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2015/06/30

お題「末初レポレートが日銀無慈悲短国買入で大幅低下/総裁の講演内容が最近劣化していないかと気になるのだが」

この手の「確率50%」ほどイイカゲン臭の表現もありませんな。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0P92LL20150629
S&PがギリシャをCCCマイナスに格下げ、ユーロ離脱の確率50%
2015年 06月 30日 04:39 JST


○そんなギリシャはスルーして東京レポレートェ・・・・・・・・・・

久々のこいつ
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

そちらの『公表データ』って所に

東京レポ・レート(2015年6月29日) エクセルファイル (Excel:27KB)
東京レポ・レート(一覧) エクセルファイル (Excel:138KB)

とありますが、まあどちらでもよい(上のが直近1日分で下のが過去データ)ので開けて見ますと、昨日の翌日物取引T+1スタートものの金利が何とびっくり-0.085%となっておりまして、短国市場が玉無し芳一時代になって、末初の短国現先の玉が思いっきり物無し状態になってしまった影響からGCレポレートにも四半期末にマイナスに突っかけるという現象が発生していますが、マイナス8.5bpというのは色々なものを超越して天上界に旅立ってしまったようなレートになっております。

#いやまあ前日の時点でS/Nの気配がアレだったのでそこそこのマイナスの数字になるとは思っていましたがアイヤーという感じですな

四半期期末(なので月末でもある)ということで、決算開示的なお家の事情というのがあって、国債とか有価証券とかの保有残高を稼ぎたいというニーズは世の中にあり、一方でこの金利の状況でそんなに買ってられませんがなという状況の下では、どうしても短国中心に期末残高の調整でニーズが出てくる訳でして、そういうお家の事情に則った買いまたは買現先のニーズでございますからそらもう特に現先なんて食らっても1日分だけですからマイナス金利だろうと突撃してくるお家の事情隊の皆様がいると普通の運用やっている投資家はマイナス金利確定のものをむざむざ買いに行くわけにも参りませんので押し出されてしまうの図となる訳ですな。

とは言いましても、GCレポでしたらそこまで盛大にマイナスに突っ込むかというとこれまた微妙で、上記の東京レポレート一覧で過去のを見ていただければ分かりますが、マイナスに突っ込むと言っても今回のような冥界レートにまではならないというのが仕様(なお短国現先は平気で冥界に突っ込む)だったのですが、今回は日銀の短国買入が四半期末日に受渡をするという無慈悲クラウディングアウトプレイ(輪番もそうですが)が登場したのでこんな有様になってしまいましたという事で、日銀から積極的にクラウドアウト(以下いつもの悪態なので割愛)。


まあそんな事より次回の金融政策決定会合では6月のマネタリーベース残高の進捗が誤差で説明できない上振れを示している件について「ステルス追加緩和ではないか」という質問を会見で誰か飛ばして下さいお願いしますお願いします(なお想定問答は「あくまでもこれは調整上の誤差範囲内で年間80兆円ペースは変わりません」だと思います・・・・・・・)。



○総裁がBISで講演をしているのだが言っている事が益々ファンタジーの世界に旅立たれている件について

小見出しが長いですかそうですか。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150629a.pdf
【発言要旨】非伝統的金融政策の波及経路 ―理論と実践―
BIS(国際決済銀行)年次総会のパネルディスカッションにおける冒頭発言の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦 2015年6月28日

ということでめんどいので邦訳の方を見てしまうのですが、全編においてツッコミどころががががが。


・消費増税前の影響とかは無視して効果を騙るとな

『日本銀行は、2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入しました。その後の2年余りの経験を経てひとまずわかったこととして、私たち中央銀行が自らの使命の達成に強く明確にコミットし、適切な非伝統的政策手段を用いれば、ゼロ金利制約は克服できるということが挙げられるかと思います。』

そういうのは政策の目標を達成してゼロ金利制約の軛を逃れたところで堂々と宣言するものであり、出口政策どころか目標達成のメドがドンドン後ずれしているような状況なのに「ゼロ金利制約は克服」とか何を寝言を言っているのでしょうか。

『例えば日本では、「量的・質的金融緩和」導入以降に、完全失業率は0.8%ポイント低下し、消費者物価指数の前年比は1%ポイントほど上昇しています。』

消費者物価指数に関しては消費増税の駆け込み需要などの影響で上がった分というのがあった筈で、その後原油ガーという言い訳はあるにせよ下がって今0.1%なのに「前年比は1%ポイントほど上昇」というのは単に緒戦の消費税神風補正付きの戦果であって、今の状況を話さないでこういう表現をするのは詐欺じゃないですかねえ。

なお、後の方でその手の言い訳は出ているのですが最初の時点ではこういう話をしているのが二枚舌っぽくてそれもまた素敵です。

『他の中央銀行も同様に、非伝統的金融政策によって需要を刺激することに成功しています。』

だそうなのですが、経済が恒常的に供給不足の時って金利とか貸出の枠みたいなので供給力の創出のコントロールをしやすいと思うのだが、経済にスラックがある中で金融政策で有効需要って恒常的に刺激できるもんなの???という気は昔からしているのですが、何せ不肖このアタクシ無学なもんでその辺の理屈構成が良くわからん。


・「効果はありまぁす」と割烹着を着て登場するわアプローチの説明が自爆だわ

で、次。

『非伝統的金融政策の効果については、学界には引き続き懐疑的な見方も残っているようですが、少なくとも中央銀行の間では、現実に政策効果があったという共通理解が醸成されています。』

お、おぅ・・・・・・・・・・

『バーナンキ前FRB議長が「量的緩和の問題点は、現実には効果が認められるのだけれども、理論的には効果が説明できないことである」と語ったことは良く知られていますが、まさに言い得て妙だと思います。』

で?

『こうした状況を踏まえますと、非伝統的金融政策について残されている謎は、効果があるかどうかではなく、なぜ効果があるのか、だと言えます。』

何ですかこのおぼちゃん状態は・・・・・・・・・・・・・・

でまあ別に「アプリオリに効果がありまぁす」を1兆歩譲ってスルーするにしましても、「なぜ効果があるのかが謎」とか言うのはQQEに関して言えば非常に危なっかしい話でありまして、こらまた盛大な自爆モードですなあと思うのですよ。

つまりですね、この前もMPMでどこかの阿呆が「副作用の理論的根拠なし」とか脳味噌が溶解しているような発言をしていたようですが、本来的に言えば伝統非伝統を問わず何らかの効果のある政策というのにはその裏側に副作用というのがあって、全体を勘案した場合に効果>副作用だから政策を実施する、という話な訳ですよ。

然るに、「非伝統的金融政策について残されている謎は、効果があるかどうかではなく、なぜ効果があるのか、だと言えます。」というのはQQE導入時のコンセプトを考えると自爆ブーメランにも程がある認識でございまして、当時は「必要な措置は全て投入した(キリッ)」とか言って逐次投入を全否定してスタートした政策でしたが、今回の黒田さんの発言を踏まえると2年前に行った逐次投入をしないというコンセプトそのものが間違えだったという話になってしまうんじゃないですかねえ。

つまりですよ、非伝統的金融政策は実践の知見が少ないから、現実に何故効果があるのかが謎、というのは恐らく正しいと思うのですが、そういう政策であれば当然ながら政策の副作用についてもどのような出方をするのかというのが謎な訳で、そういう形でどういう結果になってくるのか皆目見当のつかない政策を実施するのであれば、「走りながら考える」という形で政策を遂行していかないと、副作用が思わぬ大きさになっているのに気が付かないとか、そもそも政策効果に対して投下している政策が(方向性などが間違っているために)効率の非常に悪いことをしているのではないか、などというような点に気が付かないままで政策を継続するという事になりませんですかねってことですよ。


まあ「期待に働きかける」政策だから自信満々の姿勢を崩したくない、という理屈も分からんではないのですけれども、そもそもこれだけのマネタリーベースを投下したり長期国債を買ったりする必要が本当にあるのか、もっと効率よく政策を投下する事はできなかったのか、などというような点検が全くないままで当初のマネタリーベース直線一気理論や実質金利を下げれば何でも宜しい理論やらで打ち込んだ政策の拡大再生産だけを継続している訳で、そんな中で自分らの政策について「非伝統的金融政策について残されている謎は、効果があるかどうかではなく、なぜ効果があるのか、だと言えます。」とか無責任にも程がありませんかねえという事ですよ。MPM議事要旨見たって政策の有効性に関してとかもっと効率よくやる方法無いのかとかまともに点検しているようには見えないし。

『そこで、以下では、この論点に対して、理論的観点と実践的観点の両面から焦点を当ててみたいと思います。』

悪態が長くなりましたがでは個別論点。


・タームプレミアムの説明は時間的整合性の論点をスルーしていますなあ

『第1に、タームプレミアムについてお話しします。』

さいですか。

『中央銀行による大規模な資産買入れがタームプレミアムを縮小させるかどうかは、「市場分断(preferred habitat)仮説1」が成り立つかどうかと密接に関係します2。有力な学者の中には、「中央銀行によるマーケット・オペレーションを通じた資金供給・吸収は、将来の金融政策に関する期待を変えられない限り、余り効果がない3」として、タームプレミアムを縮小させる効果を否定する方もいます。恐らく、バーナンキ前議長が「量的緩和は、理論的には効果が説明できない」と語った際には、こうした議論が念頭にあったのだろうと思います。』

えーっとですね、まあ欧州のあの状態でもそうですし、日本のQQEの最初の時もそうなのですが、最初の買入で金利が低下して資産市場が強くなったところで、「政策が効いているから出口についても何となく意識されますなあ」となると結局の所ボラが上がってしまうのでタームプレミアムが縮小するかというとそこは微妙なのではないでしょうかねえ。

つまり政策の時間的整合性の問題に帰着される訳で、日本の場合は物価が2%で安定するという日銀の目標および見通しが行くと市場の人たちが全然思っていないから長期金利が低位安定(というか低位不安定)するのであって、日銀の経済物価見通し通りだったら2016年度から2017年度に掛けては年平均で2%近辺で物価が推移するという事になるのだから今の金利の訳はないのですがそれは。

『しかし、中央銀行の間では、長期債を大規模に買入れて需給に影響を与えることを通じて、タームプレミアムを実際に縮小させることができるという理解が、次第に広がってきています4。加えて、これまでの経験により──ジェームス・トービン教授の「資産市場の一般均衡分析」が示唆する通り──長期金利の低下がポートフォリオ・リバランスを通じて、株や民間債務といった他の金融資産の価格に影響を及ぼす、ということも分かってきています5。最近、エコノミストの間では、タームプレミアムの縮小という量的緩和の波及経路を明示的に取り込めるよう、この「市場分断」のメカニズムを自らのマクロ経済モデルの中に組み入れる動きも出てきています6。』

どう見ても????が百万個くらい飛び交う話であって、それ単に現時点を切り取ってそういう風に見えているというだけの話であって、日本だけじゃなくて他の主要国だって成長期待の低下で物価が上がりにくくなっているという認識が強いからゴルディロックスっぽくなっている訳で、金融政策の効果で物価が早期に上がって非伝統的政策も長く続かないという認識になったらその限りじゃないだろうと小一時間。



・フォワードガイダンスの説明もかなり雑で大丈夫かよおいおいという感じです

『第2に、非伝統的金融政策の大事な要素の一つであるフォワード・ガイダンスについて、触れておきたいと思います。』

はあそうですか。

『フォワード・ガイダンスが効果的であることは、理論的にも実践的にも広く支持されています。理論的には、フォワード・ガイダンスは、中央銀行の政策反応関数を明らかにすることによって、先行きの政策金利のパスに関する民間予測を収斂させ、それによって金融市場のボラティリティを小さくすることができると考えられています。』

えーっとすいません、政策反応関数を明らかにして先行きの政策金利パスの予測が収斂しちゃったらその政策反応関数に直結する何らかのもの(普通は特定の経済指標だと思うが)に変化が起きたらその時点で収斂している政策金利パスの予想が不連続に遷移するから金融市場のボラティリティって中期的に見たら将来に大きく不安定化するリスクを高めるのですが、おっちゃんトレーダーじゃなくて政策担当者だと思うのですけれどももしかして超目先の事しか考えてないの???????????

『実際に、フォワード・ガイダンスは、政策目標に対する強いコミットメントとともに、様々な国・地域における様々な政策の枠組みの中で用いられており、その効果が認められています。』

米国は出口政策に向けてガイダンスを徐々に形骸化していって廃止しましたがその間にいわゆるバーナンキショックのようなものが起きた訳ですし、しかもそれは出口着手がだいぶ具体化する1年以上前の話であることを考えると、フォワードガイダンスの効果よりも、ガイダンス政策は出口政策における障害になる為にそこでの期待のコントロールを難しくするという性格を持つ「行きはよいよい帰りは怖い」の典型的なモノなんじゃないですかねえ。



・量の効果とか長期国債買入と財政ファイナンスの説明だがMB直線一気理論は無視ですかそうですか

『第3に、量的緩和の「量」の側面について取り上げたいと思います。』

置物MB直線一気理論キターーーーー!!!!

『果たして、中央銀行のバランスシートの大きさ自体には、意味があるのでしょうか?また、もし意味があるのだとしたら、なぜ意味があるのでしょうか?』

ほうほう。

『この点、経済理論家の中には、量的緩和は「通貨創造による政府財政のファイナンス(monetary financing of the government budget)」の観点から有効なのである、と論ずる方もいます。』

宮尾先生が講演でこの理論に関する話をしてアタクシの血圧を急上昇させたという事案がございましたな。

『しかし、これに関しては、先ほどご紹介したバーナンキ前議長の言葉とは正反対のこと、即ち、「理論的には効果が認められるが、実際にそうすることはできない」と言わざるを得ません。財政のファイナンスを行うということは、中央銀行の信認を崩壊させ、潜在的にリスク・プレミアムを(引き下げるのではなく)引き上げるリスクを冒す行為と考えられています。』

ここはこの講演にしては珍しく同意(^^)。

『また、最近の米国および英国における経験からは、非伝統的金融政策は、本格的な財政再建に取り組んでいるもとでも効果を持つことが示されています。』

>非伝統的金融政策は、本格的な財政再建に取り組んでいるもとでも効果を持つことが示されています
>非伝統的金融政策は、本格的な財政再建に取り組んでいるもとでも効果を持つことが示されています
>非伝統的金融政策は、本格的な財政再建に取り組んでいるもとでも効果を持つことが示されています

・・・・・・・・・・・・えーっとあのそのすいません日本(銃声)

『日本の場合、2013年1月に公表した政府との共同声明において、日本銀行が2%の物価安定の目標を追求すること、そして、政府は公的債務の長期的な持続可能性を確保することにコミットすることが明記されています。従って、「量的・質的金融緩和」に関して言えば、財政の拡大を容易にするといった意図は、もとより全くありません。』

金融政策に関して言えば「コミットメントを裏付ける大規模な金融緩和政策」を実施していますが、財政政策に関して「コミットメントを裏付ける政策」を(内務省検閲)。


『このように、財政のファイナンスは全く我々の念頭にはありませんが、それとは別の理由で、中央銀行のバランスシートの大きさは重要だと考えています。』

というころで・・・・・・・・

『インフレは究極的には貨幣的な現象である、ということは広く認識されていますので、巨額の通貨供給を行うことは、中央銀行のデフレ克服に向けたコミットメントを表す強いシグナルとなることでしょう。』

久々にフリードマンキタコレと思ったのですが、「コミットメントを表す強いシグナル」とか言っていまして、置物マネタリーベース直線一気理論はすっかり無かったことになっていますがイエーイ置物先生見てる〜って感じでして置物副総裁の所感をお伺いしたい。

『こうした意味で、過去に例のない規模でのマネタリーベースの拡大は、「量的・質的金融緩和」において、重要な役割を担っています。』

ただのコミットメントを表す強いシグナルというので年間80兆円も拡大する必要あるのかよ・・・・・・・・・・


・期待キタコレだがただの宗教状態ですな

『第4に、そして最後に、非伝統的金融政策の波及チャネルとして、私がとても重要だと考えている期待のチャネルについてお話ししたいと思います。』

信じる者は粉を振り掛けると空中浮遊するんですねわかります。

『これは、私がたった今お話しした「『量』が持つシグナル効果」と重なる部分があります7。問題となり得るのは、期待のチャネルについては、理論的な基礎が十分に確立されていないことです。』

そら貴方様がピーターパンとか言う位じゃあねえ。

『標準的な理論では、単に、合理的な期待形成が自ずと成り立つことが想定されていますが、では、企業や家計の期待形成のあり方に変化をもたらすものが何なのか、という点については、多くの場合、何も語られていません。しかし、私は、@政策目標に対する強いコミットメント、A明確で一貫した情報発信、そしてBコミットメントを実現するための断固たる行動、この三者が一体となれば、民間の各経済主体のインフレ期待、ひいてはその行動に対して、大きな影響を与えることができると確信しています。』

確信するのは良いのですが期待インフレも2%で安定していませんし、そもそもお約束だった2年での達成もできていませんのでとてもその通りに行っているとは思えませんけどねえ。

『この期待のチャネルは、長期間にわたってしっかりと根付いてしまったデフレ・マインドを払拭しなければならない日本において、特に重要なのです。』

それは分かったが結局何がどうなっているのかの説明が無いというのは説明すると墓穴を掘るからだというのは理解致しますが言及碌にしないというのは不誠実じゃないですかねえ。


・最後の所もまあ何だかなあと

『さて、本日の話を終える前に、ケネディ、ジョンソン両大統領のもとで経済顧問を務めたウォルター・ヘラー氏の言葉をご紹介したいと思います。「エコノミストとは、現実に何か効果のあるものをみつけると、それが理論的にも当てはまるかどうかを考えてしまうものである。」もしもこの言葉が真実であるならば、非伝統的金融政策に残された謎についても、今後、理論的な理解が一層深まることが期待できるものと考えています。』

経済現象は再現性が無いから仕方ない面はあるのですが、それによって作られた「理論」が前提条件が違ったら全然通用しないような脆弱な「理論」だと邪魔にも程があるんですよね。マネタリーベース直線一気理論とかマッカラムルールとかまさにそんな感じですけれども。なお国債買うと債務消滅のジンバブエ理論は理論以前の問題ですけどね。

『同時に、中央銀行の実務家としては、それで満足している訳にはいきません。例えば、日本銀行について言えば、原油価格下落の一時的な影響が一因とは言え、物価上昇率は依然として目標には遠く及んでいません。物価上昇率は、2016年度前半頃には2%程度に達する可能性が高いとみていますが、こうしたシナリオに対するリスクは看過できません。』

2年で達成しなかったことに関する言い訳はしないで2年というのを徐々にフェードアウトしているように見えますが「じゃあ時間を特に区切らないで達成するんですね」と聞くとそれは違うとかいう話を始めるというのが日銀執行部の謎な所ではあります。

『地政学的要因を含め、世界経済にかかる不確実性が非常に高い中にあっては、特にそうです。そのように申し上げた上で、改めて、2%の物価安定の目標の実現に向けた我々のコミットメントは、決して揺るがないということを強調しておきたいと思います。こうした断固たる姿勢を保つことにより、我々は必ず目標を達成できるものと確信しています。』

ということでただの気合の話で締めていますが、その中でしらっと「地政学的要因を含め、世界経済にかかる不確実性が非常に高い」と仰せなのは、次に2016年度前半の2%というのを後ズレさせるための布石か何かを打っているのでしょうかという疑惑も湧き上がるのでありましたとさ。


ということで結局講演殆ど引用してしまいましたが、政策に関して効果の話ばかりで副作用の話が無いとか、2年で達成のコミットメント未達に関する説明は全然ないとかいうのもアレですし、全般的に益々話が雑になっている感がありまして、最近のMPM議事要旨に垣間見られる議論レベルの劣化と共に何かこう大丈夫かおいおいというのを感じる総裁講演なのでありましたとさ。




2015/06/29

お題「ギリシャ関連俺様用備忘メモ集/末渡し短国買入とな/CPI関連雑談」

自民党での勉強会は飲み屋でクダを巻いているようなもんなのか・・・・・・・・

http://mainichi.jp/select/news/20150628k0000m040064000c.html
百田尚樹氏:発言は「飲み屋でしゃべっているようなもの」
毎日新聞 2015年06月27日 21時50分(最終更新 06月27日 21時57分)

言えば言うほどボロと馬鹿が露呈されて面白いのでもっと言えwwwww


○ギリシャ関連のニュースとEU&ECBのリリースを貼っておく(ただの俺様用備忘メモ)

ということで俺様メモとして後学のために貼っておく。

レファレンダムキター!

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150627-00000018-bloom_st-bus_all
ギリシャ:支援条件受け入れ是非で国論二分も−国民投票控え
Bloomberg 6月27日(土)15時50分配信

『ギリシャの指導者は同国を侮辱しようとしている脅迫者だとユーロ圏の交渉相手を批判し、国民に「ノー」の意思表示をするよう呼び掛けた。国民投票で支援条件受け入れに反対となれば、ギリシャ国内の銀行の資金繰りの命綱を断つことを欧州中央銀行(ECB)に促し、ギリシャのデフォルト(債務不履行)リスクが高まる恐れがある。一方、受け入れ賛成なら、チプラス首相は早期の総選挙実施に追い込まれる可能性がある。』(上記URLより)


でまあこういうこと。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150628-00000002-jij-eurp
ギリシャ支援、延長せず=デフォルト濃厚―ユーロ圏会合
時事通信 6月28日(日)0時46分配信

『【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)ユーロ圏19カ国は27日、ギリシャへの金融支援をめぐり緊急の財務相会合を開き、現行支援を延長せず、6月末で終了させることを決めた。支援継続の道を断たれたギリシャは、別の支援を得られなければ、デフォルト(債務不履行)に陥る可能性が濃厚となった。』

『ギリシャを除く18カ国は声明で「ユーロ圏の金融の安定を確保するため、必要なあらゆる措置を取る」と表明。ギリシャのデフォルトに備え、危機対策の具体化に入った。このまま双方に歩み寄りが見られなければ、ギリシャのユーロ圏離脱も現実味を増しそうだ。』

『記者会見した財務相会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は、ギリシャが26日夜に一方的に交渉を打ち切ったことを明らかにした上で、「残念だが支援は30日で終了せざるを得ない」と述べた。ただ「さらに交渉するためのドアは開かれている」とも述べ、再交渉の可能性に含みを残した。』(以上上記URLより)


そうなれば現金が国際通貨ですからこうなるわな。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150628-00000083-jij-eurp
迫るデフォルト、国民警戒=30日返済期限―預金流出、週明け危機も・ギリシャ
時事通信 6月28日(日)19時36分配信

『【アテネ時事】欧州連合(EU)などとの金融支援交渉が決裂の瀬戸際にあるギリシャでは、週明け以降に銀行業務がまひする可能性が一段と高まった。週末の首都アテネでは預金を下ろす人々が銀行に列をつくり、混乱を招いたチプラス政権の不手際を口々に批判。ユーロ圏離脱が日に日に現実味を増す未曽有の事態に身構えている。「すぐに現金を下ろして。水やパンもできるだけ確保した方がいい」。チプラス首相が、債権団の求める緊縮財政の是非を問う国民投票の実施を突如ぶち上げた27日、アテネ郊外に住む翻訳家の石川直子さん(47)は、ギリシャ人の夫から電話で連絡を受け、直ちに現金自動預払機(ATM)に走った。』(以上上記URLより)

これが独自通貨だと単に通貨が盛大に安くなっていずれ預金封鎖の時に外貨建て預金も強制的に自国通貨にされてしまう(アルヘンティーノのケース)とかになるから自国通貨を引き出しても微妙ではあるのですが、何せ通貨が共通通貨ですから現金下ろして甕に入れておくのが最強。


で、肝心の欧州当局のリリースですが。

ギリシャが支援案拒否してレファレンダムしやがるのでEU怒りの支援打ち切り件(6/27)。

http://www.consilium.europa.eu/en/meetings/eurogroup/2015/06/27/
Main results

『On 26 June the Greek authorities decided to reject the proposals by the institutions (the European Commission, the European Central Bank and the International Monetary Fund) for Greece's reforms plan.』

ギリシャ拒絶キタコレ。

『The plan, which has been negotiated since February, is a precondition to unlocking the remaining financial assistance for Greece under the current arrangement.』

ワシらの改革案は支援の前提条件じゃヴォケと仰せです。

『The Greek government decided to call for a referendum on these proposals. It is expected to take place on Sunday, 5 July 2015, after the expiration date of the current arrangement.』

レファレンダムは7/5に実施されますがそれはウチラの今生きている合意の切れた後な。


ダイセルブルーム議長の会見(6/27)

http://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2015/06/27-eurogroup-press-remarks-final/
Remarks by Eurogroup President at the final Eurogroup press conference on 27 June 2015

『Good evening everyone. I would like to report back to you about the informal ministerial meeting we had following the break-up of negotiations with the Greek authorities last night and the Eurogroup meeting earlier today.』

非公式会合を26日の夜にやって公式会合を27日の朝にやったと。

『This informal meeting was held at the request of a number of ministers. We were informed by the institutions; we discussed the forthcoming expiration of the current EFSF financial arrangement with Greece and any consequences that may come from that. We discussed the strength and the preservation of the monetary union. Coming out of the financial crisis, a lot of measures have been taken, frameworks put in place, institutions have been built, which have strengthened and deepened our cooperation, and strengthened our monetary union.』

『We are in a much stronger position, certainly more than before the crisis. Also, I would like to stress the point that all of us, euro area member states intend to make full use of instruments available to preserve the integrity and stability of the euro area, to complement any actions the ECB will take in full independence and in line with its mandate. The EFSF and ESM remain strong instruments with our full backing, as they have always been. We will take any necessary measures to further improve the resilience of our economy as an ongoing process.』

説明の趣旨がギリシャが生きるの死ぬのの話からECBとユーロシステムの頑健性とか安全性の確保という話になっていますがな。

『I would like to stress that the expiry of the EFSF financial arrangement with Greece without a prospect of follow-up arrangements will require measures by the Greek authorities. The institutions stand ready to provide technical assistance to safeguard the stability of the Greek financial system.』

ギリシャの金融システム安定化のためにテクニカルアシスタンスを打ち込む用意がある、ということですけれども実際はのちに引用しますがELA据え置きな。

『The Eurogroup - and that consists of 19 members, I would like to stress - will monitor very closely the situation in Greece, stand ready to reconvene, to take appropriate actions when and where needed in the interest of both Greece and the Eurozone. We also, and this goes also for the Commission and the other institutions, stand ready to support and assist Greece and the Greek people if and when required following the expiration of the financial arrangement with Greece. This is all I have to say. The institutions will provide any technical information you want from them, on risks or possible measures. It is not up to me to communicate on a technical level.』

情勢は注視してみていきますし、いろいろな措置の準備はしますが、テクニカルな話は兎も角、本質的にはギリシャの野郎が合意しないと話が始まらんだそうな。


なお関連リリース(と関連してなさそうなのもあるが)はEUグループのトップページから適当に拾っておりまする。

http://www.consilium.europa.eu/en/home/
European Council
Council of the European Union


で、ECBのELA据え置きなのだがさっきからモーサテが日本が寝ている間と連呼しているのだが昨日の夜寝る時間の前にこれ普通に出てた筈だが。


http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2015/html/pr150628.en.html
PRESS RELEASE
28 June 2015 - ELA to Greek banks maintained at its current level

ということで「今の残高は維持してやるわコール回収とかしないから頑張って資金繰りするなり銀行閉店するなりしやがれコノヤロー」ということですね。

『・ ECB takes note of decision on Greek referendum and the non-prolongation of the EU adjustment programme
・ ECB will work closely with Bank of Greece to maintain financial stability
・ Emergency liquidity assistance maintained at Friday’s (26 June 2015) level
・ Governing Council stands ready to review decision
・ Governing Council closely monitoring situation and potential implications for monetary policy stance』

緊急流動性支援措置(ELA)に関しては金曜のレベルを維持なので昭和金融恐慌の台湾銀行みたいにいきなりコールを抜かれて即死という話にはならないですが、そうは言いましてもレファレンダムが来週日曜でそこまで空白期間なのですが1週間バンクホリデーやるのかいな。

『The Governing Council of the European Central Bank today welcomed the commitment by ministers from euro area Member States to take all necessary measures to further improve the resilience of euro area economies and to stand ready to take decisive steps to strengthen Economic and Monetary Union.』

交渉絡みに関してはECBとしては出る幕無しというか出ない方がどう見ても無難なのでこうなるな。

『Following the decision by the Greek authorities to hold a referendum and the non-prolongation of the EU adjustment programme for Greece, the Governing Council declared it will work closely with the Bank of Greece to maintain financial stability.』

金融安定に向けてギリシャ中銀と協力するもクソも何が出来るのやら。

『Given the current circumstances, the Governing Council decided to maintain the ceiling to the provision of emergency liquidity assistance (ELA) to Greek banks at the level decided on Friday (26 June 2015). 』

まあ今のELAの回収を急に求めないというのは支援ちゃあ支援ですが。

『The Governing Council stands ready to reconsider its decision.

Mario Draghi, ECB President, said: “We continue to work closely with the Bank of Greece and we strongly endorse the commitment of Member States in pledging to take action to address the fragilities of euro area economies.”

Yannis Stournaras, Governor of the Bank of Greece, said: “The Bank of Greece, as a member of the Eurosystem, will take all measures necessary to ensure financial stability for Greek citizens in these difficult circumstances.”』

とりあえず頑張りますという声明しか出しようがないと。

『The Governing Council is closely monitoring the situation in financial markets and the potential implications for the monetary policy stance and for the balance of risks to price stability in the euro area. The Governing Council is determined to use all the instruments available within its mandate.』

マンデート達成に必要な措置があれば実施しますという事ですが、事がソルベンシーになってしまうと如何ともし難い気がするのですががががが。



なお、ギリシャは本日バンクホリデーとなるようで。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQO7OV6TTDS201.html
ギリシャは29日に銀行休業−首相は国民に平静求める
2015/06/29 05:02 JST

『 (ブルームバーグ):ギリシャのピレウス銀行のソモプロス最高経営責任者(CEO)は欧州中央銀行(ECB)がギリシャの銀行向け緊急流動性支援(ELA)の上限を据え置くことを決めた後で、週明け29日に同国の銀行が休業する予定であることを明らかにした。 』(上記URL先より)

バンクホリデーは良いのだが海外で預金引き出しとかカードキャッシングとかの抜け穴がありそうな悪寒。


○短国買入を四半期末で実施だと??とかオペ関連雑談

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150626.htm
国庫短期証券買入 10,000 2015年6月30日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,750 2015年6月30日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,000 2015年6月30日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,400 2015年6月30日
国債買入(残存期間25年超) 1,400 2015年6月30日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3) 7,382 2015年6月26日 2015年6月29日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2015年6月30日 2015年10月9日

>国庫短期証券買入 10,000 2015年6月30日

お、おぅ・・・・・・・・・

いやあのですね、6月30日というのは四半期末でして、四半期末というのは開示絡みで末算調整の為に短国の買い切りや買現先のニーズが大変に多くなる時なのでございまして、MB目標が足りなくて死んでいるというのなら仕方ないのですが・・・・・・・・

3月末のMB
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd150331.htm
マネタリーベース 2,958,600

6月25日のMB
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd150625.htm
マネタリーベース 3,220,900

となっておりまして、仮にここから短国買入を実施しないで共通担保オペが全部(7592億円)落ちたとしても26日〜30日の所で銀行券増発と当座預金残高増額を合わせて2.4兆円程度はプラスが拡大する筈で、そうなりますと6月末のMBって324兆円以上になる筈で、295.8兆円から年間80兆円の四半期分で考えた場合に結構な上振れになるのですよね。

んでもってそこに更に1兆円のMBを上乗せする必要がどこにあるのかが良くわからないのですが、7月8月の財政上げ超分に対してバッファー作るにしても何も昨日短国買入やらないでも今日か明日にでも打ち込んでおけば末算調整で必要な世の中のニーズにも対応できると思うのですが、何かどうも調節の中の方々におかれましては買入で札が確保できれば市場に買われる前に買ってしまえという発想でもおありになるのか、普通四半期末渡しで短国買わないだろ(長期国債は超短い所でもない限り末算調整でどうのこうのは発生しないので輪番の足が四半期に来るのはあまりキニシナイ)というようなプレイが登場するとは恐れ入りました。


なおオペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150626.htm
国庫短期証券買入 25,335 10,005 0.000 0.002 5.1
国債買入(残存期間1年超3年以下) 10,436 3,752 -0.013 -0.010 18.0
国債買入(残存期間3年超5年以下) 14,728 4,000 0.007 0.008
国債買入(残存期間10年超25年以下) 6,025 2,402 -0.003 0.006 18.3
国債買入(残存期間25年超) 4,308 1,402 -0.002 0.003 2.6
国債補完供給(国債売現先)・即日 (午前オファー分) 0 0
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(6月30日スタート分) 733 733

木曜の3M短国入札が100円足切になっていましたので、プライマリーの段階で投資家にあまり嵌っていない(これがプラスだと今の時点では投資家の買いでガッツリ投資家に嵌ってしまい玉無し芳一になってしまうが投資家も当然その時点ではお腹いっぱいなのでそれ以上に買い進まれない)という展開が想定されますので、まあ札はさすがにあるだろと思ったら一応2.5兆円の札は入っていましたが、結果は引けとかまずまず確りですなあ。

でまあこれによりまして末の所での残高調整的な現先可能玉が世の中から1兆円消えてしまったわけでして、末初の現先とかレポとかのレートはあまり拝見したくないという所になるんですが、いやまあそういう政策ですと言われてしまえばそうなのかも知れませんが、運用上工夫できそうなところで何もわざわざ市場のニーズの強い所で日銀がガッツリ買入実施してクラウディングアウトせんでも良いものをと思いますし、日銀が末算調整上已むを得ないというのであればまだわかるのですがどう見てもMB目標上振れじゃネーノと思う所で買うというのもねえ・・・・・・・・・・・

まあ終わったもんは終わったもんとして、焦点になるのは7月に入ってどういう事になるのかという話ではありまして、何せ4月〜5月に掛けて5打席連続3M短国マイナス金利というのがありましたが、その分のロールオーバーが7月になるとやってくる訳で、日銀買入銘柄にしても(マイナス金利を買えない)投資家にしても妙な歪みが発生している所になりますので、どういう動きになるのかというのはちょっと楽しみというかオソロシスというかではございますな。


あと、固定金利オペですが、一時妙に増額ロールされていて???だったのですが、金曜のオペでは7592億円の落ちに対してロールが733億円と盛大に残高が縮小しておりまして、暫く前の買入残高拡大とは何だったのかという所ではあります。4年固定の貸出増加支援貸出制度の方も先般1兆円少々しか残高増えていません(純増ベース)でしたし、どうも中短期というか2年辺りの金利がゼロ近辺で張り付いているのが徐々に効いてきているのかもしれませんね、よー知らんけど。


○CPIが出ていましたが追加緩和とか政策見直しに関する与太雑談も含めて雑談

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0ZC06M20150626
UPDATE 1-消費者物価5月は0.1%上昇、エアコン・コーヒー指数押し上げ
2015年 06月 26日 10:23 JST

『<上昇品目数拡大、外国旅行プラス転換・ガソリンマイナス幅縮小>

コアCPIは昨年の原油価格下落の影響によりことし2月以降、消費増税の影響を除きゼロ近傍で推移している。5月の民間予想中央値(ロイター集計)も前年比横ばいだったが、実績は小幅ながら予想を上回った。前年比で上昇した品目数は332と4月の321から増え、総務省は基調として物価は緩やかな上昇を続けているとみている。品目別ではインスタントコーヒー(前年比10.9%上昇)やコーヒー飲料(同3.3%上昇)など生鮮食品を除く食料のプラス幅が4月と比べ拡大した。曜日の並びが理由で4月は前年比4.8%下落していた外国パック旅行が5月は0.2%上昇した。エアコンやテレビの新製品切り替えによる値上げも指数を押し上げた。ガソリンは前年比15.2%下落したが4月の同15.9%下落と比べマイナス幅は縮小した。一方、電気代は前年比の上昇率が4月の5.3%から5月は0.5%に縮小。都市ガス代も4月の5.7%上昇から5月は0.1%の下落に転じた。』(上記URL先より)

ということでCPIが出ていましたが、市場の予想よりも若干強くて何とかストの皆様の先行き予想もこれを受けて微妙に(気持ち程度ですが)強くなっているような感じになっていましたな。

・・・・・・でまあそうなりますと木曜にブルームバーグニュースが打ち込んで話題になりましたし、ミーもネタにしたこのニュース↓

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQHFA86JTSE801.html
家賃の品質調整で物価0.2%上げ−日銀が総務省に見直し要請
2015/06/25 21:14 JST

であります所の、黒田ピーターパン物語にティンカーベル調査統計局長が登場して魔法の粉を振りかけるとあーら不思議CPIの数字が上乗せされてしまっているじゃないですか攻撃というのが炸裂して、という辺りも本職の皆様のレポートに影響しているのか、ここに来て何とかストの皆様におかれましては追加緩和待ったなし的なトーンがだんだん弱くなっている感じがせんでもない(あくまでもアタクシの主観で真面目に集計取っている訳ではないので誰か取っていたら教えてジェネラルなのです、と図々しいアタクシ)訳でして、「この粉で空が飛べないなら地面を掘り下げれば良いじゃないか」攻撃の効果がボディーブローのように効いている可能性も微粒子レベルで存在している気もせんでもない。

しかしCPIの基準改定って普通は下にぶれる話になる(連鎖方式じゃないから、でしたっけ)のですが、今回はそんなこんなでちょっと債券売りモードになると(今日はギリシャデーですけど)金融政策の枠組みがどうのこうの的なお話ってのも後付で出やすくなって、CPI改定で更にヒャッハー的なネタになりそうな感じではありますな。

しかしティンカーベル魔法の粉は良いのですが、粉の振り掛け方によっては魔法の言葉でCPIがぽぽぽぽーんで債券市場がぽぽぽぽーんになるんですがそれはという所でして、今後に影響出そうですなあというのは金曜のCPI受けた後の何とかストさんのコメントを拾って読んでて思うのでした。



なお、更に与太話をしておきますと、「だから追加緩和が無い」というのもこれまた修行の足りない発想でございまして、物価がいかないから追加緩和をするよりも「物価が行きそうなので追加緩和をする」という荒業に打って出ますと、その追加緩和自体が何の効果があるかという事はさておきまして、追加緩和自体が物凄い勢いで効果を出したかのような錯覚(いやまあ事実かも知らんがこれだけMB出してこの程度なのに追加で10兆円出してどれだけ効くのかと小一時間)を与えて、買入政策自体の効果が凄くあったかのように見せかけることが出来るので、実は「自信がついたところで追加緩和」というのは、その追加緩和自体が実はそんなに効果が無いと思っているときなどにはテクニックとして使えるのですよ。

その実例としては、狸でおなじみの福井の俊ちゃんが2004年1月に行った追加緩和がありましてですな。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2004/k040120.htm/
金融市場調節方針の変更について(2004年ですよ!!)
2004年 1月20日
日本銀行

この時は景気見通しを下げた訳でもなんでもなく、回復シナリオ通りに順調に推移していますから現状は良くなっていますよ的な判断なのに追加緩和をするという大技を打ち込んでいまして、以前もご紹介したかもしれませんが、俊ちゃんのこの時の会見とか最早禅問答というか完全に煙に巻きまくっているのが良くわかって今となっては笑うしかない代物です。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2004/kk0401a.htm/
総裁記者会見要旨 ( 1月20日)(2004年ですよ!!)


最後に追加緩和を打ち込んでCPIの上昇確度が良くなったところで・・・・・・という自信があるならその全くロジカルではないですがイカサマ手法はあり得ますが、ただまあ黒田さんは俊ちゃん程の大狸ではなくて、結構真面目だと思うので手段として考えるかどうかはまた別問題ですが、短期勝負での勝算があるならこの手は最後のヤケクソ大作戦としては使える(ただし外れたら悲惨)。







2015/06/26

お題「短国ェ・・・・・/CPI改定ネタが早くも浮上とな/T+1化ですかそうですか」

昨日の(日本時間での)夕方から夜にかけてのギリシャ関連のヘッドラインがいちいちころころ変わるのでワロタというかこりゃ振り回されたらタマランチ会長だわと思うのでありました。

○市場雑談メモと言ってもだいたい短国とちょっと2年新発

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150625.htm

(3)募入最低価格 100円00銭0厘0毛(募入最高利回り)(0.0000%)
(4)募入最低価格における案分比率 62.7037%
(5)募入平均価格 100円00銭0厘3毛(募入平均利回り)(-0.0012%)

・・・・・・・・・・・・・orz

ということで昨日はマイナス金利のニーズはどうせ限定的とか申し上げていましたが、物の見事に100円足切になってしまいましてアイヤーという所ですな。まあその後ワッショイ的に金利が下がると地獄篇なのですがそういう事にはなっていなかくてゼロ金利近辺の推移だったみたいなので、まあ昨年の9月から11月とかのようなあばばばばーなほどではないにせよ、まあ金利が上がらない上がらない。

その一方で・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20150625.htm
国庫短期証券(第542回)の発行予定額等

1. 入札予定日 平成27年7月2日
2. 発行予定日 平成27年7月6日
3. 償還予定日 平成27年10月5日
4. 発行予定額 額面金額で5.1兆円程度

こちもアイヤー(いやま来るかもという観測はありましたが)という所で、短国玉無芳一でヒーコラ言っている中で7月は短国買入増額とか来そうな中で発行減るのかよおいおいという所で、これもまた来月短国需給が締まるし3Mも短国買入に入るのでは的な発想になって更に3Mがサガランチ会長になるという奴なのですが、まあお互い言い分はあるのは理解していますが、現在のような超異例の政策を実施する中で中短期と短国の発行減額される傍から日銀は馬鹿買いをしている訳で、そら市場の干上がりが加速するわと思う次第で、もうちょっとこう連携できないものかとは思うのですが、まーそうはならないのは理解しております。

なお発行が減った分資金需給的に財政の揚げ超が減るので実際問題としてはツーペーっちゃあツーペーなのですが、やはり入札の額が減るとその分だけ落札が強くなりやすくなりますから実際の需給云々はともかくとして入札時の瞬間的な需給が締まる方向になる要因ではあるなあとゆーところで。


・2年入札

うむ。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20150625.htm

6. 価格競争入札について
(1)応募額 8兆5,876億円
(2)募入決定額 2兆3,127億円
(3)募入最低価格 100円19銭5厘 (募入最高利回り) (0.002%)
(4)募入最低価格における案分比率 70.2250%
(5)募入平均価格 100円19銭7厘 (募入平均利回り) (0.001%)

2年のカレント既発は相変わらずちょっとプラスになってもすかさず買われたりするのか中々ゼロ近辺から抜けないのですが、新発に関しては何せ発行日が7月15日になりますので、ここで買ってもキャッシュ潰しや担保ニーズに対応できないという残念な商品でもあったりするので、新発の入札の所では存外プラスになったりする。

というか応札8.6兆円って少なくねえかとか思っていたら・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/jptokyomarket/idJPL3N0ZB2FK20150625
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が反落で引け、長期金利は一時1週ぶり0.480%
2015年 06月 25日 15:12 JST

『[東京 25日 ロイター] -<15:10> 国債先物が反落で引け、長期金利は一時1週ぶり0.480%

国債先物中心限月9月限は前日比10銭安の146円75銭と反落して引けた。ギリシャ債務協議の行方に一進一退の展開。朝方は米債高の流れを引き継いで買いが先行したが、午後に入ると、「最悪のシナリオであるギリシャのデフォルトが回避されるのではないかという期待感」(国内金融機関)が浮上すると、一時146円60銭と6月17日の水準まで売られた。現物市場は軟調。中長期ゾーンに銀行勢などの売りが出た。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時同2.5bp高い0.480%と6月17日以来約1週ぶりの水準に上昇後、午後3時現在0.470%で推移。』(上記URL先より)

ということなのですが、ギリシャ云々とか実弾の売りとかもそうかもしれんのだが、昨日の日中値動き的には2年国債入札の結果が出て上が重くなって先物コケ気味になった感もあったりするのですが(あくまでも主観です)どうなんでしょうかね。

ちなみに、
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20150625a.htm

 本日の2年利付国債(第354回)の第U非価格競争入札に対する応募はありませんでした

ということで第U非価格のおかわり無しという結果でした。



○CPI基準改定に向けた動きキターーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーー!!!!!

第一報はブルームバーグで確か昨日の引け近辺に登場していましたがヘッドライン見た瞬間に吹いた。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQHFA86JTSE801.html
家賃の品質調整で物価0.2%上げ−日銀が総務省に見直し要請
2015/06/25 21:14 JST

>日銀が総務省に見直し要請
>日銀が総務省に見直し要請
>日銀が総務省に見直し要請

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

いやーブルームバーグさん超キャッチーなヘッドライン打つんだからもう!とゆー所なのですが、記事を拝読。

『(ブルームバーグ):日本銀行の前田栄治調査統計局長は、消費者物価指数の2割を占める家賃について、老朽化による品質の劣化を調整すれば、CPI全体を最大0.2ポイント押し上げる可能性があるとの見解を示した。来年予定されるCPIの基準改定を機に、パソコンなどに用いている品質調整の導入に向けて議論を行うよう要請した。』 (上記URL先より、以下同様)

さ あ 盛 り 上 が っ て ま い り ま し た !!!!!

『前田局長は25日、内閣府で開かれた統計委員会で、「日本では高齢化・人口減少によって住宅ストックの老朽化が進んでいる」と指摘。「こうした環境下において、現時点では家賃について、住宅が時間を経るごとに劣化するという品質変化を考慮していないため、指数に下方バイアスが発生している」と語った。』

ほほう。

『その上で、日銀が公表している企業向けサービス価格指数の事務所賃貸と同程度の品質劣化が生じていると仮定すると、家賃は「消費者物価(CPI)全体を0.1ポイント以上、場合によっては0.2ポイント」押し上げるとの試算を示した。前田局長は統計委員会のメンバーで、個人的な意見と断った上で述べた。』

キタコレ!!!

・・・・・・・まあこの帰属家賃の問題に関しては石田審議委員が以前より「帰属家賃除く総合物価指数の方が消費者の実際の支出に近いのだから国民厚生的に考えたらもっと重視するというのも手(意訳)」的な指摘をしていましたように、確かにこの話って前からあるのはその通り。

ではあるのですが、「CPIの基準改定時に指数が上がる方向での計測見直しを『日銀が要請』した」と来ればそれは当然のことながらかのマリー・アントワネットも仰るように(大嘘)「目標が達成できないならば物差しを変えれば良いじゃないか」という新手の荒業が炸裂しやがったという発想が出て来るのは全く不思議ではない訳で、そういえば黒田総裁は折に触れて「2%目標達成の為に必要な事は何でもやる(キリッ)」と仰せでしたが、まさか金融政策ではなくて物価統計の方をいじって目標達成とか、まあ債券市場や短期市場の中の人たちがギャグで言う事はありましたが、まさか現実に出てくるとは思わなかったぜヒャッハー!!!!

ええもちろんアタクシといたしましては「統計に働きかける」という新手の金融政策を開始した訳ではなく、あくまでもピュアに物価測定をより実態にあった精緻化をして行こう、という中でこういう話が持ち上がったものであり、その一環としての動きであり、そのような邪な話ではないと思っておりますけれどもね!!!!!!!!!!!!!


