカニズムからしてこれを使うのが適切)ことなのですが、それに加えて、2000年当時(も2010年当時も、とありますな)スイスのレポ市場が未発達で、市場の流動性が乏しかったことから、オーバーナイトのレポ金利などを操作目標に設定するのは不適切である、という認識を持っていたから、だそうです。

・・・・・・ということですので、今般SARONに誘導目標を変えたというのは、もちろんLIBORが近い将来廃止されるというのがあるのは当然なのですが、それ以外の要因としては、この2010年時点から現在に至る間に翌日物レポ市場の取引や流動性が向上したので、直接操作(3mLは間接操作でしたから)に切り替えた、という事もあるのではなかろうかと想像します(って声明文5ページあるのを真面目に読めば良いのですが斜め読みしかしていないのでこういう書き方で勘弁)。


次のページは『Impact of the SNB’s Targeting Regime on Market Rates』となっています。まあこの頃はFRBが短期のターム物金利を誘導するとかいうのはどうよとか、そういう問題意識があって、スタッフエコノミストにこのようなネタ振りをしてきたんだろうなーと思わせてくれますな、というのも分かりますし、(まあ最近もそういう話があるっぽいですが)長期金利(というか貸出金利というか)に影響を与えるためにより有効な手段ってないですかね、という意識をもってこの課題を下ろしてきました、というのがアタクシには感じられましたな。うんうん。

『Evaluating the effectiveness of using a three-month interest rate as the primary monetary policy target is difficult, but the following briefly presents a few simple comparisons that suggest that the Swiss have not performed significantly better or worse than the Federal Reserve in hitting its target rate or in influencing longer-term borrowing rates in the economy.』

3mLをプライマリーの操作目標に使うのが適切なのかどうなのかという問題について評価するのは難しいんですが、以下のファクトチェックを簡単にではあるがした所からすると、経済におけるロンガータームの借入金利に対する影響を与えるという点や、操作目標の誘導精度という面において、スイス中銀もFRBも似たようなもんじゃネーノという結論が得られるのではないか、ってな話になっております。まあ以下はご参考という感じかもしれませんが。

『First, the SNB has been able to keep the three-month Libor rate relatively close to its target, as can be seen in the upper panel of exhibit 1. Because the SNB has a target range, when the actual rate drifts above or below the point target, the SNB does not have to act immediately to return the rate to the point target. This, in part, explains the deviation of the Swiss franc Libor rate from the point target during the financial crisis.』

『Despite the flexibility provided by a target range, the actual variability of the three-month Swiss franc Libor rate around its point target, as measured by the variance of the deviations from the target, is statistically indistinguishable from the variation of the federal funds rate around its target over the past decade.3

『However, as can be seen in the upper and lower panels of exhibit 2, the deviation of three-month Swiss franc Libor rates from the point target have tended to be serially correlated throughout the past decade, whereas the deviations of the federal funds rate from its target appear to have been more random. 』

3mLの目標レートというのはあるんですが、基本的にそれに対して許容レンジもあるし、ズレたからと言って即座に何かしなければいけない訳ではない、という建付けなのですが、金融危機の一時期以外はそんなにズレなく推移しているという結果がありますと。まあ分析者はその辺スルーしていますが、これはデイリーの指値1wレポオペがそれなりに強力だからなんじゃないのかね、とはアタクシは直観的には思うのですが実際の所は知らん(というか調べればわかるんでしょうがそこまで調べてないですすいません)。

でもって3mLと1wレポ金利(米国は1wライボー)というのと3mLと翌日物(スイスはSARONで米国は実効FF)を比較すると、平均的な乖離が3M1wだと米国スイスともに同じようなもんだけど、翌日物との乖離が米国の方がでかいですよねというお話をしていますな。

『Second, the SNB’s decision to target a three-month rate has not necessarily led to a different relationship between shorter-term rates and three-month rates than is observed in the United States. As shown in Table 1, the variation in the gap between the very short-term rate and the three-month rate is similar to the gap observed in the United States. The standard deviation of the gap between one-week rates and three-month Libor in Swiss francs and in U.S. dollars has been identical since 2000. The gap between the overnight rate and three-month Libor is less volatile for the Swiss franc rates, but the difference is small and is sensitive to the sample period.』

でもってスイスの方が翌日物金利とターム物金利のコリレーションが米国と比べて大きいということですが、それは多分1wレポの指値を毎日のようにやっているという操作上の違いなんじゃネーノと思ったりする。

『A third consideration is whether movements in the target rate affect the longer-term rates that are more relevant to borrowing and spending decisions. While we cannot establish the direction of causality, the correlations between policy rates and 5-year government bond rates for Switzerland and the United States are identical over the past decade (0.88), suggesting that the SNB’s ability to influence longer-term rates may be no different from the FOMC’s ability to do so.』

でもって3番目が結局FEDもSNBも同じですよねという話で、何が同じかといえば、長期金利への影響と、その長期金利の変化が企業の借入や消費の行動に対する影響度合いっていうのは結局のところそんなに違いが無いという話になっていて、まあこの結論はターム物金利を誘導目標に変更する、というのは考え方としてはあっても、実際には今(2010年当時)のやり方でやっていてもそんなに大差ないんじゃないでしょうか、というのがこのメモの結論になっているようですな。

#ということで完全に現世利益と無関係な趣味コーナーになってしまいまして誠に申し訳ございません









2019/06/17

お題「FOMCと日銀プレビュー世間話/ESGの日銀レビューですよ/インフレ動学ペーパーのインフレ期待形成部分が泣ける」

陽気がコロコロ変わるんですがこの時期ってこんなもんでしたっけ??

〇FEDと日銀がある訳ですが(ついでに言えばBOEも)

・FOMCはどうせ解釈に困るものが出てくると見た(個人の妄想です)

今週はFOMCと日銀MPMがあって、FOMCは今回SEPもセットになっておりますので、まあ確かに利下げしようと思えば見通し変更と共にセットで、というのはあり得るにはあり得るんですが、ここまでの要人発言を見ておりますと、(変態仮面ブラード総裁はさておきますと)「不確実性は高まった」けれども「見通しそのものは変わっていない」という説明のオンパレードになっておりますので、そう考えますとまあ普通に政策変更はない、と考えた方が順当だと思うの(個人の感想です)。

たぶん声明文の方は「下振れリスクが高まる」とするか「不確実性が極めて高まる」みたいな警戒メッセージを出すのは出すんでしょうけれども、経済の基本的な見方は同じ、みたいなのが出てきて終了って感じになるんじゃないでしょうかねえとは思うのです。でもって今回は余計なことにSEPがあるので、ドットチャートがどうなるのかというのがどうせ注目されますけれども、ここで利下げの方向性みたいなのを出す人(どうせブラードは出すのでそれ以外)がどの位出るのかという話になるんですけれども、これ普通に出そうとするとメインシナリオが変わらない以上、据え置きの票に下げることはあってもそれ以下に下げるというのはメインシナリオの書き換えが必要になると思うので、それもまあよーせんのでは、という感じになるのではないかなあと。

というのを見ると多分ハト度が足りないとかいう事になって、会見でパウエルがその火消しをするみたいなことになって、どう解釈して良いのかよく分からんという結果になるんでしょうが、まあ市場ちゃんの方は一息入れたとしてもまたカツアゲ相場になるので同じことかなーなどと思ったりしております(個人の感想です)。

何かあんまり細かく見てないからアレなんですが、最近海外の証券会社さんの何とかストハウスビューが「50bp利下げ」だの「予防的利下げをしたあと来年の半ばにはまた利上げ」とか色々なエクストリームビューが出てきているようですので、まあFEDが出してくるものもさることながら、その出てきたものに対する反応がまるでワケワカランなあと思うので(いつもそうですけど)出たとこ勝負ということで。

しかしまあ何ですな、こういう状況(次の一手が利上げなのか利下げなのか状況次第で変化しうる状況)になりますと、政策金利見通しのドットプロットとか明らかに百害あって一利なしという状態になってきておりまして(まあさすがにFEDの中の人も認識していると思いますが)、このドットプロットって軽めのフォワードガイダンスみたいな効果を期待して作ったものであって、今のように先行きの政策を決め打ちするのがリスク以外の何物でもない(そもそも論としてFEDがこれだけあばばばばーになっているのってパウエルが先行きの政策運営に関して決め打ち発言をしまくって、しかもその決め打ちトーンに(上下ともに)強めのバイアスを掛けるもんだから市場がドッタンバッタンとなったのが事の始まりな訳ですし)のでありまして、中立金利が幾らですかというのを出すのはまだ分からんでもないです(でも本来は潜在成長率と期待インフレ率のロンガーランがあれば別に中立金利なんぞ明示する必要もないんですけど)けれども、金利の方向性に関してはもう出す必要ないんだから廃止したらどうですかね、とは思いまする。


・日銀の追加緩和手段とは何でしょうかね

でまあFEDが何もしなければ特に何もしなくて良い日銀ちゃんですけれども、FEDが脳味噌沸きあがってしまってとち狂って50bp利下げとかでもやろうもんならそらもう日銀はアレよという話だし、そういう話になっているからこそ金曜の相場ちゃんでまーたフラットニングが復活して何だよそのつまらん展開とか思ってしまう訳ですな。

日銀がアレとなるのはFEDがとち狂って利下げして為替がドル安円高にすっ飛んでしまった場合ですが、さてこの時に何か手段があるのかというと、そらまあマイナス金利の深堀りは手段としては残っていますが、これをやるとリバーサルレートにも程があってただの副作用利下げになってしまって特攻自爆コースとなるのでありまする。

ただまあこれやったら金融機関的には日銀非難轟轟モードになるので、利下げして物価とかの方が何もなかったりしようもんならそれ見たことかと更に批判の的になる訳でして、そこまでの流れが見える中で特攻するんかいな、とは思ったりするので、そういう時には目くらましを何かしてやったふりするしかないんじゃないですかねえ(無責任)。

ただ、現状って最近ネタにしておりますように流れが「物価2%目標を金融政策単独で達成するのは他の要因もあって難しい、そもそも物価2%目標は物価が目標なのでは無く経済の良好な状況を作るためのベンチマークとして有効なので設定されているものである」(キリッ)という風になっていますので、ここで例えば「物価2%になるまで現在の長短金利目標水準を据え置く」みたいなフォワードガイダンスの強化とか、買入国債の量にまたスコープを置くとか、または10年金利の低下をもっと容認するようなステートメント出すとか、要するにその手の話しってすべからく「金融政策で2%目標を早期達成させる」というドクトリンのラインに乗った話であって、現状「引くに引けなくなっているんだけど何かうまい幕引きは無いか」という感じになっているとしか思えない状況にある(ようにアタクシには思えるのだが違ってたらゴメンやで)中で、昔の金融政策で何でもやりますモードを強化する方向って後始末を面倒にするだけだから難しいと思うのよ。

まあ何ですな、米国が利下げしたとしても、利下げ→リスクオンヒャッハーからのドルそんなにサガランチ会長になるかも知れませんし、日銀としては何事もありませんようにと天に祈りを込めて構えておけば御仏の御加護があるかもしれませんな、ナムナム。


ということで結論は「FEDのは多分出た時に解釈に困るものが出てくるけど現状維持だから流れとしては利下げカツアゲ相場が続く」「日銀はもはや打つ手なし」ということで(^^)。


〇ついにESGの日銀レビューが出るとな

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2019/rev19j05.htm/
ESG投資の最近の潮流
2019年6月14日
金融市場局 池田裕樹*、小川佳也
*現・国際決済銀行

上記URL先の『要旨』ってのを引用しますね。

『ESG投資は、環境・社会・ガバナンスへの取り組みといった非財務情報を投資判断に組み込むことで、投資家と企業の行動変化を促し、社会の負の外部性を低下させることを目指す資金運用手法である。』

単に銘柄スクリーニングをするとかそういう話ではなくて、ESGへの取り組みを行っている企業というのは(そうじゃない企業企業行動と比較した場合に)社会全体の価値を高める効果があるので、ESGを重視した投資を世の中の人たちが行う→ESGに配慮した企業行動が広がることによって社会全体の価値が高まる→投資している株式などの市場全体の価値が高まる、という理屈になっているんですなこれがまた。

『環境・社会問題に対する世界的な目線の高まりなどを背景に、近年、ESG投資は急速に拡がっている。本稿では、ESG投資の概念などを整理したうえで、金融市場で話題となっている最近の動向として、(1)年金基金などの石炭関連資産からの投資撤退、(2)ESG関連商品への活発な資金フロー、(3)ESG投資を進める際の留意点や課題などを紹介する。』

こちらは本文を見てちょという話。

『先行きについては、ESG投資は更なる拡大を続けるとの見方がある一方で、解決すべき課題が多いとの声もあり、ESG要素の評価方法や情報開示の枠組みなどのコンセンサス確立に向けた今後の情報の蓄積が待たれるところである。』

ということで今回は特段の価値判断は入っていないのと、ESGの前にあった考え方(SRIとかそのもっと前の宗教的とか倫理的価値判断による投資先のネガティブスクリーニングの話とか)もさらりと紹介されておりますので何となくESGですなって感じの方は本文の方一読推奨。

本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2019/data/rev19j05.pdf

日銀レビューシリーズなので量も多くなくサラサラと読めるのでお勧め。

・・・・・・しかしまあ何ですな、ESGに関してはそのコンセプトというか理念自体は悪い話ではないと思うのですけれども、この手のってだいたいブーム化してくると段々その当初の理念じゃなくて、単に外形標準がそうだからこうだ、みたいな話になったり、ESGの認証だったりSDGsの認証だったりが形式要件さえ整っていれば良いのでジャンジャン認証してウハウハでっせみたいな話になりがち、というのが大体昔からこの手の話で金が絡んで来ると当初の理念は何処へやらみたいになるというのが人間の悲しい仕様になっていると思うのでありまして、いやまあ別に今現状でどうのこうのという程までアタクシも詳しい訳ではない(少し研究した時期があるのでちったあ知っているつもりではありますが)のでそこの価値判断は控えておきますが、まあ理念自体は非常に良いものだけに、変な一過性のブームに終わらないようにして頂きたいし、逆に理念から外れた形で暴走することの無いように願いたいものだ、とまあそんな事を思うのでした。

何はともあれさっきの日銀レビューシリーズは読みやすいしシンプルにまとまっているのでお読みあれ。


〇引き続きインフレ動学に関するスタッフペーパーを見る訳ですが本日は「インフレ期待」の部分でも

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2019/data/wp19j03.pdf
日本銀行ワーキングペーパーシリーズ
近年のインフレ動学を巡る論点:日本の経験

金曜日に思いっきりすっ飛ばした要因分析の話ですが、今回はその中の最初の部分になりますインフレ期待に関する話を鑑賞しましょうなのです。こちらの章立ては金曜にご紹介したように、

『3.インフレ予想の上昇に時間を要している背景
@ 長期にわたる経験への依存
A 規範(ノルム)
B 合理的無関心(Rational Inattention)』

となっていて本文10ページからおっぱじまります。

『前節でみてきたように、わが国の中長期的なインフレ予想は、近では1%程度で推移している。このように、日本銀行による2%の物価安定目標からみれば低い水準にとどまっており、インフレ予想は目標に十分にアンカーされていない7。』

この脚注がご丁寧にも、

『7 インフレ予想が中央銀行の目標にアンカーされていないという場合、長い目で見ればインフレ予想が目標周りで変動しているものの、その変動幅が大きいことを指す場合もある。日本の場合は、こうした状況とは異なり、インフレ予想が目標を継続的に下回って推移している。』

と情け容赦なく書いてあって泣いた。

『それでは、中長期的なインフレ予想の決定要因としては、中央銀行の目標以外に、何が重要なのであろうか。』

キタコレ。

『単純な適合的期待形成モデルによれば、その答えは足もとのインフレ率である。Fuhrer (2012)は、人々のインフレ予想に、適合的な要素があることを指摘している。また、わが国では、インフレ予想が目標インフレ率でアンカーされていないことの裏返しではあるが、米欧対比でみて、適合的な要素が強いことも指摘されている(西野ほか 2016)。そうであれば、プラスの需給ギャップが維持されるもとで、インフレ率が高まるにつれて、 インフレ予想も高まっていくことも期待できる。』

ちょwwwwwこの論の流れはwwwwwww

『もっとも、2節でみたように、近では、インフレ率が弱めながらも相応に 上昇してきたにも関わらず、インフレ予想は横ばい圏内の推移にとどまっている。このことは、現実の予想形成メカニズムは、単純な適合的期待形成モデルが示唆するよりも複雑である可能性を示唆している。』

>現実の予想形成メカニズムは、単純な適合的期待形成モデルが示唆するよりも複雑である可能性を示唆している
>現実の予想形成メカニズムは、単純な適合的期待形成モデルが示唆するよりも複雑である可能性を示唆している
>現実の予想形成メカニズムは、単純な適合的期待形成モデルが示唆するよりも複雑である可能性を示唆している

マネタリーベースを拡大すれば期待インフレが引きあがるとかいう置物理論を踏みつけて総括的検証をした結果適合的期待形成モデルを持ち出してYCCに方向転換したのですが、この適合的期待形成モデルに関しても単純ではないとかぶっこんできておりまして、これは総括検証の総括検証をするとき(がいつ来るか分からんけど神風吹いて物価が上がらん限りどこかで落とし前付けなきゃいけないでしょうからいずれ行われると思ってる)にこの辺りがテーマになって、金融政策によって期待インフレを引き上げるためにはどのような経路に働きかけるのか、という事にもなって来ると思うのですが・・・・・・・・・・

『そこで、以下では、インフレ予想の上昇に時間を要していることを説明し得る三つの仮説として、@長期にわたる経験への依存、A規範(ノルム)、B合理的無関心を紹介する。ただ し、これらは必ずしも互いに排反するものではなく、例えば、「物価は上がらな いし、上がるべきでもない」という規範は、長期にわたるデフレの経験や合理 的無関心がもたらしたものとも考えられる。また、合理的無関心が生じる背景 の一つとして、長期にわたるデフレの経験や規範も存在すると考えられる。先行きをみていくうえでは、こうした要因がいかに解消していくかが重要な論点となる。 』

ということで小見出し『@ 長期にわたる経験への依存』に入ります。

『この仮説は、人々の期待形成が、個々人が長期にわたって経験した事象に依存するというものである。本仮説を支持する実証研究として、Malmendier and Nagel (2016)は、米国の家計のインフレ予想が世代ごとに大きく異なっており、 たとえば、1970 年代のオイル・ショックを経験した高齢層は、相対的に高めのインフレ予想を有していると報告している8。』

経験的に首肯できます。

『本コンファレンスでの報告論文で ある Diamond, Watanabe, and Watanabe (2019)は、日本のデータを用いて同様の分析を行っているほか、中央銀行によるコミュニケーションについても論じている。』

ほー。

『この仮説のもとでは、インフレ率の実績は、非常に長い期間にわたってインフレ予想に影響を与え続ける可能性がある。この点、オイル・ショックを経験 していない世代のウエイトが高まるにつれて、平均的なインフレ予想が低下していくことも考えられる。』

なるほど。

『一方、「量的・質的金融緩和」の導入以降、インフレ率の基調が緩やかに改善していることを踏まえると、こうした経験が、長い目でみて、インフレ予想を徐々に押し上げていくことも考えられる。』

とりあえずこういうのは入れるのですな、でもってこの分析というのを見る由もないのでアレなんですが、現実問題としてどの程度のインフレが経験依存に影響与えるのかというと、オイルショックみたいに二桁とかのインフレだとそらそうよとなりますが、0%だ1%だというのの経験依存がそんなに期待インフレを押し上げるのかいな、という気はせんでもなくて、こういうのの期待への効果ってたぶんどこかでノンリニアに効いてくるんじゃないのかな、と学問もないアタクシが勝手に思うのも何ですが、そんな事を思ったりします。


次が『A 規範(ノルム)』ですな。

『規範とは、社会システムや慣習に組み込まれる社会通念ともいえるものである。 人々が行動を決定する際に規範が果たす役割については、古くは Hume (1739)が 言及している。規範は、人々が協調を成功させるために自然に生じるものとされ、 心理学などの分野でも研究がなされてきた(Lewis 1969)。経済学でも、規範は、 人々が期待を通じて行動を他者と協調するためのデバイス(frames of reference) として機能することが、理論的に示されている(Acemoglu and Jackson 2015)。』

なるほどわからん。

『こうした議論を踏まえると、わが国のインフレ予想の上昇に時間を要している状態は、「物価は上がらないし、上がるべきでもない」という社会通念、すな わち低インフレ・ノルムが、社会システムや慣習に組み込まれてしまったことによると解釈できる(Schultze 1981; Okun 1981; Watanabe and Watanabe 2018)。』

だってお賃金あがらないんだからシャーナイじゃん。という話はあとの方の供給側の要因分析の方で出てくるのですが、つまりこれインフレ期待だけじゃなくて社会構造にも関わってくるという話ですわな。というか低インフレノルム、と言えばそうかもしれないけど、インフレノルムだけの問題ではないノルムのような気がします(低インフレノルム、としてしまうと物価に過度にフォーカスして本質を外す懸念があると思う)。

『上述した「長期にわたる経験への依存」が個人の予想形成メカニズムに着目した仮説である一方、「規範」は社会のシステム等を通じて個人の予想が影響を受ける点で異なるとの整理も可能である。 』

さいですな。

『なお、低インフレ・ノルムは、長期にわたるデフレの経験等によって、価格付けの公平性(fairness)に関する家計の認識が変化した結果とも解釈できる。』

なるほど。

『Rotemberg (2005, 2011)の理論では、企業がコスト上昇以上に販売価格を引き上げ たと家計が認識した場合、この値上げを家計は公平性を欠いたものと受け止める9。さらに、家計が企業のコスト構造を完全には知らないという不完全情報の もとでは、企業が「公平」にコストを価格へ転嫁した場合でも、家計は公平でないと認識する。』

『このため、家計に公平性を欠く企業との烙印を押されること を避けたい企業は、コストの価格転嫁に慎重になる。』

ほーん。

『こうした理論を踏まえる と、いったん家計が「インフレ率は上がらず、企業のコストも上昇しない」と の考えを持つと、「物価が上がることは公平ではない」という社会通念が浸透し てしまうことも考えられる。』

何かそういう難しい話ではなくて賃金と所得への期待の問題のような気がしますがまあこれはこれ。


でもって次が『B 合理的無関心(Rational Inattention)』でこの部分がちょっと長い。

『上述の長期にわたる経験や規範は、経験則的に成り立っていることが認知されているという性格が強いのに対し、個々人の適化の結果として理論モデル化したのが合理的無関心(Rational Inattention)という仮説である。』

ほう。

『この仮説で は、人間の情報処理能力には限りがあるため、必要性の低い情報に無関心となる結果として、世の中に存在する情報の一部しか期待形成には利用しないということになる。その理論的な枠組みは Sims (2003)によって提唱され、Mackowiak and Wiederholt (2009)などが物価の分析に応用してきた10。』

ふーん。

『合理的無関心仮説に立脚すると、以下のような推論が可能となる。インフレ率が変動しないとの考え(事前信念)が形成されている場合、人々は、将来の インフレ率に関する情報を取得せずとも、インフレ率の予測はそれほど外れないと考える。すると、限られた情報処理能力のもとで、人々は、将来のインフ レ率に関する情報を十分に集めることをせず、過去に形成した予測を変えない ということが合理的になる11。』

ほほー。

『本コンファレンスの報告論文である Aoki, Ichiue, and Okuda (2019)は、合理的 無関心のメカニズムを念頭に、長期にわたるデフレの経験等によって、家計が、 インフレ率は低位安定するものであるという事前信念を一度形成すると、そうした事前信念を引き上げるには相応の時間を要すると論じている。』

このペーパーの人たちが今回出したんですね。

『そのうえで、 そうした家計を前提とすると、顧客離れを懸念する企業は、値上げに一層慎重 となるということもモデル化している。』

へーへーへー。

『合理的無関心に基づく推論は、多くの実証研究によって支持されている。た とえば、Coibion, Gorodnichenko, and Kumar (2018)は、ニュージーランドに所在する企業へのサーベイを用いて、インフレ率が安定するほど将来のインフレ率に 関する情報を入手しなくなる傾向が顕著になることを明らかにしたうえで、企 業の期待形成が合理的無関心仮説と整合的であると主張している12。Cavallo et al. (2017)は、家計についても同様の傾向があるとの結果を提示している13。』

『わが国のインフレ率が長らく低位安定してきたことを踏まえると、人々が将 来にかけてもインフレ率が変動しないと考え、その結果、以前よりも、足もと のインフレ率に注意を払わなくなってきたというストーリーは、相応の説得力を持つように思われる14。』

