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2016/05/31
お題「増税延期で選挙無しとな/各種メモ/ジンバブエ講演ェ・・・・・・・・・・」
あっさり片付きましたな。
○増税2年半延期で黒田総裁の任期を超えますなあ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160530/k10010540611000.html
麻生氏 消費増税再延期を了承 衆院解散せずも確認
5月30日 22時32分
とまあそういうことで結局あっさり味で増税2年半延期という事になりましたが、2年半も延期されますと財政再建大好きおじさんの黒田さんすっかり煮え湯を飲まされてしまいますなあと思いますけど、「財政の正常化路線を先送り」という事になった場合、政府と日銀の共同文書的に言う日銀の役割というのも、その役割期待自体は同じであっても、達成時期を急ぐ必要ってあるのかね、というような話にした方が良いんじゃないでしょうかねえ。
いやまあ元々「2%」というのは政府と日銀の共同文書にありますけど、「2年」というのは黒田日銀が勝手に加えたもので、それは今となっては机上の空論にも程があった置物マネタリーベース直線一気理論に基づくものなのですから、そもそも論としてとっとと枠組み何とかせえやとは思うのですが、今回の消費増税先送りに関してはこれを口実に枠組みを現実的(もう少し長い期間に継続可能な金融政策の枠組みに変更)にするチャンスが来たように見えますけど、煮え湯を飲みながら黒田さんは何を考えているでしょうかねえ。
ただまあ何ですな、すっかりどこかに行ってしまった「新三本の矢」の時にも金融政策を現実的に中長期に継続可能な枠組みにするというチャンスがあったように見えましたのですが、無為無策のまま過ごした挙句に12月に変な補完措置実施→政策の限界論高まる→1月にブチ切れてマイナス金利、と来ていますので、まー期待は出来ないのですけれども、ここで馬鹿緩和の修正をしないとそれこそ本土決戦焼け野原で巻き込まれた一般市民の死者続出みたいな展開になりそうでもうねという所です。
でまあこういう時だからこそ国営放送ニュースでも確認。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160530/k10010539541000.html
消費税率引き上げ再延期 海外メディアはどう伝えた
5月30日 4時55分
『このうちフランスのAFP通信は、安倍総理大臣の自民党総裁としての任期は再来年9月までだと指摘したうえで、「もし増税が再延期されれば、国の借金の返済にとっては重要なものの景気回復の流れを弱めるリスクをはらむ、難しい判断を後任に先送りすることを意味する」と伝えました。そして、安倍総理大臣が、リーマンショック級の出来事があれば消費税率の引き上げを延期する可能性があるとの認識を示していたことを念頭に、「安倍総理大臣はG7で、世界経済は危機に直面していると主張したが、ドイツのメルケル首相やIMF=国際通貨基金のラガルド専務理事は、それは悲観的に過ぎるとした」と指摘しています。』
『これについてロイター通信も、「安倍総理大臣は痛みを伴う増税を延期することについて、G7を使い正当化しようとした」と、厳しい見方を示しています。』
『G7での議論については、イギリスの経済紙フィナンシャル・タイムズも26日、「キャメロン首相も安倍総理大臣の見方には同調せず、メルケル首相の主張を支持していた」と伝えているほか、公共放送BBCは、電子版で「今後は、G7の首脳たちを説得できなかった安倍総理大臣の主張を、日本の有権者たちが受け入れるかどうかが焦点だ」と皮肉を込めて伝えていました。』(以上上記URL先より)
ということで盛大に引用して恐縮ですが、割と伝えるじゃん国営放送なのに(ただしタイムスタンプは与党合意前でありますが)という所で。
まあしかしワロタのはこちら。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160527/k10010537511000.html
「リーマンショック前と似る」専門家は
5月27日 20時53分
もうどう見てもリーマンショックというのを出すのは筋悪だろ(単に「景気回復はしているけれども想定よりも遅いので消費増税を小幅先送り」とでもしておけば良い話なのに)と思うのですが、「何でもいいから理屈を付ければ問題なし」みたいなことを平気で言う何とかストの方がいて曲学(以下の部分は悪態につき削除されました)。
いやあのですな、全然そういう状況じゃないのに有りもしない危機を持ち出してこの前法律で決めた事をひっくり返しますよって話をおっぱじめてしまう(なお消費増税延期自体は最終的に立法措置をしないと確定しないのでこれで延期が確定している訳でもないのだが)というのは、政策運営的には結構際どい事をやっているように見える訳で、何でもかんでも結局適当に反故にされるという認識になってしまうと政策運営の安定性に対する信認問題にならんかねと懸念する次第。
まあこれでどのくらいの補正を出すのか分かりませんが、どうせ補正予算そのものは時期臨時国会で実施となるでしょうし、そうなるとそこまで時間がありますので、その間って威勢の良い数字がひたすら飛び交いそうですから、まー格付け会社がどう出るのでしょうかねえというのが目先気になる所ですの。
○各種メモメモ
・基調的なインフレェ・・・・・・・・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpipre.pdf
消費者物価の基調的な変動
『(1)総合(除く生鮮食品・エネルギー)・総合(除く食料・エネルギー)
総合(除く生鮮食品・エネルギー): 3月1.1→4月0.9』
『(2)刈込平均値・ラスパイレス連鎖指数
刈込平均値: 3月0.4→4月0.3』
『(3)上昇・下落品目比率
上昇品目比率−下落品目比率: 3月44.5→4月40.5』
どう見ても頭打ちです本当にありがとうございました。
・TKRRが堅調とな&短国買入メモ
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
2016/5/20 -0.059
2016/5/23 -0.080
2016/5/24 -0.082
2016/5/25 -0.086
2016/5/26 -0.091
2016/5/27 -0.081
2016/5/30 -0.096
T/NのGCレートを出していますが、短国発行日渡しになる5/27のT/Nは金利が若干上昇しましたが、短国買入効果が出た30日のT/Nはマイナス拡大となっておりまして、ここに来て堅調モードとなってきますな。
短国買入結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba160527.htm
国庫短期証券買入 45,472 20,001 -0.010 0.001 69.3
先週の短国買入は足切が強の所まで流れておりまして、まあこの結果でしたらさもありなんという感じになっている訳ですが、6月に入る時点でこの有様になっておりますと、6月は国債償還月ですけれども、ご案内のこの金利という状態の中で長期債の償還再投資をどのくらいするのか、という動き次第では短期市場に資金が滞留しやすくなる可能性がこれありでして、まあそうは言ってもマイナス30近い短国のニーズって国内投資家からした場合には期末の残高調整とか担保繰りみたいなマージナルな所しかないとは思いますけれども、償還再投資をしないけど債券残高の帳尻みたいな買いが入って来ると四半期末の所であばばばばーという懸念も無い訳ではないという所ですかねえ、格下げの方もありますしどうなるのやら。
#もうちょっと詳しく計数見ながら週後半に計算してみますけど
○引き続きジンバブエ講演を鑑賞
ええまあインプリケーションは無いんですけどね。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko160527a1.pdf
マイナス金利付きQQEと日本経済
── 公研セミナーにおける講演 ──
・下関金懇と同じだが全く進歩していない部分
『3.マイナス金利付き量的・質的金融緩和政策の仕組み 』のところですけどね。
『当座預金残高を増やすのは、そのお金をより有利な運用先に充ててほしいからです。内外の貸出はもちろんですし、経済全体としてリスク性資産(株式、不動産など)への運用が増えるようにです。そのためには、当座預金にはわずか
0.1%であれ付利しない方が、より効果があると考えられます。』
下関金懇の時から全然進歩していない・・・・・・・・・・・・
まあ就任後半年以上経過した時点でアレですから進歩してねえだろとは思いますが、スタッフが指摘するのはしんどいのなら中曽さんとか置物師匠とかが指摘して差し上げろと思いますし、中曽さんはこういう阿呆の阿呆発言(主義主張に関わる発言なら別にどうでも良いのだがこれは明らかに仕組みそのものを分かっていない間違い発言)を垂れ流させない責務を負っていると思うのですが。
でまあそもそも当座預金残高増やすのはマネタリーベースを増やしてインフレ期待を引き上げて実質金利を下げるためだろと思いますし、運用先云々の所で「貸出」とか言ってますが貸出をしても当座預金残高には中立。それに「内外の貸出」って言ってるけれども、日本企業の絡みならともかく、海外企業への海外貸出が進んでも金融機関収益的にはウマーでもそれ国内経済に直接回ってくる話ではない(海外経済が良くなってという間接ルートはあるけど)訳で、緩和効果の海外漏出じゃんと思いますよね。
でもって当座預金には「わずか」0.1%とか抜かしていますが、わざわざ「わずか」とか言い出す時点でこの人の頭の中が相当粗雑にできているというのが非常に良く分かる訳で、昨日ご紹介した人を物としかみていないような労働生産性の話と言い、過去の金融政策の部分での説明のハチャメチャな間違い振りと言い、こんな粗雑な頭の(以下の部分は暴言が過ぎる為に削除されました^^)。
ここも進歩していないというのが次の『ゼロ金利政策と金融仲介機能』という小見出し。
『ここでイールドカーブが寝ている、すなわち、短期の金利に比べて長期の金利は高いが、その程度が低くなっていることについて、金融機関の利益を損ない、ひいては金融緩和効果を却って阻害するものだという議論があります。』
下関金懇でも同じ話がありました。
『確かに、金融機関とは資金を短期で調達して長期で運用するものですから、イールドカーブが立っていれば利益は大きくなります。しかし、これだけでは本来銀行が期待されている金融仲介機能を十分に果たしているとは言えません。』
相変わらず話が無茶苦茶です。
『金融仲介機能とは、貯蓄超過部門である家計から貯蓄を集め、貯蓄不足部門である企業に、その投資プロジェクトの収益性を審査して貸し出すことです。ところが、現在、企業は貯蓄超過部門になっており、お金を借りてくれません。』
マクロ的な話とミクロの話が混在して話が変。
『企業が貯蓄をため込んで投資をしないのは、デフレが長期にわたって続き、投資意欲を減退させているからです。デフレが終われば、企業は投資意欲を取り戻し、銀行からの借入れ需要も増大するはずです。すなわち、銀行の貸出も増大し、銀行の利益も上がるはずです。』
ではどうやってデフレ脱却するんでしょうか????????と思いますがその話が無いというのは今回も同様。
『また、量的・質的金融緩和の開始以来、銀行の利益は高い水準で安定しています。これは景気好転によって貸出先企業の経営が改善し、貸し倒れのコスト、信用コストが減少しているからです。図表4は、銀行や信用金庫の当期純利益とコア業務純益の推移を見たものです。「量的・質的金融緩和」以来、金融機関の利益がどの業態で見ても高水準にあることが分かります。』
ちなみに下関金懇以降にFRSの最新版が出ていますが、金融機関の信用コスト改善についてはさすがにここまで散々改善した結果として、改善は頭打ちになってきている、という分析が出ていた筈ですけれども・・・・・・・・・・・・・
『一時点の金利のイールドだけで得か損かを考えるのではなく、日本経済全体の回復が金融機関経営を大きく改善したことを考える必要があります4。
』
と言っていますが、信用コストの改善が頭打ちになり、基礎的収益力が低下傾向を続けている、という信用機構局による分析がFSRとして出ている訳で、「一時点の」状況を切り取って話をしているのは貴殿ではないでしょうかねえ。
『金融機関が損失を被るから量的緩和やマイナス金利に反対だというのは、一部の業界が損失を被るからTPPに反対だというのと同じです。』
またこれ言ってるわ。バッカジャネーノ。
『金融政策も通商政策も経済全体のことを考えて行わなければなりません。日本経済全体を強くすることで、銀行業も利益を受けます。また、銀行業も強くならなければなりません。』
金利からの金融政策波及ルートって自分らで「実質金利」って説明している訳で、その実質金利が実体経済に波及するためにはチャネルとしては金融仲介機能が必要であって、金融機関経由の波及チャネルが金融機関収益を過度に圧迫することによって損なわれたら金融緩和の効果が出にくくなるんじゃないですか、という金融政策の波及ルート全体の観点から批判が来ている、という発想はこの人には無いんでしょうなあと思いますが、恐らくご本人が常に自分の目先の損得勘定だけしかしないで人生送ってきた大変に(自粛)お方だからこそ他人も皆目先の損得勘定で物事を語っている、という風にしか思えないのでしょうなあと、実にこう人間として哀れなお方であるとしか申し上げようがございません。
・下関金懇に加えた新コーナー登場したが更に馬さん鹿さんに磨きがかかる
『マイナス金利政策への反発と金利低下 』という「批判」ではなく「反発」と書く時点で
このお方の品性が良く分かる小見出しの部分が新コーナー。
『ここでマイナス金利政策への反発が強いことについて考えてみたいと思います。先日お会いした経営者の方で、マイナス金利という言葉が良くないとおっしゃった方がいました。この方は、付利を引き下げるにしても、新たにマイナスの部分を作るのではなく、従来通りの基礎残高の200
兆円余りの部分の付利を引き下げて 0.05%にするかゼロ%にすれば良かったのではないかとおっしゃっていました。それほど「マイナス」という言葉の持つインパクトが大きかったのだと思いました。』
というのはさておき、その次がいきなり飯吹いた。
『中には、マイナス金利にしたから、予想成長率や予想物価上昇率が低下するのだという方もいらっしゃいます。しかし、このような考え方が誤りであるのは、逆に金利を引き上げたら何が起きるかを考えてみれば分かります。』
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)
何でマイナス金利政策の反対が「利上げ」になるんだよということで藁人形論法の面目躍如。
『不況期に金利を引き上げれば、経済はますます悪化して実質GDPの成長率も物価上昇率も低下するでしょう。結果、金利はさらに低下してしまいます。
』
そもそも今は日銀の経済認識「不況」じゃない筈なのですが、マイナス金利の実施に対する批判へのカウンターが、マイナス金利実施時の経済状況ではない「不況」の時期において「金利を引き上げる」という話になるのかさっぱり分からないでしょうが、これが置物リフレ一派の得意とする藁人形論法の手法でありまして全くもって度し難いものがございます。
『多くの金融関係者が、マイナス金利付き量的・質的金融緩和政策をしたのが良くないというのは、2013
年 4 月の量的・質的金融緩和政策以来の日銀の金融政策によって金利が低くなり、かつ、イールドカーブがフラットになったことで金融機関が利益を上げることが難しくなったからでしょう。』
そもそもこの説明が何を言いたいのか分からんのだが、
『しかし、金利の低下は、必ずしも最近の日本銀行の政策によるものではありません。それはむしろ、これからお話しするように、日本銀行の長期の政策によるものです。』
ナ、ナンダッテー!!!という感じですが、確かQQEやって2年間で2%の物価安定目標を達成する、という話をしていた筈でして、その通りに行っているならQQE開始して2年どころか3年以上経過しているのですから、とっくの昔に金利はプラス圏になって期待インフレも2%でアンカーされているのだから金利は上昇しているわイールドカーブは立っているわという状態に成って居る筈で、そうなっていないのが「日本銀行の長期の政策によるものです」とか過去の金融政策のせいにするとかヘソが茶を沸かすわと思いますし、しかもこれ(今日はまた時間が無いのでパスしますが)トレンド成長率が低下したとかの話をしていますが、そのトレンド成長率の低下は金融緩和が足りなかったから、という話をしながら、そこから先にかなりの支離滅裂理論(一つ一つのパートだけ見ると話が通るのだが全体の整合性がハチャメチャという置物一派のお得意なパターンです)を展開しておりまして、下関金懇の恥の上塗りとなっているのですが、そこはまあ後日(明日かは知らん)。
しかしまあ何ですな、上記のような過去の事を言うならそもそも「出来るだけ早い期間に達成」という今の政策枠組み自体が無茶だという話になるのですが、そこには全然気が付かないで話をする、というのはどういう頭の構造をしているのか不思議極まりないお方ですなあと思う訳で、日銀に入って勉強した(キリリッ)とか素直に言う置物大師匠が凄まじくまともに見えてしまうというエッシャーのだまし絵もビックリのジンバブエ講演なのでした(なおまだ続く)。
2016/05/30
お題「消費増税先送りで財政はホイホイ出るのか・・・・・・・・/ちょっと目も当てられない講演が登場」
民進党が2年というから2年半ですかそうですか。
○消費増税先送りとな
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016052990070315.html
消費増税19年10月に 2年半延期 首相、麻生氏らへ意向
2016年5月29日 07時03分
『安倍晋三首相は二十八日夜、麻生太郎財務相兼副総理、自民党の谷垣禎一幹事長らと公邸で会談し、来年四月からの消費税率10%への引き上げを二〇一九年十月までの二年半、再延期する意向を伝えた。これを受け、政府・与党は増税の再延期に向けた最終調整に入る。首相は公明党の山口那津男代表との会談を経て今週にも正式表明する。』(上記URL先より、以下同様)
『延期期間を二年半とする意向を示したのは、基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させる政府の目標年次である二〇年度までには、遅くとも増税を実現しなければならないとの判断があるとみられる。』
えーっと消費税増税を2020年度に間に合わせてもPBの黒字化の目標いやなんでもないです。
『首相は増税を再延期しても、財政健全化に道筋を付ける方針を明確にしたい考えだ。』
とか何とか出ているのですが、その一方で・・・・・・・・・・・
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO02908100Y6A520C1MM8000/
首相、G7踏まえ2次補正 消費増税延期、与党と調整へ
2016/5/28付日本経済新聞 朝刊
『安倍晋三首相は27日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で訴えた世界経済の危機回避に向け、公共事業などの経済対策を盛り込む2016年度第2次補正予算案を編成する方針を固めた。7月の参院選後に予定される臨時国会に出す方向。17年4月予定の消費税率10%への引き上げの再延期は近く与党と本格調整に入る。(関連記事総合1、政治面に)』(上記URL先より)
とありまして、あの「リーマンショック前」とやらの世界経済の危機回避に向けて、という経済対策ですからということで、こちらの記事だと有料部分にしか出て来ないのですが、共同のニュースなどを見たところ(ちょっとURL見つけ損なったのですが手元の新聞による)「家計支援など5兆〜10兆円」とかありまして、こちらだと公共事業なので良く分からんという感じなのですかね。
そらもうリーマンショックだから家計支援しないといけませんね(棒読み)という所ですが、そもそも論としてリーマンショックなんだったらそれは金融バブルが崩壊するという話なのですから、金融緩和とか公共事業やってもしょーがないですし、だったら各国で共同して金融危機対策をしないといけない訳で、「リーマンショック級の経済の落ち込みがあったので致し方ない」というのなら分かりますが、「これからリーマンショックが起きるから以前法的に決めたのやっぱり無し」というのはそもそも論としてやることが(以下の記述は不穏当表現の為に削除されました^^)。
でまあこれだけやらかしたら格付会社はばっちり格下げしないとさすがに存在意義の問題になってくるだろ常識的に考えて、とは思うのですが、何せ債券市場ちゃんの方は完全に本件に関して警鐘を鳴らすような市場機能を喪失しておりますので、まあ為替市場、というよりは外貨ファンディングの所でしか市場機能による警鐘は出ませんでしょうなあと思うのでした。
○この審議委員は(少なくとも新法)史上最低の人材ではないかと思われるゴミクズ講演登場
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko160527a1.pdf
マイナス金利付きQQEと日本経済
── 公研セミナーにおける講演 ──
この講演なのですが、先般行われた下関金懇での内容を更に悪化させた代物というオソロシイものでございまして、一々全部ツッコミどころだらけなのですが、残念ながらこのおじさんの講演は執行部の無理繰りロジックの遥か斜め下を行くゴミ文章になっておりますので、以下の部分から残念ながら政策インプリケーションを得ることは困難である、という点をお含み置き頂きまして鑑賞して頂ければと存じます。まあ置物リフレ一派の程度を知るという意味では意味があるかも知れませんけどね!!!!!!!
なお、そもそも論として下関金懇の焼き直し部分がやたら多い上に焼き直したら更に悪化しているという講演になっておりまして、前回のツッコミと被る部分が多々ありそうなのは勘弁して下さい。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/doramemon1604.html#160414
・下関金懇と同じく説明がハチャメチャなのだが誰か指摘する人はおらんのか
『2.マイナス金利付き量的・質的金融緩和政策の考え方』の所でまた下関金懇の焼き直しが出てくる。
『「マイナス金利付き量的・質的金融緩和政策」は、これまでの量的・質的金融緩和とは異なるものだという議論が一部にはありました。しかし、これは、これまでの金融緩和政策と同じ考えに基づくものです1。
』
考え方が同じでも手段が別なら別の政策手段でしょ、というようなツッコミを破壊する次の破壊力だが下関金懇で既に免疫があったアタクシもこの次は椅子から落ちたわ。
『やや理論的な話になりますが、自然利子率という概念があります。これは経済を不況にも過熱にもさせない、ほど良い利子率があるという考え方です。金融政策の目的は、現実の利子率をこの自然利子率との関係で適切な水準にコントロールすることで、経済をほど良い状態にしておくことになります。』
と見た瞬間に下関金懇を思い出しましたが・・・・・・・・・・・・・・
『具体的には、消費者物価上昇率を長期的に2%程度にしておくということです。』
( ゚д゚) 全然進化していない・・・・・・・・・
(ちなみに前回は何故かPDFファイルがおかしくてワードを使わないとテキストに落とせなかったのですが今回はその点だけ進化している)
『この2%の物価上昇率の下で、失業率も低下し、成長率もそれなりに高く、景気が良好という状態を保つことができると考えています。
』
問題はその自然利子率がどのあたりにあって、今の金利をどのくらいの水準に持って行くとどの程度景気に対する刺激効果があるのか、という話をしないといけないのですが、自然利子率をコントロールするって言っておいて何で急に2%の物価の話になるのか全く分からんというかお前はアホかとしか思えません。
『しかし、長いデフレと経済停滞が続いて、金利はほとんどゼロになってしまいました。名目金利だけを考えていたのでは、金利をこれ以上下げることは難しく、経済をほど良い状態にすることができなくなってしまいました。』
という話をしているのだが、そもそも自然利子率のアプローチで行くのであれば「名目金利だけを考える」というのが筋としておかしくねえかと思いますし、この後の方でここの説明と全く矛盾した説明をしている、というのが「説明の時に自分に都合の良いパーツを適当に繰り出して来るのでその部分だけ見ると御尤も(ジンバブエの場合はそもそも部分でも御尤もでは無いといいうのが論外なんだが)に見えるけれども、話の筋が通っていないから政策論として全く無意味どころか有害、という話になります。
『そこで行ったのが、2013 年 4 月の量的・質的金融緩和です。これは、マネタリーベースを拡大し、予想物価上昇率を引き上げ、実質金利すなわち名目金利マイナス予想物価上昇率を引き下げて、経済を良い方向に持っていこうというものです。』
とか何とか以下その先の説明をしているのですが、マイナス金利の説明部分で既に馬脚が。
『こうしたリスクの顕現化を未然に防ぐために、2016 年 1 月には、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を行いました。』
という事ですがこの次にサラッと馬鹿文言が登場。
『これは名目金利をマイナスにするわけですから、実質金利も当然に低下します。』
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)
えーっとすいません、あんさんさっき「インフレ期待を上げて実質金利を下げる」という話をしていた筈で、名目金利をマイナスにしたってインフレ期待が一緒になって下がったら実質金利って低下しないかもしれませんけれども、何で名目金利を下げたら実質金利が「当然に」下がるんですか。
『マイナス金利付き量的・質的緩和も、それ以前の量的・質的緩和も、実質金利を引き下げて、経済を良い状態にしようとすることでは同じです。
』
ということで、まあジンバブエ先生にそういうロジックは理解できないでしょうから別に良いのですが、QQEではマネタリーによって期待インフレを上げて(特にマネタリーショック的な2倍2倍)、長期国債買入はその大量のマネタリーを出すためと、インフレ期待上昇によるフィッシャー効果で上昇する長期金利の抑制を行う、という話でしたが、現状QQENになってからは明らかにその話をスルーするようになって、「イールドカーブを押し下げる」一点張りになってきていますので、同じ「実質金利を下げる」と言ってもアプローチが変容している訳で、「同じです」とか言うのはジンバブエ先生のような粗雑な脳味噌なので致し方ないのかもしれませんが、それで審議委員とはヘソが茶を沸かす。
・下関金懇から更に品が無くなっているコーナーキタコレ
でもってその次の『自然利子率を高めるべきか 』というのも同じ話をしている上に更にゴミな話が加わっている辺りがジンバブエクオリティ。
『自然利子率を高めるべきか 』という小見出しですが。
『ここで実体経済を良くするために、なんとか金利を下げようという発想で考えていますが、そもそも自然利子率が低すぎるのが問題で、それを上げるべきだという議論もあり得ます。日本経済の効率を高めて成長率を高くすることができれば、自然利子率も高くなりますから、金融政策でなんとかして金利を下げなくても良くなります。そのためには成長戦略が大事だという議論です。』
何かこの辺りの説明も大分怪しい気がするのだが。
『議論としては分かりますが、ではどうやって、どのくらい成長率を高めることができるのかという具体論はあまりないようです。』
と、人の事は勝手に言いますが自分の所の金融政策でインフレ期待や物価がどのくらい上がったのかという話は全然していないのに人の事だけ「あまりないようです(キリッ)」とか相手が無能であるかのような品性があまり宜しくない表現になるのが何とも。
『そもそも、先進国の中で、日本の実質経済成長率は低いですが、人口当たりでは中くらい、経済活動人口(15〜64
歳人口)当たりでは高い国になっています。』
ってこの前も話をしているのだが、実質成長が高いのだから良いというならそもそもノミナルなCPI2%目標に何の意味があるのかという話だし、実質経済成長率を経済活動人口当たりで比較して何の意味があるのかという話で、それ以外の人間は霞でも食って生きてるのかと小一時間。
『1970 年代までの中国、80 年代までのインドのように、極めて非効率な統制経済を自由化すれば容易に成長率を高めることができますが、かなり自由な経済をもっと自由な経済にして一挙に成長率を高めることは難しいでしょう。もちろん、念のために申し上げますが、私は自然利子率を引き上げることのできる正しい成長戦略の実行には大賛成です。』
だいたいそう簡単に「正しい成長戦略」なんぞ分からんのですが、置物リフレ一派の皆様におかれましては一事が万事で、「置物リフレ理論は正しい」というような態度でとにかく正しいというのが先にあるのでそれに合わせる為に適当な理屈をつぎはぎするから前後矛盾になって政策として全く使い物にならないというのが出来る訳ですな。
とまあここまでは下関金懇のお話だったのですがこの先が酷い。
『多くの方が、技術革新による新製品や高加価値品の投入や既存の生産技術の効率化を成長戦略だと考えておられるようです。しかし、効率を高めるためにもっとも重要なのは、儲からない仕事を止めることです。』
もうここで頭がクラクラするのですが、大体からしてお前らが超緩和的な政策を長期化することによってその「儲からない仕事」とやらが延命しやすくなっているだろ何を言ってるんだ馬鹿かという感じですし、そもそも言い方に品性というのが感じられませんで、中央銀行の政策委員の講演とは思えない。
『企業がおかしなことに手を染めたり、経営破綻に追い込まれたりするのも、儲からない仕事を無理やり続けようとするからです。
』
馬鹿の人のようです。
『企業経営において、しばしば「選択と集中」の重要性が指摘されます。儲からない仕事で儲かるように頑張るより、儲けることが可能な分野に経営資源を集中させることの方が、日本全体の成長力を高めることになると思います。』
さっきの「正しい成長戦略」もそうですけれども、実際に現場を何ら触れようとしないで、勝手に自分たち一派の脳内妄想を垂れ流しておられた方々だけの事はあると感心する次第でございまして、「儲けることが可能な分野に経営資源を集中させる」ってのが簡単に出来るならだれも苦労はしないですし、集中しまくった挙句にその後経営が苦しくなっている企業の例なんぞ幾らでも有る訳で、脳内妄想だけでこれまで送ってこられただけの事はありますなあと思う訳ですよ。
『儲からない仕事を止めれば、人が余ります。現在、人手不足なのですから、余った人が、より生産性の高い仕事に就けるようにすれば良いのです。』
そんなに簡単に行くかよ。それだけの生産性の高い仕事に就けるようにするのにどれだけコストを掛けないといけないのかとか、人をモノだとしか思っていないんでしょうなあ。まあ「経済学的には正しい(キリッ)」って奴なのかも知れんが実践として使えんわ。
『高度成長の前、狭い田畑を多くの人が耕していました。いくら耕しても、生産性は上がりません。農村の余剰人口が都市で働くことで生産性が高まり、高度成長が実現しました。』
なんちゅう一面的な説明。
『これは日本だけのことではなくて、これまで高度成長を成し遂げてきたすべての国と地域―香港、シンガポール、台湾、韓国、中国、インド、ASEANの国々―すべてに当てはまることです。』
あのーすいません、香港とシンガポールは都市国家なんですけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『もちろん、現在、日本の農村に大量の余剰労働力があるわけではありません。しかし、儲からない産業には、余剰人口があるのです。儲からないことを止めることこそが、最大最良の成長戦略だと申し上げておきたいと思います。』
それ口で言うのは簡単だけど具体的に何をどうすれば良いと思うの???????
・以下延々と続くのだが時間の関係で今回新たに登場した事実誤認説明を鑑賞しましょう
この次に『3.マイナス金利付き量的・質的金融緩和政策の仕組み 』というのがあって、相変わらず『当座預金残高を増やすのは、そのお金をより有利な運用先に充ててほしいからです。』という日銀に入ってもう1年経過しているのにまだこの点を分かっていないとかと呆れて物も言えない部分がございまして、あの置物師匠ですら色々と勉強して「新たに分かった」とか70過ぎの爺さんの「お勉強」に何で貴重な国費を投下しなければいけないのかという問題はさておいても、一応勉強をするというのに、どうもこのジンバブエ先生は勉強すらしないようで、こういうのにアカポスを与えたりチーフエコノミストなどというような肩書きを与えていた某都の西北大学や某グラントウキョウノースタワー総研などは製造物責任というのを感じて頂きたいものであります。
という掴みの悪態は兎も角、盛大に腰が砕けたのは小見出しの『4.金利低下の要因
』(ちなみにここも話がおかしいのが多々あるのだが、一々突っ込んでいるとここまで時間的に絶対に辿り付かないし量がクソ多くなるので今回は分割処理します、2日連続でどうでも良い講演を出すなとか言われそうですが)の中にある『金融政策と金利の関係
』という所。
『もう少し具体的に、金融政策と金利の関係を見てみましょう。図表10は、短期金利と長期金利と名目GDPの前年比伸び率を示したものです。金利がプラスの時代には、金融政策は、インフレや景気過熱やバブルの恐れがあれば短期金利を引き上げ、不況やデフレの恐れがあれば短期金利を引き下げて、経済をほど良い状態にしておくものでした。』
まあこれは良いがその次にいきなり酷いことになる。
『1980 年代の末、景気の過熱とバブルが生じましたので、金利を引き上げ、バブルを潰そうとしました。』
実際には金利引き上げだけではなくて、総量規制や三業種規制などの融資規制などの金融規制も実施されましたし、おそらくそっちの方が盛大に効いたと思いますが、それ以前の問題としてあの時点での資産価格は最早とんでもない事になっていたので、そう簡単に軟着陸できるような代物ではなかったでしょうな。
『その結果、バブルが崩壊し、経済は不況に突入しました。』
とまあ金融政策だけで話をする時点で分析が乱暴ですがそれはさておき。
『名目GDPの成長率が思った以上に急激に低下し、ついにはマイナスになってしまいました。そこであわてて短期金利を引き下げていきました。』
えーっとすいません、公定歩合の引き下げは1991年から実施しているのですが、GDPがマイナスになったのは図表10を見ますとどう見ても1993年とかになりますが。
『ところが、1995年に金利を 0.25%にまで下げても、名目GDPの成長率は1%程度にしか上がりませんでした。』
ここちょっと分からないのですが、95年に行った「低め誘導」の時はコールレートは「0.5%をやや下回る水準」で推移するという政策で、0.25%ってどこからその数字が出てきたのかがさっぱりわかりません。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_before1995/k950908.pdf
『長期金利は、この間にもどんどん下がって行きました。ここに金融不良債権ショックが襲います。1997
年 11 月には、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券、徳陽シティ銀行が破綻します。さらに、1998
年 10 月には日本長期信用銀行が、同年 12 月には日本債券信用銀行が実質破綻(国有化)し、名目GDPの成長率はマイナスになってしまいました。日本銀行は
1999 年 2 月にゼロ金利政策を導入しましたが、回復は遅れ、長期金利はさらに低下しました。
』
とまあこんな書き方になっていて、何か本人の中では纏まっているのかも知れませんが、このように現象を説明している部分ですら全体としてこう脈絡がないので読むのに苦労する訳ですが、政策に関する説明もあちこちおかしくて大丈夫かこの人としか申し上げようがないのですが、何が酷いと言って置物師匠のように少しは勉強して成長すれば良いのにそれすらない、というのがあと4年も居座るのかと思うと頭が痛いです。
なおクソくだらんと言われそうですがハチャメチャ振りについては明日も鑑賞が続きます(すいません)。ていうかここの部分とか見解に関わる話じゃなくて単純に事実誤認な訳で、日銀スタッフも見てやれよと思うし、ジンバブエは何を見ながらこの講演書いているんだよと小一時間ですわマッタクモウ。
#FEDネタを吹き飛ばす破壊力抜群、ただし政策インプリケーション皆無の講演でした
2016/05/27
お題「ゴーストタウン市場雑談/パウエル理事講演だがニュースヘッドラインほど利上げ前のめりでは無さそうな気もします」
もはやわけがわからん
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160527-00000005-mai-pol
<安倍首相>消費増税、再延期へ 「リーマン前に似ている」
毎日新聞 5月27日(金)2時31分配信
『安倍晋三首相は26日、来年4月に予定されている消費税率10%への引き上げを再延期する意向を固めた。現在の世界経済の情勢を2008年のリーマン・ショック直前と似ていると分析。予定通り増税した場合は、経済が急速に悪化する懸念があり、政権が目指すデフレ脱却が困難になると判断した。』(上記URL先より、以下同様)
リーマンショック前に似ていたらそれはバブっているという事いやなんでも無いです。
『首相は首脳会議で、世界経済に関し、エネルギーや食料、素材などの商品価格について、資料を示しながら「最近の14年6月〜16年1月にはリーマン・ショック前後の08年7月〜09年2月と同じく55%下落した」と指摘。さらに中国など新興国や途上国の投資伸び率については「リーマン・ショック後の09年は05年以降では最低の3.8%だったのに対し、15年は2.5%とさらに落ち込んだ」など繰り返しリーマン・ショック時との比較に言及した。』
・・・・・・・・・・コメントは控えるわ。
『首相はこうした説明を踏まえて「リーマン・ショック直前の洞爺湖サミットで危機の発生を防ぐことができなかった。そのてつは踏みたくない」と強調。そのうえで「世界経済は分岐点にある。政策対応を誤ると、危機に陥るリスクがあるのは認識しておかなければならない」と訴えた。』
欧州は兎も角米国は金融正常化絶賛推進中なのですが、これG7的にどういう整理になるのでございましょうか。
○3M入札とかCP買入とか
・爆発こそしないものの・・・・・・・・・・・
40年の話ではなくて3Mの話をする訳ですが。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20160526.htm
(3)募入最低価格 100円06銭5厘0毛(募入最高利回り)(-0.2605%)
(4)募入最低価格における案分比率 4.0345%
(5)募入平均価格 100円06銭8厘1毛(募入平均利回り)(-0.2729%)
とまあそういうことで、しれっと▲26だの27だのというところまで入札の金利が下がっておりまして、入札後に爆発をする訳ではないので▲1%みたいなアレな事は無いのですが、着々と金利が下がって値持ちしているというのが何とも。
まあこんな水準誰が買うのよとかと国内的には思うのですが、海外の買いと日銀の買いだけで充足してしまうので致し方なしという感じでありますし、日銀の買いが無い(けど流通玉もあんまりないですが)利付国債の1年未満だって▲15より深いマイナスの引値になっていて、実力もそんなもんというこの強さという所でして、GCレートは▲10行くか行かないか程度のマイナスであっても海外から一定量の買いが入り続けるとまあこういう感じで値持ちしてしまうんですなあと。
しかしまあ何ですな、国債市場も輪番と入札のスケジュールの足ズレが需給要因になって動くけど外部要因知らんがなという動きですが、GCとか現先とかでも短国発行日スタートになると金利が上がって短国買入の受渡日スタートになると金利が下がってというのが綺麗に展開される訳で、まあそれって昔からそうではあったものの、最近は益々機械的になってきたような感じでして、市場としてどうよという感は拭えないと思うのは海外投資家と日銀に弾き出されてしょぼーんとしている人の愚痴ですかそうですか。
・CP買入また増額
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of160526.htm
CP等買入 4,500 2016年5月31日
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160428a.pdf
CP・社債等買入のオファー日程について
おう今回も事前アナウンスから500億円増額かよ何の為に日程出してるんだよという感じではございますが、ここもとCP買入は謎の金利上昇で前回何せ▲0.1bp一本値という意味不明なレベルになっておりましたがさて今回は・・・・・・・・・
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba160526.htm
CP等買入 7,529 4,495 -0.014 -0.004 48.8
前回が9619/3984だったので応札が2000億円減って金利の方も足切が▲1.4bpに低下と相成りまして、まあ謎の応札の大さと謎の金利上昇で喜んで(かどうか知らんが)増額していたら誠に遺憾ながら札は減るわ金利は下がるわという結果になっておりますな。まあこちらの市場も短国と同様に盛り下がる事しきりといった風情でございまして、日銀買入絡みでレートがヒャッハーヒャッハーやっていた時の方が(別の意味ちゃあ別の意味ですが)盛り上がっていた感があって、日銀当座預金口座を持っている人がわざわざCPで資金調達をする意味がないという事もあるので市場規模は自動的にシュリンク(なお日銀当座預金取引先のCPは昔から日銀買入対象外)しますし、CPに投資する短期系の公社債投信はマイナス金利政策の煽りで繰上償還相次ぐの巻ですし、市場という意味ではすっかりこうゴーストタウンモードになっておりますな。
でもってCPについては季節的にこの時期から夏に掛けては発行が多くなる筈なので、いきなりCP買入が爆発とかそういう話にはならないのかも知れませんが、3月4月のCPやら短国やらのオペ絡みのヒャッハーモードみたいなのが無くなったというだけではなく、体感的なイメージとして市場の活力というか何というかが急速にこの5月は落ちてしまっているなあという風に思うのでありました、ナムナムナム。
○国内円債市場はこの有様なのでFEDネタに走るアタクシ(涙)
ということでゴーストタウン市場のメモだけでは悲しいのでまたもFEDネタに出稼ぎ(^^)。
・ブラード総裁のはこの前と同じなのでどうでも良い
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-bullard-minutes-idJPKCN0YH1EA
Business | 2016年 05月 26日 23:44 JST
米利上げの可能性、市場は以前より適切に判断=セントルイス連銀総裁
『[シンガポール 26日 ロイター] - 米セントルイス地区連銀のブラード総裁は、市場は6月の利上げの可能性について、以前よりも一段と適切な判断をしているとの見方を示した。同総裁は、連邦公開市場委員会(FOMC)の最新の議事要旨を「市場は正確に解釈した」と述べた。』
『6月14─15日の次回FOMCについては、利上げ決定の是非について先入観は持っていないとし、「同会合までに入手できるデータを検証したい」と述べた。』(以上上記URL先より)
まあ事前織り込ませにも程がありまして、これって散々織り込ませておいて実は利上げが出来ませんでしたとなると今後のコミュニケーション的に非常にマズーな事になりますから、結構危ない橋を渡っている感じではあるのですが・・・・・・・・・・・・
https://www.stlouisfed.org/news-releases/2016/05/26/st-louis-feds-bullard-discusses-two-monetary-policy-normalization-views
St. Louis Fed's Bullard Discusses Two Monetary Policy Normalization Views
『SINGAPORE - Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard
discussed “Slow Normalization or No Normalization?” at the Official Monetary
and Financial Institutions Forum’s (OMFIF) City Lecture on Thursday.』
ということで、題名みたら分かりますように今回のお話って前回ネタにした北京での講演と同じで、おまけに話しているセミナー(?)もおなじく「Official
Monetary and Financial Institutions Forum’s (OMFIF) City Lecture 」という事で同じ話をしているのでした。
・パウエル理事講演とな
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-powell-idJPKCN0YH2AX
Business | 2016年 05月 27日 03:18
かなり早期に米利上げの可能性、景気足取り堅調=FRB理事
『[ワシントン 26日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル理事は、景気拡大と労働市場の引き締まり継続が指標で確認されれば、「かなり早期に」利上げを行う可能性があるとの認識を示した。』
『講演後の質疑応答で、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを支持するかについては、まだ決めていないと表明。「(利上げを)待ち過ぎてもいけないが、時期尚早に動くことがあってもならない」とし、慎重にリスクバランスを見極めたいとの考えを示した。ただ、待ち過ぎることのリスクは「それほど大きくない」とも指摘。米経済はインフレが手が付けられないほどに高進する恐れがあるような段階には達していないとの見方を示した。』(以上上記URL先より)
ということで講演から簡単に。(週明けに今晩のイエレンと合わせてもうちょっと詳しくやるかもですけど)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20160526a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20160526a.pdf
Governor Jerome H. Powell
At the Peterson Institute for International Economics, Washington, D.C.
May 26, 2016
Recent Economic Developments, the Productive Potential of the Economy, and Monetary Policy
・経済に関する話とトレンドグロースなどの考察に関する部分がやたら多かったりするのだ
『Recent Developments and the State of the Economy』の所はインスタント読みで結論だけ引用しますと(手抜き)、
『Despite these downside risks, I see U.S. demand growing at a moderate
pace, the labor market continuing to heal, and inflation returning over
time to the FOMC's 2 percent objective. The economy is on track to attain
the Committee's dual mandate of stable prices and maximum employment.』
とまあ大体さっきのURL先記事のような趣旨になっておりますが、その次の小見出しが『Supply-Side
Considerations』というほっほーという感じの小見出しな訳で。
『For several years after the crisis, economic activity remained far below
its potential, and the need for highly accommodative policy seemed clear.
