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2016/08/31

お題「だいたいイエレン議長講演ネタの続きと一部雑談」

最初いつもの冒頭マクラのつもりだったのがついうっかり血圧が上昇して次の小見出しに化けてしまいましたのでこちらでも置いておきますね。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2016083000565&g=pol
「証券会社勤務はやばいやつ」=所管閣僚の麻生氏が放言
(2016/08/30-16:06)

・・・・・・・・・・・アチャー。


○賃金上昇をという話だがだったら金融政策は最初からいらんかったんや!!!ではないのかね

ふむふむ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-29/OCIH6B6K50YG01
山本地方創生相:デフレ脱却へ2%以上の賃金上昇を−インタビュー
2016年8月29日 10:00 JST

『山本氏は日本銀行が目指す2%の物価安定目標の達成には「賃金がきちんと2%以上、上がるという状況が確保されていないと難しい」と指摘。』(上記URL先より)


ところで・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/tk0646951-interview-ldp-yamamoto-idJPTYE93204D20130403?sp=true
Business | 2013年 04月 3日 15:54 JST
インタビュー:2%達成にはマネタリーベース拡大を=自民・山本氏

『「抜本的にマネタリーベースを増やす施策を打ち出してもらわなければならない」と指摘。「早く160兆円、170兆円にもっていけば、半年後くらいには、ブレークイーブン・インフレ率は2%に達する」とした。』(上記URL先より)


ついでに・・・・・・・・
http://diamond.jp/articles/-/30804?page=6
浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー
「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」
【第15回】 2013年1月20日

『よく「名目賃金が上がらないとダメ」と言われますが、名目賃金はむしろ上がらないほうがいい。名目賃金が上がると企業収益が増えず、雇用が増えなくなるからです。それだとインフレ政策の意味がなくなってしまい、むしろこれ以上物価が上昇しないよう、止める必要が出て来る。こうしたことは、あまり理解されていないように思います。』(上記URL先より)


それではもんだいです。各発言が整合的になるような理論と、実際にその理論通りに結果が出るのかについて300字以内で論考してください(10点)。


・・・・・てかね、置物MB直線一気理論に関しましては、そらまあ実際にやったの始めてみたいなもんですから「やってみて思ったほどの効果が出てなくて当初大口叩いた通りに行きませんでしたねえ」となって「総括検証」をするのは何せやった事のない施策だからそういう事だってあるかも知れないのですけど、もともとの人たちが「実際の政策を行いながら徐々に考えてやっていく」としながら行っている政策を捕まえて「金融政策だけで可能」「いつも他のせいにして結果を出していない」って大口叩いて石持て追い出した後に座っている人たちなのですから、自分たちが行っていた口汚い日銀への誹謗と同じものを受けるべきなんじゃないですかねえとしか思えん訳ですけど。

と、マクラのつもりがこの有様ですが、今回の総括検証に関しても「効果があった」という話のオンパレードになるのは間違いを認めると死んじゃう病に罹患されている皆様なのでそう出てくると思うのですが、何をどう言いつくろっても結局のところ「2年を念頭に出来るだけ早期に」と大口叩いて2年よりも早い位の勢いで達成する筈の物価安定目標が全然達成できていないという事実を踏まえた「効果」の分析をして頂きたいものであります。


○イエレン議長講演ネタの続き

昨日台風のため(かどうかはさておき)途中だったので続きをば。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20160826a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20160826a.pdf

Chair Janet L. Yellen
At "Designing Resilient Monetary Policy Frameworks for the Future,"
a symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, Wyoming
August 26, 2016
The Federal Reserve's Monetary Policy Toolkit: Past, Present, and Future


・フォワードガイダンスと資産買入が効くという話をしながらも副作用にも言及

昨日ネタにしたところまでの続きになりまして、ネタにした部分までのお話は「中立金利が低下しているという試算が多い」→「今般の正常化の後の短期金利水準は過去の平均的な水準より低い」→「それって次に景気後退が起きた時に容易にゼロ金利制約に引っ掛かるのではないか」というお話が続いていて、それに対して対応可能という話をしている所まででした。でもってその具体的な説明の所から参ります。

『Figure 2 in your handout illustrates this point. It shows simulated paths for interest rates, the unemployment rate, and inflation under three different monetary policy responses--the aggressive rule in the absence of the zero lower bound constraint, the constrained aggressive rule, and the constrained aggressive rule combined with $2 trillion in asset purchases and guidance that the federal funds rate will depart from the rule by staying lower for longer.21』

『As the red dashed line shows, the federal funds rate would fall far below zero if policy were unconstrained, thereby causing long-term interest rates to fall sharply.i But despite the lower bound, asset purchases and forward guidance can push long-term interest rates even lower on average than in the unconstrained case (especially when adjusted for inflation) by reducing term premiums and increasing the downward pressure on the expected average value of future short-term interest rates. Thus, the use of such tools could result in even better outcomes for unemployment and inflation on average.』

でもって図表2ってのが
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen-figure2-20160826.png

なんですけれども、政策金利を名目ゼロから下にできないという状況においては、フォワードガイダンス政策とAPPによって金利水準全体への押し下げ効果を出すことによって、図表のように効果が出て来ますよウヘヘヘヘというお話をしておりまして、ホンマカイナ感はだいぶ漂う怪しげな話になっておりますが、これはまあ「今のツールキットが効くんじゃ」という話をすることによって、別の政策論議みたいなのに釘を差しているという事もあるのかなあとか思ったりしましたよ。

『Of course, this analysis could be too optimistic.』

そらそうだ。

『For one, the FRB/US simulations may overstate the effectiveness of forward guidance and asset purchases, particularly in an environment where long-term interest rates are also likely to be unusually low.22 In addition, policymakers could have less ability to cut short-term interest rates in the future than the simulations assume. By some calculations, the real neutral rate is currently close to zero, and it could remain at this low level if we were to continue to see slow productivity growth and high global saving.23 If so, then the average level of the nominal federal funds rate down the road might turn out to be only 2 percent, implying that asset purchases and forward guidance might have to be pushed to extremes to compensate.24』

つーことで、リセッションの影響に加えて、生産性などの低下による構造的な問題が加わっている中で、一部の試算では現在の中立金利がゼロで、将来においても2%程度にしかならん、というような計算もあったりしまして、そういうような状況下で景気後退時にゼロ金利制約に対応した適正なガイダンスと資産買入を行う事になった場合には、きわめてエクストリームな買入を実施しないと行けなくなる可能性もあります。という問題提起に加えまして・・・・・・・・・・


『Moreover, relying too heavily on these nontraditional tools could have unintended consequences. For example, if future policymakers responded to a severe recession by announcing their intention to keep the federal funds rate near zero for a very long time after the economy had substantially recovered and followed through on that guidance, then they might inadvertently encourage excessive risk-taking and so undermine financial stability.』

(;∀;)イイハナシダナー

さらなる問題として、これらの非伝統的政策に過大に依存することによって期待していない結果を生む、と非伝統的政策の副作用にも言及しているのが、副作用の話を何もしないでマイナス金利政策の自画自賛のオンパレードを行うという置物師匠の生霊が乗り移ったのではないかという黒田総裁の講演と比較致しますと何という普通の話をしているのでしょう!!!!!つーかまあ黒田総裁の方がおかしくて、あんな話をジャクソンホールでさせて恥ずかしくないのかね日銀スタッフの皆さんと申し上げておきますけど。

でまあそういう悪態は兎も角として、思いっきり「if future policymakers responded to a severe recession by announcing their intention to keep the federal funds rate near zero for a very long time after the economy had substantially recovered and followed through on that guidance, then they might inadvertently encourage excessive risk-taking and so undermine financial stability」とか日本にイヤミを言っているつもりはなくて、普通の話をしている&低金利政策の長期化を織り込みまくっている市場に対するイヤミを言っているだけだと思うのですが、日銀に対してもいい感じで砲撃成分があるなあと思うのでした。


・フォワードガイダンス政策の有効性を過信しているようなイメージはややある

『Finally, the simulation analysis certainly overstates the FOMC's current ability to respond to a recession, given that there is little scope to cut the federal funds rate at the moment. But that does not mean that the Federal Reserve would be unable to provide appreciable accommodation should the ongoing expansion falter in the near term.』

現時点で経済がコケた時にはどうなるのという話ですが。

『In addition to taking the federal funds rate back down to nearly zero, the FOMC could resume asset purchases and announce its intention to keep the federal funds rate at this level until conditions had improved markedly--although with long-term interest rates already quite low, the net stimulus that would result might be somewhat reduced.』

従来の政策を復活させればヨロシという話をしていてこれは従来の説明通り。

『Despite these caveats, I expect that forward guidance and asset purchases will remain important components of the Fed's policy toolkit.』

フォワードガイダンスが今後も重要なツールキットになるでしょうとの話だが、ただまあアタクシ思いますに、前回のガイダンスってのは1回目が期限付き、2回目は「労働市場の著しい改善」という定性的な文言となっていましたが、この2回目の定性的な文言が成功したのって初回で「オープンエンド」を強調したというのもあって、じゃあ次回に同じことやったらどうなるのか、という点についてですが、前回の場合は導入当初はそれこそ結構長い期間の緩和という期待になったのですが、割とあっさり味でテーパリングトークになってきた、という実績になりましたので、次回に同じようなガイダンス文言を使った時に「前回のことからすると実はこのガイダンス文言ってそんなに強力なコミットメントではないのでは」みたいなイメージが出来てしまっている可能性もある話。

つまりですな、本来的にはガイダンス政策で「余計に」政策を効かせに行こうとするのであれば、「本来政策として見た場合に止めるべき時点以上まで緩和政策を継続することをコミットする」というのが一番効くのですが、結局のところFEDもそれをやっている訳ではない以上、このガイダンス政策って市場の先行き経済物価見通しに効き方が依存するところがあるというふうに思うのですよ。でもってまあ市場の人間がそういうのもなんですけど、所詮市場のプライスアクションってバックワードルッキングな所が多々あって、本当におまいらフォワードルッキングで動いているのかと小一時間問い詰めたくなるような所があるとあたしゃ思ってまして(違うというのでたらすいません)、そういう点で言えばガイダンス文言使った政策ってどこかの閾値に達すると時間軸が急速に短期化してしまうという欠点があって、そこを無理に引っ張ろうとすると今度は異時点間のなんちゃらみたいな問題が拡大してくると思うので、ガイダンスを有効なツールと言っているイエレンさんって1回上手く行ったように見える結果を過大評価している節があるような気がしますし、FEDも同じ認識だとちょっとそこは将来の罠かもしれないなあとか思うのでありました。

『In addition, it is critical that the Federal Reserve and other supervisory agencies continue to do all they can to ensure a strong and resilient financial system.』

ほう。

『That said, these tools are not a panacea, and future policymakers could find that they are not adequate to deal with deep and prolonged economic downturns. For these reasons, policymakers and society more broadly may want to explore additional options for helping to foster a strong economy.』

金融政策だけではなくてそもそも経済の構造をレジリアントにしないといけませんよねと。


・他の政策ツールを導入する場合は・・・・・・・・・・・

『On the monetary policy side, future policymakers might choose to consider some additional tools that have been employed by other central banks, though adding them to our toolkit would require a very careful weighing of costs and benefits and, in some cases, could require legislation.』

欧州でやっているからと言って副作用をよく検討しないで勢いでマイナス金利を突っ込んだ日銀に対する嫌味で言っている・・・・・・・わけではありませんかそうですかw

『For example, future policymakers may wish to explore the possibility of purchasing a broader range of assets. Beyond that, some observers have suggested raising the FOMC's 2 percent inflation objective or implementing policy through alternative monetary policy frameworks, such as price-level or nominal GDP targeting.』

より幅広い資産を買えとか、2%の物価目標ではなくてプライスレベルターゲットにしろ(この話についてはかつてブランシャールが言及した時に当時副議長のイエレンさんが「お話としてはあり得るがそんなことをしたら前年比のインフレが安定しなくなって、結果としてインフレ期待が不安定化するから机上の空論」と思いっきりdisっていたのですけどね)とか、名目GDP目標にしろとかいう議論もありますが・・・・・・・・

『I should stress, however, that the FOMC is not actively considering these additional tools and policy frameworks, although they are important subjects for research.』

お勉強の課題としてはどうぞどうぞだけど別にワシら考えとらんのじゃがのうというあっさり味の否定となっております。

あと、イエレンの子飼い(かどうか知らんが)みたいなSF連銀のウィリアムス総裁がインフレ目標の引き上げみたいなのをアイデアの一つに並べていたとかいうのがあった気がしますが(まだ詳細見てない)、このネタも「時間軸の強化」というメリットに対して「インフレ期待の不安定化」に加えて「物価目標の達成を遠くすることによる中央銀行に対する信認の低下」というデメリットの方が大きいように思えます。

名目GDP目標もそもそも中央銀行が直接操作できる所から遠すぎる訳で、これまた「時間軸の強化」のメリットに対して「中銀の信認低下のデメリット」の方が大きいと思います(そういや日本では「中央銀行による賃金上昇ターゲット」とかもはやお前それは中央銀行の仕事じゃないだろというのを堂々提唱する学者がいて頭がクラクラする。トレンドインフレを見る上で賃金上昇動向が重要なのでその数値を参照しながら金融政策の調整を行う、というのなら話は分かるが目標にするのは馬鹿としか言いようがない)。


・金融政策を超えて

『Beyond monetary policy, fiscal policy has traditionally played an important role in dealing with severe economic downturns.』

そらそうよ。

『A wide range of possible fiscal policy tools and approaches could enhance the cyclical stability of the economy.25 For example, steps could be taken to increase the effectiveness of the automatic stabilizers, and some economists have proposed that greater fiscal support could be usefully provided to state and local governments during recessions.』

『As always, it would be important to ensure that any fiscal policy changes did not compromise long-run fiscal sustainability.』

ということで金融政策だけではなく財政や構造政策が重要という当たり前っちゃあ当たり前だしこの点も通常から話をしているから新しい話ではないけど、まあ打ち込んできたのは結構なお話。

『Finally, and most ambitiously, as a society we should explore ways to raise productivity growth. Stronger productivity growth would tend to raise the average level of interest rates and therefore would provide the Federal Reserve with greater scope to ease monetary policy in the event of a recession. But more importantly, stronger productivity growth would enhance Americans' living standards. Though outside the narrow field of monetary policy, many possibilities in this arena are worth considering, including improving our educational system and investing more in worker training; promoting capital investment and research spending, both private and public; and looking for ways to reduce regulatory burdens while protecting important economic, financial, and social goals.』

でもって最後にとしてそもそも経済の成長力を高めていくことが大事ということで、まあ金融政策は万能薬ではない、という話は以前よりしていましたが、金融政策に過度に依存していたように見えるステージの時よりも、こういう所への言及もちゃんと扱われるようになったように思えます。


・最後のまとめは普通

最後の『Conclusion』をとりあえず引用。

『Although fiscal policies and structural reforms can play an important role in strengthening the U.S. economy, my primary message today is that I expect monetary policy will continue to play a vital part in promoting a stable and healthy economy.』

でも金融政策が重要とかお洒落というかそらまあ場所がジャクソンホールですからね。

『New policy tools, which helped the Federal Reserve respond to the financial crisis and Great Recession, are likely to remain useful in dealing with future downturns. Additional tools may be needed and will be the subject of research and debate. But even if average interest rates remain lower than in the past, I believe that monetary policy will, under most conditions, be able to respond effectively.』

ちなみに途中すっ飛ばした非伝統的政策ツールキットの説明はまあ一応整理っちゃあ整理にはなっているような気もするという感じです。


○その他少々メモ

・布野審議委員金懇だぜヒャッハー!!!!

http://www.boj.or.jp/announcements/press/index.htm/
今後の講演・挨拶等の予定

日程 講演者等 講演内容等
2016年 8月31日 布野審議委員 新潟県金融経済懇談会における挨拶


ということで正座して待機です。


・10月に早速ドル特則のおかわりですよ

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160824a.pdf
成長基盤強化支援資金供給(米ドル特則・第17期)にかかる
新規貸付の追加実施スケジュール

って先週出てたので今更ですが、日銀最近の各種施策が悉く評判の悪い中で唯一どこからも文句の飛んでこない成長基盤ドル特則強化ですよ!!!!!!

なお7日オファーです。


・CPIェ・・・・・・・・・・・

これも先週のネタですが、
http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpipre.pdf

総合(除く生鮮食品・エネルギー): 6月0.7→7月0.5
刈込平均値: 6月0.2→7月0.1
上昇品目比率−下落品目比率: 6月34.2→7月29.6

ってどうみてもアカンやつやという感じで、総括検証とか言ってああでもないこうでもない検討しているうちに戦局が一段と悪化しているというのが実にあばばばばーですな。





2016/08/30

お題「台風も来てますので(?)イエレン議長のジャクソンホール講演の鑑賞である」

台風ですので今朝は簡単に(いいわけですが何か)ジャクソンホールネタの続きで
イエレン議長講演ダイジェスト。


○ということでイエレン議長講演@ジャクソンホール

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20160826a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20160826a.pdf

Chair Janet L. Yellen
At "Designing Resilient Monetary Policy Frameworks for the Future,"
a symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, Wyoming
August 26, 2016
The Federal Reserve's Monetary Policy Toolkit: Past, Present, and Future

・いきなり最初に「今の米国はマンデートほぼ達成状態」攻撃

冒頭でとりあえずパンチを入れて置くという事ですかそうですか。

『The Global Financial Crisis and Great Recession posed daunting new challenges for central banks around the world and spurred innovations in the design, implementation, and communication of monetary policy.』

というのが今回のお題。

『With the U.S. economy now nearing the Federal Reserve's statutory goals of maximum employment and price stability, this conference provides a timely opportunity to consider how the lessons we learned are likely to influence the conduct of monetary policy in the future.』

どさくさに紛れて「With the U.S. economy now nearing the Federal Reserve's statutory goals of maximum employment and price stability,」とかしらっと出ていますな。でもって目先の政策の話については後の方で。


・以下お題の説明ですが名指しされてないけど黒田総裁涙目系の内容になっていると思う

『The theme of the conference, "Designing Resilient Monetary Policy Frameworks for the Future," encompasses many aspects of monetary policy, from the nitty-gritty details of implementing policy in financial markets to broader questions about how policy affects the economy. Within the operational realm, key choices include the selection of policy instruments, the specific markets in which the central bank participates, and the size and structure of the central bank's balance sheet.』

昨日ネタにした黒田総裁の講演だと『そうした低インフレ・低金利下では、名目金利にゼロという下限制約があるため、中央銀行には政策金利を引き下げる余地がごく僅かしかありません。言い換えると、金融政策――厳密には伝統的ないし標準的な金融政策――の頑健性は著しく損なわれることになります。』(黒田総裁の8/28ジャクソンホール講演邦訳より)という説明になっているのですが、その頑健性を確保する為に名目金利ゼロ制約をぶち抜きましたよ(ドヤァ)という話をしていた訳ですな黒田さん。

でもって一方のイエレンさんですけれども、ここから先の方でツールキットの話が色々と行っていますけれども、将来の事も踏まえて説明する中では「色々なツールキットを用いる事、そもそもの金融政策スタンスをフォワードルッキングで行う事」によって名目ゼロ金利制約があっても有効な緩和的な金融環境を作ることが出来る、という説明になっているのですよね。


『These topics are of great importance to the Federal Reserve. As noted in the minutes of last month's Federal Open Market Committee (FOMC) meeting, we are studying many issues related to policy implementation, research which ultimately will inform the FOMC's views on how to most effectively conduct monetary policy in the years ahead.』

『I expect that the work discussed at this conference will make valuable contributions to the understanding of many of these important issues.』

この部分先日ネタにしました。

『My focus today will be the policy tools that are needed to ensure that we have a resilient monetary policy framework. In particular, I will focus on whether our existing tools are adequate to respond to future economic downturns.』

我々が出口政策で持っているツールはリジリアントな金融政策のフレームワークを持っている事に繋がりますという景気の良い話。

『As I will argue, one lesson from the crisis is that our pre-crisis toolkit was inadequate to address the range of economic circumstances that we faced. Looking ahead, we will likely need to retain many of the monetary policy tools that were developed to promote recovery from the crisis. In addition, policymakers inside and outside the Fed may wish at some point to consider additional options to secure a strong and resilient economy. But before I turn to these longer-run issues, I would like to offer a few remarks on the near-term outlook for the U.S. economy and the potential implications for monetary policy.』

つーことで、政策ツールキットの進化とこれからの政策ツールキットの話をするのですが、その前に現在の米国経済についての話なので、直接金利政策に影響しそうなのはこの部分。


・経済に関してだが「利上げが適切」と言った後のヘッジ入りまくりという両建て姐さんキタコレ状態

つーことで小見出し『Current Economic Situation and Outlook』に入ります。

『U.S. economic activity continues to expand, led by solid growth in household spending. But business investment remains soft and subdued foreign demand and the appreciation of the dollar since mid-2014 continue to restrain exports. While economic growth has not been rapid, it has been sufficient to generate further improvement in the labor market. Smoothing through the monthly ups and downs, job gains averaged 190,000 per month over the past three months.』

『Although the unemployment rate has remained fairly steady this year, near 5 percent, broader measures of labor utilization have improved. Inflation has continued to run below the FOMC's objective of 2 percent, reflecting in part the transitory effects of earlier declines in energy and import prices.』

だいたい声明文にあるような説明になっていますので、まあこの辺はヨロシ。

『Looking ahead, the FOMC expects moderate growth in real gross domestic product (GDP), additional strengthening in the labor market, and inflation rising to 2 percent over the next few years. Based on this economic outlook, the FOMC continues to anticipate that gradual increases in the federal funds rate will be appropriate over time to achieve and sustain employment and inflation near our statutory objectives.』

先行きに関してもこちら声明文通りの話ではありますが堅調な見通し。

『Indeed, in light of the continued solid performance of the labor market and our outlook for economic activity and inflation, I believe the case for an increase in the federal funds rate has strengthened in recent months.』

利上げは「in recent months」キタコレという事で、利上げ発言は先程のと合わせ技でこちらにありますということですし、「recent months」っつー位ですと確かにそらまあ9月も意識しているという読み方も出来ると思うのですが・・・・・・・・・・・・・・


・威勢の良い利上げ見通しの後の説明がヘッジ満載で物凄く腰が砕けているように見えます

『Of course, our decisions always depend on the degree to which incoming data continues to confirm the Committee's outlook.』

とさきほどの次に来るのですが、その次のパラグラフがですな。

『And, as ever, the economic outlook is uncertain, and so monetary policy is not on a preset course.』

政策はプリセットコースではない、というのは声明文などでも出ている事ではありますが、

『Our ability to predict how the federal funds rate will evolve over time is quite limited because monetary policy will need to respond to whatever disturbances may buffet the economy. In addition, the level of short-term interest rates consistent with the dual mandate varies over time in response to shifts in underlying economic conditions that are often evident only in hindsight.』

はいはいヘッジヘッジという感じで、これでもかとばかりに「事前決め打ちしてこのようにするという動きが出来ません」と言っているのですが・・・・・・・・・・・・

『For these reasons, the range of reasonably likely outcomes for the federal funds rate is quite wide--a point illustrated by figure 1 in your handout.』

その図表1ってのが(HTMLだとリンクがあるよ)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen-figure1-20160826.png

なんですけど、みればお分かりのようにSEPの金利見通しのメディアンの他に両端の変態仮面の皆さんの見通しまでをレンジに含めてファンチャートにしているから、もはや予想になっていないようなレンジが示されていまして、それをもって「the range of reasonably likely outcomes for the federal funds rate is quite wide」とか言われましてもお前は何を言ってるんだという感じ。

『The line in the center is the median path for the federal funds rate based on the FOMC's Summary of Economic Projections in June.1 The shaded region, which is based on the historical accuracy of private and government forecasters, shows a 70 percent probability that the federal funds rate will be between 0 and 3-1/4 percent at the end of next year and between 0 and 4-1/2 percent at the end of 2018.2』

『The reason for the wide range is that the economy is frequently buffeted by shocks and thus rarely evolves as predicted. When shocks occur and the economic outlook changes, monetary policy needs to adjust. What we do know, however, is that we want a policy toolkit that will allow us to respond to a wide range of possible conditions.』

とまあそういうことで、ショックが起きたら対応しないといけないとか、状況が変われば政策も変わるとか、data-dependentと言えばそらそうなのかも知れませんが、金融市場であればそらまあドカドカ動きますが、経済に関して言えばそう足元の細かい所の振れでああでもないこうでもないというような話ではなくて、目先の数字だけではなくて中期的なトレンドがどうなっているという話するんじゃないのと思う訳で、一方でイエレンさんのこの説明がやたら無駄にヘッジが多いというのは、先行きの経済状況に自信がもてないのか、金融市場などの方に過度に反応しているのかのどちらか(または合わせ技)であって、一応利上げとはいう物の、腰は据わっていなくて自信が全然ないんでしょうなあという風に読みましたけれどもどうでしょうかね。


・将来の政策ツールの話だが自然利子率低下とかの話になる

実際はここから政策ツールキットの進歩と、その効用についての話が金融危機前の状況から金融危機対応から先の色々な金融政策(金利政策ではない金融政策)についての説明がありまして、まあ本当はここを整理の為に確認しておくのが吉ではあると思うのですが、時間と量の関係上8ページほどワープしまして『Where Do We Go from Here?』という小見出し(PDFだと本文10ページ目)まで飛びます。

『What does the future hold for the Fed's toolkit?』

つーことで今後の金融政策で使うお道具のことね。

『For starters, our ability to use interest on reserves is likely to play a key role for years to come. In part, this reflects the outlook for our balance sheet over the next few years. As the FOMC has noted in its recent statements, at some point after the process of raising the federal funds rate is well under way, we will cease or phase out reinvesting repayments of principal from our securities holdings. Once we stop reinvestment, it should take several years for our asset holdings--and the bank reserves used to finance them--to passively decline to a more normal level.』

出口といってもバランスシートは抱えたままで、今後償還再投資を止めたとしてもバランスシート規模は高水準で維持されているので、当面はIOERを使って短期金利コントロールを使いますと。


『But even after the volume of reserves falls substantially, IOER will still be important as a contingency tool, because we may need to purchase assets during future recessions to supplement conventional interest rate reductions.14』

ということで、出口の話ではなくて今後起きうるリセッションなどの際への対応、という話をここから延々と行っておりまして、いやまあ確かにそういう観点も分かるのですが、いきなりそっちに来るかというややビックリ感があるお話。でまあそういう時もIOERは有効な補助ツールなんですって。

『Forecasts now show the federal funds rate settling at about 3 percent in the longer run.15 In contrast, the federal funds rate averaged more than 7 percent between 1965 and 2000. Thus, we expect to have less scope for interest rate cuts than we have had historically.』

ここではフォーキャスターの数字とは言っていますが、「中立金利が3%」というのをだしていますな。直近のSEPだと3.0-3.25位がロンガーランのFF金利になっていますので、まあそんな数字でぶち込んできたんでしょ。SEPではなくてフォーキャスターで出しているのがヘッジ入りという感じで微苦笑。

でまあ中立金利が下がったので、何かあった時の金利引き下げ余地が下がりましたよ、という指摘に対しての説明が以下延々と続くの巻となっています。


つーことはですよ、本来こういう時の将来のツールキットがどうのこうのって話って、巨大なバランスシートを抱え込みながら金融市場への歪みを大きくすることなく、インフレも高進させることもなく、無事にモデレートな物価上昇と安定に向かえるでしょうか、という方向でのリスク対応ツールの話をするのかと思わせておいて、中立金利の話などのような、今流行の金融政策議論に対応したお話をしているのですが、その金融政策の方向ってのが「次に景気がコケた時に打つ手はあるのか」というテーマになっていますので、なんかこう威勢の良さが無いというか、出口政策の話をしていると思ったら急に将来の緩和余地の話になるのかよ!という感じで、何が何やらであります。

まあ今回のジャクソンホールではFOMCの中心的見解である年1回は利上げでしょうというお告げは出しておくけれども、それから先に関する決め打ちするほどの自信はまるでない事でもある上に、この前散々地均ししたら雇用統計一発で一気に腰砕けという事案があり、あの二の舞をもう一度やったらさすがのFEDも信認問題とかになると思いますので、まあ慎重になったってえ事ではないかと思われます。

『In part, current expectations for a low future federal funds rate reflect the FOMC's success in stabilizing inflation at around 2 percent--a rate much lower than rates that prevailed during the 1970s and 1980s. Another key factor is the marked decline over the past decade, both here and abroad, in the long-run neutral real rate of interest--that is, the inflation-adjusted short-term interest rate consistent with keeping output at its potential on average over time.16』

ロングランの政策金利水準が低下した理由としては、そもそもインフレ高進しないような安定化が進んだから水準が下がったというのがあり、それに加えて「long-run neutral real rate of interes」が下がっていますという自然利子率低下ネタキタコレである。

『Several developments could have contributed to this apparent decline, including slower growth in the working-age populations of many countries, smaller productivity gains in the advanced economies, a decreased propensity to spend in the wake of the financial crises around the world since the late 1990s, and perhaps a paucity of attractive capital projects worldwide.17』

自然利子率の低下にはいろいろな構造変化が要因としてありますよ、と言ってますな。

『Although these factors may help explain why bond yields have fallen to such low levels here and abroad, our understanding of the forces driving long-run trends in interest rates is nevertheless limited, and thus all predictions in this area are highly uncertain.18』

ほうほうそうですか。


・自然利子率の下がった状態での金融緩和余地について

という観点でのお話が以下延々と続くという仕様になっていまして、出口後の政策ツールキットの話をするだろ常識的に考えて、とは思うのですが、そうではないという辺りには、そもそも他の主要国は緩和拡大の話になっているので、まあこっちも将来の緩和余地の話をした方が話が合うだろうというのもあるでしょうが、イエレンさんがそれ以前の問題としてウホウホ利上げ姐さんになっていないということも大いにあるのではなかろうかと。

『Would an average federal funds rate of about 3 percent impair the Fed's ability to fight recessions?』

ちなみに出口政策とかやっている中で出口の後のリセッションの時にどうなるのという話をするというこの先の先にも程があるイエレン姐さんに対して「出来るだけ早期に目標を達成する」と大口をたたいているのに、出来るだけ早期に目標を達成した時に行うべき出口政策の話は時期尚早とか言い出すどこぞの中央銀行の総裁はもしかして思考能力に何らかの問題があるのではないかと言いたくなりますよねえ。

という悪態はともかく。

『Based on the FOMC's behavior in past recessions, one might think that such a low interest rate could substantially impair policy effectiveness. As shown in the first column of the table in the handout, during the past nine recessions, the FOMC cut the federal funds rate by amounts ranging from about 3 percentage points to more than 10 percentage points.』

過去の利下げ局面での利下げ幅のテーブルはこちら
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen-table1-20160826.png

『On average, the FOMC reduced rates by about 5-1/2 percentage points, which seems to suggest that the FOMC would face a shortfall of about 2-1/2 percentage points for dealing with an average-sized recession.』

過去はもっと下げて対応したのだから3%しか引き下げ余地が無いとダメじゃんという指摘もありますと。

『But this simple comparison exaggerates the limitations on policy created by the zero lower bound. As shown in the second column, the federal funds rate at the start of the past seven recessions was appreciably above the level consistent with the economy operating at potential in the longer run. In most cases, this tighter-than-normal stance of policy before the recession appears to have reflected some combination of initially higher-than-normal labor utilization and elevated inflation pressures. As a result, a large portion of the rate cuts that subsequently occurred during these recessions represented the undoing of the earlier tight stance of monetary policy.』

この部分はまあ味わいがあって、リセッション前のピークにおける物価水準と、レーバーユーティライゼーションを見ると、利下げ幅が大きいように見えますが、その前の時点で経済の過熱に対応して金融政策スタンスが引締め的に転じていた状態になっていて、そこがスタート時点だから大きな緩和を行ったように見えるのであるというお話。

『Of course, this situation could occur again in the future. But if it did, the federal funds rate at the onset of the recession would be well above its normal level, and the FOMC would be able to cut short-term interest rates by substantially more than 3 percentage points.』

ですからリセッションの前って基本的に過熱しているのでその時は中立金利よりは上にあるでしょうだから3%しか引き下げ余地が無いというものでもないですよというお話ですな。


『A recent paper takes a different approach to assessing the FOMC's ability to respond to future recessions by using simulations of the FRB/US model.19 This analysis begins by asking how the economy would respond to a set of highly adverse shocks if policymakers followed a fairly aggressive policy rule, hypothetically assuming that they can cut the federal funds rate without limit.20』

『It then imposes the zero lower bound and asks whether some combination of forward guidance and asset purchases would be sufficient to generate economic conditions at least as good as those that occur under the hypothetical unconstrained policy.』

『In general, the study concludes that, even if the average level of the federal funds rate in the future is only 3 percent, these new tools should be sufficient unless the recession were to be unusually severe and persistent.』

ということで、3%しか金利引き下げ余地がないということであっても、資産買入政策やフォワードガイダンス政策などによってゼロ金利制約化における金融環境を一段と緩和することが可能であり、仮にそのリセッションがシビアで長期化するようであってもヘーキヘーキ、というお話になっております。

・・・・・・・・・・って良く見たらそれってマイナス金利政策をやっているECBと日銀に華麗な砲撃を加えているように見えるんですが、この講演まだ先がありまして、「マイナス金利政策は不要」というような露骨な表現はさすがにしていませんけれども、マイナス金利政策をツールキットのリストに加えないままで名目ゼロ金利制約における緩和政策ツールはこの前の時に行ったものを駆使すればヘーキヘーキという話をしておりまして、中々良いイヤミになっているなあというのが続きになります(時間の都合で勘弁)。




2016/08/29

お題「黒田総裁のジャクソンホール講演はマイナス金利を撤回したくないというのは把握した」

http://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPKCN1112GG
Business | 2016年 08月 27日 08:00 JST
ドル102円に迫る、FRB正副議長発言で年内利上げ観測高まる=NY外為

フィッシャー副議長が吠えるというのが何ともですが、ここでどうせみなさんが注目するのはイエレンネタなのですが、そこれ黒田総裁ネタが来るという攻撃では参りますが別に手抜きをしている訳ではありません(言い訳)。

○ジャクソンホールの黒田総裁講演(ただしめんどいので日本語の方で)

英文本チャンはこちら
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2016/data/ko160828a1.pdf
Re-anchoring Inflation Expectations via "Quantitative and Qualitative Monetary Easing with a Negative Interest Rate"
Remarks at the Economic Policy Symposium Held by the Federal Reserve Bank of Kansas City

ですが手抜きでこちら。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko160828a1.pdf
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」による予想物価上昇率のリアンカリング

リアンカリングもへったくれもそもそもリアンカリングできていないのに何を言うのでしょうという出落ち感満載なのですが、まあ鑑賞してみましょう。


・最初から微妙に怪しいキーワードみたいなのが入っていますなあ

でまあ最初の所から。

『過去 20 年間以上、日本経済は、様々な困難を経験してきました。すなわち、長きにわたるデフレーション、潜在成長力の低下、幾度かの金融危機、また、急速な高齢化とこれに伴う労働人口の減少に起因する構造問題などです。これらの困難な経験を踏まえ、金融政策の頑健性(resilience)ということを考えるにあたり、観察されているある事象を強調しておきたいと思います。』

ほうほうそれでそれで?

『それは、長期的にみると低インフレと低金利は共存する傾向があるということです。』

・・・・・(゚д゚)

『そうした低インフレ・低金利下では、名目金利にゼロという下限制約があるため、中央銀行には政策金利を引き下げる余地がごく僅かしかありません。言い換えると、金融政策――厳密には伝統的ないし標準的な金融政策――の頑健性は著しく損なわれることになります。』

だからと言って短期決戦型金融政策の現行政策を行う事の正当化ができる訳ではない訳で、それ以外に昔から散々非伝統的政策を実施しているのですが、話がこういう風に飛ぶのが屁理屈感満載。

『2013 年3月に私が総裁に就任した後、日本銀行は、マイルドではありますがしつこいデフレを克服するため、速やかに「量的・質的金融緩和」を導入しました。「量的・質的金融緩和」はそれまでの金融政策手段の限界を超える2つの要素からなっています。』

>それまでの金融政策手段の限界を超える

ってのが黒田総裁の自画自賛ポイントだろうという所で、今までの政策を見直して長期的に持つような金融緩和政策を実施する、という風にしないとどこからどう見ても物価目標達成の前に(つーかそもそも日本の計測方法で2%が適正なのかという話もあるし、行くのかよというのもあるけどそれはさておき)政策の方が爆発炎上するので、より柔軟にしながら長期的な政策継続をしないといけないというのが現状の筈なんですよ(もちろん今の日銀が馬鹿あるいは気が触れていれば神風特攻の3方向追加緩和をして爆発を早期化する可能性がありますが)。

でも、明示的ではなくても中長期的に持続可能な政策にして、政府との共同文書で書かれているような話(あの文書では2年というのは無かった訳でMB2倍で2年で2%とか言い出したのは黒田日銀)のラインまで戻って行く、となりますと「それはどう見ても麿時代に戻る話で結局麿が正しかったんじゃないか」という話になってしまい、それは黒田さんとしては耐え難いことなんでしょうなあ、というのが伝わってくるこの「限界を超える」というフレーズであると把握しましたがどうでしょうかねえ。

となりますとですよ、まあ黒田総裁になって限界を超えたのってマイナス金利な訳で、それは確かに限界を超えましたがそのもたらした物は物価面では今のところマイナスの成果しか出て居ないんですがという所で、それは普通副作用の方が大きい政策という評価になると思うのですけれども、こうやって「限界を超えた」というのをキーワードにする以上、マイナス金利をやってみたら副作用の方が大きかったですゴメンナサイと撤回する気は1ミリも無いでしょうなあと思うのでした。

とは言いましてもこの「限界を超える」はQQEの方になりますので以下続く。

『第一に、日本銀行が2%の「物価安定の目標」を出来るだけ早期に実現するという強く明確なコミットメントを示し、これを裏打ちする大規模な金融緩和を行うことで、人々のデフレマインドを抜本的に転換し、予想物価上昇率を引き上げることです。第二に、巨額の国債買入れと極めて大規模なマネタリーベースの供給によって、イールドカーブ全体に低下圧力を加えることです(図表1)。これら2つの要素が相俟って実質金利を押し下げることで、強力な緩和効果が発揮されてきました。』

効果が発揮されてきた実績が無くて追加緩和していますがね!!!

『2014 年 10 月には、「量的・質的金融緩和」は、「量」と「質」の両面で拡大されました。その後、2016 年1月には、「量」と「質」に続く3つ目の次元である「(マイナス)金利」が付加され、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」として拡張されました。「量的・質的金融緩和」は、3つの次元での政策手段――量、質、金利――をフル活用することが可能な柔軟かつ強力な政策的枠組みへと進化しました。』

>柔軟かつ強力な政策的枠組み

というのが何やら怪しげな表現で、えーっとすいません確かこの前まで「3方向で追加緩和を投下」というような感じの話しかしていなかったと思うのですが、ここに「柔軟」というのが入っているのはこれはこれで怪しい訳ですよ。

『こうした経緯を踏まえ、本日は、金融政策の頑健性をどのように確保すればよいかというテーマを考えるにあたり、鍵となる2つの課題に焦点を絞ってお話ししたいと思います。』

と纏めているのだが、そもそも論として金融政策の頑健性を確保するっていう話なのだが、金融政策は本来国民厚生を高める為に実施するものであって、その手段が金融政策なのですから、頑健性を確保する為にどうすれば良いのかという事を考えるというのは手段と目的がおかしくなっていませんかというか単なる自己実現的な話になっていませんかねえと突っ込みたくなる次第でありますが、まー「マイナス金利付きQQE」というもの自体が「金融政策手段の限界が起きないようにするための金融政策手段」という色彩が濃厚であって、マイナス金利を導入した結果どういう効果と副作用があって、資産買入政策の継続にどのような影響を与えるのか、という事を深く考えて実施したように到底思えない政策の投入の仕方であって、昨年12月の補完措置導入以降言われ出した「金融政策手段の限界」という見方に対してブチ切れて導入した政策手段の為の政策でありました(とワシは理解している)ので、そこでこの「金融政策の頑健性」というお題を持ち出すというのが、もうマイナス金利政策の正当化屁理屈にしか見えないのですよねー。

でまあこういう「手段の為の手段」みたいな話を平然と持ち出している辺りは今やっている総括検証が屁のような結果になるのではないかという懸念を呼び起こすのであって、確かこの前の総裁定例会見では「虚心坦懐」とか言ってた筈なのだが、どう見ても開き直り屁理屈だろこの頑健性ってのはと思うのでありましたorzorz


・恣意的なデータの出し方に総括検証への懸念しか起きないのですが

まあ『2.インフレ予想のリアンカリング(Re-anchoring)』という小見出しがもうねという感じですが、『(原油価格とインフレ予想)』という小見出しに参ります。

『多くの方がよくご承知の通り、2014 年の夏頃から原油価格が大幅に下落しました。インフレの予測という観点からは、原油価格の下落は通常、一時的な動きとみなされるものです(図表2)。』

ということで図表2があるのだが、図表2を見ますと、

『(注)各調査時点における回答者の予想平均値。日本の値はコンセンサス・フォーキャスト。各年1、4、7、10月(ただし、2014/4月以前は4、10月)。米国の値はSurvey of Professional Forecasters(四半期調査)。』

となっていまして、展望レポートの方ですと普段はhttp://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1607b.pdf(全文なので100ページあります)のPDFの80枚目と81枚目にあるように、コンセンサスフォーキャストって8枚図表のある中の1つの中で、しかもその中でも3つあるデータのうちの1つであって、他に色々な数値を出している予想物価上昇率関係の中では一番マイナーなものなのですが、このマイナーなものを出してきて説明をおっぱじめる、という所に誠にアレなものを感じる訳です。

まあ何ですな、こういう恣意的なデータの出し方をしてくるというのは「今度出る総括検証の時には結論先にありきでデータを恣意的に出してきます」って宣言しているように見える訳で、これまた総括検証に対する期待度を下げるというか不安度を上げる講演テキストですなあと思う訳ですよ。

『原油の先物市場をみても、翌年以降、さらに下落が見込まれていたという訳ではありませんでした。したがって、米国における Survey of Professional Forecasters の6年先から 10 年先のインフレ予測値が極めて安定的に推移していることからもわかるように、米国では長期的なインフレ予想には変化はみられませんでした。対照的に日本では、不可解なことに、長期的なインフレ予想に弱めの動きが観察されています。長期的なインフレ予想を測るためのデータの違いなど、技術的に異なる点はありますが、そうした点を考慮しても、このところの日本の長期的なインフレ予想に弱めの動きがみられることについて、その一部が 2014 年以降の原油価格の下落に起因するとの見方を否定することは難しいように思われます。』

「その一部」と言って言い逃れができるようになっているのだが、原油だけではなくてそもそも実質所得の低下による消費の低迷とか、その後の円高による物価押し下げによる要因とか、そういう話を華麗にスルーですかそうですかという所ですが、まあそれ以前の問題として、ついこの前まで声明文では『予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇していると見られる』ってなっていませんでしたっけ。


でもってこの結論が凄いというか何というか。

『程度はともかくとして、消費者物価指数(総合)の前年比上昇率が原油価格の下落の影響を受け低下したことは、多くの先進国で共通して観察された事象でした。しかし、基調的な物価上昇率について日米を対比してみると、その回復ペースには、はっきりとした差がみられました。米国のエネルギーを除く消費者物価上昇率は速やかに2%へ復したのに対し、日本の消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比上昇率はプラスを保ちつつも2%をかなり下回っており、相対的に低い水準となっています。こうした違いを踏まえると、日本のインフレ動学は米国対比、原油価格の大きな変動を含む外的なショックに対する頑健性が低い(less resilient)と捉えるのが妥当です。』

えーっとすいません、そもそも2%でアンカーされていないのですから頑健性もへったくれもなくて、それは円安と消費税増税による外的ショックで上がったものが元に戻っただけではないか、という結論にはならないんですかああそうしますとQQEが無駄だったって話になるからそういう分析にはならないんですか。

つーことで、前年比の円安進行と消費税増税による影響(その前の財政とか駆け込み需要とかの影響も含めて)による影響は全部QQEの効果にして、下がった方は原油のせいという検証結果が発生するというのは把握しました。それじゃあ虚心坦懐でも何でもないんですけどねえ。

『既に触れたように、原油価格の変動は、通常一時的と受け止められることから、長期的なインフレ予想に対して持続的な影響を与えるものではないと考えられます。まさにこうした通常のケースが米国では成り立っていると考えられます。通例とは違う日本のケースを理解するためには、何らかの別の要因を考慮する必要があります。日米のインフレ動学の違いについて、1つの解釈として、米国では長期的なインフレ予想が2%近傍にしっかりとアンカーされているのに対し、日本ではなお十分にアンカーされていないという見方ができます。日本では、実際のインフレ率に対する原油価格の下落の影響が予想インフレ率の弱めの動きを通じて増幅されてしまったと考えられます。』

>なお十分にアンカーされていない

でまあリアンカリングという話になるのだが、それはつまりQQEで最初に考えていたインフレ期待の引き上げというのが失敗していて、仕方がないから実質金利を下げるためにマイナス金利を突っ込んでいくという手段に入って行ったという事なのでないでしょうかねえ。

『このようなインフレ予想と実際のインフレ率の間の相互作用についての解釈は、現時点では、今後しっかりとした実証分析によって検証されるべき仮説という位置づけです。』

しっかりとした実証分析が出て来なさそうなのは把握した。

『そのうえで敢えて言えば、データからは、そうした解釈を支持する兆候がいくつか確認できます。米国の6年先から 10 年先のインフレ予想が前年比2%程度で安定的に推移しているのに対し、同様の日本の指標は安定しておらず、振れが大きいことが特徴です。』

そもそコンセンサスフォーキャストとかのようなどマイナーな数値で議論をおっぱじてめている時点で論外。一方で日銀の消費者意識アンケートの5年後の物価見通しとかを使って「消費者の中長期のインフレ期待は比較的安定している」とかいう話もどこかでしてませんでしたっけ(とっさに出て来ないので引用できないのがシャクだが)という次第でありまして、そもそも「インフレ予想」自体がふわっとしたものなので、それを特定指標を使って日米比較をする時点で恣意的なものになってしまうんですよね。だってさっきも申しあげましたけど、声明文では毎回『予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇していると見られる』って言っていたのに、ここで急に『日本の指標は安定しておらず、振れが大きいことが特徴です。』とかお前舐めてんのとしか思えん。

『より重要なポイントとして、「量的・質的金融緩和」が開始された 2013 年以降は幾分高まりがみられているものの、長い目でみれば 1990 年代以降、日本の長期的なインフレ予想は、2%より低いままであったという事実があります。こうした観察事実と整合的で、実証的な検証に値する仮説として、2014 年時点で日本経済はリアンカリングの途半ばであったため、インフレ動学が負のショックに対して脆弱だったということになるでしょう。』

とか何とか言ってるが、単にその前の「正のショック」政策ではインフレ予想のリアンカリングが出来なかっただけという事だったのではないでしょうかねえ。


・でまあインフレ予想のリアンカーがどうのこうのの話になる

『(インフレ動学の学習プロセスについての理解)』というお前3年もやって何を今更という小見出しで、そういうのは最初に検討してからやるもんじゃないのかねえもしかして単に何の根拠もなくて置物理論で政策実施したんですかと申し上げたくなる小見出しになるがそれはさておき。

『ここまで述べたように、長期的なインフレ予想の動きが日米両国間で異なっていることを踏まえると、「人々はどのようにインフレ予想を形成しているのか」という、より深い問題に至ります。』

でまあ適合的な期待形成がどうのこうのとあるがうざいので飛ばしてその次。

『日本の 1990 年代の経験を振り返ると、消費者物価上昇率がゼロ%近傍ないしは、しばしばマイナスとなる期間が続くという状況のもと、長期的なインフレ予想は、振れをともないつつ下方トレンドを辿っていました(図表3)。』

とあるのだが、その長期的なインフレ予想は例のマイナー指標の時点でうんこ。

『インフレ予想の不安定化は、数度の金融危機を含む日本経済に対する負のショックを増幅させ、デフレ脱却のための様々な政策的な取り組み――ゼロ金利政策や量的緩和――の効果を減殺してきたと考えられます。』

とあるのだが、単に低い所で安定していただけの話ではないかとも思われますがねえ。何かこう結論の為に一番使いやすいデータを持ってきただけに見える。

『日本の経験に照らして明らかなように、長期的なインフレ予想を目標水準近傍にアンカーすることは、頑健な金融政策の枠組みを確立するための前提条件です。』

・・・・・(゚д゚)

頑健な金融政策の枠組みを確立する為に2%目標達成するって話がおかしいだろという最初の所に戻るのだが、日本銀行の政策のために経済があるんじゃないんですけど日銀ってそんなに偉いんでしたっけ??????

