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2015/05/29

お題「2年と短国がインバート/決定会合議事要旨から」

何じゃこりゃ
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NP0HAZ6S972K01.html
グロース氏:独国債空売りはタイミング良かったが実践に難点
2015/05/28 06:44 JST

「タイミング良かったが実践に難点」とは斬新な言い訳すぎる・・・・・・・・

あと全然話は違いますが、ウィリアムス総裁って何か変なもんでも食っているのかと
いう位にカンカンのタカ状態になっているのですが背景がイマイチわからん。いやまあ
暫く前の講演とか読んだ(ネタにするの忘れた)のですが兎に角景気物価共に見通しが
強いのですけどね。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NP25FC6KLVRQ01.html
米SF連銀総裁:年内利上げを見込む、6月含め全会合で検討へ
2015/05/28 20:59 JST


なお、先にお断りしますと、本日は師匠会見ネタは時間と量の関係上間に合わなかった(すいません)ので皆様お楽しみ(かどうか知らんが)の悪態芸は出ておりませんのであしからずご了承くださいませ。


○2Yと短国が盛大にインバートとな

まずは3M入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150528.htm

(3)募入最低価格 99円99銭9厘0毛(募入最高利回り)(0.0040%)
(4)募入最低価格における案分比率 68.9119%
(5)募入平均価格 99円99銭9厘7毛(募入平均利回り)(0.0012%)

ということで、応札倍率とかの方は割愛しましたが、平均足切ともに前週の3Mと同じで、応札も13.3兆円程度と前週の3Mと同じという結果になりまして、月曜の短国買入が流れたからどうなるのかと一瞬思わせましたがまあ順当な結果。

でまあ6月の資金需給って日銀から見込み数値が出てくるのは月初になるのですが、大体想定されている資金需給からすると6月って輪番普通に実施すると短国買入を週に1兆とか実施したとしてもMBの積み上げが4-6の四半期で20兆円(80÷4)を盛大に超過することになってしまうので、こらまあ6月の短国買入はフローで大幅減額待ったなしという話になるから、3Mはもとより日銀トレードヒャッハーに入れにくい所なので頑張ってマイナスとか在庫にする必要ないです罠という話になったのでしょうな。セカンダリーでも特段買い進む動きにはなってなかったみたいだし。

ということで本日は短国買入が幾らで入ってくるのか注目なのですが、1兆でももしかしたら多いんじゃネーノ(5000億円で6Mと1Yの後だけ1兆とかでも十分すぎる筈)と思うのですけれども、そもそも何で4−5月に短国買入をあの勢いでやっていたのかが微妙なんですけれどもそれはというお話。

まあ7−9は資金需給的に不足が強いので、7−9にMBの積み上げを半期20兆円で行う場合、輪番での買入分で足りないところの帳尻を短国買入で入れると買入フローがしんどいので4−6に前倒しで積み上げておいて7−9に掛かる負担を軽くしようというのがあるのではないかとは思われますが。


2Y入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20150528.htm

(1)応募額 8兆8,073億円
(2)募入決定額 2兆3,003億円
(3)募入最低価格 100円19銭5厘 (募入最高利回り) (0.002%)
(4)募入最低価格における案分比率 56.9884%
(5)募入平均価格 100円19銭6厘 (募入平均利回り) (0.001%)

申し訳程度のプラス金利キタコレとか思っておりましたら市場推計のいわゆる不明玉は1.2兆あって入札の半分だわ、その後中期から手前のゾーンが全般的に強くなるわで、新発の1つ手前の352回債の引けは-1.5bp(確か-2bpとかの出合もあったような気がするんだが)で1毛強とか、新発の引けも貫禄の-0.5bpとかになるわという有様。

でまあこれ何が凄いと申しまして、これまでのこのゾーンのマイナス金利化って基本的には短国の需給逼迫によって引っ張られるか、付利下げなどの思惑で引っ張られるかのどちらかだったのですけれども、直近では(それまでの短国ゾーンのマイナス金利1か月半攻撃というのがラグを置いて効いている可能性もありますけど)短国の金利はプラス化してきましたし、6月はまあ普通にプラスで推移(ただし6Mと1Yは知らん)の可能性が高いという状況だし、付利下げに関する思惑は当分無しという状況の中で、利付国債の需給で引っ張っている所でして、輪番オペがこれまたオペレーション的にだんだん厳しくなってくるという話なのかも知れませんぞ。