As the shortfall of output from potential has narrowed, supply-side considerations
such as the level and growth rate of potential output naturally begin to
matter more for policy. I will turn now to a discussion of these issues.』
ということで、経済がノーマルに近づいてきているので潜在成長率とか自然利子率とか自然失業率とかからの乖離を考えながら金融政策を運営するというノーマルな経済状態でのことを考えていくようにすべき、というお話ではあるのですが、後の方に出てきますがそれは今の話では無かったりしまして、今後正常化プロセスの中で次第に重要になるというお話のようです。
でもって何せ寝起きで読んでおりますので細かく読み込めていない訳ですが(大汗)、インスタント読みで途中を飛ばしながら引用しますとこんな感じ。
『The range of opinions on the future path of productivity growth is wide,
and the historical record provides ample grounds for humility.8 A middle-ground
position that seems to underlie many current forecasts is that productivity
is probably still being held down by cyclical factors and lingering effects
of the crisis. As those factors dissipate, labor productivity growth should
move up to 1-1/2 percent or so, the lower end of its longer-run range.』
『In addition to productivity, the other principal factor in potential
output is labor supply, which is determined by the working-age population,
the natural rate of unemployment, and the trend labor force participation
rate. Both the natural rate of unemployment and labor force participation
initially appeared to suffer crisis-related damage. But more recent data
are a bit more encouraging.』
『The natural rate of unemployment reflects the matching of characteristics
that employers are seeking with those of the unemployed. With the dramatic
labor market dislocations of the crisis, it was not surprising to see measures
of matching efficiency deteriorate, and many observers raised their estimates
of the natural rate accordingly. But there are other factors, such as demographic
change, that may have led to a decline in the natural rate of unemployment.9
Blue Chip forecasters' estimate of the natural rate have now returned to
around 5 percent, about the same as before the crisis, suggesting that
these factors are roughly offsetting. Of course, estimates of the natural
rate are highly uncertain.10 』
つーことで、
『To sum up so far, estimates of long-run potential growth of the U.S.
economy have dropped from about 3 percent to about 2 percent in the wake
of the crisis, with much of the decline a function of slower productivity
growth. The decline in realized productivity growth seems to be driven
both by low capital investment that is well explained by weak demand and
by lower TFP growth. Expectations of lower productivity growth going forward
are more a function of slower gains in TFP. Lower potential output growth
would mean that interest rates will remain below their pre-crisis levels
even after the output gap is fully closed and inflation returns to 2 percent.』
TFPというのはtotal factor productivityのことですが、米国のトレンドグロースは低下していて、その結果として、中立金利水準は金融危機前の水準よりも低くなっているでしょう、というお話。
『Over time, our understanding of the relationship between recessions and
supply-side factors has evolved.13 There is a growing body of work suggesting
that recessions can leave behind lasting damage--especially severe recessions
associated with a financial crisis.』
でもって小見出しの話に。
『One recent analysis suggests that about one-third of the time, there
is no permanent supply-side damage; about one-third of the time, there
is a reduction in the level of potential output but not its subsequent
growth rate; and about one-third of the time, there is a reduction both
in the level of output and in the growth rate.14 Unfortunately, recent
experience suggests that the United States is at risk of falling in the
last category (figure 7).』
このfigure 7ってのを見ると『Potential GDP is lower』とかあって、
『Level of potential GDP in 2015 is 10% lower than projected in 2007
Potential GDP growth, 2005-15:
In 2007: 2.8%
Now: 2.0%』
とかありまして、米国のトレンドグロースが下がってます系のお話をしていまして、その要因として金融危機以降の影響による生産性の低下などがあって、例えば長期失業による労働者スキルの低下というような形でのサプライサイドのダメージがありまっせとかそういう話をしているのですが、まあインスタント読みしているので抜けがあったらごめんなさい。
『It goes without saying that economic policymakers should use all available
tools to minimize supply-side damage from the crisis. We need policies
that support labor force participation and the development of skills, business
hiring and investment, and productivity growth--policies that are, for
the most part, outside the remit of the Federal Reserve. Monetary policy
can contribute by continuing to support the expansion as long as inflation
remains consistent with our 2 percent objective and inflation expectations
remain stable.』
ということでじゃあ金融政策はどうなるのという件ですけれども・・・・・・・・・・
・金融政策の話ですがニュースヘッドラインほどウホウホ利上げおじさんではないと思うのですが
『Monetary Policy』という小見出しの部分はそんなに多くないのですよ。
『The implications for monetary policy of these supply-side issues have
been limited, but they begin to matter more as we near full employment.』
だそうでして・・・・・・・・
『For the near term, my baseline expectation is that our economy will continue
on its path of growth at around 2 percent. To confirm that expectation,
it will be important to see a significant strengthening in growth in the
second quarter after the apparent softness of the past two quarters. To
support this growth narrative, I also expect the ongoing healing process
in labor markets to continue, with strong job growth, further reductions
in headline unemployment and other measures of slack, and increases in
wage inflation.』
と言っているので、2Qの成長が強い事、労働市場の強さを質的にも確認できること、賃金が伸びる事などを見たい的な言い方をしているように見えるのですががががが。
『As the economy tightens, I expect that inflation will continue to move
over time to the Committee's 2 percent objective.』
ということですので、
『If incoming data continue to support those expectations, I would see
it as appropriate to continue to gradually raise the federal funds rate.
Depending on the incoming data and the evolving risks, another rate increase
may be appropriate fairly soon.』
つーことで記事のヘッドライン自体はここから取っていると思うのですが、前後の文脈から見て最近出ているような地区連銀総裁系のウホウホ利上げおじさん的な感じには読めないと思うのですけどどうでしょう。
『Several factors suggest that the pace of rate increases should be gradual,
including the asymmetry of risks at the zero lower bound, downside risks
from weak global demand and geopolitical events, a lower long-run neutral
federal funds rate, and the apparently elevated sensitivity of financial
conditions to monetary policy. Uncertainty about the location of supply-side
constraints provides another reason for gradualism.』
となっている訳です。
ただし、この直後にはgradual approachの潜在的な問題点というのを説明していまして、その中では・・・・・・・・・・
『There are potential concerns with such a gradual approach. It is possible
that monetary policy could push resource utilization too high, and that
inflation would move temporarily above target. In an era of anchored inflation
expectations, undershooting the natural rate of unemployment should result
in only a small and temporary increase in the inflation rate.15』
と、インフレ上振れの可能性の話をしていますが、インフレ期待がアンカーされているから基本的に問題はない筈と言いつつ、
『But running the economy above its potential growth rate for an extended
period could involve significant risks even if inflation does not move
meaningfully above target. A long period of very low interest rates could
lead to excessive risk-taking and, over time, to unsustainably high asset
prices and credit growth.』
『Macroprudential and other supervisory policies are designed to reduce
both the likelihood of such an outcome and the severity of the consequences
if it does occur. But it is not certain that these tools would prove adequate
in a financial system in which much intermediation takes place outside
the regulated banking sector.』
『Thus, developments along these lines could ultimately present a difficult
set of tradeoffs for monetary policy.16』
ということで、緩和的政策を引っ張り過ぎた場合の懸念についても話をしていますが、さっきの記事にある質疑応答の話がそうなのであれば、現状で上記の点を懸念する程の状態ではないという認識はしめしているので、そうなりますとやはりウホウホ利上げおじさんという事ではないように思えますがどうっすかね。
#手抜き速読なので土日に精読して追加するかもです
2016/05/26
お題「フィリップスカーブ(ただし日本は除く^^)に関する日銀レビューシリーズとな」
ほほう
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160525a.htm/
6月1日(水)より当日受付(事前予約不要、人数制限有り)の本店見学を開始します
相変わらず市場雑談ネタも微妙なのでペーパー引用大会。
○フィリップス曲線がどうのこうのという日銀レビュー
要旨
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2016/rev16j07.htm/
本文
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2016/data/rev16j07.pdf
米欧諸国におけるフィリップス曲線のフラット化
―背景に関する3つの仮説―
まず要旨から。
『米欧諸国では、近年、需給ギャップが着実に縮小する一方、インフレ率はなかなか加速しない状況が続いている。こうした状況は「フィリップス曲線のフラット化」(需給ギャップに対するインフレ率の弾性値の低下)と呼ばれ、その背景に関する議論が活発に行われている。』
ほう。
『主たる仮説としては、(1)インフレ予想のアンカー強化、(2)フィリップス曲線の非線形性、(3)グローバル化や規制緩和に伴う競争環境の変化、という3つが指摘されているが、現時点では、いずれがフラット化の主因であるかについて、コンセンサスはない。』
ということでまあ結論は無いペーパーなんですけどね。
『この点は、主因となる仮説次第で先行きのフィリップス曲線の傾きが異なり得るため、金融政策運営上、不確実性が大きいことを意味する。このため、今後も3つの仮説それぞれに注意を払いつつ、フィリップス曲線の動態をしっかりと分析していく必要がある。』(ここまで要旨から)
ということでもうちょっと見ますと(以下本文から引用)
・理屈はそれっぽいが現象としてどうなのか
『フラット化の背景を巡る仮説1:インフレ予想のアンカー強化 』という小見出しから。
『第 1 の仮説は、インフレ予想のアンカー強化である。これは、金融政策への反応を通じて誘導型フィリップス曲線が結果としてフラット化するという仮説であり、中央銀行関係者を中心に注目を集めてきた。』
やったぜ!という感じですね。
『具体的には、中央銀行が物価安定を重視して金融政策を運営し、コミュニケーションを強化した結果、民間経済主体のインフレ予想のアンカーが強力になり、国内の需給環境の変化にかかわらずインフレ率が安定するようになったという見方である。』
イイハナシダナー。
『例えば、総需要が下振れした場合を考えよう(図表 2)5。物価安定を重視する中央銀行は、インフレ率が落ち込まないよう、金融緩和を実施し、将来の需給ギャップを改善させようとするであろう。そうした政策対応を民間経済主体が予想すれば、インフレ予想はアンカーされるため、インフレ率の低下は小幅に止まる。一方、総需要の下振れに連れてインフレ予想が低下してしまうと、インフレ率の低下幅は大きい。つまり、中央銀行が物価安定を重視するほど、また、中央銀行の物価安定へのコミットメントに対する民間経済主体の信認度が高まるほど、需給ギャップの変動に対するインフレ率の反応が小さくなり、誘導型フィリップス曲線の傾きはよりフラットになる。』
中銀ウハウハの仮説。
『実証分析をみても、1980 年代以降の Fed の政策のスタンスの変化が米国のフィリップス曲線のフラット化をもたらしたとか6、米欧諸国においてインフレ予想のアンカー強化とフィリップス曲線のフラット化が進んでいる7、といった結果が得られている。本稿の
BOX でも、米欧主要国の半分でインフレ予想のアンカー強化を示唆する結果を得ている。』
でまあホンマカイナという事で『【BOX】構造変化のモデルを用いた実証分析』を見ますとその結論は、
『IMF が指摘するように、インフレ予想が近年インフレ目標の周りで安定する傾向が強まっていることも踏まえると、インフレ予想のアンカー強化が進んでいることが示唆される。このように米欧諸国では、フィリップス曲線のフラット化とインフレ予想のアンカー強化が確認できる21。』
とまあそういう話になっているのですが、そうなると現実にECBがインフレがあばばばばーでマイナス金利ヒャッハーとかやっている現象はあれ何ですねんという問題もある訳ですが、それよりも涙目なのは日銀な訳ですよ何気に。
つまりですな、今やってる政策ってもともとはマネタリーショックを与えてインフレ期待に働きかけるというのを重要なファクターにしていた筈なのですが、そちらは結局(全くダメだったとは言いませんけれども)突っ込んだバズーカの割に不発の香りがプンプンするなかで、最近は実質金利ガーと言いながら実質金利の低下によって消費や投資に好影響与えて需給ギャップを改善してというような話をしている訳ですけれども、この仮説がただしい、となりますと「需給ギャップとかその辺どうでも良いので何とかしてインフレ期待を上げてアンカーさせればよし」という話になってしまうので、今の実質金利がどうのこうのよりも別の事をしないと行かんがなとなりませんかねえ。
・なかなか日本に当てはめにくい話ですの
次が『フラット化の背景を巡る仮説2:フィリップス曲線の非線形性 』である。
『フィリップス曲線のフラット化の背景に関する第 2 の仮説は、フィリップス曲線の非線形性である。』
『これは、企業の価格設定行動を記述する構造型フィリップス曲線が低インフレ環境ではフラットな形状をしており、総需要の下振れなどに伴い現実のインフレ率が低下するに従って、その性質が誘導型フィリップス曲線のフラット化として顕在化したという考え方である(図表
3)。』
『構造型フィリップス曲線に非線形性をもたらすメカニズムのひとつは、メニューコストの存在である8。ここでは、企業が自らの製品やサービスの価格を改定する場合、費用(メニューコスト)がかかると仮定する。インフレ率の平均や分散が低下すると、価格改定によって得られる便益が費用を下回るようになる。その結果、インフレ率が低下し、安定するようになると、企業の価格改定頻度が低下し、フィリップス曲線はフラット化する。』
『事実、実証研究をみても、米国のフィリップス曲線を可変パラメータモデルで推計し、インフレ率の平均が低くなるほど、またその分散が小さくなるほど、フィリップス曲線がフラット化することが明らかになっている9。』
ということなのですが、アタクシ無学だから良く分かんないのですけれども、メニューコストがというのは日本に当てはめにくい部分な気がする。
『構造型フィリップス曲線に非線形性をもたらすもうひとつのメカニズムは、名目賃金の下方硬直性である。』
うむ。
『基本的な着想は、名目賃金に下方硬直性がある場合、需給ギャップが悪化しても、企業は労働者の名目賃金を引き下げることができないため、企業の製品やサービスの価格もそれほど下がらず、結果として低インフレ環境ではフィリップス曲線がフラット化するというものである10。』
ということなので、米欧の場合にはこういうの当てはまりそうなのですが、日本の場合って名目賃金の下方硬直性ってそんなに強くないのではと思う訳でして・・・・・・・・・・・
『また、その着想を拡張し、名目賃金に下方硬直性を有する経済では、景気後退局面において凍結された賃金引下げが累積している(pent-up
wage deflation が存在する)ため、景気が回復し、需給ギャップが改善しても賃金がなかなか上昇しないとの考え方もある11。Yellen
は、米国の今次景気回復局面において賃金上昇率が緩慢である一因としてこの考え方に言及している12』
さよですなと思うのですが、結局の所このメニューコストの問題にしても名目賃金の下方硬直性の問題にしても、何でそういう風になっているのかと言えば、インフレ期待がプラスの一定の所で強力にアンカーされているからこれらの要素が出てくるという事なのではないかと。
・フィリップス曲線の変化にグローバル化や規制緩和などという部分は両方の話があって面白い
『フラット化の背景を巡る仮説3:グローバル化や規制緩和による競争環境の変化』
ほほう。
『フィリップス曲線のフラット化の背景に関する最後の仮説は、グローバル化や規制緩和に伴う競争環境の変化により企業の価格設定行動が変化した結果、構造型フィリップス曲線がフラット化したというものである。このとき、例えば総需要の下振れに伴うインフレ率の低下幅は、構造型フィリップス曲線がフラット化しなかった場合と比べて小さい(図表
4)。』
『理論的には、競争環境の変化により構造型フィリップス曲線がフラット化するメカニズムとして、次の
3 つが指摘されている。』
『@ 企業が直面する需要の価格弾性値の上昇
グローバル化や規制緩和により競争が激化すると、企業が直面する需要の価格弾性値が高まり、限界費用の上昇を価格に転嫁することが困難になる。この場合、需給ギャップの改善に伴う限界費用の上昇が物価に波及しづらくなるため、フィリップス曲線がフラット化する。』
『A 企業の寡占支配力の強化
グローバル化によって競争環境が変化すると、生産性が高い企業のシェアが高まり、他社との競合において寡占的な価格支配力が強化される。そうなると、企業は自社の価格設定が市場価格に影響を与えることを見越し、戦略的に価格設定を硬直的に行うようになる結果、フィリップス曲線がフラット化する。』
『B 世間相場を重視した価格設定行動への変化
グローバル化や規制緩和により競争環境が変化すると、将来にわたる需給動向を踏まえた最適価格に価格を設定するために企業が負担する情報収集コストや顧客との交渉コストが増大する。各企業にとっては、そのコストを負担して最適価格に価格を設定するよりも、世間並みの価格に合わせて価格を設定するという戦略を採用する方が、価格設定コストを節約することができるだけでなく、大きな見誤りによる損失を回避することができる13。こうした各企業のインセンティブは価格設定の頻度を低下させるため、マクロ全体でみたフィリップス曲線がフラット化する。』
ということで、
『実証分析をみると、米欧等 8 か国のフィリップス曲線を推計し、GDP に占める輸出・輸入の比率が高くなるほどフラット化が進むことを示しているものや14、イタリアのフィリップス曲線を推計し、ユーロ圏加入に伴う競争激化がフィリップス曲線のフラット化をもたらしたと指摘するものがある15。』
とまあ何となく説得されそうな話があるのですが・・・・・・・・・・
『その一方で、競争環境の変化によりフィリップス曲線はむしろスティープになるという理論的主張や実証分析も存在する。主な理論的主張としては、以下の
2 点が挙げられる。』
ほほう。
『@ 企業の寡占支配力の低下
グローバル化や規制緩和によって参入する企業の数が増加すると、他社との競合における寡占的な価格支配力が低下する16。この場合、企業の価格設定は、戦略的な側面よりも需給動向に応じた限界費用の変動に左右される側面が大きくなるため、フィリップス曲線がスティープ化する。』
『A 企業の価格改定頻度の上昇
グローバル化や規制緩和により競争が激化し、企業の独占支配力や労働組合の交渉力が弱まると、企業の価格改定頻度が上昇するため、フィリップス曲線がスティープ化する。』
となりますとこれまた説得力があるのがオソロシス。
『実証面では、イタリアの個別企業のパネルデータを用いて推計し、グローバル化はフィリップス曲線の傾きに有意な影響を与えないか、もしくは逆にスティープ化させるといった研究がある17。』
とまあここまでやってくれているのですから、日本のデータを使って分析して頂きますと、以前よく言われていた「グローバル化でデフレ圧力」みたいな話の検証も出来るのではと思いましたが、良く良く考えた場合は日本のフィリップスカーブって価格が動いてないので需給ギャップに全然反応していないという話になるのかナムナムナム。
『以上を踏まえると、グローバル化や規制緩和による競争環境の変化がフィリップス曲線の傾きに及ぼす影響については、上述した反論もあるが、総じてみればフラット化につながったとの見解がより有力とみられる。ただし、国別には反証もあり、現時点では各国共通の要因と位置づけるのは難しいという評価となろう。』
だそうです。
・結局途中から全部引用していますが結論(汗)
『おわりに 』から。
『本稿では、多くの米欧諸国で近年フィリップス曲線がフラット化している背景について、3
つの仮説を取り上げた。それぞれの仮説は、多少の強弱はあるものの、実証分析を通じて相応の説明力を有している。このため、現時点ではどの仮説がフィリップス曲線のフラット化の主因であるかについては、コンセンサスがない18。』
でもって政策インプリケーションは???
『この点は、政策担当者にとって政策運営の前提となる先行きのフィリップス曲線の傾きを巡る不確実性が大きいことを意味する。』
まあ日本の場合はそれ以前の問題としてフィリップス曲線のシフトアップをしないといけないという問題があるのですがそれはさておきまして。お話はどっちかというと米国。
『すなわち、インフレ予想のアンカー強化がフラット化の主因であれば、先行きについても現状のフィリップス曲線の傾きが変化しないと仮定してよい。』
『しかし、フィリップス曲線の非線形性がフラット化の主因である場合、今後緩やかながらもインフレ率が上昇していけば、いずれかのタイミングで失業率ギャップに対するインフレ率の感応度が高まっていくはずである。』
『それとは反対に、グローバル化や規制緩和による競争環境の変化がフラット化の主因であり、今後も競争激化が趨勢的に進んでいくとすれば、フィリップス曲線の傾きは一段とフラットになる可能性がある。』
今FEDがその辺について色々と連銀高官もお話していますな。
『これら 3 つの仮説のどれがフィリップス曲線のフラット化の主因であるか特定化できていない状況を勘案すると、今後も
3 つの仮説それぞれに注意を払いつつ、フィリップス曲線の動態をしっかりと分析していく必要がある。』
まあそういう話であまりオチは無いのと、どうせなら日本の話をしてほしいんですがそれは次回作品ということで楽しみに待ちたいと思いますのでぜひよろしくお願いいたします。
○米国連銀発言がまた出ているが肝心のテキストが無いので何とも(メモ)
・ダラス連銀カプラン総裁
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-kaplan-idJPKCN0YG2QX
Business | 2016年 05月 26日 04:14 JST
金融政策に限界、景気支援へ財政政策活用余地=米ダラス連銀総裁
『[ヒューストン 25日 ロイター] - 米ダラス地区連銀のカプラン総裁は、金融政策に限界があることを踏まえると、景気支援に向けて財政政策を活用する余地があるとの考えを示唆した。総裁は金融政策には限界があることに目を向けるべきとし、「金融政策は万能の解決策ではない」と述べた。一方で、過去7━8年には、財政政策の活用があまりなかったと述べた。また規制が小規模銀行を圧迫し、地方のビジネス形成に打撃を与えているとして、規制緩和が必要と主張した。』(上記URL先より)
ということですが、ダラス連銀のページに行ってもこれらしい直近のスピーチは無いのですが、どこかでこの話聞いたことあるなあとか思ったらこんなのありました。
http://www.dallasfed.org/news/speeches/kaplan/2016/rsk160429.cfm
Speeches by President Robert S. Kaplan
A Discussion of Key Secular Trends, Economic Conditions and Monetary Policy
Remarks before the Official Monetary and Financial Institutions Forum
London - April 29, 2016
でまあ読んでねえなと思ったら展望レポート読むのと連休中に風邪引くのに忙しかったので打ち出しして目を泳がせただけでスルーしていたことに気が付きましたが(汗)、こちらでも金融政策の限界ガーな話はしていますがネタにするのは今日はパス(しないかも知れんけど)。
・ミネアポリス連銀カシュカリ総裁
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-kashkari-idJPKCN0YG2L1
Business | 2016年 05月 26日 02:54 JST
マイナス金利、狙った効果発揮しにくい=ミネアポリス連銀総裁
『[25日 ロイター] - 米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は、日欧中銀が導入しているマイナス金利は狙った効果を発揮しにくいとし、米連邦準備理事会(FRB)にとっては最終手段に過ぎないとの認識を示した。石油業界関連会議での講演で述べた。米景気の先行きについては、緩やかな成長が続くとの見方を示した。総裁はマイナス金利による刺激は、導入を通じてまさに押し上げを目指している個人消費や企業投資を抑制する可能性があり、思い通りにならないと指摘。FRBは景気支援に向けて、他の手段を有していると述べた。』(上記URL先より)
ワロタ。まあこれを「正常化路線の中で緩和手段の話をするとは超ハト派」とみるのか、「緩和と引締めの手段が非対称だから正常化が非常に遅くなる、という意見に対抗して緩和手段について言及したのでタカ派」とみるのかは全体の文脈で判断しないと分からん。まあ普通この記事だけだったら前者の解釈をするのが一般的だと思うのだが、良く良く全体を読まないと落とし穴に嵌る可能性もあるので注意しましょう。
・・・・・・・・といってもミネアポリス連銀のサイトにさっき見たところそれらしいのが無かったのであばばばばー。
2016/05/25
お題「米国地区連銀のおっちゃんたちの(割と)威勢の良い話を鑑賞するの巻」
消費税ネタは色々なのが飛び出てきて結局何がどうなのか分からんですな、ということで今日は海外ネタで勘弁。
○ブラード総裁のプレゼンはそこまで無茶苦茶タカでもないとは思うけど・・・・・・・・・
サマリーはこちら
https://www.stlouisfed.org/news-releases/2016/05/23/st-louis-feds-bullard-discusses-two-monetary-policy-normalization-views
スライドはこちら(ちと重い)
https://www.stlouisfed.org/~/media/Files/PDFs/Bullard/remarks/Bullard-OMFIF-Beijing-23-May-2016.pdf
お題が『Slow Normalization or No Normalization?』なのですから別に正常化をせっせとやるという話ではないとは言いましても・・・・・・・・・・・・(以下基本的にサマリーの方から引用します)
・市場シナリオとワシらのシナリオのどちらが正しいか?とは中々チャーミング
『BEIJING, China - Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard
discussed “Slow Normalization or No Normalization?” at the Official Monetary
and Financial Institutions Forum’s (OMFIF) City Lecture on Monday.』
ほうほう。
『Bullard noted that recent U.S. monetary policy discussions have been
dominated by issues related to the possible pace of increase in the Federal
Open Market Committee’s (FOMC) policy rate. He discussed two views regarding
the expected policy rate path: the FOMC’s scenario and the market-based
scenario.』
市場の見る利上げシナリオとワシらのシナリオが違うぞなと。
『“The FOMC has laid out, via the Summary of Economic Projections (SEP),
a data-dependent ‘slow normalization,’ whereby the nominal policy rate
would gradually rise over the next several years provided the economy evolves
as expected,” he said.』
『“Market-based forecasts of FOMC policy, in contrast, envision ‘almost
no normalization,’ whereby the policy rate would be changed only a few
times in the next several years.”』
『Bullard briefly compared and contrasted each view, starting first with the FOMC’s scenario.』
ということで二つのシナリオの違いという話をしているんですが、こっちのサマリーの方には角が立つからなのかどうか知りませんが載っていませんけど、スライドの方を見ますと『Which
of these two views is more nearly correct?』(3ページ目)とか書いてあるのが中々チャーミングですが、一応そのまとめもスライドの5ページ目にありまして、
『In these remarks I will briefly compare and contrast these two views.
In favor of the FOMC scenario:
・Relatively strong U.S. labor markets.
・ U.S. inflation measurements that are closer to 2 percent.
・ Waning international headwinds.
In favor of the market-based scenario:
・ Slow U.S. real GDP growth.
・ Low U.S. inflation expectations』(プレゼン資料5ページ目)
とまあ有りますので、ワシらが全部正しいという話をしている訳ではないのですけどね。
・物価の計測に色々と繰り出してきて強いという話をしているようで
ということでサマリーの方に戻りますと、『The FOMC’s Scenario-Slow Normalization』という所ではさっきと同様の話があります。
『He cited three factors in favor of the FOMC’s scenario of a slow normalization
of the U.S. policy rate: relatively strong U.S. labor markets, inflation
measurements moving closer to the FOMC’s target of 2 percent, and waning
international headwinds.』
でまあその3点の説明があるのですが、ほほうと思うのは2番目の部分なのでそちらを引用。
『U.S. Inflation Closer to Target』という小見出しついてますけどね。
『While inflation has been relatively low in the U.S. during the last several
years, Bullard explained that large movements in oil prices have had a
major impact on headline inflation. “Measures intended to give an indication
of inflation movements net of oil price effects have been trending somewhat
higher,” he said.』
ほうほうそれでそれで?
『Thus, he noted that the FOMC’s projection of a slow rise in U.S. inflation
as the effects of a stronger dollar and a decline in oil prices wear off
appears to be happening, as indicated by the rise in smoothed measures
of inflation over the last year.』
ということで、スライドの方では16ページ目になるのですが、『Smoothed measures
of U.S. inflation closer to 2 percent』というグラフがあって、その中で『Sticky
CPI』『Median CPI』『Core CPI』『Trimmed Mean PCE』『Core PCE』というのについてグラフがありまして、Sticky
CPIがアトランタ連銀謹製、Median CPIがクリーブランド連銀謹製、Trimmed Mean
PCEがダラス連銀謹製のものとなっておりますが、中々威勢の良い数字が並んでいるという図になっています。
でもってスライドの18ページ目に『Bottom line for U.S. inflation』ってのがあって、
『・The FOMC, through the SEP, has predicted a slow rise in U.S. inflation
as the effects of a stronger dollar and a drop in oil prices wear off.
・This appears to be happening, as smoothed measures of inflation have been rising over the last year.
・This is another important factor supporting the FOMC view on the expected
policy rate path.』(スライド18ページ目より)
とかありまして、要は色々な計測法でみた物価の基調はご覧のように強いですよほれ凄いでしょという所で、何となく既視感のようなものがあるような気がしますな(^^)。
でまあ元々ブラードさんって基本はインフレ重視の人で、物価の基調が強い(と判断している)時は威勢の良い話をして、物価の基調が弱い(と判断している)時はそれこそQEを先陣切って主張するというような感じです。でもってFEDって何だかんだと言いましても物価動向を重視した判断をする人が多いようですので(逆にイエレン議長とかの方が物価バリバリではない気がします)まあ最近威勢の良い話が出てくるのもこういう辺り(ブラードさんは威勢が良すぎるように見えますが)にあるのかね、とか思うのでありました。
・ではインフレ期待はとなりますと
小見出しの『The Market-Based Scenario-Almost No Normalizatio』の方ではインフレ期待の話があるのでそちらも鑑賞。
『Looking at market-based measures of U.S. inflation expectations, Bullard
noted that while they were relatively satisfactory during the summer of
2014, they fell with oil prices during 2014 and renewed a downward trend
beginning in late 2015. “Recently, market-based inflation expectations
have recovered somewhat,” he said. “However, expectations remain low
compared with the levels observed in the summer of 2014.”』
底打ちはしてきたけど水準は低いと。
『He noted that market-based measures of inflation expectations tied to
the Treasury Inflation-Protected Securities (TIPS) market are based on
consumer price index (CPI) inflation, but that the FOMC’s target is based
on personal consumption expenditures (PCE) inflation. The latter generally
runs about 30 basis points lower.』
でもって物価連動国債からのBEIについての話をしているのだがこの前置きはちとワロタ。
『“Current readings on TIPS-based inflation compensation are difficult
to reconcile with credible longer-run FOMC policy to maintain an inflation
target of 2 percent PCE inflation,” he said.』
でまあさすがにその部分を調整して計算しているのですが、それをもってしても市場の期待はスライドの35ページ目にあるのですが、
『Using this rule of thumb and the data in the previous table-and not making
any further adjustment for liquidity or risk premia-markets can be interpreted
as expecting just 1.29 percent PCE inflation over the next 10 years.』(スライド35ページ目)
ということですので、市場のインフレ期待が低い事は認めています。
・とは言えサマリーでは
『Summary of the Two Views』という小見出しから。
『To sum up, the FOMC median projection for the policy rate suggests a
gradual pace of rate increases over the next several years, Bullard said.
At the same time, the market-based expectation for the policy rate is much
shallower, with only a few increases over the forecast horizon-that is,
almost no normalization.』
でもってその差に関しては、
『“U.S. evidence from labor markets, actual inflation readings and global
influences suggests the FOMC median projection may be more nearly correct,”
he said.』
『Meanwhile, “U.S. evidence from recent readings on GDP growth and market-based
inflation expectations suggests the market view of the path of the policy
rate may be more nearly correct.”』
とまあ微妙な纏め方にしていますので、そんなに無茶苦茶強い話をしている訳でもないのですが、そうは言っても物価の所で(スライド見れば分かりますが)これでもかと物価の基調のようなものが強いという図を出していますので、全般的に見たら「ワシの方が正しいじゃろ」という雰囲気は醸し出している(大体からして「市場のインフレ期待が弱めなので市場の見ている金利パスをサポートする」って循環論法ですし)のでまあ強気の話をしているというのは事実なのでしょうが、トレンドグロースが弱まっているのではないかというような話(パスしましたがスライド見てちょ)とかインフレ期待の話も入れて、微妙なヘッジも入っているなあという感じではあります。
○ハーカー総裁講演から少々
https://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/harker/2016/05-23-16-bond-club-phila
An Economic Outlook
Presented by Patrick T. Harker, President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Philadelphia
The Bond Club of Philadelphia, the CFA Society of Philadelphia, and the Philadelphia Council for Business Economics
Philadelphia, PA
May 23, 2016
例によって時間の配分をへくってしまったのでこちらは簡単に。
・色々な意見が飛び出すのは結構な事との認識&経済は堅調
まあFEDはそういう感じですけど、最初の『An Economic Outlook』という小見出しの頭から。
『Today, I would like to offer my views on the economy and how they influence
my assessment of appropriate monetary policy.』
『I believe that normalization of monetary policy is an important aspect
for guaranteeing that the U.S. economy remains on a solid path, but the
timing of that normalization is also key in ensuring continued economic
growth and a return of inflation to target. It is also important for participants
on the Federal Open Market Committee (FOMC) to express their views on the
policy process as well as how they anticipate that process will unfold.』
『Transparency is a central feature of policy. It helps align the public’s
views with those of the FOMC’s, allowing policy to proceed more efficiently.