でもってこの次にまた身も蓋もない理屈が誘導されるのだ。刮目して見よ。

『また、同様の理由から、中央銀行の政策にも注意が払 われなくなり、このことが、インフレ予想を目標にアンカーされにくくする一 因となっている可能性もある。こうしたことから、上述したような経験や規範 が重視されやすくなっていることも考えられる。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

#身も蓋もないというか自虐ネタかと言いたくなってしまいますな







2019/06/14

お題「30年入札ェ・・・・・・/SNBが政策金利のリファレンスを変更/インフレ動学のスタッフペーパーの結びがイイハナシダナー」

まあ既定路線ではあるんだけどさあ。
https://jp.reuters.com/article/britain-eu-leader-idJPKCN1TE2H5
2019年6月14日 / 01:17 /
英保守党党首選、ジョンソン前外相が第1回投票でトップ

『[ロンドン 13日 ロイター] - メイ英首相の後任を決める与党・保守党の党首選は13日、第1回投票が行われ、最有力候補のジョンソン前外相が最大得票を集めた。

投票は与党議員313人によって行われ、ジョンソン氏は114票を獲得した。ハント外相(43票)、ゴーブ環境相(37票)、ラーブ前EU離脱担当相(27票)なども第2回投票に進んだ。』(上記URL先より)

順当オブ順当なのは分かっているのだがサムネの写真を見るといや何でもないです。


〇30年入札でアイヤーになるものの・・・・・(市場備忘録メモ)

昨日の債券市場ちゃん
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N23K1LM
2019年6月13日 / 15:12
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は横ばいで引け、長期金利は小幅に低下

結果的には、

『<15:07> 国債先物は横ばいで引け、長期金利は小幅に低下

国債先物中心限月9月限は前営業日終値と変わらずの153円44銭で取引を終えた。長期金利は一時マイナス0.130%まで低下したが、入札結果を受けてマイナス0.115%まで戻す場面があった。30年債入札では応札倍率が前回から低下し、落札価格の平均と最低の開き(テール)が過去5年間で最大の幅となった。入札が低調との受け止めから、国債先物は売られたが、下げは限定的だった。』(上記URL先より、以下同様)

『入札結果について市場では、「朝方の超長期が強すぎた。今月に入ってからのカーブのフラット化に違和感を覚える投資家は少なくない。20年金利が0.2%、30年金利が0.3%の節目に迫っている。入札結果を受け、真空地帯の中のように超長期の利回りが低下する状況にはいったん歯止めが掛かった」(投信)との意見が聞かれた。

ということですが、まあよくよく考えてみたら先週の頭とか30年カレント0.46%で引けている訳でして、特に今週に入ってからの超長期後半のワッショイ振りが凄かったのですが、そういう後講釈をする前の段階だと「まあ海外金利が下がっている間に日本の金利があまり下がらなかったのが一気に調整してきましたなあ(白目)」というような感じで解釈が出来ていたりしましたので世の中そんなもんって奴ですな。


でもって上記URL先の記事は1日の話が時間を追って追加されるので前場の状況を確認しましょう(ほどんど俺様向け備忘録なのですがすいません)。

『<10:05> 新発30年債が0.310%に低下、入札控え先回り買いか

新発30年債利回りが前日比3.0bp低い0.310%と、2016年8月24日以来の水準まで低下した。30年債入札を控え、「水準面での妙味に欠ける上、30年債と40年債のカーブのフラット化が進む一方で超長期ゾーンの需要は底堅い。入札後の動向について不透明感が強いことから、先回り買いが入っているようだ」(国内証券)との声が聞かれた。国債先物は上げ幅を拡大。中心限月9月限は前営業日比11銭高の153円55銭近辺で推移。10年最長期国債利回り(長期金利)は前日比1.5bp低い0.130%に低下している。』

ってなことになっていて、入札前からワッショイモードで先物10銭ちょい上昇している間に入札がこれからある筈の30年カレントが3毛強とか爆発来ましたねという展開だった訳で、白目を剥きながら泡吹いて板を眺めるの図という風情になっておった訳ですな。

でもって前場引けが、

『 <11:18> 国債先物が上昇で前引け、長期金利は-0.130%に低下

国債先物中心限月9月限は前営業日比14銭高の153円58銭と上昇して午前の取引を終えた。米債高や米中貿易摩擦問題への根強い懸念を背景に、朝方からしっかりと推移。日経平均株価が軟調に推移していることやドル/円がやや円高に振れていることも、円債の支援材料となった。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.5bp低いマイナス0.130%に低下した。』

多分支援材料関係なくて超長期が爆発していたのに引っ張られているだけだと思いました。

『現物市場では超長期ゾーンの金利が一段と低下。新発20年債は前日比2.5bp低い0.220%。新発30年債は一時同3.5bp低い0.305%まで低下。新発40年債は一時前日比4.0bp低い0.335%と、2016年7月29日以来の水準まで低下した。』

という頭がクラクラする入札でしたが結果がこれですよ。

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20190613.htm

6. 価格競争入札について
(1)応募額 2兆542億円
(2)募入決定額 5,914億円
(3)募入最低価格 104円05銭(募入最高利回り)(0.349%)
(4)募入最低価格における案分比率 73.8028%
(5)募入平均価格 104円92銭(募入平均利回り)(0.319%)
 
前場の最後が0.305-0.310位のイメージだったと思うのですが、踏み上げ入札でもやらかすのかと思えばまるで逆で必要額入れたらそれ以上の札が無かったのであじゃぱーという結果に相成りまして、よくよく考えてみればそら先週の頭に0.4%台半ばだったものを新発だからと言って0.3%カツカツでポートに沈めることが出来るのかという話になって、30年をポートにぶっこんで来る主要なプレーヤーさんが今回はパス攻撃をしたので、マーケットメーカーが考える必要最低限の在庫しかまともな札が集まらず、となった訳でしょうな、よー知らんけど。

しかしまあ何ですな、テールが3毛流れる入札とか久々に見た(なお短国の場合はテールが3毛くらい流れる入札は時々見るのが短国コモディティ化ですなあという感じですね全然関係ないけど)次第で、しかも30年ですから価格で87銭流れるとか割とインパクトのある流れ方ですし、さっき3毛強3毛5糸強とかやっておられたものが足切り9糸甘とかアイヤー以外の何物でもありません。

・・・・・・・・ということでこういう時に地滑り大雪崩などが起きるというのがよくある話ではあるのですが、先物とか下がってみたものの大して下がらず(まあ元々が30年40年独走で行ってたから何でや先物関係ないやろというのはあるのですが)20年とかも連れてちったあ安くなるかと思えば落札結果出たあと早めの時間だとまだ引け強だったりして、なるほど下がらんという展開。

まあさすがに30年カレントがそうは言いましてもコケましたのでイールドカーブちゃんはツイストスティープした訳ですが、さっきのロイターさんの15時の記事にある気配を引用しますと、

『TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 -0.205 -0.198 -0.005 15:02
5年 -0.231 -0.224 -0.002 15:06
10年 -0.119 -0.113 0 15:04
20年 0.25 0.256 0.011 15:05
30年 0.358 0.365 0.023 15:06
40年 0.394 0.402 0.026 15:03』(この項目最初のURL先のロイター記事より)

ということで、これを機に土崩モードという訳ではなくて、単にここもとフラットニング祭りをしていた分を一部お返ししましたの図になっているのは、やはりベースに米国利下げへの懸念(利下げ期待というのが用語としては正しいと思うのですが気分は利下げ懸念でしょ)とか、景気大丈夫かねとか、どこからどう見ても日銀が金利を上げてくる方向性が見えない状態であるとか、まあその他もろもろ有りますので、この程度では運用難でピーピー言っている(または白目をむいて泡を吹いている)人たちの待ち構える資金を蹴散らすような動きにはならん、ということなんでしょうかね、よー知らんけど。

まあいずれにしましても後付けでは何とでも言えますけど、さすがにあの前場のアオリイカモードはアタクシもビビって白目を剥いておりましたので、十ウン年(もっとか)やっていても相場は難しいもんですのう、と思いを深めるのでありました。


〇SNBが政策金利のベンチマークを変更とな

だいぶ不親切感の漂うSNBのサイト(これは英語バージョン)。

https://www.snb.ch/en/

https://www.snb.ch/en/mmr/reference/pre_20190613/source/pre_20190613.en.pdf
Monetary policy assessment of 13 June 2019
Swiss National Bank leaves expansionary monetary policy unchanged and introduces SNB policy rate

金融政策の変更は無かったのですが、政策金利のベンチマークを変更したそうな。

『The Swiss National Bank is maintaining its expansionary monetary policy, thereby stabilising price developments and supporting economic activity.』

ただのお題目。

『Interest on sight deposits at the SNB is unchanged at -0.75%. The SNB will remain active in the foreign exchange market as necessary, while taking the overall currency situation into consideration.』

中銀流動性預金の金利は▲75bpで変更なし。為替市場に注目して云々というのはスイスフランとユーロを事実上のペッグしないといけないからということで、堂々と為替を中心に話が出来る中銀なので日銀は羨ましかろうとか思ってしまいますが、「大国は為替相場をマニュピレートするものではない、介入するのは雑魚国家(キリッ)」という考えがあるのでまあ思っていても中々言えないですかそうですか。

『The Swiss National Bank is today introducing the SNB policy rate.1』

でもって脚注が
『1 For detailed information, please see Thomas Jordan’s introductory remarks to the news conference on 13 June 2019 at 10.00 am CET. 』

ジョルダン総裁の会見で説明するってナンジャソラ(この声明文3ページもあるんだからそこで説明しろよ)という感じですがまあそれは兎も角として、

『From now on, it will use this rate in taking and communicating its monetary policy decisions. The SNB policy rate replaces the target range for the three-month Libor used previously, and currently stands at -0.75%. The SNB’s monetary policy thus remains as expansionary as before. Interest on sight deposits held by banks at the SNB currently corresponds to the SNB policy rate and remains at -0.75%. The SNB will seek to keep the secured short-term Swiss franc money market rates close to the SNB policy rate. SARON is the most representative short-term money market rate today, and is also establishing itself as the reference rate for financial products.』

ということで、従来は「3か月LIBOR金利がこの位になるようにしていく」というのが政策金利だったのですけれども、今後は有担保で期間が短い銀行間取引金利の金利水準がこの位になるようにしていく、という建付けに変更しますよというお話になります。だそうです。

でもって以下説明は続くのですが、背景としてはご案内の通りでLIBORが先々出なくなる方向なので、その前に変更しましょうという極めて普通の話なんですが、そもそも論としてSNBの場合は珍しいことに3MLIBORというのを政策金利目標にしていて、インターバンク市場のメカニズムからしたら翌日物銀行間金利を政策誘導目標にした方が誘導目標への誘導を技術的に行いやすい、というかどうやってLIBOR誘導するんだよというのは昔から頭に?が飛び交っておりましたが、何せこの国の場合インターバンク金利もさることながらスイスフランの為替レートが重要で正面切って為替の話をする、というジャパンとは別系統の中銀なので、不覚にもあまり勉強をしておりませんので週末にでも勉強できたら少しずつこの辺のネタを出すかもしれない(何となく出さない気がするが)という感じですすいません。

ジョルダン総裁のステートメントはこちら
https://www.snb.ch/en/mmr/speeches/id/ref_20190613_tjn
Introductory remarks by Thomas Jordan

説明はこちら、ということですが背景を理解してから改めて読んでみようと思います。


〇昨日の続きをやろうと思ったが時間が無いので途中の分析をすっ飛ばして結論を見るという荒業に出る

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2019/data/wp19j03.pdf
日本銀行ワーキングペーパーシリーズ
近年のインフレ動学を巡る論点:日本の経験

昨日の続きということになりますと、

『加えて、上記のフィリップス曲線の枠組みでは、 概念上、これも「その他」の「その他」に含まれ得るが、やや毛色の異なるものとして、「計測誤差」の問題もある。すなわち、本節でみてきたインフレ率や需給ギャップには計測誤差もあり、実勢としてはインフレ率がすでに高まっていたり、需給ギャップでみられるよりもスラックが残っていたりするのではないかというのである。次節以降では、そうした弱めのインフレ率の背景を掘り下げる。』

ということで弱めのインフレ率の背景を掘り下げる、としまして以下、

『3.インフレ予想の上昇に時間を要している背景
@ 長期にわたる経験への依存
A 規範(ノルム)
B 合理的無関心(Rational Inattention)』

『4.供給側の要因(1):労働市場を通じるメカニズム
(1)わが国の労働市場に関する事実整理
(2)賃金の抑制メカニズム
(3)労働生産性の引き上げ31 』

『5.供給側の要因(2):財・サービス市場を通じるメカニズム
@ インターネット通販の拡大
A 携帯電話関連36
B グローバル化
C 公共料金と家賃40 』

『6.計測上の論点
(1)インフレ率(消費者物価指数)
(2)インフレ予想
(3)需給ギャップ 』

と無茶苦茶多岐に渡る分析がありまして、細かく読みだすと物凄いことになりそうな(というかなる)物件になっておりまして、色々と面白いと思うのですが、こういう分析をした後の結論部分がまた実に滋味の深い物件になっているのがこのスタッフペーパーの良いところであります、ということでいきなり本文37ページに飛びます。

『7.結びに代えて』

「結論」じゃないんですよ、その意味は中身を見ればわかります。

『本稿では、わが国のインフレ率が景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて弱いことなどを確認したうえで、その背景について、論点整理を行った。』

はい。

『そこで改めて明らかになったことは、わが国のインフレ率の弱さを説明できるような要因は複雑に絡み合っており、論点を整理することさえ容易でないということである。』

!!!!!!

『また、それぞれの要因がどの程度の影響を及ぼしており、いずれの要因が重要かという点についても、十分なコンセンサスがあるわけではない。』

(;∀;)イイハナシダナー

『そうした状況下、理論・実証両面からの研究が続けられ、わが国のインフレ動学に関する知見が蓄積されていくことが望まれる。』

全く仰る通りだとか浅学菲才のアタクシが申し上げるのも僭越ではございますが、物価は貨幣的現象とかいうような単純な話でもないし、インフレ期待を引き上げるだの期待に直接働きかけるだのというのもそんな単純な話では無い、というようなもう全力で置物ドクトリンを棄却するような分析でありますが、これつまり麿ドクトリンに普通に回帰している話で、昨日引用した「供給側の要因もある」云々の話だって麿ドクトリンで「供給側の要因もあるからいきなり2%なのではなくて当面1%を中間目標にしてその後徐々に2%になっていくようにしましょう」という話のまんまジャンでありまして、6年間散々大緩和マイナス金利とかやってようやく理屈の方はだいぶ戻って来ましたな(政策が戻るとは言っていない)という感じではあります。

いやまあやってみないと分からんから、という面はあるので全部が無駄とは言いませんけど、それにしてもマイナス金利だの株式の大量購入だのクレジットの大量購入だの、なんか払ったコストが高すぎるし、別に政策が戻るかというとまだ戻る感じはまるでない(トップが変わらないと無理じゃろ)のであって、いつまでこの実験に付き合わされるのよワシらは(白目)という感じではございます。

#途中の分析も色々面白いのでそちらはボチボチやっていきます






2019/06/13

お題「フラットニングの中30年入札とな/日本のインフレ動学のファクトチェックの結論が身も蓋もない件について」

これはニコライエジョフ・・・・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190612/k10011949621000.html
老後2000万円「報告書はもうなくなった」自民 森山国対委員長
2019年6月12日 12時43分

と思ったらこんなニュースがやって来ました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190612/k10011950231000.html
「老後2000万円必要」 投資への関心高まる
2019年6月12日 21時02分

これはいわゆる(爆発音の為以下聴取不能)。

〇フラットニングが続く中で30年国債入札のようですがと言いつつ世間話

これで今日30年入札かよ・・・・・・・
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N23J1HH
2019年6月12日 / 15:29
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は上昇で引け、超長期ゾーンはしっかり

『 <15:12> 国債先物は上昇で引け、超長期ゾーンはしっかり

国債先物中心限月9月限は前営業日比2銭高の153円44銭となり、上昇して引けた。材料不足で方向感に欠ける中、引けにかけて前日終値を挟んでもみ合いとなった。9月限は午前に出来高ベースで6月限を上回った。この結果、中心限月は6月限から9月限に事実上移行した。10年最長期国債利回り(長期金利)は前日と横ばいのマイナス0.115%。

現物市場では、超長期ゾーンが後場に入り強含んだ。新発30年債は前日比1.0bp低い0.340%、新発40年債は同1.0bp低い0.375%。新発20年債は前日と変わらずの0.245%。

超長期ゾーンの底堅い動きについて、モルガン・スタンレーMUFG証券のエグゼクティブディレクター、杉嵜弘一氏は「米金利の低下を背景に超長期債のタームプレミアムを潰すしかないことから、生保や年金勢が淡々と買い続けている」と指摘。米国では利下げ観測が高まる一方で、それに追随して日銀が追加緩和に踏み切ると考える本邦勢が少ないことが背景にあるという。』(上記URL先より)

てな訳でして、今週入って先物は上がって下がって上がってますけど上がっている間にも下がっている間にも超長期の特に後ろの方が堅調の巻で上がって下がってとかやっている間に着実に金利水準を切り下げているというこの展開で30年入札ですかという状況。

金利がホイホイ下がって迎える6月7月辺りというのは時々盛大な鬼門になることがある(まあそうじゃない時の方が多い筈なのだが鬼門になった時の爆発力が割とあるのでそっちの記憶だけは残るというバイアスがあるのはご留意ください)のですが、今回は何せ米国様の緩和観測というのがあって、これ6月や7月に下げて打ち止め感でも出すとかいうのなら話は別ですが、まあ打ち止め感出るようなコミュニケーションするの無理でしょうし、まさかこの程度の状況で利下げを直ぐにするとも思えない(のだがパウエルちゃんは本人は兎も角として金融市場的には(もしかしたらトランプ的にも)脅せば出てくるという扱いになってしまったので、6月7月なにもしなくても利下げモードが続くでしょう(個人の感想です)、というかそもそもの動きが米国利下げウギャーということでおっ始まっている相場ちゃんなので、これは米国利下げカツアゲ相場が終わらんことには・・・・・・とは思うのですがさてどうなるやら。


一方でトランプちゃんはこれだし
https://jp.reuters.com/article/trump-china-deal-idJPKCN1TD2NG
2019年6月13日 / 05:36
中国との通商合意、期限設けず=トランプ米大統領

『[ワシントン 12日 ロイター] - トランプ米大統領は12日、中国との通商合意の期限は設けていないと述べた。トランプ氏は訪米中のポーランドのドゥダ大統領との共同記者会見で、「(米中通商合意の)期限は設けていない。期限については今後考える」と述べた。』(上記URL先より)

トランプって自分の方が強い立場にいるから散々引っ張っても決定的な大戦争とかにならない限りにおいて別にこっちがそこまで痛手を被る訳もないでしょということで、窮鼠猫を噛むの図にならない間においてはドンパチやってメイクアメリカグレートアゲインって言ってた方が支持集まるしFRBの金融政策は緩和バイアスがかかりやすくなるので株価も下がらんし、となっているでしょうからそら中国(だけじゃなくてそこら中の通商問題に関しても含め)と全面手打ちとかするインセンティブねえわ、と思ってしまうとこうなるのはむべなるかな。

でもってこうなっている以上FRBは通商問題がグローバル経済の減速とマインドへの悪影響に対する重しになると言い続けないと行けなくなって、利下げは中々よーせんとは思うのですが(個人の感想です)、利下げしないだけに利下げ観測だけは延々と引っ張られるとかいう事になりますし、これは従来とはまた違った発想でいかないといけんのだろうな等と思いつつ、そういう事言うとフラグになるんだよなーという思いもあるので(汗)実に難しいですな。


しかしまあ何ですな、
http://fis.nri.co.jp/ja-JP/knowledge/commentary/2019/20190612.html
木内登英のGlobal Economy & Policy Insight
日銀の物価目標は本当の目標ではない?
2019年06月12日
金融政策に「一応の目的」と「本当の目標」

先般の安倍首相の「目標は達成している」発言って世が世なら官邸からのタオルが飛んできたぜ出口キタコレヒャッハーとかいう話になっても何ら不思議ではないネタでありますので、そらもう木内ニキがここぞとばかりにコラムを更新(更新頻度が凄いのですがががが)しておりますし、今回のコラムの筆致がノリノリで実に良いのですが、あんまりバカスカ引用するのも何なので詳しくは上記URL先を見てくらはい。

世が世なら「目標は達成している」云々はこれを機に出口作戦とかになってもおかしくは無いのですけれども、何せ米国がすべて悪い訳で、米国が利下げするかもしれないモードってトランプおじちゃんが通商問題で延々と喧嘩を売りまくって(しかも大爆発は絶対にさせない)いる間ってずーっと利下げ催促カツアゲモードになるので、主要な他国の金融政策運営的に正常化だの引き締めだのというのは無理があろうかと思われますので、逆に今このタイミングなら勝ったことにする発言をぶっこんで来ても(出口の連想からの金利上昇が起きないので)大丈夫ということでもありますな、うんうん。

なお、木内さんのコラムを3行でまとめると

リフレ派は
とっとと消えろ
ジンバブエ

こうですかわかりません(><)


#と30年入札の話はどこに逝ったんだと言われそうな雑談でした(大汗)



〇調節年報ネタの前にインフレ動学のスタッフペーパーの鑑賞をば

調節年報って基本事実関係の話を淡々としているので、読み物というか昨年度の市場をレビューするとか、資金回りの動向をレビューするとか言うのには良いのですが、価値判断の話があまり無いのでネタにし辛いですなあ、とか思っていたら先般こんなのが出てきました訳で先日URLだけ貼っていた訳ですけどね。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2019/wp19j03.htm/
近年のインフレ動学を巡る論点:日本の経験

まずは上記URL先のアブストラクトから。

『わが国のインフレ率は、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると弱めの動きを続けている。こうした現象は、世界金融危機後に先進国で共通して観察されたものである。ただし、わが国のインフレ率は、米欧対比でみても弱めとなっており、わが国に固有の要因も寄与しているとみられる。』

さいですな。

『本稿では、こうした弱めのインフレ率の背景について、国内外の学術的な議論を踏まえつつ、論点整理を行い、本コンファレンス提出論文の位置づけを明らかにする。その際、(1)インフレ予想が高まってこない背景、(2)労働市場や財・サービス市場を通じて主に供給側の要因により賃金、物価を抑制するメカニズム、(3)消費者物価指数や需給ギャップなどのデータの計測を巡る議論、に焦点をあてて議論を行う。』

ということで充実したネタなので1回で終わらずに何回かの細切れになる予定ですすいませんすいません。

てな訳で本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2019/data/wp19j03.pdf
日本銀行ワーキングペーパーシリーズ
近年のインフレ動学を巡る論点:日本の経験

以下上記PDFの本文から引用します。

・まずはファクトチェック

最初に要旨ってのがあるのですがそれはさっき引用したのと同じでして、まずは現状認識部分の最初の小見出し『1.はじめに 』から参ります。

『本稿の目的は、東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局第8回共催コンファレンスのテーマである近年のわが国のインフレ動学について、基本的な事実を確認するとともに、そうしたインフレ動学の背景について、論点を整理することである。加えて、ここで示した論点との関係で、コンファレンス提出論文の位置づけを明らかにすることも意図している。』

まさか基本的な事実を確認しないで置物理論が、などという無粋なツッコミはしないで現状認識のパートを拝読するとファクトとして確かにその通りなのですが身も蓋もない話が出て参ります。

『問題意識を明確にするために、近年のわが国のインフレ率の動向を振り返ろう。』

以下図表とかもあるのですが例によってそれは本文を見て下さいませ。

『消費者物価指数の前年比でみたインフレ率は、2013 年以降、概ねプラスで推移しており、「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではなくなっている。他方、足もとのインフレ率は、消費者物価指数(除く生鮮食品)が0%台後半と、日本銀行による2%の「物価安定の目標」にはなお距離があり、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると弱めの動きを続けている(図表1)。』

はい。

『インフレ率の基調的な動きを捕捉するべく、消費者物価指数(除く生鮮食品・ エネルギー)の前年比をみると、足もとでは0%台前半であり、ここ数年は1% にも満たない水準で推移している。この点は、刈込平均値、加重中央値、最頻値というその他の基調を捉える指標をみても同様である(図表2)1。』(アタクシの環境だとコピペしてテキストに落とそうとすると「最」の文字だけ欠落(半角スペースで出てくる)するという謎仕様になっているので、以下引用時に「最」をミスって補足し損なう可能性がありますのでよろしくお願いいたします、今回は「最頻値」なので一発で気が付いた)

