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2018/05/31

お題「市場レビューメモ/国際コンファランスの総裁挨拶がすっかり脱力モードになっている件」

さて皆さん今年ももう12分の5、今年度も6分の1が終わろうとしておりますが如何お過ごしでしょうかorzorz

〇イタちゃんとりあえず値を戻しているみたいなので備忘メモ

うむ。
https://jp.reuters.com/article/idJPL3N1T15DO
2018年5月31日 / 02:09 /
ユーロ圏金融・債券市場=イタリア国債利回りが低下、政局巡る売り一服

『大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と右派の「同盟」は、経済相候補を差し替えて再び連立政権の樹立を目指すと、五つ星運動の関係者が明らかにした。五つ星運動は組閣作業を円滑に進めるために、経済相に推していたパオロ・サボーナ氏に指名を辞退するよう申し入れた。』

『再選挙なら反既存勢力が勢いを増すとの懸念から、2年債利回りは前日、一時150ベーシスポイント(bp)強急上昇していた。この日は45bp低下して1.98%と、2%を再び割り込んだ。1週間前は0.2%にとどまっていた。』

『5・10年債の入札結果も、資金調達能力を巡る懸念を和らげた。55億7000万ユーロ(65億ドル)の債券を売却、目標発行レンジ(37億5000万─60億ユーロ)の上限をわずかに下回った。10年債利回りは7bp下がって3.03%と、4年ぶり高水準(3.38%)から低下した。』(以上上記URL先より)

つーことでまあ正直2年の所ばっかり見ていたので長い方よくわからんのですが、欧州の寄りの時はもうちょっと金利下がっていたような気もするので、カオスな状況がどの程度緩和されたのかが正直よくわからんところではあるのですが、まー全部元に戻るってまで行くのには時間が掛かるでしょうなあとは思いますし、イタリアの場合はギリシャと規模が違いますからマジで出ていくだの債務リストラだの言い出したらそらもうエライコッチャになるので、当分安心という話にはならんのでしょうなあとは思いますけれども、ただまあギリシャで1回やっているだけに、問題を波及させて飛び火させないというのが出来れば悪影響もそこまでの話にはならんで済むんじゃろというありきたりのイメージ。まー欧州金融機関(イタリア以外)に波及しだすと本格的にマズーという話になるんでしょうな。

でもってネタがネタなだけに全戻しは無理としても、ある程度戻って落ち着くということになると、一昨日から昨日のプライスアクションは2月のVIX騒動みたいな一種のフラッシュクラッシュだったのか(それにしては念の入った売られ方ではあるのだが)何なんでしょうね、という評価になるのかも知れませんが、どうせこれから組閣がどうなるとかやっぱり総選挙やるかとか、イベントは色々とあるので、時間が経ってみないと何が何だったのかは分からないのかな、というイメージで。


こんなのもありますな。
https://jp.reuters.com/article/idJPL3N1T15M6?il=0
2018年5月31日 / 05:07 /
UPDATE 1-伊・五つ星運動、サボーナ氏の擁立断念を要請 同盟は消極的反応

『[ローマ 30日 ロイター] - イタリアの大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」は30日、ユーロ懐疑派エコノミストのパオロ・サボーナ氏の経済相擁立を断念するよう、新政権樹立で連携する極右派の「同盟」に呼びかけた。 五つ星はこれに先立ち、組閣作業を円滑に進めるために、サボーナ氏に指名を辞退するよう申し入れた。五つ星は同盟と共にサボーナ氏の経済相起用を推していたが、マッタレッラ大統領は先週、同氏の起用を拒否。これを受け、2党が推したジュセッペ・コンテ氏が組閣を断念するなど、イタリアの政局混迷は深まっていた。』(上記URL先より)

昨日の欧州寄り時間帯の時点で五つ星とリーガが再組閣に向けて努力みたいなヘッドラインがあって、どっちで反応するのかと思ってたら2年の金利だけ見る感じだと金利低下(なのでこの方向性を好感)みたいな反応していたと思うのですが、そうは言いましても実際に組閣してから経済政策はどうしますみたいなことになった時にどうせまーた波乱になるんでしょうな。本来なら再選挙した方がすっきりすると思うのですが、今の流れだと再選挙するとEU残留の是非を問いに逝ってしまう可能性があるので再選挙するのもリスキーということなんでしょうな。


なお円債。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1T12KR
2018年5月30日 / 15:21 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続伸で引け、長期金利0.025%に小幅低下

『<15:15> 国債先物が続伸で引け、長期金利0.025%に小幅低下

国債先物中心限月6月限は前日比7銭高の151円04銭と続伸して引けた。前日の海外市場でイタリアの政局混迷でリスク回避の流れが強まり、米債が大きく買われた流れを引き継いで買いが先行。日経平均株価が大幅に下落すると、海外勢の株先売りを絡めた買い圧力が強まり、一時151円13銭と3月2日以来、約3カ月ぶりの高水準を付けた。

日銀が長期・超長期を対象に実施した国債買い入れ結果は無難だったが、高値警戒感が浮上する中、午後に入ると、いったん利益確定目的の売りに上値が押さえられた。

現物市場は超長期ゾーンを中心に利回りが低下。月末を控えて年限長期化に伴う買いが入った。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp低い0.025%に小幅低下。ただ、20年債利回りが0.495%、30年債利回りが0.695%とそれぞれ4月19日以来の水準まで低下し、0.5%や0.7%といった節目水準を割り込んだことで、一部国内勢から超長期などに利益確定売りも観測された。』(上記URL先より)

てな訳で朝方はきちんと先物上昇したり20年カレントが0.495%で始まってみたりと中々威勢の良い展開だった訳ですが、米国やドイツの金利が盛大に低下しても盛大に低下しきれない円債ェ・・・・・・ということで、輪番の減額は(ネタとしてはそろそろチャンスとは思うものの、まあねえだろうなとは思ったが案の定)無くても別に好感して上がるわけでもなく、というようなところで、超長期のより後ろの方はフラットニングとかしておりましたようですが、20年カレントが0.5%割ってくるところになるとだんだんウゴカンチ会長になるというのが最近の仕様のようで、おうイールドカーブその年限まで動かなくなるのかいい加減にしろと申し上げたくなりますが、そらまあ追っかけて買う人がいなければ致し方なし。

でもって輪番減額警戒が思いっきりあるのでしょうなあとは思うのですけど、10年がこれまた全然ワッショイしなくて(そもそも10年自体が金利水準がこれなので投資家が利回りの観点でここを買いに行くという感じにならない(買うのはカーブの関係上かポートの残存調整になると思われるのですがどうでしょう)ので盛り上がらんというのもあるのかも知れません)結局10年5糸強は朝っぱらからやっていたものの、0%まで行くのにエネルギー相当要りそうとなると、輪番減らすのも口実があんまりないですね、となるので、まあ本日の翌月の輪番予定も前月踏襲型になるんでしょうなあ、と勝手に思っております。

以上ただの備忘メモ。


〇黒田総裁の国際コンファランスにおける挨拶に覇気が感じられない件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko180530a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/data/ko180530a.pdf
日本銀行金融研究所主催2018年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳

昨年のはこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko170524a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170524a.pdf

一昨年は挨拶が無かったのですが2015年のはこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150604a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150604a.pdf


・量が減るわ「我々が変える」っぽいのがないわという残念感

前回のコンファランスでのご挨拶はPDFファイル版で見ますと本文6ページの量となっておりまして、今回はそれが4ページに減額。ちなみに2015年は5ページですが、最後のページがほとんどないのでまあ実質4ページとなっております。

ということは去年が多かったのではという説も考えられるのですが、何せ2015年の場合は超越パワーワードが打ち込まれた内容になっておりましたので、そこはちょっと役者が違うという感じ(あとで再鑑賞しませう)でして、昨年対比で大きく減るとか中々残念なことです。


なにせ今回の小見出し構成が
1.はじめに
2.変貌する世界と中央銀行
3.結び

となっていまして、前回の小見出し構成が
1.はじめに
2.3つの主要な研究課題
 インフレ動学とインフレ予想の動学について
 自然利子率
 異質的な主体を考慮したマクロ経済学と金融政策の分配効果
3.将来に向けて

となっていまして、インフレ予想の動学とかこうやる気を感じさせる小見出しになっておった訳なのですが、今回は「変貌する世界と中央銀行」ですよ変貌する世界。つまり「世界が変貌したからワシらが考えていた理論での2%物価目標がすぐにできなかったんです」と責任転嫁プレイキタコレというように意地悪くよんでしまう(国際コンファランス挨拶程度でネチネチとツッコむアタクシも大概に粘着質ですなと思いますけれども(超大汗)・・・・・)このアタクシな訳ですが、まあ昨年の今頃でも総括検証から半年以上経過していてだいぶフニャフニャになっていましたが、それでも「インフレ期待の形成に直接働きかけて行くぞエイエイオー」的なのは残っていたと思うのですけれども、今回は自分らがインフレ期待をガツンと上げて頑張っております的なニュアンスがまるで感じられず、まあよく言えば自然体、悪く言えばやる気あんのかという感じですな。

昨年の挨拶の小見出し『インフレ動学とインフレ予想の動学について』々の部分からまずは鑑賞してみましょう。

『2013年4月の「量的・質的金融緩和」導入以降、日本銀行の金融政策運営における極めて重要な要素は、予想物価上昇率を引き上げ、2%の「物価安定の目標」にアンカーすることです。2016年9月に、日本銀行は「量的・質的金融緩和」政策およびマイナス金利政策を含むその他の政策効果の総括的な検証を公表しました。また、総括的な検証の補足ペーパーシリーズとして、わが国と他の先進国における予想物価上昇率の特徴についての実証研究論文を公表しました1。これらの研究には、本日の論文報告者の一人であるボストン連銀のジェフリー・ファーラー氏による、サーベイ・データを用いたインフレ予想の役割に注目したインフレ動学の分析フレームワークも含まれています2。』(昨年)

『インフレ予想について、過去数年間に多くのことを学んできたことは間違いありませんが、一方で、多くの未解明の研究課題が残されていることも事実です。例えば、インフレ予想は、かなりの程度の慣性(inertia)や持続性(persistence)を示し、そうした性質は、古くから知られている「名目価格の硬直性」を考慮したとしても、完全情報・合理的期待を仮定する枠組みで説明することが難しい点については、コンセンサスが形成されているように思います。しかし、インフレ予想が持続的な動学特性を示す背景にあるミクロ的な基礎付けについては、コンセンサスはなお形成されていません。こうした中、最近では「情報の硬直性」に焦点を当てた研究が増加しており、研究者の皆さんには、インフレ予想についての研究をさらに進展させていかれることを期待しています。』(昨年)

これが今年になりますと『変貌する世界と中央銀行』の2パラグラフ目になりますが、

『金融政策面では、物価・賃金ダイナミクスの変化について、学界および先進国を中心とする中央銀行の間で、強い関心が持たれています。グローバル金融危機による負の影響が減衰する中、大規模なマクロ経済政策の効果もあって、失業率は多くの国で大幅に低下し、実体経済は大きく改善しました。しかし、こうした実体経済の改善にも関わらず、物価と賃金の動きは鈍い状態が続いています。この問題は、最近では「失われたインフレ(missing inflation)」、「失われた賃金インフレ(missing wage inflation)」などと呼ばれています。昨年の本コンファランスでの議論を振り返りますと、インフレ期待の形成における適応的な要素の存在が、失われたインフレの有力な原因の一つであるとして注目されました。先進国を中心に観察される物価・賃金ダイナミクスの変化の背景を解明することは、現在、喫緊の課題となっていると思います。』(今年)

ということで、もはやインフレ期待を金融政策で直接働きかけて上方シフトさせてアンカーさせるという話もしなくなって、「失われたインフレ」とか「先進国を中心に観察される物価・賃金ダイナミクスの変化の背景を解明することは」とか、インフレ期待の引き上げに関して最早外部環境の改善による適合的期待形成頼みという話で、いやまあそっちの方がどこからどう見ても実際にはワークする可能性が高いし、期待に直接働きかけるのはこの5年で結局無理がありましたねという事になってしまったので、現実派に転向したと言ってしまえばそれはそれでリーズナブルな「転向」ではあるのですが、転向する前にちゃんとレビューをして頂きませんと同じ間違いを後年繰り替えす恐れがというのは毎度申し上げている通り。

でもってレビューというか総括というか自己批判というかの話もそうなんですけれども、そもそも論として前任の白川ドクトリンの全面否定からスタートしたQQE政策なのに、最近は特にいつの間にやら(先般の櫻井審議委員講演がまさにそうですけれども)説明がすっかり白川ドクトリンに本家返りしているのですが、その間の説明って総括検証とかしながら徐々に変えてはいるのですが、「政策は変わっておりません」みたいな説明をしていて、確かに直近で話していたこととの整合性は何となく取りながらやるものの、2013年や2014年と比較したら全然整合性が取れない話をしている、という1日1センチづつバス停動かすみたいなプレイをしてここまで来ているのですよね(2期目に入ったところで少しまた動かしたら(展望レポートの2019年に2%云々を削除な)白川ドクトリン度合いが大きく目立つようになったというのはあるけど、その時点でも「変わった」とは言わない訳で)。

確かに今は追加緩和も正常化着手もするような環境じゃなくて、しかもYCCの実務自体は無事に回るような感じになっていますが、たぶん今のような何だか訳分らんモードになっている中で、追加緩和あるいは正常化着手が求められてくるような外部環境の変化が起きると、理屈の整合性もへったくれもない中で何をするのかという見方すら混乱するとかそういうコミュニケーションの深刻な問題が生じると思います。まあ何となくアタクシの山勘ではそういうのが求められるという話になってきたときに「総括検証以降のレビュー」とかおっぱじめて政策の枠組みをガラッと入れ替えて理屈をスクラッチで作るようになるのかなとは思うので、そこまではフニャフニャとしたままなのかも知れませんけれども・・・・・・・・・


でまあ折角ネタにしたので最後に2015年のパワーワードを久々に鑑賞しましょう。

『先進国の間で金融政策の方向性の違いが明確になる中で、世界中で中央銀行の一挙手一投足への注目度が一段と高まっています。先ほど申し上げた論点は、いずれも頭を悩ませるものばかりで、すぐに確固たる答えが見つかるものではありません。しかし、これから1日半のコンファランスにおいて、我々は直面する課題に正面から取り組み、活発な議論を通じて前進していける、と私は強く確信しています。皆様が、子供のころから親しんできたピーターパンの物語に、「飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう(The moment you doubt whether you can fly, you cease forever to be able to do it)」という言葉があります。大切なことは、前向きな姿勢と確信です。実際、これまで中央銀行は、様々な課題に直面する度に、新たな知恵を出して、その課題を克服してきました。我々の経験と知見に裏打ちされた課題克服への確信を参加者の皆様と共有し、これから始まる議論への心の準備ができたところで、私の挨拶を締めくくりたいと思います。』(2015年の国際コンファランス挨拶の結び)

#元の英文の方も引用しようかと思ったがさすがに可哀想になってきたので止めておきます




2018/05/30

お題「市場メモ雑談/調節年報の一部鑑賞で輪番に関する部分を」

いやまあ昨日の夕方からアレでしたけど起きてみたら一段のアレとはこれ如何に。

〇何かおはぎゃあなので備忘だけしておく

おはぎゃあキタコレ。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180530/k10011457741000.html
NYダウ平均株価 一時500ドル以上値下がり イタリア混乱懸念で
5月30日 4時57分

https://jp.reuters.com/article/italy-politics-idJPKCN1IU1Y6
2018年5月30日 / 00:28
イタリア中銀総裁、信任失墜の「瀬戸際」を警告 政局混迷で

『再選挙が実施されれば、同国のユーロ圏離脱の是非を問う事実上の国民投票になり得るとの懸念から、イタリア資産は総じて売りを浴びている。ビスコ総裁は、イタリア国債が売り込まれていることを受け、短期金利が1日としては約30年ぶりの大幅な上昇となっていることを指摘。「かけがえのない信任を失うという極めて深刻なリスクの瀬戸際にあることを忘れてはならない」と警告した。』(上記URL先より)

てなことで、短期金利上昇ってのが実にあばばばばーな訳ですが、

『最新の世論調査によると、同盟の支持率は3月4日の総選挙から約10ポイント上昇の27.5%、五つ星運動は3ポイント上昇の29.5%となっており、再選挙が実施されればこれら2党が議席数をさらに伸ばす可能性がある。』(上記URL先より)

ってヘッドラインはジャパンの夕方には出ていたので、まあどうせリスク回避で反応するとは思いましたがいきなり盛大に反応しましたな。とは言いましても更なる政局混乱とか言いますが連立協議してた2党が伸びるんだったら政局は安定の方向になるんじゃないですかねえ(棒読み)。まあそのうち連立したらしたで大喧嘩とかになるんですかねえ。イタリアは詳しくないので詳しい人に教えてジェネラルではある。


でもって金融市場の反応的にはこれはもうアレ。

https://jp.reuters.com/article/idJPL3N1T04TI
2018年5月30日 / 02:38 /
ユーロ圏金融・債券市場=イタリア2年債利回り約25年ぶり大幅上昇、政局混迷受け

金利の所はドイツの数字しかならんでないのがアレですが、

『イタリアの2年債利回りは150ベーシスポイント(bp)超上げ、2.73%に上昇。1日では1992年以来の大幅上昇となった。また、10年債利回り<IT10YT=RR >も一時50ベーシスポイント(bp)上げ、4年超ぶり水準の3.38%となった。この日実施された伊国債入札では、6カ月物の利回りが過去5年以上で最も高い水準を付けた。』(上記URL先より)

順イールドは確保しているものの、短期の方が盛大にイールド上昇とかどう見てもデフォルト確率を見に行く動きです本当にありがとうございましたというこらまた盛大に盛大な動きで、中道政権ができそうもないの選挙終わった時点で判明してたじゃんとは思うのですが、新興ポピュリズムと昔の北部同盟という組み合わせが思った以上にアチャーなものを出してきたということなんでしょうかね、よー知らんけどな。


メモついでに。
https://jp.reuters.com/article/italy-politics-cottarelli-election-idJPKCN1IU279
2018年5月30日 / 01:45
イタリア、7月29日にも再選挙の公算 コッタレッリ氏の組閣難航

どうせ議会と揉めて再選挙やるからとりあえず暫定的に選挙管理内閣で勘弁ということで夏休み明けに選挙するみたいな見立ての報道が昨日の時点ではメインだったと思うのですが、もっと前倒しになるというのもあるとかとりあえず色々とあばばばばー状態になって話が錯綜しているんだなあというのは伝わった。


・・・・・・しかしまあ何ですな、外債投資の含(大爆発音により以下聞き取り不能)


〇昨日の40年はお強い入札のようで

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1T028I
2018年5月29日 / 15:17 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、一時4月12日以来の151円台に乗せる

何かロイターの回し者のようにロイターのインターネット版ばっかり貼っていて恐縮なのですが、もう一つのベンダーのブルームバーグさんのインターネット版って記事見に行くとレイアウトが美しくない上に、ドンドン勝手にリロードして下の方に別の記事をふんどしのようにホイホイとつけるのでブラウザーが安定しない(ロイターもホイホイリロードするからあまり開けすぎると同様にブラウザーが安定しなくて困るのだがブルームバーグの方がタチ悪い、ブルームバーグは昔のブラウザーのバージョンに戻してくれれば基本そっちを引用する方向になると思うんだが、ネット版の無駄な自動リロードは何とかならんのか・・・・・)のでロイターの回し者みたいになって恐縮ですが、とさすがにロイター連発なので気にして関係ないコメントを入れてみますが、

『<15:11> 国債先物は続伸、一時4月12日以来の151円台に乗せる

長期国債先物は続伸で引けた。前日の米国市場は休場だったが、欧州市場でイタリア・スペインの政治不安などを手掛かりにリスク回避の流れとなったことを受けて買いが先行。寄り直後には一時151円ちょうどを付け、日中取引で4月12日以来約1カ月半ぶりの水準に上昇した。円高・株安に振れたことも買いを誘った。現物債市場では、強い40年債入札を確認した市場参加者が超長期債を買い進んだ。インデックスの長期化需要もあり、イールドカーブはフラット化した。一方、中長期ゾーンは横ばい。長期国債先物中心限月6月限の大引けは、前営業日比5銭高の150円97銭。前日に取引が成立しなかった指標10年350回債は0.035%で出合った。』(上記URL先より)

40年入札は利回り競争ダッチ方式だから地合い次第で上で切れやすくなる傾向にありますが、単に事前のアオリイカで煽っている場合はそこでおしマイケルになってしまうし、そうじゃなくて強いんだったらカーブの後ろが引っ張られるの巻となるということで、昨日は20年とかはそうでも無かった感じですが30年とかの方は強くなりましたの巻。

場中は先物の151円が中々抜けきれない感じでしたけれども引け後にイタリアェ・・・・・的なアレだと思うのですが金利低下株式アチャーの流れから151円台に乗って上がってくるの巻となっておりましたな。まあ月末前にしてこれはさすがに一段ワッショイという事になるんでしょうかねえよー知らんけど。まあ久々に円債市場全域での盛り上がり(とは言いましても金利が下がって嬉しい人がそんなにいる訳ではなく、再投資利回りが上がりながら含み損拡大がキャリーロールダウンの範囲内くらいで収まる程度の金利上昇してくれると歓喜する人が多いような気がするので、盛り上がるけど盛り上がらんという相場のような気もするが)ということですね分かります。


・・・・・・・でまあそこで金利がドカンと下がったら待望の輪番減額ですよ!となるかどうかですけど。


〇てな訳で調節年報を鑑賞する訳だが

紹介ページ
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2018/ron180528a.htm/
本文
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2018/data/ron180528a1.pdf
概要
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2018/data/ron180528a2.pdf

毎度のごとく本文からですが、本日はまず『BOX8 日本銀行の国債保有比率の上昇と国債買入れ額 』というのを鑑賞しようではありませんか。

本文47ページになります。

『日本銀行は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みのもと、長期国債の買入れ額については、本文で述べたとおり、10 年物国債金利を「ゼロ%程度」とする金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すように、その時々の市場動向に応じて柔軟に調整している。』

本文というのは後程。

『「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入以降の長期国債買入れの月間買入れ額の推移をみると、振れはあるものの、結果として緩やかに減少してきていることがわかる(BOX 図表 8-1)。』

「結果として」にちょっとワロタです。

『この背景としては、この間に金利上昇圧力が大幅に強まらなかったことに加え、2013 年4月の「量的・質的金融緩和」の導入以降、日本銀行が多額の長期国債を買い入れてきたことで、市中の長期国債残高が減少しており、日本銀行の国債買入れによる金利の下押し効果がしっかりと働いていることが考えられる。』

ストック効果キタコレなのですが、まあこれははっきり言って方便の世界でして、本当に金利上昇局面になったらストック効果って何でしたっけという話になるのですが、そこはさすがにどこの中銀も実務レベルやボードレベルでは把握していると思われます。まあ説明が綺麗にできるので使いやすい理屈。

ただまあジャパンの短国市場とか見てますと、ストックがバカスカ増えて政策金利プラスなのにマイナスに突っ込んでいく辺りからの歴史を見ますと、あくまでも感覚的な話なので本当にそうなのかは分かり兼ねますが、ストックが効きすぎて需給関係が盛大に壊れて、金利ではなくて「モノ」となってしまった時点、すなわち市場としての機能が完全に壊れた時点ではストックが当然のように効いてしまい、しかもそれがある程度の期間続くと市場が不可逆的に壊れて(日本の場合この間にマイナス金利政策が入ったのでどっちの効果かよくわからんけど)ストックを市場が機能していた時点まで戻しても金利市場としての機能が戻らないままで推移する(マイナス金利の効果なのか金利商品として参加する市場参加者が離散したり滅亡したりしたせいなのかは正直分からん)というのもあるので、おそらくストック効果ってのは「市場を叩き壊して金利市場じゃなくなってしまう」までやると盛大に効くんだと思う、まあそれは効果とは言わないで普通副作用というと思いますが。

『実際、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入以降、国債発行残高に対する日本銀行の国債保有比率(ストックベース)をみると、2017 年度には 40%を超える水準まで上昇しており、いわゆる「ストック効果」が作用していることが示唆される(BOX 図表 8-2)。』

図表は貼れない(スキルがない)ので本文48ページを見てちょ。

『もとより、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの実現のために必要な長期国債の買入れ額は、金融市場の状況に応じて変化する。このため、日本銀行は、今後とも金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの実現のために、市場動向に応じて長期国債の買入れ額を柔軟に調整していく考えである。』

つまり今後も減額します、といっているので海外要因で金利が下がっている今こそチャンス(さすがにここに至って買入減額して「日銀が出口検討」とか言い出すアホウはいるかもしれないけどまあネタになるほどのことにはならんじゃろ、と思うので)ではあるのですが、まあもうちょっと10年の金利が下がったら久々の減額砲の大チャンスめぐるという感じですな。

でまあさっきの話に戻りますと、短国市場の金利物としての機能が壊れたという事案から考えますに、長期国債の買入に関してもどこかの閾値を超えると市場がマジで壊れてしまう(いやまあ今も大概に酷い市場なのですけれども、一応金利商品としての機能はしていないわけでもない程度の状況にはあると思う、カーブの後ろのほうだけかもしれないが)ので、その手前でどうやってストックを積み上げないで行くかという話だと思うし、そうだとすればやはり買入は新規発行額以内に抑えておかないとサステイナブルじゃないよね、という話になると思うので、もうちょっと減らさないときついんじゃないでしょうかねえと思いますし、まあ日銀もそこは理解しているんでしょうな、というのが上記のBOXのトーンだと思ったのですが自分に都合の良い思い込みかもしれませんので念のため申し添えます(^^)。


あと輪番の本文部分を軽く引用だけしておきますね。本文43ページ以降になります。

『(3)長期国債の買入れ 』

『2017 年度は、2016 年9月に導入された「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもと、 「10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う」という金融市場調節方針が維持された。』

はい。

『こうした中、日本銀行は、利回り入札方式による長期国債買入れを軸としつつ、必要に応じて随時、固定利回り方式による買入れ(指値オペ)も用いて、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促してきた。利回り入札方式のオペについては、「当面の長期国債等の買入れの運営について」(月次の「運営方針」)において、翌月の1回当たりのオファー金額のレンジと翌月のオファー日程または回数を公表している。そのうえで、毎回の買入れ額は、その時々の市場動向に応じて柔軟に調整している。具体的には、金利水準や金利変動の方向のほか、金利変動のスピード、ボラティリティ、あるいは金利変動が一時的なものなのか傾向的なもの なのか、また、国債需給の状況やそれまでのオペの結果9など、幅広い要素を総合的に勘案して決定している。』

・・・・・・・えーっとすいません、最近すっかり言わなくなって良かったと思っていたのですが、この「幅広い要素を総合的に勘案して決定している」の前に一々入れているバズワードなんですが、これははっきり言って使わない方が良いと思います。普通に「総合的判断」「10年のディレクティブから逸脱しそうになった」だけにしないと、今は落ち着いているから良いのですが、オペを動かした時に一々何とかストの皆さんをはじめとして市場の皆さんが「今回の金額変更はスピードを見たもの」「いやいやボラをみたもの」みたいな思惑でゲームを始めてしまい、調節担当部局と市場の間で無駄なゲームが始まるからぜぇええええええったいにこういうバズワードってキャッチーだから使いたくなるのは分かるけど無駄なゲームを呼ぶだけなのでお勧めしない。


『長期国債買入れの実施状況をこの間の金利動向とともに振り返ると、長期金利の操作目標である 10 年物国債金利は、2017 年4月には、海外金利の低下やシリア・北朝鮮情勢を巡る地政学的リスクの高まりなどを受けて低下したが、6月下旬以降、欧州中央銀行の金融緩和縮小が意識されて海外金利が上昇すると、これにつれる格好で上昇に転じ、7月7日には 0.105%をつけた。これを受けて、同日に長期ゾーン(5年超 10 年以下)の買入れ増額(4,500→5,000 億円)とあわせて、10 年債を対象とした固定利回り(10 年新発債で 0.11%)の指値オペを実施した(オファー額は無制限とし、実際の応札額はゼロであった)。』

懐かしや。

『その後、北朝鮮情勢を巡る地政学的リスクが意識されるもとで、長期ゾーンの金利が低下するとともに、需給がタイト化し、コア応札倍率も低水準となったため、7〜8月に長期ゾーンの買入れ額を段階的に減額した(5,000→4,700→4,400→4,100 億円)。』

コア応札倍率に関しては脚注にありますが昨年度の調節年報にあります。要は冷やかし以外の札というのをだいたい勘案してみましょうという話。

『その後、国内需給のタイト化が意識されたほか、地政学的リスクへの警戒感が一層高まり海外金利が低下した9月には、10 年物国債金利は、2016 年 11 月以来となるマイナス圏まで一時的に低下する場面もみられた。もっとも、マイナス金利水準での投資家需要は限定的であったため、程なくプラス圏に転じた。』

おお懐かしい。

『その後は、地政学的リスクへの警戒感が徐々に後退する中で、10 年物国債金利は概ね 0.02〜0.07%程度のレンジ圏内で安定的に推移した。2018 年入り後は、海外金利が大きく上昇するもとで、日本銀行の金融政策の方向性を巡る関心が高まり、海外短期筋を中心に先物売りが強まったことから、2月初には 10 年物国債金利は0.095%まで上昇する場面がみられた。』

海外金利の上昇じゃなくてリバーサルレートとは大本営としては書けま(爆発音)。

『これを受けて、2月2日に長期ゾーンの買入れ増額(4,100→4,500 億円)と 10 年債を対象とした固定利回り(10 年新発債で 0.11%)の指値オペを実施した(オファー額は無制限とし、実際の応札額はゼロであった)。その後、10 年物国債金利は概ね0.02〜0.09%程度のレンジ圏内で安定的に推移した(図表 4-7) 。』

まあ増額余計でしたけどね。

『短中期ゾーン(2年物、5年物国債)でも、市場動向に応じて、オペの買入れ額 を柔軟に増減した10。4〜5月には、短中期ゾーンの需給がタイト化し、特に3年超5年以下の国債買入れのコア応札倍率が低位となる場面も散見されたため、短中期ゾーンの買入れ額を段階的に減額した(1年超3年以下:3,000→2,800 億円、3年超5年以下:3,800→3,500→3,200→3,000 億円)。』

以下は中短期輪番の話と超長期輪番の話ですがまあ折角引用しだしたので引用だけするけどコメントはパス。

『6月下旬以降、海外金利の上昇などを背景に、一転して5年ゾーンに金利上昇圧力が加わったため、3年超5年以下ゾーンの買入れ額を増額した(3,000→3,300 億円)。その後、北朝鮮情勢を巡る地政学的リスクが意識されるもとで、5年物国債に投資家の旺盛な需要が寄せられ、同ゾーンの需給がタイト化し、コア応札倍率も低位となったことから、9月初に、3年超5年以下の買入れ額を減額した(3,300→3,000 億円)。』

『11 月には、年末を控える中、ドル調達プレミアムの拡大や本邦投資家の担保需要の高まりなどから、2年物国債の需給がタイト化し、コア応札倍率も低下したことから、1年超3年以下の買入れ額を減額した(2,800→2,500 億円)。2018 年入り後は、海外短期筋による先物売りが主導するかたちで5年ゾーンにも金利上昇圧力が加わったため、3年超5年以下の買入れ額を増額した(3,000→3,300 億円)。』

だからここ戻せと小一時間。

『超長期ゾーンの金利(20 年物、30 年物、40 年物国債金利)をみると、年度の後半以降、投資家の旺盛な需要などを背景に、需給がタイト化し、同ゾーンの金利は緩やかな低下を続けた。こうした市場動向を踏まえて、11 月下旬から2月にかけて、同ゾーンの買入れ額を段階的に減額した(10 年超 25 年以下:2,000→1,900 億円、25 年超:1,000→900→800→700 億円)。 』

というのが超長期。

『以上の長期国債買入れオペ運営の結果、わが国のイールドカーブは、金融市場調節方針と整合的に形成されている。すなわち、10 年物国債金利は、2017 年度中、「ゼロ%程度」という操作目標に沿って推移している(図表 4-7)。そのうえで、10 年物国債金利とその他の年限の国債金利のスプレッドをみると、2017 年度中は、超長期ゾーンのスプレッドが幾分縮小(イールドカーブはフラット化)しているものの、全体としてみれば、大きな変動や歪みは生じていない(図表 4-8、4-9)。 』

まあ調節部局としては順調ですという話なのだが、本当に物価目標を達成しそうになるんだったら金利上昇圧力が掛からないといけないので、この結論は市場局の方でニッコリするのは良いのですが、ボードメンバーが「安定的に推移していて結構」みたいなことをいうのってなんだかなーとは思います(−−;

とまあそういうことで本日はこの辺で勘弁。


2018/05/29

お題「調節年報が出ましたのでさっそくちょっとだけ読んでみる(たぶん以下続く)」

https://jp.reuters.com/article/honebuto-idJPKCN1IT0WX
2018年5月28日 / 20:01 /
骨太方針、消費税率引き上げ明記へ 前後に「平準化対策」=政府筋

平準化対策とかケッタイなことする位なら増税しなければよいと思うの。

#全然話は飛びますがよしまいおめ!(お題の縦読みとか入れようと思ったが思いつかないので直球ストレート^^)


〇一応市場ネタ雑談メモ(昨日の話とイタリアメモ)

おお、もぅ・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1SZ2JI
2018年5月28日 / 15:17 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小幅続伸、指標10年350回債は3月13日以来の取引不成立

『<15:15> 国債先物は小幅続伸、指標10年350回債は3月13日以来の取引不成立

長期国債先物は小幅続伸で引けた。前週末の海外市場で、原油安やイタリア・スペインの政治不安などを手掛かりに米債が強含みとなったことを受けて買いが先行した。中盤以降も買い優勢だったが、上値を追うには材料不足で上昇は小幅にとどまった。現物債は積極的な売買が控えられた。超長期ゾーンにインデックスの長期化需要がみられた程度。長期国債先物中心限月6月限の大引けは、前営業日比1銭高の150円92銭。指標となる10年350回債は取引が成立せず、このまま夕方の取引でも出合いが付かなかった場合、3月13日以来の取引不成立となる。』(上記URL先より)

今日は40年国債入札もあるし、下にあるように海外が動いたからきっと動意が出てくるのではないでしょうか(個人の妄想であって相場動向を予想したものではありません)。


でまあイタリアメモメモ。

https://jp.reuters.com/article/italy-politics-pm-idJPKCN1IT0YA
2018年5月28日 / 20:02 /
イタリア、IMF元高官を暫定首相に指名 来年初めまでに再選挙へ

『[ミラノ 28日 ロイター] - イタリアのマッタレッラ大統領は28日、国際通貨基金(IMF)元高官のカルロ・コッタレッリ氏を暫定首相に指名し、2019年予算案の通過と来年初旬までに再選挙を実施する計画を進めるよう命じた。』

『再選挙がイタリアのユーロ離脱の是非を問う事実上の国民投票になり得るとして、世界の金融市場では懸念が強まっており、ユーロは対ドルで半年ぶり安値を更新したほか、イタリア債利回りも上昇している。』(以上上記URL先より)

ということのようですが、EU懐疑派のポピュリズムと極右が連立組もうかという状況の中で結論がこともあろうに頭ごなし攻撃でIMFの偉い人だったのを首相というのは再選挙で碌なことがおきない予感しかしないのですが、そらまあ市場もそう反応するわな。

https://jp.reuters.com/article/idJPL3N1SZ4BA
2018年5月29日 / 00:33 /

ユーロ圏金融・債券市場=伊10年債利回り3年半ぶり高水準、再選挙を意識

『ユーロ圏金融・債券市場では、イタリアで再選挙が行われる可能性が意識される中、同国の国債が株式とともに売り込まれた。スペインでも解散総選挙が実施される可能性が出ていることで、市場では南欧諸国を巡る懸念が高まっている。イタリアではマッタレッラ大統領がユーロ懐疑派エコノミストのパオロ・サボーナ氏の経済相起用を拒否。これを受けイタリアの債券や株式は当初は上向いたが、再選挙が行われる可能性が意識され、上昇は長続きしなかった。』(上記URL先より)

スペインは加えて南米が微妙なのも気になるところではありますが、まーた不信任案がどうのこうの
ですか。

・・・・・ということで今日こそ息をしていない円債ちゃん動くですかねえ。まあただのメモでした。


〇まあ本来的にはネタなんだが調節年報(次にあります)の方をネタにするのでメモだけ

FED方面から出ているのがダドリーとパウエルなんですが、ただまあ内容的に今の政策正常化路線の動向がどうだこうだという話ではなくてもう少し大きめのテーマなのでまた後日鑑賞のために備忘でリンクをおいておく。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20180525a.htm
May 25, 2018
Financial Stability and Central Bank Transparency
Chairman Jerome H. Powell
At "350 years of Central Banking: The Past, the Present and the Future," A Sveriges Riksbank anniversary conference sponsored by the Riksbank and the Riksdag, Stockholm, Sweden

お題の通りなので今FEDがやっている正常化路線がどうしたこうした的なネタで勝負する物件ではない(と斜め読みした結果なのですが違ったらゴメンやで)のですが、まあ金融安定化のプルーデンスな話に関して言えばスウェーデンってユーロ圏ペッグの影響で資本がドカドカ入ったり出たりして実は忘れたころにやらかしというイメージisある(個人の感想です)。


https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2018/dud180524
The Transition to a Robust Reference Rate Regime
May 24, 2018
William C. Dudley, President and Chief Executive Officer
Remarks at Bank of England’s Markets Forum 2018, London, England

またリファレンスレート改革の話かと思うのだが、そもそも論として取引の自由化を進めているんだからリファレンスレートというものに対するロバストネスを強く求めようとするのが取引自由の原則から考えて根本的にまちごうとるじゃろとしか思わない身も蓋もないアタクシな訳でして、そこまでロバストな短期金利の金利指標ほしかったら政策金利にしたら恨みっこなしじゃないのとか大体暴論なのですけれども、すくなくともこんなのプライマリーディーラーなりリファレンスバンクなりの申告ベースの集計以外でどうやってロバストネスが保証されたものが出来るのかと小一時間問い詰めたい訳でして、FSBの実レート主義(さすがにやってみたら無理があることに気が付いて軌道修正中みたいですが)とかもうねと。

いやまあリファレンスレートが無いと困る取引があるのは分かりますけど、特に短期の資金取引に関しては相対取引で取引そのものにも個別性というか特殊事情性が色々とあるので、「実勢レート」というのが実を言えば蜃気楼のような存在だったりもする訳ですよ。まあこの雑談していると調節年報ネタの時間が無くなるのでまた後日。



〇調節年報キタコレ

調節年報が出ましたよ。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2018/ron180528a.htm/(紹介ページ)

紹介ページの方から。

『日本銀行は、2017年度中、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、強力な金融緩和を推進した。すなわち、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)に関しては、短期金利について、日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利について、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行った。また、国債以外の資産買入れに関しては、ETF、J-REIT、CP等、社債等の幅広い資産の買入れを進めた。

本稿では、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで行われた金融市場調節について解説する。まず、金融市場調節方針と調節運営の概要を説明し、次に、そのもとでの国内資金・債券市場等の動向を概観する。そのうえで、個々の金融市場調節手段の運営状況や、金融市場調節運営に関する制度変更について述べる。最後に、市場参加者との対話に関する取り組みについて紹介する。』

ということで

本文
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2018/data/ron180528a1.pdf

概要
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2018/data/ron180528a2.pdf

本文よりも概要の方がファイルが重いというオモシロ事態になっていますが、これは概要の方が紙芝居になっているからです。ということで本文からなのですが・・・・・・・・・・・・・・


調節年報に関しては、やったことの説明が多いのでそこは昨年度を振り返って思い出してみるという感じになりまして、あとはオペの上げ下げをしたときにどういう事で行いましたかみたいな話をしているのを確認するというのがあります。

でまああとオモロイのは馴染みのある方には馴染みがありますが、そうじゃない方に向けた説明を念頭に置いていると思われる「短期市場の構造解説」の部分と、オペに関する効果とかその辺のお手盛り感溢れる説明があって、その辺のコラムみたいなのを読むのが楽しい。

#ちなみに調節年報本文はPDFをそのままMSデフォルトのテキストエディタにコピペして文字化け現象とか起きないので大変に助かるのは助かるのですが、機構局と市場局と企画局と政策委員会室ってもしかしてベースで使ってる文書作成ソフトがバラバラなのでしょうかと聞きたくなる


・気持ちは分かるがそれは微妙な結論

ということでこれは数回読み直して理解する(解説の部分に関して)というのが正しい読み方なので、ちょっと本日全部ネタ投下できないと思いますが、本文25ページの『BOX5 債券先物における最割安銘柄の市中残高減少の影響』という奴を発見したのでまずはこいつから。以下本文25ページのBOX5からの引用です。

『長期国債先物(以下、「債券先物」)は、それ自体の価格変動を予想した売買のほか、現物国債と債券先物の価格連動性の高さを前提に、現物国債の価格変動リスクのヘッジを目的とした売買(現物国債の売買と反対方向の売買)が行われており、市場参加者が債券ポジションを調整するうえで、重要な役割を果たしている。』

へいへい。

『ここで、あらためて債券先物の決済方法について確認すると、@最終取引日(決済期日の5営業日前)までに反対売買を行う方法(差金決済方式)と、A決済期日に受渡適格銘柄(残存期間7年以上 11 年未満の10 年物国債)の受渡しを行う方法(受渡方式)がある。Aの受渡しには、受渡適格銘柄のうち最も割安な銘柄(以下、「最割安銘柄」)が用いられ、現状の金利水準では、基本的に、残存期間が7年に最も近い銘柄が用いられる。』

はいはい。

『2013 年4月の「量的・質的金融緩和」の導入以降、日本銀行が大規模な国債買入れを続けてきたことで、最近では最割安銘柄の市中残高が減少してきている(BOX図表 5-1)。』

図表は貼りません(貼れませんというのが正しい)ですけれども、当限はまあいいとして次の2限月になるとCTDの日銀保有分除くが1兆円くらいになって、流通玉はそれよりも少ないので・・・・・・

『こうした中、一部の市場参加者からは、@最割安銘柄の需給タイト化につれて債券先物が割高化することで、現物国債との価格連動性が低下し、ヘッジ機能が低下するリスクや、A受渡方式による決済が困難化する可能性が意識され、債券先物を用いたヘッジ取引が行いにくくなる(ポジションを造成しにくくなる)リスクを指摘する声が聞かれている。』

そらそうよ。

『そこで、以下では、最割安銘柄の市中残高の減少が、債券先物のヘッジ機能に与える影響を確認する。』

ほほう。

『まず、現物国債と債券先物の連動性をみると、最割安銘柄の市中残高が目立って減少した 2017 年以降も、引き続き高めの相関関係が確認されており、少なくとも現時点で、現物国債と債券先物の連動性が失われている様子はみられない(BOX 図表 5-2)。』

???????????????

