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2015/12/30
お題「マネタリーベース前年比末残は80兆3800億円の増加の見込みですかね/その他年末なので世間話とか読書室とか」
ほうほう。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O048LH6VDKHT01.html
3つの投信全てを1月清算へ−ホワイトボックス・アドバイザーズ (1)
2015/12/30 03:26 JST
『(ブルームバーグ):投資会社ホワイトボックス・アドバイザーズは運用する3つの投資信託全てを1月19日に清算する予定だ。2015年の損失や投資家の資金引き揚げが背景にある。同社は運用資産が38億5000万ドル(約4640億円)で、株式責任者のジェーソン・クロス氏が今月辞任している。』(上記URL先より)
○MBをきっちり合わせる芸術技キタコレ!
相変わらず神業としか申し上げようがない。
28日の資金需給確報
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd151228.htm
マネタリーベース 3,559,000
29日の資金需給速報
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx151229.htm
30日の資金需給見込み
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jp151230.htm
日銀券要因での当座預金減少はMBには中立なので財政要因とオペ要因を計算すれば良いのですが、29日が財政で4600億円の揚げ超、オペ要因で4300億円の資金供給となっていて、30日が財政で8200億円の揚げ超、オペ要因で1兆2100億円の資金供給となっているので、30日のMBは見込みベースで355.9兆円+(-4600+4300-8200+12100)億円となって着地見込みが356兆2600億円になりますな。
ここで昨年末のMBを確認してみましょう。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd141230.htm
マネタリーベース 2,758,800
昨年末のMB末残が275兆8800億円で今年末のMB着地が356兆2600億円になりますので、何という事でしょうその差分は80兆3800億円とまた今年もきっちりと数字を合わせているではございませんか!!!!!!
・・・・・・・・・・しかも昔のようなオペで数字の帳尻を合わせているのではなくて、基本がアセットパーチェスで数字を合わせているというのに今年も今年で5000億円以内での着地にしてくるとか毎年同じことを言っているような気がしますが何をどうするとそういう芸術的な着地の数字が作れるのかとこの時だけは毎度感銘を覚えるとともに、結局ここの着地の帳尻オペが最後の方で色々と入ったから訳分からんオペになったんでしょうなあとは思うのですが、例によって例の如く年末過ぎるといつものように無慈悲買入とか悪態をつくようになるのもアタクシの仕様ではございますので念のため申し添えておきます(^^)。
つーかですな、こんなに芸術的な帳尻力があるのでしたらその卓越した能力(別にイヤミで言ってるのではない)のほんの一部で良いのでマーケットの流動性とかイールドのハチャメチャ状態とかをどないかする方策について配慮いただきたいと思いますがマンデートがMBとAPP残高の帳尻だから知らんがなですかそうですかorzorz
まあ来年に関しては基調的な物価が持ちこたえてくれるのかとか、オペが持ちこたえてくれるのかとか、そもそも2年で達成と言っているのに3年経過するのですがそろそろ落とし前つけてくれませんかねえとか、色々な「期限」を見ながらの展開になりますが、オペの方は無慈悲に淡々と実施という所なんでしょう。中短期輪番が燃えてきて買入年限の長期化調整をいつするのかというのは楽しみ(楽しくないが)ではあります。
なお、これらの「期限」を更に先延ばしする為には「原油価格ガー」という言い訳ができる事が必要となります(なおオペの限界はこれとは関係ないと思うけど)ので、実を言えば最早ここに至っては原油価格が一段と下がった方が日銀は助かる(ただの先送りだが)のではないかと思ってしまう今日この頃なのでありました。
○株式決済のT+2
http://www.jsda.or.jp/shiraberu/minasama/20150313173226.html
株式等の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ
『我が国金融・資本市場の競争力強化には証券決済システムの一層の利便性の向上及びリスク管理の強化等が必要であり、海外の主要国では、株式等の決済期間短縮(T+2化)が既に実施され又は実施に向けた検討が進められております。』
『平成27年7月、こうした状況を踏まえ、我が国においても株式等の決済期間短縮化の実施に向けた課題の整理・検討を行うため、「証券受渡・決済制度改革懇談会」の下に、「株式等の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ」(事務局:東京証券取引所、日本証券クリアリング機構、本協会)を設置いたしました。ここでは、ワーキング・グループの検討状況や報告書などを公開しております。
』
『平成27年12月、これまでのWGにおける検討結果及びT+2化の実施目標時期等を「株式等の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ
中間報告書」として取りまとめております。』
ということで上記URL先に報告書のリンクがありますがリンク先は以下の通り。
中間報告書(PDF60ページにつきご注意)
http://www.jsda.or.jp/shiraberu/minasama/1229_t2_tyuukannhoukokusho.pdf
中間報告書概要
http://www.jsda.or.jp/shiraberu/minasama/151229_t2_tyuukann_gaiyou.pdf
でまあ概要の方の3枚目(2ページ目)に『U.各課題への対応方針』ってのがあって、そこに真っ先に『(1)
非居住者との取引』とありますように日本の場合は時差的に早く始まるので、トレードの後処理がタイトですよねえとか、債券と違って基本的に受渡日はほぼ一律運用になる(概要の8枚目を見るとJSCCが債務引受対象にするのはT+2取引だけみたいですし)ようですし、国債の場合T+3→T+2はそこまでハードル高くなかったと思うのですが(なおT+1になるとハードルが格段に上がるのはいつも申し上げている通り)、株式の場合はそこそこ時間が掛かるようで目標時期が2019年になっていますな。まあ一応メモということで置いておく。
○年末読書室
年末ですのでたまには読書室でも、と言っても大体皆さんご案内の本で恐縮(池波正太郎モノとかさすがに無関係過ぎるので・・・・・・・)でございますががががが。
・「歴代日本銀行総裁論」(吉野俊彦著 補論・鈴木淑夫、講談社学術文庫)
ええすいませんこの本出たの昨年12月で今更紹介とかお前はナメトンノカと言われそうですし、既にだいぶ前に岩崎彌之助総裁の記述部分を引用してネタにしたのですが(汗)、書店をほっつき歩くと売り物はあるようですので超久々の年末読書室ということで。
どこから読んでも興味深いとは思う(なお思っているのはアタクシですので念のため)のですけれども、原本は昭和51年ですので詳しい話があるのは宇佐美総裁までとなっておりまして、佐々木総裁以降に関しては鈴木淑夫さんが補論という形で説明して、最後にQQEに関しての(2014年追加緩和実施後での)鈴木さんによる少々分量のある論評が補論に入っています。ちなみに最初から糞真面目に読んでいると当時(なので明治時代)の文書が引用されているので結構しんどいかも知れません(第3代の川田総裁の辺りで体力が尽きると思います)。まあ適宜興味のある総裁の所から読んで行ってその後で前後を読んでいくような感じの方が良いのではないかと。
どこも面白いとは思うのですが、宇佐美総裁論の中で吉野さんが紹介している宇佐美総裁が昭和42年に行った中堅行員の研修会での談話の最後の辺りを引用させて頂きます(改行等は割愛しています)。
『いたずらに世論とか、長いものに巻かれてはいけない。いろいろ研究して、ときには世論に対して毅然たる態度をとることも必要である。このことは、銀行の中でも同じで、相手が支店長、次長であっても、間違っていることに対しては、それは間違ってはいませんかと言うだけの勇気を持ってもらいたい。ただ、その際心すべきことは、議論の場では、自分の意見を堂々と述べることが必要だが、自分の意見が容れられなくても、決定したことには潔く従うことである。あとになって、「自分は、はじめからそれに反対だった」などとは、決して言わないことだ。それが組織の一員としてのあり方である。戦後、「私は戦争に内心反対だった」という人がいるが、その時堂々と反対を主張しないでおいて、あとからこのようなことを言うのは最も卑劣だと思う。』(「歴代日本銀行総裁論」第十九章宇佐美洵論p439-440より)
ISBN978-4-06-292272-2 CO0133 \1430E
・「真説 経済・金融の仕組み」(横山昭雄著 日本評論社)
さっきのと合わせてどちらも日銀OBの方が書いた本を紹介してるじゃねえかというツッコミがある上に、既に本石町日記さんも紹介していたのでただの尻馬ではないかと言われそうですが、年末読書室につき勘弁ということで。
でまあ内容の方ですけれども、特にマネタリーベース直線一気理論の実務面から見たおかしい部分に関しての説明は悪態はさておきまして丁寧に説明していまして、最近の金融政策論議に対しては、それらの議論に対してベースとなるものが間違っていませんか、という説明を悪態を盛大に交えながら説明していますので、まー思いっきり賛否が分かれそうではありますけれども、実務面から金融に入っているアタクシからしましても仰せの通りと存じます次第です。なお今申し上げたように悪態が盛大に入っているのでマネタリーベース直線一気理論の信奉者各位におかれましては恐らく内容を理解しようという前に横山さんの熱い悪態で受け付けない可能性があるなあとは思ってしまいましたが。
・・・・・・ええお前が言うなというツッコミが来るのは承知していますが。
ISBN978-4-535-55839-7 C3033 \1800E
なお超どうでも良い話なのですが、読書がめんどい場合は最近小学館から復刻されているマンガ「オバケのQ太郎」(今月で8巻目になる)が、バスがボンネットバスだったりパパの月給が3万2千円だったり鉄道に一等車があったり(今のグリーン車な)と時代を感じますよ。
○年末電波浴
またヨーイチ先生かよと思いながらも先生のレトリックに見事に引っ掛かっている人が多いようなので久々に電波浴ご紹介。まあご紹介するとアクセス増えて結局ヨーイチ先生は人気記事を書くという評価になってしまうのもアレなのですが。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156
「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした〜それどころか…なんと2016年、財政再建は実質完了してしまう!
この国のバランスシートを徹底分析 2015年12月28日(月) 高橋 洋一
題名を見た瞬間にまたヨーイチ先生かと思ったらやっぱり先生なのですが、従来から「バランスシートで考えて」という話をするので、一般国道が民間売却されて全部有料道路になるとか、外為特会保有の米国債を全売却したらどんだけ円高になるんだかとか、政策金融とか全部無くしたらどうなるのかとか、まあそんな話をしているのかと思ったらただのジンバブエ理論の話をしているのでありました。
3ページ目の辺りからですけどね。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156?page=3
『2013年度末の日銀のバランスシートを見ると、資産は総計241兆円、そのうち国債が198兆円である。負債も241兆円で、そのうち発行銀行券87兆円、当座預金129兆円である。そこで、日銀も含めた連結ベースでは、ネット国債は253兆円である(2014.3.31末)。』
『直近の政府のバランスシートがわからないので、正確にはいえないが、あえて概数でいえば、日銀も含めた連結ベースのネット国債は150〜200兆円程度であろう。そのまま行くと、近い将来には、ネット国債はゼロに近くなるだろう。それに加えて、市中の国債は少なく、資産の裏付けのあるものばかりになるので、ある意味で財政再建が完了したともいえるのだ。』
『ここで、「日銀券や当座預金も債務だ」という反論が出てくる。これはもちろん債務であるが、国債と比べてほぼ無利子である。しかも償還期限もない。この点は国債と違って、広い意味の政府の負担を考える際に重要である。』(以上上記URL先より引用)
ということでこれは以前どこぞの大先生が堂々朝日新聞のインタビューで説明したジンバブエも裸足で逃げ出す珍理論と同じ話ですな。
ただまあどこぞの大先生と違うのは、やたらああでもないこうでもないと説明を加えて、その間に具体的な数字を交えているので尤もらしく見えてしまうようで、盛大に引っ掛かっている人が多数いるらしい(ネットでみた感じだと)というのがさすがヨーイチ先生としか申し上げようがない次第で、さすがはこの手のレトリックを何年もやっているだけの事はありますなと存じます。その点で言えば朝日新聞でのインタビューで大変に端的かつシンプルな説明で分かりやすく説明の穴が分かるどこぞの大先生とは修業が違うという感じですな!!!!
ということでまあ話は簡単で、これって「政府債務分と同額の発行銀行券があって、政府債務部分を全額日銀引受をしていれば実質的に政府債務が無いのと同じ」という説明をしているのと同義なのですが、問題はヨーイチ先生が昔から主張しているマネタリーベース直線一気理論との整合性でありまして、実質的に政府債務を中央銀行券でファイナンスしたらそれはヨーイチ先生お得意のバーナンキの背理法によってどこかの時点でインフレが大爆発するというお話ですし、実務的に見たって政府債務を無尽蔵に中央銀行券でファイナンスする!と宣言した途端にムガベ大統領はビックリして格付け会社が泣きながら逃げ出す話になるだけでしょってな所ですな。
でもって次のページだかに(もう引用するのあほらしいのでリンクは割愛します)、「インフレ目標があるから歯止めがある」という話をしているのですが米国の例を見ればわかるようにインフレ目標を達成したら(またはする見込みになったら)その時点から大規模に拡大した超過準備については、その超過準備を回収するか超過準備への支払金利を引き上げることによって超過準備の不胎化を行わないとインフレ目標をオーバーシュートしてしまってインフレ目標の意味が無くなってしまうのですから、この時点で先ほどの説明にあった「資産の裏付け(=日銀当座預金))」が無くなってしまうか、「債務はほぼ無利子」というのが崩れてしまう(=超過準備不胎化の為に支払金利を上げないといけない)訳ですな。
でまあヨーイチ先生の説明だとそれは発生するともしないとも説明しないで、単にそこをスルーしているので、何となく尤もらしく見えてしまうのですが、インフレ目標を達成した(しそうになった)瞬間に説明の肝心な前提が崩壊するというのがちょっと見ると分からないようになっているだけのことで、まあ何だかなあとしか申し上げようがないですな。
なお、当座預金って償還期限が無いどころか要求払い性預金ですがまあこれは支払いをすれば銀行券に化けるのだからそっちの方は勘弁しておきましょう。
○年末のご挨拶
と申しましても4連休ですのでシルバーウィークよりも少ないじゃねえかどういう事だという所でございますが、何か今年は途中から短国市場の悪態だらけになってナンジャソラという感じで誠に恐縮至極の限りでございましたです(大汗)。今後も精進(?)を重ねる所存ですので宜しくお願い致します。
そうそうジンバブエと言えば
http://www.boj.or.jp/announcements/koho_nichigin/backnumber/44.htm/
「にちぎん」No.44 2015年冬号/2015年12月25日発刊
http://www.boj.or.jp/announcements/koho_nichigin/backnumber/data/nichigin44-11.pdf
AIR MAIL from Zimbabwe ハイパーインフレからデフレへ
というのが面白かったです。
では皆様良いお年をお迎えください。つーても来週月曜から通常営業ですけどね!!!!!!!!!
2015/12/29
お題「年末は(その前が阿鼻叫喚でしたが)平穏のようで/FRBはフォーキャストターゲットで正常化路線でしょうなあ」
ええいモーサテはもう休みかよと思ったらおはよんもおはよう日本もやって無いたあどういう事や(お台場と赤坂とアークヒルズは通常営業中)。
○市場雑談メモ
・スポ末はパターンがいつもと違い平穏というか何というか
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N14H1OM20151228
News | 2015年 12月 28日 15:10 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続伸で引け、長期金利0.270%に低下
『短期金融市場で無担保コール翌日物の加重平均レートは前週末(0.073%)並みの水準になる見通し。地銀、信託、証券を主な取り手に、朝方は0.075%付近で出合いが観測されたが、その後はじわりと調達レートを切り下げて調達。日中は0.073─0.074%中心に取引された。大手行は0.072─0.070%付近で調達した。
ユーロ円3カ月金利先物は小幅高。』(上記URL先より)
ということでレポ市場のネタが無いのですが(笑)、末初なので昨日は若干早めから動いていた感じでして、最初はプラス金利でスタートしたのですが、まさかのプラス金利になったのでじゃあ俺も俺もという展開になったっぽいのでブルームバーグとかの報じるところによると(ネット版では多分記事がないので引用できませんです)その後レート下がっただの何だのとなっていましたが、まあいずれにせよ年末と言えばマイナス金利になって「資金運用とは関係なく四半期末の残高を確保したいお家の事情の人」による国債残高確保で充足してしまうという毎度のパターンが今回はやや崩れましたな。
まーご案内のようにその前に短国が3Mで瞬間風速マイナス2ケタベーシスとかになったりした訳でして、そんな中ですから皆さん前倒しで残高固めないと最後の最後に取り損なうリスクがあると思ったら最後に需要の方が片付いてしまったの巻というところですが、金利がプラスだのとなったら追加の需要も出るでしょうし、まーこんなもんちゃあこんなもんですかね。
でもってこれを見て次の四半期末も何とかなるだろうとかタカを括る人がたくさん出て来ると今度は期末ギリギリに締めあがってしまうという形になるのですが(笑)、いずれにせよ日銀買入次第の面もありますのでどうなるのやら。
結局ですね、日銀買入というのが曲者でして、他の買入って海外の買いと言ってもマイナスファンディングのコストと合わないなら買わない(まあ問題はそのコストがとんでもなく低い事ですが)ですし、残高調整の買いとかでもそこまで盛大にロットがある訳でも無いですし、リアルマネーの人たちの場合はロットはあっても水準感というのがありますし、本来日銀が謎の成り行き買いを入れなければここまでの水準で値持ちすることは無いのですけれども、何せこの人たちが一定ロットを成行買いするのがアレでして、売り買い同額であっても(というか同額じゃないと売買が成立しないけど)片方が指値でもう片方が成行で、買い方が成行なのを売り方が知っていたらそらもう売り方は水準上がるまで見ます罠という状況。しかも短期の場合は投資家の残高が直ぐなくなるというのは前にもお話した通りですな。ナムナム。
まー日銀買入が進捗すると本来なら短国の買いが減ってくるという勘定になるのですが、海外ファンディング要因(というかそれに対する市場の見方)によって中々崩れなくなっている間に、3か月ものは3か月で1回転しちゃうので益々待機組が出てくるとなりますよって、そう簡単に相場がコケる気がしないのがアレ。
と申しますか・・・・・・・
http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php
売買参考統計値/格付マトリクス ダウンロード
おうこっちからDLしてくると直近の新発3M579回債(4/7償還)の売買参考統計値は▲4.4bpで3月償還銘柄と段差ついているじゃねえか(3月足だと▲2〜▲1bp)という感じになっておりまして、早速3月期末越えを意識した価格形成になっていて、カレンダーベースで年初になったら期内物と期末越えで段差がつくだろうなあとか言う前に既にこの有様。なおCPちゃんは例によって詳しくは金融ファクシミリ新聞さんをご参照して頂きたい(金ファクの回し者ではないので念の為)のですが、こちらも年末越えモードは終了の模様ですな。
・輪番は中期超長期でしたな
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of151228.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下)3,500 2015年12月30日
国債買入(残存期間3年超5年以下)3,500 2015年12月30日
国債買入(残存期間10年超25年以下)2,400 2015年12月30日
国債買入(残存期間25年超)1,400 2015年12月30日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3)8,000 2015年12月28日 2015年12月29日
ということで中期超長期でこれで年内渡しは終了。次の輪番って今日か明日なのですがほぼ朝三暮四状態なのでどちらでもという感じっすけど中期輪番が入るので2営業日連続で同じ輪番というのを外すのだったら今日は無しで明日輪番ということになりますかね。よー知らんけど。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba151228.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下)10,991 3,502 0.010 0.012 1.9
国債買入(残存期間3年超5年以下)11,174 3,505 0.002 0.003 15.6
国債買入(残存期間10年超25年以下) 6,484 2,407 -0.007 -0.003 2.1
国債買入(残存期間25年超) 5,263 1,406 0.002 0.003 27.0
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)46 46 -0.400 -0.400
中短期の輪番は基本引け甘で1-3とか大体1毛とか甘いのですが、そもそもこの辺の銘柄は引けが今や3M短国よりも低い(なお1年短国の方が▲10bpという売買参考統計値になっているのでそれから見れば順イールドである)というオモシロ展開になっておりますのでまあこういう感じでしょうな。と申しますか、今回はMPMで来月の買入明細を前倒しで発表してしまい、量が増えるのは織り込み済みで、内容に関しても若干市場予想よりも後ろが多め程度で大方の予想から大きくは外してはいなかったものの、やはり買入内容が公表されている、というのが安心感を与える訳で、「よーしパパ来年の輪番増額で売りをぶつけて四半期の頭からホームランだ!」と準備する人がワサワサと出てきた結果、皆がここぞとばかりに待ち構えているのでそこまで強くならないの巻という状況ではありますな。
とは申しましても、現実に買入が増えるのが来月で、実際に日銀が吸収しだすと「よーしパパ輪番でウハウハだよ」の見込み在庫が徐々に捌けていくでしょうから、そうなった後どうなるかというのが今から想像がつきにくいのですが、そこから先が焦点になるんでしょうね。
まあ何ですな、確かにマイナス金利をせっせと掘っていくと投資家が買わなくなるので金利低下にも限界という理屈はそうだと思うのですが、日銀が輪番で成行買いをする以上、日銀の成行買いにぶつける期間まで在庫ファイナンスが回って、その在庫ファイナンスレートが日銀成行買いに打ち込むのに対して間尺に合えば何ぼでも水準は強くなっていく、という考えもありまして、その在庫ファイナンスに関してはビルの金利がどマイナスを維持していればビルから押し出されたリアルマネーがやってくるので無問題、とか考えますと意外に強固な構造のような気もしますが、何かこの考えにも落とし穴があるようにも思える。いずれにせよ年初1週間の動きは注目したいです。
○日銀がこういうのを出すとは珍しい
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2015/ron151228a.htm/
2020年東京オリンピックの経済効果
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2015/data/ron151228a.pdf
とりあえず要旨を丸引用しておきますね。
『2020年に開催される東京オリンピックは、主として、(1)訪日観光需要の増加と(2)関連する建設投資の増加という2つの経路を通じて、わが国経済にプラスの効果を及ぼすと考えられる。』
ほう。
『訪日外国人数は、訪日観光ビザの要件緩和や為替円安等を背景に、このところ順調に拡大しており、2020年に2,000万人という政府目標の達成は、ほぼ確実な情勢となっている。この点、諸外国との比較でみても、訪日客の増加余地はなお大きく、東京オリンピックを見据えた観光客誘致政策の強化などを通じて、訪日観光需要を一段と拡大させていくことは十分に可能であるとみられる。その際には、諸外国の経験を参考にすると、オリンピック観光客が首都圏のみならず地方にも回遊するルートを整備しつつ、わが国全体の観光資源の魅力を高めることにより、息の長い観光需要の増大につなげていくことが重要である。』
『オリンピック関連の建設投資には、オリンピック会場設備など直接的な需要だけでなく、民間ホテルの新築・増改築や都心の再開発、商業施設の建設や交通インフラの整備といった間接的な需要も含まれる。過去のオリンピック開催国のパターンを参考にすると、関連する建設投資は、2017〜2018年頃にかけて大きく増加したあと、2020年頃にかけてピークアウトしていくと予想される。』
『こうした建設投資のブーム・アンド・バストによる景気の大きな振幅を回避するためには、上述の観光客誘致策に加え、規制緩和をはじめとする各種の成長力強化に向けた取り組みを通じて、新規需要を掘り起こしていく必要がある。同時に、そうした新規需要の増加を供給面から支えていくためには、労働生産性の向上や女性や高齢者などの労働参加を一段と促進するなど、人手不足というわが国が直面する構造問題に、これまで以上に取り組んでいく必要がある。』
という話をしているのですが、ニュースの方では経済効果何兆円の方だけ報道されているのが誠に遺憾の極みでございますが、日銀がこういうのを出してくるというのが何というか微妙なテイストを感じる次第で、何か政治向けのアピールでもしたいのかと思いましたが、2017〜2018に建設投資のブームが生じるならばそこにぶつけて消費増税をしても問題ないですね!!!などと感想を言うのは目が濁っている証拠なので注意しましょう。
ちなみに内容についてはごく真面目に(当たり前ですが)分析しています。
○いまさらですがイエレン会見(って2週間前ですかそうですか)のネタからちょっとだけ
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20151216.pdf
Transcript of Chair Yellen’s Press Conference
December 16, 2015
何かネタにするとか言いながらネタにしていないで鮮度が落ちそうなので慌てて投下するのですが、今日は「物価目標はアウトルックベースでの達成を念頭に」という部分をば。
10ページ目の辺りから。
『STEVE LIESMAN. Just to follow up, how does raising rates help get you to either of those goals?』
『CHAIR YELLEN. We have kept rates at an extremely low level and had a
high balance sheet for a very long time. We have considered the risks to
the outlook and worried about the fact that with interest rates at zero,
we have less scope to respond to negative shocks than to positive shocks
that would call for a tightening of policy. That is a factor that has induced
us to hold rates at zero for this long. But we recognize that policy is
accommodative, and if we do not begin to slightly reduce the amount of
accommodation, the odds are good that the economy would end up overshooting
both our employment and inflation objectives.』
『What I-we would like to avoid is a situation where we have waited so
long that we’re forced to tighten policy abruptly, which risks aborting
what I would like to see as a very long-running and sustainable expansion.
So to keep the economy moving along the growth path it’s on with improving
and solid conditions in labor markets, we would like to avoid a situation
where we have left so much accommodation in place for so long that we overshoot
these objectives and then have to tighten abruptly and risk damaging-damaging
that performance.』
そろそろ正常化しないとオーバーシュートするので利上げというのは冒頭でも説明していますが、この説明は要するに「フォワードルッキングで正常化」という趣旨な訳でして、ビハインドしたらその後のキャッチアップの際に強烈な引締めが必要になるのでそれは避ける、というフォワードルッキングの説明と、データによってペースを変える、という説明が市場に与える印象というのの間に多分温度差があると思うのですよね。
つまり・・・・・・・・・
『JON HILSENRATH. Chair Yellen, Jon Hilsenrath from the Wall Street Journal.
In the sentence in your statement about gradual increases, in that section,
the Committee says that it “will carefully monitor” progress-actual and
expected progress on inflation. That’s going to read like some kind of
code to a lot of people on Wall Street.』
と指摘があるのは当然でして・・・・・・・・・
『Can you describe-what do you mean when you say “carefully monitor”?
And, specifically, with regard to what you do next, do you need to see
inflation actually rise at this point in order to raise interest rates
again? 』
と言われます罠。これに対しての答えですが、
『CHAIR YELLEN. Well, we recognize that inflation is well below our 2 percent
goal. The entire Committee is committed to achieving our 2 percent inflation
objective over the medium term, just as we want to make sure that inflation
doesn’t persist at levels above our 2 percent objective. The Committee
is equally committed-this is a symmetric goal-and the Committee is equally
committed to not allowing inflation to persist below our 2 percent objective.』
これはただの前置き。
『Now, I’ve tried to explain-and many of my colleagues have as well-why
we have reasonable confidence that inflation will move up over time, and
the Committee declared it had reasonable confidence. Nevertheless, that
is a forecast, and we really need to monitor over time actual inflation
performance to make sure that it is conforming, it is evolving, in the
manner that we expect. So it doesn’t mean that we need to see inflation
reach 2 percent before moving again,but we have expectations for how inflation
will behave.』
ということで、実際の足元での物価指数がどうこうというのは勿論先行き見通しに影響を与えることもあるけれども、指数がどうなったから追加利上げしないというような話ではなくて、あくまでも「reasonable
confidence」というのは「forecast」ですよという話をしておりまして、要はこれ物価に関しては(雇用がコケ無い限りにおいて、だと思いますが)フォーキャストターゲットみたいな話をしているんですよね。
『And were we to find that the underlying theory is not bearing out, that
it is not behaving in the manner that we expect, and that it doesn’t look
like the shortfall is transitory and disappearing with tighter labor markets,
that would certainly give us pause. And we have indicated that we’re reasonably
close?not quite there, but reasonably close-to achieving our maximum employment
objective, but we have a significant shortfall on inflation. And so we’re
calling attention to the importance of verifying our-that things evolve
in line with our forecasts. 』
という説明ですが、まあ多分市場ちゃんの方は足元の物価とかの指標を見ながら3月利上げあるのか無いのかという話をすると思いますので、ここの部分のコミュニケーションギャップがどのような形で埋まっていくのかは来年の米国金利のテーマになるんじゃネーノとは思うのですがどうでしょうかね。
『JON HILSENRATH. Just to follow up, do you need to see it rise? Not necessarily
get to the 2 percent goal, but in order to move again, do you want to see
inflation measures actually moving higher? 』
こらまた直球質問ですが逆に言えば足元の物価がヨコでも次の利上げするんですか?と聞いている訳ですな。
『CHAIR YELLEN. I’m not going to give you a simple formula for what we
need to see on the inflation front in order to raise rates again.』
まあそう答えますよね。
『We’ll also be looking at the path of employment as well as the path
for inflation. But if incoming data were-led us to call into question the
inflation forecast that we have set out, and that could be a variety of
different kinds of evidence, that would certainly give the Committee pause.
But I don’t want to say there’s a simple benchmark. We-you know, the
Committee expects inflation-over the next year, the median expectation
is for inflation to be running about 1.6 percent, and-both core and headline.
So we do expect it to be moving up, but we don’t expect it to reach 2
percent.』
ということで、足元の物価がここからどうなったから次回をやるとかやらんという話ではない、という説明をしているのですが、このフォーキャストターゲットの考え方ってどうしても「こういう政策をやりたい」(今なら正常化路線)という発想にフォーキャストが引っ張られてしまう傾向がありますので、そういう点からしますと市場が織り込んでいる(織り込んでいるのはそのレートだが実際にはFRBの意思については市場も分かっているとおもうのですけどね)レートとは別の利上げパスに関してはFRBが「降りる」までには結構なハードルがあると思うのですけどねえ。まあ最終的にどっちが正しいのかは経済がどうなるかというお話ではあるのですが・・・・・・・・・・・・・・・・・・
という虫干しネタでしたどうもすいません。
2015/12/28
お題「オペ雑談/日銀謹製物価は横ばい/11月議事要旨は特に12月のアクションを示唆するもの無し」
おまいら来週月曜は年初だよ年初。
○短国買入と輪番を入替とな
金曜のオペオファー。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of151225.htm
国庫短期証券買入 5,000 2015年12月29日
CP等買入 5,500 2015年12月30日
ということで金曜は中短期と何の輪番実施で短国買入は年末跨ぎで実施してくるものだと思ったらまさかの短国買入実施&輪番なっしー。
通常ですと年末のこの時期の渡しで短国買入とか普通は世の中に玉が無いので札が入らんこと必至だから四半期末を跨いでくるのですが、今回は元々短国買入のペースが落ちている所に加え、足元では直近3Mの新発がマイナス決着の後あまり強い展開となっていまして、まー短国やや重いかなあというのと、年初から輪番の買入額が増える事から「年初から買入増えたところで輪番に入れたら強い所で売れるからウマー」という見通しの元、来年の輪番プレイ狙いでのポジションも中長期債でやや入っている模様で、GCのレートが四半期末接近だというのに上昇傾向となっております。
という状況なので短国の需給も若干緩んでいますなあ買入が想定通りに来週送りになったら新発安くならないかなあ〜などと取らぬ狸の皮算用をしていたのですが、ちょっと需給が緩んだと思ったらすかさず短国買入ですよ奥様困りますわね〜というこのオペで、短国の気配も当然のように持ち直すの巻と相成るのでした。
ちなみに短国の需給に関してですが、今週は年末年始でオペも入札も無いのですけれども、年初1発目の3M入札が来年は1月7日木曜日にならないと実施されない(8日に6M入札)のですが、この間に日本は年末年始ですけれども海外は通常営業になりますので、実質的に2週間近く新発の供給が無いという計算になるので、年明けて世の中の在庫状況次第な面はあるのですけれども、年末特需一巡後の短国在庫が若干あるうちに行われる来週の3M入札がどの程度の水準で決着するのかというのは年初一発目の最大関心事項という所です。
だいたい四半期1発目って期末越え残高確保分でドカンと誰かが札を入れて不明玉が多い、というパターンで3ヶ月後にもそのロールみたいな形になるのが年中行事になっていたりしますけれども、まー年初1発目と2発目の3M(どうせ6Mは日銀プレイで持って行かれるので知らん)が薄いマイナスからゼロ金利近辺になる当面のワンチャンスでしょと思うのでポイントは年初ですね。
あと末初なんですけれども、今年の年末に関しては今申し上げたように年初一発目からの輪番増額狙いで在庫が多めになっているものと推察され(だから年初最初のうちは輪番狙いの札が入ってそんなに目を剥くほど強くならなくて、その辺が普通のレートで推移してなーんだとなった辺りが怪しい)まして、一方でこの年末はその前に短国が爆発してみたりCP市場で金利が盛大に低下しているものが発生してみたり(詳しくはファクシミリ新聞ご参照)というように、海外ドル円ベーシス絡みと日銀無慈悲買入のダブルパンチでの金利低下がカオス状態になった為に、年末年始の玉確保の動きは通常比10倍くらいの勢い(あくまでもイメージ)で進行しました。そんでもってMPMで来月の輪番予定が出るというイレギュラーな事をしているので来月の輪番狙いの中短期国債の在庫が積みあげられるという形になっていますので、これは下手したらGCとか末初普通に出てくるんじゃネーノ位の勢いになっているのが味わいのある展開です。まあ本日がスポ末ですので、本日締めてみれば大体どんな感じになるのかは判ると思います。
でもってオペ結果。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba151225.htm
国庫短期証券買入14,851 5,000 0.011 0.034 13.5
CP等買入 10,935 5,490 0.048 0.054 42.0
短国買入は前回が11日金曜のオファーで15920億円のオファーでしたが、今回は14851億円のオファーと在庫多くなっていると思われるけれども減少。まあ年末年始に向けて売る分とか考えたらオペ狙い在庫以外で持っているスケベ札みたいなのは入りにくいんだろうなあと思いますので、落札結果に関しても今回足が流れて1毛1糸甘まで流れていますな。応札限度額の問題があるのでオペ狙いの在庫を多くの人が持っていないとなるとこういうケースでは札の揃いが悪くなるのかねと思いつつやや強めの所まではいったなこりゃという結果で、そらまあ短国の気配が確りするわなという結果。
でもってもう一つ注目していたのがCP買入でして、こちらについてはとにかく年末前に短国市場での運用難民とみられる買いが入ってドヒャーという展開になって、CPディーラーに日銀買入に打ち込む玉があるのかよ(CP現先のニーズも当然あるので)という風情でしたけれども、年末跨ぎ特需はギリギリの所で一段落した模様で、その結果もあってか応札の札も無事にありまして、レートの方も極端な金利にはならずに前回の5.6bp/4.7bpから今回は5.4bp/4.8bpと穏当な水準で落着してくれて、日銀としては無事に買えてホッと一息というところですかねえ。
・・・・・・・・とまあ年末年始の短期の方は(今日のスポ末を見ないと最終的には分からんのだが)11月途中の短国3Mマイナスぶっ飛び以来の大騒動モードがスポ末ちょっと前の所でようやく沈静化したという風情ではあるのですが(なお次の戦いは3末越えであってこっちの方が年末の比じゃないハードコアなのは確実)、短国買入と輪番を差し替えてきたと思われる風情の輪番の方がこれまた大変にアレ。
と申しますのは、年内営業日残り3日の中で2回輪番を打つ筈なのですが、残っているのが中短期2発に長期1発に超長期1発でして、特に足元では2年近辺の中短期ゾーンの金利がマイナス5bpだの6bpだのという大変に素敵なレートになっている中、輪番2連発という今から結果が楽しみな状態。先週の頭から元々ぶっ飛んでいる中短期2年ゾーンが更にぶっ飛んで推移し、火曜の2年入札のあと既発債の方が盛大に飛んでしまいました事もあって、木曜金曜と中短期の輪番をスキップしておりまして、こういうのを見ますと「盛大なマイナス金利で買いたくないんだな」という風に読めてしまう次第で、ヘイヘイ日銀ビビってるビビってるよ!とベンチからヤジが飛んでくるような感覚になってしまうのですが、実際の所その辺を懸念しているのか懸念していないのかは良く分からんですな。
先日も申しあげましたように、短国買入にせよ輪番にせよ、市場に配慮しているのかと思えば全然配慮しないで無慈悲買入を入れてみたりとか、パターンが意味不明過ぎて、今回の輪番中短期謎のスキップ攻撃にしても「年末に輪番中短期が間違ってぶっ飛んでも年末年始だから大きなニュースにならないので来週に送ってしまえ」と考えているんでしょうなあなどという妄想が沸き起こってくるような動きでして、そうなると「黒田総裁は強気発言しているけれども実際は輪番オペの限界を相当意識しているんじゃネーノ」とか「マイナスドンドン買って行くのはさすがに抵抗あるんじゃネーノ」とか市場に思われてしまう惧れがありまして、先般の謎の「補完措置」も合わせまして市場が輪番の限界をより意識するようになると、それが自己実現で輪番の限界を速める可能性があるんじゃないですかねえと思うのでした。
○日銀謹製物価指標来ました
http://www.boj.or.jp/research/research_data/muipre.pdf
『総合(除く生鮮食品・エネルギー): 10月1.2→11月1.2』
『刈込平均値: 10月0.6→11月0.6』
『上昇品目比率−下落品目比率: 10月39.7→11月42.2』
10月分出た時には「満を持して出したらどう見ても頭打ち指標ですな」などと申し上げた訳でございますが、今回は横ばい若干改善圏内という事で「基調は確り」攻撃が可能となりまして誠に慶賀の念に堪えません(棒読み)。
まーいずれにせよこの辺の指標が堅調に推移している隙に名誉ある大勝利宣言と共に戦線の転換を行わないと、そろそろQQE実施からまる3年となる訳で、まる3年経って何かの勝利宣言も出来ないということになるとそれは総裁副総裁のクビか毛髪を毟らないといけないと落とし前が付かないと思うのですけどね。
なお、都合が悪くなってきた場合には新しいコア物価指標が登場するのではないかという疑惑は思いっきりあるのですが、その調子で時間稼ぎをすれば何とかなるかと言えば、毎度申し上げている通りで輪番の方がどこかで爆発してしまう、というのがQQEが他の非伝統的政策と違う所で、途中で追加緩和して加速した挙句によく3年持った(まだ3年経ってないし、もしかしたら1−3の所で輪番爆発するかもしれないですけどまあ持つでしょという前提のもとで)という感じで長期戦はどう見ても無理なんで、物価指標を適当に新しいの繰り出して目晦まし作戦もいつまでも出来るものではありません。
○11月決定会合議事要旨
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g151119.pdf
まああんまりおもしろくないのだが。
・企業行動に関連する議論から
『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』の国内経済パート。
『わが国の景気について、委員は、輸出と生産は、新興国経済の減速の影響などから、このところ横ばい圏内の動きとなっているが、家計・企業の両部門において、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと作用し続けており、緩やかな回復を続けているとの認識を共有した。』
という前向きの循環メカニズムネタ。
『多くの委員は、7〜9月期の実質GDP成長率(1次速報値)が4〜6月期に続いてマイナスになったことについて、主因は在庫の減少であり、個人消費や外需を含め最終需要がプラスとなったことを踏まえると、景気が緩やかな回復を続けているという判断と整合的なものであるとの認識を共有した。景気の先行きについて、委員は、所得から支出への好循環が続くもとで、緩やかな回復を続けていくとの見方で一致した。』
とまあそういう毎度の認識でして、まあどうなんでしょうねえと思いますが、実際の企業行動に関してはと言えばその先の方で・・・・・・・・・・・・
『委員は、高水準の企業収益やタイトな雇用環境との対比でみて、設備投資や賃金といった支出面への波及がやや鈍い点について議論した。』
というのがありまして、
『何人かの委員は、企業経営者が現在の高水準の収益を過度の円高の修正や交易条件の改善も寄与した一時的なものとみていることが影響しているとの見方を示した。』
何人かですか。
『ある委員は、労働市場の改革などを含め政府が成長戦略を着実に実行し、企業の前向きな取り組みを後押しすることが望まれると述べた。そのうえで、多くの委員は、新興国経済が減速した状況から脱し、内外需の堅調さがある程度継続すれば、設備投資や賃上げに対する姿勢も積極化していくとの見方を示した。』
『一人の委員は、一部では生産を国内回帰させる動きや研究開発分野への投資を拡充する動きがみられており、今後は投資の一層の加速が期待できると指摘した。また、別のある委員は、高水準の企業収益との対比で設備投資や賃金の増加が鈍いという現象は、他の主要先進国でもみられるが、そうした状況が長く続くとは考えにくく、いずれは波及していくとの認識を示した。』
つーことで企業行動はいずれ改善する、積極化するというお話ではあるのですがどうも希望的観測の香りがします。
『この間、複数の委員は、賃金が上がらないということは、現状はまだ完全雇用には達していないことの証左であり、引き続き総需要の拡大が重要であると指摘した。
』
まあそうなのかも知れませんが、企業の成長期待が足りないから雇用にブレーキを掛けている可能性もあるんじゃないですかねえとは思うのですよ。まあそれが完全雇用に達していないと言えばそうなのでしょうけれども、総需要の拡大って言ったって何をどうするのでしょうか。
・物価に関する議論もありまして結局は「賃金の上昇が重要」という話
『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』から。
『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、物価の基調的な動きが重要であるとの認識を共有した。そのうえで、委員は、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)が伸びを高めているほか、消費者物価(除く生鮮食品)の上昇品目数の割合から下落品目数の割合を差し引いた指標が上昇を続けていることなどを踏まえ、物価の基調は改善を続けているとの見方を共有した。』
いつもの基調攻撃。
『物価の先行きに関し、委員は、来年度の春闘において、基調的な物価上昇率の高まりが賃上げに反映されることが重要であるとの認識を共有した。これに関連し、複数の委員は、基調的な物価上昇率を反映して賃金が上昇しなければ、先行きエネルギー価格下落の影響も一巡するもとで、家計が食料品や日用品の値上げに対する抵抗感を再び強めるリスクにも留意が必要であると指摘した。』
ということで、先ほどの企業行動の所でも賃金の話がありーの、こちらでも賃金の話が最初にありーのという事で、要するに賃金ちゃんと上がるかという話が物価目標に関しての重要ポイントという話に完全になっている訳でして、そうなりますと来年4月の展望レポートの時期(先送ったとしても7月)には何らかの総括が求められるのではないか、ということになりそうですね。
『この間、複数の委員は、国際商品市況の下落を受けて仕入価格が総じて低下するもとで、企業の価格設定行動に変化が生じないか、注視する必要があると述べた。この点に関連し、何人かの委員は、物価の基調について消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)を用いて説明する場面がこのところ増えているが、昨年来の急激なエネルギー価格下落を踏まえれば、こうした対応は適切であるとの認識を示した。そのうえで、委員は、物価の基調の判断に当たっては、様々な物価指標を点検するとともに、その背後にある経済の動きと合わせて評価していくことが重要であるとの見方で一致した。』
はいはい基調基調。
『予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標や各種アンケート調査では、このところ弱めの指標もみられているが、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとの認識を共有した。』
声明文で急に出てきた「弱めの指標もみられているが」ですな。今に始まった訳ではないと思うのだが何故この時期に出たのかというのを見れるかな、と思いつつ以下鑑賞。
『委員は、短期の物価見通しに対するアンケート調査の指標は、直近のエネルギー価格の動向に左右されやすいほか、物価連動国債の利回りを用いて計算されるブレーク・イーブン・インフレ率は、市場流動性や需給動向にも影響されるため、それぞれの指標の特性を踏まえて解釈する必要があるとの見方を共有した。』
BEIをドヤ顔で説明していた置物師匠is何処?
『また、何人かの委員は、本年度入り後、企業の価格改定の動きには拡がりと持続性がみられるほか、家計も値上げを受容するようになってきていることを踏まえれば、予想物価上昇率は上昇していると判断されると述べた。』
ということですがヘッドラインの物価がそんなに上がっていないから値上げに対する痛みが比較的軽くて、その結果として受容するように「見えている」だけなのではないかという論点は???