Further, it helps avoid unanticipated outcomes that could interfere with
the intentions of policymakers like me.』
だそうでして、駆け足なのでこの小見出しの部分をだいぶすっ飛ばしますが、基本的にはハーカーさんの経済見通しは・・・・・・・・・・
『Economic activity of late, at least as measured by headline GDP, has slowed noticeably. 』
と入っているのですが、その足元の数値については季節要因これありという話をしていて、その後には
『With some of the near term weakness, I remain guardedly optimistic about
our economic prospects. The labor market remains extraordinarily dynamic.』
てな事で労働市場の強さの話になりまして、最後に
『Let me also emphasize, that as a policymaker, I think it is important
to take a long-term view rather than react to short-term volatility and,
thus, consider an array of data and longer-term trends in forming my policy
stance. As I said, over the longer run, I am relatively optimistic about
the health of our economy.』
てな話をしているので基本的に景気は堅調とみています。
・物価の話ではこちらでも基調ガーみたいな話がキタコレ
途中を飛ばして『Inflation Target』という小見出しに参ります。
『Let me now turn to another important component of the U.S. economy that
significantly influences monetary policy, and that is inflation. This continues
to run below the FOMC’s 2 percent target, especially when considering
the headline numbers.』
へいへい。
『Over the past 12 months, headline PCE has been growing at only 0.8 percent,
while the less volatile core measure has been increasing at a closer-to-target
1.6 percent. Both the decline in energy prices and, to a lesser extent,
the appreciation of the dollar, have held down headline inflation.』
『Other measures of inflation that also remove the more volatile and transitory
components of price changes, and thus, reflect a more accurate reading
on price pressures, have remained closer to the FOMC’s long-run target.』
ということで・・・・・・・・・
『For example, a series the Dallas Fed uses to measure PCE inflation -
which I highly regard - has inflation growing by 1.8 percent over the past
12 months.』
ダラス連銀の刈込平均PCEキタコレという感じでして、どうも物価に関してはこういう感じでの話が益々多くなってきているように見えます。まあ原油の攪乱要因あるから現実的にはこういう話ってのも分からんでもないが、これあまりやりだすと「そもそもインフレ目標はインフレ期待をアンカーさせないといけないのに指標をあれこれ使うのってどうよ」という話にもなって来たりしますし、もっと突っ込んで考えると「そもそも真の物価上昇率って存在する/分かるの??」という話になってきて結構な迷宮のラビリンスになるような気がしますし、それって今後の中銀の課題なんじゃないのという気がしますけどどうでしょうかね。
でまあインフレ期待の話があるが駆け足なのでパスしまして最後の金融政策に関して。
・従って金融政策については正常化路線積極派キタコレ
『Monetary Policy』という小見出しである。
『My approach to policy is to conduct it in ways that will best serve our
dual mandate of maximum employment and price stability. Regarding the employment
side of our mandate, I believe we have, for the most part, attained our
goal already and that the labor market is basically functioning at full
employment.』
労働市場は問題無しと。
『Over the medium term, I remain confident that inflation will return to
target. Energy prices have rebounded a bit, and with the dollar depreciating
slightly as of late, the math is in our favor. This means that these factors
will no longer exert a deflationary impact.』
物価についても威勢が良いですな。
『Thus, I see headline measures falling in line with the more stable core-type
measures, and I see upward pressure on these measures as well.』
ということですから・・・・・・・・・・
『As actual inflation rises, so will market-based measures of inflation
expectations, and so the current low readings will recover and eliminate
one of the risks to normalizing policy. If the economy follows the path
I expect it to follow, monetary policy will be overly accommodative by
historical standards.』
経済が見通しパスなら今の金融政策はoverly accommodativeキタコレ。
『That will set in motion the possibility of another risk, which is accelerating
inflation and the need for aggressive policy actions.』
どう見ても強気です本当にありがとうございました。
『These types of actions that have typically been necessary to rein in
accelerating inflation have also been associated with negative economic
outcomes. Therefore, we need to minimize the possibility that we could
once again find ourselves in that predicament.』
正常化が遅れると一気に締めないといけなくなって却ってイクナイ理論キタコレ。
『Although I cannot give you a definitive path for how policy will evolve,
I can easily see the possibility of two or three rate hikes over the remainder
of the year. That said, all forecasts are subject to fairly wide confidence
bands, and mine is no exception.』
年内2回から3回利上げが適切とな。
『So, even though I am aware that many of you are growing tired of the
phrase “data dependent,” that is exactly what I will be. In the end,
it is the tried-and-true way for conducting monetary policy.』
とまあそういうことで、こちらも威勢の良い発言なのでありました(最後のまとめは割愛します)。
#という引用増量企画(しかも米国)ですいません
2016/05/24
お題「中曽副総裁講演を鑑賞(というか悪態)」
結局どっちですねん
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160523-00000098-asahi-pol
消費税増税「2年間延期を」 自民・二階氏、首相に提言
朝日新聞デジタル 5月23日(月)22時47分配信
『安倍政権が目標に掲げる「20年ごろにGDP600兆円」を実現するため、今年から20年まで5年間で10兆〜20兆円規模の財政出動も主張。災害対応拠点や防災設備の整備を国が地方自治体に代わって進めることで、デフレから「完全脱却」を果たすとした。』(上記URL先より)
「災害対応拠点や防災設備の整備」をすると何でデフレから脱却するのかが意味わからんのだが要するに財政は打ち出(以下の部分は削除されました)。
○中曽副総裁講演は毎度の如く理論になっていない黒日銀理論が全開とな
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko160523a1.pdf
日本経済と日本銀行:昨日、今日、明日
慶應義塾大学・ボッコーニ大学共催
日伊国交150周年記念カンファレンスにおける講演の邦訳
本当は英文なのですがめんどいので邦訳で勘弁。
・現在の日銀を正当化する為に過去の話が随分と雑になっている辺りが末期症状な件について
『2.Lost Decades における日本経済の展開』という小見出しの所は、
『日本経済が 1990 年代以降、長期停滞に陥ったことはよく知られています。一方、特に海外であまり知られていないのは、日本経済が長期停滞のもとで直面してきた課題が、その時々で異なっていたことです。』
『単純化して申し上げると、2000 年代前半までは、資産バブルの崩壊に伴う金融システム不安や銀行セクターのデレバレッジへの対応、企業セクターにおける過剰債務・過剰設備・過剰雇用──日本では「3つの過剰」と呼ばれました──の整理・解消が中心的な課題でした。これらの問題が概ね解消した
2000 年代後半以降は、グローバル金融危機に伴う需要の大幅な減少に直面するもとで、1990
年代以降進行していた潜在成長率とインフレ予想の低下への対応がより重要な課題となりました。こうした大きなふたつの課題にタイムラグを伴いつつ直面したことが、日本経済の停滞を長期化させる要因となりました。』
てな話をしていますが、まあ内容自体は上記の説明を詳しく行っているだけなので全部飛ばしまして次の『3.Lost
Decades における金融政策の展開』である。
『次に、Lost Decades の始まりから今日に至るまでの金融政策を振り返ります。日本銀行は、バブルの崩壊やデフレという問題に最初に直面した中央銀行として、金融政策の新たな手段の開発に取り組んできました。この間の日本銀行の金融政策は、その時々の課題に応じて、ふたつのフェーズに区分できます。第1フェーズにおける金融政策が、流動性の潤沢な供給に重点を置いた「量的緩和」、第2フェーズにおける金融政策が、インフレ予想に対する働きかけを重視した「(マイナス金利付き)量的・質的金融緩和」です(図表5)。』
何か途中が抜けてる気がしますが・・・・・・・・・・
『2001 年から 2006 年の「量的緩和」は、潤沢な流動性の供給によって金融システムの安定を維持し、日本経済がデフレスパイラルに陥ることを防いだという点では効果的でした。もっとも、この間に進行していたインフレ予想の趨勢的な低下を反転させ、デフレ脱却を実現するには至りませんでした。
』
ここで2006年の初回利上げ時の声明文を確認してみましょう。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2006/k060714.pdf
『わが国景気は、本年4月末に公表した『経済・物価情勢の展望』(展望レポート)で示した見通しに概ね沿って、内需と外需、企業部門と家計部門のバランスが取れた形で緩やかに拡大しており、先行きも、息の長い拡大を続けるものと見込まれる。消費者物価の前年比上昇率はプラス基調を続けていくと予想される。』(2006年7月の利上げの時の声明文)
とあったのを全面否定するとか幾ら過去を否定するにしてもそれは無いだろと思ったのですが、当時の中曽さんは金融市場局長(http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2006/g060714.pdf見れば分かりますよ)だから知らんとでも言うのでしょうか。
なお、一応申し上げますと、その前の部分では
『また、ちょうどこの年に、消費者物価の前年比もプラス圏まで回復し、デフレについても一旦は後退しました(前掲図表2)。幸いにも、1930
年代のような、景気の大幅な悪化と物価の急激な下落が相互作用する状況──所謂デフレスパイラル──に陥ることは避けられたのです。こうして、日本経済は、2000
年代半ばには、資産バブルの負のレガシーを清算し、新たな持続的成長の基盤を整えたかにみえました。』
とあって、その後にリーマンショックでどうのこうのという話をしているので、デフレは「後退した」けれども「脱却を実現しなかった」という説明の積りなんでしょうが、それにしてもちょっと量的緩和の説明が雑過ぎじゃないですかねえ。
『既にご説明したとおり、潜在成長率が低下するもとで自然利子率が低下する一方、短期金利のゼロ制約とインフレ予想の低下により実質金利が高止まったため、結果的に、十分に緩和的な金融環境を提供することができなかったのです。そうしたもとで、価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落という悪循環が生じました。このことは、一旦デフレ的な均衡に陥ってしまうと、なかなか脱却できないことを示唆しています。これに対する処方箋は、理論的には明確です。思い切った金融緩和によって、デフレマインドを抜本的に転換し、インフレ予想を引き上げること──実質金利の引き下げ──と、規制緩和をはじめとする成長戦略によって、潜在成長率を引き上げること──自然利子率の引き上げ──です。アベノミクスの「三本の矢」は、まさにこうした考え方に沿ったものでした。』
って話をしているのですが、そもそも論として2001年の量的緩和に関しましても、
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2001/k010319b.htm/
こちらの2001年3月の量的緩和実施時の参考説明の中に『強力な時間軸効果』というのがある訳でして、そこに『消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続』『デフレ予想の是正に貢献』『イールドカーブ全体の低下』とある訳でして、まるで過去の日銀がインフレ期待について無視していたかのようなレトリックで説明するってどういう事やという感じではあります。
『この点、「金融緩和と構造改革のいずれに力点を置くべきか」という議論がしばしば行われますが、私にはあまり建設的な問題設定には思えません。デフレから脱却し、持続的な成長を実現するためには、いずれも必要です。金融緩和と構造改革は、決して二者択一ではなく、相互に補完的なものなのです。』
ここ脈絡がないんですけど(割愛しないで引用していますよ)何でこういう話を入れているのかが意味わからん(原文読むと違うのかもしれないけど見てない)。
『「第一の矢」である金融政策については、日本銀行は、2013 年1月、「物価安定の目標」を導入し、消費者物価の前年比でみて2%の上昇を目指すこととしました。続いて、2013
年4月には、2%の「物価安定の目標」を早期に実現するために「量的・質的金融緩和」を導入しました。』
ということで、この説明の何がアレって「2006年までの量的緩和政策」の話があるのに、白川時代の緩和政策の話が全然ない(物価安定の目標の所だけちょっとある)という所でして、黒日銀になって白日銀時代の話は遂に無かったことにされてしまったのかと思うと落涙を禁じえません。
・効果の説明は毎度の如く
マイナス金利政策の説明の所は飛ばして『4.「量的・質的金融緩和」「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の効果』に参りますがいきなりこれ。
『「量的・質的金融緩和」導入以降、約3年が経過しましたが、所期の効果を発揮していると評価しています。』
所期の効果を発揮していたら2年で物価目標達成している筈なのですが・・・・・・・・・・・・・・
『まず、金利面での効果は顕著であり、「量的・質的金融緩和」導入以降、10年債利回りは累積で
70bps 程度低下しました(図表6)。』
えーっとすいません、短期金利は政策金利に連動するからマイナス金利政策を実施したら下がるのは当たり前としましても、さきほどあんた「思い切った金融緩和によって、デフレマインドを抜本的に転換し、インフレ予想を引き上げる」って言ってた筈で、それが実際に起こったらインフレ予想がゼロ近傍から2%水準まで上がるのですから10年債利回りが低下しない筈なのですから、それを所期の効果を発揮しているというのは詭弁以前の問題。
『これを受けて、銀行の貸出金利は低下を続けており、全ての貸出のストックでみて約定平均金利は、1%程度まで低下しています。銀行貸出は、中小企業向けを含め、前年比2%を上回る伸びを続けています(前掲図表1)。実質金利が自然利子率よりも十分低い水準まで低下するもとで、金融環境は、実体経済に対し、きわめて緩和的となっていると考えられます(前掲図表4)。』
以下曳かれ者の小唄が延々と続くので割愛しますが実体経済が改善しているとかいう寝言の後に物価の話。
『物価については、生鮮食品を除く消費者物価は、エネルギー価格の下落を背景に、前年比0%程度で推移していますが、基調的な物価上昇率は着実に改善しています。』
日本語がおかしい。
『生鮮食品とエネルギーを除いたベースでみると、「量的・質的金融緩和」導入以前は、▲0.5〜▲1.0%程度で推移していましたが、2013年後半以降、30
か月連続でプラスで推移しており、ここ数か月は+1%程度となっています(図表8)。』
だったら最初からこの指数を出して説明してください。途中から都合の良い指数を出して説明されても困るのですが。
『こうした持続的な物価上昇は、1990 年代後半に日本経済がデフレに陥って以来、初めてのことです。また、消費者物価を構成する品目のうち、上昇した品目数から下落した品目数を差し引いた指標は、「量的・質的金融緩和」導入以降、明確に上昇し、足もと既往ピーク圏内で推移しています。』
『このように、企業は、前向きな価格設定スタンスを維持しており、賃金の上昇を伴いながら、物価上昇率が緩やかに高まっていくという好循環が働いています。』
最後とその手前に話の飛躍があります。
・マイナス金利政策の言い訳がクソ長い件について
『なお、本年1月に導入したマイナス金利政策については、日本においても、批判的な意見が少なくありません。この点は、ユーロエリアにもある程度共通しているようにも窺われますが、大きく言えば、ふたつの批判があるようです。』
以下1ページ半ほど使って延々と言い訳が続く。
『ひとつは、マイナス金利政策が銀行の収益を圧迫し、金融仲介機能を損ねる惧れがあり、経済・物価に却って悪影響を及ぼし得るという意見です。しかしながら、日本においては、少なくとも現時点では、こうした懸念はあたらないと考えています。』
以下予想通りの説明。
『先にご説明したように、日本の金融機関は 2000 年代半ばにはデレバレッジのプロセスを終えているだけでなく、グローバル金融危機の影響が限定的なこともあって、資本基盤は充実しています。また、景気回復に伴う信用コストの大幅な低下を主因に、日本の金融機関は、大手行・地域銀行ともに、低金利環境にもかかわらず、過去最高に迫る水準の収益を実現しています。』
現在の話とかどうでも良い。問題は将来の話で、マイナス金利政策がこうかはばつぐんだとなってあっという間に緩和政策の出口に行けるようなら誰も懸念しないけど、そもそも日銀はQQEで物価目標を2年で達成すると大口叩いておいて全然達成できなくてヤケクソになってマイナス金利を入れたのであって、しかも「必要ならば追加をする」とか端から緩和政策の出口が無いような話しかしないから懸念するんだよオイコラというところで。
『さらに、マイナス金利政策の導入にあたって、日本銀行は、銀行収益を過度に圧迫することがないよう、金融機関が日本銀行に保有する当座預金を3段階の階層構造に分割し、その一部にのみマイナス金利を適用することとしました。先行き、日本銀行が国債買入れを続けるもとで、金融機関の日本銀行当座預金は次第に増加していきますが、これに応じて階層を調整することで、マイナス金利が適用される残高は比較的少額──10〜30
兆円程度──にとどまるように運営していく方針です。』
そもそも「金利が下がって効果が出た」「貸出金利が下がった」と言っている訳で、その時点で(預金金利をマイナスにするなら兎も角そうじゃない訳ですから)金融機関収益を圧迫する訳で、三層構造がどうしたというのは申し訳程度の話にしかなっていない。
『無論、金融機関収益への今後の影響については注視し、「金融システムレポート」でよく分析・評価していきます。金融政策の波及メカニズムにおける銀行の金融仲介機能の重要性は改めて指摘するまでもありません3。だからこそ、日本銀行は、1990年代の金融危機以来、金融仲介機能を維持することに一貫して全力をあげてきたのです。そうした方針は今後とも変わることはありません。』
FSRを見ますとマイナス金利政策が長期化したりマイナスが拡大したら色々と弊害が出るという分析になっているようにしか見えませんがさて・・・・・・・・・・・・
『もうひとつの論点としては、国民一般の間で、マイナス金利政策のメリットが感じにくいとの声が少なくないことを指摘できます。』
ほうほう。
『マイナス金利政策によって、個人の預金が減少する訳ではないことについては理解が広がっていますが、住宅ローンなどの借入がない世帯にとっては、具体的なメリットが感じにくいことは否めません。特に、年金生活者、高齢者などの貯蓄世帯には、利息収入が一段と減少することが、強いデメリットとして受け止められています。』
まあ元々利息収入は無い訳で、それよりも「マイナス金利政策などという事までやらないといけないほど日本はマズいのか」という認識を広めたことがマインドを悪化させている面があるんじゃないですかねえ。まあそれ言ったらおしマイケルだから絶対言わないでしょうけど。
『マイナス金利政策は、実質金利を自然利子率に比して十分低い水準に保つことを政策波及経路としている点で「量的・質的金融緩和」の延長線上にあると言えますが、国民一般にとって分かりにくい面もあり、このような批判や痛みにはよく耳を傾けていく必要があります。』
はあそうですか。
『しかしながら、同時に、金融政策の効果は、金融機関との取引に伴う経済主体ごとの直接的な損益だけでなく、雇用の増加や賃金の上昇などを通じたメリットも含め、経済全体としてみていく必要があることを丁寧に説明していかなければならないと思います。』
ところでQQE入れた当初に物価が上がりましたが賃金上昇が追い付かず(そういう意味では今の方が却ってマシな状態というのが皮肉です)という状況になった訳で、2%物価目標というのの実物教育を変な形で実施してしまったので説明するのも難しいんじゃないですかねえ。
『すなわち、経済を持続可能な成長経路に戻していくためにこうした政策が必要である点を、より分かりやすく説明していく必要があり、このことは、日本銀行とECBに共通の課題であるように思われます。こう申し上げたうえで、マイナス金利政策については、導入後、金利が一段と低下していることを踏まえ、今後経済にどう影響していくかを見極めたいと考えています。』
だそうです。
・以下の部分はまあネタとしては面白くありませんがちょっとだけ
『6.日本経済の成長力強化に向けて』という小見出しの所から少々。
『第二の課題は、成長力の引き上げに向けた取り組みの強化です。日本経済を持続的な成長経路に戻すうえでは、政府の成長戦略などを通じて企業の活力を引き出し、潜在成長率を引き上げていくことも重要です。成長戦略が奏功すれば、潜在成長率とともに自然利子率が上昇し、イールドカーブの形状も、長めの部分の上昇に伴って次第に正常化していくものと考えられます。』
さっきの『デフレから脱却し、持続的な成長を実現するためには、いずれも必要です。金融緩和と構造改革は、決して二者択一ではなく、相互に補完的なものなのです。』というのもそうなのですが、もともとQQEを投下した時って置物リフレ理論に基づきまして一種の金融政策万能論(だいたいからして最近すっかり言わなくなったが置物一派はマンデルフレミングを持ち出して財政よりも金融政策が超強力とか言ってた訳ですし)を持ち出して「2%物価目標達成したら全てバラ色」という話をしていた筈ですが、まあすっかりとトーンダウンしておりますな。
でもって更にワロタのは最後の『7.欧州へのインプリケーション』という大きなお世話な小見出しの最後の所。
『この間、潜在成長率を引き上げるような構造改革については、推進力を一層強めていく必要があるように見受けられます。ただ、この点についても、ドラギ総裁が「低金利は、金融政策の結果というよりも、低成長・低インフレの結果(symptom)」であると指摘されているように、しっかりと認識されています。私は、欧州の政策当局者の適切な認識と対応のもと、ユーロエリア経済が日本化するリスクは小さいものと確信しています。』
>「低金利は、金融政策の結果というよりも、低成長・低インフレの結果(symptom)」
>「低金利は、金融政策の結果というよりも、低成長・低インフレの結果(symptom)」
>「低金利は、金融政策の結果というよりも、低成長・低インフレの結果(symptom)」
おうさっき金融政策の効果で長期金利が下がったから所期の効果を発揮しているって言ってたじゃねえかとゆー所でして、ドラギ総裁のこの言葉を「しっかりと認識されています」って言うんだったらQQE実施して3年経過しているにも関わらず成長やインフレに対して効果が出ていないどころか悪化しているという話にならんかという所でして、いやもう色々と前後の話が訳分からんという感じですが、そもそもが置物リフレ理論という理論になっていない代物をベースにして政策を実施するわ、その後の説明でも置物一派の伝統芸能である「その時々で都合の良い説明をコロコロ入れ替えて実施する」というのを日銀の更に強力な屁理屈力を遺憾なく発揮して強化しているから、その場その場での説明は出来るけれども一貫した説明になっていない(元々マネタリーショックで期待インフレを引き上げると言ってたのが金利を下げて実質金利を下げる一本槍になっているなどが典型)上に、肝心の物価が全然行かないのですからそらまあ説明が出来んわなとは思うので順当と言えば順当ではあるのでした。
○しまった時間がないのでメモだけ(ブラード総裁とウィリアムス総裁)
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-bullard-idJPKCN0YE1CX
Business | 2016年 05月 23日 23:46 JST
低金利の長期維持はリスク、雇用堅調でインフレ上振れも=セントルイス連銀総裁
お、おぅ・・・・・・・・・
https://www.stlouisfed.org/news-releases/2016/05/23/st-louis-feds-bullard-discusses-two-monetary-policy-normalization-views
St. Louis Fed's Bullard Discusses Two Monetary Policy Normalization Views
スライドはこちら
https://www.stlouisfed.org/~/media/Files/PDFs/Bullard/remarks/Bullard-OMFIF-Beijing-23-May-2016.pdf
でまあこれを鑑賞する予定だったのですが時間が無いので多分明日ですが。
http://jp.reuters.com/article/us-fed-williams-idJPKCN0YE1TW?sp=true
Business | 2016年 05月 24日 01:18 JST
英EU離脱はリスクだが6月か7月利上げなお見込む=米SF連銀総裁
こっちはSF連銀のサイトに特にモノは無いようですけれども、まあこの2名がこういう話をするのは順当としましても、こんなに急いで次の利上げ(その後は別に急ぐわけではないようですけれども)という話になるのって、殆ど糊代論なんでしょうなあとゆー感じっすな。うんうん。
2016/05/23
お題「月曜だし相場は相変わらずなので簡単に雑談メモ」
うむ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160522-00000158-spnannex-ent
「笑点」6代目司会は春風亭昇太 恐縮「『え〜』と思いました」
スポニチアネックス 5月22日(日)18時50分配信
出るまで見事なまでに情報が出ませんでしたが、直ぐにお漏らしが出るどこかの金融政策決定会合におかれましては歌丸師匠に弟子入りした方が良いのでは。
#刈込平均について白井さんが言及していて、お話そのものは結構なのですが、そこで冒頭に「ワタシが言ってますが」と、また私が私がな説明の仕方をするのかと小一時間(何で「幾人かの人が指摘しておりますが私も」とならないのかね)な訳でして、これ白井さんが言い出す前に佐藤さんが言ってた話ですし、以前より白塚さんのレポートでも指摘されている話なんですけどね
○市場雑談メモ
・短国買入は今回も応札多いと
例によってオペ結果(短国のみ)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba160520.htm
国庫短期証券買入 61,719 30,003 0.000 0.016 84.0
ということで今回も3兆円の買入が入りましたが6.2兆円のオファーが入るという結果になっております。でまあ今回に関して平均は引け甘になっていますが、足切が引けまではいっていまして、そうなりますと3Mのカレントもこれなら入れられているんじゃネーノ(実際に何が入ったのかは来月にならないと分からんのですけれども)という結果。
ここまでの短国買入って微妙に弱い結果が続いていまして、連休前に発行された3Mと6M、1Yしか引値の関係で入らない(入れても良いけど投げレートになる)という結果になっておりまして、3Mカレント銘柄が日銀に打ち込まれずの巻となっておりました。この結果GCレートとかにも影響があったと思うのですが、金曜の短国買入で3Mのカレントがある程度捌けるという結果になりますと、ここから先は発行が3Mのみの週になりますので、短国買入でもうちょっと強い所が捌けそうな感じになってきますな。
でまあ何ですな、この前ネタにしたら意外に世間でもネタにしていた業態別当座預金残高を見ますと(その他に見るのは業態別コール市場残高と25日になると出てくる債券貸借取引状況)、とりあえず都市銀行さんが「マイナスチャージに掛かるような残高を持ったら死んじゃう」位の勢いでマイナスチャージを回避する姿勢を見せているように拝察されますが、それは即ち「そう簡単にホイホイと輪番に協力してこない(輪番入れたら日銀当座預金が入ってくるから)」ということに加えて「償還分は全力で有価証券を買う」という事になるかと拝察されます(なお勝手に拝察しているだけなので事実と異なる妄想である可能性は大いにあるのでその辺は割り引いてください)。
その一方で短国の保有って皆さん激減していまして、レート的にマイナス20だのというような金利でアウトライトで購入する訳もなく、購入してから日銀トレードヒャッハーというのはさすがに銀行とかでやるという訳にも行かないでしょうから、、そうなると為替スワップ絡みと自動的に残高を積む海外の人および日銀だけがアウトライトの購入となる、というかなっているのが足元の状況ではありますな。だから短国買入はここもと重そうになっているという状況。
・・・・・・・・とまあそんなバランスになっているのですが、良く良く考えてみますとここから先には6月というのがありまして、これがまた6月には償還というのものがある訳でございますよ。そうなりますと、投資家の持っている償還分ってどういう形にせよやはりマイナスチャージを食らいたくないから債券の購入に回る、という結果になると妄想中でして、この時にどこの債券が買われるのかはちょっとイメージつかないのですけれども、たとえば短国でという話にでもなった日には、3月4月の短国買入ヒャッハーヒャッハーの再来だってありますし、長い所に行けば輪番がガシガシ強くなるという展開だってあるんじゃないのかね、と何となくこうビビッているのでありました。
なお、さらについでに申し上げますと、償還銘柄(国債)に関してはこれがまたその処理についてどうなるのよ(そのまま持っているのかどうか)というのもありますが、考え出すとややこしくなるので一旦そのネタはパス。
・国債市場の流動性指標
http://www.boj.or.jp/paym/bond/ryudo.pdf
国債市場の流動性指標
まあ何ですな、全体的に流動性は落ちたまま、という結果になっておりますが、見ていて一番味わいがあったのが『(図表6)』の『(2)対顧客取引の内訳(顧客の国債グロス買入れ額、月当たり)』でして、これを見ますと、『都市銀行』の売買高が下がりっぱなしという結果でして、従来都市銀行さんは保有ポートを輪番オペに出したり、ポートの保有銘柄をGCレポ市場に出して資金を調達して超過準備を積み上げるような事もしたりとして、わりとせっせと当座預金残高を積み上げていた(瞬間的にGCレポ残高が落ちて急に市場がシュリンクした、などという懐かしい事もありましたが)のですが、何時まで経っても終わらん政策の中で徐々にアクティビティが落ちてきて、まあ最近になった所では、ランボー怒りの両建て解消という風情になっている、というのが垣間見える売買高推移なのではないでしょうか。
なお、当然ですが人様のやっていることですので、ランボー怒りの両建て解消とかあくまでも公表数値を見ながらアタクシが脳内で盛大に盛り上がった妄想でございますので、事実かどうかについては一切無担保無保証ノンリコースでお願いいたします(^^)。
○消費増税先送りだと?????????
ナンジャコラ
http://jp.reuters.com/article/ldp-abenomics-idJPKCN0YA35M
Business | 2016年 05月 20日 15:20 JST
自民・山本氏ら議連、大規模財政出動付き増税実施提言
『[東京 20日 ロイター] - 自民党の議員連盟「アベノミクスを成功させる会」(会長:山本幸三氏)は20日、消費税率10%への引き上げについて、予定通り来年4月から実施すべきとの提言をまとめ、安倍晋三首相に提出した。マイナス金利を活用して国債を発行し、2016年度に15−20兆円規模の補正予算を編成。3年間で37兆円規模の財政出動を影響緩和措置として実行するのが望ましいとしている。』(上記URL先より、以下同様)
?????????
『この提言では、1)増税は予定通り実施し、当面10%で打ち止めと宣言、2)16年度補正予算で10兆円の景気対策と5−10兆円の熊本地震対策基金を設立、3)17年度10兆円、18年度7兆円を本予算に計上、消費増税分はすべて還元する形で給付金約4兆円を支給、4)給付金は年金生活者・低所得者・子育て世代中心に所得再分配政策として実施し、住宅・自動車購入者に2%分還付、5)財源はマイナス金利を活用し、原則国債発行-─などの政策メニューを盛り込んでいる。』
ということで凄まじく訳が分からないのですが、だったら最初から増税しないで規模の少な目の財政やれば良いじゃんと思いますし、還付とか入れて再分配みたいな雰囲気を出してはいますが、再分配やるならやるでこういう形での一発施策でのものではなくて、ちゃんとした再分配政策をするのが筋じゃないですかねえと。
でまあ「マイナス金利を活用し国債発行」って言ってますけれども、マイナス金利で発行された新規発行分の国債って日銀がよりマイナスの金利でせっせと買っているのですから「マイナス金利を活用」というのはそもそも話の筋が間違い。単に「国債発行」というのなら話の筋としては分かるが、「マイナス金利を活用し」という文言に「国債発行はフリーランチ」的なアピールをしているように見えるのが実にこう浅ましさを感じるのですけどねえ。
『増税を単純に延期しても、「いずれ増税する」との観測が消費を下押しするため、増税の実施で不透明感を払しょくするとともに「延期と(経済効果が)同等となる財政措置が望ましい」と説明している。』
えーっとすいません、消費増税前に大規模財政ってのはついこの前実施して、消費増税前の駆け込みとその後の反動という振幅を拡大する作用しか無かったという結果になった筈ですがという所ですし、増税と同等の効果の財政措置とか言っていますが、増税の人と財政措置が入ってくる人は別ですし、今回のこの説明だとその財政措置ってのも一発物であって、恒常的な所得分配の見直しを伴うようなものではない、というのが上記のお話から想像できる訳ですよね。
となりますと、結局は一部に低所得者向けの還付みたいなのが入っていますが、大きく見た場合には消費税引き上げてその分補正予算でウマーという毎度のパターンで、しかもその補正予算ウマーを大規模に実施するためには消費税が財源として無いと大規模にヤラネーヨってことからいきなりこういう話になったんでしょうなあと。
つーかですよ、
『山本氏はマクロ政策の立場に関して安倍首相に近く、同会は2014年に10%への消費増税を延期する提案をとりまとめた経緯がある。今年4月6日の同会の会合で、山本氏は「消費の状況はリーマン・ショック以来の事態」と発言し、増税延期を提言していた。』
とありますように・・・・・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/yamamoto-tax-idJPKCN0X22VQ
Business | 2016年 04月 6日 10:23 JST
自民・山本氏、消費低迷「リーマン以来」 増税是非でサミット前提言
『[東京 6日 ロイター] - 自民党の山本幸三衆院議員は6日、会長を務める議員連盟「アベノミクスを成功させる会」で、「消費の数字から見れば、リーマン・ショック以来の事態が起こっている」と指摘した。その上で、データを踏まえれば「消費税は増税どころか減税すべきだという風に読める」と強調した。』(上記URL先より)
> 2016年 04月 6日 10:23 JST
> 2016年 04月 6日 10:23 JST
> 2016年 04月 6日 10:23 JST
http://www.asahi.com/articles/ASJ4F6SZ2J4FUTFK00Y.html
「消費増税、少なくとも再延期は当然」自民・山本幸三氏
2016年4月13日21時03分
『消費増税はとてもできない状況だと思う。内閣府はずっと、消費は底堅いと言っていたが、それは間違っている。過去20年の消費トレンドで見ると底割れしている。リーマン・ショック並みの減少が、消費で起こっている。少なくとも再延期は当然だ。プラス10兆円規模の財政拡大政策、とくに消費を喚起するような政策が必要だ。軽減税率も、おそらく今のままでは1年じゃとても準備できないんじゃないかという状況だ。消費増税を延ばして準備時間をおけば、少しはうまくいくかもしれない。(BS番組の収録で)』(上記URL先より)
>2016年4月13日21時03分
>2016年4月13日21時03分
>2016年4月13日21時03分
となっていたのが突然変異したのは何故なのか、というのとこれ山本先生だけじゃなくて議連がという話の筈なのですが、皆さん揃って豹変してしまうというのは何がファクターになっているのか非常に不思議と申しますか、ある種の闇のようなものを感じたくなる位のレベルでございまして、全くもって訳分からんという所です。
まあ消費増税先送りだと格付ガーという話になって、まあ別に国内におけるソブリンの話はどうでも良いのですが、特に長期格付けがA−レベルになると短期の格付けがA−2レベルになってしまいますので、それが色々と悪影響、というのは釈迦に説法のお話ではありますがまあそういうお話。
ただ、増税先送りじゃなくても赤国出しまくりで財政措置ヒャッハーとか言い出すとそれって本当に格付け会社的にどうなのという気がせんでもないので??????ではあります。
まあこれがプロレスで、実際には「こういう声もあるけれどもやはり皆様の為に消費増税を先送りすることにしました!!!」となるのかも知れませんが、消費増税しないで大規模補正という事になると、(大規模補正はやるにしても参院選後になるでしょうから9月とかの話)消費増税でニッコリとなった黒田さんとしては「財政で経済が持ち上げられるタイミングで追加緩和を実施すれば、財政によって吹かされた景気のプラスを金融政策の効果です!!!と大勝利宣言することが出来るのでウマー」というような邪悪な事を考えだしそうに思える訳でして、この消費税関連とそれに伴う財政支出というのは、追加金融緩和にも変数として結構影響を出してきそうに思えますので、どういう事になっていくかというのには注意が必要ではないでしょうか、と思います。
つまりですね、もうどうせ金融政策これ以上やってもハナクソ位の効果に対して、副作用の方が重篤な食中毒位のゲロゲロ状態になっている(とは日銀は言ってないけど)という素敵な状況になりますと、外部環境がクソだから今の3次元を拡大、というのは最早ダメダメ状態となっている、という風に見立ててしまえば、次に追加緩和をするときには「何か追い風が吹いている時に実施して、追い風分を金融政策の効果と言い張って大勝利宣言ウマー」という事を考えていても何ら不思議ではない(ゆうて前回の追加緩和は逆風下でやった上に副作用が大きい政策だった訳ですから)ので、そういう意味では消費増税実施の為に大規模補正とか来たらそらもうキタコレでしょうということですな。まあ全てアタクシの脳内妄想ではありますので念のため。
ちなみに
http://www.yamamotokozo.com/
に記事があるようですな。
2016/05/20
お題「短期市場世間話と米国ネタ(昨日の訂正あり)」
ほえ???
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS19H56_Z10C16A5PP8000/
消費増税「予定通りに」 自民議連、首相に提言
2016/5/19 23:43日本経済新聞 電子版
『自民党の有志議員でつくる「アベノミクスを成功させる会」(山本幸三会長)は19日、安倍晋三首相への提言をまとめた。消費税率10%への引き上げは、16年度に15兆〜20兆円の追加の補正予算を組んだうえで「予定通り実施し、当面10%で打ち止めと宣言」することを求め…』(上記URL先より、以下は会員ページで見てちょ)
なるほど大型補正という予算をエ(以下内務省検閲により削除^^)。
しかしまあ何ですな、補正出したって継続的なものじゃないのだったらそれは単に官公需の振幅を大きくするだけで却って成長力の強化に繋がらないんじゃないですかねえと思いますけどねえ。エコ何とか減税とかのように一時的な税制で需要の振幅を上げた後に起こるのって既に見せられているように思えますがねえ・・・・・・・・・
○市場世間話雑談
・コール市場が復活しているのかという件の雑談続き
一昨日コール市場云々のネタを投下した所、ちょうど投信協会の集計を受けて水曜の金融ファクシミリ新聞さんが投信コールの記事をだしていて、識者の方からご指摘なども賜りましたので追加で雑談(なので以下の雑談はだいぶ受け売り成分が高いことを申し添えます)。
えーっとですね、やはりこう今の状況って「市場機能が」という意味ではいやいやそれは違うだろ、と思っている訳ですが、そう感じるのは何でですねんと思いますと、「主体的に市場内の各種商品間の金利裁定(というか適正な金利比較というか)が行われた結果としての価格形成が行われている訳ではない」というのがマイナス金利になって思いっきり違ってきた(元々その傾向はマイナス金利になる前の短国金利ど低下モードの頃から強まっていましたがマイナス金利が決定的にした)という事ではないかと思うのですよ。
つまりですね、今のコール市場での資金って昔のように短国とレポと現先とコールとCPと社債を比較しながら短期資金をどう運用するか、というような形でレート形成がされて行く中での需給から金利水準が何となくこんな感じになる、みたいな意味での価格形成をしている訳ではなく、単に株式投信とかの運用上の資金繰りによって発生したキャッシュをマイナス金銭信託よりマシなら出しますというような感じにとどまっている訳で、以前のように日銀当座預金金利と超過準備付利金利の間でレートが形成される余地が大いにあった時代とは違っているでしょという風に思う訳ですよ。
とまあ書いている本人も中々こうやって文章にするとニュアンスがうまく書けているのかどうかぐぬぬという感じですが、表面として取引高がちょっと戻ってきたから市場の潮目に変化とか市場が活性化、というのではなく、その取引がどういう形で行われるものであり、その中に市場が本来持つべき価格発見機能ってどうなっているの、という視点で考えた場合(というか多分市場で取引をする人ってそういうの無意識のうちに認識するもんだと思うので市場の中の人からみたらお前は何を今更言ってるんだと言われそうでアセアセですけど)にはやっぱり違うんじゃないの、というのを付け加えさせていただきたく存じましてそんな雑談を。
なお、有担保コールの集計レートは「ブローキング取引」が壊滅した結果「出合い無し」扱いになったので集計上ゼロ金利になったということで、別に取引レートがゼロになっている訳ではない模様です。
・CP買入ェ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昨日ネタにできなかったネタシリーズですが。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba160518.htm
CP等買入 9,619 3,984 -0.001 -0.001 65.8
とまあそういうことで水曜日にCP買入が実施されたのですが、元々は3500億円程度という予定だったのですが敢然と4000億円の買入で応札も9600億円入って何と▲0.1bpの一本値という状態でナンジャソラというかワロタというか何というか。
ではこんなに金利が上がっているのだからCP市場はさぞかし活発化しているでしょうかと言いますとこれがまた全然そういう訳ではなくて、新発CPのレートは最上位格だと日銀買入に入りにくい銘柄でもない限りゼロ利回りかうっかりするとほぼゼロ近辺だけどもマイナスば利回りになったりしますし、大体からしてCPそのものの市場への供給が減っている状態ですし、投信協会の数字見ると投信のCP運用って相変わらず減少傾向ですし、CP買入の金利がゼロに近いマイナスに張り付くのと市場として見た場合に整合性が取れんわという感じですな。
ちなみに投信のCP(CPはディーラーと投資家が持っているもんで、投資家と言えば元々は投信がそれなりに存在感あった訳ですな)はこの辺りの統計情報にある
http://www.toushin.or.jp/statistics/statistics/data/
統計資料一覧
の中にあります「余資、その他有価証券内訳」という辺りを見ると数字が出てくる(月の半ばぐらいに更新される)ざますが、新発がマイナス金利連発となってしまって満期分のロールが出来なくなってきてからというもの、2月末5兆4950億円、3月末3兆2113億円、4月末2兆6198億円と絶賛減少中のようでございますの。
でまあそういう状況なのに日銀CP買入はこの金利とうのも市場として考えると不思議極まる展開ではあるのですが、市場機能がマイナス金利のせい、というか超過準備の一部がペナルティ金利、という制度になっている制度の建付けと、CP市場における参加者の関係のせいで、もともとだいぶダメダメ市場になってはいましたが、こちらも市場として考えるのではないような感じですなあと思うのでありました。
・短国も相変わらず
昨日の3M(609回)
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20160519.htm
(3)募入最低価格 100円06銭0厘0毛(募入最高利回り)(-0.2405%)
(4)募入最低価格における案分比率 83.3779%
(5)募入平均価格 100円06銭2厘1毛(募入平均利回り)(-0.2489%)
一昨日の1Y(608回)
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20160518.htm
(3)募入最低価格 100円31銭8厘(募入最高利回り)(-0.3152%)
(4)募入最低価格における案分比率 60.0900%
(5)募入平均価格 100円32銭8厘(募入平均利回り)(-0.3251%)
とまあそういうことで、相変わらず入札としての最低利回りを毎度更新していますが、セカンダリーでぶっ飛ぶ3月4月のような事案は発生していないし、あの時の金利がトンでも無い水準でそっちの記憶の方が鮮明いなのでこの▲25だの▲30だのという金利を見てもはあそうですかGCと乖離あるのに凄いですねえ(棒読み)という感じではございますが、ここで本日付の売買参考統計値を確認しておきましょう。
609回(3M)-0.260
608回(1Y)-0.359
607回(先週の3M2発目)-0.260
606回(先週の6M)-0.404
605回(先週の3M1発目)-0.248
(一応あっているつもりだがちゃんとした数値は日証協のページで確認してちょ)
入札レベルからぶっ飛んだ引けになっているのが相変わらず6Mとなっていますな。
○米国ネタであるが昨日の訂正(すいませんすいません)
昨日の議事要旨ネタでマクプル関連の所なんですけどね。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20160427.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20160427.pdf
の頭の『The Relationship between Monetary Policy and Financial Stability』の部分から(再掲)
『Some participants noted that these considerations would be less significant
for tools that were likely to be adjusted only infrequently. Most participants
judged that the benefits of using monetary policy to address threats to
financial stability would typically be outweighed by the costs associated
with deviations from the Committee's employment and price-stability objectives
induced by such actions; some also noted that the benefits are highly uncertain.』
という部分なのですが、昨日は金融安定化に対する重大な問題に対して金融政策をマクプル対応する利点がコストを上回る的に読んだのですが、良く良く見直してみると(というと格好が良いですがこれまた識者の方からご指摘を頂きましたすいませんすいません)このoutweighのところって受動態で書いてあるので読みとして逆だったわという超単純な読み間違いをしていました。
#だからその次の部分と文章が繋がらないなあと思ったのは実は当たり前でした・・・・・・・・・・・・
でもってこの部分を再掲して改めて読みますと、
『Some participants noted that these considerations would be less significant
for tools that were likely to be adjusted only infrequently. Most participants
judged that the benefits of using monetary policy to address threats to
financial stability would typically be outweighed by the costs associated
with deviations from the Committee's employment and price-stability objectives
induced by such actions; some also noted that the benefits are highly uncertain.』
『Nonetheless, participants generally agreed that the Committee should
not completely rule out the possibility of using monetary policy to address
financial stability risks, particularly in circumstances in which such
risks significantly threatened the achievement of its dual mandate and
when macroprudential tools had been or were likely to be ineffective at
mitigating those risks.』
という部分は、マクロプルーデンス的に金融安定化と物価の安定を天秤にかけるような事態が発生した場合、原則としては物価の安定を犠牲にしてまで金融安定化のために金融政策対応をする必要はないのだが、そうは言ってもマクロプルーデンス的な観点での金融政策対応というのを排除すべきではない、という話をしているのであって、ウホウホマクロプルーデンスおじさんが暴れているという程ではないというお話でしたどうもすいませんすいません。
とは言いましても、その次に
『Finally, participants stressed the need for further research and analysis
to advance understanding of the relationship between monetary policy and
financial stability and to help identify situations in which it might be
desirable to incorporate financial stability considerations in the design
of monetary policy.』
とありましたように、いわゆる昔のFEDビューバリバリの見解というのは既にFOMCでもかなりマイナーな状態になっていて、あのFEDも今や金融安定に対して金融政策での対応可能性あるいはそういうケースに関しての知見を積んでいかないと、という事になっている、というのを今回の議事要旨でわざわざ示してきているというのは事実として有る訳で、この点はやはりほほーと思っている、という点はお伝えさせて頂きたく存じます。
○ダドリー先生キタコレですがNY連銀のサイトでは統計でコミュニケーションという話でした
ほほう
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-dudley-idJPKCN0YA2KJ
Business | 2016年 05月 20日 03:58 JST
米利上げ、6月か7月に必要となる可能性=ダドリーNY連銀総裁
『[ワシントン 19日 ロイター] - ダドリー米ニューヨーク連銀総裁は19日、米経済は6月か7月の利上げを正当化するほど十分に力強い可能性があるとの考えを示した。総裁は「われわれは(利上げに必要な)多くの条件を満たす軌道にある」と指摘。「統計の内容次第だが、6月会合で行動を起こす可能性は確実にある」と述べた。』(上記URL先より)
ということでダドリー先生。
https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2016/dud160519
Opening Remarks at the Economic Press Briefing on the U.S. Economy in a Snapshot
May 19, 2016
William C. Dudley, President and Chief Executive Officer
Remarks at the Economic Press Briefing on the U.S. Economy in a Snapshot,
Federal Reserve Bank of New York, New York City
というのがあるのですが、こちらでは「最近連銀がリアルタイムの経済データ解説みたいなのを出すようになりました」という宣伝をしている内容になっていて、6月利上げみたいなのは(ざっと見たところ)無さそうですので、質疑応答か何かで喋ったのでしょうかねえ。
挨拶の真ん中の方から。
『When asked about the trajectory for the monetary policy stance, I always
point out that it is data dependent. The FOMC calibrates the stance of
monetary policy to best achieve our twin objectives of price stability
and maximum sustainable employment, taking into account our forecast for
how the economy is evolving.』
でもってそのデータ次第というのが・・・・・・・・・・・
『This forecast reflects the ongoing flow of the data. Data releases that
are close to our expectations have little additional impact on the forecast,
while data releases that deviate significantly from our expectations can
lead to more significant revisions of the forecast. It is, therefore, important
for market participants and households to be able to follow the data along
with the FOMC and to understand how we are likely to interpret and react
to incoming data.』
ということでそのincoming dataに関して、
『While market analysts readily have access to economic and financial data,
this access is not widely available to everyone. To help fill this information
gap, for the past year we have been making available on our website a monthly
publication called U.S. Economy in a Snapshot.』
というのがお題にあった通りで、一般の皆様にも今の経済状態がどんなものなのか分かりやすくするようなものを出しています(GDPナウみたいなもんですな)という宣伝(?)。
『This publication contains a set of key data charts as well as commentary
by our staff economists. The purpose is to provide interested readers easy
access to clear and concise presentations of important economic information.
The associated commentary provides some pertinent observations one might
draw from the data.』
『Our goal is to provide information that helps households and businesses
follow the data along with the Fed. If people know more about how the economy
is performing and how that is likely to influence our actions, this should
make it easier for us to achieve our twin objectives.』
てな話で締めていまして、こちらの方ではその6月がどうのこうのみたいな話はしていませんが、出来るだけ直近のデータまで見ながら、しかもそれを公表してコミュニケーションして行きますぞ、というスタンスだというのは把握しました。ただまあそれやると今度は足元の振れについてどういう風にコミュニケーションしていくの、という新たな課題も出そうな気がしますけどね・・・・・・・・・・・・
2016/05/19
お題「FOMC議事要旨である」
市場雑談の続きもしたかったのですが、FOMC議事要旨で市場が暴れたらしいので議事要旨をインスタント読みしたらインスタントでも味わいがあったので本日はそっちのネタになってしまいました(中途半端な時間しか残らなかった、汗)。
○寝起きでFOMC議事要旨だが地均しチックな説明キタコレ!
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20160427.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20160427.pdf
例によってインスタント読みで参りますが。
・見通し通りに推移すれば6月に利上げするのが適切な経済指標が出てくるとな
『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツのパラグラフから逆に見ていくのがインスタント読みの基本ですが、今回はその最初の所にお洒落な記述がということで市場も反応の巻。
『Participants agreed that their ongoing assessments of the data and other
incoming information, as well as the implications for the outlook, would
determine the timing and pace of future adjustments to the stance of monetary
policy.』
ほうほうそれでそれで??
『Most participants judged that if incoming data were consistent with economic
growth picking up in the second quarter, labor market conditions continuing
to strengthen, and inflation making progress toward the Committee's 2 percent
objective, then it likely would be appropriate for the Committee to increase
the target range for the federal funds rate in June.』
Most participantsキターーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーー!!!!!!!
『Participants expressed a range of views about the likelihood that incoming
information would make it appropriate to adjust the stance of policy at
the time of the next meeting.』
ということで・・・・・・・・・・
『Several participants were concerned that the incoming information might
not provide sufficiently clear signals to determine by mid-June whether
an increase in the target range for the federal funds rate would be warranted.』
Several participantsはそこまで堅調な指標が出て来ないのではないかというご指摘。
『Some participants expressed more confidence that incoming data would
prove broadly consistent with economic conditions that would make an increase
in the target range in June appropriate.』
一方でmore confidenceとか言ってる人もいると。
『Some participants were concerned that market participants may not have
properly assessed the likelihood of an increase in the target range at
the June meeting, and they emphasized the importance of communicating clearly
over the intermeeting period how the Committee intends to respond to economic
and financial developments.』
ということで市場が6月利上げの可能性を全然織り込んでいないのを懸念するSome
participantsがいて、この人たちは「ワシらは経済データや金融市場動向が適切なら利上げするんじゃがのう」という事をもっとコミュニケートすべき、という主張をしていまして、まあ一部の連銀高官の皆さんがやたらめったら6月利上げの話をしていたのは、要はこういうことですよね、とまあそういう風に話が繋がる訳ですが、発言メンバーから考えますと、キタコレの所にありましたように、大勢は同じようなイメージで威勢の良い話をしていた(イエレンの方がポジション的にはハト派じゃろうの)のは上記のような認識をベースにしている、ということで市場が利上げ出来ないじゃろに傾いているのでバランス取りに行っている、というのにしては妙に進軍ラッパが強いなあとは思っていましたが、まあこういうことだったという事で。
・その前の所も少し読んで見るとちょっとさっきの部分の味わいにも微妙なアレを
4つ前のパラグラフから参ります。
『Participants discussed whether their current assessments of economic
conditions and the medium-term outlook warranted increasing the target
range for the federal funds rate at this meeting.』
一応毎回がライブミーティングですよという事なのでこういう感じの議論が毎回入るようになったということでしょうな。
『Participants agreed that incoming indicators regarding labor market developments
continued to be encouraging. They generally concurred that data releases
during the intermeeting period on components of private domestic demand
had been disappointing, but most participants judged that the slowdown
in growth of domestic spending would be temporary, citing possible measurement
problems and other transitory factors.』
労働市場の動向は良いが国内民間消費は残念。でもまあ一時的な減速でしょうと。
『Financial market conditions continued to improve, providing support to
aggregate demand and suggesting that market participants saw some reduction
in downside risks to the outlook: Equity prices rose further, credit spreads
declined somewhat, and the dollar depreciated over the intermeeting period.』
金融市場動向は改善。
『Taking these developments into account, participants generally judged
that the medium-term outlook for economic activity and the labor market
had not changed appreciably since the previous meeting. Furthermore, most
participants continued to expect that, with labor markets continuing to
strengthen, the dollar no longer appreciating, and energy prices apparently
having bottomed out, inflation would move up to the Committee's 2 percent
objective in the medium run.』
色々と留保条件があるのが味わいがあるけど中期的には2%に向かって物価が上昇していくそうな。
その次のパラグラフ。
『Still, with 12-month PCE inflation continuing to run below the Committee's
2 percent objective, a number of participants judged that it would be appropriate
to proceed cautiously in removing policy accommodation.』
PCE物価指数は前年比強い訳でもないけれども正常化路線をするのは適正であるとな。
『Some participants pointed to the risk that the recent weak data on domestic
spending could reflect a loss of momentum in the economy that might hinder
further gains in the labor market and raise the likelihood that inflation
could fail to increase as expected. Accordingly, these participants believed
that it would be important to evaluate whether incoming information was
consistent with their expectation that economic growth would pick up and
thus support continued improvement in the labor market.』
一方慎重派の見解もありますよ。
『In addition, a number of participants judged that the risks to the outlook
for inflation remained tilted to the downside in light of low readings
on measures of inflation compensation and the fall over the past year in
some survey measures of longer-term inflation expectations.』
インフレ期待の数値などが弱い点を指摘する慎重派も。
『Also, many participants noted that downside risks emanating from developments
abroad, while reduced, still warranted close monitoring.』
それはそれとして海外要因はリスクとの認識は多くの参加者が共有。
『For these reasons, participants generally saw maintaining the target
range for the federal funds rate at 1/4 to 1/2 percent at this meeting
and continuing to assess developments carefully as consistent with setting
policy in a data-dependent manner and as leaving open the possibility of
an increase in the federal funds rate at the June FOMC meeting.』
ということで6月までデータを見ていきましょう、というお話でして、この話(とここから引用する部分)の話がある中で最後に上記のような話が出ている、ということは、6月の利上げ云々ってのは別に予告ホームランをしている訳ではなくて、「今のワシらの見通しが適切だったら6月に利上げが正当化できる位の指標が出てくるんチャウの??」というような話をしているようにも読めたりもするのがこれまたという感じでございまする。
・プルーデンス利上げの話と利上げ遅れによるインフレ加速の懸念をしている人というコーナーが
『Some participants saw limited costs to maintaining a patient posture
at this meeting but noted the risks--including potential risks to financial
stability--of waiting too long to resume the process of removing policy
accommodation, especially given the lags with which monetary policy affects
the economy.』
プルーデンスの観点から正常化政策継続の遅れの問題点を指摘する人キタコレでして、しかも今回こういう主張をしているのがSome
participantsになっていますな。
『A couple of participants were concerned that further postponement of
action to raise the federal funds rate might confuse the public about the
economic considerations that influence the Committee's policy decisions
and potentially erode the Committee's credibility.』
2名のうち1名がカンサス連銀ジョージ総裁(投票権あり)です。この2名というのは前回も利上げ適切という話をしていまして次のパラグラフ。
『A few participants judged it appropriate to increase the target range
for the federal funds rate at this meeting, citing their assessments that
downside risks associated with global economic and financial developments
had diminished substantially since early this year, that labor market conditions
were consistent with the Committee's maximum-employment objective, and
that inflation was likely to rise this year toward the Committee's 2 percent
objective.』
A few participantsとな。
『Two participants noted that several standard policy benchmarks, such
as a number of interest rate rules and some measures of the equilibrium
real interest rate, continued to imply values for the federal funds rate
well above the current target range. Such large and persistent deviations
of the federal funds rate from these benchmarks, in their view, posed a
risk that the removal of policy accommodation was proceeding too slowly
and that the Committee might, in the future, find it necessary to raise
the federal funds rate quickly to combat inflation pressures, potentially
unduly disrupting economic or financial activity.』
テイラールールみたいなのから示される適正な金利から見て今の金利水準が盛大に低いので、これを放置していくとそのうちどこかの時点でインフレが高進して調整の為に一気に金利調整をしなければいけなくなる懸念がある、と2名が主張。
『Overly accommodative policy could also induce imprudent risk-taking in
financial markets, posing additional risks to achieving the Committee's
goals in the future.』
でもってこの方々はプルーデンスというか金融安定化の観点からも利上げを主張ということですが、「additional
risks to achieving the Committee's goals in the future」と言ってるのは「financial
stability」のゴールであるというお話でして、この金融安定化の話って実は今回の議事要旨のトップの所に出てくるのよね。。
・最初の所に金融安定化のゴールのお話が出ているのがおーという感じで
今回は冒頭に『The Relationship between Monetary Policy and Financial Stability』というのがあってこれがおーという感じですよ。
『The staff presented several briefings on a special topic, the relationship
between monetary policy and financial stability.』
ほほう。
『The presentations began with an overview of the possible linkages among
monetary policy, macroprudential tools, and financial stability, drawing
on both academic research and experience with such tools in various countries.