ということでその『(BOX 図表 5-2)現物国債と債券先物の連動性』というのを見ると、『(注)現物国債と債券先物の利回りの相関係数(前日差ベ ース、60 営業日ローリング)。』というのを10年と20年のカレントで調べているみたいなのだが20年はまあ仕方ない(カーブが動けは相関係数が下がるから)として、10年だってYCCぶっこんでから後のところで相関係数下がったところあるんですがそれは、というのはございますが。

細かく数字検証してないからイメージで話すので恐縮ですが、この図表見た感じだと2017年の頭辺りに先物との相関が落ちているのですが、これってYCCぶっこんだ後に中期のイールドカーブの修正が入ってその後長いところの金利が上がって指値オペヒャッハーとかやった時にかぶっているように思えるのでして、単にイールドカーブ全体のバランス(特に中期との関係)がどうなっていったかという変遷(超長期の場合は超長期の事情も入る)というだけの話ではないかという気がする。

まあ先物がその間素っ頓狂な値段にならなかったのはCTDのレポ締めあげで大スクイーズとか、カウンターパーティーリスクの高まりでレポが全然できなくなって、意図したというよりも結果的にチーペストが締め上げになって7年のイールドカーブが手前とインバートしたとか、そういう無茶苦茶な事象は発生しませんでしたね、というのはそれはそうなんですけど。

『次に、債券先物の限月交代時の動きを確認する。仮に、受渡方式による決済の困難化が強く意識されているのであれば、次限月へのロール取引のタイミングが早まったり、(現限月の売り建玉の買戻しに伴う)現限月と次限月の価格差(カレンダースプレッド)の拡大が生じることが予想されるが、現時点でそのような動きは特段みられていない(BOX 図表 5-3、5-4)。』

えーっとすいません、それってそもそも債券先物をヘッジに使わなくなっても同じ現象が生じる(だれもやらないのでスクイーズのやりようがない)とか、そもそもそういうスペキュレーターが入ってこないだけという事を意味している可能性が思いっきりあると思いますが。

『以上で確認したように、これまでのところ、最割安銘柄の市中残高が減少したことで、債券先物のヘッジ機能が低下した様子は特段みられていない。』

その結論はだいぶ大本営発表である。

そもそも論としてYCCがやたら効いていて、輪番の割り振り上短期の所と10年の所がガチガチで推移されていたら先物動かないんだから、そら異常動作の仕様がないというか、スペキュレーターが入ってこんわ(そらまだいるんでしょうけれども何もこんな動かんものじゃなくたって別のものでスペキュレーションするわな)という状態なので、問題の顕在化しようがない、というのが事実に近いのではないかと思います。あと付け加えるとすれば、そもそも他の銘柄も含めて流通玉がなくて、マーケットメーカーがロングショートを作りにくくなっているというのはあると思うので、そうなると対顧ポジションのグロス残高を大きくすることができないという中では、先物の利用もそれだけ落ちてくると思うので、そういう点からも「単にやってる人がいなくなっているから流動性の低下の問題が顕在化しない」というだけのような気がします。ただまああくまでもこちらは市場の片隅のいち無力参加者でございまして、日銀金融市場局様の高い見地からの分析の方が正しいのではないかという事も当然ながら指摘可能ですので、一応こちらでははいはい大本営大本営と申しておきますが、他の方の見解をお伺いしたいものです。

『もっとも、先行きも最割安銘柄の市中残高は低位で推移することが予想されるため、このことが債券先物のヘッジ機能、ひいては現物の取引動向等に何がしかの影響を及ぼす可能性については、引き続き注視していく必要がある。』

なんか考えられるネタとしては、この状況なので大丈夫とか言ってるうちにYCCの見直しのようなことが起きて、イールドカーブがもっとホイホイと動くようになった後、思い出したように先物チーペストスクイーズ祭りだワッショイとなって先物搦めて近いカーブで裁定組んでたら即身成仏とかそういう話でしょうかね、とは思うものの、アタクシがそのころには先に成仏していないことを祈りたいと思います(涙)。

・・・・・・ということで思わずツッコミをいれてしまいましたが、解説とかもあってBOXからだけでも最初に全部読んでみたらいかがでしょうか(本文は事実関係の記述が多いので読みやすさはBOXです)。


2018/05/28

お題「穏当な発言で進めているけど味わいもある櫻井審議委員金懇会見ネタ」

辻褄を合わせようとしてドンドン無茶苦茶になっていっている、というのは把握しました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180526-00000038-asahi-pol
加計学園がコメント発表 「誤った情報を与えた」
5/26(土) 17:43配信

『当時の担当者に記憶の範囲で確認したとし、「実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えてしまったように思うとの事でした」としている。』(上記URL先より)

えーっとそれはもしかして詐いやなんでもありません。

話は違うが、モーサテの方で「米国が利上げをあまり早めるとイールドカーブが逆イールドになって景気後退懸念が高まります(言葉遣いは違うかもですがそんな感じ)」ってドヤァって説明している昔の審議委員のお姉さんがいらっしゃるのだが、「イールドカーブがインバートするから景気が後退する」のではなくて「景気が後退しそうな局面(または引き締め局面の終了が見えた時点、今は緩和の修正モードなので関係ないけど)だと市場が判断するからイールドカーブがインバートする」んですが、最近「イールドカーブがインバートするから景気後退」という因果関係を逆にした珍コメントをよく見るようになっている気がだいぶしまして、その結果アタクシの血圧が上昇して健康に宜しくないので勘弁して頂きたいものです。


〇櫻井さんの会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2018/kk180525a.pdf

・直球質問に関する答えは安全運転だわなそりゃ

例によって地域経済に関する質問を2問というのがありましてそのあとの質疑から。

『(問) 挨拶要旨では、当面は、現行の枠組みのもとで粘り強く緩和的な金融環境の維持に取り組むことが適当とされたうえで、留意点を 2 つ挙げておられます。』

さっそく本命質問来ました。

『その 1 つが、金融緩和の長期化による金融システムへの影響だと思いますが、地元の方からもお話があったと先程言及されましたけれども、例えば、金融庁の資料等によると、2016 年度の決算で地域銀行 106 行の過半数 54 行が本業で赤字になっています。2017 年度はおそらくもっと厳しい状況ではないかと思います。そうした中で、委員は、必要に応じて最適な金融政策のあり方について検討していくことが必要だと繰り返されていらっしゃいます。』

ということで、

『まず、確認ですが、この最適な金融政策のあり方という中には、長短金利の変更なり、ETFの買入れ量の減額なりということが念頭にあるという理解でよいのでしょうか。

『もう 1 点は、この「必要に応じて」について、必要な状況が徐々に近づいてきているというご認識なのか、その 2 点をお願いします。』

これはちょっとあからさま過ぎて安全運転しか答えないだろもっと緩い質問をしてから本命に行けよと思いますが、答えは案の定で・・・・・・・・

『(答) マイナス金利あるいは「イールドカーブ・コントロール」が累積的な効果を及ぼす中で、金融機関のコア業務の収益は低下してきています。もちろん、金融界全体としては、まだそこそこ収益を上げています。自己資本比率の水準等も勘案すると、当面大きな懸念材料にはならないであろうと考えています。』

となってしまうのですよね。でも金融機関の有価証券ポートフォリオという点で考えた場合、現時点の断面を切り取って、昨年度の収益見たら大丈夫だから今の政策を継続しても大丈夫、というのもこれまた少々雑な話。債券なりローンのポートフォリオのうち、変動金利のローンに関してはまあいいとしましても、債券のポートって普通固定利付債で期限があるものになっているのだから、期間の経過とともに既存の保有銘柄が償還して今の低金利状態で購入した債券に置き換わるんんですから、断面でみた時に大丈夫だから大丈夫というのは説明になっていませんんわなと。ただまあFSRでそこまでゴリゴリ突っ込んだ分析結果が示されている訳でもないのですが、当然日銀はその点についても研究しているはずなので、まあそのあたりでどういう評価になっているのか、という辺りだと思う。

・・・・・・・・ということなので、実際はこの「当面」についてどの程度の期間を考えているのか、幅のある期間だとは思うけどどうなのよ、というツッコミをしていただくと良いのかなとは思います。割とこうあっさり「数年間のタームで見た場合に特段の問題が発生するようなことはない」くらいの話をしだすと良い(よくはないのだが)のですが、問題はこういう時に何が何だかよく分からないムニャムニャした説明と共に「大丈夫大丈夫」みたいな答えが帰ってきたときでありまして、だいたいそういう場合って「大本営としてはあまりややこしい点に触れられると困るんで勘弁してもらえますか」ということを意味すると思われますので、(そういう意味では話がワープしますけどFSRの記述なんかもそうで、今は色々な問題点が今後累積してくるとイカンガネというような話がガッツリ記載されていますが、本当に金融システムがガタガタしだしたら急に「大本営発表」モードにならざるを得なくなってしまうかもしれませんので、こういうトーンは本当に大丈夫なのか実は大本営モードなのかというのを確認しないと行けなくて、確認するには継続的に発表をチェックしないと、という事になるかと思います。

すっかり話が逸れましたが質問の答えの続きはそんな訳でまあ安全運転モード。

『今後の金融政策運営については、昨年末まで 8 四半期連続のプラス成長が続き――本年第 1 四半期は季節要因もあってマイナス成長となり若干踊り場のような雰囲気もありますが――先行きも景気の回復が続くとみています。そのプロセスの中では、副作用をきちっとみながら政策を執り行っていくことになります。』

『では、具体的にどのような政策があり得るのかというご質問でしたが、私は、全ての政策手段を含めて考えるべきだと思います。その意味では、状況に応じて色々なことを考えていかなければならないと思います。タイミングについては、私は、今の景気の状況をもう少し続けたいと思っていますので、まだ色々なことをやるには早すぎると思います。基本的には、ある程度今の状況を続けて、慎重に様々な経済指標の動きを見極める段階にあると思っています。 』

ということで「現状維持」以外の言葉は出てこない安全運転でした。


・政策調整に関する質問はこういう感じでマイルドにやっていった方が吉かと

安全運転の答えが来たのでもうちょっと基本的で穏当な部分から答えさせるの図になったようですが、正直最初からこれで聞いた方が先の展開が面白くなる可能性があったと思う。

『(問) 挨拶要旨の中で、金融政策のあり方については、現在のような適度に需給の引き締まった状態を維持することを目指すべきだと述べられています。また、そのために求められる金融政策は一律ではないとも述べられていますが、この一律ではないという言葉の意味をもう少し噛み砕いて教えて頂けますでしょうか。』

ふわっとした説明を噛み砕いて下さいというのは定番だが良いですな。

『(答) 過去長期にわたって、供給が需要を上回る状態が続いていましたが、漸くここへきて需要が供給を若干上回ってきました。需給ギャップは推計したものですから、ある程度幅をもってみる必要はあるものの、あまり大きくプラスになるとかマイナスになるということは避けるべきであろうと思っています。現在のようなある程度バランスのとれた状況を保ちつつ、供給サイドがきちっと対応できるような、生産性を上げていけるような状態を保っていくのがよいと考えており、そのために金融政策を維持することが大事だと考えています。』

結論はさっきと同じで「現状維持」なのですが、この櫻井さんの答えが謎なのは「状況に応じた最適な金融政策」についてこうなればこう、というような明確なイメージや、もしかしたらある種の政策運営ルール的なものが念頭にあるのか、それとも別に何もなくてとりあえず現状維持以外は何も考えていないのか、あとそれが櫻井さんオリジナルなのか執行部ベースのお話なのか(執行部ベースの話で櫻井さんがまだ消化不良という可能性も含めて)という辺りがどうなのよ、という辺りが今後の金融政策どうなるのというのを考えるのには参考になる。


・さらにじわじわと質問が来る

というのを意識しているかはともかくとして政策変更に関する質問は角度を変えて。

『(問) 「イールドカーブ・コントロール」について、経済の実力が高まるにつれて緩和効果が増幅されるとご指摘されています。足許の経済状況は、2016年 9 月に「イールドカーブ・コントロール」を導入した頃と比べても改善が進んでいると思いますので、その分緩和度合いが強まっているということかと思いますが、調整の必要性をどの程度お考えですか。』

調整の必要性を、というのはここの言葉の使い方難しいけど真っ向斬り下げられるリスクのある質問。

『(答) 「イールドカーブ・コントロール」を導入してかなり時間が経ち、景気の回復につれてだんだんと金融緩和の効果が強まる状況になってきたというのは、理論的にはその通りだと思います。もっとも、物価の上昇は想定よりも遅れており、実質金利はまだそれほど大きく変化していません。従って、現在の金融緩和をまだ続けないといけないと思います。物価にも動きが出始めれば、金融緩和の効果が更に強まってくるということですから、そのようなタイミングでは色々なことを考えなければならなくなるだろうと思います。』

と思ったら、「物価にも動きが出始めれば」以降の答えが返ってきて質問者ニッコリという感じでございますが、まあこれは物価が少し上がりだしてくると今回の櫻井さんの金懇だけではなく、別のジャブが出てきて気が付いたら政策調整、ということになっていくんだろうなあとは思わせてくれるのですが、如何せん先週出た東京都区部5月CPIが連発して市場の予想を下回ってしまいましたので、「物価が順調に上がって2%行く前に政策調整の可能性」というのが実現性としてちと目先望みにくい、というのがあって、具体的な政策アクションに結びつかないじゃろ、ということで一部ヲチャーがヒャッハーと反応するだけで市場が全然反応しない要因だと思いますけどね。


・やはり「無理に景気を吹かすのはイクナイ」派なのですがリフレ枠じゃなかったのかよというのは不思議

『(問) 需給ギャップについて、あまり大きくプラスでもマイナスでもよろしくないというニュアンスの話をされましたが、日銀は、足許の需給ギャップについては 1%台半ばとの試算を発表しています。適度な需給ギャップという場合、1%台とか 2%前後とか、委員としてレベル感をお持ちになられているのかどうかをまずお聞きします。』

いまいち訳分らんのだが、経済が安定していたら需給ギャップって経済の1サイクルの中で全体として均衡するもんで、常に需給ギャップが大きなプラスとかいう状態で運営するもんじゃない気がするんだが、というか櫻井さんそういう趣旨で講演しているんだが。

『次に、挨拶要旨では、今後供給拡大のペースが減速していく一方で、金融面から需要の刺激効果は強まっていくという話をされていました。そうであれば、今後、需給は一段と引き締まっていくと思います。その場合、現在の適度な需給のバランスを維持するために、長期金利目標を引き上げるとか需要を調整するということは発想として考えられるのか、委員の発想からすると検討されるべきであるということかと思うのですが、その点についてお伺いします。』

だから長期金利を引き上げるとかそういう発言したら答えないに決まってるじゃん。

『(答) まず需給ギャップのレベル感ということですが、ご指摘の通り最近は1%〜1.5%だと思います。先程も申し上げましたが、需給ギャップ自体は推計値で、例えば稼働率だとか色々なものが入ってきますから、確信を持っていうことがなかなか難しいのですが、やはりある程度プラスを保っている方がよいと思います。』

『供給が需要に比べてかなり大きい状態だと、なかなか景気が回復しているということにならないと思います。現在は、全体としてはバランスが取れた状態に近いのではないかと思います。需要の方が少し強いくらいだと、設備投資を通じて生産性の引き上げ等を企業に促すインセンティブが強まるのでよいように思います。』

『もっとも、仮に需要を大幅に拡大するということになると、色々な不均衡が溜まりやすくなると思われます。現在は完全雇用に近い状態にあり、稼働率も高水準にあります。レベル感というよりも、その時々の経済指標を丹念に確認しながら考えていくということだろうと思います。』

ということで、質問の方は何だかなあという質問だったのですが、答えの方が丁寧という出来になっていまして、これはすなわち「経済の成長力に対して過大な需要拡大を促す政策をとるのは長い目で見て不均衡を発生させるので望ましくない」という木内前審議委員が泣いて喜びそうな話が櫻井さんの認識のベースラインにある、ということなのですがその割には木内さんが歓喜のレポートをだしていない(やたら物凄い頻度で投下されるNRIのページにあるレポートね)のは幾分か不思議感はあるのだが。

『2 点目のご質問についてですが、最近は短観等をみても、供給制約への対応として省力化投資や能力増強投資を含めて、色々な動きが出てきているように思われます。ただ、供給力を拡大させていくには、実は相当時間がかかると思います。需要は政策的に短期間で増やすことができますが、供給力の拡大は、構造的な変化を伴いますのでそう簡単ではありません。そのため、急がずにゆっくりとやっていくことが大事だと思います。その点で、基本的に需給のバランスを保つことに主眼をおきたいと思っています。 』

>急がずにゆっくりとやっていくことが大事だと思います
>急がずにゆっくりとやっていくことが大事だと思います
>急がずにゆっくりとやっていくことが大事だと思います

・・・・・・・どうみても第1期黒田ドクトリンの否定です本当にありがとうございました。


・期待に働きかけて云々という方の理屈で来られると答えがだいぶ雑になります

『(問) 2019 年度の 2%達成時期の削除はやむを得ないということですが、一方でそのメカニズムやリスクを理解してもらうためのコミュニケーションが大事だと仰っています。こうしたことを総合的にとらえると、期待に働きかけるという政策のスタンスから、少し実態が変わってきたと思うのですが――名実ともに変わったのかなという印象を受けるのですが――国民は 2%の達成を少し長期化して捉えて理解したほうがよいのか、どういう捉え方をした方がよいのでしょうか、お聞かせ下さい。』

2%長期化、と入れたのでこういう答えで逃げた面はあると思いますが以下回答。

『(答) 政策のスタンス自体は変わっていないのですが、一昨年辺りからサプライサイドが少しずつ動き始めています。労働需給の引き締まりに対応して省力化投資等が増え生産性の上昇に繋がっています。これは、非常に強い動きというわけではないものの、サプライサイドの変化が物価上昇を抑制する効果を想定していなかった部分があります。そのため、私は当初の予想よりは物価の上昇が少し遅れ気味になったと思っています。ただ、トレンドが大きく変わったかどうかはまだちょっとつかみにくいと思っています。政策スタンスとしては変わっていないのですが、新たな要素が入ってきていると思っています。』

期待云々の話は全然しないで誤魔化すの巻なのですが、これアタクシが想像するに期待云々の話って櫻井さんはあまり重視してないんじゃないのかなと、つまり結果としてインフレ期待が望ましい水準でアンカーされるべきとは考えても、その為に期待を頑張って引き上げようというような要素は櫻井さんの金融政策運営の部分には実際には無い、ということだと思われ。


・副作用の顕在化に関してはまあこういう回答になるんでしょうが・・・・・・・・

『(問) 金融仲介機能への影響等も考慮して幅広く金融政策のスタンスを考えるべきとのことですが、そうした色々な不確実性、要素次第では、2%に到達する前でも金融政策の正常化を真剣に考えるべきとの理解でよろしいでしょうか。』

『(答) 現在のような金融緩和が続くと、先程から申し上げている通り、累積的な効果がありますから、副作用が目立ち始めることになるかもしれませんが、現時点では、まだそれほど深刻な問題は生じていません。確かに金融機関の収益は低下してきていると思いますが、それで政策を変えるような段階にはもちろんありません。』

まあそういうのは残念だが順当。

『金融政策にはプラスとマイナスの効果が両方ありますので、今後も景気回復が続く中で、そのネットの効果を見極めていくことが大事だと思います。そして、マイナスの効果が非常に大きくなってきたということがはっきりと認識されるのであれば、新たな政策を考えなければならないと思いますが、現時点でそうした心配はありません。』

ということで、まあそこをゴリゴリ質問してもなかなか答えは返ってこないとは思うのですが、現実問題で言えば銀行業態であった場合でも、運用会社(保険とか年金とか)であった場合でも、その資産ポートフォリオってのは一日でホイホイと変わるものではないので、極端な緩和政策による悪影響っていうのは政策を変更したからといって一朝一夕で改善するものではなく、そこまでの累積的な効果というのも引っ張って影響が残るものになる、というのは当然日銀の中の方々もお分かりの事だと思うわけで、そういう点で言えば櫻井さんの説明にあるような「マイナスの効果が非常に大きくなってきたということがはっきりと認識されるのであれば」という時点で政策を調整しても時すでにお寿司にも程がある訳でして、たぶんその際には結構なコストがかかる事になっていると思うのですよ。

いやまあ今の時点で「副作用に関してフォワードルッキングで対応」とか言いたくないというお気持ちは分かるのですけれども、金融不均衡の問題とか、金融仲介機能の低下という問題に関して言えば、効果(悪い方)は累積的に高まるものなので、ある程度フォワードルッキングな対応を念頭に置いて頂きたいものだと思います。

つーかですね、そもそも論からしたら政策のプロコン分析やってくれよということで、今の政策は安定的に需給ギャップを過大ではない程度だけどしっかりとしたプラスの領域で運営するのに適している、という理屈でくる中、副作用の方はジャンジャン高まっているんじゃネーノというのはFSRの方面からも見て取れるわけで、政策のプロコン分析から考えてどうよという話もしてほしい所ではあります。


・高圧経済アプローチに関して

『(問) 今まで、日銀は、高圧経済を狙って需給ギャップを引き締めることで物価上昇圧力を高めて 2%を達成するイメージかと思っていたのですが、本日の挨拶要旨からすると 2%を闇雲に狙うものでもないし、需給ギャップの拡大というか、そのオーバーシュートは望ましくないということになると、一頃よりはその両面、その効果と副作用に関してより一層重要視されているという理解でよろしいのでしょうか。』

これは綺麗な質問。

『(答) ご指摘にあった高圧経済については、特にそういう意識があるわけではないのですが、重要なことは、先程来申し上げている通り、マクロの需要と供給のギャップのバランスをとっておくということです。』

毎度これ。

『これまで長期にわたり供給サイドのキャパシティが需要を上回っていました。金融緩和で需要をつけることで需給がバランスしている状態を高圧経済と呼ぶのであれば、それは高圧経済かもしれないと思います。』

いやそれは高圧経済とは言わない。

『いずれにせよ、このままバランスをとっていくことは必要ですが、現時点でも設備投資が伸び始めているとか、比較的底堅い動きが出てきています。必ずしも政策だけではなく、経済がかなり自律的に動き始める可能性が十分出てきています。』

まあホンマカイナとは思うが、こういう理屈で物価が上がらないのをスルーしていく感じでしょうな。

『それから、プラスとマイナスの両方の効果ということですが、これは先程来申し上げている通りで、両方の効果を丹念に点検していくということだと思います。そこは予断を持ってこうでなければいけないということではなく、その時々の経済指標を素直に判断していくということだと思います。』

こちらの回答はもうちょっと先で似た質疑がありまして・・・・・・・・・・


・「色々な道がある」らしいですよ

ちょっと飛ばしてこんな質問が。

『(問) 挨拶要旨の 10 ページで、将来的な物価安定の目標の実現を目指すための金融政策は一律ではないとありますが、この意味というか背景をもう少し詳しく教えて頂ければと思います。これは手段は色々あるということなのか、取り得る措置が経済環境によって違うということなのか、その辺りをお願いします。(後半割愛) 』


『(答) 1 点目の「金融政策は一律ではない」の意味ですが、一般論として申し上げていることで、金融政策を考える場合、どのような状況においても、その時点で最適と思われる手段の組み合わせを使えばよいと思っています。従って、例えば金利の変更もあり得るし、量の変更もあり得るし、その他色々な操作、あらゆるものを総動員して、その時に一番適切なものを使えばよいと思います。これしか使わないということは言わない方がよいと思っています。』

マネタリーベース直線一気理論ェ・・・・・・・・・・


・追加緩和をしないといけない時にどうするのかはたぶん何もない&謎のお答え

最後の質疑。

『(問) 挨拶要旨の 11 ページに、今後の供給面の変化についても不確実性があるとのお話があります。今後、需給ギャップが適正な水準にあったとしても、大きなリセッションのようなものが起こった場合には、正常化や出口が遅れる可能性というのは考えておいた方がよいのでしょうか。』

追加緩和と聞かなかったのがやや不思議ですがまあ回答。

『(答) 問題は 2 つあるかと思います。まず 1 つ目は、需給ギャップがマイナスになった時にどうするかということです。今のところ当面マイナスになる可能性はあまりないのではないかと考えていますが、仮にそうなった時には当然、先程来申し上げている通り需給ギャップはある程度バランスしていることが大事ですから、状況に応じた政策をとらざるを得ないということになります。』

ほほう。

『これは、金融政策だけの問題ではないかもしれません。財政政策もそれなりの対応をされるのかもしれません。いずれにせよ、マイナスになった時の対応というのを考えなければなりません。』

追加緩和ではなくて財政で対応して頂きたいと言ってるようなもんじゃん・・・・・・・・


『では、マイナスになった時に正常化が遅れるかどうかということは、また少し別の話かもしれません。マイナスになったからといって、正常化が必ずしも遅れない方法もあるかもしれませんし、そこは少し色々知恵を絞らないといけません。』

え????

『これまで、各局面で様々な政策手段の開発なりを行ってきたので、同じように色々な知恵を出して、工夫をしていくということは必要かもしれません。必ずしも正常化が遅れるということはないかもしれないし、遅れることがあるかもしれませんが、なるべく安定的な方法でやるのがよいだろうと思います。』

という最後の部分はどういう事を念頭に置いているのかが解読できなくてちょっと??????なのですが、まあ需給ギャップマイナスが一時的なものだからダイジョブみたいな話があるかもしれませんけれども、いずれにせよその時って普通に正常化遅れるでしょという答えになるのかと思ったけど、そういう答えをしていないのはどうなんでしょうかね。

いやまあ一番素直に解釈すると「できるだけ早期に」という共同声明の文言が生きているから、「遅れても構わん」と堂々と言いにくいからこういう説明になった、ということなのかも知れませんけれども、正直何でこういう説明をしたのかがよく分からんかったです。


#ということで櫻井さんスペシャルにしたのだが市場が1ミリも反応しないせいかベンダー的に盛り上がらないこと夥しくて何ともかんとも






2018/05/25

お題「FOMC議事要旨ネタの続き/櫻井審議委員の金懇挨拶が見事な白日銀となっているという驚愕の事案発生!」

昨晩はこんなニュースを聞いていたというのに、
https://jp.reuters.com/article/northkorea-missiles-tunnels-idJPKCN1IP2D2
2018年5月24日 / 23:25 /
北朝鮮、豊渓里の核実験場廃棄 坑道や観測所を爆破

『[ソウル 24日 ロイター] - 北朝鮮は24日、同国北東部の豊渓里にある核実験場の坑道や施設を爆破した。国営の朝鮮中央通信(KCNA)が報じた。4月に表明した核実験施設廃棄の約束を果たし、朝鮮半島の緊張緩和への一助となる可能性がある。過去6回の核実験はすべて豊渓里で行われた。爆破には韓国を含む少数の外国人記者団が招かれ取材を行った。韓国メディアによると、坑道3本のほか、観測所が爆破された。』(上記URL先より)

AP通信などによりますと〜って感じで国内ではニュース入れていたと思うのだが、一晩明けてみたらこれですよ。

https://jp.reuters.com/article/us-nkorea-cancel-idJPKCN1IP2AP
2018年5月24日 / 23:10
米朝首脳会談を中止、トランプ大統領が通告 「最大限の圧力継続」

まあペンスが何か言い出して反応してたからまた始まったよ痴話喧嘩と思ったのだが。

『[ワシントン 24日 ロイター] - トランプ米大統領は、来月12日にシンガポールで開催される予定だった米朝首脳会談を中止すると北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に通告した。ホワイトハウスが24日、トランプ大統領がに金氏に宛てた書簡を公表した。

トランプ大統領は書簡で「会合できることをとても楽しみにしていた」とした上で、「残念ながら、最近の言動で示された激しい怒りやあわらな敵意を踏まえ、現段階で念願の会談を開催することは適切ではないと感じた」と述べ、「会談は開催されない」と言明した。トランプ氏は「好機を逸した」としつつも、将来金氏と会合することを望んでいるとした。

また、北朝鮮の核開発に対しては「米国の核能力は著しく大規模で強力で、決して使う必要がないことを神に祈っている」とけん制した。』(上記URL先より)

どこぞのアメフトチームも「我々のタックル能力は著しく大規模で強力で、決して使う必要がないことを神に祈っている」と試合開始前に相手に宣言すれば使わずに済んだのではないでしょうか(大嘘)。

まあこれでまーた仕切り直しではありますが、マジで止めてるのかブラフなのか、はたまたただの交渉の一環なのか、それとも細目が詰まりそうもないので延期が必要だというだけの話なのかよくわからん人たちなので(なお英文の書簡はまだ読んでない)、これで決裂ウギャーと反応するのもアレですが、リスクオンにはならんわな。いずれにせよ。、

書簡は画像データみたいですがホワイトハウスのページから見れます。
https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/letter-chairman-kim-jong-un/
Letter to Chairman Kim Jong Un
Foreign Policy
Issued on: May 24, 2018

https://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPL3N1SV66R?il=0
2018年5月25日 / 05:42
NY外為市場=ドル下落、米朝首脳会談中止で 利食い売りも膨らむ

『 ニューヨーク外為市場では、ドルが主要通貨バスケットに対し下落し、対円では2週間ぶり安値を付けた。米朝首脳会談の中止が重しとなった。また、最近のドル上昇を受けた利益確定売りも膨らんだ。』(上記URL先より)

となりますわなと思いますが、米国輸入自動車関税ネタの方も何気にアチャーな話のようで。


〇FOMC議事要旨の昨日の続きですが景気物価認識は強い(ただし不確実性は強く意識)

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20180502.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20180502.pdf

昨日の続きで『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の前半を鑑賞してみる。

『In their discussion of the economic situation and the outlook, meeting participants agreed that information received since the FOMC met in March indicated that the labor market had continued to strengthen and that economic activity had been rising at a moderate rate. Job gains had been strong, on average, in recent months, and the unemployment rate had stayed low. Recent data suggested that growth of household spending had moderated from its strong fourth?quarter pace, while business fixed investment had continued to grow strongly. On a 12?month basis, both overall inflation and inflation for items other than food and energy had moved close to 2 percent. Market-based measures of inflation compensation remained low; survey-based measures of longer-term inflation expectations were little changed, on balance.』

だいたいこのコーナーの最初に示されているのは声明文での第一パラグラフ(現状認識部分)と同じ内容になる(寧ろならなかったらビビる)のでこれはこれで無問題。

『Participants viewed recent readings on spending, employment, and inflation as suggesting little change, on balance, in their assessments of the economic outlook. Real GDP growth slowed somewhat less in the first quarter than anticipated at the time of the March meeting, and participants expected that the moderation in the growth of consumer spending early in the year would prove temporary.』

足元の減速は思ったほどでもなかったとな。

『They noted a number of economic fundamentals were currently supporting continued above-trend economic growth; these included a strong labor market, federal tax and spending policies, high levels of household and business confidence, favorable financial conditions, and strong economic growth abroad.』

今後には力強い要素がありまっせと随分と威勢よく並んでおります。

『Participants generally expected that further gradual increases in the target range for the federal funds rate would be consistent with solid expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective over the medium term. Participants generally viewed the risks to the economic outlook to be roughly balanced.』

「generally」なのはどうせブラード変態仮面先生が利上げするなと言ってるから。

『Participants generally reported that their business contacts were optimistic about the economic outlook. However, in a number of Districts, contacts expressed concern about the possible adverse effects of tariffs and trade restrictions, including the potential for postponing or pulling back on capital spending.』

企業が先行き見通しを楽観的に見ているのも結構なのだが、貿易戦争とトランプ財政の先行きに関する不確実性を指摘する向きもあると幾つかの地区連銀から指摘がありまして、

『Labor markets were generally strong, and contacts in a number of Districts reported shortages of workers in specific industries or occupations. In some cases, labor shortages were contributing to upward pressure on wages.』

>In some cases, labor shortages were contributing to upward pressure on wages
>In some cases, labor shortages were contributing to upward pressure on wages
>In some cases, labor shortages were contributing to upward pressure on wages

キタコレ!

『In many Districts, business contacts experienced rising costs of nonlabor inputs, particularly trucking, rail, and shipping rates and prices of steel, aluminum, lumber, and petroleum-based commodities.』

労賃以外のコストも絶賛上昇中とな。

『Reports on the ability of firms to pass through higher costs to customers varied across Districts. Activity in the energy sector remained strong, and crude oil production was expected to continue to expand in response to rising global demand. In contrast, in agricultural areas, low crop prices continued to weigh on farm income.』

コストの転嫁が進むところと進まんところがあるとか、エネルギー関連は価格上昇でウハウハな一方穀物価格が弱くて農業所得がショボーン状態とな。

『It was noted that the potential for higher Chinese tariffs on key agricultural products could, in the longer run, hurt U.S. competitiveness.』

中国が農産物輸入関税をかけると米国農業の競争力に悪影響との指摘。

『Participants generally agreed that labor market conditions strengthened further during the first quarter of the year.』

次のパラグラフは労働市場。

『Nonfarm payroll employment posted strong gains, averaging 200,000 per month. The unemployment rate was unchanged, but at a level below most estimates of its longer-run normal rate. Both the overall labor force participation rate and the employment-to-population ratio moved up. The first-quarter data from the employment cost index indicated that the strength in the labor market was showing through to a gradual pickup in wage increases, although the signal from other wage measures was less clear.』

データは強いんだが賃金が一部では上がってきているけど全体的な強さには至っていないとな。

『Many participants commented that overall wage pressures were still moderate or were strong only in industries and occupations experiencing very tight labor supply; several of them noted that recent wage developments provided little evidence of general overheating in the labor market. With economic growth anticipated to remain above trend, participants generally expected the unemployment rate to remain below, or to decline further below, their estimates of its longer-run normal rate.』

賃金が全般上がらんもんだから労働市場は過熱という状態にはないという評価になるわなそりゃ。

『Several participants also saw scope for a strong labor market to continue to draw individuals into the workforce. However, a few others questioned whether tight labor markets would have a lasting positive effect on labor force participation.』

レーバーフォースがここから拡大するのかどうなのか、というのは議論の対象のようで。


『The 12-month changes in overall and core PCE prices moved up in March, to 2 percent and 1.9 percent, respectively. Most participants viewed the recent firming in inflation as providing some reassurance that inflation was on a trajectory to achieve the Committee's symmetric 2 percent objective on a sustained basis. In particular, the recent readings appeared to support the view that the downside surprises last year were largely transitory.』

次は物価の話で、去年の下げは一時的やったんや!というお話からの・・・・・・・。

『Some participants noted that inflation was likely to modestly overshoot 2 percent for a time.』

2%オーバーシュートの可能性の指摘とな。

『However, several participants suggested that the underlying trend in inflation had changed little, noting that some of the recent increase in inflation may have represented transitory price changes in some categories of health care and financial services, or that various measures of underlying inflation, such as the 12-month trimmed mean PCE inflation rate from the Federal Reserve Bank of Dallas, remained relatively stable at levels below 2 percent.』

いやいやいやそれはまだでしょトレンドとして物価が上がっているかというとそうでもないし足元の上げは一時的要因ちゃいますか、という反論。

『In discussing the outlook for inflation, many participants emphasized that, after an extended period of low inflation, the Committee's longer-run policy objective was to return inflation to its symmetric 2 percent goal on a sustained basis.』

symmetric 2 percent goal on a sustained basisとな何ぞやというと、昨日ネタにしたような感じで、今は勢いよく上がっているわけではないので、それだったら上振れを容認するとかそっちのニュアンスになると思う。

『Many saw tight resource utilization, the pickup in wage increases and nonlabor input costs, and stable inflation expectations as supporting their projections that inflation would remain near 2 percent over the medium term. But a few cautioned that, although market-based measures of inflation compensation had moved up over recent months, in their view these measures, as well as some survey-based measures, remained at levels somewhat below those that would be consistent with an expectation of sustained 2 percent inflation as measured by the PCE price index.』

賃金以外にも需要の拡大とか、外部要因のコストプッシュとかが効いてくるでしょという見解が多いものの、数名はインフレ期待がまだ弱いという話をしているのだが、最後に「マーケットのインフレ期待はCPIベースでPCEインデックスに引き直すと云々」というそういう細かい話をするのはどうかと思う策士策に溺れるブラード先生のコメントと思しきものがあり苦笑を禁じ得ない。

『Participants commented on a number of risks and uncertainties associated with their expectations for economic activity, the labor market, and inflation over the medium term.』

次のパラグラフが中期的なリスクと不確実性という奴で、このパラグラフが結構長め。

『Some participants saw a risk that, as resource utilization continued to tighten, supply constraints could develop that would intensify upward wage and price pressures, or that financial imbalances could emerge, which could eventually erode the sustainability of the economic expansion.』

この話って実は昨日(一部のマニアに取って)驚愕の講演(金懇挨拶)をした櫻井さんのお話の中にも出ているネタでして、経済の稼働率が高まって供給制約が出てくるような局面になると、需要増加がモロに物価に跳ねてきて、不均衡発生の元になり、長い目で見た場合のサステイナビリティを阻害する、という指摘で、これは(あとでも同じこと言いますが)高圧経済アプローチに対するオブジェクションでもあったりするのでほほーという感じ。

『Alternatively, some participants thought that a strengthening labor market could bring a further increase in labor supply, allowing the unemployment rate to decline further with less upward pressure on wages and prices.』

いやいやまだ労働供給余地はあるから供給制約が不均衡発生の元になるというのは時期尚早、という反論も当然ながらあります。どっちが正しいのかはここからの経済データが示すことでしょう。

『Another area of uncertainty was the outlook for fiscal and trade policies.』

トランプ野郎が不確実性、ということを丁寧に言うとこうなる(^^)。

『Several participants continued to note the challenge of assessing the timing and magnitude of the effects of recent fiscal policy changes on household and business spending and on labor supply over the next several years. In addition, they saw the trajectory of fiscal policy thereafter as difficult to forecast.』

財政効果がどう経済に跳ねてくるかのタイミングに関しても見解が割れているようです。

『With regard to trade policies, a number of participants viewed the range of possible outcomes for economic activity and inflation to be particularly wide, depending on what actions were taken by the United States and how U.S trading partners responded. And some participants observed that while these policies were being debated and negotiations continued, the uncertainty surrounding trade issues could damp business sentiment and spending.』

貿易はまあ「不確実にも程がある」という評価しかしようがないでしょうな。

『In their discussion of the outlook for inflation, a few participants also noted the risk that, if global oil prices remained high or moved higher, U.S. inflation would be boosted by the direct effects and pass-through of higher energy costs.』

原油上昇の二次的効果の可能性についても不確実性(なのかリスクなのか微妙だが)として指摘する向きも。


前半最後はこれ(以下の部分は昨日読みました)。

『Financial conditions tightened somewhat over the intermeeting period but remained accommodative overall. The foreign exchange value of the dollar rose modestly, but this move retraced only a bit of the depreciation of the dollar since its 2016 peak. With their decline over the intermeeting period, equity prices were about unchanged, on net, since the beginning of the year but were still near their historical highs. Longer?term Treasury yields rose, but somewhat less than shorter-term yields, and the yield curve flattened somewhat further.』

金融環境に関しては前回FOMCの時よりもtightened somewhatという評価ですが、特に何か明快な意見が出ている訳ではなくて、状況を淡々と並べているだけ。まああとの方で昨日ネタにしたようにイールドカーブが寝たのが云々という話が出ていますけれども。

ということなので、「やたら先行き不透明部分が多いんだけど物価は上がるんちゃいますか」という感じなのではないかと思いましたがどうでしょうかね。


・・・・・・・というのは前座でして本日のメインイベントは以下のネタである。



〇櫻井さんの金懇挨拶が完全に白日銀化しているという事案が発生しているのだが

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko180524a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/data/ko180524a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
群馬県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 櫻井 眞
2018年5月24日

・市場は反応しなかったけど・・・・・・・・・

とまあそういうことで櫻井さんの金懇挨拶なのですが、これテキスト見てまあ景気の所はどうでも良いかと流して金融政策運営の部分を読んだ瞬間にあたしゃ席から転げ落ちそうになったのですが、まあお題で申し上げておりますように内容が完全に白日銀になっているという驚愕の物件が登場しまして、いやこれって市場が確かに目先反応のしようがないのはわかるんだけど、ヲチャー的には結構腰が抜ける案件だったりするのですよ、うんうん。

でね、櫻井さんに関しては執行部腹話術人形とか言いながら(悪態に見えるが、ってまあ元々は悪態なのですが、腹話術人形に徹していた上に実は総括検証の辺りからは執行部が言うと微妙なので鉄砲玉として瀬踏みをする係になりつつあるという意味で、腹話術と言いましてもちょっと褒め成分も入りだしたんですが)今回は執行部の上を行く(というか何というかな)真っ白シロ助な日銀モードになっているんですよ。

でまあこのインプリケーションですが、妄想を逞しくしますと幾つかの可能性を指摘できるわけでして、(1)今回は執行部腹話術人形というよりも執行部の鉄砲玉となって白日銀化がどこまで行けるのかの瀬踏み係、すなわち今後の白日銀化の予告を仄めかしメソッドで出してきている(というのはこの前総裁に「リバーサルレート」の話をさせたらあの有様になったので、やはり執行部がいきなり瀬踏みをするのはアカンということで)、(2)元々櫻井さんは金融政策論についてはざっくりとした認識だったのだが日銀に入ってから「進化」したら必然的に白日銀の方が理に叶っているのでそうなった、などというのがありますが、まああとはギャグネタとしては(3)スタッフの教育の賜物、(4)麿の生霊が憑依している、(5)実は櫻井さんの着ぐるみを麿が着用していて本当の櫻井さんは出張していない・・・・などということはありませんけれども、まあしかし中盤以降麿の生霊が憑依しているんじゃないかというような金懇挨拶に仕上がっているのがとにかく読んだ瞬間にええええええええ!!!!と思ってしまいましたよ。


てな訳で鑑賞ですが、『2.内外経済の現状と先行き』の所はどうでもよくて、『3.物価の現状と先行き』はその次の真打ち部分の前振りになっていのですが、まあ今回は『4.金融政策』と『5.経済の供給面の変化と金融政策運営について』を見れば麿総裁の生霊が櫻井さんに憑依したのではないかと確信するような内容を鑑賞できると思いますので、後半だけ鑑賞ということで(^^)。


・今後の金融政策運営の留意点と「真摯な点検」に言及するとはこりゃビックリ

『4.金融政策』の最初は『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』ですがここは単なる今やっていることの説明なのでパスしまして、その次の小見出し『今後の金融政策運営』から先がもう凄いんですよ、ええ。

『今後の金融政策運営』

『足もとの弱めの物価動向に照らすと、当面は現行の枠組みの下で粘り強く緩和的な金融環境の維持に取り組むことが適当と思われます。その際、以下の2点に留意する必要があると考えています。』

ということで・・・・・・・・

『第一に、需要と供給のバランスが大きく崩れることがないよう、注意してみていく必要があると思います。先ほど申し上げたように、供給面の拡大の動きは、やや長い目でみればいずれ減速する可能性があります。一方、「イールドカーブ・コントロール」は、予想物価上昇率や潜在的な経済の成長力が高まるに連れて、その緩和効果を増幅する仕組みを内包しています。その点、先行きは供給面の拡大ペースの減速や、金融面からの需要刺激効果の強まりに伴い、需要と供給のバランスに変化が生じる可能性があります。需給のバランスが極端に偏った状況が長く放置されると、無用に経済の振幅を拡大する恐れがあります。この点は、後程もう少し詳しくお話しさせて頂きます。』

ということでこれは後の所で詳しく説明があるのですが、最初にここの字面を見ると一瞬何を言おうとしているのか判然としませんけれども、後の所で詳しく説明がありまして、これは実は真っ白シロスケな日銀の説明になっているのです。まあでもこの次を読めば腰は抜けるんですよね、つまり・・・・・・

『第二に、長期に亘り緩和的な金融環境を維持することで金融システムが不安定化することのないよう留意する必要があります。』

マジっすか!!