『こうした考え方を踏まえ、日本銀行は2%の「物価安定の目標」の実現にコミットしたうえで、現在、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を推進しています。インフレ予想を「物価安定の目標」である2%に向けて押し上げていくこと、そして、そこにアンカーすることが、この政策の眼目のひとつとなっています。』

ではどうやってやるのでしょうかねえ?????


・マイナス金利政策の波及効果とな

『3.マイナス金利政策の波及経路(トランスミッション・チャネル)』という小見出しに参ります。

『(マイナス金利政策:実際にはどのように機能するのか)』というこれまた出落ち感満載の小見出しがががががが。最初の部分は飛ばしてその効果とやら。

『この新しい政策は、金融機関の限界的な資金調達コストを引き下げ、これによって、銀行間短期金融市場における取引はマイナス金利で行われるようになりました。』

って言ってるけどコール市場でのマイナス金利は「マイナスチャージを回避するための資金放出」に対して「日銀当座預金適用金利がゼロ金利の枠が余っている人が鞘取りをしている」だけのものであって、別に金融機関の限界的な資金調達コストの引き下げには寄与していませんけど。

『日本の国債市場をはじめ様々な金融市場は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入に対し、顕著に反応しました。とりわけ、長期・超長期の国債金利は、大幅に低下しました(図表4)。これを受けて、長期の資金調達金利が低下したことで、企業の長期資金需要や家計の住宅ローン資金需要が刺激されました。』

その結果設備投資って出ていましたっけ???????

『このように、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は幅広い借り入れ主体に恩恵を与えています。その中でも、新しい動きが目立っているのが社債の発行市場です。企業による満期の長い社債の発行、たとえば 20 年満期といった超長期債などの発行が顕著に増加しています。』

その結果設備投資って出ていましたっけ???????


でまあその次の部分がマイナス金利に対する黒田さんの強いこだわりを示していますな。

『既に複数の中央銀行によってマイナス金利政策が効果的に実施されていることから明らかなように、名目金利のゼロ下限制約というものは、実務上は、もはや動かしがたい制約条件という訳ではなくなっています。マイナス金利は、金融機関間の競争と短期金融市場における裁定行動を通じて、新たな金融取引に波及しています。』

ということで、「マイナス金利は限界を打破した」と言いたいんでしょう。こら辞任でもしない限り黒田さんマイナス金利撤回せんわ。

『もちろん、ゼロ制約が取り除かれたからといって、中央銀行が幾らでも望み通りのマイナスの水準に金利を引き下げられることを意味している訳ではありません。ゼロ制約とは別の制約――この制約水準は、現金の保有コストと密接な関係を持つものです――が存在すると考えるのが自然です。ただし、現在の日本のマイナス金利水準である−0.1%は、そうした新たな下限制約からは、まだかなりの距離があると考えています。そのような留保点を考慮したうえでも、やはり、マイナス金利政策という新しい実践的な政策手段を取り入れたことによって、中央銀行は様々な負のショックへの対応において、より大きな自由度を獲得したということができます。』

という自画自賛モードのすさまじさから、マイナス金利政策の撤回を考えていないというのも兎も角として、マイナス金利政策の副作用について何も考えていないような説明をしているのがこのオッサン大丈夫かという説明なんですけど。


・量の話はすっかり無かったことになる説明

次の『(「量的・質的金融緩和」へのマイナス金利付加によるインパクト)』でも金利一本槍の説明になっていてこの辺はまた怪しい部分がある。

『日本における「量的・質的金融緩和」の経験は、インフレ予想の高まりによって実質金利が大幅に低下したことを示しています。』

最初の時点でおかしい。さっきインフレ予想下がったって言ってなかったか????

『一方、名目の国債金利については、マイナス金利政策の導入までは、さほど大きく低下はしなかったという見方もできます。これは、3年前に「量的・質的金融緩和」が開始された時点で既に名目金利はかなり低い水準にあったということも影響しています。では、なぜ、「量的・質的金融緩和」にマイナス金利を付加しただけで、イールドカーブ全体にわたって目立って大きな反応が生じたのでしょうか。』

でまあ金利が下がった効果(と言っているがただの事象だろ何のために金利下げてるんだというツッコミはパスする)の話なのだが。

『「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入によって、民間金融機関が中央銀行に保有する当座預金の限界的な付利金利が、+10bps から-10bps に 20bps 引き下げられました。その結果としてのより長い期間の金利への波及効果は、欧州諸国の経験に照らしても、かなり大きなものとなりました。ここで自然に生じる疑問は、何が「乗数(multipliers)」の違いを生むのか、ということです。ここでいう「乗数」とは、当座預金金利の1単位当たりの変化に対する長めの金利の変化幅を意味しています。』

この辺からきな臭い説明になる。

『この問いに対して、現時点ではまだ答えはありません。仮想的には、乗数はもっと小さいケースもあり得るほか、マイナスになることも考えられます。実際、マイナス金利政策の導入に伴い、長期的なインフレ予想が高まることを反映して、長めの金利が上昇すれば、乗数はマイナスとなります。』

フィッシャー効果な。

『しかし、乗数がマイナスになるという事態は、日本の場合でも多くの欧州諸国のマイナス金利政策の事例においても発生しませんでした。逆に各国で共通に観察された事象は、イールドカーブのブル・フラット化です。理論的には、長めの金利のタームプレミアムの低下ないし先行きの金融政策に対する見方の下振れが、そうしたブル・フラット化が起きる要因と考えられます。』

と言っているが、そもそも欧州ではインフレ期待が2%近辺でアンカーされているという事になっているのだし、インフレ期待を引き上げることを直接の目標にして政策を追加している訳でもなかったのだから、日本と比較することが説明として怪しいにも程がある。

『両者とも広範にみられたブル・フラット化を説明できることは事実ですが、仮にゼロ制約があるもとでの将来の金融政策スタンスについて着目すると、現実を上手く説明できる解釈が考えられます。すなわち、市場参加者は中央銀行の強い緩和的スタンスが長期化すると予想し、その結果、潜在金利は実際に観察された金利よりもかなり低くなっていたという状況を考えてみます。マイナス金利政策の採用は、名目金利のゼロ制約を取り払うことになるため、ゼロ制約の影響を受けない場合に成立するであろう「真の金利」が示現することになります。このような場合であれば、潜在金利と実際の金利との乖離が大きいほどマイナス金利政策の導入時の効果は大きくなります。これは実質的には、様々な期間の名目金利が、どの程度ゼロ制約によって強く制約されているか、その度合いにマイナス金利政策導入のインパクトが影響されるということを意味しています。』

盛大に胡散臭い説明になっていますが、この説明の中で全く存在しないのが「量の効果」であって、元々の小見出しでは「量的・質的金融緩和」へのマイナス金利付加によるインパクト」となっていましたが、マイナス金利に対する説明ばっかりになっていて、量の効果についてすっかりスルーとなっている訳でして、この講演って黒田総裁のマイナス金利政策に対するこだわりについて延々と紹介するとともに、量の効果をすっかりスルーしている、という事ですから、まあ総括検証の結果神風特攻にならないのであれば、金利政策の方に移行しつつ、量の方はもうちょっと長持ちさせるような方法を考えて徐々に量の話から撤収するという事になるんでしょうなあというのは把握しました。


・最後のはまあどうでも良いが引用しておく

『4.おわりに』である。

『中央銀行によるインフレ目標に対する強いコミットメントが企業や家計のインフレ予想の形成に影響を与えることは、コンセンサスになっています。したがって、コミットメントそのものが、頑健な金融政策の枠組みを確立するうえで、重要な構成要素であることに変わりありません。』

まあコミットしても結局成果が上がらなかったらコミットの信認が低下するんだがな。

『先行きも日本銀行は、毎回の決定会合で、経済活動と物価に対するリスクを点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要と判断した場合には、躊躇なく、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な緩和措置を講じていく方針です。』

持続できるんだったらな。

『「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は非常に強力な枠組みです。そして、言うまでもなく、「量」・「質」・「金利」のいずれについても、追加緩和の余地は十分にあります。この枠組みをどう使って、2%の「物価安定の目標」を早期に実現するか、しっかりと検討し、実践していきます。』

まあ今から量を柔軟化しますとかマイナス金利を撤回しますとか言えない(マイナス金利は撤回しないと事実上この講演で言ってるけど)ですからこうなるんですが、こういうの何も言わないで黙っていれば良いのにと思うのですけど、まあ黒田さんが意地になって総括検証がゴミみたいな結果になってしまうような事の無いように願いたいです。

ということで黒田さんの講演ネタで終わってしまった(大汗)。




2016/08/26

お題「ジャクソンホール待ちネタでジョージ総裁とカプラン総裁発言ニュースに関連して両人のネタをサルベージ」

はいはいジャクソンホールジャクソンホール。

○カプランさんとジョージさんが利上げ発言とな

・ジョージ総裁の利上げ発言は仕様なので

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-08-25/fed-s-george-says-inflation-gains-call-for-near-term-rate-hike
Fed Officials Push Hike Case Before Yellen in Jackson Hole
August 25, 2016 - 8:30 PM KST Updated on August 26, 2016 ? 1:59 AM KST

(しばらくするとインタビューが大音声で始まるのでご注意ください)

でまあそこの最初に

Kansas City Fed’s George says ‘it’s time to move’ again
Dallas Fed’s Kaplan says case for increase is strenghtening

とありまして、カプランさんの記事もあるのですがそれはさておき。

『“Where it will look at the September meeting, we will have to wait and see if anything changes,” George said. “I don’t think that we are going to need to have high interest rates. I don’t think we need to cool off the economy by any means,” she said. “But I do think that it would be appropriate to begin the process of continuing that normalization.”』(上記URLさきより)

ジョージ総裁の場合は前回のFOMCでも利上げを主張していまして、まあこういう話をするのは仕様ではあるのですけれども、じゃあなんで利上げをするのかという話ですが、このインタビューは12分もあって正座して聴いているほど朝暇じゃないので殆どBGMにしていただけなので聞き間違いしてたらゴメンやでなのですが、「見通し通りに進行しているのに何で調整せんのじゃ」という感じの話をしているように聞こえたのですが、それは先般のFOMCでの反対理由を見ているからかもしれません。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20160727.htm

『Ms. George dissented because she believed that a 25 basis point increase in the target range for the federal funds rate was appropriate at this meeting. Information available since the June FOMC meeting showed solid employment growth, economic growth near its trend, and inflation outcomes aligning with the Committee's objective. Domestic financial conditions had eased since the U.K. referendum. She believed that monetary policy should respond to these developments by gradually removing accommodation, consistent with the prescriptions of several frameworks for assessing the appropriate stance of monetary policy. She believed that by waiting longer to adjust the policy stance and deviating from the appropriate path to policy normalization, the Committee risked eroding the credibility of its policy communications.』

理由が「Committee risked eroding the credibility of its policy communications」であって、低金利によって金融不均衡がとかそういう話をしている訳ではないですし、耳で聞き流したベースなので正直聞き間違っていたらゴメンやでなのですが、ジョージ総裁は中立金利的な概念に関してはそら中立金利は昔ほど高くは無いでしょうというような話(とは言え3%台後半だったような気がするが別の講演などを確認しておく)でして、あくまでも先行き見通しに伴う利上げ主張なので、構造的に正常化しろと言っていたかつてのスタイン理事みたいなタイプとは違います。

ということはどういう事かと申しますと、前々回のFOMCであっさり利上げ提案を引っ込めたと思ったのに前回のFOMCでは利上げ提案が復活する、という形で足元のデータによって振らされる事になる人ということであって、かつてのスタイン理事のようにBISビューに近いスタンスで今の禿しいアコモデーティブなスタンスがケシカランという話をされますと足元の少々の経済指標のブレではぶれないのですけれども、ジョージ総裁の場合は何だかんだ言って足元指標が急にコケるとコケそうなので、タカ派扱いですが構造的タカ派ではないというお話ではあります。



・カプラン総裁の利上げ論

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-kaplan-idJPKCN110222
Business | 2016年 08月 26日 01:49 JST
米利上げ、さほど遠くない将来に可能=ダラス連銀総裁

『[25日 ロイター] - カプラン米ダラス地区連銀総裁は25日、連邦準備理事会(FRB)は、さほど遠くない将来に利上げできるとの認識を示した。CNBCテレビとのインタビューで述べた。総裁は、利上げへの論拠が強まりつつあるとした上で「われわれがそれほど遠くない将来に新たな一歩を踏み出すことができる状況に近づいていると考えるべきだ」とし、こうした動きは経済の継続的な進展に拠ると語った。』(上記URL先より)

ってありますが、カプラン総裁の場合は先般こういうのをやっていましてですな。

http://www.dallasfed.org/news/speeches/kaplan/2016/rsk160802.cfm
Speeches by President Robert S. Kaplan
Key Secular Trends and Implications for Monetary Policy
Remarks before the Official Monetary and Financial Institutions Forum Beijing August 2, 2016

ネタがあるとか言っておきながら総括検証大会の方で気を取られているうちにすっかりスルーしていた案件。

本当は前半の『The Broader Context』というのを先にネタにして、そもそもカプランさんがどういう世界認識(?)を元に話をしているのか、というのを確認してから先を読んだ方が分かりやすいのですけれども、そこはこの不肖アヘアヘ手抜き読みオジサンのアタクシが読むので結論部分をまず確認に行くのでありました。


小見出しの『Implications for Monetary Policy』から。

『I am closely monitoring how slowing growth, high levels of overcapacity and high levels of debt to GDP in major economies outside the U.S. might be impacting economic conditions in the U.S.』

この辺の話は今申し上げましたように、小見出し『The Broader Context』の所で全体感を示していたりするので、ここでいう話は構造的な部分ということでご理解頂きたい。

『I am also closely tracking how these issues might be affecting the slope of the U.S. Treasury yield curve as well as measures of tightness in financial conditions.』

ほほー。

『In light of these challenges, I have been suggesting that removal of accommodation should be done in a gradual and patient manner, based on a realistic assessment of progress toward achieving the Federal Reserve’s dual-mandate objectives regarding full employment and price stability. I am also very cognizant that, from a risk-management point of view, our monetary policies have an asymmetrical impact at or near the zero lower bound.』

という話をしているので、経済構造的な面から言うと金利をそう一気にドカドカ上げる訳にも行かないって経済構造になっているのだから、ゼロ金利制約問題なども考えてリスクバランスを考えて利上げを実施していくという話になりますな、とまあ経済構造の全体感を示した後の金融政策インプリケーションは別にタカではない。

『Current Challenges of Monetary Policy』というのが次にあってだな。

『As you know, the target range for the federal funds rate stands at 25 to 50 basis points. The Federal Reserve raised the range by 25 basis points in December 2015 after seven years at the zero lower bound.』

ほうほうそれで?

『Prolonged low rates, several rounds of quantitative easing and other extraordinary Fed policy actions came in response to the severe financial crisis and economic recession of 2008 and 2009.』

キタコレ!!!!!という感じですが、まあカプランさんの場合就任以来この話をしていまして、スタイン理事ほど強硬な方ではなさそうですが、BISビューちっくな論点を持ち出して政策の正常化を求めていくスタンス、というのは元が経済物価情勢と関係ない部分から始まっているので、雇用統計がコケたから利上げ提案を出したりひっこめたりとかいう風にならない面があり、投票権持ちになって正常化促進サイドに回ると結構強硬になる可能性も存在しますな。

『It is worth noting that the last time short-term interest rates in the United States were this low was during the middle and late 1930s as the U.S. economy struggled to emerge from the Great Depression. In addition, government bond yields in Germany and Japan are actually negative, even at maturities over five years.[14] Real government bond yields-returns after inflation-are at or below zero across a wide swath of countries, including the United States. This situation has been accentuated in the aftermath of Brexit.』

とは言いましても大恐慌の後の低金利は長期化していましたし、ドイツや日本の金利なんぞはマイナスになっていますしという事で、ヒャッハーBISビューだぜ低金利は消毒だ〜!という事でもないので、スタインさんのような感じではないと思う。


その次が『The Neutral Rate』という所ですが流し気味にいきますね。

『As central bankers, we aim for monetary policy to be accommodative when the economy is operating below full employment and trend inflation is below target. We typically begin to remove accommodation as we move closer to achieving those dual goals. When our full-employment and price-stability goals are in conflict, the FOMC makes an assessment of the “balance of risks” to the two objectives.』

ほぼここはマクラみたいなもん。

『While there are disagreements about how much slack remains in the labor market and about how best to gauge trend inflation, policy debates focus more fundamentally on how to gauge the appropriate level of tightness or accommodation in monetary policy. This, in turn, depends on judgments about the “neutral rate”-the rate that signifies the dividing line between an accommodative and a restrictive monetary policy.』

最近FEDが得意とする中立金利議論だが、これは話をするのに使いやすいから使いたくなるのだが、あまりにも便利なために便利使いしてしまう結果、コミュニケーションの整合性が取れなくなって最終的にあばばばばーとなる諸刃の剣なので、確信犯(つまりインチキコミュニケーション)で使う以外にはお勧めできない。

『This debate is complicated by the fact that the neutral rate is “unobserved”-that is, we have to infer this rate based on observations of financial and economic data.』

だからインチキに使えるんですけどね。

『Economists and other forecasters have lowered their estimates of the longer-run neutral rate over the past several years. Yields on Treasury Inflation Protected Securities (TIPS) have also signaled a decline in the longer-run neutral real rate.[15]』

『A major driver of the decline in the neutral rate is a decrease in estimates of future growth. Longer-run estimates of future GDP growth have been declining across most advanced economies. This growth slowdown has been mostly due to demographics, but weaker productivity growth also contributes significantly to this decline.』

でもって中立金利が下がっているよそれは構造的な経済の変化に寄る点も多いよってのは色々な人が論じているネタと同じなので一々訳しません。

『Another likely reason for the decline in the neutral rate is the emergence of the U.S. as chief supplier of safe assets to the world.』

ここはちょっと面白い、というか昨日ネタにしたブラードのオッサンもちょっと言及していたような気がするのだが、世界的に安全資産が不足しているというビューというか指摘ですな。

『In an increasingly interconnected world, the search for safety and return occurs globally-meaning that low rates in one country can quickly impact interest rates in other countries. Robert Hall of Stanford University and the Hoover Institution argues that the representation of risk-averse foreign investors in U.S. financial markets has increased and that this trend has contributed to downward pressure on the neutral real rate.[16]』

しかしそういう需給で決まる話が中立金利に影響するもんなのかねえ。

『My colleague John Williams, president of the San Francisco Fed, along with Thomas Laubach, on the staff of the Federal Reserve Board of Governors, has estimated that, as of the end of the first quarter of 2016, the longer-run real neutral rate was approximately 0.2 percent.』

SF連銀もそんなの出していましたな。

『Evan Koenig and Alan Armen at the Dallas Fed estimate of the shorter-run real neutral rate was negative 1 percent as of the end of the second quarter of 2016. By this measure, the Fed was only modestly accommodative last quarter.』

ということで低い中立金利の数値がホイホイと。

『While there are different approaches to measuring the neutral rate, it is clear that there has been a significant decline in estimates of the neutral rate over the past several years.』

でまあ結論は中立金利水準がここ数年で大きく低下しましたよと。

『I am strongly persuaded by arguments that aging demographics in advanced economies, slower productivity growth and the continued emergence of the U.S. as a source of safe assets have all contributed to the decline in the neutral rate. I also believe that high levels of debt to GDP in advanced economies and higher levels of political polarization have, at a minimum, limited the capacity of these countries to implement fiscal policy and structural reforms that could have stimulated higher rates of growth. This situation has, in turn, caused the neutral rate to be lower than it would be otherwise.』

という話をしているので、自然利子率というか中立金利というかの水準は下がっていますよ、という話を思いっきり行っている訳ですから、まーここを重視して読めばカプラン流だと利上げしてもそのターミナルレートって低いことになるからハト、という読み方も出来る訳です。さっきの金融不均衡ネタとかの言及もあるからそう単純でもないのだが。


最後の『The Role of Monetary Policy』を見る。

『In light of the decline in the neutral rate, using monetary policy to help manage the economy has become more challenging.』

ほうほうそれでそれで?

『Monetary policy has a key role to play in economic policy. However, at or near the zero lower bound, it may be less effective than other tools of economic policy. Monetary policy is not designed, by itself, to address the key structural issues we face today stemming from demographic changes, lower rates of productivity growth and high levels of debt to GDP as well as dislocations created by globalization and increasing rates of economic disruption.』

金融政策は構造問題などには対処できませんし、ゼロ金利制約に引っ掛かると効果が減殺されると。

『For the past eight years, advanced economies have relied heavily on monetary policy and much less on fiscal policy or structural reforms. However, at this stage, if we are going to generate higher sustainable rates of GDP growth and address key secular issues, there needs to be policy action beyond monetary policy. This action could take a variety of forms.』

『In the U.S., given that aging of the population is expected to continue to create headwinds for future economic growth, more could be done to examine policies that would ensure an inflow of workers to strengthen and grow the U.S. workforce. Appropriate immigration policy is a key element of this effort.』

ということで金融政策では無い方面に話が飛翔して逝くの巻。

『Public investments that upgrade aging infrastructure could help to bolster sluggish demand in the near term while boosting productivity in the long run. Given the sizable private pools of capital that exist today, some meaningful portion of this investment could come from public/private partnerships, with substantial capital coming from the private sector.』

『More broadly, tax reform and regulatory policies that create incentives for growth and investment could ultimately improve growth rates. Improved growth expectations could help counter the forces holding down the neutral real interest rate, giving monetary policy makers greater scope for action without resorting to unconventional tools.』

どうみても飛翔体です本当にありがとうございました。

『Historically during economic downturns, fiscal policy has often been used to assist monetary policy. However, due to high levels of debt to GDP as well as political polarization, governments have had difficulty coming to consensus on such action.』

「財政政策が金融政策をアシストする」というこの表現はどこぞの国に対するイヤミだったりすると面白いのだが。

『These are some examples of policy actions that could be considered. There are certainly other examples, including comprehensive regulatory review at the national, state and local levels, as well efforts to implement more comprehensive trade policy. Policy makers would need to address which of these might make sense to pursue. Whichever choices these leaders prefer, my point is that some of these actions will be necessary to address the challenges we currently face.』

とまあそういうことで、最後の所はひたすら構造改革とかの重要性を説く、というカプラン総裁前からそういう感じの話をする人なのですが、この時も(場所が北京だったこともあるのかも知れませんが)構造改革の重要性という話で、金融政策でヒャッハーという感じではないのがお洒落ですな。





2016/08/25

お題「ブラード総裁がドットプロットで一人とんでもない低金利見通しを出している理由を鑑賞する企画」

ジャクソンホール待ちとか言ってる今日この頃の相場および後付講釈ですが、結局ジャクソンホールで新ネタが出なかったら(銃声)。

などと申しておりますが輪番と入札の結果で動いているけど達観するとここもと落ち着いているという名のもとで結局そんなに動いてないのでこういう時には米国ネタでも。

○政策金利のドットプロットが横ばいの変態仮面のロジックも確認しようかと

つーことで傍から見ると一々目立つのが好きなブラード先生は最近ドットプロットでとんでもない数字を上げているのですが、その背景について最近何回か説明をしているので直近の奴でも鑑賞しようかと。

https://www.stlouisfed.org/news-releases/2016/08/17/st-louis-feds-bullard-discusses-new-approach-to-monetary-policy-normalization
(URLが長い・・・・・・・)
St. Louis Fed's Bullard Discusses New Approach to Monetary Policy Normalization

プレゼン資料はこちら
https://www.stlouisfed.org/~/media/Files/PDFs/Bullard/remarks/Bullard-CFAR-StLouis-17-Aug-2016.pdf

基本的には最初のサマリーの方から引用します。

『ST. LOUIS - Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard discussed “Normalization: A New Approach” on Wednesday during the Wealth and Asset Management Research Conference at the Olin Business School at Washington University in St. Louis. In particular, he explained how the St. Louis Fed’s approach to near-term U.S. macroeconomic and monetary policy projections recently changed, and how the St. Louis Fed came to adopt this new narrative.1』

でまあ脚注1に

『1 For more discussion of the St. Louis Fed’s new approach, see Bullard’s webpage at www.stlouisfed.org/from-the-president/key-policy-papers.』

ってありまして、上記の先に行きますと過去の色々なオモシロ(本人は大真面目でしょうが)ネタが出ていまして、先駆的なのか単に足元の流れに引っ張られて極端なネタを投下しているから時々大当たりしてるだけなのかは良く分からんオッチャンではありますが、まあFEDの場合はたくさん人がいるから一人くらいこういうユニークな視点をバカスカ出すのも良いのかなと。ただ、ブラードのオッチャンの場合、ユニークなお話するのは良いのですが、あっという間にドテンしてしまうという困った傾向もこれありでして、じゃあ何でドテンするかというと今回の説明見てても最後の方に「ああこういうスタンスなら外部環境変わるといきなりドテンするわな」というのが伝わると思います(と駄文を最後まで読ませようとするこの仄めかしスキームwww)。


『Bullard explained that the new approach delivers a simple forecast of U.S. macroeconomic outcomes over the next two and a half years. He said that the St. Louis Fed’s forecast is for real gross domestic product (GDP) growth of 2 percent, an unemployment rate of 4.7 percent and a Dallas Fed trimmed-mean personal consumption expenditures (PCE) inflation rate of 2 percent. The target federal funds rate (i.e., the policy rate) is projected to be 0.63 percent over the forecast horizon.』

ドットプロットで0.5-0.75の所に延々と票(?)を入れているのはこういう事でして・・・・・・・・・


・低成長のレジームにシフトしたとかいう説明のようで

『Overview of the Two Narratives』つー小見出しに参ります。

『In developing a new approach, Bullard said, the St. Louis Fed wanted to replace certainty about where the economy is headed with a manageable expression of the uncertainty surrounding medium- and longer-term outcomes.』

ほうほうそれでそれで?

『He said the St. Louis Fed’s previous narrative assumed that the economy is converging to a unique, long-run steady state and that values for key macroeconomic variables are essentially tending toward an average of their past values.』

今まで想定していたストーリーというのが要するに今のFOMC的な標準ストーリーです。

『With inflation and unemployment gaps near zero, he noted, business cycle dynamics appear to be over. Therefore, the implication under the old narrative is that “the policy rate would likely rise over the forecast horizon to be consistent with its steady-state value.”』

『However, Bullard explained, “In the new narrative, the concept of a single, long-run steady state is abandoned. Instead, there is a set of possible ‘regimes’ that the economy may visit.” He added that regimes are generally viewed as persistent and that switches between regimes, while possible, are not forecastable.』

でもってその「今後徐々に回復が進んで完全雇用と物価安定に向かって行って金利も中立金利に向けて引き上げていきます」というのに対して、ブラード先生的には「そうはならないレジームが違ってきたんです」という話をしております訳で。

『He said that the current regime appears to be characterized by slow growth, low real rates of return on safe assets and no recession.』

新たなレジームというのは「低成長」「安全資産の実質金利が低水準となる」「リセッションが発生しない
という事に示されるそうな。

『In terms of monetary policy, which is regime-dependent, the implication is that “the policy rate will likely remain essentially flat over the forecast horizon to remain consistent with the current regime.”』

で、その結果として金融政策は「レジームディペンデント」になるので、政策金利は今の(ブラード総裁が言う方の)レジームが見通し期間中に継続するから、金利水準は横ばいでヨロシということです。ってなお話になるそうな。

でもってプレゼン資料の方だと9枚目から12枚目(資料のページではなくて表紙を含めた枚数で何枚目としております。PDFファイルベースね)がこの部分の話になるのだが、9枚目の所に、『Nature of the new narrative』というのがあって、そこを見ますと、

『・In the new narrative, the concept of a single, long-run steady state is abandoned. Instead, there is a set of possible “regimes” that the economy may visit.

・ J.D. Hamilton, “A New Approach to the Economic Analysis of Nonstationary Time Series and the Business Cycle,” Econometrica, March 1989, 57(2), 357-384.

・ C.-J. Kim and C.R. Nelson, State-Space Models with Regime Switching, MIT Press, 1999.

The “regime” language comes from this and subsequent nonlinear econometrics literature on this topic.』(プレゼン資料9枚目のスライドから)

となっていて、その次のページの中では

『・Regimes are viewed as persistent, and switches between regimes are viewed as not forecastable.

・Optimal monetary policy is regime-dependent.』(プレゼン資料10枚目のスライドから)

とあって、レジーム自体は経済の前提みたいな話で、一種の複数均衡みたいな感じのイメージだと思ったのですが、どうもこの複数均衡の遷移が起きるとレジームがノンリニアに変化する、という話をしているようなのよ。

ついでにスライドの11枚目には結果として向こう2年半程度はどうなるのかというのがある。

『A simple forecast over the next two and a half years:

・ Real GDP growth 2 percent
・ Unemployment 4.7 percent
・ Trimmed-mean PCE inflation 2 percent
・ Policy rate 63 basis points』(プレゼン資料11枚目のスライドから)

つまりロンガーランのノーマル水準にあるのに政策金利水準は0.63%という見通しで、ナンジャソラという感じですが、そこには下の方に『Risks associated with this projected policy rate are likely to the upside.』とあってそらそうよというか何というかな訳ですがその辺のツッコミは後で。


・どうも複数均衡論もどきのようなイメージで「経済のレジームが変わった」といっているようです

次の小見出しが『The Previous Narrative and the End of Its Usefulness』とまた大きく出る。

『Bullard said that during the past several years, the St. Louis Fed’s typical medium-term forecast under the old narrative was for output to grow at an above-trend pace, for unemployment to decline, for inflation (net of commodity-price effects) to overshoot 2 percent, and for policy rate increases to be consistent with the unique steady state. Under this old narrative, the extremely low policy rate was seen as stimulating, which is what was driving inflation above target, output growth above trend and a decline in unemployment.』

old narrativeとか言ってますがまあこちらがFEDの中心的な見解。

『He noted that from the second half of 2013 to the first half of 2015, output growth and unemployment data supported the previous narrative. However, inflation did not overshoot 2 percent during that period.』

昨年前半まではこの考えがワークしましたが・・・・・・・・・

『Now, Bullard explained, output growth has arguably slowed to a rate below a 2 percent trend, unemployment may not fall much below its current values, and trimmed-mean PCE inflation is close to 2 percent but not rising rapidly.』

『“If there are no major shocks to the economy, this situation could be sustained over a forecasting horizon of two and a half years,” he said. “These facts suggest that it may be time to quit using the old narrative.”』

まあ言いたい理屈も分からんではないのですが、これは実際の政策運営として「使える」議論なのかというツッコミは後程まとめて。


・目先の動きに過度に反応してないか??というのとそもそも政策実務に使いにくいだろうというブラード理論ではある

最後の小見出しが『The New Narrative Based on Regimes』ですが、そこの文章よりもスライドショーの箇条書きの方が分かりやすいのでそっちを先に。

『An unsatisfactory aspect of the old narrative:

・ The policymaker is completely certain that the economy is converging to a long-run steady state, which is itself an average of past outcomes.

・ How to fix this?

The new narrative: We want a manageable expression of the uncertainty surrounding medium- and longer-term outcomes.

・ One way to do this is to abandon the idea of a long-run steady state and instead think in terms of regimes that the economy may visit.

・ What are these regimes?』(プレゼン資料21枚目のスライドから)

でまあサマリーの方ではその続きもありまして、

『In describing the new narrative, Bullard discussed three important fundamental factors that determine the nature of the regimes that the economy may visit: productivity growth, which can be high or low; the real interest rate on short-term government debt, which can also be high or low; and the state of the business cycle, which can be expansion or recession. “The ‘regime’ can refer to any of these states or to the combination of all three,” he explained.』

とか何とか言っているのですが、どうも「経済の状況によってこのレジーム(というか複数均衡的な均衡点というか)が変化しうるものである」というお話をしているようなのですよ。

『Bullard said that while recession is a risk, “we have no reason to forecast a recession given the current state of the U.S. economy.” Therefore, this is viewed as a “no-recession regime.” Regarding labor productivity growth, he noted that it has been low on average at least since 2011.』

『Hence, this is viewed as a “low-productivity-growth regime.” Turning to the real rate of return on short-term government debt, Bullard noted that it has been exceptionally low by recent historical standards. This is viewed as a “low-real-rate regime.”』

従って今のレジームは「生産性の向上や実質金利が低いままで推移するものの、リセッションなども起きません」ってレジームだという話なのだが、このおじさん昔複数均衡論の話をしている時に(https://research.stlouisfed.org/publications/review/10/09/Bullard.pdf)(さっきの過去のペーパー集の所では趣旨が「Permanent zero nominal interest rates:」となってた)均衡物価はゼロ近傍という話をしていたのに、何故か今回主張する均衡点では物価は2%だわ雇用は完全雇用だわという事になっていまして、その背景が何かという説明がクリアカットではないので、単体で読んでいると話の筋はそれなりに通っているのだが、過去の複数均衡論との整合性が良く分からん。

『“We think of low real rates of return on government paper (safe assets) as reflecting an unusually high liquidity premium on government debt,” he said. While not all real returns in the economy are unusually low, he noted that the real returns on safe assets are the ones that are most closely linked to monetary policy.』

安全資産の実質金利が低い点に関しては「国債の価格にプレミアムがついている事に見られますように、」って話をしているように見受けられますが、経済の状態に関してもそうなのですが、なんか他の要因で短期的に均衡しているように見えている状態なのを均衡状態と誤認しているのではないかという気もするし、確かにそらまあブラード先生がここまで述べているように、過去の平均的な水準に落ち着くという考え方そのものがおかしくて、経済の最適な均衡水準そのものは変化しうるし、ノンリニアに変化しうるというのもそれはそれで言ってる事は分かるちゃあ分かるので中々こう難しいですの。

『He acknowledged that there are some risks associated with the projected policy rate, including the fact that these fundamental factors could switch into new regimes. Overall, he said that the risks are likely to the upside.』

『Bullard concluded, “If a regime switch does occur, the policy rate path would have to change appropriately-it remains data-dependent.”』

って纏めていまして、プレゼン資料だと37枚目の『Conclusion』って所ですけど。

『The projected policy rate path is the main difference in the new approach.

・ For other variables, the St. Louis Fed’s forecast under the new approach is similar to private-sector forecasts.

Old narrative:

・ Relatively steep policy rate path, dictated by convergence to the single, long-run steady state.

New narrative:
・ Flat policy rate path, conditional on the current regime.
・ If a regime switch does occur, the policy rate path would have to change appropriately-it remains data-dependent.』(プレゼン資料37枚目のスライドから)

って纏まっているのですが、いやまあこの説明は説明で話としてはこういうのもあるなとは思うのですけれども、これを現実問題としての金融政策などの政策運営に落とし込むという事になると、「レジームが変わりました!!!」とか言いながらドテンしまくることになる訳で、現にこの引用部分を見ると「また経済のレジームが変わったら従来型のアプローチになります」って話で、いやまあそういう考え方もアリは有りかもしれんが、それやりだすと政策のボラが上がり過ぎて(ノンリニアに変わるのですから)少々無理があろうかと思われますって所かと。まあ少数意見で面白説明している分にはこういうのも面白いですし、長期的な観点では経済は最終的に単一均衡点に収束するみたいなモデルだけで回しているとブラードのいう程では無いにせよ、レジームの変化というか、均衡点の変化を見落としてしまう、というのはそらまあそうだろうなとも思いますけど・・・・・・・・

とまあそういうジャクソンホール待ちタイムなのでたまには面白おじさんの主張でも確認しようという企画でした。





2016/08/24

お題「相場も様子見なのでアタクシも様子見雑談(ただの言い訳)」

ジャクソンホール待ちってどうせジャクソンホールで画期的な新ネタは出て来ないじゃろ様子見の言い訳じゃろ、とフラグを立ててみるw

○総裁講演で何も出ないのは仕様ですな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko160823a.pdf
情報技術と金融 −中央銀行の視点―
── 第1回FinTechフォーラムにおける挨拶 ──

というのがありましたが、そもそもアタクシなんぞも「次は5日のきさらぎ会」と思っていて朝から某モーサテで注目材料に総裁講演とか言われてああそういえばそんなのありましたな、と思ったという位のアレでございましたが、まーこのネタで総括検証の話をするのはさすがにちょっとズレが大きすぎるのでねーわという所だと思います。

つーかですね、
http://www.boj.or.jp/announcements/press/index.htm/
講演・記者会見

の所に予定があって、次は布野さんの金懇がありますけれども布野さんがいきなりなんか突撃講演をするというタイプではないと思いますが、会見で今の政策の効果と副作用に関してどう思っているのかとかを丁寧に質問してくれる人がいると面白いかもしれないとは思ったりします。総括検証について質問してもそらもう答えはしないのは確実なので、総括検証について質問という形にしないで今の政策の副作用について聞くというのが宜しいのかなあとか思ったりします。

でもって5日の黒田総裁と8日の中曽さんの辺りが怪しい訳ですが、まー変に決め打ちみたいなのは出しにくいかなあと思ったりもします。というのは今回の総括検証って毒にも薬にもならない結果が出て結局今の政策がズルズル続いてオペレーショナルに回らなくなって来るのが先か副作用が顕在化するのが先か(それとも同時か)という間に物価の2%は到底達成せず、となってしまう可能性はありますが、当然ながらそういう将来が見え見えという状況なのでさてどうしたもんかという話を総括検証という名の元で実施する訳ですから、最後のバンザイアタックをするのか塹壕掘って長期戦するのかは兎も角として、何らかの戦術転換(本当は戦略がおかしいのでそれを抜本的に転換して欲しいのだがそういう建付けになっていないので塹壕戦モードにする位しかできないと思う)をはかるという事になるはずなんですよね(やらなかったら間抜け)。

となりますと、現状の政策委員会の中では明らかに塹壕戦モードに反対しそうなのが最低1名(ジンバブエ先生ともしかしたら置物だけど置物は先日の横浜金懇から類推するに存外柔軟対応してきそうにも見える)で、今の政策でも反対しているのに最後の全軍特攻とか絶対反対しそうなのが2名(言うまでもなし)となっている訳で、総括検証して直ぐに特攻なり塹壕戦なりになるのかは謎ですけれども、少なくとも特攻準備なのか塹壕堀りなのかは何ぼ何でも読めるじゃろという話になってくるとなりますと、そう簡単にコンセンサスにも至らんじゃろと思われまして、まーあと2週間の時点でも方向性出しにくいと思いますし、ましてや執行部から何か出すというのは、その時点ですべてが決まっていて動かない、という確信が無い限りはコミュニケーション上の齟齬を生み出すリスクしか無い話なので、変な話は極力避けてくると思いますけどどうでしょうかね。

とは言いましても、きさらぎ会だけは金融経済情勢の話をしないといけないので、総括検証の内容はしなくても、結局金融政策の効果とかの話を避けて通るのも難しいでしょうからさてどうなるのやらという所です。この前の置物金懇では随分と置物先生がらしからぬ抑制的な話をしていましたが、産経の方では総括検証の方向性は見せてないけど毎度の黒田節は出ていて(まあいきなり引っ込めるわけにもいかないですけどね)中々難しいだろうなあと思いますよ。徹底的に過去の話をするという手もありますけれども、結局そこの中に政策のアセスメントが含まれるのが辛いですな。


でまあ今朝のモーサテでは「昨日の挨拶では市場の注目する金融政策への言及がありませんでした」とか、そういや昨日のモーサテでも他市場の人が「総裁講演に注目」とか言ってましたが、そもそも昨日はそういうの出ないだろと思っていたので華麗にスルーしていたのですが、まー確かに普段から見てないとお題とか関係なく金融政策の話を期待しちゃいますよね。


○市場世間話

・様子見なのでとりあえず需給で動くんですかねえ良く分からん

ほいな。

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1B426I
Markets | 2016年 08月 23日 15:12 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅反発、長期金利-0.090%に低下

『<15:08> 国債先物は大幅反発、長期金利-0.090%に低下

長期国債先物は大幅反発。前日の米債相場が上昇したことを受けて買いが先行した。20年債入札を好調に通過すると、上昇幅を一気に拡大させた。現物債は総じてしっかり。入札後に国債先物が上昇幅を拡大させると、10年債利回りに強い低下圧力がかかり、超長期ゾーンも20年債中心にしっかり。生保、年金勢の需要が観測されていた。中期ゾーンも強含みで推移した。日銀の黒田東彦総裁が第1回Fintechフォーラムであいさつしたが、相場への影響は見られなかった。長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比25銭高の151円56銭。10年最長期国債利回り(長期金利)が前営業日比1.5bp低下のマイナス0.090%。一時は8月16日以来となるマイナス0.100%に低下した。』(上記URL先より)

とまあそういうことで、昨日は超長期入札が市場予想より強く、と言ってもオファーサイドで切れた位の感じだったような気もせんでもないのですが、テールが短かったのでまあ想定よりも強めの札で切れた感があったという展開。でもってこの前の30年みたいに入札堅調だけど強くなったのが他の年限で30年新発は完全に置いて行かれながらの堅調相場とかいうような訳分からん展開にはならずに後ろの方が確りという入札結果強い時の順当相場という展開になっていてほほーという感じですな。

つーてまあ何らかの方向性があるというよりは「入札があるからとりあえず甘くしておこう」とか「これだけ甘くなると誰か買うでしょうかねえ」とか「輪番スケジュールガー」とかそういう需給ネタで動いているような感じで、総括検証で何が飛び出すのか良く分からんという中で日銀も(当たり前だが)余計な事は言わないし、7月の時みたいに「どっちにしても追加緩和で3方向なのか利下げだけなのか分からんけどクルデー」みたいなのではないので、そらまあ方向感でんわなと思います。まあ需給でフラフラって所ではないですかねえとフラグを立ててみる。


・国債市場の流動性指標

http://www.boj.or.jp/paym/bond/ryudo.pdf
国債市場の流動性指標

・・・・・・・・まあ多くの指標が盛大に流動性低下を示しているのは把握した。

ということで毎度の奴なんですが、まあこういう数字を見るのは見るので否定は致しませんけれども、市場の流動性がどうのこうのっていうのはこの手の数字に出る話だけではなくて、たとえば先般のETF買入拡大以降株式市場の話題がとにかく「日銀は入ったのか」だけで日中上がったり下がったりする、というような形で、市場の流動性というだけではなく、市場参加者の行動パターンや思考様式がどうなっていっているのか、というような市場の数値やサーベイデータだけでは分からない定性的な部分というのが物凄く重要だと思うのですよ。

でもって、しつこく申し上げますとこういう数値分析するのはそれはそれでやらないよりはマシなのですけれども、この手のデータ分析物ってやりだすと割と幾らでも精緻化できるもので、その精緻化をせっせとやりだすと分析している人たちが「数値に表れない現場職人の肌感覚」みたいなのを無視する(だいたい現場叩き上げじゃなくて頭がとっても良い方々はそういうのはスルーする傾向にありますし、アタクシのような無学叩き上げはこの手のデータ分析を軽視する人も多そう(アタクシだけだったりしたらスイマセン)なので話が噛み合わない面があるのは重々承知していますが)ようになってしまうんだよなあという辺りが少々気に掛かる所ではあると思うのです。

そこで輪番に話が飛ぶのがアタクシの仕様なのですが、3月末の市場がぶっ飛んでいる時の輪番調整はまあ話として分かるし、その調整を戻した4月末位まではまだ分からんでもないのですが、それ以降の毎月輪番微調整とか頭の良い人たちがやりそうなプレイで、現場職人感覚としては一々変な調整をするんじゃねえと思うのですが、分析に力を入れすぎて現場を理解しようという方がおろそかになっては困るなあとか思いながら流動性低下の指標をつらつらと眺めるのでありました。


でもってこの前ちょっと申し上げたかと思いますが、現在総括検証を行っている中ですので、今月末の翌月輪番予定額の公表時に前月から額をいじると100%「総括検証の結果金融政策がこういう方向になるという示唆を日銀が行った」という解釈をして、せっかく今日銀的には余計なノイズを出さないような形で進行している(外野は物凄く騒いでいますが置物金懇会見があれだけ抑制的だったのですからね)ので、オペのテクニカルな変更とかで無駄な波乱を巻き起こす事だけは「絶対に」避けて頂きたいと月末1週間前なので再度声を大にして(ってテキストに書いているだけだから声を大にもへったくれも無いが)申し上げておきたいと存じますです、はい。

#最近の市場局とか調節って無邪気にテクニカル調整をしてくるという懸念があるんですよねえ


○そういえばすっかり放置していたがT+1ネタ

既に1か月前のネタですが(大汗)、展望レポートだの総括検証だのですっかりスルーしていた件。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2016/rev16j13.htm/
国債の決済期間短縮化(T+1化)に向けて

『要旨

わが国で進められてきた国債の決済期間短縮化に向けた取組みが、最終フェーズに差し掛かっている。足もと、市場参加者や市場インフラ等の幅広い主体が連携し、2018年度上期の実施を目標に、アウトライト取引の決済期間を現在の2営業日(T+2)から1営業日(T+1)に短縮する取組みが進められているほか、アウトライト取引と密接に関係するレポ取引についても、決済期間短縮化のための新たな取引手法(銘柄後決め方式GCレポ取引)の導入等に向けた作業が進められている。こうした取組みは、国債の未決済残高の削減等を通じて、決済リスクの削減や、わが国金融市場の効率性・利便性・国際競争力の向上に繋がっていくことが期待される。』

