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2016/11/30

お題「国債投資家懇談会を鑑賞/パウエル理事は過熱警戒トーンもあるけどやはり緩やかな利上げ路線ではないかと」

さあ明日から12月ですよ今年の総決算ですよ・・・・・・・・・・・・全く成長していないアタクシorzorz

○そういえば今日は来月の輪番予定

ということでそういえばでもなんでもないのですが、足元で一旦相場落ち着いた(米国様も)という事ですので、金利上昇を受けてど〜するど〜するという状態でもなくなっておりますし、米国やECBが注目される中で日銀がわざわざ特攻することも無いでしょうから現状維持で行くんじゃないですかねえ(てきとう)。

相変わらず日銀買入残高がやたらにでかくて年末月を迎えて需給がヒャッハー待ったなしの短国買入はもっとジャンジャン減らして頂きたいと思うのですが、MBの帳尻問題があるのでこれまた年末の所であまりMBペースがただのメドとは言えメドからズレてしまうと色々と悪目立ちしてしまいますので、ここは知らんふりして帳尻オペなんでしょうかね(ただし、需給が良すぎてそもそも買入出来ない可能性は存在)、よー知らんけど。

これで今回増額とか減額とかしたら結構ウケるが別にやる必要ないのにやることも無いでしょ。

#つーかうっかり何か増額されてマイナス水準で10年入札迎えられると参加者総出でションボリーヌだと思う


○国債投資家懇談会など

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbi/proceedings/outline/161128.html

発行計画に関する理財局の説明部分はPD懇と同じなので飛ばしまして、

・見解の部分を鑑賞する訳ですが

『・財政規律の観点から、発行総額の減額には賛成であるが、マイナス利回りで国内投資家の需要が相対的に少ない中短期ゾーンを減額してほしい。また、残存10年超で流動性が低下している銘柄も見られるため、仮に20年債以下を一律に減額するのであれば尚更、流動性供給入札については増額してほしい。』

『・当社には中短期ゾーンに担保需要があるため、あまり大きく減額されるとマイナス利回りが深くなり担保コストの増加につながってしまうことから、減額する場合、中短期ゾーンに偏らせず、各年限を万遍なく減額してほしい。』

『・マイナス利回りでは投資を行いにくいため、減額するのであれば2年債及び5年債にしてほしい。他方、10年債は最近プラス利回りになったところであり、発行額は維持してほしい。』

『・マイナス利回りになっている2年債及び5年債には減額余地があると考える。他方、10年債以上の年限については、プラス利回りに対する需要が比較的強いため、現状維持が望ましい。また、日本銀行によるイールドカーブ・コントロール下で超長期ゾーンへの需要が相対的に高まっているため、流動性供給入札の残存15.5-39年ゾーンの増額を検討してほしい。』

『・発行総額の減少を前提とすれば、マイナス利回りで投資家ニーズの小さい2年債及び5年債を中心とした減額にしてほしい。また、10年債についても、一定程度の発行額を確保する必要はあるものの、まだ幾分かの減額余地はあると考えており、更に減額する必要がある場合には対象になると考える。超長期ゾーンについては、発行年限の長期化により将来の借換債を抑制できるという効果も期待されることに加え、投資家ニーズも安定的に存在するため、現状維持が望ましい。 流動性供給入札については、平成28年度から残存1-5年ゾーンが追加されたことに伴い超長期ゾーンが若干の減額となっているが、40年債が増額後も順調に消化されている等、超長期ゾーンへのニーズが再確認されていることを踏まえれば、このゾーンに増額の余地があると考えている。』

ということで投資家懇談会で国債の投資家っていいましても負債デュレーションが全然違う人たちが集まって会合しているのですから、そらもう意見が思いっきり自分の所の調達運用構造の都合で話をするのは致し方ないというか、そういう懇談会ではありますが。


・市場の流動性に関する言及

『・市場の流動性は、かなり低下していると感じる。現在、当社は日本国債をそれほど売買していないが、ALM上、負債とのバランスである程度は入れ替えを実施しており、市場に一定の流動性がないと実際に売買する際に支障をきたすことから、超長期ゾーンを中心に流動性を確保してほしい。このため、超長期ゾーンについては、発行総額が減少する中、増額が難しいとは理解するが現状は維持し、流動性供給入札についても、できれば超長期ゾーンを優先的に増やしてほしい。他方、マイナス利回りとなっている中短期ゾーンは極力最低限の発行にしてほしい。』

『・日本銀行によるマイナス金利政策導入以降、市場の流動性は徐々に低下していると感じる。このため、平成29年度国債発行計画を策定するに当たっては、特に残存10年超の流動性の確保に配慮してほしいと考えており、流動性供給入札の増額を希望する。他方、2年債及び5年債については減額の余地がある。』

『・日本銀行が強力な国債買入を続ける中、プラス利回りとなっている超長期ゾーンを減額してしまうと運用難に拍車がかかる上、市場の機能度も更に低下するため、同ゾーンを減額すべきではないと考える。他方、マイナス利回りで投資家需要が低下している2年債及び5年債は減額可能。なお、海外投資家にとっては、ドルの余資運用先として、ドル円ベーシス・スワップ取引を介したT-Billへのニーズは引き続き強いため、発行額を減らしてほしくない。』

まあそうですなという感じです。

・・・・・・・でもってですな、YCCおっぱじまって最初の国債発行計画になる訳ですが、何がどうややこしいかと言えば「日銀の買入が今後フローベースでどうなるのかが全然わからない」(日銀だって出たとこ勝負だから日銀ですら分からんのにいわんや外野をや)というお話でして、これらの議論ってのも基本的に足もとでの日銀の国債買入の全体量と年限間のバランス(と相場水準)を所与としていると思うのですが、今後日銀の目論見通りに米国様の利上げ局面がもう少し鮮明になってくれて、ドル金利がやや上昇トレンドみたいになってくれて、ドル高が進んで円安で物価と資産価格ウマーという展開になってきた。という場合ですけれども、今の建付けだと「9月MPMで言及した「概ね現状程度の水準を念頭に」というイールドカーブを維持させようとして買入がバカスカ入る」のか、「自然体で金利が上昇する分には若干の上昇(10年が0.2%とか)は放置プレイ」なのかも良く分からんですし、MBのメドが何処で外れるのかとか、買入のバランスの中で短国(カーブの手前がここになるので)どうするのとか、日銀のオペ次第で年限別の需給が全然違ってくるので非常にここは判断が難しいと思うの。

まあ方向性としては先週金曜のPD懇と同様で中期の5年減額は見え見えで、他はどうなるのかとか、何処か減らして何処かを増やすみたいな(やるなら中長期から30年とかでしょうが)話をするのかとかは、やったは良いけど日銀から変な梯子の外し方されても困るし難しいですの。


・まあ順当だが円債にはつらいご意見がががががが

その次の『2. 最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて』であるが。

『・当社の基本的な運用スタンスは、20年債までのプラス利回りの債券への投資であるが、マイナス0.1%の付利が適用されている余剰資金については、マイナス0.1%以上の利回りがあれば、運用対象となり得る。また、ファンド投資を含めた海外の資産への分散投資を進めてきている。入ってくる資金の置き場として、プラス金利の日本国債に投資することもあるが、収益の源泉になっているのは外債投資である。ただ、円金利が相応のプラス圏という状況になれば、基本的には日本国債に回帰したいと考えている。ある程度のプラス金利となっていてイールドカーブが立っている状況になれば、日本の機関投資家は、日本国債を中心に運用することになるだろう。』

>収益の源泉になっているのは外債投資である

順当だが円債ェ・・・・・・・・・・・・・・

『・市場の流動性について、いつを基準に考えるかということはあるが、マイナス金利政策やそもそものQQE導入以前と比べれば、ある程度満足できる水準で国債を売買できる時間帯が限られていると考える。これは、証券会社の体力の問題もあるのかもしれない。円金利の低下により、リスクに見合うリターンを得られない状況であり、日本国債には投資しづらい状況が続いている。』

市場の流動性に関してはこちらの部分でも思いっきりケチョンケチョンに指摘されていまして、一方で本石町大本営におかれましては「国債市場の流動性はありまぁす!」というのは何なんでしょうと思う訳で、「流動性の低下は進んでいるが、それを上回る政策効果が出ている(キリッ)」とか潔く開き直って頂いて、市場との対話とやらの中でも「政策効果がこんなに出ているのですから市場の流動性とか知らんがな」位に開き直ると面白いのですが、そこまで開き直れないのは「それは分かったが物価もインフレ期待も全然上がっていないんだから潔く副総裁辞任しろや」と言われると言い訳の応酬になりますからね。


・まあしかし

『・金利が上がってくれば国債を購入するニーズは出てくるという声も聞かれているが、生保は大手も含めて、貯蓄性商品の販売を取りやめている。そうすると、運用資金が入らないことや時間の経過により負債のデュレーションが短くなるため、数年後に金利が上昇したとしても超長期ゾーンの国債を購入する需要が元に戻るという話にはならないと思う。その点について、市場参加者はもう少し危機感を持った方がよいのではないか。

 当社の運用方針としては、マイナス金利での運用は行っておらず、利回りがプラスの外債や海外のリスク資産への投資を増やしている。しかし、今後、米国のインフレ期待が高まり、FRBが利上げを始めるとなれば、ヘッジコストが上がるのではないかと懸念している。すなわち、当社が保有しているヘッジ付外債は、必ずしも満期まで為替予約しているわけではないので、徐々に逆ザヤ化することになる。逆ザヤとなっている外債を売れば含み損が実現するということになり、売らなければ逆ザヤを甘受することになるという、身動きが取れない状況に陥るのではないかと、非常に心配している。こうしたこともあり、今は金利が大幅に上がってきているが、当面は様子見を続けることにしており、急速に海外の資産を増やしてよいのかどうかは決めかねているというのが現状である。』

『・市場参加者が今の国債市場の状況に慣れてしまっていないかと心配していたが、本懇談会での話を伺い、様々な不確実性に対応しようという動きがあるとわかり、安心した。過去30年にわたった金利低下局面が終わり、上昇局面に入ったとのヘンリー・カウフマンによる分析も示されており、頭に置いておく必要がある。団塊の世代が後期高齢者となり社会保障費が増大するという「2025年問題」に備えて、2020年までにプライマリー・バランスの黒字化を達成し、その後は対GDP比での債務残高を減らしていくというのが、歴代内閣が国内外に表明してきた目標である。これが実現できないからといって直ちに問題が発生するわけではないかもしれないが、国債の格付けの問題から金利が上昇することも気がかりな情勢となっている。小泉内閣の時代には、2010年代初頭にプライマリー・バランスを黒字化すると言われていた。リーマン・ショックの発生によって目標は先延ばしにされたわけだが、足元の外部環境を踏まえると、もはや猶予期間はないと考えるべきだろう。』

というような指摘もありまして、いつまでものうのうと今の相場が続く訳でも無かったりしますが、何せ日銀のYCCというよりその前の昨年12月の補完措置以降の1年間って何かもう目先に起こりそうなヤバい奴に対してとりあえず何とかしようとして壮大なネタをバンバン打ち込んだという風情でありまして、まーこの1年(表立ってではないにせよ)変なコケ方をするかも分からん状況だったので兎に角目先何とかした、という風に褒めて褒めれない訳でもないのですが、とにかく政策枠組みが継ぎはぎ継ぎはぎみたいになってきているので、もし運よく正常化という話がいけるのなら、また建付けの増改築が必要な気がします。



○パウエル理事の利上げパス

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20161129a.htm
Governor Jerome H. Powell
At the The Economic Club of Indiana, Indianapolis, Indiana
November 29, 2016
Recent Economic Developments and Longer-Run Challenges

ということで他に色々な高官発言があって適当に読み散らかしている状態で頭の整理ができていない中で先入先出法(なおこの言い方は会計処理の話を物の話に使っているので誤用^^)によってネタを出す(とどうなるかというと、昔入れたネタがそのまま陳腐化してしまうのだが)の巻。


・金融政策の所だけ見ると微妙に見えるのだが

例えばロイター大先生
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1DU4MC
Investing | 2016年 11月 30日 03:48 JST
訂正-米利上げの論拠、「明白に強まった」=パウエルFRB理事

『[29日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル理事は29日、11月初旬の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降(訂正)、米国で利上げを実施する論拠は「明白に強まった」と述べた。同理事は経済見通しについて行った講演で、FRBは金融政策に対しこれまで忍耐強い姿勢で臨んできたが、インフレ率の上昇が進むなか、行動が緩慢になり過ぎれば手が付けられない状態になる恐れがあると指摘。』(上記URL先より)

という感じでして、この講演って小見出し見ると最後に『Monetary Policy』という小見出しなので、まあ普通に読むと最初はここに目が行く。

『The low interest rate environment presents special challenges for monetary policy. In setting our target for the federal funds rate, a good place to start is to identify the rate that would prevail if the economy were at 2 percent inflation and full employment--the so-called neutral rate.』

実際はこの講演その前の部分(Longer-Run Challenges)で自然利子率が低下している件についてのお話がああでもないこうでもないとありましてですな、

『"Neutral" in this context means that the rate is neither contractionary nor expansionary. If the fed funds rate is lower than the neutral rate, then policy is stimulative or accommodative, which will tend to raise growth and inflation. If the fed funds rate is higher than the neutral rate, then policy is tight and will tend to slow growth and reduce inflation.』

まあこの辺は前振り。

『But we can only estimate the neutral rate, and those estimates are subject to substantial uncertainty.』

そらそうよ。

『Before the crisis, the long-run neutral rate was generally thought to be roughly stable at around 4.25 percent. Since the crisis, estimates have steadily declined, and the median estimate by FOMC participants stood at 2.9 percent in September. Many analysts believe that the neutral rate is even lower than that today and will only return to its long-run value over time.9』

ということでSEPで毎回出ているドットチャートですが、今回一番の注目はロンガーランのFFレートが幾らで出てくるのかじゃないかとアタクシは思っている次第で、ここの数字がじゃかじゃか低下するもんだから債券市場としてはsecular stagnationヒャッハーとなるのであって、さて今回どうなるのやらと思う。

『The low level of the neutral interest rate has several important implications.』

ほうほうそれでそれで?

『First, today's low rates are not as stimulative as they seem--consider that, despite historically low rates, inflation has run consistently below target and housing construction remains far below pre-crisis levels.』

『Second, with rates so low, central banks are not well positioned to counteract a renewed bout of weakness.』

『Third, persistently low interest rates can raise financial stability concerns. A long period of very low interest rates could lead to excessive risk-taking and, over time, to unsustainably high asset prices and credit growth.』

『These are risks that we monitor carefully. Higher growth would increase the neutral rate and help address these issues.』

つーことで、成長が上がってきて自然利子率が引き上がってくる(そんなに単純か?という気もするが)と従来自然利子率が低かったから金利が上がりにくいのですよという辺りに対しての対処だって必要になるかもしれませんよ。という話なのでまあここを見るとおーという感じではある。

『Turning to the outlook for monetary policy, incoming data show an economy that is growing at a healthy pace, with solid payroll job gains and inflation gradually moving up to 2 percent. In my view, the case for an increase in the federal funds rate has clearly strengthened since our previous meeting earlier this month.』

12月は利上げが適切と。

『Of course, the path of rates will depend on the path of the economy. With inflation below target, relatively slow growth, and some slack remaining in the economy, the Committee has been patient about raising rates. That patience has paid dividends. But moving too slowly could eventually mean that the Committee would have to tighten policy abruptly to avoid overshooting our goals.』

ということで、過熱リスクについてやや威勢よくコメントはしているのですが、シナリオとしてメインでこの忍耐強くを外す可能性を見ているように読むのはちょっと????な気がするんですが、まあ所詮はアタクシの英語力なので皆さんご確認くらはい。


・その前後をちょっと鑑賞

最後が『Conclusion』だが。

『To wrap up, since the end of the Great Recession in 2009, our economy has recovered slowly but steadily. Today, we are reasonably close to achieving full employment and our 2 percent inflation objective. But we face real challenges over the medium and longer terms. Our aging population will mean slower growth, all else held equal. If living standards are to continue to rise, we need policies that will support productivity and allow our dynamic economy to generate widespread gains in prosperity.』

てな話で、講演のお題がロンガーランの話になっていて、金融政策の前のパートって『Longer-Run Challenges』って小見出しになっていて、そこに更にサブ小見出しが『Productivity and Growth』、『Why Are Long-Term Interest Rates So Low?』、『Is This the New Normal?』となっている訳ですよ。

でもってここを全部読んでいると時間がががががなので(大汗)、最後の『Is This the New Normal?』を見るとですなあ、

『What can we do to prevent low growth, low inflation, and low interest rates from becoming the new normal?』

低成長低インフレ低金利をニューノーマルにしないためにどうしたらよいのかと来ました。

『We need to focus on ways to increase our long-term growth and spread that prosperity as broadly as possible. I hasten to add that these policies are, for the most part, outside the purview of the Federal Reserve. We need policies that support productivity growth, business hiring and investment, labor force participation, and the development of skills. We need effective fiscal and regulatory policies that inspire public confidence. Increased spending on public infrastructure may raise private-sector productivity over time, particularly with the growth of the stock of public infrastructure near an all-time low.7 Greater support for public and private research and development, and policies that improve product and labor market dynamism may also be fruitful.8』

思いっきり金融政策以外、というか結局前々から言われていたし、どこぞの麿総裁とかも言ってた話ですわなあ。金融政策でインフレ目標達成するとそういう構造問題もホイホイ片付いて行くし、理論通りにやったらそんなの行くに決まっているからやらない日銀は怠慢とか言ってたリフレ理論の方々のご見解を賜りたい。

『Monetary policy can contribute by supporting a strong and durable expansion in a context of price stability.』

という話になっていまして、まあ結局こういう成長力強化の話が出る中では金融政策を変に引き締め的にするのもやり難いでしょうから、やはり当面そんなに理事方面とかからタカ丸出しのようなものは出て来ないんでしょうなあと思いつつフィッシャーさんの最近の講演も精読して投下しないといけませんな。






2016/11/29

お題「狙っているかどうかは知らんがPD懇議事要旨は日銀への微妙なツッコミ成分を感じますな」

ほほう。
http://www.imes.boj.or.jp/cm/exhibition/current/index.html
テーマ展  夢の一千両 ―お江戸の宝くじ「富」―

○PD懇は国債発行計画だが国債決済T+1ネタも

金曜にやってましたが昨日の朝(相変わらず朝早い)議事要旨と資料が。

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/161125.html(議事要旨)
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/161125pdset_1.pdf(資料1)
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/161125pdset_2.pdf(資料2)

・国債発行計画は新規財源債がまだ見えないので

『○平成29年度国債発行計画について、理財局から以下のように説明を行った。』

ということで説明がありますが、来年度に関しては、

『・平成29年度国債発行計画における発行規模について、借換債(除く復興借換債)は、平成29年度概算要求ベースでは104.6兆円となり、平成28年度当初計画額(109.0兆円)より約4.4兆円低い水準となっている。
 新規財源債(建設・特例国債)は、予算編成過程で決まる。
 財投債については、平成28年度の約20兆円から平成29年度の約14兆円へと、償還額が6兆円程度減少する見込みであるが、発行額自体は、財投計画全体の規模等を踏まえて今後決定される予定。

・以上を踏まえると、予算編成次第ではあるが、国債発行総額は平成28年度補正後からはもちろんのこと、平成28年度当初計画からも減少する可能性を示唆。』

つーことで総額はまだ分からんのですが、普通に考えてカレンダーベースの市中消化は減る訳ですな。それに関するPDの意見の部分の前に・・・・・・・・・・


・しらっと「市場の変化」を出して日銀にチクチク

財務省の説明が更に続きまして。

『・日本銀行のQQEの開始直前である平成25年3月末と直近の平成28年6月末の国債の保有者別内訳を比較すると、日本銀行の保有量が増加する一方、中短期債の主たる保有者である銀行等は保有量・シェア共に減少。また、超長期債の主たる保有者である生損保等は、保有量は微増し、シェアは横ばいとなっている。T-Billの保有者を見ると、海外のシェアが増加している。』

資料1の5〜6ページにございますの。要するに日銀が買っていますという図が。

『・生保の国債保有残高をみると、平成24年度までは増加が続いたが、以降は横ばいとなっている。銀行については、主に残存10年以下の残高の減少により、保有残高が減少している。』

資料1の7〜8ページです。

『・日本銀行が9月に導入したイールドカーブ・コントロールでは、短期政策金利をマイナス0.1%、長期金利操作目標として10年物国債金利をゼロ%程度とされている。日銀買入額については、概ね現状程度の保有残高の増加額年間約80兆円をめどとされ、9月末に発表された10月の長期国債の買入れ等の運営方針では、超長期債を中心に買入を減額している。

イールドカーブ・コントロールの導入以降、イールドカーブはほぼ動いていなかったが、足元では、米大統領選後に世界的に金利が上昇している中、円金利にも上昇圧力がかかっており、若干上方にシフトしている。』

日銀の説明だとYCCでイールドカーブがコントロールされておりますがなという話なのだが、財務省はしらっと金利が若干上方シフトしているという説明になっているのがお洒落で、「上方シフトしているが日銀の意図通りに推移」みたいなのを入れてあげて日銀をヨイショするという態度は取らないということですかそうですか(^^)。

でもって更にお洒落なのは、議事要旨の方でこのようにあっさり味で記載されている部分が、

『・流動性供給入札については、カレンダーベース市中発行額が減少する中においても、平成28年度国債発行計画では、総額9.6兆円を前年度から維持しつつ、残存1-5年ゾーンの国債を入札対象に追加し、流動性の維持・向上を図っている。』

資料1の11ページが『市場の流動性の現状』となっていて12ページが『流動性供給入札の変遷』となっておりまして、日銀の買入で市場の流動性が減少する中で流動性供給入札を実施して流動性の維持を図っていますぜという流れになっている辺りにも、そらまあ日銀の政策は政策だからしょうがないとは思っているでしょうけれども、一方で日銀の大本営発表によると「債券市場の流動性はありまぁす!」になるのでお前それは何ぼ何でも大本営発表にも程があるだろうというイヤミ成分が入っているというふうに読み取ってしまいましたが読み過ぎですかねえ(^^)。


・でまあ今回は意見大会なのですがとりあえず5年減額ですかねえ

『・本会合を含め市場関係者の意見も踏まえつつ、予算編成過程と並行してカレンダーベース市中発行額の年限構成や規模を決定することとしている。 国債発行計画を今後考えられる様々な状況に的確に対応できるようなものとするべく、本日の会合では幅広く皆様の御意見を承りたい。』

ということで意見を出すの会なので全部引用しているとキリがないのですが、

『・30年債以外は減額余地がある。

 特に2年債及び5年債は、長い間マイナス金利が続き投資家ニーズにそぐわない状況となっているため、減額余地は大きいと考える。また、40年債は、平成28年度当初において入札回数が6回に増えたことに伴い年間発行額も増加しており、年度の途中においても増額がなされるなど、近年増額のペースが速い。これらの増額分は日銀買入が今後も現在の規模で継続することを前提に消化されており、その意味においては1回の入札当たり5,000億円の発行を継続することは可能ではあるが、投資家の潜在的なニーズが明確には感じられないことを踏まえれば、減額することも検討すべき。

 他方、金利が上昇する過程においては投資家の需要も変化するため、それに備えるため、他年限の減額を行いつつ、流動性供給入札を増額し多様な投資家ニーズに対応することも考えられる。

・借換債が減少する見込みであることや日銀買入額が減額となる可能性が高いことを考えると、発行総額を減額する方向に違和感はない。T-Bill・1年物、2年債、10年債及び20年債は月1,000億円、5年債は月1,000〜2,000億円が減額可能と考える。

 他方、市場の流動性にも配慮すべきであり、流動性供給入札の残存15.5-39年ゾーンと残存5-15.5年ゾーンについては増額してほしい。

・2年債及び5年債を中心に減額余地がある。
 10年債及び20年債についても減額は可能だが、仮に20年債を減額する場合は残存15.5-39年ゾーンを対象とした流動性供給入札の増額を検討してほしい。

・2年債、5年債及び10年債を中心とした減額が望ましく、特に、5年債は最も減額余地が大きい。
 仮に超長期ゾーンを減額する必要があれば、まずは20年債を減額すべき。
 また、市場の流動性が低下してきていることも考えると、カレント債を減額して流動性供給入札を増額するというのが、マーケットには優しいのではないか。』

まあ何となくそうだろうなあという感じなのですが、短期減額というのが多いのがふーんという感じで、先程の短国の保有を見ると確かにまあ国内は日銀しか買わないのでPD的に要らんという話かもしれないのですが、いずれ金融政策が出口に向かう(つーか向かわない世の中が続かれたら困る)という中で2年の辺りはそうは言っても金融政策である程度アンカーできる年限で、5年はそうは行かないという年限だと思うので、2年とか短国ってもっと減らすの???感はややある。

と思ったらこんなのも。

『・発行総額が減少すると思われる中、2年債についてはドル円ベーシス・スワップ取引を介して海外投資家から、30年債及び40年債についてはALMに伴う生保からの需要が強いため、これらの年限については、減額の幅を抑えてほしい。

 5年債、10年債及び20年債については、月1,000〜2,000億円程度の減額余地があると考える。

 物価連動債については、マーケット・メイクのために最低限の発行額は必要であることから、できればこれ以上の減額は避けてほしい。』

違和感がない。

『・発行総額を減らす上では、イールドカーブ上割安となっている5年債及び20年債の減額が妥当と考える。

 40年債については、平成28年度中に1回の入札当たり4,000億円から5,000億円に増額されたが、イールドカーブ上も割安となっており、一時的な増額ならともかく、5,000億円の発行額を維持するだけの投資家層の広がりも見られない。発行額を据え置くのは適当でないと考える。

 他方、既に発行額が少なくなっているT-Bill・1年物については、一部の参加者が入札で大量落札し、それを日銀買入オペにおいて高値で売却するという状況となっており、発行額の更なる減額はこれを助長することになるのではないか。

 T-Bill市場においては、海外投資家がドル円ベーシス・スワップ取引を介して利益を得る動きが主となっているところ、当該ゾーンの金利が低くなり過ぎると、海外投資家が利益を得るため更にドル円ベーシス・スプレッドを広げる要因となるおそれがある。日本の投資家にとっては、これ以上のドル円ベーシス・スプレッドの拡大は望ましくないという観点からも、T-Bill・1年物は減額すべきでない。』

イールドカーブ上安いか高いかとかでホイホイ発行額動かすという理屈はいやそれはどうかという感じはしますし、40年についても買いが広がらないのは金利水準の問題じゃろと思うのでその辺は微妙なのだが、短国に関しては中々良い事を言ってますな。つーかそもそもMB帳尻なのはわかるけれども、MB目標はメドに格下げされたのだからどこかのタイミングで減らせよと。


・市場に関する見解では日銀にイヤミたらたら

『2. 最近の国債市場の状況と今後の見通しについて』から少々。

『・日本銀行のイールドカーブ・コントロールによって、どの水準まで金利が抑えられるのかという点については、市場参加者の関心が高いと思われる。イールドカーブ・コントロールが導入された直後は、10年債の金利をゼロ%±0.1%のレンジで誘導することが自然だと考えていた。その後は、ゼロ%を上限とするデファクトスタンダードが形成されたかとも思っていたが、先週になってその水準を突破したことを考えると、今後はもう少し金利が上がるという見方が増えてくると思う。特に超長期ゾーンについては、日本銀行がどれだけ金利を抑えるつもりなのかわからない中で、今後、レンジの上限を試すような動きになるかもしれない。』

まあそうですな。月末の輪番も注目されるかと思いましたが、足元この2日で盛大にブルフラットして30年は2日で7.5毛も強くなるの巻でしたのでこれだと別に超長期の輪番を増やすことも無い(まあ元々この戻りが無くても増やすのかは疑問符付くのですけど)でしょうが。

『・金融政策の変更や海外の選挙結果によって、足元ではマーケットの値動きが荒くなっている。こうした状況ではマーケット参加者の体力が削がれ、ボラティリティが高まりやすい。予見可能性を欠く国債管理政策の運営等により、マーケットに無用なボラティリティを与えることがないよう、引き続き発行当局とマーケット参加者との緊密な対話が重要だと考えている。』

予見可能性を欠く日銀のオペレーションと言いたいんですねわかります。

『・(前半割愛)国債発行計画についても、今後の環境の変化次第では、見直しが必要になってくるかもしれない。その際、発行体としては、発行コストを安定させる上で、ボラティリティをある程度コントロールすることが必要になってくる。ただ、日本銀行のコントロールの下で、逆にボラティリティが過度に低下してしまうと、市場の流動性を維持することが難しくなり、発行コストの上昇につながりかねない面もある。このように、非常に難しいバランスが求められる状況であり、当社としては、引き続き当局と密にコミュニケーションを取りながら、マーケット・メイクに努めていきたい。』

と、結局日銀のオペがワケワカラン点には砲撃ですなあ。まあ建付け自体が9月の時点としてはちょうどよかったけれども今当てはめるとちと難しいですからねえ。でもって・・・・・・・・・・

『・前回の本会合後、2つの大きな出来事があった。日本銀行によるイールドカーブ・コントロールの導入でボラティリティが急低下したことと、米国大統領選挙の結果を受けて逆にボラティリティが上昇したことである。マーケットのセンチメントが大きく変わった2ヶ月だったと思う。今後の見通しに関しては、利上げ期待が高まっている米国の動向と、日本銀行のオペレーションに注目が集まっている。当局と日本銀行には引き続き、マーケット関係者とのコミュニケーションを図ってもらいたい。』

どう見ても日銀への要望です本当にありがとうございました。



・国債決済T+1ねえ

『3.理財局からの説明事項〔参考配布:資料2〕』ですけどね。

『○理財局から以下の2点について説明・報告を行った。

・1点目は、平成30年度上期からのT+1化に伴う入札タイムテーブルの見直しについてである。

・御承知のとおり、日本証券業協会の「国債の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ」における議論を踏まえて、平成30年度上期を目標に、国債の流通市場において、決済期間の短縮化(T+1化)が実施される予定となっている。これに伴い、3月の本会合でも御説明したとおり、発行市場についても、流通市場に合わせる形で、原則としてT+1化することとしている。』

ということで、まあ毎度申し上げている通りなのですが、平成30年度上期ってちょうど日銀の執行部が交代する時期ですし、大体からして金融財政政策がワークすれば出口だという話になってしかるべき時期なんですが、そういうスケジュール変化をもうちょっと考えたらと言いたいのですが、一旦大型プロジェクトを動かしだすとトマランチ会長の法則が華麗に働いて、この誰得スケジュールという感じですし、大体からしてT+1を導入するときに言われていた決済リスクの問題って世の中変わっているし、国際的に云々って時差的に一番早い日本でT+1やったら海外から見たら事実上T+0なんですがそれはとか、以下いつもと同じ話なので割愛しますが、何もこのマイナス金利政策の今頑張らなくてもとは思うんですけどねえ。


#相変わらずFEDネタが積読になっているのだが整理できていないというこのグダグダなアタクシorzorz


○一応市場備忘メモ

最後にちょっとメモメモ

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1DT23M
Markets | 2016年 11月 28日 15:22 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が反発で引け、長期金利は0.010%に低下

『15:09> 国債先物が反発で引け、長期金利は0.010%に低下

国債先物中心限月12月限は前営業日比23銭高の150円60銭と反発して引けた。朝方を中心に円高・株安が進行し、米大統領選挙後のリスクオン相場に一服感が出たことに加えて、日銀が実施した国債買い入れなどで現物需給が引き締まるとの思惑から、海外勢を含めた短期筋の買いが優勢となり、一時150円65銭と11月18日以来の水準に上昇した。現物市場では、超長期主導で金利が低下。イールドカーブはブルフラット化した。超長期ゾーンは年金勢による月末・月初の年限長期化を先回りした短期筋の買いが観測された。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時同2.5bp低い0.010%、20年債利回りは一時同3bp低い0.445%、30年債利回りは一時同4bp低い0.565%、40年債利回りは一時同4.5bp低い0.670%といずれも11月18日以来の水準に低下した。』(上記URL先より)

ってまあ「日銀が実施した国債買い入れなどで現物需給が引き締まるとの思惑」とか他に書きようがないからこういう書き方になっているのは仕方ないですなあとは思いますが、輪番自体は予定通りに実施しているのにそれで需給が引き締まるの思惑もへったくれも無いとは思いますけどそれは兎も角。

まあ事前に弱い弱いニーズ無い無い言われていた金曜の40年入札が強い所で切られてその後もフラットニングが継続したのと、米国金利様が上昇一服になったということで、超長期ゾーンはそれまで粛々と打たれていたのですが、元々買いたい人というのはわんさか居るので、買いがどこかにあるとなると安心して買いが入るの巻とゆーありがちな展開になりまして、しかも金曜の場合は中期がコケながらの超長期金利低下だったのでうーんこのという感じでしたが昨日は綺麗にブルフラットの巻。

超長期に関しては10年が上がらないとなるとそこから計算してそうそう極端に金利が上がるという訳でもない(ただし物価が上がってきてインフレ期待が上がってくると話は全然別)のでしょうなあという事ですし、まあ別に変な勢いついて上がりでもしない限り超長期の金利って経済物価情勢が改善したら上がって然るべきだし、上がらない方が却って市場の期待が無し無しということなので日銀ションボリでしょうという感じではないでしょうかねえ、よー知らんけど。

まあ何ですな、この前は指値オペ打ち込まれて止まった格好になりましたが、より金融政策見通しが反映する中短期の方(ただし短国が強いことろに張り付いているので短期ゾーンは限界あるけど)が経済物価情勢が改善するなかで金利がホイホイ上昇して、指値で止められるのはカレント3銘柄程度なので、指値で止めてる金利の所だけおかしい状態(当然そういう時は買入がバカスカ入って色々と困ったことになる)とかいうようなのが見えてくるとこの政策をどうやって維持するのかというのが難しくなってくると思います。









2016/11/28

お題「トランプ前のFOMCでの論点が12月にどう整理されるのか」

もう12月ですなあ・・・・・・・・・

○12月利上げはまあ織り込み済みとして問題は今後ですので

ということでしつこく鑑賞するFOMC議事要旨。
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20161102.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
November 1-2, 2016


まずは『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から。

・経済全体に関して

『In their discussion of the economic situation and the outlook, meeting participants agreed that information received over the intermeeting period indicated that the labor market had continued to strengthen and that growth of economic activity had picked up from the modest pace seen in the first half of the year. Job gains had been solid in recent months, although the unemployment rate was little changed. Household spending had been rising moderately, but business fixed investment had remained soft. Inflation had increased somewhat since earlier this year but remained below the Committee's 2 percent longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and in prices of non-energy imports. Market-based measures of inflation compensation had moved up but remained low; most survey-based measures of longer-term inflation expectations had changed little, on balance, in recent months.』

まあ大体この辺は声明文で示されている通り。

『Domestic and global asset markets remained relatively calm over the intermeeting period, and U.S. financial conditions continued to be broadly accommodative.』

大統領選挙前ですからね。

『Participants generally indicated that their economic forecasts had changed little over the intermeeting period.』

でまあ12月FOMCでこの点をどう説明してくるかは当然注目されるでしょうなと思います。まーさすがに12月に利上げするんだろうという認識ですが、その後の利上げパスが問題でこの時点では利上げしろと言っている人の中でもそんなに前のめりのパスをしめしていた訳ではなかった訳で。

『They continued to anticipate that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity would expand at a moderate pace and labor market conditions would strengthen somewhat further.』

『Inflation was expected to rise to 2 percent over the medium term, as the transitory effects of past declines in energy and import prices continued to dissipate and the labor market strengthened further.』

この点に関しても実際にどのくらいになるかは分からないですが、財政を(減税も含めて)ヒャッハーと出すということになって、金融規制の強化が見送られて一部緩和ですぜとなった時に、雇用と物価の改善モメンタムってのに影響でるのか出ないのか(というか出るという風にFOMC当局の皆様が認識するか否かという話ではあると思いますが)というのも12月の所である程度示してくるのか。

『A substantial majority viewed the near-term risks to the economic outlook as roughly balanced, although a few participants judged that significant downside risks remained, citing various factors including the low value of the neutral federal funds rate and its proximity to the effective lower bound, the possibility of weaker-than-expected growth in foreign economies, the continued uncertainty associated with the United Kingdom's exit from the EU, or financial fragilities in some countries.』

多くがリスクはバランスとしているのですが、複数(a few)が指摘しているのは結構多岐に渡るリスクでして、中立金利が低くてかつ名目金利がゼロ制約にあること、というのは問題としては一時的ではない話になりますので、引き続きこの指摘が残っているうちは金利引き上げペースにはブレーキ掛かるんだろうなあとは思います(てかこの指摘が無くなった時は時既にお寿司なのかオーバーキルなのかどっちかでは)。

『Participants agreed that the Committee should continue to closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments.』

まあこれは普通。

『Participants noted that although real GDP growth in the third quarter was appreciably above the slow pace of the first half, it had been boosted in part by transitory factors, including a surge in agricultural exports and a bounceback in inventory investment. Excluding these factors, underlying economic growth had been relatively modest: Growth of consumer spending had slowed from its brisk pace earlier in the year, residential investment had fallen again, and business fixed investment had remained soft. Retailers in a few Districts reported weak to moderate activity, although some contacts thought that holiday sales were likely to peak late in the season.』

足もとの経済に関しては一時的要因で上ブレしているけれどもそんなに高い評価はしていない。

『Real economic activity was expected to advance at a moderate pace in coming quarters, primarily reflecting solid growth in consumer spending, consistent with ongoing employment gains, increases in household wealth, and low interest rates.』

とか言っているので、まあジャンジャン金利を上げるという雰囲気も漂わない。


・先行きの経済に関して建設関連の話に妙にスペースを割く

『Participants continued to expect economic activity in the coming quarters to be supported by a pickup in business investment. Recent increases in oil and gas drilling activity in response to higher energy prices were seen as a positive development for the investment outlook; however, a few participants reported that uncertainty about prospects for government policy, shorter investment time horizons for businesses, or the potential for advances in technology to disrupt existing business models were likely weighing on capital spending plans. A few participants noted weakness in nonresidential construction. District reports on residential construction activity were mixed. One participant reported generally strong conditions in the District's housing markets but also cited various factors that were restraining residential construction in some locales, including constraints on builder financing, limitations on the supply of buildable lots, and shortages of skilled labor.』

これ途中で割り難かったのでパラグラフそのまま引用しちゃいましたが、先行きの経済に関する見通しのお話で建設関連の話を結構使っているのがほほーという感じでして、まあこの辺りの話とかもホイホイと金利を上げるような雰囲気には見えないのですな。ただまあこれがトランプ前でして、彼ら彼女らにも想定外のトランプ大統領爆誕でこの辺りがどのように変わっているのかが気になります。今の所まだトランプ爆誕でどうのこうのというのは出て来ない(当たり前だが)のでニャンとも。

『In their discussion of business activity in their Districts, participants provided mixed reports on manufacturing, with a few areas that had been adversely affected by the downturn in energy prices reporting a modest pickup in output. In the agricultural sector, low crop prices were said to continue to weigh on farm income and farm spending.』

この辺はさよですかという感じ。

『Participants noted that economic growth in many foreign economies remained subdued, and that inflation rates abroad generally were still quite low.』


・海外経済に関しての扱いが軽くなっている

ここから海外の話。

『Some participants observed that important international downside risks remained, including constraints on monetary policies in the low interest rate environments of some countries; investors' concerns about developments potentially affecting profitability in the European banking sector; the possible consequences of upcoming negotiations and eventual terms of the United Kingdom's exit from the EU; potential deleterious effects from rapid credit growth in China; and the potential for further dollar appreciation, which could restrain U.S. inflation for a considerable time.』