『こうした議論を踏まえ、多くの委員は、先行き、原油価格下落の影響が剥落するに伴って消費者物価は伸び率を高め、2016
年度後半頃に2%程度に達する可能性が高いとの見方を共有した。』
とまあいつもの結果。
・今でも2年に拘るんですねえ(棒読み)
『先行きの金融政策運営の考え方について、多くの委員は、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとの認識を共有した。』
という毎度のお話ですが。
『このうち一人の委員は、賃金と物価の関係について、両者は概ねパラレルに動くものであり、デフレマインドが払拭されなければ結局物価も賃金も上がらなくなるとしたうえで、日本銀行の姿勢をしっかり伝えるためにも、「物価安定の目標」の早期実現のコミットメントを堅持することが重要であると述べた。』
それは分かったが早期実現してないじゃん。
『また、別のある委員は、「2年程度の期間を念頭に置いて」という強いコミットメントは、「量的・質的金融緩和」の政策効果の起点であり、そのもとで企業や家計の物価観は大きく変化していると述べた。』
それは分かったが2年で達成してないじゃん。
・一方で木内さんの話はいつも通りですが今回も反論の記載がない
『一方、一人の委員は、「量的・質的金融緩和」の効果は、実質金利の低下一巡に伴って限界的に逓減しており、国債市場への影響など副作用が既に効果を上回っていると述べた。』
(;∀;)イイシテキダナー
『この委員は、国債の保有残高を削減しない範囲で増加ペースを減額するのであれば、その効果は損なわれないとの認識を示した。そのうえで、この委員は、@長期国債保有残高の増加ペースを、段階的減額を視野に入れて、「量的・質的金融緩和」導入時を下回る水準まで減額すること、A「物価安定の目標」の達成期間を中長期へと見直すとともに、金融不均衡などのリスクに十分配慮した政策運営を行うこと、を主張した。また、これは、早期の「量的・質的金融緩和」終了や金利引き上げに向かうものではないことを指摘した。』
という所で話が終わっていますが、まあ前半の部分が実は木内さんに対する反対論なのかなとも思います。というのは木内さんの「中長期」に対するカウンターという感じでの説明になっているのでまあそうかなという風に思ったのですけれども、まー「副作用は理論的に実証的にも認められない(キリッ)」からはだいぶ後退して、「早期達成のコミットメントが重要」に戻っちゃいましたね。この反論の最大の泣き所は以前と違って「コミットメントの結果」が出てしまっていることなのですが。
つーことで、だいたい政策変更をした回の前の分のMPM議事要旨は何らかの政策変更を示唆するようなネタを練り込んでいるのですが、今回は特段のネタの練り込みは観測されず、要するに先般の調整は本当の本当に「技術的修正」だった訳で、あまり追加政策だの何だのという意図はなく、見せ方で変にスケベ心を出したのが勇み足だったというお話なんでしょうなあと思うのでした。
2015/12/25
お題「予想外の輪番/3M入札は割と穏当な結果/総裁講演を肴にちょっと雑談というか悪態」
最近ネタの処理が追いつかなくなっていて、だったら夜や土日のうちに書いておけば良いのですが、ショパンの事情により中々ヒマというか余裕がなくていかんです(大汗)。
○中短期輪番スキップとか3M入札とか
・輪番中短期スキップとな
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of151224.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下)4,000 2015年12月28日
国債買入(変動利付債)1,200 2015年12月28日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3)12,000 2015年12月24日 2015年12月25日
ということで輪番は長期変国という形で実施されたのですが、昨日は中短期があるものだという予想が多かった筈で、中短期をスキップしたのは2年入札後に2年のオフザランを中心に煽り気味に金利が低下して2年のカレント2個前の銘柄が▲6bpとか碌でもないレートになっていたので、市場の過度な金利低下をけん制する為にスキップしましたかねえとのもっぱらのお話。
・・・・・・・・・まあそれはそれで良いのですけれども、短国買入にしてもそうなのですが、市場の過度な動きに配慮しているかと思えば11月の短国買入で予想外の1.5兆円を打ってから短国市場の壊れが加速しちゃいましたテペヘロみたいなのが一方にある訳で、市場に配慮してるんだかしてないんだか分からんという感じでオペが行われるというのが一番市場としては対応に困る訳ですな。つまり、市場に配慮するったって例えばの話昨日の中短期見送りって出来上がりのドマイナス金利を避けたんですかという解釈を市場サイドだったらすると思うのですが、一方で短国の場合はしばらく前は金利がバカスカマイナス進行する中で無慈悲に買入をしていたり、金利がプラスに戻りそうな所でいきなりオペを増額していたり、とかやっている上に、そもそも論として総裁副総裁とかが「金利低下は政策効果(キリッ)」と言い出す次第ですので、結局「何をどうしたいのか」が個別のオペレーションを全部足し合わせて考えた時にさっぱり分からんというのが市場の値動きを微妙にややこしくしている要因じゃないかと思うのですよね。
あと、市場の過度な値動きに配慮したいという意思があったのかどうかはさておいて、一般論として申し上げますと、これだけバカスカオペを実施している中において、市場への配慮をするのだったら過度な値動きの牽制をしようとしてもそれは大体時既にお寿司なのでありまして、市場がおかしくなる前に手を打って行かないといけないですし、その方がオペレーションなどのコストが安くて済むのですよ。
でまあジジイの昔話になりますが、リーマンショック後のオープン市場(GCとか現先とかCPとか)のレートが急上昇しているときにもこちらの駄文でしつこく申し上げていたのですが、結局放置プレイになった(CP現先というのを申し訳のように打ったが焼け石に水程度の効果しかなかったのに後日「CP現先は効いた(キリッ)」という日銀レビューが出てきて血圧急上昇)挙句にGCレートがロンバード金利まで張り付いてCPレートはそこから25位上になってしまうというような盛大な惨状を呈した、という事案があったのですが、そうなってから沈静化させるためには何が必要かとなると、結局社債とCPの買入という異例の政策を実施した訳ですな。
別にレッセフェールで勝手にやってろというのならそれはそれで結構なのですが、何らかの市場安定化とか市場との対話とかいう話をしているのであれば、市場の変化に対する配慮をしたければおかしくなってから牽制しても遅いのであってプリエンティブに対応するしかないですし、配慮にしても時々配慮したりしなかったり、というのが一番対処に困るので、「こうやって淡々と実施するからよろしゅうに」となっていればそれはそれで予見可能になるのでオペそのものが市場かく乱要因になりにくくなるのでして、まー匙加減は難しいと言えば難しいのですが、日銀の(対インターバンク向け以外の)オペレーションは伝統芸能として「ビハインド・ザ・カーブになって火消しで無駄にコストを使う」というのがあるのが残念無念な所ではございます。
・3M短国は足切強くなるが全般的には穏当な入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20151224.htm
(3)募入最低価格 100円00銭4厘0毛(募入最高利回り)(-0.0144%)
(4)募入最低価格における案分比率 61.1745%
(5)募入平均価格 100円00銭5厘8毛(募入平均利回り)(-0.0209%)
最初足切を見てああ前回よりも1厘も強いよダメじゃんと落涙を禁じ得なかったのですが、平均が前回よりも7毛弱くて札が収斂してるじゃんこれはもしかしたらと思ったら、市場推計の所謂不明玉も1.6兆円程度と平常運転のロットですし、そもそも前場引け時点ではアオリイカのビットが入っていたのにそれよりも甘めの水準での決着、ということで、3月末越え一発目の入札にしてはそんなに強くなった感じではないですな。
でまあ途中は全般的に重そうに推移していたようなのですが、引けに掛けて毎度のように6mとか1yとかが盛大に▲10bpとかワッショイワッショイとやっていてカレント6Mと1Yだけ1毛強の引けになっていたりしたので新発の引けも強い所になるという毎度のクオリティでしたけれども、GCレポや現先の推移見ていると普通にこれ短国(だけではなくて長期国債輪番向けヒャッハー在庫もある方が効いているのかもしれませんが)とか残っているだろという風情を醸し出しております。なお、金利がマイナス圏にいるときはリアルマネーが買いに来ない(マイナス買うのはマイナスファンディングの人とお家の事情の人)のでそのままGCや現先市場に滞留してレートに反映されるという展開になるのでありました。
今週月曜に短国買入スキップしたということは、恐らく年末のMB数値の着地は計算できていると思いますので年内渡の短国買入は実施せず、29日に1月4日渡しの短国買入を打ち込んでくる、というのが予想としては順当な線になります(市場予想もそこの筈)。後は末初のGCや現先がどうなるのかという次第かとは思うのですが、今回の期末に関して言えば11月から極端になったドル円ベーシス絡みのヒャッハー相場による煽りを受けて、皆さん相当の前倒し対応をした(結果短国金利がいつまでたっても上がらなくなったのですが)と思われますので、こういうケースって最後の最後に余って出てくるというケースもアリエールかなとは思いますが、まー予断は許さんものの、事前手当の進捗が今回ばかりはさすがに良いでしょうから大波乱的なアレにはならないかもしれませんね。
でまあ今回そうなると3月末の所で「どうせ最後は何とかなる」とか思う人が出てきて碌でもないことになる、というのが短期市場の期末地合いのサイコロバクチあるいはジャンケンみたいな現象で見物する分には楽しいが当事者になると毎度神経が磨り減るという代物であります。まあのこり4営業日で年末年始がどう転ぶのか・・・・・・・・・・・・
○MPM議事要旨ネタの前に総裁講演ネタである
昨日は議事要旨ネタと総裁講演があったのですが、どちらもあまりネタがないなあと思いつつ、総裁講演の方を先にネタとして投下の所存。
#FOMCネタの続きはどうしたというツッコミを良い子の皆さんはしないようにお願いします
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151224a1.pdf
転換点を迎えて── 日本経済団体連合会審議員会における講演 ──
・今回も企業に向けて行動しろ攻撃ですが・・・・・・・・・・・
こちらも年末恒例みたいな講演ですが、今回一番言いたいのは最後の方にある企業に向けた行動をしろ云々のお話なのは、最近の経済団体向けの講演と同じではあります。
でまあそれは別に良いのですが、「転換点を迎えて」というお題は転換点だからもっと企業はマインドセットを変えろ、と言いたいのでしょうが、そもそもQQEは「2年」で物価目標を達成するという触れ込みだった筈で、2年どころかもうすぐ3年になろうという時間が経過しているのに未だに「転換点を迎えて」とか言っている時点でおまいらは企業に説教している前に自分たちのQQE政策のレビューを謙虚に行って何で未だに「転換点を迎える」などというのんびりとした寝言を言っているのかという点を反省して頂きたいと思うのですよね。
企業に対して行動しろマインドセット変えろと言ったって、それを言っている日銀が「2年で2%」をドンドン後ずれさせている時点で、企業の生き死にを掛けて企業行動について決断している経営者に対するアピールが出来るのかと小一時間問い詰めたいと思いますし、あたしゃ経営者でもなんでもなくて一介の市場の片隅にいる無力参加者ですから経営者様の考える事は妄想しかできませんけど、それにしたって「やるやる詐欺」をやっている人から「世の中変わるのだから行動しろ」とか言われても「お前は何を言ってるんだ」状態になるんじゃネーノとしか思えませんがどうなんでしょうかね。
つーことでですよ、もしマインドセットを変えたいのであれば、「2%達成」の旗を降ろす必要は全くないと思いますけれども、少なくとも今のQQEのやり方をやって行って現実問題として(デフレ脱却はしたかも知れんが)いつまでたっても2%の目標は遠いままという時点で「目標は正しいけれども戦術に問題が無かったのか」というレビューを謙虚に行い、「基本的な考え方には問題は無かったものの達成に向けた戦術を転換します」と緩和後退と思われないようなアピールを十分に行いつつ戦術転換をした方がマインドセットの転換が早くすすむんじゃないですかねえってのはそんなに無茶な話ではないと思っているのですけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・
という悪態はともかくとして講演本文から少々。
・まあ仕方がないのだが成果の説明が超一面的でワロタ
『3.拡大する経済の復活』という小見出しから。
『まず、図表4をご覧ください。ここ 15 年間の消費者物価と名目所得の推移を示したものです。』
お、おぅ・・・・・・・・・・・
『左のグラフは、消費者物価の推移を水準で表したものです。これをみると、15
年にわたって下落を続けてきた消費者物価の水準が、「量的・質的金融緩和」導入とともに反転上昇したことが一目瞭然です。右のグラフは、名目ベースの国民所得──大まかに言えば、企業収益と雇用者所得の合計と考えられます──の推移を示したものです。名目所得は、リーマンショックによって大幅に落ち込みましたが、消費者物価と同様、「量的・質的金融緩和」導入以降、明確な増加に転じていることがみてとれます。国内で生産された付加価値を表す名目GDPは、はっきりとした増加に転じました。海外の事業活動から国内に還元された所得も含んだ名目GNI(国民総所得)については、企業の海外展開の拡大と円高の修正を受けて、より顕著に増加しています。』
『これらの事実から明らかなように、「量的・質的金融緩和」導入以降の日本経済においては、「企業収益や雇用・賃金の増加・上昇を伴いつつ、物価が上昇する」という日本銀行が目指している姿が、まさに実現しつつあります。このように物価と名目所得の両方が上昇・増加するもとで、実質所得も増加を続けています(図表5)。重要なことは、物価、名目所得、実質所得のいずれもが上昇・増加する姿に転換したということです。GNIでみると、デフレ期には、実質所得は増加傾向を辿っていましたが、物価が下落を続けるもとで、名目所得は増加していませんでした。その結果として、企業や家計の支出行動が消極的なものになっていたことは、これまで繰り返し申し上げてきた通りです。』
という話をしているのですが、これパーヘッドの実質所得の話とか、実質GDP成長率の話とかは華麗にスルーしていて、消費増税で個人消費が落ちたということは、それすなわち将来の所得期待が盛り上がらない中で外的コスト要因で物価が上がってもそれは誰得物価上昇という話だったりするとか、まあそこらの話は割愛して説明に都合の良さそうな話を並べてくるのが想定通りですが何だかなあと。
んでもってその結果として
『このように経済政策によって景気や物価のトレンドが大きく転換することは、歴史的にみてもそう頻繁に起きることではありません。』
と大きく出ているのですが、後ろの方では、
『設備投資と人材への投資をどう組み合わせて、経営資源の最適な配分をグローバルに実現していくのか、これは皆様が日々深く考えておられる経営戦略そのものだと思います。私に付け加えられることは多くは無いのですが、ひとつだけ申し上げるならば、私には、世界の情勢と日本の環境は、「今、決断すべき時期になってきているのではないか」と、私たちの全てに迫っているように思えてなりません。』
『私は、日本の企業や家計がデフレ期のマインドセットの中に沈んだままで動いていないとは全く思っていません。「量的・質的金融緩和」のもとで、デフレマインドは着実に転換してきています。海外子会社の投資やM&Aなどを含めれば積極的な投資を実践している企業や業種もみられます。皆様の中にも、既に行動を起こされている企業はたくさんあると承知しています。むしろ、日本経済の置かれた状況を考えれば、そうした積極的な動きをさらに拡げていくべき重要な時期、クリティカルな時期にある、と申し上げたいのです。』
てな感じで結局は「企業の皆さん賃金上げて設備投資してちょ」という話になっておりまして、(今日ネタにする時間がなくてスイマセンが)11月MPMでも実際には「労働市場がタイトで企業収益は高水準なのに何で賃金上昇や設備投資が伸びないのか」という議論が行われている次第な訳で、まあ威勢の良い話をして企業経営者のマインドセットを鼓舞したい、というのは分かりますし、それくらいしか日銀総裁としてやることも無い、というのは理解できるのですが、先ほど申し上げましたように、そもそも物価目標達成が最初に大口を叩いて前任の総裁副総裁を石もて追い出すまでした人たちが結局できない事の言い訳を繰り返して漫然と同じ施策を継続している訳ですから、そら時間の経過とともに信認されなくなるわなと。
・12月の措置についての説明部分で緩和の香りも出してみるものの・・・・・・・・・・・
『5.量的・質的金融緩和を補完するための措置』というのが後ろの方にありまして、各種措置について説明しているのですが、説明そのものはまあ大体日銀の公表文書と総裁会見での説明と同じなので途中は盛大に割愛します。
『こうした一連の措置は、それ自体は所謂「追加緩和」ではありませんが、資産買入れを一層円滑に進めることを可能にすることで、先行き「量的・質的金融緩和」をしっかりと継続し、また、必要と判断した場合に「調整」することができるようにするものです。
』
というのが結論でして、これまでだったらこの部分を見て「よーし追加緩和期待」という感じになる(債券は兎も角として為替や株式は特に)方が普通の反応だった気がしますが、昨日の講演ヘッドラインを見ても別に市場が反応した訳でもなく(全般的に板が薄いのはあるでしょうが)という結果。
元々最初の会見で「調整であり緩和ではない」を連呼してしまったのも効いてしまったようにも思えますが、今回の措置って一つ一つは(ETFは正直ナンジャソラなので別ですが)趣旨としては別に変な話でもなんでもなくて、担保拡大とか長い目で見て(日銀が指定する信託化のスキーム次第ではありますけれども)結構なお話ですし、買入年限の長期化もどうせ実施しないといけない話だったりします。REITの10%については微妙な気もしますが継続するなら止む無し(継続するのが如何な物か的な問題はあるけど)。ETFについてはナンジャソラなのですが、設備投資に積極的な企業への融資への支援オペはまあ話の筋は分かります。
つーことで、今回の措置の何が悪かったかと言えば「色々と細かいのを出して合わせ技一本」みたいなプレゼンをしたのが間違いで、おかげで急にあちこちから「オペレーションの限界」とか「QQEの限界」というコメントがバカスカ出るようになって、正直こんなに早くにそこら中から限界論が噴出してくるとは思わなかったというイメージでして、限界論を市場が意識しだすと自己実現的に限界が近くなってしまうというのが市場の仕様である以上、ここまでの市場の反応だけで言えば(今後どう変化するか分からんので最終的な評価はできないけれども)変なプレゼンをした結果として却って政策の寿命を縮めてしまっている可能性が出てきたかなと。
この施策は淡々と1本ずつ別の機会に出して「ああちょっとした修正ね」で済ませれば良かった話ですし、ETFの所は単に金融機関保有株式購入分の売却を延期すれば良かっただけの話で、変な見せ方して最初追加購入と誤認させてしまったのが却って失望を呼ぶことになってしまったと思います。
ということで、黒田総裁講演の上記の下りというのは、今のQQEに関して限界論が盛り上がってしまうのを火消している、という部分なのですが、あまりここが注目されていないというのがちょっと残念な所でして、これは勝手な想像ですけれども、限界論みたいなのが言われるようになればなるほど日銀としてはそれを否定して回らないといけなくなりますので、今後の執行部からの講演などでは「必要ならば追加緩和」節がより強めにアピールされてくるのではないかとは思うのでありました。なお実際に追加緩和をするかと言えば10月の時点で追加緩和していないのでお察しという所ではあるのですが。
#てな訳でただのアタクシの雑感で全然総裁講演ネタじゃなかったですどうもすいません
2015/12/24
お題「短期が益々あばばばばー/FOMC冒頭説明から」
あっという間にクリスマスイブですなあ。
○2年短国入札とか3M短国入札とか
・2年入札のマイナス拡大だが市場予想より弱くて・・・・・・・・・
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20151222.htm
(1)応募額 10兆9,682億円
(2)募入決定額 2兆3,256億円
(3)募入最低価格 100円22銭0厘(募入最高利回り)(-0.009%)
(4)募入最低価格における案分比率 71.3256%
(5)募入平均価格 100円22銭8厘(募入平均利回り)(-0.013%)
ということでしたが、前日から無駄に強めのビットを入れていたりしたので事前の予想よりは弱めという結果。いわゆる不明札も5500億円程度とそんなに多くは無かったのですが、これを受けて2年所の需給が緩むのかと言いますとそうではなくて、2年カレントの2つ手前とかを初めとして日銀の買入でガッチリ日銀に沈んでいる銘柄を中心に強いビットをバカスカ入れてまーた煽ってますがなという展開になってしまい、BB引けを見ますと2年新発は(マイナスって今まで書いていたけどマイナスが恒常化して一々カタカナで表記すると見難くなるかなと思いまして表記変更)▲1.5bpなのですが、手前の銘柄が▲5.5bpだの▲6.0bpだのという異次元レートになっておりまして、最早マイナスファンディングがワークする人と日銀以外の誰が買うのか良く分からないレートがドンドン拡大しています(ちなみに第U非価格がボウズなので少なくとも第U非価格応札時限の辺りでは新発の実力はアベレージ未満なのですけれどもねえ・・・・・・・・・)。
ちなみに利付国債の1年所に関してもBB引けを見ますと1年で▲5.0bpとかですし、来年の3月や4月の足の2年債も▲4.5bpの気配(なおこの辺についてはそもそも流通銘柄がスッカラカンで投資家から何かの事情(インデックス落ちとか資金繰りとか)が無いと出てこないので居場所はよくわからん)となっていて、短国よりも気配が強いという状態になっていて、この辺りの利付国債を投資対象にするような運用をじゃあマイナス金利買うのかよ的な問題も地味に広がっておりまして、輪番そのものはマイナスバンバン買って行けば当面継続できるにしても、深いマイナス金利が継続していくという中で蹴散らされたリアルマネーがどうなるのよという問題はどうなるんでしょうねえ来年になったら1-3の輪番拡大で2年発行減額だよどうするんだよとか思ってしまうのでありました。
・3M短国入札にクリスマスは来る・・・・・・といいなあと思うもののまず期待薄とかの件
ということで本日は今年最後の短国(国債も終わってますが)入札なのですが、先般申し上げたようにこちらの新発は4月償還ということで、何と四半期を2度越えるというお家の事情的な人たちにとって夢のような商品でして、そらもうニーズが大変なもんですから入札で間違ってプラスの利回りにでもなったら瞬間蒸発待ったなしという事で、ジングルベルを鳴らすのは帰ってくる3か月短国です(元ネタ知らない若人は年寄りに聞いてください)ということになるのですが、どこからどう見てもそのようなニーズのあるのが分かっているのでまあ無理でしょうなあ(涙)。
月曜の謎の短国買入スキップがどう効くのか良く分からん所ではあるのですが、マイナス金利そのものに関しては海外がお休みモードで日銀買入が(輪番はせっせと来ますが)短国は今月そんなに出ていない(しかし月の頭に買入が急に増えてみたり、月曜は市場に配慮したような感じで急に買入見送りになったりと、短国買入はムラが多すぎて良く分からんし、市場が振り回されてかなわんです)ので、GCレートとかは年末越えないものに関しては若干高めで推移していて、短国はカレント中心にやや在庫が残っていて、長い所に関しても年初から輪番が増額になることも期待されて輪番トレードヒャッハーという事で在庫があってという状態を反映しているものと思われます。
年初からまた短国買入のペースが上がるとは思いますが、短国については1年カレントがまだまる残り状態の筈ですし、12月末を抜ければ次の焦点は3月末をどうやって乗り切るかという話になりますので、そんなこんなで年末を抜ければ3月償還までの短国の需給が若干緩むチャンスはあるけれども、4月償還以降の短国の需給は一段とタイトになるとか、まあそんな感じでしょうなあ、ということで3Mの結論はどう見てもマイナス決着です本当にありがとうございましたという事ですが。
・・・・・・でですね、月曜の金融ファクシミリ新聞さんのトップのネタになっていましたけれども、CP市場の方が相変わらずアレな展開になっているとのことで、特にこの四半期は3Mカレント短国がゼロから微かなプラス辺りで推移したのって10月後半の数週間だけという悲惨な展開になっておりまして、どうせ今日の短国もマイナス推移で終わってしまいますと、昨年9月以降に短国マイナス金利になってからの動きを四半期ベースで切って見た中で一番悲惨なパターンになっているので、かのマリー・アントワネットも短国が買えないならCPを(ウソ)と言ったような現象となっている様で何ちゅうかねえという展開で、こちらの方がまあアレというのは短国ニーズが充足できなくて困っている事を反映していると考えますと、本日の短国入札結果はお察しという話で宜しいと思うのでした。
○「データディペンデント」ではなく「アウトルックベース」なのには注意が必要だと思うのだが・・・・・・・(FOMCネタ)
年末に向けて来週3営業日もあるのでゆっくりやって行きます(ネタ不足対策とか言わないように)
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20151216.pdf
Transcript of Chair Yellen’s Press Conference
December 16, 2015
こちらの説明と会見なのですが、まー今後市場がああだこうだと言ってブレだすのは今後の利上げペースだと思うのですけれども、初回利上げを決定するときに行っていた「データディペンデント」というのは恐らく市場の人たちの頭の中にまだあって、今後もデータが弱くなると利上げペースを調整する、と考えている人の方が多いんじゃないかという風に思うのですよね。
でも、今回の説明と会見を見ていてアタクシが最初に気になったのは今後の利上げペースについて「アウトルックに大きな変化があった場合には調整する」という話をしている事でして、もちろん金融政策はフォワードルッキングにやるという建付けでやる方が普通なので、その説明自体がおかしいとは思わないのですが、たとえば12月の利上げ前でも「ISMが50割れている時に利上げをしたことは無いので12月利上げ厳しいのでは」というような市場の人のコメントが出ていたりと、恐らく市場の方では「今後出てくる経済データによって利上げペースに変更が生じる」という認識でいると思うのですよね。
もちろん、足元のデータが悪いのが続く背景を検討した結果として、経済物価状況の先行き見通しに変化が生じるという事は当然のようにあるから、今後出てくる経済データは重要であることには変わりはないのですが、たとえばコアPCEが上がってこないから次回利上げは無いのか、というとそういう単純な話ではない、という事を今回の会見で説明しているとあたしゃ思ったのですけれども、この部分に関する市場の価格形成とのギャップでどんなもんなんですかねえ・・・・・・・・・・・・・
と、無駄な能書きを垂れましたがまずは冒頭説明から少々。
・説明部分での物価見通しについては裁量的解釈が強まってくると思われる
3ページからになります。
『The anticipation of ongoing economic growth and additional improvement
in labor market conditions is an important factor underpinning the Committee’s
confidence that inflation will return to our 2 percent objective over the
medium term. Overall consumer price inflation--as measured by the price
index for personal consumption expenditures--was only 1/4 percent over
the 12 months ending in October. However, much of the shortfall from our
2 percent objective reflected the sharp declines in energy prices since
the middle of last year, and the effects of these declines should dissipate
over time. The appreciation of the dollar has also weighed on inflation
by holding down import prices. As these transitory influences fade, and
as the labor market strengthens further, the Committee expects inflation
to rise to 2 percent over the medium term.』
声明文にもありましたが、足元のPCE物価指数が弱い事は原油安とドル高という一時的ファクターが大きいよ、という説明になっています。これは実は日銀にも言えるのですが、原油安が続いているうちは「原油の一時的影響です(キリッ)」と言って物価安の責任をおっかぶせることができるので、中央銀行としては(消費や企業収益にもプラスだし)実はウマーと思っているのではないか疑惑が少々。
『The Committee’s confidence in the inflation outlook rests importantly
on its judgment that longer-run inflation expectations remain well anchored.
In this regard, although some survey measures of longer-run inflation expectations
have edged down, overall they’ve been reasonably stable.』
先行きの物価見通しに対するコンフィデンスはロンガーランのインフレ期待が安定化していることにあります、という説明でして、まあロンガーランのインフレ期待って結局鉛筆なめなめの成分が強い話なので、明確に基調が折れてこない限りFOMCがそう簡単に正常化を断念するとかものすごい勢いでペースダウンするとかいうのは考えない方が吉と思うのですけどねえ・・・・・・・・・・・
『Market-based measures of inflation compensation remain near historically
low levels, although the declines in these measures over the past year
and a half may reflect changes in risk and liquidity premiums rather than
an outright decline in inflation expectations.』
市場のBEIの低下は市場のリスクプレミアムや流動性プレミアムの低下によるものが大きい(キリッ)と鉛筆なめなめ説明が早速有る訳ですからねえ。
『Our statement emphasizes that, in considering future policy decisions,
we will carefully monitor actual and expected progress toward our inflation
goal.』
とはステートメントにある通りですが、途中の説明を見ると見るには見るけど俺様解釈で当面は走るでしょ。
・物価が低いのに何故利上げをするのかという説明がある
上記の次にはSEPの説明があるのですがそこはパスしてその次となります4ページ目の最後の方から。
『With inflation currently still low, why is the Committee raising the
federal funds rate target? As I have already noted, much of the recent
softness in inflation is due to transitory factors that we expect to abate
over time, and diminishing slack in labor and product markets hould put
upward pressure on inflation as well.』
さっきと同じで足元は一時的現象攻撃ね。
『In addition, we recognize that it takes time for monetary policy actions
to affect future economic outcomes. Were the FOMC to delay the start of
policy normalization for too long, we would likely end up having to tighten
policy relatively abruptly at some point to keep the economy from overheating
and inflation from significantly overshooting our objective. Such an abrupt
tightening could increase the risk of pushing the economy into recession.』
利上げ前も多くの高官がこの話をしていますが、結局の所この説明って「市場にフレンドリーな利上げをするために」というような衣はまとっていますけれども、実際問題としては「フォワードルッキングで利上げをしますよウヘヘヘヘ」という発想になって正常化サイクルを開始している訳で、前回の利上げが着手遅れてメジャードペースでホイホイ利上げしたのにクレジット市場の不均衡を生んだ、というのが大トラウマなんだろうなあと思います。これを不動産バブル発生に懲りてゼロ金利解除を急いだ日銀とオーバーラップするかどうかの解釈は判断に悩む所ですよね(米国単体で言えば不良債権問題の状況が全然違う)。
『As I have often noted, the importance of our initial increase in the
target range for the federal funds rate should not be overstated: Even
after today’s increase, the stance of monetary policy remains accommodative,
thereby supporting further improvement in labor market conditions and a
return to 2 percent inflation. As we indicated in our statement, the Committee
expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant
only gradual increases in the federal funds rate. The federal funds rate
is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail
in the longer run. 』
利上げをしても緩和的で経済物価には依然として刺激的であるという説明はいつも通り。
・中立政策金利の説明
『This expectation is consistent with the view that the neutral nominal
federal funds rate--defined as the value of the federal funds rate that
would be neither expansionary nor contractionary if the economy were operating
near potential--is currently low by historical standards and is likely
to rise only gradually over time. One indication that the neutral funds
rate is unusually low is that U.S. economic growth has been only moderate
in recent years despite the very low level of the federal funds rate and
the Federal Reserve’s very large holdings of longerterm securities. Had
the neutral rate been running closer to its longer-run level, these policy
actions would have been expected to foster a much more rapid economic expansion.』
中立政策金利の説明も最近しておりまして、まあこれ自体は中立政策金利水準が従来よりも低いのだから利上げのペースがゆっくりなのを正当化する、という説明に使われているのですが、この概念って説明に使うのにはある意味便利なので今後FEDがホイホイと使ってきそうなのですけれども、そもそも中立金利水準というのが鉛筆なめなめの成分が入るので、濫用するとコミュニケーションの混乱を招きそう。
『The marked decline in the neutral federal funds rate may be partially
attributable to a range of persistent economic headwinds that have weighed
on aggregate demand. Following the financial crisis, these headwinds included
tighter underwriting standards and limited access to credit for some borrowers,
deleveraging by many households to reduce debt burdens, contractionary
fiscal policy, weak growth abroad coupled with a significant appreciation
of the dollar, slower productivity and labor force growth, and elevated
uncertainty about the economic outlook.』
中立金利を押し下げている要因として色々な話をしていますが、基本的にはクレジットアベイラビリティーの問題とバランスシート調整圧力、海外要因と為替要因を挙げていますね。
『Although the restraint imposed by many of these factors has declined
noticeably over the past few years, some of these effects have remained
significant. As these effects abate, the neutral federal funds rate should
gradually move higher over time.』
という説明をしておりますので、何気にこの説明を使って利上げペースを速めることを正当化する可能性はある(やる根性があるかどうかは別として)点については要注意。
『This view is implicitly reflected in participants’ projections of appropriate
monetary policy. The median projection for the federal funds rate rises
gradually to nearly 1-1/2 percent in late 2016 and 2-1/2 percent in late
2017. As the factors restraining economic growth continue to fade over
time, the median rate rises to 3-1/4 percent by the end of 2018, close
to its longer-run normal level. Compared with the projections made in September,
a number of participants lowered somewhat their paths for the federal funds
rate, although changes to the median path are fairly minor.』
この考え方がSEPにおける金利見通しパスに表れています、ということで、一部の人は金利引き上げパスを遅くしたけれども基本的な考えはほぼ同じですよとありまして、この次にはいつものように「見通しが強くなったらペースを速めるし弱くなったら遅くする」というのがあるけど長くなるので引用しません。いつも通りの話です。
・償還再投資の停止時期は良く分からん
『The Committee will continue its policy of reinvesting proceeds from maturing
Treasury securities and principal payments from agency debt and mortgage-backed
securities. As highlighted in our policy statement, we anticipate continuing
this policy until normalization of the level of the federal funds rate
is well under way. Maintaining our sizable holdings of longerterm securities
should help maintain accommodative financial conditions and should reduce
the risk that the federal funds rate might return to the effective lower
bound in the event of future adverse shocks.』
償還再投資の説明は声明文の文言を丁寧に言っているに過ぎないのでどうせ何も決まっていないし今の所ノーアイデアなんでしょう。
・ONRRPは無制限実施というのが「ちゃんと実効レートを上げたい」という事です
『Finally, in conjunction with our policy statement, we also released an
implementation note that provides details on the tools that we are using
to raise the federal funds rate into the new target range. Specifically,
the Board of Governors raised the interest rate paid on required and excess
reserves to 1/2 percent, and the FOMC authorized overnight reverse repurchase
operations at an offering rate of 1/4 percent. Both of these changes will
be effective tomorrow.』
という話はご案内の通り。
『To ensure sufficient monetary control at the onset of the normalization
process, we have for the time being suspended the aggregate cap on overnight
reverse repurchase transactions that has been in place during the testing
phase of this facility. Recall that the Committee intends to phase out
this facility when it is no longer needed to help control the federal funds
rate. The Board of Governors also approved a 1/4 percentage point increase
in the discount rate for primary credit to 1 percent.』
『Based on the extensive testing of our policy tools in recent years, the
Committee is confident that the normalization process will proceed smoothly.
