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2019/03/29

お題「10年▲10bpだわ20年0.3%接近でさて輪番は/そら利下げ思惑になるわなというFOMC会見での説明から」

元号大喜利に参加する間もなく期末になってしまいましたが、威勢のいい元号なら横綱しかなかとよ横綱しか(大嘘)。

〇10年▲10bpキタコレ

アイヤー!!
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N21F1JG
2019年3月28日 / 15:26
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続伸で引け、長期金利は2年7カ月ぶり-0.100%に低下

『<15:16> 国債先物が続伸で引け、長期金利は2年7カ月ぶり-0.100%に低下

国債先物中心限月6月限は前営業日比28銭高の153円30銭と続伸で取引を終えた。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が、必要ならば利上げをさらに遅らせる用意があると発言したことを受け、前日の欧米債が買われた流れが波及した。中心限月ベースでは2016年7月以来の水準まで上昇し、高値引けとなった。10年最長期国債利回り(長期金利)は同3bp低いマイナス0.100%に低下し、2年7カ月ぶりの低水準を付けた。』(上記URL先より、以下同様)

40年国債入札で金利が上がりましたが一瞬で戻るどころか倍返しキタコレになっとる訳ですが、ドラギ総裁の講演ネタで金利が下がったという後講釈にようやく納得するアタクシ。

『ドラギ総裁の発言に加え、前日の海外市場ではECBがマイナス金利の副作用軽減に向けた措置を検討していることも明らかとなり、低金利環境が長期化するとの見方が広がった。』

昨日不覚にもパスしたドラギ講演ですけれども、ヘッドライン見た時(出たのは日本時間的には確か一昨日の夕方だったと思う)「マイナス金利の副作用軽減」というのを見て「やったぜ!」とかアタクシは思ってしまったのですが、翌朝になってみると「ドラギ総裁がマイナス金利の副作用軽減措置の必要性について示唆したので欧州金利低下」となっていて「????????」だったのですがこういう解釈になって金利が下がったのかと勉強になりました(半分マジで半分はぶぶづけモード)。

まあ地合い恐るべしという感じですが、これまだ株価の方がなんか持ちこたえている(日本は知らん)ので何とかという感じなのですが、FRBが急にハト派化→債券が大反応してイールドカーブが景気悪化を示唆するようになる→もしかして何かあるんじゃないかというトークになる→更に他の中銀も警戒感示す→更に景気悪化懸念のネガティブフィードバックループ、とかいう図になっておりますので、これで米株が盛大に下がりだすと最早お手上げというかガチの利下げ催促相場になってしまう(今のところ債券はもうそんな感じが強くなってきましたが株がまだそこまでではないでしょう)のでどうあがいてもあばばばばーという図になってしまうんですけどさあどうするんだか。

んな訳で円債も10年もさることながら超長期ちゃん40年国入札でヘロったもののガッツリ戻るの巻という事で、さっきの記事の続きが、

『東京市場では超長期ゾーンが堅調。全体相場に波及した。「期初の売りで多少金利が上がったとしても、押し目買いの好機とみる投資家も多い。利回りが残っているところに、先回りして買いを入れる動きがしばらく優勢となりそうだ」(国内証券)との声が聞かれた。新発40年債利回りは同4.5bp低い0.550%に低下し、16年10月以来、2年5カ月ぶりの低水準を付けた。』

入札の時に押し込んで0.60%乗せで入札やったのですが火曜の木曜で0.55%オソロシス。


・・・・・・・でもって本日は長期超長期の輪番があって、夕方には例によって例のごとく4月の輪番予定表が公表されるわけですが、このまま債券爆走されますと年度の頭から結構な誰得相場になってしまいますので超長期の減額早よと思いますが、今の流れだと(上記ロイター記事のコメントにもありますように)減額で売られたら絶好の押し目とか期初の益出し売りが出たら絶好の押し目とか言い出しそうでオソロシスではあるのですが、いずれにせよここまで輪番削減してきたので、どうせ減額余地も事実上そんなにない所ではありますので、減額しても金利がアガランチ会長とかになると益々雰囲気が金利低下じゃあああああみたいになるんでしょうな、ナムナム。

しかし人の懐事情は知らんので何とも申し上げようがないのですが、本当は期初の時点で金利が(その前の期よりも)下がった発射台でスタートすると、普通は売買益を先に出して数字を確保しにいくという筈なのですが、今年度って途中の金利上昇の時が如何にもこの先も上がりそうな感じでしたし、一方で規制的に見て金利リスク今後やや取りにくくなるんだしそんなにガツガツ買いに行けないやみたいな感じだったと思うので(個人の印象です)、期初益出しはしたいものの売るほど玉無いので売ったは良いけどすかさず買い戻しじゃあ平均利回り下がって後が困るとかそういう感じでそんなに売れないのか、それとも今期はそもそもしんどいので売買益は先に出してめど着けておかないととなるのか、どっちなんでしょうかねえ・・・・・・・・・


ということで超長期前半の減額示唆(3回にしたら格好良いけどさすがに4回で走ると考えればレンジを下げてくる)くらいが出ていただけると誠にありがたく存じますよろしくお願いしますという予想じゃなくてただの願望くらいになっています(まあ今だったら場中に減額しても誰も困らなさそうなので10時10分から減額しても大丈夫だとは思うけどさすがに期末日の場中に輪番いじるのはちょっと・・・・・・・・・)が、10年▲10bpもさることながら20年が30bpに接近してきた中でさてどうするんでしょとは思います。減らしても為替ぶれないように思うので減らせるタイミングではあるとはおもいますけど(ただの願望込みイメージ)。



〇まあコミュニケーションの失敗でしょうなあということでFRB関連

・ウィリアムス総裁も景況感に関しては火消しモードですかねえ

ヘッドラインだけで話をするのも何ですが(汗)。

https://www.reuters.com/article/usa-fed-williams-idJPL3N21F4SV
March 29, 2019 / 5:06 AM
UPDATE 1-今年や来年の米景気後退確率「高まっていない」=NY連銀総裁

『[サンファン 28日 ロイター] - ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁は28日、米経済は非常に良い環境にあるとした上で、2019年もしくは20年にリセッション(景気後退)に陥る確率は「高まっていない」との認識を示した。総裁はプエルトリコでの討論会で「景気後退については民間の同僚ほど心配していない。今年や来年の景気後退確率は依然あらゆる年度と比較して高まっていないと考えられる」と語った。』(上記URL先より、以下同様)

とまあそんな感じですが、

『債券市場ではこのところ3カ月物Tビルと10年債の利回りが約10年ぶりに逆転。利回りの逆転は向こう1―2年以内の景気後退を示すともいわれる。総裁はこうした市場の指標を注視すると述べる一方、足元の利回り曲線は景気後退を示唆していない可能性があるとの考えを示した。FRBの金融政策については適切とした。』

こちらの講演原稿は最新過ぎのせいなのか今朝の時点でNY連銀のサイトに出ていないので実際にどういう文脈で説明しているのかが分からんのですが、この次にネタにするパウエル会見(すいません)での説明に関しても結局のところ先行きの金融政策に関しては「動かない」ということになってしまっていて、本来「patient」ってのは正常化(=利上げ)を進めるのに対して「忍耐強く」なるという話だった筈で、従来の声明文もそういう話だったのに対して、ここに来て皆さん「今の金利が適切」という話をしちゃっていて、利上げ打ち止めという話になっているのがそもそもイカン訳ですわよ。

これが従来までのように「経済情勢は良好でインフレも落ち着いているので正常化までじっくり時間を掛けて取り組んでいきますああそれからその間に若干インフレが上振れても落ち着いた推移の中での上振れだったらノープロブレム」とか言っているんだったらば「経済が良ければ利上げ」という話になっていたのですが、今の説明って完全に「利上げ打ち止め」になっているので、インフレが上にオーバーシュートでもしない限り次の利上げはしませんよという事になってしまう訳ですよね。

もちろん、ずーっとパウエルが説明しているように「ブロードレンジの中立金利」という概念を使えば、「ブロードレンジの中立金利の中で微調整をしましたよグヘヘヘヘ」と言ってインフレがオーバーシュートしていなくても利上げすることは可能ですが、これだけ「今が適切」で「動きません」って話をする中で「中立金利のブロードレンジの中で微調整しますよ」とかいう理屈は市場が許さんとしか言いようがない(ので利上げしようとしたら本来は相当な努力が必要)のですけれども、その辺まで考えているのか考えていないのかがさっぱり読めないというか、今までの行状を見ると考えてなさそうなのがオソロシスですな。

まあ利下げに関しては株が下がってホワイトハウスに恫喝されて市場に恫喝されるとやり兼ねんというのもありますが、さっきも申し上げましたように中銀がハト派姿勢を出して株がさがろうもんならもうダメダメという感じですので、そっちはそっちで注意しないといけませんしと、ややこしいですな、うんうん。


とまあ連日そんな雑談を繰り返している気がしますがパウエルFOMC会見を(もうだいぶ賞味期限過ぎてそうな感じですが消費期限は切れてないことにして)少々。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20190320.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference Opening Remarks March 20, 2019

・パウエル会見ネタ:いくら経済が強いと言ってもこれでは利下げ思惑が出るわなという件

こんな質疑がありましてですな、

『MICHAEL MCKEE. Michael McKee with Bloomberg Radio and Television. I wonder if you could discuss the balance of risks. I know you said that the outlook among the committee members is a positive one, but since the end of the meeting, the three-month ten-year treasury spread has fallen to seven basis points, and now, according to Fed Funds futures trading, there's a 50 percent chance of a rate cut by next January. How far off of the market, what do you think the risks actually are?』

さっき先行きの経済はポジティブという見通しだとお話になりましたが、経済のリスクバランスについてはどう考えていますかちなみに声明文等の公表後の市場では3Mと10年が7bpまで縮小しましたしFF先物は年内1回利下げを50%の確率で織り込んでいますがその辺の市場動向はリスクバランスの認識とどの位差がありますか?とかオモロイ質問の仕方(褒めてます)ですな。

『CHAIR POWELL. Well, first, the data are not currently sending a signal that we need to move in one direction or another, in my view.』

まずこの時点でアカンヤロと思うのですが、これだと「もう利上げしません」というのと同じだと解釈されちゃいますよね。「ネクストムーブにペイシャント(ルー大柴ではありません)」みたいにいっておけば利上げにペイシャントなんで利下げの思惑までは出にくいんですが。

とは言いましてもまあマジでこの水準が中立金利と思っているならこれはこれでしょうがないのですが、長期的な均衡金利って実質潜在成長率+長期均衡名目物価上昇率であって2%台前半とかねえわと思いますけどねえ。

『I would say it this way. We see a positive outlook for this year, a favorable outlook for this year, as I mentioned. So, in our SEP projections, committee members, participants, generally see growth of around two percent. They see unemployment remaining below four percent. They see inflation remaining close to target, and they see growth, as I said, around two percent. So, you know, that's a positive outlook. It's a favorable outlook.』

といっているのですが、返す刀で、

『We're also very mindful, and we have been, of course, all along of what the risks are. And you see, you mention some of them, you know. You see slowing global growth. You still have it. There's no resolution of Brexit. There's no resolution really of the trade talks. These are ongoing risks.』

とリスクの話をして、

『We're also carefully monitoring what's happening with U.S. growth. We called that out in our statement. You know, that the limited data that we have do show a slowdown. On the other hand, as I mentioned, we see the underlying economic fundamentals for growth this year as still very positive. So that's really how we're thinking about it.』

って説明しているのですが、バランスオブリスクだけで何で中立金利水準が思いっきり下がって(半年前との差は何なのという話)急に利上げしないとかいう話になるのかという事でして、リスクバランスだけでこうなるというのは普通に変で、ファンダメンタルズに何らかの変調があるに違いないから、変な指標が出たらそらもう利下げキタコレって話になるわな、ということでしょ常識的に考えて、となりますわな。まあ普通にコミュニケーションの失敗で、しかも市場に振らされるのでフィードバックループがワンワンワンと起きるという事に繋がりますわな。


でもって同様にドットがすげえ下がった件の質疑もありまして、

『MARTIN CRUTSINGER. Marty Crutsinger with the Associated Press. With the new dot plot today, you've gone from two rate hikes in 2019 to zero. You still have one showing for next year. The Fed Funds futures trading has been alluded to as showing rate cuts at the end of this year. Are they, is that a possibility in your mind given that the sharp change you've made at this meeting?』

ドットの前回が12月で先行き見通しを全面降伏したのが1月FOMCだったのでまあ仕方ない面は確かにあるのですが、しかしここまでドットを下げまくる必要があったのかというのは正直ある。2%成長して失業率も低いし賃金だって一応は上がっているという中で、しかもそのまま見通しがそこまで極端に下がっている訳でもないのに、とは思った。

『CHAIR POWELL. As I mentioned, the data that we're seeing are not currently sending a signal, which suggests moving in either direction for me, which is really why we're being patient.』

さっきのもそうですが、「moving in either direction」という表現をしているのがミソで、これだと「利上げも利下げも」という話になっている訳ですから、これまでの「利上げにペイシャント」とは完全に異なっていて、何でそこまでダビッシュに振れさせるのかという感じですが、分かっててやっているならまあそうですかそうですかという感じですが、なんとなく勢いでやっている感じがしますし、その自分の勢いで市場が思いっきり振らされて、振れた市場を見てびっくりして更に動くというのを今までやっている感があって、計算してやっているように見えないのが怖い。

『We feel, our policy rate is in the range of neutral. The economy is growing at about trend. Inflation is close to target. Employment is under three percent. It's a great time for us to be patient and watch and wait and see how things evolve. 』

という説明で、ここで「wait and see」って言い出したけど、それだと先の利上げに対して「patient and watch and wait and see」ではあるのですが、その前にさんざん「両方向」みたいな表現をしているので、これを言っても証文の出し遅れだし、パウエル一体どっちなんねんという感じはしますが、会見の前半が概ね政策金利の先行きに関する話だったのですが、ほぼ「どっちの方向にもいかないことを今は示唆している」みたいな感じの話なので、そら利下げ思惑出るでしょうとは思うのでした。


後半は主にバランスシートの話なのですが、昨今の相場ちゃんがバランスシートどころの話ではないので、それはそれでこの前も申し上げてますが2月のマネタリーポリシーレポートでの説明と共に別途落ち着いたらネタにしたいと思います。

#来年度もよろしくお願いいたします





2018/03/28

お題「FOMC会見ネタと何でこんなに折れた(ように見えてしまう)んでしょという妄想雑談を少々」

決済システムレポートというマニア度の高いのが出てますな。
http://www.boj.or.jp/research/brp/psr/psr190327.htm/
決済システムレポート(2019年3月)

全文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/brp/psr/data/psr190327a.pdf

面白そうなのですがこの手のレポートが夕方になって出てくるという日銀の仕様(公開するのに決裁がいるとか色々な事情があるだろうなというのは分かるんだが)なのですが、夕方出すくらいなら翌日のアサイチとかに出してくれた方がベンダーヘッドラインになるし(なお夕方に出せば翌日の朝刊に間に合うというのはあると思う)などと思うのは市場脳ですかそうですか。

#ということで全然まだ読めていない

〇物凄く出遅れていますがFOMC会見ネタと関連世間話

変態仮面ブラードおじさん(なお今のところ大勝利の模様)率いるセントルイス連銀のサイトにこのような便利なページがあるのですが。

https://www.stlouisfed.org/fomcspeak
FOMC Speak: Remarks by Federal Open Market Committee Participants
About FOMC Speak

こちらの右にあるRecent Public Remarksを見ますと、FOMC以降連銀高官怒涛の情報発信モードになっておりまして、会見ネタをさぼっているうちにどんどん話は展開していくというこの事実でアワアワと泡吹きジジイと化しているアタクシな訳でございますが(涙)、

Mar 26, 2019 Pres. Daly,
Speech, at The Commonwealth Club in San Francisco, California,
The Bumpy Road to 2 Percent: Managing Inflation in the Current Economy

Mar 25, 2019(8:30 PM ET) Pres. Rosengren,
Speech, at the Credit Suisse Asian Investment Conference, in Hong Kong,
Central Bank Balance Sheets: Misconceptions and Realities

Mar 25, 2019(6:00 AM ET) Pres. Harker,
Speech, at the Official Monetary and Financial Institutions Forum in London,
On Balance: All Things Considered on the Road to Normal

Mar 25, 2019(2:00 AM ET) Pres. Evans,
Video Interview, CNBC , Chicago Fed president:
I'm not worried about a recession

Mar 25, 2019(1:00 AM ET) Pres. Evans,
Speech, at the 2019 Credit Suisse Asian Investment Conference in Hong Kong,
Revisiting Risk Management in Monetary Policy

Mar 22, 2019(3:34 PM ET) Pres. Bullard,
Transcript, Wall Street Journal, Interview With St. Louis Fed President James Bullard

Mar 22, 2019 Pres. Bostic,
Speech, at the Macroeconomics and Monetary Policy Conference at the Federal Reserve Bank of San Francisco,
The Case for an Ample Reserves Monetary Policy Framework

直近のでこんな感じでボコボコ出ていて、まあそっちも斜め読みというかベンダーヘッドラインはちょこちょこ出ている訳ですが、ベンダーヘッドラインとチラ見をしておりますと、なんかここに来まして「足元の景気は順調です」というのを強調するようになっていて、一方で金融政策に関しては「ペイシャント」を強調するという形で、まあそれはそれでFOMCのステートメントと整合的ではあるのですが、何とはなしに思うのは、「FOMCの出したメッセージがハト派的過ぎて先行き景気への不安みたいなのを煽るような動きが起きているから(不安モードの方の)火消しを始めてねえか」という感じがしたりする訳でして(個人の妄想です^^)、まあ何と申しますか、コミュニケーションがアカンわと思うのでありまする。

でまあ何ですな、このドタバタ大喜劇でパウエルFRBのコミュニケーションに物凄く不信感というか間抜け感を持つようになっておりますアタクシなので物凄い勢いで点数が辛くなってしまうのですが、ここもとの急速なハト派化というのはトランプにビビったのと株価にビビったと考えるのがアタクシは妥当だと思っていて、まあ要するに株価を何とかお助けしようとするにはハト派メッセージとか言ってメッセージ出したら、適当なところで止めておいて、今回のFOMCのメッセージでは「年内シナリオ通りに推移して下振れリスクが減ってきたら1回くらい利上げするかもしれないですよ、ただバランスシートの縮小はいったん打ち止めしますよ」くらいにしておけば、その程度のメッセージで株価が急落することも無いでしょうし、債券市場がインバートして変なところから不安感をあおるようなこともそこまで無かったんじゃなかろうかと思う(個人の感想です)ので、とにかくこの人たちの特徴として、「先行きの政策を決め打ちしすぎる」「市場をコントロールしようとし過ぎる」「出すメッセージが一々バイアスかけ過ぎる」というのがあって、そのせいでこんなことになって居るんじゃネーノって感じだと思うの。

でもって「市場をコントロールしすぎる」ってのは、昨年9月10月辺りのやたら利上げするぞメッセージだったりしますが、あれだってドットチャートを素直に読むと2019年から2020年に掛けてロンガーランのドットプロットよりもFF金利のドットプロットの方が分布的に上の方にいた訳で、何もあんな感じでパウエル議長が強調しなくても、その後に強い経済指標でも連発して来たらそのうち市場がいやちょっと待てよとか織り込みに行った可能性だってあった(多分そうなると思うのだが)訳ですが、金利が全然そういう織り込みになってなかったからパウエルがイラついてビーンボール投げてきたんじゃないの、とか勝手に妄想する訳でして、市場が自分のシナリオを反映して動くべきなのに間違っている時には自分が指導しないといけない位に思っているんジャマイカという妄想が起きる訳ですよ。

そして、「出すメッセージが一々バイアスかけすぎ」なのが困ったもんで、たぶん市場をコントロールしようという意思が強いもんだから、強く言わなければという話になって、その結果タカ派な時もハト派な時も無駄に強いものの言い方になってしまうし、出てくるメッセージも無駄に強いもんだから市場というのは中銀スタンスの変化に増幅して反応するからそらもうアラン・ブラインダー元副議長の指摘する「自分の尾を追う犬」に中央銀行がなってしまう、ってなもんでしょうなあとか思うので、今はとりあえずちったあ落ち着いてきた市場ですけれどもまたぞろ今後も中銀犬がワンワンと自分の尾を追うたびに目の回る市場になるんでしょうなあと思うのでした。

という愚感想を申し上げましたがさて今更ながらの会見。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20190320.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference Opening Remarks March 20, 2019

どうでも良いのですが今朝の時点でもまだ「PRELIMINARY」バージョンかよと思いつつ遅ればせながら会見から。

・そらこういう言い方したら利下げ織り込みに行くじゃろ

冒頭説明の所は最早アレなので簡単に途中気になったところだけ。SEPのところというか見通しの話の途中から。2ページ目のケツから3ページにかけてになります。

『Now I am describing views of the most likely outcomes, but historical experience reminds us that growth and inflation this year could be stronger or weaker than what we now project.』

『The federal funds rate is now in the broad range of estimates of neutral--the rate that tends neither to stimulate nor to restrain the economy. As I noted, my colleagues and I think that this setting is well-suited to the current outlook, and believe that we should be patient in assessing the need for any change in the stance of policy. Patient means that we see no need to rush to judgment. It may be some time before the outlook for jobs and inflation calls clearly for a change in policy.』

今の金利が「in the broad range of estimates of neutral」ってのも政策論として如何なものかという説明になるのですが、「we should be patient in assessing the need for any change in the stance of policy」とここから金利動かさないもんねーという言い方をしてしまっていまして、その一方で下振れ強調したり先行きの景気について「我々の経験によれば先行きの経済というのはその時点での見通しから上振れたり下振れたりする(キリッ)」とか言い出したらちょっと経済指標で悪いのが出れば利下げを織り込みに行くし、これ今は緩和バイアスモードに市場がなっているから大丈夫なのですが、市場の緩和バイアスをFRB高官が牽制しだしていくうちに、どこかの時点で今度は強い経済指標を受けて利上げ復活とか言い出す可能性もある訳でして、そうなってくると上に下にの大騒ぎになってしまい、それを見てFEDが火消しに走ると消した反対側に火が点くの繰り返しになるんじゃネーノという懸念は捨てきれません。


・SEP止めればと思うんだが

その続き。

『In discussing the Committee’s projections, it is useful to note what those projections are, as well as what they are not. The SEP includes participants’ individual projections of the most likely economic scenario along with their views of the appropriate path of the federal funds rate in that scenario. Views about the most likely scenario form one input into our policy discussions. We also discuss other plausible scenarios, including the risk of more worrisome outcomes. These and other scenarios and many other considerations go into policy, but are not reflected in projections of the most likely case.』

ドットチャートについてこれは各メンバーが独自に出しているものですけれども、その前提になる経済シナリオは当然個人の物だし、リスク認識の掛け方をどの程度金利見通しに反映させているかとかも個人に依存していますぜとかまあそんな話。

『Thus, we always emphasize that the interest rate projections in the SEP are not a Committee decision. They are not a Committee plan.』

よってドットは決定ではないしプランでもない。

『As Chair Yellen noted some years ago, the FOMC statement, rather than the dot plot, is the device that the Committee uses to express its opinions about the likely path of rates. 』

イエレンさんがゆうとった通り重要なのはステートメントだよ、とか言ってまして、まあ先日はパウエルは先行き決め打ちタイプでしかも市場に織り込ませたがるのでドットは残すのかとか申し上げましたが、まあさすがにこの辺を見るとドットをだすのはミスコミュニケーションの元という認識はありそうではある。

そもそも「今が中立金利」だと思うのであれば、ドットを出すこと自体が無意味であって、このドットプロットというのはコミットメントでもガイダンスでもないけれども、縛られることなくフォワードガイダンスのような効果を出すというような意味で、ゼロ金利制約化におけるフォワードガイダンス的な効果と、緩和縮小時における金利急騰抑止装置としてのガイダンス的な効果はあったんですが、金利が中立近くなったらそら無意味じゃろ(中立金利を出すのは意味があるけど、中立金利が一々ぶれるとそのたびにターミナル金利がぶれてしまうからもう出さない方が良いと思う)とは思います。


という所だけネタにして会見質疑に参りますが。

・そら一発目からこう来るわ

『HEATHER LONG. Heather Long from the Washington Post. On the broader economy, can you clarify how worried the FOMC is about a steep slowdown. Some of the actions today look like there is more worry, and on the balance sheet, can you clarify, does the FOMC see the runoff as a form of monetary tightening? 』

前半の質問で「Some of the actions today look like there is more worry」と指摘していて、まあこの「何でこんなに急に日和ったんですかそんなにヤバいことでもあるんですか」という質問はこの後もホイホイと出てくるし、そら当たり前のように出るわと思う訳ですが、実はこれSEPでのトッドチャートというものが無かったらここまでの反応にならなかったなあと思うのよ。つまり1月に声明文第2パラグラフを盛大に腰砕けさせたので、本当はそこで終了になっている筈で、今回は声明文2パラは1月から全文一致になっているので、今回のSEPのドットチャートというのは本当は「1月声明文をドットに落とし込むとこうなります」という話にあまり変わりはない筈だったのですが、今回は声明文の1パラ(現状認識)を思いっきり下げてしまっている上に、そら当たり前ですがドットチャートは前回のが12月だからまずは12月と比較するわな、となって物凄い勢いで弱気化したように見えてしまう訳ですよ。

でもってしかも冒頭説明で「景気は上にも下にもブレ得る」とか「今は広い中立金利レンジの中にいる」とか言い出せばそら利下げを意識せざるを得なくなるわけで、質疑応答もこんな感じのが割と多いのは致し方ない。

ということでヤバいんとちゃいまっかという質問に対してはこのような答えがありましてですな、

『CHAIR POWELL. So, on the outlook, our outlook is a positive one. So, as I mentioned, FOMC participants continue to see growth this year of around two percent, just a bit below what we saw back in at the end of last year. And part of that is seeing that economic fundamentals, underlying economic fundamentals are still very strong. You have a strong labor market by most measures. You have rising incomes. You've got very low unemployment. You have confident surveys for households and also for businesses that are at attractive levels, and you also have financial conditions that are more accommodative than they were a couple of months ago. So, we see the outlook as a positive one.』

クソワロタとしか申し上げようが無いですが、先行き見通しがそんなに強いんだったら何であんなダビッシュな見せ方するんだよこのスットコドッコイという感じですが、まあ会見やっている時点で「これはダビッシュなメッセージを出し過ぎたんジャマイカ」という反省をしているっぽい所は見受けられますな。

でもってバランスシートの質問の方ですが、

『As far as balance sheet, the balance sheet plan, the answer to that is, you asked whether that's related to our monetary policy in effect, and the answer is really no. We still think of the interest rate tool as the principal tool of monetary policy, and we think of ourselves as returning the balance sheet to a normal level over the course of the next six months, and were not really thinking of those as two different tools of monetary policy.』

って言っててバランスシート縮小停止関連の判断はあくまでもテクニカルなお話みたいにしていますが、11月FOMC議事要旨以降に注目度高まってしまったバランスシート縮小停止議論って明らかに金融緩和度合いに意味があるような話になってしまっているので何を今さらという感じではありますが、これは決め打ちの弊害にも程があって、どうせ縮小停止する方なんて(拡大の時に緩和と言ってたんだから)縮小停止は緩和っぽいニュアンスを出すものになる訳でして、引き締めをサプライズでやるのはインフレ高進でもしてる時に限られますが、緩和ならサプライズに近いやり方したって別に無問題な訳で、何でこのバランスシート縮小停止問題を1年近く前から決め打ちで表に出す(決定したのは今回だけどああだこうだ地均し始めたのは議事要旨で出して以降なので)必要は無いじゃろと思うのですが、まあ何でも決め打ちして事前に地ならししたがるパウエルが悪いよパウエルが。


・どこもかしこも海外が悪いと言うのですがさて・・・・・・・・・・・・

海外経済の影響についての質疑が次にある。

『STEVE LIESMAN. Steve Liesman, CNBC. Mr. Chairman, can you talk about how global developments are affecting the U.S.? What's the cause of the weakness over there? How much is it responsible for the downgrade in GDP over here and what impact are tariffs both in the United States and retaliatory tariffs having on both the U.S. and the global economies? Thank you.』

答えが割と長い。

『CHAIR POWELL. So, global economy was a tailwind for the United States in 2017. That was the year of synchronized global growth, and we began 2018 expecting and hoping for more of the same. What happened instead is that the global economy started to gradually slow, and now we see a situation where the European economy has slowed substantially and so has the Chinese economy, although the European economy more.』

前振りが長いが要するに足元では中国と欧州が弱いが特に欧州が弱い、とまあ確かにそれは仰せの通りですが、当の欧州は「海外が弱いので影響を受けている」とか言ってるのがお洒落ですな(たぶん欧州が一番アカン)。

『And just as strong global growth was a tailwind, weaker global growth can be a headwind to our economy. How big is that effect? It's hard to be precise about it, but clearly we will feel that. It is an integrated global economy, and global financial markets are integrated as well. In terms of what's causing it, it seems to be a range of different things.』

はっきり言ってこの部分無駄。

『In China you have, you know, factors that are very specific to China. The main point though is that I would say the outlook, let's look at the outlook, Chinese authorities have taken many steps since the middle of last year to support economic activity, and I think the base case is that ultimately Chinese activity will stabilize at an attractive level.』

中国はスローダウンしてるけど政府の施策で持ち直すと良いですね。

『And in Europe, you know, we see some weakening, but, again, we don't see, we don't see recession, and we do see positive growth still.』

欧州はアカンタレだがリセッションは見ていませんとな。

『You ask about tariffs. I would say tariffs may be a factor in China. I don't think they're the main factor. I think the main factors are the levering campaign that the government undertook a couple of years ago and also just the longer term slowing to a more sustainable pace of growth that economies find as they mature. In terms of our own economy, the level of tariffs is relatively small in the size of our economy, relative to the size of our economy. We have since the beginning of the year and before really been hearing from our extensive network of business contacts, a lot of concerns about tariffs, concerns about material costs on imported products and the loss of markets and things like that, depending on which industry. So, there's a fair amount of uncertainty. It's hard to say how much of an effect that's having on our economy. It's very hard to tease that apart, but I will say it's been a prominent concern among our business contacts for some time now. 』

貿易戦争の帰趨の影響は色々とあるので難しいとかそういう話をああでもないこうでもないとくどくど説明するのでありました。

という所で時間切れになってしまうという時間配分のヘボいアタクシですが続きは明日以降にでもやりつつ、他の連銀高官の発言にも追いついて行こうかと存じます。サーセン。








2019/03/27

お題「決定会合主な意見を見ると議論が同じところで停滞している気がするんですが・・・・・・・」

呉座先生・・・・・・・・(^^)。

http://agora-web.jp/archives/2037900.html
在野の歴史研究家に望むこと
2019年03月21日 16:00

http://agora-web.jp/archives/2037979.html
八幡氏への忠告@ 評論家に歴史研究はできない
2019年03月25日 17:00

http://agora-web.jp/archives/2037984.html
八幡氏への忠告A 人生経験は歴史研究に益するか
2019年03月26日 06:01

過去の経緯があって上記3部作になっているのですが、過去の経緯がわからなくてもこのキレッキレな論説を読みますとだいたい話の経緯が分かると思いますが、この3部作の斬れ味たるやアタクシなんぞは比較するのも畏れ多くて足元にも近寄れませんけれども、精進してかくありたいものであると思うのですし、経済学の分野にも呉座先生のような方が居れば某先生辺りは一刀両断なのではと思ってしまうのでありました。

なお呉座先生の「応仁の乱」は購入して本がボロボロになるくらいまで読んでいるのですが、読書室のネタにしていなくて正直スマンカッタ。


〇決定会合主な意見は相変わらず議論になっていないですなあというのは把握した

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2019/opi190315.pdf
金融政策決定会合における主な意見 (2019 年 3 月 14、15 日開催分)

・この内容と直接関係ないけどベンダーヘッドラインのバイアスリスクを感じた

ということで主な意見なのですが、まず思ったのは「ベンダー(一部か全部かはさておき)の報道が追加緩和寄りになっていますなあ」という所ですな。つまりですね、この後半でネタにしますけど、今回って追加緩和の話は出ていますがそもそも議論が成立していないし、緩和ゆうとる人たちも何か具体策がある訳でもないという情けない状況なのですが、そうは言いましてもベンダーちゃんの方を見ますと、アタクシがちらっと見たベンダーに限りますけど、追加緩和方向のヘッドラインが目に付くような打ち方をされていまして、まーだいたいベンダーというのはその時のネタとなる方向にバイアスが掛かって報道されるという傾向があるので毎度の仕様なのですが、ただまあ主な意見の本文を細々見ないでとりあえずベンダーヘッドラインで判断する、というような他市場の方々(あとは海外の方とか)がヘッドラインに反応しやすくなるのでうーんこのとは思うのでありました。まあそんな偉そうなこと言ってますけどこっちだって全てのネタを全部1次資料から当たって確認するとか全然していないので、自分が細々確認していない方面ではベンダーヘッドラインにホイホイと乗せられてしまうので人の事は言えないんですけどね(汗)。

でもって市場が当局を追い込むというのはよくある話だし、パウエルFRBとか市場と一緒になって馬鹿踊りを踊り狂っている状況なので、あんまりそんなので右往左往したくはないですけど、市場が追加緩和のテーマで先走って、それが報道などで自己実現的に強化されるようなリスクというのは頭に置いておかないとアカンかなとか思うのでした。


・前向きの循環メカニズムと言い張るための根拠がどうなるかという話

普段はスルー傾向の『T.金融経済情勢に関する意見 』の『(経済情勢)』から参ります。

ちなみに『(物価)』というのもありまして、2%物価目標やっているのですから本来はそっちを見るもんなのでしょうが、何せ今の政策ってなし崩し的に2%物価目標の達成が中長期化して、政策も中長期的な持続力を高める(高くないと思うがそれはさておき)というものになっておりますので、物価の見通しに関しては正直どうでも良い(どマイナスにならない限りにおいて)という感じになっている訳ですな。どこが2%ターゲットなのかさっぱりわかりませんけど。

今回の主な意見では(経済情勢)の方が12個も黒ポツがあって、(物価)の方は5個の黒ポツ、ということでどう見ても経済情勢での判断って風になっているなあと思いますし、では経済情勢という点で気にするのは海外というのもありますが、それはある意味如何ともし難い所なのでそれよりも注意するのはその影響が国内にどうでるかという話。

『・海外経済は、昨年の秋頃から不透明感が漂い始めていたが、減速の動きが顕在化してきている。その影響から、わが国経済の下振れリスクは足もと明らかに厚くなっている。輸出・生産は弱めの動きとなっており、これが今後の設備投資計画に影響を与えないか、注視していく必要がある。 』

『・能力増強投資を含むわが国の設備投資は、世界経済が多少下振れしたとしても大きくは崩れないとみているが、その動向には 注意が必要である。』

『・個人消費は、当面、雇用・所得環境の着実な改善などから増加基調を辿ると見込まれるほか、補正予算等を背景に公共投資も 拡大に転じると予想される。』

『・世界経済の停滞が日本経済に下押し圧力をかけているが、これ までのところ雇用の伸びは続いている。しかし、輸出、生産の減少が雇用、さらには消費に波及することも考えられる。これは物価上昇のモメンタムを弱くする。さらに消費税増税が消費 に悪影響を与えるリスクもある。』

『・企業収益が頭打ちとなる中で、賃金と設備投資の拡大ペースが鈍化する可能性がある。また、海外経済動向や消費税率引き上げの影響次第では、景気後退への動きが強まっていく可能性があり、懸念される。』

ということで経済情勢の後半の意見がこんな感じなのですが、海外が減速傾向なので輸出が弱くて生産も弱めと来ている中で、「前向きの循環メカニズムが維持されています(キリッ)」と言い張るには、設備投資と個人消費がコケないことが前提となりますし、特に設備投資は最近金融緩和効果で云々みたいなトークにおける最後のアパッチ砦状態になっておりまして、これがコケるとさすがに本格的に心が折れてしまうでしょ(設備投資それ単体での需要創出効果に加え、能力増強して生産性が高まることによって足元で物価が上がらなくても中長期的に潜在成長率が高まって好影響、という話もできなくなる)と存じますので、当然生産統計は重要なのですけれども、設備投資がコケだすと日銀の心が折れて何か別の屁理屈を繰り出さざるを得なくなると見ましたがどうでしょうかね。

消費についてはよー分からんというか、この前も某大手電機さんが45歳以上全員がリストラ対象とか終身雇用で賃金カーブ引いてやっていた筈の話の約束が違うじゃんみたいなネタがありましたが、最近はやりの(アタクシもそこに含まれますけど)年寄り冷遇策ってのが実は若手世代に更なる将来不安を与えて、冷遇される方も本来その冷遇によっておこぼれが回って来るはずの若手も将来不安で消費しませんよモードになっとるんとちゃうかとか思ってしまいますが(ただの個人の感想です)、なんかこう前回の消費増税の時と比べて、「駆け込み需要」っぽいのがあまり無いように思えるのですが、それを駆け込みが無いので反動もないとみるのか、駆け込む元気もないと見るのか、さてどうなんでしょうね。まあ消費が極端に落ち込むという感じではないと思うので、コケるとしたら設備の方かなあと思いますけど(何の根拠もない個人の感想です)。


・金融政策に関する意見の方からだが追加緩和に具体策なし&リバーサルレート論に繋がる論点も

『U.金融政策運営に関する意見 』ですけどね。

最初の3つは執行部見解というか公式見解の話なのでまあどうでも良いとしまして、4ポツ目からネタにしますです。

『・当面は慎重に景気動向を見極めつつ、金融機関や市場機能に与える副作用についてこれまで以上に留意して、現行の金融緩和政策を維持する必要がある。また、今後も金融と財政のポリシーミックスというマクロ経済政策運営の枠組みが維持されることが重要である。』

物凄く多方面にヘッジの入った現状維持ですが、金融政策で物価目標達成と言ってマンデルフレミングとか言ってたはずの置物一派が財政ガーと口を揃えて言い出すという無定見ぶりを発揮する中で、このような金融と財政の云々とか言い出すのは若田部副総裁ですかねえ。

でもって次のはこんな意見で、そういや前回の議事要旨でもこんなのあったなとか思いますが、

『・現在の政策枠組みは、市場の状況に対応するための一定の柔軟性を有しており、緩和の副作用を軽減しつつ、市場環境が変化 するもとでも緩和的な金融環境を維持しやすい政策といえる。』

一歩進んでもっと柔軟性を出して長期金利の方のYCCの形骸化を進めてください。

そしてこの後二つが追加緩和ネタなのだが・・・・・・・・・・・・・・

『・経済・物価情勢の局面変化に際しては、先制的に政策対応することが重要である。』

で何するの???

『・下方リスクが顕在化している現状では、政策対応の準備をしておくべきである。物価上昇のモメンタムが失われる懸念があれば、断固とした追加緩和を行うべきであり、緩和限界論には明確に反論すべきである。』

だから何をすれば物価が上昇するような施策になるの??????

とまあそういうお話でして、緩和限界どころか緩和のし過ぎで弊害の方ばっかり起きているリバーサルレート状態になっている訳でして、緩和限界論に明確に反論すべきである(キリッ)じゃなくて具体的にどのような事を行って追加緩和したらどのようなメカニズムがワークするのか、というのをキチンと説明して頂かないといけない訳で、置物マトリックス、あるいは置物流風が吹けば桶屋が儲かるチャート以降、なんかメカニズム示しましたっけあんさんらとしか申し上げようがない。

それに対して次の反論っぽいのはワロタ(褒めてます)。

『・現時点では、経済・物価情勢のメインシナリオは変わらず、2% に向けたモメンタムは維持されている。金融政策は、景気の変動に逐一、機械的に対応するものではなく、こうした物価の基調判断に基づいて運営していく必要がある』

「景気の変動に逐一、機械的に対応するものではなく」っての是非FRBに行って演説してほしいですな。

でもって次のはそうですねーというお話。

『・社債市場では、従来は国債金利を基準としたプライシングが行われてきたが、国債金利がマイナスとなる中、金利の絶対値が基準となりつつある。こうした実質的なゼロ金利制約があるような状況では、追加的な国債金利の低下による金融緩和効果は、 これまでと比べ限定的となる可能性がある。 』

これは全く仰せの通りという論点で、貸出に関しても同様という話まで踏み込んで議論すると、リバーサルレート論にも繋がっていく話になると思うのですが、まあどうせこの論点で議論が行われているという感じじゃないだろうなあとは思いながら、今回の議事要旨でこの意見に関する論議が行われているのか、単に単発の指摘だけに留まってしまったのか、という程度はさすがに議事要旨でなんとなくニュアンスはつかめると思うので、そこは見ておきたいと言いつつ、次のMPMが大型連休前ですから議事要旨でるの5月の連休明け(5月8日が予定されています)なので忘れないようにしないと(汗)。なお、主な意見に記載されている文言って基本的に議事要旨にも掲載されているので、この指摘部分は議事要旨に掲載されると思います。


という一服の清涼剤ともいえる意見が出たと思ったらまたジンバブエ方面からゴミ見解が披露されてしまうの巻。

『・長期的に名目金利を上げるには物価上昇率を高めることが重要であり、低金利からの脱却には、2%の早期実現が近道である。 デフレから完全脱却する前に金融緩和をやめると、むしろ低金利が続いてしまう。 』

そもそも金融緩和やめろと言ってるのは(一部変なのはいると思うが)別にいない訳で、過度な緩和で弊害しか出てないのを何とかしろと言っているだけなのですが、相変わらず金融引き締めをしろみたいな藁人形相手に奮闘するジンバブエ先生オッスオッスという感じですが、じゃあお前は早期達成するために何をどうすれば早期達成するのかというのを示せよこのボンクラとしか申し上げようがない。


しかしこれも毎回出ますな。

『・海外投資家の資金が国債市場に流入してきていることや、金融機関の国債保有額が資金調達のための担保等としての必要最低 限の水準まで近付いている可能性があることを踏まえれば、国債買入れオペの運営には見直し余地があると考えられる。 』

それはそうですがオーバーシュートコミットメントがありますし、金融機関の担保だの海外の買いだのというのを理由にするのはオペ技術の話としてはまあそういうこともありますなとは思いますが、だから買入オペを見直すみたいなのを政策論とするのはあまり筋がよろしくないと思うのですけど、と毎回申し上げるアタクシ。

次は片岡さんですな。

『・足もとの景気や物価動向を考慮すると、消費税率引き上げが経済・物価に下押しの影響を与えるリスクは相応にある。早期の物価目標達成が見通せない中では、財政・金融政策がさらに連携して総需要を刺激することが重要である。』

具体的案をヨロシクだよ。そういやなんか知らんが前回片岡さんが追加緩和の提案になっていない具体的な意見を取り下げたのは次回ちゃんとしたのを出す布石とかいう謎論評を見たような気がしたのだが、単に「10年超の金利を下げる」というのが起きてもこの有様というのを見て引っ込めただけで八方塞がりなんではなどと意地悪く解釈するのがアタクシの仕様です。

『・生産性上昇のためには、金融業も含めたすべての業種で、生産性の高い企業の参入、生産性の低い企業の退出が必要である。 このような新陳代謝を高めるには人材の企業間移動が必要であ る。日本の労働市場の硬直性が、このような移動を妨げていたが、長期の金融緩和による圧力が、そうした硬直性を打破している。これは、金融政策が構造改革を促す一例である。』

色々と話が飛躍しているのでジンバブエ先生で確定。話が飛躍しすぎで頭がクラクラします。


・詳細に比較しては居ませんがなんかここもとの議論が完全に停滞というかループしてないかと

・・・・・・・・という訳でですな、まあ今回の主な意見を拝読したわけですが、今回というかここ数回の主な意見って各人が出しているのがあんまりインタラクティブな意見提出になっていないですし、しかも意見の内容が毎度同じで変化していない、というような傾向があると思うのよ(個人の感想です)。

つまりですな、そもそも論として全然議論が成立していない上に、議論が成立していないもんだから議論によるフィードバックループもなければ各人の主張のブラッシュアップも起きない、という現象になって、時事放談が同じところをグルグル回っているだけになってるんじゃないのとか思ってしまう訳ですが、まあ人の話を聞かなさそうなのが何人もいるように見えますし、黒田総裁がどこからどう見ても意見交換しながら見解をすり合わせて行こうというようなタマではないという議長の仕切りの問題も大有りでは無いかと思ってしまう訳ですな。

いや全く困ったもんだ、とおもうのでありました。


〇基調的なインフレは・・・・・・・・・(メモだけ)

http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

上記URL先にリンクのあるエクセルの方から淡々と貼り付けるとこのような状態。

刈込平均値(前年比、%)
Jan-18 0.8
Feb-18 0.8
Mar-18 0.7
Apr-18 0.5
May-18 0.5
Jun-18 0.4
Jul-18 0.5
Aug-18 0.5
Sep-18 0.5
Oct-18 0.6
Nov-18 0.5
Dec-18 0.4
Jan-19 0.5
Feb-19 0.4

加重中央値(前年比、%)
Jan-18 0.2
Feb-18 0.2
Mar-18 0.1
Apr-18 0.1
May-18 0.0
Jun-18 0.0
Jul-18 0.1
Aug-18 0.1
Sep-18 0.0
Oct-18 0.1
Nov-18 0.1
Dec-18 0.0
Jan-19 0.1
Feb-19 0.0

最頻値(前年比、%)
Jan-18 0.3
Feb-18 0.3
Mar-18 0.2
Apr-18 0.2
May-18 0.3
Jun-18 0.2
Jul-18 0.2
Aug-18 0.2
Sep-18 0.2
Oct-18 0.2
Nov-18 0.2
Dec-18 0.2
Jan-19 0.2
Feb-19 0.2

・・・・・・・・1月の数値に一瞬改善かと思ったのですがやはりパッとしないのはカワランチ会長なのでした。


#FOMC会見ネタを完全にさぼっておりまして誠に相済みません








2019/03/26

お題「米金利更に低下だわ円金利も30年0.5割れとかやるわと/ジンバブエ先生大和総研での講演はただの焼き直し物件でした」

米国株はいったんとまったようですがさて・・・・・・・・・・・・・・・

〇自己実現型の煽りが来てますなあ

https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N21C3WK?il=0
2019年3月26日 / 04:21
米金融・債券市場=10年債利回り低下、長短金利の逆転差も拡大

30年債(指標銘柄) 2.8716% 前営業日終値 2.8890%
10年債(指標銘柄) 2.4195% 前営業日終値 2.4550%
5年債(指標銘柄) 2.2017% 前営業日終値 2.2550%
2年債(指標銘柄) 2.2562% 前営業日終値 2.3290%

ヒャッハーという感じですが、この市場の煽りに煽られる発言だか何だか知りませんが、

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-yellen-rates-idJPKCN1R627V
2019年3月26日 / 03:06 /
イールドカーブ、利下げの必要示唆か=イエレン前米FRB議長

とかいうのまで出てくる次第ですが、ニュース本文を見ると、

『[香港 25日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)前議長のジャネット・イエレン氏は25日、米国債のイールドカーブについて、景気後退でなく、ある時点で利下げを行う必要性を示している可能性を指摘した。』(上記URL先より)

景気後退ではないのに「ある時点で利下げを行う必要性」って何だよそれという感じでございまして、これが今FF金利が4%だのとかいうのなら話は分かるのですが、中立金利と言い張っている2.25−2.50%(実効FFは2.3−2.4位の筈)水準って潜在成長率と物価上昇率から考えたらどう見ても中立金利より低いだろと思うような水準で「景気後退でなく、ある時点で利下げを行う必要性を示している可能性」ってそれはどういう文脈で説明しているのか分からん。


でもってエバンス総裁もハト→タカ→ハトと近年の豹変著しいオッサンですけど、

https://jp.reuters.com/article/fed-evans-idJPKCN1R605I
2019年3月25日 / 11:55 /
利回り曲線平坦化、市場の警戒理解できるが米経済は良好=シカゴ連銀総裁

『[香港 25日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は25日、イールドカーブのフラット化に市場が神経質になるのは理解できるとした一方、米経済は依然良好なペースで成長しているとの認識を示した。』(上記URL先より、以下同様)

と来ているのですが、

『総裁は、下振れリスクの浮上と不透明感の高まりを踏まえると、FRBは経済指標をさらに見極めた上で次の金利変更を利上げとするか利下げとするかを決めることが賢明だと述べた。総裁は「経済活動が予想以上に縮小したり、インフレやインフレ期待があまりにも低い場合には、据え置きか、おそらく緩和さえも必要になる可能性がある。適切な緩和を提供し、我々の目標を達成するためだ」との見方を示した。』

ってのがあって、確かアタクシが昨日見たブルームバーグの方でのヘッドラインは思いっきりこっちの「景気が悪化したら緩和が必要になる」というのがヘッドラインに取り上げられる、という感じでメディアも良い感じ(悪い感じですけど)で煽りモードになっておりまして、すっかりこう雰囲気がアレという感じで。

・・・・・・・と言いつつパウエル会見ネタがまだという辺りアタクシも何やってんだという所ではあるのですが(サーセン)、利上げを当分しないで様子見、という話をするのは良いのですが、この人たち色々とコミュニケーションがおかしくて、自分らが市場を振り回しているという認識がなさそうなのが悲劇あるいは喜劇の元という感じなんだろうなあとは思います。

昨年の秋口って多分中立金利に近いところとみられる3%程度への利上げを見ていたと思うのですが、その時分ってまだ米国債券市場は(FF先物は変態なのであれを真に受けるよりはイールドカーブを見た方が良いと思うのですが)3%までの利上げは見ていなかったし、大体からして12月利上げ無しという人も結構いた状態で、まあそれに対してケシカランとばかりに「中立金利水準よりも利上げすることもあるかも」とか言い出して市場の織り込みを変更させに行ってたって感じだと思うのよパウエルさん。

そしたら他の要因(政治要因からの海外要因)もあってありゃりゃとなる中、12月に利上げは織り込み通りに利上げ行ったのですが、この前くらいから「中立金利はレンジ」とかワケワカランことを言い出して利上げ後の金利水準が中立に近い状態とか言い出すけれどもドットチャートは利上げを継続するというこの混乱。でもってそのちょっと前から話が出だしていたバランスシートの話を中途半端なところで出すもんだから「オートパイロット」って今まで普通にやっていたことがタカ派発言扱いになって株式相場があばばばばーとなって更に弱気化するという有様。

でもって1月FOMCでのバランスシート縮小早期停止示唆からの今回のFOMCのお笑い豹変ドットチャートに至る訳ですが、とにかく今のFOMCの何がイカンって中立金利というかロンガーランの金利水準に関してブレブレですから、そうなるとそもそも論として金融政策が緩和的なのか引き締め的なのか中立的なのかというのすらコロコロ変わる(12月FOMC前位から言い出した2.5%−3.5%が中立金利、というのは理論的には中立金利をジャストポイントで出すのは無理というのは分かるが、政策運営論としてこんなに幅のある中立金利を出されたら政策運営上意味がない)人たちなので、そら政策コミュニケーション崩壊するわと思うのでありました。

まああとは昨日も申し上げましたが無能議長の癖にグリップだけは優秀なので、無能が右を向くと一斉に右を向き、左を向けば一斉に左を向く(変態仮面を含む一部の人たちを除く)という形になるので、3か月でここまで極端に金利見通しが変わる程の大ショックって経済にありましたっけというようなドットチャートが平然と出てくる訳ですが、どうも昨年のど強気発言以降のながれを見ると、パウエルはFRB内のグリップもそうですが、市場に関しても自分でコントロールしようと考えすぎなんじゃないかなーと思うのよ。つまり「当面据え置き」だったらそれを強調しちゃうし、暫く前のように3%ちょっと越えまでの利上げを考えている時には市場にこれまた事前に織り込ませに行こうとするし、という感じなのですが、そんなのは本来「経済のアセスメント」と「ロンガーランの成長率と物価」(と中立金利かなあ、実は要らない気もするけど・・・・・)を示しておけば市場が勝手に織り込むのであって、一々「こっち方向」ってバイアスを掛けてくるもんだから市場がそっちに振らされるし、まあこの一連の動きから何考えてやっているのかさっぱり分からんというかロジカルではない、というのが示されたので、目先動かなくて良い状態ならばまだしも、先行き上にしても下にしてもややこしいことになりそうですな、と思うのでした。

