トップページに戻る
月別インデックスに戻る
(各日付の最初にラベルを「171002」というような形式でつけていますので「URL+#日付(6桁表示)」で該当日の駄文に直リンできます)
2017/10/31
お題「FSRというかFMRから引用大会」
引き続きですか。
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1N55YS
2017年10月31日 / 05:05 /
米金融・債券市場=利回り低下、次期FRB議長にパウエル氏指名の公算との報道で
なお円債。
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1N52JL
2017年10月30日 / 15:19 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小幅続伸、長期金利変わらず0.065%
FOMCと日銀待ちなのでFSRでも鑑賞の続きをば。
○FSRだけど旧FMRの辺りを確認の巻
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr171023a.pdf
金融システムレポート(2017年10月号)
本文の最初の『U.金融市場から観察されるリスク 』は昔の金融市場レポート(FMR)部分になります。段々こっちの方は寂しい感じになっているのですけれどもまあ確認をば。
『本章では、主として 2017 年度上期中の動きを中心に、国内外の金融市場の動向を確認し、金融市場からみたリスクの所在について点検する。』
・まずは海外市場だが・・・・・・・・・・・
へえへえそうですか。まずは『1.国際金融市場』です。
『国際金融市場では、北朝鮮情勢など地政学リスクに関する懸念を抱えつつも、世界経済の緩やかな成長と堅調な企業業績が続くなか、ボラティリティは歴史的な低水準を維持している。FRB
が利上げを進めるもとでも、新興国市場の動きを含め国際資本フローに大きな変調はみられていない。先進国の長期金利が低位で推移するもとで、株式・社債などのリスク性資産の価格はグローバルに水準を切り上げていった(図表U-1-1)。もっとも、低ボラティリティ環境の継続は、投資家による一層のリスクテイクを促す可能性もあり、これが先々の市場の不安定化要因になることがないか注視していく必要がある。』
ということで、『低金利と低ボラティリティ』の方ですが、
『米国では、本年入り後 FRB が3月と6月に利上げを行ったが、インフレ期待が落ち着いていることなどから、長期金利は横ばい圏内で推移した(図表U-1-2)。』
インフレ期待は常にアンカーされているというのが彼らの定義なので、これはインフレ期待が落ち着いているのではなくて、先々の物価上昇予測が弱いのと、市場の見る長期的な均衡金利水準が低下しており、FRBメンバーの示す長期的な均衡FFレートについても低下傾向を示唆する発言などがみられることであって、「インフレ期待が落ち着いている」で纏めるのは雑です。
『欧州では、政治情勢の不透明感から長期金利(対独スプレッド)が一時上昇する動きもみられたが、4月のフランスの国政選挙後は総じて落ち着いている(図表U-1-3)。また、6月下旬以降、ECB
による金融緩和縮小を巡る思惑等から長期金利に上昇圧力がかかる局面もみられたが、均してみればレンジ圏内の動きで推移した。』
はい。
『先進国の長期金利が低位で推移するもとで、世界経済は緩やかな成長を続けている。また、企業業績が堅調であるほか、インフレ期待が落ちついていることもあって、先行きの経済見通しの不確実性は抑制された状態が続いている。』
長期金利が低位で推移するのとインフレ期待が落ち着いているのは同義反復なのと、先行き経済の不確実性は景気そのものよりも地政学的リスクを含めた政治動向なので説明が雑。
『こうしたもと、各種資産価格のボラティリティは歴史的な低水準を維持している(図表U-1-1)。北朝鮮情勢など地政学リスクの高まりから、インプライド・ボラティリティが一時的に大幅に上昇する局面もみられたが、ヒストリカル・ボラティリティは低下傾向を続けており、現下の国際金融市場は安定しているようにみえる(図表U-1-4、U-1-5)。』
用語を使いたいのは分かりますが、IVは市場の期待、HVはプライスアクションの結果なので、後者のHV云々というのは「実際にはリスクは高まらずに市場の値動きが限定的だった」という説明をしないとこれではオプションに強くない人が見たら何のこっちゃとなる。
・・・・・とか何とか申し上げているうちに次の『リスク性資産の価格上昇』である。
『低金利と低ボラティリティの継続は、グローバル投資家のリスクテイクを後押しし、リスク性資産の価格は上昇基調を辿った。』
はい。
『株価は、米国では最高値圏、欧州では高値圏で推移し、バリュエーション指標(PER)をみても過去の平均をはっきりと上回る水準となった(図表U-1-6)。クレジット市場においても、低格付け先を含めて投資家の資金流入が進み、社債スプレッドは低水準で安定的に推移した(図表U-1-7)。特に、格付けが低い社債ほど、社債スプレッドが大きく低下する傾向がみられ、これには絶対利回りを重視する投資家の旺盛な投資需要が背景にある(図表U-1-8)。』
『新興国市場では、昨年末にかけての米国の長期金利上昇を受けて、資本が流出する動きもみられたが、本年入り後は新興国経済が全体として回復を続けるなか、資本の流出超が続いている(図表U-1-9)。株価はアジアを中心に大きめに上昇しており、社債スプレッドも低水準で推移している(図表U-1-10)。』
ということですので・・・・・・・・・・・・
・市場のマクロプルーデンス的観点からのリスクに関する話が微妙にこうツッコミどころが多い
次の小見出しが『リスクのリプライシングと資金フロー巻き戻しの可能性 』である。
『このように、2017 年度上期のリスク性資産価格は総じて上昇したが、投資家のリスク認識に緩みが生じている可能性も考えられる。』
ほうほう。
『例えば、米国では、オートローン(自動車購入者向け貸出)を裏付資産とした資産担保証券(オート
ABS)市場において、ローン延滞率が上昇するなかでも、対国債スプレッドが低下している(図表U-1-11)。』
『また、株式オプション市場をみると、先行き1か月程度の予想変動率を示すインプライド・ボラティリティが低位で推移している一方、株価が大幅に下落するリスクの相対的な大きさ(将来株価の分布の歪み)を捉えた指標は上昇傾向を辿っている(図表U-1-5)1。』
本文4ページの中で図表U-1-5というのがあって、『図表U-1-5 米国株価のインプライド・ボラティリティと歪み(SKEW)指標』ってグラフがあるのですが、いやすいませんアタクシが頭が悪くて無知蒙昧なだけだったらゴメンヤデなのですが、この図表ってVIXとSKEWとかいうのが出ているのですが、VIXはまだしもSKEWとか言われましてもどうやって計算しているのかの定義(いやVIXも定義入れた方が良いと思うのだが)なくて『2.SKEW
は CBOE 算出。』とか言われてもワケワカラン。
というかですね、
『株価が急落するテールリスクが相応に意識されながらも、株価の上昇が続くと、株式投資による超過収益の拡大が自己実現化し、それがまた新たな投資家を呼び込むという循環を生み出していく傾向がある。そうした過程では、投資家のリスク認識も緩みやすいと考えられる。』
って言ってるんですが、このSKEWという数値がホイホイ上がっていてその定義が良く分からんからアレなのですが、上記の説明だと「株価が急落するテールリスクが相応に意識され」ている状態なのが市場のプライシング(たぶんオプションか何かなのでしょうかねえ)に反映されている、ということですが、本当の本当にリスク意識が緩むのは「This
time is different」とか言っている時であって、テールリスクが相応に意識されているのにリスク認識も緩みやすいという結論になるのは語義矛盾も甚だしいので、ここは何を言いたいのかが分からんのでもう少し丁寧に書いて頂きたいのだが、どうせ本題のFSRとの分量調整上端折ったんでしょうとは思いますけどちょっとそれにしてもアカン。
『こうした点を踏まえると、先行きについては、グローバルな資金フローや資産価格に巻き戻しの動きが生じ、それが国際金融市場全体に影響を与えることがないか注視していく必要がある。』
というのは分かる。
『低ボラティリティ環境が長期にわたって継続すると、レバレッジの拡大やヘッジを伴わない金融活動の活発化など、過度なリスクテイクにつながり、先々の金融市場を不安定化させる可能性も考えられる。』
FMR部分の記述を見ていてアチャーと思った部分って既にいくつか申し上げましたが、ここの記述があーあーあーあーという感じなのでまたも悪態。
えーっとですね、「レバレッジの拡大」というのは過度なリスクテイクに他ならないですし、レバレッジの巻き戻しによって資産価格の逆回転に拍車が掛かるという加速装置になるのは全く仰せのとおりですが、「ヘッジを伴わない金融活動の活発化」が過度なリスクテイクに繋がる、という表現が「ああ頭の良い座学の人が言う話だわ」と思ってしまう訳ですよ。
つまりですね、本当の本当にリスクを落としたければそのものズバリの反対売買を実施してポジションを減らすのが正しいあり方であって、相関がありそうなもので蓋をしたように見えても状況の変化によって蓋になっていない場合もありますし、大体からして市場が壊れてしまうような時はヘッジでアンコになっているポジションが収拾つかなくなるとか良くある話で、ヘッジをしたと思って安心する行為の方が非常時には宜しくないのですけれども、まあそういうのはその手の碌でもない時にたまたま現場に居合わせてないと中々分からんじゃろうなと思いますし、まあそういう座学的な「ヘッジはできていますか」みたいなサムシングから起きる悲劇が15年(内務省検閲により削除)。
まあそういう風に言うとあまり賛同されないのですけれども、確かに見た目のリスク量自体は堂々裸ロングの方が大きいのですが、リスク管理という意味では「リスクの所在と量を把握しておく」というのも大事だと思う訳で、色々と相関だの何だのを取った結果リスク量が見た目少なくてもそのポジションがやたらめったら複雑になっている場合というのは、この手のシステミックリスクを管理するという観点で見た場合、本当にリスクが抑制されているのかというのはまた別(多分見えない所に変なリスクがあって顕在化しなければラッキーという状態ですし、顕在化するとあばばばばーのゲロゲロマーライオンになってしまうし、リスクと認識してない所からだから悲劇が起きる)だったりすると思うのよね。
という訳でやたらうだうだと噛みついてしまいましたが、この部分特に気になったのでまあそんなことで続きに参ります。
『また、高配当・低ボラティリティファンドへの資金フローをみると、これまで、長期間にわたって流入超が目立つ姿となっていた(図表U-1-12)。こうしたファンドへの資金流出入は、企業収益等のファンダメンタルズだけでなく、その時々の市場金利やボラティリティの動きに影響されるため、市場動向次第で資金フローが大きく変動する可能性がある。』
まあ言いたいことは分かるのだが、もう一段踏み込んで頂くと、低リスク型という形でヘッジを入れながら高配当みたいな投資も相関がおかしくなると色々と弊害がみたいな話を入れた方が良いかもしれません。結局この手のものって「リスクが少ないと思って資金を突っ込んでいる」ものなので、相関などが崩れてリスクが大きくなった場合に「そんな筈じゃなかった」ということで大変な事になるというのが、マクロプルーデンス的に見た場合の留意点だと思うの。たぶん上記の部分ってそういう事を言っているんじゃないかなとは思うのですが、一方でさっき噛みつきましたように、「ヘッジを伴わない取引」をリスクが大きい(そらヘッジしてない分市場価格変動に対する感応度は高いのだが)とか言っている辺りと比較してみるとうーんこのという感じも否めない。
つまりですね、市場から来るプルーデンス的なリスクっていうのは、もちろんユーフォリアから発生するのはその通りなのですが、崩壊を加速させるのって過度なレバレッジによるポジションの急速なオフセットですけれども、「ヘッジしているので低リスク」みたいな取引から相関が崩れて隠れたリスクが顕在化でこんなはずじゃなかった的な物も効くと思うので、何でもかんでもヘッジをしておけばリスクが減るという物でもないという認識もして頂きたいなあと(いやまあ分かっているのかも知れませんけど)思う所なのでありました。
『さらに、資金フローの変動について注視すべき点の一つとして、国際金融市場における
ETFのプレゼンスの拡大が挙げられる。』
ほう。
『ETF は広範な投資家が低コストでパッシブ運用できる受け皿として、国際金融危機後、運用残高が急拡大している(図表U-1-13)。こうしたファンドは、個別銘柄でなくインデックス構成銘柄全体を売買するため、個別銘柄間の連動性を高める方向に作用する、との指摘がある。』
『足もと、米国株式市場においては、PER 等のバリュエーション指標が過去の水準と比較して割高となってきており、市場参加者の警戒感も高まっている(図表U-1-6)。今後、特定のセクターの株価下落などをきっかけに、全面的な資産価格の巻き戻しの動きにつながることがないか、注視していく必要がある。』
別にETF買わなくても結局株式なら株式にアセットアロケーションが来るのであれば同じような気もしますし、個別銘柄間の連動性を高めるというのはそうかも知れないので、イマイチそこは良く分からんのですが、そういう風に海外のETF市場について注視していく必要があるという御認識であれば、その前に自分の所でやっているETF買入に関して何らかの認識を示した方が良いのではないか(って出来ないのは分かって言ってますので念のため)と存じますが如何でしょうかねえ(ニヤニヤ)。
・なお国内の方があっさり味だがとりあえずここは悪態でしょというのが後に来ます
次が『2.国内金融市場』で本文8ページから。
『国内金融市場では、長短金利操作付き量的・質的?融緩和のもとで、短期金利、長期金利とも、概ね安定的に推移している。株価は緩やかに上昇し、社債スプレッドは低い水準での推移を続けている。』
へいへい。
てな訳で最初が『短期金融市場』である。
『短期金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。無担保コールレート(O/N)や
GC レポレート(T/N)は概ね−0%台前半で推移しており、ターム物レートも全体としてみればゼロ%近辺ないしマイナス圏での推移を続けている(図表U-2-1)。』
そらそうよ。
『やや仔細にみると、国庫短期証券利回りは、振れを伴いつつもマイナス幅を緩やかに縮小させた。これは、@日本銀行国庫短期証券の買入残高を徐々に減少させたことに加え、A為替スワップ市場においてドルの出し手(円の取り手)である海外投資家が、ドル調達プレミアムが低下する局面でドル放出を減少させたことから、円の受け入れも減少し、結果として円の安全資産需要が低下したことが影響している(図表U-2-1)。』
Aはその次に説明があるけれども、この書き方は表現として違和感があって、確かに海外の円調達で言えば上記のとおりなのですが、背景がその次にあるものなので、最初の時点で「以下のような状況の変化によって為替スワップ市場でのドル放出が減ったから」というのを入れないと、上記の表現だけだと海外投資家が主体的にドル放出を削減したように読めてしまうし、ワシらは分かるけどメディアとかが勘違いしてここだけ切り取るとお前は何を言ってるんだとなってしまうのでちょっとどうなのよと思う。
『なお、本年入り後、為替スワップ市場におけるドル調達プレミアムが縮小している背景には、本邦金融機関において外債投資を抑制する先が増え、ドル調達のニーズが低下していることなどが影響している。』
こっちを先に書くべき。
『もっとも、FRB の利上げによりドル LIBOR が上昇するもとで、ドル調達コスト自体は引き続き高水準で推移している(図表U-2-2、U-2-3)。』
でもって次が『長期金利とイールドカーブ』です。
『国債イールドカーブの形状をみると、長短金利操作付き量的・質的金融緩和のもとで、現行の金融市場調節方針(短期政策金利:−0.1%、10
年物国債利回り:ゼロ%程度)と整合的な形となっている。短めのタームでは−0%台前半での動きとなるなか、10
年物は概ねゼロ%近傍のプラスの領域で、また 20 年物は概ねゼロ%台後半で、それぞれ安定的に推移している(図表U-2-4、U-2-5)2。』
一瞬ビックリするので20年ものの表現は何とかならんのか(苦笑)。
というのは良いとして次ですよ次。
『国債市場の流動性・機能度』
『国債市場の流動性については、悪化・改善双方の動きがみられる3。』
>国債市場の流動性については、悪化・改善双方の動きがみられる
>国債市場の流動性については、悪化・改善双方の動きがみられる
>国債市場の流動性については、悪化・改善双方の動きがみられる
債券市場関係者に喧嘩売ってるの??
『取引高をみると、長国先物や現物国債のディーラー間取引が減少傾向を辿ったあと、振れを伴いつつも低水準で推移しているほか、現物国債の対顧客取引は減少傾向が続いている(図表U-2-6)。』
『一方、ビッド・アスク・スプレッドは、値幅が小さくなるなかで、縮小方向の動きとなっており、市場の厚さや弾力性の指標にも、改善方向の動きを示唆するものがみられている(図表U-2-7、U-2-8)。』
それは流動性改善ではなくて単にプライスアクションが無いからなのですが。
『この間、債券市場サーベイによれば、国債市場の機能度の低さを指摘する市場参加者は引き続き多くなっている(図表U-2-9)。国債市場の流動性については、引き続き多面的な観点から点検していくことが必要と考えられる。』
と思っているなら「改善の動きがみられる」じゃなくて、せめて「数値としては改善しているように見えるものもあるが、市場変動率の低下による可能性もあり流動性が改善したか否かについては更に検討する必要がある」とでもしておかないと、この前の黒田総裁の定例記者会見での市場関係者揃って激怒(というかそもそも会見聞くの時間の無駄だから聞かないという人も多かったりして)の発言が誘発されるのであって、こんなのどこからどう見ても流動性が高まっている訳ではないのに、データだけでそういうのをしらっと入れてしまう辺りがアヘアヘ座学マンとしか申し上げようがないですな、というお話なのでした。
最後が『為替市場とクレジット・株式市場』。
『為替相場をみると、ユーロ/円レートは、欧州政治情勢を巡る不透明感の後退や、ECB
による金融緩和縮小を巡る思惑から、円安ユーロ高方向の動きとなった(図表U-2-10)。一方、ドル/円レートは横ばい圏内で推移した。リスク・リバーサルをみると、米国の政治情勢を巡る不確実性が意識されるもとで、円高・ドル安に対する警戒感は足もとで幾分弱まっているように窺われる(図表U-2-11)。』
『こうしたもとで、本邦株価は緩やかに上昇し、日経平均株価は 2015 年央以来の
2 万円台を回復した(図表U-2-12)。足もとのドル/円レートの水準が 2015 年央比べ円高であるにもかかわらず、株価が上昇しているのは、本邦企業の収益?の改善を市場参加者がポジティブに評価していることが背景にあると考えられる。日本株の
PER が安定して推移していることを踏まえると、企業収益の改善期待に見合うかたちで株価が上昇していると評価できる(図表U-1-6)。社債スプレッドも、全体として低水準で安定的に推移している(図表U-2-13)。』
だったらその辺の資産買入に関してはどうするとか言うのが無い、というか藪蛇になるから分析をしないのは大人の事情として分かりますが、海外のリスク性資産についてリスク意識のゆるみがリスクとか言っているのに日銀様がせっせと買入を行っている日本の株式やクレジット市場に対する分析がエライあっさり味ですなあ(棒読み)。
『この間、REIT 指数は、長期金利の低下局面で指数が上昇するなど、概ね長期金利と連動するかたちで推移していたが、4
月以降はそれまで買い越しの動きを継続していた投資信託(毎月分配型)が売り越しに転じたこともあって弱めに推移した(図表U-2-14、U-2-15)。』
・・・・・・・・いや何でもないです。
ということで本日は引用大会でした。
2017/10/30
お題「決定会合プレビュー雑談/ECBドラギ会見から少々」
あーあーあーあー。
https://jp.reuters.com/article/idJP2017102801001178
#国内政治ニュース(共同通信)2017年10月28日 / 11:53
自民、野党質問の時間削減提案へ
モリカケ云々ってクローニーキャピタリズムを連想させるのではないかという話の前に国会審議に対する姿勢とか(それまでのも含めて)もまた支持を下げる要因になっていると思うのだが、「国会で質問されなければ支持が下がらん」という発想丸出しでこういうのが出てくるというのが何とも・・・・・・・・・
○決定会合プレビュー雑談
明日は金融政策決定会合2日目で展望レポートが出る訳ですが、何せ展望レポートよりも金融システムレポートの方が読み物として面白い、というような状態な時点でお察しという状況になっておりますけれども(などと悪態をついておりますが、もしここでFSRよりも見どころのある展望レポートが出てきたら光速の勢いで土下座をしないといけませんけど)、まー今回の見どころと言いましてもねえ・・・・・・・・
・片岡さんの追加緩和提案は既に勝負あり
前回反対はしたけど提案は無いという反対でデビュー戦から反対票を投下した片岡審議委員ですけれども、先日ネタにしました櫻井審議委員の金懇で思いっきり追加緩和を否定されていましたので、提案が出たとしても別にそれに賛同する人もいない上に、どういうロジック出してくるかによりますけれども、現状のロジックを覆すだけのようなものは出て来ない(足りないからもっとやれ、であればロジックは覆らない)のは明確ですな。
でまあ追加緩和提案にジンバブエ先生が尻馬に乗って賛成するかも知れませんけれども、ジンバブエ先生の場合は従来の主張をなぜ覆すのかという説明をいずれ金懇か何かですると思いますので、ただでなくさえ読んでいて怪電波発生装置として詳細に読んでいると頭痛、血圧上昇、目の霞み、疲れ目、動悸、息切れなどの諸症状が発生する素晴らしい金懇挨拶テキストが一段と素敵な物に仕上がってくれるのではないかと、そちらも楽しみです。なお、従来通り執行部提案に賛成、ということになればそれはそれで一貫した姿勢ということです(ジンバブエ大先生様は議事要旨とか主な意見とか見ているとどうも今の政策のロジックと違う変な理解をしている可能性があるのでどう転ぶかマジで分からん)けれども、その場合はもう「リフレ派内ゲバキターーーーー(・∀・)ーーーーーー!!」と格好のネタになるでしょうなという感じです。
まーあとは片岡さんがどの程度フィージブルな追加緩和提案をしてくるかでございまして、幾らなんでも就任から3か月引っ張っているので、それでド素人丸出しのフィージビリティ皆無の提案をしてくるとは思えませんけれども、これがまたアレな物を出してくれる場合はお笑い政策委員会ぶりが益々発揮されることになるでしょう。
・物価到達時期の遅れに関しての言い訳がどう出るか
今回なのですが、海外経済も概ね上方修正されるんじゃないかという勢いで来ておりますし、国内経済もそうコケる感じもしない、ということでして、まー基本的には成長率見通しは上方修正してきてもおかしくない、というか数字の方は兎も角として、アセスメントの方は上方修正してくると思うのですよね。
でもって物価の方ですけれども、こちらは相変わらずの状況が続いている訳でございまして、今回は一応達成時期について粘ると思いますが、数値に関しては徐々に手前の物価水準の確報が出ているだけに、今出ている見通しの2017年度が+0.5〜+1.3で中央値+1.1、2018年度が+0.8〜+1.6で中央値が+1.5っての少なくとも2017年度前半は終わってしまいまして、その間の数値がこの有様の中で2017年度の数字を+1%台で出す(なお展望レポートで示される数値は年度末の数字ではなく年度平均の数字です)というのはここから相当に物価がホイホイ上がらないと厳しいと思いますし、現状で除くエネのコアコアがまだ0.5%にも全然届かんという状態になっている訳ですからそらもう下げないとイカンでしょう。
・・・・・・ということでして、まあ2019年度という看板の方は残すのかも知れませんが、そんなこんなで「成長率見通しの方は若干ながらも順調に上振れするなかで物価見通しの方は先行きは兎も角として足元はちょいちょい下方修正される、すなわち物価上昇の勢いが中々出て来ない」という状態な訳ですよ今年に入ってから。
日銀の物価がこれから上がる理屈については、「需給ギャップがプラスの領域に入ってきてこれからも更に拡大、特に労働需給が引き締まっているので賃金もあがる、そうすると実際の物価が上がってバックワードルッキング的にインフレ期待も上がるから2%に向けて上昇のモメンタムがついてくる」というお話になっている訳ですが、その中で需給ギャップの方は割と順調にホイホイと改善しているので見込み通りとなっている訳ですな。然るに、肝心の物価が上がらないという状況になっていますので、これまででしたらば「インフレ期待の引き上げが中々進んでいない」という話をしてまして、そのインフレ期待を引き上げるにはどういう風にしましょうかという話が多かったのですが、最近意外に重要だなと思ったのはこの前の櫻井腹話術人形大先生の金懇でして・・・・・・・・・
『賃金・物価の改善が遅れている理由として、いくつかの点を指摘しました。改めて整理すると、労働供給の増加や企業の生産性向上に向けた取り組みといった経済の供給面の拡大が主な要因の一つだと考えています。この点は、今後の経済・物価情勢を考える上で特に重要だと思いますので、以下、少し詳しくお話しさせて頂きます。』
『改めて申し上げるまでもないことですが、こうした供給面の拡大は経済の長期的な成長力を高めます。人口が減少傾向にあるわが国にとって、成長力の強化は大変重要な課題です。成長力の低下は、財政の持続性にかかる懸念や、企業や家計の将来不安を通じた支出の抑制姿勢等にも繋がります。この点、足もとの動きは、短期的に賃金・物価を下押すとしても、経済全体としてみれば間違いなくプラスだと思います。直近の
6 四半期連続のプラス成長も、循環的な要因だけではなく、こうした構造的な変化に下支えされている面があると思います。』
『日本銀行としても、とにかく物価が上昇すれば良いと考えているわけではありません。経済の好循環が続き国民生活が豊かになるもとで、物価の安定が実現することが大事だと思います。2013
年に政府と共同で公表した声明でも、「デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現」を目標に掲げています。足もとの動きはこうした目標に則したものと評価しています。』(以上10月18日の櫻井審議委員による函館での金懇挨拶テキストより引用)
という風になっていまして、物価目標の早期達成を無理をしてでもやるつもりは無いというのを明確にしている(以前は「何が何でも早期達成」だった訳ですから隔世の感があります)のもさることながら、何が凄いってこの金懇挨拶を見れば分かりますように、「物価の改善が遅れているのは、供給面の拡大という長期的に日本経済のために大いにプラスになることをやっているためであるので何ら問題ないどころか寧ろ望ましい話である」という理屈を繰り出して、物価目標達成時期が遅れている事に関してポジティブな話までおっぱじめていることですな。
とまあそういうことで、従来だと物価目標達成見通しが遅れていく要因を「適合的期待形成の面が非常に強くて中々インフレ期待が上がってくれない」という風に評価していたので、この場合ですととにかく何か期待を上げるようにしていかないといけませんねえ、という結論になってくれるのですけれども、こうやって平然と「物価上昇の勢いが足元で弱いのは実は日本経済の成長力を高める動きによるもの」と開き直ってしまいますと、もはや追加緩和とかそういう話ではなくなる訳で、では緩和を縮小するかというとこれまた難しくて、「現在の緩和政策を継続することによって成長力を高めていく取組が進む中でデフレなどに向かわないようにしていく必要がある」という話になる、というのが中々難しい所です。まあしかし残念それは皆さんが口を極めて罵っていた白川ドクトリンだというお話でもあるのですが。
・YCCの年限が短縮化されるのでは的なお話とかについては・・・・・・・・
てなわけでございまして、何だか良く分かりませんけれどもYCCの年限が10年じゃなくて5年になるとか、マイナス金利政策をどないかするとか、その手のネタも願望とともにあったりなかったりするらしいのですが(ワシはよー知らん)、上で申し上げた理屈を日銀が駆使したとしても、残念ながら「追加緩和をする必要はない」ということにはなっても「緩和政策を縮小しよう」ということにするのはこれまたハードルのある話でして、もう一つ理屈を捏ね繰り回す必要があります。
でもってアタクシが思いつく理屈って2通りのアプローチがあって、一つ目が政策のプロコン(というか副作用論)なのですが、まあこちらの方は自己否定になるので中々簡単に副作用があるから緩和の調整を行いますということにはならんと思うのですな。でもってもう一つのアプローチは、
『このため、短期金利ほど精緻にコントロールできる訳ではありませんが、この先も、2%の「物価安定の目標」の実現のために、最も適切なイールドカーブの形成を促していくことは十分可能だと考えています。そのうえで、スムーズな金利形成を実現するためには、市場参加者とのきめ細かなコミュニケーションが必要であることも強調しておきたいと思います。』(10月18日に行われた中曽副総裁のNY連銀セミナーでの講演邦訳より)
と先日中曽副総裁が仰せになった通りで、「最も適切なイールドカーブ」に変化が生じる場合という結構な直球ネタになってしましますが、そっちのケースですが、日銀から主体的にそれをポロっと出してくるというのも難しくて、直近想像されるイベントの中で一番可能性がある(あくまでも可能性でやると決め打ちは全然出来ないけど)のは「政府によるデフレ脱却宣言」ではないかと思うのですがどうでしょうかね。
つまり「政府が正式にデフレ脱却宣言を行うほど経済物価情勢は好転しました」「好転した経済物価情勢の中で金融緩和を極端に大規模に行う必要もないのでちょっと調整しましたよ」「ああでも物価目標2%達成には成長力の強化などが必要で、その間のサポートとしての金融緩和政策はこれからも相当の期間必要です」という形でしたらワンチャンあるでとは思う(ワンチャンあるでなので本当にやるかはまた別問題)のですな、うんうん。
ということで、そういうのが出てきた時には何らかの変更というのはあるかもしれないですけれども、特にそういう動きの無い中で日銀が突如今の枠組みを動かしてくる、というのは中々出来ないと思いますので、お話としてはあったとしても実際の可能性という意味では難しいんじゃないですかね。しかも年限を変更するというのは総括検証でやった結果YCCが適切、とした趣旨を外しに行くことになりかねないので結構なハードルがあると思います。
とは言いましても、日銀の理屈捏ね捏ねマシーン(別名企画局)はアタクシのような凡下には思いもつかないような素敵な理屈を構築できるのでそこは侮ってはおりませんけど。
○ECBネタを少々
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2017/html/ecb.is171026.en.html
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 26 October 2017
・オープンエンドを何故強調するのかが良く分からん件について
中盤の方の質疑から「open-ended programme」というのを強調するのが見られまして、何か違和感があるのですよね。
質問の方から引用しますね。
『In the past you have always stressed when you were buying ユーロ80 billion
or ユーロ60 billion that there will be no abrupt end to the purchases in
order to avoid cliff effects. Now, given the new amount of ユーロ30 billion,
is that still valid? So will there be in any case a phasing out of the
purchases? Or from that level would it possible to stop them immediately
from one month to the other?』
『You've also stressed the sequencing between net purchases and interest
rate hikes. Is there also such a sequencing between interest rate hikes
and balance sheet reduction? For example the Fed in the US had always argued
that it would only start reducing its balance sheets once the interest
rate normalisation was well underway. Is that a pattern you would also
follow?』
質問の後半の方は資産買入規模を落としてきたのですが今後の利上げについての構想はあるのかという話で、引用パスしております前の方の質問でも資産買入プログラムの期間と利上げの関係はどうなっているのかというのがあって、それ自体には直接関係が無い(買入やりながら利上げもあり得るとは言ってないけど理屈上はそういうことになる話)という説明をしております。
でもって前半に関しては「資産拡大のペースは急に落とさんと去年は言ってたけどそれは今でも同じということでよいのですか期限来たら買入拡大停止しませんか」ということでござんすな。
『Draghi: Well, the answer to the second question is, we really - no, we
haven't discussed it at all.』
この利上げに関する質問は他にも何回か出ていまして、毎度このように「全く利上げの議論はしておりませんが何か」という答えになっています。
『To the first question, I said before that the decision today is for an
open-ended programme.』
そのちょっと前の質疑でこう答えています。オープンエンドだったら額を「何月まで幾ら」で切らないだろうこのウソツキと思うのですが。
『I may add certainly it's not going to stop suddenly. It's not going to
stop suddenly, it's never been our view that things should stop suddenly.』
何だよこの強調。
『But it's open-ended and the large majority of the Governing Council expressed
its preference for keeping it open-ended. This is because basically, for
a variety of reasons.』
何でここまでオープンエンドを強調するのかと言えば、要するにテーパータントラムみたいなのが起きると困るということでそれを異常に恐れているとしか思えん。
『One of course is to reaffirm a steadfast commitment of the Governing
Council to pursue the price stability objective. But also it's due to the
fact that there is still a large amount of uncertainty and therefore prudence
has inspired many governors to opt for this possibility. So basically,
that's what we decided. That's right. Sorry, you…』
『Constancio: No, I am saying that the second question; we do have a sequence
which is defined and reaffirmed today so…』
『Draghi: No, but the question here was the sequence about net asset purchases
is defined today. The new sequence you are pointing out was actually the
same question I have received before. There isn't any sequence between
the balance sheet - the stock and the interest rates. No, we have not discussed
that.』
ということで2番目の質問の答えにもどってしまいましたが、やたらとオープンエンドを強調するのはナンナンデショというか言い過ぎじゃないですかねえという気がする。
・償還再投資の説明もやたら緩和姿勢を強調するけどストックビューに関しては怪しげですな
冒頭ステートメントの中でも、
『Third, the Eurosystem will reinvest the principal payments from maturing
securities purchased under the APP for an extended period of time after
the end of its net asset purchases, and in any case for as long as necessary.
This will contribute both to favourable liquidity conditions and to an
appropriate monetary policy stance.』
『And fourth, we also decided to continue to conduct the main refinancing
operations and three-month longer-term refinancing operations as fixed
rate tender procedures with full allotment for as long as necessary, and
at least until the end of the last reserve maintenance period of 2019.』
と、今回は「as long as necessary」というガイダンス何だかガイダンスじゃないんだかよくわからんas
long as necessaryが連発されたのですが、そちらに関しても質問が。
『On the new guidance that you provide on reinvestment that they will continue
for an extended period of time and for as long as necessary, could you
explain a bit more of what you mean with as long as necessary? How this
guidance interacts with the one on rates, is there a sequence? Are they
for the same period of time, more or less?(後半の質問割愛)』
『Draghi: Now, the guidance on reinvestment is not related to rates. The
sequence stays what it is, namely this - the interest rates will stay and
they remain at their present - are expected to remain at their present
levels for an extended period of time and well past the horizon of our
net asset purchases.』
金利のガイダンスと資産買入のガイダンスは微妙に別だとな。
『However as we moved forward not only this year but also in a previous
years, the amounts that we've purchased, the stock has become more and
more important. This year as we continue asset purchases, it will keep
on increasing. So the commitment that the Eurosystem has taken today is
that it will reinvest the principal payments for maturing securities purchased
under the APP for an extended period of time after the end of its net asset
purchases and in any case, as long as necessary. So there isn't any specific
link with interest rates. There is no link here.』
ただし、ここの説明の中で微妙なのは資産買入について「ストック効果は買入が増えるのだから効果がドンドン出てくる」という話をしておりまして、思いっきり買入のストックビューを強調していることでして、実際問題として超過準備を不胎化しながら利上げを行う(というよりは預金ファシリティが昔からあってコリドアなのは正常なころから完備されている)中においてストックがどのくらい効いてくるのかとかはっきり言って良く分からんと言いますか、たぶん余程の事が無いかぎり実はストック効果なんかよりも普通に市場の金利観で決まると思うのよね金利って。
でもまあこうやって今後ジャンジャンストック効果が効いてきますぜウシシシシというのは、緩和姿勢強調でテーパータントラム懸念というのもあるでしょうが、一方でインチキ説明をしているという感じでもあって、今回のハト姿勢ってそらまあドラギがタカという事は無いと思いますけれども、一方でハト協調しているように見えるのをそのままナイーブに信用するのもどうなのかなと思います。
『Now, of course as I said I want to stress the importance of reinvestment.
I'll never forget that in December 2015 in one of my press - usual periodic
press conference like this, we announced a series of measures. We also
said, 'Look, we are going to reinvest this.' Basically, there was no reaction,
not at all.』
再投資について重要である!と仰せで。
『Not only that but it was actually considered to be totally marginal and
in fact there were many sort of wrong estimates of what these potential
reinvestments might be. Now, since then we bought a lot of bonds. So this
stock now is sizeable and has become an important component of our - as
we say here, this continued monetary support is provided by the additional
net asset purchases by three elements. The sizeable stock of acquired assets
and the forthcoming reinvestments, so the stock and the reinvestments,
and by our forward guidance on interest rates. So the three elements interact,
act together.』
金利と買入フローに加えてストックが重要という話を強調しているのは、緩和モードの強調という事ではあるものの、インチキ説明の布石だったりする可能性も無くは無い。
・テーパリングではないの部分はウケた
最後の質疑から。
『Back in December you announced the reduction of the QE, but you insisted
it shouldn't be called tapering. After this new recalibration can we assume
that the ECB is now tapering, with that word?(後半割愛)』
『Draghi: So the answer to the first question is no. As a matter of fact,
there was also another thing that's not discussed. We discussed whether
it was proper having open-ended or closed end. As I said a few members
would rather have a closed end date or an announcement or some signal that
we would go towards that. But then the large majority of the Council preferred
to have it open-ended.』
『But there was another thing we didn't discuss: tapering. I don't think
this word had been pronounced, if I am not mistaken. In any event it was
not discussed and so this is not tapering; it's just a downsize. As I said
before, it's consistent with our feedback rule which had been - we've been
using all throughout.(後半割愛)』
・・・・・・・オープンエンドのプログラムをダウンサイズ下だけでテーパリングではありませんとか屁理屈にも程があって笑うしかありませんな。
#いつもよりアップが遅くなりましてリロードのお手間を掛けさせまして恐縮です
2017/10/27
お題「ECBネタとFSRネタの続きと」
実に見苦しい
https://jp.reuters.com/article/boj-pricetarget-idJPKBN1CV03A
2017年10月26日 / 10:12 /
物価目標の未達成、批判されすぎている=浜田・内閣官房参与
白川日銀を政策のみならず白川さんの人格を否定するような勢いで口汚く罵倒していた方々がいざ自分たちが理論通りどころか理論以上のMB拡大を実施しているのに碌すっぽ理論通りに行かない、というのに対して今更「批判されすぎている」とか学者以前に人間として恥を知るべきであるし、こういうのが経済学者としてのさばっているという経済学業界全体へのレピュテーションに関わるし、イェール大学のレピュテーションにも悪影響じゃネーノと思いますけどねえ。
大体からして全部良くなった理由を金融政策にしたいようだが、米国経済やら海外経済の拡大とか、雇用で言えば労働力人口動態の要因とかもあるし、金融政策が物価とインフレ期待にに理論通りに効いていないのに効いた、というのはどういう事かちゃんと説明して頂きたいものでありますが、まあそんな説明できないでしょうな。
・・・・・・・などと朝からトサカに来て血圧を上げている訳ですがまずはECB。
○まあ大体コンセンサス程度のテーパリングですな
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2017/html/ecb.is171026.en.html
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 26 October 2017
『First, the key ECB interest rates were kept unchanged and we continue
to expect them to remain at their present levels for an extended period
of time, and well past the horizon of our net asset purchases.』
そら金利は動かさんわ。
『Second, as regards non-standard monetary policy measures, we will continue
to make purchases under the asset purchase programme (APP) at the current
monthly pace of ユーロ60 billion until the end of December 2017. From January
2018 our net asset purchases are intended to continue at a monthly pace
of ユーロ30 billion until the end of September 2018, or beyond, if necessary,
and in any case until the Governing Council sees a sustained adjustment
in the path of inflation consistent with its inflation aim. If the outlook
becomes less favourable, or if financial conditions become inconsistent
with further progress towards a sustained adjustment in the path of inflation,
we stand ready to increase the APP in terms of size and/or duration.』
ということで、来年は資産買入のペースを半減させて9月末まで月300億ユーロの買入を実施します。なお経済物価情勢が悪化して物価目標見通し達成に悪影響がでるようなときには買入の額や買入債券の長期化も検討します。
『Third, the Eurosystem will reinvest the principal payments from maturing
securities purchased under the APP for an extended period of time after
the end of its net asset purchases, and in any case for as long as necessary.
