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(各日付の最初にラベルを「170801」というような形式でつけていますので「URL+#日付(6桁表示)」で該当日の駄文に直リンできます)


2017/08/31

お題「輪番と米国12月利上げに関しての雑感メモなどで恐縮至極」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170830/k10011118841000.html
キム委員長「米の言動引き続き注視」 日米を強くけん制
8月30日 12時02分

『キム委員長は「アメリカの言動を引き続き注視する」と述べるとともに、「日本が慌てふためく作戦で、積年の恨みを晴らした」として日米両国を強くけん制しました。』(上記URL先より)

52秒位から最後(1分1秒)に掛けての画像チョイス・・・・・・・・・


○輪番は動かしてきませんでしたな&来月の予定はどうなるのやら

・長期輪番の減額は行われませんでしたが

毎日お前は輪番しかネタが無いのかと言われますと輪番しかネタが無いのですが。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170830.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,100 2017年9月1日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2017年9月1日
国債買入(残存期間25年超) 1,000 2017年9月1日
国債買入(物価連動債) 250 2017年9月1日

超長期はここもと20年カレントの0.54%から先が無暗矢鱈と重そうにしているのでこちらは同額なのは順当なのですが、10年カレントが0%になってさてどうなんでしょ、というのがありましたので減額しないですかーという事で。

ただまあ昨日に関しては寄りから先物とか売られて(そういや先物独歩高とか昨日駄文で申し上げていたらいきなり独歩安になってフラグ建築スキルを示してしまいましたが、汗)10年も引け甘で始まり、マイナス金利水準に突撃した訳でもない、という事実もあったので減額しなかったのかな??とかいうのもありますけど・・・・・

まー何ですな、不思議っつーか何つーかだったのは、昨日に関しては輪番オファーして同額で来たら前場引けに掛けて(減額した訳でもないのに)気配甘くなっていったことでございまして、月曜の中期輪番減額せずからの中期輪番封鎖を見た後だけに、もしかして需給が悪いから減額を見送っているとかそういう事なのかなとか妄想を逞しくしたりもしたんですよ。

いやね、以前の短国買入(MB目標あった頃)がその傾向あったのですが、MB目標の着地に対して帳尻オペ打たないと行けないのだが、その一方で市場の需給をまる無視して買入オファーを入れて短国市場がぶっ飛んでしまうとそれはそれでマズイし札割れとかしたら更にマズイ、という状況になっていた時って、当然ながら需給動向というか応札可能な札の状況について入念に市場動向を確認してオペを打っていたと思われるんですよね。でもってそういう状況だから、需給がタイトだな〜っていう時に短国買入が思いっきり減額されて入ってくると「いやーそんなに需給タイトなのか〜」となって買入を減らしているのに更に短国が強くなるとか、逆だったりすると「そんなに買入の札があるのかよポジション重いじゃん」となって更に短国が甘くなるとか、中々味わいの深い短国市場の動きがみられて大変に滋味があったのですけれども、もしかして遂に輪番に関しても札の動向を読みながらオファー調整をしたりしなかったりという事になっているのか、とビビった(=短国は市場参加者というか大口ポジションの頭数が限定的なので札が読みやすいのですが長期国債の場合はそもそも日銀オペ先の外側でもバカスカ消化されているので短国のようには札読みがしにくい筈なので、という事です)のですけれども・・・・・・・・・・

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170830.htm

国債買入(残存期間5年超10年以下) 11,397 4,103 0.007 0.011 13.2
国債買入(残存期間10年超25年以下) 4,717 2,008 0.011 0.013 69.3
国債買入(残存期間25年超) 2,437 1,002 0.011 0.014 18.3
国債買入(物価連動債) 1,640 251 -0.240 -0.286 16.0

前場引けの所で20年カレントで1.5甘出合い(多分20年についてはカレント近辺以外はそこまで甘くなかったと思う)とかやっていて、それに対して10-25の輪番が1.3甘平均の1.1甘足切りなので、まあ普通に実勢水準から微妙に確り気味くらいの結果となっていまして、5-10も10年カレント前場引けが1甘で先物が13銭安だったのでこれまた同様の結果。

つーことで後場はちゃっかり相場戻った訳ですが、さすがに1.5甘前場でやっていた20年カレントが引けまで戻っているのはナンジャソラという感じで、上値が重いんだか押し目買い意欲が強いんだかワケワカラン相場ではありますなと。まーたぶん上がれば最近買ったものを中心に利食いというか益出しが来て、でも0.5台後半に突っ込んでくるとそこの水準を叩いてまで売る人もあまり居ない、とか何とか狭い所でやっているんですかねえ、よー知らんけど。


念のためロイターさんを貼っておく(毎度すいません)。
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1LG2KQ
Markets | 2017年 08月 30日 15:25 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落、長期金利変わらず0%

『 <15:14> 国債先物は反落、長期金利変わらず0%

長期国債先物は反落。リスク回避の流れに一服感が出たことを受けて売りが優勢になった。現物債もさえない展開。前日に指標10年347回債が4月19日以来となる0%を付けたことで、一部に高値警戒感が浮上していた。ただ、長期・超長期を対象にした日銀オペ結果で、応札倍率が3本とも2倍台と低水準になったことから、あらためて需給の引き締まりが意識された。オペ結果確認後、国債先物に短期筋からの買い戻し、長期・超長期債には国内銀勢を主体にした押し目買いが優勢になった。長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比11銭安の151円15銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比横ばいの0%。』(上記URL先より)

昨日の朝の駄文で独歩高とか申し上げた長期国債先物ェ・・・・・・・・・・・


・結局の所今日の「9月の予定」はレンジ全部据え置きなのではないかという読み筋

とまあそういう事でただの市場メモになってしまいましたが(大汗)、10年輪番の減額は行われずとゆー形で決着しましたけれども、後は本日公表予定の9月輪番予定で10年のレンジをどういう風に示してくるか、現在のレンジが「3500〜5500億円程度」となっていて、実際の買入額が4100億円になっているので、レンジの中で5-10は中心よりも少ない額の買入になっているのですがレンジを3000-5000とかにシフトして敢えてメッセージを出してくるかですけど、まあ今週(10年は兎も角としまして中期に関しては)減額してくるという方がコンセンサスに近かったと思うのですがそれを外して減額しなかった、という実績を鑑みると、10年の買入額についてレンジの下ギリギリになるまではあと600億(だから月に直せば3600億円という結構な額)のマージンがあるので、ここでメッセージ性のある「10年ゾーンを含む輪番オペのレンジを下方修正」というのはしてこないと考える方が順当なようにも思えます。

あと中期に関してはたぶん減額余地があるのですが、こちらは足元で1-3が「2000〜3000億円程度」の所で2800億円、3-5が「2500〜3500億円程度」の所で3300億円の買入と、買入額がレンジの中心より多い状態になっているので、来月減額するにしても(というか減らすでしょ、と思うのだが)レンジの中心にするだけでも300億ずつ減額できるのでレンジは動かさないでしょうな。なお超長期を減額したら結構ビビリますが現状上値重そうにしている中(これがまた絶対水準が甘くなってどこかの閾値に来ると値頃衆押し目買い軍団が到来して急に需給が良くなるのだが)で減額とか刺激的にも程があるので同額継続でしょうな。

とか何とかそんな感じで妄想を逞しくしながら17時を待ちたいと思いますが、あくまでも個人の感想ですので一つその辺りは宜しくお願い申し上げます。

あと短国に関しては足もとは需給がやたら良いのですがどうするのでしょうかね(3月は2月末から月初は需給が死ぬほど良かったのですがその後いきなりヘロヘロになるという謎展開でしたけどFEDの利上げ地均しからの利上げとぶつかっているので今回に引き直すのもちょっと違和感あるし)。


○正直12月利上げの所は不確定要素が多すぎるので今から決め打ちできんと思う

という感想を持ったのはこのヘッドライン。

http://jp.reuters.com/article/usa-moneymarkets-after-adp-idJPKCN1BA2B4
Business | 2017年 08月 31日 02:14 JST
12月米利上げ観測強まる、好調なADP指標受け=短期先物

『[ニューヨーク 30日 ロイター] - 8月の米ADP民間雇用者数が予想を上回ったことを受け、30日の米短期金利先物相場で、12月利上げ観測が強まった。CMEグループのフェドウォッチによると、米東部夏時間午前9時33分(日本時間午後10時33分)時点で、連邦準備理事会(FRB)が12月12−13日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを行うと市場関係者が織り込む確率は42%と、ADP指標公表直前の32%から上昇した。』(上記URL先より)

まあ何ですな、9月はさすがにここまでのFED高官の発言からすると利上げ無いじゃろ(利上げになる方向の不測の事態というのも考えにくい)と思われる所ですが、じゃあ次いつやるのと言えば(やるのであれば)SEPと会見があって、ついでに輪番投票連銀が交代する前の12月じゃろとなるので、そこまでの読み筋は一致でしょ。

でもって問題は12月上げるか上げないか、ということなのですが、確かに物価の上がり方が弱いというようなお話はあるのですが、その一方で金融不均衡に関してフィッシャー副議長が延々と指摘したりというのもあって、どこぞの中央銀行じゃないですけど「基調は確りしている」「モメンタムは維持されている」みたいな感じだとカジュアルに12月利上げするんじゃネーノというのがアタクシの個人的な感想(個人の感想です^^)なのよ。

でも、12月利上げしますって話はまあ元より「年内あと1回」みたいな話はあるけれども、そこまで大声で話をしていないってえのは、一つには12月なのですから今から決め打ちして途中で情勢変わったら赤っ恥になるので何も今から決め打ちすることは無い、という事でしょうし、3月の利上げの時を思い出せば、2月の終わりから3月頭に掛けて物凄い勢いでFED高官が利上げしまっせ発言をしてもうかなり強引に地均しをしまくって、実際の利上げの直前には「織り込み済みでござる」となって、実際に利上げしたら「利上げ織り込み済みだしSEP見たらハト派じゃんヒャッハー」となって利上げしたのに10年10bp金利低下とかお洒落な事をやっていた、という豪快な実績がある訳で、恐らくは12月に利上げするにしても、地均しは12月に入ってやれば十分、という経験則になっているんじゃないかなーと思いますし、もちろんその前に経済指標が強くなってきて、市場の方が織り込んでくれれば別に地均しすることも無い、というお話だと思うので、威勢の良い話が出るにしてもかなり先のことになると思うの。

それから、9月にバランスシートの縮小を決定して10月から開始する方もこれまたほぼダンディールに近いように思えますけれども、まーグラデュアルだの影響は小さいだろうだの言ってますけれども、そういう情報発信をFED高官が揃って行うという背景には、実際に縮小始めた時に実は金利が跳ねる可能性がある点を懸念してるのではなかろうか、と勝手にアタクシが推測しているのですが、それが利上げに関してあまり威勢の良い発言が出ない二つ目の理由にしているのです。まあバランスシート縮小の効果が意外に大きかった場合のヘッジみたいな感じで。

でもって恐らく市場ってあまりバランスシート縮小の影響を気にしていないように見えるので、そこもリスクとして見ているから大人しい発言も多くなるのかなあとか、まあ妄想ですけどそんな感じで。

・・・・・・・・だからどうしたと言われると困りますが、まあそんな読み筋で考えているので、米国長期債に関してFED方面からタカ的なタマが急に飛んできてあばばばばーというのは目先〜10月のバランスシート縮小開始の辺りまでは考慮から外しても問題ないかなーとか思っている、という個人の意見ですの世界なのですが、当然ながら経済指標が良くて物価上がるじゃんこりゃ12月利上げだしその後もホイホイ利上げ来るで〜となる、という変化についてはそういう状況になれば(そう簡単にならんと思うけど)なりますので、別に雇用統計をスルーして無問題とかそういう事を言うつもりは毛頭ございませんので念のため申し添えます。





2017/08/30

お題「さて10年0%ですが・・・・・・・・」

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1LF223
Investing | 2017年 08月 29日 15:00 JST
UPDATE 1-アジア通貨動向(29日)=ウォンが0.5%安、北朝鮮のミサイル発射で

ミサイルの通路になっていない国の通貨が下がって通路の国の通貨が上がるとはこれ如何に・・・・・・・・ってそれはつまりただの通路だから、という事でしょうし、毎度のお約束反応ではあるのですけどさてしかし・・・・・・・・

○長期輪番減額は月曜に中期減額を行わなかっただけに微妙だと思う(多分スルーでは)

・さあ10年が0%になりましたよ(昨日の引け後)

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1LF31D
Markets | 2017年 08月 29日 16:28 JST
〔マーケットアイ〕金利:長期金利が4カ月ぶり0.000%、30日の日銀買入姿勢に注目

『<16:24> 長期金利が4カ月ぶり0.000%、30日の日銀買入姿勢に注目

10年最長期国債利回り(長期金利)が前日比0.005%低い0.000%と4月19日以来約4カ月ぶりの水準に低下した。夕方の欧州市場で、独国債がしっかりと推移していることを受けて、円債にも短期筋の買いが入った。30日は長期・超長期などを対象にした日銀買い入れが予定されている。市場では、「日銀が長期金利のマイナス化をけん制するのか、買い入れ減額の可能性を含めて日銀の調節姿勢を見極めたい」(証券)との声が出ている。』(上記URL先より)

ということで買入減額、と言っても2月の指値やら買入拡大を実施する前の買入額に戻ったという状態なのですが、買入を4100億円まで減らしたものの金利は引き続きホイホイと低下するという状況でありまして、上記記事のように今日は長期と超長期(と物国)の輪番が予定されていまして、元々発行に対して多めの長期輪番減額するチャーンス、ではあるのですがさてどうするのでしょうかねえ。

でまあ何ですな、「日銀が長期金利のマイナス化を牽制するかどうか」ってのもそれは微妙にピントがずれている論点じゃないかなーと思う(まあそういう表現をしたくなるのは分かるけど)次第でして、現状って事の成行で10年の上限金利が11bpみたいな感じになってしまっていますが、YCCにおける「10年0%程度」ってゆーのは概念的に言えば別に「程度」なのですからもう少し幅が合っても良い概念だった筈なのですよね。まあ1月以降の流れで10年11bpで指値入れないと止めにくくなったのでこんな事になっておりますが。

つーことでですよ、別に「長期金利の低下を牽制」という意味で減額するかっちゅーと0%だから減額というのは別に無い話でして、水準という意味では別に金利低下牽制するような場面ではないってこと。ただまあもっと元を辿ればYCC突っ込んだ直後の9月末に10年カレントがピークで▲9.5bpとかになった所で、9月MPMで出して「とりあえずはこれで行きます」って言ってたのをいきなり9月末の所で減額しちまったもんだから、「10年の下限金利が▲10bp」というイメージを与えたのがそもそも良くなくて、下限が▲10だったら上限も+10じゃろというイメージを市場に与えたので10bp抜けた所であばばばばーの叩き料理状態になってしまい止めにくくなった、というのがある訳ですな。


でまあ今の時点になって後付で考えれば、先般の展望レポートやら先日の布野審議委員の「2年で達成とか知らんがな、いやまあ努力はするけど無理なもんは無理じゃろ(超意訳)」ということで「短期決戦で2%に持って行くのを断念」というのが(明示的ではないけど)明らかになっている、という現実を踏まえますと、このYCC政策ちゅーのは(マイナス金利が付いているのが余計なのと元々の金利水準設定に問題があるので本当に長期的な持続性があるかというと副作用の累積的拡大の方が先に来ると思うけどそれは兎も角として)、短期決戦ではなくてもうちょっと国債買入スキームを延命させるものである(つまり良い形で出口が来る分には実はあまり困らず、長期化した時に年間80兆円買入拡大とかして金利が無限に下がって行ってどうしようもなくなるのを回避するスキーム)、という観点に立っていた、というのが今の時点ではさすがにコンセンサスだと思うの。

ということですから、基本的に「YCC政策によって国債買入スキームを長く持たせるようにする」ために何が必要かって考えたら必然的に(追加緩和しないと行けない場合を除いて)「買入ペースは出来るだけ減額しておく(そうしないと長持ちしないのだから)」ということになりますし、そうは言いましても金利上昇圧力のある時に買入を減らしたら火にガソリンをぶち込むようなもんですのでそういう時にはよーやらん、と考えますと、「金利低下圧力のある時に買入を減らす」というのは別に金利上昇を牽制するのではなくて、「QQE+YCC政策の持続性を高めるための措置」なのですな。もちろん減額しすぎてその行為そのものが金利上昇圧力になってしまったらその後買入を増やさないといけなくなるのでそこの匙加減は必要ですが。


という整理をすると、まあ今日やるのか月初一発目にやるのか、来月の入札の直後にやられると話が違うじゃないかとなるのでやるなら早めにやるか、慎重にやりたいんだったら来月の10年入札通過しても金利が低位って状態を確認してからだと思いますけど、いずれにせよ減額はどこかで入れて置かないと後で増額する糊代が稼げないので減額だと思いますけど、直近の10年輪番で減額しただけに、今日やると2打席連続輪番減額となってしまいまして、ちと目だってしまうのですよね。でもって月曜に中期輪番を減額しなかった(理由が良く分からなくて、単に輪番封鎖が見えていたので減額しなかっただけだったら話は別なのですが、普通に考えると金曜の長期に続いて連日で輪番減額すると目立ってしまうリスクがある、と判断して、変なハレーションを他市場(為替)に起こさせないため、とすれば合点が行く)というのがあるので、同じ理屈で来るなら今日は減額しないのかなーと思います(個人の感想です)。

#などとフラグを立ててみるのだが最近アタクシ一級フラグ建築士になりつつあるので念のためorz

もちろん今日の寄りの所で10年がマイナスにホリャホリャと突っ込んでいくのか、じとーっと0%オファー0.5bpビットとかやっているのかにもよるでしょうけれども、輪番減額をしないことによって「日銀が10年マイナス金利を容認したぜヒャッハー」というのもこれまた妙なリアクション(でも多分マイナスになっている時点で輪番減額しなかったらそういう講釈する人が出てくるでしょうね)でして、もとよりYCCは10年「0%程度」なので、容認するもしないも最初から幅のある概念でやっている訳でして、何もマイナス金利許さんと言っている訳でもないし、プラス金利はケシカランと言っている訳でもなくて、大きく逸脱(その「大きく」が上下10bpというのが狭いんだが)しない限りは別に気にせず、それよりも大きく逸脱しない範囲内において買入ペースを減額して政策を長持ちさせるようにするのがポイントだと考えた方が良いと思う(個人の見解です)のですがどうでしょうかね。

「だったら何で昨年9月末にいきなり国債買入減額したの」というツッコミはある訳ですが、結局の所あの時点では仕方なかった面があって、いまでこそ「80兆円」とか意味なし文言という扱いになって皆さん揃って知らんがなと言っている(認めてないのはジンバブエ先生ばかりなりという所で)訳ですが、昨年9月の総括検証時点では何かこの80兆円も意味があるかのような話をして(それが明らかに転換してきたのって今年に入ってからですからねえ)説明したり、と総括検証してYCC導入したのって「80兆円ペースで国債買えば2%物価目標達成が短期決戦で行けるぜヒャッハー」というのからの大転換だった訳ですが、そこで大転換とか言うと色々とハレーションが起きまくるので時間を掛けて有耶無耶のうちに誤魔化していくという現実的には確かにそうするしかないというのも分かりますが、ロジカル的に言えばインチキスキームにも程がある方式でここまで持ってきたので、そういう点からしてYCCを突っ込んだところで作った図の「80兆円」とか「マイナス金利とセットの金利水準設定」とかに無理がある面は否めずという事でもあるんでしょう。


つーことで、今日減額しないで月末のレンジで変更するとかいう可能性も普通にあると思いますし、別に10年マイナスに突っ込んだから一概にケシカランと言って買入を減らすことも無いと思うのですが、ただYCCを長持ちさせようとするなら買入は減らせる時に減らす、なお他市場から話題にされて変なことにならないように注意する、って感じでの発動になるんじゃネーノとは思います。


・それと中短期とか先物とか

再掲しますが
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1LF31D
Markets | 2017年 08月 29日 16:28 JST
〔マーケットアイ〕金利:長期金利が4カ月ぶり0.000%、30日の日銀買入姿勢に注目

『 <15:10> 国債先物が一時9カ月ぶり高値、長期金利は4カ月ぶりの0.005%

国債先物中心限月9月限は前日比9銭高の151円26銭と続伸して引けた。前日の米債高に加えて、北朝鮮が早朝にミサイルを発射したことをきっかけに地政学リスクが高まり買いが先行し、一時151円28銭と中心限月ベースで16年11月15日以来、約9カ月ぶりの水準に上昇した。流動性供給入札(対象:残存15.5年超39年未満)は無難な結果となったが、30日に予定される日銀買い入れで需給が引き締まるとの思惑から、引けにかけて上値を試す展開となった。現物市場はしっかり。先物から長期ゾーンを中心に短期筋の買いが入った。10年最長期国債利回り(長期金利)は同横ばいの0.005%と出合いベースで4月19日以来約4カ月ぶりの水準を付けた』(上記URL先より)

中期の話をしようと思ったら微妙に中期の話が無いのが残念ですが、昨日は相変わらず先物独歩高でしたけど、中短期がここもとやたら堅調に推移していて(一方で超長期はアガランチ会長)、ついでに短国の金利も強いという状態。

でもって短国と言えば2月末というか3月頭になりますが、3月2日の3M短国入札の時に前週よりも10bp低い入札(まあその前から強かったけど)をやるわ3日の短国買入がテール3毛とか無茶苦茶な流れ方(しかも買入2500億円)するわという凶悪な現象が起きていた訳ですが、時あたかも9月頭に掛かる時期という事で、季節要因もあるのかねとか思いつつこの辺の金利が無暗矢鱈と強いのも何じゃろうねと思うので備忘メモ置いておきます。


○その他少々メモ

・基調的インフレ

http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

図表はこちら
http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf

データの方(エクセル)を見ますと、ちょっとは今回改善しているのですが、加重中央値とか相変わらずの貫禄の0.0%とか最頻値が上がったとは言え0.3%でここ2年間の中でまだまだ低い部類に入る水準とか、「いよいよこれからです」なのかも知れませんがねーという所で。


・CCPに関して(CCCPではありません^^)レポート

http://www.boj.or.jp/research/brp/psr/psrb170829.htm/
清算機関(CCP)を巡るグローバルな対応について

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/brp/psr/data/psrb170829a.pdf

まだ超斜め読みしかしていないので今後ネタにしますが、紹介ページの方だけ引用しておきますね。

『現在、グローバル金融システムにおける金融市場インフラ、とりわけ清算機関の重要性が、大きく高まっている。2008年のリーマンショックを契機とする世界的な金融危機の後、大規模な銀行の「システミックな重要性」などの問題が意識され、さまざまな規制対応がとられてきた。この間、金融危機時にも清算機関を経由する取引は総じて安定的に処理されたことや、2009年のG20ピッツバーグ・サミットにおいて、標準化された店頭デリバティブ取引の清算集中について合意されたことなどを受け、清算機関の規模は、金融危機後、拡大傾向を辿ってきている。』

うむ。

『このような中、国際決済銀行(BIS)の決済・市場インフラ委員会(CPMI)や証券監督者国際機構(IOSCO)、金融安定理事会(FSB)、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)といった国際的なフォーラムで、清算機関に関する広範な検討が進められた。』

まあ余計な検討もしているのだがそれはさておき。

『すなわち、金融安定を確保し金融取引の効率性を高めていくためには、清算機関がストレス時も含めその機能を適切に発揮し続けることや、清算機関に集約されたリスクが適切に管理されること、さらには、国境を越えて活動するような大規模な清算機関の「システミックな重要性」に対処することなどが重要との認識が共有された。そのうえで、清算機関に対しても、銀行への対応と同様、その強靭性を高め、いざというときの再建や破綻処理を円滑に行えるようにするとともに、国際的な協調モニタリング体制を構築するなどの検討が進められてきた。このような検討を経て、本年6月〜8月にかけて、清算機関の強靭性および再建に関する「金融市場インフラのための原則」のガイダンスや、清算機関の破綻処理に関する「金融機関の実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」のガイダンス、さらには、清算集中における相互依存性の分析結果などが公表された。(以下割愛)』(上記HTML先より)

つーことですが、CCP集中するのが理念的には良いのも分かるのですが、分散型というのもあったのではないか、という気もするので、この辺は色々と識者のご見解やご議論をうかがいたいものです。

#という紹介だけでスイマセン











2017/08/29

お題「輪番据え置きとな/ドイツ連銀が資産買入に文句タラタラのようですな」

まあそうですな。
http://jp.reuters.com/article/us-economy-idJPKCN1B802X
Special | 2017年 08月 28日 19:02 JST
アングル:ジャクソンホール会合、トランプ氏の政策に批判的意見続出

○輪番減額無しとかその他少々

・中期輪番減額しなかったら何故か輪番封鎖が来るとかワケワカラン

昨日の輪番オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170828.htm
国債買入(残存期間1年以下) 1,000 2017年8月30日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,800 2017年8月30日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,300 2017年8月30日

・・・・・( ゚д゚)

先週後半の中期ヒャッハー状態なのに輪番減額しないのかよという輪番の
オファーだったのですけれども結果の方がまた謎な流れ。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170828.htm
国債買入(残存期間1年以下) 3,544 1,001 0.001 0.004 70.3
国債買入(残存期間1年超3年以下) 11,717 2,803 0.003 0.005 58.9
国債買入(残存期間3年超5年以下) 12,047 3,300 0.008 0.008

5年カレントの前場出合いが引け近辺だった筈なので、特に3−5年の輪番が8糸甘だわ落札が一本値だわということで、どう見ても思いっきり打ち込みに言っていましていわゆる一つの輪番封鎖って奴なのですが、何でまたこのタイミングで中期輪番を封鎖に行くのかよー分からんのですが、この結果を受けて後場は中期1甘からのスタートとなるの巻と相成りました。

と思ったら2時過ぎ位から先物がホイホイ上がって茲許の相場では珍しくも10銭も上昇して最後高値引け(寄り近辺の高値に戻るという図)とかワケワカランという展開になっておりました。

・・・・・・・・つーことで先週金曜は長期輪番を減額したのに長期の金利はちゃっかり下がって終了するという図になっておりましたが、昨日に関しては中期輪番が減額するじゃろと思っている所に輪番が減額されずにオファーされたのですが、何故か輪番封鎖が入るという中々の謎展開でございまして、なにがどうなっているのやら・・・・・・・・

ロイターさんから
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1LE2IC
Markets | 2017年 08月 28日 15:20 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続伸で引け、長期金利は4カ月ぶり0.010%

『 <15:12> 国債先物が続伸で引け、長期金利は4カ月ぶり0.010%

国債先物中心限月9月限は前営業日比9銭高の151円17銭と続伸して引けた。前週末の海外市場で、北朝鮮情勢の緊張やトランプ政権の迷走などから米債が上昇したことを受けて、買いが先行した。しかし、高値警戒感が浮上する中、日銀が実施した「残存1年超3年以下」「同3年超5年以下」の国債買い入れで売り圧力の強さが意識されると一時小幅安まで軟化。ただ、追随した売りは限られ、引けにかけて再び買い圧力が強まった。現物市場は底堅い。日銀買い入れ結果をきっかけに一時調整売りが入ったが、引けにかけて幅広い年限で押し目買いが入った。10年最長期国債利回り(長期金利)は同変わらずの0.010%と出合いベースで4月21日以来、約4カ月ぶりの水準を付けた。』(上記URL先より)

つーことでこの輪番封鎖を見込んで減額していなかったんだったら凄い(というか何というか)のですけれども、中期減額するボーナスステージに思えたのですが、連発でやるとさすがに目立つといかんとか配慮したんでしょうかね、とは思うのですけれども、中期輪番は今月もう無いので、木曜に出てくる輪番予定をどうするのか、というのはありますが、元々のレンジが1-3年が2800の買入に対して「2,000〜3,000 程度」3-5年が3300の買入に対して「2,500〜3,500 程度」で来ているので別に月末のレンジをいじる必要もなくて、来月の中期輪番一発目(1日になるのかね?)の所で減額とかそういう事になるんでしょうか????

なお、本日は超長期対象の流動性供給入札があって、ここもと戻り売りだか何だかで妙に重い超長期ちゃんが流動性供給入札を機にどっちに転ぶのかというのもネタになるのかなと思いますが、あとは水曜が長期超長期の輪番なので、こちらに関しては超長期の減額は無いとして、長期の輪番に関しては元々4100でも買い過ぎちゃあ買い過ぎではあるので、もう一発減らしてくるかどうかっちゅー辺りでしょうかね。

しかし中期輪番減額コンセンサスだったと思う(1-3はともかく3-5はこの前増やした分減らす)のですが、そこを外してきたのは意外だったのと、輪番封鎖が入ったのがもっとわけわからんかったです、はい。


・特殊な物とは言いつつも国債で売買参考統計値公表無しが瞬間あった件

http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php
売買参考統計値/格付マトリクス ダウンロード


こちらなんですけど、まあ一応売参のチェックは最近大体行うようにしているのです(全銘柄詳しく見ているという程ではない)が、昨日付(つまり金曜引値)の売買参考統計値をダウンロードしますと、分離国債(PDFの場合9ページ目から、カテゴリー表記は「割引国債」)の売買参考統計値が「公表無し」の横線が引かれているという状態になっていまして、価格提供をしている「報告社数」が「4」となっていて、5社以上の報告が無いと売買参考統計値計算しないので「公表無し」となった訳ですよ。

まあ分離国債(ストリップス債)なので知らんがなとか思っていたのですが、読者様からの指摘を頂きましてよくよく見たら(よくよく見なくてもそうなのだが)、その後に出てきます(PDFだと19ページにある)物価連動国債の売買参考統計値が「公表無し」となっているというこのあばばばばーな事態キタコレとなっていましたんですよね。

分離国債はまあ良いとしてさすがに物国の売参が無いのはマズーじゃろということなのかどうか知りませんが、今日付け(昨日の引け)の売買参考統計値では分離国債も物価連動国債も売買参考統計値が出てくるようになりましてめでたしめでたし(なのか?)という感じではあるのですが・・・・・・・・・・・・・・・

売買参考統計値自体は昔から(昔は公社債店頭基準気配だったと思うけど)ある物件でございますのでまあこれ無いと適正価格がどうしたという時に客観性のある公示された価格があった方が良いので、ということでニーズは大ありではあるのですが、市場の流動性があるのか無いのか分からんというようなものに関して価格提供するのも何だかなーというのも良く分かる話ですし、一方でこの前のTIBORみたいに「実取引レートを使ってどうのこうの」みたいなのを報告社に対して要求する方がこれあり、というのも中々辛いものがありますな、うんうん。


○ドイツ連銀のホームページを見物の巻

たまに見物に行くと面白い(当然ながら英語版で勘弁)。

http://www.bundesbank.de/Navigation/EN/Home/home_node.html

トップページの最初の所(いくつかのスライドが出る奴)にはこんなのが、

http://www.bundesbank.de/Redaktion/EN/Topics/2017/2017_08_23_weidmann_boez.html
Weidmann: “Bond purchases are an emergency tool”


そしてその直下の所にはこんなのが、
http://www.bundesbank.de/Redaktion/EN/Kurzmeldungen/Research_brief/2017_13_effects_single_monetary_policy.html
Is the single monetary policy producing different effects across euro-area countries?
Research Brief | 13th edition - June 2017
by Martin Mandler, Michael Scharnagl and Ute Volz

でもってトップのPublicationsのResearchからDiscussion papersを見ますと・・・・・
http://www.bundesbank.de/Navigation/EN/Publications/Research/Discussion_papers/discussion_papers.html

The financial market effects of the ECB’s asset purchase programs
Discussion paper 23/2017: Vivien Lewis, Markus R

とか中々ファンキーなお題の講演やペーパーが連発されているというこの味わいの深さ。


つーことでバイトマン先生の

http://www.bundesbank.de/Redaktion/EN/Topics/2017/2017_08_23_weidmann_boez.html
Weidmann: “Bond purchases are an emergency tool”

でも簡単に。

『Bundesbank President Jens Weidmann has spoken out in favour of making an orderly exit from the asset purchase programme pursued by the European Central Bank (ECB).』

まあ題名がそもそも出オチ感満載ですが最初からこれ。

『To avoid causing needless turmoil in the financial markets, the programme should be gradually tapered and flanked by appropriate communication, he told interviewers from the German Borsen-Zeitung newspaper. He sees no pressing case, from a monetary policy perspective, to extend the purchase programme yet again. Government bond purchases, he said, should only be used as an emergency tool.』

債券買い入れはあくまでも非常時のツールであってこんなものはとっとと止めるべきなのでテーパリングさっさと開始しやがれコノヤローとのことです。

最初の小見出しが『No need to keep putting the pedal to the metal』です。

『In the Bundesbank President's view, the monetary policy stance in the euro area will remain highly accommodative even if the asset purchases are scaled back, and the asset holdings on central banks' balance sheets, which are what determine the degree of accommodation, will stay very substantial.』

スケールバックしてもハイリーアコモデーティブってんですから中々強烈。

『Monetary policy will therefore continue to be supportive of economic activity and price developments for quite some time to come. “We just wouldn’t be putting the pedal ever more to the metal,” he said.』

そんなにアクセル踏まなくても十分に緩和的だと。

『The ECB’s asset purchase programme is subject to a number of self-imposed rules. One is that the central bank is prevented from buying more than one-third of a particular bond or of the bonds from a single issuer. Another is that the purchases must be allocated to each country in accordance with the ECB capital key. Mr Weidmann stressed the crucial role these rules play in preserving central bank independence and criticised what he felt was sometimes careless talk about changing the parameters, which could have severe negative repercussions. “A clear sense of scepticism is also apparent in the Federal Constitutional Court’s decision to refer the government bond purchase programme to the European Court of Justice,” said the Bundesbank President.』

買入が進まないからと言って3分の1ルールと各国別の買入割合ルールを緩和すべきではない、だそうな。


次が『Debate about higher inflation target weakening adherence to rules』なのですが、

『Mr Weidmann also commented on the discussion over whether the ECB’s current inflation target of just under 2 % should be raised to between 3 % and 4 %.』

インフレ目標をより高くすべき、という議論に関してお答えしますと。

『This is a frequent talking point among academics and even some central bankers.』

ですです。

『In Mr Weidmann's view, a higher inflation target would not ultimately deliver any net benefits because the temporary boost provided by lower real interest rates would come at the cost of a lasting increase in the cost of inflation.』

インフレ目標の引き上げは何らメリットは無いとケチョンケチョン来ました。

『And that might even make it more difficult for central banks to manage inflation expectations because they could be expected to repeat this “feat”, he warned. “For the sake of your own credibility, you should have this discussion once you have achieved your target and not before,” he emphasised, with particular reference to the euro area. 』

インフレ期待の安定化が難しくなるからアカンとのこと。

でもってこの後『Cyberattacks pose a new type of threat』というのがあるがパスして、『Challenges for banking supervisors』をば。

『Mr Weidmann also used the interview to outline his position on the impact of Brexit for banking supervisors, explaining that the UK’s withdrawal from the EU would see institutions move to Frankfurt whose balance sheets are not only very large, but also highly complex. “As supervisors, this will present us with fresh challenges,” he noted. “This is why we are expanding our supervisory capacities at the Bundesbank and the ECB.”』

ブリクジットで英国からドイツに国際金融機関が来ると監督上色々と大変になってきますね、というまあ普通のお話。

つーことで簡単なインタビューのご紹介っぽい内容でしたが、最初の「買入は非常時のツール」ってのはちょうどさっき紹介したディスカッションペーパーのやつが、

http://www.bundesbank.de/Redaktion/EN/Downloads/Publications/Discussion_Paper_1/2017/2017_08_23_dkp_23.pdf?__blob=publicationFile
Discussion Paper
Deutsche Bundesbank
No 23/2017
The financial market effects of the ECB’s asset purchase programs
Vivien Lewis(KU Leuven and Deutsche Bundesbank)
Markus Roth(Deutsche Bundesbank)

ってあって、まあこの辺りがベースラインにあるっぽいです。









2017/08/28

お題「輪番減額のボーナスステージ到来(か?)/ドラギ総裁はグローバルなOpennessを提唱」

ちなみに今週が期限ですよ。我と思われる方は是非。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170801b.htm/
総合職キャリア採用の募集について
2017年8月1日
日本銀行総務人事局


○買入減額しても金利の方は下がるの巻とな

金曜のオペオファー

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170825.htm
国庫短期証券買入 2,500 2017年8月29日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,100 2017年8月29日
国債買入(変動利付債) 1,000 2017年8月29日

つーことで短国買入は2500に絞って来て長期輪番も4400→4100にしてきたのですけれども、別にそれで先物が売られるとかそーゆー事も無く・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170825.htm
国庫短期証券買入 7,580 2,501 -0.034 -0.026 43.1
国債買入(残存期間5年超10年以下) 16,886 4,104 -0.007 -0.005 15.8
国債買入(変動利付債) 2,868 1,002 -0.260 -0.290 16.7

短国買入も強い結果になっていますし、長期輪番も確りの結果となりまして、長期も確りなのですが短い方が強くなっておりまして・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1LB2GI
Markets | 2017年 08月 25日 15:11 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、長期金利0.015%に低下

『 <15:08> 国債先物は続伸、長期金利0.015%に低下

長期国債先物は続伸。前日の大幅高の反動で調整地合いになるとみられていたが、引き続きリスク回避の流れになった。海外勢を巻き込んだ需要とみられている。中心限月9月限は日中取引ベースで4月25日以来の151円10銭まで買われた。

現物債は中期ゾーンの金利低下が目立った。国内銀行勢を主体にした買いとの観測が出ていた。2年債利回りは6月1日以来となるマイナス0.160%、5年債利回りは5月10日以来となるマイナス0.135%と、それぞれ低水準を付けた。長期ゾーンは日銀オペのオファー減額、オペ結果で応札倍率が4倍台に跳ね上がったにもかかわらず、買い進まれた。国債先物への連動性を強めて、国内銀行勢主体の需要が観測されていた。超長期ゾーンは高値警戒感から調整地合いになった。』(上記URL先より)

リスク回避の流れで債券買いって後講釈には違和感がだいぶありまして、それよりも米国の金融正常化路線とか欧州の緩和調整とかに関するイメージによって債券の買いが手控えられていた流れの巻き戻しが起きているという感じではないかと思う訳で、リスクオフじゃ債券買いじゃーというのではなくて、リプライシングというかそういう事じゃないのと思いますけどまあそれは兎も角として。

長期の輪番減額したとは言いましても、まー冷静に考えれば買入残高というのは増える話だし、買入そのものは継続している訳ですから、そらまあ需給は引き締まり方向になるんですから輪番減額したからと言ってもこの額ですから金利下がっても良いちゃあ良いのですが、これは強いですなあって状況な上に為替も株もまるで反応しない(そらまあ金利が跳ねたら反応するんでしょうが)という図になっておりますので、輪番減額のボーナスステージ来たでという事で宜しいのではないかと思います。

つーことで、本日は中期の輪番があるのですが、中短期は(短国も含めて)需給で買い進み(欧米の緩和縮小が先送りになりそうという話になっても別に日銀が追加緩和とか利下げをするという図になる訳ではないので、中短期の金利がホイホイと低下するというのは別に利下げとか関係なくて単なる需給)という図になっておりますのでこれはもう中期輪番減額の大チャンスということで、今日は1-3と3-5両方とも300位減らしてしまっても全然問題ないんじゃないですかねえという所で。

とにかく、金利上昇圧力掛かった時にはせっせと買わないと行けなくなるのですから、こういう減らしても株にも為替にも影響無さそうな時に糊代作っておかないと今のオペを長持ちさせられなくなってしまいますので、中期も減額ですな減額。


なお、超長期に関しては金曜は中短期ヒャッハーとか言っている中で最後は金利が上昇するの図になっていまして(本当にリスクオフだったらフラットニングしてないと行けないのですから超長期が甘いという時点でリスクオフ相場ではないという事でごじゃりますな)、とりあえず売るものがある超長期(長期も割とそうだと思いますけれども特に中期以下に関してはそもそもの金利水準的に最終投資家が持ちきり運用で買えるような水準になっていない、ということになるケースが多くて、インデックス対比でイールドカーブ的にという最終投資家の買いという形になると思うので、相当のド割高にでもなれば別なのでしょうが、金利水準下がったから売りというのは超長期と違って出にくいでしょうな)の金利は上がったという辺りに味わいを感じるのですが、これでなお値持ちされますと戻り売りしたものの再投資ができ無いジャンさてどうしましょとかなって一段のあばばばばーというのはあまり想像したくない。

まーいずれにせよついこの前(と言っても7月頭ですが)指値オペを実施していたと言うのに今度はオペ減額しても金利下がってしまうぜヒャッハーとか、世の中何がどうなるか分からんですのう。

#恐らく次のFOMCとか実際のバランスシート縮小とか始まってからまーたイメージ変わるのかも知れませんがさて・・・・・・・・・・・・・・・・


○ジャクソンホールのイエレン&ドラギは直接的な金融政策に関する講演ではないというのはまあ織り込み済みでしょうが

https://www.kansascityfed.org/publications/research/escp
Economic Policy Symposium Proceedings

ということで式次第や講演などのページが来ました。
https://www.kansascityfed.org/publications/research/escp/symposiums/escp-2017
Fostering a Dynamic Global Economy

The Federal Reserve Bank of Kansas City hosts dozens of central bankers, policymakers, academics and economists from around the world at its annual economic policy symposium, Aug. 24-26, 2017, in Jackson Hole, Wyo.