図表2を見ると刈込平均で1%近く行ったのが2度ほどあったんですよね。何もかも懐かしい。

『消費者物価指数を構成する各品目の前年比に関するヒストグラムをみると、最頻値が0%近傍にある点は、90 年代から変わりはない(図表3) 2。』

ほう。

『もっとも、 物価上昇率が2%程度であった 1992年には、多くの品目で2%以上の値上げがみられていた。とくに、3%程度の値上げがなされた品目が目立っており、この程度の値上げが許容されるような環境にあった可能性が示唆される。』

ジジイなのでよく分かります。

『ここに含まれる品目を細かくみると、食料品や外食、衣料品などのカテゴリーで多くみられる。また、学校給食や下水道料のような公共料金に加え、民営家賃や公営家賃も、3%程度の上昇を示していた。このように、当時の状況は、公共料金や家賃が上がりにくい近年とは、大きく異なっていた。』

とは言え今公共料金や家賃がホイホイ上がりだしたらエライことになると思う(個人の感想です)。

『インフレ率の弱さは、世界金融危機後に、先進国で共通して観察されている ことから、「失われたインフレ(missing inflation)」として学識者および実務家から関心が注がれてきた3。そうした状況に呼応するように、近年では関連する理論・実証研究が増加しているが、依然として、インフレの弱さの背景について コンセンサスがあるとは言い難い状況にある。』

そらそうよ。

『また、わが国における missing inflation の背後には、先進国に共通する要因のほかに、わが国に固有の要因も存在するように思われる。』

キタコレ。

『その証左として、たとえば、消費者物価指数(除く食料・エネルギー)の前年比でみたわが国のインフレ率が、世界金融危機のかなり以前から米欧対比低い水準で推移している こと(図表4)や、価格変動分布において、0%近傍の品目の割合が極端に高いことが挙げられる(図表5)。』

というのがファクトの話ですが、

『こうした事実を踏まえ、本稿は、近年のわが国におけるインフレ率の弱さを説明できるような本源的な要因について、missing inflation に関する近年の議論も念頭に置きつつ、論点を整理する。こうしたわが国の経験に根差したインフレ動学に関する議論は、missing inflation に対して問題意識を有する他の主要先進国にとっても、有益な示唆を与え得るものと考えられる。』

大きく出ましたな、でもその通りだと思います。

『本稿の構成は次のとおりである。2節では、フィリップス曲線に基づいて、 インフレ率の変動を規定する主たる変数の動きを概観し、景気の拡大や労働需給の引き締まりと比べて、インフレ率が弱めであることなどを確認する。3節以降では、弱めのインフレ率の背景に関する仮説をまとめる。具体的には、3 節ではインフレ予想の上昇が鈍い背景、4節では労働市場を通じるメカニズム、 5節では財・サービス市場を通じるメカニズムについて、論点を整理する。6 節では、消費者物価指数や需給ギャップなどのデータの計測を巡る論点を紹介 する。7節は、本稿のまとめである。』

とまあそういう話になっておりまして、


・需要側以外の要因がという現状認識がございましてですな

ということで本文5ページ第2節の『2.フィリップス曲線と観察事実』になりますがこの結論がその通りだと思うけど中々身も蓋もない結論になるのがチャーミング。

『本節では、標準的なマクロ経済理論においてインフレ率の決定式として登場するフィリップス曲線(Phillips 1958)に基づいて、物価変動を規定する主たる 変数の動向を確認する。フィリップス曲線は、失業率と名目賃金上昇率の間の経験的な負の相関関係を表す概念として登場し、現在では、需給ギャップとイ ンフレ率の間における正の相関を指すことが多い。もっとも、現実には、インフレ率を需給ギャップだけで説明することは困難であり、実証研究では、その他の説明変数を加えた誘導型フィリップス曲線を用いることが一般的である4。』

ほう。

『以下では、先行研究において誘導型フィリップス曲線のなかで用いられてい る3つの物価変動の決定要因について、その動向を確認する5。』

『第一の決定要因 は、中長期的なインフレ予想である。これは、物価変動の趨勢的な変動を捉える変数とされている(Bernanke 2007; Yellen 2015)。』

『第二は、需給ギャップである。 これは、物価変動の景気循環的な変動を捉える変数である。』

『第三は、その他で ある。これは、文字通り、インフレ予想と需給ギャップ以外のすべてを指す。 本節では、その他の要因として取り上げられることの多い商品市況と為替相場に加え、それらを反映して動く輸入物価について、動向を確認する。』

ということで各決定要因の分析が続くのですが引用していると全文引用になってしまいますし、大体からして量が増えすぎにも程がありますので結論部分にワープしましょう。本文10ページまでワープします。『(4)小括』ってところになります。

『前節でみたとおり、近年のわが国のインフレ率は、基調的にみて1%にも満たない水準で推移してきた。』

ナムナム。

『一方、本節で確認したように、需給ギャップは、 このところプラス基調となっており、近年のわが国のインフレ率の弱さを需給ギャップが捉えているような需要側の要因だけで説明することは困難とみることができる。』

でもモメンタムを説明するときにいや何でもありません。

『また、輸入物価の前年比をみても、ここ2年間ほどでは振れを伴いながらも概ねプラスで推移しており、輸入物価が消費者物価を持続的に押し下げてきたわけでもないようにみえる。』

なるほど。

『こうしたことを踏まえると、インフレ率がなお低めの伸びにとどまっている 理由は、上述のフィリップス曲線の枠組みでの整理では、第一に、日本銀行が 2%の物価安定目標を掲げているにも関わらず、(1)の「インフレ予想」の上昇に時間を要していることや、第二に、(3)の「その他」の要因のうち、商品市況や為替相場以外の要因(「その他」の「その他」)が何らか物価下押しに寄与したということになる。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・・

『この「その他」の「その他」は、以下にみるように、 様々なものを含むが、需要側の要因でないという意味で、本稿では、広く「供給側の要因」として整理する。』

ちょwwwwおまwwwwww

まあその通りにも程があるのですが、それを言い出すと置物理論が示す置物政策の波及メカニズム(メンドイのであの図表のURLは割愛しますがご案内の波及メカニズムですな)の前提がががががががが。

というかこの「供給側の要因」っての木内さんが審議委員の時によく説明していた話だった訳で、これは木内さんは「それ見たことか」と言いたいでしょうなあ。

『加えて、上記のフィリップス曲線の枠組みでは、 概念上、これも「その他」の「その他」に含まれ得るが、やや毛色の異なるものとして、「計測誤差」の問題もある。すなわち、本節でみてきたインフレ率や需給ギャップには計測誤差もあり、実勢としてはインフレ率がすでに高まっていたり、需給ギャップでみられるよりもスラックが残っていたりするのではないかというのである。次節以降では、そうした弱めのインフレ率の背景を掘り下げる。』

ということで現状のファクトチェックの時点で既に身も蓋もない話になっていて、これですと金融政策単体で早期に2%とかいうのはそもそも夢物語であって、金融政策は経済の好条件をサポートして行くという形、つまり俺が俺がなのではなくて、第2線みたいな感じで物価目標の達成に寄与していく、という話になりますぞなという感が漂う身も蓋もない話になっておりますが、以下の部分は時間と量の関係上明日以降にボチボチと見て行きましょう。









2019/06/12

お題「先般のECBドラギ会見は早期の追加緩和からはある程度距離を置いていると思う(個人の感想です)」

ナンジャソラ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190611/k10011948481000.html
“老後2000万円必要”麻生副総理・金融相「報告書受け取らぬ」
2019年6月11日 17時11分

よし資料を保存した俺様大勝利(違)。


〇ドラギ総裁会見の続き(というか昨日ほとんど頭だけでしたので、汗)

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190606~32b6221806.en.html
PRESS CONFERENCE
Mario Draghi, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Vilnius, 6 June 2019

昨日の続きで恐縮ですが、昨日引用しました冒頭一発目の説明だと、「今回は先行きの不透明に対応してガイダンス半年延長したけどメインシナリオ変えてないもんねー」という内容になっておりましたので、そらまあ市場ちゃんも「期待外れ」となるわと思うのですが、次のアクションをするなら利下げですよねというような話しには素直に利下げという話もしておりまして、昨日引用したのの続きになります。

・将来の利下げの必要性についての議論はありましたとな

『Could you give us your now-customary summary of the discussion? I'm especially interested in what were the contentious points, whether there was unanimity or dissent.(後半割愛)』

ところで議論は?という質問に対しまして、

『Draghi: I'll answer first the first question. Now, if I have to give a broad summary of the discussion, I would say it was centred on three key concepts.』

3つの点について主に議論したとな。

『First of all, there is still confidence in the baseline, but in the midst of increased and prolonged uncertainty.』

ベースラインシナリオの蓋然性に関しては維持しているけれども、不確実性の拡大と長期化が起きているとな。

『Prolonged means that this uncertainty is not going to go out. In March we might've hoped for a trade deal, we might've hoped for a decrease in uncertainties more generally. We might've hoped for a different evolution in the Brexit, but now it's different. That's one, but there is some acknowledgement of the economy at the same time.』

貿易問題とブリクジットはもうちょっとマシな展開を想定していたんですけどねえ・・・・・・とのことでして、

『Basically, acknowledgement of risk.』

リスクと不確実性が分かれて話になってるとな。

『These risks have gained importance and gained projection and we can go through these risks one by one - more analytically.』

不確実性とリスクと何がどう違うんだかよくわからんのだが、そういう分け方をすることによって「リスク対応の追加緩和、知りませんなあ」と答えるための屁理屈になっているんじゃないでしょうか、という気がする(個人の感想です)。

『There is a third element that has characterised our discussion today and you can find some words to this extent in the introductory statement; namely the readiness to act in case of adverse contingencies.』

3つ目の論点は良からぬコンティンジェントなことが起きた時に迅速に動きますよ、という声明文にある点に示されています、とかゆうてるような気がします。

『I have said this on other occasions. This time the discussion has become, I would say, more granular in the sense that - and you'll see this in the accounts of the meeting - in the sense that several members raised the possibility of further rate cuts.』

でもって議事要旨に出てきますが数名のメンバーが将来の金利引き下げの可能性について指摘しました、と議事要旨出る前の話するんかいなとか思いますがまあそういう説明がありまする。

『Other members raised the possibility of restarting the asset purchase programme, or further extensions in the forward guidance.』

APPの再開やフォワードガイダンスの更なる延長の可能性を示した他のメンバーもいますよと。

『And the conviction that we should pursue our objective in a symmetric fashion was also expressed. By the way, let me add that in case these adverse contingencies were to happen, certainly fiscal policy will have to also come into consideration and play a fundamental role. Two wrinkles to this, but why don't I leave this to other questions? Let me answer the second question.(後半割愛)』

でもってコンティンジェンシープランとしては財政というのもありますな、という話をしていますが、これ割愛した質問の後半がイタリアの財政の話なのでそのマクラになっているように見えます(そこの質疑は割愛します)。


でもって次の質問で追い打ちが来る。

『I'd just like to address the answer that you gave to the last question about the granularity of the discussion. Could you maybe fill us in a little bit more on under what circumstances would you cut rates? Under what circumstances would you restart the expansion of QE?』

質問の前半はこらまた露骨なという感じですが、どんな状況になったら利下げとかAPP再開とかするんですか議論の様子はどうだったのですかさっきのをもうちょい詳しく、って話で、

『For my second question or issue, if you like, it looks as though the US Federal Reserve might start to cut rates soon as well, so could you maybe just discuss the pros and cons in terms of how that measure would impact the Eurozone economy?』

FEDが近い将来利下げしたら欧州経済にとってメリットデメリットは何でしょうかと来ました。


ドラギ先生の回答。

『Draghi: Let me say it's a reflection that has just started today in this meeting. We have not discussed which contingency would call for which instrument.』

どのような問題が起きたらこういう政策ツールを使うというような議論はしておりませんがな、だそうで。

『On the possibility of restarting the asset purchase programme, let me say that we have now, having abstained from purchasing bonds, considerable headroom anyway. We also have the comfort of the law after the European Court of Justice gave explicitly broad discretion to pursue in a proportionate manner our objectives and comply with our mandate.』

APPの再開に関しては、そもそも現状で買入を縮小しているところで買入余地はありますが、EUの規程に則って購入するような規定もございまして、って話をしているんですが、どうも次のパラグラフの流れから考えると「APP再開は目先のメインツールにはならない」ということのような気がします。

『The other instrument that was supported was a possible decrease in interest rates. Well, about the point I said in the introductory statement, it's quite important; there was a quite long discussion about whether the period of negative interest rates and whether especially the extension in the forward guidance is affecting banks' profitability in a way that could hamper lending.』

利下げとフォワードガイダンス延長に関してはかなり議論している(結局ガイダンス延長に収まった訳ですし)ようですが、この時に問題になるのがこれらの措置によって金融機関の収益に悪影響を及ぼした結果金融機関の貸出に悪影響を与えることで、今回の冒頭声明文でも示しました通り、この点についての点検を行っていますよ。

『These are answers in the aggregate; within the aggregate there are many different situations. But in the aggregate the answer was that so far we see no effect for a variety of reasons, which, however, it's not at all granted as a result, if we were to further extend the forward guidance or if we were to decrease interest rates. That's why the introductory statement makes reference to mitigating measures in that case.』

全体としてみれば現状でそのような問題が生じている訳でもなく、利下げやガイダンス長期化によってその問題が生じるとは想定していない(ので利下げもガイダンス延長もバッチコーイ状態だという話)のですが、ただまあそうは言いましても仮に今後利下げなりガイダンスの延長なりをしていく場合において、金融機関収益に関する問題点を軽減するようなことも必要かもね、とは冒頭ステートメントに書いた通りですよ、との由。

『The other question was whether the possible rate cut in some other jurisdictions might affect the European economy.』

他国の中銀を「some other jurisdictions」という言い方するのかーというのは兎も角として、

『Well, I think it's a question we've asked ourselves several times in the last few years and I didn't speak about the financing conditions now. I should say that financing conditions with respect to the last monetary policy meeting have become slightly, slightly tighter. This is on the account of the fact that stock prices are now lower and the euro has appreciated. The effective exchange rate of the euro has appreciated and so I think that's the answer to your question.』

前回会合から比べて株価がちと下がったりユーロが上がったりして金融環境が若干タイト化しましたよね、それがお答えです、ってことですから米国単独で利下げされると(特にユーロ高からの)金融環境タイト化という認識を示しているという話でございますな、となると米国利下げしたらなんちゃってでも何でもいいのでしょうが、なんかECBも追随することになるんでしょうねえ、と思わせつ説明になっております。


・次の方向性は利上げでは無くて利下げとな&政策発動余地

ちょっと先の質疑に飛びますがこれはまた露骨な質問。

『Mr Draghi, on your comments on negative interest rates and possible interest rate cuts, other central banks, like the Fed, have been talking for some time, or over the last few days, about interest rate cuts, whereas the ECB's forward guidance still seems to be tilted towards a hiking bias. Is that correct that the next move in interest rates is more likely to be an increase than a cut?』

フォワードガイダンスはそれ終わったら金利引き上げるという示唆に読める(そら正常化の一環で最初ぶっこんできているんですからそうなるわな、とは思いました)のだが、やはり次のアクションは利下げではなくて利上げなんですねとかどう見ても分かってて聞いてるのに素敵な聞き方ですな。

『Draghi: No…』

そらそうだ。

『My second question was on the amount of policy space you have if you do decide to cut rates, following on from an earlier question. How much further can you go on interest rates given that you've now found that they're not so bad for the economy? How much further can you go on QE considering how much you're already holding in terms of bonds?』

でもってさっきの質疑にもありましたが(というのがどこぞの日銀記者会見との格の違いを感じさせます)、ところで経済悪化に対応して利下げするとか資産買入するとかに関してどの位の幅とか規模を想定すりゃいいんでしょうかねと聞いているのですが、これは政策発動余地についての質問のようですな。

『Draghi: Well, the answer to the first question is no and the answer to the second question is that I think if there was someone who had doubts about our policy space, today's discussion really makes justice of any doubt about it.』

政策発動余地の限界というような議論をする外野の皆さんがいるようですが、今日の政策決定を見れば発動余地の限界などない(キリッ)ということが示された、との事です。ホンマカイナという感じはしますが。

『The policy space is there and the exchanges we had today is that if adverse contingencies were to materialise, the Governing Council stands ready to act and use - as I've said many times - all the instruments that are in the toolbox.』

道具箱にあるものを必要ならば出しまっせ、だそうだがあまり根拠があるような説明になっていませんで、まあこれは「もう手段はありません」とは口が裂けても言えないのでそう言っているだけという感じですな。


・下げる場合は預金ファシリティレートの引き下げになるようで

さらに飛んで先の方の質疑応答ですけれども。

『I wanted just a clarification on the rate discussion. Was it related to the deposit rate facility or the MRO?』

『Draghi: You mean the pricing of TLTRO?』

『Discussion that the members of the Governing Council were proposing a rate cut; was it about the deposit rate facility?』

『Draghi: It was about the deposit facility rate.』

というのがありまして(最初の所で質問が利下げの話なのかTLTRO3のプライシングの話か聞き返してますが)利下げするにしてもMRO金利は0%のまま据え置きにして、預金ファシリティを引き下げるようです。


・フォワードガイダンスは「アート」なのか?

オモロイ質疑がありました。

『Two questions, Mr Draghi. One is, given the prolonged uncertainty that you have mentioned a number of times, how far are we from a “whatever it takes” moment?』

まあ前半のは先般来質問されている「でもっていつになったら緩和するの」でありますが後半が味わいのある質問。

『The second part also is specific to you: you have made great use of forward guidance, perhaps better than some of your colleagues.』

ドラギ先生はフォワードガイダンスを非常にうまく使っている、恐らくあなたの同僚よりも上手であると思う。

『Forward guidance is an art more than a science; how much does it depend on the central banker giving that forward guidance for the markets to take it seriously? I'm thinking ahead to a day where you may not be sitting in front of us.』

フォワードガイダンスはサイエンスというよりもアートであって、使う人次第で効能が異なって来るのではないかとか思う訳ですよ、そうしますとドラギさんいなくなったらどうなっちゃうんでしょうかねえ、とか考える訳ですな、とか褒めてる(ドラギさんの資質を)んだかけなしている(フォワードガイダンスの効用が属人的という文脈で)んだか良く分からん(褒めてる)質問ですが、まあこれをジャパンに置き換えてみれば麿よりも福井の俊ちゃんが使う方が上手くワークするんじゃないかという話だから言いたいことは分かる。

でもってそのお答え。まずは前半部分。

『Draghi: First of all, the current conditions are not even comparable with the conditions we had way back seven years ago. It's about seven years ago, it's slightly less than seven years ago. We have the lowest unemployment rate in many, many, many years. We've seen growth in employment, so we have both a decline in unemployment and a growth in employment. We have basically by and large tight labour markets everywhere in the Eurozone and rising wages. The overall economic situation is different, but certainly we have to be prepared.』

7年前と今とでは経済の状況が大きく変わっております、でもってそういうのは違うけど「必要な時に行動する」という準備に関しては同じですよね、と微妙に質問と噛み合わない話が掴みに入ります。

『Even though, as I said, the Governing Council today confirmed the present baseline, also acknowledged the risks to this baseline and how these risks have prolonged themselves and have in a sense also increased. Therefore the discussion really clearly stated the readiness to act in a less general way that I have reported to you on other occasions, but more specifically, in a more granular fashion.』

結局「どうなったら行動するんじゃ」という質問には全然答えずに、現状はベースラインシナリオに変更はないものの不確実性の拡大と長期化が起きていますよという現状認識の説明をして、あとは煙に巻いていますな。

でもってフォワードガイダンス。

『The use of forward guidance, I agree with you; it's been quite effective.』

「I agree with you」って言うから一瞬ドラギマジックを肯定するのかと思ったわ、効果があったという点で質問者に同意したようですぬ。

『Now we've been using it for several years and it's been quite successful in steering market expectations and basically, it's become the major monetary policy tool we have now.』

市場の期待を制御するのにフォワードガイダンスは大変うまく機能していまして、今の政策のメジャーツールになっておりますよ、だそうです。

『What we've decided really in a sense protects the baseline from these risks in this contingency. But if we are to see different challenges, then the Governing Council - as I said before - stands ready to use all its tools.』

『I don't think it's related to me, by the way, the forward guidance being effective because the way it's been designed and the fact that the reaction function has been very well explained and in a sense going back to market expectations - what they are telling us - is that, yes, the reaction function of the ECB has been well understood.』

そらまあそう答えるしかないのですが、さすがにこのガイダンスが上手く効果を出している点については「I don't think it's related to me」と言って、ガイダンスのデザインが機能していて、ECBの政策反応関数をよく説明し、それが良く理解されているから機能しているんですよーという説明になっていますが、そこはまあ公式見解的にそういうしかないでしょうな、とは思いますけれども、ECBの政策反応関数って為替じゃねえのとか思ってしまう位しらっと為替レートの話をしてくるわけでして、「2%またはそれより下」の物価目標に対する対応って感じはあまりしない(むしろFEDの方が物価がちょっと下向きだすと大騒ぎになる)と思うので(個人の感想です)、やっぱりこのガイダンスの使い方ってのはアートの世界じゃないのかね、とか思う訳ですよ、個人の感想にも程がありますが。

まあ他にも質疑応答ありますがパスさせていただきまして、全般的には「利上げ」の方向性は消しながらも、利下げ等に関しては含みは持たせるものの、そもそもの発動条件の話も碌すっぽ出てこないという辺りに、とりあえず盛り上がり過ぎている利下げ観測に関しては一定の距離を置く(というかFEDいいから落ち着けというメッセージを出しているのか)という感じなんですかねえ、よー知らんですけど、という所ではあります。

#ということで虫干しネタで恐縮至極








2019/06/11

お題「ブルームバーグ総裁インタビューとか安倍ちゃん国会答弁とか/円債ブルフラキタコレ/ドラギ会見から(その1)」

炎上案件になってしまいましたな。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190610/k10011947681000.html
“老後に2千万円必要”指針 首相釈明「不正確で誤解与えた」
2019年6月10日 19時08分

貯蓄から投資の話をしたいのは分かるのだが使う題材が地雷オブ地雷にも程があるんだが何でこれにGoサインが出たのかという金融庁様における決定プロセスの方が気になりますわ(審議会だからコントロール効かんって話じゃないでしょ)。まあ資料類見てるとFP気取りかよという感じの話が展開されている(年金が足りないなら施策を考えるとかそういう話じゃなくていきなり資産形成しろじゃあFPとしては正しいけど行政庁としてどうなの、という話ね)のもどうなのかよと思うけど。

一方で追及する方から出てくるガバガバコメントに全俺が泣いたというか呆れたんですけど、

『立憲民主党の蓮舫参議院幹事長は、記者団に対し、「5分で読める報告書を担当の麻生大臣が読んでいなかったことに驚いた。報告書のどこにも『豊かな生活の額だ』とは書いていない。読んでいない人がめちゃくちゃなことを言っている。』(上記URL先より)

あのーすいません、この報告書本文51ページあるんで(表紙と目次合わせて56ページ)1ページ6秒で読まないと5分で読み切れない計算になりますよね、確かに図表もそこそこ入っていますけどレンホー大先生はあれを5分で読む手法を国民に公開したら物凄い国益に資すると思うので早くその手法公開してくださいよろしくお願いいたします(棒読み)。

ちなみに資料はこちら
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603.html
令和元年6月3日
金融庁
金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書 の公表について

でもって問題の報告書はこちら。(PDFで56ページあります)
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf

#とりあえず資料を速攻で保存しておきました(^^)


〇ブルームバーグで黒田総裁のインタビューとかの一方で安倍ちゃんの梯子外しとかワロエル

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-06-10/PSV5GL6KLVSH01
さらに大規模緩和が可能、副作用に最大限配慮−日銀総裁の単独インタビュー
日高正裕、藤岡徹
2019年6月10日 13:59 JST 更新日時 2019年6月10日 16:40 JST

→現時点で日本経済は追加対策必要ない−ブルームバーグTVに語る
→副作用避けるためさまざまな金融手段を組み合わせる可能性がある

というのが出たんですけど・・・・・・・・

上記のタイムスタンプにありますように、最初これ場中に出たんですけど、上記の所にありますように、「現時点では追加緩和必要ない」とかいうようなヘッドラインも打っていたのですが、何故かこの「大規模な追加緩和を打つ余地がある」みたいなヘッドラインだけハイライト(赤地に白抜き文字)表示をする、という新手の技をブルームバーグさんが繰り出してくる、という中々素敵なプレイに出たのですが、

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 19年6月限

2019/06/10 日中取引
153.47(08:45)
153.61(10:12)
153.45(08:45)
153.56(15:02)
+0.13
60,071

