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2019/04/26

お題「決定会合レビュー:本当に明確化されたのは「今の状況の長期化」ですな」

さてさてアタクシの平成最後の営業日(の筈なんだが)となりましたが、10連休もありますとさすがにこの間に更新したり過去ログ整理したり(すっかりさぼってましたし)一部に好評(?)の置物日記日記のインプットをしたり、そんなことよりせっかく買ったのに置物日記を先にしちゃって碌に手がついていない麿ブックをインプットしようぜ!

などなどありますが、とりあえず寝起きでFOMCは(寝坊するかもしれませんけれども寝起きで)やるというのだけ自分の中で決定していますが、あとはかなりの気まぐれさんでこっそり更新している筈なので、平成最後の更新は来週火曜日までのどこかでしらっと行っていると思います(一々チェックするほどの物でもありませんのでまあ適当に)。

#会見要旨と展望レポート全文も出ますからねえ・・・・・・・・

とりあえず今回の新規措置回りから参ります。

今回声明文(今のところPDFバージョンのみ)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k190425a.pdf

前回声明文
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2019/k190315a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k190315a.pdf


〇今日はひたすらガイダンスの所にこだわってみる(ので続きは連休中にぶっこみます)なお実質的には時間軸長期化ですよ


・フォワードガイダンスの「明確化」とは何ぞやということですが・・・・・・・・・・・

金融政策決定会合声明文のお題は、

『当面の金融政策運営について 』(今回)
『当面の金融政策運営について 』(前回)

であって、「金融緩和政策の強化」とは書かれていないのですが、項番1に関しては、

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、強力な金融緩和を粘り強く続けていく政策運営方針をより明確に示すため、以下のとおり決定した。 』(今回)
『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。』(前回)

となっていて、この「より明確に示すため」ってナンジャラホイという感じでして、その施策としてぶっこまれているのが次の小見出しにあるように、

『(1)政策金利のフォワードガイダンスの明確化(注1) 』(今回)

ということで、これまたガイダンスの「明確化」であって強化とは言っていないのが話として分かりにくいにも程があります。大体からして今の外部環境を勘案したら、来年の今頃くらいまで金融政策の金利上げ方向の修正着手ってえのは余程の副作用が爆発してお前ら何やってるんだという声が政治や官邸方面から飛んでくるような事態になるか、米国が急に回復してトランプが物分かりが良くなって米国のFF金利が3%台半ばまでホイホイ引き上げられでもしない限りリームーな訳でございまして、ここで「明確化」とほあ何ぞやという話な訳ですな。

『日本銀行は、海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも 2020 年春頃まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。』(今回)

『政策金利については、2019 年 10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。』(前回)

前回のは声明文項番5の方に入っていますので文章校正の関係上普通に引用すると主語が抜けちゃってしまいますが、当然ながらこの主語は日本銀行になりますので、今回の変更点は、

「不確実性」の部分に「海外経済の動向」を加えたこと、
「当分の間」の部分に「少なくとも 2020 年春頃まで」を加えたこと、

の2点になるのはまあわかりますな。なお子細に見ますと、この消費増税云々の部分に関して、今月から「2019 年 10月に予定されている」という文言がしらっと消えておりますな。


・カレンダーベースのガイダンスに変更したのかと言われるとそうでもないというヤヤコシサ

従来の金利ガイダンス文言から行きますと、「経済物価の不確実性があるから今の政策金利水準を当分維持します」と言っていたのですが、今回は上記の2点を加えて「明確化」とした、という事ですの。

でもって、ガイダンス政策ってえのは一定の状況を明確に示して、その状況に達するまでは現行の政策を継続すると事実上コミット(途中で超不測の事態が起きた場合はその限りではないので本当の本当に完全コミットしている訳ではないですが)する、ということによって、先行きの政策パスを事前に明確化することによって、金利水準なり資産買入なりのフォワードコミットメントにより市場の期待形成を安定化させて、例えば政策金利コミットメントであれば、このガイダンスにより、一定期間先スタートの短期フォワード金利を低位に保つことによって、イールドカーブ全体への影響を与えるというような効果を期待する訳ですな、うんうん。

でまあ今回なのですが、今申し上げたように追加されたものは「不確実性」という経済の状況ベース、つまりコンディションベースというかステートコンティンジェントベースの部分に従来の「消費増税の影響」に加えて「海外経済の動向」が加わった訳で、「不確実性」を判断する要素が1つ追加されている訳ですよ。

その一方で、今回は「当分の間」の次に「少なくとも 2020 年春頃まで」というのが加わり(そのせいで日本語としてはだいぶ見苦しい表現になっていますがロジックが更に見苦しいので今更ジローではある)ましたので、こちらに関しては「時期を明確に示した」というのがあります。

・・・・・・・とまあ考えますと、発想としては「今回の明確化はいわゆるカレンダーベースのフォワードガイダンスに移行したということですな」と思ってしまうのですがこれがさに非ず、というのが意味がワカランチ会長なところです。

ここの声明文だけだと自然に読むとカレンダーベースに見えてくるのですが、総裁会見(画像では見ませんでしたがヘッドラインは確認した)では黒田総裁が「カレンダーベースではない」と発言していたようにヘッドラインには出ていまして(詳しくは今日の会見要旨で出てくると思います)、何故かこのガイダンスはカレンダーベースへの変更ではない、という謎の建付けになっているっぽぽくて、ナンジャソラ感は強いというものです。

だって、「消費増税の影響を見極めるまでは金利水準を維持する」だったら「消費増税の影響が想定の範囲内で済んで良かったね、と確認したらその時の状況によって今の誘導金利水準(長期0の短期▲10bp)が適切かどうか改めて判断する」ということで、まあ金利に関するリアセスメントがどこで起きるのかが何となくわかる(ラグから考えたら数カ月程度、遅くても半年のラグじゃろとなるでしょ)のですが、ここに「海外経済」とか言われますと、海外経済の先行き動向なんてそんなもん常に不確実性があるに決まっているのですから、判断項目を増やされてしまいますと、何をもって不確実だと判断するのか、という基準が不明確というか恣意的になってしまうのではないか、と思いますので、カレンダーベースのガイダンスではない、となってしまうとこれは明確化でも何でもないだろとしかアタクシには思えないのですがどうでしょうかねえ(個人の感想です)。

カレンダーベースのガイダンスに移行しました、というのでしたら話は明確化されていて、じゃあ何でこのカレンダーの日付にしたのかという根拠が「海外と消費増税」というのでしたら何となく理解できるのですが、カレンダーベースのガイダンスにした、と総裁会見で説明しないとなると何ですかそれとなりますわな。

・・・・・とは言いましても、これがまたカレンダーベースに移行したと素直に言えないというのも分かる訳で、その理由として考えられるのは、(昨日も申し上げた通り)「できるだけ早期に達成」という毎度おなじみのアレであり、QQE導入当初の「2年程度を念頭にできるだけ早期に達成する」という大風呂敷がまだ全部畳まれていないからなのでしょうな(個人の感想です)。

つまり、そもそもが「できるだけ早期に達成」と言っているのに、初手から「来年までは短期マイナス長期0などという異例な金利環境から抜け出せる状況ではありません」と言ってしまうのは、「お前それできるだけ早期に達成する気あるのかよ」となって、「そんなに厳しい状況ならば何で追加緩和を行って早期達成に努力しないんだ」となってしまいますと、これまた話がややこしくなるという代物がございまして、当初のQQEからの政策ロジックを踏襲しているリフレ派の原田さん片岡さん(こういう時だけ突如原田さんと呼んでしまう^^)は、このガイダンス明確化の脚注において、

『(注1)原田委員は、フォワードガイダンスを見直すにあたっては、物価目標との関係がより明確となるガイダンスとすることが適当であるとして反対した。

片岡委員は、2%の物価目標の早 期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が重要であり、日本銀行としては、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとのコミットメントが必要であるとして反対した。』(今回)

となっていまして、反対していること自体は前回と同じではありますが、今回は特に原田さんの反対理由がキラリと光る筋の通った反対になっている、という事案が生じている訳ですよこれがまた。

つまり、「時間で縛る」というのも「早期達成」ということを考えているのに対しては矛盾する訳で、本来早期達成するんだったら1年先まで政策枠組みどころか10年金利0%すら変えないというのはやる気あんのかということでありますし、このガイダンスがコンディションまたはステートコンティンジェントベースのガイダンスなのであれば、「先行きの不確実性」などというフワッとしたコンディションではなく、より明確な物価がどの程度とか、そのような形でのガイダンスにした方が良くて、特に物価に紐付ける形であれば、物価上昇を確認するまで金利を上げませんという話だから明確化も明確化、という話になりますわな、ということで、原田さんの反対している趣旨の方が筋論ですな、というエッシャーの騙し絵のような世界ですわあっはっは。


〇フォワードガイダンスにしつこくこだわって全然先に進みませんがここで他国の例を確認してみましょう

・ECBが最近ぶっこんでいるフォワードガイダンス

と言いますと先般期間を延長しました金利のフォワードがインダンスですが、

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2019/html/ecb.mp190307~7d8a9d2665.en.html
Monetary policy decisions
7 March 2019

『(1) The interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.00%, 0.25% and -0.40% respectively. The Governing Council now expects the key ECB interest rates to remain at their present levels at least through the end of 2019, and in any case for as long as necessary to ensure the continued sustained convergence of inflation to levels that are below, but close to, 2% over the medium term.』(上記URL先より)

ということで、「The Governing Council now expects the key ECB interest rates to remain at their present levels at least through the end of 2019」になっていますが、この政策金利ガイダンスについて、ドラギ総裁は会見で、

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190307~de1fdbd0b0.en.html
PRESS CONFERENCE

『First of all, the decisions: It's four sets of decisions. We moved the calendar-based part of our forward guidance from September to December. The second, we confirm the reinvestment in full of the principle payments from maturing securities. Now, you understand the importance of the chained element in our monetary policy. Having moved the calendar-based, so does the expected - well, whatever the horizon is going to be during which the purchases will take place to keep the stock unchanged, so you see this is adding accommodation.』(上記URL先より、質疑応答パートの最初の質問に対する答えから一部引用)

となって、カレンダーベースのガイダンスで、この時にこのケツを伸ばしたから緩和を追加したって説明な訳ですよ。


日銀ちゃんの場合、前回は「2019 年 10月」という文言があって、今回「少なくとも 2020 年春頃まで」というのが入っていますが、前者は不確実性の源泉となるイベントの時期であって、別に2019年10月に見直すといっている訳ではないので、「時期を明確化した」という意味での明確化、つまり「今の見通しだと少なくともこの先1年は不確実性の塊だから誘導金利水準を変更するのは無理っす」ということではあるので、明確化してカレンダーベースとしたって言えばいいのにそう言い切りができないのはさっき申し上げた通り。


・条件ベースのガイダンスだったらこうなるわなというのがFRBのQE3

懐かしいものを拾っておきましょう。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20120913a.htm
September 13, 2012
Federal Reserve issues FOMC statement

『The Committee will closely monitor incoming information on economic and financial developments in coming months. If the outlook for the labor market does not improve substantially, the Committee will continue its purchases of agency mortgage-backed securities, undertake additional asset purchases, and employ its other policy tools as appropriate until such improvement is achieved in a context of price stability.』(上記URL先より)

でもってその時の説明。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120913.pdf
Transcript of Chairman Bernanke’s Press Conference September 13, 2012

『The Committee also took two steps to underscore its commitment to ongoing support for the recovery. First, the Committee will closely monitor incoming information on economic and financial developments in coming months, and if we do not see substantial improvement in the outlook for the labor market, we will continue the MBS purchase program, undertake additional asset purchases, and employ our policy tools as appropriate until we do. 』(上記URL先冒頭説明部分3ページの頭の辺り)

この時は資産買入の期限に関して「substantial improvement in the outlook for the labor market」ということで、「労働市場の先行き見通しが顕著に改善するときまでは」資産買入(資産拡大)を継続するという話をしていたのですが、これだと条件ベースの説明ではあるのですが、不確実性とかそういうのではなくて、デュアルマンデートの一方であるところの労働市場の改善を見る、というのですから、明示的な数値は示していませんけれども、まあ話としては言いたいことは分かるし、労働市場のデータを見て行けば良いんですな、ということで閾値に関しての考え方に幅はあるでしょうが、それにしてもフォーカスするものがマンデートに関連する部分、ということで言えば先ほどの原田さんの指摘もごもっとも、ということになりますわな。


・では実際はどうなんでしょうかねえ日銀ちゃん(なお個人の妄想成分が強まります)

でもって日銀ちゃん「明確化」した割には条件ベースだとすれば条件の要素を増やしているんですからナンジャソラでありますし、カレンダーにしたのであれば早期達成はどこ行ったという話ではあるのですが、まあそうは言いましてもこのガイダンス、どこからどう考えましても半年後、すなわち10月の展望レポートのころになったら「現在の不確実性の高さを鑑みると当分の間、少なくとも2020年秋頃まで〜」って話になるでしょうなというのは火を見るより明らかでしょと思う訳でして(個人の感想です)、実質的にガイダンスが半年ごとに半年先にロールオーバーされるということになる(今日はそこまで間に合わないですが、「時間が物凄くかかる」というのを今回さらに強調するような作りになっているというのも今回の声明文、展望レポートの大きな特徴だと思います)ので、実質的にはカレンダーベースのガイダンスに移行していますし、半年ごとに半年ロールしておけば、なんかその度に「何かやっています感」も出せるので、そうやって時間を稼いでいるうちに外部環境が好転してくれるのをひたすらお祈りする、ということで、短期決戦で始まったQQEの中長期化ステージへの移行(それ自体はYCCの時から始まっていますが)の完成形に近くなってきた、というのが現実的な解釈になると思います。

ただ、ここに来るまでの最初の話とは明らかに全然違う話になってしまっていて、しかもその明らかに違っているというのを認めると面目玉の問題だったり、政治的な問題だったり、まあ色々と問題があるという大人の事情があるので、昭和の温泉旅館が増築に増築を重ねたような物件を平成の終わりになってみせつけられるこのロジックが複雑骨折な作り(相変わらず80兆円文言は残っているし早期達成は外さないし、とかね)になっているという代物ではありますが、まあ今回は「緩和政策の中長期路線への移行を更に明確にしたけれども建前は残しっぱなし」という攻撃に出ている、という解釈をしておけば良いのではないかと思います、あくまでも個人の感想ですが。

・・・・・・・ということでガイダンス文言だけでこんなに引っ掛かってしまいまして、全然話が進みませんでしたので連休中に続きは追々投下する予定ですが、いつ投下するかは正直よくわからん(今のところはやる気満々ですが、たぶん連休とか言い出すと急に脱力するんジャマイカという悪寒が)。







2019/04/25

お題「フォワードガイダンス強化は早期達成レジームに矛盾するんですが/その他少々」

NHKニュースでトップのヘッドラインに上がってやんの(今朝の時点)ざまあwwww
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190425/k10011895621000.html
6年たってめど立たぬ物価目標 なお「金融緩和続ける」日銀
2019年4月25日 4時24分

>6年たってめど立たぬ
>6年たってめど立たぬ
>6年たってめど立たぬ

記事を一部引用すると、

『日銀は24日から開いている金融政策決定会合で当面の金融政策を議論するとともに、最新の経済と物価の見通しを取りまとめます。この中で日銀は、長期金利と短期金利に誘導目標を設けた今の大規模な金融緩和策を維持する見通しです。』

『一方で、最新の物価の見通しでは、今回初めて公表する2021年度にかけて、物価の伸びが目標の2%に届かない見込みです。金融緩和の一段の長期化が避けられなくなることから、日銀は25日の会合で、「フォワードガイダンス」と呼ばれる今後の政策方針の中で、粘り強く金融緩和を続ける姿勢を打ち出すことなどを議論するとみられます。』

『今の大規模な金融緩和をめぐっては、導入から6年が過ぎても物価目標の実現にめどがたたないうえ、金融機関の収益が低下し、国債の取り引きが低調になるなど副作用への懸念も強まっていて、日銀は引き続き難しい政策運営を迫られることになります。』(上記URL先より)

だそうな。


〇ということで決定会合ですがフォワードガイダンスの強化は短期達成レジームに矛盾しませんかねえという雑談

ほーんと思ったのは「フォワードガイダンス」の話なんですけど、金利のフォワードガイダンスっぽいのをぶっこんできたのはYCCの変動幅拡大とセットだったのですが、その時の意図って「YCCの変動幅拡大は利上げとは違いますというアピール」だった訳でして、そのためにとりあえず消費増税をダシにしてガイダンス文言をぶっこんできたのですけれども、じゃあ何で消費増税をダシにしたのかと言えば、元々2%の物価目標達成に関しては「2年程度を念頭にできるだけ早期に」達成というのがあって(なお置物は2年もたたずに達成とか抜かしてましたが)、2年程度は空文化しましたけれども、政府との共同文書の中に「できるだけ早期に」が残っているのが実に痛い所でして、これがある以上今回の消費増税のような明確なネタでもない限り、あまり長い期間のフォワードガイダンスは打てない、とまあそうなっとる訳ですな。

ということで政府との共同文書。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122c.pdf
デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための 政府・日本銀行の政策連携について (共同声明)
平成 25 年 1 月 22 日 内閣府 財務省 日本銀行

『日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』


項番1の最後の段落にこのように書いてあるのですが、日付を見ればご案内の通りですけど、こやつは麿時代の最後の作品になっておりまして、ここの文書をちゃんとよみますと(麿時代の作品なだけに)逃げ道がない訳ではない。

つまりですな、「できるだけ早期に」とはありますが、「実現することを目指す」と言っているだけで実現するとは言っていない(帝愛グループみたいな言い訳になってるとか言わない)のでありまして、「2年程度を念頭に達成」とか言い出したのは空理空論置物理論とそれに乗っかった黒田日銀なのであって、まあ2年は事実の積み上げによって空文化しましたが、「できるだけ早期に達成」というのは生きてしまっているので、「できるだけ早期に達成すると言っているのに何で長期間利上げしないことを約束できるのか」というツッコミに対しては今使っている消費増税のようなネタが無いと話の持って行き方に無理があるというものです。

それに、共同文書ですと今の個所の続きが「金融政策の効果波及には相応の時間を要する」とあるので、もともと「できるだけ早期に」は別に実現するとは言っていなくて、相応の時間を要するけれども早期達成できるように頑張りますという姿勢で参りますってなお話の筈だった訳ですが、まあ成立の経緯からしてそうなるのは仕方ないのですが、MB直線一気置物ゴミ理論によりましてその辺のエクスキューズを全否定するところから黒田日銀が入っているので、麿文書の記載の精神に戻るというのはリフレ一派と黒田さんの精神を否定する話になりますので、たぶん黒田さんはそういうのは分かっているでしょうから面目玉もあって引っくり返すの無理でしょ、と思うのであります。

でもって共同文書は更に仕掛けがあって、「相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。」というのは馬鹿緩和を長期継続すると碌な事が起きないのだから状況に応じて柔軟に軌道修正する。ということもできるようにしていたのですが、何せ置物リフレ馬鹿理論に乗ってこの道しかない位の勢いで麿路線を全否定しておっぱじまっただけに、そもそも状況に応じて柔軟な対応という発想がない訳ですからして、その結果としてご案内のようにこの「問題が生じていないかどうかを確認」がどう見ても問題があるだろという声はアーアーキコエナイキコエナイとなって、市場に関しても金融面に関しても無問題という大本営発表を繰り返さないと、状況に応じて柔軟に対応というのに繋がってしまうから、大本営発表を出さざるを得ないということになってしまうのでありました。

つー訳でですよ、まあよくよく考えてみれば共同声明は「実現する」とは言っていないし、極端な緩和政策の長期化に関しては一定の歯止めに使える文言もある訳でして、少なくともただの金融機関課税にしかなっていないマイナス金利政策とか、リスクプレミアムをマイナスにもっていくような資産買入政策(とは言えETFはソフトランディングさせるの難しそう・・・・・)とかの修正とかは可能っちゃあ可能だし、別に2年だのなんだので達成するのではなく。中長期的な物価目標としたって(一定の緩和政策をしていれば)共同声明に反しないとも言えるのではないかと思うんですけどどうでしょうかねえ。

つーことでして、まあフォワードガイダンス強化なら強化で勝手にすれば、という感想しか湧かないのですが、金利のフォワードガイダンス強化というのは「出来るだけ早期に目標を達成します」と言い切って政策をおっぱじめた(その時点で麿路線の否定)「短期で2%の目標達成」という路線を放り出すことを本来は意味する(ガイダンス強化の期間にもよるけど)のでありまして、まあ黒田とリフレ派全員退場しろやとは思いますが、それは政治的にリームーなのは分かっておりますのでそんなことは求めないにしても、「出来るだけ早期に達成するという当初の政策レジームは間違い」と言わないとイカンと思うの。

「できるだけ早期に」が「達成する」に紐ついている状態だから、そら追加緩和提案も出るというものでして、当初の短期達成レジームから言えば、QQE2とかまさにそのレジームに則って追加緩和したんだし、今の片岡さんが(提案してないけど)言ってる「早期達成のために追加緩和が必要」という反対意見も当初の短期達成レジームを踏襲していけばロジカルにそういう話になるのですから、この「達成する」というのが「達成に向けて努力するけど、現実問題としては時間が掛かる」という風に切り替えて、達成時期を中長期に切り替える形で短期達成レジームによる桎梏から解放しないと不毛な追加緩和議論が続くだけ、という事になりますので、まあガイダンスを強化するんだったらその辺の落とし前をちゃんとつけないと、益々「早期達成と矛盾するガイダンス強化って何?」と政策ロジックが無茶苦茶の上塗りになってしまうと思うんですがさてどうなるんでしょうかね。

#・・・・・・とグダグダ申し上げましたがただの悪態ですかそうですか


〇なんもないと金利が下がりますかそうですか(ただの備忘メモ)

昨日の債券市場ちゃんのメモだけ。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2261RP
2019年4月24日 / 15:33
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は3日続伸で引け、長期金利は-0.045%に低下

『 <15:26> 国債先物は3日続伸で引け、長期金利は-0.045%に低下

国債先物中心限月6月限は前営業日比10銭高の152円66銭となり、3日続伸で取引を終えた。日銀の国債買い入れオペでオファー額が据え置かれたことを受け、需給悪化懸念が後退。株安も追い風となり、国債先物は後場に上げ幅を拡大した。10年最長期国債利回り(長期金利)は1.0bp低いマイナス0.045%に低下した。』(上記URL先より、以下同様)

って前回の今回で連続減額はせんやろ〜。

『前日の米債高を受け、国債先物は朝方から堅調に推移した。中期・超長期対象の買い入れオペは市場のコンセンサス通りオファー額は据え置かれた。19日の前回オペでは予想に反し超長期のオファー額が減額され、売り圧力が強まる場面があった。このため、きょうの通告内容を見極めようとする姿勢が広がっていた。』

ホンマカイナ。単に連休前だからなのではないかと思うけどまあいっか。

『現物市場では総じて利回りが低下。新発20年債利回りは前日比1.0bp低い0.370%、新発30年債利回りは同1.5bp低い0.555%にそれぞれ低下した。後場に国債先物は一時152円69銭(前営業日比13銭高)まで強含んだ。』

てな訳で、先週は超長期輪番減額闇討ち攻撃で20年はそこまでの金利上昇はしないで結局0.40%かすりもしないで戻ったんですけど、30年40年はびろーんとスティープしたわけですけれども、何もないと結局長いところの方の金利ほど親指を立てながらズブズブと溶鉱炉に沈んでいって、全投資家(かどうか知らんが)が泣いた、という動きになるということですね、覚えた。

まーガイダンスがどうのこうのとか言いましても、米国様が本格的に「やっぱ株が上がってきたし、ファイナンシャルコンディションの過熱に対して調整が必要でしょ」とでも言い出さない限りにおいて、そして本人たちどう思っているか知らんけど市場の中の人から見たら明らかにトランプに恫喝されて正常化路線を引っ込めた連中であるという評価が固まって市場は完全にFRB今年動けんと思って価格形成ができているだけに、下手に動くとまた馬鹿相場を生むので動くに動けないでしょうから、まあそういう事も勘案すると、外部環境から金利が上がって来るネタが無いだけに、ガイダンス導入そのもので何か影響が出るとも思えませんので(フラグ)、そうなりますと何も無いと金利が下がったりフラットニングしたりしやすくなるの巻というのが続いて、じとーっとした相場が続くのではないか(個人の感想でありフラグの可能性もあるのでご注意ください)という感じなんでしょうかね、知らんけど。


〇もうちょっとネタにしようと思っていたんですが予告編だけでローゼングレン総裁の講演ネタ

FSR引用大会だけだと芸がないにも程があるので

https://www.bostonfed.org/news-and-events/press-releases/2019/boston-fed-president-says-economy-doing-well.aspx
Boston Fed president says economy doing well, sees challenges for monetary policy in the event of a downturn Boston Fed president says economy doing well, sees challenges for monetary policy in the event of a downturn

Rosengren: It’s a good time to consider possible changes to Fed’s policy framework that could create "policy space" Rosengren: It’s a good time to consider possible changes to Fed’s policy framework that could create "policy space"

April 15, 2019

なんか題名が無駄に長いのですが、スピーチの全文は
https://www.bostonfed.org/-/media/Documents/Speeches/PDF/041519text.pdf
Monetary Policymaking in Today’s Environment: Finding “Policy Space” in a Low-Rate World

ということで、Rスターの低い状況において金融政策のフレームワークを「金融政策の発動余地を確保する」ためにどのように変更して行ったら良いか、というお話をしていて(若干古いですが何せ最近はFOMC近いので新しいのが出てこない)、まあネタにするべと思っていたのですが、フォワードガイダンスがどうのこうのと国営放送さんが仰せになっていたのに釣られて悪態書いていたらついうっかりノリノリになってしまいましたので本日はほんのさわりだけ。

HTML(というか拡張子がaspxですけど)の方が要旨というかアブストラクトですので、本日は要旨の方からちょっとだけ。

『Boston Fed President Eric Rosengren spoke Monday at Davidson College in North Carolina.』

へい。

『Key takeaways from Rosengren’s remarks:

・The economy is doing well, but the inflation rate remains below the Fed’s 2 percent target.』

へいへい。

『・Below-target inflation and a low interest rate environment limit policymakers’ “room to maneuver” in the event of an economic downturn.』

次に経済が下向きになった時に今のやり方だとそこまで金利上げられないから、その結果金融政策で対処する余地が少なくなる、という方向での糊代論です。

『・A more firmly ingrained inflation target would help - for example, the Fed could aim to achieve its inflation target on average over the economic cycle.』

ということで例えば経済サイクルの間にインフレ目標を達成するというようなインフレ目標にするとよかろう、って言い方ですが、これは最近FEDの中の方々ですっかり流行化している「平均インフレ目標」でして、それやって高めのインフレ放置したらインフレ目標のアンカリングが壊れるとアタクシなんぞは思うのですが(なお何で思うのかというとドナルドコーンの受け売りだったりするのですが、汗)、これによって「過去のインフレ低かった時の分も取り戻しに行くから2%超えてもすぐには緩和を止めません」という話をすることができるし、そうなると将来的には正常化したときの金利スコープが上がる、というだいぶ机上の空論チックな都合の良い話をおっぱじめている。

『・In addition to the limited room for short-term rate cuts, an alternative tool - influencing long-term rates - is also constrained.』

日銀がアホウなことをするもんだからFEDまで長期金利コントロール(コントロールとまでは言ってないけど)みたいなことを言い出す始末。

『・With the economy doing well, it’s a good time to consider if changes to the Fed’s policy framework could provide “policy space” for action in a hypothetical future downturn.』

つーことで経済の状況が良い時なのでフレームワークを考える良い時期、という話なんですが、まあ大体出てくるのが「アベレージインフレーションターゲット」の話で、これどのように活用するかによって、従来の「フレキシブルなシンメトリックターゲット」とほとんど変わらんような使い方になるのか、あるいは「物価水準目標」みたいな使い方になるのか(結果的にどちらにしても利上げが遅れることになるという現世利益は同じと思われるが)が違ってくるので何ともかんとも、ということで要旨の続きと本文に、と思ったのですが時間がないのでこの辺で勘弁してくんなまし。

#今のところ連休中は寝起きでFOMCシリーズだけはやる予定ですが、その他成敗するネタは色々とありそうなので考えている状態ではありまする。絶好のインプット日和でもあるでしょうし・・・・・・・・





2019/04/24

お題「どうせMPMは何もないので(フラグ)FSR鑑賞ということで」

ニュースチェックしていて拾ってしまいましたが、
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190419/k10011889021000.html
News Up “日本に戻らなければよかった”
2019年4月19日 14時13分

これは心が削られる(涙)・・・・・・・(ので読むときはそのつもりで)


〇また性懲りもなくFSRの鑑賞モードな訳ですが

FSR全文
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr190417a.pdf
概要
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr190417b.pdf

・読み飛ばしてしまっていましたが今の金融緩和の意義に通じる論点ではないかと

『V.金融仲介活動の点検 』の中にあります『1.金融機関による金融仲介活動 』のうち、『(2)海外貸出 』というのを見ておりますと、分析自体は単にファクトを分析しているものだと思うのですが、今の金融緩和って何なんでしょうと言いたくなるような話に繋がると思うので読み飛ばしてましたがちと戻って本文20ページからの所に参ります。

『海外貸出は、大手行を主体として、アジア向けが域内経済の成長に伴い増加していることなどから、基調として緩やかに増加している(図表V-1-17,18)。銀行は、本邦企業のグローバル展開を支えるとともに、海外諸国の金融ニーズを取り込み、国際的な営業基盤をより 強固なものにしていく観点から、海外企業向け貸出の拡充を進めている。そうしたなかで国際与信市場における邦銀のシェアをみると、グローバルな金融危機後にデレバレッジを進める欧米銀行に代替して上昇してきたが、近年は、海外金融機関との競争が再び強まるなかで、概ね横ばいとなっている(図表V-1-19)。』

ほうほう(図表も見ると吉)。

『邦銀の貸出利鞘は、概ね横ばい圏内で推移しているが(図表V-1-20)、足もとでは、邦銀は貸出残高の積み増しよりも、相対的に利鞘の厚い貸出への入替えや低採算性貸出の売却に取り組むなど、従来以上に収益性を重視する姿勢を強めている。』

ほう。

『こうしたなか、一部の先では、非投資適格先上位(正常先中位)向けなどリスクがやや高いが、相対的に利鞘の厚い貸出を、リスク管理を強化しつつ、増やす方針にある。なお、大手行では、貸出以外のビジネスを含めた総合的な採算性を高めるため、非金利収益の増強にも注力している。具体的には、貸出残高の伸びが緩やかになるなかで、北米・ 欧州を中心に、シンジケート・ローンの組成など貸出関連の手数料収入の拡大に取り組んでいる(図表V-1-21)。』

ということですが・・・・・・・・・

『この間、大手行は国内預貸業務の趨勢的な収益性低下を踏まえ、銀行本体の海外支店を通じる貸出に加えて、海外現地金融機関やリース会社等に対する買収・出資等によるグローバル展開を積極的に進めている(図表V-1-22)7。』

この図表V-1-22は本文22ページにあって中々壮観ですが、金融グループの海外進出といえばリース会社のアジア事業拡大というのも結構なもんだと思いますな(図表は銀行持ち株会社とかのレベルでの話の図表です)。

『そうしたもとで、邦銀の海外大手行との間の連関性も高まっている(W章1節参照)。マクロプルーデンスの観点も踏まえつつ、邦銀のグループ全体としてみた海外資産増加やそのリスクプロファイルについて注視していく必要がある。』

とまあそらそうよという結論で、ファクトとしてはそうですなとは思うのですが、これって別の見方で考えてみますと、国内でせっせと金融緩和政策を行っているのですが、その金融緩和によって国内の需要が刺激されるというメカニズムが既に乏しく(乏しくないのなら海外貸出をせっせとやらんでも国内貸出でウハウハの筈)、金融緩和政策がメカニズムとして効くルートでありますところの「将来の需要を手前に持ってくることによって需要を刺激する」という先食いをするパイすら国内には無くて、そうは言っても金融緩和は続くので、結果的に金融緩和が海外の需要を前倒しする形で効いている、といえば聞こえが良いですけれども、金融緩和効果が海外に漏出しているということじゃないのかねー、などと思うのでした(個人の感想です)。

もちろんアジア経済が上向きになれば本邦経済にもプラスに寄与するから、そうやって金融緩和効果が需要を喚起するので効果が出ているぜヒャッハーという理屈は成り立つのですけれども、何だかなあ感は拭えないっすな。


・GaRに関して

昨日の続きに戻りましてGDPatRiskの分析部分を鑑賞鑑賞。本文35ページの『(2)金融ギャップと経済変動リスク(GaR) 』という部分。

『金融活動指標それぞれのトレンドからの乖離度合いを色で非連続的に捉えるヒートマップ では、全体としてみた金融不均衡の蓄積度合いを定量的に評価することが難しい。そこで、 ヒートマップを構成する 14 の金融活動指標のトレンドからの乖離率を加重平均することで 一つの指標に集約した「金融ギャップ」を用いて、金融循環のレベル感を評価する13。』

というのを前回のFSRから新機軸でぶっこんできています。

『足もと「金融ギャップ」は、緩やかながらも着実にプラス幅の拡大を続けている(図表V-4-10) 。 前回の本レポートで指摘したとおり、今次の金融ギャップのプラス局面の特徴点としては、 @水準は、バブル期を下回っているとはいえ、バブル崩壊以降でみればピークを更新していること、Aプラス局面の長さも、バブル崩壊以降最長となっていること、Bプラスとなっている活動領域にも拡がりがみられること、を指摘できる(図表V-4-11)。』

てのは前回からそういう話ですが、まあよく考えてみるとそんだけファイナンシャルコンディションがホッカホカになっているのに物価に跳ねないとはどういう事ですかって感じではありますよね。

『次に、こうした金融ギャップの動きが、やや長い目でみて先行きの実体経済にどの程度の景気変動リスクを及ぼし得るかをみるため、前回レポートで導入した「 GDP at Risk (GaR) 」 を用いて評価する。』

キタコレ。

『GaRは、「足もとの金融ギャップを所与とすると、先行きX年間の実質 GDP成長率は、Y%の確率で、Z%以下に低下する可能性がある」という確率分布のかたちで、 景気変動に関するリスクを「見える化」する手法である。』

つまり、

『一般に、金融ギャップの過熱方向 の乖離が大きくなるほど、経済の実力以上の金融活動、典型的には信用供与が行われることで、先々の景気に対して、後退方向に偏った非対称の影響を及ぼす可能性が高まる。』

という話ですけど、それってまさしく直前の所(昨日引用した中)で

『また、足もと「緑」となっている指標のなかにも、その動きを仔細にみると、「赤」に近接しているものが幾つかみられる。例えば、「金融機関の貸出態度判断 DI」は、低金利環境の 長期化や金融機関間の競争激化を背景に、引き続きバブル期以来の高水準で推移している(図 表V-4-6)。』

『こうしたきわめて緩和的な資金調達環境を背景に、「総与信・GDP比率」はトレ ンドから乖離して着実に上昇している(図表V-4-7)。また、「企業向け与信の対GDP比率」 と「企業設備投資の対GDP比率」も、それぞれ上限の閾値に近づいている(図表V-4-8,9)。』

『この背景には、ミドルリスク企業を中心とする、設備投資向け銀行貸出の増加等があるとみられ、不動産業向け貸出と同様、バブル期と現在の各指標のファンダメンタルズの違いも踏まえつつ、幅広い観点から注視していく必要がある(W章参照)。 』(以上の3文は一つ手前のコーナーになる本文34ページから引用しています)

とある話がこの概念を具現化している状態とも言えますが、

『GaRは、 過去の金融ギャップと需給ギャップの関係から、これを定量的に示すものである。現在の金融脆弱性が将来の実体経済に及ぼす影響について、GDP成長率の変動リスクという分かりやすい尺度で示すことができるため、近年、金融システムのモニタリング・ツールとして国際的にも活用が進んでいる14。 』

とまあそういう概念の話なんですが、緩和的な金融環境が銀行ルートを使って投資需要を喚起するのは良いんですが、その喚起される需要が非効率、低採算のものであってもホイホイと出やすくなるのが緩和的な金融環境である、というお話になると、さっきの海外漏出とは別の観点で、昨日もアタクシ駄文で申し上げたと思いますが、この緩和の長期化は経済の成長力を寧ろ下げる方向に働くのではないか、というような話でもあるというのがこのGaRの話ってことですわ。でもってその結果(ちなみにここから先は本文37ページになります)

『以下では、景気変動リスクについて、GDP 成長率から潜在成長率を差し引いた需給ギャップの変化幅で表示する。また、金融循環の影響については、前述の日本の金融ギャップの変動に加え、リーマンショック時のように海外の金融環境の変化が国内経済に影響するチャネルも考慮する15。なお、以下で示す GaR は、あくまでも金融面での不均衡の蓄積に起因する景気変動リスクを推計したものであって、それ以外のリスク要因は考慮していない。当然、先行きの GDP 成長率に関する日本銀行の見通しを示すものでもない。』

ちなみに超どうでもいい話なのですが、このページ(本文37ページ)だけ何故か毎度おなじみのMS日本語環境標準での外字攻撃が発生しないので、このページだけMS標準のフォントで原稿が作られているというオモシロ現象が発生している模様です。どうしてそうなった、というかこのページと同じエディタで作ってくれよ。

『推計された先行き 3 年間の GDP 成長率の確率分布を時系列的にみると、前回レポートでも報告したとおり、近年、バブル期ほどではないが、分布の裾野が下方に厚くなってきている (図表V-4-12)。こうした分布の形状変化には、主としてわが国の金融ギャップのプラス幅拡大が影響している。このことは、金融脆弱性を考慮した場合の GDP 成長率の確率分布の方が、考慮しない場合と比べて下方の裾野の厚みが大きくなっていることからも確認できる(図 表V-4-13)。』

うむ。

『これらの結果を踏まえると、このところの金融循環の拡張的な動きは、低金利の累積的な影響を背景にバランスシートの調整圧力を溜め込むことで、やや長い目でみれば 景気変動の下方のテールリスクを高める方向に作用している。』

まあ目先は需要喚起できているようで将来のスラックになる要因を溜め込んでいるっつー話ですわなという事。

『金融ギャップと GaR は、金融脆弱性やそれに伴うリスクを分かりやすい手法で定量化できる有用なツールであるが、その活用や解釈に当たっては以下の点に留意が必要である。』

『第一 に、金融ギャップには、無視できない計測誤差が含まれている。例えば、金融ギャップは、ミドルリスク企業向け貸出の増加といった貸出債権の質の変化まで捕捉するものではないほか、バブル崩壊以降の金融経済構造の長期的な変化を捉え切れていない可能性もある。こう した金融ギャップの計測誤差は、当然、これを用いて推計した GaR の誤差にもつながる。』

『第二に、GaRには、推計期間中のテール・イベントのサンプル数が少ないという時系列データ の制約がある。』

『第三に、GaRは、過去に観察されたデータに基づく計測結果に過ぎず、金融活動の過熱感の強まりがバランスシート調整圧力につながるメカニズムを明示的にモデル化しているわけではない。』

『以上を踏まえると、金融ギャップやGaRの計測結果については、十分幅をもってみる必要がある。 』

この分析と全然違う馬鹿ネタで申し訳ございませんが、この第三の部分、GaRをマネタリーベース置物直線一気理論に置き換えて(以下の語句も適宜読み替える訳ですが)読みますと、実に心が暖まりますな。しかも置物直線一気理論の場合分析対象になるデータの期間も恣意的と来たもんだ。


でもって結論の更に結論みたいなのがありましてですよ、

『とはいえ、わが国の金融システムの安定性を中長期的な視点から評価するに当たっては、 「金融循環の拡張局面では、やや長い目でみた景気の下方リスクが高まりやすい」という、 GaRの定性的なメッセージは重要である。』

これは(;∀;)イイハナシダナーにも程がある訳で、雨公辺りでも資産バブル発生→崩壊→金融緩和→緩和のやり過ぎ(期間的に)で資産バブル発生ってのを繰り返してジャンジャン潜在成長率が下がってきているんジャマイカなどと考えますと、どうせ読んでも何のことかわからないどこぞのへっぽこ中銀のへっぽこ政策委員(なお全員がへっぽこと言っている訳ではない)が読むよりも、またぞろゴルディロックスヒャッハー相場を作りに行きだしている雨公の中央銀行パーティシパツの皆さんにレクした方がエエンでねえのとか思ってしまいますな。