The staff then reviewed empirical literature on the linkages between the
stance of monetary policy and financial stability. Lastly, the staff presented
illustrative simulation results from a specific macroeconomic model to
explore whether and how monetary policy should react to financial imbalances
as well as the extent to which monetary and macroprudential policies should
be coordinated to best achieve macroeconomic goals and financial stability
goals.』
ほうほうそれでそれで?
『In their comments on the briefings and in their discussion of the relationship
between monetary policy and financial stability, FOMC participants noted
that more stringent regulatory and supervisory policies implemented since
the financial crisis, including enhanced capital and liquidity requirements
for some types of financial institutions, had significantly increased the
resilience of the financial system to shocks.』
金融システムに対するショックへの耐性という意味では、金融危機後に行われた規制などの強化によって、ショックに対してよりリジリアントになってきたと。
『Participants emphasized the importance of macroprudential tools in promoting
financial stability, and they generally expressed the view that such tools
should be the primary means to address financial stability risks.』
でまあマクプルのツールを一義的には金融安定化に対応して使うべきである、とまあ穏当な話。
『However, it was noted that relatively few macroprudential tools are available
to financial regulators in the United States and that, for the most part,
such tools are untested. Moreover, a number of institutional factors, including
the dispersion of responsibilities across regulatory agencies, differences
in mandates among those agencies, and resulting coordination challenges,
may make it difficult to deploy macroprudential tools expeditiously in
the United States and may lessen their effectiveness.』
とは言いましても、そもそもこれらのツールって新しく投下したものも多い訳で、実際に使うとどうなるのかとか、各種規制の相互作用がどうなるのかとか、そういう事も考えるとマクプルツールが必ずしも十分に効くかどうかは良く分からん面がありますよね、ということで段々キタコレモードになって来る。
『Some participants noted that these considerations would be less significant
for tools that were likely to be adjusted only infrequently. Most participants
judged that the benefits of using monetary policy to address threats to
financial stability would typically be outweighed by the costs associated
with deviations from the Committee's employment and price-stability objectives
induced by such actions; some also noted that the benefits are highly uncertain.』
ということで更にキタコレ的な見解になってくるのですが、金融安定に対しての「threats」(なので単なる懸念よりは強い意味で話をしている点は注意が必要ですが)に対して金融政策で対応するというのは結構な事である的な議論がMost
participantsから出るとはという感じで、これはやはりウホウホマクロプルーデンス爺さんのフィッシャー副議長あたりが先導しているのでしょうかねえ。なお複数(some)の方はそもそも金融安定化対応で金融政策というのが本当にエフェクティブなのかという懸念を示していますけどね。
『Nonetheless, participants generally agreed that the Committee should
not completely rule out the possibility of using monetary policy to address
financial stability risks, particularly in circumstances in which such
risks significantly threatened the achievement of its dual mandate and
when macroprudential tools had been or were likely to be ineffective at
mitigating those risks.』
最初に斜め読みした時に前と話の趣旨が繋がらなくて???と思ったのですが、さっきの所は「using
monetary policy to address 「threats」 to financial stability」であって、ここの部分は「using
monetary policy to address financial stability 「risks」」なので、つまりは「懸念如きで金融政策がマクプル対応するのでしょうか」という問題に対する見解ということになりますが、ご案内のようにいわゆる昔のFEDビューであれば知らんがなで済ませていたこの点についても「排除すべきではない」という結論に達していますし、大体からしてこういう話が出ているという時点で正常化政策が遅れた場合の金融不均衡リスクに関する配慮という意識があるというお話ですな。まあこの頭の部分もあったからさっき引用した参加者の議論部分でも金融安定化の観点からの話が記述されるスペースが大きく出ているという事でしょうかねえ。
『Finally, participants stressed the need for further research and analysis
to advance understanding of the relationship between monetary policy and
financial stability and to help identify situations in which it might be
desirable to incorporate financial stability considerations in the design
of monetary policy.』
ということで、今後も金融政策と金融安定化に関する研究を進めて行くべきというような結論になっておりまして、一時割とその話が沈み気味だったマクプル的な金融安定化の観点での金融政策調整という話が大復活の図となっているのが味わいがあるのでは、と思うのでした。
#ということで短国ネタとかCPオペネタとかコールのネタとかは本日はパスですすいません
2016/05/18
お題「相場世間話とウィリアムスSF連銀総裁直近講演の鑑賞という端境期ネタで勘弁」
今度は朝日新聞から「目立つ副作用」だそうですよ〜
http://www.asahi.com/articles/ASJ5J56XXJ5JULFA013.html
マイナス金利、目立つ副作用 導入3カ月 運用難・円高
2016年5月17日23時32分
○市場雑談ネタである
・しかし動きが無くなってますのう
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N18E28R
Markets | 2016年 05月 17日 15:14 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反落、長期金利-0.110%に上昇
ということで昨日は5年の入札がありましたが、別にこうどこかの投資家がバサッと行くような風景は無いけれども普通に業者で無事に入札を通過して、入札が無事だったのと関係があるのかどうかは知らんけれども超長期がスワップ方面から堅調になって終了となっているようで。
でまあ最近思うのですが、特に10年から手前って金利水準は達観するとウゴカンチ会長なのは兎も角として、投資家が動かないというか参加していないというかな状態が更に凶悪化している感じで、静かなる市場のゴーストタウン化が進行しているちゅー感じで中々悲しいものを感じますな。でまあ動くネタは輪番の日程と想定通りに輪番が入るかというのと入札日程との関係、あとは輪番の額が翌月動くのかという所って感じで、投資家が追い出されるというか静かに退出する中でこの状態を1年とか継続したらどうなるのかとかあまり想像したくないが想像するしかないですな、などという事をつらつら考える今日この頃でありますが、まだ考え中なので結論はこれから。
・いやそれは違うと思うのだが・・・・・・・・・・
昨日は業態別当座預金残高ネタでしたが、いやいやそれは違うだろという記事があったのでネタの端境期なのでここぞとばかりにツッコミ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-05-16/O78SCX6TTDS001
知ってますか「IOERアーブ」、コール市場が日銀推奨取引で活性化
2016年5月17日 00:00 JST
・・・・・・・・・・・orz
『日銀が1月末にマイナス金利導入を決めた際、日銀当座預金の超過準備にプラス0.1%、ゼロ%、マイナス0.1%と、適用される金利が異なる3層構造を設けた。黒田東彦総裁は3月7日の講演で、「マイナス金利が適用される金融機関から枠が余っている金融機関にマイナス0.1%より小さめのマイナス金利で資金を放出すれば双方に利益がある。こうした裁定取引が行われる動機がある」として、短期金融市場に取引を残す工夫だと指摘した。』(上記URL先より)
ということなんですけど、昨日ネタにした
業態別の日銀当座預金残高(4月)
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/
コール市場残高(2016年4月)
http://www.boj.or.jp/statistics/market/short/call/call1604.htm/
の他に
短資協会
http://www.tanshi-kyokai.com/
によるコール市場残高(どうでも良いのだが有担保コールの金利がゼロになっているのは理解に苦しむのだが、これは何でなの???)とか、
債券貸借取引残高等状況
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/taishaku/index.html
辺りも見ないといかん訳でして、まず業態別当座預金残高を見ると昨日申し上げたように、全体の資金増加に対して銀行業態が資金の増加を抑えている(というか信託が増えているのは何でじゃろというのがイマイチしっくりこない)となっているので、預金の受け入れに関しても当座預金残高が増えるような資金流入(預金増加でも単に貸金増加との見合いなら日銀当座預金に対しては中立ですな)を抑えていますし、大体からして当座預金残高が拡大するなかでゼロ金利適用残高の利用効率(?)が上がってマイナス金利適用残高を抑制されている、という状況においてそんなにIOERアーブが出ている訳でもないでしょという感じ。
でまあコールの取り手ベースを見ますと地方銀行が増えていまして、まあ何となく業態別当座預金残高との整合性は浮かんでくるので、その分においてIOERアーブガーともいえるのですが、そもそも論として都市銀行がコール市場でほぼ一切に近いくらい資金の取り手になっていない(ちなみに1月末は有担保コールの取りが27,322億円で無担保コールの取りが20,382億円)ですし、直近の数字でも取り手ベースでの有担保コール市場の残高が壊滅したままという状況でIOERアーブが活発化とは到底言えない状況でしょと思うのだ。
でもってついでに言えば、債券貸借取引(これは25日に更新なので4月の状況が分からんのだが)残高等状況を見ると、要するにGCレポで資金取って付利+10bpというのが盛大にワークしていた時期からマイナスチャージの刑になってからのGC取引(これは取引相手方ベースなので日銀の出す数字の主体別ベースの逆になる)の落ちっぷり、という事でして、そちらの取引も勘案してIOERアーブがどうのこうのと言わないとミスリードチックになるのではないかと思われ。
まあ何ですな、以前は「マイナス金利じゃなければ資金放出」という人と、「付利より低ければ資金調達(して超過準備)」という人の間で経済的に合理的な取引が成立しえましたけれども、マクロ加算残高が無茶苦茶大きくならない限りにおいて「マイナス10bpよりマシなら資金放出」という人のカウンターパートは基本的に「マイナス10bpよりも金利が低くないと資金調達」とはならないでしょうし、大体からして「プラス金利資産」ならまだしも「ゼロ金利資産」を積み上げてバランスシートの無駄遣いをするインセンティブって(特にレバレッジ規制とかを気にする場合には)無いでしょとしか申し上げようがないので、アーブは無担保コール市場の限界的な所に留まるのみ、となるんでしょうなあとしか思えん。
ということで、何かコメントしている人のお名前がどどーんと出ているので引用するのも忍びないのですが、「潮目の変化」とか日銀ヨイショコメントをしている場合ではなくて、「資金放出する所が出てきたものの、IOERアーブの動きは限定的にとどまり市場の活性化には程遠い」というコメントをしてもっと問題意識を出した方がよろしいんじゃないでしょうかねえとしか申し上げようがないのですけどね、とまあそんな悪態。
って一々こういう悪態をあまり申し上げないのが仕様になっているのですが、まあネタの端境期に出てきたので捕捉してしまいましたという事で。
○連銀総裁やる気満々発言のようなのでウィリアムス講演を鑑賞
ほうほう。
http://jp.reuters.com/article/fed-interest-rise-idJPKCN0Y8269
Business | 2016年 05月 18日 03:21 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
年内2-3回の利上げ可能、米2連銀総裁がそろって表明
『[ワシントン 17日 ロイター] - 米アトランタ地区連銀のロックハート総裁とサンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は17日、連邦準備理事会(FRB)は年内に2回、もしくは3回の利上げ実施が可能になるとの考えを示した。』(上記URL先より)
ホンマカイナという感じですが、直近でウィリアムス総裁が威勢の良い講演をしているので簡単にご紹介しておくの巻。
http://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2016/may/springtime-is-on-my-mind-sacramento-economic-forum-outlook-and-monetary-policy/
(URLが長いので途中まででリンクしてるよ)
http://www.frbsf.org/our-district/files/Williams-Speech-Now-That-Winter-Is-Over-Springtime-Is-on-My-Mind.pdf
題名が『Now That Winter Is Over, Springtime Is on My Mind』ってそれでもうお腹いっぱいですけど。
『Today I’ll give an overview of the economy, about where we are and where
we’re headed, and address some of the issues that have been getting a
lot of attention lately, namely the weak reading of GDP growth in the first
quarter and very low productivity growth. Before I go any further, I should
pause to note, as always, that the views I express here today are mine
alone and do not necessarily reflect those of anyone else in the Federal
Reserve System.』
ということで、この後項目別の話がありますが、成長と生産性の所を鑑賞してみませう。
・1QのGDPが弱く見えるが実は弱くないというお話
『GDP and seasonality』という小見出し。
『As for gross domestic product, or GDP, I expect growth to be 2 percent
this year. This is the time of year when we look back at first-quarter
growth and get worried about how low it was. It’s also the time of year
that economists start talking about “residual seasonality”-that is, they
point out the recurring pattern of slow GDP growth in the first quarter
over the past several years and reassess the reasons for this anomaly.』
『The takeaway from this analysis is that first-quarter GDP data tend to
paint an overly negative picture and aren’t the best way to assess the
economy’s underlying momentum.2』
1QのGDPが弱いのは(リーマンショック以降の)季節調整的な要因ですよとな。
『Although the published data should account for usual seasonal patterns,
for myriad wonky reasons that would take too much time-and too much of
your patience-to explain, they don’t. To correct for this problem, my
staff has added a second round of adjustment to get a more accurate number.』
でもって更にアジャストすると・・・・・・・・・
『Adjusted in this way, real GDP actually grew over 2 percent in the first
quarter. This makes more sense when we look at the rest of the economy-such
as the labor market-and is in line with what I’m hearing from the business
community, that they didn’t see significant drop-offs at the beginning
of the year.』
ホンマカイナという感じはしますが、実際は1Qの成長は年率2%以上ですぞなとかマジデスカというお話になっている。
・生産性の向上が最近弱めなのはゲームチェンジ的なイノベーションが無いからというこじつけチックな話
次が『Productivity』という小見出し。
『Turning to an issue that’s been getting a lot of attention: Productivity
growth has been exceptionally weak over the past five years, which has
caused some concern and some confusion.』
生産性が伸びないのがこれまた混乱を生じているとな。
『We’re seeing an otherwise healthy economic expansion that makes the
U.S. virtually unique among advanced economies, and we’re running a labor
market that’s flashing green on just about every measure. So why is productivity
growth so low?』
何でですかねえ。
『Productivity is a notoriously tricky thing to measure, so one oft-repeated
question is whether all areas of the economy are being accurately assessed-for
instance, the tech world. Are we using outdated models to try to assess
the next-generation engine of growth? The short answer is “no.” A recent
study shows that mismeasurement of innovation does not account for the
slowdown in productivity growth in any meaningful way.3』
技術向上の加味は出来ていると。
『In that case, what is going on?』
isがイタリックです。
『Productivity is the simple measure of output per unit of input. That
is, how much work did it take to produce a unit of a particular good or
service? In the past, great spurts of productivity have resulted from game-changing
innovation like the steam engine, electricity, or the advent of the modern
production line. The last instance was the first tech boom, which ushered
in a decade of strong productivity growth starting in the mid-1990s.4』
ほう。
『I know the recent productivity slowdown seems confusing when we’re sitting
near the “Tech Coast”; in Silicon Valley, it feels like the possibilities
are endless and the world is changing at an ever-faster rate.』
『So why aren’t we seeing another productivity boom? The difference between
now and the last tech boom is that, in the mid-1990s, businesses throughout
the economy used those new technologies to change how and what they produced.
They became much more efficient and spread their reach. In the more recent
tech boom, a lot of the innovation and new products are directed at our
leisure time, which may enrich our lives, but doesn’t have the same groundbreaking
effect on how businesses operate.』
ナンジャソラという感じですが、生産向上に繋がるような技術のイノベーション的改善が90年代のIT技術以降あまり進んでいない(イノベーションが生産性とやや違う所で起きている)と言いたいみたいですな。
『Of course, there may be a revolutionary invention or technology just
around the corner. History has shown that we fail spectacularly to predict
when we’ll next turn it up to 11. But in the meantime, it’s more likely
than not that slow growth is both real and here to stay. And while the
days of 2-1/2 to 3 percent growth are behind us, at least for the foreseeable
future, it isn’t the end of the world.』
何かこじつけ感があるが。
『We can still run a strong economy. GDP grew at 2 percent last year, we
added 2-3/4 million jobs, and I forecast a 2016 that looks a lot like 2015,
with continued employment gains, steady GDP growth, and progress on our
inflation goal.』
まあ結論としてはこういう先行き強気の見方になっている、というのは把握した。
・金融政策
次が『Monetary policy』という小見出し。
『So what does all this mean for monetary policy?』
へいへい。
『The Fed’s monetary policy committee, the FOMC, has indicated that we
expect to raise rates gradually, and we have made that abundantly clear
in our communications. We took the first small step with a modest rate
hike in December, and the future pace will be, as we’ve said repeatedly,
gradual and data dependent.』
それは知ってる。
『We don’t want to be the guests who stayed too long, but we don’t want to jump off a cliff either.』
ということで、結局「後からドカドカ利上げするのは宜しくない」という話になるとある程度のテンポで利上げですぞなという話になる訳ですな。
でまあこの次にバランスシートの話をしていまして、結論は穏当ですけれどもバランスシートの話を持ち出す自体がやや焦げ臭さを感じます。
『One other issue that has been getting some attention is what we’re planning
on doing with our sizable balance sheet, which swelled to some $4 trillion
after three rounds of quantitative easing.』
ということで、正常化の話をする連銀高官ってバランスシートの話は基本的にスルーする(話をしだすとこっちの縮小の方も何気に重いネタになるので、だと思うけど)傾向になるのですけどウィリアムスおじちゃん果敢に(かどうか知らんが)ネタ投下の巻。
『We have a ways to go before we start to unwind it, and it won’t happen
until normalization of the funds rate is well under way. After that, our
plan is to shrink the balance sheet “organically,” if you will, through
the maturation of the assets. It’s going to take at least six years to
get the balance sheet back to normal, which is in keeping with the overall
approach of removing accommodation gradually.5』
バランスシートの正常化には自然に落ちるのを待っていたら6年ほど掛かるぞなということですが、基本的には不胎化出来るからヘーキヘーキ、と言っているので結論は穏当。
『What’s important about this, and what’s music to the ears, is that
this is essentially the move back to normal. Monetary policy is going back
to the boring basics.』
ということなので、まあバランスシートの縮小に関して言及していること自体が微妙に微妙ではあるものの、一応結論は穏当となります。
ただまあさっきの記事じゃないですが、景気の所がやたら威勢が良い訳で、そらまあ年2回とか言い出すわな(3回はご愛嬌でしょうけれども)と思う内容だなあという風に思うのでした。投票権無いけどSF連銀はイエレンさんの前職だし、まー基本的にこの人大勢順応派っぽいので一応確認ということでした。
2016/05/17
お題「相場がこの有様なので当座預金残高ネタと超虫干しネタ」
ふーん。
http://jp.reuters.com/article/fed-lacker-june-rate-idJPKCN0Y71LX
Business | 2016年 05月 17日 04:37 JST
6月利上げ検討を、根拠相当強いもよう=リッチモンド連銀総裁=米紙
てなのがホイホイ出てもそれ以外で動いていますよね〜
○業態別日銀当座預金残高
毎度おなじみのこちら
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/
例によって上記URL先からエクセルファイルが落とせるのですが、今回4月積み期間に関してはマクロ加算の掛け目変更(昨年の平残の2.5%分のマクロ加算が新たに追加されたのと、MRFのお助け措置が出た)があったのでそこそこ動きが。
・左側のシート『1.準備預金積み期間(当月16日〜翌月15日)中の平均残高』について
全体の当座預金残高は前月比で3.8%増えていますが、それ以上に増えているのが地方銀行(6.7%)、第2地方銀行(7.5%)となっていまして、あと増えているのが信託銀行(10.4%)ですけれども、その一方で都市銀行は4.1%のプラスにとどめています。まあ預金が集まってきてますなあという所ですし、都市銀行は預金が増えないように運営しているんでしょうなあという感じです(信託は基本受け身になってしまうと思われるので如何ともし難そうですが、まあ投信にはチャージしたりしてますから)。なお「その他準備預金適用先」も1.9%の増加に抑えていますな。
・右側のシート『(参考)付利の対象となる当座預金残高(当月16日〜翌月15日の平均残高、適用金利別)』
こちらはまた味わいがありまして、今回マクロ加算が増えていますが、見た皆様もおーと思ったでしょうが、都市銀行のマイナス金利適用残高が何と「ゼロ」に減るというスーパープレイが出ていまして、もとよりマクロ加算に5兆円の余裕があるのにマイナス適用が2兆という偏在状態だったのですが、4月から5月にかけて偏在をせっせと解消して皆様マイナス適用なっしーという状態に持って行きましたなあという所です。この結果、3月積み期間ではマクロ加算適用可能残高194,470億円に対してゼロ金利適用が145,850億円だったのに対して、4月積み期間ではマクロ加算適用残高215,730億円に対して207,870億円と利用の効率(?)も高まっておりまして、久々(??)に資金繰りでの工夫が重要になってきたということですかそうですか(^^)。
同様に地方銀行でも日銀当座預金は盛大に増えましたが、その一方でマイナス金利適用残高に関しては6,120億円から4,450億円に減少していまして、これまた資金偏在(というよりは単にこれ去年の後半以降にせっせと超過準備を積み上げてしまって昨年平残対比の乖離が大きい人が泣きながら(かどうか知らんが)残高を落とした、というキャッシュマネジメントをしたという事でしょうが)の解消が進んだという事のようで、ゼロ金利適用残高についても3月平残では適用可能残高71,590億円に対して39,090億円の残高だった所に対しまして、4月平残は77,490億円に対して53,170億円の利用とこちらも効率が向上されていまして、まあこの辺りの業態では元々の超量的緩和になるような前の時点から資金の出入り規模が大きいですからキャッシュマネジメントに多くのリソースを割いていたと思われますので、こーゆー時の対応も早いという事でしょうかねえ。
なお、信託銀行ではマクロ加算が盛大に増えていますが、「ゼロ金利適用残高」が前月比7.9兆円拡大していまして、そのうち「昨年の当座預金残高平残×2.5%」の残高を(簡易的に)2月のプラス金利適用残高の2.5%で計算すると(本当は所要準備の部分を加味するが1シート内で計算を完結させる為に手抜き簡易版で勘弁)4,053億円と出てきまして、差分が7.5兆円ありまして、これに対して本当は成長基盤とかの増減を加味しないといけませんがこれまた手抜きしますとMRFのキャッシュ部分が7兆円前半程度という結果になりそうな感じですな。
なお、投信協会の
http://www.toushin.or.jp/
ファンド情報→投信総合検索ライブラリー
からMRFの直近月末最終営業日前日ベースでの残高(純資産残高)が各社MRF毎に確認できます(協会の統計情報は月末ベースのものが出てくるがこっちの方が早く見れる)が、これをホイホイと足していくと102,342億円という数字が出てくると思いますので、まあだいたいMRFの7割以上はMRFお助け残高の所に空しく寝ているという状態になっているようですな、まあどうでも良い話ですが興味本位で計算するとそうなる筈。
でもって話を戻してマイナス金利適用残高ですけれども、その他準備預金制度適用先においては当座預金残高に関してはその積み上がりを抑制しているようなのですが、マイナス金利適用残高に関しては3月の114,010億円から4月は111,580億円とあまり減っていない所に残念無念さを感じる訳でございまして、当座預金の積み上がりは抑制しても、元々プラス金利適用残高対比のゼロ金利適用残高が小さいというのもあるからキツイのでしょうかねえとか思うのですが、保有有価証券というか債券の償還とかあってそれを再投資するだけでも大変なのでしょうなあとか思いつつこの残高を見るのでありました。
○いきなり昔のネタを引っ張り出しますが虫干しネタ
超虫干しネタですが相場がこの有様でネタが無いから虫干ししてきた訳ではありません(ということにしておく)。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/ko160414b.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko160414b.pdf
金融市場の頑健性向上と日本銀行の役割 ISDA第31回年次総会における講演の邦訳
日本銀行理事 雨宮 正佳
2016年4月14日
ええまあ1か月前の話ですいませんけどね。
・良い事を言っているのだが肝心の金融政策がアレなのですが
いやまあその小見出しで話が終わってしまうのでネタにするのもどうかという気もした訳ですが、そんな事にもめげずに鑑賞の巻。
『本日は、「金融市場の頑健性向上と日本銀行の役割」というテーマでお話しさせていただきますが、先ずは中央銀行とデリバティブ市場との関係から始めたいと思います。』
『中央銀行が、デリバティブ市場の拡大に伴うマクロ経済と金融政策上の論点を初めて採り上げたのは、1994年のBIS(国際決済銀行)報告書1にまで遡ります。同報告書ではデリバティブを「金融市場の効率性を高め、通常の環境の下では、原資産市場を安定化させる効果を持つ」ものであり、中央銀行に対して「金融政策運営上の追加的な情報をもたらす」と評価しています。』
ほう。
『こうした認識のもと、関係者は、デリバティブ市場の健全な発展のために、その取引実態を明らかにする努力を重ねてきています。BISは1998年から、当時日本銀行の国際局参事であった吉国を議長とするワーキング・グループの提言2に基づき、「デリバティブ取引に関する定例市場報告」の公表を開始しました。透明性向上の流れは、リーマン・ブラザーズ証券の破綻を契機とした国際金融危機の経験を経て、取引情報報告や清算集中の義務付けといった店頭デリバティブ市場の改革に繋がっています。各種施策の具体化に当たり、ISDAから多大かつ前向きな貢献をいただいているのは、皆様ご承知の通りです。』
清算集中によってカウンターパートのリスク逓減と取引定型化によって管理しやすくなって、おまけにキャッシュの市場がこの有様なのでスワップの方が取引組みやすくなって取引がバカスカ入るようになったというのはこれまでの改善の賜物ではあります。
『さて、現在、デリバティブ市場に限らず、各国の金融市場は、各種金融規制の導入や非伝統的な金融政策の遂行といった変化に直面しています。こうした環境変化に対応し、各種規制の目的であり、金融政策の円滑な運営にも資する健全な市場発展を実現していくためには、公的セクターも含めた市場の関係者がしっかりと協調し、市場の頑健性向上に取り組む必要性が益々高まっています。』
ということですけど、次の『2.金融市場の頑健性』というセクションでこみ上げる苦笑いを噛み殺さざるを得ない訳でして。
『1点目は「不確実性の低減」です。本来、市場には様々な不確実性があります。もちろん、その多くは収益機会と表裏一体のリスクであり、市場参加者が自ら管理すべきものです。しかし、市場全体として、市場参加者が本来取りたくないリスクを削減したり、リスクの管理を効率化できる工夫があれば、市場の不確実性は低減し頑健性が向上します。例えば、ISDAマスター契約書はデリバティブのリーガルリスクを効果的に削減しましたし、ISDAによる店頭デリバティブの標準的な当初証拠金算出モデルの策定といった取り組みは、リスク管理の標準化・効率化に大きく貢献するものです。』
なお想定しないマイナス金利を実施して・・・・・・・・・・・・・・
『2点目は「市場慣行の整備」です。市場慣行とは、市場取引に関わる概念や取引ルールについて市場参加者の共通理解を形成する取り決めです。市場の秩序を維持し、市場取引の安全性と効率性を確保するためには、適切な市場慣行の存在が不可欠です。市場慣行の策定は、実務への精通や市場構造の特性への理解が必要な、大変な作業です。しかし、新たな市場取引の黎明期には市場慣行の制定が決定的に重要であるほか、その後の環境変化に適応するためには市場慣行の見直しも必要です。実際、ISDAの定義集は幾度か版を重ねつつ、デリバティブ市場の安定的な発展を支えてきました。』
そらそうなのだがマイナス金利政策いやもういいです。
『3点目は「危機への対応」です。金融市場は、金融システムの外部に原因がある危機に対しても強靭であることが必要です。事実、発生の確率は低いかもしれませんが甚大な影響を及ぼす災害等――2001年の米国同時多発テロ事件や2011年の東日本大震災、2012年のハリケーン・サンディ等――が実際にも発生しています。ISDAマスター契約書は、2002年版から災害やテロ等の不可抗力を事由とする期限前解約権と解約手続を新設し、非常時にも市場機能が無秩序に停止することのないような枠組みを整備しました。このほか、市場取引が益々グローバル化する中、特に主要な市場では、自然災害の頻発等の地域特性も踏まえた市場機能の耐性強化といった取り組みもまた重要ではないでしょうか。』
まあこれは分かるのだが今のヤケクソ金融政策はそのもの自体がテールリスク状態になっていませんかねえ。
・ということで本邦の取り組みの部分が泣ける
次の『3.わが国の取り組み』が泣ける。
『確実性の低減 ― リスク・フリー・レートの特定』
お、おぅ・・・・・・・・・・
『最初に取り上げるのは、現在、金利指標改革の一環として進められている、リスク・フリー・レートの特定に係る取り組みです。金利指標については、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の不正操作問題などを背景にその信頼性に揺らぎが生じたことから、2012年央から、BISやIOSCO(証券監督者国際機構)といった国際的なフォーラムにおいて、その改革に向けた議論が行われてきました。それらの議論の成果として、BISからは、現在の日本銀行副総裁で当時は理事であった中曽を議長とするワーキング・グループが、金利指標の望ましい姿についての報告書3を2013年3月に公表しました。また、2014年7月には、FSB(金融安定理事会)が、主要な金利指標の改革についての報告書4を公表しました。同報告書の作成に当たっては、ISDAに副議長を務めていただいた民間市場参加者グループの貢献も大きなものでした。』
『さて、いずれの報告書におきましても、金利指標の信頼性を向上させるためには、LIBOR等の既存指標を改善するだけではなく、金利指標の選択肢を拡充することが重要であると指摘しています。そして現在、こうした方向性で主要国・地域の市場では、IBOR(銀行間取引金利)と呼ばれるLIBOR、EURIBOR(欧州銀行間取引金利)、TIBOR(東京銀行間取引金利)の改善に取り組んでいるほか、リスク・フリー・レートの導入に向けた検討も行っています。』
ということなのですが、これこの前もリスク・フリー・レートに関する紙が出ていた時にネタにしたけどしつこく再度申し上げますが、そもそも論として「市場での取引レートを前提とする」という建付けを基本的思想にしている(らしい)FSBの発想が市場の実務面から見た場合に如何な物かと思う訳でございまして、それこそさっきの部分にありますように、環境が変化すれば市場の取引というのも変化する訳でして、そうなった場合に最初に制度を作った時に作られた特定のトレーダブルレートが実際の市場における指標レートとして適切ではなくなる、という事は数年のオーダーなら兎も角、10年とか経過すれば普通に変化してしまうのがマーケットな訳でして、単に市場動向を見るためのリファレンスレートをどうするという話なら別に良いのですけれども、長期のデリバティブ取引における短期取引サイドのレートを市場のトレードレートを用いる、というのも将来的には問題を起こすように思えますし、またこの手の話って(LIBORがそうであったように)最初数年とかのオーダーではきちんとワークしていて、それが10年とかの単位で後になって来ると実は弊害ガーみたいな話になって来るという埋伏の毒みたいな代物なのが非常に困るのですよね。
『IBORの改善は、可能な限り実取引に基づく透明性の高い算出プロセスを導入することで指標の信頼性を高めることが狙いです。一方、新たにリスク・フリー・レートを特定するという取り組みは、それとは異なる観点から、市場の不確実性の低減に寄与することが期待されています。』
『この点を敷衍しますと、リスク・フリー・レートとは、銀行など報告金融機関の資金調達コストを反映するIBORとは異なり、その名の通り取引主体の信用リスクを殆ど含まないレートです。つまり、両者は報告金融機関の信用リスクの動向により異なる動きをする可能性があります。こうした性質の異なる金利指標が存在することの利点は、市場参加者が取引の特性に応じて指標を使い分けることが出来る点です。例えば、IBORに連動するキャッシュフローのヘッジ取引にはIBORを活用する一方、金融機関の信用リスクには直接の関係がない金利リスクのヘッジ取引にはリスク・フリー・レートを活用することが合理的と考えられます。新たにリスク・フリー・レートを特定するという取り組みは、取引の目的に合わない金利指標を使うことに伴い発生する、金利差の変動リスク――いわゆるベーシス・リスク――を削減できる選択肢を市場参加者に提供するという意味で、市場の頑健性向上に資するものです。』
ということなのですが・・・・・・・
『わが国では、2015年4月に市場参加者が設立した「リスク・フリー・レートに関する勉強会」において、日本円のリスク・フリー・レートの特定と利用に向けた議論が行われてきています。主要メンバーであるISDAジャパンにも大変なご協力をいただきながら、本年3月31日には、それまでの検討結果を踏まえ、市中協議5を公表したところです。市中協議においては、日本円のリスク・フリー・レートとして、無担保コールレート・翌日物を優先的な候補として位置付けています。』
ということで、結局の所(FSBがそういう方向を出しているからこうなるのは必然なのですが)実際の取引レートを使ってという話になる訳でして、それはより長期的に見た場合の指標性としての頑健性が本当にあるのか、という点に疑問を投げかけざるを得ないのです。
#てな話をここでするなら市中協議に意見しろとか突っ込まれそうですが(汗)
『また、リスク・フリー・レートの利用を促す観点から、現在、IBORを用いて行われている円金利スワップ取引のうち、リスク・フリー・レートの利用を想定しうる取引のシェアを推計する試みや、無担保コールレート・翌日物を参照金利とするOIS(翌日物金利スワップ)取引の活性化策も盛り込んでいます。』
なお、肝心の無担保コール取引市場がマイナス金利のせいで・・・・・・・・・・・・
『リスク・フリー・レートの利用は、「ベーシス・リスクの削減」という合理的な目的に資するものです。しかし、慣れ親しんだLIBORに加えて、実際にリスク・フリー・レートも利用していくためには、幅広い市場参加者がその目的を共有し、気運を高めていくことが重要です。日本銀行は、同勉強会の事務局を務め、各種の分析作業等に協力してきていますが、今後とも、こうした市場参加者の取り組みには積極的に関与していきます。』
だったらマイナス金利撤回してください。
・T+1決済ってマジで予定通りにやるの???????