でもってイエレン議長のスピーチ
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20170825a.htm
August 25, 2017
Financial Stability a Decade after the Onset of the Crisis
Chair Janet L. Yellen
At "Fostering a Dynamic Global Recovery," a symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, Wyoming

ドラギ総裁のスピーチ
https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2017/html/ecb.sp170825.en.html
Sustaining openness in a dynamic global economy
Speech by Mario Draghi, President of the ECB, at the Economic Policy Symposium of the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, 25 August 2017

ということなのですが、ここで手抜きマンと化してベンダーのまとめを見ましょう(おい)。

#なお何度も申しあげているようにロイターさんの回し者ではありませんがネット版が見やすいというかブルームバーグのネット版(日本語)って画面デザイン何とかならんのマジで見難いのですがダータのサイトに力入れてられっかという理屈もまあ分かる

http://jp.reuters.com/article/yellen-speech-0825-idJPKCN1B51WU
Business | 2017年 08月 26日 00:30 JST
米経済は危機後導入の改革で強化、変更控えめに=FRB議長

『[ジャクソンホール(米ワイオミング州) 25日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は25日、米ワイオミング州ジャクソンホールで開催中の年次経済シンポジウムで、2007─09年の危機以降に導入された改革により、経済成長を阻害することなく金融システムが強化されたとし、いかなる将来的な変更も控えめなものにとどめる必要があるとの考えを示した。この日の講演では金融政策については言及しなかった。イエレン議長は「導入された中核的な改革により、不当に信用枠や経済成長が制限されることなく、レジリエンス(回復する力)が大幅に強化されたことが調査で示唆されている」と指摘。ただ、銀行の自己勘定取引を制限する「ボルカー・ルール」のほか、中小行に対する規制など、個別の規制を一部変更することは正当化されるとの認識を示し、金融システムは引き続き「堅固」であるとしながらも、債券市場の一部の流動性改善に向けた措置は必要となっていると述べた。そのうえで、現在の金融システムは将来的に発生する可能性のある衝撃に対する耐久力が増しており、こうした金融システムに対しては「規制の枠組みの調整は控えめなものにとどめ、レジリエンスの高まりを保全するものである必要がある」との考えを示した。』(上記URL先より)

レジリエンスは「頑健性」ではないかと思うのだが基本的には金融規制を改善したので、以前のようなアホアホバブルで金融ショーックとはならないように努めている(ならないとは言っていない)という感じのようで。


http://jp.reuters.com/article/ecb-policy-draghi-protectionism-0825-idJPKCN1B52OQ
Business | 2017年 08月 26日 10:24 JST
保護主義、世界的な経済成長への脅威=ECB総裁

『[ジャクソンホール(米ワイオミング州) 25日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は25日、米ワイオミング州ジャクソンホールで開催中の年次経済シンポジウムで講演し、世界的な貿易や連携が脅かされており、生産性さらには先進国の成長へのリスクとなり得るとの見解を示した。講演では金融政策に関する言及はなかった。ドラギ総裁は開放的な通商と世界的な協力は成長押し上げに不可欠との考えを示し、保護主義が世界経済に及ぼす脅威について警告。「保護主義への転換は生産性の継続的な伸びと世界経済の潜在成長に対する深刻なリスクとなる」とし、「世界経済を活性化させるには、保護主義への傾倒を拒絶する必要がある」と述べた。ユーロ圏経済は好調となっているものの、加盟国間の格差は拡大。ドラギ総裁は「潜在成長が一段と強くならなければ、現在世界的に見られている循環的な回復は最終的に低成長に向け収束する」と述べた。』(上記URL先より)

成長力強化の話になっているようで、最近中央銀行の皆さんが得意としているお話になっておりまして、主要国の中央銀行での流行は物価目標が持続的に維持できるような成長力が無いとそもそも話にならんし、それは金融政策単体でどうこう出来るものではないのだから、金融政策に何でもかんでもケツ持ちさせるなコノヤローというのがトレンドとなっている、というのを如実に示していますな。なお日本ではその話を日銀からすると「物価目標2%達成困難の理由がそれだったら元々のQQE理論が間違っていたのだからまずは最初の間違いを認めろ」というまぜっかえしを飛ばす大変に意地の悪い人たち(さて誰の事でしょう)がいますので中々大変ですなあ(棒読み)。


つーことでドラギ総裁の講演の方ですが簡単に。

URL再掲します。
https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2017/html/ecb.sp170825.en.html
Sustaining openness in a dynamic global economy
Speech by Mario Draghi, President of the ECB, at the Economic Policy Symposium of the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, 25 August 2017

手抜きで最初と最後を読む。ということで冒頭から。

『The global recovery is firming up. In some countries like the United States, this process has been visible for some years, in others like Europe and Japan, the consolidation of the recovery is at an earlier stage.』

米国は経済の確りとした回復がここ数年はっきりしたものになってきており、一方で欧州や日本ではまだ景気の確りとした回復は初期段階にある、という説明なので、まあここを捉えて「ああECBのスタンスは緩和縮小には中々向かわないのね」という解釈をすることは可能ではありますな。

『So it is fitting that our discussions are now focusing not only on how to stabilise the economy, but also on how to make it more dynamic - while at the same time improving people’s welfare.』

『At the centre of this debate is the question of how to raise potential output growth, which has slowed from around 2% in OECD countries in 2000 to around 1% today.[1]』

つーことで、今回の議論の中心はどうやって潜在的な生産の成長力を上げることが出来るのか、OECD諸国においては2000年には2%の潜在生産成長があったのに今や1%近辺でっせと。

『Without stronger potential growth, the cyclical recovery we are now seeing globally will ultimately converge downwards to those slower growth rates. Slower growth will in turn make it harder to work through the debt and demographic challenges facing many advanced economies.』

潜在成長が強くないと経済の回復も遅いし、人口動態とか債務の問題とかへの対処も難しくなると。

『With the population growth rate in those economies projected to slow, the burden of raising potential growth must fall on productivity. There are a number of areas in which domestic policies can encourage an upward shift in productivity growth, such as competition, research and development, and insolvency regimes.』

でもってそういうの解消するのに政策的な対応で潜在成長を上方シフトしないといけない、という内容に関しては金融政策ではないネタになる訳で。

『But when thinking about the global economy, one of the key ingredients for raising productivity is openness. Open trade, investment and financial flows play a key role in the diffusion of new technologies across borders that drive forward efficiency improvements.』

実際はグローバルの所がイタリックになっている(プレーンテキストに落としてから書いているのでそういうの反映しませんすいませんすいません)のですが、グローバル経済という意味では「openness」ということで、自由貿易とか投資や金融のフローの自由化によって、グローバルな新しい技術革新などを促して成長力を高めましょうと。

『The social consensus on open markets has, however, been weakening in recent years. This is driven not so much by a belief that open markets no longer create wealth, but by the perception that the collateral effects of openness outweigh its benefits. People are concerned about whether openness is fair, whether it is safe and whether it is equitable.』

ところがこの「openness」にたいする一般の皆さんの懐疑的な考えが広がっております。

『As Karl Polanyi observed many years ago, if the dislocation created by an open market goes beyond a certain point, protectionism is society’s natural response.[2]』

ある程度市場が自由化されるとそれに反対する社会的な動きがでるのは自然な事ではあるのですが・・・・・・・・

『So a central element of efforts to raise productivity growth - and build a dynamic global economy - must involve responding to these concerns about openness. And this is a feat countries cannot accomplish by themselves. Although domestic welfare policies are, of course, essential to the task, a commitment to working together through multilateral institutions is just as important.』

そのような「openness」に対する懐疑を払しょくするような福祉政策などの政策や多国間の協力を行うのも重要。

『This is because fears about fairness, safety and equity ultimately reflect a lack of trust in other countries’ regulation and enforcement. One of the main reasons why multilateral institutions exist is to create regulatory convergence, and therefore to increase trust between countries.[3] And perhaps the most important area where this applies today is global financial sector regulation.』

ということで後の小見出しが

『Openness as the key to a dynamic global economy』
『The role of multilateral cooperation in making openness sustainable』
『Implications for the global economy』

となっていて最後が『Conclusion』となっているのですが、まあ大体話に関してはお察しの通りという流れになっておりまして、しれっとトランプ批判になっている辺りは当然狙っているのでしょうし、米国の中銀の人たちがあまり露骨に言うのも何なので(って結構言っている気もするが)ドラギさんが援護砲撃をかましているというのもあるのかも知れませんね(^^)。







2017/08/25

お題「金利がホイホイと下がって来ましたがさてオペレーションはどうなる??」

お、おぅ・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-budget-0824-idJPKCN1B42FW
Business | 2017年 08月 25日 04:33 JST
トランプ氏が共和党指導部批判、「厄介なことに」

『[ワシントン 24日 ロイター] - トランプ米大統領は24日、共和党指導部が連邦債務上限引き上げを巡る自身の提案に従っていれば混乱は回避できていたと言明し、あらためて批判をあらわにした。』’(上記URL先より)

今こそシムズ大先生はトランプ大統領に国債発行無問題理論を売り込むべきではないでしょうか(棒読み)。


○さあもりさがってまいりました!!!!orzorz(市場雑談)

・今日は長期輪番ですが減額はあるでしょうかねえ(4400→4100で良いと思うのだが)

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1LA2XR
Markets | 2017年 08月 24日 16:42 JST
〔マーケットアイ〕金利:夜間国債先物は強含み、長期金利5月2日以来の0.020%に低下

『<16:41> 夜間国債先物は強含み、長期金利5月2日以来の0.020%に低下

夜間取引の序盤で長期国債先物は強含み。9月限は日中取引の大引けを2銭上回る150円93銭近辺で推移している。市場では「流動性供給入札の強い結果を受けて上値追いとなった日中取引の流れを引き継いでいる。海外勢主体の買いと思われる」(国内証券)との見方がある。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比1bp低下の0.020%と5月2日以来の低水準を付けている。』(上記URL先より、以下同様)

ということで金利低下ヒャッハーなのですからさあもりあがってまいりました!!といいたくなる感じではあるのですが、では盛り上がっておりますかと言いますと、元より日銀がバカスカ買うからこういう金利になっている、という背景がある訳ですからして、別にこう世の中的に言った場合に全体的にロングで構えているという感じでもないでしょうから、この金利水準から金利下げられましても「いやあの金利下がると償還資金の再投資とかマジで困るんですけど」という感じで金利下がっても嬉しくないので、もりさがってまいりましたという方が適切かと。

でもって昨日の場合は、同じく上記URL先のロイターさんの市況解説を借りますと、

『<15:17> 国債先物は続伸、5年債利回り5月31日以来の-0.120%に低下

長期国債先物は続伸。前日の米債高を手掛かりに買いが先行した。流動性供給入札が強い結果になると、海外勢を巻き込んだ買いの勢いが強まった。中心限月9月限は一時日中取引ベースで5月2日以来となる150円94銭まで買われた。

現物債は強い流動性供給入札の結果を受けて堅調。中期ゾーンは先物同様に海外勢の買い観測が出ていた。2年債利回りは6月5日以来となるマイナス0.145%、5年債利回りは5月31日以来となるマイナス0.120%とそれぞれ低水準を付けた。超長期ゾーンは生保や年金勢に加え国内銀行勢の買いが観測されており、20年債利回りは一時昨年12月8日以来となる0.535%、30年債利回りは6月29日以来となる0.815%、40年債利回りは一時6月30日以来となる1.020%と低水準を付ける場面があった。』

ってな話で特に中期が強いぞなという感じになっておりまして、3−5年輪番をこの前増額したあと減額していないでいたらジャンジャン強くなって来た(まあ輪番減らさなかっただけではない規模の買いなんでしょうけれども、輪番減らないもんだから買いが入ってしまう、というのはあるでしょうから)という感じでして、うーんこのという感じはします。

・・・・・つまりですね、今月は月中(先週水曜)に長期輪番を4700→4400に下げて、ああ10年0.1%超を抑制するのに増やした分の輪番は別に金利が大きく下がる前でも減らしてくるし、4500じゃなくて4400ということだから基本的に金利が落ち着いている中では買入減らすんでしょうなあ、というイメージを与えてくれたと思うのですが、先週の終わりから今週に入って、特に火曜の20年入札以降に関しては、割とホイホイと金利が下がってくる中でも特段輪番の調整は行われていなくて、特にこの前拡大した3-5輪番がそのままモードというのはどうもこう輪番の調整スタンスが一貫していない感があって?????ではありますな。


一応擁護的な理屈をひねり出してみますと、足元の金利低下の背景としてリスクオフみたいなのがある、という事だとすれば、リスクオフ=外部環境が悪化している、という事でもありますので、そういう中であれば金利低下を頑張って牽制する必要があるのか、という考えで金利低下を容認している、というのと、そもそも10年金利のディレクティブは0%なので10年金利がまだプラスのうちにそんなに威勢よく金利低下牽制する必要はない、というのは分かるのですが、ただまあそれにしても3-5輪番を減らさないまま金利低下が放置プレイになって遂に勢い付いちゃいましたね、という展開になっているのは調整スタンスが良く分からんという風に思ってしまいますな。

いやまあ別に「下がっても放置プレイ」でも「隙あらば減額」でもどっちでも良いのですけれども、どっちをやっていますねんというのが読みにくいというのは多分マーケットメーカーがポジション組みにくくなる(どっちかなのが明確ならばそれに沿ってポジションもてる)んじゃネーノとは思うのですよ。勿論それは市場の中の人の勝手なポジショントークじゃろと言われてしまえば仰せのとおりでして、完全に予見可能な輪番という風になってしまうのが本当に良い事なのか、という論点で言えばそれもやっぱり何だかなとは思いますけど・・・・・・・・・・・


でもってここで今日中期の輪番が予定されていたら3−5の輪番減らすのでしょうかねえという辺りがネタになってくる所ではあるのですが、誠に惜しい事に今日の予定は長期輪番となっておりまして、2bpまで下がりましたと言ってもプラス金利であってまだ0%にもなっていませんよねという辺りのこの微妙感という所ですけど、2月にやった指値オペ第一弾の前は長期輪番って4100億円だったこともありますので、指値2回やっている間に増額した分を元に戻すってんだったら4400→4100とか美しくてよろしいんじゃないでしょうかねえと思ったりするのですがどうでしょうかねえ。まあ4100に減らしても金利低下が止まるという感じでもない気はするのですが、同額でやったら金利低下あばばばばーという感じになるような懸念もある訳ですし、山高ければ谷深しとも言いますように、一応YCCやってるんですから金利低下をあまり放置してしまうとその後上昇圧力が掛かった時にも同じように圧が強くなってしまいますから、金利低下に対して適当にガス抜きしてブレーキ入れながらやっていた方が、その後金利上昇圧力掛かった時にも対処が楽になると思いますけどね。

#なおそういうのを細かくやり過ぎるとボラが無くなってそれはそれで困る、という説もあるけど


・短国も何気に需給が良いのですがさて短国買入は・・・・・・・・・・(減らして良いと思うが)

ところで昨日の短国。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170824.htm

(3)募入最低価格 100円03銭5厘5毛(募入最高利回り)(-0.1423%)
(4)募入最低価格における案分比率 43.8801%
(5)募入平均価格 100円03銭6厘5毛(募入平均利回り)(-0.1463%)

つーことで入札で▲14bpレベルとか久々にお強い水準になっておられますな。

再掲ですがさっきのロイターさんから短国入札レビュー。
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1LA2XR

『<12:42> 3カ月物TB落札金利が低下、海外勢の需要強まる

財務省が午後0時35分に発表した新発3カ月物国庫短期証券(TB)の入札結果で、最高落札利回りはマイナス0.1423%、平均落札利回りはマイナス0.1463%と前回(最高:マイナス0.1243%、平均:マイナス0.1275%)に比べて低下した。応札倍率は5倍台と高水準となった。市場では「強い入札結果になった。海外勢の需要が膨らんでいるもよう」(国内金融機関)との声が聞かれた。』(上記URL先より)

ということでここもと短国の需要が強くなっていて金利の方がホイホイと低下しているの巻となっておりまして、日銀の買入がどうのこうのという訳ではなくて、これは海外需要の方でございますけれども、短国金利に関しては別にホイホイと金利が下がれば良いというものでも無いでしょうと思われますので、元々今月はそんなに買わなくても良いんですから短国の買入減額(5000→2500)してもエエンヤデという所ではありますな。

ちなみにYCC政策は「短期政策金利=超過準備の一部に適用される金利水準」であってJGBの金利については短期ではなくて10年の方にディレクティブが掛かっているのですが、そうは言ってもYCCの日本語版正式名称は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策となっておりますので、長期はJGBで短期は付利金利だけど実際のJGBカーブが短期の政策金利と全然違っても知らんがなというものでもない筈(はず、というのはYCCを投下した時点では短国とか中短期JGBは「短期▲10bp」と全然違う所にいたので、その水準を是とすると思いっきり中短期は緩和度合いの調整をしまくっていたとも言えます。しかもその辺りの評価については(会見とかでツッコむ人が居ないせいもあるけど)日銀はしらっとオトボケしているので、いったん▲10bp近辺という事でYCCの短期政策金利に整合的な金利水準になった短国なのですが、恐らく需給が強い中でホイホイと買入をすると金利低下に拍車をかけると思うのですが、さて減額(別にMB目標関係ないんだから見送っても良いくらいですがそれはさすがに何なので減額という感じで)するのかどうか、ということで今日は長期輪番(の他に何か3ゾーン以外で入るはずだが)と共にオペの額がどうなるのかが注目される所ではあります。



・金利が下がると対処が意外に面倒なYCC政策

とまあそんな状況になっているのですが、こんな感じで金利が下がってくるとYCC政策は意外に困るのって、リスクオフで買われる→国債買入減額、となった時に為替市場ちゃんが「日銀が国債買入を減額したから円高ヒャッハー」とか言い出したり、株式市場ちゃんが「日銀が国債買入を減額したから株安ヒャッハー」とか言い出すリスクがあるという辺りになるんでしょうか。

何かこの前の長期輪番減額でも別に何かがあった訳ではないですし、世の中の注目は駄々っ子トランプ大先生の暴れっぷりだったりすると思うので、しらっと買入減額とかしても問題無い様には思えるのですが、まー下手に注目されて反応されると後々面倒、というのも分かるのですな。

それに、さっきも申しあげましたが、もとよりこのYCC政策って「均衡金利水準に対して国債イールドカーブの水準をこの辺りに持って行くことによって、実質的な緩和度合いを調整する」というのが概念的にあるので、リスクオフ環境の中では実は金利って下げておかないとマズイのではないかという理屈もこれありで、金利に上昇圧力が掛かっている時には「経済物価情勢が好転する中で金利上昇を抑制することによって緩和効果がより強くなるのでウマー」という理屈になるのですが、金利低下するようなときの理屈(と追加緩和手段)に乏しいというのがアレですのでさてどうなるのやら(まあ足元は別にそこまで景気悪化懸念だの金融ショックだのという話ではないので誤差の範囲内ちゃあ範囲内なのでしょうけど)ですな。


○備忘メモなど

・ちょっと一発ウケてしまったので

毎度おなじみの財務省HP
http://www.mof.go.jp/

新着情報の昨日のところにこんなのが。

財務総研 「エビデンスに基づく政策形成」とは何か(「ファイナンス寄稿」)

http://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/index.html#01
「シリーズ日本経済を考える」

http://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f01_2017_08.pdf
「エビデンスに基づく政策形成」とは何か
前財務総合政策研究所研究官
山名 一史*1

極めてちゃんとした話が展開されているのですが、

『つまり、効果が合理的に予測される政策のみを行うべきである、という考え方である。治療を行う際は、個人の経験や勘に基づく治療法ではなく、効果があると科学的に認められた治療法を選択するべきである*2、と考えれば分かりやすい。』(上記寄稿文1ページ目(「ファイナンス」2017年8月号76ページになります)より引用)

とあって置物リフレ理論いや何でもないです。


・ジャクソンホールですがな

https://www.kansascityfed.org/publications/research/escp
Economic Policy Symposium Proceedings

は良いのですが右側の方にある過去のお題の所にある今回のお題、『2017: Fostering a Dynamic Global Economy』をクリックしたいのだがまだデッドリンクになっていて式次第がワカランチ会長となっていますが、多分これ始まるとリンクできて講演とかのテキストへのリンクが貼られてい行くと思うので俺様備忘ブックマーク用に残しておきます。





2017/08/24

お題「物価目標下げるのは現実的じゃないと思うけど(浜田先生ネタ)/格差拡大のネタって最近欧米中銀で多いのかね」

http://jp.reuters.com/article/trump-gov-shutdown-republican-idJPKCN1B32HL
Business | 2017年 08月 24日 05:40 JST
トランプ氏の政府閉鎖示唆、金融市場に波紋

国境じゃなくてホワイトハウスの周りに壁を作った方が良いんじゃないですかねえ(呆)。

○結局上下とも大きくは動いてくれないのか・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1L92HF
Markets | 2017年 08月 23日 15:16 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反発、長期金利変わらず0.035%

『<15:13> 国債先物は小反発、長期金利変わらず0.035%

長期国債先物は小反発。前場は米債安の影響などから弱含みとなったが、後場はトランプ米大統領の発言を材料視して日経平均株価が上昇幅を縮小すると、買い戻された。現物債は午後の取引で中期ゾーンが底堅く推移した。日銀オペが需給の引き締まりを意識させる結果になったため、5年債に押し目買いが入った。超長期ゾーンは前日に買われた反動から20年債、30年債が調整地合いになった。長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比3銭高の150円77銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比横ばいの0.035%。』(上記URL先より)

20年近辺だけ引けで他は前日比強いという結果ですが、そらまあ火曜の超長期入札引け平均の足切引け甘水準でやっておいて1毛強(カレント以外は5糸でしたけど)とかでやっておりましたので20年図々しいじゃろというところでしたな。つーてそこの部分も別に5糸の話なのではありますが。

なお昨日の輪番オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170823.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,800 2017年8月25日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,300 2017年8月25日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2017年8月25日
国債買入(残存期間25年超) 1,000 2017年8月25日

中期超長期でしたが超長期はともかく中期も減額せずで来ましたので中期が強いという展開になっておりましたが、この調子で中期が減らないでいるとそろそろ「日銀は金利低下を容認している」とか「そもそも日銀の10年金利の誘導目標は0%程度なのだからプラス金利じゃないといけないというのは間違い」とか煽ってくる何とかスト先生の能書きが徐々に増えていくに1万ジンバブエドル。

輪番結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170823.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 7,590 2,807 0.002 0.003 69.8
国債買入(残存期間3年超5年以下) 8,165 3,303 0.002 0.003 98.8
国債買入(残存期間10年超25年以下) 6,217 2,009 0.007 0.009 79.4
国債買入(残存期間25年超) 2,993 1,004 0.002 0.005 19.0

そら(20年新発の引けを5糸強くしたんだから)そう(20年輪番が他より5糸甘くなる)よという結果になっておりますが、別に輪番封鎖したような感じでもないので債券市場ちゃんはあの調子で推移という事なんですけど、さすがにこれは輪番減らせるだろと思うんだが(特に中期)どうするんでしょうなあ。


○益々言っている話が訳分からなくなっているリフレ理論なのですが・・・・・・・

https://mainichi.jp/premier/business/articles/20170822/biz/00m/010/006000c
政治・経済週刊エコノミスト・トップストーリー
激突「浜田宏一氏vs元日銀幹部」インフレ目標は妥当か
2017年8月23日 エコノミスト編集部

ということですが、どうも詳しくはエコノミスト(日本の)誌を読めとの事なので詳しくは知らんぞなという所ですが、

『浜田氏は冒頭の講演で「アベノミクスでうまくいっているのは雇用と企業収益。アベノミクスが失敗という指摘にはまったく根拠はない。それなら5年前(の失業率の高い時代)に戻っていいのか」と強調。リーマン・ショック(2008年)後の日本経済の落ち込みについて、日銀の白川方明・前総裁時代の金融政策を「金融緩和しなかったために円高となり、日本はものすごく損をした」と批判した。一方で、アベノミクス後の金融政策について「15年の終わりごろから円高になり、金融政策が効かなくなってきた」との認識を示した。』(上記URL先より、以下同様)

「金融緩和しなかったために円高となり、日本はものすごく損をした」というのと、「15年の終わりごろから円高になり、金融政策が効かなくなってきた」という説明の整合性が全く理解致しかねるのですけれども、正当化しようとして説明がアクロバットどころか複雑骨折になっておられるように見受けられますが。

『日銀が目指す2%のインフレ率目標は「石油価格が下がっているので、その影響は除外してもいい」と述べ、「(インフレ率が目標に達しないからと)黒田東彦総裁を糾弾するのが日本のメディア。』

えーっと、○○だから目標が行かない、というのは一般物価と個別物価を混同した初歩的な議論で全く話にならない、というのが置物リフレ理論だった筈ですし、目標達成しなかったら糾弾されるの当たり前だしあんさんらが白川日銀を口を極めて罵ったのと比較したら糾弾どころか批判にすらなってないんですけど被害妄想か何かになってませんかねえ。

『続く、浜田、高橋氏の直接対談では、「必ずしもインフレ率2%にこだわる必要がないのではないか」という高橋氏の指摘に対し、浜田氏は「インフレは我々にとっていいことではない。雇用がよければインフレ率は低くてもいいのでは。(エネルギーや食料品を除いた)『コアコア』の物価指数で、場合によっては1%(の目標)でもいいかもしれない」と2%にこだわらない考えを表明。日銀が目標としてきた根幹が揺らぎかねず、アベノミクスに転機が訪れていることを示唆した。』

http://jp.reuters.com/article/t9n09z001-interview-hamada-idJPTYE8BQ04C20121227
Business | 2012年 12月 28日 08:47 JST
インタビュー:日銀は無制限緩和を、物価目標2─3%が適切=浜田宏一教授

いやマジでこの爺さん表に出てこの手の話をするんだったら主催者は焼き土下座セットを用意することをお勧めしたいのですけれども・・・・・・・・

とまあそういう血圧上昇モードという話はさておきまして、この調子で平然とリフレ一派の皆さんがアクロバット正当化をおっぱじめている、というのはまあさすがに「この調子で物価目標達成に拘ったら何時まで経っても勝利しない」という現状については認識している、という事ですから、「何とかして勝った事にして区切りをつけておかないとマズイ」という中でどう収拾するのかというのは考え出しているんでしょうなあ(だってそうしないと置物リフレ一派はタダのホラッチョでしたという話になりますからねえ、事実だからしょうがないと思うけど)となりますかね。

・・・・・・・となりますと、「勝った事にする」というスキームがブレーン方面の皆さんからは検討されているんでしょうなあとは思われるのですが、意外にネックになりそうなのが黒田総裁だったり安倍ちゃんだったりするように思える訳で、黒田さん頑固だし安倍ちゃんは良くも悪くも信念の人(というかドグマの強さというか)で、「話を誤魔化して勝った事にする」ってのがそう簡単に出来るのかとゆーのもありますな。まあ安倍ちゃんが物価目標に関する話でも始めたらそら大騒ぎになると思いますけど黒田さんにお任せっぽいように見えるし。

でまあそういう時に「2%は下げないけど中長期的に達成なので緩和は長期にわたって継続」というのと、上記の浜田大先生の仰せになる「2%を下げる」という話になると話の筋が全然違ってくる訳で、2%を下げるとなるといきなり出口政策になってしまう(2%下げないで長期継続だったらマイナス金利は解除されても長期金利は当初跳ねても結局限定的にしか上がらん)ので、まあこの浜田大大先生の寝言がどの程度安倍ちゃんに響くのか存じません(そもそも全く届かないんじゃないかという気もせんでもない)ですし、「2%の数字を下げて達成したことにする」というちゃぶ台ひっくり返しをしたらそれこそ円高に振れるじゃろお前は何を言ってるんだという所なので現実感は無い話ではあるのですが・・・・・・・・


○最近はこのネタが流行なのですかねえ(ECBコンスタンシオ副総裁の講演)

直近ではドラギ先生の講演もあるのですがこんなのもありまして、

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2017/html/ecb.sp170822.en.html
Inequality and macroeconomic policies
Intervention by Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
at the Annual Congress of the European Economic Association Lisbon, 22 August 2017

最初の方から。

『It is indeed a pleasure to participate in this timely discussion on the distributional impact of macroeconomic policies. For too long, the distribution of income and wealth was almost ignored by macroeconomics. As recently recalled by Krusell, this is perhaps due to the “presumption in the literature that the distribution does not matter in the determination of aggregates”.[1] In the 1990s, some studies underlined the end of the Kuznets’ phase of declining inequality and demonstrated that the trade-off between equality and growth no longer seemed to hold empirically.[2] The analysis of distribution in macro theory was however not pursued. A possible second reason for the neglect, could have been that income distribution was not a macroeconomic concern, as it was mostly explained by micro factor price theory with the consequence that at the macro level, “trickle-down economics” would be the right approach to economic policy.』

『These views were wrong and, naturally, the crisis shattered both presumptions.』

この前のダドリー総裁の講演とか、暫く前のECBフォーラムでのバーナンキの講演とかでもありましたが、最近はどうもこの「経済が全体として成長しても個別に差が拡大するのはアカンのではないか」という話が流行しているんですかねえ。でもってこちらでも従来マクロ政策という範疇においては無視(ミクロの政策として割り当てますということで)されていたこの問題について考察しましょ、というようなお話になっているようですの。

『First, the contributions of Mian and Sufi, Carroll or Muellbauer[3] showed how relevant heterogeneities related to indebtedness, credit restrictions or marginal propensities to consume out of different sources of income or wealth, were important to explain aggregate consumption behaviour before and after the crisis. Since then, the Heterogeneous Agents New Keynesian - HANK - class of models became an active area of research on the monetary policy transmission mechanism.[4] The recent contribution of Ahn, Kaplan, Moll, Winberry and Wolf (2017) at the NBER Macroeconomics Annual Conference[5] titled “When inequality matters for Macro and Macro matters for inequality” demonstrates how significant the feedback loop is and how models with realistic household heterogeneity better fit empirical consumption dynamics.』

ごちゃごちゃ説明していますが、金融危機以降に行われたマクロ政策(主に金融政策という話でしょう)の波及効果を考えた場合、例えば緩和政策で需要を喚起、と言っても個別には緩和政策が来てもその時点で不良債権モードになっていて借入出来ない人とか、そういうような主体が社会に多く存在するような場合って、金融緩和効果が思惑のように効いてこないのではないか、とまあそういう理屈。

『Second, the social and political aftermath of the crisis have shown how important distribution of income and wealth as an economic policy issue is. In this respect, the seminal empirical and policy contributions of Atkinson, Piketty, Saez, Milanovic and others, were very relevant to make the point as they analysed the dynamics of the distributions of household income and wealth, across many countries and over many decades. The shocking increase of inequality since the late seventies and the hollowing out of the middle class in many advanced economies, as showed in the famous “elephant graph” of Milanovic,[6] have focused minds on developments in inequality. The striking developments can be seen in Table 1 from Alvaredo et al. (2017).[7]』

でもって図表1というのは上記URL先から見てちょという所なのですが、1978年〜2015年の間に、中国と米国とフランスを例に出して、半分以下の所得層、中位50%〜90%の所得層、上位10%の所得層に関して、実質(名目じゃないよ)所得がどんだけ伸びましたか(この間の累積数値)というのがあって、これがまたすごい事に米国の場合半分以下の方々▲1%(全平均は+59%)とかいう数値になっている(ちなみにフランスはほぼ揃っている)というのが出てくるというお話で、さてそういう状況ってよろしいんでしょうかみたいなお話で、資産とかの差についての話も以下あるのですが、例によって本日は頭出しということで勘弁(どうもすいません)。