Nonetheless, as part of prudent contingency planning, we will be monitoring
financial market developments closely in the coming days, and are prepared
to make adjustments to our tools if that proves necessary to maintain appropriate
control over money market rates.』
ONRRPの限度額をサスペンドというのは、FFの外側にいる人たち(ファニーメイとかMMFとか)の余資運用について25bpで無限にFEDが受けて進ぜようという措置でして、預金ファシリティーの外側の人の預金ファシリティーみたいなもんですから、エクセスリザーブ以外の所にある資金も下限金利が25になるから基本25を割る市場金利にはならないという結構な強力措置ではあります。
まあこれやると相当の不胎化が当初実施されると思いますので、これを見て「結構な引締め」という話をしてくる人は結構多いと思います。金利誘導政策を行う場合に過大な超過準備があったらこうするしか無いのですけどね(しかも米国の場合は準備預金制度の外側に過大な資金があるのでONRRPを無制限実施となる訳で)。
ということでQAは明日にでも(出し惜しみとかツッコミをしないようにお願いしますすいませんすいません)。
2015/12/22
お題「短国買入見送りも短国微動だにせずで本日は2年入札/総裁会見は現政策の延命と4月に向けた注目の高まりを示す(のかな?)」
うむ。
http://resultados.elpais.com/elecciones/generales.html
ELECCIONES GENERALES 2015
PP+シウダダノス=163
PSOE+ポデモス=159
過半数確保には176が必要ェ・・・・・・・・・・・・・・
○市場世間話
・短国買入見送りも短国市場緩む気配なしとな&今日は2年新発
昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of151221.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下)3,500 2015年12月24日
国債買入(残存期間3年超5年以下)3,500 2015年12月24日
国債買入(残存期間10年超25年以下)2,400 2015年12月24日
国債買入(残存期間25年超)1,400 2015年12月24日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3)19,404 2015年12月21日 2015年12月22日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注4)4,000 2015年12月21日 2015年12月22日
FLS連発とか年末っぽくてお洒落ですけれども、それはそれとして昨日は想定されていた短国買入がなっしーとなっていまして、先週1年新発あったのですから短国買入は普通にやるだろというのと、資金需給的に少しやらないと帳尻合わないのではという気もするのですが、恐らく帳尻の方は財政要因とかの動きもあると思いますので、そちらは日銀のオペ通りで回ると思うのですが、それにしても1年短国入札後の買入をスキップするとはちと意外でした。
何せ先週申し上げたように白装束に身を包んでオペタイムを待っておりましたので、よーしパパこれで短国需給が緩和だー!などともあまり思っていなかったのですが、案の定これで短国の需給が緩むような気配もなく、特段板が増える動きもなくて、終わってみれば引値はほぼ全銘柄引け変わらずという事でアクティビティなっしーなのでありました。
ちなみに2年に関しては先週金曜日にマイナス5bpとかいう鬼のような引けになっていましたけれども、この短国買入見送りが効いたのか単に上記の輪番でここぞとばかりに投資家の打ち込みらしきものがあったからなのか存じませんが若干売られておりまして(前場途中からちょっと弱めになっていたから短国も少しは影響したのかな?)引けはマイナス4bpとかになっておりました。
ということで本日は2年国債入札で木曜が3M短国入札になりまして、年内の発行はめでたく終了の巻となるのですが、いつもだとその前に来る超長期辺りで「ああ年内も終わりですなあ」モードになるのですが、何せ昨今は中短期ゾーンの爆発振りがオペの持続性問題も含めて注目となっておりますので、端からマイナス金利入札になるのは明らかなのですが、どの辺で決着するのかはそれなりの注目ネタとなるでしょうな。
ま、昨日の輪番が金曜の大フラットニング(と2年債謎の金利急低下)の翌日の所でどうなるかと思ったら甘めの所で決着しているように、何かの拍子に急騰すると玉が出てくるという状態は維持されている事が確認されましたが、そうは言っても恐らく投資家的にはこのひたすらじりじり金利が下がってくる相場の中でコアのお宝部分を外すとその次どうするのという事もあるでしょうからそう簡単に降りる訳にも行かず、一部残高復元的に買った部分を上がるとシメシメと外してまた買い戻す的な動きでもという話になるんでしょうかねえ良く分からんですが。
でもって2年は完全にマイナス金利入札になるので、持ちきり前提の建付けになっていると買う訳にも行かないのですが、どうせ来月から拡大する輪番で捌けてしまいますし、12月末越えのところで散々な目にあっております人たちが来年になったら3月期末越えを意識しない訳が無いので、どうせ堅調推移なんでしょ、と投げやりな予想。
木曜の3Mも合わせまして、この辺りのマイナスが延々と継続するという状況になりますと、当初は「ああ金利が下がりましたなあ困りますなあ」程度の話になるのですが、短いゾーンだけに投資家サイドのポートが償還によって自動的に回転してしまうウェイトが大きく、長い所よりも投資家のポートに対する直撃度合いが高いのですよね。まあどうなるのやら。
○レポ市場とか国債市場の懇談会とかフォーラムとか
・債券市場参加者会合ですが
http://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond1512.pdf
「債券市場参加者会合」第2回議事要旨
『各グループにおいて、本行より、@債券市場サーベイの結果、A国債市場の流動性、B最近の金融市場の動向および市場調節運営、について説明し、意見交換を実施。会合参加者から聞かれた意見は以下のとおり。』
とのことですが・・・・・・・・・・
『昨年の金融緩和拡大後、市場環境は大きく変わっておらず、概ね意図した価格やロットで取引はできている。債券市場の機能度が急速に悪化したわけではない。』
というご意見があるようでそんな素敵なご認識をお持ちならちょっと貴殿にマーケットメイクお願いしたいんですけれども(特に投資家の)皆さん心の底からお願いしたいんじゃないですかねえ。
てな話もあったりして「忌憚の無いご意見を頂きたい(ただし発言して良いとは言っていない)」的な味わいを感じるのですが、
『投資家の中には、流通量の減少を背景に、意図したロットで国債を購入できていない先が存在するのではないか。』
という話ではないかと思いますし、
『担保繰りやレポ取引など国債の取引を執行する機会は引き続き存在しており、取引実務のノウハウや事務体制などのインフラ面は維持されている。
』
という事で大丈夫ですよ!という意見に見えますけれども、良く良く考えたら執行機会や事務体制が維持されて無かったら今頃市場が無くなっていますので、こういう指摘が「意見」に出てくるという事自体がそもそも債券市場の機能があばばばばーとなっている証左ではありますな。
流動性の所ではこんな話が。
『金融規制等を背景に主要なプレーヤーである証券会社等のリスク許容度が低下しており、市場の潜在的な脆弱性を高めているのではないか。』
『先行きの懸念材料は、市場に何らかのショックが加わった場合に、市場機能が維持されるのか、といった点である。』
リスク許容度の低下も含めて市場参加者の多様性が損なわれる中で、流通量が減ってきてロットが捌けないという状況になって来ると、まあ何だかんだ言っても今は流動性が無い訳ではないのですけれども、急に参加者が一方方向に動き出した時に値がぶっ飛びながら全然取引量が無いという動きになり、全員がポジションほぐせないまま状況だけ悪化するという事もあるかも知れませんな。とはいっても足元のように物価が全然目標行きそうもない中ですとその手のショックは起きないのですが、一つには出口、二つ目は出口じゃないけど政策枠組みの変更でスムージングに失敗した時が、何かやらかしが出るかも知れませんねという事でしょうか。
金融市場の動向の所では、
『債券運用を巡る議論では、専ら日本銀行の国債買入れオペの話題が中心となっている。
』
というのは誠に仰せの通りという状態で、輪番の話と需給の話だけで一日が終わってしまうというのは如何なものかと思いますが、そら日銀が市場における超ドミナントプレーヤーなのですから致し方なし。
なお、謎に資料が多いのですが基本パス。
・レポ市場フォーラム
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/data/rel151221c.pdf
「レポ市場フォーラム(第2回)」の議論の概要
まあこちらに関しては国債決済T+1を本当に2018年上期にやるのかよそれ出口政策とモロにぶつからないかというツッコミは相変わらずあるのですが、約定未決済残高の削減のメリットに対して掛かるコストもさることながら、SCレポに対するストレスを強めてただで無くさえ無い国債市場の流動性に更にストレス掛けるというのもタイミングとしてどうなのよという気はだいぶします。実質2年後ですからねえ・・・・・・・・・・・・・
これ出るたびに毎度申し上げていますが、レポ市場のうち特に翌日物市場に関しては日銀的には無担保コールに代わる新しい短期市場の中心的な金利になって欲しいというお話は(先般佐藤審議委員もそんな講演していましたけれども)お気持ち的には良く分かるのですが、あとは銘柄後決め方式のトライパーティーGCレポがどのくらい使い勝手が良く成るのかという所がとにかく大きくて、うっかりここを見切り発車して「システム対応できる参加者だけ参加すれば良い」となってしまうと市場参加者の多様性が中々進んでいかない(他の短期資金取引と有意に金利差が出るか、システム的な敷居が低くならないと後から参加者が出てくるのにはハードルがある)ので、業者と大手銀行と海外投資家だけの市場状態で見切り発車となるのではなくて、国内のより多くの参加者が参加しやすい市場の形を作って頂きたいものだと願います。そうしないとそもそもリファレンスの金利にするとかにも問題生じるでしょうし。
なお、銘柄後決めトライパーティーレポの対抗商品は短資会社が超便利なインフラを整備しているコール取引(最近だと有担保ですかねえ)なので結構難易度は高めだったりしますけどね。
○総裁会見である
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1512d.pdf
・追加緩和ではないとの説明
『(問) 今回の補完措置についてですが、これは金融緩和つまり黒田バズーカの第
3 弾というような、そんな位置付けでいらっしゃるのかどうかをお聞きしたいと思います。それに関連して、おそらくこの措置によって、金融緩和をより長い期間続けていくことが可能になるかと思いますが、それは金融緩和の長期化というものを見込まれているのか、逆に言うとなかなか
2%達成は時間がかかると考えていらっしゃるのか、その考えをお願いします。』
『(答) 日本銀行は「量的・質的金融緩和」に関して、従来から、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うと述べています。今回の措置は、経済・物価見通しの下振れリスクの増大あるいは顕現化に対応するものではありません。』
かつて「景気判断を引き上げながら当座預金残高目標の拡大を実施」というオモシロ政策を打った(ちなみにその時の会見要旨は今見てもハチャメチャなので鑑賞用にお勧め)福井俊彦という方がいらっしゃいました(遠い目)。
『輸出については判断を上方修正していますし、その他についても、短観では業種・企業規模にかかわらず、収益が上方修正されており、経済・物価見通しが下振れるリスクが増大するとか、顕現化したという状況ではありませんので、そうした意味での「必要な調整」という追加緩和には当たらないと思っています。』
追加緩和ではありません。
『むしろ、資産買入れを一層円滑に進めることを可能にするということで、「量的・質的金融緩和」をしっかりと継続し、物価安定目標の早期実現のために必要と判断した場合には、迅速に調整ができるようにするための措置であるということをご理解頂きたいと思います。』
謎の説明をしていますが、つまり追加緩和をやりたくないけれども今の政策はできるだけ延命したいからその措置を取りまして、ついでにちょっと見栄えを良くして出してみましたよ、ということですね。
『物価安定目標については、先程申し上げた通り、来年度の後半頃に 2%に達する見込みが高いとみています。いずれにしても、「量的・質的金融緩和」については、2013
年 4 月に始めて以来、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続できるようになるまで継続するということを申し上げて
2%の「物価安定の目標」の実現に強くコミットしています。その点はまったく変わりがありません。』
2年という文言が無いのはご愛嬌(?)としましても、今回引用していませんがこの質疑の前の所でも思いっきり「物価2%は達成しますよ何言ってるんですか」的な説明をしていまして、現行の政策のまま粘っていると本当に物価がホイホイ上昇して2%に向けた経路をたどる、という建付けで頑張っているようなのですよ。
この日銀執行部の謎認識に対して市場的にはどう見ても行かないどころかここから先行き上昇が鈍化してくるんじゃないか(コアコアとかが)という認識になっているのですが、既に2%達成時期が2回も先送りされている時点で黒田総裁の説明が「もうすぐ天から天兵が降りてきて包囲軍を成敗してくれる」というレベルになっているようにしか見えないのが誠に残念な所です。
・説明が長いのは説明が苦しい証拠です
お前の駄文も無駄に長いじゃないかというツッコミを良い子の皆さんはしないように。
『(問) (前半割愛) もう 1 点は、今回設備投資や人材投資に取り組む企業をサポートするということで、かなり踏み込んだ印象がありますが、なぜこういった企業を対象にしたETFを買うということになるのか、むしろこういった企業が積極的に人材投資や設備投資を増やすために、経営環境を良くすることこそが日銀がやるべきことではないかと思うのですが、なぜこれがETFを買うということにつながるのか、お伺いします。』
『(答)(前半割愛)2番目のご質問は、この第2の点(引用者注:前半の答えの中で今回の措置について「2
つ目は「量的・質的金融緩和」の効果が企業部門をはじめとする実体経済に、より効果的に浸透していくようにすることです。」と答えています)について関連していると思いますが、「量的・質的金融緩和」のもとでの金融の緩和は極めて大幅なものであり、最近の短観その他の指標にも表れている通り、企業側からみても金融機関側からみても、金融は極めて緩和された状況にあるということです。そうしたもとで、ポートフォリオ・リバランスを含めて様々なことが行われ、企業収益は今回の短観でもさらに上方修正され非常に良好な企業環境になっています。』
長いので途中で段落分けしますよ。
『そうした中、実際に設備投資や人材投資に積極的に取り組んでいる企業も多いと判断していますが、やはり業種あるいは個社ごとに色々なばらつきがあり、全体としてさらに広がっていくことが望ましいということも事実です。』
それはつまりこれだけのコストを掛けた金融緩和が実体経済というか企業行動や企業の期待に対しての働きかけというか効果が弱いという事を意味しているのではないでしょうか。
『企業を巡る環境は極めて良好な状況になっていますが、まだ、今申し上げたようなばらつきがあって、全体としてはさらに広がっていくことが望ましいということを踏まえ、日本銀行としてできる限りのサポートを行うということにしました。ETFについて特別の枠を設けて、設備、人材投資を進める企業の株式を盛り込んだETFが組成されれば、遅滞なく支援しますし、当面はJPX日経400連動型に投資していきますが、これでは上場企業に限られてしまいますので、現在ある成長基盤強化のための貸出支援策を新たに拡充して、設備、人材に積極的に投資する幅広い企業に対する支援も行うことにより、両面からサポートを行うことにしました。』
単に貸出支援策の拡充だけで良かったのではないでしょうかねえ。つーかJPX400ってROE経営的に優秀な企業群(定量項目で3年平均ROEのウェイトが40%ってのがありますがな)だった訳で、設備・人材投資って話になると将来的な企業の力を高めるためには重要だけどROE的な即効性のある話じゃないので、そもそもJPX400とこの話を同列に並べるのも微妙で、ROEはROEで重要な話なのだから本件とは別の話にした方が良かったのではないでしょうかねえ。
『おっしゃるようにある意味踏み込んだと言えると思いますが、それは企業を巡る環境がよくないということではなくて、日本銀行として既に十分によい事業環境になっていると思っており、そうしたもとで企業の努力もみえてきていますが、業種ごとのばらつきもあり、さらにこれを広げていくことが望ましいということに鑑みて、中央銀行としてできる限りのサポートを行うということにした、とご理解頂きたいと思います。』
何か苦しい説明をしていますが、要するにマネタリーベースを引き上げてインフレ期待を引き上げて実質金利が下がると消費や投資が自動的に出てきてウハウハですよというナイーブにも程がある理論が棄却されたという話なのでしょうが、そこは否定する訳には行かないのでああだこうだと苦しい説明をして、過去の理論は無かったことにして頬被りするという手段に出ています。
・限界は否定していますが・・・・・・・・・・
『(問) 今回の補完措置の趣旨についてと、もう 1 点お伺いします。念のための確認なのですが、巷で言われている「このままQQEを進めていても、いつかは限界が来るのではないか」という限界をむしろ意識されているからこそ、この限界を取り払うという措置を導入されたのではないかと見受けられるのですが、このまま行っても限界が来るのではないかという点についてご見解をお伺いしたいと思います。(後半割愛)』
この説明もまた長い、というのが手詰まり感を示していますな。長いのでまた段落分けします。
『(答) 前から、「量的・質的金融緩和」について、当面、何か限界があると思っていないと申し上げており、今でもそう思っています。ただ、先程申し上げたように、「量的・質的金融緩和」で大量の国債を買っていく中で、金融機関によってはもう国債をすっかり売ってしまって、その他の担保が必要な先もちらほらとあるようです。トータルで限界があるとは全く思っていませんが、そういう声もあることを踏まえて、適格担保の範囲を広げることにしました。』
限界があるという話をしているようにしか見えません。
『また、長期国債の買入れについても、今の時点で何か限界があるとは思っていませんが、来年にかけて日銀が保有している国債の償還がかなり増えますので、80
兆円をネットで増やしていくことになりますと、グロスでの買入れ額がかなり増えることにもなります。』
そんなのはだいぶ前からわかっている話なのですが。
『そうしたもとで、イールドカーブ全体を引き下げていくという「量的・質的金融緩和」の観点から言うと、短いゾーンに集中してイールドカーブを下げるのは適切ではなく、全体を下げていこうということですので、自ずと買入れの平均残存期間がだんだん長くなっていきます。』
???????????????????意味がわからん。
『7 年〜10 年というところをすぐに超えるわけではありませんが、もっと幅広くイールドカーブ全体を引き下げられるように、7
年〜10 年ではなく 7 年〜12 年に広げて、より柔軟に、弾力的に国債買入れが進められるようにしたということです。いずれも、限界があって何かできなくなるから云々ではなくて、買入れをより円滑に行い、イールドカーブ全体を下げていくという意味で、「量的・質的金融緩和」の趣旨に合うように緩和を進めていく観点から、こうしたことを予防的に進めていくことが望ましいと考えて実施したわけです。』
黒田さん的にはこの手の技術的問題に興味は多分無いと思うのですが、「予防的に」とか口を滑らせていますので、事務方の方から「今の枠組みのままで急にオペが爆発したら緩和政策の限界と言われて明らかに問題が発生しますので問題が起きる前に対応できる糊代を作りたい」と説明があったのは明らかでして、つまりは今の政策に関してひたすら粘っていれば天から天兵が降りてきて2%は達成するという見込みの元で出来るだけ粘りたいという日銀の意思だけは良く伝わってきます。
・勝負は4月ですかね
『(問) 今回の補完的措置についてですが、実際に買入れを増やされるのは2016年4月からと書かれていますが、このタイミングで打ち出されたのは、ちょうど春闘がこれから始まりますが、労働組合の要求も若干慎重な感じになっている中で、その辺のマインドを転換させるというようなお考えはあるのでしょうか。』
質問はどうでもよいのですが答えの方が今後の日銀的な関門を分かりやすく示しているので回答を鑑賞。
『(答) 春闘の前にまずは冬のボーナスの話がありますし、来年の春闘に向けての労使の色々な話し合いもあるでしょうから、私どももその行方を大変注視しています。それは事実ですが、それと今回の補完的措置を決定したこととは、直接的な関係は全くありません。』
まあ補完措置ですから関係ないでしょうが、その前に春闘に加え冬のボーナスとというのを思いっきり出してきまして、つまりは賃金動向超重視という事ですから、そういう点でも4月には一つの決着なり落とし前なりが必要になりそうです。
『この時期に決定する必要があったのは、まず第 1 に、来年にかけて貸出支援基金等の制度がこのままでいくと受付期間の終了を迎えてしまいますので、これをどうするかを決める必要があるということで、今回、それぞれ1
年延長することにしました。それから「量的・質的金融緩和」のもとでの資産買入れについても、銘柄別の買入れ上限に達するJ−REITが増加しつつあること、さらには先程申し上げたように、本行保有国債の償還が増加してグロスベースの国債買入れ額が増加する見込みがあること、そういった点も踏まえて、この際、より円滑に「量的・質的金融緩和」を実行するために対応したということです。』
この辺はどうでも良い。
『「量的・質的金融緩和」のもとで、企業のデフレマインドは転換してきているとは思いますが、この動きをさらに広げていく必要もあると思っています。そういった意味で、本日の金融政策決定会合において、来年以降も「量的・質的金融緩和」のもとでの資産買入れを円滑に遂行するとともに、その効果を実体経済により効果的に浸透させるということで、今回の措置を決めました。』
でもってその企業のデフレマインド云々というのは、今後の賃金動向と、来年に入ってからの価格設定行動と、投資動向に現れる訳でして、投資の方は少々お時間掛かるかも知れませんが、物価という意味では賃金と価格設定行動に関して来年入ってからの傾向が見えてくるのが4月の展望レポートの時期になりますし、選挙までの日程考えると政府のデフレ脱却宣言的な物(が出来ればの話ですが)とかも想定されたりしますし、色々なものが来年4月に向かって集約されてくるように思えてきますがどうでしょうかね。
ということで質疑は長いのですが今一歩話が噛み合っていなくて面白くないので本日はこんな所で勘弁。
2015/12/21
お題「策士策に溺れると申しますか・・・・・・・・・(MPMレビュー)」
最初に金曜の訂正ですがFEDのディスカウントウィンドウは75→100でした。思いっきり読み間違えてしまいました。すいません。(大汗)
○概ね技術的な修正(一部変なのあり)を下手にフレームアップするからこんな風に・・・・・・・・・
ご案内の市場反応でしたが。
http://jp.reuters.com/article/kuroda-boj-idJPKBN0U10NV20151218?sp=true
Business | 2015年 12月 18日 16:41 JST
「バズーカ3」は不発、追加緩和か迷い相場乱高下
『意表を突かれた市場は、まず株買い・円売り・債券買いで反応。日経平均.N225は一時500円高まで上昇、ドル/円も123円後半まで約1円上昇した。長期金利も0.265%と1月28日以来の低水準を付けた。「これまで2回のQQEで急激な株高・円安が進んだ記憶による初期反応」(大手証券・株式トレーダー)という。』
『だが、今回は日本株、ドル/円ともに急速に上げ幅を縮小。日経平均の下げ幅は300円を超え1万9000円割れで取引を終えた。ドル/円も122円を割り込み、ともに強化策発表前の水準を下回ってしまった。』
『また、市場が最も「食いついた」ETFの新たな買い入れ枠の設定についても、過去に日銀が買い入れた銀行保有株式の売却の再開(2016年4月から)に伴って行うものだ。ともに3000億円ずつであり、ETFの年間3兆円という購入規模は変わらない。』(以上上記URL先より)
ということで公表が出たのが12:50だったので待っている時間に何をどうするのかと思っていたらヘッドライン的には「80兆円は同じ」の後に「買入年限を7-12年に長期化」で長期化キター!と思ったら今度は「ETFの新たな買入枠年間3000億円」と来てETFキター!!!となって反応したのですが、声明文を良く良く見たらその3000億円は日銀が昔金融機関から購入した株式の売却と見合いというのを見てナンジャソラとか思っているうちに株式と為替があっさり戻るどころかドテン円高株安になってしまって日銀もさぞガックリした事でしょうなあというところです。
まあ良く良く声明文を読んでみますと、「今の政策の枠組みを継続する為に必要な措置」にETFの変な買入を加えてみましたという小手先感溢れる内容でして、こういうのを一々『「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置の導入、12時50分公表)』という名前を付けて「ほーら凄いでしょ」とフレームアップして出したために、フレームアップの第一印象と中身のギャップから失望な市場の反応を示したのに加え、「こういうフレームアップをするというのは追加緩和が出来ないからどうでも良い話を大きく見せようとしているんだな」という見方にも繋がって株と為替が失望モードになったのでしょうねと。
それから今回出た中での追加施策ですけれども3人の反対が出ているのも気にしている人は気にしていると思われまして、ここで3名反対が出たとなると追加緩和をやるという話になったとしても木内さんだけではなくて今回は佐藤さんと石田さんが反対に回ったので、今後は益々難しいことになる(まー元々コンセンサスもへったくれも無く運営している節があるので執行部的には知らんがななのかも知れませんが)と思われます。
#なお金融市場に一番近い審議委員3名が反対しているというのが何とも
○個別の施策は「今の枠組みで政策を延命させたい」というのが基本
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k151218a.pdf
当面の金融政策運営について
・MB増加ペースは同じ
『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成8反対1)(注1)。
マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。』
MBに意味があるという建付けは何とかならんのかとしか思えないがここをいじらないので追加緩和ではない、という建付けになる。木内さんの反対はいつも通りなので割愛。
・7年〜12年に長期化は3名反対ですが内容を見ると・・・・・・・・・・・
『2.資産の買入れについては、以下の方針とする(賛成6反対3)(注2)。
@ 長期国債について、保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する。買入れの平均残存期間は、本年中は7年〜10年程度、来年からは7年〜12年程度とする。
A ETFおよびJ−REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。
B CP等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、約 3.2 兆円の残高を維持する。』
後で出てくる謎の新ETFスキームはさておきましてこちらでは長期化に3名が反対。木内さんはそもそも副作用がどうのこうのという人なので反対するとして石田さんと佐藤さんの反対理由は・・・・・・・・
『(注2)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、原田委員、布野委員。反対:石田委員、佐藤委員、木内委員。石田委員と佐藤委員は、長期国債買入れの平均残存期間の長期化に反対した。なお、木内委員より、長期国債保有残高が、年間約
45 兆円に相当するペースで増加するよう資産買入れを行うなどの議案が提出され、反対多数で否決された。』
後ろの方に『「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置の導入』というのがあって、4ページ目になるのですがこういうのがあります。
『(2)長期国債買入れの平均残存期間の長期化(賛成6反対3)(注2)
長期国債のグロスベースでの買入れ額が増大することが見込まれることから4、買入れを柔軟かつ円滑に実施するため、平均残存期間を現在の7年〜10年程度から、7年〜12年程度に長期化する。また、国債の市場流動性を確保する観点から、国債補完供給(SLF)の連続利用日数に関する要件を緩和する5。いずれも
2016年1月から実施する。』
SLFの話は後でしますが、こちらに反対理由の説明がもうちょっと詳しくありまして・・・・・・・
『(注2)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、原田委員、布野委員。反対:石田委員、佐藤委員、木内委員。石田委員と佐藤委員は、現在の「7年〜10
年程度」のもとでも運営可能であるとして、木内委員は、長期国債買入れの平均残存期間を7年程度とすることを含む自身の提案と整合的ではないとして反対した。』
ということで、そもそもまだ7−10年で運営できるだろというのが石田さんと佐藤さんの反対理由なのですが、今回はMPMで平均年限を変更したからという事なのでしょうが、突如MPMと一緒に来月の買入予定が出てきまして・・・・・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel151218c.pdf
2016年1月以降の長期国債買入れの運営について
『(注4)2016 年 1 月 4 日以降の最初のオファー金額は、残存期間 1 年以下
700 億円、残存期間 1 年超 3 年以下 4,000 億円、残存期間 3 年超 5 年以下
4,200 億円、残存期間 5年超 10 年以下 4,500 億円、残存期間 10 年超 25 年以下
2,600 億円、残存期間 25 年超 1,800 億円、変動利付債 1,200 億円、物価連動債
400 億円とする予定です。』
となっていまして、(買入の回数は同じ)
−1年:700→700
1−3年:3500→4000
3−5年:3500→4200
5−10年:4000→4500
10−25年:2400→2600
25年−:1400→1800
変国:1200→1200
物国:200→400
これを手元の表計算ソフトでヘコヘコと計算しますと、除く物国変国で月間買入が8.64兆円→9.74兆円になるので年間120兆円弱という数字(来年の償還分+80兆円)と整合的なのですが、買入年限って1年の所を0、各年限はそこにあるカレント(25年超はめんどくさいので全部30年にしちゃいました)として9.69年→9.78年という数字になって何でわざわざここで7−12年に延長するのか訳分からんという結果になっているのが謎の日銀クオリティ。
物国がしらっと倍増しているのは原油が下がって困り切っている物国的にウマーなのですが、超長期の後ろの方が手前よりも買入額が増えているのが少々インパクトあるという以外は市場で大体こんなもんでしょうなあと思っていたのと極端には変わらない(市場は平均10年以内に収める方向で計算していたけれどもこの買入も平均10年で収まっているから)というのが何とも。
まあ金曜の市場の反応として何故か2年が最後に大爆発してカレントマイナス5bp(カレント以外はマイナス5.5bp)とかハチャメチャな引けになっておりました(ちなみに当然ですがウェイト上がったので20−30は引値で2毛フラットニング)が、早い時期に中短期の輪番が大爆発して日銀の買入金利が出来上がりマイナス10bpだの15bpだのというお洒落な事になった場合には買入年限の長期化をしないといけなくなるから先手を打って「7−12年」にしておいたのですかね。
まー輪番爆発してから「7−10年」を長期化すると追い込まれ感が強くなるので先手を打ったにしても、それならもうちょっと買入を長期化して「長期化しましたよ」アピールをすれば良いのにと思うのですけれども、そこは一気に長期化して一段のフラットニング(いやまあ金曜も大フラットニングで7年1.5強、10年3強、20年4.5強、30年6強の40年7強でしたけど)をさせると、それはそれで輪番の限界を速めるリスクがあるので、とりあえず今のバランスで粘ってマズイようならもうちょっと長期化しよう、という逐次投入スキームあるいは延命スキームを取りに行ったんでしょうね。
なお、この別添の方での脚注が何とも。
『4 現在の資産買入れ方針のもとで、2016 年中のグロスベースでの国債買入れ額は、保有国債の償還額の増加により、2015
年中の約 110 兆円から、約 120 兆円に増大する見込み。』
まあ単に事実の説明をしただけなのかも知れませんが、もともと既定方針となっているものなので一々説明する必要もない話なのに、わざわざ「110兆円から120兆円に増大」とかグロス買入の額を書くのが「数字を出来るだけ大きく見せよう」的な下心があるんじゃないかと思われて、下手な小芝居に見えてしまいますので出す必要はないんじゃないですかねえ。従来この数字を出していないのに急に出すというのは如何な物かと思いますし、逆に「増加額の目標からグロスの数字にして誤魔化すつもりか」と思う人も出て来て逆効果のような気がします。
・FLSについて
さっきの続きで別添脚注のFLSについて。
『5 長期国債の同一銘柄について連続利用可能な最長日数を、現在の原則 15 営業日から原則
50営業日に変更する。』
ということでFLSの制限日数を延長していますが、そもそも論として問題なのは日銀の中に沈んでしまって売りが出てこないから流動性が無い訳で、何ぼFLSで出して貰っても最終的にカバーをしないといけないので有れば話は同じであって、FLS分のバイインでも可能にしてくれるならともかく、結局カバーしないといけないというのが変わらない上に、大体からしてFLS自体がディスカウントウィンドウ的な位置づけになっている状態のままでは日数拡大しないよりはマシですがまあその程度の問題であって、この延長によって輪番に応札しやすくなるというような話は無いというのはマーケットメーカーサイドでは普通の認識だと思いますが投資家サイドだと意外にこういうのを誤解しやすいので念のため申し添えます。
・景気認識は輸出を上げただけです
声明文項番3〜6ですが、4〜6は同じなので3のみ前回と比較しておきます。
『わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。海外経済は、新興国が減速しているが、先進国を中心とした緩やかな成長が続いている。そうしたもとで、輸出は、一部に鈍さを残しつつも、持ち直している。国内需要の面では、設備投資は、企業収益が明確な改善を続けるなかで、緩やかな増加基調にある。また、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直している。公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向にある。鉱工業生産は、横ばい圏内の動きが続いている。この間、企業の業況感は、一部にやや慎重な動きもみられるが、総じて良好な水準を維持している。わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、このところ弱めの指標もみられているが、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。海外経済は、新興国が減速しているが、先進国を中心とした緩やかな成長が続いている。輸出や鉱工業生産は、新興国経済の減速の影響などから、このところ横ばい圏内の動きとなっている。一方、国内需要の面では、設備投資は、企業収益が明確な改善を続けるなかで、緩やかな増加基調にある。また、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直している。公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、このところ弱めの指標もみられているが、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(11月声明文より)
前回との相違点は輸出の判断が上がっていること、短観を受けた業況感の部分があること(短観直後の声明文の仕様)です。予想物価上昇率が全体として上昇とはどこがどう上昇しているのか小一時間問い詰めたいとかあるのですがまあさておきまして。
・項番7はもう何というか
今回は入っているのが項番7。
『こうした方針に沿って「量的・質的金融緩和」を推進していくに当たっては、国債市場の動向や金融機関の保有資産の状況などを踏まえ、より円滑にイールドカーブ全体の金利低下を促していくことが適当である。また、「量的・質的金融緩和」のもとで企業や家計のデフレマインドは転換してきており、設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業も多いが、そうした動きがさらに広がっていくことが期待される。こうした観点に立って、日本銀行は、「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置を決定した(別添)。』
はあそうですかとしか申し上げようがない。
・新たなETF購入の部分は色々と何だかなあ感が
ということで別添に戻りまして。
『1.設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業に対するサポート』というのがありまして・・・・・・・・
『(1)新たなETF買入れ枠の設定(賛成6反対3)(注1)
ETFの買入れについて、現在の年間約3兆円の買入れ1に加え、新たに年間約3,000
億円の枠を設け、「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETFを買入れる。当初は、JPX日経
400 に連動するETFを買入対象とし、この施策の趣旨に合致する新規のETFが組成された場合には、速やかに買入対象に加える。新たな枠によるETF買入れは、日本銀行が買入れた銀行保有株式の売却開始に伴う市場への影響を打ち消す観点から、2016
年4月より開始する2。』
まずは脚注1
『1 現在は、東証株価指数(TOPIX)、日経平均株価(日経 225)または JPX 日経インデックス
400(JPX 日経 400)の3つの指数に連動する ETF を対象として、それぞれの市場残高に比例して買入れを行っている。』
市場残高のプロラタで買入をしているので、新たなETF買入を別にしないとって話なのでしょうが、そもそも『「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETF』ってナンジャソレという感じで、この次の(2)にあるそ該当企業への貸出支援で良いんじゃないのとしか思えないのですが、まあ筋が悪そうな事やってるなあと思いますし・・・・・・・・・・
脚注2
『2 日本銀行は、金融機関による株式保有リスクの削減努力を促すための施策として、2002
年11 月から金融機関が保有する株式の買入れを実施した。2007 年 10 月より、取得した株式の市場における売却を開始したが、内外金融資本市場の状況等を踏まえ、現在は売却を停止しており、2016
年4月から売却を再開することとしている。本件については、昨日の政策委員会において、売却期間を従来予定していた
5.5 年間から 10 年間に延長することを決定した。なお、売却の規模は、2015
年 11 月末時点の時価で年間約 3,000 億円となる見込み。』
こちらに関しては言われて見ればそうでしたと思いだすというお話で(汗)、最初「売出の期限延長」というヘッドラインを見た時に売却開始の再延長するのかと思いましたらそうではなくて、ここの売却とのセット施策っていうのがまた残念感が出てしまう内容。
『(注1)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、原田委員、布野委員。反対:石田委員、佐藤委員、木内委員。石田委員と佐藤委員は、現在の「年間約3兆円」の枠内で対応すべきであるとして、木内委員は、ETF
買入れ減額を含む自身の提案と整合的ではないとして反対した。』
ということでこちらも3名反対。
『(2)成長基盤強化支援資金供給の拡充(全員一致)
成長基盤強化支援資金供給における適格投融資として、現在の 18 項目に、「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」を追加するとともに、本項目の投融資について、手続きを簡素化する(税制上の優遇措置の対象となっている企業に対する投融資を適格とするなどの措置を講じる)3。』
まあ成長基盤資金供給の方は話は分からんでもないが、今の市場環境で成長基盤供給を積極的に借りに行くインセンティブが金融機関にあるのかというのはかなり疑問だが。
・適格担保の拡大は良い話
『(1)日本銀行適格担保の拡充(全員一致)
「量的・質的金融緩和」のもとでの長期国債買入れに伴って金融機関が保有する適格担保が減少していることを踏まえ、外貨建て証書貸付債権を適格担保とするほか、金融機関の住宅ローン債権を信託等の手法を用いて一括して担保として受け入れることを可能とする制度を導入する
3。』
住宅ローン債権自体の残高はたくさんあるのですが、問題はこの信託等の手法云々の具体的な手間とコストでして、これについては詳細が出ないと何とも。ただまあ将来に渡ってという事を考えますと、いずれ金利がつくようなときになったらここの担保拡大はだいぶ意味が出てくるようにも思えます。
・J−REITは市場が好感でしょ
『(3)J−REITの買入限度額の引き上げ(賛成6反対3)(注3)
現在、J−REITについては、銘柄別の買入限度額を当該銘柄の発行済投資口の総数の「5%以内」としているが、市場における発行残高との対比でみた日本銀行の保有残高が増加していることから、これを「10%以内」に引き上げる
3。』
こちらは今のままですと来年の買入拡大が5%ルールに抵触してできなくなるという事で、買入そのものが停止されるのではないかという見方もあったと思いますので、リート市場ニッコリの巻。
ただし・・・・・・・・
『(注3)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、原田委員、布野委員。反対:石田委員、佐藤委員、木内委員。石田委員は、買入限度額の引き上げが不動産市場に対する不適切なシグナルとなる懸念があるとして、佐藤委員は、現在の買入限度額の範囲内で買入れを行うべきであるとして、木内委員は、J-REIT
買入れ減額を含む自身の提案のもとでは買入限度額の引き上げは不必要であるとして反対した。
』
>石田委員は、買入限度額の引き上げが不動産市場に対する不適切なシグナルとなる懸念があるとして
>石田委員は、買入限度額の引き上げが不動産市場に対する不適切なシグナルとなる懸念があるとして
>石田委員は、買入限度額の引き上げが不動産市場に対する不適切なシグナルとなる懸念があるとして
金融機関出身の方がこういう反対をするのは重いですよね。
・金融機関保有株式は予定通り売却(ただし売却期間延長)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel151218b.pdf
日本銀行が金融機関から買入れた株式の売却完了期限の延長
『日本銀行が金融機関から買入れた株式については、2016 年4月以降、市場売却を開始することとなっています。
本件については、12 月 17 日の政策委員会において、売却に伴う株式市場への影響を軽減する観点から、従来、2021
年9月末としてきた売却完了期限を、2026年3月末まで延長することとしました。これにより、市場売却を行う期間は
10年間となります。』
ということで、実はMPM1日目の前(1日目は午後からなので)か後に通常会合をやって(木曜だし)、これを決めてから金曜に臨んでいたのですね。
しかし上記のような謎施策する位なら単に売却開始を先送りした方がスッキリしていたように思えるのですけどねえ・・・・・・・・・・・
○ということで・・・・・・・・・・・
まあ今日以降の市場反応も見てという話になるでしょうが、今回の措置は、
「今の政策枠組みを延命しようとした修正をまとめて突っ込んで、ついでに新しいETF買入を入れて色々と盛りつけてみました」
という感じでして、小手先感が思いっきりするのが黒田さんの緩和および追加緩和らしくない(まあ追加緩和ではないのだが)次第で、どちらかと言えば白日銀時代に細かい技術的修正を一々無駄に盛り付けを行って中身を市場が良く見るとがっかりしてしまう、という感じで、高座で落語が思いっきり滑って客がドッチラケというような風情の漂う内容。
しかも、中短期の輪番とか結構増やしていて(年限伸ばすんだったらもうちょっと中短期軽くすれば良いのに・・・・・・・)そもそもこの施策自体が延命になっているのかどうかも良く分からんところがあって、実際に1月に買入が始まった時の中短期(短国の方も気になるが)がどう推移するのか次第では早晩買入の手直しが必要かも知れず、益々手詰まり感が強くなるかも知れません。
いずれにせよ、今回は執行部が「今の政策で出来るだけ粘りたい」(なお粘れるかどうかは知らん)という意思を出したというだけの内容で、却って追加緩和余地の乏しさを示して見事に滑ってしまいましたねえと思います。今回の変なフレームアップは今の所失敗になっているように思えます。
あと、何回かもうしあげましたが、石田さんと佐藤さんも各種措置に反対したのは重いと存じます。
とまあそういうことで。
2015/12/18
お題「市場雑談少々/FOMCレビュー続きというか具体的なオペレーションについて」
今日は一応MPMがあることを忘れないでくださいね。
・・・・・・とは言いましても今や市場的に重要イベントは毎日の輪番と金曜の短国買入なので、輪番日程とか短国買入予想とかしている中で「そういや18日はMPM」となるのですけどね!!!!!
○市場世間話
・債券は何があっても堅調とな
手抜きでロイターさんの記事を貼っておく。
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1462K220151217
News | 2015年 12月 17日 15:15 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が反発で引け、長期金利は横ばい0.295%
『<15:08> 国債先物が反発で引け、長期金利は横ばい0.295%
国債先物中心限月3月限は前日比5銭高の148円87銭と反発して引けた。日銀の大規模買い入れで需給が引き締まる中、国債大量償還による再投資ニーズなど良好な需給環境が意識されて買いが先行。午後の取引開始直後には、20年債入札が順調な結果になるとの見方から、一時148円93銭と15日の最高値(148円91銭)を更新する場面もあった。20年債入札結果はテールがやや流れて、事前の期待ほど強くなかったが、流通市場で下値でしっかりと国内勢の買いを観測されるなど、国債先物が高値圏での推移が続いた。』
『現物市場は超長期ゾーンがしっかり。20年超長期国債利回りは一時同1bp低い1.005%と2月3日以来、30年超長期国債利回りは一時同1bp低い1.340%と10月29日以来の水準に低下した。10年最長期国債利回り(長期金利)は同変わらずの0.295%。』(以上上記URL先より)
ということで米国様が利上げしても超長期入札がちょっと流れても結局の所買いが登場という図でして、まー今回の場合は「FOMCガーなので結果出るまで様子見」という方がイベント終了したので買いますか的な買いが目出度く登場の巻とかいう感じなのかも知れませんが、いずれにせよ外部環境に全然振らされない中でただひたすら需給だけでじりじりと動くというこの相場orzorzという所で。いやまあ今に始まった訳ではないのですが。
しかしまあ何ですな、オペがどこまで持つのかという話は視点によって色々と見解が割れる所でして、総じていえばオペ先の方が割と持つのではという見解で、非オペ先(つまりバイサイド)の方が何ぼ何でもヤバいのではないかという見解になっているという感じではないかと思われます(あくまでも私家版感想なので違っていたらゴメンチャイ)。まあバイサイドの場合は「最早売るもの無し」モードになる中で来年になると新規発行以上の買入フローが待っていて、その一方で放置していると保有する債券はドンドン償還に向かってくるので買わないといけないというのがあって、この市場で何を買いますねんとなった場合に「日銀オペで需給がこんな状態になっているのが更に悪化したらどこかで綻び出るだろ」というのをより強く持っているのでしょうなあとかまあテキトーな感想をのべてみる。よー知らんけどな。
・3M短国の金利は上がったものの結局マイナス1bp台ですかそうですか
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20151217.htm
(3)募入最低価格 100円00銭3厘0毛(募入最高利回り)(-0.0111%)
(4)募入最低価格における案分比率 15.1760%
(5)募入平均価格 100円00銭6厘5毛(募入平均利回り)(-0.0242%)
今回の入札は年内ラスト2回のうちの1回という入札でしたが、その前の1年入札はまあ強めでやったあと引値でマイナス9.0bpとか相変わらずのオペ向き価格推移をしていたけど、3Mに関しては目先暫く日銀買入には打ち込めそうも無いということで、それほど盛り上がることも無く足切はマイナス1bp台まで金利上昇。
とは言いましてもそもそもマイナス1レベルって今年の11月に金利が馬鹿低下する前は金利下がってもアベレージがこの辺で足切は1bp割れの水準というのが仕様だったので、1bp台で切れたのを見て金利が上がった上がったとか言っている時点で既に目線が変わってしまっているというのがお分かりかと存じます(涙)。
ここもと入札対比で短国買入は少ないので、直近3Mの各銘柄はそこそこ流通在庫はあると思われるのですが、東京レポレートの推移などでもお分かりのように年末越えの短国ニーズは相変わらずで、今仮に末初現先で飛ばすとお洒落なレートで出せると見られる(ただし今後余ったままの場合にどうなるかは知らん)ので、この程度の浅いマイナスだと多分ファンディングでそう食らわずに来年入ってからの短国買入でウマーとか行けそうですね、というような想定は置けると思いますので、中々金利もアガランチ会長でございますな。しかも21日になると国債償還金が着金してくるからまた金が出てくるし。
今日は短国買入が無いので、月曜の買入で幾ら入れてくるか、という辺りが気になるのですけれども、後で軽く申し上げるCP市場がウヒョーとなっているらしい中で月末のCP買入札割れでもしないか位の雰囲気でございますので、やっぱりバッファー取ってくるんでしょうかねえとは思います。いずれにせよ6Mと1Yのカレントしか入らないと思うので、3Mはそこそこ残るとは思うのですよね。
で、来週の短国入札が年内受け渡し最後の入札ですよワンチャンスですよ、と言いたいところなのですが・・・・・・・・・・・・
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20151217.htm
1. 入札予定日 平成27年12月24日
2. 発行予定日 平成27年12月28日
3. 償還予定日 平成28年4月7日
4. 発行予定額 額面金額で4.8兆円程度
この銘柄は幸か不幸か「3月決算跨ぎ」という素敵な銘柄でして、今回12月は海外要因が大きかったにせよ短期の現物市場(短国とかCPとか)がこのような惨状を呈してしまったという事実がある訳で、海外要因の方は若干軽減されるかもしれませんけれども基本的にはドルファンディング問題なので無くなるという訳にも行かないですし、その一方でジャパンの方はモノホンの決算期末になりますからそらもう決算の帳尻お家の事情ニーズが高まるでしょうと思われます、というのが来年の3月末。なお、FOMCもあるのでまたまた「3月利上げの可能性があるから不透明感もあってドル円べーシスガー」とFOMCを言い訳に使われるに1万イエレン。
でもって次の3月末越えな上に年末越えでもある3M短国とかニーズが炸裂にも程があると思われますので、この新発は強い入札になっちゃうんでしょうなあという事で、こうなると11月から始まっているのですが、入札からセカンダリーも含めてカレント3Mの玉がマイナス以外の金利で出てこない時期がまるまる2か月継続というオソロシスな事態になってしまうのでございまして、これはアカンヤツやろというお話。
なお、3月末越え銘柄が出てくるということは、もしかするとこの銘柄を年度末越えお家の事情で買った場合には、お家の事情の無い年度末越えない銘柄については処分玉が出てくるという期待も無い訳ではないのですが、そうは言っても年末越えのお家の事情玉のニーズが残っていると玉が出てこないということになりますのでどうなることやら(従って年内出てこなくても新春一発目はこの新発をお家の事情で買った見合いの残高調整外しが出てきて然るべき)という事で。
#超一部の人向けのネタでしたすいません
なお、CP市場に関しては四半期末を控える月の下旬に突入しようという中で、直前2か月近く短国がドマイナスで推移するというのは初のケース(これまでは大体四半期末の月の中盤辺りには資金需給の関係上短国買入のペースが落ちて、そのタイミングで短国金利がゼロ近辺まで浮上していた)でして、短国市場がそのようになっている中で詳しくは金融ファクシミリ新聞さんがCP市場のお話をしてくれます(というか毎度申し上げているように他のベンダーは興味ないようで金ファクさんだけせっせとネタにしてくれるのだ)と思います(なお別に回し者でもなんでもないので書いてくれているかどうかは知らん)のでまあそちらをご参照あれと申し上げておくのでした。年末受渡でオファーされるCP買入がどのような結果になるのかが今から楽しみで、夢のマイナス金利落札か夢の札割れかというのを白装束に身を固めて今から待っております。
まあCP買入札割れだのマイナスだのになったらさすがにCP買入を実施する意義is何という話になったり、市場へのプレッシャー拡大によって市場に歪みが発生とかいう話になりませんかねえとは思うのですけど・・・・・・・・・・・・・・・
・業態別当座預金残高
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/
銀行業態が大体残高を増やしているのですが、最近は信託の残高が増えているなあと思ったりしながら眺めております。11月積み期間および11月末残でみるとその他当座預金(含む証券)と外国銀行が10月末残では増えていたのが落ちているというのがちょっとした動きっちゃあ動きですか。
一時こちらに関しては銀行業態(特に都市銀行)が妙に末残を合わせに行くような動きがあって、超過準備を都市銀行が積まないようになったら誰が超過準備をここから積み上げますねんという懸念があったのですが、とりあえず最近は自然体で超過準備が積みあがっているようなので、今のところは無事に推移中。
・・・・・・・・とは言いましても、この政策来年も続けたら当座預金残高がここから80兆円オンされることになる訳でして、その80兆円の超過準備(超過準備じゃない積みあがり方もありますが)は誰が積むのか、という事を考えるとやはり日銀負債サイドから見てもオペの継続大丈夫かと思うのですけどね。日銀当座預金と言えどもバカスカバランスシートを拡大すると総資本ベースでの各種経営指標が悪化する訳ですし。
○FOMCレビュー続き
すいませんすいませんこちらをネタにするのを失念していました。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20151216a1.htm
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation
政策変更したのでディレクティブの変更ということで、そちらの説明もありました。ちなみにディレクティブって毎回のFOMCでNY連銀に発出されていまして、その内容もFOMCで承認されていて、議事要旨見ると書いてあるのですが、普段は一々ステートメントとかとのセットではFRBの方では公表しません(なお日銀の公表分の最初にあるのはディレクティブ)。
『The Federal Reserve has made the following decisions to implement the
monetary policy stance announced by the Federal Open Market Committee in
its statement on December 16, 2015:』
『The Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously
to raise the interest rate paid on required and excess reserve balances
to 0.50 percent, effective December 17, 2015.』
超過準備に対する付利金利は17日から50bpに引き上げ。
『As part of its policy decision, the Federal Open Market Committee voted
to authorize and direct the Open Market Desk at the Federal Reserve Bank
of New York, until instructed otherwise, to execute transactions in the
System Open Market Account in accordance with the following domestic policy
directive:』
以下のようなディレクティブをNY連銀に発出。
『1 "Effective December 17, 2015, the Federal Open Market Committee
directs the Desk to undertake open market operations as necessary to maintain
the federal funds rate in a target range of 1/4 to 1/2 percent, including:』
FF誘導金利は0.25-0.50%
『 (1) overnight reverse repurchase operations (and reverse repurchase
operations with maturities of more than one day when necessary to accommodate
weekend, holiday, or similar trading conventions) at an offering rate of
0.25 percent, in amounts limited only by the value of Treasury securities
held outright in the System Open Market Account that are available for
such operations and by a per-counterparty limit of $30 billion per day;』
オーバーナイトRRP金利(これが基本的に短期市場の下限になるようにというコリドアで、こちらは非FF先が参加できるので市場金利がこの金利以下に下がるとONRRPに資金が入るという仕組み)は25bpに引き上げ、実施上限はSOMA保有国債の範囲内(カラではレポできないから当たり前)で、1社当たりの限度額は1日あたり300億ドル。
『and (2) term reverse repurchase operations to the extent approved in
the resolution on term RRP operations approved by the Committee at its
March 17-18, 2015, meeting.』
ターム物RRPは今年3月に承認された規模で実施する。(ちなみに3月のミニッツに書いてあるのですが、総額3000億ドル、レートはONRRP+5bpで、その他幾つかあるのですがパス)
『The Committee directs the Desk to continue rolling over maturing Treasury
securities at auction and to continue reinvesting principal payments on
all agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed
securities.』
国債とMBS等の償還再投資を継続。
『The Committee also directs the Desk to engage in dollar roll and coupon
swap transactions as necessary to facilitate settlement of the Federal
Reserve's agency mortgage-backed securities transactions."』
エージェンシーMBSの取引の時に実施するドルのロールとクーポンスワップについてのお話。
『More information regarding open market operations may be found on the
Federal Reserve Bank of New York's website.』
こちらになるのですが、これをやりだすと時間が無くなるので勘弁。
https://apps.newyorkfed.org/markets/autorates/temp
『In a related action, the Board of Governors of the Federal Reserve System
voted unanimously to approve a 1/4 percentage point increase in the discount
rate (the primary credit rate) to 1.00 percent, effective December 17,
2015.』
ディスカウントウィンドウの金利がしらっと0.25→1.00に上がっていて、今後は付利金利とONRRPのコリドアで短期市場金利を形成し、ディスカントウィンドウの金利はしらっとペナルティー金利に戻るの巻になっています(以前は付利と同金利)ので、これも地味ですが危機モード脱却を象徴する話になると思いますが、まあそれを象徴とか思うのは中央銀行オタクだけですかそうですか。
『In taking this action, the Board approved requests submitted by the Boards
of Directors of the Federal Reserve Banks of Boston, Philadelphia, Cleveland,
Richmond, Atlanta, Chicago, St. Louis, Kansas City, Dallas, and San Francisco.
This information will be updated as appropriate to reflect decisions of
the Federal Open Market Committee or the Board of Governors regarding details
of the Federal Reserve's operational tools and approach used to implement
monetary policy.』
で更に下にリンクがございますが時間の都合上ここで勘弁。
#会見ネタをやってる時間が無かったですすいません・・・・・・・・・・・なお全文出ていますよ
2015/12/17
お題「ゼロ金利解除のFOMCを鑑賞」
まあその前にに1年短国が相変わらず引けに掛けて強かったり今日は3M入札ですよとか相変わらずのCP市場ェ・・・・だったりしておりますがとりあえずFOMC。
#ところでタカ&トシ先生は年金政策提言からいつの間にFEDウォッチに転進されたのでしょうか
でまあ今回の決定ですが、FF誘導レンジが0-0.25→0.25-0.50に引き上げ、償還再投資は当面継続となっていまして、評決はハト派のエバンスさんも含めて全員一致(ちなみにSEPを見ると投票してない人の中で2名が反対だった模様)となっていました。
まずは声明文。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20151216a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20151028a.htm(前回)
○声明文第1パラグラフ:しらっとインフレ期待のアセスメントが下がっているのですが
『Information received since the Federal Open Market Committee met in October
suggests that economic activity has been expanding at a moderate pace.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in September
suggests that economic activity has been expanding at a moderate pace.』(前回)
総括判断文言は変わらず。
『Household spending and business fixed investment have been increasing
at solid rates in recent months, and the housing sector has improved further;
however, net exports have been soft.』(今回)
『Household spending and business fixed investment have been increasing
at solid rates in recent months, and the housing sector has improved further;
however, net exports have been soft.』(前回)
家計、企業投資行動、住宅セクター、貿易などの判断文言も変わらず。
『A range of recent labor market indicators, including ongoing job gains
and declining unemployment, shows further improvement and confirms that
underutilization of labor resources has diminished appreciably since early
this year.』(今回)
『The pace of job gains slowed and the unemployment rate held steady. Nonetheless,
labor market indicators, on balance, show that underutilization of labor
resources has diminished since early this year.』(前回)
労働市場に関する判断文言は当然ながら強くなっていまして、労働市場のスラックが無くなっている点について今回はconfirmsというのが入って労働市場の改善を思いっきり宣言しています。
『Inflation has continued to run below the Committee's 2 percent longer-run
objective, partly reflecting declines in energy prices and in prices of
non-energy imports.』(今回)
『Inflation has continued to run below the Committee's longer-run objective,
partly reflecting declines in energy prices and in prices of non-energy
imports.』(前回)
物価の判断文言は同じ。
『Market-based measures of inflation compensation remain low; some survey-based
measures of longer-term inflation expectations have edged down.』(今回)
『Market-based measures of inflation compensation moved slightly lower;
survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained
stable.』(前回)
市場のインフレ期待は相変わらず低くて、いくつかのサーベイベースのロンガータームのインフレ期待が若干下がっている、というアセスメントを出しているのに正常化着手というのは中々面白いというかいい根性してますな。
○声明文第2パラグラフ:先行き見通しはあちこちのヘッジクローズが抜けたのと方向が正常化というのを示す
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)
これはお約束文言。
『The Committee currently expects that, with gradual adjustments in the
stance of monetary policy, economic activity will continue to expand at
a moderate pace and labor market indicators will continue to strengthen.
Overall, taking into account domestic and international developments, the
Committee sees the risks to the outlook for both economic activity and
the labor market as balanced.』(今回)
『The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic
activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing
to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.