This will contribute both to favourable liquidity conditions and to an
appropriate monetary policy stance.』
APPでの保有債券の償還分については再投資を行います。
『And fourth, we also decided to continue to conduct the main refinancing
operations and three-month longer-term refinancing operations as fixed
rate tender procedures with full allotment for as long as necessary, and
at least until the end of the last reserve maintenance period of 2019.』
MROにおける3か月ものとロンガータームの定例オペに関しては、2019年の準備預金積み期間終了までは固定金利、フルアロットメント形式で行います(固定金利の全額募入保証をしているだけで金利は保証していませんけどね)。
『Today’s monetary policy decisions were taken to preserve the very favourable
financing conditions that are still needed for a sustained return of inflation
rates towards levels that are below, but close to, 2%.』
まあこれはいつもの話。
『The recalibration of our asset purchases reflects growing confidence
in the gradual convergence of inflation rates towards our inflation aim,
on account of the increasingly robust and broad-based economic expansion,
an uptick in measures of underlying inflation and the continued effective
pass-through of our policy measures to the financing conditions of the
real economy.』
ここがワロタという感じですが、今回の決定を「recalibration」とか言いまして、どう見ても正常化に向けた動きの続きなのですが、再測定とか再計算とかそういう単語を使っているのがドラギ節という所でしょうな。なお緩和ペースを落としているのですから当たり前ですがその後に続く景気物価認識は「increasingly
robust and broad-based economic expansion」であり、「an uptick in measures
of underlying inflation」であって、政策効果の波及についても「continued
effective pass-through」とゆうとります。
『At the same time, domestic price pressures are still muted overall and
the economic outlook and the path of inflation remain conditional on continued
support from monetary policy. Therefore, an ample degree of monetary stimulus
remains necessary for underlying inflation pressures to continue to build
up and support headline inflation developments over the medium term.』
でもってそうは言いましても全体の物価上昇圧力は依然として強くないので金融緩和でサポートする必要がありますという話をしています。
『This continued monetary support is provided by the additional net asset
purchases, by the sizeable stock of acquired assets and the forthcoming
reinvestments, and by our forward guidance on interest rates.』
同じ文脈ですな。でここから先は経済物価情勢の概説になるのですが本日はパスしまして会見ネタと一緒に投下しようかと思います。
でですね、まあ今回は大体順当という感じの話で、会見の細かいの見ていないからまだあまり決め打ちする気は無いのですが、市場の反応として「急速な正常化路線が打ち出されなくて安心」というのはまあ分かるのですけれども、じゃあ「ハト派的だから債券買いじゃヒャッハー」という話をするのはさすがに如何な物かと思うの(別にタカ派だと言ってる訳ではない)。
何故かと申しますと、このおじさん昨年APPの規模を縮小するときに何を言ったかと言えば、「800×6よりも600×9の方が買入の総額が大きいので引き続き大規模緩和」とか狙公の所のエテ公も怒り出すインチキ説明をしていた訳ですから、まあこのおじさんの慎重姿勢というのは慎重であっても別にここから一転して緩和に戻すとかいう話でも無いのであって、あくまでも既定路線通りに緩和政策の正常化に向けた動きを続けて行く中で、その予想されるペースとの間でバリュエーション考えて行くというようなのが筋じゃないでしょうかねえとかそんな風に思ったりするのであります。別にバシバシ正常化していくという事でもないでしょうが、あまりハトだと大喜びするようなもんでもないという感じではないかと(個人の感想です^^)。
○再びFSRネタである
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr171023a.pdf(本文)
金融システムレポート(2017年10月号)
昨日の続きで金融機関の過当競争がどうのこうのの結論部分で『金融機関間の競争激化とシステミックリスク』という小見出しから。
『需要対比で店舗の過剰感がみられる市区町村を営業エリアとする金融機関では、厳しい競争環境に直面し、貸出など金融仲介における価格決定力が低下する傾向がある(BOX2)。』
この辺りのBOXも味わいがあるのですが例によってテキストに落とすときの文字化け修正作業が大変なもんでまたその気になりましたら後で。
『都市圏などでは将来の人口増加を想定して店舗を増やした金融機関もあるが、今後は全国のほとんどのエリアにおいて人口が減少することが見込まれている(図表Y-3-14)。また、企業数の減少がこの先も続くことになれば――つまり、開業率より廃業率の方が高い状態が続けば――、店舗数の調整が十分進まない限り、金融機関間の競争はより厳しくなる可能性がある。さらに、IT
化の進展とデジタル親和的な世代の増加は、顧客来店頻度の低下をもたらし、店舗の意義を大きく低下させる可能性もある。』
まあゆうて法人取引の場合は実店舗でやることあると思うんだがその辺は最近の銀行営業事情にそこまで詳しい訳ではないのでよくわからんから誰か講義しやがり下さいませ宜しくお願い申し上げます。。
『金融機関間の競争が過度に厳しい状況が続けば、金融機関経営が不安定化するリスクがある40。具体的には、金融機関が過度なリスクテイクを取ったり、あるいは、競争による収益減少から損失吸収力が低下するメカニズムが考えられる。』
脚注にもありますが前回のFSRでその辺の話があります。
『実際、株式市場から抽出した地域銀行に関する予想デフォルト確率をみると41、銀行が直面する競争環境指標(マークアップ)と長期的に連動していることが確認できる(図表Y-3-15)。』
ちなみにマークアップに関する説明は前回のFSR(4月号)の『BOX3 地域金融機関の競争激化とその背景』(本文71ページ)にあります。
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr170419a.pdf
一応ダイジェストの所を引用しますと・・・・・・・
『ミクロ経済理論によれば、企業の市場支配力は、企業の提供する財の需要の価格弾力性に規定される。需要の価格弾力性が小さく、企業が値上げをしても需要がさほど減少しない場合には、その企業は強い市場支配力を持つ。一方、完全競争のように、需要の価格弾力性が非常に大きい場合――値上げをすると、顧客が他企業にすぐにシフトし、値上げした企業への需要が大幅に減少する場合――、企業は市場支配力を有しない。需要の価格弾力性に左右される企業の市場支配力は、一般に、財価格(P)の限界費用(MC)に対する上乗せ幅であるマークアップ(P-MC)として表現できる44。市場支配力があり、競争を優位に維持することができる企業のマークアップは大きいが、市場支配力がなく厳しい競争に晒された企業のマークアップは小さい。』(2017年4月金融システムレポート(上記URL先)BOX3より)
でまあここはなるほどという感じですが、その次の一節に金融機構局の放つ砲撃がしらっと入っているのがチャーミング。
『すなわち、短期の予想デフォルト確率は、日本銀行のマイナス金利導入決定(2016
年 1月)を受けて一時的に急上昇するなどの動きがみられたが、足もとは再び低下している。』
>日本銀行のマイナス金利導入決定を受けて一時的に急上昇
>日本銀行のマイナス金利導入決定を受けて一時的に急上昇
>日本銀行のマイナス金利導入決定を受けて一時的に急上昇
(;∀;)イイシテキダナー
『一方、中長期の予想デフォルト確率は、量的・質的金融緩和やマイナス金利の導入前から緩やかな上昇基調を続けており、これは地域銀行のマークアップの低下と重なっている。』
『前回のレポート(2017 年 4月号 BOX3)で指摘したとおり、地域銀行のマークアップの低下には、金融緩和だけでなく、人口減少や競合店舗数の増加も大きく影響しており、こうした構造的な収益の下押し圧力の存在も地域銀行の予想デフォルト確率の上昇となって表れていると考えられる。
』
つまり、QQEマイナス金利だけではなくてそもそもマークアップ要因、すなわち過当競争における構造要因というのもありますよ、という説明でもあるのですが、まあこれだけ出されたらその構造要因を作ったのは誰じゃというツッコミをしたくなる所ですけれども、昨日ネタにした通りで、今回のFSRではこの構造が出来る歴史的な背景についても言及しておりまして、単純に今の状態だけを切り取って金融機関の努力が足りないのが全てダメみたいな過去の金融行政やらマクロ政策の事を知らんぷりモードとは違うのがよろしい訳ですな。
ということで纏めに入ってきます。
『ここで留意したいのは、@金融機関間の競争激化の構造的要因である企業数や人口の減少は、一部のエリアで発生した個別ショック(idiosyncratic
shock)ではなく、全国共通にみられるショック(common shock)であること(図表Y-3-6、Y-3-14)、』
全くで。
『A多くの地域金融機関の収益源が資金利益に偏っているため、非資金利益を含む多様な収益源がある場合に比べ、銀行は貸出金利の競争に走りやすい――つまり、資金利益の減少という共通エクスポージャー(common
exposure)を抱えている――ことである。』
つまり・・・・・・・・
『後者のAの点については、金融緩和も相応に影響しているが、』
と一応注釈は入っている。まあ金融緩和で困るというのもそうなんですが、それよりも「金融緩和しても全然資金需要が盛り上がらないしインフレ期待も盛り上がらないから金利が全然上がってくれない」のが困るのでありまして、金融緩和は何の為にやっているのかと言えば本来金融緩和して将来緩和しないで問題ない状態にするためなのに、緩和政策が安定的に維持できているから成功みたいな話になるのはおかしい訳ですな。
『わが国の地域金融機関は、(米欧に比べ)貸出取引に付随する非金利サービスの提供が限定的であるため、貸出取引の差別化の度合いが低く、金利面での競争に走りがちである。地域金融機関が共通かつ慢性的なストレスに直面し続けるもとで、収益源の多様化や需要対比での資源投入の適正化が行われないまま、競争激化が続く場合、中長期的には多くの金融機関の損失吸収力が同時に損なわれるというかたちで、システミックリスクが形成されかねない。実際、地域金融機関間の競争激化が進むなか、株式市場から抽出されるシステミックリスク指標が緩やかに上昇していることが確認できる(BOX3)。』
ここの辺りも後日ネタにするかもしれません。
ということでまとめ。
『W章とX章で示したとおり、現状、金融機関は充実した資本基盤を備えているため、株式市場が示唆する地域銀行の予想デフォルト確率やシステミックリスク指標の上昇は、金融システムの安定性に対する短期的な脅威を示唆するものではない。』
『しかし、こうした市場のシグナルは、人口や企業数の減少による需要密度の低下と金融機関の競争環境を巡る金融システムの構造問題に警鐘を鳴らしているとも解釈できる。』
なるほど。
『民間非金融部門における企業間の競争は、産業の効率性に影響を与えるが、金融部門における銀行間の競争は、金融システムの効率性だけではなく、システミックリスクにも影響を及ぼす点に留意する必要がある。』
おー。
『わが国の金融システムにおいて、金融システムの効率性と安定性の双方を将来にわたって維持していくためには、適正な競争環境のもとで、金融機関が収益性を改善させていくことが重要である。その実現には、まずは、金融機関が金融仲介サービスの差別化を図るなど、それぞれ自らの強みを活かした取り組みを進めていく必要がある。経営方針を策定するうえでは、@収益源の多様化を図る、Aよりきめ細かい採算管理を実施し、他金融機関との競争も踏まえた効率的な店舗配置や提供するサービスの見直しを行う、B業務改善を進め、設備と従業員の適正配置によって、労働生産性を向上させていくことが重要である。また、C金融機関間の合併・統合や連携も、収益性改善の選択肢の一つになろう。日本銀行としても、そうした金融機関の動きをサポートし、マクロプルーデンスの視点から競争環境の変化が金融システムに及ぼす影響について引き続き注視していきたい。』
ということでまとまっていて、まあ最後は普通の事しか言えないから仕方ないのですが普通の感じになっているのですが、ただ今回のFSRでしらっとまたぶち込んでいるのが、上記引用部分にある「それぞれ自らの強みを活かした取り組みを進めていく」という所でして、「ぼくのかんがえたさいきょうのきんゆうきかんけいえい」を全ての金融機関でやるのではなくて、各行色々な方法で工夫して、その結果顧客からの支持を受けるところは伸びるし、支持を受けない所は沈んで行って吸収されるなりなんなり、という形になるし、その時に個別行の経営状態が悪化することが即座に金融システムのシステミックリスクに繋がるような事は既に制度として回避できるようにしているのだから、無茶な事はしちゃいけませんけれども、各行個別に色々と考えてやっていってちょ、というニュアンスが伝わる文言だなあと思ったのでした。
まあとりあえずはそんなところで。
2017/10/26
お題「本日もFSRネタで」
ゲラゲラゲラ。
http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000113030.html
小池代表の辞任要求も “希望”両院懇談会が紛糾(2017/10/25 16:54)
救いようがありませんが、まあ辞任要求をするような輩はエダノンのところに間違ってその後入っても碌なことしないから断固お断りとしないといかんのでしょうな。とにかく仲間を後ろから刺す体質が酷過ぎですねえ。
でもって厭債害債さんがエントリーを^^;
http://ensaigaisai.at.webry.info/201710/article_6.html
総選挙雑感
でまあ本日もFSRで昨日の続き。
○今回のFSRの多分一番のみどころを引きつづき
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr171023a.pdf(本文)
金融システムレポート(2017年10月号)
『Y.金融機関収益と金融システムの潜在的な脆弱性 』の出来が中々よろしいと思うので昨日の続きである(下準備済み^^)。
昨日ご紹介した『2.金融機関の収益構造──低い非資金利益比率── 』というお話の最後を再掲しますけれども、
『一方、わが国では、傘下に複数の関連会社を抱える大手金融グループでは、商業銀行業務以外の手数料も比較的多くみられるが、地域金融機関においては、為替業務と投信・保険販売業務の2
つで過半を占める。なかでも、高いウエイトを占める投資信託の販売手数料は、市況の影響を受けやすいため、安定的な収益源とはなっておらず、これまでのところ地域金融機関収益の変動を高める要因の一つになっている。』
って一節があって、それに対しましてアタクシが「そもそも論として日本の戦後における金融行政というのは「長短分離」「銀行証券分離」「商銀と信託銀行分離」というような形で細かく分離した形ですみわけを行った上に、規制金利体制下で一定の預貸利鞘を確保できる体制にはあったものの、その見返りとして過当競争の防止の為に強力な出店規制や、業態によっては営業エリアの規制とかもあった訳でして」という風に申し上げましたが、この次の『3.金融機関の競争環境』という所にアタクシの申し上げたそもそも論についての言及があるのが中々。
ということで『3.金融機関の競争環境』から参ります。本文60ページ。
『前節では、本邦金融機関の 1 店舗当たりの業務粗利益が米欧に比べ低く、かつ、その内訳において、金利環境に左右される資金利益だけではなく、非資金利益も低いことを指摘した(図表Y-2-4)。この事実は、本邦金融機関の低収益性には、低金利が継続している要因だけではなく、他の何らかの構造要因が影響している可能性を示唆している。具体的には、金融機関間の競争の激化が長きにわたって続いていることが、その主因と考えられる。』
まあ要するにオーバーバンキングなのですが、次の小見出しが『金融機関数と店舗数の国際比較』。
『産業の競争環境の強弱を計測する代表的な指数であるハーフィンダール指数を、先進国の銀行業に適用して計算してみると(図表Y-3-1)33、日本は、オーバーバンキングの事例国としてしばしば指摘されるドイツのほか、米国に比べても寡占度が高くなっている。これだけをみれば、日本の銀行業の競争環境は、国際的にみて厳しいようには窺われない34。』
この辺は本文の図表も参照あれ。
『もっとも、ハーフィンダール指数は、金融機関の供給側の情報(金融機関数と各金融機関の規模)のみに基づいていることに注意が必要である。実際の競争環境は需要動向にも左右され、例えば、人口や企業数が減り市場規模が縮小すれば、金融機関数に変化がなくとも、各金融機関は収益維持のために縮小したパイ(需要)を奪い合い、競争が強まる。また、競争の現場となるのは、金融サービスを実際に提供する営業店であり、競争環境を評価するうえでは、金融機関数だけではなく、店舗数も勘案する必要がある。』
しれっと「市場規模が縮小すれば、金融機関数に変化がなくとも、各金融機関は収益維持のために縮小したパイ(需要)を奪い合い、競争が強まる」ということでマクロ要因もあるという話を入れています。
『そこで、市場規模を規定する人口と金融機関の店舗数の関係について国際比較を行うと(図表Y-3-2)、日本は、人口当たりの銀行の店舗数は比較的少ないが、銀行代理業を営む郵便局数まで含めると、オーバーバンキングとされるドイツとほぼ同水準となる。また、可住地面積当たりの金融機関店舗数をみると、日本は突出して多くなっている(図表Y-3-3)。もちろん、これには日本の人口密度の高さも影響しているが、狭い国土に銀行店舗が密集すれば、預金者や企業にとって店舗の選択肢が増えるため、それだけ店舗間の競争も激しくなりやすいと考えられる。』
「銀行代理業を営む郵便局数まで含めると、オーバーバンキングとされるドイツとほぼ同水準となる。」とはこれまた味わいのあるお言葉ですが、この後の部分は事実をさらっと述べているのではあるのですが、行間から伝わってくるものがありまして・・・・・・・
『特に、預金吸収の面では、日本の金融機関は、戦前から近年に至るまで、郵便貯金も含めて、互いに激しい預金獲得競争を繰り広げてきた。金利が規制されていた頃は十分な預貸スプレッドがあったことから、民間金融機関にとっては、店舗を増やし預金をできるだけ多く集めることは、利益拡大に直結する合理的な行動であったといえる。』
昨日も申しあげましたようにガチガチの規制産業だったのですが、何でこうなったかという背景は戦後経済の構造によって金融業をこのようにしておくのが合理的だったとか、その前の戦前における金融恐慌の要因の一つとなった金融機関の過当競争や野放図な業務拡大を制御する方が望ましいと考えられた、とかそういう話になりますな。
つまりですな、この辺りの話って微妙に表面をさらっと撫でているという感じではあるのですけれども、ちゃんと歴史的経緯に言及しているのが今回のFSRの良くできている所だとアタクシは思うのですけれども、現在の状況だけ切り取ってケシカランから是正しろ、とか言いましても、元はと言えば過去の歴史的経緯があって、その歴史的経緯の中には思いっきり行政が関与している部分もあり、そういう過去の状況を踏まえて現在がある訳ですから、いきなり過去の事を知らんふりして「これだからケシカラン」という分析だけされましても「お前が言うな」という話になる訳でございまして、その点からしますと、今回のFSRではこの最後の部分で「現状はそうなのだがこういう現状に至るマクロ的、政策的な背景があるので、個別金融機関のミクロ問題に落としてシバキ上げれば良いという問題ではない」という認識が行間から伝わってくる(従来のFSRでもややそんなニュアンスが無かった訳ではないですが今回は割と分かりやすくなった)のが良いなと思うのですよ。
『このため、郵便貯金との競合という環境もあって、民間金融機関が預金関連手数料を徴求するという戦略はとり難かったと考えられる。金利自由化や低金利環境を背景に預貸スプレッドが縮少した後も、金融機関間の厳しい競争環境が続き、自行のみが手数料をとれば預金が他行や郵便局に流出する可能性が強く意識され続けたことから、預金関連手数料を課すことを前提としないビジネスモデルが金融機関に定着していったと考えられる。』
ということで、前の部分の方(引用していませんが)では何度も「非金利収益が碌に無いですな」という分析が散々行われていますが、最後のこの部分を読みますと、「だからケシカランのでシバキ上げる」という話ではなくて「ここに至る経緯には不可避な部分もあった」という事を行間で示していると思うのよ。
『このように、非資金利益が少なく、金融機関の収益が資金利益に大きく依存する状況においては、人口や企業数の減少は、金融機関の貸出競争に拍車をかける要因として作用し、これが資金利益を下押しする構造を産み出していたとみられる35。』
つーことででね、まあ昨日も書いたのの繰り返しになるかも知れませんが、それまでガチガチの規制産業でしかも業際範囲を細かく指定して細かいすみわけを行っていた所に、金融自由化をぶち込んで来たのですが、まあ当時は外圧だの何だのあったからそういう風になるのも不可避だったのかも知れませんが、ガチガチの規制産業からの自由化というのを急にやり過ぎてしまい、その結果として弱肉強食モードになる中で金融機関が収益求めて特攻したら不動産大バブルになってしまって崩壊が来て絶賛不良債権の山が発生。でも自由化は進んだけれども護送船団というか大手行は潰さない的な方は残ってしまっていたので、不良債権の抜本処理に時間がかかり過ぎてマクロ的に低金利環境を20年以上も続ける破目になる、とかそういうざっくりとした流れのある中で、今の状態だけ切り取って地域金融機関ケシカランとか言われましてもそれはやはり釈然としませんわなあというお話なんじゃないのかと思うの。
あと、現状の低金利環境で利鞘が縮小して云々って話はFSRでも毎度出ていまして、それはそれで仰せのとおりではあるのですが、こちらもそもそも論を蒸し返しますと、異次元緩和がちゃんと効果を発揮して安定的に2%の物価上昇が示現するような経済の状況になっていれば、そらもう資金需要だって復活しているでしょうし、だいたいからして金利の方がもっと高くなっているから資金利ザヤって絶賛大改善している筈で、「低金利環境で収益力の低下が懸念される」というのは事実であっても、そういう状況を改善するのは残念ながら個別行のミクロの話ではなくて、マクロ経済運営の進め方が当を得ていればそうなる話なのであって、個別行の努力でどうのこうのという部分とは違うと思うんですよね。
ただまあこういうようなツッコミが出来るような感じの書き方に作っている、という辺りにしつこいですが今回のFSRの出来が良い所があると思いますので(行間を読み過ぎなのかも知れないけど、まあ一応こちらも日銀の出すこの手の物を読み続けて10ウン年とかですから^^)、このあたりは味わって読むのがよろしいかと思います。
さて、次の小見出しの『金融機関店舗の地域間のばらつき』ですが、
『以上の分析が示すように、本邦金融機関の従業員数や店舗数は、需要対比で過剰(オーバーキャパシティ)になっている可能性がある(図表Y-2-1、Y-3-2)。わが国では、バブル崩壊後
2000 年代半ばにかけて金融機関の統廃合が進むなか、店舗数や従業員数が削減されてきたにもかかわらず(図表Y-3-4)、オーバーキャパシティが解消されていない背景には、金融取引需要を規定する人口や企業数が減少を続けていることが大きく影響していると考えられる。』
ということでここから先はまた現状認識。
『例えば、2000 年代入り後、企業の廃業率は開業率を一貫して上回っており、企業総数はこの
10 年間で 1〜2 割程度減少していたとみられる(図表Y-3-5)36。人口減少による潜在成長率や期待成長率の低下、高齢化による後継者不足などがその背景にあるとみられる。』
うむ。
『こうしたなか、地方圏では、金融機関が不採算店舗を閉鎖する動きがみられるほか、都市圏においても金融機関の統合再編により店舗を削減する動きがみられる(図表Y-3-6)37。もっとも、過去
10 年間、企業数が国内のほぼ全域で減少しているのに対し、金融機関の店舗数をみると、依然として横ばいとなっている地域が多くみられるほか、首都圏や県庁所在地などの都市圏では、むしろ店舗数が増加している地域もみられる38。』
それはまあ都市部への人口流入というのに合わせているんでしょうな。本文63ページ以降の脚注とか図表が非常に面白いのでじっくり見ると宜しいかと思います。
『銀行業を含むサービス業では、一般に営業店でのサービスの対面供給を基本とするため、市場の地理的範囲が限られる――この点は財の供給市場を海外にまで展開可能な製造業とは異なる――。このため、店舗の立地エリアの人口密度や企業密度が、サービス関連企業の収益性を大きく左右する。』
さいですな。
『需要密度の低いエリア内の店舗では、取引が少なく収益をあげにくいが、逆に需要密度の高いエリアに立地すれば収益をあげることができる――いわゆる「密度の経済性」が作用する――。金融機関の店舗数が地方圏で減少し、都市圏で増加しているのも、基本的には、密度の経済性が背景にあると考えられる(図表Y-3-7)。すなわち、金融機関は、相対的に企業密度の高い都市圏(特に人口が増加している都市圏)に店舗を集積させる傾向がある(BOX1)。』
ということで人口動態の問題isあるという話ですが話はさらに続く。
『もっとも、店舗密度と需要密度(人口密度、企業密度)の関係について、全国の市区町村単位で評価すると、地域間で相応のばらつきがみられ、需要に比べ店舗数が過剰なエリアもみられる(図表Y-3-8)。こうしたエリアは、具体的には、@相対的に需要密度が低く、企業数や人口の減少テンポに店舗数の減少ペースが追いついていない地方圏のほか、A相対的に需要密度が高く、金融機関の店舗が増加・集中している都市圏に大別される。』
ほほう。
『密度の経済性を前提とした店舗配置は、個々の金融機関にとって合理的な戦略だが、多くの金融機関が同じ戦略をとれば、都市圏でも店舗が過剰(オーバーキャパシティ)になり得る。』
そらそうよ。
『金融機関間で競争が過度に激化する結果、新規店舗の収益が計画を下回ることとなったり、既存店舗の収益が減少するという、「合成の誤謬」が発生し得ることに注意が必要である。このため、各金融機関においては、地方圏だけではなく、需要密度が相対的に高い都市圏の店舗の収益性についても適切に評価し、経営戦略を策定していく必要がある。』
まあそう言いましても自分が引いても他行が喜ぶだけの話ですから「需要密度が相対的に高い都市圏の店舗の収益性についても適切に評価し、経営戦略を策定していく必要がある」とか言われましてもという感じでしょうな。
次の小見出しが『企業とのリレーションシップの変化』です。
『企業数が減少するなかでの金融機関店舗間の競争激化は、金融機関と企業の取引関係に明確な影響を及ぼし始めている。』
ほー。
『各店舗の顧客企業に関して、自店舗を含め何先の金融機関と取引を行っているか、その平均値の分布をみると、この
10 年間で全体として増加していることが確認できる(図表Y-3-9)。また、データが利用可能な
1996 年からみても、一貫して、企業の取引金融機関数の平均値は増加傾向を辿っている(図表Y-3-10)。』
『これは、金融機関の各店舗が、営業エリア内の企業数が減少するなかで、新たな取引機会を求めて法人営業を強化してきた結果、企業の取引金融機関数が増えたと考えられる。企業にとっては、取引金融機関数を増やすことによって、より有利な貸出条件を引き出すことができるようになったとも考えられる。』
アタクシ恥ずかしながら金貸しの手先をやっていたのは前世期なのであまりこの辺りの背景について手触り感は無いのですが、上記のような過当競争の問題もあるのでしょうが、寧ろ金融危機時および不良債権処理の加速を金融機関が求められていた時期に、貸出姿勢を従来では考えられないような厳しさにしてしまい、企業側の方がヘッジの為に取引金融機関を拡大したという面もあるんじゃないのかな、と思ったりするのですけどどうでしょうかねえ。
『取引金融機関数の増加は、特に、店舗の過剰感の強いエリアで起きている(図表Y-3-11)。』
ということですので、競争という面は思いっきりあるのでしょうが。
『平均的にみれば、企業の取引金融機関数は 2〜3 先だが、金融機関の店舗がより集積している都市圏を中心に、取引?融機関が
5 先以上の企業も増えてきている(図表Y-3-12)39。ただし、企業の取引金融機関数の変化は企業規模によって異なる。中小・零細企業において、取引金融機関数が増加しているのに対して、大企業では、取引金融機関数が減少している(図表Y-3-13)。』
中小企業が増えたのはさっき申し上げた面があるような希ガス。
『大企業との取引に関しては、地域銀行がシンジケート・ローンへの参加などを通して取引開拓を行う一方、大手行は手数料を含む総合取引推進のためにメイン化を進めている。中小・零細企業との取引に関しては、地域?融機関がミドルリスク貸出を通じた地元企業との取引関係の強化に努めている。地域銀行は信用金庫をメインバンクとする零細企業との取引にも近年進出する一方、信用金庫も地域銀行をメインバンクとする中小企業との取引を増やしており、互いの競合が強まっていると考えられる。』
ということで・・・・・
『銀行間の競争激化を受けた中小・零細企業における取引金融機関数の増加が、今後、企業と銀行間のリレーションシップにどのような影響を及ぼすかは、注目すべきポイントである。例えば、企業が銀行借入を行う際に、これまでの取引履歴や企業支援力にかかわらず、複数の取引金融機関の中から貸出金利の一番低い金融機関を選択することが常態化すれば、企業とメインバンクの間の取引関係が弱まり、中長期的には金融機関の情報生産活動の停滞を通して資金配分の効率性が低下する可能性も考えられる。』
まあここはさっき申し上げた経緯のファクターも考えた方が良い気がする。
『金融機関側が担保・保証に過度に依存した与信取引を行っているとなおさらそうなり易い。』
ここの意味はわからん。寧ろ担保や保証はそんなにホイホイ移動できないんだが。
『現時点において、企業と銀行のリレーションシップがそうした希薄な状況にあるとまではみられないが、この先、銀行間の競争激化が金融仲介機能にどういった影響を与えるかは重要な注目点と考えられる。』
ということで最後の『金融機関間の競争激化とシステミックリスク』の部分があって、その前の現状認識(飛ばしている所)もあるのですが、惜しくも時間が無くなってしまうま(時間配分が・・・・・)なので本日はこれで勘弁。
2017/10/25
お題「金融システムレポートから」
これはクソウケルwwwww
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171025/k10011196481000.html
希望 きょう両院議員懇 小池氏の責任問う声 難しい対応も
10月25日 5時09分
『希望の党は衆議院選挙を受けて、25日、党の両院議員懇談会を開いて今後の党運営などをめぐって意見を交わすことにしていますが、民進党出身者の中には小池代表の責任を問う声もあり、今後、難しい対応が求められることも予想されます。』(上記URL先より)
そりゃまあ出発当初は東京の小選挙区に全部カカシを立てても当選するんじゃないかという勢いだったのが長島さん以外全敗ですから希望の船が絶望だったとか公認の為に党に払ったお金返して位の話になる気持ちは分からんでもないですが、民主党→民進党の最もダメだったのはこの内ゲバ体質で、何か不利な話があると直ぐに党首批判や分派傾向が出るというのが余りにも酷いから愛想突かされていったんでしょ、という反省が何もないまま民進党のダメな方を全部引き継いでいる感じですな。
然るにガッキー総裁時代の自民党は分派行動やら党首批判みたいなのはあまりなく、と言っても維新と安倍ちゃんが一時期くっつきそうだったというのとか、総裁選でガッキーを後ろから刺したのはノビテルだったりするというようなのはありましたけれども、内ゲバ体質というのは無かったのか、あっても表に出なかったのかは知りませんが、まあそこが強みでしたなと思う訳で、その点では民主→民進のダメな方を希望の方が引き取ったようで政界廃棄物集積所としてはワークしましたな。
という柄にもない前置きとは全然関係なく本日もFSRであります。
#なお諸般の事情で本日はあまり量の無い状態になりますが以下その理由を申し上げますので勘弁してつかあさい
○FSRは色々と読みどころがあるのですが本日は諸般の事情で簡単になってしまうのだ(涙)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr171023.htm/(紹介ページ)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr171023a.pdf(全文)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr171023b.pdf(概要)
いつもでしたら最初の所から順にネタにするところではあるのですが、つらつら考えまして面白い所から順にネタにしようかと思いまして・・・・・・・・・・
・という話の前に物凄い勢いでクレームがあるのだが(フォントの問題)
今回のFSRなのですが、IE経由でもChrome経由でもそうなのですが、面白フォントを使っているせいなのか、このPDFの内容をテキスト(Windows付属の奴)に落とそうとすると、一部の文字(なお致命的なのはその一部に「金」の字が含まれる)が文字化けを起こしてしまいまして、(ChromeでPDF開けると若干マシだがやはり「金」は文字化けする)これネタにしようとして引用したいのですが、コピペするのに文字化け問題があるから一々ワードに落として(なおMSWordに落とすとフォントのゴシックとか文字の大きさとかを認識しない)からコピペしないと行けないんで非常に無駄な手間が掛かるんですけど。
でまあこの機会に申し上げておきますと、通常でも実は日銀の出すPDFって文字化け問題が時々発生していまして、通常の場合だと「少」の字が何故か文字化けしたりするのですけれども、金懇関連だとジンバブエ原田大先生の挨拶要旨が毎度毎度盛大に文字化けしまして、最近はHTML方式でもテキストが出ているので、そっちは大丈夫ということで何とかなっていますけれども、時々そういう困った現象が起きる次第。
いやまあ別にアタクシもMS真理教な訳ではないのですが、ジャパンの場合一般事務マンは基本MS対応だし、大体からしてデータとかMSExcelで出してる訳ですので、PDFで出すものに関しては互換性というか何というかの所について確認して対応できる形式で出して頂きたいものだと思いますが、誰がお前の為にそんな検討するかヴォケと言われてしまいますとぐうの音もでません。
しかも今回はMSワードに落として(HTMLでもテキストでもunicodeテキストでも同じ)からテキストエディタに落とすという作戦を使おうとしましたが、これまたプレーンテキストに落とすと結局文字化けしてしまうという割と凶悪な状態でして、最近そういう事象が無かったので油断していたのですが、この場合は「テキストに落とす」→「手動で文字化け部分の文字を手入力する」→「その原稿と元のレポートを並べて確認しながらネタにする」という泣きそうになるような作業が必要になりまして、FSRの量となりますと前日に夜なべが必要なのですが、今申し上げたように油断していたので気が付いたのが今朝ということで、本日はせっせと夜なべして下準備しますが、今日はぶっつけ本番(おまけに回避策探すのに時間を空費した)なので量が少なくなるのはご勘弁下さい。
・・・・・・・ということで面白フォント使うの止めてもらえませんかねえ。誰かこういうの詳しいお方の中で上手い回避策ご教授頂けるとアリガタヤなのですが。
・まとめの部分になるのですが金融機関の構造的な問題点についての指摘が熱い!!!!!
ということで本日は簡単になってしまうのですが、今回のFSR色々と面白い所が多い(のにフォントがアレなのが非常に残念)のでどこから読んでも面白いのですけれども、最後の『Y.金融機関収益と金融システムの潜在的な脆弱性
』というお題、本文で言うと54ページからの話が面白いのですよ。
まずは前置きから。
『W章とX章で確認したとおり、現状において、金融機関は充実した資本基盤を備えており、当期収益力が下押しされるもとでも、リスクテイクを継続していく?を有している。貸出の積極化などによる金融機関のポートフォリオ・リバランスは、経済情勢の改善に寄与してきており31、これが企業や家計のより前向きな経済活動へと結びついていけば、金融機関の収益力の回復にもつながっていくと考えられる。』
まあこの辺のツッコミは上記の章の所で。
『もっとも、預貸利鞘の縮少傾向が続くなかで、金融機関が収益維持の観点から過度なリスクテイクに向かうことになれば、金融面での不均衡が蓄積し、金融システムの安定性が損なわれる可能性があることに留意が必要である。一方で、収益力の低迷が続き、損失吸収力の低下した金融機関が増えれば、金融仲介機能が低下し、実体経済に悪影響を及ぼす可能性もある。したがって、金融機関の収益力の低下に伴う潜在的な脆弱性としては、マクロ的なリスク蓄積や資産価格等への影響が行き過ぎる過熱方向のリスクと、収益の減少に歯止めがかからず金融仲介が停滞方向に向かうリスクの両面をみていく必要がある。』
『本章では、こうした問題意識のもと、金融機関の足もとの収益状況を確認したうえで、収益構造の国際比較や激化する金融機関間の競争環境の視点から、金融システムの潜在的な脆弱性について評価する。』
ということではじまりはじまりなのですけれども、本当は足元の収益状況の話をしてから収益構造の国際比較以降の話を読んだ方が良いとは思いますけれども、それをやっていると人力テキスト修正が全然間に合わないので今日の所は中盤の所からで勘弁してもらいます。
本文56ページの『2.金融機関の収益構造──低い非資金利益比率──』から。
『金融機関の収益低下は、日本だけではなく、低金利環境が続く先進国において概ね共通にみられる現象である。しかし、そうしたなかでも、本邦金融機関の収益性は国際的にみて低さが目立つ。特に地域金融機関においては、米欧の同規模の金融機関に比べ従業員数が多く(図表Y-2-1)、1人当たりの業務粗利益も低い(図表Y-2-2)32。また、投入生産要素当たりの収益性という観点から、1
店舗当たりの業務粗利益をみても低くなっている(図表Y-2-3)。こうした収益性の低さには、低金利環境の長期化による資金利益の減少に加え、非資金利益の低さも影響している(図表Y-2-4)。
』
まあ前から言われていることで、その先(57ページ)に比較表があるのが泣けます。
『2000 年代以降、本邦金融機関は収益源の多様化を企図して手数料ビジネスの拡充に取り組んできているが、それでもなお、非資金利益が業務粗利益に占める割合(非資金利益比率)は国際的にみて総じて低い(図表Y-2-5)。規模別にみると、大手金融グループは、平均値でみると米欧大手並みの水準を確保しているが、地域金融機関の非資金利益比率は概ね
10%前後の水準に止まっており、同規模の米欧金融機関に比べて低くなっている。』
同規模同士で比較しても劣後している、という問題なのですがその要因は・・・・・・・・・・
『米欧金融機関においては、非資金利益は、サービス内容や顧客属性に応じて手数料をきめ細かく設定・変更することなどを通じて、重要な収益源となっている。例えば、欧州では、デビットカードやクレジットカードの発行・利用料、富裕層向けのソリューション・サービスの手数料を収益源として確保しているほか、インターネットバンキングの普及につれて、書面による残高報告などのサービスを順次有料化している。また、米国では、企業のアウトソース・ニーズを捉えた企業向けの資金管理サービスが、有料サービスとして確立している。』
『一方、わが国では、口座維持・管理にかかるサービスなど、相応にコストのかかる金融サービスを無料で提供している例が少なくない。
』
さいですな。
『こうした内外における金融関連サービスの手数料設定スタンスの違いは、家計消費支出の構成比にも明確に表れている。』
ここが興味深いのですよ。
『各国の消費者物価指数(CPI)の品目構成比をみると、日本の金融サービスのウエイトは米欧比著しく低い(図表Y-2-6)。』
銀行はもうけ過ぎだのステレオタイプで言われますのでぜひこの辺を日銀が大々的に宣伝して頂きますとマイナス金利で悪化している金融機関との関係も改善するのではないでしょうか(マジで)。
『さらに、米欧諸国の金融サービス価格が年率約 2%のペースで上昇しているのとは対照的に、日本の金融サービス価格は、長期にわたって横ばい圏内で推移している(図表Y-2-7)。これらの点は、家計からの手数料収入が、米欧の金融機関にとって安定的な収益源になっているのに対して、本邦金融機関ではそうした収益源を欠くことを意味している。
』
まあ2%上昇しないのは物価があがらないのだからシャーナイですけれどもそれ以前の問題という事ですな。
とまあここまで来てじゃあ背景に何でこういう差になるのか、という話が以下あるのですよ。
『非資金利益のうち役務取引等収益の内訳をみると、収益源の多様性という点でも違いがみられる(図表Y-2-8)。欧州では、ユニバーサル・バンキングが定着していることもあって、手数料の収入源は多様である。』
ユニバーサルバンキングですと??