(上記URL先の日中足と日中4本値は11日の日中取引時間帯になると11日のしか見えなくなります)

昨日の日中足見ると債券先物ちゃんがニョキっと上がっても精々3銭とかそういう世界でして、追加緩和の余地が大いにあるみたいなヘッドラインだけハイライトさせる「選択的ヘッドラインハイライト作戦」という技というか奇襲攻撃は惜しくも不発に終わったようでH高さん残念でしたな(ニヤニヤ)。

・・・・・・・・というのはさておき折角なのでちと拝読(URL再掲します)。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-06-10/PSV5GL6KLVSH01
さらに大規模緩和が可能、副作用に最大限配慮−日銀総裁の単独インタビュー
日高正裕、藤岡徹
2019年6月10日 13:59 JST 更新日時 2019年6月10日 16:40 JST

『黒田総裁は前日まで20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれた福岡市内で10日、ブルームバーグテレビジョンのキャサリン・ヘイズとの英語での単独インタビューに応じ、「2%の物価目標に向けたモメンタムが失われれば追加緩和を行う」と語った。』(上記URL先より)

ということで上記URL先だとインタビュー動画も見れるんですが、3分ちょいの話で別に何かそんなに大層な話をしている感じでもない(なお上記にあるように英語ですが黒田さんの英語は日本人が聞いて分かりやすい英語ですよ)のですが、

『黒田総裁はこの中で、日銀が追加緩和が必要になった時、何か大きなことがやれるのか、との問いに「そう思う」と答えた。同時に、「日本経済は全体としてよくやっている」とした上で、「現時点では日本経済は追加的な対策が必要な状態ではない」と指摘。また、「仮に追加緩和が必要になった場合、最大限、副作用を避けるため、さまざまな金融手段を組み合わせる可能性がある」と表明した。』(上記URL先より)

とのことですが「戦力の逐次投入をしないで必要な施策はすべて実施」とか威勢のいいこと言っていたQQE導入の時の話は何処へやら、というのは勘弁するにしましても、上記のように「副作用を避けるための金融手段を組み合わせる」というような副作用軽減策があるのでしたら、別に出し惜しみしないでとっとと今すぐお出し頂いた方が宜しいのではないでしょうか(上目遣いになりながら)と存じます次第でございますが、そのようなものがトンと出てこない(先日出ていたのは別に副作用軽減対策では無く、オペレーション円滑化のための物という建付けになっているはずです、念のため)という事実を鑑みるに、まあ「手段はありません」とは口が裂けても言えないのでとりあえず言ってみましたという感じだし、英語の説明聞く限り「隠し玉が用意されている」というような感じでもなく単に総括検証の時に出ていた手段の話をしている位という感じで、別にどうということもない。

『円ドル相場は黒田総裁の発言が伝わると1ドル=108円67銭まで円安が進んだ。』(上記URL先より)

そうでしたっけという感じで、さすがに国内市場の方は株も債券もスルーしていた感じですな。


まあそれはそれとしてそれより安倍ちゃんですよ安倍ちゃん。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-06-10/PSVEWE6S972B01
安倍首相:完全雇用は達成、2%物価目標は「一応」の目的
広川高史
2019年6月10日 15:56 JST 更新日時 2019年6月10日 17:43 JST

→出口戦略は日銀にお任せしたい−金融政策も含め目標は達成
→リスク顕在化なら、機動的なマクロ経済政策を躊躇なく実行

『安倍晋三首相は10日午後の参院決算委員会で、政府と日本銀行が掲げる2%の物価安定目標には届いていないものの、完全雇用など「本当の目的」は達成しているとの認識を明らかにした。金融緩和の出口戦略については日銀に任せる考えを示した。大塚耕平氏(国民民主)への答弁。』

『安倍首相は自らの経済政策について、「2%の物価安定ということが一応目的だが、本当の目的は例えば雇用に働き掛けをして完全雇用を目指していく、そういう意味においては金融政策も含め、目標については達成している」と指摘。「それ以上の出口戦略うんぬんについては日銀にお任せしたい」とも述べた。』(上記URL先より)

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

まあ何ですな、安倍ちゃんのことですから別にこれが本当に日銀の出口政策を支持しているかというとそんなことまで考えて発言したんじゃなくて勢いで話をしているんだろうなあ、という想像は難くないのですけれども、それにしても昨日ネタにした黒田総裁のおまいうスピーチとか、金懇コンファランスのリバーサルレートネタとか、「今日はこの位にしといたるわ」攻撃の布石を周囲が着々と打っていて、如何にその神輿にトップを乗っけて行くのかという事を検討しているようにも見えてしまいそうな辺りが何ともかんともという感じではございます。実際にどこまで真面目にその辺考えているのかは知る由もありませんけれども、このままズルズルと逝ってしまうリスクを考えたらさすがに矛を収めた方が良かろうという判断が働いても何らおかしくはないので・・・・・・・・・・・

しかしまあ「一応」の目的に付き合わされて散々な目に遭っている銀行業態やら生保年金アセマネなど、これが三国志演義だったらこのニュースを見た途端に全身の金創が破れて吐血する感じですかそうですか。

ま。「目標は達成しているので出口は日銀に任せる」というのは、たぶん「アベノミクスは上手く行っている」というのを例によって例のごとく安倍ちゃんお得意の発言の勢い(「私や妻が関与していたら議員も辞職する」みたいな勢いで言わずもがなの発言をする安倍ちゃんの仕様のうち最もアカン奴)なのでしょうが、これを奇貨として「アベノミクスが成功したので政府と日銀の共同文書のありかたも新しいステージに相応しいものにする」とか何とか言って共同文書の刷新を行ってしまえば「できるだけ早期に2%必達」みたいな話が無かったことに出来て、2%目標はお題目として残すとしてもそれは精神的なものみたいな感じになって、緩和政策も穏健化することが出来るのでありまして、その辺のネックをぶち破る位の「目標は達成している」ワードとしてぜひ使って頂きたく存じますです、はい。


〇輪番減額しても円債ブルフラットはトマランチ会長とな

という話の前に昨日の輪番計数計算なのですが、改めて自分で作ったお手製シート見てたら輪番の買入計算の中で変動利付国債部分の偶数月補正の符号を間違えておりましたので、出入りで1000億円計算違っていましたすいませんすいません謹んで訂正します(影響細かいので昨日の過去ログの方を訂正線入りで直しておきます)。

#なお変国に関しては現実問題として償還銘柄が打ち込まれる(年内にあと3本償還になる)可能性が多分にあるのでここの部分全部を残高で見ない方が良いような気もしますが全体との関係でそこまで確認する気力が湧かないのでパス

さてまあそんな訳で超長期の輪番減額してましたが、昨日の債券市場ちゃんについてロイターさんから毎度のように引用しますと、

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N23H1GQ
2019年6月10日 / 15:31
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発で引け、長期金利は-0.125%に低下

『<15:12> 国債先物は反発で引け、長期金利は-0.125%に低下

国債先物中心限月6月限は前営業日比13銭高の153円56銭となり、反発して引けた。米債高の流れを引き継ぎ、朝方からしっかりと推移した。日銀による中期対象の国債買い入れオファー額が据え置かれたこともサポート材料となった。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp低いマイナス0.125%に低下した。』(上記URL先より、以下同様)

って中期輪番減らさないのサポートとか言うのはただの後付けでしょ(昨日試算したように中期輪番は量が稼げてしまうだけに減額余地に乏しい)と思いますが、まあ勢いのある時は何でも後付け講釈の理屈に使うのはいつものこと。

『中期と物価連動債対象のオペのオファー額が前回から据え置きとなり、部で(原文ママ)減額観測が浮上していたことから、市場では買い安心感が広がった。中期対象のオペ結果は案分利回り格差が実勢範囲以内となり、無難と受け止められた。』

物国は減らさんだろう(笑)よ。まあそれよりも超長期でしてですね、

『現物市場は、超長期ゾーンは引け直前に一段と金利が低下。新発20年債利回りは前営業日比2.5bp低い0.235%と、2016年8月2日以来の水準まで低下した。新発30年債は同4.0bp低い0.355%と、16年8月29日以来の低水準。新発40年債は同5.5bp低い0.385%と、16年8月23日以来の水準まで低下した。』

てなことで、超長期の輪番減額して、しかも超長期の後ろの方を頑張って「回数減らして据え置き」という割と新しい施策を打ってきたにも関わらず超長期の後ろが大ブルフラットニングになったということでして、減額しても何の問題も起きないという意味では調節部門大勝利とも言えますが、ただまあリバーサルレートとかの観点からして「適切なイールドカーブ」の形成が出来ているのか、という論点になると調節部門大敗北の可能性もあるのですが、適切なイールドカーブに関してはどうせ政策委員会・金融政策決定会合でご判断することだから知らんがなと開き直っておけばヨロシアルね。

『市場では「超長期ゾーンについては、日銀の国債買い入れオペ減額による金利上昇は難しくなっている。さらなる金利低下余地がありそうだ」(別の国内証券)と声が聞かれた。』

地合いが悪い時には輪番減額懸念とか言って懸念だけで弱含むというのにこの強気よという所ではあるのですけれども、この超長期の後ろの方が特にぶっ飛んでいくという素敵な展開に関しては何回かそのような光景を見たような気がしますが、その後に何とか検証だの時事通信砲だのというのがあった気がする(個人の感想です)訳ですけれども、まあそんな事を言っている人たちが一定量以上いるうちはソイヤソイヤとやるんでしょうかねえ、よー知らんけど。

なお、このロイターさんの相場概況ですが、次の所でクスっと笑ってしまいました(^^)。

『黒田東彦日銀総裁はブルームバーグ・テレビのインタビューで「現時点では日本経済は追加的な対策が必要な状態ではない」と指摘。また「仮に追加緩和が必要になった場合、最大限、副作用を避けるため、さまざまな金融手段を組み合わせる可能性がある」と述べた。相場への影響は限定的だった。』(ここまで引用部分は上記URL先のロイター記事より)


・・・・・・・さて、ここで本日付け(=昨日の引け)の売買参考統計値を確認してみましょう。
http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php
売買参考統計値/格付マトリクス ダウンロード

左から、銘柄、回号、償還日、表面利率、平均値単価(円)、前日比(銭)、複利利回り、単利利回り、ですな。

超長期国債 148 2034/03/20 1.5 120.91 +17 0.076 0.070
超長期国債 149 2034/06/20 1.5 121.08 +17 0.087 0.080
超長期国債 150 2034/09/20 1.4 119.74 +17 0.098 0.090
超長期国債 151 2034/12/20 1.2 116.82 +17 0.107 0.100

とりあえず残存15年近辺の銘柄について確認してみたら上記の通りでありまして、これは片岡ニキも大歓喜という状況になっていますので、さぞかし物価上昇の勢いも力強くなっているでしょうなあという所ではございますが、片岡大先生の所感をお伺いしたい所ではございますな(棒読み)。


〇マクロ加算見直しとか債券市場サーベイとか

・マクロ加算見直し

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190610b.pdf
日本銀行当座預金のマクロ加算残高にかかる基準比率の見直しについて

『日本銀行は、日本銀行当座預金のうち、ゼロ金利が適用されるマクロ加算残高の算出に用いる基準比率(「補完当座預金制度基本要領」4.(3)イ.に定 める基準比率)について、次のとおり定めることとしました。

2019 年 6 月〜8 月積み期間:36.0%(注)

これにより、日本銀行当座預金のうち、マイナス金利が適用される政策金利残高(金融機関間で裁定取引が行われたと仮定した金額)は、上記3積み期間において、平均して 5 兆円程度となる見込みです。』

これまでの数字はこちらにありますように、
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190311a.pdf

『2019 年 3 月積み期間:32.5%(注)
2019 年 4 月〜5 月積み期間:35.5%(注)』

でしたので、今積み期間はそんなに日銀当座預金残高が(日々の上下はさておきまして)全体的には大きくぶれませんよということですかそうですか。


・債券市場サーベイ

http://www.boj.or.jp/paym/bond/bond1905.pdf
債券市場サーベイ <2019年5月調査>
回答期間:2019年5月13日〜5月17日 調査対象先数:67先

ということで連休明けてから海外がアイヤーと言いながら何か微妙な空気を醸し出していた時期のサーベイではありますが。

『1.債券市場の機能度の状況(長期国債の流通市場を念頭において、ご回答下さい)
(1)貴行(庫・社)からみた債券市場の機能度(注)』

ってのを見ますと、

現状判断
DI:▲38→▲36
高い:1→1
さほど高くない:60→61
低い:39→37

3か月前との比較
DI:▲38→▲36
改善した :4→4
さほど改善していない :72→87
低下した :24→9

とはなっていましてふーんそうですかそうですかという所ではあるのですが、まあこのサーベイ自体がアベイラビリティを中心にしたアンケートになっていて、そもそも論として収益の源泉が国内債券就中国債市場ですかとかそういう定性的な判断に関してはネタになっておりません(一応取引頻度の辺りでカバーされていないこともないですけど)ので、まあ余程の変態相場にならないと何かこうはあそうですかという毎度おなじみの結果が出てくるという感じになってしまいましたな、ナムナム。


〇ECBドラギ総裁会見ネタでござる(たぶん明日に続く)

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190606~32b6221806.en.html
PRESS CONFERENCE
Mario Draghi, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Vilnius, 6 June 2019

・冒頭ステートメントの見通しの方を一応確認するとこれがまた動いてませんですな

QAに行く前に冒頭ステートメントの経済物価の現状判断とスタッフ見通しを念のため確認。金曜に引用したところの続きになります。

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis. Euro area real GDP rose by 0.4%, quarter on quarter, in the first quarter of 2019, following an increase of 0.2% in the fourth quarter of 2018. However, incoming economic data and survey information point to somewhat weaker growth in the second and third quarters of this year.』

somewhat weaker growthだそうな。

『This reflects the ongoing weakness in international trade in an environment of prolonged global uncertainties, which are weighing, in particular, on the euro area manufacturing sector.』

貿易戦争の影響が長引いて不確実性が長期化しているので特に製造業に影響がでているのがその要因。

『At the same time, the euro area services and construction sectors are showing resilience and the labour market is continuing to improve. Looking ahead, the euro area expansion will continue to be supported by favourable financing conditions, the mildly expansionary euro area fiscal stance, further employment gains and rising wages, and the ongoing - albeit somewhat slower - growth in global activity.』

一方でサービスや建設業は頑健で労働市場は改善を続けているので、今後もやや速度は弱まるけど成長は続くでしょ、という見通し。よって、

『This assessment is broadly reflected in the June 2019 Eurosystem staff macroeconomic projections for the euro area. These projections foresee annual real GDP increasing by 1.2% in 2019, 1.4% in 2020 and 1.4% in 2021. Compared with the March 2019 ECB staff macroeconomic projections, the outlook for real GDP growth has been revised up by 0.1 percentage points for 2019 and has been revised down by 0.2 percentage points for 2020 and by 0.1 percentage points for 2021.』

スタッフの成長見通しは2019年が0.1%上方修正、2020年が0.2%下方修正、2021年が0.1%下方修正とかでほぼ同じ。

『The risks surrounding the euro area growth outlook remain tilted to the downside, on account of the prolonged presence of uncertainties, related to geopolitical factors, the rising threat of protectionism and vulnerabilities in emerging markets.』

リスクはダウンサイド、要因は貿易戦争の不確実性、地政学(ブリクジットなど)、保護貿易主義の台頭、新興国市場の脆弱性、と普通に順当な話。

『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation was 1.2% in May 2019, after 1.7% in April, reflecting mainly lower energy and services price inflation. On the basis of current futures prices for oil, headline inflation is likely to decline over the coming months, before rising again towards the end of year.』

物価に関しては足元の下押しはエネルギーで、当面下押し要因として働いたあと年末にかけて要因が剥落するという見通しでして、

『Looking through the recent volatility due to temporary factors, measures of underlying inflation remain generally muted, but labour cost pressures continue to strengthen and broaden amid high levels of capacity utilisation and tightening labour markets.』

基調的な物価は抑制されていますが、お賃金の上昇が広がっていけば、設備稼働も高くて労働市場のタイト化が進んでいく中で物価上昇圧力が掛かって来るでしょうという見通しでこれ毎度同じ話になっています。

『Looking ahead, underlying inflation is expected to increase over the medium term, supported by our monetary policy measures, the ongoing economic expansion and stronger wage growth.』

お賃金と今の金融緩和が効く、という話になっています。まあこれも順当。

『This assessment is also broadly reflected in the June 2019 Eurosystem staff macroeconomic projections for the euro area, which foresee annual HICP inflation at 1.3% in 2019, 1.4% in 2020 and 1.6% in 2021. Compared with the March 2019 ECB staff macroeconomic projections, the outlook for HICP inflation has been revised up by 0.1 percentage points for 2019 and revised down by 0.1 percentage points for 2020.』

スタッフの物価見通しは2019年が0.1%上方修正、2020年は0.1%下方修正、2021年見通しは不変とこれまたほぼ同じですが2021年でも1.6%なんですよね。


・主に「何で利下げせんの」「利下げを決めるファクターis何」で終始する質疑応答ですけど

という訳で質疑応答ですが、のっけから利下げせんのかオイコラ(とは言ってないが)という質問が到来する。

『You said that interest rates will remain at their current levels through the first half of next year, but the market is actually pricing for the next interest rate move to be a cut. If you look at the market reaction after you issued the policy statement, it does look like investors were actually expecting more. Would you say that markets are perhaps getting ahead of themselves even though you have said in the past that markets are pricing in the ECB's reaction function. 』

市場はECBの次の政策は利下げとみているし、政策発表後の市場の動きを見ると今回の措置は足りないという評価をしているようですが、ご所感は如何にとか相手がパウエルだったらその時点でパウエルが涙目になりそうな質問ですな、さらに質問の後半ですが、

『My second question is on market-based inflation expectations, which have continued to slide recently. You've said in the past that that was because of negative risk premium predominantly, but how long can you continue to see market-based inflation expectations so low below your aim?』

市場のインフレ期待がここに来て低下してきているんですが、以前の説明だとリスクプレミアムがマイナスになっておりまして見たいにゆうとったが更に下がっているというのはどういう事かご所感を、と来ましていきなりツッコミモードになっています。

でもってドラギ俊彦先生のお答え。

『Draghi: You have to distinguish between market-based expectations of interest rates and survey expectations. 』

いきなり「貴殿は市場のインフレ期待とサーベイの期待を分けて考えるべきである」ってナンジャソレ。

『The extension of the six months of this forward guidance basically takes into account the prolongation of uncertainty with respect to what we saw and believed and deemed in March.』

6か月のガイダンス延長(6か月と明言していますな)は、基本的に「不確実性が長引いていること」に対応したものである、だそうな。

『We've seen the threat of rising protectionism and, in fact, the point made by someone about what markets see in this protectionism threat and they seem to see much more than simply the damage to the economies coming from trade. They might see a much broader phenomenon questioning all the multilateral order that we have lived in since the Second World War. Then of course the uncertainty about the Brexit negotiation and the uncertainty about the vulnerabilities of certain emerging market countries, which are important, more generally the uncertainty about global trade growth has extended beyond what we believed in March.』

『That's why we have extended our forward guidance.』

貿易問題に関しては過去(戦後)最大の規模になってきているのでそらもう不確実性ですよ、というのに加えて冒頭ステートメントで出てきていた各種要因に関して、3月に想定していたよりも不確実性が長期化しているので今回フォワードガイダンスを延長しましたって説明ですな。

『At the same time, data about the economy are not bad. There isn't, as you've seen, any substantial worsening in the outlook. That's the reason for this extension by seven months. 』

一方で(スタッフ見通しがほぼ不変なのだから当たり前ですけど)経済のハードデータは悪くなく、経済物価見通しの顕著な悪化は見られませんので、今回のガイダンス延長が7か月(なぜかこの部分ではそう言ってる)という理由です、という説明ですな。

つまりは今回の政策対応(というほどの対応でもないけど)に関してはあくまでも「不確実性の長期化によって様子見をするとみられる期間も長くなりましたよ」という話であって、追加緩和が必要になっているという認識ではない、という説明になっておるわけですな。でもまあこの先の質疑の中で多く突っ込まれているのが「利下げはどうするんじゃ」という話でありまして、まあドラギ俊彦先生としては「さっき説明したじゃろ」という所かとは思いますが、そらまあこの状況ではこう聞くわな、というお話ではあります(が時間の関係上後続質疑は明日に続きます)。

でもって後半のインフレ期待に関して。

『The other part, the other question is about the slide in inflation expectations. Yes, the market-based inflation expectations.』

最初のナンジャソラなのは確認だったようですな。

『We are taking this seriously.』

インフレ期待に関しては真剣に捉えていますとな。

『First of all there is no probability of deflation. There is a very low probability of recession. There are, based on various analysis, no threats of de-anchoring inflation expectations, but certainly there is a considerable mass of distribution between zero and 1.5% now.』

と言いつつその次の説明を見ると、デフレの可能性は無いだの、リセッションの可能性は低いだの、インフレ期待のアンカリングが外れているような兆候はないだのと強気の話をして、ただアクチュアルの物価は0−1.5%の辺りにずっといますよね、と説明しまして、

『By the way, this fall, this slide in inflation expectations is not happening only in Europe; it's also happening elsewhere although admittedly from higher starting levels. So there must be some sort of global factor, but it's certainly something that we take into account in our policy.』

いやその「この前の秋にはインフレ期待がズッコケたのは欧州だけではなくて世界的に起きていることなので、これはグローバルファクター(キリッ)」とか言われましてもそれ言い訳になるんかいなという気もしますが、まあ要するにはいはい大本営大本営ということで、市場が期待外れとか言うのはまあ最初のこの受け答えを見ますとそうなりますわな、という風には思うのでありました(個人の感想です)。


でもって以下当然のように質疑は続くのですが時間と量の関係で今朝は最初の質疑だけで勘弁とかいう攻撃に出るアタクシなのでありましたサーセン。





2019/06/10

お題「輪番はカーブの一番後ろを意識/総裁挨拶ェ・・・・・・・/日銀から色々と紙が出ているので備忘メモ」

よしまいが人の親になるとな。何はともあれご無事にご安全に(^^)。

#むしろそんな歳月が経過していることに震える

〇輪番減額はカーブの一番後ろの方を重視してきましたという解釈で良いのかね

という訳で注目されておりました金曜の超長期輪番、という話の前に金曜の訂正ですが、金曜の輪番「中期超長期」とか慌てて書いておりましたが、言うまでもなく「長期超長期」が正解ですすいませんすいません(まあ皆さん気が付いていると思いますが、超滝汗)。

#過去ログの方は訂正線入りで直しました


でもってご案内の通り輪番のオファーは・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190607.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,800 2019年6月10日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2019年6月10日
国債買入(残存期間25年超) 400 2019年6月10日

超長期前半1800(願望込み)後半500(今まで回数減と増額をセットにしていたので踏襲すると読んで)という大予想をしておりましたが、まーたフラグ建築士になってしまったようでここまでフラグが建築されるとなると宝くじでも買いに行った方が良いのではないかと思ってしまいますが、今回の無責任輪番大予想(とはいえ本人大真面目に考えたんですが)も華麗に外してしまいましたなうははははは(白目)。

まあ何ですな、1800の方はまあちょっとそこまで減らしてくれると嬉しいなモードだったのですが、400億円据え置きの方はそこまで頑張るか(ゆうて500と400の違いにどれだけ意味があるのかという話はありますがそれはさておき)という印象をアタクシは受けたところでありまして、(別に自分の予想が順当という訳でもないですけれども)アタクシが思ったより「量云々よりは後ろの方の減額にバイアスをかけてきた」という感じで、まあこれはこれで選択肢の一つという感じですな。

額を減らしたければ超長期前半をもうちょい減らすというのはあったと思うのですけれども、超長期前半400の後半400という減らし方で、月額800なので12倍しても1兆円行かないという減らし方(まあそんなに減らしようもないと言ってしまえばそれまでですが)ですから、今回の超長期減額は特にイールドカーブのロングエンドの所の介入を一段と減らしたという事になっておりまして、定量よりも定性って感じではございまする。


でもってさぼっておりました計数雑談もついでに加えますと、

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

で例によって銘柄別残高出して各銘柄の償還から今後の償還予定を計算(償還日は売買参考統計値をエクセルで出してデータを出してくる)します、という毎度の作業をしましたというだけの話で、ついでにヘッジクローズを入れておきますと例によって別にこの集計レビュワーがいる訳でもないのでアタクシがてめえでエクセルをヘコヘコ使って念のため再鑑とかをしたりしなかったり(今回はした)という物件なので、正確性については皆さんも確認してちょ程度ではある(本人は合っていると思っている)ので一つよろしゅうに。