The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity
and the labor market as nearly balanced but is monitoring global economic
and financial developments.』(前回)
適切な金融緩和政策で2%に云々という部分が「緩やかに金融政策のスタンスの調整を行う中で」云々となっていますので、今後は徐々に正常化に向かいますよ、というのはまあ順当は順当。リスクアセスメントの所が従来
nearly balanced だったのですが nearly が抜けまして単なるバランスになっているのと、海外経済がどうのこうのの文言も外しておりまして、利上げしたのだからある意味当たり前ですが、ここの文言は自信満々モードになっております。
『Inflation is expected to rise to 2 percent over the medium term as the
transitory effects of declines in energy and import prices dissipate and
the labor market strengthens further. The Committee continues to monitor
inflation developments closely.』(今回)
『Inflation is anticipated to remain near its recent low level in the near
term but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent
over the medium term as the labor market improves further and the transitory
effects of declines in energy and import prices dissipate. The Committee
continues to monitor inflation developments closely.』(前回)
物価に関しては「しばらくは今の低いレベルで続くでしょう」という文言を外してきていまして、声明文ベースで言えば別に物価見通しが下がった訳でもなんでもないのですが、さっきから何となく聞いているモーサテ(ちなみにFOMCの時には他のニュースや数値を見ないで声明文比較とかをして考えた後にニュースとか数値を見るようにしております、寝坊しない限り)では物価見通しが下がった下がったと言っているのだが、SEPの数字でもそんなに下がってないでしょ(確かに2016年の見通しが若干下がっているがその後ろは変わらん)と思う訳で、この声明文文言の変化を見た限りにおいては2016年の見通し数値が下がっているのをそんなに大騒ぎするものかねとは思う。
○声明文第3パラグラフ:フォワードルッキングな話をしています
『The Committee judges that there has been considerable improvement in
labor market conditions this year, and it is reasonably confident that
inflation will rise, over the medium term, to its 2 percent objective.』(今回)
『To support continued progress toward maximum employment and price stability,
the Committee today reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent
target range for the federal funds rate remains appropriate.』(前回)
ということで利上げなのですが、理由は労働市場がconsiderable improvementしたのと、2%物価上昇に向けた見通しがreasonably
confidentである、という話でして、物価の方はフォワードターゲット的な話になってますね。
でもってこの先は前回第3パラグラフにはない部分。
『Given the economic outlook, and recognizing the time it takes for policy
actions to affect future economic outcomes, the Committee decided to raise
the target range for the federal funds rate to 1/4 to 1/2 percent. The
stance of monetary policy remains accommodative after this increase, thereby
supporting further improvement in labor market conditions and a return
to 2 percent inflation.』(今回)
利上げしましたという話をしていますが、その前に「recognizing the time it
takes for policy actions to affect future economic outcomes」と入っていまして、フォワードルッキングで利上げしていますよ、とどちらかというと足元の指標で一々反応してああだこうだやっていた感のある(というよりは市場がそう見ていた、というのが適切かも知れませんが)正常化着手までの動きに対して、今回は明確にフォワードルッキングですよキタコレですよと思いましたが、次のパラグラフではやはりデータディペンデントの話を行っているので、まあここからの正常化ペースに関しても市場の見方は揺れるだろうなあと思います。
○第4パラグラフ:今後のペースは緩やかでデータディペンデント&物価が上昇しない場合のヘッジ文言が入る
前回分は第3パラグラフの途中になります。
『In determining the timing and size of future adjustments to the target
range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and
expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment
and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide
range of information, including measures of labor market conditions, indicators
of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial
and international developments.』(今回)
『In determining whether it will be appropriate to raise the target range
at its next meeting, the Committee will assess progress--both realized
and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent
inflation. This assessment will take into account a wide range of information,
including measures of labor market conditions, indicators of inflation
pressures and inflation expectations, and readings on financial and international
developments.』(前回)
色々な指標を幅広く見て判断する云々というのは基本的に同じです。
『In light of the current shortfall of inflation from 2 percent, the Committee
will carefully monitor actual and expected progress toward its inflation
goal.』(今回)
さっき申し上げた物価見通し下がった云々よりも、こちらにヘッジクローズが入っている方がネタとしては意味があると思う訳で、物価2%達成がリーズナブリーコンフィデントと言っているものの、こちらで物価が足元低めなので物価の推移を慎重にモニターしますというヘッジクローズを入れている辺りは利上げペースをゆっくりやりますよという話でもあります。
『The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner
that will warrant only gradual increases in the federal funds rate; the
federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that
are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of
the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed
by incoming data.』(今回)
この辺は前回第5パラグラフの
『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it
will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum
employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates
that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels,
economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal
funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(前回)
の趣旨の部分になりまして、バランスアプローチ云々というのがデータディペンデント云々となっていますが、中立金利までの引き上げには時間を掛けるという話をしているのは同じ。ただこのデータディペンデントというのもふわっとした話でして、今後は利上げペースに関して出てくる指標や連銀高官発言によって市場の見方が揺れるんでしょうなあとは思うのでした。
なお、前回の第3パラグラフの最後は
『The Committee anticipates that it will be appropriate to raise the target
range for the federal funds rate when it has seen some further improvement
in the labor market and is reasonably confident that inflation will move
back to its 2 percent objective over the medium term.』(前回)
といいう利上げに向けた話がありますがこれは今回と比較する意味がないので引用だけ。
○声明文第5パラグラフ:保有証券の償還再投資は当面継続
『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal
payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities
in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury
securities at auction, and it anticipates doing so until normalization
of the level of the federal funds rate is well under way. This policy,
by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable
levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(今回)
『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal
payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities
in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury
securities at auction. This policy, by keeping the Committee's holdings
of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative
financial conditions.』(前回)
今回は保有証券の償還再投資を継続する期間について「it anticipates doing
so until normalization of the level of the federal funds rate is well under
way」と正常化レベルが相応の所まで進展するまで継続と当面継続しますよ(ただしどこまでやるのかは明確化されていない)という説明文言が入っていますが、もとよりしばらく続けるという話をしているのでそんなに新しい情報ではないです。問題はこの大きなバランスシートを抱えたままで正常化プロセスをゆっくりやるとまたまたビハインド・ザ・カーブになるかどうかという点(バランスシートのストック効果が正常化プロセス時にどう出るのかは良く考えたら誰も試していないので予想がつかない)ですね。
○声明文第6パラグラフ:全員一致で利上げ賛成とな
エバンス総裁が反対するかと思いましたが。
『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair;
William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley
Fischer; Jeffrey M. Lacker; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel
K. Tarullo; and John C. Williams.』(今回)
『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair;
William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley
Fischer; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John
C. Williams. Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who preferred
to raise the target range for the federal funds rate by 25 basis points
at this meeting.』(前回)
で、この声明文と次のSEPを前回と比較してみた第一印象は市場が思いっきり期待するほどのハトではなくて、期待対比で言えばタカっぽいですけれども、SEPのドットチャートそのものは前回よりも弱くなっていて、概ね年1%の利上げペースというのに整合的な内容になっています。
となりますとこの程度の内容は常識的に予想できるものなのでそんなに失望もしないでしょ、と思ったら株が瞬間下がった後盛大に上がっているようなのでふーんと思うのでした。
○SEPは経済物価見通しはあまり変わらん、ドットチャートは低下するが概ね年1%の利上げペースというストーリー
こちらが今回
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20151216.pdf
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20151216.htm
こちらが前回9月
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20150917.pdf
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20150917.htm
・経済物価見通しは概ね同じ
テキストにペタペタ貼り付けるのがめんどいのでメディアンだけ貼るという手抜きですいません。
2015 2016 2017 2018 ロンガーラン
Change in real GDP 2.1 2.4 2.2 2.0 2.0
September projection 2.1 2.3 2.2 2.0 2.0
Unemployment rate 5.0 4.7 4.7 4.7 4.9
September projection 5.0 4.8 4.8 4.8 4.9
PCE inflation 0.4 1.6 1.9 2.0 2.0
September projection 0.4 1.7 1.9 2.0 2.0
ということで別に下がってはいないのですが上がってもいないとな。
・ドットチャート
これは貼る訳にも行かないので見てちょ(実際はHTMLの方を加工すると表は作れると思うのですが、何せテキストサイトなもんで表とかそういう気の利いたモノは貼らないというか面倒なのでパス)という所ですが・・・・・・・・・・・・・
2015年:2名が0-0.25になっていたので、投票した人以外で2名が利上げ反対だったという事ですな。
2016年:途中25bp利上げと見た場合に
2回:4名
3回:3名
4回:7名
5回:2名
7回:1名
となっています。反対の2名はどうせ2回(0.75-1.00)の所に入っていると考えると、基本は4回でもしかしたら3回みたいなのがFOMC参加者の見解を平均した結果になるかと。
2017年:1.75-2.00%〜3.75-4.00%までという分布(1%を入れているコチャラコタ先生は外れ値にも程があるのでオミット)から1.75-2.00%〜3.50%までと分布がやや詰まって、3%台の札が減った(7票→4票)形になっており、2017年の部分では概ね2%台前半から半ば辺りがコンセンサスになっているので、ここの数値はやや下がった感。まあ年1%の引き上げペースが2年続くというイメージに近くなっています。
2018年:前回は3.75-4.00の所が下限でしたが、2名下の数字を入れているのがいまして、ロンガーランの数値よりもやや低い感じになっているので、これまた正常化プロセスの見通しペースがやや遅くなりましたよ、という話。
ロンガーラン:
3.00%:1名→2名
3.25%:6名→6名
3.50%:5名→6名
3.75%:4名→2名
4.00%:1名→1名
ということですので、まあ気持ち下がっているけれども中心的な所は3.50%で特に下がらんという結果でして、そうそうこの数値って下がらないですよねと思いますので、市場の期待との比較ではちょっとがっかりなのかも知れませんがこれも順当なのでしょう。
とまあそういう訳で、こちらのドットチャートは前回比でみればハト成分高まるという感じですけれども、市場がどこまで期待しているのかは少々謎なので(トークで年50bpとは言ってるけどFEDは年100bpって言うでしょ、と思っていたのではないでしょうか)そこは良く分からん。
なお、会見の冒頭ステートメントは残念ながら時間足りないのでパス。URLだけ置いておきます(汗)。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/fomcpresconf20151216.pdf
#どうでも良いかもしれませんが、公共放送ではFEDの利上げニュースの関連で何故か「新興国の通貨安が進んでインフレが進むわ出稼ぎ労働者の実質的な実入りが減るわもうエライコッチャですよ(マレーシアの例が出てた)」という話をしているのですが、このインプリケーションは円安に振るなということですか?????????(と思ったら円安はプラスという話をしていたので謎)
2015/12/16
お題「短観企業物価とCPオペ結果を見ながら金融政策雑談」
新三本の矢が出た時には成長力強化とか生産性向上とかにかなり期待をしていたのですけれども、ここに来て出てくる話が超目先の話ェ・・・・・・・
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151214/k10010340971000.html
自公 軽減税率の対象品目に「新聞」加える方針
12月14日 19時36分
○短観企業物価見通しが心温まる結果となっている件と金融政策雑談
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/bukka/2014/tkc1512.pdf
『1.販売価格の見通し(現在の水準と比較した変化率)』
全産業合計
1年後:0.7→0.5
3年後:1.4→1.3
5年後:1.8→1.6
大企業製造業
1年後:0.0→▲0.2
3年後:▲0.2→▲0.3
5年後:▲0.3→▲0.3
大企業非製造業
1年後:0.6→0.4
3年後:1.5→1.2
5年後:1.7→1.5
中小企業製造業
1年後:0.8→0.5
3年後:1.5→1.4
5年後:1.6→1.4
中小企業非製造業
1年後:0.9→0.8
3年後:2.1→1.9
5年後:2.6→2.5
『2.物価全般の見通し(前年比)』
全産業合計
1年後:1.2→1.0
3年後:1.4→1.3
5年後:1.5→1.4
大企業製造業
1年後:0.9→0.8
3年後:1.0→1.0
5年後:1.0→1.0
大企業非製造業
1年後:1.0→0.8
3年後:1.1→1.0
5年後:1.2→1.0
中小企業製造業
1年後:1.3→1.1
3年後:1.5→1.4
5年後:1.6→1.5
中小企業非製造業
1年後:1.3→1.2
3年後:1.6→1.5
5年後:1.7→1.6
ということでまる引用してみましたが、1年後の物価見通しがとうとう1.0%ギリギリまで下がってしまいましたし、昨日ネタにした短観の価格判断DIも含めますとこれはどう見ても企業のインフレ期待が鈍化していますというふうになると思うのですが、前後の差が0.2以内で基本的に収まっているので、日銀文学的に言えば「企業の物価見通しは概ね横ばい圏内で推移し、物価上昇期待は維持されている」ということになると思います。
とは申しましても、どこからどうみてもこの短観の内容は「企業のインフレ期待が下がってきていて、それが既に価格設定行動に表れている」というお話であって、そうなりますと本当は追加緩和を検討しないといけない筈、という話になってしかるべき(これだけじゃなくてBEIとかだって強くは無いですし)なのですよね。
・・・・・・となりますと追加緩和ヒャッハーという話になってもよさそうなのですが全然その話が盛り上がらない、というのは前回の展望レポートでの盛大なゼロ回答によって追加緩和やるにしても相当の変化がないとやらないというメッセージが伝わったというのと、徐々にオペの限界の話も出てきて、追加緩和をそうホイホイ打てるものではないという認識になったこと、ついでに言えば物価目標達成時期をドンドン先送りすることについては「基調ガー」で済ますという大技を開発したので知らんがなとなったのもあるでしょう。
更に追加緩和について考えますと、そもそも昨年の追加緩和が「インフレ期待が低下することを未然に抑止する」というのが(表面上の)目的だった訳ですが、それによって実施した追加緩和が1年経過したものの、また同じようにインフレ期待が低下してきました、ということになりますと問題になるのは、「追加緩和をしたのに1年で元に戻るんだったら、同じ追加緩和を実施しても結局ダメなんじゃないの」というツッコミが飛んでくる事でして、実はこの「インフレ期待が低下しそうだから追加緩和」という場合に「ではその追加緩和によって何がどうインフレ期待に効いてくるのか」というのが説明できなくなっているのが苦しいとしか申し上げようがない。
これが前回の追加緩和の時は「インフレ期待は上がりまぁす(キリッ)」と言い張ることは可能でしたけれども、何せ今回はそれをやった挙句に「やっぱりインフレ期待が下がってきたから去年と同じ追加緩和をやるねテペヘロ」と言われても「お前は何を言ってるんだ」という反応しか来ない訳ですし、波及ルートとしての話だってマネタリーベース直線一気置物理論はとっくの昔に棄却されていますし、実質金利の低下で効果ガーと言っても名目金利は散々下がっており、一方で今までの日銀の説明だと「予想物価上昇率は全体として上昇基調」ということになっていた訳ですから、既に実質金利は大きく低下した状態にある訳で、そういう大きく低下した実質金利の状況を継続しているのに物価に働きかけてくれない、という話でもあるので、同じ形で追加緩和をするにしても(そらまあ実施はできますが)政策ロジックもへったくれもあったもんじゃないという状態になって、ロジカル面では崩壊あんど崩壊という感じになりますな。
そう考えますと本当に追加緩和をしたかったら「別の方式」を考えないといけないのですが、そもそもリスク資産はどちらかと言えば買い過ぎの部類ですけどまだ買うのかねと思いますし、必殺兵器外債購入はどう考えても各方面からの砲撃。貸出支援オペの拡充とか言っても既に国債の金利が4年までマイナスとかになっている中だと4年0.1%固定金利というのがただの高利貸しモード(4年のファンディング確定という負債サイドの期間ミスマッチ解消的な意味はあるからニーズは残る筈ですけど)ですし、地方債をオペに加える的な話って結局今の政策と変わらないので・・・・・・・・と考えると別の方式というのも非常に難しい。
てなことに加え、オペの限界に関してはさすがに意識されるようになってきましたので、出来るだけ今の政策を波風立てず持たせようということになれば、自分の首を絞めるだけの追加緩和(今の枠組みのままの場合)はよーしませんねというのが最近のコンセンサスだと思いますので、だいたい何とかストの皆様の予想って来年度は様子見地蔵で原油次第だけど物価目標が先送りするのは次回もしらっと実施するんじゃネーノというのが予想の中では一番多いような気がします。
一方でオペが爆発というか金利市場が爆発というか、まあ爆発の原因は日銀のオペなんですけど、どこでマーケットなりオペなりが爆発するのかという話についてはこれがまた良く分からん所がありまして、だいたいマーケットメーカーサイドの方はあと1年とか持つでしょという話になっているようですし、一方で投資家(特に補完当座預金制度の外側にいる人たち)サイドでは1年どころか半年持つのかというようなイメージの方が強いと思われますが、まあこればかりは実際に状況が進んでいかないと分かりません。
ただ、市場そのものが思いっきり死んでしまっていて、輪番がスムーズに行っているって言ってもそれは単に新発をブローカーが落札してその分を輪番に打ち込んでいるだけで、その間投資家が何をするかというと特に動きも無く、やるとしたら精々輪番で持っている物を打ち込むけれども、打ち込むとポートのポジションが足りなくなるので新発でも買いに行きますか、と結局同じことをしているだけという有様。
来年に関して言えばこの後でもちょっと雑談しますけれども、短期ゾーンの市場が盛大に壊れ気味になっているというのがもう一つの問題(正直輪番の前に短期のオペが大爆発するのではないかと)になっていまして、今や4年ゾーンまでイールドマイナスとかになっていてイールドカーブもへったくれも無い状態になる中で、中短期の輪番大丈夫なのかというのと、短期ゾーンが大爆発(短国買入の買入レートがマイナス1%になったりするようなエクストリーム展開)してもおかしくないような市場の壊れ方によって中短期のゾーンにもその市場崩壊が伝染しているように見えますので、これ短国の金利がどこかでプラスに戻れば一旦修復に向かう望みはあるのですが、年内マイナスでの推移が続きますと、1月からの3Mは期末越えとなるのですが、今回の年末大騒動の教訓からすれば1月の頭から3月末越えのニーズが全力大殺到してくるのは火を見るより明らかで、その調子で1−3が推移すると遂にマイナスじゃない金利で購入した短国というのが世の中のポジションから消え失せてしまう(瞬間ゼロ近傍まで売られた局面が10月にはちょっとだけあったので)ので、本当の本当に(モノとして買ったマイナス金利以外の)ポートフォリオがスッカラカン、という市場が見られることになりますが、さてその時に市場はどうなっているのかとか想像するのもオソロシイという感じですな、ちーん。
#何かとめどなく雑談になって読みにくくてスイマセン。
○CPオペェ・・・・・・・・・・・・・・・・
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of151215.htm
CP等買入 5,500 2015年12月18日
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba151215.htm
CP等買入 10,888 5,480 0.047 0.056 91.0
前回が0.6bp平均/0.5bp足切でして、今回はもっとレートが下がるかと思いましたがまあこんなもの。
・・・・・・・とは言いましても、足元のCP市場は年末越えの銘柄(特に高格付け銘柄)と年内償還物の銘柄の間に素敵な逆イールド状態(年末年始はGCレポや現先が強烈にタイトになってマイナス金利の彼方にワープするから代替物が必要な上にそもそも短国がドンドン償還になるので買うモノが減っている)となっていますので、良く良く考えたら年内物を盛大に打ち込まれたに違いないという感じです。
となりますと、このCPオペ、最後の帳尻に30日スタートのオペが28日にオファーされる予定なのですが、多分このオペ結果受けてCP買入拡大すると思うのですけれども、問題は今の市場状況で年末スタートのCP買入をやったら凄まじい結果が起きるのではないかと懸念される点でして、つまりはとんでもないマイナス金利の買入まで流れるのか、あるいは華麗に札割れとなるかというような辺りを懸念している次第であります。
そもそもこのCPオペの金利も桁間違いしてないかというような金利水準になっているのですけれども、背景には昨今のCP金利推移というのがあるのですが、例によって例の如くベンダーニュースであまり相手にしてくれないので金融ファクシミリ新聞さん辺りで時々詳報がでるのでそちらのニュースを見て目を丸くしていただければと存じますが、まあ短国のドマイナス金利をまるまる1か月半継続してしまい、そもそも市場の方では当初12月になれば買入減るから需給が緩和とか思っていたら海外要因も登場するし日銀の買いのペースも割と早いしという事でマイナスを盛大に突っ込んで壊れてしまった短国市場の問題が徐々に他の市場やほかのゾーンに波及して崩壊の連鎖が始まってきているというイメージをあたしゃもっている(なおこれはアタクシの感想であり、参加している人の立ち位置によって見え方は違うと思うので念のため)のですよね。
さっきの追加緩和ネタとの絡みで言いますと、短期のゾーンが延々と正常化せず、リスクフリーの投資対象がプラス金利で存在しなくなるというのはそれは当然ながら別の価格形成に歪みをもたらす結果になる訳で、そういうのっていわゆる金融不均衡の拡大というお題になるんじゃネーノとか思うのですけれども、日銀はどういう考察をしているんだろうとお問い合わせしたいくらいであります。しかも日銀の場合は補完当座預金制度という名前の超過準備付利をしている訳で、市場の短期国債をマイナス金利に追いやるような買入をしている一方で当座預金先に対しては10bpの預金ファシリティーを提供している訳で、そら市場金利が10bp水準とかにあるなら別ですが、ここまで金利が大きく下がってしまいますと、当預先と非当預先の市場アクセスに対して著しい機会不均衡が発生していることになり、こういうのも更に金融不均衡を拡大しませんですかねえとか申し上げたくなる所です。(ちなみにECBのマイナス金利は預金ファシリティにペナルティレートを適用するものなので機会不均衡とかではなくて皆さん揃ってマイナス金利ですからね)
などなど、何か全然取り留めのない雑談になってすいませんが、短期の所のドマイナス継続から市場のあちこちが綻んできているように見えまして、この政策このままで良いのかと思ったままに書いたもんでどうもまとまっていなくてすいません。
#なお今晩は早寝して明日はFOMCだぜヒャッハーなのでいつもの調子で参ります(つもりです)
2015/12/15
お題「短観はまずます(ただし価格関連以外)/市場雑談&MPM雑談」
諸般の事情でメモ雑談シリーズが続く(大汗)
○短観はそんなに悪くは無いと思うのだが
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1512.pdf
毎度の私家版チェックなんですが、ちょうど直近で景気ウォッチャーがあまり良くなかった為にこちらでも先行き業況判断DIが弱めに出ている、というのをネタにしているような気がしますが、前回との達成状況と比較してみればそんなに悪くないと思うのだが(良いとは言わないけど)。
あと、価格判断とか雇用判断の所を並べてみると、物価安定目標2%達成という文脈で考えると日銀にとっては涙目の内容に見えるのですが、日本経済という点で見たらそんなに悪い話ではなくて、デフレにならない程度に物価が安定する中で企業マージンは改善しているというような図になっている(ように見えます)ので別にこれはこれで良いんじゃないのと思うのですけど、いつになったら黒田総裁は「2年で2%」を引っ込めるんでしょうかねえ。
・前回の先行き予測DIの達成状況
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 +12→+10 +12→+7
製造業中堅企業 +5→+4 +5→+0
製造業中小企業 +0→▲2 +0→▲4
非製造業大企業 +25→+19 +25→+18
非製造業中堅企業 +17→+13 +19→+12
非製造業中小企業 +3→+1 +5→+0
前回は製造業大企業以外で「6月時点での先行き見通しよりも業況感が上振れている」という結果で、今回はそれを上回って「全ての規模で9月時点での先行き見通しよりも業況感が上ぶれている」という結果なのでまあ強めに出ているんじゃないですかねえと。
でまあ先行きが下を向くのは大体プラス圏に居る時の仕様なのでそれ自体はそれほど大きく問題にする話ではないと思うのですが、問題としては9月(7月以降の海外市場の混乱が有った後の短観)短観の時よりも先行き予測の数値が弱めになっているという所で、「思ったよりも業況悪くなかった」のに「先行きの業況はやっぱりちょっと下」というのが続いているというのが何ともでして、「足元の数値的には悪くないけれども、マインドの好転がイマイチ」という程度の話ではないかと。
・雇用判断DI(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 ▲4→▲4 ▲5→▲4
製造業中堅企業 ▲10→▲10 ▲11→▲9
製造業中小企業 ▲8→▲11 ▲10→▲13
非製造業大企業 ▲16→▲18 ▲20→▲20
非製造業中堅企業 ▲23→▲26 ▲26→▲28
非製造業中小企業 ▲25→▲29 ▲28→▲29
非製造業中心に雇用情勢は一段とタイト化しているという答えになりましてどう見ても良い指標です本当にありがとうございました。問題はこの雇用逼迫感が2%物価上昇に整合的な賃金上昇するほどの勢いにいつまでたってもならないことですけどね。
・価格判断DI
販売価格判断(「上昇」-「下落」)
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 ▲7→▲8 ▲11→▲11
製造業中小企業 ▲6→▲9 ▲9→▲11
非製造業大企業 +4→+3 +4→+2
非製造業中小企業 ▲5→▲2 ▲5→▲3
仕入価格判断(「上昇」-「下落」)
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 +4→+6 ▲2→+3
製造業中小企業 +22→+24 +14→+19
非製造業大企業 +13→+12 +10→+11
非製造業中小企業 +18→+25 +16→+21
こちらって前回に引き続きなのですが、販売価格判断が下がって日銀涙目の展開なのですが、仕入れ価格判断の方がもっと下がっているので、企業マージンは改善という結果になっておりまして、9月短観に引き続き日本経済に対してという意味ではイイハナシダナーな話になっているのですよね。
でまあ雇用判断の方がタイトになっているのに賃金上がらん(上りが足りない)ってのも結局このあたりの価格判断が徐々に弱めになっているというのもある訳で、雇用がタイトで賃金も若干上がる中で物価の方も若干程度の上昇、という現在の状況の方が2%物価上昇に急いで進めていくよりも経済の体力つくんじゃないですかねえと思ってしまうのですが、日銀はいつまで「2年を念頭に2%物価到達」を目指すんですかねえ、
・需給判断DI
同じところに需給判断DIがあって、ここの製造業を見るとですね。
国内需給判断(「需要超過」-「供給超過」なのでプラスの方が強い)
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 ▲10→▲11 ▲10→▲11
製造業中小企業 ▲23→▲24 ▲24→▲26
海外需給判断(「需要超過」-「供給超過」なのでプラスの方が強い)
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
製造業大企業 ▲8→▲6 ▲9→▲8
製造業中小企業 ▲14→▲16 ▲17→▲16
ここの出来上がりの数字って毎度弱いので水準そのものをあまり気にしない方が良いのかもしれませんが、需給判断自体は別に前回対比で好転している訳でもなく、と言ってそんなに派手に悪化しているものでもないので、別に特徴は無いのではと。
・毎度お馴染み金融商品取引業の業況判断DI
毎度お馴染み金融商品取引業業況判断DIですが。
(9月時点) (12月時点)
現状→12月予測 現状→3月予測
金融商品取引業 +36→+32 +20→+26
最近ここの業況判断があまり豪快にぶれなくなったので面白くないのですが、今回気になる点としましては「前回よりも業況判断DIが悪化しているのに先行き判断が上向きになっている」という事でして、これはもう一段業況が悪化するフラグなのではないかという気が・・・・・・・・・
○市場世間話
・海外であばばばばー
というのは今に始まった話ではないのですが、厭債害債さんのエントリーがあったので人のフンドシで
相撲を取るの巻。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201512/article_5.html
Third Avenue Managementのファンド清算
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NZ5XQH6K50Y101.html
サード・アベニューがクレジットファンド清算へ−顧客の換金を停止
2015/12/11 08:30 JST
これ自体はうっかり伝染すると色々とややこしい話にはなる可能性を持つネタではあるのですが、こういうのがあったからFEDが利上げを見送るのか、という話になりますとそれはまた別ではないかなと思うのですよ。
つまりですね、これが一足飛びに金融不安とかになるのだと確かに利上げ所の話ではないのですが、今回の場合は(厭債害債さんもご指摘のように)投信の形になっていて内容そのものは分かるようなものになっていまして、問題なのは利回り追求によって流動性と満期転換をやり過ぎた点で、元の商品のプライシングがおかしいという話ではないと思われるお話ですから、そういう文脈から考えるとFRBの中でもBISビューというか金融不均衡の問題を気にする人から見ると「低金利の過剰な長期化期待による過度な利回り追求の動きが是正される中の事象」という風に見るんじゃないかと思うのですがどうでしょうかねえ。
ただまあこれが既に盛大に積みあがっていてしかもその金を出している人がリスク耐性弱くて売りが売りを呼んで全体的にシステムがあばばばばーとなる、ということになるとダメじゃんと申しますか、それ以前の問題として既にクレジットバブルをやり過ぎましたねということになりますので、確かに判断は難しい所なのですが、基本的には超緩和政策を若干修正して正常化モードになっていく中ではこの手の過剰な満期変換と過小な流動性というセットものはやり過ぎると正に金融不均衡になるのだから適当にガス抜きが掛かる方が当局的にはウマーではないかと。
つーかIOSCOとかFSBとかの問題意識ってこの手の流動性に問題が生じるとか、過剰な満期転換を行うとか、その手の事に対してガシガシと規制を掛けようという方向性で色々とああだこうだとやっている事もありますので、たぶん変な伝染しださない限りは当局的には放置じゃないですかねと思うのでした。よー知らんけど。
・CPェ・・・・・・・・・・・・・
と申しましてもCPレートの話とか金融ファクシミリ新聞さんくらいしかネタにしていませんのであまりこちらでどうのこうの申し上げるのも何ですけれども。
月曜の金ファクさんでも指摘されていたのですが、短国市場がご案内の状態となって11月に入って延々とマイナス金利(しかも途中で凶悪なマイナス金利化)しているせいで、短期市場での余資の置き場が無くなってきてCPレートに波及するの巻となっているようですな。まあ金利水準に関してはファクシミリ新聞さんにでも取材して頂きたいのですが、年末は特に(毎度の話ですが)GCレポとか短国現先とか盛大なマイナス金利になってしまいます(東京レポレートの1か月とか年末跨ぎの金利を見れはお察し)し、無担保コール取引もレートが盛大に低下する(最近の半期末は良く低下する)という資金運用難民がプラス金利のターム物運用のCP市場に行列の巻という図になっているようで。
まあ何ですな、短国の金利がプラスに戻ってくると国債とのスプレッドガーという話になって来るのですけれども、そもそも論としてマイナス金利を運用で買うというのもナンジャソラという話ではございますので(これがシステム的に必要な担保ニーズだのショートカバーだのそもそも調達がマイナス金利だのというのなら分かる)、ベースレートとのスプレッドと言われましてもそもそものベースレートが比較不能物件になってしまっているのでどうしようも無いですな。
まあ「金利が下がるのは金融緩和効果(キリッ)」という話なので日銀的には知らんがなという事なのかもしれませんけど。
#なお何で同じ話を今日もしているのかは市場推移とだけ申しておきます
・貸出増加支援オペは純増ベースでは1兆円弱とな
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel151214a.pdf
新規貸付の概要
貸付期間 4 年
貸付予定額 19,976 億円
貸付先数 30 先
ということで新規は2兆円ほど出ているのですが・・・・・・・・・・・・
(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み
大手行 166,385 億円 7 先
地域金融機関等 78,723 億円 119 先
合計 245,108 億円 126 先
となっていまして、9月の数値はと言いますと・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150915a.pdf
(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み
大手行 163,101 億円 7 先
地域金融機関等 73,017 億円 117 先
合計 236,118 億円 124 先
となっておりまして、残高の増加という意味では前回対比で見ますと23.6兆円→24.5兆円になっておりますので、純増ベースでは1兆円弱の増加となっていて、まあ0.1%というのが国債金利から見たらウルトラ高金利になってしまっていますが、そうは言っても4年の固定なので一応は出るには出るということで良かったですねと。
○決定会合プレビュー雑談というか
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NZCBHM6K50Y201.html
日銀:「貸出支援」と「成長強化」資金供給の再延長を検討−関係者
2015/12/14 18:19 JST
またブルームバーグお得意の「関係者」かよと言いつつ釣られて見るの巻。
『(ブルームバーグ):日本銀行は3月に期限が到来する「貸出増加を支援するための資金供給」などの期限を1年間延長することを検討する。年明け以降の金融政策決定会合で決定する。複数の関係者への取材で明らかになった。』(上記URLより)
この措置って少なくともQQEが続く限り自動延長されるものだと思っていましたので、これが出たからどうという話ではないのですけれども、まーこの程度しかネタが無い、というのが今回の決定会合のトピックなのではないでしょうか。
短観も先ほど私家版で申し上げましたように価格の方が怪しいのはスルーして雇用の方がタイトになっている点でウヒョーという感じでしょうし、ネタにはしませんでしたが設備投資計画の方も推移としては堅調に動いていて日銀が頼みにしている設備投資が遂に出る出る詐欺ではなくて出てくれればそらもう日銀大歓喜ですよという展開(本当かよという疑問はあるけど)。
とまあそうなっていて、しかも1月にまた展望レポートを出す、ということになりますと今月はどこからどう見ても様子見地蔵となるのは明らかですな。
でもってこの調子で政策継続という風に考えるのが普通なのですけれども、問題は毎度申し上げておりますように、QQEでの国債買入が短期決戦を前提にしていてどこまで持つのかが誰にも分からないことですな。恐らく国債買入が持つような枠組みであれば達成期限を有耶無耶のうちにローリングターゲットにして事実上の長期化をしてしまえば話は簡単なのですが、とにかく国債買入がこの先2年も3年も持つとは到底思えないので、いまの枠組みが中長期的な金融緩和との相性が悪い事。
つまりオペが飛んだら(凄まじいマイナス金利になったり札割れ連発になったり)その時点でさあどうするということになりますし、その時に市場がどう反応するのか(債券は瞬間買われるのでしょうけれども、その後政策の持続性という問題が生じますからマズーでしょと思いますし、他市場も政策の継続が困難となるとどう反応するのか中々読みにくい)とかゆー話を考えると、日銀がアホじゃなかったらその前に何か手を打たないと黒田緩和と共に日銀そのものが親指を立てながら溶鉱炉に沈んでいってしまって、黒田さんはそらもうサーセンと言ってればよいかもしれませんけれども金融政策を実施する機関として日銀って何なんですか的な話になったらどうするんでしょとか思うのですよね。
とはいえ、まあオペが爆発するまでにどうにか、という話になると政府との協定文書の位置づけをどうするのかとかそっちの話になるので、結局最後は政府の考え次第ということになるので、デフレ脱却だのその手の話が進んでくる辺りについては要注意という積りでいるんですがさてどうなることやら。
2015/12/14
お題「短期雑談/日銀からAPPが金利に与える影響の話だがMBの話は無い/ダラス連銀カプラン総裁は金融不均衡を懸念とな」
厭債害債さん最新エントリーである(^^)。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201512/article_4.html
浜田教授+マートン教授(都内某所での講演会より)
作成日時:2015/12/11 08:36
○市場雑談ネタ
・短国買入は順当あんど順当
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of151211.htm
国庫短期証券買入 5,000 2015年12月15日
国債買入(残存期間1年以下) 700 2015年12月15日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,500 2015年12月15日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,500 2015年12月15日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2015年12月15日 2016年3月25日
札はありそうかなとも思ったのですが前週と同じ5000億円のオファーで来まして、6M/12Mの入札直後に買入増額するでござるの巻というパターンではないという流れでほほうという感じ。
恐らく貸出増加支援の方は着地が見えていると思いますので、残りオペ系でそれなりにぶれる可能性があるのが固定金利オペの15日エンドと18日エンドの8210億円に9160億円となっています(21と23にもエンドがあるけれども1300億円と230億円なので影響は小さい)ので、ある程度固定金利の着地をにらみながら数字を合わせにきているという感じなのでしょう。その数字合わせるという意味は分かるのですが、それが実体経済にどういう差が出るんですかというような話はさておきまして。
落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba151211.htm
国庫短期証券買入 15,920 5,000 0.041 0.041
国債買入(残存期間1年以下) 1,966 700 0.030 0.048 52.7
国債買入(残存期間1年超3年以下) 8,622 3,503 0.011 0.014 66.4
国債買入(残存期間3年超5年以下) 11,079 3,503 0.012 0.012 72.7
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(12月15日スタート分) 8,150 8,150
短国買入は応札15920億円なので前週の18429億円よりも少なくて、4糸甘とかなので、新発3Mを入れてもただの投げになりますのでおそらく新発3Mは入っていなくて、(そもそも平均よりも引けが甘いので今回の買入で利食いで入る可能性はほぼゼロ)新発3Mを入れるだけ無駄なので入れないという可能性はあるのですが、まあそもそも3Mは端から入るものという認識は無かったと思われますので、このオペのオファーがあって結果が出ても特段短国に外しの動きが出るわけでも無しという流れではありました。
でもって今週は1Yがあって3Mがあるのですが、あとMB目標着地の所でのブレ要因として残っているのが18日エンドの固定金利(上記の結果にありますが15日エンドの共通担保については8210億円の落ちに対して8150億円のロールなので殆ど落ちず)でして、18日エンドのオペに関しては16日に結果が分かっているので、次回の短国買入の時点では着地に向けた調整という感じになるんでしょうかね、24日に3Mあるから25日に買入入れてくるかもしれませんけれども、まあいきなりとんでもない事にはならないでしょうね、とは思います。
ここで一部の好事家のみの注目材料が「さて3Mはゼロ金利水準まで戻るのでしょうか」というお話でありまして、なにせ11月は見事にマイナス金利で推移しまくっておりまして、12月もここまでマイナス。やっと木曜の入札後にマイナス1.6bpに金利上がったのですけれども、金曜の短国買入がイマイチ応札が少なかった(6Mの入札分だけ札が多いはずなのに前週比少なかった)ことも影響したのかどうかは知りませんが、引けはマイナス1.7bpに進めやがっていますので、まー今週の3Mがどうなるのかは一部好事家のみにとっては超注目材料ではあります。何せ今週の入札が終わってしまいますと四半期末越えは24日の3M入札以外にまとまった玉が出てくるタイミングが無いと来ておりますし、今週の3M発行日は21日なので利付国債大量償還とぶつかると来ていますので、償還再投資ニーズ分がどの程度末算調整に回ってくるかで違ってくるんでしょうな、と好事家のみの話題を展開するアタクシ。
まー買入のペースがこれなので何ぼ何でも年内どこかでゼロ近辺まで浮上するとか、あとは年初になってから末算調整分の外しが出てきてゼロ近辺に浮上するような変化は想定しても別におかしくは無いのですけれども、とにかく短国マイナスが続くと中短期の債券の需給もひたすらタイトになりやすいので、このマイナス金利は政策を持たせることを考えるとなんとか是正の方向に持って行った方がお得だと思うのですけど、政策効果です(キリッ)なので致し方なし。
ちなみにロイターさんによりますと、
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N14024820151211
2015年 12月 11日 15:14 JST 〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、長期金利0.310%に上昇
『<15:10> 国債先物は続落、長期金利0.310%に上昇
(前半割愛)短期市場では、無担保コール翌日物は0.075─0.076%を中心に取引された。主な取り手は、地銀、信託、証券などで、大手行は0.075%で一部調達した。週末を迎えたが、落ち着いた取引となった。レポ(現金担保付債券貸借取引)GCT+1レートは0.047%に低下。国庫短期証券買い入れ結果は、利回り格差の水準から判断して、6カ月物を中心に処分されたとみられている。共通担保資金供給オペは札割れ。ユーロ円3カ月金利先物は小動き。』(上記URL先より)
とありまして、GCレートはちゃかり低下しているので3Mカレントがオペに空振りするのは最初から織り込んだ上でオペ分だけ需給が改善したという認識になっているとみられまして、そらそうよとは思いますが、遠すぎるゼロ水準の短国という風情ではあります。
あとですね、月末に向けてのオペネタとしてはCP買入がありまして、CP買入に関しては最後に末算調整の買入が30日渡しという無慈悲な日程になっていて(と言っても30日渡しでやらないと月末エンドのCPを盛大に打ち込まれて肝心の末残が作れないので致し方ない)、恐らく今月もう一回ある方の買入でも30日エンドを盛大に打ち込まれる結果として30日のCP買入オファーが増額の刑とかになるんでしょうなあという所までは読めます。
でもってCPに関しては詳しくは金融ファクシミリ新聞さんあたりで見てちょという所ではありますが、短国金利がどマイナス状態なのが続いている影響で金利が低下傾向となっていますので、月末の所で日銀買入に打ち込む所では大変に素敵な金利での落札結果が出るのではないかという気がする訳で、仮にそうなった場合には金利が下がって企業の資金調達環境を緩和するので政策効果です(キリッ)という理屈になるんでしょうけれども、どうなのかねえというようなことになるでしょうな。
○「市場への効果」の説明は分かったのだが・・・・・・・・・・・・・・・
こんなん出ました。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab15j07.htm/
量的・質的金融緩和と長期金利:国債の「純供給」残高と満期構成を通じた効果
福永一郎*、加藤直也(日本銀行)
『要旨』から。
『各国で中央銀行による大規模な国債買入れが行われている中、国債市場の需給構造と長期金利の関係について、理論・実証の両面で研究が進められている。本稿では、日本国債の保有者や満期構成の変化が金利の期間構造やリスク・プレミアムに与える影響について分析した、Fukunaga,
Kato, and Koeda (2015)[PDF 3,676KB]の概要を紹介する。分析からは、政府による発行(国債の供給)残高から特定年限の国債を選好・需要する投資家(日本銀行を含む)の保有残高を除いた国債の「純供給」残高が、長期金利に対して統計的に有意な影響を与えていたことが、回帰分析と期間構造モデルの2つのアプローチによって示された。』
これこの前ペーパーが出ていたのですが何せ英語なもんで(汗)。
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/english/me33-4.pdf
Maturity Structure and Supply Factors in Japanese Government Bond Markets
『また、日本銀行による量的・質的金融緩和の一環としての長期国債の買入れが長期金利に相応の影響を与えてきたことも、上記の2つのアプローチによって定量的に示された。』
ということなのですが・・・・・・・・・・・・・
『はじめに』の前提時点で置物MB直線一気理論が全くないというのがお洒落。
『国債市場において日々の短期的な需給変動が金利に影響を与えることは、実務的にもよく知られているが、ある程度長い期間にわたって需給要因が金利に影響を及ぼすかどうかは、必ずしも明らかではない。』
うむ。
『例えば標準的な理論の一つである「(純粋)期待仮説」によると、長期金利の水準や金利の期間構造は、将来の短期金利の予想経路(その背景にある将来の景気や物価に対する予想経路)によって決まる。その場合、特定年限の国債の需給関係に何らかの変動(ショック)が生じても、市場参加者の裁定取引を通じて、長期金利は将来の短期金利の予想経路と整合的な水準にやがて収束する(図1左)。こうした考え方に基づくと、中央銀行による国債の買入れは、将来の短期金利(ゼロ金利政策の継続期間など)に関する市場参加者へのシグナルとしての効果(シグナリング経路)を持つにとどまり、それを超えた長期金利への直接的な効果は持たないことになる。』
ふむふむ。
『しかし、市場参加者の中に、何らかの理由で特定年限の国債の保有を選好する投資家(preferred-habitat
investors、以下「選好投資家」)が一定程度存在する場合(それに伴う金利のリスク・プレミアムの変動を考慮する場合)には、先ほど述べた期待仮説に基づく議論は成り立たなくなる。大規模な国債買入れや買入年限の長期化を行う中央銀行がこうした選好投資家の一種とみなされる状況では、上記の政策は、(1)特定年限の国債の需給を逼迫化させてその年限の金利のリスク・プレミアムを押し下げること(希少性経路)に加え、(2)市場参加者が長めの年限の国債を保有する際の金利変動リスクを吸収して幅広い年限の金利のリスク・プレミアムを押し下げること(デュレーション経路)も通じて、長期金利に直接かつ持続的に働きかけることが理論上も可能となる(図1右)。』
『こうした選好投資家の存在は、保険会社や年金基金(債務の年限に合わせて長めの資産を保有する傾向が強い)をはじめ、多くの国で以前から知られていた。近年、その存在を明示的に考慮した金利期間構造理論の研究が進み、それを踏まえて中央銀行の国債買入れの長期金利への効果を推計する試みも、米国を中心に多数行われている1。以下で概要を紹介するFukunaga,
Kato, and Koeda (2015)は、こうした問題意識を日本に適用した実証分析である。』
ということでご紹介(ちなみに本チャンはさっきの上の部分にあったペーパーを見た方が良いのだが)となっているのですが、これLSAPというかAPPの効果の話であって、MBを増やしたからどうなるという話には全くなっていない(そらまあ期間構造の話をしているからそうなるともいえるけど)というのが大変にお洒落です。
でまあ日本のケースの部分を引用していると全文引用になって遺憾なので結論の部分を。
『「純供給」要因の影響はどのような時に強まるか?』という小見出しの所から。
『以下では、上記のように検証された国債の「純供給」要因の長期金利への影響が、どのような時に強まるか、といった観点からの追加分析も紹介する。理論上、裁定投資家のリスク回避度が高まっている(例えば自己資本の毀損によりリスクテイク能力が弱まっている)時は、短期金利の予想経路に基づく裁定取引が活発に行われにくくなるため、「純供給」要因の影響は強まると考えられる。回帰分析アプローチでは、リスク回避度の代理変数であるエクイティ・プレミアムが高いときほど、「純供給」要因の影響が強まったとの結果が得られた。また、期間構造モデルアプローチでは、モデルの中に上記の理論上の関係が組み込まれているが、推計結果もこの関係をサポートするものとなった。』
『もっとも、ゼロ金利制約の時期に「純供給」要因の効果が強まるかどうかについては、2つのアプローチの間で結果が分かれた。回帰分析アプローチでは、ゼロ金利制約の時期に「純供給」要因の効果が強まったとの結果が得られたのに対し、期間構造モデルアプローチでは、上述のとおりゼロ金利制約の下で長期金利の感応度が通常よりも低くなることから、逆の結果となった。一般に、中央銀行による保有国債の増加や年限長期化はゼロ金利制約の下で実施されるが、その効果が通常の時期と比べて強まるかどうかは、政策含意を考察するうえで今後も重要な論点である。』
という結論になっていまして、要するにAPPによって需給をいじることによる効果がありますというお話になっているのですが、これはこれで話は分かるのですけれども、国債買入の効果が金利低下とイールドカーブの期間構成の変化によって効果が出ました(キリッ)と言われましても、問題はその金利が物価にどういう働きかけをできているのかというお話で、そらまあ長期金利が下がれば効果はどこかで出るのでしょうけれども、2年で2%という目標に対してそれで間に合うのかねという気はします。
それと、前提として国債発行によって発生した政府債務の見合い部分が国内還流しているというのも金利が低下する原因になる筈で、これがジンバブエ状態になると国債買っても金利が下がらんどころか上昇するんじゃネーノとか思ったりするのですが、まーいずれにせよ今回のリサーチラボでも最早「マネタリーベースの量に効果が」という話はすっかり無かったことになっているのは、日銀としても政策をこのまま続けていくと物価目標2%の前に政策が爆発してしまう件について一応色々なネタを用意しているというのは把握しました。
#問題は政策爆発前に物価が行くに決まっとるという姿勢を続けるシャチョーなんですけどね
ちなみにまとめが『おわりに』である。
『以上のとおり、回帰分析と期間構造モデルの2つのアプローチを通じて、国債の「純供給」要因が長期金利に影響を与えていたことを確認し、量的・質的金融緩和のもとでの日本銀行の保有国債の増加や年限長期化の効果についても定量的に検証した。いずれのアプローチでも統計的に有意な政策効果を抽出することができたが、具体的なインパクトの大きさは区々となった。』
なるほど。
『今後の研究課題としては、(1)最後に紹介した「純供給」要因の影響の変化に関するさらなる分析に加え、(2)文中で紹介した「希少性経路」や「デュレーション経路」に関するより詳細なメカニズムの解明(例えば、月次の残高データで検証した「希少性経路」と日々のフローの需給変動や流動性の状況との関係、日本銀行・保険会社・年金基金といった選好投資家の間での異質性の考慮など)、(3)国債市場における「純供給」要因の存在が他の金融市場や経済全体に対して与える影響の分析などが残っている5。最近の海外での研究の発展も参考に、日本でもこうした研究がさらに進んでいくことが期待される。』
まー結局国債の金利が下がってもそれだけで終わってしまうと意味がないと申しますか、単に国債が「国債というモノとしてのニーズの金利形成」となって、他と無関係の世界になってしまうと意味があまりない、というのは既に国債がマイナス金利ゾーンに入っている部分でみた場合には(実体経済には名目ゼロ金利制約があるのだから)意味があまりない(イールドカーブの起点がマイナスになるから長期の金利に下げ効果というのは理屈としてはあり得る)でしょと思うのでした。
○FOMC近い中で絶賛超虫干しネタ
すいませんすいませんすいませんすいません。
http://dallasfed.org/news/speeches/kaplan/2015/rsk151118.cfm
http://dallasfed.org/assets/documents/news/speeches/kaplan/2015/rsk151118.pdf
Speeches by President Robert Steven Kaplan
A Discussion of Economic Conditions and Federal Reserve Policy
Remarks before the University of Houston
Houston November 18, 2015
見れば分かるように1か月前の講演ネタなので正直お蔵入りさせようかとも思ったのですが、ダラス連銀と言えばフィッシャー総裁の跡目でタカ派総裁の後はやはりタカ派(ただしアプローチは違う)なのでしたというお話で。
経済に関する部分と失業に関する部分をいきなり飛ばして(明日続きやるつもり)『Implications
for Monetary Policy』から少々。
『Given these factors and the situation I have laid out, let me turn to
a discussion of U.S. monetary policy and the decisions facing the FOMC.』
『The Fed has a dual mandate given to it by Congress-fostering full employment
and price stability. Further, the Fed has set 2 percent as its longer-run
target rate for inflation.』
『At this stage, it appears that we are well on our way to meeting our
full-employment objective, although there is still some question as to
the rate of unemployment that constitutes full employment in a more global
world.』
なお念のため再度申し上げますが先月18日の講演です。背景の経済物価認識は明日ね(汗)。
『As I mentioned earlier, a critical question I am focusing on is: What
is the unemployment rate at which we have depleted excess capacity in the
labor force? This rate may be lower than we would have previously thought.』
労働需給がフルに活用されている水準(要は自然失業率)は従来考えられていたよりも低い水準にある、というこの辺りは穏当は話をしているのです。
『Inflation continues to run below our 2 percent long-run target. However,
as the labor market tightens and certain transitory factors ultimately
pass through the data, our economic team in Dallas still expects to see
inflation gradually rising to 2 percent over the medium term.』
物価上昇も2%に向けてgradually risingであります。
『Our economic team is continuing to consider how overcapacity, demographic
trends, high degrees of leverage in some sectors and other secular issues
in countries outside the U.S. (particularly China) might adversely affect
GDP, unemployment and inflation within the U.S.』
『In light of all these factors, it will likely be appropriate that U.S.