さらに上記記事より。

『総務省は来年8月、5年に1度のCPIの基準年改定を予定しており、近く意見募集を行う。日銀は来年度前半に生鮮食品を除くコアCPI 前年比が物価目標である2%に到達するとしている。総務省が家賃の品質調整を導入すれば、CPI全体を押し上げることになるため、量的・質的金融緩和の出口論にも影響を与える可能性がある。』

でもってまあアレですな。やはりこの17年4月に消費増税が控えている訳で、そんな中で現在の日銀の中心的見通しですと上記記事の指摘のように16年度前半に物価2%到達という話をしているのですが、現在の民間エコノミストの中心的な見方は16年度に入って1%前後にはなるけど2%は無理だろという話になっている筈でして、まあそうなった場合に今度2%到達時期についての見通しを「基調」で粘って再度の手形ジャンプというのは消費増税の所に入って来るので最早訳分からなくなるし、ワンタイムエフェクトがかかると安定的に達成とかの判定が困難になるし、とかなんとか考えると、やはり今設定されている「2016年度前半に2%到達」という見通しをもう一回先送りというのは難しいと思われるのですよね。

そこでCPIの改定で帰属家賃が下がるのを止めて0.2%くらい上昇して、ついでに家電とかのヘドニックが掛かり過ぎじゃネーノとかそんなのでちょいちょいいじるとどうしたことでしょう!1.0%近辺だと思っていた物価が1.5%近くまで上がっているではないですか!!目標達成ですよ素晴らしいですね!!!!と必殺奥義炸裂でQQEってどうなるの????というような思惑まで出てきても不思議はないので1万ドラクマと言ったところではありますな。


・・・・・とは言いましてもですね、そもそも論として基準改定の時に品目バスケットが変わってとかそういう理由なら実際の消費バスケットを反映した変更だから分かるのですが、帰属家賃の品質調整をいじってCPIが上昇したから出口云々というのは本来話の筋がおかしい訳でして、2013年に目標として掲げたCPI2%というのは「その時の」CPI2%なのだから、帰属家賃の品質調整をいじって上昇した分は目標を当然上にあげるべきではないかとか、過去に遡及して帰属家賃を再計算して今までのCPIを見たら実はデフレデフレ言ってたのが間違いだったのではないかとか、そっちの方にも話が波及することになりますし、0.1%程度の変化ならともかくとして、それなりに有意な動きがあった場合には「過去ベースのCPIで考えたらそもそも白川総裁時代の「とりあえず1%を目指す」という目標設定の方が正しかったのではないか、QQEでのアジェンダセッティングが間違っていたのではないか」というようなオモシロ展開にもなってくるようなお話でございまして、CPIの基準改定で金融政策が変わるというのはそもそも論として本末転倒にも程がある話なので、本当はこういうのが金融政策に影響するという考えっておかしいんですよね。

で、本来は国民厚生的に望ましい物価の安定を目指すという話で金融政策をやるものであるからして、物価に関しても総合的に色々と勘案して安定的な物価水準とか安定的に推移とは何ぞや、という事を考えながら運営するものだから、それこそ除く帰属家賃の総合CPIとかも考えながら物価情勢の点検を行う、というのが正しい建付けだと思う(で帰属家賃除くならそもそもそこを変えても影響なしでしょ)ので、基準年改定によって金融政策ガーという話が出てくること自体がおかしいというのは今申し上げた通り。とは言いましても何せ今のQQEの建付けというのはやたらめったら「CPI2%」というその数字を重視していて、しかも達成への期限を明記した形で、昨年10月の追加緩和に見られたようにリジッドに近い特定指標ターゲット政策であるというような見せ方をしている(日銀にその意図が無くてもどう見ても世間はそういう見方をしているでしょと思うのだが間違ってないですよね?)のですから、そらまあCPI改定で数字が動くという話になると金融政策にも変化がというような思惑が浮上しても仕方ないところですわ、マッタクモウ。

まーこういう話で基準改定で金融政策ガー的な話になる前に、「本来金融政策で目指すべき物価の安定とは何ぞや」というようなそもそも論が先に盛り上がって欲しかったなあとは思うのですが、本件「要請」記事によって不毛な方向に話が盛り上がってしまうと何だかなあとゆー所ではございます。


しかしまあ何ですな、

『前田局長は家賃について「時間の経過につれて品質が低下する分、仮に表面の価格が横ばいでも、品質調整後の物価指数は上昇ととらえるべきだろう」と述べた。「仮に品質調整が実施されれば、家賃は指数を押し上げることになるが、こうした品目でも品質調整に取り組むこと自体がCPI全体の精度を向上させるために大切ではないか」と語った。』

ということなのですが、おじちゃん頭悪いから良くわからないのですが、家賃の品質調整という話であれば、昨今の都心部では鉄道の整備(複々線化とか)やら相互乗り入れの拡大やら新線の建設やらで鉄道の輸送力の拡大やら利便性の向上が進んでいたり、道路の整備が進んだり、人口集積に伴う商店などの充実とか、そういうような事が起きている訳でして、そーゆーのってヘドニックをゴリゴリ掛けると実は東京近辺は実質的に家賃が低下していましたとかそういう話になったりせんのかとか、帰属家賃の品質調整って色々とヤヤコシイ話になるような気がせんでもないのだが・・・・・・・・・

つーかまあその手の特殊要因が色々とある統計から物価安定を判断する際には特定の指標にコミットするのではなくて云々とか結局さっきも申し上げた「物価の安定をどう定義するのか」という話になって、そうなると「グローバルスタンダードだから2%(キリッ)」というのは何だったのかとかみたいな中々深遠な話になってきそうで今後の展開が楽しみになってまいりましたというこの傍観者丸出しコメントでスイマセンスイマセン。

ま、しかしそもそもこの話って上記の記事での記述にありますように、基準改定に伴うパブコメを近日募集の筈ですので、その辺りから徐々に「基準改定でどういう感じになるのか」的な話が盛り上がって来る(徐々に最近本職の方の仮置き分析は出ているけど)という所だったと思うのですが、「日銀が総務省に要請」というこのキャッチーにも程がある記事が出て思いっきり妙な方向に盛り上がりそうでして、何でこんなの記事になっちゃうのかなあとは思うのでありました。

なお、「また要請か!(以下の部分は内務省検閲により削除されました)。




○そういえばうっかりしていましたが国債決済T+1ですかそうですか

昨日の日経朝刊に思いっきり出ていましたな(汗)。

http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/kessai/jgb_kentou/index.html
国債の決済期間の短縮化に関する検討状況について

こちらの報告書等の最初の所に

・国債の決済期間T+1化の実施目標時期等について(2015年6月)
http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/kessai/jgb_kentou/T1_mokuhyoujiki.pdf

・参考資料 国債取引の決済期間の短縮化に伴う国債店頭取引精算業務に係る制度要綱(日本証券クリアリング機構) 
http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/kessai/jgb_kentou/jscc_seidoyoukou.pdf

というのがありまして、最初の方のURL先から。

『本協会「証券受渡・決済制度改革懇談会」の下部機関である「国債の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ」(以下「本WG」という。)では、「国債取引の決済期間の短縮(T+1)化に向けたグランドデザイン」(以下「グランドデザイン」という。)における方針1を踏まえ、市場参加者へのヒアリングや調査(別添1)を通じてT+1化に係る市場関係者の開発スケジュールの把握に努めて参りました。』

開発スケジュールの把握とかもう最初から(銃声)。

『この度、本WG では、上記調査等を踏まえ、T+1化の実施目標時期を定めると共に、実施に向けた主要マイルストーン(別添2)を取りまとめました。具体的には、市場関係者は所要のシステム開発を2017 年夏頃までに終え、同年秋口からの総合運転試験等を十分に行った上で、2018 年度上期2のT+1化を目標とすることを合意いたしました。』

いやー2018年度上期ですかそうですかー。まあこの時に日銀のバランスシートが縮小に向かっていて国債の流動性も復活して、金利も復活していることを願うしかありませんが、うっかりこの時期に出口みたいなのとぶつかると今の建付けのままだったら大変なことになると思いますよ。SLFの常設ファシリティ化と日銀保有銘柄のスイッチングオークションの制度導入を早くしてください。

『また、別添2に記載のとおり、このスケジュールに沿って準備が行われるための課題・留意点についても、調査結果等を踏まえ整理しています3。市場参加者におかれては当実施目標時期及び主要マイルストーンを念頭に、引き続き国債決済期間短縮(T+1)化、及び新現先取引への円滑な移行をはかるべく、業務・システム面の対応を進めていただくようお願いいたします。』

『今後、本協会及び本WGにおいては、引き続き関係当局・関係機関、市場関係者と協力し、円滑なT+1への移行及び新現先への一元化に向けて、必要な周知・啓発活動、市場慣行の整備等を推進していく予定です。』

で、日経の記事だと決済期間短縮で未決済残高の積み上がりが減るからリーマンショックのようなときに市場の混乱が小さくなるという話が出ていましたが、そらまあ未決済残高の積みあがり(しかもあの時は新発5年入札の翌日だかに飛びやがったからもうねという所)で市場混乱というのはその通りなのですが、それってCCPを導入しても抑制できるはずの話であって、別にT+1化をしなければ出来ないというたぐいのものではないし、大体からしてTBTFの金融機関に対する資本チャージとか流動性確保のレギュレーション改定とかでそっちのリスクって減ってねえかとか、まあT+1をやりたいのは分かるのですけれども、何かこう色々なものを詰め込みすぎ(新現先とかトライパーティーレポとかCCPとかT+1とか)で話の難易度を無駄に上げている感はあるんですよねえこの件って。

まあ何はともあれ、T+1やって決済リスクが削減されても事務リスクが高まったり債券市場の流動性が低下したら何のためにやったのかという話になりますので、事務リスクの方は新現先とか銘柄後決めGCとかトライパーティーレポとかそういう話でしょうが、債券市場の流動性に関しては日銀がT+1化推進する中で金融政策の方でせっせと流動性を殺しに来ているのですから、そっちは制度手当はやくやれやという事を再度申し上げておきますです、はい。





2015/06/25

お題「3M入札です(メモ)/5月決定会合議事要旨は政策云々よりも議論レベルの劣化が懸念される件について」

ギリシャ先生の次回作にご期待ください!!!!
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQG6OB6JIJVA01.html
ギリシャ、救済合意への修正案を債権団が提示−首相は不満
2015/06/24 21:37 JST

○今日は3M入札

ということで気が付けばスポットが29日なのでスポ末前日となりまして、6月末と言えば今年も半分過ぎてしまいましたが(涙)、今日は3M短国入札。

・・・・・・でまあこの3Mなのですが、相変わらず利付の方も含めて短い所の需給が強めで推移はしているけれども日銀以外でマイナス金利を特攻してくる人がバカスカというほどの状態でもない、という微妙な状況でございますので、そうなりますとマイナスで切れるようなところまで強くはならないけれども、かと言って3月末みたいにプラス方向で流れるような事もなくという結果になるんでしょうな、よー知らんけどな。

でもって3月末の場合はそんなことで期末になって日銀買入を減らした効果とその半期前の9月で散々な目にあっていた学習効果で前倒しで積む→最後の最後で需要が飽和するというコンボになりましたが、まあ今回は事前に6月は日銀短国買入減るから大丈夫だろうというイメージが強かったのが影響して前倒しの動きがあまり強くないので最後の最後まで需要が堅調という感じですかそうですか。まあ買入が思いのほか多かったのも影響してるかもですが。

まあこうなりますと6末自体はそう極端な波乱にはならないと思う(ちなみに短国買入については明日打つと四半期末受渡になるので札が全然入らない事が想定されますし、大体からして期末の所で短国をアウトライトでお吸い上げとか嫌がらせにも程があるプレイなので、過去の例からすると29日月曜か30日火曜に買入を入れてくるんじゃないですかねえ)のですが、7月になりますと日銀保有短国の償還も多いわ財政の揚げも多いわとなるので、3月と違い発射台がゼロ金利状態で始まる短国市場とか中々痺れそうな悪寒。

ちなみに、4月の3発目の3Mから3M短国5打席連続マイナス金利という悪魔の事態が発生しておりましたので、この時期に償還が来る銘柄って流通玉がろくすっぽ無いので、入札でマイナスでその後も流通玉碌にない状態だと償還再投資ニーズも無いという珍事態になっているので、それらの需給関係がどう出てくるのかという点について、今回は特に5週連続マイナスかつ流通玉も出てこないというのは初めてですので、なんかどうなるのか想像しにくかったりしますです。



○5月金融政策決定会合議事要旨は議論の内容が劣化している点が嘆かわしい件

ということで・・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g150522.pdf

例によって『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から先を鑑賞しませう。

・海外の金融市場と海外経済に関して

『国際金融資本市場について、何人かの委員は、これまで低下基調にあった欧州長期金利が上昇した背景として、経済・物価指標の好転を契機として行き過ぎた金利低下の巻き戻しが起きたものとの見方を示した。』

つーことですが、

『欧州での金利上昇に関連して、何人かの委員は、ドイツでの金利急騰が国際的に波及したことを指摘し、裁定の働き方などの市場メカニズムや実体経済への影響について分析しておく必要があると述べた。』

と、この部分ですけれども、これは欧州の話による影響についてというよりも実は米国の今後の利上げの話とか、日本の将来にあるはずの(というか無いと困る)QQEの終了における世界的な金融市場への影響と、そのフィードバックについて考えるという話をしているのでしたらほほうという所ではあるのですがね。

『この間、何人かの委員は、政府の資金繰りの状況などギリシャ情勢には引き続き注意が必要であると述べた。』

具現化していますな。


『海外経済について、委員は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復しているとの認識を共有した。先行きについても、委員は、先進国を中心に、緩やかな回復が続くとの見方で一致した。』

ということで地域別の展開が以下にあるのですが、米国は1-3については一時的で済むでしょうという話で、欧州は緩やかな回復、中国は当局の下支えで何とか大丈夫、新興国は当面厳しいけどそのうち何とかなるでしょう的な話ですが、引用すると長くなるんで割愛します。


・国内経済に関して

以下国内経済に関する部分になります。

『わが国の景気について、委員は、家計・企業の両部門において、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと作用し続ける中で、緩やかな回復を続けているとの認識を共有した。』

最近は実質賃金プラスで前向き循環メカニズムの話に関して益々鼻息が荒くなっている感が。

『また、ある委員は公共投資が緩やかな減少傾向に転じている中でも経済成長が続いていることは、前向きな循環メカニズムがしっかりと作用している証拠だと述べた。』

何かまあ威勢の良い話をしたいのは分かるのだが、この理屈ってなんか無理矢理なのではないかという気がするんだが・・・・・・・・・

『景気の先行きについても、委員は、緩やかな回復を続けていくとの見方で一致した。』

まあこれは声明文通り。以下需要項目別に。


・輸出と設備投資だが一部ちょっと意味がアレな見解が

『輸出について、委員は、持ち直しているとの認識で一致した。先行きについても、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。』

ただ惜しい事に6月月報で輸出に関しては先行き見通しが微妙に弱くなっていますね。

『先行きの輸出に関連して、何人かの委員は、中国など、いくつかの国・地域で先行きの景気拡大テンポが緩やかにとどまる可能性があるため、わが国の輸出の増加ペースも緩やかなものにとどまるとみられると述べた。このうち複数の委員が、特に中国経済の減速やその波及懸念をリスク要因として指摘した。一人の委員は、アジア域内での貿易が低調になっていることが、わが国の輸出に与える影響について注意していく必要があるとの見方を示した。』

まあこの辺り何人かの委員の方々が指摘しているリスクがやや現れている、というか毎度の
輸出出る出る詐欺状態という事でしょう。

『一方、別の一人の委員は、契約通貨ベースの輸出物価指数の低下傾向が深まっていることを指摘し、わが国の輸出競争力が強まっているとみられると述べた。』

・・・・・・・・・なんかイマイチ良くわからんのですが、契約通貨ベースの輸出物価が低下傾向だったら別に輸出競争力が強まっている訳ではなくて単に価格勝負しているだけの話だし、円安効果で価格勝負しているならいわゆるJカーブ効果が出てくるはずなのに出ていないのですからこの指摘はナンジャソラ感があるのだが、どういう意味なのがアタクシ頭悪くてワカランチ会長なので誰か教えてジェネラル!!


設備投資はここもと出る出る詐欺からやっと・・・・・という状況ですが。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、緩やかな増加基調にあるとの認識を共有した。先行きも、企業収益が改善傾向を辿る中で、緩やかな増加基調を続けるとの見方で一致した。』

うむ。

『複数の委員は、企業マインドが改善し続けていることや、積極的な設備投資計画が示されていることに言及し、先行きは、緩やかに増加していくとの見方を示した。』

まあこれは良いとして。

『このうちの一人の委員は、円安の定着による製造業の国内回帰も、先行き、設備投資を支えていくと述べた。』

それってそんなに出るもんなのか??????国内需要が景気回復で戻るから国内生産が上がって設備が出るというのなら分かるけど。

『一方で、設備投資の回復ペースが依然として緩やかであり、力強さを欠く背景として、複数の委員が、原油安による実質所得の増加効果が期待したほどみられないことを指摘した。』

ですなあ。


・そして雇用の所で頭がクラクラする記述があるのだ

次が雇用。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに増加しているとの認識を共有した。先行きの雇用者所得についても、経済活動や企業業績の回復につれて、緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。』

とまあここまでは良いのですよ。

『一人の委員は、製造業と比べ、非製造業では賃金が上がり難いとの認識を示したうえで、非製造業における生産性の向上が、今後の賃金・物価上昇のために重要であると述べた。』

生産性が向上しないで賃金が上昇したら企業から見たら単にコスト拡大収益減少要因ですもんね。

『何人かの委員は、生産性の向上の重要性は認めつつも、仮に生産性の向上が全ての業種で生じなくとも、労働市場における人手不足は業種や地域、職種を超えて波及するものであり、賃金上昇が拡がっていくことが期待できるとの見方を示した。このうち一人の委員は、人手不足によって、非正規雇用の時給も上昇していくことが期待できると述べた。』

・・・・・・・・・(−_−;

えーっとすいません、その理屈って生産性が向上していない企業においては単なるコストアップになるだけの話で、それは企業の収益圧迫になる話ですからして、一時的に賃金上昇を行ったとしても、それは持続可能な話ではないですし、逆にどうやってそういう状況で持続的に賃金が上昇するのかという点について納得の行く説明を頂きたい訳ですよ。

ということで、これどう見ても最初の「一人の委員」の見解の方が当然だと思うのですが、無理筋理屈で賃金が持続的に上昇するという絵を描こうとしている人たちが「何人かの委員」になっているというこの人数関係に非常に嘆かわしいものを感じるわけでございます。

では何でこんな無理筋理屈で賃金が持続的に上がるという絵を平気でかけるかと言えばご案内の通りで、賃金が上昇して物価が上昇する内生的なメカニズムが働くというシナリオで説明しているからそういう話になるのですな・・・・・・と考えますと、賃金上昇と物価上昇の内生的な物価上昇メカニズムという話も企業の生産性とか労働コストという面から考えた場合になんか無理筋なロジックなんじゃネーノとか思ったりするのでありました。


・消費、住宅投資、生産の指摘はまあ普通

『個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移しているとの認識を共有した。多くの委員は、消費者マインドの改善が明確になっていることや、百貨店売上高や家電販売額が増加を続けていること、また、1〜3月のGDP統計において個人消費が3四半期連続のプラス成長となったことを指摘し、底堅さを増しているとの見方を示した。』

『先行きの個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとの見方で一致した。』

はいはい実質賃金実質賃金。

『複数の委員は、足もと、耐久財や日用品の販売が力強さを欠いている背景として、物価上昇に対する抵抗感や低価格指向の消費者行動が残存していることが影響している可能性について言及した。』

ですなあ。

『住宅投資について、委員は、下げ止まっており、持ち直しに向けた動きもみられているとの認識を共有した。先行きは、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、緩和的な金融環境にも支えられて、持ち直していくとの見方で一致した。』

これまた実質賃金とな。

『鉱工業生産について、委員は、内外需要の緩やかな増加を反映して、持ち直しているとの認識を共有した。先行きについても、委員は、内外需要を反映して、緩やかに増加していくとの見方で一致した。何人かの委員は、生産の回復が緩やかである背景として、在庫調整圧力が残っているとの見方を示した。一方、別の複数の委員は在庫に関連して、1〜3月期のGDP統計において在庫投資のプラス寄与が大きかったことは認めつつも、在庫を除く最終需要はしっかりと増加しているとの見方を示した。』

なるほど。


・実質金利の低下が効果だそうですがツッコミが入っているのがワロタ

続きまして『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』である。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」について、所期の効果を発揮しているとの認識を共有した。これらの委員は、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率に規定される物価の基調は、今後も改善傾向を辿るとの見方を共有した。』

はいはい基調基調。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」の導入以降、名目金利が低位で安定的に推移する一方、やや長い目でみた予想物価上昇率は全体として上昇しており、実質金利は低下しているとの認識を示したうえで、そのことが企業・家計の支出行動を支えているとの見方を示した。』

実質金利が支出行動を支えるという理屈は未だにしっくりきませんなあ、と思ったら・・・・・・・・

『過去2年間における「量的・質的金融緩和」政策の効果について、何人かの委員は、2%の「物価安定の目標」に対する強く明確なコミットメントと、それを裏打ちする量と質の両面で次元の異なる金融緩和を行うという政策の効果を定量的に点検し、情報発信を行っていくことの重要性を強調した。』

(;∀;)イイハナシダナー

『より最近に限ってみれば、何人かの委員は、長らく低金利が続くもとで、実質金利の低下の限界的な効果は逓減してきている可能性があり、この点は、データの蓄積とともに分析を深めていく必要があると述べた。』

これは少なくとも佐藤さんと木内さんが指摘してそうですが、4月展望レポートが出た直後に企画局謹製のペーパーが出ていましたが、それ出して半月程度の時点でこのような「定量的分析が必要」という指摘が出ている辺りに深い味わいを感じるところです。


・物価の話が楽観杉というかさっきまでの雇用所得改善で拡大という話との整合性はと聞きたくなる件

『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、「物価安定の目標」は安定的に達成すべきものであり、金融政策運営に当たっては、物価の基調的な動きが重要であるとの認識を共有した。』

ということでもしや佐藤審議委員がこの前指摘していたローリングターゲットとかフォーキャストターゲットみたいな話が出るかと期待しましたが・・・・・・・・・・

『何人かの委員は、原油価格の下落に伴い消費者物価上昇率が低下するもとでも、先行き物価上昇率が高まるという予想が維持されていると指摘した。』

どうもインフレ期待の話になってしまいましたが、上記の件はそれどの辺の数字を出すのかで全然違いますな。

『また、何人かの委員は、速報性の高い物価関連指標をみると、4月入り後、日用品や食料品などで価格改定の動きが広がっていることに言及した。この点に関連して、複数の委員は、こうした動きは、企業サイドで従来のデフレ型ビジネスや低価格戦略が見直され、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げるビジネスへの転換が進んでいることの表れであるとの見方を示した。このうちの一人の委員は、先行き、所得が名目・実質ともに改善していくことが見込まれるため、家計の物価観が変化し、物価上昇を容認する前向きな姿勢が生じていくことが期待できると述べた。』

最初の日用品の価格改定はコストプッシュの話でまあそれは分かるのですが、それ以下の部分ってホンマカイナというかそんなに広がりのある話かよというのが続いていて、徐々に???感が強くなる話になり、最後は「物価上昇を容認する前向きな姿勢が生じていくことが期待」っていやあのそれはさすがに現状では無理筋じゃネーノ、というのが自然な流れで出てくるというのが議事要旨の作文クオリティの高さを感じますが、まあなんちゅうか楽観にも程がある物価見通しのような気がする。

大体からして雇用所得状況が改善して消費が住宅投資がという話をしているのに、物価の話になると物価が上がっても無問題というのは整合性大丈夫かと思うのだが、どう見てもこの書き方はそのような超楽観というかご都合チックな物価見通しが反映されている人たちがかなーりおいでになるという事なのではないかと思いますとやっぱり2年(というか2016年度前半)で2%行かないという話になったらどうするんでしょと。

『一方、何人かの委員は、4月の東京都の消費者物価指数の前年比が低めとなったことに注目し、東京都区部での物価の弱めの動きが、全国にどのような影響を持つか留意していく必要があるとの見方を示した。』

という反論もあるようですな。

『これらの議論を受けて、委員は、予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとの認識を共有した。そのうえで、多くの委員は、先行き、物価の基調を規定する需給ギャップは着実に改善し、予想物価上昇率も高まっていくことから、原油価格下落の影響が剥落するに伴って消費者物価は伸び率を高め、2016 年度前半頃に2%程度に達する可能性が高いとの見方を共有した。』

あっそう。

『一方、一人の委員は、今年度の所定内賃金の上昇率が、0%台半ば程度にとどまると見込まれるほか、成長率についても展望レポートの中心的見通しよりも弱めに予想していると述べたうえで、この先、消費者物価の前年比上昇率が今年度後半に顕著に上昇するとのシナリオは描き難いとの見方を示した。』

まあ今年度後半に顕著に物価が上昇、という日銀見通しが正しいかどうかというのが見えてくるのが今年の年末から年初にかけて、と考えますと、来年から展望レポートが年4回になり、一発目が1月の金融政策決定会合である、というのはまあ即ち次の金融政策に関する何らかの動きというのは1月のMPMが一つの焦点になって来るのでしょうなあと思うのでした。今年10月と来年4月というのもアリエールなポイントですがその辺の考えは次の展望レポート中間レビューを見ながら頭を整理したいなあとは思います。


・いつもの木内さんの反対提案である

でまあ現状維持という話が出て、毎度の木内さんの反対提案の話が出てくるので、暫くスルーしていたので木内さんの提案趣旨から入りましょう。

『一方、一人の委員は、需給ギャップがゼロ近傍まで改善する中、逓減している「量的・質的金融緩和」の追加的効果を副作用が既に上回っており、導入時の規模であっても、金融面での不均衡の蓄積など中長期的な経済の不安定化に繋がる懸念があると述べた。』

資産買入による追加効果が逓減している中で副作用が高まるという趣旨での指摘です。毎度のことですが念のため確認。

『そのうえで、この委員は、@金融市場調節および資産買入れ方針について、マネタリーベースと長期国債保有残高の増加ペースを、段階的減額を視野に入れて、「量的・質的金融緩和」導入時を下回る水準まで減額すること、A先行きの金融政策運営について、「物価安定の目標」の達成期間を中長期へと見直すとともに、金融面での不均衡など中長期的なリスクにも十分配慮した柔軟な政策運営のもとで、早期に「量的・質的金融緩和」の終了や金利引き上げに向かうのではなく、資産買入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれぞれ適切と考えられる時点まで継続するとの表現に変更すること、などを主張した。』

具体的提案はご案内の通りで45兆円ペースの拡大な。


・今回の決定会合議事要旨の白眉というか最大のエンターテイメントというかゴミクズ議論は最後に登場!!!

・・・・・・とまあこれはとりあえずマクラとして置いたのですがこの次の意見が目を疑う内容。

『これに対して、ある委員は、現状、金融面での不均衡や金融緩和の副作用を示す理論や事実に基づく具体的な根拠はないと述べた。』

>金融面での不均衡や金融緩和の副作用を示す理論や事実に基づく具体的な根拠はない
>金融面での不均衡や金融緩和の副作用を示す理論や事実に基づく具体的な根拠はない
>金融面での不均衡や金融緩和の副作用を示す理論や事実に基づく具体的な根拠はない

・・・・・(;゚д゚)
・・・・・(;゚д゚)
・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいません、効果と副作用を比較衡量して効果の方が上回っており、今後も当面はその状況が続くから問題ない、というのなら話としては正統派なのですが、副作用を示す「理論に基づく具体的な根拠はない」とはどういう事でしょうか?????????????????

ここで先般佐藤審議委員が山梨金懇で行った挨拶のテキストから引用してみましょう。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150610b1.pdf

『もとより政策効果と副作用は表裏一体で、副作用のない政策に効果は期待できない。もっとも、異例の政策を続けていくなかでは、効果と副作用を比較し、副作用が政策継続の限界的な効果を上回らないかどうかのチェックは欠かせない。』(上記URL佐藤審議委員山梨金懇挨拶の『3.当面の金融政策運営』の『(4)副作用の点検』より)

・・・・・という佐藤審議委員の言葉を持ち出してみましたが、そもそも理論的に副作用を示す根拠が無いとか、無学のアタクシですら「フリーランチは無い」という経済学だかの常識の常識みたいな言葉を存じ上げております次第でございまして、そもそもお前副作用が無い政策だったら効果だって無いだろ頭逝かれてるのかと小一時間問い詰めたい訳です。

だいたいお前そんなこと言う前にQQE導入時に提唱していたマネタリーベース出せばインフレ期待が上昇するというマネタリーベース直線(だか対数曲線だかの)一気理論に関して「理論や事実に基づく具体的な根拠」を出してみろやオラオラオラという所でございまして、よくもまあ恥ずかしげも無くこのような演説を打てるもんだと思う訳ですよ。

でまあこれって「議事要旨」だったりするので、実際はもっと目を覆いたくなるようなゴミ演説が行われていた可能性だってあるとか考えますと、日本の金融政策を決定する最高機関においてこのような「理論的に副作用の無い政策がある(キリッ)」などという赤点再履修というか高校の政経からやり直してこいというレベルの話を堂々と実施されている、という辺りに涙が止まらなくなるほど情けないものを感じてしまうのでありました。

時々アタクシホームラン級の馬鹿発言などと申し上げたりしますが、10ウン年日銀関連の文書を見ておりましてここまで壮絶な馬鹿発言を見たのは初めてでして、これはホームラン級を通り越して殿堂入り間違いなしというレベルで、もしかして貴殿におかれましては脳が溶解して鼻水耳垂れになっているのではないかとご心配申し上げたくなりますが、さて誰がこの発言したのかとか考えますと、だいたい2名ほどのお顔が頭に浮かんでくるのですが・・・・・・・・・・・・


いやしかしですよ、こんなレベルの発言するのが政策委員会に居るという状況でこの政策の大風呂敷畳むという一番大事なことって無事に出来るのかとか考えますと、何らかの形で大爆発するという悲観シナリオが頭にチラチラしてきてひじょーに暗い気持ちになるのですがねえ・・・・・・・・・

つーことでまあ最後のここがあまりにも強烈過ぎて他の所が霞みますが、良く良く見ますと途中の議論の中でも微妙にそれ変だろ(特に生産性と賃金上昇の辺りとか)というのが散見される訳でして、政策委員会そのものが大丈夫かという懸念もあったりしますな、うんうん。





2015/06/24

お題「ECB買入ペースは帳尻程度しか戻らず/中曽さん挨拶をネタに雑談/日銀謹製債券市場参加者会合とな」

パウエル理事が2回利上げの話をするとな。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQEGYL6VDKHT01.html
パウエルFRB理事:9月利上げの確率は約50%
2015/06/24 05:04 JST

『(ブルームバーグ):パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)理事は米労働市場の改善と賃金上昇の兆候が見られるようになったことを踏まえ、米国の景気が十分に回復して9月に初回利上げを決定できる確率はだいたい半々だと述べた。 』(上記URLより)

9月が半々だとすると年内2回の可能性は25%ですね(違)。


○ECB買入はペース戻ったが前倒し感がまだないですな

先週の買入
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150623.en.html

CBPP3 EUR 92.1 billion +EUR 2.2 billion
ABSPP EUR 8.3 billion +EUR 0.1 billion
PSPP EUR 182.3 billion +EUR 11.9 billion

6/12残高と前週比増加額

CBPP3 EUR 89.9 billion +EUR 2.6 billion
ABSPP EUR 8.2 billion +EUR 0.7 billion
PSPP EUR 170.2 billion +EUR 10.6 billion

6/5残高と前週比増加額

CBPP3 EUR 87.3 billion +EUR 2.2 billion
ABSPP EUR 7.5 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 159.6 billion +EUR 12.9 billion

5/29残高と前週比増加額

CBPP3 EUR 85.1 billion +EUR 2.3 billion
ABSPP EUR 7.2 billion +EUR 1.0 billion
PSPP EUR 146.7 billion +EUR 12.4 billion

とまあ折角なので先週水曜に書いておいたのを再掲しつつ確認しますと、今月は6/5の週が全体で154億でややペースが速め(1か月600億で月4週間少々あるのだから150だとやや速い)だったのですが、6/12の週が139億で、先週は144億となっているので、600億に向けて普通に帳尻をしている感じですが、この微妙なテンポの違いって何なんでしょとか深く悩むのは日銀の細かいオペに慣れ過ぎているせいでして、まあこの程度のブレは普通普通と思う方が正しいのではないかと思います。特に政策意図はなさそう。

でもってこれ先週も申しあげましたが、本来クーレ理事の言う「夏枯れ前に早めに買入」というのが正しければどこからどう見ても今頃から買入増やさないと7月後半あたりから欧州の皆様はホイホイとバカンスにお出かけしてしまうのに間に合わないと思うのですが、この調子だと買入前倒しとかやらなさそうですな。

クーレ理事のサービス発言(?)の公表のやり方が問題含みだった、というのもあるとは思いますけれども、そのようなややこしい話でも無くて、アタクシ勝手に思いまするに、最近の一連のドラギ総裁によるボラ放置プレイにありますように、下手に市場に配慮したような動きをすると却ってボラとクレクレを高めるだけの結果になるし、勢いがついているときは結局それで止めるというのは難しいという事も見えてきた、ということではないかと思うのですよね。

従いまして、基本的に買入そのものは非常にこう淡々と実施していくというFED方式(FEDの場合はECBよりも細かく買入の年限別ウェイトとか出しているのでFED方式というのも変だが)でECBはやっていくという感じになるんじゃネーノとは予想されるところで、はてさて来年9月までこのオペ持つのかというのは知らんですが、日本の例と一緒で一回金利馬鹿低下やったあとの上昇後なので暫く持つんじゃネーノ(根拠なし)とは思いますが。


○中曽副総裁挨拶である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150619a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150619a.pdf
全国信用金庫大会における挨拶

まあこの手の挨拶自体で特段新たな話とかは出ないのが通例なのですが少々鑑賞。

・2年で2%が思いっきり後ずれしている件についての言い訳トーンが低下してますなあ

『最近の経済・物価情勢と日本銀行の金融政策運営』というのが前半な。

『わが国経済は、企業、家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが作用するもとで、緩やかな回復を続けています。企業部門では、収益が過去最高水準まで増加していることなどを背景に、前向きな投資スタンスが維持されています。また、家計部門では、雇用・所得環境の改善が続き、マインド面の改善も明確になる中、個人消費が底堅く推移しており、住宅投資も持ち直しつつあります。先行きについても、わが国経済は、緩やかな回復を続けていくとみています。』

はあそうですか。

『物価面をみると、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、エネルギー価格下落の影響から、0%程度となっています。もっとも、物価の基調は着実に改善しています。すなわち、需給ギャップは概ね過去平均並みの0%程度まで改善し、予想物価上昇率も、やや長い目でみれば、全体として上昇しています。』

安定の基調攻撃。

『先行きについては、消費者物価の前年比は、当面0%程度で推移するとみられますが、物価の基調が引き続き着実に高まり、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。2%程度に達する時期は、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度前半頃になると予想されます。』

何かこう淡々と説明していて1年後ずれしている事とか2年で2%という触れ込みが何処かに飛んでしまっている事とかすっかり無かったような話になっていますな。

『日本銀行は、一昨年4月に導入し、昨年10月に拡大した「量的・質的金融緩和」を着実に進めています。「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行としては、今後とも、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していきます。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、2%の「物価安定の目標」を実現するために必要になれば、躊躇なく調整を行う方針です。』

ということで、まあこの部分は思いっきりテンプレでして黒田総裁もこういう話をしているのですが、では「2年」の方はどうなったのか、という話に関しては前回の黒田総裁の定例記者会見では別件の質疑の方が多かったのでこの点についてツッコミが無かった(前回の展望レポートの時点で勝負があったという感じではあるのですが)ので「2年」に関してどう考えているのかというのが微妙なのですよね。

でまあこの「2年」に拘らないで佐藤審議委員の提唱する「ローリングターゲット」「フォーキャストターゲット」という考え方に則って「出来るだけ早期に」だけ生かすという話に持って行く積りが執行部にあるのか無いのか次第でここから先の金融政策の方向性が「追加緩和待ったなし」なのか「時間軸強化で緩和政策の長期化が可能な施策(=バランスシートの拡大を緩やかにするまたは止める)に以降」するのかと思いっきり分岐してしまいます罠。

ただ現状では黒田総裁の発言やら講演やらを総合すると(ただし直近は2年に関する拘りへの質疑が無かったので良くわからん)「達成時期について明示的な期限を設定する」という事自体に意味があるという建付けになっているようですので、そうなりますと基調で誤魔化すにしても次の言い訳が無くなってしまう中でやっぱり2%行かないじゃんという話になった時点で立ち往生(というか追加緩和待ったなしか降参かだが降参しないでしょ)という事になるのでして、「明示的な期限を設定することが政策の根幹」という主張をいつの間にかフェードアウトしていくという大技をかまして来ると大変に面白い事になりますので、定例記者会見では記者の皆様におかれましては誰でも結構でございますので必ず「2年で達成という期限を区切ることについて質問です」とか、「審議委員の中では期限を明示的に区切ることについて反対の見解もあるようですが如何でしょうか」とか、「2%の達成時期がドンドン後ずれしていますが、明示的な期限を設定すると却って信認を損ねませんか」とかネチネチと質問して頂きたいものだとお願いした所ではあります。そこで何か話のトーンが変わるとそらもう債券市場面白相場発生待ったなしだと思うのですけどね!!!!!

でまあ本日は5月会合議事要旨が出るわけですが、直前の展望レポートで見事に(?)またまた2%到達時期の先送りに成功した点を受けて物価目標達成に関する考え方とかの議論が出ていると面白いのですけどどうなんでしょうかね。まあ今後に関しては追加緩和か見直しか(2%に行くとは到底思えないので綺麗な形での出口は無いでしょ。あったらビビるが)という話に関しては執行部がボロボロの焼け野原になるまで進軍を止めないのか、改心してひよるのか(あるいはタオルが飛んでくるのか)次第ですなあということで。

#話がいつの間にかだいぶ脱線しましたな



・地域金融機関の再編問題


『金融システム面の話題』という小見出しから。

『次に、金融システム面の話題について、お話しします。金融機関の貸出は、企業向けを中心に緩やかな増加を続けており、貸出が増加する業種や地域にも徐々に広がりが出てきています。信用金庫の貸出も、全体として緩やかに伸びを高めています。景気が緩やかな回復を続ける中、信用金庫の皆様が、資金需要の広がりに丁寧に対応してこられてきたことの反映だと思っています。』

てなことはどうでも良い。

『また、信用金庫業界では、本年度から新たな長期経営計画をスタートされ、中小企業や地域に対する支援力を強化する取り組みを、一段と積極的に進めておられます。この一環として、業界内において、起業・創業や事業承継に関する情報やノウハウの共有を図っていくため、体制の整備を進めているとお伺いしており、大変心強く感じています。』

とまあここまではともかくとしてその先。

『人口減少と高齢化は、信用金庫の経営に大きな課題を投げかけるものです。特に地方圏では、人口動態が企業活動や資金需要の強い下押し要因となっています。しかし、「地域の企業や家計の経済活動に、金融サービスを通じて貢献していく」という地域金融の本質が変わる訳ではありません。地域社会の活力を高めるために、信用金庫が果たせる役割は大きいと考えています。』

『地域の企業は、地域資源の活用や、域外・海外の需要の開拓、高齢化のもとで必要とされる財やサービスの提供などを通じて成長できます。そうした企業の育成・支援は、地域にコミットし、地域を知り尽くしている地域金融機関が真価を発揮できる仕事です。また、高齢化とともに変化する家計の金融ニーズにきめ細かく応えていくことも、地域に立脚する金融機関の重要な役割です。』

『協同組織金融機関としての特徴を発揮しながら、社会の変化に対応して金融サービスの付加価値を高めていくことは、チャレンジングな課題ですが、信用金庫の皆様が、明確な戦略を持って、この難しい課題に対応していかれることを強く期待しています。日本銀行としても、皆様の取り組みを様々な形で支援させて頂きたいと考えています。』

非常にソフトな言い回しにはなっていますが、地方圏における今後の金融機関経営環境の悪化は更に進みますので経営を何とかしましょうというFSRで散々書かれている話がここでもキターという感じでありまして、ここ数年のプルーデンス政策においてはこの「地域金融機関の経営安定化に向けて」というのが引き続きの重い話であるというのは把握した。


○債券市場参加者会合とな

http://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond1506.pdf
2015年6月22日 日本銀行金融市場局
「債券市場参加者会合」第1回議事要旨

ということでこの前告知されていた奴が先日実施されていたようですが。

『1.開催要領

(日時)バイサイドグループ(21 先) 6 月11 日(木)18 時〜19 時30 分
銀行等グループ(22 先) 6 月12 日(金)16 時〜17 時30 分
証券等グループ(25 先) 6 月12 日(金)18 時〜19 時30 分

(場所)日本銀行本店

(参加者)「債券市場サーベイ」や「市場参加者との意見交換会」等に参加する金融機関の実務担当者(本行出席者)金融市場局長、総務課長1、市場調節課長、市場分析グループ長2、市場整備グループ長』

要するに拡大オペ懇みたいな感じですが、結局20人とか集める上に同じ業態ばかり集めるとかまあ普通に考えて忌憚の無い意見交換が出来るのかというとまあ棒読み系になるんじゃネーノとか思う次第な訳ですが、ここで意見交換の最初の部分を見てみましょう。

『債券市場サーベイ
・債券市場の機能度は、サーベイ結果が示しているとおり、大分安定してきた印象を持っている。
・サーベイ結果をみると、債券市場の機能度は改善しているが、投資家の肌感覚としては、機能度は引き続き低いという印象がある。
・債券市場の機能度判断の水準が低い背景には、低金利の中でそもそも取引を諦めている市場参加者が多いといった、流動性指標に表れにくい要素があるのではないか。』

・・・・・・・・いや普通に機能度益々下がっているだろうとしか申し上げようがない訳で、ちょっと売買があるとカーブが動くし輪番とか入札のスケジュールに向けてイールドカーブが動くし。金利水準が上がったのでちょっと売買が入るようになった分だけ違っているけれども日中の価格形成は益々酷い事になっているようにしか見えないのだが。

以下も何かこうシャンシャンっぽい要旨になっておりまして、そらまあ「市場から機能が大きく低下して問題だから今の政策の有り方を何とかしろという話が圧倒的」とはオトナの事情で書きにくいという面もあるでしょうし、そもそもオペ先集めている訳で日銀オペに参加することによってメリット受けている先を集めたら余程オペで困ったことにならない限りオペ減らせという事にはならん罠とか、まあ実際に忌憚の無い意見交換というのであればこういうセレモニー的にしない方が良いのではないかとか色々と。

とまあ悪態はつくものの、そもそも論から言えば日銀のオペレーションって短期金融市場の資金需給調節によって短期金融市場のスムージングを行って翌日物金利をターゲット水準近辺に着地させるというのを長年やってきた訳で、債券市場がどうのこうのとか知らんがなという時代が非常に長かったのですから(前回の量的緩和の時は短国買入で積んでいたから短国市場は気にする必要があったが輪番は特にオペレーション上の問題はなかった)、国債発行して市場消化しないといけないから債券市場について色々と理解しないとマズーという発行当局とは債券市場に対する知見について業務上の必要性が全然違いますので、まあこういうのやろうというだけでもマシちゃあマシなのかも知れませんけど。何せ今はQQEによって国債(と短国)を市場のキャパいっぱいいっぱいまで買う(どころかキャパ以上買っているのではないかと思われるのですがそれは)ようになり、しかも政策継続する中で輪番オペなり短国買入なりが爆発してしまって政策が続けられなくなる、などという事態を事務方が引き起こす訳には逝かないとなりましたので、まあ慌ててこういうのを始める破目になったという点については事務方に同情申し上げておきます、と一応悪態のフォローをする優しいこのアタクシなのでした。

しかしまあ何ですな、

『金融市場の動向・オペ運営』の所の意見は幾つかオモロイ。

『・金融政策の変更がない中で、日本銀行が国債買入れオペのオファー額を変更することは、市場のボラティリティを大きくする要因となっているのではないか。』

まあ分かる。最初の設計時点で2倍2倍というしょうもないのをするために7年とか平均買入年限を設定したのが話をややこしくしている。

『・国債買入れオペのオファー日程・ゾーン・金額を予め公表することを検討して欲しい。』

今の買入方式だと難しいのではないでしょうかねえ。買入基準利回りを買入当日に決定するFED方式をしないといかんでしょうけどそれはマンパワー的にも市場慣行的にも難しいと思う。

『・足もとでは、国債取引の執行に大きな問題は感じないものの、国債補完供給制度の更なる要件の見直しなど、ボラティリティの上昇した局面でも、流動性を確保できる方策を検討しておくことは有益ではないか。』

どうせなら「国債市場流動性供給オペ」とか銘打って日銀保有銘柄のスイッチングオークションもできるようにすれば市場の流動性は格段に上昇するんじゃないですかねえ(それはそれで問題が起きるけど)。

まあそれは兎も角として、SLFについては今後T+1化するとかいう話で出口を迎える中で、国債市場の流動性が落ちる中でもっと「積極的に活用されるべき常設ファシリティ」となるべきじゃないですかねえと思うのですよ。ただまあというのは過去からここに至るまでの日銀のSLF内容の改定の内容を見ると「常設ファシリティ的にしたくない」というのはプンプン漂ってきますが。

『・ 物価連動国債の発行額増加を踏まえ、日本銀行の国債買入れオペによる買入れの増額を検討して欲しい。』

いやまあ仰りたい趣旨は分かるのですがそれは・・・・・・・

通常の国債の場合は財務省による国債発行計画の中に市場のニーズの他に発行当局のニーズとして発行年限を長期化したいというのがあるから、それによって平均発行年限が変わってきた中で日銀の国債買入も市場の平均辺りに持って行く方がマーケットニュートラルではないか、みたいな理屈は成立すると思うのですが、物価連動国債の場合はそもそも「投資家のニーズが高まったから発行額を増加した」ものなのですから、発行が増えたからオペを増やしてくれというのは(気持ちは分かるが)クレクレにも程があるのですがとかなり爆笑の発作を起こしてしまいましたです。いやはや。


#おおFOMC会見ネタが積み残っている上に5月会合議事要旨が・・・・・・・・・






2015/06/23

お題「金融経済月報では輸出と生産の先行き見通しに警戒文言/総裁会見はまあしょうもないのだが一応鑑賞/短国雑談」

必殺奥義「忍法問題先送りの術」がまたも登場の悪寒・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQC5C36K50XX01.html
NY外為:ユーロが対円で上昇、ギリシャ協議の合意を楽観
2015/06/23 05:14 JST

合意を楽観しただけで合意しただけではないと。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKBN0P20RC20150622
ECB、ギリシャ銀向け緊急流動性支援枠を引き上げ=銀行筋
2015年 06月 22日 17:28 JST

『[アテネ 22日 ロイター] - 銀行筋によると、欧州中央銀行(ECB)はギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)枠を引き上げた。引き上げ額は不明。引き上げは過去6日間で3度目。同筋によると、ECB理事会は必要な場合、いつでも電話会議を開く方針という。』(上記URL先より)

そらまあECBとしては合意するする詐欺状態の中ですと自らその状況を叩き壊すわけには行かないですからねえ・・・・・・・・・


○金融経済月報では生産と輸出の見通しに微妙な文言が

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2015/gp1506.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2015/gp1505.pdf(前回)

ということで、この月報も年内で終了と思うと中々寂しいものがありますので、本日はパスしますが次回あたりから全文の前後比較とかして名残を惜しんでみましょうかねえ(ってまあ変化のあった部分のチェックはしていますが)。

・現状認識部分は声明文と同じです

『わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。』(前回)

から始まる部分は基本的に声明文の鏡に反映されていますので昨日ネタにした声明文の比較と同じになります。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直しつつある。この間、公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。住宅投資は、下げ止まっており、持ち直しに向けた動きもみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は持ち直している。』(前回)

でまあこちらについては昨日申し上げたように住宅の所が上昇しているだけです。


・先行きの需要項目別判断に微妙なのが

『先行きについても、景気は緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きについても、景気は緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

ここまでは声明文に出ております。

『輸出は、振れを伴いつつも、海外経済の回復などを背景に緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

ということで、今回輸出の見通しに「振れを伴いつつも」というヘッジクローズが入りまして、普通に緩やかに増加していくという予想を下方修正する気が無いのであればこのようなヘッジクローズは入れないのが通例ですので、実は輸出の見通しが若干下がっているという事なんですがそれは。

『国内需要については、公共投資は、高めの水準を維持しつつも、緩やかな減少傾向を続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。住宅投資は、持ち直していくと予想される。』(今回)

『国内需要については、公共投資は、高めの水準を維持しつつも、緩やかな減少傾向を続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。住宅投資は、持ち直していくと予想される。』(前回)

ということでこちらの見通しは文言一致。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、振れを伴いつつも、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

しかしながら生産に関しては先ほどの輸出と同様に「振れを伴いつつ」というのが入っていまして、これはヘッジクローズが来ましたということで、こちらは本文の方を見ますとこんな感じの記述がございます。

『財別にみると(図表7(2))、自動車関連は、足もとでは短期的な振れの影響が出ているが、均してみれば昨年後半以降、横ばい圏内の動きを続けている。情報関連は、スマートフォン向けの部品を中心に、為替相場動向の影響にも支えられて、10〜12 月まで5四半期連続で増加したあと、足もとでは一旦減少となっている。資本財・部品は、米国の設備投資の回復や世界的なIT関連需要の堅調さを背景に緩やかな増加傾向にあったが、足もとでは資源関連の建設機械などに弱めの動きがみられる。化学製品や鉄鋼等の中間財については、昨年秋以降、為替相場動向の影響にも下支えされて、緩やかな増加傾向にあるが、足もとでは弱めの動きもみられる。』(今回、本文より)

ということで、足元で弱めの動きがみられるというのが連発していまして、威勢の良い大本営発表も仔細に見ると実はちょっと懸念している部分もあるようです。

『先行きの海外経済は、先進国を中心に、緩やかな回復が続くとみられる。また、上記のような為替相場の動きも、旅行などのサービス分野を含めて、輸出の下支えに作用し続けると予想される。主要地域別にみると、米国経済については、家計部門を中心に回復が続くと予想される。欧州経済は、緩やかな回復基調を続けると予想されるが、ギリシャ情勢を含む債務問題の帰趨やロシア経済の減速の影響などに引き続き注意が必要である。中国経済については、政策当局が構造調整の推進と景気下支えの双方に配慮するもとで総じて安定的に推移するが、成長率の緩やかな減速傾向は続くと予想される。中国以外の新興国・資源国経済についてみると、基本的には先進国の景気回復の好影響が次第に及んでいくとみられるが、資源価格の弱さや地政学リスクの影響などから、成長に勢いを欠く状態が長引く可能性もある。』(今回、本文より)

ということで、先行きに関しても良く良く読みますとこのように米国についてはモウマンタイとしても、その他の地域に関しては伸びが弱い可能性を指摘していまして、声明文やら金融経済月報の概要だけを見ていますと威勢の良い進軍ラッパばかりなのですが月報必ずしもそうではない、というのもこのようにあったりするので月報読みというのも面白いんですよね。なくなるのが残念。


・リスク要因については同じです

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

声明文と同様。


・物価に関しては現象面ではありますが企業物価が上昇して日銀ニッコリの展開ですな

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、3か月前比で下げ止まっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

国内企業物価が上昇になってきてまして日銀的にはニッコリ。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面緩やかに上昇していくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(前回)

見通しは同じです。消費増税の直接的な影響が前年同月比ベースの統計上でなくなるので今回から文言割愛されているのは変わっていますがそれはまあどうでもよい。


・金融環境にも変化はないですが割愛します

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)

以下の部分は特段の政策インプリケーションを示す変化もないので割愛します。



○総裁記者会見だが長い割に質疑応答が下らん

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150622a.pdf

今回は延々17ページもあるのですが、皆様予想の通りでこの前の為替に関する質問が無駄に多いのと、決定会合見直しに関する質問もあったのですが、どうもこうツッコミがダメダメなのと答えも暖簾に腕押し系だったりして、ダラダラ長いのに全然締まらないという牛の涎のような会見でありましたなという所です。

ということで牛のよだれだけにネタにする部分もあまりないのですが一応少々。


・運営の見直しに関してだが最初の答弁はいただけませんでしたな

冒頭説明の後に幹事社から。

『(問) 今おっしゃった後段の運営の見直しについてお聞きします。グローバル・スタンダードとのことですが、これまでのやり方に具体的に何か問題があったのか、例えば、議論の形骸化が起こっていたとか、マーケットの誤解を招くことがあったとか、あるいは職員の負担の問題なのか、具体的な不都合として、どういうものがあったのかお伺いします。併せて、日銀の独立性というのは、政策決定の透明性や説明責任と裏腹なものだと思いますが、今回、会合を減らして、総裁の会見の回数も減ることで、そういったものが脅かされることはないのかどうか、ご認識をお伺いします。』

これは直球(^^)。

『(答) 先程申し上げました通り、今回の運営の見直しは、金融政策に関する審議と情報発信の一層の充実を図るために実施するものです。』

ほうほう。

『まず第1に、展望レポートを年4回公表するということ、(以下延々と直前に説明したばかりの新施策の内容についての朗読が始まるので割愛)』

ということで、理由の説明の前に延々と今しがた説明したばかりで文書も出ている件についてうだらうだらと説明をしている辺りが牛の涎的な説明なのですが、相手もちゃんと理解している分かりきった話を延々蒸し返して説明するのは基本的に時間を稼いでいる間に論点を誤魔化そうという時の基本テクニックなので・・・・・・・・・

『先程申し上げたように、四半期毎に、経済・物価見通しを公表した上で、その中間の会合を含めて、金融政策を決定する会合を年8回開催して、会合終了後は速やかに情報発信を行うという枠組みは、近年、主要中央銀行で主流になってきているものです。』

全然質問に答えていませんね。

『この見直しによって、年8回の決定会合のもとで、金融経済情勢の変化に対応しながら、経済・物価見通しをベースに充実した議論が行われると考えています。主要中央銀行において、年8回、金融政策決定会合を実施するのが、一種のグローバル・スタンダードとなってきているのも、こうした認識が前提となっていると思います。』

グローバルスタンダード以外に説明できないのかよ!!!!

『金融政策決定会合の回数とその内容については、適切な回数というのが一番望ましいと思います。回数が多ければ多いほどいいというわけでもないし、少なければ少ないほどいい、というわけでもありません。』

と思ったらちょっと説得的な話が出てきましたね!!