『この点を踏まえ、実体経済が大幅に悪化するよう なショックの発生を仮定しても、金融システムの安定性が維持されるかどうか、また、金融仲介機能が将来にわたって円滑に発揮されるかどうかを、ストレステストによってフォワードルッキングに検証する必要がある。この点は、Y章で掘り下げた検討を行う。』

ということなのですが、まあFSRの範疇を越えちゃうとは思うのですが、経済分析というか政策インプリケーションのありそうな分析という意味では、この下方リスクの蓄積が経済の低採算非効率なスペアキャパシティを生み出す可能性とかそういう事を考察して頂くと面白い気がする(なんかかなり強めの置きを置かないといけないのかもしれないので素人のアタクシが勝手に言っているだけで的を外しまくっていたら誠に申し訳ございません)のですが、そういうのは企画局とかいうマネタリーポリシーウィングの話ですかそうですか(ちなみに「物価の分析」は調査統計局の所から出てくるけれども、「インフレ期待の分析」とか「政策で見ていく物価とは」みたいな話になるとマネポのウィングであらされるところの企画局からの紙(スタッフペーパーの場合も含め)が出てくるのが日銀の仕様の筈です)。

つーことでこのヒートマップの部分とGaRの部分って、ヒートマップでは不動産関連の話を先にもっていって(そら赤いのが出てるの不動産関連だから当然ちゃあ当然ですけど)デコイを用意するという周到さに加え、GaRの話に行く中でも表現は物凄く抑制的にしていますけれども、「緩和的な金融環境を長期間継続する結果は必ずしも経済にプラスとなるレガシーを残すものではない、というか寧ろアカンものを蓄積するし今も絶賛蓄積中」というのを示しているのであって、本来ならば第二の柱における点検の中で重視されるべき政策インプリケーションなのではないか(ただこれを言い出すと政策割り当ての問題とか論点が多分拡散して政策論としては収拾がつかなくなりそうな気がする)という風には思うのですが、どんなもんなんでしょうかねえ。


・貸出のリスクに関する話はまあその通りではあるが梯子外しチックなところもありまして

『W.金融機関の財務基盤とリスクプロファイル』という次の章(今までの部分が総括みたいな感じで、ここから各論に入るようなイメージになると思う)で本文39ページからの部分になります。

『本章では、金融機関のリスクプロファイル(信用リスク、市場リスク、不動産関連リスク、 資金流動性リスク)について点検したあと、それとの対比でみた現時点の自己資本の充実度 を評価する16。 』

ということですが今日は時間とアタクシの根性の都合上信用リスクの部分で勘弁の予定。

『1.信用リスク』から始まります。

『まず、信用リスクの全体像を確認する。』

ほいな。

『金融機関の信用リスク量は、全体として低い水準が維持されている。業態別に信用リスク量の対自己資本比率をみると、いずれの業態でも、 既往ボトム圏で推移している。また、金融機関間のばらつきも、地域金融機関を中心に縮小している(図表W-1-1)17。』

いけるやん!(なおこの部分にある(図表W-1-1)は中々ビューテホーである)

『金融機関が国内外で貸出残高を増加させてきたにもかかわらず、信用リスク量が低水準で推移しているのは、国内外の好景気と低金利環境が長期化するもとで、企業財務の改善に伴い債務者区分構成の改善が続いているためである。』

うむ。

『与信の債務者区分別の構成比をみると、 正常先の比率は上昇傾向が続いており、大手行や地域銀行ではリーマンショック前のピークを明確に上回っている。また、企業の倒産件数は、1980 年代のバブル期並みの低水準となっている(図表W-1-2,3)。 』

威勢の良い話で。

『もっとも、足もとでは信用リスクの低下傾向に変化の兆しがみられる。』

キタコレ。

『企業の倒産件数は、 このところ下げ止まりつつあるほか、「3か月以上の延滞ないし破綻懸念先以下へのランクダウン(債務者区分の下?遷移)」として定義されるデフォルト率も、既往ボトム圏ながら足もとでは若干上昇している(図表W-1-3)18。こうしたなか、信用コスト率は、いずれの業態においてもきわめて低い水準で推移しているが、地域銀行では、2018 年度上期には幾分上昇した(図表W-1-4)。』

とは言え水準自体は低水準ですよガハハハハ、で終わらないのがFSRクオリティで、この先辛口モードになる。

『信用コストがここ数年1980年代後半のバブル期をも下回る低水準で推移していた背景には、後述するように、金融機関が業況不芳先を低利で支援してきたことによる面も小さくないと考えられる。』

アチャー。

『こうしたなかで、2018 年度に?って地場企業の破綻やランクダウンが散見されているほか、一部の不動産賃貸業向け融資では、事前審査や仲介業者の管理が不十分であったため破綻や返済が滞る事例がみられている。』

コロンビアの大先生(タカ&トシじゃない方)に所感を伺わないといけませんな。

『海外経済を巡る景気面のダウンサイド・リスクが強まっているなか、これまで低下してきた信用コストが増加に転じるかどうか、注意してみていく必要がある。』

『また、信用リスクの評価に際しては、全体の集計値だけでなく、貸出先の属性とその構成比の変化の影響についても注意する必要がある。以下では、貸出の構成比が近年高まってい るミドルリスク企業向けと海外向けに焦点をあてる(不動産業向けは節を改めて点検する) 。 』

ということで次が『ミドルリスク企業向け貸出 』である。


・分析はその通りだと思うのだが金融機関からしたら梯子外された感は否めないのがねえ

『わが国では、1990 年代後半以降、企業部門が「投資超過」主体から「貯蓄超過」主体へ と変貌するなか、銀行から借入を行っていない「無借金企業」が増加している。そのもとでも、銀行の企業向け貸出はこの数年間において前年比2〜3%台と潜在成長率を上回る伸びで増加を続けている。』

イイハナシダナーと言いたいのですが・・・・・・・・・

『このことは、銀行借入に依存する企業が、レバレッジを引き上げてきていることを示唆する。』

なるほど。

『近年、金融機関はこうした信用リスクの相対的に高い企業(いわゆ る「ミドルリスク企業」など)に対して、低利での貸出を増やしている(図表W-1-5,6)。』

前々回のFSRでも思いっきり言及されていた話です。

『この点に関し、最近の本レポートでは、「財務内容が相対的に悪い企業のうち、景気循環を均してみた信用リスク対比で、金融機関が貸出金利を低めに設定している先」を特定し、これらの企業を「金融機関にとって採算が低い貸出先(低採算先)」と定義している19。企業別・ 金融機関別のミクロデータを用いて点検すると、@低採算先貸出比率は、全体としてなお上昇傾向にあること、A低採算先貸出比率には、金融機関間でかなりのばらつきがあり、足もとでは 30〜40%に達する先もみられること、さらにBここ数年で不動産業の押し上げ寄与が大きくなっていること、が確認できる(図表W-1-7,8,9)。』

しらっとA、Bとかお洒落な指摘があります。まあこの前の分析の時も同じような結果なので、結果自体が何かあたらしくなったという訳ではなくてアップデート版という形になるのですが、まあこれ自体は仰せの通りとは言え、その一方で金融政策やら行政方面から来るものを考えたらこういう動きを促進するような話が飛んでくるのでして、ゆうとることはその通りの分析なのですが、そうおっしゃられてもご無体なという印象はぬぐえない。

ちなみにこの辺の図表はやたら充実していまして、中々味わいのある図になっていると思います。でもってこの先の解説が中々泣ける、さっきちょっと出ていた分析のより具体的な説明という感じです。

『金融機関がこうした先に対し低利での貸出を積極化させていることは、足もとまでの景気拡大を後押ししてきたと考えられるが、業況不芳先を経営課題の解決を図りながら金融面から支援してきたという面もある。』

何という大人の表現。

『もっとも、借入への依存度の高い企業の財務状況をみると、 景気拡大と低金利という良好なマクロ環境のなかにあっても、赤字先の割合が上昇傾向にあるうえ、レバレッジも大きく高まっているため、全体として利払い能力に目立ったた改善はみられていない(図表W-1-10)。業況不芳先の経営改善が進まない場合には、いずれ信用コストにつながっていく。』

こらまた痛烈な。

『実際、日本銀行金融機構局が粒度の高い企業別の財務データを用いて 推計したデフォルト率予測モデルによると、@利払い能力の低下に伴い、デフォルト確率が 非線形に上昇する傾向があること、Aレバレッジが高い企業ではその上昇の度合いが顕著に大きくなること、が確認される20。』

これもまた厳しいご指摘。

『金融機関が貸出を拡大しているミドルリスク企業には、 利払い能力の低い企業も相応に含まれるため、景気悪化や金利上昇など負のショックが発生した場合、信用コストが急激に上昇する可能性がある。』

ということで・・・・・・・

『ミドルリスク企業の多くは、正常先下位に分類されているとみられるが、正常先債権全体の引当率は既往最低水準で推移している(図表W-1-11)21。貸出債権の引当にあたっては、これまで続いてきた良好なマクロ経済環境に過度に引き摺られることは適当ではない。金融機関は、会計原則を踏まえつつ、中長期的な視点から先行きの景気悪化の可能性を十分に勘案してその水準を検討していく必要がある22。また、貸出先の属性とその構成比の変化の影響についても注意する必要がある。』

という話なのですが会計基準ちゃんが難物で勝手にホイホイと引き当てを増やそうとしても中々首を縦に振ってくれないところがありますので、むしろカウンターシクリカルバッファーのようなものをビルトインした方がエエンちゃいますか、とは思うのでありました。


・海外向け信用リスクではしらっとまた有価証券投資の一部がディスられるの巻

ということでミドルリスクの所の説明が中々力入っている(ちなみに本文44ページが図表スペシャルみたいな風情を醸し出しているのですが、ここの図表がこれまた味わいが深いと思う)のですが、海外の所はこれと比較してあっさり味なのに加えてなぜそこでこのネタかという感じである。

『海外向け信用リスク』という本文45ページの所。

『金融機関の海外向けエクスポージャーは拡大を続けているが、これまでのところ信用リスクは低位に抑えられている。』

ほう。

『海外大口与信をみると、投資適格級(BBB以上)が7割以上を占めるなど、全体として質の高いポートフォリオが維持されている(図表W-1-12)。海外クレジット投資についても、緩やかな増加基調が続いているが、これまでのところ、過度なリスクテイクの動きはみられていない(前掲図表V-1-27)。』

『ただし、最近では、海外金融機関 との競争激化や外貨調達コストの高止まりを背景として、一部ではあるが、相対的にリスクの高い先に対する与信を増やす動きや、利鞘確保のためにハイイールド債やCLOなど流動性の低い証券化商品を積み増す動きもみられる。』

何でや有価証券関係ないやろと言いたいですが、「流動性の低い」って話でここに出てくるのは何だかなあという感じでございまして、まあそれは今のCLOって別に上位トランシェ引いている分には信用リスクそんなに大きくないじゃろと言われると答えにくいからということなのかもしれませんが、流動性の低い有価証券投資って別にそれ自体に問題がある訳ではなくて、保有証券の流動性が低いことによるデメリットが直撃するような自分のポートフォリオ全体の中での流動性管理をしていると問題になる話なので、流動性の低い云々というのが信用リスクの所でネタに出てくるのは何だかなあと思う(ハイイールドはグレードの低い先の債券だから話は分かるけど) CLO言いたいだけなんじゃないかと小一時間問い詰めたい。

『U章でみたように、世界的な金融経済を巡る不透明感の高まりや投資家のリスクセンチメントの悪化等を背景に、クレジット市場ではハイイールド債や?部の証券化商品のスプレッドが拡大する場面がみられた(前掲図表U-1-12)。海外向けの投融資については、景気悪化や金利上昇が与信先企業の財務内容やデフォルト率にどのような影響を及ぼすか、これまで以上に注視していく必要がある。』

へいへい。

『この点、米国企業の予想デフォルト確率をみると、投資適格先は低位で安定的に推移しているが、投機的格付け先は、企業業績の改善ペース鈍化や、 既往の金利上昇や株式市場のボラティリティ上昇の影響などから、ひと頃に比べ高めの水準となっている(図表W-1-13)23。』

『わが国の大手金融機関は、銀行本体による海外貸出やクレジット投資、さらには海外子会社による金融業務等の拡大に伴って、海外発のショックから直接・間接の影響を受ける度合いが、世界金融危機前より高まっているとみられる(BOX3 参照)。金融機関は海外向けエクスポージャーの信用リスク管理の実効性を向上させていく必要がある。』

まあだからポートフォリオで分散掛けるんでしょとは思いますが、そういうお話なのでした。

#引用増量大会で恐縮至極






2019/04/23

お題「今度は一転ウゴカンチ会長とな/FSRで民間設備投資の過熱の兆候を指摘とな(FSRその3)」

諦めましたかそうですか。
https://jp.reuters.com/article/trump-fed-cain-idJPKCN1RY1AR
2019年4月23日 / 02:31 /
トランプ氏、ケイン氏のFRB理事指名を断念 「本人の意思」

一方日本では「日銀が国債を買うと政府債務がチャラ」「銀行にとって預金は在庫」などという珍理論を唱える人が中央銀行の政策委員を堂々4年以上勤めているという事実isある。

〇またウゴカンチ会長が帰って来ましたな(という雑メモ)

ロイターさんから。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N22412H
2019年4月22日 / 15:19 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反発で引け、長期金利は-0.035%に低下

『 <15:13> 国債先物は小反発で引け、長期金利は-0.035%に低下

国債先物中心限月6月限は前営業日比3銭高の152円55銭と小反発で取引を終えた。夜間取引で国債先物が上昇した流れを引き継ぎ買いが先行したものの、手掛かり材料難から全体的に動意薄の展開となった。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp低いマイナス0.035%に低下した。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、まあ昨日は先物が上昇してスタートしたものの、現物はカレントの出合いが碌すっぽなくて後場になると更に碌すっぽ無いというウゴカンチ会長相場で、イースター休暇明けのジャパンの月曜だから仕方ないちゃあ仕方ないのでしょうが、後場は日経平均先物とかも碌すっぽ動いてない(確か後場100円幅いってたっけ位の勢いで高安は前場につけていた)ですし、ドル円はまあ最近に始まったことではないですがこれまた動かんし、債券先物ちゃんもウゴカンチ会長で、

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555

2019/04/22 日中取引
始値:152.60(08:45)
高値:152.60(08:45)
安値:152.53(09:35)
終値:152.55(15:02)
前日比: +0.03
売買高: 13,009

とか先週は2万だの3万だのと盛大に出合っていた債券先物ちゃんがすっかりお昼寝モードになってしまいましたの巻となりまして、MPMが無風おぶ無風なのがほぼ予想できるだけに先週の動きは何だったのかという相場になってしまいましたな。

『朝方の円債市場は買いが先行した。ただ、今後の日銀による国債買い入れオペを巡り、買入予定額が減額されることへの警戒感が重しとなり、国債先物は高寄り後は伸び悩んだ。現物市場は閑散。超長期ゾーンでは新発20年債利回りが前日比0.5bp低い0.385%に低下。新発30年債利回りは同1bp低い0.575%に低下した。翌23日に予定されている2年債入札については「海外勢からの一定の需要は見込まれるだろう」(国内証券)との声が聞かれた。新発2年債は出合いがなかった。』

ということでウゴカンチ会長な雰囲気を示すこのコメントという感じです。先週のアレは何だったの。


〇決定会合プレビュー雑談

と言ってもまあ今回の決定会合別に何がある訳でもなく、しかも一部で注目されていたっぽい若田部副総裁の動きですけれども、金曜の超長期輪番減額というのがこれ若田部さんが反対に回らんだろうという妄想を起こさせてくれるものな訳ですな。

いやまあ勿論オペそのものは政策意図とかとは関係なくディレクティブ通りに実施するというものではあるので、オペと政策運営をリンクして話をするのって筋悪おぶ筋悪ではあるのですけれども、何もこんなタイミングで輪番減額するなよ不意打ち闇討ちにも程があるわと市場(のうちマーケットメーカーなどが中心にして)が憤激するようなタイミングでわざわざぶち込んで来る上に、MPMが控えていて若田部さんが反対に回りそうな状況だとしたらこの減額が若田部さんを更に刺激してしまう恐れが思いっきりある訳で、そんな冒険せんじゃろ、とは普通に読んでしまうんですよね。

まあそういう意味から言っても、先週の輪番減額は筋悪のタイミングであまりにも「お家の事情感」が漂いすぎている(もう一つの理由は連休で為替が円高にぶっ飛んだら減額できなくなるってことだと思います)ので、そういう腹を探られるようなタイミングで減額すんなやとは思うのですが、やっちまったもんはしょうがない。

てなことですので今回ちょっと波乱材料の可能性があった若田部さんの反対というのが見えない(個人の感想です)以上、ネタとしては展望レポートなのですが、何せ先般出てきた1−3月期の日銀謹製の需給ギャップがプラス幅を拡大して+2%台に乗ってきているという状況ですので、そんな中で「2%物価目標達成に向けたモメンタム」は弱まるどころか強まっているというアセスメントが導かれて来ますので、見通し期間が延びても2%物価目標が展望できなかろうと何だろうと、「物価上昇のモメンタムは維持されている(キリッ)」と言って現状維持現状維持、という事になる訳ですな。

フォワードガイダンスの強化みたいな可能性がないではないでしょうが、消費増税の話以外になにか先のカレンダーベースに使えるようなイベントも無いですし、「海外経済の不確実性」とか言い出したらそれはかえってガイダンス期間が短くなるから強化するにしたって中々難しいわなと思います。まあ現状ではどこからどう見ても正常化着手観測だの利上げ観測だのが起きないような状況になっておりまして、マイナス金利ケシカランというのが官邸様の方から砲撃されてこない限りにおいて、政策の変更思惑がまるで出ない(米国が変なもん食って急に利上げモードに戻ったら相場は若干水準調整するかも知れないけど政策見通しに変更を加えるものではない)のでガイダンス強化する必要すら無いのですが、そろそろ反対派が五月蠅いのでやったふりで何か入れるとか(見通し期間が延びるこのタイミングで)なくはないけど、どういうガイダンスにするのかがパッと思いつかないですな。


〇ということでちまちまとFSR(その3)

FSR全文
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr190417a.pdf
概要
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr190417b.pdf

ちまちまとやっておりましてもはや虫干しネタの部類に入って参りましたが(大汗)。

・ヒートマップの辺りはメディアにキャッチーなネタを与えるデコイ状態になってしまいましたな

『4.金融循環と金融脆弱性の点検 』というこの章のまとめ部分に飛びます。本文32ページからになりますけれども。

『本節では、1?3節でみた金融仲介活動のもとで、先行きの実体経済に大きな調整をもたらすような金融不均衡が蓄積されていないかについて、点検する。』

ということで始まったヒートマップちゃんなのですが、最近はすっかりメディア受けするデコイ状態になってしまいまして、10月FSRからおっぱじまったGDPatRiskの方がもうちょい面白くなっておりますが、まあデコイはデコイで見学。

『(1)金融活動指標(ヒートマップ) 』

『最初に、ヒートマップを用いて、金融循環上の過熱・停滞感について評価する。ヒートマップとは、各種の金融活動指標に関して、それぞれのトレンドからの乖離度合いを色で識別することにより、1980年代後半のバブル期にみられたような過熱感やバブル崩壊後にみられたような停滞感の有無を点検するものである(図表V-4-1)12。』

はい。


『これをみると、全14指標 のうち、「不動産業向け貸出の対GDP比率」を除く13指標が、過熱でも停滞でもない「緑」 となっている。このことから、金融経済活動全体としてみれば、バブル期にみられたような 行き過ぎた動きには至っていない、と判断される。』

そう来ると思いました。

『一方で個別指標をみると、きわめて緩和的な金融環境が続いているもとで、一部に注意を要する変化がみられる。』

ほほう。

『まず、「不動産業向け貸出の対 GDP比率」は、前回レポート時点で は「緑」だったが、足もとでは 1990 年末以来はじめて、過熱を示す「赤」へと転化した。 金融機関の間では、与信の業種集中などを意識し、不動産業向け貸出の新規実行くは、ここ 1〜2年減少している。しかし、残高については、賃貸業向けなど貸出期間が10年・20年と いった長期のものが中心であることから、本章1 節でみたように銀行貸出全体を上回る高めの伸びが依然続いており、対GDP比率も上昇を続けている(図表V-4-2)。一方、「不動産業実物投資の対GDP比率」や「地価の対GDP比率」は、トレンドからの大幅な上方乖離もみられず「緑」のままであり、不動産市場の過熱感を示す指標に拡がりはみられない(図表V -4-3,4)。』

不動産向けの貸出は指標的に過熱だけど不動産業そのものはさほど過熱ではない、というのはFSR的にはそうかもしれませんが、それって全体の資金需要が乏しいままで銀行借り入れのニーズが乏しいので、不動産業の貸出が突出して伸びてしまったという話っすよねえ他の業種の資金需要ってどうなってるんですかという話でもあって中々悲しいですが、まあそれ以前の問題として地域金融機関の新しいビジネスモデルとしてどこかの誰かさんがスルガ(以下の部分は内務省検閲により削除されました)。

『その他関連する幅広い情報も含めて総合的に勘案すると、わが国の不動産市場全体が、バブル期のような、過度に楽観的な成長期待に基づく過熱状態にあるとは考えにくい(図 表V-4-5、BOX2参照)。』

ほーん。

『もっとも、近年の不動産業向け貸出の増加は、バブル期とは異なり、REITや不動産ファンド、個人による貸家業といった賃貸収入目的中長期投資向けが中心となっている点に特徴がある。人口や企業数の減少、潜在成長力の低下といった要素も、不動産を巡るファンダメンタルズにバブル期とは異なる影響を及ぼしていると考えられる。こうしたなかで、不動産 業向け貸出残高がバブル期を大きく上回ってきていることについては、バブル期類似の過熱感を示すヒートマップのような指標には必ずしも表れない不均衡が蓄積されている可能性も含め、幅広い観点から注視していく必要がある(W章参照)。 』

ふーんという感じですが、この辺のBOXとか後の方の話とかは追々。



・民間設備投資に過熱の兆候とな

さらに続く。

『また、足もと「緑」となっている指標のなかにも、その動きを仔細にみると、「赤」に近接しているものが幾つかみられる。例えば、「金融機関の貸出態度判断 DI」は、低金利環境の 長期化や金融機関間の競争激化を背景に、引き続きバブル期以来の高水準で推移している(図 表V-4-6)。』

『こうしたきわめて緩和的な資金調達環境を背景に、「総与信・GDP比率」はトレ ンドから乖離して着実に上昇している(図表V-4-7)。また、「企業向け与信の対GDP比率」 と「企業設備投資の対GDP比率」も、それぞれ上限の閾値に近づいている(図表V-4-8,9)。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・

『この背景には、ミドルリスク企業を中心とする、設備投資向け銀行貸出の増加等があるとみられ、不動産業向け貸出と同様、バブル期と現在の各指標のファンダメンタルズの違いも踏まえつつ、幅広い観点から注視していく必要がある(W章参照)。 』

とのことですが、「設備投資が伸びてきているので今の緩和政策は大勝利に向かっている」というような趣旨のお話がマネタリーポリシーウィング方面からは毎度のように飛んできていて、だいたい最近の展望レポートだと家計消費と民間設備投資が堅調なのを先行きの経済が回っていくメカニズムの中に組み込んで評価しているという中で「実は民間設備投資に過熱感が」とか言われると中々お洒落なんですけれどもこれはどういう事ぞという感じではあります。

『以上みたとおり、金融機関が貸出に注力し、積極的なリスクテイクを図っている分野において、ヒートマップの指標が過熱あるいは過熱に近い水準を示している。こうした積極的な 金融仲介活動は、景気の緩やかな拡大を支えている。』

ということですが過熱に近い民間設備投資をもってしてもこの程度の拡大しかしないし物価は上がらないし、という辺りに悲しみを感じますな。

『一方、それがやや長い目でみたわが国企業部門の成長力・収益力向上につながらない場合には、経済に負のショックが発生した際 の下押し圧力が、金融面との相乗作用を通じて、予想以上に強まる可能性がある。』

この後の方でミドルリスク先の貸出がどうのこうのというのがあって(今日はパス)そこの分析と相まってここの記述を見ますと、これは「金融緩和環境で貸出競争が起きる中で非効率、不採算な設備向けの投資が行われている恐れがあって、それが増えるというのは目先だけは良いけど不稼働資産の増加による経済のスラック拡大、潜在成長力の低下につながるへっぽこ事案になりますなあ」というのをオブラートにくるんで説明しているということですな、味わいがある。

『先行きに ついても、過熱方向の動きの強まりや過熱感を示す指標の拡がりがみられないか、注意深く確認していく必要がある。』

と言って今の政策委員会の面々だと(一部ちゃんとした委員は除くと)民間設備投資が過熱になったからと言って貸出増加支援オペを止める訳でもなく、どうせ何もしないんでしょうけれども・・・・・・・・・・・・・

#ということで本日もチマチマとみていく攻撃で少なくてすいません




2019/04/22

お題「輪番減額不意打ち攻撃/FSRその2ですが本日はメモ程度で勘弁」

最近は観光地としても人気化していた(世界遺産がやたらある)と思っていたのですが。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190422/k10011891801000.html
スリランカ 同時爆発は自爆テロ 日本人も巻き込まれたか
2019年4月22日 5時12分

〇輪番減額とはこれはまた・・・・・・・・・

ええ確かにアタクシ金曜日には「ああ20年0.40%は一瞬で戻されてまーた戻りやがりましたね」と申し上げましたが、申し上げた途端に超長期輪番減額って先週は久々に市場雑談メモを書いたと思ったら毎日がフラグ建築ショーってまあそれはそれで良いんですけど(恥ずかしいだけ)ここまで自分でフラグ立てまくると何か変な事が起きるんじゃないかと心配になるわ(とりあえず宝くじは買ってみた^^)。

ということで昨日はご案内の通り・・・・・・・・・

・超長期輪番不意打ち減額で超長期の後ろがあばばばばー

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190419.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,500 2019年4月22日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,000 2019年4月22日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,600 2019年4月22日
国債買入(残存期間25年超) 400 2019年4月22日

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

ちょwwwwwwおまwwwwwwwww超長期の輪番減らすのは良いんだが不意打ちすんなよ不意打ち、ということで金曜の債券市場ちゃんは、と言いつつ手抜きでロイターちゃんを引用しちゃうのですが、

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2210Y8
2019年4月19日 / 15:51
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反落で引け、長期金利は一時-0.025%に上昇

『15:35> 国債先物は小反落で引け、長期金利は一時-0.025%に上昇

国債先物中心限月6月限は前営業日比2銭安の152円52銭と小反落で取引を終えた。米債高を引き継ぎ買いが先行したが、日銀による国債買い入れの減額を受けて売り圧力が強まった。その後は押し目買いが入り、持ち直した。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時、同0.5bp高いマイナス0.025%に上昇した。』(上記URL先より、以下同様)

という訳で輪番減額ですがこれはさすがに不意打ちにも程がありまして、3月末のところか4月の頭(超長期輪番は12日に4月1発目があった)にやらなかったし、まさか今週末の予定表の所で減額示唆も無いだろうし、減額するなら連休後じゃろと正直アタクシも思っておりましたし、まあ最近は残り減額余地もすくないこともあって、輪番当てっこクイズみたいな何とかストコメントも減ってきて朝のベンダーニュースが読みやすいわとか思っていたらこれですよこれ。

『日銀は午前、中期・超長期ゾーン対象の国債買い入れを通告した。中期の買入予定額は据え置きとなった一方で、超長期は減額された。需給が緩むとの見方から国債先物は前場の引けにかけて売り圧力が強まり、一時152円44銭まで下落した。「このタイミングでの減額は意外」(国内証券)との声も聞かれた。』

との声も、じゃなくて普通に考えてここは不意打ちというか闇討ちにも程がある。

『超長期を対象としたオペ結果は弱めと受け止められたが、後場の売り圧力は限定的だった。「ショートカバーや連休前の持ち高調整の動きが出た」(国内証券)との指摘もあった。新発20年債利回りは一時、前日比1.5bp高い0.395%に上昇。その後0.385%に戻した。新発40年債利回りは同4bp高い0.620%に上昇した。』

ということで20年は0.40%にかすりもしなかった(先物は2銭安ですし)のですけれども、売買参考統計値ベースで見れば30年カレントが0.583%(平均値単利)ですからたぶん3甘レベルで40年カレントが0.620%(同)ですからたぶん4甘レベルとか、30年40年は木曜に戻した以上に金利上がってるじゃんという風情になっていて、例によって例のごとく長い所は買いが止まりだすと様子見地蔵だし20年は押し目っぽいものが出ると買いが来るという超長期と言いましても20年とそれ以降の参加者層の違いというのを見せつける展開になりました。まあ減額が超長期後半の場合500→400というのが2割減と割合で言うとあちゃーという額だというのもあるでしょうけれども。

てまあそういう次第で不意打ちにも程があったのですが、別に株価や為替が(為替はちょっと反応していたようないなかったようなという図はありましたが)反応したわけでもないですし、金利上がったっていったって先物は2銭安だし10年は引け変わらず(売参だと前日比変わらずの単利▲0.030%)だしというウゴカンチ会長だったわけでして、金利が上がったの超長期の後ろの方だけですから日銀的に見たら大勝利にも程があるという結果になっているのが実にケシカラン(ケシカラン訳ではないが)というか何というか。

・年間長期国債増額が17兆円ペースレベルまで下がるとな&新発とのバランス

でもって輪番減額ですけれども今回は1回300億円なので月1200億円、年間1兆4400億円ということになりますが、例によって計算している毎度の買入について試算してみますが、めんどいので3月末の残高で計算した奴のアップデート版で勘弁してもらいますと、今年の残高増加見込みが額面ベースで17兆6,005億円、来年の残高増加見込みが額面ベースで17兆8,180億円、ということになって、年間の長期国債増額が17兆円ペースになりましたですな。

でですな、アタクシの計算雑なので流動性供給入札を差っ引いているという時点でアバウトにも程があるのですがそこは勘弁頂くとして、除く流動性供給入札で新発出てくる分とのバランスというのを試算すると(雑な試算なのは勘弁)、今回の減額で20年の発行対比での買入は71%でこれまで8割だった所から減ったなあという感じですし、まあ超長期の後ろに関しては30年40年の発行対比でもともと少ないのですけれども18%とかになっておりますな。

さてこのあとですけれども、たぶん残り減額するとしたら年間2兆そこそこ位しか減額できないと思うので(根拠はあまりないけどオーバーシュート型コミットメントをしているのに年間1桁兆円しか残高増えなかったらアカンヤロとさすがに思うのですけれども、そこは平然と減らすかもしれないというのはあったりする)、中期1回(減らすなら3年5年)減らしたら打ち止めになりそうですし(年間5兆も増えればヘーキヘーキとかいうならもっとガッツリ減らせるのでそこは決め打ちしまくるのも良くないかもしれないけど)、もしかしたら主要年限の買入を4回→3回とかに減らして、その中で適宜調整してしらっと満遍なく減らしてくるというのも有りかも知れませんな。

まあ本来的に言えば相変わらず発行のほぼ9割買っている5年10年の所を減らせやとは思いますが。


・連休明けに減額できないリスクと・・・・・・・・・・・・・・

しかしまあ何ですな、債券市場からしたら減らすなら月初に減らせよとは思うところで、12日に減らしても超長期流動性供給入札の翌日だからアチャーではあるのですが、今週は20年と流動性(5-15.5)があった後になるので、12日減額ならその減額を前提に20年入札が入ったから事前先回り買いで入札前に強くなったのは良いけど他年限に売りが出て結局ただの高値入札になるわ翌日から超長期コケるわというようなことにならんで済んだんジャマイカとかいう話になる(済んだかどうかは知らんけど)訳でして、超長期絡みの入札全部終わったところで減額しかも今月の場合は大型連休を控えて変なところで動かんじゃろと思っているところなのでこれはマーケットメーカータマランチ会長な訳でして、何でこんな畜生なタイミングで輪番減額しますねんという風情な訳ですけれども、そんなことは知らんがなという発想のもとに考えてみますと、まあこんな感じになるんですかね、と思うのを以下個人の感想ですという奴で。

えーっとですな、まあ大型連休があるじゃないですか、でもってその間ってFOMCがあったりするんですけれども、まあ10連休も入っていると(普段のGWでも時々起こるのに)為替市場が東京市場無抵抗状態の中で勝手に動かされるの巻って起きて、うっかり円高にでもなってしまいますと輪番減額ができなくなってしまうじゃないですか、ということでそれを気にした上に、足元中国様の経済指標が良くて、米国もまあ良かったりよくなかったりとミックスだけどこの前の米国FOMC以降の利下げ観測ヒャッハーみたいなのが一服しててドル円が112円とかで良い感じですけど、FOMC声明文次第ではまーたヒャッハーになっちゃうかも知れないじゃないですか、とか考えて「今でしょ」とばかりに減額したというのが一つ。

でもってアタクシも今月は途中から申し上げていましたが、展望レポート付きMPMが翌週(今週な)に控えているというタイミングの中で、輪番減額とかしたらリフレコンビを刺激するようなもんで、別に提案芸人の片岡さんとか預金は在庫とかアレ枠のジンバブエ先生とかが多少暴れても無問題という所ではあるのでしょうが、今のところ床の間のガラスケースの中に納まっている博多人形という風情の某副総裁様が突如ガラスケース破って暴れだしたりすると話がややこしいことになる訳で、MPM前にそんな刺激を与えることないじゃんというリスクマネジメント(何のリスクだ)の観点からしても、MPMの直前に(ってMPM初日にもう1回超長期輪番あるけど、それこそ次回だとMPM初日ですからねえ)輪番減額とかいう人形が覚醒するかもしれないネタを打ち込むことはないでしょという観点も(アタクシが勝手に思っているだけですが)あったので、ここで減額したということは・・・・・・・・・・・・・

とまあ徹頭徹尾円債村の事情を無視すればそんな辺りが減額の読み筋として考えられるのですが、はてさてどうでしょうかねえ(個人の感想です)。


・しかし不意打ちするとまーた市場トークのネタになるんですがががが

まあ何ですな、今回の不意打ちキタコレによりましてまーた円債村の井戸端会議のネタで輪番の減額はどうのこうのというのが延々と(他にネタも無いので)行われることになって、輪番の回数がどさくさに紛れてだいぶ減ったから毎日みたいなことも無くなってそれは結構なのですが、輪番オペの度にレポートやベンダーで輪番話が出てきてしまうということで、まあ確かに日々のMtoM的に物凄く切実な問題なのは分かるのですが、相場の方向性とかの話からしたらうーんそこまで話題沸騰させないと行けないのか、と考えた場合にはもにょってしまうネタでもあるのでして、何でそう目立とうとするかね(目立とうと思っている訳ではないと思うが)というのはありまして、いやまあ減額は出来るもんならやって欲しいというのはありますけど、不意打ちはどうなのかねえとは思うのでありました。不意打ちして市場が動いたのを見て「市場機能が高まった」とか言い出すことはないと思いますが、それ言い出したらちょっとおじちゃんぶち切れる用意はしております。


〇FSRの続きであるが諸般の事情で準備不足なので簡単に(その2)

FSR全文
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr190417a.pdf
概要
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr190417b.pdf

準備不足というのは土日があったのに夜なべ仕事をしていなかったという事情ですけれども(大汗)。


・有価証券投資に関するお話なのですが投信の話が微妙に微妙

本文28ページになるのですが、『2.機関投資家による金融仲介活動 』の『(2)証券投資信託 』という辺りから。

『投資信託では、株価下落の影響から時価ベースの資産残高は概ね横ばいとなっているが、 私募投信への資金流入は続いている(図表V-2-7)。また、投資信託の保有者別残高をみると、 銀行の保有増加が目立っている(図表V-2-8)。詳しくはW章、X章で述べるが、近年の金融機関は、高い利回りなどを求めて、多様なリスクファクターを内包する投資信託へのエクス ポージャーを拡大させている。』

ということでまあ本命はもうちょっと先にあるんですけどね。

『私募投信の資産規模は、公募投信に近づきつつある。私募投信は、販売先が銀行、生命保険会社等の機関投資家にほぼ限定されており、投資家ニーズに合わせて商品を設計できるほか、公募投信と比較して販売等にかかるコストが低い、といった特徴を持っている。』

はい。

『私募投信の運用会社は、外資系を含め各社のシェアが分散している。投資対象資産は、海外のソブリン債ラダーファンドや投資適格社債が中心である10。最近では、ドルのヘッジコスト上昇 を受けて、米国債から欧州債へのシフトもみられている。』

はいはい。

『また、全体に占める割合は限定的であるが、高格付けながら海外金利変動に関するリスク特性がやや複雑なカバードボンド、 また、リスクが相対的に高い非投資適格社債やヘッジファンド型といった資産への投資も含まれている11。』

とあるんですが、たぶん「海外金利変動に関するリスク特性がやや複雑なカバードボンド」って言ってるのは北欧あたりで出ている住宅ローン債権裏付けのカバードボンドの話だと思うのですが、それってMBS辺りに投資しているのと金利特性的には話は同じな物件で、そこの金利リスク云々とかを殊更に挙げるのって何だかなあと思いますし、「リスクが相対的に高い非投資適格社債やヘッジファンド型といった資産」とか言いましても別に1点張りしている訳でもなくて分散掛けてるでしょうし、そこはリスクリターンとの関係なんだから「リスクが相対的に高い」からアカンかのような取り上げ方をするというセンスが良く分からんし、大体からして円資産でのリターン叩き潰したのお前らの政策だろと小一時間問い詰めたいし、その前の方ではGPIFさんの投資に関して、

『オルタナティブ投資(インフラストラクチャー、プライベート・エクイティ、不動産など)については、資産全体の 5%を上限とする設定のもとで、残高が緩やかに増加している。』(こちらは本文28ページの今引用したちょっと上にある)

って別にリスクがどうのこうのとかいう枕詞を入れずにごく普通に書いている訳で、何で金融機関の保有す投資信託だと「リスクがどうのこうの」とか入れるのかと小一時間問い詰めたいんですが、おまいらそんなに金融機関の投資信託保有が気に入らないんだったら物価目標今すぐ達成して国内の金利上げてスプレッド叩き潰し政策止めてみろやとしか申し上げようがない(なおそうなっても投資信託のニーズはあるでしょうけど)。

・・・・・・と血圧を良い感じで上昇させたところですが、時間の関係とお家の事情により本日はこのメモだけでご勘弁ということで(汗)。








2019/04/19

お題「消費増税見送りアドバルーンとな/FSRをつらつら鑑賞の巻(その1)」

お、おぅ・・・・・・・・・
https://www.asahi.com/articles/ASM4K52PBM4KUTIL02S.html
福島廃炉に外国人労働者 東電「特定技能」受け入れへ
有料会員限定記事
青木美希 2019年4月18日05時00分

・・・・・・・・・・orz

〇消費増税見送り発言キタコレも市場ちゃんは無反応

ご案内のニュースですが。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190418/k10011888211000.html
自民 萩生田氏 日銀短観の内容次第で消費税延期も
2019年4月18日 15時45分

『萩生田幹事長代行は、インターネット番組で、消費税率の10%への引き上げについて、「景気がちょっと落ちている。ここまで景気回復してきたのに、万一腰折れしたら、何のための増税かということになる」と述べました。』(上記URL先より)

ということで昨日の大体お昼休み時間位だったと思いますが、安部ちゃんの腰ぎ・・いや何でもないですの萩生田幹事長代行様からのご発言ということでヘッドラインが来ましたが、別に株も為替も債券も反応しなかった(反応のしようが無いと言ってしまえばそれまでですが・・・・・)のですが、寧ろメディアの方が大反応という感じになっていますな(そら萩生田さんが言うんだからというのはあると思う)。