『米国でも、「その他」様々な手数料収入が過半を占める。』
ほうほう。
『一方、わが国では、傘下に複数の関連会社を抱える大手金融グループでは、商業銀行業務以外の手数料も比較的多くみられるが、地域金融機関においては、為替業務と投信・保険販売業務の2
つで過半を占める。なかでも、高いウエイトを占める投資信託の販売手数料は、市況の影響を受けやすいため、安定的な収益源とはなっておらず、これまでのところ地域金融機関収益の変動を高める要因の一つになっている。』
ちょっと待て。
『先行きを展望すると、人口減少により伝統的な預貸業務に対するニーズが伸び悩むと予想されるなか、国内で資金利益を持続的に拡大させていくことは必ずしも容易ではない。このため、金融機関が収益源を多様化させ安定的な収益構造を確?していく観点からは、それぞれがサービスの差別化を図りつつ、自らの強みを活かした取り組みを進めていくことが重要である。その際、わが国の金融機関は米欧に比べ従業員数が多いという事実も踏まえ(図表Y-2-1)、業務改革により効率的な人員配置を同時に進め、労働生産性の向上を図っていくことも重要になろう。』
とこの部分の最後は一般的なまとめになっているのですが、さっきちょっと待てと言ったあたりに一つ構造要因のポイントがあると思うのですよ。
つまりですね、大手金融グループはグループとして事実上のユニバーサルバンキングを展開しているから、非資金収益が比較的多様化している、という話なのですが、そもそも論として日本の戦後における金融行政というのは「長短分離」「銀行証券分離」「商銀と信託銀行分離」というような形で細かく分離した形ですみわけを行った上に、規制金利体制下で一定の預貸利鞘を確保できる体制にはあったものの、その見返りとして過当競争の防止の為に強力な出店規制や、業態によっては営業エリアの規制とかもあった訳でして、その手のガチガチの規制を自由化する段階(1980年代以降)においてバブル発生と崩壊(1980年代後半)が起きて、それまでの大規制産業があっという間にレッセフェールみたいになるわ、その間に金利は一気に低金利時代になるわとか、要するにこの問題って現在でみれば地域金融機関を中心に構造問題で(現に構造問題ではあるが)、まるで収益源の多様化を図らん地域金融機関がケシカランみたいな話なのですが、そもそも論からすればこれって金融自由化を行う中での匙加減と、マクロ経済の問題に起因していて、金融機関の工夫が足りないで済まされる話じゃないと思うのですよね。
・・・・・・・という点について、実は次の『3.金融機関の競争環境 』という所で今回のFSRでは説明しているのが中々良い所で、個別金融機関に努力せいというだけではなく、問題の元について改めて考えるという姿勢が中々よろしいとおもうのですが、時間の関係で以下明日に続くのでした。
2017/10/24
お題「FSRである(なお今日は紹介ページのみ)」
○FSRは今回も金融機関(特に地域金融機関)の課題についてだがそれはお前の執行部に言えとも思う
もはや引かれ者の小唄しか出て来ない展望レポートを見ているよりも金融システムレポートを見ていた方が面白いという事実isある。今回も力作が楽しめそうですよ。
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr171023.htm/(紹介ページ)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr171023a.pdf(全文)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr171023b.pdf(概要)
・紹介ページの方では金融機関の収益力低下以降の図表とかが(も)オモロイ
まずは紹介ページから。
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr171023.htm/
『今回のレポートの特徴』という小見出しより。
『今回のレポート(2017年10月号)では、金融機関のリスクプロファイルや財務基盤に関する定点観測、テールイベントを想定したマクロ・ストレステストのほかに、金融システムの潜在的な脆弱性として、金融機関の低収益性と競争激化の構造的背景とその影響について考察した。』
ほう。
『具体的には、金融機関の収益や経営資源の国際比較を通して、(1)本邦金融機関は非金利収入が少なく、収益源が資金利益に偏っていること、(2)従業員数や店舗数が需要対比で過剰状態にある可能性を検証する。』
まあこれは言われる話ではあるのですが、歴史的に見れば規制金利時代の業態規制とか出店規制とかによって頑健なシステムが出来上がってしまった(のが自由化して30年くらい経過しているのに変わらんというのも問題ですけど)というのもあって歴史的な経緯を踏まえると自由化以降あっという間にバブル発生から崩壊と来ていきなり低金利時代に突入してしまって、基本的な部分を変える前に目先の経営をどうするかという話になってしまったのも良くなかったのかも知れないなあ、とか何となく思うのですけれどもどうなんでしょうかね。
『そのうえで、人口や企業数の全国的かつ継続的な減少が、金融機関間の競争を通して、企業と金融機関のリレーションシップやシステミックリスクにどう影響を及ぼすか整理する。』
ほほう。でもって『要旨』からですが最初のは飛ばして『金融仲介活動の点検』から。
『金融機関の貸出をみると、外貨調達コストの上昇等を背景に海外貸出の拡大テンポは鈍化傾向にあるが、国内貸出の前年比はプラス幅が緩やかに拡大しており、足もとでは3%程度となっている。金融機関の積極的な融資姿勢のもと、資金需要も中小企業向けを中心に増加している。』
ふーん。
『有価証券投資では、ひと頃減少していた外債残高を再び積み増す動きがみられるほか、投資信託の運用も増加傾向を辿っており、金融機関は積極的なリスクテイク姿勢を維持している。』
って言ってしまえばそうなのかも知れませんが、それは日銀がマイナス金利だYCCだと金融機関に国内の金利収入だけだと餓死するような政策を取っているからであって、「よーしパパ業績も好調だからちょっと新しい収益分野を取りにリスクを取ってみるぞー」などというような前向きな物ではなく、督戦隊が後ろから銃剣きらめかせながら「下がると死ぬほど危ないですよー」と言われて目の前にある地雷原に向かう懲罰大隊の群れな訳でございまして、こういうのは積極的なリスクテイク姿勢というのはそもそも間違いであって「低金利環境の長期化によって収益減の確保に苦慮している」と書くべき。
『また、保険会社・年金などの機関投資家も、低金利環境が続くなか、外債等を中心にリスク性資産を引き続き積み増している。この間、CP・社債の発行レートはきわめて低い水準で推移しており、企業のデット・ファイナンスは増加している。』
まあこちらの方は「リスクテイク姿勢」という書き方になってませんな。
『以上のように、民間非金融部門の資金調達環境はきわめて緩和した状態にあるが、全体として金融経済活動において行き過ぎた動きはみられない。』
???????
『積極的な金融機関の貸出態度や良好な社債発行環境を背景に、マクロ的な信用量(対GDP比)は上昇しており、企業部門は収益改善期待に支えられて前向きな投資行動を維持している。』
それならもうちょっと雇用者の賃金が上がって然るべきだと思うのですが。
『不動産市場については、首都圏などで引き続き高値取引がみられるが、全体として過熱の状況にはないと考えられる。商業用不動産取引市場では、先行きの供給増加見通しもあって、不動産価格の上昇には頭打ち感がみられるようになっているほか、不動産投信(REIT)市場においても、投資家が期待を一段と強めている様子は窺われない。』
うーんこの。
『ただし、国際金融市場でストレスが発生し、リスクオフの動きが広がるような場合には、国内不動産市場にも影響が及ぶ可能性があり、その動向には今後とも注視していく必要がある。』
というような形で影響が来るというイメージはあまり無いのだが。
・・・・・・などと微妙に悪態をついてはいますが、まあこの辺りに関しては金融政策部署に露骨に喧嘩を売るような書き方が出来ないというプルーデンス部署の悲しさと申しますか、そもそもシャチョーがプルーデンスとかまるで関心も興味も無いという中で金融政策のせいで金融機関の経営体力が悪化して今後このままやってると大変なことになる的な話をしてもハエがブンブンうるさいくらいの認識しか無い(かどうかは知らんが、黒田総裁やリフレ一派の政策委員は金融機関経営とかのプルーデンス問題について全く興味は無いし、市場との対話とかもする気はないし、何か言ってもこの池のウシガエルは喧しいわ位にしか思っていないだろう、と金融機関や金利市場に思われているという時点で不幸以外の何物でもない)ので、まあモノの言い方が微妙になるのは致し方ないくらいは分かります。
『金融システムの安定性』についてもまあ本当にまずいですとか書けないのは分かりますが。
『金融経済活動において大きな不均衡がみられないほか、金融機関は全体として資本と流動性の両面で相応に強いストレス耐性を備えていることから、わが国の金融システムは安定性を維持していると判断される。金融機関は充実した資本基盤を備えており、当面収益力が下押しされるもとでもリスクテイクを継続していく力を有している。』
「リスクテイクを継続していく力」というのも何かねえとは思う。
『貸出の積極化などによる金融機関のポートフォリオ・リバランスは、経済情勢の改善に寄与してきており、これが企業や家計のより前向きな経済活動へと結びついていけば、金融機関の収益力の回復にもつながっていくと考えられる。』
って言いながら超低金利政策を何年続けていると思ってるんですかという話だし、その間ずーっと「金融環境は緩和的」というのが続いているのですが、その間により前向きな経済活動が活発になって物価2%になるくらいの経済になりましたっけと小一時間問い詰めたい。
『もっとも、預貸利鞘の縮小傾向が続くなかで、金融機関が収益維持の観点から過度なリスクテイクに向かうことになれば、金融面での不均衡が蓄積し、金融システムの安定性が損なわれる可能性がある。』
「収益維持の観点から過度なリスクテイクに向かう」って話なのですが、そらまあ1980年代後半の不動産等のバブルの時なんかは収益稼いでウハウハ的な動き(もあるけど競争意識もある)でホイホイとバブル拡大するような金融面での活動があった訳ですし、米国のサブプライムとかもまあそんな感じは多分にあると思うのだが、足元の本邦の金融機関の場合、その「収益維持の観点」というのが「よーしパパもっと儲けて圧倒的成長だ〜」みたいな話ではなくて、あくまでもこのままでは後ろにいる督戦隊に処分されるので仕方ないから地雷原でも全部が地雷な訳ではありませんということで進撃するという面の方が強いんじゃないですかねえと言いたくなる。
『一方で、収益力の低迷が続き、損失吸収力の低下した金融機関が増えれば、金融仲介機能が低下し、実体経済に悪影響を及ぼす可能性もある。』
てなわけでして、こっちの方が全体的な問題になってくる話で、たぶん前者はマクロ的な不均衡で出るのではなく、個別金融機関におけるやらかしみたいな形で出てくるんじゃないですかねえというミクロプルーデンスの課題のように思えます。
・という訳で紹介ページのメインイベント(かどうか知らんが)
でもって次の小見出しが『金融機関の収益力低下に伴う潜在的な脆弱性』で、ここに気合の入った図表へのリンクもあるのだ。
『金融機関の収益低下は、日本だけではなく、低金利環境が続く先進国において概ね共通にみられる現象であるが、そうしたなかでも、本邦金融機関の収益性は国際的にみて低さが目立つ。』
はあすいませんねえ。
『従業員数や店舗数は、需要対比で過剰(オーバーキャパシティ)になっている可能性が高く、このことが本邦金融機関間の競争の激化を通じて収益性を低下させる構造的要因となっている。企業の廃業率が開業率を上回り、企業数が全国的に減少するなかで、金融機関の各店舗が新たな取引機会を求めて法人営業を強化してきた結果、企業の取引金融機関数は増加している。』
なるほど。
『これを企業の立場からみると、取引金融機関数を増やすことによって、より有利な貸出条件を引き出すことができるようになったと考えることができる。しかし、企業が借入を行う際に、これまでの取引履歴や企業支援力にかかわらず、複数の取引金融機関の中から貸出金利の一番低い金融機関を選択することが常態化すれば、中長期的には金融機関の情報生産活動の停滞を通して資金配分の効率性が低下する可能性も考えられる。』
昔々その昔に金貸しの手先をやっていた時の経験しかないのであまり偉そうなことは言えませんけれども、企業の取引金融機関数が増加というのも、これって金融危機の時にメイン行という仕組みが機能不全になった所があったり、与信判断において与信判断機能を営業店サイドから本部とか中間組織とかのサイドに集約してしまって、その手の機能が低下したというのはあるんじゃないかな、というイメージだけで話をして恐縮ですが、たぶん昔(前世紀の話)と今の状況ってだいぶ違っていると思うので、その違う前のイメージからするとそんな気がしまして、企業サイドも多数の金融機関からの与信を受ける形にしないと安心できないという状況になっている、という面があるという漠然としたイメージなので実際の所全然違うわボケという事でしたらツッコミ頂ければ幸いです。
でまあその次にこんなのがあって色々と見ていて飽きない表である。
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr171023d.pdf
市区町村単位でみた金融機関店舗数の過剰度合い
・マイナス金利もショックなんですけどまあ遠まわしに記載はされています
その次が『マクロプルーデンスの視点からみた課題』という小見出しです。
『人口や企業数の減少は全国共通にみられるショックであり、そのもとでの地域金融機関間の競争激化は、資金利益の減少という共通エクスポージャーの影響度の増大を通じて、システミックリスクにも影響を及ぼし得る。』
ということでさらっと書いていますが、その資金利益を強制的に召し上げようという事実上の金融機関課税が日銀当座預金へのマイナス金利チャージで、資金利益の減少という面においても日銀が政策的にショックを与えている、というのはこれはまあ分かって書いているな(本文の方でもしれっと出てくる)という所で、政策担当部局というよりは政策委員会に対するプルーデンスからの異議申し立て(ただし大人の事情により露骨にやらない)という所ですね!!!!!
『わが国の金融システムにおいて、金融システムの効率性と安定性の双方を将来にわたって維持していくためには、適正な競争環境のもと、金融機関が収益性を改善させていくことが重要である。具体的には、(1)提供するサービスの差別化や非資金利益の拡大による収益源の多様化など、自らの強みを活かした収益力強化に努めていくこと、(2)よりきめ細かい採算管理を実施し、他金融機関との競争も踏まえた効率的な店舗配置や提供するサービスの見直しを行うこと、(3)業務改革を進め、設備と従業員の適正配置によって、労働生産性を向上させていくことが重要である。』
一般論は良いからマイナス金利を撤回してYCCも止めてただのゼロ金利時間軸政策に戻せ、ついでに貸出支援オペとか社債買入とかCP買入とかも止めなさい(ETFは知らん)。
『金融機関間の合併・統合や連携も、収益性改善の選択肢の一つになろう。』
FSR本文とかを詳しく見れば、というかここ数回ずーっとそういう話をしているので、別にオーバーバンキングの問題というのは今に始まった話ではなくて、マイナス金利云々とは別個の経済における構造問題的な部分があるのですが、ただまあそういうのがあるのは分かってはおりますし、金融機関の整理がマクロ的に見て避けるのが難しいとかいうのも分かるのですが、マイナス金利政策をやっている組織にそういう事言われますとシバキアゲ理論にも程がある話だし、シバキアゲ政策が基本碌な結果を生まないという風にも思いますので、まあお立場上こういう話をするのは良いのですが、それならばあの金融システムとかプルーデンスとかに1ミリも興味が無いというのが態度で露骨に出るボンクラ総裁や、金融機関に対して小馬鹿にした発言を堂々と行うジンバブエ原田委員とかに200時間くらい説教をして頂いて、認識を改めていただくように宜しくお願い申し上げたい。
『日本銀行としても、考査・モニタリング等を通じてそうした金融機関の動きをサポートするとともに、マクロプルーデンスの視点から競争環境の変化が金融システムに及ぼす影響について引き続き注視していきたい。』
ということなので、外の話の前に内の方を何とかしてちょ。
・・・・・・などと悪態をついていたら残念なことに紹介ページの紹介だけで終わってしまいましたので(すいません)概要とか本文とかの面白そうなところは明日以降追々ネタに致します。
2017/10/23
お題「台風シフトの為に各種雑談で勘弁してちょ」
本日は台風シフトの為に簡略バージョンでお送りします。
○選挙雑感
開票当初だとそこまで行くかという感じでしたが希望と維新のコケかたが来てましたな。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017102201001685.html
自公3百超、安倍政権継続 追加公認含め3分の2
2017年10月23日 02時03分
『第48回衆院選は22日に投票、即日開票された。自民、公明両党は307議席以上となり、自民党が追加公認した無所属候補3人と合わせて定数465の3分の2(310)を確保した。安倍政権の継続が決定。自民党は国会運営を主導できる絶対安定多数(261)に単独で達し、大勝した。希望の党は不振で、公示前の57議席前後に届かない見通し。立憲民主党は50議席を固め、公示前の16議席から3倍以上に躍進した。共産党、日本維新の会は低調だ。』(上記URL先より)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017102201001759.html
改憲勢力3分の2維持 国会発議に現実味
2017年10月23日 01時43分
『22日の衆院選で自民、公明両党、希望の党、日本維新の会の改憲勢力は国会発議に必要な衆院3分の2の310議席を維持し、衆院の7割に当たる326議席に達した。直近の民意を得たことで、数の上で発議は現実味を帯びる。安倍晋三首相は同日夜、多数派形成に意欲を示した。ただ改憲項目を巡って各党の意見は異なっており、今後の議論には曲折が予想される。』(上記URL先より)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017102201001741.html
立憲民主、野党第1党で攻勢へ 枝野氏、政策一致で連携
2017年10月23日 02時47分
『立憲民主党は公示前の16議席から大きく議席を伸ばし、野党第1党に躍進した。安全保障関連法を前提とした憲法9条改正反対や経済政策の転換を求め安倍政権に攻勢を強める構えだ。枝野幸男代表は22日のラジオ番組で、民進系無所属議員らを念頭に「政策が一致する方とは、いろいろな形で協力、連携することはある」と述べた。同じく新党の希望の党に失速感がある中、政権批判票の受け皿として野党のリーダー格の存在感を示した格好。今後、岡田克也元民進党代表ら民進系の無所属議員との統一会派結成などを模索し、政権と対抗する勢力との連携を図っていく意向だ。』(上記URL先より)
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/?from=ytop_navl&seq=01
衆院選(衆議院選挙)2017:読売新聞(YOMIURI ONLINE)
ホーム>選挙>衆議院選挙(衆院選)
・・・・・・・・まあ別にアタクシ専門家でもなんでもないので簡単に思うのだが、今回って東京の小選挙区と大阪の小選挙区を見ますと希望と維新が思いっきりダメダメで、まー希望の党と維新という中途半端な立ち位置の党が勝手に転んだという中で与党が拾った面はあると思うのです。
でもって内部がグダグダだった民進党が頭数減らしたとは言えしっかりとした形になった立憲民主に化けてしかも野党第一党になった訳ですし、公明党が小選挙区でまさかの取りこぼしをしてみたり、民進党無所属議員がそれほど大物でもないのにちゃっかり当選している人が出てみたり、かなり際どい小選挙区もありましたし、とまあ考えますと、今回の総選挙って与党選挙の獲得議席では見た目大勝かも知れんが与党もあまり楽観できないと思うのですが。
でまあ小池新党と維新というこの人たちはいったい何をしに国会にというのが勢力を落として立憲民主が登場というのはまあグダグダにも程があった野党に芯が入ったように見えますので、これが一過性の物になってまた合併したと思ったら内部で足の引っ張り合いというような事にならないように願いたいもので。
まーしかし池新党が名乗りを上げないままであったとしても、民進党があのグダグダ状態のままで選挙でまともに機能するとは思えなかった(野党統一候補構想が難しかったでしょう前原代表だと)ので、そういう点ではおい小池さんの特攻がまさかの自爆大特攻で、そこに前原一派が一緒になって特攻部員として散華(前原さん当選してますから前原さんは散華していない)されるとかゆーのは不幸中の幸いというところでしょうかねえ。
しかし当初は東京下手したら小選挙区小池新党席巻かという感じだったのが、若狭大先生比例復活もならずの惨敗とかプギャーm9(^Д^)だわ。
まあ今回は総じてアタクシがイカンじゃろと思っている方が落選したり没落したりしておりますのでメシウマ選挙ではありました。
・・・・・・でですね、ここからの問題なのですが、与党で290くらいに収まって立憲民主が野党第1党という風になると与党も緊張感持って国会運営するので、政権運営においても緊張感が出て、経済政策とかをせっせとやってくれる、という期待をしていたのですが、こういう議席数になってしまいますと、安倍ちゃんが思いっきり勘違いして調子に乗って憲法改正ヒャッハーとか聞く耳持たず説明せずのオンパレードになって内閣の支持は失っていく、という流れになってさらにグダグダというシナリオの方が気になる(というか多分そうなると思う)ので、選挙後の安倍内閣支持率がどのように進んでいくのか、というのを見て行きたいと思います。
まあ株はご祝儀で上がるのでしょうが、債券の方はあまり買いで反応するようなネタでもなさそうに思えますからにゃあ。
消費税云々とか教育云々の前にいきなり憲法改正の話になって、確か解散の理由は「国難突破」で少子化対策と北朝鮮で、消費増税の使途を変更というのが最初に言われていた話ですが、いきなりそのソリューションが「憲法改正」になりそうな気が思いっきりします。
あと、モリカケについては「我々のこれまでの説明が国民の皆様にご理解頂けたので国会でのこれ以上の説明は差し控えたい(キリッ)」となって華麗にスルーの方向で1杯のかけ蕎麦。
○そんなの見なくても会見要旨をきっちり読み込めば良いのだが
https://jp.reuters.com/article/ai-facial-expression-kuroda-idJPKBN1CP0GH
2017年10月20日 / 15:54 / 16時間前更新
焦点:世界初、AIで日銀総裁の表情解析 政策予想に応用も
『今回の研究では、会見中の黒田総裁の感情スコアの総合計に占める各感情スコアの割合を算出し、結果を解析。全体的には「中立」の感情が大部分を占めたが、日銀が金融政策変更を発表した会合の1つ前と直後の記者会見で、「怒り」、「嫌悪」、「悲しみ」の感情スコアに特徴的な変化が確認できたと言う。』
『解析対象となった期間中(2015年10月─17年1月)、主な金融政策変更は2回。昨年1月のマイナス金利政策、そして同年9月のいわゆるイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の導入だ。』
『このうち、それぞれその1回前の決定会合終了後に行われた記者会見では、「怒り」と「嫌悪」の感情スコアが顕著に上昇した。』(以上上記URL先より)
・・・・・・・てなわけでナンジャコラという感じですが、そもそも解析して政策予想がバシバシとできるんだったらこんな平場で発表しないで自分たちで政策変更にベットしたポジションを張って黙って儲けていれば盛大にマネタイズが可能な訳でして、そうじゃなくてこういう形で発表するという時点で「当社のテクノロジーは最先端んんんん!!!」とか宣伝するためのこけおどしにしか見えないですし、大体からして表情の作り方なんて人によって全然違うのでもありますから(麿を見よ)表情の判断と政策の判断を紐つけている間に総裁の任期が終わるじゃろと思いますが。
でですな、そんなもん読まなくても日銀ちゃんから「会見要旨」が出ているわけでございまして、こちらの要旨を見ますと質疑応答がどういう風になっているか、つまり上記にあるような「表情」なのではなくて、質疑応答の中で出てくるロジックがどうなっているのか、という方を見た方が面白いと思うのですよね。
この前もちょっとお話しましたが、今般サイトを引っ越ししたので、いまちょうど週1で過去ログを1か月分づつ整理していて、昨日は2015年11月という後から見ると面白い時期の駄文を整理したのですな(面白い理由は12月に補完措置、1月にマイナス金利をぶっこんで来た)。
この時期って10月末の展望レポートで物価達成を6か月先送りしているのに追加緩和を実施しないで「何でやらないのか」という点での説明がグダグダな中で「除くエネで見た場合に基調的な物価が強い」と言い張って、日銀版コアコア物価を出してみたり(11月に最初に公表した)したらそこから頭打ちになってみたり、その時期の先行き見通しに関しては「賃金上昇で物価があがります」の一本足打法だったりしていて、まあ今思い出しながらその時期の日銀ロジックを見ていると、明らかにロジックが大幅に破たんしている状態になっていたのですね。
でまあそのロジックが破たんした状態のまま金融政策の限界とか言われてブチ切れて補完措置にマイナス金利だったのですが、この時ってちょうど10月に「新三本の矢」とか出ていた時だったのですが、その新三本の矢に乗って金融政策をフロントランナーから降ろせば良かったのに2%達成の方は降ろさないで来たらこの有様、という事になってしまった訳ですな、うんうん。
でまあ先週ご紹介した櫻井腹話術人形の説明だと、やっと「今物価上昇圧力が弱いのは成長力強化の取り組みが進んでいるからなのでこれは良い傾向」という開き直りというか、「新三本の矢で成長力を強化する間に効果が出てくるまで時間が掛かるから金融政策はその間に緩和的な金融環境を提供して成長力強化のサポートを行う」という本来2年前にそういう形になっていれば良かったんじゃないのか、という姿になりつつある(ように見えるのですが希望的観測ですかねえ)と思いますし、補完措置とマイナス金利で2年間を無駄にしたとも言えそうです(が失敗して完膚無きまでに負けないと反省して総括検証はしませんからねえ)。とか何とか考えているアタクシなのでした。
○このペーパーは面白そうだが台風シフトなので備忘だけ
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2017/wp17j07.htm/
生産性の向上と経済成長
『本稿では、中長期的な経済成長の源泉となる労働生産性を巡る最近の議論を整理し、統計データにもとづく事実確認を行う。そのうえで、近年、わが国の労働生産性成長率が鈍化している背景について、いくつかの考察を行い、わが国経済が持続的成長を実現するための課題について検討を加える。
主要先進国の労働生産性成長率は、近年、鈍化傾向にある。こうした労働生産性成長率の鈍化には、主として全要素生産性(Total
Factor Productivity, TFP)成長率の伸び悩みが影響している。日本において、TFP成長率が伸び悩んでいる原因として、第一に、資本や労働といった経営資源あるいは研究開発によって蓄積された技術やアイデアを効率的に活用できていないこと、第二に、そうした経営資源が企業間で効率的に再配分されていないことが指摘できる。
日本の生産性を中長期的に高めていくためには、経済社会環境の変化や新しい技術の出現に合わせて組織としての仕事の進め方を柔軟に変えていくとともに、金融資本市場や労働市場の効率性を高めることで資本や労働といった経営資源の再配分を促すことが望ましい。』
ということで要旨がありまして、本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2017/wp17j07.htm/
生産性の向上と経済成長
#あと今日はFSRが出るはずで、このFSRは今となっては展望レポートよりも重要ですな!!
2017/10/20
お題「櫻井さん金懇ネタ&中曽さんのNY講演ネタ」
厭債害債さんが追撃の砲火。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201710/article_5.html
続・金融庁「内部留保」にいちゃもん
○一応市場ネタなのでメモとして
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO22462390Z11C17A0EE8000/
日銀、神鋼社債買い取りか 投資家が注視 かじ取り難しく
2017/10/20付日本経済新聞 朝刊
『神戸製鋼所のデータ改ざん問題が日銀に飛び火している。日銀は19日、社債を買い入れる政策で神鋼の社債を買い取ったもよう。財務面の不安が強まった企業の社債を買い取り対象にするかどうかで投資家の関心が高まっていた。(総合1面参照)』(上記URL先より、肝心の記事は有料記事なのであとは今朝の日経本紙か有料会員の方だけ読んでちょ)
ということですが、ロイターでも記事がありましたのでそちらも。
http://jp.reuters.com/article/boj-kobe-steel-bond-idJPKBN1CO1P1
2017年10月19日 / 21:08 /
焦点:日銀社債オペ、神鋼債買入の見方広がる 投資家救済の声も
『[東京 19日 ロイター] - 日銀が19日に実施した社債買い入れオペで、データ改ざん問題に揺れる神戸製鋼所(5406.T)の既発債が買い入れられたとの見方が市場で広がっている。不正発覚後に同社の社債価格が下落。評価損を抱える投資家にとって、日銀オペは格好の「売り場」となり、今回の社債オペが事実上の救済策になったとの声も聞かれる。』(上記URL先より)
というリードですが、記事の中の方はまあ何と申しますかという感じですが、昨日の社債買入オペ結果は、
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba171019.htm
社債等買入 2,347 1,001 0.016 0.155 43.3
つーことで足切が1.6bpというのはまあそんなもんかいなというレートになっていますが、平均15.5bpというのはまー高い金利ですので、一部高い利回りで放り込んだ人がいますなあというようなお話になります(上記ロイターさんの記事の中でも説明があります)。CP買入と社債買入に関しては応札および落札利回りが絶対水準の利回りをそのまま使うという物になっていまして、国債買入のような前日時価(とおぼしきもの)からの利回り(または価格)較差競争入札という形にはなっていないので、その時点での流通利回り水準が高い銘柄が対象に入る(かミスって高いレートを入れるかする)と足切と平均の乖離が出る事がある訳ですな。
でまあ後の話は以下内務省検閲ということにしておきますが、「過剰に乗っているリスクプレミアムの圧縮を図ることによって金融緩和効果を出す」という建付けになっているこれらの資産(CPと社債とETF)買入に関しては、市場の状況を鑑みてその政策目的は既に達成されているんじゃないのかねという点検はして頂きたいものだと思うのでした。
○櫻井審議委員講演続きと会見から
まずは金懇挨拶続き
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko171018a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko171018a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 函館市金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
・金懇挨拶続き:金融政策ですが達成時期に関しては開き直りコースが見えてきましたな
『(今後の金融政策運営)』の所から参ります。
『現状、物価の動きは弱めで、目標の 2%からはかなりの距離があります。この点は真摯に受け止める必要があると思います。』
真摯に受け止めるんだったら某副総裁は謝罪と反省の弁を自書でノートに1万回記入したものを早急に公表した上で潔く辞任して二度と表舞台に出て来ないようにされることを推奨いたしますが。
『もっとも先ほどお話ししたように、景気はしっかりと改善しており、物価上昇に向けたプロセスは着実に進展しています。また、今後経済が長期的な成長力を強め、物価にかかる人々の見方が変化する下では、景気に中立的と考えられる実質金利の水準(自然利子率)が高まるとともに、現実の実質金利が低下することで、金融緩和の効果は一段と強まることが期待されます。こうした点を踏まえると、当面は、現行の枠組みの下で強力な金融緩和をしっかりと推進していくことが肝要と思われます。』
こういうのを引かれ者の小唄と言います。
『なお最近は、景気が改善していることもあって、2%の目標が高過ぎるとの指摘も聞かれるようになりました。しかしながら、2%の目標は国内外の事情を広く勘案して設定されたものであり、容易に変更すべきではないと考えます。』
とか言ってまして、この部分ってはいはい藁人形藁人形とか思ったのですが、よくよく考えてみますと「景気が改善していることもあって」というのは置物リフレ一派の皆さんがエクスキューズに使う時にもそういう話をしていて「景気が改善して雇用が改善しているのだから良い」とかいう2%物価目標真理教からしたら敗戦思想で人民裁判で吊るされるべきな物価目標達成に対してあるまじき発言がある訳ですから、そういう方面にも期せずして砲撃になっているという気もします。
なお2%が何でという話はまあ毎度の事なので引用割愛ですが、この説明を見れば分かるように(引用めんどいので飛ばした部分でもあるのですが)時間が掛かるというのが強調されていますので、まあ早期達成とか完全に諦めているしやる気も無しという事ですので、ぜひ次の決定会合での会見では「2013年4月の発言との整合性」を記者全員で集中砲撃して頂きたい(てか展望レポートの方がネタが無いでしょ)ものです。
・さらに成長力強化にページを割くの巻で成長力強化の為に物価上昇が遅れるという話キタコレです
その次が『5.経済の供給面の拡大について』という小見出しで、これがまるまる3ページ分(講演テキストは11ページあるので4分の1以上ですし、冒頭と最後の部分があるからもっとシェアがある)という長い量を使って説明しています。
『賃金・物価の改善が遅れている理由として、いくつかの点を指摘しました。改めて整理すると、労働供給の増加や企業の生産性向上に向けた取り組みといった経済の供給面の拡大が主な要因の一つだと考えています。この点は、今後の経済・物価情勢を考える上で特に重要だと思いますので、以下、少し詳しくお話しさせて頂きます。』
てな訳で以下話が延々と続くのですが、今回の櫻井さんの金懇挨拶では上記のように「賃金・物価の改善が遅れている理由として、いくつかの点を指摘しました。改めて整理すると、労働供給の増加や企業の生産性向上に向けた取り組みといった経済の供給面の拡大が主な要因の一つだと考えています。」というのを思いっきり明示的に言いだしたなあ(なお櫻井さんは執行部の腹話術人形なので櫻井さんの金懇挨拶は執行部見解を執行部だと表だって言いにくい部分も含めて行っている、と解釈すべきなのでそういう意味から読むと味わいもあります)という所です。
いやまあ従来からもそういうニュアンスで例えば「賃金を上げる代わりに効率化投資をしていたりするのは賃金上昇の遅れにはなるけれども長い目で見た場合に我が国の産業の生産性が高まる話なので悪いことではない」とかいう説明はしていますが、正面切ってこうド直球で投げてきたのは初見のような気がします(違ってたらすいません)。
でもってこれは何を意味するかと言いますと、「成長力強化という中長期的に日本の経済の為に必要不可欠な施策が今まさに行われている中なのだから、それは良い意味で物価が上がり難い状況であり、そういう状況であれば物価目標達成時期が遅れるのは別に問題視すべきではない、さらに言えばそういう良い意味での物価が上がりにくい状況から金融政策で無理に物価を上げようとするのは好ましくない」という理屈を持って執行部が堂々と開き直ってきたという事を意味するのではないか、とまあ斯様に思う訳ですよ(個人の感想です^^)。
そうなりますと、まあ黒田さんやら置物師匠やらは今更後に引けないのでこのままだとしても、金融政策運営の方向性としては早期2%達成から中長期的な目標に変わっているという事になりますし、まあ上の首が変わったらしらっとそういう方向になるでしょうし、櫻井さんがこういうのですから少なくとも櫻井さん以降の審議委員は一部を除いてそういう話をするようになるんでしょうなあとかまあそんな事を思ったりするのです(個人の感想です)。
何故ならば、上記の話の先の方(途中は労働供給とか生産性改善の話がある)に結論として、
『改めて申し上げるまでもないことですが、こうした供給面の拡大は経済の長期的な成長力を高めます。人口が減少傾向にあるわが国にとって、成長力の強化は大変重要な課題です。成長力の低下は、財政の持続性にかかる懸念や、企業や家計の将来不安を通じた支出の抑制姿勢等にも繋がります。この点、足もとの動きは、短期的に賃金・物価を下押すとしても、経済全体としてみれば間違いなくプラスだと思います。直近の
6 四半期連続のプラス成長も、循環的な要因だけではなく、こうした構造的な変化に下支えされている面があると思います。』
ときまして。
『日本銀行としても、とにかく物価が上昇すれば良いと考えているわけではありません。経済の好循環が続き国民生活が豊かになるもとで、物価の安定が実現することが大事だと思います。2013
年に政府と共同で公表した声明でも、「デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現」を目標に掲げています。足もとの動きはこうした目標に則したものと評価しています。』
そこには「2%目標を早期に達成」という趣旨の文言があった筈なのですが、そちらはすっかり骨抜きというか「精神の問題」という事にするんでしょうなあ。
でもってその後も話がありますがパスして最後の方に、
『以上の点を踏まえると、現状は経済の前向きな構造変化に伴う調整過程と捉えることもできると思います。足もとの賃金・物価の上昇率が低いことだけをもって、過度に否定的にみるべきではないでしょう。』
いやその物価を目標にして物価が上がれば皆ハッピーという置物リフレ理論で政策やった筈ですので、別にまあこの理屈は理屈で良いんだが、だったら置物一派を人民裁判で吊るしてからこの理屈を出して頂きたい。
『個人的には、需要・供給の両面がバランスよく成長しつつあり、賃金・物価も将来の上昇に向けた歩みを着実に進めていることから、むしろとても良い状態にあると感じています。その点、重要なことは今の流れを止めないことだと思います。そのためには、日本銀行は現行の枠組みの下で、引き続き強力な金融緩和を推進していくことが重要だと考えています。同時に、政府や企業による構造改革など成長力強化に向けた様々な取り組みが続くことを期待しています。』
まあ「正常化路線」は無理だけれども「緩和の調整」位ならやるかもという事でしょうかね。
・会見から
はいはい会見会見。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1710b.pdf
『(問) 午前の挨拶の中で、足許の供給力の改善が短期的には物価を下押しするが、中長期的には、労働供給やビジネスプロセスの見直しの限界、成長力の高まりなどにより物価に上昇圧力がかかるというご趣旨の説明をされていたと思います。そうした物価の上昇は、いつ頃明確化するとお考えなのかお聞かせください。また、関連して、一部の政策委員は、供給の余力が残っている中では、更なる追加緩和により需要を刺激し、物価上昇圧力を強めるべきとの見解を示されています。こうした主張に対する櫻井委員のご見解をお伺いします。』
これは綺麗な質問の仕方。
『(答) まず最初のご質問について、需給ギャップは 3 四半期連続プラスということで、やや需要が強いですが、経済全体としてみれば比較的良くバランスが取れていると思います。需要が伸びてきた中で、供給力がかなりついてきているとの印象を受けています。金融経済懇談会でも申し上げましたが、労働力率の上昇や、様々な生産性向上に関する取り組みが供給力の増加につながっています。供給力の増加なので、現在は、物価に対してむしろ上昇を抑制する要因として効いているのではないかとみています。』
ポジティブに話をしつつ物価上昇圧力を抑制する方向になっているという説明をして物価が上がらない言い訳をポジティブな方向に言い換えるという高度な技が使われておりまして、これは即ち「インフレ期待や成長期待が上がっていないから物価や賃金が上がらないのではないか」というツッコミをすっとぼけるという高度な話のすり替えを行っている訳でして、展望レポートで示される屁理屈が楽しみになって参りました。
『いつ頃物価や賃金を押し上げる方向に作用し始めるか、時期をはっきりと予測することは非常に難しいと思います。ただ、その時期がだんだんとある程度近くなってきているのではないかと感じています。』
もはやマネタリーベース置物理論の片鱗も無い。
『例えば、労働力率について、高齢化が進む下でどこかで上限に達すると考えております。時期的にも、そんなに長くかかるものではないのではないかとみています。この前提条件として、ある程度、今の
6 四半期連続のプラス成長のようなものに支えられていないと、その時期も早まらないだろうと思います。そのような時期が早く来ることを願っています。』
でもって後半の追加緩和質問ですが、
『追加緩和が必要かについて、物価上昇は遅れていますが、私は、需給ギャップがプラスに転じて、そのプラス幅がリーマンショック以降では一番高い水準にあることも踏まえると、現在の状況を維持することが非常に重要だと思います。』
ほう。
『現在の量的緩和政策が始まってほぼ 4 年半になりますが、これまで最長のプラス成長は
2 四半期連続でした。2 四半期連続でプラスになってはまたマイナスになっての連続だったのです。これが初めて今回
6 四半期連続というところまできました。物価目標を早く達成したいということで何か新しい政策をとるということになると、場合によってはかなり無理をしなければならないということにもなりかねませんので、むしろ、現在の金融緩和を続けて、政策の効果をじっくりと待つことでよいのかなと考えています。』
この部分は昨日引用したロイターニュースの題名にもなっていましたし、ベンダーヘッドラインで一斉に出ていましたね。
ついでに別の質問でもう一度聞かれているのでその答えもメモメモ。
『(問) 2 つお伺いします。1 つ目ですが、現在の「イールドカーブ・コントロール」の金融緩和効果は、不十分であるという意見が政策委員の中から出ていますが、仮にそうした観点から提案があった場合に、櫻井委員はどのような対応を採られるお考えなのかお伺いします。(後半割愛)』
『(答) まず、1 点目につきましては、私は今のところ現在の政策で十分だろうと考えています。ご承知の通り「イールドカーブ・コントロール」の下では金利に重点が置かれていますので、量は従属変数になっていると思います。現実に買入れ額も減ってきていますが、重要なことは、金利をきちんとコントロールできているかであり、その効果が十分かどうかです。特に、物価が上がるに連れて、実質金利は下がることになりますから、効果がどんどん強くなってくるわけです。そうした点も踏まえると、私は現在の枠組みで十分だろうと考えています。(後半割愛)』
ということでリフレ派内ゲバキタコレという事で実に楽しみですが精々共倒れになって頂きたいものだと思います。
あと、ETFの質疑も2本ほどありまして、まあこれはこれで重要な論点ではあるのですが、今更引っ込みがつかなくなっているので現時点でゴリゴリ詰めても中々身のある話にはならないですなあというのが印象です。
○中曽副総裁講演とな
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko171019a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko171019a1.pdf
進化する金融政策:日本銀行の経験
米国ニューヨーク連邦準備銀行主催セントラルバンキングセミナーにおける講演の邦訳
(10月18日、於ニューヨーク)
なおモノホンの講演はこちら
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2017/ko171019a.htm/
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2017/data/ko171019a1.pdf
Evolving Monetary Policy: The Bank of Japan's Experience
Speech at the Central Banking Seminar Hosted by the Federal Reserve Bank of New York
(New York, October 18)
でまあ週末時間があればモノホンの講演の方も読まないとと思いつつ、本日は日本語訳の方で勘弁して頂きたく。
・なんかフェアウェルスピーチみたいなんですが・・・・・・・・・・
順序が最大に逆だが最後の『6.おわりに』を読むとですな・・・・・・・
『そろそろ時間がなくなってきました。長年にわたって金融危機への対処とデフレの克服に力を注いできた経験を踏まえ、本日は、皆さまに、優れた「実務家」になることの重要性を強調して、私の話を終わりたいと思います。』
ほほう実務家ですか。
『この 10 年、中央銀行は様々な困難に直面し、金融政策の枠組みもダイナミックに変化してきました。厳しい挑戦の繰り返しでしたが、大規模な資産買入れにせよ、マイナス金利にせよ、前例のない新たな政策に踏み出す決め手になったのは、金融調節をはじめとする実務面のフィージビリティや、市場参加者との協力関係がきちんと確保されているかどうか、ということでした。』
どう見てもマイナス金利導入はいやなんでもないです。
『セントラルバンカーとして最先端の理論を学び、分析能力を高める努力を尽くすことは当然です。しかし、それだけでは、現実に直面する問題に機動的に対処することはできません。政策に責任を持つ者は、理論的な裏付けが十分でないことをもって、目の前の課題から逃れることは許されないのです。』
置物に対する文句ですかそうですか。
『セントラルバンカーは、中央銀行の責務を踏まえ、強い使命感を持って任務に当たることが求められます。その任務を実現するためには、政策の効果とコストを意識しながら、ベストのタイミングで様々な決定を行い、同時に説明責任を果たしていかなくてはなりません。そのためには、常日頃から、実務家として判断能力を磨き、市場参加者の声に耳を傾ける努力が大切です。』
聞いてたらあのタイミングでマイナス金利やるかというツッコミはありますが、まあ自己反省の弁であると思って読むとまた味わいが違います。
『最後になりました。本日は「非伝統的金融政策」について、やや詳しくお話してきましたが、「伝統的」か「非伝統的」かは、相対的なものであり、また、おそらく事後的に評価されるべき性質のものです。そもそも、何が「伝統」かを説明できるほど、現代の金融政策は十分な歴史を蓄積していません。この
10 年の経験を、金融政策の進化の過程でどのように位置づけ、今後、どこに向かっていくのかを決めるのは、次世代を担う皆さまの仕事です。』
>次世代を担う皆さまの仕事です
>次世代を担う皆さまの仕事です
>次世代を担う皆さまの仕事です
・・・・・・・・・・(・ω・)
『中央銀行コミュニティは、共通の価値観や文化が存在する特殊な場です。それゆえ、「一度セントラルバンカーになったら、常にセントラルバンカーである」といわれることもあります。約
40 年に及ぶ私の中央銀行での経験を振り返ると、セントラルバンカーになったことを後悔する瞬間は一度たりともありませんでした。皆さまにとって、セントラルバンカー同士の連携と信頼関係は、何物にも代え難い大きな財産となります。今回のセミナーのように、同世代の同僚が直接顔を合わせ、ネットワークを広げていく機会を、是非大切にしてください。皆さまを中央銀行コミュニティに歓迎するとともに、中央銀行におけるこれからの生活が、引き続き、興味深くエキサイティングなものになることを願い、私のスピーチを終えたいと思います。』
今回は過去の話から今までの金融政策運営というネタな上にこのまとめでうーんこのという感じですな。
・YCCの説明が割とアレ
というのを読みましたが二つほど小見出し戻って『4.金融政策のさらなる進化:長短金利操作付き量的・質的金融緩和』の部分の後半から。