5月末現在の銘柄別ベースの残高ですが、

営業毎旬ベース:468兆9,352億円(12月末:456兆1,131億円)
額面ベース:4,57兆6,141億円(12月末:4,44兆3,070億円)

で差分は営業毎旬の方が多いのですが、買っているものが基本オーバーパーであることに加えて3月末に既存保有分のアモチを掛けている分があると思います。まあ本来的には簿価ベースの営業毎旬の残高でいくら増えてるというのを見るのが正しいと思いますが、面倒にも程があるしまあそこは誤差(とか言ってられなくなる位買入額が減って来ると考えますが)ということでオミットして以下額面ベースで考察。

先月末は31日に月跨ぎ輪番があった(額面6,814億円)のでそれを加味すると、今年の買入増加額は13兆9,885億円。これに対して残り7か月での買入が残存1年以内の買入を除くと月額平均(変動利付を月500に均す)5兆7,400億円で、変動利付の部分を調整(なお細かい話をすると変動利付も年内償還銘柄があって、こいつらが輪番に打ち込まれる可能性もあるんですけれどもそこはパスします)しますと残り年間買入が7か月で40兆1,300億円40兆2,300億円、年内償還分が36兆4,536億円なので、2019年暦年の国債残高増加見込みは17兆6,649億円17兆7,649億円ですな。(変動利付の偶数月補正に間違いがあったので後日訂正しています、1000億ですけど)

今回は何せ減額が年額換算1兆行かないので、輪番自体は年間17兆円強の残高拡大ペースとなりまして、まあこれだけ輪番増えていたら他が落ちたりSLFがドバドバ(という程恒常的に出るかどうかは知らんけど)出たとしてもオーバーシュート型コミットメント自体は平気は平気(あとETF買入もここまでくると何気にデカいし)という感じですが、2020年暦年の償還が何気に多くて、アタクシのエクセル手計算が間違っていなければ何ですけど、暦年来年の償還が53兆4,702億円とかございますので、今のペースをそのまま維持するとして、2020年の長期国債増加見込み額ってのが買入の68兆8,800億円(5兆7,400億円の12倍で計算している)から差っ引くと15兆4,098億円になってしまいます。今年という面で言えば多分まだ中期とか長期とか減らそうと思えば年間2兆円以上減らしても問題なさそうな気がしますが、来年の事を考えるとあんまり減らすのもどうなのという感じだと思う(まあその頃には総括的検証の総括的検証が行われてマネタリーベースの拡大方針自体が無くなっているような世の中の変化が起きているかもしれませんからアレですが、と願望を籠めて言う^^)ので、さて長期減らすか中期(の後半が割とアカン)減らすかどうなるんでしょうかね、むろんここで完成形という可能性もありますが。


というのがまあ普通(かどうか知らんが本人は普通のつもり)に数字を見ていると思いつく話ではあるのですが、ここで陰謀論を逞しくしていきますと思いつく陰謀論は、今回超長期後半の減額を頑張った(絶対額的には兎も角「回数減らして1回増やして結果減額」というスキームを取らないのは前例踏襲を外したという意味で思い切っている)という所を軸にして展開させるのが吉(?)でありまして、例えば「超長期の後半を特に減額してきたというのは、将来的に超長期後半の減額を撤廃する布石」というような特に30年超のニーズが高い人歓喜の陰謀論を描いてみたり、「超長期の後半を特に減額したのはイールドカーブを立たせたいという日銀の意向を示しているので、今後マイナス金利を深堀りする際の布石」などと投資家が涙する陰謀論を描いてみたり、というような種類の陰謀論が考えられますが、まあ建付け上そこまで市場局が鉄砲玉になるというのもちょっとねえ、とは思いますので妄想するのは楽しいですけれども、あくまでも妄想の世界という事で。


#なお銀行券ルールとの絡みで言えば着々と「発行銀行券=保有長期国債」の分岐となる償還時は短くはなっているのはなっているのですが、気が遠い話のままであることは言うまでもありません



〇黒田総裁のおまいう講演が連発であった件について

G20に合わせて黒ちゃんの講演が3本ほどアップされていましたが、土曜日の挨拶(土日にアップされているのですが)はまあ良いのですがその前の2本の講演ちゃんですが、ヘッドラインで内容が出てきた時に爆笑してしまって周りに大迷惑になってしまったので謝罪と賠償。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190606a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190606a.pdf
【講演】
金融と情報通信技術の融合─歴史から学ぶ将来像─
国際金融協会春季総会における基調講演の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2019年6月6日

以下引用はHTMLの方から行います。

お題のように内容自体は、『1.はじめに』のケツにありますように、

『来るG20のアジェンダを反映し、明日午前のセッションは、情報通信技術が急速に進化するもとでの金融の将来と金融規制・監督の役割に焦点を当てます。本日は、この点について私の考えをお話しさせていただこうと思います。歴史を通し、金融と情報通信技術は相互に影響しながら共に進化を遂げてきました。その過程で、人類はその結果もたらされる課題を克服し、好機を活かす術を見出してきました。私たちは今、まさに課題と機会に直面しています。以下では、鍵となる歴史的エピソードを振り返ってみたいと思います。というのも、歴史は、これらについて多くの示唆を与えてくれるからです。』

という話なのですが、『3.市場の失敗と金融規制・監督の役割』の辺りから話がお前が言うなモードになっているのが味わい深い。

『有限責任の問題は、金融業にとってとりわけ重要です。というのも、金融業では、情報の非対称性により、上記の問題がより深刻になる傾向が強いからです。たとえば、有限責任のもとでは、投資責任者はバブルの拡大から利することはあっても、バブルの崩壊によって同程度の損失を被るとは限りません。有限責任と市場参加者間の情報の非対称性という組み合わせが、投資責任者にバブルをより拡大させるインセンティブを与えると主張する経済学者もいます5。情報通信技術の進化は、近代的な金融リスク管理技術の高度化にも貢献しましたが、情報開示の強化と組み合わされてもなお、上記の問題を完全に解決するには至っていません。』

はて今の金融政策は・・・・・・・・・と考え込みだしながら次を見ますと、

『来る2020年は、世界初の国際的に連関した金融バブル崩壊からちょうど300周年になります。1720年、ロンドンで崩壊した南海会社のバブルは、のちのアダム・スミスの思想に影響を与えましたが、同じ時期にミシシッピ・バブルとして知られる金融バブルがパリでも崩壊しました。その帰結として、人々は資本市場に対する信頼を失い、株式会社の設立と株式取引は、一世紀もの間、著しく減少しました。資本市場が停滞する中で、大規模な投資案件は、ごく一部の富裕層による資金負担で賄われる時代へと回帰したのです6。』

ちなみにガルブレイスの「バブルの物語」(ダイヤモンド社)は名作なので読んだことない方は読んでちょ。

『金融バブルは、過剰な信用創造を伴う場合に金融危機につながる傾向があります。長期間の国別データを分析した経済学者は、与信の伸びが、金融危機の発生を予測する変数として有用であることを示しています7。金融危機は経済に甚大な負の外部性をもたらします。1990年代後半の日本の危機や、2000代後半の先の世界金融危機の経験は、金融規制・監督の最も重要な役割が、市場の失敗に対処し、金融危機を防ぐことである点を私たちに思い起こさせます。』

>金融バブルは、過剰な信用創造を伴う場合に金融危機につながる傾向があります。
>金融バブルは、過剰な信用創造を伴う場合に金融危機につながる傾向があります。
>金融バブルは、過剰な信用創造を伴う場合に金融危機につながる傾向があります。

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

>金融規制・監督の最も重要な役割が、市場の失敗に対処し、金融危機を防ぐことである
>金融規制・監督の最も重要な役割が、市場の失敗に対処し、金融危機を防ぐことである
>金融規制・監督の最も重要な役割が、市場の失敗に対処し、金融危機を防ぐことである

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

いやあのすいません黒田総裁あーた自分で何言ってるんだか理解してお話してらっしゃいますか大丈夫ですかという感じでして、信用バブル発生上等どころかそれを推進するような政策をぶちこんでいる張本人からこういう話を聞かされるとは思わなかった次第で、どこぞのベンダーのヘッドラインにこの辺の文脈が出てきて爆笑の発作を引き起こして大変に遺憾だったので謝罪と賠償以下割愛。



・・・・・・・とまあそういうのが木曜に出ていた訳ですが、さらに金曜日に追い打ちが来ましてですなあ、

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190607b.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190607b.pdf
【講演】
高齢化社会における金融包摂
G20「高齢化と金融包摂」ハイレベルシンポジウム(GPFIフォーラム)における基調講演の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2019年6月7日

こちらも上記HTMLから引用します。

こちらはほぼ一発ネタではあるのですが、『2.高齢化社会と金融リテラシー』という所にこのような記述が。

『もっとも、60歳代の方でも、さらにあと20〜30年生きるとすれば、また、人生100年時代を迎えつつある中、それ以上に長生きする可能性も考慮すれば、蓄えた金融資産を少しでも長持ちさせる知恵が必要になってきます。また、若い世代にとっては、これからの長い人生を歩む中で、時間を味方につけながら、コツコツと長期に亘って資産を形成していく工夫が重要になってきます。この点、日本では、つみたてNISAニーサやiDeCoイデコといった税制優遇を伴う制度の拡充によって、国民の長期的な資産形成を政策的に後押ししています。』(HTMLをそのまま貼ると読み仮名が出てくる)

>蓄えた金融資産を少しでも長持ちさせる知恵が必要になってきます
>蓄えた金融資産を少しでも長持ちさせる知恵が必要になってきます
>蓄えた金融資産を少しでも長持ちさせる知恵が必要になってきます

・・・・・(゚д゚)

えーっとすいません、今「マイナス金利政策」ってのやっていると思うのですが、その政策を推進している人の口から何でそういう言葉が出るんだかと思いますし、前日は「信用の拡大でバブルが発生した後に崩壊すると大変なことになる」と言っている側から投資の積極的推奨みたいな話が出てくるとかお前は何を言ってるんだシリーズの連発で落涙を禁じ得ない次第な訳でございますよマッタクモウ。

まあ何ですな、もうちょっと前だとこの手の講演とか挨拶の時もQQE政策推進の理屈との整合性を考えて変なツッコミを受けないようにその辺を微妙に回避しながら一般論を展開していたと思うのですが、特に最近になって(最近がどの時期かと言われると多少困りますがYCCというよりもYCCの柔軟化とかの辺りなのか、黒田さん再任以降なのかな、とも思いますが過去ログをちゃんと整理整頓していないバチがこういう所で当たるのでちゃんとしなきゃ)もう全然ノーガードでどこからでも掛かって来なさい状態になっているのはどうした事ぞ、という風には思うのであります。

まー展望レポートでの物価目標達成時期に関してもとうの昔に形骸化したとは言え、今回の展望レポートでの1年延長によって明らかに見通し期間が延長になっても行きませんとか堂々としてきたように、ドンドンと置物理論が無かったものになっていくのを着実にやってきている感もありまして、広げ過ぎた大風呂敷というか増築しすぎてダンジョン状態になっている昭和の温泉旅館状態の現状政策に関して、自分から幕引きは出来ないとは言いましても、幕引きをして良いというお墨付きが出たらさっさと幕が引けるような布石は打っているんじゃないですかねえ、などと無粋な事を想像したりするのでありました(個人の妄想です)。


〇いろいろと面白そうな紙が出ているのだがまだ読めていない

この前の調節年報のドサクサにT+1とレポの話があって何か一部に歴史改変チックな香りがせんでもないのですけれども、まあそんな話はさておきまして、この時期は大人の事情と拝察される諸般の事情により、駆け込みラッシュの如くスタッフペーパーが出てくるのが日銀の仕様。

http://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps19.htm/
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ
2019年収録分

からは直近3本ぶっこまれておりまして、


http://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/19-J-08.html
金融規制の効率性と透明性:米国における金融規制の見直しを題材に
平良耕作

『リーマン・ショックを発端とする金融危機以降、米国においては、いわゆるドッド=フランク法の施行等により、金融システムの安定を確保するため、規制・監督面での強化が図られてきた。もっとも、最近では、これまでの規制強化の動きに対する見直しが提言されているほか、その一部については法改正等が行われている。こうした提言では、規制の効率性や透明性確保の観点から、費用便益分析(cost benefit analysis)の実施や規制枠組みの公表のあり方の見直しが論じられている。本稿では、米国の行政法規や金融危機以降に導入された米国独自の金融規制を概観したうえで、同規制の見直しに向けた提言等を整理することを通じ、わが国の金融規制のあり方を考える際の示唆を得る。』

全文はこちら。
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/19-J-08.pdf


http://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/19-J-09.html
中央銀行の国債保有と金利期間構造
宇野淳、戸辺玲子

『日本銀行(日銀)による量的・質的金融緩和政策(QQE)が、国債市場の価格形成に与えた影響を特定期間選好(preferred-habitat)モデルに照らして検証する。日銀は2013年以降、国債買入規模の拡大、マイナス金利の導入、イールドカーブコントロールと政策の力点を移しつつQQEを継続している。一連の金融政策が金利期間構造に与えた累積効果を要因分解したところ、QQE導入・拡大期のイールドは、米国同様、個別国債とその周辺銘柄の日銀買入により押し下げられたというローカル供給効果が確認されたが、マイナス金利導入以降の期間では、銘柄別買入額とイールド低下の関係は薄れデュレーション効果が主要な要因となった。この結果は、米国の大規模資産買入に関する先行研究と異なる。日銀の国債買入が各時点で市場から大量に取得可能な新発債に傾斜していたためと推察される。』

全文はこちら。
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/19-J-09.pdf


http://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/19-J-10.html
金融規制法における「預金受入れ」の位置付けについての一考察〜スイスにおける改正銀行法を手掛かりとして〜
関口健太

『わが国では、近時、機能別・横断的な金融規制のあり方が議論されているが、「預金受入れ」が金融規制においてどのように位置付けられるべきかについては、これまでコンセンサスが形成されているわけではない。その背景には、預金を受け入れる主体が銀行として規制されてきたため、アンバンドリング化された「預金受入れ」の規制範囲や規制手法の横断的な検討が、必ずしも十分に行われてこなかったことがあると思われる。こうした中、最近の海外の状況をみると、スイスにおいて、典型的な銀行業を営まない主体による預金受入れにつき、銀行よりも緩やかな規制に服する新たな免許が創設された。本稿は、スイスにおける預金受入れの規制枠組みについて、その概要を紹介するとともに、主として経済学の分野で議論が蓄積されてきた銀行の規制根拠の観点から分析する。そして、スイスとわが国の規制枠組みの比較を通じ、規制対象とすべき預金受入れの範囲や、その規制のあり方を考察する。』

全文はこちら
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/19-J-10.pdf


と来た側から、さらに味わいを感じる(なおアブストラクトしか読めていないのでネタにするのは後日)ワーキングペーパーシリーズが出ておりまして、

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2019/wp19j03.htm/
近年のインフレ動学を巡る論点:日本の経験
2019年6月7日
一上響*1宇野洋輔*2奥田達志*3笛木琢治*4前橋昂平*5

『わが国のインフレ率は、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると弱めの動きを続けている。こうした現象は、世界金融危機後に先進国で共通して観察されたものである。ただし、わが国のインフレ率は、米欧対比でみても弱めとなっており、わが国に固有の要因も寄与しているとみられる。本稿では、こうした弱めのインフレ率の背景について、国内外の学術的な議論を踏まえつつ、論点整理を行い、本コンファレンス提出論文の位置づけを明らかにする。その際、(1)インフレ予想が高まってこない背景、(2)労働市場や財・サービス市場を通じて主に供給側の要因により賃金、物価を抑制するメカニズム、(3)消費者物価指数や需給ギャップなどのデータの計測を巡る議論、に焦点をあてて議論を行う。』

ということで先般のリバーサルレートなどの話も出ていた日銀コンファランス関連のがありまして全文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2019/data/wp19j03.pdf


日銀レビューシリーズではこんなのが、
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2019/rev19j04.htm/
地域銀行の越境貸出の動向
2019年5月31日
金融機構局 尾崎道高、今野琢人*、廣山晴彦、土屋宰貴

『地域銀行は近年、地元回帰を進めてきており、その過程では、本店所在地だけでなく隣接地域での貸出も伸ばしている。本稿では、こうした越境貸出の実態を整理し、そのことが地域銀行の経営に及ぼす影響を分析している。地域銀行の越境貸出は、都市・地方圏双方で増加しているが、経済規模が大きく、県境を越えた企業活動が活発な地域ほど増加している。また、越境貸出は、経営体力のある地域銀行ほど積極化しており、他方で、資源制約の強い地域銀行は、本店所在地での貸出に注力する傾向にある。越境貸出に伴う競争の激化は従来、相対的に高い金利を確保してきた地域銀行に対し、金利低下圧力をもたらしている。越境貸出は今後も増加すると見込まれる中、地域銀行は、採算性の確保、信用リスク管理の強化に加え、付加価値の充実などを通じ金利によらない取引先との関係強化に迫られている。』

本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2019/data/rev19j04.pdf


などとございまして盛り沢山なのは良いんですが何でそう同時に出てくる(事情は拝察しますけど)もうちょっと分散して出してくれや読めねえだろ(読む能力がそもそもお前にあるのかというツッコミはしてはいけません)という所ではございます。


〇指標金利関連ですが

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190605a.htm/
日本円金利指標に関する検討委員会」第7回会合を開催
2019年6月5日
日本銀行金融市場局

『本日、「日本円金利指標に関する検討委員会」第7回会合を開催しました。本日の会合資料等は 「日本円金利指標に関する検討委員会」に掲載しているほか、本日の会合の模様については、後日、「議事要旨」のかたちで掲載する予定です。』

ということですが、この会合資料が載っている
http://www.boj.or.jp/paym/market/jpy_cmte/index.htm/
日本円金利指標に関する検討委員会

の6月5日分の資料がこれまた読み応えがあるのですが、何で同時にそういろんなもんが出るんですかオーバーフローですがなというとことです。


あと、全然関係ないけど
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190607b.htm/
SDGs/ESG金融に関するワークショップを開催

ついにESGにも来たかという感じです。

#などとやっていたら肝心の債券市場サーベイネタをやっている時間が無くなってしまった。同時にいろんなもん出すぎだえ





2019/06/07

お題「概ね寝起きでECBネタ/その他少々メモ」

うーんこの。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190605/k00/00m/010/113000c
改正国有林法が成立 大規模伐採を民間開放
毎日新聞2019年6月5日 13時11分(最終更新 6月5日 19時04分)

『改正法は、政府が「樹木採取区」に指定した国有林で伐採業者を公募。業者に与える「樹木採取権」の期間は50年以内と明記し、対価として樹木料などを徴収する。再造林の実施は農相が業者に申し入れるが、業者への義務規定はない。』

『伐採期間は10年が基本」(吉川貴盛農相)と強調し、再造林は伐採業者との契約にも盛り込んで担保すると繰り返した。ただ、林野庁は現行の小規模な伐採でも、再造林の成功率などを示す全国のデータを把握していない。』(以上上記URL先から)

国有林が荒廃しまくるという悪い予感が杞憂に終わって欲しいのだが・・・・・・・・


〇3か月でガイダンス期間の半年延長&TLTRO3の概要公表

・ガイダンス延長キタコレ

金融政策決定事項
https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2019/html/ecb.mp190606~1876cad9a5.en.html
Monetary policy decisions

『At today’s meeting, which was held in Vilnius, the Governing Council of the European Central Bank (ECB) took the following monetary policy decisions:』

今回の会合はリトアニアで実施とな。

『(1) The interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.00%, 0.25% and -0.40% respectively. The Governing Council now expects the key ECB interest rates to remain at their present levels at least through the first half of 2020, and in any case for as long as necessary to ensure the continued sustained convergence of inflation to levels that are below, but close to, 2% over the medium term. 』

主要オペレーション及び預金貸出各ファシリティの金利は据え置き。よく考えたらECBって政策金利が幾らって言い方しないけど、従来の流れから行けばMROのフィックスレートが政策金利(ちなみに昔だとMROのミニマムビットレートを示していた)なので「政策金利はゼロ金利」なのだが、やっていることは預金ファシリティでのマイナス金利適用によって市場金利を引き下げる効果があるということなのでマイナス金利政策、というのがややこしいですな。

まあそれはどうでも良いのですけど、今回はガイダンスで示す期間が「at least through the first half of 2020」となりまして、前回が「at least through the end of 2019」なのでガイダンスの期間を半年延長するという技に出ました。

1月までが「at least through the summer of 2019」でして3月会合で「at least through the end of 2019」にしましたが、この時に「3か月延長したぜよ」という言い方を会見でしらっと行っていましたので、今回は3か月経過したから期限を3か月延長する、というのもせわしないから半年後に半年延長するんじゃろとか思っていたら今回は3か月で半年延長しちゃいましたので、こうすると年末までガイダンスの方をいじって緩和した振りをする技が使いにくくなる(気にしないで延長延長しても良いんですけどだんだん訳が分からなくなるのが難点)ので、ドラギ先生自分の任期中に使えるタマは残しておくという事をしないで使っちゃうとか割と畜生プレイですな。

・・・・・と申しますか、まあFRBがあの状態ですから、なんか手ぶらって訳にも行かないので、本当はもうちょっと引っ張ってからガイダンス文言を延長するという手もあったとは思うのですが(さすがに3か月ごとに3か月ガイダンス延長するのは選択肢として取りにくいと思う)、状況が状況なだけにシャーナイナイという感じでもあろうかと思われますので、ドラギの畜生プレイとかいうのはさすがにドラギ俊彦先生に悪いかな、とは思います(^-^)。


『(2) The Governing Council intends to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the asset purchase programme for an extended period of time past the date when it starts raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』

『(3) Regarding the modalities of the new series of quarterly targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III), the Governing Council decided that the interest rate in each operation will be set at a level that is 10 basis points above the average rate applied in the Eurosystem’s main refinancing operations over the life of the respective TLTRO. For banks whose eligible net lending exceeds a benchmark, the rate applied in TLTRO III will be lower and can be as low as the average interest rate on the deposit facility prevailing over the life of the operation plus 10 basis points. 』

つーことでTLTRO3が投下されます。

『The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 14:30 CET today.』


・TLTRO3の概要とな

ということでいつもだと会見を次に見る訳ですがTLTRO3の方を見ますね。

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2019/html/ecb.pr190606~d1b6e3247d.en.html
ECB announces details of new targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III)
6 June 2019

『・Operations aim to preserve favourable bank lending conditions and to support the accommodative stance of monetary policy』

これはお題目。

『・TLTRO III interest rate will be set at 10 basis points above the average MRO rate over the life of each operation』

今回は貸出金利がMRO+0.1%に設定されていて(当初時点での固定ではなく貸出期間中の期中平均MRO金利に対応)TLTRO2の時よりも金利が上がっているんですよね。

『・For counterparties exceeding their lending benchmark a lower interest rate will apply, which can be as low as the average deposit facility rate plus 10 basis points』

基準よりも多く貸出をしている場合、優遇金利として預金ファシリティ(なので今は▲40bp)+0.1%までのお得なレートが適用される場合もありますよ。

ということなのですが、前回のTLTRO2はこの辺に説明があって、

https://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omo/tltro/html/index.en.html
Targeted longer-term refinancing operations (TLTROs)

こちらにも条件書いてありますが、その下の方にある『・ECB announces new series of targeted longer-term refinancing operations (TLTRO II), 10 March 2016』ってのを踏みに行きますとこの内容が出てきます。

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2016/html/pr160310_1.en.html
ECB announces new series of targeted longer-term refinancing operations (TLTRO II)
10 March 2016

でもってこちらにありますように、前回のTLTRO2では、『The interest rate applied to TLTRO II will be fixed for each operation at the rate applied in the main refinancing operations (MROs) prevailing at the time of allotment. In addition, counterparties whose eligible net lending in the period between 1 February 2016 and 31 January 2018 exceeds their benchmark will be charged a lower rate for the entire term of the operation. This lower rate will be linked to the interest rate on the deposit facility prevailing at the time of the allotment of each operation. 』(この部分は直上URL先の2016年3月10日に公表されたTLTRO2の概要から引用しています)となっていまして、貸出金利水準は期中のMRO平均金利で、(細々と決められた)ベンチマーク基準を上回る貸出を行った場合は段階的に優遇金利の適用が行われ、一番安い部分では預金ファシリティ水準で貸出をする、とありますので、しらっと10bp金利が上がっているという措置になっておりますな。


もとのリリースに戻りまして、

『The Governing Council of the European Central Bank (ECB) today decided on key parameters of the new series of targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III), including the interest rates that will be charged.』