でもって午後の官房長官会見でガースー先生が否定していましたが、そもそも何で消費増税やるねんと思う所ですので消費増税延期をありがたがる気も起きないのですけれども(ぶち上げたのを引っ込めたからありがたがるとかまるでDVじゃんとかいうと問題発言ですかそうですか)、延期するなら色々と準備だって進んでいるんだからはよせえやと思いますし、大体からして今の流れで行くと次の短観って多分業況判断は持ち直し方向になるんジャマイカという気もします(個人の感想です)ので、そもそもが見送り判断する理由も出てこないんじゃないですかとも思います。だから出すなら連休明け位に出せよとか思いますけど(それにしたって遅い)、きっと7月頭に出すというのは参議院選(爆発音の為以下聴取不能)。

まー別にそれが出たから突如債券暴落というような話は単品では起きないでしょうけれども(個人の感想です)7月とかそんなギリギリの時期に急にやっぱ無しとかやりだすと色々なフリクションが生じてその中から瓢箪から駒みたいな変なことが起きまして、そっちからナンジャソラ的な展開になりますとかそっちの方が気になりますな。

とか何とか言ってますが、単に「安倍ちゃんは本当は増税反対なんだけれども財務省ガー」のアリバイ作りだけではないかという気もせんでもないですし、大体からして2か月先の話をそう思い悩んでる場合でもないので、とりあえず無反応の巻という感じなのでしょうかね。


〇またフラグを建築してしまったようだが(市場雑メモ)

昨日の債券市場ちゃん
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2201MM
2019年4月18日 / 15:19
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は6日ぶり反発で引け、長期金利は-0.030%に低下

『 <15:14> 国債先物は6日ぶり反発で引け、長期金利は-0.030%に低下

国債先物中心限月6月限は前営業日比17銭高の152円54銭で取引を終え、6日ぶりに反発した。前日の米債高が支援材料となったほか、流動性供給入札がしっかりの結果となったことで上げ幅を拡大した。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.5bp低いマイナス0.030%に低下した。』(上記URL先より、以下同様)

前日の米債高ってそんないう程上がったかという感じですが、何か知らんけど朝っぱらから先物は9銭上がって始まって、前日のヘロヘロ相場は何だったのかと申し上げたくなる堅調攻撃でして、まあ確かに3日連続で先物15銭くらい下がる相場だから気持ち悪かったというのは分かるのですが、相場止まったと思ったら今度はサックリ戻るとか何だかなーという感じでしたが、後場は流動性供給入札をネタにしたのか株が(前日も謎に強かったですが)謎に弱かったのが影響したのか知らんですけど、しれっと強いですぞという感じになっておりましたな。しかしまあ流動性供給は火曜の20年には及ばないけど5−15.5年のデルタ供給月内最終便で、20年入札強かったんですからそっちも強かろうとは思うのですがまあいいです。

ということで20年新発債0.400%の押し目とかいうのは水曜の引けから引け後にかけての蜃気楼に終わってしまいまして、ここで本格的な押し目買いが入るかどうかの確認(キリッ)とかそもそも昨日はかすりもしなかったという事で誠に恐縮至極としか申し上げようがないですし、そもそも論として新発債ってこの前までのカレントから償還延びてて一応その分レート乗ってるので、20年0.40%って言ったって実は今週頭までの20年0.39%なんですがという話も大いにあるのですが、いずれにせよ蜃気楼の付値で終わってしまいましたなナムナムという風情でございます。


〇FSRを何となく鑑賞(一応その1)

FSR全文
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr190417a.pdf
概要
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr190417b.pdf

全文の方から(というか概要はパワーポイント紙芝居なので引用しにくい)以下引用して参ります。昨日申し上げましたようにジャパン版のMS標準仕様だと外字になってしまう漢字が続出しておりまして(しかも「金」とか「行」とか「一」とか割とクリティカルな漢字ェ・・・・・・)、人力で外字の部分は直して回っているのですが、そんな事情ですので一部引用へくっているかもしれませんがそこは平にご容赦の程を、と申しますか図表とか見ながらの方が良いので、全文で図表の方をご確認ありたしということで。


まあ素直に最初の方から読んでいきます、といっても相当飛ばしまくりでとりあえずヘロヘロと読んでいて引っ掛かったところをば、という感じです(いずれまた戻ってネタにするかもです)。

・海外クレジットのリスクを無駄にフレームアップしている気がするんだが

『U.金融市場から観察されるリスク』の『1.国際金融市場』になるのですが、そこにありますところの『米欧のクレジット市場を巡るリスク』 というのでまず引っ掛かったので、本文7ページ(PDFファイルの11ページ目になります、以下同様に本文ページ+4がPDFのページになります)から参ります。

『米欧のクレジット市場では、昨年 10 月以降、投資家のリスクセンチメントが大きく悪化するなかで、信用スプレッドが大幅に拡大する場面がみられた(図表U-1-12)。投機的格付け企業向けの貸付であるレバレッジドローン1(以下、レバローン)市場では、スプレッドが大幅に拡大(流通価格が下落)する場面がみられた。エネルギーセクターのウェイトが大きい投機的格付け社債(ハイイールド債)では、原油価格の下落も、スプレッドの拡大に作用した。さらに欧州では、英国の EU 離脱交渉などの政治的不確実性や、弱めの経済指標も 材料視された。』

でもって「レバローン」については脚注で

『1 厳密な定義はないが、一般に、BB格以下の投機的格付け企業に対するローンを指す。』

とまあそういう説明で以下投資適格以下の先に対するローンに関してレバローンを連発するんですが、レバローン言いましても別にローン出す方がレバレッジ掛けているという話ではなくて(まあそういう建付けに作り上げたミューチュアルファンドみたいなのもあるようですけど)、ローン自体は単に企業向け担保付きローンじゃろというところでして、このレバローン連呼がどうも。

借入先企業がローンによって財務レバレッジ掛けてるからなのかねとは思いますが、実質無借金企業でも無い限りローンで財務レバレッジ掛かるの当たり前だろとも思いますので、何でそういうネーミングになるのかなあと無知な素人なのでおじちゃんよくわからないんですけど(って頓珍漢な話してたらご指摘頂けるとありがたいのですが伏してお願いします)まあそれは兎も角。

『足もとにかけて、クレジット市場が落ち着きを取り戻しつつあることもあり、この間のスプレッド拡大について、一時的な調整(過去のタイト化の反動)とみる向きは少なくない。 もっとも、これまで海外クレジット市場では、旺盛な投資家需要を背景に資金調達サイドに 有利な環境が形成されていたことから、低格付け企業を中心に、債務残高の増加やクレジットの質の低下などが進んできた可能性には留意する必要がある2。』

そうですか。

『とりわけ、米国のレバローンについては、これまでハイイールド債を上回るペースで市場残高が急速に拡大してきた(図 表U-1-13)。また、この過程において、レバローンの対象となるBB格以下の投機的格付け企業のレバレッジは上昇傾向にあるほか、レバローンを活用した企業買収においても、レバレッジの高い案件が増加している(図表U-1-14)。さらに、レバローンのうち、いわゆる 「コベナントライト・ローン」や、デフォルト発生時の弁済順位が低いローンが増加しており、デフォルト時のローン保有者の回収率が過去対比で低くなる可能性も指摘されている3。』

担保条件が緩くなっているのとかは注意しないいけませんですねとは思いますが、ハイイールド債って無担保だしローンの方は担保付なんでそこのところを一緒くたにするのも何だかな感があるのですが、とりあえずこの辺を目の敵にしたいというのは把握した。

『加えて、米国クレジット市場における投資信託等のファンドのプレゼンス拡大が、レバローンなどの価格変動を増幅する可能性にも注意する必要がある(図表U-1-15)。』

ほほう。

『これらの ファンドは、比較的流動性の低い社債やローン等に投資する一方、投資家に対しては短期間での換金を保証するケースもある。このため、何らかのショックを契機に、投資家による解約が一時的に増加した場合には、ファンドによる社債やローンの売り圧力が高まり、それが価格下落や一段の解約を招くリスクも考えられる。』

『実際、昨年 12 月には、投資家のリスクセンチメント悪化を背景に、レバローンを保有するバンクローン・ファンドから大規模な資金流出が生じたことが、米国におけるレバローン価格の下落に拍車をかけたとみられている (図表U-1-16)。』

持ち切ればよかですたいという話ではあるのですが、急に何らかのお家の事情が発生して流動性の低いものの資産価格が流動性が無いのでフェアバリューもへったくれもなくあばばばばーというのは毎度の光景なんですが、しかしまあミューチュアルファンドで流動性の低いものにぶっこみに行く時にはそのあたりは持ち切っておけよとか思いますし、前のサブプライムでの時から比較したらファンドの流動性管理とかの所もだいぶ改善されている筈なのですけれどもどうなんでしょうかねえ、とは思うし、寧ろ「なんか下がっているんだが大丈夫か」の鶴の一声現象の方がリスクだわとか思ってしまいますな。

『以上を踏まえると、先行き、経済・金融環境が変化し、企業のデフォルトが増加する場合などには、クレジット市場で大幅な価格変動が生じるリスクがある。』

流動性管理できないアホウが流動性の低い市場に過剰に突っ込んでいくのはリスクだと思います。


・さすがにこれはトサカに来た

同じ章の『2.国内金融市場 』に参りますが、本文11ページに『国債市場の流動性・機能度』というそんな餌に俺様がクマーな小見出しがありまして、もうこの一言目からブチ切れですよ。

『国債市場の流動性や機能度は、幾分改善している。』

・・・・・・・・・・・???????

『「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」が導入された昨年7月末以降、ボラティリティがやや高めに推移するなか、現物国債のディーラー間取引高は、水準を幾分切り上げた状態が続いている(図表U-2-4)。こうしたもとで、直近(2月調査)の債券市場サーベイをみると、国債市場の機能度に対する評価は依然として大幅なマイナスで推移しているとはいえ、一頃に比べマイナス幅は幾分縮小している(図表U-2-5)。』

という図表U-2-5というのがあるのですが(貼れないからみてくらはい)悪化したあとその辺りで底ばっているだけだろこんなのということで、何で素直に「国債市場の流動性や機能度は低い状態が続いている」と認めないのかという辺りに大本営発表精神が宿っていて実に嘆かわしい。

まあ市場の所に関しては大本営発表モードの部分があるのはいつもの事だと言ってしまえばそれまでなのですが、FMRって無くなっちゃった(確か形の上ではこのFSRに吸収されてしまったのと実質調節年報に吸収されてしまった感じですな)んですよねー。


・地域金融機関の貸出に関して

さて気を取り直して次の章、『V.金融仲介活動の点検』に参りますが、 『1.金融機関による金融仲介活動 』『(1)国内貸出』の中の『地域金融機関の貸出動向』という本文17ページからの所を鑑賞。

『国内貸出全体の増加を牽引している地域銀行の貸出について、エリア別にみると、地方店貸出が引き続き増加の主因となっている(図表V-1-9)。ただし、都内店貸出も、このところ 再び伸びを幾分高めている。』

なるほど。

『地域銀行の貸出を債務者区分別にみると、近年、正常先下位の伸び率拡大が目立っている (図表V-1-10)。これは、中小企業のなかでも、信用力が相対的に低いミドルリスク企業向 けに貸出を増やしていることなどが背景にある。』

寧ろそういう先じゃないと資金需要が無いんちゃうのかという気もしますが・・・・・・・・・

『また、中小企業向け貸出を業種別にみると、 幅広い業種で貸出が増加している(図表V-1-11)。不動産業の寄与が引き続き大きいが、電 気・ガス業、運輸・郵便業、製造業、医療・福祉業など多くの業種で貸出が伸びている。最 の地域銀行は、貸家市場の調整リスクや与信の業種集中などを意識し、不動産賃貸業向け貸出を総じて慎重化させているため、中小企業向け貸出全体の伸び率もやや鈍化している。』

ほー。

『一方、大企業向け貸出は、採算性重視の姿勢からひと頃消極化していたが、足もとでは余資運用の一環として貸出の復元を図る動きもみられており、上述したように都内店貸出の伸び率が再び幾分拡大する一因となっている。こうしたなか、地域銀行のシンジケート・ローン残高も増加している(図表V-1-12)。最近は、手数料収入の見込める自行アレンジ分の増加が目立つ点が特徴である。』

儲かるならシ・ローンにしない(大口融資規制に引っ掛からないならば)と思うのですが、この辺はアタクシ勉強不足でよーワカランチ会長なのでほっほーと言いながら読むのでした。


・有価証券運用部分に味わいの深い記述があります

更に進んで本文23ページの『(3)有価証券投資』に参ります。

『 金融機関の円債投資残高は、日本銀行による大量の国債買入れのもと、引き続き緩やかな減少傾向にある。外債投資残高は、これまで減少傾向をたどってきたが、足もとでは先行きの金利上昇への警戒感が薄れるもとで幾分増加している。』

ここでは穏当な表現になっていますがこの後の方に味わい深い記述があります。

『この間、投資信託の運用残高や海外のクレジット商品の投資残高は、増加傾向が続いている。一部には「ベア型」の投資信託 を積み増す動きもみられるが、総じてみれば、引き続き有価証券投資において積極的にリスクテイクを行う姿勢が維持されている。』

ほうほう。

『金融機関の円債残高(国債、地方債、社債等)を業態別にみると、地域銀行では引き続き緩やかな減少が続いているほか、大手行でも足もと幾分減少した(図表V-1-23)。資金利益の確保や、日銀当座預金の積み上がり抑制、担保需要等の観点から一定の円債保有残高は必要としつつも、一部で金利低下を受けた益出し売却の動きがみられた。』

なるほど。

『金融機関の外債残高(円換算ベース)を業態別にみると、大手行では足もと増加する一方、 地域銀行では減少した(図表V-1-24)。』

ここからの表現に極めて味わいの深い侘び寂びを感じる表現があります。

『米国金利が先行きの金融政策を巡る思惑等から上下 に大きく変動するなか、含み損の解消のために債券を売却する動きと、先行きの金利上昇への警戒感が薄れるもとで購入を再開する動きが交錯した。』

・・・・・・・・いやー実に味わいの深い表現ですねえ。そして次の所も狙っているのか期せずしてなのか知らんですけど別の味わいが。

『この間、信用金庫は、収益確保を企図し、金額は小さいながらも、円建て中心に着実に残高を伸ばしている。』

着実にやっているところは着実にやっていますが、味わいのあるプレイをしたところはまた別、というこの比較にも枯淡な味わいを感じてしまいますな。

『金融機関の投資信託等の残高は、引き続き増加している(図表V-1-25)。業態別にみると、 大手行では、引き続き株式投資信託に関して厚めの残高を維持しつつも、債券や政策保有株式(企業との取引関係を重視して保有する株式)等の評価損益を管理するための「ベア型」 の投資信託を積み増す先がみられ、足もとの残高増加のかなりの部分を「ベア型」が占めているとみられる。』

ほうほう。株だけじゃなくて債券もですかそうですか。

『地域金融機関では、内外金利や社債、REIT、海外株式といった幅広いリスク性資産を裏付資産とするものや、それらを含むマルチアセット型の投資信託等を積み上げる動きが続いている。』

でまあこの辺に関するリスクアセスメントの話とかは後の方の章で出てくるのですが、本日は時間と(夜なべのできた)量の関係でこの辺で勘弁ということで。







2019/04/18

お題「FSR来ました(要旨をフワッとみる予告編で勘弁)/20年0.4%でさてどうなる(という雑メモ)」

春闘????
https://www.asahi.com/articles/DA3S13980723.html
港湾、長引く春闘 GW中もストの可能性
有料記事
2019年4月17日05時00分

こちらの労組のページを見たら(リンクはしないので各自探してちょ)産別最低賃金引き上げが主な争点なのでいわゆる春の定例の賃金交渉を想起させる春闘という見出しはミスリードだと思うんですけど朝日でも所詮その程度の認識なんでしょうなあ。


〇20年0.4%キタコレ(というメモだけ)

と言っても売買参考統計値だと0.395%のようですけど・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N21Z1NN
2019年4月17日 / 15:32 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、3カ月ぶり安値 長期金利-0.015%に上昇

『<15:17> 国債先物は続落で引け、3カ月ぶり安値 長期金利-0.015%に上昇

国債先物中心限月6月限は前営業日比13銭安の152円37銭で続落、安値引けした。中心限月ベースで1月9日以来の低水準。好調な中国経済指標が相次いだほか、長期対象の日銀の国債買い入れ結果がやや弱めと受け止められたことが重しとなった。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1bp高いマイナス0.015%に上昇。3月7日以来、1カ月ぶりの水準で推移した。』(上記URL先より、以下同様)

ということで昨日超長期入札が高値入札になって超長期は強いけどみたいなメモを置いて居た訳ですが、毎度のフラグ建築士になったようで昨日は朝っぱらから20年が弱めで始まってフラグ建築ぶりに全俺が泣いたのですががががが。

『中国の1─3月期国内総生産(GDP)は前年比プラス6.4%、3月鉱工業生産は同プラス8.5%となり、市場予想を上回った。日銀が通告した3本の国債買い入れオペのうち、「残存5年超10年以下」は案分利回り格差が実勢を上回り、売り需要の高まりを示す結果となった。後場に入ると、現物市場では超長期ゾーン主導で売られ、イールドカーブはベア・スティープ化した。新発20年債利回りは前日比2.5bp高い0.400%。新発40年債利回りは同4bp高い0.595%に上昇した。』

てな訳で、昼に出た中国の指数が全般強め(小売もやや強かったと思う)で出てきて市場が反応ということで、ジャパンの経済指標に反応しないで中国様の経済指標に反応する円債市場ェ・・・・・・・・(まあ中国の経済指標が強い→米国の利下げ懸念後退の方が影響デカいから仕方ないけど)という風情で中々アレでございましたが、昨日も20年2甘位まで来たところでサクッと一回戻っていたりして、まあ押し目買いちゃんは入っているんでしょうが(0.4%カツカツの水準を押し目というのか、というツッコミはさておきまして)、押し目入って反発したところに被せるように頭叩かれるとかほうほうそうですかってなもんですが、まあ売参0.395%ってところでお察し案件という感じですかねえ、知らんけど。

ということですがこれがまた惜しいことに米国金利がアガランチ会長(と言ってもまあ10年ほぼ横ばいだから下がった訳ではないけど)で帰って来ましたので今日は20年0.4%台の押し目買いちゃんの観測ができるのでしょうかというのがすんなりいくのかいかないのか、という感じですかねえ(個人の感想です)。



〇ということでFSRなのですがこれネタにするのにひと手間かかるのよね

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr190417.htm/
金融システムレポート(2019年4月号)(要旨)

全文(色刷り100ページ以上あります)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr190417a.pdf

概要
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr190417b.pdf

でもってこの全文の方が読みでがあって中々結構なのですが、結構このレポートは大人の事情というのがあるのは分かるのですが、特に本文の方は相変わらず「行間を読む」のが必要じゃなあという内容に仕上がっている感があります。

そしてこれ毎回困るんですけど、FSRだけなんか別のフォントを使った作文ソフトを使っているようで、PDFの内容をテキストに落とそうとするとMS標準だと外字になってしまう漢字が頻発するので、いちいち手修正しないと「?」の連発になってしまうというこの苦行でして、おじちゃんこの本文ネタにする時って夜なべして先にテキスト修正版作らないと朝やっていると全然話が進まんというのは何とかならんもんですかねえ。

・・・・・と思うのですが、この「MS標準だと外字頻発になるフォント使い」ってわざとそうして引用しにくくしてるんだろうと思っておりますので、それはもうそんなもんだと諦めておりますので悪態やいちゃもんを付けないようにはしております(と言いつつ文句たらたら垂れてますが)。


・要旨を見ると思いっきり「それは言われんでもわかっとるわ」感が漂うのは大人の事(爆発音)

まずは要旨ということで紹介ページからなのでここから暫くHTMLの奴から引用します。

『2019年4月号の特徴と問題意識』というのが最初にありまして、

『今回のレポートでは、次の4つに力点を置いて分析を行った。』

ほうほう。

『第一に、今回ヒートマップにおいて、不動産業向け貸出の対GDP比率が「赤」(過熱方向でトレンドからの乖離が大きい状態)に転じたことを踏まえて、不動産市場について、バブル期との比較を念頭に置きつつ、幅広い視点からその金融安定上のリスクを分析・評価した。』

バブル期って昭和最後から平成にかけてのバブルと比較したらそら比較にならんじゃろ。

『第二に、地域金融機関の収益力低下の背景を理解するため、わが国同様に低金利環境下にある欧州系金融機関との収益構造の比較を行った。また、将来の収益力に対する市場参加者の見方が集約された株式市場の情報を利用して、わが国金融機関の潜在的な脆弱性を定量的に評価した。』

欧州との比較って前もやってませんでしたっけ(欧州の場合預貸金利のギャップが大きくて、というか貸出金利が総じて高めになっていたので、そこの利鞘が多少縮小しても糊代があったというのが一番でかいという話しでしたなあ)というのと、株価で分析ってのも前やっていたののアップデートですな。

『第三に、地域金融機関の収益力と自己資本比率の低下が継続していることを踏まえ、それが長引いた場合の金融安定への影響を定量的に把握する観点から、マクロ・ストレステストにおいて、目先のストレス発生を想定した定例のテストに加え、5年後のストレス発生を想定したテストを実施した。』

ふーん。

『第四に、金融安定への影響が大きいと考えられる大手金融機関のシステミックな重要性とデジタライゼーションについて、BOXで分析した。前者については、システミックな重要性の1つの表れである海外との連関性・共振性の実情を取り上げた。後者については、金融機関の取り組み状況と、足もと幅広い取り組みが加速しているキャッシュレス決済の動きを整理した。』

はあそうですか。

という訳で今回は「新しい企画」が無くて、結局のところ結論が毎度おなじみの「このままの状況が続くと問題が起きるのだがとりあえずは資本も充実しているのでセーフセーフ」って話になっているので、最初サラサラと読むと「そんなことは言われんでもわかっとるわ」という感じで拍子抜けモードではあるのですが、これは読み込んで行間を見て行かないといけない(というようなレポートってどうなのよ、とも思いますが)物件ですなあ相変わらず、というのは把握しました。


でもって『要旨』って奴を見る。最初の小見出しは『金融仲介活動の動向』である。

『日本銀行の金融緩和を背景に、金融仲介活動は銀行貸出を中心に引き続き積極的な状況にある。国内貸出市場では、貸出金利が既往ボトム圏で推移し、残高は前年比2%台半ばのペースで増加している。大企業向けM&A関連貸出が増加しているほか、中小企業向けの設備関連貸出が幅広い業種で増加している。CP・社債市場でも、発行レートがきわめて低い水準で推移するもとで、大企業による資金調達が増加基調にある。この間、国際金融市場では、世界経済の不透明感の高まりなどを背景に、株価やクレジット市場のスプレッドが不安定な動きを示す場面もみられたが、足もとは落ち着きを取り戻しつつある。そうしたもとで、わが国金融機関の海外エクスポージャーは、貸出やクレジット商品(高格付けのCLOや投資適格の社債等)を中心に増勢を維持している。』

ということで要旨だとはあそうですかという印象しか受けないですが、まあ中身は特に本文の方を見るとちょこちょことツッコミどころや、一方でニヤリとするような部分もあってこれはこれで読み物としてはオモロイ(と思う)。

次が『金融循環と潜在的な脆弱性』です。

『以上のような金融仲介活動を受けて、企業・家計の資金調達環境はきわめて緩和した状態にある。こうしたもとで、総与信の対GDP比率がトレンドから上方に乖離して推移するなど、金融循環の拡張的な動きが継続しているが、全体としてみると1980年代後半のバブル期のような過熱感は窺われていない。ただし、銀行の不動産業向け貸出はなお高めの伸びを示しており、その対GDP比率は、トレンドからの乖離幅がバブル期以来の水準となっている。地価動向など幅広い情報を総合すると不動産市場に過熱感は窺われないが、(1)貸出の伸びの中心が中小企業・個人による不動産賃貸業向けであること、(2)そうした貸出に積極的な金融機関に自己資本比率が低めの先が多いこと、(3)貸出とは別に、金融機関のREIT・不動産ファンド向け出資も増加していることから、不動産市場を巡る脆弱性を注視していく必要がある。』

『また、地域金融機関は、相対的に信用力の低いミドルリスク企業向け貸出に積極的に取り組みつつ地域の企業・経済を支援しているが、リスクに見合った利鞘を確保しにくい状況が続いている。先行きの信用コスト上昇に対する脆弱性にも留意が必要である。金融循環の拡張的な動きは、足もとの景気拡大に寄与しているが、やや長い目でみて、わが国経済の成長力が高まらない場合には、むしろバランスシート調整圧力を蓄積することで、経済に負のショックが発生した際の下押し圧力を強める方向に作用する可能性がある。』

この辺の説明は前回や前々回のFSRでも指摘されていた話で、定性的な認識はあまり変わっていなくて、長期的なリスクに関する定量的な認識は示されていない(示しようがないのは分かるが)のでどのように認識が変化したのかはこれまた行間読まないと分からん(サラサラ読んでるとイマイチ分からん)っぽい。

しかしまあ何ですな、某銀行さんとか某信用金庫さんとかのビジネスモデルが絶賛されておまいら愚民どもも見習え位の勢いで絶賛されていた不動産融資関連ビジネス拡大とか、担保や保証人に依存しない融資で目利き力とか言って、目利き力のない愚民はアホにも程がある位の勢いで言われた結果、不動産融資が過熱だのミドルリスク企業向け貸出が将来のリスクとか言われましてもお前は何を言ってるんだという感は強い。

『国際金融面では、海外貸出は全体として質の高いポートフォリオが維持されているが、海外金融機関との競争激化や外貨調達コストの高止まりを背景に、リスクがやや高い先への与信を増やす動きもみられている。有価証券投資でも、金融機関は海外クレジット商品や投資信託を積み増すかたちでリスクテイクを積極化しており、多様で複雑な市場リスクを抱えるようになっている。このため、世界経済の下振れ等を契機とするリスク性資産の幅広いリプライシングの影響を受けやすくなっている点には留意が必要である。』

そらそうなのだがマイナス金利にYCCというような金利低下策に加え、貸出支援オペのようなクレジットスプレッドを叩き潰す政策をやって海外方面に行かないと如何ともし難い状態にしてるのどこのどいつですねんと思いますし、日本の貸出が中々良いものが伸びないのって成長期待を作れない政府部門の経済政策の失敗によるつけじゃねえのかと小一時間ではありますな。


でもってまあ本命ちゃあ本命の『金融システムの安定性』ではこんな話が。

『わが国の金融システムは全体として安定性を維持している。金融機関は、上記のような脆弱性を考慮しても、リーマンショックのようなテールイベントの発生に対して資本と流動性の両面で相応の耐性を備えている。』

今のところはそうなんですかねえ・・・・・・・・・・・

『もっとも、金融仲介活動の中核となる国内預貸業務の収益性が低下を続けている。これには低金利環境の長期化に加えて、人口減少に伴う成長期待の低下と借入需要の趨勢的な低下という構造要因による面が大きいと考えられる。』

なるほどYCCやマイナス金利のせいではないと。

『こうした国内収益環境のもとで、大手金融機関はグローバル展開とグループベースの総合金融戦略を推進しており、システミックな重要性、海外との連関性を高めている。地域金融機関は、ミドルリスク企業向けや不動産業向けなど国内貸出や有価証券投資を積極化しているが、総じてリスクアセット拡大に見合った収益を確保できておらず、自己資本比率、ストレス耐性は緩やかに低下している。こうした状況が長引くと、ストレス時の信用コストや有価証券関連損失に伴う自己資本の下振れが大きくなる結果、金融面から実体経済への下押し圧力が強まる可能性がある。』

まあこれは本文(概要でもそうですけど)の方を見るともうちょっと色々とあるので追々見ていくのですが、このシステムの安定性がどうのこうのの問題っていうのは、「平均値」で見ても意味はなくて、輪の弱い所が切れるかどうか、その切れ方がどうなのか、という所にあって、まあなんだかんだ言って先般あったような某銀行さんのような例だとまあ特殊例なので輪が切れても全体に波及する話じゃないという感じですが、これがまた別の輪の切れ方をすると、そこのほころびが全体に影響してくるって話になる訳でしょうな。

でもってそういうのがあるので、概要とか本文とか見ると「上位グループ、下位グループ」みたいな分析結果を出したりしていまして、システミックリスクに発展する可能性という意味では平均値ではなくて、分散を含めて考えないといかんでしょ、という話が本文とか概要にあるので、そっちを見た方がより味わいがありますがそれも追々。

最後は『マクロプルーデンスの視点からみた金融機関の課題』という小見出しだがまあこれはいつも通り。

『金融システムが将来にわたって安定性を維持していく観点から、金融機関に求められる経営課題は、次の4点である。』

はい。

『第一は、収益力向上に向けた取り組みの強化である。(1)リスクに応じた貸出金利の設定、(2)企業の課題解決や家計の資産形成支援を通じた役務収益力強化、(3)経営効率の抜本的改善が課題となる。また、これらを効果的に推進する観点から、経営統合やアライアンスも有効な選択肢となり得る。』

収益力が下がっているの無駄な低金利と無駄なクレジットスプレッド叩き潰し政策も一因何ですが。

『第二は、積極的にリスクテイクを進めている分野におけるリスク対応力の強化である。地域金融機関では、ミドルリスク企業向けや不動産業向け貸出、投資信託を通じる投資拡大等に対応した管理強化が挙げられる。大手金融機関には、システミックな重要性を踏まえた強固な財務基盤の確保、グローバルかつグループベースの経営管理等が求められる。』

これに関連する部分って本文の課題の方じゃなくて分析コーナーにも色々とあって、今日は時間的に間に合わないので明日以降ボチボチと成敗していきますけれども、この「リスク対応力の強化」の話が多少引っ掛かる部分があるのですよ。

というのは(そのうちネタにしますが)例えば金融機関の投資信託への投資に掛かる部分(本文の50ページ近辺)でリスク管理をやってストレステストを云々みたいな話があったりするんですけど、どうも話の構成が個別商品というか投資をしている中の単品でリスクがどうのこうのみたいな話をしているっぽいのですが、単純化して話をすれば債券と株式と貸出のポートフォリオがあって、金利が上がったから債券の含み損がこんなにあるのに何もしないとは何事ぞみたいな話をする、みたいな変な方向に問題意識が行ってしまうリスクがあって、いやその場合株式が儲かったり、金利が上がる状況なのだから経済が強いので貸出ポートフォリオの方は信用コスト下がって儲かるだろとかいう話がある訳でして、ポートの中の一つのセクションを単品で見てああだこうだ言うのってちょっとねえと思うのですが、そういう陥穽にハマってませんかねとは思う。

『第三は、デジタライゼーションへの対応である。わが国でも、幅広いキャッシュレス決済への取り組みや、金融機関によるオープンAPI、AIやクラウドの活用等が進みつつある。金融機関はデジタル技術の活用方針を明確化し、それに応じたサイバーセキュリティ・情報管理体制を整備する必要がある。』

現金その場限りおじさんのアタクシにはよくわからない世界なのでパス。

『第四は、自己資本の適正水準や配当、有価証券評価益の活用方針等を含めた適切な資本政策の実施である。日本銀行は、考査・モニタリング等を通じて金融機関の取り組みを後押しするとともに、マクロプルーデンスの視点から、金融機関による多様なリスクテイクが金融システムに及ぼす影響について引き続き注視していく。』(以上ここまで上記URL先のうち「要旨」にあたるHTML版から引用)

収益キツイのに配当を減らさんのは如何なものかというのを丁寧に言うとこうなります。


ということで本日は要旨だけで終わってしまいましたが(諸般の事情で昨日下準備できてなかったので要旨だけで終わったというのもあるのですが、大汗)途中途中引っ掛かりながら読んでいますけど、この本文って1回通して読むだけだと行間読み切れない面が多々ある(というのもどうなのかと思うけど)のでネタにしたあと読み込み不足でこうかもしれないとか言い出す可能性は大いにありますので、一つご容赦頂きたく存じます。


しかしまあ何ですな、もうちょっと危機意識をガンガン鳴らすのかと思えば一読するとそういう感じは見受けられず(なので何回か読む必要はありますが、大汗)、割と天下泰平ちっくに見えるんですが、忖度モード(金融政策を正面切って批判するのはさすがに首がいくつあっても足りないでしょうから)でこうなっているのか、それともマジでヤバそうなのだがヤバいと書けないからとりあえず不動産融資云々というメディアが飛びつくのをデコイにしておく攻撃にしたのか(いずれにせよ不動産云々のところって現状でシステミックリスクになるような話かよというのはあるので、明らかにデコイあるいは損害担当艦って奴でしょ)というのは気になるところではございます。

#ということでフワッとした感想だけでとりあえず勘弁




2019/04/17

お題「超長期入札ェ・・・・・・・・/FEDが最近いう「皆様に成長を」ってのも何だかなあとは思うので」

なにこれなめてんの???
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019/0410/shiryo_02-1.pdf
就職氷河期世代の人生再設計に向けて

いやさあ、おじちゃんちょっと早めに生まれたから氷河期世代じゃなくて当該世代からみたら目の上のたんこぶのトンチキ世代だからその世代のジジイが言うのも何だけどさ、『同世代を「人生再設計 第一世代」と位置付け』ってナメトンノカとしか思えませんし、この紙に名前を連ねている方々の中に40歳定年を唱えているのに本人は常勤の大学教授ポストに40過ぎてもそのまま就いておられる柳川大先生の名前を見て先生オッスオッスとしか申し上げようがない。


そんな殺伐とした世の中に昨日は大爆笑事案がががが。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-04-16/PQ18D26JTSEA01
日銀総裁、ETF購入「株価安定のため」と言い間違え−直ちに訂正
日高正裕
2019年4月16日 12:21 JST

つーかですな、このヘッドラインを見た瞬間最初目をゴシゴシしたんですが、読み間違いは無かったということで、何ぼ誤報にしてもこの誤報はアカンヤロとか思っていたら直後に「総裁が自分で訂正した」というヘッドラインが流れて腹筋が崩壊するとともに、まあ本音を言っちゃいましたね(フロイトしぐさ的に)とほっこりとした気持ちになりましたとさ。


〇超長期入札ェ・・・・・・・・・・・・・・

寄付きまでに見ないと昨日のイントラデイチャートが見れません(寄り付き以降に出すと今日の東京寄りからのイントラデイチャートになる)が先物の推移ちゃん。
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 19年6月限

2019/04/16 日中取引
始値 152.63(08:45)
高値 152.70(12:43)
安値 152.48(14:56)
終値 152.50(15:02)
前日比 -0.15
売買高 39,930

今朝寄り以降は見れません(ディレイするから9時くらいまでは見えるのかもしれませんが朝のその時間に確認したことが無いのでよくわからん)ので説明すると、前場は前日の寄りからちょっと安いところで揉み揉み、前場引けに前日引けという前場高値に値を上げて(って3銭とか4銭だが)後場寄り後ちょっとしたら上昇して落札結果発表後に更に上がって高値69銭(+4銭)になったあと、押し込んで13時以降は前場のレベルで揉みあいになったと思ったら14時半ちょい前から先物がホイホイと下がって途中一回止まったものの大引けにかけて一押ししてほぼ安値引けという図。

でもって20年ちゃんは前場からあんまり下がらんですなあとかやっていたら前場引けと引け後にかけて強めの出合いがあってBB引け近くに5糸強→1毛強とかになりやがって、先回り買いキタコレという風情。

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20190416.htm
20年利付国債(第168回)の入札結果

6. 価格競争入札について
(1)応募額 3兆7,125億円
(2)募入決定額 7,277億円
(3)募入最低価格 100円60銭  (募入最高利回り) (0.367%)
(4)募入最低価格における案分比率 47.1709%
(5)募入平均価格 100円63銭  (募入平均利回り) (0.366%)

ベンダーとかで報道されてた足切り予想よりも2つ上とかで切れてしまいまして、まあ前場引けの勢いからしたら強くなるでしょうなあという入札になってしまって、でまあその結果出たあと先物ちゃん高値付ける側から20年既発のカレントが2毛強いとか先物5銭高で2毛強かよという風情になっておられた訳でございますが、そのあとは何がどうなってるのか存じませんけれども中期から先物が下がるの巻になって、20年は後場の高値の時のバランスよりも更に強くなって先物引けが15銭安で20年既発カレント5糸強の0.365%とかどんなバランスになってるんだよという図式。入札は激強でその一方で他の年限には外しだか売りだかデルタ調整だか知らんけど売りが出て相場全体は下がるという結果に。新発の売参だと単利0.375%になるので、入札時の前場引けからの先物対比のバランスで見たら5糸強相対的に強くなったんですが、そもそも前場引けのバランスが既に強かった所に来て入札がそこから5糸強は強くて最初の時点で強いのを掴まされている感が致しますな。

大体からしてプライマリーちゃんとやる業者が全部ヘッジして入札迎える訳も(今の市場だと)ないので、いくら20年堅調と言っても相場下げられるとあちゃーという感じで、三方一両損(誰が三方なのか知らんが^^)という感じで今月の大物入札を終了するのでありました。まあ金利水準上がってくれば絶対水準バイヤーの買いも見込めるんじゃないでしょうかね、知らんけど。


〇そんなことよりFSRを正座待機ですよ皆さん!!!!

http://www.boj.or.jp/announcements/calendar/index.htm/
公表予定

17(水)
8:50 ○ ● 預金種類別店頭表示金利の平均年利率等
14:00 ○ ● 金融システムレポート(2019年4月号)
14:00頃 ○ ● 実質輸出入の動向

>14:00 ○ ● 金融システムレポート(2019年4月号)
>14:00 ○ ● 金融システムレポート(2019年4月号)
>14:00 ○ ● 金融システムレポート(2019年4月号)

・・・・・・・・・さあやって参りましたFSR。「顕在化すると大問題になるリスクを点検」ということでリスク点検をしているMPMとかいうのが居ますが、顕在化はしていないけどあちこちに兆候はでとるじゃろとしか申し上げようのない金融機関の懐具合(個人の妄想です)を鑑みるに、本来であればもっとウォーニングを強めて頂きたいものだと思うのですが、さあどのような物件が出てくるか。

でまあアレですよ、本当の本当にやばくなってくると、急にこの手の公表ベースのプルーデンス物の分析とかが大本営発表ちっくと申しますか、中の人の声が急にメカ音声になると申しますか、実はそういうのが出てくるというのもありまして、今回「いやー天下泰平ですよガッハッハ」というようなレポートが出てきたらそっちの方がもっと洒落にならないので注意したいとは思います。



〇ウィリアムス総裁の先般の講演で少々もにょってしまう

FEDの高官がよー喋るのでそっちばっかりついネタにしてしまって誠に恐縮ですが。

https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2019/wil190411
Fulfilling Our Economic Potential
April 11, 2019
John C. Williams, President and Chief Executive Officer
Remarks at the Association for Neighborhood & Housing Development 2019 Annual Conference, New York City

まあ「今の金融政策がどうのこうの」という話とはちと話が違うのですが、こういう説明をしているのにやってること違くね?という違和感を覚えてるのでまあそいつをば。

・まずはデュアルマンデートのお話

イントロでSFの天候とNYの天候とかいう微妙なギャグを飛ばしながら本論に入る(という位ですし、だいたいこの会合の名前からして中立金利がどうのこうのという話をする場ではない)のですが、『Dual mandate』って小見出しから。

『Apart from a stint running a pizza shop, I’ve worked in the Federal Reserve System for my whole career, nearly 25 years. And I’m not alone. When you ask people at a Federal Reserve Bank how long they’ve worked there, their response is often measured in decades, not years. What makes them stay? Working for a mission-driven institution. 』

FRBのお仕事ちゅうのは長期的な視点でやってまっせと。

『And speaking of our mission, the Federal Reserve has two goals: maximum employment and price stability. We want our economy to reach its potential in terms of jobs and growth and we want low, stable inflation. While these two goals are critically important, they are broad and high-level.』

デュアルマンデートの説明ですな。

『The monetary policy decisions we make have important effects on the overall number of jobs and wages, but they don’t determine what economic growth looks like across communities, or who benefits from it. 』

ほうほう。

『That’s why our outreach and community-based work is a key priority. It’s an opportunity for us to take all of the data, all of the things we know about the economy, and help one another as we tackle the very real issues that shape the everyday lives of Americans.』

ということで、金融政策の効果をデータだけではなくて実際の経済の現場を知るというために、コミュニティーの方々のお話を聞くというのも重要なことです、というのはまあ別にウィリアムスだけじゃなくて割と他の地区連銀総裁(濃淡あるようには見受けられますが)もやっておりますな、うんうん。