『適切な経済情報に基づいて、委員の方々が経済見通しを議論し、またこれを公表するということを踏まえて、金融政策についての掘り下げた議論・決定を行うということかと思います。これまで何か重大な問題があったということではないと思いますけれども、今申し上げたような改善をすることによって、より情報発信が積極化し、金融政策に関する審議も一層深まったものになると考えています。従って、説明責任という意味では、一層高度なものになると考えています。』

・・・・・・・・仰っている事の意味がさっぱり分かりません。

『なお、先程も申し上げましたが、金融経済情勢が急激に変化した場合には、これまでと同様に、臨時の金融政策決定会合を開催して機動的に対応するということになると思います。これは諸外国の場合も同じです。』

最後の一言が余計です。何で貴方がたは説明の際に一々「グローバルスタンダード(キリッ)」を入れるんですかねえ。


でまあ後の方でもう少しましマシな質疑応答が。

『(問) 決定会合の運営の見直しについて伺います。そもそも、平成10年に施行された新日銀法と施行令は、日銀の政策の透明性、もちろん独立性もですが、情報公開の徹底を図るという狙いがあったはずと思います。施行令に原則月2回、決定会合を開くとあるのは、まさに情報公開の徹底という趣旨に沿ったものだと思います。14回からいきなり8回、特に総裁会見の回数が8回になってしまうことは日銀の情報公開の姿勢が後退したと捉えられるのではないかと思うのですが、この点について総裁はどうお考えでしょうか。』

で、こっちの答えの方が遥かにましなのですよ。

『(答) 私どもは、そのようには考えていません。ご指摘のように、現行の日銀法は1998年に施行され、その際、一定期間毎の定例日に開催することが適当との考えのもとで、ブンデスバンク等当時の海外中央銀行の例を参考にしながら、開催頻度が定められたと理解しています。そのもとで、当初は年20回程度の頻度で金融政策決定会合を開催しました。もっとも、年20回程度となると、2〜3週間程度で1回になりますが、基本的には2〜3週間程度で金融経済情勢に大きな変化が生じることは少ないですし、金融経済情勢の変化に適切に対応するとともに、毎回の会合を実質的な意思決定を伴う充実したものとする等の観点から、頻度をだんだんと減少させて、近年では年14回となっています。この間も、金融経済情勢が大きく変化した場合には、臨時会合を開催して機動的に対応してきました。』

ということで、月に2回も実施するとなるとその間に殆ど変化がないのにMPMって話でそれもどうかって事でして、いやまあそれはリーズナブルな説明なのでして何でこっちの話を先にしないのかと小一時間。

『この点、ご指摘の日銀法施行令、政令では、月に2回開催することを「常例としなければならない」と定められていますが、これは訓示的な規定であるため、こうした運営が問題だったとは考えていません。また、その趣旨についても、透明性あるいはアカウンタビリティ等の面で、むしろ充実してきたと思っています。』

別に14回が施行令的にケシカランという質問はしていないのでこの答えは余計ではないかと思いますが、まあ先ほどのナンジャソラな答えと言い、こちらでの説明と言い、黒田さんこの辺の説明が云々の所にそんなに興味ないんだろうなあと思わせてくれる塩対応な説明ではありますなという感じを受けましたがどうでしょうかね。


・為替云々の質疑も一応引用

まあつまらんので一つだけ。

『(問) 先日国会で実質実効レートについて、「さらに円安になることはありそうにない」と発言されて、マーケットがかなり大きく動く場面がありましたが、その真意について今一度お聞きしたいと思います。また、その発言をなさった時に、「どんどん円安が進めば経済にプラスになるわけでもない」という趣旨のこともおっしゃっていたと思います。円安が日本経済に与える影響、働きかけるメカニズムのようなものが、過度な円高の修正局面と足許の局面とで、何か変化してきているのか。その辺りについてお伺いできればと思います。』

『(答) 先日の国会質疑では、実質実効為替レートについて質問がありました。それに対して私からは、実質実効為替レートは、確かに1980年代半ばと同程度の水準になっているとの事実を申し上げました。このところの名目為替レートの水準や先行きについて何か申し上げたものではなく、そういった趣旨は、国会答弁でも明確にしたところです。』

どう見ても誤認を誘発する説明でそもそも実質実効などという話を国会問答みたいなところですべきではないように思えます。

『為替レートが円安に振れた場合の影響については、経済のセクターや企業規模、その他の色々な状況によってプラスの影響を受ける部分と、マイナスの影響を受ける部分と色々あるわけですが、何よりも重要なことは、為替レートが、経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいということであり、そうであれば、経済に全体として悪い影響を及ぼすことはない、そうした考え方に変わりはありません。』

「為替は経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい」というのは例の国会答弁と同時に流れていた金懇会見での佐藤審議委員のコメントそのままでありまして(^^)、黒田さんも最初からこう言っておけば良いだけの話。

『現状の為替の水準や、これがどちらに向くか、あるいは円安に向いた時の効果等について、具体的に申し上げることは差し控えたいと思いますが、基本的に為替レートについては従来から申し上げている通りです。実質実効為替レートの議論はこれまであまり出たことがなかったのですが、国会でご質問がありましたのでお答えしました。』

だからそういうの答えるの注意しろというのと、そもそも為替は日銀の所轄じゃないのだからコメントを避けるという手もあるだろうと思うのだが、本人が元財務官だけにドヤ顔で喋りたくなるんでしょうな。

『ご承知のように、実質実効為替レートというのは2国間の名目為替レートの動きと、多国間の貿易関係、さらには物価上昇率の差を勘案した非常に複雑な概念であり、複雑な計算に基づく数字でありますので、その解釈は必ずしも容易でありませんし、何よりも、これによって名目為替レートの今後の動きを占うことはできないと思います。』

だったら何で不規則発言したのかねえと思います。まあ以下為替の質疑が延々と続いて、延々と上記のような説明が続くという不毛にも程があっておまえら毛生え薬でも塗っておけと言いたくなる会見が続くのですが為替の話は割愛。


・消費について

『(問) 消費について、総裁の考えをお聞きしたいと思います。消費については、日銀では、底堅く推移しているとしています。私が取材していると、実際に数字も指標もそれなりに出ているというところもあるのですが、ただ現場の関係者を含めて、消費関連の業者、業界の方に聞くと、方向感としては、確かに数字は出ているけれども、決してこれが上昇基調にのっていくというような状況ではない、非常に安定はしていない、というようなことを話している方が多いと思います。総裁は、この消費の現状をどう捉えていらっしゃるのでしょうか。そしてやはり数字ではないところの話も色々聞いていらっしゃると思いますが、今後の見通し含めて考えを教えて下さい。』

モメンタムとして本当に強いのかよという正統派ツッコミですが説明を鑑賞しましょう。

『(答) 消費はGDPの中で1番大きな項目ですし、消費行動を決定しているのは、極めて数の多い日本の家計ですので、その動向を知るのは極めて重要であると同時に、そう簡単なことではないと思いますが、いくつかの指標をみる限り、消費は、やはり底堅く推移していると言っていいと思います。』

ふむ。

『第1に、先日出たGDPの2次速報をみても、消費は3四半期連続で前期比プラスになっていました。それから、各種の販売統計をみると、ややばらつきはあるのですが、百貨店の売上高などを中心に増加傾向が続いていると思います。3つ目には、消費者態度指数とか、消費者のマインドについての色々なアンケート調査等があります。これらも昨年の秋にかけて悪化していたわけですが、昨年の暮れ頃から、かなりはっきりと改善してきています。高い水準にあるものの、足許ではやや足踏みというか、どんどん改善していくという感じには、まだなっていないというところもあります。ただ、消費者マインドも、先程申し上げたように、昨年の暮れ以降かなり改善したということは言えると思います。』

マインドの説明が長いですな。

『4番目には、最も重要な要素として、家計にとって重要な雇用・所得環境が引き続き着実に改善しています。有効求人倍率もさらに上昇しましたし、失業率もさらに低下したという中で、今年の春闘が昨年を上回るベースアップになってきていることもあります。名目賃金も上昇し、実質賃金も、消費税引き上げの影響が4月にはまだ少し残っていますけれども、5月には完全になくなりますので、はっきりしたプラスになっていくと思います。何よりも雇用と賃金と両方合わせた雇用者所得という面、家計の所得という面では、かなり順調に伸びているということがあります。春闘のベースアップの影響が具体的に出てくるのは、6月頃からだと思いますが、いずれにせよ雇用・所得環境が着実に改善していっており、今後も改善していく見通しであるということは、やはり家計の消費を支えるもっとも大きな要素ではないでしょうか。』

賃金の話を強調しているのだが、実質賃金の話をするのは墓穴議論であって、物価が見通し通りにホイホイ上昇したらまた実質賃金マイナス転してマインドとか実際の消費とか落ちるんじゃネーノという話になるので実質賃金を強調するのはお勧めできない。というかあまり実質の話をしていないのはその辺り理解しているからでしょうが(^^)。

しかしまあ何ですな、いったん生活防衛的になった家計って所得が上がったからよーしパパ消費しちゃうぞーという風に本当になるんかいなと思う訳で、そのまま貯蓄コースになるんじゃないかという気もするのであって、その辺って高度成長脳とかバブル脳とかのジジイとそういうの知らん若い衆とではマインドセットが違うような気もしたりしなかったり。

『先程申し上げた幾つかの指標、さらには雇用・所得環境の改善ということからいって、足許の消費は底堅いし、今後も消費は回復していく、伸びていくというようにみています。』

ということで、主にマインド面と雇用所得の面で底堅い、とまあそういう見立てになっていますね。


・設備と輸出について

『(問) 2点お伺いします。1点目は、法人企業統計などをみると、設備投資が、非製造業を中心に非常に盛り上がっています。非製造業が景気の牽引役になり得る可能性をどうご覧になっているのか、お伺いします。2点目は、逆の話ですが、輸出が非常に弱くなっており、中国の輸入などをみますと、今後、日本で輸出の調子が悪くなって、景気全体も下押しをされるようなリスクはないのか、ご所見をお願いします。』

ということで・・・・・・・・・

『(答) 足許、特に5月の実質輸出がかなり弱かったことは、一時的な要因もかなり含まれているようですので、もう少しみないといけないと思いますが、その上で、輸出がどのように動くかということは、十分注視して参りたいと思います。IMFその他の見方でも、それから私どもの見方でも、世界経済は緩やかに回復していくというのが、ベースライン・シナリオだと思いますので、そういうことを踏まえると、輸出は、振れを伴いつつも、やはり緩やかに増加していくということであろうと思っています。』

ということで先ほどネタにした金融経済月報にもありました内容がこちらで示されていまして、輸出に関してはコケるリスクをそれなりに見ているという事でしょうな、うんうん。

『そうしたもとで、非製造業と製造業の設備投資ですが、確かに、非製造業の設備投資が伸びてきているということは、内需主導の経済成長と平仄があっているとは思うのですが、他方で製造業の方も設備投資計画をみると、かなり強いものになっていますので、非製造業の設備投資は伸びるけれども、製造業の設備投資は伸びない、と決めつけることはできないのではないかと思っています。』

いや別に質問者は製造業の設備投資が伸びないと質問した訳ではないのですがという所で、なんかこう為替の質疑が影響しているのか知らんですけれども、質問に対して聞かれもしないことについてツッコミというか非難を食らったと思って斜め上の返答をしているというのがさっきもありましたが、なんちゅうか今回の質疑ではそういうのが見受けられるのが気になる点ではありました。なんか気にしている事でもあるのかなあとか警戒モードが強くなっているのかなあとかそんな感じです。



○市場雑談メモ

といってもいつもの短国買入。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150622.htm
国庫短期証券買入 10,000 2015年6月24日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2015年6月24日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,400 2015年6月24日
国債買入(残存期間25年超) 1,400 2015年6月24日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3) 8,000 2015年6月22日 2015年6月23日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注4) 24,253 2015年6月22日 2015年6月23日

補完供給の乱れうちワロタという所ですが、それはそれとして短国買入はまあ1兆で来るなあと思ったら1兆。


落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150622.htm
国庫短期証券買入 17,811 10,000 0.011 0.012
国債買入(残存期間5年超10年以下) 12,141 4,010 0.002 0.003 41.3
国債買入(残存期間10年超25年以下) 8,761 2,404 -0.002 0.000 83.8
国債買入(残存期間25年超) 3,172 1,403 -0.033 -0.022 94.3
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4) 115 115 -0.400 -0.400
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注5) 631 631 -0.400 -0.400

ということで、短国買入の結果は1.2甘/1.1甘なので水準そのものは3Mとか入らないようなレートでして、1年カレントの539回の売参がマイナス4.4bp、6Mカレントの537回の売参がマイナス2.1bpですので、どうみてもこれは539回を一発で入れてきた(なお537入れても入札水準からすれば利食いは利食い)という所ですが、応札の方が相変わらずの少な目でして、3Mは端から応札していないのか、それとも他に買うものが無いから3Mカレントに実需投資家の買いがあって投資家に嵌って出てこないのかが謎ですが、まあ昨年9月のように本当にモノがない的な感じではなさそうではありますので、この結果を受けて3Mカレントが極端にマイナスヒャッハーとかになった訳ではないと思います(どこかのベンダーでマイナス0.1bpとか言ってたような気がする)。

でまあ来週は四半期末(良く考えたら今年も半分終わりじゃないですかorz)な訳ですが、木曜に3Mの新発があって、過去の例からすると四半期末当日に受け渡しが来る短国買入とかどう見ても札が入らないからパスして来週の月曜か火曜辺りに短国買入という段取りになる(どうせならやらないで需給を少しゆるめたほうが良いのにとは思うが)のでしょうなとゆー所ですが、相変わらずの流れで6Mと1YのTBは別世界で3Mはゼロ近辺で延々と推移というしょうもない相場になるのでしょうかねえという所で。


○時間がないので積み残したネタがががが

その1
http://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond1506.pdf
「債券市場参加者会合」第1回議事要旨等(2015年6月11、12日) [PDF 5,548KB]

・・・・・・・・・まあ微妙に悪態があるのだが時間が足りないので後日(−−;

その2
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150619a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150619a.pdf
全国信用金庫大会における挨拶
日本銀行副総裁 中曽 宏
2015年6月19日

というのが積み残しですすいませんすいません。







2015/06/22

お題「決定会合プレビュー」

モーサテにもっとも見たくないゲストが登場したので瞬時に局を変更(したので何の話があったかは知らず)。

話はワープしますがこれ「自民党が」やるとか講和条約の第11条との関係どう対外説明するのよ・・・・・・
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150622/k10010122911000.html
自民 「東京裁判」や憲法の制定過程を検証へ
6月22日 4時33分


○決定会合レビュー:経済物価情勢に関しては無風

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150619a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150522a.pdf(前回)

・現状認識は住宅投資だけ上方修正

『わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。』(前回)

へえへえそうだっか。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。』(前回)

ここまで全文一致。

『雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直しつつある。この間、公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。』(今回)

『公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。住宅投資は、下げ止まっており、持ち直しに向けた動きもみられている。』(前回)

ということで住宅投資が持ち直しつつあるに上方修正されていますがホンマカイナ。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は持ち直している。』(前回)

てな訳で今回は生産、消費、外需などの大物項目は全文一致ですのでまあ無風。

『また、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)

この間がまたに化けているのはさっきの所でこの間を使ったから重複回避の為です。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

現象に関する話が同じなのはまあそうですなという所で、相変わらず予想物価上昇率が全体として上昇しているということなのだが、その上昇というのは何時が起点なのかと小一時間問い詰めたい訳で、バックワードルッキングでの物価上昇期待の形成に悪影響があって追加緩和をした、という事象がある以上、その「全体として」の部分は少なくとも直前3か月程度でみた場合にどのように解釈しているのか、というような話が無いと、予想物価上昇率が2%でアンカーされるまでの距離感が全くつかめないのですがそれは。


・先行き見通しはこれまた全文一致

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(前回)

毎度の全文一致で当面0%程度で推移しても最早無問題状態になっているのだが、この「当面」というのは数か月オーダーの表現である、と2014年1月の声明文(展望レポート中間評価とセット)の時に説明していた筈なのですが、既に3月の声明文から「当面」が続いている訳で、この「当面ゼロ%程度」が7月8月になっても続くという事になりますと見通しが更に後ずれという事になりますがそれで2年で2%はどうなるのでしょうか。


・リスク要因と毎度のまとめも全文一致

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。』(前回)

まあ所期の効果を発揮しているんだったら「2年で2%を達成するのに十分な措置(キリッ)」というのは何だったのかと小一時間問い詰めたい訳ですが、それは兎も角としましてこのほぼ全文一致で涼しい顔が出来る、というのは「2年で2%」を肝心の2年経った時点で堂々先送りをすることができたというのが大きく、いやまあその前にも1回先送りしているのですが、やはり2年が接近する時にやいのやいの言われていた訳で、そーゆー意味からすると完全に「2年が無かったことになる」ためには2年を通過した所で堂々の先送り宣言をしたからこそという所で、今回の会見でも為替の質問はたくさんあれども2%達成時期に関する質問や師匠の進退問題など聞く人が碌にいないというようになったように、喉元過ぎれば熱さを忘れるというもののようですので、ここはヒネクレモノのアタクシとしては「2年で達成」に関して折に触れてイヤミを申し上げたいというモノです。


・反対も木内さんだけですな

先般の金懇挨拶ですといずれ金融政策枠組みに関して何かを投下することが期待される佐藤さんですが、今回も普通に賛成のようで。

『(注1)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員、原田委員。反対:木内委員。なお、木内委員より、マネタリーベースおよび長期国債保有残高が、年間約45 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節および資産買入れを行うなどの議案が提出され、反対多数で否決された。』(今回)

『(注2)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、2つの「柱」に基づく柔軟な政策運営のもとで、資産買入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれぞれ適切と考えられる時点まで継続するとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員、原田委員)。』(今回)

これもまた前回と同じなので前回分の引用は割愛します。森本審議員は今回で終了ですな。



○MPMの回数削減は方向性として結構な話だが微妙にもにょるというかツッコミというか

声明文の後にこれが出て、どうせ声明文変化ないだろと思ったら案の定声明文は上記のとおりだった訳ですが、ここでMPMの回数削減が出るとはこれはまた。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150619a.pdf
金融政策決定会合の運営の見直しについて


・施策としては何ら文句はないが理由説明のセンスが最悪なのですがこれは

『本日、日本銀行は、政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策に関する審議と情報発信を一層充実する観点から、金融政策決定会合の運営を、以下のとおり見直すことを決定した(全員一致)。関連政令の改正を条件に、2016年1月から実施する。』

どうせ今ならOISとかにも影響しないでしょうから速攻実施でもええんやで。

『これらの見直しによって、政策決定の基礎となる経済・物価見通しを、より高い頻度でより詳しく示すとともに、会合後速やかに会合における主な意見を公表することとする。』

回数が減ってより高い頻度とはどういう事やというのと、主な意見を公表というのは後に出てくるが、まあここまではイイハナシダナーな件なのですが・・・・・・・・・・


『このように、@四半期毎に、経済・物価見通しを公表した上で、Aその中間の会合を含めて、金融政策を決定する会合を年8回開催し、B会合終了後は速やかに情報発信を行うという枠組みは、近年、主要中央銀行で主流となってきているものである。』

・・・・・・・・・・orzorzorz

えーっとですね、方向性は別に出されている話で悪くないというか改善方向なので誠に結構なお話ではあるのですが、この「グローバルスタンダード(キリッ)」というのは置物マネタリーベース理論に始まり、黒田日銀における「2年で2%」の根拠説明などでも、エビデンスに基づいた実証的科学的な説明を放棄する為に使われている代物になっている上に、肝心のグローバルスタンダード(キリッ)の「2年で達成」が出来なくなったら「原油価格低下で物価が伸びないのはグローバルスタンダード(キリッ)」と今度は達成できないときの言い訳にまでグローバルスタンダードを出してくるという有様という現状を踏まえますと、もうちょっとモノの言い方というのは無かったのかというお話ですよ。

それからグローバルスタンダード(キリッ)と言えば国債決済T+1への短縮の話にしても、決済リスクの削減と比べて事務コストの拡大が間尺に合うのかとか、現状の国債市場の流動性の低さ(それも金融政策による国債大量購入が原因)の中で結果として国債市場の流動性にストレスを掛ける事になる証券決済期間の短縮化をこの時点で強硬する必要があるのか、というような疑問に対してもそういえばグローバルスタンダード(キリッ)で済ませようというのが濃厚に漂ってくるように、なんちゅうかこう説明放棄をして押し切りたい時に出てくるのが「グローバルスタンダード(キリッ)」って奴なんじゃネーノという感じですな。

でまあ本件に関しては合理的な説明が他にやろうと思えばできる筈で、ついでに海外とのタイミングがあうとそれはそれで便利とか、まあそういう説明にでもしてくれば良いのに、「隣の太郎ちゃんの所がファミコン買っているんだからボクにも買ってよね〜ね〜」というような風情を醸し出す文書になっているのが今回の公表文を見てズッコケ三銃士状態になるところですな。しかもこの文言の辺りが文書1ページ目の中央部分にドドーンと来ているので悪目立ちしてしまうのが更に印象を悪くするので、出来上がった時の文書構成をもう少し考えた方がよかったと思う。



・「主要な意見」の書き方如何で決まると思われる

ということで内容ですが。

『(1)「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の年4回化

「経済・物価情勢の展望」(以下、「展望レポート」)の公表を従来の年2回から年4回に増やし、1月、4月、7月、10月の金融政策決定会合(以下、「決定会合」)終了後、直ちに公表する。』

金融経済月報が出てこなくなる訳で、従来月次で出ていた月例経済報告とタイミングがずれる事になって比較検討ができなくなるなあというのはあるのですが、まあそもそも月例経済報告と金融経済月報では判断のタイムスパンや判断変更の基準が違うので単純に横に並べられても・・・・・というのはあるにはあると思いますが、良く月例と金融経済月報を横で並べて比較するというのはあった(アタクシはそこまで手を回せるほどの本職ではないので月例はせいぜい斜め読みでしたけど、大汗)ので、その点ではありゃーというのもあるかもです。


『(2)政策委員全員の経済・物価見通し及びリスク評価の公表

展望レポートにおける政策委員の経済・物価見通しについて、従来の政策委員の大勢見通しに加えて、全ての政策委員について各委員の見通しとリスク評価を公表する1(別添の公表例を参照)。』

脚注1は『1 これに伴い、現在公表している政策委員の見通し分布チャートの作成は取り止める。』です。

でまあこちらは図表がありますが要するにドットチャートにするという事ですかそうですか。


『(3)「主な意見」の公表

決定会合における「主な意見」を作成し、決定会合終了後1週間を目途に公表する2。』

脚注2は『2 決定会合の「議事要旨」は、従来と同様、次回決定会合で政策委員会の承認を受けた後に公表する。』

となっていまして、議事要旨に関しては政策委員会・金融政策決定会合での議決事項であると日銀法に規定されているので、これは動かしようがなくて、そうなると決定会合の議事要旨が出るのが更に遅くなるのでコミュニケーション上問題になるのは明らかなのでこれが出ると。

でまあこの「主な意見」の所でどの程度まで踏み込むのかが悩ましいですな、と申しますのはあまり踏み込み過ぎて議事要旨と同じようなモノが出てくるとそれは脱法状態になってしまうから、読む方としては出来るだけ詳しいのを見たいのですが・・・・・・・・・・・

そしてここの「1週間」というのはミニッツが出てくるのが無暗矢鱈と早いBOE(ただし論点がやたら端折られているので何が何だかよくわからなくて、継続して読まないと流れが分からない・・・・・で思い出したが最近ネタにしていませんなすいませんすいません)もビックリの速さになるのですが、期間の速さは素敵ではあるのですけれども、内容がペラペラですとそれはそれで困るというか、コミュニケーションの後退にならんかというのもあるので、まあここの内容に期待です。


『(4)金融政策決定会合の開催頻度の見直し

展望レポートを議論・公表する会合を年4回開催し、その間に経済・物価情勢の変化などを議論する会合を開催することで、金融政策決定会合を年8回開催する(従来は年14回程度)345。』

脚注は以下の通り。

『3 既に公表済の2015年7月から12月までの決定会合等の日程は変更しない。2016年1月以降の決定会合の日程は後日公表する。』

『4 金融経済月報の作成・公表は取り止め、年4回公表される展望レポートに集約する。』

『5 米国連邦準備制度、欧州中央銀行においても、決定会合の開催頻度は年8回となっている。また、イングランド銀行も、年8回に変更する方針を明らかにしている。』

5番が余計なのですがそれは・・・・・・・・・・・・・・・

ということで、月報が無くなって展望レポート4回になるのですが、ロジとか手間的に言えば月報減って集約する方がやりやすいでしょうし、MPMが14回から

なお、MPMが14回(最初は20回とかあった)の根拠はこちらです。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09SE385.html
日本銀行法施行令
(平成九年十二月二十五日政令第三百八十五号)

『(政策委員会の招集)

第九条  政策委員会の議長(議長に事故があるときは、法第十六条第五項 に規定する議長の職務を代理する者。以下この条において同じ。)は、法第十五条第一項 各号に掲げる事項(以下この条において「金融調節事項」という。)を議事とする会議を、一月に二回、相当な間隔をおいて招集することを常例としなければならない。』

ということで、これ以上減らすのは明らかにアレというのと、政策委員会の日程に関してはここにあるように政令対応なので、日銀法改正をしなくてもヨロシという事ですが、まあ回数減らすとはどういう事やと政治方面から言われたら困るのと、下手にツッコミを受けても嫌だから錦の御旗の「グローバルスタンダード(キリッ)」なんでしょうけれども、やはりこう説明面倒くさいから錦の御旗を持ち出すというのも如何なものかという感は拭えませんですなあとは思います。

なお、サラリーマン的に申し上げますとこの手の「反論しにくい錦の御旗攻撃」というのは実にこう便利な(以下自主規制^^)。



・ところで何でこのタイミング?????

という質問は会見でもあったと思いますが、まあ「2年で2%」の足かせが無くなった上に、物価目標達成時期は盛大に後ずれさせるわ、物価だけがホイホイ上昇しても困るという認識が広がるわと、目先直ぐに物価が上がらなくてもいちゃもんつけられない上に、物価が上昇しだすかどうかの判定時期まで時間がある(これが秋以降になると物価が上がらないとなった場合に見通しがどうなのとかまた炎上しだす)というのがあったのでしょうなあと。

まー裏を返して言えば政策課題が無いのでここぞとばかりに長年の懸案を出してきたという所でして、つまりこれは次回展望レポート中間評価では当然の如く何もなく無風で通過することが(天変地異の無い限り)確定的という事を示していると思います。


しかしまあ何ですな、執行部様の見通しに沿って経済物価情勢が進展すると2016年度前半になると物価が2%に到達している筈でして、そうなりますとQQEの出口政策をどうするのか、という時期になる筈でありますので、そんな大事な時期に入って経済物価情勢を点検して政策判断を行う金融政策決定会合の回数が減るとはこれはまた大丈夫なんでしょうか寧ろ回数増やした方が良いんじゃないですかねえ(盛大に棒読み)。

・・・・・・・・・という気はするのですが(しません)、これはまあつまり執行部の皆様におかれましては「来年になって出口政策で必死に何度も会合をやらなければいけない事態」と「物価目標が全然達成できなくて決定会合の度に言い訳をしなけばいけない事態」というのの発生可能性を天秤にかけた場合に後者の方が可能性が高い場合の事を考えて今回入れられる時に会合減少攻撃を入れたという事ですね!!!!!!!!!!!


まあしかしこれで毎回の会合の度に追加緩和がどうのこうのというネタが飛ばなくなって、年4回に集約されるとなりますと振り回されなくて結構ですが、悪態ネタが無くなるので寂しい気もしますな(ゲス顔)。


まータイミングとしては真面目に考えるとさっき申し上げたように単に「とりあえず政策課題の空白期間なのでここを先途とぶち込んだ」という事なのだと思いますがね。内容そのものは「主な意見」の所次第ですが方向性として回数が年8回程度に減るのは結構なことで。必要なら臨時会合やればよいのですから(それで臨時会合だらけになったらそれはそれで困るけど^^)。




2015/06/19

お題「3M入札がほぼ100円とな/イエレン議長会見の冒頭メッセージは見事なまでに安定感のある内容」

うーむ。
http://www.47news.jp/CN/201506/CN2015061801000893.html
首相「解釈固執は責任放棄」 集団的自衛権で、年金問題は陳謝
2015/06/18 11:06 【共同通信】

『安倍晋三首相は18日の衆院予算委員会で、憲法解釈の変更により集団的自衛権の行使を認めた昨年7月の閣議決定について「国際情勢に目をつぶり、従来の解釈に固執するのは政治家としての責任放棄だ」と述べ、必要性を強く訴えた。』(上記URL先より)

えーっと、「情勢が変わったから法解釈をこのように変えて運用します」ってのを為政者の都合でホイホイ実施されたら法が安定運用されないわけで、それはちょっと近代国家的にアレなのではという気が。解釈じゃなくて正面切って憲法改正の発議とセットにした方が変なスタックの仕方をしなかったのではなかろうかと。いやもちろん他の点でスタックはしますけど、手続き論でスタックするよりは本質論でスタックした方が意味があるでしょ。

などという柄にもない愚感想は兎も角としまして今日は注目されないMPM2日目ですよ!!!

○市場雑談メモ

・3M入札ェ・・・・・・・・・・・・・・・

アイヤー!
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150618.htm

(3)募入最低価格 99円99銭9厘5毛 (募入最高利回り)(0.0019%)
(4)募入最低価格における案分比率 1.3559%
(5)募入平均価格 100円00銭0厘0毛(募入平均利回り)(0.0000%)

・・・・・(゚д゚)

こっち見んなと言われそうですが^^;前回に引き続きまして3M短国のレートが低下しやがりまして、足切りはプラスでしたが案分は極薄で、実質的には100円一本値という結果になっておりまして、6月末に向けて需給が強い状態が続くの巻となっておりまして誠に遺憾の極みという所です。まあこれオーバーパーの札が中心になりだしたらまたもマイナス街道という事になりましてそらどういう事じゃというか4月〜5月の再来になるんですがそれはという話でまたかよ勘弁というお話ではありますな、うんうん。

まー何だかんだ言って短国買入が思いのほか減らなかったのと、利付の短い所がとにかく全くと言っていいほどマイナス街道、と思ったら昨日のBB引けで2年カレントの辺りが謎の1毛甘になっていて引値でプラス金利とかしばらくぶりに見た気がしますが、まあこの前も2年カレントプラスになったと思ったらあっさり実需最終投資家的な買いが入って砂漠に水を撒いたかのような吸収のされ方だったと思いますのでもうねという所で。


でまあ次回の短国買入は月曜になる(今日はMPM2日目なのでやらない)のですが、どうせまた1年新発買いたいから1兆円とかオファーして6月のMB積み上げを無駄に上方シフトさせて積み上げることになると思うのですが、まあ恐らくは7月の財政上げが例年以上に大きくいとかそんな背景があるんじゃネーノ的な話だとは思うのですが、それにしてもちょっと勢いが宜しいですから、今日の会見で誰か「MBの積み上げペースが加速していますがこれはステルス追加緩和と理解して宜しいでしょうか」って聞いてくださいお願いしますお願いします。

毎度申し上げておりますように、足元の短国需給が強いのは短国がどうのこうのというよりは利付の方が中短期の輪番やり過ぎで短いところの利付が日銀に盛大に吸い上げられていて、運用もさることながら担保とかその辺の需要にも影響という所でしょうし、大体からしてMB積み上げが進むのは良いけどその反対側にある超過準備だってバランスシート制約というものがあるのですから、そうそう無限に積むわけにも逝かない訳ですから、中短期の需給カラカラ状態が短国買入のフローをこれだけ下げているのに短国3Mの金利がアガランチ会長どころか低下してきている、というのに反映されていると考えますと、今の調子で中短期の輪番やっていたら早晩中短期の輪番が爆発(凄まじいマイナス金利での買入とかスーパー札割れとか)するんじゃないのという悪寒がだいぶするので、この際買入年限の変な縛り止めて発行が後ろにシフトしているんだから買入も後ろにシフトする方が「買入をマーケットニュートラルに行う」とか最初の7年程度について言い訳していた筈なので、その元々の理屈にも整合的なのではないかと。

#とは言っても年限は余計なことにMPMで決まっているのでMPMで決定来ないと無理なのだが


・関連雑談である

でまあ置物師匠も仰せのように「短期国債の買入では実質的にキャッシュ同士の交換であって、買入する資産がキャッシュ的な所から遠くなればそれだけ効果が出やすくなる」という話は昔も言っていた話なのですから、そう考えると「マネタリーベース」ではなくて政策の枠組みを「資産買入」にした方が色々とオペレーションが回りやすくなると思うのですが、QQEの最初の時点でMB直線一気理論の話になっているのがもう話をややこしくしている訳で、APPによるバランスシートの資産サイドによって市場に影響を与える、という形にして資産買入をメインにした建付けに変えられないもんですかねと思いますが。

つまり、バランスシートの負債サイドからみたら超過準備をこれ以上誰が積むの的な問題が非常にヤヤコシイのですけれども、「資産買入」に焦点を当てるのであれば、そもそもキャッシュ代替部分の短国やら短期ゾーンの国債とか買う意味は乏しくて、長期の買入を継続しながらしらっと短期の資産を落とす(自然減で)形にすればオペはもうちょっと持つような気がしますが、これはMBが増えないのでMB直線一気理論との整合性が取れないという残念な事態が。

というか、そもそもマッカラムルールだか何だか知らんけど、当初この程度でみたいな話をしていた額を莫大に上回るMB拡大をしているのに物価はろくすっぽ上昇しないのですから、この時点でマネタリーベース直線一気置物理論に間違いがあったとしか申し上げようがないのですが、丸腰の兵隊を100人送って戦況が改善しないなら丸腰の兵隊を1000人送ればよいじゃないか的なトンチキ理論で兵力が全部無くなって滅亡するまで置物理論の間違いを訂正しないというのが見え見えなだけに全く期待ができませんな。



○イエレン議長のプレコン冒頭あいさつネタである

今朝になったらQ&A付きにアップグレードされていたがさすがにそれを読むのは無理なので週末読む。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20150617.pdf
Transcript of Chair Yellen’s FOMC Press Conference Opening Statement
June 17, 2015

ということで冒頭ネタで勘弁っつーことですが、安定感があるとお題で書きましたが、なんちゅうかこう安定感があり過ぎて全くぶれていないので面白くないという気もせんでもない(^^)。


・一発目に「初回の利上げをしても金融政策は十分に緩和的」というのを強調するの巻

最初の所は「今回こういう決定をしました」という話だ。

『CHAIR YELLEN. Good afternoon. Today the Federal Open Market Committee reaffirmed the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate. Since the Committee last met in April, the pace of job gains has picked up and labor market conditions have improved somewhat further. Inflation has continued to run below our longer-run objective, but some of the downward pressure on inflation resulting from earlier sharp declines in energy prices is abating. The Committee continues to judge that the first increase in the federal funds rate will be appropriate when it has seen further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term.』

この辺は声明文に書いてあることですな。

『At our meeting that ended today, the Committee concluded that these conditions have not yet been achieved. It remains the case that the Committee will determine the timing of the initial increase in the federal funds rate on a meeting-by-meeting basis, depending on its assessment of incoming economic information and its implications for the economic outlook. Let me emphasize that the importance of the initial increase should not be overstated: The stance of monetary policy will likely remain highly accommodative for quite some time after the initial increase in the federal funds rate in order to support continued progress toward our objectives of maximum employment and 2 percent inflation.』

つーことで、「今回は利上げしませんという判断になりましたよ」「今後も会合毎に検討しますよ」という話をしつつ「初回利上げの時期をおまいら重要視しすぎで、それよりも重要なのは利上げを実施しても金融政策は十分に緩和的なのであって引き締めではないことだ」と強調強調。

『I will come back to today’s policy decision in a few moments, but first I would like to review recent economic developments and the outlook.』

ということで次になる。


・景気認識に関しては1Qについてとりあえずは一時的という判断を示すも・・・・・・・・

『The U.S. economy hit a soft patch earlier this year; real gross domestic product (GDP) looks to have changed little in the first quarter. Growth in household spending slowed, business fixed investment edged down, and net exports were a substantial drag on growth. Part of this weakness was likely the result of transitory factors. Despite the soft first quarter, the fundamentals underlying household spending appear favorable and consumer sentiment remains solid. Looking ahead, the Committee still expects a moderate pace of GDP growth, with continuing job gains and lower energy prices supporting household spending.』

概ね声明文での認識と同様です。「the fundamentals underlying household spending appear favorable and consumer sentiment remains solid.」という辺りも強い認識ですが、まあ先般泥縄でネタにした4月のFOMC議事要旨ではこの1Qについて「基調は強いのだが実際問題として1Qの弱さが一時的なものなのかを確認したい」というトーンで議論されていたことを考えますと、今回は1Qの弱さについて一時的という認定をしたという意味において、まあ利上げに向けて普通に前進しているという評価になるのですが、じゃあ本当に一時的と確定したかというと、これが後のほうで出てきますがまだ留保中という事のようで、まあそこを捉えてみればハトと解釈できなくもないけど・・・・・・・・・・

『The labor market data so far this year have shown further progress toward our objective of maximum employment, although at a slower pace than late last year. Over the past three months, job gains have averaged about 210,000 per month, down from an average pace of 280,000 per month over the second half of last year, but still well above the pace consistent with trend labor force growth.』

ということで次が労働市場に関して。

『Although the unemployment rate, at 5.5 percent in May, was unchanged from the latest reading available at the time of our April meeting, the labor force participation rate edged up. A broader measure of unemployment that includes individuals who want and are available to work but have not actively searched recently and people who are working part time but would rather work full time has continued to improve.』

と、ここまでは威勢の良い話。

『But it seems likely that some cyclical weakness in the labor market remains: The participation rate remains below most estimates of its underlying trend, involuntary part-time employment remains elevated, and wage growth remains relatively subdued.』

こちらは威勢の良くない話。

『So, although progress clearly has been achieved, room for further improvement remains.』

なので一層の改善余地がありますという話はしておりますが、そらまあ「マンデート達成ヒャッハー」とか言い出すと出口だあばばばばーになってしまいますから、ドヤ顔状態になるのは利上げの時じゃないですかねえとは思う。


・物価に関して

『Inflation has continued to run below our longer-run objective, in part reflecting lower energy prices.』

それは言われんでもわかっとる。

『Declines in import prices have also restrained inflation.』

ドル高の影響とは言ってないがどう見てもドル高の影響です本当にありがとうございました。

『However, energy prices appear to have stabilized recently. My colleagues and I continue to expect that as the effects of these transitory factors dissipate and as the labor market improves further, inflation will move gradually back toward our 2 percent objective over the medium term.』

ここらの認識は4月FOMC議事要旨と同じで、原油安もドル高も永遠には続かないからいずれ影響が剥落するでしょというようなのが基本トーンです。

『Market-based measures of inflation compensation remain low, though they have risen some from their levels earlier this year, and survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable. The Committee will continue to monitor inflation developments carefully.』

市場のインフレ予想に関しても若干改善というような認識が示されているのが割とお洒落。


・金融政策運営に関して

その次がSEPの経済物価見通し話だがそこはパス(SEPに表示されている事実の説明だけだから)して金融政策の話。

『Returning to monetary policy, as I noted, the Committee reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate. As we said in our statement, the decision to raise the target range will depend on our assessment of realized and expected progress toward our objectives of maximum employment and 2 percent inflation. We continue to base that assessment on a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』

『And we continue to anticipate that it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when the Committee has seen further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term.』

とは言いましても最初の所では別に変った話をするでもなく声明文通りだしいつも通りの原則論。

『On both of these fronts, as I noted, we have seen some progress.』

でまあここでさらっと「(物価および雇用の)双方のサイドにおいて、先ほど申し上げましたように幾分かの進展がありました」とかちゃっかり言っていますので、声明文の現状部分を上向きにしているものの先行き見通しが変わらんのだから特段のインプリケーションが無い、という訳ではなくて、今示している見通し通りという認識であれば利上げに向けて進展という意味になるんですよね。まあ先刻ご承知だとは思いますけど念のため。

『Even so, the Committee judged that economic conditions do not yet warrant an increase in the federal funds rate. While the Committee views the disappointing economic performance in the first quarter as largely transitory, my colleagues and I would like to see more decisive evidence that a moderate pace of economic growth will be sustained, so that conditions in the labor market will continue to improve and inflation will move back to 2 percent.』

ということで、今回利上げしなかった理由が「1Qの弱さが一時的であり経済拡大の基調に変化が無いことをもうちょっと確認したい」という事になっていまして、先ほどの経済アセスメントの部分で申し上げたネタがこちらに登場してくるわけですよ。

でまあここをどう見るかという話でして、経済のデータって実は弱いだろそんなに上がらんわ、と思っているのなら利上げ時期について後ろに倒れたという評価をすることも可能は可能だと思いますから、そのあたり解釈には幅が出てくるんだろうなあとは思うのよね。


・利上げ後の金利パスについてのお話

『Once we begin to remove policy accommodation, we continue to expect that-as we say in our statement-“even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.” In other words, although policy will be data dependent, economic conditions are currently anticipated to evolve in a manner that will warrant only gradual increases in the target federal funds rate.』

ここらも毎回強調している話で利上げしても中立金利にドシドシ上げていく訳ではないですよという件。

『Compared with the projections made in March, most FOMC participants lowered somewhat their paths for the federal funds rate, consistent with the revisions made to the projections for GDP growth and the unemployment rate.』

でもってSEPの金融政策見通しの話で、まあ見ての通りではありますが「lowered somewhat their paths for the federal funds rate」と説明をしています。

『The median projection for the federal funds rate continues to point to a first increase later this year, with the rate rising to about 1-3/4 percent in late 2016 and 2-3/4 percent in late 2017. In 2016 and 2017, the median path is about 1/4 percentage point below that projected in March. The median projected rate in 2017 remains below the 3-3/4 percent or so projected by most FOMC participants as the longer-run value of the federal funds rate even though the central tendency of the unemployment rate by that time is slightly below its estimated longer-run value and the central tendency for inflation is close to our 2 percent objective.』

数字的な話は皆様ご案内の通りでみれば分かりますな。

『Participants provided a number of explanations for the federal funds rate running below its normal longer-run level at that time. These included, in particular, the residual effects of the financial crisis, which are likely to continue to constrain spending and credit availability for some time.』

でまあここで示されている「物価と失業率の数値がノーマルになっても中立金利に上がっていない理由」についても毎度同じ話をしておりまして、金融危機の後遺症によって消費やクレジットアベイラビリティに束縛が掛かるからといういつもの話で特段の変わった話もないですし、まあ政策金利パスという話ではありますから海外経済ガー的な話ではなくてあくまでも構造ちっくな問題によって利上げパスがゆっくりになるというような話になるのもまあ順当。

『I would like to emphasize that the forecasts of the appropriate path of the federal funds rate are conditional on participants’ individual projections of the most likely outcomes for economic growth, employment, inflation, and other factors.』

『But our actual policy decisions over time will depend on evolving economic conditions. Accordingly, if the expansion proves to be more vigorous than currently anticipated and inflation moves higher than expected, then the appropriate path would likely follow a steeper and higher trajectory; conversely, if conditions were to prove weaker, then the appropriate trajectory would be lower and less steep.』

段々ここ辺りの説明もテンプレ状態になってきて安定のクオリティとなっております。出ているドットは個別参加者の個別の経済見通し依存だから同じ経済シナリオじゃないよ(だから幅があるよ)とか、政策はデータディペンデントで行うから利上げ時期だってデータしだいで早くも遅くもなるよとか最早テンプレ。

『Finally, the Committee will continue its policy of reinvesting proceeds from maturing Treasury securities and principal payments from agency debt and mortgage-backed securities. The Committee’s sizable holdings of longer-term securities should help maintain accommodative financial conditions and promote further progress toward our objectives.』

最後にAPPに関してで、償還再投資については継続するという事で、APPによる資産規模そのものが緩和的な効果を与えている(からバランスシート維持もこれは緩和的な政策である)という毎度の話を最後に入れています。


『Thank you. I’ll be happy to take your questions.』

以下は週末に読む(汗)。

#うーむ引用増量ですな



2015/06/18

お題「寝起きでFOMC/貸出増加支援とか短国とかのメモ」

FOMCの時は市場の反応とかを見ないで読書をしてから結果を見るのがアタクシの仕様なのですが(下手に見ると読むときに無用なバイアスがかかるから)、概ね普通の内容だったと思ったのですがハト派評価になっているようで違和感ががががが。


○声明文では足元の判断を引き上げ

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20150617a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20150429a.htm(前回)

・第1パラグラフ:足元の判断に関しては「1Qは一時的な落ち込み」を確認する表現

『Information received since the Federal Open Market Committee met in April suggests that economic activity has been expanding moderately after having changed little during the first quarter.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in March suggests that economic growth slowed during the winter months, in part reflecting transitory factors.』(前回)

expanding moderatelyに戻りまして1Qの落ち込みが一時的要因でしたよという評価になりました。まあ順当は順当。

『The pace of job gains picked up while the unemployment rate remained steady. On balance, a range of labor market indicators suggests that underutilization of labor resources diminished somewhat.』(今回)
『The pace of job gains moderated, and the unemployment rate remained steady. A range of labor market indicators suggests that underutilization of labor resources was little changed. 』(前回)

雇用の増加もピックアップというのと、今回は労働市場のスラックについても若干減少と判断を進めています。なお今日引用まで行けるかどうか微妙なイエレン会見では「労働市場は改善しているがその他の労働指標などをみると未だに満足な改善ではない」といういつもの説明をしていました。

『Growth in household spending has been moderate and the housing sector has shown some improvement; however, business fixed investment and net exports stayed soft.』(今回)

『Growth in household spending declined; households' real incomes rose strongly, partly reflecting earlier declines in energy prices, and consumer sentiment remains high. Business fixed investment softened, the recovery in the housing sector remained slow, and exports declined.』(前回)

消費、住宅セクターに関する表現も進展しているものの、企業の固定資産投資と輸出に関してはstayed softと弱めの判断継続。

『Inflation continued to run below the Committee's longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and decreasing prices of non-energy imports; energy prices appear to have stabilized. Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『Inflation continued to run below the Committee's longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and decreasing prices of non-energy imports. Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

物価およびインフレ期待に関する表現では見通しの部分でエネルギー価格が今後安定的に推移するでしょうというのが入っているので、ヘッドラインの物価に関してはこの先やや落ち着くでしょう的な表現としては若干前進ちゃあ前進ですけれども、まあここは同じようなもんでもあります。


・第2パラグラフ:しかし先行き部分は見事に安定の表現同一クオリティ

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

というのはいつもの呪文。

『The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(今回)

『Although growth in output and employment slowed during the first quarter, the Committee continues to expect that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(前回)

ということで、今回第2パラグラフでの変更があったのはここだけで、1Qの生産や雇用が弱まったけれどもヘーキヘーキ、という部分の前半が抜けた訳で、これはもう1Qの落ち込みは一時的であると堂々の認定ということで、シナリオ通りに復活ヒャッハーという所ですな。

『The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced. Inflation is anticipated to remain near its recent low level in the near term, but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of earlier declines in energy and import prices dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely.』(今回)

『The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced. Inflation is anticipated to remain near its recent low level in the near term, but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of declines in energy and import prices dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely.』(前回)

リスク認識はバランスのまま変わらず、インフレは徐々に上昇して2%に向かっていくでしょうという部分で前回と違うのは「transitory effects of earlier declines」のところで前回は「transitory effects of declines」と単に「earlier」が入っているだけで、この分だけ一時的というのを強調した形になっていますな。


・第3パラグラフ以下は見事に全文一致

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate. In determining how long to maintain this target range, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. The Committee anticipates that it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when it has seen further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term.』(今回)

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate. In determining how long to maintain this target range, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. The Committee anticipates that it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when it has seen further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term.』(前回)

全文一致の確認の為に並べてみました(^^)。色々な状況を見ながらデータディペンデントで利上げに向かうのですが今回はまだ利上げを正当化できる状況ではありませんなここから改善しませんとねえウヘヘヘヘという所で。


・なお第4も全文一致

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(今回)

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(前回)

こちらは資産買入政策に関しての話でこれまた一致。


・ええもう第5パラグラフも全文一致ですわよ奥様

『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(今回)

『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(前回)

利上げ後の正常化ペースに関してはバランスアプローチをとっていきますし、現状の経済の見立てだと物価や失業率がロンガーランのノーマルレベルになった時点でもまだ中立金利水準まで政策金利水準を持って行かないのが妥当と思われますよ(理由はバブルの後遺症によるスラックの存在)というのもこれまた一緒。


・華麗に今回も全員賛成

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Jeffrey M. Lacker; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John C. Williams.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Jeffrey M. Lacker; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John C. Williams.』(前回)

反対芸人が出ないのは良いのやら寂しいのやら。


○SEPから少々

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20150617b.htm

にありますリンク先のどちらかを踏めばヨロシ
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20150617.pdf
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20150617.htm

・経済見通し

PDFだと最初のページになりますが、HTMLだと『Advance release of table 1 of the Summary of Economic Projections to be released with the FOMC minutes』の最初の所になりますな。


でまあこちらを見ますと、GDPと失業率の見通しに関して足元2015年の数値が悪化しているものの、2016年と2017年の数値、およびロンガーランの数値に関しては中心的見通しの部分に特段の変化はない(GDPは上がっていると言えば上がっているのだが足元下がっている分も考えるとあまり変化ないのでは)という格好になっています。

でもって物価に関しては中心的見通しに関してほぼ変わらずという結果でロンガーランの2%についてはマンデートだから変わることもなしという結果です。

数字的に言えばGDPについては今年はロンガーランを下回る成長となるが、その後はロンガーランをやや上回る水準での推移となる。失業率は来年にはロンガーランの失業率となり安定推移、物価は来年には概ね2%に近くなり再来年には2%で安定推移。という絵になっています。

ということで、今回のSEPでは参加者の中期的な見通しに変化は見られない、つまり金融政策の正常化路線そのものに対してグランドデザイン的に特段の変化もなく既存の見通しを変えるものではない、という事になりますが、足元に関しては見通しを下げていまして、そういう意味では手前の利上げ着手時期の所では微妙になる訳で・・・・・・・・・・・・


・金融政策見通し

『Figure 1. Central tendencies and ranges of economic projections, 2015-17 and over the longer run 』とか『Figure 2. Overview of FOMC participants' assessments of appropriate monetary policy』に相当する部分でありまする。

でまあ注目の2015年のドットなのですが、今回さすがに中央値下がるだろと思っていたら中央値が0.625%のままになっていまして、年内利上げ2回かよという所ですが、元々この数字前回が妙に高かったですからね。

つまりですね、前回3月のSEPでの金利見通しで2015年に1%以上の数字を出している変態仮面が4人もいまして、しかも4回利上げと5回利上げと6回利上げ(25bpづつで計算した場合)というナンジャソラという人たちがいて、この人たちもさすがに諦めたのか今年3回の所に下がってきたという所でしょうか。

利上げ無しの2名は変わらないのですが、前回は利上げ1回派が1名、2回派が6名、3回派が3名、変態仮面が4名となっていまして、今回は利上げ1回派〜3回派が5名ずつに綺麗に分離しているというのが中々笑える結果となっていたりするのありました。

でまあ手前の所が下がったから2016年末の所の見通しも下がっていまして、めんどいから目の子で見ますと前回は1.625%〜1.875%辺りが真ん中っぽかったのですが、今回は1.375%〜1.625%辺りが真ん中になっていますが、ペースという意味で言えば引き続き「年間で1%の利上げ」という感じですので、平均して2回のFOMCで1回25bpの利上げを実施しましょというお話なんでしょうな、うんうん。


あとですね、ロンガーランの所もちょっと味わいがありまして、ロンガーランのFF金利(つまり中立金利水準)については3.75%〜4.25%に票を入れている8名の見解は同じなのですが(人の入れ替わりはあるかもしれませんけども結果しか分からんのでそう予想する)、3.5%以下の所では前回が3.5%7名、3.0%1名だったのが、今回3.5%5名、3.25%3名という分布になっていまして、1名が中立金利水準を上げて2名が下げたという形になっています。

ということで、これ見ますとまだまだ「今年2回の利上げもあるでよ」という見通しをぶち込まれているものの、まあ市場はそう受け止めないですよね、というかそもそも額面通りにこの政策金利見通しを見てたら、その前の時点でもっと壮大な利上げパス想定になっていないとおかしい訳で、まーこのドット見せられて「ハト的ですね」という評価になった(んですか良くわかりませんがモーサテはそう言ってました)とすれば、そもそもドットの水準自体に大きな意味を置いている訳ではなく変化に注目しており、水準に関してはFOMCメンバーの願望込み料金ということで読んでるんでしょうなあと思いますし、まあそれが妥当でしょと思います。


○会見についてはとりあえず明日で勘弁

会見はこちら
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/1E51E30036CA4B1583ACD363D4B7820F.htm

冒頭のステートメントはさっき印刷して読んだのですが、自分で印刷しておいてURLがどこかに行ってしまうというスカタンプレイが炸裂しているのと、そもそも時間がないので本日はパスしますが、今回のイエレンさんの会見での説明は実に丁寧というか変な思惑をださせないような説明になっていて、冒頭ステートメントの方も良く練られていたように見えます。なおQ&Aはまだ見ていないので知らん。



○貸出増加支援資金供給は1兆円ほどの増加

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150617a.pdf

新規貸付の概要
貸付期間 4 年
貸付予定額 21,369 億円
貸付先数 35 先

借り換えの概要
貸付期間 1 年 2 年
貸付予定額 198 億円 0 億円

(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み
貸付残高 貸付先数
大手行 162,003 億円 7 先
地域金融機関等 69,083 億円 117 先
合計 231,086 億円 124 先

ということですが、前回が

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150316b.pdf

(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み
貸付残高 貸付先数
大手行 160,497 億円 7 先
地域金融機関等 62,957 億円 112 先
合計 223,454 億円 119 先

となっていまして、前回からの増加は1兆円程度なので、期日前返済も入っているという形になっていますが、まあ前の制度でもロールしないというのもあったので、これはまあこんなもんなのかもしれませんが、残高22兆円〜23兆円の所で頭打ちとかになってしまうのでしょうかねえという所で。


まあ何ですな、4年10bp固定金利ヒャッハーと言いましても、そもそも論として中短期の輪番を市場のキャパ以上に実施している結果として残存3年ゾーンのJGBで1bpとか1.5bpとかの水準になっていて、4年でも5bp程度(5年だと辛うじて10bp乗りますが)という水準になっているのですからそら4年固定でも10bpが高利貸し金利になってしまいますがな(貸出支援は当然適格担保が必要)という話で、自分たちのやっている貸出増加支援の残高が伸びないのが輪番オペのせいという大変に皮肉なお話になっていますな。

つーかですね、MB直線一気理論を引っ込めて話をする、ということでしたらば、それこそECBでもそういう話をしますが、「金利低下が貸出に回って金融環境が良くなるのが政策効果」などという話に持って行くと考えますと、中短期の国債金利を無駄に下げて政策効果(キリッ)とやるよりも、この貸出増加支援オペの残高が増えるようにしていった方が「本行の金融政策運営によって銀行の貸し出し増加に寄与している(ドヤァ)」と言えるんじゃネーノとか思う
わけでございまして・・・・・・・・・・


なお、今回から開始になった「当座預金取引先以外への貸出」という超斬新企画の結果は・・・・・・・

『(注2) 系統中央機関の会員である金融機関(日本銀行の当座預金取引の相手方でない先)の利用による系統中央機関への貸付残高は、1,056 億円(会員金融機関38 先)。』

となっておりまして、これが多いのか少ないのかってイマイチ分からんのですいませんが、アタクシ的には結構出たんじゃないのかなと思ったのですがどうでしょう。

#この勢いで当座預金先以外にも補完当座いや何でもありません


○1年短国は引き続きの別世界とか短国雑談

最早勝手にしてればという所ですが
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150617.htm

(3)募入最低価格 100円01銭0厘(募入最高利回り) (-0.0100%)
(4)募入最低価格における案分比率 26.8461%
(5)募入平均価格 100円01銭5厘 (募入平均利回り)(-0.0150%)

で、セカンダリーではワッショイということでBBの引けはマイナス2.4bpになっているようですな。なお今週は金曜がMPM2日目なので短国買入は月曜に入るのですが、6月のMBって盛大に積みあがっている筈なのですがやはり1年もの買いたいから1兆円とかになるんですかねえ。まあ7月8月にバカスカ短国買入入るという悪魔のような展開にならないのであればそれもまた仕方なしという所かもしれませんがね。


ということで本日は3M入札なのですが、とにかく6Mと1Yが上記のような有様で普通の投資家排除して入札ヒャッハーとやった後ワッショイワッショイと持ち上げられてしまうので、3Mに需要が集まってしまうのと、さっきちょっと申し上げたように中短期の輪番が市中流通玉に対するバランス的にというか感覚的にキャパオーバー状態になっていて、利付の2年近辺までマイナス利回りとか良くてゼロ利回りとかになっているために、まともなロットでマイナスじゃない金利が出る短期エリアって3M新発の出た瞬間しかないという状況で、そらまあここの金利がプラスになって日銀トレードワークしなくても金利そのものがアガランチ会長だわな、と思いながら今日の入札を迎えるのでありました。



2015/06/17

お題「国会ネタ&ECBネタである」

お、おう・・・・・・・・
http://www.47news.jp/CN/201506/CN2015061601002413.html
国会会期「9月上旬まで」浮上 与党、週内にも延長幅判断
2015/06/16 22:55 【共同通信】

確かこの夏は霞ヶ関方面は似非サマータイムだか何だかで早朝出勤しろという話だったと思うのですがその状況で夏の間中国会やっていたら・・・・・・・・・・・・・(−−;


○国会答弁で色々と

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150616a.htm
通貨及び金融の調節に関する報告書
参議院財政金融委員会における概要説明

昨日は毎度おなじみの国会半期報告があったのですが、そちらで色々とお話ががががが。

・黒田総裁の為替レート云々

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQ0LDT6S972901.html
日銀総裁:「金融政策に深い意味はない」−実質実効レートで
2015/06/16 13:08 JST

もうちょっとこの記事の題名何とかならんのかと思うのですがそれはともかくとして。

『(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は16日、為替相場を動かした10日の発言について国会で聞かれ、「このところの名目為替レートについての評価や予測として申し上げたわけではない」と述べるとともに、実質実効為替レートは「金融政策に非常に深い意味はない」と語った。こうした発言を受けてドル円相場は円が値下がりしている。』(上記URL先より、以下同様)

ということで国会で問い詰められて説明しているのですが・・・・・・・・・

『黒田総裁は参院財政金融委員会で、10日の発言について「あくまで理論的な説明をした」とした上で、「2国間の名目為替レートの水準や動きについて、先行きを占ったり、評価するものではない」と発言。「名目ベースでの円安を望んでないとか、円安にならないだろうと申し上げたわけではない」と述べた。 』

という説明なのですが、ブルームバーグニュースはその先がイヤミでワロタ。

『黒田総裁は10日の衆院財務金融委員会で、「実質実効為替レートでみると円安になっているのは事実」と指摘。実質実効レートでは「ここからさらに円安はありそうにない」などと述べた。これを受けて、それまで124円台半ばで推移していた円相場は直後に一時122円台まで円高が進んだ。』

参議院インターネット中継だと質疑の過去ログも一定期間は見れる筈なのですが、何かこう説明しているのですが何が何やらという感じでの話をしている感はありまして、結局何を言いたかったのかとゆーと「先日の発言は円安けん制ではありません」ということだったのではないかというのだけは把握できましたが・・・・・・・・・

『黒田総裁はまた、無所属クラブの中西健治氏の実質実効為替レートの評価について聞かれ、「実質実効レートが最初に開発されたのは国際通貨基金(IMF)で、私はその当時IMFに勤務していたので、それをめぐる議論やその論文等を読んだことがある」と述べた。』

『その上で、「その後40年くらい経って、これから何かを読み取るのは非常に難しいものであり、金融政策にはすぐには役に立たない。非常に迂遠(うえん)なものだ。為替の動きを占う面でも、直接的に含意がはっきりしているものではない」と指摘。』

『「この理論を開発した人を私はたまたま知っているので、全く無意味だ、一顧だにするな、と言われると、そこまで言う必要はないと思うが、金融政策にこれが非常に深い意味や縁はないということには全く同意見だ」と語った。』

しかしまあ何ですな、これ説明すれば説明するほどドツボに嵌るというか、わけがわからなくなって来るので、単純に「具体的な為替レートには言及しない」「経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい」という説明を一貫して行えばよいだけだと思うのですけどねえ。

ということで実質実効為替レートの話はやっちまいましたなというだけの話でしたという所で、まー10日は前原さんの質問に答えようとして、自分の得意分野だという認識があるから余計な話をして口を滑らせた、というだけの話だったという評価でよろしいんじゃないですかね。もちろん背景として円安誘導ばっかりしてケシカランとか、そもそも円安コストプッシュで物価あげても誰得じゃネーノというような批判が外交方面や政治方面から飛んできているのはあるんでしょうが。


・それより色々とやばかったのは師匠なのですが・・・・・・・・・・・・

とまあそれはそれで良いのですが、昨日の参院財金での質疑ではニュースネタにあまりなっていない、と言うかニュースネタにするのもヤバいというのが置物大師匠の答弁。

民主党・新緑風会の風間委員(だったと記憶しているが間違っていたらすいません)からの質問が置物大師匠に飛ばされまして、質問の趣旨は日銀が剰余金を多めに留保したこの前の決算から始まり、「緩和政策によって大量に買入を行った資産について出口政策などで多額の損失が出た場合に通貨の信認という意味で大丈夫なのかという点について置物副総裁の認識如何」という話だったのですけれども、質問されたことと全然違う説明をおっぱじめたり、答弁の途中で「ところで何の質問でしたっけ」とか言い出したりで、まあそんなに国会マニアじゃないから委員会質疑を熱心に見る訳ではないアタクシなのですが、いちいち速記が止められてしまうという凄まじい展開になっておりまして、マジで大丈夫かという感じでしたので、中継録画見るなら最初の方が実はオヌヌメだったりします。

でまあその答弁の中で財政ファイナンス云々に関してかなりやばそうな言い間違えをして質問した民主党の方がびっくりして大塚耕平さんが立ち上がって理事席に行って議事止めるというこれまた珍現象が発生しておりまして、いやあの置物師匠大丈夫かという所でございましたですよ。