でもってその先行き政策を示す道具になっているドットチャートですが、市場に織り込ませに行きたいパウエルは残したがりそうな気がしますが、ロンガーランの金利を出すだけにしてドットチャートは廃止すべきと思いますな。


〇ところで40年入札ですなあとか世間話とか

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N21C1HI
2019年3月25日 / 15:15 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続伸 長期金利は一時-0.095%、2年7カ月ぶり低水準

『 <15:08> 国債先物が続伸 長期金利は一時-0.095%、2年7カ月ぶり低水準

国債先物中心限月6月限は前営業日比7銭高の153円11銭となり、続伸して取引を終えた。前週末の欧米市場では、独10年債利回りがマイナス圏に沈んだほか、米長短金利が逆転。世界景気の減速懸念が広がる中、安全資産とされる国債に買いが入った。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時マイナス0.095%と、2016年8月以来、2年7カ月ぶりの水準に低下した。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、昨日はもう朝っぱらから30年カレント0.495%とか中々地獄の入口のようなことになりました(本当の地獄は2016年の夏に見ているのでこの程度では・・・・)が、輪番の長い所がちょっと打ち込まれて後場は若干押したものの、まあ強いですわという風情ではございましたな。

『日銀による中期・超長期を対象とした国債買い入れオペは、オファー額が市場の予想通り前回から据え置きとなった。オペの結果のうち、「残存期間10年超25年以下」と「残存期間25年超」で応札倍率が上昇した。需給の緩みが意識されると、国債先物は上げ幅を縮小。長期金利はマイナス0.090%に戻した。このほか超長期ゾーンでは新発20年債利回りが一時0.325%、新発30年債利回りが一時0.490%に低下した。20年債利回りは16年9月以来、30年債利回りは同年11月以来の低水準を付けたが、オペの結果を受け、利回り低下にいったん歯止めが掛かった。』(上記URL先より)

でもってこんな水準で40年入札かよとは思いますが、まあ水準はアレですが流れはヒャッハーなのでさてどうなるのかというか絶対水準バイヤーが着いていけるのかという感じですが、インデックス対比とかレラティブとかの人的にはどうなんですかね、とまあ呆然と見るのでした。


ところで昨日ちょっと書いていてピコーンと思って昨日の10年▲9.5bpとか見ながらちょっとだけ頭を捻ってみたのですが、次に円高になって(たぶんそれ以外の要因では追加緩和をするという話にはならない、と思う)、こりゃ追加緩和待ったなし、とかになるじゃないですか。

でですね、追加緩和するにしたってツールはねえや、というかあるけどマイナス金利深堀とか地獄の拡大以外の何物でもないので、メリットどころかデメリットしかないんじゃないの、などと思い「日銀に手段無し」とか思っていた(ちなみにETFというのはあるがこれもまあ将来的な弊害が今の時点でも問題なのに更に拡大とかあり得んわな)のですが、よくよく考えてみたら「10年金利の低下を容認する」というのはインチキ緩和として使えるじゃん、とか思った訳ですよ。

つまりですな、10年が0bpを挟んでプラマイ20ってなっていますが、「経済物価情勢を反映した自然な動きで金利が変動する場合には特段の牽制などは行わない」とか何とか言い出して、10年の金利を▲20よりも低くなるのを堂々の容認をする、と言ってしまって、でもマイナス金利の深堀はしない、というインチキ策によって「なんちゃって追加緩和」をする上に、どさくさに紛れてYCCの金利変動幅を拡大してしまい、将来美しい出口になるか諦めの出口になるかはともかくとして、政策を戻す際にも「単なる変動幅拡大」なので金利上昇方向もどさくさに紛れて拡大しているから将来も使える、というインチキスキームなんですけどダメですかねえ(^^)。

・・・・・・ってまあこれどさくさに紛れてYCCを事実上形骸化させてしまうんですが、金利が上がっている時に変動幅拡大容認というとあの時ですらあんな状態だったわけですから、変動幅拡大するには金利が低下圧力が掛かっている今こそしらっと拡大しておいて、金利が上がった時に「ああ金利変動は以前から容認しているって言ってましたよね」という事ができますし、大体からして金利が下がった時に今の状況だとオペ減額もしにくいですし(予定表の建付け上臨時買入は出来るがスキップはできない)、どこかの水準決めて札を切って募外にするというのは市場に金利水準を示すことになるのでやりにくいですし(昔の短国買入みたいに突拍子もない金利で切るのはアリだと思いますが▲20近辺で切るのは変な閾値を市場に作るので後の運営が面倒になる)、となっていますが、この「金利低下のドサクサに紛れてYCCの形骸化を進める」というスキームで災い転じて福となす、というのはどうでしょうか(ヤケクソ)。マイナス深堀にしろ量の拡大にしろ戻すの大変ですが、変動容認だったら実質何もしないでいいですからね。


〇ジンバブエ大先生の講演と思って手ぐすね引いてまっていたら概ね過去の金懇コピペだったので失望

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190325a1.pdf
日本経済と生産性
大和総研日本経済予測第200回記念コンファレンスでの特別講演
日本銀行政策委員会審議委員 原田 泰
2019年3月25日

まあ実はアタクシも当日になって講演があると知りまして、いつもだともう手ぐすね引いて待ち構えた挙句に、ねじり鉢巻きでツッコミ入れまくるのがアタクシの仕様になっていて、大先生の講演を日銀のスタッフの皆さんの次くらいに熱心に読んでるの実はアタクシなのではとか勘違いしてしまいそうでございますが、本日は残念ながら小見出しのようなので何を今さらという感じです。

参考となる金懇は大体これです。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko180704a.htm/
わが国の経済・物価情勢と金融政策
石川県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 原田 泰
2018年7月4日

よって本文のツッコミどころに関しては過去のアタクシの駄文の
http://www.doramemon7743.sakura.ne.jp/doramemon1807.html#180705

でもご参考にして頂ければと存じますが、何せこの時は認知的不協和から来て最後は神の域まで到達する凄まじい金懇でしたが、その2週間後の時事通信砲からの柔軟化ですっかり忘れられた感があるので、今回焼き直しに来たのでしょうか(違)という風情ですな。

なお以下の本文はちゃんと昨日の特別講演から引用しますのでご安心ください(笑)。


・でもちょっとだけ鑑賞を開始するが最初からズッコケ

『はじめに』から。

『この度は、大和総研の日本経済予測が 200 回になられたとのこと、大変おめでとうございます。半世紀にわたる予測ですから、皆様方も日本経済の変遷とご自身の人生を振り返られて感慨深いのではないかと思います。そのような大事な節目を記念しての、大和総研日本経済予測第 200 回記念コンファランスにお招きいただき、講演の機会をいただきまして大変ありがとうございます。』

ということですが何でまた大和総研は折角のコンファレンスでこの人呼ぶのよ他にちゃんとした人幾らでもおるじゃろと思いますが、まあ大和総研が製造物責任を取っていると思えばそういうものなのかも知れません。しかし「半世紀にわたる予測ですから、皆様方も日本経済の変遷とご自身の人生を振り返られて感慨深いのではないかと思います。」ってなんか不思議な説明だわな。

『日本銀行は2%のインフレ目標達成を目指して 2013 年4月から量的・質的金融緩和政策(QQE)を導入、その強化を図って参りました。2%は達成できておりませんが、生産、雇用、投資、輸出、消費、財政状況などほとんどの経済指標が改善しています 1。本日は、短期的な予測については他の講演者の皆様がお話しなさると思いますので、長期的なお話しをしたいと思います。』

と言ってるんですが、長期的なお話というからには日本経済の長期ビジョンとか、日本経済における長期的あるいは構造的な問題点、日本の成長力を高めるためにはどういう話をしたらいいのか、というような話が出るかと思いますし、まあお題が『日本経済と生産性』なのですから、とおもいますが、これがまたさに非ずでございまして、単に「今の金融政策はこのように成果を上げた」「金融政策批判をしている連中は認知的不協和」という話をしているだけで、どこがどう長期的なお話をしているのかと小一時間問い詰めたくなるような話しですし、わざわざお呼ばれしているのに過去の公表済みの金懇の話(しかも半年以上前の話)を繰り返すとか何なんでしょうこの人という感じではございます。

ちなみに以下の小見出しは、

金融緩和政策と生産性
稼働率の上昇による生産性の上昇
ヒステリシスの解消による生産性の上昇
人手不足と構造改革
おわりに

となっていまして、概ね昨年の金沢金懇の話なのですが、この小見出しを見ただけで「長期的な話」をしていないのが分かると思いますし、「短期的な予測については他の講演者の皆様がお話しなさると思いますので、長期的なお話しをしたいと思います。」と言うからには長期的な予測があるかと思えば見ればわかるように長期的な予測もないという代物でして、ただの金融政策上手くいきましたという宣伝(しかも分析がアレ)という奴ですな。

まあ以下は大体いつものツッコミになるのですが、昔のと同じだと思うとツッコミをするパワーも落ちるので、今日改めて読んでトサカゲージを上げたら続きをするかもしれませんがちょっとだけ。


・因果関係を説明しないで効いたとか言われましても

最初のところから。

『私は、大胆な金融緩和政策、QQE の、日本経済に対する最大の貢献は生産性を引き上げたことだと考えています。しかし、実は、経済学の教科書には、金融政策は、短期的には実質変数−実質 GDP、生産、雇用などに影響を与えることができるが、長期的には名目変数−名目 GDP、物価、為替レートなどにしか影響を与えることができないと書いてあります 2。生産性も、実質 GDP を雇用量や資本量という実質変数で割った実質変数ですから、本来は金融政策によって長期的に生産性が上がることはないのです。しかし、事実として生産性が上がっています。』

『ではなぜ、経済学に反して、金融政策によって生産性が上昇したのでしょうか。それを考える前に、まず事実を見たいと思います。』

という毎度の話なのですが、金融政策で長期的に生産性は上がらないのだが、たまたま金融政策の時期と他の要因による生産性向上(実際にはこの生産性向上の分析も相当怪しいのだが)が重なった疑似相関なのではないか、という検証が無いし、大体からして金融政策の何がどうなって生産性が上がったという経路の説明が無いので却下。


・都合の良い数字を取り出してきて説明

まあ毎度のことですが、本文3ページ目のケツから4ページ目辺りが小見出し『金融緩和政策と生産性』の最後でしてね、

『そこで、生産年齢人口一人当たりの実質購買力平価 GDPという指標を考えてみました。これですと、働きたい人が働いていれば高く、働いていなければ低くなり、歪みは小さくなるはずです。生産年齢人口一人当たりの実質購買力平価 GDP を見たのが図2です。図と付表に見るように、QQE 後の日本の成長率は主要国の中で最高となり、過去 10 年のトレンドよりも明らかに高くなっています。働きたい人が、より働けるようになったからです。』

ということですが、それは日本の生産年齢人口減少が他国に比べて大きいからなのではないかという気がするんですがそっちのデータが示されていないのでこれだけ出されましても説得力がないんですけどねえ。(なおこのネタも過去の金懇で出ている)


・神は居なくなりましたが認知的不協和は残りました&そもそもこれ社会人としてどうなのよ

まあ中身の分析はこの前悪態ついたんでもう今更という感じですが、だれかこの分析に突っ込んでいただける奇特な方がいますと助かりますなという感じですが、一応経済のシンクタンクなのにそこに出かけてあの分析かよという話に関してはもうどうでも良いので『おわりに』までワープする。

『私には、QQE に反対している人々の態度には認知的不協和と言われるものがあると思えます。認知的不協和とは、マーケティングでも使われる心理学の用語ですが、自分の認識と新しい事実が矛盾すると不快に思うということです。その場合、少なからぬ人々は、新しい事実を否定することによって不快感を軽減しようとします。』

出たよ。

『QQE で経済は良くならないという自分の強い認識に対し、現実に経済が改善しているという事実を突き付けられたとき、その事実を否定、または、今は良くても将来必ず悪化すると主張して、不快感を軽減しようとするわけです。例えば、将来、金融緩和の出口で大変なことになるという主張も、将来の可能性を述べて、不快感を軽減しようとしているものです 12。現在ではなくて、将来のことですから、当面、不快感を味わわなくてもよいことになります。』

ってまた毎度のがありましたが、この部分は先般の金沢金懇と同じで、しかもあの時には小見出しでわざわざ『QQEに対する認知的不協和』というコーナーを設けて、これと全文一致する話が出ておりまして(というか今回のこの部分が前々回の金懇の全文一致なのだが)、その次にあの名言『さらに、金融緩和政策の手段そのものを否定しようという心理もあるように思います。大胆な金融緩和は危険であり、そのような手段を取るべきではないというのです。人間は、太古からこのような感情をいだいていたのかもしれません。神話は、神に挑戦した人間たちの悲劇を繰り返し描いています。バベルの塔、太陽に近づいたイカロス、土で作られ、命を与えられたゴーレムが破滅を導いた神話です。QQEに反対する人々は、QQEも神の領域を侵すものだと言いたいのかもしれません。』(これは2018年7月4日の原田審議委員金沢金懇挨拶より)というのが続くのですが、惜しいことに今回はこの話が出てこなくなっておりまして、甚だ残念なところではございます。


という訳で、今までせっせとツッコミを入れていたのに今回はどうしたんだと言われそうですが、だって以前の(しかも半年以上前)の金懇焼き直しとか悪態にも値しないですし、それ以前の問題と致しまして、わざわざ「大和総研日本経済予測第200回記念コンファレンスでの特別講演」って題目の講演をやっているのに、そこでの講演が以前の公表済み金懇の焼き直しをして済ませるってのは社会人としてどうなのよと思ってしまうんですけど・・・・・・・・・

#ああ他にも「みんなリフレ派」がありましたな








2019/03/25

お題「金利が盛大に低下したので雑談」

殺伐としたブリクジット情勢に一筋の希望が(大嘘)。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019032400135&g=int
「超能力でEU離脱止める」=ユリ・ゲラーさん緊急参戦−英
2019年03月24日22時08分
.
『【ロンドン時事】スプーン曲げで有名な自称「超能力者」のユリ・ゲラーさん(72)が、英国の欧州連合(EU)離脱を「超能力で止める」と宣言した。英EU離脱はさまざまな政治的力学が働く中で行き詰まっているが、「超能力」で英国が進む方向を曲げられるかに関心が集まっている。』(上記URL先より)

寧ろ曲げの師匠といえば北ハマー先生などがお勧めのような気がしないでもないですが、確かにここは百発百中に近い制度を持つ曲げ師匠が登場することによって混沌に新たな指針を!!!


〇金利盛大に低下でアチャーの巻で世間話的雑談

・円債ブルフラットキタコレ

金曜の債券市場のおまとめ記事を毎度おなじみのごとく(いつもすいません)ロイターさんから。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2191GJ
2019年3月22日 / 15:18 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発で引け、長期金利は2年4カ月ぶり-0.075%に低下

『<15:11> 国債先物は反発で引け、長期金利は2年4カ月ぶり-0.075%に低下

国債先物中心限月6月限は前営業日比31銭高の153円04銭となり、反発して取引を終えた。20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の内容が市場の想定以上にハト派的だったことを受け、世界的な金利低下を見込んだ短期筋の買いが入った。一時153円05銭と、中心限月ベースでは2016年7月以来、約2年8カ月ぶりの高値を付けた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同3.5bp低いマイナス0.075%に低下し、16年11月以来、2年4カ月ぶりの低水準を付けた。』(上記URL先より、以下同様)

ということで米国金利上げないもんねー攻撃を受けて、金利が上がらないのならば買うしかないじゃないか攻撃になってしまいこの有様でもう涙も出ません。

『現物市場ではカーブがブル・フラット化。新発20年債利回りは同4bp低い0.350%、30年債利回りは同4.5bp低い0.520%、40年債利回りも同4.5bp低い0.585%に低下し、いずれも16年11月以来の水準を付けた。』

20年0.350%とか昨年の20年0.6%台後半とは何だったのかという風情で、あのあたりからだと金利が半分になっていまいましたぜよ旦那さん。

・・・・・・・・ところでここまで金利ちゃんが下がりますと、片岡大先生の「15年国債金利が0.2%」という謎提案の事を思い出してしまいますが、

http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php
売買参考統計値/格付マトリクス ダウンロード

なんかサイトのデザインが突如変わっておりますがそれは兎も角として、残存15年ということは2034年償還辺りを見ればよいのですな、うんうん。

銘柄         償還日  CPN価格 前日比複利 単利
超長期国債 148 2034/03/20 1.5 119.79 +57 0.163 0.150
超長期国債 149 2034/06/20 1.5 119.94 +58 0.174 0.160
超長期国債 150 2034/09/20 1.4 118.57 +58 0.184 0.170
超長期国債 151 2034/12/20 1.2 115.62 +62 0.192 0.180

何という事でしょう!片岡審議委員が提唱していた「10年以上のより長い期間の金利低下」がバンバン促されてきてしまいました。片岡理論によれば超長期などの金利が下がると経済に刺激効果が出て物価上昇に資するはずですので、これはもう物価上昇待ったなしですね(棒読み)!!!!!!

『年度末で投資家の動きが鈍る中、先物主導で買われ引けにかけて強含む展開となった。「トレンドに追従する主体の先物買いが入ることで、目先は一段と金利に低下圧力がかかりやすい」(証券)との声も聞かれた。財務省が午後0時35分に発表した流動性供給(対象:残存1年超5年以下)の入札結果は無難と受け止められた。』

とまあそういうことで期末で決算の着地を固めてしまったりすると金利が下がったからよーしパパ債券売却益の積み増しをするぞーとは言い難いものがありますので、そら動かんわというのがあるでしょうし、とは言いましても米国が金利を変更しそうもないという有様で欧州はこれまたウゴカンチ会長、ということになりますと円金利に上昇するネタがないと来たもんだですので、来年度どうするねんとかいう悲しい話が待っている訳でして、来年度どうするねんというものをある程度前倒し可能だったら前倒ししていくしかないじゃんという悲しい結論に普通に考えていくと達するというのもあるのではないかと思われる訳で、そういう向きの買い(そういう買いだと気合の入った買いにはならないけど)がどの程度混じっていたのかなとかは思うのでした。

しかしまあそんな訳でブルフラットは1日にして登場となってしまうのがもう悲惨な流れではありますがさてどうなるのやら。


・米国も何が何だか

https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N21944I
2019年3月23日 / 06:09
米金融・債券市場=長短金利が12年ぶりに逆転、景気失速懸念強まる

アイヤー!!!!!!!!!ということで記事を拝見。

30年債 2.8747% 前営業日終値 2.9630%
10年債 2.4373% 前営業日終値 2.5390%
5年債 2.2403% 前営業日終値 2.3430%
2年債 2.3187% 前営業日終値 2.4100%


『 米金融・債券市場では3カ月物財務省短期証券(Tビル)と10年債の利回りが2007年以来約12年ぶりに逆転した。予想を下回る製造業統計が材料となった。長短金利の逆転は景気後退(リセッション)入りの兆候ともみられ、景気後退の可能性も含め経済への失速懸念が強まった。』(上記URL先より、以下同様)

ということでビルとの比較はまあためにする話っぽいですがそれは兎も角としまして。

『終盤の取引で3カ月物TB利回りは2.4527%。10年債利回りは2.4373%。マークイットが発表した3月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は52.5と、2017年6月以来約2年ぶりの水準に落ち込んだほか、サービスPMIも54.8に低下し、ともに市場予想を下回った。統計を受け10年債利回りは2.418%と2018年1月以来の水準に低下。2年債との利回り格差は9.5ベーシスポイント(bp)と3カ月ぶりの水準に縮小した。』

てな話ではあるのですが、PMI指数一発で10年ポツイチも金利下げるかよという感じではございまして、この記事の後の方にも解説とかコメントあるのですけれども、「金利を上げると言ったから急落した株価を戻そうとして、今度は盛大にハト派に寄ったメッセージを出した」というのが今回のFOMCの特色としか言いようがなくて、だからこそ「株価見ているのと大統領の意向を忖度する以外に何考えてるか分からない」という中央銀行とは言い難いプレイが炸裂してしまいましたが、同時に「ここまで大幅に利上げに関する姿勢を転換するんだったら米国経済の先行きはリセッション入りの懸念があるのでは」という話にもなってくる訳ですわ。

ということでこちらの記事でも(途中飛ばします)このような話が。

『米連邦準備理事会(FRB)が今週の連邦公開市場委員会(FOMC)でハト派姿勢に急転換して以降、景気失速への懸念は強まりつつある。』

そらそうよ。

『BMOキャピタルマーケッツ(ニューヨーク)の米国金利ストラテジスト、ジョンヒル氏は「FRBのハト派姿勢や世界経済への懸念を背景に、市場は今後10年の平均金利が足元の水準を下回ると予想している」と指摘。FRBの経済モデルによると向こう1年の景気後退確率は35%程度にとどまっているが、向こう2年の確率はかなり高まっているとした上で、現在の景気局面が終了するのは時間の問題で、今後はFRBの政策対応が景気後退の後ずれや緩和につながるかが焦点になると述べた。』

とまあそんな話になってしまう訳ですが、NY株とか見てましてもFOMC出た日(現地水曜)はちょうどトランプが関税話で毎度の発言したばっかりだったのでそっちに巻き込まれたのと、米国金利が下がったのを見て金融株があじゃぱーになったのを見て「ハト派中銀キタコレなのに株下げ」となって、翌日は株価が戻ってああやっと普通の反応になったかな、と思ったら金曜の米国でうちのダウちゃんが息をしていないの!!!!モードになってしまい、それも出てきた指標とか米国金利動向見てリセッションや!とか言い出しているという話なので世話ないわという所ではある

https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPKCN1R32SJ
2019年3月23日 / 06:54
米国株式市場が急反落、世界景気低迷不安強まる

『[ニューヨーク 22日 ロイター] - 米国株式市場は急反落、主要3指数の下落率が1月3日以来の大きさとなった。米欧の製造業指標が弱く、米国の長短金利が逆転し、世界景気低迷への不安が強まった。』

『3月の米製造業活動指標が予想を下回ったほか、欧州や日本の指標もさえなかった。これを受けて、米国の3カ月物財務省短期証券(Tビル)US3MT=RRと10年債S10YT=RRの利回りが、2007年以来約12年ぶりに逆転した。長短金利の逆転は景気後退(リセッション)入りの兆候ともみられる。』(以上上記URL先より、以下同様)

この相場が自己実現するマインド悪化ってのがタチ悪い。

『エコノミック・アウトルック・グループの首席グローバルエコノミスト、バーナード・バウモル氏は「景気後退が迫っていると直ちに結論付けようとは思わない」とした上で、「地平線上に本物の雲が発生しつつある。問題はこれらの雲がどの程度暗くなり、景気後退の嵐を引き起こすかどうかだ」と語った。』

米国のファンダメンタルズ考えて普通に考えると別に阿鼻叫喚のリセッションとかになるような話じゃなくて、ソフトパッチ程度じゃねえのかと思いますし(個人の感想ですので念のため)、後退局面入りするにしたって何らかのショックのようなものが起きるタイプの後退にはならんじゃろとか思うのですけれども、中銀の利上げモードで株が下がってアイヤー感が出るならまだしも、中銀ハト派転換して雰囲気悪くなるとか笑ってしまうしかないのですが、これもパウエルFRBの説明がまるで一貫していないこと、政策反応関数を示すことが出来ない状態になっていること、おまけにパウエルFRBになってからの特色ですけど、執行部のグリップが無駄に強いので、ある時突然大勢意見が右に倣えでひっくり返る現象が発生するから更にタチ悪いんですが、まあそんなこんなで「ハト派を表明したと思ったら市場が自己実現的にリセッションを織り込みに向かいだした」ということで、もちろん今後どうなるかわかりませんけど、目先見ているとFRB大敗北してねえかとは思うのでした。


・国内追加緩和は手段皆無だし輪番も金利下げには無力ですけれどもさて・・・・・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPKCN1R32SB
2019年3月23日 / 06:49 /
ドルが対円で下落、米長短金利逆転で景気懸念高まる=NY市場

『[ニューヨーク 22日 ロイター] - ニューヨーク外為市場では、ドルが安全通貨と見なされる円に対し下落した。米製造業購買担当者景気指数(PMI)が低調だったことに加え、米長短金利が逆転し、米国がリセッション(景気後退)入りするとの懸念が高まったことが背景。ただドイツの製造業PMIも低調だったことで、ドルは対ユーロでは上昇した。』(上記URL先より)

『ドル/円 
NY終値 109.91/109.94
始値 110.45
高値 110.46
安値 109.75』

金曜東京時間中の為替ちゃんは逆に「米国金利下がっているのにドル円(ドルが)ろくすっぽ落ちないじゃん」という感じ(個人の感想です)で、なんか実需要因でもあったのかなとかそんなことは思いましたものの、それにしても碌すっぽ反応していないとはどういうことよとか思っていたのですが、(円金利が盛大にブルフラットしたのは気分的に円買いモードになりにくかった、というのはあるのかなとも思いますけれども)週末はやってくれましたなあモードになってまいりました。

さて、ここで問題になりますのはジャパンの対応がどうなりますかという話ではあります。


まず実務上の話で輪番ですけれども、これがまた幸か不幸か昨年7月の柔軟化措置があるから10年金利が▲10bpをぶち抜けて金利が低下したとしてもヘーキヘーキ、という事になるのですが、じゃあもっと金利が下がったらどうするの?というお話。

この時にオペレーションの工夫で出来るのは@輪番を減額する、A輪番で「この金利よりも低い金利は購入しませんので応札分の一部を募外にします」、という技なのですが、これ恐ろしいことに@にしてもAにしても、国債買入が減少する話になってしまいますが、以前計算しました通り、オーバーシュート型コミットメントとの整合性という事を考えた場合、ここからの輪番減額余地ってあまりなくて、@やAをやった結果、オーバーシュート型コミットメントから見て明らかに逸脱しているだろうというような買い方(というか減らし方)は出来んのよこれがまた。

ですから本来はオーバーシュート型コミットメントなんぞ無くして頂きたいのですが、それはQQEで期待に直接働きかける、という置物直線一気理論が完全な死を迎えるという事になってしまいますが、面の皮が厚い置物先生は置物理論の敗北とか思ってないみたいなので、だったらコミットメント外してしまえとも思っちゃいますが、まあテクニカルにはこれが邪魔という感じです。


・・・・・・ただですな、QQE2以降の日銀追加施策の迷走ぶりをみておりますと、QQE2やって政策の死期を早めたのにアゲンストの風がビョービョー吹いて、やけのやんぱちでマイナス金利ぶっこんだら円高になるわ株安になるは金融市場は死ぬわとなって、どうしようも無くなったところで総括検証からのYCC導入によってなし崩してきなMB直線一気理論からの決別が行われた、とまあそういう経緯を考えまするに、八方ふさがりになったところで出てくるのは「政策枠組みの見直し」の可能性もあるんじゃなかろうか、とかなり焦土思想気味ではありますが、一応日銀はこれまで「このままの枠組みで行くと政策大爆発」というのに関しては(黒田さんとか置物系が分かっているのかはともかくとして実務チームは分かっているので上をちゃんと説得してるんだと思うんですけど)回避するためになんか別の花火を打ち上げる、というのが仕様になっていますので、そっちに期待するのはアリかな、と願望成分強く思うのでありました。

なお、何も考えないでやるんだったら、円高が105円切ってくるようだと追加緩和でマイナス金利の深堀か、マイナス金利の変動幅をさらに拡大して許容する(ちなみにマイナス金利の変動幅許容は上手く使えば金利が上がった時にも許容になるし、金利下がっている時に変動容認しておいて長期金利のコントロールを形骸化する方向に持っていくのはインチキ技としてはアリと思う)というくらいですよね。マイナスの深堀は明らかに爆発を手前に持っていく施策だし変動幅許容拡大を出すのが円高止めに効くような気がしない(マイナス深堀しても株が下がって円高になりそうだが)んですよねー。


#とか何とか、本日は雑談大会になってしまいました


・おまけに短期ちゃん

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2191GJ
2019年3月22日 / 15:18 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発で引け、長期金利は2年4カ月ぶり-0.075%に低下

からですけど。

『短期金融市場で、無担保コール翌日物の加重平均レートはマイナス0.060%台前半と、前営業日(マイナス0.059%)を下回る見通し。積み期前半のため資金調達意欲は限られた。ユーロ円3カ月金利先物は強含み。財務省が午後0時半に発表した新発3カ月物国庫短期証券(TB)の入札結果で、最高落札利回りはマイナス0.1824%、平均落札利回りはマイナス0.1958%となった。入札結果は無難と評価された。』(上記URL先より)

ということで積み期変わって(というか変わる前からですが)いつもの期末モードになっておりましたが、逆に2月末からのアレは何だったんだろうという感じではあります。誰か詳しい人教えてくらはい。








2019/03/22

お題「決定会合議事要旨から少々」

ほほう。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO42702750Q9A320C1PP8000/
新天皇即位で今秋恩赦へ 道交法違反など軽微な犯罪限定
2019/3/21付日本経済新聞 朝刊

マイナス金利も恩赦で撤回や!!!と思ったが「軽微」じゃないんだよなー。

#犯罪とは言っていないので念のため申し添えます(棒読み)


〇1月決定会合議事要旨ェ・・・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2019/g190123.pdf

・毎年思うのだが貸出支援基金の検討しとるんかいな

『U.貸出支援基金等の今後の取扱い』という所ですけどね、

『1.執行部からの説明

貸出増加や成長基盤の強化に向け、金融機関と企業・家計の前向きな行動を引き続き促していくとともに、復興に向けた被災地金融機関 の取り組みへの支援を継続する観点から、「貸出増加を支援するため の資金供給」 、「成長基盤強化を支援するための資金供給」、東日本大 震災および熊本地震にかかる「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション」等の措置について、受付期間を1年間延長する こととしたい。ついては、「貸出支援基金運営基本要領」の一部改正 等を行うこととしたい。』

ってあって、

『2.委員会の検討・採決

採決の結果、上記案件について全員一致で決定された。本件については、その骨子を対外公表文に記載するとともに、その詳細について は、会合終了後、執行部より適宜の方法で公表することとされた。』

っておんどれら検討しとらんじゃろと申し上げたい訳で、この基金によって貸出金利の叩き合いが起きることによって、適正な資源配分を歪めるような事が起きていないか、という点について検討した形跡が1ミリも見られないというのは情けない。まあ今の政策委員会の面々でこの論点まともに議論できそうなのが半分も居なさそうだし、大体からして雨宮さん以外の正副総裁がこの論点理解できないだろうと思ってしまいますのでまあ困ったもんだと。


・物価が上がるような議論がないのに展望レポートのパートに入ると物価が上がる話になる摩訶不思議モード

『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要 』の最初の『1.経済情勢』を見る訳ですが、まあ経済情勢の話は読んでて「ああそうですか(棒読み)」という感じなので全面的にすっ飛ばして最後の物価の所を見るとこうなっているのだ。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、 0%台後半となっているほか、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー) の前年比も、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスなどを背景に、0% 台前半のプラスにとどまっているとの見方で一致した。』

さいですな。

『そのうえで、 委員は、消費者物価の前年比は、プラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、弱めの動きが続いているとの 認識を共有した。』

全くで。

『一人の委員は、各支店からの報告などを踏まえると、 家計の値上げ許容度に明確な改善はみられず、外食などのサービス価格は、期待していたほどには伸びていないと指摘した。』

そら(税制や社会保障いじって負担上がっているんだから)そう(値上げ許容は改善しない)よ。

『別のある委員 は、生産性の向上に伴う物価下押し圧力があるもとで、原油価格下落の影響もあり、物価上昇は遅れているとの認識を示した。』

はい。

『この間、中長期的な予想物価上昇率の動向について、大方の委員は、横ばい圏内で推移しているとの認識を共有した。』

そうですな。

『一人の委員は、実際の物価が緩やかに上昇してきているにもかかわらず、こうした横ばいの動きが続いていることを踏まえると、わが国の予想物価上昇率は、想定以上に粘着的である可能性が高いとの見方を示した。』

ですなあ。


・・・・・・・・とまあこういう認識が延々と示されるのですが、この次の小見出し『2.経済・物価情勢の展望 』の物価の見通し部分になるとこのような話になる。

『続いて、委員は、わが国の物価情勢について議論を行った。まず、 景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて物価が弱めの動きを続けている背景について、委員は、基本的には、長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした 考え方や慣行が根強く残っていることの影響が大きいとの認識を共有した。』

『こうした要因に加えて、委員は、非製造業を中心とした生産性向上余地の大きさや、近年の技術進歩、女性や高齢者の弾力的な労働供給などは、経済が拡大する中にあっても、企業が値上げに慎重な価格設定スタンスを維持することを可能にしているとの見解で一致した。』

『ある委員は、これまで、企業は労働コストの上昇を生産性の向上で吸収し、消費者に対する価格転嫁を極力見送ってきたが、人手不足感の強まりや原材料費の上昇を背景に、コスト上昇圧力の吸収余地は着実に縮小してきていると述べた。この点に関し、複数の委員は、 ここ数年間の物価変動の要因を分析すると、物価が弱い局面において は、企業の生産性向上の動きもさることながら、むしろ為替や需要の変動が影響しているとの見方もあると述べた。』

さっきの所では全然上がらないというような話ばっかりで、家計の値上げ容認が云々とかインフレ期待が粘着的とかあったのですが、こっちの方ではなんかこうちょっと怪しいですな、と思いますとこれがこの次になる訳でして、

『次に、委員は、先行きの物価動向について、議論を行った。』

ほうほう。

『大方の 委員は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくとの見方を共有した。』

ちょwwwwwwwおまwwwwwwwwwwwww

もうね、「何という事でしょう!匠の技で物価見通しがこんなに明るくなりました!」とかナレーションが入ってしまうような話の飛躍。

『これらの委員は、2018 年 10 月の展望レポートでの物価見通しと比べると、原油価格の下落を主因として、2019年度を中心に下振れているとの見方で一致した。』

『さらに、委員は、消費者物価の前年比が2%に向けて徐々に上昇率を高めていくメカニズムを、一般物価の動向を規定する主な要因に基 づいて整理した。まず、マクロ的な需給ギャップについて、大方の委員は、労働需給の着実な引き締まりや資本稼働率の上昇を背景に、均 してみればプラス幅を拡大してきているとの認識で一致した。また、 大方の委員は、先行きの需給ギャップについても、比較的大幅なプラ スで推移するとの見方を共有した。』

『次に、中長期的な予想物価上昇率 について、大方の委員は、先行き上昇傾向を辿り、2%に向けて次第に収斂していくとの認識を共有した。』

『その背景として、これらの委員 は、@「適合的な期待形成」の面では、需給ギャップの改善などに伴う現実の物価上昇率の高まりが、予想物価上昇率を押し上げていくと 期待されること、A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、 日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推 進していくことが、予想物価上昇率を押し上げる力になると考えられることを指摘した。』

というこの理屈に関してはお馴染みの話なのでまあ驚きは無いのですが、前段の経済物価情勢の点検の所ではあんだけ物価の上がらん話が出ているのに何でこっちではメカニズム不変、ただ遅れているだけ(キリッ)ってので済ませてしまえるのか、というかおまいら議論しとるんかと小一時間問い詰めたい話のワープっぷりに甚だ遺憾の意を禁じ得なませんな。

『何人かの委員は、予想物価上昇率の高まりにはなお時間がかかると見込まれるものの、物価が2%に向けて徐々に上昇していくという方向感に変わりはないとの認識を示した。この間、別のある委員は、需給ギャップの拡大が物価を押し上げにくくなっている可能性があることや、予想物価上昇率が弱めの動きを続けていることなどを踏まえると、現時点では、この先、2%に向けて物価上昇率が伸びを高めていくとは判断できないと述べた。』

議論っぽいのこれですかそうですか、でもってその先。

『このほか、日本経済の成長力と物価動向の長期的な関係について、 委員は、近の女性や高齢者の労働参加の高まりや、生産性向上に向 けた企業の取り組みは、短期的には、賃金や物価の上昇圧力を弱める方向に作用するが、より長い目でみれば、経済の成長力を強化し、賃金や物価の上昇圧力を高める可能性があるとの見方で一致した。 』

その長い目とやらを屏風の中から出して頂きたいんですが将軍様。


・金融政策に関する委員会の検討の最初の方が主な意見のコピペ大会の気がするんだが

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』になりますけど、最初の辺りはすっ飛ばして途中から参りますと・・・・・・・

『続いて、委員は、金融政策の基本的な運営スタンスについて議論を行った。大方の委員は、「物価安定の目標」の実現には時間がかかる ものの、2%に向けたモメンタムは維持されていることから、現在の 金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を粘り強く続けていくこ とが適切であるとの認識を共有した。一人の委員は、「物価安定の目標」の実現に資するため、現在の金融政策の運営方針を継続し、経済の好循環を息長く支えていくべきであると述べた。多くの委員は、物価上昇の原動力であるプラスの需給ギャップができるだけ長く持続 するよう、今後とも、経済・物価・金融情勢をバランスよく踏まえつ つ、現在の緩和政策を粘り強く続けていくことが必要であると述べた。ある委員は、景気の下振れリスクを警戒する必要はあるが、所得から支出への循環メカニズムが維持されている中にあっては、現在の金融緩和を粘り強く続けることで、実体経済の持続的な改善を支えつつ、 物価上昇率が高まっていくのを待つべきであるとの見解を述べた。』

まあこの辺は毎度の話なのですが、ここから先の話って「主な意見」の貼り付けかよという感じになっているんですなこれが。

なお「主な意見」はこちらにありますのでその後半の金融政策に関する部分と合わせてご鑑賞ください。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2019/opi190123.pdf
金融政策決定会合における主な意見 (2019 年 1 月 22、23 日開催分)1


『この点に関し、一人の委員は、「現在の金融緩和を粘り強く続ける」という情報発信は、日本銀行の緩和的な政策スタンスを示すうえで重要であるが、同時に、金融市場において、当面は政策変更がないという予想が過度に固定化されてしまうことを防ぐ工夫も必要であると指摘した。』

次の「別のある委員」が追加緩和の話をしているのでこれは一瞬片岡じゃないかとも思ったのだが、その次の方には「限界論に反論」とか藁人形に向けてバッサバッサと快刀乱麻のジンバブエ大先生を彷彿させる表現があるので、こっちが片岡で次がジンバブエ先生のような気がします。しかしいずれにせよこれどっちも「主な意見」をそのまま貼り付けているというのが味わいがある訳ですよ。

つまりですね、主な意見って要は政策委員がお手ずから書いた主張な訳ですが、それに対して加除されることなくそのままペターっと貼られて、これに対する意見っぽいのもその先にあるのですが、それはそれでまた「主な意見」をペターっと貼っているという状態になっている訳でして、これはどこからどう見ても「各政策委員の間で議論して意見をすり合わせて行こうというような姿が毛ほども見られない」という事を示しておられるのであろう、という想像をするのに難しくはないと思うのですよ、いやはや何とも。

でまあそれはそれとしまして、「当面は政策変更がないという予想が過度に固定化されてしまうことを防ぐ工夫」ってお前は何を言ってるんだというか、だったら具体的に実行できそうな追加緩和策の提案すればいいじゃねえかよこのスットコドッコイ以外の感想は無いのであってもうねという感じです。

『別のある委員は、物価安定目標への到達が遠ざかっている現状を踏まえると、何か大きな危機が起きるまでは行動しないという態度は望ましくなく、むしろ、状況の変化に対しては、追加緩和を含めて迅速、柔軟かつ断固たる対応を取る姿勢を強調するとともに、一部で指摘されている緩和限界論に反論していく必要があると述べた。』

緩和限界論に反論するのは勝手にやっていただきたいのですが、ジンバブエ先生の反論は藁人形に向かって華麗にバッサバッサと斬りかかっているだけなのが残念無念。というかお前らじゃあ追加緩和策の具体策と、その追加策によってどのような波及経路で物価2%が早期達成するのかを出してみろや以外の感想はない。

『これに対し、ある委員は、不確実性の高い状況のもとで急いで政策を変更することは、かえって金融不均衡の蓄積や実体経済の振幅拡大に繋がるリスクもあるため、十分に情報を収集・分析したうえで、その時々の状況に応じて適切に対応していくことが大事であるとの認識を示した。』

なおこちらは主な意見のコピペになっていませんので、ちょっとだけ議論に乗ったのかもしれませんな、とは思う。

『この間、複数の委員は、海外経済の下振れリスクが顕在化し、 経済・物価情勢が大きく悪化するような場合には、政府との政策連携も一段と重要になるとの見解を述べた。 』

だから何が必要なのかという話をしろとしか申し上げようがない。


・金融政策の効果の部分も何だかなあ感がちょっとだけ味わいのある話も

続きます。

『委員は、昨年7月に決定した「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」を含め、金融緩和の効果についても議論を行った。』

効果ってあったんでしたっけ????まあ読んでみましょう。

『多くの委員 は、今後とも、強力な金融政策を続けていくためには、政策の効果と副作用をバランスよく考慮していくことが重要であるが、現時点では、 金融緩和の効果が副作用を上回っているという認識を示した。』

ほーん。

『ある委員は、昨年7月に決定した金融市場調節や資産買入れの弾力的な運用は、市場機能の低下という金融緩和に伴う副作用に対処するものではあるが、同時に、昨秋以降の金融市場の不安定な動きを緩和する役割も果たしていると指摘した。』

別に関係ないと思うんだが。

『この間、ある委員は、イールドカーブ・ コントロールは、実質金利を低位に維持することで実体経済の拡大に一定程度貢献しているものの、物価や予想物価上昇率への影響は、これまでのところ限定的であるとの認識を示した。そのうえで、この委員は、長短金利の水準やマネタリーベースと物価上昇率等の関係について、さらなる分析と検討が必要であると指摘した。 』

これが総括検証第2弾に繋がる指摘だと結構なんですがまあ期待は全然していません。


・だったら貸出支援基金の存在意義について何で議論しないのかと小一時間問い詰めたい

更に続き。

『委員は、先行きの金融政策運営上の留意点についても議論を行った。』

そもそも運営上の留意よりも政策の枠組みを留意してほしいのですがそれは兎も角。

『一人の委員は、金融機関が保有する国債の残高は、資金調達などの担保として低限必要な水準に近付きつつあるとしたうえで、日本銀行が既に買い入れてきた長期国債のストックの大きさも踏まえると、現状の国債買入れオペの運営には相応の見直し余地があると考えられると指摘した。』

主な意見でもありまして、これ実務上は頭の痛い話なのは確かなのですが、政策論でこれを持ち出すのはあまり筋がよろしくないと思う。

『何人かの委員は、低金利環境が長期化するもとで、先行き、地域金融機関を中心に、過度なリスクテイクによって収益を確保しようとする動きが拡がる可能性があるとの認識を示した。』

先行きですかそうですか。

『一人の委員は、金融機関の貸出金利が低位にある中、仮に中小企業の経営が悪化すれば、地域金融機関の信用コストが増加し、その業績に影響が 出る惧れがあると述べた。そのうえで、この委員は、地域金融機関の貸出運営が、リスクに見合ったリターンを得る形となっているか、注視していく必要があると指摘した。』

と思うのでしたら何故貸出増加基金とか素通しで延長するんだと小一時間。


・ジンバブエキタコレ

主な意見でも出ていたので別にサプライズでも何でもないですがこの次。

『この間、ある委員は、ここ数年、金融機関の貸出が増加に転じているのは「量的・質的金融緩和」導入の成果であるが、貸出以上に預金が増えているため、金融機関の利鞘は縮小しているとの認識を示した。そのうえで、この委員は、利鞘の改善にとって必要なのは預金の削減であると述べた。』

色々とおかしいのだが、貸出が増加しているのはQQEじゃなくてほかの要因の可能性は無いのか、という点が相変わらず無視されていてダメダメなところに来て、何で貸出以上に預金が増えると利鞘が縮小するのかさっぱり意味が分かりませんですし、毎度申し上げているように、金融機関って資金循環の仲介をやっているだけなので、今の状況からマクロ的に預金を減らそうと思ったら財政を引き締めないといけないんですけど、など短い中でツッコミどころ多数というか、このおじさん4年も政策委員やっているのに信用創造の基本的なところとか複式簿記とか知らんままで推移しているというのは何なんでしょと思いますが、まあ先般ネタにした山梨金懇での物の言いようとかから察するに、まるで人の話を聞こうという気がないので、変な方向にドンドン俺様理論が拡大していって、偉い人になっちゃったのでそれを誰も止められない、とまあそういう事なんでしょうなあと察するに、このような形で人間トシと共にアチャーになって行くという事なんだろうな、などと思うのでありました。



・別に物価の表示についてここまで議論するもんなのかいな、とは思う

その次にこんなのがありました。

『このほか、委員は、先行きの物価動向に関するコミュニケーションのあり方についても議論を行った。』

妙にああでもないこうでもないとお題が続きますが、だいたい組織というのは上手くいかなくなると会議がドンドン増えるようなもんで、物価の見通し出すのに今回は謎の「消費税と教育無償化抜き」というプレイを行っている件のお話。

『多くの委員は、来年度は、原油価格下落の影響に加え、消費税率の引き上げや教育無償化政策、携帯電話通信料の引き下げなど、わが国の物価の大きな変動に繋がり得る要因が幾つも見込まれると指摘した。この点に関し、何人かの委員は、 2%に向けたモメンタムを判断するに当たって重視すべきは物価の基調的な動きであるため、物価変動の要因が一時的なショックにとどまる限り、物価の基調や金融政策運営に対する影響は小さいと指摘し、 この点を、対外的にもしっかりと説明していく必要があると述べた。』

QQE2ェ・・・・・・・・・・・

『もっとも、複数の委員は、個別要因による価格の低下であっても、その拡がり次第では、「適合的な期待形成」のメカニズムを通じて、人々の予想物価上昇率を引き下げ、物価の基調に影響を与える可能性があると指摘した。』

つーかそれでQQE2やったんじゃん。

『何人かの委員は、原油価格の下落などは、物価を一時的に下押しするとみられるが、中長期的には、実質所得の増加を通じ て、物価の押し上げ要因にもなり得るとの認識を示した。そのうえで、 ある委員は、予想物価上昇率の低下を食い止めるためにも、中長期的に予想されるこうしたポジティブな影響についても、丁寧に説明していくことが重要であると指摘した。』

無駄でしょうな。

『この間、一人の委員は、先行きの 物価見通しを示していくに当たっては、消費税率引き上げと教育無償化政策という制度変更を一つの政策対応として捉えると、物価に対する影響は比較的軽微にとどまると予想されることや、本来、特定の要因を見通しから除外する扱いは限定的とすることが望ましいといった点を考慮する必要があると述べた。そのうえで、委員は、今後は、 基本的には、両方の影響を織り込んだ見通し計数を中心に説明していくことが考えられるとの認識を共有した。』

なんかもう無理矢理な議論ですが、それ言い出したら物価なんて基本的に「特定の要因」の塊じゃないのかと。



〇ということでFOMCネタの続きはパウエル会見ではないかというツッコミもありそうですが

ええすいません時間が無いのでパスというか、質疑応答付きのが出てきましたのでこちらは週末の宿題ということでご勘弁頂きたく。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20190320.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference Opening Remarks
March 20, 2019


あと、訂正がありまして、バランスシートの部分で「償還再投資分の国債の平均残存年限」ですが、「現在の」ストックベース発行済み国債の平均残存年限ではなくて、「償還再投資をする時点での」ストックベース発行済み国債の平均残存年限になりますのでよろしくお願いいたします(訂正線入れて直しています)。


しかしまあ「中期的な見通しがそんなに下がっていないのに足元の減速に対応して金融政策見通しを大幅に引き下げる」ってのはおんどれらフォワードルッキングな金融政策って意味わかってるのかと小一時間問い詰めたいですな>FRB




2019/03/21

お題「寝起きでFOMCですがこれは見事な腰砕け」

ということで無事に起きれたのでFOMCを鑑賞するわけですが・・・・・・・・・

〇声明文:現状判断をこれでもかと下げているんですがここまで下げる必要あったのかね

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190320a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190130a.htm(前回)

・第1パラグラフ:現状判断を無茶苦茶下げているんですがそこまでやるかねとは思った

『Information received since the Federal Open Market Committee met in January indicates that the labor market remains strong but that growth of economic activity has slowed from its solid rate in the fourth quarter.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in December indicates that the labor market has continued to strengthen and that economic activity has been rising at a solid rate.』(前回)

のっけから総括判断を「economic activity has slowed from its solid rate in the fourth quarter」とか下げているんですが。

『Payroll employment was little changed in February, but job gains have been solid, on average, in recent months, and the unemployment rate has remained low.』(今回)
『Job gains have been strong, on average, in recent months, and the unemployment rate has remained low.』(前回)

先般の雇用統計のNFPが弱かったというのも言及していますが、雇用に関してはbut以下の方が主文なので、主文のところでは判断を変えておりません。

『Recent indicators point to slower growth of household spending and business fixed investment in the first quarter.』(今回)
『Household spending has continued to grow strongly, while growth of business fixed investment has moderated from its rapid pace earlier last year.』(前回)

家計支出と企業投資について「Recent indicators point to slower growth」ってこれまた下げていてアチャーという感じでございます。

『On a 12-month basis, overall inflation has declined, largely as a result of lower energy prices; inflation for items other than food and energy remains near 2 percent.』(今回)
『On a 12-month basis, both overall inflation and inflation for items other than food and energy remain near 2 percent.』(前回)

ヘッドラインのインフレ率がエネルギー価格変動の影響で足元下がっている、というのを加えています。

『On balance, market-based measures of inflation compensation have remained low in recent months, and survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed.』(今回)
『Although market-based measures of inflation compensation have moved lower in recent months, survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed.』(前回)

市場から観測されるインフレ期待に関しては「have moved lower」から「have remained low」なので下がるのは止まったけど結局アカンタレな水準という話ですな、サーベイの方はいつも通り。


・第2パラグラフ以降は全文一致

ということで今回は2パラ以降が全文一致となっているのですが、アタクシが目視で確認しただけなので特にコメントも入れずに両方引用しておきます(と言いながらコピペしたのを貼って1行表示のまま横に見て行って全部一致しているのを再確認しました^^)。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. In support of these goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 2-1/4 to 2-1/2 percent. The Committee continues to view sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective as the most likely outcomes. In light of global economic and financial developments and muted inflation pressures, the Committee will be patient as it determines what future adjustments to the target range for the federal funds rate may be appropriate to support these outcomes.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. In support of these goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 2-1/4 to 2-1/2 percent. The Committee continues to view sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective as the most likely outcomes. In light of global economic and financial developments and muted inflation pressures, the Committee will be patient as it determines what future adjustments to the target range for the federal funds rate may be appropriate to support these outcomes.』(前回)


『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial
and international developments.』(今回)

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(前回)


・第4パラグラフ:今回も票決は全員一致

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Jerome H. Powell, Chairman; John C. Williams, Vice Chairman; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Richard H. Clarida; Charles L. Evans; Esther L. George; Randal K. Quarles; and Eric S. Rosengren.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Jerome H. Powell, Chairman; John C. Williams, Vice Chairman; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Richard H. Clarida; Charles L. Evans; Esther L. George; Randal K. Quarles; and Eric S. Rosengren.』(前回)


〇SEPは「利上げしないもんね〜」だわ経済見通しは下がるわ

今回
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20190320.pdf
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20190320.htm

前回12月
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20181219.pdf
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20181219.htm


・成長率見通しが下がるわ失業率見通しが上がるわ

左から順に2019、2020、2021、ロンガーランです(HTMLの方からペタペタ貼っているという手抜き)。

成長見通しはMedianだとこうなるのですが、
Change in real GDP
2.1 1.9 1.8 1.9
December projection
2.3 2.0 1.8 1.9

Central tendencyで見ると手前の見通しがメディアンで見る印象よりもうちょっと下がっているし、先の所はそんなに変わっていないという謎見通しになっています。
Change in real GDP
1.9 - 2.2 1.8 - 2.0 1.7 - 2.0 1.8 - 2.0
December projection
2.3 - 2.5 1.8 - 2.0 1.5 - 2.0 1.8 - 2.0


失業率の見通しでは手前が上がってロンガーランが下がっています。

Medianだとこうなって、
Unemployment rate
3.7 3.8 3.9 4.3
December projection
3.5 3.6 3.8 4.4

Central tendencyだとこうなります(なお本日は休日補正で時間の余裕があるのと2パラ以降の変更が無かった分だけ余裕があるのでCentral tendencyまでネタにしていますが初見でパッと見るときに正直中々そこまで行かなかったりするのは申し訳ございません)。
Unemployment rate
3.6 - 3.8 3.6 - 3.9 3.7 - 4.1 4.1 - 4.5
December projection
3.5 - 3.7 3.5 - 3.8 3.6 - 3.9 4.2 - 4.5

これはこれで味わいもあるのですが、この後の金利見通しの衝撃あるいは笑劇のジャガーチェンジとの整合性と言う文脈で考えた場合、たぶん手前の成長見通しを下げた方が今回は効いていると思われます。


物価に関してはそんなに変化は無くて、Medianが
PCE inflation
1.8 2.0 2.0 2.0
December projection
1.9 2.1 2.1 2.0

Central tendencyは、
PCE inflation
1.8 - 1.9 2.0 - 2.1 2.0 - 2.1 2.0
December projection
1.8 - 2.1 2.0 - 2.1 2.0 - 2.1 2.0

となっていますし、コアPCEについては微かに下がっているというもののほぼ2%に収斂しているので物価に関してはノーチェンジという感じです。


でもって注目の政策金利ちゃんのほうですがこれがまた腰砕けマンということでして。

2019年見通し

前回
利上げ無し:2名
1回利上げ:4名
2回利上げ:5名
3回利上げ:6名

だったのですが、今回は何となんと、

今回
利上げ無し:11名
1回利上げ:4名
2回利上げ:2名

ってこれ何のギャグかと小一時間問い詰めたい訳ですが、ここまで衝撃というか笑劇に見通しを下げるとなると、経済の現状アセスメントを盛大に下げないと収まりが付かないので最初のところにありました声明文のようになる、ということなのでしょうが、ここまで盛大に政策見通しをチェンジするほど米国経済ってヤバいのかというといやそうじゃねえだろとも思ってしまうのですが、まあ外野の素人がそういうだけで実はヤバいとかそういうことなのかも知れませんけど、逆にここまで盛大に豹変されてしまいますと、この人たちの政策反応関数はどうなっているんだよという話だし、こんなに「相場を張る」必要があるのかFED,とも思います。

ということで2020年以降の見通しに関しては前回比較がほぼ無意味なので2020年以降に関しては今回の見通しだけ確認しておきましょうではありませんか。

2020年見通し

足元から見て利上げ無し:7名
足元から見て1回利上げ:4名
足元から見て2回利上げ:3名
足元から見て3回利上げ:2名
足元から見て4回利上げ:1名

ですが、今年の利上げを7名が見ているので、実体的には

今年も来年も利上げ無し:7名
今年利上げ無し来年1回:4名
今年1回利上げ来年1回:3名
今年1回利上げ来年2回:1名
今年2回利上げ来年1回:1名
今年2回利上げ来年1回:1名

ということになるんでしょうな。でもって2021年見通しですが、

足元から見て利上げ無し:5名
足元から見て1回利上げ:5名
足元から見て2回利上げ:4名
足元から見て3回利上げ:1名
足元から見て4回利上げ:1名
足元から見て5回利上げ:1名

ってなっていますので、利上げせんもんね〜というのが5人なのですが、次に申し上げるロンガーランの見通しでも2.5%というのが6人になった(前回4人)なのでまあ整合的ちゃあ整合的。


ということでロンガーランの金利ですが、

2.50%:6名(前回4名)
2.75%:4名(前回5名)
3.00%:4名(前回5名)
3.25%:1名(前回1名)
3.50%:1名(前回1名)

となっていまして、3.00%の人が1名、2.75%の人が2名ロンガーランを25bp下げてきた、と想定するのが自然でしょうな。

つーことでですな、まあロンガーランがそこまで下がっていない(中央値は同じく2.75%になる)という中で利上げ見通しが下がりました、というのはこれはつまり「経済物価のオーバーシュートや金融不均衡発生のリスクが少ないので、てめえらが想定している中立金利以上には引き上げる必要がないと判断した、なぜなら足元の経済成長が減速しているからである(キリッ)」という事なんでしょうな、とは思いますがそれにしてもこれはちょっとジャガーチェンジにも程があるわと思ってシマウマ。


〇バランスシート縮小の停止は割と早いですしなんかハト感を出そうとしているのは把握した(しかも全員一致)

こいつもでています。もう出したのかよという感じで、これだったら昨日のマネタリーポリシーレポートネタでバランスシートのコラムを投下すればよかったと後悔先に立たず。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190320c.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/files/monetary20190320c1.pdf

March 20, 2019
Balance Sheet Normalization Principles and Plans

『In light of its discussions at previous meetings and the progress in normalizing the size of the Federal Reserve's securities holdings and the level of reserves in the banking system, all participants agreed that it is appropriate at this time for the Committee to provide additional information regarding its plans for the size of its securities holdings and the transition to the longer-run operating regime. At its January meeting, the Committee stated that it intends to continue to implement monetary policy in a regime in which an ample supply of reserves ensures that control over the level of the federal funds rate and other short-term interest rates is exercised primarily through the setting of the Federal Reserve's administered rates and in which active management of the supply of reserves is not required. The Statement Regarding Monetary Policy Implementation and Balance Sheet Normalization released in January as well as the principles and plans listed below together revise and replace the Committee's earlier Policy Normalization Principles and Plans.』

確かに1月にゆうとったがもう3月に出すとは、という感じですが、ここにありますように「in a regime in which an ample supply of reserves ensures that control over the level of the federal funds rate and other short-term interest rates is exercised primarily through the setting of the Federal Reserve's administered rates and in which active management of the supply of reserves is not required.」ということで、多めの超過準備を持ちながら、預金常設ファシリティ(のようなもの)を使って短期市場金利を制御しますし、日々の資金過不足は調節しませんよというスタンスでやるためにはどうしますかというお話。

『・To ensure a smooth transition to the longer-run level of reserves consistent with efficient and effective policy implementation, the Committee intends to slow the pace of the decline in reserves over coming quarters provided that the economy and money market conditions evolve about as expected. 』

ほうほうそれでそれで?