2017/08/23

お題「20年入札好調でフラットニングとな/米国中銀関連ネタ少々」

ほほう。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170823/k10011108161000.html
都心で2週間ぶり猛暑日予想 各地で猛烈な暑さに
8月23日 5時47分

既に店頭に並んでいるのは秋物という中で暑くなられましても・・・・・・・・・

○市場備忘録関連

・20年入札ェ・・・・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1L829C
Markets | 2017年 08月 22日 15:15 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反落、20年債利回り4月21日以来の低水準

『 <15:09> 国債先物は小反落、20年債利回り4月21日以来の低水準

長期国債先物は小反落。前日に150円81銭まで一気に買われた反動で調整地合いとなった。現物債は高安まちまち。中長期ゾーンは先物に連動して軟化する一方で、超長期ゾーンは20年債入札を順調にこなしたことで強含みとなった。20年債利回りは4月21日以来の0.540%、30年債利回りは6月30日以来の0.830%、40年債利回りは7月3日以来の1.040%にそれぞれ低下した。

長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比3銭安の150円74銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比0.5bp上昇の0.035%。』(上記URL先より)

とまあそういう事で昨日は20年入札だったのですが華麗にブルフラットの巻。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20170822.htm

(1)応募額 3兆6,652億円
(2)募入決定額 8,133億円
(3)募入最低価格 100円85銭(募入最高利回り)(0.552%)
(4)募入最低価格における案分比率 63.1797%
(5)募入平均価格 100円88銭(募入平均利回り)(0.550%)

20年入札に向けて前場ちょっとだけ超長期を安くして前場引けでは引け甘(新発はショート銘柄っぽいので5糸甘くらいだけど既発は多分5糸甘オファー)にしていたのですけれども、結局アベレージは引けになってしまって足切も2糸甘とかになりやがりまして強い結果ということで、まあ落札結果出る前の後場寄りから先物戻ったりしていましたが、落札結果出て先物は引けに戻るわ20年新発は5糸強(なので0.545%)出合うわとかやっていまして、その後先物とかは伸びない中で20年カレント1強(他は5糸強)とかこの動かん相場だとカーブ随分動かされましたなあ(なお昔はこの程度は良くある話だった筈なのですがYCC恐るべし)という感じの展開。

いやまあその前に超長期って長期中期に対してはカーブ調整していましたけれども、絶対水準的に0.550%の所が壁っぽい感じになっていたのですが、入札でちゃっかり抜けるとはという感じですが、何せ今日は今日で超長期輪番があるので、入札でワッショイワッショイとやりながら結局日銀に放り込むの巻となってしまうとまた一服になるので、今日の輪番の結果を見ないと何とも。ただ昨日の20年入札で新発(つーてリオープンですけど)のニーズちゃんが(輪番プレイではない実需の)投資家からどの程度来ましたかねえというのがありまして、それなりに実需の買いがあるんでしたら(今月は輪番の入れ方のバランスも良いので)いきなり封鎖せんでも良かろうにとは思いますがさてどうなるやら。

まーこれで月末にかけて輪番減額はしやすくなった、とはあたしゃ思うのですけれども(というのは輪番少々減らしたからと言って為替市場がそんなに派手に反応するとは思っていないからなのだが、たぶん債券市場と違って為替市場の場合「あらやっちまいましたのでさっきの無し」とばかりに調整を行っても多分効かない、という特性があると思うので、今はたぶん輪番少々弄ってもネタにされないのですが、ひとたび注目ネタに祭り上げられると全く身動き取れなくなる、というのは怖いと思う)、まあ中々そこで冒険もしにくいというのもあるでしょうし、輪番減額警戒しながらもサガランチ会長相場になっているのでさてどうしたもんかという展開になりそうですな。これで輪番減額警戒とか無かったらヒャッハーヒャッハーと超長期祭りになって、祭りになった所で一発買いがあって更にファイヤーするのか、それともドカンと戻り売りが出て水をぶっかけられるか、というような展開になる筈なのですが、YCC攻撃によってどっちも起き難いという困った相場ではありますな、ナムナム。


・業態別当座預金残高

また出遅れた訳だが。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/index.htm/

毎度の『(参考)付利の対象となる当座預金残高(当月16日〜翌月15日の平均残高、適用金利別)』ですけれども。

補完当座預金制度対象先ベースの当座預金座残高は平残ベースで8兆1,470億円増加。

掛け目が変わったのでマクロ加算残高の理論値は▲24,050億円と減少。
ゼロ金利適用残高が3,160億円増加。
マイナス金利適用残高は▲22,170円と減少して残高は22兆5,630億円。

つーことでマイナス金利適用残高って4月積み期間の28兆5,719億円をピークに減少傾向にあるのですが、そうは言いましても額が額なのと、都市銀行辺りがずーっとカツカツで運営しているっちゅうことはつまりマイナス10の回避で資金を(よりマシなマイナスに)出すというインセンティブは継続しているでしょうからこの数字そのものでは市場金利に影響という話でもなさそう。

都市銀行の計数は7月積み期間ではゼロ金利適用残高の理論値50兆5,760億円に対して実際のゼロ金利残高が50兆2,400億円で差分が3400億円でして、前回積み期間の差分が2400億円で差分が拡大したか残念(笑)という感じですが、謎の着地調整はまだ続くという感じで、この着地調整芸は伝統芸能として継承して頂かないと、将来(いつ来るのか知りませんが)何らかの出口的な状況になった時に積みの進捗調整とか誰も出来ない中で市場がどういう金利を作るのかワカランチ会長になってしまいますので伝統芸能は継承して頂きたいものです(別にイヤミで言っている訳ではなくて大真面目に言ってますので念のため)。

プラス金利の内使い切れていない分(億円表示)
1月:22,939
2月:17,178
3月:25,421
4月:12,747
5月:18,530
6月:12,520
7月:17,300


ゼロ金利の内使い切れていない分
1月:97,012
2月:94,811
3月:130,210
4月:99,930
5月:106,500
6月:120,170
7月:119,980

ここの数字は基本安定ですな。


補完当座預金制度適用外の人の残高

1月:97,650
2月:97,186
3月:103,695
4月:107,463
5月:108,770
6月:138,120
7月:139,530

6月積み期間で急に増えて????だったのですが、7月積み期間はあまり動いていません。これは政府系金融機関か清算機関絡みで動くものだと思いますが。


○虫干しネタというか途中ネタの続き系で(なお米国ネタ)

・FOMC議事要旨の景気認識を改めて確認してみる

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20170726.htm

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の部分ですが、インスタント読み以外の部分も確認しておく(利上げとかその辺の話に絡むので)。

『In their discussion of the economic situation and the outlook, meeting participants agreed that information received over the intermeeting period indicated that the labor market had continued to strengthen and that economic activity had been rising moderately so far this year. Job gains had been solid, on average, since the beginning of the year, and the unemployment rate had declined, on net, over the same period. Household spending and business fixed investment had continued to expand. On a 12?month basis, both overall inflation and the measure excluding food and energy prices had declined and were running below 2 percent. Market-based measures of inflation compensation remained low; survey-based measures of longer-term inflation expectations were little changed on balance.』

だいたい『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から始まる部分の冒頭に関してはFOMC当日に出てくる声明文の第一パラグラフと同じ話が書かれているのが仕様なのでここに関しては基本スルーで大丈夫だと思う(今回も同じ話だった)。

『Participants generally saw the incoming information on spending and labor market indicators as consistent, overall, with their expectations and indicated that their views of the outlook for economic growth and the labor market were little changed, on balance, since the June FOMC meeting. Participants continued to expect that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity would expand at a moderate pace and labor market conditions would strengthen somewhat further.』

と、ここまでは声明文で示されていた話と同じ。

『In light of continued low recent readings on inflation, participants expected that inflation on a 12-month basis would remain somewhat below 2 percent in the near term. However, most participants judged that inflation would stabilize around the Committee's 2 percent objective over the medium term.』

で、インスタント読みのところでも議論になっていましたが、物価が伸びない事に関しては当然ながら指摘されているという図ではあります。

『Data received over the intermeeting period reinforced earlier indications that real GDP growth had turned up after having been slow in the first quarter of this year. As anticipated, growth in household spending appeared to have been stronger in the second quarter after its first-quarter weakness. Reports from District contacts on consumer spending were generally positive. However, sales of motor vehicles had softened, and automakers were reportedly adjusting production and assessing whether the underlying demand for automobiles had declined.』


『Participants noted that the fundamentals underpinning consumption growth, including increases in payrolls, remained solid. However, the weakness in retail sales in June offered a note of caution.』

経済に関する認識の中では、基本的には強いという認識ではあるのですが、6月のリテールセールスが弱かった事に関しては警戒、とありまして、5月6月と小売売上が弱かったですが7月に持ち直して強い数字になっていた、というのが後から出ているので、この辺りに関してはFRBニッコリという所になったんでしょうな。

『Reports from District contacts on both manufacturing and services were also generally consistent with moderate growth in economic activity overall. Construction-sector contacts were generally upbeat. Reports on the energy sector indicated that activity was continuing to expand, albeit more slowly than previously; survey evidence suggested that oil drilling remained profitable in some locations at current oil prices. The agricultural sector remained weak, and some regions were experiencing drought conditions. A couple of participants had received indications from contacts that business investment spending in their Districts might strengthen.』

企業部門に関しては干ばつの影響受けた農業とか弱いのもあるけれども、基本的に威勢の良い話が続いております。

『Nevertheless, several participants noted that uncertainty about the course of federal government policy, including in the areas of fiscal policy, trade, and health care, was tending to weigh down firms' spending and hiring plans.』

トランプの経済政策の先行きが読めないので企業が新規の投資や雇用を控え気味という指摘を数名が行っておりますな。

『In addition, a few participants suggested that the likelihood of near-term enactment of a fiscal stimulus program had declined further or that the fiscal stimulus likely would be smaller than they previously expected.』

財政支出が出てくるのが遅れるとか期待したほどでないのではという懸念もあるとのこと。

『It was also observed that the budgets of some state and local governments were under strain, limiting growth in their expenditures.』

それから地方政府の予算に関しては相変わらず財政制約があるので中々ドライバーになりにくいですねと。

『In contrast, the prospects for U.S. exports had been boosted by a brighter international economic outlook.』

と、あっさり味で片付けているのですが、主要国の中央銀行(と言いましても日本と米国と欧州と英国ですけど)は揃いも揃って「海外経済の見通しが良くなってきているぜヒャッハー」と言っているのだが、この部分って本当なんでしょうかねえと毎度不思議ちゃんではある。

『Participants noted that labor market conditions had strengthened further over the intermeeting period.』

その次は労働市場の話。

『The unemployment rate rose slightly to 4.4 percent in June but remained low by historical standards. Payroll gains picked up substantially in June. In addition, the employment-to-population ratio increased. Participants observed that the unemployment rate was likely close to or below its longer-run normal rate and could decline further if, as expected, growth in output remained somewhat in excess of the potential growth rate.』

労働環境に関しては威勢の良い話しか出て来ない。

『A few participants expressed concerns about the possibility of substantially overshooting full employment, with one citing past difficulties in achieving a soft landing.』

数名(A few)の方々はオーバーシュートすることに懸念を示しているとな。

『District contacts confirmed tightness in the labor market but relayed little evidence of wage pressures, although some firms were reportedly attempting to attract workers with a variety of nonwage benefits.』

アネクドータルな話という事ですけど、企業が人員を確保するのに賃金ではなくてフリンジベネフィットで行っているという動きもある、とかどう見ても物価上昇しないモードです本当にありがとうございました。

『The absence of sizable wage pressures also seemed to be confirmed by most aggregate wage measures. However, a few participants suggested that, in a tight labor market, measured aggregate wage growth was being held down by compositional changes in employment associated with the hiring of less experienced workers at lower wages than those of established workers. In addition, a number of participants suggested that the rate of increase in nominal wages was not low in relation to the rate of productivity growth and the modest rate of inflation.』

賃金上昇圧力が弱い事に関する議論なのですが、数名(a few)は高スキル労働者よりも低スキル労働者が増加していて、相対的に賃金が低い人の雇用が増加しているからではないか、とか数人(a number of)は生産性の上昇や物価の状況から比較すると今の賃金上昇はまあこんなもんでしょう、という指摘をしている、というのがあって、一方で賃金が上がる系の話ってのはさっきのオーバーシュートに懸念、というのしか無い、ということで、これはまあFOMC参加者の中でも「賃金が上がりませんなあ」という感じになっているんでしょうな、という雰囲気は伝わるというところでして、まあこういう辺りに関しては物価に対してあまり強気ではない、というトーンを感じるところだと思います。

以下の部分は議事要旨出た日にインスタント読みしたので割愛。


・SF連銀の謎レポート

正直読んでいて????ではあったのだが。

http://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2017/august/forecasting-chinas-role-in-world-oil-demand/
FRBSF Economic Letter
2017-24 | August 21, 2017
Forecasting China's Role in World Oil Demand
Deepa D. Datta and Robert J. Vigfusson

これなんですけど、ちょうどベンダーのヘッドラインに「SF連銀レポートで中国の需要で将来的に原油価格が100ドル」とかあったのでつられて見たんですけどね。


最初のアブストラクトの部分から。

『Although China’s growth has slowed recently, the country’s demand for oil could be entering a period of faster growth that could result in substantially higher oil prices. Because Americans buy and sell oil and petroleum products in the global market, global demand prospects influence the profitability of U.S. oil producers and the costs paid by U.S. consumers. Analysis based on the global relationship between economic development and oil demand illustrates the prospects for Chinese oil demand growth and the resulting opportunities and challenges for U.S. producers and consumers.』

中国経済の成長は鈍化しているけれども今後も中国の原油需要は拡大するのでいずれ原油価格はどどーんと上がって米国経済にはしんどいですね、ということのようなので、分析に入る前の最初の所のまとめっぽい所には、

『China’s future demand for oil will depend on both its economic growth and its energy choices. A high level of growth combined with energy-intensive choices could result in Chinese oil demand doubling by 2025. Even in a scenario with more moderate growth and less energy-intensive choices, China’s oil demand would still grow by over 30% by 2025. To the extent that U.S. and foreign oil producers do not anticipate this demand increase, prices would have to rise, perhaps dramatically.』

とありまして、2025年までは中国の原油の需要は30%以上は拡大するので原油価格が上がるでしょうという説明なのですが・・・・・・・・・


・何で中国の場合はバンバンと需要が伸び続けるのかの理屈が良く分からん

小見出しの『The Varian rule』という所に行きます。

『To estimate oil demand growth in China, we adapt the Varian rule (McAfee 2015). Named after economist Hal Varian, the rule posits that “a simple way to forecast the future is to look at what rich people have today; middle-income people will have something equivalent in 10 years, and poor people will have it in an additional decade” (Varian 2011). Although the Varian rule was originally applied to the spread of luxury consumer goods, we extend this rule to apply to nations’ demand for oil: As countries transition from low to middle to high income and consumers’ demand for material goods increases, so will the demand for oil.』

まあ要するに国民総生産と原油需要に相関があるとかいうのを元に未来予測をしているようだが。

『For example, consider recent oil demand growth in Korea. Figure 1 illustrates the rapid growth in Korean GDP and oil demand in the 1990s, followed by a period of slower growth and roughly stable oil demand. Consistent with our take on the Varian rule, as Korea’s GDP rose, it rapidly adopted levels of per capita oil consumption that were comparable to those of high-income countries. The impact of this dramatic increase in per capita oil demand on global oil markets, however, was slight. This was because Korea’s increase in oil demand was only a small fraction of global production, and also because, at that time, Saudi Arabia had ample spare capacity. A similarly rapid transformation accompanied by a large per capita increase in oil consumption in a larger country like China would have much more dramatic effects on global oil markets.』

図表1というのはURL先見ていただきたいのですが、韓国を例に出して高所得国になった所で1人辺りGDPが伸びても原油の需要の伸びが止まってきたというのを示しているのですが・・・・・・・

『To apply the Varian rule to China, we first look at per capita oil consumption across the world today and see how it varies with income. We use that information to make a forecast for China’s oil demand, conditional on an assumption about China’s income growth. Using oil demand data from the International Energy Agency and GDP and population data from the International Monetary Fund (IMF) we generate a sample of 126 countries that is fairly representative of the complete set of countries in the world based on size and income. Figure 2 shows a best-fit line (dashed blue line) representing the relationship between per capita GDP and per capita oil demand for these countries. We use a logarithmic scale for GDP per capita (multiples of 10) to show the full range of data and to capture the nonlinear relationship between the two variables.』

現在の世界各国の1人辺りGDPと原油需要の関係を図表2というのに出していて、そっちだと威勢よく伸びるという図になっているのですが、トレンドラインの引き方ってこれで良いのかというのになっております。

『The figure depicts the Varian rule across countries, showing that countries with higher per capita GDP tend to have higher per capita demand for oil, with a sharp acceleration in oil demand as incomes rise. As in Figure 1, the pattern implies that, as China’s per capita GDP grows, its per capita oil demand is likely to grow rapidly.』

だそうですが、次の『Predicting China’s oil demand』にある図表3によると中国の1人辺りGDPが直近で8000ドルくらいですから、まあ今後も原油需要が伸びるというのは分かるのですが、韓国の例だと1人辺りGDPが1.5万ドルくらいまで来た所で需要が頭打ちになっている(図表1)のに、何故かこちらのレターでの推計だと(図表3)中国の需要は一人当たりGDPが伸びる中で途中から頭打ちになるような推計になっていないという謎推計になっています。

まあその『Predicting China’s oil demand』という所の最初に、

『Of course, there are caveats to our approach. Our analysis does not consider any existing or potential policies specific to China that encourage or discourage oil consumption. Furthermore, we assume that China will adopt technologies similar to those already in place in other countries. If policies were enacted to encourage more energy efficient technologies or to limit carbon emissions, the Varian rule estimate could overpredict oil demand growth.』

と足元の数値からトレンド引いているだけというのは断っているのですが、とにかくそーゆー推計の下にその後『Implications for oil prices』というのをけいさんしていて、その結論が・・・・・・・・

『Using the response of oil prices to surprises in demand growth from Hamilton (2009), with a price elasticity of 0.1, if supply did not increase to meet the additional demand growth, oil prices would have to almost double from $90 to $172 per barrel in order to balance demand and supply in our high-demand scenario. Although this represents an extreme and less likely outcome, it does highlight the risk of unexpectedly strong demand growth.』

つーことで供給が増えないと原油価格は(中国の成長が4%成長で)90ドルから(中国の成長が7.5%成長で)172ドル(1バレルあたり)になりまっせ、という推計なのですが、どうも怪しげな感じはするけど、何かとりあえずどこかで話題になるかも知れない極端なネタが中銀方面から出ていました、ということで念のためチェックしてみましたということで(ちょっと無理矢理感があるので話題にならんのかも知れないけど)。







2017/08/22

お題「ECB議事要旨から/20年入札ですなあ」

まあ今更の話ですけど。
http://www.jbatibor.or.jp/news/Revision_of_CoC.html
第3回市中協議結果を踏まえた「全銀協TIBOR行動規範」等の一部改正および全銀協TIBOR改革の実施日等について

ってのやって7月からTIBORの計算で実取引レートを参照してどうのこうのとかやっている側から、

https://www.jiji.com/jc/article?k=2017072800282&g=int
LIBOR、21年に廃止=英金融当局(2017/07/28-07:11)

って問題起こした元が勝手に知らんぷりする訳で、金融規制関連って元々やらかしている英米欧州とかが後から知らんぷりするのに対して何でやらかしていない日本が律儀に色々と負荷増やすことになるのかよ、というのはいつももにょりますな。

#急にそんな事を思い出したのでメモってみた


○さて20年入札ですが

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1L72EO
Markets | 2017年 08月 21日 15:17 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、長期金利変わらず0.035%

『 <15:14> 国債先物は続伸、長期金利変わらず0.035%

長期国債先物は続伸。前週末の夜間取引で、良好な需給環境を背景に堅調に推移した流れを引き継いで買いが先行した。中盤に伸び悩む場面もあったが、終盤にかけて株安を手掛かりとした海外勢主体の需要が強まったことで上値追いとなった。 現物債では、超長期ゾーンにあすの20年債入札を前にした調整が入る可能性があったが、国債先物の強い地合いを確認すると押し目買いが優勢となり、金利は低下基調になった。中期ゾーンは前週末の反動から軟化していたが、終盤に切り返した。国内銀行勢や海外勢の売買が交錯したとみられている。』(上記URL先より)

つーことで昨日は20年入札の前日な訳ですが、債券市場ちゃんの方はサガランチ会長ぶりを遺憾なく発揮致しまして取引最終では先物よりも強い1毛強い(まあ金曜の引けのバランスが微妙だったのはあるけど)0.550%と暫くの間20年カレント単利でメドっぽく抑えられてきた水準に入札前日に到達とか中々の所業。そらまあ5年も▲10bpレベルに戻ってますし、10年も3.5bpとかに来てますから20年も金利下がります罠とは思いますが、この入札の前日に強くなってしまう辺りが味わいが深い。

つーことで、この水準でもやっぱり強くてしかもセカンダリーで売れ売れになってスコーンと抜けるのか、待てあわてるなこれは孔明の罠だとなってやっぱりレンジでしたとなるのかの両極端っぽい結果になると久し振りに相場らしい相場になる(??)のですがさてどうなるんでしょうかねえ。

とか言いつつこれで何かあまり動かないで入札迎えてその後も動かなくて輪番でチマチマ捌けて行ってやっぱりじりじりとしか推移しませんでしたとかいうしょうもない展開になったりするのかも知れませんが、何かさすがに今日はひと動き(どっちだかさっぱり分からんけど)してくれませんかねえ。

というだけのお話なんですが、まーここもと短国から始まり中期ゾーンもしらっと強いですし、全般的に需給が良い所ではありますので、折角の機会なので輪番もこのチャンスに減額したら如何でしょうか(入札翌日の超長期輪番減額されたら怪我人が出るのでお勧めしないが爆騰するんだったらやってみても良いのではとは思うけど)、とか思うのですが、輪番に関して警戒も出る水準でしょうから簡単に爆騰してくれないというのもあって、YCCがワークしてるちゃあワークしてるんだが相場のリズムがワケワカランモードがYCCが順調(?)に回りだして4〜5か月くらいたって(概ね3月くらいから順調に推移している感があって7月の指値でトドメ刺された感がある)更に訳分からなくなったイメージなんですけどどうでしょうかね。

あとまあ堅調な短国ですが今月残りは5000億円の買入で9月はもうちょっとペースが落ちてもおかしくないという中でここから発行レートどう推移していくのかも今後の見物ネタではありまする。


○ECB議事要旨ネタをば

何せ国内のネタがねーざますから出稼ぎに行くしかありません(笑)。

http://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2017/html/ecb.mg170817.en.html
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council of the European Central Bank, held in Frankfurt am Main on Wednesday and Thursday, 19-20 July 2017

全般超手抜きで『Monetary policy decisions and communication』だけネタにしましたが、さすがにそれでは何ですのでもうちょっと手前の『Monetary policy stance and policy considerations』の部分からネタに致しますです、はい。

ここの最初の所から。

『With regard to the monetary policy stance, members widely shared the assessment provided by Mr Praet in his introduction that the growth outlook had become more favourable, increasing confidence that inflation would gradually converge to levels in line with the Governing Council’s inflation aim.』

プラート理事の説明云々に関しては本当はこの前半の『1. Review of financial, economic and monetary developments and policy options』の後ろ半分になりますところの、『The global environment and economic and monetary developments in the euro area』を読むという話になるのですが、それをやりだすと長くなってしまいますのでパスしますが、要するに上記のような感じで、内外の経済情勢はより好転しているので、先々の物価もあがるでしょ、という話ではあるのですが、物価のスタッフ見通しは6月時点での見通しよりも引き下げられている(足元だけではなくて2017-2019の見通し期間全般に渡って引き下げ)というお話です。

『The ECB’s monetary policy measures had substantially reduced financing costs to historically low levels across the euro area. The pass-through of the measures was continuing and a prolonged period of growth above potential implied a progressive closing of the output gap and the reabsorption of labour market slack, supporting a gradual rise in inflation over time.』

ECBの政策効果の説明は基本この一点張りでして、金融緩和によって金融環境を緩和的にして、その結果として企業や家計の借入コストを引き下げることによって需要を喚起して需給ギャップや労働ギャップの改善を図ってインフレを目標に近づけていく、というのはワークしていますよと。

『The Governing Council could thus be confident in the continued effectiveness of the monetary policy measures. While positive supply shocks or the legacy of the financial crisis could delay the transmission of the ECB’s monetary policy to prices, these factors were ultimately of a temporary nature.』

でもってその効果については確信を持ち続けていますが、供給サイドのショック(要は原油価格の下げ)やら金融危機の後遺症などがあって物価上昇へのパスが遅れているけれどもそれは一時的な物に留まるでしょうと。


『At the same time, it was cautioned that inflation dynamics remained subdued and that there continued to be considerable uncertainty about the inflation outlook and the speed with which inflation was converging towards the Governing Council’s inflation aim.』

とは言え物価が中々上がらんことには警戒が必要とな。

『Measures of underlying inflation, while showing some tentative signs of a pick-up, still needed to show conclusive evidence of a sustained upward trend. Therefore, a very substantial degree of monetary accommodation was still needed for underlying inflation pressures to build up gradually and support headline inflation developments in the medium term. Patience was still warranted for reflationary forces to translate into stronger inflation dynamics.』

若干上昇の兆しも見えるのですが、まだ確信もてるような状態でもなく、したがって引き続き大規模な金融緩和を我慢強く続ける必要がある、というのをこれでもかと説明しているあたりがまあ物価に慎重ですねという印象を与える。

『At the same time, it was noted that the recent volatility in euro area HICP inflation, which had been largely due to energy price developments, underlined the need to look through changes in headline inflation that were transient and carried no implication for the outlook for price stability over the medium term. To this end, it was important to ensure that inflation expectations remained well anchored.』

足もとの物価はエネルギーの関係で振れているけれども、それよりも重要なのは基調的なインフレとインフレ期待ですよ。


『There was also broad agreement with the assessment provided by Mr Praet that euro area financial conditions had, despite a repricing across financial markets, remained broadly supportive of the continued economic expansion. Despite the flattening of the yield curve in the United States, financial conditions had tightened since the Governing Council’s previous monetary policy meeting in early June, mainly owing to an appreciation of the euro and an upward shift in bond market yields, which had also been reflected in a rise in real interest rates.』

ここで長期金利についての言及ですが、プラート理事も説明していますが、ユーロ圏の金利は上昇して米国がフラットニングするなかで寧ろリプライシングの動きになっているのでやや金融環境はタイト化しましたがその理由は景気が強い事とそれにともなってユーロが上昇していることですよと。

『The point was made that the prevailing financial conditions mostly reflected the improved macroeconomic conditions and fundamentals in the euro area. Moreover, it was underlined that the broader financing conditions relevant for households and firms, including bank lending rates and credit conditions, remained very favourable across the euro area.』

とは言いましても金融環境がタイト化した事の要因が主に景気の良い事の反映であり、借入の環境に関しては引き続き良好ですよと。

『In addition, sovereign and corporate bond spreads had been notably resilient to the repricing of the risk-free curve and had in fact tightened somewhat, which also suggested that the repricing had been largely related to positive macroeconomic news.』

金利上昇する中でクレジットスプレッドも落ち着いていますね、ということで金融環境が金利上昇で悪化したからケシカランというような筋での話をしている訳ではない。

『At the same time, concerns were expressed about a possible overshooting in the repricing by financial markets, notably the foreign exchange markets, in the future.』

ただし、今後もリプライシングが続いてオーバーシュートするのはイクナイそうだ。特にユーロ高。

『It was underlined that the still favourable financing conditions could not be taken for granted and relied to a considerable extent on a continued high degree of monetary policy accommodation. Such favourable financing conditions were providing significant support to the upturn in the euro area economy and continued to be seen as necessary for inflation to rise towards the Governing Council’s inflation aim.』

つーことなので緩和的な環境は引き続き必要、としつこく強調。


『Taking all these considerations into account, members generally agreed that, from the present perspective, the available evidence continued to indicate that convincing progress on a durable and self-sustaining convergence of inflation to the Governing Council’s medium-term inflation aim had still to be secured.』

纏めに入ってくる。

『Although inflation was gradually moving towards this aim and confidence in this movement was increasing overall, convincing signs of a more dynamic pick-up in measures of underlying inflation were yet to appear. Moreover, the baseline scenario for inflation remained crucially conditional on the very easy financing conditions that largely depended on the current accommodative monetary policy stance.』

金融緩和環境によるサポートで今後も物価目標に向けて進むでしょう、としつこい。

『Against this background, there was broad agreement among members that there was presently a continuing need for steady-handed and persistent monetary policy. The current monetary policy stance remained appropriate. This included keeping in place all elements of the Governing Council’s forward guidance on its key interest rates and the intended pace of monthly net asset purchases.』

よって今の金融緩和スタンスが今後も必要という幅広い合意(全員一致ではない)が示されたと。

『More generally, the point was again made that the overall degree of accommodation was determined by the combination of all the monetary policy measures implemented by the ECB and that the Governing Council’s assessment of progress regarding a sustained adjustment in the path of inflation should apply to the overall design and direction of the ECB’s monetary policy stance as a whole, and not with reference to any particular instrument in isolation, such as the duration and pace of APP asset purchases.』

と、ここまでしつこく現在のスタンス継続が重要としておきながら、ここでしらっと「個別のツールのどうのこうのと言うのではなく全体としてのパッケージで緩和するのが重要」という話をしておりまして、要はこれ今後APPの見直しとかをしても「全体としては緩和継続」と言うための用意はしているのよね。だからこそその前でしつこく緩和が重要とか言いまくっているのかも知れませんぜ。

『At the same time, it was underscored that the asset purchase programme would continue to be a key instrument if the Governing Council assessed the sustained adjustment of inflation to be at risk, while the use of other instruments, within the ECB’s mandate, could not be ruled out. In this context, it was also suggested that the stock versus flow effects of asset purchases be considered.』

しかも「買入は重要」と言いつつも「フロー効果とストック効果の比較」とか言っている辺りは買入のフローを落とす気はあるというのが伝わりますな。

『The case was made for proceeding gradually and prudently when approaching adjustments in the monetary policy stance and communication in line with the Governing Council’s evolving assessment.』

政策を調整するときには慎重に行う必要があります、って調整するという話だし・・・・・・・・・

『Caution was expressed that, in the present financial market environment, markets were particularly sensitive to incoming information. On the one hand, the improving economic environment could be expected to have an impact on forward-looking financial variables. On the other hand, there was a risk that financial conditions could tighten to a degree that was not warranted by the improvement in economic conditions and the outlook for inflation. In this context, the point was made that, looking ahead, the Governing Council needed to gain more policy space and flexibility to adjust policy and the degree of monetary policy accommodation, if and when needed, in either direction.』

双方への調整についてフレキシブルに、とは言ってますが、まあ緩和の縮小は考えてるんでしょ。

『A suggestion was made that some consideration be given to an incremental adjustment in the language on forward guidance, because postponing an adjustment for too long could give rise to a misalignment between the Governing Council’s communication and its assessment of the state of the economy, which could trigger more pronounced volatility in financial markets when communication eventually had to shift. However, it was generally judged paramount at this stage to avoid sending signals that could be prone to over-interpretation and might prove premature. Accordingly, there was agreement among all members to retain all elements of forward guidance, as proposed by Mr Praet.』

フォワードガイダンスの文言変更に関してもあまり引っ張らない方が良いのではという議論もあるようですが、まあとりあえず今回は様子見で・・・・・・・・

『The Governing Council would, in the autumn, consider the future course of its monetary policy and, in particular, its strategy for asset purchases beyond the currently communicated horizon.』

次回に色々決めましょか、という事ですが、これはまあ今後緩和規模を縮小しながらもやたらめったら「大幅な緩和政策が必要」というのを連呼して、緩和の縮小ではないというような説明で突っ走るんだろうなあとは思いましたがどうでしょうかね。





2017/08/21

お題「週初なので色々と雑感的なネタで(いつもそうですか、汗)」

最初のマクラに下のを使う積りが雑感が長くなったので小見出しつけてみましたよ

○黒田総裁インタビューがあったのでマクラの積りだったけど雑感

お前は何を言ってるんだ。
https://mainichi.jp/articles/20170819/k00/00m/020/183000c
黒田日銀総裁
「物価2%いずれ上がる」緩和堅持強調
会員限定有料記事 毎日新聞2017年8月19日 06時40分(最終更新 8月19日 06時40分)

『日銀の黒田東彦総裁は毎日新聞のインタビューで、現行の金融緩和政策を続けることで「物価は目標の2%に向けて上昇していく」と述べ、目標達成に自信を示した。政府には財政の信頼性確保なども注文した。』(上記URL先より)

ちなみに毎日さんは月に5記事までは無料で読めますので購読していない方でも読める場合があります。全部読むと益々「お前は何を言ってるんだ」としか申し上げようがないのですが、まあ状況を把握した上で引くに引けないから言っているのか、それとも状況を把握していないのかという所ですな。

でまあ「物価が上がらん」という方に関してはさすがに置物リフレ理論やらマッカラムルールやらがそもそも机上の空論だったというのは何ぼ何でも把握していると思うのですが、副作用論の話になると(全文の方にもあるのですが)出口政策がどうのこうのという話はするものの、マイナス金利に超低金利のイールドカーブべったり状態が継続していく中で金融市場の機能とか流動性とか参加者離散して市場が壊れる問題、および金融機関の投資行動という意味での副作用に関しては黒田総裁がそもそも認識しているのか、という点については甚だ心許ない所がありますし、佐藤さんと木内さんが退任してしまったところでこの問題について認識が出来そうな人が鈴木さん(と布野さんは行けるかもしれないと期待)は大丈夫にしても少数意見というのが何とも。

でもってね、出口どうのこうのってのは財政懸念で悪性インフレにならない限りにおいては別にバランスシートをどうするとか損失でた時に世間の動揺を招かないようにするにはどうしたら良いのかという話だから計算可能な話で定量的に見せられる問題になるのですが、金利市場が壊れてしまってショックに対して脆弱な状態になる問題とか、運用全然出来なくて貸出だってそう簡単に伸ばせるもんじゃない(金利の叩き合いもある)中で金融機関が収益確保するのが大変になって将来的に色々とマズイんじゃないですかーみたいな話ってえのは、中々定量的にこうだというのは出せないし(日銀が出している債券市場流動性の指標みたいなのとかもそうだし)、金融機関の収益性がどうしたって話だって、そらまあ趨勢的に収益大変になっていますなあというのは分かっても結局それって問題が顕在化した時には既に碌でもない事になっている訳で、そういうのに対して事前にどうのこうのってのははっきり言って定性的というかアネクドータルな感覚の問題だと思うの。

然るに、まあ現状でこのアネクドータルな話が感覚として腑に落ちてくれそうな人が非常に少ないですし、日銀の中の人たちだってどのくらいその辺が分かっているのかという事を考えるとこれまた大丈夫かよと思う(正直10年とか20年のスケールで見た時にその辺の感覚があまり共有されていないのではないかと思う(個人の感想です)ので・・・・・・・・)次第でして、まー何と申しますか色々とコマッタモンダと市場の片隅でせいぜいクダ巻いて悪態つく位しか能の無いアタクシは思うのでありましたとさ。

というただのどうでも良い雑感を週の頭からすいませんすいません。


○順当だがさすがに連発で一段の輪番減額は行わないと

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170818.htm
国庫短期証券買入 7,500 2017年8月22日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,800 2017年8月22日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,300 2017年8月22日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,400 2017年8月22日

金曜日は中期と長期の輪番でして、金利も順調に低下する中でこの前増やした中期3-5年の輪番の減額とかどうなのかという気もせんでもない訳ですが、まー5年国債入札の翌日の輪番で減額というのはさすがにどうかという事で順調に前回と同額での実施と相成りました。

短国買入に関しても短国入札強めで推移しているから7500じゃなくて5000という手も無い訳ではないのですが、1Y入札直後の短国買入ということで今月レギュラーの5000から増額した前週と同じく7500で入れてきまして、まあ順当ちゃあ順当ではあります。