次が『市場慣行の整備 ― 国債決済期間の短縮化とレポ市場の整備』でして・・・・・・・・・・・
『わが国では、市場参加者が、2018年度上期を目標に、国債アウトライト取引の約定から決済までの期間を2日(T+2)から1日(T+1)に短縮する取り組みを進めています。これは、リーマン・ショック時の国債市場における決済不履行やこれに伴うフェイル急増の経験も踏まえた、未決済残高の圧縮を通じて決済リスクを削減するというグローバルな取り組みの一環です。』
それは良いのだが2018年度上期の時点で国債市場の流動性が今のような状態だったら、SCレポ取引にストレスを与える国債決済T+1なんぞ実施したらただでなくさえ無い流動性がもっとなくなってしまいますし、日銀の物価目標達成時期が本当に2017年度中なのだったら出口政策の検討時期とぶつかるので、もっと大変なのだが、マネタリーポリシーの状況を無視して「最初にこう決めたからやる」とか、何かこれもインパール作戦の香りがするのでマジで勘弁してほしいのですが。
『ただし、国債のT+1決済を実現するためには、国債のアウトライト取引等の結果として生じる資金や債券の過不足の調整に用いられるGC(非特定銘柄)レポ取引について、即日(T+0)決済を行うことが必要となります。これは、わが国では新たな即日資金取引市場の創設を意味しています。』
マイナス金利政策実施中に出来るかボケとしか申し上げようがないので延期するかマイナス金利撤回するかしてください。
『こうした取り組みは、市場インフラや市場参加者のシステム変更だけで対応できるものではありません。取引の契約書や照合・清算の方法、会計処理といった市場慣行の大幅な見直しを伴うものです。市場慣行の見直しがしっかり行われないと、却って混乱を招き、市場の頑健性が失われる可能性があります。このため市場参加者は、早くも2009年に証券業の業界団体である日本証券業協会にワーキング・グループを設置し、それ以降、ビジネスモデルの違いを超えて綿密な議論を継続してきています。』
マイナス金利政策やっている件はという事で、以下お話はまだあるのですが、この件ってその話単体としては(リスクフリーレートの頑健性に個人的には疑問がありますが)完結しているのですが、肝心のマネタリーポリシーの方が超異例のヤケクソハチャメチャ政策を行っている中で、その現状との整合性という意味で考えた場合に、この話を庭先掃除の如く単体で行った場合に市場デザインとして全体に与える悪影響が結構破壊力ありませんかねえと懸念される訳でして、もうちょっとその市場全体としての整合性というのを考えて取り組まないと大変な事になり兼ねませんよ大丈夫ですか、とまあ意識の低い叩き上げ(と言いつつ叩かれるだけで上がっていないという説は濃厚の)現場労働者は思うのでした。
#超虫干しネタですいません
2016/05/16
お題「短国買入メモ/ニュース雑談/総裁講演が追加緩和に前のめりチックなのですが・・・・・・・・」
○短国買入関連雑談
いやまあこの辺のネタも段々市場の体を為していなくなっているのでねえ・・・・・・・
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of160513.htm
国庫短期証券買入 30,000 2016年5月17日
3兆円のオファーでさすがに3兆オファーするので応札限度も買入予定額の半分に戻した(戻さないと札が(偏在化している筈なので)足りなくなるという認識になってレートが流れるリスクがあるから)ということですがその結果。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba160513.htm
国庫短期証券買入 77,327 30,001 0.023 0.034 99.5
とまあそういう事で応札が7.7兆円もあって足切りが2毛3糸甘で平均3毛4糸甘ってどこからおまいら応札してますねんという結果で、これですと引値の関係で直近発行された3Mのカレント2銘柄は入れられない(大投げになるから)ですなあという事で、暫く前の3Mと直近の6Mと1Y(ただし1Yは引けとの関係だとそんなにもうからないのだがまだ日銀保有額が5900億しかない)が対象という所でしょうか。
一方で東京レポレートだが
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
短国発行要因が入ってからは
5/10:-0.096
5/11:-0.077
5/12:-0.056
5/13:-0.055
(T+1の翌日物)
と推移していて重いじゃん、という話になる筈なのですが、金曜の引けを見ますと全般的に引値って強くなっていいまして、買入に甘で入れる(つーても引値の関係上益になるのを入れているだけではあるものの)状態で新発3M2銘柄丸々残ってるやんと思うのですけれども、607とか605とかは着実に引値が堅調になっていまして、つまりは「短国買入で業者のポジションの重さが分かったのでポジションの重さを嫌気して甘くなる」という訳ではなく、単に「ああ3兆円捌けたからその分だけ引値が堅調になりますよ」ってなパターンになっている訳ですわ。
ちなみに超長期債市場様とかになりますと、今の所は大体輪番が弱かったりすると「ポジションが重いじゃないか、じゃあ超長期弱くなりますな」という風に素直(というか何というか)に反応するような仕様になっておりますが、日銀の無理繰り市場抑圧が進んで、短国セカンダリーのように為替絡みでファンディングがドマイナスというような特殊な人以外に投資家が居なくなってしまう、という突き抜けた投資家不在市場を作ってしまいますと、もはやこのようなプライスアクションしかしなくなる(そもそもプライスアクションというようなアクションをしているのかという話も含めて)という大変にオソロシスな事になる訳ですな、ナムナム。
○ニュース雑談
・消費税先送りとな
ほほう。
http://www.nikkei.com/article/DGXKASFS13H56_T10C16A5MM8000/
首相、消費増税先送り 地震・景気に配慮
サミット後に表明、与党幹部に伝達
2016/5/14付日本経済新聞 朝刊
『安倍晋三首相は13日、2017年4月に予定する消費税率10%への引き上げを再び延期する方針を固めた。国内外の経済に先行き不透明感が広がるなか、4月の熊本地震による景気への影響も出ている。増税すれば政権の最重要課題であるデフレ脱却がさらに遠のくと判断した。今月26〜27日に開く主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の議論などを踏まえて表明する見通しだ。首相は政府・与党幹部に増税見送り方針を伝えた。』(上記URL先より、というかこの先は会員じゃないと読めない)
とまあそういうの出ていますが、とりあえず日経だけみたいなので観測気球なんですかねえ。消費税先送りはサミットでの財政がどうのこうのなのが前提になりそうですが、実際問題としてその財政協調ネタって大丈夫なのかよとは思う訳で、先送りするにしてもちょっとこう経済政策の棚卸しをしないと同じチョンボを繰り返すだけになるようにしか思えませんが。
・一方マイナス金利2か月に関しては
昨日の読売朝刊はこの見出しがしっかりとございました
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160515-OYT1T50008.html
マイナス金利3か月…金融政策頼み、限界も
2016年05月15日 15時56分
『日本銀行が2月16日にマイナス金利政策を導入してから3か月がたつ。金融市場の混乱を鎮め、景気をテコ入れしようとする狙いがあるが、はっきりとした効果はまだ見えない。世界経済の不透明感は強まっており、金融政策頼みの対応には限界が見えつつある。』
『マイナス金利政策はこれまでのところ、十分な効果を上げられていない。住宅ローン金利や企業向け貸出金利は低下し、お金を借りやすくなる「環境づくり」は、はっきりと効果が表れた。しかし、実際の貸し出しの伸びは導入前とあまり変わっていない。円相場は5円程度、円高・ドル安に向かい、金融市場の動乱が再燃する兆しすらある。』(以上上記URL先より)
と思ったら今朝の公共放送ニュースも
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160516/k10010522201000.html
マイナス金利政策導入から3か月 効果は限定的
5月16日 5時03分
『日銀がマイナス金利政策を導入してから16日で3か月となります。世の中の金利全般が大きく低下し、住宅ローンの借り換えの申し込みは急増していますが、投資や消費を刺激する効果はまだ限られており、日銀は政策の効果が実体経済に及ぶまでには、なお一定の時間がかかると説明しています。』
『日銀は住宅ローンの借り換えによって返済の負担が軽くなれば、消費に回すお金が増えるとしていますが、個人消費の実態を正確に把握しようと、日銀が公表を始めた指標でも消費の回復は確認されていません。』
『また、マイナス金利政策で企業による積極的な投資を促そうとしていますが、先週、決算を発表した大手銀行の経営トップからは、企業は投資の増加になお慎重だという発言が相次ぎました。』
『日銀の黒田総裁は先週13日の講演で「企業にとっては、これまで経験したことのない低い金利になっており、空前の投資チャンスだ」と、積極的な投資を呼びかけていますが、政策の効果が実体経済に及ぶまでには、なお一定の時間がかかるとも説明しています。』(以上上記URL先より)
ということで気が付いたのがこの2つですけれども、他もあるのでしょうな(全部確認していない)。
○ところで上で出ていた日銀の消費活動指数(メモ)
http://www.boj.or.jp/research/research_data/cai/cai.htm/
消費活動指数
http://www.boj.or.jp/research/research_data/cai/cai.pdf
消費活動指数(図表) [PDF 45KB]
・・・・・・・・というのが出ていますが、これを見ますと消費増税の駆け込み部分を思いっきり過大評価して大勝利宣言をしていた日銀プギャーという感じですが、一応旅行収支調整済みというのが直近で角度が上になっているのが唯一の救いですかそうですか・・・・・・・・・・
○内外情勢調査会の総裁講演は俺様ロジックで凝り固まっている上に追加緩和のトーンが上がっている件について
内外情勢調査会の総裁講演って昨年が11月、一昨年が8月でその前が7月でして、5月の連休明けのこの時期にやるのは珍しい日程という意味でも注目を集めていましたが・・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko160513a1.pdf
・完全に俺様ロジックで凝り固まるの巻
最初の所から。
『実際、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入後、国債利回りは大幅に低下し、貸出の基準となる金利や住宅ローン金利もはっきりと低下するなど、政策の効果は金利面では既に現れています。今後、その効果は、実体経済や物価面にも着実に波及していくものと考えています。もとより、新興国経済の不透明性は強く、株式市場や円相場など金融市場の不安定な動きは続いています。』
メディアですら海外経済ガーとは言わないのにねえ。
『本日は、こうした状況において、日本銀行が経済・物価についてどのようにみているか、そのもとで、新しい枠組みである「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」をどのように運営しようとしているのか、お話しようと思います。』
だそうなのですが・・・・・・・・・・・・
『2.日本経済の現状と先行き』の所は展望レポートの説明をベースにしているのですが、その展望レポートは惜しい事に概要とか基本的見解の部分でありまして、背景説明の所にあるような留保付きの話になっていないのが順当とは言え俺様ロジックキタコレという感じです。
先行きの部分ね。
『こうした海外経済のもとで、わが国の輸出は、当面鈍さが残るとみられますが、緩やかな増加に向かうと考えられます。この間、設備投資については、引き続き企業収益が高水準で推移するもとで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」に伴う実質金利の一段の低下効果に加え、成長期待の高まりや、東京オリンピック・パラリンピック関連需要の本格化などもあって、緩やかな増加基調を維持すると予想しています。』
とまあ展望レポート概要の話をしているのは順当なのですが、そもそも実質金利が下がって設備投資が出る、というロジックだが今までそうなっていたのか、とか成長期待の高まりとか寝言を言っているが、おまいら今回の展望レポートで潜在成長率の推計を下方修正しているのに何で成長期待の高まりが効いて来るとか言うの舌が2枚か3枚でも付いてるのと小一時間という感じで、展望レポートの背景説明の方との整合性はどうなっているのやら。
しかしまあモノは言いようでして、その次の『(雇用・所得環境の改善と賃上げの拡がり)』という小見出しを見ますと・・・・・・・・・・・・
『次に、家計部門の動向についてご説明します。企業部門の良好な収益環境は、雇用・所得環境に着実にプラスの影響を及ぼしています。労働需給をみると、引き締まり傾向が一層明確になっており、有効求人倍率は、足もとでは
1.30 倍と 1991 年以来の高水準となっているほか、失業率も 3.2%と 1997年以来の水準まで低下しています(図表2)。短観の雇用人員判断DIをみても、企業の人手不足感は一段と強まっており、労働市場は「完全雇用」と言って良い状況にあります。輸出や生産面で鈍さがみられる一方で、労働需給の引き締まりが続いていることは、このところの景気局面の大きな特徴と言えます。』
ってまあモノは言いようですなあと思う訳で、労働市場が完全雇用なら何で賃金が碌すっぽ上がらないのか(少なくとも2%物価目標に対して整合的な上がり方ではないし、実質賃金ガーとか言ってるけどそら物価が上がってないからだろ)とか、「輸出や生産面で鈍さがみられる」上に先ほどのように期待成長率が上がっていないのだから、労働需給の引き締まりが賃金に繋がるような循環にならんのじゃないですかねえとか思うのだが、何かこんな感じで悉く威勢の良い話になるのだ。
・物価に関して
『3.最近の物価動向と先行きの見通し』も基本的に展望レポートの鏡と基本的見解の話(のうち威勢の良い部分)になるのですけどね。
『先行きの物価情勢については、日本銀行が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくとみています。こうしたもとで、企業の賃金・価格設定スタンスも積極化し、賃金上昇率の高まりを伴いながら、物価上昇率も次第に高まっていく姿を想定しています。』
ということで後でも出てきますが「スタンスを見極める」という話ですが、それ既に今回の賃金で敗北確定してませんかという気はだいぶしますけどね。
でもって『4.経済・物価の先行きに関するリスク要因』の『(物価固有のリスク要因)』ですけど、
『物価固有のリスク要因としては、中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられます。展望レポートの中心的な見通しでは、賃金の上昇を伴いながら実際の物価上昇率が高まっていくなかで、人々の予想物価上昇率も一段と上昇し、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく姿を想定しています。』
はあそうですか。
『しかし、エネルギー価格の低迷によって、総合ベースでみた消費者物価の前年比が高まりにくい状況が長引いているもとで、先行きの賃金や予想物価の上昇ペースには不確実性があります。』
はいはいエネルギーエネルギー。
『この点、今年の春闘において3年連続のベースアップの実現が確実となり、賃上げが中小企業にも拡がりをみせていることは、「賃金は上がらないものである」という長年のデフレマインドが払拭されつつあることを示しており、デフレ脱却に向けて歓迎すべき変化だと思います。』
いやそんなに上がっているという感じになっているとは思えないし、賃金に関しては翌年の基本給がどうのこうのという話だけではなく、将来的に見た場合の賃金テーブルへの期待とか、そもそも論としての職の安定性の期待とか、そういうのも絡んで来る話で、そうならないと昔みたいに若いのがローンでマイカー買ってレジャーだぜヒャッハーとはならんだろとか思いますがまあそれは兎も角。
『一方で、大企業を中心にベースアップの幅が昨年対比で小幅にとどまった先が多かった模様であり、現時点では、賃上げに加速感が感じられる状況にはなっていません。』
ということで・・・・・・・・・・
『海外経済の減速や、本年入り後の国際金融市場での不安定な動きといった要因が、企業が「もう一歩前へ」と踏み出す動きを躊躇させた面があると思います。』
いやそんな目先の事だけの話じゃないだろ。
『企業収益は歴史的な高水準で推移しており、労働分配率も長期的なトレンドを下回っているもとで、「完全雇用」状態が実現するなど人手不足が強まっていることを踏まえると、賃上げが加速・拡大する環境は十分に整っていると考えています。今後、企業がデフレ脱却後の経済を展望して、人材投資に積極的に取り組むことを強く期待しています。』
成長期待が高まるような政策を実施した方が良いのではないでしょうか。
『先程申し上げたように、日本銀行は、賃金の上昇を伴いながら物価上昇率が緩やかに高まっていくというメカニズムは着実に作用していると考えており、』
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『賃上げが中小企業にも拡がりをみせる状況のもとで、本年度入り後も、企業の前向きな価格設定スタンスは維持されているとみています。』
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『もとより、値上げに対する消費者の今後の反応によっては、企業の価格設定スタンスが消極化したり、逆に積極化することも考えられます。こうした点については、予断を持つことなく、4月以降の消費者物価指数の動きを見極めていく必要があると考えています。』
ということで、まあこの説明とこの次の追加緩和に関する部分を見ると「何か追加緩和に関して前のめりになっているなあ」という感じを受けさせるものでありまする。
・金融政策の話は妙に追加緩和に前のめり
『5.日本銀行の金融政策運営』である。
『このように、政策の効果は、金利面では既に現れています。今後、その効果は、実体経済や物価面にも着実に波及していくものと考えられます。』
っていう前の部分を引用する気も起きないので引用しない訳ですが(笑)、大体実質金利が下がったとか言って威張っているけれども、本来の話をすればQQEってマネタリーショックとコミットメントで期待のシフトアップを行う、という建付けだった筈で、それならば本来期待のシフトアップが行われる事によって(日銀の政策金利によって影響される短期金利は兎も角)長期金利に関しては本来名目ベースでは上昇して然るべきなのであって、長期金利が下がってマイナスになったから効果があったとか喚いている方がおかしい。
『企業にとっては、これまで経験したことのない低い金利になっており、金融面でみる限り空前の投資のチャンスです。』
実質金利が下がったら自動的に投資が出るんじゃないの????何で宣伝しないといけないの?????
『もちろん投資判断の根幹は、そのプロジェクトの採算の見通しであり、その基礎には中長期的なマクロの経済環境についての見通し、すなわち成長期待があります。成長期待を高める、具体的には、例えば規制改革などにより事業のフロンティアを広げることが重要であることは論を待ちません。』
この次が泣ける。
『ただ、それにしても、現時点における成長力ないし成長期待が、これほど大きなマイナスとなっている実質金利が刺激的でないほどに低いということは考えられません。』
という話をしているのですが、そもそも名目ゼロ制約があって市場のマイナス金利が実際の金利にどの程度反映されるんですかねえとか、大体からして最近の金融政策決定会合の声明文でも期待インフレが弱含みの部分もあるとか言ってる訳で、本当に実質金利が「大きなマイナス」という程なのかと思いますし、だったらインフレ期待がもう少しマシだったと思われる時期に何で仰せの効果が出ていなかったのかと小一時間という感じですし、あるいは「こんなにやっているのだから効かない訳が無い」とアラカン山系を越えてインパール攻略を行おうとする牟田口閣下もビックリという風情でございますな。
『法人企業統計でみる企業の収益力(ROA)は4%程度、支払平均金利は1%程度であり、その差は過去最高レベルです(図表
10)。何より、実際にこの3年間で経済・物価が大きく好転し、デフレではない状況が生まれたという事実があります。』
何かもう悲痛な叫びみたいに見えますが、恐ろしい事にこれが悲痛な叫びではなくて大真面目に話しているように見えるところが黒田総裁の現実把握力に関して空恐ろしいものを感じる訳で。
・そして最後がどう見てもオソロシスとしか思えん
『もっとも、金融政策の効果の波及には、もともとある程度時間が必要であるほか、現状では、国際金融市場において、新興国や資源国の経済の先行きに関する不透明感などから不安定な動きが続いているもとで、前向きな変化が現れにくい状況にあります。このため、先月末の金融政策決定会合では、政策効果の浸透度合いを見極めていくことが適当であると判断したところです。』
はあそうですか。
『もちろん、金融政策はフォワード・ルッキングに、機動的に行うことが持ち味ですから、効果がはっきりするまで待つということでは全くありません。』
え????
『新興国をはじめとする世界経済の不透明感や、不安定な金融市場の動向、それらの企業マインドへの影響など、リスクはダウンサイドにあります。今後毎回の決定会合で、こうしたリスクを点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要と判断した場合には、躊躇なく、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な緩和措置を講じていく方針です。』
何というやる気満々。主な意見が出たタイミングだから意地になっているのかも知れんが。
『「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は非常に強力な枠組みです。そして、言うまでもなく、「量」・「質」・「金利」のいずれについても、追加緩和の余地は十分にあります。この枠組みをどう使って、2%の「物価安定の目標」を早期に実現するか、しっかりと検討し、実践していきます。』
・・・・・・・という事でやる気満々なのですが、そもそもマイナス金利政策+大規模QEという政策自体が副作用の方が大きい、という状況だとすれば(というかどう見てもそうだと思う)そもそも「効果がはっきりするまで待つ」以前の問題として「副作用がドンドン顕在化して効果を打ち消す」という事になっていく訳でして、そういう状況の下で「何か効果が出て来ないようだがこれは政策が足りないからである」とか言って副作用の大きい政策を更に拡大したら、それこそ陸のインパール海のガダルカナル状態になってしまうのですけれども大丈夫かこの人たちはという背筋が寒くなるものを感じる今回の講演でございました。作戦戦術のレビューしないで何でも気合と大和魂で何とかならない訳がないとか言ってるのと全然違わないんですけど・・・・・・・・・・・・
2016/05/13
お題「決定会合主な意見を鑑賞の巻」
いやー今週は予想通り長いですなあ(大汗)。
○決定会合主な意見は毎度中々オモロイですな(鑑賞物としては)
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2016/opi160428.pdf
こちらの何が良いって1人辺りの分量が同じなので野党審議委員の見解も分量を持って見られるというのがよろしい訳で。
・経済情勢に関する意見の所は与党優勢(^^)
『日本経済は、雇用・所得の改善を背景に、基調として緩やかに拡大すると考える。もっとも、新興国経済の減速により、輸出と生産に弱さがみられることから、成長率は、従来見通し対比幾分下振れる。』
『わが国の景気は、基調としては緩やかに回復している。但し、海外経済の不確実性や金融市場の動揺が、消費者や経営者の不安心理に与える影響や、九州の地震の影響が拡大するリスクに注意を要する。』
『わが国経済は、緩やかな回復基調を維持している。今後、2016年度後半から世界経済が緩やかに回復するもとで、緩やかな回復基調を持続していき、2017
年度は消費税率引き上げの影響を受けつつも実質GDP成長率はプラスを維持し、
2018 年度は1%台の成長を見込んでいる。』
『企業収益は史上最高水準で推移しており、労働需給も極めてタイトな状況を保っている。景気の実態はかなり底堅い。』
『家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムは持続している。』
とまあこの辺まで与党優勢な訳ですが(^^)、この後に出てきますが今回はマイナス金利政策に関する副作用の話とかオペレーション上の問題とかの話が出ておりまして、野党の皆様(^^)がそちらに力を入れているので経済の所はあまり時数が入っていないという(総時数が決まっているので)状態になったのかなあと思ったり。
『マクロの所得形成のモメンタム低下が見込まれ、好循環メカニズムが先行き力強さを増していくシナリオの説得力は強まっていない。』
『消費者物価上昇率は年度明け後に下振れリスクが高まった。しかし、2%の「物価安定の目標」を大きく下回っている現在の物価上昇率や予想物価上昇率が経済活動を特に阻害はしていない。』
ということですが、しらっと「物価上昇率が弱い状態でも経済に問題は無いのではないか」と物価目標達成の時期や水準の柔軟化を求めるような見解がありますが(^^)、まー確かに「所得から支出のメカニズム」と考えた場合、賃金の上昇がイマイチという中では物価がホイホイ上がらない方が良いという皮肉だが順当なお話な訳でして、中々良いイヤミですな。
・物価に関しては与党の皆様のロジックに無理がある訳だが
『消費者物価前年比が2%程度に達する時期は、エネルギー価格のマイナス寄与が残ることおよび成長率が下振れることから、従来見通し対比やや遅れて
2017 年度中になる。』
『物価は、2017 年度前半までエネルギー価格下落の影響が残るが、次第に上昇率を高め、2017
年度中に2%程度に達すると予想している。』
『企業収益から雇用者所得への波及は維持されており、賃金の上昇を伴いつつ、物価上昇率が緩やかに高まっていくというメカニズムは着実に作用している。』
『3年連続でベースアップが実現する見込みであり、中小企業においても賃上げの動きが拡がっている。賃金の上昇を伴いつつ、物価上昇率が高まるというメカニズムは着実に作用している。』
『需給ギャップ等の改善が続くもとで、物価上昇率は高まっていく。消費者物価が2%程度の水準に達するのは
2017 年度後半頃の見通しであり、デフレに引戻されないよう、息長く腰を据えた取組みの継続が必要である。』
『今後、消費者マインドが改善すれば、値上げに向けた企業の価格設定行動が再び積極化していくとみている。』
とまあそういう話なのですが、メカニズムがそんなに強いのかという話に関しては無い(というかそら出来ないのだが)訳で、そらまあ物価が継続的に下がるようなトレンドにまでコケるという感じはしないものの、では2%上がるかという話になると相当無理が・・・・・・・・
でもってちょっとおーと思ったのは、「消費者物価が2%程度の水準に達するのは
2017 年度後半頃の見通しであり」というのがあった所で、今回はまあこういう見解もあった(というかどうせ無理矢理鉛筆なめてもその程度ってことでしょうけれど)中で展望レポートの鏡の方は2017年度中という形になった訳で、前半→後半にしないでファジーな表現にしたのは何故かとか考えますと、政策変更を伴わなかったのでファジーな書き方になった、という事なのでしょうが、もしや7月展望レポートでは「2017年度後半」にして「見通しを下方修正しましたが大きな修正ではありません(キリッ)」とするための布石なのではないかと(^^)。
一方で野党の方からは
『消費者物価を抑制する諸要因から、自身の見通しは大勢を下回る。』
ってなのがありましたが、後半に力が入っているのでこの辺は流しモードですな。
・ところでジンバブエ先生と思われる見解が異彩を放っていて大変に素敵です
でもってこの物価のコーナーに一人イミフコメントが入っていて異彩を放ちまくっています。
『失業率の低下テンポが弱まっている。過去の経験則によれば、失業率が3%を切らないと物価が2%になるのは難しい。3%前半の失業率を構造失業率と呼び、これ以上下がらないようなイメージを与えるのは誤解を与える。』
・・・・・・・・・・・・???????????
失業率が3%を切らないと云々という話はジンバブエ先生が前もお話をしていたと思いますが、この意見はそもそも何を言いたいのかが分からん訳で、構造実業率という言葉自体が悪いと言いたいのか、それとも自分が考えている構造失業率はもっと低いから失業率がもっと下がらないといかんと言いたいのかが分からんですし、大体からして「イメージを与える」ことと失業率の低下テンポが鈍化するのは全然別問題であって、例えばの話「構造失業率が5%だと思ったら5%から下に失業率が下がることは無い」という話じゃないでしょうし、「構造失業率が5%だと思ったら失業率が4%になったら必ず物価が加速する」訳でも無くて、その場合は単に推計された構造失業率が実際の経済の実力からみた本来的な水準と違っていた、というだけの話(つまり構造失業率は結果なのであってその数値がどうだから失業率がどうなるという話じゃないでしょということ)なので、「3%前半の失業率を構造失業率と呼び、これ以上下がらないようなイメージを与えるのは誤解を与える。」というジンバブエ理論は何に対して文句言ってるのか全くわからないのですがががががが。
・今回のメインイベント(?)は金融政策の副作用とか運営に関する意見です
ということで『U.金融政策運営に関する意見』を鑑賞しましょう。、まずは『(金融政策運営全般)』である。
『「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の効果は、金利面では既に現れている。今後、その効果は、実体経済や物価面にも着実に波及していく。』
まあこれはいつもの公式見解ではありますが、そもそも論として政策金利下げてるんだからそら金利は下がる訳で、金利低下は緩和政策を実現するための手段みたいなもんでしょ。
『現在の金融政策は継続すべきである。住宅ローンや企業向け貸出の金利低下など、マイナス金利政策導入において意図した主な作用は、実体経済に有効に働いている。副作用として懸念された金融機関の貸し渋りは、現時点ではみられない。』
いや現時点で見られたら話しにならんだろ。つーか金利下がって実体経済に働くのは「実質金利が下がると消費や投資が出る」という理論なので、そっちの数字をアネクでも何でも良いから出してから「効果を発揮」と言っていただきたい。
『マイナス金利政策導入は長期金利を 30 ベーシスも引き下げたため、予想インフレ率の低下にもかかわらず、予想実質金利を大きく引き下げている。したがって、現在は、世界経済の動向を注視しつつ、この大幅引き下げが実体経済にもたらす影響を見守る段階である。』
>予想インフレ率の低下にもかかわらず
>予想インフレ率の低下にもかかわらず
>予想インフレ率の低下にもかかわらず
クソワロタ。
でまあ他にも「今は効果の波及を確認する段階」というのがありますが、その辺りはまあそうですなという話なのでパスしましてその先。
『下振れリスクは引き続き大きい。「物価安定の目標」の実現のために必要と判断した場合には、躊躇なく、3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じるべきである。』
ほほーと思いましたが、だったら何か追加緩和の提案でも出せばと思うのですけどね。まあこちらは議事要旨の方でそういう線での議論があったのかを見たい所です。
『経済・物価ともに下振れリスクが大きいと考えられるだけに、必要な場合には、追加的な行動を取るべきである。』
『今後、「物価安定の目標」の実現のために必要と判断される場合には、追加的な金融緩和措置を検討すべきである。』
というようなのがとりあえず3人いる訳でして、こちらは与党系の方々でしょうから、相変わらず「追加緩和あるで〜」という情報発信が与党系というか執行部系からは続く事が想定される訳でして、そうなりますとそういう情報発信に悪乗りした某B社の飛ばし臭プンプンの観測記事的な現象というのも引き続き発生するのでしょうね、とまあそういう想像ができますね。
『マイナス金利政策と量的・質的金融緩和を異なるものとする議論があるが、どちらの政策も自然利子率より低い水準に実質金利を引き下げるという点で、同じものである。』
総裁なのかなと思いますが、話の上ではそうかもしれませんが、名目金利の非負制約の問題がある以上、プラスの金利を引き下げることと、金利をマイナスにして更に下げる事というのには非対称性があるとみられますし、その非対称性がまさに期待の辺りに効いてきているんじゃないですかねえと思う訳でして、この理屈って経済学の教科書的にはそういう理屈なのかも知れませんけれども、現実に引き直した場合の名目金利非負制約を軽く見ていないか、とまあそういう風に思ったりもするのですよね。
でもって野党の皆さん。
『「物価安定の目標」は柔軟に解釈し、政策運営に際しては、所得とバランスよく物価の上がる姿を目指すのが望ましい。』
『 「物価安定の目標」達成まで相当の時間の経過を前提とする必要があり、現行政策の耐久性・持続性を高めるべきである。』
『マイナス金利政策について、副作用が効果を上回ると判断し、引き続き反対である。』
ごもっとも。
・オペに関して
『(オペ運営や金融市場への影響)』ですが最初の見解は与党の人なのか野党の人なのかによって解釈というかインプリケーションが大きく異なるので、今回の主な意見の中で一番の南海ホークスな部分である。
『債券市場は極めてタイトになっており、今後日本銀行買入れの入札を巡り、より問題が生じ易い状況となっていく可能性が高い。入札運営を柔軟にする必要がある。資産買入れの効果がイールドの低下として十分に出ている以上、柔軟な入札運営を実行していくことで、若干の買入額の減少が生じても、元来何の問題もない。』
これは与党系の方の見解か野党系の方の見解かによって話がだいぶ違ってくる訳で、もし与党系の方がこういう話をしているのなら「マネタリーベース直線一気理論は何処に?」という話になるのですが、確かに最近の与党系の皆さんおよび執行部の説明って見事なまでに「実質金利ガー」の一辺倒になっている訳でして(上の方での黒田さんと思われる意見だって「金利」を軸に話をしていますよね)、これはおーという感じですなという所で。
まあ金利を中心に話をするのであれば、買入のストックビューかフロービューかという話も出てくる訳でして、今までの経験から体感的に思うのは、ストックが効いてくるのは市場に対して中銀の買入が相当にドミナントになってきてからであって、それまではフローが効くという事になるんでしょうが、では出口政策になった時にそれはどうよと言われるとFEDと米債を見てもうーむと唸ってしまうので中々単純化できない話(って結論になっていないが)。
でもって、金利低下を効果の起点にするのだったら、ストックがこれだけドミナントになって来ているなら「より少ない買入で効果的に金利を下げた方が賢いのではないか」という議論になってもしかるべきなのですが、本来「2年で2倍」のマネタリーショックによって期待に働きかけてレジームチェンジを図るという話をしていたのをそう簡単に古草履の如く捨てる訳にも行かないと思うのでさてどうなるのやらですが、仮にこれが与党系から出ていたらおーという事ですな。まあ議事要旨や金懇挨拶などで片鱗が見れるといいなという所です。
『マイナス金利政策以降、市場の価格形成の歪みや買入れの限界が一段と露呈しつつある。マネタリーベース目標や資産買入れの運営の柔軟化を検討すべきである。買入れが未達となっても、テーパリングと誤解されないよう丁寧に説明していけばよい。』
これは野党の方ですな。まあ買入の限界説言われるから明示的に目標を下げた方がマシかも。
『マイナス金利政策と階層型当座預金制度の導入は、国債需給のひっ迫と国債買入れの不安定化を通じて長期金利のボラティリティを高め、経済や金融市場に悪影響を与えている。』
こらまた木内さん(佐藤さんは階層型残す提案を3月にしていたから)でしょうなと思います。
・またジンバブエ先生らしきのが来ました
その次に『(金融仲介機能への影響)』ってのがありますが、最初のでワラタ。
『マイナス金利政策に対する反対論には、銀行収益の悪化を指摘するものが多いが、経済全体が活性化して初めて銀行も安定した収益を得られることを忘れている。』
だからその「経済全体が活性化して銀行の収益基盤が拡大」という事象がQQE実施して2年で2%のインフレ目標達成するとか言いながらやっている金融政策の元でできているんですかという話であって、国内貸出の預貸利鞘は下がるわ、国内部門の基礎的収益力は低下傾向だわで、信用コストが下がっているから業純自体はそら好調ですけど、大口叩いて行っている金融政策の目標をいつまでたっても達成できて居ない中央銀行がこんな言い方をするのはヘソが茶を沸かすという所ですが、まあこれは先般の山口金懇などでも主張しておられた人ジンバブエ先生のご見解としか思えませんので、まあジンバブエクオリティということで。
『マイナス金利政策が助長する銀行財務の健全性低下は、中長期的には資源の非効率な配分を通じて潜在成長率の一段の低下に繋がる。この点、金融仲介機能に配慮した金融政策に転じれば、資源の効率的な配分を通じて、政府や企業の生産性向上の取組みが潜在成長率の向上に繋がることを助ける。』
マイナス金利政策って金融機関などのリスクテイク行動に対して後ろからマイナス金利というナイフを突きつけてオラオラオラと動かすという効果はあるでしょうが、そうやってとったリスクって本当にそれ経済全体にとって良い話なのという視点が重要という事ですな。
とまあそういう事で、結構今回も面白かったですな。この主な意見は今のように意見が割れまくっていると鑑賞物としては中々オモシロではあります。
○その他雑談
・参議院半期報告キタコレ
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
昨日は参院で半期報告があったのですが、上記URL先から5/12の開催分を見ますとその中に
『開会日:2016年5月12日
収録時間:約3時間21分
会議名:財政金融委員会』
ということで財金委員会がある訳ですが、何か物凄い勢いで燃えていてワロタというかワロエナイ。
でもって2時間8分位の所から毎度お馴染み大門先生の質疑があるのですが、冒頭の質問というか大門先生の所感がケチョンケチョンというか、もうお前は見放したみたいな感じのお話をしているので(約6分半)いやーキツイわと思いましたが、その前の桜井先生と白先生の質疑も中々強烈ではございましたですな。
でまあその辺は会議録出てからまた鑑賞(忘れてなければ)とは存じますが、ちょっと腰が抜けてしまったのと言えば。出口に絡んで将来出口になった時に国債の売却は大丈夫なのかという趣旨の質問に対して黒田総裁が「それは値段の問題であって売却できないことは無い(キリッ)」とか(47分ぐらい)発言していて、いやいやだからその「価格の問題」が大事なんじゃないかとんでもない暴落したらマズイって話だろ何言ってるんだよ、とは思いましたです、はい。
・短国3M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20160512.htm
(3)募入最低価格 100円05銭5厘0毛(募入最高利回り)(-0.2204%)
(4)募入最低価格における案分比率 76.5067%
(5)募入平均価格 100円05銭7厘7毛(募入平均利回り)(-0.2313%)
ということで相変わらずなのですが、足元短国の発行が連発していることもあるのかGCのレート自体は上昇(と言ってもマイナス1ケタBPの世界で上がった下がったの話ですけど)となっているようでして、いやまあ海外とか日銀とか嵌めこみ先はあるのは分かるのですけれども、▲20bp台でのマイナス水準で定着するもんなのか???というのはどうもしっくり来ませんなとは思う。これでGCも▲10から▲10より深いマイナスにガンガン突っ込む場面も頻発というのならイメージは起きるのですが・・・・・・・・・というメモだけ置いておきます。
2016/05/12
お題「コール市場の出し手変化に順当と一部ほほーというのが/FSRその他日銀から出ている物に関して雑談(でもないが)」
NYもホイホイ上がったりホイホイ下がったり忙しいですの。
○短国とかその他
・6M入札は相変わらず
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20160511.htm
(3)募入最低価格 100円14銭0厘(募入最高利回り)(-0.2819%)
(4)募入最低価格における案分比率 15.9012%
(5)募入平均価格 100円14銭6厘(募入平均利回り)(-0.2939%)
まあ何ちゅうか3Mよりレートが低いのは仕様ですがまたまた高値(というかマイナス利回り)を更新のようでございますが、何せ短国の場合は入札後に▲1%だのというのをやらかしている実績があるので入札のレートが低くて高値更新と言われましてもはあそうですかという感じでもありますが(−−;
でまあ売買参考統計値の方はと言いますと▲37.6bpとかこらまた入札から10bpほど金利低下という数値になっていますが、セカンダリーが確か▲40とかにちゃっかり強くなっていましたのでまあその辺の数字になるんでしょうなあとは思いましたが、何かもう▲1%とかを見てしまうと感覚が磨耗しちゃってイカンのですが、超過準備マイナスチャージをはるかに下回る水準での入札をやった挙句に更に一段の金利低下って何やってるんだかという感じで、普通の国内円資金の資金調達運用という意味ではもはや何の意味も無い状態になっているのがオソロシイ所ではございますな。まあ今に始まった話ではないですけど、それにしてもぶっ飛びだす前ってマイナス金利はマイナス金利でも浅めのマイナスとかだった訳で、ドル調達絡みのニーズとかで強くなってきたのが始まりですから、国内投資家の投資行動の影響ではありますが、まーそういう動きによって円の短期国債の方があばばばばーというのが何とも。
・コール市場残高
4月
http://www.boj.or.jp/statistics/market/short/call/call1604.htm/
3月
http://www.boj.or.jp/statistics/market/short/call/call1603.htm/
末残の出し手サイドの残高推移を見ますと、全体では有担コール10184→14327、無担コール19540→46736となっていて、無担保コールの方がドドーンと増えております。
でもってその無担保コールに関して誰がどどーんと出したかと言えば信託のうち投信が3065→22071と盛大に増えているのはまあ想定通りですが、何気にほほーと思ったのは地銀の出しが4070→12580になっていまして、無担保コールの市場実勢はどこからどう見てもマイナスになっている中で出しが増えているということは、参加者の中で超過準備残高がマイナス金利適用残高の方が増えてきた(方なのか個別の残高なのか知らんが)ということで、まあここは味わいを感じる内容でございました。
ちなみに有担保コールの方はあんまり増えていないのですが、これはレポ取引の状況とかも参考にしてみたいのですが、惜しい事に日証協から出てくる貸借取引の主体別状況に関しては25日にならないと出て来ないので足元では3月末の数値しか無くて、2月末に地獄のように減った残高が3月にほんの少し(申し訳程度に)回復してますなという程度だったのですが、この推移をみるとまあ4月もそんなに変わらんなという所です。
4月(左から有担:無担:無担のうち先日付取引)
都銀等* 0 0 0
地銀 490 12,580 8,780
信託 11,752 28,411 3,240
(うち投信)7,948 22,071 1,000
外銀 0 0 0
地銀2 325 3,330 2,610
信金中金・信金 1,610 540 540
農林系統 0 0 0
証券・証金** 0 0 0
生損保 150 300 300
その他とも計 14,327 46,736 16,795
3月
都銀等* 0 560 360
地銀 430 4,070 2,570
信託 8,874 7,455 1,990
(うち投信)2,390 3,065 0
外銀 0 0 0
地銀2 630 2,520 2,340
信金中金・信金 100 545 545
農林系統 0 350 50
証券・証金** 0 200 0
生損保 150 300 300
その他とも計 10,184 19,540 10,920
超手抜きで表をそのままテキストに貼るという手抜きにも程があるプレイを実施しておりますが、これ末算数値は上記のようになっていますが、4月の平残数値を見ると末算数値と思いっきり乖離がありまして、これは即ち4月積み期間以降の動向(金銭信託への政策金利コスト転嫁とか)を反映した乖離ですなあというのはまあご案内の通りという感じです。
○浜田先生の話が妙に穏健になっている件
一昨日はこんな話が。
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1873OK
Markets | 2016年 05月 11日 07:30 JST
再送-インタビュー:日銀は現緩和策の維持を、ドル90円前半では介入すべき=浜田参与
(この記事は10日午後7時39分に配信しました)
『それでも、日本の経済・物価に金融政策は「それなりに効いている」とし、実体経済への効果波及までの時間差も考慮し、労働市場に陰りが出てこない限り、「日銀は今の金融緩和政策をしばらく続けていけばいい」と述べ、市場で根強い追加緩和期待に距離を置いた。』(上記URL先より、以下同様)
労働市場はさすがに当分大丈夫でしょ。賃金がいつまでたってもパッとしないのだが。
『日銀が2%の物価安定目標の目安にしている、生鮮食品を除いた消費者物価指数(コアCPI)は依然としてゼロ%付近で推移している。これに対して浜田氏は、原油価格が低迷している時にコアCPIの2%にこだわる必要はないとし、現在1%程度となっている、コアCPIからエネルギーを除いた指標(日銀版コアコアCPI)が「2%になれば満点だが、1.5%程度になればいいのではないか」との見解を示した。』
当初4%でもとか言っていたあの勢いは・・・・・・・・・・
『財政拡大を金融緩和でまかなう、いわゆるヘリコプター・マネーの発想については「
ヘリコプター・マネーを主張する人たちは、何をしてもインフレが欲しい、将来がどうなってもいい、ということだと思う」と指摘。』
何をしてもインフレになればその後はめでたしめでたしという置物リフレ理論は何処に。
『「政府が使うお金をすべて日銀が刷る制度にしてしまうと、いくらでもインフレにできる」とし、「ヘリコプター・マネーはそうしたインフレに対する備えが不足している」と語った。』
ということで何というこの穏健なお話という感じなのですが消費増税に関しては、
『また、来年4月に予定されている消費税率10%への引き上げについては「波風がこれだけ荒いときに消費税を上げることは、危険が多過ぎる」とし、あらためて慎重な考えを示した。』
となっていて、だったら追加緩和をしろという話もした方が良いのではないかとか思ったりもしますが、何かこう妙にトーンダウンしているのはどうした事ぞ(というか今の方が現実的な話になってきているのだが)と思う次第で、何かこう最近日銀絡みや金融政策絡みの話の出方と申しますか何と申しますかなトーンが微妙な気がするのは気のせいでしょうかねえ。
なお、為替に関しては、
『もっとも、「(ドルが)90円前半くらになれば、いかに米国が怒ろうとも介入しないといけない。金融政策で待っているわけにはいかない」と語った。』
とのことでしたが、昨日のブルームバーグニュースによりますと、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-05-11/O6ZO246KLVRL01
2016年5月11日 11:03 JST 更新日時 2016年5月11日 15:43 JST
『浜田宏一内閣官房参与はブルームバーグの英語によるインタビューで、日本には為替介入の権利があるとし、1ドル=100円に円が急伸した場合には対応すべきだとの考えを示した。』(上記URL先より)
となっていてどっちなんですかというオモシロモードになっているのが平常運転っぽくてアレですが。
○すっかりスルーしていましたがFSRの続きというかまあ読むべきという雑メモ
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr160422.htm/
金融システムレポート(2016年4月号)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr160422b.pdf(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr160422a.pdf(本文)
連休前に出ていましたが、最初のHTMLでの要旨ご紹介部分のお話をしてその後の話をあまりしておりません
でしたが、(概要)という方の中身でも読んでちょという事で今更ながら続きを少々。
以下
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr160422b.pdf
から少々引用します。
・マイナス金利政策の金融機関への影響に関しての分析ですが
19ページ(PDFファイルで20枚目)の『金融機関収益・金融安定とマイナス金利付き量的・質的金融緩和@』という辺りからが中々味わいがあるのですという話をもうちょっと追加しておこうという事で。
『マイナス金利付き量的・質的金融緩和は、当面、金融機関収益に対する下押し圧力を強める方向に作用する。日銀当座預金にマイナス金利を賦課することによる直接的な影響は、「階層構造方式」の採用で必要最小限度に抑えられているが、イールドカーブの全般的な低下に伴って、預貸利鞘が縮小するため、収益には一段の下押し圧力が働くと考えられる。』
だが問題ないというのがシャチョーの能天気な説明な訳ですがFSRでは・・・・・・・・・・・
『こうしたもとで、@近年の増益基調を支えてきた信用コストの減少ペースが鈍化してきていること、A昨夏以降の国際金融資本市場の変動拡大を受けて有価証券関連収益も期待しにくい状況にあること等を踏まえると、基礎的収益力の低下が表面化しやすくなっていく可能性がある。』
とまあそういう風に説明されていまして、そのページにある図表などを見たりしますとこれがまた貸出利鞘が趨勢的に下がっている図とか、コア業務純益が下がっている図(特に地域金融機関)とかがきちんと示されていまして、どこぞの総裁がいうような「茲許の金融機関収益は過去最高益水準なのだからちょっと収益がさがったからと言ってごちゃごちゃいちゃもんつけるんじゃねえよコノヤロー(超意訳)」という話になっていないという事ですな、うんうん。
でもって20ページに『金融機関収益・金融安定とマイナス金利付き量的・質的金融緩和A』というのがありまして、これは要旨の方にも記載されていましたのでネタにしましたが改めて引用しておきます。
『これまでみてきたように、金融機関は充実した資本基盤を備えており、当面収益力が下押しされるもとでも、前向きなリスクテイクを継続していく力を有している。』
ほう。
『金融機関のポートフォリオ・リバランスが、経済・物価情勢の改善と結びついていけば、基礎的収益力の回復にも繋がっていくと考えられる。もっとも、足もとの収益力の減少傾向が長引く場合には、損失吸収力が低下し、いずれ金融仲介機能の制約に繋がっていく可能性がある。』
ということで、ちょっと味わいがあるのは、実質金利低下ばかりを強調しながらどこぞの総裁が「実質金利が低下することによって消費や投資がアプリオリに伸びるから金融機関の貸出も伸びるんじゃ何を言ってるんだ銀行は(超意訳)というようなお話をする中で、FSR的な観点だからある意味順当かも知れませんが、実質金利が低下したからどうのこうのという表現ではなくて、「金融機関のリスクテイクの拡大によって」経済物価情勢の改善に結びつくことによって効果が出てくる、という金融政策の波及経路についての貸出を中心とする金融仲介機能を通じたルートを前提にした書き方になっている辺りでございまして、この辺アタクシ的にはきわめてフェアな書き方だと思うのですが、肝心のシャチョーの発言にこの辺りの話がもうちょっと反映されないのかよと思ったりもします。
『こうした点を踏まえると、金融安定面への影響としては、マクロ的なリスク蓄積や資産価格等への影響が行き過ぎる過熱方向のリスク、収益の減少に歯止めがかからず金融仲介が停滞方向に向かうリスクの両面をみていく必要がある。』
まあ良く見ますと両方とも不安定化のリスクなんですけどね。いずれにせよマイナス金利はこれらのリスクを拡大させる方向の筈なんですが、何故か「必要ならば追加緩和(キリッ)」という声明文になってしまい、上下方向のリスクを点検して調整という文言ではなくなってしまっているという辺りに何ちゅうかなものを感じます。
ということでちょろっとだけ追加ネタにしたのですが、これ仔細に読むと読みごたえがございますので、オヌヌメという事で改めてネタにするの巻です。なお展望レポートに関しても「背景説明」の所はだいぶ味わいがあるという話を先日来致しましたが、今回はこのあたり両レポートとも大本営発表と実際の戦場(?)での戦況報告の間に温度差が目立ちますなあというのもこれまた微妙な味わいと行ったところではないでしょうか。
○その他少々
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2016/ron160502a.htm/
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2016/data/ron160502a.pdf
消費活動指数について
『本稿では、消費活動指数を紹介する。消費活動指数は、財とサービスに関する各種の販売・供給統計を基礎統計としており、月次や四半期といった短期的な消費活動を把握するための指標である。消費活動指数は、最も包括的にわが国の消費活動を表す国民経済計算・確報の家計消費と同様の変動をしているが、確報と異なり速報性がある。また、需要側統計と異なり、サンプルに起因する統計の振れも小さく、各種のマインド指標との相関も高い。消費活動指数には、名目値と実質値、インバウンド消費を含むものと含まないものなど、複数の指数があり、分析目的に応じて使い分けることが可能である。これらの性質を踏まえると、消費活動指数は、わが国における消費活動の実勢把握を行うことに貢献すると考えられる。』(上記HTML先より)
というのが連休中に出ておりまして、どうやって作りましたという解説がありますが何せあたしゃ頭が悪いのでネタにするほど読めていない(汗)。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2016/rev16j05.htm/
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2016/data/rev16j05.pdf
決済と担保 ―法と経済学の視点から―
『決済に関連する実務では、担保や担保類似のスキームが、当事者の破綻などのイベント時にも決済や清算を前に進めるために利用されており、金融危機後の国際的な議論の中で、このようなスキームへの関心は一段と高まっている。これらのスキームでは、実質的な担保資産として流動性の高い(その分特定性は低い)金融資産が使われており、国際的な議論では、これらが他の資産から分離され、イベント時に迅速に流動化できることが重視されている。こうした点は、高頻度の取引が連続して行われる現在の金融市場において、予測可能性を確保しつつ、冗長性(redundancy)のような仕組みを組み込むことで決済の不履行や巻戻しを防ぎ、システミックリスクを抑制するという観点からの理解が可能である。このようなスキームを実現する上では、典型担保とは異なる信託などの枠組みが用いられることも多い。』(上記HTML先より)
こちらは日銀レビューシリーズなのですが、ご指摘のように「これらが他の資産から分離され、イベント時に迅速に流動化できることが重視されている」という部分で日本の国内法というか破綻法制絡みとかになると実際にゴリゴリとその辺を詰めた場合に本当に迅速に流動化できるのか的な話で手が止まってしまう(何せ前例とか判例とかないようなケースの方が多いっすからねえ)となるとあばばばばーな訳でございますな、などと思いつつまだ半分も読んでいないのでこれからちゃんと読みます。
というただのアタクシの課題メモですいませんすいません。
2016/05/11
お題「展望レポート雑談ネタの補足とその他雑談ネタである」
ポートフォリオリバランスェ・・・・・・・・・
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS10H3O_Q6A510C1EE8000/
個人向け国債、根強い人気 4月応募額2749億円
2016/5/10 19:40
ちなみに推移などはこちらをご覧になると分かりますよん。
http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/index.html
(下の方にある「新着情報」の『2016.05.10 個人向け国債の応募額
→発行額の推移はこちら』です)
○短国入札とかCP買入とか(メモ)
3M短国入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20160510.htm
(3)募入最低価格 100円05銭3厘0毛(募入最高利回り)(-0.2197%)
(4)募入最低価格における案分比率 42.3076%
(5)募入平均価格 100円05銭7厘3毛(募入平均利回り)(-0.2375%)
ということで相変わらず政策金利を下回った水準での推移となっておりますが、日銀がそんなに買入を行わない(その一方で流通玉も碌にないけど)利付債のこの辺の残存の銘柄でも▲15.5bpだの▲16.5bpだのとかいうような水準の引値とかになっておりまして、ファンディングコストがよりお安い人のニーズがそもそも存在する上に短国の場合はご案内のように日銀の買入がという事でまあ順当。
まあ為替ベーシス絡み系以外でこの金利買うの日銀位しかいない(あとは残高調整と担保繰り)でしょうし、キャッシュ潰すニーズにしたって政策金利よりも低い所で買う必要はない(というかそもそも▲10bpまでなら泣きながらキャッシュをつぶすという人も政策金利残高の攻撃をモロに食らっている世界の人の話だし)でしょうから、通常の国内投資家の需要から飛んでもなく遠い所での金利の世界になっているので、今更国内の需要で買いがというのも無くて恒常的な海外ニーズと日銀以外の要因が無い市場という感じなんですかねえ、よー知らんけど。
でもって新発のBB引値は▲23.8bpとかアベレージで引かせていて(売買参考統計値も▲23.8bp)、ついこの前は短国買入ヒャッハーヒャッハーとかやっていた筈なのにすっかり平和な引けになっているのは何でですかねえと思う次第で、CP買入のレートが訳分からん位普通というか高いレートになっているのと合わせまして、何がどうなってこういう状況になっているのやらという摩訶不思議な相場というか、単にヒャッハートレードも入らなくなっている死後の世界になっているという事でしょうかねえ・・・・・・・
なお本日は6Mの入札で明日が3Mの入札で金曜がたぶん短国買入になりまして、まーヒャッハーの方は6Mの方に顕在化するのかもしれませんので、本日の入札というよりはその後の推移でも見物するのが良いのかも知れませんね。
CP買入(CPの結果のみ)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba160510.htm
CP等買入 11,503 2,994 -0.002 -0.002 85.3
・・・・・・とまあそういう結果でして、買入オファー額を増やしたのですが3000億円に対して札が1.1兆も入っていまして、落札結果もついこの前とんでもないマイナス金利になっていたのに直近ではこのレートってこちらもまたナンジャソラという感じです。
CP市場そのものは日銀当座預金持っている人たちが資金イラネとなっていますし、季節的にはもうちょっとした方が発行増えると思うのですけれども、これまた何か知らんが最近急に買入の落札レートがゼロ近辺まで盛大に上昇という謎の展開になっておりまして、短国とCPに関しては何が何やらという感じで「????」となりながら無い頭をひねるアタクシなのでありました。
○師匠まで延焼していてナンジャソラな展開に
http://jp.reuters.com/article/boj-sakurai-idJPKCN0Y10OQ
Business | 2016年 05月 10日 16:49 JST
日銀の岩田副総裁と桜井審議委員、「博士号取得せず」
『[東京 10日 ロイター] - 日銀の桜井真審議委員と岩田規久男副総裁は10日午後の衆院財務金融委員会で、東大博士課程で単位を取得したが、博士号は取っていないことを明らかにした。宮崎岳志委員(民進)への答弁。同席した日銀の中曽宏副総裁は「博士課程修了」との履歴は「経歴詐称に当たると考えないが、適切に対応したい」と回答した。桜井委員は「博士号は持っていない」「単位取得して中途退学となっている」と述べた。修士論文については「四十数年前なのであまり記憶が定かでないが、4ページのものを書いた。東大紛争後のやや混乱期だが、きちっと修士号はいただいた」と説明した。桜井氏の履歴については、大蔵省財政金融研究室の特別研究員など他の経歴についても、就任時期など細かな食い違いが多数あることが判明し、「色々と組織の移動が激しかったのを反映している。はなはだ申し訳ない」と釈明した。』(上記URL先より)
とまあそういう事で、何か急に変な所で盛り上がっておりまして、元は櫻井さんの話だと思っていたら師匠まで延焼という謎展開に頭がクラクラして参りますが、ここで師匠の著書を確認してみましょう。
『さて、日銀の政策委員会と米国のFOMCのメンバーの経歴を比較すると、次の違いがわかる。@日銀の政策委員会メンバーの学歴は大学卒、したがって、学士が主流であるのに対して、FOMCのメンバーは大学院での博士号取得者が主流で、最低でも修士号を取得している。』(岩田規久男「日本銀行は信用できるか」講談社現代新書2010本文31ページより引用)
・・・・・・・いやまあ別に博士号持ってないと何とかとか言い出したらそらもうアタクシのような無知蒙昧な人間がこのような駄文を書き連ねること自体が不遜にも程があるので別に博士号取得の有無とかどうでも良いと思うのですが、師匠の場合はそもそも上記のような大口を散々叩いた挙句に「日銀に入って新たに分かりました」と言い出す次第で、大体からして2年どころかまるまる3年経過して2%全然達成していないのに責任も説明もしていないという状況ですからねえとは思いますが、まー何ちゅうかこういうので妙に盛り上がってしまう、という流れになっているというのが局面の変化というかマイナス金利政策やって評判が悪化してきているという事の現れなんじゃネーノとか思うと、それはそれで味わいのある展開ではないかと思うのであります。
つーかそもそも櫻井さん自体がどういう方なのか未だにさっぱりワカランチ会長なのですが、これから5年間大丈夫かよと存じますです。
あと本件とは別ですが、国会ネタではこういうのもありまして、
http://jp.reuters.com/article/boj-nakaso-idJPKCN0Y10T1
Business | 2016年 05月 10日 17:20
批判に耳傾ける良い聞き手でありたい=中曽・日銀副総裁
何のギャグかと思いましたが、「批判に耳傾ける良い聞き手(実行するとは言っていない)」と解釈すればそんなもんかも知れませんね!!!!!!!