『・The Committee intends to slow the reduction of its holdings of Treasury securities by reducing the cap on monthly redemptions from the current level of $30 billion to $15 billion beginning in May 2019.』

『・The Committee intends to conclude the reduction of its aggregate securities holdings in the System Open Market Account (SOMA) at the end of September 2019.』

『・The Committee intends to continue to allow its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities (MBS) to decline, consistent with the aim of holding primarily Treasury securities in the longer run. 』

5月までは今のペース、6月以降は削減ペースを半減して、月150億ドルのバランスシート削減(150億ドル以上の償還分は再投資する)。9月にバランスシート削減停止(全部償還再投資)、ただしMBSについては償還分を基本的に米国債に再投資するので長期的にはMBSはゼロにする。

『・Beginning in October 2019, principal payments received from agency debt and agency MBS will be reinvested in Treasury securities subject to a maximum amount of $20 billion per month; any principal payments in excess of that maximum will continue to be reinvested in agency MBS.』

『・Principal payments from agency debt and agency MBS below the $20 billion maximum will initially be invested in Treasury securities across a range of maturities to roughly match the maturity composition of Treasury securities outstanding; the Committee will revisit this reinvestment plan in connection with its deliberations regarding the longer-run composition of the SOMA portfolio.』

『・It continues to be the Committee's view that limited sales of agency MBS might be warranted in the longer run to reduce or eliminate residual holdings. The timing and pace of any sales would be communicated to the public well in advance.』

ただしMBSの償還が月に200億ドルを超える場合は超過部分についてMBSの再投資を行う。また国債への再投資にあたってはその償還を現在の(2019/3/22訂正:その時点に発行済みの)米国債の残存する平均年限とほぼ同じになるように再投資を行う。なお限界的な部分でMBSの売却をする可能性については引き続きあるけど事前に告知しますし売るとしてもほんのちょっとの残存部分とかそういう話ですよ。

『・The average level of reserves after the FOMC has concluded the reduction of its aggregate securities holdings at the end of September will likely still be somewhat above the level of reserves necessary to efficiently and effectively implement monetary policy.』

9月末時点でのバランスシート規模はさきほど言ったオペレーションに必要な超過準備を若干上回っていると思う。

『・In that case, the Committee currently anticipates that it will likely hold the size of the SOMA portfolio roughly constant for a time. During such a period, persistent gradual increases in currency and other non-reserve liabilities would be accompanied by corresponding gradual declines in reserve balances to a level consistent with efficient and effective implementation of monetary policy.』

よってそこからバランスシート規模を維持するんですが、成長通貨の拡大などの要因によって徐々に望ましいバランスシート規模は上方に変化してくるはずなので、その時には・・・・・・・・・・

『・When the Committee judges that reserve balances have declined to this level, the SOMA portfolio will hold no more securities than necessary for efficient and effective policy implementation. Once that point is reached, the Committee will begin increasing its securities holdings to keep pace with trend growth of the Federal Reserve's non-reserve liabilities and maintain an appropriate level of reserves in the system.』

そうなった場合(日々の資金需給調整をしないと短期市場金利が跳ねる事態が生じるような場合)にはバランスシートを拡大しますよ、というお話で、それって言わずもがなのテクニカルな話ではあるのですが、一々いう事によってハト感を出したいのは分かった。なおその辺の話はうっかりネタにし忘れたマネタリーポリシーレポートの中のコラムにあるのでご興味のある方はどうそ。

ということで会見ネタはパスしてとりあえずこれでアップします。






2019/03/20

お題「来年度日銀の考査方針とな/泥縄ですがFOMC前にMonetary Policy Reportのコラムから」

さて今晩はFOMC2日目なのですが明日の朝は起きれたら真面目に声明文とかドットチャートとか見ながらネタ投下するかも知れませんが、あたしゃ根がぐうたらなので朝ちゃんと起きれない場合はその時点で戦意を喪失する予定ですので全く期待しないでください(大汗)。

〇考査方針が出てますな(メモメモ)

http://www.boj.or.jp/finsys/exam_monit/exampolicy/kpolicy19.pdf
2019 年度の考査の実施方針等について

でもって3ページ目に『3.2019 年度の考査の実施方針』というのがあるので、ちょっくら拝見してみる。

『(1)基本的な考え方 』というのがありましてですな、

『金融機関は、金融仲介機能を適切に発揮し、企業や家計の経済活動、ひいては国・地域の成長力向上に貢献することが期待されている。』

全く仰せの通りですが自分で2年で達成とか言った物価目標達成できない方が言うのはちょっと・・・・・・

『金融機関がこうした役割を果たしていくためには、強固な財務基盤の確保と明確な経営戦略に基づく前向きなリスクテイクが求められる。』

QQE2以降どう見ても戦略の無い金融政策いや何でもないです。

『両者をバランスよく実現していくためには、適切なリスク管理と収益力の確保が不可欠である。以上のような取組みは、人口や企業数の継続的な減少などの構造要因を背景に、収益性が低下傾向にある国内預貸業務のウェイトが高い地域金融機関で特に重要である。』

まあ仰せの通りなのですが、マイナス金利だYCCだと言って金利水準をぶっ潰してしまっていたというのがもうねという感じです、などと悪態を並べていてもアレですのでその先も少し拝見しますと、

『大手金融機関では、国内預貸業務の効率化を進める一方で、買収・出資等のインオーガニック戦略も含めた海外業務の拡大、持株会社傘下の銀行、証券、信託などのグループ横断的なサービス提供機能の一段の強化など、収益力向上に向けた取組みが進んでいる。システミックな存在である大手金融機関は、業務運営やリスクプロファイルの変容に応じて、強固な財務基盤の確保や経営管理体制の強化、ストレス発生時の秩序ある対応に向けた準備などが、一段と強く求められている。』

でまあ大手は何のかんの言いまして預貸以外の所で収益基盤が、という話ではあるのですが、今スクラッチで見たらそれはその通りで、地域金融機関は収益基盤の多様化を頑張れ頑張らない所は云々という話になるのですが、そもそも論として戦後の金融行政って業態別住み分けを行っていて、それが相当の長くまで続いていたし、その間って規制金利に出店規制とか思いっきりガチガチにやっていたりした訳でして、その辺の過去の経緯をスルーして地域金融機関はケシカランとか言われましてもそれはどうなのよと思いますし、だったら同業態間の水平統合じゃなくて業態間の垂直統合を促進した方が良かったんじゃネーノとか、まあ色々と思う所はございまして、まあ勿論考査だ金融システムの点検だという話になると、現状をどう見てどうするかという話になるんでしょうが、スクラッチでこの状況になっている訳ではなくて過去の経緯ってのがありますし、しかもそれを政策的に進めてたの当局なのに、その当局が過去の話は知らんがなみたいなスタンスで現状をスクラッチで見た時の理想論みたいなの振り回されても信頼感の喪失になりそうな気がしますけどね、よー知らんけど。

『この間、業態を問わず、デジタル技術を活用した新しい顧客サービスの提供や経営効率を高めるための業務改革等、デジタライゼーションの動きが本格化しつつあり、キャッシュレス決済への取組み、クラウドや AI(Artificial Intelligence)の活用、定型的な業務への RPA(Robotic Process Automation)導入等に広がりがみられている。こうしたデジタライゼーションの浸透は、異業種からの参入も含めて、幅広い金融サービスのあり方や金融機関の競争環境を大きく変えていく可能性がある。今後、金融機関には、こうした動きに前向きに対応し、収益力の向上に結び付けていくことが期待される。同時に、デジタル技術の実装に伴ってサイバーセキュリティや情報管理等の重要性が高まることから、オペレーショナルリスクの管理体制を強化することが求められる。』

この辺については意識の高い方々はややこしいことを言わはりますなあという感想しかないのでパス。

『日本銀行は、こうした認識や、2018 年度の考査でみられた課題を踏まえ、2019 年度の考査について、以下の考え方に基づいて実施していく3。 』

ほうほう。

『第一に、内外金融経済情勢などの外部環境に対する経営陣の認識と中長期的な経営戦略を踏まえ、収益力および経営体力について、先行きの見通しを含めて把握・評価する。ストレス耐性も点検する。』

金融政策の中長期的な展望ェ・・・・・・・・

『その際には、@中長期的な収益力に関する経営陣の認識が的確であるか、A非資金収益の強化や経営効率化、戦略投資の実施など、持続性の高い利益や経営体力を確保するために適切な施策を講じているかについて、対話を深めていく。併せて、B貸出・有価証券運用のリスク・リターン分析や、事業本部・エリア別などの観点から必要な収益性分析が適切に行われているかなど、収益管理の枠組みの整備状況も点検する。また、C信用コストが増加に転じつつあることも踏まえて、金融経済環境の変化等に応じた貸倒損失の見通しについて検証し、適切な償却・引当方法について対話を深める。さらに、D各種ストレス事象を想定した場合の自己資本や期間収益への影響を適切に把握し、対応策を整備しているかを点検していく。』

何ちゅうかですな、この中でアタクシ思いまするに引当の所ってカウンターシクリカルバッファーのような概念が必要だと思うのですが、今の会計制度を前提にすると引当って過去の実績がこれだからとかいうような形じゃないと監査法人方面からややこしい話になると何となく理解しておりまして、そっちとの兼ね合いの方を当局にはやって欲しいんで、Cみたいな個別行の行動マターに押し込んでしまうのって如何なものか(やるなとは言わないけど)と思いますが、まあそれ以前の問題として、収益状況が厳しくなってきてからカウンターシクリカルに引当積めとか言い出しても時すでにお寿司のような気がするんですけどね。

でまあしらっとその次にこういうのがあってですね、

『先行きの収益力や経営体力に懸念が認められる先との間では、将来にわたり、安定的に金融仲介機能を発揮していくための自己資本水準とこれを確保するための経営方針について、有価証券評価益の活用や配当などの資本政策のあり方も含めて、経営陣との対話を重点的に行う。』

しれっとこんなのが埋め込まれていますが、配当政策に関しては一方でコーポレートガバナンスコードだか何だか忘れましたが、株式公開企業に対して株主重視の政策を云々みたいな話をしている当局様がいたりする訳でして、いやまあこの問題意識ってここの所のFSRで示されているネタだからこう来るのは想像に難くないのですが、将来的な収益見通しも考えた配当政策って要するに無理な配当するなとかそういう話に落とし込まれるのですが、だったら株主重視云々とかやっている当局様との調整もして頂きたい訳で、当局様が各々自分の庭を綺麗にするためにせっせと掃除した結果として民間に矛盾した話を押し付けるみたいなことになるのが最もダメダメな話じゃないかねと思うのよ。

でまあちょこっと飛ばしてその次を見るとですな、

『第二に、金融機関のリスクプロファイルについて、足もとの状況と先行きの方向性を把握したうえで、金融機関のリスクへの対応力を点検する。 信用リスクについては、積極的に取り組む先が多いミドルリスク企業向け貸出や不動産業向け貸出等について、点検する。市場リスクについては、大手金融機関では CLO(Collateralized Loan Obligation)などの海外クレジット商品等、地域金融機関では投資信託等を通じ、リスクテイクを積極化する動きがみられていることから、有価証券ポートフォリオが内包するリスクを点検する。』

リスクを取らざるを得ない状況に追い込んでおいてこの言い草たるやというか、おんどれらは「ポートフォリオリバランス」とか言ってただろうがとしか申し上げようがない。

『オペレーショナルリスクについては、重要性を増しているサイバーセキュリティ管理やマネー・ローンダリング対策の体制整備の状況などを点検する。また、大手金融機関の海外業務については、与信リスクや外貨調達の安定性など、幅広い視点からリスクを点検する。』

まあこの辺はさいですかという話。

『第三に、経営管理やリスク管理の実効性を確保するために必要なガバナンス体制の整備状況や有効性について、持株会社による経営管理機能や内部監査の機能を含めて点検する。特にグローバル展開する大手金融機関については、海外でのインオーガニック戦略やグループ企業戦略の方向性を確認するとともに、持株会社の機能を活用したグループベースでのガバナンス体制や情報把握体制等について重点的に検証する。』

というのはさておきまして、

『第四に、考査運営は、引き続き、リスクの所在やその影響等に応じて、調査にめり張りをつけることを基本方針とする。そのうえで、「通常考査」に加えて、調査範囲を限定した「ターゲット考査」も活用していく。』

ほう。

『2019 年度は、地域金融機関の収益低下傾向を踏まえ、収益力に焦点を当てた「ターゲット考査」を中心に実施するが、』

マイナス金利政策を止めてから実施して下さい。

『その際、各金融機関のリスクテイクの状況に応じて、信用リスク管理または市場リスク管理についても調査の対象に加える。また、海外を含めて幅広い金融サービスをグループとして提供する金融機関については、海外拠点をはじめ主要グループ企業も必要に応じて対象とする。』

とまあそういう話になっております。以下まだ続くのですがあとちょっとだけでして、その次に『(2)考査を実施するうえでの重点事項』ってのがあって、

『イ.収益力・経営体力』『持続性の高い利益と経営体力の確保』って小見出しがあって、

『金融機関が、将来にわたり金融仲介機能を安定的に発揮していくためには、収益力、すなわち持続性の高い利益を獲得できる力を確保し、経営体力を保持していくことが重要である。』

と仰せなのはスクラッチで言えばその通りなのですが、先ほども申し上げましたように業態別住み分けに各種のガチガチな規制と、規制金利の中で貸出金利も政策的に低めになるように促していたという経緯があったのをいきなりどどーんと金融自由化しちゃったもんだからオーバーバンキングの中で過当競争が始まって、しかもその間にいわゆる護送船団方式とかやっていたから過当競争が止まらんとか、その手の歴史的経緯があったりするというのがある中で最近は特にスクラッチでそういう話をされますと以下同文って感は拭えないわけです。まあだから今のままで良いかというとそれは別問題ではあるのですが、業態として全体がこうなっているのって過去の金融行政のツケが回っている面も多分にあると思う(個人の感想です)ので、金融機関だけシバキアゲるようなスタンスだけは取らないで頂きたいもんだ、とまあ斯様に思ったりするわけです。

#ただの感想文で甚だ恐縮至極


〇FOMCなので泥縄でMonetary Policy Reportネタをちょっとだけ

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/2019-02-mpr-summary.htm
Monetary Policy Report submitted to the Congress on February 22, 2019, pursuant to section 2B of the Federal Reserve Act
Summary

ということでHTMLの方はサマリーページですが本チャンのほうはこちら。
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/20190222_mprfullreport.pdf

こちらの本文36ページに、コラム形式で『Monetary Policy Rules and Systematic Monetary Policy』などというのがありますので、今後政策のコミュニケーションをどうするというようなネタのある中ちと鑑賞の巻ということで簡単に。

最初に前置きがあって、その後に『Policy Rules and Historical Prescriptions 』というのがあるのですが、これはテイラールールとか修正テイラールールとかその他のルールに基づくと適正な政策金利は何ぼになりますかというのをまとめとして示していて、37ページの頭の所に、『A. Monetary policy rules』として、テイラールール、バランスアプローチルール、修正テイラールール、プライスレベルルール、ファーストディファレンスルール、などというのが出ていて、38ページの頭に『B. Historicalfederalfunds rate prescriptions from simple policy rules 』として2000年以降各々のルールで計算した時の適正政策金利は何ぼですかというのが出ています。

でもってその後が本文かいなという感じで、『Systematic Monetary Policy in Practice 』という小見出しがあるのでその辺から拝見しますがその一発目から、

『Although monetary policy rules seem appealing for obtaining and communicating current and future policy rate prescriptions, the usefulness of these rules for policymakers is limited by a range of practical considerations. 』

ということで、いきなり「ルールベースの金融政策は現在や先行きの政策金利水準に対する示唆を含むので魅力的ではあるものの、実務上の問題を考えるとその実用性は限られている」とか見事な出オチ。

『According to simple monetary policy rules, the policy interest rate must respond mechanically to a small number of variables. However, these variables may not reflect important information available to policymakers at the time they make decisions.』

『For example, none of the inputs into the Taylor (1993) rule include financial and credit market conditions or indicators of consumer and business sentiment; these factors are often very informative for the future course of the economy.』

『Similarly, monetary policy rules tend to include only the current values of the selected variables in the rule. But the relationship between the current values of these variables and the outlook for the economy changes over time for a number of reasons.』

『For example, the structure of the economy is evolving over time and is not known with certainty at any given point in time.7 』

とまあそういうことで、政策ルールとして含まれる変数から外れている中でも経済物価情勢に対して影響するものもあるし、そもそも政策ルールで使う変数というのは現在の経済の状態を示したものだし、政策ルール自体が過去の経済構造を元にして作成されている中で経済構造が変わればその条件も変わるかもしれませんよね、とか割とケチョンケチョン。

さらに、

『To complicate matters further, monetary policy affects the Federal Reserve’s goal variables of inflation and employment with long and variable lags.』

政策が効くのにはラグがありますよと。

『For these reasons, good monetary policy must take into account the information contained in the real-time forecast of the economy.』

という話になった上に、

『Finally, simple policy rules do not take into account that the risks to the economic outlook may be asymmetric, such as during the period when the federal funds rate was still close to zero. At that time, the FOMC took into consideration that it would have limited scope to respond to an unexpected weakening in the economy by cutting the federal funds rate, but that it would have ample scope to increase the policy rate in response to an unexpected strengthening in the economy. This asymmetric risk provided a rationale for increasing the federal funds rate more gradually than prescribed by some policy rules shown in figure B.』

グラフBというのはさっきの『B. Historicalfederalfunds rate prescriptions from simple policy rules 』でして、ルールで計算したら適正政策金利がマイナスになる、というようなことになったらアカンタレなので、政策当局者としてはマイナス金利が適正金利にならないようにその前に早めに緩和をするというような事も必要、という話をしていまして、この辺りってこれからの金融政策の枠組みの話を検討する中で恐らく出てくる論点だと思うし、この論点が登場すると市場ちゃんの方は「予防的な緩和政策の導入キタコレ!」とまたぞろヒャッハーするんじゃないかという所までは予想しました。


でもってその先はコミュニケーションの話になるのですが、その最後の方がちと面白かったのでそちらをば。(39ページになります)

『These policy communications help the public understand the FOMC’s approach to monetary policymaking and the principles that underlie it.』

途中飛ばしてますが金融政策運営におけるコミュニケーションをこのように実施しています云々の話の続きです。

『Consequently, in response to incoming information, market participants tend to adjust their expectations regarding monetary policy in the direction consistent with achieving the maximum-employment and pricestability goals of the FOMC.10』

コミュニケーションして政策反応関数を示しているので経済状況見ながら市場の方も先行き金融政策をロジカルに予測して行動するようになりますとな。でもってこの次がオモロイというか何というか。

『Evidence that market participants adjust their expectations for policy in this manner is shown in figure C.』

これは『C. Change in 10-year yield in response to Employment Situation report』ってグラフで、横軸が『Surprise in nonfarm payroll job gains (in thousands)』で、縦軸が『Change in 10-year yields on Treasury securities (basis points)』の分布図となっています。

『The figure plots the change in the 10-year yield on Treasury securities in a one-hour window around the release of employment reports on the vertical axis against the difference in the actual value of nonfarm payroll job gains and the expectations of private-sector analysts immediately before the release of the data on the horizontal axis- that is, a proxy for “surprises” in nonfarm payroll job gains.』

今説明した通りです。

『When actual nonfarm payroll job gains turn out to be higher than market participants expect, the yield on 10-year Treasury securities tends to increase. The rise in the 10-year yield reflects market participants’ expectation that, as a result of stronger-than-expected labor market data, the path of short-term interest rates will be higher in the future. Conversely, the 10-year yield tends to decline after negative surprises in nonfarm payroll data, reflecting the path of short-term interest rates will be somewhat lower in the future.』

『These adjustments in the 10-year yield help stabilize the economy even before the FOMC changes the level of the federal funds rate in the direction consistent with achieving its goals, as higher long-term interest rates tend to slow the labor market while lower rates tend to strengthen it.』

ということで、雇用統計のNFPが上方にサプライズだったら市場が先に反応して金利上昇する(分布図はだいたいそんな感じ)というのが示すようにコミュニケーションがうまくいっているので市場が政策を正しく先取りして反応しています(キリッ)って話をしていて、まあ何というか微笑ましいのですが、一方でお前らの今の親分は政策反応関数勝手に変えちゃうし、その前の前の親分は「ショックあんどオー」とかやっちゃうし、まあ何でしょうねというのはあるのですが、こんな話をするんですなあとか普段FEDのスタッフレポートまで中々手が回りきらないのでほほーと思いながら鑑賞しました。

ちなみに暫くFEDの高官が言ってた「地域経済と都市経済の格差問題」とか「FEDのバランスシートの適正規模とは」みたいなコラム(他にはファイナンシャルスタビリティー関連)もあって、コラムだけでも読んでみるのはお勧めしておきます。はい。








2019/03/19

お題「総裁会見である」

黒ちゃんの任期はこれであと4年か・・・・・・・・・

〇総裁定例記者会見より

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190318a.pdf

・設備投資と消費が頼みの綱のようで

実質最初の質疑から参ります。

『(問) 公表文にもございましたが、世界経済の減速感が強まっています。内閣府の景気動向指数は後退局面入りすら示唆している状況です。景気の現状と先行きについて、改めてご所見をお願いします。』

とド直球ストレート質問です。

『(答) 今回、景気動向指数が大幅に低下したことについては、1 月の生産減少により、指数を構成する生産関連の指標が下落したことが、大きく影響していると理解しています。日本銀行としても、輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられることは認識していまして、この点は、本日の公表文でも示した通りです。』

ほいな。

『一方、国内需要については、堅調な動きが続いています。』

ほうほうそれでそれで?

『企業収益が総じて良好な水準を維持するもとで、設備投資は増加傾向を続けているほか、 個人消費も、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、緩やかに増加しているとみています。このように、所得から支出への前向きの循環が働くという景気拡大の基本的なメカニズムに変化は生じていません。』

と仰せなのですが、輸出と生産が減速する中で増加する設備投資、というのは少なくとも輸出に関連するところに関して言えば更新需要が一巡したらおしマイケルになってしまうでしょうし、そもそも輸出と生産が減速する中で収益がどこまで持続可能かという話になるんじゃなかろうかと思いますが、まあこうなってくると設備系の指標とか今度の短観とか注目されるでしょうなあ。

『また、公共投資も、高めの水準を維持しています。 こうした点を踏まえ、本日の金融政策決定会合では、わが国の景気の現状について、「緩やかに拡大している」という判断を維持しました。』

はいはい大本営大本営。

『先行きについては、国内需要が増加基調を辿るとみられるほか、輸出も、当面、弱めの動きとなるものの、基調としては緩やかに増加していくと考えられます。このため、「わが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、緩やかな拡大を続ける」と判断したところです。』

海外が戻って来る、というのと国内の所得が落ちない、というのが前提になっていますね。


・そのメカニズムはちゃんとワークしているのかというツッコミが3つほど

ちょっと先の質疑になりますが。

『(問) 前回の総裁会見で、総裁が今年どんなことに注目なさっているのかというのを伺ったのですが、その時のお答えが、春闘でどのような賃上げが実現するかということでした。そして実際に春闘の動きがどうなっているかといいますと、自動車・電機の主力企業で賃上げが去年を下回っているという状況です。今後の景気それから物価に、どのように影響するとみていらっしゃるでしょうか。 2%の物価目標というのは、まだまだ遠いなというふうにご覧になっていらっしゃるでしょうか。』

当然質問するわな。

『(答) 春闘については、一昨日、いわゆる集中回答が出ましたけれども、中小企業も含めて、まだ現在も労使間で交渉が行われています。全体的な賃金の設定動向というのは、まだ見極めが必要な状況でありまして、今の時点で断定的なことは言えないと思います。』

これは涙ぐましい負け惜しみ。

『そのうえで、集中回答の状況をみますと、多 くの企業で 6 年連続のベースアップが見込まれているということ、それからこの先ボーナスや諸手当など、多様な方法による年収ベースの賃上げが進められるものと考えています。』

あのーすいません10月から消費税上がるんですけど・・・・・・・・・・・

『日本銀行は、強力な金融緩和によって、企業収益の増加あるいは賃金の上昇を伴いながら物価上昇率が緩やかに高まっていくという好循環を作り出すことを目指していますので、ベースアップの定着あるいは賃上げ手法の多様化といったことは、こうした経済の好循環の実現を後押しするものではないかと考えています。』

黒田さんにしては珍しく意味が全然通っていない発言をしています。ベースアップが足りないって言ってる質問に対して「ベースアップの定着あるいは賃上げ手法の多様化」が「経済の好循環の実現を後押しするものではないかと考えています」ってまるっきり文章としての意味が通じないんですが、まあそれ以前に強力な金融緩和がどうやってその好循環を作り出すのかがさっぱり分からんし、金融緩和で作り出せるんだったらとっくの昔に2%行ってるだろ単におんどれらの政策以外の外的要因が効いてるだけじゃねえのかと総括検証をして頂きたいものございます。

でまあ今回は不覚にも会見を中継映像では見なかったので実際にどういうベシャリになっているのかよく分からんのですが、どうせ(想定問答棒読み)って奴ではなかろうかとは思われるんですけど、このような意味の通っていない説明でもその場だけ無駄に説得力がある人が昔俊ちゃん今ドラギという所ですな。

説明はさらに続く。

『いずれにしても、今後、より深刻な人手不足に直面してい る中小企業の状況も明らかになってくるわけです。日本銀行としても、こうした動向には十分注目をしていますし、良好な企業収益あるいは労働需給の引き締まり、消費者物価の緩やかな上昇といった経済環境を活かしながら、労使双方において前向きな取組みが拡がって、賃金と物価の好循環が実現していくことを強く期待しています。』

人口動態要因で賃金上昇しませんかね、っていうのってコストプッシュで物価上昇しませんかねというような匂いを感じてしまってそれって政策効果関係ないやんという気もしますけどね。


でもってその次の質疑ではこれまた直球質問。

『(問) 今回の公表文で、輸出、それから生産の判断を引き下げているのに、 全体の景気判断を据え置いているのは、ちょっと整合性が取れないような気が するのですが、どうしてなのか。これは 4 月に見極めるということなのでしょうか。』

そら聞くわな。

『(答) 公表文の中には、まずは足許の話、それから先行きの話、海外経済と日本経済についても書かれています。足許、海外経済、特に欧州や中国の減速が、日本の輸出や一部の生産に影響を与えていることはその通りです。ただ、 一方では、足許でも設備投資は順調ですし、消費も振れを伴いながら堅調に推移しており、内需は比較的堅調な状況です。』

内需がコケると完全終了ですねわかります。

『それを踏まえたうえで先行きどうなるかということですが、海外の状況についても、いずれIMFその他国際機関も様々な見通しを出されると思いますけれども、色々な動向をみる限り、例えば中国においては、かなり大幅な景気対策が既に決定され、あるいは実行されつつあり、どんどん減速していくという状況にはないのではないかと思います。中国政府も 6%〜6.5%の成長率を目標として掲げていますし、中国経済についても、足許の減速と、この 2019 年、2020 年といった年全体をみたときの状況とは少し違っており、緩やかな成長が続いていくという見方で正しいと思います。』

ほうほう。

『欧州の場合も、ご承知のように、昨年のディーゼルの環境規制などが 突然大きくきて、自動車産業がかなり影響を受けましたが、それも克服されつつありますし、対中輸出が減ったということについても、先程申し上げた通り、 中国の景気は後半に向けて回復していくというのが大体の皆さんの見方のようです。』

結局中国か・・・・・・・

『日本経済についても、足許の輸出・生産の弱さはありますが、内需は堅調ですし、先行きについても、所得と支出の好循環というものが基本的に続いていくという、従来の経済についてのメインシナリオは変わっていないということだと思います。』

ということで、「4月に見極める」などとうっかり発言すると追加緩和期待を煽ってしまうので想定問答の時点でそういう説明をしないようにとなったのでしょうな、というのはよくわかりました(個人の想像です^^)。

・・・・・・・・ところで、アタクシ会見見てないのでそこは惜しいのですが、この会見要旨ってここまで引用してきた中で「やたら答えがクソ長い」という傾向にある(個人の感想です)というのが見て取れそうな感じです、まあ過去のと応答の長さを比較とかしてる暇はないので実際にはどうなのかというのはありますけれども、ここまで引用してきた部分でも、やたらめったら話が長いなという印象があって、会見ではどんな感じだったかなあと(何となく想像できますが)思う訳ですよ。

でもってですね、自信満々で饒舌になる、というパターンも勿論あるのですが、今回の質疑応答って少なくとも引用している部分に関して言えば明らかに日銀に「分の悪い」論点での質疑になっておりまして、その中でああでもないこうでもないと説明する、というのはまあかなりの部分無理があろうかと思われますって状態になっているんだろうなあ、というのは把握しました。

片岡大先生までが追加緩和の具体的提案(という程の具体的提案でもなかったが)を引っ込めてしまう位に有効と思われる手段が無いし、やったら副作用爆発みたいなのしか見当たらないという状況。だいたいからして、先般ネタにした山口元副総裁のロイターインタビューの受け売りになってしまいますけど、効果とか副作用とかそもそもの波及メカニズム(=強力なコミットメントと大規模緩和政策でインフレ期待が直接的に上がる)にも不明点があるのだったら、政策ぶっこんだ後も不断に検証を行い、必要とあらば軌道修正をしながらPDCAサイクルみたいなのを回して行って政策やればこんな事にもならなかったのでしょうが、一発目の政策のあとに、「とりあえず怪しくなってきたからQQE2」とか無謀なことをするからそれをリカバーするために補完措置導入からのマイナス金利政策と自爆して総括的検証からのYCCになった訳でして、まあそんな政策運営をしている中で、「最後の砦のメカニズム」まで怪しいと来たら次はどうしようも無いんですけどさてどうするのでしょうかねえ、とはこの苦しい説明を見ながら思うのであります。(なお最後の砦が陥落してもしぶとくどこかに砦を作って粘る可能性isある)


後の方で海外と春闘と両方の質問が更に来る有様。まあそらゴリゴリ聞くわな。

『(問) 先程から景気の全体の認識をお聞きしていると、基本的にはヨーロッパ、中国が回復してくるのではないか、というのがメインシナリオということで、今の海外経済の減速の影響というのは、今のメインシナリオとしては、一時的なものにとどまるということで考えていらっしゃるのでしょうか。それとも、まだそうかどうかも今見極めが必要だということなのでしょうか。』

結局この辺の質問にまともに答えてないので同じ質問が飛んでくる次第。

『それからもう 1 つ、先程の春闘の話に戻るのですが、今年はちょっと去年ほどの水準ではなかったというお話がありましたが、これまで結構春闘で相場作りをリードしてきたトヨタ自動車が、ベアの要求を非公表にして、ということになって、水準がよくみえなくなってきた部分があります。それが結果として、公表する義務があるというわけではないと思うのですが、やはり賃上げの、社会の所得から支出という流れを作るうえで、その辺りの部分というのがちょっとみえにくくなってきているのではないかなと思うのですが、総裁はどのようにお考えでしょうか。』

インフレ期待が盛り上がらないのでは、という質問ですな。でまたこの回答なんですが・・・・・・・・・・・

『(答) 前段については、海外経済の中では中国と欧州が減速しており、それが今後どのように展開していくかということは、世界経済の動向、更には日本経済に与える影響という点からみても非常に重要だと思います。他方で、ご承知のように米国経済は堅調な成長を続けていますし、中国以外のアジアの新興国をみますと、インドは 7%近い成長を続けていますし、インドネシアも 5%台の成長を続けています。』

ドンドン話を逸らしにかかっております。

『新興国の代表のように思われている中国が昨年の後 半以来減速しているということで、非常に注目を集めていますが、実は他の新興国はかなり成長をしているというか、むしろ成長率が回復している国もあります。』

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『また、昨年の前半までは、米国の金融政策の正常化がどんどん進んで金利が上がり、途上国から資金が逃げ出す、あるいはそれを防止するために途上国が金融引き締めを余儀なくされることによって、新興国の成長率が低下するのではないか、という議論が強かったのですが、最近はそういう議論が全くなくなりました。むしろ新興国はそういったおそれがなく、財政・金融政策も活用して比較的順調に成長率が回復しているところもあります。』

世界経済が順調に拡大しだしたら米国の正常化復活すると思うんですが。

『まずは世界全体をみたらどうかということと、もう 1 つは現在減速している中国と欧州がどう なっていくかということですが、特に中国については、既にかなり大幅な景気刺激策をとっていますので、その効果はいずれ出てくると思います。それが年の後半くらい、というのが皆さんの見方のようです。これはもっと遅れるとか、 もっと早く出るとか色々な議論があるようですが、海外経済についても、緩やかに成長するというメインシナリオは変わっていないのではないかと思っています。ただし、リスクは確かにありますし、その点は十分注意していく必要があると思っています。』

ということでこの前半の質問だけでこの分量の説明ってのがもうねという所で、ECBは新興国経済の所を全力でリスク要因認定している中で、日銀は同じようにすると下方修正待ったなしになってしまうのでとりあえず何か威勢の良い話をしてお茶を濁そうというのはよくわかりました。

さて後半のお賃金ですが、

『春闘については、まだ本当に中間段階というか、中間までもいっていないのかもしれませんので、あまり断定的なことをいうのはよくないと思いますが、集中回答の数字などをみますと、昨年よりちょっと低いくらいで、殆ど同じということです。』

だから今年は消費税が上がるんですけど。

『また、これは昨年になりますが、冬のボーナスが非常に良かったともいわれていますし、集中回答した企業以外、特に中小企業のベアの交渉がどうなっていくのか、それから今ボーナスなどの色々な形で総合的な賃上げが実現しています。そういう意味では、みえにくくなっているのかもし れませんが、全体としてどのように賃上げが進んでいくかについては、十分注視していく必要はあると思います。』

色々な形で総合的な賃上げが実現しているというのであれば、社会保険料の引き上げや所得控除の削減などで可処分所得が総合的に下がっている件についても考察して頂きたいものでございます。

『今のところ、何かここ数年の中で賃上げ率が顕著に低下している感じは、少なくとも私は持っていません。ただ、もう少し、これは 5 月頃まで続きますので、状況を全体としてみる必要があると思っています。』

「これは 5 月頃まで続きますので、状況を全体としてみる必要がある」そうなので4月決定会合でも意地汚く粘るんですねわかります。


・2%物価目標云々

麻生さんは以前からそういう趣旨の話はしていますが、ちょっと最近はお歳を召いやなんでもないです。

『(問) 麻生財務大臣が今朝の記者会見で 2%目標に触れて、2%にこだわっているのは新聞記者と日本銀行ぐらいなものだと、独特な言い回しをされて、そ のうえであまりこだわり過ぎると色々おかしな点が出てくるというような発言をされていて、政権の中枢からこういった発言が出ていることへの受け止め をお聞かせください。』

ネタにはしませんでしたが、まあちょっとお前何無責任な事言ってるんだというか、だったら今すぐ共同文書を書き換えろやと思う訳で、そういう責任を取る気はないんだったら黙ってれば、と思うのでこの大臣発言も相当にトサカに来るんですがそれは兎も角として黒田さんの回答。

『(答) 麻生大臣のご発言について、具体的にコメントするのは差し控えたいと思います。そのうえで申し上げますと、この 2%の「物価安定の目標」は、 日本銀行の政策委員会が自ら決定したものでありまして、物価の安定という日本銀行の使命を果たすためには、これを実現していくことが必要だと考えています。』

ほー自分で決めましたとな。だったら都合が悪ければ見直せますよね。

『もちろん、かねてから申し上げています通り、物価が 2%に上がりさえすればよいというわけではなく、日本銀行は、企業収益あるいは雇用・賃金が増加して投資や消費が活発化するもとで、物価も緩やかに上昇していくという経済を目指しているわけです。』

置物就任当初は「物価目標が達成されたら経済はバラ色」という説明でしたけど。

『また、物価は、原油価格の動きを含めて様々な要因によって変動しますし、長期にわたる低成長やデフレの経験などを踏まえますと、物価上昇率が高まるには相応の時間がかかる可能性があることも念頭に置く必要があると思っています。』

フリードマン語録を引用して「物価はいついかなる時にも貨幣現象」って言ってたの置物一派じゃなかったでしたっけ。

『更には、金融緩和が、市場機能、金融仲介 機能に与える影響なども考慮する必要があると思っています。日本銀行としては、こうした経済・物価・金融情勢を総合的に勘案したうえで、2%の「物価 安定の目標」の実現を目指していくという方針に変わりはありません。』

「できるだけ早期に」が抜けているので失格、やり直し。

・・・・・・・ということで、これうっかり忘れたのか意図的に忘れたのかがよくわかりませんが、できるだけ早期にが抜けてしまっていることもあったのか別の質問がちょっと後に出てくる。

『(問) 先程の 2%ターゲットについてお伺いしたいのですが、最近更に柔軟に、こだわりを持たずに、とか、そういった声が増えていると思います。ただ その一方で、日銀としては 2 年というのはこだわっていなくて、できるだけ早期にとおっしゃっているだけで、総裁としては十分に柔軟になっているというお考えなのか、それとも柔軟にする余地は、例えばレンジ化とかする余地はある、とお考えになっているのか、お願いします。』

何で期間の質問してるのに「レンジ化」ってなっちゃうかね????

『(答) 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するということは、 2013 年 1 月に日本銀行として決定して、その後引き続きそれを守ってきているわけです。』

「できるだけ早期に」は変わっていません、と言っていますがこれ何気に味わいがあるのが、「2013 年 1 月に日本銀行として決定して」と麿時代の共同文書で説明しているところです。

2年というのは黒田さん(や置物)がこれに追加してぶっこんできたものであって、そこで「2年を念頭に出来るだけ早期に」となったので一気に短期勝負感が強くなったし、2年で達成しなければ辞任と大法螺を吹いて日銀副総裁をゲットした置物師匠がいましたので、物凄い短いタイムホライズンになった訳ですが、その部分を説明しないで麿時代の日付を持ち出してくるのがこれがまた怪しい。

つまりですな、あれ麿の時って「できるだけ早期に」と言ってもタイムホライズン無いし、それに政府は政府で成長戦略とか持続的な財政運営とかやることをやって、というのが条件としてあった訳で、よくよく読めば金融政策単独で2%を早期達成するとは言っていない(読みようによってどうとでも取れるように作ってある)のですから、そもそもが中長期の目標になっても申し開きが(やや無理筋なのはありますが)できるという代物なので、そっちを持ち出してくるというのは麿に責任転嫁しようとしている卑怯スキームなのか、それとも「共同文書を見直してもうちょっと柔軟化させてほしい」という執行部心の声が出てきたのか、(黒田さんは多分早期達成じゃーとかまだ思ってそうですが)さてどうなんでしょうね、とは思いますが、これは味わいのある部分だと思いました。

『これを変更する必要があるとか、変更することが好ましいとは思っ ていません。現在の政策委員会のメンバーも、皆同じ意見だと思います。 』

でもこれだと共同文書を書き換えたら変更になりますよね・・・・・・・・・・


・マイナス金利への批判に関してはまともな答えが出てこない

まあ出せないのだから仕方ないけど。

『(問) マイナス金利政策について 1 点お伺いします。日本に導入してから、 先月 2 月で 3 年が過ぎましたが、国内の物価はなかなか上がらない状況かと思います。日本や海外の学者の一部からは、金利をマイナスにするという政策は、 インフレ期待や景気を逆に冷やすのではないかといったような論文も出てき ていると思います。そうした中で、非伝統的な政策手段だからこそ評価するには時間を要するかと思いますが、現時点で海外での導入事例も踏まえて、総裁 は、マイナス金利に関する功罪については、どのようなご認識をお持ちでしょうか。』

これは嫌がらせ(^^)。

『(答) 私も海外の議論を全て知っているわけではないのですが、ご承知のよ うにECBを含めて欧州大陸の中央銀行は殆ど、依然としてマイナス金利を維持しています。それも、わが国の場合のように−0.1%を当座預金の一部に適 用するということではなく、根っこから、しかも大幅なマイナス金利を適用し、 それを依然として維持しています。それは全体の金融緩和の中で必要だということで維持されているのだと思いますし、最近特に欧州において反対が強くなっているとか、拡がっているとは感じておりません。』

いや普通に問題視する発言がECB要人からも出てるだろうよ・・・・・・・・・・・

『他方で、米国では以前 からマイナス金利の導入には強い反対意見があると同時に、一部には、むしろマイナス金利をやりやすいような金融システムを作って、いわば伝統的な短期金利をプラスの範囲で動かすだけではなくて、マイナスまで含めて動かすことによって、いわゆる量的な緩和ではなく、マイナス金利でやったほうがよいのではないかという学者もいます。』

『同時に、多くの学者は、マイナス金利に対して比較的批判的で、むしろFRBがやってきた量的緩和で十分緩和効果があったのではないかという議論があります。米国の場合は意見が相当分かれている と思いますが、欧州では、少なくとも多くの意見は、マイナス金利は必要であり、効果を持っているということだと思います。』

これまでの話だけしているのでどう見ても誤魔化し説明。

『わが国の場合は、先程申し上 げたように、ごく一部を−0.1%にして短期金利をマイナスにして、そして 10 年物国債金利をゼロ%程度、超長期はプラスという、適切なイールドカーブを作るという意味でも有効であり、それが全体として金融緩和の効果を上げていると思っています。』

だったら何で物価が2%に向かっていかないんでちゅかねえ。

『他方で、金融機関の収益に対する影響には色々な議論があることはよく承知していますが、先程申し上げたように、−0.1%というのは当座預金のごく一部に適用しているだけで、殆どは実は+0.1%か 0%ということになっていますので、そういったことに対する配慮もしているということだ と思います。』

配慮になってませんが。


・これは大喜利素材

『(問) 総裁ご存知のように、MMT(Modern Monetary Theory)というのがアメリカ・欧州の方でも議論されているようなのですが、これについての総裁 の考え方をお願いします。というのも、日本では成功しているじゃないか、とおっしゃっている専門家の方もいるものですから、どうぞ宜しくお願い致します。』

そもそもバリバリの財政再建おじさんの黒田さんに質問しても、という話ですが、この応答はテンプレ素材として使えるので引用(^^)。

ちなみにMMTに関しては「お前それエルドアンでもルーラでもズマでも良いけどその辺の大統領が言い出したらどうなると思うの」で話が終了するほと、強い前提条件が必要な話なので、お話として面白くても政策論にはなり得ないでしょ、と思いますがさて黒田さんの回答。

『(答) MMT(Modern Monetary Theory)は、最近米国で色々議論されているということは承知していますが、必ずしも整合的に体系化された理論ではな くて、色々な学者がそれに類した主張をされているということだと思います。 そのうえで、それらの方が言っておられる基本的な考え方というのは、自国通貨建て政府債務はデフォルトしないため、財政政策は、財政赤字や債務残高な どを考慮せずに、景気安定化に専念すべきだ、ということのようです。ただ、 こうした財政赤字や債務残高を考慮しないという考え方は、極端な主張だと思いますし、米国の学界でも非常に少数の意見であり、広く受け入れられた考えではないと思っています。』

『もちろん常に私が申し上げている通り、財政運営は 政府・国会の責任において行われるものですが、実際にわが国の政府債務残高は極めて高い水準にありますので、政府が、中長期的な財政健全化について市 場の信認をしっかり確保するということが重要だと思っています。また、「共 同声明」においても、政府が持続可能な財政構造を確立するための取組みを着実に推進するということになっていますので、そうしたことを期待しています。』

回答はまあ予想通りですが、ここでも共同声明が出ているのがちょっと気になりましたな。

・・・・・・でもってこの前半部分がどう見ても大喜利素材とは思ったのですが、140字以上あるのでツイッターランドで使うには長すぎというのが惜しいところ(何度か申し上げておりますがアタクシはSNSのアカウント持っていませんので(鍵とかも含めて持ってない)念のため申し添えます)ではありますな。

「置物リフレ理論は、最近日本で色々議論されているということは承知していますが、必ずしも整合的に体系化された理論ではなくて、色々な学者がそれに類した主張をされているということだと思います。そのうえで、それらの方が言っておられる基本的な考え方というのは、物価は貨幣的現象であるため、金融政策は、財政政策や構造問題などを考慮せずに、物価目標達成に専念すべきだ、ということのようです。ただこうした財政政策や構造問題を考慮しないという考え方は、極端な主張だと思いますし、米国の学界でも非常に少数の意見であり、広く受け入れられた考えではないと思っています。」

こうですかわかりません(−−)。








2018/03/18

お題「決定会合レビュー雑談である」

この前のこれとか
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1903/13/news136.html
「プレミアム“キャッシュレス”フライデー」発表 経産省が決済事業者のキャンペーンを後押し
2019年03月13日 22時48分 公開

今回のこれとか
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190318/k10011851651000.html
キャッシュレス決済普及へ 10連休などでキャンペーン
2019年3月18日 4時32分

手段が目的になっている典型みたいな案件ですが、どうしてこう碌でもない介入ばっかりしたがるんでしょうかねえ。というかこれ特定事業への盛大な補助いやなんでもないです。


〇決定会合レビューである

今回声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k190315a.pdf

前回声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k190123a.pdf

前回時の展望レポート基本的見解
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1901a.pdf

・景気判断は輸出生産を下げているが総括判断は「拡大」とな

現状判断は下馬評通りに輸出と生産を下げて来ました。

『わが国の景気は、輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。』(今回)
『わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。』(前回展望レポート)