『実際、この1年間、イールドカーブ・コントロールの具体的な運用を含め、多くの方からご質問を頂きました。そこで本日は、この場を利用して、しばしば頂く主なご質問にお答えしたいと思います。』
ほほう。
『第1の問いは、日本銀行の現在の操作目標は、「量」なのか「金利」なのかという点です。先ほど述べたように、現在の政策は、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために最も適切なイールドカーブの形成を促すことを目指していますので、その意味で、答えは「金利」です。国債買入れ額を操作目標として固定する方法では、最適なイールドカーブを形成することはできません。』
ということで2点制御な筈なのですがこの説明だと均衡イールドカーブの話になっていますな。
『同じ金額の買入れであっても、金利をどの程度押し下げるかは、その時々の経済・物価情勢や国債市場の状況によって異なるからです。これに対し、「イールドカーブ・コントロール」のもとでは、長短金利の操作方針を実現するために必要な量の国債を、柔軟かつ効果的に買入れることが可能となります。その結果として、国債買入れ額は内生的に決まることになります。なお、仮に将来、買入対象となる国債が品薄となれば、他の状況を一定とした場合、一単位の国債買入れによる金利押し下げ効果はより大きくなるはずです。つまり、より少額の国債買入れによって、同じ金利水準を実現できることになります。このように、イールドカーブ・コントロールは、経済・物価・金融情勢に応じて最適な金利水準を実現できる、柔軟で持続性の高いスキームです。』
という説明。
『第2の問いは、操作目標は金利であるとして、そもそも長期金利のコントロールは実務的に可能なのかという点です。この1年間の実績をみれば明らかですが、答えは「可能」です(図表8)。』
実際問題としては金融政策の先行きに対する市場の見方が変われば大きく変動するので、この1年で出来たから将来できるとは限らないのですが、まあ実施している方はこういう大口をたたきたくなるのは分かる。
『マネタリーベースの価格ともいえる短期金利については、中央銀行が独占的な価格決定力を有しているのに対し、長期金利は、短期金利の先行きに対する市場参加者の見方や様々なリスク・プレミアムによって決定されます。』
ここはちょっと変で、短期市場金利はMBの価格ではなく資金需給に対する無制限の介入権があるから価格決定力がある訳で、現に政策変更を行った際に前後でMBを大きく変化させなくても短期市場金利は変動するので「マネタリーベースの価格ともいえる短期金利」というのは中央銀行コミュニティでは使われそうな言い方だが現場実務労働者的には非常に違和感が強い。
『このため、伝統的には、「中央銀行は、短期金利の操作はできるが、長期金利の操作はできない」という見方が一般的でした。しかしながら、先ほど述べたように、各国の中央銀行は、ゼロ金利制約を乗り越えるために、より長い金利に働きかける努力を続けてきました。イールドカーブ・コントロールは、働きかける対象となる金利の長さや、コントロールの緻密さにおいて、その最たるものといえます。』
今のところ市場の先行き見通しが変わらないから出来ているだけだと思うのであまり大口を叩きすぎない方が良いと思います。
『確かに、長期金利を含めた金利の操作はチャレンジングな試みではあります。しかしながら、日本銀行は、国債市場において相当の市場プレゼンスを有していますし、過去数年にわたって大規模な国債買入れの経験を積み上げてきています。日本銀行は、イールドカーブ全般にわたって、様々な期間別の国債買入れを行ってきたほか、特定の金利水準で無制限に国債を買い入れる「指値オペ」という強力な補完的ツールも備えています。このため、短期金利ほど精緻にコントロールできる訳ではありませんが、この先も、2%の「物価安定の目標」の実現のために、最も適切なイールドカーブの形成を促していくことは十分可能だと考えています。そのうえで、スムーズな金利形成を実現するためには、市場参加者とのきめ細かなコミュニケーションが必要であることも強調しておきたいと思います。この点を含め、私はフロント部署のオペレーション運営能力に全幅の信頼を置いています。』
ここでも「最も適切なイールドカーブの形成を促していく」と言っているがじっさいにそうなのだったらいいから均衡イールドカーブの形状を出せやゴルァとこちらは言いたくなるのであまり言わない方が良いと思うのだが・・・・・・・・・・
『第3の問いは、長期金利の水準をコントロールすることが可能だとして、「望ましいイールドカーブ」の姿をどのように判断するのか、という点です。』
ということで、思いっきり均衡イールドカーブの話になってしまっているのですよ大丈夫かなあ。
『伝統的な金融政策においては、望ましい短期金利の水準を判断するための様々なベンチマークが考案されてきました。テイラー・ルールは、その中でも最も有名な基準の一つでしょう。しかし、日本銀行の場合、単一の短期金利ではなく、イールドカーブ全体に適用される新たな判断基準を構築しなければなりません。そうした取り組みの一環として、日本銀行では、均衡金利の概念を拡張して「均衡イールドカーブ」を計測し、過去の緩和局面と比較するなど、様々な角度から理論的・実証的な分析を進めています。なお研究途上の課題も少なくありませんが、こうした分析の成果も活用しながら、先行き、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、必要であればイールドカーブの形状についても調整を行っていく方針です。』
おおじゃあ今すぐこのカーブ出せや、となるのでこの話は藪蛇になる予感がします。
#本日はこんなところで勘弁
2017/10/19
お題「櫻井さんの函館金懇は展望レポート前に執行部見解を確認する良い機会ですな」
基調的インフレ率が実際のインフレに先行するって言葉の定義として何かおかしくないですか??>モーサテ(というかNY連銀)
#それは単なる先行指数というのものではないかと
内部留保がどうのこうのというニュースに何か感想を書こうかとおもったら厭債害債さんのエントリーがありましたので(^^)。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201710/article_4.html
金融庁が「内部留保」にいちゃもん
○櫻井審議委員はすっかり「2年を念頭にできるだけ早期」を無かった事にするの巻
ということで櫻井さんの函館金懇ですけれども。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko171018a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko171018a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 函館市金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
櫻井さんはリフレ大先生ということで入ったのかと思えば非常に穏当に執行部見解の腹話術人形となっておられまして、いやまあもしかしたら中の人になってから「進化して」そうなったのかも知れませんが、その割には当初よりやんちゃな発言も見られないということである意味不思議ちゃんなお方ではあります。
・景気認識に関して
まあ景気認識に関して別に櫻井さんのオリジナル見解を聞きたい、という訳ではなくて、前回展望レポートから3か月経過してまもなく次の展望レポートが出てくるので、そのタイミングで執行部見解を聞くことができる、という意味で引用してみます。
てな訳で『2.内外経済の現状と先行き』をちょっと見てみませう。最初は飛ばして海外の地域別展開から。
『地域別にみると、米国や欧州はしっかりとした回復を続けています。世界の貿易活動の回復に連れて輸出が緩やかに増加しています。雇用・所得環境の改善を背景に個人消費が増加基調にあるほか、企業収益が改善する下で設備投資の持ち直しの動きも続いています。米国では、大型ハリケーンの影響で景気が一時的に下押しされる可能性が高いですが、過去の経験等も踏まえると、復興需要にも支えられて回復のモメンタムは維持されると思われます。欧州では、主要国の選挙等を通過し不透明感が後退する下で、このところ循環的な回復力が一段と強まっています。』
まあ今日カタランネタがありますが、欧州も含めて欧米経済は堅調に推移していますし、思ったより強いという感じなのでこれは順当。
『新興国では、中国は総じて安定した成長を続けています。既往の金融引き締めの効果もあって民間の固定資産投資は増勢が鈍化していますが、機動的な財政運営の下で公共投資は高い伸びを続けています。輸出も基調として持ち直しているほか、個人消費は良好な雇用・所得環境を背景に底堅く推移しています。NIEs・ASEAN
では、輸出が増加基調にある下で、企業・家計のマインド改善や各国の景気刺激策の効果などから内需も底堅く推移しています。資源国は、既往の資源価格の底入れもあって、このところ回復傾向が鮮明になっています。』
まあ順当。
『先行きの海外経済は、全体として緩やかな成長を続けるとみています。先進国の着実な成長に加え、その好影響の波及や各国の政策効果によって、新興国の回復もしっかりとしたものになっていくでしょう。IMF
が今月発表した世界経済見通しでは、世界経済の成長率は前回見通し(7 月時点)から上方修正され、2017
年に+3.6%、2018 年に+3.7%と伸び率を高めていく姿が予想されています。』
とまあそういう海外状況な訳ですが、こんなに調子が良いという状態の中でジャパンの物価が上昇基調にならなかったら自然に皆得みたいな良い形での物価上昇って当分ならないんじゃない(その後に上昇するのは誰得な不連続な上昇になってシフトアップするような形)かと思ってしまいますなこらまた。
『もちろん、こうした見通しには不確実性が伴います。米国では、税制改革などの経済政策運営を巡る不透明感が引き続き強いように思います。FRB
による金融政策正常化の進展が見込まれる下で、米国の金利上昇等が国際資金フローに及ぼす影響にも注意が必要です。昨年来、いくつかの新興国で大規模な資金流入がみられていることから、反動が生じた際には影響が大きくなる恐れがあります。また、北朝鮮情勢をはじめとする地政学的リスクが高まっているほか、英国の
EU 離脱交渉の展開とその影響なども先行きのリスク要因です。』
『より長い目でみると、近年の保護主義的な動きにも引き続き注意が必要だと思います。貿易と直接投資によるサプライチェーンの構築が、過去、長期に亘り世界経済の成長をけん引してきました。今後、保護主義的な動きが強まり、貿易や直接投資が制限されて既存のサプライチェーンの再構築を迫られることになると、世界経済は大きな混乱を来し、またその主要な推進力を失うことになるでしょう。これらの不確実性に留意しつつ、引き続き、海外経済の動向をしっかりと点検していきたいと思います。』
一応リスクの話をしているのだが、まあそんなにリスクバランスを下に見るような感じではない言い方になっています。海外経済に関しては普通に考えると今回の展望レポートでは上方修正するか上振れの可能性を強く認識するかという事になると思いますがどうでしょうかね。
でもって次が『(国内経済の現状)』です。
『次に、国内経済の動向です。わが国の景気は緩やかに拡大しています(図表2)。海外経済の緩やかな成長に伴い、輸出が増加基調を続けています。政府の大型経済対策の執行が進捗し、金融政策と財政政策の相乗効果も強まっています。』
「金融政策と財政政策の相乗効果も強まっています」ってのが謎なのだが。
『企業部門、家計部門の双方で所得から支出への前向きな循環が強まっており、外需主導から内需の回復を伴うより自律的な経済成長へと移行しつつあります。』
ここはホンマカイナという感じがだいぶするのだが。
『都市部から地方へ、大企業から中小企業へと景気改善の裾野が拡がっており、経済の頑健性は一層強まっていると感じています。』
そうなの??
『成長率は、2006 年以来となる 6 四半期連続のプラスとなりました。この間、平均して年率+1.7%と、0%台後半とみられる潜在成長率をはっきりと上回る高めの伸びが続いたことで、資本や労働の稼働率を示すマクロの需給ギャップははっきりと改善しています。人々のマインド面にも着実にプラスの影響をもたらしていると思います。』
とまあ威勢の良い話。企業部門と家計部門の説明があるのですがその辺は飛ばしまして結論を。
『以上のように、全体としてみると、景気が着実に改善する中で賃金の改善が遅れています。背景として、安定性を重視する日本の雇用慣行の影響が指摘されています。企業は、不況時の調整が容易でない正社員の賃金引き上げに慎重で、労働組合も、長期的な雇用の安定性を優先して高い賃上げ率を要求しない傾向があるようです。』
ということになっているのですが、本当にそうなのかいなというのは個人的にはやや疑問があって、この辺りに関しては労働政策に携わっている人たちの見解をお伺いした方が良いのかなとか思ったりもするのです。
『また、近年、女性や高齢者の活躍促進を企図した政府の取り組みもあって、労働供給が増えてきたことも、賃金の上昇圧力を緩和する一因となっているように思います(図表
9)。特に現状は、女性や高齢者は賃金が低い傾向にあることから、結果的に人手不足に直面する企業に安価な労働力の調達機会を提供してきた面もあると思います。』
さっきそのように申し上げたのは、続きの部分で上記のような整理になっていることで、確かにまあマクロ的に言うとそういう事なのかも知れないのですが、そもそも論として労働供給が増えた背景って政府の取組云々ではなくて、世帯所得が低下したとか、世帯の将来収入に対する不安感が高まったことから、従来働く必要性を感じなかった人たちが働くようになって労働供給が増加したというような要因って考えられないのですかねえと思ってしまい、まあ読んでいてここの部分にちょっと違和感を感じたので、その前の部分も実はもう少し留保して考えないといけないのではないか、と思ったりしているのです。
もちろん、櫻井さん(つまり執行部というか日銀の中心的見解)としては「面もあると思います」としているので、政府の働き方改革で労働供給が増えたと一面的に整理している訳ではないですし、恐らくこの部分というのはこの先の説明の中で、生産性向上の為の改革を行う間には短期的に物価の下押し圧力が掛かる場合もある、という話があって、そこのマクラというか伏線を張っている面もあるので殊更に入れられたという文章構成上の都合なのかも知れませんが・・・・・・・・
でもって次の『(国内経済の先行き)』です。
『先行きも、海外経済の成長や、金融緩和政策と景気刺激的な財政政策の相乗効果を軸に、わが国の景気は緩やかな拡大を続けるとみています。』
ということなんだが消費税増税が待っている中で家計が防衛的になってこないかという気もするんですけどねえ。
『企業部門では、世界の貿易活動の回復が続くもとで、輸出が増加基調を維持すると思われます。企業収益は、内外需要の増加に伴い増益傾向を辿るでしょう。設備投資は、企業収益の改善や緩和的な金融環境に支えられて緩やかな増加を続けると見込まれます。』
収益改善しても先行きの売り上げ拡大が見込めないと設備投資って増えないと思うのですがそれは。
『家計部門では、労働需要の拡大に伴い賃金の上昇圧力が一段と強まるでしょう。個人消費は、雇用・所得環境の改善に加え、引き続き耐久財の買い替え需要も見込まれることから、緩やかな増加傾向を辿ると見込まれます。』
本当に強まるのかね??
『こうした下で、潜在成長率を上回る高めの成長が続くことから、需給ギャップもプラス幅が一段と拡大していくものと思われます。』
まあとりあえずそういう見通しのようです。
・物価に関しては「2年を念頭に2%」は無かった事になっているのが味わい深い
まあアレです。櫻井さん就任以降は1回ETFの買入増額をやって金融緩和の強化をしながら総括検証を行う、という事案がありましたが、基本的にQQE導入および追加緩和にマイナス金利政策の辺りまでは決定に絡んでいませんので、無かった事にするというオトボケ作戦はまあやってやれない。
とは言いましても・・・・・・・・・・
『なお、本日公表した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した通り、海外経済・国際金融市場を巡る不透明感などを背景に、物価見通しに関する不確実性が高まっている。こうした状況を踏まえ、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」・「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行うこととし、議長はその準備を執行部に指示した。』(2016年7月29日決定会合声明文より)
ということになっていますので、現在は「2%の物価安定の目標を出来るだけ早期に実現する」という仕切りは生きている筈ですし、もっと前をたどれば、2013年1月22日の「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」において、
『日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。』(2013年1月22日政府・日本銀行の共同声明文書より)
とあるので、本当は「早期に実現」というのをオトボケするのはアカンタレなんですよね。ただまあ同じ共同文書の上記部分の続きに、
『その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』(2013年1月22日政府・日本銀行の共同声明文書より)
ということで、「金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ」という一文があるので、「早期に実現することを目指す(早期に実現するとは言っていない)」という形での解釈論によって達成時期の柔軟化を図るしか道はない(共同声明を書き換えるとか廃棄するのはハードル高い)のでしょうな、と思ったりします。
すいません前置きが長くなりました。
『続いて、足もとの課題である物価情勢についてお話しします。生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、+0.7%まで上昇しています(図表
10)。昨年春以降の原油価格の持ち直しを背景に、エネルギー価格が物価の押し上げに寄与しています。もっとも、エネルギー価格の影響も除いた消費者物価の前年比は+0.2%と、依然として弱めの動きが続いています。』
都合の良い方を強調。
『賃金が緩やかながら上昇する下で、企業にとっては労働コストが増加しています。しかし多くの企業は、コストの増加をそのまま販売価格に転嫁せず、様々な工夫により生産性を高めることで吸収しています。例えば、深夜営業の廃止や時間帯指定の配達サービスの縮小といった過剰サービスや非効率なビジネス・プロセスの見直し、事務職による現場部署の応援などの既存の人材の有効活用、セルフレジや物流施設の無人化、インターネットでの予約処理の導入などの省力化・効率化投資等の取り組みがみられています。』
この話は毎度そういう説明ですが、単に企業がこれまでの累積収益を取り崩して対応している面についてはどうなんでしょうかね。
『企業は、販売価格への転嫁に慎重な理由として、顧客離れが生じることへの警戒感を挙げています。企業が置かれている厳しい競争環境を踏まえると当然のことのようにも思われますが、以下に挙げる要因によりこうした警戒感が一層強められている面もあると思います。』
ほうほう。
『第一に、過去、数十年にわたり物価上昇率がごく低位で安定していたことから、消費者が物価の上昇に慣れていない、あるいは企業がそうした消費者の反応を見越して値上げに慎重な姿勢を強めているように思われます。』
最近開き直ってるなあと思うのはこの説明でして、それって「強力なコミットメントとそれを裏付けする強力な金融緩和によってインフレ期待の引き上げを図って実質金利を低下させる」というQQE導入時の目論見が完全に失敗しているという事を意味する筈なのですが、まあそこは総括検証で検証したじゃないですかやだなーって説明するのでしょうが、完全にこの部分は負けを認めているのに負けたと言わない開き直りというか往生際の悪さというか。
『第二に、スマートフォンの普及や E コマースの拡大等の影響が考えられます。消費者は、手元で広範な価格情報を容易に比較・参照し、必要に応じて遠方からでも商品やサービスを購入できるようになりました。』
『こうした変化は、消費者の利便性を高めると同時に価格感応度を強め、結果的に企業間の価格競争を助長してきた面があると感じています。』
という話はミクロ的にはそうですなとしか申し上げようがない(賃金にも言えるネタ)のですけれども、置物リフレ理論によればマクロ的な物価というのは金融政策によるマネタリーの変化によって動くものであって、個別の物価が下がるから全体の物価が下がる、というような理論を述べるのは無知蒙昧の極み位の勢いで説明をしていた訳でして、置物リフレ理論is何処としか申し上げようが無いのですが、まあこうやって過去の話は無かった事にするというのはスピーカーを微妙に変えることによって(これが師匠だともうちょっと総ツッコミになってしまうが櫻井さんならセーフ、というのはあるでしょう)誤魔化していくという日銀の中の人たちの巧みなインチキとなっていますな。
・物価の上昇時期についてはもはや盛大にオトボケになってくるのでしょう
でもって『(物価の先行き)』ですが、
『もっとも、こうした状況がいつまでも続くとは考えていません。ビジネス・プロセスの見直しや社内人材の有効活用等には自ずと限界があります。企業が値上げに慎重であっても、次第に労働コストを吸収することが難しくなっていくでしょう。そうした状況では、同じ競争環境にある他社も同様に限界を感じている可能性が高いと思われます。そのため、今後は個社の値上げとともに競合他社が追随する動きが増えてくると思います。現実に値上げの動きが広がれば、消費者も物価の上昇をある程度当然のこととして受け止めるようになると思います。そうなると、企業にとっては更なる値上げの余地が拡がります。雇用者も、物価の上昇分を賃金に反映するよう求めることになるでしょう。こうした循環的なメカニズムの下では、物価上昇率は
2%の目標に向けて次第に上昇基調を強めていくと考えられます。』
その前に景気が循環的に下に向いたらどうするんだというツッコミはあえて行わない。
『そうした状況がいつ訪れるか、正確に予測することは困難です。』
まあこの辺りの話は既に執行部系からは何回か出ていますが、この辺りはだいぶ開き直った感が強いです。
『しかし、既に運輸業界や外食産業等の一部では労働コストの上昇を理由に値上げに踏み切る動きがみられています。先行き値上げを検討している企業が増えているといった報道も多く聞かれるようになりました。業界により状況は大きく異なるでしょうが、全体として値上げに向けた機運は高まりつつあるように思います。』
『また、最近は、値上げを表明した企業で株価が大きく上昇するなど、世の中の受け止め方も少しずつではありますが変化しているように感じます。首尾よく値上げできた企業の事例等を眺め、値上げにより必ずしも顧客が離れることはないとの見方が増えているということだと思います。消費者も、人手不足に関する報道等が増える中で、企業の置かれた状況に徐々に理解を示し始めているのかもしれません。』
株価が上がっても客離れしたらダメなんですがそれはというか、代替性の低いものだったり、同業他社が追随しなかったらどうなのよとかいうのはありまして株が上がっているから評価されているというのは金融屋の発想にも程がある。
『以上纏めると、足もとの物価の動きは弱めですが、景気の改善に伴い労働需給が一段と引き締まるに連れて、いずれ物価上昇に向けた循環的なメカニズムが働くものと考えられます。既に、その兆候もみられ始めており、物価上昇に向けたプロセスは着実に進展しているものと評価しています。』
とまあここまで読んだところで展望レポートなんですが、この調子だと「経済見通しは上振れ、物価達成見通しは不変」とかで出してくるんじゃないかという感じではありまして、それでいいのか早期達成はという所ですが、まあそこはオトボケなんでしょう。
・金融政策以降の話を読む時間がががががが
とか珍しくも櫻井さんの金懇挨拶を仔細に読んでしまったら『4.金融政策』と『5.経済の供給面の拡大について』という部分に届かないというアチャーな事になっておりまして、続きは会見ネタと共に明日にしたいと思います(すいません)が、会見に関してはこんなベンダー記事が。
http://jp.reuters.com/article/boj-sakurai-presser-idJPKBN1CN0RJ
2017年10月18日 / 16:21
追加緩和は過剰、ETF買入見直し「まだ早い」=桜井日銀委員
『一部の政策委員から総需要を刺激するために追加緩和が必要との主張も出ているが、桜井委員は「物価目標達成を早めるために、新たな政策をとれば無理をすることになりかねない。過剰なことをやる必要はない」と否定的な考えを示した』(上記URL先より)
となっていまして、思いっきり「金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。」というのが登場しているのが味わい深い訳でして、リフレ派内ゲバキタコレと高みの見物のワイという所ですな。
2017/10/18
お題「アトランタ連銀ボスティック総裁のバランスシート正常化に関する講演から少々」
これはお前が言うな大賞候補ですわ。
http://jp.reuters.com/article/ecb-stability-constancio-idJPKBN1CM19E
2017年10月17日 / 19:27
先進国当局、金融バブルに対し真剣に取り組むべき=ECB副総裁
『[フランクフルト 17日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のコンスタンシオ副総裁は17日、先進国の金融当局は金融バブルに対して「一段と真剣に」取り組むべきであり、そうしなければ金融危機に直面する恐れがあるとの見解を示した。』(上記URL先より)
とりあえず▲40bpとかいう馬鹿政策今すぐ止めてから物を言え。
なお話は別ですがカタラン。
http://jp.reuters.com/article/spain-politics-catalonia-idJPKBN1CM2AV
2017年10月18日 / 00:40
独立宣言は撤回せず カタルーニャ州、中央政府の要求拒否
○おう来週から材料あるんだから動いてくれよという市場備忘メモ
・一応20年の入札もあったのですが・・・・・・・・・
うむ。
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1MS29Q
2017年10月17日 / 15:14 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が小反落で引け、長期金利0.065%に小幅上昇
『<15:10> 国債先物が小反落で引け、長期金利0.065%に小幅上昇
国債先物中心限月12月限は前日比3銭安の150円35銭と小反落で引けた。前日の海外市場で、米連邦準備理事会(FRB)の次期議長人事を巡る思惑から米債が下落した流れを引き継いで売りが先行した。午後に入ると、20年債入札結果が無難な内容となり、あらためて需給の底堅さを意識されたことで下値で買い戻しが入り、下げ渋った。現物市場は、入札を無難にこなしたことで買い安心感が広がった超長期ゾーンが底堅く推移。一方で中長期ゾーンは先物安に連動して朝から上値の重い展開が続いた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp高い0.065%に小幅上昇。』(上記URL先より)
先物安に連動してというか中期長期が朝からイマイチな一方で新発超長期が貫禄の不動だったという感じだった気もしますが、入札のあったゾーンがウゴカンチ会長で他のゾーンがちょっとだけ動いてみるとか中々残念感の溢れる相場になっておりますが、あまりにも動かないので輪番の減額でもして動かしてくれとか言いたくなりますが(ただの愚痴^^)、YCCという意味では見事なまでに動かなくなっているのはこれはこれで正しいあり方になっているので、金融市場局もニッコリという展開で、よほど海外金利からの金利上昇圧力がやってこないと(というか日本の物価が1%超えにでもならない限り他に金利が上がる強力なネタが無いんだが)日銀動かない方が市場が安定して、しかも何と申しますか市場の安定って普通はその後大きく動くマグマが溜まるとか言うのですが、あくまでも市場の片隅におります無力参加者であるところのアタクシ個人の感想になりますが、マグマが溜まるのではなくて円債村から離村して、外債やら株式やらという所に出かけて帰ってこないというような図になって廃村になるんじゃネーノ的な感じもするのがあばばばばーという事で。
○ボスティック総裁(アトランタ)のバランスシートに関する講演ネタ(続き)
円債がこの有様なのでネタは海外へ(ちなみに今日は櫻井さんの函館金懇がある)。
https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2017/1012-bostic-balance-sheet-normalization-in-us.aspx
Balance-Sheet Normalization in the United States
Raphael Bostic
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta
Unconventional Monetary Policy: Lessons Learned Conference
International Finance Centre
Hong Kong
October 12, 2017
・経済の認識に関しては盛大に強いのだが物価については注目度を高めに置いている感じはする
最初の小見出しが『Why now? Current state of the U.S. economy』なのですが、経済の認識は基本的に強いのですけれども、物価に関するところが足元の物価にウェイトを置いている(すなわち「基調的に強いのですから無問題」的な話をしないという事です)感がありますな。
この小見出しの最初の部分で、
『So why is the Fed embarking on balance-sheet normalization now? The short
answer is that the U.S. economy appears to be on solid footing, and there
are several signs that this performance is likely to continue. This year,
the U.S. economy is expanding at roughly a 2 percent pace.』
と来ていましてそのあと、
『Moreover, household incomes continue to rise, reflecting ongoing improvement
in the labor market. These trends should provide support for increased
consumer spending.』
雇用の良さを反映して家計は強い。
『Over the past few years, business investment in the United States has
been tepid, partly reflecting a decline in the energy and mining sectors.
However, investment growth has picked up over the past few quarters, and
I expect it to continue to expand at a pace more consistent with a typical
expansion.』
企業も強い。
『Exports have also rebounded over the past few quarters, which should
help boost the U.S. factory sector. This improvement reflects a stronger
global growth profile and a slight depreciation in the dollar this year.』
最近は海外経済の好調と若干ドルが弱くなったのを受けて輸出もリバウンド、てな感じできまして、ハリケーンの影響については3Qの成長を1%以上下げたものの、その後は戻るでしょう(引用はパスします)ああそれから四半期展開するとこの影響が攪乱要因ですけど基調に変化なし、と来ているのですが、労働市場に関して・・・・
『Notwithstanding the weak, hurricane-affected September jobs figure, the
underlying strength in the labor market has been somewhat of an upside
surprise.』
ということで労働市場に関してはupside surpriseとかゆうとりまして、その辺までは威勢が良いのですけれども、最後の方に来て急に威勢が悪くなるのは・・・・・・
『Now, it is true that there are few signs that wage growth in the United States is accelerating.』
賃金の伸びの兆候がが見られんと来ましてその先の方では、
『Retail price pressures, like wage growth, appear to be muted.』
となった挙句に、
『The year-over-year growth rate in the Fed's preferred index of inflation-the
personal consumption expenditures, or PCE, price index-was at 1.4 percent
in August. This is noticeably lower than the inflation rate we had entering
into the year, which was near the FOMC's 2 percent longer-run target. Importantly,
the weak inflation numbers are not just in the headline statistics. We
have also witnessed a slowing in some measures of underlying inflation,
such as the core PCE and the Dallas Fed's trimmed-mean PCE measure.』
と来ていまして、1.4%の物価上昇率が年初の辺りからみると「noticeably lower」とかゆうとる上に、ヘッドラインだけではなく基調的な物価も上昇がスローになっている、と来ていまして、物価に関する言及の方はまーぱっとしませんな、という感じでいきなり威勢が悪くなるというのが味わいがあります。
・でまあバランスシートの話なのだが微妙にこの先生説明が微妙にアレな気がする
次の小見出しが『Expected effects of unwinding the Fed's balance sheet』ということでバランスシート縮小の影響についての予測ってな話になりますが。
『Recent work by Board of Governors staff estimates that, overall, the
three major asset-purchase programs resulted in something on the order
of a 100-basis-point decline in the 10-year Treasury yield. This result
is primarily attributed to the Fed's acting as a consistent buyer of longer-dated
securities, which removed some of the risk to private buyers of these securities
and hence reduced the interest rate required by market participants to
hold them. Other estimates of the effects of the Fed's asset-purchase programs
are in the ballpark of the Board staff estimates.』
URL先の方ですと「Recent work」って所にリンクがあってそこを踏みに行きますと、
https://www.federalreserve.gov/econres/notes/feds-notes/effect-of-the-federal-reserves-securities-holdings-on-longer-term-interest-rates-20170420.htm
FEDS Notes
The Effect of the Federal Reserve’s Securities Holdings on Longer-term Interest Rates
Brian Bonis, Jane Ihrig, Min Wei1
というのがあるのですが、QE1〜3で10年金利は100bpの金利押し下げ効果があったという分析になっていますな、という解説になっています。まあこの分析は似たような推計結果を前からよく言われていたのではあそうですかってな感じですが、「買入によって市場の長期債の需給を締めてタームプレミアムを下げる」という説明って一見すると尤もらしいのですけれども、テーパータントラム以降の長期金利の状況を見ると、そういう需給ベースの話よりも、やはり先行きの金融政策とか、金利正常化のターミナルレートとか、名目中立金利水準に対する思惑とかによって発生するタームプレミアムの方が断然大きいんじゃないのかなあと思うのですけれどもどうなんでしょうかねえ。
それに、需給でどうのこうの言うのでしたらば、何も中央銀行が財政ファイナンスとか言われるリスクを取りに行く必要があるのかと言えば、国債発行サイドが国債発行年限を短期化すれば長期債の需給が逼迫するのでタームプレミアムが下がるとかいう話になるので、別に中央銀行が頑張る必要はないという事でもあるようには思えます(って上記のリンク先あまりまともに読んでないので趣旨を外している可能性があるのですが、ボスティック総裁の説明だけ字面を読むと何かそんな印象が)。
『As we embark on balance-sheet reductions, there is a natural question:
Will these effects be felt in reverse? That is, will the reduction of reinvestments
increase 10-year yields and tighten financial conditions as we proceed
with winding down the balance sheet?』
でもってそれを削減するとどういうことになるのか?という話ですが・・・・・・
『While much is uncertain about this unprecedented policy unwinding, there
are good reasons to think that the effects of a gradual and predictable
ramping down of the balance sheet will be smaller than the effects measured
as the balance sheet expanded.』
バランスシートの拡大の時よりも縮小の項かは相対的に小さくなるのではないかとの手前味噌感漂うお告げ。
『First, it is plausible to think that the effects of large-scale asset-purchase
programs are more powerful in times of instability and significant market
disruption. Reductions in risk during times of heightened sensitivity to
risk should induce stronger market reactions than during times when risks
are considered largely manageable or low.』
市場が混乱したり不安定な時の買入の方が効果がより高い(けど今は市場が混乱も不安定も無い)から、という話ですがそれは信用緩和を主にしたQE1の時の話ではないかという気がする。
『Second, the size of the maximum monthly reductions will be quite low.
To start, the balance sheet will be reduced by no more than $10 billion
per month. Even at the maximum planned rate of at most $50 billion per
month, the monthly reductions will be less than the pace of accruals during
the earlier asset-purchase programs. Thus, the exit will be less dramatic
than the entry.』
入るときよりも出る時の方がペースが小さいので影響が小さいという説明だがそれはまあ言いたいことは分からんでもないが累積的な効果はシンメトリックにならんか。
『Third, as the economy has grown, the housing market has stabilized, the
stock of outstanding Treasury debt has expanded, and the footprint of the
Fed's asset holdings relative to the market has declined. In that sense,
some reduction of policy accommodation associated with previous balance-sheet
actions has already happened, and hence some fraction of the ultimate market
effect has already occurred.』
経済が拡大して住宅市場が活性化したのでMBS市場規模が大きくなったり、米国債発行残高が増えていたりするので、市場の拡大によってFRBのシェアが下がっているとかいう微妙な理屈が。
『Finally, the FOMC communicated its decision to begin reducing the stock
of assets held by the Fed, and the contours of its approach, well in advance.』
事前に散々アナウンスしたコミュニケーションの勝利、ということなのですが・・・・・・・・・・
『The series of slowly increasing caps on the size of the balance-sheet
reductions that the FOMC has outlined will help ensure that markets can
predict the flow of riskless assets that will be available to the private
sector. As a consequence, much of the impact of these reductions is likely
already built into market interest rates.』
『Our recent experience in this regard supports this view. The announcement
of the start of the program, in the September 2017 FOMC statement, had
almost no effect on the 10-year Treasury yield. But even compared to the
beginning of that deliberation process, some six months ago, the 10-year
yield is little changed.』
とまあ事前のコミュニケーションの成果でバランスシート縮小決定前後の米国長期金利に影響は無かったぜとの説明になっているのですが、それよりもSEPで示されたロンガーランのFFレートの水準が低下した方が盛大に効いていると思われる所でして、わかっててそういう説明しているのか素で行っているのかが良く分からん所ではあるのですが(ただまあそこを強弁するインセンティブはボスティック総裁に無いように思えるので素で言っているような気が)、ちょっとコミュニケーションの所については理解が怪しい感じがしますな。
『I believe this outcome reflects the effectiveness of the FOMC's advance
communication regarding the coming balance-sheet policy. And in my view,
these communications were a great success.』
そんな認識なのでコミュニケーションポリシーの大勝利と来ています。
でもってコミュニケーションについてはしつこく説明していまして、
『The FOMC reported initial discussions in its March meeting minutes and
issued an addendum to the normalization plans at the end of its June meeting.
This document outlined the details of the caps and an implementation timeline.』
『The FOMC reported initial discussions in its March meeting minutes and
issued an addendum to the normalization plans at the end of its June meeting.
This document outlined the details of the caps and an implementation timeline.』
『Finally, FOMC members' public testimony and speeches seemed to focus
market participants on the likelihood of a September decision, and this
indeed is what happened. As I mentioned, all this preparation was, in my
view, key to minimizing any undesirable market volatility. We did not experience
a reprise of the so-called "taper tantrum" of 2013.』
『In terms of lessons learned, in my view, the different market responses
to the two attempts of our central bank to begin a normalization of the
balance sheet?one extreme market volatility and the other virtually no
response in real time?highlights the importance of clear communication.