ということで、本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2016/data/rev16j13.pdf
国債の決済期間短縮化(T+1 化)に向けて


こちらは特段新しい話がある訳ではなく、従来の話について進捗状況を整理した中間報告みたいなペーパーではあるので、ついうっかりネタにするのを放置プレイになっていた訳ですが・・・・・・・・・・


えーっとですね、まあ毎度申し上げておりますように、別に今でもその気になれば国債取引ってT+0でもT+1でも可能(そうじゃなかったら国債補完供給オペとか出来ない)であって、何も皆が揃ってアウトライトT+1の在庫ファイナンスとインベントリー整理がT+1以下(在庫ファイナンスは基本T+0)にならんでも良かろうとは思いますし、この話をやっていた当初に言われていた「未決済残高の積みあがりを抑止」というのは別の方向で金融機関経営の安定化が図られ、更に集中清算機関の利用促進と集中清算による決済高圧縮が行われるようになっている中で当初考えていた効果がさほどでもなくなり、その一方で決済期間を短くすることによる事務コストの増大、事務リスクの増大と、スーパー低金利環境における決済やカストディ業務の収益力の低下というのが発生している上に、実施時期が2018年上期(本文にあるけど実際は5月)という金融政策で何かあってもおかしくない時期に開始とか、もう何ちゅうかとしか申し上げようが無いというのは毎度の悪態の通りですので繰り返しません(繰り返しているけど)。

まーこの「何か良く分からんけど一旦方向性が出ると止まって考えるという行為が出来ない」というのは別にジャパンだけではなくて、それこそバーゼルとかも見ててそういう感がだいぶする訳で、日本の金融政策を見習って(?)どこかで「総括検証」をして改めて考えて見ようとかいう動きでもやってくれとは思うのですが、中々そうならないんですよねー。

まあ何ですな、どこぞの国での「総括検証」ってのは大口叩いて導入した政策におかわりまでしたらおかわりの評判は悪いは叩いた大口は全然結果出て来ないわ(途中まで出たということなので効果があったという検証結果になるんでしょうけどね!!!)というように、成否というのが見えてしまうので総括検証という事になってくるんでしょうが、それこそバーゼルの「金融安定化」もそうですし、特に本件のように「決済」に掛かる話って、物理的に絶対に無理な話(要物契約のブツを瞬間移動装置で移動させてアゲンストペイメントをするとか)でもない限り、精緻にやろうと思えば無限に人的およびシステムのリソースを割けば何ぼでも精緻に出来る訳で、それこそ内国為替決済を1円まで即時決済するとか、債券決済を全てT+0即時決済するとか、そこに参加者全員がSTP参加するとか、手間と金を惜しまなければ幾らでもできてしまうし、「コストとリソースの事を考えなければ」決済の所って精緻化をすることは常に前向きな話で正論以外の何物でもない、というのが一種タチが悪い話だと思うのですよ。つまりこういう話って「そこまでリソース掛けて精緻化することに何の意味があるんですか」以外の反対ってし難くて、しかも精緻化の正論っぷりが無双(その上バーゼルにしても日銀にしても民間企業じゃないからコストの話を持ち出しても反論として弱いのよ)なので反論の根拠がどう見ても弱く、一度方向性が出来るとそう簡単に止まらないというこの無間地獄。

ということで、何ちゅうかこれもう少し短期金利が正常化して、日銀の国債買入による市場の流動性枯渇状態がある程度何とかなる(どうせ正常化の際に国債の売却も無いでしょうから流動性は低いままで正常化になるんでしょうねえ)所まで引っ張ってなんか問題あるのかとは思うのですが、どうにかならないもんですかねえというグチでした。


#なお全然本件と関係ないですが、日銀新着情報の上記ネタの近所に

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab16j03.htm/
ライフサイクル経済における最適インフレ率

というのがあって、これなんじゃろと思いながらちょっとネタにしましたが、7月末からのアレが一段落して改めて鑑賞したら話としては中々面白いと思ったのでちょうど近い所のネタをだしたついでに再掲しておきますね






2016/08/23

お題「だいたい7月FOMC議事要旨鑑賞会」

朝のニュースが通常モードに戻って夏休み気分も一新というものですな。って夏休み取ってないから関係ないですけどwwww


○黒田総裁産経インタビューネタの補足(というか書き忘れた件)

そういえば昨日うっかり忘れておりましたが、例の産経新聞の総裁インタビューを受けまして物凄い勢いでバイアスの入ったヘッドラインを打っている所があったというこの事実ですがどこがバイアスを掛けたのかは言うまでもなし。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-20/OC6QMZ6K50Y501
日銀総裁:追加的緩和の可能性十分ある、総括的検証踏まえ−産経
呉太淳、油井望奈美
2016年8月20日 11:47 JST 更新日時 2016年8月20日 12:30 JST

ちなみに昨日の再掲になりますが、実際にインタビューやった産経の解説記事では

http://www.sankei.com/economy/news/160820/ecn1608200018-n1.html
2016.8.20 01:00
【日銀総裁単独インタビュー】
黒田日銀の金融政策は「模範例」か「失敗例」か…「総括的な検証」が試金石

http://www.sankei.com/economy/news/160820/ecn1608200016-n1.html
2016.8.20 01:00
【日銀総裁単独インタビュー】
伸び悩む物価 「検証踏まえ追加緩和も」 任期中に「2%」届くか

http://www.sankei.com/economy/news/160820/ecn1608200017-n1.html
2016.8.20 01:00
【日銀総裁単独インタビュー】
マイナス金利「さらに引き下げ余地ある」 国債購入の柔軟化に含み

ってあって、説明が両建てになっているのですが、そこで一部を切り取ってバイアス掛けるとかエエカゲンにせえよと思いますけれども、国内債券市場としてはそらまあ産経の元記事当たりに行くからブルームバーグの釣りヘッドラインには釣られんわなという所ではありますし、ブルームバーグそのものが(以下悪態につき割愛されました)。

ただまあ何と申しますかですな、総括検証をやっている時期ですので元々予定されている物件以外でこの手の情報発信が出てくると市場が疑心暗鬼モードになっている中で片言隻句に飛びついてワケワカラン反応をしだすリスクがあるので、まあ余計なノイズは出さない方向でお願いしたいものであります。いやもちろん方向性決まっていて地均ししたいってんだったらそれはそれでも良いのですが、地均ししたものの結局その通りにならなかったとかいう事になると目も当てられない事態になるので。

そういう意味ではまあ今回はそこまで反応していなかったように見えるけど自分からしたのか言わされたのかは兎も角として、正調黒田節っぽい話をしていたのはもにょる所でして、正調黒田節ペースのままで行って問題ないのだったらそもそも総括検証を何でするのよという疑問になってしまいますので、そこは先日の置物大師匠における横浜金懇での会見位に抑制的な話をしておいた方がどういう方向になるにせよ次の手を打ちやすいのではないかと思うのですよねーということで。

#いやまあノイズが出るとネタに事欠かないのでウマーちゃあウマーですけれども、まあそれでコミュニケーショングダグダになって色々なものがマズーになるほうが良くないですから


○7月FOMC議事要旨ネタである

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20160727.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20160727.pdf

スタッフ報告の部分もほほーという感じではあるのですが、参加者の議論の所を見ますとそのスタッフ報告を受けた議論になっている(ので議論の背景を確認したければ前半のスタッフ報告の部分を熟読すべしという事になります、為念)のでまあ飛ばして、例によって例のごとく『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から参ります。ちなみに分量的に言えばスタッフ報告の方が量多いんですけどね。


・最初は声明文で示されている全体感のお話

『In their discussion of the economic situation and the outlook, meeting participants agreed that the information received over the intermeeting period indicated that the labor market had strengthened and that economic activity had been expanding at a moderate rate. Job gains were strong in June following weak growth in May. On balance, payrolls and other labor market indicators pointed to some increase in labor utilization in recent months. Household spending had been growing strongly, but business fixed investment had been soft. Inflation had continued to run below the Committee's 2 percent longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and in prices of non-energy imports. Market-based measures of inflation compensation remained low; most survey-based measures of longer-run inflation expectations were little changed, on balance, in recent months. Domestic and global asset prices were volatile early in the intermeeting period following the vote by the United Kingdom to leave the EU, but they subsequently recovered their earlier declines, and, on net, U.S. financial conditions eased over the intermeeting period.』

最初の所はうだうだと書いてありますが、これは声明文の最初の部分で示される認識と同じで、しかも(先ほど申し上げましたように引用してませんが)スタッフ報告の部分でまさにこういう説明をしていまして、その内容を文章で盛大にまとめるとこうなりますという感じです。確認したい方はスタッフ報告部分を読んでちょ。

『Participants generally indicated that their economic forecasts had changed little over the intermeeting period. They continued to anticipate that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity would expand at a moderate pace and labor market indicators would strengthen.』

見通しに大きな変化は無しと。適切な金融緩和の調整によって云々というのも声明文に毎度記載されるネタですな。

『Inflation was expected to remain low in the near term, in part because of earlier declines in energy prices, but to rise to 2 percent over the medium term as the transitory effects of past declines in energy and import prices dissipated and the labor market strengthened further.』

物価に関しても同様で従来の話からの変化は(全般としては)無いという事になっていますな。

『Participants viewed the near-term risks to the U.S. economic outlook as having diminished. However, some noted that the Brexit vote had created uncertainty about the medium- to longer-run outlook for foreign economies that could affect economic and financial conditions in the United States. Participants generally agreed that the Committee should continue to closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments.』

近いタームでのリスクも消えましたというこの辺りも声明文に盛り込まれている内容です。つーか大体ここのパートの最初の2パラは毎度こんな感じで声明文に反映された内容になっている、というか声明文のステートメントを使っているというかです。


・個別需要項目では最初の消費、住宅は鼻息荒くフンガー状態

つーことで以下が個別需要項目でまず消費。

『Growth in consumer spending was estimated to have rebounded in the second quarter from the slow pace in the first quarter, as monthly gains in retail sales were strong through June.』

消費は2Qになって拡大しています。小売が強いですねえと。

『Sales of new motor vehicles remained at a high level, on average, in the second quarter, although sales appeared to be supported by substantial incentives for consumers and by business fleet purchases. With the second-quarter pickup in spending, real PCE appeared to have risen over the first half of the year at a rate consistent with the positive trends in fundamental determinants of household spending.』

うむ。

『Participants cited a number of factors that had likely been supporting household spending, including solid real income growth, gains in house and equity values, low gasoline prices, and favorable levels of consumer confidence.』

まあ物価が強くなくて実質所得が強いというのは微妙なネタではありますが、住宅や株価の上昇による個人のバランスシート改善とか、コンフィデンスの強さなども指摘されていると。


次が住宅投資。

『Residential investment posted a strong increase in the first quarter of the year, but data on starts of new single-family homes indicated that outlays likely edged down in the second quarter. Data on permit issuance through June suggested that new-home building activity might rise only slowly in the near term. However, participants commented on a number of factors suggesting that the housing sector was likely to continue to improve, albeit gradually: Rising sales of existing homes, responses to the July SLOOS pointing to stronger demand for residential mortgage loans, and the steady increase in house prices were seen as evidence of rising demand.』

これまで強くて、先行き若干弱めの部分も見られるけれども基調として改善が続くでしょうと。あとそれからSLOOSってのはシニアローンオフィサーサーベイの事です。

『In addition, credit conditions remained favorable: Mortgage rates had fallen further, and the SLOOS reported easier terms for loans eligible for purchase by the GSEs. Moreover, several participants noted positive reports on residential construction activity from business contacts in their Districts, with a few suggesting that shortages of lots and skilled labor, rather than low demand, might be contributing to the recent slowing.』

威勢の良い話が続いていまして、先ほどの所にあった住宅着工とか許可が先行き弱含みになっているのは、そもそも需要が無いのではなくて、建設に関する熟練工が不足しているからというアネクドータルな報告もありますよというお話だそうで威勢の良いことこの上ない。


・企業関連についてはパッとしない話が続く

次が企業の固定資産投資。

『Business fixed investment appeared to have declined further during the second quarter, with broad-based weakness in equipment and another steep drop in drilling and mining structures.』

資源価格があばばばばーで関連企業の設備投資が一段と落ちている上に、幅広い分野で設備購入意欲が弱いと。

『Participants noted that the recent rise in energy prices had spurred an uptick in drilling activity, suggesting that if energy prices firm over time as expected, the drag on investment from declining energy-sector activity should diminish.』

資源価格戻ってきたからよーしパパ設備投資復活させちゃうぞーってなるのでしょうかねえ。

『In addition, it was pointed out that the upward trend in investment in intellectual property products was a positive in the outlook for investment. Several participants commented on favorable reports from their business contacts on commercial construction.』

IT系とか消費関連系の投資は堅調らしい。

『Based on conversations with their contacts, participants discussed a number of factors that may have been contributing to businesses' cautious approach to investment spending, including concern about the likelihood of an extended period of slow economic growth, both in the United States and abroad; narrowing profit margins; and uncertainty about prospects for government policies.』

先行きの企業投資スタンスに関しては内外経済の見通しだのマージンの縮小だの米国大統領選挙の帰結だの色々とマインドが盛り上がらない要因があるということで、設備投資に関しての先行き認識は厳しめ。


さらに企業環境に関して。

『In their discussion of business conditions in their Districts, many participants reported that their contacts anticipated that the U.K. referendum would have little effect on their businesses.』

ブリクジットに関しては影響は小さいのですが・・・・・・・・

『Activity in the manufacturing sector continued to be mixed: Several participants indicated that manufacturing in their Districts was still quite weak, while several others reported that their Banks' June surveys showed that manufacturing activity had picked up or stabilized.』

製造業は強弱まちまち。

『The available surveys indicated that service-sector activity continued to expand. However, economic activity continued to be depressed in areas affected by the downturn in the energy sector and falling agricultural commodity prices, although several participants noted that the recent firming in crude oil prices had led to a modest increase in drilling activity. Businesses in the energy industry were reported to be highly leveraged, and additional restructurings and bankruptcies were seen as likely. Farm loans continued to increase, and banks had seen some rise in delinquencies on such credits.』

サービスセクターはサーベイ見ると強い、という話をしているのですがそれは1文だけで、その後延々とエネルギー価格と農産物価格の下落の影響を受けているエネルギーセクターと農業に対して厳しい見方を示していますのでこちらもあまり威勢は良くない。


・ということで労働市場キタコレでここの認識は全体として強いものの意見は分かれている

『The labor market report for June appeared to confirm participants' earlier assessments that the small gain in payroll employment in May likely had substantially understated its underlying pace. The sharp rebound in payroll employment gains put the average monthly increase in jobs over the three months ending in June at about 150,000.』

先般の雇用統計でホッと一息ですの。

『Although this pace was noticeably slower than the average rate during 2015 and the first quarter of 2016, many participants viewed it as consistent with continued strengthening in labor market conditions and with a further gradual decline in the unemployment rate. The unemployment rate rose in June after having declined in May, but the labor force participation rate ticked up, the rate of involuntary part-time employment more than reversed its increase in May, and the broader U-6 measure of labor underutilization continued to move down.』

NFPのペースは落ちているけれども全体としては堅調な回復を続けているという認識。

『Some participants noted that recent signs of a moderate step-up in wage increases provided further evidence of improving labor market conditions.』

数名は賃金上昇についても指摘しています。まあこの人たちが利上げ早期に的な人たちでしょうな。

『Although most participants judged that labor market conditions were at or approaching those consistent with maximum employment, their views on the implications for progress on the Committee's policy objectives varied. Some of them believed that a convergence to a more moderate, sustainable pace of job gains would soon be necessary to prevent an unwanted increase in inflationary pressures.

「at or approaching those consistent with maximum employment」って言ってるのが「most」と来ましたということでここに関してはまあ強い。そのうちの数名は労働市場のタイト化によるインフレ圧力への可能性まで言及となという感じです。

『Other participants continued to judge that labor utilization remained below that consistent with the Committee's maximum-employment objective. These participants noted that progress in reducing slack in the labor market had slowed, citing relatively little change, on net, since the beginning of the year in the unemployment rate, the number of persons working part time for economic reasons, the employment-to-population ratio, labor force participation, or rates of job openings and quits.』

一方でまだ労働市場はマンデートには近くないでしょ、という人もいまして、その主張にも文章が割かれていますので、多数意見では強い話になっていますが反対意見も相応にあるという感じでしょうか。


・物価に関して

『Available information on inflation suggested that the change in headline PCE prices for the 12 months ending in June continued to run well below the Committee's longer-run objective and that the 12-month change in core PCE prices likely remained near its May level of 1.6 percent. On a 12-month-change basis, core PCE inflation had risen from 1.3 percent a year earlier, but it continued to be held down by the pass-through of earlier declines in energy prices and by soft prices of imports.』

これは現象のお話。

『Core PCE inflation over the first half of 2016 was expected to have been close to an annual rate of 2 percent, but it was noted that some of the increase likely reflected transitory effects that would be in part reversed during the second half of the year.』

本年後半上昇するけどそれは一時的押し下げ要因の剥落によるもの。

『Longer-run inflation expectations, as reported in the Michigan survey, were little changed in June and early July. The reading from the Federal Reserve Bank of New York's Survey of Consumer Expectations for inflation three years ahead moved up further in June, returning to near its level of a year earlier. Most market-based measures of longer-run inflation compensation remained low.』

インフレ期待は市場の方が相変わらず弱くてサーベイはあまり変化なし。


・金融安定化の話では不動産貸出への懸念を表明する人が

『Participants also discussed recent developments in financial markets and issues related to financial stability.』

ということでfinancial stabilityの話があるが、最初はバブル云々の話ではなくて、ブリクジットなどの影響による金融不安定化の話なのでまあどうでも良い話になっているのでそこは飛ばして次のパラグラフに行きます。

『In the discussion of developments related to financial stability, it was noted that while the capital and liquidity positions of U.S. banks remained strong, European banks, particularly Italian banks, were under pressure--as evidenced by the sharp declines in their equity prices--from a weaker economic outlook for that region, thin interest margins, and concerns about the quality of their loan portfolios.』

ということで欧州銀行の問題を指摘していますがその先では・・・・・・・・・

『In U.S. markets, overall financial vulnerabilities were judged to remain moderate, as nonfinancial debt had continued to increase roughly in line with nominal GDP and valuation pressures were not widespread. However, during the discussion, several participants commented on a few developments, including potential overvaluation in the market for CRE, the elevated level of equity values relative to expected earnings, and the incentives for investors to reach for yield in an environment of continued low interest rates.』

低金利継続によって利回り追求の動きが不動産貸出の増加ペース拡大に繋がったりしてませんかねえと数名(several)が指摘とな。

『Regarding CRE, it was noted that the recent SLOOS reported that a significant fraction of banks tightened lending standards in the first and second quarters of the year and that overvaluation did not appear to be widespread across markets. It was also pointed out that investors potentially were becoming more comfortable locking in current yields in an environment in which low interest rates were expected to persist, rather than engaging in the type of speculative behavior that could pose financial stability concerns.』

今のところマクプル的に懸念となるような金融不均衡を発生させている利回り追求の動きには至っていないというのが結論にはなっています(不動産関連の融資態度も緩くなっている訳ではない)が、指摘されているとゆー点は要チェックということでありまする。



・経済先行きリスクでは海外の所に分量が割かれている印象

『Participants discussed the implications of recent economic and financial developments for the economic outlook and the risks attending the outlook. They indicated that their forecasts for economic growth, the labor market, and inflation had changed little over the intermeeting period.』

見通しに著変なしですがリスクの話で最初がブリクジット。

『Regarding the near-term outlook, participants generally agreed that the prompt recovery in financial markets following the Brexit vote and the pickup in job gains in June had alleviated two key uncertainties about the outlook that they had faced at the June meeting.』

『Brexit now appeared likely to have little effect on the U.S. economic outlook in the near term. Moreover, the employment report for June, along with other recent information that suggested that real GDP rose at a moderate rate in the second quarter, provided some reassurance that a sharp slowdown in employment and economic activity was not under way. Participants judged that the incoming information, on the whole, had lowered the downside risks to the near-term economic outlook. Most participants anticipated that economic growth would move up to a rate somewhat above its longer-run trend during the second half of 2016 and that the labor market would strengthen further.』

ブリクジットの短期的リスクは下がりましたよと。

『However, several noted that while the outlook for consumer spending remained positive, continued weakness in business investment and the possibility of slower improvement in the housing sector posed some downside risks to their forecasts.』

企業センチメントや住宅セクターに関しては依然としてリスクでしょという指摘が入って、その後また
ブリクジットの話。

『Although the near-term risks to the outlook associated with Brexit had diminished over the intermeeting period, participants generally agreed that they should continue to closely monitor economic and financial developments abroad. As a consequence of Brexit, economic growth in the United Kingdom and, to a lesser extent, in the euro area would likely be slower than previously anticipated. Moreover, the exit process was expected to entail an extended period of negotiations that, in the view of most participants, had the potential to increase the political and economic uncertainties in that region; several also saw the possibility that complications during the exit process could result in spells of elevated volatility in global financial markets. Some participants noted that the weak capital positions and high levels of nonperforming loans at some European banks could also weigh on economic growth in the region.』

目先は兎も角中長期的に離脱プロセスにおいてリスクじゃろうし、欧州全体にもその影響があるよねというお話が結構な分量で指摘。

『In addition to the situation in Europe, some participants continued to see a number of other downside risks to the medium-term economic and financial outlook from abroad, including weakness in the global economy more broadly, uncertainty about the outlook for China's foreign exchange policy, and the implications of China's run-up in debt to support its economy.』

海外に関してはブリクジット以外にもあるし、特に中国経済と中国の為替政策がリスクでしょとの指摘。

『A few others noted uncertainty about the strength of domestic economic activity going forward. However, some other participants indicated that they did not view the uncertainties attending the outlook to be unusually elevated and continued to see the risks to their economic forecasts as balanced.』

国内に関しては意見は両方あるようですが、このあっさり味という感じでして、海外の話をこれでもかと打ち込んでいるのが目立ちますのでまあそういう認識なんでしょ。


・雇用と物価の見通しはまちまち

『In discussing the outlook for the labor market, most participants viewed some further strengthening in labor market indicators as consistent with achieving the Committee's maximum-employment objective. With inflation still below the Committee's longer-run objective and likely to continue to respond only slowly to somewhat tighter labor markets, most also saw relatively low risk that a further gradual strengthening of the labor market would generate an unwanted increase in inflationary pressures.』

この辺の指摘はさっきと同じ。

『Nevertheless, a few participants continued to caution about the risks to the inflation outlook from overshooting the natural rate of unemployment. Some indicated that a step-down in monthly job gains seemed appropriate as labor market conditions approached those consistent with the Committee's maximum-employment objective and that a more moderate pace of hiring could still be consistent with further increases in labor utilization.』

『However, several others were concerned that if labor market slack diminished more slowly than they had previously anticipated, progress on the Committee's maximum-employment and inflation objectives could be delayed.』

そもそも労働市場のスラックがどの程度あるのか(=マンデートにどの程度まで達成しているのか)という辺りは強いとみている人が多いには多いのでしょうが、見解が分かれていますというのをさっきだけではなくてここでも打ち込んでおりまして、見解の幅があることを示そうとしているのではないかと。

でもって物価。

『Regarding the outlook for inflation, incoming information appeared to be broadly in line with most participants' earlier expectations that inflation would gradually rise to 2 percent over the medium term.』

『Most noted that the firming in various indicators of core inflation over the past year, together with signs that the direct and indirect effects of earlier declines in energy prices and prices of non-oil imports had begun to fade, provided support for their forecasts.』

まあこのあたりは良いとして。

『Several added that recent indications of a pickup in wage increases were evidence of the effect of tightening resource utilization. However, other participants expressed greater uncertainty about the trajectory of inflation. They saw little evidence that inflation was responding much to higher levels of resource utilization and suggested that the natural rate of unemployment, and the responsiveness of inflation to labor market conditions, may be lower than most current estimates.』

賃金上昇で物価圧力という人と、いやいやそんなことは無いじゃろという見解が割れていて、まあこの辺りは賃金動向と物価動向に注目ということになるんじゃないでしょうかねえ。この辺の見解の割れ方を見ますと、雇用統計の労働者数がどうのこうのよりもこの先は賃金により注目した方が吉な気がする。

『Several viewed the risks to their inflation forecasts as weighted to the downside, particularly in light of the still-low level of measures of longer-run inflation expectations and inflation compensation and the likelihood that disinflationary pressures from abroad would persist.』

物価見通しのダウンサイドを指摘する人もということで、まあこの前のビックリ雇用統計でいきなりそっちに注目集まりましたが、やはり本命は物価動向と、物価を押し上げそうな賃金動向という所になるのでしょうな、とは思いましたがどうでしょう。

次のパラグラフは色々と意見の分かれる利上げタイミングに関する部分で、インスタント読みの際にネタにしましたので割愛します。


#ということで大引用大会で恐縮至極にも程があります







2016/08/22

お題「色々な人が色々と発言しているようで」

台風がまた来るとは知らなんだにつきちょっと簡略版の悪寒。

○黒田総裁産経新聞インタビュー

産経新聞ってやたらPV稼ぎの為に記事を分割するのですが、今回はまた盛大に分割をしていてアホかと言いたくなるのですよね。

インタビュー本チャン(全6ページ)
http://www.sankei.com/economy/news/160820/ecn1608200015-n1.html
2016.8.20 01:00
【日銀総裁単独インタビュー】
「総括的検証」の公表「会合声明文と同時に」 “サプライズ演出”見直す可能性


解説記事その1(全2ページ)
http://www.sankei.com/economy/news/160820/ecn1608200018-n1.html
2016.8.20 01:00
【日銀総裁単独インタビュー】
黒田日銀の金融政策は「模範例」か「失敗例」か…「総括的な検証」が試金石


解説記事その2(全2ページ)
http://www.sankei.com/economy/news/160820/ecn1608200016-n1.html
2016.8.20 01:00
【日銀総裁単独インタビュー】
伸び悩む物価 「検証踏まえ追加緩和も」 任期中に「2%」届くか

解説記事その3(全2ページ)
http://www.sankei.com/economy/news/160820/ecn1608200017-n1.html
2016.8.20 01:00
【日銀総裁単独インタビュー】
マイナス金利「さらに引き下げ余地ある」 国債購入の柔軟化に含み

でまあ全部読んでも良いのですが、量がバカスカある割にはああでもないこうでもないと色々な方向での話をしておりまして、全体として全然纏まっていないという不思議な作品に仕上がっておりますが、まあ産経ですからそんなもんでしょうという所ではございます。ちなみに超どうでも良いのですが産経だけはネット版で有料記事というのが基本無いというのが仕様になっておりますが、ネットを自社主張の宣伝材料として使う、と割り切っているのであれば産経のやり方っていわゆるネット世論作るのに一定以上の効果を出していると思う次第で他の新聞社ももう少し考えた方が良いのではと思うんですけどね。という話は兎も角として。


インタビュー記事から少々。

3ページから
http://www.sankei.com/economy/news/160820/ecn1608200015-n3.html

『「2%目標は一種のグローバルスタンダード(国際標準)なので、変えるという話は全くない。2%をできるだけ早期に達成すること自体は、総裁就任前の平成25年1月に政策委員会で決定し、政府との共同声明(アコード)にも盛り込んでいる。その上で、量的・質的金融緩和を25年4月に導入する際、『2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する』と言ってきた。すでに3年以上たっているので、(2年では)実現されていないということ。現時点では、29年度中に2%程度に達する可能性は高いが、最近の国際的な状況などで不確実性が高まっている」』(上記URL先より、以下同様)

ぷぷぷ。

『−−総括的な検証の結果、9月の会合で、金融政策を変更する可能性は

「総括的な検証を踏まえ、その時点の経済・金融情勢を議論し、必要な場合には躊(ちゅう)躇(ちょ)なく追加的な緩和措置を講じる可能性は十分ある」』

躊躇なくキタコレ。つーかこの「とにかく追加緩和」というのを総括検証で止めるようにしないと、何ぼ総括検証を行っても「物価が上がらないままで政策の追加おかわりを際限なく要求されて、政策はオペレーショナルに回らなくなる/金融市場に重篤な悪影響を与える」という結果になると思うのですが。

『−−マイナス金利を強化(深掘り)する可能性は

「欧州のいくつかの中央銀行が早くから導入し、マイナス金利の程度も日銀より大きい。技術的な意味では、マイナス金利をさらに引き下げる余地があるということは間違いないと思う。マイナス金利については、金融機関の収益に影響が出て、金融仲介機能を十分果たせなくなるという議論があるが、住宅ローン金利や企業への貸出金利が下がって、住宅投資のはっきりした増加につながっている。国際金融市場の動揺で、企業の業況判断はやや慎重化しているが、設備投資計画は非常にしっかりしている。マイナス金利の限界にはまだ到達しておらず、むしろ所期の効果を発揮している。ただ、金融機関の収益や仲介機能への影響については、常によく見る必要がある」』

ということで3ページ目の所のをまずは引用しましたが、置物副総裁ですら先般の金懇で「きめ細かく」とか「状況に応じて」とか物凄い勢いで慎重な物言いをしていたというのに、この総裁相変わらずのトーンで変わっていないというのが台無し感を高めている感is有るという所で、まー為替円高になるのが困るからあまりトーンダウンも出来ないというのは分かるのですけれども、これだと総括検証で何もしませんっぽい言い方の部分が目についてしまうんですよねえ。


6ページ目
http://www.sankei.com/economy/news/160820/ecn1608200015-n6.html

『−−金融庁は、3メガバンクの今年度決算について「マイナス金利で3千億円程度の減収要因になる」と試算し、日銀に懸念を伝えたようだ

「マイナス金利付き量的・質的金融緩和で、イールドカーブ(国債の利回り曲線)全体が低下し、貸出金利は下がっている。ただ、過去3年をみると、金融機関は利ざやの縮小にもかかわらず、非常に高い収益をあげている。倒産件数が減って信用コストが減り、国債を売ればキャピタルゲイン(売買益)も得られる。昨年度、地方銀行全体では史上最高の収益をあげている。ただ、これからの状況を考えると、収益に対してどのような影響が出るか注視する必要がある」』(上記URL先より)

さっきのもそうですけれども、金融機関の影響に関しては最後に「影響については注視」と言っているので、必ずしも従来の強気一辺倒ではないようには見えるのですが、結局言ってる事が「銀行は過去最高の収益をこの前上げたのだから無問題」とか「マイナス金利はまだ深堀できる」とかそのtれの話を(質問されているからというのはあるけれども)見事に進軍ラッパを吹いている訳で、どこからどう見ても今から進軍したらあっという間に全滅モードになるんですが、特攻して全滅するのが日銀だけだったら勝手に自滅でもなんでもして頂きたいのですけれども、巻き込まれるのは日本国家なのですからまさに何とかに刃物という風情ですな。


・・・・・とは申しましても、解説記事全部読んで(大した話ではないので4本あるが読むのは一瞬で終わる)みた感じでの印象となりますと、産経のまとめ方が「追加緩和だぜ一辺倒でも必ずしも無さそう」という風になっているように見えましたので、この総裁インタビューを文字にするといつもの黒田節が出ているものの、トーンが徹頭徹尾黒田節だったのかというのはちと微妙な所もあるのかもしれませんね。


○フィッシャー副議長登場

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20160821a.htm
Vice Chairman Stanley Fischer
At the "Program on the World Economy" a conference sponsored by The Aspen Institute, Aspen, Colorado
August 21, 2016
Remarks on the U.S. Economy

短いので寝起きでも行けるばい。

『The Fed's dual mandate aims for maximum sustainable employment and an inflation rate of 2 percent, as measured by the price index for personal consumption expenditures (PCE). Employment has increased impressively over the past six years since its low point in early 2010, and the unemployment rate has hovered near 5 percent since August of last year, close to most estimates of the full-employment rate of unemployment.』

「close to most estimates of the full-employment rate of unemployment」とな。

『The economy has done less well in reaching the 2 percent inflation rate. Although total PCE inflation was less than 1 percent over the 12 months ending in June, core PCE inflation, at 1.6 percent, is within hailing distance of 2 percent--and the core consumer price index inflation rate is currently above 2 percent.1』

物価に関しても威勢の良い数字を出していますが次のパラグラフ。

『So we are close to our targets.』

とパラグラフの一発目からキタコレ!

『Not only that, the behavior of employment has been remarkably resilient. During the past two years we have been concerned at various stages by the possible negative effects on the U.S. economy of the Greek debt crisis, by the 20 percent appreciation of the trade-weighted dollar, by the Chinese growth slowdown and accompanying exchange rate uncertainties, by the financial market turbulence during the first six weeks of this year, by the dismaying pothole in job growth this May, and by Brexit--among other shocks.』

『Yet, even amid these shocks, the labor market continued to improve: Employment has continued to increase, and the unemployment rate is currently close to most estimates of the natural rate.』

ということですから雇用は完全雇用をほぼ達成という認識で、物価に関してはエネルギー要因について触れていて、エネルギー価格の下げ自体は家計には良いというのも加えていますがその辺はパスしてちょっと先に行って自然利子率に関して。

『And there have been other issues of concern to those particularly interested in monetary and macroeconomic policy, though probably of less explicit concern to the public: The decline in estimates of r*--the neutral interest rate that neither boosts nor slows the economy--which is related to the fear that we are facing a prolonged period of secular stagnation; the associated concerns that (a) the short-term interest rate will be constrained by its effective lower bound a greater percentage of time in the future than in the past, and (b) that the U.S. economy could find itself having to contend at some point with negative interest rates--something that the Fed has no plans to introduce; the fear that very low interest rates present a threat to financial stability; and concerns that low rates of real wage growth are increasing inequality in the distribution of income.』

自然利子率の低下によって政策運営上面倒(ゼロ金利制約と緩和長期化による金融不安定化)といういつもの話ですな。

『Primarily, I believe it is a remarkable, and perhaps underappreciated, achievement that the economy has returned to near-full employment in a relatively short time after the Great Recession, given the historical experience following a financial crisis.2』

という話の次がこれで、経済に関しては「ほぼ完全雇用」とこらまた強い認識。

『To be sure, it was a slow and difficult time for many, in part because growth in real gross domestic product (GDP) has been slow by historical standards. As can be seen in table 1, part of the slower output growth was due to smaller increases in aggregate hours worked, primarily reflecting demographic factors such as the aging of the baby-boom generation. But, as shown in table 2, there was also a major decline in the rate of productivity growth--to which I will return shortly.』

テーブルはこちらにあります
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20160821a1.htm

ということで、今般のリセッションからの回復期において生産性の方が伸びていないという話をしておりますが、これに関してもそのうち戻って来るでしょうという認識を示していまして、各コンポーネントに関する説明が色々とありまして、本来はこの説明部分の妥当性とか、将来本当にこうなるかの後付検証とかをするべきものではあるのですが、長くなるのとインスタント読みなのでその辺は華麗にスルーして結論の部分に飛びます。


『Are we doomed to slow productivity growth for the foreseeable future? We don't know.10 On the encouraging side, the technological frontier appears to be advancing rapidly in some sectors, and there are hints that the firm start-up rate is improving.11 On the more discouraging side, investment continues to disappoint--and so the current capital stock is smaller and embodies fewer frontier technologies than might otherwise be the case--and the productivity slowdown is a global phenomenon, suggesting that it may not be easily or quickly remedied.』

ということで結論としては分からんという事ではあるのですが、割愛した全体のトーンを見るとそんなに悲観的ではないと思います(が読み間違いかもしれないのでご確認してちょ)。

でもって最後の所。

『Let me conclude by mentioning briefly one aspect of the low interest rate and low productivity growth problems--the fact that the Fed has been close to being "the only game in town," as Mohamed El-Erian and others have described it.12 At least one part of the solution can be found in the observation that overall macroeconomic policy does not have to be confined solely to monetary policy.』

うむ。

『In particular, monetary policy is not well equipped to address long-term issues like the slowdown in productivity growth. Rather, the key to boosting productivity growth, and the long-run potential of the economy, is more likely to be found in effective fiscal and regulatory policies.13』

生産性向上だの潜在成長率の引き上げだのには金融政策よりも財政や規制などの政府の政策が重要と。

『While there is disagreement about what the most effective policies would be, some combination of improved public infrastructure, better education, more encouragement for private investment, and more-effective regulation all likely have a role to play in promoting faster growth of productivity and living standards--and also in reducing the probability that the economy and particularly the central bank will in the future have to contend more than is necessary with the zero lower bound.』

とまあそういう話になっていて、金融政策運営に直接言及している感じではないのですが、その前の部分で示されている雇用の強さ(というか完全雇用という認識)とか、潜在成長の引き上げなどが金融政策のやることとはちと違いますがな、という辺りを見ると低金利引っ張る系ではないなあという感じです。


○ウィリアムスェ・・・・・・・・・・・・・

まーた発言しとる。

http://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2016/august/longview-economic-outlook/
Presentation to the Anchorage Economic Development Corporation
Anchorage, Alaska
By John C. Williams, President and CEO, Federal Reserve Bank of San Francisco?
For delivery on August 18, 2016

小見出しが
A broad economy
Employment
Inflation
The outlook
Everyone’s favorite topic: Rate hikes
New normal
Conclusion

とありまして、もうこの「Everyone’s favorite topic: Rate hikes」という時点で釣り師の風格が漂っていますな。

ということで軽くつられて置きます。

『Now is when I come around to the subject of interest rates. In the context of a strong domestic economy with good momentum, it makes sense to get back to a pace of gradual rate increases, preferably sooner rather than later. I have a few reasons for saying that.』

ということでむしろ早期利上げなんですって。

『First, Milton Friedman famously taught us that monetary policy has long and variable lags.3 Research shows it takes at least a year or two for it to have its full effect.4 So the decisions we make today must take aim at where we’re going, not where we are. I liken it to a car: When you’re nearing the intersection, you ease off the gas so you can be ready to stop. You don’t wait until you get right in front of the red light; that would force you to slam on the brakes, and might propel you into the middle of the intersection. Likewise, if we wait until we see the whites of inflation’s eyes, we don’t just risk having to slam on the monetary policy brakes, we risk having to throw the economy into reverse to undo the damage of overshooting the mark. And that creates its own risks of a hard landing or even a recession.』

えーっとまあごしゃごしゃ言ってますが「金融政策は効くのに時間が掛かるからプリエンティブに対応すべし」です。

『Second, experience shows that an economy that runs too hot for too long can generate imbalances, ultimately leading to either excessive inflation or an economic correction and recession. In the 1960s and 1970s, it was runaway inflation. In the late 1990s, the expansion became increasingly fueled by euphoria over the “new economy,” the dot-com bubble, and massive overinvestment in tech-related industries. And in the first half of the 2000s, irrational exuberance over housing sent prices spiraling far beyond fundamentals and led to massive overbuilding. If we wait too long to remove monetary accommodation, we hazard allowing these imbalances to grow, at great cost to our economy.』

えーっとまあごしゃごしゃ言ってますが「緩和的な金融政策の長期化で発生した不均衡はインフレの爆発かバブルの発生と崩壊に繋がります」です。

『Finally, an earlier start to raising rates would allow a smoother, more gradual process of normalization. This gives us space to fine-tune our responses to any surprise changes in economic conditions. If we wait too long, the need to play catch-up wouldn’t leave much room for maneuver. Not to mention, it could roil financial markets and slow the economy in unintended ways.』

早期着手によって正常化をゆっくりできるという説明。

『Monetary policy has absolutely played a crucial role in getting us back on track.5 We’ve achieved our mandate of full employment and we’re heading towards 2 percent inflation. But, it’s important to recognize what monetary policy can and can’t do−not to mention what it should and shouldn’t. The job of monetary policy is to get the economy to full strength with maximum employment and steady 2 percent inflation, using the tools available to us. As I said earlier, that’s a relatively limited kit and is restricted largely to money in the system and the rates at which it is lent. How the economy develops and performs in the long run depends on a host of other factors that are outside our purview and ability to influence.』

『What comes next is addressing long-run trends in productivity and the quality of the labor force, and those are determined by the investments we make in technology and education, by tax policies and long-term fiscal decisions.6 That’s what’s going to shape the economy over the next decade, and that conversation extends far beyond the Federal Open Market Committee meeting room.』

生産性が低くて中々経済がブーストしない件のような話って金融政策だけでどうにかする問題ではありませんよねというお話になっていまして、台風来るから以下の引用パスしますが、その次の小見出しが「New normal」でして、今後経済が安定してFEDの目標値に近い所で推移するならば、もうちょっと低めのNFPとか実質成長とかになるんでしょ、というのが少し言及されています。

#ということで色々な人の発言ネタやったらFOMC議事要旨ネタががががが








2016/08/19

お題「株式市場も円債状態になりつつあるようで/本田先生もマイナス深堀に消極的とな/米国連銀高官発言メモ」

出たな▲0.5ゲーム差>パ・リーグ

○市場雑談メモ

・ETF効果で株式市場も円債への道ですかそうですか

うむ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-17/OC2S456KLVRW01
日本株反落、100円割れ円高定着を警戒−終盤に先物主導で一段安

『18日の東京株式相場は反落。1ドル=100円を割り込む円高が定着すれば、企業業績が下振れるとの警戒が強まった。日本銀行による上場投資信託(ETF)買いの有無を見極めたいとの姿勢も売買に影響を与え、午後終盤にかけ先物主導で下げ足を速めた。』(上記URL先より)

・・・・・・・ベンダーのコメントこんな感じに最終的にはまとまっているのですが、場中のコメントだと「日銀のETF買いがどうも今日は無いみたいなので終盤にかけて失速の勢いが強まった」というような感じになっておりまして、先般の買入ペース拡大決定以降、株式市場の方でもすっかり「今日のETF買いガー」という話になっているようで実に香ばしい、というか連日「日銀のオペがどうのこうの」とか分析(?)に勤しむ姿を謎扱いされていました債券市場の気持ちがお分かりになりましたでしょうかという感じですな(−−:

年間で買う量決まっているんだから今日のETF買いがあるかどうかとか最終的に年を均してみれば同じ話であって、これぞまさに朝三暮四の世界でお前らは狙公のエテ公かと小一時間問い詰めたい、っていうのはもとより円債市場でのお話だと思っておりましたけれども、買入ペース倍増で遂に株式市場もエテ公化してきたかと思いますと実に感慨に堪えないものがございますが、そうやって金融資本市場を壊して回った先には何が起こるんでしょうかとか考えると頭がクラクラしてくるものであります。


・3M短国入札&5年入札

3M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20160818.htm

(3)募入最低価格 100円05銭3厘0毛(募入最高利回り)(-0.2124%)
(4)募入最低価格における案分比率 66.5619%
(5)募入平均価格 100円05銭8厘4毛(募入平均利回り)(-0.2341%)

ということで、前週の3Mが▲22.24/▲18.44と足切が▲20を切って流れたのでほほーという感じ(その後は戻っていましたが)でしたが、今回は▲20bp台ということでまあそんなもんですかそうですかというところ。政策金利がどうのこうののネタがとりあえず今のところは様子見モードだし(円高が爆発的に進んで臨時会合で追加緩和とかにでも追い込まれない限りは)9月21日まで何もない訳ですし、大体からしてそこでいきなり何かが出るかどうかも分からんですし、四半期末でもないですしとなりますとまあ落ち着いて推移して頂きたいものであります。

5Y
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20160818.htm

6.価格競争入札について

(1)応募額 7兆7,800億円
(2)募入決定額 2兆1,780億円
(3)募入最低価格 101円28銭(募入最高利回り)(-0.163%)
(4)募入最低価格における案分比率 91.8863%
(5)募入平均価格 101円29銭(募入平均利回り)(-0.165%)

事前予想よりも強めの結果になっていたのですが、5年新発の所で入替でもあったのか、それとも本田スイス大使発言でも効いたのか先物とかは伸びないというか終盤にかけてコケるという展開ではありましたが、まあ相対的に5年強めでしたから普通という事で。


○ということで本田スイス大使のWSJ会見ネタ

http://jp.wsj.com/articles/SB10191232058230093692804582258541791147290
日銀、来月「大胆な」行動とる可能性=本田前参与

『【東京】日本銀行は来月、「大胆な」行動をとる可能性が高い。前内閣官房参与の本田悦朗駐スイス大使はウォール・ストリート・ジャーナルの単独インタビューでこのような見通しを示し、9月20・21日の金融政策決定会合で予定している政策の総括的な検証において、今後、金融緩和を縮小する道筋をつけるとの観測を否定した。

 本田氏は「どのように検証するにしても、既に答えはある。これまでの金融緩和は不十分であった、ということだ」』(先は会員記事になりますので上記URL先からの引用はここまでどす)

しかし良く考えたら「スイス大使発言」がネタになるとかナンジャソラにも程があるのですが、まあそこはさておきまして(あんまり置きたくないが)、「どのように検証するにしても、既に答えはある」ってそれは検証とは言わないのですけれども大丈夫ですかと思いますし、「これまでの金融緩和が不十分だからもっとやれ」とか言いましても、そもそもやっている施策の効果よりも副作用が大きいのであれば「不十分だからもっとやる」という事をすると益々事態が悪化するんですがとツッコミを入れたくなりますな。

ただまあそういう話をするのは本田センセイの仕様なのでそこは平常運転で華麗にスルーとなるのですが、上記URL先の所だと読めないのですけれども、上記記事の中で追加緩和の手法について「マイナス金利の拡大は金融システムの健全性の観点から望ましくない」とかいう本田センセイ何か変なもんでも食ったのかというようならしからぬ発言をしている、との内容が伝わりますと(手段としてはマイナス金利の深堀ではなくMB拡大ペースの引き上げ)そっちの方がほほーという感じになったかと思います(他のベンダーもリファーしたのですが、ネット版のロイターとかブルームバーグでは探し方が悪かったのか惜しくも見つからなかったです、すいません)。

だって本田センセイまでがそんならしからぬ発言するとか、それはどう見てもマイナス金利に対する悪評キャンペーン(つーかマイナス金利に碌な事がないのでキャンペーン云々よりも事実だと思うのだが)がここまで広がっているというのがちょっとした驚きでして、ついこの前までだったら「3方向で更に緩和すべき」という話を真っ先にしそうな人が「金融システムの健全化」とか言い出すとそれはもう椅子から転げ落ちるわと存じます次第。

まあ5年入札の日の後場にそんな記事出すなよという気がせんでもないですが、じゃあ本田発言が効いたのかと言われると、確かに先物の上が重くなったというか失速しましたけど、5年確りだし(本田さんの処方箋通りだったらフラットしてもよい)超長期(の20年)はパッとしませんですし、金先若干の強含みで、まああまりまともに反応したとは思えませんけれども、「あの」本田さんまでがマイナス金利の深堀に消極的(否定的という程ではないと思うのだが)というのが何ともなのですが、マイナス深堀できなくて、買入拡大ってそらまあ出来るんですが政策の物理的限界を手前に寄せるだけなので碌な事にならない未来があるという中で総括検証どういう落とし前のつけ方をするんでしょうかねえとも思うのでした。