はい。

『The quarterly operations, first announced in March, will help preserve favourable bank lending conditions and support the accommodative stance of monetary policy. They will start in September 2019 and end in March 2021, and have a maturity of two years each.』

9月から2021年3月まで4半期ごとに実施、貸出期間は2年、という辺りは事前にアナウンスされた通り。

『The interest rate for each operation will be set at a level of 10 basis points above the average rate applied to the Eurosystem’s main refinancing operations (MROs) over the life of the respective TLTRO.』

適用金利は今回MRO+10bp。

『For counterparties whose eligible net lending between the end of March 2019 and the end of March 2021 exceeds their benchmark net lending, the rate applied to TLTRO III operations will be lower, and can be as low as the average interest rate on the deposit facility prevailing over the life of the respective operation plus 10 basis points.』

貸出増加がベンチマークよりも多いカウンターパーティーにおいては優遇金利の適用有り、一番低い金利は預金ファシリティ+10bp。

『Counterparties will receive the maximum rate reduction if they exceed their benchmark stock of eligible loans by 2.5% as at 31 March 2021. Below this limit, the size of the decrease in the interest rate will be graduated linearly depending on the percentage by which a counterparty exceeds its benchmark stock of eligible loans.』

ベンチマークよりも貸出残高を2.5%伸ばしたところは最優遇金利が適用されますし、それよりも少ない場合でも増加させた場合はその割合に比例して優遇されますよと。

『For counterparties that exhibited positive eligible net lending in the 12-month period to 31 March 2019, the benchmark net lending is set at zero. For counterparties that exhibited negative eligible net lending in the 12-month period to 31 March 2019, the benchmark net lending is equal to the eligible net lending in that period. The interest rate applied to TLTRO III operations will be communicated to participants in September 2021.』

ベンチマークについては、2019年3月時点での前年比貸出増加を参考にして、貸出が増えているところはベンチマークを0%、減ったところは同期間の減少率をベンチマークにしまっせ、だそうな。

『The first series of TLTROs was announced in June 2014 and the second series in March 2016. They are targeted operations because the amount that banks can borrow, as well as the borrowing rate, are linked to their loans to non-financial corporations and households (excluding loans for house purchase). 』

『Counterparties are entitled to borrow up to a total of 30% of the stock of eligible loans as at 28 February 2019. The amount counterparties can borrow under TLTRO III is reduced by any amount that they previously borrowed under TLTRO II that is still outstanding. In addition, the amount that counterparties can borrow in each of the seven operations will be limited to, at most, 10% of their stock of eligible loans as at 28 February 2019. TLTRO III operations cannot be repaid before maturity.』

『Further technical details of the TLTRO III operations will be announced in due course.』

この辺になると話が細かくなるので域内銀行の中の人でもないアタクシが必死こいて読もうという気が起きなくなるのですが、TLTRO3の貸出総枠が幾らとか、過去のTLTROで借りてまだ残高が残っている分があると思いますがその分は貸出総枠から控除して貸出行いますよとか、まあその手の話をしている模様。さらに詳しいのは後日公表みたい。


ということで、TLTRO3に関しては事前アナウンス通りだし適用金利が微妙に高い(そもそも期間が前回の4年から今回は2年になっとるし、事前にアナウンスされていたけど)とかいう話のようですね。


ツー訳で、まあTLTRO3は順当な内容(のように思える)ので、ガイダンス期間をちょっと前倒し的に延長するということでポーズを見せた、という感じでしょうな。


・冒頭ステートメントに何気に味わいがある

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190606~32b6221806.en.html
PRESS CONFERENCE
Mario Draghi, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Vilnius, 6 June 2019
INTRODUCTORY STATEMENT

最初の辺りだけ駆け足で。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we have conducted a thorough assessment of the economic and inflation outlook, also taking into account the latest staff macroeconomic projections for the euro area. As a result, the Governing Council took the following decisions in the pursuit of its price stability objective.』

はい。

『First, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. We now expect them to remain at their present levels at least through the first half of 2020, and in any case for as long as necessary to ensure the continued sustained convergence of inflation to levels that are below, but close to, 2% over the medium term. 』

金利とガイダンスはこのようにしました。

『Second, we intend to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the asset purchase programme for an extended period of time past the date when we start raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』

APPの継続に関して、こちらは従来通り。

『Third, regarding the modalities of the new series of quarterly targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III), we decided that the interest rate in each operation will be set at a level that is 10 basis points above the average rate applied in the Eurosystem’s main refinancing operations over the life of the respective TLTRO. For banks whose eligible net lending exceeds a benchmark, the rate applied in TLTRO III will be lower, and can be as low as the average interest rate on the deposit facility prevailing over the life of the operation plus 10 basis points. 』

TLTRO3の概要を公表、金利水準についてはプレアナウンスが無かったので今回出ましたって奴です。

『A press release with further details of the terms of TLTRO III will be published at 15:30 CET today. 』

さっき引用した奴の事を指している、とここまでは説明だがこの次のパラグラフに味わいのある記述がある。

『The Governing Council also assessed that, at this point in time, the positive contribution of negative interest rates to the accommodative monetary policy stance and to the sustained convergence of inflation is not undermined by possible side effects on bank-based intermediation.』

マイナス金利の効果について委員会はアセスメントを行いました、銀行経由の金融仲介機能への副作用による物価などへの悪影響について、現状では副作用が物価などへの悪影響を与える状態ではないと認識している、だそうで、結論は大本営発表であるにしてもこういうネタが出たのが味わいがある。

『However, we will continue to monitor carefully the bank-based transmission channel of monetary policy and the case for mitigating measures.』

今後も点検を続け、悪影響を軽減する必要がある場合は必要な措置を実施するキタコレ。

・・・・・・という味わい深いパラグラフがありまして、その次に本題パラ。

『Today’s monetary policy decisions were taken to provide the monetary accommodation necessary for inflation to remain on a sustained path towards levels that are below, but close to, 2% over the medium term.』

ここはただのお題目。

『Despite the somewhat better than expected data for the first quarter, the most recent information indicates that global headwinds continue to weigh on the euro area outlook.』

1Qは良かったんですが足元global headwindsが来てますとな。

『The prolonged presence of uncertainties, related to geopolitical factors, the rising threat of protectionism and vulnerabilities in emerging markets, is leaving its mark on economic sentiment. 』

地政学(というのは英国)、保護貿易主義(はトランプ)、EM市場の脆弱性などの不確実性が続き、経済のセンチメントに影響を与えていますとな。でもって次のパラグラフ。

『At the same time, further employment gains and increasing wages continue to underpin the resilience of the euro area economy and gradually rising inflation.』

とは言え雇用とお賃金が良いので域内の経済がレジリアントであり、物価も徐々に上がっていくでしょうとな。

『Today’s policy measures ensure that financial conditions will remain very favourable, supporting the euro area expansion, the ongoing build-up of domestic price pressures and, thus, headline inflation developments over the medium term.』

この辺もただのお題目。

『Looking ahead, the Governing Council is determined to act in case of adverse contingencies and also stands ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation continues to move towards the Governing Council’s inflation aim in a sustained manner.』

ということで、この「必要ならば行動」という文言は4月の冒頭ステートメントでは無かったので、さすがに足元のこの状況ですから入れておきましょうという話なのですが、その前の経済物価の話は割と域内的にはレジリアントという話を平然としている訳でして、ここまでの字面でみるとそこまで追加緩和するぞモードでは無いのですが、まあ会見の方が日本時間の今日中には出ると思うので、それを見ながら再確認ですな。



〇円債市場ちゃん・・・・・・・・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N23D1GU
2019年6月6日 / 15:24 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落で引け、長期金利-0.125% 上昇限定的

『 <15:19> 国債先物は反落で引け、長期金利-0.125% 上昇限定的

国債先物中心限月6月限は前営業日比7銭安の153円51銭と反落した。前日に年初来高値を更新した反動から利益確定の売りが強まったほか、流動性供給入札がやや弱かったことも、上値の重しとなった。

現物市場の新発債は10年最長期国債利回り(長期金利)がマイナス0.125%へ、5年債もマイナス0.235%へともに上昇した一方で、30年債が0.405%へ、40年債が0.450%へ低下した。』(上記URL先より)

あ、あのですね、アタクシ昨日はこちらの駄文で「遂に来ましたブルスティープ」とか確かに書きましたよ、でもですね、それ書いた途端に円債市場フラットニングしかもツイストフラットってこれじゃあ1級フラグ建築士みたいじゃないですがアタクシが(急に早口になる)。

・・・・・・・ということで、何が何やら相場なのですが、本日は中期長期(後日訂正)超長期の輪番がございまして、さて超長期幾らにするんでしょ、という所ではあるものの、超長期の所って減らすにしてもそもそもが中期とか長期みたいに月額でドドーンと減るという事でもないでしょうし、輪番云々よりも別のネタで動いている市場ちゃんではありますので、まあ今日は自分の備忘メモとして、ブルスティープキタコレと書いたらいきなりツイストフラットしてしまったという自分だけで勝手にウケて乾いた笑いしか出てこなかったというネタを投下しておこうかと。


〇時間が無いので詳しいのはパスしますがカプラン総裁のブルームバーグインタビュー

こちらはブルームバーグニュースの動画になりますが。
https://www.bloomberg.com/news/videos/2019-06-05/fed-s-kaplan-on-rate-cut-patience-mexico-tariffs-policy-video
Fed's Kaplan on Rate Cut Patience, Mexico Tariffs, Policy

音聞くのメンドイ方でも主要な発言は画面のヘッドラインみたいなので出るので何となく話はつかめるかと思います(実際アタクシは音出さないで見てた)。

でもってニュースの方は
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-06-05/fed-s-kaplan-says-too-early-to-judge-the-need-for-a-rate-cut
Fed's Kaplan Says Too Early to Judge the Need for a Rate Cut
By Alister Bull
2019年6月5日 21:15(何故かタイムスタンプだけ日本語・・・・・)

となっていまして、利下げの判断するには時期尚早、という話がこちらでも出ていまして、そらそうよという感じではあるのですが、まあ昨日も申し上げたようにFOMCでどういう申し開き(あるいは特攻利下げ)をするのかというのは俄かに楽しみになって参りました。






2019/06/06

お題「米国市場がカツアゲ相場/クラリダ副議長の直近CNBCインタビューから/円債もキタコレとな」

お、おぅ・・・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N23C3LG?il=0
2019年6月6日 / 05:38
米金融・債券市場=2年債利回りが17年以来の低水準、弱いADP指標受け

30年債 2.6392% 前営業日終値 2.6040%
10年債 2.1227% 前営業日終値 2.1210%
5年債  1.8615% 前営業日終値 1.8830%
2年債  1.8449% 前営業日終値 1.8730%


〇米国市場がどう見てもカツアゲ相場です本当にありがとうございました

ほうほう。
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL4N23C3UX
2019年6月6日 / 05:28
米国株式市場=ダウ207ドル高、利下げ観測強まる メキシコ問題解決に期待

昨日は利下げ期待→株式相場ヒャッハー→株式相場見てリスクオンで金利上昇、という訳の分からん展開を示していましたが、本日は普通に金利が下がって株が上がってとなっていたのでまあこれが普通じゃろと思いつつも、ニュースのヘッドラインベースで見ると株式と債券で利下げ期待は同じですけど、微妙にそのテーマがてめえの市場の買い材料に都合の良いものに反応している感じがして、これこそまさにゴルディロックス相場ヒャッハーという奴ですなとかいう感じ。

でまあこの次に(全然読む方が追いついていないですけど)昨日(というか一昨日というか)クラリダ副議長がCNBCのインタビュー受けてる記事がありまして、昨日ネタにしたパウエルのスピーチネタもそうなんですが、どうも6月に利下げという所まで決め打ちするのは無理がありそうな話をしているんですけれども、そんなのはお構いなしモードになって、完全に市場がFRBを追い込みに行っているのが何とも笑えないけど笑える展開。

まあ何ですな、パウエルくんが不良たちに取り囲まれておうお前ちょっとジャンプしてみろやとか言われながらカツアゲを食らっているの図という感じになっておりまして、落涙を禁じ得ないのですが、もとはといえばパウエルが昨年の9月10月に無駄にタカ派な事を言い出したのが間違いの元で、しかもそれを一貫する訳でもなく今度は一気に年初にベタ降りしてしまうとかやって自分で盛大に金融政策の方向性についてぶれまくったから、金融市場はその本性に暴力的なところが思いっきりあるので、すっかりパウエルの足元を見てしまって、「こいつはカツアゲすれば何か出てくる」となってこのカツアゲモードに至る、という話ですから自業自得過ぎて1ミリもFRBに同情する気は起きませんな。

ということで、ハードデータが大して悪化している訳でもないという中で市場にカツアゲされて利下げを行うFRBというものを見れるかどうか、という展開におらワクワクして来たぞ(なお別に嬉しくもなんともない)という所ですが、こうなって来ると再来週のFOMCで何もしないとなると下手すると市場がおかしなことになりますし、かといって利下げしたら更に連続利下げを催促しに行く(というか既に今の米債の水準が連続利下げしないとブレークイーブンしないような利回り形成になっているのだが)ので更なるカツアゲモードになるとか、進退窮まったとはこの事とゆー感じですな。どうするんでしょうかねえ・・・・・・・

ま、パウエルは市場の期待をコントロールしようとして先回り決め打ち発言をバンバンやっていた訳でして、何もそんなところで相場張らなくても淡々とやっていれば良いのにとは思っていたのですけれども、因果が応報されちゃったという事ですわな、制御不能モードになった暴れ馬をこれからどうするのやら。


〇とりあえずクラリダ副議長のCNBCインタビューというのがあったので鑑賞してみる訳ですが

URLがクッソ長いので全部にリンク張ると画面が乱れると思うので途中の所までで直リンするようにしておきます。
https://www.cnbc.com/2019/06/04/cnbc-exclusive-cnbc-transcript-fed-vice-chair-richard-clarida-speaks-with-cnbcs-steve-liesman-today.html
CNBC News Releases
CNBC Exclusive: CNBC Transcript: Fed Vice Chair Richard Clarida Speaks with CNBC’s Steve Liesman Today
Published Tue, Jun 4 2019-2:39 PM EDT

つーことで昨日というか向こうの火曜日の午後でこっちの水曜の早朝にこんなのが出ていたので先週利下げ示唆とか言われたクラリダ副議長なので一応確認してみた訳ですな。

WHEN: Today, Tuesday, June 4, 2019
WHERE: CNBC’s “The Exchange ” - Live from the Fed’s business conference in Chicago, IL
The following is the unofficial transcript of a CNBC EXCLUSIVE interview with Fed Vice Chair Richard Clarida and CNBC’s Steve Liesman on CNBC’s “The Exchange” (M-F 1PM- 2PM) today, Tuesday, June 4th.

The following is a link to video of the interview on CNBC.com:
https://www.cnbc.com/video/2019/06/04/fed-vice-chair-richard-clarida-on-tariff-impact-rethinking-policy.html.

All references must be sourced to CNBC.

ということでインタビュー画像の本チャンは上記の所にあるようなのですが(そっちの音声までは確認していませんサーセン)、非公式文字起こしという位置づけのようですぬ。以下最初の記事のURL先からちょこっと引用します。

最初は今回のコンファランスの話を掴みだけしているのですが、まあそこは現世利益的に今回はどうでも良いのでその辺パスして、目先の金融政策の会話部分を引用しますね。

『STEVE LIESMAN: But before we get there, I think in the interest of transparency, can you tell us what you think you know about the impact of tariffs and higher tariffs on the economy? How does it work?』

てな訳で(その前に云々というのはインフレが目標行ってないのが現状問題ですよね、とかいう会話の流れです)貿易戦争の影響についての質問。

『RICHARD CLARIDA: Okay. Well, okay. That is a great question because tariffs have a number of impacts on the economy. First, they push up prices. So, in that way, there’s an increase in the price level. Typically, that is not inflationary, it is a one-time increase in the price level. Secondly, they potentially impact supply chains. And if they persist and if those impacts are large, that could have some impacts on productivity as well. I think what I can say is today, the tariffs that have been put in place on the economy have had a small effect in the aggregate and I think the others would agree with that consensus. As we move ahead and consider potentially more tariffs and potentially retaliation, that potentially has a more noticeable effect on the economy and we would have to take that into account.』

関税の影響について、物価が上がるけどそれはワンタイムの話でインフレーショナリーではなく、サプライチェーンに影響を与えるし、問題が長引けばそのインパクトは大きくなる。でもって生産性にも影響を与えます。ただ今のところその影響は小さいですよ、という現状の話をして、もちろんのこと先行きには大きな悪影響を与えるポテンシャルはありますね、だからそれを考慮しないといけません、とかいう話でして、そのちょっと先に行きますと、

『STEVE LIESMAN: So, you are saying you see the sign as negative for growth, but the question is what number you put after the sign.

RICHARD CLARIDA: Yes. Sure.

STEVE LIESMAN: Is it a large number or right now do you think it is a small number?

RICHARD CLARIDA: Well, so far, I think we’re confident in saying so far the tariffs in place have had a small impact, if at all, on growth.』

とか現状ではまだ大きなインパクトではないとしていますな。そんな話をしながらこのちょっと先にだんだん現世利益の話が出てくるのですが・・・・・・・・・・・

『STEVE LIESMAN: Would this be something that the Fed might consider to do preemptively in the wake of higher tariffs put in place? Or would you wait to see the effects of this?』

FEDは関税問題のインパクトに対して予防的に対応することを考えないのかキタコレ。

『RICHARD CLARIDA: Well, look. I think that the big picture that is very important for your viewers, Steve, we really focus on what is the outlook for the economy relative to our mandate. And we’re going to look at a wide range of indicators, not just what you mentioned, but a broad range of indicators.』

もっと大きな視点で見ろキタコレ、で更にクラリダさんの説明ですが、

『And if we get a sense that the outlook is slower -- growth is slower than we expect, and if we get the sense that underlying inflation is below where we want it to be, then as Chair Powell and I and others have indicated, we’re going to put in place appropriate policy to achieve those goals.』

という説明になっている訳でして、さっきのタリフの影響が今のところ小さい、もちろんポテンシャルとしてはデカい、という話と合わせますと、どこからどう見ても6月利下げとはならない、ただし警戒レベルを上げる位のサービスはあるかも知らんが、という事になると思われるわけですよこれが。

『And whether or not that means acting preemptively or when the data comes in, it’s just going depend on the context at the time.』

予防的に対応するかどうかはその時にどのようなデータが出ているか次第ですがな、だそうな。

『But understand that our goal is to put in place policies that not only achieve, but sustain price stability and maximum employment. And we’ll do that if we need to.』

てな話なのですが、古狸のツッコミは続く。

『STEVE LIESMAN: So, there are things that you say that you’re going to do and think about-

RICHARD CLARIDA: Yeah.

STEVE LIESMAN: --And there are ways that the market has already figured out what you’re going to do before you know you know you’re going to do that.

RICHARD CLARIDA: Yeah, they do sometimes do that. Yeah, they do do that. Yeah.

STEVE LIESMAN: It is really quite amazing.

RICHARD CLARIDA: Yeah.

STEVE LIESMAN: So, the market has now priced in, there’s a large-a greater than 50% probability of a rate cut in July.

RICHARD CLARIDA: Yeah.

STEVE LIESMAN: And in fact, there’s two rate cuts built in through this year.

RICHARD CLARIDA: Yeah.』

とまあ市場が利下げを既に織り込んでいますよね、という会話をマクラにしまして・・・・・・・・・

『STEVE LIESMAN: Are you happy with where the market is priced right now?』

これはクソワロタ。

『RICHARD CLARIDA: I don’t think that I want to get in to that. What I will say is we’ll have a meeting in June, a regularly scheduled meeting, and we’re going to look at a broad range of indicators not only where the economy is, but where it is going.』

で・・・・・・

『Obviously, we’ll look at market pricing. As you know, you’re a veteran, market pricing can go up and down, so we can’t be handcuffed to that, but obviously we’ll look at a range of indicators at where the economy is.』

市場はぶれるものでそれに一々ワシらは引きずられる必要はないがな、だそうな。

『But again, it’s very simple. We will put in place policies that need to be in place to keep the economy which is in a very good place right now and our job is to keep it there.』

ということで、別に利下げを否定はしていないですけれども、早期利下げに前のめりという話をしている訳でもない(まあ話の持って行き方が煽りチックなせいもあるかもしれませんけど)という次第な訳ですな。さらにこの現世利益談義ですが、

『STEVE LIESMAN: Richard, you spend a lot of time watching the Fed and being a major academic. So, you know, you’re damned if you do, damned if you don’t. So I’m hearing you not lean very heavily against where the market is priced right now. And so, I’m wondering if -- I’m okay with this. I don’t that there is a reason to change where the market is priced.』

『RICHARD CLARIDA: I guess what I’m saying to your viewers, Steve, is I think that our reaction function is very clear. We will -- we have in place policies that are our last meeting we thought were appropriate policies. Since our last meeting, there has been information and we will factor that in. And that is why we have a committee of 17 now. It will be discussed but I won’t get into market pricing.』

という掛け合いで現世利益コーナーが終わる(インタビューはまだ続く)のですが、なんかこう「利下げ決め打ちはしていないけれども、かといって明確な火消しもできないし」みたいなサムシングを感じる(昨日のパウエルのスピーチもそうですが)という所でしょうか。

・・・・・・でもカツアゲモードなので何言っても利下げに直結する部分がヘッドラインに入るんですよね(白目)。さてどうなりますやら。



〇円債もブルスティープとな

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N23C1D2
2019年6月5日 / 15:27
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は年初来高値で引け、長期金利は-0.130%に低下

『<15:10> 国債先物は年初来高値で引け、長期金利は-0.130%に低下

国債先物中心限月6月限は前営業日比31銭高の153円58銭となり、続伸した。日銀による追加緩和を巡る思惑を背景に海外勢の買いが強まり、そのまま年初来高値で取引を終えた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同2.5bp低いマイナス0.130%と16年8月1日以来の水準まで低下した。』(上記URL先より、以下同様)

ということでご案内の通り昨日は10年▲13bpとかアイヤーな状況になった訳ですが、中短期の方が強く推移していて、引け近辺では5年▲25bpとオーマイガーな進行になっておりましたな、ナムナム。

『前日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言を受けた米利下げ観測に加えて、日銀による追加緩和を巡る思惑も広がり、海外勢を中心に円債買いが強まった。市場では「ユーロ円3カ月金利先物が強含んでいるほか、短期・中期ゾーンの利回りも低下しており、先物もその流れに追随した買いが入ったようだ」(国内証券)との声が聞かれた。』

何をどう追加緩和するのかよーわかりませんが、概ね買われるときはフラットニングという感じだったのが昨日は明確にブルスティープの巻ということで、

『現物市場では日銀緩和観測を背景に、中期ゾーンの金利が一段と低下。新発2年債は前日比3.5bp低いマイナス0.225%。新発5年債は同4.0bp低いマイナス0.250%と、16年9月以来の低水準となった。超長期ゾーンもしっかりと推移。新発20年債利回りが前日比2.5bp低い0.260%。新発30年債は同2.5bp低い0.415%と16年9月8日以来の水準まで低下した。』

とまあそんなモードになっておりまして、えーっとすいません追加緩和って何やるんですかとは思いますが、まあそんなこと言いましてもこういう時はそういう風になるの巻なので致し方なし。

しかしまあ追加緩和するならやってみやがれコノヤローという感じではあるのですが、マイナス金利深堀りとかやったってただの自爆になるので(まあ早めに政策が自爆してくれれば結果的に政策が長期化しなくて済むので怪我人が少なくて済むかも知れない、という可能性は無くはない)、この際ドサクサに紛れて「10年金利について経済物価情勢を反映した金利変動をこれまでより柔軟に容認する」とか何とか言ってマイナスに突っ込んでいくのを容認する振りをしてYCCの長期コントロールを事実上形骸化させていくという災い(?)転じて福となすとか、そのくらいの作戦でも如何でしょうか位しか思い浮かばんのですが、中短期ここまで突っ込むのかよと思いながらあばばばばーとか言うしか知恵はないのでありました(汗)。

#毎度の計数ネタ時間が間に合わないので明日で勘弁








2019/06/05

お題「シカゴコンファランスの本題じゃないところでヒャッハーしているみたいので寝起きでその辺を確認の巻」

シカゴ連銀のページ。
https://www.chicagofed.org/conference

今回のコンファランスのページですが、ページに行ったら(アタクシの環境だと)いきなりコンファランスのライブが放映されて音が出たのでビビった。

ちなみにアタクシが踏みに行ったのは東京の朝5時位からなので物件はこいつ。
https://www.chicagofed.org/conference-sessions/panel-1
What Does Full Employment Look Like for Your Community or Constituency?