でまあ本日は来月の輪番予定表がでるわけですが、先月変えていないところを見ると足元の状況を見ても今月変えない、というか買入ペース維持と平均年限の関係上ここから下手にいじれないように見えますけど輪番が燃えたらそれはそれでややこしい話になるのでどうするんでしょうねというお話です。たぶん変更なしで市場は見ていると思いますけど。

ということで、6月は3Mと2年のインバートというお洒落な相場が延々と展開されるのでございましょうなあ要因はただの日銀買入の差による需給という事で・・・・・・・・・・・


○展望レポートの会の決定会合議事要旨である

ほいな
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g150430.pdf

・リスク要因の欧州に関する文言が変化した理由がいまだに分からん件

今月の声明文でも踏襲されていますが、4月1回目の会合で示されたリスク要因の欧州に関する文言が変更になっている件についてなんかヒントはないかと思って探したのですが・・・・・・・・・・・

執行部報告の部分から。

『欧州経済は、緩やかな回復を続けている。輸出は、外需の改善やユーロ安を背景に、緩やかに持ち直している。個人消費は、雇用者報酬の増加基調が続く中で、原油安や株高の効果もあって、このところ伸びを高めている。こうしたもとで、企業マインドは改善し、生産や設備投資にも持ち直しに向けた動きがみられている。物価面をみると、コアベースのインフレ率が緩やかな低下傾向を辿っているほか、総合ベースはエネルギー価格の下落を主因になおマイナスが続いている。』


政策委員会の討議部分から。

『欧州経済について、委員は、緩やかな回復を続けているとの認識で一致した。委員は、輸出がユーロ安などを背景に緩やかに持ち直しており、個人消費も原油安や株高の効果などから、このところ伸びを高めているとの認識を共有した。欧州経済の先行きについて、委員は、ユーロ安やECBによる金融緩和もあって、緩やかな回復を続けるとの見方で一致した。』

となっていて、展望レポートのリスク要因の所は、

『先行きの海外経済を巡るリスク要因として、委員は、米国経済の成長ペースやそれが国際金融資本市場に及ぼす影響、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、新興国経済における持続的な成長に向けた構造調整の進捗度合い、資源価格下落の影響、地政学的リスクなどが挙げられるとの見方を共有した。』

とはあるのですが、何で低インフレの長期化という表現じゃなくなったのかがここを見てもさっぱり分からず謎のまま残るのでありました。


・委員会の経済認識に関して

でまあそれはともかくとして委員会の検討部分から。

『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』の『1.経済情勢』の途中から。

『わが国の景気について、委員は、家計・企業の両部門において、所得から支出への前向きの循環メカニズムが作用し続けているもとで、緩やかな回復基調を続けているとの評価を共有した。』

「評価を共有した」というのが味わいがありまして、つまり回復基調という評価は概ね揃っているのでしょうが、前向きの循環メカニズムという部分でどうせ意見が一致していないのではないかと思う所で、そこを表現するのに「評価を共有した」となっているのでしょうな。

でまあ展望レポートでの見通しの中心になっている項目が輸出と投資と消費と消費を支える予定の雇用所得環境なのでその項目部分を鑑賞。

『輸出について、委員は、持ち直しているとの認識で一致した。委員は、年明け後は春節の影響で月々の振れが大きいが、均してみれば3四半期連続でのプラスとなっており、改善傾向が続いていると評価してよいとの見方を共有した。』

「評価してよいとの見方」とかこれまた微妙な言葉使いますなあ(ニヤニヤ)。

『先行きについても、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。』

ここは一致とな。

『複数の委員は、中国向け輸出のモメンタムが幾分弱まっていることや企業が海外需要をやや慎重にみている点などには留意が必要であると指摘した。』

その後出た貿易収支の統計でも中国がアレという事を踏まえますと・・・・・・・・・・(^^)。


次は設備投資。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、緩やかな増加基調にあるとの認識を共有した。委員は、先行きも、企業収益が改善傾向を辿る中で、緩やかな増加基調を続けるとの見方で一致した。ある委員は、設備投資の押し上げには、緩和的な金融環境や為替円安による国内投資の相対的な収益性向上といった支援材料も揃っている点を強調した。』

前半は良いが後半のある委員の指摘が違和感。


雇用所得。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給が着実な改善を続けるもとで、雇用者所得は緩やかに増加しており、先行きも緩やかな増加を続けるとの認識を共有した。』

うむ。

『多くの委員は、企業収益が好調に推移し、労働需給がタイト化する中で、今春の賃金改定交渉では、ベースアップを含め昨年を上回る回答を示す企業が増えていると指摘した。これらの委員は、賃金引き上げの動きは、大企業だけではなく、中小企業や非正規労働者にも拡がっているとの認識を示した。このうちある委員は、これらの動きを反映して、今後、賃金の増加テンポが幾分速まることが見込まれると述べた。』