○展望レポートネタもうちょっと追加しまして個別項目を少しだけ
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1604b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1601b.pdf(前回)
長いから割愛とか申し上げましたが、じゃあ実際にどういう感じになっているのか、という点について自分の備忘も兼ねてちょっとだけ追加しておきますね。
・設備投資について
『設備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。』(今回)
『設備投資は、企業収益が明確な改善を続けるなかで、緩やかな増加基調にある。』(前回)
最近は設備投資が出てくるからという話を強調してくるので設備投資の項目を選んでいるのですが。
『一致指標をみると、法人企業統計の設備投資(名目ベース)は、緩やかな増加傾向にある一方、資本財総供給は、受注から出荷までのラグの長い機械投資案件が増加していることもあって、振れを伴いつつも、横ばい圏内の動きを続けている(図表
16)21。』(今回)
『一致指標をみると、法人企業統計の設備投資(名目ベース)は、振れを伴いつつも緩やかな増加傾向にある一方、資本財総供給は、受注から出荷までのラグの長い機械投資案件が増加していることもあって、このところ横ばい圏内の動きとなっている(図表
16)22。』(前回)
横ばいが続いているということですか。
『3月短観をみると、新興国経済の減速の影響は製造業の業況感や収益動向を中心にみられるものの、設備投資計画はそうした製造業も含めて総じて堅調さが維持されている(図表
17、18)。例えば、GDPの概念に近い、全産業全規模+金融機関の設備投資計画(ソフトウェア含む、土地投資除く)をみると、2015
年度は前年比+7.3%の着地が見込まれており、この時期としては 2006 年度以来の高い伸びとなっている(図表
18(2))。また、3月短観で新たに明らかになった 2016 年度の設備投資計画も、総じて過去平均並みとなっている(前掲図表
17)。』(今回)
『12 月短観における本年度の事業計画をみると(図表 17、18)、新興国経済の減速にもかかわらず、設備投資計画は総じて堅調さが維持されており、例えば、GDPの概念に近い、全産業全規模+金融機関の設備投資計画(ソフトウェア含む、土地投資除く)をみると、前年比+8.6%とこの時期としては
2006 年度以来の高い伸びとなっている(図表 17(2))。』(前回)
前回は新興国経済が減速しているけど堅調、だったのが今回は減速の影響が設備投資計画には出ていないと言いつつ業況とか収益動向に見られる、という指摘が入っていて先行きの減速を示唆するようなヘッジ文言がありますな。まあその分3月短観で示されている計画の評価が強めなので相殺されている感じですが。
『そうした企業の前向きな設備投資スタンスを反映して、先行指標である機械受注や建築着工・工事費予定額(民間非居住用)は、振れを均せば、しっかりとした増加基調を維持している(図表19)。』(今回)
『そうした企業の前向きな設備投資スタンスを反映して、機械投資の先行指標である機械受注は、振れを均せば、しっかりとした増加基調をたどっている(図表19(1))23。』(前回)
てな感じで最初と最後は同じような書きっぷりになっているのですが、途中を見るとちょこまかと下方修正が入るというのが今回の展望レポート背景説明の特色なのですよね。
『設備投資の先行きについては、2016 年度上期にかけて、海外経済の減速により、製造業大企業を中心に下押し圧力がかかるものの、見通し期間を通してみれば、@高水準の企業収益や、A低金利や緩和的な貸出スタンスといったきわめて投資刺激的な金融環境、B期待成長率の改善などを背景に、緩やかな増加基調を続けると見込まれる22。ただし、見通し期間の終盤にかけては、資本ストックの蓄積に伴って、設備投資の循環的な増加テンポは徐々に鈍化していくと考えられる。』(今回)
『先行きの設備投資は、@企業収益の明確な改善、A低金利や緩和的な貸出スタンスといった投資刺激的な金融環境、B円安傾向の定着を眺めた製造業による国内投資の積極化を背景に、緩やかな増加を続けると予想される。ただし、見通し期間の終盤にかけては、資本ストックの蓄積に伴って、設備投資の循環的な増加テンポは徐々に鈍化していくと想定している。』(前回)
@とAは同じなのですが、Bが随分をファジーな表現になりましたなあという感じでやや怪しげな香りがするのに加えまして、設備投資は出るという見通しになっているから終盤の所はそうなるのかもしれませんが、(引用してないけど)生産とか輸出とかの見通しについては下がっていて、更に円安定着の確認による国内投資云々要因がファジーになっているのに資本ストックが本当に蓄積されるのやらというのは少々????ですの。
『企業収益やキャッシュフローとの対比でみると、企業はリーマン・ショック以降、期待成長率の伸び悩みから、抑制的な設備投資スタンスを維持してきたが23、見通し期間の後半にかけては、期待成長率がごく緩やかながらも上昇するもとで、投資スタンスも徐々に積極化していくと考えられる。』(今回)
『企業収益やキャッシュフローとの対比でみると、企業はリーマン・ショック以降、期待成長率の伸び悩みから、抑制的な設備投資スタンスを維持してきたが、見通し期間の後半にかけては、期待成長率が緩やかに上昇し、収益力も持続的に改善するもとで、投資スタンスは徐々に積極化していくと考えられる(図表
20(1))。』(前回)
ここも味わいがあって、しらっと期待成長率の今後の見通しについて「期待成長率が緩やかに上昇し」だったのが「期待成長率がごく緩やかながらも上昇するもとで」とトーンダウンしているというこの芸の細かさ。
『こうした見通しについて、「設備投資は、一定の成長期待のもとで、生産活動に必要とされる資本ストックを実現するよう行われる」との考え方のもと、資本ストック循環の観点から設備投資動向を評価する(図表20)。これによると、資本ストックは、このところ「0%台前半」と推計される潜在成長率と同程度の期待成長率を前提としたペースで、緩やかに増加している。』(今回)
『こうした見通しについて、「設備投資は、一定の成長期待のもとで、生産活動に必要とされる資本ストックを実現するよう行われる」との考え方のもと、資本ストック循環の観点から設備投資の伸び率を評価する(図表
20(2))。これによると、設備投資は、当面、「0%台前半ないし半ば程度」と推計される潜在成長率と同程度の期待成長率を前提としたペースで緩やかに増加するとみられる。』(前回)
って潜在成長率の推計が下がっている分だけ下がっているやん。
『先行きは、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとできわめて緩和的な金融環境が続き、オリンピック関連需要も徐々に本格化していくことから、資本ストックは、潜在成長率を若干上回る期待成長率と整合的なペースで蓄積されていくと見込んでいる。』(今回)
『その後は、@極めて緩和的な金融環境や、Aオリンピック関連需要の顕在化、B収益力の持続的な改善などを背景に、企業は、期待成長率を0%台後半まで高めつつ、資本ストックを緩やかに積み増していく姿を想定している。』(前回)
ということで、まあ元々足元の潜在成長率を下げている所に加え、先行きに関しても数値をあまり書かないようになっていて、これは文脈から見まして先行きの潜在成長率の上昇ペースについての見通しも下がっているとしか見ませんな。
ついでに雇用所得の賃金のところも確認しますとですな・・・・・・・・・・・
『賃金面をみると(図表 23)、一人当たり名目賃金は、特別給与を除いてみれば、緩やかに上昇している25。仔細にみると、所定内給与の前年比は、パート比率の上昇が引き続き下押し方向に作用しているものの、一般労働者が緩やかに伸びを高めるもとで、全体でも緩やかにプラス幅を拡大している。時間当たり名目賃金でみても、特別給与の振れを除いてみれば、緩やかな改善傾向を続けている。とくに、労働需給の状況に感応的なパートの時間当たり名目賃金は、最低賃金引き上げの動きにも支えられて、高めの伸びを続けている。』(今回)
『賃金面をみると(図表 23)、一人当たり名目賃金は、特別給与を除いてみれば、緩やかに上昇している24。仔細にみると、所定内給与の前年比は、パート比率の上昇が引き続き下押し方向に作用しているものの、一般労働者がベースアップの影響などからプラス幅を緩やかに拡大するもとで、全体でも緩やかにプラス幅を拡大している。時間当たり名目賃金でみても、夏季賞与の影響を除いてみれば、緩やかな改善傾向を続けている。とくに、労働需給の影響を受けやすいパートの時間当たり名目賃金は、このところ改善が明確となっており、足もとでは最低賃金引き上げの動きもあって、前年比で+2%弱までプラス幅を拡大している25。』(前回)
微妙な所もあるがまあこれまでの推移に関しては威勢が良い。
『先行きの賃金を展望するにあたり、一般労働者の賃金に大きな影響を及ぼすベースアップを巡る今春の労使交渉の状況をみると、2016
年度は、3年連続のプラス改定が見込まれるものの、エネルギーを含む総合ベースの消費者物価上昇率の低迷を主因に、大企業を中心に昨年を幾分下回る伸びで着地する可能性が高い。もっとも、@企業は、賞与などのかたちで高水準の収益を雇用者に還元することには積極的であること、A中小企業の一般労働者の賃金やパート労働者の時給は、労働需給の状況により感応的であることを踏まえると26、2016
年度の労働者全体の名目賃金は、1月の展望レポート時点から幾分下振れしつつも、緩やかな上昇を続ける可能性が高い。』(今回)
『その後については、エネルギー価格の下げ止まりにも影響されたインフレ予想の改善を背景として、ベースアップは再び伸びを高めるとともに、パートの時給も、労働需給の引き締まりの明確化に伴い、さらに上昇すると考えられる。そうしたもとで、労働者全体の時間当たり名目賃金は、緩やかに上昇率を高め、見通し期間の終盤には、名目ベースでみた潜在的な労働生産性上昇率と同程度まで、伸びを高めていく可能性が高い(後掲図表
42(2))27。』(今回)
『先行きの賃金については、労働需給の引き締まりとインフレ予想の高まりが一段と明確になるにつれて、ベースアップの改善やパートの時給の上昇などを通じて、所定内給与を中心に基調的な上昇圧力がかかっていくと考えられる26。そうしたもとで、労働者全体の時間当たり名目賃金は、次第に上昇率を高め、見通し期間の終盤には、名目ベースでみた潜在的な労働生産性上昇率と同程度まで、伸びを高めていく可能性が高い(後掲図表
42(2))27。また、賞与も、企業収益の改善を背景に増加していくと考えられる。』(前回)
ちと見にくくてすいませんが、今回は物凄い勢いで前回対比長くなっていて、それはまあご覧のとおりでベースアップが期待外れだったからというのが背景にあるのですが、しかし往生際の悪さを反映しておりまして、「そうは言っても今後は何とか」みたいな話が延々とあるので長くなっているのですな。
しかしまあ何ですな、この賃金に関しても上記のように、「その後については、エネルギー価格の下げ止まりにも影響されたインフレ予想の改善を背景として、ベースアップは再び伸びを高めるとともに」とかなりの願望成分が入っているのが気になる所でして、これすなわちヘッドラインのインフレが上がらんとどうにもならんという事を示していると思いますし、だったら物価に関する見通しとかで日銀コアとかの話をして行くぜヒャッハーという話をするのってどうなのよという疑問は思いっきりあったりします。
とまあ設備投資と賃金に関してちょっと例として比較してみましたが、今回の展望レポートの背景説明ってだいたいこんな感じで、明確に出てくるであろう政府支出の所以外に関しては色々と留保条件があったり下方修正があったりで、全部合わせると合わせ技1本以上は下方修正されているのに何故か鏡の方はそんなに下がっていない、というかなり摩訶不思議な展望レポートとなっているのでしたとさ、という雑談でした。
2016/05/10
お題「展望レポートネタとMPM議事要旨ネタです」
本当に介入してドル売りを殲滅させたかったら介入介入言わない方が良い訳ですから・・・・・・・
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS09H0M_Z00C16A5MM0000/
麻生財務相「為替介入の用意ある」 円高受け
2016/5/9 13:28日本経済新聞 電子版
#本日は10Yと3Mと入札がありますのでさあ始まりますよという感じですな
○展望レポート昨日の続きである(汗)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1604b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1601b.pdf(前回)
途中で終わってしまった(すいません)ので『2.物価の現状と見通し』の最後の所になります『(物価の先行き)』をば。
『以上を踏まえ、消費税率引き上げの直接的な影響を除いて物価情勢を展望すると36、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、現状程度のプラス幅を暫く続けたあと、需給ギャップの改善とインフレ予想の高まりを背景に、賃金上昇によるコスト増を転嫁する動きがサービス価格も含め幅広く進んでいくことから、2%程度に向けて着実に上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)
『以上を踏まえ、消費税率引き上げの直接的な影響を除いて物価情勢を展望すると36、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、需給ギャップの改善とインフレ予想の高まりを背景に、円安や賃金上昇によるコスト増を転嫁する動きが進んでいくことから、足もとの1%台前半から2%程度に向けて、着実に上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)
ちなみに背景説明の冒頭に(自分の都合の良い方の数字になる)日銀コアの説明をしているというのは昨年10月からこのパターンになっているのでまあそれは兎も角として、先行き物価上昇のメカニズムに対しましては円安コストプッシュの話が無くなったのと、賃金上昇の転嫁に関しても「サービス価格も含め」とか微妙に留保条件が入ったりしていますな。
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については37、2016 年度上期中は、除く生鮮食品・エネルギーのプラス寄与と、エネルギー価格のマイナス寄与が概ね相殺し、振れを伴いつつも0%程度で推移すると予想される。』(今回)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2015 年度中は、エネルギー価格の下押し効果と除く生鮮食品・エネルギーの改善効果が相殺し、0%程度ないし小幅のプラスで推移する。2016
年度入り後も、エネルギー価格の下押し効果は、後半にかけて減衰しつつも、なお大きめのマイナスを続けるが、』(前回)
つーことでそもそも1月の見通し通りに行ってないでしょ需給ギャップにしても物価にしてもと思いますが・・・・・・・・
『その後は、エネルギーのマイナス寄与がはっきりと縮小するとともに、除く生鮮食品・エネルギーは上昇率を高めていくことから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、しっかりと伸びを高め、2017
年度中には2%程度に達する可能性が高い。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると考えられる。』(今回)
『2017 年度前半頃には、エネルギー価格のマイナス寄与が剥落するもとで、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2%程度に達すると予想される。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると考えられる。』(前回)
良く良く見ますと1月の時点では2017年度前半「頃」と言いつつも2%程度に達すると「予想される」だったのだが、今回は「2017年度中には」となっているので半年程度の先送りなのでしょうが、そもそも1月の「前半頃」というのも後半になっても「ほぼ前半頃」とか言い出すのかなあ(ってどうせ行かないから考えるだけ時間の無駄ですかそうですか^^)とか思いますと、どの程度達成時期が先送りされているのやらと。
でまあ毎度思うのですが、2017年度中に2%の物価目標を達成して、その後平均的に2%程度で推移するって見通しを立てているんだったら「必要ならば追加緩和(キリッ)」じゃなくて物価目標達成した後に今の自称史上最凶じゃなかった最強の金融政策を続けていたらインフレが上振れする筈で安定推移できなくなるんだから普通は出口政策についてのアイデアを考えるんじゃないんですかねえ(棒読み)。
という話は兎も角として、このメカニズムの背景の説明が前回対比で相当苦しくなっている。
『こうした見通しの背景には、これまでと同様、@インフレ率は、過去の局面に比べれば、需給ギャップの改善に比較的明確に反応する、A中長期的な予想物価上昇率の高まりを反映して、「フィリップス曲線」自体も徐々にシフトアップしていく、との基本的な考え方がある(図表
41)。ただし、1月展望レポート時点と比べると、消費者物価の見通しは、成長率(需給ギャップ)の下振れや賃金上昇率の下振れなどにより、2016年度について下方修正となっている。』(今回)
となっていまして、1月では・・・・・・・・・・・・・
『上記の見通しを、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)でみたインフレ率とマクロ的な需給ギャップの関係を表す「フィリップス曲線」の枠組みで整理する(図表
41)。昨年初以降、足もとまでの動きをみると、直前に円安が急速に進行した
2013 年度の動きと同様、川下へのコスト転嫁が進捗するなかで、需給ギャップの改善以上にインフレ率は高まってきており、足もとでは、ゼロ近傍の需給ギャップのもと、1%台前半のインフレ率が実現している。』(前回)
とまあ、そもそもそのインフレ率は日銀コアであってヘッドラインにせよ総務省コアにせよそんな数値じゃないだろと思うのですが、まあそれは兎も角として「需給ギャップがゼロ近傍なのに物価は既に1%台前半です(キリリッ)」と大勝利宣言のような書き方になっていた訳で、そこから見ると「これまでと同様」と書いて同じだと言いたいのでしょうが、そうはいってもさすがに前回のは吹き過ぎという事になったんでしょうなあと思われるのが味わいが深い。
『2016 年度のインフレ率は、円安の押し上げ効果が徐々に剥落するものの、中長期的な予想物価上昇率が高まっていくことから、概ね需給ギャップの改善に沿って、緩やかにプラス幅が拡大するとみられる。2017
年度は、中長期的な予想物価上昇率が2%程度に収束していくなか、インフレ率は需給ギャップの横ばい圏内の動きを反映して、2%程度で推移すると考えられる。』(前回)
『このように、中心的な見通しでは、消費者物価の前年比は、需給ギャップの改善に比較的明確に反応していくとともに、フィリップス曲線自体も中長期的な予想物価上昇率の高まりを反映して、シフトアップを続けていくと想定している』(前回)
ということですが、今回の図表41にフィリップスカーブのプロットがあって日銀コアだとそれらしいものになっている一方で総務省コア(要はエネルギー)ではダメダメとなっていて、はいはいエネルギーのせいエネルギーのせい、としたいのは把握した。
ちなみにこの後物価と名目賃金の話をしていますが、こちらの説明は同じになっているので比較はしませんです。
『この間、物価と名目賃金の関係を確認しておくと(図表 42(1))、消費者物価と時間当たり名目賃金との間には、長い目でみれば、概ね同時に変動するといった安定的な関係が確認される。すなわち、企業は、名目賃金が上昇すると、そのコストを転嫁すべく販売価格を引き上げる一方、家計は、物価が上昇すると、実質購買力を維持すべく賃上げ要求を強めるという相互作用が働く。上記の見通しでは、時間当たり賃金が、労働需給の引き締まりや予想物価上昇率の高まりを反映して、所定内給与を中心に緩やかに上昇していくとともに、消費者物価もこれと整合的なかたちで徐々に基調的な上昇率を高めていく姿を見込んでいる。』(今回)
という理屈なのですが、家計に関して「物価が上昇すると〜」云々という事ですが、ではその物価は日銀コアなんですかと小一時間問い詰めたい訳でして、なんかこう説明において適宜都合の良いものをホイホイ持ち出してくる(そもそも日銀コアだって最初の頃はそういう話をしていなかったんですし)という作戦は相変わらずですなあと思うのでした。
ということで昨日の続きでした(汗)。
○3月決定会合議事要旨から
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2016/g160315.pdf
・MRFお助けと貸出支援をもっと増やしたい施策に関して
『W.「補完当座預金制度基本要領」の一部改正等について』の『1.執行部からの説明』から。
『「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとで補完当座預金制度をより円滑に運営する観点から、実務的な対応を講じることとしたい。具体的には、@基準比率の見直し方法の明確化、AMRFに係る「マクロ加算残高」の計算方法の特則の制定、B貸出支援基金等の利用促進策の導入等を行うために、「補完当座預金制度基本要領」の一部改正等を行うこととしたい。』
でもって『2.委員会の検討・採決』を鑑賞ですが、しらっとBがあるのは要は貸出支援基金が伸びないのでマズーというお話なんですけどね。
『委員は、執行部から説明があった実務的な対応について、これを実施することが適当であるとの認識を共有した。何人かの委員は、MRFが個人の証券投資の決済機能を担っていることを指摘し、その機能の円滑を確保することが適当であると述べた。』
機能の円滑を確保だったら何で昨年残高を上限にするとかにしたのかが良く分からんですが。
『また、複数の委員は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとで、貸出増加や成長基盤強化に向けた金融機関の取り組みなどを一層強力に支援することが適当であると述べた。』
つーか単にMB積みたいだけでしょBは。
『ある委員は、こうした工夫や改良を講じることで、マイナス金利政策の緩和効果を最大限引き出していくことが重要であると指摘した。』
??????????????????????
『この間、一人の委員は、実務的な対応を講じることは、マイナス金利の限界として誤解される可能性もあるため、情報発信面には十分に留意する必要があると付け加えた。』
どう見ても限界です。
『以上の議論を踏まえ、「『補完当座預金制度基本要領』の一部改正等に関する件」が採決に付され、全員一致で決定された。本件については、その骨子を対外公表文に記載することとされた。また、その詳細については、会合終了後、執行部より適宜の方法で公表することとされた。』
ということで。
・金融経済情勢の部分でははいはい大本営大本営という感じの話が
『X.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』の国内経済の部分辺りから。
『わが国の景気について、委員は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けているとの認識を共有した。』
はあそうですか。
『委員は、最近公表された経済指標には勢いを欠くものがみられるものの、家計、企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが作用するもとで、わが国経済の回復基調は揺らいでいないとの見方を共有した。』
『景気の先行きについて、委員は、当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられるが、家計、企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調を辿るとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加するとの見方で一致した。』
『そのうえで、委員は、わが国の経済は、基調として緩やかに拡大していくとの認識を共有した。 』
何ちゅうかこう??????ではありますが。
需要項目別の話でも例えば・・・・・・・・・
『輸出について、委員は、新興国経済の減速の影響などから、足もとでは持ち直しが一服しているとの認識で一致した。先行きの輸出について、委員は、資本財やIT関連が新興国経済の減速の影響から鈍めの動きとなるもとで、全体でも当面持ち直しの一服した状態が続くが、その後は、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加するとの見方を共有した。』
とまあホンマカイナという話がある中で、
『ある委員は、世界的にみて貿易活動は停滞気味であり、わが国の輸出についても、先行き必ずしも楽観できないと述べた。』
という指摘があったりしまして、まあそらそうよと思われるのですが、確かに大コケはしないのでしょうが、緩やかな回復ってそれ物価目標の達成ができるような勢いの回復はしないんじゃないですかねえという感じではあります。
消費の所ですけどね。
『個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に底堅く推移しており、先行きも、引き続き底堅く推移するとの認識を共有した。』
はあ。
『何人かの委員は、昨年 10〜12 月期の実質GDP(2次速報値)において個人消費が前期比マイナスとなったことについて、暖冬のほか家計調査のサンプル要因が影響しているとの認識を示した。そのうえで、複数の委員は、販売側や供給側の統計などを合わせてみれば、個人消費の基調に変化はないとの認識を示した。』
これはまあ展望レポートの所でもこんな話があるのでその線からの話だとは思うのですが、現実問題として消費以外の所でも力強い指標が見られない中なのに、「このような要因もあって本当は消費はそんなに弱くない」と言い出すのって戦局の悪化を神州不滅とか言い出しているような風情を感じる次第で、曳かれ者の小唄としか思えないんですけどねえ。
『この間、何人かの委員は、国際金融市場の不安定な動きの影響から、消費者のマインド指標がやや大きめの悪化となっている点に留意を要すると述べた。また、複数の委員が、年金生活者や低所得者が消費に慎重になっている可能性があるとの見方を示した。このうち一人の委員は、個人消費の指標の動きをよく精査したうえで、個人消費の実態を見極めていく必要があると述べた。』
どうみても後半のこの方々の指摘の方からまずは考えるべきではないでしょうかねえ。
でまあちょっと飛ばして『Y.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』を鑑賞。
・予想物価上昇率に関して何か1人で滑っている人がいるような気がしますが
『予想物価上昇率について、委員は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいるとの認識を共有した。複数の委員は、予想物価上昇率に関するサーベイ調査や市場の指標がこのところ弱めの動きを続けていることを指摘し、このところの原油価格の一段の下落が影響しているとの認識を示した。これらの委員は、こうした予想物価上昇率の動きが、今後企業や家計の行動に影響をもたらさないか注視する必要があると述べた。』
まあここまでは分かる。
『この間、一人の委員は、消費者や企業経営者が「もはやデフレではない」と認識していることに変わりはないとの見方を示した。』
?????????????????????????