幾つかのテーマがある中で米国金融政策的には最後の「potential for further dollar appreciation, which could restrain U.S. inflation for a considerable time」について盛大にドル高が進んでいる12月FOMCの時点でこれをどう評価するのかというのもこれまた気になる所です。

でまあ米国金融政策とは関係ないですが、「low interest rate environments of some countries; investors' concerns about developments potentially affecting profitability in the European banking sector」とか中々味わいがあるのですが、まあ扱いはこの程度となっていまして(この次は労働市場)、一頃は海外経済の影響がどうのこうのとかものすごい勢いでここの中で議論があったのに対して、今回はあっさり味になっているなあという印象で、国内に対する自信みたいなのはあるんでしょうなあとは思う。


・労働市場の評価は労働参加率をどう評価するのかと賃金動向の今後

『Participants generally agreed that labor market conditions had continued to improve over the intermeeting period. Reports from some Districts pointed to a tightening in labor markets, evidenced by shortages of qualified workers in some occupations, increases in overtime hours, or a pickup in wage inflation. In several of these Districts, business contacts had undertaken workforce development and worker training to address a shortage of labor with the necessary skills.』

『Many participants commented on the rise in the labor force participation rate since late 2015. A few of them noted that the increase had largely reflected a diminution in the flow of individuals leaving the workforce rather than an increase of new entrants into the labor force and had been more prevalent among workers with relatively less education. Participants expressed uncertainty about how long the participation rate could be expected to continue rising, particularly in light of the downward structural trend in this series.』

今度は労働参加率の話で、2015年終わり辺りから労働参加率が上昇している件をどう評価するのかというお話。

『On the one hand, the participation rate for prime-age males remained significantly below its level before the financial crisis, suggesting that it could rise further over time. In addition, there was some uncertainty around estimates of the longer-run trend rate of labor force participation and it could be higher than previously thought, reflecting, for example, a shift toward later retirement. On the other hand, from a business cycle perspective, the increase in the participation rate in recent months was consistent with a tightening labor market and an economy nearing full employment; furthermore, it was not clear that output growth above the economy's potential growth rate would succeed in drawing new entrants permanently into the labor force.』

労働参加率が上がってきている事について、その要因についてと今後についての議論がああだこうだとある訳ですが、どうもそこまで完全雇用ヒャッハーというようなトーンではなくて、労働参加率の上昇をもって労働市場に一段の強気になるにはまだ決め手を欠いている感があります。

『Overall, while some participants expressed the view that the economy was close to or at full employment, several others judged that appreciable slack could remain in the labor market. Some participants characterized wage pressures as only moderate, although one noted that wage growth was similar to its pace at the peak of the previous economic expansion.』

従っての労働参加率の話が現状の労働市場の評価を完全雇用と見なすかどうかという話になると、複数名(some)は完全雇用に近いという主張をする一方でその他複数(several others)はスラックがまだ残っているとしており、さっきの所でもありましたが、「Some participants characterized wage pressures as only moderate」という話であって、労働市場に関しては参加率の推移と賃金の推移を注目しているのでしょうなあというのは把握した。


・物価に関してだが「物価上昇期待が高まって金利上昇ドル高の場合」について論じている辺りが何とも

でもって物価の話。

『Readings on headline and core PCE price inflation had come in somewhat higher than expected in recent months.』

somewhat higher来ました。

『Participants generally regarded this as a positive development, consistent with headline inflation rising over the medium term to the Committee's objective of 2 percent. A few participants observed that it was difficult to judge how much of the uptick in core PCE price inflation reflected transitory factors, while a couple of others saw the incoming data as suggesting that inflation could move up to the Committee's objective more rapidly than previously expected.』

ここの話は良いのですがこの次の部分が結構注目。

『Participants discussed possible policy implications of the risks surrounding the outlook for inflation, including the possibility that achieving the Committee's inflation objective sooner than previously anticipated could cause a revision in market expectations of the path for policy rates and a sharp rise in longer-term interest rates, or the possibility that a further appreciation of the dollar stemming from developments abroad could renew disinflationary pressures and postpone the need for policy firming.』

お、おぅ・・・・・・・・・・

ということで、物価が2%行くとみる市場のパスが早まる→金利が上がってドルが上がる→経済にディスインフレ圧力を加える→マズーなので利上げパスを遅らせる必要が発生する、という話に関して議論したとな。(ただし何度も申しあげるようにトランプ前な)

『Some participants regarded the uptick in market-based measures of inflation compensation over the intermeeting period as a welcome suggestion of further progress toward the Committee's inflation goal.』

アタクシはそう考えるのが普通だと思う。

『However, several cautioned that these measures remained low or that the measures still appeared to embed a significant weight on undesirably low inflation outcomes. The median expectation for inflation over the next 5 to 10 years from the Michigan survey edged down in October to a new historical low, although it was noted that this drop could be explained by a reduction in the number of respondents who had previously expected relatively high inflation outcomes.』

何ちゅうかね、物価が上がらなくて困っているのに物価が上がって期待に変化生じて市場が動いたら困るっていうのもちょっとビビリ過ぎじゃないのとは思うのですが、確かにまあトランプ前の話とトランプ後の話は変わっている(ように見えるだけで実際に始まったら失望ショボーンかもしれないけど)とは思うので、この辺に関しても現実に金利は上がってドルは上がったのに対してどういう説明の帳尻をつけてくるのかが楽しみです。

『Overall, participants judged that survey-based measures of inflation expectations had been fairly stable in recent months.』

以下は先日ネタにした部分になりますです。まあどうせ12月は利上げしてくるようにも思えますが、この辺りで触れている論点に関して(議事要旨が出るのは後だからそれではちょっとなので会見での質疑応答などで)どのような形で考え方が整理されているのかを見たいです。


○備忘メモメモ

・40年入札ェ・・・・・・・・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20161125.htm

6.応募額1兆4,881億円
7.募入決定額4,997億円
8.応募者利回り(募入最高利回り)0.725%
9.発行価格 額面金額100円につき88円90銭
10.募入最高利回りにおける案分比率 26.5037%

途中まではニーズがありませんですねえという前評判で前場引けの所でもカーブが立って入札を迎えるというパターンでしたが前場引けから3毛だか位強い所で切られるという中々のプレイが登場致しまして引けてみたら超長期40年が前日比5毛強で30年が3.5毛強で20年が1.5毛強とか中々性格の悪い入札。

でまあそちらの方は超長期いったん止まって良かった(かどうか知らんが)ですね(棒読み)という話なのですが、超長期強い側から今度は2年が2毛甘で5年が1毛甘とかになるの(10年は0.5甘)って何なんですかねえという感じで、指値オペ入れたレートまではまだ5年で4.5毛、2年で5.5毛あるから遠いですけれども、オペ自体はその2毛強が引けの時にやっているというのが何とも味わいのある状況になって参りましたな。

なお、短国の引けは2年が滑ろうとも安定の▲20台後半から▲30というこの強さ。



・日銀的CPI

http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpipre.pdf

総合(除く生鮮食品・エネルギー): 9月0.2→10月0.3
刈込平均値: 9月-0.1→10月0.0
上昇品目比率−下落品目比率: 9月28.1→10月25.6

品目数に残念感が漂いますがまだ10月の数値ですから!!!!!と様子見ができるようになったのは日銀ウハウハの展開ですな。





2016/11/25

お題「市場世間話とFOMCネタ続きちょっとだけ」

しかしまあドル円進みますのう。日銀まさかの天佑。

なお、何度も申しあげておりますようにYCCの建付けは当分状況が動かないことを前提に長期的に粘れるもので、環境が動けばその限りではないのですが、そんな事よりも経済物価情勢が好転している方が重要ですからね。

○40年入札ですなあ&安定の短国

・久々に警戒感漂うという事らしい40年入札

ということで今日は40年国債入札でこいつを通過すると2年の後は12月の入札になりますけれども、大体毎度40年入札って「まあ流れれば買いも入るしいざとなったら日銀も買うし入札前に調整したら絶好の押し目ですぜヒャッハー」という事前のトークが主流になるのですが、今回は円安株高アタックに加えて、中期ゾーンに指値オペ入ってそっちが止まった(というほど止まっても居ないが)ために売りゾーンが超長期になってしまった感があって、ズルズルと金利が上がっているというこの状況ということで、珍しくも事前トークが「警戒」のオンパレードという素敵な展開。

まあ得てしてこういう時は警戒した挙句に止まるものなのですが、それを崩すパターンもありまして、当日になって「やっぱ大丈夫じゃん」という雰囲気になってニヨニヨしながら安易に入札が確りしてその後振り向けばだれも居なくてあばばばばーという捕まり入札というのがありまして、後は中々見れないレアケースとしては、警戒した挙句に入札したらやっぱりダメでうっかり入れた止めビットまで全部入った挙句に後場から別のゾーンに売りをかませるというのがありますな。ちなみに記憶に新しい所(全然新しくないが)だと2003年上期の金利上昇の時って10年入札が凄い流れながらもやっと止まったと思ったらいきなり中期に売りが出て死亡とか大変にダイナミックな事が時々あって、そういうのだけは無駄に記憶に残っております。

ただまあそこまであばばばばーな状況でもないでしょうし、大体からして日銀がアホほど国債買っていて投げまくるほど売るものが無いのではという市場ではあって、その一方で流動性が無くなった為にマーケットでのポジション変化の吸収力が目に見えて落ちているので、その辺加味するとまあ動くときは動くんでしょうかねえ、よー知らんけど。


でまあこの前も書いたのでしつこい訳ですが、先般の中期の指値オペってのも確かに手前のプチマーライオン相場が本格的なゲロゲロマーライオン相場に変化する可能性は消したのですけれども、あまりにも「ナンジャソラ」なタイミングで、かつ「何で中短期」な所に加えて「打つのは空包かよ」というのもありまして、色々な意味で市場の想定していたオペと違ってたのよ。むしろ10年金利が10bp超えて金利が上がってきたときに「10年10bpで無制限オペじゃどうじゃー!!!」と弁慶仁王立ちというのが当初のイメージだったと思う(アタクシが思っているだけだったらすいません)のでして、何か妙な所から忍者の手裏剣が飛んできたという風情だったのよね。

でまあ手裏剣は手裏剣でも良いのですが、そうやって意表をついてきますと「どういう基準でどういうオペをやってくるのか」というのが分からんという状態になってしまう訳でして、一方で日銀はYCCということで金利をコントロールしようという話をしている訳で、ここが今後ますます話をややこしくするなあと思うの。

つまりですね、まあ「短期以外も含めて金利をコントロールする」という政策を実施していくのは政策だからまあ仕方ないにしましても、そのコントロールする為に用意している道具立てが結構な飛び道具になっている、という状態で、しかもその飛び道具がどのように飛んでくるのかという基準がさっぱり分からん次第で、その分からんというのは第1に望ましいイールドカーブの水準がどこなのかがさっぱり分からん(そもそも9月に示したイールドカーブ自体が追加利下げを織り込んでいたものなので、そこを基準にしていること自体が実はおかしかったという状態になっているし、追加利下げを前提にしたカーブが正しい訳もない)、第2にそのカーブ水準からの逸脱(まあ10年だけは0%だが)をどのように調整するのかが分からん、と来ているので、まあ後者はまだ良いとしても、前者がさっぱり分からんし、計算の仕様もないというのが困る訳ですよ。

でまあ何で困るかというと、どこでどういうタマが飛んでくるのか分からんのにポジション取れない訳でして、そうなるとただでなくさえポジション取り難いご時世の中で更にマーケットのリスク吸収力が無くなってしまうよ、といういつもの話をしつこく申し上げるのでありました。


しかしまあ何ですな、中期固定金利オペを打ちこむ前日の引けと昨日の引けを比較しますと、

昨日
2年:▲0.165%(0.0)
5年:▲0.095%(0.0)
10年:0.030%(+0.5)
20年:0.490%(+0.5)
30年:0.640%(+1.5)
40年:0.765%(+2.0)

11/16引け
2年:▲0.110%(+7.5)
5年:▲0.060%(+6.0)
10年:0.015%(+1.5)
20年:0.445%(+1.0)
30年:0.575%(+0.5)
40年:0.680%(+0.5)

ということですが、ついでに調子にのって9/16の引けを出しますと、

9/16引け
2年:▲0.270%
5年:▲0.205%
10年:▲0.040%
20年:0.450%
30年:0.555%
40年:0.640%

となっているので、固定オペの前は手前だけ大修整していたのですが、直近ではしらっと全般的に調整した感じで、カーブの方は9/16の時と似たような感じ(ただし10bp位上方シフト)なので、日銀の9月MPMで示したカーブ「形状」がそれでよいというのなら良いのでしょうかねえ、何が何だかさっぱり分かりませんけれども。




・短国は安定の▲20bp台後半

うむ。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20161124.htm

(3)募入最低価格 100円07銭4厘0毛(募入最高利回り)(-0.2754%)
(4)募入最低価格における案分比率 21.3435%
(5)募入平均価格 100円07銭7厘2毛(募入平均利回り )(-0.2873%)

ということですが、前週が▲28.91/▲27.16、その前が▲27.65/▲26.61となっていて、こちらは長期金利がどうなっていようとも安定のクオリティを誇っているのですが、そもそも日銀の短国買入がやたら多いのでとにかくどうしようもないというマーケットになっていて、海外のベーシス云々以前に外貨準備的なニーズもありますし、そこに来て日銀がバカスカ買っていたらまったくもってどうしようもない。

本来MBの目標ってのは無くなったのですから、短国金利が跳ねない範囲内において短国買入をもうちょっと減らせよと思うのですが、とりあえず例の「80兆円」がメドとして残っているので、そうなるとクソ真面目なオペ部隊としては大体この80兆円ペースの帳尻を取りに行くと思うので、いつまでたっても短国買入が減らないというこの事実。

本来的には短国買入減らした方が「短期▲10bp」の金利に近づくので、そうした方がエエンチャウノとは思ったりもしますが、そうなった場合の問題として「短国金利が▲10bpで10年金利が0bp」というイールドカーブってのが如何にもバランスがおかしくなるので、短国に引っ張られてJGBの足もとが▲10bpよりも低い水準にいる方がカーブのバランスのすわりがマシになるのですな。

まーそんなことよりも単純に80兆円意識するなかで短国買入をホイホイ減らしてMBのペースを落とすと置物師匠とかジンバブエ先生とかが怒り出すからということなんでしょうけど・・・・・・・・


なお、このやたら残高の多い短国買入ですが、一つだけ効用があるとすれば、固定金利オペで国債をバカスカ打ち込まれた際に短国買入をしらっと減らせばそんなにMBペースが大加速することが無い(ただし43兆円が限度)というのはあるのですけれども、おそらく金利が上昇するようなときに短国買入を長国買入の見合いで減らしたらそれはそれで短期の金利が跳ねそうな気もしますし(実際にそんな事になってみないと何とも言えませんが)、何かこう色々と見た目は回りそうだけれども本当に動き出すと大丈夫か的な枠組みになっているなあと思うのでありました。


○FOMC議事要旨ネタ続きを少々

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20161102.htm

Long-Run Monetary Policy Implementation Frameworkのところをば

『Committee participants continued their discussion of potential long-run frameworks for monetary policy implementation, a topic last discussed at the July 2016 FOMC meeting.』

先般もこれやっていましたが・・・・・・・・・・・・・

『The staff provided briefings that summarized considerations regarding potential choices of policy rates, operating regimes, and balance sheet policies and highlighted tradeoffs associated with these choices.』

ほうほうそれでそれで?

『The staff noted that if the long-run implementation framework was such that the supply of reserve balances was quite abundant, then operational tools that help establish a floor under short-term interest rates, such as the payment of interest on reserves and the overnight reverse repurchase agreement (ON RRP) facility, would remain important elements of the operating regime.』

リザーブの量で調整ってのはさすがに。まあIOERなりRRPで対応するんでしょ。

『Reserve requirements would probably not be necessary in this case, and the Federal Reserve could likely maintain control of short-term interest rates without needing to conduct frequent open market operations to adjust the supply of reserves.』

いやあのそれは。確かにエクセスリザーブが過大にある状況を永遠に続けるならリザーブ云々関係ないですけれども、リザーブって金融調節技術的に言えば、資金繰りバッファーを一定量持たせることによって、短期金融市場の突発的な資金ショートによる事故みたいな金利変化を抑制する機能があるんだが何でいらんとかいう話にまで飛ぶの????

『Such an approach could also be effective with an appreciably smaller balance sheet and supply of reserves than at present.』

そらそうだ。

『In contrast, if in the long run the supply of reserves was quite small, such as was the situation before the financial crisis, either reserve requirements or voluntary reserve targets would probably be needed to help stabilize the demand for reserves and increase its predictability.』

あーびっくりした。さっきアタクシが申し上げた件ですこれは。

『The Federal Reserve would likely need to conduct frequent open market operations in this case to maintain adequate control of short-term interest rates, and banks would probably trade actively in the federal funds market. Some short-term interest rates could display greater volatility under this approach than one in which the level of reserve balances was relatively high, and operational tools to limit both downward and upward pressure on such rates would probably be needed.』

『Regardless of the level of reserves, the policy rate in either of these cases could be an unsecured overnight market rate or an interest rate administered by the Federal Reserve. The FOMC might instead target an overnight Treasury repurchase agreement rate and use standing facilities to keep repurchase agreement rates close to the target level.』

FF金利はいずれにしても市場が正常化してきてリザーブが減って来たら振れるので、誘導目標FFというのではなくて、たとえば翌日物RRPの金利を示してそれを短期金利のメルクマールにするとかそういう構想はあるようですな。つーか昔ってFF年がら年中ぶれぶれだったけど誰も気にして無かったじゃんと思うのでちょっと隔世の感が。

『The staff noted the importance of having effective arrangements to provide liquidity in times of stress. Stigma associated with borrowing from the discount window has likely prevented it from effectively enhancing control of short-term interest rates and improving liquidity conditions in various situations. Possible options to provide appropriate liquidity when necessary while mitigating such stigma were mentioned.』

リーマンショックの時にディスカウントウィンドウに駆け込むとあそこは危ないとか言われるので我慢して駆け込まなかったので全然伝家の宝刀が使わずの宝刀になり、結局各種オペを開発して打ち込む結果になったという事案に対する対策も考えないと、という話ですな。これは正しいのだが常設ファシリティ化するかどうかというのも中々難しい問題(ECBは昔から常設ファシリティにしている、日本はあるけど基本あまり使わないような建付けだったりする)。

『The staff discussed the possibility that changes in the size and composition of the Federal Reserve's balance sheet, including the duration of its securities holdings, could be used to help achieve policymakers' macroeconomic goals when short-term interest rates had declined to their effective lower bound--and conceivably when short-term interest rates were above that bound. The staff also described the possibility of using balance sheet policies to promote financial stability.』

これはどっちの方向で保有債券のデュレーション調整をするかで全然違う話になるのですが、まあ話としては面白いけれどもやらない方が良いと思う。

『In the discussion that followed the staff presentations, policymakers agreed that decisions regarding the long-run implementation framework were not necessary at this time.』

結局これか(^^)。

『They indicated that the current framework was working well and that, with the supply of reserve balances expected to remain large for a while, the present approach to policy implementation would likely remain appropriate for some time.』

それは言われんでもわかっとるわ。

『Moreover, policymakers expected to benefit from accruing additional information before making judgments about a future implementation framework. For example, they acknowledged that recent changes in financial regulations were likely to continue to be an important factor in the ongoing evolution of financial markets.』

ふむ。

『Policymakers also underscored the importance of taking account of the possibility that neutral short-term interest rates could remain quite low. For these reasons, policymakers emphasized that their current views regarding the long-run policy implementation framework were preliminary and they expected that further deliberations would be appropriate before decisions were made.』

何で中立金利が低いからというのが理由になるのか謎だが、まあ要は低金利継続していてしばらくは大問題にはならないでしょうからニヨニヨと今の政策をやっていって、バランスシートにはしばらく手を付けなくてもヘーキヘーキという話をしているようです。

『Meeting participants commented on the advantages of using an approach to policy implementation in which active management of the supply of reserves would not be required. Such an approach could be compatible with a balance sheet that was much smaller than at present, though likely at least somewhat larger than in the years before the financial crisis, reflecting trend growth of balance sheet items such as currency as well as a larger supply of reserves.』

『In addition, such an approach was seen as likely to be relatively simple and efficient to administer, relatively straightforward to communicate, and effective in enabling interest rate control across a wide range of circumstances.』

『A number of policymakers stated that they continued to view expansion of the balance sheet through large-scale asset purchases as an important tool to provide macroeconomic stimulus in situations in which short-term interest rates were at their effective lower bound.』

『Most participants did not indicate support for using the balance sheet as an active tool in other situations or for other purposes, although a few expressed support for undertaking further study of this possibility.』

『Policymakers noted the merits of relying on a policy rate that would be robust to shifts in financial market structure, practices, and regulations as well as to changes in premiums for credit risk. Other important considerations for the choice of policy rate included the volatility of the rate, the breadth of the set of Federal Reserve counterparties that would be required to ensure adequate control of short-term interest rates, and the role of the policy rate in FOMC communications.』

つーことで、今後バランスシートどうしていくか、という中の話って、基本的にはバランスシートは維持したあとは自然体でやって行くっぽいのですが、何か能動的にいじってくるという可能性は色々と検討しているようで、市場状況や規制、金融安定の問題など色々と考えながらそのような話が出てきたら議事要旨のこの辺の部分とか、何らかの形でだいぶ前に予告はあるんでしょうなあ、とは思いますが、意外に色々検討している感が。

『At the end of the discussion, the Chair reiterated that additional experience with the Federal Reserve's current monetary policy implementation framework would help inform policymakers' future deliberation of issues related to a long-run framework and that decisions regarding these issues would not be required for some time. The Chair also noted that the Federal Reserve would proceed cautiously and would communicate any intended changes to its approach to implementing monetary policy well in advance of making the changes.』

ということで、いますぐの話ではないようですが、出口でバランスシートをどうするのか(基本の政策は金利だけど)の話をしていますよ、ということをこうやってコミュニケーションしているという事ですな。





2016/11/24

お題「政井さんの会見は超越慎重運転/寝起きでFOMC議事要旨をちょっとだけ」

ドル高ェ・・・・・・・・・・・・で金利に上昇圧力掛かると今の「短期▲10bp、10年0bpで、9月半ば時点(と思われる)のイールドカーブが適切」というオペレーションの枠組みがきちんと回せるのかが益々ややこしくなっていますな。


○政井審議委員会見は想定問答通りで残念な件について

まあだいたいヘッドラインが碌に出なかったのでお察しですけど。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2016/kk1611c.pdf

・最初の質疑はまあかなりどうでも良いのですが最後の所だけ

『(問) 本日の金融経済懇談会では、地元の行政や経済界からどのような意見や要望が出て、それをどのように受け止められたかについて教えて頂ければと思います。』

という質問が最初にあって(これはまあお約束)、そこの答えは基本的に地元の話をするのですが、答えの最後の所にちょっとだけふーんというのが。

『(答)(前半というか殆ど割愛)こうした状況のもと、金融政策への要望としては、金融緩和の継続とともに、金融機能の影響への目配りを求める声が聞かれました。また、海外経済を巡る不確実性が高いため、為替の安定に配慮してほしいとの声も聞かれました。』

おう為替市場ドル高進行して市場が安定してねえじゃんどうするんだよ、というのは冗談ですけれども、この場合の「為替の安定」というのは日銀的には円高がホイホイ進行するという事であります。まあそうは言っても円安もホイホイ進まれるとある程度を超えると問題になるんでしょうがまあこの辺ではという事でしょう。


・何という循環回答

で、今回の質疑なのですが8ページある中で4ページのほぼ最後の方まで無難なネタ&地元経済に絡めた質疑応答を行っているのでネタにならないという中々アタクシ泣かせな会見でございまして、4ページ目の最後の所でやっとこういう質問になるのですが・・・・・・・・・・・

『(問) 本日の懇談会における政井審議委員の挨拶の中で、日銀自身が無用に市場のボラティリティを高めることのないよう金融政策を運営していくことが重要である、という発言がありました。これは、枠組み変更前の政策運営において、追加緩和への期待が為替市場のボラティリティを高めてきたという認識なのでしょうか。また、これは市場とコミュニケーションしていくことが重要という趣旨なのでしょうか。』

とまあやっと質問らしいのが飛んで参りましたが・・・・・・・・・・・・・

『(答) 本日の講演の中では、日本銀行が無用に市場のボラティリティを高めることのないよう、金融政策を運営していくことも重要ということを申し上げました。これは、金融政策というものは、その意図を十分に理解してもらえるように丁寧な対話を続けていくことが重要である、ということを申し上げたかったということです。』

・・・・・( ゚д゚)

うーんこの答えになっていない答えという感じですが、この辺りって別に本人の見解みたいなのがジャンジャン出てきても良い(自分の就任前の話だし)んじゃネーノと思う所なのですけれども、まー慎重というよりは質問に対して質問をそのまま返しているという回答になっている訳で、これをどう解釈(ただの妄想)するかという風に考えますと、とりあえず猫をかぶっている説と、講演の「無用に市場のボラティリティを高めることのないよう」というのが執行部の意向を思いっきり踏まえている説の解釈ができるかなあとか思う次第で、後者の場合だと実は日銀執行部的には従来の路線はアカンという事で、黒田日銀バズーカサプライズ打ちまくり路線は(明示的には言ってないけど)放棄した、という事に繋がりますなあと思いましたがどうでしょうかね。

#サプライズは止まりましたがオペの打ち方でまた別のサプライズを出しているのが何とも


・指値オペについての質問があるのだが

『(問) 2 点お伺いします。(途中割愛)もう 1 点ですが、先般、金利上昇を抑制するために初めて指値オペを実施されましたが、金利上昇を抑制する手段としては国債買入れの増額という通常の手段もあると思いますが、なぜ金利上昇抑制手段として指値オペという手法をとられたのか、今後も金利上昇の抑制のためには通常の国債買入れ増額よりも指値オペという手段を優先してとられていく考えなのか、お伺いしたいと思います。』

『(答)(前半割愛)それから 2 点目の指値オペについてどう考えるかということですが、金融緩和の強化のために、先般、新しい枠組みとして、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入しました。その際、長短金利操作を円滑に行うために、新しいオペレーション手段として指値オペを導入しました。こうした措置のもとで、今後も、金利上昇時には、足許の金融市場の動向をみつつ、どのような時に行っていくのがよいのか、考えていきたいと思っています。 』

か、回答になっていない・・・・・・・・・・・・でもってもうちょっと後に質問が。

『(問) 先ほどの指値オペの関連ですが、先日、初めて指値オペが実施されて、その日は金利が下がりましたが、その効果について、どのようにみられましたでしょうか。』

『(答) まず指値オペの導入の理由としては、先ほど申し上げましたとおり、金融緩和の強化のために、先般、新しい枠組み――「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」――を導入した折に、この長短金利操作を円滑に行うために、新たなオペレーション手段を整えました。』

まるで回答になっていないのですが、こうやって「そもそも論」をおっぱじめるのは煙に巻くときの常套手段。

『そもそも、イールドカーブ・コントロールのもとでは、「金融市場調節方針」に沿ってイールドカーブが形成されるように、国債買入れを実施しているわけで、まさに、先般のように金利が大幅に上昇した場合などは、必要に応じて、指定する利回りによる国債買入れを実施する用意があったわけですので、それが行われたということだと思います。』

うーんこの。金融市場局のコメントはどちらかと言うと「金利上昇のスピードが」という説明になっていたのですが、黒田総裁の国会答弁とか、政井さんのこの説明だと「水準」の話をしているように読めてしまうのですが、この辺りは正直どちらなのか(別に両方なら両方でも良いのだが)もう少し明確に説明をした方が良いと思います。

と申しますのは、「水準」というのであれば先般の2年▲9bp、5年▲4bpが何かの拍子にまた来た時にどういうオペをするのかという姿勢を問われることになりますし、「スピード」というのであれば経済物価情勢を踏まえて中期の金利が自然に上昇するのは容認しますよという話になりますし(それで10年だけコントロールというのも無理がある話なのですがその点はさておき)、出てくる説明があいまいだとコミュニケーション上宜しくないですし、それならもうそういう説明あまりしないで、単に「こういう状況の時には発動します」という形で、その状況として「金利水準」とか「スピード」とかそういう幾つかの条件を出しておいて、じゃあ今回何でやったかという具体的なオペレーションの背景については「以前説明した状況になったので発動します、ああそれから何にヒットしたのかはみなさんのご想像にお任せします」とした方が良いのではないかと。こうやって日銀の中から別の説明が出てくるのが一番イクナイ。

『どのような時に指値オペを行うかというのは、執行部が適切に判断して行っていくものですが、私自身も、当然、足許の金融市場の動向はみているということです。 』

この場合の執行部というのは事務方の事ですが、金融市場局なのか企画局なのかは正直分からん。


なお、全然答えになっていないので更に質問がががががが。

『(問) 指値オペは効果的な手法だとお考えでしょうか。』

まあこの質問も何だかなあという感じ。

『(答) 効果的かどうかというところで言うと、指値オペを実施した後、実際、金利の上昇が幾分弱められたということもありますし、国債マーケットに円滑にオペの意図が伝わったという印象を持っておりますので、もちろん、新しい枠組みを始めてまだ 2 か月程度ですし、指値オペ自体も、まだ 1 度しか実行されていないわけですから、これで万事円滑だと考えるのはまだ尚早だと思いますが、とりあえずのところ、第 1 回のところは、うまくマーケットに受け入れられたのではないかと考えています。』

まあこれはこんな感じだと思いますが、「国債マーケットに円滑にオペの意図が伝わった」かと言えば、それは全然そんな感じしてなくて、2年と5年にも誘導目標が出来たぜヒャッハーとか言っている人もいますし、指値オペを実施したのは10年の金利も見ているはずだからそろそろ10年の輪番増えるんじゃネーノとか言ってる人もますし、解釈はバラバラだと思いますぜ。


・この通常の質問に対する慎重な答えに某記者を感じたぞな

まあこぼれ話ネタ的なものですけどね。

『(問) 挨拶要旨の中で、日銀として、新しいフレームワークでは、長期金利を直接目標とすることから、経済・物価・金融情勢に応じて柔軟かつ効果的な金融政策運営が可能になったと書かれていますが、その前のところには、2%のオーバーシュート型コミットメントについて、消費者物価指数の実績が2%を安定的に超えるまでということですが、今回のフレームワークでは、物価上昇が急であった場合には実際の物価が 2%にいく前でも 10 年金利を引き上げることが可能と思いますが、この点について、どのように考えているか教えて頂きたいと思います。』

コミットしているのはMBの拡大であって金利水準にはコミットしていないのですから別に2%こう得るまで延々と10年金利を0%にする訳ではないのですけれども・・・・・・・・・

『(答) ご質問の内容としては、2%になる前に金利を操作する云々ということかと思います。2%になる前に物価が急上昇するといっても、それがどういう状況でそういった物価上昇になっているのかというバックグラウンドは様々であるように思います。従って、この時点で、何か決めつけたことを申し上げるというのは適切ではないのではないか、と思っておりまして、やはり、その時その時の経済金融情勢をみながら、また、金融情勢の中には、当然、金融仲介機能等を含めて、様々なことを考えたうえで、判断していくものだと考えています。』

何でこんなに慎重な答えをしてるんだと思って最初物凄い勢いで?????だったのですけれども、良く良く考えてみたら(金懇の会見は特にネットに出たりしないので想像するしかないのですが)この質問をしているのが例のあのお方で、うっかり「未来永劫0%にすることは別にコミットしていない」とでも答えようなら「誘導目標金利の引き上げもあり得る=政井審議委員」とかいうようなイカサマヘッドラインが流れることを懸念して物凄い超安全運転な答えをしたのではないか、と思い直して思いっきり納得してしまいました。

ということで、言葉尻捉えてイカサマヘッドラインを流すような情報ベンダーがいると説明を丁寧にできなくなってしまうという問題点が生じますので、まあベンダー各位におかれましてはアクセス狙いで変な釣りヘッドライン記事作るんじゃねえと申し上げたい所です。


○FOMC議事要旨(は寝起きというのはさすがに)

さて・・・・・・・・
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20161102.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20161102.pdf

まあ毎度のインスタント読みなので、とりあえ『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツのパラグラフから逆順に読んでいくという相変わらずの方法で参ります。

・利上げに関するお話

最後のパラグラフとその前のが利上げに関するお話なので、最後から1個前のパラグラフから引用しますね。

『Against the backdrop of their views of the economic outlook, participants discussed whether the available information warranted taking another step to reduce policy accommodation at this meeting.』

今回利上げするかどうか、というのがここのお話。

『Based on the relatively limited information received since the September FOMC meeting, participants generally agreed that the case for increasing the target range for the federal funds rate had continued to strengthen.』

9月会合から出てきた新しい情報が少ないので、という話になっておりまして、大統領選挙がどうのこうのというのは大人の事情で出てきません。

『Participants saw recent information as indicating that labor market conditions had improved further and considered the firming in inflation and inflation compensation to be positive developments, consistent with continued progress toward the Committee's 2 percent inflation objective.』

とは言え改善しているというお話。

『However, a number of participants expressed the view that some modest slack remained in the labor market or noted that readings on inflation compensation and inflation expectations remained low. Moreover, some participants suggested that current conditions did not point to an immediate need to tighten policy or that some further evidence of continued progress toward the Committee's objectives would provide greater support for policy firming.』

何人か(a number of) の参加者は労働市場には依然としてスラックがあるとの認識ですし、複数(some)の参加者は別に今回やらんでも良いんじゃないのという事で更にエビデンスが出てからと。

でもって次のパラグラフ。

『Most participants expressed a view that it could well become appropriate to raise the target range for the federal funds rate relatively soon, so long as incoming data provided some further evidence of continued progress toward the Committee's objectives.』

「材料がもうちょっと揃えば利上げのタイミングだぜ」と来て、しかもその後の経過がご案内の通りですからそら12月利上げヒャッハーという話になるわな。

『Some participants noted that recent Committee communications were consistent with an increase in the target range for the federal funds rate in the near term or argued that to preserve credibility, such an increase should occur at the next meeting.』

そろそろ利上げしないとやるやる詐欺呼ばわりされますがとの意見。

『A few participants advocated an increase at this meeting; they viewed recent economic developments as indicating that labor market conditions were at or close to those consistent with maximum employment and expected that recent progress toward the Committee's inflation objective would continue, even with further gradual steps to remove monetary policy accommodation.』

今回利上げしろという参加者も。

『In addition, many judged that risks to economic and financial stability could increase over time if the labor market overheated appreciably, or expressed concern that an extended period of low interest rates risked intensifying incentives for investors to reach for yield, potentially leading to a mispricing of risk and misallocation of capital.』

でもってここがほほーという感じですが、多く(many)の参加者が低金利長期化の弊害についても指摘しているというこの事実。

『In contrast, some others judged that allowing the unemployment rate to fall below its longer-run normal level for a time could result in favorable supply-side effects or help hasten the return of inflation to the Committee's 2 percent objective; noted that proximity of the federal funds rate to the effective lower bound places potential constraints on monetary policy; or stressed that global developments could pose risks to U.S. economic activity.』

一方で(さっきの所で労働市場にスラックがあるという話をしている人がいたのと同じ流れですな)労働市場についてはまだロンガーランのノーマルレベルにまでは達していないという認識を示している人もいます。

『More generally, it was emphasized that decisions regarding near-term adjustments of the stance of monetary policy would appropriately remain dependent on the outlook as informed by incoming data, and participants expected that economic conditions would evolve in a manner that would warrant only gradual increases in the federal funds rate.』

とりあえず今のところは先行きの利上げについて「only gradual increases」という見解で揃っているのねという所です。


・中立金利に関してのお話があったりするのも中々お洒落

その前のパラグラフ。

『In connection with the participants' discussion of the long-run monetary policy implementation framework, many participants noted that the Committee's broader monetary policy strategy needed both to be considered in conjunction with the design of such a framework and to receive careful further consideration in its own right.』

ちなみに最初の所に『Long-Run Monetary Policy Implementation Framework』というのがありましてこちらも読まないといけないのですがまだ読み込めていない(汗)。

『In particular, accumulating evidence of slow trend productivity and output growth and associated persistently low levels of neutral interest rates, both in the United States and abroad, had potential implications for the most effective policy implementation framework for the Federal Reserve in coming years as well as the monetary policy strategy that would best promote the Committee's macroeconomic objectives.』

米国だけではなく世界的にも中立金利が低下している事はロンガーランの政策フレームワークに影響しますというお話をしていて、利上げ予告ホームランだけではなくこの関連の部分も熟知しないといけないというのが今回の議事要旨なのかな(全部精読できていないので何ともですからまあ最初の小見出しの所と合わせて読んでちょという感じです、後で読めれば読んで明日のネタ候補ですが)と思います。

『Among other factors that needed to be taken into account, it was observed that neutral real short-term interest rates could decline further if central bank balance sheets contracted or the positive effects of quantitative easing on economic activity waned over time.』

それは違う気がするんだが・・・・・・・・・・・・・・

『Participants agreed that issues associated with monetary policy implementation should be discussed within the context of the current and potential future economic and financial environment and the Committee's strategy for monetary policy.』

ということで結論は無いのですけどね。

あとその1つ前のパラグラフににMMF規制に関する評価がありましてですな、

『Participants discussed a range of issues related to recent developments in financial markets and financial stability.』

の話なんですが・・・・・・・・・・

『MMF reforms that became effective in mid-October had resulted in a substantial shift of assets out of prime funds and into government-only funds. It was observed that these reforms had contributed to a sizable reduction of risk in the shadow banking system.』

そうなのかなあとは思うが、まあこういう建付けでやっているからそういう評価になる。

『Participants also discussed some causes of the low yields on longer-term Treasury securities and their embedded term premiums, which were below historical average levels. Among the factors cited were a persistent decline in the neutral federal funds rate, and depressed term premiums likely owing to the elevated size of the Federal Reserve's balance sheet as well as the reduced likelihood of high inflation relative to several decades ago. Some of these factors could endure for some time.』

たぶんさっきの引用部分の話に繋がっていると思うのだが、プライムMMFから米国債MMFへのシフトが発生してタームプレミアムが圧縮されるので中立FF金利に影響するというのってそれは何だか違う気がするんですけれども、何でそうなるという話になっているのかはもしかしたらFRBの誰かが解説しているのかも知れないので頑張って探してみないと。どうもワシには腑に落ちない。

とまあそんなところで今朝は勘弁。





2016/11/22

お題「政井審議委員の金懇デビュー戦は就任会見同様超慎重運転ですが・・・・・・・・・」

まあしかし米国様なのですけれども、
http://jp.reuters.com/article/markets-moneymarkets-dec-us-rate-hike-idJPKBN13G1U6
Business | 2016年 11月 22日 01:44 JST
来月の米利上げほぼ確実視、市場予想確率95%

ってここまでやっておいて「ファイナンシャルコンディションが悪化したからやっぱり無し」とか腰が砕けたらかなり残念なことになりそうですのう。

○政井さんの金懇デビュー戦キタコレだがまあ順当に慎重運転とな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko161121a1.pdf

・サプライズ戦略はもうやらないということですねわかります

最初が展望レポートの内容についての話ですが、『経済・物価情勢については、「展望レポート」の内容に沿って、お話したいと思います。』とありますように展望レポートの見通しの話をしているのでそこはスルーしまして『(3)経済・物価見通しに関する留意点』から。