あっそう。

『複数の委員は、エネルギー価格の下落も重なって、先行きは、「量的・質的金融緩和」の導入後初めて、実質賃金の持続的な増加が期待できるとの認識を示した。』

えーっと今程度の賃金上昇だと物価が上がると持続的な増加しないんですけどそれは。

『この間、一人の委員は、内需型企業を中心に人件費増加の負担感が重くなっている可能性があり、先行きの賃金上昇ペースはやや慎重にみておくべきであると述べた。』

ですなあ。


個人消費。

『個人消費について、委員は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体としては底堅く推移しているとの認識を共有した。』

ほうほう。

『多くの委員は、消費者マインド関連指標について、雇用・所得環境の改善などを背景に、持ち直しを続けていると述べた。』

『何人かの委員は、雇用・所得環境の改善やマインド指標の持ち直しに比べて、個人消費の改善がやや力強さを欠いているとの見方を示した。このうち複数の委員は、その理由として、消費税率引き上げに伴う実質所得減少の影響が思った以上に大きかったことなどが考えられると述べた。』

となると物価が見通し通りに勢いよく上昇を再開しますと・・・・・・・・・・

『先行きの個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとの見方で一致した。何人かの委員は、今春の賃金改定交渉で実現した賃上げによる実質賃金の改善は、マインド面のさらなる改善を通じて、個人消費をはっきりと後押ししていくことが期待されるとの見方を示した。この間、複数の委員は、年金生活者には賃金上昇の恩恵が及びにくいため、こうした層の消費動向に注意する必要があると述べた。』

しかし物価が上昇したらマインドって悪化しないかという気がしますがねえ。それから年金生活者に賃金上昇の恩恵が及びにくいとか今に始まった話じゃねえだろと。


・先行き見通しというか展望レポート

『2.経済・物価情勢の展望』 から。

『経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、国内需要が堅調に推移するとともに、輸出も緩やかに増加していくと見込まれ、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するとの認識で一致した。そのうえで、委員は、わが国経済は、2015 年度から2016 年度にかけて潜在成長率を上回る成長を続けるとの認識を共有した。』

とまあこの辺は展望レポートの基本的見解のお話。

『2015 年度から2016 年度の景気展開について、委員は、輸出は、海外経済が回復し、これまでの為替相場の動きも下支えに働くことから、緩やかに増加するとの見方で一致した。設備投資について、委員は、企業収益の改善や金融緩和効果が引き続き押し上げに作用する中、国内生産強化の動きなどもあって、しっかりと増加するとの認識を共有した。』

という見通しになっているのですがホンマカイナという疑問は尽きない。

『ある委員は、企業にとって賃金の上昇に対応して生産性を向上させる必要が高まる点も設備投資の増加に繋がるとの見解を示した。また、別の一人の委員は、これまで、企業は収益増加の一部を原油安や為替円安などによる一時的なものとみていたため、企業収益と設備投資の連関が弱かったが、今後は、企業収益の増加が安定的と認識されるようになり、企業収益と設備投資の連関は強まっていくのではないかとの意見を表明した。』

などと前からずーっと言われ続けているような気がするんだが。

『委員は、個人消費について、雇用・所得環境の着実な改善が続き、賃金が増加していくほか、2015 年度にはエネルギー価格下落による実質所得の押し上げ効果や駆け込み需要後の落ち込みからの回復も見込まれることから伸びを高めるとの見方を共有した。』

だから見通し通りに物価が推移した時の実質所得の押し下げ効果は?

『2017 年度にかけては、委員は、2回目の消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響を受けるとともに、設備投資の増加ペースが資本ストックの蓄積に伴って低下していく一方で、海外経済の成長などを背景に輸出が緩やかな増加を続けるとともに、緩和的な金融環境と成長期待の高まりなどを受けて国内民間需要は底堅く推移するとの見方を共有した。また、委員は、この間、潜在成長率は緩やかな上昇傾向を辿り、中長期的にみた成長ペースを押し上げていくとの認識で一致した。』

展望レポート基本的見解の通りなのでまあいいんですけどはあそうですかとしか申し上げようがない。


・物価見通しには3名反対

でまあ物価ですけどね。

『物価情勢の先行きを展望すると、多くの委員は、消費者物価の前年比は、@物価の基調が着実に高まり、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていく、A2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、消費者物価の前年比に対するエネルギー価格下落の影響が概ねゼロとなる2016 年度前半頃になる、Bその後は、平均的にみて2%程度で推移する、との見方を共有した。』