このようにヘッジクローズが入るのはとりあえず意地汚く粘っているうちに何とかならんか、という思いがこもっているのですが、だいたい粘って無事に収まったというのは少ないというのが残念なところです。そらまあ政府様が消費増税やっていこうとか、経済政策は上手くいっているって話をしている中で経済の情勢判断下げる訳には行かないのですが、また来た大本営発表という所ですな。


『海外経済は、減速の動きがみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出は、足もとでは弱めの動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、総じてみれば着実な成長が続いている。 そうしたもとで、輸出は増加基調にある。』(前回展望レポート)

「減速の動きがみられるが、総じてみれば緩やかに成長」って最早何を言ってるんだという感じですが、これは足元の海外経済様が減速しているのは偶々一時的なもので近いうちに戻ってくれるでしょう、という思いが籠った文章だと解釈すれば分かりやすいと存じます(個人の感想です)。

『国内需要の面では、企業収益や業況感が総じて良好な水準を維持するもとで、設備投資は増加傾向を続けている。』(今回)
『国内需要の面では、企業収益が高水準で推移し、業況感も良好な水準を維持するもとで、設備投資は増加傾向を続けている。』(前回展望レポート)

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩 かに増加している。』(今回)
『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。』(前回展望レポート)

ということで最近は設備投資と個人消費がコケていないというのを思いっきり強調して粘る、というのが仕様になっているように見えます。

『この間、住宅投資は横ばい圏内で推移している。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。』(今回)
『この間、住宅投資は横ばい圏内で推移している。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。』(前回展望レポート)

こちらは毎度こんなもん。

『以上の内外需要を反映して、 鉱工業生産は、足もとでは弱めの動きとなっているが、緩やかな増加基調にある。労働需給は着実な引き締まりを続けている。』(今回)
『以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けている。』(前回展望レポート)

前回にあった内外需要の「増加」という文言が削除されておりまして、内外需要が増加しないのに何で需給ギャップのプラスが拡大して物価上昇のモメンタムが維持されるのかと小一時間問い詰めたい所ではあります。

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(今回)
『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%台後半 となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(前回展望レポート)

ここはまあ毎度同じという感じですな。


・先行き見通しはクソ粘りしながら何とか維持という図ですな

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、緩やかな拡大を続けるとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、2020 年度までの見通し期間を通じて、拡大基調が続くとみられる。』(前回展望レポート)

ヘッジクローズを2つも入れながらも意地汚く拡大は維持。

『国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『国内需要は、設備投資の循環的な減速や消費税率引き上げの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(前回展望レポート)

さっきの現状判断のところで国内需要の増加という文言を削除しているというのに見通しに関しては増加基調継続(にしないと拡大基調という先行き基調判断との整合性が取れないから仕方ないけど)というこのクソ粘りモードですが、そもそも論として年後半に消費税上がるっちゅうのにベアが昨年以下とか言っている状況で「所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続」とは何のギャグだと小一時間。。

『輸出も、当面、弱めの動きとなるものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくことを背景に、基調としては緩やかに増加していくとみられる。』(今回)

『海外経済は、米中貿易摩擦など最近の様々な動きには注意を要するが、先進国・新興国ともに内需が堅調に推移するもとで、総じてみれば 着実な成長を続けると考えられる。こうしたもとで、わが国の輸出は、基調として緩やかな増加を続けると見込まれる。』(前回展望レポート)

展望レポートの方では海外経済に関する詳細文言があるのでちと引用比較のバランスが悪いですけれども、まあ何と言いましても今回の輸出の所のこのヘッジクローズデコレーションという感じでヘッジクローズ満艦飾ワロタというお話ではありまする。


『消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる(注2)。 』(今回)

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることな どを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(前回展望レポート)

でもって物価の所はこれはもう駄目ですバイとか言い出すと話が終わってしまうのでこれで粘るしかありません。


・脚注見物会:追加緩和の具体的手段も無く追加緩和が望ましいというこのダメダメ感

政策決定の方は想定通りの現状維持でしたが・・・・・・・・・・・

『(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対: 原田委員、片岡委員。』(今回)
『(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対: 原田委員、片岡委員。』(前回声明文)

とまあここまでは今回も同じですが、

『原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、 政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、 先行きの経済・物価情勢に対する不確実性がさらに強まる中、金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。』(今回)

『原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、 政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、 先行きの経済・物価情勢に対する不確実性が強まる中、10 年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。』(前回声明文)

おおかたおかよ、ぐたいてきあんがないとはなさけない。

・・・・・・・・ということですが、片岡大先生の場合、就任一発目の決定会合から反対芸人の芸風を磨いていたわけですが、

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/k170921a.pdf
『片岡委員は、資本・労働市場に過大な供給余力が残存しているため、現在のイールドカーブのもとでの金融緩和効果は、2019 年度頃に2%の物価上昇率を達成するには不十分であるとして反対した。』(上記URL先2017年9月21日決定会合声明文脚注より)

と着任してほぼ2か月経過して「具体案無き反対とな」と金利業界界隈のツッコミを受けたと思ったら、その次の会合で、

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/k171031a.pdf
『片岡委員は、イールドカーブにおけるより長期の金利を引き下げる観点から、15 年物国債金利が0.2%未満で推移するよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとして反対した。』(上記URL先2017年10月31日決定会合声明文脚注より)

という金利市場関係者一同が椅子から転げ落ちる珍提案を行いその珍提案振りに金利業界界隈のツッコミを(以下同文)、

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/k171221a.pdf
『片岡委員は、消費税増税や米国景気後退などのリスク要因を考慮すると、2018 年度中に「物価安定の目標」を達成することが望ましく、10 年以上の国債金利を幅広く引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとして反対した。』(上記URL先2017年12月21日決定会合声明文脚注より)

とまあそのように就任以来3打席連続で提案内容が変わるという提案芸人への道を歩むかと思ったらそこからは提案内容がずっと「10 年以上の国債金利を幅広く引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当である」で理由を微妙に変えてくるという提案芸としては薄めの芸風で来ていたわけですな。

然るに、今回の決定会合では就任当初(会合の関係上2か月後でしたが)の具体的な手段無く反対に戻るとは何事ぞ、という感じなのでありますが、ここで売買参考統計値を確認してみましょう。

http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php
売買参考統計値/格付マトリクス ダウンロード

先週金曜日の前日の引値(売買参考統計値の日付表記は先週金曜日付け)を見ますと、残存15年国債、すなわち2034年3月だの6月だのの償還銘柄の20年国債はこんな感じになっておりました。

超長期国債 148 2034/03/20 0.195 0.180
超長期国債 149 2034/06/20 0.206 0.190

左が平均値複利、右が平均値単利ということで、なんということでしょう!!15年国債の金利が単利だと0.2%未満、複利でもほぼ0.2%で推移しているではありませんか!!!!(ちなみにその前の日も同じで金曜の引けではここから5糸甘になっています)

とまあそういう具合になりまして、まさにここもと10年以上の国債金利が幅広く低下しているという大変に素敵な事案が生じております次第ですが、物価に関してはご案内の通りという次第でございまして、片岡大先生におかれましてはまた提案内容を考え直さないと行けなくなって参りましたという事になったというのがワロタという感じでございますが、結局のところ「物価目標がすぐに行かないのは出来るだけ早期に達成と言っている手前イクナイので追加緩和をしてすぐに行くようにすべき」というのは理屈としてその通りであっても、実際に市場金利が上がっても下がってもそれとは物価推移が結びついているように全然見えない、というような状況にあるのに、追加緩和の具体的提案とか言ったってそらできませんわなという話な訳ですよ。

ということはつまりは、そもそもここまでの経済や物価に対してこのマイナス金利+QQE+YCCがどのようなメカニズムでどのように効果を発揮したのか、という点に対して、大本営発表モードだったり、もはや相関しているから効いた位の説明で押し通す置物リフレモードだったり、というような分析はあっても、結局のところメカニズムが何だか分からんという状態のままでいるんですからそりゃ具体的提案も出んわなと思いまするに、まあマイナス金利とYCCもおっぱじめて3年とか経過(マイナス金利は3年でYCCは2年半)している訳ですし、初めて行う政策ということで(マイナス金利の方が)あれば、アプリオリに効くだの効いただのというのではなくて、効果と問題点についてそろそろ検証をした方が良いのではないでしょうか、とは思うのですが、まあ大人の事情って奴で出来ないんでしょうなあ、というのもまあ分かりますけどさてどうなるやら。


てな訳でちょっと最後脱線しちゃいましたが、まあ金融緩和政策の具体案(つーてこれまでのも具体案という程の出来栄えでもなかったけど)を片岡さんが引っ込める、という辺りに「今の延長線上ではどうにもならんし副作用がそろそろ黒煙を上げてきた感がある」っていう状況への認識が共有(ただしジンバブエ先生を除く)されてきているということが反映されているんでしょうなあ、という雰囲気を感じましたが、この点についてはアタクシがそう思うのですが、解釈の仕方によっては色々な解釈をしようと思えばできそうなところで、この「片岡さん追加緩和の具体案を引っ込める」の解釈をどう取るかのポイントになるのは、が今の政策による副作用の進展をどの程度見積もるか、ではないかと思うのですけれどもどうでしょうかね。



〇SDGsに関する講演を総裁がしていたようだが特に政策インプリケーションはない(ただのオマケ)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190315a.htm/
【挨拶】
包摂的で持続可能な発展を目指して
日本経済団体連合会主催B20東京サミットにおける挨拶の邦訳

日本語の本文はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190315a.pdf

持続不可能な金融政策を実施している人が何を言うのやら、と言いたかっただけです(-_-メ








2019/03/15

お題「決定会合のような気がしますが悠然とFEDネタでウィリアムスの利上げしないもんね講演をば」

何という想定通りのグダグダ展開。
https://jp.reuters.com/article/britain-eu-idJPKCN1QV2XJ
2019年3月15日 / 04:51 /
英下院、EU離脱の延期を可決 賛成多数で

『[ロンドン 14日 ロイター] - 英下院は14日、今月29日に迫っていた欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を延期することを賛成412反対202の賛成多数で可決した。』(上記URL先より)

EUとの案には反対でハードブリクジットはダメで離脱は延期しろとか2週間前にこのゴネっぷりなのだが英国議会の全議員がEU本部で土下座1000回とかのペナルティ課した方がエエンチャウノ・・・・・・・


〇とは言いながらもMPMなので雑感雑談

・会見で追加緩和関連のヘッドラインには要注意でしょうなあ

今回は展望レポートもない会合ですので特に何かやるということも無いでしょうけれども、とりあえず輸出と生産の直近の下振れをどう評価するのかという先般ロイターだかが報道していましたが、その辺を一時的要因でどこまで説明しきれるのかという所ですわな、とは思います。

基本的に追加緩和と言いましても最早やることないですし、まあやるならマイナス深堀というガソリン被って全身火だるまになって敵陣に特攻する手段しか残ってないじゃろ(なおそこには敵陣が無いので単に丸焼け損に終わる)とは思うので軽々に追加緩和という訳にもいかない(物凄い勢いで屁理屈を捏ねてマイナス金利撤回辺りを追加緩和と言い切って実行する位の根性があればそれはそれで絶賛に値しますが)でしょうが、円債の短い所から中期のイールドカーブちゃんもあたかも追加緩和を織り込みに行くような感じですし、メディアの方でも最近は追加緩和論調が盛んという事ですので、記者会見はどこからどう見ても追加緩和を煽るような質問が飛び出して、それに対して黒田さんもどうせ追加緩和を否定するような物言いはしないので、そうなりますとまーた金曜の引け後とかいう微妙な時間帯に追加緩和方向にバイアスの掛かったヘッドラインが出てくるリスクががががが。

などという事はアタクシ如き者が簡単に思いつく位ですので、そらもう皆さん普通にそのリスクを警戒するでしょ、と思いますが、そうなりますと「追加緩和煽りリスクを警戒したポジションメイク」という話になって、それがまた市場の金利水準に反映されると、あたかも市場が追加緩和を織り込むような価格形成をしているかのようになる、というバンドワゴン効果みたいなことになるってのが直近のお姿なのかね(単にGCの関係で手前が浮いているのと現物の需給との関係だけのような気もしますが・・・・・・・)とか何とか。

まあどうせ次回会合もそんな感じで事前に煽られるでしょうし、米国ちゃんが利上げモードというか正常化モードに戻ってくれないとどうにもならんがなとゆー感じで推移するんじゃないでしょうかね、知らんけど。


・消費増税のせいからマイナス金利のせいへのリスク

昨日もちょろっと申し上げましたが、置物理論についてはそもそも理論で示したメカニズムの一丁目一番地が動かなかったので理論崩壊ではあるのですが、そう言ってしまうと面目玉が立たないということで理論崩壊を誤魔化すための切り札が「消費増税がダメにした」という話になっている訳ですが、何せここもとは次の消費増税がまだ先にあるというのにゼロ成長とかになって来だしておりまして、消費増税ガーという言い訳にも無理が出てきたわけですな。

でもってまあ今だと海外ガーという言い方は出来るのですが、それを言い出すと「そもそも元々の景気回復も海外で足元の減速も海外だったら置物リフレ政策とは何だったのか」というツッコミが来るのはマズーという程度には知能があるようなので、すっかり置物一派の皆さん「財政ガー」という話をしておりまして、えーっとすいませんあんたらマンデルフレミングとか言ってませんでしたっけというツッコミはあるものの、まあそうやって財政ガーになっているというのが昨今の情勢。

でもって財政ガーの話をする中で、昨今の減速の言い訳もしないといけないので、そうなってくると急速に置物一派方面から「マイナス金利は副作用がある」という話が出だしているような感じを受ける訳でして(個人の感想です)、それによって「置物政策は正しかったが黒田がマイナス金利とかいう余計なことをしたのがいけない、あのまま量的政策を継続していればよかった」というような方向で黒田さんが盛大に梯子を外されるリスクって徐々に高まるんじゃネーノという風にも思っておりまして、マイナス金利とかいうトンチキ政策はとっとと解除して頂きたいのですが、置物一派がそれに乗って置物理論の正当化に使うとかなると多少どころではなくもにょってしまうので何だかなあ、などということを最近はちと思っております。まあ今日明日の話じゃないけど。


ということで何のオチも考察もないですが、MPMは現状の情勢判断をどこまでクソ粘りするかという話と会見での売り言葉に買い言葉に注意という所でしょうな。



〇ウィリアムス総裁は利上げせんでもよかろうという勢いの説明をしておりますな

えーまあここもとはバランスシート政策をどうするネタと、金融政策の枠組みをこれから考えていきましょうネタがあるので、その2つのネタでFED高官の講演だのが多い(それ以外に最近は「地域経済の振興」というネタの講演も多い)のですが、アタクシの処理能力というのもあるので(能無し)ぼちぼちと成敗して参りたいとは思っているのですが(たぶんこのネタって一巡すると同じ話の循環になってしまうと思うので急にネタ枯渇モードになりそう)、ということで先週の講演で恐縮至極なのですが(と言いつつ後日もっと前の講演ネタとかを成敗しだすと思います)、ウィリアムスが暫く封印していた中立金利ネタを打ち込んできたのでその辺から少々。

https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2019/wil190306
Speech
The Economic Outlook: The ‘New Normal’ Is Now
March 06, 2019
John C. Williams, President and Chief Executive Officer
Remarks at The Economic Club of New York, New York City

「いまこそニューノーマル」とかどこからどう見てもそれは死亡フラグにしか見えませんが、どうも中立金利がニューノーマルというお話のようです。ここしばらくはパウエル議長が「中立金利とか水準がよく分からんもんは知らんがな」みたいな感じで話をしていたと思ったら、最近は正常化停止バイアスがガンガンに掛かっているので「今の金利は中立水準」みたいな話をするようになってきたので、しばらくこのネタを黙っていたウィリアムス総裁もRスターの話をガンガンとするようになりましたな、というのがこちらの講演。


・中立金利の低下は構造要因ですよ、というまあ前からウィリアムスは言ってるけどその確認

最初の小見出しからして『R-star』な訳でしてですな。

『Now that’s out of the way, I want to take you back a long time ago, to a galaxy far, far away. It’s 2001: Destiny’s Child is topping the charts, you were marveling over your Motorola flip phone, and I was a young economist at the Board of Governors in Washington, D.C. At the time, I was burning the midnight oil, along with a fellow economist, Thomas Laubach, trying to understand what the burst of productivity growth generated by the tech boom meant for interest rates, both in the short term and in the long run. This led us to develop a model for measuring r-star.』

2001年頃のITバブルの時に中立金利の計測とかを研究しだしたんですとな。

『I know what’s going through your mind: “What is this r-star that you speak of?” R-star is how economists describe the neutral or natural rate of interest. It’s the rate that we expect to prevail in the long run when interest rates are neither providing a boost to the economy nor trying to cool things down. It’s neither accommodative, nor contractionary. In other words, it’s the “normal” interest rate we expect in “normal” economic times.』

でその後Rスター(中立金利)の説明をしていますな。そしてその次が『G-star』という小見出しでして、

『One of the major factors determining r-star is… you guessed it, g-star!』

中立金利を決める主要な要因はGスターだよ!!だそうで、

『G-star is what economists mean when they describe trend growth, sustainable growth, or potential growth of the economy. The two main drivers of g-star are labor force growth and productivity growth.』

Gスターってのは潜在成長率のことで、潜在成長率の主要な決定要因はレーバーフォースの成長と生産性の成長ですよという話になっていて、このあと潜在成長率に関する考察をああでもないこうでもないと行うのですが、概ねお察しの内容になっていますけど以下引用しますね(引用しないと話が長くないのであっさり味になり過ぎるという要因があるのですが、汗)。

『We started trying to understand where r-star was when productivity growth was very high. During the boom GDP growth averaged over 4 percent per year. Our estimate of r-star for that time was above 3 percent, a full percentage point higher than before the tech boom started.』

ITバブルの時の話からおっぱじめていますが、ITバブル前の潜在成長率が3%以上で、バブル期の潜在成長率は4%以上と推計されるそうですが、アタクシ頭悪いからよくわからんのですがそんなにホイホイと潜在成長率って変わるのかねと思うのですがそれは兎も角として先に進みます。

『Given that this research was originally focused on the reasons r-star had risen, it’s ironic that I and others have ultimately dedicated much more of our careers to understanding why it’s dropped.』

つーことでそれが要因でITバブルの時には中立金利が上がりましたが、最近は皮肉なことに何で中立金利が下がったかという考察ばっかりしております、とかややお笑い仕立て成分入り。

『In recent years, r-star has been averaging well below 1 percent. And it’s actually now lower than at any time before the Great Recession.』

最近の中立金利は平均的に1%を大きく下回って推移していて、金融危機前の水準よりも低くなっていますキタコレ。

『One of the reasons for this dramatic decline in r-star lies in changes to the major factors determining potential growth: labor force growth and productivity growth.』

でその理由は潜在成長率の低下によるものですよと来たもんだ。

『Baby boomers are retiring and fertility rates have come down. Both of these demographic shifts have significantly slowed labor force growth relative to past decades.』

レーバーフォースの面においては人口動態の変化で説明。

『Productivity growth has also fallen considerably from the boom years of the late 1990s and early 2000s. All the rapid changes in technology that we see around us every day may make this seem counterintuitive. But for the moment, being able to order a Nintendo Switch and have it arrive the same day is, shockingly, not increasing productivity in a meaningful way. I could go on for quite some time on this topic, but will leave it to another day!』

まあ今回のはギャグを交えつつということのようですが(よって講演というよりスピーチですな)、生産性の拡大については、ITバブルの時代はITテクノロジーの変化が早くてそれが生産性向上につながっていましたが、最近ではニンテンドースイッチをオーダーするとその日に配送されるような衝撃の変化は起きてるけどそれって特段生産性を向上させないよね、と何でそこでニンテンドースイッチなんだよという気はしますが、まあ要するにIT技術向上が生産性を劇的に上げるようなテクノロジーのブレークスルーが一巡しちゃいましたよねというのを言いたいようで。

『I should note that these demographic and productivity trends are not unique to the United States. In fact, we’ve seen similar slowdowns in growth and sharp declines in r-star in other advanced economies.1』

でもってそれは先進国共通だよと。

『So why did I take you back to simple days of the millennium bug, when you were playing Snake on your phone and ordering takeout from a paper menu?』

2000年近辺の生産性向上は特異だったちゅう認識で、人口動態とIT技術のブレークスルー一巡という説明で潜在成長率の低下を説明しているので、完全に構造要因扱いしていますわな。


・経済の現状評価と見通しはまあ普通の話をしているが「金融環境」を気にしているのはお察しという奴

でもって現世利益コーナーの『The Economic Outlook』という小見出しになる。

『Understanding the fundamentals driving g-star and r-star provides a helpful backdrop for what’s going on in the economy today, and an indication of what we should expect in the future.』

でもって潜在成長率、中立金利の低下が示すものって何ですかという話だそうで。

『What is the current economic outlook?』

ほうほうそれでそれで?

『The potential growth rate, or g-star, currently appears to be about 2 percent.』

潜在成長率は2%近辺だそうな。

『That may sound low to many of you, but remember that labor force and productivity trends have slowed considerably relative to the past, and that’s unlikely to change anytime soon.』

構造要因で説明してるんだからそらそうよ。

『By comparison, actual GDP growth for 2018 came in at just above 3 percent. A number of positive tailwinds gave the economy this extra boost. Strong global growth, fiscal stimulus, and accommodative financial conditions all helped drive strong headline GDP growth and a tight labor market.』

昨年の成長率3%は各種要因による「extra boost」だったと来ました。

『These tailwinds have calmed, and in fact reversed in some cases, and I expect growth to slow considerably relative to last year, to around 2 percent. Three developments contribute to this view: a downturn in global growth, heightened geopolitical uncertainty, and the effects of tighter financial conditions.』

でもってエクストラブーストをささえた各種要因が減衰するので今年は2%程度の成長を見込むんですが、その要因が海外経済の減速、地政学的な不確実性の拡大はいいとして、「effects of tighter financial conditions」とゆうとるのだがファイナンシャルコンディションはまたぞろゴルディロックスヒャッハーで緩和しとらんかとは思うのですがまあいいとしまして次。

『Starting with global growth, the outlook in both Europe and China has become less bright, with the downgrade to the outlook in Europe notable. This means less demand for our exports.』

海外の減速要因は欧州と中国ですよ。

『In addition, there’s geopolitical risk on the horizon that’s creating angst. I know we’re all on tenterhooks waiting to see what will happen at the end of this month to our good friends across the pond. And concerns around trade negotiations continue to loom large. These geopolitical risks leave an imprint on the economy as businesses put off hiring and investment decisions until the air has cleared. 』

地政学リスクは主に貿易戦争のリスク。

『Moving away from the global context, back to the United States, the tightening of financial conditions that occurred late last year will likely restrain consumer and business spending this year.』

でもってここのところはまあそう来るだろうなとは思いますけれども割と露骨な所でして、「the tightening of financial conditions that occurred late last year」ってありていに言ってしまえば昨年12月の株価下落な訳でして、株安に対するこのビビりっぷりをウィリアムスも示しているという事を見ますと、そらパウエルプットだゴルディロックスだと株式市場がヒャッハーするのも当然ではあります。

『In fact, we have already seen a sustained slowing in housing construction, in part reflecting less favorable financing costs.』

ただ株価を見て云々と言われるのがシャクだから住宅建設が借入コスト上昇の影響も一部受けて既にここもと継続的に減速していますとかとってつけているのが微笑ましい。

『Now, I know this talk of slowing growth is causing uncertainty, some hand-wringing, and even fear of recession. But slower growth shouldn’t necessarily come as a surprise. For quite some time, the economic fundamentals have pointed to GDP growth much lower than what we saw in the 1990s, for example.』

ここらあたりは先般のドラギ会見にも共通していますが、経済減速の話やリスクの話を強調することによって正常化停止バイアスを思いっきり掛けるものの、その一方でリセッション懸念はないというのを強調して、マッチポンプ説明をするのがチャーミング。


・実質中立金利が0.5%で物価が2%だから今の金利はノーマルと利上げしない発言を思いっきりしているのだが

でもってその続き。

『In fact, my 2 percent growth forecast is right in line with g-star. That means slower growth isn’t necessarily cause for alarm. Instead, it’s the “new normal” we should expect. And, it’s important to remember that this is happening at a time when the labor market is very strong.』

2%成長が「ニューノーマル」だそうです。

『From the perspective of monetary policy, the overall picture of the economy is about as good as it gets: very low unemployment, sustainable growth, and inflation just about at our 2 percent goal.』

でもって現状は失業率も低くて経済の状況も良くて、持続的な成長をしていて、物価も2%近くにあるので・・・・・・

『Given this favorable situation, when you look at monetary policy, things are looking pretty normal as well. My current estimate for r-star is 0.5 percent, so when you adjust for inflation that’s near 2 percent, the current federal funds rate of 2.4 percent puts us right at neutral.』

ということで、中立金利水準が0.5%で物価が2%なので今の2.25-2.50(実効FF金利はIOERの2.4%近辺)というのは「puts us right at neutral」なんだそうな。何じゃその推計はという感じがするのだがまあそういう説明になって今の政策金利水準が適正って言ってるんだから、これは利上げしませんと言ってるようなもんなんですがそれで良いのか?????という気はだいぶするけどまあウィリアムスはこれだと正常化はこれでおしまい利上げしませんよと言ってるに等しいわな。


・正常化をこれ以上やる気がないという気概が伝わります

『What Does the Future Hold?』という小見出しになる。

『So what does the future hold?』

『With a strong labor market, moderate growth, and no sign of any significant inflationary pressures, the baseline outlook is quite favorable, as I’ve said.』

まあ「no sign of any significant inflationary pressures」なんですがさて今後どうなるのやらお手並み拝見。

『Of course, there are a number of different scenarios that could play out over the year ahead. Geopolitical uncertainty and other factors holding back growth may recede, and the U.S. economy could resume the robust trajectory of last year. Or GDP growth could continue closer to trend, which is my own forecast. Finally, there’s always a chance that downside risks could knock GDP growth off course.』

先行きの経済には色々な可能性がありますな、といいつつ・・・・・・

『What will the response of the Fed be? My short answer: It depends!』

そらそうなのだがつまりは何もなければ利上げしないちゅうことやな。

『I promised talk of interest rates, and here it is. I’ve said it before, and no doubt, I’ll say it as long as I work for a central bank. But in the current conditions the phrase takes on even more importance. Our response will always be “data dependent.”』

株式市場ディペンデントじゃねえのという悪態はさておき、このデータディペンデントってのも言い方としてどうなのと思う所はあって、金融政策ってのは波及のタイムラグがあるんだからプリエンティブに対応ってのが原則な訳で、データは過去のものであって、バックミラーに依存して政策をするのは常に政策がビハインドして、経済の振幅を高めてしまうという事になりますがな、と思ってしまう訳ですな、いやまあデータディペンデントってのは「データを見ながらプリエンティブに対応」という事だって言ってるのは分かるんだけど、結果的には今だと完全に株式市場の後追いになってるじゃろと思う訳で。

『When growth is well above trend, raising interest rates to keep the economy on a sustainable path is the right decision. Equally, when faced with a crisis like the Great Recession, it’s incumbent upon policy makers to use every tool at their disposal to get the economy back on course.』

この辺は一般論。

『The base case outlook is looking good, but various uncertainties continue to loom large. Therefore, we can afford to be flexible and wait for the data to guide our approach.』

今は経済の状態がいいけれども先行きに不透明なものが多いから「be flexible and wait for the data」だというのはまあ執行部もそういう言い方なので今のFEDの仕様ですな。

『In that context, the FOMC decided to keep interest rates where they were at the most recent meeting, and noted the importance of patience in determining future policy actions.』

だから政策金利変えてないよ。

『To use a nautical metaphor, guiding the U.S. economy is like steering a large ship. Monetary policy decisions can leave a wake several miles long, with implications that reach far into the future. We’ll consider the full range of data, the headline statistics, the market indicators, and we’ll listen to our business contacts on the ground, as we aim to keep the economy on its current course of a strong labor market, sustainable growth, and 2 percent inflation.』

要するに動かんと言ってるわけですねわかります。最後のまとめの部分は繰り返しになるので割愛します。





2019/03/14

お題「市場世間話メモ/ドラギ会見より(その3)」

屁蔵さんがそのように仰せですかそうですか。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-12/PO8K546S972801
日銀異次元緩和の副作用は明白、政府は成長戦略に本腰を−竹中平蔵氏
占部絵美、日高正裕
2019年3月13日 5:00 JST

→消費増税は延期すべきだ、景気後退局面に向かう可能性高まる
→金融政策で景気を刺激するのは難しい、打ち出の小づちはない

だそうですが、とりあえず麿に土下座するか丸坊主になって懺悔してから言えとしか申し上げようがないし、成長戦略ってこの人が言う場合は(以下の部分は内務省検閲によって削除されました)。

まあしかしこうやって次々置物リフレ理論に乗ってた筈の方々が何の反省の弁もなくしらっと前の話をなかったことにするとか人情紙風船にも程があるわというところではございますし、それよりも問題なのはこの調子だとうっかりしたら「リフレ理論は正しかったがマイナス金利は間違い」とかいう話になって黒田さんが間違えたとかいう方向になるんじゃネーノという懸念があるんですけれども大丈夫ですかいな日銀ちゃん。


〇市場雑談メモ

・GCは元に戻ったようで(ただのメモ)

昨日の東京レポレートT/Nレートちゃんは、

2019/3/11 -0.017
2019/3/12 -0.047
2019/3/13 -0.070

ということで概ね普通のレートですな、というか今年の頭の時期ってTKRRのT/Nが延々と▲10bpよりも低い水準で推移していて、それはそれで需給だから仕方ないけどちょっと唸る水準だったりするので、まあ要するに需給ですよ需給という全く解説になっていない後講釈になるのでしたが、今日は3Mの入札(明日がMPMの2日目なので変則で今日入札)がありますけれども、GC下がったからと言って売買参考統計値ちゃんの方は動かざること山の如しで先週の新発819が▲0.135%(平均値単利)になっておりますので、まーここから期末に向けて(20日の償還もあるし)需給は確りしてくるでしょうしGC下がったからファンディングコストでギャーというのも軽減されたし、まあ穏当な結果になるんじゃないですかねえ、と何の根拠もない個人の印象なので変なフラグにならないようにしたいと思います(^^)。


・輪番減額したけど結局は10年▲5bpだしフラットニングとな

ロイターさん。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2101FY
2019年3月13日 / 15:08
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続伸で引け、長期金利は-0.045%に低下

『 <15:03> 国債先物が続伸で引け、長期金利は-0.045%に低下

国債先物中心限月6月限は前日比11銭高の152円85銭と続伸で引けた。前日の米債高に加えて、日経平均株価が値下がりしたことから、短期筋の買いが先行。昼休みに発表された長期・超長期を対象にした日銀買い入れ結果が好需給を反映した内容となったことから、午後の取引開始直後に一時152円88銭まで上げ幅を広げた。一方で、高値警戒感が意識される中、あすの流動性供給入札(対象:残存5年超15.5年以下)を前に買い進む動きは見られず、引けにかけては高値圏でもみあいとなった。』(上記URL先より、以下同様)

ということで限月交代をしたのも忘れるこの先物の数値というところですが、超長期は40割れだし引け後に10年▲5bpとかいうのが見えた気がするんですがもうねという所でして、まあ日銀の理屈だと買入拡大ペースを落としても金利コントロールが出来ているのは既存買入のストック効果です(キリッ)という話になるんでしょうが、単に海外の金利動向というか、米国様の利上げ云々によってこうなっているだけじゃろという気はだいぶしますな(個人の感想です^^)。

『現物市場はしっかり。長期・超長期ゾーンを中心に利回りが低下した。前月後半から上昇していた中短期ゾーンに買い戻しの動きが出たことで買い安心感が出た。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1bp低いマイナス0.045%と2月22日以来の水準に低下した。短期金融市場で無担保コール翌日物の加重平均レートはマイナス0.02%台前半と前日(マイナス0.022%)並みになる見通し。積み期終盤で地銀の資金調達意欲がしっかり。ただ、レポGCレートに落ち着きがみられているため、大手行の調達需要は前日に比べてやや後退している。ユーロ円3カ月金利先物は小動き。』

中短期は5年入札通過&GCが復活したので戻ったという感じなのでしょうが、超長期が期末帳尻狙いなのか期末帳尻なのか存じませんがまあ強いので、これで短いところが確りしてくるとさてどうなるやらとかあんまり考えたくないですが、明日のMPMで景気の判断についてどの程度の認識が示され、会見で黒田さんどういう説明するのかというのは、まあそんなに波乱がない(輸出と生産は足元弱まっているがこれは海外要因とは言え一時的な面も多いのでここから一方的に悪化するとは思っていない、ってな感じでしょ)とは思うのですがどうなるでしょうかね。

#ただの雑談メモでした


〇ドラギ先生の落語を更に拝見:とりあえず意味のある話をして煙に巻くのである意味俊ちゃん以上なドラギ先生

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190307~de1fdbd0b0.en.html
PRESS CONFERENCE
Mario Draghi, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 7 March 2019


・フォワードガイダンスが何で二本立てなのという質疑

昨日の続きから参ります。というかこれは昨日ネタにした最後の奴の質問の後半部分になるんですけど。

『(前半割愛)My second question is: On your forward guidance you kept the state-contingent part and the time-contingent part. Why have you kept the time-contingent part, because you also said it could be pushed further ahead and would it not give you more flexibility to just have the state-contingent part?』

『Draghi:(前半割愛)The second question, our forward guidance has been designed with two legs; the state and the time. Both of them reinforce each other and both of them give credibility to each other. To have a state only is kind of, as you said, perhaps gives more flexibility but at the same time, being vaguer is less effective.』

両方が相互に効果を発揮している、ということなのですが、そもそも論からして正常化利上げ開始したら金利がメインツールになるので、その時にこのバランスシートの意味って何?って話になりますし、確かに「長期国債を短期国債(中銀当座預金)」にコンバージョンするので緩和と言う理屈になってはいるものの、それだったら政府債務のデュレーションが変わると金融引き締めや緩和になるのかというお話に繋がって来る(民間債務とか株式とかケチャップとかを買うなら話は別だが)と思うので、何ちゅうかまあそれってインチキっぽいよね、という所ではあります。単に正常化の手順を示しただけのものじゃろと思うんですけどね。


・何でTLTROなの?とか味わいのある質疑(とオマケつき)

その次の質疑ですけど。

『Could you elaborate a bit more on the choice of the TLTRO with T instead of an LTRO; what have been the reasons for this?』

これは味わいがある。

『Just one question more: do you want to make any comment on the statement of the ECB that has confirmed that you are going to end your mandate without hiking the interest rates?』

これは嫌がらせ質問ですな。よってそっちに先に回答。

『Draghi: I make no comments. First of all, it's not me, it's the Governing Council, but I have no comments to make.』

ワロタ。

『Now, the other point actually has been discussed. The first LTROs were quite effective for the time when they had been designed. But they were used - not 100% of course - but they were used also to kind of buy sovereign bonds.』

最初のLTROはその全てが、という訳ではないが国債を買うのに使われましたとな。

『At that time, the yields on bonds were high and banks especially in parts of the eurozone, where to lend to the economy was very risky because these parts were in huge recession, they bought sovereign bonds.』

その時分は金利水準が高かったし、大きなリセッションの中だったから貸出もリスキーだったのでソブリンに投資資金が向かいましたよと。

『What then we wanted to achieve with the “T” was to make sure to minimise this possibility to make sure the banks borrow at a very good rate, but in order to lend to the economy and to firms and households in the private sector, not to buy sovereign bonds.』

でもってT(ターゲット、ですな)というのを入れるようになったのは銀行貸出ルートへの資金供給、というのになるようにしたかったからです、つー話をしておりまして、これでソブリンを買ってもらうもんじゃないですよ、というお話なのですな。

まあ何ですな、間接金融主体という事なのでこういう話ってのもありますけど、銀行貸出ルートでの刺激が効くっていう状態なのかねとかいう話もこのオペがワークするのかという面に大きい訳で、どこぞのジャパンのように、そもそも論として企業の投資ニーズが中々出てこなくてお金余ってますがな状態になってしまうとこのルートそのものが効きにくくなってくるわけですが、欧州の場合は(アタクシも素人なのでよーわからんで適当にイメージで言ってますが)南北格差があって、資金需要があるような所もあればそうじゃないところもあるとか、そんな感じで一様じゃない、というのが銀行貸出ルートが効く(本当に効いているのかどうか知らんが)という話の背景にあるんでしょうなあ、と何となく思うのでした(的外してたらすいませんので教えてジェネラル)。


・これは記者の質問がおもろかったので

昨日はサプライズ云々というので二つネタにしましたが実はもう一つあって(うっかり飛ばしてしまった)こんな質問があったんですけどね。

『I have two questions. One is on markets that have been surprised and actually we, I think, have also been surprised by these moves for - bold moves in accommodation that was already very ample. Is your message not only to the markets but also to European governments? Is Europe, to your view, reacting as you are reacting - in a bold manner to the deterioration of the economy?(後半割愛)』

surprisedなのはいいとして「bold moves in accommodation」って冷静に考えるとそこまで派手な追加緩和をしたわけでもない(そもそも実弾は打っていない)のですが、記者3名からこういう言われ方をするというのがなんかドラギ劇場最後の渾身のドラギマジックでしたなという風情ではあるんですけど。だから昨日も申し上げましたが緩和方向を前打ちするパウエルはダメだこりゃではあるんですけどね。

『Draghi: Let me first respond to the first part. It's easy for us to plead for more action at European level in all directions; institutional, policies and so on. I think we should do it, but we should be aware that these are political decisions that governments can take or have to take, but they have to explain to their citizens. It's relatively easy to advise about the right policy, much more difficult is to implement it in a democratic society, of course. I think certainly, I've said many times, the European construction is still fragile. The completion of the Monetary Union is essential. The completion of the banking union is essential, capital markets union are all essential things. By the way, some of these things are very, very close to being implemented because much of this has been agreed. The remaining differences don't seem to be of an order of magnitude that could stop the whole process. I would say when the political contingencies, when the political stars will align, I am absolutely confident we'll see fast progress on all these fronts.(後半割愛)』

なんか思いっきり質問の筋を外して答えていて、質問は「これだけのサプライズ大胆緩和をするということは欧州経済に危機が迫っているというEU委員会に向けた警告ですか」という話なのに、ドラギ先生のこの説明の趣旨って「必要な政策は行われなければいけないが政治的イッシューは簡単には実施できない、でも構造改革や金融同盟、銀行同盟とか大事ですよね」とか思いっきり明後日の方向での回答をしておりまして、つまりは「緩和しました」というポーズは思いっきり見せる一方で、「欧州経済がやばいよ」というメッセージに繋がるような言い方はしたくない(一昨日ネタにした最初の大演説がまさにそれ)というこのヤヤコシヤな説明ですが、こうやって煙に巻きながら「欧州経済ヤバイよ話は避ける」というのはさすがのドラギクオリティ。


・ユーロボンド構想に関して

同じ質問の後半は別の話でして、

『(前半割愛)I know there is a lot on the plate so I don't want to go too far on the toolbox of others, but I've seen that Philip Lane now is confirmed as new Executive Board member. He's also linked to a project of safe assets. Do you feel that the ECB has enough in its toolbox? Do you feel that Europe has enough in its toolbox as well?』

『Draghi:(前半割愛)Now, Philip Lane is an excellent acquisition for the ECB but we are not going to ask him about this Eurobond thing. The Eurobond is again not something that the ECB can force or just decide about; again it's an inherently political decision. And of course this doesn't detract at all from the argument that it's absolutely rational to have a safe asset at European level. It's fundamental, but one thing is to say it's fundamental, another thing is to decide and defend this decision in front of your citizens, which may have different views about that from the ECB.』

ユーロボンド構想に関してはECB政策とは直接関係ないですが、まあそれ自体は推進されるべき話ですなという感じのようで。


・預金ファシリティ金利引き上げに関して

こんな質疑がありました。

『My first question is also on the deposit facility rate: you mentioned that there was a discussion about the potential risks to banks following this low for longer interest rate policy. I'm not sure; have you also discussed ways to mitigate the adverse effects or discussed when there might be a point in time when you have to decide on such things?』

(昨日引用したところで)議論があったという事ですがマイナス金利の弊害除去とか弊害の分析とかしてるの?

『The second question, you mentioned several times optionality is everywhere and that the toolbox is rich. Is also helicopter money part of the toolbox, especially given the fact that you've called it once an interesting concept?』

ヘリマネってツールボックスの中に入ってるの?という質問が後半なのですがドラギさんまとめて答えているので引用しておきます。でもって答え。

『Draghi: Yes, well, there was a concession to my past academic experience, but no. The answer is no to both questions and the effect that negative rates might have on banks' balance sheets is complex and was not… The specific mitigating measures were not discussed.』

ヘリマネはノー回答で、マイナス金利の弊害軽減策に関しては最初にノーといったものの、ノーなのは「具体的に何かするかというような手段が議論されていない」という風に説明しなおしてますな。

『There was a discussion about the need to examine this issue in depth because negative rates have been quite successful in our monetary policy. They were a powerful instrument in enhancing, fostering the recovery and converging to price stability and achieving our objective.』

マイナス金利は極めてパワフルな効果があったという事になっています。

『There are several analyses trying to assess what's the effect of negative rates for some time on banks' profitability but they're very, very complicated.』

金融機関の収益に影響がある件についてはいくつかの分析があるがとーーーーっても複雑であるとな。

『First of all, we're talking about aggregates. Now, the way in which a negative rate affects the banks' profitability depends very much on what business model the bank has. You have situations where this influence is very, very important - it's significant - and situations where it's not. If you combine in the aggregate you don't see much in spite of the many years that have passed by. So, it's been successful.』

出たな全体で判断理論。

『Second point, one may argue that certainly at the beginning combined with QE, there were benefits coming from the recovery, coming from the selling of the bonds with QE and there were costs coming from the negative rates. Now, how all this has evolved through time is quite complicated.』

全体の効果としての評価、という話で押し通しますな。

『Also again talking about the aggregates, but that's why I'm not satisfied with looking at aggregates so much, but that's what we have to do. You see that when you talk about profitability of European banks, well, it's certainly lower than profitability of American banks, but not much lower than UK or Japan, whether they have mitigating measures or not.』

副作用軽減策がある無しに関係なく欧州金融機関の収益性は米国よりは明確に悪いが英国や日本の金融期間ほどではないって説明してるんだがその中でマイナス金利ぶっこんでるの日本だけなんですけど・・・・・・・・・

『There are many elements that affect the profitability, so we have to look at this issue in somewhat greater detail. Not necessarily related to the negative rates but more generally, what are the components of banks' profitability that are being affected by our monetary policy and one of which is the negative rate.』

マイナス金利の影響だけではないじゃろ、という説明をしていまして、そらまあマイナス金利をまだ継続するってガイダンス出しているからこういう話にならざるを得ないんでしょうし、欧州金融機関は預貸スプレッドが元々あったというベースがありますけれども、今後徐々に悪影響効いてくるわけでさてどうなるやらという感じ
ではありますな。

#とまあそんなところで





2019/03/13

お題「GC上昇とな(市場メモ)/ドラギ総裁会見より:見せ方がとにかくもうハッタリ満載でドラギ節ですな」

まあそうだわな。
https://jp.reuters.com/article/britain-eu-idJPKBN1QT2TL
2019年3月13日 / 05:08 /
英下院、EU離脱合意案を再度否決 あす合意なき離脱案採決へ

『[ロンドン 12日 ロイター] - 英下院は12日、メイ首相と欧州連合(EU)がまとめた離脱修正案を賛成242票、反対391票で否決した。合意案の否決は1月に続き2回目。ただ否決差は前回の230票ほど広がらなかった。』(上記URL先より)

これだけ散々やっていると実際にハードブリクジットになったとして英国はまあ大変(というか面倒)でしょうけれども直接関係しない他の市場ってそこまで動くのかいなと思ってしまうんですが(個人の感想です)。中期的に「おおこんな影響があるのか」みたいなのはあるでしょうけれども・・・・・・・・・・

〇短国買入はダイヤどおりに5000億円とな

昨日の短国買入オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190312.htm
国庫短期証券買入 5,000 2019年3月13日

とまあそういう事で短国ちゃんはパターンダイヤ(?)通りの5000億円のオファーになりまして結果は、

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba190312.htm
国庫短期証券買入 17,732 5,001 0.012 0.016 13.5

平均1毛6糸甘で足切りが1毛2糸甘ですが、12日付(11日引けベース)の売買参考統計値だと先般の3Mカレント819回の引けが▲0.135%で、落札時利回りが▲0.1291%/▲0.1210%となっていましたので、平均レベルの玉だと投げになってしまいますが、足切り近辺で入っていて輪番の方も平均じゃなくて足切り近辺で入っていれば何とかという水準なので若干弱いということになりますかいな。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N20Z0M3
2019年3月12日 / 11:40
〔マーケットアイ〕金利:短国買い入れ結果は弱め、業者在庫が重い状況続く

『 <11:37> 短国買い入れ結果は弱め、業者在庫が重い状況続く

日銀が発表した国庫短期証券(TB)の買い入れ結果は、案分利回り格差がプラス0.012%。平均落札利回り格差がプラス0.016%となった。前回の2500億円から5000億円に増額された今回の買入予定額に対し、応札額は1兆7732億円、落札額は5001億円。応札倍率は3.55倍と前回(5.19倍)から低下した。市場では「オファー額5000億円は想定通りだった。引き続き業者の在庫が重い状況には変わりないが、わずかに改善の兆しも出て来た」(国内金融機関)との声が聞かれた。』(上記URL先より)


ただまあ東京レポレートちゃんの方は低下しまして、昨日の東京レポレートのT/Nの水準は▲0.047%の水準になっていまして、積み最終要因なのか在庫が軽くなっているのかはよー知らんですけれども、そっちの金利が下がってますんで昨日の売買参考統計値も特に変わらずだったですし、2年とか場中5糸強なんぞになっていまして、短いところの需給がややマシになった感じですので、まあ牽制の共通担保(ただし空砲)を入れただけで済んでいるという風情になっておりましてこれは良い調節という感じですな。バタバタ動いて介入すると当然ながらさっさと止まるんでしょうが、そこは0%の共通担保のシーリングだけバシッと示しておいて、そこから逸脱しないようにしつつ、市場の調整に任せて戻って来る、という方が良いに決まっておりますので(というのは思いっきり個人の感想です)。

というただの備忘メモでした。


〇引き続きECBドラギ会見の続きの巻

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190307~de1fdbd0b0.en.html
PRESS CONFERENCE
Mario Draghi, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 7 March 2019

昨日はクソ長い1発目の質疑応答だけで終わってしまう(IE系のブラウザーから何の工夫もしないでA4に印刷するとこの会見8枚組になるんですが、ここの質疑だけで1枚と3分の1位使うという応答でして、ちなみに2枚分がINTRODUCTORY STATEMENTなので5枚中1枚と3分の1がこの質疑という超大演説モードだったのですよ)というアチャーなことになってしまいましたがその続きをば。

・やたら緩和モードを強調するというかアピールするというかなドラギ俊彦ちゃん

資産買入プログラムを復活させる予定はありまっか、とかそんな質問が飛んで来ましてですな。

『Can I ask you about what you said a little bit earlier, that you are standing ready to adjust all of your instruments available? Does that also include the net asset purchase programme? Could you revive it in case the economy is not going any way better, the inflation outlook is going to worsen?』

でもってその見通しが悪化したら買入プログラム復活するんかいなという質問に関連して米中貿易交渉はどの程度見通しに織り込んでいるのか、という質問をしていまして、もうこれは「米中貿易交渉が不調だと資産買入復活待ったなし」という話を誘導したい気満々という質問になっておりまして・・・・・・・・

『Then I have a question on the underlying assumption of your growth and inflation estimates. Is the underlying assumption that the US and China will come to an agreement on trade or not?』

これに対する俊ちゃんもといドラギさんのお答え。

『Draghi: The answer to the second question is that our projections take into account the protectionist measures that have already been implemented, but they don't project an assessment of future measures or of how the current negotiation will actually end.』

そらそうよという答えで、先行きの交渉について見通しには含めていない(けれどもリスク認識として認識している)という話になるわな。でもって前半の質問に対してだが微妙に説明が長い。

『On your first question, well, you see optionality is everywhere.』

何でもできます、というのは八方塞がりの黒田総裁だって言うのだからまあこれは普通として、

『Now, the issue is whether we see contingencies that would justify the use of certain instruments instead of others. I don't want to speculate at this point in time. At this point in time, we've just taken all these decisions and we think they are the right decisions and the adequate decisions to be taken at this point in time.』

現在必要なものはぶっこんでいるよと。

『Let me add one thing: we didn't tighten when we stopped the net asset purchase programme. We didn't tighten monetary policy contrary to what some of you say. I'm not even sure it's one of you, but just it's been said. We didn't tighten at all.』

資産買入プログラムは止めたが金融を引き締めている訳ではないとな。

『Just to give you an idea, the balance sheet of the ECB is about 42 - 43% of the eurozone GDP. The Fed is about half of it now. In order to keep this stock unchanged, we continue purchasing something in the order of ユーロ20 billion a month of bonds.[1]』

バランスシートの対GDP比較で来たかという感じですが、それを言い出すとジャパンのハイパー緩和は何なんでしょという話になりますが、バランスシートが対GDPで大きいとかいうのって単純にその額だけで比較するのはミスリード(IOERで不胎化しているのかとか、そもそも制度上所要準備が大きいとか(EUは確か所要準備が大きめという理解をしていたのだが咄嗟にリファレンスを出せないのでそのうち調べておきます)、いろいろな要因も考えないと乱暴な議論になってしまうと思う)気味な面はあるのだが、まあとにかく昨日引用した最初の質疑応答と同様に緩和っぽい話を強調するのでした。

『This happens in a context where the debt to GDP ratio in the eurozone is actually falling. The simple action of maintaining the stock unchanged in this context actually is a continuous easing because interest rates are pushed downward by this action.』

もはや質問の趣旨と全然違う演説になっているように思われますが(^^)、ユーロ圏の対GDPでの負債が減っている中でECBがバランスシートを維持することによってそれは継続的な金融緩和を維持する、とかホンマカイナという理屈を繰り出してきてますが、理由はこれによって金利に低下圧力が掛かるからってうーんこの何というかという感じですが、まあとにかく「緩和と見せるときのハッタリパワー」はドラギ俊彦としか申し上げようがない。

『You can see this because since we decided in June last year, interest rates have gone down, they keep on going down, the term premium is negative, so conditions are very, very accommodative.』

昨年6月からのその金利低下は金融緩和効果ではなくて米国の利上げ停止観測とかグローバルな株価の調整に
よるものではないかと小一時間問い詰めたい。

『If you add to this what I've just said, it's the chained element of this, of the horizon over which we'll carry out purchases to keep the stock unchanged moves together with the forward guidance. 』

でもって資産買入のフォワードガイダンスもあるから更に緩和効果が、という話なんですが(しばらく前にネタにしたセントルイス連銀ブラード総裁の話にもつながるんですが)利上げするようなことになって(ECBは中々きつそうですが)IOERだの追加手段だので超過準備を不胎化した後のバランスシート上の資産って、どのような効果があるのかというのって実際問題としたらちょっと????な所があると思いますし、そうなるとフォワードガイダンスでバランスシートが云々と言いましても、金利引き上げてしまえばその資産買入規模がシグナリング効果を出す(というブラードの説)というのもホンマカイナ(1回目はシグナリング効果が出ても2回目は出ないし、ECB方式の場合は実際に効いてるのは金利のガイダンス文言だけで資産買入のガイダンス文言って本当に効くのかという話っす)と思うのですがどうなんでしょうかねえ。

『To finish the answer,』

やっと最後に来ましたが(^^)、

『what today's decisions also say is that we've changed the calendar-based part of our forward guidance based on the information we have today and it's data driven. In this sense we are very open to act and determined to act when it's needed.』