monetary policy remain accommodative for some time. Moreover, a lower-than-usual
federal funds rate may well be needed to achieve any given desired level
of accommodation.』
『Accordingly, it is probable that the return to “normal” interest rates
will be gradual. As a business manager or as an investor, I think these
are key messages I would be taking from our FOMC statements.』
とまあこの辺までは特にタカ派感を出していませんが・・・・・・・・・・
『However, accommodative policy does not necessarily mean a zero fed funds rate.』
この辺りから段々タカっぽくなってきます。
『There are various costs to maintaining a zero fed funds rate for too
long-particularly in terms of potential distortions in investment and business
decisions. These distortions can create imbalances in investments, inventory
and hiring decisions that may later need to be (painfully) unwound when
policy normalizes.』
金融不均衡の話を前面に押し出してくるという方向で来ました。
『My experience is that these imbalances are sometimes tough to see in
real time but often relatively easier to recognize in hindsight.』
カプランさんは前職は教授なのですがその前がゴールドマンの方で、このゴールドマンのバックグラウンドでMy
experienceと言われるとそうですよねーと言いたくなる訳ですよ。
『In thinking about these potential imbalances, we’re sensitive to the
fact that monetary policy affects the economy with a lag.』
金融政策はラグを持って効いてくることについて敏感であるべきとな。
『These are all issues that will have to be assessed and reassessed as
the economic outlook unfolds. In my view, the FOMC-in the previous two
meetings-has been prudent in waiting for more data before taking policy
action.』
とは言え前回の見送りは妥当だったという話をしているので利上げとっとと実施しろというほどのタカではないのですが、そうは言っても金融不均衡の話を業界出身の方がするという流れも味わいがあるなあと思うのでやっぱりお蔵入りさせないでネタにしておきました(講演の金融政策部分はここで終了して残りはただのご挨拶)。なお、フィッシャーさんの場合は金融不均衡どうのこうのよりも物価上昇懸念という話を出していた筈なのでちょっとパターンは違う。
ちなみにカプランさんがノミネートされた時の記事を置いておきます。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NT8M7GSYF01W01.html
ダラス連銀、ハーバード大カプラン氏を次期総裁に指名
2015/08/18 06:41 JST
『カプラン次期総裁は17年まで連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権を持たない。ハーバードで教壇に立つまで、カプラン氏はゴールドマン・サックスに22年間勤務し、最終的な肩書は投資銀行を担当するバイスチェアマンだった。』(上記URL先より)
2015/12/11
お題「カレント3M短国がマイナス1bp台の引けとな/お騒がせブラード節を鑑賞/BOE据え置き」
ここ2日ほどお家の事情(?)にて備忘メモ状態になっておりまして誠に恐縮至極。寝かせたままのネタがあるものの賞味期限が切れている気がしてどうもアレです(大汗)。
ところで暖冬のようですな。これまた物価が上がらない方の要因でしたっけ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151210/k10010336361000.html
「エルニーニョ現象」最盛期 広範囲で暖冬予想
12月10日 16時53分
○お楽しみ(?)は短国買入
例によって例の如く3M短国である。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20151210.htm
(3)募入最低価格 100円00銭6厘0毛(募入最高利回り)(-0.0221%)
(4)募入最低価格における案分比率 78.2417%
(5)募入平均価格 100円00銭9厘6毛(募入平均利回り)(-0.0353%)
前週の入札が足切マイナス5bpとなっていたのに対して今回は足切マイナス2.2bpまで戻り、しかもセカンダリーでは足切水準よりも甘くなったようで引値はマイナス1.6bpと珍しくも入札水準より甘い引値となって(最近の短国は引値が入札よりも強くなるのが仕様でした)、年内残り2回の3M短国に短国市場正常化への光明が見えないこともないという状態になってまいりました。
現状マイナス金利でもホイホイ買うのってそもそもファンディングがマイナスになるドル円ベーシス系の海外さんと、日銀短国買入と、お家の事情で国債残高の末残調整をしないといけない人、というのは毎度申し上げている通りですが、海外の買いが一段落して日銀の買入フローが低水準のままで推移してくれれば残りは末残調整の買いとなりますので運が良ければ金利の浮上あるでとなりますので、こうなると本日の短国買入がどうなるのかというのが注目されるの次第。
でまあここで日銀が短国買入見送りでもやって頂きますと短国市場正常化上等の人としては益々慶祝の念に堪えないのですが、入札結果とその後の動きから勘案すると本日は短国買入に応札可能な玉が結構どっちゃりとある筈ですので、応札可能な玉がたくさんあると需要調査をした結果としてよーしパパ玉があるうちに全力で買っちゃうぞーとか言い出して短国買入を増額オファー(前回は5000億円)して来ると思われるのが日銀クオリティでございますので、まずは何ぼオファーが来るのかを見て、その後は応札状況を見てということになると思います。
短国市場が正常化(プラスになれば正常と言うのか、という議論はさておいて)ということになりますと、中短期のマイナスゾーンがこんなに広範に拡大せんでも良いとは思うのですが、どうもこちらはこちらで短国需給とは別の要因も含めて中々金利が上がりにくくなっているようで、2年カレントマイナス3.5bpとか相変わらずでして、まー短国がほぼゼロ金利に近いマイナス位で推移している分にはここまでエクストリームな展開には成っていなかったのですが、短国をとんでもないどマイナスにしてしまい、それを1か月程度引っ張ればこうなるよねというお話で、市場一回壊しちゃうと戻るまでは時間が相応に掛かるでしょうなとは思います。
なお、短国市場に関してはとりあえず目出度く来週以降にほぼゼロ金利とか間違ってプラス金利とかになったとしても、年明けになると3Mが3月期末越えになる(当たり前だが)のですが、この12月に向けた動きに参ったという人は多いと思いますので、1月になると早速期末越えを意識してという話が発生して結局需要は尽きないように思えますし、大体からしてドルファンディングの話ってファンディングする人が市場ファンディングをしないで済むようになるためには金融市場外(米国現地でドル預金とか)での調達をするか、ファンディングによって購入している資産を外すかしないとニーズの量自体は同じになりますので、今回ほど極端にはならない(2回目なので同じことは繰り返さないで適当に需要は期間分散されることを期待しているのですが)とは思うものの、碌な事にはならんでしょうなあとは思うのでした。
○虫干しではないネタでブラード総裁の毎度の利上げ節
うむ
https://www.washingtonpost.com/news/wonk/wp/2015/12/07/fed-official-not-raising-rates-in-september-was-a-mistake/
Fed official: Not raising rates in September was a ‘mistake’
By Ylan Q. Mui December 7
インタビューしている人はFOMC後の会見でも質問している人ですな、うんうん。
・リードの部分でワロタ
インタビューの前に前振り部分がありまして、そこのブラードのおっちゃん紹介部分の最初が・・・・・・・
『One of the most vocal officials has been St. Louis Fed President James Bullard.』
とあってクソワロタのですが、
『He often pushes the envelope of debate at the central bank, and he is
the last top official to speak before the Fed’s big decision. In an interview
with The Washington Post, he said not raising rates in September was a
“mistake" and that the U.S. economy could be ready to take off.』
ということでブラード節である。
・9月上げなかったのはミステイクだがそれによって遅れてマズーという話ではないとな
『Washington Post: Let’s start with Friday’s jobs numbers. Everyone is
saying this is cementing the Fed’s liftoff in December. What do you think?』
もう答えは最初から明らかですが。
『Bullard: I thought it was is a very strong report. I think the monthly
average of 218,000 is very promising for the U.S. economy. I think it shows
it was probably a mistake to delay from September, when people were concerned
there was a slowdown in the fall. That hasn’t really materialized. I will
argue for a move in December. I don’t want to prejudge what the committee
might do, but that will be my position.』
こんなに強い指標が出るなら9月に上げるべきだったとか利上げ節にも程がある。
『WP: An actual mistake not to move in September? What are the consequences,
then? Is the Fed already behind the curve?』
だったらまずいんじゃないのFEDはビハインドザカーブになってるんじゃないの??と聞きますよね。
『Bullard: The timing of the rate hike is probably not critical, and so
we can certainly make up for the fact that we didn’t move earlier.』
ということで、利上げのタイミングが遅れた事はクリティカルではない、という話をしているのがナンジャソラという所ではありまして。
『WP: You guys have been saying for a long time that it’s not just the
first increase that matters: It’s the entire path. Let’s talk about what
gradual means.』
『Bullard: There’s been so much pressure on this first move, and you can
kind of understand it because we haven’t moved since December 2008. That’s
seven years. We’ve been pinned down to zero. If we do move in December,
it will certainly be momentous. It will be a great signal I think for the
U.S. economy: It does signal confidence. It does signal that we can move
away from emergency measures, finally.』
利上げは異常な経済が終了して経済正常化に向かっているというシグナルというのはさておきまして。
『But you’re right, the debate will immediately turn to how will normalization
proceed? My main concern about that is we remain data dependent, and we
do not get locked into a mechanical pace of rate increases the way that
we did in 2004 to 2006.』
『In that sequence, for those that remember it, we raised the funds rate
a quarter percent at every meeting for 17 meetings in a row. I’m virtually
certain that was not optimal policy.』
『At the time, we were congratulating ourselves that this was a very organized
way to go about the normalization process. But in the end, we really got
burned with the huge crisis and a housing bubble that ran far out of control.
And when it collapsed, it caused a major global macroeconomic disaster.
So I don’t think we want to be in the position of trying to telegraph
a mechanical rate hike path the way we did in that situation.』
前回の利上げプロセスはFOMCごとに25bp上げていくという機械的なプロセスを踏んだのだが、これがバブルを起こさせる一因になったという話をしていて(前からしているのですが)、今回はメカニカルではなくてデータディペンデントなので望ましい、という話をしているのですから、つまりはこの「データディペンデント」という文言はタカ派あるいは金融不均衡警戒派(はたぶん今だとカプランとラッカーで副議長のフィッシャーに若干その成分があるかな程度しかいないと思いますが)に掛かりますと「急いで正常化が必要になるならペースを上げる」という事も意味するのですが、おそらく市場では「データディペンデント」について現状では「利上げペースが遅くなるぜヒャッハー」という文面にしか解釈していないと思われるので、ここからうっかり良い指標がホイホイ出だすと(出るかと言われると中々怪しいですけど)市場の期待パスがいきなりジャンプするというリスクはあるんじゃないですかねえ、顕在化するかどうかは指標次第でしょうが。
・正常化においてビハインドになるのがリスクとな
ちょっと先に飛びまして、
『WP: What do you think is the biggest risk facing the Fed as it starts to normalize policy?』
『Bullard: Risks abound, and they’re on all sides. There’s a risk of
being too technical and not responding enough to data and letting situations
that sort of fester and grow during the normalization process. There’s
a huge temptation to tell ourselves a story, as we did during the housing
bubble, “Oh, that’s not going to be problem. That’s not going to blow
up and cause a recession.”』
ブラード総裁が好きな「optimal」な政策対応という意味でテクニカルに正常化すべきではない、というお話になるのですが、恐らくこのやり方をすると将来の政策金利パスが経済指標や連銀高官の発言などで振らされることになるので、政策金利水準に対して長期金利が振れやすくなって、もしかすると政策金利をそれほど上げなくてもイールドカーブの中期から長期辺りが不安定化することによって正常化効果が早めに出易くなる、というのはあるかも知れません。
『There is some risk that we would fall behind the curve, and I’ve argued
that we’re entering what is probably a boom phase for the U.S. economy,
barring a major shock. I would expect unemployment to go way down to the
4 percent range. I think there’s some risk that that process starts to
get away from us, and we’re not normalizing at an appropriate pace.』
しらっと「もしかしたら既にブームの入り口に差しかかっているかも知れない」とか言い出しているのがお洒落でして、正常化開始したら更にお騒がせ発言をするリスクあり。
『You can appreciate that having been seven years in the woods here that
it’s hard to think about the economy doing well. But if you just look
at macroeconomic history, this looks like we’re poised to be in a pretty
good situation unless something major happens in the years ahead.』
ということで、金融不均衡を結構気にしているなあと思うのでありました。まあそういう方向に質問が誘導しているってえのもありますけどね。
○BOE据え置き
最近BOEネタの登場が少なくてすいませんすいません。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2015/012.aspx
Bank of England maintains Bank Rate at 0.5% and the size of the Asset Purchase Programme at £375 billion
『Twelve-month CPI inflation remained at -0.1% in October, a little more
than 2 percentage points below the inflation target. Inflation is expected
to have been slightly positive in November, and is projected to rise further
as some of the large falls in energy and food prices at the turn of last
year drop out of the annual comparison. Nevertheless, core inflation remains
subdued, and CPI inflation is expected to stay below 1% until the second
half of next year. 』
来年後半までコアCPIは1%以下で推移する見通しとな。
『The outlook for inflation reflects the balance between persistent drags
from factors such as sterling and world export prices and prospective further
increases in domestic cost growth. The MPC’s objective is to return inflation
to target sustainably; that is, without an overshoot once persistent disinflationary
forces ultimately wane. Given these considerations, the MPC intends to
set monetary policy to ensure that growth is sufficient to absorb remaining
spare capacity in a manner that returns inflation to the target in around
two years and keeps it there in the absence of further shocks.』
物価はそのうち2%に戻るという見通しは一応出しているものの、色々と条件をつけていますので、現在の政策が適切ですよという話で。
『The MPC set out its most recent detailed assessment of the economic outlook
in the November Inflation Report. At that time, the Committee’s central
view was that if Bank Rate were to follow the gently rising path implied
by the prevailing market yields then CPI inflation would exceed slightly
the 2% target in two years and then rise further above it, reflecting modest
excess demand. The MPC judged that the risks to this projection lay a little
to the downside in the first two years, reflecting global factors.』
来年後半まで1%以下なのに向こう2年で2%というのもナンジャラホイ(ヒントはローリングターゲットですかそうですか)という感じですが、リスクも若干ダウンサイドというのですから、現状の政策を継続、という話になるのでしょうなという事で、当面動き難いという事でございますの。なおミニッツは読んでいないのでただのメモ状態ですいません。
2015/12/10
お題「本日は虫干しネタシリーズで恐縮至極(前回のFOMC議事要旨ネタ)」
虫干しネタのうち既に賞味期限切れているのはそのままお蔵入りorzorz
○各種雑談ネタ
・さあ今日は3M入札ですよ(白目)
ということで本日は月内残り3回となった3M短国(あと1Yが1回ある)の入札な訳ですが、先日の6M入札が結局マイナス6bpの引けとかやっている次第(ただしGCや現先の金利的に考えるとさすがに需給的には少し緩和しているように見えるのだが)なのは兎も角として、ここに来て2年とかの辺りが一段と強くなっている(年末ポジションクローズ要因も入っていそうではあるのですが)という鬼のような展開になっておりまして、昨日の2年カレントの引けはマイナス3.5bpなどとなって、このゾーンがこの調子になっていると短国の方も日銀の買いが無くてもそう簡単にゼロとかプラスにならないのではないかと思ってしまう所です。
そんな訳ですので本日の入札は入札水準は兎も角として(火曜の6M並みの足切になるとちょっと需給緩和のイメージになり来週以降の残り2回の入札に光明は出てくるが期待薄)、落札結果の分布状況(どのくらい「お家の事情でマイナス金利突撃」組がいるのか)、テールの具合(日銀買入以外の需要が見えているのか見えていないのか)に注目しながら正座して待機したいと存じます。
・債券市場の機能度絶賛低下
そらそうよ。
http://www.boj.or.jp/paym/bond/bond1511.pdf
債券市場サーベイ<2015年11月調査>
回答期間:2015年11月19日〜11月27日
調査対象先数:39先
(「調査対象先数」は、国債売買オペ対象先のうち、調査協力を得られた先)
毎度思うのですが、このアンケートの選択肢って例えば2番目の『債券市場の機能度』からすべての項目に関して『1.
高い、2. さほど高くない、3. 低い』とか『1. 改善した、2. さほど改善していない、3.
低下した』というような3択方式になっていまして、これが5択方式になっているとどういう回答分布になるのかというのを見たいのですよね。
つまり、この手のアンケートって一番上と一番下に入れるのにはそこそこ思い入れというか信念みたいなのが無いと中々入れてこないという心理的なものがあると思われますので、このサーベイのような3択方式だと「低い」とか入れるのもちょっと喧嘩を売っているようでちょっとねえというような方々が真ん中にどのくらい入っているのかを見たいのですが、どうせフォームを1回決めたので変えないでしょうし、そもそも論として5択方式にしなかったのは4番目にドバドバ票が入るの困るからでしょなどという事を良い子の皆様は指摘してはいけません。
というような事情も踏まえても、今回は前回対比で機能が低下した(取引量だけは増えている)という結果になっていまして、そらまあ市場があのプライスアクションですし、短い所に関しては逆にベーシススワップ絡みとか何とかで盛り上がったりしていましたので、まあイメージに違和感がないですし、この割と穏健な結果がでるような作りになっているサーベイですら機能度低下って言ってるんですから来年になって輪番フローが拡大することになる中で大丈夫かという所ですね。
○虫干しシリーズでFOMC議事要旨からちょっとだけ
今更ネタですいません。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20151028.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20151028.pdf
・利上げ関連のオペレーショナルな話
最初の『Developments in Financial Markets, Open Market Operations, and Policy Normalization』から。
『The deputy manager of the System Open Market Account (SOMA) reported
on developments in domestic and foreign financial markets, money markets,
and System open market operations conducted by the Open Market Desk during
the period since the Federal Open Market Committee (FOMC) met on September
16-17.』
『Take-up of the System's overnight reverse repurchase agreement operations
increased during this period, evidently reflecting a modest narrowing of
the spread of money market interest rates over the offered rate on such
operations. Total take-up of overnight and term reverse repurchase agreements
at the end of the third quarter was also elevated.』
ONRRPが利上げ後にとりあえず使われるツール(ただしあまり長期間は使いたくないみたいで、出来ればIOERでコントロールするという考え)なのですが、ONRRPの金利と市場金利のスプレッドがやや縮小したという話と、四半期末(9月末)のRRP(期末越えに関しては翌日物の他にターム物のRRPも実施)の残高は拡大しましたというお話。
『The deputy manager briefed the Committee on plans for the upcoming quarterly
test of the Term Deposit Facility in December and for term reverse repurchase
agreement operations to be conducted ahead of year-end.』
年末に関してはターム預金ファシリティのテストと、ターム物RRPの実施をする予定と。
『In addition, an update was provided on a data collection that will allow
the calculation of the federal funds effective rate and a new overnight
bank funding rate based on transaction-level data reported by depository
institutions that are active in overnight bank funding markets; as previously
reported, the Federal Reserve expects to begin publication of the rates
based on these data in the first few months of 2016.』
FF実効金利水準、預金金融機関の実取引データ報告から集計した銀行の翌日物ファンディングレートについて、2016年の早い時期から公表を開始するそうです。
この後に連邦債務上限問題によるテクニカルな国債発行停止があった場合にどうするか(結論はオペとかディスカウントウィンドウを使うという話)という話がありましたがそちらは割愛します。
・労働市場に関しては既にスラックなっしーという人がそこそこいるのよね
寝起きインスタント読みの時にすっ飛ばしていた『Participants' Views on Current
Conditions and the Economic Outlook』を今更ながらに再確認。まずはマンデートの片方の雇用に関して。
『Although employment growth slowed and the unemployment rate held steady
in September, participants agreed that underutilization of labor resources
had been reduced since earlier in the year. A number of participants expressed
the view that further progress would be necessary before labor market conditions
were fully consistent with maximum employment, while some others judged
that there was little or no remaining underutilization of labor resources.』
10月FOMC時点で労働市場のスラックに関しては一部(some)の参加者は既に労働市場のスラックは殆ど無いまたは既に無いという認識を示していますね。
『Several participants observed that the recent employment reports had
increased the uncertainty about the outlook for the labor market. They
discussed whether the slowdown in job gains was merely transitory or indicative
of a more persistent slowdown in which labor market conditions might no
longer improve. Some other indicators, such as the labor force participation
rate and data on job openings, quits, and hiring, had also been softer.』
『Other participants viewed a broad range of recent labor market data as
indicating a further reduction in slack and stressed the importance of
assessing the cumulative improvement in the labor market since early in
the year, which had been significant. Moreover, several participants indicated
that they viewed the pace of monthly job gains in September as still above
the rate consistent with stable or declining labor market slack, and a
few participants interpreted slower increases in payrolls as evidence that
labor markets had tightened.』
ということで、足元(この時点)での労働市場のデータについてどのように見るべきか、という事で議論が分かれているという感がありますが、その後の労働市場のデータは強めに推移していますわなと思いますのでこの辺の意見についてはもうちょっと強い方でまとまっていくんでしょうね。
・物価に関して
ちょっと飛ばして物価に関して。
『Participants discussed how recent economic developments influenced their
expectations for reaching the FOMC's 2 percent inflation objective over
the medium term.』
物価目標が達成できますかという見通しはどうなのよという件に関して。
『Total PCE price inflation, as measured on a 12-month basis, continued
to run below the Committee's longer-run objective. Core PCE inflation also
remained low, but some other measures of inflation, such as the trimmed
mean PCE and trimmed mean CPI measures, continued to run at higher levels
than core PCE inflation and had recently moved up modestly. Moreover, a
few participants noted that the September CPI data appeared consistent
with some firming in inflation.』
コアPCE以外の刈込平均だのCPIだのは確りしているのではないかとの指摘。
『Surveys continued to suggest that longer-run inflation expectations remained
stable. Participants still expected that the downward pressure on inflation
from the previous declines in energy prices and the effects of past dollar
appreciation would prove temporary. Several participants, however, cited
downside risks to inflation, pointing, for example, to declines in market-based
measures of inflation compensation.』
ロンガーランのインフレ期待は安定していますという認識で、エネルギー価格のパススルーも一時的ということですが、数名(several)の参加者はBEIの動きなどを見ると先行きのインフレ下振れリスクがありますよという指摘をしています。
『Nonetheless, participants generally continued to anticipate that, with
appropriate monetary policy, inflation would move toward the Committee's
objective over the medium term, reflecting the anticipated tightening of
product and labor markets, the waning of downward pressures from energy
and import prices, and stable inflation expectations.』
全体としては今後2%に向かって物価は徐々に上昇していくという認識を示していまして、ダウンサイドリスクがあるという人は複数いるものの、多数派の方と揉めている的な書きっぷりになっていません。物価が上昇する見通しの背景に労働市場のタイト化というのがありますので、基本的にこの議事要旨出て以降の雇用関連の指標が堅調である、ということであれば雇用、物価の両面において12月利上げを排除するような流れにはならない、と考えるのが妥当でしょう(というか既にそこは織り込んでいると思いますが)。
・金融不均衡キタコレ!
虫干ししまくってお蔵入りになりそうな気もするダラス連銀カプラン総裁もこの金融不均衡ネタを強調しています。
『Participants also discussed a range of topics related to financial market
developments and financial stability.』
早期の正常化をしようと言っているのはこっちの理由も結構念頭にあるんじゃないかと。
『They noted that volatility in global financial markets had abated since
the previous FOMC meeting, with equity prices in the United States largely
retracing the declines experienced late in the summer. The U.S. financial
system appeared to have weathered the turbulence in global financial markets
without any sign of systemic stress.』
『Participants commented on issues related to financial stability monitoring
and the use of macroprudential tools, the assessment of valuation risks
in leveraged loan and real estate markets, the widening of credit spreads
on corporate bonds, and potential risks to financial stability stemming
from interest rates remaining low for a prolonged period in an environment
of a low neutral (or equilibrium) real rate. In addition, it was noted
that Puerto Rico continued to face significant challenges servicing its
debts, although the associated systemic risks for U.S. financial markets
were likely to be minimal.』
金融不均衡が問題という状況ではないという結論にはなっているのですが、レバレッジドローンと不動産価格に関しては金融不均衡の問題がありますな的な話をしていまして、何せ前回の緩和→正常化が遅れた事がクレジットバブルの拡大を招いたという反省はあるでしょうし、同じこと2度やる訳にも行かないでしょうから、この点って気にはしていると思うのですけどどうでしょうかね。
・次回利上げがどうのこうのという話の部分
『During their discussion of economic conditions and monetary policy, participants
focused on a number of issues associated with the timing and pace of policy
normalization. Some participants thought that the conditions for beginning
the policy normalization process had already been met. Most participants
anticipated that, based on their assessment of the current economic situation
and their outlook for economic activity, the labor market, and inflation,
these conditions could well be met by the time of the next meeting.』
今回(10月)利上げ派が数名(some)居て、次回行きましょうが多く(most)だったりするのでそらまあこれ出た時に反応しましたよねという話。
『Nonetheless, they emphasized that the actual decision would depend on
the implications for the medium-term economic outlook of the data received
over the upcoming intermeeting period. Some others, however, judged it
unlikely that the information available by the December meeting would warrant
raising the target range for the federal funds rate at that meeting.』
反対は数名(some)いますが、さて来週のFOMCではどうなりますやら。
『A number of participants pointed to various reasons why the Committee
should avoid a delay in policy firming.』
その次に「利上げを遅らせることを避けるべき理由」の議論まであるのですから本物なのですが、避けるべき理由というのがつぶれれば逆に利上げを遅らせることになるのですが・・・・・・・・・・
『One concern was that such a delay, if the reasons were not well understood
by market participants, could increase uncertainty in financial markets
and unduly magnify the perceived importance of the beginning of the policy
normalization process.』
つまり余程とんでもない事が起きない限りは今度利上げ日和ると信用失墜と。
『Another concern mentioned was the increasing risk of a buildup of financial
imbalances after a prolonged period of very low interest rates.』
別の問題が低金利の長期化で金融不均衡、というのですから結局どちらもそう簡単につぶれる理由ではない。
『It was also noted that a decision to defer policy firming could be interpreted
as signaling lack of confidence in the strength of the U.S. economy or
erode the Committee's credibility.』
利上げを遅らせるのは先行きの見通しが弱くなっているという事を意味するとされて、経済への先行き期待とFOMCの信認的に宜しくないと来てますからやはりこれはそう簡単に延期できるものではない。
『Some participants emphasized that progress toward the Committee's objectives
should be assessed in light of the cumulative gains made to date without
placing excessive weight on month-to-month changes in incoming data.』
ここはデータディペンデントという中でムツカシイ話でして、「金融政策の決定は累積的に見て行った場合の経済情勢の見通しに基づくものであり、毎月のデータに一々反応して行うモノではない」という指摘は全くもってその通りではあるのですが、やはり「データディペンデント」となりますと市場の方は一回一回の経済指標に一々反応するようになりますし、利上げ後はその反応が「次回利上げタイミング」だけではなく、「将来の利上げパス」や「最終的な着地」までに影響するようになるので、ここの期待をどういう形で安定化させる(全部は無理でしょうけど)かは難しい課題になるでしょうなと思うのでした。
以下は早期正常化反対の意見の議論部分があって、最後は利上げ後のパスに関するいつもの話があるのですけれどもそこは割愛します。
ということで諸般の事情で超虫干しネタの投下でした。
2015/12/09
お題「佐藤審議委員会見はところどころに麿ドクトリンとか砲撃とかが見られます」
浜田先生ェ・・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/hamako-intaerview-idJPKBN0TR0V620151208
Business | 2015年 12月 8日 19:00 JST
インタビュー:米利上げで円安なら日銀追加緩和は必要ない=浜田氏
『一方、日銀が目標に掲げている消費者物価(総合)の前年比上昇率2%は、見通しの目安としている生鮮食品を除いたコアCPIで足元ゼロ%程度。インフレ率は低迷した状況にあるが、原油安を受けたエネルギー価格の下落が原因とし、総合やコアの2%に「こだわる必要はない」とした。』
『中国の実体経済がさらに悪化した場合、「すべてを財政・金融でオフセットし、日本の完全雇用を保つのは難しい」としたが、「労働市場が悪くなる時は、日銀が追加緩和をしなければならない」と語った。』(以上上記URL先より)
インフレターゲットではなくて雇用ターゲットになったのですか。
○一応市場雑談
・相変わらず短国ェ・・・・・・・・・・・・
昨日は念仏唱えながら6M入札。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20151208.htm
(3)募入最低価格 100円01銭9厘(募入最高利回り)(-0.0378%)
(4)募入最低価格における案分比率 32.9333%
(5)募入平均価格 100円02銭3厘(募入平均利回り)(-0.0458%)
でまあ実はこの結果6Mでは前回よりも金利が低下しているので過去最低利回りを更新しているのですけれども、既に3Mでエクストリームな結果を散々みておりますので何か普通に見えてしまうのはエッシャーのだまし絵みたいなもんですな(違)。でまあいわゆる不明玉は1.1兆円程度なのでそこまで多くは無いのですが、セカンダリーでは入札水準より利回りが低下しているという時点でお察しの展開で、引けはマイナス6bpになっておりまして、入札水準よりも強い引けになっているという事で需要は相変わらず堅調というお話。
何気に2年とかその辺の引けも強くなっておりまして、2年カレントマイナス3bpとか1年から2年の当たりの引けがマイナス3.5bpとかすっかり異世界レートが定着しておりまして誠にあばばばばーの極みという展開になっております。そらまあ短国が延々とどマイナスになっていて、その一方で国債の残高は一定量必要という人たちがいる訳ですし、大体からして貸出増えていると言ってもそれ以上に預金が増えているので、そもそも論として積まないといけない分が増えるというのもありますから、そら短期の需給がここまでタイトになっていたら波及するのも致し方なしという所ですな。まあ日銀がMB目標からAPP目標に切り替えて短国の買入残高落とせば済むことなんですが、肝心のリフレ派の皆さんがすっかりMB直線一気理論を無かった状態にしているのに一度決めたもんだから日銀がこのMB理論を続けているというのが何とも。
・ちなみにCP買入オファーやっぱり増額
やるかと思っていたらやっぱりやってアチャー
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel151208a.pdf
CP 等買入のオファー金額の変更について
『○ 日本銀行では、CP 等買入の 12 月 15 日オファー分のオファー金額について、5,000億円から5,500
億円に変更しましたので、お知らせします。なお、その他の内容については、変更はありません。』
ということで年末分も5500億円なのですが、12/15オファー分のCP買入も5500億円ということになっております。でまあご案内の通りで短期市場では短国の金利が延々とどマイナスとなっている訳でして、短期の資金運用(除く海外)という意味ではマイナスレートだとキャピタルゲイン狙いじゃないと買えないんですがそれはという状況になっている訳(国債残高が必要という意味でのお家の事情の買いはここでは別の話です)なのですが、そんな中でプラス金利のCPをここぞとばかりに日銀が絶賛吸い上げしかも増額ですかそうですかという所で。
もう数字を合わせに行くことが至上命題で市場との対話というのはアリバイでやっているだけというのは理解しましたが、しかしまあ日銀がこの調子で市場をスチームローラーの如く潰して逝ってしまいますと戻すの大変になるので、正常化するときに色々と不具合生じると思うのですがまあ後の事は知らんという事ですねわかります(−−;
○佐藤審議委員会見
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1512c.pdf
・最初からアホウの三冠王みたいな質問があるのだが
冒頭の説明の後の実質最初の質問がこれなんだけど。
『(問) 2 つあります。午前中のご挨拶でも触れておられたQQEの時間的な限界についてですが、時期は特定できないと思いますが、ただ、永遠に続けられないということだと思いますし、今日明日に限界がくるというわけでもないと思います。そうするとある程度の幅で、限界が来る時期は幅を持っては想定されるのではないかと推察するのですが、今年
1 年は大丈夫だという理解でよろしいでしょうか。(後半割愛)』
時期が特定できないのに今年1年は大丈夫だという理解でよろしいでしょうかってアホウの三冠王のような質問だなと思います(まさかこの「今年1年」というのは12月末までという質問ではあるまい)。
『(答) まず、QQEの時間的な限界あるいは政策の持続可能性についてですが、午前中の挨拶要旨の中でも触れたとおり、特定の年限というかたちで時間的な制約を現段階でイメージすることは難しいと思います。』
そらそうよ。
『といいますのは、政策の持続可能性あるいは国債の買入の持続可能性は、その時々の経済・物価の情勢あるいは金利の水準やイールドカーブの形状といった様々な要因に規定されるものであると思います。例えば、今のこのQQEが所期の効果を発揮し、人々の予想物価上昇率が実際に上がってくれば、イールドカーブはどちらかというとスティープ化する方向に動くと思いますので、その場合には却って買入が容易になるという面があります。反面、このQQEをもってしても人々の予想物価上昇率がなかなか上昇せず、したがってイールドカーブが低位安定というかフラット化していくと、買入は却って難しくなる、そういう難度の高さを内包した政策であるということです。』
ちなみにどこぞのベンダーはこの中の「予想物価上昇率が上がると買入が容易になる」という所だけ切り取ってヘッドライン打っていて、見ている人を???とさせていた(予想物価上昇率というとBEIを思い出す市場の人も一定量いるのだ)のですが、このようにして読めば単に「金利先高観が出てくれば皆がバカスカ輪番に入れてくるし、金利先高観が出ないと輪番出し渋りになって金利が下がるわオペはしんどくなるわ」というお話をしているのですが、この説明はこうやって改めて読めば皆が理解できるのですが、オモシロヘッドラインを打つという意味不明というか社会的に害悪じゃないかというインセンティブを持つ一部ベンダーに掛かると一見何言ってるのか分からんヘッドラインに加工されるリスクがあるので(会見の場合)、説明の方法をもうちょっと工夫した方が吉だと思うのですがどうでしょうかね。
『このように、様々な要因によって国債の買入の持続可能性は規定されますので、今年1
年は大丈夫とか、来年は大丈夫とか、そういった特定の年限を現時点で明示することはやや難しいと考えています。ただ、もちろん、今のところ国債の買入は概ねスムーズに行われていると認識していますので、これが今すぐ不可能になるということでもないと思います。(後半割愛)』
最後が余計で、当然のように最後の所だけヘッドラインを打っているどこぞのベンダーとかもあったので、印象として「佐藤さんはオペレーションの問題に対して懸念していないのではないか」というのを与えた(まあそのどこぞのベンダーのヘッドラインの打ち方が恣意的なのがそもそもの問題ではあるのだが)感じがあるのですけどね。
・政策の追加的な効果が逓減しているのだが何かあったらどうするのという質問
質問の仕方がヘボなのだが(答えを見れば分かる)がポイントは良い。
『(問) 2 点質問させて頂きます。1点は、挨拶要旨の中で、7−9月期のGDPデフレーターがマイナスになるなど、デフレの兆候もみられているというご発言がありましたが、昨年
10 月末に追加金融緩和に佐藤委員は反対されていまして、また緩和効果が逓減しているという指摘もされていると思います。仮に、このデフレの兆候が顕在化した場合に、日銀として何か対応のしようがあるのかどうかという点についてお聞きしたいと思います。(後半割愛)』
でもって答え。
『(答) まず、最初のご質問、7−9月期のGDPのデフレーターがマイナスに転換したことについてですが、挨拶要旨の中で触れているのは、中国経済の話でして、日本経済についてではありませんので、その点、お含み置きください。』
あちゃー。
『その上で、仮にデフレの兆候があったらという仮定のご質問ということでお伺いしたいと思います。私どもとしては、2%へのパスが危ぶまれる状況では、必要な政策の調整を行うということを予ねてより申し上げていますが、私は、基本的にはそれはリスク認識の程度次第であると思います。』
ほほう。
『例えば、リーマン・ショックあるいは欧州債務危機並みの世界経済の成長パスが大きく揺らぐようなイベント・リスクが顕在化する場合には、日本経済においても、2%の物価安定の目標達成のパスが危ぶまれる状況になる可能性があると思いますので、そういった状況の下では、政策の調整を行うこともやぶさかではないと思っています。ただし、今の政策は、例えば、GDPの見通しがコンマ数パーセント動くとか、あるいは、消費者物価の見通しが同じくコンマ数パーセント動くといったような、微細な経済動向の変化に対して敏感に対応していく性質のものではないと理解しています。』
うむ。
『基本的には、今行っているQQEは、政策の継続に伴って、あるいは資産の買入の進捗に伴って、累積的に効果が出てくるものと認識していますので、政策の調整についても、そういった認識を踏まえつつやっていくことになると思います。』
ショックの際の具体的なイメージについては言及しませんでしたな。
・短期金利マイナスに関して
今の質問の後半。
『(問)(前半割愛)もう1 点は、挨拶要旨の中でもご指摘されていましたが、ドル調達コストの上昇の裏側で円の調達コストが低下し、国庫短期証券や
3 年物の国債ぐらいまでマイナス金利が定着しています。レポ市場でも期末越え取引などでマイナス金利が常態化しつつあるなか、日本経済が、マイナス金利が定着している中で、金融市場に与える歪みというか影響について、佐藤委員がどのようにお考えになられているか、改めてお聞かせください。
』
キタコレ。
『(答)(前半割愛)それから、短期市場におけるマイナス金利の問題についてですが、日本と、例えば欧州のマイナス金利の状況は違うと思います。』
ほう。
『欧州においては、政策金利がそもそもマイナスであることから、短期市場でマイナス金利が常態化していますが、ご質問にございましたように、日本の場合にはドル調達コストの上昇の裏返しで円の調達コストが大幅にマイナス化しています。これはドルの調達が直接出来るドルベースの投資家にとっては、円を事実上、大幅なマイナス金利で調達できるため、マイナス金利の短期国債を買っても十分にペイします。そういうかたちで、短期国債に対する超過需要が発生しているわけです。』
うむ。
『ドル調達コストの上昇は、金融規制の強化等に伴う米国の金融機関のバランスシート制約を反映している面もあると思いますので、この年末越えの調達が一巡したとしても、おそらく先行き簡単に下がる性質のものではないかと、ある程度、構造的な面もあると認識しています。そういう意味では、現時点の短期市場におけるマイナス金利は、ある程度持続する可能性があります。』
さいですな。
『これについては、マイナス金利が実現していること自体は、一つには政策効果の表れである、という言い方も出来ると思います。』
そらまあ買入効果は買入効果ですけれども、問題はそれによって実体経済や物価上昇にプラスになる政策波及ルートがあるのかという話だと思うのですが。ちなみにどこぞのベンダーはここだけ切り取ってヘッドラインを打つという超恣意的攻撃をしているんですがががががが。
『その一方で、マイナス金利になることによる短期資金市場における様々な歪み、例えば、市場機能の低下といったことも、十分認識しているつもりです。私としては、そういった短期市場におけるマイナス金利がもたらす政策効果、それからその反面、その副作用として、市場機能の低下、あるいはMMFやMRFを含めた広義の決済システムへの影響も含めて、その両者の功罪を睨みつつ、今後ともしっかり政策運営をしていきたいと思います。』
ということで副作用に関しても具体的に言及が思いっきりあるのでした。
しかし何ですな。政策金利自体は補完当座預金があるわけで、そこから金利が下に突き抜けている状態というのが政策効果なのかというのも疑問で、中長期金利に関しては中長期年限まで拡大した国債大量買入によって(期待の引き上げによって起きる筈の)フィッシャー効果による名目金利上昇を抑制しようという意図があって実施しているから中長期の実質金利が下がるのは政策の意図した動き(ただし実質金利が下がったからと言って設備投資が出たり消費が思ったように活発化していないという問題があるのだがそれはさておき)なのですけれども、短国の買入で短期金利どマイナスって単にマネタリーベースの帳尻合わせに短国買ったら金利が下に突き抜けましたという話な上に、しかも海外の規制要因によるものであって、最初から短国金利を押し下げることを狙って打ったものじゃないでしょとは思うのですけどね。
・さっきの質問について具体策を質問されたら金融政策の限界論がしらっと出ている件
『(問) 佐藤委員は前から金融緩和の副作用のことも心配されています。今日の講演では、QQEを継続することが重い判断であるということを言われておられます。一方で景気下振れリスクのことも言われて、前向きのメカニズムに関してはそれほど力強くないと、デフレマインドも払拭されていないと言われています。景気の下振れリスクへの対応策として、現状の枠組みで対応できるのか、それとも別のアプローチの仕方があるのかどうかをお伺いします。』
『(答) 所得から支出への前向きの循環メカニズム、これが力強く働いているかどうかと問われますと、現状では、一応働いていることは働いていますが、必ずしも力強いとは言い切れない、ということだと思います。これは、最近の設備投資あるいは賃金に対する企業のスタンスによく表れていると思います。その一方で、ご指摘のとおり、私としては、こういったQQEを毎回の金融政策決定会合で継続するということ自体が非常に重い政策判断であると認識しています。』
うむ。
『では、このQQEによって、所得から支出へのメカニズムをこれ以上サポートしていくことが出来るのかどうかについては、私としては、QQEのトランスミッション・メカニズムとしては、当然、資産価格等も含めた幅広い経済活動への影響を強めることによって、政策効果が望めると判断しています。であるからこそ、毎回の金融政策決定会合で政策の継続に賛成票を投じているわけですが、その一方で、この所得から支出へのメカニズムを強めるためには、やや金融政策を超えた課題があることも事実だと思います。』
しらっと限界論来ました。
『例えば、挨拶要旨の中でも述べていますが、最近、企業収益が過去最高益を更新している中で、あるいは企業経営者のマインドも総じて高水準を維持している割には、設備投資の足取りは今一つ鈍いですし、賃金の基本給の増加ペースも非常に緩やかで、企業経営者の支出マインドが今一つ積極化していません。これは一つには、企業経営者の認識として、過去最高益といっても、結局は円安による海外からの収益の為替換算差によるものであったり、あるいは原油価格下落等による交易条件の大幅な改善のためであることから、こういった企業収益の改善は、総じて一時的なものであり、恒常的な所得の増加によるものではないのではないかと、危惧を抱いているからではないかと思います。言い換えますと、企業経営者が、現状の過去最高益の企業収益を、いわば“windfall
profit”と考えていることでもあるでしょうし、これをさらに言い換えれば、利益の成長期待が低い、あるいは成長期待そのものが低いということではないかと思います。そういう意味では、金融政策によって成長期待を鼓吹していくということは、もちろん重要ですが、これはやはり成長戦略の着実な実行によって、生産性の向上、あるいは競争力の向上を地道にやっていくしかないのではないかと思います。』
ちゃっかり麿ドクトリンになっております。
『それから、政策の調整に関してですが、もしこれを考えるとすれば、当然市場に対してそれなりに大きなリパーカッションがあると思いますので、そういった影響も良く考える必要があります。そういう点では、市場とのコミュニケーションは、慎重の上にも慎重を期す必要があると考えています。』
具体策については余計な事は言わないという事ですな。
・何気に砲撃発言登場
『(問) 今日の講演の中で、前回の展望レポートで物価の達成の見通し時期を後ずれさせたことに関して、佐藤委員は、コミットメントについて、改めて説明する必要性を感じていらっしゃる、その中で、佐藤委員の考えとしては、特定の期限を念頭に置いたものではなく、ローリング・ターゲットと考えている、ということでしたけれども、これは改めて説明すればよいというものなのか、それとも現行の執行部の説明を変えていく必要があるとお考えなのか、どちらでしょうか。』
イイハナシダナー。
『(答) 私自身の考えとして、今の物価安定の目標と、目標の達成時期に関する解釈については、これをローリング・ターゲットと考えるのが一番無理なく整合的に解釈できますし、他の諸外国の中央銀行における一般的なインフレーション・ターゲティングの枠組みとの比較でも、整合的な仕組みであると考えています。すなわち、向こう
2 年間程度を展望して、その中で、2%の物価の安定の目標を追求するスタンスをとることが重要です。』
ただし執行部はそうは言ってませんな。
『特定の年限を区切ると言っても、もう既にQQE開始から 2 年半以上が経過しているわけですから、今さら
2 年といったところで仕方がないわけです。』
これは良い暴言(^^)。もちろんヘッドラインに出まくってましたけれども。
『そういう点では、私の説明が人々に対して一番無理なく整合的に説明出来るのではないかと考えています。』
そらそうなのだが執行部の説明は違いますし、大体からして政策の建付けが短期勝負になっているというのが大問題にも程があるのですけどね。
・テーパリングもQQEの中かどうかという質問
『(問)(前半割愛)。それともう一つ、この量的・質的金融緩和の継続期間は、2%の物価目標が安定的に持続すると判断されるまで継続するということですけれども、これは、国債の買入を仮に縮小しても、その政策手段自体がオーバーナイトの金利ではなく、マネタリー・ベースであるという政策を続ける限りにおいては、仮に国債の買入を多少縮小したとしても、約束違反にはならないというような考え方が出来るかどうか、この継続についての考え方についてもご意見をお聞かせください。』
『(答)(前半割愛)それから、最後のご質問で、テーパリングとマネタリー・ベース・ターゲティングの関係と理解しましたけれども、現時点で、もちろんテーパリングをするという具体的な計画があるわけではありませんし、このQQEは、マネタリー・ベース・ターゲティングということで、マネタリー・ベースの水準に目標を置いて、その達成手段として国債を買い入れるという枠組みを採っていますので、その枠組み自体は、とりあえずQQEを続けていく中では変えようがないのではないかと思います。』
微妙な答えで説明を回避していますな。MB水準の目標を持って国債を買う、というのがQQEなのであればその目標水準を維持している状態でもその水準が潤沢であればQQEの枠組みになるのですかとかそういう話なのですが、これは回答を避けた感じですな。
2015/12/08
お題「佐藤審議委員金懇挨拶は執行部への砲撃に余念がないようで何より(^^)」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151207/k10010332101000.html
高額療養費制度など見直しへ 歳出抑制案
12月7日 5時13分
うっかり大病に罹れないとかになるのはマジ勘弁でお願いします。
○ちょっくら小ネタ雑談
・今日は6M入札
えーっと本日は6M短国の入札があるのですが、何せ先週金曜日の短国買入が1年とか6Mの入札週でもないのに増額という攻撃をかましてきまして、前週まで短国買入を絞って市場のマイナス金利拡大に配慮したのかと思ったら3M短国入札が実質的には前週よりも堅調(アベレージが強くなったりセカンダリーで跳ねたりという現象は無かったから強くなっていないという言い方もあるが、普通に考えてマイナス5bpから強めのレートが定着してしまっている、というのが妥当でしょ)となっているのに買入を増やすという、マイナス5bpからのマイナス金利に関して日銀がお墨付きを与えたようなプレイが出てしまいましたので、まあどうせ碌な入札にならないでしょうし、そもそも先週の短国買入が増えた時点でこりゃ今週もオペ狙いヒャッハー行けるやん!という話になるのでしょうな。
ちなみに注目というほどの事も無いですが、ここもと延々と3Mとか2Yとかの入札で所謂不明玉が多めに推移している感じでして、さてその手の買いと思われる買いはどこまでやるんでしょうかねえという辺りでして、何せこの四半期入って最初のうちだけは3Mが若干程度のマイナス金利でしたが11月2週からはマイナス3からジャンジャン金利が低下の巻なのであっという間に手持ちがスッカラカンになるというオソロシスな展開ですからねえ。
と、もはや水準どうこうあまり気にもならないのでした。
・遅くなりましたが都合の悪い方のインフレ指標も先週出ています
既に2日に出ているのでご案内だと思いますが俺様向け備忘メモです
http://www.boj.or.jp/research/research_data/mui.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標
下の方に
図表 [PDF 169KB]
データ [ZIP 20KB]
とありまして時系列データも取れるのが実に素敵なのですが、図表の方はアップデートされていまして、『品目別価格変動分布と基調的なインフレ率』というのが2ページ目に出ています。
でもって『(1)消費者物価の個別品目の前年比の分布』『(2)各種コア指標』とあって、(1)の消費者物価の個別品目の前年比の分布というの個別の品目ベースで値上がりと値下がりがどうなっていますかというもので、13年1月は分布の山がマイナス圏にある中で直近は分布の山がプラス圏にありますが、91年時のような2%に山がある状態ではありません、とまあ実に分かりやすい結果になっております。
ということで「山は動いた(どっかで聞いた言葉だな)」けどまだ期待のジャンプが足りませんという事を言いたいのがあまりにも露骨なのがチャーミングというものです。
(2)の各種コア指標は調査統計局謹製レポートでも同じような図表が出ていましたけれども、直近分までアップデートすると、モードの所は上がっているけれどもウェイテッドアベレージは頭打ちしていますがなという所でして、まあ総じて「基調的なインフレを見るとデフレ状況では無くなっているようですが2%物価目標達成には力不足にも程がある」という話になると思うのですが、日銀屁理屈劇場に掛かると都合の良いものだけをピックアップして大勝利宣言をしたり、微妙なものをならべて追加緩和したりと自由自在応用自在ということですねわかります。
○黒田さんのマクロプルーデンスはあくまでも監督ですと(メモ)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151207b.pdf
日本の金融システムの現状とマクロプルーデンス政策
内容的にはまあ割愛という感じなのですが、こちらの中で面白かったのは、マクロプルーンデンスという話の中でBISビュー的な「マクプルの為に金融緩和規模を調整する」というようなお話が物の見事に皆無な所でして、これが麿に掛かるとマクプルの観点から超緩和政策を継続する際には留意しないといけない(キリッ)と来るのとは全然違うなあというメモだけ置いておきます。
#FOMC議事要旨とかドラギちゃんの会見とか積み残されているのだが成敗が追い付かない
○佐藤審議委員の金懇講演は執行部への砲撃をちょこちょこ打ち込んでいるようで
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151207a1.pdf
まずは経済のパートから少々。
・資源価格の弱さは需要要因もあるんじゃネーノという話から始まります
最初が世界経済の話ですが、まずは資源価格の話。
『資源・エネルギー価格の低迷が続くなか、新興国・資源国の成長率が高まらないうえに、先進国でも資源開発関連投資の減少などの影響がみられる。当初は世界経済全体に好影響をもたらすと思われた資源・エネルギー価格の下落には、供給要因だけでなく需要要因、すなわち中国をはじめ新興国の需要減少も相応に影響しているということであろう。』
うむ。
『また、供給要因面をみると、価格メカニズムにより供給が自動調整されるとのオーソドクスな見方も、例えば、資源開発業者が初期投資費用(サンクコスト)回収のため、採算点以下の価格水準でも操業を続けるなか、必ずしも現実に適合しないようにみえる。』
うむ。
『このように考えると、資源・エネルギー価格が短期的に顕著に持ち直すシナリオは描きにくく、資源国の成長率が短期的に高まっていく姿も想定しづらい。』
しらっと展望レポートの見通しにイヤミが打ち込まれています(^^)。
『世界経済の先行きは、先進国の成長の好影響から新興国も減速した状態から次第に脱していくとしても、全体として成長率の上昇ペースは引き続き緩やかなものにとどまる可能性がある。IMFの世界経済見通しもこのところほぼ一貫して下方修正となっている(図表1)。』
でまあこの後リスクの話があって、リスクは(1)米国一本足打法状態なこと、(2)欧州の難民問題が新たに拡大、(3)新興国資源国が本当に戻るのかよという話、となっていますが引用はパスします。
・金融市場の先行き懸念について
次が国際金融市場の話です。
『こうしたなかで先行き留意すべき点は、第一に、市場の流動性低下の影響である。』
さいですな。
『この夏場の世界的な変動の直接のきっかけは中国の人民元レート改革とみられ、中国の通貨・金融当局の情報発信面の課題が各方面から指摘されるところである。ただし、より根本的には、この7月にいわゆるボルカー・ルールが全面施行されるなか、主要なマーケット・メーカーによるリスクテイクが制約を受け、市場の流動性が低下し、アルゴリズム取引や高頻度取引(HFT)など、テクニカルなプレーヤーの存在感が夏場の薄商いのなかで強まったことが相応に影響したのではないかと感じている。夏場以外にも、年末や四半期末は規制によるさまざまな制約から流動性が低下しやすく、些細なきっかけで市場が不安定化することがないか、注意深くモニターしていく必要性を感じている(図表4)。』
図表4というのはタルーロ理事が良く出してくる昨年10月15日の米国長期金利ヒャッハー相場です。
『第二は、ドル調達コストが構造的に高止まる可能性である。』
キタコレ!!