『先日日本銀行が公表した金融システムレポートでは、全体として日本の金融システムに過熱感はみられないものの、金融機関の貸出スタンスなどいくつかの指標は過熱に近い状態にあることが示されました。』

>いくつかの指標は過熱に近い状態にあることが示されました
>いくつかの指標は過熱に近い状態にあることが示されました
>いくつかの指標は過熱に近い状態にあることが示されました

(;∀;)イイハナシダナー

『また、低金利環境の下で、金融機関の収益が長期に亘り圧迫されると、金融仲介機能に影響が生じる恐れもあります。』

(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー

『今後も、こうした点について毎回の金融政策決定会合で点検し、必要に応じて、最適な金融政策のあり方について、真摯に検討していくことが必要だと考えています。』

つまり副作用を点検していくことが大事で、しかも真摯に検討ですよ真摯に検討。どこからどう見てもあの黒田某とか副作用を真面目に検討しているように見えない薄ら笑いでヘラヘラと会見しているジジイと比較して何というまともな物言いでしょうか、ということで変なもんでも食ったのか一服盛られたのか麿が着ぐるみの中にいるのかとかいう感じのこの部分でもういきなり恐れ入谷の鬼子母神ですよ。

#ただしこの辺りさすがに会見では中和された話をしていたようにベンダーヘッドラインからは見受けられましたが、その辺は本日出る会見要旨を見ながらということで


・物価目標を達成すると幸せになるという置物理論を真っ向から斬り下げるという事案が発生

ということで、さっきの第一の点の詳しい説明ってことで、『5.経済の供給面の変化と金融政策運営について』という小見出しに参りますが、これを見ておじちゃん更にビックリの二乗となるのでありました。

『これまで、賃金・物価の上昇が遅れている背景として、経済の供給面の拡大にかかるいくつかの要因に触れました。以下では、これまでのお話と重複する部分もありますが、やや長い目でみた日本経済の供給面の変化と、そうした下での金融政策のあり方について、私なりの見方を整理してお話ししたいと思います。』

『経済の供給面の変化』という小見出しになりまして、最初の方は前振りなのでサラッと流しますけど・・・・

『日本では、1990年代以降、長期に亘る需要不足とデフレの下で経済の供給面に様々な変化が生じてきました。企業は、過剰雇用に苦しんだ経験から、採用スタンスを厳格化するとともに雇用の非正規化を進めてきました。結果として、希望する職が得られず、就職を諦めたりやむを得ず非正規社員として働く人々が増えました。また、設備の過剰を解消するため新規の投資を抑制した結果、設備は老朽化し、新たな技術が必ずしも積極的に導入されてこなかったように思います。さらに、過剰サービスの提供や過度な値下げといった過当競争が蔓延し、労働生産性を低下させてきた面もあるのではないでしょうか。』

『元来循環的な景気後退が、供給面に影響を及ぼすことで長期的な成長力を低下させる効果をヒステリシス(履歴効果)と呼びます。日本では、度重なる深刻な景気後退の下で、まさにヒステリシスが生じてきたように思います。』

ほほうヒステリシス。主な意見とか議事要旨で良く出てくるのは櫻井さんだったんですかね。でもまあこの履歴効果の件は政井さんも持ち出していたので、まあちょっとそこまでは推理しませんけど。

『一方、足もとにおいては、過去に生じたヒステリシスが希薄化する下で、急ピッチでの供給面の拡大が実現しているようです。例えば、潜在的に働く意欲を持っていた人々が労働市場に参加し、またやむを得ず非正規として働いていた労働者が正社員としての職を得る機会が増えています(前掲図表10、11)。』

『これまで機会を窺いながら実施されずにいた設備投資が実行に移され、また過剰サービスを取りやめ人員を再配置するなどしながら非効率なビジネス・プロセスを見直す取り組みも進められています。こうした変化を通じて労働投入が増え、労働者の生産性も高まる中で、過去に大きく低下した日本経済の長期的な成長力は再び強まりつつあります。今の日本経済は、本来の実力を取り戻すリハビリの途上にあるといっても良いかもしれません。』

この辺は引用割愛しましたが『3.物価の現状と先行き』で説明されていまして、要は足元までは供給力が急ピッチで拡大することによって需要の伸びによる物価上昇圧力を吸収していた部分があって、今後供給制約が徐々に強まってくる(いつまでも供給力が高まり続けられないので)ので需要の伸びが物価に跳ねてくるという見通しの話をしていまして、まあそこはホンマカイナというツッコミはあるのですが話としては完結しているのですな。


『海外でもヒステリシスの影響が指摘されています。特に2000年代後半の金融危機以降、世界的に経済の成長トレンドが下方にシフトしたことで、注目が高まりました。もっとも、日本では、世界に先駆けて、1990年代初頭から相次ぐ深刻な景気後退の度に成長トレンドが下振れてきました(図表13)。』

『この点、日本ではヒステリシスの影響が相対的に強く残っている可能性があると思います。例えば、日本の労働生産性が他の先進国対比低いことはよく知られています(図表14)。視点を変えてみると、日本ではヒステリシスの希薄化に伴う供給面の拡大余地が大きいともいえると思います。』

『実際足もと、日本の労働生産性は、他国にキャッチアップする形で相対的に早いペースで改善しているようです。』

不可逆的な構造変化が起きている、という論に立たないとこういう理屈になるのかなとは思うので、まあこの辺り麿だったらもうちょっと別の論を立ててくると思うので、麿が着ぐるみの中にいるという可能性は棄却されるのではないかと思うのですがどうでしょうか(って元から無いけど^^)。

ということで、

『賃金・物価に対しては、こうした供給面の拡大の動きは、短期的に需要の増大に伴う上昇圧力を緩和する方向に作用しています。もっとも、現状を過度に悲観すべきではないと思います。既に申し上げたように、将来の「物価安定の目標」達成に向けたモメンタムは維持されています。』

となるのですが、ここでいきなり名言が登場します。

『また、物価はとにかく上がれば良いというものではありません。国民の生活が豊かになる下で、物価が緩やかに上昇していくことが望まれます。』

>また、物価はとにかく上がれば良いというものではありません。
>また、物価はとにかく上がれば良いというものではありません。
>また、物価はとにかく上がれば良いというものではありません。

物価が上がってインフレ目標を達成することによって全てが上手く回るという置物リフレ理論の棄却キタコレ。

『足もと、人々が希望に沿った形で労働に参加し、また、より効率的で無駄のない働き方への転換が進んでいます。結果として、長期的な経済の成長力は高まりつつあります。こうした変化は、まさに国民生活を豊かにするものだと思います。』

この辺は自画自賛が過ぎると思うので、そういう意味では執行部の宣伝マンっぽい部分があるのですが、まあ要するに物価2%を無理くり達成する必要はない、というどう見ても黒日銀ではない路線な訳ですな。


・とどめを刺すように再度物価安定目標の在り方の説明が来るのだ

次の小見出し『金融政策のあり方』でもこれまた凄い理屈(と言っても言っていることがおかしいという意味ではなくて、黒日銀理論じゃないじゃんそれ、という話が続くという意味です)が展開されますが、その前に物価安定目標達成に関する考え方の部分で先ほどの説明をもうちょっとキツめに説明する櫻井さん。


『以上のような整理の下で、改めて金融政策のあり方について考えてみたいと思います。予め私の考えを申し上げると、金融政策は、現在のような適度に需給の引き締まった状態をできるだけ長く維持することを目指すべきだと思います。』

つまり政策は現状維持ということですけれども・・・・・・

『これまでお話ししてきたように、足もとの日本経済は、物価の伸びが鈍いことを除けば、
とても良い状態にあると思います。』

>物価の伸びが鈍いことを除けば
>物価の伸びが鈍いことを除けば
>物価の伸びが鈍いことを除けば

リフレ派じゃなかったのかよと言いたくなるが、まあ最初からリフレ全開な発言してなかった人ではあるが、置物リフレ理論とは何だったのかということで置物先生は5年分の報酬と退職金に熨斗つけて返納すべきなのではないかと存じますがどうでしょうかねえ。

『需要の増加に促される形で、供給面の拡大に伴う様々な恩恵がもたらされています。日本では、特に過去のヒステリシスの影響が強く残っていることから、こうした恩恵が相対的に大きい可能性があります。』

さっきと同じ話。

『もちろん、だからといって物価が上がらなくても良いというつもりはありません。日本銀行はできるだけ早期に「物価安定の目標」を達成すべきだと考えます。ただし、この「できるだけ早期に」の意味を取り違えてはいけません。なりふり構わず、闇雲にという意味ではありません。』

さてここで2014年11月0日(追加緩和の「ハロウィン緩和」をやった直後ですな)のきさらぎ会での黒田総裁の講演テキストの最後の決め台詞を確認してみましょう。

『デフレ期待を払しょくし、人々の気持ちの中に2%を根付かせるには、それなりの速度と勢いが必要なのです。これが、日本銀行が2%の達成時期にこだわる理由です。同時にそれは、今回の措置によって期待形成のモメンタムを維持することを重視した理由でもあります。最後に昨年4月に言ったことをもう一度繰り返します。「物価安定の目標」を早期に実現するため「できることは何でもやる」。』(2014年11月5日、きさらぎ会での黒田総裁講演より)

・・・・・って先日のきさらぎ会講演の時に畜生企画として2018年黒田VS2014年黒田というのをやったので皆様ご記憶に新しい(というより思い出させるというプレイになりますが)と存じますが、どうしてこうなったという感じですなあ。

『日銀法で定められた日本銀行の使命は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」です。物価が上昇しても、結果として経済の健全な発展が阻害されるようでは本末転倒だと思います。』

>物価が上昇しても、結果として経済の健全な発展が阻害されるようでは本末転倒
>物価が上昇しても、結果として経済の健全な発展が阻害されるようでは本末転倒
>物価が上昇しても、結果として経済の健全な発展が阻害されるようでは本末転倒

(;∀;)イイハナシダナー


・いわゆる「高圧経済アプローチ」にもネガティブな説明というのが凄い

この続きの部分がどう見ても麿というロジック展開になっておりますので鑑賞しましょう。

『例えば、供給面の変化は相対的にゆっくりなので、需要の増加ペースを速めれば、供給制約が強まり物価が大きく上昇するかもしれません。もっとも、そうした形で経済の振幅が大きくなると、資源配分の効率性の低下等、様々な弊害が生じる恐れがあります。』

読んでてここであたしゃウヒョーと思った訳でして、この部分ってすなわち「金融緩和によって経済の実力対比過大に景気を吹かすようなことをするのは不均衡発生の元になるので良くない」という麿丸出しの話をしている訳でして、いや勿論仰っていることは大変にリーズナブルなお話ではあるのですが、さきほどちょろっと出した2014年11月のきさらぎ会の講演に端的に示されていますように、インフレ期待に直接働きかけて物価安定目標を早期に達成するというのを最優先課題にしていた筈の黒田日銀ドクトリンから見たら、これって全然違う話をしていますし、寧ろ木内さんが喜びそうな説明になっていますがな、というお話。

しかもこれって「実力以上に経済を吹かして物価を上げりゃ良いってもんじゃない」という話になりますと、いわゆる「高圧経済アプローチ」に対してもネガティブである、ということになりますので、そうしますと今の執行部の公式見解がどういう風になっているのか、というのが最近実はファジーになっていて困るところではありますけれども、まあ少なくとも今の執行部の公式見解に比べると思いっきり白日銀に振り切っている話になるので、これはどうしたことぞ、というおはなしになる訳でアタクシがウヒョーという訳ですよ。

『また、いずれ金融政策を慌てて引き締めることになり、ヒステリシスの解消も道半ばで途絶えるかもしれません。何より、こうした物価の上昇は長期的に安定しないように思います。そのような状況はおそらく誰も望まないのではないでしょうか。』

置物リフレ理論では望んでいた筈ですけど、まあこっちの方が正論紅茶100%。


・ということで途中での金融政策運営変化の可能性まで示唆とな

次のパラグラフである。

『こうした理解の下では、今後も適度に需給の引き締まった状態を維持することで、ヒステリシスの希薄化に伴う恩恵を享受しつつ、将来的な「物価安定の目標」の実現を目指すことが肝要と思われます。』

つまり現状維持、という話なのですが・・・・・・・・

『なお、そのために求められる金融政策は一律ではないことを付言しておきます。』

ほほう!!!

『既に申し上げたように、やや長い目でみれば、ヒステリシスの希薄化が進捗するにつれて、いずれ供給面の拡大余地は縮小することになります。一方、予想物価上昇率や長期的な経済の成長力が高まるにつれて、「イールドカーブ・コントロール」による需要刺激効果は強まります。この点、先行きの政策運営に際しては、こうした外部環境の変化に伴い需要と供給のバランスが大きく崩れることがないよう細心の注意を払いながら、必要に応じて、最適な政策のあり方を予断を持たずに検討していくべきだと考えます。』

!!!!!!

ってこれは将来の時点において、物価が2%達成するまで今のマイナス金利だ馬鹿買入だを続ける必要は必ずしもございません、と言っている話になるので、先ほど出ていた副作用の点検部分も含めて、割と平然と踏み込んだというか突撃した説明になっている訳で、これを執行部の誰か(まあ若田部さんは言う訳ないでしょうが)が言い出したら大騒ぎなのですが、執行部の鉄砲だとデューク東郷の狙撃弾になってしまう所を、まあ軽いジャブ(銀玉鉄砲と言おうと思ったがちょっと失礼かなというのに加え、そもそも銀玉鉄砲とかジジイしか知らないネタだったことに気が付いた)程度で行ける(現に市場は全然反応しなかったし)ので、まあこれはこれで狙っているのか単に素で言っているのかは別としても、まあお洒落な講演ですな、と思うのでした。


・あとちょっと最後にあるので引用だけ

『不確実性とコミュニケーション』という小見出しが最後(本当の最後はそのあとです、為念)にあります。

『最後に、今後の供給面の変化には、相応の不確実性を伴うことを指摘しておきたいと思います。過去に生じたヒステリシスがどの程度修復可能かについては多様な議論があり、学界などでも一致した見解は得られていないように思います。また、当然ながら、過去の日本の供給面の変化には、ヒステリシスだけでなく、人口動態などより構造的な要因も影響しています。』

やっと構造の話が出たわ。

『そのため、先行き、供給面の拡大がどの程度持続するか、ひいてはこうした面から物価の上昇を抑制する効果がいつまで続くか、事前に正確な見通しを立てることは難しいと思います。』

ほほう。

『この点に関連して、先月公表した展望レポートで、物価上昇率が2%程度に達する時期にかかる見通しの記述を削除したことが話題になりました。見通しを示すこと自体は有意義だと思いますが、一部で「見通し」が「達成期限」として捉えられ、政策運営にかかる無用な憶測を生じさせてきた面があるように思います。』

最初はどう見ても達成期限だったのですが・・・・・・・・・

『これまでお話ししてきたように、金融政策を執り行う上では、様々な不確実性に配慮する必要があるため、特定の時期や計数のみに過度に注目が集まることは望ましくないと考えます。これらの点を踏まえ、私自身は、今回、そうした記述を削除することはやむを得ないと判断しました。むしろ、物価上昇のメカニズムやリスクに関する評価を丁寧に説明していくことが、市場とのより適切なコミュニケーションにつながると考えています。』

とか2期目の黒田日銀はなし崩し的に随分と違ったアプローチになっている(櫻井さんのこの説明部分はまあ執行部の説明と同じなのでここはそういう読み方で良いと思う)のでして、いやまあその方が現実的なアプローチではあるのですが、ただまあこの政策運営が一段落してある程度正常化したとして、そのあとにまた非伝統的政策を使うような事態になった時に、2013年の第1期黒田日銀以降について、きちんとしたレビュー(つまり何でも過去のを正当化しない、という事な)を行う、という落とし前、すなわち「失敗の研究」をして頂かないと、同じ事をして無駄な時間を使ったり、無駄なリソースを使ったり、もしかしたら逆噴射政策をやってしまうことにもなりかねない、というのは心して頂きたいものだ、と最後は櫻井さんの金懇挨拶からちょっとずれてしまいましたが、まあそう思うのでありました。

『以上、少し長くなりましたが、日本経済の供給面の変化と、そうした下での金融政策のあり方について、私なりの見方をお話しさせて頂きました。今後も日本銀行は、金融緩和政策に粘り強く取り組み、物価の安定を図ることを通じて、国民経済の健全な発展を全力でサポートしていきます。そうした下で、企業や政府の前向きな取り組みが続くことを期待しています。』

ということで最後のご挨拶部分は割愛します。




2018/05/24

お題「為替が動きましたな(メモ)/寝起きでFOMC議事要旨インスタント読みだが中々味わいが深かった(と思う)」

ほほう。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/moritomo_kakikae/
財務省 「廃棄」と説明の交渉記録提出
2018年5月23日

『この中には、安倍総理大臣の妻の昭恵氏付きだった谷査恵子氏が理財局に問い合わせた際の記録が含まれています。記録では、森友学園が昭恵氏を通じて国有地の貸付料の減額を要望し、平成27年11月10日に、谷氏が「安倍総理夫人の知り合いから優遇を受けられないかと総理夫人に照会があり、当方からお問い合わせさせていただいた」などと、財務省の担当者に問い合わせたことが記されています。』(上記URL先より)

昭恵氏は通常の手続きの中で何らかの負担軽減策が可能かどうかの問い合わせをしただけで、手続き以外での優遇を受けさせるような要求をしたわけではなく、ましてや問題のある手法で値引きをしろなどという要求をしている訳でもないので、これは関与には当たらない(キリッ)。国有地売却に対して仮に財務省が何らかの不合理な手段をとったのであれば担当部署や責任部署における意思決定の経緯を調査し、適切な処分を下すべき問題であり、その点は調査中である(キリッ)。

・・・・・・・こうですかわかりま(銃声)


〇市場雑談メモ(昨日は為替が動きましたな)

昨日の債券市場様ですが、
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1SU2KH
2018年5月23日 / 15:08 / 15時間前更新
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続伸で引け、長期金利は横ばい0.045%

『<15:05> 国債先物が続伸で引け、長期金利は横ばい0.045%

国債先物中心限月6月限は前日比7銭高の150円85銭と続伸して引けた。日銀国債買い入れで需給が引き締まるとの観測に加えて、米朝首脳会談の実現やトルコの金融情勢を巡る不透明感で、日経平均株価が大幅安になったことを受けて、しっかりとした展開となった。現物市場は閑散だったが、短期筋の買い戻し主体に底堅く推移。10年最長期国債利回り(長期金利)は同横ばいの0.045%で推移した。』(上記URL先より)

ってトルコリラが日本株に影響というのは????ではありますが、昨日は平均株価ちゃんとかも割とスルスル下がりやがりましてはて面妖なという所でしたが、午後からは為替ェ・・・・・・・・でありまして、

https://jp.reuters.com/article/tokyo-frx-idJPL3N1SU38C
2018年5月23日 / 16:58 /
〔マーケットアイ〕外為:ユーロ128円後半へ下落、独仏指標が相次ぎ下振れ

『<16:50> ユーロ128円後半へ下落、独仏指標が相次ぎ下振れ

夕方の取引でユーロが下落。対ドルで1.1701ドルまで60ポイント、対円で128円後半まで1円弱売られた。5月の総合PMIが仏独ともに予想を下回った。ユーロはポンドや豪ドルなどに対しても軒並み安。独国債市場では10年金利が5週ぶり水準へ低下している。対ユーロでの円買いが波及する形で、ドル/円も下落。日中安値を下回り110.07円をつけた。独仏株は1%前後の下げとなっている。』(上記URL先より)

ユーロが急落という感じになる前からドル円何か円高になっていたんで債券ちゃんは引けに掛けてモリモリ上昇して20年とかもちゃっかり確り目になっていましたけれども、引け後は上記のようにドイツのPMIとか出てきてからユーロがコケる格好に。

まあその前からドル円は110円台前半の低い所までドル安円高になっていたので、その前から何かネタがあったのかねという風情ではありますし、大体からしてドイツのPMI出た瞬間確かにユーロ動いてついでにドル円も動いてウヒョーとなったのはなったのですが、PMIが市場予想より悪いったって別にその度肝を抜くほど市場予想から下振れたという程でもないような気がします(個人の感想です)し、大体からして欧州の経済指標で予想より悪い数字出てくるの今に始まった訳じゃなくて、しばらく前から弱めのが続いていた訳で、その流れの一環ジャマイカとは思うのですが、なんか急に今回ポッキリ折れたみたいな感じで何なんでしょとは思いますが為替専門家じゃないのでよー分からん。イタリアの首相がどうなるとか影響したのでしょうかねえ(てきとう)。

あと一応トルコリラ。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-frx-mid-23-idJPKCN1IO0C8
2018年5月23日 / 12:53 /
正午のドルは110円半ば、早朝にトルコリラが急落

『午前7時過ぎにトルコリラが対ドル、対円などで急落したことをきっかけに、ドル/円もつれ安となった。トルコリラはその後小幅に反発したが、日経平均が午前の取引で下げ幅を拡大したことや、米10年国債利回りが3.05%台に低下したことが、ドル/円の新たな重しとなった。ただ、110.40円付近には個人の証拠金取引のドル買いオーダーもあるとされ、東京市場の日中には大幅なドル安は回避されるとの見方もでている。』(上記URL先より)

為替も詳しくないのにトルコリラとか言われましても分からんので何も加えるネタはないですがメモ。


〇FOMC議事要旨キタコレ:利上げ急ぐ感じでもないが物価見通しは確りなので・・・・・・

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20180502.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20180502.pdf

毎度の寝起きインスタント読みで『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツから読んでみますが、ケツから逆順にネタにするのも座りが悪いので、この小見出しの中盤にあります「金融政策スタンスに関する議論」の部分(9パラグラフ目以降)を鑑賞するだよ。

『In their consideration of monetary policy over the near term, participants discussed the implications of recent economic and financial developments for the outlook for economic growth, labor market conditions, and inflation and, in turn, for the appropriate path of the federal funds rate. All participants expressed the view that it would be appropriate for the Committee to leave the target range for the federal funds rate unchanged at the May meeting.』

「今回金利据え置き」は投票者だけじゃなくて参加者全員一致。

『Participants concurred that information received during the intermeeting period had not materially altered their assessment of the outlook for the economy. Participants commented that above-trend growth in real GDP in recent quarters, together with somewhat higher recent inflation readings, had increased their confidence that inflation on a 12-month basis would continue to run near the Committee's longer-run 2 percent symmetric objective.』

この間出た経済指標では見通しを大きく変えるものもなく、トレンド成長率を上回る成長がここ数四半期続く間に物価指標が幾分か強めに出ているので、2%物価目標達成に対する自信は強まったとな。

『That said, it was noted that it was premature to conclude that inflation would remain at levels around 2 percent, especially after several years in which inflation had persistently run below the Committee's 2 percent objective.』

だからと言って2%マンデート達成だぜヒャッハーと現時点で結論付けるのは早計で、特にここ数年は物価が目標を下回っていたことも考えるべきという指摘になっておりまして、物価水準目標チックな発想がキタコレ(なお盛大にざっくりとしか見てないので見落としがあるかも知れませんが、特に今回物価水準目標の導入や他のフレームワークの導入に関するブレーンストーミング的な記述はなかったように思われますが、まあ上記部分の認識のベースには物価水準目標を意識した面があると思う)となっておりまして、もし物価水準目標という話になれば、昨日ネタにしたボスティック総裁の講演ネタで申し上げたと思いますが、目先の利上げペースが遅くなる可能性があるのですが、ターミナルレートは上がる可能性があるので、割と悩ましいところ。

『In light of subdued inflation over recent years, a few participants observed that adjustments in the stance of policy should take account of the possibility that longer-term inflation expectations have drifted a bit below levels consistent with the Committee's 2 percent inflation objective.』

てな訳で物価が2%行ってない期間がそこそこあったのでインフレ期待が下がっている可能性も考慮して政策を、という意見も(少数ですが)ありまして、精読したのってこのパラグラフ以降になるのですが、そこを見ますと利上げはすると思うのですが前傾する感じには見えないですけど、物価の多少の上振れを容認するとなるとこれターミナルレートは上昇するので債券市場としてはまあどうなのよとは思う。

『Most participants judged that if incoming information broadly confirmed their current economic outlook, it would likely soon be appropriate for the Committee to take another step in removing policy accommodation.』

たぶんここが一番ヘッドラインになったところで、殆ど(Most)の参加者は見通し通りに推移するならこの先直ぐに次の利上げを行うのが適切と来ましたので、6月利上げはまあ普通に考えてやるじゃろという予告ホームラン。

『Overall, participants agreed that the current stance of monetary policy remained accommodative, supporting strong labor market conditions and a return to 2 percent inflation on a sustained basis.』

ここはいつもの話ですが後で面白い意見が出てきます。


次のパラグラフ。

『With regard to the medium-term outlook for monetary policy, all participants reaffirmed that adjustments to the path for the policy rate would depend on their assessments of the evolution of the economic outlook and risks to the outlook relative to the Committee's statutory objectives.』

より先の政策については状況を見ながら判断、というのは毎度おなじみのフレーズ。

『Participants generally agreed with the assessment that continuing to raise the target range for the federal funds rate gradually would likely be appropriate if the economy evolves about as expected. These participants commented that this gradual approach was most likely to be conducive to maintaining strong labor market conditions and achieving the symmetric 2 percent inflation objective on a sustained basis without resulting in conditions that would eventually require an abrupt policy tightening.』

参加者は一般的に同意したというのが、金利を徐々に上げていくアプローチで、これをやれば経済のサポートになるし先行き慌ててバンバン利上げをするような事態も避けられる、とまあこれも平常運転。

『A few participants commented that recent news on inflation, against a background of continued prospects for a solid pace of economic growth, supported the view that inflation on a 12-month basis would likely move slightly above the Committee's 2 percent objective for a time. It was also noted that a temporary period of inflation modestly above 2 percent would be consistent with the Committee's symmetric inflation objective and could be helpful in anchoring longer-run inflation expectations at a level consistent with that objective.』

ここで数名(A few)の参加者の意見として、経済がこれだけ強いのに物価の上昇が力強くないのですから、物価が2%を越えてきた場合でもそれが少々程度ならばしばらくの間は容認するのが正しいのではないか、という見解で、下振れも(追加緩和をしないという形で)容認したのだから多少の上振れも容認するのが吉、という説明になっておりますな。

なおアタクシの愚見解なのでどうでもよいのですが、このsymmetric inflation objectiveって奴なんですけど、物価の上げ下げが本当にシンメトリックなのかというのは個人的には疑問なところもあって、消費行動とかが本当にシンメトリックに動くのか(物価下落に対してと上昇に対しての行動がシンメトリックではないのではという山勘)というのはあるんですけどまあそれは実際に物価が上に振れた後の話ですかね。


『Meeting participants also discussed the recent flatter profile of the term structure of interest rates.』

いきなりここで金利の期間構造の議論がおっぱじまる。

『Participants pointed to a number of factors contributing to the flattening of the yield curve, including the expected gradual rise of the federal funds rate, the downward pressure on term premiums from the Federal Reserve's still-large balance sheet as well as asset purchase programs by other central banks, and a reduction in investors' estimates of the longer-run neutral real interest rate.』

イールドカーブがフラットしている件についての議論が始まるのですが、たぶんこれを「タームプレミアム」で議論をしだすと話がおかしくなってくると思うの。最近タームプレミアムの話って金利の期間構造の話をするときに使われるけれども、もともとこれ計算するベースに強めの仮定をおかないといけなくて、そこで出てくる数字を広めのレンジで考えるならまあ議論に使っていいと思うのですが、ピンポイントで使っていくと、単に自分の主張に都合の良いお手盛り理論になってしまう恐れがあると思うのね。

だったらまだイールドカーブ上のグリッドにあるインプライドフォワードレートの期間構造と、市場の先行き政策金利見通しやらロンガーランの政策金利に関する考え方などを並べるとかの方が置かれている仮定がすくない(とは言えインプライドフォワードレートをメインに置いてカーブ裁定をするというのは現実にはあまりいないと思うので、これはこれでやはり置きの世界になると思うんですが)ような気がする。

まあそれは兎も角として、一応資産買入でタームプレミアムに影響を与える、という話(概ねストックビューだけど話の持って行き方によってはフロービューでも使える)を持ち出してああだこうだと言っているのだが、結局のところ、金利が動くときはストックどうのこうの関係なく動く(スワップだって先物だってあるんだし)と思うので、この辺りの議論ってのは市場のビューが傾いていなくて相場が平穏な時代のお話なんじゃないかと思う(個人の偏見です)。

『A few participants noted that such factors could make the slope of the yield curve a less reliable signal of future economic activity. However, several participants thought that it would be important to continue to monitor the slope of the yield curve, emphasizing the historical regularity that an inverted yield curve has indicated an increased risk of recession.』

何でそんなマクラがあったかと思えば、イールドカーブのフラット化が進んでインバートするときはリセッションの懸念を市場が高めているので警戒が必要(カーブがインバート来るで、というのは複数の連銀総裁が言ってますな)という意見があるのに対して、一方で「いやいやタームプレミアムが主要国の資産買入効果で押し下げ圧力掛かっているんだからカーブのフラットニングをそこまで警戒する必要はないんじゃないですかね」という意見の交換があったということのようで。

まあカーブがインバートしたからこれからリセッションだ!警戒しなきゃ!!というのもなんか短絡的な感はあって、金利先高観が無くなったからカーブがフラットするという話ではありますが、まあ気にしている人が何人かいるのでこういう話になっているんでしょうな。


でこのコーナー最後のパラグラフ。

『Participants commented on how the Committee's communications in its postmeeting statement might need to be revised in coming meetings if the economy evolved broadly as expected.』

今後想定通りに推移したら声明文どうしましょうという議論。

『A few participants noted that if increases in the target range for the federal funds rate continued, the federal funds rate could be at or above their estimates of its longer-run normal level before too long. In addition, a few observed that the neutral level of the federal funds rate might currently be lower than their estimates of its longer-run level. In light of this, some participants noted it might soon be appropriate to revise the forward-guidance language in the statement indicating that the "federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run" or to modify the language stating that "the stance of monetary policy remains accommodative."』

これは興味深い所で、数名(A few)の参加者は今後利上げをする中において、金融政策が緩和的な状態ではなくなってくるので、今ある「利上げしたけど政策スタンス緩和的」とか「FF金利はしばらくの間ロンガーランの中立水準よりもやや低く推移するでしょう」というような文言を削除する時期がそんなに時間を掛けないうちに来るのではないか、という指摘をしておりますな。

『Participants expressed a range of views on the amount of further policy firming that would likely be required over the medium term to achieve the Committee's goals.』

どの程度まで金利を上げるのか、という議論もあったようで。

『Participants indicated that the Committee, in making policy decisions over the next few years, should conduct policy with the aim of keeping inflation near its longer-run symmetric objective while sustaining the economic expansion and a strong labor market. Participants agreed that the actual path of the federal funds rate would depend on the economic outlook as informed by incoming information.』

最後の所は一般的な話で締めていて、途中どういう話になっているのかはスルーという微妙な作りになっている(ので別の所をみないといけないかもですけど)のですが、今のところはまだ利上げ継続としても、そんなにしないうちに(というのは多分2%台半ばに近づいてきたころとかだと思うけど)今の水準が緩和的なのかそうじゃないのか、というような議論が出てくるということで、まあジャンジャン金利上げていきましょうマンデート達成だヒャッハー!というような雰囲気がまるで無い、ということは示されたという評価になるのではないでしょうか(個人の感想です)。




2018/05/23

お題「20年入札ェ・・・・・・/ボスティック総裁の物価水準目標論(その2)/その他少々」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018052202000129.html
「残業代ゼロ」修正合意 同意撤回規定 行使に壁
2018年5月22日 朝刊

『自民、公明両党と日本維新の会、希望の党の四党は二十一日、安倍晋三首相が今国会の最重要課題と位置付ける「働き方」関連法案に関し、「高度プロフェッショナル制度(高プロ、残業代ゼロ制度)」などを一部修正することで正式合意した。修正をしても過労死などを招く制度の危険性は変わらないが、与党は二十三日に衆院厚生労働委員会で、二十四日に衆院本会議で採決に踏み切る構えだ。高プロは、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す制度。修正案には高プロで働く人が制度適用への同意を、後に撤回できる手続きを明記するのが柱だ。』(上記URL先より)

「高プロで働く人が制度適用への同意を、後に撤回できる手続きを明記する」ってのが現実にワークする規定と思っている時点で修正案で改善したとかいうのはアホじゃねえかと思うわけだが、まあ東京新聞だけにこの次に同様のツッコミがあります。

まあ関連はしてないがこんなのもあって、
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180521/k10011447361000.html
東京五輪・パラのボランティア 「やりがいPRを」組織委
5月21日 23時20分

『2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、大会組織委員会が公表したボランティアの募集要項案の宿泊費などが自己負担となっていることに批判があったことなどを受けて、ボランティアの在り方などを有識者が検討する初会合が開かれ「やりがいをわかりやすくPRしていく必要がある」といった意見が出されました。』(上記URL先より)

予算の関係とかあるのは分かるが、とにかく労働賃金を払いたくないというデフレマインド溢れる風潮は何とかならんのか。


〇そういや昨日の訂正

昨日のボスティック総裁ネタですが、「中立金利が高いと緩和するときにすぐに金利がゼロ金利制約に到達する」って書いたのですが、当然ですが「中立金利が”低い”」が正解でして思いっきり逆を書いておりましたすいません。

それから「2021年に投票権」って書いていますが、それはそれとして今年もアトランタ連銀は投票権ありますので、何を手が滑ったのかアレですが(だいたいこう寝起きが悪い時には碌なことがない)それも違いますので(過去ログの方は取り消し線入れて訂正しました)誠に相済みません。


〇20年入札ェ・・・・・・・・・・・・(備忘メモ)

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1ST2DD
2018年5月22日 / 15:26 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続伸で引け、長期金利は横ばい0.050%

『<15:16> 国債先物が続伸で引け、長期金利は横ばい0.050%

国債先物中心限月6月限は前日比7銭高の150円78銭と続伸で引けた。前日の夜間取引で上昇した流れを引き継いで、朝方は買いが先行した。財務省が午後の取引開始直後に発表した20年債入札結果は好需給を支えに無難な内容。いったん一部短期筋の調整売りに前日終値付近まで押される場面があったが、引けにかけて買い戻しが入った。現物市場は、入札結果発表後に超長期ゾーンに売りが出たが、引けにかけて買いが入った。24日に流動性供給(残存5年超15.5年以下)、29日に40年債と長期・超長期ゾーンを中心に供給圧力が続くため、「投資家は金利低下を追いかけて買う動きはなく、押し目買い姿勢に徹している」(国内金融機関)という。10年最長期国債利回り(長期金利)は同変わらずの0.050%。』(上記URL先より)

ということなのですが、昨日は朝から先物もプラスでしたが20年カレントまたまた5糸強の0.530%とかで始まりまして、入札だちゅうのに何でですねんと思いながら入札を迎えて、落札結果自体は足切りが市場予想通りで、テールが短いから強いとか謎の講釈があった(ロイターさんの上記のでは「無難」でして、まあ無難辺りで評価するのが無難かと^^)のですが、足切りが市場予想通りの時にテールが短かったらそれは思ったよりも平均が低いということではないでしょうかと思うわけで、案の定かどうか知らんが後場は20年カレント5糸甘までやりやがりまして、あちゃーとおもっていたら引けにかけてモリモリ(という程でもないが)戻して引けに戻るとか何のこっちゃという感じ(まあ毎日何のこっちゃという感じですけど)。

ということで動くネタがあるとすれば(地政学リスクのようなネタは別にして)この入札と来週の40年とか思っていたのに(流動性もありますけど)何かこうスッキリしない入札に終わってしまいまして、これだと今月の残りの長いところの入札も動きそうで動かんという事になるんでしょうかどうなんでしょということで、まー動かんですな。

一応真面目に後講釈すれば、物価も微妙に怪しげになる中ですと、何はともあれ追加緩和の方って日銀やる気なさそうだしそもそもやるにも手段がないので緩和方向で盛り上がるというのが出来ないところに来て、まあ何のかんの言って海外の方は金融緩和の縮小(正常化)方向に進んでいるので、海外金融政策からの緩和プレッシャーもないと来ていますので、そうなりますとYCCの修正もなかろう&追加緩和方向に敢えて特攻するほどの事も無かろうとなりまして、そら動かんわという事だと思うので、物価指標がもうちょっと明確に腰折れしだす(というのはちとそこまではという感じですけど)とか海外の正常化が頓挫するみたいな面白ネタがないと動きようがないんでしょうな、南無南無。


〇博多人形が床の間のガラスケースに収まったようで(比喩的表現)

リフレ派方面からの電波浴に最適の某新聞様がこのように仰せで。
https://www.sankei.com/economy/news/180522/ecn1805220041-n1.html
2018.5.22 19:18更新
若田部昌澄日銀副総裁、リフレ派の旗下ろす?! 黒田総裁との不一致回避

『日銀の若田部昌澄副総裁は22日、参院財政金融委員会で物価上昇率2%目標の達成について「(日銀の)政策をつぶさに吟味し、現段階では現状の政策でも可能ではないかとの心証を得ている」と述べ、追加金融緩和の必要はないとの見方を示した。現状維持を主張する黒田東彦総裁との方針不一致が表面化する懸念はひとまず解消された形だ。』(上記URL先より)

ということで目出度く(かどうか知らんが)大杯と槍を持って勇壮に暴れまわることもなく、あっさり最初から床の間のガラスケースに収まってしまいまして、置物2世になってしまわれましたので、置物の二つ名を襲名という事になったようですが、先代置物大先生の場合は、そうは言いましても最初の1年くらいは威勢よく色々とやっていた訳で、就任早々から置物になるとかこの人は一体全体何をしに日銀に入ったのかと小一時間問い詰めたくなる(いやまあ「何か」されても困るのは困るけど)のですが、
ただの猟(以下自粛)。


〇なお基調的物価は刈込平均がががががが

http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

毎度のこいつですが、今回はPDFのグラフを見ましても下向きな感じになっていて甚だ遺憾なのでございますが、

刈込平均値(前年比、%)
15年基準
Trimmed mean(y/y % chg.)
2015base

Apr-17 0.2
May-17 0.3
Jun-17 0.3
Jul-17 0.4
Aug-17 0.6
Sep-17 0.5
Oct-17 0.5
Nov-17 0.6
Dec-17 0.7
Jan-18 0.8
Feb-18 0.8
Mar-18 0.7
Apr-18 0.5

ということで、基調的な物価の趨勢を見るのに割とフィットしている(と昔日銀のスタッフペーパー(なお書いているのは白塚さん)でも指摘されていた)刈込平均が年末年始をピークに頭打ち感が出て来まして、いやこれはどうなのと思いますがさてどうなるのやら。追加緩和をしません的な展望レポートの文言削除からのこの展開ってのがなんとも味わいがありますな(だからこそ早めに削除しておかないと削除しそこなって追加緩和催促相場を(債券市場以外から)食らうというのを意識していたんでしょうかね、とは思いますけど)。


〇ボスティック総裁講演続きで

https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2018/05/21-bostic-views-on-the-economy-and-price-level-targeting.aspx
Views on the Economy and Price-Level Targeting
Raphael Bostic
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta
Atlanta Economics Club
Federal Reserve Bank of Atlanta
Atlanta, Georgia
May 21, 2018

『Why price-level targeting?』ってところから参ります。上記URLの方には図表があるのですが、そんなものを貼り付けるスキルは無いのでURL先の方を見てちょ。

『First, I think the Fed's commitment to the long-run 2 percent objective has served the country well. I recognize that the commitment part of that sentence may be more important than the specific 2 percent target value. But, credibility and commitment imply objectives that are changed infrequently and only with a clear consensus on a better course.』

2%というのは良いのだがその中身を検討すべき、だそうなのだが、それで何で金利の糊代が稼げるのよ。

『Second, former Fed chair Alan Greenspan offered a well-known definition of what it means for a central bank to succeed on a charge to deliver price stability. He suggested that the goal of price stability is met when households and business ignore inflation when making key economic decisions that affect their financial futures.』

一般ピープルの経済活動における決定で将来を見通しやすくするためのものが物価安定である、というのはよく言われる話。

『I agree with the Greenspan definition, and I believe that the 2 percent inflation objective has helped us meet that criterion. But I don't think we have met this definition just because 2 percent is a sufficiently low rate of inflation. I think it's also critical that deviations of prices away from a path implied by an average inflation rate of 2 percent have been relatively small in our country.』

『Until recently, the 2 percent inflation objective in the United States has been functionally equivalent to a price-level target centered on a 2 percent growth path. The following chart shows what a 2 percent growth price-level path would have been from 1995 to 2012. I chose 1995 to start, as that is arguably near the date when the Fed began the era of inflation targeting in practice.』

『The policy outcomes we have seen from 1995 to 2012 satisfy what I will call the "principle of bounded nominal uncertainty." This means that if you and I enter a contract to exchange a dollar at some future date, we can confidently predict within some range the purchasing power that dollar will represent. For me, this is the essence of a reasonable definition of price stability. It's another way to represent the Greenspan idea.』

ということで1995-2012の物価チャートが出ていて、2%を常にキープしていたから水準も2%上昇が続いていたという話をしていますので後はお察しの通りで、

『However, as I mentioned earlier, since we began explicitly targeting a 2 percent inflation rate in 2012, the actual PCE inflation rate has persistently fallen short of the 2 percent goal. That, of course, means that the price level has fallen increasingly short of a referenced 2 percent path, as shown in this chart.』

1995-2017の物価推移をみると、2012年以降は2%の目標を単年で未達になっているので、累積的にみると2%目標を累積した物価水準ターゲットとしてみた場合に足りない、というお話。

『In the context of price-level targeting, how significant of an issue is this recent (and persistent) shortfall in inflation? The practical answer to that question is an implementation issue. However, for argument's sake, let's suppose that the FOMC commits to conducting monetary policy so that the price level will always fall within plus-or-minus 5 percent of the long-run target path (which itself we define as the path implied by a constant 2 percent inflation rate). In that sense, the current price level would be within the bounds of a hypothetical commitment made in 1995. If the central bank could perpetually deliver 2 percent annual inflation, that promise would remain intact, as we see in this chart.』

でもって物価水準目標という意味ではここもと乖離してきちゃっていますが、そこで「物価指数実数ベースで±5%の乖離を許容した2%のトレンドラインというのを引いてみましょう」というのがチャート3というのになりまして、

『Of course, that picture depicts a forward path for prices whose margin for error is quite slim.』

ってことで、直近のプライスレベルは2%で引いたトレンドラインからの許容乖離の下限にありますよ、というのが(図を張っていないから見ていただきたいのですが)今の状況だというお話になっているのですな。

『Continued inflation below 2 percent would, in short order, push the price level below the lower bound,
likely requiring a relatively accommodative monetary policy stance-that is, if policymakers sought to satisfy a commitment to this framework's definition of price stability.』

したがって、今は物価水準目標で言えばマンデート達成どころか、マンデートから下に抜けそうな状態にあるということになるので、緩和的な政策を寧ろ継続すべきである、という話になるんじゃネーノという事になるというお話。

・・・・・・・ということになりますと、前年比で見た物価上昇率は2%を超えるものが求められることになる訳ですので、そうなりますと目標を達成した時点での中立政策金利水準はもうちょっと高くなっているでしょう、ということで糊代が稼げる、という理論になるので、目先ハト派なのですが、ターミナルレートが上がるのでイールドカーブ的にはタカ派(何のこっちゃ)という話になりますな、うんうん。

『Central bankers in risk management mode might opt for policies designed to deliberately move the price level toward the 2 percent average inflation midpoint in cases where the price level moves too close for the Committee's comfort to one of the bounds (as, perhaps, in the last chart). It bears noting that in such cases there are a wide range of options available to policymakers with respect to the timing and pace of that adjustment.』

『This scenario illustrates the flexibility of the price-level targeting framework I'm describing. I think it's important to think in terms of gradual adjustments that don't risk whipsawing the economy or force the central bank to be overly precise in its short-run influence on inflation and economic activity. A key feature of such a policy framework includes considerable short- and medium-run flexibility in inflation outcomes. The only caveat is that deviations from 2 percent cannot be so large and persistent that they push the price level outside the target bounds.』

ということで、上下の乖離をある程度許容した物価水準目標という形で運営することによって、物価の弱い状態が続いた場合はより緩和を長く、上がった状態が続いた場合は引き締めを長く、ということになるんでしょうが、問題はこのターゲット政策って(前も誰かの講演で指摘されていた(確かウィリアムス)のですが)、「起点をいつにするのか」という問題もこれありで、「将来の計画が立てやすい」とか言っても、例えば今の時点から見た場合、先行きのプライスレベル目標は「今から2%が累積的に続く」のではない水準に置かれる訳ですからどうなのよ、というのもありますし、だいたいからして特に家計とか「前年との比較」くらいしか行動する時の基準がないんじゃネーノというのもありまして、この方式だと前年比の数字はそこそこぶれるので、本当にインフレ期待がアンカーされた状態で維持できるのかが謎な面があると思うのですが、話としては美しいのでまあよく話題に乗りますな。

『The crux of my argument is that a "good" monetary policy framework limits the degree of uncertainty associated with contracts involving transfers of dollars over time. In limiting uncertainty, monetary policy contributes to economic efficiency.』

『And, as to the problem of the zero lower bound that makes further rate cuts infeasible, nothing in the notion of a price-level target rules out (or demands) any particular policy tool. If anything, bounded price-level targets could expand the existing toolkit. They certainly do not constrain it.』

『Summing all of this up, then-to me, the important characteristic of a sound monetary policy framework is that it provides a credible nominal anchor while maintaining flexibility to address changing circumstances. I think some form of flexible price-level targeting can be a part of such a framework.』

まあ糊代が(今の状況だと)稼げるというのは分かるのですが、インフレ期待が逆にアンカーされなくなるのではないかという気はだいぶするので(個人の感想です)、この辺りは今晩の議事要旨で議論が行われているのかを確認したいなとは思います。

#駆け足になってしまって恐縮至極




2018/05/22

お題「20年入札ですな(メモ)/ハーカー総裁発言/ボスティック総裁の物価水準目標論(その1というか前座)」

総理のこれまでの説明に無理矢理皆さんが話を合わせていたものの・・・・・・・・・・

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180521/k10011447081000.html
愛媛県新文書 “3年前 加計氏が安倍首相に獣医学部構想説明”
5月21日 19時25分

『加計学園の獣医学部新設をめぐる問題で、愛媛県は、3年前に柳瀬元総理大臣秘書官が官邸で学園側と面会したことに関連する県の新たな文書を21日に国会に提出しました。文書には、学園側からの報告内容として「3年前の2月末、加計理事長が安倍総理大臣と面談し、獣医学部の構想を説明した」などと記載されています。』(上記URL先より)

説明は受けたし良い構想だという話はしたが、設置や認可について手心を加えろという意味で言ったわけではなく、総理としては公正な手続きを踏むべきと考えていたのに、官僚たちが総理の考えを誤解して勝手に忖度してやったことであるから問題があるとすれは官僚サイド。と説明するのがよろしいのではないかと(棒読み)。


〇さあ20年入札ですが・・・・・・・・(市場雑談メモ)

毎度後講釈にロイター記事で恐縮ですが。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1SS2GS
2018年5月21日 / 15:15 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小幅続伸、長期金利変わらず0.055%

『 <15:12> 国債先物は小幅続伸、長期金利変わらず0.055%

長期国債先物は小幅続伸して引けた。前週末の海外市場で、イタリア政局不安や米中貿易交渉への懸念などから、安全資産の米債が強含みとなった流れを引き継いで買いが先行した。終盤にかけて、翌日の20年債入札に向けた調整や、円安・株高が上値を抑えた。現物債は横ばい圏で推移した。超長期ゾーンに入札を無難に通過するとみた先回り買いが入る場面があったが、一方で業者の持ち高調整もあり、金利の低下幅は抑制された。長期国債先物中心限月6月限の大引けは、前営業日比1銭高の150円71銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比変わらずの0.055%。』(上記URL先より)