なお、マイナス金利という点では昨日はベンダーに「S&Pが欧州のマイナス金利は効果があるが日本のマイナス金利の効果が乏しいというコメントした」みたいなヘッドラインが放流されていましたが、ネット版ではそれらしいものが見当たらないので残念ながらネタにするに至らんのですが、最近のSPって日本のソブリン格付け関連でオトナの対応と申しますか以下自主規制な感が漂う中でそういうコメントですかそうですかというのもありまして、なんかマイナス金利深堀に対してエライ言われ様になっているのが興味深い傾向ではあります。

ただし、黒田総裁のことですから、周囲からマイナス金利深堀ケシカランと羽交い絞めにされてしまいますとランボー怒りのマイナス金利深堀とかやりかねないキャラクターなのがオソロシスなところでして、あまりにも周囲がマイナス金利の弊害弊害言い出すと駄々っ子のように暴れるリスクがあるので要注意という気がします。


○米国連銀高官発言メモ


・ウィリアムスェ・・・・・・・・・・・

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-18/OC4FYR6KLVRF01
SF連銀総裁:早期利上げを支持−待ち過ぎはバブル招くと警告
2016年8月19日 05:08 JST 更新日時 2016年8月19日 06:51 JST

『米サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は18日、米経済には早期の利上げを正当化する十分な強さがあり、あまりにも長く待てば成長を阻害する高いインフレ率や資産バブルを招く恐れがあると警告した。ウィリアムズ総裁はアラスカ州アンカレジで講演し、「国内経済が力強く、勢いもあることから、できれば割合早い時期に緩やかな利上げペースへと戻ることが理にかなう」と述べ、「より早期の利上げ開始が一段と円滑で緩やかな正常化プロセスを可能にするだろう」と指摘した。』(上記URL先より、以下同様)

・・・・・・・・お、おぅ。

何か先日このおじさん「インフレ目標数値の引き上げ」みたいな話をして低金利政策長期化の話をしていたというような話をしていたと報道されていた気がするんだが、どうもこの人どっちなのかイマイチつかみにくい所がありますの。

『ウィリアムズ総裁は15日発表の小論文で、より長期的な観点から金融・財政政策の在り方の見直しを促していた。』

ってのがそれで、物件はこいつなのだがまだ精読できていない(汗)
http://www.frbsf.org/economic-research/files/el2016-23.pdf
Monetary Policy in a Low R-star World
BY JOHN C. WILLIAMS

中長期的な話と足元の話は別ということなのか講演テキストの方も当然ながら読めていない(何せSF連銀のページってリニューアルしてから物凄い勢いで必要なものを探すのが面倒になっていて、寝起きでインスタント読みしようにも探す時間すらないのが困りもの)ので、何とも申し上げようがないのですが、まーFEDの高官の皆様が夏休みモードから次回FOMCモードになってきたということで、せっせと講演その他を拾って確認するのは割と楽しいので精々確認しておこうと思います。


・ダドリー総裁っつーか副議長

ほほう。
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-dudley-confident-in-labor-market-idJPKCN10T1ON
Business | 2016年 08月 19日 04:18 JST
中間層の雇用拡大は明るい材料、米経済に自信=NY連銀総裁

『[ニューヨーク 18日 ロイター] - 米ニューヨーク(NY)連銀のダドリー総裁は18日、最近の力強い雇用の伸びと中間所得層の雇用回復が米労働市場の2つの明るい材料との認識を示した。米経済全般に対して自信を深めている様子をあらためてうかがわせた。総裁は記者団に対し「雇用停滞の懸念が出ていたが、過去2カ月に雇用が大きく伸びたことで不安が軽減された」と指摘。この統計は「労働市場の状況が引き続き改善しているとの私の見方を後押しする」と述べた。』

『また労働市場の「空洞化」に関するNY連銀の最新の分析に触れ、中間層の雇用増ペースがしばらくぶりに高・低所得層の雇用の伸びを上回っていると指摘。教師や機械工といった雇用が近年減少し、所得格差を助長していたトレンドに「潮目の変化が見られる」とした。その上で「これは経済にとり重要だ。なぜなら継続すれば、これまで苦境に立たされていた労働者やその家族に一段の機会を提供するためだ」と述べた。』(以上上記URL先より)

ということで基本的なトーンは昨日ネタにしたFOXビジネスでのインタビューでのコメントと同じような感じ(切り口は全然違うけど)のようですが、まあダドリーがイエレン議長の意向を反映しているのかというとこれまた微妙な感じもする所で、どちらかと言えばイエレンさん個人がFOMCの中心ビューよりもハト派というかビビリ入っている感じもするので、ダドリーがこういうから利上げキタコレという話でもないし、まあ話もあまり目先の話ではない(そもそもFOXのもそうでした)な気もします。

でもってそのスピーチはこちら。
https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2016/dud160818
Remarks at the New York Fed’s Economic Press Briefing on the Regional Economy
August 18, 2016
William C. Dudley, President and Chief Executive Officer
Remarks at the Economic Press Briefing on the Regional Economy, Federal Reserve Bank of New York, New York City

小見出しが

Job Growth in the Region
Update on Puerto Rico
Middle-Wage Jobs Returning

となっているので、多分最後の所を最初に読めばインスタント読みできるということで簡単に。

『Let me conclude by returning to the theme of the labor market. Job growth is essential to the vitality of an expansion, but the types of jobs being created are also important.』

労働の成長も大事だが質も大事だと。

『While the labor market has continued to add jobs at a solid pace, many remain concerned about a lack of job opportunities for the middle class. Indeed, growth of middle-wage jobs has been lackluster for the past few decades, with gains occurring disproportionately in higher-wage and lower-wage sectors. This long-term hollowing out of jobs in the middle of the wage distribution has helped fuel rising wage inequality, and has contributed to a growing sense for some that they are being left behind in the current economic expansion.』

『At a previous press briefing, we showed that many middle-wage jobs disappeared during the Great Recession with very few of these jobs returning during the early stages of the recovery. This made it especially difficult for many workers who lost their jobs to rejoin the economy.』

さっきの記事で纏められていましたが、この回復期では高所得者の所は回復しているけれども、相対的に中所得者の所の回復がパッとしませんでそういう意味で質の向上がイマイチさんだったという説明ですの。

『Today, our economists will show that the tide has begun to turn.』

でもってこの潮目が変わりだしているのではないかと。

『For the first time in quite a while, gains in middle-wage jobs actually outnumber gains in higher- and lower-wage jobs nationwide. These middle-wage jobs include teachers, construction workers, mechanics, administrative support personnel and truck drivers, just to name a few. I believe this is an important development in the economy, because, if it were to continue, it would create more opportunities for workers and their families who have been struggling up to now.』

なるほど。

『Middle-wage jobs are also being created in our region, though such gains have been more evident in some places than others. I will now ask Jaison Abel to provide more details about job growth in our region.』

ということでNY連銀管内における労働市場の動向というのにも触れていますが、中間賃金層の所得が伸び出していることは良い事ですと大変にイイハナシダナーなお話ではあるのはその通りだと思います。


・ブラード総裁

https://www.stlouisfed.org/from-the-president/speeches-and-presentations/2016/normalization-a-new-approach
Normalization: A New Approach

要旨はこちら
https://www.stlouisfed.org/news-releases/2016/08/17/st-louis-feds-bullard-discusses-new-approach-to-monetary-policy-normalization
St. Louis Fed's Bullard Discusses New Approach to Monetary Policy Normalization

資料(プレゼンのスライドショー)はこちら(PDF注意)
https://www.stlouisfed.org/~/media/Files/PDFs/Bullard/remarks/Bullard-CFAR-StLouis-17-Aug-2016.pdf

・・・・・・・でまあこちらまで残念ながら手が回らないのですが、何せこちらのセンセイはドットチャートで「向こう2年で1回しか利上げしないもんね」という変態仮面にも程があるプロットを打ち込んできた面白オジサンですので、まあ大体読むまでもなくハト派全開の話をしているだろうなあとは思うのですけれども、どういう理屈を展開しているか、というのはブラードさん毎度毎度その内容の妥当性は兎も角として、話の理屈だけは見事につけてくるのが仕様となっているので、読み物としては面白いということで、この辺りに関しまして週末の宿題という事にしておきます(キリッ)。


#あとECBのミニッツに関しては相変わらずまだ慣れていないのでインスタント読みが出来ないのでこれまた宿題orz





2016/08/18

お題「FOMC議事要旨ネタおよびその他少々」

FOMC議事要旨と思ったら珍しくインスタント用の論点が1パラになっているとな。

○ということで議事要旨インスタント読みだが利上げタイミングの意見は超バラバラ

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20160727.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee

・利上げに関する見解はタカハトバラバラにも程があるが論点が色々と面白い件について

毎度の如く『Committee Policy Action』のひとつ前のパラグラフを見ると、政策決定に関する部分はそこのパラグラフに集約されている感じですが、これがもう意見バラバラで中々面白い(なお長い)。

『Against the backdrop of their views of the economic outlook, participants discussed the conditions that could warrant taking another step in removing monetary policy accommodation.』

これはまたそのまんまな書き出し(^^)。

『With inflation continuing to run below the Committee's 2 percent objective, many judged that it was appropriate to wait for additional information that would allow them to evaluate the underlying momentum in economic activity and the labor market and whether inflation was continuing to rise gradually to 2 percent as expected.』

さあ利上げするのです!今すぐ!という変態仮面の人が2名いますが、まあ多くの人は2%物価上昇への確信が得られる為にデータの確認が必要と来ていますが、almostとかじゃなくてmanyなのね。

『Several suggested that the Committee would likely have ample time to react if inflation rose more quickly than they currently anticipated, and they preferred to defer another increase in the federal funds rate until they were more confident that inflation was moving closer to 2 percent on a sustained basis. In addition, although near-term downside risks to the outlook had diminished over the intermeeting period, some participants stressed that the Committee needed to consider the constraints on the conduct of monetary policy associated with proximity to the effective lower bound on short-term interest rates. These participants concluded that the Committee should wait to take another step in removing accommodation until the data on economic activity provided a greater level of confidence that economic growth was strong enough to withstand a possible downward shock to demand.』

数名(Several)の参加者から出ている利上げはそんなに急がなくて良かろうというお話で、この人たちは物価の上昇が想定よりも強い場合であっても利上げは慎重にという見解でして、そのベースになる話は引締めの方は余地があるけど緩和の方には余地が少ないから下方に備えるべきとか、従来よりももっと確信度上がってからの方が良いのではというような理由。

『However, some other participants viewed recent economic developments as indicating that labor market conditions were at or close to those consistent with maximum employment and expected that the recent progress in reaching the Committee's inflation objective would continue, even with further steps to gradually remove monetary policy accommodation. Given their economic outlook, they judged that another increase in the federal funds rate was or would soon be warranted, with a couple of them advocating an increase at this meeting.』

他の数名(some other)の参加者は労働市場が完全雇用に達していることから、緩やかな利上げを行っても問題無しとの見解で、利上げ開始時期は向こう2回程度のFOMCで利上げが適切になりますという見解。

『A few participants pointed out that various benchmarks for assessing the appropriate stance of monetary policy supported taking another step in removing policy accommodation. A few also emphasized the risk to the economic expansion that would be associated with allowing labor market conditions to tighten to an extent that could lead to an unwanted buildup of inflation pressures and thus eventually require a rapid increase in the federal funds rate.』

数名(少ない方の数名でA few)の参加者はもうちょっとタカ的な見解を表明しているようで、労働市場がタイト化すると(賃金上がって)望ましくないインフレ圧力が掛かり、将来にインフレ防止の為により強力な利上げステップを行う必要が出てくるので、利上げペースについてもグラデュアルのままで良いのかという指摘をしていますな。

『In addition, several expressed concern that an extended period of low interest rates risked intensifying incentives for investors to reach for yield and could lead to the misallocation of capital and mispricing of risk, with possible adverse consequences for financial stability.』

BISビューチックな懸念キタコレでして、数名(several)の参加者は緩和政策の長期化によって利回り追求の動きが高まることにより、資産市場におけるミスアロケーションが生じ、金融安定化に対する阻害要因になることを懸念した、と来ていますが、そういう方々的には日本とか英国とかの金融緩和ヒャッハーでスピルオーバーして米国にきているのも苦々しいという話になるんだろうなあとか、昨日のダドリーさんのFOXビジネスでのインタビューを思い出すのでした。


でまあこの前提になる議論の部分はインスタント読みの為に割愛(すいません)でありますがその辺は後日またネタにします。あと、最初の所に『Long-Run Monetary Policy Implementation Framework』という小見出しの所があって、金融政策の枠組み、と言いましても金利誘導をどうやって行うとかその辺の話をしているようなのですが、技術論の好きな方には面白いかもしれませんのでちょっとだけ。


・政策枠組みに関して

ということで最初の『Long-Run Monetary Policy Implementation Framework』から少々。

『The staff provided several briefings that reviewed progress on a long-term effort begun in July 2015 to evaluate potential long-run frameworks for monetary policy implementation.』

ほほう。

『The briefings highlighted some foundational considerations that are relevant for such an evaluation. The staff described the recent experience of several central banks of advanced foreign economies (AFEs) in implementing monetary policy, noting that they use a wide variety of frameworks to control short-term interest rates and that their approaches have evolved over time.』

ということで、フレームワークと言っても技術的な面での大枠をどう組むのかというお話です。

『For example, foreign central banks vary in their choice of the interest rate used to communicate monetary policy; in their approach to the provision of reserve balances; and in their use of policies, such as large-scale asset purchases, various funding programs, and negative interest rates, to supplement more traditional means of policy implementation.』

うむ。

『The staff also described the Federal Reserve's experience in implementing monetary policy during the recent financial crisis. Before the financial crisis, traditional implementation tools--relatively small-sized open market operations and discount window lending--were adequate for interest rate control even during periods of stress. But the evidence from the period of the crisis and its aftermath suggested that the Federal Reserve's pre-crisis framework did not enable close control over the federal funds rate when liquidity programs were expanded significantly and subsequently was unable to generate sufficiently accommodative financial conditions to support economic recovery without the use of new policy tools.』

平時だったら最低限の公開市場操作とディスカウントウィンドウで短期金利の誘導が出来た(っていう程FEDってFFを精密コントロールしていた訳ではないが、そこが需給によってボコボコと動くからと言ってイールドカーブ形成に悪影響を与えていた訳ではないので、まあこの認識は妥当っちゃあ妥当)のだが、危機後は色々な手段を投下しないと金利コントロールが難しくなりましたねという確認。

『Finally, the staff noted that various aspects of U.S. money markets, which determine short-term interest rates and are important for transmitting monetary policy, have changed since the financial crisis. The differences include changes the Federal Reserve has made to its policy tools and balance sheet, changes in market participants' business practices, and the regulatory changes made around the globe to strengthen the financial system.』

まあ仰る通り。

『Taken together, these factors may, for example, raise the long-run demand for safe assets, including reserve balances, and they should help make U.S. money markets more stable than they were before and during the financial crisis.』

つーことで次のパラグラフ。

『In the discussion that followed the staff presentations, policymakers agreed that decisions regarding an appropriate long-run implementation framework would not be necessary for some time. Furthermore, their judgments regarding a future framework would benefit from accruing additional experience with recently developed policy tools, such as the payment of interest on reserves, and accumulating more information about some important considerations that are still evolving, including financial regulations and market participants' responses to them.』

『One key consideration discussed by policymakers was the appropriate amount of flexibility that an implementation framework might have--for example, the extent to which a framework could readily enable interest rate control under a wide range of economic and financial circumstances.』

ということですので、フレームワークと言っても技術面の話で、金利誘導を円滑に行うにはどういう政策ツールを使って行けば良いのじゃろ、という点って環境も変わったし規制も変わった中で以前と同じって訳にも行きませんですよね、というお話。

でもってこの先が微妙に別の論点が加わる。

『With neutral interest rates potentially remaining quite low, policymakers also observed that, in order to promote the Federal Reserve's policy objectives, the framework should have the capacity to supplement conventional policy accommodation with other measures when short-term nominal interest rates are near zero.』

ゼロ金利制約があって中立金利が低下しているという現状の中では伝統的金利誘導以外の補助ツールも使わないとですなというお話。

『Policymakers emphasized that the relationship between the monetary policy implementation framework and financial stability considerations would require careful attention.』

でもってこの論点がイイハナシダナーというかどこぞのジャパンの中銀にこの観点がさっぱり無いのですけどねえというのが「the relationship between the monetary policy implementation framework and financial stability considerations would require careful attention.」というお話であり、最近各国中銀ではこの指摘がちょこちょこ出てくるなあと思う次第で、日本の総括検証でもゼヒ考えていただきたい。

『Importantly, the policy implementation framework would need to be consistent with recent changes in regulation designed to enhance the stability of the financial system. Also, because episodes of financial stress can arise with little warning, policymakers noted the advantage of being operationally ready for such situations; however, they also recognized that such operational readiness could entail some costs. Participants observed that various choices associated with policy implementation frameworks--such as the selection of counterparties or types of collateral to accept, and the overall size and composition of the Federal Reserve's balance sheet--may both be influenced by, and themselves influence, incentives and activity in financial markets. Moreover, they indicated that the implications of the implementation framework for the efficiency of the financial system needed to be taken into account.』

まあ特定の論点がクローズアップされているという感じでもないので、一般的な論点ということでしょうが、金融政策の枠組みで市場に対するインセンティブも変わるとか、環境が違えば枠組みも変わるべきとかどこかの中銀のような乱暴な話をしていないのは好感が持てますな。

『Meeting participants commented on several other considerations that they saw as being relevant for evaluating possible implementation frameworks. Other major central banks have successfully employed a range of policy rates, including both administered rates and market rates, suggesting that either type of rate can be effective in communicating and implementing policy.』

『However, the factors affecting market rates, as well as the relationships between the policy interest rate and other short-term interest rates, would need to be well understood in deciding on a particular policy rate.』

どこの国の事じゃ?????

『The potential benefits of improving the functioning of certain policy tools were noted; for example, approaches to reducing the perceived stigma associated with borrowing at the discount window, particularly in periods of financial strain, would need further careful consideration.』

それはその通りなのですがでしたらドルスワップももっと使わせてくんなまし、というのは無理か。

『In addition, it was noted that the dollar is a principal reserve currency and that monetary transmission in the United States occurs through funding markets that are quite globally connected.』

他国の事なんぞ知るかというスタンスだったFEDとは思えん記述がありますな。最近そんな感じになっているのでこれが初出な訳ではないですけど。

『At the conclusion of the discussion, the Chair asked the staff to continue its work and noted that policymakers would review further analysis at a future meeting.』

ということでこの話はまだ続くようです。論点を色々出したところという感じで各論点についてこれから議論していくんでしょうな。



○市場雑談等

・日替わりでツイストェ・・・・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1AY283
Markets | 2016年 08月 17日 15:10 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が反落で引け、長期金利は-0.080%に上昇

『<15:06> 国債先物が反落で引け、長期金利は-0.080%に上昇

国債先物中心限月9月限は前日比18銭安の151円33銭と反落して引けた。前日の海外市場で、米連邦準備理事会(FRB)高官の発言をきっかけに年内米利上げ観測が再燃。米債が下落したことを受けて売りが先行した。18日の5年債入札を警戒した売りも出た。いったん下げ渋る場面もあったが、日銀が実施した国債買い入れ結果が需給の緩みを映す内容になると、午後取引開始直後から水準を切り下げた。現物市場は中長期ゾーンを中心に軟調。10年最長期国債利回り(長期金利)は同2bp高いマイナス0.080%に上昇した。』(上記URL先より)

ということですが、昨日は輪番の超長期25年超以外がパッとしない結果で相場が弱含みというのは良いのですが、30年とか後場確りしだして30年カレントのちょっと手前の所でツイストになってしまうというフラットニング相場と相成りまして、これで今週に入って3打席連続でカーブがツイストする上にフラットとスティープが日替わりで発生するというシーソーかよというバタバタ振りなのですが、まー参加者の方が閑古鳥大合唱状態なのか、単に皆さん様子見なのか知りませんけれども、要は市場の厚みが全然なくて流動性も無いという状態でカーブが個別需給で動くという感じになっているんでしょうかね、よー知らんけど。

でまあこんな感じになってしまうとポジション構築もクローズも大変になるので皆さん益々参加しなくなって流動性が益々落ちるという素敵な状態になってしまいますし、9月のMPMでの総括見直しが有る訳で、これに対して何がどう出るかという件についてはポツダム宣言受諾から最後の決戦追加緩和菊水作戦まで見解がバラバラなので、変にポジション持ってポジションが総括されちゃったら目も当てられませんという理由もありますのでそら手を出しにくい罠ということでしょうが、ニュースフローとかで毎日ヘコヘコとあまり方向感なく動くんでしょうかね。


・1年短国が▲20bp台とな!!!

昨日は地味に1Y短国入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20160817.htm

(3)募入最低価格 100円24銭1厘(募入最高利回り)(-0.2410%)
(4)募入最低価格における案分比率 83.5740%
(5)募入平均価格 100円24銭8厘(募入平均利回り)(-0.2480%)

先月の1年短国が平均▲35.87bp足切▲32.89bpという結果でしたが、今月に関してはとりあえず9月の総括検証待ち状態なのと、マイナス金利の不評キャンペーンが何か結構一般紙とかでもホイホイ出るような攻勢が続いている(昨日だか一昨日だかヤフーのトップにも出てた気がするんですが)という状況なので、とりあえずヘッジで買う的な仮需もなさそうですし、担保繰りという点で言うと(しまった!7月末の日銀受入れ担保ネタを投下するの忘れてた!!!)住宅ローン債権活用の新担保が(担保価値ベースで)3兆円位出てくるとかございまして、元々こんな金利水準だと物として必要な人とファンディングコストのマイナスの大きい人と、政策とか言いながら馬鹿成行買いをする人しかいませんので、需給が緩和されるわな(つーても政策金利よりも15bpも低いのですが)という感じでて、日本相互証券の引けも▲32.5bpとかになっているので、セカンダリーで売れているとかそういう話でもないでしょうな。


ということで投下するのを忘れていたので
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/col/col1607.pdf
日本銀行が受入れている担保1の残高
(2016年7月29日現在)

一番下に

『住宅ローン債権信託受益権 56,102 33,661』

とありまして、3兆円少々担保繰りが良くなっていまして、担保繰りで無理繰り買わないといけない国債がその分減るという(単純にそういう話でもないけどまあ単純化しまして)結構なお話。


・厭債害債さんのエントリー投下来ました

いつもながら整理されて分かりやすいご指摘に敬服。まあお読みあれ、と人のふんどしモード。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201608/article_2.html
きしみはじめたアベノミクス






2016/08/17

お題「日銀当座預金残高ネタ/連日ツイストが逆方向とかナンジャソラ/米国連銀高官ネタが夏休み明けですかそうですか」

南関東の通勤時間帯台風直撃被弾にはならなかったようですの。

○毎度お馴染みの日銀当座預金残高ネタ

つーことでこちらです。毎度のようにエクセルで計算させたものをヘコヘコ貼って行きますので、数値表記が全部エクセルのをテキスト形式にしたものというこの手抜き(別に手を抜いている訳でもないが)。


・マイナス金利適用残高の推移とマクロ加算残高の未利用分(以下単位は基本的に億円)

各積み期間におけるマイナス金利適用残高の平残は以下の通り。

2月:223,034
3月:297,238
4月:212,002
5月:204,428
6月:256,880
7月:208,090

ということで、7月の平残に関しては前月差で▲27,640億円となっているのですが、マイナス金利適用残高は▲48,790億円となっていて、当預平残の落ちよりも頑張ってマイナス金利適用部分を減らしましたねという所です。まあ6月に関してはマクロ加算部分の掛け目の変更などがありましたので、一時的に偏在が拡大したというのもありますので、それがこなれてきたというのもあるでしょうな。

でもって今月マイナス金利適用残高が4.9兆円落ちていますが、そのうち業態別で見ますと、「その他準備預金適用先」が▲23,230億円、「信託銀行」が▲19,530億円落としていまして、あと額的には大きくは無いのですが、「地方銀行」が▲2,720億円落としてマイナス金利適用残高を1,780億円にしているのですが、この額は2月の制度適用以来の既往ボトムになっていまして、残高の進捗管理の動きが広がってきているんだろうなと勝手に想像してみましたけれども実際問題としてはどうなんでしょうかね。

なお、相変わらず「都市銀行」のマイナス金利適用残高はゼロのままで推移しています^^;


でもってマイナス金利非適用残高の消化振りですけれども、

プラス金利適用残高のうち使い切れていない分

2月:20,089
3月:12,607
4月:17,429
5月:20,854
6月:25,840
7月:20,230

となっていて、どうも2兆円程度は使い切れない分が残るようで、これはフリクショナルな部分なのか何だか分からんですが、どうも残るようですの。

ゼロ金利適用残高のうち使い切れていない分

2月:166,314
3月:122,941
4月:72,563
5月:61,804
6月:94,890
7月:90,310

となっていて、そらまあ先程のマイナス適用減らした業態が業態なだけに当たり前ですけれども、別にゼロ金利適用残高の部分とかの偏在調整を進めた結果としてマイナス適用が減ったという訳でも無くて、使わない分自体は似たような感じで推移しているようにも見えたりするところ。

当預平残自体は全体で▲27,640億円落ちていて、未利用部分が1兆円程度減っているのに加えて、後で申し上げますが補完当座預金制度不適用先の残高が4600億円ほど増えている一方でマイナス適用残高が4.9兆円落ちているので、差分が残るのがどうも気持ち悪いのですが(マクロ加算部分がぶれる筈(マクロ加算範囲内におけるMRFの現金残高差分と貸出支援関連の増減差分)なので差分の5000億円ほどってそこになるのかなとか思う(MRFの場合昨年の投信純財産の平残を上限に金銭信託残高分だけがマクロ加算になるので、MRFの金銭信託が減ればマクロ加算残高は自動的に減るし、増えた場合は(前年平残を上回る平残にならない限り)その分マクロ加算残高が自動的に増えるのだ)のですが良く分からん。

まあそんな訳で、マイナスチャージによる疑似的な進捗操作もどきというのは日銀の狙い(?)通りにワークしている感はあるのですが、そうは言いましても別に資金過不足があって進捗操作がワークしている訳でもないというのが残念な所ではありますの。



・都市銀行はゼロ金利適用の所で余らせる進捗操作を継続

直近3か月で確認。

5月平残
個別行のゼロ金利残高合計:216,430億円
ご利用額:213,150億円
余らせている分:3,280億円

6月平残
個別行のゼロ金利残高合計:274,510億円
ご利用額:257,280億円
余らせている分:17,230億円

7月平残
個別行のゼロ金利残高合計:277,060億円
ご利用額:265,450億円
余らせている分:11,610億円

ということで相変わらずの推移をしておりまして、

7月コール市場残高
http://www.boj.or.jp/statistics/market/short/call/call1607.htm/

6月コール市場残高
http://www.boj.or.jp/statistics/market/short/call/call1606.htm/

でして、コール市場残高の平残ベース(念を押すまでも無い話ですが、コール市場残高の平残は歴月ベースで当座預金残高に関しては積み期間ベースなので実際は半月の足ズレがあるのですが計数これで取るしかないから勘弁)で見ますと、

となっていて平残ベースで、

出し手(左が有担保、右が無担保)

6月都銀等* 0 435
7月都銀等* 0 158

取り手
6月都銀等* 0 2,601
7月都銀等* 0 6,043

となっています。なお、最近は積み最終とかになるとややコールがタイトになったりするみたいですので、もしかして最後の所でゼロ金利適用部分の余り部分を見ながら着地の所でちょっと取ったりしているとか、税揚げとかの時にもタイトになるようなので、残高を抑制的に推移させるために資金不足とかの時に帳尻が入るようになっているのかねとか思ったりするのだがその辺の話はもっと詳しい人が居る筈なので教えてジェネラル。


・補完当座預金制度非適用先の残高がジリジリと増えている件について

先月も同じ話をしましたが、業態別当座預金残高をDLした場合に出てくるエクセルシートの2つのシートのうち、左側のシートの所にある「合計」(普通にエクセルに落とすと7月分の場合N28〜N40のセルの数値)と、右側のシートの所にある「補完当座預金制度適用先合計」の「当座預金残高」が合致しませんが、この差分がじりじりと拡大しております。

2月:40,512億円
3月:53,841億円
4月:65,970億円
5月:73,100億円
6月:78,700億円
7月:83,310億円

ということで、7月積み期間でも平残ベースで4610億円増え得て8.3兆円の水準まで拡大しておりまして、ここの残高ってあまり派手に上振れしてしまうと、マクロ加算の尻抜けみたいになってしまうのでホイホイと増えるのもどうなのかなという気がせんでもない(まあその分マクロ加算掛け目を調整すれば良いという議論はあるが、掛け目調整は基本的にマクロ加算の偏在を促す事になるのでちょっとという感はある)。

とまあそんな感じで。


○市場雑談

・ツイストフラットの翌日にツイストスティープとな

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1AX28U
Markets | 2016年 08月 16日 15:14 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発、長期金利-0.095%に低下

『<15:12> 国債先物は反発、長期金利-0.095%に低下

長期国債先物は反発。前日の米債安を受けて安寄りしたが、海外市場のリスクオンの流れにもかかわらず、日経平均株価が円高の進行で軟化したことを材料視した短期筋からの買いで強含んだ。現物債は高安まちまち。超長期ゾーンの利回りには上昇圧力がかかった。午前の取引から流動性供給入札を意識した調整が入ったことに加え、入札が弱めの結果になったことが影響した。国債先物への連動性を強めた中長期ゾーンは小じっかり。』(上記URL先より)

ということですが、月曜には金融庁がマイナス金利に懸念という記事が投下されたことから中期がヘロヘロになって超長期は強いというツイストフラットしたのですが、昨日は何が何だか分からん(というか流動性供給入札が弱めだった以外にネタがあるのか)のですが、先物中心に中長期が強くてこちらの方が前日比強となって、超長期の方が前日比甘になるという事で、(別にロイターさんにいちゃもんつける積りでもないのですが)昨日のロイターでの相場後講釈記事だと5年入札に向けてポジション調整の動きがーとか言っていたのは何だったのかと小一時間問い詰めたい展開。

・・・・・・・・まあ要するに特に皆さんが積極的に参加していない中で誰かがヒョイと入替売買するとカーブがその方向に思いっきり逝ってしまうとかそういう事ですか良く分かりません。

なお、このロイター市場記事ですが、その次にこんなのがあってワロタ。

『ロイターは16日、日銀が検討を進めているマイナス金利付き量的・質的金融緩和政策(QQE)の総括的な検証では、急速に進行している利回り曲線平たん化の功罪が議論のポイントの1つになりそうだと報じた。マクロ政策の専門家からは、平たん化の進行や長期化が継続した場合、金融仲介機能に支障が出るとの懸念も浮上。一部では、金利ターゲットへの転換などのオプションも提示されているという。マーケットの注目度の高い内容だが、ダイレクトに相場に影響を与えるまでに至らなかった。』(上記URL先より)

>マーケットの注目度の高い内容だが、ダイレクトに相場に影響を与えるまでに至らなかった

・・・・・・・・・くやしいのうくやしいのう

ちなみに当該記事は
http://jp.reuters.com/article/boj-varification-idJPKCN10R0DT
Business | 2016年 08月 16日 17:33 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
アングル:日銀検証、利回り曲線平坦化の功罪議論か

なんですが、まあちょっとこうイールドカーブの話を狙い過ぎという感じでして、総括検証の結果ってまあ勿論イールドカーブがどうなるというのもあるのですが、その結果がどうのこうのという結論から話を持って行く話はもう色々と出ている所ですし、検証ってそもそも論として「政策がどう効いているのか」とか「波及メカニズムどうなっているのか」とかを政策のパーツごとに検証していくという話がメインになる筈で、イールドカーブってのは本来結果に過ぎないのですが、「イールドカーブ全体に働きかける」ってのをやっているから話がややこしくなる話になっている訳ですな。

ですからイールドカーブがどうのこうのという話も勿論あるのですが、筋論として結果であるカーブ形状に関してどうのこうのというのは検討の中では最初に行うど真ん中の話の次ではなかろうかと思う訳で、日経の記事に対してロイターの記事が反応しなくてくやしいのうwwくやしいのうwwというのは、日経の場合は「マイナス金利がこのように効能よりも副作用が大きい」という検証のストレートな筋での指摘を示したのと、金融庁ガーというのが効いた(つーて本当にどこまで効いているのかは知らんが)一方で、(上記URL先記事見れば分かりますが)まあ記事そのものは「・・・・・・と外野の皆さんが評価している」という内容ですので、そらまあねえという所でくやしいのうくやしいのう。



・CP買入ってこれ何のために継続しているのかさっぱり分からんのだが

昨日のCP買入
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba160816.htm
CP等買入 7,374 3,489 -0.001 0.000 59.8

もう何ちゅうかずーっとこのレートになっていまして、とんでもないドマイナス金利になった時も如何な物かと思いましたが、このちょっとだけマイナスで基本は100円ってのが判で押したように続いているのっていうのも何だかなあという感じですな。



○米国が夏休みから戻って来ました(のかどうか知らんが)

米国ネタを放置しているうちにSF連銀のペーパーで要するに緩和の期間を長くするのを正当化する(のだがそれはどうかという気がする論点でもある)物件が出て話題になっていたようなのですが不覚にもまだ読んでいないのでそのネタは後で。

でもって今朝はダドリー発言とロックハート講演ネタがありましたので寝起きで全部読めないから簡単に(汗)。


・ダドリー発言

(長いので画面デザイン上リンクを途中まででしか貼っていませんがきちんと飛ぶようにしているはずです)
http://www.foxbusiness.com/markets/2016/08/16/ny-fed-president-dudley-sept-rate-hike-possible-economy-accelerating.html
NY Fed President Dudley: Sept. Rate Hike Possible, Economy Accelerating
Published August 16, 2016 The Fed FOXBusiness

ということでFOXニュースでのダドリー総裁発言で、動画の方で発言の方は追える(というかブラウザーのデフォだと勝手に音が出だすのではないかと思うのでご注意)のでとりあえず怪しいヒアリングをしながら記事の方を拝読。(全部で5分ほどです)

『The U.S. economy is getting stronger. That’s one reason why William Dudley, president of the New York Federal Reserve, says policymakers can raise rates in the near future.』(上記URL先より、以下同様)

『“We are edging closer towards the point in time when it will be appropriate to raise rates further,” said Dudley during an exclusive interview with Peter Barnes on the FOX Business Network. When asked whether a September rate hike was on the table Dudley said, “Yeah, I think it is possible”.』

Peter BarnesさんはいつもFOMC後の記者会見で質問している人ですな。でもってこの部分ですけれども、

『Dudley highlighted the improving trends he is seeing in the economy including a “tightening” job market. U.S. employers added 255,000 jobs in July, a major improvement following May’s data, which showed just 11,000 new jobs were created. He also noted inflation is moving closer to where the Fed wants it to be: [We] “seem to be on trajectory for 2% inflation.”』

というような話をしていて、9月に利上げするのはさすがに超順調に進めばという事であって、基本的には「年内には利上げ可能」というような話をしていて、でももっと順調なのを確認できたら別に待つ必要はないぞな、という感じでこの「9月も可能」という話をした(というかさせられたというか)な感じだと思いましたがどうでしょうかね(まあ聴いてちょ)。


でもってですね、このインタビューの後半部分ですが、

『Dudley’s comments coincide with U.S. stocks climbing to fresh records. The S&P 500, the broadest measure of U.S. equities, has advanced 4% this year, along with record low U.S. Treasuries prices. The yield on the 10-Year, which trades inversely to bond prices, has drifted to 1.57%.』

『When asked if he was concerned about financial bubbles brewing he said, “I don’t see anything now that is particularly disturbing, I would argue the one area which looks a little bit stretched to me is the bond market.”』

『Dudley noted the massive quantitative easing efforts coming from the Bank of Japan, the European Central Bank and the Bank of England as factors driving up the price of U.S. bonds.』

ってのがございまして、資産バブルに対して懸念は無いのか?というお題に対するお話が後半の方にありまして、米国の長期金利水準についての言及(ワシらの経済物価見通しに対して長期金利の水準って低いですよねえとか言ってるように聞こえましたが確認してくらはい)があったりしていまして、その流れで他の海外中銀が超緩和をするからサーチフォーイールドのスピルオーバーによる影響が出ているがなというようなコメントがしらっと打ち込まれていた方にもほほーと思いましたよ。



・ロックハート講演

こちらは講演でして、
https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2016/0816-lockhart-knoxville-gauging-current-economic-momentum.aspx
Gauging Current Economic Momentum

Dennis Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta

Rotary Club of Knoxville
Knoxville, Tennessee
August 16, 2016

つーことでアトランタ連銀の場合は便利なサマリーがあるのでサマリーから。

『Atlanta Fed President and CEO Dennis Lockhart, in an August 16, 2016, speech to the Rotary Club of Knoxville, Tennessee, discusses the national economy's underlying momentum and his economic outlook.』

これは前置き。

『Lockhart points to real final sales, a subset of GDP, for a more consistent picture of economic momentum than GDP. Real final sales rose at an annualized rate of 2.4 percent in the second quarter.』

『Lockhart is holding to an outlook of moderate growth through 2017. His baseline forecast calls for achievement of the Fed's core monetary policy objectives-full employment and price stability-over the next year and a half.』

このお方も特にベースラインのシナリオを変えていないということですな。

『Lockhart assumes continuing healthy consumer activity and a modest acceleration in business investment.』

ふむ。

『Lockhart will be watching the incoming data closely for confirmation that his outlook remains valid.』

と、自信満々という程でもなさそうですが、超手抜きで講演の頭とケツだけ引用します。

『In late July, the Bureau of Economic Analysis released its first estimate of second-quarter growth of gross domestic product (GDP). Growth in the quarter was estimated at 1.2 percent annualized. The number was below our expectations at the Federal Reserve Bank of Atlanta and below the predictions of many others. The report has been treated as a downer. I gave an interview on August 2 and got the question, "What do you make of the dismal GDP report?" It's not surprising a GDP report so much below expectations evoked strong reactions.』

先般のGDPに対する反応の話ですな。

『When the history of the post-recession economic expansion is written, it will be described as a long period of relatively slow growth. Through mid-2015, GDP growth averaged a little over 2 percent. Over the last year, GDP growth has averaged just 1.2 percent. Over the first half of 2016, GDP growth has averaged just 1.0 percent at an annual rate. At face value, it might appear that economic momentum is decelerating.』

回復のペースが遅いのはリセッション後の回復という状態が続いているので仕様ですと。

『At these low numbers, an apparent decelerating pace of growth would not seem compatible with policymakers' thinking about raising interest rates. Yet I, as one Fed policymaker, am not prepared to rule out at least one rate hike before year's end.』

という数字が出ると利上げしないという人も出てきますが、あたしゃ年内利上げは排除しませんよという説明。


・・・・・・でもって経済物価情勢に関する話がこの先続くのですがそれをやっていると時間ががががなのと(当然ながら寝起きインスタント読みしているので)精読できていないのでいきなり最後に大ワープ(汗)。

『So, to sum up, I caution against overreacting to the second-quarter headline growth number.』

ちなみにそのひとつ前のパラグラフで自分で『Certainly, there are risks to this hopeful scenario. 』って言っているのでやや強気であるという認識(つーかまあこの講演では強い話をしている)の下で話をしているのですけど、まあそれはそれとしてGDPに対する市場の反応が過剰ではないかとの指摘キタコレである。

『Early indications of third-quarter GDP growth suggest a rebound. I don't believe momentum has stalled. I remain confident about prospects in the second half of 2016 and 2017. I will be watching the incoming data closely for confirmation that the outlook I've presented here today remains valid.』

ということで強気の見方。

『I'm not locked in to any policy position at this stage, but if my confidence in the economy proves to be justified, I think at least one increase of the policy rate could be appropriate later this year.』

と結論していまして、そら経済強めで見てればそうなるわなとは思いますが、こんな記事もありましたな。

http://jp.reuters.com/article/atlanta-two-rate-hike-idJPKCN10R27M
Business | 2016年 08月 17日 04:43 JST
米利上げ年内2回の可能性、9月排除せず=アトランタ連銀総裁

『[ノックスビル(米テネシー州) 16日 ロイター] - アトランタ地区連銀のロックハート総裁は16日、堅調な米経済を受け、連邦準備理事会(FRB)は年内に2回利上げを行う可能性があり、9月実施も排除しない考えを示した。総裁は講演後、記者団に「9月の可能性を排除しない」と語った。雇用が伸び続け、インフレ加速を示す「健全な」兆候もみられるとして、9月の利上げを恐らく正当化するとの認識を示した。』(上記URL先より)

・・・・・・ということで威勢が良いなおいという感じでもあったようですな。







2016/08/16

お題「金融庁ネタで反応しましたのう/BOEの追加緩和ロジックを見物の巻」

モーサテまで休みなのに何で働くのかと絶望したら時間差で始まった・・・・・・

#「モーサテ夏の基礎講座」というのを「夏の基礎代謝」と空目してしまったorz

○市場雑談など

・金融庁ネタのインパクトは債券市場だけにはありましたな

昨日リンクするの忘れたのが1個ありましたので再掲すると、

http://www.nikkei.com/article/DGXKZO06024580T10C16A8MM8000/
「マイナス金利で3000億円減益」 金融庁、日銀に懸念伝達
3メガ銀を調査
2016/8/13付日本経済新聞 朝刊

『金融庁は日銀のマイナス金利政策が、3メガ銀行グループの2017年3月期決算で少なくとも3000億円程度の減益要因になるとの調査結果をまとめた。同庁は収益悪化が銀行の貸し付け余力の低下につながるとみて、日銀に懸念を伝えた。調査結果は日銀が9月に予定するマイナス金利政策の「総括的な検証」の材料になる見通しだ。』(上記URL先より)

というのが土曜にあって、日曜にはその続きの記事という

http://www.nikkei.com/article/DGKKZO06042760T10C16A8NN1000/
マイナス金利 効果道半ば
導入半年、物価上昇の兆し見えず
2016/8/14付日本経済新聞 朝刊

と連発攻勢があった訳ですが、先週の相場で30年入札の日(火曜)に何故か30年以外が強くなって20−30がツイストとか訳分からん相場になる→翌日の後場終盤に30年だか40年だかが急に強くなってブルフラット→12日は何が何だか分からんけど中期弱くて超長期強くてツイスト、と来ていたのですが、昨日はこの「マイナス金利はケシカランと金融庁方面からの砲撃キター!」という報道が効いたのか中期がもう一発甘くなって5年の引けが▲16.5bpまで金利上昇(つーても政策金利よりも低いのですが)で2日で3毛甘くなっている一方で超長期は30年の所が1毛強とかなっていまして、30年ちょっと手前の所でツイストするという展開。

ロイターから
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1AW26U
Markets | 2016年 08月 15日 15:16 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、長期金利-0.085%に上昇

『<15:12> 国債先物は続落、長期金利-0.085%に上昇

長期国債先物は続落。前週末の海外市場で、さえない米指標を手掛かりにした米債高を受けて高寄りした。しかし、買いが続かずに軟化し、一時151円26銭まで水準を下げた。マイナス金利の深掘りに慎重な見方が浮上するなど、日銀の金融政策に不透明感が増す中、18日の5年債入札への警戒感が広がり、先物や中期ゾーンに売りが膨らんだ。ただ、後場の中盤以降に短期筋からの買い戻しが入り、下落幅を縮小する展開になった。現物債は高安まちまち。長期ゾーンは先物に連動性を強め、中期ゾーンは5年債入札に絡む持ち高調整が主流になった。一方で、20年債はさえない展開となったが、30年債、40年債利回りには強めの低下圧力がかかった。9日の30年債入札を無難に通過したことで、あすの流動性供給入札に対する強気な見方が出ていた。』(上記URL先より)

先週の時点では5年入札はまあ何とでもなるでしょうから問題はその次の20年とか言ってたのに月曜から木曜の入札に絡む持ち高調整とかこのドテン振りに落涙を禁じえませんが所詮その程度の流動性ということですかそうですか。

まーそもそも論として7月MPMで追加緩和待ったなししかも買入は限界近いからマイナス金利もう一発深堀しか無かとよという感じで盛り上がってしまった時に中短期の金利が盛大に下がった上にヘリマネだの40年増発だのの何だかんだで超長期の長い方が弱かった反作用とか色々とあるのでしょうが、「マイナス金利ケシカラン」からマイナス金利の深堀が厳しくなったという認識なので中期がコケる(そもそも追加の利下げが無いのに2年なら兎も角5年を政策金利よりも盛大に低い金利にする意味は無い罠)のは分かるのですが、何も30年前日比金利低下せんでも良かろうにとは思う(だって買入増額だって大変なんですから)のですけどねえ。

しかも味わいがあるのは、このマイナス金利ケシカラン記事に対して別に株式市場も為替市場も反応しているようにはさっぱり見えない所でして、まーそれって先々週からの金利上昇の時もその時は別に何も反応していなかった(後から急に後付で円金利の上昇がネタにされていたが、円金利が上がっている時に為替でそういうコメントをしながら動いているという図では無かったように見える、実際の為替市場の人じゃないから違ってたらゴメンだけど)のと同じっちゃあ同じなのですが、それにしても債券市場が総括検証にナーバスになっているのか、他市場が全然気にしていなさ過ぎなのか良く分からんですが、反応度合いが全然違ってワロタという感じです。


まー何ですな、そもそも金融庁がプルーデンス政策的なアプローチで考えた場合っていうのは、日銀の金融機構局の金融システムレポート(のプルーデンスウィング部分)と同じような認識になる筈だし、そういう認識は金融庁と日銀のプルーデンスウィングで共有している筈でございますので、そういう文脈から考えればこういう指摘が飛んでくるのも順当っちゃあ順当。

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr160422.htm/
金融システムレポート(2016年4月号)

でまあFSRについては上記のURL先にリンクがありますが、こちらのレポートに関しては以前ネタに致しましたが、上記の鏡の所だけ見ているとふーんと流してしまいますが、良く良くPDFの方を見ますとマイナス金利政策が長期間継続した場合の金融機関収益に与える悪影響や、そもそも論として金融機関の基礎的収益についても全体として見た場合と、個別金融機関の分散を見た場合とではまた話が違ってくるんですよねえとかを始めとして、今の政策(マイナス金利QQE)の弊害について頑張って指摘しているので、読んでいないお方で夏休みモードの方はこの機会に熟読するのをお勧めしておきます。総括検証でそこまで突っ込むのかは別ですが、政策検証の論点になりうる話(第二の柱系のお話を中心に)への示唆が色々とあると思うの。

とは言いましても、同じ日銀内なだけに自分のシャチョーに向かって「お前の政策はケシカラン」と言うのも内々ならともかく、外部に向かってそこまで言う訳には参りませんので、そういう時は金融庁の出番という所でもあるのでしょうが、まー総括検証を機に色々と出てきますなあという感じでしょうか。