詳しくは会議録が出たらという所ですが、速記が何度も止まっているので様子を見るなら会議録よりも録画映像を見た方が良いかもしれません。


○ECBのAPPは相変わらず別に加速していない件についてなどECB関連+ドラギ総裁講演の続きでギリシャネタ

・6月第2週の買入はペースが若干落ちているのですが

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/index.en.html
Weekly financial statements

こちらから週次のデータを見れるのですが。

6/12残高と前週比増加額
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150616.en.html

CBPP3 EUR 89.9 billion +EUR 2.6 billion
ABSPP EUR 8.2 billion +EUR 0.7 billion
PSPP EUR 170.2 billion +EUR 10.6 billion


6/5残高と前週比増加額
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150609.en.html

CBPP3 EUR 87.3 billion +EUR 2.2 billion
ABSPP EUR 7.5 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 159.6 billion +EUR 12.9 billion


5/29残高と前週比増加額
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150602.en.html

CBPP3 EUR 85.1 billion +EUR 2.3 billion
ABSPP EUR 7.2 billion +EUR 1.0 billion
PSPP EUR 146.7 billion +EUR 12.4 billion

・・・・・・・・とまあそういう風になっていまして、先般のクーレ理事の「夏枯れ時期に向けて前倒しで買入を加速して夏枯れ時期は買入を抑えるかもしれません」という説明は一体全体なんだったのかと小一時間問い詰めたい訳ですが、先般来のドラギ総裁による市場放置プレイ発言に見られますように、ECBとしては下手に市場にサービスをすると却って市場のクレクレを促してボラを無駄に高めるだけの結果になるという認識になったのかなあとは思うのですが、あともう一つあるとしますと、例のクーレ理事の前倒し発言に関してはリリースの仕方に問題があって公平な情報発信という点でかなーり問題になるネタだったので、不公平な情報発信と取られても仕方ないような内容の情報発信に沿った動きをするとその点を突かれてまた問題になってしまうから、買入の前倒しができなくなってしまったというのはあるかなあとか想像というか妄想を逞しくする次第です。

なおペースが若干落ちているようには見えますが、そもそも月間で60bilの買入をすれば良いので、第1週が15.4で若干オーバーだった所で第2週が13.9の買入ですから進捗としては特段問題はないようには見えますが、直近まで大体12.5程度で推移していたのが10.6なのでちと気になるちゃあ気になる程度の話で、来週出てくる今週の数字も落ちてくると???となりますが、まあそこは挽回してくるんでしょ。



・まあそれよりもギリシャな訳で

しかしまあ何ですな、足元ではギリシャが交渉なのかヤケクソなのか知らんけど矢でも鉄砲でも持って来い状態になっているように外野からは見える

まあ何というかヤケクソになった債務者というのはオソロシイもので、矢でも鉄砲でも持ってこいと
開き直られると本当に矢でも鉄砲でも持ってくる訳にも逝かないので結構困る訳ですな。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQ1GFT6K50Y401.html
ギリシャ首相譲らず、IMFの「犯罪」とECBの「窒息」戦略非難
2015/06/17 00:36 JST


ということで昨日は時間の都合上スルーしましてあまり追加する予定もなかったのですが気が変わったのでドラギ講演ネタの続きである。

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150615_1.en.html
Hearing at the European Parliament’s Economic and Monetary Affairs Committee
Introductory statement by Mario Draghi, President of the ECB,
Brussels, 15 June 2015

『The current situation in Greece』という小見出しから参ります。

『Finally, let me say a few words on the situation in Greece and the ECB’s role.』

ということで・・・・・・・

『As is the case for any member country of the euro area, the ECB, in the context of the euro system, fulfils its mandate as central bank toward Greece. Furthermore, the SSM Regulation you adopted together with the Council in 2013 made the ECB the supervisor of the Greek banking system through direct and indirect supervision. And in the two-pack, Parliament and Council have asked the Commission to liaise with the ECB when negotiating the conditionality attached to the adjustment programmes and when reviewing their implementation.』

つーことで、2013年の金払えません攻撃の時の話が出てくる(そういう枠組みなので当然ですが)という話であって、結局の所はEUがギリシャに求めるconditionalityを満たすようにして頂きたいとかそういう話になる訳なのですが。

『When it comes to monetary policy and supervisory action, the ECB will continue to take its decisions in full independence and in accordance with our legal framework. This rules-based approach is what is required from us. This is what we have been following and will continue to follow.』

でまあECBの判断はルールベースに則って独立して行うという話ですけれども、前回の時にはお助けするのかどうかという話に関して結局ECBは(形式はともかくとして)そこそこ踏み込まざるを得なかったりしていましたのでここからは中々難しいものがありますわな。

『In this context, the Eurosystem has provided support to allow Greek banks to continue financing the economy. Currently, the central bank liquidity extended to Greek banks amounts to around EUR 118 billion, more than double the amount at end 2014.』

ギリシャへの銀行システムに対する流動性供与額はすでに昨年末の倍以上になっていてその額1180億ユーロとな。

『The current liquidity support represents around 66% of Greece’s GDP, the highest level as a share of GDP of any euro area country.』

流動性サポートが既にギリシャのGDP対比で66%に達しているとな。。

『Last week, the Governing Council decided not to object to a further increase in the ELA ceiling, by EUR 2.3 billion to EUR to 83 billion.』

うむ。

『Liquidity will continue to be extended as long as Greek banks are solvent and have sufficient collateral.』

というのがニュースヘッドラインに出ていましたのでそらバジョットルールのまんまやろとか書いた訳ですけれども、良く良く考えてみると「Greek banks are solvent and have sufficient collateral」という状況なのかどうかってそのcollateralは何ですねんとかsolventである状態なのかという査定の問題とかあるので、ECBとしてもダラダラ流動性を出し続ける(と取りあえず目先は持ってしまう)のか、てきとうな所で「こいつらsolventじゃないし持ってるのはcollateralとして使えんわヴォケ」という風に潰しに掛かるのかとかに関してECBもどうするのやらという話になりますなこれは。

でまあ常識的に考えると交渉は遅滞に次ぐ遅滞ではあるのですが、そうは言いましても一応決裂していないだけに、まさかECBが自らギリシャを潰しに掛かる訳にも逝かないでしょうから、そうなると銀行システムへの流動性供与が回るので何となく金が回って誤魔化しが続き、その間に財政を改善する気もなさそうという状況なのでダラダラと出血が続く、というかつてどこかの国で良く見られた不良債権問題先送りプレイのような光景が見られそうな悪寒がががががが。

『However, in a situation where the Greek government does not have market access, this liquidity can not be used to circumvent the prohibition of monetary financing, as laid out in Art. 123 of the Treaty on the Functioning of the European Union.』

でもってギリシャの政府がマーケットアクセスの無い中ですが金融システムに突っ込んだECBの流動性で財政ファイナンスをするのはダメですよという話をしているのですが、この辺って結局資金繰り問題になるから露骨な財政ファイナンスは出来ないにしても、流動性が回る中で資金繰りだけは何となく回るのではないかという気もするのだが。

『This, together with supervisory considerations, explains why there is a ceiling on the Greek T-bills held by the Greek banking sector.』

そこら辺の抜け道を塞ぐためにギリシャ政府が発行する短期国債について銀行システムが保有できる額を制限して、裏口財政ファイナンスにならないようにという話をしているのですかそうですか。

『For the Governing Council to reconsider the T-Bills ceiling, there should be a credible perspective for a successful conclusion of the current review and subsequent implementation which would imply the disbursement of programme funds by euro area Member States. This would also significantly improve the outlook for future market access by the Greek government.』

『It should be absolutely clear that the decision on whether to conclude the review of the current programme and disburse further financial support to Greece lies entirely with the Eurogroup, so ultimately with euro area Member States. Hence this is a political decision that will have to be taken by elected policymakers, not by central bankers.』

でもってこの短国のシーリングの見直しをするとかの判断についてはユーログループによる追加的な金融サポートが必要で、そっちの方は政治的判断になりますからECBが丸腰でやるのはマズーですよという話で、結局の所はギリシャの資金繰り持たせるかどうかという話はECBが最終的な判断をするのは勘弁ってのはそらまあそうでしょうなあと思う。

『In the meantime, we will continue to provide our advice on the adjustment programmes. It is within this context, that we need a strong and comprehensive agreement with Greece, and we need this very soon. By strong and comprehensive I mean an agreement that produces growth, that has social fairness, but that is also fiscally sustainable, ensures competitiveness, and addresses the remaining sources of financial instability. I can assure you that the ECB is doing all it can to facilitate a successful outcome.』

ということでギリシャとの合意をしてほしいし、その合意にはギリシャの財政運営に関して持続可能で、ギリシャ経済が競争力を持てるような財政的構造的な内容を含むものであって頂きたいし、とっとと合意して欲しい、と結局のところ踏み込んだ表現でとっとと合意しやがれという話をしているのでした。

『Such a strong and credible agreement with Greece is needed, not only in the interest of Greece, but also of the euro area as a whole. While all actors will now need to go the extra mile, the ball lies squarely in the camp of the Greek government to take the necessary steps.』

ということで全ての関係者はもう一歩踏み出す必要があるが、必要なステップを踏み出すためのボールはギリシャ政府にあります、ということで、最後はギリシャ政府に対応を求めるという踏み込んだ見解表明をしないといけませんわなというのが結論のようですな、うんうん。


○業態別当座預金残高(メモ)

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

例によってこちらから表計算ソフトに落としてみますと、5月積み期間に関しては超過準備が2.6兆円程度拡大しているのですが、増えているのが都市銀行、外国銀行、信託銀行となっていて、減っているのが地方銀行、第二地銀、その他準備預金先、その他当座預金先になっていて割と画然と分かれていますな。

だからどうしたというのがイマイチ良くわからんのでとりあえずメモだけ。






2015/06/16

お題「ドラギ総裁欧州議会証言/FOMC議事要旨虫干しネタ続き(汗)/水野元審議委員インタビュー記事とな」

ほほう。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0OV2JK20150615
ギリシャ首相18日に訪ロ、ユーロ圏はこの日に最後通告の可能性
2015年 06月 16日 03:46 JST

・・・・・・・ところでこの「最後通告」って何回目になるのでしょうか(−−;

○ドラギ総裁の欧州議会証言は市場のボラを引き続き放置プレイと来ましたよ

ドラギ総裁の欧州議会証言である。

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150615_1.en.html
Hearing at the European Parliament’s Economic and Monetary Affairs Committee
Introductory statement by Mario Draghi, President of the ECB,
Brussels, 15 June 2015

こちらの構成なのですが、小見出しが『Economic outlook and monetary policy』『Risks and side-effects of APP』『The current situation in Greece』とありまして、パートパートは独立した感じになっているので読みやすい(そんなに長くない)ですが、まあ当然ながら足元の状態だと三番目の部分がネタになると思うし誰か本職の人が解説してくれると思いますので1番目と2番目を華麗に寝起き斜め読み(^^)。

ちなみにどうでもよいが、「ギリシャの銀行に支払い能力がある限り流動性供給を行う」ってそれニュースでもなんでもなくてバジョット・ルールそのまんまで中央銀行のレーゾンデートル直球ど真ん中だと思うので何でニュースヘッドラインになるのやら(ヘッドラインにしたくなるお気持ちは分かるけど)。


・経済推移についてはドヤ顔風味だが・・・・・・・・・・・

『The latest economic indicators and survey data broadly confirm our assessment that the economic recovery is proceeding at a moderate pace. While growth has been mainly supported by private consumption in recent quarters, we now see encouraging signs that also private investment is picking up, which underlies our expectation that the economic recovery should broaden.』

ドヤァって感じですね。

『This will be supported in particular by our monetary policy measures, which are working their way through to the real economy, by the comparatively low price of oil, and by improvements in external price competitiveness.』

ということで緩和的な金融政策の方はともかくとして、原油価格が下がったり輸出品の価格競争力が上昇して経済がサポートされてますっていやあのですな、ちょうど昨日ネタにしただいぶ前のFOMC議事要旨とかですと先行きの見通しの所で原油安やドル高は永遠に続くものでもないしこれは一時的ファクター、という認識になっていて、一方でドラギ先生の所ではユーロ安と原油安でウハウハですよという話が出るとな。

『This is also reflected in the latest Eurosystem staff projections: we project economic growth to increase from 1.5% of GDP in 2015 to 1.9% in 2016 and to 2.0% in 2017.』

へいへい。

『After some months with negative or zero rates, inflation in May has increased modestly , standing at 0.3% in year-on-year terms, as the negative contributions from energy prices are fading. We expect inflation to remain low in the months ahead before rising stepwise around the turn of the year. Thereafter, inflation is expected to gradually converge toward levels closer to but still below 2%. In the Eurosystem staff projections of June, inflation is projected to increase from 0.3% in 2015 to 1.5% in 2016 and 1.8% in 2017.』

物価に関しての見通しではエネルギー価格の影響はこれから落ちるという話をしているのだが、経済の方の先行きでは原油のプラスの話はするもののその先はスルーとな。いやまあそれでも話は整合的ちゃあ整合的なのですが。

『Over the last quarter, money and credit dynamics have strengthened overall. The growth of broad money in April stood at 5.3%, and in part reflects the expansion of bond purchases by the Eurosystem. While improving further, loan growth to the private sector, standing at 0.8% in April, has lagged somewhat the pace at which monetary trends have been firming. It remains moderate - atypically so, after such a prolonged phase of credit compression - and uneven across the euro area economies with new loans to enterprises particularly weak.』

金融政策の効果にかかわる金融環境に関してですが、こちらでは毎度そうなのですがクレジットの伸びとか、借入環境とかの話をネタとしておりまして、まあ本道ちゃあ本道なのですけれども、この話をメインに持ち出すと実は国債市場金利のランコルゲに関しても割とスルーが可能というスグレモノな理屈なのでありまする。

『Overall, we remain prudently confident that all economic and monetary conditions are in place to support a gradual reflation of the euro area economy, with a sustained return of inflation rates to levels below, but close to, 2%.』

「we remain prudently confident」ですってよまあ相手が欧州議会だから威勢よく説明しているというのはあるのでしょうが、まあ経済に関しては自信度が上がっている(ギリシャの話はさておいて)という事ではないかと。


・金融政策ではクレクレ市場へのサービス成分がだいぶ減少している件

『This assessment is based on the full implementation of all our monetary policy measures. We need to keep a steady monetary policy course and firmly implement those measures, including our expanded asset purchase programme. It is our clear intention to purchase private and public sector securities of EUR 60 billion per month on average until the end of September 2016 and, in any case, until we see a sustained adjustment in the path of inflation that is consistent with our aim of achieving inflation rates below, but close to, 2% over the medium term.』

とまあ最初に相変わらず「これらの見通しは金融政策を2016年9月まで継続して月間600億ユーロのAPPを行うのを前提にしていますから政策は続きますよウヘヘヘヘ」という話はしているのですが・・・・・・・・・・・

『Over recent weeks, financial markets have registered a measurable trend reversal in prices and a surge in volatility, with the fixed-income market the epicentre of the correction.』

最近の債券市場の話キターーーーーーー(・∀・)!!!!

『Let me make two observations in this respect.』

ほうほうそれでそれで???

『First, a period of higher volatility is a phenomenon that is frequently observed not long after the start of a large quantitative programme, when short-term rates are pressed against their lower bound.』

短期金利が下限制約にある中で大規模資産買入をするとそれからあまり期間を置かない時点でボラ上昇というのはよくある話です(キリッ)って仰せのように読めてしまうのですが・・・・・・・・・・

『Price discovery is gradual and complex in a world in which central banks intervene in long-dated securities and markets re-appraise prospects for the macro-economy in exceptionally uncertain conditions.』

で、中銀が大規模介入するから市場の価格発見機能の復活はグラデュアルなのは特に経済状況が不確実な状態の時にはありがちですわな、という話をしているように見えるのですが、かつてはクレクレ市場に対して更に餌を与えるのを趣味としていたのかと思われるドラギ総裁が最近すっかり微妙になってきたというか市場を突き放すようになったのはどうしたのでしょうかねえ。まさか南斗水鳥拳を食らった影響が(大嘘)。

『Second, and notwithstanding these developments, financial market conditions remain accommodative and supportive of the economic recovery in the euro area.』

それに大体からしてそのような債券市場の乱高下はあるけどユーロ圏の金融環境は引き続き緩和的で経済成長にサポーティブである(キリッ)という事で・・・・・・・・・

『For example, given the amount of accommodation that was introduced even before our expanded asset purchase programme commenced in March, bank lending rates - a key indicator of financing conditions in the euro area - are still trending down.』

で、そこでさっきの理屈であるところの「銀行の貸し出し金利ガー」という話が始まるのだ。

『Since the announcement of the expanded APP, the composite bank lending rates for euro area NFCs declined by 13 basis points to 2.30% in April (and compared with 2.79% in June 2014). Bank lending rates on loans to households for house purchase declined by 25 basis points to 2.25% in April (and compared with 2.87% in June 2014). In addition, most measures of cross-country dispersion show tangible declines for NFCs.』

域内の非金融機関向け貸出金利はご覧のようにAPP導入以降低下していますし、域内国での差も小さくなっているので足元のボラがどうのこうのとか小さい事気にしちゃいけないんですよウヘヘヘヘヘという事ですねわかります。

『As interest rates on outstanding loans are re-set, and new credit contracts embodying more favourable terms for borrowers replace old ones, financial accommodation reaches a growing number of consumers and investors. This incremental process has not yet run its course. It is still on-going.』

新規貸し出しの条件も改善していますよとかそういう話も。

『This being said, in the process of price adjustment, the term structure of the money market interest rates has come under intense upward pressure. The expected policy rate path implied by money market quotes has shifted up and steepened noticeably as a consequence.』

『The very short end of the curve - because of expanding surpluses of liquidity - has remained well-anchored around levels that are broadly in line with our forward guidance over those horizons.』

金融市場価格からみられる将来の金融政策予想パスは若干上に向いているけれども、短期方面の金利を見ますとECBのフォワードガイダンスに沿った政策金利予想パスになっているので無問題、ということで盛大に市場を突き放しているのがこの前の定例記者会見でもそうでしたがほほーという感じですね。

『We are closely monitoring conditions to detect signs of an unwarranted tightening of our stance, to which we would need to react.』

でまあこのコーナーの最後にこう書いてあるので、ニュースヘッドライン的にはこの部分とかクローズアップされてしまうのかと思うのですが、ここの証言のトーンについてこのコーナーを見ますと「市場を突き放している」という方が妥当だと思いますよというそんな話でした。


・APPの副作用の話キタコレだが今回も微妙な論点は回避

次のコーナーが『Risks and side-effects of APP』である。

『Engaging in a large-scale asset purchase programme is not without risks and side effects.』

この話って黒田日銀は見事にしませんよね(ちなみに佐藤審議委員は「元よりリスクや副作用はあるし、そもそもリスクも副作用も無い政策には効果もない」と当然の説明をしています)。まあ置物リフレ理論だとMB盛大に増やすと物価が直線番長的に上がって物価が上がると何もかも上手く行くという触れ込みなんだから副作用もリスクも無い(インフレターゲットをしていればインフレが高進することも無いという触れ込みだし)のでしょうけどね!!!!!!!!!!!!

とは言いましても、まああまり核心的な話をするのではなくて、割とどうでもよいトピックにしか触れないというのもドラギ先生の仕様なのですがさて今回はどうでしょう。

『Let me focus here on the financial risks of our own balance sheet, on financial stability implications for the euro area, and on effects on income distribution. 』

ほうほうそれでそれで?

『We monitor very closely the risks for the Eurosystem’s balance sheet associated with our asset purchase programmes and we manage those risks to keep them at levels that do not threaten our capacity to fulfil our policy mandate to maintain price stability. In particular, we manage credit risk by exclusively purchasing assets of sufficient credit quality, by defining an asset allocation and a limit framework that ensures some degree of diversification, and by applying severe due diligence and monitoring processes.』

まず自分の所のバランスシート劣化問題ですがはっきり言ってそれはどうでもよい。財政政策との役割分担がどうのこうのという話をするなら分かるが、相手が欧州議会でその話をするのは自分で虎の尾を踏みに行くだけの話ですかそうですか。

『With regard to PSPP, we also decided that the purchases of government bonds conducted by the Eurosystem NCBs will not be risk-shared within the Eurosystem. This does not hamper the effectiveness of the purchase programme and the singleness of our monetary policy. The Governing Council has full control over all the design features of the programme. The specific risk-sharing agreement takes into account the unique institutional structure of the euro area, in which a common currency and a single monetary policy coexist alongside 19 national fiscal policies.』

PSPPに関してもリスク負担の話になっていて確かに単一財政単一通貨の所と事情が違うのかも知らんが、APPの副作用というのは金融政策効果の裏側の話がメインだと思うのですけどねえ。

『As regards possible financial stability risks, we assess these risks as rather contained for now. Looking in particular at housing markets in the euro area, we don’t see any signs of general overvaluation. Important indicators for increasing financial imbalances are real estate prices and credit growth, but so far we have witnessed low growth rates of both.』

『For instance, the annual growth rate of prices for houses and apartments in the euro area increased on average by 0.8% in the last quarter of 2014. The annual growth rate of loans for house purchases stood at 0.1% in April 2015.』

で、2番目にやっと金融不均衡の話が出てきましたが、まあこちらに関して正面切って問題あるといいう話をすることは無いのは当然としても、わざわざ住宅価格推移まで持ち出すこの丁寧振り。

『Nevertheless, we monitor developments closely. If needed, macro-prudential policy tools should be used to safeguard financial stability.』

必要ならマクプルとは言っているがやる気はなさそうですな。

『Finally, large-scale asset purchases - as any other monetary policy measure - have distributional consequences.』

確かこの前もdistributional consequencesの話をどこかでしていたな。

『In the short run, the current combination of low interest rates, forward guidance and asset purchases is conducive to a change in asset prices and to wealth gains for investors holding a wide spectrum of assets. But this mechanism of asset price changes lies at the heart of monetary policy transmission and is set in motion every time a central bank activates its instruments of monetary policy, whether conventional or unconventional, in the pursuit of its objective. Interest rate changes always alter the attractiveness of saving relative to consumption and can influence the debt burden of borrowers.』

資産買入だの低金利だのを強力な政策で実行というのは例えば預金金利借入金利などの関係で所得移転が生じますというお話ですが、まあこれは話の筋が見えるネタだと思います。一応以下引用。

『Likewise, the current accommodative monetary policy stance eases financing conditions throughout the economy, boosting consumption and investment and, ultimately, inflation. This is an absolute precondition for interest rates to return to more normal levels consistent with sustainable growth and price stability. By reducing the cyclical component of unemployment, it also contributes to reducing a major source of inequality, particularly amongst the young and lower-income groups. In the end, all citizens across the euro area will benefit most from an environment of stable prices, macroeconomic stability, economic growth and job creation in the longer run.』

ということで、毎度の「低金利で預金者の皆様にご負担をお掛けしますがこれによって経済が良くなれば皆様ウハウハですので今しばらくご辛抱ください」という話で、まあ今回の話もそれほど変わり映えしない代物でございましたな、うんうん。

なお最後のギリシャ云々の所は誰か本職の人が解説しているでしょうからパス、というより全部読むと時間ががががが。


○FOMC議事要旨ネタという超虫干しネタの続きをちょっとだけ

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20150429.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20150429.pdf

・出口政策での金利コントロールに自信

最初の『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's Balance Sheet』と『Normalization Procedures』から少々だが、今回はこのコーナー従来よりも随分とあっさり味になっています。


まずは『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's Balance Sheet』から。

『In a joint session of the Federal Open Market Committee (FOMC) and the Board of Governors of the Federal Reserve System, the manager of the System Open Market Account (SOMA) reported on developments in domestic and foreign financial markets.』

でもって・・・・・・・・・

『The deputy manager followed with a review of System open market operations conducted during the period since the Committee met on March 17-18, 2015. The deputy manager also discussed the outcomes of continued testing of the Federal Reserve's term and overnight reverse repurchase agreement operations (term RRP operations and ON RRP operations, respectively). The Open Market Desk conducted two term RRP operations over the March quarter-end. The combination of term and ON RRP operations continued to provide a soft floor for money market rates over the intermeeting period, including around quarter-end.』

ON RRPが短期市場金利のソフトフロアとしてワークしているという話です。ちなみに念のため申し上げると、本来超過準備が殆ど無いような通常(というか従来型というか)の金利誘導調節の場合は本来は短期市場金利の上限と下限が貸出ファシリティと預金ファシリティになる筈なのですが、超過準備がアホほどある中では預金ファシリティが市場金利の下限としてワークしにくくなる(もともと米国の場合は預金ファシリティの外側にいる人の運用ニーズが強いので預金ファシリティが下限としてワークしにくいという構造的な要因もある)のでこういうのでヒーコラ言っている訳ですな。

『Based on experience around recent quarter-ends, the deputy manager discussed possible plans for June test RRP operations. The manager summarized ongoing staff work related to improved data collection for, and possible adjustments to, the calculation of the effective federal funds rate that were intended to provide a more robust measure of trading conditions in the federal funds market over time.』

6月末に向けてもRRPのテストをして市場金利のコントロール状況を確認するそうな。

『The Committee voted to renew the reciprocal currency arrangements with the Bank of Canada and the Bank of Mexico; these arrangements are associated with the Federal Reserve's participation in the North American Framework Agreement of 1994. In addition, the Committee voted to renew the dollar and foreign currency liquidity swap arrangements with the Bank of Canada, the Bank of England, the Bank of Japan, the European Central Bank, and the Swiss National Bank. The votes to renew the Federal Reserve's participation in these standing arrangements are taken annually at the April meeting.』

通貨スワップの延長についてですが・・・・・・・・・

『Mr. Lacker dissented on both votes because of his opposition, as indicated at the January meeting, to foreign exchange market intervention by the Federal Reserve, which such swap arrangements might facilitate, and because, in his view, such arrangements were best left to fiscal authorities.』

反対芸人ラッカー先生キタコレなのですが、反対理由はそういうスワップラインのようなものは財政当局がやるもので中央銀行がやるものではない、という話ですがじゃあ急に止めてどないしますねんという気はだいぶするのだが。

『By unanimous vote, the Committee ratified the Desk's domestic transactions over the intermeeting period. There were no intervention operations in foreign currencies for the System's account over the intermeeting period.』

まあこちらはそういうことで。次が『Normalization Procedures』であるが珍しく一パラグラフだけ。

『The staff provided a briefing on issues related to the implementation of monetary policy during the period immediately following the first increase in the target range for the federal funds rate, when it becomes appropriate.』

ということで正常化時点での短期金融市場コントロール力に関して。

『In their subsequent discussion, participants agreed that the Committee's testing of normalization tools, in conjunction with its other planning, had created conditions under which policy normalization would likely proceed smoothly once it commences.』

散々テストした結果というのもあるでしょうが金利コントロールには割と自信モード。

『Nonetheless, as part of prudent contingency planning, participants agreed to have the staff provide more frequent updates on financial market developments for a period after firming begins. Such updates would ensure that, if adjustments to policy normalization tools prove necessary to maintain appropriate control over money market rates, policymakers could make such changes in a timely manner.』

とはいえまだまだテストをしていく、というこの市場に対する慎重な姿勢という話で、黒田総裁になってQQE打ち込んでからすっかり乱暴者モードになった日銀の過去の生霊がFEDに乗り移ったのではないかというようなこの市場に対する真摯というか何というかなスタンスに感心するのですが、まあそれだけ「出口が重要」という当たり前のことを把握しているのと、その出口をちゃんとやらないとバブルまたやらかして存在意義を問われるという意識あるんじゃないのかね、とかまあ色々と思うのでした。

『Participants also considered whether it might be appropriate, when the Committee first raises the target range for the federal funds rate, to increase the spread between the primary credit rate and the top of the federal funds rate target range. One participant argued for such a step in order to bring the spread up to a level closer to that prevailing prior to the financial crisis, but several participants favored maintaining the current spread at least until the process of policy normalization was well under way and policymakers had considered carefully the potential benefits and costs of such a change. In part, that view reflected concerns that an increase in the spread that coincided with the initial step in policy normalization could complicate communications regarding the Committee's policy intentions.』

でまあ初回の利上げはおそらく今のレンジの25bpフルスライドで来るのでしょう(0-25→25-50)けれども、その後に関してどこまでレンジで行くのかとか、そもそもレンジの幅が25で良いのかとか、その辺に関しては利上げ行った後に本格的に議論になりそうな悪寒。

とまあそんな感じでありました。


○東洋経済オンラインで水野元審議委員のインタビュー記事とな(メモ)

こんなんありました。
http://toyokeizai.net/articles/-/73232
FRBの利上げ実施後、日銀は枠組みの修正を
水野温氏・元日本銀行審議委員に聞く
2015年06月15日

でまあ4ページありますが、FRBの利上げについて9月で想定しているようですので、つまりこれは次回の展望レポート(10月)に枠組み見直せということで、上記URL先記事の3ページ目にこんな説明が。

3ページ目はこちらです。
http://toyokeizai.net/articles/-/73232?page=3

『日銀は次の「展望レポート」を出す今年10月30日から来年の春までの期間に、うまく、次の金融政策の枠組みに移る準備ができればいいと思う。10月には、日銀が今主張している「消費者物価上昇率が16年度前半頃に2%程度に達する」ということは困難なことが明らかになり、また、FRBが9月に利上げできたかどうかも結果が出ている。FRBが利上げして、一時的にドル高円安が止まっても、景気がしっかりして、再びドル高円安基調になるということが確認できれば、日銀の金融政策運営にも自由度が増すことになる。』(東洋経済上記インタビュー3ページ目(直上のURL先)より)

まあ何ですな、そういう感じでいければ色々と日銀もやりやすいのではとは思うのですが、何せ「本年度後半から物価上昇が加速する」という説明をしているだけに、10月末だと「いよいよこれからです(キリッ)」で誤魔化すことが可能というのがナムナムな所で、その間に輪番が爆発するとか炸裂してしまえば別なのでしょうけれども、今の執行部のスタンスだと「焼け野原になってポツダム宣言受諾まで戦闘継続」という感じにしか見えませんので、そう簡単にソフトランディングできるのかどうか・・・・・・・ってハードクラッシュされると国全体が巻き込まれる可能性があるので勘弁してほしいのですがががががが。

なお、そのページの『いまさらピーターパン? すでに検証すべき時期』以下の部分は当然のコメントながらウケましたのでご覧あれということで。

内容に関して詳しくは上記URLを見てちょという所ですが、ドラギ総裁のコミュニケーション(2ページ目にあります)に関する評価については直近は市場を突き放すような説明になって、市場を甘やかさない結果として実は無用なボラを与えないので結構という趣旨は分かるのですが、その前のサービス過剰およびグランドデザインのない金融政策(QEやらない代わりにマイナス金利にしたのにマイナス金利のままAPP実施するとか)設計の方で盛大に迷惑を掛けているのでどうも評価する気分になれませんですなという所で。





2015/06/15

お題「短国買入1兆円とな/原田審議委員のインタビュー記事登場/超虫干し企画の前回FOMC議事要旨ネタ」

ジンバブエ原田先生の会見記事(後述)があると聞き産経新聞のサイトを見に逝ったのですが、MSNとの提携止めて単独になったせいなのか「どうしてこうなった」というようなアレなトップページになっていてちょっと・・・・・・・

○市場メモである

・例によって短国買入

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150612.htm
国庫短期証券買入 10,000 2015年6月16日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,750 2015年6月16日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,000 2015年6月16日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,400 2015年6月16日
国債買入(残存期間25年超) 1,400 2015年6月16日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3) 2,603 2015年6月12日 2015年6月15日

・・・・・・・・1兆円????と思ったら結果は以下の通り。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150612.htm
国庫短期証券買入 24,455 10,000 0.006 0.006
国債買入(残存期間1年超3年以下) 11,463 3,752 0.005 0.006 27.6
国債買入(残存期間3年超5年以下) 8,738 4,008 -0.015 -0.014 54.6
国債買入(残存期間10年超25年以下) 6,005 2,402 -0.029 -0.020 39.7
国債買入(残存期間25年超) 5,263 1,401 -0.019 -0.013 100.0
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4) 155 155 -0.400 -0.400

まあ結果見て正直ホッとしました。また流れたら3M入札の瞬間だけプラスであとマイナス街道という四半期末でそれやらんでくれという展開が想像されたのですが、先週は6Mの入札がマイナス利回りで行われてその後もマイナス水準で推移していたのでおそらく3.5兆円の発行分がほぼまるまる残っている筈で、その一方で3Mに関しては平均落札価格が前2週よりも高くなったのに示されるように最終投資家のニーズが強いという事でしょうからこちらは投資家に結構嵌っているものとみられる、というバランスの中で増額してきたから、たぶん札はあるんだろうな(そもそも6Mの直後の短国買入だから6M新発を買いたいでしょうし)とは思ったものの、これでまた応札1.3兆円で引け強まで落札になったら湯気ポッポーという所でしたので一安心という所で。

ちなみに申すまでもありませんが6糸甘の落札結果ですので3Mは入らず主に新発6Mが入っていると思われますが、6Mとか1Yは日銀オペに入れるための玉状態になっていまして、3Mとは完全に別世界の商品状態になっていますな、ナムナム。


なお輪番は10-25がちよくてキタコレとか思ったのですが結局相場が持ち上がる中でキタコレになっていたのは超長期でも途中までで、先物35銭高で10年引けが3強で20年引けが2強の所で30年引け変わらずとかもうねという所ではありますな、うんうん。



○ジンバブエ審議委員のインタビューは産経の編集が台無しにしているような気がする件について

まあ産経電波浴シリーズとか以前は良くネタにしていましたが最近は見もしていなかったりしたのですがインタビューが出たと聞いて産経のサイトを訪問。

http://www.sankei.com/economy/news/150612/ecn1506120003-n1.html
【日銀・原田審議委員に聞く】「個人消費、今後は増える」 出口論は時期尚早
2015.6.12 05:00更新

『−−日銀は2%の物価上昇率目標の達成時期を「平成27年度を中心とする期間」から「28年度前半ごろ」に修正した』(上記URL先より、以下暫く同様)

『「大事なことは、2%に向かう物価上昇のメカニズムが維持されているかだ。直近の国内総生産(GDP)をみると企業の所得(利益)から設備投資への動きが明らかだ。個人消費は今ひとつだが、今後は増えるだろう」』

ということで、景気見通しに関しては普通に執行部ペースの話をしているように見えますし、「大事なことはメカニズムが維持されていること」というのは「基調」連呼の黒田執行部と同じ話なので、このスタンスだと原田さんの所から追加緩和が必要という話はあまり出てきそうもないですな。

なお余談になりますが野党の佐藤さんも同じく「基調」連呼だったりしていますが、そもそも論として「期限を区切ったリジッドな目標」と「ローリングターゲットとしてのフォーキャストターゲット」という金融政策運営のスタンスの盛大な違いがある訳で、ローリングターゲットの概念ならば「基調が堅調ならよろしい」という話はリーズナブルなのですが、期限を区切ってリジットに達成しようという話をしている人が基調の話をすると只の言い訳にしか聞こえないんですがそれは、という所ですな。


『−−国債の大量購入は限界が近づいているとの指摘もある』

『「物価上昇率がゼロの段階で、出口(緩和縮小)を語るのは時期尚早だ。(追加緩和には)さらに(資産を)買った方がいいのか、付利(銀行が日銀に預ける当座預金につく金利)の引き下げなど、いろんな方法がある。必要性が見えた段階で十分に議論して決めることだ」』

これ最初の「出口を」の部分が質問と全然かみ合っていないように見えるのですが、もしかしたら本紙の方には詳しいのがあるのかも知れないのですし、そもそも記事があまりにも短くし過ぎているので結局どういう答えをしているのかがさっぱり分からん。

ただ、執行部も野党審議委員も揃って「MBが効くといってMB拡大する政策やっているのに付利を下げたらMB拡大を阻害するから付利下げは無い」と言っている中でジンバブエ先生着任してからまだ理解していないのですかという悪寒もせんでもないし、まあ期待(?)されてブチ込まれたから何か追加緩和ネタで独自色出しておかないと期待に沿えないとか張り切っているのかもしれませんね!!!!


一つ飛ばしてこれはwww

『−−消費税の再増税は景気の重しとなる』

『「日銀の金融政策で景気がよくなり、税収も増えている。増税すれば景気がその分悪くなるのは当たり前で、『悪くなるけどやったんだ』と、政府に言っていただければ問題ない」』

「政府に言っていただければ問題ない」ってちょwwwwおまwwwwwwwという所で、そんな庭先論で政策論議するなよおいおいという感じですが、「景気が良くなったのは日銀の政策」といやあの消費増税前の駆け込みとかあったし、大体からして増税前に財政打ってただろとか、その辺は全部スルーして景気が良くなったのは日銀のおかげですとか本当にこの人経済何とかストやってたのかその分析はいかがなものかという感じではありますが、これだけ徹底的に「成果は日銀、問題は政府」という話をして「政府に言っていただければ問題ない」とか何がどう問題ないのかさっぱり分からん究極の庭先論をぶち込んでいただけるとは日銀としては心強い援軍でありますなあ(棒読み)という所で。


でまあそれはそれで良いのですが、一問一答以外に記事があったのでそちらも拝見。

http://www.sankei.com/economy/news/150612/ecn1506120002-n1.html
「物価2%に近づけば、追加緩和は不要」 日銀・原田審議委員インタビュー
2015.6.12 05:00更新

『就任後、原田氏が国内メディアのインタビューに応じたのは初めて。原田氏は「(物価上昇率が)2%に近づくことが見えるのであれば、さらにアクセルをふかすべきだとは思わない」と述べ、これ以上の追加緩和に慎重な立場を示した。』(上記UR先より、以下暫く同様)

いやまあ良いんですけど最初に出たのがブルームバーグでその次が電波浴で著名な産経新聞ってどうなのよという感想しか起きないのですけれどもまあそこはさておき。

『 原田氏は追加緩和の手段として、「付利(銀行が日銀に預ける当座預金につく金利)の引き下げなど、いろんな方法がある」と持論を展開した。』

さっきの記事通りですな。

『付利は金融機関が日銀に預ける当座預金のうち、払い戻しに備える最低金額を上回る分(超過準備)に0・1%の利息をつける仕組み。付利がつかなければ、銀行が超過準備を市中への貸し出しや投資に回すとみて、原田氏は「付利の引き下げは景気を刺激する」と語った。』

これインタビューの全体像がWeb版だとさっぱり分からないので、付利の説明部分が原田さんが言っているのか産経の編集が書いているのかが見えないのですけれども、「超過準備の水準」と「貸出や投資の水準」というのは思いっきり無関係の話で、「超過準備を減らして貸し出しに回す」というのは全くの間違え認識にも程がある(のだがそういや以前ECBだか欧州どこぞの国の中銀だかのどこかの高官が同じような発言をしてまして、まあ間違える輩は続出するのですけどね)のですががががが。

でですね、ここの部分に関しては産経の編集が説明しようとして書いてしまった内容である、と一応は信じたい部分ではあるのですが、まさかこれジンバブエ先生おん自らが説明していたら先生日銀入って何か月たってましたっけという話ではございますので、そういう状況ではないことを切に願いたいものでございまする。

まあしかし何ですな、こういう基本認識で大間違えの話をするお方が金融政策の手段について語るというのは何とかストの皆様でも平気でやらかしてくれますので、市場の人では無かったジンバブエ先生がそういう話をするのは不思議でもない(というかあのジンバブエ理論だけはさっぱり分からん)のですが、それにしてもこの記事見ると原田センセイ相変わらずの認識しかないのか、と一瞬勘違いしそうになる(というか勘違いじゃなくて産経の編集が原田センセの説明をそのまま書いているのだと悶絶モノですけれども)のでこれは編集仕事しろよとか思いますが、まあ電波浴シリーズとかが出てくる位の所ですから期待する方が間違いと。



○そういえば前回のFOMC議事要旨ネタをスルーしていたことを思い出すの巻(すいません)

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20150429.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20150429.pdf

6月になって4月FOMCの議事要旨もあったもんじゃないですが(汗)。


・参加者の経済アセスメント

まあだいたいメインイベントは『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』なのですけれどもね。

『In their discussion of the economic situation and the outlook, meeting participants regarded the information received over the intermeeting period as suggesting that economic growth had slowed during the winter months, in part reflecting transitory factors.』

声明文でもこの回は「一時的要因により成長が減速」という評価でしたよね。

『The pace of job gains had moderated, and the unemployment rate had remained steady, with a range of labor market indicators suggesting that underutilization of labor resources was little changed. Most participants expected that, following the slowdown in the first quarter, real economic activity would resume expansion at a moderate pace, and that labor market conditions would improve further.』

一時的要因という位ですから先行き見通しは普通に堅調。

『Inflation continued to run below the Committee's longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and decreasing prices of non-energy imports. Market-based measures of inflation compensation remained low, while survey-based measures of longer-term inflation expectations had remained stable. Participants generally anticipated that inflation would rise gradually toward the Committee's 2 percent objective as the labor market improved further and the transitory effects of declines in energy prices and non-energy import prices dissipated.』

物価に関しても足元では一時的要因により弱めだが先行きはモウマンタイという話。

『Participants judged that recent domestic economic developments had increased uncertainty regarding the economic outlook. While participants continued to see potential downside risks resulting from foreign economic and financial developments, most still viewed the risks to the outlook for economic growth and the labor market as nearly balanced.』

ただまあここの部分辺りも声明文出た時は「海外経済のリスク認識キター」という話になっていたりしてましたな。


・民間需要に関する部分では「この弱さが一時的か」の判断をしたいという話でさてその材料は

で、全体の次はこういう話になっています。

『Participants generally agreed that data on private spending for the first quarter had been disappointing, with unexpectedly weak household expenditures and investment spending.』

つーことでこの時は1Qの民間消費が弱かったという話でして・・・・・・・・

『Retail sales had continued to be tepid, although consumer sentiment stayed high and auto sales rebounded in March. The recovery in the housing sector remained slow. Business fixed investment softened, in part reflecting sizable reductions in capital expenditures in the energy sector.』

『Exports contracted, likely reflecting the damping influence of the dollar's appreciation. In combination with a decline in government spending, the weakness of private spending had led to a substantial slowing in economic growth in the first quarter.』

輸出の所でしらっとドル高の話があったりするのがお洒落ですな。でまあ何で足元弱いねんという話が以下。

『Participants discussed whether the weakness of spending in the first quarter primarily reflected temporary factors or instead suggested a longer-lasting loss of momentum for the economy.』

足元弱いのは本当に一時的なのか実はもっと弱いのかという議論とな。

『A number of reasons were advanced for believing that the weakness in spending observed during the first quarter was partly or even largely transitory. Most notably, the severe winter weather in some regions had reportedly weighed on economic activity, and the labor dispute at West Coast ports temporarily disrupted some supply chains. Furthermore, a pattern observed in previous years of the current expansion was that the first quarter of the year tended to have weaker seasonally adjusted readings on economic growth than did the subsequent quarters. This tendency supported the expectation that economic growth would return to a moderate pace over the rest of this year.』

一時的要因だと大いに考えられる理由としては冬の厳冬と西海岸の港湾ストとあって、おまけに1-3の経済指標がここ数年毎度弱めに出てそのあと堅調になっているのを見ますと、まあ一時的でしょという見解の方が多いという事のようで、では今回のFOMCまでに出た指標はこの基本的な見立てをサポートしていますか、という観点で指標をレビューしておけば今回のFOMCでどういう認識を示されるのかというのも見えてくるんじゃないですかねえ。

『Participants also pointed to other reasons for anticipating that the weakness seen in the first quarter would not endure. A number of the fundamental factors that drive consumer spending remained favorable, among them low interest rates, high consumer confidence, and rising household real income. In addition, business contacts in several parts of the country continued to be optimistic and expected sales, investment, and hiring to expand over the rest of the year. In the agricultural sector, drought effects had worsened in some parts of the country, but effects on production were limited and planting intentions remained strong.』

個人消費を支える低金利、コンフィデンスの強さ、家計の実質所得上昇という条件があるし、企業に関してもアネクドータルな部分からも強さが見えますと。でまあ農業に関しては旱魃の影響があるものの経済全体に大きな影響を与えるものではないという話ですので、この辺のコンフィデンス関連や所得関連の経済指標がコケないというのもポイントになりますな。

『Finally, if the decline in oil prices and the rise in the foreign exchange value of the dollar did not continue, then their influence on the growth rate of investment and the change in net exports would likely recede.』

ドルが無限に上がる訳でも無し、原油が無限に下がる訳でも無しでしょと。



・金融安定化の論点キタコレではありますが利上げでショックを与えたくないという話だったりするのだ

でまあ上記の話のあとで海外経済の話と労働市場の話と物価の話がありますが、まあそちらよりも多分この回のFOMCでは今引用した「基調判断」に関わる部分の方が意味あるかなと思って途中をスルーしまして、以下経済物価情勢以外の論点。

『In their discussion of financial market developments and financial stability issues, policymakers highlighted possible risks related to the low level of term premiums.』

キタコレ!!!ということで「低いタームプレミアムに関連するリスクが金融安定化に対して問題となる可能性が」という指摘ですが・・・・・・・・・・・

『Some participants noted the possibility that, at the time when the Committee decides to begin policy firming, term premiums could rise sharply--in a manner similar to the increase observed in the spring and summer of 2013--which might drive longer-term interest rates higher.』

利上げ着手した時に長期金利がテーパリングトークでスパイクしたような事になるのを懸念する人が数名(Some)とな。

『In this connection, it was suggested that the tendency for bond prices to exhibit volatility may be greater than it had been in the past, in view of the increased role of high-frequency traders, decreased inventories of bonds held by broker-dealers, and elevated assets of bond funds.』

債券市場のボラは構造的に以前よりも上がりやすくなっているんですってよ奥様!!

『A couple of participants underscored the need for a better understanding of the structure of the bond market in the current environment, including the effect on bond market behavior of regulatory changes. Some participants noted that careful Committee communications regarding its policy intentions could help damp any resulting increase in market volatility around the time of the commencement of normalization.』

(;∀;)イイハナシダナーという感じで、日銀のピーターパンやらMB直線一気番長やらに爪の垢を煎じて飲ませたいところですな。

『It was also noted that financial stability and the Committee's macroeconomic goals were likely to be complementary objectives, but different views were expressed about the potential implications for financial stability of monetary policy tightening in current economic conditions.』

ということで、話はここで切られていて、最後の「different views were expressed about the potential implications for financial stability of monetary policy tightening in current economic conditions」というのが具体的に何を指すのかがファジーなままにしている(細かく書くと色々と差し障りというか市場へのインパクトがあるんでしょうけど)のがお洒落な話ですが、まあ正常化の際に長期金利をスパイクさせたくない、というのはあるにせよ、だからと言ってそれは「だから低金利長期化になって長期金利が上がらん」という話かというとこれまた微妙で、「スパイクさせないためには地均しをすればよいじゃないか」という意見も成り立つ話ですが、まあそこはミニッツで露骨に出したら明らかにマズーでしょうなあとは思いますがね。


・中期的な金利パスに関するコミュニケーションがどうのこうの(再掲)

次のパラグラフであるがこちらはミニッツ出た途端にネタにしましたけれども久々なので俺様メモ的に再掲します。

『In their discussion of communications regarding the path of the federal funds rate over the medium term, participants expressed a range of views about when economic conditions were likely to warrant an increase in the target range for the federal funds rate.』

ほうほう。

『Participants continued to judge that it would be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when they had seen further improvement in the labor market and were reasonably confident that inflation would move back to its 2 percent objective over the medium term.』

それは当たり前。

『Although participants expressed different views about the likely timing and pace of policy firming, they agreed that the Committee's decision to begin firming would appropriately depend on the incoming data and their implications for the economic outlook.』

毎度おなじみのデータディペンデント。

『A few anticipated that the information that would accrue by the time of the June meeting would likely indicate sufficient improvement in the economic outlook to lead the Committee to judge that its conditions for beginning policy firming had been met. Many participants, however, thought it unlikely that the data available in June would provide sufficient confirmation that the conditions for raising the target range for the federal funds rate had been satisfied, al-though they generally did not rule out this possibility.』

数名(A few)は6月FOMCの時点で利上げいけるやん状態のデータが出るかもしれませんなという見通しですが多数派はいやそれはまだ難しいだろう、ということでまあ今回のFOMCで利上げとか無理でしょうから多数派の仰せのとおりでしたな。

『Participants discussed the merits of providing an explicit indication, in postmeeting statements released prior to the commencement of policy firming, that the target range for the federal funds rate would likely be raised in the near term. However, most participants felt that the timing of the first increase in the target range for the federal funds rate would appropriately be determined on a meeting-by-meeting basis and would depend on the evolution of economic conditions and the outlook.』

「次回利上げしますよ」的な予告文言は出ない、というのが示されていますので、そういう意味では会見でも同様に利上げ時期の特定はされないような発言をイエレンさんはすると思いますし、何もなければつかみどころのない話をしてきて、市場の見方が偏っている場合はバランスを取りに行く、という説明になるのではないでしょうか。

『In keeping with this data-dependent approach, some participants further suggested that the postmeeting statement's description of the economic situation and outlook, and of progress toward the Committee's goals, provided the appropriate means by which the Committee could help the public assess the likely timing of the initial increase in the target range for the federal funds rate.』

このsome participantsの見解は一見もっともなのですが、基本的にはメッセージの中で説明部分をゴテゴテと多くする方がコミュニケーションをややこしくするので今のままで良いと思うの。


・中立FF金利に関しての議論(これも再掲です)

俺様用に再掲なのでまあ以前書いたのと同じですすいませんすいません。

『During their discussion of economic conditions and monetary policy, participants also commented on different concepts of the equilibrium real federal funds rate--that is, a reference value of the inflation-adjusted federal funds rate consistent with the economy achieving, over a specified time horizon, maximum employment and price stability.』

中立金利についての議論です。

『Estimates of such equilibrium real interest rates were highly uncertain, but some participants reported that their estimates were currently unusually low by historical standards, reflecting, for example, factors weighing persistently on aggregate demand. In light of their low estimates, a few of these participants questioned whether the Committee was providing sufficient accommodation at the present time and cautioned against initiating policy firming in the near future. However, other participants cited factors, including the current low level of term premiums, that might cast doubt on the notion that the equilibrium real federal funds rate was particularly low. Some participants observed that more discussion of this topic was likely to be helpful in assessing these issues.』

中立金利が下がっているという人といやそのりくつはおかしいという人がありますがまあこれはすぐに決定的な結論の無い話。

『One participant suggested that, in part because of the evidence that the equilibrium real interest rate was low by historical standards, the Committee should discuss the possibility of increasing its longer-run inflation objective. This participant and a few others thought such a discussion could be useful but emphasized that any decision to change the Committee's longer-run goals and policy strategy should not be made lightly. One of these participants noted, in particular, that a decision to raise the Committee's longer-run inflation objective might work against the achievement of maximum employment and price stability because such a change could undermine the Committee's credibility and, in addition, lead to adverse changes in inflation dynamics that could pose significant challenges for policymakers.』

とまあ長く紹介されていますが、数名の参加者は中立金利は明確に下がっていて、ロンガーランの政策目標水準にも影響がある話ですのでさらなる議論をする必要という話をする一方で、そんなにホイホイ変えるものではないのではという見解も出ていて、まあこの件についてはまだまだカオスであるという印象を受けるのでした。


#超今更な虫干し企画ですいません



2015/06/12

お題「市場メモメモ/クーレ理事のインタビュー記事ななめ読み/佐藤審議委員会見である」

昨日はFTPうまくいかなくて(最近時々ありますね)こっちのページの内容が途中で切れていて何が何やらワカランチ会長だったと思いますので、下の方に付けるとともに更新後の確認をもうちょっと細かくやろうかと思います(汗)。

なお、こちらがダメな場合でも「今月の過去ログ」がきちんと更新されているケースが多いので(何でやと思うのだが)そちらをご覧いただきますと幸いです。

○市場雑談メモとか

・3M短国金利がアガランチ会長

昨日の新発3M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150611.htm

(3)募入最低価格 99円99銭9厘5毛 (募入最高利回り)(0.0020%)
(4)募入最低価格における案分比率 36.8423%
(5)募入平均価格 99円99銭9厘9毛 (募入平均利回り)(0.0004%)

ということで前回入札が99.9997/99.9995の95.5%案分だったので何と前回よりも強い結果になっていまして、その間に6Mの入札があった筈なのですがこの強さはという所でして、やはり5回連続での3Mマイナス金利という流れが効いていて、四半期末に向けたニーズが強そうに見える事とか、利付国債の短いゾーンが相変わらずマイナスのままで推移していて他に買えるものがない人の中で短国と利付国債が同じ国債扱いの方だったらまあこの際ヤケクソで仕方ないとか、その他諸々のニーズがあるんでしょうなあと思いますが、そもそもMB目標を大幅に上振れするような短国買入をしている日銀という大投資家がいるのがアレなのですけれどもね。

まー一方でGCや現先レートの方は高止まりしているので、実際問題として玉が全部無くなってという状態になっている訳でもない筈なのですが、まあとにかく需給バランスが中々変わらない状況でして、長い所があばばばばーというのに何ですねんこれはという所ですな。


・債券市場ェ・・・・・・・・・・・

海外戻ったから今日は戻るんでしょうが。

http://jp.reuters.com/article/jptokyomarket/idJPL3N0YX2J220150611
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が大幅続落、長期金利一時9カ月ぶり0.545%
2015年 06月 11日 15:12 JST

『[東京 11日 ロイター] -

<15:10> 国債先物が大幅続落、長期金利一時9カ月ぶり0.545%

国債先物中心限月9月限は前日比41銭安の145円95銭と大幅続落して引けた。前日の海外市場で、米独国債利回りが上昇したことを受けて売りが先行。外部環境が悪化する中で、朝方は20年債入札を警戒した売りが出て、下げ幅を広げた。入札結果発表直後はいったん買い戻しが入ったが、応札倍率の低さが意識されると再び売り込まれ、一時145円72銭と14年11月13日以来、約7カ月ぶりの水準に下落。引けにかけて安値圏での推移が続いた。現物市場では、入札に絡んだ持ち高調整やヘッジ(損失回避)を目的にした売りが出て軟調。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時同5bp高い0.545%と、日銀追加緩和前にあたる14年9月22日以来、約9カ月ぶりの水準に上昇した。』(上記URL先より)

ということで、昨日もまたまた先物とか10年とかの叩き料理が展開されまして10年が追加緩和前の水準というのが実に心温まる数値でありまして、「実質金利の低下で金融緩和の効果(キリッ)」という説明をしている執行部見てる〜イェーイ!!というとても素敵な状態になっておりまして、期待インフレは上がらないわ物価は上がらないわ金利はヨコだわで何のために国債買入をしているのかと小一時間問い詰めたいのですが、恐らく債券安が株安に波及でもしない限りニヨニヨしたままで推移するでしょ黒田総裁はと勝手に妄想しております。

ま、昨晩欧州が更にクルーと思ったら毎度のクーレ先生の発言が報じられた辺り(なおその前にバイトマンとかいうジャガイモおじさんがボラは別に高くないとかギリシャはもうすぐあばばばばーとか碌でもない話をしていたが、またバイトマンか!という事で華麗にスルーされていたように見える)から戻っていましたのでまあとりあえず週末ですし戻るの巻となるんでしょうけどね。


○クーレ理事のインタビューの超ななめ読み

ヘッドラインになっていたのはこいつ
http://www.ecb.europa.eu/press/inter/date/2015/html/sp150610.en.html
Interview with La Croix

Interview with Benoit Coure, Member of the Executive Board of the ECB,
conducted by Marie Dancer, La Croix, 10 June 2015

でヘッドラインになっていたのは『2. FINANCIAL MARKETS, LIQUIDITY AND BUBBLES』の所な。

『Is the excess liquidity that has been injected into the markets - notably by the ECB - not paving the way for a bubble and the next crisis? Are the markets not high on liquidity?』

超過準備でバブルがーな質問だが答えはお察しの通りの想定問答。

『The ECB has pursued its policy of monetary easing - rock-bottom interest rates and purchases of securities in the markets - in order to return to growth and inflation below, but close to, 2% in the euro area, in line with our mandate. We know that this policy has some side effects.』

どこぞのピーターパン&置物師匠と違いまして、ちゃんと「this policy has some side effects」と言っているのは中央銀行家というか政策当局者として当然の発言ですな。

『It is true that there is a lot of liquidity in circulation. We are not currently concerned about financial bubbles in the euro area. Financial assets are not over-valued at present; I am thinking of stock markets in particular. But we remain very vigilant in this regard, particularly since rates will remain low for an extended period of time.』

想定通りの「現状の資産価格にバブル的な価格形成は見られませんが今後も市場を注視します」というお答えでこれはこう答えるしか無かろう。

『Does this mean that the economists who are sounding the alarm are correct?』

そう聞くか。

『Such warnings are useful. We must learn the lessons of the financial crisis, which we have scarcely emerged from, and ensure that the growth model in the euro area is different from that which led to the crisis - based on uncontrolled debt, risky (and even unlawful) behaviour by some banks and non-productive investment (e.g. investment in the Spanish and Irish property markets).』

『To that end, we now have new instruments. The financial sector is much better regulated - thanks, first of all, to the banking union, which allows banking supervision to be independent of political pressures, strict and harmonised. The banks are also better capitalised, and we have new “macro-prudential” instruments aimed at preventing bubbles and financial instability, which we should not hesitate to use.』

『The ECB is also involved in discussions regarding financial regulation at the global level, where we are arguing that the non-bank sector - “shadow banking” - should be supervised just as rigorously as the banks.』

ということでバブル問答に関しては警戒は勿論しているけれどもそれに対して金利操作をプリエンティブに割り当ててどうのこうのという話にするという事にはならん模様。

でまあそこまでは昨日のヘッドラインと関係ないのですが次の問答がヘッドラインに。

『You are not worried that an abrupt reversal in the markets could quickly break through all of these firewalls?』

(・∀・)キタコレ!