『以上、2018 年度までの経済・物価の中心的な見通しをお話しました。この見通しには当然、上下双方向のリスクがありますが、経済、物価とも下振れリスクは引き続き大きいと考えています。』

というのも展望レポートと同じですけれども、

『私自身が特に懸念しているのは、海外経済の不確実性の高まりを背景として、グローバルな金融市場が急変するリスクです。米国における新政権の経済運営、英国のEU離脱に向けた交渉、欧州における金融セクターを巡る問題など、不透明感が高い状態が続きます。このような中では、金融市場はどうしてもボラタイルになりやすいものです。』

ふむふむ。

『個人及び企業のマインドは、足もと底堅く推移しています(図表9)。本年入り後の国際金融市場の混乱や、国内においては、熊本地震、夏場の悪天候など悪化しやすい状況が続いたなかで、よく踏み止まったとの印象を持っています。こうした動きは、心強いところですが、海外情勢を中心に非常に不確実性の高い状況が続くなか、金融市場の急変は、このように踏み止まっているマインドに悪影響を及ぼし得るため、引き続き警戒が必要だと思います。』

まあ今の所はウマーな方向ですが、まあ良く考えればボラが発生していますな。

『こうした中、日本銀行自身が無用に市場のボラティリティを高めることのないよう、金融政策を運営していくことも重要だと考えています。』

・・・・・・・・・・・ひょっとしてそれはギャグで言ってるのか?????と思ったりする訳ですが、まあ確かに今回の政策建付けとしては「イールドカーブ全般をコントロールする、ただし操作目標は短期と10年金利」という事になっているので、一応ボラを下げる方向な建付けではありますから、一応こういう話をしても今の政策枠組みと整合性はあるという事にはなっている訳ですな。

と申しますか、まあ就任会見以来の調子ですと政井さん与党審議委員コースで行くと思われる感じで今の所推移していますし、今回の金懇挨拶を見ても何か「私はこうすべきと思うのですが」系の話が出ている感は無いですので、そこから逆算して考えれば上記部分は日銀の執行部ラインでの考えも反映しているでしょと想像される訳ですよ。

でまあそう考えますと(ということですのでアタクシの妄想成分が入っておりますよ)、この「日本銀行自身が無用に市場のボラティリティを高めることのないよう」というのはお前は何を言ってるんだと思わずコーヒー吹きそうになりますが、つまりはサプライズ政策路線はもうやりませんよという黒田日銀のスタンス変更(一応昔もサプライズ狙いだとは言ってませんでしたけど)を示すものでしょうなとやや無理矢理ですが解釈してみましたけれどもどうでしょうかねえ。


・QQEの予想インフレに対する効果の説明はやや控えめですな

その次が金融政策の話になっていまして、まあこちらも基本的に日銀執行部公式見解の範囲を出るものではないのですけれども、『(1)「量的・質的金融緩和」の効果 』という辺りを鑑賞してみましょう。

『日本銀行が 2013 年4月に「量的・質的金融緩和」を導入して以降の3年余りで、わが国の経済・物価情勢は大きく改善しました。』

物価情勢ですかそうですか。

『「量的・質的金融緩和」で想定されていたメカニズムは、主として実質金利の低下を通じた効果です(図表 11)。』

(図表11)というのが何ともアレ。

『実際、「量的・質的金融緩和」は、予想物価上昇率の押し上げと名目金利の押し下げにより、実質金利を低下させました(図表 12)。』

『この間も、自然利子率は趨勢的に低下しましたが、「量的・質的金融緩和」の導入後の実質金利はその水準を十分下回っており、金融環境は改善しました。このように、きわめて緩和的な金融環境の実現を通じて、「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではない状態まで来たことは、「量的・質的金融緩和」の成果と言ってよいと思います。これが第1のポイントです。』

ということで図表12というのがあるのですが、こちらの図表12のお題は『潜在成長率と実質長期金利』となっているのが割と味わいがあるなあと思った訳で、この前の総括検証では、総括検証の説明ペーパーシリーズの第3弾にありましたように「他の外生要因をシカトしてでもQQEの効果で予想物価上昇率が上昇したぜヒャッハー」というだいぶ恥ずかしいのでもうちょっと控えた方が良いんじゃネーノという説明を日銀執行部が行っている訳ですが、政井さんのこの部分ではその辺りをあまりアピールしないで実質金利の方で説明している訳ですよ。

でまあこの説明の仕方がどういう流れで作られているのかというのはアタクシが知る由もないのですが、政井さんが総括検証での説明部分を見つつも「いや何ぼ何でもこの説明は恥ずかしいだろ」と考えて実質金利コースでの説明をしているのでしたら、政井さんが時間の経過とともに野党審議委員の跡目を相続してくれる期待(?)も出てくるというものです。

また、執行部内部での説明が「予想物価上昇率」から再度「実質金利」をメインにするようになって、それを受けてこういうトーンの説明になっている可能性もあって、つまりYCC導入前の時点では「日銀の政策で期待に強く働き掛けることによって予想物価上昇率を引き上げていく」という話を主にしていましたが、YCC導入後に関しては、YCCというのはファイナンシャルコンディションを緩和的にするためのものであり、しかもそれは金利を馬鹿みたいに下げれば良いというものではない、という説明になっているので、したがって金融緩和政策の効果の話も金利主体になるという事なのかも知れませんなあ、とこのくだりを読んで思うのでありましたがどうでしょうかね。



・ということでまあMBドバーで予想物価上昇率を2%まで引き上げるのはさすがに無理という話

次が『(2)わが国における予想物価上昇率の期待形成メカニズム』でありますが、総括検証の結果に沿って説明しているのですが、金懇挨拶ですから内容を端折っているのでちょうど読み良くて結構。

『第2のポイントは、予想物価上昇率の形成についてです。予想物価上昇率とは、家計や企業の将来の物価の変化に対する見方のことですが、わが国においては、これが過去の実績に引きずられる傾向――このことを「適合的な」要素と表現します――が、諸外国と比べて際立って強いのです(図表 13)。』

『日本銀行は、「量的・質的金融緩和」を通じてフォワード・ルッキングな期待形成への転換を図ってきました。「フォワード・ルッキングな期待形成」とは、「実際の物価上昇率は様々な要因で変化するが、やがては中央銀行が目標とする上昇率に収束する」という見方です。しかし、これが十分に強まる前に、原油価格の下落などから、現実の物価上昇率が低下した結果、人々の予想物価上昇率は適合的な期待形成を通じて、低下しました(図表 14)。』

まあこの合成予想物価上昇率というのも何でしょうかなあという感じではありますが、何故かこういう説明に都合の良さそうな図表が出てくるのが日銀恐るべし。

『このことが、依然として2%の「物価安定の目標」を実現出来ていない主な要因であると考えられます。言い換えれば、「物価安定の目標」を実現するためには、フォワード・ルッキングな期待形成が人々の間にしっかりと根付いていくこと――こうした状態を「インフレ期待がアンカーされている」と言います――が大変重要です。』

いやまあ大人の事情というのは分かるのですが、「言い換えれば」何なのかというと「マネタリーベースを2倍に拡大すれば2%物価目標を達成できるという岩田副総裁の置物リフレ理論は当初から批判がありましたように間違いで、批判の方が正しかったです」ということではないでしょうかねえ(ニヤニヤ)。


・MB80兆円に関しては華麗にスルーとな

その次に『(3)イールドカーブ引き下げの効果と留意点 』というのがありますが、こちらも総括検証での話になりますのでパスしまして、オーバーシュート型コミットメントの説明部分をちょっと鑑賞してみましょう。

『まず、オーバーシュート型コミットメントは、先ほど触れました「総括的な検証」のポイントの2点目に対応するものになります(前掲図表 10)。すなわち、予想物価上昇率を高めていく方法として、これを採用しています。』

うむ。

『もともと、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、金融緩和政策を継続するとコミットしています。今回、このコミットメントに加えて、消費者物価指数の前年比上昇率が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を維持することを約束したものです。今回、敢えて、「安定的に2%を超えるまで」と実績値に基づく約束を行うことで、日本銀行の強い決意を示すこととしたものです。』

ということだけ説明していまして、当面80兆円をめどとする云々の話を全くしていない辺りがこれまた味わいがありまして、これもまあ都合のよい理屈を使っているなあとは思いますが、さっきの予想物価上昇率の推移を見てもそうなのですが、説明的には「MBの拡大について強いコミットをした時(QQE導入と買入拡大)には予想物価上昇率にプラスの影響を与えている」という事になっているので、「期待に働きかけるのはMB」という理論になっているのですな、金利ではないという辺りがまあ良くできた理屈ではあります。


・YCCに関しての「適正な金利水準」は今後運営どうするんでしょうね

『(2)イールドカーブ・コントロール』の所ですが、

『次に、イールドカーブ・コントロールです。これは、さきほど申し上げた「総括的な検証」のポイントの2点目と3点目に対応しています(前掲図表 10)。イールドカーブ・コントロールにおいても、大量の国債買入れを継続していくことは、これまでと何ら変わりありません。』

この説明部分なのですが、文章をブツ切りにして読んでみるとなるほどこうやって話を進めていくのかと中々良い勉強になる。

『これまでと異なるのは、従来、マネタリーベースや国債保有残高の増加ペースを操作目標としてきたのに対して、新しい枠組みでは、短期政策金利と 10 年金利の操作目標を示すこととしたことです。』

はあ。

『これまでの枠組みは、実務的な運営方法が明確なのですが、望ましいイールドカーブとの対比でみて、金利の引き下げが不十分なものに止まったり、逆に過度な引き下げをもたらす可能性がありました。新しい枠組みでは、直接長期金利を目標とすることから、経済・物価・金融情勢に応じて柔軟かつ効果的な金融政策運営が可能になったと考えられます。』

とやって話が進んでいるのですが、この間に「政策の目標がMBから金利に変わりました」というのが含まれるのですが、その点をスルーしながらこういう話に持って行くのが何とも。

『結果として、政策の持続性を高めることとなり、予想物価上昇率を高めていくうえでも強力な枠組みとなります。』

と言ってるのですが、予想物価上昇率を高めるのはMBの方で、金利に関しては金融環境を通じて経済にプラスの影響を与えてそれがフィードバックしてくるという建付けになっている筈で、だからこそ「適正な金利水準」への誘導を行うという話で、下げれば下げる程良いものではない、という説明しか今は正面切ってしていませんが、これ将来的な事を考えると、当たり前なのですが経済物価情勢が好転した場合に、金利を同じままにしておくと緩和度合いが高まってしまい、それは結果的に良くないという話になる、という形で見事に切り分けられているのですけれども、そこをあまり説明すると「MB拡大にはコミットしているが10年ゼロ金利にはコミットしている訳ではない」という話が広がってそれはそれでまあ曖昧にしておこうという事なんでしょうかねえ。

『さらに、「総括的な検証」のポイントの3点目で触れました、金融仲介機能に与える影響にも配慮しつつ、政策運営することが可能なものとなっています。』

まあつまり金利を下げれば下げる程良いというのもではないという事ですが、だったらとりあえずマイナス金利解除をした方が良いのではないかと。


・最後の章は割と良いですな、というか日銀の方向変化への兆候だと嬉しいのですが

『W.2%の「物価安定の目標」の実現に向けて』というのが最後にあってですな。

『日本銀行は、「総括的な検証」で、日本経済が「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではなくなったとしつつ、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために、これまでより強力な枠組みを導入しました。次にこの点について、お話ししたいと思います。 』

ということで最初の小見出しが何と『1.「物価安定の目標」の意義:再訪 』となっているのが中々奥が深い。

『そもそも日本銀行は、なぜ2%の「物価安定の目標」の実現が必要と考えているのでしょうか。これに対する考え方は、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のため、政府と日本銀行が政策連携を強化し、共同で公表した 2013 年 1月の共同声明に明確に示されていると思います(図表 18)。日本銀行はそれまで、「中長期的な物価安定の目途」として、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域、当面は1%を目途」としていました。このとき、「物価安定の目標」を日本銀行が導入し、その目標を消費者物価上昇率で2%としたのは、次の認識に基づくとしています。導入後4年近く経過したいま、改めて再訪する意義があると思いますので、以下引用します。』

再訪も何も今でもこの文書は生きているのですが、何はともあれこれが出てくるのが中々。

『日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」より抜粋 』(最初の一文アンダーライン)

麿キタコレ。

『ここで重要な点は、2%目標はあくまで、日本経済の競争力と成長力の強化に伴って、持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていく、との認識に基づくということです。』

それは麿ドクトリン。

『日本銀行に対しては、「無理に物価だけを引き上げるべきではない」、あるいは、「構造改革で潜在成長率を高めることなしに、金融緩和しても意味がない」といった趣旨の議論が一部にあると承知しています。もっとも、この引用部分から分かるとおり、「物価安定の目標」は、物価だけ上昇すれば良いということではもちろんありませんし、構造改革をはじめ、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組みの進展は、2%目標の認識の前提です。言い換えますと、「需要の刺激か供給サイドの強化か」や「金融政策か構造改革か」といった議論を耳にすることが多いのですが、これらは二者択一ではありません。その時々の状況に応じて、どちらかに力点が置かれるものですが、いまの状況では、双方を追及すべきものだと思います。』

最初の所で麿ドクトリンなのですが途中で話が「双方を追及すべきものだと思います」となっているのは大人の事情ですかそうですか。

『このように、2%の「物価安定の目標」は成長力の強化と共にあるものです。そうでなければ、長期にわたるデフレを経験してきたわが国においては、物価の上昇に対する漠然とした不安が生じてしまうように思います。』

とりあえず置物師匠とジンバブエ大先生に引退勧告を出して頂けると誠にありがたいのですが。


でまあ次が『2.「三面作戦」の重要性 』という小見出しになっていまして、

『経済の競争力と成長力の強化に向けた取組みが特に重要になってきているのは、日本に限ったことではありません。IMFは、本年4月の理事会において、先進国が高い水準で持続的な成長を維持するためには、@構造改革、A金融緩和の継続、Bプルーデントな財政サポートから成る、「三面作戦」(“three-pronged approach”)が必要であることで概ね一致していますし、G7首脳宣言やG20の声明でも、金融政策、財政政策および構造改革を総動員することの重要性が謳われています。』

ってな話が以下続きますがその辺は割愛するとしまして、まあ余談チックになりますが、この3面作戦ヒャッハーという世界的なトレンドですが、単に財政金融をジャンジャンモッテキテーという状態な話になってりゃせんかと思う所で、これジャンジャンモッテキテーとやっていられるうちは良いのですが、じゃあそれによって経済物価情勢好転しました言いましても、それ自体がサステイナブルではないのですから、安定的なという話が抜けたままでとにかく吹かせやゴルァというのは将来の谷を深くするだけのようにも思えてならない所ではあります。

会見要旨は本日出るのですが、ヘッドライン的には会見があったんだっけ位の勢いだったので、あまり質疑は盛り上がらなかったのですかねえ。オペの話だと政策委員関係なかったりしますからねえ。


○こんな面白そうなものが出ているのですが

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/wp16j12.htm/
トレンド・インフレ率の新推計
―トレンド・インフレ率推計システム(TIPS)の開発と分析結果―

上記『要旨』より。

『景気循環や一時的なショックの影響を除いたインフレ率の趨勢的な水準は、トレンド・インフレ率と呼ばれる。トレンド・インフレ率は、民間経済主体による超長期のインフレ予想に相当し、中央銀行のインフレ目標政策への信認を前提とすれば、中長期的にはインフレ目標値に一致していく。ただし短期的には、適合的、ないしはバックワード・ルッキングな予想形成や、インフレ目標の信認度の変化などの影響で、両者は乖離し得る。』

ふむ。

『この点を踏まえ、本稿では、トレンド・インフレ率推計システム「TIPS(Trend Inflation Projection System)」を提案する。TIPSは、トレンド・インフレ率を、(1)実績のインフレ率の長期変動成分に基づく適合的な予想と、(2)インフレ目標によるフォワード・ルッキングな予想、の2つの要素の加重平均で定式化し、そのウェイトであるインフレ目標の信認度の変化も勘案している。』

まあどの辺がどうなのかはまだ全然読み込めていないし、そもそも読める知能があるかどうかが分からんが(汗)。


『推計結果によると、トレンド・インフレ率は、2013年初に日本銀行の目標インフレ率引き上げにより大きく上昇し、その後も緩やかに上昇している。もっとも、中長期の予想インフレ率は、2014年後半以降、下振れて推移していた。これは、最近の予想インフレ率が、モデルが示す以上に適合的であった可能性を示している。推定されたモデルをもとに、近年の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比を要因分解すると、2013年初以降、トレンド・インフレ率とともに緩やかに上昇したあと、2014年後半以降は、原油価格下落などの要因から、再び押し下げられている姿となった。』

結論は何か普通に大本営チックですが・・・・・・・・・

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16j12.pdf
トレンド・インフレ率の新推計
― トレンド・インフレ率推計システム(TIPS)の開発と分析結果 ―

『2.トレンド・インフレ率推計システム(TIPS)の概要 』の辺りにどういう考えで計算するのか(あたしゃ数学強くないから式だけ見せられても困るのだが、導出過程の考え方を書いてもらえれば何となくイメージというか勘では読んだ気分になる)らしき理念的な話もあるような気がする(何とかモデルによるとこうなります、とかアプリオリに書かれるとうーんこのとなってしまうのです)。







2016/11/21

お題「中期は止まったのですが今度は長期いう雑談やその他雑談」

ほほう。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161121/k10010776661000.html
トランプ氏に期待でドル高 世界経済への影響に注目
11月21日 5時27分

というニュースを朝から割と時間使ってやっているとな。

#とか通常運転のつもりがオペ雑談を書いていたら時間が無くなってしまうの巻という申し訳ない状態(汗)


○まあ中期止まったようには見えるのですが・・・・・・・・・・・・

金曜の債券ですが、とまた毎度お馴染みロイターさんから。
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1DJ2CP
Markets | 2016年 11月 18日 15:28 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅反落、長期金利一時0.040%に上昇

『<15:20> 国債先物は大幅反落、長期金利一時0.040%に上昇

長期国債先物は大幅反落。前日の米国市場では、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が早期利上げの可能性を示唆したことで米債安が進み、円債市場でも朝方から売りが先行した。いったん下げ渋る場面もあったが、日銀オペで長期ゾーンが対象とならなかったことで失望売りが続いた。オペ結果が売り圧力の弱さを示し、午後は買い戻しも入ったが、終盤にかけて海外勢主導の売りが出て下落幅を拡大した。円安・株高も売りを誘った。12月限は一時1月29日以来となる150円27銭に下落した。

現物債は、長いゾーンの利回りに上昇圧力がかかった。先物同様に日銀オペへの失望から長期債利回りは上昇基調になった。超長期ゾーンにも売りが継続し利回りが上昇。20年債と30年債利回りは9月14日以来の高水準となり、40年債利回りは3月11日以来の0.7%台に乗せた。一方、中期ゾーンは日銀オペを受けて底堅い展開。』(上記URL先より)

とまあそういう事で、金曜は長期超長期に対して中期はやたら堅調で、先物は親の敵のように(というほでもないが7年が甘い)叩かれておりまして、中期がコケなかったという意味では木曜の中期指値オペが効いていますわなという結果に一応なっているので日銀もニッコリの展開でしょう。まあ中期がコケて全部が売られるとゲロゲロマーライオン感が強くなりますが、とりあえず長期超長期が売られながら中期が堅調だとそこまでの投げ投げ感がただよわない(ただし先物が親の敵のように叩かれているので「現物外す代わりに先物ヘッジ売りと称して叩き料理になっている」という事実is有るという感じだが)のでそこまでビビる感じでもないかも知れませんけどね。


でまあ昨日の引けは

2年:▲0.170%(-1.0)
5年:▲0.095%(+1.0)
10年:0.035%(+3.0)
20年:0.475%(+3.5)
30年:0.600%(+4.0)
40年:0.710%(+4.0)

となっていて、2年の1毛強も何やってるんだという感じですがこれは短国の方に引っ張られているような話なのでさておくにしても、5年は指値の▲4bpにまだまだ遠い程度の金利上昇になっていて、5毛5糸金利低下してその後の為替米金利ヒャッハーで1毛しか上がっていないのですから効能かくの如しという所ですが、中期コケ無い代わりに今度は超長期(と先物)がアチャーとなっているのが何ともでして・・・・・・・・・・・・

指値オペ打ち込み前夜の水曜の引けが

2年:▲0.110%(+7.5)
5年:▲0.060%(+6.0)
10年:0.015%(+1.5)
20年:0.445%(+1.0)
30年:0.575%(+0.5)
40年:0.680%(+0.5)

となっているので、実は「10年金利をコントロールする」って言っているという事実もある訳で、10年金利の「ゼロ%程度」の程度をどこまで許容するのか、イールドカーブコントロールって言ってるんだから超長期どうするんでしょうとか、よりタチの悪そうな長期、超長期をどうするのかが試される展開になってきているとゆーのが実にこう味わいが深い所ではあります。

まあどこを基準にするのかによって微妙に違いますけど多分この辺だろうと思われるのが9/16でして、

9/16

2年:▲0.270%
5年:▲0.205%
10年:▲0.040%
20年:0.450%
30年:0.555%
40年:0.640%

となっていたので、中期はもうとっくの昔に全然違う水準になっているのですが、まあこの時の中期に関しては利下げの可能性を織り込んでいた(総括検証の結果輪番減らしてその代り短期の金利を下げてくるというTaperingの可能性は割と言われていた)ので、前提条件そのものがこの時点と違っていて、良く良く考えてみれば金利上昇の中で中期の輪番増額することもなくここまで来た挙句に2年が▲9、5年が▲4という水準の指値をやっと行った(ただし威嚇射撃)という事なので、実はYCCとか言いながら既にこの時点で9月のYCC政策導入とセットの指値オペ導入時に説明していたこの文言、

『A 長短金利操作のための新型オペレーションの導入(賛成8反対1)(注2)

長短金利操作を円滑に行うため、以下の新しいオペレーション手段を導入する。(i)日本銀行が指定する利回りによる国債買入れ(指値オペ)

1 今回の枠組みの変更に伴って、イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止するため、金利が上昇した場合などには、例えば 10 年金利、20 年金利を対象とした指値オペを実施する用意がある。』(9月21日声明文より)

というのがだいぶ空文になっている訳ですよ。だって9月21日に公表している「概ね現状程度」の水準と中期の金利って突拍子もなく乖離しているのに前の金利水準を全然防衛しなかった訳で、まあ単にスピード調整はしたけれども水準について調整してないでしょというお話。

もちろん今申し上げたように、そもそも中期のカーブが利下げを織り込んでいるのと利下げを織り込まない水準(100円大きく割れるのはさすがに遠くなりましたから)になっているので全然前提条件が違うのですが、少なくとも9月の時に示した「概ね現状程度の水準」という文言はまだ改訂されていないのですから、本来ここまでの金利上昇を放置するならキチンとイールドカーブの変化を示すべきなんですよねー、と意地悪く言ってみる訳です。

つーことで、まあ超長期はこの金利上昇の中で中期とか長期が先に行っているのでまだ9/16辺りの水準から5毛少々しか甘くなっていないのですが、中期が止まって後ろ(と先物)が相対的にアチャーという感じになる中で今週(というか今日??)は日銀がどうしてくるのか楽しみになって参りました(不謹慎)。


○やはり動き出すと色々と苦しい政策枠組み&目先の説明に追われ過ぎです

まあ何ですな、YCC政策は環境の変化で金利が動き出すと結構オペレーションに難儀するというのは何度か申し上げましたが、難儀するが為にドンドンと「さっき話していたことと違うじゃないか」という風に実務が進んでいくというのがこれまた日銀の政策運営に支離滅裂感を高めていくことだと思うのですよね、つまり既に・・・・・・・・・・・・・・

・9月21日に言っていた「イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止する」というのが全然出来ていないという状態

・元々の説明だと金利上昇時の対処は輪番増額→指値オペで無制限に購入、だったのに輪番の増額は行わないで「指値オペは入れたけれども無制限に購入するようなレベルで入れてこない」という手段になっている

・同じような話だけれども「金利が上昇するとむしろ買入が増える」と言っていたのにそういう形になるのを回避しているのはなぜ??

などなど、目先の説明だけは相変わらず口八丁で何となくわかったような説明になっているのですが、このYCCになってから更に一段となのですが、「おいおい聞いてねえよ何だよ前と話が違うじゃねえか」という事案がボコボコ出過ぎにも程がある訳ですよ。

でまあYCC政策をやりましょうって状況の中で、こう一々「聞いてねえよ事案」ばかりをボコボコと実施するようになりますと、売買するにしたって何を基準にやってくるのかがさっぱり分からんのでありまして、いやまあ全部市場が勝手にやってる状態で日銀の介入が別に無いというのなら市場が勝手に動くのですが、市場が動いた時に何が何だかさっぱり分からない基準で、しかも当初の説明と違う使い方でツールを打ち込みに行かれますと、ポジションも取れませんがなという風になる訳でございます。

でもってポジションを皆で取らないとなるとそら当たり前ですが何らかの変化に対して市場のリアクションというのは無抵抗主義の相場になってしまいますし、だいたいからしてポジション取りたくないとなると国債の円滑消化にも支障を来すんじゃネーノという風にも思う訳でございます。

まー建付けが悪いのか運用が悪いのかというと、恐らくは建付けが例によって例のごとく問題含みで、何となく頭の中で現状の市場環境を前提に考えたら妥当ではないか、というものを作ったものの、その後のことまで耐えられるような物件に成って居なかったという事ではあると思うのですけれども、この政策枠組み無理して今のまま維持するのは(ドル高米金利ヒャッハー的な流れが反転してくれればまた話は別かも知れないけど)結構難しいんじゃないですかねえと思います。

なお、打開策としては「10年の目標金利をとっとと上げる(まあマイナス金利も撤回した方が良いのではないかと思うけど)」のが一番楽になりそうですけど。そうじゃなかったら毎回の様に「次回MPMまでの均衡イールドカーブを出す」のもアリかも知れないが、こうなるとMPMの回数減らしているから介入主義的政策をやるのには難しいですし、大体からしてカーブの根拠が説明できないのだから実務上無理でしょうな。


○従いまして信じる者は足を掬われるのでしょう

金曜日ですけど国会での総裁発言だと・・・・・・・・・・・・(またまたロイターさんから)

http://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-operation-idJPKBN13D0CP
Business | 2016年 11月 18日 13:33 JST
指し値オペ、金利跳ねれば必要に応じて実施=黒田日銀総裁

『[東京 18日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は18日午前の衆院財務金融委員会で、17日に初めて実施した、特定の年限の国債利回り上昇を抑えるために無制限で国債を買い入れる「指し値オペ」について、今後も「金利が跳ねるなら、必要に応じて使っていく」と述べた。丸山穂高委員(維新)への答弁。』(上記URL先より、以下同様)

ってこんな質問するよりももうちょっと別の質問が有る訳で、総裁読んで細かいオペの話をさせる位だったらQQE政策の理論的支柱の一本であらされる所の浜田参与大先生をお招きして量的緩和政策の効果についてお伺いした方が有益だと思うのですけど、まあ駄文のネタが出来たので感謝しておきましょう。

『黒田総裁は日銀が17日実施した2年債・5年債を対象とした指し値オペについて「米長期金利が大幅に上昇する下で日本の長期金利も上昇傾向にあり、特に中期ゾーンが急ピッチで上昇していたために実施した」と説明。その結果「オペが抑制的、けん的に効き、2年、5年金利は落ち着いた」と評価し、「今後も2%の物価目標達成のために最も適切なイールドカーブを形成していく」と強調した。』

という説明ですが、その「最も適切なイールドカーブ」が9月21日に示したものからは思いっきり乖離した状態なのを容認している(9月21日時点で示した「概ね現状程度の水準」に戻したいのなら中期についてはもっとジャンジャン買入をしないといけないのだから)訳で、その時点でこの「今後も2%の物価目標達成のために最も適切なイールドカーブ」がブラックボックス化している所に来て日銀に飛び道具用意されているのだからもうねという感じ。

『市場金利よりも低い金利(市場価格よりも高い価格)で日銀が指し値オペを実施すれば入札者が殺到しないか、との質問に対しては、「基本的には金利が上昇したところ(その水準よりも)上でオファーする」と否定した。』

という話をしていますがこれも変な話で、これだと先ほども申しあげたとおりで「金利が上がったら買入が増える事になる」と言っていた話と矛盾しますし、大体からしてこれ超長期とかで買入やろうとした時に「買入が殺到しない水準」に買入の指値置こうとすると多分30毛とか40毛とか外側に置かないといけない話になり、それをひとたびやってしまうと「結局コントロールする気なし」と言われるでしょうし、買入が殺到する水準に置いたら置いたで今度は通常の輪番のコントロールをどうしていくのかが難しくなりますし、どうするんでしょうねえ。

『指し値オペの実施によって市場では、2年債や5年債の利回りについても、日銀が事実上の操作目標を内々に定めているとの観測が広がったが、黒田総裁は「(マイナス0.1%の短期と、ゼロ%程度の長期10年の)2年以外に操作目標はない」と否定した。』

確かにディレクティブはそうなのですが、政策の名前が声明文によりますと『(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)』と書いてある上に、先ほども引用しましたように『今回の枠組みの変更に伴って、イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止するため、金利が上昇した場合などには、例えば 10 年金利、20 年金利を対象とした指値オペを実施する用意がある。』とやっている上に、答弁の同じところで「今後も2%の物価目標達成のために最も適切なイールドカーブを形成していく」と言いながら短期金利と10年金利しか目標がない、という説明って結構なハチャメチャな説明になっている訳で、何度も申しあげますように、金利が動かないときには問題が無かったのですが、動き出すと説明がハチャメチャになって来てオペレーション無理だろこれという風になって来るので、今後ボラが上がるとかそういう前に市場の人たちがポジションを取り難くなるんじゃないかと思う次第で、この建付けも見直しを迫られるのではないかという風に思うのは心配のし過ぎでしょうか。

願うらくは、もうちょっと慎重に設計をして(大体からして黒田日銀になってからは無理のあるオペレーションやっている上に、制度設計が(特にマイナス金利以降)あまりにもやっつけで作った感が強くて、目先の帳尻に追われているだけのように見える)頂ければと思います。まあ2013年4月より昔に戻して(輪番はその時よりは多くなるでしょうが)しまえば話は簡単なんですけどね!!!!!!


ということで連日雑感ばかりですいません。その他ネタが・・・・・・・・・・・・・・

○FRB利上げ予告ホームランだらけですの(メモ)

これ読み物が追い付かん(悲鳴)

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-dudley-idJPKBN13D27L
Business | 2016年 11月 19日 02:49 JST
米大統領選後の市場反応、NY連銀総裁「懸念材料とならず」

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-george-rates-idJPKBN13D215
Business | 2016年 11月 19日 01:33 JST
米利上げより段階的に、高金利有益でなく=連銀総裁

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-bullard-idJPKBN13D1CF
Business | 2016年 11月 18日 23:29 JST
来月米利上げ支持へ、17年の道筋が問題=セントルイス連銀総裁

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-kaplan-idJPL4N1DJ3XI
Markets | 2016年 11月 18日 22:52 JST
米FRB、利上げ近づいている=ダラス連銀総裁

まあブラードまでOKですからさすがに決まりでしょう・・・・・・・・・・・・・・





2016/11/18

お題「指値オペを思いの外早くにしかも中期で実施とな、ということで雑感大会」

まーた両建てしておいて「私が申し上げましたとおりに」を言い出す人が出てきたので途中でモーサテを見る気を無くしたんだが今日は何を言ってたんでしょうかねえ>元審議委員の誰かさん

○色々とエンターテイメントネタが出ますなあということで指値オペ

20年入札の日だしまあ輪番ねえわなあとか思っていたらまさかの指値オペオファー。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of161117.htm
国債買入(固定利回り方式)(残存期間1年超3年以下)(注3) 2016年11月21日
国債買入(固定利回り方式)(残存期間3年超5年以下)(注4) 2016年11月21日

(注3) 国債買入(固定利回り方式)(残存期間1年超3年以下)の固定利回較差は、0.020%。この結果、2年利付国債370回の買入利回りは、-0.090%となる。買入金額に制限を設けずオファー。

(注4) 国債買入(固定利回り方式)(残存期間3年超5年以下)の固定利回較差は、0.019%。この結果、5年利付国債129回の買入利回りは、-0.040%となる。買入金額に制限を設けずオファー。

ということで指値オペが実施された訳ですが・・・・・・・・・・・


・やや遠めの当たらない指値でしかも中期債とな

昨日は20年国債入札ではありましたが、中期に関しては前日の中期のプチゲロゲロマーライオンもどきの反動だか何だか知りませんが、とりあえず中短期は反発気味で始まっていまして、前日比金利低下モード(1毛とか1.5とかそんなもんでしたっけ)となっておりまして、指値水準としてはこの時点でのマーケット水準からやや距離のある所となっていましたし、中期ということでナンジャソラという事でそらまあ中期は反発しますわなあとなって前場引けの時点では普通に考えると札の入らない水準(なお日銀のHPだと書かれていないのがアレですが、指値オペは9月の声明文にありますようにカレント銘柄対象なので中期だと2年と5年のカレントが対象で、具体的にはカレント3銘柄が対象なので別に中期全ゾーンを2甘で無制限購入する訳ではありません)となりました。

でもってまあご丁寧に2年新発と5年新発の出来上がりレートが書いてあって、2年が▲9bp、5年が▲4bpなので、何となくこの時点で「短期の誘導金利が▲10で10年が0近辺っていうんだからその間で線引いたんでしょうなあ」という感じを受ける訳ですが、しかし指値やるなら10年(誘導目標水準が明示的に書かれているのは10年だから)で、「0%程度」のどの辺になったらランボー怒りの指値オペが実施されるんでしょうなあというイメージだったのでまあこれは中々の謎オペにも程があるの巻。


しかもですね、指値オペ実施するのって基本的にイールドカーブが変な歪み方をするとか、10年の目標水準(「今のところは」ゼロ%程度)から大きく逸脱するとかいう時にやるもんじゃろという認識(日銀の説明を総合するとそういう話をしていたように認識されていたと思う)ではないかという中、昨日の時点で別に5年と10年がインバートするような本格的なゲロゲロ相場でも無かったですし、そもそも水準が前日の引値時点で2年が▲11で5年が▲6で、確かにその前の水準からは大きく金利が上がっていますが、とはいえそもそもが追加緩和の可能性を織り込んでいた水準からの水準訂正と思えば別にそんなに違和感ない水準であって、ここまで訂正してからさて仕切り直しですなあ(ただし米国連続利上げヒャッハーとかになるともう一発やりそうな雰囲気は確かにあったけど)という感じだったと思いますので、そんな所でいきなり指値オペを入れてくるとかチキンにも程があるし、どうもこう市場との間合いの取り方が下手じゃねえのとしか申し上げようがない。


・金融市場局のコメント付きでしたな

http://jp.reuters.com/article/idJPT9N1D101T
Markets | 2016年 11月 17日 10:49 JST
指値オペ、整合的なイールドカーブ形成のため実施=日銀市場局

『[東京 17日 ロイター] - 日銀は17日、特定年限の金利をコントロールする指値オペを、2年債と5年債を対象に実施した。担当の日銀金融市場局は「このところの中短期ゾーンの急激な金利上昇に対応し、短期マイナス0.1%、10年ゼロ%程度との調節方針と整合的なイールドカーブ形成のため実施した」としている。』(上記URL先より)

ちなみにベンダー各社が市場局のこのコメントをオペオファーのちょっと後から皆さん報道していたのですが、どこぞの某社だけ微妙な方々の愚にもつかない微妙なコメントをせっせと報道して肝心の市場局のコメントを13時になってやっと報道するというトンチキな事をしていたので猛省を促したいですがそれは兎も角。

一応各ベンダーとも上記のような感じで報道していたのでこのコメントで良いと思うのですが、「このところの中短期ゾーンの急激な金利上昇に対応し」っていう事で、まあこれは直近2日でちょっと勢いよく中期の金利上昇(というか水準訂正というか)が起きて、そらまあ確かに米債とか為替辺りがもう一発吹くともっとやらかす可能性はあったとは思いますが、まあこのコメントを額面通りに捉えますと、水準がどうのこうのよりも金利上昇のスピードにビビったという感じがうかがえる訳で、だったら中短期の輪番増額しておけよとは思うのですけれども、まあ輪番増額するよりはやや離れた所に指値オペ置いた方が実際に買入をしないで勢い止めれるから、その点だけは一応考えているのうと評価して進ぜようという感じだが、それにしてもまーこの程度で指値オペとかチキンだよなあとは思いまする。

というのもですな(朝の駄文なのにさっきから例えがアレで恐縮ですが)、マーライオン相場みたいなときって出すもん出し切ってしまった方が世の中のやられポジションが軽くなるので、また元気に価格形成が始まる訳ですけれども、この程度の所で変に止めようとすると、ポジションの整理が中途半端な所に留まってしまうので、またぞろ米国金利ヒャッハーとかドル高ヒャッハーとかになった時にマーライオン様が簡単に登場しやすくなる次第でして、1回目はこれで止まるのですけれども2回目になった時にどうなんでしょとか変なエネルギー溜めないかというのが(昨日もそんな事申し上げましたが)懸念されますので、あまりこういうの多用できない筈なんですよ。

然るにこの程度の水準の所で打ってきているというのは、目先にとらわれてもうちょっと長いタームでのYCC政策の持続可能性に対するリスクを高めているようで残念無念と思います。


・2年と5年の「水準」に強い意志が出ているのかというお題

まあ何ですな、そらまあ昨日のオペに関してはああいう感じで数字出しましたので、当面(と言ってもどの程度の当面かは知らん)はこの水準を皆さん意識するんでしょうけれども、そもそも論として別に10年の0%に物凄い根拠があって水準を決めている訳ではない(もし物凄い根拠があるなら均衡イールドカーブを毎回のMPMで出せやゴルァと言いたいが、少なくとも前回のMPMで何も出ていないということはそういうのを政策にそのまま使う程強い根拠を持って均衡イールドカーブからの緩和度合いで適正なイールドカーブがどうのこうのという物を出している訳では無いというのが示されます。悔しかったら次回のMPMで適正なイールドカーブのアップデート版出して下さい)のでしょうから、中期の適正金利だって水準がどこにあるのかとか根拠はだいぶ乏しいというお話でしょうと思われる次第。

そらまあ別にCPIがホイホイ上がっている訳でもなく、待望の春闘はまだですので、近い時点で10年の誘導水準上げるような事はよーしませんでしょうけれども、今回の金融市場局のコメントもさきほどありましたように「勢い」に関してのコメントであって別に水準についてのコメントでは無かったという事を勘案しますと、まあ中期と10年がインバートでもすれば介入するでしょうけれども、そこまでこの「2年だいたい▲10bp、5年だいたい▲5bp」に意味があるような感じでもなかろうという話にはなりますな。

というかですな、明確な誘導目標水準がある10年で指値入れてくると完全にそこが「誘導目標水準の「程度」の上限金利」となってしまうので、それよりは明確な誘導水準の無い中期で入れたのがマシだったという話かも知れませんが、まーこの「水準」自体は(中期の相場が大反発したので目先特に2年とか遠くなっちゃいましたから特に)当面は意識されると思いますが、一段の外部環境の好転によって金利が上がっていく(ただしゲロゲロ相場ではなく)中で次回も同じ所で指値が出るのかという点についてはあまり信用しない方が良いような気もしますがどうでしょうかねえと思います。

従いまして「中期の金利水準に関しても日銀の明確な金利上限が示された」というのはさすがにちょっと過大評価だという風にあたしゃ思うのですけれども、ただまあそういう受け止め方をされるというのは自然ですので、アタクシの考えている方が正解に近いのであれば、日銀と市場のミスコミュニケーションをわざわざ起こすような事にもなりかねませんなあとも思います。

まあ何か月とか経過した後で環境が変わっている中ではさすがに「ここが絶対防衛線だから買って問題ないぜヒャッハー」とか言う人もいなくなるでしょうけれども、世の中そう都合よく動いてくれない可能性というのもありますし、先般来申し上げておりますように、このYCCとオーバーシュート型コミットメントって実は経済物価環境が急速に改善するという日銀ウマーの展開になると実はオペレーションが難しくなるという皮肉な建付け上の欠陥があって、経済物価環境がのんびりとしか好転しないじゃろと降参してそれを前提にした建付けになっているというのが何とも味わいがあるというものです。

#まあ経済物価情勢が好転してウマーなのですから別に良いちゃあ良いのですけどねえ・・・・・・・・


・ということで落札結果はボウズでしたが・・・・・・・・・・・・

落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba161117.htm
国債買入(固定利回り方式)(残存期間1年超3年以下) 0 0
国債買入(固定利回り方式)(残存期間3年超5年以下) 0 0

そらまあ前場引けの時点で2甘の水準とか遠い水準になりまくっていましたので今回はボウズという結果になりましたけれども・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

このオペなんですけれども、中期だからまあこういう結果になりましたけれども、超長期とかでこういうオペ打った場合に、「場で5000億円売ったら今の気配から何ぼ動きますねんと考えると日銀に打ち込んだ方が合理的だぜヒャッハー」とか言ってATMから数毛甘程度の水準だと盛大に打ち込まれるリスクがありまして、そらまあ本当の本当に何ぼでも買うという覚悟で打つにしても、前場引けのATMから3毛甘いのに落札が1兆円あったとかになった日にはその後大騒ぎ相場になる(と困るので後場もオペ打てるようには成っているけど)リスクとかあって、意外にこれ長期以降のゾーンで打つのって難しいというか下手な打ち方をすると却って大爆発相場になってしまうんじゃないのかなあなどと前場の引けの時にはそういう事を考えていたりしました。まあ中期だったし指値から遠かったから今回はボウズでしたけれども。


・輪番増額の前に指値というのも意外ですがこれをどう解釈するのか

ということでイエレン議長の議会証言ネタとかECB議事要旨ネタとかを盛大にスルーしてひたすらアタクシの駄感想文を連ねているだけで誠に申し訳ないのですが、時間も押して参りましたのでもう一つの論点として小見出しの話を。

基本的にレンジを逸脱してきたら金利低下なら輪番減額というのは9月の時点で実施したので、金利上昇なら輪番増額するじゃろ固定金利は飛び道具にも程があるから、というのはコンセンサスだったと思うのですが、金利上昇した時に輪番を増額しないでいきなり飛び道具を打ってくるというのんびもこれまた微妙なテイストがあります。

と申しますのは、今回のようなやや離れた指値での固定オペという打ち方をすると、基本的には買入を全然やらなくても金利を下げる事は可能(昨日は引けで2年5強、5年4.5強とかになりましたし)なのですが、(ただしもっと気合が入って金利が上昇するようなときに特に超長期のようにワンショット4ケタ億円とか市場でどう見ても一発で捌けないロットだと打ち込まれるリスクあり)というのは示されましたが、それって国債買入の量という文脈で見た場合には「輪番増額は出来れば避けたい」という事を示したかのような解釈も可能な訳ですよ。

勿論実際にこの後金利が上がった時に輪番増やすという選択肢はありますから、別にそれで決まりという話ではないにしても、金利が上がった時には輪番が増えて結果としてはMBがホイホイ拡大するというイメージを持っている人の方が大勢だったと思いますので、それはそれで今後どうするんだろうなあというのが注目されますし、更に余談チックになりますけれども、指値オペでバカスカ札が入ってしまったような場合に、その後の輪番オペを調整するのかしないのかとかもどうするんだろうとか、色々と興味が尽きない、と言えば聞こえがいいですけれども要は運営が意外に難しいということですので、まーこのオペ多用するのはどうなんだろうなあと思いますし、大体からして多用するのは品が無いにも程がありますな。

ま、今回「輪番増やさずに金利を止める」というのが目的だったのでしたらばそれはそれで1回目は上手くいって良かったですねえという感じです。


○一応メモメモ

・まあ順当

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-yellen-idJPKBN13C1RM
Business | 2016年 11月 18日 02:58 JST
イエレン氏が来月米利上げ明確に示唆、「比較的早期適切」

なお議会証言はこちらだが指値オペの衝撃(?)によってあまりちゃんと読めていない(すいませんすいません)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/yellen20161117a.htm


・短国ェ・・・・・・・・・・・・・

なおこのような大暴れ相場の中、昨日の3M入札も安定のクオリティというか、短国需給良いんですよね〜というメモだけしておきます。これから12月越えが意識されますし・・・・・・・・・・・・・・・




2016/11/17

お題「中期大コケでイールドカーブだいぶ変わりましたが日銀はどうするのでしょうかねえという雑談メモ」

プチマーライオン相場・・・・・・・・・・なのかな??