しかしまあ昨日も申しあげましたが、そもそも資産買入がもって精々あと1年位(追加拡大の思惑があればもっと短命)でマイナス金利も深堀できないけれども、まさかポツダム宣言受諾して黒田体制崩壊でもするなら別(というかそういう決断したら絶賛するわ)ですけれどもそういう訳にも行かない、となりますと、総括検証するのは良いけれども結局その後どうするのかという答えが出せない(資産買入とマイナス金利の両方をおかわりするのは無理で、片方を撤収しながらもう片方はちょっとは拡大するしか現実的にはやりようがないと思う)ので答えは先送りとかになると、総括検証したは良いけれどもその先の政策に関する見方がさっぱり分からず、その上シャチョーが例の強気音頭で追加緩和の盆踊りをされますと益々コミュニケーションが無茶苦茶になるという非常に嫌な予感もしますが、まーあと1か月以上ある話なので、今後もこんな感じのネタで債券市場だけナーバスに動くんでしょうなあという所です。


・基準改定の日銀コアに対する影響とな

うむ。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160815a.pdf
消費者物価指数の基準改定が総合(除く生鮮食品・エネルギー)に与える影響

2016/   1月 2月 3月 4月 5月 6月
2015年基準 0.9 1.0 0.9 0.8 0.7 0.7
2010年基準 1.1 1.1 1.1 0.9 0.8 0.8

・・・・・・・・・・おう今年に入って殆ど日銀コア1%割れという結果になっとるやんどこがどう物価の基調が2%に向かって上がっていくんだよという結果で実に心温まるものがございますな。


○BOEネタの続きである:フレキシブルターゲットとか政策波及メカニズムに対する配慮とか

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2016/aug.pdf
Monetary Policy Summary and minutes of the Monetary
Policy Committee meeting ending on 3 August 2016

本日も最初のサマリーの方から参ります。昨日は追加金融緩和政策の個別の政策が何を狙っているのかという部分を引用しまして、順序が逆になりますが本日はそのサマリーの中で「そもそも何で追加緩和をしましたの」という説明を見物ということで。

ということなので『Monetary Policy Summary, August 2016』の最初から。

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee (MPC) sets monetary policy to meet the 2% inflation target, and in a way that helps to sustain growth and employment. At its meeting ending 3 August 2016, the MPC voted for a package of measures designed to provide additional support to growth and to achieve a sustainable return of inflation to the target.』

ここで「to achieve a sustainable return of inflation to the target」とあるのですが、この先の方で特にポンド安の影響によって物価については2%のターゲットを上回る状況が先行きしばらく続くという見通しがありまして、では何で追加緩和しますねんというロジックが説明されています。

『This package comprises: a 25 basis point cut in Bank Rate to 0.25%; a new Term Funding Scheme to reinforce the pass-through of the cut in Bank Rate; the purchase of up to £10 billion ofv UK corporate bonds; and an expansion of the asset purchase scheme for UK government bonds of £60 billion, taking the total stock of these asset purchases to £435 billion. The last three elements will be financed by the issuance of central bank reserves.』

これは実際に投下した施策についてですな。

『Following the United Kingdom’s vote to leave the European Union, the exchange rate has fallen and the outlook for growth in the short to medium term has weakened markedly.』

ブリクジットの影響がポンド安と中期の経済見通しの大きな下げと。

『The fall in sterling is likely to push up on CPI inflation in the near term, hastening its return to the 2% target and probably causing it to rise above the target in the latter part of the MPC’s forecast period, before the exchange rate effect dissipates thereafter.』

物価は2%に達する時期が早くなるとな。

『In the real economy, although the weaker medium-term outlook for activity largely reflects a downward revision to the economy’s supply capacity, near-term weakness in demand is likely to open up a margin of spare capacity, including an eventual rise in unemployment. Consistent with this, recent surveys of business activity, confidence and optimism suggest that the United Kingdom is likely to see little growth in GDP in the second half of this year. 』

経済見通しは下がるのですが、ブリクジットの影響で需要が下がって経済のスラック(英国ではmargin of spare capacityというのが仕様)が拡大して失業が増えるがなという見通し。

『These developments present a trade-off for the MPC between delivering inflation at the target and stabilising activity around potential. The MPC’s remit requires it to explain how it has balanced that trade-off.』

つーことでインフレ目標とのトレードオフの話が出ていまして、そらもうBOEの場合はターゲットをしょっちゅう逸脱しているので今更ではありますが、フレキシブルターゲットの話をしている訳ですな。

『Given the extent of the likely weakness in demand relative to supply, the MPC judges it appropriate to provide additional stimulus to the economy, thereby reducing the amount of spare capacity at the cost of a temporary period of above-target inflation.』

まー日本の場合と違って物価が上方向にぶれるのに対して緩和が適切という話をする(って昔もこの理屈ではありましたが)ので話はし易いというのはありますが、日本の場合黒田日銀になってから「物価目標を達成すれば全て上手く行く」という謎の置物リフレ理論(なお置物理論で必要なMB出しても物価が行かない事に対してリフレの無敵理論に拠れば緩和が足りないって言えば良いんですから安易な議論にも程がありますなあリフレ派の皆さんは)によっていますので、こういうバランス論にはならん、というか円安に強引に振って誰得物価上昇にして結局消費がコケてしまって期待インフレもコケているのに、消費税のせいとアダプティブな期待形成という結論になっている時点で見立てに問題があると思うのだが、と話がそれてしまいましたが話を戻しまして続き。

『Not only will such action help to eliminate the degree of spare capacity over time, but because a persistent shortfall in aggregate demand would pull down on inflation in the medium term, it should also ensure that inflation does not fall back below the target beyond the forecast horizon. Thus, in tolerating a temporary period of above-target inflation, the Committee expects the eventual return of inflation to the target to be more sustainable.』

まあ理屈としてはそうなりますなという感じで、スラックの解消をしておかないとサステイナブルな物価安定に繋がらんというロジックですな。

『The MPC’s choice of instruments is based on a consideration of their likely impact on the real economy and inflation. The MPC has examined closely the interaction between monetary policy and the financial sector, both with regard to ensuring the effective transmission of monetary policy to households and businesses, and with consideration for the financial stability consequences of its policy actions.』

というここのパラグラフ(この次から昨日引用した部分の政策手段の説明部分に移る)が当然の話をしているのですがワロタという所でして、「金融政策と金融セクターの相互作用についての考察を行っている」だの、「金融政策が家計や企業に影響を与えるための波及経路を確保するための考察を行っている」だの、「金融政策が結果として金融の安定化をもたらすための考察を行っている」だのという説明がきっちりと入っていまして、そらまあ当然ちゃあ当然の態度ではあるのですが、何かこうヤケクソで3次元緩和に後先考えずに特攻した結果総括検証とか言い出している極東の島国の中銀に対する巧まざるイヤミになっているのが実に香ばしい展開というものです。

#閑散相場なので駄文も閑散で勘弁ということで(というのはただの言い訳でこの先やりだすと時間が足りないから切りの良い所で終わらせただけなのですがががが)





2016/08/15

お題「財政発散はイクナイネタが急に出ていますな/BOEの色々突っ込んだ緩和政策ネタを見物」

どうも世の中お盆休みらしくて通勤電車が空いていて結構。

○各種雑談メモ

・CPI改定が珍しく碌に変わらんとな

http://www.stat.go.jp/data/cpi/2015/sokyu.htm
2015年基準消費者物価指数の遡及結果(2015年1月分〜2016年6月分)及び接続指数

ということで、
http://www.stat.go.jp/data/cpi/2015/pdf/def2010-2015.pdf
消費者物価指数 2015年基準による遡及結果について

出来上がりの数字が珍しい事に今回は碌に変わっていないという内容になっておりまして、下がらないように鉛筆いや何でもないですという所ですが、

『2.新旧基準で寄与度※3に差がある主な品目(2016年6月 全国)』というのを見ると思いっきりウェイトが下がっているのが「テレビ」で万分の97から万分の15まで盛大に下がっているのはウケました。


・この攻勢(?)は何なのでしょうかねえ

金曜のマクラで東京新聞(中日新聞)が
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201608/CK2016081102000238.html
<戦後71年目の経済秘史> (上)「禁じ手」再び待望論
2016年8月11日 朝刊

というのを掲載していますなあというのを申し上げましたが、昨日の日経朝刊では、
http://www.nikkei.com/article/DGXLASM108H0I_R10C16A8000000/
元財務相の藤井氏「将来の大増税、明らか」
日本国債(5)インタビュー
2016/8/14 3:30日本経済新聞 電子版

ってのが出ていまして、時期的に終戦の日の頃というのはあるのでしょうが、ここに来て急に攻勢をかけるかのように「財政発散させると最後は預金封鎖新円切り替えで一般人の生活が破壊されますよ」という一般ピープル向け(ちなみに東京(中日)新聞の預金封鎖ネタも日曜の日経と同様に1面ネタでした)の情宣が行われるの巻となっておりますな。

まー何ですよ、ヘリマネヘリマネとか極端なことまで言いだしてくるアレな方々(というかそもそも金融政策だけで物価目標行くと言っていた筈のリフレ派の方々が財政とセットのヘリマネを言い出すのは従来の主張との整合性is何??という感じだが)があまりにもギャーギャー言い出すから反作用も起きるというもので、まあそういう流れなんでしょうかねえという所で。


・金融庁がマイナス金利に批判的とな

同じく昨日の日経ですけど。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO06042760T10C16A8NN1000/
マイナス金利 効果道半ば
導入半年、物価上昇の兆し見えず
2016/8/14付日本経済新聞 朝刊

これまた日経本紙ネタでネット版だと会員記事になってしまいますので肝心の記事引用は致しませんが、その中で思いっきり「銀行や金融庁は」と金融庁が日銀のサイドではなくて思いっきり銀行サイドと並べられているのがお洒落でして、そちらには「マイナス金利政策はデフレ政策」というコメントが入っている(ちなみに日曜の日経3面です)というこの報道は何でしょかという所ではあります。

いやまあマイナス金利って低金利が長期化した挙句に元々貸出金利競争が激しくて貸金の利ザヤが少ないという日本の特殊事情を鑑みると、マイナス金利による貸出金利引き下げという貸出を利用した金融政策の波及メカニズムって効きにくいですし、では為替に効かせに行っているのかというと、その考えはあると思いますけれども現状正面切ってそういう話も出来ないし、大体からして為替が円安になってコストプッシュで誰得物価上昇になっても、適合的な期待インフレの形成には役立つかも知れないけれども、その前に誰得物価上昇によって消費がコケてしまい、需要がコケてしまうので景気がコケるという事態を既に1回やっているというこの事実。

・・・・・・・とまあそういう事で、マイナス金利とQQEというのはやはり相性悪いし、そもそもQQEで考えていた話が当初マネタリーの話と中銀バランスシートの資産サイドを使った話だったのに、急に実質金利の低下ガーという話をした結果として「金利を下げるならマイナス金利」というのに安易に乗っかった結果がこれですよという訳ですから、まーやっちまいましたなと思いますが、この間に世の中のMMFとかが華麗に繰上償還されてしまったりして、覆水盆に帰らずとはまさにこのことという感じではありますな。


しかしまあ何ですな、マイナス金利がマズーというのもあるのですが、その一方で足もとで問題になるのって資産買入の継続可能性の方もある訳でして、まー実際にやってみないと分からんという面は多々ありますが、直感的に今のペースの買入って持って1年とかそういう世界で、もしかして将来の買入縮小とかを市場が見るようになってくれば輪番に応札するインセンティブが出てきてもう少し持つのかも知れませんが、少なくとも総括検証でそういう方向性でも出ない限りは買入そのものがそんなに長持ちしない(次は追加とか言われたら尚更)と思うので、マイナス金利撤回して買入を強化というような施策も打ちにくいというのもありますな。

何せ総括検証云々ってこの駄文の下の方(昨日ヘコヘコ作って今日一緒にアップしたもの)にありますように、物価2%上昇というのに相当な時間が掛かりそう(何せ上げなければいけない筈のインフレ期待が足元下がってきているのというオソロシイ事実と先行き見通しがある訳でござんすから)という事から、今の金融緩和政策を適当に看板の塗り替えをしてでもより中期長期的に持たせないと行けなくなった、っていう現状認識があるんでしょと思われますので、マイナス金利政策も中長期で続けるもんじゃないのはその通りですが、喫緊の課題は資産買入をどこまで持たせられるかという事のような気がします(ETFも買入増やしたら早速株式市場の価格形成が変になっているようですし)。



○BOEの「3次元緩和」見物コーナー

というのを本日のネタにする予定だったのですが、寝坊はするわ昨日の日経ネタが何か面白いわと
来ていますので今日はイントロですいません。

3次元緩和の図
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2016/063.aspx
Bank Rate cut and other new measures: what do they mean?
04 August 2016

『On Thursday 4 August, we announced new measures designed to support growth and achieve our 2% inflation target.

This included reducing Bank Rate (the interest we charge when we lend to commercial banks) from 0.5% to 0.25%.

The package was voted on by our Monetary Policy Committee, which meets monthly to set monetary policy including the Bank Rate.』

というのは良いとして、

『The image below summarises the changes that we’ve introduced. You can read about them in more detail in our latest Inflation Report.』

とあって、下に謎の水道の図
http://www.bankofengland.co.uk/publications/PublishingImages/crediteasing_large.jpg

が有る訳で、日銀が「3次元」って言ったもんだから3次元の図を使うのは真似っ子みたいで嫌だという妙な対抗意識はあるようで(ちなみに日銀もECBの真似っ子で「第一の柱」「第二の柱」とか言っているけれども使う英単語を敢えて変えていたりするのが微笑ましい)、物凄い勢いで謎の図になっております。

でまあインフレーションレポートを見ろとか書いてありますが、
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/inflationreport/2016/aug.pdf

インフレレポートは重いのでこちらで勘弁
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2016/aug.pdf
Monetary Policy Summary and minutes of the Monetary Policy Committee meeting ending on 3 August 2016

でまあミニッツの方はまた後ということで、サマリーの方から水道の謎の図に合わせた説明部分があるのでその辺から少々。

・利下げとTFSは貸出金利の引き下げの為とな

第5パラグラフ(1ページ目の終わり辺り)から。

『The cut in Bank Rate will lower borrowing costs for households and businesses. However, as interest rates are close to zero, it is likely to be difficult for some banks and building societies to reduce deposit rates much further, which in turn might limit their ability to cut their lending rates.』

『In order to mitigate this, the MPC is launching a Term Funding Scheme (TFS) that will provide funding for banks at interest rates close to Bank Rate. This monetary policy action should help reinforce the transmission of the reduction in Bank Rate to the real economy to ensure that households and firms benefit from the MPC’s actions. In addition, the TFS provides participants with a cost effective source of funding to support additional lending to the real economy, providing insurance against the risk that conditions tighten in bank funding markets.』

ということで、利下げは企業や家計の借入金利を引き下げるためで、一方で預金金利がこれ以上さげにくい銀行やビルディングソサエティもあるでしょうから、貸出の伸びに対応してTFSによってファンディングをつけてあげましょうという話。

でまあこれって話の筋としては分かるのですが、それをやると貸出金利の引き下げ要求が高まるだけの話になって、結局銀行しんどいですよね、というのは日本の経験の気もしますが、英国の場合はまだ金利プラスだし預貸利ザヤは日本よりも大きいでしょうから、その辺からのアプローチもありなのかもしれませんけど、あまり長期的にサステイナブルとは言い難い気がします。


・資産買入に関しては社債買入の効果がでかいと踏んでいる

第6パラグラフ(2ページ目)から。

『The expansion of the Bank of England’s asset purchase programme for UK government bonds will impart monetary stimulus by lowering the yields on securities that are used to determine the cost of borrowing for households and businesses. It is also likely to trigger portfolio rebalancing into riskier assets by current holders of government bonds, further enhancing the supply of credit to the broader economy.』

国債買入についてはどこぞの国のようなMB直線一気理論では勿論無くて、金利全般の引き下げと(非常に怪しいのだが)ポートフォリオリバランスだとなっていますが、利下げとTFSは全員一致でしたが国債買入拡大が一番反対が多くて実は6-3での決定なのが味わいが深いです。

でもって次のパラグラフ。

『Purchases of corporate bonds could provide somewhat more stimulus than the same amount of gilt purchases. In particular, given that corporate bonds are higher-yielding instruments than government bonds, investors selling corporate debt to the Bank could be more likely to invest the money received in other corporate assets than those selling gilts. In addition, by increasing demand in secondary markets, purchases by the Bank could reduce liquidity premia; and such purchases could stimulate issuance in sterling corporate bond markets.』

ということで、社債買入の方に期待をしているという感じの説明になっていまして、社債買入によって社債の金利低下、社債打った金融機関のポートフォリオリバランス、社債発行の活発化と金利の低下を期待となっていて、名目としては「purchases by the Bank could reduce liquidity premia」とリスクプレミアムの圧縮という話をしていますな。


・しかし最初から追加を示唆したらそら買入札割れとか起きるわなと

でまあそれはそれで良いとして一つ飛ばして第9パラグラフ(最後から3つ目)を見ますと・・・・・・・

『This package contains a number of mutually reinforcing elements, all of which have scope for further action.』

黒田スキームキタコレ!

『The MPC can act further along each of the dimensions of the package by lowering Bank Rate, by expanding the TFS to reinforce further the monetary transmission mechanism, and by expanding the scale or variety of asset purchases.』

「each of the dimensions of the package」とかクソワロタ。

『If the incoming data prove broadly consistent with the August Inflation Report forecast, a majority of members expect to support a further cut in Bank Rate to its effective lower bound at one of the MPC’s forthcoming meetings during the course of the year. The MPC currently judges this bound to be close to, but a little above, zero.』

でまあミニッツの方に詳しくあるのですが、実際は(たぶん0.10%までの)利下げの可能性を思いっきり議論していたという事になっていて、経済が見通し通りだったら年内にその水準まで下げるのが妥当でしょうという話になっている、というナンジャソラという話になっておりまして、そらそうなったら買入の札入らないわという話だし、だったら何で途中で止めたんじゃという話でもあったりするのですが、その辺の詳しいネタはまた続きで。




2016/08/14

お題「展望レポート基本的見解逐語比較シリーズ(虫干しネタ)」

結局原稿は日曜に作りましたがまとめて更新しているので月曜の朝と変わらん。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1607a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1604a.pdf(前回)

○物価の所は予想インフレの話が大きく変わっています

・見通しの部分はまあ良いとしまして(と言いつつ引用はする)

ということで先行き物価ですが最初の所だけ6月声明文も比較。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160616a.pdf(6月声明文)

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)

『消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(6月声明文)

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)

どうしてこうなるのという感じですが変わらずということで。勿論経済対策と今回の追加緩和で盛っているのですけどね。

『この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格の寄与度は、現在の−1%強から剥落していくが、2016 年度末まではマイナス寄与が残ると試算される。この前提のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」である2%程度に達する時期は、中心的な見通しとしては 2017 年度中になるとみられるが、先行きの海外経済に関する不透明感などから不確実性が大きい。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる。』(今回)

『この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格の寄与度は、現在の−1%強から次第に剥落していくが、2017年度の初めまではマイナス寄与が残ると試算される。この前提のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」である2%程度に達する時期は、2017 年度中になると予想される8。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる。』(前回)

原油価格の前提は今回が45ドル→50ドルに向けて上昇、前回が35ドル→40ドル台後半という図になっているので、原油価格のマイナス寄与の継続期間を短くしています。その結果・・・・・

『今回の物価見通しを従来の見通しと比べると、成長率が上振れる一方、為替円高や中長期的な予想物価上昇率の改善が後ずれしていることなどにより、2016 年度について下振れているが、2017 年度、2018 年度については概ね不変である。』(今回)

『2017 年度までの見通しを従来の見通しと比べると、成長率の下振れや賃金上昇率の下振れなどにより、2016 年度について下振れている。』(前回)

ということですが、先ほどの所にあるように「先行きの海外経済に関する不透明感などから不確実性が大きい」ってのを入れている訳ですな。


・背景説明:需給ギャップは経済対策で盛るとな

『こうした見通しの背景として、物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、新興国経済の減速を背景に製造業の設備稼働率の改善が遅れる一方、労働需給の引き締まりは続いており、全体として横這い圏内の動きとなっている7。』(今回)

『こうした見通しの背景として、物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、新興国経済の減速を背景に製造業の設備稼働率の改善が遅れる一方、労働需給の引き締まりは続いており、全体として横這い圏内の動きとなっている9。』(前回)

同じとな。

『先行きは、経済対策の効果もあって、失業率が低下するなど、労働需給の引き締まりは続き、そうしたもとで、パート時給をはじめとする賃金への上昇圧力は強まっていくとみられる。設備の稼働率も、輸出・生産が持ち直していくに伴い、再び上昇していくと考えられる。このため、マクロ的な需給バランスは、本年度末にかけてプラスに転じていくと見込まれる。すなわち、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていくと予想される。』(今回)

『先行きは、失業率が緩やかに低下するなど、労働需給の引き締まりは続き、そうしたもとで、パート時給をはじめとする賃金への上昇圧力は強まっていくとみられる。設備の稼働率も、輸出・生産が持ち直していくに伴い、再び上昇していくと考えられる。このため、マクロ的な需給バランスは、本年度後半以降、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要による振れを伴いつつも、緩やかにプラス幅を拡大していくと見込まれる。すなわち、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていくと予想される。』(前回)

経済対策で盛っているのですが、需給ギャップがプラスになる時期は遅れているんですよね。


・背景説明:予想物価上昇率に関する部分が・・・・・・・・・

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。とくに、予想物価上昇率に関するマーケット関連指標やアンケート調査結果は、低下している。その背景としては、実際の消費者物価が1年以上にわたって前年比0%程度で推移したため、その影響を受ける形で、予想物価上昇率が低下したものと考えられる(予想物価上昇率に関する「適合的な形成メカニズム」)。また、このところの個人消費の弱めの動きを背景に、新年度入り後の価格改定においては、食料工業製品や耐久消費財など「財」を中心に改定を見送る動きがみられる。』(今回)


『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。すなわち、予想物価上昇率に関するマーケット関連指標やアンケート調査結果は、このところ弱含んでいる。一方、企業は、昨年度以降、エネルギー価格の下落から総合ベースの消費者物価上昇率が低迷するなかにあっても、前向きな価格設定スタンスを維持しており、消費者も、雇用・所得環境の改善などを受けて、価格改定を受容しているとみられる。こうしたもとで、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価の前年比は、30 か月連続でプラスを続けており、最近では1%を上回る水準で推移している。この間、今年の労使間の賃金交渉においては、3年連続でベースアップが実現する見込みにあるものの、総合ベースの物価上昇率の低迷などを背景に、改定率は、大企業を中心に昨年を幾分下回った模様である。もっとも、賞与などによる収益の還元が行われているほか、労働需給の引き締まりを背景に、中小企業においても賃上げの動きが拡がっている。こうしたことを踏まえると、企業収益から雇用者所得への波及は維持されており、賃金の上昇を伴いつつ、物価上昇率が緩やかに高まっていくというメカニズムは着実に作用していると考えられる。ただし、企業収益が過去最高水準で推移しており、失業率が3%台前半まで低下していることとの対比でみると、これまでのところ賃金の改善の程度が鈍く、労働分配率も低下傾向を続けている点には留意する必要がある。』(前回)

こうやって前回と比較すると前回の方が往生際が悪いという気もしますが(^^)、「とくに、予想物価上昇率に関するマーケット関連指標やアンケート調査結果は、低下している」という所から始まって、「適合的な期待インフレのい形成メカニズム」への言及(だったら何でETFの買入拡大をすると効くのか意味不明にも程がありますが)が来て、「価格改定においては、食料工業製品や耐久消費財など「財」を中心に改定を見送る動きがみられる」と来ていまして、前回の展望レポートで色々と往生際が悪かった部分が全部引導を渡されているようにしか見えませんが、何故かメカニズムは維持されているというこの謎(−−;


ということでその往生際の悪さが先行きの方に含まれているのです。

『先行きについては、前述の見通しに基づけば、個人消費の持ち直しに伴って、企業の価格設定スタンスは再び積極化していくとみられる。賃金設定スタンスについても、今春の賃金改定交渉においては、伸び率は昨年を下回ったものの、3年連続でベースアップが実現したほか、中小企業にも賃上げの動きが拡がっている。さらに、労働需給の影響を強く受ける傾向のある非正規労働者の賃金は、はっきりと上昇している。こうした点を踏まえると、企業収益から雇用者所得への波及は維持されており、賃金の上昇を伴いながら、物価上昇率が緩やかに高まっていくというメカニズムは、引き続き作用していると考えられる。』(今回)

結局前回の所で現状認識として往生際が悪かったところが結局先行き見通しに入る(そらまあ入らないとメカニズムが維持できませんからね)という結局往生際が悪いというこの図。

『また、今後、エネルギー価格による下押しの剥落もあって、実際の物価上昇率は高まっていくと予想される。以上を踏まえると、中長期的な予想物価上昇率は、日本銀行が2%の「物価安定の目標」の実現を目指して「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで上昇傾向をたどり、2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。』(今回)

『先行きについては、日本銀行が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。こうしたもとで、企業の価格・賃金設定スタンスは積極化していくと考えられる。』(前回)

もうさ、「また、今後、エネルギー価格による下押しの剥落もあって、実際の物価上昇率は高まっていくと予想される」とまで言う位なら強引に円安に振るとか原油買うとか誰得物価上昇を無理繰りやったら如何でしょうかと言いたくなりますが、そもそも物価上昇は国民生活の厚生を向上させるための手段であって目的ではないので、原油先物とか買うとかそういう狂気の沙汰はしないという理性だけは残っていて、まあ如何ともし難いので総括検証に至ったという話なのは評価したいが、しかしこの見通しは中々苦しい。


・背景説明:輸入物価は為替と商品価格次第の話なのでまあこんなもん

『第3に、輸入物価についてみると、原油価格をはじめとする国際商品市況の既往の下落は、当面、輸入物価を通じた消費者物価の下押し圧力となるが、その影響は減衰していく。この間、為替が輸入物価を通じて消費者物価にもたらす影響については、最近の円高もあって、価格上昇圧力を抑制する方向に作用すると考えられる。』(今回)

『第3に、輸入物価についてみると、原油価格をはじめとする国際商品市況の低迷が、輸入物価を通じた消費者物価の下押し圧力となる。この間、既往の為替円安による直接的な消費者物価の押し上げ効果は、次第に減衰していくとみられるが、マクロ的な需給バランスの改善や予想物価上昇率の上昇を通じた間接的な消費者物価の押し上げ効果は、より持続的なものと考えられる。』(前回)

まあここはこんなもん。



・上振れ、下振れ要因

つーことでこの物価の説明が苦しい話はさておきまして。『3.上振れ要因・下振れ要因』の『(1)経済情勢』に参ります。

『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、海外経済の動向に関する不確実性がある。英国のEU離脱問題を巡る不透明感が国際金融資本市場や世界経済に及ぼす影響には注意が必要である。また、中国をはじめとする新興国や資源国についても、先行き不透明感が強い。さらに、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融資本市場に及ぼす影響、金融セクターを含む欧州債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、地政学的リスクなどもリスク要因として挙げられる。こうした海外経済や国際金融資本市場の動向については、わが国の輸出入を通じた直接的な影響に加え、企業や家計のコンフィデンスに影響を与え、設備投資や消費などの支出行動に抑制的に作用する可能性に注意する必要がある。』(今回)

『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、海外経済の動向に関する不確実性がある。中国をはじめとする新興国や資源国については、資源価格低迷の影響もあって、不透明感が強い。そうしたもとで国際金融資本市場は不安定な動きが続いており、企業コンフィデンスなどに影響を及ぼす可能性については引き続き留意する必要がある。また、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融資本市場に及ぼす影響、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、地政学的リスクなどもリスク要因として挙げられる。』(前回)

ブリクジットの話があるのは今回のお約束なのでまあ良いとしまして、米国の金融政策がどうのこうのというのが入っていたり、欧州債務問題の金融セクターに対する影響とか、色々と海外の話を盛り込んだうえで、最終的に「設備投資や消費などの支出行動に抑制的に作用する可能性」と入れていて、いやそんなに効くのかよとは思うのですが、まあここが今回のメインなのでそういう扱いになるわなという感じで。

『第2に、企業や家計の中長期的な成長期待は、規制・制度改革の今後の展開や企業部門におけるイノベーション、家計部門を取り巻く雇用・所得環境などによって、上下双方向に変化する可能性がある。この点、企業が高水準の収益に伴う潤沢なキャッシュフローをより効率的に設備・人材投資などに活用していくことが期待される。』(今回)

『第3に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下するような場合には、人々の将来不安の強まりや経済実態から乖離した長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道筋に対する信認が高まり、人々の将来不安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。』(今回)

という第2、第3に関しては前回の第2に消費増税の駆け込みと反動が入っているので4つになっているのですが、こちらは同じになっていますので前回分の引用は割愛します。


・物価の所は説明がこちらも苦しい

経済の方では海外のリスクがたくさんありますよ、という有る意味順当(今回それを理由に追加をしているのですから)な内容ですが物価の方は先程の所と同様にこちらも苦しい

『それ以外に物価の上振れ、下振れをもたらす要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。中心的な見通しでは、先行き個人消費の持ち直しが明確になるにつれて、企業の価格設定スタンスも再び積極化し、労働需給の改善に伴う賃金の上昇が続くことと相俟って、中長期的な予想物価上昇率が「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく姿を想定している。しかしながら、既往のエネルギー価格下落の影響から、総合ベースでみた消費者物価の伸びが当面低位で推移することが、「適合的な形成メカニズム」を通じて予想物価上昇率の伸びをどの程度抑制するかという点や、海外経済を中心とした景気の先行きに関する不透明感が、企業の価格・賃金設定スタンスにどのような影響を与えるかという点を巡っては、不確実性がある。』(今回)

『それ以外に物価の上振れ、下振れをもたらす要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。中心的な見通しでは、賃金の上昇を伴いながら実際の物価上昇率が高まっていくなかで、人々の予想物価上昇率も一段と上昇し、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく姿を想定しているが、エネルギー価格の低迷により、総合ベースでみた消費者物価の前年比が高まりにくい状況が長引くもとで、賃金や予想物価の上昇ペースにどのように影響していくか不確実性がある。この点では、企業の本年度における価格改定が、賃金の動向も受けた消費者の値上げに対するスタンスも踏まえつつ、どのように進んでいくかが重要である。』(前回)

こうやって比較するとどう見ても前回の下振れ懸念が顕在化しているようにしか見えませんですし、今後どうやったらこのメカニズムが復活するのやらとしか思えないので、まあ説明は相当苦しいですわな。

『第2に、マクロ的な需給バランス、とくに労働需給の動向がある。中心的な見通しでは、近年の高齢者や女性による労働参加の高まりや最近みられているパート労働の正規雇用化が労働供給を下支えしていくことを前提としているが、この点を巡っては上下双方向の不確実性がある。』(今回)

『第3に、物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度が挙げられる。とくに、公共料金や一部のサービス価格、家賃などは依然鈍い動きを続けており、先行きも消費者物価の上昇率の高まりを抑制する要因となる可能性がある。』(今回)

『第4に、原油価格といった国際商品市況や為替相場の変動などに伴う輸入物価の動向や、その国内価格への波及の状況によっても、上振れ・下振れ双方の可能性がある。』(今回)

というのは今回も同じです。


・金融政策運営に関しては

つーことで2つの柱の点検まで来ました。

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、わが国経済は、2017 年度中に2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断される。』(今回)

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、わが国経済は、2017 年度中に2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断される。』(前回)

ワロタとしか申し上げようがないですな。

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクが大きい。物価の中心的な見通しについては、先行きの海外経済に関する不透明感や、そのもとでの中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きく、下振れリスクが大きい。』(今回)

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクが大きい。物価の中心的な見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きく、下振れリスクが大きい。』(前回)

海外のせいにしていますが既に予想物価上昇率の動向があばばばばーにしか見えませんが大本営発表なので仕方ありません。


『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていないほか、低金利に伴う金融機関収益の下押しによって金融仲介が停滞方向に向かうリスクについても、金融機関が充実した資本基盤を備え、前向きなリスクテイクを継続していく力を有していることから、大きくないと判断している。もっとも、政府債務残高が累増するなかで、金融機関の国債保有残高は、全体として減少傾向が続いているが、なお高水準である点には留意する必要がある。』(今回)

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていないほか、低金利に伴う金融機関収益の下押しによって金融仲介が停滞方向に向かうリスクについても、金融機関が充実した資本基盤を備え、前向きなリスクテイクを継続していく力を有していることから、大きくないと判断している11。もっとも、政府債務残高が累増するなかで、金融機関の国債保有残高は、全体として減少傾向が続いているが、なお高水準である点には留意する必要がある。』(前回)

はあそうですかという感じですが何故か全文一致。

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる。
』(今回)

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる。
』(前回)

ということですが総括検証するんですよね、ということでまあ今回の展望レポート(2週間も引っ張ってスイマセン)はどう見ても物価メカニズムの所の説明が苦しいなんてもんじゃないから、そらまあ総括検証せざるを得ませんな、って話になるんしょう。

#引用大会でどうもすいません









2016/08/12

お題「遅れていた30年が急に復活とな/展望レポート基本的見解の逐語確認シリーズ」

ほうほう。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201608/CK2016081102000238.html
<戦後71年目の経済秘史> (上)「禁じ手」再び待望論
2016年8月11日 朝刊


○市場世間話

8月のこんな所に祝日を入れるからもうねという感じですがw

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1AR26C
Markets | 2016年 08月 10日 15:20 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、長期金利-0.105%に低下

『<15:16> 国債先物は続伸、長期金利-0.105%に低下

長期国債先物は続伸。前日の海外市場で、英中銀が9日に実施した国債買い入れで未達となり、グローバルに金利低下圧力がかかったことを受けて買いが先行。日銀が中期・超長期を対象に国債買い入れを通告したこともサポート要因となった。後場は日銀オペの結果を確認後に海外勢の需要を巻き込んで上昇幅を広げた。』(上記URL先より、以下同様)

後講釈も何か良く分からん事になっていますが、前場は引き続き30年以降がやたら甘いという前日の動きを継承した展開で、後場途中から突如強くなって終わってみれば先物17銭高で10年2毛5糸強の20年以降4毛5糸強の引け(40年何か6強とかやってた気もするが)というブルフラットに。

『現物債は、超長期ゾーンを中心に利回りに低下圧力がかかった。日銀オペで残存10年超25年以下の結果が強めだったことで買い安心感が広がり、年金勢などからの需要が強まったとみられている。中長期ゾーンもしっかり。長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比17銭高の151円70銭。10年最長期国債利回り(長期金利)が前営業日比2bp低下のマイナス0.105%。』

輪番直後に強くなった訳ではないので、まあ何ちゅうかこの前からの流れで「ヤバいと言われていた30年入札が特に流れもしなかった」→「30年は買わないけれども長期とか20年とかまでなら買う人が登場」→「30年だけ置いて行かれているのを見てそろそろ買っても良いんじゃないのとなって買い入る」という流れのような気がするのですが、それにしてもちょっと投資家買いらしきものが入るといきなりどどーんと動くというこの流動性ナッシング相場あばばばばーという所ではあります。

まーそうは言いましても7月の追加緩和期待(懸念?)でのロング上で捕まっている人もいるでしょうし、下を調子に乗って叩いて捕まった人がどのくらい居るのかは分からんけど、買いたいけど買えなくてあばばばばーとかやっていた人がこの下げの間でそんなに買っている感じでもない(直近は買いがあったんでしょうけど戻りも早いですからねえ)ですし、一旦一方への方向性というのは一段落したのかも知れませんが、ワケワカラン動きをするか全然動かないかという感じになるんでしょうな。

#なお本日は動かない模様ですが誰かが急に何かやったらその通りに動く、というかポジション組むのにコストハチャメチャ掛かりそうな

『短期金融市場では、無担保コール翌日物はマイナス0.015%─マイナス0.06%付近で取引された。15日に準備預金の積み最終日を控えて一部から資金調達意欲がしっかりと示されているが、取引レートは前日同様に幅広い。レポ(現金担保付債券貸借取引)GCT+1レートはマイナス0.086%とマイナス幅を拡大。TIBOR(東京銀行間取引金利)3月物は0.058%と横ばい。共通担保資金供給オペは札割れ。6日物の米ドル資金供給オペは応札がなかった。新発3カ月物国庫短期証券(TB)の入札結果で平均落札利回りはマイナス0.2224%となり、前回からマイナス幅をやや拡大した。業者間取引で6カ月物TBは弱含み。ユーロ円3カ月金利先物は小動き。』

ということで短期ですが、最近はマクロ加算の所で帳尻を合わせようという積み進捗操作が起きていて、まあ現状だと「積み進捗気味に推移させて後で減らして調整」するよりは「積み進捗を若干程度遅らせておいて後から増やして調整」の方が(全体としては金が余っていてマイナス金利適用の人がいるのだから)操作しやすいでしょうからそらそうよという感じで、コールだけは何となくそういう感じでの価格が付くと言えばつくのだがこれを市場機能というのかは謎で、コールがベースになって他の金利体系がついているというのならそらもちろん市場機能なのですが、今となってはコールレートが幾らだから短国のレートが幾らだとか、CPのレートが幾らだとか、別に関係ない状態になっている(1ミリも関係ないとは言わないけれども)のであって、そういうのは市場機能があるとは言わないと思うのね。単なるインターバンクの帳尻調整だけで閉じている世界であって、別にそのレート形成が市場全体の足元の事実上のリスクフルーレートとなって他のレート形成に影響を与える訳ではない訳ですからね。

ちなみに短国の方は最近イマイチさんな中で、ここもと2年とか5年がちゃっかり復活して2年がまたまた▲20bpよりも低くなってたりしていますな。



○おう夏休み(ワシは夏休みではない)ですから夏休み用読み物じゃ

と言いましても大体こんなのしか出さないですし、以前も紹介したかもしれませんけれども重複を辞さずに夏休み用読み物をご紹介。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2006/index.htm/
金融政策決定会合議事録 2006年

ってあるけど1998年以降のが読めるのでとりあえず全部読んでいると夏休みが終わること請け合い。でまあ毎度思うのですが、これ画像ファイルなのでネタにするときに文字起こししないといけなくて読みながら文字起こしになるから楽しいのですが3ページも打っているとさすがに手が疲れるわ目がショボショボするわなのだが議事録書籍にして刊行してくれませんかねえ。


http://www.boj.or.jp/about/outline/history/hyakunen/
日本銀行百年史

これまた鉄板ネタになりますが、多分これを全部読んでいると夏休みが以下同文という事で。

http://www.boj.or.jp/research/past_release/index.htm/
金融・経済情勢等に関する過去の資料

とりあえず昔の調べ物をするのにどうぞ、と言いたいところですが内容が細かすぎるので調べ物に使うよりはやはり読み物でしょうな。なお夏のこの時期になりますと
http://www3.boj.or.jp/josa/past_release/mh02_001.pdf(PDF画像ファイルで重いので注意)

を読みたくなりますな、うんうん。




○展望レポート基本的見解の確認という虫干しネタ(成敗できなかった分は週末に更新しておくが月曜のケツに載せておく)


・「中心的な見通し」の確認である

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1607a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1604a.pdf(前回)

まずは『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し』の『』から。

・経済先行き判断の手前は下げ

まずは『(1)経済情勢』ですが、先行き判断の総括部分は6月声明文とも比較します。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160616a.pdf(6月声明文)

『先行きのわが国経済を展望すると、暫くの間、輸出・生産面に鈍さが残り、景気回復ペースの鈍化した状態が続くとみられる。その後は、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな増加に向かうことから、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。見通し期間中の成長率は、潜在成長率を上回って推移すると予想される4。』(今回)

『先行きのわが国経済については、当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられるが、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加するとみられる。このため、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。』(6月声明文)

『先行きのわが国経済を展望すると、当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられるが、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加するとみられる。このため、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。』(前回)

つーことで、前回堤防レポートと6月声明文は同じなのですが、今回の展望レポートでは、「気回復ペースの鈍化した状態が続く」と下げていて、海外経済に関しても新興国だけではなくて海外経済にしているのは鏡の部分と同じ。まあブリクジットを理由に追加緩和しているのですからそうなりますかな。

でもって輸出に関しても従来は「緩やかな増加する」となっているのが「緩やかな増加に向かう」とヘッジクローズ成分が高まっていまして、基本的な見通しは下がっているのですよね〜。


・背景の所では海外を下げて公共投資を上げているというまあ順当な内容

『見通しの背景にある前提は、以下のとおりである。』という所になりますが。

『第1に、日本銀行が、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続するもとで、実質金利は見通し期間を通じてマイナスで推移するなど、金融環境はきわめて緩和した状態が続き、景気に対し刺激的に作用していくと想定している5。』(今回)

『第1に、日本銀行が、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続するもとで、実質金利は見通し期間を通じてマイナスで推移するなど、金融環境はきわめて緩和した状態が続き、景気に対し刺激的に作用していくと想定している6。』(前回)

脚注には潜在成長率の推計値がありますが、相変わらず0%台前半となっています。ただまあこの前ネタにした三面等価の観点から別途推計したGDPっての見ると本当に潜在成長率がこの水準なのか(もうちょっと上の可能性が存在)というのもあります。


『第2に、海外経済については、幾分減速した状態が暫く続くとみられ、英国のEU離脱問題などを巡って不透明感も強い。しかし、先行き、先進国が着実な成長を続けるとともに、その好影響の波及や政策効果により新興国も減速した状態から脱していくとみられることから、緩やかに成長率を高めていくと予想している。』(今回)

『第2に、海外経済については、幾分減速した状態が当面続くとみられるが、先進国が堅調な成長を続けるとともに、その好影響が波及し新興国も減速した状態から脱していくとみられることから、緩やかに成長率を高めていくと予想している。』(前回)

ということで、海外経済については「当面」が「暫く」になって減速の期間が延びて、ブリクジットを入れているのは追加緩和(という名の下でETFだけしか買わなかったわけだが)したから仕方がありませんが、先進国が回復して新興国が上がるという見通しでしたが、新興国の先行きに関しても「政策効果」とか出ていまして、まー念頭には中国の経済対策があるのでしょうけれども、益々他力本願チックになっているのが味わい深い。


『第3に、公共投資は、このところ下げ止まっており、先行きは、2016 年度予算の早期執行や近日中に取りまとめられる予定の経済対策の効果などから増加に転じるとみられる。見通し期間の中盤以降は、オリンピック関連投資の本格化もあって、高めの水準を維持すると想定している。』(今回)

『第3に、公共投資は、緩やかな減少傾向にあるが、先行きは、2016 年度予算の早期執行の影響などから徐々に下げ止まり、見通し期間の中盤以降は、オリンピック関連投資の本格化もあって、横ばい圏内の動きになると想定している。』(前回)

公共投資で盛るしかありませんので致し方なしですが盛大に強くなっていますね。


『第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどが続くとともに、デフレからの脱却が着実に進んでいくにつれて、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』(今回)

『第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどが続くとともに、デフレからの脱却が着実に進んでいくにつれて、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』(前回)

こちらは毎度同じですな。


・年度展開を確認

まずは今年度見通し。

『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2016 年度については、輸出は、暫く鈍さが残るとみられるが、その後は、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな増加に向かうと考えられる。』(今回)

『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2016 年度については、輸出は、当面鈍さが残るとみられるが、その後は、新興国経済が減速した状態から脱していくことから、緩やかな増加に向かうと考えられる。』(前回)

輸出の先行きは下がっています。

『また、企業収益は、前年度に比べて減益となるものの、非製造業を中心に高水準で推移するとみられる。そのもとで、設備投資は、金融緩和に伴う実質金利の一段の低下効果もあって、増加基調を続けると考えられる。』(今回)

『また、企業収益は、非製造業を中心に増益基調を続け、過去最高水準で推移するとみられる。そのもとで、設備投資は、金融緩和に伴う実質金利の一段の低下効果もあって、増加基調を続けると考えられる。』(前回)

企業収益に関して下がっていますが、実質金利が下がって本当に設備出るんでしたっけという感じはしますが、ここの見通しは相変わらずでございます。

『個人消費は、株価下落に伴う負の資産効果もあってこのところ弱めの動きがみられるが、雇用・所得環境の着実な改善が続くことなどから、緩やかに増加すると予想される。この間、公共投資も、2016 年度予算の早期執行や近日中に取りまとめられる予定の経済対策の押し上げ効果などから、緩やかな増加に転じると考えられる。こうした内外需要のもとで、成長率は、潜在成長率を上回ると予想される。』(今回)

『個人消費も、労働需給の引き締まりが続くなど雇用・所得環境が着実に改善していくことや、エネルギー価格下落による実質所得の押し上げ効果が働くことなどから、緩やかに増加すると予想される。また、年度後半にかけては、2017 年4月に予定される消費税率引き上げ前の駆け込み需要が国内民間需要を押し上げると見込まれる7。こうした内外需要のもとで、成長率は、潜在成長率を上回ると予想される。』(前回)

ここで株価下落で負の資産効果というのが入っているのがETF買入という結果からの逆算的な香りがしますがそれは兎も角として、今回の説明って「労働需給の引き締まりが続くなど」ってのが抜けているのは字数の関係なのか、それとも完全雇用状態になってきたという事なのか。あと「エネ価格が下がって実質所得がウマー」というのも抜けていて、エネ価格のマイナス寄与自体は今年度も続くという計算に成って居る筈なのにこれまた字数の問題なのか他の意図があるのかという感じでちと微妙。消費増税の駆け込みが抜けたのは当然。


2017年度以降は以下の通り。

『2017 年度から 2018 年度にかけては、輸出は、海外経済の成長率の高まりを背景に緩やかな増加を続けると考えられる。内需面では、設備投資は、緩和的な金融環境や成長期待の高まり、オリンピック関連需要の本格化などを受けて緩やかな増加基調を維持すると予想される。個人消費も、雇用者所得の改善を背景に、緩やかな増加を続けると予想される。この間、公共投資は、近日中に取りまとめられる予定の経済対策による押し上げ効果などから 2017 年度にかけて増加し、その後は、経済対策の効果は減衰するものの、オリンピック関連需要もあって、高めの水準で推移すると考えられる。こうしたもとで、成長率は、潜在成長率を上回ると予想される。


この間、潜在成長率については、見通し期間を通じて緩やかな上昇傾向をたどり、中長期的にみた成長ペースを押し上げていくと考えられる。』(今回)

『2017 年度については、家計支出は駆け込み需要の反動の影響を受けるものの、輸出が、海外経済の成長などを背景に緩やかな増加を続けるとともに、設備投資も、緩和的な金融環境や成長期待の高まり、オリンピック関連需要の本格化などを受けて緩やかな増加基調を維持すると予想される。こうしたもとで、成長率は、潜在成長率を下回るものの、若干のプラスを維持すると予想される。