ということで週末に米国様で金利が下がって戻ってきたもんだから先物上がって20年カレントなんぞは5糸強と思ったらその後に1毛強まで出合ってみるという20年入札前だろいい加減にしろという風情で始まって、前場の時点で先物日中1万枚超えるとか月曜にしては優秀優秀という感じではあったのですが、ドル円が111円台に明確に入って(前場も111円ついていたと思うがぶち抜けたのは後場、後付け講釈的には米中貿易戦争の一時停止を歓迎)いったりする中でよくよく考えたら0.5台前半で20年新発入札迎えてどうするんのという理性が働き(???)押し込んだのですが、売買参考統計値とか見ると5糸強で引かせていますので5糸とは言え入札前に先回りで強くなった感じで、まーこの水準(絶対値の話、レラティブの話は知らんが安いとは思えん)で入札迎えるんですかさあどうしましょうねえという感じですの。

入札前に先回りしてヒャッハーと盛り上がるような水準かねとは思いますし、今週超長期の輪番明日しか無くて、木曜に5−15.5年の流動性供給もあるのに高値入札するのはちょっとどうかとは思いますし、大体からして今のこのご時世に先回りしてから入札も強くしてワッショイワッショイと投資家の買いを巻き込んで輪番と投資家への売却でウマーとか相場作りにいく元気ないでしょ(個人の感想です)。

とは思いますが世の中やってみないとワカランチ会長なので、というメモ書きでした。


〇またFEDの人が話をしているようだが

・ハーカー総裁(フィラデルフィア・再来年に投票権)

https://jp.reuters.com/article/harker-rates-idJPKCN1IM26N
2018年5月22日 / 04:36
インフレ加速なら年内あと3回の利上げ支持=米フィラデルフィア連銀総裁

『[ニューヨーク 21日 ロイター] - 米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は21日、インフレ率が上昇していることは、連邦準備理事会(FRB)は年内はあと2回、もしくは3回の利上げを実施する必要があることを示しているとし、次回利上げは早くて6月になる可能性があるとの見方を示した。』(上記URL先より、以下同様)

ほほう。

『FRBは3月に今年初めての利上げを実施。ハーカー総裁は、年内はあと2回の利上げが実施されると現時点で予想しているとしながらも、「インフレが加速し、あと3回の利上げの支持に回る可能性もある」と述べた。そのうえで、インフレ率は「2%に向けて動いているようにみえ、労働市場にはそれほど多くのスラック(需給の緩み)は残っていない」とし、「このため、思慮深く利上げを継続していくことが適切であると考えている」と述べた。』

『同総裁は2月の時点では今年の利上げ回数は全体で2回になるとの予想を示していた。』

というオチをちゃんと入れていただいていますが、実際に物価が上がって来ましたのでそらまあ前傾になるわな、というのと、恐らくは世界経済の見通しがそこそこ強くなっている(年初比)というのが効いているんじゃないかと思うのですが、フィラデルフィア連銀のページを見に行っても(ちなみにフィラデルフィアは過去の講演とかを検索する機能が分かり難くて講演とかその手のものを探すのがかなり面倒な連銀)どうも該当するスピーチなどは見当たらなかったので、これ以上の話もない(だいたいハーカーさんはあんまり連銀のサイト見ても講演を頻繁にする人ではない、その真逆がブラードおじさんですが)のでこれだけになりますが一応メモメモ。


・ボスティック総裁(アトランタ・2021年に(今年です)投票権)

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-bostic-idJPKCN1IM219
2018年5月22日 / 02:51 /
雇用・インフレ目標の達成に近付く=米アトランタ連銀総裁

『[21日 ロイター] - 米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は21日、完全雇用とインフレ率を2%とする連邦準備理事会(FRB)の目標は達成に近付いているとし、米経済成長率は今年2.5%近辺になるとの見通しを示した。金利見通しは示さなかった。金融政策の枠組みに新たに物価水準目標を採用する案については、低水準の中立金利の影響を相殺するという点で「関心を抱いている」と語った。』(上記URL先より)

ということで講演。

https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2018/05/21-bostic-views-on-the-economy-and-price-level-targeting.aspx
Views on the Economy and Price-Level Targeting
Raphael Bostic
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta
Atlanta Economics Club
Federal Reserve Bank of Atlanta
Atlanta, Georgia
May 21, 2018

ということですが、題名とURLを見ればわかりますように(ちなみにこれそのままでリンクを貼るとブラウザの画面構成が乱れる可能性があると思いますので、途中の所までしかリンクつけていませんが、ちゃんと行先に飛びますので宜しゅうに)お話は「経済と物価水準目標」ということで物価水準目標のお話。


例によってアトランタ連銀では最初にサマリーがあるのでまずはそれを鑑賞。

『Atlanta Fed president and CEO Raphael Bostic speaks at the Atlanta Economics Club's luncheon about the economy, his economic outlook, and the Fed's inflation target.』

ほう。

『Bostic: The economy is arguably as close to the Fed's employment and inflation goals as it's been over this expansion.』

経済には強気ですし既にマンデート達成キタコレと。

『Bostic continues to see the economy growing above potential this year, around 2 1/2 percent, and slowing to its longer-run growth rate of around 1 3/4 percent over the medium term.』

今年の経済は2.5%成長で、その後徐々に潜在成長率近辺の1.75%付近になっていくでしょう。

『Bostic notes that an upside risk to his economic outlook is the prospect for capital spending given tax reform, while a downside risk is the uncertainty about changes in trade policy.』

上振れリスクはトランプ減税関連での支出拡大、下振れリスクは貿易戦争とまあ順当。

『Bostic asks if the current monetary policy framework is still the right one, noting that once monetary policy has normalized, the federal funds rate will settle at a level significantly below historical norms.』

正常化後のFF金利水準は従来のロンガーランの金利よりも低いところにあるでしょう、とこれまた順当。

『Bostic explains that if the real rate of interest is likely to remain low, then giving the Fed enough room to fight even run-of-the-mill economic downturns requires boosting the nominal rate of interest.』

出たな糊代論という感じですが、実質金利が低い状況の中では将来景気が下振れた時の緩和余地を作るためには名目金利を上げないと行けませんと来まして・・・・・・・・・・

『To increase the nominal rate, Bostic is drawn to a monetary policy framework that has a version of price-level targeting.』

物価水準目標を掲げることによって(正常時の)名目金利水準を高めにすることができる、というようなお話を今回はおっぱじめたようで。

『Bostic believes a sound policy framework provides a credible nominal anchor while maintaining flexibility to address changing circumstances, and flexible price-level targeting can be a part of such a framework.』

でもってボスティック総裁の言う「flexible price-level targeting」は名目のアンカーと金融政策のフレキシビリティーを与える手段の一つである(キリッ)だそうなのでナンジャソラと思いつつ鑑賞なので、講演の最初の経済見通しの所は飛ばしましてその先から。


・ボスティック総裁の物価水準目標論

『Pondering a different framework』って小見出しから。

『In the context of this outlook, I'd now like to tackle a fundamental question: Is the current monetary policy framework-one that targets a 2 percent inflation rate-still the best one?』

『Over the course of roughly two decades prior to the global financial crisis, most monetary-policy experts and practitioners concurred that something like 2 percent is an appropriate goal-maybe even an optimal goal-for central banks to pursue. So why rethink that target now? 』

ほうほうそれでそれで?

『The answer to that question starts with another consensus that has emerged in the aftermath of the global financial crisis. There is now a widespread belief that, once monetary policy has fully normalized, the federal funds rate-the FOMC's reference policy rate-will settle at a level significantly below historical norms.』

正常化しても金融危機の影響で以前より高い金利では通常の政策ができない。

『I like to think in terms of the "neutral" rate of interest-that is, the level of the policy rate that is consistent with the FOMC meeting its longer-run goals of price stability and maximum sustainable growth. In other words, it's the level of the federal funds rate consistent with 2 percent inflation, the unemployment rate at its sustainable level, and real GDP at its potential. Estimates of the neutral policy rate are subject to debate. But a reasonable notion can be gleaned from the range of projections for the long-run federal funds rate reported in the Summary of Economic Projections (SEP) after the March FOMC meeting. According to the latest SEP, neutral would be in a range of 2.3 to 3.5 percent.』

名目中立FF金利水準は現状では2.3(2.25)-3.5%とみられています、SEPをご覧ください。

『Here is the upshot: in the latter half of the 1990s, as the 2 percent inflation consensus was solidifying, the neutral federal funds rate would have been pegged in a range of something like 4.0 to 5.0 percent, much higher than the range considered to be neutral today.』

1990年代後半の名目中立FF金利は4-5%でしたよ。

『The implication for monetary policy is clear. If interest rates settle out at levels that are historically low, there will be a more limited scope for cutting rates in the event of a significant economic downturn. Even relatively modest downturns are likely to yield policy reactions that drive the federal funds rate to zero, as happened in the Great Recession.』

出たよ糊代論ということで、中立金利が高い(低い)と緩和するときにすぐに金利がゼロ金利制約に到達する、という話ですが、たぶんこれって大規模資産価格下落みたいな大規模バランスシート問題が発生したときは、その前の金利が3%だろうと5%だろうと金利だけでは無理で、プルーデンスを兼ねた資産買入(つまりQE1という名前だったが実質的にクレジット緩和のプルーデンス政策だったバランスシート政策)をやらんと話にならんという事ではないかと思う(もしくは間接金融主体で統制が効くんだったら窓口指導みたいな貸出チャネルへの直接介入)ので、ここの糊代論って正直無駄だと思う、というのが現場労働者の感想(個人の感想です)。

まあそれはそれとしましてその続き。

『This is where challenge to the 2 percent inflation target enters. The neutral rate I have been describing is a nominal rate. It is roughly the sum of an inflation-adjusted real rate-determined by fundamental saving and investment decisions in the global economy-and the rate of inflation. The downward drift in this neutral rate is attributable to a downward drift in the inflation-adjusted real rate. This has been documented by a lot of research-one influential entry being the work by soon-to-be New York Fed president John Williams and Thomas Laubach, the head of the Monetary Affairs Division at the Board of Governors.』

ほうほうそれでそれで?

『And there is the essence of the argument. If the real rate of interest is governed by factors outside the central bank's control and is likely to remain low, then giving the central bank enough room to fight even run-of-the-mill downturns in the economy requires boosting the nominal rate of interest.』

理屈としてはそうなのだが、それって政策割り当ての問題であって、金利の上げ下げによって金融政策を行うという意味での金融政策の発動余地を残したいから名目金利を高めにしておくべき、というのは当然他の部分に影響するのであって、それが現実の問題になった時に、国民厚生の向上に資するのかという面についてよく考えないといけないし、コンセンサスを得ないといかんでしょうねえとは思う。

『There are a number of different strategies the Fed could use to raise the nominal rate of interest. These include raising the FOMC's longer-run inflation target, targeting nominal GDP growth, adopting flexible inflation targets that are adjusted based on the state of the economy, and price-level targeting. While each of these strategies carries with it its own laundry list of pros and cons, I find myself drawn to a policy framework that has a version of price-level targeting at its center. Why?』

でまあ新しいフレームワークというのは色々と言われていてプロコンありますが、ボスティック総裁は物価水準目標のバージョンが良いと思うそうで、ナンデヤネンという話を引用しようと思ったら不覚にも時間切れになってしまったので、肝心の所の前に明日に続くですいませんすいません(ついついのんびり読んでしまうのがよくないと自省)。

しかしまあひとつ前の所にある「名目金利を上げて政策の糊代を確保すべき」というのはどうもアプリオリに正しいと思っている節があるのがちょっとどうなのと思うわけで、そもそも潜在成長率が下がっているのに、名目金利を高止まりさせようというのはその時点でどこかに無理をさせないと行けないと思う訳でして、それっていわゆる「健康の為なら死んでもいい」みたいな倒錯したことになりゃせんかね、とは思うのですけれども、まあ「潜在成長率が大きく低下した社会において金融政策の発動余地は少ない」とか言い切ってしまうと「じゃあお前クビじゃん」となるのでそれはそれでまあ大人の配慮というのもあるのかも知れませんな。

つーことで続きは明日ですいません。





2018/05/21

お題「市場世間話/ブラード総裁の利上げする必要なし理論は少々強引な感じが」

https://jp.reuters.com/article/fsa-regional-banks-securities-idJPKCN1IJ0Q4
2018年5月18日 / 16:47 /
金融庁、地銀に有価証券運用の含み損の適切な処理を要請=関係筋

『[東京 18日 ロイター] - 金融庁が、全ての地方銀行に対し、外債などの有価証券の運用で抱えた含み損を放置せず、適切に処理するよう求めたことがわかった。複数の関係者が18日、明らかにした。同庁は、有価証券運用の含み損を自己資本や年間コア業務純益などの期間収益の範囲内にとどめることが望ましいとの見解を伝えている。』

『金融庁は地銀に対し、有価証券の評価替えを行ったり、売却することで損失を確定させるように求めている。』(以上上記URL先より)

・・・・・・・・・えーっとですな、貸出金も含めた全体で見て調達運用構造を考えていかないとバランスを欠く議論になると思うお話なので、この手の記事って色々な方面から出ていますが、実際問題として全体のバランスとかそういう話の中でのものなのか、殊更に一点突破で話をしているのか、というのが分からないのであんまりヘッドラインと記事で反応するのもどうなのか、とは思いまする。

だって有価証券ポート運用やってたら一点勝負で大勝利とかいうような頭のイカレタ運用をするならともかく、普通はポートフォリオのリスクやリターンの属性を分散して投資するんだから、儲かっている部分と損している部分があって、トータルで必要な収益が出ていればよいという話だし、それ以前の問題として、有価証券ポートというのはそのポート単独で存在するのではなく、銀行の貸出資産なども含めた総合的なより大きな資産ポートフォリオの中の一部署なのであって、例えば金利上昇局面になった時って(ローンの変動比率が高ければの話ですが)基本的にローンの方が儲かってくるから固定利付の有価証券が多少食らっても実は痛くも無かった、ということだってある訳で、ことさら有価証券ポートの一部を捕まえた話をするというのは????なので、これは恐らく報道している方が何か片言隻句を切り取って針小棒大にネタにしているのであって、そんなナイーブな話をしている訳ではないのではなかろうかと存じます(個人の妄想です)。

大体からしてクレジット物で償還が無理無理無理とか、株式などの償還の無いもので価格の回復がどう見ても無理無理無理とかいうのものならばそらまあどこかで損をきちんと出さないとという話になると思うのですが、例えば米国債だったら償還まで持っていれば(ドル建てだけど)元本利息はきっちり回収できる訳で、株式とかみたいなノリでやれ売却だという話になるのはどうなのかねとは思うのですけれども、上記記事見ていると評価替えというのがあるので、損出し入れ替えを行って簿価改善を勧めている、というのなら話はわかるので、おそらくこの売却云々は記事を書いている方が「含み損の処理=損切り」という認識が強いので「売却」という言葉が出て来ているんじゃないでしょうか、と存じます(個人の感想です)。

・・・・・・と思わず前置きが長くなりましたが。


〇米債新値抜けてもこれですか

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1SP2FO
2018年5月18日 / 15:22 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が小反発で引け、長期金利0.060%に上昇

『<15:09> 国債先物が小反発で引け、長期金利0.060%に上昇

国債先物中心限月6月限は前日比1銭高の150円70銭と小反発で引けた。前日の米債安に加えて、東京市場で円安・株高が進んだことから短期筋の調整売りに押され、一時150円63銭まで水準を下げた。午後に入ると持ち直す展開。中期・長期を対象にした日銀の国債買い入れ結果で需給の底堅さが確認されると買い戻しが入った。現物市場は底堅い。朝方を中心に長期・超長期ゾーンを中心に売りが出た。しかし午後に入ると、4月調整局面の水準まで利回りが上昇した超長期ゾーンを中心に国内勢から押し目買いが観測された。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp高い0.060%に小幅上昇した。』

『短期金融市場で、無担保コール翌日物の加重平均レートはマイナス0.06%台半ばから後半と前日(マイナス0.062%)を下回る見通し。週末を迎えたが、準備預金の積み期序盤で資金調達意欲は限られた。ユーロ円3カ月金利先物は小動き。新発3カ月物国庫短期証券(TB)の入札結果で、最高落札利回りはマイナス0.1323%、平均落札利回りはマイナス0.1391%と前回(最高:マイナス0.1222%、平均:マイナス0.1275%)に比べて小幅低下した。』(以上上記URL先より)

ということで金曜日ですけれども、米国金利が一段上昇あそばされる中で20年カレントとか0.545%(5糸甘)でスタートしていた訳で、先物も上記のように6銭安水準までは下がってみたものの、後場になったら20年カレントとか今週入札があるというのにきっちり戻って引けの時点では引けが堂々の出合いというこのサガランチ会長というのは何なんでしょという展開。去年の途中までは寧ろ0.55-0.60のレンジをイメージにしていたと思うのですが、0.50レベルに突っかけてしまって滞空しちゃったもんで今度は20年の0.55%が妙に底堅くなっていまして、それより後ろは何のかんのとフラットスティープするのですが何なんでしょうねと思う。いやまあカーブ全体で言えば20年が割高になったり割安になったり、という見方なのかも知れませんけれども、20年カレントが動かなくてもっと後ろが動くのでカーブ上の割高感が出るような、とかそういう風にも思っていたりしましてですな(個人の感想です)。

とまあそういう訳で今週は20年の入札があって、そのあと5-15.5の流動性供給入札があって来週は40年(と2年)があって、超長期輪番が23日と30日の2回のはずなので、バランスは微妙ですから実需が買いに来るレベルに一回は調整しないとアカンのではと思うのですが、こういう時に意地悪相場の場合は先回り買いが何故か入ってしまってショート気味で入札を迎えることになってジャンピング落札になってやっぱり売れないとかいうのが一番香ばしいというか怪我人の出る展開になりますがどうなるかは知らんので別に予断は持たん。

あと短国ちゃんですが上記URL先記事にもありますように。
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20180518.htm

(3)募入最低価格 100円03銭3厘0毛 (募入最高利回り)(-0.1323%)
(4)募入最低価格における案分比率 76.2891%
(5)募入平均価格 100円03銭4厘7毛 (募入平均利回り)(-0.1391%)

先週の3Mが▲12.75/▲12.22で前日の1Yが▲13.91/▲13.71だったので落ち着きましたねということでよろしいのでしょうかね。徐々にT+1も慣れてきたのでしょうかねえ・・・・・・・・


〇全国CPIェ・・・・・・・・(メモ)

http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
2015年基準 消費者物価指数 全国 平成30年(2018年)4月分 (2018年5月18日公表)

『≪ポイント≫

 (1)  総合指数は2015年(平成27年)を100として100.9
    前年同月比は0.6%の上昇  前月比(季節調整値)は0.4%の下落
 (2)  生鮮食品を除く総合指数は100.9
    前年同月比は0.7%の上昇  前月比(季節調整値)は0.1%の下落
 (3)  生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101.0
    前年同月比は0.4%の上昇  前月比(季節調整値)は0.1%の下落』

前回からだと総合1.1→0.6、コア0.9→0.7、コアコア0.5→0.4で、事前予想が総合0.7、コア0.8、コアコア0.4で、一応コアコアは事前予想通りで格好は付いたものの、実際の物価が上がると期待インフレが上がる理論に則りますと4月という絶賛価格改定時期におかれまして予想を下回る上昇だわ(昨年の要因の剥落分があるにせよ)ここでヘッドラインの物価が前年比の上昇が屈折したり前月比でも下がってみたりとかですが、さてどうするんでしょうかね。

つまりですよ、既に物価そのものを金融政策で直接的に上げるという話には無理があって、需給ギャップから上がっていく(まあ円安にして持ち上げるのはできますが、それをやってもただの誰得物価上昇になって消費がコケるのは2014年に実例有り)という話をする中で、物価の上昇が遅々として進まんとなった場合に、「(勝ってないけど)勝ったことにして撤退」すら困難になってしまい、しかも追加緩和と言ってもやることない訳で(やってもいいけどたぶん副作用しかないので益々ドツボにハマる)、さあドウスルドウスルとゆー感じは徐々にしてまいりますが、まあ4月東都区部CPIでなんとなくこんな感じかなというのもありましたので今のところは様子見ですけど、この調子で頭打ちになると厳しいですの。救いは円安気味になってきたのと原油高だがそれはどう見ても誰得物価上昇。


〇変態仮面ブラード総裁の割と謎な理論

SEPでロンガーランの見通しのプロットを打たないわ、政策金利のプロットを常に「今の金利でずっと継続」にしている、というセントルイス連銀ブラード総裁。先般ネタにしましたように、本人は連銀のサイトの総裁のお部屋(という名前ではないが「From the President」というお名前)に「Key Policy Papers」なんていうのを作っていまして、色々とオモシロ独自理論を出さないと気が済まないようで、時々複数均衡論みたいなので当たりを出すのですが、微妙なのもあって中々味わいがある。

つーことで先々週金曜のブラードのおじちゃんの講演がどうも最近のロジックらしい。

https://www.stlouisfed.org/news-releases/2018/05/11/bullard-a-case-for-caution
St. Louis Fed's Bullard Discusses "U.S. Monetary Policy: A Case for Caution"
May 11, 2018

プレゼンテーション、そこそこ重いのでご注意あれ
https://www.stlouisfed.org/~/media/Files/PDFs/Bullard/remarks/2018/Bullard_Springfield_Chamber_11_May_2018.pdf?la=en

でもってまあ大体プレゼンの方を字面を追えば何となく話は分かると思いますが、HTMLの方のサマリーページの方からネタにします。

ということで以下は

https://www.stlouisfed.org/news-releases/2018/05/11/bullard-a-case-for-caution
St. Louis Fed's Bullard Discusses "U.S. Monetary Policy: A Case for Caution"
5/11/2018

から引用します。

『SPRINGFIELD, Mo. - Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard discussed “U.S. Monetary Policy: A Case for Caution” on Friday at the Springfield Area Chamber of Commerce.』

『In the talk, Bullard explained that U.S. monetary policy has been normalizing during the last two and a half years, with the Fed’s balance sheet shrinking relative to U.S. GDP and the Fed’s policy rate (i.e., the federal funds rate target) increasing relative to policy rates in key foreign economies.』

海外と比較して米国がどんどん正常化しています、というのをプレゼンでも強調しているのですが、何かそれって意味あるのかという感じでして、ご案内のようにブラード総裁は「もう利上げする必要なし」という話をしているのですが、どうも最近の説明は無理筋に走っている感はあります。

『He posed the question: “How far can the Fed go along the current normalization path?” He then presented five reasons for caution in deciding whether to raise the policy rate further in the near term. The reasons spanned the following areas: inflation expectations, the neutral policy rate, the flattening yield curve, room to grow business investment, and labor markets in equilibrium.』

ということで、利上げをもうせんでも良かろう、というのは(1)インフレ期待(が上がっていない)、(2)中立的な政策金利水準(は既に現時点で達成できている)、(3)イールドカーブがフラットニングしてきている(のは市場が景気の先行きを厳しく見ている証拠である)、(4)企業の投資の余地(を拡大するためには金利を上げない方が良い)、(5)労働市場は現在均衡的である(ので金利を上げるとスラックが発生するようになるかもしれない)、というお話で、プレゼン見ても良いのでしょうが文章になっているので以下引用します。

『Inflation expectations remain low』

『Bullard noted that market-based inflation expectations are still low. On a PCE basis, they remain centered somewhat below the Federal Open Market Committee’s (FOMC) 2 percent inflation target, inhibiting the FOMC’s ability to maintain the credibility of the target,
he explained.1 』

『“By keeping the policy rate steady, the FOMC may be able to appropriately re-center inflation expectations at the target outcome for the next several years,” he said.』

市場のBEIが上がっていないからインフレ期待が低い、という一点で説明するのはちょっと強引じゃないの、と思います(そもそもインフレ連動債に対する需要の問題がある)し、もっと笑えるのは、プレゼンの方には記述があるのですが(こっちも脚注にあった)、「インフレ連動債はCPI連動だが、我々の目標とする2%はPCEデフレーターで、それはCPIよりも若干低い(と言ってびっくりするほど低い訳ではないのだが)ので、より低めに見ないといけない(キリッ)」って何かそういう細かい話じゃないと思うんだがインフレ期待っていうのの計測は、と思いました。

『The current policy rate is neutral』

『Bullard noted that the policy rate setting is likely neutral today, putting neither upward nor downward pressure on inflation. “This suggests that it is not necessary to change the policy rate to keep inflation at target,” he said.』

『In recalling analysis he did earlier this year, he said the level of the trend short-term safe real interest rate, the so-called “r-star,” is a starting point for the appropriate nominal policy rate. He suggested that r-star remains in negative territory. 』

『“That analysis also suggests that the nominal policy rate set by the FOMC is already pressing against the upper bound of a neutral setting,” he said.』

実質中立金利水準を測るのに昔からこの人ダラス連銀のPCEデフレーター刈込平均と1年のTBillを比べるという割と珍妙なことをしていて、現状はこれを見ると実質金利がプラス水準になっているからこれ以上の金利引き上げは要らんという話だが、そもそも1年のTBillにこの先の利上げを織り込んでねえかとかツッコミどころは満載。

『The yield curve is relatively flat』

『Bullard noted that the U.S. nominal yield curve has flattened since 2014. The spread between the 10-year and one-year Treasury yields went from close to 300 basis points at the beginning of 2014 to only 72 basis points as of the week of May 2. 』

『“The yield curve could invert later this year or early next year if the Committee continues increasing the policy rate and longer-term yields do not move higher,” he said.』

『He cited research by the Federal Reserve Bank of San Francisco, which suggests that yield curve inversion is a reliable bearish signal for the U.S. economy. “It is unnecessary to press policy rate normalization to the point of inverting the yield curve since inflation and inflation expectations are either at or below target,” he said.』

いやだってターミナルレートが3.0-3.25%くらいって話の中で利上げしていったらそらカーブはフラットするわと思いますし、確かにカーブがインバートしだしたら市場が経済の先行きを危ぶんでいる、という話にはなりますけれども、トレンドの成長が落ちている中ですから、イールドカーブって昔よりもフラットするのって仕方ないんじゃないですか、とは思うので何かこれも強引なお話。ちなみに「来年イールドカーブがインバートする」って言ってるんだがどうなんでしょうかねえ。

『Business investment has room to grow』

『Bullard noted that investment in the U.S. economy as a fraction of GDP remains low and that it has room to grow. He also noted that the corporate tax reform recently signed into law was meant in part to address the dearth of investment.』

『“To the extent the corporate tax reform is successful today and over the next few years, the economy could grow more rapidly without inflationary side effects,” he said. “For this reason, I would caution against translating faster real GDP growth into increased inflationary pressures.”』

この人の「To the extent the corporate tax reform is successful today and over the next few years, the economy could grow more rapidly without inflationary side effects,」という理屈はプレゼン読んでもイマイチよく分からん、一応過去の企業投資の時系列(国内の民間投資のGDP比)を出して、現状は過去の平均付近にいるだけで特に投資が過大というゾーンではない、とはいっているんだが、その図表が1975年からのトレンドを出していて、いやあの潜在成長率が全然違う時代からのトレンドを出してどうする感はだいぶある。

『Labor markets are in equilibrium』

『Bullard recalled that after being dislocated during the aftermath of the 2007-2009 recession, U.S. labor markets have recovered to an equilibrium state. This means that the suppliers of labor (households) and the employers of labor (firms) are now on the same footing in the labor market, he explained, adding that this is an appropriate situation that the Fed should not disturb.』

『He also noted that labor market outcomes are not tightly associated with inflation. He explained that when compensation paid to workers increases, firms have increased incentives to substitute away from labor and toward capital investment, an effect that keeps the labor market in equilibrium without inflationary consequences.』

『“It is not necessary to disrupt this equilibrium to keep inflation under control given the current macroeconomic circumstances,” he said.』

労働市場が均衡しているし、そもそも(プレゼンには書いてあるけどこっちにはない)以前のように雇用指標とインフレの間の関係が弱くなっているので、労働市場が強いからと言って利上げを急ぐ必要はない、という話になっていて、まあここは主義主張の問題だろうなあとは思うのでした。


ということで、ちと全体に無理筋っぽい話になっていまして、まあこのおじさん物価が実際に上がりだしたらいきなり豹変すると見ました、というのが感想でした。ちとこのロジックだと賛同を集めにくいと思う。





2018/05/18

お題「米債が新値を取ってもウゴカンチ(少しは動いたけど)ということで市場とFED高官雑談になってしまった」

しばらく前から出ていたけど公共放送が出したということはきっちりと裏が取れたということですな。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180517/k10011442211000.html
「相手を壊してこい」 日大監督が試合前に発言 アメフト問題
5月17日 19時07分

『日大アメリカンフットボール部の関係者によりますと、関東学生連盟が反則行為をした選手に対外試合出場禁止の処分を出した今月10日以降に、日大の複数の選手やスタッフに話を聞いたところ、いずれも内田監督が試合前にこの選手に対し、「相手を壊してこい」とか「やるなら出してやる」といった反則行為を促すような発言をしたと話したということです。』(上記URL先より)

反則をしろという意味ではなく、試合で相手チームに勝ってこいという一般的な意味で激励しただけ。選手が勝手に勘違いしたのだが誤解を招く発言であったとすればお詫びする、とでも言い出すんでしょうが、もうこの富永恭二もビックリの流れ(何だか分からん方はレッツグーグル先生)というのはジャパンの伝統ですし、逃げ回っているうちに有耶無耶になってしまい、こういうのを引き起こす体質が温存されるところまでがジャパンクオリティということですな、とほほ。


〇市場メモ雑談

5年国債・・・・・ではなくて短国。
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20180517.htm

(3)募入最低価格 100円13銭7厘 (募入最高利回り)(-0.1371%)
(4)募入最低価格における案分比率 44.2358%
(5)募入平均価格 100円13銭9厘 (募入平均利回り)(-0.1391%)

ということですがこちらは1年短国の結果で3Mは本日の入札になるのですが、引けの売買参考統計値見ますと▲14.4bpで引かせていますので、まあこの水準から売り込むという程の事もなくてという感じでしょうかね。先週の3M新発も売買参考統計値ベースでみると引けが▲13.6bpなので入札時点よりは金利下がっている形になっておりまして、同じ話ではありますが、そこまで崩れる理由もないということで。

#ちなみに証券業協会のページでTKRRの過去データ一覧を落とそうとすると何故かエクセルのダウンロードで不具合が発生するのですがアレは何なんでしょう(アタクシのPCだけの問題なのかもしれないけど。売買参考統計値とかはちゃんとダウンロードできる)

という事情があってTKRRとの比較とかそういう話は惜しくもパスする(俺様備忘の為に追記するかもしれませんけど)破目になりましたが、まー短いところは華麗に需給で動くのではあるのですけれども、▲11辺り(▲10.8)に大きな壁があるのでその手前では基本止まるという毎度のお話ということでしょうかねえ、よーわからんけど。


でもって5年国債入札もあった訳ですが、

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1SO2QQ
2018年5月17日 / 16:05 /
〔マーケットアイ〕金利:夜間国債先物は軟化、海外勢売り観測 米10年債3.12%に上昇で

『<15:58> 夜間国債先物は軟化、海外勢売り観測 米10年債3.12%に上昇で 

夜間取引の序盤で長期国債先物は軟化。足元の6月限は、日中取引の大引けを2銭下回る150円67銭近辺で推移している。市場では「米10年債利回りが約7年ぶり高水準となる3.12%水準に上昇していることを手掛かりとした海外勢の売りが優勢になっているもよう」(国内証券)という。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比1bp上昇の0.060%で推移している。』(上記URL先より)

ってなっていまして、昨日は確かに引け後の3時半過ぎとかに米金利が3.12%とかたぶん新値を付けに行っていて、瞬間的にドル円が110円台後半になったりしてて、ドル高にもなっていた(米債が戻ったら戻ったのだが)りしてるんですが、日本時間の3時過ぎとか言いますと何かこう海外勢売り観測でいいのかねえとか思ってしまったりしまわなかったり、というような展開でございまして、まあ海外(というか米国)の金利がどこまで上がるのかとか知らんですけれども、ちょっとこうしばらく前の「米国は中立金利が下がっているしお賃金は伸びないのでコアCPIは中々2%超えてこないのでそんなに利上げができる訳はない(キリッ)」っていうムードが妙に後退してしまったので、金利が下がるという雰囲気も同時に後退してしまっていて、毎度おなじみの「金利が下がらないなら上がるじゃん」という短絡的発想によりまして(恐怖の横這いというのがあるんだが・・・・・・)なんとなーく重そうな感じになっておられる。

ということで円債もなんかもっと重くなってもよいようなもんなのですが、超長期の後ろの方とかあまり買い手が多くないところなのでその辺はちと重そうなのですが、金利が上がるとホイホイと買いが来そうなところはうーんこのという感じのようで、ってそらまあ基本的に売るほど円債もっている人がいなくて、今買わないのはコスト見合わないからとかそういう人はいるのですから、まーそういう感じになってしまいますが、こうなると輪番減らせないから、2月に中期と長期の輪番を増やしてしまって元々買入年限のバランスが悪いのでどこかで解消してくれよと思っていたのですが、ちょっと期待薄になりましたな。

あといちおう俺様備忘用に引けの記事も貼っておく。

『<15:16> 国債先物は小幅下落、40年債利回り0.9%台に上昇

長期国債先物は小幅下落して引けた。前日の海外市場で米債が下落した流れを引き継いで売りが先行。中盤以降は買い戻す動きもあり、明確な方向感が出なかった。現物債は超長期債利回りの上昇が目立った。超長期ゾーンは今月20年債と40年債入札を残しており、早めにポジションを調整する動きがみられるとの指摘があった。40年債利回りは2月22日以来となる節目の0.9%台に上昇した。入札を無難にこなした5年債は横ばい。長期ゾーンはさえない。長期国債先物中心限月6月限の大引けは、前営業日比2銭安の150円69銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比0.5bp上昇の0.055%。』(上記URL先より)

まあ何か一昨日とか引けが強かった気がするのだがまあいっか。


〇FRB高官発言ってどうしてこう連続するんだか

・カプラン総裁(来年投票権有り)

https://jp.reuters.com/article/kaplan-employment-idJPKCN1II2Q9
2018年5月18日 / 03:56 /
米経済、最大雇用に達したかすでに超えた可能性=ダラス連銀総裁

『[17日 ロイター] - 米ダラス地区連銀のカプラン総裁は17日、米経済は最大雇用に達したか、すでに超えた可能性があるとの考えを示した。 同総裁はテキサス州リチャードソンの商工会議所のイベントで「ダラス地区連銀としては、米経済は完全雇用に達したか、すでに超えた可能性があると判断している」と述べた。 カプラン総裁は現時点では、年内あと2回の利上げがあるとの見方を支持している。同総裁はこのほか、米国が次に景気後退に見舞われた時に財政刺激策を出動させる余裕があるかどうかが懸念となっているとの考えも示した。』(上記URL先より)

ということですが、
https://www.dallasfed.org/news/speeches/kaplan

の辺りを見ましても該当するのが無いので特にアーカイブされていないのか、それとも後で何か出るのかよくわかりませんが、完全雇用を超えているのに年あと2回の利上げで良いのかねという気はするのですけれども、まあこのパターンだと物価指標が上振れだすと利上げだヒャッハーとなるパターンだし、賃金が上振れるともっと慌ててヒャッハーとなるので要注意という感じですな。


・カシュカリ総裁(来年投票権あり)

https://jp.reuters.com/article/USA-FED-KASHKARI--idJPL3N1SO515
2018年5月18日 / 01:46 /
再送-米ミネアポリス連銀総裁、低失業率下での緩慢な賃金上昇は「難問」

『[17日 ロイター] - 米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は17日、失業率が極めて低い水準となっているにもかかわらず、賃金が緩慢なペースの伸びにとどまっていることは「難問」との認識を示した。カシュカリ総裁は講演で、労働市場に現状よりもスラック(緩み)が存在しているか、賃金を巡り企業の交渉力が強まっていることが背景にある可能性があると指摘した。』(上記URL先より)

でまあこっちの講演でも見るかと思ったのですが、
https://www.minneapolisfed.org/news-and-events/presidents-speeches/neel-kashkari-at-mn-housing
President's Speeches
Neel Kashkari at MN Housing
Neel Kashkari | President
Federal Reserve Bank of Minneapolis
MN Housing
May 17, 2018

ってあるのですが54分間の講演と質疑応答をそのままビデオ放映しているという攻撃になっていまして、文字起こしされていないという畜生モードになっているのでこれまたよー分からんのですけれども、まあカシュカリ総裁が言うのはこれはこれで分かる。

ということでですな、今ってたぶんこの物価と雇用の「謎」については解釈が幾つかあると思うのですが、現在結果として出ている事象は「完全雇用でもしかしたら超過雇用なのかもしれないのに物価に全然跳ねてこない」という事になる訳で、それを格好良い言い方をすると「フィリップスカーブが機能していない」とか言うのですが、そもそもフィリップスカーブって単なる事後的な話なので機能していないという表現も(イエレンか誰かが言い出してキャッチーだからはやったけれどもアレは言い方としておかしいとアタクシは思う)変だと思いますがそれはともかく。

つーことで、現象面を合理的に説明しようという中では、上記のカシュカリ総裁のように、「今完全雇用だと思っているけれども、実は推計できていない雇用のスラックがあって、まだ完全雇用じゃない」という説明をするのが一つの方法ですが、最近は「テクノロジーの進歩(特にIT化を持ち出すのが流行)によって価格競争圧力が高くなっている」「高齢化に伴い労働生産性の伸びが弱くなっているとか貯蓄率が上がっているとかで中々物価に跳ねにくくなっている」というような感じの構造変化要因で説明する人たちも多くなっていまして、というよりそれこそ米国はまだマンデート近くにいるから良いけど、日本の物価が上がりにくい説明とか構造要因じゃねえの的な説明がしっくり来るのかもしれませんな。

でまあこのどっちかという話って金融政策運営には当然跳ねてくる話で、スラックが残っている派であれば緩和継続が必要となるし、構造要因派(まあ全部が全部構造要因という極端な主張はさすがに無いと思うので程度問題になると思いますが)の場合は別に正常化してエエンチャウノという話になってくると思う(全部が構造ではないのでそういう単純な事にはならないけど)ので、このあたりの見立てがどうなっているのか、という議論がFOMCでどの位まで行われているのか、という辺りは次の議事要旨とか読んでみたいなとは思う所ではあります。


・クオールズ副議長の講演というのもありまして

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/quarles20180516a.htm
May 16, 2018

Trust Everyone--But Brand Your Cattle: Finding the Right Balance in Cross-Border Resolution
Vice Chairman for Supervision Randal K. Quarles
At "Ring-Fencing the Global Banking System: The Shift towards Financial Regulatory Protectionism" Symposium sponsored by Harvard Law School Program on International Financial Systems, Harvard Law School, Cambridge, Massachusetts

こちらはお題とシンポジウムの名前の通りでプルーデンス方面のお話なのですが、それなりの量で話をしているのは早めにチェックはしておきたいと思いつつ、通常の経済見通しから金融政策のお話みたいな講演と違って読みどころをピンポイントで探して速攻読みというのが(プルーデンスネタの講演読み込みが足りないせいでもあるのですが)中々難しいので週末の宿題にしておいて、面白ければネタにしようかなという感じであります。


・・・・・・ということで外債が動けども円債ネタなしという困ったちゃんで雑談ばっかりですが、さすがに今日は円債動きませんですかねえ、ほら前も週末に急に滑ったりしたじゃん円債!!!