ということで、今回の変更はカレンダーベースのガイダンスを変えましたとな。


・マイナス金利に関して&何で年末までの延長なのという話

でもって次の質問である。

『Ahead of the meeting there was some talk from some of the members of the Governing Council about whether or not to introduce a tiered system, whether to start by raising the deposit rate. I'm just wondering, was there any trade-off in terms of extending the guidance to the end of this year rather than, say, further into 2020 in order to not have to make any commitment to move to some sort of tiered system and in order to have the unanimity behind the decisions that you've had today?(後半割愛というか後程)』

『Draghi: Several members of the Governing Council presented the option of changing the calendar date of the forward guidance to March next year. In a way, that was an option.』

でまあ確かこの「数名のメンバーはフォワードガイダンスの文言を2020年3月までにすべきとの意見があった」というので更に緩和ヒャッハーみたいな感じになっていたような気がせんでもないのですが、(昨日引用したところにあったように)3か月ガイダンス期間延長しただけなのですがこういうのを入れこんできて更に緩和チックな見せ方になるとかドラギ先生流石です。

『And other members discussed what the consequence of a protracted period of time with negative rates, so lower or low for longer, could imply for banks. But there was no trade-off between the two, there was no trade-off and in the end we converged on a package that basically reflected the views of all the members of the Governing Council.(後半割愛というか次に)』

そらまあマイナス金利撤回しない以上こういう答えになるのでしょうが、とは言いましてもメンバーの中でマイナス金利の長期化が金融機関への影響があるという議論をしています、というのを示しているというのはほほうという感じですな。


・サプライズ政策来ましたね、という質問に対して

今引用した質疑の後半部分から。

『(前半割愛というか先ほど引用済み)Having said that, even though the guidance on rates isn't extended as far as markets are now foreseeing for the first rate rise, there is a broad sense in which you've got ahead of the curve today and that you have really surprised people by not only announcing something on TLTROs but also announcing that you've shifted your message on forward guidance. Can you maybe explain a little bit about the reaction function here, why you've decided to deploy these ‘shock and awe’ tactics? Was there something in particular that has scared you that you've seen in the recent data?』

ということで、この質問でほほーと思いましたが、市場の方ではTLTROをぶっこんで来るのは織り込みがあったものの、ここでフォワードガイダンスの期間延長は織り込んでいなかった(よくよく考えたらたった3か月なのですがそれは兎も角)ということで、今回はサプライズ戦略(質問の方は‘shock and awe’ tacticsなので衝撃と畏怖って奴なのでもっとニュアンス強いですが)を何でぶっこんできたんですかあ政策反応関数なんか変わりましたかというのがありましてですな、

『Draghi:(前半割愛というか先ほど引用済み)Now, the second part of your question is whether… Well, markets have pretty well understood our reaction function. So in placing the expected date of the lift, [of] the DFR, some time in 2019 - before it was later, now it's moved back - and so the changing calendar in the calendar part in the date of our forward guidance becomes necessary when you kind of want to give credibility.』

『Because clearly, if you have market expectations which are far away from the foreseen date of the guidance, then of course credibility becomes an issue. In this sense, I think we've if anything enhanced the credibility of the forward guidance with today's decision.』

なんかやたらとcredibilityを連発しているのと、DFRなので金融機関の資金調達に関する新たな規制だかガイドラインだかの今後の導入があって、という話をしている以外は、これ正直何を言ってるのかよく分からんのですが、とにかく我々のcredibilityを示すためにガイダンスを延長しましたみたいな話になっていて、とりあえず勢いで説明している観isある。

同じくサプライズ来ましたね質問がちょっと先にありまして、

『I have one question on the timing. Markets were quite surprised about your decisions today. Why did you decide to act now, because many people have argued before the meeting that there is such a high uncertainty and that it would be maybe better to wait to see if these uncertainties materialise or not.(後半割愛)』

「Markets were quite surprised about your decisions today」なんですね。でもってお答え。

『Draghi: Well, two things were present; pervasive uncertainty but also a definite worsening in the projections. The fact that the climate has become more uncertain doesn't mean that one has to stay put. You just do what you think is right and you temper, however, what you are doing with a consideration there is uncertainty.』

不確実性が高まったからというだけはなく、見通しが明確に下がった(definite worsening)ので今回の措置を行ったとな。

『In other words, in a dark room you move with tiny steps. You don't run, but you do move.』

何じゃそのたとえは。

『Or in other words, you try to be proactive rather than reactive to contingencies because, for a variety of reasons, the situation can then unfold in an unforeseen and unwanted way. That's the answer to the first question.(後半割愛)』

まあ要するに今回は見通しが悪化したからプロアクティブに対応した、という話なんですが、確かにこれ3か月のガイダンス延長でここまで見せるってのはスゲーというか、引き締め方向なら仕方ないけど反対側の時に一々前打ちしてしまって市場のクレクレを促進することになりそうなパウエルおじちゃんはドラギ俊彦の爪の垢でも煎じて飲むべきだと思いましたです、はい。

という所で時間が無くなりましたが、まあ他に見るべきものがありましたら明日にでも続きをば。








2019/03/12

お題「市場雑談メモ/輸出と生産下方修正ねえ・・・・/米国クレジット市場のペーパー/ドラギ会見より(その1)」

中国に続いてですか。1回目はこちらの国のでしたからねえ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42325060R10C19A3910M00/
インドネシアでもボーイング新型機の運航停止
東南アジア アジアBiz 2019/3/11 21:26

〇マクロ加算掛け目とかGCとかのメモ

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190311a.pdf
日本銀行当座預金のマクロ加算残高にかかる基準比率の見直しについて

『日本銀行は、日本銀行当座預金のうち、ゼロ金利が適用されるマクロ加算残高の算出に用いる基準比率(「補完当座預金制度基本要領」4.(3)イ.に定 める基準比率)について、次のとおり定めることとしました。

2019 年 3 月積み期間:32.5%(注)
2019 年 4 月〜5 月積み期間:35.5%(注)

これにより、日本銀行当座預金のうち、マイナス金利が適用される政策金利残高(金融機関間で裁定取引が行われたと仮定した金額)は、上記3積み期間において、平均して 5 兆円程度となる見込みです。次回は、2019 年 6 月〜8 月積み期間に適用する基準比率を 2019 年 6 月 10 日 17 時に公表する予定です。』

ということで今回は3か月分のマクロ加算掛け目を3月積み期間とそれ以外で分けて来ましたけれども、別にまあ政策的な何かがある訳ではなくて、この時期は財政要因でのぶれが大きいから、ということだと理解していますので特にだから何なのという訳ではないのでしょうが、今回の積み期間でのマイナス金利適用残高(裁定後じゃなくて実際問題の額)がどの位になっているのかねというのは拝読しておきたいかなと何となく思ってますけれども。


http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

こちらのGCちゃんですが、昨日はさすがに金利上昇しましたけど、

2019/3/1 -0.029
2019/3/4 -0.030
2019/3/5 -0.035
2019/3/6 -0.035
2019/3/7 -0.033
2019/3/8 -0.006
2019/3/11 -0.017

てなもんで相変わらず▲1.7bpとか割と素敵な水準になっておりまして、今日は多分短国買入がある筈なのですけれども、パターンダイヤだと5000億円でして、パターンダイヤ通りになるのかというのは短国の需給の状況と今後の見通し次第なところがあるので詳しい人に聞いて下さいという所ですな。

でまあGCに関してはマイナス金利適用残高がどうのこうのというよりは単純に短国の需給の方が効くのと、後は期末だの四半期末だので資金の出し手が出さなくなるとか、その辺で決まっているようには思えます(個人の感想です)し、完全裁定後じゃない実際のマイナス金利適用残高に関しても実は昨年11月積み期間は直近の中では割と低水準(16兆9,376億円)だし、1月積み期間もそんなに多くなかった(18兆7,230億円)ですが短国の金利は低かったりしたので、マイナス金利適用残高が今程度の水準にいるうちはそれが直接的にコールやGCに響いてくるような水準ではないっつーことになるんでしょうかね、よー知らんけど。


〇決定政策プレビュー雑談という程でもないがメモ

ほうほう。

https://jp.reuters.com/article/boj-export-product-idJPKBN1QS03V
2019年3月11日 / 10:58
焦点:日銀、生産・輸出など下方修正検討 金融政策と総括判断は維持

『[東京 11日 ロイター] - 日銀は、1月の輸出や生産が大きく落ち込んだことを受け、14、15日の金融政策決定会合で内外経済の現状と先行きを重点的に点検する。海外経済は減速感を強めているが、設備投資や個人消費など内需は比較的堅調とみており、景気は「緩やかに拡大している」との判断を維持する見通し。一方、輸出や生産、海外経済は下方修正を検討する。物価のモメンタム(勢い)は維持されているとして、現行の金融政策の継続を決める公算だ。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほうそうですかそうですか。しかし普通は生産と輸出を下方修正した場合は基調判断が変わると思いますし、大体からしてこれから消費増税で消費からの国内発の循環メカニズムが回る気もしないですし、春闘は端から期待できない(しかし消費税上がるんだから生活給の観点からベースアップするもんじゃないのかと思うのですがそういう話すらあんまり大きく聞こえてこないis何?という感じなのですが)と来ておりまして、そんな中で輸出と生産がアカンタレとなって何がどう「モメンタムが維持」というのか小一時間問い詰めたいところではありまする。でまあその言い訳に関しては上記記事によりますと、

『現時点では、海外経済も含めて、年後半には回復するとのシナリオが基本だ。中国では、デレバレッジ政策を巻き戻すようなマクロ政策を打っており、政策効果を見極める段階にある。ITサイクルの持ち直しや、米中貿易摩擦も緩和方向への動きが期待されており、推移を「もう少し見極めたい」(幹部)との声が多い。』

「情勢を見極める」ではなくて「時間稼ぎをしているうちに海外からリスクオンの神風が吹いてくれるといいなという願望」なのではなかろうかと思う訳ですが、とりあえず今回は展望レポートも無いので、4月末まで粘って神風待ちということですねわかります。

『現段階では、国内における企業の設備投資が目立って慎重化する兆候はみられず、個人消費も増勢を維持しているとみている。内需は引き続きしっかりしていることから、国内景気は「緩やかに拡大している」との総括判断は据え置く見通し。』

10月の消費増税の影響が云々と言ってガイダンス文言を入れているというのにこの自由自在というのは毎度の仕様なので気にしませんが、まあとりあえず米国と中国の底打ち待ちで粘るんでしょうけれども、4月展望レポートの時にどこまで言い逃れできるのかというのが割としんどくなってきたようには思えます。

いずれにせよ今回はだいぶ無理気味だけどクソ粘りするということでしょうな。

#全然話は違いますけど、そういや今回って「消費増税前の今がチャンス」みたいな駆け込み狙いの動きが前回の盛り上がり(というか何というか)に対して少ない(つーか全然ない)気がするんですが気のせいでしょうかねえ


〇米国クレジット市場の動向についてとな(日銀レビューシリーズ)

紹介ページはこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2019/rev19j03.htm/
米国クレジット市場の最近の動向について
2019年3月8日 金融市場局 寒川宗穂太郎、助川卓也、小川佳也

でもって『要旨』となっていまして、

『本稿では、米国クレジット市場の現状評価を行うにあたり、レバレッジドローン・CLO市場やBBB格社債市場など、低格付け企業の債務の動向に焦点を当て整理を行った。いずれの市場でも、総じてみれば緩和的な金融環境などを背景に、これまで借り手優位な資金調達が続いてきた。その結果として、低格付け企業の債務残高が増加し、クレジットの質の低下を示唆する動きがみられている。こうしたなか、先行き何らかのショックが生じ、企業の格下げやデフォルトが増加に転じる場合には、企業部門全体のバランスシート調整圧力が高まる可能性には留意する必要がある。』

と要旨はあっさり味ですが本文の方はと言いますと、
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2019/data/rev19j03.pdf
米国クレジット市場の最近の動向について

以下本文より引用しますが、

『はじめに』

『近年の米国クレジット市場の動向をみると、資 金調達サイドに有利な環境が続くなかで、低格付け企業の債務増加が目立っており、一部の市場参加者からは、同市場の調整リスクに言及する声が聞かれている。債務増加の内訳をみると、伝統的に「炭鉱のカナリア」として注目を集めることが多かった、BB 格以下の投機的格付け社債(High Yield 社債:以下、「HY 社債」)の残高は、さほど 増加していない。この点、最近の米国クレジット市場の動向を理解するうえでは、以下の 2 つの特 徴点を踏まえて考察する必要がある。』

ほうほう。

『第一に、投機的格付け企業向けを中心とした貸付であるレバレッジドローン1(以下、「レバローン」)の残高が大きく増加しており、同ローンを 裏付資産とした CLO2の発行も高水準になっている。第二に、投資適格社債(Investment Grade 社債: 以下、「IG 社債」)のなかで、最低位にある BBB格の残高増加が目立っている。BBB 格社債は、 HY 社債よりも信用リスクは低いが、市場残高は極めて大きい。そのため、仮に格下げが発生すれば、市場残高が大きいだけに、その影響も大きくなる。』

ほほう。

『これらの点を踏まえると、米国のクレジット市場の動向を評価するうえでは、HY 社債に加えて、 レバローン・CLO や BBB 格社債の動向について 把握することの重要性が増している。実際、海外当局者の間でも、これらの市場の動向やリスクに ついての議論が活発となっている3。また、昨年 10 月以降には、投資家のリスクセンチメント悪化を主因に、これらの市場で振れの大きな動きがみられる場面もあったため、市場参加者の注目度はより高まっている。』

『そこで、本稿では、こうした最近の米国クレジ ット市場の特徴点である、レバローン・CLO や BBB 格社債など低格付け企業の債務の動向につ いて考察を試みる(図表 1)。 』

ということで以下分析になるのですが、アタクシそこまで米国クレジット市場に詳しい訳ではないので恐縮ではございますが(大汗)、現状とか商品の概要(というほど細かい概要ではないけど)とかに関しての記述が分かりやすいんじゃないかなと思います(個人の感想です)のでお勧めですし、脚注の所にも説明があったりしまして現状をコンパクトに理解するのにはよろしいのではないでしょうか。

ちなみに今謎に話題のCLOちゃんに関しては本文2ページに、

『このように急拡大しているレバローン市場を より仔細にみると、機関投資家向けに組成される ローンの増加が市場の拡大を牽引していること が確認できる(図表 3)。こうした背景として、機 関投資家向けレバローンの半分程度を保有する とされる CLO への投資家需要の高まりが指摘されている。』

『実際、2018 年の米国 CLO の新規発行 額は既往最高となった(図表 4)。投資家からみる と、CLO は、変動金利商品中心であることに加え、 裏付資産であるレバローンの比較的高い利回り を背景に、一定のスプレッドを確保できることや、 金融危機以降、上位トランシェの安全性などにより配慮した商品構造となっていること4などが魅力となっている。このため、銀行・保険・年金勢 に加え、アセットマネジメントやヘッジファンド など多様なグローバル投資家が資金を投じてい る(図表 5)。』

ってあって、脚注4には

『4 CLO の商品構造について、金融危機前後でやや違いが生じており、市場では、金融危機前に発行された CLO を「CLO1.0」、危機 後に発行されたものを「CLO2.0」と呼ぶ。CLO は、金融危機時 にも、最上位トランシェではデフォルトは発生しなかったが、他 の証券化商品同様に大幅に売り込まれた。こうした金融危機の経験を経て、格付機関の格付基準が厳格化されたこともあり、 CLO2.0 では、一般に、第一抵当権付きローンの構成比率上昇や再投資期間の短縮化など、質の向上が図られている。 5 』

ってな話があったりします。ほかにも色々と解説がありますので読んでちょという感じですの。

でまあ話題のCLOといえば話は変わりますが、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-07/PNYY9O6S972A01
金融庁はCLO新規制を来週にも公表、「深度ある分析」求める
谷口崇子、中道敬
2019年3月8日 0:00 JST 更新日時 2019年3月8日 17:21 JST

ほーん「深度ある分析」ですかそうですかーという所ですが、地域金融機関のビジネスモデルに関して「深度ある(以下の部分は内務省検閲により削除されました)。



〇ECBドラギ俊彦先生の会見である(たぶん終わらないのでその1)

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190307~de1fdbd0b0.en.html
PRESS CONFERENCE
Mario Draghi, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 7 March 2019

・最初の質疑で謎の長広舌

Q&Aの一発目ですが謎の演説モードになっていまして、

『Mr President, could you give us an idea about the reasons why you decided on the specific features of the TLTRO-III programme? For example why are the maturities two years? Why have you indexed it to the MRO, and also why is the start date in September when the funding becomes relevant for banks' Net Stable Funding Ratios in June already.』

TLTRO3について、何で2年の期間なの?何で金利をMRO基準にしてるの?6月から金融機関向けのネットステーブルファンディングレシオ(あんまり詳しくないので恐縮ですがまあ安定調達に関するレシオを出せとかそういう話でしょうな)が始まるのに9月開始なの?とかの質問と、

『My second question is what you would like to achieve with this programme, so are you trying to keep the size of the balance sheet stable? Or are you trying to add extra accommodation?』

これ実施するとバランスシートはどうなるの?変わらんの拡大するの?そもそもこれって追加緩和なの?

とまあそんな質問があった訳ですがこれがまた謎の大演説になっております。

『Draghi: The design of the TLTRO responds to a variety of objectives. The key objective derives from how the situation of bank funding looks like over the next few years. In the coming years we will have a congestion for bank funding caused by the coming to maturity of the existing TLTROs, the coming to maturity of sizable amounts of bank bonds, various regulatory compliances.』

今後数年で過去のTLTROの満期が来るのと、金融機関発行の社債の満期が来るのと、今後予定されている金融機関のファンディングなどに関する規制の変更に対応して実施した、というお話になっているようですな。

『The TLTROs, as has been said in the introductory statement, maintain [and] preserve favourable bank lending conditions and a smooth transition of monetary policy. Now, the precise design, whether it's two instead of four, do reflect the changed conditions we have today. Now, further details especially on the pricing and other details, will get to be known in due time.』

金融機関の貸出環境を緩和的にするというのが目的で、(前のTLTROの)4年じゃなくて2年にしたのは、最近の状況変化(が何を言っているのかは華麗にスルーしてます、まあ状況が改善したということでしょうが、短くしたいというのはそらあるでしょうよ)に応じたものですよ、とまあそういう説明ですが後半の質問の答えがこれまた長い。

『Now, the second question really addresses the substance of today's meeting so let me give you a broad account of how this meeting unfolded. In so doing, I think I'm pretty sure I'll respond to some of the questions you intend to ask.』

これは演説する気満々という奴で。

『First of all, the decisions: It's four sets of decisions. We moved the calendar-based part of our forward guidance from September to December. The second, we confirm the reinvestment in full of the principle payments from maturing securities. Now, you understand the importance of the chained element in our monetary policy. Having moved the calendar-based, so does the expected - well, whatever the horizon is going to be during which the purchases will take place to keep the stock unchanged, so you see this is adding accommodation.』

っていうことで、「We moved the calendar-based part of our forward guidance from September to December.」となっていて、前回の金利ガイダンス文言は9月までだったということを示していますが、しかしまあ3か月の延長でその点は「you see this is adding accommodation」ってのも何というハッタリという感じで、久々に福井の俊ちゃんが乗り移って来ました(というかドラギ先生の場合は憑依されなくてもそもそもが俊ちゃんスタイルなんですが)という感じです。

『To answer your question, as a matter of fact you asked me is this adding accommodation? The financing conditions have been - well, monetary policy has been very accommodative, but also financing conditions as a matter of fact have even eased since our last meeting. This is also partly due to the structure of our forward guidance so that expected interest rates have gone down since the last meeting and especially at the end of last year as well.』

借入の環境はもとより緩和的だが前回の会合よりも一段と緩和されています、これは金利のフォワードガイダンスによってもたらされている面がありますってゆうとるのだが他の要因ちゃいますかと思いますが、まあそうやってガイダンスの延長を緩和的と大宣伝するのがドラギ俊彦クオリティ。

『Then the third element is the targeted longer-term refinancing operations that we've just discussed. Then we have the fixed-rate tender procedures with full allotment for as long as necessary, at least until the end of the reserve maintenance period starting in March 2021.』

でもって今回は4つの政策を入れましたと。

『Now, what are the features of all these measures? First of all, they are data-driven. These are decisions that have been taken following a significant downward revision of the forecasts by our staff.』

今回の決定はデータドリブンですよ、なぜならスタッフの景気見通しの大幅下方修正しましたよね?と来たもんだ。

『Second, you've seen and you've just heard me say that optionality is reiterated in all instances, which means that the Governing Council is both willing and committed to act when if needed, amplifying the use of these instruments based on the data.』

以前から私たちデータを見ながら必要な時に必要な施策を打つって言ってるじゃないですかーだそうな。

『Third is what I just said; all this takes place in an environment where monetary policy accommodation is already very substantial.』

既に大変に緩和的な状態である、という中でこの施策をしましたよと。

『Second point is, how did we get to take these decisions? The answer here is that they were unanimous.』

全員一致だったとな。

『There was unanimity and I think given the complexity of the package, I think it's a very, very positive sign for the cohesiveness of the Governing Council and of our deliberations. Third, what is the general context in which these decisions have taken place? Well, we're coming - and maybe we still are - in a period of continued weakness and pervasive uncertainty.』

『That's why the forecast has been revised downwards quite significantly. Now, I will come and comment in a moment about the pervasive uncertainty but the factors that have originally caused this weakness, which are mostly of external source, are still there. The uncertainty is partly related to how long these factors will continue affecting the world economy, the eurozone economy and confidence more generally.』

とまあ「経済見通しを大幅引き下げるような事態なのでプリエンティブに対応しました!」と思いっきり説明してやたらめったら先行きの懸念の話をして、ここでドカンと政策対応みたいな言い方になっていますが、よくよく考えてみればガイダンスを3カ月延長したのと過去のTLTROの折り返しを期間2年に短縮したTLTRO3をぶっこんだのが基本なので、そこまでビビるような追加緩和をしている訳ではなくて、このハッタリパワーで見せているという感じではありますな。

『There are two observations to make about the assessment of the outlook. First, the Governing Council expressed confidence, all members expressed confidence in the baseline, which means that we assess the probabilities of a recession as being very low, as well as the probabilities of a de-anchoring of inflation expectations are indeed very low in our assessment.』

エライ先行きがアレという話をした後に返す刀で「ベースラインシナリオには変化なくてリセッションの可能性は極めて低いしインフレ期待のアンカリングも信認している」と威勢のいい話をするという剣豪ぶり。

『What are the reasons? Well, the reasons are the same that underpinned the strength of our economy in our previous meetings; namely nominal wage growth continues, labour market, though at a kind of slower rate but continues to improve, consumption remains by and large in good shape. Monetary policy remains accommodative and now is even more accommodative, and financing conditions, as I said, have eased up. They were already very easy and they eased up further.』

ペースは遅いが賃金とか労働市場とか消費とかは改善していますよと。

『There is a second factor that we've taken into account in maintaining this confidence.』

さらに先行きのコンフィデンスを維持する要因があるとな。

『It's that it's true that these external factors continued to be hanging on, continue to be weighing on the eurozone economy. But it's also true that governments are responding in their respective jurisdictions with policies that are addressing these problems in the US, in China. The second point to be kept in mind is that you've seen that the revision of the inflation path basically says one thing; we have confidence that [inflation] will converge but we also, at this point in time, think that it's going to take longer to get there. Why is it going to take longer? Well, the weaker growth probably will further slow down the pass-through from higher nominal wages to higher prices, higher inflation and possibly also slow down the closure of the output gap. In other words, the outward gap now is closing. These two reasons are important to be kept in mind.』

海外要因については政治的な部分は今後改善することが期待されるけど状況を見たいというのと、物価の上昇は遅れてはいて、賃金のパススルーが遅いとか需給ギャップの改善がやや遅いとかあるので、その動向を見たいとな。

『Now, the other important part of today's decision is that we maintained the risk assessment as tilted to the downside.』

リスク認識が下方に傾いている件も重要とな。

『This is infrequent because we usually say when we take some policy actions, the risks get back into balance, but it's happened on other occasions in the past, but not frequently. Why is that? Well, because we are aware that our decisions certainly increase the resilience of the eurozone economy but actually can they address these factors that are weighing on the eurozone economy in the rest of the world? They cannot, so the threat of protection is one factor. Geopolitical considerations also related to whatever happens about the United Kingdom Brexit or United Kingdom exiting, or not exiting, or in the forms in which they will exit from the European Union. The emerging market vulnerabilities, what's happening in China, we know that the Chinese government has reacted, the US government has - the US monetary policy has changed. For example in the US, we have to take into account that there is going to be a waning effect of the fiscal package so a slowdown is projected there all over.』

毎度リスクは下方ですが、と言いながらこのようなリスク要因がありますよというネタをこれでもかと説明。

『Basically, our actions increase the resilience of the eurozone economy and so make us confident, keep us confident that convergence to a sustainable rate of inflation - our objective - will happen.』

ということで、先行きの景気がコケるという訳ではないが、と言いつつリスクだの成長の鈍化だのというのをこれでもかと説明する謎の大演説になったのでありました。

#その先の質疑はまた後日







2019/03/11

お題「GCレート上昇で短期から7年が逆イールドとな/山口元副総裁のロイターインタビュー」

日本人を実験動物くらいにしか思っていない欧米経済学者には碌でもない死に方をして頂きたいものだと存じます。
https://jp.reuters.com/article/mmt-japan-idJPKCN1QP072
2019年3月8日 / 11:31 /
焦点:財政拡大理論「MMT」、理想の地は日本か

自国通貨が無制限に流通することが前提な話とかただのジンバブエ理論でしょ、としか理解しておりませんが(無理解)。

〇GCレートェ・・・・・・・・・・・・・・・

金曜の東京レポレート。
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

2019/3/1 -0.029
2019/3/4 -0.030
2019/3/5 -0.035
2019/3/6 -0.035
2019/3/7 -0.033
2019/3/8 -0.006

ということで金曜はT/NのGCレポレートが0%にかなり近い所になるの巻とかになりやがりまして、おーそんなに金利上がるんかいなという所ですが当然ながら短国3Mちゃんもこの有様。

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20190308.htm
国庫短期証券(第819回)の入札結果

(3)募入最低価格 100円03銭2厘5毛(募入最高利回り)(-0.1210%)
(4)募入最低価格における案分比率 48.4429%
(5)募入平均価格 100円03銭4厘7毛(募入平均利回り)(-0.1291%)

てな訳で▲12.91/▲12.10まで金利が上昇の巻でござるとなりまして、木曜の6Mが▲14.35/▲13.75で先々週金曜の3Mが▲16.23/▲14.89ということで、あら金利上昇しちゃいましたねという所ですが、そら(GCレートがゼロだのとなったらファンディングコストが思いっきりいつもと違うから)そう(短国の金利が上がる)よという風情で、ファンディングコストがどうのこうのというか短国が在庫で残っているからというような話だとは思いますが(どこかで大きな資金の出し手が急に引くとかいう要因でもない限りは基本的にマーケットメーカーの保有在庫ファイナンスのニーズが増えるか減るかでGCの水準決まる筈だから)、いやーなんか金利上がりましたなというところではございまする。

一応ロイターさんから。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N20V0YZ
2019年3月8日 / 12:46
〔マーケットアイ〕金利:3カ月物TB入札結果は低調、レポ金利上昇や業者の在庫負担増で

『 <12:40> 3カ月物TB入札結果は低調、レポ金利上昇や業者の在庫負担増で

財務省が午後0時半に発表した新発3カ月物国庫短期証券(TB)の入札結果で、最高落札利回りはマイナス0.1210%、平均落札利回りはマイナス0.1291%と、前回(最高:マイナス0.1489%、平均:マイナス0.1623%)に比べて上昇した。市場では、入札結果について「弱い内容。レポレートの上昇や業者の在庫負担が重くなっていることが影響したのだろう」(国内金融機関)との声が出ている。』(上記URL先より)

念のため売買参考統計値を見ますと、
http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php
売買参考統計値/格付マトリクス ダウンロード

国庫短期証券 819 2019/06/17 -0.120

ってことで平均水準ではなく足切り水準で売参が付いていますのでまあ推して知るべしという状況になっておりましたな。


・・・・・・・・ということで金曜はこんなオペが実施されました。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190308.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 20,000 2019年3月11日 2019年3月12日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2019年3月11日 2019年3月25日

2Wの固定金利オペはロール分なのですが、オファーが前週に引き続き1.5兆円で実施となりましたが、先週の短国買入がパターンダイヤ通りの2500だったところを見ますとこちらは平常運転というか、足元のGC上昇云々というよりは、期末なので共通担保でファンディングするようなニーズにも手広くお答えする(基本的にJGBだったらレポなり有短コールなりで調達すれば良いのですが、他に用途のなさそうな共通担保適格物件にファンディングつけるのであれば固定金利オペもニーズがない訳ではない、もちろん額としては限界的だからそんなに残高は出てないですけど)というものだと思われるのですが、T/Nで2兆円ぶち込んだというのは何ともかんとも。

まあ何ですな、こちらも金利は0%なので、GCの方がマシじゃんという感じ(掛け目の問題もあるし)ではあるのですが、とりあえずこいつは「GCレートがプラスになるのは宜しくないでごわす」という姿勢を見せましたシグナル空砲という所でして、市場のことは市場にやらせますが政策ディレクティブとしての閾値はあるからよろしくね、というような感じなんですかねえ、金利押し下げたいんだったら突如短国買入をぶち込むとかそういう事をするでしょうが、そこまで過保護にせんでも良かろうというか、そういうことするとそれこそ市場機能って何って話になるから、ここに金利上限は設定したんであとは市場であんじょうようやっといてくれというプレイなのは別にこれはこれでありだとは思うのですがさてどうなんでしょうかね。

ま、毎度申し上げておりますがどうせ期末になると短国が足りないだの何だのという話になりますし、担保がどうのこうのというネタで政策の限界というお話があるようなのですがホレホレ担保ならありまっせ(と言っても3か月だとすぐに担保差し替えになるのでその時の需給次第で担保ロール時に死ぬかもしれないし。とは思いますが)という所ですかそうですか。


・・・・・・・とまあそんな結果、売買参考統計値を拝読すると中々お洒落なことに。

(利回りは平均値単利を取っています)
3M:国庫短期証券 819 2019/06/17 -0.120
2Y:中期国債 398(2) 2021/03/01 -0.150
5Y:中期国債 138(5) 2023/12/20 -0.155
7Y:長期国債 342  2026/03/20 -0.165
  :長期国債 343  2026/06/20 -0.165(6月限チーペスト)

ということで、先物回りを頂点にして手前のイールドが堂々の逆イールドになって2年7年というか3M7年が明確に逆イールドになるという大変に素敵な状態になっているので、これはもうリセッション待ったなしですね(超棒読み)。

まあそんな相場ちゃんなのでロイターさんをクリップ。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N20V1M6
2019年3月8日 / 15:16 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続伸、長期金利-0.035%に低下、世界景気懸念でリスクオフの流れ

『<15:05> 国債先物が続伸、長期金利-0.035%に低下、世界景気懸念でリスクオフの流れ

国債先物中心限月3月限は前日比16銭高の152円79銭と続伸して引けた。欧州中央銀行(ECB)が前日の理事会で、利上げ時期を来年に先延ばししたことを受け、欧米債が上昇した流れを引き継いだ。世界景気に対する悲観的な見方から、東京市場でも円高や株大幅安となり、リスクオフの流れが強まったことも短期筋の買い圧力を強めた。現物市場は長期・超長期ゾーンを中心に堅調。「20年債0.4%付近で国内勢の利益確定売りも観測されたが、株価が大きく値下がりしたこともあり、売りを吸収する形で買われた」(証券)といい、イールドカーブはフラット化。10年最長期国債利回り(長期金利)は同2bp低いマイナス0.035%と2月27日以来の水準に低下した。

短期金融市場で、無担保コール翌日物の加重平均レートはマイナス0.02%台半ばと前日(マイナス0.029%)を上回る見通し。積み期終盤に差し掛かる中、レポレートの高止まりや週末要因で強含みの展開。マイナス0.02─マイナス0.04%を中心に取引された。ユーロ円3カ月金利先物は期先にかけてしっかり。新発3カ月物国庫短期証券(TB)の入札結果で、最高落札利回りはマイナス0.1210%、平均落札利回りはマイナス0.1291%と、前回(最高:マイナス0.1489%、平均:マイナス0.1623%)に比べて上昇した。日銀が午後1時、2本建てで共通担保資金供給(全店)を通告した。期間は3月11日─25日、3月11日─12日。2本のTB発行が重なる11日スタートのレポGCレート翌日物レートが上昇したことから、日銀は最近の短期金利上昇をけん制する姿勢を示した、との見方が出ている。』(上記URL先より)

ということで今日も今日とて超長いところと超短いところと先物が注目ネタなんですかねえ、よー知らんけど。


〇山口元副総裁(廣秀さんの方の山口さんです)ロイターインタビュー登場とな

https://jp.reuters.com/article/interview-financial-policy-idJPKCN1QP0FH
2019年3月8日 / 14:41 /
インタビュー:物価2%の勢い低下、日銀は追加緩和模索へ=山口元日銀副総裁

山口さんキタコレということで何でキタコレかと申しますと、麿総裁と共に山口さん基本的に金融政策に関連するインタビューみたいなのには出てこないでいたのですが、最近ちょっとこうやってベンダーのネタに登場するようになってきて、今回のは割とまとまったインタビューっぽい感じが漂う物件でして、麿総裁も麿ブックで改めて評価の動きとなってきているのは実に心温まる話ではございますが、そんな中で山口さん満を持して(かどうか知らんが)登場キタコレなので拝読。

『[東京 8日 ロイター] - 元日銀副総裁の山口広秀・日興リサーチセンター理事長は、ロイターとのインタビューに応じ、日本経済が減速する下で、日銀が掲げる物価2%目標に向けたモメンタム(勢い)は低下してきているとし、金融政策運営は「追加緩和を模索する方向にならざるを得ない」との見解を示した。』(上記URL先、以下同様)

というリードとヘッドラインを見ますと「追加緩和キタコレ」という風になりそうですが、上記記事の内容を見ますと「本来はそういうもんじゃないんだが今の体制および建付けだと追加緩和模索することになってしまいますなあ」という感じの追加緩和という話だと思われます。と言いますのも、

『大規模な金融緩和の長期化によって副作用に対する懸念が強まる中、金融政策の適切な遂行と金融システムの安定確保は「車の両輪」と述べ、効果と副作用を検証しながら漸進的に金融政策を進めていく重要性を強調した。インタビューは7日に行った。』

「効果と副作用を検証しながら漸進的に金融政策を進めていく重要性」って言ってるわけですな。以下詳細を拝読いたしましょう、とは言いましてもさすがに全部引用するのはアレでございますので、最初の経済に関する部分を割愛(当然ながら先行きは怪しいという話です)してその次から。

『−−先行きの日銀の金融政策運営をどうみるか。』

『「目標の2%の物価上昇率に向けたモメンタムは、むしろ少しずつ低下してきており、日銀としては追加緩和を模索する方向にならざるを得ない。ただ、使える手立てはかなり限られており、小さな変化に直ちに対応するというよりは、大きく景気が減速し、物価上昇のモメンタムもかなり低下したときに、何らかの手を打つことになるのではないか」』

ということで「日銀としては追加緩和を模索する方向にならざるを得ない」とのことですがこの次の質疑が中々お洒落でして、

『−−追加緩和の手段は。』

『「より長いタイムスパンで考えれば、金融政策の正常化が大きな課題だ。追加緩和といっても、長い目で考えた正常化のプロセスと極力矛盾しない政策は何かを考える必要がある。すでに日銀のバランスシートは相当に大きくなっており、バランスシートにできるだけ負担をかけない政策手法を見出していくことになるのではないか」』

『「資産買い入れは、緩和の枠組みの中でも、削減できるものがあれば、削減してもいい。一方、金利の追加的引き下げの可能性が、全くないわけではないだろう」 』

ということで「長い目で考えた正常化のプロセスと極力矛盾しない政策は何かを考える必要がある」ということで、政策の正常化というのがぶっこまれつつの追加緩和とな、という感じですが、長期国債買入はそういう意味ではオーバーシュート型コミットメントという最早何のためにあるのかよく分からん(長期的に資産買入の拡大にコミットするとフォワードルッキングな予想インフレ率の形成(引き上げ)に寄与する、ということになっているのだが、その理論の根拠はQQEやったことによって予想インフレが上がったという相関関係と因果関係をごっちゃにした総括検証によるものである)物件との関係上減らすのそろそろ限界という所に減らしておりますし、まあそれよりETFどうするんじゃいというのはありますが、いずれにせよ将来の正常化(出来るのかどうか知らんが)を考えたらバランスシートは何とかしないと、という発想なのは把握致しました。


この辺から現執行部に対する砲弾が出てくるのですがその次の部分。

『−−正常化のプロセスと求められるコミュニケーションは。』

『「FRB(米連邦準備理事会)は、非常に早い段階から出口の議論を開始した。これによって市場に無用の混乱を与えずに、出口に向けて動き出すことができた。日銀も、市場が当面の緩和継続を想定しているような状況においてこそ、出口ないし正常化の方法論を議論し、市場に提示していくことが必要だと思う」』

出口は全く考えていない、という黒田総裁に向けて軽くジャブを放っています(^^)。

まあしかし何ですな、「出口を全く考えていない」って発言ってえのも冷静に考えると間抜けな話で、政策の効果に自信があって2%達成に向けて自信があるんだったら当然出口の事を考えないといけないのですし、むしろ「2%早期達成に自信満々ですので達成の暁には出口ですが、急速に緩和を後退させるのではなくて緩やかに後退させていくように対応していきますので金利の急騰などは起きないようにします」とか堂々と言った方が「自信満々じゃん!」となったのかもしれませんね。まあ今そんなことを言うとはいはいおじいちゃん朝ごはんはさっき食べたでしょお昼寝の時間ですよと言われるだけなので時すでにお寿司にも程があるのですが。

でまあ大規模緩和と金融機関経営という話もあるのですが、そこまで引用しちゃうと多くなりすぎましてロイターさんにちょっとアレですのでそこはロイターさんの方の元URL先を見ていただくとしまして、最後の方が中々の砲撃になっていて砲弾着弾という感じになっているのでそこを鑑賞。

『−−物価2%目標の位置づけをどのように考えていくべきか。』

『「長い目でみて2%目標を維持しながらも、先行き消費者物価が前年比プラスの領域で動いていくと判断できる状況になれば、政策の方向を(現在の緩和から引き締め的に)変えるといった対応があってもいい。2%目標をひたすら厳格に追及する必要はないとの議論も、一時よりは強まっているように思う。日銀として柔軟に考えてもいいのではないか」』

仰せの通りですが政治の方からタオルがとんでこないとどうにもならんでしょうな。ハマコーじゃ屁の突っ張りにもならん。

『−−黒田東彦日銀総裁の下での異次元緩和の評価と課題。』

『「それまでデフレを克服することができなかった環境の中で黒田総裁が登場し、大胆な緩和政策に踏み切ったことは、全く理解できないわけではない。ただ、2%目標は実現できないまま6年がたとうとしている」 』

>2%目標は実現できないまま6年がたとうとしている

砲撃用意。

『「大胆な緩和の結果、国債市場の機能が低下し、株式市場のゆがみも指摘されている。金融機関の収益基盤も毀損(きそん)されるなど副作用が蓄積している。この6年間の政策についてポジティブな評価はしにくい」 』

>この6年間の政策についてポジティブな評価はしにくい
>この6年間の政策についてポジティブな評価はしにくい
>この6年間の政策についてポジティブな評価はしにくい

着弾を確認しました(^^)。

『−−金融政策運営における白川方明前総裁との大きな違いは何か。』

でもってこの回答が(;∀;)イイハナシダナーというお話でして、

『「効果を明確には読めない政策については、漸進的に進めるというのがそれまでの政策運営だった。効果と副作用がはっきりしなくとも、必要であれば大胆に進めていくのが黒田総裁のスタンスだと思う」 』

そして・・・・・・・・・

『「しかし、そうした大胆な政策には、実験的な要素が必ずある。事前に予測できない効果と副作用を検証し、GRADUAL(漸進的)に進めていくことが大事だ。GRADUALに進めることで極端な政策に陥らずに済むし、いつでも方向転換ができる。こうした政策運営が基本だ」 』

・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

「そうした大胆な政策には、実験的な要素が必ずある。事前に予測できない効果と副作用を検証し、GRADUAL(漸進的)に進めていくことが大事だ。」っていうスタンスに今の日銀ってなっていない(幾分かは問題点を修正すべく国債買入が減ったりしていますけど・・・・・・・・)ですし、連中の面目玉のために根本の部分は何も変わっていないというのが問題ですから、実に仰る通りではありますな。


〇ということで時間が無くなってしまってECB総裁会見ネタが明日になってしまいました(大汗)

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190307~de1fdbd0b0.en.html
PRESS CONFERENCE
Mario Draghi, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 7 March 2019

よくよく考えてみると金利ガイダンスを3か月(会見の中でしらっと9月から12月に延長したって言っていましたなやっぱり)延長したのと、まあ入れるだろうと言われていたTLTRO3(しかも期間2年で前のより短い貸出)をぶっこんだという流れではあったのですが、物凄い緩和をしたかのようなサプライズを出す、というのはさすがはドラギ俊彦ということでして、久々に俊ちゃんっぽいドラギでしたなという所なのですが時間の関係上本日はパスで勘弁してつかあさい。









2019/03/08

お題「ECBがぶっこんできましたな/大先生の山梨金懇会見より」

ほうほうそうですか。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190307/k10011839001000.html
国内景気 すでに後退局面の可能性 景気動向指数3か月連続悪化
2019年3月7日 18時41分

『これについて内閣府では「景気の現状の基調判断は、あくまでも指数から機械的に示されるもので、政府としての景気判断は月例経済報告で総合的に示したい」と話しています。』

『そのうえで、記者団が「景気は回復基調という判断に変わりはないか」と質問したのに対し、菅官房長官は「変わらない」と述べました。』(以上上記URL先より)

なるほどこれは皆様の忖(以下爆発音のため聴取不能)。


〇ECBは金利ガイダンス延長、TLTRO3投下と来ましたな(決定事項)

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2019/html/ecb.mp190307~7d8a9d2665.en.html
7 March 2019

At today’s meeting the Governing Council of the European Central Bank (ECB) took the following monetary policy decisions:

ということで投下された物件は・・・・・・・

・金利は据え置き、フォワードガイダンスは3か月くらい延長

『(1) The interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.00%, 0.25% and -0.40% respectively. The Governing Council now expects the key ECB interest rates to remain at their present levels at least through the end of 2019, and in any case for as long as necessary to ensure the continued sustained convergence of inflation to levels that are below, but close to, 2% over the medium term.』

金利据え置きですが、「今の金利水準を維持すると想定する期間」(これをECBは「日付ベースのガイダンス」としています)を従来の「at least through the summer of 2019」から「at least through the end of 2019」に変更しまして、前回はこのサマーってのが微妙でしたが、まあ普通に考えると3か月くらい延長になったという事でしょうな。

『(2) The Governing Council intends to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the asset purchase programme for an extended period of time past the date when it starts raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』

資産買入に関しては、「利上げを行ってからもしばらくの間は現状のバランスシートを維持することを企図する」(これをECBは「条件ベースのガイダンス」としています)という文言になっていますが、これは前回と同じです。


・TLTRO3投下

『(3) A new series of quarterly targeted longer-term refinancing operations (TLTRO-III) will be launched, starting in September 2019 and ending in March 2021, each with a maturity of two years.』

キタコレということでTLTRO3というのがぶっこまれることになりまして、四半期に1回オファーされて、2019年9月から2021年3月までですから7回シリーズで実施されて、2年ものの貸出をするそうで。

『These new operations will help to preserve favourable bank lending conditions and the smooth transmission of monetary policy.』

TLTROは毎度そうなのですが、建付けというか波及経路の説明が常にこれで「銀行貸出の条件を緩和的なものにすることによって経済に影響を与える」という趣旨ですな。

『Under TLTRO-III, counterparties will be entitled to borrow up to 30% of the stock of eligible loans as at 28 February 2019 at a rate indexed to the interest rate on the main refinancing operations over the life of each operation.』

2019年2月末時点の適格貸付残高に対して30%まで、MRO金利で2年間の借入が可能であるとな。なお借入金利に関しては従来の長期LTROと同様に「貸付期間内におけるECBの短期資金供給MROオペレーションの金利を期間按分したもの」になるので固定金利ではない。

『Like the outstanding TLTRO programme, TLTRO-III will feature built-in incentives for credit conditions to remain favourable.』

既存のターゲットLTROと同じく、クレジットコンディションを望ましい状態に維持するための貸付となります。

『Further details on the precise terms of TLTRO-III will be communicated in due course.』

ということなので明細はのちほどとなっているのですが、肝心の後程出てくると思われるTLTRO3の内容説明のページがアタクシの探し方に問題があるのか見当たらないので今日の所はパス。。


・2021年3月積み期間までは固定金利フルアロットメントでのオペを行う

『(4) The Eurosystem’s lending operations will continue to be conducted as fixed rate tender procedures with full allotment for as long as necessary, and at least until the end of the reserve maintenance period starting in March 2021. 』

これは小見出しの通りでして、短期の方の資金供給分になりますが、積み期間に応じて行われている資金供給オペに関して、2021年3月の積み期間までは「固定金利方式、フルアロットメント(応札したら全部落札させる)」を継続します、というお話で、過去ログの整理をさぼっているツケがここで出て来まして(大汗)これ前回延長したのいつでしたっけとECBの過去の政策決定を眺めてみましたが、どうも2019年末の積み期間まで、というのを2017年10月の時に決定してて、今回はその延長みたいですな。


〇冒頭ステートメントより

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190307~de1fdbd0b0.en.html
PRESS CONFERENCE
Mario Draghi, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,Frankfurt am Main, 7 March 2019
INTRODUCTORY STATEMENT

おっちゃんの会見については幾つかおーという発言があったみたい(何となく聞き流した)ですけれども、そちらに関してはQ&A明細が出てから改めてということで冒頭ステートメントの方を確認しておきませう。

『Ladies and gentlemen, the Vice-President and I are very pleased to welcome you to our press conference. We will now report on the outcome of today’s meeting of the Governing Council, which was also attended by the Commission Vice-President, Mr Dombrovskis.』

これはただのご挨拶。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we have conducted a thorough assessment of the economic and inflation outlook, also taking into account the latest staff macroeconomic projections for the euro area. As a result, the Governing Council took the following decisions in the pursuit of its price stability objective.』

ということでさっきのプレスリリースの説明になります、

『First, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. We now expect them to remain at their present levels at least through the end of 2019, and in any case for as long as necessary to ensure the continued sustained convergence of inflation to levels that are below, but close to, 2% over the medium term.』

さっきの決定順と同じに出てきます。金利政策と金利ガイダンス部分。

『Second, we intend to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the asset purchase programme for an extended period of time past the date when we start raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』

資産買入政策と資産買入ガイダンス部分、こちらは変更なし。

『Third, we decided to launch a new series of quarterly targeted longer-term refinancing operations (TLTRO-III), starting in September 2019 and ending in March 2021, each with a maturity of two years. These new operations will help to preserve favourable bank lending conditions and the smooth transmission of monetary policy. Under TLTRO-III, counterparties will be entitled to borrow up to 30% of the stock of eligible loans as at 28 February 2019 at a rate indexed to the interest rate on the main refinancing operations over the life of each operation.』

TLTRO3の借入金利条件に関してはこっちの方が読みやすいですね。

『Like the outstanding TLTRO programme, TLTRO?III will feature built-in incentives for credit conditions to remain favourable. Further details on the precise terms of TLTRO-III will be communicated in due course.』

銀行借り入れからの波及効果を望むと。


『Fourth, we will continue conducting our lending operations as fixed rate tender procedures with full allotment for as long as necessary, and at least until the end of the reserve maintenance period starting in March 2021.』

短期資金供給に関する固定金利、フルアロットメント期間の延長。

『Today’s monetary policy decisions were taken to ensure that inflation remains on a sustained path towards levels that are below, but close to, 2% over the medium term.』

2%物価目標達成の道筋をensureさせるために実施したんですとよ。

『While there are signs that some of the idiosyncratic domestic factors dampening growth are starting to fade, the weakening in economic data points to a sizeable moderation in the pace of the economic expansion that will extend into the current year.』

「the weakening in economic data points to a sizeable moderation」とはこれまたションボリーヌですな。

『The persistence of uncertainties related to geopolitical factors, the threat of protectionism and vulnerabilities in emerging markets appears to be leaving marks on economic sentiment.』

「persistence of uncertainties」とも仰せ。

『Moreover, underlying inflation continues to be muted.』

おまけに基調的な物価上昇が弱いと。

『The weaker economic momentum is slowing the adjustment of inflation towards our aim. At the same time, supportive financing conditions, favourable labour market dynamics and rising wage growth continue to underpin the euro area expansion and gradually rising inflation pressures. Today’s decisions will support the further build-up of domestic price pressures and headline inflation developments over the medium term. Significant monetary policy stimulus will continue to be provided by our forward guidance on the key ECB interest rates, reinforced by the reinvestments of the sizeable stock of acquired assets and the new series of TLTROs. In any event, the Governing Council stands ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation continues to move towards the Governing Council’s inflation aim in a sustained manner.』

とまあそんな訳で、今回の措置についての説明が「正常化路線の様子見」というよりは単純に「現在の緩和政策を時間的に延長して現状の経済物価見通しにアジャストしましたよ」ってな感じで、まあ追加緩和しますというような勢いは当然ながら無いのですが、ちょっと正常化一回休みとかそういうレベルではない説明っぷりではありますな。

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis. Euro area real GDP increased by 0.2%, quarter on quarter, in the fourth quarter of 2018, following growth of 0.1% in the third quarter. Incoming data have continued to be weak, in particular in the manufacturing sector, reflecting the slowdown in external demand compounded by some country and sector-specific factors.』

海外の減速が要因で工業セクターが弱い、と仰せです。

『The impact of these factors is turning out to be somewhat longer-lasting, which suggests that the near-term growth outlook will be weaker than previously anticipated. Looking ahead, the effect of these adverse factors is expected to unwind. The euro area expansion will continue to be supported by favourable financing conditions, further employment gains and rising wages, and the ongoing - albeit somewhat slower - expansion in global activity.』

一応先行きはこれらの要因の押し下げは減衰していくでしょうとはしているものの、「turning out to be somewhat longer-lasting」とかすっかり弱気ですの。よってスタッフ見通しが・・・・・・・・

『This assessment is broadly reflected in the March 2019 ECB staff macroeconomic projections for the euro area. These projections foresee annual real GDP increasing by 1.1% in 2019, 1.6% in 2020 and 1.5% in 2021.』

うむ。

『Compared with the December 2018 Eurosystem staff macroeconomic projections, the outlook for real GDP growth has been revised down substantially in 2019 and slightly in 2020.』

「revised down substantially in 2019」来ました。(2020はslightlyだけど)

『The risks surrounding the euro area growth outlook are still tilted to the downside, on account of the persistence of uncertainties related to geopolitical factors, the threat of protectionism and vulnerabilities in emerging markets.』

リスクは下方ですな。

『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation was 1.5% in February 2019, after 1.4% in January, reflecting somewhat higher energy and food price inflation. On the basis of current futures prices for oil, headline inflation is likely to remain at around current levels before declining towards the end of year. Measures of underlying inflation remain generally muted, but labour cost pressures have strengthened and broadened amid high levels of capacity utilisation and tightening labour markets. Looking ahead, underlying inflation is expected to increase over the medium term, supported by our monetary policy measures, the ongoing economic expansion and rising wage growth.』

物価に関してですが・・・・・・・・

『This assessment is also broadly reflected in the March 2019 ECB staff macroeconomic projections for the euro area, which foresee annual HICP inflation at 1.2% in 2019, 1.5% in 2020 and 1.6% in 2021. Compared with the December 2018 Eurosystem staff macroeconomic projections, the outlook for HICP inflation has been revised down across the projection horizon, reflecting in particular the more subdued near-term growth outlook.』

スタッフの物価見通しは「revised down across the projection horizon」とか残念な見通しになり、要因の一部として「more subdued near-term growth outlook」と経済見通しの引き下げが要因というところでハトハトモードという感じでしょうか。会見は後日。



〇ジンバブエ先生の金懇会見ェ・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190307a.pdf

・予想インフレは観測できないのに一丁目一番地なんですかそうですか

最初の質問は今日は何がありましたかって奴なのでまあパスしまして、その次の質問への回答がいきなりワロタんですけど。

『(問) 2点、お伺いします。1点目は、様々なリスクが顕現化した場合 には、 「遅滞なく追加的な金融緩和をする」必要があると挨拶要旨で述べられていますが、どういうリスクかによって、とり得る緩和の手段は変わるかもしれないのですが、とりわけ予想物価上昇率が停滞してしまい、物価上昇達成が遅れてしまった場合、そういうリスクの顕現化にはどのような追加緩和手段が有効なのかお聞かせください。(後半割愛) 』

という質問があったのですが、その答えがですな。

『(答) まず、リスクの顕現化については、予想物価上昇率の低下をリスクの顕現化と挙げておられますが、私は予想物価上昇率を判断することは、 明確な指標がなく、なかなか難しいため、むしろ、景気の悪化の顕現化、あるいは、物価上昇率の一時的でない低下をリスクの顕現化だと考えています。』

>予想物価上昇率を判断することは、 明確な指標がなく、なかなか難しいため
>予想物価上昇率を判断することは、 明確な指標がなく、なかなか難しいため
>予想物価上昇率を判断することは、 明確な指標がなく、なかなか難しいため

なんか昨日もリンクを貼った気がするのですが、
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
こちらの6枚目に、『「量的・質的金融緩和」の波及経路』というのがある訳でして、これを見ますと波及経路の一丁目一番地にあるフローチャートのボックスに書いてある物件は誰がどう見ても『予想インフレ率上昇』となっているのですが、それが分からんとはこれ如何にという話ですし、まあ百万歩譲って正確にリアルタイムで分からんという事だとしましても、「景気の悪化の顕現化、あるいは、物価上昇率の一時的でない低下をリスクの顕現化だと考えています」って言っちゃうとQQE2とは何だったのかという話になってしまうのですけれども・・・・・・・・・・・・

『景気の悪化と物価のモメンタムをどう考えるのかについては、この指標だけで判断できるというものではありませんので、様々な指標を総合的にみて考えるということだと思います。』

それは昔ながらの「総合判断」という奴になるんですが・・・・・・・・・・・

『それから、どういう手段があるのかということと、2点目の質問 の消費増税による景気の悪化に対して、財政をどう考えるのかということとは重なるところがあると思います。』

ちなみに2番目の質問は割愛しましたが財政を絡めた質問になってました。

『これについては、あくまでも景気悪化、物価上昇が望めないということであれば、必要な政策手段をとるということだと思います。リスクの顕現化の種類と政策手段とは必ずしも結び付いているとは思いませんが、手段としてはこれまでもお話ししてきまし たように、 「質」・「量」・「金利」の3つの次元を十分に考えて行いたいと思います。消費増税による景気の悪化についても同じことです。それに対 して財政がどう動くのかということについては、政府がお考えになること ですので、私からコメントすることは差し控えたいと思います。』

手段については見事にノーアイデアでした。


・先行き見通しの話が完全両建て主義になっているのはワロタとしか申し上げようがない

『(問) 様々なリスクが顕現化した場合について、最近、景気が後退局面に入ったのではないかというような観測も出回るぐらい指標が悪化しているという状況ですが、こうしたリスクが顕現化する可能性はさらに高まってきているとお考えでしょうか。』

『(答) 直近のデータをみますと、確かに落ちていることがあるわけですが、その状況が今後とも続くのかというと、必ずしもそうは言えないと思 います。例えば、中国のデータも──挨拶要旨で引用しているデータがありますが──非常に下がった後、また大きく上昇するような動きをしてい まして、一進一退のデータの動きから判断することは難しいです。下方リスクが高まっていることは事実だろうと思いますが、今、景気後退になると考えているかというと、そうではありません。』

何というこのヘッジ入れまくり、という感じですが、消費増税の影響の話が一番ワロタという感じでして、ちょっと先の方の質疑になりますが、

『(問) 消費増税の影響についての質問となります。景気後退になる可能性があるということですが、これは消費増税をいっそ止めてしまった方が 良いということもお考えになっているのか、それとももっと政府が対策を行っていくべきとお考えなのか、お聞かせください。』

そら聞くわな。

『(答) まず、消費増税によって景気後退になるとは考えておりません。』

ほほう。

『前回の消費増税の際にも、順調に成長していた景気が一時的に悪化したことは事実ですが、私自身はそれを景気後退とは考えていませんし、政府の景気後退を認定する研究会においてもそのように認定していません。』

消費増税で2%達成が出来なくなったという位の影響があった、と言って置物リフレ理論の見込み違いを誤魔化す一方で、QQEは上手く行っていて順風満帆だと言いたいからこういう謎の説明になります。

『前回 の消費増税に比べて、今回の消費増税の影響が小さいだろうというのは、数字的に事実だと思います。ただ、前回も非常に小さいと言っていたエコノミストは多かったのですが、小さくはなかったので、今回も、前よりは小さいだろうけれども、やはり大きな影響はあるかもしれないと述べたわけです。』

結局どっちなんだか訳分らないんですけど、ということでそらブルームバーグのヘッドラインでH高さんが思いっきり両方のヘッドラインを打ってくるわなと思いました。


・本当に消費増税がマズイと思うんだったら反対しろよ

今引用している質疑応答は実はもう一文ございまして、それは何かといいますと以下のようになります。

『消費増税については、政府が、財政再建と、政府にとって必要な支出の財源を得るためになさっていることですので、私の立場からそれについてどうこう言うということはありません。』

これがまたふざけた話で、本当に消費増税がマズイと思うんだったら、金融経済政策に携わっているという立場から僭越だろうと何だろうと言うべきじゃないでしょうか。まさかとは思いますが、原田審議委員様におかれましては自分の地位が大事だから日本のためにならない政策を看過するなどというようなスタンスをお取りになっておられるのでしょうか、と問いかけたくなるようなお答えで非常に残念としか申し上げようがありません。

何といいましても日本銀行政策委員会ってのは金融政策決定の最高機関な訳でして、その日本銀行政策委員としての立場って別に誰か上役がいる訳でもない、というポジションにあるわけで、それだけの重要な立場にいるのに傍観者のように「自分とは関係ない」というような発言をするのって何なんでしょうと思いますし、しかも置物リフレ一派って自分らが日銀批判をしている時には国士のような物言いをして麿総裁とかを国賊であるかのような罵り方をしていたのに、そっちの側に立った途端に「消費増税とか俺知らんもんね」とか何を言ってるんでしょうかね。本当に大変だと思うんだったら職を賭して反対したらどうかと思います(どうせあと人気1年でしょ)が、まあその前段にありますように、ああでもないこうでもないと両建てをして、反対はしないけど結果が凶と出たら後から「私もこのように警告したのに」とか言い出す気が満々というのがもうねという所ですが、まあ本尊の置物があの調子だからそらまあ子分も推して知るべしという所でしょうな。


・マクロ的に銀行預金を減らせ・・・・・・だと??