2018 年度については、輸出が緩やかに増加するとともに、国内民間需要も、駆け込み需要の反動の影響が剥落することもあって、増加すると考えられることから、成長率は、再び潜在成長率を上回ると予想される。』(前回)

つーことで、輸出に関しては緩やかな増加を続ける「と考えられる」とか微妙なヘッジが入っていて、雇用者所得の改善という文言が入ってみたり(従来の見通しでは消費の所で消費増税の駆け込みと反動のファクターが大きいから所得の改善云々はスルーしたんだと思います)の変化はありますが、一番の変化は公共投資の所ということですかそうですか。


ということでして、まあ確かに成長率見通しが上がってはいるのですが、鏡やら出来上がりの見落とし数値やらで示されているほどに威勢が良いものでもなくて、公共投資の上乗せ部分一本足打法(しかも文章的に見た場合そこまで威勢が良いという話でもない)という形になっていまして、基本的にこの展望レポートって「見通し数値」→「基本的見解の冒頭(概要)部分」→「基本的見解」→「背景説明を含む全文」という形で大本営発表成分が抜けてくるというのが仕様になっていまして、この大本営発表成分については成分が強い時と強くないときが当然のごとくあるのですが、まあ大本営成分が強まればそれだけ願望レポート化あるいはただのプロパガンダチラシ化するというものであります。

でもって次が物価でして、そこの予想物価上昇率に関する記述の所がオモロイのですが、別に出し惜しみしている訳ではなく単純に時間の段取りが悪いだけという理由(お前昨日休みなのに何やっていたんだと言われるとぐうの音も出ない)で以下土日(たぶん日曜日だが時間は不定なので月曜日に見てちょ)にダラダラと続きを投下します。




2016/08/10

お題「30年入札で止まったと言っても30年は甘いとか/BOEからドタバタ感/虫干し企画の展望レポートネタ(その1)」

明日が祝日だという認識が今月になるまで無かった・・・・・・・・・・・・orz

○30年国債入札まずまず→30年以外が強いとな

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1AQ29P
Markets | 2016年 08月 9日 15:10 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅反発、長期金利-0.085%に低下

昨日は米金利が上がったからなのか30年国債入札大丈夫かということなのか知らんですけれども下がってスタートして、先物151円割れたり10年カレントが▲3bp水準まで叩かれるとか、おーこれは夢の10年プラス金利復活(というよりはマイナス金利が悪夢なのだが悪夢も長引くと訳分からなくなる)まであと3毛じゃあああああとか思っていたらさすがに切り返し。

ということで前場引けでは先物は戻って16銭上がって30年は前日比1甘〜1.5甘位で入札を迎えた訳ですが、結果出る前から後場寄りで更に上昇して先物30銭高レベルになり、落札結果もまず順調。

・・・・・・とまあここまでは良いのですが、その後30年のセカンダリーがイマイチなのか先物とかジリジリ下がってきて、「入札前にこりゃ大丈夫となって入札で突っ込んだら結局いらない子になってしまい却って無駄なポジションが発生」というパターンかよと思っていたら結局後場途中から先物とか中長期がソイヤソイヤと強くなって終了の図。

『<15:08> 国債先物は大幅反発、長期金利-0.085%に低下

長期国債先物は大幅反発。朝方は30年債入札に備えた調整圧力で売りが先行し、一時150円90銭と8月2日以来1週ぶりの水準に下落した。前場終盤にかけて順調に入札を通過すると見た市場参加者の買い戻しから急反発した。後場に入り、入札を無難にこなすと、国債先物は上昇幅を一気に拡大し151円59銭まで買い進まれた。

現物債も入札結果発表後に地合いが大きく変わった。入札を前にした午前の取引では、超長期債利回りは約4カ月ぶりの水準に上昇していたが、入札を無難にこなすと年金勢や生保など投資家の押し目買いから利回りは低下基調になった。長期金利も一時マイナス0.030%まで上昇する場面があったが、国債先物が強含むと利回りに強い低下圧力がかかった。中長期ゾーンには国内銀行勢主体の需要が入ったとの観測が出ていた。』(上記URL先より)

という後講釈になっているのですが、現実問題としては20年が1.5毛強の0.305%で引けていて、30年が1甘の0.425%で引けている(5年10年は3毛強で先物は35銭高なので7年最強)という図になっておりまして、超長期が弱いどころか20年30年がツイストスティープしとるやないですかナンジャコラという展開で、そらまあ後付で適当な講釈をしようと思えば、「30年入札がそこそこの結果で終了した」→「ということはそろそろ月末からの下げ相場も一旦止まり所になってきましたね」→「じゃあとりあえず買えるところを買いますか」となって、ゼロ近辺に戻ってきた10年(結局また▲8.5bpになっちゃいましたが)とかこの前まで利下げを盛大に織り込んでいたのが剥がれて▲10bp台まで戻ってきた(ので利下げヘッジでは買い易くなった)5年とかに買いが入ったけど30年は別に買いが来なくてあばばばばー、とまあ見てきたかのような後講釈は可能ですけれども、なんちゅうかワケワカランですな。30年入札堅調でも売れていなかったら(入札分何か別のゾーンでヘッジしたらヘッジだけ見事に食らうという泣ける展開)それは落ち着いたというのか???という感じではあるのですががががが。

まあこれで来週火曜日に超長期の流動性供給入札がありますが、大物入札は18日の5年と23日の20年まで若干間がありますので、だから落ち着くでしょうという事ではあるのですが、30年入札やって30年だけ置いてかれて相場反発というのもうーむという感じですな。まーヘリマネだの40年増発だのの余波と言ってしまえば言えないこともないけど・・・・・・


○BOEが色々と盛り上がっているようなので夏休みの課題にしよう

なおアタクシに夏休みは無いので結局土日祝日の課題になる模様orzorz

ということで・・・・・・・・・・・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1AQ4G9
Investing | 2016年 08月 10日 02:40 JST
英中銀国債買い入れ、2日目は不調 初の未達

『[ロンドン 9日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)が量的緩和(QE)策の一環として9日実施した償還期限が15年を超える国債の買い入れで、買い入れ額は11億1800万ポンドと、予定の11億7000万ポンドに満たなかった。』(上記URL先より)

(;∀;)イイハナシダナー

『買い入れ額が予定に届かなかったのは中銀が国債買い入れを開始した2009年以来初めて。これを受け、英20年債 利回りは1.201%、英30年債 利回りは1.362%と、ともに過去最低水準を更新した。5年債と10年債の利回りも過去最低を更新している。中銀は4日、国債買い入れ枠をこれまでの3750億ポンドから4350億ポンドに拡大することを決定し、拡大分の600億ポンドの買い入れを8日に開始。8日に実施した11億7000万ポンドの3─7年債に対しては約4倍の引き合いがあるなど、買い入れ再開の滑り出しは好調だった。中銀はこの日の買い入れが5200万ポンドの未達となったことについて、10日に対応策を発表するとしている。』

とまあそんな感じで大変に香ばしい展開になっておりますし、

http://jp.reuters.com/article/forex-london-idJPKCN10K1OJ
Business | 2016年 08月 10日 00:50 JST
ポンド/ドルが1カ月ぶり安値、英中銀政策委員の緩和拡大発言で

『[ロンドン 9日 ロイター] - 9日のロンドン外為市場は、英ポンドが対ドルで、7月11日以来約1カ月ぶりの安値をつける場面があった。英中銀金融政策委員会のマカファーティー委員が、景気悪化が深刻化すれば、量的緩和の拡大が必要になるとの見方を表明、ポンドの重しとなっている。』(上記URL先より)

とまあ追加緩和実施以降もBOEの高官がどうみてもポンド安狙いだろという動きをああでもないこうでもないとやっていたりと、BOEの方が色々と焦げてきた感がありまして、ジャパンの方ばかり見ていないでこれは英国の方も色々と面白い事になると思いますので夏休みの課題、と言いつつ夏休みじゃないのですが(笑)。


○えー2週間も経過して何を今更ですが展望レポート基本的見解をじっくりと比較する企画(その1)

どうせ1回で終わらないので(その1)とかになるが、成敗するのに手間暇かかるから続きは休み中にやりますが(休業日にアップした場合は翌日の朝の駄文のケツにつけるので無駄に長くなります)、いつもだと直ぐにやる企画が諸般の事情で遅延して恐縮至極。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1607a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1604a.pdf(前回)

・まずは鏡から

最初の基本的見解概要である。

『わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(前回)

という現状認識の総括判断は同じですが。

『先行きを展望すると、暫くの間、輸出・生産面に鈍さが残り、景気回復ペースの鈍化した状態が続くとみられる。その後は、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな増加に向かうことから、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。』(今回)

『2018 年度までを展望すると、当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられるが、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加するとみられる。このため、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。』(前回)

先行きがボコスコ下がっていまして、最初の鈍さが残る期間が「当面」→「暫くの間」で期間が長くなり、「続くとみられる」ともしていますな。でもって海外経済に関しても従来は「新興国の減速が回復」という見込みだったのが、「海外経済の減速が回復」ということになっていて、何気にここも弱くなっている上に、輸出に関しても「緩やかに増加するとみられる」→「緩やかな増加に向かう」という表現で、微妙にここも自信無しという総括判断。

・・・・・・・つまりですな、結論部分では「成長率見通し上方修正、物価見通しは相変わらずの強気のまま」となっているのですが、この景気判断を見ると何でそうなるの???という話な訳で、つまりは政府の経済対策で思いっきり下駄を履かせているというお話で、それってあーたサステイナブルな話じゃないのではないでしょうかと思うのですけどね。恐らく執行部のお絵かきとしては「財政政策で持ち上がった需要が民需にバトンタッチされる」という話になると思うのですが、過去それがワークしてた時期ってあんまり無かった筈で、何で今回そういう話になるのかと小一時間問い詰めたい訳で。

でもって物価。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格の寄与度は、現在の−1%強から剥落していくが、2016年度末まではマイナス寄与が残ると試算される2。この前提のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」3である2%程度に達する時期は、中心的な見通しとしては 2017 年度中になるとみられるが、先行きの海外経済に関する不透明感などから不確実性が大きい。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格の寄与度は、現在の−1%強から次第に剥落していくが、2017 年度の初めまではマイナス寄与が残ると試算される2。この前提のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」3である2%程度に達する時期は、2017 年度中になると予想される4。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる。』(前回)

足もとの数値が下がっているので「小幅のマイナス」が入っていますが、エネルギー価格の寄与に関しては原油価格が上がっているので若干前倒しで影響消滅となりますが、それ以外には見通しに変更なし、となっているのですが、今回は「先行きの海外経済に関する不透明感などから不確実性が大きい。」というのを入れていて、だから追加緩和という話をしているのですが・・・・・・・・


従来との比較。

『従来の見通しと比べると、成長率については、財政面での景気刺激策の効果もあって、見通し期間の前半を中心に上振れている。なお、2017 年4月に予定されていた消費増税の延期に伴い、駆け込み需要とその反動減は均される。物価見通しについては、こうした成長率の上振れの一方、為替円高や中長期的な予想物価上昇率の改善が後ずれしていることなどにより、2016 年度について下振れているが、2017 年度、2018 年度については概ね不変である。』(今回)

『2017 年度までの見通しを従来の見通しと比べると、成長率については、海外経済の減速に伴う輸出の下振れなどの影響から、幾分下振れている。物価見通しは、成長率の下振れや賃金上昇率の下振れなどにより、2016 年度について下振れている。』(前回)

>予想物価上昇率の改善が後ずれしていることなどにより
>予想物価上昇率の改善が後ずれしていることなどにより
>予想物価上昇率の改善が後ずれしていることなどにより

えーっと声明文とかでは毎度毎度「予想物価上昇率は全体として改善している」というような説明をしていて、しかもそれ3年以上そういう話をしている訳ですがどうなっているのでしょうか、というのもありますし、これ基本的見解の本文に入りますと明らかに「予想物価上昇率は短い期間の物では下がっている」という認識を示している訳でして、ここの「改善が後ずれ」という表現がもう既に大本営発表成分が高くて大変に香ばしいものを感じる訳ですが、「低下している」とかにした日には3次元追加緩和とかしなければいけなくなってしまうのでそこは誤魔化すというのは大人の対応ということですね!!!!!!!!!!!!


最後のもワロタ。

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる。』(今回)

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる。』(前回)

これ自体は全文一致なのですが、でも「総括的な検証」を行うんですよねということで苦笑を禁じ得ない訳でございますが、そういえば昨日の7月会合「主な意見」ではどこぞのジンバブエ大先生が「副作用という考えを持つのは間違い」というのって、そもそも論として金融政策運営の基本を分かっていないのですから、こういう人は政策委員として不適格だから放逐した方が良いと思うの。


・全体感について

最初の『1.わが国の経済・物価の現状』という本文の冒頭部分で本日は時間切れの所存(すいません)。これは6月声明文との比較もしないといけないので
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160616a.pdf
から(項番2)も比較します。

『わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(6月声明文)
『わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(前回)

ほっほーという感じですな。

『海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうしたもとで、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうしたもとで、輸出は持ち直しが一服している。』(6月声明文)
『海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうしたもとで、輸出は、足もとでは持ち直しが一服している。』(前回)

段々パッとしなくなっています。

『国内需要の面では、設備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。住宅投資は再び持ち直しており、公共投資は下げ止まっている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、地震による影響もあって、横ばい圏内の動きを続けている。企業の業況感は、総じて良好な水準を維持しているが、このところ慎重化している。』(今回)

『国内需要の面では、設備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。住宅投資は再び持ち直しており、公共投資は減少ペースが鈍化している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、地震による影響もあって、横ばい圏内の動きを続けている。』(6月声明文)

『国内需要の面では、設備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。一方、住宅投資はこのところ持ち直しが一服しており、公共投資も高水準ながら緩やかな減少傾向にある。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、横ばい圏内の動きを続けているが、足もとでは、地震による影響もみられる。企業の業況感は、総じて良好な水準を維持しているが、新興国経済の減速の影響などから慎重化している。』(前回)

内需の方は住宅が4月より持ち直し方向にしていて、今回は6月声明文よりも公共投資を持ち直し方向にしています。

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(6月声明文)
『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(前回)

ってのはいつも通り。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。』(6月声明文)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。』(前回)

ということで同じなのだが、この「このところ弱含み」っての3月の声明文にも入っている(その前は11月声明文以降に「このところ弱めの指標もみられているが」ってのがある)訳で、弱めの指標も見られるがもう3四半期継続して、ほぼ2四半期に渡って「このところ弱含み」となっているのに「やや長い目でみれば全体として上昇」って
幾ら大本営発表でも、さすがにそれはポツダム宣言受諾レベルではないかと小一時間ですな。

#ということで完全に冒頭だけになってしまいました、以下は平日にやっているとオワランチなので休みにまとめて投下の所存







2016/08/09

お題「主な意見は味わいのある部分と珍獣観察が同時にできるという内容でした」

「主な意見」が出ましたので公式見解系はしばらく夏休みモードでしたっけ。

○先般の「主な意見」は方向性みたいなのは無かったけど・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2016/opi160729.pdf

・経済情勢に関してはまあ想定の意見ですな

『T.金融経済情勢に関する意見』から少々。

『・わが国の実体経済の底堅さは維持されている。所得から支出への前向きの循環は強まっているとは言えないものの、壊れてもいない。』

まあそんなもんですかねとは思うが、前向きの循環ってほどの話かねと思う訳で、足もとでは物価が弱いから個人消費が堅調という話のような気がしますがね。

『・政府の経済対策は、きわめて大規模になる見通しであり、成長率と物価上昇率をかなり押し上げる。


何という鉛筆なめなめ。

『・短観では設備投資は底堅いが 、前提となる想定為替レートは111.41 円であり、直近の円高が考慮されていない。設備投資の先行指標である機械受注をみると堅調とは言い難い。利益の割に投資が伸びないという問題は残ったままで、利益上昇の一服感がある。』

設備投資が引っ張るという図が中々できませんな。

という感じでまあここはごく普通の話(鉛筆なめるのも含めて)ですな。でもって物価。


・物価に関して

『・物価は2%に向け上昇率を高めていくとみているが、不確実性は大きい。予想物価上昇率の伸びが抑制されるリスクがある。


という理屈ならばETF買入じゃなくてMBの拡大ペース強化なんじゃないですかねえ(ニヤニヤ)。

『・需給ギャップは改善方向で、予想物価上昇率もやや長い目でみれば上昇トレンドを維持していることから、物価上昇率は徐々に高まっていくが、2%程度の水準に達するのは 2017 年度後半頃の見通しである。』

ということで、与党の皆様からもしらっと見通し時期が遅れだしていますな。

なお、佐藤さんと木内さんの意見と思しき見解は以下の通り。

『・予想物価上昇率が先行き急速に上向く蓋然性は低く 、物価は2017 年度中には2%に達しない見通しである。


『・中長期の予想物価上昇率の下振れは、一時的に上振れた後に均衡値に回帰していく正常化の一環であり、デフレリスクの高まりと理解すべきではない。』

後者が木内さんのような気がしますが、しれっと「中長期の予想物価上昇率の均衡値が2%ではありません」と言っていてワロタです。

でまあこの辺までは前座でして・・・・・・・・・・


・ETF買入拡大以外の追加緩和に関する意見が無いということは・・・・・・・・・・・・

『U.金融政策運営に関する意見』の方が毎度オモロイ訳でして。

『・Brexit をはじめとする海外経済の最近の不確実性の高まりに対応するため、企業と金融機関の外貨資金調達環境の安定化策に加え、ETF買入れ額の倍増により、民間経済主体の前向きな経済活動をサポートすることが適当である。』

外貨資金調達の方は分かるのだが後半の意味が分からん。

『・海外発の不確実性が企業・家計の心理悪化に波及することは何としても防がなければならない。最も有効な手段はETFの買入れであり、思い切って倍増すべきだ。』

益々訳分からん。

『・海外発の不確実性が企業や家計のコンフィデンスに影響しているため、ETF買入れを年間6兆円に倍増するといった資産価格に働きかける緩和策が有効である。』

大体からして他の中銀が「いったん短期的な下方リスクは大丈夫」って言っているのにこういう認識示すのも恥ずかしいのだがどうせ結果から後付で屁理屈捏ねているだけなのでそこはまあ良い(良くないが)としまして、このコメント中の・・・・・・・・・

>資産価格に働きかける緩和策
>資産価格に働きかける緩和策
>資産価格に働きかける緩和策

・・・・・・・・リスク性資産の買入政策というのは「リスクプレミアムの縮小」の為に実施するということで、総裁会見でもそういう話をしていた筈なのですが、これでは「リスク性資産の価格形成を歪める政策を実施します」と言っている訳で、そういう政策を実施すると目先はそらまあ価格形成を歪めてまで上げるのですから効くかも知れませんが、歪んだ価格形成を正常化するときのコストがドンドン拡大するという非常に危険な政策だという話になるのですが、「資産価格に働きかける緩和策」とか平気で言って(書いて)しまう政策委員がいるというのが頭クラクラする。

『・企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置や、ETF買入れ額の増額は、海外経済を巡る不透明感や、企業や家計マインドの慎重化への対処として適当と考えられる。』

『・きわめて緩和的な金融環境は維持されているが、ETF買入れの拡大案は、将来の家計や企業のマインド悪化に歯止めをかける手段として一つの選択肢である。』

まあこの辺はどうでも良い。


『・このところ、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の上昇率が鈍化していることや、予想物価上昇率に関する各種の指標が低下していることなどを踏まえると、2017 年度中の2%の「物価安定の目標」の達成を確かなものにするために追加緩和が必要である。』

という話をしているのですが、だったら何でETF????というさっきの話に戻る。

『・海外経済については、英国のEU離脱問題等を巡る不透明感の強い状態が続くことが予想される。わが国の物価上昇率や予想物価上昇率が低下していることも踏まえると、下振れリスクへの備えに万全を期すべく追加的な金融緩和策を導入することが適当と考える。


「英国のEU離脱問題等を巡る不透明感の強い状態が続くことが予想される。」ってブリクジットとかこれから何年も掛けて行われる話で、その間ずーっと不透明間の強い状態が続くのかよという気はだいぶせんでもない。

『・為替等による物価押下げ圧力が続いていくとみられ、物価の下振れリスクは大きいため、息長く腰を据えた取組みの継続が求められることから、金融政策を強化することは適切である。』

ということで、8件の見解が大体賛成側で入っているのですが、実際は賛成7反対2なので賛成の人の中で2つ意見を入れた人がいますな。

でもって反対の2名。

『・年間6兆円のETFの買入れ額は過大であり、市場の価格形成を歪め、出口の難度を高めるほか、本行財務への悪影響も懸念される。』

これは佐藤さんの反対理由にありましたな。

『・ETF買入れ増額は、政策の限界を一層明確に意識させるほか、政策の逐次投入とみられ、際限ない催促相場に陥るリスクがある。』

仰る通りですが、まあ「総括検証」が入って政策そのものが「水入り」になっているのでそこをちゃんと使えればという所でしょうか。これが佐藤さんなのか木内さんなのか良く分からんですが、佐藤さんですかねえ。石田さんがいたらどういう意見を出していたのでしょうかね。

『・ETF買入れ増額は、追加緩和が必要な経済環境でない、市場を歪めボラティリティ上昇に繋がる、本行の財務健全性を一段と損ねる、本行が株価を目標にしているとの誤ったメッセージとなる、こと等から反対である。むしろ減額が妥当である。』

減額と来ているのは木内さんですな。まあ仰せの通りですが減らすというのもなかなか大変だけど正常化後のことまで考えたらストックが償還しないETFをバカスカ増やすのはさすがにマズーですよね。

・・・・・・・・・でですね、これ全体的に見て思うのですが、ETF買入ペース拡大の話は出ているのですが、他の手段に対する見解が皆無となっておりまして、そもそも論としてETF拡大以外の緩和拡大(つまり利下げとか国債買入拡大とか)について初手からテーブルに上がっていなかったという事を意味すると思うのよ。となりますとやはり今般のETF買入って差し込まれと次回までの時間稼ぎなんですなあと思いますがどうでしょうかねえ。


・政府との取り組みに関する意見はどうでも良いが一応引用

『・積極的な財政支出と物価安定目標を実現するための金融緩和政策の組み合わせは、一般的な「ポリシーミックス」であり、そのもとでの景気刺激効果は格段に強力なものになる 。政府の経済対策は時宜を得たものである。』

『・政府が新たに策定する経済対策は、本行の金融緩和政策と高い親和性を有するものと考えられる。』

『・強力な金融緩和を一層進めることにより、政府・日銀が一丸となって取り組む姿勢を前面に打ち出すことができる。』

ああそうですかとしか申し上げようがない。


・総括検証に関する意見が少ないのが不思議と言えば不思議

総括検証に関する意見が非常に少ないのはたぶんこれを見て最初に「ほえ?」と思ったのではないでしょうか、アタクシも?????と思った次第です。

『・2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向や政策効果について、次回会合で総括的な検証を行うことが適当である。』

『・この3年で経済・物価は大きく好転したが、「物価安定の目標」は達成できていない。2%の早期実現に何が必要かという視点から総括的な検証が必要だ。』

『・「物価安定の目標」達成のための具体的な政策対応を考えるうえで、「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向や政策効果について総括的な検証が必要である。』

とまあこの3つしか無くて、しかも通り一遍感が強い記述になっております。これはどういう事を意味するかとかんがえたのですが、つまりは総括検証に関しては野党審議委員から見直しを求めてきたものに対して議論した結果として導入に至った、という事ではなく、あくまでも執行部サイドから執行部ペースで出されたものである、という事を意味するんでしょうな。でもって野党の皆さん(って2名だが)は執行部がそういうならばまあ別に見直せは昔から言っている話なのでどうぞどうぞという感じだったのでしょう。

ということで、ここでまあ見方が分岐すると思うのですが、「執行部ペースなのだから今の政策を肯定して再度3次元緩和拡大驀進するのでは」というのと「さすがに政策の副作用も目につくようになってきたし、そもそも物価が色々と盛ってもそう簡単に2%にならんでしょと執行部がやっと認識したわ」というのになると思います。まあどっちも可能性としてはある(アタクシは後者だと思うけど)のはそうでしょ。


・今回の「主な意見」の中で馬鹿の金メダルが存在するのが白眉としか申し上げようがない

でもってこの次の『(その他)』に凄まじい意見があって皆様の話題と爆笑と日本って大丈夫かという不安を呼び起こしたと思うのですが・・・・・・・・・・・・・

『・金融緩和の限界、副作用という考えを否定することが必要である。金融緩和の「量」の限界は、国債の発行残高である。また、金融緩和の出口で、金利の上昇により日銀の収益がマイナスになりうることが金融緩和の制約になるという議論があるが、量的緩和によって日銀の収益は拡大していること、金利の上昇により長期的には日銀の収益が増大することから、そのような制約はない。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

もう馬鹿の金メダルとしか申し上げようがないのですが、「金融緩和の副作用という考えを否定することが必要」って副作用の無い政策だったらそれは効果も無いんですよねとか誰もが思うでしょうし、「量の限界は国債の発行残高」とかもう頭大丈夫かとしか思えん。実務を全く知らないとはオソロシイのですが、置物大師匠ですら「日銀に入って勉強した」とか間抜けではあるが一応進歩するというのに何なんでしょうかねえこの人は。

でまあその前半のフレーズの破壊力が強烈なので思わず後半をスルーしてしまいますが、「金利の上昇により長期的には日銀の収益が増大」ってのも大概に馬鹿な訳で、購入している国債は期間利回り確定で買っていて、それに対してファンディングコストは当座預金の平均コストになる(日銀券ルールの範囲内であればファンディングコストゼロですけれども今はそうではない)のですから、「金利の上昇」という正常化の時には当然ながら政策金利を引き上げて行く必要があり、その時にはファンディングコストが跳ね上がるので大幅な損失が先行して出て、期間損益のマイナスは逆鞘分の国債保有期間継続するのですが。

とまあそういう訳でして、建付け上馬鹿の馬鹿見解でもそのまま掲載しないといけない訳で、誤字とか助詞の直しだったら出来るでしょうが、そもそも言っている事が馬鹿の三冠王という代物なので矯正の仕様がないときたもんで、これはさすがに掲載するにあたって関係各位においては恥ずかしかっただろうなあと思います。

まあどこの馬鹿がこういう見解を書いているのか名前が記載されていない(当たり前だが)ので存じませんが、この馬鹿に博士の学位を授与した学習院大学と教授ポストに置いた早稲田大学におかれましては可及的速やかに滅(以下不穏当文言につき削除されました^^)。


・・・・・・とはいえ、まあこのような見解が飛び出すのはこの大先生の仕様なので致し方ないというかある意味順当なのですが、この最初の文言「金融緩和の限界、副作用という考えを否定することが必要である。」に飛びついて「やはりこれは追加緩和に向けた日銀の気合を示すもの(キリッ)」とかいうようなコメントが出てくるという動きが昨日は散見されまして、正直そっちの方が頭大丈夫かと思う事案であります。いやだってどう見たって金融緩和の限界云々は兎も角、「副作用という考えを否定することが必要」とか馬鹿の戯言以外の何物でも無い訳で、それに乗るってのはさすがにちょっと。

まあ今回不幸中の幸いだったのは、この馬鹿意見の出る前に置物大師匠の金懇があって、置物師匠が総括検証に関してごくごく穏当な話をしていたことであって、師匠のお蔭でこの意見の方が「外れ値」扱いになったという所でしょう。まあ「主な意見」でこういうのが出るということで執行部の方が師匠の金懇挨拶と会見質疑応答でセーブするように振り付けをして、変な特攻追加緩和期待を出さないようにしたという事前火消しスキームが発動したのかも知れませんけどね!!!!!!


・その他の意見の続きである

とまあひとしきり珍獣観察で盛り上がったところで最後の方に。

『・これだけ大胆かつ強力な金融政策を行うにあたっては、従来以上に肌理細かい工夫を凝らした説明を行い、政策効果をより確実にしていくことが大切である。』

昨日ネタにしましたように、師匠の金懇での会見でこういう話をしていましたので、もしかしてこれは師匠なのでしょうかと思ってしまいます。まあしかし「肌理細かい工夫を凝らした説明」って今までが盛大に粗雑な説明にもなっていない説明をしていただけに、これをすると却って金利市場以外の方々からはワケワカランとか言われるようになるんでしょうと思いますので、総括検証は中々難物ではあるものの、ここで3次元緩和の際限なき拡大から長期戦に向けた工夫をできないと政策大爆発は目の前という感じですので、うまく舵取りをしていただきたく期待をするものであります。

『・超長期金利低下の設備投資などへの影響は限定的である一方、年金の割引率低下を通じた企業財務や公的年金などへの悪影響が見込まれる。社会保障制度の持続可能性への懸念から人々のコンフィデンスに悪影響が及ぶ可能性もある。


『・生保の資産・負債のマッチング行動等を背景に、超長期国債は需給が逼迫するもとで流動性は大きく低下しており、先行きボラティリティが高まるリスクがある。これは国債買入れの困難度の高まりを象徴しており、国債市場全体の将来の姿を先取りしている。』

まあさいですな、その前に短国市場が一度「国債市場全体の将来の姿を先取り」したハチャメチャな動きがあったようにも思えますが(なお最近は昨日の6Mが▲20bpそこそこの足切とかずいぶんと金利は戻った模様)。


・しかしまあ何ですな(関連雑談)

まーしかし先週の師匠の金懇と今回の主な意見を見ますと、総括検証に関しておよびその後のスタンスに関しては従来のバズーカ撃ちまくって戦車軍が突撃していく電撃戦という作戦から、長期持久戦を可能にする方向にどう上手く転換するかという話が基本となっており、それも執行部ペースで行っている(野党からの突き上げで実施している訳ではない)というのがほほーという感じではあります。

ただまあこれまで散々大口叩いておりました関係上、市場の多く(特に金利以外)はまだ過去のバズーカのイメージでやっていますし、まー転進するにしたってそれこそ「追加緩和と言いながら実は転進」みたいな技を使わないと撤退戦の途中で追撃戦食らって全軍崩壊とかになり兼ねませんから、まー執行部の自業自得とは言え大変だなあと思うのです。

それよりも興味があるのは、「何でここに来て急に総括検証とか言う話になったのか」という方でありまして、恐らくは10年後にならないと分からない(下手したら10年後でも分からないかも)のでその時までに覚えているかという感じではございますが、まーマイナス金利を自信満々で投下したら副作用の方が先行して出てくるわ、物価はどう逆立ちしても2%そう簡単に行きそうもないわという現実を直視できるようになったという事でしょうし、そうなったきっかけって何なんだろうなあというのは恐らく外野からは謎のままなんでしょうなあとか思うのでした。

なお、そのような推測をしておりますが、実は「一億総玉砕」とか執行部が思っているかも知れませんので、その場合は今申し上げた推測は全部大外れですいませんすいませんという事で宜しくお願い致します。


#どうも夏バテ(というのはただの言い訳ですが)でネタの投下量が不足気味になっていて、ネタの逐次投入にも程があるのですが、それよりも溜まったネタの方が段々賞味期限切れになりそうな方がマズーとしか申し上げようがないので頑張らないといけませんな(大汗)






2016/08/08

お題「置物副総裁会見は総括検証での政策見直しを示唆しているように読めるのだが・・・・・・・・・・」

ほほう。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160806-00000034-jij-bus_all
国債購入の柔軟化検討=買い増し額に幅、年限緩和―日銀
時事通信 8月6日(土)8時1分配信

『日銀が9月の金融政策決定会合で、金融緩和の「総括的な検証」をするのに併せ、国債買い入れの柔軟化を検討することが5日、明らかになった。購入している国債の平均年限(現行7〜12年)基準を緩和したり、年間の買い増し額(同80兆円)に「70兆〜90兆円」など一定の幅を設けたりする案が浮上している。債券市場の金利動向を踏まえた弾力的な国債買い入れを可能とし、市場機能の維持を狙う。』(上記URL先より)

・・・・・・・・という観測が出てみたりやはり追加という話が出てみたりとアレですがさて。


○師匠の会見は従来の政策の進め方からの変化を示唆しているように見える件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2016/kk1608b.pdf

・3次元の強化をするのかという質問

『(問)黒田総裁は、2 日の麻生大臣との会談後、検証の結果として、緩和縮小の方向にはならないと思うといった趣旨を述べましたが、岩田副総裁も同様のお考えでしょうか。つまり、現状の 3 次元での緩和を維持、または強化する方向での検証ということでしょうか。あるいは個人的な見解として、検証の結果、3 次元を軸にした政策を見直すべきかと考え得るのか、やはり 3 次元は軸になるのか、お考えをお聞かせ下さい。』

ということで、まあこれ突っ込まれるなあと思うのですが、「緩和縮小の方向にはならない」と黒田総裁が発言したことによってその後すかさず何とかストレポートが「黒田総裁の発言からすると量はうっかりしたら拡大」というような話が出てくるという状況でございますからね。

でまあこれ最初の質疑なのですが、もう最初の時点から置物師匠が日銀批判していたころや、QQE導入直後のあの勢いから完全に転換しているじゃろという内容になっているのだ。

『(答) 「総括的な検証」に関するご質問だと思います。「量的・質的金融緩和」の導入から3 年半くらい経って、色々経験・知見も積みましたので、』

・・・・・・・・・・・えーっとすいません、元々日銀批判している時に「世界標準の金融政策」で「この政策をしたら2%物価目標達成する」って自信満々で、しかもQQE導入した時には「2%達成に必要な政策を全て投入した」という話をしていた次第で、こういう言い方をしている時点で自分の敗北を認めている訳で、他はどうでもいいがお前は一身上の理由で辞任しろと。

『それでもまだ 2%という「物価安定の目標」を達成できていない状況を踏まえ、できるだけ早期に達成するために何が必要か、逆に言うと、2%に達成しなかった阻害要因は何かということを、きちんと検証することが目的です。』

置物リフレ理論とリフレ派の皆さんではないでしょうか???

『従いまして、この検証の結果、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早く達成するわけですから、今までの金融緩和の程度を縮小するといったようなことはあり得ないと思います。』

本当はここで「検討した結果マイナスになっている部分の縮小もあり得る」とか言うべきというべき論はありますが、まあ間違いでしたゴメンナサイというと死んじゃう病に罹患しているのでこういう答えしか出来ないのですが、注目はこの続きの部分。

『これまで、「量」・「質」・「金利」という 3 次元を駆使してきましたが、2%の「物価安定の目標」の早期実現のために、どういう組み合わせが一番よいかということを、これから検証していくということです。金融政策の緩和の程度を緩めるというようなことは、元々あり得ないと思っています。』

これまで3次元を駆使してきましたがどういう組み合わせが一番よいかということを検証、と言っていますので、「検討した結果この政策は効きが良くて、この政策は効きが悪いので効きが良い政策に重点投下する」とかそういう話になるというのが師匠ですら念頭に置く状態になっているという事でございますな。より詳しいのが先にきます。


・すっかりトーンダウンしている師匠とな

まあ最初の所でもトーンダウンしていますがこの質疑応答が更に味わいがある。

『(問) 2 点あります。総括検証の力点が委員によって違うというお話が講演にありましたが、岩田副総裁の力点がどこにあるのか教えて下さい。それと、2%の「物価安定の目標」の早期達成のために、効果の阻害要因を検証するというのは、いつも会合でも行っていることではないかと見受けられるのですが、通常の会合と今回の総括検証がどう違うのか、?し説明頂ければと思います。』

お答え。

『(答) 総括する場合の力点の置き方が委員によって違うというのは、政策委員の自由な考え方を縛ることはできないという意味です。もともと総括の目的は、2%の「物価安定の目標」の達成をできるだけ早くするためのものです。これまで達成できなかった理由――これは金融政策以外にもあるかと思いますが――を検証し、最適な金融政策のあり方――今の考えでは「量」・「質」・「金利」という 3 次元ですが――を検証し、実際の金融政策の運営にも反映していくということです。』

ここまでは全然答えになっていません。つーかそもそも2%を出来るだけ早期にというのに反対している木内さんとの折り合いはどうするんだろ。

『そういうことは、いつも行っているのではないかというご質問ですが――確かにいつも行っているのですが――、今回の場合にはそれを集中的に行うということです。』

ワロタ。

『日銀の執行部でも様々な研究が実はあります。2%の「物価安定の目標」の達成が遅れている理由であるとか、予想インフレ率が日本ではどのように形成されているのかとか、予想インフレ率が下がっているのはどうしてかとか、色々な研究があります。』

予想インフレ率はマネタリーベースで決まるのではなかったですか???????????????????

『そういう研究に加えて、さらにマイナス金利の効果や、マイナス金利と例えば大量の買入れを加えた場合にどういう効果が出てくるのか、そういったようなことも、更にもっと研究を深めなければなりません。これから 6 週間、執行部にそれを研究してもらい、それをどう判断するかを政策委員会で議論するということです。』

でもってこの次がワロタ。

『もちろん、私も個人的には色々なことを研究しているわけですが、執行部には専門家がたくさんいますので、まずは専門家に十分な時間を取って検証してもらいます。』

日銀は世界標準の金融政策を理解できない度し難いアホウでそもそも法学部出ているようなのがのさばっているのがケシカランとかいう話はどこに逝かれたのでしょうかと小一時間問い詰めたい。

『次に総括で、考えられる要因はすべて網羅して、徹底的に議論するという意味では、今までの通常の会合とは?し違った意味があるということです。』

あっそう。


・政策の副作用は検討するの???

『(問) 講演資料についてお伺いします。9 ページの一番下に「政策効果の波及メカニズムやそれを阻害した諸要因など」と書かれていますが、ここで言われている阻害した要因というのは、副総裁の念頭にはどういうものが置かれているのか。また、それは結局政策の副作用も含まれて言われているのか、その辺をお伺いします。』

ということですが、

『(答) それは、むしろこれから検証することによって明らかになってくると思います。』

というだけ大進歩というか大転換で、MBが効かない訳が無いという事を言いだすのかと思っていたのですが、金懇挨拶テキスト見たら置物オリジナル感が1ミリもなくて、まあさすがに会見では置物っぽい成分もあるのですけれども、今回は置物オリジナルな感じではなくなっていますよね。

『ただ、自分自身の考えでは、いくつか阻害要因があります。いつも言っていますが、2014 年に向けて物価や予想インフレ率が上がってきたところに、例えば、消費税増税があって、それが予想インフレ率を下押ししてしまったとか、その後原油価格が急落して 4 分の 1 くらいになってしまったとか、そういったことです。こういった逆風に金融政策がどう対処すべきなのかということです。逆風への対応として、「量的・質的金融緩和」の拡大やマイナス金利の導入を行いましたが、それらがどのような効果を持ったのかといったことを、きちんと把握し、それが事後的には適切だったのかどうかということも含めて――今後も色々な逆風が生じてくる可能性がありますので――、きちんと検証し、最適な金融政策を考えていきたいということです。』

「それが事後的には適切だったのかどうかということも含めて」というのにはほほーと思いましたよ。


・こう言いたいのは分かるが余計な説明をしない方が良いと思う

『(問) 国債市場についてですが、今週前半、結構売りが出てイールドが上がりました。この日銀の総括検証によって、国債の買入れ額を減額するのではないかという話が海外の投資家に広がっているようですが、減額の可能性について、また先般の国債市場の動きについて、副総裁のお考えをぜひ聞かせて下さい。』

海外??とは思いますがまあそれはさておき。

『(答) 早期に 2%の「物価安定の目標」を達成するという前提での検証になります。「量」・「質」・「金利」の 3 つの組み合わせがどうなるかは前もっては申し上げられませんが、「量」を減らすとか、「質」を減らすとかいう、金融をむしろ引き締める方向ということは考えられないと思います。』

でまあ先程申し上げましたように、この部分を受けて早速「量や質は減らない」というレポートがホイホイと出てくる次第でして、そこから追加という話とじゃあマイナス金利の方が撤回という話と両方に分岐するのですが、まあそうやってややこしい事になるので、今回の師匠の金懇挨拶と会見は比較的無難に対処した方だとは思いますが、それにしてもこの手の方向性に掛かる話はコメントを極力控えておかないと無用に色々な期待というか妄想が発生し、先月のような事になってしまって日銀にとっても市場にとっても不幸なお話になると思うの。


・組み合わせを調整しながら逐次投入の可能性もということですな


『(問) 7 月の追加緩和に関しては、世界経済の不確実性に対応するということでしたが、3 つの次元というところで、なぜマイナス金利の深掘りを今回選ばなかったのか、その理由について教えて頂けますか。』

ちなみにこの直前にも何でETF拡大しましたのという質問があって、そこでの答えと前半部分は同じです。

『(答) 不確実性の場合には、リスクプレミアムに働きかけるのが一番よいということで、今回はETFを増やすことで十分と判断したわけです。』

まあこの理屈もナンジャラホイですがそれはともかく。

『しかし、今後については、必ずしもそれだけで十分かどうかはわかりません。というのも、2%の「物価安定の目標」の達成は遅れていますので、それを達成するためには、「金利」の深掘りがいいのか、そうではなく「量」と「質」で対応したらいいのか、それとも 3 つを全部組み合わせた方がよいかとか、そういったことをもっと色々な今までの知見を踏まえて行わないと、日銀が意図した方向に必ずしも市場が動かないこともあります。このため、きちんと検証し、きちんとした研究を踏まえて、政策を練っていくということです。』

とまあこういう説明な訳で、明らかに3方向ではないという話になりますし・・・・・・・・・・

『(問) 物価目標の早期達成のために、3 つの次元の組み合わせを考えるということですが、日銀はこれまで、この 3 つがあって、早期に「物価安定の目標」が達成できると言ってきたのだと思います。「組み合わせを考える」と聞くと、どれかを増やすとか減らすと聞こえますが、その点は如何でしょうか。要するに、3 つの中の組み合わせをどうしたらよいのか、それは毎回の経済や金融市場の情勢によって決めることであって、今後、2%を達成する前にこれで行こうと決めるということでしょうか


直近でも同じ質問があってそこでは答えに成って居なかったのですが。

『(答) 9 月に検証する結果は、経済情勢の違いによって色々な不確実性があります。』

とは?