While such clarity of purpose and goals is always of value, it is especially
so when in the realm of unconventional policy, where there are few guideposts
to help shape the expectations of market participants.』
つーことでこの前のテーパータントラムと比較して事前のコミュニケーションがどうのこうのという話をしているのですが、そもそもテーパータントラムに関しては必要あれば緩和の方向から正常化の方向という方向転換だった訳ですからそら金利動きましたわという事ではありますし、今回はその点で金利が動かなくて結構という話をしているのですが、金利が上がらなかったり下がったりという要因ってそれ以外の中立金利がどうのこうのの話が効いているんだし、だいたいからして正常化しようという事をしている中で金融環境が一層緩和的になるのってそれ本当に良い事なのかというとそれはおかしくねえかという感じもする所であって、ここまでコミュニケーションの大勝利というのは現状認識として如何なものかなと思うのでした。
・以下は簡単に流します
その次に『Longer-run questions』という小見出しがあるのですが、これは最終的にバランスシートの規模がどのくらいになるのかという話で、金融規制強化の影響でリザーブの予備的需要が以前よりも高まっているとみられるので少し多いんじゃないのという話はあるけど、まあこれはやってみないと分からんという結論。
最後の『Conclusion』ですが、
『There are many other items on the list of pros and cons for choosing
either the precrisis framework of scarce reserves and active funds rate
management, or something more like the current situation, with abundant
reserves and interest on excess reserves as the main tool for implementing
policy. I have not attempted to do justice to them here, and I have not
yet made up my mind on the question of what the normalized size of the
balance sheet should be.』
『My point is only to acknowledge that answering this question is the next
major step in the process of normalizing monetary policy. Of course, the
Federal Reserve System has been actively engaging in this discussion. You
can find reports on a few of these discussions in the minutes of the November
2016 FOMC meeting and in the presentation materials from a conference on
normalizing central bank balance sheets that the New York Fed hosted this
past July.』
ってことでバランスシートの最終形に関する考察がこれからは重要だそうな。正直その水準って
オペレーション技術的な問題に帰着すると思うのであんまり重要じゃない気がするのですが・・・・・・・・
『We have the luxury of continuing to be deliberate about seeking answers
about the new normal. But I have noted that I view communications about
the FOMC's plans as key to the success of full exit from the extraordinary
policy interventions of the financial crisis and Great Recession. I look
forward to actively engaging with my colleagues in both formulating answers
to our outstanding issues and playing my part in communicating our thinking
and decisions to the public.』
てな訳で講演終わるのですが、コミュニケーションの大勝利的な話に傾斜し過ぎな気はします。
○ルールベースの金融政策に関する講演がありまして(予告編)
時間がないので予告編ですが(涙)。
ちょうどまあこんなのありますが。
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1MS4YT
2017年10月18日 / 04:58 / 2時間前更新
米金融・債券市場=2年債利回り約9年ぶり高水準、次期FRB議長タカ派的との観測で
『 前日、トランプ米大統領が次期連邦準備理事会(FRB)議長の候補の1人として、タカ派とされるスタンフォード大学のジョン・テイラー教授に好感を持ったと報じられたことで、短期債利回りの上昇が加速。』(上記URL先より)
テイラー先生といえばテイラールールで、そういやリフレ万歳講演をしてもらおうとリフレ系の方々が日本に読んだらまるで逆の話をしだしてワロタという事案があった記憶がございますが、ルールベースの金融政策云々というのでちょうどこんなのが先日ありましてですな、
https://www.bostonfed.org/news-and-events/speeches/2017/making-monetary-policy-rules-benchmarks-guidelines-and-discretion.aspx
Making Monetary Policy: Rules, Benchmarks, Guidelines, and Discretion
By Eric S. Rosengren
October 13, 2017
というネタがあるのですが、時間がないので後日ということで勘弁。
2017/10/17
お題「米国のコミュニケーションが物価に偏り過ぎな気がするというメモ/ボスティック総裁講演(その1)」
ここもと2年前のログを整理したりしていますけれども、2年前と言いますとこの後金融政策の限界とか言われる中で12月に補完措置、1月にマイナス金利導入というヤケクソに打って出て結果はご案内の通りという状態だった訳ですが、そういう後の事態を知っている状態で過去ログを見直すのも面白いものだということが分かりました。
てな訳ですから、皆様におかれましても相場ノートみたいなの付けていると思いますけれども(つけてない人はつけましょう)、数年前のを読み直すと面白いんじゃネーノとかそんな事を思うのです。
ところで、本日はセ・リーグCSで横浜と阪神の試合ですが、2年前と言えば前の中畑監督の退任というのがありましてですなあ・・・・・・・
https://full-count.jp/2015/10/03/post19260/
DeNA中畑監督、辞任会見全文 「ダラダラした組織というのは僕は一番嫌い」
2015.10.03
※2年前の記事です
『自分の中では、まだまだ本当に志半ばという気持ちは多分にあります。ですが、こういった世界というのはどっかでけじめをつけないと、という部分がはっきりと出てくると思うんですね。
そういうところを流してしまうと、その後のチーム事情とか、いろんな意味で切り替えのつかないダラダラした組織というのは僕は一番嫌いなんで、ダメな時にはダメだという、そういう風なわかりやすい世界を目指してきたつもりなので、自分なりには、この責任というのは本当に重いものだと感じています。
あとちょっとで勝てない、もうちょっと という内容だったらまだ良かったかもしれないです。でもあの首位からの陥落する内容というのは、本当にファンの皆さんの期待を大きく裏切ったという部分で本当に重い責任を感じています。』(上記URL先より)
※念のため改めて申し添えますが2年前の記事です
どこぞの日銀総裁副総裁はこのキヨシの言葉を噛みしめて頂きたいものだと思います。
・・・・・・・・すいません前置き長くなりました(汗)。
○金融政策と直接関係ないですがこんなの出てます
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb171016.htm/
サイバーセキュリティに関する金融機関の取り組みと改善に向けたポイント
― アンケート(2017年4月)調査結果 ―
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb171016.pdf
サイバーセキュリティに関する金融機関の取り組みと改善に向けたポイント
− アンケート(2017 年 4 月)調査結果 −
要旨ですが、
『金融機関が、IT の進歩に対応し、付加価値の高いサービスを創出していくうえでは、外部などからの攻撃に対する情報の安全管理およびコンピュータシステム・通信ネットワークの安全性や信頼性の確保、すなわちサイバーセキュリティの確保が不可欠である。
日本銀行は、今般、当座預金取引先金融機関等のうち 411 先を対象に、サイバー攻撃の脅威や自社の対策状況などの現状に対する認識、経営資源の割り当てスタンス、実際のリスク管理状況などについて調査するため、アンケートを実施した。この結果、多くの先では、サイバー脅威の認識が深まっており、それに応じて、役員レベルのサイバーセキュリティの責任者を設置し、対策費用も増加させるなど、体制整備に向けた取り組みが進んでいることが確認された。また、技術面でも、脆弱性対策やマルウェア攻撃対策、DDoS
攻撃対策などが相応に進んでいることが確認された。もっとも、個社別にみると、対応状況にはかなりのばらつきがみられた。
金融機関のサイバーセキュリティ体制については、全ての先に一律の水準が求められるものではない。もっとも、サイバー脅威の高まりを踏まえれば、各金融機関が、対策の強化に不断に取り組みを進めていくことが重要である。日本銀行としては、金融機関が自らのサイバーセキュリティに関する体制面や技術面での取り組みを進めていくうえで、本アンケート結果が活用されることを期待するとともに、金融機関とサイバーセキュリティに関する議論をさらに深めていく方針である。』
ということで金融政策(金利の上げ下げとかの意味での)とは直接関係は無いですが、読み物としてはまずます(人による)と思いますのでメモという事で。
○円債ェ・・・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1MR2GC
2017年10月16日 / 15:10 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が小反発で引け、長期金利は横ばい0.060%
『 <15:05> 国債先物が小反発で引け、長期金利は横ばい0.060%
国債先物中心限月12月限は前営業日比1銭高の150円38銭と小反発して引けた。前週末の米債高の流れを引き継いで短期筋からの買いが先行した。
日経平均株価が堅調に推移したことに加えて、中期と長期を対象にした日銀の国債買い入れ結果で応札額を上回り、需給の緩みが意識されたことを受けて、上げ幅を縮めた。追随した売りは見られなかったが、17日に20年債入札を控えて様子見ムードが広がった。現物市場は持ち高調整主体の動きで閑散。10年最長期国債利回り(長期金利)は同変わらずの0.060%。』(上記URL先より)
前月末近くのところで金利が一旦上がった後はまーこれがまたウゴカンチ会長で、10年とか元より動かないところもそうですが20年とかも0.60%には届かないけどじゃあ金利が下がるかっつーと米債がヒャッハーと金利が下がってもアチャーと金利が上がっても0.5%台後半の後半くらいの辺りで動かん(おかげで2毛動くと急騰急落だと勘違いする位に動体視力が落ちてしまいました^^)というこの状況。
何せ市場後講釈で「20年入札を迎えて様子見」っていや20年入札なんだから入札の前準備とか先回りの売り買いとかないのかよと言いますとこれがまた無いんだなあという状態でして、円債市場の地蔵ぶりが最近さらにひどい事になっていますな(20年で0.5%〜0.6%のレンジに嵌って早3か月とかになっているこの見事な展開)。
まー足元では半期の期初な所に来て、ECBとFRBは今後の動きに関して次のMPCで何らかの予告みたいなのを打ってくるかも知れないというのがあるし、日本では総選挙もあるし、その後は展望レポートもあるし、ということで、これからネタが出てくるというのに期初早々から動くこともあんめえという投資家スタンスというのはそらそうよという所ではあるのですが、債券先物の売買高でみるよりも何かこう動かんなあという感じで思うのですけれども実際の所どうなんでしょうかねえ。
というだけで別にオチがある訳ではないのですが、しかしまあこういう相場になってしまいますと、一応キャリーがぱみゅぱみゅなので投資家何とかならんことも無いのですが、そうは申しましても世の中には償還というのがありますし、だいたい償還まで持ってられているような物だったらまともに再投資しても再投資利回りが下がってあばばばばーですし、証券ディーラーは客が動かないから商売にならんとは言いましても、もっと機械的に国債をせっせとその時の成行で買ってくれる鴨もとい日銀というのがいるので、入札と輪番で商売というのは可能ではありますが、それってバランスシートをある程度使えないとやりにくい業務でして、バランスシート使うにしてもその辺のバランスシートコストにうるさい人とかだとそーゆープレイをするのも中々大変でしょうし、ということでまーYCCというのもコマッタモンダという状況はまだまだ続くという所で、せめてECBとFRBが正常化やる気を見せてジャパンの金利に少しくらい影響を及ぼしてもらいたいもんですなというグチをメモしておくと後で見直した時に味わいが出るかな〜などと思うのでありました。
○一番期待できそうな米国ちゃんですけど
まあ何ですな。
http://jp.reuters.com/article/frb-fomc-idJPKBN1CL0EV
2017年10月16日 / 14:35
米FRB、来年は3─4回の利上げがおそらく適切=ボストン地区連銀総裁
『[ボストン 16日 ロイター] - 米ボストン地区連銀のローゼングレン総裁は、連邦準備理事会(FRB)はおそらく12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げする必要があり、その後、米国の失業率が引き続き低下し、インフレ率が上昇すれば、来年は3─4回の利上げがおそらく適切との認識を示した。』(上記URL先より)
まー米株がホイホイと上昇する中ですと利上げがしやすいと言いますか、足元世界景気に関しては多分強い状況ですし、基本的にリスクは上振れくらいの勢いになっているという状況でありまして、そんな中だから資産価格が上がるのは順当ちゃあ順当なのですが、それに加えて「緩和縮小には時間が相当かかるんじゃネーノ」というのも株価とかを支えているでしょうなという状況。でもってそういう状況って株式バブルとか起きやすくなる訳ですからして、そっちの警戒というのもあって(FOMC議事要旨だと必ず資産価格上昇で金融不均衡の議論が出てくる)12月利上げとかになっていると思うの。
そうは言いましても米国の場合「正常化ペースが遅れる」って話で利上げしても長期金利があんまりアガランチ会長になっておる訳でして、このやり方だと利上げしている意味があるのかよ(長期金利があんまり上がらんと緩和効果は変わらんし実質に直すと却って緩和が強まっているかもしれん)という感じも受ける訳ですな。
つーことで、FOMCの正常化路線なのですが、コミュニケーションとして「物価」の話を言い過ぎなのと、「中立金利の低下」を強調し過ぎな面があるんじゃないかなと思う所でして、今何のために金利を上げようとしているのかという点をもうちょっと突っ込んで説明した方がよろしいんじゃないかと思うのです。つまり、仮に金融不均衡警戒なら金融不均衡警戒でもう少し強いトーンで言えば金利の先高観が出てきてイールドカーブも立ってくるので金融緩和効果を下げることができますし、もし糊代論で利上げをしたいと思っているならば、今のようにフラットニングしながら金利が上がっている状況ですと、糊代作るつもりが糊代になっていない(長期金利の低下余地が変わらないのであれば糊代が出来ているのは短期だけなので糊代不足)と思えますが、何せSEPでターミナルレート下げてしまっているように、何かこう利上げしたいというのは分かるのですが、ではどういうバックグラウンドで利上げするのか、というのをもう少し明確化しないとと思うのですが、おそらくFRB的にもその辺の整理が出来ていないんだろうなあと思うのでした。
と言ってるアタクシもこれ頭の中で思いついているのを文章にはきだしてみましたが、イマイチこう上手く整理できていない感じがする(のをそのまま出すなよと言われそうですけどこれでも止まりながら書いたんですよ許してつかあさい)次第ですけれども、まー米国の金融政策に関しては正常化路線でやっているのは分かるのですが、その意図するところが却って分かりにくくなっているなあというのが最近の印象で、もうちょっと整理した方が良いと思うのと、物価にフォーカス当てすぎ(幾ら市場予想よりも弱いと言っても0.1%の予想からの下振れで4毛長期金利動くとか市場が反応し過ぎと思う)なのを何とかするのが最初だと思いますけどね。
○アトランタ連銀ボスティック総裁のバランスシート縮小に関するお話を拝読
ここもとFEDの皆様がああでもないこうでもないと講演をするので読まないといけないものだらけとなっているのですが中々追いつけておりません(超大汗)。
https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2017/1012-bostic-balance-sheet-normalization-in-us.aspx
Balance-Sheet Normalization in the United States
Raphael Bostic
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta
Unconventional Monetary Policy: Lessons Learned Conference
International Finance Centre
Hong Kong
October 12, 2017
非伝統的政策に関するコンファランスみたいですな。
アトランタ連銀の総裁講演は最初に箇条書きで要点がありまして便利。
『Atlanta Fed President and CEO Raphael Bostic speaks October 12 on Federal
Reserve balance-sheet normalization at the Unconventional Monetary Policy:
Lessons Learned Conference in Hong Kong.』
ほうほうそれでそれで???
『Explaining why the Fed is embarking on balance-sheet normalization now,
Bostic says the U.S. economy appears to be on solid footing.』
米国経済の成長は力強い足取りなのでバランスシートの正常化に着手しました。
『He believes the Fed's asset-purchase programs during the financial crisis
and in the early phases of the recovery had meaningful macroeconomic effects.』
金融危機時および回復初期におけるFEDの資産買入は意味のあるマクロ経済への効果を示した、という説明だが微妙にこの人の説明もアレな部分がある。
『Bostic says there are good reasons to think that the effects of a gradual
and predictable ramping down of the balance sheet will be smaller than
the effects measured as the balance sheet expanded.』
拡大の時の効果よりも縮小の時の悪影響の方が少ない、という謎理論にも程がある説明なのですけれども、まあ手前味噌感のある謎理論になっています。
『Bostic believes the FOMC's advance communication regarding the size of
coming balance-sheet reductions was a great success, as much of their impact
is likely already built into market interest rates.』
資産縮小に関するコミュニケーションはgreat successって言ってるけど、金利の安定的な推移は別のコミュニケーション要因によるものだと思うので、一般化できる話ではないと思う。
『Bostic has not yet made up his mind on the question of what the normalized
size of the balance sheet should be.』
そらそうよ。
『Bostic says communications about the FOMC's plans are key to the success
of full exit from the extraordinary policy interventions of the financial
crisis and Great Recession.』
コミュニケーション上手く行っている、という話を強調しているのですが、そもそも論として正常化しようとしているのだから、ある程度金利が上がらないと正常化の意味がない訳で、テーパータントラムで長期金利がスパイクしたのがトラウマになっているのは分かるのですけれども、長期金利が上がらないで資産市場のユーフォリアが続くという状況って結局のところグリーンスパン議長時代の正常化(が遅れて住宅バブル発生)と同じ轍を踏むんじゃネーノという気もだいぶするので、その辺に関してFRBのメンバーが何を考えているのかというのを知りたいなあとは思うのです。
・・・・・・・・とか何とか言っているうちに本文をネタにする時間が微妙に苦しくなったので続きは明日(すいません)。
2017/10/16
お題「短期市場サーベイが来ましたな/ポーゼン発言で頭クラクラとか」
ほほう。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171016/k00/00m/010/100000c
衆院選中盤情勢
自民、最大300超も 立憲は勢い増す
毎日新聞2017年10月15日 22時19分(最終更新 10月16日 00時26分)
という同じ毎日調査ですが、
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171016/k00/00m/010/127000c
毎日新聞調査
「安倍首相続投望まず」47%
毎日新聞2017年10月16日 02時35分(最終更新 10月16日 02時35分)
というのは何かこれ選挙以降に議席数と支持率の乖離が別の意味で変な波乱になるような気がしてきました。
○これはひどい(ポーゼン氏の日本金融政策に関する発言)
本石町日記さんなどがご指摘ですがせっかくなのでアタクシもメモに。
https://jp.reuters.com/article/posen-japan-interview-idJPKBN1CK04F
2017年10月15日 / 14:23
インタビュー:日銀追加緩和は不要、目標未達悪くない=ポーゼン氏
『[ワシントン/東京 15日 ロイター] - 米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は15日までにロイターのインタビューに応じ、日銀の追加金融緩和は不要との見方を示した。物価安定目標2%に届かない現状について「悪い結果とは思わない」との認識も示した。』(上記URL先より)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO95100310U5A211C1KE8000/
日本の経済政策への提言 名目賃金、5〜10%上げを
A・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所所長/O・ブランシャール
ピーターソン国際経済研究所シニア・フェロー
2015/12/15付日本経済新聞 朝刊
『日本はインフレを必要としている。日銀が量的・質的金融緩和により0.5%程度のインフレを達成したが、それ以上のインフレが必要だ。』(上記URL先より)
おまえナメトンノカとしか申し上げようがないのですが、まあこういう輩でもBOEのMPCメンバーだったりするのですが、所詮他人事ですからまあ無責任にも程がある訳で、こういうの「以前の発言との整合性」とかどうなっているんだよと小一時間問い詰めたい訳で、そういう意味では一応反省の弁を述べるバーナンキ逆さ絵おじさんの方がまだ知的には誠実なのですな、ベンなだけに(違)。
まーだいたいこのオッサンは偉そうに他国の事に言及するのですが、わずか2年でこの盛大な変節っぷりでして、まあこういうオッサンのいう事を真に受けて金融政策だの経済政策だのをどうにかしましょう的な話をするのってのが碌なもんじゃない訳ですので、一々海外から学者先生呼んできて消費税がどうのだの財政がどうのだのというような事はするだけ無駄だし害しかないちゅう事でしょうし、まーそもそも学者に金融政策やらせてもどこかの誰かさんのように「進化した」とか言い出してお前はいったい今まで何をやっていたんだ(そもそも置物理論が学者と言えるようなレベルの話をしていたのか、という話はあるが)という例もあるように、まーアカンやろというのがここ数年で段々馬脚が表れてきましたなという悪態なのでございました。
○短期金融市場サーベイ公表
http://www.boj.or.jp/paym/market/market1710.htm/
わが国短期金融市場の動向
-東京短期金融市場サーベイ(17/8月)の結果-
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/paym/market/data/market1710.pdf
わが国短期金融市場の動向
-東京短期金融市場サーベイ(17/8月)の結果-
まずは全文の前に紹介の上記URL先(HTML)のほうから。ここから先暫くの引用元は日銀HPのHTML紹介文書からになります。
『はじめに』から。
『日本銀行金融市場局は2008年以降、わが国短期金融市場の取引動向などを把握するため、「東京短期金融市場サーベイ」を実施している。このサーベイは当初は隔年で実施していたが、市場動向をより的確にフォローする観点から、2013年より毎年実施することとしており、本年8月、第8回目となる調査を実施した(調査基準時点は本年7月末)。』
ふむふむ。
『今回のサーベイは、従来同様、日本銀行のオペレーション対象先および短期金融市場の主要な参加者を対象として実施している。今回のサーベイの調査対象先は303先と、オペレーション対象先の増加などを背景に昨年の300先から増加している(回答率100%)。』
ふーん。
『日本銀行金融市場局は、今回のサーベイ結果を短期金融市場の動向把握のために有効に活用していくとともに、「債券市場サーベイ」なども併せ用いながら、金融市場の状況や構造変化の包括的かつ多面的な把握に努めていく考えである。また、「市場調節に関する懇談会」や、「債券市場参加者会合」などの機会も活用しつつ、市場参加者の方々と対話を重ねながら、短期金融市場も含めたわが国金融市場の活性化に向けた関係者の取り組みを積極的に支援するとともに、自らも中央銀行の立場から、可能な限りの貢献を果たしてまいりたいと考えている。』
ということですが、でしたら金融市場局からマイナス金利の弊害をもっと声高に主張して「マイナス金利政策のプロコン分析」というのをした方が良いと思いますし、「短期金融市場も含めたわが国金融市場の活性化に向けた関係者の取り組みを積極的に支援する」ってそれ市場の中の人が頭抱えている国債アウトライトのT+1決済という誰得取引を延期するとかそういうことはせんのかと小一時間問い詰めたい。
・・・・・・てな悪態はさておいて『概要』ですが、
『短期金融市場の取引残高は、資金調達残高・資金運用残高とも、前年と比べて増加した。取引残高が増加した背景としては、日銀当座預金の3層構造を利用した裁定取引の拡大がある。裁定取引が拡大した要因として、(1)システム対応の進捗や、マイナス金利政策導入後相応の時間が経過し、市場参加者がマイナス金利での取引を拡大したことや、(2)マクロ加算残高の上限値拡大等を受け、マイナス金利で資金調達して日銀当座預金に積む裁定取引の余地が拡大している先の資金調達ニーズと、(3)国債の償還資金が流入していること等を受け、政策金利適用を避けるため短期市場での運用に振り向けたい先の資金運用ニーズ、の双方が高まったことが挙げられる。』
ということで取引が増えたので市場機能が回復ですよ素晴らしいですよとかどうせ偉い人に話が回っていて、だからこそこの前の総裁発言は短期じゃなくて債券の方ですけれども、「機能度が高まっている客観的な指標もある」とか金利市場の状況に興味が少しでもあって知的誠実な発言をしようという人間であれば絶対に出てくるはずの無い発言が飛び出している、というような事例が発生するんだろうなあと。
短期金融市場って一つには資金繰りの都合で起きる取引(資金繰りの都合で起きる取引について金利の急騰や急落を中央銀行がオペレーションや常設ファシリティやディスカウントウィンドウ(も常設ファシリティではありますが一種のスティグマ付きの常設ファシリティみたいなもん)を使うことによってコントロールすることが圧倒的に可能だから、中央銀行は短期金利を政策金利に使っている訳で)というのがまずありますが、それに加えまして、近い将来の政策金利動向に関する読み筋によるターム物取引やら金利先物取引の動向とか、もうちょっと近くなると準備預金の積み進捗操作とかによって、色々と金利が動く、というのがあって、まあ市場の金利観というのが形成されたりもすることもあったりする訳です。政策的に全然金利が動かないと資金繰り以外で動かんし、ターム物の金利は流動性リスクプレミアムしか乗らないですけど。
然るに、今やっているのって超過準備の一部に対して懲罰金利を科して、その懲罰金利の負担を誰に押し付けるかというのでグルグルと取引が回っているだけの話ですし、超過準備自体は死ぬほどあるので資金繰りという意味での取引も別に(証券ディーラーはあるけどそれ以外で)無い訳ですし、さらに金利観で取引がどうのこうのというので全然無い、という状態な訳で、こういうのは「懲罰金利逃れでの取引」という意味では動いているけれども、本来の意味での市場でも何でもないのであって、こういう動きを「市場機能がどうのこうの」とか自画自賛されましても知らんがなという所ではあります。
『取引種類別にみると、レポ取引・コール取引が残高を増加させたほか、資金調達サイドでは対日銀取引が、資金運用サイドでは国庫短期証券が増加に寄与している。』
って結局短国買入が無駄に活用されているだけという事ですからにゃ。
『短期金融市場の機能度については、「低下した」との回答割合が前年比で大きく低下(2016年:61%→2017年:17%)したものの、引き続き「改善した」との回答割合を(2017年:9%)を上回っている。』
機能度云々に関しては先程申し上げた通り。「懲罰金利負担の押し付け合い」ではございます。まあ勿論まともな金利がある状態における預金ファシリティあるいは付利全くなし状態の場合での運用ニーズも「機会損失回避のための運用」ではありますけれども・・・・・・・・
『日本銀行としては、今後とも短期金融市場の動向を、日々のモニタリング活動や本サーベイ、市場参加者との対話などを通じて、適切にフォローしていく考えである。』
ということでしたら国債アウトライトT+1はあれ多分相当面倒だと思いますけれども、まあ資金の方はこの超過準備モードの中何とかなるとして物の決済の方がめんどいのではと思ったり思わなかったり(たぶんアウトライトT+1とT+2が混在して、おまけにJSCCとNon−JSCCが混在するとかになって、GCについては銘柄先決めの方が安定した資金放出先からの取引ではメインのままの気がします)。
・・・・・・・などと悪態ばっかですが本文からも少々。
(再掲)
http://www.boj.or.jp/paym/market/data/market1710.pdf
わが国短期金融市場の動向
-東京短期金融市場サーベイ(17/8月)の結果-
最初の方はさっきのURL先の話があって、その後個別市場の話になるのですが、途中を飛ばして市場機能度とかアウトライトT+1決済とかの話を確認しましょう。(よって以下の引用はサーベイ結果本文のPDFファイルからになります)
本文8ページ(PDFファイルの9枚目)の『6.短期金融市場の機能度に関する市場参加者の見方』から。
『短期金融市場全体の機能度については、「低下した」との回答割合が前年比で大きく低下(2016
年: 61%→2017 年: 17%)したものの、引き続き「改善した」との回答割合(2017
年:9%)を上回った。』
当たり前です。
『取引残高が拡大を続けている国債レポ取引についても、「改善した」の回答割合(7%)を「低下した」の回答割合(20%)が上回った。この背景としては、市場に流通している国債の量や銘柄種類の減少を指摘する声が聞かれている。』
つーかですね、取引高が多ければ市場が機能しているか、というとそら取引が少ないよりは機能しているとは言えるかも知れませんが、それよりも市場機能と言った時に恐らく市場の中の人が考えるのって、取引参加者のバラエティが豊富で、バイカイしようとした場合にカウンターがちゃんといるような多様性が市場の中に存在することだと思う(などと申し上げましたが不肖このアタクシも市場での年代的には棺桶に片足突っ込むどころではないジジイですので、今みたいな市場しか知らんという方とはギャップがあるでしょうな)ので、そら(取引残高が拡大しているからと言って)そう(市場機能が改善しているとは限らない)よと思います。
まー「この背景としては、市場に流通している国債の量や銘柄種類の減少を指摘する声が聞かれている」ってのにはちょっと味わいがあって、その事象ってのは誰がどう見ても長期国債馬鹿買入の結果として発生しているので、「長期国債の野放図な買入を漫然と継続すると市場機能は低下します」ってのを遠まわしに表現しているのですが、遠まわし過ぎて市場の中の人には理解できても政策委員会の中の人たちには理解できないのではないかと懸念。
てな訳で(データ集の前の)最後に『【BOX】国債の決済期間短縮化(T+1 化)に向けた取り組み状況』というのがあるので確認。
『2018 年5月より実施予定の国債の決済期間短縮化(T+1 化)に向けた取り組み状況を先数ベースでみると、既存のシステム・体制等で対応可能とする先やシステム開発・調達に着手している先の割合が、前年に比べて各々増加した。』
まあ何ですな、アウトライトT+1って別に今でもやろうと思えば物理的には可能なので、対応可能(ただしやるとは言っていない)というのは居るでしょうなあと思われる所で、T+1を通常対応にするためのシステム体制構築となるとそれはまあ面倒な事になるでしょうなあとは思います。
このT+1ですけれども、まー特に日本の場合はゼロ金利だのみたいな期間が超長い間続いていて、短期決済回りってどこから見てもコストセンターみたいな状態が長くなっているので、この手の制度対応という大義名分でも無いとシステム対応する予算やら人員やらの確保も出来ない(と言ってもこの対応で人員増やしたという話はトンと聞きませんけれどもorzorz)という悲しい話でもあるので、まあドサクサに紛れて短期資金繰り決済回りのシステム対応の改善を図るというのはあると思いますけど。
『また、T+1 化に合わせて採用が推奨されている新現先取引への移行状況について、取引残高ベースでみると、「既に新現先取引のための体制(事務・システム)を構築済み」との回答が前年に比べて増加しており、新現先取引への対応が一段と進んでいる。他方で、レポ取引の頻度の少ない先のなかには、新現先取引への移行になお慎重な姿勢を示す先もみられた。』
「取引残高ベースでみると」ってのに盛大に味わいがありまして、それはつまり大手銀行さん辺りの対応がどうのこうのという所では対応されてくるものの、取引先の広がりというのが全然起きていないという事なんでしょうなあというのは分かる。
でですね、特に資金繰りのような最終的には命綱な取引に関して言いますと、市場の参加者に種類的な広がりがある事が市場機能の安定とか、危機における対応可能性という観点とかから重要なのであって、幾らバカスカ取引が行われてその残高がコール市場の何倍とか威張っていましても、参加者が大手銀行と証券ディーラーばっかりの市場(あとはレポ信託と証金・短資ですかね)というのは市場ストレス時における脆弱性が大きいと思う訳でして、アウトライトT+1についても同じ事が言えるのですけれども、「対応できる人だけ参加すれば良い」というのはそらまあ市場作るに際してそういう考え方も分かるのですが、参加者の幅を広げる為に何をしたら良いのか、という辺りの配慮が不足していて、今後も参加者の幅が広がりをみせる感じがしないというのは市場デザイン的に如何な物かなとは思うのでありました。
『さらに、銘柄後決め GC レポ取引に対応した新しい基本契約書の利用状況をみると、2018
年5月の T+1 化開始時期までに新しい基本契約書を利用して契約締結するとの意向を示す先が大宗を占めており、T+1
化に向けた体制整備の着実な進展が窺われる。』
って言ってるけど多分銘柄後決めってそんなに質的には広がらないと思う。
○こんなんありました
今(月曜の朝)だとトップページの新着情報の最初の所なのでトップページからリンクがありますが。
『10/13(金) (論文)金融研究所DPS:2017年国際コンファランスの模様』
ってのがあって、
http://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps17.htm/
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ
2017年収録分
に飛ぶのですが、最初の所に
2017-J-14/経済 「金融政策:教訓と課題」2017年国際コンファランスの模様 2017-10-13
ってのがあって、アドビのアイコンをポチっとなとすると
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/17-J-14.pdf
「金融政策:教訓と課題」
2017年国際コンファランスの模様
Discussion Paper No. 2017-J-14
というのが出てきます。
でもって目次だけ見ますと、
1. はじめに
2. 開会挨拶
3. 前川講演:Some Reflections on Japanese Monetary Policy(日本の金融政策に関する一考察)
4. 基調講演:Rethinking the Power of Forward Guidance―Lessons from Japan―(フォワード・ガイダンスの有効性の再検討―日本からの教訓―)
5. 論文報告セッション
(1) Japanese and U.S. Inflation Dynamics in the 21st Century(21 世紀の日本と米国のインフレ動学について)
(2) Monetary Policy According to Heterogeneous Agent New Keynesian (HANK)
Models(家計の異質性を考慮したニューケインジアン・モデルによる金融政策)
(3) Some Evidence on Secular Drivers of U.S. Safe Real Interest Rates(米国実質金利の長期的な変動要因)
(4) Market Concentration and Sectoral Inflation under Imperfect Common
Knowledge(不完全共有知識下における産業レベルのインフレ動学の特徴)
6.政策パネル討論
(1) パネリストによるプレゼンテーション
(2) 一般質疑
となっていまして、前川講演に関しては先日来チマチマ引用しております(今朝は時間がないので勘弁)逆さ絵講演で、基調講演はこの前ちょろっとだけネタにした奴ですが、ここに出ている質疑含めたサマリーもはあそうですかと思いつつも鑑賞したのですがこれまた時間が無いので、そのうちネタにするかもしれませんししないかもしれません(大汗)。
2017/10/13
お題「色々と紙が出ているのでその辺りでも」
なるほど。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017101101276&g=pol
安倍首相、「妻はだまされた」【17衆院選】
(2017/10/11-22:03)
『首相は「籠池さん自体が詐欺で逮捕、起訴された。こういう詐欺を働く人物のつくった学校で、妻が名誉校長を引き受けたことは問題があった」と語った。』
逮捕起訴された時点では推定無罪なんですけど行政の長がそれを言うのはどう見てもアカンヤツだろうツッコミも重要なのですが、それは兎も角として詐欺を働く人物の作った学校に関与するのは問題という理屈だと経済政策に関してアドバイスをする人の中に(銃声の為以下聴取不能)。
○フィンテックキタコレ
トップページの更新情報の所に唐突に講演資料が置かれるの巻。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel171012c.pdf
FinTechが描く未来〜利便性かBig Brotherか
2017年10月 日本銀行FinTechセンター 河合祐子
ということでFinTechセンターのセンター長の河合さんがCEATEC JAPAN 2017という所で講演を行ったのの講演要旨ではなくスライドが唐突に出てくる中々珍しいパターンというか講演要旨が無くてスライドだけがドーンっていうのは初めてに近い気がするんですが、まあ突如登場の巻(ちなみに海外の地区連銀総裁だとセントルイスとかよくやりますが、講演の方は要旨というよりはアブストラクト程度になっていて、あとはスライドショーでお察しというパターンもありますので、そこまで異例の話ではないのですが、日銀はそういうのやってきたことが無い筈なのでちとこれはビックリ)。
原稿が無いので中身はスライド見て想像する訳ですが、主に大陸中国の事例を紹介しながらフィンテック発達するとこういう事も起こりますというお話と、日本での現状などの比較というのがありまして、不肖このアタクシは現金の匿名性スキーなアヘアヘ現金決済マンなのですが、まあこの辺のテクノロジーってその手前の段階が全然ないような無人の野みたいな状態だった所だと上記資料にある大陸中国の事例のようないきなり最新バージョンに飛ぶことが出来るのですが、幸か不幸か日本の場合はそれ以前のバージョンの方で極めて堅牢かつ安定的なシステム(社会的な慣習とかを含めたシステム)が出来上がってしまいましたので、そこからワープするにはどうするとワープするのか、というお話になるんでしょうかね。
とまあそれは兎も角として、上記のスライドショーは面白いと思いますのでお暇な時に一読推奨。
ちなみにフィンテックに関しましてはこのような特設コーナーもあります。
http://www.boj.or.jp/paym/fintech/index.htm/
FinTechセンター
○決済と言えばこんなのも
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2017/rev17j15.htm/
ユーロの利便性向上に向けた欧州の取組み
─欧州決済インフラの統合および高度化─
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2017/data/rev17j15.pdf
HTMLの方のトップにある要旨部分は本文のアブストラクト部分になりますが、折角なので引用しておきます。
『通貨の利便性を高める上では、資金の支払や決済、さらには当該通貨建て金融資産の取引や決済などが、効率的かつ安定的に行えることが重要となる。ユーロの歴史は他の基軸通貨に比べて短いが、この間欧州中央銀行など欧州当局は、ユーロ圏における決済の統合・高度化に向けた取組みを精力的に進めてきた。そのうえで本年
9 月には、欧州全域をカバーする証券決済プラットフォーム T2Sへの各国証券決済システムの移行が、概ね完了した。また、欧州中央銀行は、欧州の決済インフラの一段の高度化に向けた中期イニシアチブ“Vision
2020”を公表しているほか、2018 年 11 月より、リテール決済のサポートに特化した中央銀行資金決済システムを
1 年 365 日、1 日 24 時間稼動させ、欧州全域をカバーする即時リテール送金を後押ししていく方針を決定した。』
ということで、欧州の決済と言えばもう前世期には欧州ソブリン(てかだいたいイタリア)のグローバル円債とか結構取引されていましたけど(いや今でも外債普通にやりますが)、一昔前は決済するとフェイルは当たり前だし利金着金が遅延するのも良くある話(償還元本だけ着金して終期利金が翌日に着金した時は腰が砕けた事があります)というかなりしょぼい決済インフラだった(インフラのせいなのか欧州人の事務処理能力のせいかわかりませんが)ですし、アタクシは良く知りませんが昔の海外駐在帰りの人に聞くと預金口座の残高がリアルタイムで分かるとかいうような洒落た機能は存在しなかったとか、色々と凄まじい話を聞いておった訳ですな。
然るに、そういうど貧弱な所から上記のレポートにありますように、ここ10年位だったと思いますが急速にこの辺りの決済回りとかリテール決済回りとかが発達してきて、気がつけばかなり進んできました、というお話になっております。
でまあこういう話になると決済に少々興味があって、小僧の頃にバックオフィスで決済事務に従事しながら登録済証が今どこにあるのか月末にトレースして回るとか(何の事だかわからない人は1997年以前に資金証券部門に居た人に聞いてちょ)やっておりました程度のアタクシが色々と知ったかで話をするのも何なので決済詳しい人に伏して教えを乞いたいものでありますが、今回の上記レポートで債券市場の中の人として確認しておいた方が良さそうなのは、上記レポート本文の2ページ目(PDFでも2枚目)にあります、
『欧州証券決済インフラの整備と T2S』
というところ(今回メインの説明になっている部分でございます)になろうかと思いますので、まあこの辺りを読むのがよろしいかと存じますが、アタクシも一読しただけでドヤ顔で説明できるほど勉強している訳では全くもってございませんので、もしかして勉強した結果ドヤ顔で説明できる位の知識でもつけばドヤ顔で説明するかも知れませんが道のりは遠そうです(トホホ)。
○FSBのリファレンスレート云々キタコレ
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel171011c.htm/
金融安定理事会による「『主要な金利指標の改革』(2014年7月金融安定理事会提言)の実施に関する進捗報告書」の公表について
『金融安定理事会(FSB)は、10月10日、「『主要な金利指標の改革』(2014年7月金融安定理事会提言)の実施に関する進捗報告書」(原題:Reforming
major interest rate benchmarks - Progress report on implementation of July
2014 FSB recommendations)を公表しました。詳細につきましては、以下をご覧ください。』
てな訳で、
プレスリリース(英語です)
http://www.fsb.org/wp-content/uploads/R101017.pdf
FSB publishes progress report on implementation of IBOR reforms
本文(英語です)
http://www.fsb.org/wp-content/uploads/P101017.pdf
Reforming major interest rate benchmarks
Progress report on implementation of July 2014 FSB recommendations
プレスリリースの方から
『The Financial Stability Board (FSB) today published a progress report
on implementation of the FSB’s 2014 recommendations to reform major interest
rate benchmarks such as key interbank offered rates (IBORs).』
ちなみにこの2014年のリコメンデーションとかいうのはこちら
http://www.fsb.org/wp-content/uploads/r_140722.pdf
Reforming Major Interest Rate Benchmarks
22 July 2014
『The 2014 recommendations included measures to strengthen benchmarks and
other potential reference rates based on interbank markets, as well as
developing alternative nearly risk-free benchmark rates (RFRs). The recommendations
were made following examples of attempted market manipulation and false
reporting of global reference rates, together with the post-crisis decline
in liquidity in interbank unsecured funding markets.』
『The progress report concludes that IBOR administrators have continued
to take important steps to implement the FSB’s recommendations, including
steps to adjust methodologies used to calculate benchmark rates. However,
in the case of some IBORs, such as LIBOR and EURIBOR, underlying reference
transactions in some currency-tenor combinations are scarce and submissions
therefore necessarily remain based on a mixture of factors including transactions
and judgement by submitters. Regulators have taken a number of steps to
address these issues, including developing powers to require mandatory
contributions to benchmarks, but it remains challenging to ensure the integrity
and robustness of benchmarks and it is uncertain whether submitting banks
will continue to make submissions over the medium to long-term.』
てな訳で「integrity and robustness of benchmarks」というのですが、一方でFSBの求めるものとしてそれがトレーダブルレートで実際のトレードレートに依拠していないとイカンというのがあって、先般も申しあげたように市場慣行なんぞは10年のスパンで見た全然違っているという事は多々ある訳で、市場の実勢に沿う形、かつ連続性をできるだけ損なわないようにしながら短期のリファレンスレートを定期的に見直していく形を作った方が建設的だと思うのですが、そうなるとISDAが困っちゃうとかそういう事なんですかねえとは思うけど、ISDAだってクレジットイベントの判定の時に微妙な柔軟性(ギリシャのリストラクチャリングが何故かセーフだったとか)を発揮するんだし、リスクフリーレートに関しても柔軟にやっていけば良いのではないかと思うのですけど、今後この扱いってどうするんでしょうかねえ。
途中飛ばして、
『The official sector has also actively engaged with the International
Swaps and Derivatives Association (ISDA) to tackle the risks associated
with permanent discontinuation of widely used IBORs. ISDA has established
a series of working groups and is drafting fall-back arrangements for new
derivatives contracts and a future protocol to amend existing contracts.』
LIBOR廃止になったら「これを使いますので読み替えて下さい」ってISDAがやるんでしょうな。
『The official sector places great importance on all industry stakeholders,
on both the buy and sell side, entering into such protocols. It is also
important that work on contract robustness is extended to other non-derivative
markets where contracts reference IBORs such as mortgages, loans, floating
rate notes and futures contracts.』
『The FSB will publish another progress report in 2018.』
前回は2016年7月に進捗状況が公表されていまして、
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160720a.htm/
金融安定理事会による「『主要な金利指標の改革』(2014年7月金融安定理事会提言)の実施に関する進捗報告書」の公表について
本文の方には日本に関する記述があって、リスクフリーレートに関する説明もございますが、日本での進展状況の話なので別にそこをみたから新しい話がある訳ではございませんけれども、また出てきやがったということなのでメモメモということで。
2017/10/12
お題「寝起きでFOMC議事要旨ネタ」
ほお。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171011-00000074-asahi-pol
自民堅調、希望伸びず立憲に勢い 朝日新聞情勢調査概況
10/11(水) 22:28配信
『22日投開票の衆院選について、朝日新聞社は10、11の両日、4万人以上の有権者を対象に電話調査を実施し、全国の取材網の情報も加えて選挙戦序盤の情勢を探った。現時点では、(1)自民党は単独過半数(233議席)を大きく上回りそうで、小選挙区・比例区とも堅調(2)希望の党は伸びておらず、代表の小池百合子都知事のおひざ元の東京でも苦戦(3)立憲民主党は公示前勢力(15議席)の倍増もうかがう勢い――などの情勢になっていることが分かった。』(上記URL先より)
大チャンスを自分で潰した人が居るように思えますな。調子に乗り過ぎでしたな。
○寝起きでFOMC議事要旨である
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20170920.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20170920.pdf
ということで9月議事要旨ですが、例によって『Participants' Views on Current
Conditions and the Economic Outlook』のケツの方から読んでいくという手抜きモードなのですが、今日は頑張って(?)労働市場の所から最後まで読んでみる。
・賃金がアガランチ会長な件について
9パラグラフ目からになります。
『Labor market conditions strengthened further in recent months. The increases
in nonfarm payroll employment in July and August remained well above the
pace likely to be sustainable in the longer run. Although the unemployment
rate was little changed from March to August, it remained below participants'
estimates of its longer-run normal level.』
『Other indicators suggested that labor market conditions had continued
to tighten over recent quarters. The labor force participation rate had
been moving sideways despite factors, such as demographic changes, that
were contributing to a declining longer-run trend. In addition, the number
of individuals working part time for economic reasons, as a share of household
employment, had moved lower. The job openings rate, the quits rate, households'
assessments of job availability, and the labor market conditions index
prepared by the Federal Reserve Bank of Kansas City had returned to pre-recession
levels.』
と、労働市場の現状については威勢の良い話が続きます。
『However, some participants still saw room for further increases in labor
utilization, with a couple of them noting that the employment-to-population
ratio and the participation rate for prime-age workers had not fully recovered
to pre-recession levels.』
数名(some)の参加者はそうは言いましてもまだ改善の余地があるとの指摘で、まあこの現状の所は流して読んで良い種類だと思いますがその次が賃金動向に関する議論。
『Against the backdrop of the continued strengthening in labor market conditions,
participants discussed recent wage developments.』
てな訳で10パラグラフ目は賃金のお話。
『Increases in most aggregate measures of hourly wages and labor compensation
remained subdued, and several participants commented that the absence of
broad-based upward wage pressures suggested that the sustainable rate of
unemployment might be lower than they currently estimated.』
複数(several)の参加者は賃金上昇圧力が弱いのは自然失業率が下がっているからでねえの?と指摘。
『Other factors that may have been contributing to the subdued pace of
wage increases reported in the national data included low productivity
growth, changes in the composition of the workforce, and competitive pressure
on employers to hold down their costs.』
その他としては全要素生産性の伸びが弱いとか労働人口の年齢構成の変化とか企業のコスト削減へのプレッシャーが強いとか。
『However, reports from business contacts in several Districts indicated
that employers in labor markets in which demand was high or in which workers
in some occupations were in short supply were raising wages noticeably
to compete for workers and limit turnover. It was noted that the expected
increase in demand for skilled construction workers for reconstruction
in hurricane-affected areas would likely exacerbate existing shortages.』
とは言いましても地区連銀からのアネクドータルな報告によれば企業が必要とするスキルに合致するような労働者の確保は賃金を盛大に上げないと困難になっていますという話のようで。
『Most participants expected wage increases to pick up over time as the
labor market strengthened further; a couple of participants cautioned that
a broader acceleration in wages may already have begun, consistent with
already-tight labor market conditions.』
殆どの参加者は賃金上昇はこれから来ますなという指摘ですが、2名は既にこれは広範な賃金上昇圧力が始まっているぜよ、という指摘になっています。
・インフレに関して
11パラ目以降が物価の話。
『Based on the available data, PCE price inflation over the 12 months ending
in August was estimated to be about 1-1/2 percent, remaining below the
Committee's longer-run objective.』
四捨五入すれば2じゃないかと言いたくなるがそうはならないFOMC。
『In their review of the recent data and the outlook for inflation, participants
discussed a number of factors that could be contributing to the low readings
on consumer prices this year and weighed the extent to which those factors
might be transitory or could prove more persistent.』
色々な要因について一時的なのか長く引っ張りそうなのかを点検と。
『Many participants continued to believe that the cyclical pressures associated
with a tightening labor market or an economy operating above its potential
were likely to show through to higher inflation over the medium term. In
addition, many judged that at least part of the softening in inflation
this year was the result of idiosyncratic or one-time factors, and, thus,
their effects were likely to fade over time.』
多くの(Many)参加者は賃金上昇圧力からの物価上昇圧力は今後も継続し、足元での物価上昇ペースの鈍化に関しては特殊要因あるいは一時的な要因であり、これは時間の経過とともに影響が無くなっていくでしょう、ということなので(当たり前だが)声明文で示された通りが中心的な見解。
『However, other developments, such as the effects of earlier changes to
government health-care programs that had been holding down health-care
costs, might continue to do so for some time.』
一方でヘルスケア関連の物価への影響はもうしばらく続くじゃろということだがもうちょっと前は一時的って言ってなかったっけ???