・・・・・・・とは申しましても、この前長期輪番減らして来た時に「10年0.05%割れで減額してきたということは金利に関するメッセージ」みたいな解釈も出ていたりして、いやそこまで別に考えてねえだろと思いつつも、4500じゃなくて4400にした辺りが「もっと減らしたい」という気持ちだけは伝わったという所だったので、どうなんでしょうかねとは思われる所だったと存じますから、なんかこう「何を基準に輪番減額するの」というのが分かりにくいという受止めは来るだろうなあとは存じます。

なおオペ結果。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170818.htm
国庫短期証券買入 19,437 7,501 -0.006 -0.002 7.9
国債買入(残存期間1年超3年以下) 9,243 2,808 -0.004 -0.003 19.0
国債買入(残存期間3年超5年以下) 8,426 3,307 -0.006 -0.004 96.8
国債買入(残存期間5年超10年以下) 13,650 4,407 -0.003 -0.002 39.2

短国も含め普通に全ゾーン強くてうーんこの需給の強さという所ですが、今週火曜は20年の入札のあと流動性供給が長い所で木曜来週火曜の2発ですかそうですか。どうなるんでしょうな。

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1L42O0
Markets | 2017年 08月 18日 16:06 JST
〔マーケットアイ〕金利:長期金利が0.035%に低下、出合いベースで5月30日以来

『 <15:58> 長期金利が0.035%に低下、出合いベースで5月30日以来

10年最長期国債利回り(長期金利)が一時前日比0.5bp低い0.035%と出合い値ベースで5月30日以来、約2カ月半ぶりの水準に低下した。同水準での出来高は数十億円程度とみられている。為替が再び円高方向に振れ、再びリスクオフの流れが意識される中、「海外勢が先物や中期ゾーンに買いを入れている。リスクオフのほこ先が北朝鮮リスクからトランプリスクに移行しつつあるようだ」(証券)との声が聞かれた。』(上記URL先より)

出合いベースというのは引値ベースだと10年3.5bpとかになっていたので、という所ではあるのですが、まあ最近のネタは別に日米金利差とかそういう話ではないので、輪番ちょろっと減額してもそれを材料にして為替が円高に振れるってイメージが湧き難いんですけどアタクシの勘違いですかねえ。何となく今月末の所とかで減らし時のように思えるんですが。


○金融政策で問題に対処というステージから最近は労働に関する話が良く出ますなあという話(虫干しネタ含む)


・まずはこの前の夏休みヒマネタのバーナンキ講演@ポルトガルのECBフォーラムの続き(ファイナル)

https://www.ecbforum.eu/uploads/originals/2017/speakers/Speech/Bernanke%20ECB.pdf
WHEN GROWTH IS NOT ENOUGH

先日ネタにした最後の方の部分を途中から再掲しますと、

『I’ve been speaking about the United States, but of course Europe has shared some of the same problems, including populist reactions.』

欧州でもポピュリストのお怒りが起きています、という話をしていまして、

『The European Central Bank, as one of the most respected European-wide institutions, has been an outspoken proponent of pro-growth reforms. I think the ECB’s efforts have generally been constructive, and reforms have taken place and appear to have had some success, including here in Portugal. I’d like to conclude my remarks with a few comments about the European reform process, in light of the American experience.』

ということでECBの中央銀行フォーラムだけに欧州の話も含めて、ということですが、構造改革的な施策が重要ですよ、という話として、その中で特に労働市場のフォワードルッキング(政策的に実施する教育とか労働訓練とか)やバックワードルッキング(雇用や解雇に関する規制などの緩和)な労働政策が求められる、ってな話をしていました、というところまでご紹介したのですが、その先の所から最後の方までサラサラと。

『Finally, on both sides of the Atlantic we have to grapple with the issue of political legitimacy. As I’ve noted, in the United States, many voters have gone beyond disagreement about specific policy proposals to question both the federal government’s motives and its capacity to improve their lives.』

米国では多くの有権者が政府の動きが自分たちの生活を豊かにしてくれていないとお怒りになっておる。

『Winning back that trust will require a better policy process as well as better policies. In particular, we need more two-way communication between the grass roots and the center, to try to adapt policy initiatives to local conditions. America’s federal system, in which much economic policy is made at the state and local level, is well adapted to help that happen.』

それを改善していくこと、特に草の根との相互コミュニケーションが重要ではないかと。

『In Europe, again, the starting point for policy is different. While the United States is already an integrated continental economy, Europe is still working toward that goal. Achieving uniformity across the euro zone in areas such as banking and capital market regulation inevitably requires decisions to be made at the center, even if after wide consultation. However, there may be less of a need for top-down uniformity in other areas, such as in the regulation of labor markets or small businesses. Accommodation of national and sub-national differences in rules and institutions that mostly affect local conditions could foster more responsive and more effective policies, which could also be perceived as politically more legitimate.』

米国と違って欧州の場合は域内で国がまだバラバラなので、その中では域内を跨いだ政策と、個別国の事情による政策というのがあるので、こらまた大変ですよねという指摘をしていまして・・・・・・・・・・

『To sum up: Generally speaking, economic growth is a good thing, positively associated with many indicators of citizens’ well-being. More-rapid growth also improves fiscal balances, giving governments greater capacity and flexibility.』

纏めに入りますが、成長は望ましい事ではあります。

『But, as recent political developments have brought home, growth is not always enough.』

とは言いましても成長だけでは十分ではないと。

『Economic growth almost always involves significant change and the possibly rapid depreciation of some human and social capital. The resulting dislocations can be very difficult to address, likely requiring a mix of top-down, bottom-up, public, and private interventions. But if the resources released by economic change are to be effectively redeployed; if the benefits of growth are to be widely shared; and if economic policy is to be widely perceived as both successful in its own terms and politically legitimate, then making those interventions effective should be a top priority for policymakers.』

成長だけでその他をレッセフェールにしておくと社会的に取り残される向きが出てくるのであって、(教育や職業訓練のような)人的資源の向上に努められるような社会的な政策対応というのが必要になりますよ、というような話で締めていまして、これが中央銀行フォーラムでの話かよという感じではあるのですが、こういう話を中銀フォーラムで打ち込んでくる、というのは金融政策万能論的な話を排除して、寧ろこれからの社会政策の中で金融政策は本来のスムージングという形でフロントランナーではありませんよ、という事になっていく(まあ米国だから言えるというのはあるけど)という話になるんでしょうなあという所で。


・ダドリーがこんな講演をしておりましてですな(頭出しと簡単なメモのみで勘弁)

先日こんな講演がありまして、
https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2017/dud170810
Remarks at the Economic Press Briefing on the Regional Economy
August 10, 2017
William C. Dudley, President and Chief Executive Officer
Remarks at the Economic Press Briefing on the Regional Economy, Federal Reserve Bank of New York, New York City

この講演(そんなに長くない)は特に今の金融政策をどうこうするという話をしている訳ではなくて、小見出しは・・・・・・・

Current Economic Conditions
Wage Inequality
Lagging Economic Mobility
Directions for Policy
Conclusion

ってなっていまして、最初の経済の現状に関しては普通に域内の経済状況が雇用を中心によろしい(ただしNY連銀所管のプエルトリコと米領バージン諸島はダメダメ)という説明をしているのですけれども、その後の小見出しが大体見た通りのお話になっております。

でもって例によって時間が無くなってしまっているので(アホです)途中をだいぶパスしますが、要は中間層以下の賃金が主にテクノロジーの発達による単純労働の減少と、グローバル化による低廉な海外労働力の利用によって減少してしまって、賃金の格差が拡大していること、経済的な階層の変化というのも起き難くなっていて、サーベイなんかだと「自分の子供がより良い経済状況になる事が期待できるか」という問いへの答えが否定的なのが多く、特に教育に関しては今や住んでいる地域によっても差が出ているというような状況になっていて、これは米国経済の長期的な問題としてケシカランという認識を示しているのです。

つーことで『Directions for Policy』をば。

『So, what are some specific ways policy can address inequality and improve economic mobility? While this is a difficult and complex set of issues with no easy answers, I do have a few thoughts.』

どう対処するのか。

『First and foremost, we can improve the quality of education for our most vulnerable citizens.』

弱者への教育の質を向上させることです。

『Children who attend better schools and attain higher levels of education have more favorable long-term outcomes, including better job prospects and higher earnings. There are large disparities in the quality of education a student receives, which are highly correlated with where that student lives. We need to look for ways to provide higher-quality education regardless of where people live. Reducing the role of local property taxes in school financing to better equalize school quality across locations is one example.5 』

『In addition, education’s benefits start very early in life and are cumulative. While we need to further strengthen primary and secondary education, there is convincing evidence that educational investments in early childhood have especially high rates of return in terms of lifetime earnings and are associated with many other positive outcomes.6』

教育、特に初等教育の部門に関して、経済的に困難な人に対しても質の高い教育を提供するようにして行くことが重要ですと。

『Workforce development is another key policy area that can improve economic mobility and reduce inequality.』

労働者の質の向上がもう一つの重要なファクターだと。

『Because of the swift pace of economic change driven by advances in technology and globalization, we ought to step up efforts to help workers build the skills necessary to adapt to change. This means providing these types of services at the local level. These efforts should include innovative workforce development programs, coursework and certifications in key skills that are in demand, and fostering partnerships between higher education institutions and local employers. Here, I would point to Monroe Community College in Rochester as a model of successful collaboration with employers to create job-training programs that align with current employment opportunities.7』

モンローコミュニティーカレッジという所の例が出ていますが、グローバル化や技術革新に伴い労働者のスキルが陳腐化する事に対して職業訓練などで対処していく政策が必要です、というお話をしておりまして、米国の金融政策当局の方(バーナンキは第一線ではないですが)がこの手の話をせっせとするようになってきて、何でもかんでもケツを金融政策に持ってくるんじゃねえ的なものも感じる今日この頃なのでありました。

#という週初雑談でありました





2017/08/18

お題「FOMC議事要旨ネタ続き/ECBネタのメモと市場メモ」

これはアカン。
http://jp.reuters.com/article/spain-barcelona-victims-idJPKCN1AX26T
World | 2017年 08月 18日 02:24 JST
バルセロナ車突入で13人死亡報道、テロの見方

○市場メモメモ

・短い所が強い件について

昨日の3M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170817.htm

(3)募入最低価格 100円03銭1厘0毛(募入最高利回り)(-0.1243%)
(4)募入最低価格における案分比率 15.6262%
(5)募入平均価格 100円03銭1厘8毛(募入平均利回り)(-0.1275%)

水曜の1Y
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170816.htm

(3)募入最低価格 100円12銭5厘(募入最高利回り)(-0.1251%)
(4)募入最低価格における案分比率 17.8341%
(5)募入平均価格 100円12銭8厘(募入平均利回り)(-0.1281%)

つーことですが先週の3Mが▲11.10bp/▲10.82bpでしたので、今週の短国入札は金利低下の巻となっておりまして、まあ例によって例のごとくどうせ海外要因とか季節性みたいな話なんでしょうけれども、短国買入自体は今月少な目に推移する予定の中でこうやってしらっと金利が下がっているのねということで。


○米国(つーか連銀)関連

・利上げ慎重発言とな

ダラス連銀カプラン総裁
http://jp.reuters.com/article/infl-assurance-fed-idJPKCN1AX2MC?il=0
Business | 2017年 08月 18日 05:30 JST
米利上げ支持にはインフレ率中期目標達成の確証必要=連銀総裁

『[ラボック(米テキサス州) 17日 ロイター] - 米ダラス地区連銀のカプラン総裁は17日、追加利上げを支持するには中期的にインフレ率が目標としている2%に達するとの確証を得る必要があるとの見解を示した。』(上記URL先より)


ミネアポリス連銀カシュカリ総裁
http://jp.reuters.com/article/balance-sheet-debt-ceiling-idJPKCN1AX2MS?il=0
Business | 2017年 08月 18日 05:35 JST
バランスシート縮小時期決定、債務上限動向も勘案=米連銀総裁

『[ワシントン 17日 ロイター] - 米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は17日、連邦準備理事会(FRB)はバランスシートの縮小開始時期を決定するにあたり、連邦債務上限の引き上げに向けた政府の取り組みの状況を勘案するとの考えを示した。』

『カシュカリ総裁はこのほか、利上げ実施には緊急性はないとの考えは変えていないと表明。米経済が3%成長をどのようにして達成するのか見据えるのは難しいとし、トランプ政権が減税だけでなく、税制改革の実施を追求することを望んでいると述べた。』(以上上記URL先より)


カシュカリさんは明確に利上げ反対おじさんなので順当で、カプラン総裁も最近は慎重派になっているのでこの辺順当っちゃあ順当ではありますが、いずれにせよ「年内1回やるかどうか」という状況でかつやるの普通に考えて12月、という事になりますと今時分からそんなに威勢の良い発言は出て来ないという事なんでしょうかね。


・FOMC議事要旨ネタの続き(昨日の積み残しです)

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20170726.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20170726.pdf

Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の最後の方から。

・利上げの継続に関する議論

『In their discussion of monetary policy, participants reaffirmed their view that a gradual approach to removing policy accommodation was likely to remain appropriate to promote the Committee's objectives of maximum employment and 2 percent inflation.』

これは前置きみたいなもん。

『Participants commented on a number of factors that would influence their ongoing assessments of the appropriate path for the federal funds rate.』

でもって先行きの政策金利引き上げパスを決める要因について議論があったそうな。

『Most saw the outlook for economic activity and the labor market as little changed from their earlier projections and continued to anticipate that inflation would stabilize around the Committee's 2 percent objective over the medium term.』

ほとんど(Most)は労働市場の見通しが変わらない(強い)ので物価が今後上昇するという見方。

『However, some participants expressed concern about the recent decline in inflation, which had occurred even as resource utilization had tightened, and noted their increased uncertainty about the outlook for inflation.』

経済の稼働状況がタイト化しているのに足元のインフレが弱くなっているというのは、今後の物価見通しに対して不透明感を与えるのではないか、と数名(some)が指摘。

『They observed that the Committee could afford to be patient under current circumstances in deciding when to increase the federal funds rate further and argued against additional adjustments until incoming information confirmed that the recent low readings on inflation were not likely to persist and that inflation was more clearly on a path toward the Committee's symmetric 2 percent objective over the medium term.』

この辺がベンダーヘッドラインになっていたと思うのですが、上記の指摘をする人たちは、足もとの物価足踏みが真に一時的であって、明確に物価が上向きになってくるのを確認するまでは利上げを待つべきだ、という話をしていますな。

でまあこの辺りの部分に反応しているのですし、実際に物価の動きがイマイチさんという事もあるので利上げ見送りヒャッハーとなるのも道理ではあるのですが、ただまあ上げるにしたってどうせ12月FOMCになると思われますので、それまで時間がありますがなというのと、あと昨日引用したように、最後の所は金融規制などで対処とは言っているものの、資産市場の動向による金融不均衡の議論があれだけある中ですと、資産市場がコケていれば別なのですが、ゴルディロックスヒャッハーとか資産市場がやっている場合は足もとの物価がそこまで強くなくても利上げを突っ込んでくる可能性は高いんじゃないのかな、とはおもうのですけどね。

『In contrast, some other participants were more worried about risks arising from a labor market that had already reached full employment and was projected to tighten further or from the easing in financial conditions that had developed since the Committee's policy normalization process was initiated in December 2015.』

数名(some)の他の参加者は労働市場がほぼ完全雇用な上に今後タイト化するという状況、あるいは金融環境が2015年12月のテーパリング開始の時よりも寧ろ緩和的になっているという状況がリスクを生むのではというタカ派な懸念。

『They cautioned that a delay in gradually removing policy accommodation could result in an overshooting of the Committee's inflation objective that would likely be costly to reverse, or that a delay could lead to an intensification of financial stability risks or to other imbalances that might prove difficult to unwind.』

正常化が遅れると物価がオーバーシュートしたり金融不均衡が高まったりするリスクという毎度の話。

『One participant stressed that the risks both to the Committee's inflation objective and to financial stability would require careful monitoring. This participant expressed the view that a gradual approach to removing policy accommodation would likely strike the appropriate balance between promoting the Committee's inflation and full employment objectives and mitigating financial stability concerns.』

1名は物価にフォーカスするだけではなくて金融不均衡の問題にもフォーカスすべきというより強硬なタカ派(というかBISビュー派)。


・・・・・・・つーことで議論は別にハトハトな訳でもないように見える(確かに利上げ前のめり感は全然ないけど)のですがね。


次のパラグラフ。

『A number of participants also commented that the appropriate pace of normalization of the federal funds rate would depend on how financial conditions evolved and on the implications of those developments for the pace of economic activity.』

パラグラフを変えて書かれているのは「金融緩和度合い」に関するお話のようで。

『Among the considerations mentioned were the extent of current downward pressure on longer-term yields arising from the Federal Reserve's asset holdings and how this pressure would diminish over time as balance sheet normalization proceeded, the strength and degree of persistence of other domestic and global factors that had contributed to the easing of financial conditions and elevated asset prices, and whether and how much the neutral rate of interest would rise as the economy continued to expand.』

長期金利が下がったり株価が上がったり海外の金融緩和の影響があったりとかで金融緩和度合いがどの程度変わってくるのか(外部環境による緩和度合いの変化)を見ながら正常化のペースを考えないといけませんね、という指摘ですな。でもって恐らくなんですけど、あまり利上げの人も威勢の良い話をしていない、というのはどうせ10月には始まるであろうバランスシート縮小の影響が長期金利とかMBSの金利とかにどういう影響を与えるのか、という点が読みにくいと認識していて、その影響をみないとあまり威勢の良い事も言えない、というのはあるんじゃないかなあとは思います。



・バランスシート縮小はこれもう次回FOMCでアナウンスでしょうという風情

でもってこのコーナー最終パラグラフ。

『Participants also discussed the appropriate time to implement the plan for reducing the Federal Reserve's securities holdings that was announced in June in the Committee's postmeeting statement and its Addendum to the Policy Normalization Principles and Plans.』

いつバランスシート縮小着手するかと。

『Participants generally agreed that, in light of their current assessment of economic conditions and the outlook, it was appropriate to signal that implementation of the program likely would begin relatively soon, absent significant adverse developments in the economy or in financial markets.』

経済や金融情勢に著変が無ければ「relatively soon」に開始ってんですから次回FOMCでしょう。

『Many noted that the program was expected to contribute only modestly to the reduction in policy accommodation.』

でもってこのペースなら緩和縮小度合いは極めて緩やかと期待している、というのですから、まーこのバランスシート縮小開始で金利が跳ねたりしたら一気に利上げは日和ることは予想できます。

『Several reiterated that, once the program was under way, further adjustments to the stance of monetary policy in response to economic developments would be centered on changes in the target range for the federal funds rate.』

バランスシート縮小開始したら今後の金融政策運営は金利の正常化で行っていきますよと。

『Although several participants were prepared to announce a starting date for the program at the current meeting, most preferred to defer that decision until an upcoming meeting while accumulating additional information on the economic outlook and developments potentially affecting financial markets.』

ここがワロタのですが、複数名の参加者(several participants)は資産買入縮小開始時期を今回のFOMCで公表すべきだという意見になっていまして、まあこりゃ(カシュカリさんは別として)9月FOMCでバランスシート縮小開始のアナウンスが普通に出るわな、と思うのでありましたが、こちらは市場の方も織り込んでいると思われます(とは言え織り込みに行くにしてもどう織り込んで良いのかは謎なので市場のプライスアクションに反映されていないと思いますが)ので別にこう出たからと言ってサプライズにはならん、というところでしょう。


○ECB議事要旨は本当にメモだけ

http://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2017/html/ecb.mg170817.en.html
Account of the monetary policy meeting
of the Governing Council of the European Central Bank, held in Frankfurt am Main
on Wednesday and Thursday, 19-20 July 2017

これ切れ目があまりなくて長いので読むのがめんどいということで週末に読むつもりなのですが、超手抜きをしようとすれば最後の『Monetary policy decisions and communication』以下とその直前あたりをよんでおくとヨロシ。

つーことで最後の所だけメモ程度に。

『As regards communication, all members agreed with the proposals put forward by Mr Praet in his introduction. It was thus seen as important to stress that the economic expansion had strengthened and that risks to the growth outlook were broadly balanced. Moreover, it was seen as appropriate to emphasise that the Governing Council’s confidence that inflation would gradually converge towards its aim had been strengthened by the ongoing economic expansion.』

『However, while reflationary forces, which referred to the recovery of inflation from levels below its long-term trend, had replaced risks of deflation, the economic expansion had yet to translate into stronger inflation dynamics.』

デフレリスクに関しては無くなってきているものの物価が力強く上昇するような状況でもありませんという話で、プラートさんがどうのこうのの件は本文を読む必要があります。

『In the light of the heightened sensitivity of financial markets to news, a steady approach to communication was seen as key.』

そうなのか??と思うけど市場が敏感に反応するからコミュニケーションは慎重にだそうな。何かそうは見えない発言している人もいると思うのだが・・・・・・・・・・・

『The Governing Council needed to strike a fine balance between, on the one hand, expressing justified confidence in the economic expansion and, on the other hand, underlining the need for monetary policy to remain persistent and patient.』

経済が拡大していく確信の話と金融政策は緩和的なのを継続する必要がある話をバランスよくしないといけませんよね、だそうな。

『It was thus important to stress that a very substantial degree of monetary accommodation was still needed for underlying inflation pressures to build up gradually, supporting headline inflation in the medium term, and for inflation dynamics to become more durable and self-sustaining.』

『Against this background, the Governing Council should also reiterate its continued readiness to adjust the size and/or duration of the asset purchases, if necessary. The view was widely shared that prudence was warranted with regard to the Governing Council’s communication on the possible timing of its deliberations on the future course of its monetary policy.』

よって極めて緩和的な金融政策を継続することが重要ということは強調しないといけませんねと。

『Overall, members agreed that communication on the timing of the decision should refer to the autumn.』

つーことで秋にまた考えましょうという話(以下は決定事項に関してなのでパス)で、まあここの字面だけ見ますと買入ペースに関する議論はやるけれども、明確なテーパリングやバランスシート縮小に向けた議論という感じでは話を持って行かない、というアプローチになるんでしょうなあとは思いました。





2017/08/17

お題「長期輪番減額とな/FOMC議事要旨」

何だかなー。
http://jp.reuters.com/article/trump-disband-twitter-idJPKCN1AW2D6
Business | 2017年 08月 17日 04:40 JST
トランプ大統領、助言組織2つを解散 企業トップの辞任相次ぎ

○長期輪番減額しかも何故か300億円キタコレ

ご案内の通りですが昨日の輪番オファー。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170816.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,400 2017年8月18日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2017年8月18日
国債買入(残存期間25年超) 1,000 2017年8月18日

>国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,400 2017年8月18日

・・・・・・お、おぅ。

ということで減らしても良いと思うけど減らさないんじゃネーノとかてきとうなことを申し上げたら減額してきやがったのですが、そこでお洒落だったのは4500億円に減額するのではなく4400億円に減額した所で、おー頑張って減らしたやんという風情。

でもって4500じゃなくて4400ということで(ってまあ微妙な話ではありますが)、債券先物は下がったりして10年カレントも5bp出合いとかやった訳ですが、その後別にコケるでもなく推移した挙句に、輪番の結果が・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170816.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 12,752 4,407 -0.002 0.000 69.1
国債買入(残存期間10年超25年以下) 6,709 2,003 0.010 0.010 99.0
国債買入(残存期間25年超) 3,534 1,006 0.012 0.013 6.2

超長期輪番が弱くて長期輪番は強かったということで後場はツイスト気味で推移して結局引けてみたら先物(が何か妙に強いのはナンナンデショという話はさておきまして)とか強いのですが10年も結局前日比で金利低下の巻とかになるという有様。

まあ何ですな、昔の短国買入では「買入減額する程度に需給が締まっている」ので減額買入を行ったもののオペ結果が強くて「需給良好かくにん!よかった!」となって買入減らしているのに金利が盛大に低下というような事案が良くありましたが、今回は(まあ別の要因もあるんでしょうが)現象だけでみれば同じような話になっているのがワロタというかワロエナイ(ついに市場の流動性あるいは機能度が短国並みになったかという意味で)結果になったのでありました。

とは言いましても、まー元々10年絡みの輪番というのは2月の時に増額してから減らすチャンスが無い中7月にまた増額する破目になってしまった、という代物で、そもそもが買い過ぎというのがありましたので、4500に減らしてもまだ減らし足りないというのはその通りではありますので、今回この「4400」に込められた(かどうか知らんが)微妙なスタンスというのは「もうちょっと減らせるなら減らしたい」というのは把握しました。

ただし、10年の所はYCCで明示的に0%程度としているので、ここって下手な減らし方をして金利が上がって結局買入を増やさないといけない、となるとトンチキにも程があるので、まー減らすにしても物凄い慎重に減らすしかないでしょうなあと思いますし、とは言え減らせる時に減らしておかないともうちょっとまともに金利上昇圧力が掛かる(ことがあるのか知らんけど)時に打つ手がなくなるから中々難しいですな。ここで調子に乗って金曜の長期輪番を更に減額したら面白いのですが、まあそんな冒険はしてこないでしょう。

ま、いずれにせよ輪番減額しても別に円高ヒャッハーとなる訳ではなく、そもそも金利ちゃんの方も上がらなかった(なお超長期はどうせ来週の20年があるから絶対水準的に金利下がってくるとレラティブで安くしておかないと入札しんどいという奴でしょと勝手に妄想していますが)ので今回もまた調節大勝利という結果になりましたな。

#本来の日銀シナリオの通りにインフレ期待が順調に上がれば調節は苦労するので大勝利していること自体が日銀シナリオの瓦解方向ではあるのですが・・・・・・・・・・


なおロイターさんの市況記事を貼っておく。
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1L22HA
Markets | 2017年 08月 16日 15:42 JST
〔マーケットアイ〕金利:17日に5年債入札、業者や海外勢の需要で無難予想

って引け後の話になっていますが、引けの記事では・・・・・・

『<15:08> 国債先物が続伸で引け、長期金利は2カ月ぶり0.040%に低下

国債先物中心限月9月限は前日比10銭高の150円68銭と続伸で引けた。前日の海外市場で、米朝間の緊張緩和の兆しや底堅い米小売売上高を手掛かりに米債が下落したことを受けて、朝方は売りが先行した。もっとも残存5年超10年以下を対象にした日銀買い入れで、金額が4400億円と前回に比べて300億円減額されたにもかかわらず順調な結果となるなど、良好な需給環境が意識されると、海外勢の買いを巻き込んで上げ幅を広げて、一時150円69銭と6月9日以来の水準に上昇した。現物市場は長期ゾーンを中心にしっかり。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時前日比0.5bp低い0.040%と6月7日以来、約2カ月ぶりの水準に低下した。一方、超長期ゾーンは22日の20年債入札を控え軟調。残存10年超25年以下と残存25年超の日銀買い入れで超長期需給の緩みが意識されたことも売りを誘った。』(上記URL先より)

ということで昨日は輪番オファーした10時10分が日中先物の安値でしたな。


○FOMC議事要旨である:ちなみに斜め読みした感じでそこまでハトハトはしてないかと思ったけど・・・・・・・

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20170726.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20170726.pdf

毎度のことですが『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツから斜め読みした訳ですが、今回はネタにすべきところが長いんですが(涙)。


・物価に関して

上記部分の7パラグラフ目から。

『Participants discussed the softness in inflation in recent months.』

てな訳で物価の部分から参ります。

『Many participants noted that much of the recent decline in inflation had probably reflected idiosyncratic factors. Nonetheless, PCE price inflation on a 12?month basis would likely continue to be held down over the second half of the year by the effects of those factors, and the monthly readings might be depressed by possible residual seasonality in measured PCE inflation. Still, most participants indicated that they expected inflation to pick up over the next couple of years from its current low level and to stabilize around the Committee's 2 percent objective over the medium term.』

直近の物価の弱さは一時的要因によるものだけども年後半に掛けても物価はこれらの要因が足を引っ張って中々上がらんじゃろうな、でも今後2年程度でみれば物価は上がって2%近くになるんじゃネーノ、だそうです。

『Many participants, however, saw some likelihood that inflation might remain below 2 percent for longer than they currently expected, and several indicated that the risks to the inflation outlook could be tilted to the downside.』

とは言え多く(Many)の参加者は物価が弱い状態が思ったより長期化する可能性があるのでそのうちの数名はリスクはダウンサイドですよと。

『Participants agreed that a fall in longer-term inflation expectations would be undesirable, but they differed in their assessments of whether inflation expectations were well anchored. One participant pointed to the stability of a number of measures of inflation expectations in recent months, but a few others suggested that continuing low inflation expectations may have been a factor putting downward pressure on inflation or that inflation expectations might need to be bolstered in order to ensure their consistency with the Committee's longer-term inflation objective.』

インフレ期待に関しては低下するのは望ましくないというのは当然として、じゃあインフレ期待がどうなってますねんというのに関してはどちらも少数ですがヘーキヘーキという見解(1名)と物価弱いままだと大丈夫かよという見解(a few)があるようですな。

『A number of participants noted that much of the analysis of inflation used in policymaking rested on a framework in which, for a given rate of expected inflation, the degree of upward pressures on prices and wages rose as aggregate demand for goods and services and employment of resources increased above long-run sustainable levels.』

次のパラグラフに参りますが、物価動向に関してインフレ期待動向と需給ギャップの動向に対して賃金が上昇して物価上昇圧力になるとか、そういう関係に関する議論のようですの。

『A few participants cited evidence suggesting that this framework was not particularly useful in forecasting inflation. However, most participants thought that the framework remained valid, notwithstanding the recent absence of a pickup in inflation in the face of a tightening labor market and real GDP growth in excess of their estimates of its potential rate.』

でもって数名(A few)は従来のフレームワークで物価の動向を予想するのが実は使えないんじゃネーノという見解を出していて、多くの人はいやいや今でもそれは有効でしょうとは言っているのですが、こういう議論が出ているというのでまあハト風味と言えば言えるかも知れん。

『Participants discussed possible reasons for the coexistence of low inflation and low unemployment.』

低インフレと失業率の低い状態が併存するのはナンデジャロ。

『These included a diminished responsiveness of prices to resource pressures, a lower natural rate of unemployment, the possibility that slack may be better measured by labor market indicators other than unemployment, lags in the reaction of nominal wage growth and inflation to labor market tightening, and restraints on pricing power from global developments and from innovations to business models spurred by advances in technology.』

自然失業率がもっと低い所にあるとか。実はスラックがもっと大きいとか、今は名目賃金に波及するまでのラグの期間なのではないかとか、グローバル化による生産サイドの価格支配力低下とか、技術革新による影響とか、まあそんなのがあるのかねと。

『A couple of participants argued that the response of inflation to resource utilization could become stronger if output and employment appreciably overshot their full employment levels, although other participants pointed out that this hypothesized nonlinear response had little empirical support.』

2名ほどが生産の拡大や雇用のタイト化がもう一発進んで来たらノンリニアに物価に跳ねてくるのではないかというような指摘をして他の人たちにそれはちがうんじゃネーノと突っ込まれたようで。


・金融市場動向に関する指摘が多いのはあまり無視するのはイクナイと思うのですけどねえ

今回ほほーと(ケツから読みながら)思ったのはこの部分で3パラグラフも使っている(さっきの物価の所は2パラグラフ)のですよ。

『In assessing recent developments in financial market conditions, participants referred to the continued low level of longer-term interest rates, in particular those on U.S Treasury securities.』

長期金利が低い件についてとな。

『The level of such yields appeared to reflect both low expected future short-term interest rates and depressed term premiums.』

ほうほうそれでそれで?

『Asset purchases by foreign central banks and the Federal Reserve's securities holdings were also likely contributing to currently low term premiums, although the exact size of these contributions was uncertain.』

米国&主要国の中央銀行の国債買入が金利低下のストック効果とな。

『A number of participants pointed to potential concerns about low longer-term interest rates, including the possibility that inflation expectations were too low, that yields could rise abruptly, or that low yields were inducing investors to take on excessive risk in a search for higher returns.』

複数名の参加者は長期金利が低い要因に先行きの市場のインフレ予想が低すぎるとか、利回り追求の動きによって金利が押し下げられているとかいうのがあれば、逆に行った時に金利が急騰するリスクがあるのでは、との指摘とな。


次のパラグラフ。

『Participants also considered equity valuations in their discussion of financial stability.』

株価と金融安定に関する議論キタコレ!!