でもって次の小見出しになるのですが、

『Equitable Growth』

と来ていますが、このエクイタブルは公平とか公正とかいう意味になりますので、アメリカン全ての皆さんに成長をお届けしますってなもんですな。

『We’re closing in on the longest economic expansion on record, unemployment is at historically low levels, and inflation is close to our 2 percent target.』

しらっと景気循環の最終局面じゃなかろうかみたいな話をしているのがチャーミング。

『From a pure monetary policy perspective, this is a healthy economy. But I’m acutely aware that not everyone is feeling the benefits of the economy’s good performance.』

これパウエルも就任時から会見でやたらと強調している論点なのですが・・・・・・・・・・・

『Recent work by my colleagues at the New York Fed crystalized the economic challenges faced by some of those living in New York City. Since the early 1980s wage inequality has increased in the United States, but that increase in inequality has been particularly sharp in large urban areas like this one.』

1980年代の成長では収入拡大の格差が目立ったのですが、特に都市部でそれがあったと。

『In New York City and Northern New Jersey, someone near the top of the income distribution earns seven times that of someone closer to the bottom. This contrasts with other parts of New York State, where the number is somewhere between four or five times.1』

NYやニュージャージーでは収入拡大の格差が7倍もあって、NY州の他の所だと4〜5倍だったとな。

『That’s not to say things are necessarily easier in areas with less inequality. In fact, many of the areas with less inequality are also challenged by limited job opportunities and declining populations. It does mean that not everyone is benefiting from growth equally.』

格差が拡大しなかった地域もあったけどそういう所は人口減ってたり職がそもそも無かった所だったりしています。つまりこの時は必ずしもすべての人が公平に成長の果実を受けたという訳ではない、つー話ですな。

『One of the reasons for this is that the type of growth in the city has disproportionately benefited one type of worker. Growth in New York has generated demand for highly skilled workers, who are often more highly paid and highly mobile. This drives up housing prices and contributes to gentrification, which often goes hand in hand with displacement.』

でもって職種による格差も拡大して、大都市のハイスキルな労働者たちが収入ドーンと上がってNYのような大都会に集まるので、そうじゃない人たちが住宅価格上がってあばばばばーになって跳ね飛ばされてしまうみたいな事象まで起きましたよと。

『Words like “gentrification” and “displacement” sometimes can feel impersonal or cliche. For some, gentrification conjures images of fancy coffee shops and high-priced fashion boutiques. But the reality can be heartbreaking. Families who’ve lived in a home for generations are driven out, communities break up, and the social fabric of a neighborhood is irreparably damaged.』

gentryが上流階級とかそういう意味だから、格差拡大でお上流生活になるのもあるけど、そこから弾き出された人たちには残念な事しかおきませんがなとかそういう話しっすね。

『We seek growth that enables everyone to fulfill their economic potential. We want enterprise that supports communities, and communities that have the tools to flourish through investment.』

『This is good for families, good for communities, and good for the economy.』

『Of course, you don’t need me to tell you this. You face the challenges of inequitable growth every day through your work. And that’s why I’d like to talk about the role we can play to support you create a New York City that benefits every part of the community. 』

という話をしてこの部分まとめているのですけれども、緩和的な金融政策を長期間継続して、その緩和がアセットバブル方面に進んでしまいますと、それはどう見ても格差拡大だし、アセットバブル崩壊してデットデフレーションのような事が起きますと、その時は実体経済にも跳ねてくるので、そういう時には社会的に立場が弱い人たちが割を食う、という図式になりますんで、それって金融緩和の正常化を途中で止めてしまった(執行部はそろそろ「ここでおしマイケルですよ既に正常ですよ」と言っておかないと理屈の整合性が取れなくなって来ると思いますが、物価目標2%でFF金利2.5%が中立金利というのは明らかに話に無理があるのでどうするんでしょうねえ)FRBとして、こういう主張をするのって大いなる矛盾だろいい加減にしろとは思う次第。

『When I think about our work at the New York Fed, both today and going forward, it boils down to three things: We connect organizations with data and research to amplify the power of their work, we convene stakeholders to share experiences and best practices, and we are a catalyst for initiatives and approaches that help tackle some of the most complex challenges confronting our communities.』

でまあ以下は上記の3つの話をしているのですがそこは割愛しますけど、まあこの「オールアメリカンズの皆さんに成長の果実をお届け」みたいなのってそこはトランプを意識している(という面から言えば最初からそれを言ってるパウエルは議会を意識しているのかと思ったのですが、結局あのテイタラクなのでトランプを意識していたんでしょうな最初から)のでしょうけれども、そもそも論として金融政策で「皆さんに公平な成長の果実を」とかいうのって政策割り当てとして無理じゃろと思う訳で、できもしないことを声高に言うのってのは言ってる当初はまあ耳障りの良いことを言うのがこういう時の仕様だからその場はウケるんですけれども、できもしない事なのでだんだん時間が経ってくると「お前は何を言ってるんだ」状態になり、クレディビリティを喪失するリスクを高めるだけなので、あまりこのネタを強調しない方が良いのではないでしょうかねえ、と人の国の中銀なのでどうでも良いのですが思うのでありました。

#できもしない物価目標を2年間をめどに早期達成するとか言ってた中銀とどっちがマシかという話ですな

思いっきり現世利益に関係ない話で恐縮至極。




2019/04/16

お題「クラリダ副議長の金融政策枠組み見直し関連講演(その2)/市場ネタ俺様備忘メモ」

聞け万国の労働者キタコレ。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190415/k10011884581000.html
港湾労働組合 22年ぶり平日にスト コンテナ積み降ろしできず
2019年4月15日 18時16分

『組合側は、今月下旬からの10連休中のストライキの通告も示唆して交渉を続けていて、国土交通省は物流への影響が出ないか情報を収集しています。』(上記URL先より)

そら影響でなかったら同盟罷業の意味が無いじゃろ。

〇ちょっとだけ市場世間話メモ

・展墓レポートェ・・・・・・・・・・・・

市場世間話と話は違いますが、昨日は展望レポートを"展墓"レポートとか書いてしまいまして誠に恐縮至極。おじいちゃん手元が怪しくて単なるうっかり八兵衛のタイポさんだったのですが、何せ"てんぼれぽーと"一発変換したんで気が付かなった訳ですよ(普通のタイポだともっと全然違う変換結果になるのでしょうが、割と字面も見た感じそこまで違和感がないので月曜の寝起きということもあって完全スルーしてしまいました)。

ということで何でじゃろと思って調べた(ってただのレッツグーグル先生ですが)ら「展墓」っての「墓参りをすること」だそうなので(正直知らんかった)、どう足掻いても物価2%に行かないで季節の度に同じ事しているという事象を鑑みるに墓参りレポートというのでも間違っていないのでタイポのふりして使って行くのありじゃんと思うのでありました(^^)。

#墓参りに失礼ではないかという指摘は分かる


・20年国債入札ですな

今日は20年国債入札ちゃんでございまして、この後5-15.5年の流動性供給はありますけれども、長めのまとまったデルタ供給は8日の10年まで無いということで、いつもよりも1週間長い(営業日的には平常運転ですが)間が空くのでさてどうするんでしょ、とか思っていたらここもと先物とか長期とか20年とかが弱めなように見えますんですが、さてさてどうするんでしょうかね。

とは言いましても昨日も最初は20年先行して甘めの出合いからの気がついて見れば10年と似たようなバランスになっているように感じましたし、まあ20年に関しては水準が押せば押しただけ買いは入るというか入らざるを得ないというような感じで、気合入れてオリャーと買う人はいるのかというと???ではありますが、金利水準があれよあれよと下がってしまい、一方でさて今年度の償還幾らでしたっけ持ち物件の今の利回り何ぼでしたっけとか考えると大変に頭がクラクラするというのはポート系共通の悩みだと勝手に当て推量しておるわけで、ちょっとだけでも買っておかないとマズかろうというののちょっとだけでも結構な量になりますな、ってことで。


・3Mはちゃっかりまた戻ってますの

先週金曜ネタを今更ですけど。
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20190412.htm
国庫短期証券(第826回)の入札結果

(3)募入最低価格 100円05銭0厘0毛(募入最高利回り)(-0.1861%)
(4)募入最低価格における案分比率 3.5119%
(5)募入平均価格 100円05銭3厘3毛(募入平均利回り)(-0.1984%)

ということでまーた▲20bp近くという水準。月初の3Mは3日の823回が▲16.28/▲14.97で始まり、5日の3M824回が▲14.44/▲14.00とかでしたが、期末期初特有の需給のブレが調整されて先週は普通に短国買入7500億円(入札1回で2500億円分の短国買入換算なのでこれで平常運転)がありまして結果は確りでしたし、GCレートちゃんの方もTKRRのトモネで、

http://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

2019/4/1 -0.085
2019/4/2 -0.085
2019/4/3 -0.081
2019/4/4 -0.089
2019/4/5 -0.094
2019/4/8 -0.093
2019/4/9 -0.085
2019/4/10 -0.089
2019/4/11 -0.124
2019/4/12 -0.137
2019/4/15 -0.142

とかなっていまして、先週後半から金利下がっていますしそらそうよという感じですが、ただまあ売参見ると826は▲19bpなのでそこまで凄いことになっているという訳でもないという感じなんでしょうか、とりあえず備忘の為にメモしておきますという感じで恐縮ですが。

何せ今月は10連休という訳の分からんものがあるので資金回りとか気を使うことが多そうには思えますので、従来パターンとは違うことになるんでしょうな、ナムナム。


〇クラリダ副議長講演:

昨日の続きですサーセン。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/clarida20190409a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/clarida20190409.pdf
April 09, 2019
The Federal Reserve's Review of Its Monetary Policy Strategy, Tools, and Communication Practices
Vice Chair Richard H. Clarida
At the "Fed Listens: Distributional Consequences of the Cycle and Monetary Policy"
Conference hosted by the Opportunity and Inclusive Growth Institute, Federal Reserve Bank of Minneapolis, Minneapolis, Minnesota

昨日の続きで、『Three Questions』という小見出しがまあ本論ちゃあ本論で今論点になっているところはこの辺という感じなのかと思います。


・アベレージインフレーションターゲットあるいはプライスレベルターゲットに関して

『The first question is, "Can the Federal Reserve best meet its statutory objectives with its existing monetary policy strategy, or should it consider strategies that aim to reverse past misses of the inflation objective?"』

ということでいきなり来たのは「暫く前まで物価目標継続的に下回っていた部分を取り返しにいくべきなのかどうか?」がキタコレということでこれは逆さ絵おじさんの言い出しているアベレージインフレあるいはプライスレベルターゲットだわという論点がぶっこまれています。

『Under our current approach as well as that of many central banks around the world, the persistent shortfalls of inflation from 2 percent that many advanced economies have experienced over most of the past decade are treated as "bygones."』

『This means that policy today is not adjusted to offset past inflation shortfalls with future overshoots of the inflation target (nor do persistent overshoots of inflation trigger policies that aim to undershoot the inflation target).』

FRBのみならず主要国中銀の今の枠組みでは過去継続的に物価目標下回った分に関しては終わったことなのでキニシナイ(上回っても同様)という事になっておりますが・・・・・・・・

『Central banks are generally believed to have effective tools for preventing persistent inflation overshoots, but the effective lower bound on interest rates makes persistent undershoots more likely.』

一般的に中央銀行はインフレ高進の方を止める強力なツールはあるけれども、下がっていく場合にはそこまで強力なツールがというとゼロ金利制約というのがありますので少々アレですと。

『Persistent inflation shortfalls carry the risk that longer-term inflation expectations become poorly anchored or become anchored below the stated inflation goal.16』

でもって物価が低い状態が続くとインフレ期待が下がってしまうリスクがありまっせと。

『In part because of that concern, some economists have advocated "makeup" strategies under which policymakers seek to undo, in part or in whole, past inflation deviations from target. Such strategies include targeting average inflation over a multiyear period and price-level targeting, in which policymakers seek to stabilize the price level around a constant growth path.17』

という問題があるので経済学者の中では「遅れた分を取り返す」アプローチが必要、ということで数年間の平均インフレに関する目標だの、プライスレベルターゲットだのというのがあると。

『These strategies could be implemented either permanently or as a temporary response to extraordinary circumstances.』

この適用は通常からやれという場合と一時的にやれ(バーナンキが提唱しているのは政策金利がゼロ制約に引っ掛かったらそこから先は平均インフレ目標に切り替えるという手法)というのがありますよ。

『For example, the central bank could commit, at the time when the policy rate reaches the ELB, to maintain the policy rate at this level until inflation over the ELB period has, on average, run at the target rate.18 Other makeup strategies seek to reverse shortfalls in policy accommodation at the ELB by keeping the policy rate lower for longer than otherwise would be the case.19』

脚注18は

『18. See Bernanke (2017) for a discussion of such a strategy. See Hebden and Lopez-Salido (2018) for a quantitative assessment of that and other strategies. See also Kiley and Roberts (2017) for a strategy in which policymakers aim for inflation higher than 2 percent during economic expansions to compensate for below-target realizations of inflation during economic downturns.』

ということでバーナンキの提唱も出ていますな。バーナンキ以外のだと平均インフレ目標というのではなくて「インフレ目標の枠組みで考えられる通常よりも長い期間の緩和を約束するというコミットをする」というもののようですぬ。

『In many models that incorporate the ELB, these makeup strategies lead to better average performance on both legs of the dual mandate and thereby, viewed over time, provide no conflict between the dual-mandate goals.20』

モデルでシミュレートするとゼロ金利制約に引っ掛かった場合はこれをすると効果が出るっていう事になっています。まあ実際はどうなのというのはあるのですが。

『The benefits of the makeup strategies rest heavily on households and firms believing in advance that the makeup will, in fact, be delivered when the time comes--for example, that a persistent inflation shortfall will be met by future inflation above 2 percent.』

それによって長期的に皆さんのインフレ期待が2%で継続する、っていうのですが、これはドナルドコーンが以前プライスレベルターゲットの時にケチョンケチョンに言ってましたが、長い目で見てそうかも知らんが、それによって途中で高めのインフレを長期間継続すればインフレ期待がアンカー出来なくなるじゃろ(その他の悪態もついていた筈ですけどもう一度詳しく読まないと咄嗟に思い出さない)という指摘をしていまして、ジャパンでもそうなのですが、そもそも適合的な期待形成というのがある中、インフレの高め放置というのはやはりインフレ期待のアンカーにマイナス何じゃないの、と思う訳ですよアタクシは。

『As is well known from the research literature, makeup strategies, in general, are not time consistent because when the time comes to push inflation above 2 percent, conditions at that time will not warrant doing so. Because of this time inconsistency, the public would have to see a makeup strategy as a credible commitment for it to be successful.』

『That important real-world consideration is often neglected in the academic literature, in which central bank "commitment devices" are simply assumed to exist and be instantly credible on decree.』

『Thus, one of the most challenging questions is whether central banks could, in practice, attain the benefits of makeup strategies that are possible in models.』

クラリダの説明だとこの取返し戦略に関してはタイムインコンシステンシー(時間的不整合)が発生しますということになっていて、そこは割とプラクティカルに言っているなと思うのですが、取返し戦略の途中でインフレが高進した場合には、のほほんと「取返し中だから放置上等」という訳にはいかん場合が発生する可能性があり(今アタクシが申し上げたインフレ期待の望ましくない上昇を防ぐ必要が発生しうる、ということですわな)、そうなると結局のところ時間的不整合問題を排除することができないので、アベレージインフレやらプライスレベルターゲットの目標というのは、それが信頼できるコミットメントなのか、ということを世間様が納得しないとワークしないので、そこをどうするかってのは問題ですなという指摘をしてこの部分を締めていますが、まあこういう話をしているってことは、たぶん議論がこの手の長期間に渡る物価目標みたいな話が主な論点になっているんだろうなあ、というのは想像しました。


・政策ツールの追加は必要か

『The next question the review will consider is, "Are the existing monetary policy tools adequate to achieve and maintain maximum employment and price stability, or should the toolkit be expanded? And, if so, how?"』

政策ツールを追加すべきか、追加するならどうやって、という問題がその次なのでそれは枠組みちゃいますがなと思いますがまあそういうネタ。

『The FOMC's primary means of changing the stance of monetary policy is by adjusting its target range for the federal funds rate. In the fall of 2008, the FOMC cut that target to just above zero in response to financial turmoil and deteriorating economic conditions. Because the U.S. economy required additional policy accommodation after the ELB was reached, the FOMC deployed two additional tools in the years following the crisis: balance sheet policies and forward guidance about the likely path of the federal funds rate.21』

過去は金利の上げ下げの後ゼロ金利制約になったからバランスシート政策とガイダンス政策を使いましたよ・

『The FOMC altered the size and composition of the Fed's balance sheet through a sequence of three large-scale securities purchase programs, via a maturity extension program, and by adjusting the reinvestment of principal payments on maturing securities.』

『With regard to forward guidance, the FOMC initially made "calendar based" statements, and, later on, it issued "outcome based" guidance.』

この辺はやったことの分類整理。

『Overall, the empirical evidence suggests that these added tools helped stem the crisis and support economic recovery by strengthening the labor market and lifting inflation back toward 2 percent. That said, estimates of the effects of these unconventional policies range widely.22』

でもってこ奴らの政策は効果がありましたと経験的なエビデンスは申しております(empiricalってのが入っているのがちょっとチャーミング)。

『In addition to assessing the efficacy of these existing tools, we will examine additional tools to ease policy when the ELB is binding. During the crisis and its aftermath, the Federal Reserve considered but ultimately found some of the tools deployed by foreign central banks wanting relative to the alternatives it did pursue.』

でまあここで若干きな臭いのは「some of the tools deployed by foreign central banks」という奴で、他の首相中銀のやっていることといえばマイナス金利に日本のYCCとなって、米国は短期金融市場の構造が今のままだったらマイナス金利は実務的に無茶なのでやらないにしてもYCCには見どころがあるとか思っているようですな、円債村村民としてはどう見てもあばばばばー政策で村民出稼ぎに出たりしないといけないんですが米国でやるな米国でと思いますけどまあきな臭い(円債村村民的に)。

『But the review will reassess our earlier findings in light of more recent experience in other countries.』

と締めているので見てもらおうじゃないか日本のあばばばばー振りを、と申し上げたい。


・コミュニケーションの話は特に何かある訳でもなさそう

『The third question the review will consider is, "How can the FOMC's communication of its policy framework and implementation be improved?"』

コミュニケーション手法と来ました。

『Our communication practices have evolved considerably since 1994, when the Federal Reserve released the first statement after an FOMC meeting. Over the past decade or so, the FOMC has enhanced its communication practices to promote public understanding of its policy goals, strategy, and actions, as well as to foster democratic accountability. These enhancements include the Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy; postmeeting press conferences; various statements about principles and strategy guiding the Committee's normalization of monetary policy; and quarterly summaries of individual FOMC participants' economic projections, assessments about the appropriate path of the federal funds rate, and judgments of the uncertainty and balance of risks around their projections.23』

この辺はだいぶ前からさかのぼってここまでやってきたことの説明。

『As part of the review, we will assess the Committee's current and past communications and additional forms of communication that could be helpful.』

「additional forms of communication that could be helpful」と来ました。

『For example, there might be ways to improve communication about the coordination of policy tools or the interplay between monetary policy and financial stability.』

ここでやっとファイナンシャルスタビリティの話が出てきましたが、それを見て書き忘れたの思い出したんですが、よくよく考えてみればアベレージインフレ目標とかやるとなりますと、もとよりフィリップスカーブが昔ほどワークしないって講演の前半でも言ってたし、まあ現実そういう風になっている中で、インフレの所に過度にフォーカスすると緩和効果が物価じゃなくてアセットプライスの方に出てきて、ゴルディロックスヒャッハーからのバブル崩壊あばばばばばーでデットデフレーションって図になる件について上段の話ってほぼネグっていまして、コミュニケーションのこの部分でやっと出てきている、という辺りがなんともかんともとは思うのでありますが、まあFEDビューだからこうなるということかねとは思ったり思わなかったり。


・日程表はご参考までに

『Activities and Timeline for the Review』というのが次にあるので一応引用だけ。

『The review will have several components.24』

ほう。

『The Board and the Reserve Banks are currently conducting town hall-style Fed Listens events, in which we are hearing from a broad range of interested individuals and groups, including business and labor leaders, community development advocates, and academics. The conference here at the Minneapolis Fed is one of these events, as was the "Community Listening Session" hosted by the Dallas Fed in February. Several more Fed Listens events will follow in May.』

今回のもそうですが、公聴会(?)みたいなのを今後もやるそうな。

『In addition, we are holding a System research conference on June 4-5, 2019, at the Federal Reserve Bank of Chicago, with speakers and panelists from outside the Fed. The program includes overviews by academic experts of themes that are central to the review: the FOMC's monetary policy since the financial crisis, assessments of the maximum sustainable level of employment, alternative policy frameworks and strategies to achieve the dual mandate, policy tools, global considerations, financial stability considerations, and central bank communications.』

『Two sessions will feature panels of community leaders who will share their perspectives on the labor market and the effects of interest rates on their constituencies.』

シカゴで6/4-6/5にリサーチカンファレンスを実施。

『We expect to release summaries of the Fed Listens events and to livestream the Chicago conference. Building on the perspectives we hear and on staff analysis, the FOMC will conduct its own assessment of its monetary policy framework, beginning around the middle of the year. We will share our conclusions with the public in the first half 2020.』

でまあそれをまとめて最終的なのは来年の前半に出すそうな。

ついでに『Concluding Thoughts』を。

『The economy is constantly evolving, bringing with it new policy challenges. So it makes sense for us to remain open minded as we assess current practices and consider ideas that could potentially enhance our ability to deliver on the goals the Congress has assigned us. For this reason, my colleagues and I do not want to preempt or to predict our ultimate finding. What I can say is that any refinements or more material changes to our framework that we might make will be aimed solely at enhancing our ability to achieve and sustain our dual-mandate objectives in the world we live in today.』

まあこれは普通のご挨拶という感じです、ちなみに脚注の数字でわかりますように、こちらはReferencesがふんどしのように長いですな。


〇こんな素敵なページが

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/other20190412a.htm
April 12, 2019
Federal Reserve Board publishes transcripts of more than 50 interviews with former policymakers and former senior staff that chronicle nearly half a century of Federal Reserve history

これは先週末に出ていたのにうっかりしていましたが、まだ読んでないので連休の読み物ですかね。





2019/04/15

お題「クラリダ副議長の金融政策枠組み見直し講演にはFEDビュー丸出しの香りが(その1)」

ヒョーショージョー!
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019041201031&g=pol
トランプ米大統領の賞杯授与検討=来日時の大相撲夏場所
2019年04月12日18時11分

『トランプ米大統領が5月に来日する際、大相撲夏場所で内閣総理大臣杯などの賞杯をトランプ氏から優勝力士に手渡す案を日米両政府が検討していることが分かった。』(上記URL先より)

アタクシはヤングなのでパンアメリカン航空の小柄な人がヒョーショージョーを読んでから大きなトロフィーをもって優勝力士に手渡す時間が千秋楽の相撲放送の楽しみとかそんなことは知りませんな(キリッ)。トランプにも巨大トロフィー授与のイベントお願いします。

〇政策枠組みの見直しモードの論点がどんなもんかというのを確認(クラリダ副議長)

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/clarida20190409a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/clarida20190409.pdf
April 09, 2019
The Federal Reserve's Review of Its Monetary Policy Strategy, Tools, and Communication Practices
Vice Chair Richard H. Clarida
At the "Fed Listens: Distributional Consequences of the Cycle and Monetary Policy" Conference hosted by the Opportunity and Inclusive Growth Institute, Federal Reserve Bank of Minneapolis, Minneapolis, Minnesota

ってこれまた思いっきり先週の講演ネタで虫干し感の強いネタで誠に申し訳ございませんが、何せ円債ちゃんって短国が堅調なのとカーブの後ろがどっち行っても堅調なのくらいしかネタが無くて、どうせ輪番は展墓レポート直線のタイミングではよー変えんじゃろうし、10連休前の引け後に買入日程変更とか出すのは畜生プレイにも程がありますので、今月の月中はちょっと動きにくいでしょうなとか思いますので、そうなるとまあネタがねえですのうということでまたも出稼ぎモード。

ご案内のようにFEDは政策枠組みを今後どうしますかというような話をおっぱじめているのですが、クラリダ副議長のこの講演ではその辺の話に関して論点をしめしておりまして、まあ今すぐの現世利益にはならないのですが何となく考えていること掴んでおこうかと思いまして。


・マクラ部分「FEDが皆様の意見を聞いて回っています」企画のご説明

『I am pleased to attend this Fed Listens event on the distributional consequences of the business cycle and monetary policy.』

「Fed Listens event」だとよ(こういうのやりますというのは予告されていました)。

『The Opportunity and Inclusive Growth Institute at the Federal Reserve Bank of Minneapolis is a natural venue for discussing this topic in the context of the broad review of our monetary policy framework that we are undertaking this year.1』

ということで政策枠組み見直しという話です。

『In our review, we are examining the policy strategy, tools, and communication practices that the Federal Open Market Committee (FOMC) uses to pursue the Fed's dual-mandate goals of maximum employment and price stability. I will speak this evening about the motivation for and scope of our review. We are bringing open minds to it and are seeking perspectives from a broad range of interested individuals and groups, such as the panel of researchers we heard from this afternoon and the community leaders we will hear from tomorrow. To us, it simply seems like good institutional practice to engage broadly with the public in this review as part of a comprehensive approach to enhanced transparency and accountability.2』

つーことなので皆様幅広い意見を寄越してちょという話ですな。では本文。


・今回の政策枠組み見直しは極端な見直し(2%物価目標の在り方を見直すようなレベルの)ではないようです

最初の小見出しが『Motivation for the Review』である。

『The Federal Reserve has been charged by the Congress with a dual mandate to achieve maximum employment and price stability, and this review will take this mandate as given. Moreover, the review will take as given that a 2 percent rate of inflation in the price index for personal consumption expenditures (PCE) is the operational goal most consistent with our price stability mandate.』

「price stability」のスコープなんですが、「2 percent rate of inflation in the price index for personal consumption expenditures (PCE) is the operational goal most consistent with our price stability mandate.」という説明になっていまして、オペレーショナルにこれがゴールとして適切、という話になっているのだから、オペレーショナルにもうちょっと適切なものが出てきたらどうしましょうという話とか、そもそもこのPCEコアの2%というのが正しいか、という話までしだすとお洒落なのだが、どうもそこに関しては今回突っ込んでいかない模様で、以下の講演の中でも「2%が適切か」という話は惜しいことに無い。


・レビューをしますがこれは普段からもやっていることですよというお話

『While we believe that our existing framework for conducting monetary policy has served the public well, the purpose of this review is to evaluate and assess ways in which our existing framework might be improved so that we can best achieve our dual mandate objectives on a sustained basis.』

今のところ上手くいっているという説明なのにレビューするとは。

『That said, based on the experience of other central banks that have undertaken similar reviews, our review is more likely to produce evolution, not a revolution, in the way that we conduct monetary policy.』

「evolution, not a revolution」という位なので、2%の物価目標をより適正な水準にするとか、そういうような話が出てくるわけではない、ということは分かりますな。


『With the U.S. economy operating at or close to our maximum-employment and price-stability goals, now is an especially opportune time to conduct this review.』

今マンデート達成できている状態に近いのでこの時期こそが見直しの時期である、とな。

『The unemployment rate is at a 50-year low, and inflation is running close to our 2 percent objective. We want to ensure that we are well positioned to continue to meet our statutory goals in coming years.』

向こう数年もこの状態を維持できると見込まれるそうですよ。

『In addition, the Federal Reserve used new policy tools and enhanced its communication practices in response to the Global Financial Crisis and the Great Recession, and the review will evaluate these changes. Furthermore, the U.S. and foreign economies have evolved significantly since the experience that informed much of the pre-crisis approach.』

この見直しは金融危機以来のコミュニケーション改善の中でも行ってきました、だそうな。


・自然利子率の低下による金利政策ツールの有効性の限定化

次のパラグラフになりますともう少し話が具体的に。

『Perhaps most significantly, neutral interest rates appear to have fallen in the United States and abroad.3 Moreover, this global decline in r* is widely expected to persist for years. The decline in neutral policy rates likely reflects several factors, including aging populations, changes in risk-taking behavior, and a slowdown in technology growth. These factors' contributions are highly uncertain, but, irrespective of their precise role, the policy implications of the decline in neutral rates are important.』

自然利子率低下キタコレということで、今回の見直しのモチベーションは要は「自然利子率が低下した状態における金融政策運営をどうしましょうか」というのがFRB的なお考えのようですな。

『All else being equal, a fall in neutral rates increases the likelihood that a central bank's policy rate will reach its effective lower bound (ELB) in future economic downturns. That development, in turn, could make it more difficult during downturns for monetary policy to support household spending, business investment, and employment, and keep inflation from falling too low.4』

このことによって金利の引き下げ余地が少なくなってしまう(平常時の政策金利が昔よりも低めになってしまうから)ので、金融政策がゼロ金利制約に引っ掛かってしまう可能性が高まり、金融政策の有効性に関しては金利操作だけではワークしきらないことが起きるリスクがありますよ、とまあこの辺りもよく最近言っていますな。


・フィリップスカーブのフラット化に関して

『Another key development in recent decades is that inflation appears less responsive to resource slack.』

次にこういうのが来るのだが、ここに関連する話はロジックの進め方が(まあその考え方もわかるのですけれども)ちょっともにょってしまう面が出て来るなあというお話にだんだんなって来る。

『That is, the short-run Phillips curve appears to have flattened, implying a change in the dynamic relationship between inflation and employment.5』

つーことでリソースのスラックに対して物価が反応せん、というフィリップスカーブのフラット化が
金融政策運営の枠組みにもたらすインプリケーション云々というお話になる。

『A flatter Phillips curve is, in a sense, a proverbial double-edged sword.』

フラット化したフィリップスカーブは諸刃の剣だそうな。

『It permits the Federal Reserve to support employment more aggressively during downturns--as was the case during and after the Great Recession--because a sustained inflation breakout is less likely when the Phillips curve is flatter.6』

『However, a flatter Phillips curve also increases the cost, in terms of economic output, of reversing unwelcome increases in longer-run inflation expectations.』

ということでフィリップスカーブがフラットしていると金融緩和をアグレッシブに行っても物価に跳ねにくいというメリットがあるかれども、金融緩和のし過ぎで長期のインフレ期待が望ましくない上昇をするコストもある、という言いたいことは分かるが謎の説明をしている。

『Thus, a flatter Phillips curve makes it all the more important that longer-run inflation expectations remain anchored at levels consistent with our 2 percent inflation objective.7』

ということでインフレ期待をアンカーさせ続けることが重要である、という結論になっているのですが、フィリップスカーブがフラット化しているという状態で起こりうる問題はインフレ期待の方ではなく、インフレとインフレ期待が落ち着いているからと言って安心して緩和をホイホイ続けることによって、資産価格にバブル的な価格形成が発生し、そのバブル的な価格の修正が起きる過程において、デットデフレーションのような事が起き、それが潜在成長率を下げてみたり、格差を拡大してみたり、というような問題を起こすことなんじゃないのと過去の事例から考えたら起きてるのそっちじゃないのかと思う次第でありまして、そっちの話を華麗にスルーして「物価が上がりにくいから多少金融緩和を吹かし気味にしてもオッケー」という話をして、まあ実際にこの先の方でアベレージプライスターゲットとか、プライスレベルターゲットのような枠組みにクラリダさん一定の評価をしているんですが、「経済のスラックに物価がそんなに反応しない(し物価が上がったら引き締めればいいし)」とか言って緩和を吹かすようなのを容認するとそこにはゴルディロックスヒャッハー相場からのあばばばばーが待っているような気がするんですけどねえ、とは思います(個人の感想です)。



『Finally, the strengthening of the labor market in recent years has highlighted the challenges of assessing the proximity of the labor market to the full employment leg of the Federal Reserve's dual mandate.』

ほうほうそれでそれで?

『The unemployment rate, which stood at 3.8 percent in March, has been interpreted by many observers as suggesting that the labor market is currently operating beyond full employment. However, the level of the unemployment rate that is consistent with full employment is not directly observable and thus must be estimated. The range of plausible estimates likely extends at least as low as the current level of the unemployment rate.』

『For example, in the February Blue Chip economic outlook survey, the average estimate of the natural rate of unemployment for the bottom 10 respondents was 3.9 percent, as compared with 4.7 percent for the highest 10 respondents.8』

NAIRUに関する考察シリーズになりました。

『The decline in the unemployment rate in recent years has been accompanied by an increase in labor force participation, with especially pronounced gains for individuals in their prime working years.9 These increases in participation have provided employers with a significant source of additional labor input and may be one factor restraining inflationary pressures. As with the unemployment rate, whether participation will continue to increase in a tight labor market remains uncertain.』

最近は労働参加率が上がってきたので賃金が上がり難くてインフレ圧力にならん、この先どうなるかはよくわからんですけどな。

『The strong job gains of recent years also has delivered benefits to groups that have historically been disadvantaged in the labor market. For example, African Americans and Hispanics have experienced persistently higher unemployment rates than whites for many decades.10』

ここで「最近の雇用市場の改善は今までその恩恵を受けにくかったマイノリティーの皆さんにも好影響を与えています」という宣伝キタコレではあります。ちなみに先日ウィリアムスも似たような宣伝しておりましたが、ただ金融政策の成果で末端(って表現が適切じゃないですかね、すいません)まで効果が出る、という状態になっているというのは、社会的政策に変化がないのに金融政策だけやっているというのはそれはあなた吹かし過ぎで実はその間に格差はさらに絶賛大拡大って可能性は無いのかねという気もせんでもない(個人の感想です)。

『However, those unemployment rate gaps have narrowed as the labor market has strengthened, and there is some indication of an extra benefit to these groups as the unemployment rate moves into very low territory.11 Likewise, although unemployment rates for less-educated workers are persistently higher than they are for their more-educated counterparts, such gaps appear to narrow as the labor market strengthens.12』

『And wage increases in the past couple of years have been strongest for less-educated workers and for those at the lower end of the wage distribution.13』

と、この辺は金融緩和で労働市場が改善して多くの人たちにメリットがありますという宣伝のお時間。


・レビューのスコープは・・・・・・・・・・・・

次の小見出しが『Scope of the Review』ということでそのものズバリの小見出し。

『Our existing monetary policy strategy is laid out in the Committee's Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy.14 First adopted in January 2012, the statement has been reaffirmed at the start of each subsequent year, including earlier this year with unanimous support from all 17 FOMC participants. The statement indicates that the Committee seeks to mitigate deviations of inflation from 2 percent and deviations of employment from assessments of its maximum level. In doing so, the FOMC recognizes that these assessments of maximum employment are necessarily uncertain and subject to revision. According to the Federal Reserve Act, the employment objective is on an equal footing with the inflation objective.』

毎年1月FOMCで更新している「 Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy」の説明ですな。

『As a practical matter, our current strategy shares many elements with the policy framework known in the research literature as "flexible inflation targeting."15』

でもって今の政策は一般に "flexible inflation targeting."と呼ばれるものをやっています。

『However, the Fed's mandate is much more explicit about the role of employment than those of most flexible inflation-targeting central banks, and our statement reflects this by stating that when the two sides of the mandate are in conflict, neither one takes precedent over the other.』

それに加えてワシらは最大雇用のマンデートを明示的に付与されています。

『We believe this transparency about the balanced approach the FOMC takes has served us well over the past decade when high unemployment called for extraordinary policies that entailed some risk of inflation.』

でもって物価と雇用のマンデートのコンフリクトが起きる時には、バランスアプローチをとって、それに対して説明を行いますので、例えば以前は失業がアホほど高かったので物価上振れのリスクを認識しながら景気を吹かすような政策をしましたと。

『The review of our current framework will be wide ranging, and we will not prejudge where it will take us, but events of the past decade highlight three broad questions.』

でもって今の枠組み見直しに関しては、もちろん今から何かを決め打ちしている訳ではないのですが、この10年(金融危機以降)の経験と教訓を踏まえて行うとして今3つの論点がありますな、ということでこの次の小見出しが『Three Questions』になりまして、まあクラリダ副議長の言いたいことも分かるんだがそれは元祖FEDビューチックでして、今の環境でそれをぶっこむとゴルディロックスヒャッハーからのどこかのアセットクラスにバブルが発生して金融面からこんにちわって話になって、まーたその後始末とかやっていると益々デフレーショナリーな構造になっていくような気がするんですけど(個人の感想です)、まあその長期的視点はさておきゴルディロックスでしょこれは、というような感じの論法にアタクシには見えてしまいます(思いっきり個人の偏見ですけど)。

・・・・・・そして時間が無くなってしまったので(おいこら)肝心な所は明日に続くということですがご興味のあるかたは是非続きを。


#毎度途中で終わってすいませんすいません







2019/04/12

お題「FOMC議事要旨:バランスシートの扱いに関する事務方説明と議論を確認」

ほほう。
https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-idJPKCN1RN2IY
2019年4月12日 / 02:51
ECB、マイナス金利での貸出検討 金利階層化には消極的=関係筋

『[11日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は市中銀行を対象とした長期資金供給オペ(TLTRO)の第3弾について、ゼロ金利やマイナス金利での貸し出しを検討している。関係筋4人がロイターに明らかにした。』(上記URL先より)

経済的に正しくても(あたしゃ正しいとは思わないですけど)政治的な面で可燃性の高い案件なので欧州でこういう話がどう政治的に燃焼するのかという動向は見ていきたい。


〇FOMC議事要旨をもうちょっと確認してみるの巻

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20190320.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20190320.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee
March 19-20, 2019

・バランスシートに関して

最初の小見出し『Balance Sheet Normalization』を鑑賞するでござるの巻。

『Committee participants resumed their discussion from the January 2019 meeting on options for transitioning to the longer-run size of the balance sheet.』

ということで1月の議論の続きだそうです。

『The staff described options for ending the reduction in the Federal Reserve's securities holdings at the end of September 2019 and for potentially reducing the pace of redemptions of Treasury securities before that date.』

今回(3月)に決定されたような方式でのバランスシート削減ペースの縮小からのバランスシート規模の維持への方式案をスタッフが示しましたと。

『Reducing the pace of redemptions before ending them would be consistent with most previous changes in the Federal Reserve's balance sheet policy and would support a gradual transition to the long-run level of reserves.』

いままでも段階的にやっていたのでそれと整合的ってんですけれども、別に緩和方向のオペを段階的にやることはないんじゃないでしょうかねえ。だいたいからしてLSAPやるときとかはドカンと実施してるじゃないの(今回に関しては「政策変更じゃない」のだから段階的にやっていく、という整理だとは思いますけどね)。

『It could also reinforce the Committee's communications indicating that the FOMC was flexible in its plans for balance sheet normalization and that the process of balance sheet normalization would remain consistent with the attainment of the Federal Reserve's monetary policy objectives.』

今回のプランが「FRBは状況に応じてフレキシブルにバランスシートの正常化を行う」というこれまでのコミュニケーションと整合的とか説明しているのは忖度にも程があって、当初は「この正常化には政策的な意図はないので基本的に自動運転」と言っていたのでこれはイカサマロジック。

『However, continuing redemptions at the current pace through September might be simpler to communicate and would somewhat shorten the transition to the long-run level of reserves.』

ふーん。

『The staff noted that reducing the pace of redemptions before September would leave reserves and the balance sheet slightly larger than continuing redemptions at the current pace through September.』

そら(減額ペースを途中で落とせば)そう(バランスシート規模が大きくなる)よとしか言いようがない。

『However, the longer-run level of reserves and size of the balance sheet would ultimately be determined by long-term demand for Federal Reserve liabilities. Staff projections of term premiums and macroeconomic outcomes did not differ substantially across the two options.』

ロンガーランの適正なリザーブの規模に関しては、究極的にはFEDのバランスシートの長期的な負債と見合う(長期負債は発行銀行券で実質長期みなし負債は所要準備になりますが、それ以外にFEDが何か長期負債を持っていればそれ、というお話ですな)という説明をしちょります。


さらに事務方の説明は続く。

『The staff also described a possible interim plan for reinvesting principal payments received from agency debt and agency mortgage-backed securities (MBS) after balance sheet runoff ends and until the Committee decides on the longer-run composition of the System Open Market Account (SOMA) portfolio.』

全体の負債(リザーブ)規模の話から資産構成の話になってMBSをどうすっぺという話。

『Consistent with the Committee's long-standing aim to hold primarily Treasury securities in the longer run, any principal payments on agency debt and agency MBS would generally be reinvested in Treasury securities in the secondary market.』

基本的なべき論が最初に来て、べき論的にはMBSの償還金は全部米国債を買うべきである。

『These reinvestments would be allocated across sectors of the Treasury market roughly in proportion to the maturity composition of Treasury securities outstanding.』

まあはっきり言ってこの理屈は謎なのだが何故かこれで通っている理屈でして、FEDが購入する米国債の平均残存はその時点での発行済み米国債の平均残存にあわせるようにする(のが市場中立なので良い)という理屈になっています。

『However, the plan would maintain the existing $20 billion per month cap on MBS redemptions; principal payments on agency debt and agency MBS above $20 billion per month would continue to be reinvested in agency MBS. This cap would limit the pace at which the Federal Reserve's agency MBS holdings could decline if prepayments accelerated; the staff projected that the redemption cap on agency debt and agency MBS was unlikely to be reached after 2019.』

でもってそういうべき論はさておき、償還が月額200億ドルを超えた時には超過分の再投資はMBSにしますという案(で決まりましたが)を出してきて、その心は将来的にプリペイメントが早まった時(ここから利下げの可能性かよ・・・・とは思いますがまあ時間のかかる話ですから)にドバドバ償還が来て一気にMBSの保有が減るというのもMBS市場にどうなのよ、という感じのようですが、ただまあ現状ではこれをいれたからと言って当面この上限を上回る償還が来るとは想定していないようです。


でもってなお事務方説明。

『The staff noted that, once balance sheet runoff ended, the average level of reserves would tend to decline gradually, in line with trend growth in the Federal Reserve's nonreserve liabilities, until the Committee chose to resume growth of the balance sheet in order to maintain a level of reserves consistent with efficient and effective policy implementation.』

バランスシートのランオフを終了した時には超過準備ドバーなのですが、FEDのリザーブと関係ない資産(銀行券とか)が拡大していくと、その拡大に沿ったバランスシートの拡大が必要になるでしょう、との説明。

・・・・・・・でまあこの辺はインチキ説明ですなあと思いますが、だいたいからして「成長通貨見合いでの長期国債残高拡大」というのは別に金融政策でも何でもなく、寧ろ調節技術上の話しとして昔からやっていたことなので、このことを捕まえて「バランスシート再拡大」みたいな言い方をするのはハト派っぽくみせるイカサマ説明なんですよねー。まあいいけど。


でもってここからが参加者の議論。

『Participants judged that ending the runoff of securities holdings at the end of September would reduce uncertainty about the Federal Reserve's plans for its securities holdings and would be consistent with the Committee's decision at its January 2019 meeting to continue implementing monetary policy in a regime of ample reserves.』

元々オートパイロットだったんだし「この辺まで縮小します」って示せばよかっただけの話でしょと思うのでこれは単にビビったことを正当化するための屁理屈。

『Participants discussed advantages and disadvantages of slowing balance sheet runoff before the September stopping date.』

どうせ超過準備がアホほど余っているのでこのプロコン論じる意味あるのか??