『Admittedly, there has been some short-term volatility in the markets [ed.: yo-yoing rates]. That is inevitable, not so much because of the monetary easing pursued by the ECB, but because of uncertainties in the global economy, which went through a soft patch in the first quarter of this year. The financial markets need to adapt to the fact that we now have very different monetary policies in the United States and the euro area and a new regulatory environment. That is causing a lot of uncertainty and will entail a period of adjustment.』

この後に例のヘッドラインになるのが出てくるのですが、前半だけ見ると「いやー年前半はウチの追加緩和に加えてグローバルにソフトパッチ懸念があって金利が下がって、今はそのリバーサルですからねえはっはっは」という文言にしか読めないのですがその次に決め台詞が出るのだ。

『The ECB does not intend to counter that volatility in the short term, which would effectively give market participants a free insurance policy.』

ここまではまだ出てこない、というかここで切られたらもっと梯子外しのあばばばばーなのだが。

『However, we will not allow excessive fluctuations in financial markets to threaten the achievement of our objective, which is to ensure price stability in the medium term.』

キター!!!という所で、この部分がヘッドラインに出て、この前のオペ前倒し云々発言の印象も強く残っているのでさすがクーレはん債券市場へのお助け宣言キタコレとなる訳です。

しかし・・・・・・・・・

『The best contribution that we can make is to be clear about the future direction of monetary policy. For this reason, we have been clear about the fact that purchases of securities will continue until September 2016 at least, and longer if necessary.』

じゃあ何をするかというと別に新しい話をするとは一言も言ってませんし、そもそも論としてさっきの決め台詞(?)の手前の所で「別にうちら短期的な市場のボラティリティに一々対応せんのだが」という話をしている訳で、どうもこれクーレ理事の発言を「ECBからお助けが出る」と過大評価しているように思えるのですが。

つーかですな、この前の前倒し云々だってあれただの朝三暮四の世界だし、ついでに言えばその後別に買入のペースが加速している訳でもないわけで、ブンズ市場がゲロゲロマーライオンになる中、何かに縋りたいという思いがクーレ理事の発言を(市場担当理事なだけに)ハトというか市場お助けとして過大に見るようになってるんじゃネーノという悪寒がだいぶするんだが・・・・・・・・・・・

なお続きの質疑。

『Does the ECB still have room for manoeuvre, or has it now used all of the tools at its disposal?』

で??

『The reason that rates are at zero and purchases of securities are being carried out is because we want to kick-start the European economy and raise inflation towards 2%. This is a temporary strategy aimed at responding to the very specific situation that we saw in 2014, when inflation rates deviated from our target on a lasting basis and flirted with deflation.』

『Were we to abandon that policy today, we would plunge the euro area into an undesirable situation where both growth and inflation were weak in the long term. Some people refer to that as the “world of 1%” - i.e. 1% growth and 1% inflation. There is, of course, no question of us doing that.』

1%の世界ではなく2%の世界にしようとしているのだが現状がそれに程遠いから今のような派手な緩和をしているのですよという話で。

『But monetary policy cannot do everything. In order to avoid the “secular stagnation” that certain economists fear, monetary policy must be supplemented by (i) responsible fiscal policies that use available room for manoeuvre in countries where it exists but prevent debt from exploding in countries where debt levels are high and (ii) an economic environment that allows firms to invest and create jobs and fosters employability.』

とは言いましてもいわゆるsecular stagnationを避けるためには金融政策だけではなく、構造改革が必要でという毎度の話をしておりまして、この先はギリシャこけたらどうなるネタとQEは通貨戦争ですかというネタになっておりますがこの辺で引用終了します。


○佐藤審議委員会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1506c.pdf

・為替に関する質疑応答はかくあるべし

『(問) 2 点あります。為替ですが、午前中の国会で、黒田総裁が、これ以上のドル高になる必要はないとおっしゃっていますが、昨今のドル高円安をどうご覧になっているかということと、これ以上のドル高円安は物価目標達成という意味で望ましいのか、それとも経済状況、マクロにみて急速過ぎるということで望ましくないのかご所見をお願いします。(後半割愛)』

ということで実はあのオモシロヘッドライン出る前から国会での答弁は正直おかしかった。午前のはあまり大々的にヘッドラインになっていなかったし英文になっていたのか記憶が怪しいレベルなのですが。

『(答) まず、円安について、為替相場の水準やスピード、あるいは日々の動きなどについて、私の立場から具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。その上で、あくまで一般論として申し上げますと、円安は輸出の増加やグローバルに展開している企業の収益改善のほか、株価の上昇といったプラス効果を持つと思います。その一方で、輸入コストの上昇や、その価格転嫁を通じて、中小企業や非製造業の収益や家計の実質所得に対する押し下げ圧力として作用するといった面もあると思います。このように円安の影響は、経済主体によって様々に異なり得るということであって、いずれにしても為替相場は、経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいと思います。今後とも、為替相場の動きを含めた金融資本市場の動向については、それが実体経済やあるいは国際金融資本市場に及ぼす影響も含め、引き続き注意深くみていきたいと思います。(後半割愛)』

後の方ではこんなのも。

『(問) 先程黒田総裁が国会で、実質実効レートについて、円安になっているのは事実だとおっしゃったうえで、ここからさらに円安はありそうにないということをおっしゃっています。こういう見方は、政策委員会の中でも共有されているのでしょうか。』

『(答) この通り出張中ということもあり、現在の衆議院での質疑について逐一内容を熟知しているわけではありませんので、直接的なコメントは差し控えたいと思いますが、足許の為替レートの動きについては、私の解釈は、ごく一般的な解釈だと思いますけれども、先行きの日米の金利差拡大を織り込む動きであろうということです。』

うむ。

『すなわち、先般の雇用統計をきっかけにして、マーケットではFEDの出口戦略、すなわち利上げのタイミングが若干前倒しになるのではないかという見方が俄かに強まってきていると理解しておりますけれども、足許の円安の動きはそういったFEDの金融政策に対する期待と整合的な形で動いているということです。さらに円安があるのか、ないのかということは、私どもの立場で申し上げることではありませんし、特にそういった予想ができるわけでもありませんが、現在の動きはそういったFEDの金融政策を先取りする動きであると理解しています。』

全く持って順当な回答でして、黒田総裁が国会でなんであんな話をおっぱじめたのかについては、まあ単になまじ得意だと思っている分野の話なのでドヤ顔で余計な話を初めてしまったという所だとあたしゃ思っていますが、一昨日の終わりから昨日にかけては色々と面白い解釈が出ていてワロタのだが、一番コケたのは「米国経済の為にドル高阻止」というので、日本の中央銀行総裁が何で日本経済の前に米国経済の事を考えて動くんだよお前はアホかと感心することしきりでした。


・さらっと言っているが単なる一般論なのかテーパー示唆なのか

質問が長いのだが丁寧に聞くとこうなるかもね。

『(問) 挨拶要旨の9 ページで、「物価安定の目標」の達成状況と政策継続の是非というのは、「量的・質的金融緩和」拡大後の政策効果や巨額の国債買い入れの持続可能性、及びさまざまな副作用も念頭に置きたい、とおっしゃっています。政策効果と持続可能性、副作用について、色々ご指摘されていますが、ざっくり理解すると、特に追加緩和以降、効果が減っている一方で、副作用は大きくなっているとして、持続可能性についてもその困難度が増している、という理解でいいかと思うのですが、仮に、2%の物価目標の実現前に、こうした副作用が効果を上回ったり、持続可能性に大きな困難度が増した場合には、2%の物価目標達成前にも、佐藤委員ご自身は、このQQEの縮小、テーパリングといったようなことをご提案されるつもりがあるのかどうか。もし、そういうご提案をした場合には、2%の物価目標というのは、一段と難しくなるのか、あるいはテーパリングしたとしても、その物価目標の実現というのは可能なのかどうか、ということをお聞かせ下さい。』

『(答) 2%の「物価安定の目標」の実現前に、仮に、こういった政策効果が逓減したり、あるいは持続可能性の問題が生じたり、副作用が大きくなればということで、これも、あくまでも仮定のご質問になりますので、なかなか直接的にお答えすることは難しいと思いますが、私どもは、この「量的・質的金融緩和」の継続にあたり、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、というフォワード・ガイダンスを提示しているわけであり、今後の政策の継続にあたっては、このフォワード・ガイダンスに照らして、あくまでも毎回の決定会合で判断していくべきものと考えております。』

まあ実際には後の質疑で具体的事例に関する質疑が入っているのですが(^^)。

『そういう意味では、毎回の決定会合で、この「量的・質的金融緩和」を継続することが当然の帰結であるといった予断を持つことなく、政策効果あるいは持続可能性を検証しながら、今後の政策の継続について判断していきたいと考えています。』

>「量的・質的金融緩和」を継続することが当然の帰結であるといった予断を持つことなく
>「量的・質的金融緩和」を継続することが当然の帰結であるといった予断を持つことなく
>「量的・質的金融緩和」を継続することが当然の帰結であるといった予断を持つことなく

特にヘッドラインになっていませんでしたしサラッと流されていますがこれは!!!



・ローリングターゲットの概念について

たしか今回初めて講演で出てきたローリングターゲットですけれども。

『(問) 講演の中で言われていたローリング・ターゲットのことですが、佐藤委員はボードと比べて弱い物価の見通しを持たれていて、2%の物価安定の理解がちょっと異なるかと思うのですが、ここで言われている、ローリング・ターゲットというのは、実際に2%にいってなくても2%が見通せるような状況が常に、2 年程度の先行きをみて、見通せれば十分ということでよいのか。それと、4 月30 日の展望レポートでも、見通し期間にその2%に達するという可能性が低いとみられている、現状の物価の情勢には佐藤委員は満足されてない、というようにも理解できるのですが、その辺をどう思うのかお伺いしたいと思います。』

まあ質問されます罠。

『(答) ローリング・ターゲットという考え方については、挨拶要旨の中でも触れていますが、私どもでは、先行き2 年程度の期間を念頭において、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」の実現をするというコミットメントを出しており、これが私どもの達成目標になると思いますが、この点について私は、2 年程度の期間というものを固定的に考えるのではなく、先行き2 年程度のタイムスパンを常に念頭に置きながら考えていく、ということだと解釈しています。実際のところ、主要国の中央銀行の物価目標の考え方も、概ねそういった概念に近いものではないかと考えております。』

キター!!!!!!!!!!!!

ということで「期限を切るのが期待形成に重要」と思いっきり「2年」の所を重視するピーターパン置物理論に真っ向斬りかかりキタコレという話ですが、どうみてもローリングターゲットの考えの方が普通だし自然ですなそいつは、というと「期待がアンカーされている国と一緒にやっていては期待の押し上げができない」という執行部理論の反撃もあったりするのですよね。


『それから、私としては、先行き2 年程度のタイムスパンの中で、物価の動きが2%の安定的な実現を見通せるようなパスにあるということであれば、それはそれで政策効果として、あるいは政策目的として、所期の目的は果たしたことになるのではないかと考えています。』

ほう!!

『すなわち、先行き2 年程度を見越して、あくまでもフォーキャスト・ターゲティング的な考え方で、見通しとして2%ということが射程圏内にあるという状況であれば、それはそれで政策の所期の効果、目的というのは果たせるのではないかということです。』

つまり、先般の展望レポートですと現状では2年程度では2%達成しないというのが佐藤さんの見立てになっていて、2016年度になって2年程度での2%が見通せるという見立てになっていますから、この場合は2016年度になって2年程度で2%が見通しとして安定的に出せるという事になったら目出度くQQEからの出口模索という話になりますな、うんうん。



・買入の持続可能性に関して

『(問) 先程もちょっと出ましたが、国債買い入れの持続可能性について、もう少し詳しいイメージを伺えればと思います。講演の中では、限界に達する時期を、現時点で見通すことは難しいということはおっしゃられていますが、とはいえ、例えば今の金利水準がある程度継続した場合に、どの辺の時期が想定されるのか。今、例えば展望レポートで17 年度までの見通しを出しているわけですが、その期間内はどうなのか、そのあたりの時期のイメージを伺いたいのと、実際、限界に達するというのは、どういう現象が現れたとき、限界に達したと判断されるのか、その辺についてもう少し詳しいイメージがありましたらお伺いしたいと思います。』

ということで・・・・・・・・・

『(答) 国債買い入れの持続可能性についてですが、果たして、どの時点まで今の大規模な国債買い入れを継続することが可能かどうかという問題意識は常に持っています。ただ、果たして、そういったクリティカルポイントがどこにあるのか、という点については、挨拶要旨の中でも触れたとおり、例えばその時々の金利水準、あるいはその時々の海外金利の水準、あるいは他の資産価格、例えば株価、そういった色々な要素が絡んでくると思いますので、様々な要素の中で複合的に決まってくるものだと思います。』

確かにそうですな。

『そういう点で、現時点で、何か確からしい見通しを持っているというわけではありません。ただ、そういったクリティカルポイントが、この買い入れを長く続けていく中では、やはりどこかででてくる可能性があるということです。それは、金融機関が国債の保有額を、例えば担保需要等から、これ以上減らせないところまで減らしていくということであり、それが果たしてどこにあるのか、ということは繰り返しになりますけれども、現時点ではなかなか見通すことは難しいです。ただ、言えることは、そういった国債市場における国債の供給曲線がどこかの時点で垂直になるところがあるのではないかと考えています。』

まあそうでしょうな。

『それから、その限界点に達したときに果たしてどうなるのか、ということですが、具体的なイメージとして、例えば私どもの国債の買い入れオペにおいてオペの未達が起きるといったことをイメージしています。』

具体的イメージキタコレ。

『ただ、未達が単発で起きるということであれば、その後のオペレーションで挽回すればいいわけであり、それは特に問題はないかと思います。状況としては、そういった未達が仮に起こるとして、それが連続的に発生し、年間80 兆円のマネタリーベースの増加目標の達成が難しくなる、そういった状況を念頭に置いています。』

そらそうよ。

『ただ、今申し上げたことはあくまでも仮定の話でして、繰り返しになりますが、いつそれが起こるのかということは、なかなか今の段階で見通すことは難しいということです。』

ですな。


・ 量が買えないなら金利を下げればよいじゃないという考えに対しては・・・・・・・

『(問) 今の質問に関連するのかもしれませんが、佐藤委員が講演の中で、国債買い入れの量と金利の間にリニアな関係が成立しにくくなっているとご指摘されています。それであれば、国債買い入れから、金融政策のターゲットを金利に変える、例えば、付利の引き下げのような金融政策に変えるという方法は現時点で可能だとみていらっしゃるのでしょうか。』

『(答) 私どもの政策というのは、もちろんそういった量の拡大によって、金利に影響を及ぼすというものでありますが、その際に、名目金利と実質金利を分けて考える必要があるかと思います。』

ほう。

『挨拶要旨の中でも触れましたように、この名目金利に関しては、既に、10 年金利で0.5%前後ということで、非常に低い水準にあります。そういう点では、私どもはこれから買い入れの残高を累積的に増やしていくということになるわけでありますが、その結果としてリニアにこれまでと同じような経験則で、同じようなペースで名目金利が下がり続けるかどうかというと、金利の非負制約ということもありますので、なかなかそう簡単にはいかないであろうと、リニアな関係というのも成立しにくくなるであろうということです。』

まあ現実にそうなっていますわな。

『ただその一方で、私どもは、もう1 つの政策の柱として、大規模な買い入れを続けるということにより、中央銀行としての決意、あるいは市場に対して明確なコミットメントを示すことで、市場の予想インフレ率に働きかけることを目指しているわけです。』

とは言え、MBで期待に働きかけるという大きな建付けがある中でそれを簡単に捨てることが出来るのかという話ですな。

『もちろん、その予想インフレ率に働きかけるということを中央銀行の大胆な決意によってのみできるかどうかというと、それはそれでまた色々議論のあるところかと思います。』

さりげなく砲撃(^^)。

『市場の予想インフレ率というのは、中央銀行のスタンスだけではなく、例えば、全般的な経済情勢、あるいは資産価格、その他諸々の要因によっても規定されると思いますし、実際そちらの方の要素の方が大きいかもしれません。』

なお砲撃(^^)。

『ただ、例えば私どもの政策がそういったかたちで資産価格に影響を及ぼすことで、それが最終的にやや長めの予想インフレ率に影響を及ぼすことができるのであれば、仮に名目金利がリニアになかなか下がりにくくなるとしても、実質金利に働きかけるということは可能かもしれません。そういう意味では、政策の限界があるということを申し上げているわけではありません。ただ、実際のところ名目金利がかなりゼロに近づいてきているということでありますので、挨拶要旨の中でも触れたように、政策の難度が高まっているということは事実であろうと思います。』

うむ。

『それから、付利に関してのご質問がありましたけれども、基本的には、0.1%の当座預金への付利ということ、これはマネタリーベースを円滑に積み上げるために必須のツールであると私としては理解しております。』

(;∀;)イイハナシダナー

『すなわち、現行の年間80 兆円のマネタリーベースの増加目標、これを達成する上では、0.1%の付利、これが重要な役割を演じているわけであり、ある意味、一体不可分のものであると思います。そういう意味では、付利を動かすという考え方とマネタリーベース目標、これは本来相容れないものであり、そういう点では、私どもとしては、現時点ではそういったことは念頭に置いていません。』

なお、ちょうど国会で黒田総裁も付利の話を答弁しているタイミングだったので、総裁発言と見事にシンクロしているのが中々面白かったです(^^)。

まあ何だ、未だに付利下げあるでといっている何とかストの理屈は短期市場の実態全然把握してないだろとしか申し上げようがないのだが、まあおまいらその席どいてこっちに寄越せやという感じですな。


・「期待」に関する質疑

『(問) 予想インフレを通じて実質金利を引き下げるというこのチャネルは、QQEの他のチャネルと併せて重要なものとして日銀として説明してきたと思うのですが、この予想インフレに与える影響というのを佐藤委員ご自身は講演でも、なかなか支出でみると明確な改善がみられないという主旨で述べられていると思うのですが、その評価を佐藤委員ご自身どう考えられているのか。』

『また、設備投資について、やはり国内に回帰するかどうかというのが大事であるという点を述べられており、その兆候はみられるということですが、円安以外のファクターも大事だと思うのですが、例えば需要のあるところに生産拠点を作るという動きもあると思いますし、そういうことも踏まえて設備投資の今後の先行きについてもう少し敷衍して頂ければと思います。』

質問は2つですな。

『(答) 中長期的な予想インフレ率に関しては、毎回のステートメントの中でも述べていますように、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるということです。この点について、私どもとしては、例えば毎月の消費者物価指数の前年比のアップアンドダウンに一喜一憂するということではなく、あるいは日々のBEIの動きといったものを逐一フォローしていくということではなく、QQE開始以降のやや長い目でみて人々の物価感がどう変化してきたかということに着目しているわけです。』

>BEIの動きといったものを逐一フォローしていくということではなく

まーた置物師匠に砲撃していますね(・∀・)

『そういう点では予想インフレ率は全体として上昇しているのではないかということです。もう少し具体的に申し上げますと、例えばQQE実施以前と足許との、人々の、例えば家計あるいは企業の物価観を考えてみますと、かつてデフレの下で、消費者は極端に安い財あるいはサービスを追い求めるなど、極端な安値志向であったということであり、企業もそういった極端な安値での供給ということに努力してきたわけであります。ただ、足許、消費者のそういった志向というのは、やや変化してきているということであり、極端な安値志向というのも、もちろん残っているわけですが、その一方でそれなりの質を伴ったものに対しては若干高い対価を支払ってもいいと、そういったスタンスに微妙に変化しつつあるのではないかということです。』

物価上昇の中で賃金に関してはアグリゲートすれば上がっているかも知れないけれども、実際問題としては全体の水準が同じように底上げされているという訳ではない中ですから、この「安値志向と品質志向」の話って、こちらに関してもアグリゲートして出てくる現象はそうかもしれないけれども、実際問題としては賃金などが上がっている人とそうでない人(とか資産効果でどうのこうのな人ですかねえ)の間での2極化が進んでいて、それが「安値志向が残る中でも品質志向」となっているのではないかとまあそんな風に小市民のアタクシ的には思ったりもするのですけれどもね。

『企業側としても、これまでの単にコストを削減するという努力だけではなくて、それなりのクオリティのものをそれなりのコストを掛けて供給していくといったスタンスに変わってきています。すなわち、これは企業の価格設定戦略、これが若干変化してきているということだと思います。こういったことは、やや長い目というか、かなり長い目でみたときの人々の予想物価上昇率の変化ということを象徴的に示しているのではないかと思います。こうしたことは月々の経済指標の変化からは簡単には読み取れないものです。』

まあ上げて売れるのがあるならそっちにも逝く罠。

『もう1 つ重要なことは、賃金の設定行動の変化です。これは、昨年からの春闘の動きにもみられますように、デフレの下では長らくベースアップという概念すら忘れ去られていたわけですが、ベースアップという概念が政治の強い後押しというかリーダーシップもあり、昨年ようやく、久しぶりに実現したということです。かつ今年に関しては、昨年からの流れを引き継いで、そういったベースアップ、これは賃上げ率としては昨年以上の成果というのが出つつあるということだと思います。こうした労使交渉、労使の賃金交渉において、物価上昇を賃金上昇率に織り込むという考え方、これはデフレの世界では長らく忘れ去られていたわけであり、そういった概念が賃金の交渉過程で織り込まれるようになった、あるいは戻ってきたということ、これ自体が長い目でみたときの人々の予想物価上昇率の変化ということを象徴的に示しているのだろうと思います。』

とのことですが、そもそも論としてある程度の右肩上がり賃金というのが想定できるような期待が形成されないような状態だとベアがどうのこうの言われても単なる物価上昇対比の生活保障給としての認識になるんじゃネーノと思う訳で、ある程度の右肩上がりの賃金カーブへの期待というのは実は労働者にとってはインフレ期待と成長期待をビルトインするものではないかという説を考えていまして、そこから見たら今の状況って前よりはマシかもしれないけれども本質的には何も変わっていないような気がします。

『そういう点で、私としては予想物価上昇率の変化を引き続き着目していきたいと思いますし、私どもの究極の目標としては、単に消費者物価の前年比上昇率が2%をつけるということではなく、挨拶要旨でも触れたように、人々、すなわち企業も家計もあるいは賃金交渉においても、ある程度の、具体的に言いますと個々の経済主体が2%程度の物価上昇を前提としてそれぞれ行動するような世界にもっていく、すなわち、中長期的な予想物価上昇率を2%程度にリアンカリングしていくということが究極の目的であると理解しています。』

問題はそれを実行する手段な訳で、マネタリーベース直線一気理論で物価だけコストプッシュで上げても所詮は消費がおちるだけという話なのでやはり「期限を切る」というのが良くないと思うの。

以下設備投資の話。

『それから設備投資に関してですが、企業は既に海外での設備投資を相当積極的にやっているわけであり、伸び率としては前年比2 桁の伸び率をコンスタントに維持しています。』

景気の良いお話ですわおくさま。

『その一方で、国内の設備投資はどうかといいますと、リーマンショック以降長らく低迷していましたが、このところ、ようやく少し持ち直していますが、それでも前年比でみると1 桁台の前半に止まっています。』

アイヤー!!

『そういう点では国内とそれから海外の設備投資のバランス、これをどう見直していくかということ、これは企業の生産戦略というか立地戦略に深く関わってくる問題ですので、今後とも注視していきたいと思いますが、1 つの重要な決定要素としては、挨拶でも申し述べましたように、為替、しかもそれは短期的な為替の見通しではなく、かなり中長期的な為替の見通しが影響してくるであろうということです。』

うむ。

『すなわち、企業として先行き例えば5 年、10 年を見通して、2 年前までのような大幅な円高の再燃はないだろうと見越すのであれば、企業の立地戦略というのは必然的に変わってくる、あるいは生産戦略は必然的に変わってくる。すなわち、国内の生産のウエイトを高める方向になっていくのではないかということで、為替は1 つの重要な要素だろうと考えています。』

まったくその意識は無いと思うのですが黒田総裁の国会答弁に盛大に斬りかかっております。

『ただ、為替以外にも、ご指摘のように、幾つかの重要な要素があることはもちろんでして、例えば労働資源、これは国内では不足しつつあると言われているわけですし、それから税制の問題、生産拠点を国内に置くか海外に置くかということで税金が変わってくるということになると、これも企業の意思決定に大きく影響してくるでしょうということであります。そういう点では企業としては、最適な立地戦略を常に考え続けているわけで、税制等の重要な要素はありますけれども、その中の1 つとして私は為替レートということを例示したとご理解して頂ければと思います。』

まあ結局の所消費地に近い所で作れるものならそれが一番リーズナブルという話だとすれば、国内の需要が盛り上がらないといけない訳で、それってコストプッシュのインフレでは残念ですが達成できない、という意味で「物価を上げれば今までのデフレ時代の逆回転が起こって全てがうまく回りだす」という置物師匠一派の置物リフレ理論がナイーブにも程がある議論だったという話になる訳ですが、困ったことにその置物と置物の亜種のジンバブエ理論の人が政策委員会に鎮座ましますという時点でおおもう・・・・・・



2015/06/11

お題「黒田総裁ェ・・・・・・・/その黒田発言に話題を持って行かれた佐藤審議委員講演は見どころが多いのですよね」

アイヤー!
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPPVU46S972E01.html
ドイツ10年債下落、債利回り一時1%突破−供給と景気改善で
2015/06/11 01:52 JST

○黒田総裁の国会答弁があばばばばー

俺様メモなので皆様ご案内のニュースですがこいつを。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPPOPA6JIJUY01.html
日銀総裁:「ここからさらに円安はありそうにない」−実効レートで (2)
2015/06/10 15:21 JST

昨日は半期報告だったのですが、午前の時点でも微妙にアレな発言をしているなあとか思ったのですが、あちゃーとなったのは午後の部での答弁(なお場所は衆院財務金融委員会)でして、ヘッドラインで言いますと反応したのはこの辺りだと思われます。引用はブルームバーグからですが他のベンダーも同様に出していて、さすがに今回は一部切り取り系のヘッドラインではなくて普通のヘッドラインになっていました(国会の委員会質疑は秘密会じゃなければ基本的にインターネット生中継されるから恣意的なヘッドラインは出てこないのが普通)。

BFW 06/10 13:12 *日銀総裁:実質実効為替レートでみると円安になっているのは事実
BFW 06/10 13:14 *日銀総裁:ここからさらに円安はありそうにない−実行為替レートで

でまあこれが出て為替が124.50辺りから4円割れて3円後半とかになったのですが、日本語ヘッドライン出て振れて英語ヘッドライン出てまた振れるみたいな動きになっていたのですが・・・・・・・・・

BFW 06/10 13:48 *日銀総裁:永久的な量的・質的緩和は考えていない
BFW 06/10 13:52 *日銀総裁:付利金利の引き下げは検討していない
BFW 06/10 14:00 *日銀総裁:日銀券ルール一時的停止、量的・質的緩和終了時点で復活

(以上ブルームバーグニュースヘッドラインより、当然ですが関連ヘッドラインの一部です)

まあこちらの方は当然の発言ではありまして、そらまあ永久にQQEするのだったらそもそもQQEの効果が無いちゅう話ですから当たり前ですし、付利金利に関してはMB積み上げを建付けにしているので難しく(MB理論から離れれば別だが今更変えられないでしょ)という所。

いわゆる銀行券ルールに関しては色々と言われますが、実際問題として一番重要なのは調節技術上の問題(短期市場金利の誘導政策を実施する際に長期での資金供給をし過ぎると短期で吸収しながら調節しないといけないので難しい&逆鞘発生の恐れがある)だったりするのですけれども、「QQE終了時点で日銀券ルール復活」はちょっと口が滑り過ぎで、それを額面通り受け止めると「QQE終了時点では日銀保有国債の残高は市中売却によって減らす予定ですが何か?」と言っているように見えてしまう(実際問題としてそのような乱暴なことは難しいけど)ので、それはマズイだろという発言だったりしますが、まあこれ単体で市場が反応した訳ではなくて、上記のようなヘッドラインが五月雨式に出てきて、さらに海外勢が目を覚ました順に為替市場に登場して反応という図だったのかなという感じではありました。


でですね、ついこの前タカ&トシ先生が同じように実効為替レートで歴史的円安という話をしていたり、もうちょっと前にはジンバブエ審議委員が円安はいいところまで来ている的な話をしていたりという一連の発言がありーの、本当か飛ばしか良くわからんオバマさんの為替がらみ発言報道を巡る一連のドタバタがあったばかりでしたので、そらまあ普段「為替水準については言及しない(キリッ)」と言ってた黒田さんがこのオモシロ発言をすれば、「これは何かあったのでは」となって盛大に反応するわこりゃという所でしょうな。


全般的な雰囲気としては一段の円安誘導をしても誰得という感じはしますし、G7だかに行ってきたばかりでその時も何か言われたりはしてるだろうなあという想像はありますので、そういうベースがある中でつい言ってしまった的なお話なのでしょうが、そもそも日銀の経済物価見通し的に言えば円安が今後ドンドン進むかというのは兎も角としても、少なくとも円安修正起きて円高モードになってくるみたいなことになると、期待の輸出や国内設備投資回帰にも悪影響を与える可能性がある話であって、そうなりますと物価の基調がコケるという事になりかねませんので、日銀執行部としては基本的に円高に振るような事は歓迎しないとなる筈(そうじゃないなら今までの話の整合性が取れない)ですから、まー今回はやっちまったなあおいという話だと思うのですが、先般のピーターパン発言と言い、ちょっと足元で黒田さんネジが外れてきているのではないかとそちらの方が懸念されるところではあります。


しかしまあ何ですな、円安けん制みたいな発言をしてきちんと円高に振れるというのは別の考え方をすれば「まだ当局者の介入が市場に効いている」という事ですから結構なお話でもある訳で(^^)、これが「円安はケシカラン」と言っているのを材料に更に円安一段の進行とかになりますと、それはもう為替市場が糸の切れた凧状態かつ虐殺モードに入っていることを意味する訳でございますので、当局の威光がまだまだ強く反映するというのは結構な事ですよ、などとおバカな事をいってポジティブに考えてみる(笑)。

・・・・・・・てのは半分冗談ですが、まーこの前のドラギのボラ上等発言といい、昨日の黒田さんのこの発言といい、中銀総裁の市場への言及が市場のボラを高めて大変動をさせてしまうとか迷惑千万にも程があるので可及的速やかにご両者に恵方巻きを献上したいと存じますです。しかもドラギのおっちゃんは金利の話だからまだしも、日本の場合為替は中銀が口出すものではないので更にマズーとしか。


しかしまあ何ですな、為替と株があばばばばーなのは分かるが、あばばばばーを見てちょっと戻るかと思った債券の戻りが弱いと思ったら結局先物叩き売りというのがお洒落ですが、これはこれで別の要因なのかなという所ではありますな、うんうん。


○黒田さんのオモシロ国会答弁で話題を持って行かれた佐藤審議委員の金懇挨拶である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150610b1.pdf
わが国の経済・金融情勢と金融政策
── 山梨県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

前場に金懇挨拶が出て、会見のタイミングがちょうどまたお洒落な事に黒田さんの国会でのぶっ飛び答弁と同じタイミングで出ていたので、非常に真っ当な発言ヘッドラインとぶっ飛び発言ヘッドラインが混在して放流されてくるというシュールな事態になったわけですが、折角の佐藤さんの金懇挨拶が黒田オモシロ答弁に全部持って行かれるという実にカワイソスな展開となりましたが、この金懇挨拶は非常に素敵ですので全文を精読されることをお勧めしたい。


・海外経済の話では国際金融市場動向への指摘がよろしいですな

まずは『2.内外経済・金融情勢』の海外パートから。

米国経済と欧州経済の現状認識に関して述べた後に金融政策当局の話が入っているのがお洒落。

『こうしたなか、FRBは利上げ実施に向けた情報発信を重ねつつも、具体的な時期については今後の経済指標次第という柔軟かつ慎重なスタンスである。』

『こうしたなか、ECBが打ち出した非伝統的金融政策は、当初は為替および債券市場に顕著な影響を及ぼしたが、足許は振れの大きい展開となっている。大規模な資産買入れの持続可能性については様々な指摘があり、私としても帰趨を見守りたい。』

大規模な資産買入の持続可能性指摘キタコレ!!

で、その次の『(2)国際金融資本市場の動向』の見立ては色々と注意すべき点を提示していますのでオヌヌメ。

『以上の世界経済情勢のもとで当面の国際金融資本市場について、第一の注目点は、米国の利上げが国際金融資本市場に及ぼす影響である。』

うむ。

『このところの米経済指標を受け、利上げ時期についての市場の見方は前後に振れている。一方、FRBは利上げ時期について断定的な情報発信を慎重に避けつつも、遠からず利上げがあることを市場に織り込ませるよう腐心している。FF金利先物市場の価格形成をみる限り、FRBのこうした意図は概ね浸透し、一頃のようなFOMCメンバーと市場の見方の乖離は埋まりつつある(図表5)。』

状況を淡々と説明しているだけなのでしょうが現執行部に対するイヤミに見えてしまうのは気のせいですね!!!

『もっとも、市場参加者の間で利上げ時期が具体的に意識されれば、国際金融資本市場はこれまでと違った反応を示すかもしれない。5月上旬にFRB議長が株・債券市場の価格形成に言及した際の市場の反応は、そうした懸念を先取りしているように思われる。各種金融規制の結果、主要なマーケット・メーカーのリスクテイクが制約され、米国債市場でさえ流動性低下が懸念されるなか、先行き利上げ時期が具体化すると、国際資金フローの変化から各種資産市場で大幅なリプライシングや予期せぬ連鎖が生じないかどうか注意深く見守りたい。』

「米国債市場でさえ流動性低下が懸念されるなか」とかチクチクと入っていますが、実際の利上げという話になった時の動きについての懸念は全く仰る通りでありますな。

『第二の注目点は、ECBによる大規模な資産買い入れの影響である(図表6)。』

キタコレ!!

『買い入れ実施当初、その効果は概ね織り込み済と思われたが、実施後も欧州諸国の長期金利は顕著に低下し、ドイツ国債10 年物は一時ゼロ%程度となった。また、ユーロ安も進行した。』

ですなあ。

『もっとも、4月下旬以降は急激な金利低下の反動からか、ドイツの長期金利は買い入れ実施前の水準を上回る振れの激しい展開となっている。このような長期金利のボラティリティ上昇は、ECBの買い入れ規模が国債市場の規模との比較で巨額なことによる市場の流動性低下と関連しているように思われる。』

(;∀;)イイシテキダナー

『日本においても、2013 年4月の「量的・質的金融緩和」実施後や、昨年10 月末の緩和拡大後は長期金利のボラティリティ上昇がみられた。日本国債10 年物金利は、「量的・質的金融緩和」実施直後は当初の意図に反し、一時やや大きく振れた。また、「量的・質的金融緩和」拡大後は逆に一段の低下の後、足許は拡大前の水準に概ね戻っている。』

うむ。

『こうした長期金利の振れについては、金融政策のみならず海外要因も影響しているとみられ、その評価については慎重であるべきだが、金融政策の効果が名目ないし実質金利の低下によるとすれば、巨額の買い入れによる国債市場の流動性プレミアムがその効果を一部減殺している可能性には留意する必要があろう。』

後程QQEに関する話の中でまたこの論点が出ますが重要な論点。

『一方、こうした長期金利の振れが経済・物価見通しの改善を織り込む動きである可能性もあろう。』

でまあ大体当局の皆様におかれましてはこちらの「改善を織り込む動き」の方にばかり注目してウッキウキになってしまってという傾向が強いというのは昨日悪態を申し上げた通りです。


・国内経済については別に弱気ではなくて「基調は確り」という認識ですよ

『(3)国内経済の動向』から少々。

『1-3 月期の日本経済は、設備投資をはじめ輸出や生産の緩やかな改善基調が続いた。個人消費や輸入も底堅く、最終需要は堅調に推移した。4-6 月期は、一部業種の在庫調整等から生産が横ばい圏内で推移の見通しながら、3月以降、個人消費が引き続き底堅く推移しているとみられること等から緩やかな回復を続けていくとみられる(図表7)。世界経済が先行き成長率を幾分高めると見込まれることも日本経済への追い風となろう。堅調な雇用情勢や好調な企業業績を背景に、所得から消費・投資へという回復メカニズムは次第に確からしさを増していくと考えられる。』

ということで基本的に弱い話はしていない。

『ただし、原油安に伴う家計の実質購買力の拡大や企業収益の改善が、期待したほど支出の拡大につながらず、結果として貯蓄超過(経常収支黒字の拡大)圧力がなかなか和らがないリスクも一応念頭に置いておく必要があろう。』

まあこれは順当な懸念ですな。でもって雇用所得環境について。

『こうしたメカニズムのベースとなる雇用・所得環境についてだが、雇用情勢が逼迫の度合いを強めるなか、賃金は毎勤統計で伸び率の下方改定後も緩やかな増勢を維持している(図表8)。今般の2年連続のベア実施の見通しを受け、先行きも賃金の緩やかな増加が続くと見込まれることから、個人消費は昨年の消費税率引き上げによる実質所得減少の影響を徐々にこなし、緩やかに水準を切り上げていくことが期待される。』

基本的に佐藤さんは雇用に関しては特に弱い見方はしていないです。

『やや長い目では、持続的な賃金増加の前提である企業の生産性上昇ペースのほか、高齢化の影響に着目している。』

ほほう。

『消費が中期的に増加基調を維持するには、約4,000 万人の年金受給者の実質所得の動向に対し、約6,000 万人の就業者の実質賃金の持続的な回復が必要となる。』

なるほど。

『先行き設備投資の増加による生産性上昇に応じ賃金増加率が徐々に高まり、また各種改革の実行により社会保障制度の持続可能性への信認が高まるとみても、やや長い目でみた個人消費の回復ペースはかなり緩やかなものにとどまろう。』

ということで雇用所得環境は弱気ではないものの、ではそれが消費に直結するのかというとそこは慎重ですな。


『民間設備投資については、資本財出荷・総供給といった月次指標の持ち直しや短観等にみる企業の設備投資計画の堅調さの割にGDPベースの設備投資の動きはこれまで鈍かった。もっとも、海外での設備投資はこのところ一貫して2桁増となっており、連結ベースでみた企業の設備投資意欲は以前から旺盛である(図表9)。』

ということで設備投資ですけど・・・・・・・・・

『問題は企業が設備投資をさらに増やすかどうかではなく、国内で設備投資をするかどうかである。』

確かに。

『この点、これまで非製造業中心であった設備投資だが、自動車産業では昨年頃から本格化した生産設備の海外移管の流れが一部に残っているものの、ここ2年間の円安方向への動きを映じ、製造業の一部で国内生産増強の動きがようやくみられるようになってきた。』

『やや長い目でみて、企業の立地戦略の変化に広がりが生じ、設備投資の国内増強の流れが強まるかどうかは、企業の中長期的な為替見通しにも依存しよう。』

ですなあ。

『すなわち、過去2年間の円安方向への流れが持続的と判断すれば企業は国内生産設備の増強を進める一方、円高再燃を警戒する企業は足許の為替情勢でも立地戦略を容易に見直さないであろう。その点、内閣府の「企業行動に関するアンケート調査」にみる企業の1年後の予想円レートが119.5 円と3年連続で円安方向に振れている点は好材料といえる(図表10)。』

黒田さんの円安牽制と取られたオモシロ発言対比でこれを見ると実に素敵。

『もっとも、企業にとり設備投資の決定には、先行き5〜10 年といった長期の予想が重要であることからすると、先行き国内生産設備増強の流れが広がりを見せるかどうかは予断を許さない。』

ここでしらっと止まっていますが、国内需要の持続的拡大への期待というのも重要なのではないかと思うのですが、そこは敢えて触れていないのかしら。


・物価についての話は更にイイハナシダナーが

次が『(4)物価面の動向』である。

『エネルギー価格下落を受け、消費者物価(生鮮食品を除く)の前年比上昇率はこのところゼロ%程度となっている。先行きもエネルギー価格下落の影響が残ることから当面ゼロ%程度で推移するとみられる(図表11)。このように消費者物価は現状勢いを欠くが、エネルギー価格下落による物価下落は実質所得の押し上げ要因であり、私としては日本経済にむしろ好材料と受け止めている。』

ですなあ。

『重要なのは月々の消費者物価の前年比上昇率の振れでなく、全般的な経済情勢を反映する物価の基調であり、基調自体はしっかりと維持されていると考える。』

と、執行部の連発する「基調」を佐藤さんも使っているのですが、なんか佐藤さんがこういう言い方で「基調はしっかりと維持」と言われると執行部が連発する「基調」から漂うインチキな香りが1ミリも漂ってこないのはアタクシの気のせいですかそうですか。

で、次が無慈悲な砲撃第一弾。

『過去2年間の円安・エネルギー価格上昇等による物価上昇のもとでは、実質賃金の伸び悩みから、家計の物価上昇に対する否定的な反応が各種ソフトデータに見られ、消費増税の影響もあり実際に個人消費は伸び悩んだ(図表12)。このことは単に物価が上がるよりは、経済情勢が改善するなかで、賃金・所得とバランス良く物価が上昇する姿が望ましいと人々が考えていることの証左であろう。「物価安定の目標」の本来の意味もそうしたものと私は考える。』

物価が上がれは全て上手く行って皆ハッピーという置物リフレ理論に無慈悲な砲撃キタコレ。


でまあインフレ期待の話になりますがちょっと途中を飛ばしましてこの辺から。

『私としては、人々の中長期的な予想物価上昇率の決定要因として、先に挙げた過去の物価上昇率の実績とともに、全般的な経済動向や資産価格動向、及び賃金改定の状況等を踏まえたフォワードルッキングな予想形成も重要と考える。また、これらを踏まえれば、エネルギー価格下落による物価上昇率低下により人々の中長期的な予想物価上昇率が悪影響を受ける可能性は低いのではないかと楽観的にみている。』

なるほどです。次が物価指標そのものに関する論点。

『ところで、物価の計測方法に関する最近の学界の研究成果は、消費者物価をどう定義するかという古くて新しい問題に様々な示唆を与えてくれる。』

ということでこの先ちと長いが引用する。

『例えば、一橋大学の阿部修人教授が開発した「SRI 一橋大学消費者購買単価指数」は企業が頻繁に投入する新商品の価格設定を物価指数の算定に取り入れる試みである3。阿部教授によれば、平均的な小売店では、46-47%の商品は前年の同じ週には販売されておらず、現実には商品入れ替え率が非常に高いという(図表14)。また、こうした新商品の中には以前の商品と実質的にほとんど変わらないものがあり、企業は実質的な価格調整手段として商品入れ替えを頻繁に行っている可能性があるという。』

『一般的な消費者物価指数が、商品価格の変化を計算するにあたって、2時点間で価格情報がある商品に限定されるのに対し、「SRI 一橋大学消費者購買単価指数」は上述の新商品投入の重要性を定量化するものである。』

この前一橋物価指数のニュースが出ていた時の説明だとナンジャソラという感じでついニュースに脊髄反射して悪態つきましたが、要は「日常品の品目更新は実際には極端に早いのだから物価統計でもその品目更新を反映すべきではないか」という話だったのねというのをやっと把握しました、って勉強不足ですいません。

『結論的には、最近では、新商品の投入効果が物価に与える影響等から、例えばスーパーマーケットの「SRI 一橋大学消費者購買単価指数」は総務省の消費者物価指数や継続商品に限定した価格指数より伸び率が高く、前年比+1〜1.5%程度で推移しているという(図表15)。こうした研究成果は、POSコードのある商品に計測対象が限定されるなどカバレッジの問題等から、総務省の消費者物価指数と単純比較できないが、新商品投入による企業の価格設定行動と物価への影響、ひいては家計の実感する物価と物価統計との乖離について、有益な示唆があるように思われる。』

と、この話もここで止めていますが、以前より石田審議委員が指摘する「帰属家賃除くコアCPI」への注目の話と話の筋は同じ方向で、そもそもCPI2%と言うけれどもそのCPIは政策担当者が目指すべき社会厚生の測定に対して本当に適切に計測されているのかというお話にもつながりますが、それをゴリゴリ言い出すとまた別の話で一席できてしまうのでここで止めたんでしょうね。


・「ローリングターゲット」という概念

さてメインイベント(?)の金融政策に関してです。『3.当面の金融政策運営』から。

『(1)「物価安定の目標」の考え方と政策運営のあり方』というのがまず来ますよ!!!

『日本銀行は消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を「2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現する」ため、約2年前に「量的・質的金融緩和」を導入した。直近の消費者物価の前年比上昇率はエネルギー価格下落のため0%程度となり、また「展望レポート」の中心的な見通しにおいて「物価安定の目標」の達成時期は2016 年度前半頃に後ずれしている(図表16)。もっとも、前述のように、経済の好循環メカニズムのもとで、物価の基調はしっかりと維持されているとの見方から、政策委員会として現時点で政策対応の必要性はないと判断している。』

でまあここから先がメインイベント。

『私としては、特定の物価目標水準を特定の期限を区切って達成するコミットメントはそもそも他の主要国が採用する金融政策運営のあり方とは馴染まないため、「2年程度の期間」はあくまで「念頭に置く」努力目標であり、「できるだけ早期に」の部分に実質的な意味があると考えている。』

執行部にマッコウクジラで無慈悲な砲撃キタコレ!!!!!というかグローバルスタンダード(キリッ)と言ってる総裁副総裁を火の海に投げ込んでいますね!!!!

『すなわち、私の理解では、「物価安定の目標」は先行き2年程度の期間を念頭に置いたローリング・ターゲットであり、これは主要国が採用するインフレ目標の考え方に概ね沿うものである。』

ローリングターゲットという言葉は佐藤さんの講演の中で初めて出てきましたかね。これは分かりやすいコンセプト。

『こうした理解に立てば、達成時期の後ずれは本質的な問題でなかろう。企業や家計も輸入物価上昇によるコスト高への懸念や実質賃金への影響等から、単なる物価上昇には概して拒否反応があることは先ほども触れた。』

確かに仰せのとおり。

『一方、政策の継続にあたっては、「量的・質的金融緩和」が大規模な資産買入れによる実質金利やリスクプレミアムの押し下げ、及び強いコミットメントにより人々の予想形成に訴えかける一種のショック療法であることを念頭に置く必要があると考える。』

ということで・・・・・・・・・・・

『無論、日本銀行は「物価安定の目標」を安定的に実現するのに必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続するとのフォワード・ガイダンスを示しており、政策の継続はこのガイダンスに沿って判断される。したがって、2年が経過したから現状の政策の枠組みを機械的に見直すべきとは思わない。』

何気に木内さんにも斬りかかっているようにも見えるが(^^)。

『もっとも、私の理解では「物価安定の目標」はフォーキャスト・ターゲティングの枠組みで、上下に幅のある柔軟な概念である。また「物価安定の目標」の安定的な実現とは、消費者物価指数の前年比上昇率が単純に実績として2%をつけることではなく、人々の中長期的な予想物価上昇率が2%程度にリアンカリングされる、すなわち家計や企業が2%程度の物価上昇を前提とした消費や投資行動に移行する見通しとなることである。』

非常に納得がいくし無理筋成分が無いですな。

『こうした「物価安定の目標」の達成状況と政策継続の是非については、毎回の金融政策決定会合で政策委員会が「判断」していくが、私としては、以下に述べる「量的・質的金融緩和」拡大後の政策効果や巨額の国債買い入れの持続可能性、及びさまざまな副作用も念頭に置きたい。』

キタコレ!!!!!!


・政策効果の話がイイハナシダナー

『(2)「量的・質的金融緩和」拡大後の政策効果』で先ほどのECBネタの続きが出てくる。

『「量的・質的金融緩和」の継続にあたり点検すべき第一のポイントはその政策効果である(図表17)。昨年10 月末の「量的・質的金融緩和」の拡大後、10 年国債金利は一旦低下して0.2%を割り込んだ後、足許は「量的・質的金融緩和」拡大前の水準に概ね戻っている。この間、市場の経済・物価見通しはむしろ下方修正されており、予想物価上昇率の一段の上昇を説得的に示す材料は乏しい。』

追加緩和の効果があったという執行部に無慈悲な砲撃(^^)。

『「量的・質的金融緩和」が想定する効果の波及メカニズムの一つは巨額の国債買い入れによりイールドカーブ全体に下押し圧力を加えることであり、昨年10 月末の「量的・質的金融緩和」拡大はそうしたメカニズムを強めるものと理解していた。現実には買い入れ規模増大の割に流動性プレミアムの上昇等から名目金利の下押し効果は逓減し、政策の難度が高まっているように私には見受けられる。』

イイハナシダナー

『長期金利が低下しにくくなった背景として、第一に、そもそも金利水準が低く、国債買い入れの量と金利の間にリニアな関係が成立しにくくなっているとみられること、』

直線一気理論ェ・・・・・・・・・

『第二に、極端な低金利下では最終投資家の需要がみられなくなる傾向があること、第三に、流動性低下や海外金利の影響によるボラティリティ拡大でディーラーのリスク許容度が低下していること、が考えられる。』

ちょうど昨日債券市場サーベイの5月版が出ていたのですが・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/paym/bond/bond1505.pdf

これを見ると金利水準が市場の流動性や機能が改善しているのですが、その間金利って上昇してるんですよね♪


『このうち、第一の点は、名目金利が低下しにくくなる中、先行き実質金利が一段と低下するかどうか、すなわち、日本銀行の「強く明確なコミットメント」のみにより人々の中長期的な予想物価上昇率が更に高まるかどうかがポイントとなる。無論、日本銀行がたとえマイナス金利でも買い入れを進めることで名目金利を一段と押し下げることは理論的に可能かもしれない。しかし、その場合、国債の買い手は日本銀行のみとなることが想起され、財政ファイナンスの懸念や市場機能の一段の低下といった問題を惹起しよう。』

ですなあ。

『また第二の点は、最終投資家の先行きの買い入れ目線次第という面がある。例えば、この7月からの生命保険会社の一部保険商品の予定利率引き下げは先行きの投資家行動に影響する可能性がある(図表18)。第三の点は、市況次第でディーラーのリスク許容度は変化しよう。』

『以上を念頭に、日本銀行の買い入れ進捗が金利形成に及ぼす影響はもとより、投資家・ディーラーの動向を注視し、今後の政策効果の出方をしっかりとモニタリングしていきたい。』

宜しくお願い致しますm(__)m


・持続可能性への指摘キタコレ

『(3)巨額の資産買い入れの持続可能性』から。

『「量的・質的金融緩和」の継続にあたり点検すべき第二のポイントは、巨額の国債買い入れの持続可能性である(図表19)。』

キタコレ!!!!!!

『現状、日本銀行は年間約80兆円のペースで中長期国債の保有を増加することにコミットしている。グロスでは政府の市中発行額の約9割に相当する年間約110〜120 兆円のペースである。仮に、最終投資家が満期償還を迎えるごとに国債保有を減少させる、すなわち再投資を行わなければ、日本銀行による巨額の国債買い入れは持続可能にみえる。しかし、現実には担保需要等から一定の国債保有への需要は存在する。』

さいですな。

『例えば、「量的・質的金融緩和」実施当初、国債保有額を削減してきた大手行の国債保有額はこのところ安定し、地域金融機関の保有額も安定的に推移している。このように最終投資家による満期償還分の再投資への一定の需要がみられるなかで日本銀行が現状の巨額の買い入れを継続し、最終投資家が国債保有をこれ以上減らせない限界まで保有残高を削減すると、買い入れの持続可能性が問題となろう。』

イイハナシダナー

『そうした限界点がどこにあるかはその時点の金利水準等にもよるため、現時点で見通すことは難しいが、政策の継続にあたっては、オペレーションのフィージビリティへの配慮も重要である。』

いやもうこれは茶々入れる必要のない論点です。


・副作用の指摘までキタコレですよ!!!

最後に(実際は財政の話と山梨県経済の話があるのですがネタとして引用するのは最後ですので)『(4)副作用の点検』であります。

『「量的・質的金融緩和」の継続にあたり点検すべき第三のポイントは、巨額の買い入れの副作用である。』

(・∀・)!!!