これは展望レポートの見通しだが平均的に見て2%だったら目標達成なのですから出口政策考えないといけないのではないでしょうか。

白井さんと思われる反対意見。

『これに対して、一人の委員は、2016年度末に2%程度に近づき、2016 年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性を排除しないとの見解を示した。』

ちなみに後の方で出てきますが、じゃあこの見通しを出した結果として白井さんは何か政策に関する提案をしているのかというとしていない訳で、見通しと政策アクションが全くあっていないので「だからアタクシが言ったでしょ」と言うだけ言って両建てをするという一番モノの役に立たない困った人をやっているだけの話。

佐藤さんと木内さん。

『別の複数の委員は、見通し期間中には2%程度に達しないとの認識を示した。このうち一人の委員は、2016 年度前半頃に2%程度を見通せるようになる可能性が高いと述べた。もう一人の委員は、消費者物価の前年比は、当面0%程度で推移した後、かなり緩やかに上昇率を高めていくとの見方を示した。』

佐藤さんはフォーキャストターゲットの話をしていまして、木内さんは中長期的に目指すという話をしていますが、この見解は政策アクションに掛かる部分で反映されてはいますのでいきなりワープして展望レポートの採決の部分に参ります。


白井さん。

『これに対し、白井委員からは、物価見通しについて、2%程度に達する時期の記述を「2016 年度前半頃」から「2016 年度を中心とする期間」に変更することを内容とする議案が提出され、採決に付された。』

いやだからそれは何なのという感じです。


佐藤さん。

『佐藤委員からは、@物価見通しについて、「2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016 年度前半頃になると予想される。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる」から「2%程度を見通せる時期は、原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016 年度前半頃になると予想される」に変更すること、A第1の柱の中心的な見通しについて、「2%程度の物価上昇率を実現し」から「2%程度の物価上昇率を目指し」に変更すること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。』

これ字面を読むとえらくゴテゴテしているのですが、要するに「2年で2%」について、アクチュアルに数字を達成しに行く(というのが執行部が説明しているところ)のを重視するのではなく、フォーキャストターゲットとして「見通せるようになった状態となる」というのを重視するということで、より柔軟な枠組みにしましょうというお話だが、一応「早期達成」の旗を明確に下ろすことはしないという話ですな。

ただまあこの場合にフォーキャストターゲットと出口政策のタイミングの関係がどうなるのかについては詳しい説明が出ていないのでその辺どうなのでしょというのは知りたいところです。


木内さん。

『木内委員からは、@予想物価上昇率の見通しについて、「中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく」から「中長期的な予想物価上昇率は安定的に推移する」に変更すること、A物価見通しについて、「当面0%程度で推移するとみられるが、その後はかなり緩やかに上昇率を高めていくと考えられる」とすること、B先行きの金融政策運営について、「日本銀行は、中長期的に2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、金融面からの後押しを粘り強く続けていく。今後とも、2つの「柱」による点検を踏まえた柔軟な政策運営のもとで、資産買入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれぞれ適切と考えられる時点まで継続する」とすること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。』

そもそも期待インフレが上がらないと言っている時点でだいぶ話が違うのですが、中長期的に目指すので期待インフレも中長期で上昇する方向という話で、これは時間軸がかなり長い話になりますので、やはり執行部の2年という期限を切ることのこだわりに真っ向対立でありますな。なお毎度の政策提案もありますけれどもそちらは引用割愛します。



・ということで予想物価上昇率の見通しについて

討議の方に戻ります。

『次に、中長期的な予想物価上昇率について、委員は、物価上昇率の低下にもかかわらず、やや長い目でみれば全体として上昇しており、こうした予想物価上昇率の動きは、2年連続でベースアップが実現する見込みにあるなど、実際の賃金・物価形成にも影響を及ぼしているとの見方を共有した。』

はあそうですか。

『一人の委員は、企業のビジネスモデルはコスト削減による低価格設定というデフレ型ビジネスモデルから、価格引き下げに頼らずに顧客満足度を高めるイノベーティブなビジネスモデルに転換しつつあると指摘した。』

とか言ってるが結局客単価上げないで実質値上げでコストプッシュを対応しているだけにしか見えませんがね。

『ある委員は、企業の賃金や価格設定行動が継続的な物価上昇を前提としたものに変化してきており、このことは、デフレマインドが払拭されつつある証左であるとの見解を述べた。』

だったら何で物価が上昇して消費増税したら消費が落ちたんでちゅかねえ。

『こうした議論を経て、多くの委員は、賃金の上昇を伴いながら、緩やかに物価上昇率が高まっていくメカニズムが作用し続けているとの見方を示した。』

つまりそうじゃないという見方もあると。

『先行きについて、大方の委員は、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向を辿り、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくとの認識を示した。もっとも、このうち一人の委員は、企業の価格転嫁力や中長期的な予想物価上昇率が一段と高まるにはそれなりに時間がかかるとみていると付け加えた。別のある委員は、中長期的な予想物価上昇率が、2%程度に向けて次第に収斂していくのは難しいとの見方を示した。』

最後のは木内さんなのは確定でその前は佐藤さんなのかな???