『9 月には検証の結果一番よいとなった政策も、時間が経過すれば、経済情勢が違うかもしれませんので、改めて適当な政策をまたその時の金融政策決定会合で決めていくことになります。しかし、それは「総括的な検証」を経た結果の知見を活かしているということです。』

「必要な政策を全部投入」「逐次投入はしない」と言っていたQQEスタート時とはずいぶんと違って参りました。

『ですから、9 月に検証した結果をどんな経済情勢になっても維持するということを申し上げているわけではありません。検証を踏まえたうえで、その時々の経済情勢を考えて、どういう下振れリスクがあるかということも考えて、早期に「物価安定の目標」を達成するための手段を、毎回毎回の金融政策決定会合で決めていくことになります。その前提が総括であり、総括なしにはそういうことはしないということです。』

総括の結果逐次投入とな。でもって更に質疑。

『(問) マイナス金利について、副総裁は今日の講演の中でも、様々な影響を与えていると言っています。ご存知のように、マイナス金利について銀行の方で不満をおっしゃっている方もいます。早期の 2%の「物価安定の目標」の達成にインフレ期待が重要だとすると、そこまで大きなプラスの効果が今出ている感じではないように思うのですが、マイナス金利政策について、更に深掘りするのはやめようという結論に達する可能性についてはどうお考えですか。』

『(答) それもやはり、検証の結果だと思います。検証によってメカニズムが分かれば、こういう経済情勢の場合はこう対処すべきだとか、こういう経済情勢に変わればこう対処すべきだということが導けると思います。検証、あるいは研究を経なければ、事前になかなか言えないと思います。』

ということで、回答は当然ながら避けていますが、必要な政策を投下しました!という感じではなくなっているのは事実。


・最早バズーカでは無い

最後の方にこういう質疑が。

『(問) 壮大な金融緩和が長期間続いてきたことに対するリスクについて、副総裁ご自身のご意見をお聞かせ下さい。』

『(答) これから総括してはっきりすると思いますが、日銀が適切な金融政策を行わなかったために「物価安定の目標」の実現が遅れたという検証にならないように願っています。』

ナンジャソラ。

『3 つの組み合わせに関して、誤った判断をしたということであれば、大きくその考え方を改めなければならない可能性もあるかもしれませんが、そういった可能性はほとんどないと思います。』

そらまあそういうでしょ。

『もう?しデリケートな問題が 3 つの組み合わせに関してはあるかもしれませんが、今までの 3 つの方向性は別に間違っていたわけではないと私は思っています。もう?しデリケートな、その微妙な調整の仕方に関しては、もう?し検証し、気配りのある金融政策を行っていきたいと思っています。』

キターーーーーーーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

デリケートとか微妙な調整とか気配りとか今までの黒田日銀に一番無かった話で、しかもこの発言が置物師匠から来たというのはかなりのビックリでして、まー金懇挨拶の時点から置物オリジナルが無い状態となっていることを勘案致しますと、これはどうみても執行部(というか事務方)の振り付けでしょうから、もはやバズーカのような乱暴な政策で振り回していくという事に対する無理に気が付いたという事でしょう、遅きに失した感はありますけれども、まあ今回が最後の「転進」チャンスであって、これを逃して現政策をズルズル続けていくと最後は本土決戦で丸焦げという感じになりますな。


・おまけの質疑が最後に(^^)

『(問) 以前、副総裁が 2 年で 2%の「物価安定の目標」を実現するということで、ご自分の進退の問題と絡めて、そういう決意をおっしゃっていましたが、実際、3 年半程度経って、先程、2 年程度というのは幅を持たせて変えてはいないとおっしゃっていましたが、このまま任期まで、この状況で目標の達成に向けて政策を運営していくという認識でよろしいのでしょうか。』

ワロタ。

『(答) それはその都度、達成できなかった説明責任を果たしていくということです。今までは、説明責任を果たしていると思います。今後も、説明責任を果たしていくということに変わりはありません。』

最後までやっても良いけど自分の理論の間違いと失敗を退任時に認めてリフレ派ともども総退場してください。


○時間配分失敗したので予告編等

・面白そうなのだが英語ェ・・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/wp16e14.htm/
金融機関のドル資金調達と金融規制改革の影響

ちょうど米国MMF改革でプライムMMFに変動NAVが義務付けられて、制限がガチガチのリテールMMFとガバメントMMFしか固定NAV方式使えなくなってしまうというのが始まらんとする時期ですからね。

『要旨』

『本稿では、為替スワップ市場における非米系金融機関のドル資金調達プレミアムの変動メカニズムについて、理論モデルを用いて説明するとともに、対ドル主要4通貨のデータを用いたパネル推計による実証分析を提示する。非米系金融機関のドル資金調達プレミアムは、過去においては、金融危機時に典型的に観察されたように、銀行の信用度の悪化が原因となって上昇することが多かった。しかし、近年は、銀行の信用度が安定している中で、ドル資金調達プレミアムが上昇しており、これには、金融政策のスタンスに関する米国と他の先進国間での違いが影響している。』

『具体的には、米国が利上げ方向に動く中で、日欧などが低金利政策を継続していることを背景に、非米系金融機関がドル建て資産に対する需要を増加させ、これが為替スワップ市場におけるドル資金調達の増加につながっている。また、レバレッジ比率規制導入などの金融規制改革の動きは、米系・非米系問わず金融機関のドル資金調達の限界費用を増加させるため、為替スワップ市場におけるドル需要曲線とドル供給曲線の傾きがスティープ化する。この結果、為替スワップ市場におけるドルの需給変動圧力は、ドル資金調達プレミアムの大きな変動につながりやすくなっている。』

とあるのですが、最初の所に燦然と輝く『全文掲載は、英語のみとなっております。』ェ・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/en/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16e14.pdf
Regulatory Reforms and the Dollar Funding of Global Banks:
Evidence from the Impact of Monetary Policy Divergence


・展望レポートの内容比較

鏡の方は兎も角として、基本的見解の比較を1週間経っているんだからやれよというツッコミが来そうな訳ですが(ええ誰も突っ込みませんかそうですか)、基本的見解を見ていてヒジョーに違和感というかアレ感があるのは「期待インフレ」の所ですな。

いや基本的見解に書いてある期待インフレの部分が弱含み、というのをやっと認めた点についての違和感ではなくて、気になるのはそちらと政策判断のリンクの方です。つまり、上記の置物副総裁の説明にもありますように(というか総裁定例会見でも勿論その説明に成って居ますが)、今回って「コンフィデンスに対応する為にリスクプレミアムに働きかけるETFの購入拡大を行った」という整理になっているのですが、展望レポートを見ると見通しに含まれる部分で大きく変えているように見えるのがこの期待インフレの部分でして、ということはそれに対応するのに本当にETFで良かったんでしたっけと小一時間というお話な訳ですよ。

まあね、そもそももう政策を見直さないといけないという状況になっていて、そうは言ってもいきなり政策を変える訳にも行かないという中で、下手に追加緩和期待で大盛り上がりしてしまったし政府(というか政治)が喧しいし、ということで色々と差し込まれた結果としてETF拡大を選択した、というのが実際に近いのでしょうなあとか思うので、そこの理論的整合性も蜂の頭も無いというのは分かるのですが、というかまあ展望レポートの理屈と政策判断の理屈が合わない時点でそういう事ですよね、ってお話なのではないかと思いますが如何でしょうかね。


#夏バテ月曜につきこの程度で勘弁(大汗)、今日は結構注目したい「主な意見」ですよ〜








2016/08/05

お題「置物師匠の講演は置物どころか腹話術人形/だが会見では微妙に微妙なコメントが出ていると思うのだが」

正座して待ってたら足が痺れました(ウソ)。

○置物師匠の横浜金懇が完全に事務方の作文棒読みになっているという嘆かわしい件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko160804a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
─ 海外経済を巡る不確実性の高まりと金融緩和の強化 ─
神奈川県金融経済懇談会における挨拶

題名を見た途端にこれは企画局の作文を棒読みするパターンではないか、と思ったらまさにその通りで、ネタにする積りだったのにネタにならないじゃないですかという所ですが、置物師匠の高座に関しましては、最初はご案内の通り置物成分満艦飾という感じだったのですが、昨年5月の金懇がややパッとしないなと思ったら昨年12月の金懇がこれがまた置物オリジナルなオモシロ理論が無いじゃない、という類のアレになっておりましたが、今回はその完成形になっております。

・・・・・・・・ということで、外部から来ている副総裁で置物理論を引っ提げてやって来たというのにすっかり当初の置物理論っぽくない話を展開し、しかもそれがきっちり振り付け通りという事になっていまして、まあ振り付け通りに動くとは置物にしては優秀優秀とか思いますが、良く良く考えればこの置物は国会では割と吊るし上げを食らっていて、その間延々と木で鼻を括った対応しかしないというのをやっていますので、存外本人は平気なのかもしれませんね。

ただまあ置物の存在意義が益々置物化しているなあと思ったまでですが、ジンバブエ先生という驚愕のアレがいるので、どうせ一派なんだから置物師匠先生のお力で更生していただくとかそういうお仕事でもしててください。


とまあそんな悪態をマクラに入れましたが、今申し上げたように執行部の説明、つまり端的に言えばこの前の総裁会見での説明をそのまま書いているようなものですが、そこで終わりにするとアタクシの駄文のネタとして成立しないので少々。


・ブリクジットの影響のアセスメントを見ると・・・・・・・・・・・・・・・・・

前半の経済物価情勢に関してですが、『2.海外経済の動向』の所ですけどね、

『しかしながら、6月下?に実施された英国の国民投票は、EUからの離脱──いわゆる Brexit──に対する支持が過半数を占める結果となり、これを受けて、英国の通貨であるポンドが急落するなど、国際金融市場は再び不安定化しました。為替市場では円高が急速に進行したほか、株価は、わが国も含めて世界的に大きく下落しました。こうした事態に対して、G7をはじめとする関係当局は迅速に対応しました。すなわち、各国が金融の安定を緊密に協議し、適切に協力していく方針を示すとともに、主要国の中央銀行も、米ドル資金を含め十分な流動性の供給を実施する用意がある旨を明らかにしました。』

『その後の動きをみると、7月上?に公表された米国の雇用統計が予想を上回る結果となり、米国経済の先行きに対する見方が改善したことや、英国において新たな政権が早期に始動したことなどもあって、市場は落ち着きを取り戻しつつあります。しかしながら、今後、Brexit が世界経済に与える影響は、引き続き不透明であり、慎重に見極めていく必要があります。英国とEUの新たな関係構築に向けた交渉は、年単位の時間を要するとみられます。かなり長い期間にわたって、政治経済的に不確実性が高い状況が続くことを覚悟する必要があると思います。』

という説明で何でこれに対応する為にETF買入を拡大したのか意味が分からんですな。直後には、

『こうした海外経済に関する不確実性は、輸出入を通じた直接的な影響もさることながら、企業や家計のコンフィデンスを通じて、わが国の設備投資や消費などの支出行動に影響を及ぼす可能性があり、十分に注視していきたいと考えています。』

とありましたが、別に急性症状に対処する訳でもなく、コンフィデンスがどうのこうのってのも実際問題として主要国のPMI指数とか特に悪化していないという状況の中で何でETFの買入をやらなければいけないという理屈になるのか意味が分からんですな。


・予想物価上昇率に関する説明がクソワロタとしか申し上げようがない

今回の白眉(という程でもない)は物価と予想インフレの部分。

『しかしながら、この生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価上昇率についても、昨年後半に前年比で+1%を上回る水準まで上昇した後、このところプラス幅が縮小しており、6月は前年比+0.8%となりました。その背景には、為替円高の進行に加え、予想物価上昇率の改善が後ずれしていることがあります。』

ほほう予想物価上昇率ねえ。

『予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられますが、このところ弱含んでいます。関連指標をみると、マーケット指標だけでなく、各種のアンケート調査においても低下しています。エネルギー価格の下落などから、実際の消費者物価上昇率が1年以上にわたって0%程度で推移したため、その影響を受ける形で、いわゆる「適合的なメカニズム」を通じて予想物価上昇率も低下したものと考えられます。』

アダプティブな期待形成を認めている訳ですけれども・・・・・・・・・・・・・・・・

『米国などでは、人々の物価予想が中央銀行の物価安定目標近くで「アンカー」されており、実際の物価上昇率が低下しても、中長期的な予想物価上昇率はさほど変化しません。一方、長年にわたってデフレが続いたわが国では、予想物価上昇率の形成において、実際の物価に強く引きずられる傾向があります。また、このところの個人消費の弱めの動きも企業の価格設定行動に影響を与えており、食料工業製品や耐久消費財などの「財」を中心に、新年度入り後の価格改定を見送る動きがみられています。


ってまあこの辺の説明はまさに企画の操り人形という感じでございますが、ここで師匠の過去のご発言を確認しましょう。

2013年8月28日京都商工会議所における講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a1.pdf
「量的・質的金融緩和」のトランスミッション・メカニズム
── 「第一の矢」の考え方 ──
京都商工会議所における講演

本文4ページより。

『金融緩和政策が実際に効果を発揮するためには、2%という物価安定の目標を中央銀行が責任をもって達成するのだという強い意思表示、すなわち「コミットメント」と、それを裏打ちする具体的な行動を伴っていることが何より重要です。中央銀行がインフレ目標の達成にコミットし、その実現を目指して思い切った金融緩和政策を実施することによって、人々の期待がデフレ予想からインフレ予想に変わり、行動が変わり、経済全体の動きが変わってきます。このことが、政策効果実現の大きな鍵を握っています。
』(2013年8月28日岩田副総裁講演より)

フォワードルッキングあるいは合理的期待形成によって予想物価上昇率が高まることが政策効果実現の大きな鍵を握っています(キリッ)という話をしていて、それによってマネタリーベース直線一気理論が登場した、という事を考えますと、そもそもこの合理的期待形成のチャネルがあまりワークしていないということで、そら全くなかったかというとそこまで言うのは酷な気がするけど、少なくとも、適合的な期待形成の方にあっという間に押し潰されてしまう程度の力しか無かった、という話ですから、最初に言っていた「政策効果実現の大きな鍵」はそもそもございませんでした、って話になりますよね。

でもって当時ご説明のメカニズムはこうなっていまして、

『すでに述べたように、私たち日本銀行が進めている金融緩和には、チャート図の一番上に並んでいる二つの柱があります。』

懐かしの面白フローチャートがあるので上記URL先もぜひ。

『最初の柱は、消費者物価の前年比上昇率2%という「物価安定の目標」へのコミットメント、つまり「2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」ことを、責任を持って約束することです。もうひとつの柱は、そのコミットメントを裏打ちする具体的な政策として行う「量的・質的金融緩和」であり、ここでは端的に「マネタリーベースの増加」と記述しています。』

『こうした二つの柱、つまりインフレ目標の設定とそれに向けた大胆な金融緩和を行うことにより、世の中の人々が予想する将来の物価の動き、つまり予想インフレ率が上昇します。そうすると、物価の上昇を織り込んだ将来の実質的な金利負担、つまり予想実質金利が低下することになります。』(以上2013年8月28日岩田副総裁講演より)

となっていた訳ですが、肝心の予想物価上昇率が合理的期待形成で動くよりも適合的期待形成で動く力の方が強くて予想物価上昇率がろくすっぽ上がってくれない、という大変に素敵な状態になっているから予想実質金利下げるのには期待を上げるよりも名目金利を下げれば良いわとなってこの惨状という事になっている訳ですな。

まー今回の置物講演は振り付け人形だと思ってみますと、当初の置物リフレ理論対比で考えてしまえば、実質金利を下げるというチャネルについて、合理的期待形成でインフレ期待を上げるというのには無理があるからあんまり頑張らないでも良いけれども、プラスの需給ギャップを作るために実質金利を低位に置いておくことは物価上昇に直接効く話で、それを維持すれば実際の物価上昇圧力に繋がり、それが物価上昇を通じて適合的にインフレ期待の上昇に繋がり、それが物価目標達成への道になる、ってのが上記の置物理論と今の説明を足し合わせると出てくる訳で、そうなるとやはり「金利は上げないけれども量は減ったりしない程度に柔軟な対応をする」という話になると思うんだけどなあ。


・まあごくごく普通の話だしこれは総裁会見での総裁の説明と同じだが(ヘリマネ絡み)

まあ中身に関しては先程申し上げておりますように執行部原稿の棒読みなので内容は無いようなのですが、ヘリマネに関してはこのように。

『なお、このところ、日本銀行の金融政策と政府の財政政策の関係について、様々な議論が行われていますので、一言付言しておきたいと思います。』

『先程申し上げた通り、政府は大規模な「経済対策」を取りまとめ、財政政策・構造政策面での取り組みを強力に進めています。こうした取り組みは、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長を実現していくうえで誠に時宜を得たものであり、日本銀行としても歓迎したいと思います。そして、日本銀行が、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を推進し、きわめて緩和的な金融環境を整えていくことは、こうした政府の取り組みと相乗的な効果を発揮するものと考えています(図表6(2))。』


『マクロ経済の講義では比較的初期に教えることですが、通常、政府が国債発行を通じて財政支出を拡大すると、市場金利が上昇し、民間投資を抑制する効果が生じます。これを、「クラウディング・アウト」といいます。』

『この点、同時に中央銀行が金融緩和を推進する場合には、金利上昇が抑制されるため、「クラウディング・アウト」を防ぐことができることが知られています。こうした政策の組み合わせは、「ポリシー・ミックス」と呼ばれており、マクロ経済政策として一般的な考え方です。』

えーっとそれ「通常」そうなるのか?????ということでして、前提になっている条件が実際の経済と違うのをそのままこういう説明に持ってくるのがナイーブ過ぎて本稿の中では一番置物っぽい部分ですな。

まあそういう高校の政経の教科書みたいな話を何の留保条件も付けずにする辺りが置物の置物たるゆえんですが。

『この考え方を現在の状況に当てはめれば、日本銀行の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」により金利は幅広くマイナス圏にあり、そのもとで政府が財政政策を行えば、それらの相乗効果によって、景気刺激効果は非常に強力なものになると考えられます。』

『この「ポリシー・ミックス」は、中央銀行マネーの恒久的な増加を原資に財政拡張を行う「ヘリコプターマネー」や、財政資金の調達を手助けするために中央銀行が国債を買う「財政ファイナンス」とは、異なるものです。』

震災の時に復興国債を日銀引受しろとか言ってた人がねえと感慨深い。

『マーケットでは、「ヘリコプターマネー」に関する議論が盛んですが、定義を明確にすることなく、その是非を論じることは建設的とは思われません。』

五月蠅いのマーケット以外なのですが。

『重要なことは、わが国では、3年前から、機動的な財政運営と「量的・質的金融緩和」という形で、歴史的にみても非常に強力な「ポリシー・ミックス」を実施してきたこと、そして、今般の大規模な「経済対策」と「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の組み合わせによって、それをさらに強力に推進しようとしているという事実なのです。』

消費税引き上げしてませんでしたっけ??????

とまあ色々とアレなのはありますが、まーこういう話をするから海外がションボリして瞬間為替が跳ねたとかこういうの当たり前じゃんとしか思えないのですけどね。



○会見がヘッドラインの内容と詳報に差があるような気がする

でまあ会見の時って「緩和政策の縮小や引締めを行う訳ではない」というのがヘッドラインになっていて、ブルームバーグなんぞは「TaperingはUnthinkable」というような感じの英文ヘッドラインを打っていたのですけれども、共同通信のリファーしている会見詳報(だいたい質疑応答の文字起こし)を見るとニュアンス違って読めるんだが・・・・・・・・・・・・

と思ったら公共放送ニュースがそれに近いニュアンスのヘッドラインを打ってくれているので引用しておきますが、どうせ会見要旨は夕方にしか出て来ないので会見の詳報を共同通信なりなんなりで確認しておいた方が吉だと思いますぞ。


http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160804/k10010621681000.html
日銀副総裁「金融緩和策検証は最適な政策探すため」
8月4日 17時17分

『日銀の岩田規久男副総裁は4日に横浜市で記者会見し、来月の金融政策決定会合で、今の金融緩和策を総括的に検証するねらいについて、「最適な金融政策を探すということだ」と述べ、政策の枠組みの見直しも含めて対応を検討する考えを示しました。』(上記URL先より、以下同様)

共同の詳報でも「金利、質、量、どの組み合わせが一番か検証」ってなっているのですよ。確かに共同通信によりますと、「量を減らすとか、質を減らすとか、金融をむしろ引き締める方は考えられない」という発言をしてるようなのですが、MBの拡大ペース下げてもMBのストックに効果があるビューを前面に出せば緩和政策は引き続き強化とか、色々とトリックはあるので注意しないといけませんで御同輩。

『4日に横浜市で記者会見した日銀の岩田副総裁は、そのねらいについて、「政策の効果を妨げている要因を検証し、最適な金融政策を探すということだ」と述べ、今の金融政策の枠組みの見直しも含めて、対応を検討する考えを示しました。そのうえで、岩田副総裁は「2%の物価目標のために、これまでの政策をどう組み合わせればよいかを検証することになるが、金融緩和の手を緩めることはありえない。マイナス金利を深掘りすべきか、量や質の緩和でやるべきかといったことをきちんと検証して政策を練っていく」と述べました。』

ということですので、そらまあ転進するにしたって敗走とは言えないでしょう(本来は将来に向けて政策を正しくやっていく、という意味において、負け戦は負け戦としてきちんと総括(総括と言ってもあさま山荘ではない方の総括)して、負け戦の教訓というのをきっちりと分析すべきであり、それをやらない組織はいずれ腐って崩壊するものなのですが・・・・・・・・・)なあってのは分かるんですが、まあとりあえず「3次元緩和で突撃」をすると前方に濃密な機雷地帯があって両岸には砲門が待っているという事には気が付いたというのがこの会見要旨で読めるという所っすけど、そう読まれて問題ない発言をして平気だったのでしょうかね。どちらかと言えば置物だから本土決戦一億玉砕とか言い出すのかと思っていたのでやや意外感is有る。



○備忘メモ

ということで本日の置物会見は重要なのと、

http://www.bankofengland.co.uk/Pages/home.aspx
BOEが色々とやっていまして、

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/mps/2016/mpsaug.pdf
のところで各種施策についての効果がどう期待されるというのを延々と(という程でもないが)
説明していまして、この辺の読み物読み、

展望レポートの中身をネチネチ突っ込むという企画が未済

日銀計数ネタや短期計数ネタでも短国の金利が上がってみたり月末の計数で面白そうなものがあったり、

などなど、来週の夏枯れに向けてネタをため込んだわけではなく、単にアタクシの処理がおいついていないものが散見されますので、できれば少し整理できたら一部放出をしていきたいと存じます。




2016/08/04

お題「6月議事要旨ネタと総裁会見ネタ(続き)など」

ふーん。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160804/k10010620731000.html
首相 デフレ脱却と経済再生を最優先課題に
8月4日 4時02分

相変わらずデフレ脱却していないことになっているのか・・・・・・・・・・・・

それから今日は置物師匠の金懇がありますので正座して待ちましょう!!!!!!


○6月決定会合議事要旨ネタである

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2016/g160616.pdf

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』から少々。

・海外経済

『海外経済について、委員は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速しているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、幾分減速した状態が当面続くとみられるが、先進国が堅調な成長を続けるとともに、その好影響が波及し、新興国も減速した状態から脱していくとみられることから、緩やかに成長率を高めていくとの見方で一致した。』

という話で毎回推移しているのですが、

『ただし、一人の委員は、先進国の景気回復が新興国に波及するスピードは遅く、新興国の景気減速が先進国経済を下押しするリスクにも注意が必要であるとの見方を示した。』

という指摘がありまして、先進国堅調だと世界的にコケはしないけれども、新興国がバンバン伸びて全体がヒャッハーという時と比較した時にヒャッハー感が無いなあとか何となくイメージしていたことを指摘しているなあと思ったりしたのでした。

『地域毎にみると、米国経済について、委員は、新興国経済の減速などから鉱工業部門は力強さを欠いているが、堅調な家計支出に支えられて回復傾向にあるとの認識で一致した。5月の雇用統計における雇用者数の増加が市場の事前予想を大きく下回ったことについて、ある委員は、米国経済の回復の弱さを示している可能性があるとの見方を示したが、多くの委員は、雇用情勢に基調的な変化が生じているかどうかを評価するには、もう少しデータの蓄積を待つ必要があるとの認識を示した。』

まあこちらは多くの委員に分がありましたな。

『欧州経済について、委員は、輸出は新興国経済の減速の影響などから弱めの動きとなっているが、個人消費が引き続き増加するもとで、緩やかな回復を続けているとの認識を共有した。』

『先行きについて、委員は、緩和的な金融環境のもとで、雇用・所得環境の改善などを背景に緩やかな回復を続けるとの見方で一致した。複数の委員は、英国のEU離脱問題の帰趨が、欧州をはじめ世界経済に対して与える影響には注意が必要であるとの見解を述べた。』

というお話だったのが7月にはこれを理由に追加緩和しかもETF買入拡大っていうのがもうね。


・国内経済

『わが国の景気について、委員は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けているとの認識を共有した。委員は、引き続き、企業収益が高水準で推移し、労働需給の引き締まりも続いていることを指摘し、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが作用しているとの見方を共有した。』

って毎回そういう話になっているのだが全然そうなっていないように思えるのだが。

『ある委員は、日本経済は雇用・所得環境の改善を背景に、基調としては緩やかに拡大していくと考えられるが、このところ個人消費の一部に弱さがみられることや、円高の負の影響が今後現れてくることを踏まえると、下振れリスクは大きいとの見方を示した。』

でまあこれまた7月会合議事要旨を見ないと、って言いましても議事要旨出るころには9月の時点での総括検証が出ているのでもはやどうでも良い話になっている悪寒がしますが、基本的に日本経済の下振れリスクに対応するのに何でETFの買入になったのかという点について6月の会合議事要旨で何かヒントが無いかと思いつつ探す訳ですが。

『個人消費について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に底堅く推移しており、先行きも、引き続き底堅く推移するとの認識を共有した。ある委員は、1〜3月の個人消費は、年初の国際金融市場の不安定化や暖冬の影響を受けたものの、4月の消費活動指数は持ち直しの動きを示していると述べた。』

『一方、別の複数の委員は、所得対比で消費が弱い背景として、賃金の回復力が弱いことや、年初来の円高と株安による逆資産効果、財政・社会保障制度の不確実性に起因する将来所得への不安などを挙げた。』

まあ何ですな、円高株安でマインドがコケるという話は分からんでもないのですが、だからETFを買うというのも何ちゅうか安直な話で、円高株安が何等かのリスクプレミアムを反映しているという認識を7月会合でどういう示し方をするのかが楽しみです、とか次回議事要旨のみどころばかり探すアタクシ。

しかしまあ何ですな、

『これに対し、一人の委員は、社会保障や財政に関する不安は消費性向が低い要因にはなるとしても、ここにきて消費性向が低下している要因にはならないとし、』

まあこれは分かる。

『消費性向がいずれ下げ止まれば、雇用者所得の増加を映じて消費は増加すると述べた。』

??????????????????????????

一つ上の複数の委員の見解と全然話が噛み合っていないように見える訳ですが、これ「議事要旨」な訳でして、要旨の時点で話が噛み合っていない表現に成って居るということは、恐らく本チャンの議論の場ではもっと議論になっていないのではないかと思うのですよ。つまり、議事要旨作る事務方だってこういう辺りで議論の論点をきちんと分かるように書こうとするでしょうから、事務方の編集をもってしてもこれ以上書けないってそら相当のもんじゃないのと。

でまあ大体こういうのが増えてきたのがいつごろかと考えますとそらもうジンバブエ先生辺りの頃からということで後はお察しということでしょうな。


・金融環境の評価が微妙ですのう(まあ大本営だから仕方ない面はあるが)

『2.金融面の動向』から。

『わが国の金融環境について、委員は、きわめて緩和した状態にあるとの認識で一致した。委員は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとで、企業の資金調達コストはきわめて低い水準で推移しているとの見方を共有した。』

『何人かの委員は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入決定後、国債利回りだけでなく、貸出金利やCP・社債の発行金利もはっきりと低下していることや、超長期の社債を低利で発行する動きが拡がっていることを指摘し、企業の資金調達環境はさらに緩和的になっているとの見解を示した。』

まあこれは良いとしまして、

『これらの委員は、金融環境の緩和によって、世界経済の不透明感が続くもとでも、設備投資は増加基調を続け、住宅投資が再び持ち直すなど、マイナス金利政策の効果は、実体経済面に徐々に波及してきているとの見方を示した。』

そ、そうなのか???????

『このうち一人の委員は、企業が国債利回りとのスプレッドよりも発行レートの絶対水準を重要視しながら社債発行を行う動きが定着してきているほか、固定金利でのシ・ローンの組成等が行われるなど、金融実務の面でも、マイナス金利のもとでの企業の資金調達は順調に行われていると述べた。』

えーっとすいません、それは「国債金利対比でのスプレッドが拡大している」と言うと思うのですが。

『また、別のある委員は、現在の緩和的な金融環境を活用することによって、民間部門が構造改革を着実に進捗させることが期待されると述べた。』

何じゃそらというお話で、そもそも成長期待が無かったら金融環境活用もへったくれも無いですし、構造改革ってそれデフレ圧力の話ジャマイカと思うので実際にこれどういう話をしているのか非常に謎ではありますな。

『一方、別の一人の委員は、銀行貸出全体の増加率は高まっておらず、マイナス金利政策の効果は明確にはみられないとの見方を示した。』

そらそうよ。


・物価動向の判断はまあこういう話になるんだろうなとは思うけど・・・・・・・・・・

続いて『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』から。

『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、物価の基調的な動きが重要であるとの認識を共有した。』

といういつもの前置きから始まりまして、

『何人かの委員は、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比が、4月に+0.9%とプラス幅を幾分縮小した背景として、個人消費の一部に弱さがみられることを挙げた。このうち一人の委員は、こうしたもとで、新年度入り後の価格改定の動きは昨年ほど拡がっていないと述べた。複数の委員は、サービス価格の伸びは高まっているが、財価格の伸びの鈍化を相殺するまでにはなっていないと述べた。』

確か新年度入り前の時点では「企業の価格設定行動の推移に注目」という話をしていた筈なのですが、最近すっかりそこに言及しなくなっているのは仕様です。

『もっとも、一人の委員は、消費者物価指数の内訳をみると、上昇品目数が下落品目数を大幅に上回る状況が続いており、ここへきて、企業の価格設定スタンスに大きな変化が生じている様子は窺われないとの見方を示した。』

何かこじつけ感が。

『また、この委員を含む何人かの委員は、3年連続でベースアップが実現し、中小企業にも賃上げの動きが拡がっていることなどを踏まえると、賃金の上昇を伴いながら、物価上昇率が緩やかに高まっていくというメカニズムは、引き続き作用しているとの見解を述べた。』

単にデフレ傾向じゃなくなりましたね万歳万歳というのなら分かるのですが2%物価目標との整合性はどうなっていますねんというお話ではあります。

『別の一人の委員は、個人消費の弱めの動きを受けて、昨年のような価格引き上げが望めないため、当面、物価上昇率は高まりにくい状況が続くが、原油価格が上昇に転じていることや、タイトな労働需給を背景に賃金の上昇が見込まれることなどから、物価は今年度後半からは伸び率を高めていくとの見方を示した。』

でまあ展望レポートでもこういう話になっているのですが、このタイトな労働需給で賃金の上昇がという話が何ちゅうかこう微妙感あるのですよねえ。

それから期待インフレに関してですが、

『予想物価上昇率について、委員は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいるとの認識を共有した。』

毎度のマクラ。

『一人の委員は、予想物価上昇率が弱含んでいる背景として、本年入り後の国際金融市場の不安定化等から消費者マインドが悪化したことや、既往のエネルギー価格下落や円高の影響などを指摘した。そのうえで、この委員は、ファンダメンタルズが底堅く推移している中で、タイトな労働市場や設備投資の増加基調を背景に、今後、需給ギャップの改善が進めば、予想物価上昇率は徐々に高まっていくとの見方を示した。』

という話になっているのですが、どうも眉唾な感じですの。


・6月時点で追加緩和の主張もありますな

『先行きの金融政策運営の考え方』の辺りに参りますと、

『また、何人かの委員は、英国のEU離脱に関する国民投票の結果とその後の金融経済動向を見極める必要があると付け加えた。このうち一人の委員は、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比や予想物価上昇率の指標に弱さがみられるなど、「物価安定の目標」の達成に警戒信号が点滅しており、2%の達成時期が遅れる蓋然性が高くなる場合には、追加緩和により、2%達成に向けた日本銀行のコミットメントを、人々とマーケットに改めて示す必要があると述べた。』

という理屈ですが、コミットメントを示すために追加緩和って逐次投入の発想にも程がある訳で、まあ今度の総括検証でどういう絵が出てくるのかさっぱり分かりませんが、やはり逐次投入ができるようなスキームへの乗り換えをこっそり行わないと苦しいという事をこの辺りでも示されているように思えるのですがどうでしょうか。


・なお問題点を指摘している人が3名いるのですが・・・・・・・・・・・・・

でまあ毎度の反対論だが参戦者がどう見ても1名多い。

『これに対し、一人の委員は、「量的・質的金融緩和」の効果は限界的に逓減しているほか、既に副作用が効果を上回っているとしたうえで、@長期国債保有残高の増加ペースを、段階的減額を視野に入れて「量的・質的金融緩和」導入時を下回る水準まで減額すること、A「物価安定の目標」の達成期間を中長期へと見直し、金融不均衡などのリスクに十分配慮した政策運営を行うことを主張した。』

って言ってるんだから木内さん。

『また、この委員は、近年の政策運営は、市場ではサプライズを狙ったものと受け止められており、金融政策の予見性を大きく低下させ、市場のボラティリティを高めていると指摘したうえで、市場との対話の正常化、双方向での対話の強化を早期に図るべきであると述べた。』

この委員ってんだから木内さんの話の続きですが、まあ前半の方は敗北宣言になっちゃうから色々と難しい面があるにしても後半の方は別に敗北宣言でもなんでもない話なので改善頂きたい、というかそういう議論も踏まえて総括検証という話になったのであればまあ良い傾向ではありますの。


『この間、一人の委員は、日本銀行が3年以上にわたって「量的・質的金融緩和」を継続するもとで、わが国経済は、既に物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっているとの認識を述べたうえで、国債買入れについて、その遂行にあたって、大きな問題が生じる前に、より持続的なものに転換していくべきであると主張した。』

『また、別の一人の委員は、政策の主目的は量から金利に既に移行しているとし、資産買入れを柔軟に運営することが重要であるとの見方を示した。』

ということで、佐藤さんともう一人は石田さんだと思われるのですが、これがまた残念な事に石田さんはこの会合を最後に退任されているのが何とも惜しい。


・輪番をコロコロ変えているのは市場の安定化のつもりだったのかよ!!!!!!!!

『これらの議論に対して、別の一人の委員は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」によって、国債市場が影響を受けることは事実であるが、日本銀行では、国債市場の流動性や機能度について、サーベイや各種の指標をみながら丹念に点検しているほか、』

は????????

『市場動向を踏まえて国債買入れを弾力的に運用することで、市場の安定に努めていることを指摘した。』

えーっとすいません、毎月輪番をコロコロいじってボラを無駄に上げたり流動性を無駄に落としたりしているとしかこちらでは思えないのですけれども、もしかしてあの輪番額の毎月の変更って「市場の安定に努めている」つもりでやっているのかよと結構な驚愕の文言でして、そもそも論として市場を安定化させようとしながらどう見ても不確実性とか予見不可能性を高めている行動をとってしまっている、という時点で市場との対話もへったくれも無い訳で、もとよりインターバンク市場以外に関して日銀の市場センスってアチャーな面が多いのですが、日銀的にこういう建付けになっているのであればかなり頭がクラクラするんですけど・・・・・・・・・・

『そのうえで、この委員は、大量の国債買入れが国債市場に与える影響にはしっかりと目配りしつつも、思い切った金融緩和によって、一日も早くデフレから脱却し、日本経済を持続的な成長軌道に復帰させることが、低金利の状態を脱して市場を正常化するための一番の近道であると述べた。』

そら良いのですが、だったら何で3方向で追加緩和とか連呼していたんでしょうかねえ・・・・・・・・・・・・・・・

『この間、別の一人の委員は、銀行の国債離れが「量的・質的金融緩和」の限界や副作用を示すという一部の議論について、国債を保有していた金融機関が、国内や海外における貸出の増加など、国債以外の様々な資産にシフトすることは、ポートフォリオ・リバランスという政策効果の浸透を示しているとの見方を示した。』

「一部の議論」とか言っている時点でジンバブエの香りしかしませんが、相変わらずピントがずれていますの。



○総裁会見ネタの続き(すいません)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2016/kk1608a.pdf

・マイナス金利に対する拘りを見せている質疑応答

まー当たり前っちゃあ当たり前ですが総括検証の話だらけではありました。

『(問) 2 点お伺いします。総裁はかねて、金融政策が効果を発揮するのに半年も 1 年もかからないと発言されていましたが、おっしゃったようにマイナス金利の導入から半年が経とうとしています。現時点で、効果について具体的にどのように感じていらっしゃるか教えて下さい。もう 1 点は、今回声明文に入った、総括的に検証するということについて、検証した結果、例えば、今のような規模で買入れを進めることはそれほど効果がない、むしろ副作用が大きいのではないか、という議論が起きた場合、今よりも規模を縮小するといった方向性も可能性としてあるのか、お教え下さい。』

2名は既に副作用の方が大きいと指摘していますね。

『(答) 1 月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定し、マイナス金利は、金融機関の日銀における当座預金のごく一部に 2 月から適用されるようになりましたが、』

「当座預金のごく一部」ってエクスキューズ文言が入っているのがお洒落でして、絶賛大不評のマイナス金利に対してこういう風にコメントを入れるあたり、マイナス金利は悪くないという事には拘るという姿勢が見えますなあと思うのでありました。

『ご承知のように、国債は短期から長期、超長期に至るまで全体的にイールドカーブが相当下がっており、その結果として、金融機関の企業に対する貸出金利、家計に対する特に住宅ローンなどの金利もはっきりと低下しています。また、市場におけるCPや社債の発行金利も顕著に低下しています。そうした意味で、金融資本市場全般にわたる効果は、既にはっきり出ていると思います。』

金利が下がって貸出の量が伸びてくれないとプロコン比較的にねえ・・・・・・・

『それが実体経済にどのような影響を及ぼしているかについては、最近の日銀短観でも、景気に対する見方は若干慎重化していますが、設備投資のスタンスは非常にしっかりしています。この背景には、非常に緩和的な金融環境が続いていることに加え、今後も続くという見通しを踏まえて、企業がしっかりした設備投資計画を維持しているのだろうと思います。』

ダウト。

『また、住宅投資はこのところ再び持ち直していますし、最近のローンサーベイでも住宅ローンは顕著に伸びています。』

借り換えだけどな。

『このように、金融資本市場全体に対する影響は既に十分現れているわけですが、実体経済に対する影響も出てきており、今後、そのプラスの影響はより顕著になっていくだろうと思っています。』

でもそれを示現するのにマイナス金利である必要があったのかという話は無い辺りが大本営。

『「総括的な検証」については先程申し上げた通り、あくまでも 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために何が必要か、という観点から、これまでの 3 年間の経済・物価動向、あるいは政策効果について検証を行うわけです。』

政府の方では財政で達成するという事になってしまっているようですがががが。

『これまでの 3 年強の経験上、「量」・「質」・「金利」、特に「量」・「質」はずっとこの 3 年強やってきましたし、「金利」は今年から始まったわけですが、「量」の面も非常に重要であることは認識しています。そうした意味で、「量」を軽視することになるとは思っていません。』

という話をしている訳ですが、「量と質」を3年間やった結果として達成していないという事実がある以上、どこからどう考えても「効果はあるが2%行かせるためにはツールとしてそんなに強くない」という話に成らざるを得なくて、その点からすると「マイナス金利」という新しいオモチャじゃなかったツールを使い出したんですから、そちらの方に期待をするしか無い、という話になるので、まーマイナス金利についての説明を頑張っていくのは当然ですし、どうせ検証してもそうなるんじゃないのという気がするのですがどうでしょうかねえ。


・物は言いよう

この質疑の答えはワロタ。

『(問) 政策の逐次投入はしない、とおっしゃっていましたが、「量」、「金利」に限界はないという中で、今回は「質」、中でもREITでも社債でもないETFに絞って拡大したことで、今後は、現状と 3 つの効果を見比べながら、逐次投入していくということでしょうか。あえて今回ETFに絞られた理由をあらためてお聞かせ下さい。』

ニヤニヤ。

『(答) 「量」・「質」・「金利」の 3 つの次元で緩和が可能であるということは先程申し上げた通りで、今、限界がきていることは全くないと思います。』

はあそうですか(棒)。

『従って、その時々で、最も適切な政策を行うということです。政策の逐次投入が望ましくないと言った意味は、その時々で必要にして十分なことを行わずに、情勢の悪化に引っ張られて次々に逐次的にやっていくやり方は適切ではないということです。その時々で必要にして十分な政策をきっちりと行うということが、逐次投入を避け、金融政策の効果を最大限発揮させることになると思っています。』

えーっとすいません、必要にして十分な政策って言って何回追加緩和してましたっけ????????

『先程申し上げたように、現時点で日本経済の成長率見通しが下方修正されたわけではなく、むしろ上方に修正していますし、物価は足許については下方修正しましたが、2017 年度、2018 年度については従来と全く同じ見通しになっています。』

そら経済対策分の鉛筆なめてるからな。

『ただ、そうしたもとで、不確実性は高まっています。』

そら経済対策(以下同文)。

『今回の展望レポートの「政策委員の経済・物価見通しとリスク評価」のグラフを見ても、下方リスクが大きいことが示されていますし、展望レポートの文章でもかなり明確に下方リスクを指摘しています。』

ここの所分布はだいたいそうだと思うのだが。

『特に、英国のEU離脱問題や新興国経済の減速を背景として、このところ海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場が不安定化していることは事実であり、それが企業や家計のコンフィデンスの悪化につながるおそれがあるので、必要にして十分な対応ということで、ETF買入れ額のほぼ倍増――これはかなり大きなものですが――や、外貨資金調達環境の安定のための 2 つの措置を採りました。これは、いわゆる戦力の逐次投入ではないと考えています。』

外貨の方はマイナス金利政策やって外貨資産に向かわせたのだから相互補完的なものもあるので分かるのですけれども、ブリクジット云々をネタに出してETFというのは如何にも恥ずかしいですよねえ。


・まあ似たような質疑は続くのだが資産買入に関する説明もだいぶ混乱気味ですのう

こんなのもネタにしておきませう。

『(問) 日銀のETF買入れに対しては、かねてから株価というのは企業の収益であるとかファンダメンタルズで決まるもので、市場機能を歪めるおそれがあると指摘されてきたわけですが、これを今回倍増させると、さらに市場機能を損ねるおそれ、もっと言えば日銀による相場操縦ではないか、という見方に対して、どのようにお考えになるかというのが 1 点です。(以下割愛)』

『(答) まず、ETFの買入れ額を 6 兆円にほぼ倍増するということについては、先程来申し上げているように、英国のEU離脱をはじめとする海外経済の不透明感が高まっている、あるいは国際金融市場が不安定化していることを踏まえて、企業や家計のコンフィデンスの悪化を防止する観点から決定しました。ETFの買入れは、別に特定の株価を目標にして行っているものではもちろんありません。』

ということですが、

『基本的にはリスクプレミアムに働きかけて、株式市場、資本市場がより適切に機能するようにサポートしているものであり、株式市場の機能を損ねることはないと思っています。』

という話ですから、だったら特定の水準が念頭にあるじゃんとか思う訳ですし、そのリスクプレミアムがどの程度あるのか、買入継続したらストック効果でドンドンそのプレミアムが縮小する筈なのですから、それこそ社債やCPの買入と同様にどこかの時点で「残高維持」に変わって然るべきではないか、と思うのですけどねえ・・・・・・・・・・

『国債の買入れにしても、その他色々な金融資産の市場からの買入れにしても、市場の価格に影響を及ぼすことは事実ですが、それによって、経済活動を支え、「物価安定の目標」を達成するということであり、何か特定の株価を実現しようとして行っているものではありません。』

って言ってますが、国債の買入は「名目金利に低下圧力を掛ける」って言ってやっている訳で、説明に混乱が見られる辺り、ETF買入拡大に関しては相当にヤケクソ投入したんだろうなあとあたしゃ思うのですけどね。

『もちろん、こういうことを通じて、そうでない場合と比べて株価が上昇するであろうということはその通りだと思いますが、市場機能を損ねてはいないと思っています。(以下割愛)』

市場機能っつか市場の価格発見機能であり、資源の適切な配分機能と言った方が良いと思う。そういう観点をわざとスルーして先物の売買高がどうのこうのとかそういうテクニカルな話に持って行って「市場機能はありまぁす」とか言っているのが最近の日銀だと思うの。

ということでまあ今回の質疑って総括検証の話と何でETFって話(そらそうだが)が多かったので、一々引用するのもオモロイとは思うのだが時間の関係でとりあえずこんな感じ。ただしまたネタにするかも。






2016/08/03

お題「思った以上に総括検証ネタが妙な盛り上がりをしているので市場備忘と雑談的所感を」

ここに来ましてダドリーとカプランの講演が投下されているのですがまだネタにできる状態では無かったりします(大汗)が面白そう。

カプラン
http://dallasfed.org/news/speeches/kaplan/2016/rsk160802.cfm
Speeches by President Robert S. Kaplan
Key Secular Trends and Implications for Monetary Policy
Remarks before the Official Monetary and Financial Institutions Forum
Beijing August 2, 2016

ダドリー
https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2016/dud160731a
The U.S. Economic Outlook and the Implications for Monetary Policy
July 31, 2016
William C. Dudley, President and Chief Executive Officer
Remarks at Bank Indonesia & Federal Reserve Bank of New York
Joint International Seminar, Bali Indonesia

北京とかバリ島とかに出撃してるんですね・・・・・・・・・・・・・

#ネタにするのは来週あたりかもしれません(すいません)がカプラン総裁は質疑応答の方でマイナス金利は米国の場合アカンという話をしていたそうな

#ところで未だに嬉しそうに「ヘリコプターマネー」とか言ってるモーサテのキャスターェ・・・・・・・・・・・


○9月のMPMまで振らされるのか途中でフリーズするのか

・いやあ想像以上に動きましたなあ

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1AJ25F
Markets | 2016年 08月 2日 15:14 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落、10年債利回り一時-0.025%に上昇

『[東京 2日 ロイター] -

<15:10> 国債先物は大幅続落、10年債利回り一時-0.025%に上昇

長期国債先物は大幅続落。前日の夜間取引で下落した流れを受けて売りが先行。日銀政策の先行きに不透明が増す中、海外勢の売りに加えて、10年債入札を警戒した業者の調整売りが膨らんだ。入札低調を確認すると、9月限は中心限月として3月16日以来の151円割れとなり、一時150円66銭まで売り込まれた。

現物債利回りに強い上昇圧力がかかった。日銀の金融政策の影響を受けやすい中長期ゾーンの利回り上昇が目立っており、10年債利回りがマイナス0.025%、5年債利回りがマイナス0.120%、2年債利回りがマイナス0.150%といずれも3月16日以来の高水準を付ける場面があった。終盤にかけては、国内銀行勢を中心とした押し目買いが入り、金利上昇が抑制された。

10年利付国債入札は落札価格の平均と最低の開き(テール)は27銭と2015年3月入札の338回債のテール33銭に匹敵する水準に拡大し低調な結果となった。

長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比91銭安の151円33銭。10年最長期国債利回り(長期金利)が前営業日比8bp上昇のマイナス0.060%となった。』(上記URL先より)

とまあそういうことで昨日はたぶんこの記事
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGC01H0R_R00C16A8EN2000/
政府、日銀目標に見切り? 物価2%上昇「困難」の声
2016/8/2 2:00日本経済新聞 電子版

『政府内で日銀の物価目標に見切りをつけるような動きが出てきた。2017年度の物価上昇率予想は日銀が1.7%に対し、政府は1.4%。日銀は目標とする物価2%上昇の達成を引き続き目指すが、政府内では「早期実現は困難」との声が聞こえ始めた。日銀は9月会合で過去の政策の効果を検証するが、弱い物価は追加緩和への圧力としてなお残りそうだ。』(上記URL先より)

週末にも日経が「政府の中では2年で達成に拘る必要無しという考えも」みたいな報道を打ち込んでおりまして、昨日は朝刊でまた追い打ちという感じでして、いやまあ金利上がりますなあという風情で、上記記事にあるように10年国債入札がコケて先物とか長期とかの金利は上昇したのですけれども、結構売られてやがるのが中短期でして、記事にあるように2年とか5年とか大甘となっておりました。折角ですのでMPM直前の28日の引けと昨日の引けを比較しませう(ただし単利)。

2年367回:▲0.350%→▲0.165%(18.5甘)
5年128回:▲0.360%→▲0.150%(21甘)
10年343回:▲0.280%→▲0.065%(21.5甘)
20年157回:+0.145%→+0.250%(10.5甘)
30年51回:+0.245%→+0.320%(7.5甘)
40年9回:+0.310%→+0.375%(6.5甘)

まあ先物とか10年とかが叩き売られるのは兎も角として、2年とか5年が盛大に甘い訳でして、今回の「量も金利も見送り」&「総括的な検証」によってマイナス金利がそう簡単に深堀できる訳でもございませんという事になって利下げ期待(市場の中の人的に言えば「利下げ期待」というよりは「利下げに対する恐怖感で泣きながら購入」という方がイメージ的に正しいんじゃないでしょうか御同輩の皆様???)でバカスカ低下していた分が盛大に剥落した格好。

超長期に関してはゼロ金利とかまでつけた後やれ超長期輪番減額だやれヘリマネだとかいう感じでその前にフラット化が一服してたのと、そもそも金利水準がプラスの水準から始まっているから下がれば相応の買いも入る(というほど入っている感じでもないけど)のでブレーキはそらかかりますなあと思いますが、まあふーんという感じです。


と思ったら今度は引け後に「緩和縮小の見方に対して『おっしゃったようなことにはならない』と黒田総裁が発言した」というヘッドラインが出て債券先物引けから40銭位上がるとか中々お洒落な展開になっています。直接的なヘッドラインがみつからなかったのでこちらでも。

http://jp.reuters.com/article/focus-boj-idJPKCN10D14M
Business | 2016年 08月 2日 20:56 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
焦点:日銀の政策検証、可能性低い緩和縮小や目標柔軟化の選択

『黒田総裁は2日午後、麻生太郎財務相と会談。終了後の会見で、緩和検証への思惑から「市場では緩和が縮小に向かうとの見方から金利が上昇したが」との質問に対して「そもそも総括的な検証自体が、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現する観点から何が必要かを明らかにするため。そのようなことにはならない」と緩和縮小を否定した。』(上記URL先より)

という現象をまずは俺様備忘用にメモして置きまして以下雑談。


・まあ当分この調子で「総括的な検証」の解釈論でぶれるでしょうなあ

いやまあアタクシ月曜の駄文で「正反対の見方が出来ますよね」というお話で、アタクシ的にはそもそも今の政策を3方向で拡大するのは執行上の自爆大炎上が見ているので何らかの手段の工夫が必要だから見直しだぜヒャッハーと申し上げましたが、総裁会見とかを見ると追加緩和をぶち込んみそうな威勢の良い話(って最初の所しか引用してませんでしたな)をしていたりもしていて(でも効果はばつぐんだと思って限界無いと思ってるなら総括検証とかしなくて普通に追加緩和するんじゃないの??)、まー見方は割れるし多分アタクシの方がマイナーになるだろうなーとかおもっていたら思いの他緩和期待を剥がす格好に。