『A slowing in the pace of redemptions would accord with the Committee's general practice of adjusting its holdings of securities smoothly and predictably, which might reduce the risk that market volatility would arise in connection with the conclusion of the runoff of securities holdings. However, these advantages needed to be weighed against the additional complexity of a plan that would end balance sheet runoff in steps rather than all at once.』

割とどうでもいいプロコンだがそもそもが緩和方向のものを段階的にやるかどうかという話だから議論の意味がない。


『Participants reiterated their support for the FOMC's intention to return to holding primarily Treasury securities in the long run.』

バランスシートの量に関しては腰砕けになった割にはMBSは将来的にUSTにするという話の方は強調する、ってんですからバランスシートに国債がドバーっとあることについて、それによって発生した超過準備がIOERで不胎化されていても意味がある、という理論で行っているんだと思います。アタクシは超過準備が不胎化されていて、超過準備の見合いが国債だったらそれって緩和効果がそんなにあるとは思わないんですけど(プラセボというか見せ金効果はあると思うけどそれはシャドウであり実体のあるものではないと思う)。

『Participants judged that adopting an interim approach for reinvesting agency debt and agency MBS principal payments into Treasury securities across a range of maturities was appropriate while the Committee continued to evaluate potential long-run maturity structures for the Federal Reserve's portfolio of Treasury securities.』

でもって出されているプランについてはおおむね同意。

『Many participants offered preliminary views on advantages and disadvantages of alternative compositions for the SOMA portfolio. Participants expected to further discuss the longer-run composition of the portfolio at upcoming meetings.』

この前ネタにした誰かの講演では「より短期化しておいた方が将来必要な時にマチュリティーエクステンションプログラム(要は長期化)という手段が使える」というような話がありましたので、まあその辺の議論をやっていくという話でしょうが、それは償還再投資をどういう構成でやっていくかという話で決めていくことになるので議論は今後の会合で継続という事でしょう。

『Participants commented on considerations related to allowing the average level of reserves to decline in line with trend growth in nonreserve liabilities for a time after the end of balance sheet runoff.』

金融機関の超過準備をIOERの形で吸収するのでまあそういう事になるんですけど、発行銀行券が拡大していくと中央銀行当座預金が見合いで減少するのでこういう説明になるんでこれはこれで良いのですけれども、「エクセスリザーブが減る」という説明の方が分かりやすい気がするんですけどね、まあそれはどうでもいいんですけど、将来的には徐々に発行銀行券拡大の見合いで超過準備が減っていきますよねという事で。

『Several participants preferred to stabilize the average level of reserves by resuming purchases of Treasury securities relatively soon after the end of runoff, because they saw little benefit to further declines in reserve balances or because they thought the Committee should minimize the risk of interest rate volatility that could occur if the supply of reserves dropped below a point consistent with efficient and effective implementation of policy.』

お前は何を言ってるんだと思うのだが、「Several participants」はランオフ終了したあとに銀行券拡大見合いでのバランスシート拡大を直ぐに開始すべきとか言っていまして、それによって金利が急騰するのを防ぐみたいなことをゆうとるんだが、現状でも超過準備付利で不胎化することによって短期市場金利を下げないでいられているだけなのに、何でそこを慌てて拡大しなきゃいけないんだという話と、まあアタクシもそこまでマニアックじゃないので米国のこの辺りのバランスについて詳しい訳では無いので何ともではありますが(なおこの前のマネタリーポリシーレポートに概要の話はありますよ)、発行銀行券の拡大トレンドに対してランオフ終了後の超過準備が幾らあるんだよと考えると、そこまでギャースカ言う必要があるのかと思いますし、どんだけこいつらバランスシートのことを気にしているんだよ(減らすと引き締め、というのをという意味で)と思うのでありました。

『Some others preferred to allow the average level of reserves to continue to decline for a longer time after balance sheet runoff ends because such declines could allow the Committee to learn more about underlying reserve demand, because they judged that such a process was not likely to result in excessive volatility in money market rates, or because they judged that moving to lower levels of reserves was more consistent with the Committee's previous communications indicating that it would hold no more securities than necessary for implementing monetary policy efficiently and effectively.』

アタクシはどう見てもこっちが正しいと思うのですが、いや別にそんなの気にせんでエエジャロだって超過準備腐るほどあるんだから徐々に減っていったとしても、むしろ「必要最低限の超過準備ってどのくらいなんでしょう」というのを見ていくためにもやっていって平気だし、大体からして超過準備が減ったからと言って債券市場のボラが上がるかよという話だし、もともとバランスシートは無駄に大きく持たないという正常化の時の話をしていたじゃろ、という意見がSome othersより。

『Participants noted that the eventual resumption of purchases of securities to keep pace with growth in demand for the Federal Reserve's liabilities, whenever it occurred, would be a normal part of operations to maintain the ample-reserves monetary policy implementation regime and would not represent a change in the stance of monetary policy.』

『Some participants suggested that, at future meetings, the Committee should discuss the potential benefits and costs of tools that might reduce reserve demand or support interest rate control.』

まあ元々大昔のFEDって日銀みたいな(というか日銀と邦銀が変態だったのだが)クソ細かいリザーブバランスの調節とかやっていなくて、需給によって実効FFレートがぶれるのに対して寛容だったけど、別にそれを材料に長期金利が反応する訳ではない(一時的現象だし政策意図ないの分かっていたから)という話だった訳で、調節技術上の問題に関してここまで気にするかね、というのは何だかなあと思いますし、超過準備を不必要に放置して、それをIOERで不胎化するというのは、究極的にはFEDの財務問題からの政治マターに発展するリスクがあるから(そういう論点は多分中の人は分かっていると思うし話もしてそうだが、ネタがネタだけに出てこないんでしょうな、と思っているのですけどどうでしょうかね)あんまり望ましい話じゃないし、大体からして将来バランスシート政策やる時に政策発動余地を無くすので如何なものかと思うのですが、まあこの辺の議論はこれからなんでしょうな。

『Following the discussion, the Chair proposed that the Committee communicate its intentions regarding balance sheet normalization by publishing a statement at the conclusion of the meeting. All participants agreed that it was appropriate to issue the proposed statement.』

以下は3月FOMCの時に出た『BALANCE SHEET NORMALIZATION PRINCIPLES AND PLANS』です。その時にも出ていましたがこれは全会一致(メンバーではなくパーティシパントが一致)ですな。

#ということでバランスシートの所に絞って確認してたら時間が無くなったので今日はこれで勘弁









2019/04/11

お題「ECB定例理事会と3月FOMC議事要旨ですな」

お、おぅ・・・・・・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190411/k10011880121000.html
桜田五輪相を事実上更迭 野党は首相の任命責任追及へ
2019年4月11日 4時28分

『桜田オリンピック・パラリンピック担当大臣は、10日夜、東京都内で、岩手県出身の自民党の高橋比奈子衆議院議員のパーティーに出席し、「復興以上に大事なのが高橋さんだ」などと述べ、その後、発言の責任をとりたいとして安倍総理大臣に辞表を提出し、事実上、更迭されました。』(上記URL先より)

今回に始まった話ではないのですが天然ボケで済まないレベルまで来たということなんでしょうけど、大臣以前の問題のような気がするんだがこれでもなんと衆議院当選7回ェ・・・・・・・・・


〇ECBはドラギ先生の次回作にご期待ください攻撃とな

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2019/html/ecb.mp190410~3df2ed8a4c.en.html
Monetary policy decisions
10 April 2019

『At today’s meeting the Governing Council of the European Central Bank (ECB) decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.00%, 0.25% and -0.40% respectively.』

金利据え置き。

『The Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present levels at least through the end of 2019, and in any case for as long as necessary to ensure the continued sustained convergence of inflation to levels that are below, but close to, 2% over the medium term.』

金利のフォワードガイダンス据え置き。

『The Governing Council intends to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the asset purchase programme for an extended period of time past the date when it starts raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』

バランスシート規模維持(償還再投資)のフォワードガイダンス据え置き。

『The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 14:30 CET today.』

ハーイ。


ということで会見の冒頭ステートメント。
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190410~c27197866f.en.html
PRESS CONFERENCE
Mario Draghi, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 10 April 2019

INTRODUCTORY STATEMENT

なお前回の会見はこちらです。
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190307~de1fdbd0b0.en.html


最初の挨拶はさておきましてその次から。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. We continue to expect them to remain at their present levels at least through the end of 2019, and in any case for as long as necessary to ensure the continued sustained convergence of inflation to levels that are below, but close to, 2% over the medium term.』

それはさっき聞いた。

『We intend to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the asset purchase programme for an extended period of time past the date when we start raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』

それもさっき聞いた。

『The Governing Council stands ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation continues to move towards the Governing Council’s inflation aim in a sustained manner.』

この表現も毎回お約束で、前回色々とやった時にも最後に『In any event, the Governing Council stands ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation continues to move towards the Governing Council’s inflation aim in a sustained manner.』(前回3月7日でのINTRODUCTORY STATEMENTより)とありまして、ここも同じということで政策周りに関して今回は不動。

ではTLTRO3はという話ですが、

『Details on the precise terms of the new series of targeted longer-term refinancing operations (TLTROs) will be communicated at one of our forthcoming meetings.』

詳細については次回以降(meetingsって複数形だから)の会合に決定しますということのようですが、9月からぶっこむものなので確かに急いで出すほどの物でもないのでしょうが、それよりも出すのを引っ張ることによって「緩和的なものが出るのではないか」という期待を維持させるという効果を狙っているのではないか、ってドラギは狸なのでそういうことを考えていそうには思うのですがどうでしょうかね(なお今回は手抜きマンで会見見てないから会見で何か言ってるかも知れないのは無視してます、すいません)。

『In particular, the pricing of the new TLTRO-III operations will take into account a thorough assessment of the bank-based transmission channel of monetary policy, as well as further developments in the economic outlook.』

と言ってるんだからまあそういう効果狙ってるでしょ、とは思う。

『In the context of our regular assessment, we will also consider whether the preservation of the favourable implications of negative interest rates for the economy requires the mitigation of their possible side effects, if any, on bank intermediation.』

マイナス金利の金融仲介機能に与える可能性のある副作用の軽減に関しても考えて行こうかと思っておりますよ、とまあこれだけキタコレなのですがどうせマイナス金利撤回するわけじゃないからまあね、って感じです。


でもって景気認識。

『The information that has become available since the last Governing Council meeting in early March confirms slower growth momentum extending into the current year.』

「confirms slower growth momentum extending into the current year」と成長鈍化を確認したとか弱い言い方なのですが、それでもslower growth momentumで景気落ちる話にはなっていないですな。まあなっていたら緩和だからそらそうなりますけど。

『While there are signs that some of the idiosyncratic domestic factors dampening growth are fading, global headwinds continue to weigh on euro area growth developments.』

はいはい海外のせい海外のせい、ということなのですが、普通に考えて今一番あじゃぱーなのはユーロ圏なので海外のせいとかいうの如何なものかと思うんだが。

『The persistence of uncertainties, related to geopolitical factors, the threat of protectionism and vulnerabilities in emerging markets, is leaving marks on economic sentiment. At the same time, further employment gains and rising wages continue to underpin the resilience of the domestic economy and gradually rising inflation pressures. However, an ample degree of monetary accommodation remains necessary to safeguard favourable financing conditions and support the economic expansion, and thus to ensure that inflation remains on a sustained path towards levels that are below, but close to, 2% over the medium term. Significant monetary policy stimulus is being provided by our forward guidance on the key ECB interest rates, reinforced by the reinvestments of the sizeable stock of acquired assets and the new series of TLTROs.』

国内は雇用の伸びと賃金の伸びで支えられていて海外が悪いよ海外が、という話になっていますな。でもって金融緩和が必要でどうのこうのというのはいつもの話。

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis. Euro area real GDP rose by 0.2%, quarter on quarter, in the fourth quarter of 2018, following an increase of 0.1% in the third quarter. Incoming data continue to be weak, especially for the manufacturing sector, mainly on account of the slowdown in external demand, which has been compounded by some country and sector-specific factors.』

「Incoming data continue to be weak」と来てましてそれは海外が悪いよ海外が、となっております。

『As the impact of these factors is turning out to be somewhat longer-lasting, the slower growth momentum is expected to extend into the current year.』

さらにその影響も思ったよりも長く続くようだとまあ全然強気気分なし。

『Looking ahead, the effect of these adverse factors is expected to unwind. The euro area expansion will continue to be supported by favourable financing conditions, further employment gains and rising wages, and the ongoing - albeit somewhat slower - expansion in global activity.』

だが先行きは金融緩和継続していく中で成長は続くって言っているので「緩和継続(なのでガイダンスの延長みたいなの)はやるけど追加緩和(利下げとか資産買入拡大)は今のところしませんがな」という話になっていますな。

『The risks surrounding the euro area growth outlook remain tilted to the downside, on account of the persistence of uncertainties related to geopolitical factors, the threat of protectionism and vulnerabilities in emerging markets.』

リスク下向きというのも同じ。

『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation was 1.4% in March 2019, after 1.5% in February, reflecting mainly a decline in food, services and non-energy industrial goods price inflation. On the basis of current futures prices for oil, headline inflation is likely to decline over the coming months. Measures of underlying inflation remain generally muted, but labour cost pressures have strengthened and broadened amid high levels of capacity utilisation and tightening labour markets.』

『Looking ahead, underlying inflation is expected to increase over the medium term, supported by our monetary policy measures, the ongoing economic expansion and rising wage growth.』

まあ賃金がどの位物価に跳ねてくるかという感じでしょうな。TLTRO3については詳細発表を引っ張ることによってドラギ先生の次回作にご期待ください攻撃ですな、うんうん(と会見を聞かずに言うアタクシ)。


〇3月FOMC議事要旨はまあ一戦終わったあとなのでとりあえず手抜き読みで

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20190320.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20190320.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee
March 19-20, 2019

現状で「もう利上げ無理じゃろ」となっているので、利上げの強力な示唆か利下げの強力な示唆でも出ないと市場のネタにはならんじゃろとは思うのですけどね。

手抜きなので『Committee Policy Action』の直前のパラグラフから逆順に読む。なお現世利益的には最初にある『Balance Sheet Normalization』も見た方が良いかもですが今朝はパス。

『Participants also discussed alternative interpretations of subdued inflation pressures in current economic circumstances and the associated policy implications.』

インフレ圧力が高まらないことについての議論とな。

『Several participants observed that limited inflationary pressures during a period of historically low unemployment could be a sign that low inflation expectations were exerting downward pressure on inflation relative to the Committee's 2 percent inflation target; in addition, subdued inflation pressures could indicate a less tight labor market than suggested by common measures of resource utilization.』

歴史的な水準まで失業率が下がっている中でインフレ期待がアガランチ会長である、というこの状況はインフレ期待が実は下がっているからという可能性と、実は従来のスラックの推計方法では捕捉出来ていないスラックの存在がある可能性とか、そういうのはありませんかねえ、と数名の参加者が指摘の巻。

『Consistent with these observations, several participants noted that various indicators of inflation expectations had remained at the lower end of their historical range, and a few participants commented that they had recently revised down their estimates of the longer-run unemployment rate consistent with 2 percent inflation.』

幾つかのインフレ期待に関する指標が弱くなっているというのはやっぱりインフレ期待が下がってるんジャマイカという事をこの人たちは指摘していまして、その中の数名はロンガーランの失業率(つまり自然失業率)の推計値を引き下げましたとな。

『In light of these considerations, some participants noted that the appropriate response of the federal funds rate to signs of labor market tightening could be modest provided that signs of inflation pressures continued to be limited.』

ということなので労働市場のタイト化に対して金利政策をホイホイ反応させる必要性が低いということですわな、という指摘を数名がしとります。

『Some participants regarded their judgments that the federal funds rate was likely to remain on a very flat trajectory as reflecting other factors, such as low estimates of the longer-run neutral real interest rate or risk-management considerations.』

つーことで政策金利については当面ほぼ横ばいでエエンチャウノという指摘をしている人たちが数名いまして、それは労働市場からのインフレ圧力の話だけではなくて自然利子率の低下とかリスクマネジメントの観点からも適切という話。

『A few participants observed that the appropriate path for policy, insofar as it implied lower interest rates for longer periods of time, could lead to greater financial stability risks.』

ほほう、「A few participants」ではありますが今のままの政策やっていると「could lead to greater financial stability risks」と指摘する人がいるのか。

『However, a couple of these participants noted that such financial stability risks could be addressed through appropriate use of countercyclical macroprudential policy tools or other supervisory or regulatory tools.』

とは言え、その中の2名は金融不均衡リスクはプルーデンスや規制で対処すべきといっているのでまあイマイチ感は拭えない。


では一つ戻って、

『Several participants expressed concerns that the public had, at times, misinterpreted the medians of participants' assessments of the appropriate level for the federal funds rate presented in the SEP as representing the consensus view of the Committee or as suggesting that policy was on a preset course.』

SEPで出てくる金利パスのメディアンがFOMCのコンセンサスビューと取られやすい件について懸念を表明している数名の参加者がいるとな。

『Such misinterpretations could complicate the Committee's communications regarding its view of appropriate monetary policy, particularly in circumstances when the future course of policy is unusually uncertain.』

特に現在のように先行きの金融政策のコースがとても不確実(要は利上げも利下げも状況次第、ってことでしょうな)な時はコミュニケーションを難しくする、と言ってるのだが、そもそもお前らがブレブレなのがコミュニケーションを難しくするんだし、中立金利に1%の幅持たせて議論するなよとしか思えん。まあ今が中立ってんだったらドットチャート出すの止めたらとしか言いようがない。だいたいからしてSEPのドットチャートは将来の予想パスを示すことによってガイダンス的効果を出すものなので、ガイダンス出すのが却って混乱を招いているというのは、先行き政策の決め打ち発言を上下にブラして混乱を招いているパウエルおじさんが身を切って示している(こっちも切られとるわという気もしますが、汗)んだし。

『Nonetheless, several participants noted that the policy rate projections in the SEP are a valuable component of the overall information provided about the monetary policy outlook.』

だから???

『The Chair noted that he had asked the subcommittee on communications to consider ways to improve the information contained in the SEP and to improve communications regarding the role of the federal funds rate projections in the SEP as part of the policy process.』

ということでパウエルおじさんはSEPでの見せ方に関して改善案は無いかというのを小委員会(なのでFOMC参加者とスタッフとかの奴でしょ)に指示したそうな。


もう一丁戻りますね。

『With regard to the outlook for monetary policy beyond this meeting, a majority of participants expected that the evolution of the economic outlook and risks to the outlook would likely warrant leaving the target range unchanged for the remainder of the year.』

マジョリティーの参加者は今年は金利を動かさないのが適切とのご意見なので、まあFED動かんわというのが強化されたという感じですな。

『Several of these participants noted that the current target range for the federal funds rate was close to their estimates of its longer-run neutral level and foresaw economic growth continuing near its longer-run trend rate over the forecast period.』

そのうちの数名は今の金利がロンガーランの中立水準に近くて経済も潜在成長率並みで暫く推移する(から政策金利を動かす必要なし)とみているとな。

『Participants continued to emphasize that their decisions about the appropriate target range for the federal funds rate at coming meetings would depend on their ongoing assessments of the economic outlook, as informed by a wide range of data, as well as on how the risks to the outlook evolved.』

先行きの金利は今後の多くの指標を見ながら判断する、だそうだが足元ルッキングに陥りそうですな。

『Several participants noted that their views of the appropriate target range for the federal funds rate could shift in either direction based on incoming data and other developments.』

数名の参加者は今後の状況次第で利上げも利下げもあるでよ、だそうです。これをどっちに受け止めるかはその時の市場の地合い次第としか言いようがないですのう。

『Some participants indicated that if the economy evolved as they currently expected, with economic growth above its longer-run trend rate, they would likely judge it appropriate to raise the target range for the federal funds rate modestly later this year.』

一方で数名(こっちはSome)の参加者は今後見通し通りに経済が推移していけば年後半の利上げが適切とのお話ですが、今のところ動かんの方が多数派ということですの。


ではあと1つ戻ります。

『In their discussion of monetary policy decisions at the current meeting, participants agreed that it would be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate at 2-1/4 to 2-1/2 percent.』

つーわけでここから4パラグラフが金融政策運営の話でした。

『Participants judged that the labor market remained strong, but that information received over the intermeeting period, including recent readings on household spending and business fixed investment, pointed to slower economic growth in the early part of this year than in the fourth quarter of 2018. Despite these indications of softer first-quarter growth, participants generally expected economic activity to continue to expand, labor markets to remain strong, and inflation to remain near 2 percent. Participants also noted significant uncertainties surrounding their economic outlooks, including those related to global economic and financial developments. In light of these uncertainties as well as continued evidence of muted inflation pressures, participants generally agreed that a patient approach to determining future adjustments to the target range for the federal funds rate remained appropriate.』

めんどいので長々と引用しちゃいましたが、まあ大体この辺は声明文に反映される内容が記載されるのがお約束の部分です。

『Several participants observed that the characterization of the Committee's approach to monetary policy as "patient" would need to be reviewed regularly as the economic outlook and uncertainties surrounding the outlook evolve.』

「patient」アプローチというスタンスに対しての議論じゃな。毎回状況を確認してこのスタンスも見直すべき、というのが出て来まして、

『A couple of participants noted that the "patient" characterization should not be seen as limiting the Committee's options for making policy adjustments when they are deemed appropriate.』

2名はこの「patient」がガチで何もしないという風に捉えられるのはイクナイという話をして、何か必要があった時に動きますよというのは見せないとアカンじゃろということなんですが、まあ市場は「patient」は地蔵という風に思ってるじゃないかと思いますけどねえ。というか本来はこれ「中立金利への利上げにpatient」だった筈なのに、今って動くことそのものに「patient」になっちゃっているから、表現自体も何か考え直した方が良いと思う。だから一つ下のパラグラフみたいに「見通し通りに進んだ場合に利上げするのかしないのか」というのが割れたまま声明文だけはしらっと出てくるみたいなことになると思うの。


#とまあ今朝は全部寝起き読みなのでこの程度で勘弁してくんなまし







2019/04/10

お題「インフレ予想に関するスタッフペーパーが出てますよ〜」

昨日は改札とか書いちゃいましたが「改刷」でしたねすいません。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190409a.pdf
日本銀行券の改刷および 500 円貨の改鋳について

1万円札表:渋沢栄一なので第一国立銀行からの第一勧銀
1万円札裏:丸の内なので三菱ですから三菱銀行
1千円札裏:富嶽三十六景神奈川沖浪裏なので場所は横浜銀行、背景は富士山で富士銀行

・・・・・・・・これはSMBCガックシの図ですな(違)。

絵柄はまあいいんですけど数字がユニバーサルデザインでも意識してるのかとは思いますけどなんかこう安っちいのと万札と千円札の数字のフォント何で違いますねんとか気になりますが、折角ならもっとこう金持ち感を出すために足利義満と金閣みたいな豪勢なのとか(割とマジ)、もっと威勢よく成金様の「どうだ明るくなったろう」の絵なんかどうですかねえ(それはウソ)。

話は飛びますが米中貿易摩擦とか思っていたらこっちが燃焼開始とはアーコリャコリャ。
https://jp.reuters.com/article/idJP2019040901002760?il=0
2019年4月10日 / 05:20 /
米とEU、報復関税合戦も

〇展望レポートを前にしてインフレ予想に関するスタッフペーパー登場

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2019/wp19j02.htm/
日本のインフレ予想カーブの推計

↑は要旨紹介と全文へのリンクがはってあるページですのでまずは『要旨』を拝読。

『本稿では、多様な経済主体を対象とした、インフレ予想データの情報を包括的に集約し、インフレ予想を年限別の期間構造で表した日本の「インフレ予想カーブ」の推計を行った。このカーブの推計においては、米国の先行研究を応用した状態空間モデルを用いており、年限間の整合性や、他の経済変数の予想との整合性が考慮されている。』

これはまた意欲的な。

『推計されたインフレ予想カーブは、1990年以降の概ね全ての期間において、右上がりの期間構造であった。』

ほほう。

『また、インフレ予想を時系列でみると、全ての年限において、1990年代前半から2000年代初頭にかけて趨勢的に低下した後、2000年代央や、2012年後半から2013年にかけて上昇した。』

ほうほうほう。

『とくに短期インフレ予想については、輸入物価の変動の影響を受けつつも、量的・質的金融緩和の導入以降は趨勢的に水準が切り上がる傾向がみられる。』

キタコレ。

『さらに、推計されたインフレ予想の性質を構造VARにより分析すると、インフレ予想が実績インフレ率の影響を受けて適合的に形成される性格が強いことが窺われた。』

ちょwwwwwwwwwwwwww

ということで要旨の最後が大変に味わい深い結果になっているようですな。しかもこのスタッフペーパーなんですが脚注を見ますと分かりますように「企画局」のスタッフが出しているというのがこれまた味わいが深い。ということでアタクシは大学は出てるが出ただけの元ボンクラ無学学生(今もボンクラというツッコミは却下します^^)にも程がありますが、無学にもかかわらず本文の説明の方を拝読しようではあーりませんか。

ということで全文はこちら、以下の引用は下記URL先の本文からの引用となります。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2019/data/wp19j02.pdf
日本のインフレ予想カーブの推計

最初の[要 旨] というのはさっきの『要旨』と同じことが書いてありますのでパスして早速本文1ページ(PDFファイルの3枚目に対応します、以下本文のページとの対応はそういう関係で)から拝読。


・インフレ予想を見て行こうという取り組みに関してですが余計なことを思い出したアタクシ

『1.はじめに』というのが最初の小見出しでして、

『民間主体のインフレ予想は、物価動向に大きな影響を及ぼす要因として、世界各国において、これを捕捉するためデータの整備が進められてきた。これらのインフレ予想データには、家計や企業、専門家といった、様々な経済主体を対象としたものが含まれているため、各予想データの間には、必然的に無視し得ない異質性が存在する。また、インフレ率の予想期間という面でも、インフレ予想データには、短期から中長期まで様々な年限のものが存在する。』

仰せの通り。

『多くの中央銀行では、このようなインフレ予想データの情報を用いて、インフレ予想の基調を判断するに当たっては、様々な主体や年限のインフレ予想データを幅広くみて、クロスチェックすることが一般的である(例えば、ECB (2006)) 1。』

でもってこの1の脚注が

『1 FRB も、2019 年3月の連邦公開市場委員会(FOMC)における政策声明文において、「マーケット・ベースのインフレ予想に関する指標はこの数か月低水準で推移し、サーベイ・ベースの長期的なインフレ予想の指標は、総じてみればほとんど不変であった」としているように、インフレ予想の基調を判断するうえで、複数のインフレ予想データをクロスチ ェックしている』

という説明もありまして、確かにそうですなというお話。

『その際、こうした基調判断を補助することを目的として、様々な経済主体による予想形成の異質性を所与として、インフレ予想データの有する情報を統計学的手法を用いて集約し、経済全体としての基調的なインフレ予想を抽出しようとする試みもみられている。』

ほう。

『例えば、日本銀行(2016)や西野ほか(2016) では、家計や企業、専門家のインフレ予想データに主成分分析を適用して「合成予想物価上昇率」を作成した。 』

・・・・・・・・・・さてここで話は急にワープしますが、この下りと拝読しておりましたら、我らが置物師匠が2015年2月4日に仙台市で金融経済懇談会を行った時の質疑応答を思い出しましたのでここで確認してみましょう。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1502a.pdf

5ページ目の辺りになります、質問部分は割愛しまして回答の途中から引用します。

『(答) (前段部分割愛)ただ、研究者のときには、予想インフレ率を知る手掛かりはBEIしかなく、ある程度欠陥はありながらも利用せざるを得なかったということです。先程の「日本銀行に入って変わったのか」という質問とも関係しますが、日本銀行に入ってからは、予想インフレ率をみる上で様々な指標を提供してもらえるようになりました。研究者の時にはなかなか手に入らなかったようなものや、研究者としては気付かなかったようなデータもあります。実際、BEIもなかなか手に入らないもので、研究者としては手が縛られていました。それが、日本銀行では様々な、膨大な指標が提供されるようになり、予想インフレ率は様々なサーベイデータをみなければならないということがだんだんと分かってきました。(以下割愛)』(ここだけ直上URL先、2015年2月4日宮城金懇後の記者会見での岩田規久男副総裁発言より)

いやあこんな認識で「マネタリーベースを拡大してコミットメントしたらインフレ期待が上がるのでそれからすべてが好転する」とか言った理論をぶっこんで中央銀行副総裁になった人がいたんですねえどこの未開国家なんでしょうかねえ(憤怒)。



・これは意欲的な取り組み

・・・・・・・・・とうっかり変なことを思い出して血圧が上がってしまいましたが話を戻しまして、引用元も元に戻ります。

『また、世界的金融危機以降は、インフレ予想を年限別の期間構造で表した「インフレ予想カーブ」に関する関心も、米国を中心に高まっている。』

へーへーへー。

『すなわち、 世界的金融危機後の景気回復局面において、インフレ率が中央銀行の目標対比で低位に推移する(いわゆる missing inflation)中で、 「民間主体は、先行きインフレ率が中央銀行の目標にどのようなペースで近づくと考えているのか」という情報が従来以上に重要になっている。』

ほう。

『この点、例えば、フィラデルフィア連銀では、Aruoba (2016)の研究に基づき、複数種類の専門家によるインフレ予想データを Nelson-Siegel モデルに当てはめてインフレ予想カーブを推計し、月次で公表している。また、Crump, Eusepi, and Moench (2018)は、専門家による様々な インフレ予想データに加え、これに影響を与えうる実質成長率や名目金利の予想データから成る、大規模なサーベイ・データのセットを整備し、これらの変数の経済学的な関係を組み込んだ状態空間モデルを用いて、インフレ予想カーブを推計している。』

一方で「研究者のときには、予想インフレ率を知る手掛かりはBEIしかなく」というジャパンの研究のプアーなことよ(ジャパンちゃいますが)。

『こうしたインフレ予想を巡る問題意識を踏まえ、本稿では、多様な経済主体によるインフレ予想に関するデータセットを用いて、日本のインフレ予想カーブの推計を行った。具体的には、様々な主体や年限のインフレ予想データを幅広くみるという観点から、家計や企業、専門家を対象としたサーベイ・データ に限らず、マーケット・データも含めたデータセットを作成したうえで、Crump, Eusepi, and Moench (2018)の手法を改良して、インフレ予想の期間構造を計測している。このように日本のインフレ予想について、多様な予想データを集約する形で、その期間構造に着目した研究は、著者たちが知る限り、本研究が初めてである。』

という実に意欲的な取り組みです。

『本稿の主要な結果を予めまとめると、次のとおりである。第1に、推計された日本のインフレ予想カーブは、米国を対象とした先行研究と同様に、1990 年 以降の概ね全ての時点において、右上がりの期間構造である。第2に、インフレ予想を時系列に見ると、1990 年代前半から 2000 年代初頭にかけて趨勢的に低下した後、2000 年代央や、2012 年後半から 2013 年にかけて上昇した。第3に、 とくに短期インフレ予想については、輸入物価の変動の影響を受けつつも、量的・質的金融緩和の導入以降は趨勢的に水準が切り上がる傾向がみられる。第4に、インフレ予想は、適合的に形成される性格が強い。』

『構造 VAR による実証分析によれば、インフレ率の実績値が上昇するショックに対して、@インフレ予想は有意に上昇し、その影響は比較的長い期間に亘って残存すること、A長期インフレ予想は、短期インフレ予想と比べより緩やかに上昇すること、が確認された。』

ということは短期的な価格ショックは短期的なインフレ予想には影響を与えるけれども長期のインフレ予想に関してはまた別の要因が働くってこともありそうですな、と申しますか、短期的な価格ショックで短期的なインフレ予想が上がる中で所得や成長の期待が無かったらそのインフレ予想上昇は消費や投資を抑制的にする効果が出て景気にマイナスに働くので長期的にみたらそれがセカンドランドエフェクトを出さないとかそういう話になるんジャマイカと頭は悪いが生活としての経済活動はしているおじちゃんは思うのですがどうなんでしょうかね。


『本稿の構成は、以下のとおりである。2節では、先行研究及びこれらと比較 した本稿の特徴を取り上げる。3節では推計に用いたデータについて説明する。 4節では本分析に用いたモデルの概要を示す。5節では推計された日本のイン フレ予想カーブを示す。6節では同カーブの特徴点を分析する。7節はまとめである。』

でまあアタクシはデータとかモデルの話を読んでも馬の耳に念仏にも程があるので、その辺を盛大にすっ飛ばしつつ鑑賞をしたいと思います。


・各主体のインフレ予想の違いに関する先行研究のご紹介

3ページの『2.先行研究と本稿の分析の特徴 』 の『2−1.インフレ予想形成の異質性を巡る先行研究 』について読んでみます。

『近年、サーベイ・データの個票分析により、家計や企業、専門家がインフレ予想形成において異なる特徴を有することが明らかとなってきた。例えば、 Coibion et al. (2018)は、専門家は、金融政策の変更に敏感に反応して、インフレ予想形成を行うと主張している。他方、Cavallo, Cruces, and Perez-Truglia (2017) は、家計のインフレ予想形成は、身近な買い物の経験に影響されると指摘している。また、企業のインフレ予想の形成については、Coibion, Gorodnichenko, and Kumar (2018)が、一般物価よりも自社の属する業界の価格動向を意識していると 主張している。 また、マーケット・データは、サーベイ・データとも異なる特性を有することが知られている。』

ちなみにこの辺に関して日銀のスタッフからの日銀レビューシリーズもありまして、
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j01.htm/
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j01.pdf
家計のインフレ予想の多様性とその変化
2014年3月27日

#ちなみにこの時のペーパーも書いているスタッフは企画局だったりします

ってのがありますな。

なお次の部分を拝読していてまた味わいが。

『例えば、物価連動国債の情報から抽出されるブレーク・イーブン・インフレ率は、市場参加者のインフレ予想を示すと考えられるが、インフレ・リスクプレミアムや市場の流動性プレミアムの影響も受けやすいことが、Christensen, Dion, and Reid (2004)や、Haubrich, Pennacchi, and Ritchken (2012) 等により指摘された。』

「Christensen, Dion, and Reid (2004)」ってあるのにBEIガーとか言ってた人は誰でしょうかねえ(憤慨)。

『とくに、世界的金融危機の際には、債券市場の流動性が大きく低下する中で、マーケット・データから得られるインフレ予想は、明らかに異常ともいえる水準まで低下がみられた(片岡・白鳥(2011))。 こうした家計・企業・専門家を対象としたサーベイ、及びマーケット情報か ら抽出されるインフレ予想データのうち、どのデータを重視すべきかという点 については、コンセンサスが存在しない。』

なるほど。

『例えば、Burke and Ozdagli (2013)は、 家計のインフレ予想が重要であると指摘しており、その理由として、家計のインフレ予想は、家計が直面する実質金利の変化を通じて、家計の消費に直接的に影響を及ぼすことを挙げている。一方で、Coibion and Gorodnichenko (2015)は、 企業のインフレ予想に着目することが重要であると主張しており、その理由として、学界等で多く利用されている金融政策分析の枠組み(ニューケインジアン・モデル)では、企業のインフレ予想に基づいて、その価格設定行動が定まることを指摘している。』

それもそうなんですが家計のインフレ予想が高まって実質金利がマイナスになったからといってよーしパパ物価上がる前にジャンジャン消費しちゃうぞーとなるかというとそれは別問題と思いますし、企業にしたって然りで、支出決定のメカニズムは実質金利をインプットすればアウトプットが出てくるようなものではない、(ので物価がアガランチなパズルが起きてきている)という事なんじゃなかろうかと思うのですが、まあそれ言い出すとインフレ予想の計測に意味があるのかとか、そもそもインフレ予想とは何なのかという話になってきそうな気がしますのでまあパスします。

『このように、各主体のインフレ予想の形成メカニズムや、その重要性について様々な見方が示される中でも、それらは互いに関連していることを示す研究もある。』

『Carroll (2003)は、家計や企業がインフレ予想を形成する際には、専門家のインフレ予想が強い影響を与える情報源となっていることを指摘している。 また、Bullard (2016)は、家計のインフレ予想が変化すると、賃金交渉を通じて企業の価格設定に影響を及ぼすため、実際の消費者物価にも影響を及ぼすと主張している。』

前者はホンマカイナという感じだし、後者に関しては恐らくそれは労働組織が強くて労働者側にバーゲニングパワーがあった(でもって何であったかといえば社会主義国家という対立軸があって、その対立軸に対して対抗しないといけないからそのために労働者側にバーゲニングパワーを与えないと政治的にアカンじゃろという状態がソ連成立から崩壊までの間に存在したから、という事なんじゃねえのとか漠然と思うのですが)時の話しであって今成立する話なのかは眉に唾を付けてみたいし、だからこそ労働需給とのフィリップスカーブがワークせんのじゃろうかと思う。

・・・・・とアタクシの愚見解なんぞどうでも良いので進めろと言われそうなので続き。

『このように、専門家や家計のインフレ予想が企業のインフレ予想に影響を及ぼす場合、企業のインフレ予想を用いるべきニューケインジアン・フィリップス曲線の推計において、家計や専門家のインフレ予想を用いることも正当化されうると、Coibion, Gorodnichenko, and Kamdar (2018)は論じている。』