『もとより政策効果と副作用は表裏一体で、副作用のない政策に効果は期待できない。もっとも、異例の政策を続けていくなかでは、効果と副作用を比較し、副作用が政策継続の限界的な効果を上回らないかどうかのチェックは欠かせない。』

置物やジンバブエは佐藤さんの爪の垢を煎じて百万回飲むべし。

『その点、本行の国債保有割合が高まることによる市場機能への影響については、やや長い目でみて出口を円滑に出るにあたっては市場機能の回復が重要なポイントと思われるだけに、2 月に調査が実施された「債券市場サーベイ」の結果については幾分憂慮している(図表20)。』

でまあ先ほど引用しましたが金利が上昇して市場機能が若干回復、という結果になっていましたので、とりあえず金利を馬鹿下げするのが良くないというのは判明したと思いますが、ただまあ日本のこの数か月における金利上昇は特に欧州の直近金利上昇と比較したら思いっきりオーダリーであって、きゃりーがマーライオンになった2013年のようなマーライオン相場になった場合には金利上昇即市場機能回復、では無かったりすると思われますので、今回の債券市場サーベイ結果についてもそのあたりは留意して査収されたいと思うのです。

『また、超低金利の継続による金融機関経営への影響のほか、広義の決済システムの安定性についても引き続き問題意識を持ってみている。』

マイナス金利が続いた場合の問題点指摘ですな、うんうん。


とまあそういう事で、黒田総裁のオモシロ国会答弁で全て持って行かれてしまったという佐藤審議委員の金懇挨拶がこのまま持って行かれたままでは勿体ないので絶賛引用大会をさせていただきましたとさ、という所ですが、途中やや端折った部分もあるので全文鑑賞を推奨しておきますです、はい。




2015/06/10

お題「ドイツ金利ェ・・・・・・・・/調節年報は輪番オペの影響分析がオモロイ」

責任の所在が不明確・・・・・だと???
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150609/k10010108001000.html
新国立競技場 「責任の所在不明確が問題」
6月9日 12時11分

『また、下村文部科学大臣は、東京都の舛添知事が、国立競技場の改築費の一部を都に負担してもらいたいという国の要請に反発していることに関連して、東京都に負担を求める根拠となる法律の整備を検討する考えを示しました。』(上記URL先より)

お、おう・・・・・・・・・


○市場メモメモ

・ドイツ金利ェ・・・・・・・・・・・

アイヤー!!
http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0OP28Q20150609
ドイツ10年債利回り1%に向け上昇、売り再燃=ユーロ圏市場
2015年 06月 10日 04:03 JST

『[ロンドン 9日 ロイター] - 9日のユーロ圏金融・債券市場では、成長、インフレ見通しの改善を背景に、独連邦債に対する売りが再び強まった。独10年債利回りDE10YT=TWEBは0.87%まで低下する場面もあったが、その後は8ベーシスポイント(bp)上昇の0.97%。先週つけた年初来の高水準となる0.998%に迫った。「利回りは今後1%を試す展開になる」(DZ銀行のストラテジスト、ダニエル・レンツ氏)とみられている。』(上記URL先より、以下同様)

ふむふむ。

『ニューバーガー・バーマンのグローバル債券マネジングディレクター、ジョン・ジョンソン氏は「成長、インフレ見通しの改善があらためて意識されており、利回りは上昇方向で調整される必要がある」と指摘。独10年債利回りは「1%─1.5%のレンジが経済の実勢や適正水準に近い」と語った。』

ということですが、2003年の円債絶賛暴落との比較という話が良く出てくるわけですが、まああの時はその前に永久デフレみたいな感じの話があって、そもそも金融機関の不良債権問題があばばばばーで株価がどひゃーだった訳ですが、そこからりそな銀行の救済があって株が戻りだして暫くした所からの金利上昇の図という形でしたな。

でもってあの時は第一弾が超長期62回の入札からの相場崩壊が主に超長期中心にカーブの後ろが盛大に売られる形で推移して、長期超長期が売られた相場だったのですがいやーどこまでやるんだとか思う辺りでさすがに買いが入っていったん反発。でまあ問題はその次の金利上昇で、当初は本当にこのまま戻るのかいなとか思っていた株価が思いの他確りで、物価は全然アガランチ会長でしたが株価が上がって何かこう雰囲気が良くなってきて政策当局からの発言もウッキウキ状態になって来た訳ですよ。でまあそんな流れから今度は「良く良く考えたら近い将来量的緩和終わるかもしれないから備えないといけないんちゃうのかね」という感じになって中期がコケだしたというか、中期がコケ出してから相場の自己実現状態になったというのが正しいのかもしれませんが、5年どころかCPIマイナスのままなのに2年までコケ出すというブレークイーブンもへったくれもあったもんじゃない状態になった訳です。

とまあジジイの昔話で長広舌をふるいましたが、よーするに今のドイツ国債様ってそうは言ってもQEは2016年9月まで実施するという話がありますからよもや金融政策の変更はないだろというのが前提にあるのではないかと推測します(こちとらドイツ国債のマーケットメイクしてる訳ではないから推測するしかごじゃりません)が、問題はマンデート直結のCPIが改善して当局者がウッキウキになってしまう辺りでございますな。

これもう政策当局者の仕様なので仕方ないと思うのですが、追加緩和みたいな施策を打ち込んで資産市場が上がったりする位ならともかく、経済指標まで良くなってくるともうウッキウキになってしまい、金利上昇を「良い金利上昇」と思ってしまうという事例は福井の俊ちゃんですらそうでしたし(なお俊ちゃんの場合でもその前の金利低下の時に「国債市場は別にバブルじゃないもんね〜(ニッコリ)」という趣旨の話をして更に国債市場が強気化するという事例もありました)、QQEローンチ直後の黒田さんも株高進行でニヨニヨして円金利上昇は経済の見通しが強くなったためですし下げるのは実質金利だよウヘヘヘヘとか言い出してきゃりーぱみゅぱみゅマーライオン相場になった次第でしたな。

ということですのでまあ金利上昇が株式市場を直撃するとか為替市場を直撃するとかいうような事態(というかそういう言い方をされる事態、というのが正しいように思える)が起きると金融政策当局の皆様の尻に火か点いてウッキウキから目が覚めるのですが、どこまでECBの皆様がニヨニヨしているかというのと、その間にうっかりCPIが改善しちゃったりすると更にニヨニヨしてくるというのが中々こうアレという話なんでしょうな。

つまりですよ、ECBのQE(なおバランスシートのサイズを目標にしている訳ではないので、APPとマイナス金利の組み合わせ、という方が適切)って2016年9月末まで継続という事になってはいるのですけれども、実はマンデートが早期に達成できるというのであれば別に2016年9月まで継続することは無いという建付けになっている(冒頭ステートメント読んでちょ)のであって、まあさすがにそこがぶれると不味いので「QEは完遂する」というコメントが毎度入っているのですが、かつての量的緩和時代における日銀のように解除条件に対して「足元の物価指標に対して紐つけをしたコミットメント」を取っている訳ではない(2003年の暴落の時には結局はそのコミットメント文言をより明確化することになった)ので、「いや待てこの調子なら2%達成が早期に逝くのではないか」とかになりだすともう大変ですよ先生とゆー話になる訳ですな、うんうん。

てな訳でまあ中短期が盛大にコケるような金融政策への思惑を伴うか伴わないかでマーライオンの度合いも変わってくるでしょうなあ、という当たり前の結論になるのですが何となく2003年の対比するのに記憶(とメモ等)を辿ってダラダラと書いてみましたが、そんな事より2003年の債券あばばばばー相場から干支が一回転している事の方に打ち震えるアタクシなのでありました。


・米国金利ですが

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0YV51620150609
米金融・債券市場=中長期債利回り7カ月ぶり高水準、週内の入札で売り圧力
2015年 06月 10日 05:30 JST

『9日の米金融・債券市場は、期間が長めの国債利回りが7カ月ぶりの水準に上昇。今週は大規模な国債入札が実施されることから、売り圧力が高まっている。RBSセキュリティーズの米債ストラテジスト、エド・アトキンス氏は「週内に加速する国債入札がこの日の焦点となった」と述べた。トレーダーの間からは、欧州市場で独連邦債の売りが再燃したことも、米債利回り上昇につながったとの声が聞かれた。』(上記URL先より)

まあ何ですな、来週のFOMCは現状維持でしょうからその後の会見に注目という事になるんでしょうけれども、米国の場合はそうは言いましても年内利上げはコンセンサスで、その後の利上げパスもまあゆっくりでしょさすがに、という話なのですから、そーゆー意味で言えば話の前提がコケるのって「ゆっくり利上げパス」という市場の想定する前提が崩れるときですから、まあそこまでの指標改善というのはハードル高いんじゃないのとは思うのですが良くわからん。

どうせ年内利上げするなら9月にサクッと上げて「もちろん今後もデータ次第だけど、少なくとも1四半期は今回の利上げの影響を見極めていく余裕がありますし、状況によってはもう少しその先の利上げを待つ余裕があるんじゃないですかねえウヘヘヘヘヘ」というメッセージをどどーんと出した方が相場が落ち着くように思えるんですけどねえ。


・なお日本は流動性供給入札でヒャッハー

とりあえず置いておく。
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0YV2HD20150609
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が大幅反発、長期金利は一時1週ぶり0.445%
2015年 06月 9日 15:24 JST

『<15:20> 国債先物が大幅反発、長期金利は一時1週ぶり0.445%

国債先物中心限月6月限は前日比36銭高の147円31銭と大幅反発して引けた。前日の米債高を受けて買い先行後は、限月交代に絡む持ち高調整で小動きのまま午前の取引を終えた。午後に入ると、堅調な流動性供給入札結果を織り込む形で上げ幅を拡大。現物長期・超長期ゾーンに国内勢とみられる買いが観測されたほか、日経平均が大幅安となったことを受けて、上値を試す展開となった。現物市場では、10年最長期国債利回り(長期金利)が一時同4.5bp低い0.445%、20年超長期国債利回りは一時同6bp低い1.215%、30年超長期国債利回りは一時同5.5bp低い1.480%とそれぞれ6月2日以来1週ぶりの水準に低下した。』(上記URL先より)

・・・・・・・・・・・・・まあ10年0.5%でいったん止まったように見えたからという事なのでしょうがもうね。


○調節年報は途中の辺りは相変わらずなのだが輪番オペの影響分析が中々良くできていますよ

先週のネタですすいませんすいません。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2015/ron150603a.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2015/data/ron150603a.pdf(本文、PDFでそこそこ量あるので注意)

・ディレクティブに忠実に書いているので当たり前なのだが物悲しさが伴う概要説明

まずはHTMLの『概観』の方から。

『2014年度において、日本銀行は、前年度に続き、「量的・質的金融緩和」のもと、長期国債の多額の買入れなど、広範な資産の買入れを通じてマネタリーベースの残高を大きく拡大させるという、極めて強力な金融緩和を進めた。』

うむ。

『すなわち、日本銀行は2014年10月までの間、2013年4月に導入した「量的・質的金融緩和」のもとでの金融市場調節方針に従って、長期国債や国庫短期証券、CP等、社債等、ETF、J-REITといった広範な資産の買入れを通じて、マネタリーベースが年間約60〜70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を進めた。』

そして・・・・・・・・

『さらに、日本銀行は、2014年10月31日の金融政策決定会合においては、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定した。すなわち、マネタリーベースの増加ペースを、それまでの年間約60〜70兆円から約80兆円に拡大するとともに、長期国債の買入れペースについても、日本銀行の保有残高の増加額を、それまでの年間約50兆円から約80兆円に拡大した。また、長期国債買入れの平均残存期間も、従来の7年程度から、7年〜10年程度へと長期化した。さらに、ETFおよびJ-REITの買入れについても、日本銀行の保有残高がそれぞれ年間約3兆円、約900億と、それまでの3倍のペースで増加するよう買入れを行っていくこととした。その後、日本銀行は、この新たな金融市場調節方針に沿って、一段と高いペースでの資産の買入れを進めてきた。』

3倍攻撃とかナツカシス。

『このような金融市場調節の結果、2014年末のマネタリーベースは275.9兆円と、前年末に比べ74.0兆円の増加をみた。さらに、その後もマネタリーベースを着実に増加させる調節を行ったことから、2015年3月末のマネタリーベースは295.9兆円と、前年3月末に比べ76.0兆円の増加となった。また、日本銀行の保有する長期国債の残高は2014年末で201.8兆円と、前年末に比べ60.2兆円増加し、2015年3月末には220.1兆円と、前年3月末に比べ66.0兆円の増加となった。』

ということでディレクティブがそうなっているのだからこう説明するしか無いのですが、企画局どころか置物師匠までもがすっかり連呼しなくなっている「マネタリーベース」をここまでの間都合6回も連呼している訳でございまして、指揮官がトツゲキーと命令を出して実行部隊である市場局の調節担当部署がマネタリーベースに向けて突撃を果敢に実施しているというのに、指揮官の方がすっかりマネタリーベース直線一気理論から「ティンカーベルのこの粉を信じれば空も飛べる」というピーターパン理論でお伽の国の世界に旅立たれてしまいまして、金融市場に突撃した実行部隊の梯子が外されているというこの現状に対して現場部隊が「マネタリーベース」を連呼している、というように読むと(いやまあそんな訳ではないでしょうが)実にこう世の無常というのを感じて調節部隊を初めとする金融市場局の皆様に対して落涙を禁じ得ませんな。


・当座預金は今後誰が持つのか

というような雑談はともかくとして以下は本文から参りますが、まずは本文の見出し『2.2014年度中の日本銀行の金融市場調節運営の概要』の所で、実際の買入がどうなった云々は事実の記載なのでまあ流すのですが、日銀の当座預金残高の業態別推移の辺りから。

『負債サイドをみると、日銀当座預金残高は、「量的・質的金融緩和」のもとでの各種の資産買入れなどを通じた資金供給の増加を反映し、2014 年末には178.1 兆円と、概ね見通しどおりの増加となり、2015 年3月末には201.6 兆円に達し、前年との対比では72.9 兆円の増加となった(図表2-2)。日銀当座預金残高を業態別にみると、全ての業態で増加がみられたが、とりわけ「都市銀行」および「その他準備預金制度適用先」の増加幅が大きくなった(図表2-3)。』

ということでその後が『BOX1 主要中央銀行の金融政策とバランスシートの比較』という話になっていて、日銀バランスシートの負債サイドの話はさらっと流している形なのですが、冷静に考えればこれからもバランスシートを拡大しないといけないとなった場合に、負債サイドである一方の発行銀行券がそんなに劇的に増えるものではないのですから、実際に一番問題になるのは「当座預金(大体の場合超過準備)を誰が持つのか」という話であって、預金金融機関がどこまで当座預金の拡大をできるのか、というのが問題になる筈なのですが、そちらの話は触れないのか触れたくないのかスルー気味なのは気になります。


・短国市場の説明とマイナス金利関連のコラム

でまあ話は思いっきりワープして市場概況に関する部分で『(2) 国庫短期証券市場』に参ります。

『国庫短期証券の利回りは、日本銀行が「量的・質的金融緩和」のもとで多額の国庫短期証券を買い入れ、国庫短期証券の市中流通残高が減?傾向を辿る中、2014年度前半は緩やかな低下傾向を辿った(図表3-2)。その後、国庫短期証券の利回りは、期末に向けた国庫短期証券の需要の高まりなどを背景に、2014年9月に初めてマイナスとなり、その後もマイナス圏で推移することが多くなった。』

まあおまえの所が無慈悲に買うからな。

『2015年入り後は、日本銀行の買入国庫短期証券の残高が概ね横ばいで推移するもとで、国庫短期証券の利回りはゼロ近傍で推移した。』

>国庫短期証券の利回りはゼロ近傍で推移した。
>国庫短期証券の利回りはゼロ近傍で推移した。
>国庫短期証券の利回りはゼロ近傍で推移した。

・・・・・・・・・(−−;

特に資金運用サイドからすると名目ゼロ金利制約というのが非常に大きな問題になる訳で、金利が正なのか正じゃないのか(またはゼロが閾値のケースもあると思うが)というのはそこで投資家需要に不連続な断面が生じるという意味で非常に重要なポイントなのですが、その不連続性について全く顧慮しないような表現をしているという辺りがもうアレな訳でございまして、金融市場局様におかれましては「市場との対話」を熱心にしておられるという触れ込みになっている筈なのに、この市場における需給の不連続部分がまるで存在しないような文章で市場概況の説明を済ませるところが甚だ遺憾ですな。

いやね、こういうポイントになるような特異点っていうのは市場動向的にはきわめて重要な所になるのですから、そういうのを軽くスルーするような表現を使うというのが市場の中の人的にだいたいカチンと来させるところになる訳でして、まあ中曽さんの昨年11月の講演とかでも散々悪態つきましたけど、オペやってる方からすると細かい話かも知れないけれども参加者的には結構な重要ポイントみたいなところでこういう表現をされてしまうと「結局日銀って市場を分かってないよね」という失望に繋がってしまう訳で、市場との対話もへったくれもあったもんじゃないですよと思うのでここの説明文の表現については猛省を促したい。


では何故「ゼロ近傍」で流したかというと以下にエクスキューズがある。

『民間金融機関には担保などとして国庫短期証券を保有するニーズがあることに加え、海外投資家や投資信託など非付利先では、国庫短期証券の利回りが付利金利水準を下回っても、なお資金運用手段として国庫短期証券を保有するニーズが存在する。この中で、投資信託は、金利がマイナスになった段階では、国庫短期証券による運用を一旦控える動きがみられたが、一部の海外投資家は国庫短期証券による運用を続ける傾向が顕著であった。』

国内投資家を排除して海外投資家には購入機会を与るとはどこの国の中央銀行なのでしょうか。

『これは、2014年度中、ドル資金の調達にプレミアムが観察される局面が多くなる中、とりわけドル資金を潤沢に有する海外投資家は、ドル資金を為替スワップ市場等で円資金に交換することでマイナス金利での円資金調達が可能となるケースが多く、このことを勘案すれば、国庫短期証券の利回りが小幅マイナスであっても、なお収益性が確保されたためと考えられる。』

マイナス金利は海外のせいで文句言うならベーシススワップ市場に言えよワシら知らんがな、と言いたいのは把握した。

なお、追い打ちをかけるようにその直後に『BOX3 海外投資家の投資動向とマイナス金利』というのがある。

『2013 年3月末から2014 年12 月末までの国庫短期証券の業態別保有比率の変化をみると、日本銀行が国庫短期証券の買入れ残高を積み上げる中、銀行等の保有残高が大きく減?した一方、海外投資家の保有残高は概ね横ばいで推移した(BOX 図表3-1)。海外投資家の国庫短期証券の保有は、外国中央銀行などによる外貨準備の運用によるものが中心とみられ、外貨準備ポートフォリオの通貨構成の分散というニーズから、国庫短期証券に対し、金利水準に非感応的な一定の需要があることを示唆している。』

というのが分かっているなら何故恒常的にマイナス金利になるまで短国を買わないと回らないようなMB拡大の枠組みを当初作ったのか(現実問題として追加緩和の時にMB内訳を変えていなかったら今頃大変なことになっていた)と小一時間問い詰めたい。

『また、一部の海外投資家は、外貨資金をもとに円資金を調達して国庫短期証券を購入しているが、為替スワップ市場における円資金の調達コストである「ドル投円転コスト」は、国庫短期証券の利回りがマイナス圏で推移した2014 年後半において、国庫短期証券の利回りを大きく下回る水準で推移していた(BOX 図表3-2)。このため、ドル資金を有する海外投資家は、マイナスの円資金調達コストまで勘案すれば、国庫短期証券による運用でなお収益性が確保できたとみられる。』

『国庫短期証券の利回りが低下するにつれて、国庫短期証券に投資していた投資家の一部は、相対的に高い利回りを求めて、投資先を残存期間が短い利付国債にシフトさせた。こうした中、海外投資家は、低位の円転コストを背景に、利回りがマイナスとなった利付国債にも投資を続けたとみられ、このような海外投資家の行動は、残存期間が短い利付国債の金利を押し下げる要因の一つとなった。』

ということで2年の金利がマイナスからなかなか戻らないのは海外のせいですとでも言いたそうな勢いですな。


・国債市場の説明はサラサラで流動性の話は後の方で

その次が『(3) 国債市場』ですけど。

『長期金利(10 年新発債流通利回り)は、日本銀行による長期国債買入れが需給面から金利下押し圧力となり続けるもとで、低下傾向を辿った。特に、2014 年10 月末の「量的・質的金融緩和」の拡大を受けて日本銀行の長期国債買入れが一段と増加するとともに、原油価格の大幅な下落などを受けて欧米長期金利が低下傾向を辿る中、長期金利は、とりわけ2014 年秋以降は一段と低下傾向が顕著となり、2015 年1月には既往最低水準となる0.1%台(日中ベース)まで一旦低下した(図表3-3、3-4)。その後は、原油価格の下げ止まりや米国長期金利の反発、本邦長期金利の低下に対する警戒感などを背景に、長期金利は幾分上昇し、0.2〜0.4%台のレンジで推移した。』

以下超長期と中期の市況概況があって、まあこちらは調節年報だからそこまで細かく書かないというのはあるけど、単にサラサラ書いてあるだけでして・・・・・・・・

『この間、長期国債先物価格のインプライド・ボラティリティは、2014 年度中は低めの水準で推移したが、上述のような長期金利の低下後の反発などの動きを反映し、1月中旬以降、上昇する場面がみられた(図表3-5)。』

ということで、その次のコラムが『BOX4 民間主体の国債保有構造の変化』ですので、ここではサラサラと流しています。


・調節の影響という話のコラムは良くできてますのでご覧あれ

『4.金融市場調節手段の運営状況』以下の所にあるコラムはこれまでの悪態を覆すオモロイ出来なのでこれは読むべし。本文25ページ(ファイルの26枚目)以降になります。

『BOX5 長期国債買入れオペにおける落札利回りと市場流通利回りの関係』

『ここでは、日本銀行の長期国債買入れオペにおける全ての買入れ銘柄の情報(利回りや落札額)を用いて、「オペでの落札利回りと流通市場における利回り(=市場流通利回り)の差2」を算出し、落札利回りについて分析する。なお、市場流通利回りとしては、オペ応札締切り直前(≒前場引値)において流通市場で売り手が呈示しているオファーと買い手が呈示しているビッドの仲値を用いる。』

ということで、まあこの分析は日銀にしちゃあ頑張っている分析。

『2013年4月の「量的・質的金融緩和」導入直後は、超長期ゾーンを中心に、その時々の市場流通利回りと比べて高い利回りで買い入れるケースが多かった。これは、市場金利のボラティリティが大きくなっていた中で、リスク削減の観点から金融機関による債券売却ニーズが高まり、市場での価格に比べて相対的に安値であっても、日本銀行のオペを通じて早期に国債を売却したいとのニーズが強まったことが背景であると考えられる。』

要するにオペで外すのが目的。

『もっとも、その後は、「当面の長期国債買入れの運営について」を、買入れ頻度を増す一方で、1回当たりの買入れ額を引き下げる形に見直したことや、長期金利のボラティリティ低下などを受けて、いずれのゾーンでも、「オペでの落札利回りと市場流通利回りの差」は0bps近傍となっており、日本銀行の長期国債買入れは、ほぼ市場流通利回り並みの落札金利で行われていた姿となっている。』

と書いてありますが結論部分にしらっと意味深表現があって中々よろしいのです(後程)。

『その後、2014年10月末に「量的・質的金融緩和」が拡大され、この中で国債買入れの平均残存期間も延長されたことを受け、とりわけ超長期ゾーンの国債買入れ額が大幅に増加することとなった。この中で、日本銀行が超長期国債を市場流通利回りよりもやや低い利回りで買い入れるケースが目立った。これは、超長期国債についてはもともと長期安定的な投資家のウエイトが高く、日本銀行のオペを通じて超長期国債を早急に売却したいといった先は多くなかったためと考えられる。 一方、短中期ゾーンでは、このゾーンの金利水準がマイナスとなり、債券投資スタンスを消極化させる先がみられていた中、日本銀行がこのゾーンの長期国債を、市場流通利回りよりも幾分高めの利回りで買い入れるケースがみられた。』

(・∀・)ほほう。

『その後、日本銀行による長期国債の買入れが進捗していくもとで、「オペでの落札利回りと市場流通利回りの差」は、いずれのゾーンでも「量的・質的金融緩和」導入以降の平均的なレンジ内に概ね復した。なお、2015年3月末にかけては、年度末を控えて積極的な債券売買を控える先が多くなっていた中、日本銀行が長期国債を市場流通利回りよりも低い利回りで買い入れるケースが、再びみられるようになった。』

ということで・・・・・・・・

『日本銀行の巨額の長期国債買入れは、長めの金利に下方圧力をかけ続けていると考えられるが、具体的には、@毎回の買入れオペにおいて日本銀行が市場流通利回りと比べて低い利回りで購入することで、その時々で金利を押し下げる形と、A日本銀行の長期国債買入れによる国債需給引き締めの効果が、個々のオペの実施に先立って国債の流通利回りに織り込まれる(したがって、毎回のオペでは、既に低下済みの市場流通利回りと同程度の利回りで国債を買い入れることになる)形があると考えられる。』

>個々のオペの実施に先立って国債の流通利回りに織り込まれる
>個々のオペの実施に先立って国債の流通利回りに織り込まれる
>個々のオペの実施に先立って国債の流通利回りに織り込まれる

・・・・・・・・・・(;∀;)イイシテキダナー

『上記分析では、日本銀行は市場流通利回りとほぼ同程度の利回りで国債を買い入れている場面が多いことが分かるが、こうした場面でも、Aの形で金利に低下圧力が加わっているといえる。』

と、さらっと書いていますがここのコラムは中々よろしい(・∀・)


その次の『BOX6 長期国債買入れオペ後の流通市場の動き』もご覧くだされ。

『日本銀行の長期国債買入れオペは、オペの結果を公表した直後の国債流通市場における利回り形成にどのような影響を与えているのだろうか。ここでは、BOX5で試算した「オペでの落札利回りと市場流通利回りの差」を用いて、この値とオペ実施の前後における債券利回り変化3の関係について、長期ゾーン(残存期間「5年超10年以下」)を例に検証する。』

これは!!!!

『まず、「量的・質的金融緩和」の導入直後は、オペ後に相場が大きく変動していたが、「オペでの落札利回りと市場流通利回りの差」とオペ前後の利回り変化の間に明確な関係性はみられない。一方、その後は、オペ後の相場の変化は小さくなるとともに、日本銀行が買入れオペにおいて市場流通利回りよりも低く(高く)購入すると、流通市場で債券がやや買われ(売られ)、利回りが低下(上昇)していることが窺える。この関係は、「量的・質的金融緩和」の拡大後も概ね維持されている。』

ふむふむ。

『2013年4月の「量的・質的金融緩和」の導入当初は、日本銀行による多額の長期国債買入れが市場に及ぼす影響の不確実性が強く意識された結果、日本銀行の長期国債買入れオペ直後に国債流通利回りの変動が大きくなっていたものと考えられる。その後、日本銀行の長期国債買入れオペ直後の流通利回りの変動が小幅になった背景としては、@国債買入れオペの経験が積み重なったことに加え、A日本銀行が、買入れ頻度を高めつつ1回当たりの買入れ額を小さくする方向での運営方針の見直しを行ったこと(2013年4月18日、5月30日公表)や毎月初回のオファー額を明示するようになったこと(2014年10月31日公表分以降)もあり、日本銀行の長期国債買入れが国債流通市場に及ぼす影響について、市場参加者の見方が収斂してきたことが考えられる。』

まあそうですな。

『また、「日本銀行が買入れオペにおいて市場流通利回りよりも低く(高く)購入すると、その後、流通市場で債券がやや買われ(売られ)、利回りが低下(上昇)する」という関係が窺われるようになった背景としては、上述したように、日本銀行の長期国債買入れが市場に及ぼす影響についての見方が収斂するにつれて、オペの結果が流通市場における国債需給の状況をよりストレートに反映するようになり、これが市場にとっての追加的な情報と受け止められ、その後の国債流通利回りの形成に影響を及ぼしている可能性を指摘できる。』

(;∀;)イイシテキダナー

・・・・・・・つーことでこの調節年報は唯一最大の読みどころはこの二つのコラムでして、これだけ気合を入れた分析が出来るのにどうして(内務省検閲により削除されました)。


なお、このオモシロ分析以降はまあ事実の説明で、最後の『6.市場参加者との対話強化に向けた取り組み』はマジでどうでもよいので以下はパスします。



2015/06/09

お題「ECB買入状況の確認/短国関連市場メモ/その他」

ウラー!!!
http://www.47news.jp/CN/201506/CN2015060601001425.html
二階氏「呼ぶのが間違い」 憲法審査会参考人の安保「違憲」
2015/06/06 11:44 【共同通信】

『「党の方針は初めから決まっている。あくまで参考意見で大ごとに取り上げる必要はない」とも語った』(上記URLより)

いやええ別に引用に他意はございませんですわよ(棒読み)。

#本日は諸般の事情(段取りの悪さ)で甚だ簡単に参ります


○市場メモ関連

・ECBの買入関連

http://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omo/html/index.en.html
Open market operations

http://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omt/html/index.en.html
Asset purchase programmes

辺りからちまちまと数字を拾ってくると市場を普段触っていなくても大体見えてくると思うのですけどね。

・6月入り直近1週間の走りは154億ユーロなので平常運転

http://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omo/html/index.en.html
Open market operations

の下の方に「EURO outright operations」というのがありまして、こちらでは毎週月曜になると前週末の買入残高の走りが見れます。ただし見れるのは各資産買入プログラムにおける残高ベースのみですが(多分簿価ベース)。

でもってこいつを前週の数値と比較して見ると、現在買入が実施されているCBPP3とABSPPとPSPPの合計額が254,371百万ユーロとなりますが、月末値に関しては

http://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omt/html/index.en.html
Asset purchase programmes

の方が詳しいのでそっちを見ますと、当該3つの買入プログラムでの買入額が238999百万となっていまして、差分が15372ですから6月1週目は154億ユーロの購入と金利がランコルゲする中でも平常運転で特に金利上昇したからたくさん買入をしようというような気の利いた話ではなかったというお洒落なことが示されています。

ちなみにAsset purchase programmesのほうにあります

『History of cumulative purchase breakdowns under the APP. Weekly changes are reported in the Weekly financial statements, full historical data are available in the Statistics section under Data on daily liquidity conditions.』

という辺りを見ると買入の色々なのが出てくるので(表計算ソフトが必要)そこで数字を拾ってああでもないこうでもないと加工すれば良いのですけど、その加工の結果ですなあ・・・・・・・・


・5月の買入はちょっとだけ増えていたのは事実

で、全体の買入額の推移を月次で見ますと、月末対比で3月:60,914、4月:60,325、5月:63,088となっていて5月の買入ペースが上がっている形になっている(つーか3月は月の途中から開始したのに600億にしているのがなんか笑えます)のですが、この前ネタにしたようにペースって実は先々週から週に150ペースに落ちて、というか月600に対する巡航速度ペースになっていまして、あの5月の瞬間買入拡大とクーレ理事の発言は何だったのかと??????感が漂うのでありました。

しかも買入額増やして介入するならお前先週とかだろと思うのですが、まあそういう気は実はありませんというのがオサレでして、その上「ボラに慣れましょう」ときたもんですからまあやっちまったな感は強いですね。



・5月のドイツ国債買入平均年限は短期化

Breakdown of holdings of debt securities under the Public Sector Purchase Programmeというのが同じページにありますのでそれをヘコヘコダウンロードするとこれまた便利なものが出てまいります。

Weighted average remaining maturity in years

ってのがありまして、買入国債の平均残存年限がありまして、

      31/03/2015 30/04/2015 31/05/2015
Austria     7.79      7.99        7.84
Belgium     8.8       9.1        9.13
Germany    8.12     7.9        7.11
Spain     11.66       9.73       9.71
Finland     7.26       7.15      7.16
France     8.22       7.84        7.83
Ireland     9.43       9.14        9.61
Italy       9.07       8.41        8.68
Lithuania     6.46      5.22        6.11
Luxembourg    7.01     6.88        6.71
Latvia        6.43     5.93        6.3
Malta         10.37    8.47      11.05
the Netherlands    6.71    6.97      6.85
Portugal       10.96     10.77      10.84
Slovenia       6.33     7.92        7.5
Slovakia       9.49     9.26       9.29
Supranationals     7.26   8.05        7.8
Total          8.56    8.25       8.07


きちんと貼れて居るかどうか自信がありませんが怪しい場合は心眼で見ていただきたいと存じますけれども、確かにこの前のドラギ発言にありましたように、ドイツ国債の買入平均年限は3末の8.12年から7.9→7.11と思いっきり1年短期化しておりまして、マイナス金利深くてで買えない銘柄も入ったから短いのを買う事によって長期債の需給に影響したというのもあります(キリッ)という説明になっているのでした。

しかしまあ何ですな、それはそれで良いのですけれども、黒田日銀の導入時と同じで、名目金利を下げたいのか量を出したいのかという話が不明確で、日本の場合はインフレ期待をシフトアップして実質金利を下げるという話はしているものの、肝心のインフレ期待は正確に測定できない話なので、「名目金利のどこをどうしたいのか」というのが不明確なままで進み、結局市場のボラが上昇するの巻となりましたな。

ついでに言えばあのクーレ理事発言が余計で、あそこで変に買い戻しやロングを作らせてしまったためにもう一発ゲロゲロマーライオン相場をやる余地が出来てしまうというのがECBの市場オペレーションの伝統的なヘタクソ振りっぽくて素敵です。


まーそもそもECBって準備預金期間中に対応するMROをドカンと実行して後は知らんがな状態にして、かつ所要準備を集めにすることによってシステム内での資金繰りバッファーを確保して、さらに預金ファシリティ金利をプラスにしておけば(FEDもBOJも預金金利に付利するようになったのはつい最近)きめ細かいオペでトン近辺の調節というようなこともしなくてよく、というような雑な金融調節しかしてなかったという歴史的な経緯がありますので、どうも市場に対してやることも雑で頂けませんなあという所です。


・短国買入&6M短国入札

6M入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150608.htm

(3)募入最低価格 100円00銭2厘(募入最高利回り)(-0.0039%)
(4)募入最低価格における案分比率 26.6229%
(5)募入平均価格 100円00銭4厘(募入平均利回り)(-0.0079%)

・・・・・・・・・・・お、おう。

えーっとすいません何ですかこのマイナス金利足切はという所ですが、期末ニーズやら海外ニーズやらを狙っているのか今週の日銀短国買入がうっかり増額することを狙っているのかというところだとは思うのですが、まさか足切までオーバーパーしかも100円の2つ上で切れるとは思いませんでした(−−;

平均もマイナスということで、落札結果出た後は「入れすぎて投げる人がいね〜か〜」とプラス金利で購入したい人たちがナマハゲの如く歩き回るもどこの家に言っても投げる人もなく、そのままスポネの現先市場に玉が出てきて金曜の買入待ち(またはその前の海外待ち)となるのでありましたとさ。

まーこの銘柄が業者の在庫になっている方が現先市場の金利も上がりやすくなりますし、木曜の3Mがプラスになりやすくなりますのでこれはこれでという所なのかもしれませんが、100円より上で切れるとはという感じで。



まあ先週の短国買入が多かったですからねえ。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150605.htm
国庫短期証券買入 11,723 5,002 0.000 0.001 26.0

ということで、短国買入5000億でオファーされたのですが、だったらその前の週の謎の刻み4000億円のオファーとは何だったのかと小一時間問い詰めたいところなのですが、資金需給予想から考えるとこの調子で6月の短国買入を進めてしまうと兆円単位の後半とかで6月末のMBが上振れするようにしか計算できないのですが・・・・・・・・・・・・・・

まあ金曜の短国買入がそれこそスキップだったりすると昨日の6Mもプラス金利だったかもしれませんけれども、予想の上限でのオペだったので安心してマイナス金利にツッコミに行けるというのはあったと思いますし、期末需要とかこの為替で海外需要も見えている(ただ今の所そこまでの盛り上がりはないはず)のでという所でしょうかね。

しかし毎度申し上げておりますが、MB年間80兆円なので四半期で20兆円になると思うのですが、1−3はきっちり合わせに来ていましたが、4−6ではこのままですと相当な上振れになってしまう筈で、それはMB目標の建付け上ディレクティブとの整合性はどうなっているのかと小一時間問い詰めたい所ではあったりするのですが、「日米のマネタリーベースガー」とか言ってドヤ顔でソロスチャートとかを出している人たちからこのMB拡大ペースの速度違反的な前倒し積み上げが起きている件について「日銀はダマテン緩和拡大をして円安誘導を進めているからこのように足元で円安(ドヤァ)」というレポートなり指摘なりを全然見る事が出来ないのは残念な所です。



○為替に関して色々と出ていますな(メモ)

またこいつか。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPLFI06JIJUO01.html
伊藤教授:すでに歴史的超円安、急落続かず−円買い介入なら驚き (3)
2015/06/08 16:19 JST

この「言うだけ言って引っ掻き回すけど最終的にケツ持ちは誰かにさせて逃げ切って燃えた頃には全く別の所に突っ込んでいる」という嗅覚の大変鋭い学者というよりは世間師とか道中師とかそんな感じの大先生ですが。

『伊藤教授は、最近の為替相場は「ドル高だ。あらゆる通貨に対して上がっている。円安で日本が責められるとか、日本売りではない」と述べた。ただ、現段階での円買い介入の可能性については、「今したら皆驚くだろう。過度の変動がなければ、正当化は難しい」と語った。均衡レートからの乖離(かいり)がさらに急激に拡大していけば、「全くないとは言えない」が、「125円から130円まで2、3日で」急落した場合などに限られると言う。 』(上記URLより、以下同様)

最近のというのは足元の話で、円高是正に関してはこんな話。

『伊藤教授によれば、超円安なのに貿易収支 が黒字基調にならないのは原発の停止や生産拠点の海外移転、人口減を見越した国内投資の低迷などが要因。「いずれにせよ、身の丈に合う形で生活水準が落ちているのは確かだ。国際競争力の低下は紛れもない事実で、ゆゆしき問題だ。ただ、円高になったら状況はもっと悪くなるだろう」と述べた。 』

てな感じですので、要はこの辺で落ち着けという話なのですが、この嗅覚鋭くハイエナのようにキャッチーな所に飛びついて適当に好き放題言って回る大先生がこのように仰せというのは、まあ官邸方面とかの「空気」がそういうことなんでしょと思うのでありました。


しかしもっとウケたのはこちら。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPMW8CSYF01T01.html
米大統領:強いドルへの懸念表明せず−仏当局者の発言を否定
2015/06/09 01:54 JST

『(ブルームバーグ):オバマ米大統領は、主要7カ国(G7)首脳会議の非公式の場で強いドルに懸念を表明してはいないと述べ、フランス当局者の発言を否定した。オバマ大統領は8日の記者会見で、「特定されていない人物の引用を信用してはならない」とし、「私はそのようなことは言っていない」と述べた。』(上記URLより、以下同様)

クソワロタ。

『仏当局者は8日、オバマ大統領がG7首脳らに対しギリシャなどの地政学的リスクが金融市場のボラティリティ(変動性)を高め、金利や為替相場に影響していると述べたと語った。この文脈で強いドルは問題だとオバマ大統領が発言したという。この当局者は、協議内容が非公開だとして匿名を条件に語った。この当局者発言に反応し、ドルはユーロと円に対して下落した。』

ということで、昨日はまさかのオバマ発言が出る→全力否定というコンボまで出てきまして、まー為替ネタはしばらく色々と飛び出すんじゃないですかねえ、と妄想。



○おお調節年報のネタができなくなってしまった(たんなる準備不足)

調節年報

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2015/ron150603a.htm/(概観)
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2015/data/ron150603a.pdf(全文)

『本稿の構成は以下のとおりである。第2節では、2014年度中の日本銀行の金融市場調節運営の概要について述べる。第3節では、このような金融市場調節運営のもとでの国内資金・債券市場等の動向を概観する。第4節では、金融市場調節手段の運営状況について説明する。第5節では、金融市場調節運営に関する制度変更等について述べる。最後に、第6節では、市場参加者との対話強化に向けた取り組みについて説明する。』

ということで、本当はこちらのネタをやろうと思っていたのですが、量が多いのでどこをポイントにすればよいか考えているうちに「えーい朝になってからかんがえるわー」とヤケクソになったらやっぱりダメでございましたという悪事例(−−;

ちなみに本文の表紙とか図表を見ますと・・・・・・・・・・・・・

『BOX5 長期国債買入れオペにおける落札利回りと市場流通利回りの関係』というので日銀買入とその買入金利に関しての分析ちっくなものがあってほほーという感じですが、その買入による金利低下効果に関して華麗にスルー気味なのが『BOX3 海外投資家の投資動向とマイナス金利』での短国マイナス金利に関する解説部分という辺りに味わいというか血圧の上昇を感じるのですが詳しくは明日以降。



2015/06/08

お題「白井審議委員会見は八方美人説明な点は平常運転で整合性という意味では・・・・・・・・」

あばばばばー(−−;

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPHN9QSYF01V01.html
米国債(5日):大幅安、10年債利回りは昨年10月来の高水準
2015/06/06 06:42 JST

『(ブルームバーグ):5日の米国債は大幅安。10年債利回りは昨年10月以来の水準に上昇した。5月の米雇用者数が予想を上回る伸びとなり、金融当局が9月にも利上げに動くとの観測が強まった。キャンター・フィッツジェラルドの金利ストラテジスト、ジャスティン・レデラー氏(ニューヨーク在勤)は「『これは強い数字だ』という驚きの声が上がった」とし、「フロア全体で素早い反応があり、債券のデスクは取引を開始した」と述べた。』(上記URLより)


○遅くなりましたが白井審議委員会見である

ということで白井審議委員の会見ですが・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1506b.pdf

・英文テキストと日本文テキストが違っている件について

『(問) 本日の懇談会についてお聞きします。日本語の挨拶要旨では11ページに、金融政策運営について以下のような発言があります。「物価の基調が大きく弱まるような下振れリスクが顕在化する場合には、金融政策による対応を検討する余地があると思いますが、現時点ではそのような蓋然性は低いと、私は考えています」と。これが、同時に公表された英語版の方では、「金融政策による対応を検討する余地がある」という部分が、「I would not hesitate to consider some monetary policy actions」となっています。「not hesitate to consider」ということなので、検討することを躊躇しない、躊躇せず検討する、ということだと思います。』

テキスト出た途端にこれに気が付くとはどういう事やと思いますが、講演出た途端にニュース記事にしていたブルームバーグ社の某H記者のお名前しか浮かんで参りませんが、どれだけ粘着(褒め言葉)なのでしょうかオソロシス(褒め言葉)。

『この日本語の表現は、追加緩和に対してやや受け身な印象を、これを英語で言えばパッシブな印象を与えると思うのですが、英語の方の「not hesitate to consider」というのは、より能動的な印象、英語で言えばプロアクティブな印象を与える表現になっています。』

あたしゃドメドメ人間なので詳しいニュアンスの差というのは体感的には分からんのですが、英和辞典(ちなみに愛用はデイリーコンサイス)引き引き確認するとそういう感じではございます。

『日本の大学の入試で、この文章を日本語から英語に、あるいは英語から日本語に直せ、という問題が出たとしたら、これは不合格になるんじゃないのかと思います。白井先生が採点したら、もしかしたら合格になるのかもしれませんが、この金融政策運営の非常に重要なメッセージで、日本語と英語がこれほど大きく異なる背景についてちょっとお聞かせ頂けますでしょうか。』

いちいち悪態を入れて喧嘩を売るなんてイヤミ成分満々ですねえ誰ですかこんな質問してるのは(^^)。


白井さんのお答え。

『(答) 私は、これまで海外でも講演をたくさん行っていますが、私が常に重視しているのは、同じ意味・同じことを伝えるのですが、英語あるいは日本語の持っている言葉の流れを重視して、読み手にとって読みやすい書き方にするようにしています。』

ほほう。つまり「アタシが英文も日本文も作っているのよ!」という話をしておりますのと、「アタシの英文はちゃんと作り込んでいるのよ、そこらの翻訳マシンとは違うのよ!」という自慢をしているのですね。

『ですから、私の講演原稿は、これまでのものも見て頂ければお分かりのように、逐語訳はしておりません。』

ほうほう。

『その上で、今おっしゃった日本語の表現と英語の表現について、ご質問されている方は、日本語の方が受け身に取れるという印象をお持ちになったということですが、私はそのような違いがあるとは全く思っておりません。』

what?????

『ですので、もしそのような表現の違いというような誤解があるのであれば、この場をもって、全くそういう違いは一切ありませんということを明確にお伝え致します。』

誤解があるような表現だとしたら訂正しますではなく、「違いは一切ありません(キリッ)」と言われましても「では英文と日本文のどっちが正しいのか」という部分についてはスルーというのが白井クオリティ。


・・・・・・となりますと当たり前の如く続きの質問が飛びます。直後に同じ人と思われる質問が。

『(問) そうすると、要は、日本語の方が正しいのか、それとも英語の方が正しいのでしょうか。違いがないという割には、随分表現が違いますし、私だけではなく、市場の人たちも、これは明らかに意味が違うと言っております。』

「市場の人たちも、これは明らかに意味が違うと言っております」ってのを質問でぶつけたかったから会見の話が出る前にあちこち取材して記事にしてたんですねH記者段取り良さすぎです(^^)。

『そういう意味では、どちらがよりおっしゃりたいことに近いのかということを、英語でも結構ですし、日本語でも結構ですし、お伝え頂けますでしょうか。』

さて白井さんの答えですが・・・・・・・・・・・・

『(答) 私は違いがあるとは思っていません。』

・・・・・( ゚д゚)

『私は、必要があれば、何らかの金融政策対応は考え得るということを言っており、「しない」という否定は一切しておりません。そういうことが必要な時期には──そういう判断がなされるのであれば──、何らかの対応を考えるという点では全く違いがありません。ただ、現時点ではそのような蓋然性が低いと言っているところも、英語も日本語も全く同じです。』

ということで、結局追加緩和にやる気があるのか無いのか分からないですし、大体からしてこの人物価目標達成の時期が遅れるのに追加緩和やインフレ期待を引き上げるような措置(というのがあるのかは知らんけど置物理論だとMBがあれば上がるという話)を提案するだろと思うのですが、それはしないというこの有様。

まあ何ですな、そもそも2年で2%の目標を達成していないという現状において、その間に何らかの政策的インプリケーションのある提案なり反対意見なりを出しているならともかく、それを一切実施していない(白井さんの展望レポート反対提案はただの見通し時期だけ)挙句に2年2%が遅れているのを「アタシの言っていた通り」とか言い出すこの政策責任者の態度として無責任極まる筈なのだがどう見ても本人は自分が100%正しいとしか話をしないという白井さんの面目躍如なこの説明。

つまりですね、海外向けに話をするときは緩和積極派みたいな話をする(昨年10月の追加にも賛成していますし)方が海外筋のウケが良いから積極緩和派みたいにとれる表現をしておいて、一方で現在の執行部の動きを見れば追加緩和は当分やらないで済むならやらないという消極的な感じになっているので、そちらには日本語でヨイショしておき、どっちに転んでも「アタシが前に言った通り」となる、という事で、両建て予想しておいて当たった方だけ後から出してきて百発百中でござるというようなもんですが、出すときに「アピールしやすい使い分けをする」という辺りが更にこのタチの悪さを示しておりましてとても素敵です白井先生。


・何回読んでも何の答えをしているのかが分からん質疑応答

『(問) 2点お伺いいたします。1点目は午前の懇談会ですが、ご自身の物価の見通しについて、2016年度末に2%に近付くとご紹介されており、一方、先の展望リポートの議論では、2%の達成時期について、「2016年度を中心とする時期」とのご提案を白井委員はされていますけれども、やはり2016年度末に2%に近付くということであれば、2%の達成時期というのは2017年度になると思います。このご提案の内容と講演発言の整合性をどのように考えればよいのか教えて下さい。(後半割愛)』

ちなみに先日公表された4/30MPMの議事要旨によりますと白井さんの提案はこうなっていました。

『これに対し、白井委員からは、物価見通しについて、2%程度に達する時期の記述を「2016 年度前半頃」から「2016 年度を中心とする期間」に変更することを内容とする議案が提出され、採決に付された。』(4/30金融政策決定会合議事要旨から)

ということで、4月30日の提案と早速整合性のない見通しを示しているがどういう事やという質問ですな。

『(答) 私の見通しは、おっしゃったように2016年度の末に2%程度に近づいていくということで、2017年度にそれを少し下回る水準という見方です。』

何かこっそり下方修正してませんか????

『私は、総意として、どういう表現が適切なのかということで提案しました。その理由は、挨拶要旨にも書いてありますが、「2016年度の前半頃」とするよりは、「2016年度を中心とする時期」の方が、総意としても、表現がよりフィットしているのではないか、ということです。』

いやだからそれだったら2016年度の終盤に、とか2017年度に向けた時期に、とかになるだろと思う訳で、なんちゅうかこの人はなんの断りもなしに言っている事がコロコロ変わるという恐ろしい仕様になっているようですが、まあ良く考えたら置物一派の置物理論だって昔はマンデルフレミングで財政効かないからこそ金融政策とか言ってたのに、最近は超大規模金融緩和よりも3%如消費増税の方が効くという話になっているようですし、もしかしたら経済学というのはそういうものなのかも知れませんね(イヤミ)!!!

で、ここで話が終わればはあそうですかで終了なのですが、この先にああだこうだ無駄な説明が入っているのですな。

『それには、2つ理由があり、物価の下振れリスクが高いと日本銀行の基本的見解として書いているわけですから、下振れリスクが高いのに半年程度の範囲で実現するという見通しとは合わないのではないか。下振れリスクが高いのであれば、より大きなタイムスパンを持った方が妥当ではないかというのが1つ。』

?????????????????????

えーっとすいません下振れリスクとメインシナリオをごっちゃしてませんか??

『もう1つは、その非常に狭い半年程度の期間に2%程度が達成できるというような表現にしてしまうと、金融政策の柔軟性が削がれるのではないかと思いまして、総意として、より適切な表現は「2016年度を中心とする時期」ということで提案しました。』

あのーすいません、今のQQEは「期限を区切って2%物価目標を達成するという強いコミットメント」が看板の一つなのでありまして、それによってインフレ期待を2%にアンカーさせる(ちなみに日銀は「リアンカー」を使いたがるがそもそも過去において2%にアンカーされていた訳ではないので「リ」はねえだろと)というのが重要なファクターな訳で、全然違う話をしているのが分かります。

でね、更にこのお方がアレだと思うのは、「短い期間で達成させるためには追加緩和」ということで行われた昨年10月の追加緩和には賛成していることでして、これを森本さんや石田さんが主張するのなら話は分かるのですけれども、10月は10月で執行部提案に唯々諾々としたがっておきながらウケが良さそうな「柔軟な運営」という話を一方でするとか言行支離滅裂にも程があるのですが、まあさっきの英文と日本文の差分を見ればわかるように、言行支離滅裂ではあっても一本筋が通っているのは「とりあえず自分の評価が上がりそうな方向には都合の良い事を言って/行っておこう」という辺りなのではないかと推察せざるを得ないのが非常に残念に見えるところでありまする。

『なお、その表現の中で、私の見方ですが、今申し上げましたけれども、この見通し期間の間に2%の達成の可能性を完全に排除しているわけではないので、概ねこの表現の中に入ると考えております。』

最早何を言っているのか分からん・・・・・・・・・・



・物価見通しがより後ろに倒れるのに追加緩和はしないの??????という質問

同じ質問の後半です(この質疑前半後半ともにポイントがあるので通して読むと白井さんの答えがクソ長くて読みにくいにも程がある)。

『(問) (前半割愛)また、その関連で金融政策運営ですが、挨拶の内容を拝読しますと、金融政策については、今後、余程の下振れがない限り、追加緩和は不要との印象を受けたのですが、先程の質問との関連で2017年度までの見通し期間中に2%達成が展望できるような状況が確保されるのであれば、達成時期が現在よりも後ずれしても、追加緩和不要とお考えになるのか。また、仮に今後追加緩和不要となる場合、どういうケースをイメージしておられるのか。』

で、お答えですがあり得ないくらいに冗長。

『(答)(前半割愛)それから、追加緩和の可能性についてですが、追加緩和が必要かどうかというのは、やはり2%程度の達成に向けたその道筋がどうか、ということで判断するべきと思っています。昨年10月の場合には、明らかに需要が相当弱まっていて、家計、企業のマインドも悪化していて、そういう中でやはり追加緩和が必要だと判断しました。インフレ予想も下落するものも多かったので、そういたしました。』

ふーん。

『現在は、昨年10月に行った追加緩和からまだ1年も経っておりませんので、その緩和効果が徐々に今出てきていると思いますから、それを見極める時期だと思います。』

2年で2%だし「できるだけ早期に」達成なのですが・・・・・・・・・・

『それとともに、1月〜3月のGDPが公表されて、日本銀行の推計では需給ギャップはプラスの方向で改善していると思います。それから、インフレ予想も下落していたものが概ね横ばいになってきていますし、これから物価の基調は名目賃金、実質賃金の上昇とともに高まっていきます。今もう既に家計のマインドも改善し、企業のマインドも改善し、設備投資も前向きな動きが出てきているわけですから、物価の基調は高まっていくと思います。従って、今は物価の基調が高まっていくことを確認する時だと思いますので、現在は現状維持でよいと思っています。』

QQEの重要な点として「早期に達成」というのがあるのですがすっかり無い事になっていますね!!!!!