○中期が盛大にコケあるいは修正をしておりますが

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1DH27M
Markets | 2016年 11月 16日 15:25 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が一時10カ月ぶり安値、長期金利は0.015%とプラス圏

『<15:13> 国債先物が一時10カ月ぶり安値、長期金利は0.015%とプラス圏

国債先物中心限月12月限は前日比43銭安の150円42銭と大幅続落して引けた。前日の海外市場で欧米金利の上昇に歯止めがかかったことで、朝方は強含む場面があったが、日経平均が堅調に推移すると上値を重くした。日銀は予想通りに中期と長期を対象にした国債買い入れを通告。中期の買い入れ結果で売り圧力が意識されると、午後に入り国債先物は急落し、一時150円29銭と1月29日以来の水準を付けた。急落局面では、中期ゾーンに銀行勢や業者の売りが観測されたほか、先物に銀行勢や海外勢の売りが出た。現物市場は中期ゾーンを中心に軟調。ただ、プラス金利となった10年や超長期に国内勢の押し目買いが観測された。』

『2年債利回りは一時同8bp高いマイナス0.105%と2月1日以来、5年債利回りは一時同6.5bp高いマイナス0.055%と日銀が当座預金残高の政策金利残高に適用しているマイナス0.1%を上回り1月29日以来、10年最長期国債利回り(長期金利)は一時同1.5bp高い0.015%と3月11日以来、20年債利回りは一時同1bp高い0.445%と9月21日以来の水準を付けた。』(上記URL先より)

とまあそういうことで、寄りから暫くは値持ちしてまして、まあ背景としては10年がプラス金利に上昇したこともありますので、輪番が増額されて日銀の「意思」が出るのではという期待というのもあったんでしょうが、輪番は順当に入れてくると入ら無さそうな10年を入れたので気を使ったと言えば使ったような気もせんでもない程度の入れ方で、勿論の事買入額が増える訳でもなくという内容。

輪番の結果って別にそう大コケというものでも無かったように思えたのですが、後場に入って債券市場中短期と先物が一段と大コケになって一時先物が50銭安レベルまで下がって10年カレントも+1.5bpとか何とかそんな水準になってありゃーとか思っていたら今度は切り返しが入ってほえーという動きのあと、結局大引けに掛けては失速の巻となっておりまして、その間中短期が盛大にゲロゲロ相場となって上記のような有様。

BB引けが

2年:▲0.110%(+7.5)
5年:▲0.060%(+6.0)
10年:0.015%(+1.5)
20年:0.445%(+1.0)
30年:0.575%(+0.5)
40年:0.680%(+0.5)

って中短期ゲロゲロマーライオン相場なのですが、いきなりもうやるとは素早い展開にも程があってナンジャソラではありますが、昨日も申しあげましたが国債のカーブの起点が変態イールドとなっている短国であるというのがよろしくなくて、そこの部分をある程度ネグって「短期▲10bp、10年+0bp」というのであればこんなものであっても別におかしくないという理屈も成り立つので、ゲロゲロマーライオンちっくではあるものの、良く良く考えたら為替が108円だの109円だのとなって、もはや追加緩和期待が大幅に後退(だれもが思うと存じますが、追加緩和になりえるトリガーって急速な円高の進行であり、水準としては95円とかその辺りが来るとず追加緩和ヒャッハーという話)している訳ですから、目先暫く追加緩和無さそうな状態の中で何も2年が付利よりも盛大に低い金利である必要はないし(付利より高かったら短国の金利水準がおかしいのでキャシュ潰し代替でのニーズが出るような気がするけどどうでしょう)、5年は更に付利金利に義理を立てる必要もないという事ですな、うんうん。


・・・・・・・・・・・・とまあそういう訳で、中期の方の金利が盛大に上昇している訳なのですが、これだけ円安が進むと追加緩和期待が無くなるので、利下げの部分を剥落させに行ってカーブを修正しましたと言えばまあそういうだけの話なのかも知れません。本日は超長期入札だから(ここで入札あっさり落ち着くのか流れてあばばばばーとなるのかは神の味噌汁としか申し上げようがないのですが、流れてあばばばばーとかになってさすがに最終投資家が買い出動をしてきて落ち着いて一旦相場が落ち着くみたいなのが一番ビューテホーでしょうかねえ、よー知らんけど。


とまあそういう訳で市場が見守るのは超長期入札でもありますが、明日の輪番がどうなるのかというのもこれまた注目材料にも程がある展開でして、買入の額を増やしてくるのかどうかってのが注目されるでしょうな。

でもって、この額を増やしてくるのかというとこれがまた物凄く微妙というかブラックボックスなお話でありまして・・・・・・・・・・・・・・・


http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921b.pdf
「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証【背景説明】

『3.マイナス金利の効果と影響』の『(4)金利の期間構造による経済・物価への影響』を見ますと、こんな説明になっている訳ですよ。

『イールドカーブの形状に応じた経済・物価への効果や金融面への影響については、以下の点に留意する必要がある。@経済への影響は、短中期ゾーンの効果が相対的に大きい、Aただし、マイナス金利を含む現在の金融緩和のもとで、超長期社債の発行など企業金融面の新しい動きが生じており、こうした関係は変化する可能性がある、Bイールドカーブの過度な低下、フラット化は、広い意味での金融機能の持続性に対する不安感をもたらし、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性がある。』

『実質金利の低下は、経済・物価にプラスの影響をもたらす。もっとも、その度合いは、金利の年限によって異なる。一般的には、短期〜中期の金利の低下による効果がより大きいと考えられる。企業や家計の資金調達に占めるこのゾーンのウエイトが大きいためである。』(ここまで上記URL先より)


・・・・・・・・・・・ということでですな、ここで「実質金利の低下は、経済・物価にプラスの影響をもたらす」という説明がありますように、YCC政策とか言いつつも、実際に経済に影響を与えるのは「実質金利」の方であるという説明になっている訳ですよね。

この理屈を敷衍致しますと、為替市場で101円とか102円とかの水準になっている時と、108円とか109円とかの水準になっている時というのはその時点で金融環境が緩和的になっているのだから、「実質金利」については足元で名目の金利があがっていますが、8%くらいは円安に振れているという事を勘案するとそんなに気にしなくても良いですよウハハハハハ、という理屈は十分に成り立ちますし、そもそも論としてYCCって別に2%達成するまで未来永劫短期▲10長期0を継続する訳ではなく、あくまでも「実質金利をある程度緩和的になるように調整する」ものですから、いつまでもあると思うな誘導目標という話に繋がるのですな。

と、ちょっと先走り気味になりましたが、今の短期と10年をピン止めしてイールドカーブ全体をコントロールするという政策と、オーバーシュート型コミットメントというのは、良く良く考えてみれば「2%達成に向けた環境が整うのに物凄い時間が掛かるのでその間の時間稼ぎをするのに最適な政策」ではあるのですけれども、外部環境が大幅に変化して(まあ今はトランプご祝儀祭りでこれが本当の環境変化になるかどうかは予断を許さないと思いますが)、そもそもこの金利誘導水準、特に「10年0%」に関して何か根拠のある数字かと言えば全然根拠のない数字な訳でして、別にここの理屈がリジリアントなものではないという中で、「誘導目標を変えても良いのではないかというような環境変化」が生じるとその後のロジック展開が難しくなるという問題点を抱えているのが今の政策な訳ですな。

それに加えまして、今しがた引用した総括検証の『(4)金利の期間構造による経済・物価への影響』を見ますと「中短期の金利の方が物凄い勢いで経済に効く」という話をしている訳で、イールドカーブの後ろについては一方で相関が弱いので金利上昇は放置プレイでという話をしても整合性はややあるのですけれども、今回2年の金利ってトランプで逆ヒャッハーになった11/9の▲28bpが足元で▲11bp(実際には引け後に▲10bpついていたと思うが)とか物凄い勢いで金利が上昇しているのですから、「中短期の金利上昇を放置して良いのでしょうか」とツッコミが来た場合どうお答えするんでしょうねえという感じis有るというものです。

しかもですよ、これ総括検証の時にも何かイールドカーブの絵を示していましたが、その時の水準って9/16〜9/20の総括検証出る前までの2年カレント引けは▲27bpだったので、明らかに総括検証で出したイールドカーブを盛大に逸脱しているし、しかも中期金利は大変に重要だというのに放置するのかやる気あるのかみたいな話になってきたときにどういう言い訳をするのでしょうかねえとは思います。

なお、思いますと言ってますがだいたい答えは読めていて、一つには先ほどと同様に「為替市場や株式市場などの外部要因に変化が生じる中では適正な名目金利水準はその状況変化に応じて変化するものだから別に問題ないでしょ」という感じでしょうし、他の言い訳としては「短期はあくまでも▲10bpですからそこからカーブが引かれているの何か変でしたっけ」ととぼけるという位でしょう。ただまあ本当は「マイナス金利水準になると貸出等の金利についての名目ゼロ制約がキツクなってきているので、金利の低下は副作用もあって、全体的なバランスで考えたら今程度の金利上昇があっても無問題」という辺りなんでしょうけどね。それよりも中短期の金利盛大に上がっても株も為替も反応しないし、マイナス金利政策は名目ゼロ制約の関係上デメリットが顕在化しやすいというのであれば、このどさくさに紛れてマイナス金利政策を撤回して10bpずつ誘導金利水準上げて欲しいものですが(ただの身勝手)と言いたい所ですが(^^)、先ほども申しあげましたようにYCC政策って「目先何もしないで済む」というのには大変良くできた建付けなのですが、「何かしないと行けなくなってきた」時には、これまでの政策のロジックを継ぎはぎしまくって作っているロジックなので、ここで「何かする」というのも結構説明の整合性を取りに行くのが面倒で、何がどうなるとどういう政策になるのかといういわゆる政策反応関数が益々カオスになるので、動かしたくないだろうなあとは思うのでした。



でもって市場的には「いつ指値オペ来るのか」というのもだいぶ話題になるころだとは思うのですが、今回の金利上昇は別にリスクプレミアムが上昇して金利が上がっているというわけではなくて、米国のインフレ期待とか財政期待とかそっちのネタな訳で、金融環境がそれによって改善しているならそんなに急いで指値やりますかというのもありますし、確かに9月末は10年▲9.5bpで輪番減額入りましたが、別にゼロ近辺というのがプラマイ10bpである保証もない訳で、状況が円高株安とかいうならそらもう思いっきり止めるでしょう(そもそもそんな状況で金利は上がらんけど)けど、そこまでやる必要があると考えるのかも良く分かりませんな。先物ボコボコ叩かれて7-10がインバートとかしたらそらリスクプレミアムガーとか言えるでしょうけれども(^^)。

あとちなみに余計な事を言っておきますと昔の月報とかだと「CPIが0%近傍」とかいう時って▲0.2%くらいまでは意地汚く0%近傍扱いして、▲0.3%になってくると「小幅のマイナス」と言い出すので、まあその程度のアローワンスはしらっと持っている(そのアローワンスを使うとは言っていない)ので念のため。



○その他少々

・という中での1年短国はおかしいレートに

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20161116.htm

(3)募入最低価格 100円25銭0厘(募入最高利回り)(-0.2500%)
(4)募入最低価格における案分比率 6.2222%
(5)募入平均価格 100円27銭5厘(募入平均利回り)(-0.2749%)

という中短期JGBヘロヘロ相場が何ぼのもんじゃいというレートになって(とはいえこれでも前回よりは金利上がっていますけど)ショートカバーだか何だか知らんですが(たぶんショートカバー)BBの引けが▲35.5bpと、2年JGBが▲11bpという水準をやっているのに何というこの別世界という感じですが、これは日銀がMB帳尻でアホのように短国を買うのがイカン訳で、もはや浜田大先生もゼロ金利でのMBの効果は乏しい(って量的緩和って名目ゼロ金利近傍だからこそ出来る政策なんですがそれはさておき)と仰せなのですから、段階的に縮小をしていただかないとJGBカーブの起点が相変わらず訳の分からないことになると思うのですよね。


・ブラード大先生

よーしゃべるオッサンことセントルイス連銀ブラード総裁
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-bullard-december-idJPKBN13B1BX
Business | 2016年 11月 16日 20:47 JST
12月の米利上げ見送りは「現時点で意外感」=セントルイス連銀総裁

今回の講演はこちら
https://www.stlouisfed.org/news-releases/2016/11/16/bullard-discusses-us-monetary-policy
St. Louis Fed's Bullard Discusses U.S. Monetary Policy after the U.S. Presidential Election

早速このネタに飛びつく辺りがブラードクオリティ・

https://www.stlouisfed.org/~/media/Files/PDFs/Bullard/remarks/Bullard_UBS_London_Nov_16_2016.pdf
スライドショーはこちらですが、3分の1斜め読みしただけで時間が無くなりそうになったので、このネタはまた(読むの間に合って頭の中が整理できたら)明日にでも。






2016/11/16

お題「10年プラスで輪番に注目ですなあという雑談とその他世間話」

モーサテでもやってましたけど・・・・・・・・・・・・・・・・

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H46_V11C16A1MM8000/?dg=1
首相、賃上げ4年連続要請へ 「少なくとも前年並み」
2016/11/16 2:00日本経済新聞 電子版

ちょうど円安のタイミングが良くてトランプ大明神様様という感じですな。

と思えばその次にいきなりこうヘッドライン的にションボリ系のネタ
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H2T_V11C16A1MM8000/?dg=1
経団連、会員企業に配偶者手当縮小求める
女性就労後押し
2016/11/16 2:00日本経済新聞 電子版

実際にどういう指示出しているのか分からんですけど、記事を見ると配偶者手当を縮小して子育て家庭への手当の充実をするみたいな話なんですから、それであれば「子育て支援の手当てを一段と充実させるように求める」というような記事の書かれ方をするような「見せ方」をしないと、これではマインドを冷やす方向になってしまう訳ですが、何か最近この手の話がある時って「給付を減らす」話がクローズアップして出されるようになっていて、見せ方の工夫が必要なのではないかと思うの。


○さあ10年金利がプラスですよ!!!!

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1DG2N0
Markets | 2016年 11月 15日 16:01 JST
〔マーケットアイ〕金利:長期金利が2カ月ぶりプラス圏、リスク許容度低下も

『<15:55> 長期金利が2カ月ぶりプラス圏、リスク許容度低下も

10年最長期国債利回り(長期金利)が一時前日比2.5bp高い0.005%と9月21日以来のプラス圏に浮上。5年債利回りも同4.5bp高いマイナス0.110%と2月4日以来の水準に上昇した。きょうの5年債入札結果が低調な内容となったことを受けて調整売りが出た。「急激な金利上昇で損失を抱え、リスク許容度が低下している参加者もいるのではないか。16日にも予想される日銀買い入れが注目される」(国内金融機関)という。国債先物は夜間取引で一段安。中心限月12月限は一時150円70銭と日中終値(150円83銭)を13銭下回った。』

『<15:10> 国債先物が3カ月ぶり安値、長期金利は2カ月ぶりに0%に上昇

国債先物中心限月12月限は前日比29銭安の150円83銭と続落して引けた。東京時間で円安・株高の流れが一服したことでプラス圏に転じる場面もあったが、5年債入札結果が低調な内容になるとヘッジ売りが膨らみ下げ幅を拡大し、8月2日以来となる安値のまま取引を終えた。現物市場では、中期ゾーンを中心に金利が上昇。入札低調を受けて、銀行勢などからの売りが膨らんだ。2年債利回りは同4bp高いマイナス0.180%と9月1日以来、5年債利回りは同3.5bp高いマイナス0.120%と8月2日以来、10年最長期国債利回り(長期金利)は同2bp高い0.000%と9月21日以来の水準に上昇した。』』(以上上記URL先より)

ということで昨日のBB引け(例によって単利)ですが。

11/15

2年:▲0.185%
5年:▲0.120%
10年:0.000%
20年:0.435%
30年:0.570%
40年:0.675%

となっておりまして、まあ比較する意味があるかどうかは知らんですが、トランプ大統領爆誕で東京時間まではリスクオフになっていたのが先週水曜なので直近ピーク近く(実際には場中の方がピークで下が)先週水曜のBB引けですけど。

11/9

2年:▲0.280%
5年:▲0.215%
10年:▲0.080%
20年:0.350%
30年:0.475%
40年:0.565%

まあここと比較する意味があるのかどうかは知らんのですが、しらっと中短期の金利も上昇しているという状況で昨日は5年入札と味わいのある展開でしたな。

ついでに連日乗っける必要あるのかと言われるとコピペだから勘弁と言いつつ総括検証関連で「このイールドカーブ」みたいにして示していたものはこちらの辺りの金利(どうもプロットを見ると9/16の引けなんジャマイカという気がするが良く分からん)。

9/16

2年:▲0.270%
5年:▲0.205%
10年:▲0.040%
20年:0.450%
30年:0.555%
40年:0.640%

9/20

2年:▲0.270%
5年:▲0.210%
10年:▲0.060%
20年:0.405%
30年:0.505%
40年:0.585%

9/21(MPM結果出た後の引けな)

2年:▲0.230%
5年:▲0.175%
10年:▲0.030%
20年:0.415%
30年:0.510%
40年:0.595%

・・・・・・・・・・・・・・・・・・ということでこうやって見ますと10年以降に関しては何となく9/16のイールドカーブに何となく似てきたような感じではありますが、短期の金利は随分上がった感じではあります(なおこの間に約2か月経過しているので本当はロールダウン分を考慮しないといけないとか真面目に詰めるとツッコミどころ満載なのだが、そもそも日銀の「イールドカーブ」自体が物凄くフワフワしているのでそこをゴリゴリ詰める意味は無い)。

とは言いましても、元々は短期の誘導金利は「超過準備の一部に対して▲10bp」というお話ですので、中短期の国債利回りって理念的には別にこんなに下がらんでも良い筈ですし、大体からして総括検証から以降って余程の円高にでも振れない限り追加緩和はよーやらんというスタンスの物件がホイホイ日銀から出てくるという状態になっている訳で、追加緩和の期待って大概に下がっている筈なのですよね。

ただまあ総括検証前は当然そういう話じゃないから短い所の金利低いですし、大統領選挙がこうなる前はそうは言ってもどちらの候補もドル安論者だから円高圧力再燃だろう的な話になっていたので、追加緩和無しと決め打ちするのも無理筋モード。

より問題なのは日銀のMB帳尻の為に行っている短国買入で、これがとにかく馬鹿買いにも程がある状態で、短国の保有ってほぼ日銀と海外で残りは担保需要分と商品有価証券としてマーケットメーカーが在庫を持っている分という世界になっており、需給が恒常的におかしいので、この中短期ヘロヘロ相場の中でも全然気配が甘くならずに3Mが▲25bp〜▲30bpとかいう変態レートで張り付くの巻となっており、ここから線を引かれるからまあこういう金利になるという話なんでしょうかね、よー知らんけど。

しかしまあ何ですな、まあ2年は短期の所のグリップが効くというのは分かるのですが、良く良く考えれば5年までもそれに付き合う必要はない訳ですし、米国様がとりあえず来年の利上げパスをどう出してくるのか次第で中期が動くとそれはそれで面白い(不謹慎)のですがどうなることやら。


でまあ本日は昨日の10年(引け後だけど)+0.5bpという久々(総括検証出たその日に瞬間芸でプラス金利になって以来)のプラス金利となりましたが、さてここでたとえば本日の輪番で5-10を入れてくるのかとか入れてきて増額するのかとか、まあそういうのが物凄い勢いで注目される訳ですな。

でもってこれを予想しろと言われてもただの当て物の世界で知らんがななので壺振りでもして考えて下さいとしか申し上げようがございませんが、後々の事を考えた場合ってこんな所で「止め」を入れない方が良くて、昨日も申しあげましたがそれが「意思」になってしまうので止めの入った水準の所に市場のロングが溜まってしまうのですが、当然ながらより長いタームで将来の事を考えた場合、日銀の政策が上手く行くというのが前提であれば金利というのは上昇しないとおかしい訳です。となると、変な所で市場のロングを集中的にためるような事をした場合、金利がより上昇して然るべきという環境になった場合に、そのポイントで無駄なロングが溜まっているためにマーライオン相場が発生した時のゲロの量が溜まっておりまして、破綻の貰いゲロ合戦となってしまうので、まーあまりホイホイと弄ってくるのもどうなのかねという気がします。

つーかね、今の所まだフェイクかも知らんが、別にこの金利上昇ってそれこそテーパリング懸念でも財政リスクプレミアムでもなくて、円安株高米金利上昇(しかも米金利上昇は財政出て経済が良く成る期待)での金利上昇なのですから、それを頑張って止める必要も無くて、頑張って止めるのはテーパリングだのの方じゃないかなあとも思うのでした。

とは言いましても、何ちゅうかこの今の調節と企画は何か色々と出てくる話が全部合わせると整合性が取れている感じもしないし、大体からして総裁の定例会見とかでもそうですが、追加緩和をするかしないかの基準が「モメンタム」って冷静に考えればナンジャソラな話で、どうもこう目先の話に拘り過ぎのような気がするので目先の帳尻に関しては何をやってくるのか良く分からん面はある。


○名古屋の総裁会見はまあどうでも良いがちょっとだけ

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2016/kk1611b.pdf

『(問) 本日の講演でも、物価上昇を達成するための 1 つの要素として、「賃上げ」に予想物価上昇率を反映してはどうかというお話をされていたように思いましたが、改めて、今後の賃上げ動向についてどうみているかを教えて下さい。』

『(答) 先日の金融政策決定会合でまとめた展望レポートでも申し上げていますが、来年の春闘の動向に非常に注目しているというのはその通りです。企業収益は非常に高水準が続いています。円高の影響により製造業の一部で今年度の収益が若干減?するというところはみられますが、非製造業や製造業の全体を通じてみると、極めて高い企業収益が続いています。一方、失業率はどんどん下がってきて 3%ということですし、有効求人倍率は二十数年来の高さになっているということです。企業収益は非常に高く、労働市場は極めてタイトであるという状況ですので、当然、賃金は上がっていくということで、現に上がっているわけです。特に非正規、つまりパートとか契約社員の方の賃金はどんどん上がっていますが、正規の方の賃金というのは、あくまでも春闘で年一回、交渉で決まるというところが非常に大きいわけですので、今申し上げたような企業収益とか労働市場のタイトさを反映して、春闘も賃上げがスムーズに進んでおかしくない、そういう客観的な情勢は整っているとは思います。』

と言ってますが、まあ良く良く考えてみればバズーカ2の時も10月末の追加緩和で円安が進行して賃上げに追い風的な流れになった訳ですから、今回はトランプ大先生要因でただの期待先行にも程があって持続性大丈夫か的なサムシングはあるものの、一応雰囲気はゲームチェンジャーみたいになっているので、円高修正で春闘ヒャッハーという神風は期待できると考えるでしょうし、そうなるとまあ元気満々モードで暫く行くでしょうなあ日銀は、という風に思うのでした。

『具体的にどのような水準で労使の交渉がまとまるかについては、これはあくまで労使交渉に任されておりますので、具体的な数字等を申し上げる立場にはありませんが、企業収益や労働市場の状況からみて、正規の職員の方々の賃金も上昇していく、十分合理的な理由があるとみています。』

円安が天の助けとかいう能書き垂れていますが結局ここ数年の政策って何だかんだ言ってただの為替要因で喜んだり悲しんだりしているだけじゃねえかなどと分析してはいけません。


○12月FOMCはSEPとかが楽しみなんですけどね

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-rosengren-rates-idJPKBN13A1UQ
Business | 2016年 11月 16日 00:02 JST
米利上げペース加速、財政支出拡大なら=ボストン連銀総裁

ローゼングレンのおっちゃんは前々回FOMCで利上げ賛成して地区連銀の票が3対1で利上げという中々お洒落な事象を発生させたのですが(反対3は久々に見た気がする)、前回は据え置き賛成に回るという中々謎の行動をとったおじちゃんですが、まあ順当に12月利上げ主張してくるのは兎も角として、12月SEPでは利上げペースについてどういうのが出てくるのかも楽しみ。

まあ元々政策当局が出す見通しは強めに出てくるというのは仕様(そら自分の政策が効かないと思うのは野党ならあるけど与党では出さんでしょうし、延々と1%割れのFF見通し出している変態仮面のブラード総裁も別に政策が効かないから1%割れなのではなくて、既にギャップは無くて実質均衡金利がマイナスなのだからそうなるという謎理論であの金利を出している)でございますから元々強めで出ているのですが、来年のパスがその元が強めの所を強めに修正してくるかどうかというのが一つの楽しみ。

でももっと楽しみにしているのはロンガーランのFFレートでして、これってもう毎回の如く平均値がズブズブと沈下して行っているのですが、今回どう転ぶかということで、下がらんとは思いますが、間違ってロンガーランの金利が上がると中々爆笑できるのでその辺を正座して待ちたいなあと今から足を痺れさせているアタクシなのでした。

でもって副議長の方のフィッシャー
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-fischer-unexpected-idJPKBN13A2OD
Business | 2016年 11月 16日 05:25 JST
米大統領選結果に驚く、影響判断は時期尚早=FRB副議長

そらまあそんな感じで話をするしか無いですが、今後はハト派のメンバーがどう動くのかが注目ですなあという感じですか。


タルーロ先生はウホウホ金融規制おじさんですから・・・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-tarullo-trump-idJPKBN13A1YH?sp=true
Business | 2016年 11月 16日 02:37 JST
トランプ氏勝利への市場反応、米FRB注視必要=理事

市場反応よりも金融規制の方がなので、上記URL先記事の最後の方にはしっかりと、

『タルーロ氏はこの件をめぐる質問に対してはコメントを控えながらも、次期政権と議会は金融規制の緩和を検討する上で、「金融危機以降、なぜ金融規制が強化されたか、その理由に留意する必要がある」と述べた。』(上記URL先より)

と突っ込まれていますな、こちらも推移に注目。


○いやあのそれは幾らなんでも・・・・・・・・・・・・・・・・・

昨日の日経新聞は読者の皆様の顎が外れたり腰が砕けたり血圧が急上昇したりというような健康被害をもたらしたのではないかと思料されますが。

http://www.nikkei.com/article/DGKKZO09531030U6A111C1EE8000/
経済観測アベノミクス4年 減税含む財政拡大必要 内閣官房参与 浜田宏一氏
2016/11/15付日本経済新聞 朝刊

でまあ肝心の部分は会員向けなのですが、まあ記事を拝読してアタクシの場合はトサカに来てもうコケコッコーとなっておりましたのでして、厭債害債さんが解説をしておられるのでまあエントリーを貼っておきます(毎度人のフンドシですいませんすいませんありがとうございます)。

http://ensaigaisai.at.webry.info/201611/article_2.html
浜田センせぇー・・・

誠に仰せの通りで、「やっぱりマネタリーベース拡大はゼロ金利制約ではイマイチ効きませんなあテペヘロ」とかおじいちゃんが日銀批判している時からずーっと指摘されていた話で、それを全否定しまくって馬鹿MB拡大政策を打ち込んでそれでも足りずにマイナス金利政策打ち込んで「やっぱり効きませんなあ」とか、経済学者だと思っている皆さんにおかれましてはこういうの大先輩だか何だか知らんですけど、同じ学者としてボコボコにして自浄して頂かないと経済学という学問自体が胡散臭いイカサマ学問という話になりはしませんかねえと思いますし、まあ大先生におかれましてはその一派の皆様も道連れにして(以下の部分は自主規制により削除されました^^)。








2016/11/15

お題「10年あと2bpで0%ですよ/総裁名古屋講演はまあ別にという感じですな」

お家の事情(ただの大寝坊)で時間があまりないので雑ネタメモで勘弁。

○さあそろそろ10年0%が見えてきましたよ!!!!!!

まあここもとずーっとこの状況ですけどね。

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1DF5QZ
Markets | 2016年 11月 15日 05:51 JST
米金融・債券市場=国債売り継続、利回りは年初来高水準に

『[ニューヨーク 14日 ロイター] -
           利回り
30年債(指標銘柄) 3.0020%
10年債(指標銘柄) 2.2384%
5年債(指標銘柄) 1.6569%
2年債(指標銘柄) 0.9922%


米金融・債券市場は、前週からの流れを受け継ぎ売りが継続。トランプ次期米大統領の下、インフレ率が上昇するとの懸念が強まる中、国債利回りは軒並み年初来の高水準に達した。30年債利回り は1月以来初めて3%を上抜け。2・10年債利回り格差は前週末から拡大し、昨年12月以来の高水準となった。』(上記URL先より)

・・・・・・・・・ということで米国債もナンジャソラという売られっぷりで勢い付いておりますし、何でそれにおつきあいしないといけないのか良く分かりませんが欧州債がコア国周縁国お構いなし、というか周縁国の方が中々盛大に売られるの巻。

となっている中で円金利も一応上がってはいるものの、昨日の引けの時点でやっと10年▲2bpというこのウゴカンチ会長ということでYCCがワークしていると行ってしまえば話は簡単なのですが、問題はYCCがどうのこうのの前に馬鹿買入政策とマイナス金利で市場から投資家を締め出しモードになっているというのがあって、最終投資家が何もできないような状態を作っているのですから、ここで気合を入れてポジションの踏み投げが発生する訳もなく、そらもう動きませんなあ(いやまあ一応動いては居るのですけれども欧米比較で何で動かんのということで)という感じではあります。

でもってそんな中で本日は目だたく5年の入札が実施される訳ですけれども、ここもと5年ゾーンがだいぶ打たれて来て昨日の引けは▲15.5bpという水準になっている訳でございますが、随分金利上がりましたねとは言えども相変わらず付利金利よりも低い水準にあり、では追加緩和って期待できるのかと言うと、そらまあ経済物価情勢的に追加が必要な局面がまた来るリスクは普通にあると思いますが、そもそもYCCにしたのとセットで追加金融緩和のハードルを上げているという事実がある上に米国がこのトランプヒャッハー相場で円高とか株安とかで肝を冷やすことも無い、と来ています。

そーなると日銀の短期市場経由グリップが効く2年はまあ分かるのですが、5年のこの水準ってどうなんですかねえ的な話になってくる(所詮マイナス金利だし)とこの辺りってどうなんでしょうかねーとは思ったりします。ただし短い所って短国の金利が▲20bpより低い金利の所で全然上がってこないという日銀の短国買入邪魔だから止めて欲しいんですがというのもあって、そことのバランスがどこまで効いてくるか(普通は2年位までですけどね)というのもややある。

でまあその5年入札によっては10年カレントあと2bpでゼロ金利水準ですが、ここで例によって総括緩和直前の各年限カレント単利と比較しておきましょう。

11/14

2年:▲0.220%
5年:▲0.155%
10年:▲0.020%
20年:0.415%
30年:0.545%
40年:0.645%

でまあ多分9/16のような気がせんでもない総括検証で示したイールドカーブ(のようなもの)を推測しようと毎度のこの3つを並べてみると実は中短期がヘロっている中で更に今日5年の入札があるというのがお洒落。

9/16

2年:▲0.270%
5年:▲0.205%
10年:▲0.040%
20年:0.450%
30年:0.555%
40年:0.640%

9/20

2年:▲0.270%
5年:▲0.210%
10年:▲0.060%
20年:0.405%
30年:0.505%
40年:0.585%

9/21(MPM結果出た後の引けな)

2年:▲0.230%
5年:▲0.175%
10年:▲0.030%
20年:0.415%
30年:0.510%
40年:0.595%

まあ何ですな、これで10年0%超えた途端に指値オペとか入れたらズッコケ三銃士という風情で、債券市場ションボリーヌになるんでしょうなあというか、指値オペって最終兵器にも程があるので、他に要因が無くて投機的に売られているなら兎も角、米国のインフレ期待が上がって財政からの景気拡大期待が上がって、しかもドル高と来ているんだったら、まあ日銀的には天の助けみたいなお話なのであって、それをいきなり止めるというのも何だかなあーという感じがしますので、そらまあ10年+10bpとかまで放置するとも思えませんけれども、別にここで急に指値オペとかやらないとは思うけど(今日は入札だからオペはやらないにして)、やったらさすがに唸る。

というのも、指値オペやると市場が「ここが金利上限」と見なす訳で、(既に輪番減額した所が「金利下限」と見なされたのと同じ)そうなりますと市場の事ですから金利の上限近くの所でロングポジションが増えやすくなるのですが、この金利水準自体が未来永劫同じ所で良いのであればそらまあ別に問題ないのですが、足元の状況からインフレ期待を引き上げて物価水準も引き上げようという政策を実施していく中で、特に長期金利に関しては「10年金利0%」という水準が未来永劫正しい筈もなく、うっかり指値オペ馬鹿馬鹿やってエネルギー溜めてしまいますと、その水準を変えないと行けないとなった時に物凄い勢いで怪我人が続出することになるので、オペレーション的にもプルーデンス的にもよろしくない、という事になると思います。

などと申し上げましたが、さてどこで介入が入るのかというのをまずは試しに来るという展開で、外部環境的には日銀ウハウハというか正に北条時宗もビックリの神風という展開でありますので、そういう環境だと本当はカーブの水準って徐々に引き上がって然るべきでもありますが、まさかカーブを急に引き上げる訳にも行かないでしょうし(うっかり上げたら下げるのがかなり恥ずかしい)、でも水準どうするんだろとか、「YCCは外部環境が動いた時に真価が問われますなあ」とかたぶんちゃんとした日銀見物をしている人的には皆で思っていたとみられる事案の閾値が見えてきましたのでやっと死にかけている円債市場も面白くなって参りました。


○黒田総裁講演だが・・・・・・・・・・・・・・・・・

名古屋での講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko161114a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 名古屋での経済界代表者との懇談における挨拶 ──

・全体的にやる気がないトーンである

最初の方ではYCC入れましたよ的な話をしていますが・・・・・・・・・・・・・・・

『新しい枠組みを導入してから、2か月近く経ちましたが、金融市場においては、日本銀行の新しい政策枠組みは、ポジティブに受け入れられているように思われます。この点、図表1をご覧ください。まず、長短金利の動向をみますと、短期政策金利を▲0.1%、10 年物国債金利の操作目標をゼロ%程度とする「金融市場調節方針」と整合的なイールドカーブが円滑かつ安定的に形成されています。』

別に日銀の言うように動いているのが「ポジティブに受け止めている」とは限りませんが何か?????(憤怒)

『また、その他の金融市場をみても、為替市場では、米国の利上げ観測が高まるもとで、ひと頃に比べれば、やや円安ドル高方向で推移しています。こうしたもとで、株価も比較的堅調に推移しています。この間、米国の大統領選挙の結果を受けて、一時的に大幅な円高・株安に振れましたが、その後は円安・株高方向の動きとなっています。日本銀行としては、引き続き、市場の動向を注視していきたいと思います。』