『A couple of participants noted that favorable macroeconomic factors provided backing for current equity valuations; in addition, as recent equity price increases did not seem to stem importantly from greater use of leverage by investors, these increases might not pose appreciable risks to financial stability.』

2名はマクロ経済が順調で株が上がってるんだし、投資家もレバレッジ掛けて株買っている訳でもないし、んなもん問題ないがな、という話。

『Several participants observed that the banking system was well capitalized and had ample liquidity, reducing the risk of financial instability. It was noted that financial stability assessments were based on current capital levels within the banking sector, and that such assessments would likely be adjusted should these measures of loss-absorbing capacity change.』

でもって金融機関の資本は充実していますからそういう辺りからは金融不安定化のリスクは減っています、という話ではあります。

まあ言いたいことは分かるのだが、この辺の話を見ていて毎度ちょっと不安に思うのは、自己資本あるからヘーキヘーキということで米国の金融当局者はちと安易に考えているのではないかという気はせんでもない。

『Participants underscored the need to monitor financial institutions for shifts in behavior--such as an erosion of lending standards or increased reliance on unstable sources of funding--that could lead to subsequent problems.』

与信態度が緩むとかそっちを見るべきではないかと。

『In addition, participants judged that it was important to look for signs that either declining market volatility or heavy concentration by investors in particular assets might create financial imbalances.』

市場のボラ低下や投資家の投資が集中することなどはウォッチすべきとな。

『A couple of participants expressed concern that smaller banks could be assuming significant risks in efforts to expand their CRE lending. Furthermore, a couple of participants saw, as possible sources of financial instability, the pace of increase in real estate prices in the multifamily segment and the pattern of the lending and borrowing activities of certain government-sponsored enterprises.』

不動産市場への警戒はあるようで。


『Participants agreed that the regulatory and supervisory tools developed since the financial crisis had played an important role in fostering financial stability. Changes in regulation had likely helped in making the banking system more resilient to major shocks, in promoting more prudent balance sheet management strategies on the part of nonbank financial institutions, and in reducing the degree to which variations in lending to the private sector intensify cycles in output and in asset prices.』

でもって最後の所では前2パラグラフでの話を中和するかのように「つーても監督ツールとかで対処できますし」という話をしている訳ですが、

『Participants agreed that it would not be desirable for the current regulatory framework to be changed in ways that allowed a reemergence of the types of risky practices that contributed to the crisis.』

規制緩和によってリスクの高い投資などに突っ込むようになるとそれはイカンガナという話もしていたりするので、まあこの辺については今後の動向次第では金利政策で対処という話になる可能性が無い訳ではないということでしょうな。


・でもって肝心の金融政策のパートに届かずに時間が無くなるというあばばばばーな訳ですが

この次のパラグラフが、

『In their discussion of monetary policy, participants reaffirmed their view that a gradual approach to removing policy accommodation was likely to remain appropriate to promote the Committee's objectives of maximum employment and 2 percent inflation.』

から始まる部分で、そっちの方がメインじゃネーノかという気もするのですがその前の部分で時間が足りなくなるという(すいません)プレイになってしまいましたので、明日続きはやりますが思いっきり簡単にまとめると、

・利上げ路線に慎重、というのもあるけど別にそうじゃないのもあるし、慎重というのも多数意見という訳ではないのでそこでヒャッハーハトハトだぜというのはちょっと違和感がある

・ただし利上げへの前のめり感は無いなあという感じ

・一方でバランスシート縮小に関しては今回やりましょうというのも居る位でやる気満々

つー感じなので9月バランスシート縮小計画具体化がダンディールで、12月の利上げに関しても別に確率がこれを見て下がったとかそういう話ではない、とは思うのだが、まあ市場の方が今は利上げ先送りヒャッハーとやりたいという流れなんでしょうな、と思います。






2017/08/16

お題「今日は輪番に注目なのかしらん??/お盆休みヒマネタシリーズ(その4)」

昨日の放送でしたな。
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20170815
戦慄の記録 インパール
初回放送 2017年8月15日(火) 午後7時30分〜8時43分

現代の金融政策いや何でもないです。


○何気に先物出来高もありますし

・長期輪番減額はどうでしょうかねえ(やっても良い気もするけどやらないかなあ)

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1L12UG
Markets | 2017年 08月 15日 16:41 JST
〔マーケットアイ〕金利:夜間国債先物は小じっかり、長期金利6月27日以来の0.045%に低下

『<16:40> 夜間国債先物は小じっかり、長期金利6月27日以来の0.045%に低下

夜間取引の序盤で長期国債先物は小じっかり。9月限は日中取引の大引けを1銭上回る150円59銭と上値追いとなっている。市場では「日中取引で終盤にかけて海外勢とみられる需要が強まった流れを引き継いでいる感じだ」(国内証券)との見方がある。10年最長期国債利回り(長期金利)は強い先物に連動する格好で金利に低下圧力がかかっており、足元では前営業日比0.5bp低下の0.045%と6月27日以来の低水準を付けている。』(上記URL先より)

ということで昨日も何気に先物出来高ほぼ2万枚ありましたし、現物のブローカースクリーン的な出合いだけでは分からんような気がしますけれども、まー昨日の場合は海外金利上がっているのに債券全然サガランチ会長(20年カレントは前日比甘だったけど元々引けが強い希ガス)という展開でもうナンジャソラという流れでございまして、輪番も入札も無いと堅調になるんですかねえと。

でまあ海外の金利が惜しくも(?)上がって戻ってきましたので本日の10年カレントがどっちに転ぶのか良く分かりませんが、今日は長期と超長期の輪番が予定されていまして、7月に金利が上がった時に買入額を4500→5000にした長期の方がまだ4700の買入になっておりますので、さてそろそろ減らせるのでしょうかというのが本日の注目材料(ってかなりしょうもない注目材料なんですがそういう相場だから仕方ない)という所でしょうか。

まーここの所悪目立ちしたくないような雰囲気は醸し出しているので何となく減額しないでスルーしちゃうのかも知れませんけど、減額しないとヒャッハーと言って10年の買いになるのかどうかが読めんので何とも。減額しないでも結局の所ヒャッハーとやれば減額が見え見えなのでそんなにヒャッハーにならない、という感じで推移するような気がする(個人の感想です)ので、減額しないまま何となくじりじりと金利が下がる(米国が急に2.3%とか2,4%とか抜きに行くような事でも起きない限り)というようなことになるんじゃネーノという感じですかねえ、よー知らんけど。



・米国金利市場の反応に味わいが

ほほう。
http://jp.reuters.com/article/usa-moneymarkets-idJPKCN1AV1TG
Business | 2017年 08月 16日 00:48 JST
12月米利上げ観測強まる、好調な指標受け=短期先物

『[ニューヨーク 15日 ロイター] - 米小売売上高とニューヨーク州製造業業況指数がともに市場予想を上回ったことを受け、15日午前の米金利先物相場で12月利上げ観測が強まった。CMEグループのフェドウォッチプログラムによると、12月12-13日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)が金利を引き上げると市場が織り込む確率は、米東部夏時間午前8時45分(日本時間午後9時45分)時点で48%と、指標公表直前時点の42%から上昇した。』(上記URL先より)

まあこのFF先物と米国長期金利の人たちが腹の中で思っているであろう利上げ確率って必ずしもイコールではないと思う(昔金利が動いていたころの金先とかもそうだったし)のですけれども、米国10年債でもダドリー発言のあった月曜は10年で3毛程の金利上昇で、昨日は10年で5毛程の金利上昇。

って本当は2年とか5年とかの金利推移とかもちゃんと見ないと行けないのですけれども、ただまあこういう動きを見てて思いまするに、段々FED高官があーでもないこーでもないという話をするよりも、実際の経済指標にきちんと反応するようなマーケットになってきましたねえ(FED高官の言ってるのが一部のハト派以外皆揃っているのもあると思いますけど)とちゃんとしたマーケットっぽくなっているなあと味わいを感じました。いやまあそれだけのメモなんですけど。


○とは言え市場がアレなのでお盆休みヒマネタシリーズの続き

https://www.ecbforum.eu/uploads/originals/2017/speakers/Speech/Bernanke%20ECB.pdf
WHEN GROWTH IS NOT ENOUGH

・経済学者は有効な社会的政策に関する注意が欠けていたとな

昨日の続きから。

『Providing effective help to people and communities that have been displaced by economic change is essential, but, on the other hand, we should not understate how difficult it will be. Addressing problems like the declining prime-age participation rate or the opioid epidemic will require the careful and persistent application of evidence-based policies which populist politicians, with their impatience and distrust of experts, may have little ability to carry through. Moreover, to be both effective and politically legitimate, such policies need to involve considerable local input and cooperation across different levels of government as well as cooperation of the public and private sectors.』

昨日まで引用した所にありましたが、まあ要するにバーナンキさんとしては戦後から1970年辺りまでの経済成長が特別なまでに結構な状態だったのに対して、その後本来政策割当を行うべきだった社会的というか構造的というかそういう政策、教育だの職業訓練だの諸々の、レッセフェールでやっていると拡大してしまう社会的な格差(その間に海外のキャッチアップによる要因もあるのでレッセフェールだけではないけど)に対応することを怠っていたので、経済成長力が1970年位までのような状況ではなくなる中で徐々に問題が高まって今に至ってポピュリストの皆さんが大暴れということになる、というような話をしている(ように読めたのですがどうでしょうかねえ)次第でありまして、でもそういう政策って言うのは簡単だけど実行するのも難しいですよね、とも。

『The credibility of economists has been damaged by our insufficient attention, over the years, to the problems of economic adjustment and by our proclivity toward top-down, rather than bottom-up, policies.』

『Nevertheless, as a profession we have expertise that can help make the policy response more effective, and I think we have a responsibility to contribute wherever we can.』

だそうです。まあ確かにバーナンキさんも途中からは「金融政策は万能薬ではない」という話を連呼していましたし、危機対応で仕方がない面は勿論あるのですが、それにしてもFRBの時およびその前のヘリコプター・ベンの時に金融政策があたかも万能であって、問題の多くは金融政策で望ましい経済状態にすると解決していくかのようなイメージをふりまきすぎたんじゃね、とは思ってしまいます。


・構造政策の話を延々とする中で金融政策の役割については華麗にスルーしているのは・・・・・・・・・

でもってその次。

『I’ve been speaking about the United States, but of course Europe has shared some of the same problems, including populist reactions.』

欧州でもポピュリストのお怒りが。

『The European Central Bank, as one of the most respected European-wide institutions, has been an outspoken proponent of pro-growth reforms. I think the ECB’s efforts have generally been constructive, and reforms have taken place and appear to have had some success, including here in Portugal. I’d like to conclude my remarks with a few comments about the European reform process, in light of the American experience.』

ということで元々これECBの中央銀行フォーラムというイベント(なお会場はポルトガル)なので欧州の話とな。

『First, I have the made the case this evening for more intervention in labor markets by American policymakers, for example, through active workforce policies like the promotion of job training and apprenticeships. In Europe, however, the message has been that governments should intervene less in labor markets. I’d emphasize that there is no real contradiction here; rather, the contrast reflects differences in starting points. It’s useful to divide labor market interventions into what I will call, somewhat tendentiously, forward-looking and backwardlooking policies. Forward-looking policies, like job training and other types of workforce development, aim to help workers adjust to change, endowing them with the skills and training they need to take advantage of new opportunities. To invoke another theme of this conference forward-looking policies generally involve investment in human, social, or physical capital.』

欧州の場合は元々が労働規制が強いので労働規制の問題で語られる事が多いですが、それは別にして、フォワードルッキングな労働市場に対する施策が大事だって言ってまして、職業訓練とか教育とか、そういう方面に力入れていくのがよろしいのではないかというお話。

『Backward-looking policies, in contrast, aim to preserve the status quo, and in particular to protect incumbent firms and workers. Examples are rules that excessively restrict employers’ ability to fire workers or to set pay and hours, impose restrictive licensing or certification requirements, or create large fixed costs of hiring or market entry. Backward-looking policies inhibit productive growth and change, which is why they are ultimately not sustainable.』

バックワードルッキングな政策というのは解雇規制の問題とかその他の規制を緩和するというお話でこっちも重要と。

『Relative to the United States, and reflecting differences in political traditions among other factors, postwar Europe has employed many more of both the forward-looking and backward-looking types of labor market policies. Calls for reform in Europe today largely focus, appropriately, on the elimination of backward-looking policies. But the distinction between the two types of policies should be in front of mind, including the recognition that a reduction in rules that protect incumbent workers, for example, may need to be balanced with an increase, not a decrease, in active policies to support necessary adjustments in the labor market.』

でもって米国よりもEUはいずれの政策も進んでやっていたのですが、今後は労働規制の緩和もそうなのですが、フォワードルッキングな施策を同時に拡大しないといけませんなと。

『Second, the cyclical recovery in the United States is sufficiently far advanced that issues of longer-term growth and reform can be debated largely independently of short-term cyclical considerations.』

循環的な点では米国の労働市場は良い状態なので労働改革をやりやすいというのはある。

『In Europe, labor market slack remains, interest rates are still at zero, and macroeconomic adjustment is incomplete, all of which implies that reform plans cannot ignore macroeconomic conditions.』

欧州ではまだ金利はゼロ制約だし労働市場のスラックはあるし、マクロ政策の調整も終わっていないので、労働改革をその辺りを気にせずに実行するという訳にも行かんと。

『A small literature has argued that structural reforms can be counterproductive when interest rates are at the zero lower bound, because of disinflationary effects.17』

構造改革はデフレ的な効果があるのでゼロ金利制約の下では生産的ではない、との指摘もあるとかしらっとまたそんな事を・・・・・・・・・・・・・

『I tend to agree that those ZLB effects are probably quantitatively modest.18 However, whether rates are at zero or not, it seems quite likely that policies that have the effect of releasing redundant labor resources could have adverse short-run effects if insufficient aggregate demand exists to re-employ those resources in a reasonable time. It’s consequently important for the content and sequencing of reforms to take into account the macroeconomic situation, as has been pointed out by the International Monetary Fund and others.19』

『Likewise, reforms can complement, but should not be viewed as a substitute for, appropriate macroeconomic policies. In particular, labor market reforms should not by themselves be expected to solve national competitiveness problems, at least not in the short term. Also needed are appropriate macroeconomic policies, especially fiscal policies, to help ensure adequate demand and remedy the underlying source of trade imbalances.』

労働市場改革をするという中で需要が足りない場合は労働市場改革自体が短期的な悪影響を経済に与えることになるし、労働市場改革をしたからと言ってそれが国の競争力に関して少なくとも短期的にプラスになる訳ではないので、それ以外の政策も重要ですよという話をしていまして、金融政策の話ってどうも見事なまでに脇役になっていますな。

まあ米国(欧州も割と)に関しては金融政策の正常化を進めているからこそ、金融政策が主役になるのは終わりでそれ以外の政策が重要。金融政策はその間のマクロ経済の悪化にプリエンティブに対応するような調整をしていればヨロシ、という整理になっているのでしょうなあ、と思わせてくれるのですが、実はもう少し残っていましてそれはまた後日。






2017/08/15

お題「バーナンキ先生の講演だが金融政策でヒャッハーという話がすっかり無い訳で(その3)」

ほほう。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170815/k10011100011000.html
米2長官「北朝鮮挑発やめれば交渉の用意」新聞に寄稿
8月15日 4時23分

○一応市場メモとダドリー発言をメモメモ

・まあサガランチ会長モードということでしょうかねえ

輪番も入札も無いので仕方ないですが。

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1L02JM
Markets | 2017年 08月 14日 15:18 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、超長期ゾーン強含み

『<15:15> 国債先物は続伸、超長期ゾーン強含み

長期国債先物は続伸。国内連休中の海外市場で、北朝鮮情勢の緊迫化や米消費者物価指数(CPI)の予想下振れを手掛かりに米金利が低下したことを受けて買いが先行した。日経平均株価が下落幅を拡大する場面で先物は買いが優勢となり、中心限月9月限は一時6月29日以来の高水準となる150円51銭まで上昇した。ただ、上値を積極的に追うには材料不足で、後場は総じて高値圏でもみあった。

現物債は国債先物に連動して長期ゾーンが小高く、超長期ゾーンは終盤にかけて強含みとなった。中期ゾーンは底堅い。2017年4─6月期実質国内総生産(GDP)1次速報値は市場予想を上回ったが、相場への影響は限られた。

長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比10銭高の150円50銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比0.5bp低下の0.050%と6月28日以来の低水準を付けた。』(上記URL先より)

つーことで先週木曜もそうでしたが、寄りでギャップアップして始まる→場中はそこからろくすっぽ伸びずに上値重そうになる→引けにかけて戻ってきて寄りの高値近辺の所で終了、というのを2日連続でやっていまして、上値重いっちゃあ重いのですが、まあ戻り売りをこなしながら全然下がらんと言ってしまえばそうとも言えそうな相場ではありまして、昨日は月曜の分際で先物15000枚くらい出来ていましたし、何かサガランチ会長な感じもします。だからどうしたと言われると困りますけど。

まー来週にならんと色々なネタが出て来なさそうな感じはしますから・・・・・・・・・


・ダドリー総裁発言とな

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-idJPKCN1AU276
Business | 2017年 08月 15日 04:40 JST
資産縮小開始は9月、年内あと1回の利上げ予想=NY連銀総裁

『[ワシントン 14日 ロイター] - ダドリー米ニューヨーク連銀総裁は14日、連邦準備理事会(FRB)が9月にバランスシート縮小を開始するとの見通しは不合理ではなく、経済指標が持ちこたえれば年内あと1回の利上げがある、との見方を示した。総裁はアソシエーテッド・プレス(AP)とのインタビューで「(バランスシート縮小に関する)市場参加者の期待は不合理ではないと思う」と述べた。また、経済が自身の予想通りに進展するなら「年内のあと1回の利上げ実施を支持する」とした。』(上記URL先より)

ということで全部引用して誠に申し訳ないのですが、9月BS縮小開始、12月利上げという従来の話をしているのですが、多少なりとも債券の方は売りで反応したようですので、「年内利上げ無理」という方にやや期待が入っている感があるのね、というのは良く分かる反応でしたなという感じです。ダドリー総裁の説明(これだけしか見てませんが)そのものには特段のサプライズは無い(寧ろ年4回の利上げ路線は完全に消えちゃいましたねという方がほほーという感じですけど)ので、まあこんなもんでしょう。


○ヒマネタでバーナンキさんの構造問題に関するお話@ECBフォーラム(その3)

https://www.ecbforum.eu/uploads/originals/2017/speakers/Speech/Bernanke%20ECB.pdf
WHEN GROWTH IS NOT ENOUGH

・本来すべきだった社会的政策が足りなかったから今のテイタラクですよという指摘

第二次大戦直後から1970年くらいまでが奇跡でしたというお話の続きから。

『Of course, similar forces were playing out in Europe and elsewhere, with effects that depended on the policy response. In the United States, in the immediate postwar era, feelings of social solidarity and economic optimism had helped to generate political support for significant expansions in government spending on education, health, and infrastructure. The introduction of Medicare and expanded Social Security benefits provided economic security for the elderly in particular.』

戦後から70年代くらいまでは「social solidarity and economic optimism」ってんですからソーシャルな連帯感と経済への楽観ということでしょうが、そいつによって社会保障だのメディケアなどが進んだと。

『However, the postwar glow faded as America divided over a variety of big issues in the 1960s and 1970s, including the Vietnam War and the civil rights movement, and as economic growth began to slow. The Reagan revolution heralded a more constrained approach to economic policy, aimed primarily at fostering aggregate economic growth by empowering the private sector. Examples of such policies include tax cuts and tax reform under Reagan, a number of consequential trade agreements under Reagan’s immediate successors, financial deregulation and welfare reform under Clinton, and more tax cuts and trade opening under the second President Bush.』

70年以降成長が減速する中でレーガン革命などから始まる民間のパワーによる景気拡大を志向する動き(減税とかによる)が進みましたと。

『Missing from the mix, however, was a comprehensive set of policies aimed at helping individuals and localities adjust to the difficult combination of slower growth and rapid economic change. Why policy was not more proactive in this area is an interesting question: Perhaps the failures of Lyndon Johnson’s Great Society and the inflationary monetary and fiscal policies of the 1960s and 1970s hurt the reputation of activist policies and helped revive American’s laisser-faire inclinations.』

でまあここのところがへーと思ったのですが、1960〜70年代の金融財政政策がインフレに対してプロアクティブな政策じゃなかった(ので米国はインフレに苦労した)ことから、アクティビスト的な政策に対しての批判的な考えが生まれて、元々の米国人が好むレッセフェール的な政策を後押しするようになったとのことで。

『Perhaps the stresses in the heartland were not sufficiently understood until it was too late. Perhaps the politics didn’t align. Whatever the reason, it’s clear in retrospect that a great deal more could have been done, for example, to expand job training and re-training opportunities, especially for the less educated; to provide transition assistance for displaced workers, including support for internal migration; to mitigate residential and educational segregation and increase the access of those left behind to employment and educational opportunities; to promote community redevelopment, through grants, infrastructure construction, and other means; and to address serious social ills through addiction programs, criminal justice reform, and the like.』

でもってそういうレッセフェール的な考えが強くなったから、本来この時期からもっとやって置くべきだった社会的政策、職業訓練とか失業者の教育とか・・・・・と色々な社会的な施策によって国民全体のスキルセットを上げる方策についてこれでもかとばかりに列挙していますが、そういう施策そのものがレッセフェール容認の考えの下で行われなかったのが良くない、というのですが何故かと言えば・・・・・・・・・

『Greater efforts along these lines could not have reversed the adverse trends I described at the outset-notably, Europe, which was more active in these areas than the United States, has not avoided populist anger-but they would have helped. They might also have muted the disaffection and alienation which our political systems are currently grappling.』

欧州はそういうのを米国に比べて結構やっている方だったけどポピュリストの怒りが今起きている訳でして・・・・・・・・・・・

『Which brings us to the present. Whatever one’s views of Donald Trump, he deserves credit, as a presidential candidate, for recognizing and tapping into the deep frustrations of the American forgotten man, twenty-first-century version. That frustration helped bring Trump to the White House.』

トランプキタコレ!

『Whether the new president will follow through in terms of policy, however, is not yet clear.』

しらっと悪態。

『Trump’s economic views, which mirror the odd combinations of factions that make up his coalition, are a somewhat unpredictable mixture of right-wing populism and traditional supply-side Republicanism. The policies that his administration has actually proposed or endorsed so far lean toward the latter, including health care bills that would significantly reduce insurance coverage among lower-income people, tax cuts for both individuals and corporations, and a relaxation of financial, environmental, and other regulations.』

バーナンキさんによればトランプは伝統的右翼ポピュリズムと共和党的サプライサイド政策のミックスでどちらかと言えばサプライサイド寄りだそうですが、さすが中銀総裁を退任しているだけにしらっと政治的な話を平然としますな。

『Policies that would more directly address the needs of the people who elected Trump, such as community redevelopment, infrastructure spending, job training, and addiction programs have recently received a good bit of rhetorical attention from the White House, but it remains to be seen whether that attention will be translated into programs and budgets.』

トランプを押し上げた人たちの求める社会政策に関しては結構なことではあるのだが実際どうなるかは分からんぞなと。

『Ironically, it may be that the most rhetorically populist president since Andrew Jackson will, in practice, not be populist enough.』

今までの中で最もポピュリストと言われたアンドリュージャクソン大統領の時でも結局そういう期待に応えられてないですからね、とかしらっと。


・成長がすべてを解決する訳ではないとな

『I’m hardly the first to observe that Trump’s election sends an important message, which I’ve summarized this evening as: sometimes, growth is not enough.』

ほほう。

『Healthy aggregate figures can disguise unhealthy underlying trends. Indeed, the dynamism of growing economies can involve the destruction of human and social capital as well as the creation of new markets, products, and processes. Unaided, well-functioning markets can of course play a crucial role in facilitating economic adjustment and redeploying resources, but in a world of imperfect capital markets and public goods problems there is no guarantee that investment in skills acquisition, immigration, or regional redevelopment will be optimal or equitable.』

『Tax and transfer policies can help support those who are displaced, but the limits on such policies include not only traditional concerns like the disincentive effects of income-based transfers but also conflicts with social norms. Notably, people can accept temporary help but transfers that look like “handouts”are often viewed with extreme suspicion or resentment. Some active interventions thus seem a necessary part of a responsive policy mix.』

経済成長が健全に進めば市場が広がったり人々の雇用機会が増えたりとかで社会的厚生も高まるのですが、それだけでは社会全体の教育やら職業スキルやら地域格差問題などが埋まる訳ではなく、再配分政策などの社会的政策、それから(米国の場合はレッセフェールを好むという)社会的規範のありかたの変化なども必要である。というお話をしておりまして、急に話がワープして申し訳ないのですが、バーナンキさん辺りを師匠というか教祖っぽくして言い出したジャパンのリフレ派な皆様って「2%物価達成で問題解決」という宣伝をしていましたよねえと思ってサルベージしてたらこんなのを見つけましたのでご参考までに。

http://seesaawiki.jp/w/reflation/
リフレ政策ポータルWiki

http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20130310/ecn1303100711002-n1.htm
「リフレ政策」って何? なにがなんでも物価目標を達成
2013.03.10

・・・・・というところで時間が無くなってしまいましたのでまだ続く(夏休みでネタが無いので引っ張ってすいません)。





2017/08/14

お題「市場等メモ/バーナンキさんの講演ネタ(その2)」

本石町日記さんがご紹介していたので便乗。
http://www.kobe-u.ac.jp/NEWS/info/2017_08_10_02.html
アベノミクスを再考 浜田宏一・内閣官房参与を招きシンポジウムを開催しました

『浜田氏は「雇用が確保されていれば、インフレ率は低い方が良い。インフレ目標は達成しなくても良いと思っている」と2%のインフレ目標にこだわらない考えを表明し、日銀の金融政策についても「金利が効かないので、量的緩和で行くことにしたが、だんだん限度が近づいている」と認めました。』(上記URL先より)

・・・・・・・普通はそこで「私たちの理論が間違えていましたので反省と共に二度と経済金融政策提言を行いません」って腹を切って詫びるもの(物理的に切れとは言っていない)であって恥を知れとしか申し上げようがない。

#まあ恥を知らないからあんな提言するんでしょうけど


○例によって市場備忘録とFED高官発言メモ

・連休前は地政学では盛り上がりきらず

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1KW2L7
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、長期金利変わらず0.055%

『 <15:19> 国債先物は続伸、長期金利変わらず0.055%

長期国債先物は続伸。前日の海外市場で北朝鮮情勢の緊迫化でリスク回避の流れとなり、安全資産とされる米債が買われたことを受けて買いが先行した。中盤はもみあいとなったが、終盤にかけて海外勢の需要が強まり、上昇幅を拡大した。現物債は高安まちまち。中期ゾーンは日銀オペ結果で需給の緩みが意識されたことなどから調整地合いになった。超長期ゾーンは30年債と40年債に国内銀行勢とみられる買いが継続する一方で、20年債は益出しで金利に上昇圧力がかかった。』(上記URL先より)

ということで最初は地政学キタコレで割と上がって始まったのですけどその後後続の盛り上がりというのでもなく結局寄り引け同事だし、輪番も中期(と短期と物国)だったのであまり長い所に影響しなかったですが、短国買入は強めだったと思うのですが中期輪番はイマイチとか最近ここ連動しなくなっていますねというメモだけ。

ちなみにオペ結果の方ですが、
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170810.htm

国庫短期証券買入 25,043 7,500 -0.004 -0.002 90.6
国債買入(残存期間1年以下) 3,317 1,005 0.003 0.006 36.0
国債買入(残存期間1年超3年以下) 14,930 2,803 0.005 0.005 74.3
国債買入(残存期間3年超5年以下) 12,648 3,304 0.003 0.004 4.9
国債買入(物価連動債) 1,342 251 -0.130 -0.186 45.7

短国買入が7500億円とまあ少な目(つーてもこんなもんちゃあこんなもん)でオファーされましたが、引け強という結果になっていて、売買参考統計値見ますとカレント銘柄は軒並み強く引けていますので、短国の方は買入落ちているけど需給は強いということで、まーここの需給も正直どどーんと持っているであろう人じゃないと良く分からんですな(大汗)。


・CPIを受けて日和発言ではあるもののそもそも市場の予想も一番速くて12月だし・・・・・・

カシュカリ総裁
http://jp.reuters.com/article/kaskari-idJPKBN1AR21N
Business | 2017年 08月 12日 03:27 JST
7月の米CPI軟調、利上げ中断の新たな理由に=ミネアポリス連銀総  

『[11日 ロイター] - 米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は11日、7月の消費者物価統計が軟調だったことは、インフレが上向くことが明確になるまで連邦準備理事会(FRB)が利上げを中断する新たな理由になるとの見解を示した。同総裁は「消費者物価指数(CPI)は今回も軟調だった」とし、「FRBは金融政策を決定する前に、実際の動向を確認するために待つ余裕を持ち合わせている」と述べた。』(上記URL先より)

まあカシュカリ総裁はもとより利上げ反対の人なのでこれは仕様。


カプラン総裁
http://jp.reuters.com/article/kaplan-fed-balancesheet-idJPKBN1AR1YP
Business | 2017年 08月 12日 03:21 JST
米FRB、近く債券ポートフォリオ縮小計画設定 利上げ控える必要=ダラス連銀総裁

『[アーリントン(米テキサス州) 11日 ロイター] - 米ダラス地区連銀のカプラン総裁は11日、連邦準備理事会(FRB)は規模が4兆2000億ドルとなっている債券ポートフォリオの縮小開始に向けたタイムフレームを「近く」設定すると述べた。ただインフレが低迷していることを踏まえ、利上げは当面控える必要があるとの考えを示した。同総裁は記者団に対し「FRBが次の一歩を踏み出す前に(インフレ率2%の目標に向け)進展が見られていることを確認したい」と述べた。カプラン総裁はこれに先立ちテキサス大学で行った講演で、FRBの主要政策金利は「中立」金利に近づいているとし、このためFRBは追加利上げを決定する前にインフレが上昇しているとの一段の証拠を忍耐強く待つ必要があるとの認識を表明。』(上記URL先より)

ちなみに講演の方は読んでいない(すいません)ので何ですが、まあこの「当面控える」の話なのですが、よくよく考えてみれば9月バランスシート縮小開始アナウンス、12月次の利上げ、というのが大体想定されているスケジュールだと思うし、その12月が怪しいのではないかという所でヒャッハーとなったりアチャーとなったりしている訳ですが、12月ってここから4か月先の話でありまして、この「利上げ控える必要」というのが12月の話を意味しているのかどうかってのは良く考えておかないといけませんな。

まー実際にはバランスシート縮小プロセスが始まった所での長期金利の影響というのを市場もFRBも楽観視している可能性があって、その結果としてやっぱ12月ダメじゃんという事になるかも知れないのですが、その場合って利上げ有無の話とは別に長期金利は上がっている訳でして、利上げ無いジャンというのがどういう背景によるものなのか、という事をちゃんと考えておかないと金融政策予想が当たっても金利予想は外してしまうのでねえ・・・・・・・・・


○夏休みネタでバーナンキさんのECBフォーラムの講演だが・・・・・・・・

https://www.ecbforum.eu/uploads/originals/2017/speakers/Speech/Bernanke%20ECB.pdf
WHEN GROWTH IS NOT ENOUGH

・金融政策はマクロ政策の主役の座を降りる、という主要国(除く日本)の流れ

https://ecbforum.eu/programme-overview
Programme overview

こちらにありますように、セッションが『Session 1 Innovation, investment and productivity』、『Session 2 Business cycles, growth and macroeconomic policy』、となっていまして、元々非伝統的金融政策大成功万歳三唱というようなお題ではない、というのはありますが、それにしましても今回のこのバーナンキさんの話って何が凄いって金融政策の役割の話が殆ど無いというところです。

つまりですな、危機対応とインフレ目標に戻すというような所であれだけ「マジック」みたいな事をやって本人もそんな雰囲気を醸し出していたおっちゃんなのですが、まあ構造論の話を真正面から思いっきりしておりまして、もう全然金融政策の出番無いジャンというような内容になっておりまして、日本だけ完全に取り残されている感が強いのですが、主要国のマクロ経済運営って金融政策は最早主役じゃない、あるいは少なくとも金融政策当局は主役の座に居る事は全く望んでいない、という事を示しているのではないか、とまあ斯様に思うのであります。


・米国の構造問題だが・・・・・・・・・・・

連休前にこの講演の中で米国の構造問題として最近あがっているものについて、

『First, stagnant earnings for the median worker』
中間層の所得が弱い事

『Second, declining economic and social mobility. 』
経済的、社会的な移動(アメリカンドリーム的な意味で)がおきにくくなっている事

『The third adverse trend is the increasing social dysfunction associated with economically distressed areas and demographic groups. 』
経済的、社会的(というのか?)に弱者となっている地域や年代に対するソーシャルな
機能が低下している事

『The fourth and final factor I’ll highlight, closely tied to the others, is political alienation and distrust of institutions, both public and private. 』
上記の話と関連するが、政治的、社会的な疎外感とか不信感が国民の間に高まっている事

というのがあります、というのをご紹介したと思いますが、これ特に3番目の辺りもくらーい話をしていて何なのですが、1〜3を飛ばして4番目から参ります。本文で言えば(何故かこの講演ページ番号が無い)6ページ目まで飛びます。

『The fourth and final factor I’ll highlight, closely tied to the others, is political alienation and distrust of institutions, both public and private.』

つーことで政治的な不信とか疎外感の話。

『In particular, Americans generally have little confidence in the ability of government, especially the federal government, to fairly represent their interests, let alone solve their problems.』

元々雨人は自力で何とかするという発想は強かったですが・・・・・・・・・

『In a recent poll, only 20 percent of Americans said they trusted the government in Washington to do what is right “just about always” or “most of the time”.13 The failure to prevent the global financial crisis did not help this situation of course, but these attitudes are long-standing, going back at least to the 1970s.』

中央政府への不信は最近だと大変に高い(信用しているのが2割しかいないという調査結果も)のだがこれは今に始まった話ではなくて70年代以降の話だよと。

『A recent book by the sociologist Arlie Russell Hochschild, Strangers in Their Own Land, recounts her experience living for several years in a politically conservative community in Louisiana. One of her most striking findings is the reluctance of Louisianans to support federal efforts to protect the local environment, despite the substantial health risks they face as the result of pollution by oil refineries and other industries.14 This opposition appears to be partly a product of traditional values of self-reliance and independence but also reflects deep-seated skepticism about the sincerity of government officials and their ability to achieve improvements at a reasonable economic cost.』

Arlie Russell Hochschilのルイジアナ生活による書籍の話が。

『Stagnant median wages, limited upward mobility, social dysfunction, and political alienation are a toxic mix indeed. How did it happen? The sources of these adverse trends are complex and interrelated. But at a fifty-thousand-foot level, they appear to be the product of some broad global developments of the postwar era, together with the U.S. policy response (or lack thereof) to those developments.』

ということで以下もっとそもそも論が始まる。


・そもそも第二次大戦後の経済情勢が特別に恵まれていたという認識キタコレ

『The immediate postwar era, say 1945-1970, was an extraordinary period, economically speaking.』

そもそも1945-1970までの世界が特別だったとな。

『Following fifteen years of depression and war, Americans were once again able to enjoy peace and prosperity. A substantial backlog of technological and commercial innovations was available to be exploited, and producers faced enormous pent-up demand for consumer goods and housing. The federal government provided expansive support for education, through the GI Bill for example, and undertook major infrastructure projects like the interstate highway system. Importantly, for a time the U.S. economy had no effective competition, either from warravaged Europe and Japan or from not-yet-emerging markets. There was plenty of economic change and what we would now call disruption, but strong catch-up growth, active economic policies, and America’s monopoly position resulted in widely shared economic gains. It’s not really surprising that the period evokes nostalgia as a time of national greatness.』

成長の余地は幾らでもあったし、イノベーションによる生産性向上も著しかったし、米国の経済覇権を脅かすような存在も無かったからそら良い時代だったわけよ。

『However, as Robert J. Gordon has documented, the pace of technological and economic change in the middle of the past century was historically quite unusual and unlikely to be sustained.15 By 1970 or so, the backlog of commercial and technical opportunities available at the end of the war had been used up, and the conversion to a civilian, consumer-driven economy was complete.』

でもってそれらの成長余地は1970年辺りで使い切ってしまったと。

『Outside of a brief productivity spurt associated with the IT revolution, the past forty-five years or so have been historically more ‘normal’ in terms of economic growth and productivity gains. Productivity growth has been particularly anemic over the past decade.』

それ以降はIT革命以外の要因で生産性が以前のように大きく向上することはなくて、ある意味通常の状態になってしまいましたと。特にここ10年はアカンと。

『Equally important, American economic dominance faded, as Europe and Japan recovered and as what we now call emerging-market economies accounted for increasingly larger shares of global output and trade. The emergence of China as a global trading power was particularly disruptive, with adverse effects on the wages and employment opportunities of many American workers of moderate or lower skills.16 In contrast, high-skilled workers tended to be favored by global economic integration, particularly those whose talents were scalable to the size of the market, such as managers of internationally active firms or of global hedge funds.』

おまけに欧州や日本、そして中国が伸びてきて、特に中国が伸びることによって一般的な労働がグローバルな価格競争にさらされて通常の労働者の賃金が上がらなくなってきました。


・・・・・・・てな感じで1970年の所で話を切って、それ以前の高成長社会はあれは奇跡でしたという話をするという事でこの講演は以下続くのですが、今朝はちと寝坊したので時間の関係でここまででとりあえず勘弁。






2017/08/10

お題「市場メモ雑談とストック効果に関して雑感/バーナンキの米国に対するお話(今日は冒頭だけ)」

http://jp.reuters.com/article/trump-north-korea-idJPKBN1AP2E7
orld | 2017年 08月 10日 04:33 JST
トランプ氏の「炎と怒り」発言は場当たり的=米政権当局者

というか某中央放送みたいですな。

○短国とか例によってメモ

うむ
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170809.htm

(3)募入最低価格 100円02銭7厘0毛(募入最高利回り)(-0.1082%)
(4)募入最低価格における案分比率 24.2019%
(5)募入平均価格 100円02銭7厘7毛(募入平均利回り)(-0.1110%)

つーことで先週の3M新発が▲11.78bp/▲11.42bp、火曜日の6M新発が▲11.50bp/▲11.31bpと来まして昨日は▲11.10bp/▲10.82bpとなりましたので、新発が出る側から順調(?)に金利が上昇しているの図という大変に分かりやすい展開です。

本日は短国買入(2Mは結局でないので)の筈ですが、この順調に金利が上昇するのを見てさあどうするんでしょという所ですが、短国があまりにも重くなると一応中期位まで波及することもあるみたいなので一応注意しておくかなという程度ではありますけど、何せ今月は償還が4兆切るので買入5回で6Mと1Yの週を1兆円で入れて買入が3.5兆円になって、残高あまり減らないの図になってしまいますな(というか9月どうするの)。

これ買入がちょっと増えるとあっという間に需給が締まって、ちょっとペースが落ちると▲10bpに張り付くという形なのですが、目先のプライスアクションについてはフローが効いているのですが、そうは言いましてもフローがちょっと動いただけで需給がピョーンと動いてしまうのは、やはりストック効果があるからこそであって、本来こんなにストックが無ければもうちょっと需給のブレってマイルドになるんじゃないのかなーとか、短国買入と短国市場の動きってのは将来この調子で国債買入が続いた場合に国債市場も同じような感じで(ただし短国と違って超過準備ペナルティ金利というバックストップが無いのだが)国内最終投資家が排除、とは言わないけどそれに近い状態になったとき(そこに至る前に何とかしないととは思いますが)に買入をどうやって減らすのか、その時にフローが効くのかストックが効くのか、というのはあるようにも思えます。

ちなみに、元々漠然と短国見ながら考えていた時は「買入残高が少ない時にはフローが効くのだが、どこかの閾値を超える(端的に言えば日銀の買入残高と市中の投資家のニーズが発行額を越えた時点ではないかと思う)ところで、急速にストック効果が効いてくる、という感じなのですが、今短国買入の残高を落とす中、つーてもまだ残高多いので良く分からんのですが、その状況において、価格形成にフローが効くのかストックが効くのかってよくわからんなあと思ったりしております。