『こうした研究は、各経済主体のインフレ予想には、異質性と同時に、共通の変動成分が存在していることを示唆している。』

『日本銀行(2016)や西野ほか(2016) では、こうした共通の変動成分に着目し、家計や企業、専門家のインフレ予想 データから主成分分析を用いて合成予想物価上昇率を作成し、インフレ予想の推移について局面分析を行っている。』



・色々なサーベイデータを使っているのが特徴ですよというお話

次の所はすっ飛ばして5ページの『2−3.先行研究と比較した本稿の特徴 』に参ります。

『本稿では、Crump, Eusepi, and Moench (2018)の状態空間モデルの分析をベース にしつつ、いくつかの改良を加える形で、日本のインフレ予想カーブを推計す る。本稿の特徴について、先行研究と比較しつつ予め述べると、以下のとおり である。』

『第1に、本稿では、様々な経済主体のインフレ率の予想データには、異質性が存在することを許容しつつも、そこには共通の変動成分があることを仮定し て経済全体の基調的なインフレ予想の推計を試みている。この点は、家計・企 業・専門家といった、様々な経済主体のインフレ予想データの動きを合成した、 合成予想物価上昇率(日本銀行(2016)、西野ほか(2016)) と同様であるが、 合成予想物価上昇率が、インフレ予想の期間構造を勘案せず、異なる年限のインフレ予想データの第1主成分を抽出しているのに対し、本稿では、予想データの年限間の整合性や、インフレ率以外の経済変数との整合性を考慮しつつ、 経済全体の基調的なインフレ予想を推計している。』

とりあえずアタクシの頭が悪いのでよくわからんが「合成予想物価上昇率が、インフレ予想の期間構造を勘案せず、異なる年限のインフレ予想データの第1主成分を抽出しているのに対し」って辺りで何をしようとしているのかはおぼろげながら見当はつく(間違ってるかもしれんが)。

『第2に、インフレ予想カーブの先行研究と比較すると、先行研究では、いずれも専門家に対するサーベイ・データ、ないしはマーケット・データのみが用いられてきたのに対し、本稿では、様々な主体の予想データを幅広く見て情報を集約するという観点から、家計や企業に対するサーベイ・データも用いてインフレ予想カーブを推計している。』

たぶんこれが斬新な企画なんだと思う。

『第3に、やや技術的ではあるが、状態空間モデルを用いた先行研究では、モデルの推計において最尤法を採用していたのに対し、本稿では、ベイズ推計を採用している。パラメータ数が多い複雑なモデルにおいては、最尤法による推 計は、推計結果が不安定になることが経験的に知られており、ベイズ推計を採用することは、こうした問題を軽減するための工夫である。』

数学ができないのでわからん(何を言いたいのかはわかるが)。

とまあそういうことでその次からデータとモデルと計算の話になるのですが分からんので全部飛ばしまして結論にワープするという攻撃にでます。


・結果はQQEやQQE2をサポートするものになっているのがチャーミング

13ページまで盛大に飛びます。『5.日本のインフレ予想カーブ』ですな。

最初が『5−1.推計された日本のインフレ予想カーブ』です。

『本小節では、3節のデータ及び4節の手法を用いた、日本のインフレ予想カーブの推計結果を示す。図4(1)は、日本における消費者物価インフレ率の実績値と、各時点(各年第1四半期)における、先行き 10 年間のインフレ予想カーブを示したものである。太実線がインフレ率の実績値、灰色線が各時点に おける先行き 10 年間(40 四半期)のインフレ予想カーブである。』

図表は貼り付けスキルないですから本文を見に行って下さいませ。

『カーブの形状をみると、推計期間中の概ね全ての時点において、右上がりの期間構造となっている。』

そうなんですよ。

『これは、Aruoba (2016)やCrump, Eusepi, and Moench (2018) 等の先行研究で示された、米国のインフレ予想カーブと同様の形状となっている。また、推計されたインフレ予想カーブは、年限が長くなるほど、傾きは次第に緩やかになり、一定の値へと収束していく姿となっている。これは、イン フレ予想は、年限が長くなるほど循環成分の影響が減衰し、トレンド成分(ここに本当は符号があります、フォントの関係で割愛)へと収束していくためである。』

この辺は図を見てちょとしか申し上げようがない。

『 図4(2)は、インフレ予想カーブの推計により得られた、短期(1・2年 先予想の平均)・中期(3・4年先予想の平均)・長期(5〜10 年先予想の平均) のインフレ予想について、時系列的推移をみたものである25。』

『その動きを確認す ると、全ての年限に共通して、1990 年代前半から 2000 年代初頭にかけて、趨勢的に低下した後26、2000 年代央や、2012 年後半から 2013 年にかけて上昇したことが確認できる。』

ほほう。

『2000 年代央の上昇については、景気の回復が続き、かつ輸入物価も上昇基調で推移する中で、消費者物価が下落から横ばい、そして緩やかな上昇に転じていったことが影響している可能性が高い。』

ほうほう。

『また、2012 年後半か ら 2013 年にかけての上昇については、日本銀行(2016)や西野ほか(2016)が指摘しているように、日本銀行による物価安定の目標及び量的・質的金融緩和の導入も寄与しているとみられる。』

出たな。

『なお、短期インフレ予想については、輸入物価の変動の影響を受けつつも、量的・質的金融緩和の導入以降、水準が趨勢的に切り上がってきており、インフレ率の実績値がエネルギー価格の下落等によりマイナスに転じた局面においてもゼロ%台半ばで推移する等、一時的な要因によって落ちにくくなっている傾向が観察される。 』

しらっとQQE2の正当性までが示されているのがチャーミング。

でもって『5−2.既存の日本のインフレ予想指標との比較』というのはめんどいのでパスしまして次に行きます。


・しかし適合的期待形成であるという結論に

本文15ページの『6.実証分析:インフレ率の実績値へのショックに対するインフレ予想の反応 』という所に行きます。

『本節では、推計されたインフレ予想カーブの性質について実証分析を行う。 近年のインフレ予想を巡る研究が示唆するように、インフレ予想は「フォワード・ルッキングな期待形成」と「適合的な期待形成」の2つの要素から構成されると考えられる。』

キタコレ。

『とくに日本においては、インフレ予想は「適合的な期待形成」の影響が強く、米国等と比べてインフレ率の実績値の変動の影響を受けやすいとの見方が示されている(日本銀行(2016)、西野ほか(2016))。本節では、 こうした特徴が、様々な経済主体の予想を集約し、かつ年限間の整合性等を考慮した、本稿におけるインフレ予想についても観察されるのかを検証する。』

ほうほう。

『具体的には、インフレ率の実績値、短期インフレ予想、長期インフレ予想の 3変数 VAR を用いて、インフレ率の実績値が1%ポイント(年率)上振れるショックが発生した場合に、そのショックが短期と長期のインフレ予想に与える影響を分析した。』

で結果は・・・・・・・・

『図6のインパルス応答をみると、インフレ率の実績値の1%ポイント上昇ショックに対して、短期インフレ予想は、0.1〜0.2%ポイント程度反応するが、タ イミングとしては、早期にピークに達する。他方、長期インフレ予想は、反応 は 0.1%ポイント弱と、短期より小幅となるほか、タイミングについても、より緩やかにピークまで上昇する。なお、短期・長期のインフレ予想とも、12 四半期後もショックの影響は有意に残存する28。 』

これは図6というのを見てちょという感じですが、長期予想は0.1%にもいかないとかいうことですと、インフレ期待に直接働きかけてフィリップスカーブを上方シフトさせるとは何だったのかというか、円安もっていってコストプッシュでも何でもいいから物価を上げてインフレ期待が上がるかも知れないというのは何だったのかと悲しくなります。

『こうした結果は、上述の「日本においては、インフレ予想は適合的な期待形成の影響が強い」という主張を裏付けるものである。日本銀行(2018)では、 図6と同様の3変数 VAR を、短期インフレ予想としてコンセンサス・フォーキ ャストの1年先予想、長期インフレ予想として同6〜10 年先予想を用いて推計しており、同様の主旨の結論を得ている。』

なるほど。

『すなわち、本稿の分析結果は、日本銀行(2018)における分析結果が、より多様な経済主体の予想を集約し、かつ 年限間の情報等をより反映した本稿におけるインフレ予想を用いた場合でも、 頑健であることを示している。』

つまり2%安定的に推移するようになるまでは時間が非常に掛かるということですねわかります。


・課題はそもそもの期待形成メカニズム

ということで本文最後の『7.まとめ 』ですが、前半部分は要旨と同じなので割愛しましてその後から。

『今後の研究課題としては、インフレ予想の形成メカニズムをモデルに考慮することが挙げられる。』

なるほど。

『すなわち、本稿のモデルは、予想データの情報を反映させることを企図した誘導型となっており、インフレ予想の形成メカニズムに特段の構造的な仮定を置いたものではない。』

なるほどなるほど。

『近年の研究では、短期インフレ予想 と中長期のインフレ予想とでは、予想形成において重要となる要因が異なる可能性が指摘されている(例えば、Fuhrer (2012, 2017))。こうした期待形成メカニズムに関する研究結果を本稿のモデルに取り入れることで、より精緻なインフレ予想を年限別に推計すること等が、今後の応用として期待されよう。』

ということで本文は終わっている(以下はモデルやデータの説明と参考図表)のですが、まあこういうのを折角出した方に言うのは良くないのかもしれませんが、そもそも「インフレ予想」って何なのというか、成長期待なのか将来所得期待とかそういうのも混じって形成される、つーかそういうものの代理変数としてインフレ予想、ということなのかとか、そっちの概念的な方が最近気になっているのですが、たぶんそういう概念系に行ってしまうと話が概念のままで終わってしまうのでイクナイ(だからインフレ予想を総合して代理変数にするのと同じじゃんと言われてしまえばそれまでですかね)ような気がしますし、なんかインフレ予想の実体とは?というのも気になる今日この頃のアタクシではございます。

#引用大会趣味コーナーになってしまいました(しかも頭が無いのに読んだ気になっているだけ・・・・・・・)







2019/04/09

お題「生活意識アンケート/景気ウオッチャー/支店長会議関連・・・・で4月は現状維持でしょうなあ」

改札とな。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190409/k10011877661000.html
政府 紙幣のデザイン一新へ 新たな肖像画は?
2019年4月9日 1時28分

『この背景には、皇位継承に伴って来月1日に元号が「令和」に改められるのに合わせて、新しい時代を国民がこぞってことほぐ環境を醸成する狙いもあったと見られます。』(上記URL先より、以下同様)

とか何とか言ってますが、

『紙幣のデザインが一新されるのは平成16年以来で、新紙幣が実際に市中に流通するのは数年後になるものと見られます。』

今からデザインするとかいうタイムスケジュールで新元号を寿ぐもへったくれも無いじゃろと思いますし、キャッシュレス推進している筈なのにわざわざ新紙幣を作るとかこれは改札にかこつけて新円切り替え待ったなしですな(大嘘)。

・・・・・朝から陰謀脳になってしまった(−−;


〇金曜に出ていたのにうっかりネタにし忘れたので生活意識アンケート

うっかり八兵衛にも程がある。
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1904.htm/
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki1904.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第77回<2019年3月調査>)の結果
2019年4月5日 日本銀行情報サービス局

基本的に全文(PDF)の方から引用します。説明付きのビジュアル付きなのは2ページ目の『1.要 旨』という所からの部分になりますです。

『1-1. 景況感等』の『1-1-1. 景況感 』からつらつら見ていきます。

『景況感のうち、現在(1年前対比)については、「良くなった」との回答が減少し、「悪くなった」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。』

あちゃー、と思いきや。

『先行き(1年後)については、「良くなる」との回答が増加し、「悪くなる」との回答が減少したことから、景況感D.I.は改善した。』

行けるやん!!!

『なお、現在の景気水準については、「良い」、「どちらかと言えば、良い」との回答の合計が減少し、「悪い」、「どちらかと言えば、悪い」との回答の合計は増加した。』

とは言いましても、ビジュアル版(って本文のことですが)を見ますと、そもそも論として前回(昨年末の調査ですけど、前回の調査期間は2018年11月9日〜12月5日となっています)調査の時に先行きDIがウギャーという感じで悪化していた訳でして、今回は改善したのはしたのですが、じゃあ半年前の前々回と比較してどうなのよというとやっぱりアカンタレという感じではありまする。

でもってこれに続くところは基本おもんないので5ページまで飛びまして、『1-2. 暮らし向き、消費意識』に進みます。『1-2-1. 現在の暮らし向き 』ですけどね、

『現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりがなくなってきた」との回答が増加したことから、暮らし向きD.I.は悪化した。』

そら(生活必需品の値上げが続いてるから)そう(暮らし向きのゆとりがなくなる)よという感じではございますが(身の回り3メートル脳)、こっちって前回横ばい(だがゆとりがなくなってきたというのが減っているのでイメージとしては改善っぽい)だったのが半年前の数字に戻ったという感じでして、前回の生活意識アンケートって1月の9日に公表されたのですが、この時は暮らし向きとか収入とか雇用に関するDIがほぼ横ばいで雇用に関しては寧ろ改善しているという状況だったのですが、何故か先行き景況感DIと、この後に出てくる日本経済の成長期待DIだけが盛大に悪化していたという味わいのある不整合がある代物だったので、素人考えでは消費増税が本格化してきたことが要因なのかなーとか思っていたのですが。

6ページの『1-2-2. 収入・支出 』です。

『収入については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が減少したものの、「減った」との回答も減少したことから、現在の収入D.I.はほぼ横ばいとなった。先行き(1年後)については、「増える」との回答が増加し、「減る」 との回答が減少したことから、1年後の収入D.I.はマイナス幅が縮小した。』

ということで収入については悪くない(ただし「増えた」というのが減るのは縮小均衡チックでアレだが)。

『支出については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が増加し、「減った」との回答が減少したことから、現在の支出D.I.はプラス幅が拡大した。 先行き(1年後)は、「増やす」との回答が増加したものの、「減らす」との回答も増加したことから、1年後の支出D.I.はほぼ横ばいとなった。』

このアンケートって絶対水準に関しては回答の癖があると思うのであまり絶対水準だけ見てもシャーナイと見らえれますので、先行き「減らす」と思っている人がやたら多いのはキニシナイとしましても、今回は消費増税を控える中「先行き減らす」って回答が若干増えてますなあと思いまするに、それは無理じゃろと思ってしまうのですが、一方で支出に関しては「増えた」というのが着実に拡大していて「減った」が着実に縮小しておりますので、まあ節約したいという思いに対して実際問題としては中々そうはいかんざきという事ではありますな。

『1年前と比べて、支出を増やしたものについては、「食料品」との回答が最も 多く、次いで「家電」、「保健医療サービス」が多かった。』

となっていますが、まあこれは基本的に上位構成は同じなのであまりキニシナイ。

『1年前と比べて、支出を減らしたものについては、「外食」との回答が最も多く、次いで「衣服、履物類」、「旅行」が多かった。 』

この上位御三家の構成も同じなのですが、過去との比較がビジュアルでありまして、半年前、1年前との比較が見れるようになっていますが、1年前に2位だった旅行が半年前から3位に下がっておりまして、衣服の節約が進むとかどう見ても父ちゃんへの支出が減少しています本当にありがとうございました。

『今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視することは、「収入の増減」と の回答が最も多く、次いで「今後の物価の動向」、「余暇・休暇の増減」といった 回答が多かった。』

この上位御三家も毎度同じ(上の2つが抜けているので御三家というよりはツートップ)なのでキニシナイ。

『商品やサービスを選ぶ際に特に重視することは、「価格が安い」との回答が最も多く、次いで、「安全性が高い」、「長く使える」、「信頼性が高い」、「機能が良い」といった回答が多かった。 』

まあこれ何を買うかによっても変わるからアレですが、何気に「信頼性が高い」とか上がっているのね。これはその分値上げを許容する態度とも取れますが、安物買いの銭失いモードというのが多くなっていることなのかも知れませんな(なんか身に覚えがあるような)。


さてその次の『1-2-3. 雇用環境 』。11ページになります。

『1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「かなり感じる」との回答が減少したものの、「あまり感じない」との回答も減少したこ とから、雇用環境D.I.は悪化した。 (注)勤労者:会社員・公務員(会社役員を含む)およびパート・アルバイトなど。 』

とはいえ「かなり感じる」が減っているのはエエンチャウノ。


でもって物価になりますが、12ページから。『1-3. 物価に対する実感』の『1-3-1. 現在の物価 』ですけど。

『現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)との回答が減少した。
1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答 を求めたところ、平均値は+4.2%(前回:+5.0%)、中央値は+3.0% (前回:+3.0%)となった。

(注1)「あなたが購入する物やサービスの価格全体」と定義。
(注2)『上がった』は「かなり上がった」と「少し上がった」の合計。』

ということでして、さっきの暮らし向きDIが悪化している割には物価の実感自体は前回対比上げを縮小しています。これで雇用判断DIの方が悪化しているのであれば話は分かるのですが、雇用判断も別に悪化している訳でもなく、物価観も前回ほど上昇感が無いという中で何で暮らし向きが悪化するのかと小一時間問い詰めたい(とアンケートに向かって問い詰めても何も出て来ませんけど)。

ちなみに図表の方には『<1年前に比べ現在の物価は何%程度変化したと思うか> 』という表がありまして、

平均値
18/ 9月 + 4.7 %
18/12月 + 5.0 %
19/ 3月 + 4.2 %

中央値
18/ 9月 + 3.0 %
18/12月 + 3.0 %
19/ 3月 + 3.0 %

となっていて半年前よりも下がっているんですよね。うーんこの。

『1-3-2. 1年後の物価 』ですけど、

『1年後の物価(注1)については、『上がる』(注2)との回答が増加した。
1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.3%(前回:+4.3%)、中央値 は+3.0%(前回:+3.0%)となった

(注1)消費税率引上げの影響を除くベース。 』(注2はさっきと同じです)

消費税率引き上げの影響を除くベース、と言われていますが、前回の消費増税の時に便乗値上げみたいなのがホイホイと起きていました記憶がさすがに新しいですからねえと思いますけれども、先行きは「上がる」が着実に増えていますけれども、その割には平均値とか中央値はカワランチ会長。


でもって中長期的な期待インフレという奴の『1-3-3. 5年後の物価 』に関しては・・・・・・

『5年後の物価(注1)については、『上がる』(注2)との回答が増加した。
これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+3.8%(前回: +3.9%)、中央値は+2.0%(前回:+2.0%)となった。 』

これはそんなに変わらんですし中央値2%なんですけど、でもまあインフレ期待がそうなのかというとそうでもないという悲しい数値。こっちも「上がる」系が確実に伸びているという状況になっておりまして、インフレ期待自体は上がっていると思うのですけれども、結局のところ消費者に価格決定権というのは無い訳でして、企業のインフレ期待(この前の短観の奴)が上がらんとアカンし、おちんぎんが碌すっぽ上がらんのにインフレ期待だけは上がって体感物価も上がっていたらそら消費委縮効果しかないわなという話になりますな、ナムナムナム。


でもって何せこれが悲しいのですが、17ページの『1-5. 日本経済の成長力 』ってのがありまして、

『日本経済の成長力については、「より高い成長が見込める」との回答が減少し、 「より低い成長しか見込めない」との回答が増加したことから、経済成長力D. I.はマイナス幅が拡大した。』

となっております。まあ絶対数値に関してはあまり気にしてはイカンのでしょうが、本文の方では同じページに『<経済成長力D.I.の推移> 』というのがありまして、設問開始した2006年9月調査以来の長期時系列が出ていまして、その脚注を見ますと、

『2.経済成長力D.I.のピークは ▲26.7(2013/6月)、ボトムは ▲68.3(2012/3月)。』

ってなっていまして、どんだけジャパニーズネガティブ思考なんだよと小一時間問い詰めたくなるのでございますが、じゃあお前どう思うのと言われると、アタクシの成長期待も20世紀に置き忘れて来ましたのであまり人の事は言えない。

つーことで相変わらず整合性が微妙な結果になっているのですが、これ日銀がどう分析して解釈しているのかというような話って公表するような筋合いのものではないのは重々承知していますが、でもまあどう読み取っているのかというような話は聞いてみたいな、と常々思ってはおります。


〇景気ウォッチャーェ・・・・・・・・・・・・・

https://www5.cao.go.jp/keizai3/2019/0408watcher/menu.html
平成31年3月調査(平成31年4月8日公表):景気ウォッチャー調査

ということで最初の『抜粋』というのを見るのが一番見やすい。なお読み物として面白いのは『景気判断理由集』ですな。

https://www5.cao.go.jp/keizai3/2019/0408watcher/bassui.html
平成31年3月調査結果(抜粋):景気ウォッチャー調査
今月の動き(3月)

『3月の現状判断DI(季節調整値)は、前月差2.7ポイント低下の44.8となった。』

アイヤー!!!

『家計動向関連DIは、サービス関連等が低下したことから低下した。企業動向関連DIは、製造業等が低下したことから低下した。雇用関連DIについては、低下した。』

全部低下とな。

『3月の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差0.3ポイント低下の48.6となった。』

現状判断DIよりも落ち込みが少ないですな(震え声)。

『家計動向関連DIが上昇したものの、企業動向関連DI及び雇用関連DIが低下した。

なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差0.0ポイントの46.7となり、先行き判断DIは前月差2.0ポイント低下の47.9となった。』

どういう季節調整してるのかも興味ありますがそれはさておき。

『今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「このところ回復に弱さがみられる。先行きについては、海外情勢等に対する懸念もある一方、改元や大型連休等への期待がみられる。」とまとめられる。』

だそうで、

『1.景気の現状判断DI(季節調整値)

3か月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは、44.8となった。家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのDIが低下したことから、前月を2.7ポイント下回り、2か月ぶりの低下となった。』

全項目軒並み悪化というテイタラク。

『2.景気の先行き判断DI(季節調整値)

2〜3か月先の景気の先行きに対する判断DIは、48.6となった。家計動向関連のDIは上昇したものの、企業動向関連、雇用関連のDIが低下したことから、前月を0.3ポイント下回った。』

家計と小売動向の所が改善していますが、小売の先行きに関しては改元と連休の需要期待という解説の通りなのでしょうな。

・・・・・・・でまあ何ですな、最近海外の指標系でもやたらめったらISMみたいなマインド指標が注目されるようになってきて、マインド系指標って振れやすいから相場のネタとしてオモシロスというのもあるとは思うんですが、パウエルFRBがぶれぶれなのでそれに応じてマインド系指標が従来以上に注目されやすくなっているなあというのもあると思うの。まあ日銀の場合はぶれないという意味では延々と大本営発表を続けるという点でぶれないのでマインド指標見たからどうのこうのというのはあまり無いとは思うので(今の大本営モードだと基調判断に影響するのは需給ギャップとインフレ期待でどうせインフレ期待はちゃんとした経済指標にならないからお手盛り可能でギャップ推計に直接跳ねるものでしかビビらん)、これをもって日銀がどうのこうのは無いのですが、これ来月もこの調子でモドランチ会長とかになるとさすがにマズいんジャマイカと思うんですがどうでしょうかね。

つまりですな、まあウォッチャー調査で景気判断がどうのこうのというのは無い(基本ハードデータで来る傾向があるから)でしょうし、まあ今月のは単月一発ものかも知れませんので、4月の展望レポートの見通しにこれがいきなり影を落とすという話にはならんのでしょうが、その次の展望レポート、つまり7月30日の展望レポートは色々と正念場になるでしょうなあという感じが更に高まるし、来月出てくるウォッチャー次第では7月に向けて「もはやのがれることはできんぞ!」てなるかなあと。

#と言いつつ日銀は「ライオン仮面、もはやのがれることはできんぞ!」の後にオシシ仮面出したりオカメ仮面出したりして粘っていくという手段が用意されていたりしますけどね


〇支店長会議&さくらレポート

http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer190408.htm/
地域経済報告―さくらレポート―(2019年4月)

全文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer190408.pdf

そういや前回のさくらレポートの時ってアタクシ夏休み(冬休みだけど)でしたなと思いつつ、概要の説明の所だけネタにします(手抜き)。

『I.各地域の景気判断の概要』という奴でして、

『(1)各地域の景気の総括判断』

『各地域の景気の総括判断をみると、引き続き全ての地域で「拡大」または「回復」としている。前回(2019年1月時点)と比較すると、輸出・生産面で海外経済の減速の影響が指摘される中、3地域(東北、北陸、九州・沖縄)が判断を引き下げる一方、5地域(関東甲信越、東海、近畿、中国、四国)が判断を据え置いている。また、北海道は、地震の下押し圧力が解消したことから判断を引き上げている。』

ほほう。

『こうした各地域の判断の背景には、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きな循環が働くもとで、国内需要の堅調な動きが続いていることが挙げられる。すなわち、足もとでは輸出や生産に海外経済の減速の影響がみられるものの、企業収益が総じて良好な水準を維持するもとで、設備投資は増加傾向を続けているほか、個人消費も、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。』

ということで、まあこれが今月に出てくる展望レポートの大本営発表じゃなかった景気判断の基本的なスタンスになると思われまして、「輸出や生産は海外のせいで減速しているけれども、所得から支出への前向き循環メカニズムは崩れていないのでセーフ」という説明をもって今回の展望レポートはクソ粘りしてくるものとみてまあ大丈夫でしょ(個人の感想です)という話で、従いまして追加緩和だのなんだのという話にはならないでしょ、という結論が演繹されてくると思いますがどうでしょうかね。まあそもそも論として追加緩和されたら迷惑この上ないので市場も期待していないでしょうからだから何かある訳ではないです(何とかストとかリフレ一派とかは追加緩和ガーとか言いますが、だったらその追加緩和をすることによって物価2%が本当に早期達成できるという手段を貴様の首の上に乗っかっている漬物石を掛けて出してみろやこのスットコドッコイ以外の感想はない)。


支店長会議の挨拶も出てますが、
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/siten1904.htm/
支店長会議総裁開会挨拶要旨(2019年4月)

『(1)わが国の景気は、輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。先行きについては、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、緩やかな拡大を続けるとみられる。』

『(2)物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。先行きについては、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』

というのは直近の展望レポートおよび直近金融政策決定会合で示されている判断を踏襲して出してくるもので、ここでいきなり新しいのが出てくるというのは余程の非常時でもない限り普通発生しませんので、まあ今回も特に何の変哲もない公表文書になっています、という感じだと思います(見落としがあったらスマン)。

とまあそんなところで本日は勘弁して頂きとう存じます。



2019/04/08

お題「エバンス総裁講演は普通にハトだしゴルディロックスヒャッハーはスルーしているエバンス流」

まあそうでしょうな。大阪は自民中央が碌に支援してねえから織り込み済みでしょ。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190408/k10011876581000.html
与党 参院選への弾みに 野党 候補者一本化へ調整急ぐ
2019年4月8日 4時45分

〇エバンス総裁講演ネタの続きである

https://www.chicagofed.org/publications/speeches/2019/revisiting-risk-management
Last Updated: 03/25/19
Revisiting Risk Management in Monetary Policy
A speech presented on March 25, 2019, at the 2019 Credit Suisse Asian Investment Conference in Hong Kong.

・リスクマネジメントアプローチ:当面の不確実性への対応ということですが・・・・・・・・・・・

ということで金曜の続きから参ります。

『Back in 2015, I worked on a research project with three of my Federal Reserve Bank of Chicago colleagues in which we studied the minutes of FOMC meetings for clear references to risk management.7 We looked for instances when the minutes commented explicitly about adjustments to the policy path due to uncertainty over the outlook or as insurance against particular risks.』

過去FOMCがリスクマネジメントとか言いながら政策パスを明確に変更した時を調べたことがあるそうな。

『We found such references in about one-third of the 128 FOMC meetings between 1993 and 2008. I would note, too, that not all of these resulted in policy being more accommodative than it otherwise would have been; about one-quarter of the occurrences seemed to be associated with tighter policy.』

ほうほうそれでそれで?

『Let me give you a couple of examples.』

その2例をご紹介しますだそうな。

『One is the 1997-98 period. Through much of 1997, the FOMC’s policy directive maintained a bias indicating that it was more likely to raise rates to battle inflationary pressures than it was to lower them.』

1997年にインフレ抑制のスタンスを取っていた時のお話。

『However, that fall, with the Asian financial crisis still unfolding, the Committee changed to a symmetric directive.』

日本の金融危機ですな。三洋北拓山一。

『While many members thought the next move was likely a tightening, to quote the December 1997 minutes, “most members agreed that the need for such a policy adjustment did not appear to be imminent, and that prevailing near-term uncertainties warranted a cautious wait-and-see policy posture.”8 Sound familiar?』

その状況を見て、日本のあじゃぱーが米国に直接影響を及ぼすとは今のところ見てないけど当面の不確実性があるから、それまでのインフレバトル引き締めスタンスを修正しましたFRBは偉いでしょ(最後の「Sound familiar?」がまさにドヤ顔にも程がある、見てないけど)というのはそれは例としては分かるのですが。

『Later, in the autumn of 1998, the fallout on domestic financial conditions from the Russian default led to a downgrading of the economic outlook and an aggressive 75 basis point easing in the funds rate over a two-month period.』

ロシアの債務危機というかデフォルトとかあったですなあ(遠い目)。

『When making the first of those cuts, the FOMC noted that easing would “provide added insurance against the risk of a further worsening in financial conditions and a related curtailment in the availability of credit to many borrowers.”9』

でまあその対応で利下げしたのが当面のリスクに対するリスクマネジメントアプローチですよと。

『How did this risk-management strategy turn out? In the end, the economy weathered the situation well. Productivity accelerated sharply, and by early 1999 growth was on a firm footing. Subsequently, the FOMC raised rates by a cumulative 175 basis points by May of 2000.』

っていうことで、「In the end, the economy weathered the situation well.」とか言っていますが、その後の緩和を引っ張り過ぎた影響でテックバブルが発生したんですがそれは、という話をスルーしているのがお洒落にも程がありますな。


『The second example is more recent. In December 2015, after nearly seven years with the federal funds rate at its effective lower bound, the economic recovery had progressed enough for the Fed to make its first rate hike.』

次の例は2015年の利上げの話になる。

『At that time, the median forecast in our Summary of Economic Projections envisioned four 25 basis point rate increases in 2016-with expectations generally for one hike each quarter.10』

はい。

『However, early in 2016 concerns about global growth and a related tightening in financial conditions posed downside risks to the forecast.』

2016年の頭に海外で先行き懸念から金融環境がタイトニングしましたと。

『Furthermore, as noted in the March 2016 minutes, the FOMC was well aware of an important policy asymmetry.11 Namely, with rates close to their effective lower bound, there was little conventional policy could do to offset a material weakening in the outlook. But the Fed could easily raise rates if the economy unexpectedly overheated. In many participants’ views, this policy asymmetry made it prudent to wait for additional confirmation that the recovery was on track before reducing accommodation further.』

でもってこの時は政策金利がまだ低かったので、追加利下げ余地が少ないけど利上げはホイホイできるんだから、オーバーヒートしても利上げをどどーんとすれば良いのに対して利下げしないといけないような状況になると政策対応が困難になるから利上げはゆっくりの対応で良いじゃろ、というスタンスで一致しましたと。

『Note that this is exactly how economic theory tells us policymakers should respond when faced with this asymmetric policy uncertainty.』

「asymmetric policy uncertainty」の時の対応としてはそれは「economic theory」である(キリッ)ってなもんですが、まあだいたいこういうような「定説です」とか言い出すときってのは本当に定説だと思っていない(=議論の余地が実はある)時にいうものと相場が決まっております(と断定するのは以下循環^^)。

『So the risk-management posture the FOMC is taking today is not unusual.』

よって今回のハイパードテンモードはハイパードテンモードなのではなくて別に変ったことをしている訳ではない(キリッ)、だそうです。

『It has served us well in similar situations in the past. Whether this leads to further rate hikes later this year or not will depend on how the current uncertainties are resolved. But even then, in some form or another, risk management will be a key element of our decision-making.』

Whether以下の所って一応利上げ云々言ってるけど、結局のところ「how the current uncertainties are resolved」次第と言っていて、そのような不確実性などというのものは上げて行けば基本的に常になんぼでもあるものなので、要するに動かないというか腰砕けになったことの言い訳に過ぎません。

『To quote former Chair Greenspan, “The conduct of monetary policy in the United States has come to involve, at its core, crucial elements of risk management.”12』

当面のリスクに対するリスクマネジメント、という部分での説明がまあこんな調子なのですが、何せ1つ目の例の話しって、「緩和を引っ張り過ぎてテックバブルが発生しました」という話を完全にスルーしている辺りがもうねという感じでございますし、2016年に関しては確かに利上げペースが一気に下がったものの、「先行きは正常化」というのはあった訳で、今回のように「中立金利だからもう利上げしないもんねー」というメッセージにはなっていないのですから、まあ何と申しますか説明的にうーんと唸ってしまいますし、大体からして日本の金融危機にロシアのデフォルトみたいな外の大ショックが今回どこにあるのかと小一時間問い詰めたい状況の中で、(経済循環的にアチャーというのであればそれはまあ話としては通じますけど、そういう説明にはなっていないので)この2例を出してきて説明するのも何だかなーというか、却って「これは本当はヤバいことになっているんではないか」という話になりませんですかねえというようなレベルじゃろと思います。

でまあ本人そこまで意図しているとは思えませんが、第1例にありますような話を出してくるということは、その後に緩和を引っ張り過ぎてテックバブルが発生したことを思えば、現在のアプローチによって今後株式市場なりクレジット市場なりでバブルが発生しますよって先行きを示唆しているようなもんでして、そらゴルディロックスヒャッハーという事になるのは致し方なしという所ではござます。

だいたいですな、今回出してきた例の後半の「今は利下げ余地が無いけどオーバーヒートした時の利上げ余地はたくさんあるんだから緩和的でオッケー」っていう話なんですが、金融緩和で物価が上にオーバーヒートってのは(供給ショックのようなものを伴わない限りにおいて)近年起きないだろという話で、オーバーヒートするのって金融市場というか資産価格のバリュエーションの方に出てくるだろ、とまあ思う訳でして、株価が下がってビビっておられる方々が資産価格のバリュエーションがオーバーヒートしたっていう事で金融引き締めに回れるかというと回れんじゃろと思う次第でございまして、ゆうてこれまでは正常化の途中ということで落ち着けば利上げという話だったからゴルディロックスヒャッハーにも歯止めがあったかも知れんが、もう利上げしませんとかいうSEPのドットプロットを盛大に見せた後の「当面のリスクマネジメントアプローチ」ってのは別の流れになる可能性ありませんかねえ、と思うのですが、まあそう思うFRB高官も他にいるっぽくて直近では(ヘッドラインしか確認していませんが)経済が順調に推移したらもう少し利上げの余地あり的な高官発言も出ているようではありますな。

ということでまあエバンスさんの場合元々ガチガチのインフレ目標おじさんで、金融不均衡の論点に関しては金融政策を割り当てるというのは常に不適切と思いっきり考えている節がある(この日と昔から金融不均衡の話をほとんどしない)ので、金融緩和が物価上昇よりも資産価格上昇の方に効きやすくなるとなってくると、どうしてもこういうアプローチになってしまう(というかここまで途中タカ派っぽかった方が想定外でした)なあと思うのでした。


・FRBのバランスシートの構成について

『Longer-term risks and the composition of the balance sheet』という小見出しに参ります。

『Dealing with uncertainty and managing risk can come in many forms. But it always entails studying the problem from many angles and thinking about what could go wrong. This is true not just for immediate policy questions, but also when we consider longer-term strategic issues.』

ロンガータームイッシューとは。

『One such strategic issue the FOMC faces today concerns the size and composition of our balance sheet in the long run.』

中長期的な米国経済のどうのこうのではなくて、strategic issuesってあったのでまあそうかと思えばバランスシートのお話でした。

『As we announced last week, the FOMC intends to end the normalization of the balance sheet later this year.13 We also agreed that in the long run we should go back to holding primarily Treasury securities in our portfolio.』

長期的にはバランスシートの保有資産は米国債オンリーにしますよと合意しましたと。

『But the FOMC still has to decide on the maturity structure of that portfolio.』

でもってポートの平均残存の話。

『During the crisis, when faced with the zero lower bound on the federal funds rate (ZLB), the FOMC worked to lower long-term interest rates by purchasing long-term assets (known as quantitative easing, or QE) and through a maturity extension program (known as the MEP or “Operation Twist”). The MEP swapped short-term Treasuries for longer-term ones.』

QEやっている時には長期金利下げるために長期債かったりオペレーションツイストをしましたよ。

『The legacy of these programs is that the average duration of assets on the Fed’s balance sheet is currently about five and a half years.14 Before the crisis, it was two and a half to three years.15 』

ということで現状FED資産の平均デュレーションは5.5年です危機前は2.5〜3年でしたよ。

『There are many issues to ponder when selecting the final structure of the balance sheet. The Fed could return to the pre-crisis framework and hold securities roughly aligned with the maturity composition of Treasuries outstanding. This is sometimes referred to as holding a neutral balance sheet. Or, as some have suggested, we could move to holding an even shorter-duration portfolio than before the crisis. So we must ask what additional benefits or costs may come with the latter alternative.』

でもって将来は米国国債の発行済み銘柄の平均デュレーション並みにして「中立のバランスシート」にする、というのもこの前アナウンスされていましたが、しかしその市場残存平均並みというのが本当に中立なのかというとそれもまた議論の余地ってあるんじゃないのかねと思ってしまいます(市場残存並みにするのは良いけどポートがラダーな訳ではないのでフローが新規発行とミスマッチしますわな、まあ長期債買うのが長期金利に影響与える為じゃないからということでミスマッチは知らんがなとなりそうですが)。

まあそれはそれとして、「もっとデュレーションを短くする」という議論もあるそうな、というかそれが普通じゃねえのかと思うのですが、それに対するプロコンのお話が以下にある。

『Well, if bad economic circumstances caused us to return the fed funds rate to the ZLB, a shorter duration of assets would allow us to conduct a large maturity extension program that would provide additional accommodation without increasing the size of our balance sheet.』

短くしておけばゼロ金利制約でバランスシート使う時に「平均残存を伸ばす」という緩和手段の余地が残るとな。

『So if you were concerned about expanding the size of the balance sheet through QE, you might find this configuration attractive. 』

よってバランスシートを使うにもサイズじゃなくてオペレーションツイストが使えますよ、だそうです。まあ本当にそれって効くんかいという気はしますが。

『But is this a choice free of so-called unintended consequences? Here is one issue to consider: Think about the neutral federal funds rate at which policy is neither accommodative nor restrictive.』

ここで中立金利との関係の話が出てくる。

『This is one definition of the famous r*. One factor determining r* is the level of long-term interest rates. All else being equal, the Fed holding shorter-maturity assets would mean more long-duration Treasury bonds in the hands of the public, higher duration risk for market participants, and higher long-term Treasury rates.』

『In other words, on its own, a shorter-maturity Fed portfolio would generate somewhat more restrictive financial conditions and headwinds for the economy. This means the equilibrium fed funds rate associated with a shorter-maturity portfolio would have to be lower to offset the higher long-term interest rates.』

『In turn, a lower r* means higher odds of hitting the zero lower bound; that is, we would have less scope to cut rates before reaching the ZLB.』

ナンジャソラという説明ではありますが、Rスター(実質中立金利)の決定要素の中に長期金利水準があって、FEDのバランスシートが短ければ長期金利を押し上げる効果があるので、バランスシートのデュレーションを短くすると、それだけ金融引き締め的になるので、利下げの糊代をそこで使ってしまう(利上げしにくくなるから)という事のようだがまあこの辺の話はだいぶ眉唾ではあると思いますけどまあFEDはそういう説明をしていますからねえ。

『Now we have to ask about the magnitudes. Quantitatively, would this effect on r* be negligible? Or would adding the capacity to do a big maturity extension program to fight the ZLB actually lower r* sufficiently to induce meaningfully higher odds of hitting the ZLB in the first place? And if it did, would it matter? Would the extra MEP ammunition be enough to offset the reduced capacity to lower rates?』

ただこの問題に関してはそもそもどのような効果が実際にあるのかとかその辺のイッシューもあるし、ほかのプロコン(オペレーションツイストが使い勝手良いのならバランスシートが引き締め的になるよりもツイスト実施の余地を残しておく方が良いという選択肢もあるし、みたいな話)も考えていくそうな。

『Moreover, in this world with higher odds of hitting the ZLB, we could, paradoxically, end up using active balance sheet policies-the MEP-more frequently because we chose a balance sheet composition aimed at limiting the use of quantitative easing! Would this paradox pose any problems for the Fed?』

ゼロ金利制約にポンポン引っ掛かるようになる時代になるとバランスシートもQEの余地を残す必要があるけどそれは引き締め的になるので(ホンマカイナという話はともかく)パラドックスですよね。

『Clearly, much work is needed to decide on the portfolio duration that will best help the Fed meet our dual mandate objectives. I am open-minded on this question. But managing the risks in this decision is of paramount importance in today’s world, where r* is significantly lower than before to start with and the ZLB is too close for comfort.』

『This example illustrates how thinking through the implications of a seemingly simple policy question can reveal many important and complicated issues. This is true of a number of other balance sheet questions and other strategic monetary policy issues facing the Fed. It is incumbent on us to study these carefully, considering the possible pitfalls as well as the clear benefits. Only then should we make our policy decisions.』

なんかやたらバランスシートの将来のあり方に関することを重視しておられます。

『Commentators often bemoan the unintended consequences of a particular policy decision. Risk management tells us we should do all we can to think ahead of time about what those consequences might be. If the costs are large enough relative to the benefits, we should adjust policy accordingly. This does not mean we can render policy riskless. But it does mean we should manage the important risks as best as we can. This goes for both our near-term policymaking and our longer-term policy frameworks and strategies.』

でもってリスクマネジメントアプローチが重要ですよという話で締めるのですが、これはハト派のエバンス先生リターンズという感じですが、それにしてもバランスシートのデュレーションがどうあるべきかという話をここまで大騒ぎしてやるものなの(大体からして時代の変化とともにニーズが変わっていくから発行当局だって発行年限の調整は行うのに、過去の部分まで含めた既存銘柄の平均残存にあわせる、というアプローチが本当に中立的なのかという時点で話が?????ではあるんですが)なのかねとは思いますけどまあそういうことで。

#虫干しネタばっかでどうもすいません




2019/04/05

お題「この前までしばらくタカ気味だったエバンスさんすっかりハト転の講演から(先月末のネタですいませんが)」

ほー。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-cain-idJPKCN1RG2K6
2019年4月5日 / 04:12 /
米大統領、FRB理事にケイン氏指名へ 大統領選出馬経験者

『[4日 ロイター] - トランプ米大統領は、連邦準備理事会(FRB)理事にピザチェーン会社の元幹部で、大統領選の共和党候補者指名争いに出馬したハーマン・ケイン氏(73)を指名する方向だ。政権当局者が4日、明らかにした。ケイン氏は2月、フォックス・ビジネス・ネットワークのインタビューで、デフレが懸念材料と指摘し、インフレ抑制を狙った利上げ支持に傾かない姿勢を示唆した。金融政策決定で賃金動向を材料視する意向も示した。最近の賃金上昇傾向を踏まえると、こうした考えは利上げ支持の可能性を示すとも解釈できる。ケイン氏は1990年代、カンザスシティー地区連銀で役職に就いた。』(上記URL先より)


〇ハトからタカ化してまたハトになっているコウモリ先生シカゴ連銀エバンスはんの講演ネタでも(その1)

ぼちぼちこの前から成敗しております最近ホイホイ出てくるFED高官のネタですが、ハトだったのにタカになって最近またハト転換しているというコウモリ系のエバンス、というとまあちょっとエバンスさんには酷評になりまして、この人って(ブラードも割とそうだとは思うのですが)インフレを重視していて、金融不均衡とかそういうのはほぼスルーという傾向があって、ここに来てハト転しているのは昨日と一昨日ネタにしたデーリー総裁の講演的に言えばおちんぎんと物価のリンクが切れていて、賃金上がってもそんなにインフレが高進しないんだったらそらタカである必要ないじゃん、となっているだけではあると思うのですけど、直近の講演は先月末に行われた香港(クレディスイスアジアパシフィックのセミナー)での物でデーリー総裁と同じ時の講演でございまする。

https://www.chicagofed.org/publications/speeches/2019/revisiting-risk-management
Last Updated: 03/25/19
Revisiting Risk Management in Monetary Policy
A speech presented on March 25, 2019, at the 2019 Credit Suisse Asian Investment Conference in Hong Kong.