何ちゅうかこの淡々とした説明ですが、円安株高で心も落ち着いているという感じですな。

でもって今後の説明ですが、

『第一に、金融政策、財政政策の両面できわめて強力な景気刺激策が行われているということです。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を実現するため、新しい政策枠組みのもとで、強力な金融緩和をしっかりと継続していきます。』

できるだけ早期にとか2年程度でとかはすっかり言わなくなっているの巻。

『政府は、先般の補正予算の成立を受け、事業規模 28 兆円に及ぶ大規模な経済対策を着実に推進していくとしています。中央銀行が、物価安定目標の実現に向けて緩和的な金融環境を整えるもとで、政府が積極的な財政支出を行う場合には、両者が相乗的な効果を発揮し、景気刺激効果がより強力になることが知られています。今後は、まさに、こうした「ポリシー・ミックス」の効果が期待されます。』

最近ずーっとそういう話をしているのですが、消費増税の頃には「金融緩和が強力なので消費増税なんのその、というかそこまで織り込んで政策打ち込んだんですけど」という話だったのが隔世の感ですなあ。

『第二に、こうした効果に加え、海外経済の回復もあって、わが国経済は、企業・家計の両部門で所得から支出への前向きな循環メカニズムが維持されるもとで、緩やかに拡大していくと見込んでいます。具体的には、図表2の赤色の部分に示しておりますとおり、2018 年度までの見通し期間を通じて、潜在成長率を上回る1%前後の成長を続けると予想されます。

第三に、物価面では、青色で示しておりますとおり、消費者物価の前年比は、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられますが、失業率がさらに低下するなどマクロ的な需給バランスが改善し、中期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、見通し期間の後半には2%に向けて上昇率を高めていくと予想しています。』

まあこの辺の話は従来通りですが、全体的に「金融政策でガンガンやって物価目標達成だぜヒャッハー」というトーンがすっかりなくなって憑き物が落ちたかのような感じですな。


・QQEがインフレ期待に非常によく効いたという説明は往生際が悪いのでもっと抑えた方が良い

ずっと飛んで予想物価上昇率のお話。

『図表8をご覧ください。「量的・質的金融緩和」の導入後、2014 年夏頃にかけて、予想物価上昇率は明確に上昇しました。このことは、予想物価上昇率に働き掛けるうえで、金融政策が効果的であることを示しています。しかしながら、その後、原油価格の大幅な下落や消費税率引き上げ後の需要の弱さ、さらには新興国経済の減速に伴う国際金融市場の不安定化といった「逆風」のもとで、昨年夏以降、予想物価上昇率は再び低下し、現在まで弱含みの局面が続いています。』

下がった要因は全部「逆風」で上がった要因は全部自分の金融緩和効果とかお前舐めてんのというか、そういう分析してて恥ずかしくないのかと小一時間問い詰めたい。

『わが国においては、デフレが長年にわたって続いたため、予想物価上昇率の形成は、依然として、現実の物価上昇率の動きに強く引きずられる傾向があります。人々の物価観が2%に向けてしっかりと変化する前に、実際の物価上昇率が低下したために、これにつられて、予想物価上昇率も弱含んでしまったと考えられます。』

この整理にも問題があって、それだと「何でもいいから物価を無理やり上げてしまえば良い」という話になるのだが、現実問題として2013年から2014年というのは消費増税前の動きと為替の効果で無理やり物価を上げたら実質所得の大きな落ち込みと駆け込み需要の仮需で需要の先食いしたために、その後需要が落ち込んで物価が下がる要因になったんじゃないかと思いますし、そこのところをもっと虚心坦懐に分析しないと何の意味も無いと思うのよね。


でまあ以下うだうだと話が続きますが、あまり気合の入った話もなく、何か通り一遍感の強い講演なのでまあこんなもん。


・おまけだが

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL14HVY_U6A111C1000000/
黒田日銀総裁、イールドカーブ「下に行けば行くほどいいものではない」
2016/11/14 11:40

『日銀の黒田東彦総裁は14日、名古屋市で開いた金融経済懇談会で講演し、長短金利操作を導入した背景について「イールドカーブ(利回り曲線)がフラット(平たん)になればなるほど、下に行けば行くほどいいというものでもない」と述べた。「半年間のマイナス金利の経験、3年半の量的・質的金融緩和の経験を踏まえ、副作用なく2%の物価安定目標を達成するための枠組み変更」とした。イールドカーブのフラット化の弊害としては「保険会社や年金機構のリターンが低下し、不確実性や不安を高める」点を挙げた。』(以上上記URL先より)

時間から見て講演テキストにはない発言だと思われますが、そこまで言うならマイナス金利を何故撤回しないのか全く意味が分からないのですが、貴殿の面目玉のためにマイナス効果がたくさんのマイナス金利継続させられて大迷惑にも程があるんですけどねえ。









2016/11/14

お題「週初なのでブラードのオモシロ理論とかリテール決済のペーパー雑感とかの小メモで勘弁」

インフレ目標が達成できないのは国民の為にむしろ良い事理論来ました。
総括検証は金融政策が効かなくなってきている事を示した来ました。

・・・・・・・・・・・・・・・一番最初にしていた話と全然違うんですが浜田先生。

でもって「1回だけヘリマネ」とかそれ実現可能性についての考察をぜひお願いいたしたいのですけれどもねえ。打ち出の小づちを政治に与えたら何が起きるんでしょうかねえ。

○ドットプロットが「ずーっと0.75%」のセントルイス連銀の理屈が何か良く分からん件

ということでトランプヒャッハーとかいうのも今後どうなるんでしょうなあとか思いながらもまだ試合は始まったばかりという感じですのでゆるゆる考えて行くしかないかなあと思います。

というのを言い訳にして、FED高官発言から単に最近のバージョンでオモシロオジサンのブラード総裁の理屈を読んでみたのだが正直この理屈は何だか良く分からんというのをいきなりネタにするこのアタクシ(すいません)。

要旨
https://www.stlouisfed.org/news-releases/2016/11/10/bullard-safe-real-interest-rates-fed-policy
St. Louis Fed's Bullard Discusses Safe Real Interest Rates and Fed Policy
11/10/2016

プレゼン資料
https://www.stlouisfed.org/~/media/Files/PDFs/Bullard/remarks/Bullard_Commerce_Bank_Nov_10_2016.pdf

つーことで、要旨とプレゼンから引用しつつなのですが、ご案内とは思いますが念のため先に申し上げておきますと、セントルイス連銀ってFOMCでのSEPの「ドットプロット」の中で「年内1回利上げした後延々とその金利水準で推移すべき」というオモシロプロットを出している(自分たちで公言している)変態理論を取っているのだが、その理論の説明をするというまあ殆ど趣味の世界で恐縮至極というお話どす。


・どうも「雇用ギャップもインフレギャップも無い」という理屈らしい

暫くは要旨から引用します。(図表から)としているのがプレゼン資料のPDFからの引用です。

『ST. LOUIS - Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard discussed “Safe Real Interest Rates and Fed Policy” on Thursday at Commerce Bank’s annual economic breakfast.』

ということで、安全資産の実質金利とFEDの金融政策というお題。

『Bullard discussed how a single equation can describe much of the state of the current monetary policy debate, and how the St. Louis Fed’s new regime-based approach to near-term U.S. macroeconomic and monetary policy projections, which was adopted in June, fits within this one-equation format.1』

なんちゃらレジームとかんちゃらレジームって話をするのは複数均衡論とかそういうの好きなブラード総裁。

『“The bottom line: Low interest rates are likely to continue to be the norm over the next two to three years,” he said.』

SEPでのドットがそうなっているのですが、ではなんでそうなるかと言いますと・・・・・・・・・・・・

『The Policy Rate Path Dichotomy』という小見出しでして、「政策レートのパスが2分化」って言ってるけれども「2分」じゃなくて単にブラード先生が一人で外れ値を出しているだけだと思うのですけど・・・・・・・・

『Bullard noted that the Federal Open Market Committee (FOMC) operates by setting a short-term nominal interest rate (i.e., the federal funds rate target), which is also referred to as the policy rate. It influences all other nominal interest rates. The policy rate setting is currently 38 basis points, which is extraordinarily low by postwar historical standards.』

今の政策金利は38bp(25-50ですな)ですよと。

『“The FOMC is considering raising the policy rate to a somewhat higher level,” he said, adding, “the St. Louis Fed’s rate path projection is much flatter than those of the rest of the Committee.”』

SEPのドットがブラード先生の所だけ横ばいというのは図表PDFの7枚目『The policy rate path dichotomy』にございますが、別にセントルイス連銀以外に横ばい予想の人いないんですががががが。


でもって次が『The Short-Term Real Interest Rate』という本理論のベースなのですけどね。

『To help illustrate the current situation, Bullard outlined a simple Taylor-type rule that could be used to provide a recommended value for the FOMC’s policy rate. “Because unemployment and inflation are relatively close to their long-run values, the recommended policy rate from a Taylor-type rule depends mostly on the safe real rate of return,” he said.』

これどういう事かというと、プレゼン資料の9枚目〜17枚目で説明されていまして、その途中に『Gaps Close to Zero』という小見出しがあるように、どうも「雇用のギャップとインフレのギャップゼロ」という話をしているのよ。

『On the left-hand side is the object of interest, the short-term nominal policy rate set by the FOMC, denoted as i. The equation recommends a current value for i.』(図表9枚目)

『On the right-hand side are four terms. The point of this talk is to argue that one of these terms, r+ , is most interesting in the current macroeconomic environment.

The parameters φπ and φu are positive constants that will not matter for the argument made here, so they can be ignored.』(図表9枚目)

でまあ引用していると計算式をテキストに落とすとかややこしい事になるのでアレですが、テイラールールだと

政策金利=均衡実質金利+目標インフレ率+インフレギャップ+需給ギャップ

という話になるのですが、「The parameters φπ and φu are positive constants that will not matter for the argument made here, so they can be ignored.」というお洒落な説明が10枚目から13枚目にありまして、『Unemployment has declined to a low level』『Smoothed measures of U.S. inflation are close to 2 percent』ということで、ギャップ項は無視して宜しいという説明になっているのが中々の謎っぷり。


したがって、ブラード理論だと望ましい政策金利水準が実質均衡金利+目標インフレ率になって、目標インフレ率は2%なのですから実質均衡金利だけの問題になる。という理屈になっているのですよ。

その結果、

『Thus, the Taylor-type rule simplifies to the policy rate being the sum of the real interest rate on safe, short-term assets?like short-term government debt-and the FOMC’s inflation target (2 percent, or 200 basis points).』

となるそうな。でもって、

『Bullard noted that one way to measure the real return on short-term safe assets is to consider the one-year nominal Treasury security and to subtract a one-year smoothed inflation rate from it, which produces an ex-post one-year real return on a safe asset. “There are other methods of calculation, but this one is simple, model-free, and uses a relatively short maturity that allows use of year-over-year inflation measures,” he explained.』

つーことで、均衡実質金利については1年物のTBの金利と物価上昇率を使って「1年物の実質金利」を求める、というのが何か凄まじく怪しげな香りがするのですが、その結果・・・・・・・・・・

『Measured this way, the real rate of return on safe assets has been more than 200 basis points lower in recent years than it was during the 2001-2007 expansion. “This goes a long way toward explaining why the policy rate is low today,” Bullard said. “Furthermore, it seems unlikely that the real rate of return on safe assets will return to its historical level over the next two to three years. At the St. Louis Fed, we call this a ‘low-safe-real-rate regime.’”』

プレゼン資料の18枚目〜23枚目の辺りに説明があるのですけど、

『Real rate of return on short-term government debt,』というお題があるのがプレゼン資料の19枚目にありまして、1年TBの利回りとダラス連銀の刈込平均PCEインフレーション(前年比)を使ってその差分が実質金利だという話をしている訳ですな。でもってその「‘low-safe-real-rate regime.’」というのはこの実質金利水準が昔はもっと高かったという話をしていて、今はこの実質金利水準が低いのでレジームが違います的な認識。


『From July 2013 to September 2016, this ex-post one-year real rate of return on safe assets averaged -1.34 percent, or -134 basis points. Adding this value to the inflation target leads to a recommended policy rate of 66 basis points. “I conclude that a single 25-basis-point increase in the policy rate-from 38 to 63 basis points-will get us very close to the recommended Taylor rule value over the forecast horizon,” Bullard said.』

という計算をすると、2013年〜2016年の1年物均衡金利水準は▲134bpなのだから、テイラールールから出される政策金利水準は66bpになります(キリッ)という説明で、だから1回利上げするのは結構なのですが、その後の金利水準は横ばいです、というお話になっています。


・・・・・・・・・・・いやですね、ブラード総裁がSEPのドットプロットで「ずっと横」という金利水準を何で出すのかというのについては、不肖このアタクシ「インフレギャップや需給ギャップがマイナスで中々戻らないのだから金利を上げるべきではない」とかいわゆる高圧経済的なイメージの話をしているのかと思っていたのですが、何と「物価と雇用のギャップは既に無視できる」という状況という認識なので、均衡した状態の結果今の金利で推移しているのだから実際はこの金利水準が均衡状態なのであって利上げとかする必要無いという中々ぶっ飛んだ理論を持ち出しているという事実を今回拝読いたしまして、えーという感じでもありますし、何かこの理屈胡散臭いなあと思うのですが、以下もうちょっと『Regime-Dependent Monetary Policy』、『Why Are Real Returns Low?』という小見出しがあるので続きをするかもしれないししないかも知れません。



○即時決済に関するペーパーが出ていましてですね

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161110a.htm/
BIS決済・市場インフラ委員会による報告書「即時振込:リテール決済のスピードとアベイラビリティの向上」の公表について
2016年11月10日
日本銀行

『BIS決済・市場インフラ委員会(CPMI)は、11月8日、報告書「即時振込:リテール決済のスピードとアベイラビリティの向上」(原題:Fast payments - Enhancing the speed and availability of retail payments)を公表しました。

詳細につきましては、以下をご覧ください。

報告書(原文<国際決済銀行ウェブサイトにリンク>)(本行抄訳 [PDF 843KB])』


ということで手抜きで日銀抄訳を拝見。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/data/rel161110a.pdf

でまあ話は色々とあって面白い訳ですが、最後の所を見るとやはりこう実務家(いや別にアタクシは決済の実務家ってほど決済を詳しくやっている訳ではないが)的には微妙に唸るなあというのでメモメモ。

PDFの30枚目(ページだと27ページ)に『5.即時振込のメリットとリスク』というお題があるのですけれども、以下の小見出しが・・・・・・・・・・・

『5.1 様々な主体にとっての即時振込のメリット』
『スピードと継続的なサービス利用が最終顧客に与えるメリット』
『即時振込の最終顧客に対する追加的なメリット』
『決済サービス提供者のメリット』
『即時振込の広範なメリット


とありまして、『結論』の最後では、

『即時振込は、導入に向けた障壁は存在するが、最終顧客、決済サービス関連事業者、および社会全体に対し、その導入・利用を促すだけのメリット、特に、時限性のある振込を早期に完了するというメリットをもたらす。即時振込システムの導入は、その国・地域の決済システム全体の近代化をもたらすための触媒(カタリスト)として作用する。同時に、即時振込に伴うリスクは、適切に管理される必要がある。即時振込に伴うリスク管理の課題については、多くの国々において徐々に認識されてきており、こうしたリスクを管理するための具体的な対応は、即時振込に関する経験の蓄積により、今後も発達していく。』

『即時振込の導入には、より早く便利な振込サービスに対するニーズとその提供といった市場の発展(例えば、モバイル技術の普及など)、および、その国・地域の決済システムを改善・近代化するという幅広いビジョンが重要である。即時振込の導入は複雑さを伴うことから、@異なる関係者間の一体的な取組みに向けた協調、およびA長期的な戦略アプローチが必要となる。中央銀行および他の当局は、決済業界の関係者間の協調および決済システムの更なる改善を促進するために重要な役割を担うことができる。』

とまあ良いことずくめのような話をしているのがうーむという感じではあります。確かに英国とかみたいにそれまでのリテールの銀行での資金管理とかが物凄いヘッポコで事実上スクラッチで即時決済のシステムをぶっこむという話だと、それはそれでお話としては良いことだらけ的な話になるのかも知れませんが、日本みたいにその前の段階でガチガチの決済システムが出来ていて、そこに他のインフラも乗っかっている場合って、それをいきなりスクラッチから始めるという訳には行かず、おそらく元々が貧弱なシステムしかない所と比較した場合に別の摩擦があると思うのよ。

ただまあこの手の国際的ななんちゃらって「こうあるべきだからこうしましょう」的なお話で、いやまあその考え方も別に全否定されるものではないのですが、だからと言って既存のシステムとのフリクションをどうするのとか、そういう実装面における問題をどうするのとか、大体からして今あるガチガチのシステムとどういう形でやっていくのとかそのコストはとか、中々大変な部分もあると思うのですが、そこを「導入に向けた障壁は存在するが」の一言でサラリと流してしまうのがこういう人たちのクオリティなんだよなあと、そこが気になったので中身の話はさておきましてメモを置いておきました次第。



2016/11/11

お題「面白展開の市場の備忘メモ/主な意見で相変わらず誤解を全力で披露している人がいるのは何とかならんか」

大統領選挙のドサクサで忘れていたがこれは何ぞ。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016110800393&g=pol
猪瀬元都知事が講師に=小池塾(2016/11/08-12:49)

公民権停止中の人を政治塾の講師に呼んで何の話をするのやら。


○きれいなトランプ期待ヒャッハー相場のただのメモ雑談

それまでトランプリスクとかヒラリー危ないとなると盛大にリスクオフ相場をしていたというのにこの豹変ぶりに笑ってしまうしかありませんが、一応ストーリーにはなっているので、今後の政策がちゃんと出てくるかという話になるんでしょうな。

何せ軍拡の話をする傍から在外の駐留軍減らすかもとかいう位に何が何だか分からない話をしているので、話の整合性を取りに行く段階でどのような修正が入るか、と考えますと、冷静に考えたらそんな政策整合的にできないだろうと思われるマニフェストを掲げて堂々の政権交代という事案がどこかであった気がしますので、あの辺りに落ち着くのではないか(なお官僚機構とかの作りが全然違うので同じになるとも思えないけど)というのは一つのイメージにしてみようかなとか思ったりするのでした。

まーしかし
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-10/OGG0XPSYF01Y01
NY外為:ドル続伸、トランプ政権の政策期待でインフレ見通し強まる
2016年11月11日 05:41 JST

『10日のニューヨーク外国為替市場ではドルが続伸。ドル指数は3月以来の高水準を付けた。トランプ次期政権の政策期待からインフレ期待が強まり、ドル買いが続いた。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は2日連続で上昇。10年債利回りは1月以来で初めて2%を超えた。共和党がどのような政策をとるのか、それがオバマ現政権よりもインフレ圧力を高めるかどうかに注目が集まっている。』(上記URL先より)

という話なのだが、日本の場合はデフレの国だから事あるごとに円高になるぜヒャッハーとやっていた訳で、インフレ見通し強まるってドル高って普通に話をされるとそらまあインフレ見通し強まるので利上げサイクルが強まりドル高という話ではあるのだが、ちょっと勢いでやっている感isあるという気もせんでもないが良く分からん(−−;


でまあ昨日は30年入札がありましたが。
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1DB2J3
Markets | 2016年 11月 10日 15:28 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅反落、長期金利一時9月21日以来の-0.035%に上昇

『<15:19> 国債先物は大幅反落、長期金利一時9月21日以来の-0.035%に上昇

長期国債先物は大幅反落。米大統領選でトランプ氏が勝利したことを受けて、景気刺激による財政拡大圧力が意識され、9日の米債相場が大きく下落した流れを引き継いで売りが先行。朝方の取引開始直後に一時151円37銭と9月21日以来の水準を付けた。後場に入っても日経平均株価が急反発した流れが続き売りを誘った。ただ、一部で懸念されていた30年債入札を無難にこなしたことから大きく売り込まれることはなかった。現物債の金利は上昇。米債のイールドカーブが傾斜化したことで、長いゾーンを中心に金利に上昇圧力がかかった。10年債利回りは一時マイナス0.035%と9月21日以来、20年債利回りは一時0.395%と10月28日以来、30年債利回りは一時0.525%と10月11日以来の水準にそれぞれ上昇した。中期ゾーンも軟化し5年債利回りは一時9月21日以来のマイナス0.175%を付ける場面があった。しかし、市場では、日銀のイールドカーブ・コントロールが意識される中、このまま金利が一方的な上昇基調になるとは見ていない。』(上記URL先より)

とまあそういうことで、前日にあの程度しか動かなかったので終わってみたら2毛甘とかで収まったら円債村は本当に廃村かと密かにビビッておりましたが(^^)、引けは20年30年が3.5毛甘の38.5bpの51bpで10年が3甘の▲5bpとかになっておりましたので、安値から引けに掛けて戻ったとは言え、最初の時点で45銭とか下げられてスタートしたのを見て「おおまだ生きてるじゃん」という感じではございますな、うんうん。

しかし米国は盛大にスティープするなかで円金利ってまあこの程度しか上がらなかったのは仕方ない(あの調子で相場が高値で張り付かれたら戻り売りする玉無いし買い戻すニーズは散々あって、どこからデルタが供給されるかって言ったら新発発行しかない訳ですから)所ではありますなあ(だいいち今回の金利上昇日本要因じゃないし)と存じまし、カーブだって別に対してスティープしない(先物から後ろ全部パラレルじゃないの引けベースは)という辺りに、海外の金利が上がったからとりあえず売られて見ました感が強いですのう。

でもって金利が上がった所で日銀のオペ姿勢を試す・・・・・・・・と言いたいのですが、10年カレントはここから0%まで5毛もございまして、それどう見ても無理じゃろというレベルになりますので、MPM近辺3日間の引け(カレントの単利ですいません)を俺様備忘メモのために再掲しておきましょう。

11/10:

2年:▲0.265%
5年:▲0.185%
10年:▲0.050%
20年:0.385%
30年:0.510%
40年:0.610%


9/16:

2年:▲0.270%
5年:▲0.205%
10年:▲0.040%
20年:0.450%
30年:0.555%
40年:0.640%

9/20

2年:▲0.270%
5年:▲0.210%
10年:▲0.060%
20年:0.405%
30年:0.505%
40年:0.585%

9/21(MPM結果出た後の引けな)

2年:▲0.230%
5年:▲0.175%
10年:▲0.030%
20年:0.415%
30年:0.510%
40年:0.595%

・・・・・・・・・・20日が基準日だと思ったらイメージするカーブの線なのですが、16日からだと考えるとまだ5bpほどありますし、10年も5bpあるということでして、さあ根性を入れて超長期を叩くのです!今すぐ!と言いたいところですが(ただの不謹慎)、まあ日銀の姿勢を試すために下を叩くほど売れる物がないし、金利上がれば買いが来る(しかも超長期金利プラスですからねえ)しという事ですから別に期待はしないで待ってます。


○米国連銀高官発言は週末チェックしておくあるね

昨日はこんなヘッドラインが
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-lacker-idJPKBN1352JB
Business | 2016年 11月 11日 05:06
米利上げペース、財政刺激実施なら加速=リッチモンド連銀総裁

ラッカー先生はタカ派芸人枠なので平常運転。


http://jp.reuters.com/article/bullard-rate-idJPKBN1351W2
Business | 2016年 11月 11日 00:14 JST
米経済、2─3年は低金利環境 当面1回の利上げ適切=セントルイス連銀総裁

ブラード先生は新しいネタに飛びつくのが仕様になっている面白枠(ただしQE2の時は「複数均衡論」におけるescape velocity的な説明をQE2実施のための根拠として持ち出してきまして大当たりすることもあるのですが、当るときと外れる時の差が激しくて面白いオッサンという感じです。1回利上げしたらもう要らねえよというのはSEPで示されている変態ドットとして著名ですが、今回は・・・・・・・・・・・

『そのうえで「新たな段階への移行が見られれば、金融政策を調整する必要がある」との考えを示した。』(上記URL先より)

とか言っているのですが、はてさてどうなのかというのは本チャンを見ないと何ともで、斜め読みしようとしたがイマイチ斜め読み出来ない(というかトライしてまとめきれずに時間を空費したorz)ので自分への宿題。

https://www.stlouisfed.org/news-releases/2016/11/10/bullard-safe-real-interest-rates-fed-policy
St. Louis Fed's Bullard Discusses Safe Real Interest Rates and Fed Policy




○相変わらず政策の建付けを理解していない人がいるという「主な意見」

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2016/opi161101.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2016年10月31日、11月1日開催分)

・経済物価情勢の話はまあ普通の見解なので基本パスですが

まずは『(経済情勢)』から。

『・消費性向の低下が無限に続くことはないので、この反転が力強い景気回復の鍵である。また、労働需給はひっ迫しているが、名目賃金の増加は、これに見合っていない。これらが、当面の金融経済情勢の最大の注目点だと考える。』

でまあこれが改善されるされると言われながら改善されないという事実。

『・現在の日本経済の最大の懸念材料である円高は修正局面にあり、FRBが 12 月に利上げに踏み切れば、これまでの円高トレンドから円安トレンドに移行すると予想される。』

何という人頼みという感じですが、日銀の思いがこんな感じ(思いというより祈りですか)である訳ですから、実はトランプ大統領で米金利上昇ドル高ヒャッハーとかなっていると日銀ウハウハの巻で、円安(やり過ぎるとラグ持って消費がガタ落ちするからやり過ぎても困る)になってくれると日銀って今のYCC政策の運営が非常に楽になるのですが、円高に振れたりすると金利下がる方を止めるのが難しい上に、そもそもその場合の背景を考えて金利低下を止めるべきか的な話になったりすると更に話がややこしくなるので、政策の枠組みにヒットしてくる問題。

などという背景をくっきり見せてくれる良い意見ですね!!!!!

『(物価)』でござる。

『・消費者物価の前年比は、需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれ、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。2%程度に達する時期は、2018 年度頃になる可能性が高い。』

『・「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、足もと幾分弱まっているため、達成時期は後ずれして 2018 年度頃になる可能性が高い。


『・予想物価上昇率や需給ギャップはやや長い目でみれば上昇傾向にあり、石油価格等に反転の兆しがみられている。先行き、物価押し下げ圧力が徐々に剥落し、物価上昇率が高まっていくことが期待される。』

賛成派のうち5名の見解が出ているがいずれも何か棒読みチックな感じですな。

『・予想物価上昇率の先行きを慎重にみていることなどから、見通し期間中に物価は2%に達しないと考えている。


『・物価上昇率、予想物価上昇率ともに、展望レポートの見通し期間を越えても、比較的近い将来に2%程度の水準に達することは見込まれない。』

多分前者が佐藤さんで後者が木内さん。とりあえず悪態入れてみましたという感じですね!!!!


・金融政策に関する意見の所はそこそこオモロイ

『U.金融政策運営に関する意見』の所ですけど、最初の『(金融緩和の継続)』はまあ何だかどうでも良いので割愛してその次の『(イールドカーブ・コントロール)』からがまあまあ。

『・イールドカーブ・コントロールについて、長期金利の操作は新たな試みであったが、金利の変動はごく限られた範囲内にとどまっており、枠組みはうまく機能している。』

固定金利相場を志向しているんだったらそれで良いのですが、本当は「2点を止めておくと全体のカーブもある程度コントロールされるでしょう」という趣旨の筈なので、全面に渡ってフリーズしているのは「枠組みはうまく機能している」とは言い難い。市場が死んじゃうと次に金利水準を変更しないといけないときに大変ややこしい事になるのだが、こういう認識だと正直困る。

『・長期国債の買入れ額については、これまでと同様、保有残高の増加額として年間約 80 兆円をめどとしつつ、10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう買入れを行うとの方針を継続することが適当である。


えーっとですね、手元でちゃちゃっと計算したら、今って月間の買入が(1年以内を除いて)月平均で9.05兆円程度(買入単価を物国変国105円、その他は大体101円位で見ています。105円くらいで見るともうちょっと多い)になっていまして、来年の日銀保有国債の償還が額面で39.8兆円あるので、差分を取るとどう見ても69兆円(買入単価をもう少し上で見てもせいぜい72〜73兆円とか)になるんですけど・・・・・・・・・・・・・・(計算根拠は今日書いている時間がないので今度書くけど別に難しい計算している訳ではないから皆様も計算済みと思う)

『・長期国債の買入れ額の「保有残高の増加額年間約 80 兆円」という「めど」については、日本銀行の政策意図に対する無用の誤解を避けるため、今回の決定会合ではこれを維持したうえで柔軟に運用することが適当である。


順序変えましてちょっと後の方。

『・現状程度の買入れペースを継続すると、ストック効果により長期金利は一段と低下するので、金利水準の維持には買入れ額の調整が必要になるとみている。操作目標は金利であるから、公表文中の約 80 兆円のめどは先行き適宜プレイダウンしていけばよい。』

適宜プレイダウンというよりはさっくり無くしてしまった方が良いとは思うのですが、その前に量の話をしなくしていく、というのは重要ですよね。


という中で相変わらず政策の枠組みを理解していないことを全力で表明する政策委員がいるのですが、政策枠組み理解しないで議案に賛成とか馬鹿の人でいらっしゃるのでしょうか??????

『・新しい枠組みは、金利と量について非対称な対応をとることが前提と考えている。正のショックに対して量を固定すれば当然金利は上昇するが、この時、ゼロ%に維持すれば金融政策は緩和的になる。逆に、負のショックがあれば金利は低下するが、この時、金利をゼロ%に止めようとすれば、金融政策は引 き締め的になる。そうならないように、80 兆円の買入れを維持して金利の低下を許容するべきである。』

それじゃあイールドカーブコントロール(長期金利操作)にならないので、そうすべきならそういう提案をして頂きたい。何でしたらアタクシが案と作ってみますがこんな感じでは?

”マネタリーベースガ年間80兆円ペースで増加するように金融市場調節を行う。なお、長期金利(10年物金利)が0%程度を超えて大きく上昇しないように、長期国債の買入を行うこととし、この時にはマネタリーベースの増加ペースの拡大を容認する。”

しかしまあしかし何かこの大先生大丈夫かという感じですな。いやはや。


気を取り直してもう少し鑑賞。

『長短金利操作付きQQEは、市場にとっても初めての政策であるため、引き続き市場と対話を重ね、状況を注視する必要がある。先行き不確実性の高い状況が続く中、本行自身が無用に市場のボラティリティを高めないことも非常に重要である。』

誰に対するイヤミなのでしょうか(ニヤニヤ)。

『日本銀行が国債買入れ残高の増加額を徐々に減少させるとの観測が広まる中でも、市場は安定を維持している。こうしたもとでは、量のコントローラビリティが不確実な「イールドカーブ・コントロール」ではなく、資産買入れ残高の増加額に操作目標を設定し、それを段階的に着実に減らしていくことが、資産買入れの持続性と、市場の安定性をより高めることに貢献する。それを通じて、実質長期金利を安定的に低位に維持し、過去の政策で積み上げてきた緩和効果をしっかりと確保していくことが最も重要である。』

これ木内さんっぽい気がするのですが、「日本銀行が国債買入れ残高の増加額を徐々に減少させるとの観測が広まる中でも、市場は安定を維持している」っていうのは単に市場介入ガチガチに実施されたというのが9月末の輪番変更の時に受けた印象なので、本格的にテーパリングヒャッハーという場合にどうなるのかは全然わからん話だと思います。

まあ言いたい理屈も分からんではないが、最初の部分を理由にするのは筋悪な議論だと思う。


・あとは少々

あとはまあはあそうですかという感じの話なのですが、ちょっと面白かったのを2つほど。

『・追加緩和の要否の判断基準は、「物価安定目標の達成時期の見通しが後ずれするか」ではなく、「2%に向けたモメンタムを維持するために必要かどうか」である。』

適合的な予想インフレ形成してるんだから後ズレたらモメンタム悪化しませんかねえ(ニヤニヤ)。

『・マイナス金利政策に対する漠然とした不安は、家計のマインド面を通じて悪影響を及ぼし得るため、一般国民に向けて丁寧に政策を説明すべきである。



そこは丁寧に説明するんじゃなくて撤回ですよ撤回。YCCが効くんだからマイナス10の所だけゼロ%にしたってそんなに悪影響ないんじゃないですか!!!!!!!!(提案)


とまあそんなところで。







2016/11/10

お題「トランプとな(色々な現象を備忘メモしておいただけだ)/総括検証補足ペーパー今回は調査統計局の作成ですな」

まだ木曜の朝だというのに何という疲労困憊感という所ですが、厭債害債さんがエントリーを投下されていますのでまあ読めと。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201611/article_1.html
トランプ大統領

ところで最近実質金利というのがお得意のモーサテ米国某コメンテーター様ですが「財政支出が出ると実質金利が下がりますので米国金利が上昇」とか何を言ってるのかさっぱり分からないのですが慣れない話はしない方が良いと思います。

・・・・・・などと悪態をつきましたが、別の方の講釈も何かこう混乱していますし、そらまあみなさん混乱する罠としか申し上げようがない。


○ということでトランプショックと思ったら米国株高債券安ドル高になっとるのだが(記念メモ)

・為替とか米国債券とか

時系列に見ると中々味わいがある。

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1DA25C
Investing | 2016年 11月 9日 12:24 JST
〔マーケットアイ〕外為:ドル一時101円台に下落、トランプ氏優勢踏まえた弱地合い継続

というのが東京で昼飯時間に一気にトランプ優勢とかになって株は下がるわ為替が円高だわ、
ってな感じになっておった訳ですな。

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1DA3W5
Investing | 2016年 11月 9日 17:23 JST
〔マーケットアイ〕外為:ドル103円を回復、トランプ氏の勝利演説で「過激発言」なりひそめ安心感か

海外時間になって米債金利長い所ボコボコ上昇するわ為替は戻るわでナンジャソラとか思っておりましたらそのうち欧州金利も連れて(かどうか知らんが)上昇するの巻。

http://jp.reuters.com/article/dlr-regains-ground-in-early-ny-trade-idJPKBN1342ZN
Business | 2016年 11月 10日 01:50 JST
ドル104円半ばに回復、トランプ氏政策中期でプラスとの見方も浮上

でまあ人が寝ているうちにいつの間にやら「トランプ氏政策中期でプラスとの見方も浮上」っておまいらトランプがリスクでブラックスワンとか言ってたのは何だったのかと小一時間問い詰めたいのだが、まあその程度には何が何だか分からなくなっているのでしょうなあ。でもって朝の時点で105.80とかのレベルな訳ですが。

#だがトランプがドル高容認するとも思えないのだが・・・・・・・・・・・・・


でもってUST
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1DA682
Markets | 2016年 11月 10日 04:35 JST
UPDATE 1-米10年債入札は需要さえず、トランプ氏勝利で歳出拡大懸念

『[ニューヨーク 9日 ロイター] - 米財務省が実施した230億ドルの10年債入札は、需要が低調だった。背景には、共和党ドナルド・トランプ氏の大統領選勝利で、財政支出が膨らむとの懸念がある。応札倍率は2.22倍と、2009年3月(2.14倍)以来の低水準となった。』(上記URL先より)

ということで元々(非常におまえが言うかと思うが)トランプ先生バブル懸念がどうのこうのとか仰せだったりする割には財政出しますよとかいう人らしい(らしいというのは結局このオッサン実際に始まらないと何を始めるかがさっぱり分からんので)ですなあって所ですか。

でまあ取りあえず足元ドルが上がっていますし雨株も上がっているのでそれほどビビらないのですけれども、これ夕方見ている時はそこまでドル高でも雨株高でも無かったので、まさかの米国トリプル安コース来たらどうすんだこれとか密かにビビッておりまして、何か一晩開けてこの状況なのでとりあえずは一安心ではあるのだが、モーサテ見てる(聞いている)と東京の方はまあ淡々と話をしているのですが、米国の人が急にご祝儀ヒャッハーモードになっているのを見ていてこれ一気に逆もあるでとやはりそこはかとない不安感がぬぐえないのでありました。


やたらロイターからの引用ばかりで恐縮でございますが(さーせん)
http://jp.reuters.com/article/usa-bonds-tips-idJPKBN1342T7
Business | 2016年 11月 10日 00:35 JST
トランプ氏勝利でインフレ懸念、米BEI昨年7月以来の高水準

『[ニューヨーク 9日 ロイター] - 米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利したことを受け、米債券市場ではインフレ期待指標が上昇した。トランプ政権下で財政規律が緩み、通商政策の保護主義的な色合いが強まるとの見方から、インフレ懸念が高まっていることを示唆した。普通国債とインフレ指数連動債(TIPS)の利回り格差であるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は、5、10年物が2015年7月以来の水準に上昇した。』(上記URL先より)

保護主義的だったりモンロー主義チックだったりした時には供給サイドドリブンのインフレ圧力もありそうですが、その場合って米国のトレンドグロースも低下しそうなので最終的に金利がどういう形になるんじゃろとか、でも本当に低成長やや強めのインフレという図になるのか、何かもうちょっと違う気もしますし・・・・・・・・・・



・米国金融政策絡み

でもって金融政策ですが、9月にこんな記事がありましたのをサルベージしておきますと・・・・・・・・・

http://www.asahi.com/articles/ASJ9F46VMJ9FUHBI00T.html
トランプ氏「イエレン氏は恥を知れ」 低金利政策を批判
ワシントン=五十嵐大介 2016年9月13日23時58分

『トランプ氏は「お金は実質的にタダで、今の市場は偽物だ。新しい人が大統領になり、利上げをしたらどうなるか。株価がどうなるか見てみるがいい」と話し、「低金利は預金者を最も苦しめる」「FRBに独立性はない」などと持論を展開した。トランプ氏は今春、大統領に就任した場合はイエレン氏を交代させる可能性に言及。一方で、「最良なのは金利がとても低いことだ」として低金利で借りたお金をインフラ投資などに使う考えを示し、今回と矛盾する発言をしていた。(ワシントン=五十嵐大介)』(上記URL先より)

確かにこれはトランプ先生何をいってるのかワケワカランという感じですが、こういう風になってイエレン議長も12月利上げってどうするんでしょうかねえと。まー純経済的に見たら元々次回の利上げくらいは無問題(問題なのはその先の利上げパス)な訳ですし、その上この先「出方を見守る」ということで市場が地蔵的になってどちらかというとインフレとか財政拡大とかの話がネタになる位なら涼しい顔して利上げコースなんでしょうが、トランプ先生が利上げしろとか言ってる中でトランプ大統領爆誕を受けて利上げしたみたいな12月利上げってちょっとシャクですよねえどうするんでしょうイエレンさん。

いやまあ「政治イベントが終わって特段経済に対する変な影響もなかったので予定通り12月に利上げします」というのがごくごく普通の動きだとは思うのですが、ここで変な意地張ってくれるとそれはそれでボラが高まるお洒落な話になりますなあと思っただけのことです。


もうめんどいからロイターばっかりですが(手抜き)
http://jp.reuters.com/article/us-moneymart-see-dec-rate-hike-even-afte-idJPKBN1342TD
Business | 2016年 11月 10日 00:38 JST
米12月利上げ観測再燃、トランプ氏勝利でも予想確率67%に上昇

『[ニューヨーク 9日 ロイター] - 米短期金利先物相場は、米大統領選で共和党ドナルド・トランプ氏の勝利を受けた当初の上げ幅を縮小、米連邦準備理事会(FRB)による12月利上げ観測が再び高まっている。米短期金利先物12月限は1.5ベーシスポイント(bp)高の99.51。CMEのフェドウォッチによると、市場は12月利上げを約67%の確率で織り込んでいる。オーバーナイトの取引では約50%まで低下していた。』(上記URL先より)