つまり、多分なんですけど、日銀の場合って買入がとにかく成行で全部買って来ますから、閾値を超えると投資家が買えない金利水準まで購入することになって(金利を下げようとしているのだから仕方ないけど)、逆に残高を減らす中で閾値よりも残高が減ったらストック効果って段々剥落するのかなあとか思っていたのですが、今の市場を見るに金利が馬鹿下がりした状態が長期化しちゃうと、そもそも市場参加者の方が離散してしまうので、当初あった筈の市中の投資家ニーズというのの総量に変化が生じてしまっていて、市場にある種不可逆(というのは言い過ぎで多分最後は戻って来るのだが)な変化が生じてしまっていて、残高を落とすときに同じような形で市場が戻らない、という事になるのかなー(短国の場合はマイナス金利という特殊事情によってリアルマネー系の短期資金投資家を排除しっぱなし、というのも効いているようにも思えますが)とか何とか、まあそんな事をつらつら考えまするに、QQE政策も大概にしておかないと収拾大変なことになりそうだな、とか思うのでありました。


ところで長期債の方。
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1KV2IH
Markets | 2017年 08月 9日 15:22 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発、長期金利6月28日以来の0.060%に低下

『 <15:16> 国債先物は反発、長期金利6月28日以来の0.060%に低下

長期国債先物は反発。北朝鮮がグアムへのミサイル攻撃を検討しているとの報道を受けて地政学リスクが高まり、円高・株安が進行する中で、安全資産とされる国債が買われた。中心限月9月限は一時6月30日以来となる150円35銭を付ける場面があった。

現物債もしっかり。国債先物に連動して長期ゾーンは強含みで推移したほか、中期ゾーンもあすの日銀オペ期待で買いが優勢になった。超長期ゾーンはきょう実施された日銀オペ結果が強めだったことから金利に低下圧力がかかった。国内銀行勢の買いが観測されており、20年債利回りは6月29日以来の0.565%に低下した。長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比12銭高の150円34銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比0.5bp低い0.060%と出来値ベースで6月28日以来の水準に低下した。』(上記URL先より)

つーことで昨日は長期と超長期の輪番が全体的に強くて上昇ということですが、さてここらでこの前増やした中期3-5と長期の輪番を元に戻すかとか気にしないのかなあとか思ったりはしますが、最近はどうも変に動いて目立たないようにするという感じはヒジョーに見受けられますし、中期輪番に関しては短国市場次第でまた中期が重くなってしまう可能性があるので中途半端な所で減らすのも難しいかも知れませんね。

しかし地上戦やってるのと違ってミサイルでドンパチなのに何で日本が安全資産になるのかが相変わらず意味不明ではありまする。


○やはりエバンス総裁ですな(メモ)

詳細が分からんので(シカゴ連銀見に行っても特にこの関連のブツは無い)ヘッドラインだけのお話ですが。

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-evans-idJPKBN1AP2FW
Business | 2017年 08月 10日 05:04 JST
米FRBバランスシート、来月の縮小開始妥当=シカゴ連銀総裁

『[シカゴ 9日 ロイター] - シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は9日、インフレは低迷しているが、連邦準備理事会(FRB)がバランスシートを来月縮小し始めることは可能とする一方、利上げは12月以降に先送りを余儀なくされる公算が大きいとの認識を示した。シカゴ連銀本部でインタビューに応じた。総裁は「現時点で入手したデータに基づけば、インフレ指標が一時的に下振れする恐れがあっても、バランスシートの縮小を9月に開始することは極めて妥当」と述べた。総裁は今年に入り2度の利上げを支持している。3度目の利上げを巡っては「12月はあり得るが、インフレが鈍化し、より多くの金融緩和が必要と判断すれば、先送りすることも可能だ」とした。』(上記URL先より)

ってすいません全文引用しちゃいましたが、エバンス総裁はある意味わかりやすくて、この人は従前はハト派扱いだったと思うのですが、ここもとは割と普通に利上げ支持をしていまして、そこでこの利上げ先送り可能発言なのですが、この人は割と分かりやすくて、アクチュアルな物価が上がりだすとタカ派になるし、伸びが弱くなってくるとハト派になるという物価指数連動型の人なのですよね。

従って構造的にどうのこうのという意味で反対するというタイプではないです。



○思いっきり昔のネタですが逆さ絵おじさんことバーナンキ大先生の講演というのがありまして(今日は出だしだけ)

この前のECBフォーラム@ポルトガルのシントラ(6月26〜28日)
https://ecbforum.eu/speakers-and-papers-2017
Speakers and papers

https://www.ecbforum.eu/uploads/originals/2017/speakers/Speech/Bernanke%20ECB.pdf
WHEN GROWTH IS NOT ENOUGH

・長期的なチャレンジがどうのこうのというお話。

最初の方から参ります。

『The theme of the conference, investment and growth in advanced economies, has about it a feeling of transition, which I suspect was intended. With policy interest rates at or close to zero in most advanced economies, and with inflation still very low, there is much more work to be done before a full recovery from the global financial crisis can be claimed. Still, with cyclical expansions apparently entrenched, financial conditions looking stable, and the major central banks at least contemplating their exits from extraordinary policies, it’s natural that the focus is beginning to shift to the longer-term challenges of growth, investment, and structural change.』

金利がまだゼロ近辺だし物価はまだ低いのでまだ完全回復とは言えませんが、緩和的な金融政策の出口という事になっていく中で、注目はよりロンガータームの成長、投資、構造変化に対する対応に変わっていくのは自然です。ということで、1か月少々前の話になりますが、まあこんな話をしていまして、別にバーナンキさんの発言のせいではないですけれども、特に米国は最近この「長期的なチャレンジ」という話で金融政策だけではありません、というような事を言うようになっています。

まーこのバーナンキの説明だと「金融政策で危機対応をするステージではなくなったので、金融政策は経済政策の第一線から撤退するよー」という説明でもあるので、そういう意味では話の筋は通っているのですけど。

『In my remarks this evening I’ll discuss some of these longer-term challenges from the perspective of my own country, the United States. My talk is entitled “When Growth Is Not Enough” and is strongly influenced by recent political developments, which have cast a bright light on some disturbing economic and social trends in the United States. 』

自分の講演について「strongly influenced by recent political developments」とか言ってしまうのは中銀の人じゃなくなったからこそですな。


・米国人が経済が回復しているにもかかわらず満足度が低いとな

でもって講演は経済回復が進んでいる話と、米国の強さについての話をしているのですが、その辺は飛ばしまして、

『And yet, despite the sustained cyclical upswing and the country’s fundamental strengths, Americans seem exceptionally dissatisfied with the economy, and indeed have been for some time.』

アメリカ人は異例なまでに経済に対して不満をもっているそうな。

『For example, those who tell pollsters that the country is “on the wrong track” consistently outnumber those who believe that America is moving “in the right direction” by about two to one.1』

『And, of course, last November Americans elected president a candidate with a dystopian view of the economy, who claimed that the “true” U.S. unemployment rate was 42 percent, (inaccurately) described the United States as the most highly taxed nation in the world, and promised to restore lost American greatness. Nor, it should be noted, did the anger come exclusively from the right, as a left-wing populist made a serious bid for his party’s nomination as well.』

でもって米国で世論調査すると「米国が悪い方向に向かっている」と考える人の方が倍くらい多くて、その結果がこの前の大統領選挙ですよとのご指摘ですわ。

『So why, despite the undoubted positives, are Americans so dissatisfied? The reasons are complex and not entirely economic. Without trying to be comprehensive, I’ll highlight here four worrying trends that help to explain the sour mood.』

ということで、今の米国における問題を4点上げておりまして、

『First, stagnant earnings for the median worker』
中間層の所得が弱い事

『Second, declining economic and social mobility. 』
経済的、社会的な移動(アメリカンドリーム的な意味で)がおきにくくなっている事

『The third adverse trend is the increasing social dysfunction associated with economically distressed areas and demographic groups. 』
経済的、社会的(というのか?)に弱者となっている地域や年代に対するソーシャルな機能が低下している事

『The fourth and final factor I’ll highlight, closely tied to the others, is political alienation and distrust of institutions, both public and private. 』
上記の話と関連するが、政治的、社会的な疎外感とか不信感が国民の間に高まっている事

ってなのを上げているのですが、以下時間がということで週末以降に続きます。





2017/08/09

お題「相場が動かないのでこの前のBOEネタを簡単なメモ程度に」

これはこれはドリル先生お久しぶりです。
https://mainichi.jp/articles/20170809/k00/00m/010/113000c
小渕氏、3年ぶり要職 組織運動本部長代理に
毎日新聞2017年8月8日 21時42分(最終更新 8月8日 23時20分)


○全然動かんが市場備忘メモ

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1KU2HV
Markets | 2017年 08月 8日 15:15 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小幅続落、長期金利0.070%に上昇

『 <15:12> 国債先物は小幅続落、長期金利0.070%に上昇

長期国債先物は小幅続落。7日の米債高を材料視した短期筋からの買いが先行したが、前場の中盤以降は30年債入札を控えたヘッジやポジション調整的な売りに押された。現物債は小動き。入札絡みで超長期ゾーンが動意づいた程度で、引き続き投資家の動きは鈍い。30年債入札は日銀の買い入れオペを意識したニーズが強めで無難な結果に収まった。長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比2銭安の150円22銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比0.5bp上昇の0.070%。』(上記URL先より)

ってな訳で昨日は30年国債の入札があって、これを抜けると次の中長期国債の入札が17日まで飛ぶので動くなら昨日と思ったこともありましたが、まあ入札でも動かんですなあという結果とな。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20170808.htm
6.価格競争入札について
(1)応募額 2兆5,245億円
(2)募入決定額 6,472億円
(3)募入最低価格 98円10銭(募入最高利回り)(0.880%)
(4)募入最低価格における案分比率 12.8466%
(5)募入平均価格 98円20銭(募入平均利回り)(0.876%)

事前予想と言われていた水準と同じような所で落札決定するものの、その後別に30年カレントに買いが入ったような感じでもなく、とは言っても別に売り込む人もいないということで入札で新発が出た分ちょっと重くなりましたね程度のお話になっていまして、上記のロイターさんの記事にありますように翌日(今日)は超長期の輪番があるということで叩く人も無しの巻。

つーことで何ですな、YCCもそうなのですが、輪番が入札の翌日に実施というそれは財政ファイナンスとどう違うのかというオペレーション方法に加え、オペ日程事前公表で入札の翌日に実施しますよというのも確定しているので、入札で投資家のニーズがそんなになくても日銀に打ち込みの巻で値持ちしてしまう、というような状況になっている訳ですが、これって輪番がこういう打ち方じゃ無くなったら国債入札ってどうなりますねんというのが気になる所ではあります。

いやまあそのこと自体は今に始まった訳ではなくて大分前からそういう事にはなっているのですが、YCC政策始まって10年金利が動かなくなって中短期の買入減らして修正して、という風になっていく中で市場の流動性って一段と落ちているので、輪番の支えを外したら(勿論今はYCCやっているから支えが外れるという事は無いのですが・・・・・・・)どうなってしまいますねんとは思うのでありました。ここまで入札で相場が動かなくなってしまうと(寧ろ輪番の方が動くカモ)、市場の流動性の低下って閾値越えてるんじゃないですか的な感覚はするのであります。

でもってそれって何がアカンと言いますと、YCCとか市場機能をおかしくする副作用あるからもう少し柔軟運用したら、というような話をしようにもそもそも市場機能が壊れて輪番が無いと入札が持たないというような状態になってしまうとオペレーション自体が止められなくなるというヤク中ジャンキーモードになってしまって、ヤク抜きするのに物凄い痛みが発生するか、廃人になってしまうかというような事になるんですけど大丈夫ですかと思いますし、多分今の時点で市場機能低下も懸念されるからとか言って超長期の輪番を減額するのも難しいんじゃないのかね(べき論としては減らした方が良いようにも思えますが・・・・・)という気がだいぶするのでした。


一方短国6M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170808.htm

(3)募入最低価格 100円05銭8厘(募入最高利回り)(-0.1131%)
(4)募入最低価格における案分比率 68.5647%
(5)募入平均価格 100円05銭9厘(募入平均利回り)(-0.1150%)

前月の6Mから見ると金利下がっているのですが、先週の3M新発が▲11.78bp/▲11.42bpだったので、まあこれは金利が上がりましたという方が正しくて、さすがに短国買入が減るのが効いて、短国買入専用機であるところの6Mのレートも直近の3M新発より甘くなりましたなという事で順当順当。

つーてまあ昨日はCP買入の金利がまた下がってたりとかで、別に短期の需給が全部緩んだというよりは短国買入の部分だけでの話ではある(って短国が規模でかいけど)ので別にこれから金利がバカスカ上がるという話でもないでしょ、とは思うのでありました、はい。


○ところでBOE

先週のネタを今更なのですが(超大汗)。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2017/005.aspx(8月)
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2017/004.aspx(6月)

本当は議事要旨もネタにしないといけないのですが最近読み込みが不足していて簡単で勘弁(そのうち読み込みますが、こういうのはちょっとサボるとキャッチアップするのに時間が掛かりまして、大体半年分くらい心を無にして読み続けるとキャッチアップできる、というのが経験上のイメージであります)ということで。

『The MPC’s overall assessment of the outlook for inflation and activity in the August Inflation Report is broadly similar to that in May. In the MPC’s central forecast, GDP growth remains sluggish in the near term as the squeeze on households’ real incomes continues to weigh on consumption. Growth then picks up to just above its reduced potential rate over the balance of the forecast period. Net trade and business investment firm up, and consumption growth recovers in line with modestly rising household incomes. Net trade is bolstered by strong global growth and the past depreciation of sterling. The combination of high rates of profitability, especially in the export sector, the low cost of capital and limited spare capacity supports investment by UK firms over the forecast period, offsetting the effect of continued uncertainties around Brexit.』(8月)

『The MPC set out its most recent assessment of the outlook for inflation and activity in the May Inflation Report. That assessment depended importantly on three main judgements: that the lower level of sterling continues to boost consumer prices broadly as projected, and without adverse consequences for inflation expectations further ahead; that regular pay growth remains modest in the near term but picks up significantly over the forecast period; and that more subdued household spending growth is largely balanced by a pickup in other components of demand.』(6月)

まあ大体ここの書き方ってあまり前回とどうのこうのという感じでもないのと、8月はインフレーションレポート更改の会合ですので説明が長くなるのですが、6月での書き方ですと「lower level of sterling continues to boost consumer prices broadly as projected」、「regular pay growth remains modest in the near term but picks up significantly over the forecast period」、「more subdued household spending growth is largely balanced by a pickup in other components of demand」とか消費の先行きに関してそんなに懸念していない話だったのに対して、8月は「GDP growth remains sluggish in the near term as the squeeze on households’ real incomes continues to weigh on consumption」とかになっていまして、家計の実質所得の低下の悪影響を指摘しているのですな。


でもって物価に関しては、

『CPI inflation rose to 2.6% in June from 2.3% in March, as expected. The MPC expects inflation to rise further in coming months and to peak around 3% in October, as the past depreciation of sterling continues to pass through to consumer prices. Conditional on the current market yield curve, inflation is projected to remain above the MPC’s target throughout the forecast period. This overshoot reflects entirely the effects of the referendum-related falls in sterling.』(8月)

物価がターゲットを上回っているのはブリクジット以降のポンド安によるもので一時的という説明になっていて、これはまあ6月もそういう説明になっているのですが・・・・・・

『As the effect of rising import prices on inflation diminishes, domestic inflationary pressures gradually pick up over the forecast period. As slack is absorbed, wage growth is projected to recover. In addition, margins in the consumer sector, having been squeezed by the pickup in import prices, are projected to be rebuilt. Consequently, inflation remains at a level slightly above the 2% target.』(8月)

今後の物価はポンド安の影響の後に国内物価への波及が来るものの、スラックは無くなっているので賃金は上昇するでしょう(からそこは悪影響も抑えられる、と言いたいのでしょう)。ああそれから消費に関してはポンド安で輸入物価が上がるのでそっちの悪影響で消費が弱まるでしょうということで、少し長く見れば物価に下押しという事なのでしょう。でもって見通しは2%を少々上回る程度、という結論になっております。


ということで・・・・・・・・・

『Monetary policy cannot prevent either the necessary real adjustment as the United Kingdom moves towards its new international trading arrangements or the weaker real income growth that is likely to accompany that adjustment over the next few years.』(8月)

実質所得の問題がポンド安にあるだけにポンド安で景気を吹かすというのと物価下げて実質所得を上げるというのは相反する話、というのは6月の時も同じ話をしています。

『Attempting to offset fully the effect of weaker sterling on inflation would be achievable only at the cost of higher unemployment and, in all likelihood, even weaker income growth. For this reason, the MPC’s remit specifies that, in exceptional circumstances, the Committee must balance any trade-off between the speed at which it intends to return inflation sustainably to the target and the support that monetary policy provides to jobs and activity. Through most of the forecast period, the economy operates with a small degree of spare capacity and CPI inflation is well above the target. By the end of the forecast, that trade-off is eliminated. Spare capacity is fully absorbed, and inflation remains above the target.』(8月)

でもってどっちを取るかというと緩和政策で経済を吹かす方を選ぶしかないですね、というのはずっと言っている話なのですが、

『The Committee judges that, given the assumptions underlying its projections including the closure of the drawdown period of the TFS, and allowing for the effects of the recent prudential decisions of the Financial Policy Committee and the Prudential Regulation Authority, some tightening of monetary policy would be required to achieve a sustainable return of inflation to the target.』(8月)

この「tightening」が必要云々というのは6月には無かった文言だったりします。

『Specifically, if the economy follows a path broadly consistent with the August central projection, then monetary policy could need to be tightened by a somewhat greater extent over the forecast period than the path implied by the yield curve underlying the August projections.』(8月)

とありまして、票決自体は利上げが減っているのですが、ただまあそれによってポンド安ヒャッハーとなると物価が更にオーバーシュートしてしまう、というのもあり、しかも前の物価上振れの時は「経済のスラックがあるから緩和は正しい」と思いっきり言えたのですが、スラックの方も無くなってきているという中ですとこりゃ困ったという感じなんだろうなあ、と思いました。

#議事要旨読みながら追いついて行ったら夏休みヒマネタにでもする所存




2017/08/08

お題「市場雑談/木内さん・・・・・・・/ネタも無いのでブラード総裁のいつもの主張を再確認」

まあ何だか。
http://www.asahi.com/articles/ASK875QB7K87UUPI004.html
加計関係者発言の速記録「存在しない」特区WGで内閣府
岡崎明子、星野典久 2017年8月7日20時30分

『民進党はこの日の調査チームの会合で、内閣府に対し、ヒアリングの全容を開示するよう求めた。これに対し内閣府の塩見英之参事官は、業者に委託した「速記録」をもとに議事要旨を作成したとしたうえで、「議事要旨を作れば用済みになるので、元の速記録は今の段階では存在しない」と語った。同党は録音記録の開示も求めたが、塩見氏は「(業者に)速記のお願いをしているだけ」と述べた。』(上記URL先より)

速記って内閣府の人間がやるんじゃないというのも微妙ですがそれは兎も角としまして、速記録を廃棄してどうやって将来議事録を作るのでしょうか。まさかとは思いますが議事要旨に適当に言葉を勝手に増やしただけで議事録でございとかやるんでしょうか。


ちなみに日銀MPMだと例えば、
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2007/gjrk070615a.pdf
の冒頭に必ず「会合の中でのご発言は全て記録させて頂く。そのことを前提にご出席の皆様方はご発言頂ければというふうに思う。」と議長が発言している訳ですけれども。


○市場メモメモ

・いやー動きませんなー

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1KT2BX
Markets | 2017年 08月 7日 15:09 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が小反落で引け、長期金利0.065%に小幅上昇

『<15:08> 国債先物が小反落で引け、長期金利0.065%に小幅上昇

国債先物中心限月9月限は前営業日比2銭安の150円24銭と小反落して引けた。前週末の米債安に加え、8日に30年債入札に備えた調整圧力で売りが先行した。7月米雇用統計の結果は積極的に材料視されなかったが、手掛かり難で様子見ムードが強く、わずか4銭の狭い値幅で推移した。出来高は7657億円と昨年12月27日以来の低水準。

現物市場は閑散。30年債入札を控える超長期ゾーンを中心に軟調。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp高い0.065%に上昇。』(上記URL先より)

>出来高は7657億円と昨年12月27日以来の低水準
>出来高は7657億円と昨年12月27日以来の低水準
>出来高は7657億円と昨年12月27日以来の低水準

・・・・・・・・・・・・orzorz

いやーもう前週末に雇用統計あったのですけれども、輪番も入札も無い月曜日ということでこれですよ、というのもありますし、まー押し目買いましょという人が待っていて、下を叩く人がいないということなのでこの有様という事なのでしょうが、これで30年国債の入札で特に何も無ければ今月って超長期の輪番と入札(流動性供給を含む)のタイミングがバランス良く設定されているので益々動くネタェ・・・・・・・・・・という感じで。


○木内さんが早速大暴れしている模様と聞きまして

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-08-06/OU5IW06KLVR901
木内氏:緩和の効果強調「非常に危うい」、日銀総裁任期が修正の好機
日高正裕、藤岡徹
2017年8月7日 08:38 JST

『木内氏は、もともと2%の物価目標にはっきりした根拠はなく、日銀はその点で「思考停止になっている」と指摘。本当に2%が妥当なのか「根本から問い直すことが非常に重要だ」と言う。超低金利が非常に長期化する中で、「追加的な金利低下の効果は小さくなっている」との見方を示す。日銀は実質長期金利の低下を強調しているが、「効果が出たのは14年くらいまでで、それ以降は副作用ばかり積み上がる局面に入っている」と語る。』(上記URL先より)

という感じでお話をしているのですが、上記URL先の記事だと話が正直要領を得なくてもうちょっと記事分かりやすく書いてよと思うのですが、アタクシも人から教えて頂いたのですが、インタビュー記事よりも充実した物件がございます。ご案内の方も多いとは存じますがこちら。

http://fis.nri.co.jp/ja-JP/knowledge/commentary/category/kiuchi.html
木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

着任後にジャンジャンレポートを出していまして、しかも今週になったら遂にリストが2ページに突入してるじゃんということで、題名を見てみましょう(リンクはめんどいからしていません)。

2017年08月07日財政リスク顕在化の条件と金融政策
2017年08月04日欧州の低い賃金上昇率は移民流入のためか?
2017年08月04日IMFが日本の労働市場改革を提案
2017年08月03日金融仲介機能は既に低下
2017年08月02日銀行の資本増強は破綻回避に十分か?
2017年08月02日日本での高額紙幣廃止論
2017年08月01日消費者物価の上昇を妨げる携帯電話関連値下げ
2017年08月01日労働の質の変化が賃金上昇を阻む
2017年07月31日ネットショッピング拡大の物価への影響
2017年07月31日企業の中長期成長期待と金融政策
2017年07月28日ブレグジット後の清算機構(CCP)問題
2017年07月28日再燃する米連邦債務上限引き上げ問題
2017年07月27日ETFの急成長とその課題
2017年07月27日フィリップス曲線分析の陥穽
2017年07月27日BOEの金融政策とマクロプルーデンス政策
2017年07月26日米国の自然利子率と追加利上げ不要論の検証
2017年07月26日人材への投資とこども保険
2017年07月25日金融危機前の水準を超えた米国家計債務
2017年07月25日働き方改革と人手不足深刻化の功罪
2017年07月24日FRBのバランスシート圧縮と出口戦略
2017年07月24日プライマリー・バランス黒字化目標と政府債務GDP比率目標


2017年07月27日フィリップス曲線分析の陥穽
2017年08月01日労働の質の変化が賃金上昇を阻む
2017年08月03日金融仲介機能は既に低下

とかの辺りを始め、時々ポチポチと拝読していますが、NRIさんの物件だからホイホイとネタにして良いのか良くないのか分からんということで存在のご紹介だけしておきましたが、どんだけ鬱積が溜まっていたんだという事で同情の念に堪えません。

一方佐藤さんはまだメディアとかには出て来ないですっかり静かにしている訳ですが、木内さんにしろ佐藤さんにしろ言いたいことは沢山あるんでしょうなあとは思うのでございますが、最初にNRIの上記ページ見た瞬間にあまりのレポートの多さに正直吹きました。


○ブラード総裁はいつものお話ではあるのですが・・・・・・・・・・・・

米国ばっかりネタにしていますな(だって円債・・・・・・)。

http://jp.reuters.com/article/fed-bullard-idJPKBN1AN227
Business | 2017年 08月 8日 04:18 JST
米FRB、短期的な利上げの必要なし=セントルイス連銀総裁

『[7日 ロイター] - 米セントルイス地区連銀のブラード総裁は7日、米労働市場の改善が継続したとしてもインフレ率が大きく上昇する公算は小さいため、連邦準備理事会(FRB)は当面は金利を現行水準に据え置くことができるとの考えを示した。』(上記URL先より)

まあブラード総裁が金利を動かさない、という話をするのは仕様なのですけれども、相場後講釈の方ではロイターやブルームバーグでは特に触れていないですけど、モーサテでは連銀高官のハト派発言がむにゃむにゃとか言っていまして、少々違うんじゃないの(ブラードさんがハト派発言するのは仕様なので)とは思いましたけど、まあ金利下がる方の言い訳に使われるというような地合いなんですけねえ。


ということでまあブラード総裁自体の主張は最近はスーパーハト派モードになっておりますが時々確認を入れて置く必要はありますので確認確認(誰ですかネタが無いから無理矢理ネタにしているだろうとかいうツッコミをする人は)。


https://www.stlouisfed.org/from-the-president/speeches-and-presentations/2017/low-inflation-surprise
A Low Inflation Surprise for U.S. Monetary Policy


でもって要旨
https://www.stlouisfed.org/news-releases/2017/08/07/bullard-low-inflation-surprise

プレゼン資料
https://www.stlouisfed.org/~/media/Files/PDFs/Bullard/remarks/2017/Bullard_AMCOT_Nashville_7_August_2017.pdf?la=en

基本的には要旨から引用しますがプレゼン資料の方から引用する場合は注釈しますね。

プレゼンの3枚めに『Key themes in this talk』ってのがありまして、

『Background on U.S. monetary policy and the Federal Open Market Committee (FOMC)
・ Post-recession low-growth regime in the U.S.
・ Recent low inflation in the U.S.
 o Connection to global commodity markets
o Relationship with unemployment
・ Upgrades to the global growth outlook and the implications for the value of the U.S. dollar
・ Implications for near-term U.S. monetary policy: The current level of the policy rate is likely to remain appropriate over the near term.』(プレゼン資料より)

ってあって、複数均衡論大好きなブラード総裁はここ1年近くこれ一本槍で行ってるのですが、「low-growth regime」に米国経済が入ったから、物価はあがりにくいので金利を低いままにしても無問題、というのが毎度の趣旨ではあります。


・BISビュー的なイメージは引き続き持たない人だがFOMCはまた違うという件

以下要旨の方から。

『After providing a brief background on the Federal Reserve, including its decentralized structure and the role of the Federal Open Market Committee (FOMC), Bullard noted that the FOMC’s goals include good labor market performance and an inflation target of 2 percent.』

というのはともかく。

『“Financial stability is sometimes considered as an additional goal, but can be more directly addressed through regulatory policy. This remains a hot topic,” he said.』

ということで、プレゼン資料の方でも同じようなスライドはあるのですが、じゃあ何がどうなっているのか、という話は特に無くて、金融安定に関する金融政策の役割という点に関してブラード総裁的に何らかの論点を提示してどうのこうの、というのではなくて、「より直接的にはその問題は規制で解決する話であってマクロプルーデンス的な利上げとかはありえん」という立場を維持していますが、ただまあ「This remains a hot topic」と入れているのがお洒落で、これはFOMCの内部での利上げ議論の中でマクロプルーデンス的な発想での利上げを企図している向きがある(というか多いんでしょ)ということを示していると思います。

つーことで、何か実際に米国にいて米国国債のトレーダーやっている訳ではないからさっぱりその辺の感覚が掴めんのだが、ブラードさんも指摘するように、FOMCってマクロプルーデンス的な観点からの利上げ継続という考えも根強くあると思われる訳で、そういう中でゴルディロックヒャッハーとかやってるのってそれマクプル利上げを一段と後押しするじゃんとか思ってしまうのですが、その辺のバランスってどういう風に米国の人たちの頭の中でなっているのかが疑問なのですけどどうなんですかねえ。


・2%成長レジームではなくて低成長レジームといういつもの話だが物価の話でワロタ

『He then turned to some key aspects of today’s macroeconomic situation. In particular, he examined the low-growth regime in the U.S. since the recession. He also discussed recent inflation outcomes, which he said “have been unexpectedly low,” and their connection to global commodity markets.』

最近の物価は「予想外に低い状態が続いている」だそうでダラス連銀の刈込平均を使っているのですが、プレゼン資料の15枚目のグラフは(貼れないので見てちょという所です)いやそれはちょっと幾らなんでも恣意的な作りでは、という感じです。

でもって昨日ご紹介したウィリアムスSF連銀総裁はこの同じダラス連銀の刈込平均が1.7%(ブラードさんも1.7%の数字を見て上記の話をしている)なのを見て「だいたいマンデートに近い所」と言っている訳で、同じ数字を見ても解釈が全然違うとか笑えるわ。

『In addition, he looked at whether the low U.S. unemployment rate means that inflation is about to increase substantially. Regarding the global economy, he discussed the impact of upgrades to the global growth outlook on the U.S., specifically implications for the value of the U.S. dollar.』

『Bullard also addressed what the current macroeconomic situation means for the policy rate (i.e., the federal funds rate target). “The current level of the policy rate is likely to remain appropriate over the near term,” he said.』

まあ結局いつもの話に落ち着いているのですが、今の金利が適切というのは、米国経済が低成長レジームにあるので、物価がそう簡単にあがらんため、という話なので、根本的に今のFOMCの中心的見解とは違う、という事になっております。


・つーことで失業下がっても物価はあがらんと

『Bullard noted that recent labor market outcomes have been relatively good and discussed the question of whether the low U.S. unemployment rate-at 4.3 percent in the July reading-might signal a substantial rise in inflation.』

本来なら上がるはずなのに何で上がらんのか。

『“The short answer is no, based on current estimates of the relationship between unemployment and inflation,” he said. “Even if the U.S. unemployment rate declines substantially further, the effects on U.S. inflation are likely to be small.”』

という質問に対しては、そもそも失業率がこれ以上さがってもまだ物価に与えるインパクトが小さいから、という答えでして・・・・・・・・・・・・・

『To sum up, given that recent data indicate that real GDP growth remains consistent with the low-growth regime of recent years; that U.S. inflation has surprised to the downside in recent months and that low unemployment readings are probably not an indicator of meaningfully higher inflation over the forecast horizon, he concluded, “The current level of the policy rate is appropriate given current macroeconomic data.”』

ということで金利据え置き主張といういつもの話ではあったのですが、同じ物価指数を見て全然解釈が違うこと、FOMC内部では想像通りではありますがマクロプルーデンス利上げ路線が相応にあるんだな、というのは把握できました。





2017/08/07

お題「ウィリアムス総裁の金融政策限界論」

あらそうですか。
https://this.kiji.is/266372203401691140
首相、消費税10%引き上げ明言
改憲は多数派へ努力
2017/8/5 15:34

○市場メモメモ

・今月初回の中期も長期動かさないので順当ですが

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170804.htm

国庫短期証券買入 5,000 2017年8月8日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,800 2017年8月8日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,300 2017年8月8日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2017年8月8日
国債買入(残存期間25年超) 1,000 2017年8月8日

つーことで、中期輪番は金曜も3300億円のまま、まあ超長期をここで減額する意味は無いからそっちは当然としても超長期も買入維持でのオファー、と来ていまして、順当は順当ですがこの調子だと輪番って中々減らないんじゃないのという感じがする中で雇用統計の数字は良い(けど賃金ェ・・・・・・)ということで、結局の所先月増やした輪番分は減らせないままで走ることになりそうですな。

あと短国買入に関しては5000億円でこれまた順当なのですが、何せ今月は
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/index.htm/
日銀当座預金増減要因(見込み)

の8月にありますように、短国の償還が39600億円(自分の計算と同じでホッとした)しかないので、5000×5でも2.5兆円の買入になってしまいますから買入ってこの程度で進めるしかないっつーことでこれまた順当なのですが、来月ってアタクシの計算が間違えて無ければ(何せエクセル使ってますが実質手計算みたいなもん)9月の償還って3兆カツカツ位しかないので、来月短国買入どうしましょ、というのはありますが、まー9月は長期国債大量償還月だしその辺のニーズもあるでしょうから買入が減って金利がマイナス一桁BPになった方が皆さんハッピーなんじゃないですかねえ(てきとう)ということで。


なお輪番の結果は
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170804.htm

国庫短期証券買入 14,250 5,003 0.000 0.001 40.5
国債買入(残存期間1年超3年以下) 10,790 2,801 0.001 0.002 25.4
国債買入(残存期間3年超5年以下) 14,333 3,304 0.002 0.003 38.2
国債買入(残存期間10年超25年以下) 8,221 2,002 0.000 0.003 29.2
国債買入(残存期間25年超) 4,321 1,003 -0.002 0.001 34.8

超長期が微妙に甘い気がするのだが入札前だからですかねえ。短国は相変わらず応札が1.4兆円しかないので需給は今のところ良好と。


・ちなみにものは試しに再計算してみた

使うのはこの辺

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/index.htm/
営業毎旬報告

昨年末の時点での日銀保有国債残高ですが、銘柄別残高(額面)と営業毎旬(簿価)から計算してみると、額面で350.7兆円、簿価で360.7兆円という数字になって、直近7月末の数字が額面で387.5兆円、簿価で397.7兆円となると思います。したがって差分は額面で36.7兆円、簿価で37.1兆円だと思う。

つーことで差分だけ見て行く分にはそこまで極端に違わないということにしておいて(手抜き)、以下額面でヘコヘコと計算してみたのですが、

年内の償還額:18.8兆円
今後の買入額:40.5兆円(足元のペースでそのまま行く、ただし1年以内は加算対象外)

となるので、今後21.7兆円増えますから、今年末でみると58.4兆円の国債買入増加になると思う。

でもって来年ですが、これまた年末からのベースで計算すると、来年の償還は50.6兆円あって、今の買入って(1年以内は加算対象外で計算して)97.0兆円の買入ペースになっているので、来年の国債増加は今の所46.3兆円(額面ベース)という計算になって相変わらず50兆円行かないのね、という話(今から1年ではありませんので念のため)になりますな。

だからどうしたと言われると困りますが、時々計算しておかないと段々ずれてくるので月初のうちに(月初からだいぶ経ってるけど)計算しておいたのをメモしておくの巻。



○SF連銀ウィリアムス総裁の講演は実は「金融政策の限界」の話を思いっきりしている内容でした

木曜にちょろっとネタにした奴ですが、

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-idJPL4N1KO5CM
Markets | 2017年 08月 3日 04:58 JST
米FRBバランスシート縮小、今秋開始支持=サンフランシスコ連銀総裁

『[ラスベガス 2日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のバランスシート縮小について、サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は2日、今秋の開始を支持する考えを表明した。経済関係団体のイベント講演予定原稿で述べた。具体的にどの会合が適切な時期と示唆しているのかは不明だ。』(上記URL先より)

ってなニュースになてましたが、

http://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2017/august/monetary-policy-role-in-fostering-sustainable-growth/
http://www.frbsf.org/our-district/files/Williams-Speech-Monetary-Policy-Role-Fostering-Sustainable-Growth.pdf
Monetary Policy’s Role in Fostering Sustainable Growth
Remarks to the Economic Club of Las Vegas
Las Vegas, Nevada
By John C. Williams, President and CEO, Federal Reserve Bank of San Francisco

実は内容的には金融政策正常化のタイミングがどうのこうのという話は正直おまけのようなもんで、メインテーマが違いましたぞなということで改めて参ります。(物件自体は長くない)

・金融政策の限界論でしかも人口動態と生産性の構造問題を要因にしているのだが・・・・・・・・

『Introduction』の途中から。

『But, even as we see daylight in today’s economy, we find ourselves in the shadow of daunting longer-term challenges to economic growth and shared prosperity.』

つーことでロンガータームのチャレンジが米国経済にはある(その前にやっと金融危機からのリカバリーが出来たよというお話がある)とな。

『These include a sea change in demographic factors like slowing population and labor force growth and a downshift in productivity growth.』

キタコレ!