This session begins at 2:45PM on June 4, 2019. You can watch it live on the conference page.
The session will be available to view on this page shortly after it concludes.

参加者の顔でこれだと判断したんですけど何で2時45分からのセッションとか思ったがよく考えたらシカゴだから米国中部時間なのか。


〇パウエル議長あいさつで株式市場がヒャッハーしたと聞きまして

https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL4N23B3ZX
2019年6月5日 / 05:29
米国株式市場=5カ月ぶり大幅高、FRB議長の発言を材料視

『[ニューヨーク 4日 ロイター] - 米国株式市場は上昇し、主要株価3指数はそろって5カ月ぶりの大幅高となった。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が利下げの可能性を示唆したことが材料視された。』(上記URL先より)

ゴルディロックスヒャッハー!

でもって金利ちゃん。
https://jp.reuters.com/markets/bonds?tab=5

US2YT=RR
1.885 +0.045
US5YT=RR
1.891 +0.044
US10YT=RR
2.130 +0.049
US30YT=RR
2.613 +0.065

こっちはこっちでうーんこのという感じですが、まあとりあえず挨拶とやらを拝読するの巻。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20190604a.htm
June 04, 2019
Opening Remarks
Chair Jerome H. Powell
At the "Conference on Monetary Policy Strategy, Tools, and Communications Practices" sponsored by the Federal Reserve, Federal Reserve Bank of Chicago, Chicago, Illinois

音と画像を見たい場合はこちら(いきなりおっぱじまるのでご注意)
https://www.chicagofed.org/conference-sessions/opening-remarks-1


ということで開会の挨拶の筈なんだが市場が食いついたのは・・・・・・・・・・・

『Good morning. I am very pleased to welcome you here today. This conference is part of a first-ever public review by the Federal Open Market Committee of our monetary policy strategy, tools, and communications. We have a distinguished group of experts from academics and other walks of life here to share perspectives on how monetary policy can best serve the public.』

これは普通の挨拶ですがこの次でして・・・・・・・・・・・・・・・

『I’d like first to say a word about recent developments involving trade negotiations and other matters.』

と、コンファランスの開会の辞の筈が突如このようなものをぶっこんできましてですよ、

『We do not know how or when these issues will be resolved. We are closely monitoring the implications of these developments for the U.S. economic outlook and, as always, we will act as appropriate to sustain the expansion, with a strong labor market and inflation near our symmetric 2 percent objective.』

ってわざわざ長期的なストラテジーの話をする会合の開会の辞でこんな話するかー、ということでして(現にこの先の話は主にゼロ金利制約に引っ掛かりやすくなっているという現実にどう対応するのかという話を延々としている)、FOMCも近い(と言っても半月後ですが)中でこれはという感じでございますが、さてこの表現が利下げを確定的に示唆しているのかというとこれがまた良く分からん所ではあります。

まあ大体からして昨日は昨日で外れ値おじさんで現状は緩和芸人(突然引き締め芸人になることもあるので注意が必要だが正常化おっぱじまって以降は緩和芸人でして、たぶんこの人の基準はアクチュアルの物価動向による、と今までの行動を見ていると思えます)のセントルイス連銀ブラード総裁の利下げすべき発言をネタにして思いっきり反応(2年債の金利が2営業日で25bpも下がるとか利下げ1回分じゃろという勢いなのはびっくりだわ)する、という利下げ催促地合いの過激な方にまで進んでいるので、まあ米国株式市場がヒャッハーとなっているので利下げ予告ホームランなのかというと何ともかんとも。

でもってこれはもはや当たるも八卦当たらぬも八卦のヤケクソで妄想してみますけど・・・・・・・

確かに「we will act as appropriate to sustain the expansion」って言ってるんで利下げの可能性は思いっきり示しているのですけれども、予告ホームランなのかと言いますと、その前の所で「recent developments involving trade negotiations and other matters」について「We do not know how or when these issues will be resolved.」とゆうとる訳でして、どうなるかわからんけれども、そのどうなるか分からんことに関して「We are closely monitoring the implications of these developments for the U.S. economic outlook」ということですから状況の推移が先行き経済の見通しに与える影響についてモニターします、とした結果が「we will act as appropriate」になりますので、予告ホームランという程の物でもないし、その前に「as always」と入れているのは「データディペンデント」とか言っているのと同じく、「点検そのものは毎度の平常運転ですよ」という話をしている訳でして、これをもって予告ホームランというのはちょいと先走り感がぬぐえない。

でもってこのパラグラフ部分に関しましては、さっきの文の続きが、

『My comments today, like this conference, will focus on longer-run issues that will remain even as the issues of the moment evolve.』

となっていて、この次が、

『While central banks face a challenging environment today, those challenges are not entirely new. In fact, in 1999 the Federal Reserve System hosted a conference titled "Monetary Policy in a Low Inflation Environment." Conference participants discussed new challenges that were emerging after the then-recent victory over the Great Inflation.1 They focused on many questions posed by low inflation and, in particular, on what unconventional tools a central bank might use to support the economy if interest rates fell to what we now call the effective lower bound (ELB). 』

というお話になっていて、開会の辞らしい展開になっていく訳ですな。


・・・・・・・・ということで、字面だけ見たらさすがに「次回FOMC利下げの予告ホームラン」とするのは少々無理があろうかと思われますという感じなのですが、そうは言いましても別にさっきのパラグラフってこの開会の辞に入れる必要はちゃんちゃら無い物件な訳でして、ちゃんちゃら必要のない物件をわざわざぶっこんで来る、という所にもこれまた意味ありと考えるのが普通の発想。

昨日ネタにした先週末のクラリダ副議長の講演も、利下げ予告ホームランというには「いつも通りに点検」みたいな感じで話をしているのでそこまでの予告ホームランかというと微妙に見える(というのはアタクシの主観による感想なのでその辺りはよろしくです)のですが、こちらは講演としてまあ金融政策の現世利益の話をしておくのが適切だから話が入るのは順当ですけれども、繰り返しになりますが「スピーチのお題からして入れる必要の無いものをわざわざぶっこむ」という行為には当然意味があるので、とにかく今回は金融政策に関するメッセージをぶっこみたかった、というパウエルの考えが出たということなんでしょうな。

でもってですよ、じゃあ現実問題としてハードデータが特に悪化の兆候を示しているとか、金融危機のような急性ショックが起きているとかいうような事象が発生していなくて、ハードデータ自体はまだ順調というような状態の中でいきなり中央銀行として利下げって出来るの?って考えますと、発射台が例えばの話中立金利と目される水準よりも上の方にあって、金融政策自体が抑制的であるというような状況が客観的に観測されるのであれば、そらまあ「リストリクティブな政策をニュートラルに戻します」とか言いながら利下げをするのは有りだと思うのですが、現状の金利の発射台が「中立金利と思われるレンジの中でも低い方」にいる状態で、そう簡単にホイホイと利下げするんかいな、とは思うのよ。

だいたいからして、今回のコンファランスだって、

『Even though the Bank of Japan was grappling with the ELB as the conference met, the issue seemed remote for the United States. The conference received little coverage in the financial press, but a Reuters wire service story titled "Fed Conference Timing on Inflation Odd, but Useful" emphasized the remoteness of the risk.2 Participants at the conference could not have anticipated that only 10 years later, the world would be engulfed in a deep financial crisis, with unemployment soaring and central banks around the world making extensive use of new strategies, tools, and ways to communicate.』

『The next time policy rates hit the ELB-and there will be a next time-it will not be a surprise. We are now well aware of the challenges the ELB presents, and we have the painful experience of the Global Financial Crisis and its aftermath to guide us. Our obligation to the public we serve is to take those measures now that will put us in the best position deal with our next encounter with the ELB. And with the economy growing, unemployment low, and inflation low and stable, this is the right time to engage the public broadly on these topics.』

とさっきの続きの話が続いていくのですが、再度政策金利のゼロ金利制約に引っ掛かった時の事も考えて政策のデザインなどを長期的な視点で考えましょってな話をしている中で、さっそく今ある糊代を帰結の分からん話の初動段階で使いだしてしまう、というのも戦略的に無駄玉チックじゃネーノという風にも思ったりする(思いっきり個人の感想ですなのだが)ので、この程度の話でいきなり利下げするんかいな、とはちょっと思う。


というような背景(かなり主観が入りまくっていますがそこはお許しくらはい)の中で、今回言わずもがなの話をぶっこんできたのって、タリフマンの馬鹿踊りが原因とは言え、株式市場ちゃんが動揺する中で、金融政策の話を何もしないと株式市場ちゃんがあばばばばーとなるのを恐れる、という株式市場ディペンデントのパウエルおじちゃんの腰の弱さによるもので、かと言って6月利下げ予告ホームランするほどでもないのでこういう感じになった、ということなんじゃないですかねえ、と物凄い勢いで妄想成分を逞しくしながら考えるのでありました。

ただ、現状って外れ値の緩和芸人の利下げ発言でも盛大に反応するという利下げ大催促相場になってしまっているので、この状況から市場の利下げ期待をマネージしていくのって(ここから連続利下げでもするなら別にマネージ不要ですけれども何ぼ何でもそうではないでしょうから)かなり難しいものがあると思いますし、もうちょっとデンと落ち着いて構えておけという風には思うのですが、年初来完全に「自分の尾を追う犬」と化してしまっているので、一々あっちにヒロヒロこっちにヒロヒロと動かないと気が済まないことになってしまっているのは甚だ遺憾の極みという感じではございまする。


・ついでと言っては何だが関連してエバンス総裁発言

関連してブルームバーグちゃんのほうではこんなのが。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-06-04/PSKT596TTDS001
シカゴ連銀総裁:利下げ圧力一蹴、景気底堅いー市場のシグナルは注視
Christopher Condon
2019年6月4日 23:40 JST

『金融市場から圧力が強まっているにもかかわらず、シカゴ連銀のエバンス総裁は米金融当局が利下げに踏み切るべきだとの考えを支持するには至らなかった。』(上記URL先より)

ほほう。

『エバンス総裁は4日、CNBCとのインタビューで、フェデラルファンド(FF)金利先物の価格は年内の0.5ポイント利下げを織り込んでいることを示しているのではないかとの質問に対し、「一見したところ、私が全米のデータでまだ見ていない何かを市場は見ていることを示唆している」と述べた。』(上記URL先より)

これはパワーワードキタコレという感じですが、CNBCのインタビューなので記事あるじゃろと思ったら案の定ございまして、

https://www.cnbc.com/2019/06/04/feds-evans-pretty-comfortable-with-policy-but-nervous-about-inflation.html
Economy
Fed’s Evans: The market is seeing something ‘that I haven’t seen yet’
Published Tue, Jun 4 2019 8:10 AM EDT 
Updated Tue, Jun 4 2019 10:11 AM EDT

『Chicago Fed President Charles Evans said Tuesday that he is content with current Fed policy though he is worried about persistently low levels of inflation.』(直上のURL先のCNBC記事より)

継続的な低いインフレに関しては懸念しているものの今のFEDの政策に関しては満足しているキタコレ。

『At a time when markets are anticipating at least two interest rate cuts before the end of 2019, Evans did not commit to any further loosening of policy as the market prices in looser policy and government bond yields sink to multi-year lows.』

そら連続利下げ(2年の金利今朝は上がったとは言え1.88%って2回利下げですもんねえ)織り込むレベルに関してはそこまでのハードデータが無いだけにそうなるのが本来は順当なんですよねー。

『“At face value, it would suggest that the market sees something that I haven’t yet seen in the national data,” Evans told CNBC’s Steve Liesman during a “Squawk Box ” interview from Chicago.』

「the market sees something that I haven’t yet seen in the national data」ってこりゃまたパワーワードですな。なおここに出てくる聞き手のSteve Liesmanさんは毎度おなじみのFOMC記者会見に出てくる百戦錬磨の古狸オブ古狸記者でございまする。

『He did say that the Fed needs to “defend” its 2 percent inflation target, indicating that if softness persists that could warrant a closer look at policy.』

ということでして、株が下がったからと言って今から決め打ちしませんよね、というか市場に催促されているのに対して微妙にイヤミを言いたい模様(個人の感想です)。

『“I definitely think that with inflation being a little on the light side, there’s the capacity to adjust policy if that’s necessary,” he said. “But the fundamentals of the economy continue to be solid, the consumer is solid. We have to navigate this, we have to think through what this really means.”』

ということなので、物価が弱いことに関して政策調整の余地はあるという話はしているんで、全くの利下げ否定ではないのですが、経済のハードデータが強いし、コケる兆候もない中で利下げするという選択肢はねえわな、という説明をしていまして、まあ中銀としてはそらそうよという感じだと思います。

でもって記事全文引用になってしまうのも何ですので途中を飛ばしまして(途中には長期的なフレームワークの話しとバランスシートの話がある)物価に関する言及の最後の所に参りますと、

『The tendency of inflation to run persistently below the Fed’s 2% goal has him “a little nervous.” Evans added that he would be “more aggressive” in defending the Fed’s symmetric target, meaning that policymakers would be comfortable with inflation running slightly above or below the goal. 』

『“I think we should be overshooting 2%,” he said.』

ということで、まあこの辺も最近のFED高官が概ね口を揃えて言いますのと同じだと思いますが、インフレが加速しない限りにおいては、多少の物価上振れは容認、という話をしているので、そういう点からすると中立金利の範囲内での利上げというのもしばらくはしてこない、つまりは政策金利の調整はよほど景気が吹いてくるとか、物価が急にモリモリと上がって来るとかお賃金が盛大に上がって来るとか、そういうのでもないと中々難しかろう、ということになるかと思います(個人の感想です)。







019/06/04

お題「輪番は入札の翌日ってのも外してましたな(大汗)/クラリダ副議長講演ってそこまで利下げ決め打ちはしてないと思うが」

ちょっと何言ってるかわからないんですが。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-06-02/PSH4ZNT1UM0W01
トランプ大統領、関税は「素晴らしい言葉」−政策の正当性を主張
Ros Krasny
2019年6月3日 0:34 JST 更新日時 2019年6月3日 9:44 JST

『「タリフマン(関税の男)」を自称するトランプ米大統領は1日、メキシコと中国からの輸入品に対し、関税を賦課したり引き上げたりする政策の正当性を主張した。関税の支払いを避けるために「企業は米国に移ってくる」とツイートし、「関税とは実に素晴らしい言葉だ!」と豪語した。』(上記URL先より)

ご都合でコロコロと制度を変えるような国には政治リスクが高いということで企業が活動を控えるようになるのではないかと思うのですが・・・・・・・・・・・・


〇金曜警戒なのかただ単にこの水準なで買いが来にくいのか(&オペ紙補足)

昨日の債券市場ちゃん、といってもロイターの受け売りですが(毎度すいません)。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N23A1KA
2019年6月3日 / 15:22 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落で引け、長期金利は-0.095%に上昇

『<15:12> 国債先物は反落で引け、長期金利は-0.095%に上昇

国債先物中心限月6月限は前営業日比6銭安の153円14銭となり、反落した。欧米債高の流れを引き継ぎ、朝方は買いが先行したが、翌4日の10年債入札を控えた調整売りに押され、引けにかけてマイナス圏に沈んだ。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp高いマイナス0.095%に上昇した。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、朝方は買いが先行、というほどの感じでもなくて、確かに先物数銭上がったんですがその一方で朝から10年が引けの▲10bpだったり20年が5糸甘の0.295%だったりということで、米金利低下だぜヒャッハーというような相場では全然ありませんですがなという動き。

『短期・中期対象の日銀の国債買い入れオペのオファー額は前回から据え置かれた。中期対象のオペ結果については、案分利回り格差が実勢の範囲以内となり、無難と受け止められた。国債先物の反応は薄かった。現物市場は、新発20年債利回りが前日比0.5bp高い0.295%。新発30年債は同1.0bp高い0.460%。新発40年債は一時0.505%と2016年9月以来の水準まで低下した。「年金勢による年限長期化に向けた買いが引き続き入る場面があった」(国内証券)という。その後、前日比1.5bp高い0.515%まで上昇した。』(上記URL先より)

40年の途中の動きは謎ですけれども、とりあえずは何となく気持ち長いところが弱めという程度の推移になったようで、株安円高にも関わらずヒャッハーモードにならなかったのは一応輪番警戒とかいうことなのか、ただ単に6月月初でしかも先月の頭と全然違う風景になっている中、さてそれでは今月の見通しと方針について会議(爆発音)などの要因があるのか、などなどごじゃりますが今日は10年入札。


と思いましたら10年入札のコメントもありまして、

『<14:06> 4日に10年債入札、応札需要に慎重な見方広がる

4日に10年債入札が行われる。354回のリオープン発行になる見込み。発行額は2兆1000億円程度。高値圏での入札が見込まれるほか、翌5日に日銀による国債買い入れオペが実施されないことから、応札に慎重な姿勢が広がっている。』(上記URL先より)

・・・・・・・ということでええすいません昨日駄文書いている時に計算をせっせとやっているうちにすっかり書くのを忘れるというおじいちゃん朝ごはんはさっき食べたでしょ症状を起こしまして、誠にアカンですなという話ですけど、今回の輪番紙って「超長期の減額(かどうかは金曜次第ですが暗黙の了解的には減額)」に加え、いままで過保護の限りを尽くしていた「10年国債入札の翌営業日に輪番を実施」というのも外したんですな。その話はのちほど。

『10年最長期国債利回り(長期金利)は足元ではマイナス0.100%で推移しており、前回入札時(5月8日)の平均落札利回りであるマイナス0.06%と比べると、水準的な妙味は一段と薄れている。市場では、「海外の金利低下が進んでおり、(10年債の)事前調整が難しい状況。今月から入札翌日に残存5年超10年以下対象の日銀国債買い入れオペが実施されないため、需要に対して一定の警戒感が広がっている」(国内証券)との声が聞かれた。』(上記URL先より)

ということですが、元々は入札の翌日に同年限の輪番をやるとかいうのは財政ファイナンス一歩手前にも程があるということでやらない、というのが正しい在り方だったのですが、何せ国債馬鹿買いをしないといけない、という事になってしまってからというものの、「国債が発行されて民間に昇華される前に日銀がどさっと買いに行かないとロットが捌けないしマーケットインパクトも下がるはず」というような感じの理論が登場して、国債入札の翌日に同年限の国債買入を行う、というプレイが行われた訳ですな、うんうん。

でもってこのやり方、確かに買入の数字を作るのには非常に有効なのですが、非常に有効過ぎまして、最初に弊害が盛大に出たのが短国市場なのですが、日銀の買入が超ドミナントになってしまったところから「入札を吊り上げる」→「翌日に日銀に売り飛ばす」→「日銀に捌けるので自動購入しないといけないような投資家に売ったらもう物なし芳一で相場は崩れない」という輪番ディールなるものが盛大に有効になってしまう有様になってしまい、まあその後徐々に工夫がされまして、というよりは「量」からの脱却をかなりの度合いで行ったのが効いたのですけれども、まあこの「入札の翌営業日に同年限の国債を対象とする買入オペを実施」というのは「兎に角量を積み上げろ」という世界に行われていた行事であって、昨年来10年ゾーン以外に関しては段階的に「入札の翌日に買入」が無くなって行ってましたので、これが今回完成形になった訳ですな。

まあ完成形とかいうよりも「量的拡大を指向していた時代に導入した無理筋オペ」からの脱却と言った方が正しくて、先ほども申し上げましたように、そもそも「日銀は財政ファイナンスを行わない」という理念からしたら入札の翌営業日に買入を行うというのがかなり怪しい上に、輪番トレードとか言われてしまった日にはそれどう見ても「入札に参加する業者からしますと輪番があるからこの高価格でも買えますよ状態」な訳でして、そこまで来ると「輪番オペによって市場の価格形成に好ましくない歪みが生じる」ということですから財政ファイナンスもどきにも程があるという話になるわけですから、従来の(従来のというのは麿および麿以前)日銀の感覚からしてみたら、こういう輪番オペの入れ方は本来は行わない方が望ましい、という事になると思います。

でもってその点から考えると、段階的に短国、10年以外の輪番と来て今回10年の輪番も入札翌営業日外してきたのは、「何でもかんでも無理に量を積む政策というのは実験したけど思うような効果があまり出ませんでしたので切り替えましたよ」という事も示しているという感じではありまして、何気に今回は量というよりは別のところで輪番いじって来ましたなという風に思ったりはします。


とまあそんな訳で昨日は何か輪番気になって上値が重いぜとかやっているようですが、まあさはさりながらこの状況で10年輪番がこれまでから2営業日ズレたから入札あばばばばーとかそんな話になるっつーこともねえだろちょっと気に過ぎじゃネーノという風情なのではございますけれども(個人の感想です^^)、10年も水準が水準だけにここで実需がどの位あるのやらとは思ったりしますです、はい。


〇FRBのシンポジウムが始まるよ〜

シカゴ連銀のサイトを見に行ったら何か派手なページがあった(シカゴ連銀のトップではない)・

https://www.chicagofed.org/conference
FedListens
Conference on Monetary Policy Strategy, Tools and Communication Practices
June 4-5
Starting at 8:45AM CST

一応式次第を確認。

Conference Agenda
Tuesday, June 4

8:45am
Welcome and Introduction
Charles Evans

8:55am
Opening Remarks
Jerome Powell

9:15am
Session #1: Review of the Federal Reserve’s Current Framework for Monetary Policy
Yuriy Gorodnichenko, Janice Eberly, James Stock, Jonathan Wright, and John Taylor

11:00am
Session #2: Maximum Employment
Lisa Cook, Katharine Abraham, and Jared Bernstein

1:30pm
Session #3: Global Dimension of U.S. Monetary Policy
Susan Collins, Maurice Obstfeld, and Kristin Forbes

2:45pm
Panel #1: What Does Full Employment Look Like for Your Community or Constituency?
Lael Brainard, Patrick Dujakovich, Juan Salgado, and Andy Van Kleunen

4:30pm
Session #4: Federal Reserve Communications
Hyun Song Shin, Stephen Cecchetti, Kermit Schoenholtz, and Jon Steinsson



Wednesday, June 5

8:30am
Welcome and Introduction
Anna Paulson

8:45am
Opening Remarks
Richard Clarida

9:00am
Session #5: Monetary Policy Strategies
Adam Posen, Lars Svensson, and Sharon Kozicki

10:15am
Panel #2: Transmission of Monetary Policy to the Economy: Beyond the Headlines
Eric Rosengren, Janie Barrera, David John, Maurice Jones, and Holly Wade

12:30pm
Session #6: Monetary Policy Tools
Kenneth Rogoff, Eric Sims, Jing Cynthia Wu, and Annette Vissing-Jorgensen

1:45pm
Session #7: Financial Stability Considerations and Monetary Policy
Nellie Liang, Anil K Kashyap, Caspar Siegert, and Mark Gertler


・・・・・・・ということですが、物価がアガランチ会長の構造の中で物価目標をそのままでいいのかとかそういう話になるような雰囲気が漂ってこないお題目になっている気がしますが、まあそれはそれとしておらあワクワクしてきただ!とはなっているものの、ここに出てくる英文全部読むのはちょっとドメドメおじいちゃんのアタクシとしてはあばばばばーなのですが、どうせ円債方面はネタがリサーチレポート系と調節年報になるので読み物おじさんになるのは同じですので頑張ってみるかもしれません(パネルは動画だけしか出ないかもですけど)。



〇ところで先週はクラリダ副議長の利下げ示唆がどうのこうのとかありましたが・・・・・・

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/clarida20190530a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/clarida20190530a.pdf
May 30, 2019
Sustaining Maximum Employment and Price Stability
Vice Chair Richard H. Clarida
At the Economic Club of New York, New York, New York

こちらの講演ですが、確かに「今の金利は中立」って話なので利上げはしなさそうな言い方なのですが、じゃあ利下げするのかというと状況次第ということなので、うーんこのという気はしますが、こちらの講演の小見出しが、

『Structural Changes in the U.S. Economy: Demand and Supply』
『Monetary Policy』
『Monetary Policy Implementation and Balance Sheet Decisions 』
『Review of Monetary Policy Strategy, Tools, and Communications』

と来ていますので、思いっきり現世利益な小見出しとなりますと『Monetary Policy』とになると思いますので(斜め読みした結果)そこを拝読の巻ということで、まあ他の部分もそこそこ見どころはあるようにも思えますけれども、現世利益の点では2つ目の小見出しだけで良さそう。。、


・データディペンデントによって自然利子率と自然失業率の低下を把握する

『Monetary Policy』という所から参ります。

『As I mentioned earlier, my colleagues and I on the FOMC understand that our priority today is to put in place policies that will help sustain maximum employment and price stability in an economy that appears to be operating close to both of our dual-mandate objectives.』