・マイナス金利政策に関する議論が結構あるのでそれを鑑賞
『「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」導入が金融経済情勢に与えた影響について、大方の委員は、金利面では、マイナス金利の導入の効果は、既に現れているとの認識を共有した。』
『何人かの委員は、国債のイールドカーブが全ての期間で低下したことを指摘し、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は、イールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えるという狙い通りの効果を発揮していると述べた。』
問題は金利が下がったあと実体経済にどういう波及をするのかですけれども・・・・・・・・・
『一人の委員は、住宅ローン金利の低下は、住宅投資を刺激するほか、借り換えを通じて債務者の金利負担を軽減し、消費にもプラスに働くとの見方を示した。』
既に散々下がりきった金利で新規に刺激されるのかよとは思うのだが。
『また、複数の委員が、マイナス金利導入後も円高・株安が続いたことについて、世界的な投資家のリスク回避姿勢の過度の強まりを背景とするものであると指摘し、市場が落ち着きを取り戻すにつれて金利低下の効果はしっかりと波及していくとの見方を示した。』
出たな「やらなかったらもっと悪かった」攻撃。
『ある委員は、今後、金利の低下がどのように企業や家計の支出面に波及していくかを注視すべきであると述べた。また、複数の委員は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」はこれまで所期の効果を発揮してきた「量的・質的金融緩和」を一段と強化するものであり、実質金利の引き下げを通じて雇用・所得面を含め国民生活に幅広いメリットをもたらすということをしっかりと説明し、人々の理解を得ていくことが重要であるとの認識を示した。』
金利が下がった事が実体経済に波及するためには金融市場か貸出チャネルを通じる必要があるのですが、ということで・・・・・・・・・・・・
『こうした見方に対して、何人かの委員は、足もとでは、マイナス金利の導入に伴う負の影響が現れているとの認識を示した。』
キタコレ。
『これらの委員は、具体的な影響として、金融機関や預金者の不安を招いたこと、日本銀行の政策運営が分かり難いものとなったこと、金融市場の不安定化に拍車をかけたこと、行き過ぎた追加緩和期待が醸成されたことなどを指摘した。このうち複数の委員は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとでのポートフォリオ・リバランス効果について、国内の投資対象資産が限られていることから、必ずしも期待した効果に繋がっていないと付け加えた。』
海外の金利物とかに向かわれますと何のことは無い緩和効果のポートフォリオリバランスが海外に漏出するという話になりますからね。
でもって次が金融機関収益問題なのだが、どうも黒田総裁をはじめとする与党審議委員の皆さんは「貸出ルートによって実体経済に緩和政策の効果が出る」という話がすっかり頭の中から抜けていて、単に金融機関の収益ガーだけの話ですませようとしているというような浅い認識なんじゃネーノ疑惑がただよって参りますな。
『「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の金融機関収益や金融仲介機能への影響について、複数の委員は、日本の金融機関は高い財務健全性を維持しているほか、「量的・質的金融緩和」の導入以降、地域銀行を含め収益は高い水準にあることを指摘し、金融仲介機能が直ちに弱まるとは考え難いとの見方を示した。これらの委員は、日本銀行当座預金の階層構造の採用によって、金融機関収益への直接的な影響は緩和されていると付け加えた。』
いやだからそういう問題じゃないのだが。
『また、複数の委員が、金融機関の収益構造を抜本的に改善するためには、デフレから脱却し、低金利環境から脱することが不可欠であり、この点をしっかり説明していく必要があるとの認識を示した。』
そんな事は説明されんでも分かっているし、大体からして今までQQEでそうなるって鉦や太鼓で大宣伝していたからオペに協力したりしてたんですけど銀行はという話で、お前らそういう風に偉そうに言うけれども物価目標の実績が全然上がっていないし、低金利環境から脱するどころかドンドン金利下げて「効果が出ています」とか威張っているだけで、いつになったら物価目標を達成するのか全然見えない状況になっているのに何を偉そうに言うのかと申し上げたい。
『一人の委員は、銀行は長短金利差で利益を得るものであるが、利益の源泉が長短金利差だけということであれば、十分な金融仲介機能を果たしているとは言えないと述べた。』
この前の金懇挨拶から分かりますがどうせジンバブエなのだが、長短金利差「だけ」が利益の源泉ってまた極端化して話を矮小化するというどこのタブロイド紙かネット掲示板かよという感じでして、その程度の浅い認識で金融政策運営に関わられると世の中に害悪しかもたらさないので可及的速やかに辞任してくれませんかねえ。
『これに対し、複数の委員は、マイナス金利のもとでは、金融機関が資産・負債を圧縮することを通じて金融仲介機能が低下するリスクや、金融機関の過度のリスクテイクを通じて金融の不均衡が蓄積するリスクが高まるとの見方を示した。このうち一人の委員は、金融システムの安定をこれまで以上に重視していく必要があるとの認識を示した。』
どうみてもこちらの方が正しいのだが、まあ執行部方面におかれましてはこういう話もしたがらないということのようで、プルーデンスの観点はどこに逝ったのかと小一時間問い詰めたいですな。
とまあそういうことで。
2016/05/09
お題「まあ連休明けですので展望レポート背景説明から幾つか参ります」
ふーん。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160506a.pdf
設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するための指数連動型上場投資信託受益権買入等における指数の公表について
という話は兎も角として本日は連休明けなので(?)展望レポート虫干し系で。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1604b.pdf
経済・物価情勢の展望(2016年4月)
本文12ページ(ファイルの14ページ目)からが『【背景説明】』になりますが、これを一々全部前回比較をしていると21ページ分あって、書き物やっていると6時間くらいかかると思われますのでそれは気が向いたらやるかも知れませんが、まあ逐語比較を読んでもなんじゃそらでしょうし、つーことで概ねざっくりと。
前回はこちら。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1601b.pdf
経済・物価情勢の展望(2016年1月)
○背景説明を読むとエライ勢いで下方修正されているのだが何で物価の見通しがああなるのか
というのが全体を見た感想でございまして、以下(全部やっていると大変なことになるのでてきとうにやりますが)各項目を見ておりますと、まあ見事なまでに細々と下方修正が入っていまして、今回の展望レポートって最初の数字を見るとあまり下がっていないのですが、基本的見解を見ると下方修正入っているじゃんという感じになり、背景説明を見るとまあ見事なまでにあちこち下げているじゃんという形になっています。
でまあ説明に無理があるのは当然ではございますが、月曜日に展望レポート基本的見解をネタにした時にうっかりスルーしてしまった件がありまして、バカスカ現状認識を下げているのに何でそんなに物価の見通しが下がらない(半年ほども先送りにならない)理由として潜在成長率の置きをしらっと今回変えているのがあったりします(汗)。
つまり、本文3ページ目(基本的見解部分、前回は2ページ)の脚注ですけれども・・・・・・・・・
『5 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、このところ「0%台前半」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当の幅をもってみる必要がある。』(今回)
『5 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、このところ「0%台前半ないし半ば程度」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当の幅をもってみる必要がある。』(前回)
ということでしらっと潜在成長率の推計値が下がっておりまして、このせいで成長見通しが下になっても「潜在成長率を上回る成長」のバーが下がるので物価が行く、というお話になっているのですが、それって別の見方をすれば経済に何らかの不測の下振れが生じた時に物価見通しが行かなくなるリスクが潜在成長率が高い時に比べて大きいってことじゃないのでしょうかとか思う訳で、だったらやはりプリエンティブに緩和しないといけないんじゃ無いでしょうかというお話になるのだが、要は追加緩和やっても金利ショックやマネタリーショックを与える事は出来るけれども需要に直結する訳じゃないから、金融市場からの下振れ要因(つまり円高株安)が来ない限りは追加緩和やっても無駄という認識で今回追加緩和を行わなかった、という理解をしておけばよろしいのでしょうかねえ(ニヤニヤ)。
○細かく文言を下方修正しているんですよというのは最初の所から鑑賞(ここは細々と確認)
本文12ページの『1.経済活動の現状と見通し』から参ります・
『前回の展望レポート以降の日本経済を振り返ると、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられたものの、所得から支出への前向きの循環が維持されるもとで、基調としては緩やかな景気回復が続いた。』(今回)
『前回の展望レポート以降の日本経済を振り返ると、新興国経済の減速が輸出・生産面の下押しに作用したものの、原油安や為替円安にも支えられた前向きの所得形成メカニズムが維持されるもとで、景気は緩やかな回復を続けた。』(前回)
最初の所からいやーよくもまあ細かくいじってるなあと感心するのですが(^^)、3か月前のレビューと今回のレビューで「経済が緩やかな回復」という結論は同じなのですが、その回復の中に「基調としては」とヘッジ文言が入っているのは兎も角として、その回復のバックグラウンドとなる部分の説明が今回は「所得から支出への前向きの循環」となっていまして、前回は「原油安や為替円安にも支えられた前向きの所得形成メカニズム」となっていた訳でして、つまり3か月間の認識では前向きの「所得形成」メカニズムだったものが、今回は「所得から支出への前向きの循環(所得が前向きに形成されるとは言ってない)」という文言に変更になっている訳でして、まあこんな感じで物凄い勢いでちょこちょこと下方修正が入っているんですよ。
『実質GDPは、昨年7〜9月に、前期比年率+1.4%のプラス成長となったあと、10〜12
月は、主として個人消費と輸出が下押しとなり、同−1.1%のマイナス成長となった(図表1)13。この間、労働と設備の稼働状況を捉えるマクロ的な需給ギャップをみると、労働需給の引き締まりから労働投入ギャップは緩やかな改善基調にあるものの、新興国経済の減速などに伴う資本投入(製造業稼働率)ギャップのマイナスが下押しとなり、全体としてはゼロ%近傍で横ばい圏内の動きとなっている(図表3)。』(今回)
『こうした景気展開を反映して、実質GDPは、昨年4〜6月に若干のマイナス成長となったあと、7〜9月は国内民間需要の増加を主因に前期比年率+1.0%と潜在成長率を上回るプラス成長となった(図表1)14。また、労働と設備の稼働状況を捉えるマクロ的な需給ギャップも、4〜6月は製造業の資本稼働率低下の影響から一旦悪化したものの、7〜9月は労働需給の引き締まりを背景に幾分改善した(図表3)。』(前回)
こちらは数値の話になりますが、需給ギャップについても改善からゼロ近傍で横ばいに変化。
『景気の先行きについて、今回の見通しでは、新興国経済を中心とする海外経済の下振れに加え、為替円高や株価下落などの金融市場の不安定な動きの影響も念頭に、前回の展望レポート時点から、2016
年度を中心に、成長率を幾分下方修正している。』(今回)
『先行きについては、前回の展望レポートで示した考え方を、基本的に維持している。』(前回)
先行きの見通しに関して前回は追加緩和をしているのに維持、今回は何もしないのに見通しが下方修正とは何ぞこれという感じですが、追加緩和をした分を加味したからこういう結果になっている、という説明をするのでしょう。
『もっとも、原油安に支えられた過去最高水準の企業収益を起点として、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」に伴う実質金利の一段の低下とオリンピック関連需要が後押しとなり、景気の前向きな循環は続く、という基本的な考え方は従来から不変である。』(今回)
『すなわち、@原油安・円安という価格面からわが国の所得形成を支えてきた良好な外部環境が続くことに加えて、数量(輸出・生産)面でこれまでマイナスに作用してきた海外経済も緩やかに成長率を高めていくことから、企業収益の着実な改善は続く、A雇用者所得も、企業収益の改善や労働需給の引き締まりを背景に、緩やかな増加を続ける、と考えられる。』(前回)
ということで、これ前回は「格面からわが国の所得形成を支えてきた良好な外部環境が続く」という話をしている訳ですが、そのうちの円安部分がコケているのはさっきある通りなのですが、それでも基本的な考え方は不変としている訳で、前回の見通しの前提となる部分でコケ気味になっているのに追加緩和しなくて良いのでしょうかという風情。
『このように、外需・製造業部門を中心とした計数面での下方修正は行ったが、わが国経済は、消費税率引き上げによる振れを伴いつつも14、内需・非製造業部門を中心に、基調としては潜在成長率を上回る成長経路をたどると予想している。』(今回)
『こうした前向きの所得形成とその背後にもある金融緩和効果のもとで、支出面では国内民間需要が増加基調をたどることから、わが国経済は
2016 年度にかけて潜在成長率を上回る成長を続ける可能性が高い。2017 年度については、オリンピック関連需要が下支えに作用するものの、全体の成長率は、消費税率引き上げによる家計支出の落ち込みを主因に15、潜在成長率を幾分下回るという姿は前回から不変である。』(前回)
そもそも「潜在成長率を上回る成長経路」となっているその潜在成長率が下方修正されているというマジックが入っている上に、「基調としては」というのが今回入っている訳で、これ結構な下方修正になっているのに何で物価が行く見通し時期が半年程度(?)しか後ずれしていないのか全く持って意味分からん、という内容になっているのですよ今回の展望レポートの背景説明って。なおさっきと同様に「前向きの所得形成」から「前向きの循環」にしらっと変わっています。
年度別展開は基本的見解にもありますがもうちょっと詳しいので鑑賞。
2015年度の話は終わっているので今回無くて、前回のを念のため鑑賞します。
『見通し期間の各年度の特徴をみると、2015 年度末にかけては、新興国経済の減速の影響が徐々に和らぐもとで、輸出は持ち直しから緩やかな増加に向かうと予想される。上期にややもたついていた設備投資は、積み上がっている受注残が出荷に向かうなかで16、増加ペースを幾分増していくと見込まれる。個人消費は、需要側統計の弱さや天候不順の影響から
10〜12 月は弱めの動きとなるものの、基調としては、雇用・所得環境の改善やエネルギー価格の下落、消費者マインドの改善に支えられて底堅く推移するとみられる。この間、公共投資は緩やかな減少傾向を続ける可能性が高い。以上の動きを反映して、実質GDPは振れを伴いつつも潜在成長率を上回る成長となり、需給ギャップは年度末にかけてプラスに転じていくと見込まれる。』(前回)
輸出と生産が見込み違いで需給ギャップはプラスに転じませんでしたなあ、って半年前の展望レポートなら兎も角、今年から展望レポートが3か月ごとになって、そのたびに細かくこういう説明をしている訳でして、3か月でこの結果というのはそれは前回の見通しが甘かったという話になりますよね、と思いますがどうでしょうか。まあ今回も結論の計数は甘々ですけれども、説明内容を細々いじってきているのはその辺り踏まえたんでしょうかね。
『見通し期間の各年度の特徴をみると、2016 年度の上期は、新興国を中心とした海外経済の減速を主因に、景気改善のテンポが鈍化した状態が続くと予想される。すなわち、輸出・鉱工業生産は、地震や自動車のサプライチェーン問題の影響による振れを伴いつつ、基調としては横ばい圏内の動きとなり、企業収益は、高水準を維持しつつも、製造業を中心に改善ペースが一旦鈍化するとみられる。そのもとで、設備投資は、非製造業に支えられて緩やかな増加基調を維持するものの、製造業では一旦鈍めの動きになると見込まれる。この間、個人消費は、雇用者所得の改善とエネルギー価格の下落、年金生活者向けの給付金の支給に支えられて、底堅く推移すると予想される。同年度下期には、新興国経済の減速の影響が徐々に和らぐもとで、輸出や企業収益は次第に改善基調に復するとともに、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が、家計支出(個人消費と住宅投資)と設備投資の一部で発生することから、成長率は前期から加速するとみられる。以上の景気展開を反映して、需給ギャップは暫くゼロ%近傍で横ばい圏内の動きとなったあと、年度末にかけてプラス幅を拡大していくと予想される。』(今回)
『2016 年度については、公共投資は、前年度の補正予算の執行に伴って、減少ペースが緩やかになると想定している。輸出は、新興国経済が減速した状態から脱していくに伴い、緩やかに増加していくとみられる。国内民間需要も、原油安にも支えられた企業収益の改善や実質可処分所得の増加を背景に、しっかりと増加すると見込まれる。さらに、下期には、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が、家計支出と設備投資の双方で再び発生することから、潜在成長率をはっきりと上回る成長が続くと予想される。』(前回)
ということで手抜きで途中のブツ切りをサボっていますが、年度前半の成長率は明確に下方修正していて、輸出と生産は緩やかに増加とかしっかりと増加みたいな話から下方修正していまして、消費税増税の駆け込み需要に関しても前回は「家計支出と設備投資の双方で再び発生」だったのが「家計支出(個人消費と住宅投資)と設備投資の一部で発生」となりまして、何でこんな細かい所まで下げるんだ(まあそれ以前の問題として消費増税そのものが怪しいですがそれはさておき)という形になっています。
でもって結論に関しても前回は年度後半において「潜在成長率をはっきりと上回る成長が続くと予想される」となっているのに、今回は「需給ギャップは暫くゼロ%近傍で横ばい圏内の動きとなったあと、年度末にかけてプラス幅を拡大していくと予想される。」として、何かこう威勢の良くない表現になっているんですよね。
『2017 年度については、輸出は、海外経済の回復を背景に、緩やかな増加を続け、設備投資も、金融緩和効果やオリンピック関連需要に支えられて、緩やかな増加基調を維持すると考えられる。一方、家計支出は、駆け込み需要の反動減と実質所得の減少効果から、はっきりと減少すると予想される。このため、全体の成長率は、前年度から大きく鈍化し、潜在成長率を下回る若干のプラスにとどまる可能性が高い。こうした動きを反映して、需給ギャップは、プラスを維持しつつも、上期を中心に一旦小幅に悪化すると見込まれる。』(今回)
『2017 年度については、設備投資の循環的な増加ペースが次第に鈍化するなかで、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減や実質所得の減少効果が発生するため、成長率は前年度から大きく低下するとみられる。ただし、輸出の緩やかな増加が続くほか、国内民間需要は、金融緩和効果に加え、成長期待の高まりやオリンピック関連投資による押し上げ効果もあって、基調的な底堅さを維持すると考えられる。このため、潜在成長率を幾分下回るもののプラス成長となり、年度平均でみれば需給ギャップは概ね前年度並みのプラス幅を維持すると見込まれる。』(前回)
今回は17年度に関しては「設備投資の循環的な増加ペースが次第に鈍化する」というのがしらっと無くなって、設備投資はホイホイと出てくるという図になっています。まあ言ってる理屈としては「設備投資が手前であまりでなくなったので循環的な増加ペースの鈍化も発生しませんよ」ということなのでしょうし、前回は17年度の成長率を「前年度から大きく低下」としたものを今回「前年度から大きく鈍化し」という表現にしているのも同じように手前が下がったから先の落ち込みが少なくて済むんです(キリッ)という理屈になるのでしょうが、まあ何ちゅうかそうやって帳尻を合わせないと話が纏まらんのでしょうが、そもそも前回の時点での16年度の成長見通しもそんなに強いものかいなという気がしますけどねえ。
18年度は今回しかありませんのでまあ鑑賞用に。
『2018 年度については、輸出は、海外経済の改善を反映して、小幅に伸びを高めるとともに、国内民間需要も、金融緩和とオリンピック関連需要による押し上げ効果に消費増税後の反動減の剥落も加わり、しっかりと増加すると考えられる。こうした内外需要の増加を受けて、成長率は再び潜在成長率を上回り、需給ギャップもプラス幅を拡大すると見込まれる。』(今回)
はあそうですかという感じです。
○本当は各項目を細かく見ると細かく下方修正が入っているのが鑑賞できますが物価にワープ
次が『1.2 主要支出項目の動向とその背景』でして、こちらもまあ細々と下方修正が丁寧に入っている感じで、下方修正されていないのは政府支出と対外収支と労働需給(ただし賃金は当然ながら微妙)という感じになっていますが今日はそこはパス。
でもって『2.物価の現状と見通し』の『(物価の現状)』は飛ばして『(物価を取り巻く環境)』をば。
『先行きの物価情勢を展望するにあたり、物価上昇率を規定する主な要因について点検する。第1に、マクロ的な需給ギャップは(前掲図表3(1)、図表
38(2))、このところ、ゼロ%近傍で横ばい圏内の動きとなっている。先行きも、当面は、資本投入(製造業稼働率)ギャップの鈍さを主因に横ばい圏内の動きを続けるものの、2016
年度後半には、輸出・生産面の改善に加え、消費増税前の駆け込み需要による内需の押し上げもあって、労働・資本の両面から、プラス幅をはっきりと拡大する。2017年度上期には、駆け込み需要の反動減から、需給ギャップは、一旦小幅に悪化するものの、同下期以降は、潜在成長率を上回る経済成長を反映して、再びプラス幅を拡大していくと考えられる。』(今回)
『先行きの物価情勢を展望するにあたり、物価上昇率を規定する主な要因について点検する。第1に、マクロ的な需給ギャップは(前掲図表3(1)、図表
38(2))、2015 年度末にかけて、輸出・生産の持ち直しを受けた製造業稼働率の上昇や労働需給の更なる改善などを反映して、過去の長期平均並みを表すゼロを上回り、小幅のプラスまで改善すると予想される。2016
年度中は、下期には駆け込み需要による成長率の加速も見込まれるもとで、景気拡大に伴う生産要素の稼働状況の高まりを反映して、プラス幅を着実に拡大していくとみられる。2017
年度には、消費再増税の影響から成長率が潜在成長率を幾分下回る結果、需給ギャップはプラスを維持しつつも横ばい圏内の動きになると想定している。』(前回)
需給ギャップについては先程までと同様で、そもそも前回対比で足元の需給ギャップ推計値が悪化しておりまして、当面も「資本投入(製造業稼働率)ギャップの鈍さを主因に横ばい圏内の動きを続けるものの」とあってダメじゃん感が強いのですが、中々味わいがあるのは16年度後半に向けての説明でして、今回は「労働・資本の両面から、プラス幅をはっきりと拡大する。」となっていまして、前回の「景気拡大に伴う生産要素の稼働状況の高まりを反映して、プラス幅を着実に拡大していくとみられる。」と比較してどっちが強いのよという感じですが、前回は「みられる」だったのが今回言い切りがたになっているのは願望成分が強くなって(キリッ)って感じになったという所ですかねえ。
予想物価上昇率の所はブツ切り鑑賞してみましょう。
『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。』(今回)
『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、このところ弱めの指標もみられているが、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)
これは基本的見解の所にもあったので再掲ちっくですが、こういう感じで「主文がひっくり返って弱くなっている」というのが(さっきすっ飛ばした)個別需要項目に関する説明でも非常に多く見られまして、まあ何と申しますか非常に丁寧に細かく下方修正いれてるんですよ、という代表例ということでここで切ってみました。
『すなわち、予想物価上昇率に関するマーケット関連指標やアンケート調査結果は、このところ弱含んでいる(図表
39、40)。一方、消費者物価の基調的な動きを示す指標に窺われるように、企業は、昨年度以降、エネルギー価格の下落から総合ベースの消費者物価上昇率が低迷するなかにあっても、前向きな価格設定スタンスを維持しており、消費者も、雇用・所得環境の改善などを受けて、価格改定を受容しているとみられる。』(今回)
『すなわち、マーケット関連指標やアンケート調査のなかには弱めの指標もみられているが、企業の価格・賃金設定スタンスは、特に本年度入り後、明確に変化している(図表
39、40)。消費者も、雇用・所得環境の改善などを受けて、価格改定を受容しているとみられる。』(前回)
つーことで、今回は企業の所で「価格・賃金設定スタンス」のうち賃金の方が残念なことに抜けておりまして、なんちゅうかもうこの今回の「費者物価の基調的な動きを示す指標に窺われるように、企業は、昨年度以降、エネルギー価格の下落から総合ベースの消費者物価上昇率が低迷するなかにあっても、前向きな価格設定スタンスを維持しており」という表現に悲痛なものを感じるのは気のせいですかそうですか。
『すなわち、賃金の上昇を伴いつつ、物価上昇率が緩やかに高まっていくというメカニズムは着実に作用していると考えられる。』(今回)
『こうしたもとで、価格改定の動きは拡がりと持続性を伴っている。また、労使間の賃金交渉においては、一昨年以来、企業業績や労働需給に加え、物価動向を賃金に反映する動きが拡がっている。』(前回)
こちらも悲しみを感じますな。
『先行きについては、日本銀行が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。』(今回)
『先行きについても、日本銀行が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。』(前回)
という結論が同じになっているのですが、その前の部分がだいぶ悲しい事になっているのにもう相当無理がある(もともと無理があるのだが)という感じですな、ナムナム。
ということで輸入物価。
『第3に、輸入物価についてみると(前掲図表 32)、原油価格(ドバイ)は、1バレル
35 ドルを出発点に、先物カーブに概ね沿うかたちで緩やかに上昇し、見通し期間の終盤である
2018 年度には40 ドル台後半に達すると想定している。』(今回)
『第3に、輸入物価についてみると(前掲図表 32)、原油価格(ドバイ)は、1バレル
35 ドルを出発点に、先物カーブに概ね沿うかたちで緩やかに上昇し、見通し期間の終盤には
40 ドル台後半に達すると想定している。』(前回)
これは元々市場の数字を入れて置きにしているのですが、1年ほど後ずれですね。
『そうした前提のもと、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対するエネルギー価格(石油製品・電気代・都市ガス代)の寄与度をみると、2016
年度上期に−1%強のマイナスを続けたあと、同下期にはマイナス幅縮小に転じ、2017
年央には概ねゼロになると試算される。』(今回)
『そうした前提のもと、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対するエネルギー価格(石油製品・電気代・都市ガス代)の寄与度をみると、2016年度前半は−1%程度のマイナスを続けたあと、次第にマイナス幅は縮小に転じるが、同年度末までマイナス寄与が残ると試算される。』(前回)
まあここはこんなもん。
『為替相場の動向が消費者物価に及ぼす影響についてみると、既往の為替円安が食料工業製品や耐久消費財など為替感応的な品目の価格を「直接的」に押し上げる効果(1次的な波及効果)は、足もとの円高進行の影響もあって、先行き緩やかに減衰していく可能性が高い。一方、既往の為替円安が、需給ギャップやインフレ予想の改善といった「間接的」な経路を含めて、物価を押し上げる効果(出尽くしベースの波及効果)は、持続的に作用すると考えられる35。』(今回)
『為替相場の動向が消費者物価に及ぼす影響については、個人消費が底堅さを増していくもとで、既往の為替円安によるコスト高を転嫁する動きは、緩やかに減衰しつつも、暫くの間、続いていくと考えられる35』(前回)
ということで、円高になってしまったのでこの部分の説明も相当苦しくなっているという感じですな。
#という所で時間が無くなったので物価見通しの所は明日にでも
2016/05/06
お題「市場雑談と総裁会見です」
一瞬アイヤーという感じだったがまあこれならおはぎゃあという程でもなかろう。
#3日も休むと月曜が遠い昔に思えますが3日働いていると月曜がついこの前にしか思えない現象についての名前ってありましたっけ
○市場メモ関連
・短国買入今回は603回が入るの巻
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of160502.htm
国庫短期証券買入 20,000 2016年5月9日
国債買入(残存期間1年以下) 700 2016年5月9日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,400 2016年5月9日
国債買入(残存期間25年超) 1,600 2016年5月9日
ついでに後の話の都合上輪番も入れていますが、まあここ見ても何回債が買入対象とか書いていないのでアレですけど今回は603回が対象に。
http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php
売買参考統計値/格付マトリクス ダウンロード
まあ何ですな、こちらで確認しますと603回の平均値単利は2日付の分が▲30.8bpでして、周りの銘柄だとその後に入札やってた604回が▲28.5bpとそこまで違わないので対象になりましたという所ですが結果。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba160502.htm
国庫短期証券買入 37,275 20,001 -0.009 0.012 54.5
国債買入(残存期間1年以下)1,478 701 -0.025 -0.008 53.1
国債買入(残存期間10年超25年以下)8,138 2,404 -0.053 -0.046 32.4
国債買入(残存期間25年超) 5,360 1,601 -0.090 -0.064 34.4
落札結果を見ますと37275億円も札がありまして、ワロタとしか申し上げようがない訳ですが、それでも2兆も札打ち込んだ(帳尻のため)こともあって結局足切は引け強ということで、何のことは無い結局強いじゃんという結果。
ちなみにこれ引値対比でみているからまあ普通の入札なのですが、毎度お馴染みのように入札時と比較してみますと・・・・・・・・・・
603回
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20160421.htm
(募入平均利回り)(-0.2044%)
604回
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20160427.htm
(募入平均利回り)(-0.2473%)
売買参考統計値5/2付
603回:▲30.8bp
604回:▲28.5bp
となっていまして、いやまあ何と申しますか買入の結果を金利水準で見た場合には相変わらずの結果になっておりまして、そもそも資金の流動性に問題がない(どころかエクセスリザーブの一部にマイナスチャージ)状態で短期のオペをこれだけせっせと短国とMBの交換によってMBを増やさないといけないやらないといけない理由って何でしたっけと思いますと、MB直線一気理論以外に無いと思うのですが、MB直線一気理論って結局どうなっているんでしたっけちゃんとレビューしてないですよねえと思うのでありました。
ちなみにですが、603回債の6日付の売買参考統計値は▲30.1bpと、短国買入で玉が吸い上げられて需給が締まる筈なのになぜか前日よりも金利が上昇(水準がここまでくるとほぼ誤差ですが)するという辺りに味わいの深さを感じますな。
・輪番とかも少々
さっき引用した中で輪番もありましたが、今回は輪番超長期の調整(10-25が+200で25-40が-200)があった直後に早速打ち込みの巻だったのですが、何だ200億円調整しても結局輪番どっちも強いじゃんという所で、普通に30年も強く推移していまして、20-30のカーブガーとか月曜の朝の駄文で書いたのがうっかり特級フラグ建築士になる所で勝手に焦っておりました(−−;
でもって引値は一応20年と30年を5糸スティープさせていましたが、追加緩和を見送ろうとも超長期の輪番が後ろをいじられようとも堅調に推移する債券市場(何せ付利下げの懸念もある中だった筈の2年以下ゾーンとかも全体として見たら28日と2日のトータルで金利って概ね下がっているというこの需給相場)というこの状態は何なんでしょうかねえと。
・ところでコール市場の残高が増えておりますよ
http://www.tanshi-kyokai.com/
短資協会
例によって例のごとく下の右の方にある
○ 時系列データのダウンロード
http://www.tanshi-kyokai.com/cgi-bin/3_csv_load.cgi
をポチっとなとしてCSVファイルを見ますと、最近取引がちょっと増えてきているという状態になっておりますので念のためメモをしておきましょう。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGC30H01_Q6A330C1MM0000/
信託銀各社、ファンドの資金に手数料 マイナス金利負担を転嫁
2016/3/30 13:36日本経済新聞 電子版
既報のように18日から現金というか預金の一部に本格的にマイナス金利が適用(というか日銀チャージの転嫁)が開始になりまして、ご案内の通りコールレートが低下した(有担保のレートがゼロのままになっているのが謎なんですけど・・・・・・・)のですが、取引の方はどうなのかとみておりますと、直近で見れるのが4/28の数字(たぶん10時過ぎになると5/2の数字が見れる)なのですが、有担14327億円に無担46736億円とだいぶ増えてきておりましてほほーという感じです。
ちなみにもうちょっと細かく申し上げると
昨年12/16-2/15(マイナス金利始まる前)平均
有担:135,081
無担:82,070
2/16-4/15平均
有担:13,606
無担:34,026
4/28
有担:14,327
無担:46,736
となっていまして、まあそこそこ戻っているのは無担だったりしますが、何で有担保戻らないで無炭の方はそこそこ戻るのかと言えばそれはコール取引の業態別残高(月初数日すると日銀が出してくる)を見れば分かりますが、資金の出し手ベースで見た場合信託の出しって有担と無担とありますけれども、無担の方は投信ばっかりということですので、まー要するに投信がマイナス金利を避けて資金を出してきているので取引が徐々に増えてきているという図でございまして、まあ日銀的には三層構造でマクロ加算部分と政策金利部分の枠の交換的な取引でコール市場の取引が行われて市場機能が維持される!という話ではあるので、日銀としてはやっと思惑通りの展開になってきましたとニッコリの展開ではあるかと思いますが、資金出している方としては政策金利のマイナスを食らって泣きながらよりマシなマイナス金利で資金を放出しているという事で、後ろから刃物で斬り付けられながら泣きながら前に向かって流血しながら進んでいるという風情ではありますな、ナムナム。
ちなみに4/18-4/28の平均を取ると
4/18-4/28平均
有担:12,645
無担:36,285
なので、取引高が増えたよと喜ぶのはまだ早いのかもしれませんが、まあ足元に来て段々増えて来ているから取引自体は今後増えるかもしれませんけどね。
○総裁会見である
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2016/kk1605a.pdf
・2年で達成の話is何処????
冒頭の説明ですけどね。
『この間、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入によって、国債金利は大幅に低下しており、貸出の基準となる金利や住宅ローン金利もはっきりと低下するなど、政策の効果は、金利面では既に現れています。今後、その効果は、実体経済や物価面にも着実に波及していくものと考えられます。』
はいはい蕎麦屋の出前蕎麦屋の出前。
『もっとも、こうした効果の波及には、ある程度時間が必要であるほか、現状では、国際金融市場において、新興国や資源国の経済の先行きに関する不透明感などから、不安定な動きが続いているもとで、前向きな変化が現れにくい状況にあります。』
来ました言い訳。そもそも実体経済に波及していくのに時間が掛かるんだったら「2年で2%」にどういうパスで達成するのでしょうかと思いますし、追加緩和に関しては「国際金融市場のせい」ということにしていますが、少なくとも1月以降の国際金融市場でどこかボロボロの所ってありましたっけと思いまするに、国際金融市場のどこがどうマイナスに効いているのかの説明って無いんですよね〜。
『このため、今回の会合では、政策効果の浸透度合いを見極めていくことが適当であると判断しました。』
要するにてきとう。
『もとより、世界経済の先行き不透明感が強いもとで、わが国の経済・物価の下振れリスクは引き続き大きいとみています。今後、毎回の決定会合において、経済・物価のリスク要因を点検し、その上で物価安定の目標の実現のために必要と判断した場合には、躊躇なく、「量」・「質」・「金利」の
3 つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じます。』
ということなので、そもそも2年で達成とか言いながら既に3年経っているのですから、最初のコミットメントを重要だと思うのならドンドン追加緩和しないといけないですし、そうじゃないなら「2年で達成」というのを引っ込めて、より長期戦に向いた緩和手法にしないといけないのに、3方向全部拡大とかどう見ても数年タームで持たない政策を突っ込む手法を止めないといけないでしょうし、何かもう戦線を広げ過ぎて全戦線において崩壊している感じですな。
・まあ一番良いのはこの質問を延々と続けることなのでしょうな
『(問) 今回、物価目標の達成時期の先送りがあり、これはその都度色々な理由があると思うのですが、これで
4 回目になります。約束が守られずに先送りを繰り返している状況にあるわけですが、総裁としてこの件の責任について、どのようにお考えでしょうか。(後半割愛)』
まあ何ですな、この責任もさることながら「何で先送りになっているんですか」というのを逐一全部理由を入れてもらって「じゃあ今度は何故達成できると思うのですか」と逐一聞き続ければ実は日銀は最後にこたえられなくなるのではないかと思ったりもするのです。あとは「ところで前回行くと言って居たものを先送りにしたのは、当然ながら読み間違えの部分があった筈で、その読み間違えは何ですか」と延々と聞くんですけどね。
でまあ答えが長い。
『(答) まず、2%の「物価安定の目標」の達成時期が幾分遅れて、従来の「2017年度前半頃」から「2017
年度中」に後ずれした理由については、展望レポートで示されている通りです。』
『 日本銀行としては、ご案内の通り、本年の 1 月に既に金融市場が世界的に不安定な状況のもとで、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延して、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大していることを踏まえて、そうしたリスクの顕在化を未然に防ぐという観点から、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定しました。』
モメンタムが維持されているんだったら達成時期が先送りになるのはおかしいですね。
『その後の状況をみますと、確かに企業の業況感が、新興国経済との関連で慎重化している向きもありますが、依然として企業は過去最高水準の収益を上げています。また、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」に伴う実質金利の一段の低下効果もあり、直近の短観で示されている通り、前向きな投資姿勢が維持されています。個人消費も一部に弱めの動きはみられると申し上げましたが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移しており、これも先程申し上げたように、春闘における3
年続きのベースアップもありますし、労働需給の引き締まりを背景に、中小企業においても賃上げの動きが広がっていますので、基本的に所得から支出への前向きな循環メカニズムというのは、家計・企業の両部門で持続していると考えています。特に、企業収益から雇用者所得への波及というものが維持されており、賃金の上昇を伴いつつ物価上昇率が緩やかに高まっていくというメカニズムは、着実に作用していると考えています。』
でも達成時期が先送りになったんですからモメンタムが維持できていないということでしょうし、だったら追加緩和しないといけないんじゃないでしょうかねえ。
・・・・・・・とか突っ込んでいて思ったのですが、展望レポート年4回にしてその都度物価達成見通し時期を後ずれさせていくと政策判断と説明の間に齟齬が出まくるということになる(中間レビューでは数字をいじっても2%達成時期に関する見通しをわざわざ書く必要が無いのだが、展望レポートだと2%達成時期に関する見通しを毎回書かないといけないから)という事に気が付いたので、記者の皆様におかれましては是非この線でネチネチ突っ込んで頂きたいものだと今回思うのでありまする。
『従って、わが国の経済は、基調として潜在成長率を上回る成長を続けて、そのもとで物価の基調が着実に高まり、消費者物価の前年比が
2%に向けて上昇率を高めていくと予想しています。冒頭申し上げた通り、成長率が幾分下振れして、賃上げも
1 月に想定していたよりも若干下振れしたということ等を背景にして、2%の達成時期が若干後ずれしたということは事実ですが、これはあくまでも経済見通しですので、直近までのあらゆるデータを分析して、最も適切な見通しを作ったということです。』
ということで成長率が下振れしているのが海外だから、海外と賃上げのせいという事にしているようだ。
『一方で、2%の「物価安定の目標」を 2 年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現するという強いコミットメントは続けていますし、この展望レポートにもあるように、2%の「物価安定の目標」は十分達成できると考えています。』
って4回も先送りしているんですけどねえ。しかも2年どころか3年経過してあと2年で達成とかお前は何を言ってるんだ状態だし、必要な緩和はやったとか最初に豪語していた時の出来上がりから見たらどれだけ余計に緩和しているのかと小一時間問い詰めたい。
更にこういう質問が次の人から。
『(問) 今の質問とも多少関連しますが、2 点お伺いしたいと思います。物価2%の達成時期の先送りですが、これまでの
3 回の先送りは全て原油価格の下落を大きな理由としていました。今回は、一方で需給ギャップの縮小の遅れであり、もう一方は総裁が重要視されていた賃上げの遅れなわけで、これまでの3
回とは質が違うのかと思います。それにもかかわらず、追加緩和に動かれなかったということは、早期に
2%を達成するというこれまでの姿勢が変わってきたのではないかという印象も持ちますが、そのようなことでよろしいのか、お考えをお聞かせ頂きたいというのが
1 点です。(後半割愛)』
(;∀;)イイシツモンダナー
『(答) 前の点につきましては、2%の「物価安定の目標」の達成時期について、後ずれしてきたことの最大の理由が原油価格の大幅な下落だったことはその通りでありまして、そのように説明してきました。今回、1
月の見通しと比較した場合に、先程申し上げたように、海外経済の減速に伴う輸出の下振れなどから、成長率が若干下振れたということと、今春の賃金改定交渉の動向を踏まえると、賃金上昇率の見通しが
1 月の時点よりも若干下振れていることが影響しているわけです。』
同じ話をするな。
『ただ、その背景には、やはり原油価格の低迷であるとか、新興国、資源国の経済の減速であるとか、そういったことが影響していたということもあると思います。ここでの説明は、あくまでも
1 月時点との見通しの違いを具体的に申し上げたということです。私どもの 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する、そのためにできることは何でもやるという姿勢に全く変化はありません。』
全然答えになっていないという事で、要するに政策反応関数としては「2年で2%」というものは存在していませんという事だとしか思えませんね。
さらに後の方でも質問されていまして・・・・・・・・・
『(問)(前半割愛)もう 1 点は、今回、物価上昇率の達成時期を先送りしながら据え置きということで、これも非常に分かりづらいところはあると思いますが、先般ワシントンでG20があり、通貨安政策について牽制する発言が各国首脳から相次いだと思います。そういったところも今回の議論に影響があったのかどうか教えて下さい。』
だいたい答えが苦しい場合に思いっきり簡単にするのか思いっきり長々とするのかのどちらかだと思うのですが、どうも黒田さんは思いっきり話をする(まあそっちの方が普通だと思う)傾向にあるようで・・・・・・・・・・・・
『(答)(前半割愛)それから、物価 2%の達成時期が後ずれした一方で金融政策を据え置いたことについては、縷々申し上げています通り、まずは本年
1 月に既に、いわば英語でいう preemptive(予防的)に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入しました。そうしたもとで家計・企業の両方において、所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続していますし、企業収益から雇用者所得への波及というものも維持されています。賃金の上昇を伴いながら物価上昇率が緩やかに高まっていくというメカニズムは着実に作用していると考えています。』
同じ話の繰り返し。
『その上で、この「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の効果──これは金利面では既に現れています──が、今後実体経済や物価面に着実に波及していくと考えられます。』
これも「そうなるでしょう」なのだが、そもそもQQEだってあれだけのMB拡大と金利の引き下げをしている訳で、それが結局今になっても物価目標達成していない訳でして、それに対して今回マイナス金利にしたら何で急に効きが良く成るのかという説明を頂きたいし、そもそも論としてマイナスの預金金利が無いとか言ってる中でマイナス金利ってどういう形で波及するのかも良く分からんのですけど。
『こうしたもとで、今回の会合では、政策効果の浸透度合いを見極めていくことが適当であると判断したということです。今後も毎回の金融政策決定会合において経済を全体としてよく点検して、その次の会合までにどのような金融政策をとるかを決定していくものであり、先程来何度も申し上げているように、必要と判断すれば躊躇なく追加的な緩和措置を講じるという考え方に変わりはありません。』
『それからG20の会合等に私も参加していましたが、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」──ECBの場合も同様でマイナス金利そして量的・質的な金融緩和を行っているわけですが──、そうしたものに対して批判的な意見はまったく聞かれませんでした。G20のコミュニケでも為替の強制的切り下げというのはよくないということは言っていますが、一方で金融政策は国内政策目標に沿って運営されるということも言っています。私どもの金融政策もあくまでも「物価安定の目標」の達成のために行われているということについて、十分理解が得られていると思いますし、今後とも必要があれば躊躇なく
3 つの次元で追加的な措置を取るということも申し上げて、特に反論のようなことはありませんでした。』
別の質問でもあったのですが、引き続き政策の限界みたいな話をされると反論するというのが仕様のようでして、円高と政策の限界と言われるの(と多分消費増税が行われないこと)には暴れるというのが黒田日銀の仕様のようですな、ナムナム。
ちなみに別の質問でこの質問の前の方ではこんなのも。
『(問)(前半割愛)もう 1 つが、今回動かなかったということで、銀行だとか経済界からもマイナス金利に対する色々な批判がありますが、マイナス金利の拡大に動きにくくなっているのではないか、緩和カードが尽き始めているのではないかという観測もあるかと思います。それに対してどのようにお考えなのか伺いたいと思います。』
『(答)(前半割愛)それから 2 番目の点ですが、マイナス金利についての金融機関その他の批判によって、マイナス金利をさらに引き下げることが難しくなったというようなことは全くありません。必要があれば、まだまだいくらでもマイナス金利を深掘りすることができると思いますし、先程申し上げたように、2%の「物価安定の目標」の早期達成のために、必要になれば躊躇なく「量」・「質」・「金利」の
3 つの次元で追加的な緩和措置を講ずるということに変わりはありません。』
単に意地になっているだけですな。
・ブルームバーグの例のアレ関連
『(問)(前半割愛)もう 1 点は、今回の会合前に金融機関への貸出金利をマイナスにすることを検討するという報道がありましたが、総裁はこうした案についてどのようにお考えでしょうか。また、今回の会合で、実際にこの案について検討した、あるいはどなたか委員の方から検討に値するとか、意見が出たのでしょうか。』
『(答)(前半割愛)2 番目のご質問で、マイナス金利で日本銀行が金融機関に貸し付けることについてどうかということですが、これはご案内の通り、ECBが
3 月に採用した緩和措置の中に含まれているものですが、今回こういったことについて議論したということはありません。』
思いっきり頭ごなしに否定というのが実に味わいがありまして、いやあブルームバーグやっちまいましたなあというか、そもそも「案としてこういうのもあるのではないかと日銀分析をするアナリストなどが話をしている」程度の記事を英文ヘッドライン詐欺入れてしまうというのが悪質なのでありまして、展望レポートの内容や決定事項を事前報道しちゃう(そういえば今回は無事でしたな)どこぞの経済新聞とは別の意味での悪質さがございますな。
まあブルームバーグの某記者が質問すると物凄い勢いで嫌な顔をするのが会見放送を見ても良く分かる総裁ですのでここのあたりはざまあwwwwみたいな感じで答えていたんですかねえ(今回のは見てないので知らん)。
・マイナス金利なんだから効かない訳は無いという大和魂理論
『(問) 先程の総裁のご説明の中で、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の効果が出るまでにはある程度時間がかかるし、前向きなものが表れにくい理由として、新興国経済が不安定だということをご指摘になっていました。今回の見通しだと、2016
年度には 0.5%くらいに物価が上がらないといけないので、今の状況を考えると今年度の半ばくらいから物価が上がっていかないと、なかなか均して
0.5%というのは難しいのではないかと思います。』
ですなあ。
『いつになったらマイナス金利の効果が出てくるのかという点、またそれを阻んでいるものは海外要因が非常に大きいという理解でよいのかどうかについて、お聞かせ下さい。』
(;∀;)イイシツモンダナー
『(答) マイナス金利に限らず、金融緩和は、基本的には金利、特に実質金利を引き下げて、それが投資や消費にプラスの影響を与えるということを目的とした政策ですが、実質金利が下がっていることは間違いありません。それもかなり下がっています。』
賃金動向からみた場合のインフレ期待は????
『従いまして、これが設備投資、住宅投資その他、国内需要にプラスに効いてくるというのは間違いないと思うのですが、』
でも2013年の時点から「期待インフレを上げて実質金利を下げれば」って言って今の話をしていて、日銀によれば期待インフレも上がっている筈なのに全然効いてないですよね。
『それまでの間、若干のタイムラグがあるということは、従来、認められていることです。どのくらいかというのは、具体的に申し上げるのはその他の事情にも関連しますので、難しいです。1、2
か月ですぐに出るということではなくて、もう少しかかると思いますが、半年も
1 年もかかるということではないと思っています。』
これまでの実績は????