『The theme of my talk is that monetary policy is reaching its limit as to what it can do to generate economic growth.』

>monetary policy is reaching its limit as to what it can do to generate economic growth
>monetary policy is reaching its limit as to what it can do to generate economic growth
>monetary policy is reaching its limit as to what it can do to generate economic growth

イエレンさんがSF連銀総裁だっただけの事はあって、ウィリアムスさんってそんなに尖った感じではなくて、概ねFRBの議論で言えば与党系の人という感じ(タカハトではなく与党)のお方だし、SF連銀の分析ペーパーって基本現政策のヨイショレポートが多いという風に見ておりますが、そのお方にしてこれですよこれ。

『Other actors-in both the private and public sectors-need to step up and take the lead in making the investments and enacting policies needed to improve the longer-term prospects of our economy and society. The outstanding question is whether we as a nation will rise to these challenges and define our economic future, or will we instead allow our economic future to define us.』

ということで、人口動態という意味では米国よりも思いっきりこの問題が深刻なジャパンにおいてはウィリアムスさんの筆法をお借りすれば、置物リフレ一派の皆さんが世界標準の政策とか何とか宣伝していた本家の米国様よりももっと大きな金融政策(単体として)の限界が存在していましたねという話になる訳でございまして、構造問題を理由にしている日銀はケシカランとか悪罵の限りを尽くしておられた置物副総裁一派の御所感をお伺いしたい所ではございますな。


・ちなみに物価に関してはダラス連銀刈込平均を持ち出している

次の小見出しが『The Federal Reserve’s Goals: A Scorecard』ですけど、そこの話は概ね割愛致しまして、物価に関する部分だけ引用します。

『In recent months, some special transitory factors-like sharp declines in prescription drug prices, airfares, and especially wireless service fees-have been pulling inflation down.』

でたな一時的要因。

『To cut through the noise, it’s helpful to look at measures that strip out prices that fluctuate wildly. My favorite such measure is the trimmed-mean PCE inflation rate reported by the Dallas Fed.』

ダラス連銀の刈込平均を使って基調的物価の判断をするそうな。

『Over the past year through May, this measure is at 1.7 percent.2 As these transitory factors wane and with the economy doing well, I expect that we’ll reach our 2 percent goal in the next year or two.』

という見通しがホンマカイナという気はするが、まあそういう見通しの下に金融政策運営の話はちょろっとある。


・金利に関しては時期については何も言ってないが正常化する気が満々なのは伝わった

次が『Transitioning from Recovery to Sustained Expansion』なのですがその最初の方から。

『With the economy having reached full employment, the Fed’s job is to keep it there. That means managing the risk that the economy will get too hot and out of balance against the risk that the expansion will stall.3 』

「managing the risk that the economy will get too hot」とかついこの前は高圧経済とか言っていたFED(ウィリアムスさんが高圧経済といった訳ではないですが)の与党的な方がこれですからにゃあ。

『During the recession and recovery, jump-starting and speeding the recovery required historically low interest rates. But today, with the recovery already complete, interest rates in the United States are still low. 』

『To keep the economy on a sustainable path of growth, we need to gradually reduce the monetary stimulus put in place during the recession and recovery. If we delay too long, the economy will eventually overheat, causing inflation or other imbalances to emerge.』

「other imbalances」来ました。

『At some point, that would put us in the position of having to quickly reverse course to slow the economy. That risks stalling the expansion and setting us back into recession.』

ということで、この辺は正常化が遅れると云々という話の典型的なテンプレみたいな話ではあるので、実際にじゃあどこで次の利上げをするかというような話にはなっていないのですが、まあ正常化をしたくて、しかもBISビューチックなイメージでプリエンティブにやっていこうというのは概ね伝わった。


・バランスシートに関しては9月に縮小着手へ

『Shrinking the Fed’s Balance Sheet』つーのはまあ同じような話をしていますがポイントはこの辺かな。

『Now that the U.S. economy has fully recovered, the Federal Open Market Committee has said that it intends to gradually reduce these holdings by cutting back on the amount we reinvest every month.6 My own view is that it will be appropriate to start this process this fall.』

「this fall」ってんですから9月でしょう。


・でもって金融政策の限界論

次の小見出しが『Sea Change in Sustainable Growth』でして・・・・・・・・・

『As I mentioned at the beginning of my remarks, a sea change in sustainable growth is under way, driven by fundamental shifts in demographics and productivity growth.』

『Specifically, due to declining birth rates, the retirement of the baby boom generation, and other factors, the labor force is expected to grow only about 1/2 percent per year over the next decade.10 That’s less than one-third the pace of the 1980s.』

『And productivity growth has slowed markedly from the surge in the mid-1990s and early 2000s. It has averaged only a little over 1 percent per year since 2005. This slowdown isn’t because of some failure of economic statistics to capture the latest breakthroughs in technology.11 Nor are there signs of a resurgence as the economy has recovered.』

つーことで、構造変化によるトレンド成長の低下という話をしていまして・・・・・・・・・

『Assuming that these trends continue, and I do, the growth rate of our economy’s potential is likely to be around 1.5 percent for the foreseeable future, the slowest pace in our lifetimes.12 The consequences of slow growth will be felt by monetary, fiscal, and other public policymakers.13 Unless these trend lines improve, they will likely find that they are repeatedly being asked to do more with less?in some cases much less?than they planned for. Those who fail to act today will find their challenges getting even more severe tomorrow.』

この調子で行くとトレンド成長率は1.5%水準まで落ち込むとの見通し。

つーことで『If not Monetary Policy, Then What?』っつー小見出しになるのですが、

『This begs the question, what does said action look like? As a monetary policymaker, I wish I could tell you that it’s within the purview of central banks to solve all this, that the answer lies in raising or lowering interest rates. Reality, unfortunately, dictates otherwise.』

金融政策でこれらの問題が解決できます(キリッ)と申し上げたいがそれは無理です、だそうで、2%インフレ目標を金融政策単体で達成したら世の中バラ色と言っていた方々に所感をうかがいたい。

『Our long-term challenges are going to require the sorts of long-term investments that fiscal policymakers-and private investors-have within their own toolkits.』

政府と民間に頑張って頂きたいと。

『We know that there is a range of things we currently underinvest in that have very high returns on investment, both for individuals and for nations as a whole. These include early childhood education and health, secondary and higher education, job training, infrastructure, basic research and development…all the things that propel an economy and prosperity over the longer term.14』

ようするに成長戦略という話をしている訳ですな。

『With the sea change already under way, we no longer have the luxury of taking a wait-and-see approach. These policies and actions may be difficult and costly to implement, but our nation has successfully met such challenges in the past, and I am confident we can again.』

でもって木曜に引用した最後の所になるので割愛しますが、これはまた思いっきり「長期的な課題は金融政策では何ともできません」ってのを全力で特攻してきていて、まあ米国でも危機脱出の時にはあれだけ金融政策が万能ちっくな雰囲気で色々とやっていた(途中から金融政策は万能薬ではないとか言い出しましたが)ものの、結局の所はこういう話になってきて、まあ世界的にも金融政策が経済政策の先頭に立ってどうのこうのというのではない、という状況なんでしょうなあと思う中で置物リフレ副総裁ェ・・・・・・・・・




2017/08/04

お題「布野審議委員会見が非常に味わいのある素晴らしい内容でした」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170802/k10011085371000.html
内閣改造 五輪相に鈴木俊一氏 内定
8月2日 23時00分

・・・・・・・という名前で都知事を思い出すのは間違いなく年寄りの証拠です。

○布野審議委員会見が面白かったので延々と引用大会

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1708a.pdf

いやー中々今回の会見は良いですな。佐藤、木内の両審議委員退任直後ですが俄然会見が注目される存在になられた訳ですが、布野さんの面白いのは票決と講演の方は与党(金懇挨拶は明らかに執行部謹製の予定稿をそのまま読んでいるという風情)なのに今回会見では与党から微妙にずれている所であります。

ということで内容を確認してみましょう。

・生産性向上と労働需給と物価に関しての整理

『(問) 午前の講演で生産性向上の重要性を訴えておられましたが、一方で 7月の展望レポートでは、生産性上昇が物価上昇を抑制する遠因にもなるという指摘もあります。そのような意味でいうと、生産性上昇と値上げの関係は複雑な面があると思いますが、その辺りについてどのように整理していらっしゃるか、トヨタでの経営の経験も踏まえて見解を伺えますでしょうか。』

この説明が非常に詳しくて面白い。

『(答) その問題については、話を単純化するために会社をイメージして話をさせて頂くと、製品の市場でどのように競争していくかというテーマと、人という資源をどのように調達していくかという労働市場における競争力のテーマと、会社の内部プロセスとして、設備投資等を組み合わせながら、生産性をどのように上げていくかという、3 つのテーマがあると思います。』

なるほどこれは分かりやすい。

『これまでは大まかに言いますと、その中で 1 番重要なテーマは、製品の市場において競争力をどのように確保するか、具体的にいうと、製品の品質を上げると同時に価格を抑えて、お客様にどのように喜んで頂くかということによって競争力を高めるかというのが、企業の成功に非常に大きく重要なファクターである時代がずっと続いてきたと思います。』

ふむふむ。

『ところがここにきて、これだけの人手不足になり、製品の市場での競争力ももちろん重要でありますが、労働市場における競争力をどのように確保していくのかが、成功にとって非常に重要なファクターになりつつあります。』

『すなわち、賃金をどのように上げ、労働条件をどのように改善し、従業員という人の資源をどのように確保するのかということが、非常に重要な局面に入ってきており、これは様変わりの状態だと思います。そうした中で、内部の生産性を上げていくわけです。』

なるほど。

『今ご指摘の話は、まだ会社によっては、製品の市場における価格を上げることを避けるために、生産性向上の果実を使っているという意味で、これがすぐに物価上昇につながらないというメカニズムもあると思います。ところが、将来を見渡しますと、製品の市場において値上げないし値段を維持し、会社内の生産性による果実をほとんど全て労働市場の競争力の確保のために使わなければ、労働力、労働投入量を確保できない時代にもう差し掛かりつつあるということです。』

『これは、今、一時的に、会社によっては逆の動きや錯綜した動きになっていますが、労働市場での競争力が全ての会社にとって、非常に重要なサクセスファクターになりつつあると認識しています。賃金が上がり、それが消費の増加につながり、物価も上がっていくというサイクルの入口に、今差し掛かっているところです。私は、そういうサイクルがどんどん起こってくるのは時間の問題だと認識しています。』

なるほど、とは思うのですが、これって労働力の供給制約によって賃金に上昇圧力が掛かるという話ではあるのですが、その供給制約が需要の拡大によって発生したのかと言いますと、それよりも人口動態要因による方が大きいのだったら、それはコストプッシュ型という事になるのでサステイナブルなサイクルにならないのではないかという疑問isある。


・達成時間に拘らないという話の前座が既にある訳で

『(問) いずれも物価の関係ですが、1 点目は、展望レポートにおける今年度のCPIの見通しは+1%台、皆さんもご承知だと思いますが、足許は+0.4%に止まっています。その物価を押し上げる重要なファクターである原油価格をみますと、原油価格の前年比は今年の 1、2 月がピークだったと思います。エネルギーの押上げは、今年前半がおそらくピークで、どんどん押上げ幅が小さくなり、来年には押下げに寄与すると思います。今後、何が物価を押し上げていくのか、原油急騰をみているのか、大幅な円安をみているのか、それとも今お話にあったような企業による大幅な賃上げの全国急速展開なのか、その辺りのロジックについてお願いします。(後半割愛)』

という質問に対しての答えが「時間が掛かりますなあ」なのですよ。

『(答) 最初の質問ですが、物価につきましては、原油価格は、今おっしゃられたようにこれから下がっていくとか、上がっていくとか、専門家によって予測が違いますので、私が素人として原油価格の予測について、特に強くこうだと言い切るのは適当ではないと思います。そのうえで、私は、原油価格がわが国の物価を押し上げていく要素については期待できない、というよりも期待しない方がよいと思っています。ただ一方で、これが相当な押し下げになるかということについても、そこまで悲観的には思っていません。』

つまり上にしても下にしてもテンポラリーですよというお話なんでしょう。

『大体過去数か月、40、50 ドル前後で推移し、この辺りで私自身は想定し、物価をみています。』

『為替につきましては、1 ドル 110 円前後でここ数か月行ったり来たりしているわけですが、そのまま動くだろうという想定であり、私は、為替が円安に振れることを要因として物価が上がっていくというような想定はしていません。』

早期達成させたければ円安に強引に振るしかないと思うのですが円安を想定しないということは・・・・・・・・・・・

『そこで、最後のご指摘に含まれると思いますが、需給ギャップが引き締まり、それが労働条件の改善、賃上げにつながり、消費に、そして物価につながっていくという自律的なモメンタムが今後働いてくることに私は期待しています。そのように考えていますので、どちらかというと、やはり物価についても息長くみるといいますか、急激な上昇があるとは期待していません。』

時間が掛かるキタコレ!

『政策委員見通しの中央値も 2018 年度頃から今回 2019 年度頃にずれ込んだわけですが、そういう私の見方と、このようなずれ込みは、ある種、整合性があるのではないかと感じています。』

ということで後で引用しますが昨日ご紹介した部分に繋がるようです。


・モメンタムとは

『(問)(前半割愛、というか先ほど引用)2 点目は、物価のモメンタムは弱いけれど維持されているというのが公式見解だと思いますが、モメンタムの定義を教えて頂きたいと思います。それはCPIの前年比のプラス幅が拡大しているということなのでしょうか。だとすれば、プラス幅が+0.4%から+0.3%、+0.2%となれば、それはモメンタムが失速していく、追加緩和が必要となるロジックになっていくのか、その辺りの整理をお願いします。』

これは聞きたくなる質問。ただ「モメンタム」という鉛筆の舐め舐め成分が入る言葉は要するに追加緩和をしない方便で使われている感もある訳でして・・・・・・・・

『(答) (前半割愛)2 点目の物価のモメンタムについては、何とも悩ましく、私も数式で表されるような定義を特に持ち合わせていません。』

ほうほう。

『私が今、モメンタムが維持されているとみているのは、図表でみると需給ギャップが右肩上がりとなっていることを挙げられると思います。そういう意味で、モメンタムというのは現状及び過去のイナーシアが右肩上がりになっているその勢いの度合いを、将来にそれがどうつながっていくかということで、非常に主観的で、それぞれの政策委員の中でも、その見方については色々だと思います。』

ちなみにイナーシアって慣性の事ですが、「非常に主観的で、それぞれの政策委員の中でも、その見方については色々だと思います」って辺りが味わいの深い答えになっていまして、要は鉛筆舐め舐め成分がある話で、客観的な政策反応関数で示すものではありません、ってのを非常に綺麗かつ婉曲な言い方で表現しているようにも思えます。

『私は、モメンタムは維持されていると思います。今の物価は、生鮮食品を除く消費者物価の前年比でみると、マイナス圏で底を打って上がってきています。その辺りをみて私はモメンタムが維持されていると観察しています。』

つ除く生鮮エネルギー


・金融政策の副作用というお話

『(問) 先程、懇談会において、金融政策についての相当突っ込んだお話があったとおっしゃっていましたが、どのような内容だったのか教えて頂けますか。相当突っ込んだとおっしゃっていたので非常に興味があります。』

この質疑も面白い(つーかさっきから冒頭の2つ以外の質疑全部引用しているのだが、汗)。

『(答) 相当突っ込んだというのはちょっと誤解を招いたかもしれませんが、新しい要素が出たわけではありません。色々なところで議論されていることで、一言で言うと副作用といわれているものです。』

「副作用」と思いっきり発言しているのがイイ(・∀・)ですね!!

『例えば、金融機関の収益力の下押し圧力が累積的に掛かっているという議論や、金融市場の金融仲介機能が弱っているのではないかというご意見、ご指摘が金融機関の方を中心にあり、私の考えをお答えしました。』

ほほう。

『お答えしたことを一言で申しますと、金融政策の決定にあたっては、私の記憶によりますと、昨年 9 月の「総括的な検証」以前は、経済・物価情勢をみて、と言っていましたが、「総括的な検証」の後は、経済・物価・金融情勢を踏まえ、と申し上げています。金融情勢の中の 1 つとして、金融仲介機能で発生し得る副作用についても常時注視しながら、毎回の政策決定において、政策委員のそれぞれの観察を踏まえて、副作用についても議論を交わし、決定していくのだと思います。そういう制度のうえで金融政策決定会合を運営していることを、通常よりも細かくご説明しました。』

まあ問題はそれに関してどうでも良いどころか文句を言うのは甘え位の勢いで金懇などで話をする某ジンバブエ先生(片岡さんもその懸念あり)とか、副作用の話についてスルーというよりも大本営発表モードになる中曽さんとか、そんな感じの中で佐藤さん木内さんが抜けてさてどうなるの、というのはあります。

ただ、今回妙に布野さんが会見の方で独自見解的なのをポンポンだしてきて、しかもその内容が従来佐藤さんや木内さんが指摘していたような話をしている、というのは面白い所でして、それは即ち黒田日銀って元々QQE導入するときとか「愚民どもを世界標準理論に則った世界標準の金融政策で導いて進ぜよう」って感じで当然ながら市場からの声などチンピラゴロツキの戯言くらいな感じで「聞く耳持たん」ってスタンスでして、まあ最近少しはマシになったとはいえ、元々がそういう体質を持っていると思うの。でもってそうなりますと野党陣営に回ってしまった佐藤さんや木内さん(しかも市場サイドから来ている人なので黒田さん的にはチンピラゴロツキ一派でしょ)が何を言っても馬の耳に念仏という所なんでしょうなあ、とまあそんな感じを受ける訳ですよ(個人の感想と妄想だけど、議事要旨とか主な意見を読むと「議論して見解を擦り合わせて行こう」という雰囲気が皆無なのは想像がつくのよ)。然るにずーっと与党サイドでやっている布野さんがこういう話をすると、今度は黒田さんと言えども一蹴する訳にも行かないのではないかなあ、とか想像するので、今回の布野さんの会見は「おおおおお!!」とアタクシが勝手に反応するのでありました、という事なのです。

#自分の中で勝手に盛り上がっているせいか↑の文章が要領を得ませんですかそうですかorz


続いて質問が。

『(問) 副作用の指摘があったということですが、基本的には、総裁が言われるように 2%の物価達成は重要だと、布野委員も講演の中で 2%の物価達成と予想物価上昇率を 2%台にアンカーさせることが重要だと言われていました。今後副作用が更に大きくなる、そうなってくれば 2%の達成前であっても、政策の見直しがあり得るという理解でよろしいですか。』

ふむ。

『(答) まず出発点として、政策の見直しは毎回の金融政策決定会合であり得ます。会合の前に政策が決まっているわけではありません。毎回見直すわけです。その見直す時の要因、それぞれの委員が考える際に、経済・物価・金融情勢を踏まえることになっていますので、政策は毎回変わり得る、そういう制度であるということです。』

『これを踏まえて、ご質問の趣旨、例えば 2%の達成前の政策見直しについてですが、+2%で物価が安定的に維持できるということを明示的に目標として、政府との間でも共同声明として表明しているわけです。それが重要ですから、その目標を踏まえたうえで緩和的な金融環境を維持するという方針があるわけです。その方針の具体的な緩和的な金融政策の中身については、今のままでロックインされているわけではなく、必要であればその都度討議をしながら修正を加え、変化を与えていくということです。』

元々そういうものなのですが、中々これを認めないのが執行部なのでほほーという感じで。


・労働市場に関して再び

『(問) 午前中の講演についてですが、1 点目は、成長分野を確保する成長戦略が必要だという指摘の中で、産業間の労働者の移動も含んだ雇用の流動化を広範囲に進めるチャンスでもあると考えていらっしゃいます。この点はおそらくトヨタでのご経験も踏まえてだと思いますが、具体的な中身を教えて下さい。(後半割愛)』

『(答) まず雇用の流動化についてです。わが国の潜在成長率を引き上げつつ、経済を回復、成長させていくために、特に人材が不足する環境においては、生産性の低いところからより生産性の高い、付加価値を生み出すような職場、職種、会社に雇用が流動していかなくてはならないということです。』

うむ。

『これは当然のことですが、それを実行していくためには、労働需給がある程度タイトで、例えば個人が積極的に、今までの仕事を辞めてこちらに動こうと思った時に、今の仕事を辞めたら次に行くところが全然定まらないという状況では、そういうプロセスが円滑に進まないわけです。』

そらそうよ。

『企業も企業の視点があるわけですが、あえて個人の視点で言わせて頂くと、自分が行きたい職場にスムーズに動け、かつ、できれば今の給料よりも高いところに移動していけるような環境をマクロ経済的に担保することは、流動化を促し、経済の拡大的な成長につながるという意味で、とても重要だと思っています。』

たぶん昭和の早めの時の方がそういうのはあったと思うのだがそれは成長経済だったからということでしょうからこれは鶏が先か卵が先かという話のような気がします。今からそうなるようにする、というのは難易度そこそこありそう(単純に流動性を高めたら待遇の切り下げになりそう)。

『更に言うと、そのような環境を作り出すにおいては、金融政策には何がしかの貢献をする余地があると思っています。


「何がしかの貢献」であって金融政策で2%のインフレ率を作るとそういうのは勝手に上手い事行きますよ的な置物リフレバラ色理論ではない所が味わいの深い回答です。


・達成期間の中長期化キタコレ!!!!!!

でもって最後の質問の後半(結局3番目から全部引用している)。

『(問)(前半割愛)もう 1 点は、最近は 2%の「物価安定の目標」が高過ぎるという声も一部では挙がってきております。講演でもそういうご指摘をされていましたが、やはりそこは 2%を維持する必要があるという認識でよろしいでしょうか。 』

これ布野さんがわざわざ達成期間の話をしているから良いようなもんで、2%が必要かという質問を他の人にするとボスキンバイアスだのグローバルスタンダードだのという話ばかりをしてテンプレ回答になってしまうのですから、「2年を念頭に出来るだけ早期に」の方を質問すべきだと思うので質問者の猛省を促したい。

『(答)(前半割愛)それから、2%の「物価安定の目標」についてですが、私は一貫して 2%は非常に重要だと思っており、2 年前の就任記者会見の時から 2%は重要だと申し上げています。』

さいですな。

『ただ、2%を達成する時間軸については、各委員がそれぞれの考え方で見通しを持って金融政策決定会合に臨んでいます。』

!!!

『2013 年 4 月には 2 年ということで出発しましたが、現在の運営の有り様としては、特に昨年9 月からは明示的に 2 年という時限的な制約はかませていません。』

>昨年9 月からは明示的に 2 年という時限的な制約はかませていません
>昨年9 月からは明示的に 2 年という時限的な制約はかませていません
>昨年9 月からは明示的に 2 年という時限的な制約はかませていません

!!!!!!!!

総括検証って実はなし崩し的にローリングターゲットまたは中長期的にする流れをつくるものだったんですね。

『ただし、できるだけ早く 2%に至る、そのためにどうしたらよいかという問題は当然あるわけです。できるだけ早くということは残っていますが、時限立法的にやらなくてはいけないということでは必ずしもありません。』

何という禅問答。つまり「出来るだけ早く」というのは心の問題で頑張っていればその期限を切る必要はないという事ですな。

『具体的にどういうことかといいますと、私は 2%を達成するには、やはり金融政策、財政政策、構造改革の 3 つが総合力を発揮して上がっていくということが非常に重要な要素だと思っています。』

『特に忘れてはならないのは、2%というのは物価目標ではありません。「物価安定の目標」ということです。2%に安定するということが政策の目的になっていますので、そのためには、構造改革等は非常に重要なファクターであると思っています。』

つーことで、金融政策だけで2%の物価目標を達成という元々の置物リフレ理論に依拠した筈のQQE政策とは異なるアプローチキタコレ!ということですが、まあどう見ても布野さんのおっしゃる話の方が正論とみられる訳でして、今後の政策、もちろん「2%の物価目標」は変わらないし、そのための金融緩和も変わらないと思いますが、「金融政策でインフレ期待に直接働きかけてインフレ期待をシフトアップする」、というアプローチから、「物価目標達成に向けて金融緩和で環境整備」という事になりますと、そらもう具体的な手段も変わってくるでしょ、という方向性は出てきたなあという感じです。

とは言いましても、それがいつ実現するのかはさっぱり予想がつきませんので、だから金利が上がるかというとそれは別問題だし、緩和の期間が長期化するんだから結局の所副作用上等で押さえつけている部分の金利だけが修正されて終わるような気もしますが、まあその方向性っていうのは、そもそも物価目標2%自体が何かの拍子に超円安にでもならない限り2%って数字がアクチュアルに出て来ないでしょうと思いますので、いずれは布野さんのいうアプローチに転じないとなにかが爆発炎上するという事になろうかと存じますです、はい。

問題はこの布野さんの話やアプローチに関して金融政策決定会合などでちゃんと議論が出来ているのか、という事なのですが議事要旨とか見ていると全然そんな雰囲気が見受けられないのが甚だ遺憾に存じます次第なのですが・・・・・・・・・・


○金融政策決定会合の議論といえば議事録が出ておりましたが

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2007/index.htm/
金融政策決定会合議事録 2007年

こちらなのですが、メディアのネタ的には2月の利上げをしたMPMの方が使われているのですが、実は読むべきなのはその前の1月の議事録です。

議事録はこちら
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2007/gjrk070118a.pdf(重いので注意)

ちなみに資料というのもありまして更に重いファイルですけど

資料その1:金融市場のデータ集
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2007/gjrk070118b.pdf

資料その2:企画局作成の情勢判断、金融経済月報、前回決定会合議事要旨
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2007/gjrk070118c.pdf

でもってこちらの議事録(および資料)は紙ベースのものをスキャンした画像データ(なので重い)となっているので、これをネタにしようとすると超越タイプ打ちをしないといけないので中々無理があるので余程ヒマがないと・・・・・なのですな(汗)。


という前座はさておきまして、この1月会合議事録なのですが、利上げあるでという状況になっている時でしたので、とにかく市場がドタバタとやっていた時なので、最初の執行部からの報告(なお報告しているのは中曽金融市場局長)と、その報告に対して審議委員の皆さんが次から次へと質問しているのですが、まー皆さん詳しい質問をしていて、その質問と答えを読んでいるだけでも面白い、という代物でして、さて今の金融政策決定会合でこういう細かい市場の動きまでちゃんと政策委員の皆様がフォローできているのでしょうか、と思いますと10年後議事録は絶対読んでやるぞと思うのであります。

それから後半の金融政策決定に関する部分は、その後の2月議事録の後半も読みますとまた面白い(良い意味で)内容になっていましてマジお勧めですし、金利が毛ほどですがあった時の実録としても面白い(懐かしい)ですし、金利の無い時代しか知らない若い衆におかれましては何が起きているのかというのを理解できないかも知れませんが、近くにいる年寄を捕まえて勉強して下さいませ。


○市場等メモを少々おいておく

・物国BEI

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1KP2MY

『 <12:59> 物価連動債入札は予想より強め、BEI38.5bp程度

財務省が午後0時45分に発表した10年物価連動国債(表面利率0.10%/22回)の入札結果で、最低落札価格は104円55銭(最高落札利回りはマイナス0.3580%)となった。応札倍率は3.19倍と前回(3.64倍)を下回った。

市場筋によると、BEI(ブレーク・イーブン・インフレ率/予想インフレ率)は38.5bp程度。

市場では「事前予想よりやや強めの結果になった。BEIが調整したこともあって一定程度のニーズがあったもよう。ただ、しばらくはネガティブ・キャリーになるので、物価連動国債を持ちやすい状況ではなさそうだ」(国内金融機関)との声がある。』(上記URL先より)

前回入札時のBEIが46位だったので入札自体は事前予想より堅調とは言え元々のBEIェ・・・・・・


・BOE

http://jp.reuters.com/article/idJPZRN262V03
Markets | 2017年 08月 3日 20:15 JST
英中銀、政策金利を0.25%に据え置き

『[ロンドン 3日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行、BOE)は3日、政策金利を0.25%に据え置くことを決定した。また、英国の欧州連合(EU)離脱が家計消費を圧迫するとして、2017年および18年の国内総生産(GDP)伸び率見通しを下方修正した。』(上記URL先より)

またこれも週末の宿題ですが、物価は上がるが景気が伸びない、という英国独特のクオリティまた登場の巻ということでしょうか。これでポンド安になると益々物価上昇圧力という毎度おなじみのパターンで中々苦しいですな。






2017/08/03

お題「輪番は維持/FRB高官発言あいつぐ/布野審議委員講演と会見(の一部)」

ほほう。
http://jp.reuters.com/article/idJP2017080201001858
Domestic | 2017年 08月 2日 20:24 JST
福田元首相、安倍政権を批判

『福田康夫元首相は2日、東京都内で共同通信のインタビューに応じ、学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画や「森友学園」への国有地払い下げなどを踏まえ、安倍政権下の「政と官」の関係を批判した。「各省庁の中堅以上の幹部は皆、官邸(の顔色)を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている」と述べた。2014年に発足した内閣人事局に関し「政治家が人事をやってはいけない。安倍内閣最大の失敗だ」との認識を示した。』(上記URL先より)

○輪番は減額しませんでしたな(メモ)

昨日の輪番オファー

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170802.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,800 2017年8月4日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,300 2017年8月4日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,700 2017年8月4日

ということで中期も長期も前回と同じでして、まあ慎重ですね、というのと、こうやることによって「レンジの中心が次回の買入額ではありません」というのを示してまして、色々と足かせが多い輪番に関して債券市場に変なサプライズを与えないようにしながらも、徐々にフリーハンドを確保できるように工夫していますな、というのは把握した。


○まーたFRBの方々が色々と発言しているのですが

内容のフォローは追いつかないので後で確認する。

セントルイスブラード総裁
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-bullard-idJPKBN1AI1Y2
Business | 2017年 08月 2日 23:55 JST
米セントルイス連銀総裁、追加利上げに反対=MNI

『[2日 ロイター] - ブラード米セントルイス地区連銀総裁は、利上げをさらに行えば連邦準備理事会(FRB)が掲げる2%のインフレ目標達成を阻害する恐れがあるとして、追加利上げに反対する姿勢を示した。マーケット・ニュース・インターナショナル(MNI)が2日報じた。総裁はMNIが1日に行ったインタビューで「今年悪化しているインフレ見通しを踏まえ、短期的な追加措置を支持しない」と言明。「指標が今後上向く可能性はあるものの、見極めが必要で、当面は一時停止を続けるべきだとおもう」と述べた。』(上記URL先より)

つーことでブラードさんは常に「今の金利水準が既に中立水準に近い」という人でSEPでの金利ドットプロット出さないという変態さんなのでまあこれは平常運転。


クリーブランドのメスター総裁。
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-mester-inflation-idJPKBN1AI2FF
Business | 2017年 08月 3日 03:00 JST
9月会合までの指標でインフレ動向より明確に=米連銀総裁

『[シンシナティ(米オハイオ州) 2日 ロイター] - 米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は、足元のインフレ鈍化に過剰反応すべきではないとし、9月19─20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)までに入手するデータを注視する考えを示した。講演後、記者団に述べた。総裁は、9月会合までにはあと何度か統計が発表されるとし、「弱めの数字が数回の特異な動きに過ぎないのか、それ以上の何かなのか統計を注意深く見極める。私は一時的なものだと考えている」と話した。9月会合での利上げを支持するかとの質問に対しては「データを確認したい」とし、年3回としている米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しは、必要に応じて引き締めを一時的に小休止することが可能と述べた。』(上記URL先より)

日本語訳ニュースの字面だけで判断するのはイクナイですけど、まあこれだけだとどっちとも解釈可能な感じですけど、ヘッジ入れながら話をしているので腰は引けた感じでしょうなあ、とは思います。

講演はこちら↓
https://www.clevelandfed.org/en/newsroom-and-events/speeches/sp-20170802-perspectives-on-the-economic-outlook-and-banking-supervision-and-regulation.aspx
Perspectives on the Economic Outlook and Banking Supervision and Regulation
08.02.17 Loretta J. Mester
The Community Bankers Association of Ohio Annual Convention, Cincinnati, OH


概ね与党系のSF連銀
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-idJPL4N1KO5CM
Markets | 2017年 08月 3日 04:58 JST
米FRBバランスシート縮小、今秋開始支持=サンフランシスコ連銀総裁

『[ラスベガス 2日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のバランスシート縮小について、サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は2日、今秋の開始を支持する考えを表明した。経済関係団体のイベント講演予定原稿で述べた。具体的にどの会合が適切な時期と示唆しているのかは不明だ。』(上記URL先より)

最近ややタカ傾向ですがまあ基本的に与党チックな方です(SF連銀だけに)のですが、バランスシート縮小の話は登場するものの。

講演はこちら
http://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2017/august/monetary-policy-role-in-fostering-sustainable-growth/
http://www.frbsf.org/our-district/files/Williams-Speech-Monetary-Policy-Role-Fostering-Sustainable-Growth.pdf

Monetary Policy’s Role in Fostering Sustainable Growth
Remarks to the Economic Club of Las Vegas
Las Vegas, Nevada
By John C. Williams, President and CEO, Federal Reserve Bank of San Francisco
For delivery on August 2, 2017

ということでこちらの最後の最後の『Conclusion』という小見出しのところだけ読むと・・・・・・

『To sum up, it’s been a long, hard road, but we have finally attained a recovery from the financial crisis and the Great Recession. Because no good deed goes unpunished, monetary policymakers who worked very hard to help our economy recover are now faced with the challenges of protecting what we’ve gained.』

金融危機からの回復にやっと到達したよ!だそうです。

『Our goal, therefore, is to foster sustainable growth. This requires bringing both conventional and unconventional monetary policy gradually back to normal.』

でもって金融政策の正常化が必要、という話をしているのですが、引用すっ飛ばしている講演の中では『Shrinking the Fed’s Balance Sheet』というコーナーを置いて説明していますが、その中で金利の話に関しては『We will continue to use conventional monetary policy tools?raising or lowering interest rates?as the primary lever we operate to keep the economy from running too hot or too cold.9』という説明にとどめていまして、話としてはスルーしているという感じです。

『As I have emphasized, though, there is only so much that monetary policy can do. We face significant longer-term challenges that interest rates alone can’t solve. The choices are clear; what remains to be seen is whether the critical investments in our future will be made. These decisions have ramifications that extend beyond the next few months or years-they will define the economic landscape for the next decade and beyond. In a broader sense, they’re also about the next generation and what sort of future we choose to create together.』

つーことで長期的な課題については金融政策だけではなくて各種政策が必要ですよ、というお話でして、まあ最近はすっかりこういう話が多くなりまして、中央銀行万能的な置物リフレ理論は机上の空論ですなあというのがトレンドになって参りましたな。

ただまあウィリアムスさんもこの講演で利上げの話は一般論しか出してこない、という辺りに、FOMC全体でちょっと腰が引け気味になっているのかなあとは思いましたがどうでしょうかね。

#バランスシート縮小開始してからの株式市場動向とかによりそうな気はします


○布野審議委員講演は講演よりも会見の方が面白かったようですな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko170802a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170802a1.pdf

・講演内容はごくごく普通に執行部ペース

最初の説明は完全に執行部ベースなので『3.経済・物価見通しを巡る主な留意点』から。

『以下では、こうした経済・物価見通しが実現していくにあたって、私自身が留意している点をお話ししたいと思います。』

『(1)雇用・所得環境』

『まず、雇用・所得環境ですが、労働需給は着実な引き締まりを続けており、雇用者所得も緩やかに増加しています。雇用面では、雇用者数は1%程度の伸びを続けています。そのもとで着実な上昇傾向をたどっている有効求人倍率は1990年代前半のバブル期のピークを超えており、関連指標でみた人手不足感も強まっています。失業率も、振れを伴いつつも緩やかな低下傾向を続けており、足もとでは3%程度となっています(図表5)。先行きも、雇用者数は引き続き増加し、労働需給は一段と引き締まっていくとみています。賃金面では、時間当たり名目賃金でみると、振れを伴いつつも、基調としては伸びを高めています。このうち、パートの時間当たり名目賃金は、足もとではプラス2%台前半と高めの伸びとなっています(図表6)。』

『先行きは、インフレ予想の高まりが明確になるにつれてベースアップが伸びを高めるもとで、一般労働者の賃金も緩やかに伸び率を高めていくと想定しています。』

『このような雇用面・賃金面の見通しのもとで、先行きの雇用者所得は、緩やかに増加し、2019年度までの見通し期間の後半には、名目GDP成長率を若干上回るペースで増加していくとみています。もっとも、企業における賃金などの設定スタンスが慎重なものにとどまるリスクがあり、今後の企業の動きに注目しています。』