ちょっと戻りまして例の預金が在庫で貸出が売り上げ云々の珍理論に関する質問も飛び出すのでした。

『(問) 金融機関の経営についてお伺いしたいのですが、挨拶要旨の中で、 金融機関が困っている根本的な原因は、借りる人がいないのにお金が集まっていることだと、つまり在庫にあたる預金が多すぎるのではないかというご指摘だと思うのですけど、これに対して金融機関は具体的にどういう対応をすれば良いか、預金の制限みたいなことがあり得るのか、ご見解をお聞かせください。』

まあそういう質問はして欲しい所ですな。でもってお答え。

『(答) これはマクロ的な問題を指摘したわけであり、個別の金融機関の経営について、私からどうこう言うというのは差し控えたいと思います。』

じゃあ何であんな話をしているんだよ。

『そのうえであえて申し上げますと、全体でそうなっているということは 個々でもそうなっているということですから、それは個々の金融機関としてお考えになっていく、またお考えにならざるを得ないと思っています。』

全く何を言っているのかわかりませんが、そもそも論として「マクロ的な問題を指摘した」んだったら何で「必要なのは在庫減らしです。」って個別問題のような言い方をするんでしょうか。「マクロ的に問題で在庫減らしが必要」なんだったら、行うべきは民間部門の資金余剰を削減することであって、そうなりますと今のマクロバランスからみたらどこからどう見ても「財政引き締めが必要」ということになりますし、大体からして「マクロが問題」なのであれば民間金融機関にケツ持ちをさせるというのはマクロ政策の問題を押し付けているという話に他ならないのですが何を言ってるのか分かってお話してるのかなーとちょっと頭の中身を拝見したくなるような説明なのでした。


・妙なことだ発言へのツッコミも来ました

『(問) 金融緩和政策と銀行経営のチャプターのところで、日本経済全体に良いことが起きている中で、「それが金融機関にはやって来ないという のは妙なことだ」というふうにおっしゃっていますが、その原田委員の理論を敷衍していくと、銀行はみんなハッピーだということになるような気もするのですが、実際には、地銀協などが公の場で、いわゆる慢性的なストレス、いわゆる利鞘の問題のことを言われていて、何か少し食い違いが あるような気がするのですが、改めて副作用についての考え方を教えてください。』

「原田委員の理論を敷衍していくと」ってこれはまたイヤミな表現ですな(^^)。

『(答) 全体で良くなっているわけですから、個々も良くなってもおかしくないのではないかということを申し上げたわけです。そのうえで、なぜ そうなってないのかと言いますと、色々問題あるとは思いますが、貸出が 増えているけども、預金がそれ以上に集まってしまっていることが問題だということになります。』

ちょwwwwwwwww

経済全体の話はマクロの話ですが、さっき(質疑応答の順序ではこっちの質疑の方が後です)預金が余っているのはマクロの問題って言ってませんでしたっけ??????

『普通のビジネスであれば、売れないものは仕入れ ないと思うのですが、仕入れざるを得ないからこうなってしまうのだと思います。この点ついて、各金融機関の経営について私からどうこうと言うことはありません。普通の商店であれば、売れないものは仕入れないのだから、やはり何か工夫されることが必要なのではないかと申し上げたということです。』

そもそも信用創造の基本がわかっていないので単位は差し上げられません、来年再履修してください。

ちなみにこれに続けて、

『(問) そうすると、個々の経営に対してではなく、一般論で結構ですけど、 そういう状況があって、預貸率が改善しないのであれば、銀行は預金を集めることをある程度絞るような対策を考えていく方が合理的ではないか とお考えでしょうか。』

『(答) 一般論で言えば、その通りだと思います。 』

という答えになりまして、個別金融機関という意味ではそれで良いのですが、その前の時点で預金超過になっているのがマクロの問題という話をしていて、それはまさにその通りで政府部門の大資金不足の反対側が民間資金余剰なのですが、結局ジンバブエ先生は問題の解決がどこにあるのかという話が全然整理されていないというこの残念な事態、という事になる訳ですな。


・まあ突っ込んでいるアタクシの方が大人げないと言ってしまえばそれまでかもしれないんですけど・・・・・・

まあこういうのを取り上げるアタクシも大人げないのでしょうけれども、どうも性分として気になってしまうのですよね・・・・・・・ということでこんな質疑がありました。

『(問) 当県の経済情勢についての質問となりますが、先週、駅前の老舗の百貨店が今年9月に閉店すると発表をしまして、立地から考えても県内経済への影響は大きいかなと懸念されている状況があるのですけれども、それに関して、もしご見解があれば教えて頂きたいのと、出席者の当県の代表者の皆さまからもそのような声があったかというところも教えて頂きたいと思います。』

って質問があって、想定問答の世界だろうと思ったらさに非ずで・・・・・・・・

『(答) 私は山梨の個別の商業の状況をよく理解しておりませんので、百貨店の閉鎖について十分なことを言うことはできないのですが、一般的に言えば、地方の商圏が郊外に移り、駅前が衰退しているというのは多くの都市でみられることですので、そういうことかと思います。』

・・・・・・・・日銀を代表して金懇に行くんだからせめて直近の地域での大きなニュース(ニュースが5日で金懇が6日)である(と思われるのですが甲州人じゃないので実際の所はどうなのかしら)ところの山交百貨店さん閉店に関する予習しておけよと思うので、その場の言い方の流れ方次第で印象は全然違うかもしれないので何ともではあるのですが、「地元で長年営業をしていた百貨店が閉店」というシンボリックな話を「他の地域でもよくあること」みたいな感じで簡単に言っちゃうのってどうなの(甲州人の山交百貨店さんへの思いの度合いにもよるでしょうな)とは思うのですよ。まあ続きを一応引用します。

『ただ、私の印象では、アーケードのついた商店街等は、まだ活力を持っているのではないかと感じました。個別の企業についての出席者からの発言は、あったとしても言わないことになっていますが、一般論として言いますと、当地の商業の状況についての発言は無かったと記憶しています。一般的に、生産、製造業の話と、観光業の話が多かったです。』

って感じでした。なんかこういう質問って基本的にほっこりとした質疑になるような気がするんですが、段取りになかったとか実はH記者が質問を浴びせてきたのでこのような妙な守りの回答になったのか、とかまあよくわからんのですが、アタクシが何で引っ掛かったのかと言いますと、この質疑以外でもこのようなやりとりがありまして、

『(問) 消費増税が行われると、山梨県の観光に対するダメージというの は、他の県に比べて大きいのではないかという感じがします。また、米中貿易摩擦の電気機械とか生産用機械に対しての影響も、他県に比べて大きくなってしまうのではないか、それからインフラ網の整備、リニアとか中部横断道が整備されれば、逆にストロー現象によって人が減ってしまうの ではないかという声も聞くことがあるのですが、それをどう考えるか、打開するには何か方策というのがあるのでしょうか、それをお聞かせください。』

ってまあ質問が網羅的過ぎて手に負えないのも分からんでもないですが、のっけからいきなり、

『(答) 私は、山梨県の固有の問題について、詳しくないわけですが、消費増税の影響が特に山梨県で大きいと悲観的にお考えになることはないのではないかと思います。(以下割愛)』

って「私は、山梨県の固有の問題について、詳しくないわけですが」ってまあ正直ちゃあ正直ではあるのですが、せめて「山梨県に本格的にお伺いするのは初めてなので誠に恐縮ながら今回色々とお話をお伺いしました印象をもとに述べさせていただきますと」位の言い方しろよ〜って思いますし、1回ならともかく、短い会見の中で2回「よく知りません」的な物言いをするのってさすがに失礼じゃないのと思ってしまいますけど・・・・・・・・

いやまあその場に居合わせ訳ではないですからこの物言いが単なる謙遜発言に聞こえただけで済んでいるんだったらそれはそれで問題ないですし、いちゃもん付けてゴメンナサイってな所なのですが、この会見要旨って完全な文字起こしとは違ってスタッフの方で表現等丸めて作っている筈ですから、丸めた結果がこれというのはちょっと気になるんですよね・・・・・・・・・


ちなみに、櫻井審議委員の昨年10月の秋田金懇での会見だとこんな感じになるんですよねー。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2018/kk181012a.pdf

『(問) 県内の景気の現状について、本日の意見交換を通じて、印象が変わった点を教えて下さい。

(答) 印象が変わった点を率直に申し上げると、まず当地に来て実際に見学をさせて頂いたり、お話を伺ったときに、想像以上に産業基盤が強いと感じたことです。それから、予想していたよりも人口問題、労働力の問題がかなり深刻だと感じたことです。私どもは金融経済懇談会で日本の各地に行ってお話を伺う機会があるのですが、特に当地ではこれらの問題が決定的に大きいとの印象を持ちました。』(この部分直上のURL先の2018年10月11日櫻井審議委員秋田金懇における記者会見より)

・・・・・・って櫻井さん物凄く興味を持って色々と見て聞いて回ってきましたってのを説明している訳でして、全部真似は出来ないにしても、ちったあ見習って頂きたいと思いますが、どうせもう任期残り1年だから下手したら金懇あと1回(普通に考えれば2回だがサイクルがしらっと半年超なのよジンバブエ先生って)なんで時すでにお寿司なんでしょうかね。


まあ何ですな、この部分は別に噛みつく必要ねえじゃんと言われてしまえばそのとおりですし、政策と関係ないところで人格非難ですかって言われるとどうもすいませんということなのですがジンバブエ先生の場合金懇挨拶における金融政策と金融機関の部分でいつも通りの平常運転ではありますけれども金融機関に喧嘩を売って回った挙句に会見でこれ、ということなのでアタクシも噛みつきたくなってしまう次第なのですよね。

ま、物の言いようが云々ってお前こそ何を言ってるんだというツッコミで矢が刺さりまくって針山みたいになりそうではありますけれども、まあこの辺りは人の振り見て我が振りなおせとはよく言ったもんだと自戒も込めて思ってしまいましたでございます。と締めてみました(^^)。


〇今日は短国3M(メモ)

GCが昨日のTKRRでも相変わらず▲3bp台で推移して、昨日の6Mは▲14.35/▲13.75とかになっていまして、何でそうなるという感じですが、ドル円ベーシススワップが今年は10連休とか余計なものが入っているので、その関係でいつもと需要が出てくるタイミングがずれている説というのは聞いたりしましたが、いずれにせよ毎度のパターンと微妙に違いますがなという所でメモだけ。




2019/03/07

お題「輪番4800で輪番減額は最終段階に/原田審議委員金懇今回は破壊力が足りませんな/ECBネタ」

なんじゃこの「有識者」は????
https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019030502000082.html
2019年3月5日 朝刊
元号懇メンバー候補に山中教授 意見聴取、林真理子さんらも

まあ出てきた案になんか意見を言いますよ位の建付けだからこんなもんで良かろうということなのかもしれませんが、当代一流の漢学者、国文学者、東洋史学者などが厳かに宮内庁の一室に集まって缶詰になって慎重に検討、みたいな図にはならないんですかそうですか。

〇輪番4800でしたな

注目の長期輪番オファーですがご案内の通り・・・・・・
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190306.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,800 2019年3月7日
国債買入(物価連動債) 250 2019年3月7日

ということで4800億円になりました、4700だと思ったのに残念無念という所ですが、まあ残念無念というのは当たらぬも八卦の話はさておきまして、4800×4だと月間の5−10輪番が19,200億円ということで1.9兆円を超えるというのが気分的にもう一声!って感じがして残念という所ではございまする。

でもってこれを前提にしますと、暦年2019年の長期国債買入残高(ただし額面ベース)の増加見込み額は今の時点で19兆3,026億円になりまして、まああと1バゲットの減額はしてもそんなに無理が起きないとは思うのですが、オーバーシュート型コミットメントとの整合性を取ることを勘案すると(これは4700で計算しても大差ないので昨日と同じ話になりますけれども)2バゲット減額するのはちょっとギリギリ感が強くなるように思えますので、輪番減額はあと1バゲットやるのか、それともまあ20兆円の所まで来たので助さん格さんもういいでしょうとなるのか、まあそんな辺りじゃネーノと思うのでありました(個人の山勘です)。

でもって市場の反応をクリップしておきますね。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N20T1HV
2019年3月6日 / 15:18 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は上昇で引け、長期金利-0.005%に低下 日銀オペ結果で強含み

『 <15:07> 国債先物は上昇で引け、長期金利-0.005%に低下 日銀オペ結果で強含み

国債先物中心限月3月限は前営業日比11銭高の152円62銭となり、上昇して取引を終えた。日銀が通告した「残存5年超10年以下」を対象とした国債買い入れオペは、オファー額が4800億円と市場のコンセンサスと一致した。買入予定額を巡る不透明感が後退したことを受けショートカバーが入った。オペの結果も無難と受け止められ、後場に上げ幅を拡大。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp低いマイナス0.005%に低下した。』

『長期対象の国債買い入れオペは需給悪化懸念を和らげる結果となり、国債先物は一時152円63銭まで上昇した。現物市場ではプラス利回りが確保されている超長期ゾーンに国内勢とみられる押し目買いも入った。』(以上上記URL先より)

ということですが、まあオペ結果云々の前にオペオファー入って下げ止まりから確りしてきていましたし、4800だともうちょっと減らすかという期待(アタクシも本命4700で4500は中々難しいと思うけどやったらイイネ!でしたし)よりは多めちゃあ多めですが、そうは言いましても輪番5回に換算したら4300→3840と一発で460も減らしたことになりますので、何のかんのと言いましても冷静に考えれば結構な減額ではあるのですが、その減額に対しても債券市場ちゃんさっくり戻るわとなっておりまして、要するにおまいら輪番額が決まったら一旦出尽くし買いだったんだなと言いたくなるような典型的な動きでワロタですし、引け強で終わるくらいなら4700でも良かったじゃんとかただの結果論にも程があるのですが、そんなこんなを思いましたです、はい。


でまあさっきの話に戻って、残り1バゲットを減らすということになると、中期後半か超長期前半となるのが日銀買入とカレンダーベース市中消化額とのバランス上妥当と思われる(あるいはどっちも少しだけ減額とかだが2バゲット下げるとなると基本的に2回減額チャンスが来ないといけないのは面倒)のですが、これがどうなるかとか完全に妄想の世界ではあるのですが、まあ色々と論点を頭の中で発酵させているところですので(足元の地合いというかバランス、という問題はよく言われますが、もう少し中期的な戦略を考えた場合どうなのか、という論点から入ると答えに違いが出てくると思うのよね)、まとまったらまた後日。


#あと輪番とは全然関係ないですがTKRRのGCT/Nは▲0.035%でしたな



〇大先生の山梨金懇ですが前回対比でエンターテイメント性が無いのが惜しまれますな

ということでジンバブエ先生の金懇は今回山梨で行われました(引用はPDF版の方から
行っています)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190306a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190306a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 山梨県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
日本銀行政策委員会審議委員 原田 泰


・前回の石川金懇のようなネ申がかった勢いが無いので赤点再履修

さてさて、大先生の金懇と言えば前回の石川金懇が凄まじい作品に仕上がっていた訳でして、鬼気迫るものがありまして読んでいるアタクシの方も精神を削られる(駄文では一生懸命エンターテイメント仕立てにしましたが真剣に読むと精神削られますぜいやマジで)という大変に素敵な作品になっていたのです。まあどの程度入神の挨拶かと言いますと何せ・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko180704a.htm/
【挨拶】わが国の経済・物価情勢と金融政策 石川県金融経済懇談会における挨拶要旨

の最後の所の『QQEに対する認知的不協和』を改めて読み直して頂きたいものだと思うのですけれども、アタクシの突っ込み作品はこちらになります。
http://www.doramemon7743.sakura.ne.jp/doramemon1807.html#180705(昨年7月5日の作品)

でまあリンクだけ見てほほーと流す方も多いと思いますので、サービス(いやがらせではありません^^)で石川金懇の一説を引用しましょう。

『さらに、金融緩和政策の手段そのものを否定しようという心理もあるように思います。大胆な金融緩和は危険であり、そのような手段を取るべきではないというのです。人間は、太古からこのような感情をいだいていたのかもしれません。神話は、神に挑戦した人間たちの悲劇を繰り返し描いています。バベルの塔、太陽に近づいたイカロス、土で作られ、命を与えられたゴーレムが破滅を導いた神話です。QQEに反対する人々は、QQEも神の領域を侵すものだと言いたいのかもしれません。』(2018年7月4日石川県金懇における原田審議委員の講演要旨より、以下同様)

『また、歌舞伎の雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)には、朝廷が、邪悪な心を持った早雲(はやくも)王子を皇位から遠ざけるため、鳴神(なるかみ)上人に寺院建立を約束に、本来は女子として生まれるはずの子を超人的な力―変成男子(へんじょうなんし)の行法―により世継ぎの皇子として誕生させたという話があります。ところが、朝廷は、上人は自然の摂理を侵したとして、寺院建立の約束を反故にしてしまいます。しかし、QQEは自然の摂理を侵すような方策でしょうか。』

『ローマに税金を払うべきか否かを問われたイエスは、銀貨に皇帝の肖像が彫られていることを人々に確認させた後に、「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返せ」と言われました。貨幣に関わる金融政策は、神のものではなく人間のものです。人間のものであれば、理論と事実に基づく議論を避けるべきではありません。』(ここまで2018年7月4日石川金懇での原田審議委員講演要旨より引用)

ジンバブエ先生は藁人形論法炸裂が芸風だったのですが、この回の金懇では藁人形論法に加えて、ネ申の視座を加えた解説によってQQEへの懐疑論を一刀両断に叩き斬る(なお斬っているのは藁人形なので何の意味もない)という大暴れっぷりを示しておられましたが、今回の金懇に関してはこれから引用しますけれども、今回は認知的不協和の話も無いし、ましてや神だのイカロスだのイエスキリストだのも出てこないということですっかり拍子抜けの巻となっております。

とは言え中身は相変わらずのしょうもないスッカスカの内容になっているのでツッコミは致しますが、あの昨年7月に見せた鬼気迫る勢いはどこに行ったのでしょうか?????

まあ何ですな、前回金懇が昨年7月4日で、その後YCC柔軟化とインチキガイダンスの強化が行われた訳ですが、それ以降って大先生政策決定会合の結果に反対しているというのがあって、反対していることによって毒気が抜けた結果狐憑きかと見まがう勢いを失ったのか、などとも思いましたが、さらに考えますと前回金懇ってとにかく「この政策は正しい」ということを強調するために強引な説明をしていた訳でして、いやまあ今回だってそのベースライン自体は同じで無理矢理な説明をしているのですが、ただ反対をしているだけに、何が何でも擁護の論陣である必要もない、ということで鬼気迫らなくなったのかもしれませんな、などと色々と考えますが、まあ単純に前回の金懇挨拶がさすがに看過できないレベルのアレである、という話になって自主規制だか手枷足枷首枷着けられたのかは知りませんが、ついにレッドゾーンを越えてしまったので(その前からとっくの昔にレッドゾーンだろという説もありますがそれはさておき)勢いが失速しただけなのでしょうな。

・・・・と申しますのは、今回の金懇ですけどその後の会見でのヘッドラインが兎に角お前は何を言ってるんだというような内容になっていまして、なんとなく某H記者のイヤミ成分も入っているかもしれませんが、それにしても両建て発言ばかりしているような会見ヘッドラインになっておりまして、今回は会見の方でもしかしたら本領を発揮しているかも知れないな(なお会見についてはめんどいので今日の要旨待ちでヘッドライン斜め読みしかしていません)とか楽しみにしております、よー知らんけどな。

というような掴みは兎も角として今回の金懇挨拶を拝見しませう。


・いきなりの出オチで最早笑うしかない

最初のご挨拶部分です。『はじめに』って小見出しです。

『おはようございます。日本銀行の原田です。 本日はお忙しい中、山梨県を代表する皆様にお集まり頂き、懇談の機会を賜りまして、誠にありがとうございます。皆様の前でお話しできるのを大変光栄に思います。』

聴いてる方はよりによって何でこいつなんだよちょっと特急かいじで雨宮さん連れてこいやとか思っていそうですがそれは兎も角。

『また、皆様には、日頃から私どもの甲府支店をはじめ、日本銀行各部署の業務運営に多大なご協力を頂いており、この場をお借りして厚くお礼申し上げます。』

でもって次がいきなりの出オチで最早笑ってしまうしかない。

『日本銀行は2%のインフレ目標達成を目指して 2013 年4月から量的・質的金融緩和政策(QQE)を導入、その強化を図って参りました。本日は、まず、物価以外の成果を説明し、最後に、最近の経済と物価情勢についてお話しさせていただきます。』

>本日は、まず、物価以外の成果を説明し、
>本日は、まず、物価以外の成果を説明し、
>本日は、まず、物価以外の成果を説明し、

ちなみに前回の金懇では「本日は、日本銀行が行っている金融政策の成果、巷間聞かれますQQEへの批判的なご意見について私の考えを説明し、最後に直近の金融経済情勢の確認と2%の物価安定目標達成の道筋をご説明したいと思います。」(2018年7月4日石川金懇での原田審議委員挨拶要旨より)という掴みになっていたのですが、ついにもう「物価以外の成果」とか言い出しまして開き直りにも程があるというところですが、皆さまご案内のように、置物大師匠様の2013年8月28日京都商工会議所での講演ではQQE政策の波及メカニズムの図というのをお出しになられています。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
こちらの6枚目に、『「量的・質的金融緩和」の波及経路』というのがある訳でして、これを見ますとどこからどう見てもインフレ期待が上がっていくのが波及経路の一丁目一番地であって、その一丁目一番地がワークしていないわけのに「成果が出ました」というのはおかしな話な訳ですな。

その場合考えられるのは、「そもそも考えていた波及経路が間違えていたけれどもラッキーパンチだった」のか、「全く別の要因によって起きていることだった」という事なのか、という風に掘り下げて考えて行くのが正しい思考なのではないか、と存じますが、その後消費増税でダメになった、というような話を何度も置物一派の皆様はしておいでになっているように、消費増税如きで飛んでしまったということを考えるに、QQEの効果がさほどなくて、実は改善したといわれるものは別の要因が効果を発揮したからなのではないか、という風に思ったりするのですが、何せ置物理論というか、この方々の机上の空論モードによれば、理論によれば効果が出るのがアプリオリに正しい、ということになってしまっていて、他の要因の効果とかそういうのを考えないし、しかもマイナスになった方は他の要因によるものという整理になってしまうという幸せ回路が脳内で作動しているので会話が成立しない、というようなことになってしまう訳ですな。

でもってですね、前回の金懇挨拶の場合は今回のように「物価以外の成果を説明し」とまで開き直っていなかった面があったと思われまして、その結果として理論通りに行かない事に関する認知的不協和がジンバブエ先生の中で絶賛発生しまして、神だの自然の摂理だのイエスキリストだのが登場するということになったのかも知れませんな。


・ということで今回もまた勝手に金融政策の成果にしてお話が始まる

最初の小見出しが『1.金融緩和政策の成果 』ということで、そのトップバッターが『雇用の改善』となっております。

『金融政策の成果としてまず挙げられるべきものは雇用の改善です 1。図1は、正規と非正規に分けた雇用です。図に見ますように、QQE を始めた当初は、増えたのは主として非正規の雇用でした。ところが、2015 年初頃から正規の雇用も拡大するようになりました。』

本文中に図表が入っていまして、図表1(図1 雇用の推移)ってのを見てちょという感じではあるのですが(ちなみにこのグラフの横軸が読みにくいったらありゃしないんですがもうちょっと何とかしろ)、そこの系列「雇用者(男女計、正規) 」を見ますと「拡大するようになりました」っていう程動いているかよというような図表でして、もうちょっとちゃんと説明しろという感じです。

まあそれ以前の問題として、QQEの効果で雇用者が増えましたと言いたいようなのですが、この図表1では、「QQE導入」というところで線を引いていて、その区切りは2013年1〜3月と4〜6月の間になっているのですが、金融政策の効果が雇用に出るまでのタイムラグとかそういうものを見事に無視した考察になっているのがお前は何を言ってるんだという話ですし、しかもこのQQE前と後の比較、として図1の中にあるのが、

「雇用者(男女計、正規) QQE前:年率 -0.6% QQE後:年率 +1.1%
雇用者(男女計、非正規) QQE前:年率 +1.5% QQE後:年率 +2.4%」

みたいな比較(表記の体裁は若干アレンジしました)になっているのですが、図の脚注に、『QQE前/QQE後の雇用者の成長率は、各々2008年1〜3月から2013年1〜3月 まで、2013年1〜3月から2018年10〜12月までの平均成長率(年率ベース)を表す。』って何でその期間を取ったのかよくわからんのがもうねという感じでございます。

まあもっとそれ以前の問題としましては、先ほどから申し上げておりますように、そもそもQQEの効果で雇用が改善しているのか、という根源的な問いになる訳で、東日本大震災からの戻り局面における改善基調とか、2013年には消費増税前の財政拡張ありましたねとか、駆け込み需要で仮需が発生した可能性はどうなのよとか、数々の他のファクターについては丸無視で全部QQEの効果(しかも即効とな)としているのがなんともかんともという毎度のツッコミになるのでした。


・どう見てもQQEによって改善したんじゃねえだろうというのまで効果としてこじつけるのは如何なものか

でもって1つ飛ばして『自殺者数も減少』という小見出しで、

『雇用情勢が悪く、仕事に就けないと、自分が社会に必要とされていないのではないかというストレスをもたらします。また実際、失業者の増加とともに自殺者が増えるという研究があります 4。であれば、失業率が低下すれば、自殺者も減少するはずです。』

いやあのそれは一つの説なのに何で「はずです」に飛躍させるんだよと思いますがそれはさておき、

『図3は自殺者数と失業率を示したものですが、失業率が上がると自殺者が増加し、下がると減少するという関係があります。自殺の原因は経済的問題ばかりではないと思いますが、それでも景気好転、失業率の低下によって自殺者数は 2012 年と比べて7千人以上減少しています。』

っていうとスゲーって思ってしまいそうですが、その先にある「図3 失業率と自殺者数の推移」を見ますと、2010年〜2011年辺りから失業率も自殺者数もトレンド持って減少しておりまして、別にQQEをぶっこんだからこの傾向が加速したというような状況はこのグラフからは全く読み取れない訳で、そうなるとQQEの効果として説明するのは何ぼ何でも無理がありませんでしょうか、とまあこのように思うのですが如何でございましょうか。

似たようなのが次の小見出し『出生率も微増』ですけど、

『 私は、出生率の改善もあったと思います。図4は 20-39 歳人口の失業率、婚姻率、出生率を示したものです。婚姻率と出生率が相関していることは良く知られた事実です。図でみても概ね同じような動きをしています。』

『出生率(20-39 歳人口千対。以下、出生率)を見ると、従来はトレンドとして低下していましたが、2005 年から現在までで、失業率の低下とともに出生率が上昇しています。』

って言ってるんだが、そのグラフを見ると婚姻率とかほとんど動いていないようにしか見えないし、出生率は確かに近い所では改善傾向示していますが、その改善傾向って2006年くらいをボトムにして改善傾向になっていて、その間失業率が上がったり下がったりしてるし、グラフを見る限りにおいて、出生率って直近数プロット(なので数年)では下がっているようにしか見えない(ちなみに婚姻率も直近数プロットは微減に見える)んですがという所です。まあ図表を見てくんなましという感じではあるのですが、これをもってQQEの効果と言うのはこじつけどころかインチキなんじゃネーノという風にしか見えないのですがどうでしょうかねえ。


その次の小見出しの『財政も改善』の所に関してはもはや本文の方は引用しませんが、『図5 一般政府の財政収支と政府債務(対名目GDP比)』の凡例「財政収支」を見ると、別にQQEと関係なく財政収支の対GDP比って2009年位の所からトレンドとして改善しててQQEが改善加速させているようにも見えないという代物になっている、という感じでまあこの辺り、そもそも論としてQQEの効果というのには無理がある話を並べていますな、としか申し上げようがないですし、大体からしてこんなに「改善は実は以前からのトレンド線上でした」って図表を並べてしまうと「あれれ??」ってなって逆効果なんじゃないですかねえ(鼻ホジホジ)という感じではありますな。


・どう見ても怪しいのだが数字の裏を取りに行くのが面倒(というか手間暇が必要)なので・・・・・

次の小見出しが『個人の所得格差も縮小』となっているのだが、どう見ても説明が怪しいのですけど、これ反論するとなるとちゃんと定義の部分から掘り下げて確認しないといけなくて、前回の金懇でもそうやってツッコミをしてみたりしましたが、これそこそこ手間がかかるのでちょっと本日はパスしておきますが、その次の小見出し『地域間の所得格差も縮小 』と共にナンジャソラというもので、どこで無理矢理な説明になっているのかの確認に多少時間を賜りたいのでパスします。


・効果の最後は腹筋崩壊

というこの謎のQQE効果宣伝ですが、最後の小見出しで腹筋の崩壊を禁じ得ない訳でして、その小見出しが『日本は寛容な国になっている』ですよ何ですかそれは????????

『最後に、景気拡大が続いていることで、日本は海外の文化、人材、サービス、商品への関心と寛容さが高まっているように思えます。先進国で反自由貿易の声が聞かれる中で、日本は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)( 2018 年 12 月発効)、日 EU 経済連携協定(2019 年 2 月発効)を締結しました。日本は、いまや世界において自由貿易の旗手となっています。また、2018 年 12 月の出入国管理法の改正によって、海外の労働力を呼び込むとともに、その待遇を改善しようともしています。』

・・・・・・・・・・もはや何を言ってるのかよく分からないのですがとりあえず腹抱えてワロタわ。TPPの締結がQQEの効果って風が吹いて桶屋が儲かるどころの騒ぎじゃないぞそれ。


・今回は小見出し『2.最近の経済情勢 』は読む気も起きませんので割愛しますが最後の所だけ

『2.最近の経済情勢』の部分は、

『金融政策の成果として、短期的な経済指標ではないものについてご説明して参りましたので、これからは最近の経済情勢についてお話ししたいと思います。』

ということでああだこうだとあるのですが、ああそうですかふーんそうですかと鼻が鳴る程度の物件でございますのでパスしますが、最後の所はお前は何を見ているんだという感じでして、

『なお、昨年までは、金融不均衡、バブルを懸念する議論もありましたが、株価が大幅に下落してしまいましたので、現在、株式市場において、金融不均衡があるというのはいささか無理な議論だと思います。』

って金融不均衡は株式市場だけに出るもんじゃないですし、株価が下がったから不均衡が解消されたのかという話じゃなくて金融の不均衡が資産価格のオーバーバリュエーションになって表れるとバブルって奴に繋がるとかそういう話だろいい加減にしろとは思いました。


・相変わらず金融業務への理解がない上にロジック立てが無茶苦茶

ということでだいぶ飛ばしてしましましたが、『3.金融緩和政策と銀行経営 』という小見出しに参ります。

『このように、QQE は長期的、構造的にも、また短期的にも経済を改善していますが、長期の金融緩和が金融機関経営を困難なものにするという議論があります。これについて私の考えを述べたいと思います 13。』

まあ碌な考えが出てこないのは分かっていますがこの先の論理立てがかなりの壊滅状態。

『まず、大胆な金融緩和によって日本経済全体に良いことが起きているのだから、それが金融機関にはやって来ないというのは妙なことだと思います。』

えーっと経済が良くなっても個別業種では良くならないという事は起き得ると思うのですが・・・・・・・

『図 11 は、産業別の名目 GDP で金融・保険業(以下、金融業)と製造業の GDP と全体の GDP を日米で見たものです。アメリカでは、全体の名目 GDP が伸びている中で金融業も伸びているのに、日本では全体の GDP が停滞しているなかで金融業の GDP はことさらに停滞しています。』

って何を言ってるんだという話から始まりまして、

『さらに、2008 年9月のリーマンショック後、名目 GDP が最低になった 2009 年からの回復の様子を見てみましょう。日本は名目 GDP が下落し、その後 2012 年まで横這っていましたが、QQE を行った 2013 年から回復しています。それとともに製造業は回復していますが、金融業は回復しているようには見えません。しかし、図の表にあるように、12 年まで年率 2.5%ずつ低下していた金融業の GDP が QQE 後ゼロに戻りました。名目 GDP が拡大すれば、金融業の GDP もまた拡大しやすいことが理解できるでしょう。 』

って何かこう話がこんがらがり過ぎて訳分んないんですが、

『図 11 でアメリカを見ると、リーマンショック後も、名目 GDP は成長し、それに応じて製造業も金融業も伸びています。さらに、日本のように 2012 年を境に成長率が異なるということもありません。リーマンショック後、すぐに大胆な金融緩和政策を行ったからです。』

ってリーマンの落ち込みが大きかったからとか、財政出したからとか、そういう話は全部スルーして金融政策の話になるのがジンバブエクオリティ。

『ここでアメリカの金融業が名目 GDP の伸び率を上回る成長率を示しているのは、アメリカ金融業の企業家精神によるものでしょうが、それでも名目 GDP が伸びなければ、その分は成長率が低下しただろうと思います。』

「アメリカ金融業の企業家精神によるもの」ってナンダソラ。

『2%の物価目標の達成を目指す大胆な金融緩和政策は雇用を改善し、賃金を引上げ、株価上昇に見られるように企業の利益を引き上げています。名目 GDP はすべての賃金と利潤を足し合わせたものですから、当然に名目 GDP も増加します。名目 GDP が増加すれば、銀行の名目 GDP も増加するはずです。銀行からお金を借りている企業の経営状況も改善し、もっと借りたいという企業も出てくるはずです。また、信用コストも低下しています。 』

申し訳ないんですがもっとちゃんと説明してくれませんかねえ。ということでその次の所で例の珍理論登場。


・また「預金は製品、貸出は売上」理論が登場していますが

次の『金融緩和は借入需要を作っている 』という小見出しですが、

『図 12 は、国内銀行の貸出と預金を見たものです。まず貸出を見ますと、バブル崩壊後、低下トレンドにありました。2001 年の量的緩和(QE)後は時間がかかりましたが、QQE 後はすぐに、貸出が増えています。2013 年 3 月から 2018 年 12 月までで貸出が 74 兆円増えているのですが、預金は 147 兆円も増えています。』

でもってこの次が先般金融政策決定会合議事要旨でも出ていた珍理論。

『銀行にとって、預金はいわば製品、貸出は売上です。売上と製品の差は在庫です。貸出以上に預金が集まるのは在庫を増やしているのと同じです。必要なのは在庫減らしです。金融機関が困っている根本的な原因は、借りる人がいないのにお金が集まっているということにあります。』

ツッコミも先般の時と同じですが、銀行が貸出を行うと貸出金の見合いで預金が増えるという簿記3級の基本がわかっていないのでやり直しだし、「必要なのは在庫減らしです」って銀行が主体的に預金減らすことが日本の現状で実務的に可能かという事を全く考慮に入れないで金懇の席(当然金融機関の経営クラスの人が出ている筈ですよねー)で平然と発言する時点で不見識極まりない上にお前は4年間政策委員として何を見ていたんだという話だし、大体からしてマクロ的に銀行の預金を減らすためには民間部門の資金余剰を減らさないといけないということですので、そうなりますと政府部門で引き締め政策を行わないといけない、という事になるのですがそういうこと分かって貴方は「必要なのは在庫減らしです」って言ってるのかと小一時間問い詰めたい訳です。

まあ何ですな、さきほどQQEの効果で「日本は寛容な国になっている」って言ってましたが、確かにこの程度の見識な上に、政策委員に就任以降も何の進歩もしていないというような物体がやれ政策委員だとか、進歩はしたけど元々の間違いは認めないし責任も取らない置物が副総裁だってやっているんですから確かにQQEの効果で日本は寛容な国になっているのかも知れませんな、と思うのでありましたとさ。


・やっと飛び出る藁人形

その次の小見出しが『金融を引き締めてもイールドが立つ保証はない』でありまして、

『大胆な金融緩和による金利の低下が銀行の経営状況を悪化させるというのは、金利を上げればイールドが立つ、長短金利差が拡大し、貸出金利も上がると多くの金融関係者が考えているからでしょう。』

となっていますが、そもそも「金利を必要以上に下げ過ぎている」あるいは「金利引き下げによる需要の前借効果も無いのに意味なく金利を下げ過ぎている」というような論点での批判をしている訳で、「緩和政策は緩和政策として継続するんだが過剰に無駄な金利引き下げは止めろ」というのが主な論点なのに、「金融を引き締めれば」というような文脈で話をすること自体が金融機関に喧嘩を売っている、という意識が無いんだろうなあ、というのは把握しました。

でもって次の『物価が下がれば金利も下がる 』という小見出しにはまた例によって例のごとくの藁人形論法が飛び出しまして、その小見出しの最後の方になりますが、

『銀行が金利を上げて欲しいというのは、金利を上げればイールドが立つ、長短金利差が拡大すると考えているからでしょう。しかし、前述の通り、事実を見ると金利を上げてもイールドが立つとは限りません。また、金融緩和を止めれば、物価は低下し、景気が悪化して名目金利も低下します。』

とありますように、先ほど申しました通りで金融引き締めをしろという風に言っている、という解釈になっているのがもう話にならないですわなと思いますし、それ以前の問題として金融緩和止めたら物価低下するのかねというのも何だかなあとは思いますが、その次に久々にまた例のアレが来ましたので引用します。

『金融機関は、金利を上げても、為替も株価も債券価格も動かず、企業の借入れ意欲も低下せず、ただ運用金利だけが上昇すると期待しているようですが、そんなことはありえません。』

お前は金融機関の事を馬鹿にしているのかと小一時間問い詰めたい訳でして、こんな話を聞かされた山梨の金融機関の経営者クラスの皆様にご同情申し上げたくなるのですが、そんな期待をするのはどこの馬鹿だよという話であって、「そんなことはありえません(キリッ)」とかお前の脳内妄想の方があり得んわ、ということでやっとここでジンバブエ先生の藁人形論法来ましたという感じではございます。


・物価に関する話が混乱していて笑えるのだが

今申し上げた『物価が下がれば金利も下がる 』という小見出し部分の先頭にちょっと戻りますと、

『また、物価が低下すれば、名目金利も低下します。その時、通常は実質成長率も下がるので、物価と実質生産の積である名目 GDPも低下します。名目 GDP の低下は景気が悪くなることですから、貸出先企業の破綻で生じるコスト、すなわち信用コストが上昇し、借入需要が減少し、最終的には金利も下がります 15。』

と、名目GDPが低下すれば景気が悪くなるという名目と実質の関係はどうなったと言いたくなるお話があるのですが、論点はそこではなくて物価の話になりましてですね、

その次の章になります『4.今後の経済と2%物価目標 』という小見出しの中を見ますと、今後の物価動向の話の中でこんなのがあるんですな。

『他にも、消費税増税とは関係がありませんが、携帯電話料金の引き下げがあります。これはどれだけの大きな差になるか明白ではありませんが、消費者物価(生鮮食品を除く)の上昇率を 0.5〜1%ポイント引き下げる要因だという民間エコノミストの試算もあります 17。これらの試算が正しいとすると、当然に2%の物価上昇率目標の達成を遅らすことになります。しかし、私は、必ずしも悲観的には考えていません。と言いますのは、これらは一種の減税のようなもので、物価が下がった 分だけ人々の実質所得が増加するからです。』

という話をおっぱじめておりまして、さっきの名目GDPが下がれば景気が悪くなる理論との整合性は何ですかという感じで、まあそもそも話が混乱しているのがアレなのですけれども、どうも会見の方では更に話が複雑骨折していたっぽいので今日出る会見要旨を正座して待機したいと思います。


てな訳で、今回は最後の方の金融機関に意味不明の言いがかりをつける藁人形コーナーが中々エンターテイメント性がありましたが、前回の鬼気迫るアレ感満艦飾の講演テキストにはなっておりませんでしたのでまあこんなところで(気が付いたツッコミどころがあったら追加するかも知れません程度)。


〇明日がECB定例理事会終了日だというのに泥縄式確認(しかも手抜き版)の巻

https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2019/html/ecb.mg190221~0f3dd919fa.en.html
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council of the European Central Bank, held in Frankfurt am Main on Wednesday and Thursday, 23-24 January 2019

お前の処理能力はどうなっているんだと言われますと割とぐうの音も出ないのですが(涙)、今晩ECBがあるのに前回議事要旨をネタにするとか駆け込み需要にも程がある。


なお手抜きマンなので最後の『Monetary policy stance and policy considerations』だけしか読まないですぜ(すいませんすいません)。

『With regard to the monetary policy stance, members widely shared the assessment provided by Mr Praet in his introduction.』

この認識を詳しく見たければ前段のプラート専務理事の報告コーナーを読むと吉なのですが、

『There was broad agreement that the stance remained highly expansionary overall and that it had contributed to dampening the impact of prevailing uncertainties on financial conditions, which remained favourable. It was remarked that, alongside uncertainty about the external environment, uncertainty regarding the euro area economy had risen recently - pertaining to both the growth outlook and inflation - owing to not only lower oil prices but also the slow pass-through from wages to prices.』

全体感としてはこのようになっていて、海外の不確実性要因などがあるものの、経済に関しては内需が好調で金融環境についても緩和的に推移している。でもって物価に関しては原油価格の弱さで物価が上がらんというのもあるが、そもそも論として賃金上昇が物価上昇につながるパスが弱い状態で物価が上がりにくいというのもあるとの認識。

『There was broad agreement among members that supportive financing conditions, favourable labour market dynamics and rising wage growth continued to underpin the euro area expansion, thus supporting confidence in the convergence of inflation to the Governing Council’s aim.』

基本的な見通しは普通に明るいんですよね。

『While measures of underlying inflation remained muted, labour cost pressures were strengthening further and were expected to pass through to underlying inflation in the period ahead. In this regard, it was underlined that the euro area was still experiencing growth momentum, with labour market conditions improving and lower oil prices supporting consumption. 』

基調的な物価はあまりあってないけど、賃金の上昇がパススルーしてくるでしょうし、経済も引き続き成長モメンタムを維持している中で、労働市場の改善と原油価格の安い状態が消費をサポートするじゃろ、とまあそんなお話をば。

『Looking ahead, a key question was seen to be the extent to which the weaker growth momentum might turn out to be more persistent than currently envisaged.』

先行きの問題になる点は今起きてるやや弱いグロースモメンタムについて、そんなに長期的な悪影響はないじゃろ、となっている部分が実際どうなるやらという所ですよと。

『More information, including the March projections, was needed to deepen the analysis and obtain greater clarity before conclusions could be drawn about the medium-term inflation outlook.』

といっているので今回出てくるスタッフ見通しでどうするのかは見もの。とは言えそんなにドラスティックに変えてくるとは思われないから、会見とかでも「慎重に〜」みたいな話はサービス満点でしてくると思うのですが、スタッフ見通し大きく変更とかが無い限りはここで何かドカンと一発ってのはちょっとねえと思います。

ということで皆様の討議っぽいところ。

『Against this background, all members agreed with the monetary policy considerations put forward by Mr Praet in his introduction.』

これまた細かく見たければ前の方を見ましょうなのですが、以下に大体書いてある。

『This entailed confirming the enhanced forward guidance on the path of the key ECB interest rates and on the reinvestments of acquired assets while acknowledging that the risks surrounding the euro area growth outlook had moved to the downside on account of the persistence of uncertainties related to geopolitical factors and the threat of protectionism.』

『Significant monetary policy stimulus would continue to be provided by the forward guidance on the key ECB interest rates and on the reinvestments of the sizeable stock of acquired assets.』

『At the same time, the Governing Council would reiterate that it stood ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation continued to move towards the Governing Council’s inflation aim in a sustained manner.』

この辺の話は定例理事会後のドラギ総裁の冒頭ステートメントでも出ていた話。

『Members underlined that specifying the forward guidance on the Governing Council’s policy instruments in terms of both a time-based leg and a state-contingent leg had served it well.』

フォワードガイダンスの「時間縛り」と「条件縛り」の両面をぶっこんでいるがワークしているだそうな。

『The observation was made that, in response to the recent weaker than expected data, some easing in financial conditions had taken place through an outward shift in market expectations for the timing of a first rise in key ECB interest rates. This endogenous response was viewed as being consistent with the state-based elements of the Governing Council’s forward guidance and contributed to preserving the financial conditions on which the projected inflation convergence remained contingent. The “chained” forward guidance on the key ECB interest rates and the reinvestments was seen as functioning as a kind of automatic stabiliser, particularly in situations when further easing was deemed desirable in reaction to weaker than expected data.』

何だかなーって感じですが、特に条件ベースのガイダンスがに対して、経済物価情勢が弱くなれば、その分だけガイダンス達成が遠くなるので、政策維持の想定される期間が延びることになり、市場はそれを反映して動くので、追加政策をしなくてもその市場の動きで金融環境が緩和的になる、というオートスタビライザーの機能があります(キリッ)って認識をしているんだが、それって別に通常の政策でも同じじゃんというお話だし、それ以前の問題として、お前ら金融政策目標達成するためにやってるんだから、足元が悪化してもそんなスタビライザーが働いているよって喜んでいる場合なのかという点は小一時間問い詰めたい。

『There was wide agreement that the continued convergence of inflation to the Governing Council’s aim in the period ahead still required an ample degree of monetary accommodation.』

引き続き強力な緩和が必要な状態というのは幅広い合意が取れているよ。だそうです。

『A number of remarks were made regarding available monetary policy tools in the domain of longer-term liquidity provision. Any potential new operations should reflect the monetary policy objectives to be achieved. While any decisions in this respect should not be taken too hastily, the technical analyses required to prepare policy options for future liquidity operations needed to proceed swiftly.』

ということでここで話題になっていた「新しい長期LTROの導入」という話があるんですが、これに関してはまあこの書きっぷりだと入れるのが前提みたいな雰囲気を漂わせておりますが、内容の詰めが必要という段階のようですな。今週の会合で出るのかなあ?