ちなみにこの講演テキストの中では「sustain」がイタリック体になっているのがちょっとお洒落でして、どこぞの中央銀行のような「金融政策単体で物価目標を達成するんじゃオリャー」というものではない、ということを示しているものと見られまして、中々の味わいではございまする。

『In our most recent statements, we have indicated that "the Committee will be patient as it determines what future adjustments to the...federal funds rate may be appropriate to support" our dual-mandate objectives.12 What does this mean in practice?』

ペイシャントのクラリダさん的な意味はなにか、

『To me, it means that we should allow the data on the U.S. economy to flow in and inform our future decisions.』

データディペンデントだよということだそうで次のパラグラフに行く。

『I believe that the path for the federal funds rate should be data dependent in two distinct ways.13』

two distinct waysとな。

『Monetary policy should be data dependent in the sense that incoming data reveal at any point in time where the economy is relative to the ultimate objectives of price stability and maximum employment. This information on where the economy is relative to the goals of monetary policy is an important input into interest rate feedback rules. Data dependence in this sense is well understood, as it is of the type implied by a large family of policy rules, including Taylor-type rules, in which the parameters of the economy needed to formulate such rules are taken as known.』

データディペンデントからデータ重視のテイラールールのようなルールベースの政策の話まで進んでしまった。

『But, of course, key parameters needed to formulate such rules, including u* and r*, are unknown.』

そこまで振っておいて自然利子率とか自然失業率とか正確に分からんもんねキタコレ。

『As a result, in the real world, monetary policy should be-and in the United States, I believe, is-data dependent in a second sense: Policymakers should and do study incoming data and use models to extract signals that enable them to update and improve estimates of r* and u*.』

『Consistent with my earlier discussion, in the Summary of Economic Projections, FOMC participants have, over the past seven years, repeatedly revised down their estimates of both u* and r* as unemployment fell and real interest rates remained well below previous estimates of neutral without the rise in inflation those earlier estimates would have predicted.』

『And these revisions to u* and r* appeared to have had an important influence on the path for the policy rate actually implemented in recent years.』

したがって実際の運営においてはデータを見ながら色々なモデルに当てはめつつそこの補正を行うような形で経済の分析をするので、その結果として最近は自然失業率や自然利子率の推計値が下がってきて、SEPでの中立金利見通しも下がって来ましたが、これはそういうもんなんですよという説明で、開き直っているちゃあ開き直っているのですが、まあこういう話の持って行き方をするとなるほどとなってしまいますな。


・インフレ期待に関して

次のパラグラフからはインフレ期待ネタ。

『In addition to u* and r*, another important input into any monetary policy assessment is the state of inflation expectations.』

キタコレ。

『Indeed, I believe price stability requires that not only actual inflation be centered at our 2 percent objective, but also that expected inflation be equal to our 2 percent inflation objective.』

まあそうだ。

『Unlike realized inflation, inflation expectations themselves are not directly observable; they must be inferred from econometric models, market prices, and surveys of households and firms. As I assess the totality of the evidence, I judge that, at present, indicators suggest that longer-term inflation expectations sit at the low end of a range that I consider consistent with our price-stability mandate.』

ということでここはキタコレとなりますが、いろいろな分析をクラリダさん的に行った結果、現状のインフレ期待は「at the low end of a range that I consider consistent with our price-stability mandate.」ということですので、一応許容範囲内だがその中でも低い方にいまっせ、という説明をしているのですからこれはハト派。


・今の金利は思いっきり中立だというお告げキタコレ

次のパラグラフです。

『Where does this leave us today?』

ほう。

『As I already noted, the U.S. economy is in a very good place, with the unemployment rate near a 50-year low, inflationary pressures muted, expected inflation stable, and GDP growth solid and projected to remain so. Moreover, the federal funds rate is now in the range of estimates of its longer-run neutral level, and the unemployment rate is not far below many estimates of u*.』

経済の状況に関しては引用していない最初の部分にありますが、まあ普通に普通の話をしていて、別にお先真っ暗的な話にはなっていなかったと思います。よって上記のような話になりますが、

『Plugging these inputs into a 1993 Taylor-type rule produces a federal funds rate between 2.25 and 2.5 percent, which is the range for the policy rate that the FOMC has reaffirmed since our January meeting.』

これらの条件を修正テイラールールにぶっこんでみると適正FF金利は2.25-2.50%キタコレ。

『Most recently, the Committee judged at our May meeting that the current stance of policy remains appropriate, and that decision reflects our view that some of the softness in recent inflation data will prove to be transitory. This judgment aligns with some private-sector forecasts, which now project PCE inflation to return to 2 percent by 2020.』

はい。

『However, if the incoming data were to show a persistent shortfall in inflation below our 2 percent objective or were it to indicate that global economic and financial developments present a material downside risk to our baseline outlook, then these are developments that the Committee would take into account in assessing the appropriate stance for monetary policy.』

というこの部分がベンダーなどで思いっきり報道されて利下げ示唆という話になったように見えますが、「a persistent shortfall in inflation」とか「global economic and financial developments present a material downside risk to our baseline outlook」とかになるならば「the Committee would take into account in assessing the appropriate stance for monetary policy」とゆうとる訳でして、それって別に利下げを決め打ちするようなものでも物凄く強く示唆するようなものではないと思うんですけどベンダーバイアスと市場の利下げ催促モードが生み出した相場展開という感じはせんでもない。

まあ確かに中立金利水準に関しては現状で中立というくらいですから、そう簡単に金利上げないでしょうし、下振れ警戒で金利を下げる可能性も高い(緩和的という認識があるんだったら現状維持でも良いけどね)となるのは分かるのですが、これはもう利下げだワッショイとするのは早計、とは思うものの、タリフマンのタコ踊りが酷いことになっておりますのでそれが大リスクとして考えられるうちはこういう相場展開もむべなるかなという所でしょうかねえ・・・・・・








2019/06/03

お題「超長期輪番減額(未定だが)キタコレ/櫻井審議委員金懇は会見も良い質疑ですな」

あっはっはっはっは(白目)。
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPKCN1T12L4
2019年6月1日 / 06:28 /
米国株が大幅安、米の対メキシコ関税導入表明受け

『S&P500とナスダックは共に3月8日以来となる200日移動平均線割れ。テクニカル上の強固な支持線を下回り、一段安の可能性が示された。週間ではダウが3.01%安、S&P500が2.62%安、ナスダックが2.41%安。ダウは6週連続安となり、2011年以降で最長となった。月間ではダウが6.69%安、S&P500が6.58%安、ナスダックが7.93%安。いずれも月間では年初来で初の下げ。S&Pの5月の下落率は2010年以降で最大となった。』(上記URL先より)

中国叩いてみたものの猛反発されたから叩いても反発しないおとなしそうな奴を叩いて見るとかもうどこからどう見てもパワハラ上司によくある事例だと思うと落涙を禁じ得ないのですが、このパワハラ上司さんから見て「叩けば出てくる」認定をジャパンがされているのではないかという一抹の不安が拭えないところがなんともかんとも。


〇超長期輪番減額(かどうかは7日に判明するが)キタコレなど

・超長期輪番いじって来ましたねえオペ紙の方で

金曜日は長期超長期の輪番があったのですが、

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190531.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,800 2019年6月3日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,600 2019年6月3日
国債買入(残存期間25年超) 400 2019年6月3日

ということで減額はしてこなかったのですが夕方の輪番紙では・・・・・・・・・


http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190531d.pdf
当面の長期国債等の買入れの運営について

『日本銀行は、長期国債等の買入れについて、弾力的に実施することとしており、当面、以下のとおり運営することとしました(2019年6月3日より適 用)。 ── 次回公表は2019年6月28日17時を予定。』

そういや先月はMPMでバタバタしているうちに輪番紙のネタをやってませんでしたが先月は同額でやってきたわけですけれどもさて今回はと言いますと、

0−1年:100-1000、月2回(変更なし)
1−3年:2500-4500、月4回(変更なし)
3−5年:3000-5500、月4回(変更なし)
5−10年:3000-6500、月4回(変更なし)
10−25年:1000-3000、月3回(1000-2500、月4回から変更)
25−40年:100-1000、月3回(100-1000、月4回から回数だけ変更)
物価連動国債:250、月2回(変更なし)
変動利付国債:1000、隔月1回(変更なし)

ということで、タリフマン大暴れの中で減額(かどうかは7日にならないと確定しませんが)をぶっこんで来るとはこれは中々いい根性をしている(文字通り褒めているので念のため)という感じですが、引け後にこれ出て先物がちょこっと下がったかな程度の反応はしておりましたけれども、そんなに反応していた節は無いですし、それよりもタリフマンの馬鹿踊りの方がインパクトでかいので円債の中の人以外に注目されることもない上に、まあ反応されるとしたら円債ちゃんがこれによってドドーンと動くとそら注目になるのですが、何せ円債市場の地合いが大変によろしゅうございます(なお地合いが良いのと参加者が幸せなのとは別問題ェ・・・・・・・・)ので、昨日のイブニングのように碌すっぽ押すこともなしとなりまして今回も日銀大勝利にも程がある結果。

でもって今回の輪番のレンジですが、また例によって例のごとく超長期前半の上限レンジは上げているのですが後半はいじらずという形になっていましてさてどうなるのかという事ですけれども、4回→3回となりますので、

1600×4=6400、6400÷3=2133
400×4=1600、1600÷3=533

と考えますと、超長期前半は一番多くて2000で後半は500かもしかしたら据え置きで400とかにして来るのかねとか勝手に妄想しますが、2000と500だと月額で合計500億円ぽっちしか減額にならないので、それだとわざわざ輪番紙出すときに他市場が反応するリスク取っているのに対して減額する量が小さいような気がする(ってのは個人の印象にも程があるのですが)、せっかくリスク取っているんですから超長期前半はもうちょっと減額して1800(だと月額換算で超長期前半1000億の減額なのでキリが良いという何の根拠もない話ですがw)とか1900(だと月額換算700億なのだが超長期後半と合わせると合計が800億にしかならないので何か勿体無い気がする、どうせなら1000億は減らしたい)という位には減らしてもエエンチャイマスカと申しますか、どうせ放置しておくと海外があの有様なので金利に低下圧力が掛かり易くて、金利低下する場合はどうしても超長期がフラットニングしやすくなるので減らせるときには減らしておけばと思ったりもします。

5末の銘柄別残高が近いうちに出てくるので、そちらで集計してみようかと思いますが、超長期の減額というのは額自体は捌けない(そもそもだいぶ減っているから)のですけれども、日銀のバランスシートに長期国債が残ってしまうという問題に関連して言えば、減額の霊験は明らかでして、発行銀行券残高との比較でみた場合、以前は買入国債の銘柄別残高から確認できる額面ベースの保有が残存10年超で平気で発行銀行券残高を上回っていたのですが、最近はこれが残存9年くらいのところまで短期化(って全然短くはないですが以前と比べれば)されておりまして、それこそ最近FEDが将来の保有国債長期化プログラムの発動余地を考えるとどうのこうの的な話をしている件をしらっと先取りしているという点も中々味わいが深いですな。

あと一応超長期後半は500億円かなとは思っていますが(回数減らした時は一回の買入を増額しているので)、これが400億円で据え置きとか来たらウケますし、何でしたら減額したらもっとウケを取れると思いますが、まあそこで勝負する必要もないのではと思いますので、(別にこれ予想することに何か重大な意味があるという感じではないでしょうけれども)、輪番はドンドン減るべきであるという願望成分をかなり込めて1800と500で金曜は来ると良いですないう大予想をしてみますけれども、上記のように全く持って何の根拠もないので、外れても謝罪も賠償もしませんので投資及び投機は自己責任ということでよろしくお願いいたします(何をよろしくお願いするんだかww)。


・SLFの要件緩和は債券先物6月限最終決済に間に合わせますな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190531a.htm/
2019年5月31日 日本銀行金融市場局

『日本銀行は、 「国債補完供給の要件緩和措置について」(2019年4月25日)において公表した措置の実施日を、2019年6月10日とすることとしましたので、お知らせします。』

ということで、まあこの措置出た時点でそこは織り込んでいたと思いますので順当ではありますが、債券先物6月限最終売買日の前に間に合わせる攻撃と相成りましたな、一応メモメモ。



〇櫻井審議委員会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190531a.pdf

金曜は金懇テキストを勢いよく褒めていたら謎の絶賛モードになってしまいましたが、あれ改めて思ったのですが、内容云々も良いのですけれども、格調が高いというか、品格というのを金懇テキストの行間から感じる、というのがどこぞの誰かさん等と比較した場合に感じられる次第で、まあ人間の出来が違うわ(結局絶賛モード^^)と思いますし、寧ろどこかの誰かさんのようなテキストを日本銀行政策委員という名前の人が出すのって日銀のレピュテーションを著しく下げるのではないか、と思ったりもするのは今に始まった話ではないのですが、冷静に考えてみますと、某誰かさんがネ申懸った金懇挨拶を行ったとしても、「あれは外れ値」という認定なのはコモンセンスだと考えれば、別に日銀のレピュテーションに関係なし、という話になるのかも知れませんな。

一方で櫻井さんの場合は執行部の鉄砲玉としての役割も期待される中ですので(褒めてるんだか褒めてないんだか^^)、やはりこの立ち位置の方が神の領域だの何だのとか言い出すとそれはもう日銀のレピュテーションにモロに反映しそうですけれども、まあ品格と格調を良いレベルで持った内容であることは誠に良かったですな。

という雑感はさておきまして会見要旨を拝読。


・これは良い誘導質問(副作用論からの色々な論点)

『(問) 今回のお話をお伺いして、前回の秋田、その前の前橋と比較しても、低金利の副作用に関して櫻井審議委員がさらに懸念されているような感じがします。』

うんうん。

『単に日銀が金利を修正するというか、金利を上げれば済む問題ではないと思うのですけれど、景気の下振れが大きい中で、金利上げではなくて、日銀としてはその副作用を緩和する手段として何が考えられるのか、お伺いします。』

これは良い話の持って行き方でして、良い持って行き方過ぎて却って仕込み(以下爆発音の為聴取不能)。


『(答) まず、過去2回と比べて大きく変わった点というのは、やはり足もとの景気の状況がかなり微妙な段階になってきているということだと思います。』

ほほう。

『それから、やはりこういう状況を踏まえて、今後もう少し長く金融緩和を続けなければならないということで、フォワード・ガイダンスをこの間の4月の通り、長くしました。』

長くしたの??明確化しただけなのでは????

『これがある意味、時間との積分値でいえば、やはり緩和措置としては強めているというように考えられますが、そのような状況に今あるということです。』

4月MPM時点から比較するとこの1か月でほぼタリフマン要因で下振れリスクの高まりとか金融市場の環境悪化とかそういう話にはなっていますから、MPMの時点では「明確化」でしたが、「あれはガイダンスを長くした」という風に自由自在に使い分けるというのはまあやってやれないことはない、という辺りにガイダンス文言自体が良くも悪くもフワフワしているということ、つまりリジットな内容になっていない事を示していますなあとか思ってしまいました。

『そして、この4月に出ましたFSR――金融システムレポー ト――でも指摘していますが、やはり地方の金融機関の経営の状況というもの はトレンドとして厳しくなってきています。』

FSRの言及キタコレ。

『そうした中で金融緩和がフォワード・ガイダンスの通り長くなるということですから、そこはこれまで以上にやはり慎重にウォッチをしていかないといけないと思います。』

たぶん「金融緩和が長くなる」というのはガイダンスの方ではなくて、「展望レポートでの物価見通し2021年度が2%を見ていないという状況だから金融緩和が長くなるということになるのはロジック的にそうなりますよ」という話のような気もするんですが、よくよく考えてみると以前展望レポートでの見通しが下がると早期達成という事から勘案したら追加緩和しないといけないのでは、という話に対して展望レポートの見通しが金融政策行動に直結するわけではない、という話を(YCC導入前から)行っていた訳でして、これはこれで展望レポートの見通しとセットで説明すると、政策判断と展望レポートが絡められると説明がややこしくなるのでそこを避けるという意図があるのかも知れませんなあ、とか勝手に深読みしてしまうアタクシなのでした。


『金融緩和の手段としてどういうことが考えられるのかという点については、現段階ではやはりきちっとウォッチしていくということがまず大事です。10 月には消費税率の引き上げもありますから、そのタイミングで経済の状況がどのようになっているのか、特に日本よりも海外の経済状況がどのような 展開になっているのか、まず慎重に考えなければならないということだと思います。その上で、必要があれば色々な手段を考えていくことになるのだろうと思います。これは、既存の枠の中にとらわれないで、色々なことを工夫していくということも含めて、既存のものも含めて、その時点で考えていくということだろうと思います。』

要するに何も手段は無いのだが無いと言ってしまうとマズいですよという話をしているだけですなこりゃ。



・この1か月でリスク要因の状況が変わりましたよねという点について

『(問) 2点あります。まず4月の決定会合で展望レポートが出された後、ゴー ルデンウィークの最後の方に、米中貿易摩擦が激化して今に至るという状況かと思います。現時点で、先行き不透明ではあると思うのですけれども、日銀として、あの時に出された経済であったり、物価の先行きのシナリオを見直す可能性、見直す必要性がどのくらいあるとお考えなのか、というところをまず1点お聞かせください。』

そうですな。

『もう1つはそれに絡んで、足もとで、今株安、金利低下ということで、 いわゆるリスクオフというものが進んでいると思いますけれども、これが実体経済にどのような影響を及ぼしうるのかとか、日銀の金融政策の追加緩和といった話も含め、政策対応にどのようなことが今後考えうるのかというところ についても、現時点のお考えをお聞かせください。』

ということで回答はというと、

『(答) 1点目については、前回の展望レポートを出した後、5月の初めから、米中間の貿易問題に少し新たな展開が出てきており、不確実性が高まったということがやはり一番大きいと思います。』

そらそうよ。

『その点を除きますと、あとはやはり、 指標をどのようにきちんとみていくかということに尽きるのではないかと思います。そういう意味では、指標がもう少し時間をみないと分からないというのが率直なところです。既に展望レポートでも指摘したことではありますけれども、やはり中国の景気対策の執行段階が進んでいますので、今後の展開やどのような効果が現れてくるのか、今後みていかないといけないと思います。』

『一番大きな点は、なんといっても冒頭に申し上げた通り、不確実性がやはりある程度高まっているということは事実であろうというように考えているということです。』

メインは変えていない、ということもしらっと説明していますな。

『それから、2点目のご質問の、足もとの株安、リスクオフということですけれども、株価はかなり短期的にも変動致しますし、色々なニュースに反応するということもありますので、トレンドとしてどのようになっていくか、という点は中々読みにくいと思います。現に、最近でいえば、昨年の 11 月から 年明けにかけても色々な動きがありましたし、その後またそれが収まるということで、色々な動きがありますから、その辺をもう少しある程度慎重にみていくということだと思います。』

『また、幾分株安は進んだとはいえるかもしれませんが、例えば為替レートなどはほとんど動いていないということもありますし、 その辺も含めて全体に丁寧に指標を慎重にみていくということに尽きるのではないか、と考えています。』

ということで為替が動かんと多少株がぶれても日銀はビビらん、というのが良く分かりますな、うんうん。


・フラットニングについて

『(問) 副作用のところをウォッチしていくことに尽きるのかもしれないのですが、国債の金利が低下してきていて、昨日なども10年物金利がマイナス0.1% を付けました。イールドカーブの形状をみると、YCCを導入した時くらいまでフラット化しており、これはやはり副作用とも関連はあると思います。』

フラットニングねたキタコレ。

『今の時点で櫻井審議委員は、どの程度フラット化、イールドのフラット化が副作用を増長することについて、どの程度懸念されているのか教えてください。』

ほほう。


『(答) 2016 年9月にYCCを導入する前の状況というのは、やはりかなり金利が下がっており、その状況に近づいているというのは、その通りだと思いま す。ただ、YCCの導入後、特に昨年7月のフォワード・ガイダンスを導入した時に、10 年金利の変動幅を拡大しており、現在のところ、そこの範囲内に収まっているので、しばらくは様子をみるということかと思います。』

ほう。

『長期的に考えて、やはりある程度正常なイールドカーブの形状というものはあるかと思いますから、そこは考えなければならないと思いますが、現状はこういった状況なので、当面は慎重にウォッチしていくということに尽きるのかなというように思っています。』

そこ(ある程度正常なイールドカーブの形状)は考えなければならないキタコレの中超長期減額(確定は金曜ですが)キタコレという事ですねわかります。

『それから、副作用についてですが、もちろん、さらなる金利低下がさらに進んでしまうということになれば、当然副作用の問題についても考えなければいけないですが、現在のYCCの中での一応の変動の幅の中には入っているということなので、そこの中に入っているということであれば、特段大きな 副作用のことを現時点で何か考えなければならないかというと、そこまででは ないかと思います。ただし、ある程度の期間が経って、もう少し色々な形で金利が変動してもらってもいいかなという感じは持っています。』

どさくさに紛れて「一段の金利低下したら副作用の問題について考えなければ」とか中々のイイハナシダナーですな。まあ金利下がった時に止める手段はあんまりないんですけど。


・副作用対応の見直しに関して

ちょっと飛びまして先の質疑ですが。

『(問) 最初の方の段階で、必要なら色々な手段を考えて、既存の枠組みにとらわれずということを含めて、必要なら色々な手段を考えていくという、これ について質問は、副作用対応ということだったので、副作用に対応するためということなのか、追加緩和ということも含めてなのか、その辺を少し確認させていただいてよろしいでしょうか。』


『(答) これは両方ということだと思います。』

これまたしらっと「両方」とか言ってますな。

『もちろん、副作用のことはこれまで以上に考えなくてはいけなくなってきています。これは、半年ごとにでるFSRが毎回厳しくなってきているという認識がありますから、そこは考えていかなければいけません。それからもう1つは、やはり、景気の状況をみながら、ということはやはりあるだろうと思います。』

『その際、一番重要な問題は、 どちらを取るのかというジレンマに陥ったときです。』

『その時は、バランスを考えなければいけないと思います。大変厳しい判断を迫られるかもしれませんが、 現在はその段階にはないだろうと考えています。』

まあ仰せの通りですわとしか申し上げようがないですけど割と踏み込んだ説明していますな。


・金融緩和の効果と物価へのメカニズムに関して

また飛びまして最後の方の質疑になります。

『(問) 講演の中で、物価上昇抑制の要因を詳細に分析されていたかと思うのですけれども、企業の前向きな行動の結果、抑制されているかもしれないということでした。そうすると現状の物価の伸び悩みというのは過度に悲観すべきではないということでよろしいのでしょうか。また、2%の物価目標について は、こだわらなくてもよいというような意見も出ていますが、そのあたり目標のあり方についても検討することに意義はあると思うか、お伺いします。』

ということで、

『(答) まず1点目の、物価に関してそれほど悲観する必要はないのか、ということですが、やはり物価目標を掲げていますので、ある程度の時間の中で達成していくということは望ましいと思いますし、その目標を掲げていること自体が、景気の状況や企業の前向きな動きとも関連してくると思いますから、そこは必要なのではないかと思います。』

でもって、

『物価は2%に届かないという状況ですけれども、そこは色々な状況が入り込んできている、その意味では 2013 年の時点と、相当現在の状況は違うのではないかというように私は考えています。』

ほほう。

『特に 2017 年頃から、はっきりと生産性の上昇というものが見られてきていますので、それにより吸収されてしまうことで物価が上がりにくくなっている、という状況もやはり入っているだろうと思います。これは、決して悪いことではないというように私も思って いますので、目標は目標として重要なのですけれども、悲観する必要はないのではないでしょうか。』

ほっほー。

『問題は、現在の状況を長く維持できるかどうか、そして一歩でも、ゆっくりでもその目標に近づいていくことができるかどうかではないか、と考えています。』

世界標準の金融政策で2年で2%とは何だったのかというか櫻井さんってこんなに麿だったのかと。

『それから目標自体をどう考えたらよいかということですが、私は2%の目標自体はそのままで良いのではないか、と思います。』

別に短期目標じゃないんだったらこれはこれで看板でエエンチャウノという感じですわな。

『これはやはり先進国全体でみてもほぼ合意している――デファクトとしてですが――状況ですので、やはりそこはある程度の協調も必要かもしれないです。従って、もしそれ が変化するということであれば、世界全体の協調の結果としての目標が変わっていくとか、そういうトレンドが出てくればまた変わってくるかもしれませんが、そこに大きな変化がない限りは現在のままの状況で、そう問題ではないのではないかと考えています。』

そらそうですなという感じです。

しかしこの会見、全体を通じてみますと、良い講演なのでQ&Aも良い内容になる、ということでやはりどこかの誰かさん(以下同文)。