『Some participants discussed the possibility that secular trends, such
as the influence of technological innovations on competition and business
pricing, also might have been muting inflationary pressures and could be
intensifying. It was noted that other advanced economies were also experiencing
low inflation, which might suggest that common global factors could be
contributing to persistence of below-target inflation in the United States
and abroad.』
より構造的な話の議論がありまして、テクノロジーの進化によって競争が激しくなったり企業の価格設定が厳しくなったり(価格比較サイトみたいなイメージですかね)で物価上昇圧力が弱まるという話。それから多くの他の先進国でも物価が中々アガランチ会長となっているということからして、グローバルに共通する要因があるということですなという指摘もあります。
#だったら主要国揃ってインフレ目標下げればいいのにとは思うがその話は措く
『Several participants commented on the importance of longer-run inflation
expectations to the outlook for a return of inflation to 2 percent. A number
of indicators of inflation expectations, including survey statistics and
estimates derived from financial market data, were generally viewed as
indicating that longer-run inflation expectations remained reasonably stable,
although a few participants saw some of these measures as low or slipping.』
インフレ期待に関する指摘も入って来ておりまして、概ねインフレ期待はアンカーされているものの、一部のインフレ期待に関する指標が低かったり下落傾向にあることを指摘(というか懸念でしょうな)する参加者も複数名(a
few)いるとのことで、労働市場の方に比べると当然ですがこっちの方が慎重に見ている人もいまっせというのが伝わる書き方になっているように見えます。
でもって第12パラグラフは、「で、低インフレが続いているけどどうよ」という話。
『Participants raised a number of important considerations about the implications
of persistently low inflation for the path of the federal funds rate over
the medium run.』
ということで。
『Several expressed concern that the persistence of low rates of inflation
might imply that the underlying trend was running below 2 percent, risking
a decline in inflation expectations. If so, the appropriate policy path
should take into account the need to bolster inflation expectations in
order to ensure that inflation returned to 2 percent and to prevent erosion
in the credibility of the Committee's objective. It was also noted that
the persistence of low inflation might result in the federal funds rate
staying uncomfortably close to its effective lower bound.』
数名(Several)は物価が低い状態が続くとインフレ期待が低下するリスクが生じるので、そのリスクに対応するためにも金利はあまりホイホイ上げずに低い水準に保つべきではないでしょうかという指摘をしているのが一発目に出て来るのでした。
『However, a few others pointed out the need to consider the lags in the
response of inflation to tightening resource utilization and, thus, increasing
upside risks to inflation as the labor market tightened further.』
という一方で複数名(a few)は経済の稼働状況(要はスラック解消)から物価の波及ラグの事を考えれば、ここから一段と労働市場がタイト化すると物価上昇リスクの方が高まるのではないか、とマッコウクジラで逆の見解があってこの二つを並立させて掲載していますな。
でもって第13パラグラフ。
『On balance, participants continued to forecast that PCE price inflation
would stabilize around the Committee's 2 percent objective over the medium
term.』
両端の見解を出しておいて結論これかよという感じですがまあ続きがある。
『However, several noted that in preparing their projections for this meeting,
they had taken on board the likelihood that convergence to the Committee's
symmetric 2 percent inflation objective might take somewhat longer than
they anticipated earlier.』
数名(several)は今回のSEP作るにあたって2%物価到達の見込み時期を遅らせましたというのを指摘したそうな。
『Participants generally agreed it would be important to monitor inflation
developments closely. Several of them noted that interpreting the next
few inflation reports would likely be complicated by the temporary run-up
in energy costs and in the prices of other items affected by storm-related
disruptions and rebuilding.』
物価動向に関しては今後も注意深く見ていく、というのは当然として、今しばらくは各種特殊要因やハリケーンの影響なども出ますなとの指摘。
・金融不均衡について
第14パラ。
『In financial markets, longer-term interest rates and the foreign exchange
value of the dollar declined over the intermeeting period, and equity prices
increased. It was noted that U.S. financial conditions recently appeared
to be responding as much or more to economic and financial news from abroad
as to domestic developments.』
ドル安と株高で金融環境が緩和されましたと。
『Many participants viewed accommodative financial conditions, which had
prevailed even as the Committee raised the federal funds rate, as likely
to provide support for the economic expansion. However, a couple of those
participants expressed concern that the persistence of highly accommodative
financial conditions could, over time, pose risks to financial stability.
In contrast, a few participants cautioned that these financial market conditions
might not deliver much impetus to aggregate demand if they instead reflected
a more pessimistic assessment of prospects for longer-run economic growth
and, accordingly, a view that the longer-run neutral rate of interest in
the United States would remain low.』
つーことで2名が緩和的な金融環境の継続が金融不均衡という話をしているのですが、一方で株高とはは景気の見通しが良いからだし、中立金利が低いのだったら別にこれはこれで問題なかろうという指摘もあってやや楽観気味なテイストも。
・という訳で金融政策
第15パラ。
『In their discussion of monetary policy, all participants agreed that
the economy had evolved broadly as they had anticipated at the time of
the June meeting and that the incoming data had not materially altered
the medium-term economic outlook. Consistent with those assessments, participants
saw it as appropriate, at this meeting, to announce implementation of the
plan for reducing the Federal Reserve's securities holdings that the Committee
released in June.』
中期的な見通しに変化が無いので今回バランスシート縮小着手を決定。
『Many underscored that the reduction in securities holdings would be gradual
and that financial market participants appeared to have a clear understanding
of the Committee's planned approach for a gradual normalization of the
size of the Federal Reserve's balance sheet. Consequently, participants
generally expected that any reaction in financial markets to the start
of balance sheet normalization would likely be limited.』
まあこれだけアナウンスしたし額も少しずつだから初期の影響は少ないでしょうと。
でもって次のパラグラフが金利の話。
『With the medium-term outlook little changed, inflation below 2 percent,
and the neutral rate of interest estimated to be quite low, all participants
thought it would be appropriate for the Committee to maintain the current
target range for the federal funds rate at this meeting, and nearly all
supported again indicating in the postmeeting statement that a gradual
approach to increasing the federal funds rate will likely be warranted.』
見落としに変化はなく、中立金利水準も低いですから今回は利上げは見送るけど、先々の利上げは行いますよというステートメントも入れましょう、って話なのですが・・・・・・・・・・
『Nevertheless, many participants expressed concern that the low inflation
readings this year might reflect not only transitory factors, but also
the influence of developments that could prove more persistent, and it
was noted that some patience in removing policy accommodation while assessing
trends in inflation was warranted.』
多くの(many)参加者は物価の足元の弱さが本当に一時的なのか確認したいからトレンドを見るためにも利上げについてはsome
patienceが必要と。
『A few of these participants thought that no further increases in the
federal funds rate were called for in the near term or that the upward
trajectory of the federal funds rate might appropriately be quite shallow.』
『Some other participants, however, were more worried about upside risks
to inflation arising from a labor market that had already reached full
employment and was projected to tighten further. Their concerns were heightened
by the apparent easing in financial conditions that had developed since
the Committee's policy normalization process was initiated in December
2015. These participants cautioned that an unduly slow pace in removing
policy accommodation could result in an overshoot of the Committee's inflation
objective in the medium term that would likely be costly to reverse or
could lead to an intensification of financial stability risks or to other
imbalances that might prove difficult to unwind.』
一方で利上げすんなよというのと、いやきちんと利上げした方が良い、というのが分かれていて、さっきの金融不均衡話の所とは逆に、こちらでは金融不均衡の記述の方にウェイトが掛かってます。
ということで今後の利上げに関して最後のパラグラフになりますが。
『Consistent with the expectation that a gradual rise in the federal funds
rate would be appropriate, many participants thought that another increase
in the target range later this year was likely to be warranted if the medium-term
outlook remained broadly unchanged.』
サムペイシャンスとか言う割には結局多くの(many)参加者は次回利上げを年末位という事にしているのね。
『Several others noted that, in light of the uncertainty around their outlook
for inflation, their decision on whether to take such a policy action would
depend importantly on whether the economic data in coming months increased
their confidence that inflation was moving up toward the Committee's objective. A
few participants thought that additional increases in the federal funds
rate should be deferred until incoming information confirmed that the low
readings on inflation this year were not likely to persist and that inflation
was clearly on a path toward the Committee's symmetric 2 percent objective
over the medium term.』
いやいやいやそんなに急ぐことは無いでしょう、と言っている数名(Several)の意見を今度は思いっきり記載して何かバランスを取っている感はありますな。
『All agreed that they would closely monitor and assess incoming data before
making any further adjustment to the federal funds rate.』
まあこれは当たり前です。ということで本日はFOMCネタだけで勘弁。
2017/10/11
お題「さくらレポート関連/結局米国のQE2は発射台が高かったから効いたという話なのでは?」
ほほう。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171011/k10011174261000.html
カタルーニャ州首相「独立を延期」
10月11日 3時26分
『スペインからの一方的な独立を宣言する構えを見せていた北東部カタルーニャ州のプチデモン州首相は、今月1日に行われた住民投票の結果、カタルーニャがスペインから独立する権利を得たと強調したうえで、スペイン政府との交渉を視野に今後数週間、独立を延期すると発表しました。』(上記URL先より)
あと話は全然飛びますが。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel171010b.htm/
バーゼル銀行監督委員会によるプレス・リリース「安定調達比率の実施およびデリバティブ負債の取扱いについて」の公表について
しれっと↑なものが出ていますな。
○1年以下輪番減額とな
昨日の輪番オペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of171010.htm
国債買入(残存期間1年以下) 700 2017年10月12日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,800 2017年10月12日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,000 2017年10月12日
国債買入(物価連動債) 250 2017年10月12日
つーことで1年以下の輪番が700億円に減額(というか前増額したのが戻ったという感じですが)となりましたが、正直ここは買入の残高として意味あるものではないのですが、償還銘柄を償還まで持っていると100円になるので、大昔みたいに登録国債の元利金取扱手数料込み売買というのがワークしていれば別なのですが、そうじゃない状況下において償還銘柄を償還まで持ち切る意味って殆ど無いので、日銀様が拾ってくれると助かりますなという意味では意義はあるのですが、でもそれって何のためにやっているの感がありますけれども、中長期国債全銘柄を対象にするという事になるとどうしても償還銘柄の扱いが問題になってしまいますので、まあ仕方ない面はややありますな。本来的には残存1年以下の国債は輪番から外してしまえば良い(そもそも輪番=長期の資金供給オペなので1年以下の短期資金供給に結果としてなる買入をする必要は無い、と整理すればヨロシ)と思います(ただしそれをすると償還銘柄の投げ場が一つなくなる)。
というオペですので減額されてもあまり影響はなく推移という所ではございますな。
○支店長会議関連
・総裁挨拶は特にどうということもなく
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/siten1710.htm/(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/siten1707.htm/(7月)
『(1)わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。先行きについては、緩やかな拡大を続けると考えられる。』(今回)
『(1)わが国の景気は、緩やかな拡大に転じつつある。先行きについては、緩やかな拡大を続けると考えられる。』(前回)
個人消費が確りしてきているのを背景に「前向きの循環メカニズム」キタコレという所ではあるのですが、さてその持続性や如何にとしか申し上げようがない。
『(2)物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。先行きについては、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)
『(2)物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台前半となっている。先行きについては、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)
足元の計数に関しては事実を述べているだけの話なのでまあ良いとしまして、先行き見通しはいつも通りで「需給ギャップのプラス拡大」と「予想物価上昇率の上昇」なのですが、昨日ネタにしましたように生活意識アンケートを見ますと、どう見てもインフレ期待の方は全然上がらんどころか寧ろ微減傾向になっている訳ですし、まあそっちが微減という状態だからこそ財布の紐も固くならないのではなかろうか、と小市民でありますところのアタクシなんぞは思う訳ですけどね。
『(3)わが国の金融システムは、安定性を維持している。金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(今回)
『(3)わが国の金融システムは、安定性を維持している。金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(前回)
安定性を維持しているなら金融機関の運用ガーとか一々言われるのは(内務省検閲)。
『(4)金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(今回)
『(4)金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(前回)
てな訳でして、まあ最近はすっかりこう支店長会議挨拶要旨の方は決定会合の声明文やら展望レポートの基本的見解部分の垂れ流しという感じになっていますが、しかしまあ2年を念頭に出来るだけ早く達成というのが生きているんだったらこんなにのほほんとしている場合では無いと思うのですが、「10分遅刻するのも80分遅刻するのも同じ」という理論になって悠然と講義に向かう(最近は皆さん真面目なんでしたっけ)ようなもんですが、そもそも「2年」とか「できるだけ早期に」というのが無かった事にされてきているので、遅刻しても到着しなきゃという感じすらないように見えますが。
・景気判断は引き上げておりまして
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer171010.htm/(今回)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer170710.htm/(前回)
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer171010.pdf
最近「地域の視点」が別冊になってしまいましたので、各地域の景気判断の方だけ確認することにしませう。ということでHTMLの方から引用します。
『(1)各地域の景気の総括判断』から。
『各地域の景気の総括判断をみると、6地域(北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、九州・沖縄)で、「拡大している」、「緩やかに拡大している」としているほか、3地域(北海道、東北、四国)では、「緩やかな回復を続けている」等としている。』(今回)
『各地域の景気の総括判断をみると、6地域(北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、九州・沖縄)で、「緩やかに拡大している」、「緩やかな拡大に転じつつある」等としているほか、3地域(北海道、東北、四国)では、「緩やかな回復を続けている」等としている。』(前回)
はいはい引き上げ引き上げ。
『この背景をみると、海外経済の緩やかな成長に伴い、輸出が増加基調にある中で、労働需給が着実に引き締まりを続け、個人消費の底堅さが増しているなど、所得から支出への前向きな循環が強まっていることなどが挙げられている。』(今回)
『この背景をみると、海外経済の緩やかな成長に伴い、輸出が増加基調にある中で、労働需給が着実に引き締まりを続け、個人消費の底堅さが増しているなど、所得から支出への前向きな循環が強まっていることなどが挙げられている。』(前回)
前向きの循環云々というのは前回もあったのですが、今回は挨拶の文言の中にぶち込んできましたのでそういう意味では7月時点よりも強いという事になっていますので、今月末に出てくる展望レポートでも成長率の先行き見通しに関してはもしかして上方修正してくるのではないでしょうか、と思わせる部分。
『前回(2017年7月時点)と比較すると、4地域(関東甲信越、東海、近畿、中国)で総括判断を引き上げている。主な背景としては、(1)輸出や生産が、電子部品・デバイス等を中心に増勢を強めていること(東海、近畿、中国)、(2)個人消費が、耐久消費財や高額品の販売堅調などにより上向いていること(東海、中国)、(3)公共投資が、2016年度第2次補正予算の執行やオリンピック関連工事の発注に伴い増加していること(関東甲信越)が挙げられている。一方、残り5地域では、総括判断に変更はないとしている。』(今回)
『前回(2017年4月時点)と比較すると、5地域(北海道、関東甲信越、近畿、中国、九州・沖縄)で総括判断を引き上げている。主な背景をみると、(1)生産が、海外向けの電子部品・デバイスや生産用機械を中心に増加していること(北海道、関東甲信越、近畿、中国)、(2)個人消費が、耐久消費財や高額品の販売堅調などから上向いていること(関東甲信越、近畿、中国、九州・沖縄)、(3)公共投資について、災害復旧関連工事が進捗し、昨年度の補正予算関連工事の発注も顕在化しつつあること(北海道、関東甲信越、九州・沖縄)が挙げられている。一方、残り4地域では、総括判断に変更はないとしている。』(前回)
ということなので、輸出と公共投資が前回に加わったという判断になっておりますな。
『各地域の景気の総括判断と前回との比較』ってのを見ますと、
北海道:回復している 不変 回復している
東北:緩やかな回復基調を続けている 不変 緩やかな回復基調を続けている
北陸:緩やかに拡大している 不変 緩やかに拡大している
関東甲信越:緩やかな拡大に転じつつある 右上がり 緩やかに拡大している
東海:緩やかに拡大している 右上がり 拡大している
近畿:緩やかな拡大基調にある 右上がり 緩やかに拡大している
中国:緩やかに拡大しつつある 右上がり 緩やかに拡大している
四国:緩やかな回復を続けている 不変 緩やかな回復を続けている
九州・沖縄:地域や業種によってばらつきがみられるものの、緩やかに拡大している 不変 緩やかに拡大している
となっていまして、ちなみにどうでも良いですけれども、HTMLの方からざざーっとコピペ芸をかましてプレーンテキスト(Windows付属の奴)に貼り付けると矢印が上記のように「不変」とか「右上がり」とかペーストされるのでした(普通に文字化けするかと思ったので思わずニッコリ)。
つーことなのですが、普通はこれだけウハウハな現状認識および先行き見通しがさくらレポートで出てくると展望レポートの経済見通しも堂々上方修正でもおかしくは無いのですが、何せ物価の方がお察しの状態でインフレ期待も別に上がっている訳ではない(一応この前の物国入札は堅調でしたがゆうてBEI40bpとかそんなもんでの入札ですし、消費増税予定通り実施というのを織り込んでの話ですからねえ)ので物価の見通しを上げる訳にも行かないという状況下において、成長率の見通しだけホイホイ上げていくとそもそも前の物価見通しは何だったのかと小一時間問い詰められることになって前との整合性がどうよという話になるのでございますが、さて次回展望レポートはどういう図になるのでしょうか(あと片岡さんの追加緩和提案の内容を見れば金融政策実務に関する知見と理解度が分かるので良いリトマス試験紙になりますのでこれまた楽しみ)という所で。
○うっかり飛ばしていましたが逆さ絵先生の日本金融政策に対する話の続き
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/17-J-12.pdf
日本の金融政策に関する一考察
ベン・S・バーナンキ
・そういえば思ったのだが
でもって前回の続き(本文8ページ、PDFの10枚目)から参りますが、その前にちと思ったのですけど、木曜にこの話をネタにした時に、バーナンキが言ってたのが「オーバーシュート型コミットメントはインフレが目標よりもオーバーシュートすることを容認するもので実質的にインフレ目標の引き上げみたいなもん」として、他人事なので実験でもありますから日本を大評価していまして、そんなに評価するならお前のテーパリングは何なのかと小一時間問い詰めたい所ではあるのですが、まあそんな話をしていました、というのをご紹介しました。
ただ、オーバーシュート型コミットメントってコミットしているのは「マネタリーベースの拡大」だけであって、利上げしながらMBをちょっとでも拡大するというのもアリ、という政策なので、別にインフレを上ブレさせることをコミットしている訳でもないのに、まあ勘違いしてるな〜とか思って悪態ついた訳ですよ。
・・・・・・・・でもってですね、まあその時は「逆さ絵勘違いしてるぜイェ〜イ!」とか思っていた(まあ勘違いは勘違いなのですが)のですが、ふと冷静になってみますと、これって日銀の執行部(この執行部の意味するところは敢えてスルーということで^^)が海外向けに対外説明をしている時に、バーナンキが勘違いするような説明をして「物凄いアグレッシブな緩和を継続しているのですから円安ですよ円安」という風に宣伝をしていて、それを真に受けてバーナンキはああいったのではないか、という疑惑もしてきたのですよ。というのを先に一言入れて置きますです。
・費用対効果が高い????
つーことでQQEの評価の続きから。
『実際、2013 年以降の政策、その中でも特に日本銀行の政策は、顕著な効果があったようにみえる。コールレートを下げる余地がほとんどなかったにもかかわらず、安倍首相の就任以来、日本銀行は株式市場や長期金利、為替レートにみられるように、金融環境を大幅に緩和させた
16。すなわち、経済成長率は上向き、2013 年初めの平均で+1.1%となっている。これはおそらく潜在成長率を上回っており、労働市場にみられる改善と整合的である。名目
GDP は縮小が続いていたが、過去 4 年間で平均+2.1%成長し、財政の持続可能性改善にも寄与している。そして重要なこととして、2016
年にゼロ近傍まで低下したことは心配ではあるが、2013〜15 年の消費者物価指数(コアコアベース、消費税率変更の影響は除く)の上昇率が+0.5〜+0.7%となったように、長期にわたるデフレ終息の兆しもみえてきている。Hausman
and Wieland [2014]によるアベノミクスと日本銀行の金融政策の当初の評価は、費用対効果が高いというものであったが、3
年経ってもその評価は維持されていると思われる。』
ということですが、これ「2016 年にゼロ近傍まで低下したことは心配ではあるが」って簡単にスルーしているけれども、消費増税前の財政ドライブとか久々の消費増税に伴う駆け込み需要とその便乗とか、米国の金融緩和サイクルの終了と米国経済の拡大とか、そういう外部要因というか神風部分をどう見ても過小評価してるだろうとしか思えないんですよね(まあ「Hausman
and Wieland」とか読んでないからどの程度その辺が加味されているのか知らんけど高評価している時点でまあお察しでしょう)。
『それにもかかわらず、日本銀行が掲げている 2%のインフレ目標はいまだ達成されておらず、目標達成時期も幾度となく先送りされていることは残念である。では、いったい何が理由であろうか。』
はあ。
『部外者である私の目からは、日本経済の特性や、過去の金融政策の遺産が相互に影響し合い、日本銀行のインフレ目標の早期到達を阻害しているようにみえる。』
ヘリコプター・ベンでケチャップでも何でも買えばインフレ目標達成するって話をしていただろうがいい加減にしろこのハゲ。
『重要なことは、日本の均衡実質金利は極度に低く、おそらくマイナスになっていると思われる。均衡実質金利は、エコノミストの間では
r*やヴィクセルの利子率として知られており、総需要と潜在産出量を一致させる水準の実質金利である。言い換えると、均衡金利は金融政策の「中立」なスタンスを定義する金利ということになる。』
実質均衡金利が低いから政策が効かないという話はケチャップの話の時に出ていなかったと思いますが髭を剃って詫びろ。
ということで以下実質均衡金利が低いという話をしているのですがめんどいので途中をパスしまして、
『均衡実質金利 r*が低いことは、インフレ率が低いこととあわせ、金融政策が経済を浮揚させることを難しくしている。もちろん、そうした状況のもとで中央銀行が無力だといっているわけではない。』
あっそう。
『一般論として、実効下限制約に直面していても、金融政策は、次の 2 つの補完的な方法のうちいずれかを用いることで、総需要や雇用、物価上昇を喚起できる。』
補完的な方法かよ。
『まず、(例えば、長期金利を低下させる、通貨を減価させる、あるいは株価を上昇させるなどにより)金融環境を緩和させ、直接的に総需要を刺激することである。次に、国民のインフレ予想を引き上げることで、実質金利を押し下げるとともに、将来の成長期待を引き上げることである。』
インフレ予想が引き上がって実質金利が下がるのは分かるが何で成長期待が引き上がるの??
『合理的期待を仮定する標準的なモデルでは、この 2つの方法は、ちょうど 1
枚のコインの裏表のような関係にある。特に、実効下限制約のもとでは、金融政策はインフレ予想に影響を与えることを通じてしか金融環境を緩和することができない。しかしながら、実務的な側面からは、この
2 つのアプローチは、行動の面で明確に異なる、あるいは、金融環境の変化に対して少なくとも大衆は一様に反応するわけではなく、また、インフレ率や成長率について異なる予想を有している可能性を念頭においておくことが重要である。』
てそもそも合理的な期待形成がワークしとらんというのが示された訳なのでして、「金融環境の変化に対して少なくとも大衆は一様に反応するわけではなく、また、インフレ率や成長率について異なる予想を有している可能性を念頭においておくことが重要である。」って重要も糞も自明だろお前は何を言ってるんだと無学のアタクシは思うのでした。
『いずれにせよ、日本における金融政策の波及経路は、両者ともに限界に近付いているように思われる。』
・・・・・・・・・・・(−−)
『第 1 に、今日の日本においては、短期金利だけでなく、超長期金利も実効下限制約またはその近辺にあり、ある種「超流動性の罠(super
liquidity trap)」とでもいうべき状況にある。』
『対照的に、米国の短期金利は 2008 年から 2015 年までほぼゼロであったが、この間、長期金利は明確なプラス圏内で推移し、10
年物国債金利は一度も 1.5%を割り込むことはなかった。』
『FRB は、短期金利引下げの余地を有していなかったにもかかわらず、フォワード・ガイダンス(長期間短期金利を低位に維持するとの約束)と量的緩和(ターム・プレミアムの縮小)によって、より長期の金利に低下圧力をかけ、金融緩和策をとることができた。』
ということでここはしれっと流しているけれども、米国の場合はスタートの時の名目金利水準が高かったので金融政策が上手く行ったように見えるけれども。QE2(QE1は信用緩和なのであれは別)以降の金融政策が効いたのって単に発射台があったからであって、同じことを発射台の低い国がやっても効きが足りませんって話なんでしょう。
『同様に、これまで申し上げてきたとおり、日本銀行も近年、イールド・カーブの短期ゾーンを誘導する余地はほぼなかったにもかかわらず、金融環境を大幅に緩和することができた。もっとも、現在、金利の期間構造全体が事実上ゼロとなる中(そして日本銀行が金融システムの安定のため大幅なマイナス金利には明らかに後ろ向きであると思われる中)、金融環境の大幅な追加緩和の余地は、非伝統的手段を使ったとしても限定的であろう。』
『代わりに、これまでお話ししてきたように、例えば将来のある時点においてインフレ率が上昇し始めたとしても金利を低く抑え続ける約束をすることによって、将来のインフレ率が上昇するとの期待を生み出すことができるならば、日本銀行は実質金利を引き下げ、景気を刺激することができるであろう。』
ということで以下の話が始まるのですが、そもそも日銀は「MB拡大」だけはコミットしているけれども「金利を低く抑え続ける」ことにはコミットしておらずというのは元より申し上げている通りでして、以下の話って何だかな〜という感じになるのですが、まあ追々続きをやって参ります。
2017/10/10
お題「短国買入1兆円/生活意識アンケートがパッとしない/その他雑談系」
つーことでサイトの引っ越しを行いました(元サイトもまだ生きています)。容量の問題が解消されましたので(だったらもっと早く引っ越せというツッコミは理解する)ログの分類別整理とか復活させていきます。
ところでこれは味わい深い。
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2017/news1/20171009-OYT1T50030.html
ニュース(公示前)
希望失速、立憲民主と「反安倍」分散…読売調査
2017年10月09日 11時26分
○オペのメモ位しか円債市場ネタが無いわけだが
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of171006.htm
国庫短期証券買入 10,000 2017年10月11日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,100 2017年10月11日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2017年10月11日
国債買入(残存期間25年超) 1,000 2017年10月11日
短国買入は1兆円で来ましたので、このペースだと7500×3+10000×2で42500の買入になって、57200億円の償還なので残高は1.5兆円落ちる計算になりますな。まあ短国の金利水準をどこに置くのが良いのかというのも割と難しい話で、いやまあ本来的に言えば長期国債でこれだけの買入やっているんですから短国買入は要らないというのが筋ではあるのですが、長期国債買入だけだとMBの進捗がぶれるからそこを気にするかどうかというのが一つ、後は短国の金利が浮いてきた場合に短いJGBの金利に影響するかもしれないのでその辺の兼ね合いが微妙、現状ではコールレートって▲10bpよりは全然金利高い所にいますし、GCレポレートの方がコールよりも低くてどちらかと言えば▲10に近い所にあるのですけれども、そうは言いましても▲10に張り付いている訳ではなく、ということなので、恐らく短国買入のストック効果が出なくなるような水準になってくると短国の利回りはGCレポ並みになってくると思う(当初はマイナス一桁になった所で買いがドバーっと来るかなと思っていたのですが、この前の短国相場見てるとそこまで買いが伸びてこないみたいなので)ので、そうなるとYCCのカーブ形成更に苦しくなるかなという問題もあって中々難しいですの。
とはいえ短国買入はオペレーション的にはいらない子なのと、量的目標になった時に数字を稼ぐバッファーとして使えるから今のうちにせっせと削減するしかありませんな。
あと長期国債の方ですが、とりあえず足元の相場の位置だと減額というのはやりにくい感じではあると思いますがステルステーパーの立場からはドンドン減らして行く方が市場もニッコリという事ですので、さてどうやって減らすかという所でしょうな。
○中曽副総裁の絵心ですかね
金曜日にネタにした中曽副総裁の講演ですが、
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko171005a1.pdf
日本経済の底力と構造改革
ジャパン・ソサエティおよびシティ・オブ・ロンドン・コーポレーションの共催講演会における講演の邦訳
(於ロンドン)
金曜にネタにした講演なのですが、上記図表付本文の一番最後のページに(図表22)ってのがありまして、「柿本人麻呂が詠んだ和歌」ということで日本経済が偽りのじゃなかった真の夜明けは近いぜよ(って4年以上ハチャメチャな金融緩和政策を行って挙句にまだ真の夜明けなのか偽りの夜明けなのか分からんという状態ってそれは金融緩和の効きが悪いという話のような気がするがそれはさておき)という話をしていて、そちらにツッコミをしたのですが、後から気が付いたので1日遅れで。
えーっとですな、この絵をちょっと拡大すると分かりやすいのですが、絵の右下の方(人間の影の左側の下)にサインがあって、これどう見ても「H.N」でしてそれは中曽宏さんではないかという事に気が付きまして(遅いと言われそうですが)、絵を描かせるとあばばばばーな不肖このアタクシからしたら俳画(俳句じゃないから俳画じゃないけど)のこの味わいがイイネ!という風に思いましたのでネタメモということで。
なお、これはもしや任期満了も近いということですのでj(内務省検閲)。
とか言って違っていたらすいませんすいません。図の説明は和歌の英訳がたぶんドナルド・キーンさんによるものでとかそういう話が書いてあると思うのだが。
○遂に書面開催になったか(リスクフリーレート関連)
http://www.boj.or.jp/paym/market/sg/rfr1704b.pdf
「リスク・フリー・レートに関する勉強会」第17回議事要旨
(平成29年4月28日(金)16時30分〜17時30分、日本銀行本店会議室)
http://www.boj.or.jp/paym/market/sg/rfr1710a.pdf
【リスク・フリー・レートに関する勉強会】
第18回会合・議事次第(書面開催)
ということで18回の方は最早何をやったのかも良く分からん会合になっておりますが、まあ本件に関してはそもそもFSBだかIOSCOだかISDAだか忘れましたが、トレーダブルなレートを使って短期市場のリスクフリーレートを作ろうというのがあって、もとより短期の特に資金市場となりますと、個別金融機関の資金繰りに直結した部分のカバーという面が強く、おまけにこの低金利環境な上にカウンターパーティーリスクがどうのこうのと当局が言っている中で、資金ディーリングなんぞをまともにやるのは使用する規制資本に対してのリターンがまるで間尺に合わないですから、資金ディーリングのような取引が入ってこないような状況になっておる訳で、そうなりますと個別金融機関のお家の事情と、個別金融機関におけるアベイラビリティによってレートが決まるという日替わり需給による市場という事になりますが、だいたいこういうのを提案してくる人たちって意識は高いけど現場に対する理解は全然追いついていないから、それこそ昔の短期ディーリングが活発で市場取引が参加者の金利観を反映したレートとして出ている、という時代のイメージでいるんでしょうなあ(個人の感想です)と思うのよ。
てな訳ですから、まあそんな状況な上に日本の場合は例えば本来リスクフリーレートに一番近い筈の3か月新発短期国債平均落札利回りとかも日銀の馬鹿買入によってレートが碌でもないことになっているような状態な訳で、そんな中でリスクフリーレートとは何ぞやという話を海外に話合わせるためだから仕方ないけど延々と検討するとはご苦労なことではありましたな、とは思います(しかもこれ検討している途中でマイナス金利政策になって一時コール市場も壊滅していましたからもうねという所で)。
まー毎度申し上げておりますが、そもそも「市場金利の指標となるレート」というのは市場の環境(国債の発行量とか市場の取引慣行とか)の変化によって変わるものでして、さすがに不肖このアタクシも「指標金利」時代よりも「カレント利回り」時代の方が長くなっていますが、その程度のスパンで市場がリファレンスとするべき金利というのは変化しているのであって、この手のリファレンスレートは長期的にレジリアントな物などは存在しないのに、30年のスワップの変動金利部分とか言って参照レートが使われてしまうのに関しては、(そうするしかないとは言え)レートが長期的に見て必ずしもレジリアントではないという事でISDAなり中央銀行なりが市場の動向を見ながら必要ならば変更みたいなことをするのですかねえとかそんな事を考えるのでありました。
でもってリスクフリーレートと言えば日銀のコールのページですが、
http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_m.htm
コール市場関連統計(毎営業日)
ここに
http://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/data/exmutan2.pdf
無担保コールO/N物レートのご利用上の留意点
ってのがあって、
『無担保コールO/N物レートの公表は、日本銀行ホームページを通じて行われます。このため、契約の締結・実行または重要な意思決定等に当たって無担保コールO/N物レートを利用される場合には、日本銀行により公表された無担保コールO/N物レートを参照してください。』
『その際には、予め以下の留意点を十分にご理解のうえ、参照・利用してください。なお、
1.日本銀行および情報提供会社は、無担保コールO/N物レートの閲覧または使用をもって、無担保コールO/N物レートを参照・利用する方が留意点を理解し、同意したものとして取扱います。
2.この留意点は、無担保コールO/N物レートがリスク・フリー・レートとして
OIS 取引などの参照金利となっていることなどに鑑み、利用上、特にご留意頂きたい点について整理しているものであり、日本銀行が公表する他の統計の利用に伴う免責事項等に対し影響を及ぼすものではありません。』
というのが入っておりまして、リスクフリーレートとして無担保コールレートを使って行きましょうという話の一環という事になっておりますな、うんうん。
○生活意識アンケート
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1710.htm/
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki1710.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第71回)の結果
―― 2017年9月調査 ――
・謎の景況感だが格差拡大なのかこれ?
まずは『1-1-1. 景況感』から。
『景況感のうち、現在(1年前対比)については、「良くなった」との回答が増加し、「悪くなった」との回答が減少したことから、景況感D.I.は改善した。先行き(1年後)については、「悪くなる」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。
なお、現在の景気水準については、「良い」、「どちらかと言えば、良い」との回答の合計が若干増加し、「悪い」、「どちらかと言えば、悪い」との回答の合計が減少した。』
先行きの方がワケワカラン(前回はちゃんと改善していた)が、まあ足元「悪い」が減っているんですから宜しいのではないかと。
でもって『1-2-1. 現在の暮らし向き』に行きますと、
『現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりが出てきた」との回答が増加したことから、暮らし向きD.I.は改善した。』
とはなっているのですが、微妙に「ゆとりがなくなってきた」というのも増えていまして、(「ゆとりが出てきた」よりも増え方が小さいのでネットするとゆとりが出ていることになるのだが)これはいわゆるひとつの格差拡大って奴ですか???