『その上で、追加緩和を絶対にしないのかと言えば、絶対にしないとは言っていません。どういう場合に追加緩和かと言えば、当然──繰り返しになりますが──、2%の達成に向けた道筋が明らかに逆方向に向いているという場合です。』

ここで止めておけばよいのに余計な説明をするからこの人の話は冗長で何を言いたいのか分からんし、まあそれが本人の作戦で何でもかんでも喋っておけば「ほらアタシの言った通りでしょ」となるということなのでしょうが、誠に遺憾の極みに存じます。

『例えば、様々なあらゆる予想物価上昇率が低下している、企業では新しいよりイノベーティブな財・サービスを提供して適正価格で提供しようという前向きな行動が今出ていますが、それが逆行してしまって再び2012年の時のようなディスカウント競争になってくる、家計もディスカウントに走る、そういう行動が明らかに出てくる、その背景には当然需要の減退、需給ギャップの悪化、賃金の低下があると思いますが、そういうものが出てきたら、金融政策として何ができるのかを検討するのは当たり前のことです。そういう状況があるのであれば、検討するべきだと思いますが、私の見通しでは、その蓋然性はかなり低いと、今はみているということです。』

供給過剰の状態になっていて経済にスラックがある状態の中で金融緩和政策の効きが悪くなるから非伝統的な政策をという話なのですが、白井さんが説明したこのトリガーに対して金融政策でどういう効かせに行くのかについて小一時間問い詰めたいが、一つ問い詰めると1万倍くらいの返しが白井さんの場合は来そうなので問い詰めるにも覚悟が必要な気がしますな(−−;


・質問と答えがかみ合っていないが結局QQEは資産価格ルートかよという話

ちょっと先に参りまして。

『(問) 今のお話と絡むのですが、家計が物価上昇を容認するには時間がかかるということで、昨日発表された毎月勤労統計ですと4月の実質賃金は+0.1%になりました。これは、結局物価が下がっているので、名目が下がらなければ実質が上がったということかと思います。その中で現在円安が進んでいて、製造業には確かにプラスなのでしょうけれども、円安から来る輸入物価上昇で、足許結構食料品が上がっていて、それによって家計の支出が削減されたり、マインドにも影響していると思うのですけど、現状の、というか先行きのさらなる円安のポジティブの影響とネガティブの影響をみたときに、どちらの方が勝ると現状でみていらっしゃるのでしょうか。円安が進むと家計にはマイナスの影響が大きいかと思うのですが、その辺をお伺いしたいです。』

ちょっと前でも「金融緩和で製造業に効果」(場所も三重県ですし)という話を何回かしておりまして、QQEによる円安の効果とデメリットのバランスについての質問だったのですが・・・・・・・・・・・・

『(答) 為替の円安の良い、悪いということは、私は申し上げる立場にはないので、それについてのコメントは避けたいと思います。』

いやお前それはないだろ。

『重要な点は、例えば実質賃金は3月までずっと下落していましたが、家計マインドはもう12月から改善し始めています。12月、1月、2月、3月と結構改善してきて、4月は横ばいになりましたけれども、家計のマインドは改善してきています。なぜ実質賃金がマイナスでも家計のマインドが改善したのかといえば、これは3つ理由があると思っています。(ここから先暫く割愛)』

ということでどうも実質賃金が上昇してきたけど物価が上がったら元の木阿弥という考えについては、そうは言っても名目賃金上がっているし、雇用そのものが強いから次は大丈夫みたいな話をしているようなのだが冗長につき途中割愛。

『(途中から)それから、2つ目は、株高と円安が――これは円安のプラスの効果になるかもしれませんが――あることによって、機関投資家だけではなくて、他の金融機関もそれから個人投資家も資産が増えたと思います。その結果、今、NISAの開設口座もそうですし、回転率も上がっているように、多くの個人の投資家がより前向きに自分の資産運用を考えるようになっています。高齢の方達も余資がある人達は運用に積極的になっています。それが家計のマインドとか収入の補足にもなるわけでプラスに働いていると思います。(またしばらく割愛)』

資産効果攻撃キタコレですが、この次の説明がもはや何を言ってるのか分からん(いやまあ一応話は価格設定行動が変わったという話をしたいみたいなのだが)のでこれまた割愛しまして説明の最後。

『(途中から)重要な点は、QQEがもたらした効果というのは、私は2つあると思います。』

『1つは、2012年までは非常に行き過ぎた円高で大変なデフレ圧力があったと思います。例えば、製造業では競争力を維持するために円建ての輸出価格をすごく下げようとして、下請けの方など多くの方が大変なコスト削減を必要としました。しかし、そういう形の無理なコスト削減はかなり減っていると聞いています。ですから、デフレ圧力は相当緩和されたということです。』

『もう1つは先程の繰り返しになりますが、健全なリスクテイクが少しずつ起こってきています。企業も株価が上がっていて、それに見合うだけの収益を上げようと思っていますし、ガバナンスを改善しようとみんなが取り組んでいます。』

>企業も株価が上がっていて、それに見合うだけの収益を上げようと思っていますし

いやー正直でよろしいのですが「株価が収益に見合わないバブル水準である」って言ってるようなもんですので表現不穏当。

『QQEを始めてからもっと地方の創生、地方の活力を高めるために積極的に、地方銀行もメガバンクも取り組んでいます。』

地方創生とかいうワードを入れてヨイショにも余念がないですね!!!!!

『そういう姿勢が2012年にあったでしょうか。また、先程申し上げましたように、個人投資家も、少し資産運用に前向きになってきていますし、あらゆる人たちがより健全なリスクテイクをするようになってきていて、そういう前向きな姿勢があります。これらの変化が重要なわけですから、もちろん、その過渡期にはより恩恵を受ける人と受けない人というのがありますけれど、やはり総じてみればプラスの効果が出ていると思いますので、そういったところをみながら、少しずつプラスの効果が日本経済に広がっていくのではないかと私はみています。』

ということで、結局の所QQEの効果の説明が為替ルートと資産価格ルートで、マネタリーベース直線一気理論とは何だったのかという思いが益々強くなるのでありました。


#今朝は諸般の事情でこの虫干しネタだけで勘弁





2015/06/05

お題「3M入札は金利低下/ドラギ総裁のボラ質疑を確認/黒田総裁QQEはお伽噺と開き直る/原田さんインタビュー登場」

・・・・・・・とネタが色々とあるのですが、白井さんの記者会見が無いのではないか、というツッコミにお答えしますと、確かにアタクシ白井さんの会見テキストを読んだのですが、この人の説明って何を言ってるのかが中々無慈悲なまでに難解ホークスでありまして、1回読んでも分からず2回読むと更にわからなくなるので3回読むと脳が溶けそうになるという危険な代物でありまして、実は中身は把握したのだが駄文にまとめるのをどうするかがまだ整理できていないのです。ということで月曜に投下ネタということですいませんすいません。

○3M入札結果は何と最低落札金利低下と来ました

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150604.htm

(3)募入最低価格 99円99銭9厘5毛 (募入最高利回り)(0.0020%)
(4)募入最低価格における案分比率 94.5434%
(5)募入平均価格 99円99銭9厘7毛 (募入平均利回り)(0.0012%)

ということで平均は0.12bpの所でこの数値はプラス金利に戻ってからの2回が同じく平均0.12bpだったので同じ結果となとか思ったのですが、足切がしらっと0.2bpの水準となっておりまして、前回前々回は足切はこの1つ下の値段になる0.40bpレベルで半分少々とかの案分だったのですが、今回は華麗に1つ上で切れているのがプラス金利突入のニーズの強さですな。

結局の所5週間マイナス金利を継続してその間全然プラスにしなかった(ゼロ近辺は瞬間風速で有ったと思うが)という市場推移が破壊力抜群で、おまけに中短期の利付もマイナス状態となっている訳ですので、干天の慈雨というよりは買えていない投資家によります餓鬼道の修羅場状態になっているといった方が適切なんでしょうなこりゃ。

でもって多分海外のニーズとかも確り入っていますからそらもう食用可能レベルの金利で玉が降ってきたら俺も買う俺も買うそのスイトンこっちに寄越せ状態になる訳で、誠に浅ましい展開となっているようで、昨日は確か朝方は海外の金利絶賛上昇を受けて長期とかと一緒に2年とかにも売りが出てプラス金利になっていた筈なのですが、引けになってみたら前日比利回り低下(もちろんマイナス)でBBさんの引け値が出ているという辺りに修羅の深さを感じる短期ゾーンなのでありました。今日の短国買入は5000億円以内のどこかだと思いますが、見送りとか思い切って7月8月償還の保有銘柄絶賛売切りオペとかやったらワンダホーなので一つここはヤケクソでどうでしょうか(ってやらないと思っておりますので念のため)。

なお30年国債入札についてはとりあえず調整したから強めに入札したのはいいけどセカンダリーで結局伸びなくてあっさり投げとなるなら入札弱く入れておけよとか思うのですが、調整入ったところで「投資家実需を背景にした札で切られてショートカバーであばばばばー」とされる恐怖の方が強い、というのはまあそれは入札参加の皆様のコンセンサスが「勢いとかそういうのはともかくとして、絶対水準的にここから下を売りたたくのは段々慎重にならざるを得ない」という風になっているのでしょうなあとは勝手に思ったが、そげな認識でよかとね????

ただ裏を返すとそうやって皆が半身になっていると気合入れたショートとか居ないので買戻し圧力が高くない、というのもあって、とにかく今の市場は輪番というオモシロファクターがあるので非常に読みにくいのは事実ですな、うんうん。


○ドラギ先生のボラ問答を拝見

今日はそこだけ読むだよ。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is150603.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 3 June 2015

こんな質問から始まります。

『Question: There was a recent rise in yields in a number of government bonds sectors in Europe, especially in Bunds. Could you give us your assessment of that? Was this a positive development that follows the recovery of the economy or was it an unjustified tightening of conditions? And is there a fear, or concern, in the Governing Council that QE may be adding to volatility in markets?』

欧州ソブリン市場のボラが絶賛急拡大しているがその所感は?金利上昇で意図しない金融タイト化が起きてないでしょうか?そもそもQEの実施がボラを市場に与えているという見解に対する認識如何?とこれ以上ない直球ストレートの質問!!!!


『Draghi: Yes indeed, there was some reversal generally in financing conditions recently. There have been many explanations that have been given, one of which you hinted at, namely that there is an improvement, in the perspectives of growth.』

これ2013年5月の黒田さんもこういう話をしていましたが、市場の経済見通しが改善したら金利はあがるもんです(キリッ)といってて、その前に「金利が下がってこのように効果」とか言っていたのは何だったのかと梯子を外しに来るとか黒田さんの生霊が乗り移っているとしか思えない。

『A second explanation is higher inflation expectations. A third explanation is actually a bunch of technical conditions present in the markets like, and here I’m going through them quickly, first, there have been one-directional investments into long-term maturities, and the turnaround has been quite abrupt.』

物価や経済の期待の変化で今まで一方的だった債券買いの流れが変わったのですだとよ。

『Second, there was strong supply pressure, in the sense that issuance had been quite significant, by various governments in the meantime.』

この間に一部の国での国債発行が多かったから需給が緩んだだとよ。

『Third is that when shorter-dated German Bunds became eligible, previously they had not been, because of their negative yields, there was less need to buy longer-dated bonds, and that produced a steepening of the curve.』

短いところのドイツ国債の金利がマイナス20BPという「ここから低い金利は買わないわヴォケ」ゾーンから戻ってきたので短いのをせっせと買ったから長いのの需給が悪くなったんですよね〜とはこれまたなんか梯子外しっぽいですなあ。なおそこの買入年限推移まで事細かにフォローしている暇がなかったのだが頑張ってフォローできないか考えてみる(面白そうだから)。

『The fourth technical condition is simply that volatility by itself generated further volatility and further selling, and a fifth is poor market liquidity because of the absence of certain significant investors during this period of time.』

ボラというのはさらなるボラを生むものです(キリッ)ってお前の所で火付けをしておいて「火事が起きると延焼するのは世の習い(キリッ)」とかこれはまた見事な梯子外し&マッチポンプメソッド。

『Now, it’s very difficult to distinguish between these three sets of factors, sets of conditions, so we won’t speculate exactly on what explanation is the most likely.』

で、その辺の何がどうなのかを決め打ちするのは難しいと。

『But certainly one lesson is that we should get used to periods of higher volatility.』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

ということで、完全なまでに梯子を外して知らんがなという攻撃をするドラギのおっちゃん黒田さんより無慈悲な攻撃でそらまあドイツ債券市場が火の海になるわな。

『At very low levels of interest rates, asset prices tend to show higher volatility, and in terms of the impact that this might have on our monetary policy stance, the Governing Council was unanimous in its assessment that we should look through these developments and maintain a steady monetary policy stance.』

といっても見てるだけでしょ。


次の質疑。

『Question: Mr President, one question on that, that we have to get used to greater volatility. What are you planning on doing against that greater volatility? Are you planning on managing the yield curve going forward a bit more, or don’t you care about greater volatility?』

お助けはないのかのクレクレキタコレ。

『Another question on greater volatility and the low rates. The IMF is warning that asset managers and insurers in the eurozone could actually get in trouble because of that policy, so are you preparing the next financial crisis or what would you do?』

ワロタ。


『Draghi: The answer to both questions is no and nothing, but let me also qualify this. We won’t plan to change our monetary policy stance. That will stay.』

スタンス変えないわ、ボラとか知らんがなとのお告げ。

『As you know, as I’ve said many times, we have a mandate, which is maintaining price stability based on the definition that we’ve discussed several times, and we plan to keep our course steady and unchanged, and if anything, if necessary, we’ll actually add to that.』

いやだからそのマンデート達成に金融環境の悪化が悪影響与えるのはどうなのよと思いますがねえ。

『On the second point, it’s quite right. A long period, a protracted period of very low interest rates, causes a series of problems. First of all, it may increase the financial stability risk, but also it causes problems for insurance companies and for other important financial market actors. Is this a good reason to change our monetary policy? The answer is no. If we were to undertake the wrong monetary policy to address the problems of these specific sectors, we actually would do them a disservice. We would undermine our price stability objective. We’d create in the end a more difficult situation for everybody. So what’s the answer? The answer is that when we see a financial stability risk, this should be addressed by the proper instruments, which are macroprudential instruments.』

『The second issue is typical of insurance companies. Clearly, the insurance companies try to respond to this situation in a variety of ways, which I don’t want to discuss, because some of them have to do with their business models, but certainly it’s quite clear that certain regulatory provisions make their task of diversifying their investments into higher yield and potentially more liquid investments more difficult.』

後半の質問に対しては完全に話の論点をそらして説明していますな。

ということでインスタントでトピックになった部分だけ投下しました。



○黒田総裁の金研挨拶はキャッチーな部分の破壊力が凄まじくて他の部分がどうでもよくなっている

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150604a.pdf
日本銀行金融研究所主催2015年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳

『昨年のコンファランスでは、「金融危機後の金融政策」をテーマに、先般の金融危機後の緩やかな経済成長のもとでの金融政策を巡る基本的な問題に関して、活発な議論が行われました。昨年のコンファランス以降、学界・中銀サークルでは、非伝統的金融政策の効果に関する研究が一段と進展しているほか、長期停滞論に代表されるような金融危機後の緩慢な景気回復を巡る新たな議論が注目を集めています。こうしたもとで、昨年に引き続き金融政策を中心に据えつつも、実際の金融政策運営への含意をより意識する観点から、今年のコンファランスのテーマとして、「金融政策:効果と実践」を選びました。先ほど申し上げた研究面の進展や最近の世界経済の変化を踏まえ、我々中央銀行が直面している金融政策面の課題について、率直かつ活発な議論が行われることを期待します。私からは、コンファランスのキックオフとして、そのような課題に関する論点をいくつか提示したいと思います。』

ということで幾つかの論点があるのですが、そんなことよりもとにかく最後のうまい事言ったつもりの部分があまりにも破壊力があって他の全てを押し流す力がありました、というのはニュースヘッドラインなどでも出ていましたので皆様ご案内の通りかと存じます。

最後の『4.結び』の最後の部分ね。

『皆様が、子供のころから親しんできたピーターパンの物語に、「飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう(The moment you doubt whether you can fly, you cease forever to be able to do it)」という言葉があります。大切なことは、前向きな姿勢と確信です。』

・・・・・(;゚д゚)

なお本チャンの英文テキストもせっかくなので引用しませう。

『I trust that many of you are familiar with the story of Peter Pan, in which it says, "the moment you doubt whether you can fly, you cease forever to be able to do it." Yes, what we need is a positive attitude and conviction.』

いやーすいません不肖このアタクシはすっかりオトナになってしまっておりまして濁世にまみれてすっかり心も濁っておりますのでピーターパンとかティンカーベルとか見る事ができない訳でございますが、QQEの効果がお伽の国の世界であると言われてしまいますと最早アタクシのような平々凡々なオトナといたしましては心が純真じゃなくてQQEの効果を知見出来る能力が欠如しておりまして誠に申し訳ございませんと深々と頭を下げる以外にすることなしという所でございますな。

『実際、これまで中央銀行は、様々な課題に直面する度に、新たな知恵を出して、その課題を克服してきました。』

どうも心の目が濁っているので物価目標が達成できていなくて課題が克服できていないようにしか見えないのですがピーターパンの方におかれましては物価安定目標が達成できているという姿が見えるのでしょうな(棒読み)。

『我々の経験と知見に裏打ちされた課題克服への確信を参加者の皆様と共有し、これから始まる議論への心の準備ができたところで、私の挨拶を締めくくりたいと思います。』

>我々の経験と知見に裏打ちされた課題克服への確信
>我々の経験と知見に裏打ちされた課題克服への確信
>我々の経験と知見に裏打ちされた課題克服への確信

・・・・・(゚д゚)

えーっとあのそのQQEって「経験に裏打ち」されているのでしょうかそれから「知見」ってもしかして置物MB直線一気理論なのでしょうかなどと思ってしまうのはオトナになって心の目が濁っている人のたわごとなのですね!!!!!!

まあしかしそれだけの「心の準備」が必要な議論とはこらまたどういう議論だよという話で、もう参りました降参ですとしか申し上げようが・・・・・・・・・・・・・・


なお、いわゆる「ピーターパン症候群」というのがありますが、とりあえずWikipedeiaへのリンクでも張っておきますが症状例を見て誰か具体的な方のお顔が目に浮かんだりするのは心の目が(以下同文)。

ピーターパン症候群(Wikipedeia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%B3%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4
(リンクは途中の所までですが間違えてなければ当該ページに飛ぶはずです)


しかしまあ何ですな、自分の所の金融政策を「信じれば空も飛べます」とかそこまで開き直るかという所でございまして、そこまで開き直って矢でも鉄砲でも持ってこい状態になるとは黒田日銀どこに逝くってなもんですが、ピーターパンではない一般凡下のワタクシのような者から致しますと、「さあ信じれば空も飛べるんだ今すぐそこから飛んでみろ」とか言われましても困るのですが信心の足りないものは墜落しろということなのでしょうか(涙)。


○原田審議委員が金懇の前にブルームバーグのインタビューに登場とな

昨日の引け後位に出ていたと思いますが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPENM06JTSED01.html
原田日銀委員:円高は修正、「かなりいいところ」に来た可能性
2015/06/04 17:37 JST

『 (ブルームバーグ):日本銀行の原田泰審議委員は4日のブルームバーグのインタビューで、過去数年にわたり日本の製造業を苦しめてきた過度の円高は修正されたとの見方を示した。(途中割愛)原田氏は異常な円高は修正されたとの見方を示した上で、現状の為替円安について「いろんな産業が競争力を取り戻しているところを見ると、かなりいいところまできたのかもしれない」と述べた。』(上記URL先記事より、以下暫く同様)

というのが何故か「円高修正は良いところまできた」というのを円安けん制発言と解釈したのかヘッドラインが出てドル円が円高に振れてきまして、いやおまえそれは反応おかしいだろと思っていたら触れた分は戻ってきた感じでしたな。

でまあこの為替の話はまーどちらかというと本質の部分ではなくて、記事から読むべき部分と思われるのはこの辺ではないかというのを少々。


・追加緩和に関しては良く良く見れば追加緩和消極派に見えますよ

『原田氏は物価上昇率が2%に達するのは「16年度前半ごろ」という日銀の見通しについては、「経済にはいろいろなことが起こるので、実際には後ずれすることはあり得る」と述べた。ただし、失業率や需給ギャップが改善を続け、物価を上げる方向に向かっている限り、たとえ達成時期が後ずれしても追加緩和は必要ないとの見解を示した。』

今の執行部は「2年」と期限を切った大看板こそが重要でQQE政策における重要なポイントとしているのですが、話としては「基調が確り推移して2%が見通せるのなら追加緩和の必要はない」という説明になっていますよね。

・・・・・・・・となりますと、原田さんの主張って一歩踏み込むと「フォーキャストターゲット」方面に簡単に転びそうな説明になっていますなとゆーのがまた別の味わいがあります。記事のちょっと後ろの方に行くとこんな話があります。


・2年で2%に対するこだわり成分の低さは執行部と温度差があるのだ

『原田氏は「肝心なことは、2%に向かって上がっていくというメカニズムが続いているかどうかだ」と指摘。注目すべき点として、1)予想物価上昇率が下がらない、2)失業率や需給ギャップが順調に改善し、物価を上げる方向に向かっているかどうか、3)現実の物価が上昇に向かっているかどうか−を挙げた。』

ということで、「2年で」への拘りは無い様ですなと思われるのはその先で小見出しが『2%遅れても上昇軌道維持なら緩和必要ない』というブツになっております訳でして・・・・・・・・

『原田氏は「これら3つの指標がひどい状況になれば、『躊躇(ちゅうちょ)なくやる』ということになる」と言明。一方で、「この3つが崩れていなければ、物価は安定的に上がっていく経路にある。その経路にいることが一番大事だ」と述べた。問題は、3つの指標が微妙に悪化した場合だ。』

『その場合は、「よく考えるしかないが、物価がちゃんと上がっていくメカニズムが続いていれば、そんなに『躊躇なくやる』ということでなくてもいいのではないか」と指摘。2%達成が見通し通りに行かなくても、「安定した物価上昇が続くという期待がアンカーされていれば、3年超かかっても、それはそれでいいのではないか」としている。』

ということで、確か強力リフレ派で追加緩和ジャンジャンやれやという人が送り込まれたという触れ込みだったと思ったのですが、この主張ですと「達成時期が遅れても別に良いじゃないか」という話になっていて、「2年で2%」という期限を区切ったコミットメントを続けることに意味があるという主張を繰り広げている黒田岩田執行部からの距離がありますよね。

ちなみに、原田さんのこの主張を総合しますとポイントになるのは「2年を念頭に」の看板について拘っていないという所でして、そこからロジカルに話を展開していくと、実は佐藤さんや木内さんのサイドに寄る可能性も出てくるんじゃネーノとか思いますので、「当初の触れ込みで期待されていたのと別方向に動く可能性が小さいけれども存在しそう」というのは波乱要因になる可能性があります。


・金融調節実務についてはまだ勉強途上のようで

同じく上記URL先のブルームバーグ記事より。

『追加緩和の手段については、買い入れ対象資産として「国債残高は巨額なので、これは余地がある」と指摘。一方で、「指数連動型上場投資信託(ETF)は株式市場にあまり影響を与えるのもいかがなものかということもあるし、不動産投資信託(J−REIT)もそうだ。一般論で言えば制約がある」と述べた。』(引き続き上記URL先記事より、以下同様)

いやあの国債市場の流動性ってドンドン下がっているんですけど・・・・・・というのはともかく、ETFとREITの買入に関してはあまり拡大を言わない、というのはピュアなマネタリーベース直線一気理論からすると妥当ではあるのですが、これはリスク性資産の購入に対して慎重という事も言えますな。


『日銀は金融機関が保有する日銀当座預金の所要準備を上回る超過準備に対し、0.1%の金利を付している。金融市場では日銀の次の一手として付利引き下げが行われるとの見方もある。日銀は追加緩和が必要な際には、付利の引き下げや撤廃を含め、あらゆる手段を排除しない方針であることが複数の関係者への取材で5月15日に明らかになった。』

なお5月15日の記事というのは単にそこらの何とかストにコメント取って回っただけのマッチポンプ記事だろというツッコミは先般行った通りでありまする。

『原田氏は「付利については、今どうすべきか考えているわけではなく、あくまで一般論だが、付利をしていれば、それだけマネタリーベースの緩和効果は弱まる」と指摘。』

まあそれは仰せのとおり。

『「金融機関が国債を買えば、マネタリーベース、より正確には当座預金に置き換えられるが、0.1%でも金利が付いていれば、そこに預けておこうということになる。これが0%ならもう少し他の投資をしなければならない、ということになるので、ポートフォリオリバランス効果が強まる。マイナスであればさらにその効果が働くだろう」と語る。』

記事は原文ママでして、最初の「金融機関が」というのは「金融機関から」の誤植(または言い間違え)だと思いますのでそこはまあヨロシとしまして、金融機関から国債買っても0.10%の当座預金への交換が行われるだけでは意味があるのか的なお話をしているのですな原田先生。

でまあゆうとることはそこだけ見ると話として尤もらしいので、原田先生だけではなく多く主張される話ではあるのですが、そもそも「日銀が金融機関から国債を買う」と言いましても強制収容でもするのなら話は別ですが、建付けとしては金融機関に対して入札なりなんなりの方法で保有する国債を買いに行く、という行為をしている訳で、その際に必要なのは「金融機関が保有国債を売却するインセンティブ」でありまして、そもそも論として「売ってもメリット無いなら売らないよ」という事になってしまうと、肝心の超過準備が積みあがらないという事になりますし、マネタリーベースの拡大もバランスシートの拡大もできない事になります。

つまり、現在積みあがっている超過準備は補完当座預金制度の付利金利を前提にして積みあがっているものとなっているので、この数値を引き下げると長期国債の買入拡大が困難になるどころか、下手をしたら誰も国債買入に応じなくなって日銀保有国債の償還に伴いMBが縮小への道とかになりかねないんですけど大丈夫でしょうかと思いますし、マイナス金利を実施してソブリンQE始めた欧州が最初だけは金利が急速に下がって大効果に見えましたが最近どうなってるのとか参照にされた方がよろしいかと。


『買い入れ対象に地方債を加えることについては「可能性はあると思うが、ただ、それほど買えるものでもない」と指摘。さらに、「たくさん発行している県の地方債を買うとなると、たくさん借金している県が得をするのか、という話になる。これも難しい」としている。』

地方債市場って規模的にクレジット市場の中でもおまけみたいな感じだし売買もそんなにないと思うのですが、ちょっとここを見て思ったのは 「たくさん発行している県の地方債を買うとなると、たくさん借金している県が得をするのか、という話になる。」という部分でして、いやあの別に日銀が地方債買ってもそこの地方債務は消滅する訳ではなくて、期日になったら耳をそろえて社債権者に元利金お返ししないといけないから「得をする」とかそういうもんではないと思うのですけれども・・・・・・・・・・・・・・

日銀買入によって銘柄間格差が縮小する(もへったくれもこの運用難で格差は少ないけど)と財務状況が相対的に悪い発行体に有利になるかもという話はありますが、それは別に発行額が多いからお得になると言うものではないと思います。


『原田氏はこのように述べた上で、「これからもし物価がさらに下落するという状況になったときは、もちろん、あらゆる可能性を考慮してやるべきだ。どれを今やるべきか、どれを次にやるべきかを考えているわけではない」と述べた。』

ということで、付利下げのヘッドラインもブルームバーグらしく鬼の首を取ったかのように打たれていましたけれども、そもそも論としてその前にネタにした部分にありますように、原田さんの場合下手をすると現執行部よりも追加緩和に消極的なスタンスになり兼ねないという主張内容を展開されている訳で、そう考えますと付利下げとか地方債とかの部分はまーあまりそこで考えなくても良いと思いますよ。








2015/06/04

お題「寝起きでECB/白井審議委員の講演では以前主張していない話が以前より主張したことになっている件」

キタコレ!
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPDTLG6VDKHT01.html
米国債:続落、ECB総裁のボラティリティ発言で世界債券安
2015/06/04 04:05 JST

○ということで寝起きでECBだが問題は質疑応答のようなので

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is150603.en.html
Introductory statement to the press conference
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 3 June 2015

日本時間の朝ですとまだ上記URL先に行っても惜しくも冒頭ステートメントしかないので(ちなみにECBはQ&Aが出てくるタイミングにムラがある)残念ながらボラ発言に関するリファーが取れないのですけどね。

・金融政策スタンスに関してはいつも通りの話で内容はあっさり味

『Based on our regular economic and monetary analyses, and in line with our forward guidance, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged.』

はいはい。

『Regarding non-standard monetary policy measures, the asset purchase programmes are proceeding well.』

>asset purchase programmes are proceeding well
>asset purchase programmes are proceeding well
>asset purchase programmes are proceeding well

ボラ発言は会見の方ででている(というか冒頭ステートメントには無い)ようですが、まあその発言があったと思ってみると確かにここも「買入額は予定通り実施しています」という話ではあるのだが、「買入はちゃんと実施してるんだから金利乱高下とか知らんがな」とも読めますな。

『As explained on previous occasions, our asset purchases of ユーロ60 billion per month are intended to run until the end of September 2016 and, in any case, until we see a sustained adjustment in the path of inflation that is consistent with our aim of achieving inflation rates below, but close to, 2% over the medium term.』

2016年9月まで買入継続するし2%の安定パスが見られるまで実施する(からその後もやる可能性ある)というこれまた毎度の話。

『When carrying out its assessment, the Governing Council will follow its monetary policy strategy and concentrate on trends in inflation, looking through fluctuations in measured inflation in either direction if judged to be transient and to have no implication for the medium-term outlook for price stability.』

でまあ必要ならば必要な調整をするよというのもいつもの話。

『Our monetary policy measures have contributed to a broad-based easing in financial conditions, a recovery in inflation expectations and more favourable borrowing conditions for firms and households.』

金融政策の効果で金融環境は緩和しております(キリッ)っとなっていて足元のドイツ金利の乱高下については依然としてスルー。

『The effects of these measures are working their way through to the economy and are contributing to economic growth, a reduction in economic slack, and money and credit expansion. The full implementation of all our monetary policy measures will provide the necessary support to the euro area economy, lead to a sustained return of inflation rates towards levels below, but close to, 2% in the medium term, and underpin the firm anchoring of medium to long-term inflation expectations.』

とまあそういう説明で、今の政策は効果を出していますが今後も継続して2%ターゲットへの安定パスになるように実施しますよというまー特段変りも無いいつもの話。


・経済の話は強めになっていますよ

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis.』

ということで・・・・・・・

『In the first quarter of 2015, real GDP in the euro area rose by 0.4%, quarter on quarter, after 0.3% in the last quarter of 2014. In recent quarters, domestic demand and, particularly, private consumption were the main drivers behind the ongoing recovery. The latest survey data to May remain consistent with a continuation of the modest growth trend in the second quarter. Looking ahead, we expect the economic recovery to broaden.』

「we expect the economic recovery to broaden」ですってよ!

『Domestic demand should be further supported by our monetary policy measures and their favourable impact on financial conditions, as well as by the progress made with fiscal consolidation and structural reforms. Moreover, the low level of the price of oil should continue to support households’ real disposable income and corporate profitability and, therefore, private consumption and investment. Furthermore, demand for euro area exports should benefit from improvements in price competitiveness.』

『However, economic growth in the euro area is likely to continue to be dampened by the necessary balance sheet adjustments in a number of sectors and the sluggish pace of implementation of structural reforms.』

ということで、However以下の話はあるものの、循環的な話に関しては前半のように威勢の良い話。

『This assessment is also broadly reflected in the June 2015 Eurosystem staff macroeconomic projections for the euro area, which foresee annual real GDP increasing by 1.5% in 2015, 1.9% in 2016 and 2.0% in 2017. Compared with the March 2015 ECB staff macroeconomic projections, the projections for real GDP growth over the projection horizon remain virtually unchanged.』

ただ成長見通しに関しては特に上げているという話ではない。

『While remaining on the downside, the risks surrounding the economic outlook for the euro area have become more balanced on account of our monetary policy decisions and oil price and exchange rate developments.』

リスクはダウンサイドだがよりバランスされてきているという説明になっていてやや強め。

『Inflation bottomed out at the beginning of the year.』

物価に関してはキタコレですな。

『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation was 0.3% in May 2015, up from 0.0% in April and compared with -0.6% in January. On the basis of the information available and current oil futures prices, annual HICP inflation is expected to remain low in the months ahead and to rise towards the end of the year, also on account of base effects associated with the fall in oil prices in late 2014. Supported by the expected economic recovery, the impact of the lower euro exchange rate and the assumption embedded in oil futures markets of somewhat higher oil prices in the years ahead, inflation rates are expected to pick up further during 2016 and 2017.』

先行き物価が改善しますよと言う話ですが、まあこちらはふーんという所ではありますけど、何せ物価に関する部分ではさっきの「物価に関しては底打ちました」というのがもうねということで。

『This assessment is also broadly reflected in the June 2015 Eurosystem staff macroeconomic projections for the euro area, which foresee annual HICP inflation at 0.3% in 2015, 1.5% in 2016 and 1.8% in 2017. In comparison with the March 2015 ECB staff macroeconomic projections, the inflation projections have been revised upwards for 2015 and remain unchanged for 2016 and 2017.』

つーことで物価見通しは2015年を上方修正していますが2016、2017と中期見通しには変化なしですがまあ元々「今後は2%に向けて収斂」ですからね。

『The Governing Council will continue to monitor closely the risks to the outlook for price developments over the medium term. In this context, we will focus in particular on the pass-through of our monetary policy measures, as well as on geopolitical, exchange rate and energy price developments. We acknowledge that the staff projections are conditional on the full implementation of all our monetary policy measures in place. We also take into account that the degree of forecast uncertainty tends to increase with the length of the projection horizon.』

物価見通しに関しては今の金融政策の効果があって、しかもこの政策が継続されることを前提にしていますからという話をして、先行きの不確実性は考慮しますという話をしておりまして、ここでも「full implementation」を強調しておりますがまあここもドラギ節的には平常運転ですな。

ということで以下がマネタリーの話と財政構造改革実施しろやゴルァという話をしておりますが引用割愛します。


○白井審議委員講演だが金融政策スタンスに関して「以前から主張していた」事が以前主張していないという珍現象発生

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150603a1.pdf
わが国経済・物価情勢と金融政策:量的・質的金融緩和の導入後2 年間を振り返って
── 三重県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

・『消費税率引き上げの影響がなければプラス成長の継続』は分かったがお前のマンデートは物価だ

『2.量的・質的金融緩和の導入後2 年間の経済・物価の実績』というのがあってだな。

『それでは、過去2 年間の経済・物価の実績についてお話をさせて頂きます。』

ってなことで話があるのですが2番目の小見出しから。

『消費税率引き上げの影響がなければプラス成長の継続』

ふーん。

『次に、2014 年4 月の消費税率の引き上げはわが国経済に多大な影響を与えましたので、金融緩和の効果を評価する上では、消費税率引き上げの影響を取り除いて経済の実績を確認してみることも重要です。そこで、消費税率引き上げが成長率に及ぼす影響についての日本銀行の試算値(2013 年度は+0.5%ポイント程度、2014 年度は−1.2%ポイント程度)を踏まえて、消費税率引き上げの影響を除いた2013 年度と2014 年度の実質GDP の前年からの変化額と変化率を算出してみました(前掲図表1)。』

この前師匠がQQEの物価への効果という話で消費税増税の駆け込み需要による物価押し上げ効果の分を完全に無視した話をして笑いを取っていたのでさすがに白井さんここは考慮していまして、以下ああだこうだという話をしているのですがそこはパスしてこの小見出しの結論。

『図表1 によると、消費税率引き上げの影響を除いた実質GDP の変化額は、2013年度は+8.1 兆円の増額となっており、消費税率引き上げによる押し上げ分の2.7 兆円分だけ減少していますが、それでも1.6%程度の上昇率を維持しています。2014 年度の変化額に至っては+0.8 兆円の増額へとプラスに転じており、消費税率引き上げによる成長下押し分(6.4 兆円程度)が無ければ、わが国経済は落ち込まずに0.2%程度成長していたと言えます。』

だそうですが、まず第一にMB残高やら資産買入が累積的に拡大して、金融緩和の効果についても経済にラグを持って効く、という事を考慮に入れますと、QQEが累積的に拡大してきた昨年度の方が成長が弱いという時点でQQEのGDPに関する効果はどうなっているんだよというか、実は2013年度の方が高かったのだったらそれは麿時代の金融政策効果じゃねえのかと小一時間。

まあそんな話よりも、QQEの効果ガーという話をするのにマンデートである物価の話をしないで何の効果分析だよと小一時間問い詰めたい訳です。なおこの白井さんの分析の後にこの前企画が出していたペーパーの説明が延々と続き、その中で予想物価上昇率に対しての効果とかの話があるにはあるが白井さんの分析に関する部分では物価の話が無いとかお前ナメトンノカという話ですな。

なお、0.2%しか成長しないのかよという点に関する言い訳説明がこの先に繰り広げられていますがどうでもよいので引用しません。


・引用しないけど一応小見出しだけ引用しておく

なお、今申し上げましたように上記引用部分以降に関しては「2014年がイマイチだった理由」というのを(消費税以外の要因で)説明していまして、その次の小見出しに関しては『展望レポートの「量的・質的金融緩和の効果の検証」と私の見方(物価面)』、『家計と企業の予想物価上昇率(インフレ予想)の動きをどう理解すべきか』とあって、また「私の」見方かよとうんざりしますが、内容に関しては別に新味も無いどうでもよいものであるので引用する価値なしと判断して全部割愛して次のコーナーに行く。


・経済物価見通しを一応引用する

その次が『3.わが国の経済・物価の中期見通しとリスク評価』である。

『私自身の経済見通しについては、2015年度は1%台後半、2016年度は1%台半ば程度、2017年度は0%を少し上回る程度で推移すると予想しています。2015年度について中心的な見通しよりも慎重なのは、賃金上昇ペースの想定の違いもあるように思います。非製造業の労働生産性はこれまで殆ど改善していないことから、私は、今後の賃金もより緩やかな上昇を想定しており、それに見合った消費回復力を予想しています。』

えーっとすいませんそれなら追加緩和提案をするなり金融政策での「2年で2%」の看板に関して何らかの政策提案するなりしないとダメなんじゃないでしょうか。

『私自身の物価見通しは、物価の上昇メカニズムは中心的な見通しと同じですが、そのペースは2016年度末に2%程度に近づき、2017年度は2%を幾分下回る水準で推移すると予想しています。2015年度平均では0%台半ば程度と中央値対比で低く見ており、この背景には、企業の自社販売価格の引き上げがより緩やかに生じるとの慎重な見方があります。』

以下うだうだと冗長なのだが仕方ないので引用する。

『足もとの幾つかの企業調査(日銀短観を含む)によれば、一部の企業で仕入価格下落に対して販売価格の上昇を多少抑制する動きも確認されており、物価上昇率が0%近傍で推移する間はこうした状態が続くとみていることも影響しています。2016年度平均についても、1%台半ば程度と中央値対比で慎重な見通しを立てています。これは、所得の持続的な改善とともに家計の物価上昇を容認する姿勢が強まるにつれ、企業の価格設定力も高まり、中長期の予想物価上昇率が2%程度に向けて収斂していくプロセスが、より緩やかなペースで生じると考えているからです。』

ふーん。

『なお、2%程度の達成時期についての中心的見通しですが、従来の「2015年度を中心とする時期」から、今回は「2016年度前半頃」へと1〜2四半期程度後ずれさせています。後ずれ自体は、私のこれまでの主張に沿っていますが、その表現について、私は「2016年度を中心とする時期」へと修正する案を提出しました。』

アタシがアタシがとやかましいんじゃ。

『理由は、第一に、日本銀行の基本的見解として物価見通しの下振れリスクが大きいと判断していることから幅をもった表現が適切であること、第二に、従来の表現は「1年あるいは1年以上のレンジ」で示していたのを、「半年程度のレンジ」に狭めており、金融政策の柔軟性を弱める可能性があるからです。』

?????????????????????????


・ということで金融政策スタンスの話をしているがいつの間に「前から申し上げていたこと」になるのでしょうか

上記引用部分の続き。

『念のために申しあげておきますと、私は、量的・質的金融緩和の導入時から、家計・企業に過大な調整負担をかけない範囲で、「できるだけ早期に」2%目標の達成を目指してきており、私の提案はその見方を修正するものではありません。』

「2年」という期限を切った大看板を出すことに意味がある、と黒田総裁や置物副総裁は仰せなのですが。

・・・・・・・・・というかですね、『私は、量的・質的金融緩和の導入時から、家計・企業に過大な調整負担をかけない範囲で、「できるだけ早期に」2%目標の達成を目指してきており、私の提案はその見方を修正するものではありません。』とか言ってるんですが、ここで2013年9月20日の白井さんの講演を見てみましょう。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/ko130921a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130921a1.pdf
我が国の金融政策とフォーワードガイダンス ―金融政策運営についてのコミュニケーション政策―
国際通貨基金(IMF)及び米国連邦準備制度理事会における講演(各9月19日、20日、於ワシントンDC)の邦訳
日本銀行政策委員会審議委員 白井 さゆり
2013年9月20日

この時にQQEの建付けに対して『量的・質的緩和の下でのフォーワードガイダンス』という謎小見出しの中で謎の説明をしていて意味不明であると悪態をついた次第ですが、この部分から引用してみましょう。

『日本銀行は、本年4月4日に量的・質的緩和の導入に伴い、金融緩和の時間軸に関する以下の二つの表現を含む公表文を公表致しました。

(1)日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する(これを「第一のフォーワードガイダンス」と呼ぶことにします)。

(2)「量的・質的緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(これを「第二のフォーワードガイダンス」と呼ぶことにします)。』(上記2013年9月20日白井審議委員講演より)

で、その第一のフォワードガイダンスとやらが「2年で2%」なのですけど・・・・・・・・・

『この第一のフォーワードガイダンスの目的は、市場や国民に対して、日本銀行が、2%目標を2年程度という期間内――これはインフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行が通常想定している期間に相当しますが――に達成するという強い決意を示すためのものです。このガイダンスは、日付ベース(2年程度)と経済状況ベース(2%)の二つの特徴を兼ね備えています。このうち日付ベースの側面は、2%を可能な限り早期に達成するとの日本銀行の強い意図とその可能性についての市場や国民からの信認をできるだけ早く高めるために不可欠だと考えられました。日本銀行の政策に対する市場や国民の信頼が高まるほど中長期インフレ期待が上昇するペースが加速し、そうなれば企業が需給状況に合わせて販売価格を調整するような価格設定行動を強めることにも寄与すると考えられます。』(上記2013年9月20日白井審議委員講演より)

ということで、どこからどうみても先ほどの「家計・企業に過大な調整負担をかけない範囲で、「できるだけ早期に」2%目標の達成を目指してきており」というのと整合性が無いのですが、いつの間に勝手にそのような主張を以前からしていたとでっち上げられているのでしょうか。


では今回の講演に戻りまして。

『他の主要中央銀行と同様に、外生的な内外の要因によって環境が変われば、経済・物価の見通しを後ずれ(あるいは前倒し)させるのはごく自然なことです。新しい情報を適宜織り込み、目安としての目標達成時期を示しながら、持続性に配慮した2%程度のインフレ社会を速やかに実現するために努力をしていくことが重要です。』(ここからは今回の金懇挨拶からの引用に戻ります)

えーっとすいません2013年9月20日の講演では「日付ベースのフォワードガイダンス」(なお念のため申し上げますがこのフォワードガイダンス云々という説明は用語の使い方が明らかに一般的な使い方ではないのでその点に関して駄文で悪態申し上げたですのでよろしゅうに)と2年に関する話をしていたのに、何で今回は「目安としての」時期になるんでしょうか????????????

『これが、私が量的・質的金融緩和の導入時から主張し、また日本銀行を含む主要中央銀行が事実上採用している「フレキシブル・インフレーション・ターゲティング」の本質だと考えています。』

以前言っている事と違いますし、そもそも「2年」は単なる「目安」ではなくて達成時期としてのコミットメントであるという建付けで執行部は説明した上で金融政策決定会合や展望レポートの表現がある訳で、日銀はそういう説明を採用していないのですが。

でもって日銀の2年で2%スタンスに関して決定会合あるいは展望レポートで反対議案をだしている訳でもなく(白井さんの出している反対は単に2%物価の到達時期見込みに関してのみ)、体制順応しておいて後から旗色悪くなると「私が申し上げていた通り」とかズルにも程があるとしか申し上げようがない。白井さんの場合は単に物価2%到達時期に関してだけ反対議案だしていますが、

『なお、前述した私自身の物価見通しは、見通し期間中に2%程度に達する可能性を排除していませんので、私の提案した表現なら概ねカバーされると判断しています。』

だったら金融政策スタンスに関する提案をするか追加緩和提案しろやゴルァ!!!!


・これはウケたという指摘

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPCMRQ6S972901.html
「余地ある」が英語で「躊躇なく」−白井日銀委員の使い分け
2015/06/03 16:01 JST

『(ブルームバーグ):日本銀行の白井さゆり審議委員は3日、津市内で講演し、物価の下振れリスクが顕現化すれば「対応を検討する余地がある」と述べた。一方で、日銀が公表した英文訳では「躊躇(ちゅうちょ)なく対応を検討する」と、日英で異なるメッセージを発しており、金融市場からはこうした使い分けに批判的な声が相次いでいる。 』(上記URL記事より、以下暫く同様)

「批判的な声が相次いでいる」ってさすがにジャパニーズの皆様がかなりどうでも良いネタ審議委員の金懇挨拶如きで英文まで見ないわと思う次第なので、これはこの記事書いた某記者が「こういうのはどう思いますか」と聞いて回って集めた話だろとさすがに吹いた。

『白井委員は講演で、「物価の基調が大きく弱まるような下振れリスクが顕在化する場合には、金融政策による対応を検討する余地があると思いますが、現時点ではそのような蓋然(がいぜん)性は低いと、私は考えています」と述べた。』

ちなみにこれは今まで引用した後の所で最後の部分にあります。本文11ページでPDFの12枚目になりますのでご参照あれ。

『この「対応を検討する余地がある」という部分が英語では、「I would not hesitate to consider some monetary policy actions」と訳されており、日本語では「躊躇なく検討するであろう」という意味になっている。』

なお、英文を見たい時に一番便利なのは日本語トップページから行けるHTMLで
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150603a.htm/

となっている所で、画面右にある日本銀行の建物の画像の下あたりに「ENGLISH」というリンクがあって、ここをクリックすると英文ページになる(いやまあトップページからでも同じですけど)ので便利でして、まあそこから見に行くと確かに記事の指摘通りです。

『この「躊躇なく」という表現は黒田東彦総裁の決まり文句でもある。総裁が5月15日に行った講演でも「物価の基調が変化し、2%の実現のために必要となれば、躊躇なく調整を行う方針である」と述べたが、英文では「without hesitation」と正確に訳されている。』

クソワロタ。

『白井委員はその後の記者会見で、日英の講演録の違いについて問われ、「私の講演原稿は逐語訳はしていない」と指摘。「必要があれば何らかの金融政策の対応は考え得ると言っており、追加緩和をしないという否定は一切していない。必要だという判断があれば、何らかの対応を考えるという点では全く違いはない」と述べた。』

「問われ」って質問したのアナタデショとか思いましたが、必要なら追加緩和をするというのであれば確かに日本語の表現の方が弱いわというのは事実だなと思ったので、会見で更に墓穴掘ったなという感じでございます。


・相変わらず内容の割に分量だけは多いが少しはマシになったのだけは評価しておく

ということで白井さんの金懇挨拶ネタ終了なのですが、今回も相変わらず無駄に説明が冗長で、そんな事は言われんでもわかっとるわという話がクドクド続くわ「私の」は連呼するわで紙の無駄遣いにも程があるのですが、少しだけマシになったのは今回の金懇挨拶って表紙と図表含めて23枚に止めている点でして、たとえば同じ金懇で2013年6月13日の金懇挨拶では32枚もありまして、とりあえず資源の無駄遣いの削減がなされているのだけは評価しますが、1枚でも100枚でも内容的に資源の無駄遣いであることに変りがないというのが残念な所であるとも申し上げておきましょう。


○本日は3M短国入札と30年入札とか調節年報キタコレとか(メモ)

本日はここもと謎のマイナス突入している3M短国の入札ですが、資金需給的にどう見てもこれ6月のMB帳尻を考えた場合には7〜8月償還の日銀保有短国の売り切りオペやらないと帳尻合わないだろ(やったら爆笑するがさすがに売りオペやったらアナウンスメント効果がマイナス方向にでかいからやらないと思うけど)という状態の中での入札という事でどうなるんでしょうねえ。まあ100円に限りなく近いプラス金利で落ち着くと思いますが。

でまあそれよりも欧米金利上昇ヒャッハーであばばばばーの中での30年入札がもうねという所ですが・・・・・・・

あと、これが昨日の遅めの時間にしらっと出ていましたがまだ読んでいない。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2015/ron150603a.htm/
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2015/data/ron150603a.pdf
2014年度の金融市場調節







2015/06/03

お題「今月の短国買入はどうなるの??/ブレイナード理事の講演は議長副議長のラインよりもハト成分高い」

ふーん。
http://asia.nikkei.com/Business/Trends/Corporate-governance-reform-hatches-business-opportunities
Corporate governance reform hatches business opportunities

江連さんって以前モーサテでお天気コーナーやってたという記憶がありますな、うんうん。


ところで賃上げ要請の次は投資要請ですかそうですか
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS02H3W_S5A600C1PP8000/
首相、経団連に「大胆な投資を」 定時総会で
2015/6/2 19:04

・・・・・・・・・・蘇った特振法または満(銃声)。


○短国関連の計数ネタ

・6月の短国買入は買入どころか売切した方が良いのではないかと

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1506.htm/
日銀当座預金増減要因(2015年6月見込み)

こちらを見ますと今月の財政要因の資金需給見通しは6.58兆円の余剰見込になっています。買入短国の償還が少ないのと2M短国が発行されないのが効いていて短国要因がツーペー近くになっているのがでかいですな。

さてここでマネタリーベースの進捗状況を確認しますとですな。

5/29
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd150529.htm
マネタリーベース 3,073,900

3/31
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd150331.htm
マネタリーベース 2,958,600

12/30
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd141230.htm
マネタリーベース 2,758,800

ということでして、12/30-3/31のMBが19.98兆円の拡大と無駄に見事な帳尻芸を披露して頂きましたので、3/31-6/30のMBも20兆円拡大するものだと妄想される訳ですよ。

でもってですね、3/31のMB+20兆円だと315.86兆円となる訳ですが、5/29の時点でMBが307.39兆円ですので、ここから20兆円拡大の帳尻という事になりますと要積み上げ額は8.47兆円になっております。

そして先ほどの増減要因を見ると財政要因(銀行券要因での当座預金増減は当座預金増える分銀行券が還流するのでMB的にはチャラになるのでこの計算上は考えなくて良い)が6.58兆円でしたので、これに輪番オペでの買入が9.0兆円(オファーと受渡の期ズレが生じる分での増減があり得ます、なお1年以内の輪番は今月の場合6/20償還が全部打ちこまれる前提で月末MBに跳ねないという見通しにしました)程度になりますので、この時点でMBが323兆円という数字が出てきます。

となりますと、前回の四半期20兆円積んで華麗に着地させていたのに対して今回は何でこんなに積んでいるのかという話になりますし、そもそも論として固定金利オペの分はさておいても今月は貸出増加支援貸出の実施によってそこでもMB積みあがってしまう(一桁の前半兆円)のでございますがとか勘案しますと、そもそも論として何で4月5月にあんな勢いで短国買入を実施して短期国債の金利を5週連続でマイナスキープとか市場を叩き壊す行為をしておられたのかがさっぱりワカランチ会長な訳ですよ。

まあ毎度申し上げておりますように7-9が資金需給的に不足が深い(はず)なのでクーレ方式で7-9に短国買入をとんでもないマイナスまで買い上げることを考えたら先にMBを積んでおいて7-9のオペに掛かる負担を軽くしようというテクニカルな調整をしているのかなとは思うのですが、それにしても貸出支援の入り方によっては「四半期20兆円」の数字が10兆円近く上に振れるという事になると、それはMPM声明文に掛かれているディレクティブの『マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。』から見てさすがに整合性大丈夫なんかという話になってくる(しかもこれまでが無駄に綺麗に着地させているだけに)と思うのですがどうなんでしょ。

ということでもしかしたら帳尻の為に短国売切(ちなみに事務的にはそういうオペは存在する)でもしないと帳尻にならないのではないか(7月足とかの保有分売れば6月分のMB積み上げ分を7月に先送りができますよ〜ウヘヘヘヘ)という夢の展開とかはさすがに無い(緩和やってるのに売切オペとは何ぞという話に絶対なるから)でしょうが(^^)、今月の短国買入どうするつもりなのやらという極めて不思議ちゃんな事が想定されるのでした。

しかし置物副総裁様までがMBの量の話ではなくて「長期国債を買い入れて実質金利を下げることが重要」と明言するという中で短国買入(とか短い利付国債の輪番とか)ってやってる意味ねえだろそれはとしか思えないのですけど何とかならんもんですかねえ・・・・・・・・・


・なお3M短国がマイナスになっている模様

毎度のロイターニュースから
http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPL3N0YO2H420150602
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、長期金利0.410%に上昇
2015年 06月 2日 15:14 JST

『[東京 2日 ロイター] <15:09> 国債先物は続落、長期金利0.410%に上昇』

『短期市場では、無担保コール翌日物は0.070─0.073%を中心に取引された。主な取り手は地銀、信託、証券など。大手行は0.068─0.069%付近で調達意欲を示し、0.069%で一部調達したもよう。レポ(現金担保付債券貸借取引)GCT+1レート(平均)は0.069%と高止まり。7日物の米ドル資金供給オペに応札はみられなかった。新発3カ月国庫短期証券は前日比0.006%低いマイナス0.005%で取引が成立した。ユーロ円3カ月金利先物は小動き。』(以上上記URL先より)

ということでまあ前日もマイナス0.1bpとかがあったような気もしますが、昨日はもうちょっと明確なマイナスでマイナス0.5bpとかになっておりまして、資金需給からみてどう考えても短国買入減るだろと言いましてもこうなるというのが短期市場の仕様だったりします。

つまりですな、どうせ木曜になると3M短国の入札があって、そこでどどーんと玉が出てくるのではありますが、だからと言って今そこにある3Mカレント銘柄が需給悪化待ったなしなのでプラス金利が拡大するのかというとこれはこれで別問題でして、ご案内のように4-5月は短国の金利が殆どの期間でマイナス推移していた(最初の1週と最後の2週のうち一部だけプラス)のですから投資家が短国の持ちが無く、プラス金利になればバキューム買入状態になっているという状態はまだ継続しており、その結果プラス金利になったところで業者の持ちが軽くなり、別に木曜から金利がプラスになるからと言ってその前に投げないといけない状態ではないというこの風潮。

そしてその中で海外からちょろっと買いが来るとかでマイナスを買う人が出るともう気配がマイナスになってしまうというお洒落な展開なのですが、まー普通に考えて明日の入札で足切マイナスとかにはならないというか、そうしてしまうと業者の持ちになってしまい、日銀への嵌め込みショーが下手したら実施されないリスクがある中で全部を海外と四半期末債券残高帳尻投資家にマイナス金利で嵌めるのはどう見ても無理なので、まー普通にプラスのどこか(ただしゼロには近い)となるんでしょうが、2日後にそうなるのが見えていても今の需給で金利がついてしまうというこのその日暮らし感が短期市場というのはタマランチ会長ですなあと思うのでありました(^^)。



○FRBブレイナード理事がハト成分なスピーチをしたようで

海外ネタに関しては他のネタを成敗していないような気がしますが何故か先入先出攻撃でブレイナード理事講演から簡単に。

記事はこの辺。
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPKBN0OI1VJ20150602
利上げできない可能性、海外景気回復まで=米FRB理事
2015年 06月 3日 04:21 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPBNS0SYF01X01.html
ブレイナードFRB理事:弱いデータ、成長見通しに疑問
2015/06/03 02:16 JST

で、その講演はこちら。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20150602a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20150602a.pdf
Governor Lael Brainard
At the Center for Strategic and International Studies, Washington, D.C.
June 2, 2015
The U.S. Economic Outlook and Implications for Monetary Policy

どう見てもド直球ストレートなお題ですが、金融政策絡みは後半の『Inflation, Employment, and the Implications for Monetary Policy』というデュアルマンデートそのまんまの小見出しから。


・物価については「コアインフレ」と「海外からのデフレ圧力」を強調

『Foreign headwinds also appear to be affecting U.S. inflation. Weak foreign demand appears to be the dominant factor driving recent reductions in the prices of some non-oil commodities and also likely played some role in last year's decline in oil prices, although changes in supply are likely the more important driver.』

『The stronger dollar is also weighing on U.S. inflation through lower import prices. Non-oil import prices are reported to have declined at an annual rate of 4-1/2 percent last quarter, and data on trade prices through April suggest a decrease of a similar magnitude this quarter. Based on the share of imports in consumption, econometric models imply that falling import prices might subtract about 0.3 percentage point from consumer price inflation this year.』

ということで海外経済がうんこで商品価格がぱっとしないわドルが高いわで輸入価格が物価を押し下げてやがりますという話から入っている時点で掴みがハト風味。

『Starting this month, with the end of calendar-based forward guidance, the decisions of the Federal Open Market Committee (FOMC) regarding the level of the federal funds rate will depend on the evolution of incoming economic data.』

もちろん前からこういう建付けにはなっていますが、ブレイナードさんのこの言い方は簡潔でして、フォワードガイダンスを止めたので政策はあくまでも状況次第というのを強調しています。

『While the date of liftoff will not be predetermined, the conditions governing the decision to lift off have been clearly stated.』

ブレイナード的出口着手の条件とは??