こっちは記事の通りで東京の日中は米国金先市場でインプライする12月利上げ確率が盛大に下がってげげげのげとか思っていたのですが、結局その後は上記の一連の流れと同様にやっぱ利上げじゃんという事になった次第。


・なお円金利ェ・・・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1DA2HM
Markets | 2016年 11月 9日 15:12 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、30年債一時10月4日以来の0.465%に低下

『<15:09> 国債先物は続伸、30年債一時10月4日以来の0.465%に低下

長期国債先物は続伸。米大統領選の開票が進むにつれてトランプ氏勝利の可能性が高まったことから急激な円高・株安とリスクオフの流れになったことで、国債先物は海外勢の需要を巻き込みながら買い上げられた。中心限月12月限は一時10月7日以来の152円台の高水準を付けた。』(上記URL先より)

ということですが、平均株価1000円安とかやらかしてドル円102円割れとかやらかす中で20年は0.34%とか30年0.465%とかまではやっていたのですが、結局売りも出たりして高値水準から1毛ほど戻されて引けているので、平均株価が900円下げているのに20年1毛強30年2毛強とか安定の円金利過ぎるこの展開は何なのという感じではあります。

まあトランプ受けてどうしましょとか言ってたら米国の方ではまさかの株上昇ドル全戻し以上に戻って10年USTは2%とかお洒落な展開で、そこで30年入札とか素敵な展開になって昨日考えていた状況と全然違うじゃんという感じですが、まー金利上昇方向は日銀買入がいますし、10年には0%のYCCの誘導目標(ただし0%で機械的に止めるかどうかは無保証)があるしで、金利上昇方向にも限界はあるんでしょうが、中々面白いタイミング(不謹慎)な所で入札となりましたなあということで。

とか何とか面白がっているのですが、これで今日ろくすっぽ動かないで淡々と入札して淡々とセカンダリーを通過して終わったりすると益々円金利ェとなりそうでそれはそれでオソロシイ。



○まあ政策効果の説明は胡散臭くなるのは仕方ない面はあるのですけれども・・・・・・・・・・・・・

ということで出遅れましたが総括検証補足ペーパーシリーズ第三弾来ました。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/wp16j11.htm/
「総括的検証」補足ペーパーシリーズ(3):「量的・質的金融緩和」導入以降の政策効果
―マクロ経済モデルQ-JEMによる検証―

でもって今回実は面白いなあと思ったのは、過去2回が

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2016/rev16j17.htm/
「総括的検証」補足ペーパーシリーズ(1):「量的・質的金融緩和」の3年間における予想物価上昇率の変化

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2016/rev16j18.htm/
「総括的検証」補足ペーパーシリーズ(2):わが国における自然利子率の動向

とあるのが日銀レビューシリーズで出ていて書いているのが企画局のスタッフペーパー(ただし個人的見解という文言が無いので日銀企画局としてのペーパー)だったのですが、今回はもうちょっと詳しいバージョンにあたるワーキングペーパーシリーズで出ていて、書いているのが調査統計局になっている(これまたスタッフ謹製ですが個人的見解という文言は無いので調査統計局としてのペーパー)辺りが中々味わいを感じます。

ということでQ-JEMでの検証来ましたよという所ですが、まずは上記URL先の『要旨』から。

『日本銀行が「量的・質的金融緩和」を導入してから3年余りが経過した。本稿では、「量的・質的金融緩和」導入以降の政策がわが国の経済・物価動向に与えた影響を定量的に検証するため、日本銀行のマクロ経済モデルQ-JEMを用いたシミュレーション分析を試みる。』

うむ。

『ここでは、仮想的なシナリオとして、一連の金融緩和策が行われていなかった場合を想定し、その場合の経済・物価情勢と、実際の経済・物価情勢との差を金融緩和の効果として影響を推計した(カウンターファクチュアル・シミュレーション)。具体的には、(1)名目長期金利の低下と予想物価上昇率の変化による実質金利の低下と、それが株価、為替を通じて及ぼす影響についてのシミュレーションを実施したほか、(2)実質金利の低下による影響のみならず、この間の株価や為替の変動が全て金融緩和によるものであると考えて行ったシミュレーションを実施した。また、シミュレーションの対象時期については、「量的・質的金融緩和」が実際に実行された時期と、そうした予想が発生した時期に金融資本市場や予想物価上昇率が早めに変化していた可能性を考慮して、複数の時期を設定した。』

でまあ先日から申し上げておりますように「実質金利の低下による影響のみならず、この間の株価や為替の変動が全て金融緩和によるものであると考えて行ったシミュレーションを実施した。」というのが何ともとしか申し上げようがない所。

『シミュレーションによると、多くのシナリオでは、「量的・質的金融緩和」導入以降の政策がなければ、CPI(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は引き続きマイナスまたはゼロ%近傍で推移していたとの結果が得られた。』

・・・・・(゚д゚)

ということで全文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16j11.pdf
日本銀行ワーキングペーパーシリーズ 「総括的検証」補足ペーパーシリーズB
「量的・質的金融緩和」導入以降の政策効果
─ マクロ経済モデルQ−JEMによる検証 ─

でまあここの前提部分ですけれども、本文の『1.はじめに』の所を読みますとですな(本文2ページの辺り)、

『こうした点を踏まえて、本稿では、「量的・質的金融緩和」導入以降の政策が、どの程度、経済・物価情勢を好転させたのかについて、日本銀行のマクロ経済モデル「Q−JEM(Quarterly Japanese Economic Model)」を用いて、定量的な分析を行う1、2。Q−JEMは、200 本以上の方程式から構成される大型のマクロ経済モデルであり、過去平均的な日本経済の姿を描写できるよう実績のデータに合わせて推計されたものである。そのため、金融政策の変更に伴う実質金利などの各種の金融変数の変化が、わが国の経済・物価にどの程度の影響を及ぼしたかについて定量的な分析を行う上で適したモデルとなっている3、4。 』

『具体的には、仮に 2013 年第1四半期以降、「量的・質的金融緩和」導入以降の政策が行われていなかった場合を想定した仮想的(カウンターファクチュアル)なシナリオを設定し、この間の経済・物価がどのように推移したかについてシミュレーションを行う。当然ながら、金融緩和が行われなかった場合には、それに応じて経済・物価が、現実のデータと比べて下振れていたことが想定される。その際の下振れの度合いを検証することによって、逆算的に金融政策の効果を計測することが可能となる。』

『なお、過去3年余りの間には、原油価格の下落や、消費税率引き上げ後の需要の弱さ、新興国経済の減速とそのもとでの国際金融市場の不安定な動きといった、金融政策以外のショックも発生していた。上記のカウンターファクチュアル・シミュレーションでは、こうした影響は所与のものとして扱われており、その結果として、「量的・質的金融緩和」導入以降の政策による「純粋な」経済・物価の押し上げ効果を評価することが可能となっている。』

という理屈になっていますが、途中を全部すっ飛ばして『3.3 結果のまとめ』を見ますと(本文11ページ)、

『上記の結果をまとめたものが、図表8である。政策効果のレンジをみると、需給ギャップについては、2014 年度が+0.4%ポイント〜+3.2%ポイント、2015 年度が+0.6%ポイント〜+4.2%ポイントと、大きな幅がある。また、CPI(除く生鮮食品・エネルギー)前年比への政策効果をみても、2014 年度が+0.2〜+0.9%ポイント、2015年度が+0.3〜+1.5%ポイントとなっており、やはり幅がみられる。』

ふむ。

『これらは、「量的・質的金融緩和」は過去に類をみない大規模な金融緩和策であったため、その導入前後における予想物価上昇率や為替レート、株価の変動がそれだけ大きかったことを示しており、結果は幅をもってみる必要がある。』

『もっとも、仮想的なシミュレーション結果におけるCPI(除く生鮮食品・エネルギー)前年比のパスの推移をみると、シミュレーションAにおける試算1の結果を除いてみれば、残りの3つのシナリオではマイナスまたはゼロ%近傍での推移となっている。これは、「量的・質的金融緩和」導入以降の政策が行われていなかったならば、「物価の持続的な下落」という意味でのデフレから脱することはできていなかったことを示す。』

ん??

『勿論、これらの結果は、シミュレーションを行う際の各種の前提、データ、マクロ経済モデルの特性などに依存したものである点には留意が必要である。特に、各シナリオでは、この間の予想物価上昇率や名目長期金利、為替レート、株価の変化が、金融政策によってもたらされたものと想定したが、実際には、他の外的な要因も影響を与えていたと考えられる17。』

為替とか長期金利はともかく、予想物価上昇率は消費増税のファクター無茶苦茶大きかっただろうと体感的には思えるのですけれども、脚注17を見ますと・・・・・・・・・・・・・

『17 具体的には、この間に行われた大規模な公共投資などの政府支出、2014 年における消費税率の引き上げ、海外経済の動向、原油価格の動向、その他金融資本市場固有の要因等、といったものが挙げられる。』

としらっとこの辺に微妙な言及はありまして、「実際には、他の外的な要因も影響を与えていたと考えられる17。」という一文を入れないで堂々と大本営発表を出す程には調査統計局様としては図々しくなれないという所でしょうか。

『そのため、推計された政策効果は、局面に応じて過大にも過小にもなり得る。』

まあどう見ても過大推計じゃろと思いますが。

『また、予想物価上昇率については、他の経済指標と比べて、観測上の誤差は相対的に大きいとみられる。さらに、本分析で用いたマクロ経済モデルQ−JEMは、過去の実績データに合わせて推計したものであるため、近年の構造変化を十分に捉えきれていない可能性があるほか、マクロ経済モデルの性質上、経済変数間の非線形的な関係を描写することは十分にできない面がある。 』

という事なのですが、であれば折角なのですから予想物価上昇率の所は何ぼ何でも消費増税効いているだろと思うので逆に予想物価上昇率を外生変数にして分析したらどうなるのかを見たい気はするのですが、それをやったらそもそも金融政策が予想物価上昇率に効いていないという前提で計算するのでダメですかそうですか・・・・・・・・・・・・・・とは思いますが、全部を政策効果にしないで計算するとどうなるのかは見てみたいですの。


ただまあ何ですな、こういうの使って「この通り効きました」とか言われても留保条件付きまくりというだいぶ怪しい内容であっても、時間の経過とともにそういう留保条件の話はすっかりスルーして「QQEはこのように効いてやらなかったら全然酷い事になっておりました(キリリッ)」という結論部分だけが独り歩きするというのがこの手の分析のオソロシイ所でして、もうちょっとこの辺りは虚心坦懐にできないもんかと。表に出すと大騒ぎになるから出せないというのであれば、とりあえずは中でお蔵入りにしておいて、王朝変わって暫くしてから前の正史を編纂する中国じゃないですけれども、ある程度ほとぼりが冷めてから出すでも良いとは思うのですけど、あまり手前味噌成分の強い分析をどどーんと出すと後々の人たちをミスリードするんジャマイカとそこは懸念される所ではあります。




2016/11/09

お題「市場メモ/9月議事要旨でロジックを再確認するがやっぱり微妙なロジックである」

トランプ相手にどんだけ苦戦してますねんと思いますが兎に角大統領選ヒャッハー!

○市場関連メモ雑談

・コール市場残高は

10月分
http://www.boj.or.jp/statistics/market/short/call/call1610.htm/

9月分
http://www.boj.or.jp/statistics/market/short/call/call1609.htm/

ということで定例の残高比較。左が有担保コール、右が無担保コール。

平残[出し手:全市場]

都銀等* 0 62
地銀 349 9,841
信託 16,877 46,920
(うち投信)14,461 35,123
外銀 0 423
地銀2 319 1,286
信金中金・信金 1,206 260
農林系統   0 3,384
証券・証金** 0 90
生損保   15 81
その他とも計 18,766 63,200

9月数値が

平残[出し手:全市場]

都銀等* 0 68
地銀 358 10,468
信託 17,682 40,894
(うち投信)14,815 32,056
外銀 0 242
地銀2 289 1,319
信金中金・信金 912 270
農林系統 0 3,922
証券・証金** 0 50
生損保  5 70
その他とも計 19,247 58,134


平残[取り手:全市場]

都銀等* 0 6,894
地銀 1,997 19,369
信託 423 11,007
外銀 0 2,541
地銀2 487 2,599
信金中金・信金 300 1,952
農林系統    0 0
証券・証金** 1,996 17,021
生損保 0 0
その他とも計 5,378 63,200


9月が

平残[取り手:全市場]

都銀等* 0 6,234
地銀 1,742 14,179
信託 466 14,775
外銀 0 1,950
地銀2 402 2,697
信金中金・信金 340 1,798
農林系統     0  0
証券・証金** 2,401 14,012
生損保      5   0
その他とも計 5,505 58,134



でして、8月数値が(めんどいので合計だけ出すと)合計で有担保19,102無担保58,371なので、一応無担保コール先月増えてるやん!!ということですが、マクロ加算の掛け目が9月16日から拡大されたので、その結果ゼロ金利適用残高の市場内での偏在が発生してそれを均す取引が増えた、ということにしておけば良いのでしょうかね(平残ベースなので9月だとマクロ加算で増えた裁定取引分は半分しか跳ねない)。無担保コールの出し手の伸びがほぼ信託・投信になっていまして、その反対側が地銀の取りと信託の取りになっていて、基本的にはマクロ加算加算のゼロ金利適用が余った部分での裁定取引に対して信託の受託部分(投信も含め)が自動打ち込みマンなので資金出してきましたという事でしょうかね。

でまあ出しの方で信託、投信以外が殆ど増えていないという状況ですので、あくまでも自動資金放出マンが自動資金放出をしているだけの話で、資金取引市場の市場機能を円滑化させるような資金ディーリングちっくな動きが入っている訳でもなんでもないのはいつも通りという当たり前の結果が読めるかと思います。


・10年入札とな

毎度のロイターさん
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1D92HU
Markets | 2016年 11月 8日 15:15 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が小反発で引け、長期金利は2週ぶり-0.070%に低下

『<15:10> 国債先物が小反発で引け、長期金利は2週ぶり-0.070%に低下

国債先物中心限月12月限は前日比2銭高の151円80銭と小反発して引けた。前日の海外市場で、米大統領選への懸念が和らぎ、安全資産の米債が下落した流れを引き継いで、朝方は売りが先行した。事前に警戒感があった10年債入札が順調な結果になると上昇に転じた。しかし、米大統領選の行方を見極めたいとして全般に見送りムードが広がり、狭いレンジでの値動きに終始した。現物市場は長期ゾーンを中心にしっかり。入札を順調にこなしたことで、短期筋の買い戻しが入った。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.5bp低いマイナス0.070%と10月26日以来、約2週ぶりの水準に低下した。』


『<13:05> 10年債入札結果はしっかり、国債先物が反発

財務省が午後0時45分に発表した10年利付国債の入札結果で、最低落札価格は101円54銭(最高落札利回りマイナス0.055%)となった。また、平均落札価格は101円55銭(平均落札利回りマイナス0.056%)で、落札価格の平均と最低の開き(テール)は1銭と前月債(2銭)に比べて縮小した。応札倍率は4.35倍と前回(3.82倍)を上回った。

市場では「入札結果はしっかり。相場のボラティリティーが小さい中、午前の段階で、10年債利回りがマイナス0.050%と最近形成したレンジの上限に近づいて入札を迎えたため、一定需要があったのだろう」(メリルリンチ日本証券・チーフ金利ストラテジストの大崎秀一氏)との見方が出ている』(以上上記URL先より)

▲5bpで最近のレンジの上限で▲7bpで2週間ぶりの水準とか中々泣けて来ますが、入札は

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20161108.htm

6.価格競争入札について
(1)応募額 9兆4,221億円
(2)募入決定額 2兆1,657億円
(3)募入最低価格 101円54銭(募入最高利回り)(-0.055%)
(4)募入最低価格における案分比率  45.8142%
(5)募入平均価格  101円55銭(募入平均利回り)(-0.056%)

ということで上記URL先の記事にもありますが応札は多いわテールは1銭だわでお約束のように後場上昇とかもうねという感じでございますが、まあ何も外部環境に変化がないとこの有様でしょうし、少々の変化程度では何も動かない訳でして、まあ基本は物価でしょうが、物価は戻って来るのは来年の話なのでそこでは何も期待できませんですから、海外要因というか為替市場辺りがヒャッハーと動いてくれた所でどうなるか、というのが市場にも日銀オペにも試練到来になるんでしょ、という意味では本日の大統領選挙で上下どっちでもヒャッハー相場が起きてくれると色々と面白いかも知れませんな(不謹慎)。


・CP買入

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba161108.htm
CP等買入 6,065 2,950 -0.001 -0.001 78.9

前回が3500億円の買入予定で6171億円の応札で足切、平均ともに▲0.1bpなのでほぼ前回並みになっていまして平常運転にも程があるのですが、もとより発行の方がパッとしませんので市場の方も市場の体を為していませんという状態で、このCP買入いつまで続けますねんという感じではありまする。


・市場と別だがエバンスェ・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-evans-idJPKBN1331RQ
Business | 2016年 11月 9日 01:54 JST
インフレ加速一段の確信望む、低金利時に財政投資を=米シカゴ連銀総裁

『[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は8日、インフレ率の上昇が継続するとの一段の確信を得られれば、利上げを「心地良い」と感じられるようになるとの考えを示した。FRBが注目するインフレ指標は足元で1.7%まで高まっており、「目標に近づいている」と指摘。「2%の目標に向かっているとのさらなる確信が得られれば、金融政策の正常化に対し一段と前向きになれる」と述べた。』(上記URL先より)

あらそうですかと思ったがシカゴ連銀のサイトに関連スピーチとかアップされていないので良く分からん。



○9月決定会合議事要旨ネタの続き(すいません)

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2016/g160921.pdf

『Z.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』以下を改めて鑑賞。

・オーバーシュート型コミットメントについて

『以上の議論を踏まえて、委員は、政策の方向性について議論した。委員は、2%の「物価安定の目標」を実現するためには、弱含んでいる予想物価上昇率を2%に向けて引き上げていく必要があるとの見解を共有した。』

というのは冷静に考えれば当たり前で、予想物価上昇率が2%で安定して推移するようにならないと物価目標が達成できないのですから、これ一種の循環論法ですな(^^)。でもって問題はですなあ・・・・・・・

『大方の委員は、わが国では、予想物価上昇率の形成において、依然として「適合的な期待形成」の役割が相対的に大きいことを踏まえ、フォワード・ルッキングな期待形成を強める手段を導入する必要があるとの認識を示した。』

というのも良く良く考えれば訳の分からん理屈で、適合的な期待形成の役割が大きいのにフォワードルッキングな期待形成を強めてもそれは投入する政策の割に効果が小さいという話になるように思えます。

『その方策として、多くの委員は、「物価安定の目標」に対するコミットメントを強化することが適当であるとの見解を共有した。そのうえで、複数の委員から、具体的には、消費者物価上昇率の「実績値」が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続する、いわゆる「オーバーシュート型コミットメント」が適当であるとの意見が示された。』

ということで無理矢理な理屈には成って居るのですが、ここでポイントとなるかなあと思うのは明らかに「早期達成」の部分が欠落していることで、そらまあ適合的な期待形成の役割が大きいのですから、そうであれば物価がある程度上がってこないとフォワードルッキングな期待形成が効いてこないので、早期達成はそもそも無理、という話でして、今回さすがにその部分を事実上諦めた(ただし諦めたというとそれこそ期待を下げてしまうので諦めたとは言わない)わけですな。

『これらの委員は、金融政策の波及ラグを考えれば、実際の物価上昇率が2%を超えるまで金融緩和をコミットすることは異例の措置であるが、それだけに家計や企業の予想形成に働きかける効果は大きいと述べた。』

『このうち、ある委員は、実績値に基づくコミットメントは、2001 年に日本銀行が導入した「量的緩和政策」においても用いられたが、当時は消費者物価上昇率の実績値が安定的に0%以上となるまでという内容であり、それとの対比でも安定的に2%を超えるまでというコミットメントは強力であると述べた。』

とは言ってますが、実際問題として将来物価が結構なモメンタム持って上がりだしたら(たぶんそれは円安財政インフレみたいな碌でもない時だと思うが)当然ながらこのコミットメントは無かった事にされるのでして、本当の本当に物価がホイホイ上がると思ったらこんなコミットメントはできません。とここまでゴリゴリ詰めて考えると実はこういうコミットメントは中央銀行が物価が当面上がらないと思っているというメッセージを与える事になるんじゃないかという説というか暴論を唱えてみたいのですがどうでしょうかねえ。

『別の委員は、オーバーシュート型コミットメントは、「物価安定の目標」に対する注目を高め、フォワード・ルッキングな期待形成の要素を強めることで、予想物価上昇率の引き上げに寄与するとの見解を示した。』

これ本当にそう思うならイールドカーブコントロール政策を同時に投入することによってどうみてもそっちの方が注目を集める(現実問題としてYCCについては他市場の方々の含めて注目されたけれどもオーバーシュート型コミットメントの方が「緩和政策の強化」であるというロジックって全然周知されていないのではないでしょうか)ので、YCCの導入は待った方が良かったんじゃないですかねえ(と思うけど、まあ今回の展望レポートでのべた降りとセットで考えるとYCCを入れるのは9月しかありえなかったので致し方ない)。もっとオーバーシュート型コミットメントの方を宣伝すべき。

『また、他の委員は、人々の物価観を変えるのは簡単ではないが、オーバーシュート型コミットメントは、「物価安定の目標」に向けた強い意志を示す有効な手段であると述べた。』

問題はこのコミットメントが他市場に全然周知されていなさそうな所なんだが。

『ある委員は、このような強力なコミットメントを導入する場合、副作用も考え得るが、予想物価上昇率が先行き緩やかに高まっていくというメインシナリオのもとでは、インフレが加速する可能性はかなり限られると述べた。そのうえで、この委員は、万が一、予想物価上昇率が急速に高まる局面では、金利の引き上げで対応することが可能であると述べた。』

結局インフレが加速する可能性が限られるという前提だから導入しましたというのが分かりやすく示されているので良い味わいがある。

『こうした見方に対して、一人の委員は、オーバーシュート型コミットメントは、潜在成長力からみて現実的な目標設定ではなく、予想物価上昇率を引き上げる効果も期待できないと述べた。』

これは身も蓋もない。


・そしてまた馬鹿発見

『複数の委員は、コミットメントの対象について、これまで「物価安定の目標」に対するコミットメントとこれを裏打ちするバランスシートないしマネタリーベースの拡大が、予想物価上昇率の引き上げに寄与してきたことを踏まえると、マネタリーベースの拡大に関するコミットメントを導入することが、有力な手段になるとの見解を示した。』

定量的効果について総括検証で全然示されていませんが。定性的に効いているという話はあっても。

『こうした見解に対して、ある委員は、マネタリーベースと予想物価上昇率の間には、為替レートを介した見かけ上の相関はあったかもしれないが、両者の長期的な関係は観察できていないと述べた。』

そもそも(またまた今日ツッコミを入れ損なう予定ですが総括検証の補論ペーパーにあるんですけど)2013年以降の予想物価上昇率について全部を金融政策の寄与みたいな話をして「効いた」とか言っているのですが、消費増税によるインパクト無茶苦茶あったんじゃないですかねえというのと、為替が急速に動いたことによってそれが輸入価格経由でラグ持って食料品とかに効いてきて生活物価が上昇したぜあばばばばーとかやってたじゃんとは思うのでして、後者の方が説得力ある感じがするんですけどねえ。

しかしそんな話を全て打ち砕く発言がここに!!!!

『これに対し、別の委員は、為替も株価もマネタリーな現象であり、長期的なマネーと物価の関係は理論的にも成立すると述べた。』

>為替も株価もマネタリーな現象
>為替も株価もマネタリーな現象
>為替も株価もマネタリーな現象
>為替も株価もマネタリーな現象
>為替も株価もマネタリーな現象

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

この議事要旨を作成しないと行けなかった事務方が何を思ってこの部分をタイプ打ちしたかと思うと不憫で不憫で・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・YCC政策について

『次に、多くの委員が、これまでの金融緩和が主として実質金利の低下を通じて経済・物価の好転をもたらしたとの認識を踏まえ、これを長短金利の操作によって実現することを、政策枠組みの中心にすべきとの見解を示した。また、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」が金利低下に大きな効果をもった一方で、金融機関収益等の面での影響も大きかったとの認識に立って、長短金利の操作によって、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」の実現のために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促していくことが適当であるとの見解で一致した。』

総括検証もそうですがFSRでもケチョンケチョンに指摘されていましたが、そもそも導入する前から定性的な点ではこんなの無茶だろとしか思えなかった訳で、やってみたあとに「金融機関収益等の面での影響も大きかったとの認識」とかナメトンノカとは思う。

『これらの委員は、そうした枠組みのもとでは、経済・物価情勢に加えて、金融情勢の変化にも応じて柔軟に対応することが可能であり、その導入は、金融政策の持続性を高めることにもなると述べた。』

つまり金利水準はいずれ変更可能(まあ当分無理でしょうけれども)。

『ある委員は、長期金利の水準を操作目標とすれば、国債買入れ額について、経済・物価・金融情勢に応じたより柔軟な対応が可能となると述べた。そのうえで、長期金利の操作目標を実現するため、国債買入れ額の増減は生じ得るが、買入れ額の変化自体は政策的なインプリケーションを持つものではないということを、しっかり説明していく必要があると述べた。』

一方で分かっていない人が分かってない宣伝をしている訳だが・・・・・・・・・・・・

『また、別の委員は、イールドカーブをコントロールするためには、大量の国債買入れを続けるので、マネタリーベースが大きく拡大していくことは確実であると述べた。そのうえで、金利を操作目標にすれば月々マネタリーベースの拡大ペースは多少変動することになるが、これが予想物価上昇率の形成に影響するとは思われないと述べた。 』

だったら何でさっきの「これまで「物価安定の目標」に対するコミットメントとこれを裏打ちするバランスシートないしマネタリーベースの拡大が、予想物価上昇率の引き上げに寄与してきたことを踏まえると」となるのかが矛盾なんですよねこの政策。継ぎはぎ建築だから仕方ない面はあるのだが。


でもって長短金利のコントロールの件について、

『長短金利のコントロール可能性について、多くの委員は、「量的・質的金融緩和」のもとでの大規模な国債買入れと、本年 1 月に導入したマイナス金利政策の組み合わせによって、イールドカーブ全体にわたり金利水準を引き下げられることが確認できており、イールドカーブ・コントロールは可能であるとの見解を示した。』

短期的にはそうだが長期的に持続可能化は謎としか言いようがない。

『ある委員は、短期金利はコントロールできるが、長期金利はコントロールできないというのが中央銀行の伝統的な考え方であったが、リーマン・ショック以降、欧米の中央銀行においても、大規模な国債買入れによってイールドカーブ全体にわたって金利低下圧力を加えることを金融政策手段に加えていると指摘した。』

働きかけるのとコントロールするのは別。

『また、別の委員は、この半年、相応に長期金利をコントロールできてきたのは事実であり、また、国債買入れ1単位当たりの金利引き下げ効果が状況によって変わってくるのであれば、イールドカーブをコントロールしていく発想は自然である旨述べた。』

半年程度の話を敷衍されても困るし、だいたいからして金利バカスカ下がった時に本当にコントロールできていたと思っていましたっけ?????????

『こうした見方に対して、一人の委員は、金利と量の両立は困難であるとし、FRBが 1940〜50 年代に実施した長期金利に上限を設定する施策では、インフレリスクが高まった局面で、短期間に国債保有残高が大幅に増加したと述べた。この間、別の委員は、金融市場調節方針は次回会合までのものであり、毎回の会合において最適なイールドカーブの形状を判断していく枠組みに大筋で賛成であると述べた。』

ということでその後にどういう政策やるかという話があり、昨日引用したジンバブエ先生と思われるそもそも枠組み分かっていないだろという部分になるのでした。





2016/11/08

お題「9月決定会合議事要旨は読み物としては面白い」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161107/k10010758581000.html
会計検査院「日銀は財務の健全性確保を」
11月7日 17時20分

『日銀が大量に保有している長期国債の利回りは、昨年度は0.495%を確保しました。しかし、ことし2月に導入したマイナス金利政策の影響で、会計検査院の試算、試みの計算によりますと、ことし4月から6月までの3か月間に日銀が買い入れた長期国債の利回りはマイナスに転じたとしています。これによって、日銀が保有する国債全体の利回りが一段と低下するおそれがあるとしています。』(上記URL先より)

・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

○9月決定会合議事要旨は何せ総括検証ですのでそこそこ読みでがあったの巻

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2016/g160921.pdf

・定例の経済物価情勢に関する検討部分から少々

『X.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』から少々。海外はまあどうでも良いので国内経済のパートの途中から。

『設備投資について、委員は、企業収益が高水準で推移する中で、緩やかな増加基調にあるとの認識で一致した。先行きの設備投資について、委員は、全体としては高水準の企業収益を背景として、緩やかな増加基調を維持するとの見方を共有した。ただし、複数の委員は、先行き一段と円高が進む場合、企業センチメントの悪化から設備投資計画の先送りにつながらないか注視する必要があると述べた。 』

まあ言いたいことは分かるのだが、そもそも円安になったからと言って設備投資が盛大に増えた訳でもないのに円高になったからと言ってそんなに減るもんなのかという感じはするけれども、とりあえず円高に振れるのは困るという政策委員会の考えは伝わる記述であります。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給が着実な改善を続け、雇用者所得も緩やかに増加しているとの認識で一致した。先行きについても、労働需給の引き締まりが続き、企業収益が高水準で推移するもとで、雇用者所得は緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。ある委員は、今後の課題は賃金上昇トレンドの加速であり、労働市場の規制緩和や改革が重要な焦点になると述べた。』

労働市場の規制緩和や改革をすると賃金には一時的に低下あるいは抑制圧力が高まりそうな気がするんですが。労働市場の規制緩和によって総労働者で見た時のスキルアップが促されるとかそっちの方で効果が出てくるとかいう議論だったら分かるけど。

『個人消費について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に底堅く推移しているとの見方で一致した。』

という消費ですけれども・・・・・・・・・・・

『ある委員は、夏季賞与の増加もあり雇用者所得が堅調に推移する中、景気ウォッチャー調査に示されるように消費マインドには持ち直しがみられていると述べた。別の委員は、このところの株価の回復もあって、個人のマインドは持ち直しがみられていると述べた。』

うむ。

『先行きについて、多くの委員は、株価下落に伴う負の資産効果が剥落し、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、徐々に底堅さを増していくとの見方を共有した。』

「株価下落に伴う負の資産効果が剥落し」というのがうーんこのという感じがするのだが。

『ある委員は、個人消費が堅調に増加するためには、現在の良好な雇用・所得環境が一時的なものではなく、持続的なものであり、今後、賃金は上昇していくとの確信を持てる環境を整備することが重要であると述べた。』

先行きの賃金上昇というのは、ベアが2%とかそういう話ではなくて、ある程度の賃金上昇カーブがイメージできて、かつ将来の雇用不安が低い(自社での、だけではなくて今と似たような職ならあるから何とかなるわ的な感じの)状況じゃないと、未来から力を前借りして消費する的なイメージそら湧かんよね。だから単にインフレーションターゲッティング2%がどうのこうのだけの問題じゃないと思うの。

『別の委員は、現在の消費性向の低下は、様々な要因はあるが、リーマン・ショック後に行われた耐久消費財需要の喚起策の反動も一因と思われると述べた。』

ということで、今後消費が伸びるという話も前提はだいぶ怪しいというのは良く分かりますな。


・物価の所は記述に一部味わいがある

でもって物価の所ですが、この回はまだ長期的なインフレ期待は全体としては上昇しているとか粘っている時でしたけれども(実質的にはもう降りていたんでしょうけど)。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は小幅のマイナスとなっているとの認識を共有した。先行きについて、大方の委員は、エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくとの見方で一致した。』

これ「一致した」ですけれども「大方の委員は」であって、この回の決定会合って総括検証が入っているイレギュラーな会だったので、本文19ページ(PDFファイルの21枚目)にありますが、

『2.「経済・物価の現状と見通し」(議長案)

議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、「経済・物価の現状と見通し」の議案が提出され、採決に付された。採決の結果、賛成多数で決定された。

採決の結果
賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、佐藤委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員
反対:木内委員
── 木内委員は、消費者物価の前年比は、2%に向けて上昇率を高めていくとの記述に反対した。』

ということで「経済・物価の現状と見通し」が出ていまして、一致していないのは木内さんであることは分かります。

『そのうえで、何人かの委員は、個人消費や為替相場等の動向次第では、企業の慎重な価格設定行動が想定以上に長引く可能性もあることから、下振れリスクを意識する必要があると述べた。』

何人かの委員とありますので、木内さん以外の数名が下振れリスクの話をしていますが、この中でもしらっと「為替相場等の動向次第では」とあって、ここの表現が「エネルギー価格等の動向次第では」となっていないのが非常にお洒落ですな。だって(この回は展望レポートだから関係ないですけれども)展望レポートの物価見通し出すときには原油価格の推移というのにわざわざ置きを入れてその置きを公表している訳で、それだけエネルギー価格の動向とその物価への波及効果を気にしています、とやっているのですが、ここでの政策委員の発言要旨での書き振りは「エネルギー価格等」ではなくて「為替相場等」であり、それはもう結局為替市場次第ですがなという話をしているのと同然という中々味わいのある書き振りになっております。

『別の委員は、今後執行される政府の大規模な経済対策は、金融緩和政策との相乗効果により、成長率の押し上げと予想物価上昇率の改善に寄与すると述べた。』

成長率は分かるが予想物価上昇率?????

『また、他の一人の委員は、資源市況が低位ながらも一定の範囲内で変動しており、物価に対する下押し圧力は徐々に剥落していく見通しであると述べた。ただし、同時にこの委員は、適合的なメカニズムを通じて、予想物価上昇率に下押し圧力が作用している点には留意が必要であると述べた。』

うむ。

『一人の委員は、足もとでの各種指標における中長期予想物価上昇率の下振れは、現在の経済構造と整合的な均衡水準に再び回帰する過程であると述べた。 』

木内さんェ・・・・・・・・・・・・・


・総括検証の執行部説明をまずは鑑賞しましょう

次の『Y.「「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証」に関する執行部からの報告および委員会の検討の概要 』(長いね)が当然ながら今回の主役。まあ出た時にも突っ込みましたけどね。

『まず、金融緩和の効果と2%の「物価安定の目標」未達成の理由についてである。「量的・質的金融緩和」は、実質金利の低下を主たるメカニズムとして、経済・物価を好転させ、日本経済はデフレではなくなった。』

これこの前の時も同じ文章で記述してたと思うのだが、主語と結語の関係が変だと思う。「経済・物価を好転させた。」のところで一旦文章を切って、そこから「その結果として日本経済は〜」となるんじゃないの?と下らない事について突っ込んでみる。

なお、それ以前の問題として「実質金利の低下を主たるメカニズムとして」というのは元々のおまいらの話と違う訳で、「当初考えていた波及経路はこうだったが、そうじゃない所がワークした」という点についてちゃんと検証しないと、それはただのラッキーパンチが当たったのを喜んで次も同じラッキーパンチを狙ってボコボコにされるみたいな失敗を招く(現にマイナス金利を調子に乗って導入して失敗している訳だが)のではないでしょうかねえ。

『もっとも、2%の「物価安定の目標」は実現できていない。この主な要因は、原油価格の下落、消費税率引き上げ後の需要の弱さ、新興国発の市場の不安定化などの外的な要因によって、実際の物価上昇率が低下し、もともと適合的な期待形成の要素が強い予想物価上昇率が弱含んだことである。』

昨日は総括検証の補足ペーパー出てて(たぶんネタにするのは間に合わないというか総論だけ)、何かだいぶ怪しげな検証(Q−JEM使って色々とやっているので、検証の数字的な話はそらもう正しいのでしょうが、そもそもの置きがアレというパターン)が出ていますが、まあそこの話とこれは被りますな。

でまあこの部分では(要旨なので当たり前ですが)その辺端折っていますが、今回の総括検証での話と、ちょうど昨日出てきた補足ペーパーを見ると良く分かるのですが、QQEの効果という話をする中で、当然考慮されるべき予定されていた消費増税に対する駆け込み需要や駆け込み需要を見込んだ値上げの動き、そもそも景気サイクル的に上向きという状態だった点、などなどの話は盛大にスルーして全部金融政策の効果にしておいて、消費増税の反動減の所は外部要因(キリッ)とかするのって大人の事情的には良く分かるのですが、それって恣意的な分析じゃないですかねえと思う訳ですが、まあそういう説明になっております。

本来は「この政策はこういう効果を狙ってやったのだがこういうのはワークしないで、むしろ別の所でこういうパスからワークした」みたいな分析をしないと実験で言えば再現性も無いし、大体からして新たな知見も得られない訳で、理学でも工学でも「何だか分からないけど上手く行ったから良かった」みたいなのは検証とは言わないんですが経済学ではそういうの許されるんですか面白いですねえ、などというのは無責任な外野だから言えるんですね分かります。

『実際の物価上昇率が当面低い水準で推移する中にあって、適合的な期待形成による予想物価上昇率の引き上げには不確実性があり、フォワード・ルッキングな期待形成の役割が重要である。この点に関し、マネタリーベースと予想物価上昇率は、短期的というよりも長期的な関係を持つものと考えられるため、マネタリーベースの長期的な増加へのコミットメントが重要である。 』

では何を持って2年で達成するとしていたのか、というかそもそも長期的な関係持っているってそのタイムスパンはどうなっているのとか、まあ総括検証の方は説明そのものは一応入っているみたいなのですが、「では何をどうすれば行くのか」の知見が得られた感が全然無いのがアレ。


『次に、マイナス金利の効果と影響については、マイナス金利と国債買入れの組み合わせは、長短金利の押し下げに有効であることが確認できた。これによりもたらされた国債金利の低下は、貸出・社債・CP金利の低下にしっかりとつながっている。もっとも、貸出金利の低下は、金融機関収益を圧縮する形で生じている。また、長期金利や超長期金利の低下は、保険や年金などの運用利回りを低下させ、これらがマインド面を通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性がある点にも留意が必要である。 』

「長期金利や超長期金利の低下は、保険や年金などの運用利回りを低下させ、これらがマインド面を通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性がある点にも留意が必要である」って毎度書いていて、まあこの説明をベースにして「超長期の金利はもうちょっと上がってもよろしいのでは」的な不規則発言が総裁から飛び出たりしていますが、この「保険や年金などの運用利回りを低下させ」というのはファクトとして分かるのですが、「これらがマインド面を通じて経済活動に悪影響」ってのが相当話が飛んでいる感がありますな。

つまりですな、そもそも論として「マイナス金利政策」というそのネガティブな語感とか、マイナス金利によって高齢世代の将来不安みたいなマインド悪化というのであれば話は大いに分かる(別にそういうの信用する訳ではないが自分の周囲5メートル的な体感でもそんな感じ)のですけれども、「保険や年金などの運用利回りを低下させ」でマインドが悪化ってそらまあ企業の退職給付債務とか年金債務とかの所からの企業マインドには効くかも知らんが、それよりもマイナス金利政策そのものがマインドを悪化させているってことの方が効いているようにしか思えないんですけど。

然るに、まあ世の中大人の事情というのがありますので鳴り物入りで突っ込んだマイナス金利はそう簡単に撤回できないので、マイナス金利そのものではなくて超長期金利の低下という方にフォーカスしたという事ではあるのは想像に難くないのですけれども、何かこう戦略の失敗を戦術で何とかしよう感が漂う所ではございますな。