『1-2-2. 収入・支出』でも、
『収入については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が増加したものの、「減った」との回答も増加したことから、現在の収入D.I.はマイナス幅が拡大した。先行き(1年後)については、「増える」との回答が増加し、「減る」との回答が減少したことから、1年後の収入D.I.はマイナス幅が縮小した。』
となっていて格差拡大感isある。なお支出は、
『支出については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が増加し、「減った」との回答が減少したことから、現在の支出D.I.はプラス幅が拡大した。先行き(1年後)は、「増やす」との回答が増加したことから、1年後の支出D.I.はマイナス幅が縮小した。』
となっていますがこの拡大がサステイナブルなのかどうかは怪しいもんですな。
・雇用はよろしいようで
『1-2-3. 雇用環境』ですが、
『1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「あまり感じない」との回答が増加し、「かなり感じる」との回答が減少したことから、雇用環境D.I.は改善した。
』
まあ素敵。
・物価観や成長期待ががががががが
てな訳で『1-3. 物価に対する実感』の『1-3-1. 現在の物価』に参ります。
『現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)との回答が減少した。
1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.2%(前回:+4.3%)、中央値は+2.5%(前回:+3.0%)となった。
(注1)「あなたが購入する物やサービスの価格全体」と定義。
(注2)『上がった』は「かなり上がった」と「少し上がった」の合計。
』
短いタームの物価観が下がっていますが、適合的期待形成の観点からマズーなんじゃないでしょうか????????
『1-3-2. 1年後の物価』と『1-3-3. 5年後の物価』は更に泣ける。
『1年後の物価については、『上がる』(注)との回答が減少した。
1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+3.8%(前回:+3.9%)、中央値は+2.0%(前回:+2.0%)となった。
(注)『上がる』は「かなり上がる」と「少し上がる」の合計。
』
『5年後の物価(注1)については、『上がる』(注2)との回答が減少した。
これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+3.7%(前回:+3.8%)、中央値は+2.0%(前回:+2.0%)となった。
(注1)消費税率引上げの影響を除くベース。
(注2)『上がる』は「かなり上がる」と「少し上がる」の合計。』
という微妙に残念な数字が出ていますが、その先の『1-5. 日本経済の成長力』を見ますと・・・・・
『日本経済の成長力については、「より高い成長が見込める」との回答が若干減少し、「より低い成長しか見込めない」との回答が増加したことから、経済成長力D.I.はマイナス幅が拡大した。』
お、おぅ・・・・・・・・・・・
でもって金融政策に関しても、『1-6. 日本銀行の金融政策に関する認知度』を見ますと、
『日本銀行が、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を掲げていることについては、「知っている」との回答が2割台後半となった。
積極的な金融緩和を行っていることについては、「知っている」との回答が2割台後半となった。
「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を行っていることについては、「知っている」との回答が1割台後半となった。』
って解説ですが、時系列比較のグラフを見ますと、直近では「知っている」系の回答が減っておりますし、2%物価目標に関しては「知っている」系の回答が徐々に減っているという大変に素敵な状態になっておりますので、気合が足りないよ気合が、などと言ってヤケクソで追加金融緩和をされても困るのですが、まあイカンですなという感じです。
○サイトお引越しのお知らせ&関連雑談
最初の所にもしつこく書いておりますが、長年使っておりましたKDDIのレンタルサーバー(ホームページ公開代理サービスとか言ってた)が利用者減少ということで廃止になってしまいまして、今般引っ越しをしたのですな(と言っても元の所も残っていますが10月末でサーバーが廃止になるのでアドレスが無くなってしまう筈)。でもってその先についてはトップページが
http://www.doramemon7743.sakura.ne.jp/
となりますのでよろしくです。
・・・・・・・つーことですが、実旧サーバーって容量が碌になくて(いまどき100MBって・・・・・)ただのテキストサイトであっても容量的にマズイという事もあってついうっかり過去ログの整理を2年分くらいサボっていたので、この前の週末にちょっと整理を開始したのですが、2015年9月の奴をみていたら既にあの時点でかなり政策が行き詰まりを示していたし、短国利回りは日銀の買入ストック効果が猛烈に効いて付利が10bpなのにマイナスに特攻しちゃいましたし、「金融政策以外の政策も必要では」みたいな話も海外からはちらほら(プラートECB理事とか)出ていましたし、ちょうど「新・三本の矢」とか出ていた時だったんですよね〜とか思いながら懐かしく読んでいたので、「本棚の整理をして本を読みふける」状態になってしまいました(大汗)。
で思ったのですが、この時既に政策行き詰っていて、その後ヤケクソで打ち出した12月の補完措置、1月のマイナス金利とかに特攻した訳ですが、せめてこの時期に総括検証ができていればもう少しマシだったのかも知れないですが、どう見ても爆発するまでは総括検証とか出来ないもんだろうなあジャパンの組織だものという風に思いながら、結局のところここ2年って何ら進展していないしマイナス金利とYCCとは何だったのかという風に思ったりしながら2年前の駄文を読み直すのでした。
てな訳で徐々に追いついて行くと過去ログ確認しやすくなる筈ですのであまり期待しないで待っていてください(いずれは追いつく)。
2017/10/06
お題「中曽さんの講演/短国雑談/逆さ絵ネタの間に別のネタが打ち込まれているのでそちらをメモメモ」
ほお。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171005-00000092-jij-pol
まさにブラックボックス=都民ファ運営を批判―離党2都議
10/5(木) 18:18配信
そらそうよという感想しかない。
○中曽さんの海外講演だが金融政策効果の話が無いのが別の意味で金融政策へのインプリケーションかも
こんなのが出てまして、
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko171005a.htm/
【講演】日本経済の底力と構造改革
ジャパン・ソサエティおよびシティ・オブ・ロンドン・コーポレーションの共催講演会における講演の邦訳
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko171005a1.pdf
でまあこちらなのですが、金融政策に関係ない話が出ているのが中々味わいがあります。これまでの日銀の偉い人の海外講演(ちなみに正副総裁が出る時は概ね黒田総裁ですけど1回韓国で置物大先生が講演しましたがそれ以外は中曽さんというのも順当としか申し上げようがない)だと必ず金融政策の効果を前面に押し出していた筈なので、こういう形で構造改革がどうのこうのみたいな話をするようになっているのは、世界的な流れでもありますけれども「金融政策で何でもかんでも解決するんじゃないですよ」という置物リフレ教団の教えに背く話がメインストリーム(もへったくれもそもそも金融政策で物価目標達成したら何でも解決というのがナンセンスなのだが)となっている一環で、遂に日銀もそっちになってきましたかと思うとそれはそれで味わいの深いものであります。
ということであまり内容自体は金融政策関係ないのですがちょっとだけ。
・日本の底力の話だがいやそれは話に無理があるような
『あらかじめお断りしますと、本日の講演では、学問的な厳密さよりも、全体像をお示しすることを優先したいと思っています2。そのため、これから私が申し上げる内容には、暫定的な分析に基づくものや単なる推測を越えないものを含みます。そう述べたうえではありますが、本日の話は、わが国経済をみるにあたり、新たな切り口を与えるものにはなっていると考えています。また、こうした話が、同様の課題を抱える他の経済にとって、適切な政策対応を考える際の一助になれば、とも願っています。』
ということでお話が始まるのですけどね。
『「1990 年代初頭にバブル経済が崩壊して以降、日本経済は長きにわたってずっと停滞している」というのが、わが国経済に対してお持ちのイメージではないでしょうか。こうした見方は、皆さんのみならず、広く日本人にも共有されていると思います。「日本経済同様、自分たちの生活水準はよくなっていない」という認識があるからこそ、メディアの論調は悲観的になり、日々の生活に不安を感じている人の割合が、1990
年代以降、高い水準で推移していることの一因になっていると思います(図表1)。』
『本日の講演では、まず、こうした後ろ向きのイメージに異を唱えたいと思います。日本人には、「謙譲の美徳」という言葉があるように、「控えめであること」を良しとする風潮があります。しかし、だからと言って、日本経済の実情を不必要なまでに「控えめ」に、すなわち悲観的にみるべきではありません。』
というのが冒頭に来まして、
『実は、海外の人々は、わが国のもつ底力を既に再発見していると思われます。』
と来るのですが、その次の文章に腰が盛大に砕けた。
『訪日外国人旅行者数はこの5年間で飛躍的に増加し、世界の旅行先ランキングをみると、日本は
2010 年の 31 位から 2016 年には 16 位へと躍進を遂げました(図表2)。この勢いであれば、次回以降ランキングが更新される際には、わが国は、現在6位の英国にさらに近づいていけるのではないかとみています。外国人旅行者数が増加している背景には、為替レートなどの経済環境の変化や、ビザ発給条件の緩和といった制度面の後押しがあります。しかし、日本には私達日本人がなかなか気づいていない隠れた魅力、底力があるからこそ、外国人旅行者が引き付けられているのではないでしょうか。』
・・・・・(゚д゚)
いやあのすいません別に経済力がなくても観光客が来る程度に治安が良くて観光資源があれば観光客って来るというお話で、経済が停滞している云々違いますがな。
でもって観光の話は飛ばしまして、
『また、近年の成長率を改めてみますと、日本経済が停滞しているという見方からほど遠いものがあります。2008年に発生した世界的な金融危機以降、日本の実質GDPは平均して年率1-1/4%で上昇しており、金融危機前とほぼ変わりません(図表3、左図)。年率1-1/4%という数字は、英国の成長率(2%)と比べると目覚ましいものではないかもしれませんが、日本は、他国でみられたような金融危機後に成長率がはっきりと減速するような状況には陥らなかったという点は特筆に値します(図表3、右図)。』(分数部分が機種依存文字なので趣旨を損なわないように直しています、以下同様)
だったら何でドンドン金融緩和を過激にしているのでしょうか。
『日本経済が停滞しているという認識は、基準改定前の古い統計をベースに形成されているのかもしれません4。金融危機後の日本の平均成長率は、現在の統計では1-1/4%ですが、古い統計では1%でした。こうした新旧GDPの違いは、昨年12月の年次改定において、「2008SNA」と呼ばれる新しい国民経済計算体系を導入した際に生じたものです。改定の結果、日本銀行のスタッフが推計する潜在成長率は、足もとでは+1/2%ポイントほど上方改定され、3/4%となりました(図表4)。』
物差しが変わったので成長しましたですかそうですか。
・・・・・とまあそんな感じで日本経済の底力のコーナーがあるのですが、読んでいて悲しくなってくるのでこの先は割愛します。
・いきなりワープして結論部分へ
なお途中の小見出しは、
『労働市場改革と生産性』
『労働市場改革と物価』
とありまして、まあ話自体は普通のお話ですが、金融政策と関係ない所の話をメインというか、そもそも金融政策によって期待に働きかけて物価がどうのこうのみたいな話をしていないテキストになっているのがお洒落でして、金融政策で何でも解決というのは何ぼ何でも荷が重いですがな、という話をするとともに、こうやって2013年の政府との共同文書に関しても「政府のやるべきこと」方面を強調するような流れを作って行こう、という趣旨でこういう講演テキストを公開する、というのはそれ自体非常に意義のあることでして、先般来ネタにしている逆さ絵講演(5月)のにしたって、「金融政策単体で短期間にインフレ期待を上方シフトさせてアンカーさせることの難しさ」という話をしているものをどどーんと出している訳でして、日銀がそういう方向で単独ではできませんがなというのをお察しくださいモードになっている、と考えながら読むと味わいも出てきます。
つーことで折角ネタにするので最後の所をば。
『ここで本日の講演をまとめさせていただきたいと思います。私どもは、需給ギャップとインフレ予想が改善を続けるなかで、物価の基調的なモメンタムは維持されていると考えています。本席で議論させていただきましたように、かなりの確度をもって、先行き物価上昇圧力が高まっていくことが見込まれます。』
ほう。
『現在起こっている労働生産性の改善は、日本経済の底力を上げるためには、まさに必要なことです。
そして、本日お話ししたように、この労働生産性は、労働市場改革の進展により、さらに引き上げられるべきと考えます。こうした観点から、成長戦略は引き続き重要です。完全雇用のもとで非常にひっ迫した労働市場は、緩和的な金融環境とあいまって、構造改革の過程で生じる痛みを和らげてくれるはずです。これらを考えあわせると、今は、日本経済の底力をさらに強化する千載一遇のチャンスということになろうかと思います。』
折角賃金が上がろうとしている中で改革して結局賃金が上がらんのではないか、などというのは短期的な話(というのは本文の割愛した方にもある)なのですが、つまりは賃金と物価のメカニズムがワークして短期間で物価目標を達成する、という話をだいぶ諦めているという事でもありますので、だったら今の短期決戦総員バンザイ突撃みたいな金融政策の枠組みを考え直すべきではないか、と思うのですよね〜。
『日本銀行は、デフレからの脱却という長い道のりを歩んできました。これまでの日本銀行の政策対応を振り返ると、狙い通りの成果が得られたこともありましたが、そうならなかったことがあったことも認めざるを得ません。また、これまで何度か偽りの夜明けも経験してきました16
。』
わーなつかしい、false dawnですよ麿ですよ。ちなみに脚注16は、『16白川(2009)「経済・金融危機からの脱却:教訓と政策対応」ジャパン・ソサエティNYにおける講演の邦訳(4月23日、於ニューヨーク)。』とございまして、あれからもう8年もたっているのかと思うと感慨深い。
『しかし、私達は、過去の経験から多くの教訓を学んできたのも事実です。私には、今度こそ、真の夜明けが近いと信じるに足る、より多くの理由があるように思います。』
お、おぅ・・・・・・・・・・
『最後に、8世紀の日本の歌人である柿本人麻呂の和歌を引用させていただきます(図表22)。』
図表22というのは講演本文か図表のリンクを見てください。
『「東の野にかげろひの立つ見えて」ではじまるこの和歌は、万葉集という古い歌集に収録されているもので、夜明け間近に東の空が紫色に明るくなり、月が西に沈んでいく情景を描いています。もしかしたら現在の日本経済は、この和歌で歌われている情景に近いかもしれないと私自身は思っています。朝日が差し込んできたとき長い夜の後に日がまた昇ってきたことを実感するでしょう。その時に、底力がつき、強固かつ持続的で均整のとれた成長に向けて新たな一歩を踏み出した日本経済の姿もよりはっきりと見えてくるだろうと思っています。』
とおもったらやっぱりfalse dawnだったとかならまだマシで、実は地獄の一丁目への道だったりすると色々と残念な訳でして。
○市場世間話
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1MG10A
2017年10月5日 / 15:19
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続伸で引け、長期金利0.045%に小幅低下
といいつつちょっと前の時間になりますが、
『<12:41> 3カ月物TB入札の落札金利が小幅低下、予想通り
財務省が午後0時35分に発表した新発3カ月物国庫短期証券(TB)の入札結果で、最高落札利回りはマイナス0.1617%、平均落札利回りはマイナス0.1685%と前回(最高:マイナス1550%、平均:マイナス0.1652%)に比べて低下した。
市場では、入札結果について「入札前取引の前場実勢を反映した水準で決まり、予想通りの内容」(国内金融機関)との声が聞かれた。』(上記URL先より)
てな訳で今週の短国ですが、
6M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20171004.htm
(3)募入最低価格 100円08銭0厘 (募入最高利回り)(-0.1603%)
(4)募入最低価格における案分比率 69.4531%
(5)募入平均価格 100円08銭2厘 (募入平均利回り)(-0.1643%)
3M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20171005.htm
(3)募入最低価格 100円04銭3厘0毛 (募入最高利回り)(-0.1617%)
(4)募入最低価格における案分比率 27.2022%
(5)募入平均価格 100円04銭4厘8毛 (募入平均利回り)(-0.1685%)
てな感じになっていて、▲16bp近辺で推移している訳ですが、先月は月の頭に短国需給がひっ迫して▲20bpレベルになって短国買入を最低限と思われる水準に一旦絞ってから徐々に需給が緩む中で▲10bpレベルになった所で買入増やしたら反転したのは良いのですが、その後期末も絡んだのでしょうか需給が今度は確りしたままの状態で金利水準が▲16bpレベルで入札を通過するの巻となりました。
てな訳でイールド的な意味でのボラが一番出るの短国じゃろという感じなのが続いているのですが、このゾーンってマイナス10より低い金利で買うのが日銀と海外と限界的な担保需要とかですが、じゃあマイナス10になると自動的に無限に買いが来るのか、というと超過準備マイナスチャージ見合いでは買いが出てくるのですけれども、そうは言っても機動的に直ぐにホイホイ買いが来るのかというと必ずしもそうではない、という人もいて、そういう人たちが滞留させているマイナス10の超過準備ペナルティ部分が動かないと買いが入らんのであれば、短国買入のコントロールって結構難しいなあという感じですな。
いやまあ勿論短国の金利がもうちょっと明確にマイナス10よりも高い金利になるとある程度買いが入ってくるとは思うのですが、今度は短国のレートを例えばマイナス5にしたところで(ちなみに0以上の金利になったら何ぼでも買いが入ると思う)買いが入るので安定、と言いましてもその場合YCCの起点金利を▲10bpにしているのとの整合性という問題が発生するので中々悩ましい所でして、ここもとの金利動向を見て思ったのですが、これマクロ的なマイナス適用をもう少し増やした方が短国の金利形成が安定するし、短国買入減らせるんじゃないかとか悪魔のような事を考えてしまったのですが、これをすると被害者続出になりそうなのに対してメリットは短国買入の残高をもう少し派手に減らせる、というだけなので、全体的な事を考えると意味のある話ではないなあと思いましたので今の話は無しということで(汗)。
しかしまあ短国買入の所は理想を言えば無し位の勢いで減らした方が良いとは思うのですが、短期▲10と10年0金利のスプレッドが無さすぎで、普通ならその位誤差じゃろというような程度の金利上昇であっても、10年目標とのスプレッドの関係で後ろの金利の方が難しくなってくるのは困ったもんですな。
○逆さ絵先生と言いつつこんなのも投下されているぞな
http://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps17.htm/
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ
2017年収録分
こちらの最近版にこんなのが。
http://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/17-J-13.html
フォワード・ガイダンスの有効性の再検討:日本からの教訓
マーク・ガートラー
本文はこちら
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/17-J-13.pdf
フォワード・ガイダンスの有効性の再検討:日本からの教訓
マーク・ガートラー
Discussion Paper No. 2017-J-13
でまあ例によってこちらも
『本稿は 2017 年 5 月 24〜25 日に東京で開催された日本銀行金融研究所主催、2017
年国際コンファランス「金融政策:教訓と課題」において行われた基調講演の英文原稿をもとに、日本銀行金融研究所が著者の同意を得て翻訳したものである(文責:日本銀行金融研究所)。』
となっているのですが、ここでの分析のややこしい数式に関しては知らんがなという感じで概念的な意味だけ読み飛ばしつつ眺めていたのですが、まあ最初の所だけ引用しておきます。
本文1ページ目(なので冒頭、PDFの4枚目)の『1.はじめに』から。
『最近の世界経済情勢は、マクロ経済学の知見に関する再評価を余儀なくさせている。数ある難問の中でも筆頭に挙げられるのは、日本における持続的な低インフレと実体経済の弱さに関する説明である。』
ほう。
『金融政策の失敗を経済停滞の主因とすることはもはや不可能である。』
>金融政策の失敗を経済停滞の主因とすることはもはや不可能である。
>金融政策の失敗を経済停滞の主因とすることはもはや不可能である。
>金融政策の失敗を経済停滞の主因とすることはもはや不可能である。
イェーイ!置物リフレ教団の皆さん見てるゥ〜!!
『2013 年春以降、「量的・質的金融緩和(Quantitative and Qualitative Monetary
Easing: QQE)」の導入により、日本銀行は誰しもが最先端と認める政策プログラムを実施してきた。』
まあよくよく見るとコンポーネントは従来の政策を派手にしただけだし、コンセプトの「期待に直接働きかける」はどう見ても不発なんですけどね!!!!!!
『もちろん、長引く低インフレと実体経済の弱さは、近年世界的にみられる現象である。2008〜09
年の金融危機は、世界中の先進国経済を流動性の罠に陥らせた。先進国の中央銀行は、自国経済のリフレーションに十分な成果をあげることができていない。これは世界に共通する問題であるが、日本においてとりわけ深刻であり、1980
年代末の金融危機以降、延々と続いている。さらに、米国などと異なり、日本では、インフレ予想がインフレ目標にしっかりとアンカーされてこなかった。』
「1980 年代末の金融危機」って誤植じゃなかったらそんなもんありませんでしたが何かとしか申し上げようがない。
『科学的な観点から、中央銀行にとって、自国経済の流動性の罠からの脱却が難しいことである点を説明するのは容易ではない。』
って話で以下説明があるのですが、いわゆる複数均衡みたいなアプローチは取っていなくて(アタクシは無学なので知らんですが、たぶんそういうアプローチをとらない方が標準的なんでしょうね)、先の方の分析を見ても期待インフレみたいなのがノンリニアに遷移するというような仮定は置いてないのですなこの人の主張。
でまあそれはそれで多分そういうもんなのかも知れませんが、ただ市場の現場職人をやっていた身からしますと、この手の人々の期待とかそういうのに裏付けられた(投資)行動ってのはどこか良く分からないけど後付ではああここだったみたいな閾値があって、その閾値(破断界みたいな感じ)を越えるといきなりノンリニアに期待が遷移する(クレジットスプレッドなんてまさにそんな感じじゃろ)のではないかと思うので、以下のこの大先生の分析も微妙に違和感isあるという感じです。
『標準的なモデルでは、中央銀行が先行きの金融政策に関する期待を管理することで、流動性の罠のもとでも、実体経済を刺激できる。もちろん、中央銀行による将来の政策に関する公約は信認されていなければならない。そうでなければ、「フォワード・ガイダンス(forward
guidance)」は効果をもたない。しかしながら、以下では、不完全な信認だけでは、流動性の罠からの緩慢な回復を説明できそうにないことを論じる。もしかすると、主因ですらないかもしれない。実際、以下では、具体的な数値例を用いて、なぜこうした公約(commitment)にかかわる問題がそれほど重大ではないのかを説明する。』
ということで、分析の結果として出てくるのは・・・・・・・・・(この先の分析に関する部分全部ぶっ飛ばして最後に行きます)
『日本の経験に最も関連しているのは、各経済主体がトレンド・インフレ率について適合的に期待を形成すると考えることである。』
総括検証みたいですな。
『標準的なモデルでの制約と異なり、各主体は中央銀行が望ましいと考えるインフレ目標を、トレンド・インフレとして単純に受け入れることはしない。黒田
[2016]が強調しているように、インフレ率が目標水準にアンカーされた歴史に乏しい経済では、経済主体は中央銀行がインフレ率を目標水準に誘導できるという事実そのものを必要とする。すなわち、信じるためには、実際に目にしてみないといけない。これは、各主体が中央銀行の意図を信認していないということではない。むしろ、中央銀行が実際に公約を達成できると確信する必要があるということである。』
ということで、実際に出来た事が無いものを信用して合理的期待形成をしろといってもそれは無理じゃろ、というゆうてみれば当然の結論が出ている(ただしその導出過程に関してはノンリニアな変化が分析に入っていない感じなのでちとどうかと思うが)のでありまして、イェーイ置物副総裁見てるゥ〜!!というのがまた投下されるの巻となっているのでありました。金研お洒落ですな。
2017/10/05
お題「あっさり味で戻る債券/日銀保有国債に関して少々計算してみた/逆さ絵先生講演続き」
ほほう。
http://www.asahi.com/articles/ASKB44TGDKB4UZPS00B.html
2017衆院選
世論調査―質問と回答
2017年10月4日23時11分
○何か色々考えることは無かったのか・・・・・な?
昨日の債券市場ちゃんですが
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1MF17M
2017年10月4日 / 15:16 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続伸、長期金利0.055%に低下
『 <15:08> 国債先物は大幅続伸、長期金利0.055%に低下
長期国債先物は大幅続伸。前日終盤にかけて強含みとなった流れを引き継いだ。後場に入ると、しっかりした日銀オペ結果を受けて海外勢を巻き込んだ需要が強まり、上昇幅を拡大した。現物債市場では軒並み金利が低下した。先物同様にオペ結果を好感した国内銀行勢を主体にした需要が中長期ゾーンを中心に見られた。超長期ゾーンにも一部生保や年金勢からの需要が観測されていた。』(上記URL先より)
てなお話ですが、昨日は前場から先物とか中期とか強くて、前場引けの時点で既に確りだったのですが、輪番強くて更に堅調。という展開でございましたが、まあ色々と後講釈のやりようはありますが、これ要するに期初の所で益出し売却できるものの売りが出て、その後残高復元でカレント近辺に買いが入って戻りましたとかそういう期初にあるフローがどこかから出てきただけでしたちゃんちゃんとかそういう話なのではないかという気がだいぶする(なお人の懐具合はワシは知らんので適当な妄想に基づく妄言であることを改めてお断りいたします^^)のですがどうなんでしょうかねえ。
いやね、一応この選挙がどうのこうのとか米国金利がどうのこうのとかあったりしたので、不覚にもつい考え込んでしまったのですが、もしかして(米国金利も何かそんな気がしてくるのですが)単に期初独特のフローが出て相場が無抵抗主義に動いただけだった(たぶん円債に関して言えば益出しできるゾーンでそのまま残高復元するんじゃなくて別のゾーンで恐らくは益出しゾーンよりもデュレーション長い所に入らざるを得ないから残高回復する間にデュレーションベースではネット買い越しになるんじゃネーノ的な)とかいうオチだとワロエルというかワロエナイというかなのですが・・・・・・・
○計数が出ていたので物は試しに国債残高を計算してみると・・・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高
月末計数が出るととりあえず更新してみるという感じですが、9月末の計数が出ていたのでちょっと確認してみました。
・2017暦年の国債増加は57兆円位ですかね
まーこれ全銘柄の償還日を引っ張ってきて(売買参考統計値はエクセル形式で国債全銘柄1シートで落とせるのですが、償還順になっているのでそこの対応をやれば良い、と思う)償還日順にソートしているだけの話なのですけれども、10−12月の償還が9.3兆円となると思います。以下アタクシがヘコヘコとエクセルで計算した結果なので本人は合っている積りですけれども、間違えているかも知れませんので皆様もぜひご確認の程を。
でもってここから年末までの買入ですが、(輪番の受渡日ベースと約定ベースの日ズレによる入り繰りはツーペーになるものとしてとりあえず無視して計算しています)1年未満はどうせ超短い償還銘柄しか入らないという事にして、無視しますと、残り3か月で今のペースで買入をすると年末までの買入が22.67兆円になる(10年カレントや5年カレントの水準的に考えてそこまでオーバーパーのものがドカドカ入ることも無かろうということで額面ベースで考えて補正はしない)と思います。
9月末なので営業毎旬報告が出るのが微妙に遅くなるのと、どうせ額面ベースで計算しているので昨年12月末と9月末の銘柄別残高から日銀保有額面を出すと、昨年12末が350.7兆円、9末が394.4兆円で43.6兆円(端数四捨五入しています)の増加となっているので、今後の増加が13.4兆円であるので、年末時点では昨年対比57.0兆円の増加、という結果になると思います。80兆円程度と言いつつ60兆円を切るとはお洒落。
・ところでここから1年で計算すると・・・・・・・・・・・
というのは良いのですが、10月〜来年9月末、という形で見た場合になりますとこれがまた話が微妙に違ってきまして、向こう1年間での償還予定額が48.7兆円(10月〜来年9月)だと思われますのですが、今の買入ペースというのは1年未満のゾーンを例によって例のごとく償還銘柄しか入らないので増分無しとして計算すると、額面ベースで90.48兆円の年間増加ペースになりますので、ここから1年で計算すると41.8兆円の増加ペースとなってしまう次第でして、知らぬ間に木内さんの提案の45兆円ペースよりも少なくなってしまう、という事で更にお洒落な展開になる訳で、これには木内さんもニッコリ(かどうか知らんが)という所ですかそうですか。
なお、そういう計算式を基にして「何で木内さんの提案が却下されるのにこういう買入ペースになるんですか」と聞いても、木内さんの提案は45兆円を目標にするものであって、今の日銀の買入は金利をターゲットにして結果として量がこうなったというだけで、経済物価情勢の好転と共に金利に上昇圧力が掛かった場合、目標金利水準を維持する為に買入は増えていくので、今の買入額が1年間続くというような前提を置くのは非現実的な仮定です(キリリッ)と逃げられてしまいますので誠に遺憾の極みという所でしょうか(ニヤニヤ)。
ちなみに暦年ベースの2018年で計算すると、2018暦年はもう少し償還が多くなって51.2兆円になりますので、この調子で買入をすると暦年2018だと(額面ベースですが)40兆円を切るという数字になってしまうのが一段とお洒落感を漂わせます。
なお、中期輪番を1回当たり両ゾーンで100億づつ、長期輪番を1回当たり100億減額すると年間の買入額面が2兆程減らせまして、88.3兆円に減るので、ここから1年で40兆円カツカツの買入になってしまう、というこれまたお洒落なステルステーパリングですなあ、とちょうど四半期の所で切りが良いので計算してみたらそのような結果がががががが。
・しかしながらより長い期間で見ますと・・・・・・・・・・・・
というステルステーパリング状態ではあるのですが、では将来日銀の思い通りに物価2%達成して金融政策の正常化に着手するのでバランスシートの正常化をしましょう、という話になるとこれがまた絶望的なお話になります。
バランスシートの正常化という話になりますと「銀行券ルール」という事になるのですけれども、この銀行券ルールって金融市場調節の技術的な話で言えば、「銀行券」+「所要準備」の額以上に長期国債の残高がある状態(つまり長期の資金供給オペを実施している状態)になると、超過準備が発生してしまうので、短期金融市場の調節技術上超過準備を何らかの形で不胎化しないと行けなくて、エクセスリザーブに付利をするか、短期の資金吸収オペ(米国で言えばリバースオペ)を実施しないといけない(多分超過準備も昔と違って一定のバッファーが出来ていると思うのでもう少し余裕はあるかも知れないが10兆円とかのオーダーにはならない筈)、という事になります。
でもってですよ、銘柄別保有残高を足の長い方から計算していくとこれがまた恐ろしい事に、2028年以降に償還の来る銘柄の額面残高全部足すと75兆円、10年カレントも入ってくる2027年以降に償還の来る銘柄の額面残高を全部足すと91.7兆円という数字が出てくる(ちなみに2026年以降だと120.0兆円)のですな(なおアタクシの人力エクセル計算なので数字は皆さん確認してちょ)。
でもって発行銀行券残高は直近の数字で9月20日の営業毎旬で見ると100兆円となっていまして、所要準備って10兆円弱(現在の積み期間の所要準備は今の所1日あたり9.71兆円)ですが、一方でETFとかどう見ても売れません長期資金供給にも程があります、というのがあるので、まあ銀行券との比較だけ考えて見ますと、銀行券の発行残高がよほど増えない限り、「今直ぐに長期国債の買入を全面停止したとしても」、バランスシートの正常化には楽勝で9年は掛かるという中々お洒落な計算になると思うのですが、まあ間違っていたら指摘して頂戴なという事で。
・・・・・・・つまりですね、よく「将来金利が上がっても日銀の買う国債も利回りが高いものに置き換わるから云々」という話があると思うのですが、実際問題としては買入を全面的に停止したとしても2026年までは自然体で減る国債残高に対して資金吸収オペ、つまりその時の政策金利水準での不胎化作業をしないといけない、という事になりまして、まあどう見ても今の買入のフローベースで年間90兆円とかそんなのをいきなり減らすの無理無理無理なので、結局のところもっと不胎化をしないといけないでしょ(だいたいこれからも買入増えるんだし)という事を勘案すると、正常化の時って(2%に永遠に行かないなら別ですけれども2019年度には行くというのならば)相当ダラダラと逆鞘ポートフォリオを抱え込む形になるのではなかろうか、とまあ斯様に思う(だって物価目標達成とか言ってる時に短期金利ゼロって訳には行かなくて今の30年債よりは高い政策金利になってるでしょ)次第なのですがどうなんでしょうかねえ、とか思ってしまうのでありました。
なお、以上の計算についてはアタクシがエクセル人力作業でやっているので、計数についての正確性については再度申し上げますが本人は正しく計算しているつもりですが違っているかもしれませんので計数に関しては皆様ご自身でご確認下さい(しつこくヘッジクローズ)。
○逆さ絵おじさんの講演ネタ続きで(その3)
はいはい逆さ絵逆さ絵。
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/17-J-12.pdf
日本の金融政策に関する一考察
ベン・S・バーナンキ
・オーバーシュートコミットメントをそう解釈するのはまあそうだろうなと思うが・・・・・・
本文7ページ(PDFの9枚目)の『アベノミクスのもとでの金融政策 』という小見出しなので2番目の論点というのに入ります。
最初はまあ飛ばしまして直近の政策枠組みに関して。
『より最近では、日本銀行は 10 年物国債利回りに当初ゼロ近傍という誘導目標を設定し、2%のインフレ目標を達成した後もしばらくの間、インフレ率をオーバーシュートさせることにコミットするよう政策枠組みを修正した(黒田[2016])。最近投稿したブログで議論したように(Bernanke
[2016b])、私はこのどちらも建設的な措置であると考えている。』
『特に、インフレ目標をオーバーシュートするというコミットメントは、短期金利が実効下限制約にある場合、中央銀行はインフレ率が上昇しても、金利をゼロ金利制約が存在しない場合の水準よりも低く維持することにコミットすることで、そうした制約を補うべきであるとする理論的分析と整合的である(Krugman
[1998]、Eggertsson and Woodford [2003])。』
とまあそういう説明になっているのだが、今のオーバーシュート型コミットメントって別にインフレ上振れをコミットしている訳ではなくて、「現実の物価指数が2%に達するまで「マネタリーベースの拡大」にコミットしている」だけの話であって、まず第一にその間にマイルドに物価が上がって2%になった所で安定するというのなら話は別ですが、そうじゃなくて本当にインフレが高進してコリャアカンという事になるようであれば、マネタリーベースの拡大は継続しながら誘導目標金利の引き上げは出来る、という建付けになっている上に、マネタリーベースの拡大に関しても別に80兆円拡大するのをコミットしている訳ではなく(既に今の時点でそうですよね)、極端に言えば前年比1円拡大(はさすがにアレなので1兆円とか)でもコミットメントであることには変わりない、という建付けになっているのですよ。
ということは・・・・・・・・・
『より一般的にいえば、オーバーシュート型コミットメントは、日本銀行がデフレとの闘いを早期に中断してしまうのではないかとの推測を打ち消すのに役立つであろう。』
というのはまあそのメッセージが入っているのは事実ですけれども、どうもその前段の話を見ると「インフレ目標の上振れ容認」という自分の所ではやっていないけれども世界有数の経済大国しかも開放経済国で禿理論の実験をやってくれるなんて非常に愉快愉快というのが伝わってくる一方で、どうもこのコミットメントの仕掛けについては理解してないなというのが分かる話で勉強しろやという感じです。
つまりですな、まあ確かに今の体制だったら物価目標からの上振れ容認チックな動きをするのかも知れませんが、いざ物価が本当に上がった時にどうなるのかとか、その時点で政治的な流れが変わって居た場合により普通に金融政策を運営したい、というような場合には、枠組み変更を伴わずに物価目標オーバーシュートはしない程度の所で事実上の正常化モードに入る事が出来る、という仕掛けになっているので、将来どうとでも出来るような仕組みになっている、という話はバーナンキおじさん理解してねえなと思いますが、そらまあ日銀の公表文書を一々細かくみていく(しかも日銀の場合は正本は日本文だし)という訳にも行かないでしょうから、上記のような理解をするのも仕方ない所ではあるかなとおもいますが、元FRB議長なんだからもうちょっと理解しておけよとは思うのでした。
『イールドカーブ・コントロールの導入は、量的目標(年間 80 兆円の日本国債買入れ)から価格目標(日本国債の金利)への変化と解釈できる。日本銀行が国債の保有シェアを高めるにつれ、銀行やその他の保有者は利回り以外の理由で国債に価値を見出すため、民間主体の国債保有の価格感応度が低下している。』
何か微妙に変だが。
『したがって、日本銀行にとって、国債買入れの量的目標を達成することが一段と困難になったとしても、国債利回りの管理は容易になるであろうし、過去よりも少ない購入量で管理できるであろう
15。市中に出回る日本国債の供給量に制約があることは、もはや政策遂行の障害とならないため、新しい枠組みは以前に比べ持続可能性が高い。』
とか言ってるがまあこの辺は日銀の大本営発表をうのみにしているんだろうなあとは思う。
『また、日本国債利回りに目標を設定することで、日本銀行は、経済や金融機関に対する金融政策の効果を予測、管理しやすくなるであろう。』
その割には効果がいやなんでもないです。
・・・・・という中途半端な所なのですが、さっきの計数ネタで時間を使ってしまいましたので本日はここで勘弁させていただきたく存じます。
2017/10/04
お題「20年0.6%の壁(て程の物でもないが)はどうなるでしょうかね/物価関連統計が毎度の如く/逆さ絵講演ネタ(その2)」
スペイン語はよー分からんが何か大変そうな。
https://elpais.com/tag/referendum_autodeterminacion_cataluna_2017/a/
REFERENDUM 1 DE OCTUBRE
たぶん朝のうち見るとトップになっているフェリペ6世のスピーチは、
http://www.bbc.com/news/world-europe-41493014
Catalan referendum: Vote illegal - Spain's King Felipe
だそうですが、カリスマ性のあった故先代ならともかく、当代が出てきてもカスティージャの国王が何をゆうとりやすわしらカタラン知らんがなという事になるような気がせんでもないのだが詳しい人教えてジェネラル。
○市場世間話メモ
うむ。
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1ME1AP
2017年10月3日 / 15:23 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発、長期金利0.075%に上昇
『 <15:18> 国債先物は反発、長期金利0.075%に上昇
長期国債先物は反発。前日の米債安を手掛かりに売りが先行し、10年債入札が弱めの結果になると、短期筋からの売り圧力が強まる場面があった。円安・株高も売りを誘った。ただ、終盤にかけてあすの長期ゾーンを対象にした日銀オペへの期待などから買い戻す動きが優勢となり、プラス圏に浮上した。』(上記URL先より)
ってか基本的に入札が弱そうという事だと思うのだが後場寄りから先物マイナス圏内でずーっと推移していたし、現物も(金曜の引けが強かった気もするが)甘で推移していたので確かに先物プラスだから反発は反発なのだが何と申しますか。というか「あすの長期ゾーンを対象にした日銀オペの期待」ってのも物は言いよう(以下自粛)。
『現物債は総じて軟化。弱めの入札結果を受け、長いゾーンを中心に利回りが上昇した。一方で、先物が切り返すと押し目買いも見られた。長期国債先物中心限月12月限の大引けは、前営業日比5銭高の150円23銭。一時150円08銭と日中取引ベースで7月26日以来の水準に下落する場面があった。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比0.5bp高い0.075%。一時0.080%と7月26日以来の水準に上昇した。』(上記URL先より)
つーことでしたが、20年カレントの0.600%の一歩手前で止まるという実にありがちな展開を示してくれまして、今日の輪番で日銀に捌けるのでしょうけれども、一方でこの展開だとそんなに投資家に捌けるのかという所(まあ10年に関しては投資家に捌けなくても月を通してしまえば日銀で捌けてしまいますけれども)ではありますのでさてどうなるのやら。
しかし入札は滑ってその後甘くなった筈なのですが引けにかけてちゃっかり戻すという割と芸術点の高めな展開で輪番を迎える辺り、10年ゾーンってのも投資家不在感が強いのかなあとか思ってしまう所ですが、まー物理的にこのゾーン日銀の買いが多いので(YCCで10年を目標にしているんだから仕方ないけど)シャーナイナイなのかねと思うのでした。
まーこの辺だと10年のどうのこうのよりも久々に見る20年カレントの0.6%(と言いましてもカレントの償還が伸びているので実は1か月前あたりと比較するのは若干インチキなのですがそれはさておき)の所でどういう動きになるのかという方が気になる所ではありまする。
○短観と基調的な物価関連
http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標
図表はこちら(データはエクセルのリンクが上記URL先にあるぞな)
http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
刈込平均値(前年比、%)
Apr-17 0.2
May-17 0.3
Jun-17 0.3
Jul-17 0.4
Aug-17 0.6
加重中央値(前年比、%)
Apr-17 0.0
May-17 0.0
Jun-17 0.0
Jul-17 0.0
Aug-17 0.1
まあ何ですな、今回は暫くの間梃子でも動かなかった加重中央値が久々に(旧基準の2015年11月以来)0.1%になったよ!というのがほほーとは思ったのですが、問題はこの後ここの数字ちゃんが上がってくれるかどうかでございまして、何せこの数字はエクセルの方を見ていただければ分かりますが、データの出ている2001年1月から連綿としてゼロ近辺(前半はややマイナス)で推移するという安定の数値でございまして、あたくしが見落としていなければこの17年間において0.2%というのが何回か出ている最高値という大変に素敵な数字になっておりますので、まあこれが上がって来るとそらもう期待が動いたというか山が動いたというかということで日銀ヒャッハーと喜ぶ展開になるのですが・・・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/bukka/2016/tkc1709.pdf
短観(「企業の物価見通し」の概要)―2017年9月―
1.販売価格の見通し(現在の水準と比較した変化率)
2.物価全般の見通し(前年比)
を見ましても全然上がっていない(辛うじて足元1年後の辺りでちと上がっているのもあるけれども総じてみれば横ばいだし、特に長期の予想の所が寧ろ微減になっているものもあるというテイタラク)というのが実にアカンがなというかですな、一昨日出た業況判断DIの方を見ると企業の業況感ゼッコーチョーにも程があるという大変に素晴らしい内容だというのに何だよこの価格設定スタンスおよび物価判断はと小一時間問い詰めたくなるような内容で、ここが強気化せんとどうにもこうにもという日銀涙目の展開なのでした。
・・・・・・と思ったのですが、よくよく考えてみますと2%の早期達成が今やどうでも良いという状況になっている(ただし公式には引っ込めていないというのがイカサマにも程があるのだが)のですから、企業の業況感が良くてそこらから文句が飛んでこないという状況にある分には日銀としてはオトボケしていれば良いので、まあ別に痛痒を感じていないのではないかという気もしますが、このような感じで「期待に働きかける」という政策パスが完全に空振りになってしまっている中で、純粋置物リフレ教団の立場から追加緩和を主張されたと思われる片岡大先生(なお教団トップの置物副総裁が転向した挙句に碌すっぽ表に出て来ない模様)による「インフレ期待に働きかけるような追加金融緩和政策と、その政策がどういうパスでインフレ期待に直接働きかけることができるのか」という物を月末にお出しいただけると思いますので楽しみでございますな!!!!!!