『いずれにしましても、重要なことは、これだけ実質金利が下がって、短観をみても、企業からみた金融の緩和の度合いは非常に大きくなっていますし、また金融機関の貸出の姿勢も積極化しているということであり、それは必ずや実体経済に波及していくとみています。』
ということで、これまでのレビューも無く203高地に白兵突撃すれば敵陣地を抜けるみたいな話になっているように見えますけど大丈夫ですかねえ。
・これはひどいというのが2つほど
『(問) 先程の質問とも少し重複するのですが、マーケットがこれだけ荒れるということが毎回のようにあるというのは、どのように考えていらっしゃるのか、つまり、市場との対話という意味では、かなり課題があるのでないかと思うのですが、その辺りについて、総裁は、今後どうされていくのかも含めて教えて下さい。(後半割愛)』
『(答) 第 1 に、市場との対話は非常に重要であると思っていますが、金融政策はあくまでも毎回毎回の金融政策決定会合において委員全員が経済の状況についてつぶさに点検したうえで、次回の金融政策決定会合までの金融政策がどうあるべきかを決めています。そういう意味では、私どもの市場との対話が特に問題があるとは思っていません。(後半割愛)』
まあ質問も挑発質問ではありますが、サプライズ出しているのは黒田総裁だろとしか申し上げようがないですし、政策反応関数も訳分からなくしているのも黒田日銀だろと小一時間。
『(問) また銀行の話で恐縮ですが、金融政策を実施するに当たっては、金融機関は重要な役割を担っていると思います。そうしたところから公の場で、金融政策に対して批判があがることが健全な状態だとお考えかということと、「量的・質的金融緩和」の時は何も文句を言わなかった銀行が、収益に影響する状況は同じはずなのに、マイナス金利になって文句を言うようになったのはなぜなのかについて、総裁のお考えをお聞かせ頂けますか。』
これはまた挑発質問だが挑発質問にそのまま乗るなよという答えで、もうアホかと馬鹿かとと思うのだが鑑賞用に引用しておきますね。
『(答) 金融政策は、金融機関のためにやっているものではなく、日本経済全体のためにやっているわけです。』
まずこの時点で今すぐ肥溜めに頭突っ込んでこいとしか申し上げようがない。
『そうした意味で、金融政策について、緩和であろうと引き締めであろうと、金融機関が賛成するか反対するかで、金融政策を決めるということはないわけです。』
見事なまでに挑発に乗っていて最早肥溜めに漬けこんでおきたいという所です。
『ただそう申し上げた上で、金融機関の収益が過度に圧迫されますと、金融仲介機能が損なわれることになるおそれがあり、そうなると金融政策の効果が十分発揮されない懸念が生じます。そうした意味で、私どもは金融機関の金融仲介機能に常に焦点を当てて、それが十分機能しているかをよくみています。』
これだけ言えよ。
『現時点では、金融機関の金融仲介機能が大きく影響されたとか、損なわれたというような状況には全くありません。』
まあここで「全く」とか言ってる位ですし最初のアレですから明らかにこのオッサン頭に来てるんでしょ。
『また、2 番目の点は、おそらく先程来申し上げている通り、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」と「量的・質的金融緩和」は、基本的な経済への波及メカニズムでは違いはありません。基本的にイールドカーブ全体を引き下げて、金融機関から企業や家計への貸出金利を下げることで、実質金利を引き下げて投資を刺激して経済を刺激することであり、基本的な違いはありません。金融機関への影響の点からみても、先程来申し上げている通り、マイナス金利自体の直接的な影響は本当に最小限になっています。』
『この点、よく比較されるECBのマイナス金利は、ご承知のように、いわば根っこから、金融機関が中央銀行に預けている当座預金のうち超過準備に相当する額全部にマイナス金利を適用するものです。ECBは量的緩和を続けていますので、マイナス金利がかかる分がどんどん増えていき、金融機関の収益が直接的に影響されるのですが、わが国の場合は「マクロ加算残高」というゼロ金利の分を四半期毎に調整して、マイナス金利がかかる部分は常に非常に小さくしていますので、マイナス金利自体が金融機関の収益に与える影響は本当に最小限と言って良いと思います。』
そもそもの超過準備の量が全然違うのですが。
『その上で先程来申し上げている通り、「量的・質的金融緩和」であれ、あるいはそれ以前の金利を操作することによる金融緩和であれ、常に、緩和すると貸出金利は下がり、銀行の貸出に伴う業務純益が下方圧力を受けるという点では全く違いがありません。そうした中で、なぜ「量的・質的金融緩和」の時に反対がなく、』
なくは無かったと思うが。
『今回「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」になって反対が一部ですが出てきたのかは、銀行の方に聞いて頂くしかありません。』
というような言い方も「聞く耳持たないですよwwww」と言っているようにしか見えない訳ですが。
『察するに 1 つは、マイナス金利はわが国では初めてのことであり、全く新しいことに対してどのように対応するかで、色々と悩んでおられるのかもしれません。もう
1 つは、もう少し実務的な意味で、コンピューターシステムその他がマイナス金利に直ちに対応できない金融機関もあったようで、そうした先はシステム等を修正するコストがかかりますし、マイナス金利を予定しないで貸していた貸出等について今後どうしていくか、事務的な手間が一定程度あり得るとは思います。ただいずれの話も、マイナス金利が始まって何か月か経ちますし、金融機関の対応も進んできていますので、現に、短期金融市場でもマイナス金利の取引がもう一般的に広がってきていますので、今申し上げたような意味では、反対の理由はだんだん薄れていくのではないかと思っています。』
・・・・・・・・・全く分かっていないし、大体からして分かろうともしないでしょうし、それ以前に総裁はじめ執行部や与党政策委員に対して実情がちゃんと伝わっていないのではないかと懸念される所です。
2016/05/02
お題「決定会合レビュー&展望レポート基本的見解の比較」
金曜に決定会合2日目を置くのは良くないと思うし、ましてや連休前に置くのは今回のように連休中に海外でおはぎゃあとかになる訳でして、特に展望レポートの時に直後が祝日などが絡むロング週末になるという日程は避けるべきではないかと。
○決定会合はゼロ回答でブルームバーグの飛ばしニュースに乗った皆さん涙目
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160428a.pdf
当面の金融政策運営について
ということで
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N17V3IM
Markets | 2016年 04月 28日 17:49 JST
〔マーケットアイ〕株式:日経平均先物が下落、急ピッチな円高進行で
『<15:38> 日経平均・日足は「大陰線」、25日線がサポート
日経平均・日足は上ヒゲを伴う「大陰線」。実体部分が4%を超える弱い足となったが、25日移動平均線(1万6629円91銭=28日)にサポートされた。4月8日安値(1万5471円80銭)以降の急上昇に対する反動が出た格好だ。下方への勢いが強く、短期的には引き続き調整圧力がかかりやすい。目先の下値は4月8日安値(1万5471円80銭)から4月25日高値(1万7613円56銭)までの上げ幅に対する半値押しの1万6542円がめどになる。これを下回ると1万6000円の心理的節目まで下値余地が広がる。』(上記URL先より)
てな感じで決定会合結果出たら為替は2円以上ぶっ飛ぶわ日経先物は1000円近くぶっ飛ぶわと大変な反応になる中で債券市場は「いやー追加緩和あるかも知れませんけどこれ以上やられても益々死ぬだけだから勘弁してください」という感じだったせいなのかどうかは知らんけど、「追加緩和食らうと死ぬのでその分だけはヘッジ」的なポジション程度しか入っていなかったこともあって貫禄の安定推移(ただの死後硬直というツッコミは却下)だったりしましたが、まあ為替と株は盛大にあばばばばばーとなってオソロシスという所ですが、日中の所ではとりあえず22日にブルームバーグが謎の飛ばし記事(のように見えるが日本語を見ると本当は誰が関係者なのか分からない上に英文ヘッドラインが明らかにヘッドライン詐欺になっているという素敵な記事)のレベルで止まってるかなと思ったらその後結局更にあじゃぱーな感じになっているのはご案内の通り。
まあしかし他人様の事だから知らんがなではあるのですが、さすがに今回の謎記事に関しては記者の名前まで思いっきり出てきて何とかショックとかまで言われているみたいですし、何ぼ何でも大概にしておかないと色々な意味でマズイんじゃないのと思ってしまいますし、ついでに言えばああいう与太記事の所にコメントが引用されて記事にされちゃうのもコメントする人にとってもリスクになってきますよねとか。
特に木曜の場合は、前場に謎の株高円安をやっていたのがまた怪我人を増やしていた(それはまあブルームバーグ関係ないけど)ような感じでもありまして、何と申しますか御愁傷様でございますとしか申し上げようがないのですが、じゃあ不肖このアタクシは木曜に追加緩和無しの自信満々だったかと質問されますと、いやまあべき論からしても戦術論からしても別に今回追加緩和やる必要はないし、やったら今の政策の限界は手前に寄せる事になってしまうけど、それに対して物価目標達成時期がそれ以上に手前に寄るかというと寄りもしない訳で、幾らなんでもその位日銀も分かっているだろうから追加なし、とは申しておりましたけれども、何せ「リスク対応」と言ってしまえば追加緩和出来る(というかそれ以外の理由でしていない)のだし、突如何をしでかすか分からんのが黒田クオリティという事でしたので、そらまあやっても不思議ではないと申し上げておりました次第ですので、そら追加緩和期待している人たちをプギャーとも言えんなと存じます。
ま、そこまでコミュニケーションが崩壊しているだけということなのですけどね。
○決定事項に関して
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160428a.pdf
『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。』
とありまして決定事項自体での変更は以下の通り。
『2.また、日本銀行は、熊本地震の被災地の金融機関を対象に、復旧・復興に向けた資金需要への対応を支援するため、被災地金融機関支援オペ(貸付総額
3,000 億円、無利息で実施、残高の2倍の金額をゼロ%の金利を適用する「マクロ加算残高」に加算)等の措置を導入することを決定した(全員一致)。』
被災地支援オペはマイナス金利ではなくて普通にゼロ金利で実施、実施残高の2倍の金額をマクロ加算に入れるのでゼロ金利で借りれてついでに同額マクロ加算が増えますよ、ということですが、まあ貸付総額3000億円だから全体から見たら誤差の範囲内。
ちょっとだけチャーミングなのは、この前一部でネタとして盛り上がっていた(?)「義捐金とか復旧復興の資金に対してマイナスチャージするやん!!」というのに対しても被災地支援オペを借りておけばそれと同額分だけマクロ加算が増えるのでマイナスチャージにならずに済むというのがありますが、まあその辺はネタの世界(とは言え象徴的な話になってしまっていたし、国会で質問まで出ていましたのであまり軽く見る話しでもないのかもしれませんが)ではありますな。
あと、反対理由の所ですが、マイナス金利に関する反対がですな・・・・・・・・・・・・
『(注2)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、石田委員、原田委員、布野委員、櫻井委員。反対:佐藤委員、木内委員。佐藤委員、木内委員は、マイナス金利は市場機能や金融仲介機能および国債市場の安定性を損ねることから、所要準備額を除く日本銀行当座預金については+0.1%の金利を適用することが妥当として反対した。』(今回)
『(注2)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、原田委員、布野委員。反対:佐藤委員、木内委員。木内委員は、マイナス金利は市場機能や金融仲介機能および国債市場の安定性を損ねることから、所要準備額を除く日本銀行当座預金については+0.1%の金利を適用することが妥当として反対した。なお、佐藤委員より、3段階の階層構造を維持しつつ所要準備額を除く日本銀行当座預金について+0.1%の金利を適用する、貸出支援基金等は+0.1%の金利で実施するとの議案が提出され、反対多数で否決された。』(前回)
ということで、金利の部分に関しては今回から佐藤さんが木内さんの提案に乗っかる形にしている(貸出支援基金等の金利以外は前回の時点で木内さんも佐藤さんも現象面では同じちゃあ同じでしたが)のがほほーという感じですな・
○決定会合ネタではないが輪番とかいじり過ぎ
展望レポートネタはこの後入れますが、その前に・・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160428c.pdf
当面の長期国債買入れの運営について
『(注4)2016 年 5 月 2 日以降の最初のオファー金額は、残存期間 1 年以下
700 億円、残存期間 1 年超 3 年以下 3,500 億円、残存期間 3 年超 5 年以下
4,400 億円、残存期間 5年超 10 年以下 4,500 億円、残存期間 10 年超 25 年以下
2,400 億円、残存期間 25 年超 1,600 億円、変動利付債 1,000 億円、物価連動債
600 億円とする予定です。』(今回)
『(注4)2016 年 4 月 1 日以降の最初のオファー金額は、残存期間 1 年以下
700 億円、残存期間 1 年超 3 年以下 3,500 億円、残存期間 3 年超 5 年以下
4,400 億円、残存期間 5年超 10 年以下 4,500 億円、残存期間 10 年超 25 年以下
2,200 億円、残存期間 25 年超 1,800 億円、変動利付債 1,000 億円、物価連動債
400 億円とする予定です。』(前回)
となっておりまして、超長期輪番の割り振りが10-25:2200→2400、25-40:1800→1600という謎の微調整が行われていまして、これは20-30スティープしますわというのはまあともかくとしまして、何でまあこういう細かい調整をしてくるんだかという感じで正直ここをわざわざ調整する必要があるのか良く分からん。
とにかく輪番に関しては今年に入ってから細かい所をチマチマいじり過ぎで、期末の所でも超長期を減額したと思ったら戻すとかやるし、まあ「市場動向に応じて機動的に運営」ということなのでしょうが、そういうのってある程度予見可能なロジックで「市場動向に応じて運営」というのならまだ良いのですが、どういうロジックで微調整しているのか良く分からんという状態で微調整を繰り返されますと、日銀の買入が市場においてきわめてドミナントになっている状況においては、市場に無駄なボラを与えるという以上に、ポジション運営上の予測不能の不確実性(しかも非常にタチが悪いのは債券インデックスが更新となる月末のタイミングしかも引け後に打ってくるので打ち込まれた後にインデックス対比でのリスクを殺しに行けないよいう無理ゲー)を日銀がわざわざ供給する、という事になり、ただでなくさえ流動性が無い債券市場の流動性を日銀が自分から提供してどないすんねんとしか申し上げようがないですし、まあこれだけチマチマいじってくるというのは、要するにオペレーションの維持が物理的に難しくなっているからチマチマいじらざるを得ないんでしょ、という風にも見られるので、日銀的にあまりお得な選択肢には見えません。
なお、物価連動国債の輪番がしらっと増額になっているのもチャーミング。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160428a.pdf
CP・社債等買入のオファー日程について
『日本銀行では、CP・社債等買入のオファー日程について、以下のとおり、6 月オファー分を追加しましたので、お知らせします。なお、CP
等買入のオファー金額については、5 月 10 日オファー分を 2,500 億円程度から
3,000 億円程度に、5 月 18 日オファー分を 3,000 億円程度から 3,500 億円程度に、5
月 26 日オファー分を 3,500 億円程度から 4,000 億円程度に変更しています。』
先月はご案内の通りでアナウンス時に減額して、その後最終回の買入を結局増やしてその回に関しては元に戻すというプレイをしていましたが、今回は今回で直近で馬鹿利回りでの買入になっていないのに味をしめたかどうか知らんけど、早速買入予定額を戻してくる、という動き。
ええまあお気持ちは分かるのですけれども、そうやっていると結局どこかで足元を見られだす展開になるのでして、何だかなあという感じではあります。まあ年度の前半は基本的にCP発行企業の方が資金需要ある時期ではあると思うのですが、2.2兆円に関してはショートしている事が多いですし、一方でそもそもCPや社債買入(ETFもそうですが)って「リスクプレミアムの縮小」を目的にするオペレーションであって、同残存の国債金利よりも遥かに低い利回りでの社債やCPの買入を行うという行為自体が「リスクプレミアムの縮小」を逸脱した買入じゃネーノという点を考えますと、やはり馬鹿利回りでの買入は出来ないという所だったりするでしょうし、まあいずれにせよこれらのオペってマイナス金利突入して益々もって何の為に実施しているのか良く分からん代物になって参りましたな。
○ということで展望レポート基本的見解について
既に背景説明も出ていますが本日は基本的見解で勘弁してつかあさい
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1604a.pdf
・3月声明文との比較:一部にヘッジが入っているがほぼ同じとな
まずは3月声明文との比較をします。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160315a.pdf
3月声明文の該当箇所との比較をしますが、まずは現状認識に関して。声明文だと項番2、展望レポート基本的見解では本文2ページになります。
『わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(3月)
ということで、3月声明文と基本的認識が同じと来ました。
『海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうしたもとで、輸出は、足もとでは持ち直しが一服している。』(今回)
『海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうしたもとで、輸出は、足もとでは持ち直しが一服している。』(3月)
同じですな。
『国内需要の面では、設備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。一方、住宅投資はこのところ持ち直しが一服しており、公共投資も高水準ながら緩やかな減少傾向にある。』(今回)
『国内需要の面では、設備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。一方、住宅投資はこのところ持ち直しが一服しており、公共投資も高水準ながら緩やかな減少傾向にある。』(3月)
個人消費の中に「一部に弱めの動きもみられるが」のヘッジ文言追加入りました。
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、横ばい圏内の動きを続けているが、足もとでは、地震による影響もみられる。企業の業況感は、総じて良好な水準を維持しているが、新興国経済の減速の影響などから慎重化している。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、横ばい圏内の動きが続いている。』(3月)
生産の所で地震の影響ヘッジ文言追加入りました。なお、短観に関しては昨年12月の決定会合公表文書と比較しないといけませんが、12月は『この間、企業の業況感は、一部にやや慎重な動きもみられるが、総じて良好な水準を維持している。』(昨年12月)としており、前回は主文が良好な水準を維持だったのが、今回は主文が慎重化しているになっていますな。まあ短観受けての割と機械的な部分ですけど。
『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。』(今回)
『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。』(3月)
ここは同じです。でもって先行きですけど3月声明文では項番3、展望レポート基本的見解では本文2ページ目(経済)と本文5ページ目(物価)になります。
『先行きのわが国経済を展望すると、当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられるが、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加するとみられる。このため、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられるが、家計、企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加するとみられる。このため、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。』(3月)
全文一致・・・・・・・・
『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)
『消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる(注3)。』(3月)
全文一致・・・・・・・・
とまあそういうことで、3月声明文と今回の展望レポート基本的見解の鏡の部分とでも申しましょうかな所は何とまあ先行きに関しては全文一致となっているという状態になっているのですな。
そしてそれを踏まえたり、政策の見直しが無かったり、というのを踏まえながら展望レポートを比較するという荒行をしてみるとこれがまた色々と文章の方だとえーっとそうなっているのに何で政策は変わらんの???という感じなのがホイホイ出てきますよ。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1604a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1601a.pdf(前回=1月)
○展望レポート基本的見解の比較確認:最初の概要部分
『 わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。』(前回)
「輸出・生産面に鈍さがみられるものの」、「基調としては」とヘッジ文言2つ入りました!
『2018 年度までを展望すると、当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられるが、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加するとみられる。このため、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。』(今回)
『2017 年度までを展望すると、家計、企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加するとみられる。このため、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。』(前回)
「当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられるが」とヘッジ文言入ってますが、結論としては1月の文言と同じになっています。
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格の寄与度は、現在の−1%強から次第に剥落していくが、2017
年度の初めまではマイナス寄与が残ると試算される2。この前提のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」3である2%程度に達する時期は、2017
年度中になると予想される4。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる。』(今回)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格の寄与度は、現在の−1%強から次第に剥落していくが、2016
年度末まではマイナス寄与が残ると試算される2。この前提のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」3である2%程度に達する時期は、2017
年度前半頃になると予想される4。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる。』(前回)
というCPIの見通しなのですが、ここの説明だけ見ていると原油価格(ちなみに前提は若干下方修正されている)の下落の影響が1月時点の見通しよりも長引いているからCPIの2%到達時期が2017年度前半頃→2017年度中、となっているかのような印象を与えるのですが、実際にこの後の基本的見解の文言を見ておりますと、原油価格以外の要素も物価目標達成時期の遅れに大いに影響しているような説明になっておりまして、実にこうインチキっぽい感じが致します。
『2017 年度までの見通しを従来の見通しと比べると、成長率については、海外経済の減速に伴う輸出の下振れなどの影響から、幾分下振れている。物価見通しは、成長率の下振れや賃金上昇率の下振れなどにより、2016
年度について下振れている。』(今回)
『従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、概ね不変である。物価の見通しは、2016
年度は下振れ、2017 年度は概ね不変である。物価見通しの下振れおよび2%程度に達する時期の後ずれは、原油価格の想定を下振れさせたことによるものである。』(前回)
ということで次の項の部分を前回1月と比較すると分かるのですが、前回1月の場合は追加緩和込みということなのでしょうが、原油価格の想定が下振れしたことによって物価見通しやら2%達成時期が後ずれしましたと思いっきり言っているのですが、今回の場合は成長見通しの下振れやら賃金上昇率の下振れやらが原因にある、ということでして、それは当然ながら前回時点と比較した場合に物価上昇の循環メカニズムが弱くなっている可能性を示しているという事に他ならないのですが、何かその前の部分の書き方をそのままフンフンと読んでいるとあれさっきと違くね?という感じになりますな。
『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる。』(今回)
『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入した。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる。』(前回)
「出来るだけ早期に実現するため」に追加緩和実施という文言があって今回は外れていますが、これはまあ昨年10月の展望レポートでも同じように出来るだけ早期に云々は無かったので、それはまあ良いとしましても、前回展望レポート時に「出来るだけ早期に実現するために」追加金融緩和を行ったのに3ヶ月後の展望レポートで見通しが漫然と下方修正されているのは如何なものかという話にならんのかねこの辺り、などと思いつつ本文に参ります。
○現状認識(3月声明文との比較もしました)は前回より弱め
最初は『1.わが国の経済・物価の現状』のところ。
『わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。』(前回)
ヘッジクローズ2つ入りました。
『海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうしたもとで、輸出は、足もとでは持ち直しが一服している。』(今回)
『海外経済は、新興国が減速しているが、先進国を中心とした緩やかな成長が続いている。そうしたもとで、輸出は、一部に鈍さを残しつつも、持ち直している。』(前回)
海外経済の主文が入れ替わるわ輸出は下がるわ。
『国内需要の面では、設備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。一方、住宅投資はこのところ持ち直しが一服しており、公共投資も高水準ながら緩やかな減少傾向にある。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、横ばい圏内の動きを続けているが、足もとでは、地震による影響もみられる。企業の業況感は、総じて良好な水準を維持しているが、新興国経済の減速の影響などから慎重化している。』(今回)
『国内需要の面では、設備投資は、企業収益が明確な改善を続けるなかで、緩やかな増加基調にある。また、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直している。公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向にある。鉱工業生産は、横ばい圏内の動きが続いている。わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)
見れば分かるように文章長くなっているのよね。つまり1月に鳴り物入りで追加緩和しているのに、結局の所展望レポートの文章がヘッジクローズコテコテになっているという事でして、だったら何で今回漫然と様子見なんでしょというツッコミが入るのは理の当然でもありますな。(アタクシは様子見しとけ派でしたので念のため)
『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、このところ弱めの指標もみられているが、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)
この所弱含みというのは3月声明文から入ってまして、現状認識に関しては1月レポートよりも3月声明文と今回の展望レポートで徐々に弱くなっているんだけどなあという感じです。
○経済の中心的な見通しについて:仔細に見ると色々と怪しいのだが・・・・・・・・・・
・全体感の部分は3月声明文比較で見た通りですが
『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し』に入ります、まずは『(1)経済情勢』です。
『先行きのわが国経済を展望すると、当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられるが、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加するとみられる。このため、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済を展望すると、家計、企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加するとみられる。このため、わが国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。』(前回)
声明文比較もしましたが、3月に入ったヘッジ文言「当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられるが」が継続しているので1月対比で見たら下がった格好になっていますな。3月声明文対比では同じですけど。
・成長見通しのパスが色々と怪しい
『見通し期間中の成長率については、2017 年4月に予定される消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動による振れはあるとみられるが、基調として、潜在成長率を上回ると予想される5。』(今回)
『すなわち、わが国経済は、2016 年度にかけて潜在成長率を上回る成長を続けると予想される5。2017
年度にかけては、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動などの影響を受けるとともに、景気の循環的な動きを映じて、潜在成長率を幾分下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持すると予想される』(前回)
前回までは見通し期間途中の経済成長パスとして潜在成長率を上回って推移した後に消費増税の反動と景気循環要因によって落ちるもののプラスを維持。というような見通しだったのですが、今回はそういう説明を全部スルーして「基調として」潜在成長率を上回ると予想される、という説明になっておりまして、要するに具体的に潜在成長を上回る成長を維持、というパスを具体的に書きにくくなっているという状況になっている訳ですな。
『見通しの背景にある前提は、以下のとおりである。』(今回)
『こうした見通しの背景にある前提は、以下のとおりである。』(前回)
ということで以下鑑賞。
・見通しの背景説明だが金融政策に関して「実質金利がマイナス」を急に強調しだしています
『第1に、日本銀行が、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続するもとで、実質金利は見通し期間を通じてマイナスで推移するなど、金融環境はきわめて緩和した状態が続き、景気に対し刺激的に作用していくと想定している6。』(今回)
『第1に、日本銀行が、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」6を継続するなかで、金融環境は緩和した状態が続き、景気に対し刺激的に作用していくと想定している7。』(前回)
「実質金利は見通し期間を通じてマイナスで推移する」というのが入っていまして、そらまあ金利水準が盛大に下がっている事位しかマイナス金利QQEの成果アピールができないのですから仕方ないのですけれども、3方向の緩和とか言いながら金利の話がこうやって前面に出てくるというのも何だかなあという感じではあります。
『第2に、海外経済については、幾分減速した状態が当面続くとみられるが、先進国が堅調な成長を続けるとともに、その好影響が波及し新興国も減速した状態から脱していくとみられることから、緩やかに成長率を高めていくと予想している。』(今回)
『第2に、海外経済については、先進国が堅調な成長を続けるとともに、その好影響が波及し新興国も減速した状態から脱していくとみられることから、緩やかに成長率を高めていくと予想している。』(前回)
前提となっている海外経済の見通しに関しては「幾分減速した状態が当面続くとみられるが」と弱くなっていますな。
『第3に、公共投資は、緩やかな減少傾向にあるが、先行きは、2016 年度予算の早期執行の影響などから徐々に下げ止まり、見通し期間の中盤以降は、オリンピック関連投資の本格化もあって、横ばい圏内の動きになると想定している。』(今回)
『第3に、公共投資は、現在の高めの水準から緩やかな減少傾向をたどったあと、見通し期間の終盤にかけては下げ止まっていくと想定している。』(前回)
ここの公共投資の所は前回対比で引き上げになっておりまして、2016年度予算の前倒し云々で減少傾向→下げ止まりという表現になっていまして、しかもその後の見通しに関しても1月展望レポートでは2017年度の終盤(見通し期間は2017年度)に掛けて下げ止まりになっていましたが、今回は見通し期間の中盤以降下げ止まりとなっていて、これは公共投資について結構上方修正した格好になっています。
『第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどが続くとともに、デフレからの脱却が着実に進んでいくにつれて、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』(今回)
『第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどが続くとともに、デフレからの脱却が着実に進んでいくにつれて、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』(前回)
ここは同じなのですが、良く良く読みますとこれ「業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていく」という結論に対しての前振り部分って、それによって中長期的な成長期待が本当に高まるのかよという気がしますな。
・でもって見通しの期間別展開を鑑賞
ということでまずは2016年度。
『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2016 年度については、輸出は、当面鈍さが残るとみられるが、その後は、新興国経済が減速した状態から脱していくことから、緩やかな増加に向かうと考えられる。』(今回)
『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2015 年度下期から
2016 年度にかけては、輸出は、当面持ち直しを続けたあと、新興国経済が減速した状態から脱していくもとで、既往の為替相場の動きによる下支えもあって、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)
輸出に関しては当面の見通しが持ち直しから鈍さになってみたり、「緩やかに増加していく」が「緩やかな増加に向かう」とか表現がしらっと弱くなっておりまして、しかも「為替相場の動きによる下支え」というのが無くなっているのがお洒落。
『また、企業収益は、非製造業を中心に増益基調を続け、過去最高水準で推移するとみられる。そのもとで、設備投資は、金融緩和に伴う実質金利の一段の低下効果もあって、増加基調を続けると考えられる。』(今回)
『設備投資は、輸出・生産の持ち直しに伴って設備稼働率が上昇するとともに、過去最高水準にある企業収益や金融緩和効果が引き続き押し上げに作用するなか、国内向け投資の積極化などもあって、増加を続けるとみられる。』(前回)
設備投資に関しては「増加を続ける」が「増加基調を続ける」とかこちらもヘッジクローズが入っていまして、設備投資が出る理由が「実質金利の一段の低下効果」と、こちらでも実質金利の話をしておりまして、「実質金利の低下で消費と投資が出る」という実質金利ガー理論に傾斜している感じですな。
『個人消費も、労働需給の引き締まりが続くなど雇用・所得環境が着実に改善していくことや、エネルギー価格下落による実質所得の押し上げ効果が働くことなどから、緩やかに増加すると予想される。また、年度後半にかけては、2017
年4月に予定される消費税率引き上げ前の駆け込み需要が国内民間需要を押し上げると見込まれる7。こうした内外需要のもとで、成長率は、潜在成長率を上回ると予想される。』(今回)
『個人消費は、雇用環境の着実な改善が続き、賃金が上昇していくことや、エネルギー価格下落による実質所得の押し上げ効果が働くことなどから、緩やかに増加すると予想される。鉱工業生産は、新興国経済の減速の影響が和らぎ、在庫調整が進捗するにつれて持ち直しに転じ、その後は、内外需要を反映して緩やかに増加していくとみられる。』(前回)
ここなんですけれども、生産の見通しが何故か抜けているのも????なのですけれども、それはそれとして、今回は「2017
年4月に予定される消費税率引き上げ前の駆け込み需要が国内民間需要を押し上げると見込まれる」という説明になっていまして、前回はそこを入れて居ないのに今回入れるという辺りがインチキの香りが。
それから今回しらっと「賃金が上昇していくことや」という賃金上昇に関する文言が削除されていまして、賃金上昇が期待外れの内容だったことを示していますなあという辺りも味わいが深く、展望レポートの最初の鏡の部分だとそんなに変わっていないようになっていますが、このように基本的見解のコンポーネントの所で既に弱めのコメントを少しずつ加えているというのが、表の鏡以上に下方修正していますなという感じですし、この場合背景説明を見ると更に弱いという結果になるというのが日銀の仕様となります。
『2017 年度については、家計支出は駆け込み需要の反動の影響を受けるものの、輸出が、海外経済の成長などを背景に緩やかな増加を続けるとともに、設備投資も、緩和的な金融環境や成長期待の高まり、オリンピック関連需要の本格化などを受けて緩やかな増加基調を維持すると予想される。』(今回)
『2017 年度にかけては、2017 年4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響を受けるとともに、設備投資の増加ペースが資本ストックの蓄積に伴って低下していくとみられる8。もっとも、輸出が、海外経済の成長などを背景に緩やかな増加を続けるとともに、国内民間需要も、緩和的な金融環境と成長期待の高まりなどを受けて底堅く推移すると予想される。』(前回)
17年度の見通しの前提部分が誠にアレでございまして、設備投資に関して従来の見通し(これは前回よりも前の展望レポートでも同じ)では資本ストックの蓄積によって2017年度に入ると設備投資のペースが鈍化するという見込みだったのですが、今回の展望レポートからしらっとその設備投資のサイクルの話が無くなっておりまして、何でそのサイクルの話をしなくなったんですかねえというのは謎ですな。なお設備投資の増加についても「緩やかな増加基調」ととにかく今回は基調の連呼でやはり下がっていたりする。
『こうしたもとで、成長率は、潜在成長率を下回るものの、若干のプラスを維持すると予想される。2018
年度については、輸出が緩やかに増加するとともに、国内民間需要も、駆け込み需要の反動の影響が剥落することもあって、増加すると考えられることから、成長率は、再び潜在成長率を上回ると予想される。』(今回)
『この間、潜在成長率は、見通し期間を通じて緩やかな上昇傾向をたどり、中長期的にみた成長ペースを押し上げていくと考えられる。こうしたもとで、2017
年度は、潜在成長率を幾分下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持すると見込まれる。』(前回)
見通し期間が違うので18年度の話がありますが、17年度は「成長率は〜若干のプラスを維持」と今回は「プラス成長を維持」から下がっていたりしまして、何ちゅうかこう全体的に見通しが
『この間、潜在成長率については、見通し期間を通じて緩やかな上昇傾向をたどり、中長期的にみた成長ペースを押し上げていくと考えられる。2017
年度までの成長率の見通しを従来の見通しと比べると、海外経済の減速に伴う輸出の下振れなどの影響から、幾分下振れている。』(今回)
『今回の見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。』(前回)
ということで、結論は幾分下振れているという事なのですが、コンポーネントを見ますと何か一つ一つのコンポーネントでホイホイと見通しが下がっているのに何故か全体では対して下がらんという結論になっておりまして、これは結論が大本営発表モードになっているのではないか疑惑がががががという感じがプンプン漂って参ります。
○物価見通しも色々と説明が怪しくなってきている
ということで本文5ページの『(2)物価情勢』であります。
・今回の下げは原油だけの要因ではないですよと
『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格の寄与度は、現在の−1%強から次第に剥落していくが、2017年度の初めまではマイナス寄与が残ると試算される。この前提のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」である2%程度に達する時期は、2017
年度中になると予想される8。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる。』(今回)
『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格の寄与度は、現在の−1%強から次第に剥落していくが、2016年度末まではマイナス寄与が残ると試算される。この前提のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」である2%程度に達する時期は、2017
年度前半頃になると予想される9。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる』(前回)
先程(だいぶ前)に声明文比較で出した部分と被りますけれども、はいはい大本営大本営というのはさておきまして、この部分を見ると如何にも原油価格のせいで先送りしただけですよーという風に読める、というのは最初の鏡の部分を紹介した時に申し上げた通りなのですけれども・・・・・・・・・・・・・・・
『2017 年度までの見通しを従来の見通しと比べると、成長率の下振れや賃金上昇率の下振れなどにより、2016
年度について下振れている。』(今回)
『今回の見通しを従来の見通しと比べると、2016 年度は下振れ、2017 年度は概ね不変である。物価見通しの下振れおよび2%程度に達する時期の後ずれは、原油価格の想定を下振れさせたことによるものである。』(前回)
ということで、鏡の所でも申し上げましたように。今回の下方修正は原油の価格見通しよりも成長率の下振れとか賃金上昇率の下振れという事になっている訳ですな。ここまでは鏡の所と同じネタですな。
・需給ギャップの説明が随分後退
『こうした見通しの背景として、物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、新興国経済の減速を背景に製造業の設備稼働率の改善が遅れる一方、労働需給の引き締まりは続いており、全体として横這い圏内の動きとなっている9。』(今回)
『こうした見通しの背景として、物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、新興国経済の減速を背景とした生産のもたつきの影響などを受けつつも、労働面を中心として、着実に改善傾向をたどっている10。すなわち、失業率が緩やかに低下し、3%台前半で推移するなど、労働需給は引き締まり傾向が続いている11。設備の稼働率は、輸出・生産の持ち直しに伴い、上昇していくと考えられる。』(前回)
ということで物価の基調を決める一番でかいマクロ的な需給バランスに関しては稼働率の低下も加えて改善が思い切り遅れているという現状認識になっているようですが。
『先行きは、失業率が緩やかに低下するなど、労働需給の引き締まりは続き、そうしたもとで、パート時給をはじめとする賃金への上昇圧力は強まっていくとみられる。設備の稼働率も、輸出・生産が持ち直していくに伴い、再び上昇していくと考えられる。このため、マクロ的な需給バランスは、本年度後半以降、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要による振れを伴いつつも、緩やかにプラス幅を拡大していくと見込まれる。すなわち、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていくと予想される。』(今回)
『先行きについては、マクロ的な需給バランスは、本年度末にかけてプラス(需要超過)に転じたあと、2016
年度にプラス幅が一段と拡大し、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていくと予想される。その後、2017
年度には、マクロ的な需給バランスは、プラスの水準で横ばい圏内の動きになると見込まれる。』(前回)
先行きの所ですが、賃金の上昇圧力についての説明がこれまでは当然のように上昇するという感じの表現だったのが「パート時給が云々」という形で随分と腰が砕けた見通しになっている時点で前向きのメカニズム大丈夫かという感じですし、設備稼働率が上昇していく見通しも前提として輸出と生産の拡大が必要となっています。そのため需給ギャップに関しての見通しが随分と腰が弱く成って居まして、結論だけは「需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていく」で維持していますけれども、前回対比でみた場合に明らかにこの辺りの先行き見通しが願望成分高まるの巻となっています。
・予想物価上昇率に関する表現は威勢の良さが相当にトーンダウン
『
第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。』(今回)
『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、このところ弱めの指標もみられているが、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)
主文がひっくり返りました。
『すなわち、予想物価上昇率に関するマーケット関連指標やアンケート調査結果は、このところ弱含んでいる。一方、企業は、昨年度以降、エネルギー価格の下落から総合ベースの消費者物価上昇率が低迷するなかにあっても、前向きな価格設定スタンスを維持しており、消費者も、雇用・所得環境の改善などを受けて、価格改定を受容しているとみられる。こうしたもとで、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価の前年比は、30
か月連続でプラスを続けており、最近では1%を上回る水準で推移している。』(今回)
『すなわち、マーケット関連指標やアンケート調査のなかには弱めの指標もみられているが、企業の価格・賃金設定スタンスは、特に本年度入り後、明確に変化している。消費者も、雇用・所得環境の改善などを受けて、価格改定を受容しているとみられる。こうしたもとで、価格改定の動きは拡がりと持続性を伴っている。』(前回)
ということで、企業の賃金設定や価格設定スタンスに関しては「本年度入り後明確に変化」とか威勢が良かったのが「総合ベースの消費者物価上昇率が低迷するなかにあっても、前向きな価格設定スタンスを維持しており」とかずいぶんとトーンダウンしておりまして、前回あった「価格改定の動きは拡がりと持続性を伴っている」という威勢の良い文言も「生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価の前年比は、30
か月連続でプラスを続けており、最近では1%を上回る水準で推移している。」と他にネタがないもんだから日銀版コアを出してアピールするのに余念がないという残念な状況。
『この間、今年の労使間の賃金交渉においては、3年連続でベースアップが実現する見込みにあるものの、総合ベースの物価上昇率の低迷などを背景に、改定率は、大企業を中心に昨年を幾分下回った模様である。もっとも、賞与などによる収益の還元が行われているほか、労働需給の引き締まりを背景に、中小企業においても賃上げの動きが拡がっている。こうしたことを踏まえると、企業収益から雇用者所得への波及は維持されており、賃金の上昇を伴いつつ、物価上昇率が緩やかに高まっていくというメカニズムは着実に作用していると考えられる。ただし、企業収益が過去最高水準で推移しており、失業率が3%台前半まで低下していることとの対比でみると、これまでのところ賃金の改善の程度が鈍く、労働分配率も低下傾向を続けている点には留意する必要がある。』(今回)
『また、労使間の賃金交渉においては、一昨年以来、企業業績や労働需給に加え、物価動向を賃金に反映する動きが拡がっており、今年もこうした動きが継続することが見込まれる。このように、賃金の上昇を伴いつつ、物価上昇率が緩やかに高まっていくというメカニズムは着実に作用している。もっとも、企業収益が過去最高水準にあり、失業率が3%台前半まで低下していることとの対比でみると、これまでのところ賃金の改善の程度が鈍く、労働分配率も低下傾向を続けている点には留意する必要がある。』(前回)
最後の企業収益対比での賃金改善が鈍い云々に関しては前回と今回は同様なので兎も角としまして、今回はご覧のとおりで肝心の賃金の上がり方が弱い事に関してああでもないこうでもないとの言い訳が入ってコテコテと長い説明になっておりまして、言い訳オンパレードという感じで実にこう自信の無さを示す物件となっております。
でもって予想物価上昇率の先行き。
『先行きについては、日本銀行が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。こうしたもとで、企業の価格・賃金設定スタンスは積極化していくと考えられる。』(今回)
『先行きについては、日本銀行が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。こうしたもとで、企業の価格・賃金設定スタンスは積極化していくと考えられる。』(前回)
実際の物価上昇率が高まっていくもとで、というのが何を指しているのか??だったりしますけれども、まあ先行き見通しだけは維持していますな。
・為替ェ・・・・・・・・・・・・・・
『第3に、輸入物価についてみると、原油価格をはじめとする国際商品市況の低迷が、輸入物価を通じた消費者物価の下押し圧力となる。この間、既往の為替円安による直接的な消費者物価の押し上げ効果は、次第に減衰していくとみられるが、マクロ的な需給バランスの改善や予想物価上昇率の上昇を通じた間接的な消費者物価の押し上げ効果は、より持続的なものと考えられる。』(今回)
『第3に、輸入物価についてみると、これまでの為替相場の動きが、輸入物価を通じた消費者物価の押し上げ要因として作用していく一方、原油価格をはじめとする国際商品市況の下落は、物価の下押し圧力となる。なお、円安が物価に与える影響については、輸入物価の上昇を通じた直接的な物価押し上げ効果に加え、マクロ的な需給バランスの改善を通じて実際の物価を押し上げ、さらに予想物価上昇率を押し上げるというより持続的な効果もある。』(前回)
ということで前回の展望レポートだと為替の影響に関する説明コラムまで作っていたりしたのですけれども、前回にあった既往為替円安の影響は一時的な物だけは無くてパーマネントな面もあるという話自体引っ込めては居ないようですが、ちょっとトーンダウンしていますな。
○上振れ下振れ要因
・海外経済の「企業コンフィデンスに与える影響」が入りました
『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、海外経済の動向に関する不確実性がある。中国をはじめとする新興国や資源国については、資源価格低迷の影響もあって、不透明感が強い。そうしたもとで国際金融資本市場は不安定な動きが続いており、企業コンフィデンスなどに影響を及ぼす可能性については引き続き留意する必要がある。また、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融資本市場に及ぼす影響、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、地政学的リスクなどもリスク要因として挙げられる。』(今回)
『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、海外経済の動向に関する不確実性がある。中国をはじめとする新興国や資源国については、引き続き不透明感が強いことに加え、資源価格下落の影響もあって、その成長ペースと世界経済への影響には不確実性がある。また、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融資本市場に及ぼす影響、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、地政学的リスクなどもリスク要因として挙げられる。』(前回)
海外に関して入れている中で今回「企業コンフィデンスなどに影響を及ぼす可能性」を入れて来ておりますので、これは海外の影響によって企業コンフィデンスガーと言って追加緩和を入れられるような布石が入っているのでここはおーという感じです。しかし海外の影響で企業コンフィデンスガーなのか本当に、という気はするんだけどね。
『第2は、2017 年4月に予定される消費税率引き上げの影響である。駆け込み需要とその反動の影響や実質所得減少の影響は、消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得る。』(今回)
『第2は、2017 年4月に予定される消費税率引き上げの影響である。軽減税率の導入によって、駆け込み需要とその反動の影響や実質所得減少の影響は幾分減殺されるとみられるが、実際のインパクトは、消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得る。』(前回)
見通しの前提で前回対比財政が出ることになっているだけの事はあって、軽減税率云々の文言外れているのがチャーミング。
第3の『企業や家計の中長期的な成長期待は』と第4の『財政の中長期的な持続可能性に』は殆ど全文一致なので飛ばします。
○物価に関するリスク要因はリスク認識が微妙&価格と賃金設定を見るとな
『上述のような経済の上振れ、下振れ要因が顕在化した場合、物価にも相応の影響が及ぶとみられる。それ以外に物価の上振れ、下振れをもたらす要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。中心的な見通しでは、賃金の上昇を伴いながら実際の物価上昇率が高まっていくなかで、人々の予想物価上昇率も一段と上昇し、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく姿を想定しているが、エネルギー価格の低迷により、総合ベースでみた消費者物価の前年比が高まりにくい状況が長引くもとで、賃金や予想物価の上昇ペースにどのように影響していくか不確実性がある。この点では、企業の本年度における価格改定が、賃金の動向も受けた消費者の値上げに対するスタンスも踏まえつつ、どのように進んでいくかが重要である。』(今回)
『上述のような経済の上振れ、下振れ要因が顕在化した場合、物価にも相応の影響が及ぶとみられる。それ以外に物価の上振れ、下振れをもたらす要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。中心的な見通しでは、賃金の上昇を伴いながら実際の物価上昇率が高まっていくなかで、人々の予想物価上昇率も一段と上昇し、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく姿を想定しているが、その上昇ペースには、実際の物価の動きやそれが予想物価に及ぼす影響の度合いなどを巡って不確実性がある。この点では、エネルギー価格下落の影響が長引き、現実の消費者物価の前年比が高まりにくい状況が長期間続くことによって、予想物価上昇率の上昇ペースに影響するリスクがある。また、賃金と物価の関係を考えると、今春の労使交渉において、既往の基調的な物価上昇や先行きの物価見通しが賃金上昇に適切に反映されていくことが重要である。さらに、このところ、原油価格の一段の下落に加え、中国をはじめとする新興国・資源国経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安的な動きとなっている。このため、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大している。』(前回)
とめんどいのでそのまま引用しちゃいましたが、今回は「総合ベースでみた消費者物価の前年比が高まりにくい状況が長引くもとで、賃金や予想物価の上昇ペースにどのように影響していくか不確実性がある」としらっと「不確実性がある」とかに文言を変更していまして、前回の方がより強めのトーンで「予想物価上昇率の上昇ペースに影響するリスクがある」となっていたので、この時点でリスク認識を後退させたような表現になっています。まあ前回はリスク対応で追加緩和した訳で、それをやってもリスクが高いとなるともう一発追加緩和しないといけないという話になるから今回トーンダウンしているのでしょうがちょっと????ではあります。
あと、価格と賃金の設定動向注視とのことですが、これが日銀の願望ほど強くなかった場合にどういう言い訳をしてくるのか(または追加緩和をするのか)が楽しみではありますな。どうせ強くは無いでしょうけれども。
第2の『マクロ的な需給バランス』は毎度同じ話なので割愛。
『第3に、物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度が挙げられる。とくに公共料金や一部のサービス価格、家賃などは依然鈍い動きを続けており、先行きも消費者物価の上昇率の高まりを抑制する要因となる可能性がある。』(今回)
『第3に、物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度が挙げられる。すなわち、海外経済の動向など経営環境を巡る不確実性から企業の賃上げの動きが拡がりを欠く場合や、そうしたもとで消費者の物価上昇に対する抵抗感が強まる場合には、物価の上昇ペースが下振れるリスクがある。また、食料工業品や耐久消費財などの価格が需給ギャップの改善に比較的強く反応する一方、公共料金や一部のサービス価格、家賃などの反応はこれまでのところ鈍く、先行きも消費者物価の上昇率の高まりを抑制する要因となる可能性がある。』(前回)
ここがワロエるのですが、どう見てもこれ前回懸念していることが徐々に具現化してきているようにしか見えないのですが、今回この部分をあっさり味にしておりまして、何かこうアーアー聞こえない聞こえないモードになっているのではないかと懸念される所です。
第4の『輸入物価の動向』もいつもの話なので割愛。
○第二の柱の部分がナメトンノカとしか申し上げようがない
とまあ延々と引用して恐縮ですが、最後にもう一つ見どころがございます。最後の『4.金融政策運営』でございまする。
『以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する10。』(今回)
という所ですけど、第一の柱ははいはい大本営大本営という所なのでどうでも良いのですが・・・・・・・・
『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクが大きい。物価の中心的な見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きく、下振れリスクが大きい。』(今回)
ちなみに前回とここは全文一致なので前回分は割愛します。
『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていないほか、低金利に伴う金融機関収益の下押しによって金融仲介が停滞方向に向かうリスクについても、金融機関が充実した資本基盤を備え、前向きなリスクテイクを継続していく力を有していることから、大きくないと判断している11。』(今回)
ということで、今回は新たに「低金利に伴う金融機関収益の下押しによって金融仲介が停滞方向に向かうリスク」という話がありましたが、結論は上記の通りでナメトンノカという内容。
脚注には『11 詳しくは日本銀行「金融システムレポート」(2016 年 4 月)を参照。』とありますが、FSRの方では確かに足元で問題になるような話ではないけれども、今の政策が長期化した場合に金融機関収益の下押しが長期化し、金融仲介機能が低下するリスクについては言及している訳でございまして、金融政策はフォワードルッキングに行うものであり、かつ展望レポートは2018年度までの期間に関して記載しているのですから、当然ながらFSRの趣旨を踏まえれば「足元では大きくないけれども今後の動向には注意をしたい」と締めるのが至当としか思えないのですが、そこではいはい大本営大本営となってしまうのは金融政策はフォワードルッキングとかいうのはどこに逝ったのかと小一時間問い詰めたい訳で、お前ら自分らの保身と体面で日本経済の潜在的リスクはスルーかよふざけるなとしか申し上げようがない最後のこの部分におじちゃん血圧急上昇ですよという事で、最後のこの部分についてはお前は何を言ってるんだという感じではあります。
以下の部分はどうでもよい(1月には追加緩和を入れる時に「出来るだけ早期に」を入れているのですけれども、今回は10月と同様にそこの文言が抜けていますがさっきの鏡と同じ)のでパス致します。
ということで引用増量企画お付き合いいただきましてありがとうございました。