うーん執行部ベースの説明、ということで実は以下『(2)個人消費動向』、『(3)設備投資動向』と続くのですが華麗にスルー致しまして、『(4)物価動向』に。

『次に、物価上昇率を規定する主な要因である需給ギャップと予想物価上昇率についてお話しします。第1に、マクロ的な需給ギャップについては、昨年7〜9月に小幅のプラスに転じたあと改善を続けており、足もとではプラス幅を幾分拡大しています(図表10)。先行きについては、2017年度はプラス幅を一段と拡大し、その後も、内外需要の増加を反映して、資本・労働の両面でプラス幅の緩やかな拡大が続くと見込んでいます。2019年度下期には、消費増税の影響から、プラス幅の拡大は一服するものの、比較的大幅なプラスを維持すると予想しています。』

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、弱含みの局面が続いているものの、このところ、一部に上昇を示す指標もみられています。先行きについては、先ず(1)「適合的な期待形成」の面において、マクロ的な需給ギャップが改善するなかで、企業の賃金・価格設定スタンスも次第に積極化していくと予想されること、また(2)「フォワードルッキングな期待形成」の面において、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことから、中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどるとみています。』

ということでこちらも思いっきり執行部ベースなのでした。布野さん講演では独自色出しませんですなあという感じで、暫くやって行くとこれまでも民間(非金融機関)経営者の方って独自の視点みたいなのが開陳されるようになるのですが、講演では中々出してくれませんな。


・2%を目指す理由の話もまあ執行部ベースではありますがちょっと味わいがある

『4.金融政策運営』という所ですけど。

『先行きの金融政策については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続することとなります。』

『一部からは、2%の物価上昇率を目指す必要はないという声が聞かれます。』

ということで2%が必要という説明なのですが、ここはちと面白いと思ったのですけどね。

『しかし、経済に負のショックが生じた際には、実質金利を十分に引き下げ、経済をしっかり下支えすることが必要となります。このためには、物価上昇率を2%程度に安定させ、予想物価上昇率を2%にアンカーすることによって、実質金利の引き下げ余地を十分に確保するため、2%の「物価安定の目標」の実現を目指すことが重要となります。』

グローバルスタンダードとかボスキンバイアスとかの話ではなくて、「金利政策の糊代確保」という説明を持ってきたのがほほーという感じでして、ボスキンバイアスがどうのとかグローバルスタンダードがどうのとかいう話よりも「状況が悪化した時の金融政策発動余地の糊代確保」という話が布野さんとしてはしっくり来るのでこの部分を講演で話をした、という事なのか、執行部の本音としても実は「2%」というのは別に絶対的な数字でもなんでもなくて、単に隣が2%だから仕方なく出しているだけで、金融政策発動の糊代を確保できる状態に持っていければ良いと思っている、ということなのか、などと考えますと、「2%」をマジックワードかの如く説明していた置物リフレ理論とはこれまた一線を画した状態になってますなあと思う訳ですよ。

でもってまあ「金利操作による金融政策の発動余地を残しておきたい」という理屈は政策やる側の理屈としてよーくわかるのではあるのですけれども、この話ってあまり前面に出してしまうと、これまでの「資産買入やマイナス金利政策などによって名目ゼロ金利制約化でも金融政策の有効性を確保できます」という話との整合性is何処?という話になる訳でして、そういうのは出口政策になってからしらっと話をするのならまだしも、出口どころではない状態の中で金利政策の発動余地の糊代がと言い出すのはちょっと微妙な感じがします。

が、これは日銀の場合においては、「名目ゼロ金利制約を突破する画期的政策」としてドヤ顔で打ち込んだマイナス金利政策がどこからどう見ても効果を遥かに上回る副作用炸裂で結局YCC政策実施という撤退モードに追い込まれた、ということで、マイナス金利政策の限界を認識しているからこそ「金利政策対応の糊代」という話が出てしまうんだろうなー、などと解釈すると中々味わいがある訳でして、まあ要するにこれは現状の日銀に追加緩和政策の発動余地が無い、という認識を(ジンバブエ先生は別として他の)政策委員会メンバーが持っているからこそ、2%の意義の所でいきなり政策発動用地の話が出てしまうんですな。だってマイナス金利政策をボンボン使って良いのだったら、別に今の状態から何かあった時に追加緩和によって実質金利引き下げ出来るんですからね。


・最後の部分も中曽さん講演と同じようなお話で

最後に『5.日本経済の課題』とあって、

『次に、私なりに、より長期的な視点から、日本経済が置かれている状況を考えてみたいと思います。』

とあるのですが、誠に遺憾ながら中曽さんの先般の金懇挨拶と同じ話をしているのですが、ちょっとほほーと思ったのは、

『金融環境が極めて緩和的で労働需給がタイトである今は、構造改革と成長戦略を進める好機であり、これを逃すべきではありません。実体経済を担う民間部門が生産性向上や需要創出などに向けて一層のリーダーシップを発揮すべきだと考えています。また金融機関には、関係先企業のこうした努力に対するコンサルティング活動が期待されます。特に地方においては、人材面を始め、情報、知識、経験の点で恵まれた立場にある金融機関がリーダーシップを発揮することが期待されます。』

と、金融機関にケツが回ってきている辺りで、いやそうおっしゃるならマイナス金利撤回して下さいよと言いたいでしょうなあ金融機関、とか思うのでした。


・それよりも会見で発言が飛んできたようでして会見要旨が楽しみです

正直会見はノーケアーだったのですが・・・・・・・・・・・

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGF02H04_S7A800C1EE8000/
日銀布野審議委員、物価目標達成に「時限制約ない」
2017/8/2 16:42

『日銀の布野幸利審議委員は2日の札幌市での記者会見で、2%の物価目標について「いまの政策運営には『2年』という時限的な制約はかませていない」と述べた。目標自体は「非常に重要」としたが、経済成長や物価上昇の持続性に重きをおくべきで、達成時期のみにこだわるべきでないとの考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)

>達成時期のみにこだわるべきでない
>達成時期のみにこだわるべきでない
>達成時期のみにこだわるべきでない

!!!!!

『日銀は2013年4月、「2年程度を念頭にできるだけ早期に実現する」として量的・質的金融緩和を導入した。日銀はこの旗をおろしたと公式には示していないが、布野委員は「(日銀が金融政策を検証した)昨年9月以降は明示的にやっていない」と述べた。』

冷静に考えてみれば「2年で2%」と言ったQQE導入時点での政策委員は実は正副総裁の3人しかいないという事実isある。

『布野氏は今の物価動向について「モメンタム(勢い)は右肩上がりに維持されている」と述べたものの、「急上昇は期待していない」とした。その上で、2%目標は「『物価目標』ではなく『物価安定目標』だ」と改めて強調。長期的な視点で目指すべきだとの姿勢を重ねて示した。』

>長期的な視点で目指すべきだ
>長期的な視点で目指すべきだ
>長期的な視点で目指すべきだ

これは・・・・・・・・!!!!







2017/08/02

お題「動きませんのう/非伝統的政策が格差を拡大するのかというテーマのペーパーがありまして」

あの読売がこういう書き方になるのか。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170731-00050039-yom-pol
幹部「辞退すると思った」稲田前防衛相が離任式
7/31(月) 13:09配信
最終更新:8/1(火) 15:52
読売新聞

○まあしかし動きませんですのうという備忘メモ

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1KN2GW
Markets | 2017年 08月 1日 15:15 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小幅続落、長期金利変わらず0.075%

『長期国債先物は小幅続落。市場参加者の動きは鈍く高値と安値の差はわずか5銭と狭いレンジでの売買となった。前日の米債安の影響は限定的となり、出来高は盛り上がりを欠いた。現物債も動意薄。10年債入札は無難に通過したが手掛かりにならなかった。超長期ゾーンは10年債入札に絡んだ入れ替えの動きなどから売りが優勢になった。長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比3銭安の150円13銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比変わらずの0.075%。』(上記URL先より)

・・・・・・・ということで10年入札があったのですが先物値幅5銭だわカレントの現物は一本値だわという素敵な相場になっておりまして、おう今日は為替が瞬間だけど110円割れしたんだし輪番オペあるんだから何とか反応しろよという感じですけれども、まー金利下がりそうな感じになれば増やした輪番減らす攻撃もあるでしょうし、元々海外金利が上がっても上がらないのですから下がったら大喜びして下がるという訳でも無い(追加緩和という話が出る位になれば話は別)ですから致し方なしという事ですかそうですか。

でまあ今日は中期と長期の輪番があって、月曜に出た買入予定を見るとレンジの中央が先月と同じになっている、ということですので金利が下がるようならどこかで減額ということになるでしょうし、まあそういうのを予告モードになっている、という前提の中でもこのような価格形成しているんですから減らされても別にサプライズにならんのとちゃいますかと思うのですが、水準がちと微妙なので(もう少し強かったら楽々減らせると思うのだが)様子見るのかも知れませんな。

とはいえ、様子見になって同額になったからと言ってヒャッハーと買い上げると減額が待っているというのはさすがにコンセンサスでしょうからヒャッハーともならん、とゆーことで、外部環境的に居場所を変えるようなドライバーが無いと上も下もアタックしようが無いっつーことですな、ナムナム。

#明日の内閣改造も特にオモシロネタは出ないでしょうし


○基調インフレ率ェ・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

図表はこちら
http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf

(1)総合(除く生鮮食品・エネルギー)・総合(除く食料・エネルギー)

の数字は総務省に行けということなのでエクセル(HTMLページのリンク先からとれる)には数字は拾って来れないのですが、相変わらず「総合(除く生鮮食品・エネルギー)」がゼロで推移していまして、需給ギャップでどうのこうのというのはどうなっているのかと小一時間。


(2)刈込平均値・加重中央値・最頻値

トレンドを見たりインフレ期待を見たりするのに使える指標ちゃんの方も、

刈込平均値(前年比、%)
Mar-17 0.1
Apr-17 0.2
May-17 0.3
Jun-17 0.3

加重中央値(前年比、%)

Mar-17 0.0
Apr-17 0.0
May-17 0.0
Jun-17 0.0

最頻値(前年比、%)

Mar-17 0.3
Apr-17 0.3
May-17 0.2
Jun-17 0.2

(数字はエクセルファイルの方から)ということで加重中央値なんぞは2015年の12月から0.0のまま延々と推移(2015年基準になったのは2016年1月からですが)しているという状態ですし、最頻値も微妙に下がるという事で、刈込平均も本来はもうちょっと威勢よく上がりだすという感じだったのではないかと思うに、期待形成のほうも、エネルギー価格の前年比効果が出て上がったところで、需給ギャップのプラス効果で実際の物価が上がりだして云々というのも中々苦しそうな感じなのですけれども、まあ日銀的には今回の展望レポートで「2018年度とか知らんがな」ということで降参しているので知らんがなという所かも知れません。

つーか物価見通しって先の方はマクロ的に云々とか(鉛筆なめなめではない)の話で見通しを出すと思いますが、足元に関しては基本的に数字の積み上げで近い見通しは読める筈ですので、今回の展望レポートで2018年度というのを諦めたのも、その次の展望レポートまでの3か月の物価推移を想定した結果として、2018年度達成の看板を上げたままにしておくのはさすがに無理があるような物価推移になりそう、ということで降参したんでしょうなあという数値が堂々と出てきた感があります。

(3)上昇・下落品目比率

上昇品目比率−下落品目比率(%ポイント)

Mar-17 25.8
Apr-17 23.9
May-17 20.7
Jun-17 18.9

長期時系列の図表の方を見た方が分かりよいと思うのですが、上昇−下落が均衡気味になっている時って大体物価がウゴカンチ会長になっている時期と同じ(まあ当たり前ちゃあ当たり前ですけど)になりまして、徐々にこの数値が落ち着いてきている、というのもこれトレンドとして物価上昇基調が崩れてきているという話で、モメンタムの維持とは何の事か、と言いたくなるのですが、物価上昇のモメンタムというのを需給ギャップと予想インフレで説明している訳で、品目比率は予想インフレ率に影響を与えるというか予想インフレの反映でもあるでしょうからさすがに知らんがなというのも強引な気がするのですが、それにしてもこれって

でまあ皮肉なのは物価があまり上がらないという感じになる(たぶん統計上の数字はこうだけれども生活実感物価ってのは上がっている感があるんじゃないのとか個人の感想としては思うので、それが下がって「思ったより物価が上がらない感じかもしれない」程度でデフレ感は無いと思うんですけど)ので消費が強い可能性があるようにも思える訳でして、まあやはりゼロインフレ均衡なのかも知れませんなあという気はする相変わらずの基調物価なのでありました。


○これは面白い論文(非伝統的政策が格差を拡大するかというお話)

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2017/wp17j06.htm/
金融政策と所得・消費のばらつき
―日本のデータを用いた検証―

全文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2017/data/wp17j06.pdf

ちなみに脚注に『本稿は、日本銀行ワーキングペーパーシリーズ No.17-E-3「Effects of Monetary Policy Shocks on Inequality in Japan」の日本語訳版である。』

とありまして、元物件は
http://www.boj.or.jp/en/research/wps_rev/wps_2017/wp17e03.htm/
Effects of Monetary Policy Shocks on Inequality in Japan

本文は
http://www.boj.or.jp/en/research/wps_rev/wps_2017/data/wp17e03.pdf

ってあって読もうかと思ったものの当然ながら泡を吹いてしまったのでそのまま積読として盛大に埃をかぶっていたので誠にアリガタヤであります。


・非伝統的金融政策は格差を拡大するのか?

でまあサマリーの方でも良いのですが全文の最初の辺りから少々。

『1.はじめに』から参ります。

『家計間の所得や消費のばらつきに対して、金融政策がどの様な影響を与えるのかという問題について、近年、関心が急速に高まっている。特に、世界的な金融危機後、主要各国の中央銀行が非伝統的金融政策を実施してきている中で、こうした政策がどのような影響をばらつきに与えるのかについては、活発な議論が行われてきた。』

敢えて「格差」と書かない辺りは刺激的なヘッドラインにして結果的に変な読まれ方をしないようにしているという配慮を感じて素晴らしいです。

『この中では、例えば、Cohan (2014)のように「金融危機の最中に、バーナンキFRB元議長が実施した極端な量的緩和政策は、持つ者(the haves)と持たざる者(the have-nots)との溝を拡げただけである。」という主張がある一方、Krugman (2014)のように「量的緩和政策が、常に富裕層優遇であるという考え方は間違っているか、少なくとも言い過ぎである。」との主張も存在する。』

って話ですからね。

『Bernanke (2015)も、「金融政策が所得や資産のばらつきに影響を与えるというのは確からしいものの、結局のところ、ばらつきを広げるのかどうかについては明らかではない。」と指摘している。』

ということで・・・・・・・・

『こうした高い関心にも関わらず、マクロ経済学は、この問いに対して、明確な答えを導き出せずにいる。既存の実証分析においても、定性的な点についてですら報告結果が異なっており、コンセンサスが得られているとは言い難い。』

ほほう。

『例えば、この分野の先駆けともいえる Coibion et al. (2012)(以下、CGKS [2012])では、金融緩和ショックに対して、米国家計の所得・消費のばらつきが反循環的(counter-cyclical)に反応する――金融緩和に対して、ばらつきが縮小する――ことが報告されているが、日本のデータを用いた Saiki and Frost (2014)では、CGKS (2012)と逆に正循環性――金融緩和に対して、ばらつきが拡大する――が報告されている。また、Domanski et al. (2016)は、非伝統的金融政策が、家計間の資産のばらつきを拡大させている可能性があること、特に株価の変動の寄与が大きいということについて、複数の国のデータに基づいて主張している。』

だそうです。

『本稿は、日本のデータを用いて、一つの回答を出すことを目的とする。分析は、2 つのパートから構成されている。前半では、金融緩和ショックが所得や消費のばらつきに、どの様な影響を与えるかを推計する。推計にあたっては、総務省「家計調査」の個票データを用いて、勤労者世帯の家計間の所得と消費のばらつきの指標の時系列を 1981 年から 2008 年まで四半期ベースで作成したうえで、Jorda (2005)が提唱する Local Linear Projection(以下、LLP)という推計手法を用いて、ばらつきの指標の金融緩和ショックに対するインパルス反応関数を推計する。』

『なお、標本期間中に金融政策のレジーム転換が生じている可能性を考慮し、いわゆる「伝統的金融政策」が実施された時期(1981 年第 1 四半期から 1998 年第 4 四半期まで)のみを用いた推計(以下、ベースライン推計)と、「非伝統的金融政策」の実施時期を加えて推計したもの(1981 年第 1 四半期から 2008 年第 4 四半期まで)の双方を分析している。また、勤労者世帯間のばらつきについての分析だけではなく、世帯主が失業している世帯を含むよりカバレッジの広い世帯間のばらつきについても、近似的な指標を作成したうえで分析している1。』

この辺の話になると字面読んでも泡を吹いているだけの泡吹きおじさんなので誰か教えて下さいお願いします(本文の方にどういう推計したのかもう少し詳しくあるのではございますけれども)。まー数学的な話になるとアレなのですが、こういうのは推計のロジックと推計の元になるデータに関して突っ込んで確認すればどの点に問題があるのかなどは漠然とイメージできるものだとは思っている(程度しか数学はワカランチ会長ですいません)。


でもってその結論。

『前半パートから得られた主要な結論は以下の 3 点である。(1)伝統的金融政策の実施時期においては、金融緩和ショックは、労働所得に対して正循環的にはたらくことを通じて、税引き前所得や可処分所得といった所得のばらつきを統計的に有意に拡大させる。(2)2000 年代初頭から、金融緩和ショックが所得のばらつきに及ぼす影響が定量的に低下してきており、推計期間を 2008 年末まで伸ばした場合には、正循環性はほぼ消失する。また、勤労者世帯間ではなく、全世帯間の労働所得のばらつきについてみていると、伝統的金融政策の実施時期においても正循環性はみられない。(3)金融緩和ショックが所得のばらつきを統計的に有意に拡大させる時期においても、所得のばらつきから消費のばらつきへの波及は限定的である。』

勤労世帯の家計所得、という意味ではたぶんこのベースライン期間とそれ以降の期間って日本の場合労働慣行の変化が生じていて、そっちの方も何らかの形で寄与しているんじゃないのかね、とは思うのですが。あとまあ非伝統的政策が資産価格チェネルで効くというのが何らかの影響をというのかも知れませんが頭が悪いので良く分からん。結論は何となくそうかなあという感じが直感的にはする。


『後半では、幾つかの分析手法を用いて、金融政策ショックが家計間のばらつきに波及するメカニズムを検証している。まず、動学的確率的一般均衡(Dynamic Stochastic General Equilibrium、以下 DSGE)モデルを用いて、労働市場の柔軟性や家計間の金融資産・負債の分布が、金融政策ショックが生じた後の家計間の消費や所得のばらつきの変化に対してどのような影響を及ぼすのかを、理論的に分析している。』

ということで今アタクシが申し上げた辺りは当然カバーされているのだ。

『また、政府公表の集計値や金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」の個票データを用いて、産業間での付加価値、従業員給与、時給のばらつき指標、家計間の金融資産・負債のばらつき指標を作成したうえで、これらのばらつき指標と金融政策ショックとの関係性を実証分析している2。』

なるほど。

『こうした指標は、家計調査では捉えられない財・労働市場や、家計の金融資産・負債に関する情報6を含んでおり、家計調査を用いた分析を補完するものである。』

つーことでその結論。

『後半のパートの主たる結論は、前半部分で得られた実証結果――金融緩和ショックに対する労働所得のばらつきの正循環性と、正循環性が推計期間を伸ばすほど弱まる傾向にあること――を説明する上では、日本の労働市場の柔軟性の度合いの変化が重要であるというものである。』

なるほどなるほど。

『鍵となるメカニズムは、労働者による企業間の賃金のばらつきの裁定である。』

『金融政策ショックが各産業や企業の経済活動に及ぼす波及度合がそれぞれ異なるということを前提としたうえで3、労働移動がなく、各家計の労働供給が各企業に紐づいている経済を仮想的に考えると、金融政策ショックが発生した後の企業間の経済活動のばらつきの変化は、企業間の「従業員一人当たり労働所得のばらつき」および家計間の「労働所得のばらつき」の変化に直結することが分かる。』

『逆に、労働移動が伸縮的なもとでは、金融政策ショックによって、企業間の経済活動にばらつきが生じたとしても、賃金のばらつきは裁定によって失われるため、家計間の労働所得のばらつきの変化には直結しにくくなる。こうした理論的な帰結は、過去20〜30 年間に日本で観察されてきた労働市場の柔軟性の高まりと整合的と言える。』

言ってる事は分かる。

『なお、金融資産・負債の分布が、金融政策ショックのばらつきへ及ぼす影響については、実証分析の結果を踏まえる限り、限定的であるとの結論が得られた。』

そ、そうなのか・・・・・・・・

でもって途中飛ばして、

『本稿の構成は、以下の通りである。第 2 章では、金融政策ショックが家計間の所得や消費のばらつきに波及する経路について、先行研究を紹介しながら整理する。第 3 章では、推計に用いたデータと推計手法について説明する。第 4章では、金融政策ショックがばらつきに与える影響についての推計結果を示す。第 5 章では、推計結果の背景となっているメカニズムについて、DSGE モデルなどを用いつつ検証する。第 6 章では、まとめを行う。


ということなのですが、時間とアタクシの能力の問題上あとは本文読んでちょということで。





2017/08/01

お題「輪番レンジ据え置き/フィッシャー副議長講演から」

はて・・・・・・・・??
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170731/k10011081721000.html
自民 稲田前防衛相の閉会中審査への出席 応じない考え
7月31日 16時10分

『このあと、竹下氏は記者団に対し「稲田氏は辞任という、いちばん重い責任の取り方をしており、辞任した大臣を国会に呼び出すことは、やってはいけない」と述べました。』(上記URL先より)

もしかして竹下さんわざと話をややこしくしようとしてるんじゃないか??

○8月輪番のレンジは不変で来ましたな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170731c.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170630e.pdf(前回)

前回のレンジがこうなっていましていて(カッコ内は6月最終回の買入額)、

短期:500〜1500(1000億円)
中期1-3年:2000〜3000(2800億円)
中期3-5年:2500〜3500(3000億円)
長期:3500〜5500(4500億円)
超長期10-25年:1500〜2500(2000億円)
超長期25-40年:500〜1500(1000億円)
物国:250(250億円)
変国:1000(1000億円)

今回はこうなりましたと。

短期:500〜1500(1000億円)
中期1-3年:2000〜3000(2800億円)
中期3-5年:2500〜3500(3300億円)
長期:3500〜5500(4700億円)
超長期10-25年:1500〜2500(2000億円)
超長期25-40年:500〜1500(1000億円)
物国:250(250億円)
変国:1000(7月は変国買入無しで6月は1000億円)

・・・・・・でまあ今回は呈示レンジが同じでしょう、というのがコンセンサスっぽかったようなので特段の波乱も無いようですが、同じにしてもサプライズにならなかったとゆーのは中々お洒落ですねと思ったです、はい。

つまりですね、レンジ方式にして翌月の初回買入額を公表しない、という方式に変更した当初だと翌月の買入額が幾らになるかをレンジの中心がどこにあるかによって何となくアナウンスする、という感じでやっていたので、レンジの中心が当月最終回の買入と乖離していると来月の買入が増えるだの減るだのという事で一々ネタになっていた訳ですが、徐々にこの辺りが柔軟というかファジーになってきても市場が反応しないようになってきた、というのが面白いですなという事で。

以前でしたらこのレンジが出ると「中期と長期が来月から元に戻る」と言って少しは反応しても良いような気がするのですが、元々中期と長期が元に戻るのを想定しているからこうなっているのか、それとも先月の指値オペ攻撃が効いて、金利が上がったら止めに来るのが分かっているから別に減っても金利が跳ねる訳でも無し、ということになっているのかはよー分からんですけれども(それ以前に月曜だから反応しないとか)、いずれにせよ「レンジ内でしか変更していませんからまあ今回はレンジ変えなくてもサプライズではないですな」となっているというのは、オペの実働部隊的には量の上げ下げを柔軟にやりやすくなったかなあとは思いますし、まあ「基本的には減らせるなら減らすけれども金利が跳ねないようにする」というのが見えてきて(金利を下げに行くような買い方はしない)コンセンサスが形成されたということかも知れません。


でもって短国。

『3.国庫短期証券の買入れ

金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、8月末の残高を25〜27兆円程度とすることをめどとしつつ、金融市場に対する影響を考慮しながら1回当たりのオファー金額を決定する。』


短国ちゃんですが、7月に提示していたレンジが「26〜28兆円程度」となっていましたけれども、6月末の短国買入残高が27兆7,550億円、7月償還銘柄が概ね5兆3,600億円で、7月の受渡ベースの買入が4兆5,000億円程度でしたので、7月末の残高は26兆8,950億円と、ほぼレンジの中間で収まりまして、この出し方ですと1兆円減らすのがレンジの中心という所ですな。

でもってアタクシがヘコヘコ計算したら8月の償還が4兆弱(3.96兆円)なので、8月の短国買入は3兆円買ってくるのが中心ということで、買入が5回あるので5000×3+7500×2だと3兆円になりますが、それだと短国買入専用機の6Mと1Yが捌けないかも的な気はせんでもないものの、そもそも7月は後半の方でそんなに買わなくてもエエンチャウノ的な買い方をして需給が強くなっているので、そこで糊代があるのと、まあゆうて1兆×2でもレンジ内に収まるちゃあ収まるので、という事かも知れません。

短国ってまあ特殊なので参考になるのかどうかというのは分からないのですが、先月の流れと今月の推移というのをこれから見ていくと、将来買入正常化という事になった場合(なるのかどうか知らんけど)「フロービュー」なのか「ストックビュー」なのか、というのの参考には少しはなるんじゃないかと思うのです。つまり、先月ってストックは1兆円落としたけれども途中でフローを上げたところで需給が強くなった訳でして、今月の場合は元々償還が少なめなのでストックはあまり減らないけれども見合いでフローは増やしにくい、という状況にある訳ですが、この場合金利がどう動くのか、7月と比較して市場のプライスアクションどうなるのか、というのは面白みがあるかのう、とは思ったりしています。

ただ、短国の場合は発行償還がバカスカ来るので長期国債とはまた話が別のような気もするのでどの程度参考になるのかは分からないですけど・・・・・・・・


○フィッシャー副議長の講演だが「世界的な実質金利の低下」だそうで

ほほう。
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-fischer-idJPKBN1AG1OL
Business | 2017年 07月 31日 23:14 JST
米政策巡る不透明感、企業投資の足かせに=FRB副議長

『[31日 ロイター] - フィッシャー米連邦準備理事会(FRB)副議長は、政府の政策見通しを巡る不透明感が米企業の投資を抑制している可能性があるとの認識を示した。リオデジャネイロで開催された会議で述べた。医療保険制度や規制、税制、貿易の先行きが不透明なため、企業は政策環境が一段と明確になるまでプロジェクトを先送りしているようだとしたが、具体的にトランプ政権に言及することはなかった。』(上記URL先より)

これはフィッシャーさんヘッジを入れ出したか?と思わせるニュースヘッドラインな訳ですが、中身を見るとこの部分だけ取り出すのもちと微妙ではあります。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20170731a.htm
July 31, 2017
The Low Level of Global Real Interest Rates
Vice Chairman Stanley Fischer
At the Conference to Celebrate Arminio Fraga’s 60 Years, Casa das Garcas, Rio de Janeiro, Brazil


・お題は「グローバルな長期金利の低下」であります

まずはマクラの所から。

『Now I will turn to the main topic of my discussion, the low level of global real interest rates, an important and distinguishing feature of the current global economic environment.』

ということで世界的に実質金利が低いというお話がテーマなのでした。

『In the United States, the yield on 10-year Treasury bonds is near all-time lows, with the same being true in the euro area, the United Kingdom, and Japan (figure 1). Yields have also declined in many emerging markets, with interest rates falling almost 400 basis points in Korea since the financial crisis and by a similar amount in Israel. As shown in figure 2, the decline has been less apparent in Brazil and South Africa, though interest rates in both countries remain well below previous peaks.』

先進国のみならず新興国でも長期金利が絶賛低下中というお話で図表はこちらにあります。
https://www.federalreserve.gov/images/fischer-figure1-20170731.jpg
https://www.federalreserve.gov/images/fischer-figure2-20170731.jpg

『In this talk, I will address two questions: Why are interest rates so low? And why has the decline in interest rates been so widespread?1』


・世界的に長期金利が下がっているという件

『Global Real Interest Rates Have Declined』という小見出しが最初に来るのだ。

『Lower inflation explains a portion of the decline in nominal interest rates. Longer-term interest rates reflect market participants' expectations of future inflation as well as the expected path of real, or inflation-adjusted, interest rates. And while lower realized inflation and credible central back inflation targets have likely stabilized expected inflation at relatively low levels compared with much of the 20th century, inflation-adjusted yields have also notably decreased.』

『The decline in interest rates also does not appear to be primarily an outcome of the economic cycle. Longer-term interest rates in the United States have remained low even as the Federal Open Market Committee (FOMC) has increased the short-term federal funds rate by 100 basis points and as the unemployment rate has declined below the median of FOMC participants' assessments of its longer-run normal level.』

微妙に話の進め方が丁寧なので飛ばし方に困る講演ですが(^^)、米国の長期金利が利上げしても上がらんぞなということで、しかもそれが経済が落ちているから上がっているとかそういうもんでも無いという今の状況と。

『Rather, it appears as though much of the decline has occurred in the equilibrium level of the real interest rate--also known as the natural rate of interest or, alternatively, r*. Knut Wicksell, in his 1898 treatise Interest and Prices, wrote, "There is a certain level of the average rate of interest which is such that the general level of prices has no tendency to move either upwards or downwards."2 In recent years, the coincidence of low inflation and low interest rates suggests that the natural rate of interest is likely very low today.』

でもって今の米国長期金利の低下は経済サイクル的な云々ではなくて、実質均衡金利が低下していることによって引き起こされているものである、というお話をしております。でまあ以下完全雇用時の長期金利の比較とかして実質均衡金利が低下してるんじゃネーノ的な話があるがその辺はパス。


・均衡金利水準が低下していくというのが宜しくないというお話

『How Should We Think about the Decline in Equilibrium Interest Rates? An Investment and Savings Framework』

でもって均衡金利水準が下がっているのはナンデジャロ、という話の中で先ほどのロイターさんのヘッドラインになっていた件が出てくるのだ。

『There are many factors that could be holding down interest rates, some of which could fade over time, including the effects of quantitative easing in the United States and abroad and a heightened demand for safe assets affecting yields on advanced-economy government securities. I will focus on some of the more enduring factors that could potentially lower the equilibrium interest for some time.』

一時的に均衡金利水準を下げるファクターというのもありますが、ということで内外の量的緩和だの安全資産需要だのを上げていますが、では恒常的に均衡金利水準を下げるファクターとはということで。

『In attempting to explain why real interest rates have fallen, a useful starting point is to think of the natural interest rate as the price that equilibrates the economy's supply of saving with the demand for investment in the long run, when the economy is at full employment.』

経済が完全雇用の状態にあるときに貯蓄と投資がバランスする金利水準(=金の価値みたいなもんだから)が自然利子率である、という観点から考えるとヨロシ、という説明でほうほうという所ですが、

『With this framework in mind, low interest rates reflect factors that increase saving, depress investment demand, or both.』

この観点からすれば低金利というのは貯蓄の増加か、投資需要の減少か、もしくはその合わせ技か、という事になります。

『Focusing initially on the United States, I will look at three interrelated factors that are likely contributing to low interest rates: slower trend economic growth, an aging population and demographic developments, and relatively weak investment. I will then discuss global developments and spillovers between countries.』

でもって米国の場合は、トレンド成長率の低下、高齢化と人口動態の変化、相対的に弱い投資、の3点によって金利が低下していますよ、という指摘でして・・・・・・・・・

『But first I would like to interject a quick word on why we as policymakers might be concerned about low interest rates. I highlight three main worries.』

その個別ファクターの話をする前に何で均衡金利が低下するのを懸念しないと行けないのかという話をしましょうぞ。

『First, as John Maynard Keynes discussed in the concluding chapters of The General Theory of Employment, Interest and Money, a low equilibrium interest rate increases the risks of falling into a liquidity trap, a situation where the nominal interest rate is stuck, by an effective lower bound, above the rate necessary to bring the economy back to potential.5 Relatedly, but more broadly, low equilibrium interest rates are a key pillar of the secular stagnation hypothesis, which Larry Summers has carried forward during the past few years.6』

均衡金利が低くなるとゼロ金利制約による流動性の罠に落ちやすくなることに加え、長期停滞を意味するということ。

『Second, a low natural rate could potentially hurt financial stability if it leads investors to reach for yield or hurts financial firms' profitability.』

自然利子率の低下が金融機関の収益悪化や、投資家の利回り追求の行動に結び付くと金融不均衡を招く。

『And, third--and perhaps most troubling--a low equilibrium rate sends a powerful signal that the growth potential of the economy may be limited.7』

最も重要とみらえるのは、低い均衡金利というのは「経済の潜在成長力が限定的である」というシグナルを出している、ということであり、以上の事から政策担当者は均衡金利が低い状態であることについて警戒しないといけません。だそうな。


・均衡金利低下の個別要因

でもって以下がそういう話になるのですが小見出しが、

『Slow trend growth』
『Demographics』
『Investment』

とありまして、トレンド成長が下がっているとか、人口動態によって影響が出ているとかぼ部分は飛ばしまして投資」の所でロイターのヘッドラインに載っている話があります。

『Another factor weighing on equilibrium real interest rates has been the recent weakness of investment. What explains the tepid response of capital spending to historically low interest rates?』

『As mentioned earlier, low productivity growth has certainly been a contributing factor, as firms see fewer profitable investment opportunities. But elevated uncertainty, both political and economic, has likely also played a role. For one, uncertainty about the outlook for government policy in health care, regulation, taxes, and trade can cause firms to delay projects until the policy environment clarifies.』

ということで、「For one, uncertainty about the outlook for government policy in health care, regulation, taxes, and trade can cause firms to delay projects until the policy environment clarifies.」って言ってまして、ロイター記事にありますような部分ですな。

まー確かに具体的にトランプ政権に言及はしていないのですが、結構思いっきり言っているような感じもしまして、ただまあこういうのって「均衡金利の低下」みたいなテーマからするとちと視点が短期的でネーノというのもあって、ここでしらっとフィッシャーさんがこのネタをはめ込んできたのがイマイチ良く分からん(文章の流れに若干の違和感がある)とは思う。

ちなみにこの先は、

『Firms also seem quite uncertain about the disruptive capacity of new technologies. Technological developments appear to be rapidly reshaping entire industries--in retail, transportation, and communications. Elevated uncertainty about the continued viability of long-standing business models could be weighing on investment decisions.』

とまた話が大きなネタになるので、上記の所だけ妙に具体的に入れているというのはやはりフィッシャーさんヘッジをしたいのか、それとも政権にイヤミを言いたいのか良く分からんところではありますが謎な展開になっていました。


・思いっきり飛ばしまして結論部分

以下話があったあと、『Global Links: Why Has the Decline in Interest Rates Been So Widespread? 』というのと、『Current Account Balances and Global Spillovers』というのがありますが盛大にパスしまして、最後の『What, If Anything, Can Be Done about Low Interest Rates?』をば。

『Given the potential risks around low interest rates I discussed earlier, including the impact on the effectiveness of monetary policy and financial stability concerns, what should policymakers do to address the problem?』

さて。

『Monetary policy has a role to play. Transparent and sound monetary policy can boost confidence in the stability of the growth outlook, an outcome that can in turn alleviate precautionary demand for savings and encourage investment, pushing up the equilibrium interest rate.』

「Transparent and sound monetary policy can boost confidence in the stability of the growth outlook,」としかないので別に緩和政策で需要を増やしますという話ではない。

『However, as I have said before--and Ben Bernanke before me--"Monetary policy is not a panacea."19 Also, to repeat myself, policies to boost productivity growth and the longer-run potential of the economy are more likely to be found in effective fiscal and regulatory measures than in central bank actions. This statement is true not only in the United States, but also around the globe. But it is not to say that monetary policy is irrelevant to the growth rate of the economy.』

金融政策は万能ではなくて、成長力を押し上げるのは金融政策以外の政策も重要、とありますので、これは別にフィッシャーさんの金融正常化路線に影響を与える話ではない、とは思う物の、確かにロイターが目を付けた部分というのは若干違和感があるので、若干こうもにょる講演ではありました。