『First, to have reasonable confidence that inflation will be on track to reach its target of 2 percent over the medium term, I will be looking closely at a variety of indicators--in particular, signs that core inflation is firming, deflationary pressures from abroad are abating, and both survey- and market-based measures of inflation expectations are stable.』

2%のオントラック、に関しての注目点として「コアインフレが強くなっていること」「海外からのデフレ的圧力が弱まっていること」「インフレ期待が安定している事」としています。

でもって注目なのは当然ながらこの2番目でして、海外からのデフレ圧力というのは先ほどの出落ち部分にあった話となりますと、これは「海外経済が弱い状態だったりドルがドンドコ上昇しているようなときには出口着手するのは時期尚早」と思いっきり言っているのと同じなのでこれはキタコレなハト風味という話になりますし、まあ最初に紹介した記事なんかでもそこに反応するわそりゃというところで。

『Despite the deflationary pressures from abroad, the recent data have provided some reassurance that inflation in the United States is starting to firm. Oil prices have now retraced part of their decline from the middle of last year through January, and monthly changes in core personal consumption expenditures (PCE) prices have increased from the very low levels reached around the turn of the year.』

でまあその海外からのデフレーショナリーな圧力に関しては最近弱まっている、というのを次のパラグラフで上記のように説明しているのは、まあ先ほどの部分だけだとハト風味強すぎというので中和をしている感じでございましょうかねえ。議事要旨(そういえば途中までしかネタにしていなかったっけ)なんかで為替とか海外の議論が出ている中で何らかの認識が示されている場合もあるので良く見ておきましょう。

『In the face of the long period of weak overall inflation, it is reassuring that survey-based measures of longer-run inflation expectations appear to have remained stable. In addition, market-based measures of inflation expectations have moved up somewhat in the past few months after several months of decreases that appeared to have been associated with oil price declines and heightened anxiety about global deflationary pressures.』

物価が弱い期間が長引いているもののインフレ期待は安定的ですなという話もしておりましてこの辺に来ると先ほどのハトキタ状態がだいぶ中和されてくるのですが・・・・・・・・・

『Even so, most indicators of the underlying trend in PCE inflation, such as the 12-month change in core PCE prices or the Federal Reserve Bank of Dallas's 12-month trimmed mean PCE inflation rate, are around 1-1/4 to 1-1/2 percent, noticeably below the FOMC's 2 percent target.』

とはいえコアインフレが弱いという話をしておりますので、まあ結局はハト風味であります。


・労働市場に関しても改善の余地ありと指摘

でもって第二の着目点。

『Second, I will also want to see further improvement in the labor market with solid further employment growth and further evidence of a narrowing of resource utilization gaps based on various indicators, including the unemployment rate, the labor force participation rate, the percentage of employees who are working part time for economic reasons, and faster wage growth.』

労働市場のデータがさらにソリッドになる必要があって、特に非自発的失業者の戻りとかパートタイム比率とか賃金の一段の上昇加速を見たいとこれまた具体的項目を挙げています。

『The robust pace of labor market improvement was perhaps the brightest part of the data picture over 2014. As we have advanced into 2015, the pace of job gains has slowed. Average monthly nonfarm payroll employment gains in the past three months were a little under 200,000, down from last year's pace of 260,000.』

で、それらに関しては茲許の改善ペースがイマイチという話をしていますが・・・・・・・・・

『Even so, job gains still appear to be consistent with declining labor market slack, as do indicators such as unemployment insurance claims and job openings, which remain robust.』

Even soが好きねこの人(^^)という感じですが、ジョブオープニングに関しては労働市場のスラックが順調に縮小という話も入れています。

『My judgment is that there is still room for employment and hours worked to grow further, as there are other labor market indicators that suggest slack not captured by the unemployment rate.』

とはいえ、失業率でみられるよりもまだ改善すべき余地があるという話をしているのでやはり慎重派ですね。

『For example, the labor force participation rate remains low relative to its declining pre-crisis trend, and the number of employees who are working less than they would like is still elevated relative to pre-crisis standards. Moreover, on balance, aggregate measures of wage growth remain soft and have not significantly strengthened in the past year, suggesting there is remaining slack in the labor market.』

というようなデータの話に加え・・・・・・・

『In addition, although the unemployment rate is now near levels commonly associated with the natural rate of unemployment, there are reasons to think that the natural rate may have declined over the past few years such that a gap remains between the unemployment rate and its natural rate.』

ということで自然失業率が下がっているのではないかネタ登場。

『The composition of the labor force, for example, looks to be shifting toward groups with relatively low levels of unemployment.4 In addition, it may be that a reduction in worker bargaining power or perhaps reduced levels of labor market churning are putting downward pressure on the natural rate.5』

『With the labor market evidencing additional slack not well captured by the standard unemployment rate and with inflation remaining soft, there may be additional room to support further healing in the labor market, which is appropriate following the deep damage from the Great Recession.』

てな訳で、「there may be additional room to support further healing in the labor market」って来ましたので慎重姿勢ですな。


・年末位に出口とは言っているがこれはどう見ても物言いが慎重

『Given the softness in the data we have seen so far this year and some uncertainty about how much to attribute to temporary or statistical factors, I think there is value to watchful waiting while additional data help clarify the economy's underlying momentum in the face of the headwinds from abroad. If continued labor market strengthening is confirmed and inflation readings continue to improve, liftoff could come before the end of the year.』

最後に「If continued labor market strengthening is confirmed and inflation readings continue to improve, liftoff could come before the end of the year.」とは言ってますが、その前の部分がどう見ても慎重姿勢でハト風味全開です本当にカムサハムニダとしか申し上げようがないですなこりゃ。

『It is important to underscore, however, that the date of liftoff is only one in an ongoing series of decisions the FOMC will be making in response to incoming data. Just as no previous recovery has proceeded as this one has, so, too, there is no reason to expect monetary policy to follow previous tightening cycles.』

出口後の利上げサイクルは従来通りとは限りませんというのは要するに利上げペースが慎重ですという話だがさすがにこれはバリバリのタカ派以外はそう言っているのでまあさいですなという話。

『Given the unique conditions in the labor market and the economy more broadly, I will want to move step by step--observing how the markets and the economy respond before gauging the appropriate next step in the policy path.』

まあそうくるでしょうね。


・正常化における金利についてのお話の中に欧州金利のボラ上昇の問題も絡めるとな

次は出口政策における金利に関する論点のようで。

『The divergence in conditions here and abroad also injects an element of uncertainty with regard to the path of policy. While, as noted earlier, the dollar's appreciation is generally transmitted into somewhat tighter financial conditions, the advent of quantitative easing in Europe appeared to have led to some compression in term premiums not only in European bond markets, but also in the United States.』

金融政策の方向性によるドル高で金融環境がタイト化した上に欧州金利のボラ上昇がタームプレミアムの上昇によって米国にも影響を与えるという話ですが、FEDの人って米国人だけに基本的に「海外の影響ガー」の話をする時もそんなに話を強調しないで、「海外は海外ですが偉大なるステイツ様はステイツ様ですからねえ」というような感じで知らんがな的な姿勢の方が多いと思う(って偏見ですかそうですか^^)のですが、割とこう「海外の影響ガー」を連発するのがFEDらしからぬという感じで面白いなと思うのでありました。

『Although longer-dated yields have recently moved somewhat higher, it is nonetheless difficult to know in advance how term premiums will respond when U.S. normalization gets under way.』

ふーん。

『To the extent that the commencement of normalization leads to relatively greater demand for U.S. assets, we could see echoes of the so-called conundrum in the period from 2004 to 2005, when rising short-term rates were accompanied by falling forward rates. But the reverse is also possible, with term premiums moving more steeply than appropriate for underlying economic conditions, which we saw in the so-called taper tantrum episode in 2013.』

『Certainly, my colleagues and I are mindful of recent episodes in which we have seen unusually sharp spikes in market volatility. Accordingly, I expect that the FOMC will continue proceeding to the greatest extent possible in a very deliberate manner, aiming to provide clear communications about Committee members' assessments of the economic and policy outlook.』

とりあえず正常化の中で長期金利がどう動くのかを気にしているのは把握した。

『Based on today's picture of moderate underlying momentum in the domestic economy and the likelihood of continued crosscurrents from abroad, the process of normalizing monetary policy is likely to be gradual. It is also important to remember that the stance of monetary policy will remain highly accommodative even after the federal funds rate moves off the effective lower bound, because the real federal funds rate will initially still be low and because of the elevated size of the Federal Reserve's balance sheet and the associated downward pressure on long-term rates. Moreover, the FOMC has stated clearly that it will reduce the size of the balance sheet in a gradual and predictable manner starting at an appropriate time after liftoff, which will depend on how economic and financial conditions evolve.』

利上げ着手しても金融環境は緩和的ですよとかその手の話ですな。


・最後のまとめも慎重スタンス

で、最終パラグラフ。

『In summary, the string of soft data in the first quarter raises some questions about the contours of the outlook. While it is possible that residual seasonality and temporary factors were responsible, it would be difficult, based on the data available today, to dismiss the possibility of a more significant drag on the economy than anticipated from foreign crosscurrents and the negative effects of the oil price decline, along with a more cautious U.S. consumer.』

soft data in the first quarter raises some questionsキタコレ!!!

『This possibility argues for giving the data some more time to confirm further improvement in the labor market and firming of inflation toward our 2 percent target. But while the case for liftoff may not be immediate, it is coming into clearer view. When that time comes, the policy path will be highly attuned to incoming data and not on a preset course, and it is important to be mindful of the possibility of volatility as markets adjust to a change in the stance of policy.』

どう見ても慎重スタンスです本当にありがとうございました。

『Thus, the FOMC will continue communicating as clearly as possible regarding the outlook and the factors underlying its policy determinations. 』

ということで、イエレン議長などの線よりもハト成分高い理事ですなというのが結論なのでありましたとさ、と駆け足でありましたが講演の後半をネタにしてみました。




2015/06/02

お題「ECBのAPPのペースに勝手に味わいを感じている件/FSR別冊というのが出ましたぞなもし」

為替ェ・・・・・・・・・・・

○今週はECBですな

でまあ今週はECBで会合自体はどうせしばらくの間は「今の政策の効果を見て行くのですが政策自体は効果出てますので順調順調」という話になると思うのですが(ただしギリシャが火を噴いた場合に泡吹き状態になって何かするというのはあり得ますが)、ここでPSPPの進捗を確認してみましょう。

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150526.en.html
Consolidated financial statement of the Eurosystem as at 22 May 2015

CBPP3: +EUR 2.0 billion
ABSPP: +EUR 0.1 billion
PSPP: +EUR 11.8 billion

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150519.en.html
Consolidated financial statement of the Eurosystem as at 15 May 2015

CBPP3:+EUR 2.8 billion
ABSPP:+EUR 0.3 billion
PSPP:+EUR 13.7 billion

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150512.en.html
Consolidated financial statement of the Eurosystem as at 8 May 2015

CBPP3: +EUR 2.9 billion
ABSPP:
PSPP: +EUR 13.6 billion

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150505.en.html
Consolidated financial statement of the Eurosystem as at 1 May 2015

CBPP3: +EUR 2.5 billion
ABSPP:
PSPP: +EUR 10.0 billion

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150428.en.html
Consolidated financial statement of the Eurosystem as at 24 April 2015

CBPP3: +EUR 3.0 billion
ABSPP: +EUR 0.2 billion
PSPP:+EUR 11.7 billion

いやまあこれCSVでも落とせるのですが、週次のページがあって数字をペタペタ貼れるのでつい貼って見ましたが、5月になってPSPPの買入ペースが上昇してるように見えます(5/1の週はレーバーデーがあってこの集計は受け渡しベースの集計なので1営業日分少ないので少なく見えるので4/24の週も比較に入れています)が、クーレ理事の例の発言が報道された週のPSPPってなんか知らんがペースが落ちていまして、月末の数字に関しては、

http://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omo/html/index.en.html
にありますように、

Covered bond purchase programme 3
29 May. 2015
85,108

Asset-backed securities purchase programme
29 May. 2015
7,212

Public sector purchase programme
29 May. 2015
146,679

となっていて、前週からの差分ですとCBPP3が+2.3bil、ABSPPが+1.0bil、PSPPが+12.5bilとなっていまして、その前の週からはやや買入増えていますが5月1週2週よりは若干ペースが落ちているの巻となっていますな。

でまあ月次の走りを見ますと・・・・・・・・
http://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omt/html/index.en.html
の中に

Eurosystem holdings under the expanded asset purchase programme

というのがありますが、こちらを見ると

April 2015
ABSPP5,785 CBPP375,070 PSPP95,056

May 2015
ABSPP7,212 CBPP385,108 PSPP146,679

Change from previous month
ABSPP1,427 CBPP10,038 PSPP351,623

となっていて、結論として買入の増分は全部で『APP63,088』となっているので、まあ月刊600億に対して1割は進捗が早いのですが、クーレ理事の講演での説明から市場が受けたと思われる反応ですともっとペースが上がるようなイメージだったのではないかと思われますので、これもしかしてクーレ理事の発言が市場に予想外にインパクト与えてしまって、しかも公表の経緯があまり宜しくなかった(特定業者の顧客向け非公開セミナーでの発言を1日遅れで公開した格好だから)というのもあって、実際にはもうちょっと前倒しをするつもりだったのを調整したのではないかとか勝手に妄想すると中々面白いのですが、恐らく定例理事会で質問が飛ぶのではないかとワクワクしております。

まーもとよりあの発言って単純に「単に月割りで買っているとお前らバカンスだなんだと休みやがるからその時買入が札集まらないとマズーなので先に買っておいた方が良いかもしれないし、札集まらないときはその時期買入減らして後で帳尻をすることもあり得るから、これから買入増やしたり8月に買入減らしたりしても驚くなよ」というテクニカルな話をしようという親切心というか、買入額の増減による変な思惑を出させないために行ったものだと思うのよ(クーレ理事はそもそも市場担当理事だし)。

ところがまあ地合いが地合いで買い戻したい状態だったのと、ノボトニーの発言がちょうど合わせ技みたいに出てしまったのが影響してあの有様という中銀コミュニケーションポリシー的にはチョンボとしか言いようがないプレイになってしまったという事だと思うのですけど、さて会見でどういう説明が繰り出されるのか(質問されないと答えないと思うが)という所ですな。

しかしまあドラギのおっちゃんがそういう感じだからシャーナイのかもしれませんけど、ECBの偉い人のコミュニケーションポリシーというのも何ちゅうかトンチキな発言飛び出したりするので、一応穏当かつたぶん常識的に考えると今回の一連の経緯ってこういうことで、下手に市場にこれ以上の無駄なボラを与えないために一旦前倒ししていた買入ペースをやや落としたんじゃネーノと思っているのですが、ECBの場合はつぎはぎで政策打ってきて全体の整合性をあまり気にしないで打ってくるという傾向もあるので、何してくるか良くわからんという恐れはございますです、はい。



○FSRの別冊ですが経済の都市部と地域の温度差という文脈で読んでも面白いですよこれは

先週末にこんなんでました。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150529a.htm/
「金融システムレポート別冊シリーズ」の公表開始について

で、記念すべき第一発目はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb150529.htm/
人口減少に立ち向かう地域金融
― 地域金融機関の経営環境と課題 ―

・・・・・・・・・お、おう。

でもって本文はこちらです。
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb150529.pdf


・要旨自体は毎度お察し

まずはHTMLの方の『要旨』から。

『地域金融機関の収益力は、2000年代以降、趨勢的に低下してきた。長期にわたる超低金利環境の継続というマクロ的な要因に、人口減少等の構造的な下押し圧力が、地域経済により強く働いてきたことによるものである。』

構造的に収益環境が厳しいとな。

『人口動態は今後も「逆風」として働くとみられるが、地域金融機関は、これに立ち向かうべく、様々な取り組みを行っている。』

今後も収益環境は構造的に悪化すれども好転しないので様々な取り組みをしなさいという事ですかそうですか。

『まず挙げられるのは、地域の産業・企業の活力向上支援である。足もと、わが国の景気が緩やかな回復を続けるもとで、金融機関の取り組みは、より効果を発揮しやすくなっていくと考えられる。また、事業領域の拡充や新たな金融ニーズの掘り起こし、ITの活用等による業務革新や経費構造の見直しなどへの取り組みもみられる。これらは、金融サービスの付加価値と効率性を高め、個々の金融機関のみならず、地域金融全体の収益力向上にも繋がり得るものである。』

うむ。

『業務提携や経営統合は、これらの取り組みをより効果的に推進し、地域に貢献していくための選択肢の一つと位置づけられる。

出たな。

『地域の経済活力の維持・向上には、それを支える地域金融が収益力を備えた活力ある「産業」として存立していくことが不可欠である。企業統治改革の浸透とともに、地域金融機関においても株主等の視点から収益力が評価される傾向が強まっていく。金融機関自身の経営努力の重要性は言うまでもないが、人口動態など構造的な下押し要因の存在を考慮すると、(1)地方創生に向けた官民の協働、(2)金融業務に関する制度・規制、(3)公的金融のあり方など、金融機関の取り組みを後押しする環境整備も重要である。日本銀行としても、中央銀行の立場から地域金融機関の様々な取り組みを支援していく。』

構造的に収益環境は厳しくなる一方という話がまたまた出てきておりましてまあお察しという要旨でして、基本的にFSRの話って日銀の機構局の見解ではありますが、日銀の機構局と金融庁におけるプルーデンスに関しては(当たり前ですが)基本的な問題認識とか方向性とかに関しては平仄を取っている(なおマネタリーポリシーウィングとの整合性はゆうてはならんことじゃ)ので、まー金融行政というかプルーデンスの問題意識と方向性を示したい、というFSRの中で初めて出た別冊が地域金融というお題という所に味わいがあります。ついでに言えば金融不均衡に関する話とかの前にこれが出てくるという時点で金融不均衡に関しての問題意識よりもこちらの方が意識として強い(まあ金融不均衡に関するレポートはマネタリーポリシーウィングの事を考えると今の時点で出しにくいというオトナの事情もあると思います)のかと。

まあ何ですな、次回出すときはぜひ「金融不均衡」に関するネタを投下して頂きたく存じますがオトナの事情というかショパンの事情というかでダメですかね。


・それはそれとして経済レポート的に見ても面白いので本文から少々

でもって本文の方は通常のFSRと同じ体裁なのですが、地域金融機関がどうのこうのというだけではなく、環境分析の部分に関しては良く言われている話ではありますが綺麗にまとまっているので本文の途中から少々。

本文4ページ(ファイルの6枚目)の『2.人口動態と地域経済』から。

『本章では、実体経済活動と人口動態の関係をみていく。ここでの分析は、2000年代以降の実績値に基づいており、諸計数の関係性は、様々な取り組みによって先行き変化し得るものである。』

『日本全体の人口が減少基調に転じたのは2011 年であるが、地方圏ではその前から ―― 早い県では1980 年代半ばから ―― 減少に転じている3。2000 年を基準に地域別の人口推移をみると、東京・愛知・大阪など都市圏の都道府県4の人口は、現在に至るまでプラス圏内を維持しているが、それ以外の県を集計した地方圏の人口は、2000 年代中頃に減少に転じている。先行きの推計をみても、都市圏に比べて、地方圏の人口減少テンポが速く、両者の差は拡大していく(図表2-1)。』

でまあこちらでは人口の推移を「東京」「東京のぞく都市圏」「地方圏」という形でグラフが出ているので本文見てちょと思いますが、都道府県別とか出すと色々とアレなのでまあこの程度の分類にとどめたんでしょうかねえとか思うのでした(−−;

『地方圏の人口減少は、少子高齢化による自然減が都市圏より早く進行したことが大きな理由であるが、@都市への人口流出(社会減)や、A若年層の流出に伴う更なる少子化・自然減も、この傾向に拍車をかけている。』

うむ。

『地域の人口減少・高齢化は、地域の企業活動の低下と相互に影響を及ぼし合いながら、地域経済の下押し圧力となってきた。人口減少に伴う地域の需要縮小やその見通しは、地元を主たる商圏とする中小・零細企業の経営環境を厳しいものにしている。また、事業主の高齢化は、個人企業等の存続にも影響を及ぼしており、事業所数が減少傾向を辿っている5。グローバル化に伴う生産の海外移転など産業構造の変化も、地方の企業活動や雇用創出力の低下に繋がってきた。そして、こうした企業活動の縮小が、より有利な就業機会を求める若年層の都市への流出を招くなど、更なる人口減少に繋がるという負の相互作用が働いている。』

うーむ。

『一方、都市圏では人口と企業活動の集積が進んできている。地域別の人口推移が示すとおり、全国の人口が減少する中にあっても、地方からの流入が都市圏の人口を押し上げている(前掲図表2-1)。また、日本全体の事業所数が減少する中で、地方圏の減少テンポはより速く、都市圏のシェアが緩やかに増している(図表2-2)。企業収益は、都市圏に属する上位10 都府県が、日本全体の8割強 ―― 東京が全体の半分強 ―― を占めるに至っている(図表2-3)。』

とまあそういう話で、もとより言われている話ではありますけれども計数も含めてコンパクトにまとまっているので改めて見るとぐぬぬという感想が。


・貸出が厳しいのもそうだが預金吸収力の低下という面にも言及しています

でまあ地域での貸出業務厳しいから都市部で突っ込むものの、もとより都市部においても資金需要がそんなに強い訳ではないし大手金融機関もたくさんいるので競争が激しくて収益性が厳しいというような話が本文7ページ(ファイルの9ページ)の『3.人口動態と地域金融機関の預貸ビジネス』という所にあります。

『こうしたもとで、地域銀行の多くは2000 年代半ば以降、人口や企業活動が集まる大都市を中心に、地元県以外での貸出(以下、「県外貸出」)を積極化させている(図表3-2@)7。この結果、2013 年度における地域銀行の総貸出に占める県外貸出のウェイトは、全体で3 割程度にまで上昇してきている(図表3-2A)。また、信用金庫においても、地元以外の区域における貸出を積極化する動きがみられている。』

でその結果ですが・・・・・・・・

『しかし、県外・域外での貸出増強は、今のところ、地域金融全体としてみた貸出の収益力向上には繋がっていない。』

ちなみにここ本文はゴシック体です。

『これは、マクロ的な資金需要が緩やかな増加に止まるもとで、都市部においても貸出供給圧力が資金需要を上回る状況に変わりはないためである。』

ほうほう。

『実際、人口・企業・利益が集中し、経済規模の大きい大都市ほど、優良先を巡って金融機関間の競合が強まることから、貸出金利に対する低下圧力が強まる傾向がある。個別金融機関の都道府県別貸出残高に基づき、貸出の競争状況の強さを表すハーフィンダール指数8を都道府県別に計算すると、経済規模が大きく、貸出のボリューム増が見込める大都市の都道府県ほど、競争的になっており、とくに東京、大阪、愛知では、ハーフィンダール指数が最も競争的な水準を示している(図表3-3)。そして、より競争的な貸出環境に直面している地域銀行ほど、貸出約定平均金利は低くなる傾向にある(図表3-4)。』

ちなみにこの指数については脚注あります。

『8 ハーフィンダール指数(ハーフィンダール・ハーシュマン指数)は、個社の市場シェアを二乗し合計した値である。例えば、1 社の企業が100%のシェアを有している場合は、ハーフィンダール指数は10,000 となり、100 社の企業が等分でシェアを有している場合は100 となる。』

ハーフィンダール指数のプロットに関してはグラフがあるのですが、プロットについて各県名とかまでは入ってるのを出していただくとどの辺が競争厳しいのかとか興味深いのが出てくるのかもしれませんがそこは惜しくも出ていませんな。

『県外・域外貸出を行う金融機関は、新たな顧客を開拓するため、相応に低い金利を提示する傾向があるうえ、都市を本拠地とする先と比べて情報劣位にあることから、比較的信用力の高い先 ―― 信用スプレッドが小さく、低利での貸出となる先 ―― を貸出先にする傾向があることも、貸出金利の低下に寄与している9。』

で、ここの脚注に

『9 詳細は、「金融システムレポート」2014 年4 月号の図表V-1-42 および図表V-1-43 を参照』

とありますように、実際にはこのあたりの問題意識については昨年のFSRで問題意識として強めにアピールしているなあというのがありましたので、昨年のFSRもお暇な方は改めてご覧いただくと吉かと。

でまあその貸出ガーというのはともかくとして金融システムの頑健性という文脈で考えた場合に興味深いのはその次の『(預金吸収面への影響)』というコーナーで本文9ページ(ファイルの11枚目)になります。

『預金吸収面をみても、人口の減少や高齢化の進展による貯蓄率の低下は、地域金融機関の個人預金の伸びを抑制する方向に働いてきている。都道府県別の人口増減率と個人預金の伸び率の間には、明確な正の相関が存在する(図表3-5)』

図表3-5というのが『図表 3-5 都道府県別の人口増減率と個人預金の増減率』で内容は2008年〜2013年の都道府県別の人口増減率と個人預金の増減率の散布図となっています。

『これまでのところ、いずれの業態でも個人預金は増加を続けている。個別にみても、地元の人口減少や高齢化が比較的厳しい先でも、個人預金は増加している先が多数を占めている。これは、個人預金の伸び率が、人口動態以外に、給与所得の伸び率、高齢層に対する社会保障給付の水準、家計の資産選択行動(リスク性資産への選好)など、様々な要因に依存することに起因している11。』

『11 「金融システムレポート」2014 年4 月号BOX 1 では、人口動態がマクロの家計預金量に与える影響について、@世帯数の変化、A一世帯当たりの人員数の変化、B世帯主の年齢構成の変化、という3 つの要因に分解したうえで、先行きの試算を行っている。同試算においても、地方では人口動態が徐々に家計預金を押し下げる方向に働いていく見通しとなっている。』

とありますように、この辺の話は昨年のFSRでの指摘を再度まとめて掲載しているという感じなのですけれども、改めてこれを掲載してしかもシリーズ別冊の一発目に持ってきているという辺りにプルーデンス当局の問題意識を感じますな。

『もっとも、今後を展望すると、人口減少と高齢化がさらに加速していく見通しにある地域が少なくない。また、足もと相続に伴って預金が地方から都市へと流出する動きがみられ始めており、高齢化とともにこれが本格化していく可能性がある。』

となりますと・・・・・・・・・・・

『後述するように、安定した小口預金、流動性預金の基盤を有することは、金融機関の収益力の基礎となることから、人口動態は預金面からも収益に負の影響を及ぼしていく可能性がある。』

ぐぬぬ。

更に次の『(金利環境の変化と預貸収益)』の所で預金吸収力の低下に関する問題意識に追い打ちがががが。

『なお、景気の回復に伴って金利が上昇する場合には、金融機関の収益にプラスの影響が見込まれる12。貸出が増加するほか、貸出利鞘も改善するためである。』

そらそうよ。

『利鞘が改善するのは、小口預金や流動性預金の存在によって、市場金利の上昇に対する追随率が、貸出金利より預金金利の方が低いことによるものである。』

ということは??

『人口動態との綱引きの中で、実際にどの程度の収益改善効果があるかは、景気の力強さや金利上昇の度合いによって異なる。2005〜2007 年の局面では、金利上昇が小幅かつ短期間であったこともあり、大手行では利鞘の拡大が小幅に止まったほか、地域金融機関では利鞘の縮小に歯止めがかからなかった(図表3-6)。』

アイヤー。

『加えて、改善効果は、地域ごと、金融機関ごとの個別性が強い。人口動態による負の影響の度合いは地域によって大きく異なる。また、市場金利に応じてどの程度貸出金利を引き上げられるかは、金融機関ごとの貸出先顧客の債務返済能力13や、競合状況などに左右されるほか、どの程度預金金利の上昇を抑制できるかも、金融機関ごとの預金吸収基盤の強さなどに依存する。』

『このため、金融機関は、様々な先行きの金利想定のもとで預貸収益にどのような影響が及ぶかについて、自らの営業基盤や資産負債の状況等を踏まえつつ、適切に評価・分析していく必要がある。』

とうことで纏めているのですが、預金吸収力が弱くなってきて趨勢的に個人預金が減少に転じるような状況になりますと色々と厳しい局面に中長期的には直面しますよという話をしているのに等しい訳でして、マクロ的な話で厳しい話をしておりますなあという所で。

でまあこの次の『4.逆風に立ち向かう地域金融機関』というのは施策とかその辺の話と金融機関の経営統合でどうのこうの的な話があるのですが、まあだいたいお察しな話が続きますのでそちらは皆様読んでちょというか、金融機関の中の方は必読的なのがプルーデンスウィングから出ているレポートとか指針とかになりますからアタクシが申し上げるまでもなく読みますかそうですか(大汗)。








2015/06/01

お題「市場関連メモ/師匠の会見はクオリティが予想通り壊滅的な件について」

内容はともかくヘッドラインの数字だけで言えば物価が概ね市場予想並みで雇用が良くて家計消費があばばばばーとか中々お洒落ではありますな。

うむ。
http://www.asahi.com/articles/ASH5H5CMSH5HTIPE01Q.html
「ほっともっと」弁当、値上げ 首都圏などで最大40円
2015年5月15日17時10分

いやあ値上げのニュースで日銀もニッコリですね(棒読み)。


○市場関連メモメモ

・短国買入の刻みェ・・・・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150529.htm
国庫短期証券買入 4,000 2015年6月2日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,750 2015年6月2日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,750 2015年6月2日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2015年6月2日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2015年6月2日 2015年9月11日

>国庫短期証券買入 4,000 2015年6月2日

・・・・・・・・????

ということで最近2500億円の整数倍で刻んでいたので謎刻みににも程があるのですが、短国買入4000億円ということはこらまあ普通に考えて6月の資金需給からして買入をあまりしなくても良いからという事なのでしょうが、それにしても4000億円って普通のオペみたいな数字で謎な刻みすぎる。

いやね、調節部署の頭の中では細かく丁寧にやろうとしているというのは分かるのですけれども、その「細かく丁寧」が単にMBの数字の帳尻合わせであって、そのために需給調査をしても別にその需給調査が市場の安定化とかそういうことを考えていない、という素敵なスタンスですなあという辺りが露骨に見えてしまうのでして、その一方でそういう事をしながら「市場との対話」だの「市場との対話説明会」だのをアリバイのように実施するというのがが実にトサカに来る話でありまして、元々おまいらMPMから言われたMB積み上げをマシンのように実施するだけなんだったら最初からそうだと宣言して機械だと言い切ってしまえばよいのだし、もっと言ってしまえばそのような機械的調節の経験をもって「市場への理解が深まった」とか生兵法を振りかざして市場への施策とかを実施されると益々宜しくないのですけどねえ。

などという悪態はともかくとしてオペ結果。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150529.htm
国庫短期証券買入 12,638 4,003 0.001 0.002 87.4
国債買入(残存期間1年超3年以下) 10,800 3,752 0.001 0.002 46.5
国債買入(残存期間3年超5年以下) 13,242 3,754 0.004 0.005 12.8
国債買入(残存期間5年超10年以下) 14,255 4,007 0.003 0.005 89.5
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(6月2日スタート分) 5,550 5,550

つーことで応札が12638億円しかなかったのですが、そもそも前日の3Mがセカンダリーで全然伸びていなかったことを勘案すると投資家に投げていない限り丸残り状態になっている筈ですので、どうせ投げないと日銀オペに入れられないのでしたら別に投げる必要もないということでそもそも応札をしていないのではないかという悪寒も少々するのでございますが。

先週月曜の短国買入も札が全然ない上に足切が流れてビビリましたが、その後現先やレポの市場がモノ無し芳一になったわけでもなく(瞬間現先だけレート下がりましたが)という展開でしたし、今月はスタートが4000億円ということですから短国買入のペースは相当少ないという事になります(次に申し上げるように輪番が増えているし)し、まー短国に関しては6月はよほどの特殊需要(海外から馬鹿外が入るか銀行の残高帳尻攻撃が入るか、中短期のマイナス金利から短国に流れるという緊急モードでも起きるか)でもないとまあプラス金利になるんでしょうな、うんうん。

ただし1か月半近く(入札5回分)普通の短国投資家が買えていないという状況になっていた後遺症がありますし、資金需給的に7-9は不足がキツイ筈なのでそのことも考えますと、6月には短国残高抑えておくニーズが発生するでしょうから相変わらずの低金利モードは続くのでしょうな。

あと固定金利オペですが、今回は5550億円の落札となりまして、11800億円から半減という結果になりましたが、ここで半減するならその前の連続増額ロールは何だったのでしょうかという所でありますな。


・輪番謎の中期増額

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150529e.pdf
当面の長期国債買入れの運営について

日本銀行は、長期国債買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2015年6月1日より適用)。
── 次回公表は6月30日17時を予定。

これ何回イヤミ言ってますが月末引け後になるんだが債券インデックス対応で投資する人にしてみたら月末引け後じゃなくてもう少し別のタイミングにならんのかと思うがそれはともかく。

前回がこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150430e.pdf

ということで今回ですが・・・・・・・

『(注4)2015年6月1日以降の最初のオファー金額は、残存期間1年以下700億円、残存期間1年超3年以下3,750億円、残存期間3年超5年以下4,000億円、残存期間5年超10年以下4,000億円、残存期間10年超25年以下2,400億円、残存期間25年超1,400億円、変動利付債1,400億円、物価連動債200億円とする予定です。』(今回)

『(注4)2015年5月1日以降の最初のオファー金額は、残存期間1年以下700億円、残存期間1年超3年以下3,750億円、残存期間3年超5年以下3,750億円、残存期間5年超10年以下4,000億円、残存期間10年超25年以下2,400億円、残存期間25年超1,400億円、変動利付債1,400億円、物価連動債200億円とする予定です。』(前回)

レンジの方は前回と同じですが、中期の3-5年に関して1回の買入額を250億円増額しますので、6回分で月額で1500億円の買入増になります。

・・・・・・・・・うーんこのという感じで、確かに先週金曜に申し上げたように買入のペースが従来のままで年間80兆円カツカツという感じではあった(明日銘柄別残高出ますので計算を更新してみましょう)のですけれども、その1回250億円だけ増額というのは何なのという感じで。

いやまあこれも例によって例の如くの細かい調整なのでしょうし、月間1500億円だったら極端に影響は無いとは思うのですが、中期の需給が非常に良くて、というか逼迫していて2年と3Mがインバートという状態になっておそらくこの状態1か月は平気で続いていると思うので、中期輪番を増やされると心理的にはアチャーという感じではありますが、他に増やすところが無いので中期輪番を増額せざるを得ないのは事実としてあるので、こういう形にしたのかねという所で。しかし細かいわ。


・レポ市場何とかとかがあったようで

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150529b.htm/
「レポ市場フォーラム」を開催
2015年5月29日 日本銀行金融市場局

『日本銀行金融市場局では、2015年5月14日、日本銀行本店において、レポ市場のさらなる発展に向けた具体的な取り組みの一つとして、「レポ市場フォーラム」を開催しました。本フォーラムにおける議論の概要や関連資料については、以下をご参照ください。』

ということで議論の概要とやらが
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/data/rel150529b.pdf
にありますが・・・・・・・・・・・・・

小見出し見ますと『3.レポ市場を巡る国際的な議論』というのと『4.国債決済期間の短縮化とレポ市場』というのがあるのが分かりますが、そもそも話の流れとしては最初に国債決済をT+1にしようという話があって(なおT+1にしないといけない理由が分からんという話は散々申し上げているのでパス)、それに対応してレポ取引をトライパーティー方式にしてGC即日に対応する為に銘柄後決め方式ガーという話になっているのですけれども、今申し上げた小見出しのように、この市場改革ネタは色々な話がごっちゃに進行しているので話がややこしくてかなわんのよね。

つまりですね、CCPでのクリアリングという話と、レポ取引の海外方式契約対応(=新現先対応)と、国債決済期間短縮の話があって、話を別途切り分けて進めることも可能じゃないのかと思うのですが、全部をセットにして居るために話がヤヤコシイ上に「いやそこはコスト掛けるだけのメリットが見えないのになんで実施するんだ」というツッコミが飛びやすくなるというものではないかと思いますがねえ・・・・・・

しかしこの最後の所に『5.閉会挨拶(日本銀行金融市場局市場企画課長 新見明久)』というのがあって・・・・・

『現在進められている「レポ市場改革」の取り組みは、2008年のリーマン・ショックを契機に始まったが、今後2〜3年で最終ゴールを迎える予定である。その意味で、これからが改革の「正念場」になる。』

などとおそロシアなタイムスケジュールが出ている訳でして、えーっとすいません日銀が国債大規模買入しているQQEによって国債流通市場に多大なるストレス掛けていますし、大体からして日銀の経済物価見通しが正しければ「最終ゴール」とされる2〜3年後というのはQQE政策の出口政策を実施する時期になりまして、その出口政策を事故なく実施する為には「市場改革」とやらを実施して国債決済の短縮化という国債流通市場に盛大なストレスを掛けるのはどう見ても悪手だと思いますがねえ(単にトライパーティーだけ入れてT+1残すならだいぶ話が違うと思うが)。

どうも内容を見ると証券決済期間短縮に加えてT+0レポ市場を作りたいという意識が強い(この前の佐藤審議委員の講演もそうでしたな)ようですが、そういうのはとりあえず金利が上昇してから実施するのか、それとも向こう数年以上に渡るタームで今の市場環境が続いているという前提の時に実施して欲しい訳でして、この「2〜3年」というスケジュール感については悪い予感しかしませんので先に申し上げておきましょうという事で。

#まあそれ以前の問題としてこの金利環境で皆さん身を切ってインフラ維持しているのに「市場改革」につきあう設備投資の金は無いのですけどねえ早くQQEから正常化して金利をつけて下さいな

その他いくつかありますが師匠ネタがあるのでこの辺で(続きがあればまた)。


○師匠会見キタコレだがまあ想定通りにダメダメ会見

はいはい置物置物
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1505d.pdf

・例の「電気料金下がってインフレ期待が下がる場合」の質疑

『(問) 2点あります。1つは、期待インフレ率について、朝の講演でも、 物価が上がれば、期待インフレ率も上がっていくというお話をされていらっしゃいます。例えば、電力料金は、7月以降、全国的に下がっていくと思うのですが、それによって期待インフレ率が下がるということはないのかどうか、ご見解をお願いいたします。(後半割愛)』

ワロタ。

『(答) 期待インフレ率あるいは予想インフレ率の形成には、2つの形成の 仕方があります。まず、いわば足許の物価を見て将来を予想するというアダプティブとか適応型と言われる予想インフレ率の形成の仕方があります。それから、必ずしも足許の物価だけではなく、金融政策の動向も含めて経済政策や他の企業の行動等色々な要因について、将来を予想するという合理的期待形成あるいはフォワードルッキングな予想形成ともいうものがあります。そういう予想形成にはいくつか、あるいはミックス型もあるわけです。』

で?

『日本の場合には、割合、適応型で予想する人が多いという傾向がありますので、物価が下がり続けると、予想インフレ率もだんだん下がるというリスクといいますか、その可能性があるということです。』

だからQQEで2年で2%というのを出したのですけどね。

『そういうことにも注意して金融政策を運営しているわけです。電気料金に関しても、ずっと下がった場合には、予想インフレ率が下がるということが絶対ないとは言えないですが、現在の状況では、あまりその可能性はないとみています。そういうことが絶対ないとも言えないので、やはり予想インフレ率がどのようになっていくかというのは、金融政策の運営上は気をつけてみています。(後半割愛)』

ここがヘッドラインになっている訳ですが、そもそも論としてフォワードルッキングな期待形成を強めるために「2年で」とわざわざ期間を切ったのに対して実際の物価が2年経ったら元の木阿弥になっている訳でして、予想インフレの形成に関しては「2年で行かなかった事」が重要で、しかもそれに対して講演で言い訳をしているという行為そのものがフォワードルッキングでもアダブティブでもインフレ期待を弱めることになるように思えますがね。


・意地悪質問というか何というか

『(問) 2つお聞きします。1つは、講演録の5ページ、2%物価目標の早期 実現へのコミットメントというところで、「現時点においては、物価安定目標の早期実現に向けたコミットメントを変更する考えは全くない」とおっしゃっています。あえて「現時点で」という言葉を入れているということは、将来については分からないとおっしゃっていると理解していいのでしょうか。』

『つまり、2016年度前半頃に2%に達するという日銀の大勢の見通しについて、それが 実現せずに、また何度もやってきたように見通しを先送りする時には、今度は、2年の目標というのはやはり無理だからあきらめるということもあり得るということをおっしゃっているのでしょうか。「現時点で」とあえて入れてあるので、あえてお聞きします。(後半割愛)』

クソワロタというか師匠だからこそ突っ込まれてしかるべき。

『(答) 最初の「現時点では」と申し上げたことについては、別に他意があったわけではなく、基本的に、2年程度を念頭において、できるだけ早期に、 というコミットメントは、この「量的・質的金融緩和」の一つの起点といい ますか、効果を発揮する一つの重要な要素ですので、それは全く変えることはないということです。「現時点で」というのは、その意味では、別に必要のなかったフレーズですので、そういうふうにご理解頂きたいと思います。(後半割愛)』

「必要のなかったフレーズ」ってなんだよ原稿チェックしてないのかよアホか。


・消費増税でインフレ2%に達しないのなら・・・・・・・・・・

さっきの質問の後半。

『(問)(前半割愛)もう1つは、インフレ率が2%に達していない理由について、消費増税による影響を挙げておられます。既に起こったことについて、どうこうはないですが、2017年4月に消費税の再増税が確定しております。』

本当は「反動で物価が下がったのならそもそも駆け込みで上がった分を含めてQQEの効果というのはおかしいだろボケナス」と聞いて欲しかったが。

『2014年4月の消費増税の影響が予想より大きく長引いたということですが、また、これと同じようなことが起こる可能性が十分あり得るわけです。』

(;∀;)イイハナシダナー

『そうなると、今は、2016年度前半頃に消費者物価が2%に達するという予想ですが、もし仮に、 万一これが実現したとしても、消費増税が予定されているということを考えると、消費増税の前に出口はかなり難しいでしょうし、消費増税をしてから1年くらいはやっぱり出口は難しいと思います。つまり、展望レポートで2017年度末までの経済・物価の見通しをお出しになっているわけですが、この見通し期間内には、出口はかなり難しいというふうに思わざるを得ないのですが、 如何でしょうか。』

これ出口の質問をするのじゃなくてもっとストレートに「消費増税で物価がマイナスの影響を受けるのであれば2017年4月の増税でまた物価が落ちる事になるのだから2016年度前半に2%到達しても安定的に維持できないのではないか」と聞くべきだったように思えます。

『(答)(前半割愛)次に、2017年4月の増税の影響ということですが、現時点では、昨年の消費増税の影響が、予想よりも少し大きかったということを踏まえて、2017年度の経済を展望しているということですので、その時に出口を出られないかどうかというようなことは、今この段階では、何らコメントするという状況ではありません。』

と逃げを打たれましたが、つまりここで置物師匠が言っているのは「日銀の今の見通しは前回の消費増税の影響を踏まえて次回の消費増税の影響についても含めて物価見通しを出している」という話でございますので、次回また「消費増税ガー」という事は絶対に許されない(というかそもそも今回のだって許されない見通し違いだけど次回は直近に例があるのだから間違えたら縛り首もんだろという話ね)という事ですね。


なお後の方で追加のツッコミが。

『(問) 先ほどの消費増税についての件ですが、講演録の6ページで、昨年 4月の消費増税の影響が予想よりも大きく長引いた理由として、「低調な雇用環境が長く続いたことによる低所得者層の拡大や、高齢化の進展による年金 生活者層の増加も一因ではないか」とおっしゃっています。展望レポートによると、2016年度前半頃に2%に達して、その後は2%前後で安定してくるという見通しを立てていらっしゃるわけですが、そうなると、2017年4月の次の 消費増税の時には、ほぼ物価は2%だということだと思います。これは、また、1年前に起こったことの二の舞になるのではないでしょうか。』

ニヤニヤ。

『高齢化ということは2年間で変わらないと思いますし、低所得者層の拡大というのも1年、 2年で変わるとは思えません。そうなると、また2017年4月の消費増税の時には、元々、物価が2%、そして、前回ほどではないにしろ、インパクトが2%近い消費増税による値上げ、物価の上昇というのがダブルで効いてくるわけです。それは、もともと予想を見誤ったことと─―日銀は前回の消費増税の影響をある種軽視してしまったと思うのですが─―、また同じ二の舞になるんじゃないかというおそれを非常に多くの人が持っているのではないかと思うのですけれども、そこはどのようにお考えでしょうか。』

順当な質問であるが言い訳がクソ長い。

『(答) 2014年の消費増税が、大方の予想といいますか、あるいは日銀も含めて予想より大きかった、かつ長引きましたが、低調な雇用環境が続いて、低所得者が増加し、高齢化が進展していたことを十分に織り込めていなかったのではないかということです。おっしゃる通り、今後も年金生活者は増えるわけですが、そういうことを踏まえて、こういう展望レポートを出しているわけです。』

はあそうですか。

『それを踏まえて出していると申し上げたのは、2014年というのはどういう時期だったかということをもう少し反省してみると、経済全体がデフレからようやく脱却し始めたという段階だったと思います。したがって、経済がどれほど 強かったかという問題があったと思います。強かったかどうかというのは、 低所得者の拡大とか高齢化ということがありますが、全体として、企業のマインドとか、消費者のマインドというのも、本当に、安心してデフレは脱却して道筋がみえてきたということを、確信とは言わないけれども、かなり確信に近いほど持っていて、将来の展望ができるというところまでやはり行っていなかったのではないかと思います。』

気合と信心が足りなかったと。

『まだ1年しか「量的・質的金融緩和」をやっていなかったわけです。』

おい最初の頃「少なくても2年」とか言ってなかったかお前。

『今後は、この効果が十分に発揮するように、今の金融政策で運営することによって、人々のマインドは、将来に対する希望といいますか、確信がもっと強まっていくと思います。物価も上がるだろうけれども、自分の賃金も上がっていく、そして企業モデルも非常にイノベーティブになってくるというような環境を、2014年の時とは違って、前向きな力強いものにしていこうと、あるいはいけるという考え方から、展望レポートというのはでき上がっています。』

つまりエビデンスに則った根拠ではないと。

『2014年度と2017年度は、経済環境というのが少し変わって、もっとポジティブにみんなが行動できるように、そういうようにしたいということと、しなければならないと思っているということです。ですから、ご指摘された下振れリスクについては、上下双方向のリスク要因をみていますので、必要があれば、適切な金融政策を運営するというスタンスには変わりないということです。』

ただの気合と願望だというのは把握しました。





・いやあ面白い答弁ですね(棒読み)

『(問) 日本銀行としては、「量的・質的金融緩和」が全体として上手くいっているという認識をお持ちだと思います。そこで、金融緩和の効果と副作用について、できましたら、北海道経済に引きつけて、コメントいただければと 思います。』

諸葛孔明の罠。

『(答) 北海道経済に関して一番はっきりと効果が表れているのは、インバウンドの需要が増えているということです。金融政策の効果としては、大きいというふうに感じております。』

それだけかよ。

『それ以外は、今日の懇談会で、例えば、飼料が 円安で高くなっているというようなデメリットがあるということをおっしゃっていましたが、そういう面もあるかもしれません。』

「そういう面もあるかもしれません」とかナメトンノカというか、燃料費の話(生活用と農業とか漁業用とか)は無いのかとかそっちも深刻な影響だろうよ。

『中長期的に考えると、日本の食糧生産というのは、輸入代替産業であって、非常に円高の時には輸出は全く考えられませんでした。ただ、ある程度円高が修正されると、コストは上がるけれども輸出産業への道も開けてくる、あるいは食糧の輸入というのが少し抑えられることによって、国内での販売を促進できるという面もあります。』

???????????

『中長期的にはそのように食糧生産も変わってくるとか、あるいは、農業の第6次産業化などによって、農業の全部が全部とは言いませんが、輸出産業になり得る機会もあるので、そういうようなプラスの面もあるということだと思います。(以下割愛)』

そもそも食糧自給が全然できていない(燃料も飼料も輸入だし)のに第6次産業化でプラスってそらまあ個別の主体レベルではそうかも知らんが国家全体で見たら円安進行で輸出代金が上がるから第6次産業化って敢えて極端に言えば飢餓輸出コースになるんですけどそれは。



・置物に答えが出来る話ではないがこれは鋭い論点

質問が鋭い論点。

『(問) 資産価格の関係で、民間資産の購入のことを少しお伺いします。先日、株式の時価総額がバブル期を超えるという話がありました。株式市場がバブルかどうかというような見方は色々あると思いますが、リスクプレミアムを圧縮するほどのアンダーバリューの状況はもう解消されているのではないかと思います。』

元々はリスクプレミアムを圧縮するという触れ込みで始まって、その後はMB拡大の一手段という言い方になっているのですが、こいつらの買入の意義とはという話にも繋がる論点。

『この前の金融システムレポートで不動産の過熱感について、警戒過熱感を示す指標が1つ出ていますが、こういう状況でETFとかJ−REITを買うことの政策的な必要性とか意義というのは、以前と変わらずまだ残っているということでしょうか。』

まあ置物の答えはうんこなのでどうでも良いので割愛。ちなみに置物先生にこのような論点での独自の知見があるとは全く思えない答えなのでインターネットのリソースの無駄遣いなので割愛しまして、ぜひ同じ質問を他の審議委員の皆様にも金懇でしていただきたい。


・これはクソワロタその1

『(問) 先日、QQE2年の検証のペーパーを出されました。そこにはマネタリーベースに関して直接的な言及はなかったわけですが、岩田副総裁はマネタリーベースそのものの増加が緩和効果を引き出しているとみられているのか、それとも強力なコミットメントを伴っているので、量的拡大というのが効果を持っているのかという点について、もう一回教えてください。』

順当な質問。

『(答) こういう記者会見の場では、なかなか、金融政策のメカニズムを説明出来ませんが、日銀のホームページを見ていただくと、私の講演の資料にメカニズムが書いてありますので、是非見ていただきたいと思います。』

あの風が吹けば桶屋が儲かるの話かよ。

『「量的・ 質的金融緩和」は、まず、言葉で言っているように、「量」と「質」と、もう一つはコミットメントという2本の柱になっています。1本の柱は、「量」だけではなく、「量」と「質」と言っているわけです。「量」だけと言わなかった理由は、マネタリーベースの量も大事ですが、量の増やし方─―どういう 資産を買うかということが質ですが─―、それが大事なのです。その「質」としては、例えば長期国債は平均残存期間が7年から10年ぐらいになるように買っていますが、どうしてそういうことをしているかといえば、日銀当座預金と代替性の低いものを買わないと、金融緩和効果というのは出ないという 考え方からやっているわけで、それが「質」です。量的・質的に国債を買っており、これは表裏一体になっているというふうに考えてください。だから、両方大事だということです。』

だったら短国買うなよというかこの置物は短国市場を叩き潰す勢いで買入してるの知らねえんじゃネーカ。

『それともう1本の柱であるコミットメントは、ちょっと違います。 つまり、そういう「量的・質的金融緩和」を、どういう目的で、どういうふうにして運営していくかということについては、2%の「物価安定の目標」が 安定的に実現するまでは基本的にそういうことをやっていく、基本的な枠組みは変えないということです。それがコミットメントです。』

コミットメントは2年じゃなかったのでしたっけ???????

『この二つが相俟って、金融政策の緩和効果というのが出てくるという考え方ですので、マネタリーベースに触れなかったのではなく、そういう 「量的・質的金融緩和」が、実質金利を下げるところからレポートは書かれているわけです。』

長期の実質金利を下げたいというのなら別にMBを目標にする必要ないじゃん。金利にもっと効かせる方法あるだろうよ。

『当然、「量的・質的金融緩和」は、「量」と「質」の両方と コミットメントがなければ、予想実質金利が下がらないという考え方があって、その上で予想実質金利がどれだけ下がったのかというところから出発して、 実体経済にどれだけ影響があったかというレポートになっているということです。』

「予想実質金利」とは???????????



・これもクソワロタその2

これの質疑は凄いというか酷いというのがある。

『(問) 瑣末なことかもしれないのですけれども、今回の講演の図表を見ると、これまでの岩田副総裁の講演資料にあった予想物価上昇率に関するグラフが全部なくなっていますが、何か理由はあるのでしょうか。』

確かに今回の資料異常に少ないなとは思っていましたがここまで頭が回らなかった・・・・・・・・


『(答) 講演と金融経済懇談会はちょっと違うと思っています。講演の方は、長時間でメカニズムを説明し、そのうえで実績はどうかというような説明をします。金融経済懇談会の方は、もう少し分かりやすくコンパクトにやるということで、色々な図表の中で、どれだけ使えばいいかということを考えています。比較的分かりやすく、短時間で分かっていただくには、あれくらいの図表が 適当だということでやっているので、何か意図的に図表を外したということではありません。』

ほうほう。

前回の金懇挨拶
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150204a.htm/
【挨拶】最近の金融経済情勢と金融政策運営
宮城県金融経済懇談会における挨拶
日本銀行副総裁 岩田 規久男
2015年2月4日

本文でも図表でも良いですが図表3は何でしょうか?????

前々回の金懇挨拶
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/ko140910a.htm/
【挨拶】最近の金融経済情勢と金融政策運営
石川県金融経済懇談会における挨拶
日本銀行副総裁 岩田 規久男
2014年9月10日

本文でも図表でも良いですが図表13と図表14は何でしょうか??????????

・・・・・・ああそうですか、都合が悪くなってきたので2枚→1枚→0枚に変化したんですね(・∀・)ノ