『On communication, members widely concurred with the elements proposed by Mr Praet in his introduction. Accordingly, it was seen as appropriate to acknowledge that the incoming data had continued to be weaker than expected but that supportive financing conditions, favourable labour market dynamics and rising wage growth continued to underpin the expansion and gradually rising inflation pressures in the euro area.』

『At the same time, it had to be recognised that the risks surrounding the euro area growth outlook had moved to the downside on account of the persistence of uncertainties related to geopolitical factors and the threat of protectionism, vulnerabilities in emerging markets and financial market volatility.』

『In this regard, the need to communicate cautiously was stressed, in order to strike the right balance between credibility in acknowledging the weaker than expected data and conveying confidence in the adjustment towards the Governing Council’s medium-term inflation aim. 』

コミュニケーション、と最初に来ているから何事の話かと思うのですが、経済のベースラインは確りとしたものだけれども海外経済とか金融市場の動揺とか新興国の脆弱性などの不確実要素があるので、不確実性については強調するとともに、でも経済が悪い訳じゃないんだよーとも説明していくのがよろしいようですな〜みたいなご相談モードなのでしょうかね。でもってその結論が引用最後の部分で、「the need to communicate cautiously was stressed」であって、経済が確りVS不確実性のバランスを取って説明しようね、ってお話。

『Consequently, the Governing Council would reconfirm its forward guidance on the key ECB interest rates and on the reinvestment of the principal payments from maturing securities purchased under the asset purchase programme.』

ということで今回はガイダンス文言のリコンファームを行ったにとどまりましたと。

『Members agreed that monetary policy needed to remain prudent, patient and persistent and to continue to follow a data-driven approach in the period ahead. At the current juncture, a steady hand was seen as warranted and discussions with regard to monetary policy operations or the forward guidance were deemed premature.』

これでもかとばかり慎重な書き方で最後の締めが、

『At the same time, the Governing Council needed to reiterate that it was prepared to act if needed.』

ということで、まあ動かざること山の如し(ただし新型長期TLTROの導入はアリエール)というのは把握しましたので本日の決定(ったって地蔵状態だと思うが)を待ちましょう。




2019/03/06

お題「計数関連市場雑談/バランスシート政策に関するハーカー総裁とブラード総裁の講演から」

恒例の某紙による何とかストランキングとやらを拝読しましたが、その中の某部門で置物系何とかストの順位が下がって置物じゃない系何とかストの順位が上がっているのを見て味わいを感じました。


〇計数関連市場雑談

・短国買入2500億円でしたの

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190305.htm
国庫短期証券買入 2,500 2019年3月6日

ということでパターン(?)通りの2500億円オファーで、そらまあ短国金利上がったと言ってもそもそもが低かったですがなというのもありますし、どうせ期末になると需給が逼迫するでしょというのもありますし、つーことでこの程度では一々反応しませんよ、てなもんでしょうが、先週金曜日の共通担保オペ謎の折り返し増額オファーは何だったのかと小一時間、という程でもないのですが、別にどーんと構えて風林火山なのでしたら妙なところで動かんでくれダマされるではないか(笑)という所ではございますな。

http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

昨日のTKRRちゃんはT/Nで▲3.5bpで前日よりも若干金利下がったという結果になっておりますので落ち着いた形、というかさすがにそれ以上金利上がらんわなという所なので、まあそんな感じじゃろというお話ですかね、よー知らんけど。


・10年入札は微妙に甘いけど結局引けまでは利回りゼロ%が精いっぱいでしたな(なおイブニングェ・・・・・・)

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20190305.htm
10年利付国債(第353回)の入札結果

6.価格競争入札について
(1)応募額 7兆6,095億円
(2)募入決定額 1兆7,902億円
(3)募入最低価格 100円98銭 (募入最高利回り)(0.000%)
(4)募入最低価格における案分比率 74.5124%
(5)募入平均価格 101円00銭 (募入平均利回り)(-0.002%)

前場のBB出合いが▲0.5bpで輪番減額が翌日に待っているしということで、ベンダーで出ていた事前予想で足切り101.00辺りとかいう評価になっていましたが、若干弱くて100.98足切り厚め按分ということで、落札結果出てから10年カレント0%(5糸甘)だの20年カレント0.450%(5糸甘)だの先物152.46(5銭安)だのとなっていましたが、先物がサガランチ会長なのだか何だか知りませんけれども、結局引けてみると現物5糸甘先物引けとかいう結果になっていた感がします。

ということでロイターさん。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N20S1T1
2019年3月5日 / 15:16 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は横ばいで引け、長期金利は0%に上昇

『 <15:07> 国債先物は横ばいで引け、長期金利は0%に上昇

国債先物中心限月3月限は前営業日比変わらずの152円51銭で取引を終了した。前日の米債高や、日経平均株価が下落したことを受け買いが先行。その後10年債入札はやや弱めの結果と受け止められ、後場に下げに転じる場面もあった。ただ売りは続かず、引けにかけては前日引け値近辺で方向感なくもみあった。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp高い0%に上昇した。

10年債入札は応札倍率が4.25倍と4倍台を維持したものの、前回(4.80倍)から低下した。また落札価格の平均と最低の開き(テール)は2銭と、前月債(1銭)から拡大した。入札結果を受け、後場に国債先物は一時152円46銭(前営業日比5銭安)まで下げる場面があった。

翌日に日銀が長期を対象に実施する予定の国債買い入れオペを巡り、実際のオファー額を見極めたいとの姿勢も広がったが、超長期ゾーンが底堅く推移した。』(上記URL先より)

ということで本日待ちってお話になっておりますが、まあ昨日の短国買入2500億円オファーというのを見て勝手読みすると、足元の状況、つまり昨日の10年入札で金利が上がった(と言っても5糸ですけど)からと言って、それが重大なものなら話は別だけれども、そうでもないのに一々反応するのではないですよ大枠抑えて下さいね、という勝手なメッセージだと思いますと、別に昨日の10年入札が若干弱かったと言ったとしても、それが別に一々目くじら立てるほどの状況ではない(そら入札が輪番警戒だけで前日比5毛も6毛も甘くなれば何らかの対処を検討するでしょうがそんなわけでもない)となれば、まあ足元の入札がどうだったから長期輪番の額を考え直す、みたいなことには成らんと思うのですよ。

てな訳で、まあ4700か4500かという感じになると思うのですが・・・・・・・・・・・


・よくよく考えてみると今日実質減額したら・・・・・・・・

昨日ああでもないこうでもないと計算したのですが、あれ前提として「長期国債買入残高増加が今年は15兆円くらいの着地に持っていくのがせいぜい限界」という置きを勝手に作っていて、まあその数字自体は山勘の世界ではあるのですけれども、一応根拠レスな根拠としては、その他資金供給の部分で、短国買入は直近で8兆円弱でここからはそんなに減らない(べき論としてはゼロに落としてほしいですが)とは思うものの状況によっては減らすかも知れんし、共通担保は多分もう減りようがない位の水準ですが、貸出支援関連オペは減る可能性があって、とか考えて、一方でオーバーシュート型コミットメントがあるので、そこまでガツガツ削るのもなんですし、さすがに暦年末ベース(これをどこで切るかというのも醍醐味のある話ですがそれはさておきまして)で10兆以上は増えるくらいにはするんじゃろうな、と考えた時に出てきた腰だめの数字な訳ですよ。

でですね、昨日も申し上げましたように、今後の(つまり今日の)10年輪番を4500億円で実施すると今年暦年ベースの長期国債残高増加が18兆1,026億円、4700億円で実施すると同じく18兆9,026億円になって、20兆切った状態になっている訳ですな。

でもって15兆くらいまでこのペースを減らそうと思うと確かにもう一発から頑張れば2発くらい輪番落とせると思うのですが、一つ思ったのは「そこまで減らしちゃうと金利が下がった時にやることが無くなる」というものでして、まあそこはヘーキヘーキキニシナイ!という事も出来ますけれども、何せ今のオペの建付けだと、金利が下がった時に牽制する方法は「輪番減額」か「足切り下限レートの設定」になる(実はあと一つあって、思いっきり買入を短期化するというのは無くはないが無理筋)のですけれども、前者は当然ですけれども、後者の場合っていうのは要するに強制札割れを起こすということなので、後者の場合でもオーバーシュート型コミットメントとの絡みでコンフリクトが生じる可能性があって、そう考えると金利が下がった時のオペ運営柔軟化の可能性という意味では今日長期国債買入減らしたところで終了の巻というのも無くはないかなとか思うのでした。

まー何となくですけど、たぶん中期3−5年に関してはもうちょっと減額した方が国債玉不足(担保とかの話)のことを勘案して減額(4回買入の1バゲット500減らしてしてくるとさっきの数字から月2000億円さらに減らせるので、仮に4月から減額した場合には年間で1.8兆円さらに削減ができるという計算)かも知れませんが、なんかそれでマジ打ち止めって可能性もありそう(4700だと17兆1,026億円、4500だと16兆3,026億円なので、今日4500まで減らすと中期減額でマジ打ち止めっぽい)な気がしますな(個人の妄想です)という事で、だいたい昨日の話と重なる部分が多いですが補足してみました。

つーことですから「さらなる輪番減額懸念」って多分そういうもんじゃないと思うのよね、というメモ雑談でした(なお個人の妄想によりますので当たるも八卦当たらぬも八卦)。


〇FEDネタの宿題消化とばかりにFEDネタを投下する訳だが

バランスシートネタで参ります。

・フィラデルフィア連銀ハーカー総裁講演(という程の講演ではないが)から

https://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/harker/2019/02-22-19-policy-forum
https://www.philadelphiafed.org/-/media/publications/speeches/harker/2019/02-22-19-policy-forum.pdf?la=en
The Future of the Fed’s Balance Sheet
Presented by Patrick T. Harker, President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Philadelphia

Opening Remarks at the US Monetary Policy Forum University of Chicago Booth School of Business“Panel: The Future of the Fed’s Balance Sheet”
New York, NY  February 22, 2019

普段は読み飛ばす最初の『Welcome and Introductions』ですけど。

『Good afternoon and welcome. It’s a pleasure to be moderating this discussion of a subject that’s gathered interest and commentary from a vast array of outlets: the Federal Reserve’s balance sheet and what the future holds.』

ということで22日は金融政策ネタの講演があれこれあってもっとバンバンネタ消化しろやと言われそうな状態でございましたが、2週間熟成(放置ともいう)してやっとこさとネタにしていくのでありました(大汗)。

『I’m joined today by my colleague Jim Bullard, president and CEO of the Federal Reserve Bank of St. Louis; Lisa Emsbo-Mattingly, director of research in the Global Asset Allocation group at Fidelity Investments; and another colleague, Governor Randy Quarles of the Federal Reserve’s Board of Governors.』

先般ネタにしたクオールズ副議長の講演も同じパネルでの講演だったということですな。

『Everyone here is familiar with our panelists, and their bios are in front of you, so I’ll skip the customary recitation of their CVs - which are obviously as long as they are impressive, and I think we’d all rather spend that time hearing what they have to say.』

楽しそうだなおい。

『Before I start, I’ll issue the standard Fed disclaimer that the views expressed today are mine alone and do not necessarily reflect those of anyone else in the Federal Reserve System - something that my colleagues and I may well demonstrate in a few minutes. I will, however, speak on their behalf to say that the disclaimer extends to all of us, to spare them having to repeat it.』

ということでお話が始まりますが、

『The Fed’s Balance Sheet - A Brief History and Where Things Stand Today』という小見出し。まあ基本的にBrief Historyとかなので流し読みになりますけど。

『Before I ask the first question, I’d like to start by putting the subject of the discussion in context, with a quick reminder of the present state of the balance sheet and its recent history.』

以下これまでのバランスシート正常化の流れという話になりますが、

『In October of 2017, we started the normalization process by decreasing the reinvestment of principal payments from our Treasury and MBS securities. Since then, we’ve reduced our securities holdings by close to half a trillion dollars.』

って何だよそれだけしか減らしてないじゃんという感じではあるのですが・・・・・・・・・

『The aggregate level of reserves currently stands at roughly $1.6 trillion. That’s $600 billion less than when we started unwinding, because reserves decline both with asset redemptions and the growth of other liabilities, such as currency. Overall, the current level of reserves is $1.2 trillion less than the peak of $2.8 trillion, back in 2014.』

この辺の数字は何度か出ているのでおなじみになりましたが、準備預金(超過準備含む)が2014年のピークの2.8兆ドルから1.2兆ドルまで減りましたよと。

『We noted at the time that the unwinding would be essentially on autopilot and spectacularly boring - though we were clear about our intent to keep an eye on things.』

これまでの減額過程はオートパイロットでしたよと。

『As that process has unfolded, and aggregate reserves have declined, we’re coming to a more interesting juncture. And so, in recognition of the beginning of the end, last November we resumed our discussions of the Committee’s plans to implement monetary policy over the longer run.』

でもってこの削減が進んできたので11月以降バランスシート削減の見直しという議論になってきた、という話になるのですが、1年も後になってからの話をこの時点でする理由って(議事要旨などにもチラチラ出ていましたけれども)要するに株価が盛大に下がっていく中でバランスシート削減を停止するとか言い出すと株価の下落が止まるんじゃネーノという緩和効果を出そうとして思いっきりフライングしたって話じゃネーノという疑惑を持つアタクシ。

『Staff from across the Federal Reserve System presented excellent work on an array of options.』

『After careful consideration, we agreed that the current implementation framework has served us very well. Our administered rates have proven effective at controlling short-term interest rates. This allows us to continue using changes in the target range of the fed funds rate as the primary means of adjusting the stance of monetary policy. In January, therefore, we communicated our intention to maintain an “ample supply of reserves,” that ensures control over the federal funds rate via our administered rates, without necessitating active management of the supply of reserves.』

ということで超過準備を多く残したままの状態、すなわちバランスシート縮小を途中で止めてしまって運営するという事になるのは分かったのですが、それって短期市場金利維持のために超過準備付利をしないと行けない上に、超過準備が多ければお支払いする付利金利も多くなるという点はどう言い逃れをするのか(たぶん議会はそのあたり今は全然気にしていないと思うけど)、それと将来バランスシート政策をする際の政策発動余地を狭めている、という問題があるのについては完全どスルー状態なのが気になります、って毎度申し上げておりますが。

『Transition to the Long-Run Framework』という小見出しに行きます。

『So we stand today knowing what we want the long-run framework to look like, knowing that we are getting closer every day, and knowing that we are not that far from the efficient level of reserves.』

てな訳で、「we are not that far from the efficient level of reserves」というのホンマカイナとは思う訳で、短期金利がコントロールできているからバランスシートはデカいままで良い、って理屈は何か変だと思うんですけれどもどうもそういう話になっているのが不思議ちゃんではある。

『We have therefore started discussing our transition plans to the long-run implementation framework, and will continue to do that in future meetings.』

まあそれはそれとしてそんな訳で今後の施策については近いうちにまた詳しいのが出てくるという感じでしょうな。

『In my view, a key issue is that we only have estimates of the demand for reserves, and we certainly don’t have the luxury of a tensile test - breaking points in engineering and monetary policy are very different animals.』

はあ。

『It is my own view that we should approach the end of normalization with caution. Based on work by my staff, I have proposed that we can substantially slow the decline in reserves by ending the reduction in asset holdings later this year; reserves would then diminish at a very gradual pace, reflecting the trend growth of other Federal Reserve liabilities.1』

超過準備需要がどの位か読めないからノーマライゼイションの終了はよく気をつけて、というようなことをゆうとって、今年後半には準備預金総額の削減ペースを大きくスローダウンさせるのがよろしいという案のようですな。でもってこれはこの前のクオールズとか、パウエルの議会証言とかにもあって、(まだネタにしてなくてすいませんが)マネタリーポリシーレポートの方でわざわざコラム作ってFRBの負債サイドのこれまでの変化というのを説明していたりするんですけど、「reflecting the trend growth of other Federal Reserve liabilities」っていうのに対して超過準備の方が大き過ぎじゃろと思う(ってレポートの方をネタにしないと説明できませんかそうですか)ので、何ちゅうかそれ説明用の詭弁に近い気はするんですけどね。つまり「other Federal Reserve liabilities」って主に発行銀行券で、それに政府預金勘定が乗っかって来るという感じになるのですが、発行銀行券に関しては確かに額は多いのですが、その伸びって別に目を剥くような伸び方している訳でもなくて、なんか最近「準備預金以外のFRBの負債が増えているのでFRBのバランスシートは以前よりも大きくても良い」という説明がFED高官界隈では流行なのですが、そこまでいう程の増加じゃねーだろ、とも思ったりします(詳しくは今度)。

でまあそれは兎も角として、

『A slow and steady approach is not only the safer option, it’s one that will reduce uncertainty about the evolution of the balance sheet. It is also firmly in line with the FOMC’s stated objective to proceed in a “gradual and predictable manner.”』

ということなので、どうもバランスシート縮小は相当手前の所で削減ペースを下げるという話をしているのだが、バランスシートの資産サイドに緩和効果があって云々、と言っていたし、大体からしてバランスシートのテーパリングした時だって「バランスシートの規模が大きいので依然として緩和効果が出ており引き締め政策ではない」とか説明していた訳で、金利も上げるの慎重、バランスシートも縮小慎重となると、それはお前らマンデート達成しているのに物価が上がりにくいから緩和政策を続けていられるっていう説明になっているし、それって1980年代後半に極東のどこぞの国が盛大にやらかしたアレということで、物価が上がりにくい中でアセットバブルを起こしますって言ってるようなもんじゃろ(よって株式市場がヒャッハーするのは致し方ない)と思うのですが。

次の小見出しは『Questions for the Panel』ってなっていましてまあ議事進行用って感じです。

『Back when we started the normalization journey, I promised that it would be the policy equivalent of watching paint dry - and it certainly was, for over a year. Yet despite laying out a gradual, predictable path, and communicating that path with regularity, the recent interest in the subject makes me wonder if I’ve underestimated the allure of dried paint.』

最近この喩えも出てきますが、バランスシートのランオフ開始から最近まではオートパイロットで、ペイントしていたもののペンキが乾くのを待っている状態でしたので見てるだけでした、でもペンキも乾いたしさあこの上に絵を描きますか、みたいな話をするのね。

『So I would like to start by asking our panelists: Given that the reduction in asset holdings was announced well in advance, and given that it proceeded smoothly in the background as promised, why is it that balance sheet policy has suddenly leapt to the front page?』

『I’ll parcel that with a related question, because the public discussion will turn next to the composition of the balance sheet: We are on record as preferring that our securities holdings be primarily Treasuries, but what about their maturity composition? More broadly, what should be our most important considerations in discussing the composition of the balance sheet?』

ということでこの辺はパネルのお題ですが、どうやって政策をアナウンスしていくかとか、バランスシートの構成どうするのかとか、そもそもその論拠はどうするのかとか、そういう質問をしてたぶんこれがモデレーターご挨拶みたいな感じになっていますが、とりあえずバランスシートを大きいままで走らせてみたい、というのは把握したが、株価対策は分かるけどなんか色々とツッコミどころが多くて、結局のところ「非伝統的政策を行って拡大したバランスシートは覆水盆に返らず」という非常にイヤーな予感のする結果になるのではないかという所ではございますな。


・ブラード先生バランスシート縮小に関して割と平然としているのがチャーミング

ということでさっきもお名前出ていました変態仮面ブラード先生。

https://www.stlouisfed.org/news-releases/2019/02/22/bullard-weighs-impact-quantitative-tightening
St. Louis Fed's Bullard Weighs the Impact of Quantitative Tightening
2/22/2019

プレゼンテーションはこちら
https://www.stlouisfed.org/~/media/Files/PDFs/Bullard/remarks/2019/bullard_usmpf_22_february_2019.pdf?la=en
When Quantitative Tightening Is Not Quantitative Tightening
James Bullard President and CEO
2019 U.S. Monetary Policy Forum The Future of the Federal Reserve’s Balance Sheet Feb. 22, 2019 New York, N.Y.

ということで同じところでのお話ですが、基本的に最初のプレスリリースという方のまとめページの方から引用します(適宜プレゼンから引用するかもしれません)。

だいたい最初のリードの部分で内容はお察しなのですが、

『New York - Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard on Friday offered his views on the future of the Federal Reserve’s balance sheet at the 2019 U.S. Monetary Policy Forum hosted by the University of Chicago’s Booth School of Business.』

ほいな。

『In his presentation, “When Quantitative Tightening Is Not Quantitative Tightening,” Bullard made the argument for why the Fed’s balance sheet policy may be less important today than it was during the period when quantitative easing was most effective.』

バランスシート縮小の停止(または大幅なペース削減)について鉦や太鼓を打ち鳴らして大宣伝してヘイヘイピッチャー株価にビビってるよビビってるよ!のパウエルFRBな訳ですが、さすがの変態仮面だけに「When Quantitative Tightening Is Not Quantitative Tightening」とか「Fed’s balance sheet policy may be less important today」とかパワーワードが並びます。さすがはブラード先生。

『The Federal Open Market Committee (FOMC) has raised the policy rate and, since late 2017, simultaneously reduced the size of the Federal Reserve’s balance sheet, he pointed out. Many have argued that the balance sheet reduction-or quantitative tightening (QT) as it is sometimes called in global financial markets-could operate in the background with relatively small macroeconomic effects, Bullard said.』

お前らがギャースカいう程バランスシート縮小は影響がないんじゃヴォケとのお告げキタコレ。

『Others argue that balance sheet reduction should have equal and opposite effects relative to balance sheet expansion, or QE, he explained, and, accordingly, that there may be relatively large macroeconomic effects.』

他の見解としてはバランスシート縮小はバランスシート拡大と正反対の方向に同様の効果を出すんだ、というのもあって、そういう論によればバランスシート縮小は大きなマクロ経済への影響がある、ということになるんだが・・・・・・

ということで最初の小見出しが『The Case for Small Effects from QT』である、QTは量的引き締めの意味じゃな。

『Bullard argued that the case for relatively small macroeconomic effects of balance sheet reduction is more accurate.』

何で拡大と縮小で効果が異なるのでしょうか。

『He suggests that “it is indeed possible to view quantitative easing as having an important influence on the macroeconomy and simultaneously view the macroeconomic effects of unwinding the balance sheet as relatively minor.”』

はて?

『“This may be one reason why the FOMC’s balance sheet reduction policy beginning in the fall of 2017 seemed to have only minor effects in financial markets,” Bullard said.』

いやまあ確かに2017年に開始した時には市場反応しなかったけど・・・・・・・・

『The balance sheet reduction has arguably been significant, he added, pointing out that the Fed has been able to reduce reserve balances by about 40 percent from the peak.』

バランスシートはピークから40%減らしましたよという指摘をしつつ次の小見出し『Baseline Neutrality』とな。

『Bullard noted a 2010 paper1 suggesting that in situations where financial markets are functioning properly, temporarily expanding the level of reserves beyond the satiation point for banks would have no direct effect on the economy.』

1というのは『 See V. Curdia and M. Woodford, “Conventional and Unconventional Monetary Policy,” Federal Reserve Bank of St. Louis Review, July/August 2010, 229-64.』だそうです。金融市場が機能している時に一時的に超過準備需要以上にバランスシートを拡大するのは経済にダイレクトな影響を与えない、という先行研究がありますとな。

『This is one way to formulate a neutrality theorem for the size of the Fed’s balance sheet in ordinary times or when the policy rate is well above the zero lower bound, he explained.』

ということでブラード先生の根拠はゼロ金利制約化における金融政策とそうじゃない時の違い、という所に帰着するのです。

『“A baseline neutrality theory suggests temporarily increasing the Fed’s balance sheet size beyond the minimal level needed to implement monetary policy has no macroeconomic effect at all when the policy rate is well above the zero lower bound,” Bullard explained.』

でもって次の小見出しが『Signaling Effects』でして、

『However, while the Fed’s policy rate was near zero, the Fed’s balance sheet policy nevertheless had an important macroeconomic impact through a signaling channel, he continued.』

ゼロ金利制約の時にバランスシート政策は効果をだす、という事に加えてこの小見出しでお察しのように、

『Bullard noted that actual effects of quantitative easing appear to be far from neutral,2 and one theory as to why this may be so is that QE did not have direct effects but did send a credible signal about how long the FOMC intended to keep the policy rate near zero.』

ゼロ金利制約の時にバランスシート拡大をすると金融政策をより長く維持するだろうというシグナル効果を金融市場に送ることになる、だそうな。

『With the policy rate near zero, he explained, the FOMC may wish to signal convincingly that they will keep the policy rate near zero “for longer,” that is, beyond the time that an ordinary approach to monetary policy would call for rising rates. “QE may have been a good approach to accomplish this objective,” he said.』

だったらガイダンス政策で良いんじゃないのとか思ってしまいますがそこを突っ込むのは野暮ということで(^^)。

『“Once the policy rate rose above the lower bound, balance sheet movements no longer provided a valuable signal about the future direction of monetary policy,” he added.』

よって利上げをしてゼロ金利制約から外れると、バランスシートの量が先行きの金融政策運営に対するシグナル効果にならなくなるので、その結果としてバランスシートの量を減らしても拡大の時のような効果が減る、というインチキ臭いですけれどもまあ何となく煙に巻かれてみたくなる理屈というか屁理屈というか。

『This means that baseline neutrality would again apply, Bullard said, “and the size of the balance sheet could be reduced without important macroeconomic consequences.” In other words, the balance sheet reduction could occur “in the background,” he noted.』

まあ一理はあるが屁理屈感は拭えません。でもって最後の小見出しが『Asymmetric Effects』ということでこれまたお察しの小見出しですが。

『In summary, the financial and macroeconomic impact of the FOMC’s balance sheet policy may well be asymmetric, Bullard noted.』

バランスシート政策はゼロ金利制約化においては効果があるが金利がゼロ金利制約から外れると
効果が小さきなる、という非対称性がありますよ、という事を仰せになっている訳ですな。

『“With the policy rate near zero, the effects of QE may have been substantial due to signaling effects,” he said. He pointed out that the FOMC normalized the policy rate to a considerable extent during 2017 and 2018. “Now, with the policy rate well above zero, any signaling effects from balance sheet changes have dissipated,” Bullard added.』

『This means quantitative tightening does not have equal and opposite effects from quantitative easing, he pointed out. “Indeed, one may view the effects of unwinding the balance sheet as relatively minor,” he said.』

ということで話がまとまっていて、物凄い勢いで屁理屈感は漂うのですが、バランスシート縮小停止に向けた話で大騒ぎしている中で、万年利上げ反対おじさんのブラード先生がこれを言い出すのは中々味わいがあるなあと思いました。




2019/03/05

お題「月初計数雑談あれこれ/GCレートとかの雑メモ/クラリダ副議長の金融政策枠組み見直し講演ネタ(その2)」

そうですかそうですか。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019030400734&g=pol
安倍首相「政治で大切なのは雇用」=アベノミクスの成果強調−参院予算委
2019年03月04日17時32分

『安倍晋三首相は、金融緩和を柱とするアベノミクスに関し「2%の物価安定目標に届いていないのは事実だが、政治の場で大切なのは雇用だ」と述べ、好調な雇用情勢を理由にアベノミクスの成果を強調した。』(上記URL先より)

だったら日銀にタオルを投げてあげてください。ああそれから雇用の改善ですけど人口動態要因とか改善の内容についてもちゃんとレビューしておいて欲しいですし、低賃金被収奪労働みたいなのがジャンジャン増えても国民厚生的に成果とは言わないんじゃないかと思われますのでその辺はよろしく(ニッコリ)。


〇計数雑談その1:輪番関連計数雑談

毎度ですが使うものは以下の物件です。

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高
(銘柄別の額面残高を拾ってくるもの)

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/index.htm/
営業毎旬報告一覧
(簿価ベースの数値と銀行券残高を拾ってくるもの)

http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php
売買参考統計値/格付マトリクス ダウンロード
(各銘柄の償還日を拾ってくるもの)

とまあそういう訳で先般ちょっと途中からアバウトになりましたので月末データ出たところで再作成の巻という感じで参ります。


・2月末の状況(昨年末対比)

営業毎旬ベース:456兆1,131億円→465兆8,205億円
額面ベース:444兆3,070億円→453兆6,034億円
となっていて、差分は

営業毎旬ベース:97,074億円
額面ベース:92,964億円

と差分ちょっとある(1月の時より多い)のですが、これはオフザランのオーバー大きいのが買入に入るとどうしてもこうなりますので乖離がありまして、日銀の国債買入残高が云々という時って本来は日銀の財務ベースの数字でお話をしないといけないので乖離がどの程度かってのも気になるといえば気になります。でもってこの額面簿価乖離問題はオフザランを買う時の乖離以外に日銀の購入国債って半期ごとにアモチアキュム会計をしているので、

http://www.boj.or.jp/about/account/kkaikei.htm/
会計規程(第4章第13条にある(有価証券の評価基準及び評価方法)をご覧あれ)

元々持っている国債に関するアモチで簿価ベース減ってきたりする(3末と9末の半年ごとにアモチを掛けているのですが今の状況だと普通に考えてアモチの方がアキュムよりも盛大に大きい筈)けれども、昨年の場合は営業毎旬ベースの残高増分が37兆5,962億円で額面ベースの増分が36兆7,276億円で簿価の方が額面よりも1兆円の上方乖離がありましたのでまあ基本的には額面と簿価いっしょで考えておきます(もちろん日銀の中の人はアモチ幾らかは読めていると思いますがこちとら相当ゴリゴリと推測をしていかないと分からんし、この程度の年間乖離ならばそこまで気にすることもないから労力は掛けない)。

#なお2月月末跨ぎになっている輪番はありません


・2月超長期減額後でのお話

以下の話は額面ベースで参ります。

額面ベースで見た場合、月間買入額が61,700億円(除く1年以内、変国は1か月分に均して計算、以下同様です)となりますが、今回の長期減額前の時点ですと、今年の買入増加は残り10か月で買入が61兆7,000億円、ここからの償還が49兆3,938億円になるので、21兆6,026億円になりますな。

・長期輪番4700億円にした場合のお話

この場合、月間買入額が59,000億円なので、今年の増分は18兆9,026億円になりますな。でもって実は2020年の分についても考えますと、2020年の償還額は2月末現在で51兆3,936億円で、長期輪番4700億円で計算した場合、19兆4,064億円の増加見込みとなりますので何となく20兆円くらいという感じです。

でもってアタクシの勝手読みで最終的にもうちょっと減らすにしても額面ベースの増分で15兆円は切らないという前提を置きますと、そこからの減額余地が(月4回のバゲットのどこを減らすかはさておきまして)月4回のバゲットのうち思いっきり削ったとしても900億円から1000億円(3月から減額するとなると900が限界ですが4月からだと全部で1000億まで減らせるとかそんな話)とかになりますが、まあそこまでガツガツ削るかという感じでもありますわなと思います。3−5を500減らして超長期前半を300減らすと最大限減らしたって感じでしょうし、まあそこまでやるのかどうかは微妙ですけど、まあやってあと2回という感じになりそうですな。


・長期輪番4500億円にした場合のお話

同じような計算をしますと、月間買入額が58,200億円なので、今年の増分が18兆1,026億円になって、2020年は18兆4,464の増分になります。

でもって額面15兆円まで絞りに絞るとして、月4回のバゲットをどこまで削れるかというとこの数字がさっきの900から1000というのが700から800とかになってきますので、そうなると3−5を500減らしたらおしマイケルという感じになりそうなところで、まあ微妙なところではあるのですが、4500まで減らしてしまうと輪番減額はあと1バゲットがいいところって感じなのがより明確(4700でもあと1バゲットになっても不思議ではないですが)という感じになるような気がします。とか言ってそもそも15兆円まで減らすというのにも根拠がある訳ではないのですけれども。


ということでまあ確かに昨日は最後10年カレント0%になりましたけれども、冷静に考えて長期輪番って減らしても4500まででしょと考えますと、何のことはない今回輪番減らしたら長期のバゲットに関しては「打ち止め」になってしまう可能性が大という状況(5000とかにすれば打ち止め感出ませんけれども、そんな中途半端なことをするならスパッと打ち止め感出した方が良いと思う)なので、まあそうなるとは別に無担保無保証ですが、「長期輪番減額出尽くしヒャッハー」と言って買う・・・・・・のはさすがにその時の地合い次第ですかとは思うけど、金利下げ下げ地合いになった時に減額余地なしってのも結構お洒落な気がしますな、うんうん。

てな訳で、まあ長期輪番4500でもエエンチャウノとは思いますけれども、示したレンジの真ん中というのであれば4700って感じでしょうかねえ。例の「新発10年債の市中消化額対比」ってので見ますと、4700億円だと新発のほぼ9割を買うという依然として依然とする状態なので、4500にして85%に落として頂きたいなあとは思うのですけれども。


〇計数雑談その2:短国買入残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/index.htm/
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額

こちらは営業毎旬だと償還乗り換えとかの分が乗って来るので額面の方で見ていく奴になりますが、12月末から見ますと、89,357億円→82,815億円→79,352億円と順調(?)に残高は減少していますが、今月の償還額は15,694億円になりますので、6Mと1Yの直後は5000億円、それ以外は2500億円、というパターンを使いますと買入が1.5兆円になるので今月はそこまで残高減らんかという感じですな。

足元は何かよー知りませんがGCが上がって(あとでメモしておきますが)先週の短国は久々に▲15bp挟みの水準まで金利が上昇しておりまして、まあこれが牽制すべきものなのか気にしなくて良いのか、というのは意見が分かれるところなのでしょうが、そもそも▲20台で定着とかいう方が如何なものかとは思いますし、マイナス金利深掘りとかするわけないじゃん(自爆したいのなら別だが)という中で▲10台に金利が上がって来てやっと普通じゃんとは思いますが、こればっかりは2500で来るのか5000で来るのかよく分からんですが、5000とかにしちゃうと今月残高増えちゃいますし、だいたいからして期末になるからどうせ需給締まって来るでしょうからここで反応せんでもエエンチャウノとは思いますがさて(多分今日の)短国買入はどうなるやら。

まあアタクシ思うに短国買入残高ゼロでも良いのではとは思いますが、まあそういう訳にもいかないでしょうとか考えますと、とりあえずは2500と5000を織り交ぜ攻撃なんですかね、よー知らんけど。


〇それから短国とかGC雑談

http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

2019/2/21 -0.110
2019/2/22 -0.087
2019/2/25 -0.068
2019/2/26 -0.069
2019/2/27 -0.059
2019/2/28 -0.049
2019/3/1 -0.029
2019/3/4 -0.030

てな訳で昨日もTKRRのT/Nは▲3bpとかのお高い金利になっておりまして、先週の短国入札に関しても(って本来昨日ネタにする物件ですが、汗)、

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20190301.htm
国庫短期証券(第817回)の入札結果

(3)募入最低価格 100円04銭0厘0毛(募入最高利回り)(-0.1489%)
(4)募入最低価格における案分比率 18.6666%
(5)募入平均価格 100円04銭3厘6毛(募入平均利回り)(-0.1623%)

とか▲16.23/▲14.89とか久々に普通っぽい数値(前週の3Mが▲22.07/▲20.65でその前の3Mが▲21.05/▲19.54)になっておりまして、短国の買いが弱いのか、はたまた中長期債のマーケットメーカーの在庫が重いのか何だかよく分からんですが、GC金利と短国の金利が上昇、と言ってもGCの方は結構高めの感じで、短国は上がったとは言ってもこれで本来そんなもんでエエんでは(個人の感想です)という感じではありますが。

まあ何ですな、短国の場合は日銀の買入残高はだいぶ減ってはくれましたが、大体からして発行が以前よりも減っている中で、海外の買いが来るか来ないかで思いっきり需給が振れまして、しかもこればっかりはQGK(急に外人が来たので)にも程があるので知らんがなという所ではあるのですが、何がどうなってこうなっているのやらとゆーところではありますな。


でもってですね、まあ金曜日に(これも昨日入れるネタだったのですが失念してた)はこんなお洒落なのがありまして、

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190301.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2019年3月4日 2019年3月18日

こちらは4日エンドの来る共通担保固定オペのロールになるのですが、8000億円でオファーしているところに謎の1兆5000億円のオファーを行いましたが、そもそも元の8000億円にしたって708億円しか札が入っていなくて札割れになっているものを1兆5000億円にロールしてどうしますねんと思いますし、だいたいからしてオペのレートが0%なので別にGCレポ金利の上昇の牽制にすらなっていないのですが、オペ結果はご覧の通り。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba190301.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(3月4日スタート分) 2,630 2,630

やったねパパ!3倍以上にロールで増えたよ!!!という感じですが、一応この1兆5000億円にオファーを増やしたというのは足元のGCレート上昇は把握しておりますよとでも言いたいのかという感じで、まあこれがあったからもしかしたら今日の短国買入は5000億円とかで入れてくるのかねとかは思うのですが(もっとたくさん入れれば金利は下がるがどうなんでしょうかねえ)、このオファー2倍(近く)攻撃はワロタです。

ちなみに現状共通担保オペって残高思いっきりスッカラカンで、今回ロールで増えたので7546億円になりますけれども、その前が5624億円とかで、そらまあオペ金利0%なのですからファンディング付きにくい担保物件に対するファイナンスという位しか意味がないですから、まあこの1兆5000億円は何かのポーズという所ではありますなあと思いましたですがアタクシもうっかり月曜にネタにするのを失念する程度の残高なのでネタが遅れてどうもすいません。


ちなみにGCとかとはちと話が違いますが、
https://www.jasdec.com/material/statistics/
統計情報

週次統計
2019年2月27日更新
短期社債振替制度 発行者区分別残高状況(週次)

というのがありまして、そちらを見ますと直近(2/22)のCP(短期社債ね)の発行残高は貫禄の21兆円となっておりまして、確かどこかで先般1月末のCP発行残高が21兆円になって残高拡大だぜという記事があったとは思うのですが、だからどうしたという話はちょっと置きますけれどもメモだけでもと思いまして、という所でございましょうか市場ネタメモでございました。


〇クラリダ副議長の金融政策枠組みネタの続きである(その2)

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/clarida20190222a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/clarida20190222a.pdf
February 22, 2019
The Federal Reserve's Review of Its Monetary Policy Strategy, Tools, and Communication Practices
Vice Chair Richard H. Clarida
At the 2019 U.S. Monetary Policy Forum, sponsored by the Initiative on Global Markets at the University of Chicago Booth School of Business, New York, New York

昨日の続き。

・レビューのスコープ、という小見出し部分は一般論でした

『Scope of the Review』という小見出しですが、

『In the Federal Reserve Act, the Congress assigned the Federal Reserve the responsibility to conduct monetary policy "so as to promote effectively the goals of maximum employment, stable prices, and moderate long-term interest rates."8 Our review this year will take this statutory mandate as given and will also take as given that inflation at a rate of 2 percent is most consistent over the longer run with the congressional mandate.』

今のマンデートに沿った見直しを行うというお話(マンデートの見直しは行わない模様)。

『Our existing monetary policy strategy is laid out in the Committee's Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy.9 First adopted in January 2012, the statement has been reaffirmed at the start of each subsequent year, including at the FOMC's meeting last month with unanimous support from all 17 FOMC participants.』

2012年に出した「Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy」が現在の建付けですよと。

『The statement indicates that the Committee seeks to mitigate deviations of inflation from 2 percent and deviations of employment from assessments of its maximum level. In doing so, the FOMC recognizes that these assessments of maximum employment are necessarily uncertain and subject to revision. According to the Federal Reserve Act, the employment objective is on an equal footing with the inflation objective.』

でもって現状ではこの2%物価目標と最大雇用という2つのマンデートからの乖離を小さくするように政策運営をしますよというお話になっていますと。

『As a practical matter, our current strategy shares many elements with the policy framework known in the research literature as "flexible inflation targeting."10』

よって今の枠組みはフレキシブルインフレーションターゲットと言われるものになっております。

『However, the Fed's mandate is much more explicit about the role of employment than that of most flexible inflation-targeting central banks, and our statement reflects this by stating that when the two sides of the mandate are in conflict, neither one takes precedent over the other.』

『We believe this transparency about the balanced approach the FOMC takes has served us well over the past decade when high unemployment called for extraordinary policies that entailed some risk of inflation.』

他の中銀と比較した場合、FRBの場合は最大雇用というのがより明示的になっている点が異なりますけれども、雇用と物価のコンフリクトが生じた時には、その間のバランスを取りますというのも明確になっています。

『The review of our current framework will be wide ranging, and we will not prejudge where it will take us, but events of the past decade highlight three broad questions.』

ということでここは一般論でした、しょぼーん。では次に。


・プライスレベルターゲットあるいはアベレージインフレーションターゲットについて

次の小見出しが『Three Questions』と来ました。ワクワク。

『The first question is, "Can the Federal Reserve best meet its statutory objectives with its existing monetary policy strategy, or should it consider strategies that aim to reverse past misses of the inflation objective?"』

今のストラテジーで金融政策の目標を達成できるのか、あるいは過去物価が目標行ってなかった期間があるがそれを取り返しに行くスキームを考えるべきか?ということでプライスレベル系のターゲット話が登場。

『Under our current approach as well as that of most flexible inflation-targeting central banks around the world, the persistent shortfalls of inflation from 2 percent that many advanced economies have experienced over most of the past decade are treated as "bygones."』

今の多くの主要国のフレキシブルターゲットの枠組みにおいて、他国も同様ですが過去2%から下方乖離していた期間に関しては「終わった話」になるというのが建付けです。つまり・・・・・・・

『This means that policy today is not adjusted to offset past inflation shortfalls with future overshoots of the inflation target (nor do persistent overshoots of inflation trigger policies that aim to undershoot the inflation target).』

取り戻しに行くためにインフレのオーバーシュートを目指すようなことはしない、という意味ですな、と。

『Central banks are generally believed to have effective tools for preventing persistent inflation overshoots, but the effective lower bound on interest rates makes persistent undershoots more likely. Persistent inflation shortfalls carry the risk that longer-term inflation expectations become poorly anchored or become anchored below the stated inflation goal.11』

インフレが継続的にオーバーシュートした時にそれを止めるツールが中銀にあるというのは認知されていますが、インフレが継続的にアンダーシュートした場合に実質ゼロ金利制約があって、このアンダーシュートの継続の結果インフレ期待が低下するリスクがありますよね、と来たもんだ。

『In part because of that concern, some economists have advocated "makeup" strategies under which policymakers seek to undo, in part or in whole, past inflation deviations from target.』

という問題を回避するために「取返し戦略」を提唱する経済学者がいますよね、と。

『Such strategies include targeting average inflation over a multiyear period and price-level targeting, in which policymakers seek to stabilize the price level around a constant growth path.12』

プライスレベルターゲットとか複数年の平均インフレ目標とかで、このtargeting average inflationは先般ウィリアムスとデーリーも提唱して話題になっていた奴な。なおプライスレベルターゲットは以前(と言っても相当前だが)ドナルドコーン副議長時代にコーンさんが割とクソミソにディスっていました。

『These strategies could be implemented either permanently or as a temporary response to extraordinary circumstances. For example, the central bank could commit, at the time when the policy rate reaches the ELB, to maintain the policy rate at this level until inflation over the ELB period has, on average, run at the target rate.13』

例としてはELBに引っ掛かっている時はその間アベレージインフレーションターゲットにするとかの手法が紹介されていますとか(なお話としては美しいのだが、現実問題として物価が上がらない場合において、この方法だと現実の物価と目標との乖離というか宿題部分が大きくなりすぎるので、「インフレ期待が下がらないようにする」面でどの程度有効かという話はあるにせよ、いったんインフレ期待が下がってそれに経済構造がマッチしてしまうとこの手法は中銀の信認を更に落とすだけになりそうな気がしますので、かならずしも常にフィットするものではないとアタクシは思う、クラリダがどう思っているかは知らん)。

『Other makeup strategies seek to reverse shortfalls in policy accommodation at the ELB by keeping the policy rate lower for longer than otherwise would be the case.14』

その他の手法としてはELBの時の時間軸を長くするという話(だがたぶんそれはtime-inconsistencyの問題が思いっきり出てくると思うので実務上無理、これもアタクシの感想なので気にせんでちょ)。

『In many models that incorporate the ELB, these makeup strategies lead to better average performance on both legs of the dual mandate and thereby, viewed over time, provide no conflict between the dual-mandate goals.15』

という研究結果になっているようだが正直ホンマカイナ感は拭えん。

『The benefits of the makeup strategies rest heavily on households and firms believing in advance that the makeup will, in fact, be delivered when the time comes--for example, that a persistent inflation shortfall will be met by future inflation above 2 percent.』

このやり方だと物価2%が平均的には続くということで企業や家計の行動がそれを前提にしやすくなる、ということなのだがそれも何だかホンマカイナ感はあるけど、だいたいこの政策提唱する人はこういう説明をするのでこれは仕様みたいなもん。

『As is well known from the research literature, makeup strategies, in general, are not time consistent because when the time comes to push inflation above 2 percent, conditions at that time will not warrant doing so.』

ご案内の通り、取返し戦略の問題にタイムインコシステンシーというのがありますよと。

『Because of this time inconsistency, any makeup strategy, to be successful, would have to be understood by the public to represent a credible commitment. That important real-world consideration is often neglected in the academic literature, in which central bank "commitment devices" are simply assumed to exist and be instantly credible on decree. Thus, one of the most challenging questions is whether the Fed could, in practice, attain the benefits of makeup strategies that are possible in models.』

ということで、このタイムインコンシステンシーの問題を踏まえて、中央銀行が元々言っていたアベレージターゲットなりプライスレベルターゲットなりをキチンと将来において実行するのか、という点の信認確保とか、そういう実務的問題があるよね、って話で最初のネタは締めています。

まあ何ですな、ここのアベレージプライスの所をガチガチにやると多分複雑骨折になってしまうと思うのですが、要は「暫く物価が下振れていたんだから多少上振れ立っていいじゃないかけいざいだもの」という感じでもっとフワッとしながらやっておけば、逆に取返し戦略中のインフレ期待のオーバーシュート(ちなみにドン・コーンはプライスレベルターゲットは結果として前年比で見た場合のインフレ率が却って安定化しなくなるからその点からのインフレ期待の不安定化を思いっきり指摘していました)もしにくくなるんじゃないのとか思うと、それはフレキシブルターゲットとかシンメトリックなターゲットとか言っている今のFRBの運営と大差ない運営になりまして、だったらそれでエエンチャウノとは思うのですがさてどうなんでしょうかね。


・ELBに引っ掛かった時にどうすべきか

次のパラグラフからは別の論点に参ります。

『The next question the review will consider is, "Are the existing monetary policy tools adequate to achieve and maintain maximum employment and price stability, or should the toolkit be expanded? And, if so, how?"』

政策のツールキットが十分でっか?というお話になります。

『The FOMC's primary means of changing the stance of monetary policy is by adjusting its target range for the federal funds rate.』

今は金利の上げ下げがメインツールですよ、というのはご案内の通り。

『In the fall of 2008, the FOMC cut that target to just above zero in response to financial turmoil and deteriorating economic conditions. Because the U.S. economy required additional policy accommodation after the ELB was reached, the FOMC deployed two additional tools in the years following the crisis: balance sheet policies and forward guidance regarding the likely path of the federal funds rate.16』

前回金融危機の時にELBにぶつかったのでバランスシート政策とフォワードガイダンスを使いましたよと。

『The FOMC altered the size and composition of the Fed's balance sheet through a sequence of three large-scale securities purchase programs, via a maturity extension program, and by adjusting the reinvestment of principal payments on maturing securities.』

バランスシート政策では3つのLSAP(ってQE1〜3ですかね)を使って、あとは買入銘柄の長期化プログラムとか償還再投資の調整とかをしました。

『With regard to forward guidance, the FOMC initially made "calendar based" statements, and, later on, it issued "outcome based" guidance.』

ガイダンスはカレンダーベースとアウトカムベース(って言ってますが、あれは「労働市場の見通しの顕著な改善」とか何とか言ってたやつで、アウトカムと言っても特定の経済指標に紐付けたものではないので本当の意味でのアウトカムというかターゲットベースになっていたわけではありません、念のため)のガイダンスをやりました。

『Overall, the empirical evidence suggests that these added tools helped stem the crisis and support economic recovery by strengthening the labor market and lifting inflation back toward 2 percent. That said, estimates of the effects of these unconventional policies range widely.17』

でもってそれが効いたことになっているのだが、QE1はリクイディティーの供給だったので明らかにそれは効果があったと思う(まあその前にショックを起こしたのが米国金融当局なのでマッチポンプにも程があるが)のですけれども、その他の部分って「結果的には効いたことになっている」というだけで、ほかの緩和でも同じようなことになったのかも知れませんぜとは思いますけどまあそれはさておき。

『In addition to assessing the efficacy of these existing tools, we will consider additional tools to ease policy when the ELB is binding.』

でもってこれからやる検討の中にはELBに引っ掛かった時に実施するほかのツールも検討しなければ、と来まして何と出てくるのが後から無理くり増築建築の結果出来た昭和末期の温泉旅館状態になっているところのジャパンの政策とかうーんこのという感じがががががが。

『For example, as is presently Bank of Japan policy, the FOMC could, when the ELB is binding, establish a temporary ceiling for Treasury yields at longer maturities by standing ready to purchase them at a preannounced floor price.18』

そもそもジャパンの政策は長期金利上限シーリング政策じゃないんですがそれは(昔のFEDはそれやったけど、あの時と金融市場の前提条件が全然違うのでたぶんアレをやるのは無理があろうと思われます)。

『During the crisis and its aftermath, the Federal Reserve reviewed but ultimately found this tool and some others deployed by foreign central banks wanting relative to the alternatives it did pursue. But the review will reassess the case for these and other tools in light of more recent experience in other countries.』

他国の最近のも参考にしていきましょうということだが金融市場の前提条件が違うのは念頭に置いてねとしか申し上げようがない。


・コミュニケーションについて

『The third question the review will consider is, "How can the FOMC's communication of its policy framework and implementation be improved?"』

ブレブレパウエルおじちゃんがいるのにこのネタはヘソが茶を沸かすんですがまあそれは兎も角。

『Our communication practices have evolved considerably since 1994, when the Federal Reserve released the first statement after an FOMC meeting. Over the past decade or so, the FOMC has enhanced its communication practices to promote public understanding of its policy goals, strategy, and actions, as well as to foster democratic accountability. These enhancements include the Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy; postmeeting press conferences; various statements about principles and strategy guiding the Committee's normalization of monetary policy; and quarterly summaries of individual FOMC participants' economic projections, assessments about the appropriate path of the federal funds rate, and judgments of the uncertainty and balance of risks around their projections.19』

これは単に今までこんなことやっていろいろ工夫しましたよという話。

『As part of the review, we will assess the Committee's current and past communications and additional forms of communication that could be helpful. For example, there might be ways to improve communication about the coordination of policy tools or the interplay between monetary policy and financial stability.』

でもって今後の改善の例として「there might be ways to improve communication about the coordination of policy tools or the interplay between monetary policy and financial stability」というのが来ているのはほほーとちょっとだけ思いましたが、そうなのかね??という気もしますしまあこの辺は出てみないと分からん。