・最初にまとめがあるので便利

最初が『Introduction and synopsis』でして、

『Today, I’d like to discuss my outlook for the U.S. economy and my views on risk management in monetary policy-both from a current perspective and from a longer-run one. Of course, my comments reflect my own views and not necessarily those of the Federal Reserve System or the Federal Open Market Committee (FOMC).』

というのはお約束のディスクレーマー。

『Let me begin by laying out my main points. 』

ほほう。

『●We made good progress toward our dual mandate goals in 2018. Growth was strong, the unemployment rate declined further, and inflation picked up and is now near our 2 percent objective. Looking ahead, I note that the fundamentals for growth in the U.S. remain good. If the economy performs as I expect, in 2019 we should see growth falling, but still being close to trend; continued healthy labor markets; and inflation consistent with our 2 percent target.』

ということでして、エバンスさんは今年見通し通りに推移すれば経済は(強かった昨年よりも)成長が鈍化するけど潜在成長率程度の成長は維持し、雇用は引き続き強く、インフレは2%のターゲットに整合的に推移するだろう、という見方になっています。

でまあここで成長率見通しと潜在成長率の関係が「still being close to trend」となっていて、しかもマンデート達成水準なので、そうなると中央銀行としては心地よい水準である、という話にはなるのですが、中立金利との関係ってどうなっているのかというのはここではスルーされています。

『●However, the U.S. economy faces many uncertainties and risks. In particular, financial market developments of late last year and continued uncertainties regarding growth abroad and trade policy have cumulated to increase the downside risks. Indeed, the recent data on U.S. economic activity generally have been softer than anticipated.』

不確実性とリスクの一発目がいきなり「financial market developments of late last year」ってのがアレで、それはパウエルの自作自演モードによるものが大きくて、ドテンして今は金融市場は(株だけは無くてクレジットも)以前のヒャッハーモードになっているような気がしますし、これ気にしだすとドテンドテンの連続になるので(全く無視しろとは思わないけど)何ぼ何でもおまいら気にし過ぎと思うのですけどね。

でまあそれ以外の不確実性とリスクに関しては海外(概ねユーロ圏が今はアカンタレじゃろ)と貿易協議の話になっとりますが、ついでに最近の経済指標も予想よりも弱いですなとかゆうとるんですが、まあ本来ってそれが一時的なのかどうかという点について見るという話になるはずなんですが、どうも株価とホワイトハウスを見てションベンちびってしまったのを誤魔化すために足元の指標の話をしているんじゃないか感は漂う。

『●Of course, there could be upside surprises. One would be the absence of any additional drag on activity from the shocks I just noted. Another would be a resurgence of momentum in consumer and business spending.』

今説明したショックからの追加的な景気下押しが無ければアップサイドサプライズってナンジャソラという感じですな。モメンタムが戻って来る、というのに関してだって、企業はともかく消費の方は株価がヒャッハーと戻るとヒャッハーとなるのが米国様の仕様(逆に3〜6か月くらいあばばばーとなるとすかさずあばばばーになるのも仕様)ではないかと思うんだが。

『On the price front, pressures on productive resources could boost inflation more than I currently expect.』

物価が思った以上に上昇圧力掛かるとアップサイドサプライズというのは分かる。

『Any of these various crosscurrents could pull the economy in a different direction than my baseline expectations. However, at the moment, the risks from the downside scenarios loom larger than those from the upside ones.』

最近のFED流行語大賞「crosscurrents」キタコレですが、今のところダウンサイドリスクの方が高いとな。

『●In situations like today, when there is heightened uncertainty, best practices in risk management dictate taking a prudent approach to policy. As the January and March FOMC statements noted, the Committee will be patient in assessing the implications of these crosscurrents for the economic outlook and will determine future adjustments to policy accordingly.1』

金融政策の話キタコレですが、risk managementのスタンスだからprudent approachなんですと。

『●This type of wait-and-see approach to policy when faced with heightened uncertainty is not new. As I’ll discuss later, the FOMC has adopted it many times in the past, and it has served the U.S. economy well. Risk management also is important in setting longer-term monetary policy frameworks and strategies. The FOMC currently is reviewing such structural questions. I will also give an example of how I see risk management factoring into these important decisions facing the Fed.』

「The FOMC currently is reviewing such structural questions」とかほほーという感じですな。では本文。


・経済見通しに関して

『Outlook』という小見出しが次にあるのですが、まあ大体さっきの要約でお察しなので前半すっ飛ばして先行き見通しの所をちょこっと引用しませう。

『As I look ahead, supportive fundamentals lead me-and most other forecasters-to expect growth in 2019 to come in close to potential.』

さっきのまとめでありました通りの認識。

『Importantly, unemployment is low and wage growth is healthy. The associated income growth and backing for consumer sentiment should generate healthy gains in household spending. Business spending should follow suit to satisfy household demand.』

おちんぎんの上昇はヘルシーとの由。

『That said, my outlook for growth today is somewhat less sanguine than it was last autumn. The main reason is that a number of downside risks emerged late last year.』

昨年の秋よりも私の見通しはちと下がっていてそれは昨年後半に起きたダウンサイドリスクによります。

『On the international front, foreign growth in 2018 slowed from a stronger pace in 2017. And recent forecasts are for a further slowdown this year and next.3 There also is a concern that events such as a disorderly Brexit could have important spillovers to U.S. financial markets. U.S. trade negotiations with China and other trading partners add another layer of uncertainty.』

ということですが、これって海外経済の減速以外って別に昨年後半に始まった話ではない(テンションは上がったけれども)とは思うんですけどねえ。

『These issues generated quite a bit of volatility in financial markets beginning last October.』

どう見ても歴史改竄です本当にありがとうございました。お前らの親分が急にタカ派全開の話をおっぱじめだすからだろいい加減にしろ。

『Investors appear to be calmer today, and some financial indicators have improved noticeably. Still, on net, the market spasms have left us with effectively tighter overall financial conditions than we had last autumn, providing less support to real economic activity.』

ファイナンシャルコンディションと言ってるけど株価とかクレジットスプレッドとかの話って思いっきり金融市場の話な訳で、そっちにフォーカスして反応するとアラン・ブラインダーの言う「自分の尾を追う犬」リスクを高めるだけなんだが、というかもうそうなってるけど。

『Indeed, the latest data point to appreciably slower momentum so far this year in consumer spending, housing, and business investment.』

「the latest data point to appreciably slower momentum」なんですとよ。でまあちょっと話がずれますけど、この手の企業や家計のコンフィデンスだのモメンタムだのを重視しすぎるというのも何だかなあとは思う所でございまして(実際問題として中銀がこの辺強調するもんだから最近はやたらISM系の指標に盛大に市場が反応するようになっている)、モメンタム系ってのもこれ市場ではないですけど雰囲気でも振れる話で、それを無視するのは良くないけど、先行指標だからと言って過度に重視すると今度はアラン・ブラインダー以下同文。

『Another complication is that our picture of the economy is clouded by the fact that the prolonged government shutdown has delayed many key data releases. It is difficult to discern if these weak readings are a temporary pothole or a more sustained soft patch.』

政府機能一部閉鎖に伴って経済データの取得に一時的に中断が生じていたので、それによるノイズがある可能性があって、経済のトレンドを見るためにはその要因が排除されたデータ(となると3月以降とかのデータになるから5月とかに出てくる奴ってことですかね)を見ないとちと判断しにくいというのもあるんです、というのはへいへいそうだっかとは思う。

『For some time now, most forecasters and I have been predicting slower growth in 2019, reflecting the combined effects of waning fiscal stimulus and removal of monetary policy accommodation. Factoring in the additional news, my current forecast is for growth be around 1-3/4 to 2 percent this year. Last fall, I was projecting it would be about 2-1/4 percent. Now, the lower end of this range is actually in line with my view of the economy’s long-run growth potential. So we’re not looking at a bad number; still, the economy won’t feel like it is doing very well compared with last year’s very strong performance.』

2019年については昨年時点での見通しよりも成長見通しを0.25-0.50%程度下げたけどそれは潜在成長率並みなので景気後退という話ではないですよと。

『In addition, I expect core inflation to remain consistent with our 2 percent objective in the near to medium term.』

物価についてはさっきのまとめ通り。

『All told, the broad contours of my forecast of the economy are consistent with the median projections made by my colleagues on the FOMC, although I am looking for a bit softer activity this year.4』

ということでワシの見通しはほぼSEPのメディアンフォーキャストと同じでっせ、だそうな。


・金融政策に関して:両論併記しているけどまあ可能性から言ったらダビッシュ側になるわな

次の小見出しが『What about monetary policy?』である。

『The FOMC must always weigh crosscurrents and uncertainties. And today there are many:

●Are the developments I just described consistent with growth simply moderating from a strong 2018 to a rate closer to the economy’s sustainable potential-as in my baseline forecast? Or are they signaling a more substantial slowdown?

●What about inflation? What is keeping it so low despite 3.8 percent unemployment? And will these factors continue to influence pricing dynamics?

●As for policy, is the federal funds rate close enough to neutral to support our goals? Or is policy exerting a different impetus to activity than we currently think?』

ということで、経済見通し通りに推移するのか、物価はこの失業率の中で上昇しないままなのか、そもそも今の政策金利がニュートラルに近いのか、というのが今の論点ですね、とまあ仰る通りですなという話から入ります。

『Given the uncertainty over the answers to these questions, the FOMC has decided to pause and take time to assess the economic environment to see how these various issues play out.』

でもってこれらに関する答えをするのには不確実性があるという中で、FOMCはこれらの論点がどのように進展していくかを見るためいったん動くのを止めました、という話ですが、なんかこれってまあ元々がそうなのか、それともパウエルがあまりにもハトハトモードになって(先般ネタにしましたし、皆様もご案内の通りで、FOMCでの見せ方に加えてパウエルのあの会見じゃあメッセージが先行きヤバイヨヤバイヨって感じになっちゃうわけで、とりあえずパウエルは言ってる話を強調しようとして上の時も下の時もものの言い方が強くなってしまうのを改めないとイカンとは思うのですが、まあそのパウエルによって引き起こされている利下げモードの火消しモードでこういう話をしているのか、その辺がよー分からん。なおエバンスのこの講演と質疑自体は確か市場的にはダビッシュネタにされておったはずだが。

『If growth runs close to its potential and inflation builds momentum, then some further rate increases may be appropriate over time to ensure that the economy settles in on its long-run sustainable growth path and that inflation runs symmetrically about our 2 percent target.』

もし成長が潜在成長並みで物価がモメンタムをもったならば追加利上げが必要、という話だがまあ物価がモメンタムもって上がるとあんまり市場が思っていないのでここには反応しないですよね。

『In this scenario, the path for rates will depend crucially on any signals of an acceleration in core inflation. Frankly, though, given how muted inflationary pressures appear today, a rise to 2-1/4 to 2-1/2 percent is not a big concern to me at the moment.』

しかもここでは「コアインフレーションのany signals of an acceleration次第」という話だし、しかもその次に「今の抑制されたインフレ圧力からしたら2.25-2.50%に物価が上昇しても特に慌てる状況ではない」とか言っているのでこういえば普通にハトとして捉えますな。

昨日一昨日ネタにしたデーリーさんの話で経済のモメンタムに対して物価のリンケージが切れているという話がありますように、まあ何かの原因があってそういうことになっている(構造要因なのか低成長要因なのかその合わせ技なのかという事でしょうが)のを意識してこういう話になっている訳でして、昔の経済みたいに経済全体の需給バランスに物価がモロに反応するような時だったら2.5%に上昇したらもう慌てだす時期なのでして、まあこういう時点でのんびりしてるなあという話なのだが、話は若干逸れますけれども、そういう環境下での緩和継続というのはたぶんアセットバブルを創り出す方向に行くんじゃなかろうかという話に関して敢えてスルーしているのか無頓着なのか分からんし、FEDビューの仕様なのかも知れませんけれども、金融政策枠組みの話となりますとそういう議論も見たいところではあります。

『In contrast, if activity softens more than expected or if inflation and inflation expectations run too low, then policy may have to be left on hold-or perhaps even loosened-to provide the appropriate accommodation to obtain our objectives. As we often say, policy will be data dependent.』

とまあこっちに確か市場は反応していた筈。

・リスクマネジメントアプローチだそうだがどう見てもアップサイドリスクを丸無視しておりますな

『Managing near-term risks』という小見出しである。

『In explaining the pause in policy at his January press conference, Chair Powell noted that given the uncertainties we face today, commonsense risk management suggests a patient, wait-and-see approach regarding future policy changes.5 FOMC communications since January have reinforced this sentiment.』

『The Chair also noted that such a risk-management approach has served policymakers well in the past. But what do we mean by risk management? How does the current situation compare with what we have done in the past?』

でもってそのリスクマネジメントスタンスのポリシーとは?

『The Fed sets monetary policy seeking to achieve our dual mandate of maximum employment and symmetric 2 percent inflation, with both goals being equally important. A key baseline for thinking about policy is the path for the federal funds rate that is most likely to align future output and inflation with these policy goals.』

それは当たり前。

『But the world is an uncertain place. Unforeseen events will cause even the most carefully constructed forecast to go astray. Risk management entails thinking about what could go wrong with the forecast and then judging if policy should be adjusted from the baseline one way or the other in light of alternative scenarios. In other words, at times, we may want to adjust policy as insurance against bad outcomes.』

どうもこの説明だと、悪いデータ出てくるとそっちに反応しそうだし、フォワードルッキング的にどうなのという話になっていないので、利上げに関しては普通にビハインドしそうな説明に思えるんだが(個人の感想です)。

『Economic theory gives us insight into when risk management makes sense. One example is when policy losses are asymmetric. That is, when we find ourselves in a situation where the costs of output or inflation falling on one side of its expected path outweigh the costs of falling on the other side. Another example is when the range of possible shocks that could move the economy from its modal path is skewed. Uncertainties or asymmetries in how policy tools affect the economy can also enter the picture.』

ということで、経済が下に行った時のマイナスの方が経済が上振れた時のマイナスよりも大きくて、経済に対するショックが起きた場合も上方ショックと下方ショックの影響が下方ショックのマイナスが大きいという状態であるならば、リスクマネジメントの姿勢として下方ショックに備えるべき、ということで結局のところダビッシュということですな。

『Theory tells us that the appropriate policy response to these situations depends on the details. In some cases, heightened uncertainty dictates moving cautiously-a result known as the Brainard principle.6 In other cases, policy should tilt away from the baseline path to reduce the odds of a miss in the more costly direction. Theory also points to situations where the best policy response is to move aggressively to preempt the potential damage that could come from a particularly adverse event. 』

やたらTheoryを連発するわブレイナードプリンシパルとか出してきていますが、要するにエバンスの認識だとインフレ上振れリスクが少ないので(緩和政策によるアセットバブル発生や緩和政策による資産配分不均衡の発生という論点の論点を明らかに軽視した上で)下振れに備えるスタンス(なので利上げはしない)を取りましょうという話なので利上げする気はないし、まあこれだと物価重視のあまり金融分均衡をスルーするというお約束のパターンですなという感じで。

『Of course, the prescriptions from economic theory don’t always translate cleanly into real-world policymaking. But it’s safe to say that in some form or other, risk management has often influenced the FOMC’s decisions. 』

あらそうですか、ということで以下過去FRBが行っていたリスクマネジメント型金融政策という話になるのですが、ここらで時間が来てしまったので、とりあえず現世利益の部分ってだいたいこの辺までなので、今日はこの辺で勘弁していただきとう存じます(続きは後日、というかたぶん月曜)。

#ただこの説明だと普通は利下げにならないというのはテイクノートすべきだと思うんですけどね





2019/04/04

お題「日銀保有国債短国計数雑談/デーリーSF連銀総裁講演から(続き)」

発言詳細がご丁寧にも出ていますが、
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190403/k10011872051000.html
塚田国交副大臣「そんたく」発言の詳細
2019年4月3日 18時32分

『吉田氏が私の顔を見て、『塚田、分かっているな。これは安倍総理大臣の地元と、麻生副総理の地元の事業なんだ。俺が、何で来たと思うか』と言った。私はすごくものわかりがいい。すぐそんたくする』(上記URL先より)

忖度の前の吉田氏の発言(として塚田さんが言った内容)の方も大概で何というガバガバ感の漂う発言なのかと、あと11年前に事業を止めたのと民主党政権の話を並べてます(記事中にありますが引用はパス)けど11年前は民主党政権ではないので事実認識の方もアレですな。

〇今年も来年も20兆円割れの国債買入増加であることを再確認

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

ということで改めて計算してみました(なお計算内容は当然ながら自分で確認しているだけなので内容については本人合っているつもりですが違ったらゴメンやで)。

2019年暦年(以下全部額面ベースの話になります)

昨年末の残高:444兆3,070億円
3月末の残高:448兆6,971億円

ということなので1−3で増えたのが4兆3,901億円になりまして、今のペースでの国債買入が続きますと、1年以内の買入を除いて変動利付国債の買入を月500億円とみなして計算すると月間買入が5兆9,400億円。残り9か月で偶数月が1回多いので500億円補正を入れて今年の残り買入が53兆5,100億円になって、これから年内の償還が39兆2,496億円ということで、1−3での増分を加えますと、

2019年暦年の国債残高増加見込み額:18兆6,505億円

ってまあこの前長期輪番減らした時に計算したのと同じくらいになるのは当たり前なのですけれども、20兆割れという数字が出て来まして、これは木内さんもニッコリという所ではありますが、YCCは木内さん提案並みという所ですな、しらっと骨抜きにする匠の技恐るべし。

2020年暦年の償還額がこの間ちょっと増えて、償還額が52兆220億円になってましたので、買入の方を5兆9,400億円の12倍で計算しますと、

2020年暦年の国債残高増加見込み額:19兆2,580億円

となりまして、償還の方が2月末対比で6000億円少々増えた結果、来年の国債残高増加見込みも明確に20兆円を割り込むようになりましたな、というただの計数確認ですが計数だけに確認を何回もするので手間だけはかかりますな(汗)。

なお、営業毎旬報告に関しては今月は半期で決算処理みたいなのがあるはずで、保有国債の評価額に関しては償却原価によるアモチアキュムが行われたりする関係上いつもよりも多少出てくるのが遅れまして、現時点では営業毎旬ベースでの残高の方はパスということで。


あと短国ですけれども、
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/index.htm/
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額

額面ベースの保有合計が7兆8,662億円で、2月末が7兆9,352億円となっていて、ほぼ同じになったのですが、今月は償還が2兆1,094億円なので、短国買入がパターンダイヤの6M1Y入札の後に5000億円でその他2500億円の月間1兆5000億円だとしますと、今月は若干残高が減少する(ただし5月は償還が7,661億円なので5月は増加する)という事になるんですかね。


〇需給ギャップが盛大に拡大しておられますが

http://www.boj.or.jp/research/research_data/gap/index.htm/

こちらの計数のエクセルちゃんを拝見しますとですな、

2018.1Q 1.26
2018.2Q 1.46
2018.3Q 1.26
2018.4Q 2.23

ということで4Qでは何と需給ギャップが2%台に乗るという快挙なのですが、従来の日銀の分析を見ますと(例えば展望レポートの背景説明含む全文というのでも読んでいただきますと図表が思いっきりありまして、直近の展望レポートだと図表49って奴(33ページにある)になりますな)需給ギャップと物価上昇率のフィリップス曲線分析では、需給ギャップが2四半期先行で物価とプロットしておりますです。

ちなみに直近の展望レポートはこちら
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1901b.pdf

・・・・・・ということは2018年第4四半期から2四半期先となりますと、今年の4−6月期には物価がさぞかし力強く上がってくるのではないか、とまあ斯様に思う訳でございますが、夏に向けて物価指標を正座しながら待機してみたいものだと存じます(棒読み)。

つーことでですな、「物価上昇のモメンタムは維持されている」って言い訳なんですけれども、そのモメンタムが需給ギャップと期待インフレ率で説明されているのに対して、需給ギャップが順調に強くなっているのに物価の加速が見られませんってことになりますと、何がどうすると本当に物価が上がるんでしょうか必要な施策が抜けてませんですか、みたいな話になった時にどう申し開きをするのかという話ですし、まさに2四半期後方の直後に7月展望レポートというものがありまして、これはどうも7月展望レポートが屁理屈的な正念場になりそうな悪寒が更に高まって参りましたという風に思うのでした。


〇デーリーSF連銀総裁講演ネタ(その2)

URLが長い・・・・・・・・
https://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/mary-c-daly/2019/march/the-bumpy-road-to-2-percent-managing-inflation-in-the-current-economy/
https://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/mary-c-daly/2019/march/the-bumpy-road-to-2-percent-managing-inflation-in-the-current-economy/Daly-Speech-Bumpy-Road-2-Percent-Managing-Inflation-in-Current-Economy.pdf

The Bumpy Road to 2 Percent: Managing Inflation in the Current Economy

Remarks to The Commonwealth Club
San Francisco, California
By Mary C. Daly, President and Chief Executive Officer, Federal Reserve Bank of San Francisco
For delivery March 26, 2019

・インフレ期待のアンカーという話がなんかフワフワしているんですが

昨日の続きで『The Fed Wedge』って小見出しから参ります。

『There’s another wedge weakening the link between economic activity and inflation, and it might surprise you. It’s the Fed.』

ほほう。

『The actions of the Federal Reserveーand the success of its monetary policymaking decisionsーhave played an important role in keeping inflation tethered around 2 percent, in good times and bad.』

まあそれは良いとして。

『To explain how, we need to go back to one of those bad times. In the 1970s, a series of economic shocks hit. One shock was an oil embargo that pushed up oil prices. Because of the cost-of-living adjustments written into many workers’ contracts, this automatically translated into wage increases. These wage increases led to price increases. And when the Fed didn’t react aggressively enough to stem the rising inflation, a vicious cycle began.』

『People started to think high inflation was just a fact of life. Inflation eventually peaked in the double digits. It wasn’t until the Fed raised interest rates dramatically that inflation finally started to decline. But, as some will remember, that was a painful process.』

この辺は昔の話で、高インフレになった後にインフレ下げるのも結構なpainful processでしたな(ボルカーがマネタリーベースコントロールとか方便使って金利を思いっきり引き上げた訳でして)というお話。

『Once inflation was under control, the Fed committed to keeping it that way. This commitment became a well-known and accepted position that people could depend on. And it ushered in the conditions that dominate today-the era of well-anchored inflation expectations.』

現在は「today-the era of well-anchored inflation expectations」だそうでして・・・・・・・・・

『We see this shift in the data. Inflation expectations-of both businesses and consumers-started trending down in the late 1980s, and have remained close to the Fed’s 2 percent target since the mid-1990s.8』

インフレ期待が2%に向けて低下(安定)しだしたのが80年代後半で90年代半ばには2%近くになりました、ということで・・・・・・・・・

『Well-anchored inflation expectations have great benefits.』

ほうほうインフレ期待がよくアンカーされているとどんなベネフィットがあるとな。

『When people know that the Fed is committed to keeping inflation at 2 percent, they’re more likely to see inflation fluctuations as temporary, and stop short of building them into contracts like wage and rental agreements.』

アンカーされているので多少の振れがあっても物価上昇率がが元に戻りやすいとな。

『In other words, when the Fed is credible, it’s easier for the economic system to absorb shocks.』

そこまで言うかという感じですが、経済システムのショック耐性も高まるんですとよ。

『This keeps inflation from plummeting when the economy is weak, and a lid on inflation when the economy is strong.9』

それによって経済が弱い時でもインフレが落ちないで済むし、経済が強い時にもインフレが高進しないで済むというホンマカイナという説明になっています。

『But here’s the twist. When the Federal Reserve is doing its job well, the link between economic activity and inflation is weaker-much like we see today. This is the essence of the “Fed wedge.”』

昨日引用したところでは構造的要因の説明をしながら労働需給や賃金と物価のリンクが切れてきている現象について「Wage and Price Wedges」とか言っていたわけですが、FEDの2%物価目標の信認が強いので強力にアンカーされた結果として「Fed wedge」が起きて経済のブレに対しても物価が2%で安定しますって話になる訳でして、いや言いたいことは分かるんだけどちょっとそれはという感じがするのですよね・・・・・・・

つまりですな、でもってその次の小見出しが『Maintaining Credibility in a Low-Inflation Environment』ってなっていまして、

『So what does all of this mean for monetary policy?』

はい。

『As I mentioned earlier, inflation has generally been low for the past decade. In fact, for the past seven years, inflation has consistently come in below our 2 percent target.』

ここ7年程物価が2%よりも継続的に低かったです、って話の辺りから理屈が微妙になるんですけどね。

『This may not seem like much of a problem at first glance. After all, isn’t it a good thing when prices stay roughly the same?』

『But too-low inflation has its own risks. It makes the chance of deflation-or negative inflation-more likely. And it makes it harder for the Fed to adjust interest rates in the face of economic shocks.10』

物価が2%よりもちょっと低くてもいいじゃないかというのはアカン、という説明ですが論法は通常の説明ですね。

『The bigger problem is that the Fed has explicitly stated that 2 percent is our goal, and that this goal is symmetric. This means we care just as much about long periods of too-low inflation as we do about long periods of too-high inflation.11』

でまあ高いインフレが継続するのもよくないが低いインフレが継続するのも良くないとかいう話で、

『Inflation consistently below target tugs at inflation expectations. While there is no sign today that the anchor has drifted down significantly, we are seeing signs that inflation expectations are edging lower.12 This bears close watching.』

その結果インフレ期待が下がってしまうのがアカン、だから今のところ大丈夫っぽいけど今後のインフレ期待の動向には注意したい、という話で、

『We need to be vigilant on this front, and work to deliver 2 percent inflation on a sustained basis. The Federal Reserve’s continued credibility with consumers and businesses depends on it.』

とまとめている(その後に「Conclusion」がありますがパス)のですけれども、この論法の何が怪しいかと申しますと、そもそもてめえでその直前に、「Fed wedge」が起きて経済のブレに対しても物価が2%で安定しますって話をしている訳で、じゃあ何でここ7年間は物価上昇率が低かったのかという話をしていないので、「This bears close watching」って言ったってじゃあお前何をするんだよ具体的に、というのがワケワカラン事と、「Wage and Price Wedges」の所では思いっきり構造要因の話をしている訳でして、構造要因で労働市場と物価のリンケージが切れている(昨日引用したように現象の説明部分では「Disrupted Links」という小見出しまであった)んだったら、そもそもインフレ上げるのが金融政策で出来るのかよとか、「today-the era of well-anchored inflation expectations」なんだったらそもそも何で物価が2%から下がった状態が継続しているのかよとか、なんかツッコミどころが満載の話になっていて、どういう整理になっているのかがワケワカランという風に思ったんですけど。

しかしこの説明を見てて思ったのは、「そもそも論としてインフレ期待がアンカーされている」というのが本当にそれインフレ期待なのか(成長期待とかじゃないの、とか)とか、何と申しますかそもそも論のインフレ期待という概念は実は想像上のもので別の物ををインフレ期待と言い換えていただけだったのではないかとか、どうも頭が悪いので色々と考えているうちに頭がウニになってしまいましたので、頭の良い方に整理して頂きたいものだと思うのでありました(何という結論放りだし)。




2019/04/03

お題「短観企業の物価観は大企業がアカン/デーリーSF連銀総裁講演より(その1)」

もうこの国は一生やってろという感じですがメイ首相にはさすがに同情する。
https://jp.reuters.com/article/may-brexit-extend-idJPKCN1RE1ZJ
2019年4月3日 / 02:38
英首相、EUに離脱期限の再延長要請へ 野党党首とも協議


〇短観企業の物価観云々も製造業ェ・・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/bukka/2016/tkc1903.pdf
短観(「企業の物価見通し」の概要)―2019年3月―
第180回  全国企業短期経済観測調査 


1.販売価格の見通し(現在の水準と比較した変化率)

全規模合計 全 産 業

1年後 前回:0.8%→今回:0.8%
3年後 前回:1.2%→今回:1.2%
5年後 前回:1.5%→今回:1.5%

前回アタクシはこんなことを書きましたのですが、

・・・・・・・・今回は3年後の数字が下がって他がウゴカンチ会長ということでもう書くことがございませんが何か???という風情なのが悲しい。(以上前回12月短観の時の駄文です)

でもって・・・・・・の前は「この2回の間にやっと1年後と3年後の数値が0.1上昇しましたよやったね!と言っても半年で0.1ですかそうですか」というような話をグダグダと書いた次第なのですが、まあ相変わらずの動かざること山の如しではございます。

ただし今回目立ったのは大企業製造業の販売価格判断が下がっていることでして、まあ昨日ネタにしましたように販売価格判断DIが「前回想定していたよりも低下した挙句に先行きも下向き」なので整合的ではあるのですが、これはちょっと唸りますでしょ物価目標達成的に言って。

大 企 業 製 造 業

1年後 前回:0.3%→今回:0.1%
3年後 前回:0.0%→今回:-0.3%
5年後 前回:-0.1%→今回:-0.4%

でもってこれなんですが、前回に関してもその前(9月短観)対比で1年後と3年後の数値が0.1下がっている(5年は9月短観と12月短観同じ)となっていまして、いやー下がりますなあという感じです。大企業非製造業に関しても、

大 企 業 非製造業

1年後 前回:0.6%→今回:0.5%
3年後 前回:1.1%→今回:0.9%
5年後 前回:1.3%→今回:1.0%

とか下がりだしていまして(12月時点では前回比横ばいだったし5年後の数値に関しては前回比0.2%上昇していたのが今回反転下落になっている)、これは中々悲しい展開ではあるのですが、なにせ日銀は「大企業の物価観はエコノミストの経済予測や金融市場動向などの足元に振らされる要素が大きい(ので中小企業の物価観の方がインフレ期待を反映しやすい)」という理屈をとっくの昔に繰り出しているので、この大企業の価格設定判断の所を見ても知らんがなということになるんですねわかりますというところで。


2.物価全般の見通し(前年比)

全規模合計 全 産 業

1年後 前回:0.8%→今回:0.9%
3年後 前回:1.1%→今回:1.1%
5年後 前回:1.2%→今回:1.1%

前回アタクシはこんなことを書きました。

・・・・・・・・うーんこのという感じで、今回は一応上がるには上がったのですが、結局ずーっとこんな感じで動かんのでして、まあこれはこれでアンカーされているんじゃないですかデフレ期待じゃないだけマシという事にしておきませんか、とは思いますが、この調子だと「実際の物価が上がってくると適合的な期待形成が」とかいう話も大丈夫かと思いますし、そもそも論として「日銀が強力なコミットメントとそれを裏付けする強力な金融緩和政策をとることによってフォワードルッキングな期待形成が行われてインフレ期待が上がる」という置物理論あんど黒田ドクトリンとは何だったのかという話になりますし、そら若田部副総裁も「世の中が日銀の示す2%物価上昇を理解してくれません」と泣きを入れるというものですな、ナムナム。(ここまで前回12月短観時のアタクシの駄文より)

ちなみに前回上がったのが「5年後」で1.1→1.2になったのですが、今回あっさり味で1.2→1.1に戻ってしまっていて、前回と同じ感想ですが、「これはこれでインフレ期待がプラスの領域で安定してるからエエンチャウノ」という気もせんでもないのですが、まあ異次元緩和でインフレ期待を直接引き上げるのがどうのこうのという置物リフレ理論は完全に破綻しとるのにどの面下げてエラソウにしとるんだあのトンチキどもはという感想しか起きない、

でもって例によって日銀もすっかり言わなくなった「中小企業のインフレ期待の方が見るべき」の方ですが、

中小企業 製 造 業

1年後 前々回:1.0%→前回:1.0%→今回:1.1%
3年後 前々回:1.2%→前回:1.2%→今回:1.2%
5年後 前々回:1.3%→前回:1.3%→今回:1.2%

中小企業 非製造業

1年後 前々回:1.0%→前回:1.0%→今回:1.1%
3年後 前々回:1.2%→前回:1.2%→今回:1.2%
5年後 前々回:1.2%→前回:1.3%→今回:1.3%

なお前々回の前、とか更にその前、とかの数字もまあ似たようなもんでして、延々とこの辺りで安定しているのでありまして、インフレ期待を引き上げてどうのこうのとは何なんのか小一時間問い詰めたいところではありますな。

ああそれから「2%には届かないがデフレではないのは評価できる」とか置物一派は直ぐに言い訳を開始するのですが、「とりあえず1%を中間目標にしてその後徐々に2%を目指していく」というのは麿日銀時代に既にあったドクトリンで、「それはケシカラン」と散々言ってたのが置物一派な訳で、この状況で達成して居ないのに評価するとか言うのインチキだし、元々物価目標達成したら世の中良くなると言っていた人たちなので物価目標達成しないのに世の中の状況を説明して成果というのはおかしいし、まあそれ以前の問題で足元海外がマドルスルーかもしれない程度の所でアチャー感のある話になっている時点で置物緩和の効果って言ってるけど実はただの海外経済要因(と人口動態要因)だったんじゃないのと言いたくなりますな。

・・・・・・ついうっかり話が逸れてしまいましたが、まあ価格に関する短観は相変わらず残念な数字だし、じゃあそこが残念だからと言っても実は短観の仕入価格判断DIとかと合わせて見るとマージン改善となっていますなあとか、そんな感じではないかと思います(個人の感想です)。


〇デーリーSF連銀総裁の講演をちと見てみたんだがどうも唸ってしまう(という論点まで今日は届かないので2回シリーズな)

SF連銀といえばイエレンが総裁だったりイエレンの後釜がウィリアムスだったりと来ているので注目されるところではありますし、まあ大体そういう所なので「概ね執行部寄り」という感じで推移しているので最近色々と出ているFED高官発言なのですがチェックの順番が先順になる。

URLがあり得ないほどクソ長いので、そのままハイパーリンク貼るとブラウザーの画面が乱れると思われますので、ハイパーリンクは下記URLの途中までの所に貼っております(ので2行表示とかになっていると思います、すいません)。

https://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/mary-c-daly/2019/march/the-bumpy-road-to-2-percent-managing-inflation-in-the-current-economy/
https://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/mary-c-daly/2019/march/the-bumpy-road-to-2-percent-managing-inflation-in-the-current-economy/Daly-Speech-Bumpy-Road-2-Percent-Managing-Inflation-in-Current-Economy.pdf

The Bumpy Road to 2 Percent: Managing Inflation in the Current Economy

Remarks to The Commonwealth Club
San Francisco, California
By Mary C. Daly, President and Chief Executive Officer, Federal Reserve Bank of San Francisco
For delivery March 26, 2019

米国なのにCommonwealthとは?と思ったらこのクラブのコモンウエルスは英国連邦という意味ではなくて単語本来の意味の団体のようですね(思わずサイトを調べてしまいました^^URLは割愛します)。

・インフレーションパズルですよという話をしておりますな

最初の小見出しが『Current Conditions』で現状認識の話をしていますが、こちらは多くのFOMC参加者と同じく経済は潜在成長を上回って推移していて雇用は強いですよという話から入りまして・・・・・・・・・

『Economic models-as well as historical data-tell us that a prolonged economic expansion and a very tight labor market should be pushing inflation up to, or even above, our 2 percent goal. But that’s not what we’re experiencing today. Inflation has remained low-lower than our 2 percent target-for most of the past decade. We’ve grazed 2 percent here and there, including briefly last year. But it hasn’t been sustainable.』

ということで経済モデルあるいは過去の経験からすればこれだけのタイトな労働市場と長期間に渡る経済拡大によっても2%物価が中々行かないですな昨年ちょっとかすったもののまだサステイナブルではないよね、と来まして次の小見出し『Disrupted Links』が小見出しからしてお察し案件。

『So what’s up with inflation?』

どうしたんでしょうねえ。

『Is it time to throw out our models and start from scratch? Have the fundamental laws of supply and demand broken down? And what does all of this mean for monetary policy?』

どうなんでしょモデル(基本的に今はニューケインジアンベースのDSGEですか)を投げ捨てるべきなんでしょうかと来ましたが。

『That’s what I’m going to spend the rest of my time today addressing-the inflation puzzle and what we should make of it.』