『年末に向けては例年ドル調達ニーズが強まるが、本年はこれに利上げ見通しが重なったことなどもあり、スワップ市場におけるドル転コストや中長期のベーシス・スワップは上昇している(図表5)。邦銀は海外展開を積極化するなかで従来から安定的な調達基盤の拡充に努めてきていると思うが、これもしっかりとモニターしていく必要性を感じている。日本銀行としては、FRBの協力のもと、ドル供給オペというバックストップを用意しているが、金融機関自身が安定的な調達基盤を構築することの重要性については、改めて強調しておきたい。』
あのドル供給オペというのは金利がNY連銀様が決めるレートで、まあNY連銀的にアレをホイホイ使って常設ファシリティの如く使われるのは金融安定化の観点からも望ましくない、という考えのようでして、バックストップではあるのですがどちらかと言えばスティグマ付のディカウントウィンドウ的な物件となっておりますので、アレがあるから市場が火を吹かないというモノでもなく、本当の本当の最後の駆け込み寺という感じではあるのですな。
まあ一方で米国MMF規制とかでプライムMMFに対する風当たりが厳しくなり、トレジャリーオンリーに近い方向になっているので、安定的な調達基盤言いましてもそっちからも逆風なのでアカンヤツやとなっておりますのはご案内の通り。
『第三は、ECBの追加緩和実施に伴う国際金融資本市場への影響である。』
ほほう。
『欧州ではECBによる中銀預金金利のマイナスへの引き下げ前から、国によっては、通貨政策との関連で既にマイナス金利が常態化しているが、今回のECBによる中銀預金金利の引き下げはこうした状態に拍車をかけることになろう。』
うむ。
『指標となるドイツのイールドカーブは、一時、6〜7年ゾーン近くまでマイナス化していた。こうした金利形成が、米国の利上げとあいまって国際金融資本市場における資金フローにどのような影響を及ぼすか、またイールドカーブのフラット化が進むことでECBによる国債買い入れオペの持続可能性に問題が生じないか、後述する日本銀行の国債買い入れの持続可能性の観点から注目している。』
ということで最後はしらっとオペレーションの維持可能性の話が来ています。
・国内経済に関してはそんなに弱気ではない&金融政策だけでは・・・・・という話がしらっと
まあ展望レポートでの見通しよりは若干弱気ではありますが、基本的にそこまで弱気ではないですな。途中は飛ばして企業の態度に関して。
『このように企業が慎重な支出スタンスを維持する背景は、一つには、広い意味でデフレマインドが払拭されていないこともあると思うが、加えて以下の点もあろう。すなわち、足許は過去最高の収益を計上していても、それは売上数量の増加からではなく、円安による海外からの所得の受取の為替差益や資源価格下落による投入コストの低下による。したがって、企業はこれを恒常的な所得の増加と見なさず、固定費増大に慎重である、言い換えれば、企業の利益の成長期待がさほど高まっていないということが考えられる。』
ですねー。
『こうした状況に対し、金融政策面では、日本銀行は、例えば成長基盤強化のための資金供給などにより緩和的な金融環境の実現に従来から取り組んできている。もっとも、成長期待底上げには、金融政策による対応を超えた課題も多く、やはり政府の成長戦略の着実な実行により企業・家計の将来期待を変えていく地道な取り組みが重要と思う。』
一方で黒田総裁は物価2%になるんだからお前ら投資しろと経済団体に説教して回るという大変に地道な取り組みに勤しんでいるのであったwwww
『企業の支出スタンスと関連して、来年度の春季労使交渉についても触れたい。家計消費支出の着実な回復のためには、また欧米諸国との比較で依然低いとみられる人々の中長期的な予想物価上昇率が高まるかどうかは、就業者の持続的な基本給引き上げがポイントの一つであり、来年度の春季労使交渉で3年連続の基本給引き上げとなるかどうかに注目している。』
まあ問題はその幅だし、基本給上がるけど総支給額大して変わらないというマジックは良くある話だったりするのが油断ならんのですがね。
『連合は、来年度に向け2%程度の賃上げ要求を基本方針に掲げているが、基調的な物価上昇や先行きの物価見通しが基本給にどのように織りこまれていくかには不確実性がある。政府に対しては、労働市場の規制緩和など、企業が基本給引き上げを決断しやすくなるような取り組みを期待したい。』
どう見ても連合が当てにならないという書きっぷりにちょっとニヤリとしてしまいますな。
・物価に関しては1%程度は何とか持つでしょうというご案内の説明
でまあ前段の説明が長いのでそこは華麗にスルーしまして、
『以上を念頭に置いたうえで、このところの生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価の動向について論じたい。』
念頭に置くところはそんなに変わった話はしていないのでスルーしましたが。
『同ベースでの物価上昇には、昨年10月末の「量的・質的金融緩和」拡大以降の円相場の下落が寄与しており、先行きは円安傾向一巡に伴い、来年度入り後には伸び率はピークアウトするとの見方がある。もっとも、最近の同ベースの物価上昇を主導する食料工業製品や耐久財は、2013年4月の「量的・質的金融緩和」開始前後からのほぼ一貫した円安基調の下で、ここにきて改めて値上がり傾向が鮮明となっており、単に円安だけでこの間の一連の動きを整合的に説明することもまた無理があるように思われる。私としては、雇用・所得環境が緩やかに改善するなかで、エネルギー価格下落もあり、値上げに対する家計の許容度が広がり、企業もそれに応じて価格設定を幾分強気化しているとみるのが、むしろ妥当なのではないかと考える。』
ということは・・・・・・・・・・・
『それでも、先行きエネルギー価格下落影響が一巡すれば、家計がこれまでのように値上げに寛容であり続けるかどうかは不確実性がある。』
そういう意味では物価がエネルギー寄与分で上がらない方がサステイナブルな物価上昇基調を続けられるという実に皮肉な展開になる訳して。
『さらに、円安傾向が一巡すれば、食料工業製品や耐久財の値上げの動きも一巡する可能性がある。』
まあ東大物価指数とかそんな感じになっている感が。
『こうしたことから、生鮮食品・エネルギーを除く物価の前年比上昇率が1%程度で安定的に推移するかどうかは、来年度の賃金交渉を経て、足許出遅れているサービス価格に値上げの動きが広がっていくかどうかが鍵を握るであろう。』
問題はそんなことを見ている間に今のオペレーションが爆発しかねないことですがその話は後で。
『この点、先に述べたように賃金交渉の先行きに不確実性があり、日用品・耐久財からサービスへと物価上昇のシークエンスがうまく繋がるかどうかについては、下振れリスクはあるものの、私としては、エネルギー価格による影響を除けば、見通し期間を通じて前年比1%程度の上昇率は概ね維持可能と考えている。』
ほほう。
『先般の「展望レポート」では、物価の安定に責任を有する中央銀行のボードメンバーとして、私なりに最も蓋然性の高いシナリオを提示したつもりである。私としては、基調的な物価上昇率が2%にジャンプするかどうかは、人々の中長期的な予想物価上昇率が2%程度にジャンプするかどうかとほぼ同義であり、相応の賃金上昇などをみていない現時点では、見通し期間中に人々の期待がそこまで強気化することは想定しにくいと考えている。』
つまり2016年度後半に2%というのは蓋然性も低く無責任にも程があると言いたいのですねわかります。
・QQEの考え方コーナーでバンバン砲撃を打ち込んでいます
以下佐藤さんの砲撃コーナーの『3.当面の金融政策運営』である。
『「量的・質的金融緩和」実施から2年8ヵ月が過ぎた。この間の経済・市場動向が端的に示すように、デフレマインドの転換を促すという「量的・質的金融緩和」の所期の目的について、私自身は、依然途半ばではあるものの、次第に達成されつつあると評価している。』
ほほー。
『一方、「物価安定の目標」の達成時期は、10月の「展望レポート」では2016年度後半頃に後ずれした(図表12)。』
うむ。
『これを受け、「2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に」2%の「物価安定の目標」を安定的に実現するというコミットメントに対し、各方面からさまざまな意見があることは承知している。』
何かじわじわ来る表現(^^)。
『私としては、こうした状況を踏まえ、このコミットメントについて改めて説明する必要性を感じており、以前に述べたことの繰り返しになるが、再度、私なりの考え方を申し述べたいと思う。』
まあ執行部の考えと違いますけどね!!!
『私としては、このコミットメントは特定の期限を念頭に置いたものでなく、先行き常に2年程度を念頭にできるだけ早期に「物価安定の目標」の実現を目指す一種のローリング・ターゲットと考えている。』
ローリングターゲット来ました。
『また、「物価安定の目標」自体も上下に幅のある柔軟な概念と考えている。こうした考え方は、他の主要国の中央銀行が採用するインフレ目標の枠組みと同様、比較的無理のない現実的な目標設定である。』
今の目標設定は無理がある非現実的な設定だと。
『物価は、短期的には原油価格などに左右されるほか、基調的な物価についても、それに影響を及ぼす予想物価上昇率は、金融政策のほか、賃金交渉の帰趨や成長期待など、必ずしも金融政策で直接コントロールできない要因の影響も受ける。また、以前も申し上げたが、物価は経済の体温であり、中央銀行が直接に操作可能な変数ではない。このため、特定の期限を区切って特定の物価上昇率を目指すという政策運営にはもともと違和感があるし、それに固執すると、中央銀行の信認が低下するリスクも念頭に置く必要があろう。』
執行部に全面砲撃を加えると共に、白川ドクトリン的なお話も思いっきりしていますな。
『ここで「物価安定の目標」における2%の意味について改めて吟味しておきたい。「物価安定の目標」は消費者物価指数の総合で定義され、その基調をみる上での参考計数として、日本銀行は消費者物価指数(除く生鮮食品)を政策委員会の見通しとして示してきた。しかし、欧米と違い、公共料金の粘着性が高く、また民営家賃・帰属家賃が構造的に消費者物価指数への下押しに寄与する統計上の問題があるなか、公式統計上の消費者物価指数と、例えば、東大・一橋大物価指数に示される日用品の値上がりによる人々の体感物価は足許乖離してきているように思われる。』
『販売製品の頻繁なマイナーチェンジによる企業の価格維持戦略も考慮したSRI一橋大学消費者購買単価指数については以前紹介したが、同指数は直近では前年比2%程度の上昇となっており、同指数と対象商品を合わせた消費者物価指数の伸びを上回っている(図表13)。』
ということで・・・・・・・・
『このように人々の体感物価が統計上の消費者物価指数の伸びを上回るなかで、日本銀行が仮に公式統計上の消費者物価指数のみに着目して金融政策運営を行うと、かえって人々が過度の物価上昇を実感し、マインドや実際の消費行動に影響するなど、さまざまな歪みをもたらす可能性には十分留意する必要がある(図表14)。』
図表14というのは物価が上がると遅行してマインドが悪化するという大変に素敵なグラフです。
『重要なのは、経済の活動水準の上昇に応じて賃金の増加とバランスよく物価が上昇することである。こうした点を踏まえると、「物価安定の目標」については、従来から申し上げているように、単に、消費者物価指数の総合が前年比2%になればいいというものではなく、幅広い物価指標を点検していくなかで、その達成状況について、総合的な見地から柔軟に判断していくべきものと考える。』
バランスよく上昇とは黒田さんも言っていますがその中身は全然別の話をしているのがお洒落です。
・QQEの継続に関しての部分で更に佐藤さんが悪態を
『一方、市場では「量的・質的金融緩和」の更なる拡大への期待が依然あるように見受けられる。』
いきなり悪態。
『そうした見方の背景として、先に述べた「物価安定の目標」の解釈の問題のほか、「量的・質的金融緩和」の政策効果に関し、資産のフローの買入れ規模に応じて緩和・引締め効果が生じるとの考え方があるように感じている。』
そこは分からん。
『もっとも、「量的・質的金融緩和」の効果は、理論的には、資産買入れの進捗とともに累積的に高まっていく性質のものである。すなわち、買入規模を維持するもとでも、買入れを続けていく限り緩和効果は強まっていくこととなる。』
市場の片隅で棲息している身として思うのは、途中まではフローの量が重要なのだが、残高が累増してきたところでストック効果が思いっきり出てくるのではないか(閾値は市場の流通玉が需給ひっ迫状態になる辺りなのではないかという気がするがあくまでも感覚的なお話です)と思うのです。
『このため、毎回の金融政策決定会合において、現行の「量的・質的金融緩和」を継続すること自体が重い判断であると私は考えている。』
よし!そろそろ反対に回るんだな!!!!!(だいぶ違う)
『また、日本銀行は年間80兆円のペースで国債のネット保有額を増額することにコミットしているが、先行き日本銀行の保有国債の償還額が増加することを勘案すると、現行の政策継続のもとでもグロスの買い入れ額は増加していく可能性が高い。このため、先行きの政府の国債発行計画にもよるが、国債市場における日本銀行のプレゼンスは一段と高まる可能性がある。こうしたなか、巨額の国債買入れは金融政策目的であり、財政ファイナンス目的ではないという日本銀行の従来からの見解が十分に説得的であり続けるためには、政府の財政健全化へのコミットメントが重要である点も繰り返しておきたい。』
まあジンバブエ先生を日銀審議委員にしたりしている時点でだいぶ怪しいのですが、消費増税先送りでダブル選挙登場に1万ジンバブエドル。
『効果と副作用という点では、緩和効果は理論的には累積的に表れるとはいうものの、昨年10月末の「量的・質的金融緩和」の拡大後の長めのゾーンの金利低下幅が限られるように、買入れ進捗の割に名目金利低下幅という意味での緩和効果は逓減している可能性がある。』
そらここまで下がればねえ。
『もとより政策効果に副作用はつきもので、効果と副作用を比較衡量の上で政策の継続を判断するのが、オーソドクスなアプローチであると思う。』
ジンバブエ置物一派の木内さんへのいちゃもんに軽く砲撃。
『ただし、大胆な資産買入れにより人々の予想形成に訴えかけるという一種のショックセラピーについては、私自身、もともとあまり長く続けることを想定していなかったし、続ければ効果は逓減する一方、副作用は逓増することを懸念している。
しらっと執行部にも砲撃をしています。
・オペレーションの維持可能性はもうちょっと論じて頂きたかったのですが
とはいえ『(3)オペレーションの持続可能性 』というコーナーがあるというのは良い話。
『現行規模の国債買入れを続けるにつれ、市中の国債保有残高は、政府のネット新規発行額と本行のネット買入れ額の差額分だけ減少する。市中保有残高は有限であるので、こうした買い入れを永久に続けることはできない。現実には金融機関側には担保需要などから一定限度の国債を保有する動機があるので、市中残高が枯渇する前段階で、金融機関は日本銀行への国債売却を停止するであろう。』
さいざますな。
『そうしたクリティカル・ポイントがどこにあるかは、その時々の金利水準やイールドカーブの形状により金融機関の売却インセンティブに違いが生じると見込まれ、現時点で蓋然性の高そうな時期を見通すことは困難である。』
まあそうなんですが。
『「量的・質的金融緩和」が所期の効果を発揮し続け、市場の中長期的な予想物価上昇率が高まれば、イールドカーブはスティープ化し、金融機関の売却インセンティブは高まるであろう。反面、デフレマインドの転換が進まず、市場の中長期的な予想物価上昇率も高まらない場合、イールドカーブはフラット化し、金融機関は国債保有への選好を強めるであろう。』
でまあ今は市場が後者状態になっていると。
『このように、日本銀行による巨額の国債買入れは、政策目的の実現の蓋然性が強まれば容易になる反面、実現が困難と見なされればオペレーション自体も困難化する可能性があるという意味で難度の高さを内包している。私としては、政策継続の判断にあたっては、こうしたオペレーションの持続可能性も念頭に置きたい。』
ということで話が終わっていまして、「ローリングターゲットの考え方でやっていく」という話とオペレーションの維持可能性に関する話を繋げて論じて欲しかったなあとは思う所で、ローリングターゲットの考え方を持ち出してオペレーションの限界が来る前に勝ったことにして撤退をするのか、ローリングターゲットなのだから緩和を長期に継続する必要がありオペレーションの見直しを検討する必要があるのかとか、このローリングターゲットの話と政策をどうするという話の繋がりを見えるようにして頂きますと(って現在検討中なのかも知れませんが)もうちょっと盛り上がるのですけどにゃーと思うのでした。
なお、会見ではブルームバーグのヘッドラインを見ると維持可能性を超楽観してマイナス金利は政策効果(キリッ)と言っているようなヘッドラインだったのですが、共同通信配信の会見詳報を見るとそうは言っていないようにしか見えないというまたブルームバーグのヘッドライン詐欺かという風情が漂っていますので会見要旨を見てから再度このオペの維持可能性や市場金利についての見解を拝見したいと思いますです、はい。
2015/12/07
お題「木内審議委員の講演ネタである」
雇用統計で米国今月利上げ織り込み株高なんですからこれはやるしかないですね。
○その前に短国買入とCP買入ェ・・・・・・・・・
金曜のオペオファー(短国とCP買入のみ)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of151204.htm
国庫短期証券買入 5,000 2015年12月8日
CP等買入 5,000 2015年12月9日
オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba151204.htm
国庫短期証券買入18,492 5,000 0.037 0.038
CP等買入 8,611 4,995 0.050 0.060 14.3
というころで、短国買入に関してはここの所2500億円でのオファーだったのですが、今回は5000億円に増額となりまして、日銀の「隙あれば短国買入増額」というスタンスがまた出ましたなという所ではありますな。応札は1.8兆円あったので応札自体は多めですなという所ではありますが、5000億円が現実に日銀に吸い上げられていくというのはやはり需給を確りさせますなあという所で、もとよりあまり気配がないので何ともなのですが、需給はまたタイトな感じではあります。
というのと、こうやってちょっと入札後で物が増えた所を見てすかさず短国買入が増える、というのを見ますと、その前の日に3M入札の足切水準がマイナス5bp水準(しかも極薄案分)と前週よりも実質的には強い入札だった翌日にこういうのを打ち込んでくる、というのは先月末も2年入札激強だったのに何故か翌月の輪番で1-3/3-5の輪番を3000/4000から3500/3500にするというプレイを行ったりと、市場に配慮してるんだか配慮してないんだか良く分からん謎の微調整が一々入るのが不思議調節ではあります。
まー短い所に関しては短国買入の影響か輪番結果の影響があったのかは謎ですけれども、2年ゾーンまで引値軒並みマイナス3bp(2年カレントだけマイナス2.5)になっておりまして、一方で5年は1毛甘の4bpになっていましたから3500/3500にした効果はちったああったのでしょうか、と言いたいですが、単にECBのドラギショックにつられて金利が上昇する中で短期だけは強いというだけの話かもしれませんけどね。
でもってCP買入結果の方も地味にお洒落でして、出来上がりの金利が足切5bpで平均6bpとなっておりまして、前回(10/27)が4000億円の買入オファーに対して足切6.5bpで平均7.3bpとなっておりましたので、順調に金利が低下中となっております。
CPは国債残高確保という点では短国の代替にはならない(当たり前)のですが、資金運用という意味では短国がマイナスもマイナスという状態の中でまともにプラスの金利が出てくるのはCPという事になりますので、1か月以上カレント3Mが盛大なマイナス金利(オペに入らなくて四半期末の残高に跳ねない短いものならプラス金利になる場合も無い訳ではない、為念)ということになりますとそらまあ堅調になりますわなあという感じでございます。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel151130a.pdf
CP・社債等買入のオファー日程について
ということで今月はあと2回短国買入(最後は年末渡なのだが何せ末渡スタートにしておかないと、折角買入をしても全部月末落ちの物になってしまうとかありますからね)があって、5000億円に最後は5500億円とかになっていてこちらでも日銀買入パワー登場という風情になるんでしょうなあとゆーお話ではあります。
しかしまあ何ですな、CP買入って当初はリーマンショックの時にオープン市場がカウンターパーティーリスクの意識からGCレポ取引などが蒸発してしまい、レポとか現先の金利がロンバード水準まで上昇し、現先レート上昇のあおりを食ってCPのレートまで上昇、というような流れになって市場沈静化の為に投下したのが当初のCP買入だったのですけれども、今となっては短国金利はマイナスだわ短い国債も軒並みマイナスだわという状況で、日銀がわざわざCP買入をする意味がどこにあるのかという状態になっているように思えるのですが、この辺りについてどこかで見直しをしないんですかねえとは思うのでした。
○木内審議委員講演は当然ながら木内ワールドを展開
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151203a1.pdf
「量的・質的金融緩和」再考
資本市場研究会における講演要旨
・経済は既に実力にあった状態
経済に関するパートではいつもの説明をしています。『3.経済・物価見通しに関する留意点 』から。
『私は、「量的・質的金融緩和」の政策効果などに助けられ、国内の経済・物価は、現時点での日本経済の実力に概ね見合った安定した状態を、既に取り戻したと考えています。また、展望レポートの見通し期間である
2017 年度にかけても、このような安定した状況が続くことを標準シナリオと考えています。』
これに関しては毎度木内さんが説明していますが、今の経済の実力対比で安定した成長軌道であるという評価をしているんですよね。
『もっとも、こうした私の見方は、展望レポートで示された政策委員の中心的な見通しと比べると、より慎重と言えます。そこで、以下では、私自身の見方に基づいて、経済・物価見通しに関する留意点を幾つか申し述べたいと思います。』
てな訳で木内さんの認識。
『(1)潜在成長率と需給ギャップ 』から。
『日本銀行が 10 月の展望レポートで示した推計では、供給面から日本経済の実力に見合った成長ペースを示す潜在成長率は、0%台前半ないし半ば程度と依然低い水準に止っています(図表5)。また、労働力および生産設備の稼働状況を示す需給ギャップを本年4〜6月時点で−0.7%と推計しており、足もと幾分下振れたとは言え、2013
年末頃から概ねゼロ近傍の中立的な水準を維持しています(図表6)。』
『この点、OECDの推計値をみても、日本の需給ギャップは、他の主要国よりも良好な水準にあります(図表7)。このように需給ギャップが概ね解消された局面においては、景気回復初期のように需給ギャップが拡大した局面と比べると、潜在成長率を大きく上回る成長は実現しにくくなると考えられるほか、人手不足などの供給制約が経済活動に抑制的な影響を及ぼしやすくなると私自身はみています。』
うむ。
『こうしたなか、以下で詳しくみていくように、私自身は、需要面からは、輸出、設備投資、個人消費のそれぞれに下押し要因がある一方、「量的・質的金融緩和」の累積した効果は、当面経済に好影響を及ぼし続けることから、2017
年度にかけて、基調としては、潜在成長率並みの緩やかなペースでの成長が続き、政策委員の中心的な見通しよりは低いながらも、安定した経済・物価情勢が維持されると考えています。』
という評価ですな。
で、次の『(2)海外経済と輸出動向 』というのは要約すると海外は腰折れしないけど下振れリスクという話なので飛ばしまして、『(3)設備投資動向
』に入ります。
・設備投資が伸びるためには
『設備投資は、2015 年度計画をみると概ね強めの内容となっていますが、実際の投資活動は依然として力強さを欠いており、企業の慎重な投資姿勢は大きく崩れてはいないようにみられます。収益環境が明確に好転するなかでも企業の姿勢に変化がみられない背景には、良好な収益環境の持続性に対する不安があると考えられます。』
同意。
『すなわち、企業は、既往の円安やエネルギー価格下落などの交易条件の変化によって一時的に収益環境が改善したとしても、それが潜在成長率の高まりなどの構造的な変化に支えられた持続的な収益環境の改善ではないと判断した場合、潤沢な手許資金を積極的に設備投資に回すようなことはしないと考えられます。』
そらそうですな。
『こうしたなか、企業が設備投資を一段と積極化するためには、この先、政府の成長戦略や人口対策などにも後押しされて、中長期の期待成長率が明確に高まることが欠かせないと思います。』
白川さんの最後に作った政府との共同文書に則ってみれば日銀は金融政策やってるんだから政府も成長戦略やって下さいという話ではあるのですが、物価の方には2%というのが書いてあるのに成長戦略の方はほわっとした書き方しかないのが残念ではある所です。
『他方、設備投資のストック循環に着目すると、設備投資は、2015 年度に増加した後、現時点の期待成長率が今後も続くと仮定すると、2017
年度に向けて、増加率は頭打ち傾向を示す可能性があると私自身は考えています。』
ということで設備投資が出るという執行部の見通しとはここで思いっきりずれてくる。
・個人消費では物価が上がるとダメじゃんという指摘が
次が『(4)個人消費動向 』である。
『個人消費は、雇用・所得環境の改善や緩和的な金融環境といった好環境のもとで底堅さを維持していますが、なお勢いを欠く状態が続いていると思っています。その背景には、消費者による当面の値上げ観測と、賃金上昇期待の低さがあると私自身は考えています。』
置物リフレ理論によりますと当面の値上げ観測(値上げと打とうとして利上げと打ってしまうアタクシの勝手な手はナンナンデショ)があったらそれは需要を拡大させる、ということになっておりますが、現実問題としてはそういうのってダブルデジットのインフレにでもなればそうかも知れんけど、収入も増えないし何となく最近物の値段が高いなあ程度の状態だったら消費が抑制的になるという方が違和感のない動きでございますな、とまあそういう事でしょ。
『特に、本年春先以降、食料品や日用品の価格引き上げが広くみられている一方で、賃金の伸びが緩やかなものに止まっており、これらが消費者心理に悪影響を与えている可能性があるとみています。』
さいですな。
『こうした状況を、金融緩和の効果と合わせてみると、』
キタコレ。
『「量的・質的金融緩和」の導入当初は、政策の影響を受けて実質金利が低下を続ける一方、実質所得の見通しには大きな変化が生じなかったため、将来の消費を前借りする金融緩和効果が生じたものと考えています。しかし、現在の局面では、実質金利の低下が一巡している一方、賃金上昇率が物価上昇率に簡単には追いつかないとの見方が消費者の間に広まっているようにみられることから、当面の値上げ観測の広がりに伴って、実質所得の見通しが悪化し、消費活動が抑制的になっている可能性があります。また、そうした傾向は、年金生活者を含む高齢者世帯や低所得者により顕著に表れうると考えられます。』
まあそうですねと思うのですが、どうも置物先生の先日の講演やら総裁の講演やらを始めとして執行部の方では家計は価格上昇を容認しているということになっているのがうーむという感じで。
・物価の見立て
『(5)物価情勢と物価見通し 』は展望レポートの中で一番低いのですが理由を鑑賞。
『物価情勢について、消費者物価の基調的な動きを、食料・エネルギーを除くベース(いわゆる「コアコア指数」)でみると、足もとで改善傾向がみられます。これには、昨年末から本年初にかけての景気情勢の改善や、既往の円安の効果が、時差を伴って物価の押し上げに寄与している面があると思います。』
ところが・・・・・・・・・・
『しかし、足もとの景気情勢には鈍さがみられること、前年比での円安効果が今後一巡していくこと、川上に位置する企業物価が足もとで明確な下落基調にあることなどを踏まえると、コアコア指数が今後さらに加速傾向を続けていく余地は然程大きくないと私自身は考えています。』
木内さんの物価見通しからしたら順当だが早速来ました。
『ちなみに、このところ、食料品や日用品、耐久消費財などの価格上昇が目立っていますが、この点を企業物価指数で確認すると、上昇しているのは輸入品が中心です。このことは、最近のコアコア指数の上昇が円安の影響を強く受けており、円安効果の一巡で先行き上昇ペースが鈍る可能性を示唆していると考えられます。』
しかも直近の日銀御自慢(?)のコアコアに関しても所詮は円安効果という指摘。
『また、物価の先行きを考えるうえでは、物価と賃金との関係に注目することも重要です。』
ほいな。
『基調的な賃金動向を示す指標の一つである所定内賃金は、直近9月時点で前年比+0.1%に止まっており、伸びは緩やかなものに止まっています(図表
10)。また、先行きの賃金を大きく左右する来年の春季労使交渉での賃上げ率については、今年と比べて不確実性が相応に高いように思います。』
『すなわち、労働需給の逼迫や高水準の企業収益は、過去2年と同様に賃上げに追い風になるとしても、賃金上昇率の更なる押し上げという観点からは、効果は大きくないように思います。また、賃上げ交渉に大きな影響を与える物価上昇率の前年実績については、消費税率引き上げ効果の剥落とエネルギー価格下落の影響から、今年の春季労使交渉の際と比べて低く、賃上げの材料としては勢いに欠けるように思われます。こうしたもとで、実質所得の見通しが伸び悩み、個人消費に抑制的な効果をもたらすことで、基調的な物価上昇率の加速は一巡していくことが予想されます。』
まあそんな感じではありますよね。というかベア何とか%とかやっている間に他の手段で人件費の帳尻を合わせに行くような動きになって結局適当に骨を抜かれるのではないかという悪寒。
『こうしたなか、私は、10 月の展望レポートについて、「2%程度に達する時期は、・・・2016
年度後半頃になる」との表現に反対しましたが、現時点でも、消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率は当面0%程度で推移した後、かなり緩やかに上昇率を高めていくと考えており、2017
年度まで視野に入れても2%に達する可能性は低いとみています。』
だったら何故追加緩和じゃなくてTaperなの、というのは既にご案内の通りでしょうがこの次に参ります。
・今回は自分の毎回の提案についての説明が更に詳しくなった感じで
『(1)「量的・質的金融緩和」と私の提案 』というのいが次でまあメインイベント。
導入直後から反対してる件についての説明は皆様ご案内の通りと思います(いつも通りの話をしていた)ので割愛しまして木内さんの提案内容から。
『今年4月以降は、マネタリーベースおよび長期国債保有残高の増加額を、現行の年間約
80 兆円に相当するペースから、「量的・質的金融緩和」導入時を下回る年間約
45 兆円に相当するペースへと減額することなどを提案し、その後も直近 11 月の金融政策決定会合まで、同様の提案を続けています。』
さいですな。
『これは、「量的・質的金融緩和」導入から2年経過したタイミングで、効果と副作用の比較衡量を改めて慎重に行い、もはや長期国債の買入れペースなどについて、導入時の方針であっても、副作用が効果を上回ると判断したためです。また、日本銀行の長期国債保有残高を、導入時を下回る年間約
45 兆円に相当するペースで増加させる方針に修正すれば、日本銀行の年間買入れ額は国債のカレンダーベース市中発行分の
50%弱程度の水準まで下がるなど、国債市場への過度の圧力が相応に緩和されるほか、国債買入れが早期に限界に達するリスクが軽減されて、国債買入れの持続性・安定性がむしろ当面は高まると考えました。』
「年間買入れ額は国債のカレンダーベース市中発行分の 50%弱程度の水準まで下がる」「国債買入れが早期に限界に達するリスクが軽減」がポイントとな。
『こうした私の提案は、資産買入れ額(フロー)の減額を意図するものであって、資産買入れ残高(ストック)を減額するものではありません。マネタリーベース増加額および長期国債買入れ額を減額しても、残高の積み上がりとともに今後も金融緩和は累積的に強化されていきます。私自身は、当面は、資産買入れ額を段階的に減額し、マネタリーベースと長期国債保有残高が一定となる状態に至ることを目指すのが適当であると考えています。』
いきなり45兆にしないで80から段階的に10づつ減らすでもゴールががそうだというのが見えて来たら売りにくくなる前に外そうってことになるからいきなり45にしなくても効果は似たような感じで出るようにも思えますけどどうでしょうかね。実際にやってみないと分からないけど。
『もっとも、それは、「量的・質的金融緩和」の終了を意味するものではありません。超過準備が解消され、長期国債保有残高が正常化する「量的・質的金融緩和」の終了までには、極めて長い時間を要すると考えられます。そこで、以下では、私の提案の背景にある考え方について、「量的・質的金融緩和」の効果と副作用という観点を軸に、より詳細に述べたいと思います。』
ということでプロコンキター!!!
・QQEのプロコン説明が詳しい
『「量的・質的金融緩和」の効果については、主に実質長期金利の低下を通じて国内民間需要を増加させる点にあると考えています。』
おーここは執行部と一緒。
『この点、実質長期金利の押し下げなどを通じて、これまでに累積した効果は、既に経済にしっかりと定着してきているとみています。特に、@需給ギャップが
2013 年末頃にほぼ解消され、その後も概ね中立的な状態が維持されていること、A企業や家計が経済活動の前提とする中長期の予想物価上昇率と実際の物価上昇率の間のギャップが縮小したことは、「量的・質的金融緩和」の効果の表れと評価しています。』
『もっとも、2014 年半ば頃からは、実質長期金利の低下傾向が一巡し、足もとでは反転の動きもみられているため、追加的な効果は既に明確に逓減してきていると考えています(図表
13)。また、各種サーベイや市場指標から中長期の予想物価上昇率をみると、2%の物価安定目標と整合的な水準まで依然として距離があるもとで、足もとでは一部に下振れ傾向さえみられています(図表
14)。 』
ということで・・・・・・・・・
『私としては、今後も、期待に働きかけるといった日本銀行の政策姿勢のみで、中長期の予想物価上昇率を継続的に高めていくことは困難であると考えています。』
しれっと執行部に盛大な砲撃を加えておりますね!!!!!!!!!!
『また、日本銀行が国債購入残高を増やし続けても実質長期金利が下がりにくくなっており、追加的な効果が明確に逓減する局面に至っているとみられる点を踏まえると、国債買入れ額を減額することで、効果を大きく減殺させることなく、以下でみるような各種副作用を減少させることによって、限界的な効果と副作用のバランスを改善させることができると考えています。』
減額した場合にどうなるかという話ですが、買入を長期的にサステイナブルにすることによって副作用を減らして結果として効果の方が高くなるという話をしたいようです。
『(3)潜在的な副作用への配慮』というのに参りまして・・・・・・・・・・
『「量的・質的金融緩和」の副作用については、潜在的な要素が強いことから、必ずしも現時点で明確になっている訳ではありません。しかし、将来どこかの時点で顕現化すれば、上手く対応することが難しく、手遅れになってしまうリスクには十分注意する必要があります。』
なお決定会合で「理論的にも実証的にも観測されない(キリッ)」と反論していた置物ジンバブエ軍団が居た模様(あの2名以外に考えられないので勝手に置物ジンバブエ軍団にしているが)。
『こうした特性を踏まえて、私は、日本銀行が国債を大量に購入し保有することによって、国債市場を過度に歪めることから派生する様々な問題を特に注視しています。』
まあ既に様々な問題が起きてるけどな!!!!!