○逆さ絵おじさんの講演より(その2)
はいはい逆さ絵逆さ絵。
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/17-J-12.pdf
日本の金融政策に関する一考察
ベン・S・バーナンキ
・ということで逆さ絵のお話の続き
『以下では、3 つのことをお話ししたいと思う。第 1 に、いくつかの重要な経済指標が足もとの日本経済の好調さを示している事実を踏まえたうえでなお、日本銀行が
2%のインフレ目標の達成を追求し続けることが重要であることを再確認しておきたい。』
ほう。
『第 2 に、アベノミクスの第 1 の矢と位置付けられる、2013 年以降の日本の金融政策に関し概括的なお話をする。この点、多くの前向きな変化がみられているものの、黒田総裁のもと推し進められている非常に積極的な政策によってもなおインフレ目標を達せずにいる。インフレ目標の達成を難しくしている日本経済のいくつかの側面について議論したい。』
というような面を全然考慮しないで好き勝手言った挙句に置物リフレ教団がのさばってしまった訳でして、いまさら何を言ってるんだというか、所詮海外からの政策提言だの実情を知らない机上で考えた学者の政策提言などというのものはそんなものであって、そういうのを有り難がって「世界標準の政策」とかいうのってのは土台碌なもんじゃないという事ではあるのですが、どうせそういうインプリケーションは1万年経っても得られないんだろうなあというのがジャパンクオリティ。
『先行きを展望すると、世界経済からの後押しを考慮すれば、日本銀行が今後数年で目標に到達するために必要な行動は既にとられているのかもしれない。しかしながら、どこにもそうした保証はないし、不運な出来事によって、これまでの改善が反転してしまうこともありうる。本日のお話の最後の部分では、そうした不測の事態に陥った場合に、どのような政策オプションが残されているかについて考えてみたい。』
日本の金融市場とか金融システムとかの実務的側面に詳しくない癖にそういう事を言うとゆーのが相変わらずの大きなお世話で黙ってろこのハゲとは思うがはいはいそうですかということで。
つーわけでまずは『インフレ目標を追求し続けるべき論拠 』ですが・・・・・・・・
・結局糊代論か・・・・・・・・
『これまで述べてきたように、前向きの動きはみられるものの、消費者物価のコアコア指数(エネルギー価格と食料品価格を控除したベース)のインフレ率はゼロ近傍で推移しており、日本銀行が
2%のインフレ目標を達成するには、なおかなりの距離がある。』
はいそうですね。
『では、日本銀行は、勝利宣言をして、インフレ目標達成をあきらめるべきであろうか。』
この設問って置物リフレ教団系の方々とか、(バーナンキも要は教団代表の代表なので結局は同じ穴のムジナなのですが)ががほぼ必ず言い出すのですが、そもそもこの設問で二元論を持ち出すのが愚問である。
つまりですな、「勝利宣言をしながらも、今後も2%目標に向かって金融緩和を続けていくので俺たちの旅はまだ続く!黒田先生の次回作にご期待ください!」という戦法によって金融緩和政策の中身を組み替えて「緩和的政策だけれどもサステイナブルに緩和が継続できる政策への転換をする」という選択肢がある筈なのだが、何だか知らんがこういう風に全ツッパリみたいな話をするのが意味わからんとしか申し上げようがない。
『極めて大規模な取組みは、これ以上必要ないと議論する向きもいるかもしれない。日本経済は極めてゆっくりとしか成長していないが、それは主として長期的要因、とりわけ縮小する労働力人口や低い生産性上昇によるものであり、金融政策で解消できるわけではない。』
でもって何がタチ悪いかと言って、このウスラハゲは今の政策のプロコン比較を何もしないで「長期的に時間が掛かるが大規模緩和を続けるべき」とか抜かしている事であって、政策のプロコン比較をした上で、達成に時間が掛かるのであれば時間が掛かった時に副作用が早期に拡大することのないような政策をしないと行けない、という事になるという当たり前の話を無視しているのが他人事感満載のお話。
『実際、よく指摘されることであるが、近年における日本の 1 人当たり GDP 成長率は米国と比べてそれほど低いわけではない。日本では、失業率が近年における既往最低水準にあるなど、労働市場の需給が逼迫しており、働き盛り世代(prime-age
workers)の雇用者数=総人口比率(employment-population ratio)は73.3%と米国(68.7%)よりも高い
5。この成果は、2008 年の世界金融危機、2011 年の東日本大震災と津波(そしてその後の原子力発電所の停止)、そして中国が国内需要中心でサービス指向の成長モデルへの転換を模索するようになったことの波及効果などの桁違いの逆風の中で達成されたものである。もちろん、2014
年の消費税増税も成長に対するさらなる逆風であった。』
消費税増税の前に財政吹かしたんですけどね。
『ではなぜ、インフレ目標を追求し続ける必要があるのであろうか。より高いインフレ率、より高い名目金利、より高い名目
GDP 成長率の組み合わせは、日本の多大な財政負担を軽減するとの見方がある。』
で?
『簡便な手法であるが、2018年以降、日本のインフレ率と名目金利が 0%から
2%に上昇したと仮定し、既発の日本国債の将来の元本返済額の現在価値がどう変化するかを試算してみた
6(この際、短期国債やその他の政府保証債、将来のクーポンの支払いは考慮しない。これは、これらの要因を考慮したとしても結果にそれほどの差はでないと考えられるためである)。』
ほう。
『将来発行される日本国債のクーポンは、市場金利の上昇につれて上昇すると想定したため、高いインフレがもたらす唯一の財政面への恩恵は、現在の日本国債残高の実質価値を減少させることだけになる
7。この試算によれば、インフレ率と金利の 2%への上昇は、日本の債務のGDP
に対する実質的な価値を▲21%ポイントほど減少させることになる。これは小さくない数字であるが、現在の比率が
200%を超えていることを考えれば、たぶん状況を一変させることにはならないであろう
8。高インフレ率がもたらす財政への影響については、後ほど、またお話ししたい。』
こういう時に物価スライドで上がる他の政府支出に対して経済が成長して税収がどうのこうのとかいう計算ってどうなっているのか示して欲しいといつも思う。
『私は、インフレ目標の達成による一層重要な恩恵については、金融政策が景気後退ショックに対応する能力を取り戻すことにより、将来の経済の安定性を高めることにあると考えている。』
糊代論なのですが、これもよくよく考えれば妙な話で、金融政策で対応するのか財政政策で対応するのかというのは政策割当の問題と考えてしまえば、何も金融政策の糊代を作るために物価を上げる必要があるのかという話であって、それよりも長期成長力を引き上げながら財政発動余地を常に用意しておき、物価はそれほど高くなくて従って名目金利も低い状態に留まる、という方が良いのではないか、という議論も成り立つわけで、金融政策の発動余地の為に物価を人為的に上げるべきってのはよくよく考えると一考の余地があるのでないかというか中央銀行の金融政策部門が自分の存在意義を出すためのワガママなのではないかとねじ込んでしまえなくもない、と思うのだがどうでしょうかねえ。
『過去 20 年間、短期金利が実効下限制約近傍にあったことにより、この能力は制約されてきた。この制約がどれほど重要であるかを大まかに理解するため、日本について標準的なテイラー・ルールを推計してみた(Taylor
[1993])。』
まあ大体以下の推計はお察しの結果なので途中は飛ばす。
『こうした上方バイアスの可能性にもかかわらず、予測結果に基づけば、政策金利の実効下限制約がないもとで、世界的な大不況(Global
Great Recession)だけでなく、2000 年代初頭の日本の長く続いた景気後退期(2000
年 9 月〜2003 年 4 月)においても、コールレートが▲4%まで低下していた可能性を示している。Kiley
and Roberts [2017]が最近米国について示したように、政策金利が頻繁に実効下限制約に直面する場合、経済パフォーマンスは長期にわたって悪化しうる。これは下限制約が金融政策を制約するだけでなく、景気循環のもっとも脆弱な局面において、実質金利の下限が設備投資を阻害し、かつ借り手のバランスシートを圧迫するためである。実際、日本では
1995 年以降、実質金利はほとんど変動しておらず、通常期待される安定化機能を果たしていないと考えられる
12。インフレ目標が持続的に達成され、それにより名目金利が現在の水準から
2%ポイント上昇すれば、こうした問題を解決するとまではいかないものの、問題をかなりの程度軽減できるのではないかと思う。』
とか何とか言っている訳ですが、実質金利の構成要素の均衡成長率に関しても下がっていたと思う訳で、金融政策の緩和がどうのこうのだけではなかったようにも思えるのですが、まあ金融政策関連の学者だし中銀総裁だったから当たり前ちゃあ当たり前なのですが、金融政策の有効性に対して過大な評価を今でもしているのではないかという気はだいぶする。
『つまり、日本銀行が将来の経済的ショックに対応する能力を取り戻したいのであれば、インフレ目標の追求に積極的であり続けなければならない。』
という第一の結論になっているのですが、それはそれで分かるのだが、そうは言っても全然届きそうもないという状況で何をしますねんという話になる訳ですがなと思うが、それはお前ら考えろという事なんでしょうな。
#以下さらに続くが時間が無いので今日はここで勘弁
2017/10/03
お題「短観は良い内容のようですな/バーナンキ講演ネタである(その1)」
そう言えば昨日は今月のMPMを10/31-11/1とか申し上げましたが、それはFOMC(プレコンなし)の方でMPMは1日前でござりました。どんだけFOMCの日程を気にしているんだという所で(大汗)。
しかしまあ何ですな。
http://www.asahi.com/articles/ASKB15J60KB1UTFK00D.html
民進、公認巡り反発拡大 小池・前原氏へ不信頂点
2017年10月2日08時36分
『前原氏は、希望の党への事実上の合流方針を提案した9月28日の民進の両院議員総会では、「誰かを排除するということではない。もう一度政権交代、理想の社会の実現を一緒にやりたい」と訴えていた。』(上記URL先より)
偽メールの時もそうなんだが、この人どうも簡単に騙される甘さがあってろくなことをせんなあという印象がががががが(個人の感想です)。
案の定置物リフレ理論が机上の空論と分かったものの、机上の空論がベースになっているだけに余計な手枷足枷になっている日銀と政府の政策協定の紙だって元はと言えば前原経済財政相の時の代物なんで、まあ碌なものを残して行かない人だという印象ですな(個人の感想です)。
#というのは日付の通り公示前の駄文ですよいいですね!
しかしこれはさすがに色々と意味不明過ぎる。
http://www.asahi.com/articles/ASKB200YWKB1PTIL011.html
嘉田前滋賀知事、希望に公認断られる 無所属出馬へ
2017年10月2日12時09分
まあ公示まであと少しですが色々と見苦しいものが見物できそうですね!!!
○日銀短観は相変わらず結構な数字なので理屈の上ではそろそろ物価が上がる筈なのですが・・・・・・
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2016/tka1709.pdf
例によって例のごとくの私家版分析でおじゃる。
・先行きDIの達成度合い
(6月時点) (9月時点)
現状→9月予測 現状→12月予測
製造業大企業 +17→+15 +22→+19
製造業中堅企業 +12→+11 +17→+13
製造業中小企業 +7→+6 +10→+8
非製造業大企業 +23→+18 +23→+19
非製造業中堅企業 +18→+12 +19→+14
非製造業中小企業 +4→+7 +8→+4
でまあ前回、前々回ははこう書いたのですよ。。
「今回ですけどこれどう見ても良いでしょうと思う訳でして、「前回の見通し対比で上振れ」というのは大体強めの水準になってくると先行きが慎重になるので達成度上回ったぜというのはありがちなのですが、12月短観に引き続き現状判断DIの実績値が前回調査を上回っているというのもまあ強いですよねというお話。」(こいつが前々回3月短観時の駄文)
「今回は更に前回の先行きDIを全部において上振れている上に前回対比でも水準が上がっているし、中堅中小を中心に先行きDIの下げ方(基本的によほどの上向きモメンタムが強い時でもない限り、先行きDIって現状対比で弱く出る)が小さくなっているのが多い、とまあいいことずくめで、通常だったらこれで債券市場が盛大に反応しても良いんじゃないのと思ってしまうまな数字だと思うのですけどどうでしょうかね。
でまあ昨日も申しあげましたが、この「短観強いわ〜」って話って昨年の9月短観の所で「日銀も安心の展開」みたいな感じだったのから始まって12月以降ずーっとこれは強いわというのが3回連続となっているのですよ。でもってそうであるならば企業の所から前向きの循環メカニズムが働いて物価が上昇してウマーとなる筈がそっちは全然ならない、というのはどういう事やというお話でありまして、物価の方の見通しに関して本当に大丈夫なのか、というツッコミは飛んで来て然るべきというステージじゃないのかね、とか言いたくなります。」(こいつが前回6月短観時の駄文)
まあその後あっさり味で物価の先行き見通しが下がっている訳でして、そらそうよという感じではあります。
さて今回ですが、前回に引き続き先行き見通しDIを上回っていますし、そもそもDIの水準自体でも製造業が前回水準をやや多めに上回るという状況(非製造業は微増または横ばい)になっておりまして、今回の景気回復は非製造業がという話もありましたが、製造業までこのような状況という事ですから大変に結構な数字になっている訳で、需給ギャップもプラスに転じている(片岡審議委員に言わせるとそうではないのですが)という中で、逆に何で物価上昇が加速して来ないのかと小一時間問い詰めたいというようなヘッドラインになっていると思うの。
企業の収益にはなるけどそこから中々波及してこない、というような状態になっているのは理屈としてはどういう事であって、それを何とかするにはどうすれば良いのか、というお話になると思うのですが、とにかく異次元緩和で期待のチェンジというのは残念ながら不発だったので、それを更に緩和したら何とかというのも変な話なのですが、そうは言いましてもその辺りを認めてしまうと金融政策の存在意義を問われてしまいます(なお中央銀行の存在意義の方はバジョットの話まで戻って決済とLLRと発券があるので存在意義は十分にある)ので中々話が難しいですの。
・雇用判断DI(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)
(6月時点) (9月時点)
現状→9月予測 現状→12月予測
製造業大企業 ▲10→▲11 ▲11→▲12
製造業中堅企業 ▲17→▲20 ▲22→▲25
製造業中小企業 ▲17→▲24 ▲23→▲27
非製造業大企業 ▲21→▲23 ▲24→▲24
非製造業中堅企業 ▲31→▲34 ▲34→▲37
非製造業中小企業 ▲33→▲39 ▲37→▲42
前々回、前回はこう書きました。
「企業の業況感は更に改善していき(先行き見通しの落ち方も小さくなっている)、おまけに雇用人員判断はタイト化、という状況なのですから、この数字だけを見るともうちょっとホイホイと賃金が上がって然るべきだと思うのですがどうしてこうなったという感は更に高まるの巻ですが、もしや賃金を抑制しながらだから企業の業況がいや何でもありません。」(こいつが前々回3月短観時の駄文)
「昨日(7/4です)のニュースにもあるように、何故かここにきて人手不足が先行きの企業活動に悪影響かもというような大本営発表が出てくるというのは、つまりは企業サイドが労働に払うにしてもテンポラリーな払い方はするけれども常勤の賃金を上げるという感じではない、というのが相変わらずということを意味しているのかね〜とかじっと手を見ながら思うのでありました、トホホ。」(こいつが前回6月短観時の駄文)
いやこれだけ人足りない言ってるのに賃金って何でホイホイと上がらないのかよと小一時間問い詰めたい訳ですが、「業況は良いです」「人が足りません」とか言っているものの、だからと言ってそこからバンバン待遇上げようとかゆー話になってこないというのが実に不思議ちゃんな世の中です。そんな中で社会保障負担とかしらっと上がってきているので、実質可処分所得とか上がっている気が全然しないのが困りもので、このサイクルどこを動かすと前向きに回りだすんでしょうかねえ・・・・・・・・・・
・販売価格判断(「上昇」-「下落」)
(6月時点) (9月時点)
現状→9月予測 現状→12月予測
製造業大企業 ▲1→▲2 +0→▲2
製造業中小企業 ▲4→▲3 ▲2→▲1
非製造業大企業 +4→+2 +3→+1
非製造業中小企業 ▲3→▲2 ▲3→▲2
仕入価格判断(「上昇」-「下落」)
(6月時点) (9月時点)
現状→9月予測 現状→12月予測
製造業大企業 +13→+13 +14→+13
製造業中小企業 +26→+31 +28→+31
非製造業大企業 +12→+14 +12→+15
非製造業中小企業 +18→+23 +19→+24
前回は「今回に関してはあまり著変が無くて傾向が無い感じですな。」(前回の駄文)だったので前々回のを入れて置きますと、
「でまあ今回も前回と同様の傾向になっているって感じで、販売価格判断が上がっている以上に仕入れ価格判断が上がっているという感じですが、ただまあ「前回見通し対比」で見た場合には大企業製造業以外では前回見通しと今回の判断の差分が全部上振れといっても販売と仕入でそれほど上振れ度合いに差がないので、ある意味見通し通り(見通しよりも仕入も販売も上振れたけど同じようなぶれ方なのでマージン的には計画対比無問題)という感じになっておりますが、製造業大企業はマージン減ってやがるわという所ですか。」(前々回3月短観時の駄文)
で、ああ今回なのですが、それほど動いた感じではなくて、仕入価格判断も販売価格判断も前回の数値と同様に推移しておりまして、そのような判断が続いている結果として足元の物価状況的に特段の上昇トレンドが見えませんよね、という形ですので、日銀の目標達成云々というのは全く別にして考えると、企業業績も好調を維持しながら物価についてもマイナスではない程度に安定しているという事なのですから、これはこれで結構な均衡なのではないか、と言いたくなってしまうような状態でして、そもそも2%物価目標を性急に達成すれば全ては上手く行くし、そんなのマネタリーベースを増やせば簡単に行くのにやらない白川日銀は無能とか言っていた置物一派はこの状況を何と解釈するのでしょうかねえ。
ま、現状が本当に均衡なのかというとそれはそれで議論の余地が滅茶苦茶あるので別に現状固定が良いと自信を持って言うような事でもないとは思いますけど。
・需給判断DI
国内需給判断(「需要超過」-「供給超過」なのでプラスの方が強い)
(6月時点) (9月時点)
現状→9月予測 現状→12月予測
製造業大企業 ▲6→▲6 ▲5→▲6
製造業中小企業 ▲18→▲19 ▲16→▲17
海外需給判断(「需要超過」-「供給超過」なのでプラスの方が強い)
(6月時点) (9月時点)
現状→9月予測 現状→12月予測
製造業大企業 ▲2→▲1 +0→+0
製造業中小企業 ▲12→▲11 ▲8→▲4
ここの数字は業況判断対比絶対水準が安定の低さなのですが、まあ今回はその低い中でも何気に改善していて、特に海外が改善してるジャンとかなりますと、やはりこの企業部門の状況がどうして前向き循環メカニズムに繋がらないのか甚だ理解に苦しむ、という結論になってしまいますなこりゃ。
・金融商品取引業ェ・・・・・・・・・・・
金融商品取引業の業況判断に全オレが泣いた。
(6月時点) (9月時点)
現状→9月予測 現状→12月予測
製造業大企業 +23→+23 +10→+13
この好調な株価というのに業況判断の傾向が悪化と示されています(プラスはプラスだからまあ良いのは良いけどさ)が、そらまあこれだけウゴカンチ会長やられるわ投信販売とかで以下割愛。
○逆さ絵おじさんの懺悔録キタコレということで
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/17-J-12.pdf
日本の金融政策に関する一考察
ベン・S・バーナンキ
Discussion Paper No. 2017-J-12
手抜きマンなので英文のほうではなく日本語訳をこの時期にあえて投下してきた金研のお洒落なタイミング選択と共に鑑賞したいと思います。
まずは『はじめに 』から。
『金融政策の教訓と課題に関するコンファランスでの講演にご招待頂いたことに感謝する。日本銀行がしばしば先頭に立ってきた金融政策の革新と実験(innovation
and experiment)の時代を経た今日、われわれが得た教訓と学ぶべき課題について、一歩離れて整理することはまさに時宜を得ているように思う。』
本文にもありますが、
『本稿は 2017 年 5 月 24〜25 日に東京で開催された日本銀行金融研究所主催、2017
年国際コンファランス「金融政策:教訓と課題」において行われた前川講演の英文原稿をもとに、日本銀行金融研究所が著者の同意を得て翻訳したものである(文責:日本銀行金融研究所)。』
ということですが・・・・・・・・・
『個人的にも、今振り返って整理を行うことはよい機会であると考えている。これからお話しするとおり、私は、長年、学者と金融政策当局者双方の立場から、日本の金融政策について考え、論文を執筆してきた。これら一連の研究の出発点となるのは、日本銀行の金融政策の枠組みとインフレ目標に関するケース・スタディを行った
1992 年のリック・ミシュキンとの共著論文である 1。』
キタコレ。
『私自身の日本に関する著作の多くは、日本銀行が直面したデフレーションと短期金利の実効下限制約(effective
lower bound)という日本特有の――少なくとも当初は特有であった――課題に触発されたものといえる。研究者としては、そうした課題に大いに知的好奇心をそそられたものである。もちろん、これらの課題は抽象的な問題ではなくなってきており、2002
年に自分自身が連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board: FRB)に入った後、米国も同じような問題に直面していることを意識するようになった。実際、2003
年のデフレの恐怖(deflation scare)に始まり、2008 年終わりには米国も実効下限制約に直面することとなった。』
ですな。
『本日の講演を準備するに当たって、私自身の日本に関する論文と講演を振り返ってみた。私の講演は特に解説的になる傾向があり、このため、自分自身の見解に加え、その時点における専門家のコンセンサス――すなわち、ポール・クルーグマン(Krugman
[1998])、マイケル・ウッドフォードやガウティ・エガートソン(Eggertsson
and Woodford [2003])、ラルス・スベンソン(Svensson[2003])などの学者の考え――を取り入れようと努めていた。』
解説的というよりか煽り成分が入る傾向というのが正しい気もするが。
『改めて振り返ると、世界金融危機(Global Financial Crisis)以前の 10 年間に私が日本について書いたことの多くは、今でも相応の妥当性を維持していると思う。例えば、2002
年のデフレーションについての講演とそれに続く 2004 年のビンセント・ラインハートとの共著論文およびラインハートとブライアン・サックとの共著論文において、短期金利がゼロ近傍にあると中央銀行は「弾切れ」になってしまうという、当時一部で信憑性があると考えられていた考えを否定した。むしろ、私は短期金利がゼロに到達した後でも、中央銀行がとりうる追加的な金融緩和手段は複数あると主張し、米国と日本でリフレを発生させようとする取組みとして、その後実際に用いられた多くの政策手段について、共著者とともに検討・評価を行っていた。』
うむ。
『その中には(経済状況に条件付けたものと条件付けない双方の)フォワード・ガイダンス、大規模資産買入れ、中央銀行による保有資産の構成変化、低利での中央銀行貸出に基づく信用プログラム、そして現在、日本銀行がイールドカーブ・コントロールと呼ぶ手段までも含まれていた(一方で、マイナス金利政策については予想していなかった)2。』
ということですが、既に過去の日銀はフォワードガイダンスも資産買入もやっていたのですけれども、何でバーナンキ様が日銀をケチョンケチョンにけなしているという話になっているかと言えば、ケチャップがどうのこうのみたいな煽り文句が一々入るからであって、ハッタリとかケレン成分が多いのを綺麗に言うと「解説的」ということだという言葉の良い使い方を覚えました。
『他の論文では、中央銀行の資産購入プログラムは、日本銀行のかつての量的緩和のように短期国債に集中するのではなく、長期資産に焦点を当てるべきと論じた
3。この点について、私は、Reifschneider and Williams [2000]と関連付け、デフレ・リスクに直面した場合には、政策手段は出し惜しみせず、「強い決意で機先を制して(decisively
and preemptively)」行動することが重要であると指摘した(Bernanke [2002])。』
ふーん。
『また、インフレ目標を高めに設定することでデフレへの十分なバッファーを確保する必要があることを強調したほか、』
実際にFRB議長になってからはその議論を見事に封印しましたけどねえ・・・・・・・
『名目金利が実効下限制約に服してしまった後は、インフレ率が目標水準を下回った分の補填のために、目標水準を一時的にオーバーシュートさせることは正当化できると述べた
4。』
これについてもそう。ちなみにプライスレベルターゲットに関してはかつてイエレンさんも(SF連銀総裁の時ですが)ケチョンケチョンにしていました。
『私はたびたび、金融政策は財政政策や構造政策によって補完されるべきとの認識を示してきたし、最後の貸し手機能、金融規制改革、銀行の資本増強を通じた金融安定性を確保することが極めて重要であることにも言及してきた。』
何故か日本では置物リフレ教団により物価目標達成したら何もかも上手く行くという話になっていたような気がしますが。
『その一方で、私がすべて正しかったわけではないことも確かである。』
キタコレ!!!!
『特に、初期の著作において、私は、強い決意を持った中央銀行であればデフレを容易に克服できるという点に、過度に楽観的かつ確信的であったし、自分以外の考えに対する寛容さが足りなかった。』
それを真に受けた置物リフレ教団というのがいましてなあ・・・・・・・・・
『例えば、まだ学者であった頃の 2000 年の論文では、日本銀行を自己機能不全(self-induced
paralysis)に陥っており、ルーズベルト的決意(Rooseveltian resolve)を十分に示せていないと批判した。』
『また、1933 年にとられたと考えられているフランクリン・ルーズベルト大統領の非伝統的な戦略(unorthodox
strategies)や、同時期にまさに日本において高橋是清蔵相が行った政策と同じように、より積極的な政策をとりさえすれば、必ずよりよい結果をもたらすと断言していた。』
ということですが・・・・・・
『しかしながら、その後、自分自身が FRB 議長としての重責と不確実性に直面した時には、それまでの自分の一部の論調を後悔した。』
ニヤニヤ。
『中央銀行は、金利が実効下限制約に服してもなお有効な手段を持っていることは確かであるが、米国においても日本においても、私がそれまで述べていた以上に問題は扱いづらいものであった。特に、初期の著作においては、金融政策が単独で達成できることと、財政政策との協調がある程度必要なこととをはっきりと区別していなかった。』
だったらちゃんと説明しろ。
『2011 年の記者会見において、日本の記者からの質問に対して私は、「10 年前に比べて中央銀行家に対して、少しばかり同情的になった」と答えている。』
その時に日本銀行に対して謝罪しないといけないとかきちんと説明しないから日本の国債市場はこんな事になったんだぞいい加減にしろこのハゲ。
『デフレを終わらせ実効下限制約から抜け出すことが、私がかつて想定していたよりもなぜ難しいのかということは、今日お話しするテーマの
1 つである。』
とまあそういう訳でここから先が本論になるのですが、時間の都合上以下明日以降に続くという事で。
2017/10/02
お題「10月買入は順当に現状維持/MPM主な意見を鑑賞」
カタランェ・・・・・・・・・
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171002/k10011164621000.html
スペイン カタルーニャ州独立問う住民投票 開票始まる
10月2日 5時25分
という中、ジャパンではこのどこの政治勢力にも節操なく出てくるのに何故か無事に生きている謎の人のお名前が。
http://www.asahi.com/articles/ASK9Y6VX3K9YUTIL04T.html
小池氏と維新、竹中平蔵氏が仲介 橋下氏も「密約を」
2017年10月1日08時05分
さて下期スタートですね!
○10月の買入予定はまず順当
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170929c.pdf
前回のレンジ、カッコ内は直近の買入オファー額
短期:500〜1500(1000億円)
中期1-3年:2000〜3000(2800億円)
中期3-5年:2500〜3500(3300億円)
長期:3000〜5000(4100億円)
超長期10-25年:1500〜2500(2000億円)
超長期25-40年:500〜1500(1000億円)
物国:250(250億円)
変国:1000(1000億円)
今回のレンジ、カッコ内以下同文
短期:500〜1500(1000億円)
中期1-3年:2000〜3000(2800億円)
中期3-5年:2500〜3500(3000億円)
長期:3000〜5000(4100億円)
超長期10-25年:1500〜2500(2000億円)
超長期25-40年:500〜1500(1000億円)
物国:250(250億円)
変国:1000(9月は買入無し、8月は1000億円)
ということでこちらは順当に変更なし。まあレンジ内で推移していて、金利が下がった時にちょっとだけ中期減らせましたよねという位ですが、とにかくここもとはウゴカンチ会長で問題なしという事ですな。
短国買入に関しては、
『3.国庫短期証券の買入れ
金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、10月末の残高を23〜25兆円程度とすることをめどとしつつ、金融市場に対する影響を考慮しながら1回当たりのオファー金額を決定する。』
とありまして、先月発表のレンジ対比で1兆円減額となっていますが、元々9月は償還が少なくて、月の頭の時点では需給が無茶苦茶締まっていたので短国買入のオファーを1000億円という額まで抑えておいて、その後需給が緩和して金利が▲10bpをうかがう中では買入を増やして、という調整をした結果、3兆円程度の償還に対して2.85兆円の買入を実施しまして、その結果9月末の買入残高はたぶん(8月末が25.7兆円なので)25.5兆円とかの辺りにいると思います。
まー今月は償還が多いのでそこそこ買っても残高は落ちるという感じになると思いますので、基本的には残高落とし気味になってくると思います。
○決定会合主な意見だが片岡さんらしき意見が大変にアレなものを感じるのだが
佐藤さんと木内さんロスとなってしまいました今回の決定会合主な意見ですが、主な意見の見どころと言えば当然ながら佐藤さんと木内さんの見解で、あと必ず意味不明の怪電波や意味不明の藁人形論法を繰り出してくる方がいまして、誰がこのようなものを出すんでしょうかねえ(棒読み)というのもありますけど。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2017/opi170921.pdf
・別にどうでもよいのだがナンジャソラという見解が
経済の話のあたりは正直どうでも良いのだが、読んでいて???だったのはこれ。
『・企業の資産に占める現預金保有額の割合は、歴史的にみて、企業が最適と考える水準に近づいていると考えられる。したがって今後は、内部留保のうち、設備投資や研究開発費に振り向けられる割合が次第に増えていく。』
「歴史的に見て」というのが分からん。元々企業が中々投資しなくて前向きの循環メカニズムが思ったように回らないというのが政策の誤算の筈なのですから、そう考えると「歴史的に見てこうだからこの先こうなるに違いない」という論理で筋道を立てていくのは、定性的には意味があっても、達成までの時間が出来るだけ早期とか言っているのであれば、そこは定量の問題になる訳ですし、その定量問題の所が今までと違う、となっているから目標達成に時間が掛かっているということなのではないでしょうかねえ。
その点では、やはり同じ中にある
『・家計部門では、将来の家計負担の高まりが見通される状況下、現在の所得増加が持続的な所得増加期待につながりにくい。企業部門では、設備稼働率や期待成長率が十分に高まっていない。こうした点から、国内民需の増勢テンポは緩やかなものにとどまる可能性が高い。』
の方がどう見ても普通。
・どう見てもコストプッシュ狙いです本当にありがとうございました
物価の辺り。
『・ 企業はいずれ、省力化投資やビジネス・プロセスの見直しだけでは吸収しきれないコストの上昇分を、価格に反映させることが必要になってくると考えている。
・ 飲食など労働集約的な業種を中心に、値上げに向けた取り組みや、それに追随する動きが、少しずつであるが、着実に拡がってきている。
・ 足もとの企業動向をみると、都心の不動産賃料や宅配便の運賃などで、値上げも相応に行われるようになってきている。』
都心の不動産賃料というのに引っ掛かるのですがまあそれは兎も角として、この値上げが賃金上昇でカバーできなければ前回の二の舞になりますわな・・・・・・
・達成への時間の議論はすっかり無かった事になっていますな
『U.金融政策運営に関する意見』の所位しか見るところは無い。
『・2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは、引き続き、維持されている。こうした好ましい動きをできるだけ長く持続させるよう、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な緩和を粘り強く進め、経済・物価の改善をサポートしていくことが適当と考える。
・ 本行の政策に対する理解を得るよう努めつつ、息長く経済の好循環を支えて脱デフレの完遂に資するべく、現在の金融政策を継続するべきである。』
とまあそんな感じで、完全に「2年をめどに出来るだけ早期に」というのが無くなっておりますが、いや別に無くしても良いのですけれども、だったらそこはもっときちんと整理しないと行けない訳で、競技が長距離走に変わったのにスプリンターみたいな走りをしていたら途中で倒れてしまうので、きちんと長距離になったという話をしないといけないんじゃなですかねえ。黒田さんでは無理だけど。
・片岡さんの意見が
という主流派に反対した片岡さんの反対意見はどこにあると思って探してみたのですが・・・・・・・
『・現在の金融緩和政策を粘り強く続けることが、時間はかかるものの、2%の「物価安定の目標」を達成するうえで最善である。ただし、地政学的リスクがさらに高まるような場合には、デフレマインドの復活を防止するために、必要な調整を行う可能性があることも考えておく必要がある。』
追加緩和チックな話をしているのは最初がこの意見なのですが、この意見は「現状維持が適切」でしかも「時間が掛かる」と思いっきり言ってしまっているので、片岡さんではない。
でもって緩和しろというのはもう一つあって、
『・2019 年 10 月に消費税の増税が予定されている中、「物価安定の目標」の達成・安定化に向けて、追加金融緩和によって総需要を一段と刺激することが必要である。』
・・・・・・・・・・えーっとすいません、これですと政策によって何をどうしたいのかのイメージすら掴めない訳で、これそのまま読むと、単に「行ってないしこの先消費増税があるから緩和が足りない」というだけの話をして、じゃあ対案はというとそれは無い、というお粗末極まりない反対をしているのでした。
いやね、一応好意的に解釈して「イメージとしてはあるのだが具体的な手段に落とし込むのに検討時間が掛かるから今回は反対した」というのだと思うのですが、これで10月決定会合(10/31-11/1)の所できちんとした成案を出してくれないと、さすがにちょっとナンジャソラという話になる訳ですな。いやあの日本銀行金融政策委員会政策委員ってのは個人のキャリアパスの為にある職務じゃないんでちゃんと出すものは出して頂きたいと思う次第でして、今月(というか来月)に期待したいと思います。
・藁人形ボクサーの面目躍如
という中、まーたいつもの藁人形ボクサーであるところのリングネームジンバブエ原田さんと思われる見解が登場。
コピペすると何故か謎のスペースが入るんですよね(こちらで編集済)。
『・2%のインフレ目標にコミットする一つの理由は、景気の実勢や構造失業率を正確に把握することはできないことにある。』
これはまあそうで、そういう中でメルクマールとして分かりやすいし国民生活にも直結するからインフレーションターゲットにしている、というのはそらそうよという話なのですが、ここからお得意の藁人形論法が始まる。
『構造失業率を 3.5%とする推計値を前提として金融緩和を止めていたら、現在の
2.8%の失業率は実現していない。』
キワモノは別にして「構造失業率が3.5%なのでもう金融緩和を止めろ」とかいう論者がまともな論者の中に存在しておりませんし、市場でそんな理由で緩和を止めろをいう話をするのは居ないのですが、相変わらずこの人は勝手に脳内で変な反対論者をでっち上げて、その反対論者を批判することによって自分の主張の正当化をする、という詭弁のガイドラインの典型である藁人形論法がお好きですな。
『直接物価を目標にしたことにより、より低い失業率や賃金の上昇が実現し、バブルにもなっていない。人手不足から、企業はビジネス・プロセスの改善や省力化投資にも取り組んでいる。
』
???????何を言ってるのか分からないのですが、だいたいからして物価目標を達成しない段階なのに失業率が下がったと言って威張られてもそれはただの「道半ば」ですし、物価が上がらん中で「より低い失業率」なのは兼ねてよりジンバブエ師匠が主張しているような「現在の日本での構造失業率が現状よりももっと低い水準にある」ということであって物価を目標にした効果でもなんでもないんですが。
あとバブルに関してはクレジット市場のミスプライスとか色々ありますがねえと思いますし、大体からしてこのおじちゃん1980年代後半の日本での資産バブルの時に資産価格の急騰に対して物価が安定しているって放置プレイした結果大変なことになったという実例があるのに。「直接物価を目標にしたことにより〜バブルにもなっていない」とか言い切るのはもしかして物忘れでもされているのでしょうかと小一時間問い詰めたい。
あと人手不足は全部が全部金融政策の効果じゃないでしょう。
・時間が掛かるとか副作用とか政策の持続性という見解がしらっと複数あるのだ
という藁人形拳闘というしょうも無いものの後に目の保養にこんなものを。
『・現状の物価水準を踏まえると、「物価安定の目標」の達成には相応の時間がかかる可能性があり、時間がかかるほど外部環境の不確実性も高まる。今後、政策の持続性と目標達成にかかる時間の制約の双方を意識する必要がある。』
『・長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入から1年が経過しており、金融仲介機能については、今後、これまで以上に丁寧に点検する必要があると感じている。
』
『・現在の金融政策が出口に向かう局面が来た際に、金融機関の経営体力やリスクヘッジ手段が十分残されているよう、引き続き市場参加者と対話しつつ、点検を継続していくことが重要である。』
(;∀;)イイシテキダナー
○おお肝心のこれがががが
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/17-J-12.pdf
日本の金融政策に関する一考察
ベン・S・バーナンキ
Discussion Paper No. 2017-J-12
元の英文は以前でていたのですが、このタイミングでこれが出るというのが何とも味わいが・・・・・・・・・
#時間の関係で今日はパスですすいません