ということで以下は『Activities and Timeline for the Review』という日程表なので日程のご確認はして頂くとしまして、最後に『Concluding Thoughts』とありますが、言ってることは別に今の時点で何か決まっているようなものはない(まあアベレージターゲットの考え方が俎板に乗っているのは分かったけど)という感じの話ですが、まあそんな話をしておりましたという所でございます。

#すいません完全に1週間熟成(熟成したとは言ってない)物件になってしまいました





2019/03/04

お題「鈴木審議委員会見/債券市場サーベイなど/クラリダ副議長の政策枠組み見直し関連講演(その1)」

ロジを考えないで制度変更したのかよ・・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190303/k10011834731000.html
高齢者の運転免許更新 対応追いつかず約3万人失効おそれ 愛知
2019年3月3日 19時00分

『75歳以上のドライバーが全国で最も多い愛知県で、運転免許を更新する際の検査や講習が厳格になったことで、教習所の対応が追いつかず、ことし、およそ3万人の高齢者が手続きを終えられないまま免許が失効するおそれがあることが、警察の試算でわかりました。専門家はほかの地域でも起こりうる問題で、制度の見直しを検討すべきだと指摘しています。』(上記URL先より)


〇鈴木審議委員金懇は会見の方がオモロイような気がする

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190301a.pdf

・中々の悪態力があって結構な(^^)

最初の「今日こんなのありました」の説明の中でこんなのがありました。

『第二に、金融環境面につきましては、日本銀行の大規模な金融緩和が続くもとで、金融機関収益の一層の悪化に伴う金融機関の「持久力」に対する懸念や、そのことが金融機関の金融仲介機能に与える累積的な副作用について十分な配慮が必要とのご指摘も頂きました。特に、金融機関の経営者以外の方からもこのようなご意見を頂いたことが印象的でした。 』

>金融機関の経営者以外の方からもこのようなご意見を頂いた

これは良い感じで現行政策に対する悪態をしらっとぶっこんでいますが、それよりもウケたのはこの質疑でしてですね、

『(問) 追加緩和についてですが、昨日の片岡審議委員のご発言では、もっと大胆な政策が必要ではないかということをおっしゃっていて、市場の中でもぽつぽつ追加緩和の必要性が出てくるかもしれないという見方があります。これについて委員はどのようにお考えになっているのでしょうか。』

追加緩和ですぐ2%行くなら必要だけど何やっても逆噴射になるから机上の空論とか市場が認識してる訳ので、「市場の中でもぽつぽつ追加緩和の必要性が出てくるかもしれないという見方があります」については、「ねーよ馬鹿」と答えそうなところですが、この「ねーよ馬鹿」を丁寧な言葉遣いで説明すると以下のようになります(^^)。

『(答) 昨年までメディアの方々からは、「正常化に向かって動かないのか」と聞かれることが多かったのですが、今年になると反対に「追加緩和をしないのか」というようにおっしゃられることが多くなり、その真意をはかりかねる部分もありますが、(以下割愛というか後程)』

「市場の中でも」という質問に対して「メディアの方々から」って返しているのが最高に素敵!!!な上に「真意をはかりかねる部分もありますが」とか最高の悪態力ですが、よくよく考えたら鈴木さんって某赤銀行副頭取までお勤めになられた方な訳で、中間管理職が報告しに行った時に偉い人からこんな感じで返されたらその場で泡吹いて卒倒してしまいそうですな。おそロシア。

おまけにこの質疑の後にこんな質問があったのですが、

『(問) 先程の質疑の中で、追加緩和は現時点では全く必要ないという趣旨のご発言があったことを理解したうえでの質問ですが、半年前の沖縄での講演と比べると、当時は、副作用が顕現化すると手遅れになるリスクがある、といったやや強めな言葉が多かったような印象がありますが、その時と比べると大きな メッセージは変わっていないとはいえ、副作用への対応で正常化を探るべき必要性について、少しトーンが落ちているという印象を受けたのですが、その解釈は間違っていないでしょうか。(後半割愛)』

この答えがまた素敵。

『(答) 昨年の 2 月とか 8 月、特に 8 月と比べて、金利水準や正常化に対しての私の主張のトーンが弱まっているのではないか、ということですけれども、弱まっているかどうかを私自身では特に認識してはおりません。記者の方からご覧になって、弱まっているように見えるということなのかもしれませんが、昨年までは正常化に関するご質問が多かった中で、現状は追加緩和についてのご質問があるといったような正常化方向に対してはアゲンストの風がありますので、そのためにトーンが弱くなっているように見えるのかもしれません。(以下割愛)』

お前らが勝手にバイアスかけて煽っているだけだろういい加減にしろこのトンチキども、というのを丁寧に言うとこうなるのかと感心する(イヤミではなく)次第でございまして、会見要旨見てニッコリしてしまいました。


・追加緩和は必要ないですよという話について

さっき引用した「メディアの方々から」という鈴木さんの砲撃(どの位記者の方々に着弾したかは分からんですけど)の回答の続きに相当する部分から引用します。

『そうした中で、将来的にこうしたモメンタムが損なわれることがある場合には、適時・適切な金融政策を検討していくことになります。ただ、私自身も含め、現時点においては 2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていると申し上げてきており、そういう状況にあるのであれば、私としては追加緩和の必要は全くないと考えています。』

『仮に、そういったモメンタムの維持が損なわれる事態においては、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入時にも公表しておりますように、イールドカーブ・コントロールにおける金利、すなわち短期政策金利および長期金利、資産買入れの質の面、マネタリーベースの量の面など、様々な手段の中から、その時々で最適と考えられる施策を講じていく必要がある、ということだと思います。』

と原則論というか公式見解の話をした後に鈴木さんのキタコレが来る。

『その際、私としては、留意すべき点がいくつかあると思っています。』

キタコレ。

『第一に、経済・物価に対する見方ですけれども、例えば物価について短期的には一部品目の大きな価格変動が消費者物価に強い影響を及ぼす可能性があるわけですが、より重要なことは、長い目で見た物価の基調であると思います。すなわち、単に物価が目先上がった、下がったという点に一喜一憂するのではなく、幅広い品目の価格動向をきめ細やかに見定めつつ、その背後にある環境の変化や基調としての物価の動きをとらえていく必要があるということだと思います。』

それはそうなんだが(鈴木さんのいない時だから仕方ないのだが)QQE2は思いっきり原油価格下落をネタにして追加緩和をしておった訳で、結局「基調」と「個別物価」の間は何なんだよというそもそも論に関して日銀もその場その場で都合の良い理屈を繰り出しているもんだから判然としないし、まあそれ以前の問題として、「物価」というものに関してその「ザ・物価」みたいなのがあるのか無いのか、というよりそもそも論に関してだって意見が分かれる(それは日銀だけの話ではないと思います)問題で、ここのところってどのくらい突き詰めて考える必要があるのかという話になるんでしょうなあ(個人の感想です)。

でまあそれは兎も角として鈴木さんの言いたいのはその次だと思う。

『昨年 1年間のコアCPIは 0.7%から 1.0%の間を行き来していましたが、その前の 1年と比べると、明らかに基調としては上昇しているということだとみています。残念ながら、昨秋以降の原油価格の下落等で、必ずしも更に上昇していく勢いまでは見えないところですが、基調としては良い方向に動いていると思っています。』

つまり上がってきているんだから良いのでは、という説明ですが、ただこれ金懇挨拶の所でツッコミを入れましたように、コアはそうだがコアコアって延々と0.5%以下の所でウゴカンチ会長なので、基調というのもどうなのかねとは思ってしまう所ではありますが、まあこう言って説明する、というのは把握した。

更に言いたいのはこっちでしょうな。

『それから二番目に、金融政策運営に当たっては、その効果とともに、国債市場の機能、あるいは金融機関の金融仲介機能に及ぼす副作用やコストについても比較衡量しながら、その状況に応じて最適な方法で金融政策を運営していくことが重要であると思います。』

国債市場の機能というのは中々受けないと思う(1日ぶり2回目)。

『この点、今後、モメンタムが損なわれるような場合に、追加緩和を行う際には、効果よりも副作用が大きい可能性もありますので、私としては十分慎重な議論をしていく必要があると考えています。』

>追加緩和を行う際には、効果よりも副作用が大きい可能性もありますので
>追加緩和を行う際には、効果よりも副作用が大きい可能性もありますので
>追加緩和を行う際には、効果よりも副作用が大きい可能性もありますので

本当は「可能性もあります」じゃなくて「と思われます」と言いたいのでしょうなあというのは把握した(^^)。

・・・・・・・ってかね、なんかの拍子にドル安円高に進むとするじゃないですか、そうなった時に追加緩和ってやってマイナス金利深堀したら多分盛大なる自爆になってしまう(そもそもマイナス金利入れたのも円高になってきて突如ブチ切れてマイナスぶっこんだのに、その後株安円高になって自爆したから半年で総括検証になったので、円高になってブチ切れ追加緩和すると次も大爆発炎上するのは必定)ので、どう見ても鈴木さんの指摘が妥当。

『こうした点を踏まえつつ、金融政策運営の観点から、引き続き重視すべきリスクの点検を行うとともに、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムをしっかりと維持すべく、適切な金融政策を運営していきたいと思っています。』

イイハナシダナー。


・政策見直しに関しては

鈴木さんのご指摘の通り(^^)、政策見直しネタの質疑があまりないのですが多少あったので引用します。

『(問) 本日の挨拶の中で、仮に景気後退局面になった場合にデフォルト率が上昇すると、金融機関の収益が加速度的に悪化する可能性があると指摘されています。そういうリスクが高まった場合、金融政策でできることはあるのか、日銀として、仮にそうしたことが起こった場合は、どういう政策運営をすべきなのか、その辺りについてお聞かせください。』

『(答) 信用コストと景気の関係については、まずは景気が急激に悪化することのないように、金融政策としてもよくみていくということであろうと考えていますが、』

そらそうだ。

『これまでも申し上げているように、金融政策は金融機関の収益のために行っているものではないということは一方で真実であります。』

それもそうだ。

『ただ、ご案内の通り、金融政策は金融機関を通じて経済に対して金融政策の効果を浸透させていきますので、金融仲介機能が毀損するリスクがある、あるいは金融システムが不安定になる、といったことがあると、それは問題であると考えています。』

その通り。

『逆に、経済・物価が順調に推移している中で、多少、金利やイールドカーブが上がっていけば、それは金融機関の収益にとってもプラスになると思います。』

イールドカーブが立った方が良いと仰せですなイイハナシダナー。で別の質疑から。

『(問) 先程、副作用を考えながら「持久力」のある修正を図っていく必要があるとおっしゃいましたが、具体的にはどのような修正が必要だとお考えでしょうか。』

『(答) 昨年7月に市場機能に与える副作用に対しての柔軟性ということで対策を講じた次第ですが、私が本日申し上げたのは、今後、それ以外の副作用等も含めて問題が顕れ、 「持久力」の維持が難しくなるようなことがあれば、それに対しては適切な修正を行って、 「持久力」を強化していく必要があるということです。現時点において大きな問題があり、やっていないことがあるということで申し上げたつもりではありません。』

ということで現状特に修正をしろという話ではないのですが、今そこの話をぶち込んでも政策委員会の中でウケないのでとりあえず死んだふりをしているという事なのかなあとは勝手に想像しますが、さてどの程度の思いなのでしょうかというのは金懇挨拶、会見共に煙に巻いていますなあ、ということで。


〇債券市場サーベイとか金曜の訂正ネタ(大汗)とか

http://www.boj.or.jp/paym/bond/bond1902.pdf
債券市場サーベイ <2019年2月調査>
回答期間:2019年2月4日〜2月8日 調査対象先数:67先

今回のは盛大なる出オチでして、

『1.債券市場の機能度の状況(長期国債の流通市場を念頭において、ご回答下さい)

(1)貴行(庫・社)からみた債券市場の機能度(注)    
(注)債券市場の機能度は、(2)@〜Fの質問項目への回答内容等を総合的に勘案して、ご回答下さい。』

ってのが、

(現状)は、
1. 高い:前回0→今回1(ところでこの高いって回答してる金融機関1先って・・・・・・)
2. さほど高くない:前回60→今回60
3. 低い:前回40→今回39

と横ばいに見えるのですが、

(3か月前と比べた変化)を見ますと、

1. 改善した:前回9→今回4
2. さほど改善していない:前回85→今回72
3. 低下した:前回6→今回24

と盛大に悪化していまして、そらまあそうだろうなとは思いますが、以下の所では売買が減りましたって話が目立ちましてそれもまたそうだろうなという感じでした。

ところで金曜日にヘコヘコ計算した「暦年2019の買入増加見込み」なのですが、長期輪番の計算するのに2月から減額する計算にしておりまして、1か月分減額を多めに計算していましたので(すいませんすいません)、ちょうど2月末の日銀保有国債残高表とか営業毎旬報告が今日公表されますので、2月末の状態からで計算しなおして、数字いじっているとパズルみたいなので割と楽しい輪番大予想の修正版を作成しようかと思います、サーセン。


〇だいぶ出遅れましたがクラリダ副議長の金融政策枠組み見直しネタ講演(だが今日は頭出しだけ)

という訳で色々なネタがあって折角出た後にせっせと読んだのにすっかり後の方になって恐縮至極。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/clarida20190222a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/clarida20190222a.pdf
February 22, 2019
The Federal Reserve's Review of Its Monetary Policy Strategy, Tools, and Communication Practices
Vice Chair Richard H. Clarida
At the 2019 U.S. Monetary Policy Forum, sponsored by the Initiative on Global Markets at the University of Chicago Booth School of Business, New York, New York

・中立金利の低下とフィリップスカーブのフラット化が政策見直しの主な動機だそうで

最初の所はご挨拶みたいな話なので割愛して『Motivation for the Review』という小見出しから。

『The fact that the System is conducting this review does not suggest that we are dissatisfied with the existing policy framework. Indeed, we believe our existing framework has served us well, helping us effectively achieve our statutorily assigned dual-mandate goals of maximum employment and price stability.』

政策枠組みの見直し、ということですが別に今の政策枠組みに不具合があるから見直しをするわけではなくて、今はマンデート達成みたいな感じになっているがな、ということですがでは何でという話になる訳ですな。

『Nonetheless, in light of the unprecedented events of the past decade, we believe it is a good time to step back and assess whether, and in what possible ways, we can refine our strategy, tools, and communication practices to achieve and maintain these goals as consistently and robustly as possible.2 I note that central banks in other countries have conducted periodic reviews of their monetary policy frameworks, and their experience has informed the approach we are pursuing.』

上手くいっているのでレビューをする、という説明になっとりますが、まあ今までが緩和政策の重要性からの正常化路線だったから、ここらで変えないとコミュニケーションが持たないというのがあるんですかねえ。

『As Chairman Powell has indicated, with the U.S. economy operating at or close to our maximum-employment and price-stability goals, now is an especially opportune time to conduct this review. The unemployment rate is near a multidecade low, and inflation is running close to our 2 percent objective. By conducting this review, we want to ensure that we are well positioned to continue to meet our statutory goals in coming years. In addition, the Federal Reserve used new policy tools and enhanced its communication practices in response to the Global Financial Crisis and the Great Recession, and the review will evaluate these changes. Furthermore, U.S. and foreign economies have significantly evolved since the pre-crisis experience that informed much of the research that provided the foundation for our current approach.』

つーことで、どうも経済の構造変化に対応して政策の枠組みを変える、という話なので、(ニュースヘッドラインにもなっていましたが)経済の変化によってフィリップスカーブが効きにくいとか、中立金利が低下したとか、そういう状況に対応するための枠組み変化、という話をしているのですな。

でもってこれ今日はネタにしている暇がないのですが、先般の議会証言のセットになっているマネタリーポリシーレポートでは金融政策ルールベースでの運営に関するコラムとかもあって、まあ何かやっていきたいというのは分かるのですが、何でここまで力こぶを入れないといかんのかは正直よくわからん面もある。

ということでその続きに経済の構造変化云々というのが出て来まして、

『Perhaps most significantly, neutral interest rates appear to have fallen in the United States and abroad.3 Moreover, this global decline in r* is widely expected to persist for years. The decline in neutral policy rates likely reflects several factors, including aging populations, changes in risk-taking behavior, and a slowdown in technology growth. These factors' contributions are highly uncertain, but irrespective of their precise role, the policy implications of the decline in neutral rates are important.』

中立金利低下ネタ来ました。

『All else being equal, a fall in neutral rates increases the likelihood that a central bank's policy rate will reach its effective lower bound (ELB) in future economic downturns. That development, in turn, could make it more difficult during downturns for monetary policy to support spending and employment, and keep inflation from falling too low.4』

他の条件が同じならば中立金利の低下は金融緩和局面における金利引き下げにおいて実質ゼロ金利制約(ELB)に引っ掛かる可能性を高めてしまい、金融政策での対処を難しくする要因になりますという毎度の奴が来ました。

『Another key development in recent decades is that inflation appears less responsive to resource slack.』

物価が経済のスラックに反応しにくくなっている、という要はフィリップスカーブがフラット化しているという手の話がもう一つのキーになる変化とな。

『That is, the short-run Phillips curve appears to have flattened, implying a change in the dynamic relationship between inflation and employment.5』

ほい来たフィリップスカーブのフラット化。

『A flatter Phillips curve is, in a sense, a proverbial double-edged sword.』

それは諸刃の剣であるとな。

『It permits the Federal Reserve to support employment more aggressively during downturns--as was the case during and after the Great Recession--because a sustained inflation breakout is less likely when the Phillips curve is flatter.6』

『However, a flatter Phillips curve also increases the cost, in terms of economic output, of reversing unwelcome increases in longer-run inflation expectations.』

フィリップスカーブがフラット化すると(雇用の改善に対して物価が上がりにくいので)雇用改善に向けてより積極的な金融政策をとれるという利点があるが、一方で長期的な期待インフレを上振れささせるリスクを高めるとな。

『Thus, a flatter Phillips curve makes it all the more important that longer-run inflation expectations remain anchored at levels consistent with our 2 percent inflation objective.7』

よってインフレ期待のアンカーを維持することが重要です、ということでこの小見出しの所が終わるのですが、時間が無いので以下は明日以降で勘弁して下さいませという完全にただの頭出しなのでした(汗)。





2019/03/01

お題「10年輪番減額とな/鈴木審議委員金懇/片岡審議委員金懇会見」

物価目標2%達成にはインフレ予想の引き上げが重要だというのにこの見出しは・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190228/k10011831651000.html
ビジネス特集 春なのに 値上げですか?!
2019年2月28日 19時12分

〇10年減額キターということで輪番減額もやってあと少しという感じですな

3月輪番予定表
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190228d.pdf

0−1年:100-1000、月2回(変更なし)
1−3年:2500-4500、月4回(変更なし)
3−5年:3000-5500、月4回(変更なし)
5−10年:3000-6500、月4回(3000-6000、月5回から変更)
10−25年:1500-2500、月4回(変更なし)
25−40年:100-1000、月4回(変更なし)
物価連動国債:250、月2回(変更なし)
変動利付国債:1000、隔月1回(変更なし)

・・・・・という訳で5−10輪番減額キタコレ(確定じゃないけどさ)ということになりましたが、「10年入札の翌営業日だけは10年含みの輪番入れます攻撃」の方は残しているということでして、そっち外してから減額とかのんびりしたことを考えていたのですが、月4回攻撃の方が先に来るの巻となりましたし、これはたぶん10年だけは別格で入札翌営業日の輪番が残るということになるんでしょうかね、よー知らんけど。

でですね、これ来月の長期輪番が幾らで来るかというのがまあネタになるのですが、3000-6500のレンジになっているので、真ん中が4750億円とかいう数字になりまして、まあ普通に考えれば4500から5000の間という事になるでしょうな、ってところでしょう。

でもってですよ、これまでが4300×5=21500(なので4月からの10年新発発行額よりも多くなるという状況だった)でして、4300×5÷4=5375なのでいずれにせよ減額になりますけれども、1回5000だと買入の量としてちと多いじゃろというイメージがあって(あくまでもアタクシの個人の感想だから人それぞれだと思うけど)、おまけに5000×4だと2兆円なので、来年度の10年新発国債の1回辺り発行予定額の2.1兆円から見ると相変わらず95%くらいの買入ということになりまして、ちとそれは多いんジャマイカという感じがするのですよ(個人の感想です)。

つー訳でですな、これが4700だと18800億円の買入で2.1兆円対比で90%とかになるので座りが良いかなと思いますし、まあできれば4500にすると18000億円まで行くので2.1兆円対比で86%とかの水準まで来てくれまして、こうなるとちったあ10年買いすぎ感が薄まる(中期後半と同じようなシェア割りになる)ので宜しいですなと思われますな(それ以上減らすと「掛け算スキーム」ですらなくなるので無理がある)。まあ足元ではご案内の状況だし、とにかく米国が利上げモードに戻る感じがしないうちだったらこれで金利が上がるって言ったって所詮は米国利上げしませんもんねのインパクトの方がでかいのでそうそう金利上がらんじゃろ(個人の妄想です)とか思う次第なので、まー4500か4700かのどちらかじゃネーノという風に勝手に大予想(外れても知りません)ということにしておきます。べき論は4500で予想は4700ですかね(^^)。

さてそれはそれで良いのですが、10年の所を減らしますと実は「買入総額」の方に結構インパクトが出てくるわけでございまして、めんどいので1月末時点のデータを使って(というのはこの前も計算したからエクセルシートの数字をちょこっと入れ替えるだけで計算できるから、という手抜き思想によりますが)計算しますと、先般超長期前半の減額を行いましたので、今回の減額前時点で月額の買入が(除く1年以下で)月額61,700億円になっていたのですね(変動利付は月500億円に均して計算)。でもって1月の増分と2月からの償還額を勘案すると、今回の減額前時点で、暦年2019の長期国債買入残高増加見込み額って21兆6386億円になっていたんですよ。

そして、この前からアタクシ計算していた時って長期輪番の月に5回が維持されるのを前提に長期輪番が500億円、他のバケットで合わせて800億円とか計算していたわけですが。4回になって、4500億円にしますと、月5回の輪番に引き直すと3600億円、4700億円だと3760億円になるので、何気にいずれの場合でも500億円をちと超える減額になるんですな。

ということで、今回4500にした場合、暦年2019の長期国債買入残高増加見込み額が17兆7886億円、4700にした場合は18兆6686億円になりまして、この前適当に計算した際にアタクシが勝手に推計したラインなので特段の根拠はない(本人は妥当だと思っていますけど)のですが、オーバーシュート型コミットメントとの兼ね合いからして長期国債買入残高増加見込みを15兆円よりも下になるような削り方はしない、という風に置いてみると、4700の場合は大体この前の計算と同じになるので、他のバゲットで800億円の減額(中期3-5で500、超長期10-25で300ってのでどうでしょうかね)で15兆1486億円でまあそんな感じ、4500の場合は他のバゲットで500億円の減額で15兆5886億円で、600億円の減額だと15兆1486億円になりますなあという感じです。

何となく10年減らした後の減額バケットのバランスを考えると長期4700にして、いずれ中期後半を3500、超長期前半を1500に削減するという感じなのかなとか思いますが、プラス金利ゾーンの所を頑張って減らすということにすれば長期4500にして超長期1300か1200というのが物凄くビューテホーな上(ってただのご都合願望にも程がある)、減額を残りあと1回やったら打ち止めになるので、輪番の度に今日の減額はどうのこうのとかいう市場との変なゲームもしなくて済むようになって誠に結構という感じではありますな。

でまあ今の地合い(とか言っても今日になったらどうなっているのかは知らんけど)から考えたら、多少減らしても金利がドカドカ上がる訳でもないでしょうし、小幅に減額(=5000)するよりもスパッと減額して逆に10年減額出尽くしモードにしちゃった方がスッキリするんじゃないですかねえとは思いますがさてどうなるやら来週が楽しみですな。


〇GCレートに動意が続いているのでメモを置いておく

http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

先週末くらいからGCがしれっと上昇していて、TKRR公表値ベース(上記URL先にある「東京レポ・レート(一覧)」から査収) でT/NのGCレートが、

2019/2/20 -0.111
2019/2/21 -0.110
2019/2/22 -0.087
2019/2/25 -0.068
2019/2/26 -0.069
2019/2/27 -0.059
2019/2/28 -0.049

とお洒落な推移をしておりまして、ナンジャソラという感じで今日の3M入札どうなるんでしょうなとちょっとだけワクテカするわけでございますが、まあ何かの一時的要因だか特殊要因だかという感じなのでしょうが割とドバドバ上昇しているのでメモメモ。


〇鈴木審議委員茨城金懇とか金懇を連日並べないで頂きたいものです

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190228a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190228a1.pdf
【挨拶】わが国の経済・物価情勢と金融政策
茨城県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 鈴木 人司 2019年2月28日

・物価認識に関しては「モメンタムは維持」「目標は達成できる」というスタンスとな

片岡さんの金懇の直後に金懇ですかそうですかという所ですが、鈴木さんの場合は金融政策に対する副作用だの弊害だのその辺を見るのが見どころになりますので、経済物価情勢に関する部分は思いっきりすっ飛ばしまして、とは言いましても全部すっ飛ばすのはさすがにアレなので『(物価の先行き)』という所から参ります。

『ただ今申し上げました「マクロの需給環境」、「ミクロの物価変動要因」、「企業・家計のマインド」という点を踏まえたうえで、消費者物価の先行きについては、マクロ的な需給ギャップがプラスを維持する中、企業の値上げに向けた取り組みの裾野が拡がり、企業・家計のマインドにも少しずつ変化が生じていくことで、物価上昇に向けた材料が次第に整っていくと考えられます。』

ほほう(なお結局この前段部分を後で鑑賞します)。

『原油価格の動向等の影響による振れはあると考えられますが、「物価安定の目標」に向けたモメンタムは引き続き維持されており、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくとみています。』

ほうほう。

『具体的に、1月の展望レポートにおけるコアCPIの政策委員見通しの中央値では、2018年度にプラス 0.8%、2019 年度にはプラス 1.1%、2020 年度にはプラス 1.5%となっています(図表6)。 今後、日本銀行が「物価安定の目標」を達成し、国民経済の健全な発展に資するためには、「物価だけが上がれば良い」というものではなく、物価の上昇に企業収益の増加や実質ベースの賃金の上昇が伴っていくことも重要です。』

『日々、企業経営者の方々は、生産性・効率性の向上やコスト削減、高品質な商品・サービスの提供といった、様々な努力をされています。こうした努力の結果として、企業が生み出す製品やサービスの付加価値が高まり価格が上昇する、すなわち物価が緩やかに上昇する環境においては、企業収益も潤っていくことが考えられ、その場合には企業で働く労働者の賃金も増え、家計所得もまた潤うと考えられます。家計が潤うことで、人々がさらに企業の製品やサービスへの支出を増やすと考えられますので、企業収益が一層潤う、こうした好循環を先行き創り出していくことが肝要であると考えています。』

というような話の展開になっているのですな。でもってその背景になるのがその前段の部分になるのですが(と順番前後して引用して恐縮ですけど)、『(物価の現状)』の所を見ますとこうなっておる訳です。

『こうしたもとで、物価情勢についてみますと、生鮮食品を除く消費者物価(コアCPI)の前年比は、昨年2月にプラス1%まで上昇した後、若干減速しましたが、その後再び1%を回復し、足もとは0%台後半の水準で推移しています(図表7)。日本銀行では、「物価安定の目標」を「2%」と設定し、大規模な金融緩和を実施していますが、その目標に向けてはなお距離があります。』

はい。

『こうした物価の動向を分析するうえでのポイントについて、本日は「マクロの需給環境」、「ミクロの物価変動要因」、「企業・家計のマインド」の3つの視点からご説明します。』

つーことで、

『 @ マクロの需給環境

まず、「マクロの需給環境」という点に関して、日本銀行では、わが国経済の総需要が景気循環の影響を均した平均的な供給力からどの程度乖離しているかを示すマクロ的な需給ギャップを推計しています。こちらをみますと、労働需給の着実な引き締まりや資本稼働率の上昇を背景に、需給ギャップは 2016 年第4四半期以降、8四半期連続でプラスを維持しています(図表8)。つまり、マクロ的な需給という観点では経済は需要超過の状態が続いており、物価に対して押し上げ方向の力が作用していると考えられます。』

という話になっておりますが、さきほどの先行き見通し部分に見られますように、鈴木さんって物価見通しに関しては執行部ベースのお話をしていますので、この部分でも「押し上げ方向の力が作用している」とまとめてしまっていますが、この部分に関して言えばちょうど昨日ネタにした片岡さんのツッコミ、即ち「既に需給ギャップが1%以上のプラス局面がそれなりの期間継続しているのに、物価の伸びに力強さが見られていない(ので物価はこのままではそう簡単に上がらんのではないか)」という風に話を持って行って、だからこそこのままでは極端な緩和政策の長期化が懸念されるので修正をしなければいけない、という風に話を持って行った方が主張としては強くなるんじゃないのかなあと思う訳ですよこれがまた。

『A ミクロの物価変動要因

次に、「ミクロの物価変動要因」という観点で申し上げます。物価を表す指標として用いられている「消費者物価指数」は、様々な財・サービスの価格を集計し、一つの数字で表現したものですが、足もとでは、これまで物価の前年比を押し上げてきたエネルギー価格は、昨秋以降の原油価格の下落の影響を受けてそのプラス寄与が縮小してきているほか、携帯電話通信料について、先行き一層の価格低下が進む可能性もあります。また、企業間で取引される商品の物価を示す国内企業物価指数をみますと、原材料費や人件費の上昇を背景に2018 年は平均して前年比プラス 2.5%の上昇がみられており、企業間では2%を超える値上げが行われているものの、企業が消費者に対して提供している商品では、企業物価ほどには値上げが行われていないという状況が窺われます。もっとも、少しずつではありますが、足もとも家庭用小麦粉やアイスクリーム、ペットボトル飲料、冷凍・冷蔵食品等において値上げの動きがみられており、こうした取り組みの裾野が拡がっていけば、先行きの物価上昇に向けた足掛かりができていくものと考えています。』

よってその次の部分もこのような感じになってしまいまして、もうめんどいのと長いので『B 企業・家計のマインド』の所は引用パスしちゃいますが、要するに執行部のペースであるところの「モメンタムは維持されているので物価目標行きますよ」的なロジックを受け入れてしまうと、どうにもこの先の金融政策に関するところの主張が(もし今の政策枠組みに何らかのモノ申すモードなのであれば、という前提付きですが・・・・・・)強くなくなってしまうのが残念なところ。さすがに執行部ペースの話を全否定しちゃうというのも今度は具体的かつ説得力のある政策デザインを出さないとちと無理があるという事になるでしょうが、鈴木さんがもうちょっと「今の政策の枠組みの見直しが待ったなし」というような感じで話をするのであれば(って別にそんなこと考えていないのでしたら致し方ないですけど)、執行部ペースよりも「物価目標がそう簡単に行かない」に寄せてから話をした方が多分政策見直し論議の土俵に引きずり込みやすいと思うのですけどどうでしょうかね、などと思ったりしました。


・執行部ベースの話からの副作用論だと政策見直しの話になりにくいと思うのですが

ということで次の『3.金融政策運営 』ですが、最初の『(「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」について)』の途中から参ります。


『物価の面では、コアCPIは、2016 年9月のマイナス 0.5%からプラス0%台後半まで、この2年半で1%ポイント以上上昇しました。予想物価上昇率という観点でも、日本銀行が実施している「生活意識に関するアンケート調査」の結果をみますと、中長期的な予想物価上昇率の水準はなかなか上がらないものの「1年後」の物価が「上がる」と答えた個人の割合は足もと上昇してきており、人々の物価の見方に変化の兆しもみられ始めています(図表 11)。』

うーんこのという感じでして、CPIは図表7になるのですが、確かにコアCPIは仰せの通りですけど、同時期のコアコアCPIは0%台前半で推移しているので、それは何ぼ何でも説明に無理があるじゃろと思いますし、生活意識アンケートの1年後物価の推移って図表11ですけれども、落ちた数字が戻って来ただけではないでしょうかという感じでして、説明にいずれも無理があるし、今の政策の見直しも含めて問題提起するというスタンスなのであれば(そうじゃないなら別に良いんですけど)何もこんな無理のある提灯説明しなくても良いのにと思うんですけどねえ。

『コアCPIの水準自体は「物価安定の目標」に向けてなお途半ばの状況にありますが、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、強力な金融緩和を息長く継続していくことが重要と考えています。』

まあこの提灯説明はこの「息長く」を言いたいがために行ったんだと思うのですが、むしろそこは「現行の政策枠組みでは効果がろくすっぽ上がってこないのに大規模緩和にマイナス金利という政策の弊害は累積しているのだから、俺様が総括検証第2弾をやってより適切な政策の在り方を考えてみるわいな」というそもそもの現行ドクトリン(ただの問題の先送りドクトリンとも言えますが)の見直し論議から入っていかないと弱いと思うの。

つまりこの次に『(金融緩和の持久力)』って小見出しになりまして、

『 2013 年4月の「量的・質的金融緩和」の導入から、丸6年が経過しようとしています。先ほど申し上げたとおり、大きな流れとしては企業の値上げに向けた取り組みや企業・家計のマインドの変化が少しずつ進展していくと考えられますが、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスや家計の値上げに対する慎重な見方はなお根強く、先行きも長期間にわたり消費者物価上昇率の高まりが抑制される可能性があることにも留意が必要です。』

『こうしたことを踏まえると、今後の金融政策運営においては、「持久力」が必要となってくると考えられます。』

という話になってしまうのですが、それだと結局のところ執行部と言ってることが五十歩百歩という事になってしまいまして、むしろ片岡さんと途中まで同じような話をしつつ「追加緩和じゃなくてそもそもの枠組みの見直しによって無理なく金融政策を継続することを考えるべき」という風に持っていく方が強いでしょうなあとは思う(ただしいきなり最初からそのカードを切るのではなくて鈴木さんとしてはタイミングを見ている、というのかも知れないのですが)のよね。

まあそれはそれとして続き。

『では、金融政策の「持久力」を高めるためには、何が重要でしょうか。この点についての私自身の考えを申し上げますと、「走り続けるという意志」、「柔軟性」、そして「ランニングエコノミー」の3点であると考えています。』

ということでこの3つの小見出しを拝読しましょう。

『@ 走り続けるという意志

まず、「走り続けるという意志」という観点では、日本銀行の先行きの政策運営スタンスを明確にし、政策への信認の確保・維持を図るということです。日本銀行では、「2019 年 10 月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している」というフォワードガイダンスを示し、「物価安定の目標」の実現に対するコミットメントの強化を図っています(図表 12)。』

うーんこのという感じでして、正直このへっぽこ政策でそのまま走り続けられますと迷惑なだけなんですが。

『A 柔軟性

2点目に、陸上選手がストレッチ運動で体の柔軟性を保ち、怪我を防止しているように、金融政策運営においても、適度の「柔軟性」を持たせることが重要と考えられます。』

とあって、以下延々と話が続くのですが、

『日本銀行では、昨年7月、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みの持続性を高めるため、10 年物国債金利の操作目標を引き続きゼロ%程度としつつ、「経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうる」こととしました(図表 12)。これは、イールドカーブ・コントロールの導入後、結果的に金利形成が幾分硬直的となっていたことを踏まえ、弾力的な国債買入れの実施によって市場機能への影響にもより配慮したものです。ただし、現時点で金利水準を引き上げていくことを想定しているわけではありませんので、金利が急速に上昇する場合には迅速かつ適切に国債買入れを実施することとしています。』

という話をしながらこの後の方では『(金融機関の持久力)』という小見出しが続いてしまう所がこれまた弱いなあと思う所でして、何ちゅうかこの辺りの話って現行の政策枠組みを所与として政策の副作用論の話をするというスタンスになっているようなのですが、そらまあ副作用論は金融の人とか金利の人にはそれで話は通じますけれども、政策論という問題になった時に副作用論だけで話をするのはやっぱり説得力が弱くて、むしろ真正面から「今の政策の効果が労多くして効少ないのだからありかたそのものを見直し」という方向から行かないと政策見直し論議の土俵に乗せるのって難しいんだと思うの。

いやまあ政策見直し論議をするという事を考えていないとか、とりあえずそこはまだカードを切らない、ということなのかも知れませんけどね。なお以下の「柔軟性」にはETF買入などの話もありますが引用割愛します。


・担保の話は実務的に大事なのはわかるけどそれは政策副作用論としても弱いと思う

『 B ランニングエコノミー

3点目として、「ランニングエコノミー」の観点が挙げられます。』

あたくし不勉強にして初めて知ったこの言葉。

『これは、長距離走においていかに効率良くエネルギーを使うか、すなわち「燃費」の概念ですが、金融政策についても、効果とコスト、副作用の比較衡量を図りつつ、そのパフォーマンスをできるだけ高い状態で維持し続けることが重要です。』

ほほう(マラソンとかやらんから知らんかった)。

『イールドカーブ・コントロールの枠組みにも、既に積み上げてきた日本銀行の保有国債残高のストックによる金利押し下げ効果の大きさを活用することで、きわめて低い長短金利の水準を効率良く実現し、そのことを通じて経済を刺激していくという側面があります。』

ということで、これも今の政策を所与とした話になっているなあと思うのでありました。でもってこの次の話はさらにうーんこのという奴でして・・・・・・・・

『この点、よりミクロな国債市場の構造に着目しますと、現状、10 年物新発国債は、発行後およそ半年でそのかなりの部分が市場からはなくなり、日本銀行へ持ち込まれている状況であり、市中に残存する国債残高は減少傾向が続いています。こうした中で、金融機関では資金調達などの目的で、日本銀行に差し入れているオペの担保のほか、デリバティブ契約上の担保、外貨調達のための担保、円レポ取引における担保など様々な用途で、低金利環境下でも一定量の国債を保有するニーズがあります。今後も市中に残存する国債残高が減少を続ければ、金融機関によっては保有国債残高が徐々に必要最低限の水準まで近付いていくことが予想されます。このような国債に対する金融機関の需要などを丁寧にモニタリングしつつ、状況に応じて、各回の国債買入れオペの金額についても適切な調整を図ることが重要と考えられます。』

主な意見とか議事要旨でも出てくるのでおなじみだし、まあそんな話をするのは鈴木さんだろうなあと思っておりましたら案の定なのですけれども、この「担保としての国債が足りなくなる」という話って確かに実務的には物凄く切実な話ではあるのですが、政策論議として考えた場合は「で何が問題なの?」という話になってしまうのでこの論点で話をするのって筋がよくないと思うの。

つまりですな、担保の国債足りないなら財務省が国庫短期証券増発すれば良いじゃないですかとか、実務上の対応で済ませてしまう話でしょと言われると割とぐうの音も出ない話だし、大体からして長期国債買入だってせっせと減額して既に来年度のカレンダーベース市中発行額よりも買入額は少なくなっていますし、長期国債買入残高の増加も新規発行額よりも少なくなってきているという状況でもあるので、この論点で政策運営の見直しというのはちょっとどうなのと思う。単に実務的な対応をという話ならそれはそれでわかるけど、実務的な対応に関する論点を金懇でするようなもんじゃないでしょ?とも思います。


・金融機関の持久力キタコレではあるのですが・・・・・・・

てな訳で次が『(金融機関の持久力)』という小見出し。

『 このように、日本銀行が金融政策の「持久力」を高めていくことが重要であると同時に、金融政策の効果は、主として金融機関を通じて経済全体へと波及していくことにも目を向けていく必要があります。そうした意味では、先行きも金融機関が金融仲介機能を十分に発揮できるよう、金融機関の「持久力」についても肌理細かくモニタリングをしていくことが重要です。』

ということでキタコレではあるのですが・・・・・・・・・・

『金融機関では、足もとの低金利環境に加え、地域における人口や企業の減少などを背景に収益へのプレッシャーが高まっており、有価証券の益出しや与信費用の戻入によって収益を下支えしてきています。もっとも、金融機関の基礎的収益力をみますと、緩和的な金融環境が続くもとで、金融機関の新規貸出約定平均金利はきわめて低水準となっており、当該金利から経費率を控除した数値をみますと、例えば地域銀行では足もと 10bps 程度となっていますが、これは過去 20 年間の平均信用コスト率を大きく下回っています。また、地域銀行や信用金庫では、都銀等を上回る貸出の伸びを示しており、相対的にリスクの高いミドルリスク企業向けの貸出や不動産賃貸業向け貸出等もみられます。今後、仮に景気後退局面となった場合、こうした先の経営悪化が信用コストとして顕現化する惧れがあるほか、貸出先企業のデフォルト率が上昇すれば貸出ポートフォリオ全体として貸倒引当金の積み増しが必要となり、金融機関における加速度的な収益悪化の要因となり得る点に注意が必要です。』

『この点、少なくとも現状においては、わが国の金融機関は全体として資本、流動性の両面で強いストレス耐性を備えており、金融システムの安定性も維持されているものとみていますが、地域金融機関も含めた金融機関のリスクテイク姿勢や経営の動向については、金融システムや金融仲介機能への影響という観点から引き続き注視していきたいと考えています。今後も、現状の金融緩和政策を息長く続けていくもとで、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、「物価安定の目標」に向けたモメンタムをしっかりと維持すべく、適切な政策運営に努めて参りたいと考えています。』

という締め方になっていまして、まあこの金懇挨拶での流れがそうなのだから仕方ないですが、前の方であったように「現行政策を基本的に是としてその政策の持続性を高める」という観点での説明を行っていると、結局のところ政策見直し議論には直接つながってこないというのが残念なところでして、YCCの話をしている中でも「金利は上げません」とかいう話だし、政策効果があって物価は2%に向けたモメンタムを維持している、というのであれば政策見直しの必要がないという話になる訳ですからして、これが鈴木さんの単に死んだふりというか狸寝入り攻撃なのであれば有りなのですが、政策の副作用論とか見直し論とかの方面での論理展開としては弱すぎにも程があるし、むしろこれだと「政策を続ければ物価目標達成なのに金融機関の得手勝手な都合でケチ付けてるの何なの?」というような印象の方を与えそう(もちろん金利市場とかにはこれでウケますけど一般向けに考えた場合)で、実際問題としてやべーよやべーよというのが伝わってくれるのかがよく分からんなあと思いました(個人の感想です)。

もうちょっと「今の政策を続けると破綻するから何とか汁」というのを強調した方が良いのかとは思うものの、それを言うのはタイミングを見ないと、ということで苦心しているんだろうなあとは思うので同情の念に堪えないところではあるのですが、今回の金懇はその辺微妙な仕上がりになってしまいましたな。

まあ何ですな、今の政策の見直しって結局のところ何かの外圧が無いとダメで、副作用論にしたって本当に副作用が爆発でもしない限り外圧にならない(なおそうなったら時すでにお寿司なのは言うまでもない)訳でして、結局のところ政治方面にアッピールして政策の問題点をご理解頂いてそっちから日銀に圧が掛かる方向じゃないと実際問題としては無理があると思うので中々難しいんだろうなあ、とは思うのでありました。


〇片岡審議委員会見

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190228a.pdf

・どうでも良い小ネタだが冒頭で反応するアタクシ

最初の質問がこれ。

『(問) 今日、高松市で金融経済懇談会が開かれたのは7年ぶりということですが、地元の経済界からどのような意見や要望が出たのか教えて頂けますでしょうか。 』

答えの方はどうでも良いのだが、おお7年ぶりなのかと思いまして、まあ7年ぶりの金懇でリフレ派かよとは思いますが、ただまあ片岡さんの場合は「実現可能性に目をつぶれば理屈はその通り」なので、どこぞのジンバブエ大先生のような物件をお出しするのとは全く違うのでこれはこれでという感じでした(しかしそう考えるとジンバブエだったり置物だったりが金懇に送り込まれる金沢支店ェ・・・・・・)。なお高松支店と言えば歴代支店長がこちらになりますのでご確認ください。
http://www3.boj.or.jp/takamatsu/sum/list.htm
歴代支店長一覧


・最初から普通に直球質問

とは言いましても最初の質問は「今日はどうでしたか」でして、次の質問が香川県経済に関するお話になりますのでそれだけで10ページ中3ページ丸々使ってしまいますが、その次の質問が満を持してこれ。

『(問) 2点お聞きします。1点目は、講演で、金融緩和が「長期化する ほど、出口戦略の負荷が高まりますし、金融緩和の副作用も累積的に高まります」とおっしゃっています。出口戦略の負荷が高まるというのは具体的にどういうことか、何が起こり得るのでしょうか。また、金融緩和の副作用が顕現化した、あるいはもっと強まり累積的に大きくなった場合には、何が起こるのかについて、具体的に教えて頂きたいと思います。』

『2点目は、「財政・金融政策のさらなる連携を図る工夫を講じることで、市場や経済主体の期待や予想に働きかけていくことも重要である」とおっしゃっています。金融政策と財政政策の色々な協調は既にされていると思いますが、この「さらなる連携」とは具体的にどういうことをイメ ージされているのか教えてください。』

まあアレです、「片岡さんの政策の実現可能性」以外の論点で言えばこの辺りが今回の金懇でのお話のトピックという感じですので出オチみたいになってしまいますな。

『(答) 1点目については、ご案内の通り、物価の現状は、2%の「物価安定の目標」から非常に遠い状況です。そうした状況を考えますと、現状、 出口政策までは非常に距離が遠いことが前提としてありますので、出口政策を具体的にどう進めるのかについては、この場でお答えは差し控えさせて頂きます。』

うーんそういう事は質問してないように思えますが。

『ただ、直感的に申し上げて、緩和が長引けば長引くほど、そこから平時の状態に戻すには、時間もコストもかかることは明らかであると思いますので、そうした意味を含めて、講演では出口政策へのコストが強まるのではないかと申し上げました。』

なんだ一般論だったかつまらん。

『副作用については、現状、私どもとしましては、金融機関等について具体的な副作用があるとは認識していません。』

あるわボケいい加減にしろ。

『ただ、低金利環境が長引くと金融仲介機能が阻害されるのではないかといった点については、金融システムに対する副作用だとして、注視しています。』

まあ片岡さんだから分かっていないという事はないとは思いますが何か金懇挨拶で割ときちっと言っているのに会見がこれってなんだかなあという感じです。

『2点目については、色々な手段が考えられると思います。』

なんだよそれ。

『アベノミクスのもとで、2013 年以降、金融、財政、成長戦略といった3本の矢を使ってデフレからの脱却に邁進していくという基本的な方針は、私自身、 変わっていないと認識しています。そうした中で、足許の内外の経済動向を勘案しながら、「物価安定の目標」を早期に達成するために、何をやっていくかという視点で、財政との連携をより考えていく余地があるのではないか、というのがお話した趣旨です。』

というのは良いのだが呆れたのはその次。

『具体的に何かということについては、この場では申し上げられないとご理解頂ければと思います。』

???????????????

いやお前さんMPMで『片岡委員は、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が重要であり、日本銀行としては、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとのコミットメントが必要であるとして反対した。』(1月MPM声明文脚注より)って毎回言っているのに具体案が申し上げられないって何なのそれ????????????????


・追加緩和の手段について

次の質問はこんなのである。

『(問) 1点目は、委員は、講演で、追加緩和が必要だという従来の主張をされています。日銀は球切れだとよく言われていますが、具体的に、今どのような手段があるのか、考え得る中でのベストなものを可能でしたら具体的にお話し頂けますでしょうか。(後半割愛) 』

『(答) 1点目ですが、私自身は、過去の金融政策決定会合の公表文、ないしは議事要旨などにも記載されている通り、追加緩和の手段としては、10 年以上の国債金利をさらに引き下げるように金融緩和を強めるべきだという点と、コミットメントの強化という観点から、中長期の予想インフ レ率が下振れするという判断がなされた場合には間断なく金融緩和を行うとのコミットメントを結ぶべきだという点を申し上げています。ですか ら、現状、追加緩和の手段としては、これら2つが私自身の主張であると ご理解頂ければと思います。』

いやだからその10年金利の引き下げ方について説明しろやと思うし、その先の追加緩和については何かアイデアねえのかよ(無いんだったら追加緩和手段を講じるコミットメントとか意味ねえだろ)と。

『一般論としては、黒田総裁もお話しされていると思いますが、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という新しい枠組みに移った 2016 年9月に、物価のモメンタムが失われたと判断される場合には、「量」 ・「質」・「金利」といった3つの観点から、追加緩和策を検討するという点 が公表されています。追加緩和については、この3つの観点から検討していくことになると思います。 (後半割愛)』

ということでなんかこう実はこの人ノーアイデアで竹林の清談をしているだけなのではという雰囲気が漂ってくる次第でして・・・・・・・・・・


・これは良い質問

実はこの質疑の1つ前も良さげなのですがこっちの方が良い質問なのでこちらを引用。

『(問) 物価が伸び悩んでいる理由として、講演の中で、需給ギャップの拡大が物価の上昇に効きにくくなっている可能性があると指摘されてい ます。その一方で、緩和を強化して、需要超過幅を一段と拡大させるよう 働きかけることが重要だとも述べられており、一見すると矛盾する感じもします。』

イイシツモンダナー。

『追加緩和する時に、例えばマネタリーベースと金利と物価上昇率の関係や、効果の再検証も必要ではないかと思いますが、それらをどうつなげられるのでしょうか。』

これは秀逸。では片岡さんの回答。

『(答) 需給ギャップの拡大が物価に効きにくくなっている理由について は、昨年7月の展望レポートで再度整理した通りだと思います。それを前 提として、金融緩和を強めて需給ギャップを拡大させていくことで物価が上がるのかという点については、私自身は、手段としての金融緩和の強化 に加えて、コミットメントという形で、中央銀行が物価安定を達成するという約束を信認してもらう取組みをあわせて行うことで、予想インフレ率そのものに働きかけていく工夫が必要ではないかと従来から申し上げています。』

予想インフレに働きかける政策はワークしていないんですが・・・・・・・・・

『加えて、最近では、政府と日銀の連携をさらに強化させることを通じて、2%の物価予想をより強固にしていく必要があると申し上げています。その根拠については、挨拶要旨の脚注にありますが、何よりも日本では、長引くデフレの中で2%の物価のアンカーが確保されていないことが大きな理由であると感じています。』

なんだその話のワープっぷりは???

『例えば、2%のアンカーがある程度担保されている米国をみますと、リーマンショックを受けて物価上昇率が一時マイナス圏となるなど、非常に低い水準まで落ち込んだ局面がありましたが、大規模な金融緩和が行われ、それによって物価上昇率が2%近傍 に再び戻った状況にあります。残念ながら日本はそういう状況にはありませんので、2013 年以降、財政、金融、成長政策という3本の矢を通じて、 物価のアンカーを作ることを目指しているわけです。』

おいこらお前いつの間に財政とか成長戦略で物価のアンカー作ることになったんだよ話が違うじゃないかいい加減にしろ。

『ただ、金融緩和だけではなかなか難しい。この難しいというのは、できないということではな く、デフレの状況の中で、2%のインフレ目標の達成までは非常に距離がある状況ですので、3本の矢を使っていく必要があり、そのためには、政府とのコーディネーションが重要だということです。その中で、金融緩和としては、手段とコミットメントが大事だということを申し上げています。』

さてここで置物副総裁の就任記者会見に立ち戻ってみましょう。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf
『2 つ目は、そういう意味で、2 年くらいで責任をもって達成するとコ ミットしているわけですが、達成できなかった時に、「自分達のせいではない。 他の要因によるものだ」と、あまり言い訳をしないということです。そういう立場に立っていないと、市場が、その金融政策を信用しないということになっ てしまいます。市場が金融政策を信用しない状況で、いくら金利を下げたり、 量的緩和をしても、あまり効き目がないというのが私の立場です。』(上記URL先の2013年3月21日正副総裁就任記者会見における岩田副総裁の発現より)

・・・・・・まあお前は何を言ってるんだとしか申し上げようがありませんで、まずは元々の置物ドクトリンの誤りを自己批判してから話を始めろという所ですな。


#FEDネタの方も押しているので週末頑張って成敗しないと(するかどうかは未定ですができれば何とか)