『具体的には、「国債市場の流動性や価格発見機能といった市場機能の低下や金融機関の収益悪化が、金融システムの不安定化に繋がりうるリスク」、「金融政策の正常化の過程での金利上昇リスク」、「国債価格の大幅な変動によって、広く金融・資産価格の見直しが生じ、金融・経済に深刻な影響を及ぼすリスク」などです。』
流動性が無くなってショックに対する脆弱性が高まるのは気になりますね、まあこの指摘の中に含まれているんでしょうけれども。
『また、日本銀行による長期国債の大量購入に伴い、「中央銀行による財政ファイナンスとの認識がより高まる可能性」や「国債市場の安定が今後も保たれるとの過度な期待から、金利による財政規律メカニズムが損なわれるリスク」についても留意する必要があると考えています。』
さらに続いて『(4)国債購入の持続性と金利の安定性 』である。
『以上の点に加えて、日本銀行による国債購入の技術的な限界と国債のタームプレミアムの上昇について述べたいと思います。現在のところ、日本銀行による国債買入れオペは円滑に行われており、技術的な問題は目立って表面化していません(図表
15)。』
この図表15というのを見るとどう見てもあと1年しか持ちません本当にありがとうございましたという風情になるんですけどね。
『しかし、今後その限界が突然意識されれば、国債のタームプレミアムの大幅上昇など市場の混乱が生じやすく、それが実体経済や金融市場全体の安定を損ねることも考えられます。』
最初に金利がどどーんと下がってその後流動性が皆無の中で訳の分からん動きをするというイメージ。
『また、海外での金融不安などを受けて、国内金融機関がリスク回避姿勢を強め、国債保有の選好度合いを高めれば、国債需給の逼迫度が高まり、日本銀行による国債購入が俄かに困難化する事態も考えられます。こうした潜在的なリスクは、日本銀行による大規模な国債購入の進捗とともに、着実に高まっていると私自身は考えています。』
そらそうよ。
『今後、経済・物価環境の改善に伴い、期待インフレ率や成長率見通しの引き上げによって名目長期金利が上昇する場合、実体経済や金融市場への影響は大きくないと考えられます。一方、日本銀行の国債購入の持続性に対する不安など、その他の要因からタームプレミアムが上昇することで名目長期金利が上昇する場合は、その影響が深刻なものになる可能性も考えられます。』
ですなあ。
『国債買入れ策のもとで、「タームプレミアムは、現時点の日本銀行の国債保有残高に加えて、将来の日本銀行の国債保有残高の見通しによっても決まる」という考え方に立つと、』
ちなみにこれ置物一派が国債買入やれ言ってた時に使っていた理屈なので、木内さん的にはイヤミをしらっと混ぜているのですよね。
『市場で日本銀行の国債買入れの限界が突然意識された場合、日本銀行による国債買入れの継続期間や国債保有残高維持の期間が予想よりも短くなる、あるいは日本銀行の国債保有残高のピーク水準が低くなるなどの見通し修正が生じ、それがタームプレミアムの大幅な上昇に繋がる可能性が考えられます。』
ですです。
『こうしたリスクは、@国債買入れの限界が表面化するよりも前の段階で、国債買入れ額の減額措置を実施することによって、国債購入の持続性・安定性を高めるとともに、A当面の国債の購入継続や国債保有残高維持の考えを情報発信(フォワード・ガイダンス)することによって、軽減できる余地は比較的大きいと私自身は考えています。』
そらそうなのだが、そもそも中長期で達成するんじゃなくて早期に達成するつもりで打ち込んだ政策で、今でも早期に達成しないと自分の存在意義が飛んでしまう(というか麿ドクトリンに戻ってしまうのであれば麿批判しまくっていた黒田日銀の否定になるからできないということでしょう)のでこういう手段はよーできんと思う。政府から見直してくれと懇願してこない限り。
副作用の話は更に続き『(5)日本銀行の財務の健全性 』である。
『「量的・質的金融緩和」の長期化に伴う副作用としては、日本銀行の収益およびバランスシートに与える影響にも注目しています(図表
16)。「量的・質的金融緩和」のもとで、日本銀行の国債購入に伴う利子収入は、現在、年間1兆円を上回る規模に達しています。』
『その多くは国庫に納付され政府の歳入となるため、日本銀行の国債買入れ策が長期化すると、その分政府の歳出を増やす余裕が生じ、景気浮揚効果を生じさせるとの見方もあります。』
単にタコが自分の足を食っているだけの話なのだが前の審議委員の宮尾さんが卒業講演(という講演ではないけど)でこのジンバブエ理論変形バージョンの話をおっぱじめて腰が抜けるは赤点再履修呼ばわりするわなどという事がありましたな。
『しかし、将来の「量的・質的金融緩和」の正常化の過程では、長期金利が上昇するなかにあっても、現行の会計ルール(償却原価法)のもとでは日本銀行の国債利子収入は緩やかにしか増加しない一方、日銀当座預金に対する付利金利の引き上げによって、日本銀行の利払いが一気に増加し、逆鞘が生じる可能性があります(図表
17)。』
含み損がどうのこうのとかは国債の場合はどうでも良くて、問題は期間損益のマイナスですという話。
『その場合、日本銀行の収益悪化や資本の毀損に繋がるとともに、国庫納付金の減少や滞りが発生し、政府の歳入が減少する事態を招くこととなりえます。しかも、ここで重要なのは、「量的・質的金融緩和」が長期化し、日銀当座預金の水準が高まるほど、その影響が大きくなる見合いにあるということです。』
その通り。
『もちろん、長い目でみれば、長期金利の上昇に伴い、徐々に国債利子収入が増加するとともに逆鞘が解消し、収益環境の改善や自己資本の再積み増しに至ることも予想されますが、その道筋は具体的な金融政策手法や市場金利の動向に依存しており不確実性が高いうえ、相当の時間を要することが考えられます。こうした潜在的なリスクを考慮すれば、先ほど述べた景気浮揚効果への期待は容易には高まらないと思います。』
うむ。
『加えて、日本銀行の収益悪化や自己資本の毀損が日本銀行の業務に直接支障を来すものではないとしても、日本銀行の財務の健全性に対する不安から、通貨価値の安定に何らかの悪影響を及ぼす可能性にも留意する必要があると思います。』
然り。
『また、日本銀行による国庫納付金の減少を受けて、それ以前はみえにくかった「量的・質的金融緩和」のコストが、国民に明確に認識されるきっかけになる点も重要です。これは、日本銀行が、「量的・質的金融緩和」を通じて、政策的な所得配分に強く関わったことが、国民の間に広く認知されることでもあります。こうした問題は、「量的・質的金融緩和」が長期化するに及んで、より深刻度合いを強めていく点には十分に留意しておく必要があると考えています。
これは重要な論点ですね。
・プロコン考えて長期的に維持可能な政策にしろという話の間にしらっとネタが
『(6)今後の金融政策運営のあり方 』ですけど。
『これまでみてきたように、「量的・質的金融緩和」の副作用には様々なものがありますが、これら副作用は、「量的・質的金融緩和」の継続とともに逓減することなく、増加を続けていると考えています。また、「量的・質的金融緩和」は、正常化に着手してもその過程を完了するまでに相当の時間を要することを踏まえると、先行き相当な期間に亘って生じうる副作用を十分に考慮する必要があり、伝統的な金利政策と比べて格段にフォワード・ルッキングな政策運営を心掛けることが重要です。』
なるほど。
『この点を踏まえて、私は、短期的な環境変化に対して「量的・質的金融緩和」の拡大措置をもって対応するといったファイン・チューニング的な金融政策手法は妥当ではないと考えています。』
どうでも良い規模だったらファインチューニングで対応だったと思うの。
『一方で、金融政策は特定の手段に依存するのではなく、各種手段を組み合わせながら柔軟かつ総合的に運営されるべきであると考えています。したがって、経済・物価情勢や金融環境が著しく悪化するような事態が起きれば、「量的・質的金融緩和」におけるマネタリーベースの年間増加目標額に拘らず、一時的に潤沢な円資金・外貨資金の供給を実施するなど、「量的・質的金融緩和」の拡大とは異なる追加的措置を検討する余地があると私自身は考えています。』
しらっと「外貨資金の供給」とかFRBがトサカを立てそうなネタを打ち込んでいるのがチャーミング。
・物価安定は中長期的にというのはご案内の通りですがせっかくなので鑑賞
『(7)「物価安定の目標」の考え方 』というのが最後の所。
『最後に、今後の金融政策運営方針と深く関わる「物価安定の目標」について、私自身の考えを申し上げたいと思います。私は、これまで述べてきた金融市場調節・資産買入れ方針の修正(国債買入れ額の減額等)提案に加えて、2%の「物価安定の目標」の達成時期を2年程度と限定せず、「中長期」の目標と位置付けることを提案しています。これら2つの提案は、以下にみるように一体であると言えます。』
まあご案内とは思いますがせっかくこうやって纏まった説明があるので鑑賞鑑賞。
『日本銀行が掲げる2%の「物価安定の目標」は、物価上昇率を一時的にではなく安定的に2%程度で持続させることを目指すものです。その実現に向けては、企業や家計が経済活動の前提とする中長期の予想物価上昇率が2%程度に達するだけでなく、その水準で安定することが必要条件になると考えています。』
そらそうよ。
『また、企業や家計の中長期の予想物価上昇率は、日本銀行が掲げる物価目標の水準や、財・サービスおよび労働市場の需給関係、実際の物価上昇率の動向などの要因よりも、潜在成長率や労働生産性上昇率など供給側の要因、いわば経済の実力とも言える成長力によって決まる部分が大きいと考えています。この点から、私自身は、2%という物価目標水準は、現時点では日本経済の実力をかなり上回っていると思います(図表
18、19)。』
麿ドクトリンキタコレ!
『したがって、物価上昇率の基調を高めるような構造変化が一段と進まない限り、金融政策のみで安定的に2%の物価目標を実現することは、現時点では難しいと考えています。こうしたなか、金融政策を通じて短期間で経済の実力以上に物価を押し上げようとすれば、経済・物価の安定をむしろ損ないかねないと考えています。』
これが正に麿ドクトリンでして、黒田ドクトリンはそうではなくて2%の物価安定目標は潜在成長率などのようなものから決まるものではなくて、金融政策のみで達成が可能なものであるという話なので、中長期的に達成という話って自体は海外だってそうジャンとは思ってもこの部分が相容れないので、黒田さんがここをブレークスルーするのは(政府が泣きを入れてミッションが変更にならない限りは)難しいのよね。
『また、経済の実力を高めるためには、企業の技術革新とそれを生産性向上に繋げる設備投資の積極化が必要となります。企業の国内での設備投資活動を積極化させ、資本ストックの蓄積を通じて潜在成長率の上昇に結びつけるためには、企業の中長期的な内需の成長率見通しを高めるような政府による各種施策も必要となります。』
『既に述べたように、「量的・質的金融緩和」は相当の成果を挙げたと考えています。こうした現状のもと、経済政策全体の中で金融政策が今後担うべき役割は、良好な金融環境の維持を通じて、生産性上昇率や潜在成長率が2%の物価上昇率と整合的になる水準まで高まるよう、政府や企業の取り組みを側面から粘り強く支えることに重点を移していくことにあると私自身は考えています(図表
20)。』
というスタンスになっている訳で、これは最終的に政府がどういう風に考えるかということによって決まると思いますし、政府の方としてはフォワードルッキングにこりゃマズイとなって泣きを入れてくるのか、それとも日銀のオペが明確に爆発して慌てて直すことになるのかというのはまだ良く分からん。アホじゃなかったら前者になる筈なのだが・・・・・・・・・・・・
『そのためには、将来、金融市場の大きな混乱に繋がりうるような金融緩和の副作用を軽減し、先行きのリスクや不確実性の低下に努めることで、景気が現在の経済の実力(潜在成長率)に見合ったペースで、緩やかながらも息の長い回復を続けていけるような政策運営を行うことが重要です。現在私が提案している金融市場調節・資産買入れ方針の修正は、こうした考え方に基づいたものであり、2%の物価安定目標の実現のためには、この方がむしろ近道であると考えています。』
ということで、従来の木内さんの主張ではありますが、詳しく説明しているので後半ほぼ全文引用になってしまいました(大汗)。
2015/12/04
お題「ECBレビュー雑談/短国金利事実上低下のようなもん/置物師匠の会見である」
ネタが多すぎますな、片付きません><;
・・・・・・という事で本日は木内さんの講演まで手が回りませんすいませんすいませんすいません
○ECBですがやっぱりこれは逐次投入っぽいですよねえ
・預金デポジット金利10bp引き下げとな
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2015/html/pr151203.en.html
Monetary policy decisions
3 December 2015
『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the
interest rate on the deposit facility will be decreased by 10 basis points
to -0.30%, with effect from 9 December 2015.』
『The interest rate on the main refinancing operations and the interest
rate on the marginal lending facility will remain unchanged at 0.05% and
0.30% respectively.』
『Further monetary policy measures will be communicated by the President
of the ECB at a press conference starting at 14:30 CET today.』
ということで一発目に出たのが10bpと、期待の範囲内では一番しょぼい利下げになっておりましたが、会見でその他の説明があるので日本の22時半からの会見を(全部聞いていると長くなるので)質疑の前半位まで聞いていたのですがね。
・会見での説明:半年程度の時間稼ぎ???
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is151203.en.html
Introductory statement to the press conference
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 3 December 2015
会見開始前にカメラマンがいつまで経ってもどかないので係りの人がはいはい引いて引いてとやっている時に「Good
Night」と言っていたのはワロタですが。
『Ladies and gentlemen, the Vice-President and I are very pleased to welcome
you to our press conference. We will now report on the outcome of today’s
meeting of the Governing Council, which was also attended by the Commission
Vice-President, Mr Dombrovskis.』
ということで。
『Based on our regular economic and monetary analyses, we today conducted
a thorough assessment of the strength and persistence of the factors that
are currently slowing the return of inflation to levels below, but close
to, 2% in the medium term and re-examined the degree of monetary accommodation.
As a result, the Governing Council took the following decisions in the
pursuit of its price stability objective:』
足元の物価が動きはマンデート達成に向けた動きが鈍化していることから、金融緩和の度合いを更に強化すべきとの結論になりましたということで・・・・・・・・・
『First, as regards the key ECB interest rates, we decided to lower the
interest rate on the deposit facility by 10 basis points to -0.30%. The
interest rate on the main refinancing operations and the rate on the marginal
lending facility will remain unchanged at their current levels of 0.05%
and 0.30% respectively.』
預金ファシリティ金利だげ10bp下げてコリドアは結果的に拡大ですね。
『Second, as regards non-standard monetary policy measures, we decided
to extend the asset purchase programme (APP). The monthly purchases of
ユーロ60 billion under the APP are now intended to run until the end of
March 2017, or beyond, if necessary, and in any case until the Governing
Council sees a sustained adjustment in the path of inflation consistent
with its aim of achieving inflation rates below, but close to, 2% over
the medium term.』
APPについては買入規模の増額は行わず、期間は半年延長、ということで、期待を思いっきり煽った割には単に「半年先送りの時間稼ぎ」的な内容になっております。米国が利上げした後の状況を見ながら考える時間を稼ぐという形ですな。
『Third, we decided to reinvest the principal payments on the securities
purchased under the APP as they mature, for as long as necessary. This
will contribute both to favourable liquidity conditions and to an appropriate
monetary policy stance. The technical details will be communicated in due
time.』
償還金の再投資を実施する、ということでこれはこれで大きなネタではあるのですが、実際問題としてどういう形の再投資をするのかとか、その継続期間も「for
as long as necessary」とか訳分からん内容になっていまして、これが凄い勢いでの買入になるのか、やったふりの骨抜きになるのかが良く分からん。まあ全部再投資をするとなるとそこそこインパクトあり。
『Fourth, we decided to include, in the public sector purchase programme,
euro-denominated marketable debt instruments issued by regional and local
governments located in the euro area in the list of assets that are eligible
for regular purchases by the respective national central banks.』
PSPPでの買入に地方政府などの発行した債券を加える、ということでして、緩和拡大と言えば緩和拡大なのですが、それよりは買入対象になる国債が足りないので準国債というイメージで追加をしたというような感じもします。
『Fifth, we decided to continue conducting the main refinancing operations
and three-month longer-term refinancing operations as fixed rate tender
procedures with full allotment for as long as necessary, and at least until
the end of the last reserve maintenance period of 2017.』
通常のMROと3MLTROについて引き続きフルアロットメントで実施します2017年の最後の準備預金積み期間までそれを継続しますというお話。
『Today’s decisions were taken in order to secure a return of inflation
rates towards levels that are below, but close to, 2% and thereby to anchor
medium-term inflation expectations.』
2%に戻るための経路をより強化してインフレ期待をアンカーさせるというのが目的。
『The latest staff projections incorporate the favourable financial market
developments following our last monetary policy meeting. They still indicate
continued downside risks to the inflation outlook and slightly weaker inflation
dynamics than previously expected. This follows downward revisions in earlier
projection exercises. The persistence of low inflation rates reflects sizeable
economic slack weighing on domestic price pressures and headwinds from
the external environment.』
基本的に会見でもそうなのですが、「これまでの金融政策は効果を発揮している」という話をしながら、経済に下振れリスクがある点、物価の弱い状況が継続していてインフレ期待が弱まるリスクがある点、というのを概ね今回の追加緩和の理由にしています。
『Our new measures will ensure accommodative financial conditions and further
strengthen the substantial easing impact of the measures taken since June
2014, which have had significant positive effects on financing conditions,
credit and the real economy.』
先日ネタにしたドラギ講演でもそうですし、今日引用しませんが冒頭声明の最後の方や会見でも説明があったのですが、従来の金融政策の効果として、上記の「クレジット環境の緩和」というのを挙げていますね。
『Today’s decisions also reinforce the momentum of the euro area’s economic
recovery and strengthen its resilience against recent global economic shocks.』
本日の決定は回復力を強めるのと、グローバルショックに対してレジリアントにするためと。
『The Governing Council will closely monitor the evolution in the outlook
for price stability and, if warranted, is willing and able to act by using
all the instruments available within its mandate in order to maintain an
appropriate degree of monetary accommodation. In particular, the Governing
Council recalls that the APP provides sufficient flexibility in terms of
adjusting its size, composition and duration.』
ということで、必要があれば政策の調整をしまう(キリッ)というお話ですな。
・・・・・・・・・・・・でですね、償還再投資の所がどういう形になるのかが気になる(出し方によってだいぶイメージが違ってくる)のですが、その部分をさておきますと、今回は出尽くし感を起こさないようにした、と言えば格好が良いですが、ボードをまとめきれなかったからAPPの額拡大みたいなのを出せなかったという事なのではないかと思われますし、APPの期間を1年ではなく半年延長というのは、要は米国の動きによる影響を見てまた仕切り直しましょうというお話なのでしょうなあと。
しかし市場はどっちかと言うと今回は全部出します攻撃をしてくるかの如きな感じだったのに、この小出し感満載に見える動きだと、暫くするとまたクレクレ攻撃が来るんでしょうなあとは思うのですが、期間半年延長と来ましたから、一応半年程度は猶予をもらえるのかも知れませんし、貰えないかも知れません。
なお会見は前半位しか聞いていない(夜遅くなるから^^)ですが、お前話が違うじゃねえか(規模的に)とか、今までの政策効果はどうなってるんですかとか、追加の余地はまだあるんですかとか、中々意地の悪い質問がゴリゴリ飛んでいた気がします。
ということで会見詳細は週末読む。
○短国ェ・・・・・・・・・・・・・・・・
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20151203.htm
(3)募入最低価格 100円01銭3厘5毛(募入最高利回り)(-0.0502%)
(4)募入最低価格における案分比率 3.9952%
(5)募入平均価格 100円01銭7厘3毛(募入平均利回り)(-0.0644%)
アイヤーという感じでして、平均落札は前回のマイナス8bpレベルからマイナス縮小したのですけれども、足切がマイナス5bp台に上昇しておりまして(前回はマイナス3bp台)、テールが短くなっているという結果になっております。
ということはつまり「この水準で皆さんの目線が定まってきました」という事でございまして、需給が緩んでゼロ近くの金利に戻ってくるどころか金利水準がマイナス5bpまたはそれよりもマイナスの大きい所、という感じで認定されたようなものでして、おうこれはどういう事やという大変にあばばばばーな状況になっております。しかもいわゆる不明玉が2兆円以上ありまして、何か海外需要とお家の事情需要がかなりしっかりしているというのを示した格好になりました。
#セカンダリーはマイナス7レベルなのでまあ強いんでしょ
ということですので、本日の短国買入タイムも絶賛念仏タイムとなることになるんでしょう、
○師匠の会見が益々置物らしくなくなっている件
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1512b.pdf
・置物師匠理論も無いし威勢の良いトーンも無かったりする師匠である
『(問) 黒田総裁は、先日名古屋で物価と賃金は同調的に動くとして物価のパスを考えていく上で、賃金も上がっていくことを期待していると述べられました。その上で
2%の物価目標の早期達成のために必要であれば躊躇なく政策を調整するとの考えに全く変わりはないとも述べています。これは物価上昇につながる労使双方の賃上げへのマインドが弱くて賃上げが進まない場合に追加緩和も辞さないとの示唆と受け止められます。』
さいですな、まあそれで何に効くのかは知らんが。
『本日の岩田副総裁の講演の内容をみると賃金交渉については細かく触れられていません。物価の基調を決めるのは賃金のみではないということや、金融緩和は十分になされているというようにも取れますが、それは総裁と見方が異なるということでしょうか。また、総裁ほど賃金上昇に対するリスクを仮に重視されないとなると、春闘の賃上げが前年を下回ったとしても物価上昇はいずれなされるので待つとの見方をされているのでしょうか。(後半割愛)』
元々置物理論も無いのですが、そもそも威勢が良くない感じになっているのもありまして。
『(答) 政策委員会の他のメンバーへのコメントは差し控えたいと思います。私の考えを申し上げますと、本日の金融経済懇談会でも話をしましたが、まず物価の基調がどういう状況にあるかということを判断するということです。その場合、エネルギー価格がこれだけ安くなっていることが撹乱要因になっていますので、物価全体を含めて色々と指標をみるわけですが、エネルギーを除いた基調をみることが重要であると話しました。それから需給ギャップがどのように縮んでいるか、雇用などがどのような状況にあるかも判断材料です。雇用がタイトであればあるほど、結局賃金が上昇しながら物価が上昇すると思っています。』
マネタリーベース直線一気理論がすっかりなくなっている・・・・・・・・・・・・個別物価と一般物価は別の問題とか思いっきり言っていたのはどこへ
『それからもう 1 つ大切なのは、予想物価上昇率です。これは人々の現在の行動は、将来どうなると予想しているかに依存するためです。予想物価上昇率に関しては、弱めの指標があるということですが、例えばBEIなどは弱めであったものが最近は反転しているため、こうした指標の動きは中長期的にみていきたいと考えています。』
ふーん。
『そのほか本日の講演ではあまり述べませんでしたが、物価の基調を判断する上で、価格が上がっている品目と下がっている品目の比率の差をみると、現在は上がっている品目の比率の方が下がっている品目の比率を
4 割くらい上回っていて、特に 15 年度以降、上がっている品目の比率が増えているという特色があります。あるいは、東京大学や一橋大学の日次・週次物価指数も一つの参考指標です。これも昨年の消費増税後の動きと最近の動きとでは、最近の方が上がっています。』
最近足元で頭打ちだけどな。
『ということは、逆に家計の方もある程度物価の上昇、価格の上昇を受容するようになっていると思います。』
もうちょっとこの先を見ないと。本当に容認しているなら消費がもっと強くないとおかしい。
『予想物価上昇率をみる上では、色々な指標をみていく必要があると思いますが、そういったことが物価全体の動向あるいは将来の動向をみる上で必要です。こうした動向について、下振れリスクが非常に大きい、うっかりするとデフレに戻ってしまうリスクがあることに注視しながら金融政策で対応していくことを考えています。』
という認識なら追加緩和なのではないかと思うのだが・・・・・・・・・・・
・質問が微妙にふわっとしているのだが答えの方が中々
『(問) 2 点お伺いしたいのですが、賃金の関連で、賃金と物価というのはバランス良く上昇することが望ましいということを日本銀行としてはおっしゃっていると思いますが、賃金というのは日本銀行が決定できる要因ではないと思いますので、もしこの賃金交渉が遅れる、弱かった場合、それが日本銀行の政策に与える影響についてはどのようにお考えでしょうか。(後半割愛)』
『(答) 賃金があまりに遅れて上がらないというときは、物価も上がり方が遅れると思います。賃金と物価は割合同調して上がります。物価と賃金のどちらの上がり方が大きくなるかは、労働生産性の向上がどうなるかに最終的には依存しますが、大体は景気が回復していく過程で生産性は上がりますので、賃金も物価も上がってくるという状況が続くと思います。』
従来は物価が上がってインフレ期待が上がれば投資も消費も出て、それが生産や雇用に繋がるのでウハウハという話だったと思うのですが・・・・・・・・・・・
『ですから、賃金が上がらないで物価だけが先行して上がるということがもし起こるとすると、それは雇用が増えない状況だと考えられます。雇用が増えないので賃金が上がらないのですが、物価だけが上がる、この雇用があまり増えないで失業率が高止まりしていて物価が上がるというのは、いわゆるスタグフレーションです。そういう状況にはならないように金融政策を運営したいと思います。』
リフレ派の辞書にはスタグフレーションという言葉は無かった筈で、マネタリーな現象である物価がマイルドに上昇することによって全てが上手く回るのだから悪い物価上昇みたいなのは無いということだったのではないかと。
『ですから、雇用が増えているということは賃金も上がり、物価も上がり、完全雇用に近付いている、あるいはすでに完全雇用だという見方もありますが、いずれにしても雇用が改善しながら物価が上がるのであれば、賃金も必ず上がると思います。若干のラグはあるかもしれませんが、中長期的にはそういう傾向がありますので、あまり心配はしていません。むしろ、雇用がどんどん悪くなることの方が注視しなければいけないことだと思っています。(後半割愛)』
ということは雇用の方がマシならそのうち賃金が上がるので問題ないという説明じゃな。
・名目金利の低下についてのコメントで置物にしてはいいこと言った
『(問) 金利のことを伺います。最近、期間の短いところの金利がマイナス圏になって、徐々にマイナスが深くなっているような感じですが、今の金融政策を続けることで、今すでにマイナスになっているところが、より深いマイナスになっていくということについて、政策的な効果をどのようにお考えでしょうか。』
『(答) 現在の金融政策は、名目金利を引き下げるのと併せて、予想インフレ率を引き上げることを目指しています。金融政策がだんだんと効果を発揮して実際の経済活動も良くなってくれば、予想インフレ率が上がるにつれて、名目金利が上がるということは許容できることだと思います。』
これは実に仰る通り。
『名目金利がまだ上がらないということは、金利を引き下げる日本銀行の国債買入れの力の方が非常に強くて、まだまだデフレ脱却への道は半ばだということを表していると思います。』
何という正論という所で、そもそも期待の変化を伴ってしかも物価安定目標は2%なのですから、日銀の政策が効果を出して2%の物価安定目標に整合的な将来が見えているのであれば、当たり前ですが今の名目金利で収まる訳ではないのですからして、日銀が買って金利が下がって「政策効果です(キリッ)」とかドヤ顔で言い出す方が頭の毛を抜かれるべき存在という事です。
『ですから、デフレ脱却の道がまだ半ばではあるけれども、これから半ばを過ぎてくることを期待しています。そうなってくれば、名目金利も少しずつ上がる状況になってきます。しかし、実質金利は、予想インフレ率が上がっている分だけ、下がっていくという状況が続くだろうと思っています。それによって、デフレからの脱却が本物となり、安定的な
2%程度に向けて物価が収斂していくだろうと考えています。』
発言が微妙に要領を得ませんが、要はインフレ期待が上がる事を期待していて、その時には名目金利も上がっているかもしれないけれれども、実質金利に関しては日銀買入で名目金利の上昇を抑えているんだからその分低くて政策効果が出てきますという話をしている模様。
『ですから、今がデフレ脱却の道半ばということが名目金利の低さを作り出している一つの要因であると思っています。』
他の総裁副総裁はこういう話をしないで「金利低下は政策効果(キリッ)」の一点張りな訳ですが、置物師匠なのに置物とは思えない良い事を言った!感動した!!
#なおそんなの普通の話ではないか、という事を言ってはいけません
・質疑の最後にこんなのが
『(問) 2 点あります。今の話にも絡むのですが、元々なるべく早期に 2%を達成するということでこの政策を始められたのですが、一方で今の大規模な金融緩和策が長引くことによる限界をどのように感じていますでしょうか。』
政策の限界について。
『また、岩田副総裁は元々就任のときに、2 年で 2%に達しない場合には、辞めるという責任の取り方もある、とおっしゃっていたのですけれども、今の見通しだと丸
4 年近く、政策を始めてからかかるわけです。副総裁として、責任の取られ方であったり、今後、説明を国民に対してどのように行うのかというところを改めて伺えればと思います。』
キタコレ。
『(答) 現在、物価安定の目標の達成が遅れている最大の理由は、原油価格が一時期
6 割も下がって、一旦上がるのですが、また下がってきて、最近でも低迷しているという状況です。原油価格の低下が永遠に続けば、物価に対して下押し圧力が続きますが、こういう短期的で急激な変化があれば、どこの国の中央銀行でもそうですが、物価安定の目標からは外れるわけです。』
『外れたからといって、どこの中央銀行も大幅な緩和をしていないのは、原油価格の変化で物価安定目標の達成が少し後ずれすることは許容するというのが、先進国の多くの中央銀行の、あるいはその先進国の人たちの、共通の理解だからだと思います。』
2年で達成するのが世界標準でコミットメント達成しなかたら責任を取らないとコミットメントに信頼が得られない、と言っていたあの置物師匠はどこにいってしまったのでしょうか??????
『なかなか予想もできなかったことが起こっているわけですから、金融政策は最善を尽くすけれども、どうしても物価目標の達成は遅れるということで国民にも理解して頂きたい。』
焼き土下座マダー?????
『もう 1 つ、』
来たか?とおもわせるものの・・・・・・・・
『原油価格が下がるというのは物価の下押し圧力ですが、それ自体は経済には中長期的には良い影響を与えるということです。』
ただの言い訳の継続でした。
『その良い影響というのは、エネルギー以外の価格が上がっていることにもみえるわけです。金融政策を十分緩和していることが前提ですが、物価の基調を中長期的に上げる力も持っているということであり、そこの兼ね合いをみながら、金融政策を運営していくということです。主要先進国では日本銀行以外でも、原油価格が急激に下がったということをもって、物価安定の目標の達成時期が遅れるから、猛烈な金融緩和をするというような金融政策は、標準的な金融政策の理論や実践に照らしても、考えにくいということです。』
標準的な金融政策の理論では一般物価は貨幣的現象で金融政策だけで2年程度で達成する筈だったと思うのですがどうなったのでしょうか・・・・・・・・・・・・・
ということで、置物師匠の中の人が変わってしまったのではないかという位に毒気が抜けたというか腑抜け状態になっておりまして、この調子だと2%早期達成絶対やるぞーと裸踊りをしているのは黒田総裁だけで、ついに張本人の置物師匠まで逃げ出しつつあるのではないかと思うと爆笑の発作を禁じえませんな、うんうん。
#木内さんの講演は時間間に合わないので勘弁(すいません)
2015/12/03
お題「今日は3M入札/イエレン議長発言メモ/置物師匠の講演から置物理論成分がすっかり消滅気味ですな」
相変わらずネタが多い訳ですが。
○市場雑談メモ
・今日は3M短国入札ですが・・・・・・・・・・・・・
ええまあ今日は3M短国入札なのですが、
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
こちらのTKRR見てますとT+1翌日物GCレートは順調に低下していて世の中に国債の在庫が軽くなっている事が示されていますし、それよりもスポット1MのGCレートがスポ末年末越えになって以降-0.020→-0.030→-0.040→-0.050と日々順調に低下しているという実にこうあばばばばーな状況が続いております。
・・・・・・・・・という状況の中で3M短国の入札が前回から甘くなって落札金利のマイナスが浅くなってくるというような流れになると大変に素敵なのですが、どう見てもそういう流れになりそうもありません本当にありがとうございました。
てな訳で本日も落札結果を念仏を唱えて待ちたいと思います、ちーん。
・日銀買入短国残高
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/
今回は先々週金曜の2500億円に減額された短国買入分が前回との差分として反映されますが、物の見事に1年新発短国1銘柄2500億円で入っていまして、まあそうでしょうなあという結果。
ちなみに1月償還と2月償還の短国ですけれども、1月足が40744億円、2月足が48690億円になっておりまして、もしかしたら2月足はもうちょっと入るかもしれませんけれども、基本的にここから先は3Mが入っても3月足以降になると思いますので、1月2月の日銀保有短国の償還はまあ上記の額になるんでしょうなあと。
となりますと、日銀保有短国の残高維持位のペースでの買入だとすると1月は何気に週1兆円の買入ですかそうですかうーむという風情ではありまして、まあ1月どうなるのかとか考える前に今月の3M入札が4回有る訳ですが、この間に海外とか担保需要とか保有国債残高帳尻ニーズとかで短国買入が低水準で推移する(はずなのですが)のとのバランスがどうなるのかというお話の方が先ですが、年末越えに関してはTKRRの1Mを見ているとニーズが飽和するどころか更に厳しくなっているように見えるので中々のあばばばばーな感じで頭がクラクラしますな。
#年初になって年末跨ぎの帳尻需要分のバランスが崩れるタイミングはあるのかも知れませんが
○イエレン議長のスピーチ
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20151202a.htm
Chair Janet L. Yellen
At the Economic Club of Washington, Washington, D.C.
December 2, 2015
The Economic Outlook and Monetary Policy
全力でお題のままで小見出しが『The Economic Outlook』『Monetary Policy』なので置物師匠ネタとかなかったら細々読むのですが置物師匠ネタもありますのでほんのちょっとだけ斜め読み。
経済見通しの所に関しては物価の所(最後の部分)だけ見てみましょう(どうせ途中はお察しの内容ですから)。
『Regarding U.S. inflation, I anticipate that the drag from the large declines
in prices for crude oil and imports over the past year and a half will
diminish next year. With less downward pressure on inflation from these
factors and some upward pressure from a further tightening in U.S. labor
and product markets, I expect inflation to move up to the FOMC's 2 percent
objective over the next few years.』
向こう数年で2%に達する見通しというのは順当な話ですが。
『Of course, inflation expectations play an important role in the inflation
process, and my forecast of a return to our 2 percent objective over the
medium term relies on a judgment that longer-term inflation expectations
remain reasonably well anchored. In this regard, recent measures from the
Survey of Professional Forecasters, the Blue Chip Economic Indicators,
and the Survey of Primary Dealers have continued to be generally stable.』
この後にインフレ期待が重要というのが来ますな。
『The measure of longer-term inflation expectations from the University
of Michigan Surveys of Consumers, in contrast, has lately edged below its
typical range in recent years. However, this measure often seems to respond
modestly, though temporarily, to large changes in actual inflation, and
the very low readings on headline inflation over the past year may help
explain some of the recent decline in the Michigan measure.6 Market-based
measures of inflation compensation have moved up some in recent weeks after
declining to historically low levels earlier in the fall. While the low
level of these measures appears to reflect, at least in part, changes in
risk and liquidity premiums, we will continue to monitor this development
closely.』
一部のサーベイ指標や市場のBEIなどに弱めのものがありますがこれらについては一時的であったりすると思われますということではあるものの、注意しますということで・・・・・・・・
『Convincing evidence that longer-term inflation expectations have moved
lower would be a concern because declines in consumer and business expectations
about inflation could put downward pressure on actual inflation, making
the attainment of our 2 percent inflation goal more difficult.』
ということでして、期待の低下について懸念している面はあるのですが、この辺に関しては「利上げで却ってコンフィデンスが高まる」とか言い出しそうではありますな。ただまあこの辺を警戒している、というのは要するに利上げを慎重に行いますよと言いたいんでしょ。
でもって『Monetary Policy』ですけど、まあ次回利上げしますとか上げペースは慎重とかそういう話は大体想定通りのようですが、最近この話していますなあというパラグラフを2つほど。
『However, we must also take into account the well-documented lags in the
effects of monetary policy.8 Were the FOMC to delay the start of policy
normalization for too long, we would likely end up having to tighten policy
relatively abruptly to keep the economy from significantly overshooting
both of our goals. Such an abrupt tightening would risk disrupting financial
markets and perhaps even inadvertently push the economy into recession.』
『Moreover, holding the federal funds rate at its current level for too
long could also encourage excessive risk-taking and thus undermine financial
stability.』
ということで、初回利上げが遅れるとその後利上げペースを速めないといけませんという話は毎度している通りですが、最近はこの金融安定化に関する指摘を他の連銀の人(ネタにするのに追いついてないけど先々週のカプラン講演とか)もしていたり、FOMC議事要旨の方でも出ていたりという風になっていて、Taperingトークの時にも当時のスタイン理事がバリバリのBISビューチックな話をしていましたけれども、利上げ開始という中でこのトピックが頻発するようになっているのは中央銀行の仕様だなあと思ってしまうのでありました。
でまあそういう発想だと市場がたぶん思っているような利上げを碌に進行させないというのはちょっと甘いんじゃないのかなあとも感じてしまうのですが、まーこれは利上げしてからのお話ではありますので今すぐにどういうという話ではないんでしょうね。
あと、利上げペースはデータディペンデントとか言っているのですが、まあモーサテを例に出すのも何ですけど、モーサテのおねいさんが最近毎日出てくる経済指標を一々「ISMガー」「ADPガー」とか説明して利上げはどうですかと解説の人に聞いているのを見ていますと、データディペンデントっていうのは足元の指標に一々振り回される事になりまして、金融政策って本来フォワードルッキングに対処という筈なのに(上の所でもそういう話をしてますわな)、足元の指標に過度に反応することが続くリスクはあるでしょうし、しかも初回利上げの話ではなくて利上げ後の場合は正常化プロセスのペースの問題になるのですから、先行きの予想短期金利パスの先の方までの傾きに思いっきり跳ねてくることになるんじゃないのと考えますと、今月普通に利上げして最初は普通でしょうけれども、次第に市場が利上げペースで一喜一憂という香ばしい展開になりそうな悪寒もするのでした。
それからですね、
『This expectation is consistent with an implicit assessment that the neutral
nominal federal funds rate--defined as the value of the federal funds rate
that would be neither expansionary nor contractionary if the economy were
operating near its potential--is currently low by historical standards
and is likely to rise only gradually over time.』
というのが説明の中にあって、最後の方4パラグラフを使って「中立FF金利」の話をしていまして、まーこれ自体は概念として正常化のゴール地点という意味で考えている話ではあるのですが、このゴール地点の概念となる中立金利水準に関してあまり説明をし過ぎると「データディペンデント」という話との合わせ技になった場合に結構訳分からん事になるように思えるのですよね。
『One indication that the neutral funds rate is unusually low is that U.S.
economic growth has been quite modest in recent years despite the very
low level of the federal funds rate and the Federal Reserve's very large
holdings of longer-term securities. Had the neutral rate been running closer
to the levels that are thought to have prevailed prior to the financial
crisis, current monetary policy settings would have been expected to foster
a very rapid economic expansion, with inflation likely rising significantly
above our 2 percent objective.』
以下中立金利ネタで一講釈しているのですが、この概念って説明道具には便利なのですけれども、中立金利水準に関して今後のプロセスの中で「やっぱり経済強いから上ね」とかいうような話が出てくる場合には、将来の期待短期金利のゴールが全然違ってくるという事になりまして、却って金利形成が不安定になりかねないなあとか杞憂かも知れませんが思うのですよね。もちろん考え方として中立金利水準との乖離で金融政策が緩和的かどうかという話は当然あるのですけれども、それをどの程度説明に使うかによってもろ刃の剣になる可能性もあるなあとか思うのでした。考えすぎなのかもしれないけど。
ということで詳しくは後日。
○師匠の岡山金懇はオリジナル成分が大幅に低下していてある意味残念な件
置物師匠岡山に襲来。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151202a1.pdf
今回の金懇ですが経済の話はいつも通りどうでも良いとして、金融政策の所でマネタリーベース置物直線一気理論の話は全然ないですし、インフレ期待が上がったり株価が上がったりすると設備投資が出るという置物リフレ理論がすっかり影を潜めているなど、エンターテイメントとしての出来が非常に悪化していてもうおじちゃんガックリですよ、ということで金融政策の辺りから。
・まあ細かい話ですが用語は適切に使っていただきたい
『日本銀行は現在、長年にわたるデフレの中で人々の意識に定着してしまった「デフレマインド」を「緩やかなインフレマインド」へと転換すること、言い換えると、「物価の緩やかな上昇が継続することを前提に人々が行動するような状況」を作り出すことを企図し、「量的・質的金融緩和」政策を進めています。』
『この政策は、二つの柱から構成されます。第一の柱は、日本銀行が、消費者物価の前年比上昇率2%を「物価安定の目標」として設定し、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現することを明確に約束したことです。』
さすがに師匠は「2年」を入れていますね、まあそこは評価したい。
『第二の柱は、国債を中心とした大規模な資産買入れによりマネタリーベースを大量に供給する「量の拡大」と、リスクのより大きな資産である長期国債を中心に買い入れる「質の変化」という、「物価安定の目標」を達成するための手段を、明確に示し、実行することです(図表5)。』
ということなのですが、金融政策運営の2つの柱という奴で「第一の柱」「第二の柱」ってのを使っていまして、展望レポートでの説明でも使っているので、この用語をそのまま別の用途の説明に使ってしまうのは金融政策の説明という意味で混乱を招くので、あまり使わない方がよろしいのではないかと思います。まあ師匠の話なんぞ誰も聞いていないから混乱しないという意見はありますし、たぶんそうでしょと思いますけど。
・置物理論がいつの間にか放棄されているのだが
でまあそれはどうでも良いとして直後のメカニズムの説明で置物理論が放棄されているのですが・・・・・・・
『日本銀行はこの政策によって、幅広い年限の名目金利を引き下げるとともに、人々の予想インフレ率を2%に向けて引き上げることにより、予想実質金利を引き下げることを目指しています(図表6)。こうした予想実質金利の低下により、株式などのリスク性資産の価格は上昇し、資産効果を通じて民間消費を増加させる方向に作用します。また、過度な円高も修正されたことで、緩やかながらも輸出の増加をもたらすとともに、採算性の改善などを通じて輸出関連企業の収益好転に繋がっているほか、海外からの観光客も目に見えて増加しています。
加えて、これまで貯蓄に励んでいた家計や企業も、予想実質金利の低下や所得・財務状況の改善を受けて、住宅投資や設備投資を拡大させることが期待されています。』
おいこら最後の期待「されています」って何だよ実質金利が低下したら投資が勝手に出てくるというのが置物理論じゃなかったのかよという所でして、置物理論がすっかりトーンダウンしているのが実に味わいが深い。
まあそもそも資産価格の上昇で消費が増加ってそれ一過性だろとか、円高修正で「緩やかながら」輸出の増加とか、置物理論がワークしていない件についてのトーンダウンっぷりが中々のテイストを醸し出していますが、現実に直面して自分の置物理論がワークしていないという認識に立ち至ったのであれば誠に結構な事でありますが、そんなのやる前から言われてただろ責任はどうなっているんだという話はその後に。
・物価に関しては言い訳オンパレード
物価についての部分ですが、小見出しが『(2)物価の基調的な動き』といきなり「基調的」となっている時点でもう言い訳大会の香りがしますが・・・・・・・・・・・・・
『日本銀行は現在、インフレ率が2%程度に達する時期が「2016 年度後半頃」になると予想しています。従来の見通しからは後ずれしていますが、これは原油価格の下落の影響などによるものであり、物価の基調自体は、想定した政策効果の波及メカニズムが機能するかたちで着実に改善していると考えています。ここでは、物価の基調的な動きを、@消費者物価の動き、A経済全体の総需要と供給能力の差である需給ギャップ、B中長期の予想インフレ率という3つの観点から考えたいと思います。』
さてここで2013年3月の就任記者会見での威勢の良い冒頭説明を改めて確認しましょう。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf
『私は、2%のインフレを達成するため、あるいはデフレを脱却するためには、2
つの条件が必要だと思っています。1 つは、2%のインフレ目標を大体いつ頃までに責任をもって達成するのかということに日本銀行がコミットするということです。これにコミットすることが、非常に大事なことです。大体いつ頃までに達成するかということについては、主要国の中央銀行は、大体、「中期的」とか「ミディアムターム」という言葉で表現しています。その「ミディアムターム」というのが実際何年くらいなのか、色々な研究者が調べたところ、大体
2 年くらいということになっています。平均すると2 年くらいでインフレターゲットの中に入っているので、そういう経験から言っているわけです。
』
『2 つ目は、そういう意味で、2 年くらいで責任をもって達成するとコミットしているわけですが、達成できなかった時に、「自分達のせいではない。他の要因によるものだ」と、あまり言い訳をしないということです。そういう立場に立っていないと、市場が、その金融政策を信用しないということになってしまいます。市場が金融政策を信用しない状況で、いくら金利を下げたり、量的緩和をしても、あまり効き目がないというのが私の立場です。』(この部分は上記URLの2013年3月就任記者会見より)
というのを確認した所で、上記の@〜Bでも鑑賞してみましょう。
『まず、消費者物価の動きをみてみましょう。生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、足もとでは0%程度で推移しています。しかし、昨年夏以降のように原油価格が短期間で
50%程度まで下落する場合には、エネルギーも除いた消費者物価(以下、エネルギーを除く消費者物価)が、物価の基調を判断するうえで、より重要な指標になると考えています。』
言い訳をしないのではなかったでしたっけ???