などと悪態をひとしきりついたところで(この部分良く考えたら決定会合議事内容じゃなくてただの総括検証への悪態でした)政策委員会の検討部分を鑑賞しましょう。


・総括検証検討編

『まず、「量的・質的金融緩和」の効果について、多くの委員は、「量的・質的金融緩和」は、予想物価上昇率の押し上げと名目金利の押し下げにより、実質金利を低下させ、経済・物価の好転をもたらし、その結果、物価の持続的な下落という意味でのデフレではなくなったとの見解を共有した。』

ほっほー。

『これらの委員は、マネタリーベースの拡大は、「物価安定の目標」に対するコミットメントや国債買入れとあわせて、金融政策レジームの変化をもたらすことにより、人々の物価観に働きかけ、予想物価上昇率の押し上げに寄与したとの見解を示した。』

しかし総括検証ではMBの定量評価全然無い訳で、元々当座預金を80兆円拡大したら予想物価上昇率が2%になるとかいう高度な計算式を用いていた方々がどうせこれ言っているんでしょうが、お前は何を言っているんだという感じですな。つーか消費増税に伴う予想物価上昇率の押し上げ効果を丸無視しているのが実にトサカに来る。

『ある委員は、「量的・質的金融緩和」は、予想物価上昇率の押し上げを通じて現実の物価上昇率を引き上げたほか、政府の経済対策による後押しもあって雇用・所得環境を改善させたと述べた。別の委員は、「量的・質的金融緩和」のもとで経済は大幅に好転し、貸出は増加を続けていると述べた。』

という程伸びてないだろ。

『これらに対して、複数の委員は、限界的な金利低下の経済効果は逓減してきており、累積的な経済効果を中心にした評価は、効果を過大に見積もりかねないと述べた。このうち、一人の委員は、「量的・質的金融緩和」が導入当初経済・物価に非常に効果的であったのは、大胆な政策変更により、円の過大評価と株価の過小評価を修正する契機となったためであり、こうした修正が一巡するもとで、経済・物価への効果もラグをもって一巡した面があると述べた。 』

佐藤さんと木内さんですねわかります。

『2%の「物価安定の目標」が実現できていない要因について、大方の委員は、原油価格の下落、消費税率引き上げ後の需要の弱さ、新興国経済の減速とそのもとでの国際金融市場の不安定な動きといった外的な要因が実際の物価上昇率を低下させ、もともと適合的な期待形成の要素が強い予想物価上昇率が弱含んだことが主な理由であるとの認識を共有した。』

この辺は執行部の説明と同じなのでツッコミ割愛。

『ある委員は、原油安などは中央銀行がコントロールできない要因であり、問題の本質は、外的要因そのものよりも、これらによって実際の物価上昇率が低下した結果、予想物価上昇率が下押しされたことにあると述べた。』

ここ端折り過ぎて、だから何なのかが分からん。

『別の委員は、わが国では、予想物価上昇率の形成において、依然として適合的な期待形成の役割が大きく、2%の「物価安定の目標」を実現するためには、フォワード・ルッキングな期待形成を強める何らかの手段が必要であると述べた。』

いままで出来ていないのにどうやるんですかねえ。

『これに関し、一人の委員は、予想物価上昇率の低下は賃金上昇を抑制する要因になっていると指摘した。そのうえで、この賃金上昇の鈍化は物価上昇率を引き下げ、予想物価上昇率のさらなる低下を招いており、こうした悪循環を断ち切るためには、予想物価上昇率を引き上げる金融政策が必要であると述べた。』

だから何をするの???という話で、今回YCC+QQEになった訳ですが、その結果予想物価上昇率の上がるパスが引き上げられたとは到底思えない展望レポートの物価見通しになっているのですけれども。

・・・・・・・・とは言えこれ以上国債馬鹿買入されても困るのであって、そもそも金融政策で予想物価上昇率をリアンカーさせる作業は最初は政策ショックが必要かもしれないが、それ以降は緩和的な政策の長期化で徐々にその水準を上げていくしかないですね、って話なんじゃないかねとしか思えん。

『また、多くの委員から、2%の「物価安定の目標」を実現するためには、予想物価上昇率をさらに引き上げる必要があるが、実際の物価上昇率が当面低い水準で推移する中にあって、適合的な期待による引き上げには不確実性があり、時間がかかる可能性に留意する必要があるとの見解が示された。』

フォワードルッキングだって2%にはあげられてないし、そもそも足元でフォワードルッキングに2%の物価上昇となった時には予想実質所得(という言葉があるのか知らんが)の低下で消費落ちませんかねえとかも思ってしまう(現に消費増税で物価が先行して上がったら消費がコケたわけですから)のだが。


でもってマイナス金利の影響。

『委員は、マイナス金利の金融機関収益に与える影響等について留意すべきとの認識を共有した。』

だったらマイナス金利政策撤回してください。

『この観点で、委員は、さらなる金利低下に伴う貸出金利への波及については、金融機関収益への影響や、それを踏まえた金融機関の貸出運営方針に依存するとの見解を共有した。』

そうじゃなくて預金をマイナス化のような気が。まあそれはハードル無茶苦茶高そうだが。

『また、委員は、イールドカーブの過度な低下、フラット化は、保険や年金などの運用利回り低下等を通して、広い意味での金融機能の持続性に対する不安感をもたらし、マインド面などを通じ経済活動に悪影響を及ぼす可能性があるとの認識を共有した。』

さっきと同じなのでツッコミ割愛。

『ある委員は、今のところ金融仲介機能の低下は生じていないとしつつ、今後も大規模な緩和を続けていく際には、金融面への影響にも配慮しながら、適切なイールドカーブを形成していくことが必要であると述べた。また、別のある委員は、イールドカーブを適切にコントロールすることができれば、金融緩和政策の有効性を高めるとともに、金融機能の持続性を担保することができると述べた。』

だったらマイナス金利は持続的な政策ではないと思うので撤回でしょう撤回。

『一人の委員は、金融緩和の効果は、@金融機関経営に与える影響、A金融機関経営の悪化が経済全体を悪化させる影響、B金融緩和が金融機関を経由しないで経済を好転させる経路を考慮する必要があり、AとBの影響が経済全体に与える影響が重要であるとしたうえで、経済全体が好転すれば、信用コストの低下、名目金利の上昇、貸出の拡大から、金融機関の経営も好転すると述べた。』

信用コストは既に散々低下していますし、金利がバカスカ上がるような経済状況ならお前に言われるまでもないわという所で、名目金利上げない政策を実施しようとしているのにAとか出すのは何を言ってるんだという感じがだいぶする。


・何と時間が無くなってきてしまったので(超大汗)

丁寧にツッコミという名の悪態を入れていた(執行部報告全部と経済情勢の半分くらい割愛してるんですけれども)ら何とアタクシこの分量に対する相場観間違えたようで、第2のメインイベントに達する前に時間が怪しくなってくるというアチャー(これなら昨晩眠い目をこすって下書きしておくべきでしたと大後悔時代)な事案が発生しておりまして、今回の第2のメインインベントである所の『Z.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の鑑賞会が明日送りになるというすいませんすいませんな事態(というか総括検証ペーパーのネタもあるというのにorzorz)。

・・・・・・・なのですが、一か所だけ先に一応書いておきますと、議長提案の議案が出てくる直前の所で、本文16ページ(PDF18ページ)になりますが、

『ある委員は、マネタリーベースの拡大ペースが加速する場合には、金利の大幅な低下を伴う可能性が高いとしたうえで、このように、イールドカーブ・コントロールに重点をおいてバランスのとれた政策運営をしつつ、必要が生じた場合には、持てる手段を総動員できる構えとしておくことが必要であると述べた。』

まあ他の所でも実はもう一つ凄まじい見解があって、まあ誰の発言なのかは概ね想像がつくのですけれども、今の枠組みって「経済物価情勢の好転期待(あるいは財政ファイナンス懸念だがそっちは想像したくありませんなあ)によって市場金利に上昇圧力が掛かって、10年金利の誘導目標水準を上回るような債券売り圧力が掛かってくる場合には日銀は長期金利誘導のために国債の買入をより多く実施しないといけない」というものなので、市場金利が上昇しそうなときにはMBの拡大ペースが加速するのですが、YCCということで金利の過度な低下は抑制する方向なのですから、金利の大幅な低下が起きている時というのは基本的にMBの拡大ペースは縮小する筈なんですよね。

つーか既に輪番の変更でもそういうのがその後の月末にさっくりと示された訳ですが、この政策委員大先生におかれましては、そもそもこの政策の枠組みを理解しないで賛成しているという事実があるとしか思えないという前代未聞にも程がある話。

・・・・・・ってまあこの前のどっかの誰かさんの金懇ネタでも申しあげましたが、まあこの誰かさんはそもそも枠組みを理解しないで賛成票を投じているというのがこの議事要旨でも更に明らかになったという事でして、主義主張で反対とかそういうのなら分かるのですが、内容を分からないで採決するような人を政策委員会に置いといて良いのでしょうかねえとしか申し上げようがございません。

#ということで続きは明日ですいません






2016/11/07

お題「出遅れましたが展望レポート基本的見解の比較鑑賞」

何かFBIが言い出してまたいきなり動いているのかよ。

○展望レポート(基本的見解)の見通しもべた降り状態という話(の続き)

つーことで水曜の続きで恐縮です。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1610a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1607a.pdf(前回)

つーことで『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し』から続きに参りますが、先日も申しあげましたように展望レポート基本的見解の文章を今回バッサバッサと減らしているので比較引用のバランスが難しかったりして適当に端折ったりすると思います。


・経済見通し

『先行きのわが国経済を展望すると、暫くの間、輸出・生産面に鈍さが残るものの、その後は緩やかに拡大していくと予想している。まず国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『先行きのわが国経済を展望すると、暫くの間、輸出・生産面に鈍さが残り、景気回復ペースの鈍化した状態が続くとみられる。その後は、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな増加に向かうことから、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。見通し期間中の成長率は、潜在成長率を上回って推移すると予想される4』(前回)

「景気回復ペースの鈍化した状態が続くとみられる」という文言がさっくり削除されていましたが、ゆうて足もとのGDP見通しは下がっているのですが削除というのは微妙。でもって今回は先行き見通しに思いっきり「きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に」ということで、そもそも論として金融環境が景気に効いていくという話があるのと、政府の経済対策が前提に入っていますな。

でもって「潜在成長率を上回って推移」の所は実にヤヤコシイのですが、冒頭の実質鏡みたいなこの部分から削除されまして、その代わりにここの文末に付くという面倒な変更をしているので、「潜在成長率を上回って推移」というのは変わらないですな。

でもってここの最初の部分って文章自体がスッキリになっていて、言い訳じみた感じになっていないのと、足元の弱さの所を削除しているので一瞬不変か強めに見えますが、これ前提に金融緩和が効いて(マイナス金利の副作用で効きが悪くなってませんかねえ・・・・・・・・・・特に長期化すると)政府の財政が前提になっているので、結構な前提条件付きですよねー。

『すなわち、設備投資は、緩和的な金融環境や成長期待の高まり、オリンピック関連需要の本格化などを受けて緩やかな増加基調を維持すると予想される。雇用者所得の改善が続き、個人消費は緩やかに増加していくとみられる。公共投資は、経済対策の効果などから 2017 年度にかけて増加し、その後は、オリンピック関連需要もあって高めの水準で推移すると考えられる。この間、海外経済は、幾分減速した状態が暫く続いたのち、先進国の着実な成長が続き、新興国経済も、その好影響の波及や各国の政策効果から減速した状態を脱していくにしたがって、徐々に成長率を高めていくと予想している。このため、輸出は、緩やかな増加に転じるとみられる。』(今回)

ここなんですけれども、前回との書きっぷりがだいぶ変わっていますので、まず前回の該当するところをちと長いのですが一気に引用しますとこうなります。


『見通しの背景にある前提は、以下のとおりである。

第1に、日本銀行が、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続するもとで、実質金利は見通し期間を通じてマイナスで推移するなど、金融環境はきわめて緩和した状態が続き、景気に対し刺激的に作用していくと想定している5。

第2に、海外経済については、幾分減速した状態が暫く続くとみられ、英国のEU離脱問題などを巡って不透明感も強い。しかし、先行き、先進国が着実な成長を続けるとともに、その好影響の波及や政策効果により新興国も減速した状態から脱していくとみられることから、緩やかに成長率を高めていくと予想している。

第3に、公共投資は、このところ下げ止まっており、先行きは、2016 年度予算の早期執行や近日中に取りまとめられる予定の経済対策の効果などから増加に転じるとみられる。見通し期間の中盤以降は、オリンピック関連投資の本格化もあって、高めの水準を維持すると想定している。

第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどが続くとともに、デフレからの脱却が着実に進んでいくにつれて、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』(前回)

つーことでここの表現がだいぶ簡素化されているので比較しにくいのですが、この次の部分を見ますとこれまた今回エライ勢いであっさり味にしていまして・・・・・・・・・・・・


『以上のもとで、わが国経済は、2018 年度までの見通し期間を通じて、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる2。今回の成長率の見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。』(今回)

『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2016 年度については、輸出は、暫く鈍さが残るとみられるが、その後は、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、(以下長くなるので引用割愛)』(前回)

『(割愛した部分の途中から)この間、潜在成長率については、見通し期間を通じて緩やかな上昇傾向をたどり、中長期的にみた成長ペースを押し上げていくと考えられる。今回の成長率の見通しを従来の見通しと比べると、財政面での景気刺激策の効果もあって、見通し期間の前半を中心に上振れている。なお、2017年4月に予定されていた消費増税の延期に伴い、駆け込み需要とその反動減は均される6。』(前回)

途中の展開についてああでもないこうでもないと思いっきり書いてあった部分を大幅に削除しまして、単に「わが国経済は、2018 年度までの見通し期間を通じて、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる」で済ますという荒業になっています。

でもって全部引用していると量が多くて敵わんのでパスしましたが、ここの部分では年度別展開とかをスルーしたので、たとえば「輸出は、緩やかな増加に転じるとみられる」としているけどその時期が良く分からんとか、個人消費については「緩やかに増加していくとみられる」となっているけど前回は「緩やかな増加を続けると予想される」となっていて、成長率に関しても今回が「潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる」でして、前回が「成長率は、潜在成長率を上回ると予想される」となっておりまして、この「予想される」が「考えられる」に変更しているのは何となく表現が弱気化したように見えるのですが。


・金融環境の表現が微妙に味わいが

『こうした見通しの背景となる金融環境についてみると、日本銀行が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで、短期・長期の実質金利は見通し期間を通じてマイナス圏で推移すると予想される3。』(今回)

となっていまして、従来の説明ですと特に2016年度の見通しの中では「金融緩和に伴う実質金利の一段の低下効果もあって」というような説明になっていましたが、今回の説明の場合は、あくまでも「見通し期間を通じてマイナス圏で推移する」となっていまして、これは実質金利のこれ以上の押し下げを行うという訳ではないかも知れませんね、という話でもあると思うのよ。

つまりですね、マイナス金利政策においては「マイナス金利政策使って名目金利をもう一発下げることによって効果をもっと出しますぜヒャッハー」ということを主張していた訳ですけれども、総括検証によって「金利を下げれば下げるほど良いという物ではない」という結論になった訳でして、そういう意味では経済物価情勢や予想物価上昇率の上昇によって実質金利が一段と下がることに関しては一々アジャストしないで、基本的にはその効果を享受しつつ適当な所で下がり過ぎの実質金利の調整(つまり名目の誘導金利水準の引き上げ)というのはあるでしょうが、わざわざここから名目の金利を無理繰り下げてまで実質金利の押し下げはしない、ということがこちらの背景にはありますよね、という事。

『また、金融機関の積極的な貸出スタンスや社債・CPの良好な発行環境が維持され、企業や家計の活動を金融面から支えると考えられる。このようにきわめて緩和的な金融環境が維持されると予想される4。この間、潜在成長率については、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどが続くとともに、デフレからの脱却が着実に進んでいくにつれて、見通し期間を通じて緩やかな上昇傾向をたどるとみられる。それに伴い、自然利子率も上昇し、金融緩和の効果を高めると考えられる。』(今回)

この辺前回の引用しませんが、今回はこの「自然利子率」の話を打ち込んできていまして、まあ流行りの言葉だからギミックとして入れてきたという感じがだいぶ漂いますけれども、「自然利子率も上昇し、金融緩和の効果を高める」というのもこれまた味わいがあって、総括検証の結論での説明を見ますと「実質金利水準にペッグしたような政策」という感じにも見える(適正なイールドカーブ水準を示すというのは概念的には均衡イールドカーブに対する適正な緩和度合いを示しているのと同じだから)のですが、自然利子率が上昇する中で金融緩和の効果を高めるということは、自然利子率の上昇に対してYCCによって誘導されるイールドカーブ水準はビハインドして上昇しますよ、という事を示しているというのがこれまた味わいがあります。

そらまあそもそも均衡イールドカーブに幅がある概念なのと、インフレ期待を上げようとしている政策なのと、オーバーシュート型コミットメントしているのですから、基本YCCで実質金利水準にペッグするような政策といっても厳密にペッグするのではなくて、ビハインドで推移させる方がまあそうだろうなあというのは有りますから不思議ではありませんけれども。


・物価見通しである

次が『(2)物価の中心的な見通し』である。

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、見通し期間の後半には2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。今回の物価見通しを従来の見通しと比べると、中長期的な予想物価上昇率の弱含みの局面が続いていることなどから、やや下振れている。なお、2%程度に達する時期は見通し期間の終盤(2018 年度頃)になる可能性が高い。』(今回)

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格の寄与度は、現在の−1%強から剥落していくが、2016 年度末まではマイナス寄与が残ると試算される。この前提のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」である2%程度に達する時期は、中心的な見通しとしては 2017 年度中になるとみられるが、先行きの海外経済に関する不透明感などから不確実性が大きい。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる。』(前回)

今回ですが、「中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて」と入ったのは足元で予想物価上昇率が弱含みになっているという認識になって下がったので入れたという所でしょう。それから原油云々に関しては当然置きは置きで今回もあるのですが、前回の場合は如何にも「原油のせいで今の所弱いですがこれから行きますよヒャッハー」という表現でしたが、今回ってそもそもが2%達成時期が1年後ろに倒れている時点で、原油価格の影響によっての前年比効果が剥落してからも暫くは2%行かない、という事なのですから、「原油の影響が剥落すればもうバンバン行きますよ(キリッ)」と突っ張るのを止めたということですな。

でもってこの「2018年度頃」ってこれどう見ても2019年度に掛かる気満々だろとしか思えない訳で、YCCによってとりあえず金利をバカスカ下げれば良いという話じゃなくなったから誤魔化されていますが、良く良く考えたら物価目標達成見通し時期が1年(以上)も後ろに倒れたって無茶苦茶ハトな内容ですよね〜。


『こうした見通しの背景を述べると、』から先の部分ですが、総括検証の結果を受けて予想物価上昇率の話がああでもないこうでもないとございます。

『第1に、中長期的な予想物価上昇率は、中央銀行の物価安定目標に収斂していく「フォワードルッキングな期待形成」と、現実の物価上昇率の影響を受ける「適合的な期待形成」の2つの要素によって形成される5。』(今回)

前回はこういう説明的なのは無くて「やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。」から始まって、背景として足元の物価が弱めだからですが、その物価は原油効果が剥落すると上がってくるので行きますよウハハハハハという話でした(面倒なので引用割愛しますよ)。

『中長期的な予想物価上昇率は、現実の物価上昇率がゼロ%程度ないし小幅のマイナスで推移する中で、「適合的な期待形成」の要素が強く作用し、2015 年夏場以降の弱含みの局面が続いている。先行きについては、上記の経済見通しのもとで、個人消費が緩やかな増加に向かうにつれて、企業の価格設定スタンスが再び積極化していくほか、労働需給のタイト化が賃金設定スタンスを強める方向に影響すると考えられる。』(今回)

『これらを背景にしつつ、@「適合的な期待形成」の面では、今後エネルギー価格による下押しの剥落もあって、現実の物価上昇率は高まっていくと予想されること、A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことから、中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。』(今回)

てな説明になっていまして、まあ従来の説明と大きくは変わらないのですが、ここの個人消費に関する表現が「緩やかな増加」となっていて、前回が(引用割愛しますが)「個人消費の持ち直しに伴って、」と表現していまして、個人消費に関する見通しはこれ強くなっているのか弱くなっているのか良く良く分からん日本語ですな。

まあそれよりワケワカランのは「A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことから、中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどり」という奴で、今までQQEから追加緩和にマイナス金利と打ち込んで結局予想物価上昇率は確かにデフレ的ではなくなったかも知らんが2%に向けて上がる状態には全然成って居ないのに、何で今回はフォワードルッキングの期待形成が2%に向けて上昇するのかというのは説得力はありませんな。


『第2に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、新興国経済の減速などを背景に製造業の設備稼働率の改善が遅れる一方、労働需給の引き締まりは続いており、全体として横ばい圏内の動きとなっている。先行きは、経済対策の効果もあって、労働需給の引き締まりは続き、設備の稼働率も、輸出・生産の持ち直しに伴い、再び上昇していくと考えられる。このため、マクロ的な需給バランスは、2016 年度末にかけてプラスに転じ、その後はプラス幅を拡大していくと見込まれる。』(今回)

経済見通しが足元大きく下がっているから当たり前ですが、需給バランスがプラス化する時期は後ろに倒れていますし、表現も全体的にあまり具体的に書かなくなっている(スリム化した影響もあると思うけど)感じです。

『第3に、輸入物価についてみると、原油価格など国際商品市況の既往の下落は、当面、輸入物価を通じた消費者物価の下押し圧力となるが、その影響は減衰していくと予想される。為替相場が輸入物価を通じて消費者物価にもたらす影響については、本年入り後の円高もあって、価格上昇圧力を抑制する方向に作用すると考えられる』(今回)

ここは何故か「その影響は減衰していくと予想される」というのだけ違っていて、前回は「その影響は減衰していく」となっていました。



・リスク要因は国内のマクロ的な需給バランスのところを外してきました&春闘注目

『3.経済・物価の上振れ要因・下振れ要因』ですが、『(1)経済の上振れ・下振れ要因』の項目は『海外経済の動向』、『企業や家計の中長期的な成長期待』、『財政の中長期的な持続可能性』で、今回は海外の影響がコンフィデンスに悪影響云々が無くなっただけで、あまり変化無いので引用を割愛します。

『(2)物価の上振れ・下振れ要因』の方ですけどね。

『第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。海外経済を中心とした景気の先行きに関する不透明感が強い中で、現実の物価上昇率の動向に強く影響されて、企業の価格・賃金設定スタンスが慎重なものにとどまるリスクがある。この点に関して、とくに来春の賃金改定交渉に向けた動きが注目される』(今回)

『第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。中心的な見通しでは、先行き個人消費の持ち直しが明確になるにつれて、企業の価格設定スタンスも再び積極化し、労働需給の改善に伴う賃金の上昇が続くことと相俟って、中長期的な予想物価上昇率が「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく姿を想定している。しかしながら、既往のエネルギー価格下落の影響から、総合ベースでみた消費者物価の伸びが当面低位で推移することが、「適合的な形成メカニズム」を通じて予想物価上昇率の伸びをどの程度抑制するかという点や、海外経済を中心とした景気の先行きに関する不透明感が、企業の価格・賃金設定スタンスにどのような影響を与えるかという点を巡っては、不確実性がある。』(前回)

クソ長い説明から随分簡素化されましたが、企業の価格設定スタンスと賃金設定スタンスに関しては従来よりも慎重な表現になっていて、「とくに来春の賃金改定交渉に向けた動きが注目される」とありましてまあ来年の春闘がどうのこうのの時期にはまーた見直しをしないと行けなくなるとか考えると意外にこのYCCQQE政策(ナンジャソラという略称ですな)もいつまで行けるのやら。

『第2に、マクロ的な需給バランスに対する価格の感応度が低い品目があることが挙げられる。とくに、公共料金や一部のサービス価格などは、労働需給が引き締まる中でも依然鈍い動きを続けているほか、家賃は最近下落幅が拡大しており、想定以上に物価上昇率を抑制する可能性がある』(今回)

『第2に、マクロ的な需給バランス、とくに労働需給の動向がある。中心的な見通しでは、近年の高齢者や女性による労働参加の高まりや最近みられているパート労働の正規雇用化が労働供給を下支えしていくことを前提としているが、この点を巡っては上下双方向の不確実性がある。』(前回)

ここはしらっと国内のマクロ的な需給要因のリスクから品目の問題に話を変えてきているので、景気という点では上方修正しているのがチャーミング。でもってこの辺の品目の話って今更何をおっしゃるのやらということで、これは「除く帰属家賃のコアCPI」登場待ったなしですね!!

第3は為替と商品価格の話で毎度同じなので割愛します。


・金融政策運営に関して

最後の『4.金融政策運営』である。

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、見通し期間の後半には、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。このように「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているとみられるものの、前回見通しに比べると幾分弱まっており、今後、注意深く点検していく必要がある。』(今回)

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、わが国経済は、2017 年度中に2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断される。』(前回)

ということで見通しは後ろに倒れるわ留保条件は入るわということでかなりのべた降り状態。

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、海外経済や中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に、下振れリスクの方が大きい。』(今回)

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクが大きい。物価の中心的な見通しについては、先行きの海外経済に関する不透明感や、そのもとでの中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きく、下振れリスクが大きい。』(前回)

「が」が「の方が」になっているのが気になりますがまあ同じ話。

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、これまでのところ、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていない。また、低金利環境が続くもとで、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがあるが、現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、そのリスクは大きくないと判断している。』(今回)

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていないほか、低金利に伴う金融機関収益の下押しによって金融仲介が停滞方向に向かうリスクについても、金融機関が充実した資本基盤を備え、前向きなリスクテイクを継続していく力を有していることから、大きくないと判断している。もっとも、政府債務残高が累増するなかで、金融機関の国債保有残高は、全体として減少傾向が続いているが、なお高水準である点には留意する必要がある。』(前回)

こちらは今回「低金利環境が続くもとで、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがあるが」とリスク認識を強めていまして、そらまあFSRであれだけゴリゴリやっているのですからここの認識強めてくれないと困りますわ。

ということで最後になります。

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(今回)

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる。』(前回)

ここは実際には9月の声明文の時点で変更になっていて、今回は9月声明文と同じなので重複になりますけれども、オーバーシュート型コミットメントに関する文言が入っているのと、「金融情勢」を踏まえるという表現(先ほどの金融仲介のリスクに関連しますな)があるのと、「追加的な金融緩和」ではなくなっているという変化ですな。なお9月声明文の時点では「必要ならば更に金利を下げる」とかありましたが、この表現はここでもそうですが、声明文の方でもしらっと外していますので、そういう意味では2段階方式で追加緩和への方向性を削除したという感じでしょうな。

#ということで遅くなりましてすいませんでした







2016/11/04

お題「中央銀行ネタが集中しますなあ」

他所の結果に振り回される事が多くなっているせいか段々皆さんの政策決定会合のタイミングが揃うようになっていて甚だめんどい。

○FOMCは予告ホームラン無しですがそらまあ不透明要素有りますもんねえ

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20161102a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20160921a.htm(前回)

・第1パラグラフ:現状判断は全体的には若干強気化

『Information received since the Federal Open Market Committee met in September indicates that the labor market has continued to strengthen and growth of economic activity has picked up from the modest pace seen in the first half of this year.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in July indicates that the labor market has continued to strengthen and growth of economic activity has picked up from the modest pace seen in the first half of this year.』(前回)

総括判断は同じ。

『Although the unemployment rate is little changed in recent months, job gains have been solid. Household spending has been rising moderately but business fixed investment has remained soft.』(今回)

『Although the unemployment rate is little changed in recent months, job gains have been solid, on average. Household spending has been growing strongly but business fixed investment has remained soft.』(前回)

ここでは雇用の伸びについて強いという所のon averageを削除して若干の強気化、個人消費はgrowing stronglyからrising moderatelyでたぶんこれは慎重化しているんじゃないでしょうか。

『Inflation has increased somewhat since earlier this year but is still below the Committee's 2 percent longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and in prices of non-energy imports. Market-based measures of inflation compensation have moved up but remain low; most survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance, in recent months.』(今回)

『Inflation has continued to run below the Committee's 2 percent longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and in prices of non-energy imports. Market-based measures of inflation compensation remain low; most survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance, in recent months.』(前回)

物価についてはincreased somewhatというのを入れていまして現状判断を引き上げ。


・第2パラグラフ:物価見通しを若干強気化するもそれ以外は変わらんですの

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace and labor market conditions will strengthen somewhat further.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace and labor market conditions will strengthen somewhat further.』(前回)

緩やかな金融政策の調整により〜という文言の部分で特に変更は入れてこなかったですな。

『Inflation is expected to rise to 2 percent over the medium term as the transitory effects of past declines in energy and import prices dissipate and the labor market strengthens further. Near-term risks to the economic outlook appear roughly balanced. The Committee continues to closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments.』(今回)

『Inflation is expected to remain low in the near term, in part because of earlier declines in energy prices, but to rise to 2 percent over the medium term as the transitory effects of past declines in energy and import prices dissipate and the labor market strengthens further. Near-term risks to the economic outlook appear roughly balanced. The Committee continues to closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments.』(前回)

こちらでは前回まで入れていた物価が足元弱いという見通しを削除していまして、リスクバランスの文言は同じ。やや強気化という感じですが利上げウホウホという感じでもない。


・第3パラグラフ:金利据え置き判断の説明部分に予告ホームランは無しと

『Against this backdrop, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 1/4 to 1/2 percent. The Committee judges that the case for an increase in the federal funds rate has continued to strengthen but decided, for the time being, to wait for some further evidence of continued progress toward its objectives.』(今回)

『Against this backdrop, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 1/4 to 1/2 percent. The Committee judges that the case for an increase in the federal funds rate has strengthened but decided, for the time being, to wait for further evidence of continued progress toward its objectives.』(前回)

予告ホームラン入れるならこのあたりなのですが、今回は利上げの環境について「has continued to strengthen」と引き続き強くなっているという表現でちょっとだけ前進させた程度にとどめて、12月予告ホームランですよという感じではありません。

『The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting further improvement in labor market conditions and a return to 2 percent inflation.』(今回)

『The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting further improvement in labor market conditions and a return to 2 percent inflation.』(前回)

まあ足元では大統領選挙がわけわからんから予告ホームランは出来ませんなとは思います。


・第4、第5パラグラフ:毎度の全文一致

一応アタクシが確認した感じだと全文一致だと思うので手抜きでべた引用だけしておきます(しかも比較しない)。

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. In light of the current shortfall of inflation from 2 percent, the Committee will carefully monitor actual and expected progress toward its inflation goal. The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant only gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.』(今回)

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction, and it anticipates doing so until normalization of the level of the federal funds rate is well under way. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(今回)

ということで資産買入関連に関する説明については変化は毎度のようにありません。


・第6パラグラフ:ローゼングレン総裁利上げから日和るとか中々お洒落な票決

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; James Bullard; Stanley Fischer; Jerome H. Powell; Eric Rosengren; and Daniel K. Tarullo.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; James Bullard; Stanley Fischer; Jerome H. Powell; and Daniel K. Tarullo.』(前回)


『Voting against the action were: Esther L. George and Loretta J. Mester, each of whom preferred at this meeting to raise the target range for the federal funds rate to 1/2 to 3/4 percent.』(今回)

『Voting against the action were: Esther L. George, Loretta J. Mester, and Eric Rosengren, each of whom preferred at this meeting to raise the target range for the federal funds rate to 1/2 to 3/4 percent.』(前回)

つーことで今回ローゼングレン総裁が利上げを日和るという中々の謎行動に出ていて、何でひよったのか説明して欲しいですな。今の所ボストン連銀の所見ても出ていないですけど。

つーことでまあ予告ホームラン無しなのは不透明要素があるからそこまでリスク取れないという感じで、ローゼングレン総裁のひよりっぷりとかも見ますと、まあ何もなければ12月利上げはするんでしょうけれども、この後に関しては物価が強くなっているのだからもうちょっと強いパスになるのか、それともローゼングレンがひよるのを見ると先行きそんなに自信がないのか、SEPでどういう出し方してくるのかの方が楽しみですな。



○BOEはとりあえずインスタント読みで勘弁

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2016/011.aspx
Bank Rate held at 0.25%, government bond purchases at £435bn and corporate bond purchases at up to £10bn

ということで現状維持。

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee (MPC) sets monetary policy to meet the 2% inflation target, and in a way that helps to sustain growth and employment. At its meeting ending on 2 November 2016 the Committee voted unanimously to maintain Bank Rate at 0.25%. The Committee voted unanimously to continue with the programme of sterling non-financial investment-grade corporate bond purchases totalling up to £10 billion, financed by the issuance of central bank reserves. The Committee also voted unanimously to continue with the programme of £60 billion of UK government bond purchases to take the total stock of these purchases to £435 billion, financed by the issuance of central bank reserves.』

色々書いているが要は現状維持。その後の説明の所は飛ばし飛ばし参ります。8月のインフレレポートを出した時に経済と物価のバランスを見ていくという話をしましたがさて・・・・・ということでその次の所から。

『In the three months since then, indicators of activity and business sentiment have recovered from their lows immediately following the referendum and the preliminary estimate of GDP growth in Q3 was above expectations. These data suggest that the near-term outlook for activity is stronger than expected three months ago. Household spending appears to have grown at a somewhat faster pace than projected in August, and the housing market has been more resilient than expected. By contrast, investment intentions have continued to soften and the commercial property market has been subdued.』

この間に企業活動やセンチメント、家計消費が予想よりも強くて、見通しもやや上方修正となっている一方で、投資と商業用不動産が予想より弱いとな。

『In financial markets, the past three months have been characterised by two phases.』

ほほう。

『In the first, the sterling exchange rate stabilised for a period following its initial post-referendum depreciation. Supported by the measures announced by the MPC in August and more positive activity indicators, financial conditions and other asset prices recovered from the deterioration seen straight after the referendum, accompanied by a sharp increase in corporate bond issuance.』

『However, in the period since the beginning of October, the sterling effective exchange rate index has depreciated further. Market intelligence attributes these latter movements to perceptions that the United Kingdom’s future trading arrangements with the EU might be less open than previously anticipated, requiring a lower real exchange rate to improve competitiveness and support activity. Longer-term gilt yields have risen notably, as have market-implied expectations of medium-term inflation.』

この間の金融市場についての話があって、ネタが主にポンド市場の話になっていますな。一旦ポンド安が落ち着いた後もう一発ポンド安拡大という事で、背景としてはブリクジット後の状況が思ったよりは英国にキツイのでポンドもう一発下がらないと英国の競争力がキツクなるという見方からとかそんな話ですが、その間に市場のインフレ期待が上がって英国金利も上昇しましたよと。

『The Committee’s latest projections for output, unemployment and inflation, conditioned on average market yields, are set out in the November Inflation Report.』

『Output growth is expected to be stronger in the near term but weaker than previously anticipated in the latter part of the forecast period. In part that reflects the impact of lower real income growth on household spending. It also reflects uncertainty over future trading arrangements, and the risk that UK-based firms’ access to EU markets could be materially reduced, which could restrain business activity and supply growth over a protracted period. The unemployment rate is projected to rise to around 5-1/2% by the middle of 2018 and to stay at around that level throughout 2019.』

『Largely as a result of the depreciation of sterling, CPI inflation is expected to be higher throughout the three-year forecast period than in the Committee’s August projections. In the central projection, inflation rises from its current level of 1% to around 2-3/4% in 2018, before falling back gradually over 2019 to reach 2-1/2% in three years’ time. Inflation is judged likely to return to close to the target over the following year.』

というのが経済物価見通しで、

『The MPC’s Remit requires that monetary policy should balance the speed with which inflation is returned to the target with the support for real activity. Developments since August, in particular the direct impact of the further depreciation of sterling on CPI inflation, have adversely affected that trade-off. This impact will ultimately prove temporary, and attempting to offset it fully with tighter monetary policy would be excessively costly in terms of foregone output and employment growth. However, there are limits to the extent to which above-target inflation can be tolerated.』

つーことで、物価と経済のバランスを考えて政策をする訳ですが、ポンド下落による物価上昇圧力に対しては基本的には経済考えれば金融を引き締めに掛かる必要はないとのことですが、そうは言っても物価がホイホイと2%の目標を超えるというのもあまり宜しくないという認識。

『Those limits depend, for example, on the cause of the inflation overshoot, the extent of second-round effects on inflation expectations and domestic costs, and the scale of the shortfall in economic activity below potential. In the MPC’s November forecast, the inflation overshoot is the product of a perceived shock to future supply, which has caused the exchange rate to fall, alongside a modest projected shortfall of activity. Inflation expectations have picked up to around their past average levels and domestic costs have remained contained.』

『Given the projected rise in unemployment, together with the risks around activity and inflation, and the potential for further volatility in asset prices, the MPC judges it appropriate to accommodate a period of above-target inflation. That notwithstanding, the MPC is monitoring closely the evolution of inflation expectations.』

つーことで基本的に緩和的な政策自体を継続するし、基本的には物価が少々上に振れてもそれが一時的という評価なら緩和的な政策を継続するという話をしているのですが、このあと「以上の見方によって決定しました」という所(があるがパス)の次に、

『Earlier in the year, the MPC noted that the path of monetary policy following the referendum on EU membership would depend on the evolution of the prospects for demand, supply, the exchange rate, and therefore inflation. This remains the case. Monetary policy can respond, in either direction, to changes to the economic outlook as they unfold to ensure a sustainable return of inflation to the 2% target.』

とあって、「Monetary policy can respond, in either direction」として来まして、追加緩和一辺倒ではなくて両にらみですよという説明になって物価見通しが上がっているので、実質追加緩和予告を撤回という結果になっておりますな。


○黒田総裁記者会見は基本的に暖簾に腕押し糠に釘

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2016/kk1611a.pdf

・任期中の達成が出来ませんがという質問が当たり前のように連発

『(問) 今回の展望レポートでは、2%の物価目標の達成時期について、2018年度頃へ先送りをして、現在の総裁任期中に物価目標を達成することが難しいと、日銀自らが認めたわけですが、これについて総裁はどう思われますか。』

最初からこれな訳ですが・・・・・・・・・

『(答) 今回の展望レポートでは、先程申し上げたように、物価上昇率が 2%程度に達する時期について 2018 年度頃になる可能性が高いとしました。この後ずれは、中長期的な予想物価上昇率の弱含みの局面が続いていることなどを反映したものです。ご案内の通り、中長期的な予想物価上昇率は、中央銀行の物価安定目標に収斂していく「フォワードルッキングな期待形成」と、現実の物価上昇率の影響を受ける「適合的な期待形成」の 2 つの要素によって形成されます。先般の「総括的な検証」で示したように、このところ、中長期的な予想物価上昇率は、現実の物価上昇率が 0%程度ないし小幅のマイナスで推移する中で、「適合的な期待形成」の要素が強く作用し、2015 年夏場以降の弱含みの局面が続いています。今回の見通しの修正は、こうした動きを踏まえたものです。』

とまあ見事に質問に全然答えないというのがお洒落ですが、もう全部こんな感じで推移するので実にこうアレな会見ではありますが、同じような質疑が続くのでこの件はあとこいつを引用しましょう。


『(問) 繰り返しで恐縮なのですが、総裁の責任について今一度お伺いします。総裁がおっしゃるように、就任時に 2 年で 2%を達成すると力強く約束したことで、人々の期待を高めた効果があったと思うのですが、同時に今回も含めて約束を実現できずに何度も先送りしたことで、期待を低めたというか、失望させたり、信用されなくなっている面もあるのではないかと思います。その点、先程のお話からすると、外部要因のせいだから総裁自身の責任はない、というように聞こえるのですが、この点について、今一度お聞かせ下さい。


ここまで聞いても回答は以下のような有様。

『(答) これは「総括的な検証」にも相当詳しく書いています。2013 年 4 月に導入した「量的・質的金融緩和」は予想した効果を十分あげました。ただその後、消費税増税後の個人消費の弱めの動き、原油価格がピークからみると 70%以上も下落した影響、そして昨年の夏以降の新興国経済の減速とそれが国際金融市場にもたらした大きな波乱、そういった中で物価上昇率が現在の水準に至っているということです。2 年で実現できなかったことは残念ではありますが、それは「総括的な検証」で述べられたような事象の中で起こっていることです。先程申し上げたように、欧米の中央銀行も全く同じ状況であり、2013 年頃を見通していたのがどんどん後ずれしてきています。原油価格の動向はなかなか予測が難しく、新興国経済の減速と国際金融市場の大きな変動も予測し難いことであったということで、まさに「総括的な検証」が示したようなことであろうと思っています。


海外のせい、消費税のせい、原油のせい、海外だって物価が上がってないだろう、という説明でして、ここで2013年3月21日の岩田副総裁の就任記者会見での説明をしつこく確認させていただきましょう。

『2 つ目は、そういう意味で、2 年くらいで責任をもって達成するとコミットしているわけですが、達成できなかった時に、「自分達のせいではない。他の要因によるものだ」と、あまり言い訳をしないということです。そういう立場に立っていないと、市場が、その金融政策を信用しないということになってしまいます。市場が金融政策を信用しない状況で、いくら金利を下げたり、量的緩和をしても、あまり効き目がないというのが私の立場です。』(2013年3月21日岩田副総裁就任記者会見より)

今後も折に触れて蒸し返す気だけは満々ですからね!!!!!