インフレーションパズル来ました。

『Let’s start by considering how the links between employment and inflation have traditionally functioned. To do that, we have to go back to Econ 101, and review how monetary policy affects the economy.』

経済学101に戻って、ってまあ要するに従来考えられているメカニズムに戻って、ってことでしょうな。


・金融政策は借入コストを下げることによって効果を出すという基本的な考えに対して・・・・・・・・

さらに続く。

『In short, the Federal Reserve sets interest rates. These interest rates determine borrowing costs. Borrowing costs drive consumer and business spending, which in turn determines the level of economic activity. When economic activity is high, the labor market heats up. A hot labor market allows workers to demand higher wages. And employers pass these wage gains on to consumers in the form of higher prices.』

ごくごく基本的な説明でこれはこれで仰せの通りなのですが、そもそも借入コストを下げたから企業や家計がコストが下がったぜヒャッハーと言って設備投資や消費を拡大するのか、という点を考えた場合、そしてどこぞのジャパンのように既にとっくの昔に借入コストがゼロ金利制約近くの所まで下がってきているというような状況が継続した場合、その効果ってどうなのよというのはありますし、米国だって足元上げましたけど割と長くゼロ金利していましたですからねえ。

『Those are the basics of how things work-in theory, at least. But as a policymaker, I have to focus on the practical.』

それはそれとして実際の所を見るのが政策当局者としての立場です、とおっしゃる通りですなあという話。

『And in the real world, things crop up that disrupt the simple linkages between monetary policy and the economy.』

今言った単純なリンクが切れている、という状況が実際の世界には現れています、という誠に仰せの通りという説明をしている訳で、他の要因の可能性を全然検討しないでQQEで何でも改善したとか言っているトンチキ政策委員は何とかストだの学者だのという看板を下ろすべきではないかと存じます。


・「wedges」なんですって

『Because I’m an economist, I like to call these things “wedges.”』

くさびとかそんな意味の単語ですの。

『And understanding these wedges goes a long way toward understanding the inflation puzzle we’re facing.』

でもってこのwedgesを理解することがインフレーションパズルに結びついているということなんでしょうな。



・まずは「Wage and Price Wedges」である

次の小見出しが『Wage and Price Wedges』でして、

『While there are several wedges that complicate the simple theory connecting monetary policy to the economy, the ones I will focus on today relate to employment, wages, and prices.』

つまりおちんぎんが上がっても物価がアガランチ会長な件に関して。

『As a Reserve Bank President, I spend a lot of time talking to businesses, workers, and community members about what they’re experiencing. And what’s loud and clear these days is that the labor market is changing.』

労働市場に変化が生じているとな。

『An example I hear again and again is the increasing demand from employees for alternative forms of compensation. Employers are being asked to provide benefits like free transportation, flexible workweeks, unlimited time off, and help with things like student loan repayment and even housing. Many employers are providing these benefits in an effort to attract and retain talent. And for some firms, they’ve become a meaningful part of employee compensation packages.』

そうなんですかという所ですが、働き方の多様化というかパートタイム切り売り化現象とか、一部の企業で行われている新しい雇用形態とかそんなのがあるそうで、

『The challenge for policymakers is that these alternative forms of payment aren’t being captured in the traditional measures we use to track wages and salaries.』

そういうオルタナな雇用の状況とか従来のやり方では中々捕捉できませんのよ、だそうです。

『This creates a wedge between the strong labor market we observe and our available indicators of wage growth, and it mutes the signal we’re receiving about the strength of the economy.』

そこで賃金と経済のリンクに繋がっているので、前段で説明したようなオルタナ雇用みたいなのが実は賃金を押し下げている部分があってそれを統計が把握できてないとかそういう認識なんでしょうな。

『Another important wedge that’s been evolving over several decades is the loss of worker bargaining power.4』

もう一つの「wedge」は労働者のバーゲニングパワーの喪失だそうで、

『Declining unionization-along with increased automation and globalization-have made it harder for workers to push for higher pay, even in very healthy job markets.5 This weakens the link between employment and wage growth.』

労働者の組織率の低下、労働の自動化進展やグローバル化によって賃金が上がりにくくなっていると。

『Of course, workers aren’t the only group affected by these changing dynamics.』

次は企業の価格支配力の低下というテーマで、

『Many firms have lost pricing power in a global marketplace, facing ever-increasing competition to hold onto customers.6 This means they have a harder time passing along rising costs, such as wages, to final goods prices.』

グローバル化で競争が高まる中で企業の価格支配力とかコスト転嫁力とかが落ちているというのもありまっせ、というお話で、ちょうど(最初の日本語部分だけしか紹介しませんでしたが)先日日銀でも企業の価格設定力に関するスタッフペーパーが出ておりましたなとか思うのですが、まあそれはそれとしまして、最近はさすがに「グローバル化の進展によって価格が上がりにくくなっている」という話が普通の普通に主流見解になっている訳ですが、この話とて昔は日銀が「中国などの新興国からの低廉な製品輸入拡大によって一般消費財中心に価格の低下圧力がある」とかいう説明をすると、ミルトン・フリードマンの「物価は常に貨幣的現象」とか持ち出すわ、「個別物価と一般物価を混同した素人の説明」とか言い出すわとやって日銀を罵倒しておられた方々が置物リフレ一派だった訳でして、投げ捨てるのはニューケインジアンベースの物価モデルではなく、どこからどう見ても置物リフレ理論となるのではないか、などと思いつつこの続きの部分がまた読んでいて「インフレ期待のアンカーとは何ぞや」という点に疑問を生じるお話だったりするので、続きは明日参りたいと思います(ってのんびりとやっていたら時間が無くなったという段取りが悪いだけなんですけどすいませんすいません)。





2019/04/02

お題「短観私家版チェック(製造業が気になりますな)/入行式総裁挨拶を確認しておく」

ほほう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190402/k10011870041000.html
新元号 6原案中4つは 「英弘」「広至」「万和」「万保」
2019年4月2日 4時34分

という選択肢だったら「令和」だわなあとは思いますが、限界集落円債村の村民としては最後のを見て「満保」に自動変換するのはお約束ではないかと思うのですが如何なもんでしょ(読み方候補は「まんぽ」ではないみたいですが)。


〇短観私家版チェック

短観概要
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2016/tka1903.pdf

本当はこれ細々とみていくと色々と面白いと思うのですが残念ながら本職でも何でもない不肖このアタクシなので毎度気にしている定点観測ということでご勘弁。


・先行きDIの達成度合い

           (12月時点)     (3月時点)
          現状→3月予測    現状→6月予測
製造業大企業   +19→+15     +12→+6
製造業中堅企業  +17→+11     +7→+3
製造業中小企業  +14→+8      +6→▲2

非製造業大企業   +24→+20    +21→+20
非製造業中堅企業  +17→+13    +18→+12
非製造業中小企業  +11→+5     +5→+5

前回12月短観ではこんなことを書いておりました。

前回は製造業ピークアウトかと思わせる怪しげな数値をたたき出していた短観ちゃんでございますけれども、今回は前回時点の予測をプラス(除く製造業大企業)して達成しているので無問題という感じがします。なお短観DIの市場事前予測は知らん(無頓着)。あと、これ先行きDIが弱いというのはネタになる話ではあるのですが、基本的にこの位強い状態で、かつバンバン上がる訳でもないという地合いにおいては、先行きDIは保守的に出てくるのが仕様なのでそこはそんなに気にしなくてエエンチャウノとは思います。(以上は12月短観の時に書いた駄文より)

という風に書いたわけですが、今回はそら(生産と輸出が弱いというのが出ているから)そう(製造業の業況感は悪くなる)よという感じで製造業がだいぶ芳しくないし、製造業中小の先行きDIがマイナスとか久々にアチャーなもんを見ましたが、前回の先行き予測DIが割と堅めに出ていた筈なのですがそれをも下回る現状判断DIというのもアチャーですし(なお一応どこぞのベンダーで市場予想というのを今回は念のため見てみましたが、まあ市場予想の現状判断DIとそこまで大差がある訳ではないので製造業絡みの指数からしたらこの程度の悪化はシャーナイナイなのかも知れませんけど)、堅めの先行き予想よりも今回の足元悪いし更に今後も下向き、というのはちょっとねえという感じではあります。でもって最近日銀公式的に「設備投資」「消費」が堅調というので前向きの循環メカニズム云々というのを引っ張っている面が多々ある中、この業況感の悪化が設備投資に影響してくるのか(って設備投資計画チェックしろとツッコまれそうですがそこはさておきまして、汗)ってなのも気がかりではございますの。

一方で非製造業の方は前回の先行き見通しDIを楽々達成どころか盛大に改善しているセグメントまであるというこの力強さという感じなのですが、自律的に内需が勝手に強くて非製造業はそんなに落ちないという事ですとビューテホーなのですけれども、製造業にそのうち引っ張られだすというのが仕様のようにも思える訳でさてどうなるやら。


・雇用判断DI(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)

           (12月時点)      (3月時点)
          現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業  ▲19→▲19      ▲18→▲18
製造業中堅企業 ▲26→▲30      ▲26→▲25
製造業中小企業 ▲33→▲35      ▲31→▲32

非製造業大企業   ▲29→▲31    ▲29→▲31
非製造業中堅企業  ▲39→▲41    ▲41→▲42
非製造業中小企業  ▲40→▲43    ▲43→▲47

前回まではせっせと不足が拡大していましたが、今回は前回からの不足幅のさらなる拡大とは成らなかったようですけど、とは言いましても水準はこの水準だし、先行き見通しが概ね「ここから更に人手不足感高まる」になっていますので全く持って強い雇用情勢という所なのですが、おちんぎんがバカスカ上がるどころか45歳以上リストラの大企業アリーのというのは何なんでしょうね。


・販売価格判断(「上昇」-「下落」)

          (12月時点)      (3月時点)
         現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業  +6→+1        +1→▲2
製造業中小企業 +4→+6        +3→+5

非製造業大企業  +8→+7       +7→+6
非製造業中小企業 +2→+3       +3→+5



仕入価格判断(「上昇」-「下落」)

           (12月時点)        (3月時点)
          現状→3月予測       現状→6月予測
製造業大企業   +24→+20       +17→+16
製造業中小企業  +41→+42       +37→+40

非製造業大企業  +20→+19       +16→+17
非製造業中小企業 +26→+29       +26→+31

前回12月短観ではこんなことを書いておりました。

今回一見して「おー」と思ったのは何かと申しますと、前回時点の「12月予測」よりも価格判断が上がっているのが大企業、下がっているのが中小企業となっていまして、まあ仕入れも販売も上がっているからアレではございますが、謎の二極化になっているのが一見して気になりました。

なお、このコーナーにある「需給判断」ですが毎度ほぼ同じ数字が並んで面白くないのでパスします。(以上前回12月短観時の駄文より)

前回は上記のように書いたのですが、今回は3月予測対比で見ると製造業大企業の販売価格判断は同水準で、製造業中小企業の販売価格判断は12月時点の予測対比で未達になっていまして、まあオモシロ読み筋をすれば(12月時点で先行きの販売価格判断を足元よりも下げているのが大企業だっただけに)大企業の原価圧縮努力(というと聞こえがいいですが要するに値下げ要請)によって元々上向きだった中小企業の価格判断が上がるどころか下がってしまいましたとかいうお絵描きが出来そうだし、それはそもそも12月短観時点での仕入れ価格判断でも製造業大企業は下向いていたのですから予定の行動という感じだったのかも知れません、とか勝手にこの数字に思いっきり物語をでっちあげてみました。

まあそれにしましても販売価格判断の先行きDIが製造業大企業でしらっとマイナスになっているのが誠にアレでございまして、物価上昇に向けたモメンタムが維持という話に対してこれはどういう事ぞという感じではあります。ただまあ救いなのは仕入価格判断の方もパラレル以上に下がっているので、企業のマージンという意味ではそこまでアチャーな結果にはなっていませんよね、という所でしょうか、よー知らんけどな。

あと、需給判断に関して「毎度ほぼ同じ数字が並んで面白くないのでパスします」とか前回申し上げている中で今回は何気に需給判断DIが製造業で悪化していまして、海外需給判断が悪化するのはまあシャーナイナイにしても、しらっと国内需給判断の方も悪化しているとはどういう事ぞという感じでございまして、今回はここの数字の製造業部分の内容が気になるという短観ちゃんではありまする。



・金融商品取引業はギャグで短観回答しているのかという毎度毎度のエンターテイナーぶりを発揮

           (12月時点)        (3月時点)
          現状→3月予測       現状→6月予測
金融商品取引業  ▲7→+0         ▲17→▲4

前回12月短観ではこんなことを書いておりました。

・・・・・・・・・いやーマイナス来ましたよマイナス。ちなみに短観大企業の業種別DIを見ましても金融業の業種別DIを見ましてもマイナスというのはここだけという辺りに悲しみを感じます。(ここまで前回12月短観時の駄文より)

前回の短観ではその前の短観が現状判断+4→先行き予測+14からの現状▲7というのに盛大にウケを取っていたわけですが、12月時点での3月予測がマイナスからの持ち直しだったのに蓋を開けてみるとマイナスが更に拡大というこのエンターテイナーぶりでして、ギャグで短観回答しているのかと小一時間問い詰めたくなりますが、まあそうは言いましてもお前は昨年の12月上旬に今の相場を想定できたかと言われるとぐうの音も出せずに土下座マンとなってしまいますので人の事笑っている場合ではない(戒め)。

でまあ悲しいなあと思うのは6月予測DIが現状よりも改善となっていることで、まあだいたいこうやってコケて行く中で先行きに希望的観測が残っているうちは碌な事がないというのがよくある話でござりまして、これがもう先行き予測DIが横ばいから更に悪化みたいな北ハマー先生の「落ち短(落ちる短剣を掴むな)発言」状態になってこその底打ちという感じになりますのでナムナムナム。


預金金融機関に関しては前回の短観でなんか下げ止まった感がでていましたが今回はどうなっているでしょうか。

           (12月時点)        (3月時点)
          現状→3月予測       現状→6月予測
銀行業        +13→+4         +8→+6
協同組織金融業   +2→+0         +2→▲2

前回12月短観ではこんなことを書いておりました。

でまあ銀行業は何か知らんが下げ止まったような感じなのですが、そんなにおまいら業況良いのかよというのは物凄い勢いで疑問を感じざるを得なくて、前々回にあばばばばーな業況判断DIが出て以降状況が改善しているとも思えないのに妙に銀行業の方が反転している辺りに何か陰謀論を妄想したくなりますが個人の感想ですという所で。(ここまで前回12月短観時の駄文より)

まあ銀行業の業況判断DI自体は着実に下がっているので別に下げ止まったという訳ではないのでしょうが、一応前回予想よりマシという数字ですし、協同組織金融業(信用金庫と系統金融機関)に関しては先行き予測DIは前回よりも厳しい見方ですが現状判断に関しては横ばいなので、そこまであばばばばーという訳でもないのでしょうな、おそらく金融機関の先行き予測DIに関しては相当堅めに出ていると思いますので・・・・・・・・・

とまあ毎度アタクシの私家版定点観測ちゃんですが、今回は製造業の業況感と価格判断の部分がアカンタレという感じになっていて、これが単なる踊り場で済むのか済まないのか、というのが見えてくるのが6月短観であり、それを受けた7月展望レポートというお話で、今月の展望レポートに関してはクソ粘りして判断自体は変えてこないし政策も変えてこない(というより政策はやりようがない)という事になるとは思うのですが、これは6月短観で持ちこたえられるかというのは注目して良いんじゃないでしょうかねえ、とは思いますが、詳しくは本職の方々の分析を見てちょという所ではございまする。



〇日銀入行式総裁挨拶とな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/nyukou19.htm/
入行式における黒田総裁挨拶
2019年4月1日 日本銀行

昨年の入行式挨拶では黒田総裁就任以降のを適宜見ていくという悪趣味企画をしましたので今回もちょっとだけ。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/nyukou18.htm/(2018)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/nyukou17.htm/(2017)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/nyukou16.htm/(2016)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/nyukou15.htm/(2015)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/nyukou14.htm/(2014)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/nyukou13.htm/(2013)

・明治150年で話の威勢が良かったのに今年は平成最後なので威勢が良くない

『皆さん、おはようございます。日本銀行への入行、おめでとうございます。今年も、160名の新しい仲間を迎えることができ、大変嬉しく思います。日本銀行の役職員を代表して、心から歓迎します。』

去年は147名でした、まあここの文言は人数以外いつも同じ。

『来たる5月には改元が予定されていますので、皆さんは、「平成最後の入行者」ということになります。振り返りますと、平成の約30年間は、情報通信関連をはじめとする技術革新や金融経済のグローバル化が、想像をはるかに超えるスピードと拡がりを持って進展した時代でした。企業活動や人々の交流は国や地域を超えて地球規模で拡大し、情報通信技術の進歩は金融をはじめ様々な分野におけるイノベーションに結び付いています。こうした変化は、経済の成長力を高め、新たな製品やサービスの創出を通じて人々の生活をより豊かにするものです。平成の時代の世界経済は、それらの恩恵も受けながら、発展し成長を遂げてきました。その一方で、これらの変化は、ある国や地域で生じたショックが、短期間のうちに世界的な拡がりを持って伝播するリスクを高めるといった側面も持ち合わせています。アジア通貨危機やリーマン・ショックといったグローバルな金融危機が発生し、国内外の金融システム安定化への対応を迫られたのも、平成の時代を象徴する出来事でした。加えて、わが国は、バブル崩壊とその後の金融システム不安、さらには、阪神・淡路大震災や東日本大震災といった未曾有の大災害を経験するなど、予期せぬ様々な困難にも直面しました。』

ちなみに去年は明治150年で威勢が良かったんですよね。

『皆さんが社会人として第一歩を踏み出す2018年は、明治元年、すなわち1868年から、ちょうど150年に当たります。この150年の間に、日本は近代国家として目覚ましい発展を遂げ、高度成長を実現して、今日のように世界の中でも大変豊かな国となりました。こうした発展の出発点となった明治初期は、欧米列強が国際的な競争を強めるもとで、国内的には、廃藩置県、地租改正、海外の先端技術導入による殖産興業、学制公布による人材育成など、わが国の経済力の向上につながる大きな変革が相次いで行われた時期でした。こうした中で、日本銀行も、西南戦争以降、政府紙幣や各地の国立銀行が発行する紙幣の増発により進行したインフレーションに対応するため、銀行券を一元的に発行するわが国の中央銀行として、1882年、明治15年に創設されました。』(2018年入行式挨拶より)

でまあこれはレビューしている時期の問題である、と言ってしまえばそれまでですが、この部分の中に今回はインフレもデフレも無くて、金融ショックとか経済へのショックの話(プラスもマイナスも)に終始しているのが味わいがあって、目先シャカリキになって政策対応をしないよやるならショック対応だけですねん、というスタンスが示されているのではないかとオモシロ読みをしてしまいました。

なお昨年も申し上げましたが、この入行式の一発目の部分というのは、2016年以降は歴史的なお話をするようになりましたが、それ以前は物価目標達成に向けて進軍ラッパを鳴らしていたのはいうまでもありません。例えば2013年の挨拶では、

『皆さんもご存知のように、日本経済は約15年にわたってデフレが続き、根強い閉塞感に覆われています。米国や欧州でも、深刻な金融危機の影響から、景気の低迷が長引いていますが、日本のような物価下落には至っていません。わが国のデフレは、世界的にもきわめて異例なものです。「物価の安定」を使命とする日本銀行は、これに果敢に立ち向かって行かなければなりません。』(2013年入行式挨拶より)

っていやー元気があってよろしおすなあ(ぶぶ漬けモード)という風情だったわけですな、うんうん。


・成果は強調するスタンスですがそこの表現にも微妙な味わいが

でもってその次ですが、

『しかしながら、こうした困難な出来事が生じた際も、人々は、それぞれの持ち場で懸命に取り組み、力を合わせてそれを乗り越えてきました。日本銀行も、金融経済環境が絶えず変化し、多くの課題に直面する中にあっても、「物価の安定」と「金融システムの安定」を維持するため、全力を尽くしてきました。金融政策面では、デフレの克服に向けて、資産買入れ等の「非伝統的」とされている政策を含め、様々な金融緩和措置を講じてきました。その効果もあって、「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではなくなりましたが、引き続き、2%の「物価安定の目標」の実現を目指して、強力な金融緩和に粘り強く取り組んでいます。』

『金融システム面では、国内外の金融危機への対応、それを踏まえた国際金融規制を巡る議論への参画など、国内のみならず、グローバルな視点でもその安定化に向けて取り組んできました。また、金融イノベーションの世界的な進展がみられる中、FinTechが金融インフラの効率化や金融サービスの向上に資するよう、様々な調査・研究も行っています。』

となっていて(長いので段落分けしました)、中盤の部分では日銀が「デフレ克服に向けて」ということで政策対応をしたという話をしているのですが、そこの中の説明って今回「資産買入れ等の「非伝統的」とされている政策を含め、様々な金融緩和措置を講じてきました」ってなっているじゃないですか。

こいつなんですけど、例えば2015年の挨拶だと、

『皆さんもご存知のように、日本経済は様々な課題に直面しています。この中でも、長年続いたデフレからの脱却は、日本銀行が果たすべき大事な使命です。その実現のため、日本銀行は「量的・質的金融緩和」政策を進めており、日本経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、着実に歩を進めています。』(2015年入行式挨拶より)

ってなっていて、QQEのお名前が前面に出ていたんですが、今回は「非伝統的とされている政策を含め」ってなっていまして、まあ確かにその前の話が「平成を振り返って」なのでそういう文脈にしているだけ、という風に言ってしまえばそれまでなのかも知れませんけれども、従来だったらQQEで頑張って成果が出ましたという話になっていましたが、今回のように「非伝統的とされている政策を含め」って話になると、QQE以前から継続していた緩和政策も包含する概念になる訳で、平成全体の話だから包含してるからではあるにせよ、QQEがQQEがという話ではなくなっているのには味わいを感じました(オモシロ読みのし過ぎですかそうですか)。


・今回の3点は・・・・・・・・・・・

さらに挨拶は続きまして、

『皆さんが今後日本銀行で働いていく中では、諸先輩が平成の時代において経験したのと同様、未知の出来事に直面することが数多くあると思います。日本銀行の使命は、「物価の安定」と「金融システムの安定」を通じて、国民経済の健全な発展に資する、というものです。以下では、本日、中央銀行員としての第一歩を踏み出す皆さんに、未知の出来事への対応も含め、この使命を果たしていくために心掛けてほしいことを3点、お話ししたいと思います。』

これはお約束。

『1点目は、「日々の業務遂行を通じて、中央銀行員としての基本動作を身につけてほしい」ということです。日本銀行が、その使命を適切に果たしていくためには、職員一人ひとりがプロフェッショナルとして、自らの役割をしっかりと果たさなければなりません。皆さんがこれから携わる仕事は、いずれも国民生活に深く関わるものである、ということを自覚してほしいと思います。外部の方々から信頼を得られるよう、まずは配属された職場において、日々の業務に精励することを通じ、中央銀行員としての基本動作をしっかり身につけてください。』

政策委員4年以上やっているのに銀行業務に対しての理解が全然ない方がいますね。

『2点目は、「周囲の声に真摯に耳を傾け、チームワークを大事にして仕事に取り組んでほしい」ということです。日本銀行の仕事は、非常に幅が広く、また、それぞれが深く関連しています。一人で全てをカバーすることは難しく、チームワークが必須です。上司・先輩をはじめ周囲の人の意見によく耳を傾け、そこからできるだけ多くのことを学び取ってほしいと思います。』

政策委員会での議論が成立していないようにしか議事要旨や主な意見を見ると思えませんが大丈夫でしょうか。

『最後は、「環境変化を的確に捉え、チャレンジ精神を持って新たな課題に取り組んでいってほしい」ということです。いつの時代においても、環境変化は起こるわけですが、その速度や複雑さは年々増しているように思われます。中央銀行は、そうした環境変化にも適切に対応し、使命を達成していかなければなりません。そのためには、皆さん一人ひとりが、アンテナを高く張り、状況を的確に捉えるとともに、中央銀行として対応するべき新たな課題に、チャレンジ精神を持って取り組むことがとても重要です。』

環境変化も関係なく「物価はいついかなる時でも貨幣現象でマネタリーベースを伸ばせば直線一気理論」という方とその残党が何人も政策委員会の中におられるようですが大丈夫でしょうか。

・・・・・などというのはさておきまして(^^)、昨年はこの3点が、「社会人としての自覚をしっかりと持ってほしい」、「中央銀行業務のエキスパートを目指して、理論と実務の両面で研鑽を積んでほしい」、「周囲の人の意見によく耳を傾け、力を合わせて仕事に取り組んでほしい」でして、なんか毎回政策委員向けなんじゃないでしょうかと言いたくなりますな。

なお、この新入行員向けの心得については昨年の駄文では2013年以降の変遷を並べてみましたが、長くなるので割愛したします(^^)ご興味のある方は過去ログ辿ってくらはい(昨年4月3日の駄文にございまする)

では総裁挨拶の締め文言で。

『今、皆さんは、フレッシュな意欲と気概にあふれていることと思います。その気持ちを大切にしながら、これからの仕事に取り組んでいってください。』

・・・・・・・・・いやもうウン十ウン年目の社会人としての4月1日とかになりますと以下自主規制という感じで汗顔至極ですわ。






2019/04/01

お題「輪番減額なし/ムーア理事指名に向けて圧力モード来てますな/その他メモ」

おいこらアゴラ編集部何で呉座先生のが「どっちもどっち」扱いになるんだよ。
http://agora-web.jp/archives/2038038.html
八幡氏VS呉座氏:「停戦」とします
2019年03月29日 11:30

と思うんだったら最初の時点でただの難癖の八幡氏の言説を載せるなよと思う次第なんですけど、まあ基本的にアゴラってこういう編集がやっているからお察しという認識があって普段から見てなかったんですけど、所詮はアゴラでしたな。ヤレヤレ。

さて今日は新元号の決定の日ですが、「改元対応」という文字ばかりが頭に浮かんで甚だ遺憾なのですががががが。


〇輪番減額なし&4月の減額はどうなりますかね

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190329.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,800 2019年4月1日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,800 2019年4月1日
国債買入(残存期間25年超) 500 2019年4月1日

ということでさすがに期末当日の日中輪番減額というのはやりすぎじゃろということだったのかなあとか思いましたが、輪番オファーの後先物様がホイホイ(というほどホイホイでもないけど)戻っていくというプレイが見られまして、皆さん願望込みであっても輪番減らしてちょという債券市場心の叫びが伝わってくるような戻り方に全オレが涙しました。

でもって金曜の相場ちゃんは例によってロイターさんから。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N21G1N1
2019年3月29日 / 15:27 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反落で引け、長期金利は-0.095%に上昇

『 <15:14> 国債先物は小反落で引け、長期金利は-0.095%に上昇

国債先物中心限月6月限は前営業日比2銭安の153円28銭となり、小反落で取引を終えた。前日の米債安を受けた売りが先行したが、下げは限定的だった。日銀が通告した国債買い入れオペの結果は、長期ゾーンが強めの結果となった。夕方に日銀が公表する今後のオペの方針を見極めたいとの姿勢が広がる中、国債先物は大引けにかけて下げ幅を縮小した。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp高いマイナス0.095%に上昇した。』(上記URL先より、以下同様)

まあさすがに期末日なのでバカスカ取引をするという訳でもないでしょうが、一応減額に関しては有るかもね(ただし願望込み)という感じなものの、アタクシは何せ「減額をネタに売りがあった時に押し目買い軍が登場して売り方粉砕」というような泣きそうな妄想を禁じ得ないのですが、たぶんそういう感じの見方はそれなりに多いと思う(個人の妄想です)。

『日銀が通告した3本の国債買い入れオペはいずれも応札倍率が低下した。「残存5年超10年以下」の応札倍率は1.74倍(前回3.21倍)と、2倍を割り込んだ。応札額が前回と比べ減少したことを受け、今後の日銀の国債買い入れ方針で買入予定額が減額される可能性が意識され、後場寄り後はいったん軟化する場面があったが、売り急ぐ姿勢はみられなかった。』

1回減ったからってそれだけで減額という訳ではないし、そんなに目先のことだけで近視眼的に輪番をいじっている訳ではないと思う(金利上昇したときの指値オペは別ですが)のでこれはまあ後講釈の一種でっしゃろ。

『現物市場では中期ゾーンがしっかり。新発5年債利回りは前日比0.5bp低いマイナス0.205%に低下し、2016年11月以来の低水準を付けた。新発20年債利回りは一時0.340%に上昇したが、その後0.330%(前日比0.5bp高)まで戻した。超長期ゾーンに対しては、月末に伴う年金勢による年限長期化の買いが支えとなったようだ。』

ということでしらっと5年が▲20bpを越えて金利低下してきていまして、この2年5年インバート攻撃って何なんですかという感じでございますが、リスクシナリオとしてのマイナス金利深堀懸念とか(ちなみにアタクシはこの前申し上げましたようにいざとなったら10年の変動幅拡大許容でなんちゃって緩和というのを提唱したいところ)も一応ネタとはなるんでしょうが、ドル調達でどーのこーのでヘッジ後のイールドが他の主要国と比較してどうのこうのみたいな話もとか、まあいずれにせよ勝手に異世界モードへと旅立っておられますので、マイナス金利導入後のナイトメア相場が頭にチラチラしてくる今日この頃ではございますな。


雑談が長くなってしまいましたがネタは輪番予定表。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190329c.pdf
当面の長期国債等の買入れの運営について

0−1年:100-1000、月2回(変更なし)
1−3年:2500-4500、月4回(変更なし)
3−5年:3000-5500、月4回(変更なし)
5−10年:3000-6500、月4回(変更なし)
10−25年:1500-2500、月4回(変更なし)
25−40年:100-1000、月4回(変更なし)
物価連動国債:250、月2回(変更なし)
変動利付国債:1000、隔月1回(変更なし)

ということでして、2月末(3月分)はしれっと10年ゾーンの減額攻撃がキタコレになりましたですけれども、今回はあっさり味で変更なしとなりましたし、10年国債入札の翌営業日でありますところの3日に長期含む輪番が行われますので、「10年国債だけは厚遇」というのは変わらないですし、新発入札対比の買入ウェイトも10年が厚いというのは変わらんという結果になっておりますな。

でですな、今回に関しては5月予定表が出るのが、

『日本銀行は、長期国債等の買入れについて、弾力的に実施することとしており、当面、以下のとおり運営することとしました(2019年4月1日より適用)。 ── 次回公表は2019年4月26日17時を予定。』

ということで無慈悲にも10連休の直前の引け後に公表となりますので、何ぼ何でも10連休直前にいきなり減額というのはオーバーウィークエンドリスク的に如何なものかという感じはするので、4月減額するとしたら(というか金利が下がってこの有様なので減額して頂きたく存じますというだけの話ですが、汗)月中のどこかで減額をしていただけると甚だありがたく存じますが(どうみてもただの願望です本当にありがとうございました)、3月FOMCの大ハトハト攻撃によって米国ちゃんの金利低下ネタが割と強めにあるうちは為替がいつ何時円高に振らされるかというのもあるので中々動きにくいのかもしれませんなあ(個人の感想です)。


〇米国の圧力モードはアカンですなあ

ほほう。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N21G4JS
2019年3月30日 / 03:23 /
米FRB、直ちに50bp利下げすべき─NEC委員長=報道

『[29日 ロイター] - 米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長は29日、連邦準備理事会(FRB)が「直ちに」50ベーシスポイント(bp)の利下げを行うことが望ましいとの認識を示した。ニュースサイトのアクシオスが報じた。トランプ大統領が指名したFRB理事候補の保守系経済コメンテーター、スティーブン・ムーア氏も同様の見解を示しているが、ホワイトハウス当局者で利下げを公言したのはカドロー氏が初めてと、アクシオスは伝えている。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は現在2.25─2.50%。カドロー氏はそもそも2%以上に設定すべきでなかったと指摘した。』(上記URL先より)

クドロー委員長と読むもんだと思っておりましたけれどもまあそれはそれとして、先日はハセットさんがこういう発言をしているからまあ一応歯止めみたいなのはあるのかなとか思っていたのでアチャーという感じ(って総帥が総帥なだけにアチャーなのは今に始まったことではないと言われればそれまでなんですが)。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-27/PP19NP6S972A01
米CEA委員長:ムーア氏は発言に注意を、FRB理事候補に指名なら
Randall Woods
2019年3月28日 2:23 JST

『米大統領経済諮問委員会(CEA)のハセット委員長は27日、トランプ大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)理事に指名する意向を示したスティーブン・ムーア氏について、大統領が実際に指名するか確実ではないとの認識を示した。保守派の評論家であるムーア氏は最近、金融政策についての発言が物議を醸している。』(上記URL先より、以下同様)

というのが先週木曜に出ていたので、ほほーと思ってみておった訳ですが、まあ案の定という展開にアチャー感が拭えないものでございまする。

ちなみにハセットさん、この記事の中で中々良いコメントをしておられまして、

『ハセット氏は「プロセスが進行し、スティーブ(ムーア氏)が正式に指名されてFRB理事候補となれば、自らの立場をきちんと説明しなくてはならないだろう」とし、「評論家としてのキャリアを通じ、さまざまなトピックに関して非常に興味深い発言を行ってきたことは確かだが、候補者となればあらゆるささいな言葉にも、もっと注意を払う必要が出てくる」と述べた。その上で、「正式に候補者となった場合は、評論家としての発言を控え、承認に向けた準備を始めるはずだ」と語った。』(同じく上記URL先より)

何と申しますか、どこぞの中央銀行の政策委員会の方々や、政策委員会の方々だったお方などに百万回くらい聞かせたい名言ではあると思って心が洗われたなあとか思っていたのですが、ネタにする前に政権別方面からダイナシーな発言が絶賛登場というのがもう何ともかんとも。


でもって関連して発言もという感じですがさすがは変態仮面ブラード先生。
https://jp.reuters.com/article/frb-steven-moore-idJPKCN1RA03R
2019年3月29日 / 10:07 /
ムーア氏のFRB理事指名、金融政策左右せず=セントルイス連銀総裁

『[ミルウォーキー 28日 ロイター] - 米セントルイス地区連銀のブラード総裁は28日、トランプ大統領が米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長体制に批判的なスティーブン・ムーア氏をFRB理事に指名したことでFRBの政策が変わる可能性は低いとの考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほうそれでそれで?

『ブラード総裁は「連邦公開市場委員会(FOMC)は19人で構成される大規模な組織であり、1人の意見が優勢になることはない」と発言。「大勢のスタッフが多くの分析とともに金融政策の方向性を検討しており、これらの情報も政策判断の一要素となっている」と述べた。』

ただまあ今回の一連の流れを見ますと(変態仮面先生は全然付和雷同してませんが)パウエルに右に倣えみたいになっている感が漂うのが何とも。

『総裁は、ウィスコンシン大学で開かれた金融政策に関する会合での講演後、記者団に対し「大統領は自身の見解を最も代弁すると思う人物を選ぶことができる。それが大統領の権限だ」と発言。』

そらそうよと思いますし、そこで明らかなるトンチキを選ぶと上院がチェックのプロセスが入る、ということではあるのでしょうが、まあどこぞの国では明らかなるトンチキ(爆発音の為聴取不能)。


という発言があると思えば、カシュカリェ・・・・・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N21G3MX
2019年3月29日 / 22:38
米長短金利逆転、FRBの過度な引き締め示唆か=ミネアポリス連銀総裁

『[ニューヨーク 29日 ロイター] - 米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は29日、米債券市場で長短金利の逆転が発生していることは、連邦準備理事会(FRB)が金融政策を引き締め過ぎたことを示す重要なシグナルである可能性があるとの見方を示した。』(上記URL先より)

ってお前は何を言ってるんだというか、だったら3月FOMCで利下げの表明(ドットチャートで示す)でもしとけやこのハゲという感じですが、「中央銀行がダビッシュなスタンスを表明」→「市場がそのスタンスを見て景気後退のリスクを意識」→「イールドカーブがフラットニングやインバート」→「その市場を見て中央銀行が上記のような発言」ってそれどこからどう見ても中央銀行初の自作自演フィードバックループな訳でして、FEDが「データディペンデント」と言いつつその実がただの「足元ディペンデント」になってしまっているからこのフィードバックループが加速されやすいし、いったんフィードバックループに入ると止めるのに大きなエネルギーが要りますよ、という事になるってなもんですな、ナムナムナム。

まーしかし足元ルッキングキタコレというのと、ムーア氏指名云々で早速これかよという感じではあるのですが、先日来申し上げておりますように、ここもとFED高官発言がバンバカ出ているのに読む方が全然ついていけておりませんで(多少多忙なののありまして、汗)とりあえず重要な政策決定を3月末近くにやらんでくれ、と言っても別に雨国には3月末とか関係ないので致し方ないのですが、全部確認しながら取捨選択して可及的速やかにネタとして回収できるものは回収する所存。


〇というご時世の中多少気になるのが為替なんですが・・・・・・・・(ただの個人の妄想系世間話)

お前の話は全編個人の妄想系世間話だろと言われると割とぐうの音も出ないのですがそれはさておき。

いやまあここもと何のかんの言って米国の利上げ打ち止めからの下手したら利下げなんでネーノ位の勢いになっているじゃないですか。でまあ多分市場の中の方々ってアタクシも含めまして、米国利上げ打ち止めからのうっかりしたら利下げの可能性もってなると日銀苦しいですよね〜って思っていたとは思うのね(個人の印象です)。

でまあここもとすっかり金利は下がってアチャーでして、輪番減らしても金利はホイホイ下がるのって米国金融政策の転向というのがだいぶ背景にあると思うのですが、その割にドル円って円高にズバーンと行かないですなあというのが気になるのですよアタシャ。

・・・・・・・つまりですな、時間軸という意味では物凄く長い時間軸で言えば、この調子でジャパンが手を拱いているうちにドンドン衰退国家化していくと、もはや円高とか言ってる場合じゃないくなる、というようなどちらかと言いますと暗い円安っつーか国家ダメじゃん的な通貨安みたいなのが、今来るわけではないので何とかする時間はまだあるでしょと思いっきり思うので時間軸は物凄い先の話の筈、ということで思っていたりするわけなのでございますけれども、米国金融政策という文脈で考えた場合、今の動きって今までだと普通に円高ドル安にホイホイと行きそうなもんだったと思うのですよ。

もちろん日銀の方に追加緩和思惑とか、そういうのもあるのでチャラとかそういう話なのかもしれないのですが、ここもとの米国金融政策というか米国金利の動きに対してドル円がさほど反応していないように見える(個人の印象です)というのが「もしかして円高に行かないようなアカンタレな変化が底流で起きているのではないか」みたいな、まーかなり大げさで杞憂オブ杞憂にも程があるとは思うのですが、何でじゃろというのはここのところずーっと引っ掛かっているのですが、何せアタクシ別に為替に詳しい訳でも何でもないので、詳しいお方の見解をお伺いしたいと思ったので誰か教えてちょ(ただのクレクレですな)。



〇企業の価格設定行動とかいう琴線に触れるレポートが出ています(ただし英文のみ)

紹介のページ
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2019/wp19e05.htm/
企業の戦略的補完性と非対称な価格設定行動

『全文掲載は、英語のみとなっております』ということで無情にも英文のみとなっておりますが紹介ページに日本語の紹介がちょっとあるので引用しておきます。

『要旨』

『本分析では、日本企業の大規模なサーベイデータ(短観)にもとづき、企業の価格設定行動において戦略的補完性が存在することを示した。具体的には、企業の価格設定は、競合他社の価格動向に影響を受けることがわかった。また、その影響は、企業が価格を下げる時に大きくはたらき、いわゆる屈折需要曲線の理論的な予見と一致していることが確認された。このほか、企業に価格支配力があると、他社価格の影響を相対的に受けづらいことや、企業が不確実性に直面していると、需要動向が価格調整に与える影響が弱まるとの事実も明らかになった。』


「企業が不確実性に直面していると、需要動向が価格調整に与える影響が弱まる」という辺りに味わいがあるような気がしますが、本チャンのほうはこちら↓
http://www.boj.or.jp/en/research/wps_rev/wps_2019/data/wp19e05.pdf
Strategic Complementarity and Asymmetric Price Setting among Firms

ええすいませんまだ全然読んでません(というかここまで手が回らんがメモだけおいとくスタンス)