2018/05/17

お題「円債が動かないので市場世間話という名のグチ/メスター講演より」

ほほう。

https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N1SN5YJ
2018年5月17日 / 05:49 /
米金融・債券市場=国債利回り小幅上昇、10年債は7年ぶり高水準

『10年債利回りは1.5ベーシスポイント(bp)上昇し3.096%。一時2011年7月以来の高水準となる3.098%を付けた。2年債利回りは小幅上昇し2.589%。2008年8月以来の高水準。』(上記URL先より)

〇というのに円債ェ・・・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1SN2QM
2018年5月16日 / 15:28 / 15時間前更新
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が横ばいで引け、長期金利0.055%に小幅上昇


『<15:15> 国債先物が横ばいで引け、長期金利0.055%に小幅上昇

国債先物中心限月6月限は前日比変わらずの150円71銭で引けた。米10年債利回りが15日の取引で一時3.095%と、2011年7月以来の水準まで急上昇したことを受けて、朝方は短期筋の売りが先行し、150円62銭と4月27日以来約3週ぶりの水準まで下落した。』(上記URL先より)

いや「急上昇」ってほど急上昇してないんですが、と思いますが、何かこう新値ついたから暴落(金利急上昇)みたいな書き方が雨人系メディア方面の仕様らしくて、ブルームバーグでこのヘッドラインを見た時にもナンジャソラと思ってしまいましたが。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-05-16/P8SMU56K50XU01
米国債のビッグショート報われる、5月は2番人気
Lananh Nguyen
2018年5月16日 9:10 JST

大儲けするほど金利が動いているのかと小一時間問い詰めたい。

・・・・・とまあそういう雑談はともかくとして、ロイターさん円債市場解説記事の続き。

『売り一巡後は下げ渋る展開。日経平均株価が軟調だったことに加えて、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策で、金利上昇余地が限られるとの見方から、引けにかけては買い戻す動きが優勢となった。』(先ほどと同じロイター記事の方のURL先から、以下同様)

後付け講釈をするのも難しい相場な訳で、ロイターさんに悪態つくつもりではないのですが、「YCC政策で、金利上昇余地が限られるとの見方」とか無理矢理にも程があって笑ってしまいました。結局9銭とかそのくらいは先物下がったんですけど、もはや米国金利が上昇して節目超えましたとなっても、円債売り叩く人がいないというこの事実という風情でございまして、入札の瞬間以外で需給が大きく傾くことがなくて、たまたま入札の直後とかに何か新ネタでも出ると傾いたポジションの始末をするための動きが出るものの、あとはリアルマネーの押し目買いという名前になっているけれども償還バシバシ来るから仕方なく最低限は買わないといけない分だけ遺憾ながら買う分と、相変わらず阿呆のように買い続ける輪番オペとで捌けていって気が付いたらやっぱり押したら買いが来るの巻という図になっておられるようで誠に残念。

『現物市場は軟調。全般に短期筋の調整売りが優勢だった。一方で、20年ゾーンを中心に国内勢からとみられる押し目買いが観測されるなど、需給の底堅さを意識させる地合いだった。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp高い0.055%に小幅上昇。内閣府が朝方に発表した2018年1─3月期実質国内総生産(GDP)1次速報は、9四半期ぶりのマイナス成長になったが、相場への影響は限られた。』

となっていますが、寧ろさっきの後講釈の所、「YCC政策で、金利上昇余地が限られるとの見方」とするよりも「1QのGDP1次速報から急速な金利上昇も考えにくいとの見方から」みたいにした方が美しいのではないでしょうか、と余計なおせっかいにもほどがある訳ですが、まあGDP1次速報を見たら円債売り込んでどうすんのよという感は強い(この前の4月東京都区部CPIが実にあばばばばーだった訳で、一時的なのかもしれないけれども、どうもこうポッキリ折れているのではないか疑惑は深まる感じだったのでそっちが効いていると思うけど)というのもあるんじゃないでしょうかねえ、よー知らんけど。

ちなみに余談ですが、GDP1次速報って昔も今もQEという略称があるのですが、どうもアタクシ的にQQEからこの方、QEというのが非常に災厄のような言葉に感じてしまっておりまして、すっかりQEと言わなくなってしまったのは仕様です。


・・・・・・いや今日もしかしたら動くかも知れない(何の期待もしていないが)ので動きませんを連呼するのも何なんですが、米国金利上昇で新値とってもウゴカンチ会長(いやまあ20年1甘とかはやりましたし先物も出来高あったんで最近にしては昨日は動いた方だとは思いたいですが)とかなりますと何が起きると円債ちゃん動いてくれるのかという話になるのでございますけれども、

まず輪番をいじってくれると少しは反応してくれるかも知れない、というのはあるのですが、何せ20年カレント0.500%まで来た時に何もしないでいたし、その時から比べて当たり前ですけれども10年の方も甘くなってしまっているので、あの時に減額しないでここに来て減額するのってまるで理屈もへったくれもなくて、説明不能にもほどがあるから普通に考えるとやらないでしょうな。まあだからこそやったら「オペの予見可能性が低下」となりますので、それはリスクプレミアムが発生する要因なので金利が動きやすくなるかもしれないからこの際ギャグで輪番減額してみたらどうでしょうか(無責任)。

でまあ政策の見直しだの変更だのという話なんですが、緩和強化でも政策見直しでも動く気がさらさらないというのは先般の文言削除で明確化されたと思います。そして主な意見の方を見たら意外に揉めてたように見えるのに結局票決8−1だった訳で、それって要するに追加緩和の可能性を、というリフレ派が片岡さん以外押し切られたあるいは納得してしまったということであって、まーよほどのことがないと追加緩和までの距離は遠い。

でもって金融機関決算も出て参りまして、例の「第二の柱」の点検ということで今の政策の長期化による副作用論で政策の調整、というのを本当はぜひ検討して頂きたいとは思うのですが、副作用論での政策見直しっていうのは冷静に考えるとハードルが高くて、副作用論だけでメインの政策目標を一旦諦めるみたいなことをするには余程の副作用が出て、まあ正直今見直しても時すでにお寿司という状態じゃないと見直しせんじゃろと思うに、これまた目先今年度中に副作用勘案して政策調整ってのも難しいでしょうな。

ということで望みがあるとすれば物価が上昇するとかインフレ期待が上昇するとかいう屁理屈を前面に押し立てて、概念的に言えば均衡イールドカーブが上方シフトしたので、その結果として名目金利の調整を行うことは政策の見直しでも何でもないし、副作用とかで調整している訳でもないですよ、という風に行う事なのですが、これがまた東京都区部4月CPIェ・・・・・・となっていまして道のりが険しそう。

てな訳で、八方ふさがりですなあというのが結論な訳ですが、せめて輪番はこの前増額した分くらいは減額できないもんかね、と思ったりしますけど寧ろ金利が上がったらまた増額みたいな話になる訳ですから難しそうですなあ。



〇金融政策ネタがすっかり米国ばっかりですがメスター講演から少々

この前出ていたフランスでの講演。

https://www.clevelandfed.org/newsroom-and-events/speeches/sp-20180514-issues-for-us-monetary-policy.aspx
Issues for U.S. Monetary Policy
05.14.18 Loretta J. Mester
Global Interdependence Center Central Banking Series with Banque de France, Paris, France

小見出しは
The U.S. Economy
Maximum Employment
Price Stability
The Stance of Monetary Policy
Monetary Policy Frameworks: Operations and Strategy
Conclusion

と王道チックな話ですが、簡単に金融政策の話の辺りから少々なのでThe Stance of Monetary Policyから。

『As the FOMC said in its May statement, the stance of monetary policy remains accommodative. Currently, one indicator that policy is accommodative is that the fed funds rate, adjusted for inflation, is negative even though the economic outlook is strong. Another indicator is that many monetary policy rules are pointing to higher interest rates given the outlook. For example, the simple monetary policy rules across several forecasts that are available on the Cleveland Fed’s external website indicate that policy rates should be rising given the forecasts, with the median path somewhat steeper in the near term than the median funds rate path in the March Summary of Economic Projections.12』

今の政策は利上げしているけど緩和的だよ、その証拠に実質金利マイナスだしテイラールールみたいな奴で計算するとやっぱり適正金利よりも低いよ。だそうで。

『In its May statement, the FOMC also said it expects economic conditions will evolve in a manner that will warrant further gradual increases in the fed funds rate. In my view, the medium-run outlook supports the continued gradual removal of policy accommodation; it seems the best strategy for balancing the risks to both of our policy goals and avoiding a build-up of financial stability risks.』

でもって今の徐々に利上げというのは適切。

『We want to give inflation time to move back to goal, and I don’t expect inflation to pick up sharply; this argues against a steep path. At the same time, the economy is slightly beyond maximum employment, and financial conditions are accommodative. In my view, it is appropriate to continue to remove some of the monetary policy accommodation to ensure that we avoid a build-up in risks to macroeconomic stability that could arise if the economy were allowed to overheat or a build-up of financial imbalances or risks to financial stability that could arise from the extended period of very low interest rates.』

物価が急上昇しないから、ということですが、そのあとに緩和政策のやりすぎによる金融の不均衡発生も起こさないようにという話はしているので、実はゴルディロックヒャッハーと言って金融市場が動くと却って「寝た子を起こす」モードになるという点は注意。

『Of course, the path policy actually takes will depend on how the economy actually evolves. If the upside risks to growth come to pass, we may need to steepen the path a bit; if inflation surprises on the downside, we may need to go a bit slower, but the gradual upward path is consistent with the modal economic outlook at this time.』

状況によって政策は変わりうる、と当たり前の話。

『As we continue to move rates up, we will have to continue to assess whether monetary policy is accommodative, neutral, or restrictive.』

利上げするのは良いけど金利水準が緩和的なのか中立的なのか引き締め的なのかは確認する必要がある、と当たり前の話ではあるのですが、中立金利水準を意識した話をしているというのはほほうという感じで。

『Essentially, it requires assessing where the policy rate is relative to the level of the short-term interest rate that represents neutral monetary policy, that is, the equilibrium interest rate. This equilibrium interest rate will vary with economic conditions that affect the demand for investment and the supply of savings; there are wide error bands around estimates of this rate; and the rate over a short-run horizon can differ from that over a longer horizon.』

『For example, as the economy deteriorated during the financial crisis and Great Recession, the short-run equilibrium interest rate fell to a level below what would be expected to prevail over the longer run. Now, with fiscal policy turning from restrictive to stimulative, the economy growing above trend, and investment rising, the short-term equilibrium interest rate is rising, too.』

中立金利は経済の状況によって変化するし、計測誤差は大きいですよ、ということで・・・・・・

『As the expansion continues, it could be that in order to maintain our policy goals, we may need to move the fed funds rate, for a time, a bit above the level of the funds rate that is expected to prevail over the longer run. Indeed, the March Summary of Economic Projections indicates that the median appropriate policy path has the fed funds rate in 2020 moving a bit above the estimate of its longer-run level, which is about 3 percent. Of course, 2020 is a long time away and the policy path actually followed will be responsive to changes in the outlook.』

経済の拡大が続くのであれば、正常化の最終地点は中立金利と我々がみている3%よりもちょっと上になるでしょう、だそうで、まあSEPで示されている話の説明みたいな感じではありますが、そういう意味ではメスターさんは割と普通に与党。

『In terms of that estimate of the longer-run fed funds rate, one needs to consider what policy rate is consistent with maximum employment and stable inflation over the longer run. There is reason to believe that this equilibrium rate is lower now than it used to be. In fact, FOMC participants have been lowering their estimates of the longer-run fed funds rate over time. For example, in March 2014, the median estimate was 4 percent. Now it is about 3 percent. The equilibrium rate is related to the longer-run potential growth rate of the economy, which itself depends on the growth of the labor force and the growth of productivity, a measure of how effectively the economy combines labor and capital to create output.』

でもって中立金利水準に関しては常に点検が必要ですよ私らだって昔4%だったのが3%になったりしている訳ですし、だそうな。

『Based on demographics, U.S. labor force growth is projected to be considerably slower than it has been in recent decades.13 While some of the slow growth in labor productivity during this expansion has been cyclical, more persistent structural factors may also be at play.14 The combination of slow labor force growth and slow productivity growth suggests that the potential growth rate of the economy will be lower than it was in the past. My own estimate of output growth over the longer run is 2 percent, which is a lot slower than the 3 to 3-1/2 percent rate seen over the 1980s and 1990s, and my own estimate of the longer-run nominal fed funds rate is 3 percent, or 1 percent in real terms.』

潜在成長率に関しての話で、メスター総裁はロンガーランの産出成長率は2%くらいで、1980年代や90年代の3.5%から見たら下がっています、という見通しで、名目FF金利のロンガーランは3%で見ていますよというお話。

『Of course, policy changes outside the realm of monetary policy could foster higher productivity growth and labor force growth and ultimately support higher potential output growth and equilibrium interest rates. But such policies need to be implemented as the country puts its longer-run fiscal situation on a sustainable path.』

『Recently released projections by the Congressional Budget Office indicate that under current policy, the U.S. federal deficit as a share of GDP will be considerably higher 10 years from now, with rising government debt levels implying that a higher share of government spending will go to interest payments.15』

『This would tend to crowd out productive investments by the private sector and the government, thereby lowering productivity and longer-run growth.』

生産性の先行き見通しに関しては、今後の財政政策などの政府の政策で変わってくるけれども、米国の財政支出のGDPに対する寄与が上がっている中では中々生産性って上がらんのでは、という話のようで。

あと、時間の関係で割愛しますが、次の「Monetary Policy Frameworks: Operations and Strategy」の中では、今のフレキシブルインフレーションターゲットに代わる政策枠組みについての研究を行うのは良いのでは(ただし何が良いかの話は皆無なのでとりあえず言ってみるって感じですかな)というのがあって、まあこちらもまた議事要旨の方で鑑賞できるかもしれませんね。



2018/05/16

お題「米国3%に明確に乗せていますが高官の発言でも確認いたしましょうかということでウィリアムス講演」

金融機関決算の季節ですからして・・・・・・・
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30520440V10C18A5EE9000/
スルガ銀、高収益は砂上の楼閣か
シェアハウス破綻、高リスク融資は転換も
スルガ銀問題 金融機関 2018/5/15 15:59日本経済新聞 電子版

『「まっとうなビジネスに戻して『群れ』に紛れてしまうなら本物ではなかったということだ」―。金融庁幹部はスルガ銀行についてこう評する。同庁は2017年秋に公表した金融レポートで、地方銀行106行の本業の利益率を表したグラフを載せた。縦軸は利益率、横軸は利益率の増減幅を示し、106個の点が散らばった。そのグラフの右上に、他の点からかけ離れて描かれたのがスルガ銀行だった。』(上記URL先より)

なお、たまたまこのような記事を見かけたので貼っておきますが変な意味はありません(棒読み)。
https://jp.reuters.com/article/japan-fsa-idJPKBN1860P0
2017年5月10日 / 16:34 /
厳しさ増す地銀、サービス業への貢献で収益確保を=金融庁長官

・・・・・・いやあ金融業務って1年で環境が激変しますなあ(棒読み)。


〇米債金利上昇とな&連銀高官発言など

・10年3.07%キタコレ

https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N1SM6F6
2018年5月16日 / 05:12 /
米金融・債券市場=10年債利回り約7年ぶり高水準、底堅い小売統計受け

(以下のデータは上記URL先より)
30年債(指標銘柄) 16時00分 3.1966%  前営業日終値 3.1280%
10年債(指標銘柄) 15時58分 3.0723%  前営業日終値 2.9950%
5年債(指標銘柄) 16時00分 2.9186% 前営業日終値 2.8520%
2年債(指標銘柄) 15時54分 2.5766% 前営業日終値 2.5470%

昨日の終値10年で3.006%だった気もするのですが、米債の場合別に明確な売買参考統計値みたいなの無い(と思った)のでベンダーによって微妙に違うということですが、まとりあえずレンジを抜けたような感じ。

『10年債利回りは前月末から3%近辺で推移。ジャネイ・モンゴメリ・スコットの首席債券ストラテジスト、ガイ・レバス氏は「この日はかなり急な動きとなった」 としながらも、「売買高はそれほど大きくなかった」と指摘。10年債利回りの次の節目は、2017年7月に付けた3.21─3.23%となるとの見方を示した。アナリストや市場関係者は、企業や消費者の活動の高まりが維持されれば、FRBは向こう数カ月で利上げが可能になるとの見方を示している。MUFG証券・アメリカ(ニューヨーク)の米国債トレーディング部門責任者、トーマス・ロス氏は「第2・四半期のスタートは幸先が良い」と指摘。「FRBは6月に再び利上げを決定する公算が大きい」と述べた。』(上記URL先より)

ってあるのですが、6月利上げって普通にするだろ今更何の話をしてるんだ、とか思ってしまうわけですが、こちとらニューヨークの雨人ではございませんのでどんだけ利上げに関して舐めてたのか、あるいはとりあえず適当にコメントしてお茶を濁しているだけか、という風に思ってしまいます(ていうかアタクシの聞き間違いじゃなかったらなんですけれども、某モーサテだとあと3回「以上」の利上げとかいう声が聞こえた気がするのですけれども幻聴だったらすいませんが幻聴じゃなかったらさすがにそれはという感じ)。


・プルーデンスの副議長と理事候補はプルーデンス観点から来ていて結構結構

という訳で要人発言ですが、

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-nominees-idJPKCN1IG2LK
2018年5月16日 / 01:42 /
クラリダ次期FRB副議長が証言、量的緩和策に懐疑感表明

『クラリダ氏は「当該重要目標を達成する上で、バランスの取れたアプローチによる金融政策運営を支持する」とした上で、「二重の責務は経済、企業、家計、地域にとって極めて重要。その遂行に向け、いかに最善を尽くせるかに注力していきたい」と語った。』(上記URL先より、以下同様)

というのはマクラで、

『ただFRBの債券買い入れプログラムに対しては懐疑的な姿勢を表明。当初のプログラムは「理に適っていた」としながらも、その後、回数を重ねるにあたり自分自身がどのように投票したかは分からないとし、「量的緩和(QE)による恩恵は回を重ねるにつれ低下した一方で、コストは上昇していったと考えている」と述べた。 』

>量的緩和(QE)による恩恵は回を重ねるにつれ低下した一方で、コストは上昇していったと考えている
>量的緩和(QE)による恩恵は回を重ねるにつれ低下した一方で、コストは上昇していったと考えている
>量的緩和(QE)による恩恵は回を重ねるにつれ低下した一方で、コストは上昇していったと考えている

FRBではなく日銀の副総裁でお招きしたい。

『ボウマン氏はFRBの量的緩和策について直接言及することは避けたが、4兆ドルに上るFRBのバランスシート削減については「将来に向けた適切な道筋」であるとし、賛同する姿勢を示した。』

どちらもプルーデンス担当の方なのである意味順当な発言ですが、こうやって緩和緩和していない人がまた入ってくるということですけれども、じゃあ利上げが加速するかと言いますと・・・・・・・


・ウィリアムス総裁

もうすぐNY連銀総裁になりますが、直近講演のロイター記事。
https://jp.reuters.com/article/sf-fed-neutral-rates-idJPKCN1IG2XX
2018年5月16日 / 03:42 /
米中立金利、堅調な経済成長でも上昇しておらず=SF連銀総裁

『[ミネアポリス 15日 ロイター] - 米サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は15日、米経済の継続的な成長、および前向きな見通しは基調的な中立金利の上昇に何の役割も担っていないとの考えを示した。連邦準備理事会(FRB)内では中立金利の推計値に幅が出ており、現在見られている堅調な経済成長で中立金利が押し上げられているかについても見方が分かれている。 ウィリアムズ総裁はエコノミック・クラブ・オブ・ミネソタで行った講演で、こうした楽観的な見方は「検討違い」であるとの考えを示し、人口の高齢化や世界的な安全資産への需要の高まりなどの長期的に作用する力学を踏まえると、中立金利は2.5%近辺にとどまっているとの見方を示した。』(上記URL先より)

ということで講演はこちら(URLがくそ長くてこれ全部にリンクすると画像表示が乱れると思うので途中までのところでリンクしていますがちゃんとURL全部にリンクしています)。

https://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2018/may/future-fortunes-r-star-are-they-rising/?utm_source=frbsf-home-president-speeches&utm_medium=frbsf&utm_campaign=president-speeches
https://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2018/may/future-fortunes-r-star-are-they-rising/Williams-Speech-Economic-Club-Minnesota-R-Star-Future-Fortunes.pdf

The Future Fortunes of R-star: Are They Really Rising?
Remarks to the Economic Club of Minnesota
Minneapolis, Minnesota
By John C. Williams, President and CEO, Federal Reserve Bank of San Francisco
For delivery on May 15, 2018

手抜きなので最初と最後だけ読む(汗)。

『Introduction』

『Good afternoon, and thank you for the kind introduction. I know that here, at the Economic Club of Minnesota, you regularly host Fed presidents, so you’re no strangers to speeches on interest rates and monetary policy. Today I’m going to take advantage of that fact and take a step back. Today I’m going to talk about where I see interest rates going, not just over the next few months, but over the next several years, and discuss the economic fundamentals driving the changes taking place.』

目先数カ月の話ではありません(キリッ)とのことだが中立金利推計の部分は緩和度合いの判定に掛かってくるので結局目先にも影響するんですけどね。

『One of the key factors that influences my thinking on monetary policy is something called r-star. Today I hope you’ll indulge me while I describe what r-star is, where it’s headed, and how that affects the direction of interest rates.』

ということで中立金利のお話をするそうな。

『Now, I’ve already referred to interest rates and monetary policy several times. So before I go any further I should give the usual Fed disclaimer that the views I express are mine alone and do not necessarily reflect those of anyone else at the Minneapolis Fed, the San Francisco Fed, the New York Fed, or the Federal Reserve System as a whole!』

おーニューヨーク連銀ってのも言うんだって感じですが。

でもって中立金利がどうなっている云々の説明を引用していると長くなるのですが『R-star and the new normal』の中で現在の水準について言及しているのでそこを引用します。

『My own view is that r-star today is around 0.5 percent. Assuming inflation is running at our goal of 2 percent, that means the typical, or normal short-term interest rate is 2.5 percent.2』

キタコレということで、中立金利が0.5%でインフレ率2%乗っけるから名目の中立金利水準すなわちロンガーランの政策金利の適正値は2.5%ですよ、だそうです。まあ普通にSEPのドット通りの話。

『When put into a historical context, r-star stands at an incredibly low level-in fact, a full 2 percentage points below what a normal interest rate looked like just 20 years ago. This trend is not unique to the United States: Averaging across Canada, the euro area, Japan, and the United Kingdom, a measure of global r-star is a bit below 0.5 percent.3』

でもってその中立金利は20年前から見たら2%は下がっているけど、下がっているのは先進国に世界的です、という毎度のお話。そのあとに『What drives the fortunes of r-star?』ってのがあるのですが、そこでは中立金利が下がっていることについて人口動態、生産性の低下、安全資産への投資ニーズ拡大、の3点が指摘されているのですが、その部分は特に新しい話は無いのでこれまたパスします。

そしてその次に『A positive outlook』ということで米国経済に関する良い話があるのですが、さらにその次の小見出しが『The optimism about r-star is (sadly) misplaced』ということで、「中立金利が上昇するという事に関する楽観論は残念ながら誤解である」という身も蓋もない小見出し。

『It’s these strong tailwinds that are leading some people to believe that we’ll see r-star move back up. But, as I said, this optimism is, sadly, misplaced.』

だそうですが、

『It’s time to return to our trio of demographics, productivity growth, and the global demand for safe assets.』

ほうほうそれでそれで?

『When it comes to demographics, the thing I hear discussed is that the baby boomer generation is a peculiarity that will slowly work its way out of the data. That’s a polite way of saying that, once my generation has retired, labor force growth will return to the speed of recent decades. But research by my colleagues at the San Francisco Fed reveals that our increased longevity and propensity to save are the key demographic drivers keeping r-star low, and they’re not about to reverse.11 』

そらまあ人口動態の部分はどうしようもなかろう。

『People living longer and saving more are two trends I would like to see continue! But they do both spell bad news for the fortunes of r-star.』

高齢化によって貯蓄増やしたりするのも中立金利を下げまっせ。

『The second thing I hear discussed is that there’s more cause for optimism around productivity growth because of the fiscal stimulus and, more specifically, the tax cuts. In principle, if businesses have a smaller tax burden, they’ll have a greater incentive to invest in capital equipment and research and development, which will drive productivity growth.』

財政支出や減税によって企業の投資行動が活発になると生産性が上がるんちゃいますかという件については・・・・・

『Although I agree that lower tax rates on businesses should spur greater investment and productivity, the resulting effect on r-star is likely to be relatively modest.』

その考えは否定はしないが中立金利に与える影響は微々たるもの。

『By my own calculations, we can expect the fiscal stimulus to increase r-star over the next decade by no more than 0.25 percentage point.』

財政刺激での効果で向こう10年の中立金利25bpも動かんわ、だそうです。

『This modest effect is in part because the tax cuts are front-loaded?that is, they have a larger effect on growth in the next few years than in later ones.12 』

効果は一時的っすから、だそうで。

『In addition, it’s important to remember that r-star is affected by global economic conditions and not just those in the United States. A bump in U.S. growth improves global growth, but if other countries don’t follow suit, the effect on r-star will be relatively modest.』

海外で中立金利が下がるようなプレイが続くとそれにも引っ張られるし。

『The third leading factor in terms of a rising r-star is the demand for safe assets. The theoretical argument that, with such strong economic conditions, we should see the appetite for riskier investments increase, pushing up interest rates overall, makes sense. But that’s not what’s played out in the data, at least so far.』

リスクアペタイトが変わってもベースの安全資産需要は(貯蓄増加や支給が増える年金などの安全資産需要に支えられて、ということだと思う)そんなに変わらんぜよ。

『These three issues-demographics, productivity growth, and the demand for safe assets-all point to an r-star that’s set to hold its position low in the sky for quite some time.』

つーことで中立金利がそう簡単に上がらんので・・・・・・・『Monetary policy』に入りますと、

『If you’re not as passionate as I am about r-star at this point, listen up, because things are about to get more interesting. I’m going to discuss what all this means for monetary policy and the path of interest rates.』

ほうほう。

『Following the global financial crisis, the Fed cut interest rates and kept them low to stimulate the economy and get it back on its feet. Now that the expansion is well under way, we’re in the process of normalizing monetary policy and bringing interest rates back up. Based on the center of the distribution of projections from our March meeting, the Federal Open Market Committee has indicated a total of three to four rate increases this year and further gradual rate increases over the next two years will be appropriate.13 I view this to be the right direction for monetary policy.』

今の年3回か年4回というのは正しいそうです。

『At our most recent meeting at the beginning of May we decided not to change the federal funds rate, consistent with our gradual pace of policy normalization.14 』

はあそうですか。

『But even as we raise rates, I’m conscious that the fundamental drivers that govern r-star are lower than we’ve seen in the past. With a new normal for short-term rates of around 2-1/2 percent, interest rates are likely to remain low relative to historical experience.』

つーことでゴールは2.5%ですよと思いっきり言ってますのでそうすると少し上に振れる場合も出るでしょうが、あと6回からオーバーシュートして8回とかそんなことになるって話のような気がしますがさてどうなるやら。

『Conclusion 』を確認。

『In conclusion, it’s important to distinguish between the current strong economic conditions and the key longer-run drivers underpinning interest rates. I am always keeping a close eye on both the short-term economic outlook and the longer-term factors that define the more fundamental changes taking place. I don’t have a crystal ball, so it’s always the numbers that inform my opinion. For the moment, r-star continues to shine brightly, guiding monetary policy, but hold steady, low on the horizon. 』

つーことで中立金利は上がらんからターミナルレートは2.5%ですよ、というお話なのでそこまでビビるネタでもないし、別にヒャッハーと喜ぶネタでもないということですな。


・カプラン総裁もまあ穏当に

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-kaplan-idJPKCN1IG27J
2018年5月15日 / 23:37 /
インフレ率2%目標に向け上昇、加速はしておらず=米ダラス連銀総裁

『[ニューヨーク 15日 ロイター] - カプラン米ダラス地区連銀総裁は15日、米インフレ率は連邦準備理事会(FRB)が目標とする2%に向かって上昇しているが、経済の過熱を示すほど加速していないとの見方を示した。』(上記URL先より)

こちらは今の所それらしい講演テキストはダラス連銀のサイトに無いのでまあこのヘッドラインだけですが、話としてはまあ穏当ですが利上げは年4回やるんでしょ、という所だと思います。




2018/05/15

お題「動かん相場で市場雑談/FED高官発言出てきますな(メモ)/虫干しネタの虫干し、と全部雑談ですいません」

ついこの前こういう話をしていた訳ですが。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO000304/20180330-OYT1T50114.html
新元号の公表、来年2月24日以降に…政府検討
2018年03月31日

『元号の発表時期を巡っては、政府は当初、官民のシステム改修など国民生活への影響を考慮し、改元の半年前をめどに公表する方向だった。しかし、調査した結果、システム改修が想定より短期間で対応できることが判明した。』(上記URL先より)

一昨日のニュースではこうなっていまして馬鹿感満載となっております。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180513-00000009-asahi-pol
改元後も「平成」利用へ 納税や年金システム、混乱回避
5/13(日) 7:03配信

『税金や年金、医療などに関するシステムは、国税庁や日本年金機構といった行政側と銀行など民間側との間で元号を記号化したやり取りをして、時期を認識する。システムの改修には相当な時間がかかる一方、いずれも国民生活に直結する分野のため、政府が対応を検討している。』 (上記URL先より)

なんつーかさあ、「実現可能性とか条件とかを何も考えないで鶴の一声で結論が先に決まってそれに合わせるために辻褄合わせようとして最後に来てドタバタ」ってのって、役所系の絡む色々なところでボロボロ出ているようにしか思えん訳で、この手の「調査」が結論先にありきのお手盛りだったってのは、代表的なのは台湾沖航空戦ということなので簡単に言って何の反省もしていないという話ではございますが、債券市場でも細かい所ではT+1決済だし大きな話ではQQEだわな、とか色々と思いまするに、無能とかそういうレベルではなくて、どうも日本の病理のような気がして頭が痛いですな。


〇月曜とは言えウゴカンチ会長

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1SL2RH
2018年5月14日 / 15:24 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反落、長期金利0.045%に上昇

という小見出しを見ると市場が動いているようにも見えなくはないですが・・・・・・・・・・・

『 <15:16> 国債先物は小反落、長期金利0.045%に上昇

長期国債先物は小反落で引けた。中期・長期を対象にした日銀の国債買い入れへの期待から強含んで取引が始まった。後場は日銀オペが需給の緩みを意識させる結果になったことから売りがやや優勢になった。ただ、手掛かりとなる材料が乏しく、狭いレンジでの取引となった。』(上記URL先より、以下同様)

いやもうねという感じでして、昨日の債券先物日中売買高が11982枚しかなくて、しかも前場引け近くまで3000枚そこそこで売買(最終的には4351枚)していて頭がクラクラしておりました。

『現物債市場では、午前の取引で主要な年限の新発債はいずれも取引が成立しなかったが、先物同様に日銀オペ結果を受けて調整地合いとなり、広いゾーンで金利に上昇圧力がかかった。超長期ゾーンはあすの30年債入札を控えた持ち高調整がみられた。長期国債先物中心限月6月限の大引けは、前営業日比3銭安の150円80銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比0.5bp上昇の0.045%。』

ということでごじゃりまして、前場はカレントが見事に取引なしとかなっていまして、その上引け近くまで先物出来高3000枚そこそことかになっていて、もう卒倒しそうになりましたけれども、実は先週って10年入札の日だけ2万枚先物売買ありましたけれども、後の日は日中出来高1万枚台でして、しかも1万枚台前半とかだったりしたりして、金曜とかまでそんな感じになっていたので、そら(ただでなくさえ閑散な月曜なので)そう(日中売買1兆カツカツになる)よという所ではあるのですがそれにしても悲しい。


輪番に関して言えば、とにもかくにも金利が下がっているときに減額できなかった訳で、それがどこからどう見ても円高に振れるのをビビったということであっても、建付け上はYCCということで長期金利の水準を調整することになっておりますので、金利が低下してた時に買入の減額をしていない以上、ちょっと金利水準が戻った今の時期に輪番を減額するというのは、YCCの建付けから見た場合の理屈がつけにくい、という大問題があります。もちろん「いやー為替が落ち着いたんで減額します」と言ってしまえばそれまでなのですが、それはゆうてはならん事じゃとなっているのが主要国の金融政策におけるお約束(欧州の周辺国家(スイスと北欧)の場合は事実上ユーロペッグしているがあれはああいうもんなので仕方ないし主要国ではない)となっておりますので、どうにもこうにも減額ってしにくいですわな、ということになる。

さすがに今月入って同額モードが淡々と続いているし、金利水準自体が微かに上昇しているということもありますので、だんだん輪番減額への期待値下がっていると思うのですが、いくら何でもこの市場流動性だと輪番減らしてくれないと市場のプライスアクション無くなってしまうがなという思いも込めて輪番減額ネタのマーケットトークはあるのですが、まー中々減らしにくくて、あまり期待してもしょうがないけれどももし期待したかったら月末の所になるんじゃないかと思う。


それから短期ですが、またしてもロイターさんのさっきのURL先の記事から。

『短期金融市場では、無担保コール翌日物はマイナス0.030─マイナス0.040%を中心に取引された。準備預金の積み最終日を15日に控えて、朝方は積み需要がしっかりと示されたが、一巡後は調達意欲がやや後退した。レポ(現金担保付債券貸借取引)GCT+1レートはマイナス0.061%とマイナス幅を拡大。TIBOR(東京銀行間取引金利)3カ月物は0.097%と横ばい。ユーロ円3カ月金利先物は閑散。 国庫短期証券(TB)の買入結果は、応札額が節目の3倍を下回り、売り急ぐ動きはみられなかった。業者間取引で新発TBは高安まちまち。』(上記URL先記事より)

まあ水準が水準なだけにここから短国が大崩れするというのは何ぼ何でもという所でしょうな。積み最終で進捗(進捗と言っても準備預金というよりはマクロ加算の利用額の進捗だが)調整をする際って、今みたいに普通に資金をとれるのであれば、最終日に向けては抑えめに進捗させて、最終日近くは調達サイドに回って着地させる方がテクニカルにはやりやすいと思うので、どうしても積み最終日近くのコールは最初だけ強含み(数字作ったら用はないのでその後は需給が急激に緩む)という形になるんですかねえ、よー知らんけど。


しかしまあ何ですな、もともと4月MPMの結果若田部さんは置物2世だし、2%到達時期文言を削るわいつのまにやら(正確には総括検証以降)「あの数字はコミットメントではなくただの予想」とか言い出して出口も無ければ追加緩和もない、というのが明確になるわ、英国は利上げできなくなるわ欧州は当分動きを示さない感じだわ米国は既存路線通りで来そうだわ、と金融政策のネタが無いというのもあるのですけれども、それに加えてこの間国債決済アウトライトT+1が始まって、そもそもの取引に手控えムードが一層漂うという事になってしまったのも、これまた国内債券市場がゴーストタウン化甚だしい状況になるのに貢献しているような気がいたしまして、いや本当にこの調子で流動性が死んで行って値段が碌に動かん(ちなみに今一番債券市場で利回り動いているの明らかに短国)となってしまいまして、これが下手に長期化したら市場機能って終わるなあとか思いながら絶望の悲しみの中でじっと板を見るアタクシなのでした。



〇まーたFEDの高官が喋っているようですが(メモだけ)

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-bullard-yieldcurve-idJPKCN1IF2O5
2018年5月15日 / 04:00 /
来年初めまでに「逆イールド」起きる可能性=米セントルイス連銀総裁

この人「複数均衡論」(ちなみに簡単なペーパーは下のURL先)を唱えてみたりしてますが。
http://research.stlouisfed.org/publications/review/10/09/Bullard.pdf
"The Seven Faces of 'The Peril.'"(2010年)

セントルイス連銀のサイトに行くと、
https://www.stlouisfed.org/from-the-president/key-policy-papers
James Bullard - Key Policy Papers

とか言って何ぼありますねんというくらいに「Key Policy Papers」が並ぶ人で、政策に関して何かフロントランナーっぽくオモシロネタを投下しないと気がすまないという仕様にでもなっているのか、毎度毎度何か変わったものを出してきます(最近ではSEPでロンガーランのFFレートを出さないとか)ので、まあそういう一貫でのお話ですな、しかし執行部の鉄砲玉という訳でもない(寧ろ全然違う)のですが、いろいろな話をする中でお前それ以前と違うじゃろ、というのは少々ある人。

でまあ逆イールド云々ですが、ブラード総裁はどうせ「今の金利から利上げするのは無理」というスタンスでSEPとかに変態ドットを入れている人なので、そういう人から見たら今年あと3回利上げしたら表題のような話をするよな、というだけの話だと思う(がちゃんと読んでない)。


https://jp.reuters.com/article/frb-cleveland-idJPKCN1IF0Q3
2018年5月14日 / 16:35 /
米利上げ、段階的に進めるべき=クリーブランド連銀総裁

どうでもいいが写真がちとアタクシ的には怖いのですが。

ということで(どういうことだ)メスター総裁のご尊顔はこちら。
https://www.clevelandfed.org/people-search?pid=51d503bc-e964-4f3a-b26e-5c472e868348
Loretta J. Mester
President and Chief Executive Officer

でもって講演ですが、
https://www.clevelandfed.org/newsroom%20and%20events/speeches/sp%2020180514%20issues%20for%20us%20monetary%20policy
Issues for U.S. Monetary Policy
05.14.18 Loretta J. Mester
Global Interdependence Center Central Banking Series with Banque de France, Paris, France

とあるのですが寝起きで読むパワーがないので面白かったら後日。


〇虫干し企画で展望レポート基本的見解読み比べの残り(すいません)

どうもすいません。

4月展望レポート(基本的見解)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1804a.pdf
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1804a.htm/

1月展望レポート(基本的見解)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1801a.pdf
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1801a.htm/

『3.経済・物価のリスク要因』から先なのであまり大した話でもない(小ネタはある)かもしれませんが途中で終わらせるのも何なので(汗)。

・経済の要因ですが海外の見方が何かこう微妙にファジーなんですよね

『(1)経済の上振れ・下振れ要因』から。

『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れないし下振れの可能性(リスク要因)としては、以下の4点がある。

第1に、海外経済の動向である。具体的には、米国の経済政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、地政学的リスクなどが考えられる。

第2は、2019年10月に予定される消費税率引き上げの影響である。駆け込み需要とその反動や実質所得減少の影響は、消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得る。

第3に、企業や家計の中長期的な成長期待は、少子高齢化など中長期的な課題への取組みや労働市場をはじめとする規制・制度改革の動向に加え、企業のイノベーション、雇用・所得環境などによって、上下双方向に変化する可能性がある。

第4に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下する場合、人々の将来不安の強まりやそれに伴う長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道筋に対する信認が高まり、将来不安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。』(今回)


『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、以下の3点がある。

第1に、海外経済の動向である。具体的には、米国の経済政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、地政学的リスクなどが考えられる。

第2に、企業や家計の中長期的な成長期待は、少子高齢化など中長期的な課題への取組みや労働市場をはじめとする規制・制度改革の動向に加え、企業のイノベーション、雇用・所得環境などによって、上下双方向に変化する可能性がある。

第3に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下する場合、人々の将来不安の強まりやそれに伴う長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道筋に対する信認が高まり、将来不安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。』(前回)

ということで経済のリスクの所に消費増税が入っているのは普通に想定の範囲内(今回見通し期間が2020年度まで伸びているので増税後の影響についても期間的に入るし)ではあるのですが、海外経済に関しては元々の見通しだと(だいぶ前の引用だったのでアレですが)基本的に「海外経済が引っ張って外需に支えられて堅調に推移」という見通しを主に示している(特にオリンピックの反動などもありますし日本の場合)のですが、米国経済だって循環的にどうなのとか、その上財政出すからその反動も来るでしょうし、というようなのがこのリスクの方には入っていると思いますし、大体からして各委員見通しのドットチャートの方だと先々の成長も下方リスクあり、みたいな感じになっているのですが、その割にメインでは海外が引っ張るというのを相変わらず継続しているのはちょっと何かそうなのか???という感じはする。

なお文言自体は消費税云々以外変化なし。

『(2)物価の上振れ・下振れ要因』

『以上の要因のほか、物価の上振れ、下振れをもたらす固有の要因としては、

第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。予想物価上昇率は、先行き上昇傾向をたどるとみているが、企業の賃金・価格設定スタンスが積極化してくるまでに時間がかかり、物価が弱めの推移を続ける場合には、予想物価上昇率の高まりが遅れるリスクがある。

第2に、マクロ的な需給ギャップに対する価格の感応度が低い品目があることが挙げられる。公共料金や一部のサービス価格、家賃などは依然鈍い動きを続けており、先行きも消費者物価上昇率の高まりを抑制する可能性がある。また、差別化の難しい財・サービスの価格についても、流通形態の変化や規制緩和等によって競争環境が一段と厳しくなる場合には、消費者物価上昇率の高まりを抑制する可能性がある。

第3に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向およびその輸入物価や国内価格への波及の状況は、上振れ・下振れ双方の要因となる。』(今回)


『以上の要因のほか、物価の上振れ、下振れをもたらす固有の要因としては、

第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。予想物価上昇率は、先行き上昇傾向をたどるとみているが、企業の賃金・価格設定スタンスが積極化してくるまでに時間がかかり、物価が弱めの推移を続ける場合には、予想物価上昇率の高まりが遅れるリスクがある。

第2に、マクロ的な需給ギャップに対する価格の感応度が低い品目があることが挙げられる。公共料金や一部のサービス価格、家賃などは依然鈍い動きを続けており、先行きも消費者物価上昇率の高まりを抑制する可能性がある。また、差別化の難しい財・サービスの価格についても、流通形態の変化や規制緩和等によって競争環境が一段と厳しくなる場合には、消費者物価上昇率の高まりを抑制する可能性がある。

第3に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向およびその輸入物価や国内価格への波及の状況は、上振れ・下振れ双方の要因となる。』(前回)

見事に全文一致・・・・・・・・・・


・物凄い細かいところですが弱気感を窺わせる変更がありますな!!!

最後の『4.金融政策運営』。

『以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する8。』(今回)
『以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する8。』(前回)

さっきの方式だとこちらは個別文書が長いので柱一本ごとに確認。

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっている点は注意深く点検していく必要があるが、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていると考えられる。これは、(1)マクロ的な需給ギャップが着実に改善していくなかで、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化してくるとみられること、(2)中長期的な予想物価上昇率は、このところ横ばい圏内で推移しており、先行き、実際に価格引き上げの動きが拡がるにつれて、着実に高まると考えられること、が背景である。』(今回)

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっている点は注意深く点検していく必要があるが、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていると考えられる。これは、(1)マクロ的な需給ギャップが着実に改善していくなかで、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化してくるとみられること、(2)中長期的な予想物価上昇率は、このところ横ばい圏内で推移しており、先行き、実際に価格引き上げの動きが拡がるにつれて、着実に上昇すると考えられること、が背景である。』(前回)

物凄い細かい話ですが、最後の中長期的な予想物価上昇率が、前回は「着実に上昇すると考えられること」だったのが、上昇という表現からこの部分が「高まる」と少しフワッとした表現に変わっているのが芸の細かいところで、これはつまり全然上昇しないもんだからうーんこのというのが本音にはあるんでしょウリウリウリとツンツンしたくなる部分です。

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、経済の見通しについては、2018年度はリスクは概ね上下にバランスしているが、2019年度以降は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。』(今回)

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、経済の見通しについては、リスクは概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。』(前回)

経済の見通しを上振れと言っておいてリスクバランス下げるというのは正直わけわからん。

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、これまでのところ、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていない。また、低金利環境が続くもとで、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがあるが、現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、そのリスクは大きくないと判断している9。』(今回)

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、これまでのところ、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていない。また、低金利環境が続くもとで、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがあるが、現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、そのリスクは大きくないと判断している。』(前回)

ナメトンノカという感じではあるのですが、全文一致である。

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(今回)

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(前回)

全文一致ではいはいモメンタムモメンタムというのは昨日申し上げた通りです。

#ということで虫干しネタですいませんすいません



2018/05/14

お題「短国の金利が上がったのでメモ/きさらぎ会講演を昔のと軽く比べてみるという企画」

7月16日まで連休がないのか・・・・・・・・(何を今更)

〇ちょっと市場メモ(俺様備忘碌)

金曜の3M入札
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20180511.htm

(3)募入最低価格 100円03銭0厘5毛 (募入最高利回り)(-0.1222%)
(4)募入最低価格における案分比率 90.1569%
(5)募入平均価格 100円03銭1厘8毛 (募入平均利回り)(-0.1275%)

アウトライトT+1になってからは原則金曜が3M入札になったのですが、アウトライトT+1始まってから債券ディーラーの資金繰りのケツが後決めのT+0GCの所に来るようになって、後決めGCのT+0ってのは資金を出す方にしても相応の事務的手当てをしないといけない取引になるので、有担保コールのようにはいはいちょっと資金を出しますよというような簡単な取引という訳にもいかないようですな。とまあそんな訳ですから銘柄後決めのGCのT+0のレートというのは資金の出し手が少ないとなりますのでそらまあ需給関係で金利が高くなりやすく、T+1の銘柄先決めの通常のGCとかはそっちの影響があるんだか何だか知らんですけどこれまた微妙に上昇とかそんな感じなんでしょうかね。

つーことでTKRR
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

そこの
東京レポ・レート(一覧) エクセルファイル (Excel:267KB)
ってのを見ますと、ここしばらくの推移は

       overnight/翌日物
          T+0  T+1

2018/4/16 -0.140 -0.151
2018/4/17 -0.149 -0.158
2018/4/18 -0.150 -0.166
2018/4/19 -0.152 -0.170
2018/4/20 -0.151 -0.159
2018/4/23 -0.147 -0.134
2018/4/24 -0.140 -0.141
2018/4/25 -0.142 -0.133
2018/4/26 -0.131 -0.098
2018/4/27 -0.115 -0.088
2018/5/1 -0.097 -0.091
2018/5/2 -0.078 -0.084
2018/5/7 -0.065 -0.082
2018/5/8 -0.064 -0.071
2018/5/9 -0.060 -0.065
2018/5/10 -0.058 -0.060
2018/5/11 -0.055 -0.059

とかなっております(翌日物はアウトライトT+2の時はT+1が普通でT+0はマージナル)ので、まあ見るからにアウトライトT+1始まってから露骨にGCレート上昇という事になっていますが、後決めT+0もそうですけれども、そりゃアウトライトT+2をT+1にしたら資金管理忙しくなるから普通の人でも債券売買にかかわる資金繰りの事務面が整備されていないと資金だすのどうよという話になってきますわなというお話なんでしょうな、よー知らんけど。

ということですので、ここもとの3Mの入札というのは(平均/足切り)

4/16発行751回:▲0.1685/▲0.1625
4/23発行753回:▲0.1804/▲0.1744
5/1発行754回:▲0.1556/▲0.1358
5/7発行755回:▲0.1411/▲0.1323
昨日の757回:▲0.1275/▲0.1222

と推移しておりましてそら(資金決済が忙しくなったら)そう(資金の取り手が不利になる)よという展開になっておりますが、まああとからこうやってドヤ顔(ではありませんが)説明するのは誰でも出来ることなのでそらそうよとか言っている場合ではありませんな。

とりあえずすっかり短期ネタを放置プレイしていましたが、政策の見直しが云々というのがすぐ来るのか中々来ないのかは別にして、色々なものを元に戻すときに、実はその間に世の中変わっているというのが円金利の世界ではあちこちであるでしょうから、昔のイメージで考えないためにもこの手のチェックはきちんとしておかないといけなせんな、とまあそう思いました。

ちなみにロイター記事でも短国入札コメント(入札の時にはいつもついていますが)。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1SI2KU
2018年5月11日 / 15:17 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反発、長期金利変わらず0.045%

『 <15:14> 国債先物は小反発、長期金利変わらず0.045%

長期国債先物は小反発で引けた。前日の海外市場で、4月米消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことを受けてインフレ加速への懸念が後退。米債が長いゾーンを中心に買われた流れを引き継いだ。ただ、高寄り後は狭いレンジでの値動きが続き、株高に対する反応も限られた。模様眺めとなる市場参加者も増えたことから出来高は厚みを欠いた。現物債は動意薄。日銀オペの結果も材料視されなかった。

長期国債先物中心限月6月限の大引けは、前営業日比3銭高の150円83銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比変わらずの0.045%。

短期金融市場では、無担保コール翌日物はマイナス0.030─マイナス0.040%を中心に取引された。準備預金の積み最終日を15日に控える中、週末要因で資金調達意欲がしっかりと示された。レポ(現金担保付債券貸借取引)GCT+1レートはマイナス0.059%とマイナス幅を縮小。TIBOR(東京銀行間取引金利)3カ月物は0.097%と横ばい。ユーロ円3カ月金利先物は小動き。新発3カ月物国庫短期証券(TB)の入札は、落札利回りが前回に比べて上昇した。レポレートを反映した結果との見方があった。』(上記URL先より)



〇黒田総裁が先週きさらぎ会で講演をしていたので昔のきさらぎ会の講演と比較してみるという畜生企画を考えてみた

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko180510a.htm/
【講演】最近の金融経済情勢と金融政策運営
きさらぎ会における講演
日本銀行総裁 黒田 東彦 2018年5月10日

PDF版はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/data/ko180510a1.pdf


でもって畜生企画の相手に選ばれたのはQQE2を実施した直後に行われました2014年11月5日のきさらぎ会講演でございます。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/ko141105a.htm/
【講演】2%の「物価安定の目標」の実現を確かなものに
きさらぎ会における講演
日本銀行総裁 黒田 東彦 2014年11月5日

PDF版はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141105a1.pdf


もうね、題名からして気合の入り方が全然違いますなという所ですが、以下(今回)(2014年11月)との間に何があったんしょうなあというのを比較しながら確認でござるの巻。