『これを確認するために、生鮮食品を除く消費者物価(以下、エネルギーを含む消費者物価)の前年比を、エネルギーによる寄与とエネルギーを除く消費者物価の寄与に分解してみてみましょう(図表7)。』
完全に執行部ベースの言い訳状態。
『まず、「量的・質的金融緩和」が始まるまでの期間では、エネルギーを含む消費者物価の前年比は、エネルギーのプラス寄与と、エネルギーを除く消費者物価のマイナス寄与が合わさることで、概ね若干のマイナス圏で推移していました。つまり、エネルギーを除く消費者物価でみると、エネルギーを含む消費者物価でみるよりもデフレ的だったということです。』
えーっと金融政策は総合で判断するんですし、エネルギーだって一時的な上下ならともかく世界経済の拡大に伴ってトレンドとして上昇しているんだったらそれは除いちゃだめでしょと思いますがまあそこはさておきまして。
『一方、「量的・質的金融緩和」を開始して以降は、エネルギーを除く消費者物価のマイナス寄与が縮小し始めて、2013
年の秋口にはプラス寄与に転化し、消費税率の引き上げが実施された 2014 年4月頃までそのプラス幅は拡大を続けました。この間、エネルギーのプラス寄与もあり、エネルギーを含む消費者物価の前年比も上昇を続け、2014
年4月には消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで+1.5%に達しています。すなわち、「量的・質的金融緩和」開始から消費税率の引き上げが実施された昨年4月頃までは、消費者物価の前年比は、2%に向けて順調に上昇し続けていたということです。』
先般の名古屋での総裁講演でもこういうインチキ説明をしているのですが、消費増税前の駆け込み需要による価格上昇圧力とかの話を無視して、駆け込み需要の方はQQEの効果に含めてしまって反動のマイナス寄与は消費増税のせいにする、という時点で政策効果の説明に粉飾成分が入っているとしか申し上げようがない。
『その後、2015 年初までは、消費税率引き上げの影響もあって、エネルギーを除く消費者物価のプラス寄与は縮小しました。さらに、2014
年の夏頃から、原油価格の大幅下落が消費者物価前年比のプラス幅を縮小させる要因として働くようになりました。』
『こうした状況を踏まえ、デフレマインドの転換が遅延するリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、日本銀行は、2014
年 10 月末に、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定しました。』
消費増税の効果を過小評価していて、その前のプラスをQQEの実力と勘違いして大勝利宣言とかをしていたから追加緩和をすることになったのではないでしょうかねえ。
『その後の推移をみると、エネルギーを除く消費者物価のプラス寄与の縮小は
2015 年初で止まって拡大基調に戻り、足もとでは+1%程度と、「量的・質的金融緩和」開始以後、最大の寄与度となっています。また、この間、エネルギーを含む消費者物価の前年比は低下していますが、その主因は、エネルギーのマイナス寄与の拡大であることも分かります。以上のように、消費税率引き上げでいったんデフレに戻りかかった物価の基調は、「量的・質的金融緩和」の拡大の効果が発揮されて、2015
年に入ってからは、2%に向けた上昇軌道に戻っていると考えています。』
まあ執行部ベースの説明ではありますが、これに関しても「エネルギー価格の下落効果によって総合物価の上昇が低い所で抑えられているために需要が落ちずに済んでいるからその他の物価が持っている」という成分もそれなりにあるようにも思えますけれどもねえ。
・需給ギャップの説明に置物理論不在&循環論法な件
次が『A 需給ギャップ』ですけどね。
『次に、わが国経済の総需要と供給能力の差として定義される需給ギャップを考えてみましょう。需給ギャップは、設備投資や個人消費といった需要の拡大を背景に、着実に改善していくものとみています。』
というお話ですが・・・・・・・・・・・
『まず、設備投資については、短観などのアンケート調査をみると、今年度は高水準の計画となっていることは、先ほどご説明したとおりです。新興国経済の減速など先行きの不透明感が強いこともあってか、まだ計画並みに実行されてはいませんが、いずれしっかりと実行されるとみています。』
・・・・・・・実質金利が下がったら自動的に設備投資が出てくるという置物リフレ理論はどうしたと小一時間問い詰めたいのですが、次に個人消費の話もこんな感じの執行部ベースの説明になっておりまして最早置物理論はどこかに逝ってしまっておられます。でまあそこは飛ばしまして、
『したがって、設備投資や個人消費の増加によって、需給ギャップが改善し、これが物価を緩やかに押し上げていく好循環は、今後、より明確になってくると考えています。』
『この点、最近の企業収益と設備投資、賃金の関係をみると、企業収益が過去最高水準となっていることとの対比で、設備投資の増加と賃金の上昇はやや鈍い印象があるのも事実です(図表8)。しかし、先行き需給ギャップの緩やかな改善が続き、需要超過に転じていく中で、こうした状況も変わりつつあると考えています。』
というふうに纏めているのですが、これ最初の所で「設備投資や個人消費がこれから出るから需給ギャップが改善する」と言ってるのに、最後の所では「需給ギャップが改善するから企業の設備投資や賃金の上昇が強くなる」とか言ってまして、内生的な循環メカニズムですキリッという話なのかもしれませんが、説明が微妙に舌足らずなのでただの循環論法に見えてしまう訳で、つまりは循環メカニズム出る為に必要なのは何でしょうと考えたらそれは成長期待という事になるのではないでしょうか、という白川ドクトリンに戻るような気がするんですけどねえ。
・予想インフレ率の説明が怪しい件について
次が『B 中長期の予想インフレ率』である。
『最後に、予想インフレ率をみてみましょう。各種アンケート調査における企業や家計の予想インフレ率をやや長い目でみると、「量的・質的金融緩和」導入前後から上昇しています(図表9)。』
とあるので図表9『企業と家計のインフレ予想』とやらを見るのですが、そもそもQQE導入前後から上昇とか言っている数値が出ているのは『家計のインフレ予想(消費動向調査)』なのですが、これがまた酷い事にプロットされているものが『1年後の予想物価上昇率(加重平均)』となっていまして、あのーすいません期待インフレがアンカー云々という話をするときに普通「1年」は使わないと思うんですけど相変わらず適当に都合の良いものを取り出してきて説明する置物リフレ一派クオリティは顕在ですなあと思うのですが、取り出し方の間も抜けているというのも置物リフレ一派クオリティですなあと思うのでした。
しかも直近でこの数値下がっていまして、最後の所に『1年後の予想物価上昇率(2015/10月)2.5%』って入っていますがそれQQE導入直後の水準に向けて最近下がってきているようにしか見えませんが。
『足もとでは、幾つか弱含んでいる指標もありますが、』
自分で例示している物が弱含んでいますが。
『企業の価格設定行動は、特に今年度入り後明確に変化しており、価格改定の動きには拡がりと持続性がみられています。先行きについても、実際のインフレ率が2%に向けて上昇していくもとで、そのこと自体も予想インフレ率の押し上げ要因となるため、中長期の予想インフレ率は2%に向けて上昇していくと考えられます。』
だったら何で2014年の時点でインフレ期待が必要な水準に達しなかったんでちゅかねえ。
『以上説明しましたとおり、消費者物価の動き、需給ギャップ、予想インフレ率という3つの観点全てにおいて、物価の基調が、2%の「物価安定の目標」達成に向けて着実に改善していることが確認できます。』
ワロタ。
『こうしたもとで、エネルギーを含む消費者物価の上昇率は、原油先物価格なども踏まえますと、「2016
年度後半頃」に2%程度に達すると考えています。』
はいはい言い訳言い訳。
『もちろん、実際の経済には様々な不確実性があります。』
そういうのと関係なく金融政策で2%を達成するのが置物リフレ理論だったと思いますが。
『現在最も重要と考えているのは、中国をはじめとする新興国や資源国の経済が一段と減速し、わが国経済に悪影響を与え、物価の基調に下振れをもたらすリスクです。今後の金融政策運営に当たって、そうしたリスクの顕在化によって、物価の基調が悪化するようであれば、躊躇なく対応します。』
と、すっかり物価の基調というのに染まっておりまして、置物リフレ理論がすっかり抜けてしまっているのは現実を見て自分の間違いに気が付いたのか、単に元々の理論が日銀にいちゃもんつけるためだけの根拠脆弱なものであって、理論そのものが最初から無かったという事なのかは存じませんが、まあ2年半でこれかよという所ではございますな、うんうん。
・なお会見ではスタグフレーションとかの話までしたとのことで
会見要旨は今日出る(なおECBと木内審議委員ネタもあるのだが)のでそれからなのですが、ヘッドラインを見ますと会見の中で「スタグフレーションにならないように運営したい」旨発言をしたようですが、リフレ理論においては「物価下落は悪」「物価上昇は善」(もちろん上昇しすぎたら悪ですが)という話であって、物価目標を達成できていればそれはアプリオリに善であって、「悪い物価上昇」などというものは存在しない(「悪い物価上昇が存在するなら「良い物価下落」も存在しますがなという話になるわ)という筈だったのですが、これまた置物リフレ理論はどこにいってしまったんでしょうかねえという所で。
2015/12/02
お題「黒田総裁会見/本日は師匠の岡山金懇ですよ!」
12月の営業日もこれから日々順調に消化されていきますが皆様お元気でしょうか(白目)。
○総裁会見の説明が微妙に混線しているなあと思うのですがファイティングポーズだけは妙に旺盛
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1512a.pdf
・確かにこの辺りは気になりますよね
『(問) 講演の内容について質問させて頂きたいのですが、講演の中で、2%の目標の早期実現ということで、いくつかの力強い言葉が入っていたかと思います。』
まあ現実には白川ドクトリンの方が正しかったんじゃネーノという話がジャパンのみならずあちこちで出ているように思えますので、その線から悪態を申し上げた訳ですけれども、昨日も申しあげましたように「経済の実力にあった物価上昇水準」という白川ドクトリンを否定する所から始まっている黒田ドクトリンを前提に考えた場合、昨日のこのあたりの言葉って別の取り方になる訳ですよ。つまり・・・・・・・・・・・
『例えば、動くのは日銀であるとか、早期実現のために必要と判断すれば躊躇なく対応するという姿勢を示されたわけですけれども、1
点教えて頂きたいのが、先の10 月末の決定会合では、2%の物価安定目標の達成時期を半年後ずれさせたにもかかわらず、政策は据え置かれた。その行動と、今回ここでおっしゃっている早期実現のために必要と判断すれば躊躇なく対応するとおっしゃっていることとの関わりがちょっと分かりにくい部分があるので、どういう意図なのかを教えて頂きたい。16
年度下期は必ず守るという、そういう表明なのかどうかも、併せてお聞きできればと思います。』
ですなあ。
『(答) 10 月末に新しい展望レポートを示して、従来申し上げていた、2016
年度前半頃に 2%に達するという予測を半年後ずれさせて、2016 年度後半頃に
2%に達するという予測を示したわけです。その際にも、物価の基調自体はかなりしっかりと着実に改善してきていると申し上げました。』
で?
『いわゆる生鮮食品とエネルギーを除く物価上昇率が(以下延々と講演で出ている「あれも良くなったこれも良くなった」という話をしていますが長いので途中割愛)そういう判断のもとで、現在の「量的・質的金融緩和」を継続していくことで、いわば累積的に緩和効果が効いてくるわけですが、それを着実に進めることによって、2%の「物価安定の目標」を早期に実現できるという確信を持ったことから、引き続き「量的・質的金融緩和」を遂行していくという決定に至ったということです。』
まあすげえ長い説明(面倒になって途中を割愛していますが)をしているのは説明が苦しいということでしょうな。
『その時にも申し上げましたが、これでは早期に 2%を達成するということはできないというように物価の基調が変わった場合には、躊躇なく、追加緩和であれ何であれ政策を調整します。』
ということなのですが、そもそも基調がどうのこうのという話をしている時点で早期達成と話の整合性が怪しい訳でして、早期達成というのがあくまでもただの気合とかスローガンだというのでしたら基調がどうのこうのという話は分かるのですが、本当の本当に期限を切って達成したくて何が何でもやるのでしたら基調がどうのこうのというようなのんびりとした話をするのではなくて、円安に思いっきり振ってコストプッシュでもなんでも良いからもう一段ステージの変更が必要ではないかと思うのですよね。それが経済全体にとって良いのかどうかは別にして。
『今回の私からの挨拶では、この東海地方という、景気が着実に回復し、賃金も設備投資も伸びている地域での懇談ということも踏まえ、特に従来申し上げたことを繰り返し、かつ、強調しました。その際のポイントは、既往最高水準の利益をあげている東海地方の企業部門に対し、引き続き賃上げ、さらには設備投資に積極的に取り組んで頂きたいという希望を述べるとともに、日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」を早期に実現するというコミットメントは不変であり、必要があればいつでも躊躇なく政策を調整するという強い姿勢をお示しした、ということです。』
ということで企業にそういう話をしているのですが「2年で達成」というコミットメントを全然達成していないのに「コミットメントは不変であり(キリッ)」とか言われても説得力というのが無い(からうっかり「2年」を言わないようにしているでしょうけれども)訳で、2年で2%達成のコミットメントを達成しなくても基調とか言い出して言い逃れできる日本銀行の皆様に対しまして、経営判断を誤った場合にそれこそ大きな場合には生きるか死ぬかという話になる企業経営の皆様が「達成もしていないコミットメント」を盾に賃金上げろ投資しろと言われてそう簡単にホイホイ動く訳ないでしょと思いますし、昨今のお願い行脚(かどうか知らんが)にはその辺の認識がヌル過ぎですと宣伝して回っているのか、そうでないなら統制経済国家の夢でも見てるんですかと小一時間ではございますな、うんうん。
・追撃質問である
『(問) 10 月 30 日の決定について、このまま継続することで 2%の物価目標を早期に実現できると確信していたから、現状維持でよしとしたということをおっしゃいました。同時に
11 月の会合後の会見などでは、やはり賃金が極めて重要であると、非常に強い関心をもってみておられるとおっしゃっておられました。』
ですなあ。
『その意味では、2 年連続のベアは実現したのですが、3 年目の来春の春闘では、今年並みの賃上げ・ベアで十分なのか、2016
年度後半に 2%の物価目標を達成する上で、今年並みで十分なのかどうか、それをまず
1 つお聞きします。』
ベアは実施するが賞与は減るとかそういうオモシロ展開の可能性もありますけどね。
『その上で、連合については、今年は 2%以上の賃上げ・ベアを要求したわけですが、今度は
2%程度と若干トーンダウンしています。もし来春の春闘のベアが、黒田総裁が目論んでいらっしゃるというか、期待していらっしゃるような水準に達しない場合には、やはりこれは物価が上がらなければ、賃金も上がらない、賃金も上がらなければ、物価も上がらないと、11
月の会合の時におっしゃったように、やはり物価 2%目標というのは遠のくのは必至ではないかと思います。』
『その場合には、それが明らかになるか、あるいはそれが明らかにそうなるであろうと見越された場合には、追加緩和というのは、これはもう避けられないのではないかと思いますが、如何でしょうか。』
連合のベア水準云々もそうなのですが、そもそも給与というのには生活給という面もある訳ですから、ヘッドラインの物価が0%前半でフラフラしているんだったらそら賃上げそんなにせんでも良かろうという話になりますわな少なくとも経営側だったら、と思いますから、そういう意味からも「基調ガー」とか言ってほらこの数字が上がっていますよ凄いでしょうとか言われましてもそれはちょっと違うんじゃないのと存じますし、やっぱり円安に振ってヘッドラインの物価を上げないと話が始まらないんじゃないの(円安に振るべきとは言ってない)的なツッコミも聞いてみたかったりしますな。
ではお答え。
『(答) 本日の懇談の中でも、資料の図表 9 で賃金上昇率と物価上昇率のグラフによって、賃金と物価は中長期的にみれば、賃金が上がる時は物価も上がり、物価が上がる時は賃金も上がる、物価が下がる時は賃金も下がり、賃金が下がる時は物価も下がるという意味で、いわば同調して動くということを、統計的な事実として示しました。』
経験的な事実じゃないの?
『他方で、賃金が物価と同じペースでは上がらないので、物価だけ上げても仕方がないから、賃金がもっと上がるのを待とう、というようなことは全く考えていません。』
講演の方では一方で「賃金と物価がバランスよく上昇する状況が良い」と言ってみたりしていて、そちらの方はどうせ政府の方から梯子外された上に釘を差されている状態なので言わない訳にも逝かない(しかも沈没船から逃げ出すかの如くドブネズミの人たちまでもがそういう話を最近している次第だし)ですな。
然るに、黒田さんとしては最初に「とにかく物価を上げて期待インフレを引き上げて実質金利を下げれば全て上手く行く(そのためにはMBを直線一気理論で拡大すればよい)」という話で始まっており、一度その方向で走り出したものは経済にとってどうだととか言われても知らんがなというようなもんで、御聖断が下らなかったら本土決戦国土丸焼けになるまで戦争を続けたとしか思えない昭和軍事官僚の趣を感じさせる風情になっているのが今回の講演やら会見の直近引用部分だったりするのですよね。となりますと、黒田さんとしては梯子をドンドン外されるわ置物リフレ一派はドンドン逃げ出すわという状態の中で、ランボー怒りの追加緩和とか打ち込んで来る勢いになってもおかしくないですし、講演の中での勢いとかはそういう成分もだいぶ今回濃いですよねとも思ったりするのですよ。
まあ黒田さんの意地と体面の為に無理矢理円安に振って輸入物価だけ上げられても誰得物価上昇にも程があるので、お前の意地と体面で日本経済を巻き込まないでくれとしか思えんけど。
『日本銀行としての目標であり、最も強く働きかける対象というのは物価ですので、先程来申し上げている通り、物価が
2%の目標に向けて着実に前進していくということが重要です。』
講演の方でもこういっていましたが、この辺りだけフォーカスするとヤケクソ追加緩和を打ち込んでくるとかいう目も考えられますが、「物価だけ上昇して生活が苦しくなっただけ」という話になるのを恐れる政府方面も止めに掛かるでしょうし、審議委員とかでも止めに掛かるのが出てくるでしょうから、執行部が爆弾三勇士となって敵陣の鉄条網に向かう前に自陣で爆弾が爆発するというコミック展開になるかも知れませんけどね!!!!
『2%の「物価安定の目標」を早期に達成することが難しいということであれば、何回も申し上げますが、躊躇なく追加緩和であれ、何であれ、金融政策を調整するという姿勢に全く変わりはありません。』
この「何であれ」ってナンジャラホイという所ですが、実は政策の調整と称して金利政策への移行と低金利政策の長期化のどさくさにTaperingをする(しないと今の政策が早期に爆発するから仕方ないのだが)というのも調整かも知れませんが、追加緩和じゃなくてヤケクソ物価上昇政策をするとなりますとまさかの外債購入構想浮上とか突っ込む気なのかとかギャグをかましておきます(なお米国様がお怒りになる模様なのでギャグ以上にはならないでしょ)。
『そうしたもとで、物価と賃金は同調的に動くわけですから、当然、私どもとしても、そういう物価のパスを考えていく上では、賃金も上がっていくことを期待しているということです。ただ、何度も申し上げますが、私どもは賃金をコントロールできるわけでもありませんし、賃金をターゲットにしているわけでもなく、あくまでも、2%という「物価安定の目標」をターゲットにして、金融政策を進めているということであり、従来通り、2%の「物価安定の目標」の早期達成のために必要であれば、躊躇なく政策を調整するという考えに全く変わりはありません。』
賃金が上がらないと物価が上がりにくいのか、物価さえ上げてしまえば賃金は上がるのかという話が混線して分かりにくいのですが、さっき申し上げたようにそもそも論として「物価も上がっているので従業員の皆さんの生活水準の維持のためにも賃金を上げないと皆様に逃げられてしまいますがな」というので見る物価はあくまでも総合物価水準じゃネーノとしか思えないので、色々なコア指数を出して「この通り基調は上がっています(キリッ)」とか言われましても、それはエコノミストや市場関係者に意味があっても、企業行動に対してという意味では話が別のような気がする訳で、ここの説明の中で言っている「物価」がふわっとしているのが説明をややこしくしている(ゴリゴリやってしまうとヘッドラインの物価を上げる為に円安誘導すべしという一点に答えが集約されちゃうので困るんでしょうが)のでしょうなと存じます。
しかし「躊躇なく政策を調整するという考えに全く変わりはありません」を連発している訳で、黒田さんとしてはランボー怒りの追加緩和をやりたかったんじゃないのかと思わせてくれるような感じの物言いで、この前までは追加緩和もしませんし政策の見直しもしませんという物言いだったのに、先般の10月30日議事要旨もそうですが、説明トーンには変化がありますよねと思うのです。
逆に「追加緩和はもうできない(実際にこの調子だと来年のどこかで追加とか物理的に大爆発確定なのだが)」という認識になったので、せめて威勢良くファイティングポーズをとらないとマズーという考えの元で意味不明なまでに急にファイティングモードになっているという考え方もありますので、まあどっちなのかというのはワカランチ会長ですが、短国ゾーンがこの調子でマイナス継続されていきまして、中短期の金利が浮上しない状態が続くと、来年のかなり早い時期に輪番が大爆発(札割れ頻発とかとんでもないマイナスの買入連発とか)しても不思議ではなくなってきますので、どうするにしても結構残り時間は短い訳で、2017年消費税見極めてから政策見直しとか言っているような時間軸では無いと思いますがどうでしょうかね。
・賃金と物価がパラレルに上昇すると言っているのにこの答えは何ぞ?
『(問) 賃金に関連して 2 点お伺いします。(前半割愛)もう 1 点、賃金も今後上がっていくということを期待しているということをおっしゃっていますが、実際にはその押し上げていく要因となっている、原油安を除いた物価が上がっていけば、それに見合った形で賃金は上がっていくということを考えていらっしゃるのでしょうか。』
うむ。
『(答) (前半割愛)それから、賃金上昇──ベアを含む賃金上昇──が、何によって決まってくるのかということは、色々な研究がありますが、マクロ的にいえば、需給ギャップがどんどん縮小し、プラスになっていくと、その過程で労働市場がどんどんタイトになっていきます。現実に労働市場がタイトになっていることは、数十年来の高さになっている有効求人倍率とか、数十年来の低さになっている失業率をみても間違いないですから、その面から賃上げの圧力が効いてきていることはあると思います。』
その割には上昇が不十分だと思うのですけど。
『もうひとつは企業側の収益、そして今後の製品価格の上昇のテンポそれ自体が、収益に影響してくるわけです。足許の収益や将来の収益見通しは、企業側からみればベアを含む賃上げの決定要因になっていると思われます。』
という話だったら物価を上げたからどうのこうのではなくて、経済の成長力を引き上げて成長期待を上げないとダメであって、物価だけ上げても売り上げが下がったら意味無いんですけどねとならんかね。
『そのもう少し背後をみると、価格が今後どのくらい上がっていくであろうかということは、一方で、働いている人からみれば、当然それをコンペンセイトする(埋め合わせる)ような賃上げになって欲しい、という賃上げ要求になると同時に、企業側からみれば、価格が上がっていけば賃上げ分を吸収できる面もありますので、両方にとって、将来の物価上昇予想も影響してくると思われます。』
まあここはそうでしょうなと思うけど、その場合の物価とは企業側からしたら自社の製品・サービス価格であって、労働側からしたら総合物価だと思いますけどね。
『従って、足許の具体的な賃上げだけが価格に影響するとか、賃上げは価格だけで影響されるといったことではなく、マクロ的な、相互的な中で決まってくると思います。』
おうさっきは賃金と物価がパラレルに動くので日銀は早期に物価を上げるって言ってたのにここでは経済全体を見て考える(つまりヤケクソ円安誘導をしても誰得状態なのであれば物価上昇の為だけに円安誘導してもしょうがない、という結論になるのですよね)という話になっとるじゃんけと言う説明。
『ベアを含む賃上げについては、やはり何といっても労働需給の状況と企業の収益の状況が具体的には効いてきますし、その背後にある物価上昇の予想も、当然寄与してくるだろうと思っています。』
とまあそういう説明になっている訳で、白川ドクトリンを思いっきり否定してスタートして物価が上がって期待インフレさえ上がってしまえば好循環が絶賛回転するという風が吹けば桶屋が儲かる置物リフレ理論で政策運営をしていて、そういう線から「追加緩和を含む政策の調整も辞さず(キリッ)」とは言っているものの、いざ具体的に「じゃあ賃金ってどうやって上がるの」という話になると風吹けば桶屋が儲かるとは言えない訳で、その乖離がドンドン拡大して行って股裂き状態になりつつあるのが昨今の説明であるという事なのかも知れませんな。あるいはもはや黒田さんが一人で風吹けば桶屋が儲かるので2%を早期達成と突っぱり続けているのかという所なのでしょうか、よー知らんけど。
○そういう意味では今日の師匠の岡山金懇はちょっと注目
http://www.boj.or.jp/announcements/press/index.htm/
今後の講演・挨拶等の予定
>2015年12月 2日 岩田副総裁 岡山県金融経済懇談会における挨拶
ということで本日は岡山方面で師匠が金懇を行うとのことで、まあどうせ愚にもつかない話をするのではありますが、最近企業へのお願い行脚に加えて妙にファイティングポーズを取っている黒田さんのトーンと比較して、師匠が「物価目標の早期達成」や「そのための政策調整」に関してどのようなトーンで説明をするのか、という点はちょっと注目したいなあと思います、話の内容自体はゴミ待ったなしとしましても。
でもって見方によっては黒田さんの方がよっぽど置物リフレ理論状態になっていて、その勢いを誰も止められません状態になっているようにも見える(ただの芝居かも知れない)という状態の黒田さんの首に鈴をつけられるのって実は官邸を別にすれば官邸の意を受けた置物大師匠くらいしか思い浮かばない訳でして、それはそれで興味を持っているという所なんですよ、まあ超越過大評価のような気がしますけど。
なお、折角ですのできびだんごもって鬼が島に行ってそのまま定住されて頂いても結構なのですが、会見では「2年と言ってほぼ4年になっていますが辞任はまだなんでしょうか」という質問は絶対宜しくお願い申し上げたい所であります。
ちなみに上記URL先の今後の予定を見ておりますと・・・・・・・・・・
2015年12月3日 木内審議委員 資本市場研究会における講演
2015年12月7日 佐藤審議委員 奈良県金融経済懇談会における挨拶
2015年12月7日 黒田総裁 パリ・ユーロプラス・フィナンシャル・フォーラムにおける挨拶
明日の木内さんの講演の後は大注目のECB理事会がありますし、来週月曜の佐藤さんの金懇の同日(時差がありそうですが)には黒田総裁の講演が打ち込まれている、という素敵な日程構成になっておりまして、野党審議委員の講演は他の大ネタがあるときにぶつけに行くという日程上の配慮が存分に為されている辺りが実に味わいの深いものを感じます。なお過去の木内さん、佐藤さんの金懇等の日程を調べて確認すると更に幽玄の詫び寂びの世界を感じることが出来ますのでオヌヌメ。
#などと書いていたら時間が無くなってしまい前のネタ虫干しができないままネタの賞味期限が切れるのでしたorzorz
2015/12/01
お題「市場雑談メモ/先日の補足(MPMネタ)/黒田総裁の名古屋講演はまあ何と申しますか・・・・・・・」
ほう。
http://jp.reuters.com/article/2015/11/30/yuan-sdr-imf-idJPKBN0TJ2J720151130
Business | 2015年 12月 1日 04:53 JST 関連トピックス
中国人民元をSDR構成通貨に採用、IMF理事会承認
おおまたモーサテで「銀行が中央銀行に預ける金利をマイナスにすると銀行が中央銀行の預金を貸出に回すことが期待できる」って説明があるわと思ったらWSJがその説明しているとかWSJもウスラバカだったのかorzorzorz
○市場関連メモ
・おう何で1-3の輪番増やすんだよどういう事や
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel151130c.pdf
当面の長期国債買入れの運営について
『注4)2015年12月1日以降の最初のオファー金額は、残存期間1年以下700億円、残存期間1年超3年以下3,500億円、残存期間3年超5年以下3,500
億円、残存期間5年超10年以下 4,000 億円、残存期間10年超25年以下2,400 億円、残存期間25年超1,400
億円、変動利付債1,200 億円、物価連動債 200 億円とする予定です。』
ということで今月の輪番なのですが、先週から1-3の輪番を4000→3000に削減して短期ゾーンの枯渇に対して配慮したのかと思ったのですが今月は1-3増額して3-5を減額するという謎のプレイによって中期輪番の買入年限間のバランスを合わせに行き、かつ1回7000億円という数字は同じという結果になっておりまして何か知らんが謎の攻撃。
まあ短国買入も謎に2500億円で刻んで毎回実施していて、やっと3Mカレントの引けが昨日の所ではマイナス5bp水準まで戻っているという状況なのですけれども、結構なマイナス金利であってゼロ金利水準は遥か彼方という状態である事には変わらず、そういう状況は知らんがなとばかりに数字の方をそろえに行くという攻撃に出ました、というのが今回の500億円調整に来たメッセージですなあと受止めることが出来る訳でして実にこう脱力系ですなあと。
いや別にそこの500億円を何故調整して1-3と3-5を合わせる必要があるのかと思いますし、大体からして(そういやメモ忘れてましたが)金曜の2年入札が堂々のマイナス利回り足切となったという結果が出た直後に減らした1-3の輪番をまた増やすとか中々お洒落な訳で、これ単体でみると「2年国債の入札が初のマイナスマイナス金利」→「1-3年の輪番拡大」となるのでマイナス金利もっとやれとお墨付きを与えているんですねとか言われたらどういう説明をするんでしょうなあと思う訳ですよ。
つーことで、ただの帳尻モードで回っているような感じではありますが、だったら市場との対話とかただのアリバイ茶番にも程があるので、最初からそういうのは知らんがなと開き直って頂かないと振り回される方としては無駄に疲弊するだけで体力の無駄遣いにも程があるんですけどねえ、とたかだか500億円の手直しで一々悪態をつくお前の方がやかましいわですかそうですか。
しかしまあ何ですな、この買入の運営とか言って物凄く幅の広い数字が出ているのですけれども、結局12月末に向けて80兆円増額に対して物凄い勢いでギリギリの所に着地させに行こうというこの帳尻運営ということで、上記の運営についての最初の項番の所に『ただし、政策効果の浸透を促すため、市場動向を踏まえて弾力的に運用する。』ってなっていますがどう見ても帳尻硬直運営です本当にありがとうございましたというのが何ともでして、この調子で出口だの政策転換だのの時に大丈夫かよと今から心配ですがどうせ2%は達成しないから心配する必要はないんですね!!!!!!!!!
・一応記念に残しておかねば
金曜の2年入札結果を記念に残すのを忘れていたのでメモメモ
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20151127.htm
6.価格競争入札について
(1)応募額 11兆8,107億円
(2)募入決定額 2兆2,791億円
(3)募入最低価格 100円20銭5厘(募入最高利回り)(-0.002%)
(4)募入最低価格における案分比率 57.7344%
(5)募入平均価格 100円20銭9厘(募入平均利回り)(-0.004%)
ということでこの金利ェ・・・・・・・という所ですが、いわゆる不明札もそこそこありまして、木曜の3Mも不明札が多かった訳でして、まあ12月末に向けてお察しという所ですなあとしか申し上げようがない展開。
でもってどうせ今週木曜の3Mまでは動きがでそうもない短いゾーンではあるのですけれども、今週木曜の3M入札がどの程度の水準までマイナス幅を縮小することができるのか(もはやゼロとかそういう事は言わない)というのと、その後セカンダリーでうっかりまた金利低下が進んでしまわないかというのがポイントで、何せ今月は3M入札は4回しかない(6Mと1Yは端から碌な事にならないと予想)のですが、前回の入札があの状況で今でもマイナス5bpとか言っている訳ですから、今週の入札である程度以上は調整してくれないとどうにもならんという感じではありますな。
まー買入に関しては今後もペースが遅くなるという事は見込まれるのですが、現実問題として供給が入札の形でどどーんと出てきてからじゃないと動かないのが短国市場クオリティでございますのでまさに出たとこ勝負。しかも毎週2500億円の買入だけは突っ込まれているので、隙あらば拡大しよう(ただし帳尻の範囲内)と考えているのではという気はしますし、ここで帳尻モードをやっていると実は1月になってまたまた買入がポンポン入るのではないかとか色々と頭が痛いものがありますな。
○補足を忘れていたのでメモ(決定会合議事要旨)
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g151030.pdf
展望レポートに対する反対意見部分を引用するのを忘れたので自分用備忘メモとして置いておきます。
『Y.「経済・物価情勢の展望」の検討』である。
『続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討され、多数意見が形成された。』
多数意見というのは出来上がりの文。
『これに対し、佐藤委員からは、@物価見通しについて、「2%程度を見通せる時期は、原油価格の動向によって左右されるが、同価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度後半頃になると予想される」とすること、A第1の柱についての記述中、「2%程度の物価上昇率を実現し」を「2%程度の物価上昇率を目指し」に変更すること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。
採決の結果、反対多数で否決された。』
『木内委員からは、@中長期的な予想物価上昇率の見通しについて、「安定的に推移する」とすること、A物価見通しについて、「当面0%程度で推移するとみられるが、その後はかなり緩やかに上昇率を高めていくと考えられる」とすること、B先行きの金融政策運営について、「日本銀行は、中長期的に2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、金融面からの後押しを粘り強く続けていく。今後とも、2つの「柱」による点検を踏まえた柔軟な政策運営のもとで、資産買入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれぞれ適切と考えられる時点まで継続する」とすること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』
ということでですな、これ実質的にお二方とも先行きの政策運営に関する提案をこちらでしているのと同じなのですが、どうせなら木内さんの見解と佐藤さんの見解の着地点は無いものかと考える次第で、物価の見通しに関しては別に揃う必要が無いのですが、佐藤さんの場合は「2%を実現し、ではなく目指し」というのですから要するにローリングターゲット、木内さんの場合は「中長期的に2%を達成すればよろしいがな」という話をしているのであって、これはまあローリングターゲット的な話に収斂できんもんかと思うのですよね。2名が同時に同じ話をするとなるとそれはそれでインパクト違ってくるし、石田さん辺りの加勢も期待できたりしないかなとも思ったりはしますけど。
でもって佐藤さんの見通しは「2%程度を達成」ではなくて「見通せる」なので、よーするにフォーキャストターゲットの考え方でもあって、現時点から見て2年程度の期間内に「よしこの先2%行けるやん!」となれば良いという説明なのですが、そもそも今の建付けでの政策継続可能期間がそんなにあるとも思えない(来年前半位は持つのかもしれませんが、短国がうっかり今の調子のままで続くと中短期から大爆発が開始されるのは意外に早いかもしれません)のですが、2016年度後半頃にフォーキャストターゲットが見えてくるという見通しおよび建付けと、今の続きそうもない政策の建付けとの折り合いをどうつけるという話を考えますと、やはりもう少し継続可能な無理のない建付けになるという事になるんでしょうなあと思いつつ、木内さんの枠組みとの間の着地点が出来ると良いのですがと思うのでありました。
○黒田総裁の名古屋講演は毎度の状態なのですが・・・・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151130a1.pdf
『このところの経済情勢をみますと、中国をはじめとする新興国経済の減速の影響が、わが国の輸出や生産に現れています。しかしながら、これからご説明するように、日本経済のファンダメンタルズはしっかりしており、わが国の企業や家計を取り巻く環境は、数年前に比べて大きく好転しています。また、物価の基調も着実に改善しています。日本銀行が一昨年4月に導入した「量的・質的金融緩和」は、デフレの脱却に向けて所期の効果を発揮していると考えています。』
『本日は、日本銀行の経済・物価見通しや金融政策運営の考え方をご説明するとともに、デフレ脱却に向けてわが国経済に残された課題についてお話ししたいと思います。』
ということで講演である。
・経済の説明はいつも通りだが賃金の所で吹いた
経済の説明はもういつもの話なのでさておこうかと思ったら賃金の説明が大本営状態で中々香ばしい。
『企業収益が過去最高水準で推移し、労働需給のタイト化が継続するもとで、賃金には上昇圧力が生じています。所定内給与は、2年連続でベースアップが行われたこともあり、年初来3四半期連続で前年比プラスとなっているほか、各種のアンケート調査などをみると、夏のボーナスも、大幅な増加となった昨年の水準を更に上回ったようです(図表3)。』
ということで図表3が上記URL先の巻末にあるのですが、左の『所定内給与』というグラフの折れ線を見ると足元では頭打ちしているように見えますし、もっとお洒落なのは右の『夏季賞与』という表でして、毎月勤労統計の方で賞与に相当する部分の数値が悲惨な事になっているのを完全に表示しないという辺りに大本営発表の香りが漂うのが実に味わいが深いというものです。
でまあ景気づけで大本営発表をするために都合の良い数字を出してくるというのであればまだよい(実際は全然良くないが)のですが、この都合の良い数字を持ち出して大本営発表クオリティというのが別の方向に発揮されますと、物価数値に関して都合のよい数値を取り出して「ほらこんなに物価の基調が改善しているからQQE大勝利で2%達成したも同然」とか言い出して勝ったことにするという粉飾目標達成攻撃で政策の収拾を図るという荒業に出られるリスクがある点についての留意が必要でございますので念のため。
『こうした雇用・所得環境の着実な改善を背景に、7〜9月の個人消費は前期比プラス成長となりました。より最近のヒアリング情報なども合わせてみますと、個人消費は底堅く推移していると判断しています。』
だそうだが消費弱かったんじゃネーノ。なお経済のまとめは以下の通り。
『以上のような企業・家計の両部門における前向きの循環メカニズムのもとで、先行きのわが国経済は、本年度から来年度にかけて、1%台前半から半ば程度の実質成長を続けると予想しています。これは、現在、「0%台前半ないし半ば程度」とみられる潜在成長率を上回る水準です。』
そんなんで2%達成できるんでしたっけという感じですけどね。
・物価の説明も相変わらずの大本営
『(物価情勢)』に参ります。
『次に物価情勢です。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、「量的・質的金融緩和」導入直前の−0.5%から、昨年4月には消費税率の引き上げの影響を除くベースで+1.5%まで高まりました。』
なにこの「2%上昇しました」と言わんばかりの説明ですが、この伏線は後程回収されます。
『しかし、昨年夏以降、原油価格の大幅下落などが生じた結果、消費者物価の前年比上昇率は低下し、このところ0%程度で推移しています(図表4)。
』
これも相変わらずのインチキ説明で、消費増税前の駆け込み需要による需給ギャップの一時的な改善の効果と、消費増税前後における便乗値上げの動きについては全て「QQEの初期の効果」にしていて、反動で落ちているはずの部分に関しては「原油のせい」としている時点でお前は何を言ってるんだと。
『もっとも、エネルギー価格の影響を除いてみると、物価の基調は着実に改善しています。たとえば、生鮮食品とエネルギーを除くベースでみた消費者物価の前年比は、「量的・質的金融緩和」導入以前はマイナスで推移していましたが、13
年 10 月にプラスに転じました。その後は 25 か月連続でプラスを継続しており、今年
10 月には+1.2%まで上昇しています。このように物価上昇が持続するのは、90
年代後半に日本経済がデフレに陥って以来、初めてのことです。』
都合の良い数値キタコレ。
『また、東大や一橋大が食品や日用品などの価格を集計し、日次や週次で速報している価格指数をみても、』
去年は「一部を反映しているに過ぎない」とか言ってたのにね。
『本年4月以降、プラス幅の拡大傾向が続いています。さらに、消費者物価を構成する品目のうち、上昇した品目数から下落した品目数を差し引いた指標は明確に上昇するなど、価格改定の動きには、拡がりと持続性がみられています(図表5)。』
なお、ここで図表5を見るとどう見てもトレンドが頭打ちになっているように見えるのが味わいがあります。
『なお、このところの物価上昇について、エコノミストなどの間で「もっぱら既往の為替円安に伴う輸入物価の上昇を通じた一時的なものに過ぎず、物価の基調が改善しているとは言えない」との声も聞かれます。』
といって反論するのが毎度の仕様なのですが、それよりも現在の物価の基調が確りできているのは実はエネルギー価格が下がった水準で維持されている結果としてヘッドラインの物価が落ち着いていることによって、実質賃金が低下しないでいるから消費が何とか持っているだけであって、エネルギー価格が日銀の見通し通りに上昇に転じてヘッドラインの物価が上昇に転じた時に家計の購買力が低下して需要が落ちて物価上昇の基調の腰が折れてしまうのではないか、という方が心配のような気がするんですけれども、そこの話をついぞ聞いたことがありませんな。
『円安に伴う輸入物価の上昇が消費者物価の上昇に寄与していることは確かですが、先程申し上げた通り、価格改定の動きは、こうした品目に限定されている訳ではなく、拡がりがみられています。また、このところの物価上昇のサイズと持続性は、ともに円安の効果だけで説明できるものではなく、その背後には、雇用・所得環境の改善と、企業や家計の物価観の変化があると考えるのが合理的です。』
といういつもの説明をしているのですが、問題はそこではないと思うのですけどねえ。
・最後にまた大きなお世話キタコレ!
この後『3.新興国経済の動向と日本経済への影響』という小見出しがあるのですがどうでも良いので割愛しまして『4.ポスト・デフレ時代を展望して』という所である。
『以上をまとめますと、日本経済は緩やかな回復を続けており、物価の基調も着実に改善していますが、新興国経済の動向などのリスク要因には十分注意する必要があると考えています。金融政策運営の面では、「量的・質的金融緩和」は、所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。』
今の枠組みがいつまで持つのかね。
『今後とも毎回の金融政策決定会合において、経済・物価の現状と先行き、様々なリスク要因、金融資本市場の動向などを十分吟味し、政策判断を下していきます。そして、2%の「物価安定の目標」の早期実現のために必要と判断すれば、躊躇なく対応します。』
じゃあなんで追加緩和しないでしょうかねえという話は兎も角として。
『さて、最後に、デフレ脱却と企業経営について、申し述べたいと思います。』
大きなお世話キタコレ!!
『先般の大阪での経済界の皆様との懇談の場や、東京での講演などで、私は「程度の問題として、企業収益が歴史的な高水準となっている割には、設備投資や賃金の伸びがやや鈍いという印象が否めません」と申し上げました。』
さいですな。
『誤解のないように付け加えますが、私が申し上げているのは、それが日本経済全体のために必要だというだけではなく、自社の利益に繋がるはずだということです。』
大きなお世話です。
『すなわち、日本経済がデフレを脱却し、2%の物価安定のもとでの持続的成長という新しいステージに入っていくのであれば、今のうちにデフレ期のマインドセットを転換し、人材や設備への投資を進めることが勝ち残るための必須の条件になります。』
>入っていくのであれば
>入っていくのであれば
>入っていくのであれば
そういうのは達成してから言えと思うし、達成しそうならお前に言われんでも皆やるわヴォケ。
『この文脈で日本銀行が申し上げたいことは、ただひとつ、「デフレからの脱却と2%は確実に実現する」ということです。それも「できるだけ早期に」です。』
どうみてもやるやる詐欺です本当にありがとうございました。
『私どもは、賃金上昇を伴うかたちで物価がバランスよく上昇する姿を実現したいと思っています。しかし、そのことは、賃金が上がるペースをみながら物価の上昇に向けた手を緩めたり早めたりするということを意味しません。』
全く持って意味がわかりません。
『物価と賃金は、理論的にも実証的にも概ねパラレルに動くものです(図表9)。物価目標の実現をゆっくりやっていれば、賃金の調整もゆっくりになるだけです。これは結局は、「卵が先か鶏が先か」という問題であって、デフレという「竦み(すくみ)」の状況を打破するには、誰かが断固たる決意を持って物事を変えなければなりません。』
ということでコストプッシュでもなんでも物価が上がればバックワードで予想インフレが上がって経済が好循環するという置物リフレ理論をやったら実質賃金が下がって消費がコケて物価の基調がコケたというのが実証済みな上に、たまたまエネルギー価格が下がって実質所得にプラスの影響が出たから何となく持ち直している、というラッキーパンチが入っているのが今の状態じゃないですかねえ。
『そしてそれが、物価の問題である以上、まず行動すべきは日本銀行です。』
ということですが、物価の問題なのではなくてそもそも経済の成長力が弱い中で2%を早期に目指すのはそれこそ物価と賃金のバランスとかそういうのを崩すだけであって、そうではなくて経済の成長力を付けるという取り組みの中で金融政策はその取り組みを推進する為に緩和的な環境をもってサポートし、経済の実力に見合った物価上昇を目指して最終的には2%程度の物価上昇が整合的になるような経済を作って行きましょう、というのが白川ドクトリンなのですが、黒田さんはここだけは絶対に認めようとしませんよね、そらまあ認めたら過去の自分全否定になるから認められないのですが、ここまでに起きた事って結局白川ドクトリンの方が妥当じゃねえかという流れにしか見えませんけどねえ。
・最後の最後に目を疑うような新手の説明
『日本銀行は、「物価安定の目標」の実現のため「できることは何でもやる」という姿勢のもと、「量的・質的金融緩和」を推進してきました。その結果、株価、為替相場などの金融市場の状況や、企業収益の環境、失業率をはじめとする労働市場の状況などは大きく変化し、物価の基調は明確に変わりました。』
あらそう。
『「量的・質的金融緩和」導入前の 2013 年3月との対比でみると、この 10 月の消費者物価の前年比は、除く生鮮食品・エネルギーで+2.0%ポイント、除く食料・エネルギーで+1.5%ポイント上昇しています。このように、日本銀行は、2%の物価安定を早期に実現する強い意志とそれを実現する能力を持っています。』
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)
ついに物差しの起点を変えるという凄まじい荒業に出ました!!!!!!!!!!!!!!!!!
・更にお願いというか何というか
『2%という物価全体の「ものさし」は提示されているわけですから、個々の価格や賃金は、それを前提として調整されることになります。』
「ものさし」の起点がインチキなのに提示もへったくれもあるかよ。
『実際に2%の物価安定が実現した場合、デフレ期の考え方で投資や雇用の判断、価格設定などを行っていた企業は、競争に出遅れ、不利になります。また、賃金の上昇については、労働需給や企業収益など賃上げの環境は既に十分に整っているとみていますが、この先2%の物価上昇を前提として、それにふさわしい賃上げを実現していくのは、まさに労使の役割です。』
大きなお世話です。
『私自身、実は個々の企業の中には、新しいステージに向けた動きは既に拡がってきているとみています。特に当地は、わが国初の純国産乗用車が開発された地であり、従来から、進取の精神に富んだ経営風土にあると理解しております。折しも先日、わが国初の国産ジェット旅客機であるMRJが初飛行に成功し、新たなレジェンドが生まれました。是非、当地から前向きな企業行動の風が吹き立ち、日本経済がデフレ脱却後の新たなステージへと力強く飛び立って行くことを期待しています。』
何かとりあえずキャッチーな事を言って話をまとめたようなのですがちょっと・・・・・・・・・・
ということで、とりあえず賃金上昇と設備投資をお願いして回っていかないと如何ともしがたいという手詰まり状態だという所ですが、これは「企業のマインドを鼓舞する為に行っているので、期待に働きかける政策の一環である(キリッ)」という事であって、ただのお願い行脚ではないということなんですねきっと!!!!!!!!!!!