・2018年度「頃」なんですから多分2019年度も入るのでしょうがそこはスルー

『(問) 物価上昇率の見通しに関して、2%程度に達する時期が 2018 年度頃という「頃」の範囲について、どうお考えなのかをまずお聞かせ下さい。(後半割愛)』

『(答) 2018 年度頃というのは正にその通りでして、別にどういう幅とか、そういうことは特別な議論はしていません。展望レポートで示した通りです。(後半というか殆ど割愛)』


・追加緩和しない理由

まあご案内の通り市場も明らかに追加緩和しないわなあと思っていましたけど・・・・・・

『(問)(前半割愛)2 点目は、物価見通しについて、2016、17 年度ともに下方修正されていますが、それにもかかわらず追加緩和を見送りということになっているわけですが、その理由についてお聞かせ下さい。』

『(答)(前半割愛)今回、物価の見通しが後ずれしましたけれども、追加緩和は行いませんでした。過去をみても、展望レポートで 2%に達する時期の予想が後ずれしたからといって必ず追加緩和したというわけではありません。後ずれしなくても追加緩和したこともありますし、両者はぴったり合っているわけでは元々ないと思います。』

それはそうですが。

『金融政策運営については、あくまでも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行うという方針であり、これは前回の公表文にも、また今回の展望レポートにも示されている通りです。』

ちなみに「金融情勢」というのは9月から入ったんですけどね。

『今回の展望レポートの中心的な見通しでは、消費者物価の前年比は、当面小幅のマイナスないし 0%程度で推移するものの、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、見通し期間の後半には、2%に向けて上昇率を高めていくと考えています。すなわち、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていると判断したわけです。』

期待予想物価上昇率に関しては弱含みという表現に下がっているのですが、何故かモメンタムは維持されているというこの不思議な理屈。

『もとより、こうした中心的な見通しについては、経済・物価ともに下振れリスクがありますので、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが、前回見通しに比べると幾分弱まっているということも踏まえて、今後、十分注意深く点検していく必要があると考えています。』

という何か分かったような分からんような理屈ですが、ここでバズーカ2を実施した2014年10月31日の追加緩和実施後の総裁会見での説明を確認しましょう。

『ただ、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクもあると考えられます。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、ここで「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断しました。』(2014年10月31日の総裁定例記者会見より)


・・・・・・・ということで、まあこの説明だと何でやらないのかという話ですけれども、結局のところ過度に金利を下げると「金融面」で見た場合に金融機関への収益を必要以上に下押しするから追加の金利引き下げをやる際にはそのデメリットを勘案する、という事であって、それが9月の所から「経済・物価・金融情勢を踏まえ」という金融入りの表現になりましたという話で、その金融面のデメリットに対してメリットがイマイチだから追加緩和は見送るということなのでしょうが、質問がそっちに行かないから分かりにくい事この上ない。



・YCCは結局どこをどの程度のレンジでコントロールするのかが実にこうワケワカラン

まあここまでの話も色々とどうなのと思うが、現実問題としてワケワカラン状態になっているのがこのYCCの運営の方でして・・・・・・・・・・・・・・・・

『(問) (前半割愛)もう 1 点は、前回の会合で、適切なイールドカーブにしていくということで、概ね維持されていると思いますが、生保業界等からは、今の 20 年以上の期間の超長期金利は低過ぎる、1%を超えないと投資対象にならないという声も出ています。この点についてどう受け止められているかお教え下さい。


『(答)(前半割愛)もう 1 つの点は、いわゆる超長期債の金利ですが、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を決めた時のイールドカーブと、現時点のイールドカーブは変わらないと言ってよいと思いますけれども、そういったものを実現していく上で一番短いところの日銀当座預金に対する政策金利と、10 年債金利の操作目標という 2 点を金融政策決定会合で決めることによって、全体として適切なイールドカーブの形成を促していくということです。』

であれば超長期の所の微調整とはという感じですが。

『具体的に、政策委員会で決めているのは、一番短いところの−0.1%と、10 年物国債金利のゼロ%程度であって、その前後の全体としてのイールドカーブは概ね前回の会合通りであり、特に違和感はありません。』

『今後の動向については、当然毎回の金融政策決定会合で議論していくことになると思います。なお、超長期の金利については、今申し上げた 2 つの点を操作目標として示し、マーケットでイールドカーブが全体として整合的で、適正な形になると想定しておりまして、先行きの経済・物価に対する見方などを反映して、上下に変動しつつも、金融市場調節方針と整合的な形で市場において形成されていくものであろうと認識しています。


という説明がワケワカラン次第で、結局「2点をピン止め」したいのか「全体をペッグ」したいのかがさっぱり分からん説明ですし、そもそも政策委員会も分かってないのでは疑惑が。

『(問) 新しい政策の枠組みを導入して 1 か月が経ちますが、どのように評価されていますでしょうか。』

『(答) この点については、政策委員の間でも色々な議論をしましたが、基本的には、マーケットに非常に円滑に受け入れられているということではないかと思います。』

という認識なんだが、これだけ市場が動かなくなって死んでしまって円滑に受け入れもへったくれも無いのですけれども。こんなに動かなくなると適正水準が変わるような際に大変なことになりますよ。

『と申しますのは、前回の金融政策決定会合において、「総括的な検証」を行い、それを踏まえて新しい枠組みとして、「イールドカーブ・コントロール」と「オーバーシュート型コミットメント」の組み合わせでやってきたわけですが、市場はそれを円滑に受け入れて、イールドカーブもほぼ前回の金融政策決定会合時と変わらない形になっています。』

動いていないのが成功と考えているのがそもそも変。

『その間、もちろん世界経済やその他色々な動きがありましたが、比較的順調に来ているのではないかと考えています。特に「イールドカーブ・コントロール」は、ある意味では、世界で初めての試みでもありますので、市場の動向は随分注視してきましたが、これまでのところ非常に円滑に受け入れられて、適切なイールドカーブが実現しており、これが日本経済にとってプラスに働き、2%の「物価安定の目標」に向けて効果を発揮していくと思っています。ただ、新しい試みでもありますので、市場の状況、それから日本経済を取り巻く世界経済の状況等については、十分注視していくということではないかと思います。』

まあ実際は為替も株も逆の反応にならなかったから良かった、ってことでしょ。









2016/11/02

お題「正直アタクシの想定以上にべた降りしてきた決定会合でありました」

という訳で超無風日銀決定会合のレビューでございますが、結果は無風でもまあ出てきたものは面白かった。

○最初にこぼれ話系ですが・・・・・・・・・・・

・【悲報】決定会合結果発表より5時の方が日銀HPが重い件【朗報】

昨日は予定(?)通り12時前に決定会合結果公表となりまして、11時55分に決定会合が終了したのですが、最近毎度毎度アクセスが盛大に集中して無茶苦茶重くて全然資料が見れなくて困っていた日銀ホームページがあら不思議、もうサクサク閲覧が出来まして、えーっとサーバー増強するの年末じゃなかったでしたっけなどと思いながら決定会合結果を鑑賞するの巻。

でまあ結果はご案内の通りで現状政策継続だったのですが(ただし内容は色々面白かった)、17時に(今月はMPMがあったのでいつもの月末ではなくて翌月頭になった)来月(今回は今月ですが)の国債買入額に関する公表がありまして、この時間に日銀のサイトにアクセスすると瞬間重くなりまして(アクセス出来ないレベルまでは集中していなかったけど)、ついに注目度が輪番オペ>MPMになったか・・・・・・・と悲報なのか朗報なのか良く分からない事案が発生しておりました。


・ところで公表時間の時系列出さなくなったの??

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2016/index.htm/
金融市場調節方針に関する公表文 2016年

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2015/index.htm/
金融市場調節方針に関する公表文 2015年

いや凄まじくどうでもよいのですが、MPMの結果公表時間って(声明文を見れば書いてありますけれども)この一覧の所にも出ていたのですけれども、何故か今年の所の記載が何時の間にやら無くなっているのですが、これは何か意味があるのでしょうか???もしかしてHPがアホほど重くなってしまったからその時間に対外公表しているけれども、HPが重くて閲覧できるようになるまで時間が掛かったことを反省(??)して対外公表時間について記載するの止めたとか???????


○ついでに余談ではないが長期国債買入方針

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161101e.pdf
当面の長期国債等の買入れの運営について

日本銀行は、長期国債等の買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2016年11月2日より適用)。
── 次回公表は11月30日17時を予定。

『<当面の月間買入予定(利回り・価格入札方式)> 』の所を見ますと、

−1年:700→700
1-3年:4000→4000
3-5年:4200→4200
5-10年:4100→4100
10-25年:1900→1900
25-年:1100→1100
物国:250→250
変国:1000→(奇数月なので買入予定無し)


回数も変化なくて短期2回、中期長期6回、超長期5回、物国2回ですな。


・・・・・・・・・・・ということで、昨日は9/29の引けと比較しましたが、9/29対比で金利が下がっている所というのは無かったのですが、まあその中でも金利がまだ低めになっているのが超長期で、しかも超長期に関しては先般の黒田さんの国会答弁で「超長期の金利が上がっても良いのでは」みたいな発言をしたとヘッドラインが飛んでいましたし、まあ何のかんの言っても超長期はマイナス金利からの避難民が押し寄せてくる所ですので、日銀の買入がちょっと減るくらいで推移してくれた方が押し目が出来てウマー的なサムシングもありますので、今回は超長期の輪番を1回200億円程度までは減らされても驚かないというかむしろウマー的な感じもあったりしたと思うの(予想そのものは半々とかだったと思うけど)。

でまあこれなんですけれども、後で申し上げますけれども、今回の決定会合声明文と展望レポートが物凄い「べた降り」状態になっていまして(べた降りしている癖に政策は現状継続なのですが)、見通しのべた降りをする中で今回は国債買入の減額をして下手に悪目立ちするのを避けてきたのかなあとか思うのですが、だったら国会であんなことを黒田総裁に喋らせるなよという感じでして、そらまあ国会だから質問に応じて話をしたのが情報ベンダーによってキャッチーな部分を強調されるというのもあるので貰い事故的な部分もあるのですが、国会で具体的に超長期金利の水準みたいは話をすると、イールドカーブコントロールに何らかのインプリケーションがあるのかと思われやすくなるので、YCCになって政策の枠組み変わっているんですから、もうちょっと市況に関する発言は慎重にした方が良い(意図してやっていて出口なり追加緩和の地ならしをする積りなら良いけどさ)と思います。


などというのは余談ですが決定会合レビュー。


○総じて「べた降り」感の強い結果になりましたなあ

今回出てきたもの。

声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k161101a.pdf

展望レポート
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1610a.pdf

前回と比較して声明文の文章量が物凄くあっさり味になっている(総括検証のお話があるのでもとよりあっさりするのは自明だったのですが、その分を差し引いてもエライあっさり味になっている)上に、展望レポート(基本的見解)は本文部分で9枚組→6枚組と3分の2にスリム化していまして、しかも従来ゴテゴテと言い訳成分を入れながらああでもないこうでもないと書いていた部分がバッサリと削られております。

つまりですね、従来は「足もとはこのように目標達成までやや苦戦しているけれども、その理由は政策が上手く行っている訳ではなくて別の問題があるからで、これからはこんな事やらあんな要素やら出来るだけ早期に達成するんですよ皆さん!!!」というような感じで、毎度往生際が悪く見通し未達と今後の達成についての話があった訳でございますよ。しかしながら今回は表現も簡素化されまして、2%物価達成見込み時期に関しても1年(下手したら1年以上)先送りになるという見通しを淡々と述べるというような感じになっていまして、現状の未達と今後の達成見込みについて「かなりべた降りしてきた」という感じでは無いかと思います。

ということでまずは声明文比較。


○声明文:追加緩和文言をしらっと減少させるという段階的フェードアウト攻撃キタコレ

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k161101a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921a.pdf(前回)

前回は総括検証とYCCの話があるのでちとややこしいのですが、今回の声明文は余計な物を外しまくっているので非常に少なくなっています。

『(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成7反対2)(注1)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約 80 兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。』(今回)


『(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)

@ 金融市場調節方針(賛成7反対2)(注1)

金融市場調節方針は、長短金利の操作についての方針を示すこととする。次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10 年物国債金利が概ね現状程度(ゼロ%程度)で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約 80 兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。買入対象については、引き続き幅広い銘柄とし、平均残存期間の定めは廃止する。』(前回)

今回変わった所としては「今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。」という部分でして、これに関する文言は声明文の他の部分でも出て来なくなりました。

つまりですな、特にマイナス金利政策をぶっこんだ後に顕著だった「金利を下げれば下がるほど緩和効果が出るからマイナス金利政策は強力だぜヒャッハー」という黒田総裁以下日銀執行部の理屈なのでございますが、そらまあ必要な時(外的ショックとか)の利下げは別に今後だって起こると思いますけれども、それをわざわざ表面に書かなくなった訳ですな。

これと、展望レポートでの物価2%達成見込み時期の大幅後倒しとこれまたフェードアウト気味の表現への変更(後で申し上げます)の中で追加金融緩和措置は行われなかった、ということとの合わせ技一本で考えてみますと、これまでならアジャスト程度の状況でも追加緩和をやりそうな勢いでしたし、今回のように見通し1年も延長したら自動的に追加緩和という感じだったのに対しまして、明らかに今後については余程とんでもないショックでもない限り追加緩和は行わないですよーという話をしているので、明確にスタンスが変更されましたな。

・・・・・・・・・・とは言いましても、それってまあYCC始まった時にそういう話をしてはいたのですけれども、YCC導入時の軋轢を回避するのか、それともリフレ派審議委員を丸め込むためのギミックだったのかは存じませんが、前回の時点では「今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。」という文言を入れていたものの、YCC始まって時間の経過とともに、「金利が下がれば下がるほど良いという認識ではない」というのも定着してきたので、そこで今回こっそりと当該文言を外したんでしょうなあと思うのでした。

でちょっと脱線しますと、まあ確かに今回の展望レポートでこれだけ「べた降り」するしかないと考えているのであれば、総括検証とYCCを同時に入れて、展望レポートでの実質的には大幅な下方修正での政策変更無しという政策を整合的に実施出来ない罠と思うので、YCC導入した時は何でそんなに急ぐのかと思いましたが、結果から見ますとこの展望レポートでのべた降りが前提としてあった中ではYCCを入れるのは前回会合じゃなければいけなかったということだったのですねと感心する次第。

あと「80兆円」という文言は相変わらず残っているのですが、まあこれはいずれフェードアウトするんでしょうとは思います(そのペースで買っていたら金利は下がり過ぎてYCCにならない)が、これまた徐々に撤収という感じで、今回はまず「際限なき追加緩和要求」からの完全脱却を行って(成功したし)、量の事とかはその後に徐々にやっていくという事になるんでしょうな。

それからもう一つ、10年金利の表現ですが、まあこれは枝葉の問題ではあると思いますが、数値を明確化しただけとかその程度のお話だとは思われますが、「これは0%に誘導するんだから10年カレントが▲5.5bpから見たらこらもう10年輪番減額だぜヒャッハー」とかいうのはさすがにちと考えすぎの類で、案の定10年輪番もカワランチ会長でしたな。


『(2)資産買入れ方針(賛成7反対2)(注2)

長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

@ ETFおよびJ−REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。

A CP等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、約 3.2 兆円の残高を維持する。』(今回)


『(2)資産買入れ方針(賛成7反対2)(注3)

長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

@ ETFおよびJ−REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。

A CP等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、約 3.2 兆円の残高を維持する。』(前回)

順当に変更なしですな。


それから、今回オーバーシュート型コミットメントに関する記述が皆無になっていて一瞬ビビったのですけれども、

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2003/k031010.htm/
本日の金融政策決定会合における決定について
(2003年10月10日)

2003年の時に量的緩和政策の継続期間のコミットメント強化をすることになった(背景にはその前にいわゆるVaRショック(本当の原因はVaRではないと思うのだが)が発生して金利が不安定化したというのがあった)のですが、この時にコミットメントを出しましたが、その次のMPMでは

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2003/k031031.htm/
当面の金融政策運営について

こちらを見ていただければ分かりますが、コミットメントに関しては特段の新たな議決事項ではなくて、そのままスルーされていますので、この時と同様の話であって、オーバーシュート型コミットメントについては、今回の場合だと声明文には入らない(声明文中に経済物価情勢の説明の入る展望レポートじゃ無い時の声明文には入ると思いますし、展望レポートの回では展望レポートの中で記述する(今回もそう)という仕切りかと思います。




○展望レポートはだいぶ簡素化されてべた降り感が高まる

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1610a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1607a.pdf(前回)

本文相当部分の分量が9ページ→6ページに減少しているのは先程も申しあげたとおりですが、文章の作り方も読みますと「読みやすいですなあ」という感じになっておりまして、それは言い訳成分や強がり成分が無くなって参りまして、これまで盛大に突っ張っていたのが、急に憑き物が落ちたかのようにあっさり味で「いやー物価中々行きませんなーでも頑張りますよあっはっは」というような長期戦とまではまだ言いませんが、すくなくとも短期決戦で本土大決戦玉砕辞さず的な悲壮感が無くなっているというのは読み取れるものと存じます。


・「鏡」部分に物価目標達成時期の明示を外すというのは中々やります(本文には有るけど)

冒頭の鏡の部分。

『<概要>』というのがいわゆる鏡の部分ですな。

『・ わが国経済は、海外経済の回復に加えて、きわめて緩和的な金融環境と政府の大型経済対策の効果を背景に、2018 年度までの見通し期間を通じて、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。

・ 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、見通し期間の後半には2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。

・ リスクバランスをみると、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きい。物価面では、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているとみられるものの、前回見通しに比べると幾分弱まっており、今後、注意深く点検していく必要がある。

・ 金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(今回)

前回のはクソ長い(今回が超あっさりと言えばその通りですが)のですが引用してみましょう。

『・ わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。先行きを展望すると、暫くの間、輸出・生産面に鈍さが残り、景気回復ペースの鈍化した状態が続くとみられる。その後は、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな増加に向かうことから、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。

・ 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格の寄与度は、現在の−1%強から剥落していくが、2016年度末まではマイナス寄与が残ると試算される2。この前提のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」3である2%程度に達する時期は、中心的な見通しとしては 2017 年度中になるとみられるが、先行きの海外経済に関する不透明感などから不確実性が大きい。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる。

・ 従来の見通しと比べると、成長率については、財政面での景気刺激策の効果もあって、見通し期間の前半を中心に上振れている。なお、2017 年4月に予定されていた消費増税の延期に伴い、駆け込み需要とその反動減は均される。物価見通しについては、こうした成長率の上振れの一方、為替円高や中長期的な予想物価上昇率の改善が後ずれしていることなどにより、2016 年度について下振れているが、2017 年度、2018 年度については概ね不変である。

・ 金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる。』(前回)


比較すると中々クソ長いのですが、見ればお分かりのように今回エライ簡素化した記述になりまして、何せここの鏡見た時点でおーと思ったのは、

『・ 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、見通し期間の後半には2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)

『・ 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格の寄与度は、現在の−1%強から剥落していくが、2016年度末まではマイナス寄与が残ると試算される2。この前提のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」3である2%程度に達する時期は、中心的な見通しとしては 2017 年度中になるとみられるが、先行きの海外経済に関する不透明感などから不確実性が大きい。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる。』(前回)

説明がばっさり切られたのはさておきまして、今回はなにせ「見通し期間の後半には2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる」ということで、鏡では2%達成時期についての言及が消えていますな。ただまあこれ完全にバッサリという訳にも行かないようで、本文3ページに、

『なお、2%程度に達する時期は見通し期間の終盤(2018 年度頃)になる可能性が高い。』(今回)

とありまして、この2018年度「頃」って何だよという感じで、前回が「2017年度中」と一応ケツがあったのですが、頃だとケツがどこだかワカランチ会長で、2019年度に突入する気満々というこの状況でして、「2年程度を念頭に出来るだけ早期に」とかいうのは完全に「気持ちの問題」というか「心意気は示しました」的なお題目になってしまいましたなあ(ただしウソ800でも言い続けないと「断念した」と言われるので引っ込めるわけにはいかないので、フェードアウトしつつも聞かれたら「頑張る」と答えるという感じでしょうな)とゆー感じ。


あと、金融政策というかオーバーシュート型コミットメントに関しては、前回の展望レポートと比較しても仕方ないので直近の声明文での記述と比較しますが、

『・ 金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(今回)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースの残高は、上記イールドカーブ・コントロールのもとで短期的には変動しうるが、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。この方針により、あと1年強で、マネタリーベースの対名目GDP比率は 100%(約 500 兆円)を超える見込みである(現在、日本は約 80%、米国・ユーロエリアは約 20%)。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(9月)

まあ前回は導入した時なので説明が長くなるのは当然なのですが、それにしても前回色々とぶち込んでいたマネタリーベースの具体的な額についての言及を思いっきり外してきておりまして、これどう見てもMBとかとりあえず増加はするし最初はうるせーからペースそんなに下げないけど、徐々にフェードアウトしていきます(つーてもMBは増えますが)と言ってるようなもんで、べた降りに加えて追加緩和からもきっちりべた降りしているので、追加緩和でもう死ぬしかないとなっている金利市場の皆さんニッコリ(つーてもこの金利とプライスアクションなので別に嬉しくは無い)という所ですかそうですか。


・経済物価情勢についてもべた降り感が強い

『1.わが国の経済・物価の現状』の所は9月声明文別紙とも比較しますね。

『わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(9月)
『わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(前回)

同じじゃな。

『海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうしたもとで、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。国内需要の面では、設備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、一部に弱めの動きがみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。住宅投資は持ち直しを続けており、公共投資は下げ止まっている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は横ばい圏内の動きを続けている。企業の業況感は、総じて良好な水準を維持している。』(今回)

『海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうしたもとで、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。国内需要の面では、設備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。住宅投資は持ち直しを続けており、公共投資は下げ止まっている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は横ばい圏内の動きを続けている。』(9月)

『海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうしたもとで、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。国内需要の面では、設備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。住宅投資は再び持ち直しており、公共投資は下げ止まっている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、地震による影響もあって、横ばい圏内の動きを続けている。企業の業況感は、総じて良好な水準を維持しているが、このところ慎重化している。』(前回)

9月対比で変化なし、7月対比でみると個人消費の文言が「一部に弱めの動きも」だったのが「一部に弱めの動きが」になっていて、もはやその日本語のワーディングの使い分けの意味が良く分からん。住宅は上がっていて、業況感も上がっています。ただし生産は震災の影響が抜けても横ばいのままなのでこれは横ばいだけれども気分的にはあまり良くない。

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いている。』(今回)

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。』(9月)

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。』(前回)

でもって今回キターーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーー!!!なのはこの予想物価上昇率の所で、ついに「やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが」という往生際の悪い文言を削除致しました。

でもってそれならモメンタムを維持するために一昨年のハロウィン緩和のようにインフレ期待の低下を防ぐためにプリエンティブに追加緩和するもんじゃないですか???などと折角追加緩和をしない枠組みになって金利の皆さん死なずに済んでいるのにわざわざ死ににいくようなツッコミはしないのが大人の態度という事でありまして、まあ結局の所総括検証とYCCで枠組みを変えたことによって今回の「期待インフレの現状判断引下げなのに追加緩和無し」という珍妙なセットが成立しうる(なぜなら追加をやったからと言っても副作用が大きい場合があるからやらないでも良いという選択肢になる)というものでして、いやまあ総括検証の効果恐るべしと言った所です。


でもって見通しに関しましてもあちこちでべた降り感が漂うのですが、当然のように時間と量の都合で今朝はここで勘弁してつかあさい。明日ちゃんと起きれたらFOMCもありますしどこかの時間で更新するか金曜にまとめて全部投下するかします。










2016/11/01

お題「日米プレビュー雑談メモ」

ということで急に注目度が低下したMPMがやって参りましたよ。

○その前にBOEですが

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2016/080.aspx
Governor Mark Carney makes announcement on his term
31 October 2016

カーニー総裁が今の政権とイマイチなので5年で退任して3年の延長オプション使わない観測報道が思いっきり出ていたようで、MPCの後に出るとか報道されていましたが前倒しで出してきましたか。

『In a letter to the Chancellor, published this evening (Monday 31 October), the Governor said he would extend his term to the end of June 2019.』

1年延長とはこれまた微妙な延長。

『The Governor said:

“I would be honoured to extend my time of service as Governor for an additional year to the end of June 2019. By taking my term in office beyond the expected period of the Article 50 process, this should help contribute to securing an orderly transition to the UK's new relationship with Europe.

It is an honour and a privilege to serve in this important role. I deeply appreciate your support, that of the Prime Minister, and that of colleagues at the Bank, and I look forward to continuing to promote the good of the people of the United Kingdom during this crucial time for the country.”

In his reply, the Chancellor said:

“I am very pleased to hear that you intend to continue as Governor of the Bank of England until the end of June 2019. This will enable you to continue your highly effective leadership of the Bank through a critical period for the British economy as we negotiate our exit from the European Union.”』

ブリクジットがあるのでその時期に関してはカーニーさんがやりますよ(その後はその後の話)ということのようで、そうなりますとFSBとかバーゼル3関連も変わらず(というかBOE総裁辞任してもやってそうなのであまり関係ないのかも)なんですかねえ。まあメモメモ。


○決定会合がやっとイベントリスクではなくなるようでなにより(というプレビュー雑談)

ふむふむ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-31/OFW77A6K50XU01
日銀会合注目点:2%達成時期どこまで先送りか、80兆円めどの行方は
2016年11月1日 00:01 JST

『ブルームバーグがエコノミスト43人を対象に10月21−25日に実施した調査では、41人が今会合の現状維持を予想。来年4月までに追加緩和があると予想したのは18人(42%)と半数以下にとどまる一方で、追加緩和なしは15人(35%)と前回9月会合前の調査(14%)から大きく増えた。今会合で追加緩和を予想していた2人のうちの1人、HSBCアジア経済調査部門共同責任者のフレドリック・ニューマン氏(香港在勤)は10月27日付のリポートで緩和予想を撤回。マイナス金利の深掘りの予想時期を来年第2四半期に先送りした。』(上記URL先より、以下同様)

そもそも43人に聞いてどうするんだよという気は昔からするこのアンケートですが(ブルームバーグ的には頭数が多ければ多いほど良いという事なんでしょうけれども、ドテカボチャ集めてアンケートしても仕方ないと思うんですがねえ)、今回追加緩和予想が1名(大体想像はつくが多分その方は「べき論」での予想ですな)とか、まあやっと無風になりましたなという感じです。

しかも「当分追加緩和は無い」という認識も広まりましたし、この先にありますように物価達成も後ずれして誰も文句言わなくなってきたという事ですから、本来であればその前からクレクレクレクレ言っていた市場(債券はクレクレというよりは迷惑にも程があるがまあ仕方ないというまな板の上の鯉状態で、クレクレは他市場だが)がとっくの昔に「日銀金融緩和の後退」とか言って円高ヒャッハーとかやっていてもおかしくは無かったと思うのですが、米国利上げモードとかECBも何か急に追加緩和ヒャッハーからのトーンダウンとかになっていて、無事にここまで来ているのがラッキーなのか作戦が上手く行ったのかは知りませんが、まああまり波風立てないで(ただし債券市場が一段と死亡するという犠牲を払っているが)昨年12月に打ち込んだ補完措置と1月のマイナス金利以降に起きた市場のクレクレを見事に止めたのでそこは結果オーライの気がするが評価できますな。

まあ今回は兎に角テクニカルな修正すら入れるべきではなくて、これだけ何もないという予想になっているのですから、決定会合は12時前にさっくり終わらせて現状維持のアナウンスをさっさと流すというのが9月の総括検証→9月末の金利釘づけ大作戦開始→直近でもちょっと下がった超長期金利に牽制打ち込み、という流れをコンプリートして、兎に角当分動きませんよオラオラオラというのを見せるのが宜しいんじゃないかとおもいますけどさてどうなるやら。


『日銀は決定会合後に4半期に1度の経済・物価情勢の展望(展望リポート)も公表する。前回7月の展望リポートでは、2017年度の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比見通し(政策委員の中央値)は1.7%上昇で、同年度中に物価目標である2%に達するとしていた。』

『しかし、9月のコアCPIはエネルギー価格の下押しもあって前年比0.5%低下と水面下で推移。日銀が重視しているエネルギーと生鮮食品を除いたいわゆる日銀版コアCPIも0.2%上昇とゼロ近傍で低迷している。黒田総裁は10月21日の衆院財務金融委員会で、物価目標の達成見通しについて「修正はあり得る」と発言。前回会合から経済、物価、金融情勢は変わっておらず、長短金利の操作目標について「すぐに変更があると考えることは難しい」とも述べ、今会合は現状維持とする可能性が高いことを示唆した。』

ということで今回の注目という程でもないのですが、まあ2%達成見込み時期に関して1年延長というのがコンセンサス(従来は伸ばすときに半年とかで小出しに延期していた)になっていまして、出たらどうだというのも無いですし、まあこれ以上追加緩和やられても迷惑ですから物価見通し先送りしてもリフレ派の敗北とか岩田副総裁何で辞任しないのとかそういう事は言わないでとりあえずスルーしておかないとまた逆切れして追加緩和とか言われても敵わんという所で(笑)、平然とスルーされることになるのでしょう。

でまあそこまではコンセンサスなのでどうでも良いのですが、そもそも論という話になりますと、物価見通しそのものは展望レポートだから出すにしても、その中のワーディングとして「2%に達する時期」そのものを敢えて書かないで、会見で質問されたら「中心的な見通しとしてはご覧の通りです」とだけ説明する、という形、すなわち「2%物価水準の達成見込み時期を政策委員会の総意としてのワーディング部分から外す」かどうかでしょうかね。

つまりですね、展望レポートの見通しの数値として別表に出ているもの自体はあくまでも「個別政策委員のビューの集合体」であって、政策委員会としての一つの見解としてのものではないのですが、展望レポート(や声明文)で出す「2017年度中前後に2%に達し」云々という文言は政策委員会の決定事項としての一つの見解(反対も出ますが賛成多数で可決される訳です)となっているのですが、この部分のビューをさっくりと外してくるとなりますと、つまりは「目標達成時期の一段の曖昧化」となりますので、それは佐藤審議委員の主張する「ローリングターゲット」や木内審議委員の主張する「中長期的に達成」という話にかなり近づく(というか事実上ローリングターゲットになったようなもん)のでして、ドンドン黒日銀の漂白が加速する訳ですが、何せ置物大先生は間違ったと言わないで「進化した」とか言う位ですから漂白がここで加速したらかなり笑えますなあという所です。

まー2%到達時期を曖昧化するならここのタイミング(まさか今回見通し下げないという変化は無いと思うのですが、見通しを1月まで引っ張ってそこで下げるなら1月でも)かなあと思うのですが(もう一回下げる時に追加緩和しない言い訳として曖昧化ってのもあまりパッとはしないけど)、いずれにせよこの達成時期を曖昧化して、もっと重要なのは「2年を念頭に出来るだけ早期に達成する」というのを気持ちだけの問題にして行動は別という風に持って行かないと(今の所すっかり皆さん忘れたような感じになっているので誠に結構なのですが、「2年を念頭に出来るだけ早期に達成する」というのは別に撤回された訳ではない筈なので、記者会見で誰か非常に意地の悪い方が質問するかも知れません)政策運営が面倒になりますな。


でもってあとはこれですか。

『金融市場が注目しているのは、日銀が約80兆円をめどとしている長期国債の買い入れ減額のタイミングだ。黒田総裁は21日の国会答弁で、将来、年間80兆円増のペースで買わなくても良くなる「可能性は高い」と指摘。70、60兆円になってもマネタリーベースは増えると述べ、買い入れペースの大幅減があり得るとの見方を示した。』

この辺りに関してですが、確かに日銀は追加緩和クレクレ無間地獄からの脱却には成功しているのですが、そうはいってもこれ海外中銀の金融政策のタイミングとか景気的にも一旦底割れ的な感じはなくなっているとか、そういう外部環境のサポートもある訳で、何だかんだ言いまして為替がとりあえず円高アタックしてきそうもないのが何となく安定しているように見える状況のサポート要因として無茶苦茶効いていると思うのですよね。

つまりですな、今の所上手く行っているのですけれども、だからと言って調子に乗って主体的に買入をバンバン減らすとかおっぱじめた場合に、日銀がまた悪目立ちしてしまって日銀政策が注目されて国債買入を動かしただけでもう大騒ぎ、となってしまうと元も子も無いので、国債買入ペースはいずれ落としていくことになるのでしょうが、あくまでも目立たないようにこっそりやって行くというのが基本でしょと思うのですよ。

何となれば、先般の輪番調整の時だって、日中に10年を減額して引け後に翌月の超長期を減額しているのですが、公表文書の方では「今月の最終オファー額と比較して」という表示をして、日中に10年の減額に気が付かなくて、前月末の公表文書との比較をする習慣の無い方がみたら「ああ20年だけ減額したのか」と思うような細かい演出を入れている訳でして、(そんな事しても普通気が付くわと思うのですが)とにかく減らすにしても目立たないようにやってくると思いますよ今の所は。

ですから、国債買入額の減額に関してはあくまでも市場金利がイールドカーブのイメージで示したメド水準から10bpとか乖離した所で自然体(のように見せかけて)の小幅減額で匍匐前進という風になってくると思いますし、同じ理屈で80兆円云々についても、まあもっと時間が経過して国債買入への注目度が下がってくるまでは仕方ないから残して、来年に入って4月位になったら外してくるとか(早くて1月)そんな感じじゃないですかね。

でもって来年4月と言えば残り1年ということですから、そういう意味では「自分の任期中に2%達成が出来ないんだから、後任の執行部に対して短期決戦タイプの政策をそのまま残しておくのは余りと言えば余りに酷い話なので、少なくとも短期決戦タイプの政策は畳んでいく」という蛍の光窓の雪モードになってきたという事で生温かく閉店モードを見守っていくというのが大人の姿勢かなあと思って悪態も程々にしている次第でありますが、今日の結果を見てまたトサカに来て悪態モードになる可能性は一応否定できません。


○実は5時の輪番の方が注目でしょどうせ

ということでメモだけ。こんなんただの当て物ですけれども、昨日の引けは以下の通り(単利)

2年:▲24.5bp(既発は▲26.0)
5年:▲19.5bp
10年:▲5.5bp
20年:37.5bp
30年:50.5bp
40年:59.0bp


ちなみに9月29日(30日の前日)の引けは

2年:▲0.295%(新発じゃない方にしています)
5年:▲0.240%
10年:▲0.090%
20年:0.340%
30年:0.435%
40年:0.510%

#さっきと全角半角が違うとか表記がbpと%なのは何でじゃとかいうツッコミはしないでください自分の過去ログからのコピペなもんで

となっておりますので、超長期減らすのかどうか微妙な線ですけれども、徐々に買入は減らしたいというのであればこの水準を見ると減らせるのは超長期でしょうし、10年超の金利がもうちょっと上がっても無問題と思うのであれば(国会ではそんな話を堂々としていましたので)超長期の輪番を減らしてもおかしくはないですが、派手に減らすと目立つので200億円×5で月間1000億円でしょうな、というか多分その辺まで減らしても債券市場は驚かないので減らすなら減らせばどうかねとは思います。

なお、本当に本当のことを言えば中短期の買入がどう見ても過大なのだが、MB80兆円文言の残る中では中短期ってロットで減らさないとあまり意味がない年限なので、ちょっと減らすのはキツイんでしょうなあと思う。


○ついでにFOMCプレビューメモ

まあ今回は利上げ無しで12月利上げまでコンセンサスですから、別に明日のFOMCが何か爆弾になるとは思えない(むしろ怖いのは雇用統計で変なノイズが出ること)のですが、問題は12月に利上げした後に来年の利上げがどうなるかという話。

・・・・・・・・・・ということでフィッシャーとかダドリーとかの話とイエレンのこの前の高圧経済ネタとかを絡めて全体のビューがどうなっているのかというのを整理すると一本大きめのネタになるのですが、例によってそんな時間がないのでその辺はFOMC終わってから追々成敗して参りますが、いわゆる物価上ブレ容認方向の「金利中々上げませんよね」という人にも別系統があるんですよね。

イエレン講演

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20161014a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20161014a.pdf
Macroeconomic Research After the Crisis

エバンス講演

https://www.chicagofed.org/publications/speeches/2016/10-11-2016-conducting-monetary-policy-in-an-evolving-environment-sydney
Conducting Monetary Policy in an Evolving Economy

ウィリアムス講演
http://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2016/september/whither-inflation-targeting/
Whither Inflation Targeting?

そういやエバンス講演途中まででその続きを別ネタやっているうちに継続しこそなっているような気がだいぶするんですが、エバンスとウィリアムスの話ってインフレターゲットからの物価上振れ容認(だから低金利政策継続をもっとやるべき)という話なのですが、エバンスとウィリアムスって別系統の話をしていて、エバンスの場合は「インフレ期待が下振れている(今の所1.75%程度位に下振れているという認識)から上げなければいかん」という話であって、ウィリアムスの場合は「どうせ構造的にそんなに上ブレしないんだから別に容認しても無問題」という話をしているのよ。

でもってイエレンの場合は高圧経済云々は言ってるけれども、物価が構造的に上がり難いという点の認識はウィリアムスと同じだけれども、たぶん物価が上ブレすることを容認という程のスタンスではなくて、そうしないと上がらないから高圧経済という話だと思うのですよ。

ということで、まあハト系の方でも別に一枚岩でもないし、タカ系はこれからもう一回ちゃんと整理して見ますが、これまた一枚岩でもなんでもないので、結論として出てくるのはどうせ平均して来年は年2回〜3回の間の利上げとかいうのがSEPで出るんでしょうが、そのドットプロットの含意が人によってだいぶ違ってくるので、ちゃんと整理しておかないと多分なんでこう変化するんじゃみたいなことになってくるように思えます。

という結論が何もないメモでどうもすみません。