・金融政策運営に関するお話の部分を色々とみてみると

何せ2014年11月5日というのは10月31日に騙し討ちもといバズーカ2を実施したところだった訳でございますので、最初の所にQQE2の意義の説明があるのですけれども、今回の講演は当然ながらそのようなことはないので後ろの方にかかれています。

『続いて、日本銀行の金融政策運営についてお話しします。現在、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指して、強力な金融緩和を進めています。具体的には、2016年9月に導入した「イールドカーブ・コントロール」の枠組みのもと、その時々の「経済・物価・金融情勢」を判断基準としながら、2%の実現のために最も適切なイールドカーブの形成を促すこととしています。先月末の金融政策決定会合では、短期政策金利を▲0.1%、10年物国債金利の操作目標を「ゼロ%程度」とする従来の金融市場調節方針を維持しています。』(今回)

『こうした金融政策運営の考え方は次の通りです。まず、判断基準の一つである「経済・物価情勢」についてみると、先ほど述べたように、景気は着実に改善していますが、その改善度合いに比べて物価の動きは力強さを欠く状態を続けており、2%の「物価安定の目標」の実現までにはなお距離があります。物価に関する下振れリスクにも注意が必要な状況です。このため、「経済・物価情勢」という観点からは、引き続き、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を進めていく必要があります。』(今回)

『次に、「金融情勢」に関する判断です。金融政策運営にあたっては、金融面での不均衡が蓄積し、金融システムの安定性が損なわれる「過熱方向」の動きと、金融機関の収益環境が悪化し、金融仲介機能が低下する「停滞方向」の動きの両方に注意する必要があります。過熱方向の動きについては、これまでのところ、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていません。金融仲介機能が停滞方向に向かうリスクについては、マイナス金利を含む強力な金融緩和が、貸出利鞘の縮小などを通じて、金融機関の収益や金融仲介機能に影響を及ぼすとの指摘があります。先行き、低金利環境が継続し、金融機関収益への下押しが長期化すれば、その経営体力に累積的に影響を及ぼし、結果として、金融仲介機能が停滞方向に向かう可能性がある点には注意を払っていく必要があると考えています。もっとも、わが国の金融機関は充実した資本基盤を備えていることもあり、現時点で、収益の悪化に伴う金融仲介機能への大きな問題が生じているとは考えていません。このことは、金融機関の貸出スタンスが、引き続き積極的であることにも表れています(図表12)。』(今回)

とまあいつもの説明ではありますが、こんな感じになっておりますが、一方で2014年11月はどうだったかと言いますと・・・・・・・・・

『はじめに、「量的・質的金融緩和」の目的と効果について、振り返っておきます。日本銀行は、昨年の4月に、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するために、「量的・質的金融緩和」を導入しました。「量的・質的金融緩和」は、次のような基本方針に基づいて設計されたものです。』(2014年11月)

『第1に、長年にわたって日本経済を劣化させてきたデフレから脱却するために、「できることは何でもやる」ということです。第2に、日本銀行が「物価安定の目標を責任をもって実現する」と強く明確にコミットするということです。第3に、こうしたコミットメントを裏打ちする量的にも質的にも従来とは次元の異なる金融緩和を行うということです。』(2014年11月)

「できることは何でもやる」し、「物価安定の目標を責任をもって実現する」と強く明確にコミットするんだそうですわよ奥様。

『15年にわたるデフレの間に、人々の間には、「物価が上がらない」あるいは「物価が緩やかに低下する」という考え方が定着してしまいました。これが「デフレマインド」や「デフレ期待」と呼ばれるものです。デフレマインドが定着すると、企業や個人はそれを前提に行動するため、デフレと景気の低迷が自己実現的に長期化することになります。このような悪循環から脱却するためには、従来とは全く次元の異なる金融緩和によって、人々の間に染みついたデフレマインドを抜本的に転換する必要があります。「量的・質的金融緩和」は、まさにこうした効果を狙ったものです。』(2014年11月)

(;∀:)イイハナシダナー


とまあこの違いは何よという感じですが、いやまあ実際には総括的検証をやってこの辺を全部ガラッと変えたというのが事実認識としては正しいのだと思いますが、ただあの時には政策の基本スタンスを変換するとかいうような話を碌すっぽしておらず、寧ろ今まで通りというのを強調していたわけよ。

いやね、やってみたら基本方針違ってたのが分かったんで転換しますよだってこんな政策世界でも初なんだから多少の齟齬があっても仕方ないでしょああそれから置物副総裁には反省の弁をしてもらいます、ってな訳にいかない大人の政治的事情があったというのはこちらも重々承知しているのですが、だからといってその辺を有耶無耶にしたままでQQE2から見たら物凄い勢いで直近は全然違うスタンスになっているのがなし崩しのまま、というのはさすがにどうなのかと思う。

それは別に安部ちゃんの面目玉がどうのこうのとかリフレ派は机上の空論を弄んで間違いを認めないでまだのうのうとしているが今すぐ総退場して二度と出てくるなとかそういうのもありますけど、それよりも何よりも重要なのって、こういうのを有耶無耶のままにして何だか知らんけどケジメもつけずに引っ張っていく、というのは、「将来において同じ間違いを繰り返す」というジャパニーズオーガナイゼーションクオリティを見事に体現したものとして考えた場合、本当の本当にちゃんとした形で「なぜこうなったのか」というのを誤魔化して出すのではなく、ちゃんと包み隠さずに開示しないと将来また非伝統的政策に頼るようにならないと行けなくなった時(ってまあ今でも非伝統的政策に頼っているのですが)に打つ手を間違えて、「一度目は喜劇、二度目は悲劇」って奴にならないか、とそれが心配なのよ。別にそこらの民間企業がやらかしているならせせら笑って高みの見物でも平気(じゃない場合もあるが)かも知れんが、日本銀行ですよ日本銀行。



・意欲の違いを別の角度から確認しましょう

今回のだとほぼ最後の方、2014年のでは後半の金融政策にかかわるぶぶんです。

『最後に、1点補足したいと思います。先ほど述べたように、日本銀行は、現在、その時々の経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%に向けたモメンタムが維持されているかを点検しながら、金融政策を運営しています。その際、2%の達成時期に関する具体的な期限は設定していませんし、そうした期限を念頭に置いて、金融政策を運営している訳ではありません。今回の展望レポートでは、「2%程度に達する時期」を記述していませんが、これは、こうした政策運営スタンスを明確にする意味合いもあります。もっとも、このことが、「物価安定の目標」の位置づけや性格を変更したものではないことも、合わせて申し上げておきたいと思います。日本銀行は、2013年の「量的・質的金融緩和」の導入以降、2%の「物価安定の目標」を「できるだけ早期に」実現することにコミットし、それを裏打ちする大規模な金融緩和を続けています。こうした決意を明確に示すことは、人々の間に根付いてしまったデフレマインドを転換していくうえで不可欠です。2%を「できるだけ早期に」実現するという約束に変わりはありません。』(今回)

というのが今般での説明になりますが、2014年はですな、

『日本銀行は、「量的・質的金融緩和」の導入当初から、2%の「物価安定の目標」の早期実現に強くコミットしています。物価の下振れリスクが大きくなったのであれば、追加的な措置を行うことは当然の論理的帰結です。その意味で、今般の措置は、我々の揺るぎないコミットメントを示すものに他なりません。』(2014年11月)

「早期実現に強くコミットしています」と「2%の達成時期に関する具体的な期限は設定していませんし、そうした期限を念頭に置いて、金融政策を運営している訳ではありません。」の間にはどこからどう見ても物凄いギャップがあるようにしか見えませんが・・・・・・・・・

『さらに、「2%を目指すにしても、2年程度という期間にこだわることはないのではないか」という意見もあります。この点、日本銀行は、昨年4月、「物価安定の目標」を「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に」実現すると宣言して、「量的・質的金融緩和」を導入しました。同じ月に公表した「展望レポート」では、2015年度の消費者物価上昇率の見通しを政策委員の中央値で1.9%と公表しました。その後、この見通しは、最新の展望レポートでは幾分下振れていますが、引き続き、「2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高い」と予想しています。2%の「物価安定の目標」を2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するという方針に変わりはありません。』(2014年11月)

2年程度というのもなんかなし崩しに無くなりましたな。まあ実際にできなかったんだからそうなるんだけど。ちなみにその直前にはこんなことも。

『本日、ご説明したように、「量的・質的金融緩和」のもとでデフレマインドの転換は着実に進んできています。今、この歩みを止めてはなりません。デフレという慢性疾患を完全に克服するためには、薬は最後までしっかりと飲み切る必要があるのです。中途半端な治療は、かえって病状を拗らせるだけです。』(2014年11月)

>中途半端な治療は、かえって病状を拗らせるだけです
>中途半端な治療は、かえって病状を拗らせるだけです
>中途半端な治療は、かえって病状を拗らせるだけです

・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

『今回の原油価格の下落でもわかるように、実際の消費者物価の計数は、需給ギャップや予想物価上昇率のような基本的な要因のほかにも様々な要因の影響を受けます。2年ちょうどで2.0%にできる中央銀行は世界中にありません。だからといって、「いつかは2%にする」というのでは、デフレマインドが蔓延していた企業や家計が「これからは2%を前提として行動しよう」とは思わないでしょう。』(2014年11月)

つまり期限を切らないで実施するなどという生温いことでは期待形成が変化しないということですね、わかります。

『デフレ期待を払しょくし、人々の気持ちの中に2%を根付かせるには、それなりの速度と勢いが必要なのです。これが、日本銀行が2%の達成時期にこだわる理由です。同時にそれは、今回の措置によって期待形成のモメンタムを維持することを重視した理由でもあります。最後に昨年4月に言ったことをもう一度繰り返します。「物価安定の目標」を早期に実現するため「できることは何でもやる」。』(2014年11月)

ということでですな、この時期の「期待形成のモメンタム」には「それなりの速度と勢いが必要なのです」って話をしていたわけなのですが、さてそのモメンタムはどうしたのでしょうか・・・・・・・・・・・・


・物価があがるメカニズムに関して

今回だと『物価上昇のメカニズム』として説明しています。

『ここで、物価が2%に向けて上昇していくメカニズムを改めてご説明したいと思います。日本銀行では、これを2段階に分けて整理しています。第1のステップは、景気の拡大とともにマクロ的な需給ギャップが改善し、これが、企業における賃金・価格設定スタンスの積極化を通じて、現実の物価を引き上げていくというものです。第2のステップは、実際に物価が上昇することにより、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率が高まり、このことが、実際の物価上昇率を一段と押し上げていくというものです。』(今回)

『このうち、第1段階についてみますと、マクロ的な需給ギャップの改善は、賃金や物価を着実に押し上げています。賃金の面では、労働需給の引き締まりを背景に、パート雇用者だけでなく、正社員の給与も増加しています。各種の調査によれば、本年度のベースアップ率は昨年の実績を上回り、正社員の賃金を引き上げる企業の割合も高まっています(図表9)。賃金コストの上昇を販売価格に反映させる動きも拡がっています。3月の短観では、販売価格判断DIが、大企業に続き、中小企業でもプラスに転じましたが、これは1991年以来、27年ぶりの出来事です(図表10)。このように、第1段階のメカニズムは、着実に作動しています。景気の拡大に比べて、物価の動きがなお力強さを欠いている点は否めませんが、それでも、生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価の前年比は、2017年3月のボトムから緩やかに上昇し続けています。』(今回)

『次に、第2段階、すなわち、現実の物価上昇が、中長期的な予想物価上昇率の高まりに繋がっているかどうかという点です。この点について、最近の予想物価上昇率の動きをみますと、一頃の弱含み局面からは抜け出しているものの、なお横ばい圏内で推移しています(図表11)。』(今回)

でまあ2014年の時は「期待を変える」というお話だったのでこういう説明を細々している場面というのは無かったのですが、原油価格下落の影響についての話をしています。

『では、(引用者追記:原油価格低下に関する話です)日本経済や物価形成への影響はどうでしょうか。まず、日本は資源輸入国ですから、基本的には、経済活動に好影響を与え、長い目でみれば物価の押し上げ要因となると考えられます。特に、国際商品市況下落が供給面や市場の反応などの要因によるものであれば、この点はより明確です。一方で先行きの世界需要の弱さを示唆している場合には、国際商品市況の下落そのものはプラス材料だとしても、将来の世界経済の弱さという懸念材料も同時に考えておかなければなりません。現時点において、この点は明確ではありませんが、引き続き、世界経済の動向を注視していく必要があると考えています。』(2014年11月)

世界経済は別に落ち込むということにはなりませんでしたね。

『また、物価形成の面では、原油価格の下落が、長い目でみれば物価の押し上げ要因である一方で、当面の消費者物価の下落をもたらすことの意味を考える必要があります。冒頭で申し上げたとおり「量的・質的金融緩和」は、2%の消費者物価上昇率を安定的に達成する、という日本銀行の強いコミットメントとそれを裏打ちする異次元の大規模緩和によって、人々のデフレマインドを払しょくし、予想物価上昇率を引き上げることを狙った政策です。これまでこのメカニズムは所期の効果を上げ、予想物価上昇率は全体として上昇しています。そこで、このメカニズムの核である「予想物価上昇率」の好転のモメンタムが、当面の消費者物価上昇率の伸び悩みによって弱まることはないのか、ということが問題になります。』(2014年11月)

ということで、さっき出ていたモメンタムというのは「このメカニズムの核である「予想物価上昇率」の好転のモメンタム」なんですよね〜。

『この点、原油価格のような一時的な要因によって実際の物価上昇率が多少変化しても、中長期的な予想物価上昇率はあまり影響を受けないというのが基本的な考え方です。たとえば、米国では、原油価格の下落にもかかわらず、中長期的な予想物価上昇率を示す指標は、さほど変化していません(図表11)。ただ、米国の場合には、長年にわたって予想物価上昇率が中央銀行の設定する目標近傍にアンカーされている一方で、わが国は、「量的・質的金融緩和」によってデフレマインドを抜本的に転換しようとしている最中にあります。わが国では、米国などに比べれば、実際の物価上昇率の変化が予想物価上昇率の形成にも相応の影響をもたらす可能性があると考えておくべきだと思います。』(2014年11月)

うーん。

『現実の社会を考えても、米国などでは、中央銀行の金融政策運営によって均してみれば毎年2%程度の物価上昇が実現する、ということを前提に賃金や価格決定が行われていると考えられます。そうした国では一時的に物価が上がったり下がったりしてもいずれ2%に戻るだろうと予想されますので、中長期の予想物価上昇率はあまり動きません。一方で、日本においては、長きにわたったデフレのあと、ようやく、この春の労使間の賃金交渉で物価上昇率の高まりが意識され、多くの企業でベースアップが実施されたところです。企業の価格設定行動も変化の途上です。こうした状況を踏まえると、リスク要因としては、現在の物価下押し圧力が残存する場合に、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延する可能性も否定できません。これは「量的・質的金融緩和」の核となるメカニズムに関するリスクです。今回の緩和の拡大は、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、実施するものです。』(2014年11月)

ということで、期待形成をメインのメカニズムにしていて追加緩和をした、というのから同じ「モメンタム」でも全然違う話になっているのが分かりますな。


・・・・・・・・もうちょっと他にもネタがあるような気がしますが、時間と量の関係上本日はこんなもんで勘弁して頂きつつ、傷口に塩を塗るような畜生企画ではありますが、ちゃんとした総括をしないのでこうやって畜生企画を発生させる余地が残るということではありますな、うんうん。



2018/05/11

お題「BOEは予想通り/主な意見では文言削除の件が・・・・・・・(^^)」

おー一般紙でニュースになったか。
https://mainichi.jp/articles/20180511/k00/00m/040/052000c
弁護士 大量「懲戒請求」返り討ち 賠償請求や刑事告訴も
毎日新聞2018年5月10日 18時52分(最終更新 5月10日 21時08分)

権利の濫用には注意しましょうという所でしょうな。

#一番迷惑なのは権利を濫用する不届き者のせいで権利が制限される方向になることである


今日はBOEと主な意見ときさらぎ会(黒田総裁講演)があったのですがきさらぎ会は時間の都合でパスということで勘弁させていただきとう存じます(どうせ市場も完全スルーでしたし)。


〇BOEは寝起きで簡単に(市場予想通り据え置き)

寝起きでBOEとか言ってますが、そこまで深夜深夜している時間という訳でもないのですから寝起きというのは手抜きではないかというツッコミを受けると割とぐうの音も出ない。

https://www.bankofengland.co.uk/monetary-policy-summary-and-minutes/2018/may-2018
Current Bank Rate
0.50%
Next due: 21 June 2018

Monetary Policy Summary and minutes of the Monetary Policy Committee meeting

PDFおよび細かいミニッツはこちら
https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/monetary-policy-summary-and-minutes/2018/may-2018.pdf
Monetary Policy Summary and minutes of the Monetary Policy Committee meeting ending on 9 May 2018
Publication date: 10 May 2018

でもってミニッツの最後の方にありますが、

『Regarding Bank Rate, seven members of the Committee (the Governor, Ben Broadbent, Jon Cunliffe, Dave Ramsden, Andrew Haldane, Silvana Tenreyro and Gertjan Vlieghe) voted in favour of the proposition. Two members (Ian McCafferty and Michael Saunders) voted against the proposition, preferring to increase Bank Rate by 25 basis points.』(上記のPDF版議事要旨より』

とあって2名が利上げを提案ですが顔ぶれ含め順当なのでノーサプライズ。

一応HTML版のサマリーを見ますと、(以下は上記のHTML版の方のサマリーから引用します)

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee (MPC) sets monetary policy to meet the 2% inflation target, and in a way that helps to sustain growth and employment. At its meeting ending on 9 May 2018, the MPC voted by a majority of 7-2 to maintain Bank Rate at 0.5%. The Committee voted unanimously to maintain the stock of sterling non-financial investment-grade corporate bond purchases, financed by the issuance of central bank reserves, at £10 billion. The Committee also voted unanimously to maintain the stock of UK government bond purchases, financed by the issuance of central bank reserves, at £435 billion.』

というのが現状維持ですよという決定事項(7-2というのもこっちにありますな(汗))。

『The MPC’s updated projections for inflation and activity are set out in the May Inflation Report. The outlook and the main factors shaping it are broadly similar to those set out in the previous Report.』

インフレレポートも出まして見通しは前回2月レポートと同様。

『The preliminary estimate of GDP growth in the first quarter was 0.1%, 0.3 percentage points lower than expected in February. This is likely in part to have reflected adverse weather in late February and early March. Survey indicators suggest that growth was somewhat stronger in Q1 than implied by the preliminary estimate.』

成長率1Qの速報推計値は低下しましたが、2月末から3月の悪天候が効いているせい。

『Despite the near-term softness, the MPC’s central forecast for economic activity is little changed from that in the previous Report.』

足元経済弱めだけど成長見通しは前回レポートとほぼ同じだぞ。

『In the MPC’s central forecast, conditioned on the gently rising path of Bank Rate implied by current market yields, GDP is expected to grow by around 1-3/4% per year on average over the forecast period.』

市場の見込む政策金利パス(徐々に利上げ)を前提にしても今後概ね1.75%程度の成長を見込む。

『On the expenditure side, growth continues to rotate towards net trade and business investment and away from consumption. Although business investment is still restrained by Brexit-related uncertainties, it is being supported, like exports, by strong global demand and accommodative financial conditions. Household consumption growth remains subdued, in line with the modest growth in real income over the forecast period.』

最近の成長を引っ張っているのは支出サイドではこれまでの消費から輸出と企業の投資になっていますということだそうな。

『Wage growth and domestic cost pressures are firming gradually, broadly as expected.』

日銀が聞いたら羨ましさの余り悶絶しそうですが、あたくしも懐を見ながら悶絶しておりますこの解説。(まあその分物価がホイホイ上がっているんですけど英国の場合は)

『The MPC continues to judge that the UK economy has a very limited degree of slack. Hiring intentions have remained strong and, over the past three months, the unemployment rate has fallen slightly further.』

何て威勢がいいのよ。

『While modest by historical standards, the projected pace of GDP growth over the forecast is nonetheless slightly faster than the diminished rate of supply growth, which averages around 1-1/2% per year. In the MPC’s central projection, therefore, a small margin of excess demand still emerges by early 2020, feeding through into higher rates of pay growth and domestic cost pressures.』

まあ昔はずーっとこの国は「margin of spare capacity」があるので経済がアガランチ会長と言ってインフレが上振れても知らんぷりして緩和をしていたのですが、今や「margin of excess demand」かよということで、他の主要国とやはり一味違うのがジョンブルクオリティ。

『CPI inflation fell to 2.5% in March, lower than expected at the time of the February Report. The inflation rates of the most import-intensive components of the CPI appear to have peaked. The MPC judges that the impact of the past depreciation of sterling on CPI inflation, while remaining significant, is likely to fade a little faster than previously thought. Taking external and domestic influences together, CPI inflation is projected to fall back slightly more quickly than in February, reaching the target in two years. These projections are conditioned on a gently rising path for Bank Rate over the next three years.』

ここのところインフレを高める要因だったコンポーネントに関してはピークアウトしたんちゃいますかという説明になっておりますが、まあすぐに2%に下がる感じでもない見通し。

『In the exceptional circumstances presented by Brexit, as specified in its remit, the MPC has been balancing any significant trade-off between the speed at which it intends to return inflation sustainably to the target and the support that monetary policy provides to jobs and activity.』

ブリクジットの影響が読み切れないのでボンボン正常化図る訳にもいかないのだが物価は上にブレっぱなしなので中々バランスはとりにくいのはまあわかる。

『The prospect of excess demand over the forecast period has reduced the degree to which it is appropriate for the MPC to accommodate an extended period of inflation above the target. The Committee’s best collective judgement therefore remains that, were the economy to develop broadly in line with the May Inflation Report projections, an ongoing tightening of monetary policy over the forecast period would be appropriate to return inflation sustainably to its target at a conventional horizon.』

一応先行きに関しては需要がやや減速するとみるのでそこまで慌てて利上げせんでも良いじゃろというのが理屈になっているのかね。

『As previously, however, that judgement relies on the economic data evolving broadly in line with the Committee’s projections.』

データ次第ですよというのは決まり文句。

『For the majority of members, an increase in Bank Rate was not required at this meeting. All members agree that any future increases in Bank Rate are likely to be at a gradual pace and to a limited extent.』

ということで多くのメンバーは現状維持が適切としました、というのがこれがサマリーで、詳しいのはミニッツにあるのですがそっちはさすがにパスということで。やはりBOEオモロイからちゃんと過去のも読み直して研究します(ただし期限はどこぞの中央銀行と同じく設定されていません!)。


〇これだけ意見が出ながら反対が1名とは意味がさっぱり分からん4月会合主な意見

小見出しが長すぎますかそうですか。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2018/opi180427.pdf

・何を今更なのだがこれは若田部さんの意見でしょうかねえ

『T.金融経済情勢に関する意見 』についてはそもそも今回展望レポート出ているのであまり見るものもないのですが、物価の所で1つこんなのが。

『「物価安定の目標」の実現には、需給ギャップの改善による物 価上昇だけでなく、中長期の予想物価上昇率が他の先進国並に 上昇することが必要である。』

いや勿論その通りなのですが今更それを指摘するかね、と思った訳ですけど何か後の方の意見にも期待の話があって、そっちが消去法で考えると若田部さんじゃないのという感じなのでこれは若田部さんですかねえ、とは思いましたが違ったらゴメンナサイ。

その物価に関するところでは、

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2%に向けて緩やか に上昇していくとみられる。しかし、予想物価上昇率の形成が 適合的であるため、2%に達するには暫く時間がかかると見込まれる。』

『資本・労働市場の需給逼迫が企業の前向きな動きにつながっている面があるものの、価格設定行動の前傾化を通じて物価上昇率を2%に押し上げるほど力強いとはいえない。』

というのがあって、なんとなく後者が片岡さんの気がするのですが、前者は誰なのかなという感じではございます。まあ今回からは例の2%到達見込み時期文言が削除されましたので、「時間が掛かりますね〜」で話を終わらせても別に問題がないっちゃあ問題がないという建付けになってしまいましたし、これをリフレ派の人たちが言ってたら「いやお前そんなのんびりしてないで追加緩和提案しろよ」と言いたくなりますけれども。


・何か微妙な意見が続く『U.金融政策運営に関する意見』

でもって次の『U.金融政策運営に関する意見』ですけれども、なんか今回は随分と読んでいて違和感ちゅうかもやっとするものを感じる次第でございまして、そういう意味からは味わいが中々深い。ということでこちらのパートは最初から鑑賞。

『2%の「物価安定の目標」の実現までにはなお距離があること を踏まえると、「物価安定の目標」に向けたモメンタムをしっか りと維持するために、現在の金融市場調節方針のもとで、強力 な金融緩和を粘り強く進めていくことが適当である。』

まあこれは総裁か雨宮さんが言いそうなことで毎度の話ですから良いのですがこの次から色々と味わいのあるものが出てくる。

『息長く経済の好循環を支えて「物価安定の目標」の実現に資するべく、現在の金融政策を継続するべきである。この際、「物価安定の目標」の趣旨について広く社会との共有を進めるべきで ある。 』

「「物価安定の目標」の趣旨について広く社会との共有を進めるべき」って5年たって今更何を言ってるんだろうというのがあるのがいきなり登場しておりまして、まあ確かにちょっと物価上がるとすかさずその財の消費が落ちてみたり、代替材の消費が落ちてみる(直近の消費活動指数http://www.boj.or.jp/research/research_data/cai/index.htmが割とお洒落な結果だったり)とかで、物価が下がるのが別にいい話ではないというのは認識されても、じゃあ物価が上がると幸せなのかというと消費者全然そんな感じじゃねえじゃろ、という文脈からこういう指摘をするのはまあ仰せの通りではあるんだが、何を今更感があるので、新入り若田部先生のコメント何だろうなあとは思った。

『強力な金融緩和を継続していくため、「物価安定の目標」の必要性について人々のコンセンサスを得ていく努力を続けつつ、金融緩和の持続性を高めることを不断に検討する必要がある。 』

この「「物価安定の目標」の必要性について人々のコンセンサスを得ていく努力を続けつつ」ってのも何で今更そういう話になるのか意味わかんね的なのはあるんですけれども、これって例の文言削除に絡んで、ここの文言を削除すると物価安定目標への必要性が弱まったように世間に思われると困る、ということを言いたかったのかなあとか頑張って解釈してみるとまあ味わいがある(がそう解釈しないと唐突感がある)。

『今後、物価が上昇し経済の成長力が高まるもとでは、金融緩和 政策の効果は強まることになる。需給のバランスや金融システ ム面への影響にも配意しながら、適切な政策運営について予断なく検討していくことが必要である。 』

政策微調整論でだんだん目立ってくるようになってきましたが、趣旨は分かる。

『足もとの社債、銀行貸出の動向をみると、長期実質金利の低下に伴う経済・物価への緩和効果は小さくなっている可能性がある。金融機関の経営体力への累積的影響が厳しさを増す中、望ましいイールドカーブの形状についてさらに検証を進めることが重要である。』

そこまでネタになっていなかった(まあ梃子でも動かんという意思表示を会見でしちゃった後だから、というのがあるけど)ですけれども、これは割と真っ向勝負で「政策効果の逓減」と「副作用の拡大」を出してきたという感じで、ソフトな木内さん的なサムシングがありまして木内さんの生き霊キタコレとかいうと怒られますかそうですか(^^)。でも思いっきり同意で首がもげるほどうなずいてしまう。


・ここまで味わいが深かったのに急に馬鹿現る

その次がまた藁人形論法おじさん登場。

『市場は金利の早期引き上げを求めていると言われることがある が、実際に金利を引き上げれば、債券価格と株価が下落し、円高で企業の経営が悪化し、信用コストが増大し、金融機関は大きな打撃を受けるだろう。また、短期金利を上げても長期金利が上がるとは限らず、長短スプレッドはむしろ縮小してしまう可能性もある。これは 2006 年以降の日本で起きたことである。』

色々と頭の悪い発言なのだが、金利を上げるったってどういう背景の時なのかにもよるし(一般的にそうなのだったらそもそも政策の出口がないんだが)、こんなまあ簡単な話になるかよと思うし、長短スプレッドとかお前ら今長期金利のコントロールしてるだろと思いますし、2006年とか言ってドヤっているけど2006年の先にはサブプライム問題からのリーマンショックがあったんじゃヴォケとしか言いようがないので、3年くらい肥溜めの中で修行してから出直していただきたい。


・気を取り直して続きを鑑賞

『ETFなどリスク性資産の買入れは、「物価安定の目標」を実現 するための政策パッケージの一要素として行っているが、政策 効果と考え得る副作用についてあらゆる角度から検討を続ける べきである。』

ETFの指摘も必ずでますな。しかしこれ何でパッケージなのかさっぱり分からん(パッケージとしておかないと「こんなに株価が上がっているのに何で継続するの」という時の言い訳がない、というのが事実なんでしょうけれども)。


『現状の金融緩和を息長く続けていくもとで、金融政策をより効 果的なものとする観点から、「出口」や「正常化」の意味につい て明確な説明に努め、経済・物価・金融情勢に応じて柔軟な対応を取り得ることについて、国民の理解を得ていくことが必要である。 』

おーこちらも政策調整論ですよということで割とそういう向きが目立ってきましたな。


・文言削除問題について

その次から文言削除問題。

『展望レポートにおける2%程度に達する時期は、あくまで見通しであって、その変化と政策変更を機械的に結び付けているわ けではない。市場とのコミュニケーションの面からも、この点 を明確にすることが適当である。 』

これは大本営。

『2%程度に達する時期の見通しに関する記述を修正したとして も、2%の「物価安定の目標」を「できるだけ早期に実現する」 というコミットメントは、全く変わらないことをしっかり示す必要がある。 』

大本営じゃないかもしれないですな、しかしこの理屈には無理がある。

『2%程度に達する時期に関する記述を見直すことは、「物価安定 の目標」達成に向けたコミットメントを弱めてしまうことにな りかねないと懸念される。達成時期を明記するとともに、追加 緩和とコミットメント強化によって、需給ギャップの拡大と予 想インフレ率の上昇を促すことが必要である。』

これは片岡さん、追加緩和の手段がない上にそもそも緩和拡大したから物価2%に達する時期が早まる、という明確なパスを示せないという時点で空論ではあっても、今までの政策の理屈すなわち置物リフレ理論に則ればこちらの方が空論でも正論となる訳で、ジンバブエとか置物2世とかは何をやっているんだと小一時間問い詰めたい。

『新体制発足にあたり、改めて「共同声明」の意義を確認してお きたい。対外的にも、2%の「物価安定の目標」に対する理解 を浸透させるべく、コミュニケーションを今後も強化していく ことが必要である。また、現在の政策の要はコミットメントに ある。これを強化する手段がないか、更なる研究と議論が望ま しい。』

って置物2世の見解と思われる(ので前の方にある関連するものも置物2世のものだと思うけど)のですが、「現在の政策の要はコミットメントにある」って言ってるのにどこからどう見たってコミットメントを弱めることにつながる文言削除に賛成して、賛成しながら「これ(コミットメント)を強化する手段がないか、更なる研究と議論が望ましい」とかお前は何を言ってるんだと思うし、大体からして置物リフレ理論って期待に直接働きかけてインフレ期待を引き上げるのがキモなんだから、更なる研究と議論が望ましい、とか他人事のように言ってる場合じゃなくて、いまこそお前らの研究と議論(どっかでやってるんでしょ??)の成果を今出せやおいこら早くしろという所なんですが何ですかこの人は。


あと文言と関係ないですが最後はこれ。

『「物価安定の目標」の達成に向けたリスク要因が顕在化し得る 場合、 「共同声明」の理念に則って政府と日本銀行が連携し、具体的な行動を起こすことを検討してもよいのではないか。 』

財政を出せと言いたいのでしょうか。でも共同声明では「持続可能な財政運営」ってのがあるんですけど・・・・・・・・


ということで、こんな意見が出るんだったら文言削除に片岡さんしか反省しないというのは意味わからんという主な意見でございました。




2018/05/10

お題「米国3%で入札とかボスティック講演メモとか/展望レポート基本的緩解鑑賞会(その2)」

ここで出てきた文書がこの前財務省が「改竄前文書」として出したものと違ってたりするとザッツエンターテイメントになるので間違ってもそのような事が無いように願いたいものですが、なにせ最高責任者のおじいちゃんが改竄はどこにでもあるとか言い出すだけに予断は許しませんな。

http://www.news24.jp/articles/2018/05/09/06392589.html
財務省と森友 500ページ以上の交渉記録
2018年5月9日 12:07

『森友学園への国有地売却問題で財務省側が学園側などと面会や交渉をした500ページ以上の記録が残っていたことがNNNの取材でわかった。去年国会で当時の佐川理財局長が「ない」と答弁していたもの。』(上記URL先より)

「当時の佐川理財局長が「ない」と答弁していたもの」とかいうのに驚かなくなっている程度にこっちも感覚が麻痺してきていてオソロシスとしか。


〇市場雑談メモ

・3%の新発入札は普通の結果なんですかね

https://jp.reuters.com/article/-idJPZXN0DAM0J
2018年5月10日 / 02:05 /
BRIEF-米10年債入札、最高落札利回り2.995%・最高利回り落札比率50.13%

『[9日 ロイター] -

米10年債入札、最高落札利回り2.995%・最高利回り落札比率50.13%
米10年債入札、応札倍率2.56倍
米10年債入札、最高落札利回りは午後1時時点のWI取引を1BP近く下回る=ロイターデータ
米10年債入札、落札比率はプライマリーディーラー28.66%・直接入札者8.32%・間接入札者 63.02%
米10年債入札、落札/応札比率はプライマリーディーラー17.94%・直接入札者52.22%・間接入札者77.96%』(上記URL先より)

トレジャリーの入札を毎回細かくチェックしている訳でもない(すいません)のでよー知らんのですけれども、前後の反応からすると入札自体は普通に通過したようですが、ここにきて原油がどうのこうのだのというので売りネタに使ったりとかまあご苦労なこってという感じではありまする。


・アトランタ連銀ボスティック総裁講演だがヘッドラインバイアスが掛かっている可能性があると思う

そんな中でこんなのもありまして、
https://jp.reuters.com/article/us-fed-bostic-idJPKBN1IA33R
2018年5月10日 / 04:15 /
米通商政策巡る不透明性で投資抑制、「明白な」経済リスク=アトランタ連銀総裁

『[サバンナ(米ジョージア州) 9日 ロイター] - 米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は9日、トランプ政権の通商政策を巡る先行き不透明性が米経済にとり「最も明白なリスク」となっており、これにより企業投資が抑制されている可能性があるとの見方を示した。 』(上記URL先より)

『ただ、今のところは米経済は潜在力を超えて成長しているようにみえると指摘。インフレ率は連邦準備理事会(FRB)が目標とする2%を大きく上回り、「しばらく」その水準にとどまる可能性があるとし、インフレ率が目標を下回る時期が長期化しているため、目標を上回ったとしても喫急の問題とはならないとの立場を示した。 』(上記URL先より)

まあ大体順当な話っぽいですが、物価が上がる分には全然平気で、変に加速しないことだけは懸念するんでしょうが、そうじゃなければ「内外共に不透明」ということでしらっとしたままなんでしょう。

講演の本チャンはこちらでして、
https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2018/05/09-bostic-economic-conditions-and-the-role-of-trade
Economic Conditions and the Role of Trade

Raphael Bostic
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta

World Affairs Council Global Business Luncheon
The River Club
Jacksonville, Florida
May 9, 2018

アトランタ連銀に関しては総裁の講演があった時に本文の前に箇条書きサマリーをのっけてくれるので、超越手抜きでそっちのサマリーを拝読。

『・Atlanta Fed president and CEO Raphael Bostic speaks at the World Affairs Council Global Business Luncheon in Jacksonville, Florida, about his economic outlook and the influence of trade policy and uncertainty on that outlook.』

題名にもある通りで貿易戦争に懸念を示すの巻、というのが今回のお題。

『・Bostic: The economy is arguably as close to the Fed's employment and inflation goals as it's been over this expansion.』

ニュースヘッドラインおよび記事の方ではハト派っぽい部分が強調されていますが、しらっと「経済はFEDのマンデート水準に間違いなく近くなっている」ってマンデート達成ですがなという話はしている点には注意した方が良いと思う。

『・Bostic says feedback from business contacts indicates that labor market conditions have tightened, but he wouldn't characterize the situation as overheated.』

とは言え過熱しているという認識は示しておらず、

『・Recent reports suggest inflation is close to the FOMC's target rate of 2 percent. Bostic says inflation is likely to run a bit above target for a while but would not necessitate a more aggressive policy response.』

記事にもありましたが、物価は2%のターゲットに近い状態と最近のデータは示しておりって言ってますから、別に緩和をしろという話をしている訳ではないですぞな。でもって物価が当面2%から上振れるけどそこで正常化を加速する必要はない、という話はしています。

『・Bostic continues to see the economy growing above potential this year, around 2 1/2 percent, and slowing to its longer-run growth rate of around 1 3/4 percent over the medium term.』

経済見通しも別に弱くはない。

『・Bostic notes that businesses' optimism over tax policy early in the year has been replaced by uncertainty regarding proposed tariffs and the possibility of a trade war.』

(引用していないけど)これ日本語の翻訳のせいなのか記事原文のせいなのかわかりませんが、記事を見るとこの「トランプ税制ヒャッハーによるbusinesses' optimismがtariffs and the possibility of a trade warの不確実性に置き換わった」となっている部分を記事にした部分が、記事だと主語が「企業の皆さん」なのか「ボスティック総裁」なのか分かりにくい書き方をしているので要注意。

『・Citing the challenges of economic change for some workers and communities, Bostic touts the benefits of aligning worker-focused workforce development and business-focused economic development.』

って部分は、講演本文の最後の方に、

『I believe that communities that can align worker-focused workforce development and business-focused economic development will be much more resilient to economic shocks and better able to capitalize on opportunities for growth. This approach can ultimately benefit the overall economy, but there is more to do to achieve full and effective collaboration between workforce development and job creation efforts.』

ってのがあって、どうも労働者とビジネス側のスキルアンマッチを解消するために双方が協力して労働者の技能向上をしていくような仕組みがあると良いですね的な話をしているようですな。


ということで超手抜き読みだが、確かに貿易戦争ネタは先行きの不透明要因で、企業心理に悪影響という認識は示しているが、それは一段の正常化加速は行わない、という話になっても、別に緩和的環境を長期化した方が良いという話にはなっていないように見える(特に金融政策に関して小見出しつけて細かく話をしている訳ではない)ところです。まああんまり市場がこれで反応したという話でもなさそうだが。


・円債ェ・・・・・・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1SG2OH
2018年5月9日 / 15:15 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小幅続落、長期金利変わらず0.045%

『<15:12> 国債先物は小幅続落、長期金利変わらず0.045%

長期国債先物は小幅続落で引けた。米国のイラン核合意離脱を受けた中東情勢への懸念に加えて、日銀の国債買い入れへの期待から買いが先行した。ただ、アジア時間で米10年債利回りが再び3%に迫り、為替市場では円安に振れたことから短期筋の調整売りが上値を抑えた。現物債は横ばい圏で推移した。無難な範囲に収まった日銀オペ結果に反応薄。日中韓首脳会談も材料視されなかった。

長期国債先物中心限月6月限の大引けは、前営業日比3銭安の150円81銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比横ばいの0.045%。』(上記URL先より)

ロイターさんも書きように困って超あっさり味になるというこの円債市場ェ・・・・・・という風情ではございますが、政策はしばらく梃子でも動かんというのを2%達成見通し時期文言削除と「あれは見通しで実際にそこで達成するコミットメントではない」によって示したし、輪番は動かん(10年がこの位置にいると中短期や超長期にしてもよほど突拍子もなく動かない限りいじりようがない)という事になりますとまあこうなるわという事で昨日の先物出来高も週初でもないのに2万枚届かずとかもうねという事で。



〇ということでウゴカンチということで展望レポート鑑賞虫干しネタで勘弁

昨日の続きです。

4月展望レポート(基本的見解)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1804a.pdf
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1804a.htm/

1月展望レポート(基本的見解)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1801a.pdf
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1801a.htm/

・物価の部分はご案内の文言削除が一番目立ちますな

『消費者物価の前年比は徐々にプラス幅を拡大しているが、エネルギー価格の影響を除くと0%台半ばにとどまっており、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、なお弱めの動きが続いている。』(今回)
『前回展望レポート以降、消費者物価の前年比はプラス幅を拡大しているが、エネルギー価格の影響を除くと小幅のプラスにとどまっており、なお弱めの動きが続いている。』(前回)

鏡の所でもありましたが、今回はこの「景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると」というのがもの悲しさというのを醸し出していまして、日銀としては需給ギャップの引き締まりによって物価が上がってそれが適合的期待形成に繋がってインフレ期待が上がる、という話に切り替えた(その前は強力なコミットメントとそれを裏付けする大胆な金融緩和政策によってインフレ期待が上がる、という話だったことは言うまでもありません)のに、需給ギャップは引き締まってきているのに物価がアガランチ会長ではそもそもメカニズムがマワランチ会長な訳でして友蔵心の一句という感じになっておりますな。

『この背景としては、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に根強く残っていることが影響している。』(今回)
『この背景としては、携帯電話通信料の値下げといった一時的要因もあるが、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に根強く残っていることが影響している。』(前回)

もはや特殊要因が攻撃も効かないので堂々と正面切って言うしかない。

『企業は、人手不足に見合った賃金上昇をパート等にとどめる一方で、省力化投資の拡大やビジネス・プロセスの見直しにより、賃金コストの上昇を吸収しようとしている。このように、労働需給の着実な引き締まりや高水準の企業収益に比べ、企業の賃金・価格設定スタンスはなお慎重なものにとどまっている。』(今回)

『企業は、人手不足に見合った賃金上昇をパート等にとどめる一方で、省力化投資の拡大やビジネス・プロセスの見直しにより、賃金コストの上昇を吸収しようとしている。このように、労働需給の着実な引き締まりや高水準の企業収益に比べ、企業の賃金・価格設定スタンスはなお慎重なものにとどまっている。』(前回)

南無南無。

『もっとも、パート時給がはっきりとした上昇基調を続けているほか、仕入価格の上昇などもあって、企業のコスト面からみた価格上昇圧力は高まっている。』(今回)
『もっとも、パート時給がはっきりとした上昇基調を続けているほか、既往の為替円安による仕入価格の上昇などもあって、企業のコスト面からみた価格上昇圧力は着実に高まっている。』(前回)

問題はコストプッシュで上がっても2014年以降に示されたように持続性がないことなんですが。

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)
『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)

はいはい大本営大本営。

『2019年度までの物価見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である6。』(今回)
『今回の物価の見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。2%程度に達する時期は、2019年度頃になる可能性が高い6。』(前回)

概ね不変ですが見通し文言は削除と。

『消費者物価の前年比が2%に向けて上昇率を高めていくメカニズムについて、物価上昇率を規定する主たる要因に基づいて整理すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、労働需給の着実な引き締まりや資本稼働率の上昇を背景に、着実にプラス幅を拡大している。先行きについても、わが国経済が緩やかな拡大を続けるもとで、マクロ的な需給ギャップは2018年度にプラス幅をさらに拡大し、2019年度から2020年度についても比較的大幅なプラスで推移するとみられる。』(今回)

『消費者物価の前年比が2%に向けて上昇率を高めていくメカニズムについて、物価上昇率を規定する主たる要因に基づいて整理すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、労働需給の着実な引き締まりや資本稼働率の上昇を背景に、着実にプラス幅を拡大している。先行きについても、わが国経済が緩やかな拡大を続けるもとで、マクロ的な需給ギャップは2018年度にかけてプラス幅をさらに拡大し、2019年度も比較的大幅なプラスで推移するとみられる。』(前回)

ということで同じ見通しのままですが、一方で総裁会見では世界的にフィリップスカーブがフラットしていますとか言い訳の中に入れ込んでしまっていて、いやあのそれじゃあ物価が上がるメカニズムが回らないんですけれども本当は上がると思ってないでしょとツッコみたくなるわけよ。


『第2に、中長期的な予想物価上昇率は、2015年夏以降、弱含みの局面が続いていたが、最近は横ばい圏内で推移している。先行きについては、上昇傾向をたどり、2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。この理由としては、(1)「適合的な期待形成」7の面では、マクロ的な需給ギャップが改善していくなかで、企業の賃金・価格設定スタンスも次第に積極化し、現実の物価上昇率も着実に伸びを高めると考えられること、(2)「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことが挙げられる。』(今回)

『第2に、中長期的な予想物価上昇率は、2015年夏以降、弱含みの局面が続いていたが、最近は横ばい圏内で推移している。先行きについては、上昇傾向をたどり、2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。この理由としては、(1)「適合的な期待形成」7の面では、マクロ的な需給ギャップが改善していくなかで、企業の賃金・価格設定スタンスも次第に積極化し、現実の物価上昇率も着実に伸びを高めると考えられること、(2)「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことが挙げられる。』(前回)

脚注の番号まで全文一致ですが、まあそうは言っても予想物価上昇率って上がってましたっけと思いますし、問題はこの短期的な予想物価上昇率が上がると消費者の行動がインフレ期待で先に金を使わねば、というようなことにならない事なんですけどね。

『この間、輸入物価についてみると、既往の原油価格の持ち直しは、消費者物価のエネルギー価格の押し上げ要因として作用してきたが、その影響は緩やかに減衰すると予想される。』(今回)

『第3に、輸入物価についてみると、2016年春以降の原油価格の持ち直しは、消費者物価のエネルギー価格の押し上げ要因として作用してきたが、その影響は緩やかに減衰すると予想される。一方、為替相場が輸入物価を通じて消費者物価にもたらす影響については、2016年秋以降の為替相場の円安方向への動きが、当面は、価格上昇圧力を高める方向に作用すると考えられる。』(前回)

さすがに為替が戻ってしまったので為替効果の部分を削除しましたが、まあ原油の方は盛大に上がっているので日銀大チャンスという感じではありますな。


でもって以下リスク認識の所になりますがまたそれは後日。

#FSRネタももう少しやると面白かったりするのですがそちらも追々




2018/05/09

お題「10年入札があっても動意がイマイチさんなので虫干しネタが続く(汗)」

・・・・・と文書改ざんをした組織のトップが発言するとは呆れる。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180508/k10011430471000.html
文書改ざん「どの組織でもありうる 個人の問題」麻生氏
5月8日 13時26分

『森友学園をめぐる財務省の決裁文書の改ざんについて、麻生副総理兼財務大臣は「どの組織でも改ざんはありうる。組織全体としてではなく、個人の資質が大きかったのではないか」と述べ、改ざんは個人の資質によるところが大きかったという認識を示しました。』(上記URL先より)

「どの組織でも改ざんはありうる」とか言って平然としているようですが、そういうのを抑止する組織的な牽制機能もなければ意識づけをする組織内教育がなくて単なる無法地帯になっているのを良しとするということでしょうかねえもうおじいちゃん引退した方が良いと思いますよ。麒麟も老いては駑馬になる(もともとが麒麟というのはほめ過ぎの感はあるが)という奴ですな、寂しいもんで。

連休開けて通常モードに戻ったらまた色々とトサカに来る話が増えてきたことよ(他にもあるのだが明日に回す所存)。

しかしまあこういう発言が平気で出るというのはモラルとか世の中のタガというのが盛大に外れている音がするという状態な訳で、この調子では日本ドンドンダメな国になり下がっていきそうですな、ただただ悲しい。まあ「MB増やして2年で2%、出来なかったら辞任」とか言っていたクソジジイが今でも偉そうにしているというのもモラル崩壊って奴ですけどね!!!!!!!!!!