実際にはどうなのか分からんですけれども、やはり今回は「いつもだったらやるはずの追加緩和セットから買入も金利も外したということは、それは次回にどちらかの手綱を緩める可能性があるからでしょ」という発想になったとかいうのもあると思いますし、日経新聞がまた例によって例のごとくの「謎の政府筋」によるイタコ記事を打ち込んできて見直し機運を煽ってみたりというのがあったのと、そもそもポジションが「ここから3方向で追加緩和されてしまうと死んでしまうんですがそれは」という事になっている人たちのヘッジと言うよりは恐怖による買いも入っていて、相応にというか過剰に緩和期待(嬉しくないので期待という文言も不適切だと思うので緩和懸念の方が正しいか)が高まっていて、とりあえずは緩和懸念に対応したヘッジ的なポジションの振り落としが発生したという事でしょうな。


しかしまあ何ですな、別につるし上げる気は無いのですけれども先ほどのロイター見たら・・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/focus-boj-idJPKCN10D14M
Business | 2016年 08月 2日 20:56 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
焦点:日銀の政策検証、可能性低い緩和縮小や目標柔軟化の選択

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1AF4U6
Markets | 2016年 08月 1日 07:30 JST
再送-〔焦点〕黒田緩和「検証」で枠組み転換の思惑、量目標やマイナス金利修正も(この記事は29日に配信しました)

・・・・・( ゚д゚)

もうこのブレブレっぷりが何とも心温まる訳ですが、色々と飛び交うクルスク大戦車戦のレポート砲弾を見ますとついこの前まで緩和の限界とか言ってた向きが急に見直しで追加緩和の方向再びとか言い出す向きがあったりする位ですから、ベンダーがこの調子でブレブレになるのは最早お約束の類になる、と思って当分見て行かないといけないと思います。

まーとにかく検証結果が出てMPMで何らかの物件が出るのが9月下旬になる訳でして、まあ途中でああだこうだとやるのは疲れてやらなくなるとは思うのですけれども、来週頭までは置物金懇にMPM主な意見があるし、どうせこの間にあちこちのベンダーがあの手この手でコメント取ろうとするでしょうし、9月途中からは見直し内容について更に一段と思惑が飛び交うでしょうなあ、とか思いまするに、こりゃまあ当分は債券市場ってハイボラか死んだように動かないかの両極端相場をやる(って今までもそうだよと言わるとグウの音も出ませんが^^)という感じでしょうな。


・聞く方も聞く方だが話す方ももうちょっと工夫というのが無いのか

さっきの記事の部分再掲しますけどね。

http://jp.reuters.com/article/focus-boj-idJPKCN10D14M
Business | 2016年 08月 2日 20:56 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
焦点:日銀の政策検証、可能性低い緩和縮小や目標柔軟化の選択

『黒田総裁は2日午後、麻生太郎財務相と会談。終了後の会見で、緩和検証への思惑から「市場では緩和が縮小に向かうとの見方から金利が上昇したが」との質問に対して「そもそも総括的な検証自体が、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現する観点から何が必要かを明らかにするため。そのようなことにはならない」と緩和縮小を否定した。』(上記URL先より)

まあ聞く方はニュースヘッドラインにしたいから「緩和の縮小という思惑もあるようですが」とか質問して相場を煽りたいということなのでしょうが、そもそもそういう事をして相場を荒らして日本として何の得があるのかと小一時間問い詰めたい訳で、そんなもん今の時点で方向性が無いという建付けになっている(実際は知らんけどそういう建前なんだから)事に関して一方方向にバイアス掛けた質問したら否定されるのですが、そうなるとヘッドラインに使えてアクセス増えるし、市場も荒れて俺様の功績ムハーとかやっていると思うと血圧が急上昇してしまいますよ全くでありまする。


でまあ答える方も輪を掛けて今回間抜けにも程があると思うのですが、黒田さんそもそも市場との対話とかする気が1ミリも無いし、市場のチンピラどもをゴキブリか蛆虫位にしか思っていなさそうにしか思えないのでまあこうなるのも致し方ないのは分かるのですけど、何でバイアス掛けた質問にバイアス掛けた答えをするんだかと思う訳ですよ。

つまりですな、足元の債券市場という意味で言えば茲許の動きってもう7月利下げがダンディールだというような織り込みをして(買入については微妙だし幅は10は間違いなく織り込んでいたが20は微妙)結果としては過剰織り込み状態になっていたのですよね、しかもMPM前の結構の期間において。ですから、今回追加緩和期待がそれなりに剥落したのって日銀的には非常にウマーな話で、見直しの結果10月末の展望レポートで追加緩和をするにしたって、何らかの政策見直しをするにしたって、一旦市場の見方をスクラッチに戻しておいた方が実際の施策を打ち込んだときに素直に反応して素直に期待する効果が出てくる(市場的に)と思うので、過剰な期待を剥がすことは日銀を「動かしやすくする」んですよね。

然るにこの微妙な発言バランスということで、まー勿論非常にこの辺のバランスは難しいのですけれども、とにかくヘリマネどうのこうのとかどこぞの官房参与(今はどこぞの大使)が毎回のようにMPMの度に何かコメントしてベンダーが大々的に取り上げる、とか、ベンダーの馬鹿報道合戦が一々キャッチーな報道をしてマーケットを動かそうという馬鹿祭り状態になっておりまして、まー黒田さんの振付師の皆様におかれましてはもうちょっとその辺慎重に振付けて頂きますと誠にありがたく存じます。

まあそもそも論から言えば、「政策の総括的な検証」」と言った時点で正反対の見方が成立してしまう、というのが日銀の情報発信が崩壊しているという事でもある訳で、ど〜せこれからも碌な動きをしないでしょうなあという債券市場なのでありました。


でまあもっと笑うのは、この黒田さんの発言って実は為替の方を意識して(101円台に入っていたから)打ち込んできたのかもしれないなあと思ったのですが、黒田さん的には一番反応して欲しい為替市場は1ミリも反応しないで債券先物だけ(ナイトセッションで)40銭位上昇しているという辺りでして、実に素敵な侘び寂びの世界を感じるのでした。



・ちなみに「政策見直し」でも「緩和政策の強化」って言ってくると思うで

とまあそういうことで雑談の続き。

えーっとですね、何か「政策の見直し即緩和縮小」みたいな話の方がメディア受けするからメディアってそういう言い方になるのは分かるのですが、ぼーっとレポート砲弾を見ておりますと同じような理屈で「今までの総括するのに効いてなかったとか言う訳ないから縮小は無い」とかいう向きもあってもうげんなりしてしまう今日この頃。

つまりですね、そらまあどこからどう見ても今の政策ってMB増やしても別に増えた分効く訳ではないですし、マイナス金利は1億歩譲って借入チャネルから効果が出てくるのに時間が掛かるから判断を留保して差し上げても良いのですが、初期段階では金融市場と金融仲介機能に打撃を与えて副作用先行だわなとかになっておりますし、「実質金利を下げて消費や投資を出す」ってのもう3年半やって効果が無いのにこれから効果が出るという理屈もわからんし、マネタリーショックとコミットメントでインフレ期待の引き上げを行うとか言ってたのに3年半経ってもフィリップスカーブは上方シフトどころかスティープもあんまりしていない(しているんだったら今回の展望レポートで先の方のGDP見通し上げているのに物価見通しが上がらないのがおかしい)とか、盛大にツッコミどころが多い訳ですから、本当の本当に検証したら「効いたかもしれないけどあんまり効いてませんな、いやーすいません失敗失敗」となるのが妥当だと思いますが、まあ官僚組織がそんなタマの訳が無いのでそれは1ミリも期待できません。

となりますと「政策見直し」と言っても「撤退」というような形は当然とらないのですが、我が国には敗戦を「転進」と言い換えて発表するという伝説的な官僚話法がございました訳でして、見直しの結果量か金利かを諦めるにしたって、それ以外の強化を行う事によって、たとえば「政策金利の引き下げについて」と言いながら買入やMBの柔軟化を行う(マイナス金利は10か20掘る)とかして、「これだけ詰みあがったMBはそれ自体ストックとして効果を出すので、ここからは実質金利を低位に安定させることによって一段の効果が期待できるので緩和の強化です(キリッ)」とやるだけの話で、政策のパーツのメインツール(今のメインは建付け上はMB)見直しや入替(あまり入れ替えるものにイメージが無いですけど)を行って執行面の問題を軽減する(2%が直ぐに行かないので早期の執行面からの爆発を回避しないといけない)時だって、大本営発表よろしく「新たな大緩和戦線に向かうために現在の戦線の兵力を整理して大緩和戦線シーズン4に突入する」というような話をするでしょうよ。

と思うので、政策見直しで緩和は「縮小」とはならない(仮にテーパリングしたってMBのストックは拡大するんだから緩和は拡大しているぞな、市場の反応は別にしまして)のであって、どうしてそう話が極端から極端に飛ぶのかねとは思いますが、まあそれでボラが出るのは必ずしも悪いとは思わないけれども、今ってそのボラが不健全(ベンダーの飛ばしに反応したり片言隻句に反応したり)となっているのがどうもイカンのじゃないかなあとは思いますが、流動性スッカスカで日銀が買占め相場になっているのですから致し方ないことなのかも知れません。


○政府の経済対策登場

http://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/keizaitaisaku.html

経済対策の題名が何かポエムみたいになっていますがそれは兎も角としまして、

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1AJ2NI
Investing | 2016年 08月 2日 16:40 JST
〔マーケットアイ〕外為:ドル102円割れ、経済対策閣議決定で材料出尽くしか

まー実際にどうなのかは知らんですけれども、昨日は東京引け後に102円割りに行って経済対策関連ではあまり反応が無くて、

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS02H8I_S6A800C1MM8000/?dg=1
財務相、40年債増発検討 黒田総裁と会談
政策協調確認
2016/8/2 21:13

こっち関連で50年債が出ないってんでヘリマネ不発ネタにでもなったのか(50年債出さないけど40年を増発すると言ってるのにヘリマネ不発という理論も1ミリも理解できないけど)一段円高とか良く分からん展開になっていましたな。真水ちと増えている気もするんだが反応せんなあ。

でまあ今回の一連のを見ているとアタクシ的には(違っていたら平伏してお詫びいたしますが)どうも株式市場とか為替市場とかを気にし過ぎに見えまして、円高株安で何か出さなきゃ→何か出す→市場の反応が最初だけは良かったけどどうもイマイチ→やっぱり増やさないと→以下ループというようになって、まーそうなるのも分からんでもないですけれども、ちょっと市場に振らされ過ぎだと思いますのよ。でもって市場ってのは何ぼでもおかわりを欲しがるというバキュームカーのような人たちですので、一々市場の「期待」に答えているとキリがないと思うのですが、どーもこう何だかなあという感じはするのでありました、という
雑感だけ書いておきます。

#ということで総裁会見ネタに展望レポートネタがお留守になってしまうまですいません(事前にストックしろよと言われるとぐうの音も出ない)






2016/08/02

お題「決定会合レビューの続きだよ」

毎年の定例行事ですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160801c.htm/
総合職キャリア採用の募集について

『4.歓迎する経験・スキル
金融工学・リスク管理、会計・税務(公認会計士)、マーケット関連実務など』

だそうですので一ついかがでしょうか(^^)。

でもって引き続き決定会合レビューネタで昨日の続きですが、決定会合関連のネタ(と展望レポートネタ)がある訳でまずはその辺を。


ところで小池知事の話を見たらまだこのネタ生きていたのかよという感じです。
http://txbiz.tv-tokyo.co.jp/wbs/newsl/post_115798/
小池新都知事に聞く「国際金融都市として成長目指す」2016/08/01(月)23:00

いやあのこんなに中銀が介入していて市場もそのクレクレを前提にして、MPMの度に妄想が飛び交って場中に大荒れになるような市場のどこがどう国際金融都市としての資格があるのか小一時間問い詰めたいのですが、このネタって熊手大先生が金融担当大臣だった辺りからゾンビのように生き続けてますな。何で「意識高い系(笑)」の先生方はこのネタ好きなんでしょうかねえ。



○ドル資金供給の詳細に関して(俺様用備忘メモ)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160729f.pdf
企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置

ということですが、だいたい昨日申し上げた通りですけれども、あとで何だったっけと見る為にメモメモ(そういや諸般の事情で過去ログの分類整理を最近していないのでどこかでキャッチアップします)。

『1.成長基盤強化支援資金供給(米ドル特則)の拡充


── 成長基盤強化支援資金供給の4類型のうちの1つ。

・ 貸付残高の上限:120 億ドル(日本銀行保有外貨資産が原資)
・ 1先当り上 限:10 億ドル
・ 貸 付 期 間:1年以内(最長4年までの借換え可)
・ 貸 付 利 率:6か月物 LIBOR(6か月毎に変動)
・ 担 保:共通担保
・ 対 象:成長基盤強化に資する1年以上の外貨建て投融資

・ 2014 年 12 月以降、貸付残高が上限に達しており、今回、上限の引上げを実施。

@ 貸付残高の上限:120 億ドル→240 億ドル
A 1先当り上 限: 10 億ドル→20 億ドル』

ということで、マイナス金利云々の前からヘッジ付外貨運用みたいなのは円金利低下のせいで拡大してドル調達があばばばばーだった訳ですが、日銀がマイナス金利政策を行ってポートフォリオリバランスを促した所でお助け措置をどさくさに紛れて入れてきましたなという結構なお話。

ただまあこの手のお助けものっていうのは政策的に言いますと、市場金利の上下限を決める為のものであれば常設ファシリティとして置いておくという事になりますが、こちらにつきましては物が外貨資金調達になりますので、そもそも論として相手国の短期市場に影響がある話になりますからして、常設ファシリティを他国が勝手に作るというのはさすがに掟破りににも程があって・・・・・・・・・・・

『2.米ドル資金供給オペレーション用の担保国債の貸出

【米ドル資金供給オペの概要】
── 6中銀スワップ取極の枠組みに基づく米ドルの資金供給オペレーション。

・ 貸 付 総 額:無制限
・ 1先当り上 限:なし
・ 貸 付 期 間:3か月以内(現在、1週間物を原則として毎週実施)
・ 貸 付 利 率:ニューヨーク連銀が指定する利率
・ 担 保:共通担保

・ 米ドル資金供給オペ利用先が日本銀行に差し入れる担保として、日本銀行保有の国債を米ドル資金供給オペ利用先に貸出す仕組みを導入。
── 当面、レートは、補完当座預金制度適用利率(政策金利残高分)となるよう設定。』

とまあそういう訳で、これは常設ファシリティチックではあるのですが、お金を出すのがNY連銀となっていて利用の方として常設ファシリティ化するのはアカンという話でして、これはそもそもがバックストップとして設けているのだから、バックストップを常設ファシリティとして使うのは使っている金融機関の個別プルーデンス問題になりますよ、とまあそういう整理になっています。

・・・・・・・・でまあそれはそれで良いのですが、この手のバックストップ的な措置に関して頻繁な利用は個別金融機関へのスティグマであるという話をするのはまー理屈は良く分かりますし、恐らく今の時点では制度作ってそんなに長くないですし、金融市場のストレスって時々ホイホイとネタになるという状態でそれなりに意識があると思うのですよね。

ただ、この手のスティグマ問題っていうのは制度作って時間が経過していくとともに、スティグマである!というのが意識として抜きがたくなってしまい、その結果として肝心の市場ストレスが掛かっている時にスティグマ問題があるからバックストップのファシリティを使えない、というようなしょうもない弊害が生じたのは米国金融危機時代のディスカウントウィンドウがまさにそういう状態になったと思うの(結局米国の場合は別途の資金供給系のオペを作ってましたが)。

つーことで何を言いたいかと申しますと、この手のバックストップってスティグマ問題を強調する(どうせ五月蠅いのは米国であって日本や欧州はそこまでスティグマスティグマ言ってないけど金主のNY連銀が五月蠅いから言っていると邪推)と市場環境が急変した時に使い物にならない(使いたいけれどもスティグマ発生して自分の所の信用問題にヒットしちゃうぐらいならファシリティ使わずに市場で何とかしようとするインセンティブが発生するから)ことになりますので、市場動向に応じてスティグマ問題というのに関する考え方も調整できれば良いのです(が市場最前線ではない中央銀行にそれを求めるのも酷ということで毎度色々と危機においてはフリクションが発生する)けどね。


○輪番のちょこまか調整は大概に何とかならんのか

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160729e.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160630e.pdf(前回)

『(注5)2016 年 8 月 1 日以降の最初のオファー金額は、
残存期間 1 年以下 700 億円、
残存期間 1 年超 3 年以下 4,000 億円、
残存期間 3 年超 5 年以下 4,200 億円、
残存期間 5年超 10 年以下 4,300 億円、
残存期間 10 年超 25 年以下 2,000 億円、
残存期間 25 年超 1,200 億円、
物価連動債 250 億円、
変動利付債 1,000 億円
とする予定です。』(今回)


『(注5)2016 年 7 月 1 日以降の最初のオファー金額は、
残存期間 1 年以下 700 億円、
残存期間 1 年超 3 年以下 3,750 億円、
残存期間 3 年超 5 年以下 4,400 億円、
残存期間 5年超 10 年以下 4,300 億円、
残存期間 10 年超 25 年以下 2,000 億円、
残存期間 25 年超 1,200 億円、
物価連動債 250 億円、
変動利付債 1,000 億円
とする予定です。』(前回)

・・・・・( ゚д゚)

物国の調整を除きますと、ご案内のように3月期末に急に月中に調整を入れたのを皮切りに、

4月:超長期前半200億円↓+超長期後半200億円↑
5月:超長期前半200億円↑+超長期後半200億円↓
6月:超長期前半200億円↓+超長期後半200億円↓
7月:超長期前半200億円↓+超長期後半200億円↓+長期200億円↓+中期1-3年250億円↑

と来ていたのですが、

8月:中期1-3年250億円↑+中期3-5年200億円↓

とまあ何をやりたいのか良く分からんオペ内訳の変更で、ついでに額が1回50億円なので月間300億円動くという結果になっていまして、片やETF買入を2.7兆円拡大しているのにMB拡大ペースを変えないで「金融緩和の強化」と説明するという謎理論になっているのに、一方のオペはその月間300億円の総額調整とか何の微調整だと言いたくなりますし、中期の前半と後半をいじってくるのって何なのとしか申し上げようがない。


・・・・・・・・でですね、この輪番内訳に関しては決定会合では

『2.資産買入れ方針(議長案)

議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、次回金融政策決定会合まで、@長期国債の保有残高が年間約 80 兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う、ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する、また、買入れの平均残存期間は7年〜12 年程度とする、(以下割愛) 』(4月決定会合議事要旨より引用)

という形になっていますので、建付けとして調節やってる部署(金融市場局)のほうで言われているのは「長期国債の保有残高が年間80兆円増えること」「イールドカーブ全体の金利低下を促す観点で行うこと」「市場の状況に応じて柔軟に運営すること」「買入国債の平均残存年限を7〜12年程度にすること」となっていて、それに沿った運営をしている、ということになっているようなのです。

でまあそれは良いのですが、たとえば今回の変更にしたって中期の中で短い所を増やして長い所を減らしていまして、それはまあMPM前の時点で2年と5年がインバートしていたこととか、直前の2年入札が盛大に滑って短い所の需給が悪化したとか、そういう市場状況を踏まえてのことだと思うのですがちょっと待って頂きたい。

つまりですな、そもそも2年5年がインバートなんてそれ需給もあるけれども背景として政策金利引き下げの刑を食らった場合にどちらがヘッジとしてワークするかというようなことを考えた場合にはそらまあインバートしても何らおかしくは無いでしょうという話でして、恐らくはその辺の状況と足元の需給に応じて「金融市場の状況に応じて柔軟に運用する」として調整を入れていると思うのですが、そもそも論として昔のように日銀の輪番がそうは言ってもドミナントじゃなかった時とは全然違いまして、日々の需給読みに輪番の日程がどうなるというのを極めて真面目に予想をするとかいう状態になり、輪番(と入札だが入札は事前に日程も額も読めるのでそこは最初から織り込んで計算する)日程の読み方が需給を振り回すみたいになっている訳ですよね。

そこに来てこの毎月月末引け後になると翌月の買入の変更が入ると来ますので、日銀の輪番額変更がカーブ形成に影響を与え、その動きを見た結果としてまた日銀の調整が入る、みたいな事になってしまいますと、まさしく「自分の尾を追う犬」という状態になってしまいかねませんので「動かない」というのも作った方が良いと思うんですけどね。

あとはこの微調整に関して、市場局で出しているのですから政策インプリケーションは無いという建付けになっているのは明らかなのですが、そうは言いましても超長期の金利が低下してから暫くして急に超長期の輪番が減りだした挙句に7月分ではツイストのような事が行われるなどというのを見ると、そらもう市場の方は「実はステルスで政策メッセージを出しているんじゃないか」と疑心暗鬼になる(そういうトークは割と多いんですよ)というような弊害もありまして、機械的に運用しているならそのロジックを出して頂きたいですし、裁量持ってやるならそれはそれで良いのですが、昔の短期トン調節時代みたいに裁量のベースになる判断材料が出ていないと、結局のところ何が何だか分からないので月末になると変な思惑が出る(今回はそもそもMPMだったからオペとはあまり関係なかったけど)とか、やり難くて敵わん次第で、何をどうしたくて毎月調整しているのかをもう少し示すか、変更は未達のような極端な事が無い限りは四半期程度のペースで調整するとかにして、毎月変なイベント扱いになるのは勘弁して頂きたいものでありまする。


○MPMの日程に関しては今回改善の跡が見られて誠に結構

うむ。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160729b.pdf
2017 年の金融政策決定会合等の日程

とにかく以前より実に困ると思っていたのが4月の展望レポートで、毎度の如く大型連休直前の昭和の日前日にMPMが実施されるので、その後市場がネタを消化する前に大型連休に入って連休明けには海外がネタをちゃっかり消化して国内勢あばばばばーという事案が多々あった訳ですが。今回の決定会合日程を見ますと、月末開催は1回で展望レポートのある会ではありますが火曜日がケツですし、4月は昭和の日の2日前に終わるようになっているので翌日に市場があります(なお来年の昭和の日は土曜日なのでただの土日だ)し、週末開催になるのは6月ですが、展望レポートの無い会なのでそんなにややこしい事も無いような気がするというような感じで、随分とこう工夫した日程になっております。

なお、先般このようなものが出ておりましたが、この日程と上記日程を比較してみましょう、などということは良い子の皆さんはやってはいけませんのでご注意ください。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomccalendars.htm#26566
2017 FOMC Meetings


○基調的な物価ェ・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpipre.pdf
消費者物価の基調的な変動

総合(除く生鮮食品・エネルギー): 5月0.8→6月0.8
刈込平均値: 5月0.2→6月0.1
上昇品目比率−下落品目比率: 5月35.3→6月34.4

・・・・・・・もはや何も申し上げる事はございません、お大事に。


○おお時間がないが総裁会見の前半という事で

すいませんすいません。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2016/kk1608a.pdf


・何故ETFだけとは聞きますな

『(問) 2 点伺います。今回、ETFの買入れ額を増加しましたが、なぜマイナス金利の深掘り、あるいは量の拡大をしなかったのか、それらの政策が限界に近づいているのではないのか、その点についてお聞きしたいのが 1 点目です。もう 1 点、その質問を踏まえてですが、次回、総括をすると言われましたが、なぜこのタイミングなのかと唐突な感じもします。そこで、これまでやってきた政策のスキームチェンジまで考えていらっしゃるのか、なぜこのタイミングでそういうことをやろうとされているの消費者物価の基調的な変動か、お考えを頂ければと思います。』

でまあ後半では総括検証の質問で、今回はこの質問がバカスカ出ていますね、当たり前ですけど。

そしてこの答えがアホのように長いというのも味わいがあります。

『(答) まず、マイナス金利あるいは量的な拡大が限界にきているのではないかとの点については、限界にきているとは考えていません。』

来ているとは言っていないが近づいているという認識はあるのではないでしょうか????????そうじゃなかったら素直におかわりするようにしか思えませんけどねえ・・・・・・・・・・・・・

『マイナス金利については、本年 1 月に導入を決定して以来、市場に受け入れられて、マーケットとしてもうまく機能するようになっています。』

ダウト。

『金利の引下げ効果は非常に大きいものがあり、既に金融資本市場だけでなく、実体経済にもプラスの影響を及ぼしつつあると思っています。』

先生!インフレ期待は下がっているし基調的な物価も頭打ちです!!!

『これについて何か限界がきているとは考えていません。欧州の状況などを見ても、まだまだマイナス金利を更に深掘りしていく余地はあり得ると思っています。』

先生!欧州は日本のような大規模資産買入状態になっていないですが単純比較していいんでしょうか!

『量的なものについても、年間 80 兆円に相当するペースで国債保有額を拡大していくことを通じて、おそらく国債の 3 分の 1 くらいを既に取得していると思いますが、逆に言うと、まだ 3 分の 2 が市場にあるということでして、今、何か量的な限界にきているとは全く思っていません。』

国土の3分の1が戦略爆撃で焼け野原になりましたが、逆に言うとまだ3分の2が焼けていないということなので一億突撃火の玉だということですね、わかります。

『現に、日本銀行による国債の買入れについて何らかの障害が出るとは全く思っていません。そうした意味で、マイナス金利あるいは量的緩和の拡大が限界にきているとは全く思っていません。』

そらまあ思っているとは言えんというのは分かるが、それを強調するあまりに説明がヤケクソになっているというのはさすがに末期症状。

『むしろ、先程申し上げた通り、あるいは公表文にも書いてある通り、今、英国のEU離脱問題あるいは新興国経済の減速を背景にして、海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場で不安定な動きが続いているわけで、こうした不確実性が企業や家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止するとともに、わが国の企業および金融機関の外貨資金調達環境の安定に万全を期して、前向きな経済活動をサポートする観点から、今回のようなETFの買入れ額のほぼ倍増や企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置を導入したわけです。これが、現時点で、最も有効で適切な政策であると考えています。』

海外中銀は様子見ですけどね、というのと、「ETFが企業コンフィデンスを高める」(外貨ファンディングの負担軽減は銀行チャネルを通じて好影響なのと、一般企業の外貨調達にも資する面もあるでしょうからその点はまあ分かる)という理屈も今回初めて繰り出された理屈でして、そういう風に政策反応関数が毎度毎度コロコロと変わって、「こういう施策をするとこういう波及経路を持って主にこういう事に効果を出すことを期待している」というのがその時その時で実施したい施策に対して後付理屈でホイホイと設置するもんだから、段々市場の方が何をやるか訳分からなくなるのですよね。

確かに非伝統的政策だから分かりにくいとか、予見可能性が下がる面は致し方ないのですが、「このような状況でこの点にボトルネックがあるのだから日銀はその点を解消する為にこのような政策を行って、こういう形でその政策が波及していくので効くのではないか」という点について日銀が何か考察を出すでもない所か、今申しておりますようにやった政策に後付で理屈を捻りだしてくるというああいえばこういう状態になっているのですから、そら市場の方も解釈が混乱するというのもので、やれヘリマネだなんだというような話がバカスカ飛び交うというこのアホアホ状況については、日銀がきちんと政策反応関数や政策の波及メカニズムについて説明していない事も大いに悪影響を与えていると思うのですよ。

実際に効くかは後になってみないと分からない面があるのは仕方ないにしても、そのレビューだって碌に無かった訳ですし、まあ今回のMPM前の大混乱カオス市場(債券よりも他のカオスが酷かったですな、まあ結果後は債券がカオスになりましたが、笑)とかコミュニケーションをグダグダにして2%物価目標を2年で達成するという目標に対する結果が碌すっぽ出ていない(これちなみに結果さえ出ていればコミュニケーションがある程度グダグダでも意外に何とかなるというのは逆さ絵おじさんのFRBで示されておりますな、ドラギ先生はどうも気が付いて態勢の立て直しに入っているように見えます)という今の日銀の惨状がコミュニケーショングダグダと相まって絶賛炎上モードになったという事でしょう。

・・・・・・とつい悪態になってしまいましたが続き。

『展望レポートにもあるように、また、冒頭の説明でも申し上げた通り、経済成長率は、足許、特に 2017 年度の成長率は、経済対策等の効果もあってかなり上振れています。物価についても、足許は予想より低下していますが、今申し上げたような成長率の上振れその他によって、2017 年度、2018 年度の物価の見通しは従来と変わっていません。そうした中で、最も適切な金融緩和の強化策を採用したとご理解頂きたいと思います。マイナス金利あるいは量的緩和に限界がきたということは、全くないと考えています。


だから何でETFが適切なのかが分からんし、これ経済対策の効果が過大評価だった場合は追加緩和をするの??と聞きたくなる。置きの問題だから追加緩和をしたくないからそう置いたんじゃないの???という話になるわな。


『総括の点についても、公表文で示した通り、海外経済・国際金融市場を巡る不透明感などを背景に、特に物価見通しに関する不確実性が高まっている状況を踏まえて、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、この 3 年強の間の色々な金融緩和の下での経済・物価の動向、あるいは政策効果について、「総括的な検証」を行うことにしました。』

まあ何だかねという話は昨日もしたのでしつこくなるから割愛(^^)。

『もちろん、スタッフは常に分析をしているわけですが、「量的・質的金融緩和」を導入して 3 年強、そして「マイナス金利」を導入して半年――1 月に決定して実際に適用されたのは 2 月からですから半年位――というところで、「総括的な検証」を政策委員会において行うということです。政策委員会の全てのメンバーがこうしたことが望ましいと言われまして、この公表文に示したということです。具体的に、「総括的な検証」を行った後の金融政策については、「総括的な検証」を行ったうえでのことですが、明確なのは、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために何が必要かという観点から、「総括的な検証」を行うということです。』

ここちょっと疑問なのですが、確かに今の建付けはそうなっていますけれども、そもそも論として「できるだけ早期に」について木内委員は反対してますし、「2%の物価安定の目標」に関しても木内委員や佐藤委員の言う2%の安定と置物副総裁が言うようなものとは違っていると思いますし、達成の定義もアクチュアルな物価の話なのかフォーキャストターゲットなのかとかも敢えて曖昧になっている次第で、こういう定義論について全く触れないというのも変じゃないのかねとは思いますが、まあ最初の時点で定義論に触れると言った瞬間に世紀末救世主伝説市場になってしまうから、出さないというのもまー分かるけど、実際問題としてどこまで踏み込んで行くのかがイマイチ見えない説明ですよね。もしかしたら「主な意見」の所でもう少し見えてくるのかもしれないですしそれを期待したいですけどね。

ということで質疑一つで時間切れになってしまいましたすいませんすいません。






2016/08/01

お題「決定会合レビューである」

自民と民進の東京都連が間抜け揃いなのが良く分かる都知事選挙でしたが、当選した方も「これまでにない都政、これまで見た事が無い都政」とか余計な事や出来ないことをやって爆発炎上のフラグにしか思えないので2年以内にまた都知事選が実施に100ドラクマ。

ということでそれは兎も角決定会合。

○色々とツッコミどころの多い今回の決定会合ではありました

声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160729a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160616a.pdf(前回)

展望レポート基本的見解
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1607a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1604a.pdf(前回)

まー色々とツッコミどころは多いのですが・・・・・・・・・・・

・先にアタクシ的な総括:甚だ恥ずかしい「金融緩和の強化」ですが見直し内容によっては評価できる

兎に角ですね、今回の決定内容を声明文の形で見た時に「こんな声明文出して恥ずかしくないのかね」とは思ったのですが、まあ最後に項番5を見てああそうですかやっと現実的な収拾策考えましたか、という感想になったので、まあその点がアタクシの想像通りに行くならば評価しようじゃないの、ってな感じですな。

つまりですな、そもそも今回ETFの拡大だけというのは品が無いのと、これまでの金融緩和の日銀的な定義からズレてくるのでやらないでしょとか思っていたのですが、堂々とETF拡大だけで「金融緩和の強化について」って来たのには腰が砕けましたし、ブリクジットに関してFEDとか「短期的なリスクは消えた(diminish)」とか言うわBOEやECBが金融政策の様子見に入るわという中でブリクジットを声明文の1発目に突っ込んでくるとか、まあ見てる方まで恥ずかしいにも程がある声明文ではあるのですけれども、一方で今回は金利も量も拡大していないとか、その上で項番5にある見直しをしてくるとかいう所でして、まーその辺については今後どうなるか次第ですが評価できる方向性になるかも知れませんなという感じです(ただしETFの拡大にも問題があると思うという悪態は先の方に)。


・金融緩和の強化?????

今回の冒頭表現が『金融緩和の強化について』となっているのですが・・・・・・・・・・・

昨年の決定会合声明文一覧
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2015/index.htm/

こちらを見ると分かりますが、昨年12月の「補完措置」って『当面の金融政策運営について(「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置の導入、12時50分公表)』というお題になっていまして、この時って「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置の導入」というのがあって、設備・人材投資ETF買入という謎の措置があったりしましたが、その中で長期国債の買入平均年限を7-10年から7-12年に伸ばすというのもやっていまして、これって買入の年限が長期化されるという事になりますから、「質的な緩和の強化」でもあった筈なのですが、この時は「マネタリーベースの拡大ペース引き上げを伴わないから追加緩和ではありません」という整理をしていた筈なのですよね。

一方で今回の追加緩和においてはマネタリーベースも金利も変更が無いのに「追加緩和」という説明になっていまして、これって従来の整理と違っているのですが(量的質的金融緩和自体はマイナス金利の前からやっているのでETF単独の拡大が質的な緩和だったら長期国債の買入平均年限の長期化も緩和と説明して然るべき)、何で今回は「金融緩和の強化」という看板を出したのかが謎、というかどこからどう見ても大人の事情(銃声)。

#つーかヘッドラインで「追加緩和」って出たのに量も金利も変わらなかったので「はぁ?」でございましたわ


ちなみに英文のお題はこうなっています。

今回
http://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmdeci/state_2016/index.htm/
Enhancement of Monetary Easing [PDF 67KB]

昨年12月の補完措置
http://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmdeci/state_2015/index.htm/
Statement on Monetary Policy (Introduction of Supplementary Measures for Quantitative and Qualitative Monetary Easing, Announced at 12:50 p.m.) [PDF 32KB]

一昨年のバズーカ2
http://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmdeci/state_2014/index.htm/
Expansion of the Quantitative and Qualitative Monetary Easing (Announced at 1:44 p.m.) [PDF 65KB]

量の拡大を伴っていないからExpansionじゃないのか、3方向の一方だけだからEnhancementなのか知りませんが、英文の表記が色々とございますなあという感じで。

・下振れリスクで何故ETF??????

今回の追加緩和にの背景については項番1に記載がされていますが、まあ出オチにも程があるのでそこを引用しますと、

『1.英国のEU離脱問題や新興国経済の減速を背景に、海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場では不安定な動きが続いている。こうした不確実性が企業や家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止するとともに、わが国企業および金融機関の外貨資金調達環境の安定に万全を期し、前向きな経済活動をサポートする観点から、日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下の措置を決定した。』(今回声明文より)


>英国のEU離脱問題や
>英国のEU離脱問題や
>英国のEU離脱問題や

・・・・・・・・さっきも書いたけれども、今月はBOEも影響見るからと現状維持、ECBは結構オトボケで現状維持、FEDは態勢立て直しモードに入って「短期的な下振れリスクは解消した」というアセスメントまで出す中で、その3中銀よりも英国の影響が小さいとしか思えないジャパンの中央銀行がブリクジットをお題にして追加緩和実施とか、それってお前ジャクソンホールのシンポジウム行って恥ずかしいとか思わないのかと小一時間問い詰めたい内容でして、言い訳に出すにしたってもうちょっとマシな言い訳を出せよという所ではございます。

>国際金融市場では不安定な動きが続いている
>国際金融市場では不安定な動きが続いている
>国際金融市場では不安定な動きが続いている

・・・・・・・・・えーっと、株価とかブリクジット前を大体奪還してて、流れとしてはリスクオンに戻っていると思うんですが(以下さっきの繰り返しになるので割愛^^)。

とまあそういう理由づけもワケワカランですが、今回はETFの拡大「だけ」というオモシロ決定になっている訳ですよこれがまた。

つまり展望レポートに記載されている見通しの方で言いますと、成長率見通しは政府の経済対策で思いっきり下駄を履かせているようで上方修正、物価見通しは先行きの2%到達時期を含めて長めの見通しに変化は無し。ということでメインシナリオに関しては変化が全然ない(目先の所は弱含みになっていますが先の見通しには変更が無いという事ですからね)となっていますので、本来ならば追加緩和をやる必要があるのかどうか謎な訳ですよ。

もちろん「下振れリスク対応」で追加緩和というのは、バズーカ2の時にも「インフレ期待の下振れリスクに対応」という形で実施していますが、逐次投入で下振れに対するプリエンティブな対応で追加緩和(福井の俊ちゃんが得意技としていましたが)というのがあっても良いのですけれども、仮に下振れ対応でプリエンティブで追加緩和を実施、というのであれば、今回少なくともマネタリーベースの拡大か政策金利の引き下げという措置を実施しないと今までの政策フレームワークとの整合性が取れないのですよね。

従ってETF「だけ」というのがそもそも訳が分からないですし、元々ETFなどのリスク性資産の買入というのは「リスクプレミアムの縮小を行い、市場価格を安定させることによって金融政策の波及メカニズムをワークさせる」という措置だった筈で、ETFの買入拡大を「追加緩和」と称すること自体が話が変だろという事でもあります。即ち、リスクプレミアムが発生しているのでそれを縮小させて適切なプライシングを促す、という意味でのリスク性資産の買入であれば政策として意味が分かるのですが、自分から追加緩和と称して買入を一段と拡大させる、というのは最早リスクプレミアムの縮小ではなく、リスク性資産の価格形成において、リスクプレミアムをマイナス方向、すなわち金融不均衡を発生させる方向に追加措置を行った、と宣言するに等しいお話な訳で、金融政策としてそもそも適切なのかという問題があって、その点においては現行のペースでも如何な物かと思っていたのに6兆円ペースとかお前ら何考えているんだ、というのは大いにありますな。

とまあそう考えますと、6兆ペースにする必要あるのかというこの数字の根拠をどう出しているのか、そもそもこのETF買入拡大がどのような政策波及効果を狙ったものなのか、という定量的&定性的な評価を出せやゴルァ!と暴れようかと思ったら項番5があるので勘弁してやろうかというようなお話になるのでありました。


・項番3も何ちゅうかとしか申し上げようがない

『3.この間、政府は、大規模な「経済対策」を策定する方針にあるなど、財政政策・構造政策面の取り組みを進めている。日本銀行としては、今回の措置も含め「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を推進し、きわめて緩和的な金融環境を整えていくことは、こうした政府の取り組みと相乗的な効果を発揮するものと考えている。


まー項番1のブリクジット云々がとにかく今回の声明文を禿しく見苦しくしている(というかお笑いにしている)元凶ですが、この項番3も何を申し上げたいのかという所ですの。まあ今回の展望レポートで政府の経済対策を思いっきりトッピングすることによってメインシナリオを変えずに済んで、その結果政策金利やマネタリーベースのおかわりをしなくて済んだ謝辞ですかそうですかという感じですが、一応金融政策と財政政策の連携はあるけど別に一体化している訳ではないとか言いたいんでしょうが、まあ分からん人が読んだらヘリマネの布石とか取られるような書き方でもあって、こういうのは下手に入れない方が良いと思いますがね。いやまあ実はヘリマネの布石でしたってんだったら別に良い(良くは無いが)んですけど。


・項番4はいつもの文章ですが・・・・・・・・・・・・・

『4.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる(注4)。


と言っているのですから、ブリクジットの影響で追加緩和の実施が必要だというのであれば、金利なりマネタリーベースなりのおかわりをすれば良いという話ですが、項番5の政策見直しキタコレとなっておりますので別の小見出しで参りましょう。


○項番5の「政策検証」は見解が割れるので9月まで思惑(やヘナチョコヘッドライン)で荒れるでしょうな

『5.なお、本日公表した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した通り、海外経済・国際金融市場を巡る不透明感などを背景に、物価見通しに関する不確実性が高まっている。こうした状況を踏まえ、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」・「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行うこととし、議長はその準備を執行部に指示した。


まあ各種措置よりもこちらの方が注目度大となった訳ですが(当たり前ですが)、まあ一見して何が何だか良く分からない悪文になっているのが実にこうアレな訳ですが、この場合悪文にしているのは「どうとでもとれるような書き方にしている」というお話な訳ですよ。

「物価見通しに関する不確実性が高まっている」という認識を示し、「2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から」政策について総括的な検証を行う、という説明になっていますが、その見方としての読み筋は全く逆の2方向となる訳で、

(1)色々と最近評判が悪いので悪評を叩きのめす理論的なバックボーンを作ってから追加緩和や!!!
(2)これまでの政策の限界が色々と出てきたから政策の転進を目指すための整理遂にキタコレ!!!

という両方の解釈が可能でありまして、現にMPM出た直後からその双方の何とかストレポートが飛び交いだしておりまして、今日になったら更にそれがクルスク大戦車戦の如く砲弾が飛び交うの図となるでしょうなあと思いますし、次回決定会合まで結構な日数があるので、その間に思惑記事みたいなのが飛び交ってみたり、早速今週は4日に置物副総裁の置物駄話会(またの名を金融経済懇談会)が横浜方面で行われるようですので、そういう機会での会見とか、まあ色々な機会で解釈論が盛り上がって相場が振らされることになるかと存じます。

でまあせっかくですので金融政策にイヤミと悪態を申し上げるのを趣味としている(筈では無かったのだが・・・・・・・・)不肖このアタクシも解釈論を一席申し上げますと、まあ後者の方じゃないですかねえと思うのですよ、その根拠は以下のような感じかな。


えーっとですね、元々現行政策が特段問題なくワークしていて、こうかもばつぐんだ!という風に認識しているんだったら、別にこんな包括的な検証云々とかしなくても良い訳ですし、それこそ今回は下振れリスク対応で自称追加金融緩和を行っている訳ですから、問題ないと思っているのであれば今回政策金利の下げなり長期国債買入の拡大なりその両方セットなりを実施すれば良いはずなのですよね。

然るに今般は金利も量もいじらずに、ETFの買入ペース拡大だけをもって「追加緩和」と政策の看板を「盛る」形にしてきた訳ですから、それはもう「マイナス金利下で量の大規模拡大を志向する政策(そもそも今の政策枠組みは「マネタリーベースの拡大ペース」が調節方針で金利ではない)の遂行に問題があり、このままでは執行で行き詰ってしまうという事を認識したからこそ政策の限界を手前に寄せる追加緩和を回避した、ということだと思うのですよ。一方で色々と大人の事情とか市場のクレクレがやかましいとかいうのがあるから追加緩和を何かしておかないといけないので、とりあえずおかわりをしても直ぐに限界にぶち当たらない(筈の)ETF単独拡大というのを下品を承知で実施した。とまあこういう解釈になるのって自然じゃありませんかね????????

もちろん(1)のような考えも成り立つと思うので別に全否定する気は無いですけれども、そもそも問題が無いと思っているならば今回追加緩和期待も高かったんですし素直に量や金利の政策が出てきていたと思うので、「追加緩和の予告型」というのは当たらないと思うのですよねー。予告だったら「新たな政策手段の検討」というようなものが出る筈。


まー(1)だと思ってしまうのは、会見でも総裁が説明していたし、こちらの声明文にもありますように「2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から」という文言が入っているので、2%は変わらない、出来るだけ早期にも変わらない、となるとそらもう追加緩和をやらないと2%にも届かないし早期達成も出来ないでしょ。という発想になると思うのですが、そもそもこの2%とは何ぞや的なお話をするとか、フォーキャストターゲット的な意味での2%であるともっと明示的にするとか、まあ色々と2%もいじりようがあると思うのですよね。

それに「できるだけ早期に達成」とありますが、元はこれって「2年程度を念頭に」というのがあった訳で(QQE導入当時の声明文http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130404a.pdfをご覧ください)、いまに始まった訳ではないですが2年程度というのをしらっと抜かしており、こちらでの検討指示文言でも堂々と外している以上、「できるだけ早期に」というのをこれまた心の問題にすることは可能で、「できるだけ早期に達成する努力はしているけれども、そもそも経済は生き物なので先般の原油価格みたいに我々のあずかり知らぬところで問題が起きる場合もある」とか言い出すのも可能。

もちろん(2)と考えているにしたって今からそれを前面に出す訳には行かない(というか転進モードになるにしたっていきなり9月から転進するのもフリクション大きいから難しいのではないかと思う次第)でしょうから、いきなり上記のような総括が出てくるのかも謎ではありますけれども、まーここは素直(かどうか知らんが)に政策の限界が近づいてきたので、政策の限界とか言われ出す前に戦線の整理縮小を企図している、という風に読みたいと思います。

なお、英文では以下のようになっています。

『5. As shown in the July 2016 Outlook for Economic Activity and Prices (Outlook Report) released today, there is considerable uncertainty over the outlook for prices against the background of uncertainties surrounding overseas economies and global financial markets. Against this backdrop, with a view to achieving the price stability target of 2 percent at the earliest possible time, the Bank will conduct a comprehensive assessment of the developments in economic activity and prices under "QQE" and "QQE with a Negative Interest Rate" as well as these policy effects at the next MPM. The Chairman instructed the staff to prepare for deliberations at the next meeting. 』(今回声明文英文版より)

a comprehensive assessmentですかそうですか。


○ドル供給関連は特則部分はウマーですな

実施施策のうちドル供給部分はまあ宜しいのではないでしょうか。

『(2)企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置(全員一致)

@ 成長支援資金供給・米ドル特則の拡大

成長支援資金供給・米ドル特則(企業の海外展開を支援するため、最長4年の米ドル資金を金融機関経由で供給する制度)の総枠を 240 億ドル(約 2.5 兆円)に拡大する(現行の 120 億ドルから倍増)。

A 米ドル資金供給オペの担保となる国債の貸付け制度の新設

金融機関に対する米ドル資金供給オペに関し、担保となる国債を、日本銀行当座預金を見合いとして貸し付ける制度を新設する。』

一々倍にするのが好きですなと思いますが、ドル特則に関しては現状でも枠いっぱいまで利用があるという人気オペになっておりますし、最近ますますドル運用ニーズの高まる中でベーシススワップがアイヤーという感じになっておりますので、そーゆー意味では嬉しい話ですがまあ1兆円少々の拡大ですかまあ仕方ありませんねという感じ。

2番目のドル資金供給オペですが、これに関して言えば常設ファシリティとして利用するようなオペになれば更にウハウハという感じではあるのですが、資金出す方のFEDが当たり前ですがそんな事されたら自国のファンディング市場に無駄な変化を生み出す事になるからそらまあ首を縦には振ってくれませんよねと思いますので、常設ファシリティ化というのは難しいでしょうな。まあこれが常設ファシリティになったら腰抜かしますが。

しかし「当預担保に国債をSLFで貸し出す」とかMB出した側から回収しているようなもんでして、モノがドル資金だから話としては成立しますが、MBの量に意味がある派の方からするとどうなのでしょうかねとも思ったりします。


#というところで続きは明日以降