・・・・・という話はともかく、10年国債入札があったというのに別に大した動意も起きないということで、この前27銭先物動いたのが蝋燭の消える前の最後の輝きみたいな感が漂っておりますので、仕方がないから虫干しネタ。

〇展望レポート基本的見解の逐語確認をスルーしていたのでここぞとばかりに虫干しネタ(たぶんその1)

ええ連休中にやるとか言ってたんですが連休中浮かれて連休モードだったもんで手が回らずこんな思いっきり出遅れ感の強いところで投下の巻になりましたすいません。

4月展望レポート(基本的見解)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1804a.pdf
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1804a.htm/

1月展望レポート(基本的見解)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1801a.pdf
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1801a.htm/

ということでいつの間にか4月の方もHTML版が出ていてこれは便利(アタクシのようなウホウホコピペおじさんにとって、なのですがHTMLにもニーズあると思いますです)なので、HTML版からペタペタ貼り付けますけど。

・でまあ先に総じて言えばの話なんですが

今回の展望レポートはご案内の通りで「2%到達見込み(安定目標達成ではない)時期に関する文言が削除されました」というのが話題で、まあ日銀が何をどう説明しようとも、片岡さんの反対意見に典型的に示されておりますように、「早期達成に向けた取り組み意欲の低下」と解釈されるのは致し方ないですなというのがあります。

それはそれとして今回の展望レポート基本的見解が物凄い勢いで不思議ちゃんなのは、見通しに関して鏡(最初のページにある「概要」)のところでは成長率の見通しを上げています、という話になっているのですが、本文を読んでいると下方へのヘッジクローズが増えているという内容になっていまして、本文まで読むとこれ上方修正というよりむしろ下方修正なんじゃないかという書きっぷりになっていて、大本営発表なのか何だか知らんのですが実に難解ホークスになっておりますです、はい。

まーここの書きっぷりとリスクバランスチャートを見れば、次回7月展望レポートでは、特に物価見通しの下方修正待ったなしという話ですな、と思いますし、大体からしてしばらく前から何回か成長見通しの方は上方修正しているのに、物価の方は実質下方修正(上昇見通し時期の先送り)となっているっつー時点で「需給ギャップのプラスの影響が実際の物価に反映して適合的期待形成に資する」というのに無理があるのが分かりますし、成長率が上がっているのに物価が上がらんということはインフレ期待への働き掛けも現に進んでいないという事にもなる、という意味では悲しいレポートではあるのですけどね!!!!!


・まずは鏡

『日本経済の先行きを展望すると、2018年度は海外経済が着実な成長を続けるもとで、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。2019年度から2020年度にかけては、設備投資の循環的な減速や消費税率引き上げの影響を背景に、成長ペースは鈍化するものの、外需に支えられて、景気の拡大基調が続くと見込まれる2。』(今回)

『わが国経済は、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、きわめて緩和的な金融環境と政府の既往の経済対策による下支えなどを背景に、景気の拡大が続き、2018年度までの期間を中心に、潜在成長率を上回る成長を維持するとみられる。2019年度は、設備投資の循環的な減速に加え、消費税率引き上げの影響もあって、成長ペースは鈍化するものの、景気拡大が続くと見込まれる2。』(前回)

海外経済の成長に関する文言が上方修正されています。全般的な話は同じです。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっていることなどを背景に、エネルギー価格の影響を除いてみると、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて、弱めの動きが続いている。もっとも、マクロ的な需給ギャップが改善を続けるもとで、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、中長期的な予想物価上昇率も高まるとみられる。この結果、消費者物価の前年比は、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)は、企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっていることなどを背景に、エネルギー価格上昇の影響を除くと弱めの動きが続いている。もっとも、マクロ的な需給ギャップが改善を続けるもとで、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、中長期的な予想物価上昇率も上昇するとみられる。この結果、消費者物価の前年比は、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)

今回は物価の現状に関して「弱めの動きが続いている」という現状判断と先行きの見通しは同じなのですが、現状判断の中に「景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて」というのがあって、「本当は上がるはずなんですが」という思いをさらに強く入れているのですが、昨日ネタにしました総裁会見での発言を見ますと、「世界的にフィリップスカーブがフラット化している傾向がありますが日本もそうですので、物価が見通し通り上がらんのは別にうちだけの話じゃありませんよウヘヘヘヘ」とエクスキューズする文言にも読めてしまいますな。

『2019年度までの見通しを従来の見通しと比べると、成長率については、幾分上振れている。物価については、概ね不変である。』(今回)
『従来の見通しと比べると、成長率、物価ともに、概ね不変である。』(前回)

ということで成長率見通し上がっているんですけどね。

『リスクバランスをみると、経済については、2018年度はリスクは概ね上下にバランスしているが、2019年度以降は下振れリスクの方が大きい。物価については、下振れリスクの方が大きい。物価面では、マクロ的な需給ギャップが改善を続け、中長期的な予想物価上昇率も次第に高まるとみられるもとで、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要がある。』(今回)

『リスクバランスをみると、経済については概ね上下にバランスしているが、物価については下振れリスクの方が大きい。物価面では、マクロ的な需給ギャップが改善を続け、中長期的な予想物価上昇率も次第に上昇するとみられるもとで、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要がある。』(前回)

ということで、見通しは上がっているけどリスクバランスは下方リスクが大きいってしているという中々不思議な改定になっているのが今回。

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(今回)

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(前回)

ここはいつも通り。


・現状認識部分は上げもあるけど下げもあり

でもって最初の『1.わが国の経済・物価の現状』である。

『わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。』(今回)
『わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。』(前回)

という総括判断は同じ。

『海外経済は、総じてみれば着実な成長が続いている。そうしたもとで、輸出は増加基調にある。』(今回)
『海外経済は、総じてみれば緩やかな成長が続いている。そうしたもとで、輸出は増加基調にある。』(前回)

さっきありましたように海外の判断が上方修正。

『国内需要の面では、設備投資は、企業収益や業況感が改善基調を維持するなかで、増加傾向を続けている。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。住宅投資は弱含んで推移している。この間、公共投資は高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けている。』(今回)

『国内需要の面では、設備投資は、企業収益や業況感が改善するなかで、増加傾向を続けている。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。住宅投資は横ばい圏内の動きとなっている。この間、公共投資は高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けている。』(前回)

企業収益や業況感に関して「改善する」が「改善基調を維持する」とモメンタムが弱まっているような書き方になっています。まあ既往最高水準にあるからですよ、と言われてしまえばはあそうですかという話になるのはなるのですけど。でもって住宅投資は下げ。

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、1%程度となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(今回)
『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、1%程度となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(前回)

ここは同じ。


・先行き見通しは別に上がっている訳ではない

次が『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し』でしてまずは『(1)経済の中心的な見通し』である。

『先行きのわが国経済は、緩やかな拡大を続けるとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな拡大を続けるとみられる。』(前回)

というのは同じ。

『2018年度についてみると、国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(今回)
『2018年度までの期間を展望すると、国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府の既往の経済対策による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(前回)

政府支出部分の表現が変わっていますが言っている中身は同じ。

『すなわち、設備投資は、緩和的な金融環境のもとで、景気拡大に沿った能力増強投資、オリンピック関連投資、人手不足に対応した省力化投資を中心に、増加を続けると予想される。個人消費も、雇用・所得環境の改善が続くもとで、緩やかな増加傾向をたどるとみられる。公共投資は、既往の経済対策による押し上げ効果が緩やかに減衰するものの、2017年度補正予算やオリンピック関連需要もあって高めの水準を維持すると予想している。』(今回)

『すなわち、設備投資は、緩和的な金融環境や成長期待の高まり、オリンピック関連投資の本格化、人手不足に対応した省力化投資の増加などから、増加を続けると予想される。個人消費も、雇用・所得環境の改善が続くもとで、緩やかな増加傾向をたどるとみられる。公共投資は、既往の経済対策による押し上げ効果が緩やかに減衰するものの、オリンピック関連需要などもあって高めの水準を維持すると考えられる。』(前回)

設備投資の所に前回あった「成長期待の高まり」というのがしらっと外れているとは何ですねんと思う一方で、今回は「景気拡大に沿った能力増強投資」というのがあるので、まあそこでチャラという事にしているのでしょうが、この能力増強投資ってただのペントアップ以上の、という意味で書いていると思うのですがホンマカイナ感はせんでもないけどまあいっか。

『輸出についても、海外経済の着実な成長を背景に、基調として緩やかな増加を続けるとみられる。』(今回)

『この間、海外経済は、先進国の着実な成長に加え、その好影響の波及や各国の政策効果によって、新興国経済の回復もしっかりとしたものになっていくとみられることから、緩やかな成長を続けると予想している。こうした海外経済の成長を背景として、輸出も、基調として緩やかな増加を続けるとみられる。』(前回)

海外の所景気の話は強くしているんですが、輸出については相変わらず「基調として」が抜けないですな。

『こうしたもとで、2018年度は、潜在成長率3を上回る成長を続けると見込まれる。』(今回)

これは構成上前回はこの先に出ているのですが、ここの見通しは同じになっています。


『2019年度と2020年度については、内需の減速を背景に成長ペースは鈍化するものの、外需に支えられて、景気の拡大基調が続くと見込まれる。』(今回)
『2019年度については、内需の減速から成長ペースは鈍化するものの、外需に支えられて、景気拡大が続くと予想される。』(前回)

今回「拡大」→「拡大基調」とヘッジクローズ入りになっています。ただまあ今回2020年度が入っているので、2020年度に関しては消費増税の影響があるからそれを加味して「基調」にしたんですよ2019年度は変更ありませんよ、ということで説明するんでしょうかね。でも何か弱まった印象を与える(個人の感想です)。

それから、相変わらず毎度のごとく「外需に支えられて」という見通しになっておりまして、昨日ネタにした3月会合議事要旨なんかでは「今回の回復は外需だけではなくてバランスの良い回復です(キリッ)」とかいう認識が示されたりしているのですが、展望レポート見ると結局成長のドライバーって海外じゃん、というような説明を毎度続けているのがチャーミングですし、大体からして海外の成長って雨公が目先変な吹かし方するから上がるかもしれんが、財政出した後にはその反動、というのはこの前の消費増税の時に日本でもやらかした次第でして、


『すなわち、個人消費は、2019年10月に予定されている消費税率の引き上げの影響4から一時的に減少に転じるなど、2019年度、2020年度ともに緩やかな増加ペースにとどまると予想される。もっとも、海外経済の着実な成長を背景に、輸出は増加基調を維持すると見込まれる。この間、設備投資は、景気拡大局面の長期化による資本ストックの積み上がりやオリンピック関連需要の一巡などから、2020年度にかけて増勢が徐々に鈍化していくとみられるが、輸出の増加を起点とした投資需要の高まりもあって、増勢鈍化のペースは緩やかなものになると予想される。』(今回)

『すなわち、景気拡大局面の長期化による資本ストックの積み上がりやオリンピック関連需要の一巡などから、設備投資が減速すると見込まれる。また、家計支出も、下期には消費税率引き上げの影響から減少に転じると予想される3。もっとも、海外経済の成長を背景とした輸出の増加が景気を下支えするとみられる。』(前回)

ということで結局その先でも海外が下支えということになっているんですけれども、他の所を見ると、設備投資に関しては前回「減速」だったのが「増勢鈍化」になっていて、ここにきて設備投資の先行きに自信ニキとなっている姿があるのですが、まあここの部分に関しては別の物件で別の話があって、設備投資出るけど・・・・・という話があるのですがそれはいずれ別の時に(なおヒントはFSR)。

『2019年度までの成長率の見通しを従来の見通しと比べると、海外経済の上振れなどを背景に、幾分上振れている。』(今回)
『以上のもとで、わが国経済は、2018年度までの期間を中心に、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる4。今回の成長率の見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。』(前回)

ということで海外経済が上振れだそうなのですが、ホンマカイナ感はだいぶある。


『こうした見通しの背景となる金融環境についてみると、日本銀行が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで、短期・長期の実質金利は見通し期間を通じてマイナス圏で推移すると想定している5。また、金融機関の積極的な貸出スタンスや社債・CPの良好な発行環境が維持され、企業や家計の活動を金融面から支えると考えられる。このようにきわめて緩和的な金融環境が維持されると予想される。』(今回)

『こうした見通しの背景となる金融環境についてみると、日本銀行が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで、短期・長期の実質金利は見通し期間を通じてマイナス圏で推移すると予想される5。また、金融機関の積極的な貸出スタンスや社債・CPの良好な発行環境が維持され、企業や家計の活動を金融面から支えると考えられる。このようにきわめて緩和的な金融環境が維持されると予想される。』(前回)

『この間、潜在成長率については、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みなどが続くもとで、見通し期間を通じて緩やかな上昇傾向をたどるとみられる。それに伴い、自然利子率も上昇し、金融緩和の効果を高めると考えられる。』(今回)

『この間、潜在成長率については、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みなどが続くもとで、見通し期間を通じて緩やかな上昇傾向をたどるとみられる。それに伴い、自然利子率も上昇し、金融緩和の効果を高めると考えられる。』(前回)

というところは前回と同じです。でもって肝心の物価の所に来る前に時間が無くなってしまったので(汗)、以下の部分はたぶん明日という事で勘弁してつかあさい。






2018/05/08

お題「3月決定会合議事要旨鑑賞会」

このニュースを見た時に一瞬プロレス団体かと思いました^^;
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180507/k10011429331000.html
野田前首相 国民民主党に不参加表明 新団体設立へ
5月7日 11時46分

しかしまあ何ですな、MPMもFOMCも終わって、まあ既存路線通りで極端な変化も起きそうもない、と来ますと米国は自動操縦状態だし日本は動かないし欧州はどうせ何かするにしても9月以降だしそれが影響出てくるのには時間がそこそこかかるし、と考えるとこれは当面相場様の方はネタなし(なおジャパンはT+1というネタがある)でまーたウゴカンチ会長モードとかになるんですかね、とか死亡フラグを立ててみる。

#原油は気にはなりますが

〇先入先出法に基づきまして3月会合議事要旨

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2018/g180309.pdf

1月のはHTML版とPDF版だったのですが、今回またPDF版だけに戻ってしまったのは何ででっしゃろ、というかこれ後日出てくるんでしたっけ。(HTML版は引用とかするのには便利なもんで(印刷して読むのはPDFの方が多いけど)。

・国際金融情勢と海外経済のリスクに関して

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から少々。

『国際金融市場について、委員は、2月入り後、米国長期金利の上昇を契機に投資家のリスク回避姿勢が強まり、各国の株価が調整する場面もみられたが、これまでのところ、他の金融市場や実体経済への影響は限定的であるとの認識を共有した。』

ということで、

『何人かの委員は、この時期、 一部投資家のショートボラティリティ戦略の巻き戻しなどが重なったことも、株式市場が急速に不安定化する一因になったとの見方を示した。』

というのは現象面ではそうなのだが、VIXショートの指数物が大爆発した(他に誘爆しなかったのは何よりでしたが)のは「インデックス」という名前で何でもかんでも包んでしまうと何となく流動性があって投資しやすい商品のように見える、という昨今のインデックス投資ブームというかインデックス信仰みたいなのの落とし穴で、原資産がどプレーンで流動性が大いにあるようなものから合成に合成を重ねたようなインデックスが平気で流動性のあるように(まあ実際平時はあるんだが)取引されている、というのが実は形を変えたレバレッジであって(そういう意味ではロングショートのファンドとかも似た部分があるでしょ)、レバレッジ規制でカバーできていない問題ですよ、というような捉え方をして頂きたいものであります。

『このうちの一人の委員は、わが国の金融機関が外債投資を増やしてきたことを踏まえると、国際金融市場の変動が金融機関の財務状況に与える影響も、しっかりと把握していくことが重要であると述べた。』

うーんこの。外債投資って要は債券ですから特定のクレジットに集中投下するとかでもない限り、そこまで騒ぐことはないというか、もともとQQEというかその以前からですが、ポートフォリオリバランスとか言って日本国債以外に投資する(というかせざるを得なくなる)状況作ってそれを長期化させてるのあんさんらなので、この「把握していく」が無駄に金融機関の行動を縛る方向ではなく、現行政策の副作用が顕在化している、という認識を持っていただくのであればそれはそれで良い話なのですが、こういうのって単に「金融機関が海外の債券投資でこんなに金利リスクがあるので怪しからん」的な方向に行くだけになるというのがウン十年見ていたアタクシの印象。

『国際金融市場の先行きについて、委員は、米国の経済政策運営などを巡る不透明感は払拭されておらず、これが国際資本フローやわが 国の経済・物価に及ぼす影響については、引き続き注視していく必要があるとの認識で一致した。』

さいですか。

『ある委員は、グローバルにリスク回避姿勢が強まり、円高・株安傾向が長引くようなことがあれば、わが国の輸出が減少したり、設備投資や消費が抑制されたりする可能性があると付け加えた。』

まあお話の趣旨は分かるんだが、円安になってコストプッシュで物価が上がると消費って抑制されませんかと思うんだが。まあ輸出の所はその通りなんでしょうが。

とまあそういうことで国際金融情勢の話がある訳でして、これが3月頭の会合だったのですが、その後(また最近話が蒸し返されているものの)諸々の不透明要因がやや収まっている(というかトランプの親父がツイッターで余計なことを言う回数が減ったから、だったりして)ので、この辺りのリスクは下がっている感はあると思いますが、これを受けた直近のMPMでは物価の見通しが結局下がっているというこの事実(展望レポート基本的見解の詳細読書は今週ネタが切れた時に入れるか、週末に入れるかします(さすがにやらないと賞味期限が切れるので))。


途中を飛ばしてリスク要因に。

『海外経済を巡るリスク要因として、委員は、引き続き、米国の経済政策運営や英国のEU離脱交渉の展開、地政学的リスクなどが挙げられるとの認識を共有した。』

ということで・・・・・・・・

『多くの委員は、米国の政策運営については、 財政・金融政策に加え、通商政策を巡る不透明感も高まっているとの見方を示した。この点に関し、複数の委員は、仮に米国が保護主義的 な動きを更に強めた場合、これに反発する他国から米国への輸入が滞 る惧れがあると指摘した。また、ある委員は、行き過ぎた保護主義は、これまでに築かれたグローバルなサプライチェーンを毀損し、せっか く回復してきた世界貿易の縮小をもたらすリスクがあると付け加えた。この間、一人の委員は、北朝鮮を巡る情勢も、引き続き地政学的リスクとして認識しており、今後とも十分注意してみていく必要があ ると述べた。』

って米中通商協議はアレでしたが、文在寅大先生によりましてすっかりこの辺のリスク要因の状況が変わったように見られる中、まあ今から即断することもないとは言え、海外リスクに関しては展望レポートの方では相変わらず大きめに見ているという感じになっておりますな。と申しますか、こちらでも先日の展望レポートでもそうなのですが、米国が経済吹かし過ぎて反動、という話について何故か毎度言及しないのはあれ何か米国に気を使っているとかそういうもんなんでしょうか。恐らくそこがリスクという認識はさすがにMPMでもしているとは思うのですが何故かふわっとした表現(「米国の政策運営」)で済ませますよね。


・でまあ国内なのだが・・・・・・・・

『以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に 関する議論が行われた。』

へいへい。

『わが国の景気について、委員は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大しているとの見方で一致した。』

という辺りは声明文での記載通りの話なのでまあ良いのですが、

『ある委員は、2000 年代半ばの戦後最長の景気回復局面は外需に依存した自律性に乏しいものであったが、現 の景気回復は、地域、業種、企業規模のいずれでみても拡がりがあり、バブル崩壊以降、最もバランスの取れた成長を実現していると述べた。』

というお話なんだが、そ、そうでしたっけ???という感は否めないというか、だったら賃金とか物価とかもっと上がってもいいんじゃないのとは思う。

なんせその次が、

『輸出について、委員は、海外経済の着実な成長を背景に、増加基調 にあるとの認識を共有した。複数の委員は、わが国のGDPベースで みた輸出は6四半期連続で増加しており、機械受注統計をみても、このところ海外向けが堅調に推移していると指摘した。』

って結局海外じゃんという感が。

『先行きの輸出について、委員は、世界経済が着実な成長を続けるもとで、当面、緩やかな増加基調を続ける可能性が高いとの見方で一致した。』

で飛ばして設備投資の方ですが、

『設備投資について、委員は、企業収益や業況感が改善する中で、増加傾向を続けているとの認識で一致した。複数の委員は、合理化・省力化投資の進展に加え、最近では、部材等の供給制約が意識される中、設備更新の機会などを捉え、能力増強投資に取り組む企業も増加していると指摘した。』

ふーん。

『先行きの設備投資について、委員は、緩和的な金融環境や成長期待の高まりなどを背景に、増加を続けていくとの見方で 一致した。ある委員は、各種先行指標をみても、オリンピック関連投資や人手不足に対応した省力化投資を含め、設備投資は、当面、しっ かりとした増加を続ける可能性が高いとの見解を示した。』

ってしらっとこの部分で「緩和的な金融環境や成長期待の高まりなどを背景に」とか言ってるんだが、そもそも金融環境緩和的なのは今に始まった話じゃないですし、成長期待があるなら何で企業の価格設定や賃金設定があまり変化していないのか小一時間問い詰めたい次第で、結局海外次第なんじゃネーノという感は強い。大体からして前段の合理化、省力化投資って別に成長する話じゃないですからねえ。


でもって雇用の所は色々と書いてあるので鑑賞鑑賞。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な引き締まりを続けており、雇用者所得も緩やかに増加しているとの認識を共有した。』

というのはまあいつも通りです。

『何人かの委員は、1月の完全失業率が前月の 2.7%から 2.4%に大きく低下したことについて、労働市場の一段のタイト化を示すものでは あるが、一時的な特殊要因が影響している可能性もあるため、予断を持たずに今後の動向をみていく必要があると指摘した。』

そらそうよ。

『ある委員は、 かつて日本の構造失業率は 3.5%程度と言われていたが、現実の失業率はこれを大きく下回っているほか、新卒の採用率や女性就業率も大幅に高まるなど、最近の雇用環境の改善は著しいとの認識を示した。』

でも物価が上がっていないんだから構造失業率が下がっているんじゃないでしょうか???

『これに対して、一人の委員は、1990 年代前半と比較すると、人口動態の変化等を勘案しても現在の就業率はなお低めであり、労働市場には、依然として供給余力が残存しているとの見解を述べた。』

労働市場にスラックがある、というのは片岡さんの話なのですが、よく考えたら構造失業率が幾らで云々という話ってジンバブエ先生がお得意としている話だし、物価目標が全然達成できないのを誤魔化すためとしか思えないくらいに雇用の改善をやたら強調するのもジンバブエ先生だったりするので、これこの前のある委員がジンバブエ先生だとリフレ一派内ゲバモードとか中々心が温まる展開になるんですがどうなんでしょうかね。

『何人かの 委員は、労働市場の逼迫度は業種や職種によって異なっていると指摘した。これらの委員は、AIの活用を含め、労働の資本代替が進みやすい分野では有効求人倍率が低めである一方、女性の新規参入や資本代替が難しい運輸や、価格・報酬規制が強く、賃金が上がりにくい介 護や保育などでは人手不足が深刻化していると述べた。』

はあそうですか、AIみたいなバズワードを使うとアタクシ的には軽薄な議論に見えちゃうので変に使わない方が良いと思うのですが(あくまでも個人の感想ですけど)。

『この間、一人の委員は、長期にわたる需要不足とデフレのもとで定着した企業の非効率なビジネス・プロセスや投資抑制姿勢といったヒステリシス(履歴効果)が、最近の人手不足を契機に薄れてきていると指摘した。』

そ、そうですかね。

『先行きの雇用者所得について、委員は、労働需給の着実な引き締まりが続き、企業収益も改善するもとで、緩やかな増加を続けるとの見方を 共有した。そのうえで、多くの委員は、当面、春闘によって賃上げ率がどの程度高まるかに注目していると述べた。ある委員は、労使の前向きな取り組みが、先行き、実質ベースの賃金を前年比プラスに押し 上げていくかどうかが一つの重要なポイントになると指摘した。』

その後って賃上げがあまりニュースネタになっていなかったような気がするんですけど・・・・・・・・・・・

あと、超どうでも良いのですが、

『先行きの個人消費について、委員は、雇用者所得の増加や既往の株価上昇による資産効果に加え、耐久財の買い替え需要にも支えられて、緩やかな増加傾向を辿るとの見方で一致した。』

って話が毎度出てくるのですが、株価上昇の資産効果ってこれ本当にそうなの???という風に毎度思うんですけれども。そら超高額の所が出れば統計数字上は強いものになるんですけど、一般物価が上昇するという効果につながるには幅広い層の個人消費が堅調にならないといかん話で、高額消費が株持ちお大尽様の効果で伸びてそれが何?感は否めません。


・なお物価の先行きについて

もはや現状認識の所は引用しないということで。

『先行きについて、大方の委員は、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくとの見方を共有した。』

はいはい大本営大本営ですが先般の展望レポートを鑑賞するときにまた鑑賞できると思います。

『複数の委員は、賃金上昇によるサービス価格の押し上げや、資源価格上昇に伴う財の企業間取引価格の上昇が、先行きの消費者物価に波及していく可能性があると述べた。このうちの 一人の委員は、春闘後の賃金動向が、各企業の価格設定スタンスや値上げに対する消費者の許容度をどの程度改善させていくかが重要なポイントになるとの見解を示した。』

うーんこの。

『これらに対し、ある委員は、需給ギャップのプラス幅が拡大するもとで、物価にも上昇圧力がかかっているが、その勢いは依然として2%の「物価安定の目標」を早期に達成するに足るほど力強いものではないとの認識を示した。』

片岡さんはこの辺の見通し自体は仰せの通り、と思うわけですが、残念ながら出てくる処方箋が藪にも程があるので極めて残念無念という所ですな。


『委員は、予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移しているとの認識を共有した。』

はあそうですか。

『ある委員は、短期的なインフレ予想については、最近、上昇傾向を示す指標が多くみられており、中長期的なインフレ予想も、 一頃の弱含み局面を脱し、横ばい圏内の動きを維持していると指摘した。多くの委員は、このところ現実の物価上昇率が少しずつ高まってきているほか、今後とも、マクロ的な需給ギャップの改善などから物価の上昇が見込まれるため、先行き、「適合的な期待形成」を通じて、人々の予想物価上昇率は高まっていくとの見方を示した。』

つ4月東京都区部消費者物価指数

『こうした中、 ある委員は、1月以降、予想物価上昇率に関する指標は総じて弱めの動きにとどまっており、現時点では、「適合的な期待形成」を通じて 予想物価上昇率が上昇するメカニズムが十分に働くとの確信は持てないと述べた。 』

これまた片岡さんなのですが、前半の大本営モードと別の意見なのは順当として、意見が違う背景が見通しの部分なのではなくて、予想物価上昇率の現状に関する大本営との違い、という現状認識の部分で違っているのがチャーミングですな。


・金融政策に関して

ということで今日は前半部分を多めに引用しましたが『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の途中から。

『委員は、金融政策の基本的な運営スタンスについて議論を行った。』

ほう。

『何人かの委員は、現在の金融緩和政策の効果と副作用について、金融仲介機能や金融システムに及ぼす影響も含めて、多面的な点検・評価を継続していくことが重要であると指摘した。』

その割にはこの会合の次の回で出てくる展望レポートでは相変わらずの問題ありませんモードだったんですが。

『一人の委員は、現状、 わが国の金融機関は充実した資本基盤を有しており、現時点で金融仲介機能に支障は生じていないが、金融機関の収益動向がその経営体力 に及ぼす影響は累積的なものであるため、この先、低金利環境が更に 長期化すれば、先行き金融仲介が停滞していくリスクがあるとの見方を示した。』

そらそうよ。

『ある委員は、今後、2%に向けて物価が上昇し、潜在成長率が高まるもとでは、金融緩和政策の効果が強まることになるため、 そうした環境変化や政策の副作用も考慮しながら、適切な政策運営のあり方について検討していくことが必要であるとの見解を示した。』

正論だがそうならないので心配ない。

『一人の委員は、最近では大手銀行の新規貸出の多くが短期金利連動型となっていることなどから、長期の実質金利の低下が経済・物価へ及ぼす影響は小さくなってきている可能性があるとしたうえで、こうした変化も踏まえつつ望ましいイールドカーブの形状について検証を進めていくことが重要であると指摘した。』

これは!!!!!

つまりこれは10年金利の0%ではなくて中期や短期の金利をがっちり低めに誘導しておけばよいという見解でございますな何となく誰かという想像が出来そうですがイイハナシダナー。

『別のある委員は、望ましい イールドカーブの形状を判断するにあたっては、経済・物価のみならず、金融情勢もしっかりと考慮する必要があるが、オーバーバンキングという構造的な問題を踏まえれば、金融政策面の調整だけで金融仲介機能や金融システムを安定化させることは難しいとの認識を示した。』

それはそうなんだが今のマイナス金利は不要に金融機関に負担をかけていると思うのですがね。

『この間、一人の委員は、わが国経済はデフレではない状況を維持する状態に到達したが、その過程で生じた好循環の勢いを、追加緩和策を講じることによって更に強め、デフレから完全に決別することが重要であると述べた。』

これは片岡さんなのだがこの後に議論が無いのがなんとも。

『委員は、金融政策運営に関する情報発信のあり方についても議論を行った。』

ほうほうそれでそれで?

『何人かの委員は、最近の為替市場や株式市場における不安定な動きについては、国際金融市場の変動に加え、わが国でも経済・物価情勢の改善が続く中、今後の金融政策運営の方向性を巡り、市場参加者の関心が高まっていることも影響しているとの見方を示した。』

いや別にそんな感じではなかったと思うが。

『何人かの委員は、市場に誤解が生じないよう、日本銀行としては、「物価安定の目標」の実現までにはなお距離があることを踏まえ、引き続き、現在の強力な金融緩和を粘り強く進める方針にあり、いわゆる「出 口」のタイミングやその際の対応を検討する局面には至っていないと考えていることを、丁寧に説明していくことが重要であると指摘した。』

でもFRBとか出口と全然関係ない時にそういう話をしましたよね。結局この部分って「早期達成」と「でも現実には時間かかる」とうのの相克から話が混線する訳でして、その上やっていることがやりすぎで副作用が何となく出ている面もありませんかねえ、とかなっているのがアレな訳です。まあそういうのもあって今回展望レポートの文言削除があったんでしょうけど。


『そのうえで、このうちの一人の委員は、将来的には、金融緩和の度合いを次第に縮小していくという意味での「正常化」を検討していくことになるが、それがなお金融緩和の領域にあり、需給ギャップの縮小を狙った「金融引き締め」とは異なることを、市場参加者にきちんと理解されるよう説明していくことも必要であると述べた。』

まあ物価が上がらないとその話にはならんでしょうな。

『別のある委員は、企業の価格設定スタンスの強まりがネガティブに捉えられることのないよう、デフレ脱却の意義について人々の理解を得つつ、「物 価安定の目標」の実現を図っていくことが重要であるとの認識を示した。 』

これは良い指摘なのですが、如何せん今の所は物価が上がると消費が落ちる(高額品は知らんが)という図式になっていて、そもそも物価上昇を頭では許容しても(してるかどうかも怪しいが)現実の消費行動に跳ねてこないという状況になっているのであって、まあ金融政策だけではどうしようもない面があるのですが、やはり恒常的な所得上昇期待を持たせるような政策を行うように政府にも呼び掛けていくしかないんじゃないでしょうかねえ。


・そして最後に謎コーナー

この次ですが、

『この間、一人の委員は、追加的な金融緩和の余地が大きくない中、 デフレ脱却を確実にするためには、財政政策の協力が必要になるとの 見解を示した。そのうえで、この委員は、プライマリー・バランスの 黒字化については、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、適切な定量 的目標を定めて、柔軟に運営していくことが望ましいと述べた。 』

どう見ても置物師匠のコメントなのですが、「追加的な金融緩和の余地が大きくない」とかお前は何を言ってるんだという所でして、あちこちメディアや講演に登場する前に懺悔告解をして墨染めの衣を纏って巡礼してから出直してきやがれと小一時間。

『このほか、ある委員は、「量的・質的金融緩和」の経済への効果が 小さいとみていた人の中には、強力な金融緩和のもとで経済が大きく 改善したことを受けて、将来必ず経済は悪化すると強調することで自 己の主張と現実とのバランスを取ろうとする向きもみられると指摘 した。』

これは「主な意見」が出た時に「認知的不協和」とか言うのが飛び出した衝撃の謎意見で、まあどう見てもジンバブエ大先生なのですが、主な意見に書かれてしまっただけに議事要旨に載せないわけにもいかず、仕方がないので最後のどうでも良いところに「このほか」とかいう面白い接頭語をつけて掲載している辺りに事務方の苦悩をお察し申し上げまして鑑賞会終わりということでよろしゅうに。








2018/05/07

お題「MPM関連ネタ虫干し大会(総裁会見ネタ)」

えーっとすいません、連休中すっかり連休モードだったので結局FOMC声明文の寝起き読みしかしておりませんで(本日の駄文の後に5/3更新分入れてます)誠に恐縮至極というかネタなしで困っていたと思えばネタ超過というこの波の多さたるや。

〇総裁記者会見はまあボロボロでしたなあ

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2018/kk180501a.pdf

この会見珍しく中継を見てたんですが(一応新体制初回だし文言削除あったし)、質問がバンバン切りかかって来る中で例のフフフ笑いをしているのですが、まあなんちゅうか余裕の笑みちゅう感じじゃないので却って見てて不快になるという感じでしたが、まあ答えに苦しんでますなあという質疑ではありました。あとそれから余計なお節介ですけど、総裁がどこぞの某テレビ局のアナウンサーの方が質問した時だけ露骨に超満面の笑みになるのはご時世がご時世だけにもうちょっと自制された方がよろしいのではないでしょうか。

ということで会見質疑の頭から。

・当たり前だがこの質疑が続くのだ

『(問) 展望レポートから 2%目標に達する時期の記述が今回からなくなった点です。今まで、早期実現のために大規模緩和をし、かつその達成する時期も一応明示してきたこととの整合性がとれなくなるのではないかというように 受け取れます。これについてご説明下さい。』

何というシンプルかつ美しい質問。

『(答) これまで展望レポートにおいて、2%程度に達する時期の見通しを記述してきましたが、これはあくまでも見通しであって、その変化と政策変更を機械的に結びつけているわけではないという点は、これまでも繰り返し説明してきたところです。』

確かに説明しているが、元々は「期限を区切って達成するという強いコミットメント」をQQE導入の時にぶっこんだ訳でして、展望レポートの見通しが遅れるのに追加緩和をする手段がないのでそれは別、という説明をして誤魔化してきているのであって、この質問も「当初の説明と違っているけれども何でですか?」という問いのはずですが、そこは誤魔化して答えるから話が訳分らなくなるんですよね。

『もっとも、市場の一部では、こうした見通しを 2%の達成期限ととらえたうえで、その変化を政策変更に結びつけるといった見方も根強く残っています。また、現実の物価上昇が予想物価上昇率に波及するまでに相応の時間がかかる可能性があるなど、物価の先行きに様々な不確実性がある中にあって、計数のみに過度な注目が集まることは、市場とのコミュニケーションの面からも必ずしも適当とはいえません。』

と言ってるのは総括検証以降の話になりますが、だったら早期達成を諦めたのかといえばそうなっていない説明になっている(後で出てくる)のがコミュニケーションを難しくしていると思いますけどね。

『このため、今回の展望レポートから、物価の先行き展望について、これが達成期限ではなく見通しであることを明確にするため、記述の仕方を見直すこととしたわけです。 なお、ご案内の通り、展望レポートの後ろに、従来と全く同様に、政策委員の大勢見通し、あるいは経済・物価に関するリスクの見方も掲載されています。』

達成期限がない、ということは「2年程度を念頭にできるだけ早期に」というのは何だったのかというお話になるのですが、まあ要するに総括的検証導入当時だと市場の反応が恐ろしくてこのような早期達成の実質上のギブアップを宣言できなかったけれども1年半たってやっと明言しましたよというお話。


・説明する中で色々とボロが出ている気がするんだが

でまあこんな回答では許されるはずもなく追及は続く。

『(問) 時期を示して、いわば短期決戦型で 2%を達成していくわけではないのだということになると、現状の副作用も伴うような大規模緩和を続けなくてもよいのではないかと、色々な見方がでてくるとは思うのですが、そういう中でもやはり今回落とした、この理由について、もう一度ご説明頂けますでしょうか。』

言いたいことは分かるが、今回の文言削除は出口と出口じゃない政策調整の両方を否定するような感じにできていると思うので政策調整と絡めて質問するのはあまり良い着手とは言えない。

『(答) ご案内の通り、2013 年 4 月に、2%の「物価安定の目標」をできるだ け早期に実現する、という際に、2 年程度を念頭に置いて「量的・質的金融緩 和」を始めたわけですが、その後は、そういった特定の達成時期を念頭に置いて金融政策を運営しているわけではありません。』

ふむふむ。

『この点は、2016 年 9 月の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のところでは、更に明確になっています。』

という回答に物凄い勢いで疑問があるのだが、「(特定の時期に達成するのを止めたのが)更に明確になっています」ということは総括的検証の前から「2年程度を念頭において出来るだけ速やかに達成する」というのを諦めていましたという話になるんだが、期限を切って実施するのが重要なコミットメントというのはいつから有耶無耶になったんでしょうか、というのは気になります。

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指して政策運営を行っており、その点は、今後とも全く変わりはありません。従って、現状、わが国の物価は景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて弱めの動きが続いていますので、そうした点を踏まえると、日本銀行としては、現在の「金融市場調節方針」のもとで、強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが引き続き適当であると考えています。』

この「できるだけ早期に実現」というのが政府との共同文書の中に入っているのがコミュニケーションをグダグダにしている原因でもありますけれども、「無理矢理早期達成するのは国民厚生上意味がないあるいは害悪なので達成については無理なく行う」というまあ政策としては至極当然のことをしている、という状態に今はなっているのですが、この共同文書にある馬鹿文言のせいでいつまでたっても話がややこしくなっている、という状態になっている訳ですよ。

まあ元はといえば馬鹿置物理論が悪いのでとりあえず置物は世の中に出てこないで西方浄土辺りで金融政策のお話でもしていて頂きたいと強く祈念するところであって、一派の皆さんも置物理論の間違いを認めてとっとと引退しやがれと思うところで、この連中が引っ込まないというのもコミュニケーションをややこしくしているのですが、何せリフレが政治案件(内務省検閲により削除)。


次の質問はまあ良い整理。

『(問) 2%の達成時期を削除した点についてですが、先程総裁は、市場との 対話、コミュニケーションの点だとおっしゃいました。これは、時期を明示することによって、市場での追加緩和期待が強まる、高まることを抑えたいという意図があるのでしょうか。 』

『(答) 先程申し上げたように、現在の金融政策は、特定の達成時期を念頭に置いて運営されているのではなく、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するという大きな目標のもとで、2%の「物価安定の目標」に向けた モメンタムが維持されているかどうかということを、毎回の金融政策決定会合で丹念に点検するものです。』

微妙に本音が出てきますが、要は「上向きになっている」と言い張れる状況ならばよいという事で、それで2%何時行くんですかと小一時間ではあります。

『モメンタムが失われつつあるというようなことになれば、当然追加緩和を検討することになりますので、金融政策運営は、従来と全く変わりはありません。最初に申し上げた通り、展望レポートに 2%の「物価安定の目標」が達成される時期を文章で書くことによって、それと金融政策の変更がダイレクトにリンクしているように誤解されると、日本銀行の政策委員会の金融政策スタンスが誤解されるおそれがあるということで、削除したということです。』

元は期限を切って達成するというコミットメントいやもういいです。

『先程申し上げた通り、経済・物価の見通しについては、政策委員の大勢見通し、更にはそれぞれの政策委員の経済・物価に関するリスク評価をきちんと示しています。』


・2%程度に達成する時期云々でふと気が付いたのだが・・・・・・・・・・・・

『(問) 前回まで 2019 年度頃に 2%という目標があったわけですが、総裁自身は今も 2019 年度には 2%に達する、もしくはそれくらいのレンジにいくと思っ ていらっしゃるのでしょうか。』

『(答) 政策委員の大勢見通しの数字が示されていますが、私を含めて 9 人の 委員のそれぞれについて、具体的に誰がどういう見通しを、ということは示していませんので、私だけ特別なことを申し上げるのは避けたいと思いますが、 2019 年度頃に 2%程度に達する可能性が高いと私は思っています。ただ、それぞれの年度の具体的な経済見通しや物価見通しについて、他の 8 人の委員の方は言わない中で、私だけ申し上げるのは適切でないと思います。』

単に「2019 年度頃に 2%程度に達する可能性が高いと私は思っています」あるいは「個人的な数値をピンポイントで申し上げることは政策の建付け上できませんが中心的な見解として達する時期がこうなっています」、だけで良いのではと思ったらそのちょっと後に案の定ツッコミ。

『(問) 先程、黒田総裁ご自身は、2019 年度頃に 2%に達すると考えているというご説明だったのですが、これまでは、色々な公の場で質問があった時などは、日本銀行としての考え方として示されていたように、所信表明でも、再任 会見でもおっしゃっていたように思うのですが、今後はそのような質問が出た場合には、個人的な考えでというような言い方で、日本銀行としての見解を示さないということなのでしょうか。今回、2020 年度に中央値で 1.8%というの が新しく出ましたが、これを素直に読めば、少なくとも 2020 年度に 2%を達成 すると思っている委員は多くないということになると思います。これを先送りというかは別にして、また目標達成は遠のいたのかな、と受け止めるのが素直な見方かと思いますが、如何でしょうか。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『(答) それは、そうではありません。展望レポートの表をみて頂いても分か るように、2019 年度の物価見通しは、前回も 1.8%、今回も 1.8%だったわけ です。そうしたもとで、2%程度に達する時期は、2019 年度頃になる可能性が高いということを申し上げていたわけです。』

と最初は威勢が良い。

『ただ、それを展望レポートの中で文章で記述すると、金融政策と直接リンクしているように誤解されるおそれがあるということで削除しただけです。2019 年度頃に 2%程度まで上昇率を高め ていくという日本銀行の中心的な物価見通しも、前回の展望レポートから変わっていません。』

という説明なのですが、「金融政策と直接リンクしているというように誤解されるおそれが」だけで押し通していますが、この辺りの質疑を改めて読み直してみて気が付いたのですが、「2%程度に達する時期の文言を削除した」というのは、展望レポート基本的見解について議決をしているということを鑑みると、今回から「政策委員会として物価が2%程度に達する時期を議決しなくなった」ということなので、つまり「日本銀行政策委員会として機関決定した数字」というのは無くなっているんですよねこれがまた。したがって「日本銀行として物価が2%程度に達する時期」というのは今回から特に決めなくなったという話なので、公式見解がないわけですよ、あるのは展望レポート基本的見解の巻末にある図表なのですが、あれはあくまでも政策委員会の委員の皆様の個別のビューを連ねたものであって機関決定したものではないので、今後は「2%程度に達する時期を日本銀行として正式に何時だと見通していますか」と聞いた場合は「知らんがな、ああ参考指標は直近の展望レポート基本的見解の巻末を見てちょ」というのが正しい答えになるということですな。


・インフレ期待を上げようという気合がないお話

さっきの所に戻ってその先の質問。

『(問) 今の部分も含めてお聞きしたいのですが、まず 2%の達成時期の記述がなくなりましたが、日本銀行の金融政策における目標であることについては変わりがないのか、ということを確認させて下さい。』

『(答) それは全く変わりありません。2013 年 1 月に正式に決定して以降、 2% の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するということは変わっていま せん。また、これは 2013 年 1 月の政府との「共同声明」でも謳われていることでありますし、「共同声明」を再確認し、堅持することは、政府にも申し上げています。 』

ここは前座。先ほど申し上げましたが、「できるだけ早期に」がこの共同声明にあるのがイカン。

『(問) そのうえで、今回の展望レポートで、先程おっしゃった政策委員の中 心的見通しで、2019 年度、2020 年度のCPIは 1.8%ということで、やはり 2% と比べると少し力強さに欠けるというのが正直なところだと思うのですが、それでも2019年度頃には2%程度に達する可能性が高いと黒田総裁はお考えなのでしょうか。また、その理由についても少し頂けると助かります。』

確かに。

『(答) 数字はその年度の平均ですので、年度の中で一定の動きはあり得ると思います。』

これなんですけど、「年度平均」で2018年度は+1.3%じゃないですか。それが2019年度に+1.8%になるには、2018年度の終わりの時点でどの数値になるかによるんですけど、2019年度の後の方にはにはそれなりに高い数値が出てくるはずで、2020年度も平均が+1.8%というのは、そのあとどういう物価推移のパスを考えているのかと小一時間という感じでして、この「年度平均」っていう出し方は、何でこういう出し方にしたのかイマイチよく分からんのですが、FRBのSEPみたいに普通に期末値にしてくれれば分かりやすいと思うのですが、あえてそこをファジーにすることによって(爆発音)。

『2%程度に達するという見通しであるといってよいと思いますが、 これはあくまでも見通しですので、金融政策運営のための達成時期のようなものではありません。』

さっきからしつこく言っています。で、この先が先日とりあえず申し上げた話で、まあ一番のけぞった回答部分。

『欧米の中央銀行も経済見通しや物価見通しを示していまして、過去の動向、特にここ数年の動向をみますと、皆、物価の見通しをずっと先送りしてきています。それはある意味で当然でして、原油価格が 110 ドル、 120ドルから30ドルを割るくらいまで大幅に下落したというのは世界的な現象ですし、先進国の状況をみましても、経済成長は順調で、労働需給も引き締まっているわりには、賃金や物価の上昇が従来と比べるとやや鈍い状況にあります。』

もともと「欧米と違って日本はインフレ期待がアンカーされていないので2%の物価安定目標達成にはインフレ期待の引き上げが必要で、そのために異次元に強力な金融緩和政策をとっている」という説明をしていたわけで、「欧米と同じで良い」というのであれば、何も異次元な金融緩和政策をしなくったって、普通に金融緩和政策を行えばよいだけの話で、超大規模国債買入とか、ETFみたいな信用リスク資産までの買入とか、マイナス金利政策とか、そういうのやる必要ないだろういい加減にしろ、というツッコミをこれを聞いた瞬間に思いましたよいやマジで。

『また、いわゆるフィリップスカーブがシフトしたのではないか、あるいはフラット化したのではないかという議論も世界的に行われております。そういう意味で、経済や物価の見通しは一定の不確実性があるものですので、従来同様、 政策委員の大勢見通しを示すとともに、政策委員の経済・物価見通しのリスク 評価というものも具体的に示しているところです。 』

いやいやだからおまいらの政策はそのフィリップスカーブの傾きをスティープにしてみたりシフトアップしてみたりする、という政策だろうが世界的にそうだから自分らも別にできなくてもよいとか今更お前は何を言ってるんだという説明ですな。


・中長期的な目標になったのか系の質疑

ちょっと先の質疑から。

『(問) 日本銀行としての意図がどうであれ、政策変更と結びつけられたくな いというのは分かるのですが、それでも、時期を明示しないで削除したということ自体が、市場とのコミュニケーションということになるのだと思います。 日本銀行が 2019 年度頃の達成をあきらめたとか、そのような受け止めも当然出てくると思います。そうすると、人々の期待に働きかけるという点と、デフレマインドを払拭するという点では、ネガティブな効果が出るのではないかと思いますが、その辺りはどのようにお考えでしょうか。 』

いや全く仰せの通り。

『(答) そこは、色々な議論があり得るとは思いますが、政策委員会としての 政策意図を明確に市場にコミュニケートすることが一番重要であって、そうい う意味で、誤解や誤認があっては好ましくないので、記述の仕方を変えたというだけで、金融政策のコミットメントは全く変わりませんし、従来行ってきている大規模な金融緩和を粘り強く続けるということについても、何ら変わりはありません。そこは、しっかりとコミュニケーションを図っていくという必要を私も感じていますし、こうした場も含めて、しっかりと考え方を説明してまいりたいと思っています。』

って説明しているのだが、「見通しが先送りになっても追加緩和しない」というのを明確にしたというのはそれは気合が無くなりましたよというのを明確化したということではないでしょうかねえ。

『(問) 先程のご説明の中で、最も注意している点として、中長期の予想物価上昇は緩慢であると、そういうことを挙げられました。やはりこれだけ好景気 が長く続いている中でも、なかなかインフレ期待が上がらないのは、需給が改善して、物価に波及して、それが期待にいくのである、というような、日本銀行がご説明されるメカニズムのどこかに齟齬が生じているのではないか、そう いう可能性があるのではないかという面もあると思うのですが、緩慢な理由も含めて、総裁は今どのようにお考えか、お聞かせ下さい。』

これは良い質問。

『もう 1 点は、達成時期の表記を削除したわけですが、これは事実上のローリングターゲットに変わったのではないかという見方もできると思いますが、その点は如何でしょうか。』

まあそうでしょ実際の所は、ということで回答。

『(答) 後者から先に申し上げますと、特定の達成時期を念頭に置いて金融政策を運営しているわけではないということをローリングターゲットだとおっ しゃるのかもしれませんが、私どもとしては、カテゴライゼーション云々より も、他の主要中央銀行と同様に、物価安定の目標を実現すべく金融政策を進めている中で、何か達成時期というものを決めて、それにあわせて毎回の金融政策を決定していくという形ではありませんので、誤解が生じないようにしたということです。何回も申し上げますが、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するというコミットメントには、全く変わりはありません。』

さて、ここで2013年3月21日の岩田副総裁就任記者会見を確認しましょう。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf

『私は、2%のインフレを達成するため、あるいはデフレを脱却するた めには、2つの条件が必要だと思っています。1 つは、2%のインフレ目標を大 体いつ頃までに責任をもって達成するのかということに日本銀行がコミットするということです。これにコミットすることが、非常に大事なことです。大 体いつ頃までに達成するかということについては、主要国の中央銀行は、大体、 「中期的」とか「ミディアムターム」という言葉で表現しています。その「ミ ディアムターム」というのが実際何年くらいなのか、色々な研究者が調べたと ころ、大体 2 年くらいということになっています。平均すると 2 年くらいでイ ンフレターゲットの中に入っているので、そういう経験から言っているわけです。 2 つ目は、そういう意味で、2 年くらいで責任をもって達成するとコ ミットしているわけですが、達成できなかった時に、「自分達のせいではない。 他の要因によるものだ」と、あまり言い訳をしないということです。そういう 立場に立っていないと、市場が、その金融政策を信用しないということになってしまいます。市場が金融政策を信用しない状況で、いくら金利を下げたり、 量的緩和をしても、あまり効き目がないというのが私の立場です。』(2013年3月21日岩田副総裁就任記者会見、会見要旨5ページにある岩田副総裁の発言)

と、毎度のようにサルベージしてくる訳ですが、この話からしますと当然前者の質問の「期待形成」の問題にかかわってくるでしょとは思いますわなそりゃ。

『前者の期待形成については、基本的に、適合的な期待とフォワード ルッキングな期待と 2 つあると思います。そのうえで、この両者が効いてくることを期待しているわけですが、米国のように、2%の物価安定目標の周りに 予想物価上昇率がしっかりとアンカーされている国と違って、わが国の場合は、 フォワードルッキングな期待形成が弱いようにみられます。』

「弱いようにみられます」じゃなくてそれを金融政策で何とかしようというのがQQEじゃろうがお前は何を言ってるんだと申しますか、そんな他人事状態で説明するならマイナス金利政策とかやめちまえ。

『2016 年 9 月の「総括的な検証」でも詳しく述べているわけですが、需給ギャップが改善し、実際 の物価上昇率が徐々に上がっていく中で、適合的に予想物価上昇率も上昇し(以下いつもの言い訳で読む価値が無いので割愛)』


でまあ中長期的かどうかという質疑は続きまして、

『(問) 達成時期の削除の件についてですが、2016 年 9 月の段階で、多くの市場関係者の間では、2%自体が中長期的な目標になったのではないか、という 受け止め方が既に多かったと思います。今回、達成時期の見通しまで削除する と、まさに名実ともに中長期的な目標になったのではないか、とのとらえられ方を当然されると思うのですが、そこは全くそうではないということなので しょうか。 』

『(答) 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指し ているという点は、日本銀行としては全く変わりありませんし、今後ともこの 方針に変わりはありませんので、中長期的な目標に変更したということではありません。その点は、今後とも引き続き丹念に説明していく必要があると思っ ています。 』

というのはどうでも良いですが、その次の質疑はまあ良いところを突っ込んでいる。


・「できるだけ早期に」の呪縛

『(問) 「できるだけ早期に 2%」というのは、もともとは「共同声明」に盛 り込まれていることなので、それを掲げざるを得ないと思うのですが、それがあることによって、例えば副作用が顕在化してきているとか、そういう時でも 政策の修正ができにくいのではないでしょうか。ある意味で「できるだけ早期 に」という建前自体が自らを縛ることになっているのではないか、という指摘があると思うのですが、その辺りどのように考えていらっしゃいますか。 』

(;∀;)イイシツモンダナー

『(答) 副作用については、金融仲介機能が低下していないかということと、いわゆる資産バブルその他金融の行き過ぎはないか、という 2 つの面があると 思うのですが、いずれも金融システムレポートで示している通りで、』

と完全に質問の趣旨を外しにかかっていますので途中を割愛します。

『(途中割愛)現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」 の枠組みを決めた 2016 年 9 月の時からはっきりと言っているように、経済・ 物価・金融情勢を総合的に勘案したうえで、できるだけ早期に 2%の「物価安定の目標」を実現する、という方針ですので、金融情勢というものも十分勘案 しながら、2%の「物価安定の目標」に向けて金融政策を運営していくという ことには変わりはありません。』

ということで、総括的検証してスタンスが変わったと今更言っていますが、なぜあの時にもっと明言しないのか、ってな話ではありますな。まあ明言するのも怖いのは分かるが、有耶無耶のうちに誤魔化すというのはイクナイと思うのだ。

趣旨を外されたから再度質問。

『(問) 「2%をできるだけ早期に」という言葉自体が自らを縛っている、足 かせになっているということはないですか。』

『(答) そのような感じは持っていません。あくまでも日本銀行として 2013 年 1 月に決定した 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するということは変わっていませんし、それが何か金融政策の運営上、足かせになっているということはないと思います。 』

どう見てもなっているだろうよ・・・・・・・・・・・


でまあもう少し質疑はあるのですがまあ大体こんなところで勘弁ということで。




2018/05/03

お題「だいたい寝起きでFOMC声明文確認」

どもども。さすがにお休みなのでいつもよりも遅く起きましたが、一応まだ朝っぽいので寝起きで声明文読んでおきましたよ。

声明文
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20180502a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20180321a.htm(前回)

〇第1パラグラフ:「2%に近づきました」キタコレ!

『Information received since the Federal Open Market Committee met in March indicates that the labor market has continued to strengthen and that economic activity has been rising at a moderate rate.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in January indicates that the labor market has continued to strengthen and that economic activity has been rising at a moderate rate.』(前回)

労働市場と経済活動に関する記述は同じですな。

『Job gains have been strong, on average, in recent months, and the unemployment rate has stayed low. Recent data suggest that growth of household spending moderated from its strong fourth-quarter pace, while business fixed investment continued to grow strongly.』(今回)

『Job gains have been strong in recent months, and the unemployment rate has stayed low. Recent data suggest that growth rates of household spending and business fixed investment have moderated from their strong fourth-quarter readings.』(前回)

雇用増加に関しては今回も強いの判断は同じなのですが。「on average」というヘッジクローズが入っているので若干の下方修正、企業の投資活動に関しては今回判断引き上げ。

『On a 12-month basis, both overall inflation and inflation for items other than food and energy have moved close to 2 percent.』(今回)

『On a 12-month basis, both overall inflation and inflation for items other than food and energy have continued to run below 2 percent.』(前回)

ヒャッハー!!という所でございまして、「2%に近づいてきている」の現状判断いただきました。

『Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance.』(今回)

『Market-based measures of inflation compensation have increased in recent months but remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance.』(前回)

今回は市場のインフレ期待が「上がっている」という表現が抜けた上に「remain low」なのでここはパッとしません。


〇第2パラグラフ:当然ながら2%達成に更に自信ニキですよ

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

これはいつもの文言。

『The Committee expects that, with further gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace in the medium term and labor market conditions will remain strong.』(今回)

『The economic outlook has strengthened in recent months. The Committee expects that, with further gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace in the medium term and labor market conditions will remain strong.』(前回)

前回は「経済見通しが強まった」というのがありまして自信ニキでしたが、今回は次の物価の所にその話があります。まあSEP出す回じゃないから前回の表現みたいなのは入れないというのはあると思うが。

『Inflation on a 12-month basis is expected to run near the Committee's symmetric 2 percent objective over the medium term. Risks to the economic outlook appear roughly balanced.』(今回)

『Inflation on a 12-month basis is expected to move up in coming months and to stabilize around the Committee's 2 percent objective over the medium term. Near-term risks to the economic outlook appear roughly balanced, but the Committee is monitoring inflation developments closely.』(前回)

ということで「is expected to run near the Committee's symmetric 2 percent objective over the medium term」ってこれはどう見てもマンデート達成です本当にありがとうございましたという風情になっていますし、「but the Committee is monitoring inflation developments closely」ってのも抜けていますのでもう自信ニキにも程がある。

ただまあ次のパラグラフの表現は変わっていないですし、そらまあインフレが加速する(ここからホイホイと物価指数が上がりださない限りにおいて、という意味な)のでなければもうちょっと様子見ながらというのもあるでしょうから、次のパラグラフ以降の表現には変更がなくて、それはつまり先行きの政策スタンスをこの判断をもってもっとタイトにするというような結論には今回至っていないということではありますが、そらまあこの表現はもうFRBウハウハという感じであるのはそうでしょうな、と思います。まあ普通に6月利上げで年4回でしょ。


〇第3パラグラフ:今回は金利据え置きで現状の金融政策に関する表現は同じ

『In view of realized and expected labor market conditions and inflation, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 1-1/2 to 1-3/4 percent. The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting strong labor market conditions and a sustained return to 2 percent inflation.』(今回)

『In view of realized and expected labor market conditions and inflation, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 1-1/2 to 1-3/4 percent. The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting strong labor market conditions and a sustained return to 2 percent inflation.』(前回)

前回は利上げしているのでそこの表現は違いますが、その次の文言は同じで、今の政策スタンスによって、「supporting strong labor market conditions and a sustained return to 2 percent inflation」っていうのがありますので、これはすなわち現状はまだ「sustained return to 2 percent inflation」までは行ってない、ということでしょうから、すなわちさっきの第1第2パラグラフを捕まえてマンデート達成宣言というのはさすがに早とちりというものですな、というお話。


〇第4パラグラフ:先行きの金利政策に関する表現も同じ

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. The Committee will carefully monitor actual and expected inflation developments relative to its symmetric inflation goal. The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant further gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.』(今回)

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. The Committee will carefully monitor actual and expected inflation developments relative to its symmetric inflation goal. The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant further gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.』(前回)

手抜きマンでパラグラフ一気に引用しちゃいましたが、今回もこの先行き金利政策に関する部分は、まるで同じ文言になっていますので、さすがに年4回を超えるペースでの利上げが必要というような認識までには至っていない、ということを意味しますが、ここからはアクチュアルの物価がどう出てくるかという話になるんでしょうな。


〇第5パラグラフ:全員一致で賛成です

『Voting for the FOMC monetary policy action were Jerome H. Powell, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Thomas I. Barkin; Raphael W. Bostic; Lael Brainard; Loretta J. Mester; Randal K. Quarles; and John C. Williams.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were Jerome H. Powell, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Thomas I. Barkin; Raphael W. Bostic; Lael Brainard; Loretta J. Mester; Randal K. Quarles; and John C. Williams.』(前回)


ということでまあ大型連休後半初日ということで頭が休日モードになっているのでこの程度で今朝の所は
ご勘弁願いたく存じますm(__)m

なお、市場の反応はあまり真面目に見てませんが、ドル円110円ですかそうですかという所で。

#T+1ネタとか色々と連休の谷間でもネタは投下されていた感はあるのですがその辺は追々やるかもしれないし、やらないかも知れませんので期待しないでください


2018/05/02

お題「予定を変更してMPMレビューと総裁会見で一番ズッコケた応答の部分など」

展望レポートの前回比較をしようかと思ったのですが、まあ昨日は例の文言削除の話もしたことですしそちらは連休中にということで。

#T+1決済の方はどんな感じになっているでしょう・・・・・・・

〇決定会合レビューネタは続くのだが決定事項に関して

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/rel180427d.pdf
当面の金融政策運営について

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。』

ってなことで内容自体はいつも通りなんですけれども・・・・・・・・・

『(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注1)
次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約 80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。』

というのに変更がないのはまあ良いのですが、よくよく考えたらすっかり忘れておりましたが、この「概ね現状程度の買入ペース(保有残高の増加額年間年間約80兆円)」って文言なのですけれども、そもそも年間約80超円の増加をさせようと思ったら「概ね現状程度の買入ペース」では全然足りないという状況になって久しい訳ですが、この文言ってどうにかならんのかね、とは思います。

だってそうじゃないですか、日銀保有国債の年間の償還額と今の買入ペースから普通に保有国債の年間増加額って四則演算できれば計算できる訳でして、それが誤差の範囲じゃねーぞオイって状態になっているのに平然としている、という状況を皆さんはご子息の方々にどうやって説明するんですか(別に説明する必要がありませんですかそうですか)と小一時間問い詰めたいというお話。

まあそれ以外に物価2%程度への到達時期に関しても当初コミットメントだった筈なのにしらっと見通し数値に変わっていた上に展望レポート中でのコメントが6回先送りというのもありまして(やはり7回先送りとなると諸葛孔明の南蛮王孟獲征服の故事になってしまうのでアカンということでしょうか)、こちらも中々ご子息の方々に説明しにくいお話ではあったのですが、まあそちらの方は今回削除の巻となった訳ですな。

つまりですね、そもそもこの政策は置物リフレ理論という座学としてもゴミレベルのマネタリーベース直線一気理論であり金融政策で人々の期待を飴細工のように変化させうるなどという理論をベースにしてQQEとしてぶっこんだだけに、その後の不具合修正のために平成バブル時代の温泉旅館も裸足で逃げ出す増改築を繰り返してしまった、というのがこの80兆円にも残っているという次第ですから、そらコミュニケーションが難しくなりますわなと思います。

となりますと、本当はこの増改築繰り返して訳の分からん状態になっている温泉旅館を一旦更地にして新しくすっきりした設計で温泉旅館を作り直した方が良いとは思うのですが、なにせ最初に作ったインチキ理論に基づくダメダメな設計の建物が時の首相の肝いり案件みたいになっているので、その方がいる間に「この建築はダメダメうんこだから再建築」とかいうと首相様の面目玉にかかわってしまうというもうねというのが色々とグダグダな所ではありますな、とは思います。


『(2)資産買入れ方針(全員一致)
長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

@ ETFおよびJ−REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、 年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。
A CP等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、約 3.2 兆円の残高を維持する。』

まあこっちは全員一致だからどうしようも無いのですが、この前からネタにしていたFSRでは今回クレジットスプレッドが無駄に圧縮されていて、信用力に応じたスプレッド形成がなされていない点について警鐘を物凄い勢いで鳴らしまくっているという事実があるのですが、このリスクプレミアム圧縮とか言って行った政策こそが「経済・物価・金融情勢」のうちの金融情勢を鑑みたら調整の必要があるのではないでしょうかねえ、とは思うのですが、まあ日銀の立場になって考えますと、こちらの規模縮小とかを行うとさっそく「政策の調整論」というのが思いっきり言われるようになって、長期金利に上昇圧力が盛大に掛かって政策運営が困難になるんじゃないか、と懸念するから外すに外せないという感じで見ているんだろうなあ、とは思います。ただこれは「QE」と「CE」(クレジットイージング)として整理して分離できないもんですかねえとは常々思う、というかCP社債の買入は金融機関に対する単なる民業圧迫になっているので勘弁してくれ。


『2.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を 踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整 を行う(注2)。』

今回から展望レポートの回でもこれを入れるようにしたようですな、まあ確かにこっちの方が尻切れ感がなくて良いと思う。


ということで賛否ですけど・・・・・・・・・・・・・

『(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対:片岡委員。片岡委員は、消費税増税や米国景気後退など 2020 年度までのリスク要因を考慮すると、金融緩和を一段と強化することが望ましく、10 年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとして反対 した。』

提案芸人先生の提案理由に関しては実質的に同じで、手段も同じ。でもって手段の方に関しては何が何だかよく分からないのと、そもそもそれをすることによって何で物価上昇が加速するのかさっぱり説明がつかない、という絶対的に致命的な問題があるのですが、反対する理由の方はわかる。


『 (注2)片岡委員は、「物価安定の目標」の達成時期を明記するとともに、オーバーシュート型コミットメントを強化する観点から、国内要因により達成時期が後ずれする場合には、追加緩和手段を講じることが適当であり、これを本文中に記述することが必要として反対した。』

今回『「物価安定の目標」の達成時期を明記するとともに』というのが入ったお蔭で何か提案芸人大先生の反対理由が物凄い勢いで説得力を増すようになっているというのがエッシャーの騙し絵のようで中々味わい深くなっています。というのは達成時期の明確化というのは達成時期に対してコミットメントをするのであれば、当然ながらコミットメントの一環として入れていなければおかしい話になりますし、大体からしてQQEの導入当初は「2年程度を念頭にできるだけ早期に達成」をコミットメントしていましたし、達成できなければ副総裁を辞任するとまで国会で言っていた馬鹿がいた(そういう意味では「命を賭ける」とメディアのインタビューで言っていた某本田先生の副総裁就任からの目標未達でリアルハラキリショーという流れも味わいがあったのではないかと思いますが後述のように若田部さんいきなり置物化したので残念)訳でございますから、その流れをもってすればこの「達成時期を明記」というのが入って何か片岡さんの提案の筋が通っているジャンという話になってしまう訳ですな。

まーそれって要は総括的検証やったあとYCCになった時に実際は2%のコミットメントはそのままにして達成時期のコミットメントをしらっと外し、できるだけ早期に達成という中に「経済・物価・”金融”情勢を踏まえ」と金融を入れることによって、何でもいいから無理くり2%達成というのを亡き者にすることによって時間のコミットメントを無効化して早期達成を実質的には気持ちの問題にした、というのがあるのですけれども、あの当時いきなりそれを言うとバックラッシュが起きたらエライコッチャというリスクは当然感じたでしょうから、そこを1年半かけて風化するまで待ってからのしらっと文言削除になった訳で、そこに意地悪い言い方をすれば誤魔化し成分が入っているので、片岡さんの反対理由が御尤もに見えてしまうという話な訳ですな。

ということは、つまり今まではその部分が有耶無耶になっていましたが、今回の文言削除によって時間的コミットメントを行っていない、というのが明確になる中で、片岡さんの提案って時間的なコミットメントを重視(書き方が微妙で時間にコミットしていないけど早期達成とも読めるのでどっちの線で反対しているのかが不明確なのだが)しているように読めるので、今回の時点で明確に片岡路線は排除された形で、これはもう永久に反対提案芸人として頑張っていただくしかないかなという感じになりましたな。もちろん片岡さん降りれば提案芸人ではなくなりますが、降りようがないと思うし降りたらここまで来て降りたら恥ずかしいと思う。


・・・・・・・・さてさて、それは兎も角として今回は新正副総裁になって初回のMPMということで、ベンダーなどでは若田部副総裁が緩和的な提案あるいは提案への賛同あるかという話題もあって、お前ら何言ってるのと鼻でせせら笑っておりましたら案の定な結果となってしまいまして、この方は一体全体何をしに日銀副総裁になったのかさっぱり理解致しかねる状態に初回からなってしまいましたので、置物2世を襲名して頂くのが良いのか、まるで動きませんので床の間のガラスケースの中の博多人形ということで博多人形先生で良いのか、木彫りの熊でも何でも良いのでしょうが、ちゃんと二つ名を考えてみようかとは思います。まあこんなもんでしょ。


〇ということで本当は今日は総裁会見ネタのつもりだったのですが・・・・・・・・・・

何か前段の方でアタクシの手が勝手に動いて悪態のような文字列を並べるもんだから時間が無くなってしまうというタイムマネジメント不在のアタクシなのでした(大汗)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2018/kk180501a.pdf

質疑応答なのですが、事務方の人が質問文をコンパクトにしてくれて趣旨が分かりやすくなっておりますので、物凄い勢いでこの会見要旨は見物物件としては秀逸なものになっております。でもって時間が無いので質疑を(珍しくちゃんと正座して・・・・はいないけど)聞いていた時に一番アタクシがのけぞったのはこの質疑応答でした。(会見質疑詳しいのは連休中あるいは明けの一発目にでも)

『(問) そのうえで、今回の展望レポートで、先程おっしゃった政策委員の中心的見通しで、2019年度、2020 年度のCPIは 1.8%ということで、やはり 2% と比べると少し力強さに欠けるというのが正直なところだと思うのですが、それでも2019年度頃には2%程度に達する可能性が高いと黒田総裁はお考えなのでしょうか。また、その理由についても少し頂けると助かります。 』

という質問の答えの後半なんですけどまあ前半から引用します。

『(答) 数字はその年度の平均ですので、年度の中で一定の動きはあり得ると思います。2%程度に達するという見通しであるといってよいと思いますが、 これはあくまでも見通しですので、金融政策運営のための達成時期のようなものではありません。』

というのを今回文言削除で示した、という話と「お前それ最初の話と違うじゃないかふざけんな」という質問の応酬が今回は最初から延々と行われていて鑑賞物として面白いというのは後日。

『欧米の中央銀行も経済見通しや物価見通しを示していまして、過去の動向、特にここ数年の動向をみますと、皆、物価の見通しをずっと先送りしてきています。それはある意味で当然でして、原油価格が 110 ドル、 120ドルから30ドルを割るくらいまで大幅に下落したというのは世界的な現象ですし、先進国の状況をみましても、経済成長は順調で、労働需給も引き締まっているわりには、賃金や物価の上昇が従来と比べるとやや鈍い状況にあります。』

えーっとすいません、個別物価と一般物価は別の話であって、日銀のQQE政策は一般物価を上げるために政策をしていてそれが達成できるからQQE導入したんじゃなかったでしたっけ、と思いますし、そもそも論として、欧米と日本の違いとして、欧米はインフレ予想が概ね2%程度でアンカーされているのに対して、日本はインフレ予想を引き上げて2%程度にアンカーさせなければいけない、と言っていた筈だし、QQEはその期待に直接働きかける、というコンセプトが画期的だという触れ込みだった筈で、今になってこういう部分で「欧米だって先送りしているから日本の先送りも当然」とか言われましてもお前は何を言ってるんだという話になりますわな。

もちろん、総括的検証とYCC導入で本当はそのコンセプトは崩れてしまったのですが、負けを認めないで転進に次ぐ転進というような感じで誤魔化し増築をやっていて最初のを負けたことにしていないから今回のような集中砲火になってしまうのですけどね、会見は火力十分で久々に面白かったし

『また、いわゆるフィリップスカーブがシフトしたのではないか、あるいはフラット化したのではないかという議論も世界的に行われております。そういう意味で、経済や物価の見通しは一定の不確実性があるものですので、従来同様、 政策委員の大勢見通しを示すとともに、政策委員の経済・物価見通しのリスク評価というものも具体的に示しているところです。 』

とか言ってますが、そもそも2%の安定目標達成にはフィリップスカーブの上方シフトによって、コンセプチュアルに言えば需給ギャップがゼロ近辺に対応する物価が2%になる必要があり、それって期待への働きかけじゃなかったでしたっけ、という中でしらっとフィリップスカーブが思うようにいきませんがそれは世界的な問題とか言われましてもお前は何を(以下同文)。

というのが一番ズッコケましたが、詳しくはFOMCは明日の朝ちゃんと起きてちゃんと気合を持ったら午前中にネタにしまして、そのあと展望レポート関連を休み中のどこかで打ち込んでいこうかと存じます。



2018/05/01

お題「今日から国債T+1ですな/展望レポートの今回の2大見どころだけ雑談で勘弁」

ここもホイホイと閣僚が変わりますのう。
https://jp.reuters.com/article/britain-politics-rudd-idJPKBN1I10EA
2018年4月30日 / 15:17 /
ラッド英内相、移民への対応巡り引責辞任 政権に一段の打撃

〇さて今日から国債決済T+1

どうなるんでしょと思いますが、毎度のごとく日本の得意技でちゃんと手間暇かけて事務は回すのでしょうが、参加不参加混在するし、カットオフタイムの関係でも混在するし、まー色々と七面倒な割にこのT+1って何のためにやっているんだっけ感は強いですな。

金曜のロイターさん
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1S446R
2018年4月27日 / 17:34 /
〔マーケットアイ〕金利:5月日銀国債買入は全ゾーンで据え置き、夜間の国債先物強含み

『17:22> 5月日銀国債買入は全ゾーンで据え置き、夜間の国債先物強含み

日銀は27日、5月から適用する「当面の長期国債買い入れの運営について」を公表した。1回当たりのオファー額レンジ、買い入れ回数ともに、全ゾーンで4月から据え置かれた。

マーケットでは「市場がボラタイルになっていただけに1回当たりのオファー額のレンジが据え置かれることは想定通りだ。市場に安心感を与えそうだ」(国内証券)との声が出ていた。夜間取引の長期国債先物は強含みで推移している。

日銀は、国庫短期証券の買い入れについて、金融市場に対する影響を考慮しながら1回当たりのオファー金額を決定すると公表した。また、5月1日に「国債の決済期間短縮化(T+1化)」が予定されている。市場参加者のT+1化への円滑な移行を支援する観点から、日銀は現時点で予定している5月の国庫短期証券の買い入れ日程を公表。5月1日、7日、14日、21日、28日の実施を予定している。』(上記URL先より)

輪番予定表はこちらですが上記記事にありますように、
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/rel180427d.pdf

『3.国庫短期証券の買入れ

金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、金融市場に対する影響を考慮しながら1回当たりのオファー金額を決定する。 なお、5月1日に「国債の決済期間短縮化(T+1化)」が予定されているが、 市場参加者のT+1化への円滑な移行を支援する観点から、5月の国庫短期証券の買入れについては、現時点で予定している買入れの日程を示すこととする。

具体的には次のとおり。

5月1日、7日、14日、21日、28日 』

ということで、とりあえず日程を事前アナウンスしたのだがこれは短国買入アナウンスしておかないと(基本的に日程は読めるとは言え一応打ち込まれないと分からない)オペに入れる前にGCで出しちゃうとかそういうことでもあるのでしょうか教えて偉い人。

なお、日程を見ますと本日は短国買入以外に長期と何かの輪番が実施される模様で、初日からやりますな(ってまあ5月は日程詰まるから仕方ないんですけど)という感じですな、まあ皆で事務量を増やして誰得決済なのですがどうなるやら。


あと、記事にもありますように今回輪番動かさなかったのは順当オブ順当で、この前の金利低下局面で輪番をピクリとも動かさなかったのにそこから金利が上昇する中で輪番減らしたら意味プーにも程があるプレイだし、まあカジュアルに「為替連動ですかそうですか」と言われてしまうまでの事ではありますので、そらもう不動の地蔵モードで行くしかありません。なお、ロイターさんに悪態をついている訳ではないですけれども、さっきの記事の中で「市場がボラタイルになっていただけに」ってコメントがあって、あの値動きでボラタイルとかいうようになってしまったとはどんだけ生体反応の無い債券市場だと悲しみを禁じえませんな、先生!大変なの!うちの債券市場ちゃんが息をしていないの!!!!


〇決定会合レビュー世間話:展望レポートただし基本的見解

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1804a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1801a.pdf(前回)

前回HTML版が出てこりゃ便利と思ったのですが、今回はHTML版が無いですな(あとからでるの?)。


まあ今回の一番目立ったのは2か所でして、皆さん既にご案内の通りだし総裁会見ではそればかり質問されて黒田総裁は武蔵坊弁慶状態になっておられましたが。


・「2%程度に達する時期」の削除

展望レポート出るじゃないですか、でもって重大な変更があれば鏡(概要)の所に出るのですが、まあ今回って基本的にそんなに大変更するのって(人が変わったところなのでチャンスなのだが政治情勢が荒海の中で日銀が何も飛び出していくことはないから無理はしないのが正しい)考えにくいんですよね。でもってそのあと本文を読んでいくのですが、さてそこで『(2)物価の中心的な見通し』のところですよ。いずれも本文4ページになります。

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。 2019年度までの物価見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である6。 』(今回)

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。 今回の物価の見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。2%程度に達する時期は、2019 年度頃になる可能性が高い6。』(前回)

キター!!!という形ですが、実はこの「物価が2%程度に達する時期」ですけれども、

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1607a.pdf(2016年7月展望レポート)

『この前提のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」 3である2%程度に達する時期は、中心的な見通しとしては 2017年度中になるとみられるが、先行きの海外 経済に関する不透明感などから不確実性が大きい。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる。』(2016年7月展望レポートより)

というのがありますが、さてこの文言はどこから取っているでしょうか????と言いますと、これは同じく基本的見解の鏡となる『<概要> 』部分に掲載されていたわけですよ。

でもってその次の2016年10月展望レポートでは、

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1610a.pdf(2016年10月展望レポート)

『今回の物価見通しを従来の見通しと比べると、中長期的な予想物価上昇率の弱含みの局面が続いていることなどから、やや下振れている。なお、2%程度に達する時期は見通し期間の終盤(2018 年度頃)になる可能性が高い。』(2016年10月展望レポートより)

となったのですが、この時から鏡の部分から本文の中へと「降格」されまして、今回ついにそれが外れたという展開になった訳ですな。


ではこの2016年7月→10月って何でしたっけと言いますと、この間に「総括的検証」「YCC政策導入」というのがありまして、総括的検証の結果何故か知りませんが「長短金利操作をすると物価目標の達成によろしい」という事になりまして(まあ実際にそれで1年半やってこのテイタラクではありますがそれはさておき)、その次の総括的検証を受けてその後に出てきた展望レポートでは堂々の2%程度到達する時期先送り、というのをやっている訳ですが、当然のように追加緩和の実施は行われなくなりました。

でもって今回(今日出てきますが)総裁会見で当然のようにツッコミを食らっていましてこれがまた十字砲火モードで中々泣けてきますが、今回の当該文言削除の背景として説明していたのが「コミュニケーションのわかりやすさ(意訳)」というものでして、「展望レポートで出しているのは経済物価見通しであって、この「見通し」が後にずれるからと言って即追加緩和という風に捉えられると市場とのコミュニケーションにおいて齟齬が起きてしまいます。見通しは見通しであって、政策判断として追加緩和などを実施するのかどうか、という話は、”2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタム”が維持されているかどうかの判断がポイントであって、そのモメンタムが維持されていると判断できれば政策は現状のままが物価目標達成のために最適であり、モメンタムに変調が生じた場合には何らかの調整が必要である。

とまあ日銀ではそういう理屈になっているのですが、この理屈に即して考えた時に、展望レポート本文中に存在する「2%程度に達する時期見通しの記述」は、政策達成までの時間と考えられてしまうリスクがあり、現にこの時期が後ずれした場合に追加緩和に対するトークが聞かれたり、達成時期後ずれを政策の失敗と捉えるような向きも見られる(モメンタムが維持されていて今後の2%達成に向けたメカニズムが維持されているのだから現時点で失敗とか判断するのは適切ではない、ということですな日銀の屁理屈としては)ので、それらの事を勘案して、市場などに対して紛らわしいメッセージとなる当該文言を削除しました。

てなのが総裁会見を通して読んだ日銀の理屈な訳ですな、うんうん。


・・・・・・・・・・えーっとですな、そもそもあんさんらってQQE打ち込むときに、

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/ko140603a.htm/
【発言要旨】日本経済の潜在成長力と「量的・質的金融緩和」
韓国中銀主催国際コンファレンスにおける冒頭発言の邦訳
日本銀行副総裁 岩田 規久男
2014年6月3日

『「量的・質的金融緩和」には、大きく二つの柱が存在します。

第一の柱は、2%の物価安定目標の早期達成についての「コミットメント」です。具体的には、「2%の物価安定目標を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」と、目標達成までの期限も示しながら、明確に約束しました。

第二の柱は、第一の柱であるコミットメントを「具体的な行動で示す」ということであり、残存期間の長いものを含めて巨額の国債買入れを行うこと等によって、マネタリーベースを2年間で2倍に拡大することが中心となっています。「量的・質的」という言葉が示すとおり、日本銀行のバランスシートの「量」の拡大と「質」の変化の両面を用いた金融緩和政策といえます。』(上記2014年6月韓国での岩田副総裁(当時)の講演より)

って言ってましたわな。つまりどういうことかと言いますと、少なくともQQE導入当初においてはこの展望レポートに示す物価2%程度への達成時期というのは先代置物師匠の言うように「目標達成までの期限を示しながら」というものだった訳ですよね。

然るに、総括検証の後にしらっと本文に移動させたと思ったら、今回副総裁が変わったタイミングでしらっと本文から外すというプレイに出るわ、会見での説明でも明示的に「あれはただの将来の予想数値」ということで、QQE当初のお約束と違うんですけどどうなっているんでしょうか。

いや勿論当初のお約束通りにできませんでしたゴメンナサイ副総裁の中曾が頭を坊主にしてお詫びしますので新しい政策枠組みとその考え方がこうなっております、とか言って新しい説明をしていただければ別にまあ置物理論を提唱した言い出しっぺは市中引き回しの上江戸所払いを申し付けて(獄門台と言おうと思ったがすんでの所で思いとどまったワタクシを褒めてほしい)落とし前をつけて、きっちりけじめつけてくれれば何も変なところで変な事せんでもエエジャロという感じではあるのですが、間違ったというと死んじゃう病に掛かってしまっているので、折角総括検証やっても置物リフレマネタリーベース直線一気理論とか、期待に直接働きかける理論とかに無理がありましたサーセンって言わないで、前のを肯定しながら話をすすめるからロジックが完全崩壊しているだけのお話で、国会答弁にあわせて話を取り繕おうとして無茶苦茶になってしまったどこぞの国のスットコドッコイを彷彿させる残念さを示しております。


ちゅーことでですね、まあつまり結局のところ、実際にはYCCになった時点で「時期のコミットメント」というのは完全に外れてしまっているのですが、話をややこしくしているのは相変わらずそんな中でも当初の「2年程度を念頭にできるだけ速やかに」というののさすがに2年程度というのは無くなったのですが、「できるだけ早期に」が残っているのが話をややこしくしていることで、これは共同文書の方にも文言が入ってしまっているので更にややこしいのですけれども、これを「気持ちの問題」に如何にグレードダウンさせるのかが難しくて、最初の時点の2年で2%の印象が強いだけに、この「できるだけ早期に」も現状では「心の問題」であるのに、「コミットメント」とされますと、やはりそれって7月展望レポートで見通し先送りになったら追加緩和しなくて良いのかよ的な筋論が出てくるということで、永遠にロジックがグダグダのまま推移することになるでしょう。


・・・・・・・ということで悪態ばっかり申し上げていますが、この文言削除から読み取れるのは「日銀は追加緩和にしろ金融政策の微調整にしろ、動く予定は全然ない」という事を示しているという風に解釈するのがまず通常の読み方になると思います。2%程度に到達する時期が先送りになっても追加緩和しないし、物価安定目標の達成時期がいつかという話をしていないだけに、出口政策について聞かれましても「何のことでしょう今の物価を見てください寝言でも仰せなのでしょうか」という話になりますので、要は日銀当面様子見地蔵のまま雨が降っても雪が降ってもヤリが降っても様子見(なにせ「モメンタム」ってのは使い勝手が良いですからね)という事になるでしょうな。



・見通し数値ェ・・・・・・・・・・・・・・

本文8ページと9ページに見通しの表とリスクバランスチャートがあります・

でもって刈込入りレンジとメディアンは以下の通り(見るまでもないと思いますが俺様備忘用)

2018 年度
GDP:+1.4〜+1.7 <+1.6>
コアCPI:+1.2〜+1.3 <+1.3>

1月時点の見通し
GDP:+1.3〜+1.5 <+1.4>
コアCPI:+1.3〜+1.6 <+1.4>

2019 年度
GDP:+0.7〜+0.9 <+0.8>
コアCPI:+1.5〜+1.8 <+1.8>
(消費税除く)

1月時点の見通し
GDP:+0.7〜+0.9 <+0.7>
コアCPI:+1.5〜+2.0 <+1.8>

2020 年度
GDP:+0.6〜+1.0 <+0.8>
コアCPI:+1.5〜+1.8 <+1.8>
(1月時点の見通し無し)

メディアンの数字は何かこう無理繰り横ばいにしているのですが、9ページのリスクバランスの認識の所をみますと、特に物価に関しては2020年とか一番上の2%にしている変態仮面だけはリスクバランスで出していますけれども残り全員が下振れ、2019年だって下向き▼のオンパレードとなっていて、これはどう見ても下方修正必至で次回の展望レポートで物価見通しが引き下げられるに100ドラクマといった風情の内容。

あとそれから、成長に関しては一応今回上がっているのですけれども、よくよく見ると同様に下向き▼が増えているし、今日間に合わないから後でやりますが、展望レポート基本的見解中の記述を見ると、今回の先行き見通しって「基調として」的な毎度おなじみのヘッジクローズがてんこ盛りになっていまして、記述を見てもそんなに強い内容になっているとは思えない書き方で、「成長率は上方修正しています」という結果になっているのだが違和感がががががが。

ついでに申し上げますと、物価上昇のメカニズムに関しては相変わらずなんですが「モメンタム」が維持されているので物価は上がりますと来たもんだなのですが、需給ギャップに関しては成長率そのものが、2019年度からは潜在成長率並み程度で推移する(日銀の潜在成長率の推計が0%台後半で、見通しの実質GDPもそんなもんで推移ですわな)という中で、コアCPIってそんなに簡単にホイホイと上昇してくれるもんなのですかというのが疑問オブ疑問であって、おそらく労働需給ギャップのタイト化というロジックでやっているのでしょうが、潜在成長並みの成長しかしない中で労働需給がタイト化していくとそれは賃金に跳ねて前向きな循環になるよりも企業のコストカットに向かったり、賃金には反映しないけど販売価格は上げるとか、そういう話になるのではないかと頭が悪いのでつい思ってしまうのですが、そこのメカニズムってどうなっているんでしょ。


ということで、今回は「どう見ても短期的な目標達成を諦めたのに往生際悪い説明を総裁会見では行っている2%到達時期文言削除」と「頑張って物価の見通しを維持したものの、どこからどう見ても次回の下方修正待ったなし」のまたまた先送りとなる2%達成、というのが基本的見解の中の2大読み処となったのではないでしょうか。


つーことで会見ネタは明日。基本的見解本文の詳細比較に関しては明日か連休の早いうちに(今年こそはちゃんとやりますよー)。