・次回消費増税のマイナスはそれほど大きくないという関係を述べている人が居ますよ!!!!!

上振れ下振れの話でえーと思ったのはここ。

『2017 年4月に予定されている消費税率引き上げの影響については、何人かの委員が、昨年4月以降の経験を踏まえると、消費の反動減や実質所得の減少が、想定以上に景気を下押しするリスクについては十分に注意する必要があるとの認識を示した。』

これはわかる。

『これに対し、ある委員は、経済の中心的な見通しを前提とすれば、2017 年4月の消費税率引き上げの前には、日本経済は安定的な成長軌道に乗っている可能性が高く、そうであれば、消費税率引き上げのマイナスの影響はそれほど大きくならないのではないかとの考えを述べた。』

ちょwwwwなんちゅう強気見通し。ここまで強気の見方が出来るのって置物師匠か黒田総裁しかいないと思うのですが・・・・・・・・・・



・金融政策運営に関する話だが「2年で2%」の部分はワロタ

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですけどね。

『何人かの委員は、2016 年度までの物価見通しの計数がやや下振れたことと、「2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」というコミットメントとの関係について見解を述べた。』

ほうほう。

『これらの委員は、日本銀行が2%の「物価安定の目標」の早期実現にコミットすることで、人々のデフレマインドを転換し、予想物価上昇率を引き上げることは、デフレ脱却という目的そのものであると同時に、「量的・質的金融緩和」の政策効果の起点であり、そのもとで、企業や家計の物価観は実際に大きく変化してきたとの認識を示した。』

マネタリーベース2倍2倍が起点じゃなかったのかよと思うのですが2年は起点だそうで、その割には終点が見えないのですが大丈夫でしょうか。

『このうち一人の委員は、デフレマインド転換のモメンタムを維持していくうえでは、「2年程度」というベンチマークが必要であると強調した。』

総裁か置物師匠だが置物の可能性が高いとみた。

『また、これらの委員は、実際の物価が国際商品市況などの様々な要因で変化し、「物価安定の目標」から乖離する期間が生じることは、各国の中央銀行でも当然のこととされていると指摘した。』

でた言い訳。

『そのうえで、これらの委員は、中心的な物価見通しは、「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に」というコミットメントに沿った動きとなっているとの認識を示した。』

いやだからその見通しがドンドン後ろに倒れたら肝心のベンチマークへの信頼がなくなってマインドに悪影響だと思うのですけどねえ。

『この間、見通し期間中には物価上昇率は2 % 程度に達しないとの見方を示した複数の委員は、こうした議論とは異なる見解を唱えた。このうち一人の委員は、向こう2年程度を展望して2%の「物価安定の目標」実現のパスにあればよいとの認識を示した。もう一人の委員は、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指していくべきであるとの考えを述べた。』

前者が佐藤さんのフォーキャストターゲットの考え、後者が木内さんの中長期的達成の考えですな。



・木内さんの提案に対する反対意見を最後に鑑賞しましょう

うーむ長くなりましたが最後に木内さんのいつもの提案の反対意見をば。

『これに対して、何人かの委員は、潜在成長力の水準にかかわらず、最終的に物価の安定を確保することは金融政策の役割であり、他の先進国の例をみても、多くの中央銀行が2%程度のインフレ目標の達成にコミットして金融政策運営を行っているという点を改めて強調した。』

潜在成長力と関係なく安定的な物価水準は2%で一義的に決まるという考え方も何だか違和感ありますが、そもそも木内さん2%の旗を降ろすと言ってないのに何でそういう反対論になるのやら。

『このうちある委員は、現状の需給ギャップの推定方法を前提とすれば、需給ギャップがゼロというのはデフレ期を含む過去の平均的な状態にあることを示しているだけなので、需給ギャップがゼロ近傍となっているから「量的・質的金融緩和」のペースを緩めるべきだという考え方には賛同できないと述べた。』

デフレ期を含む平均的な状態だから云々という部分が良くわからん。言いたい趣旨は分かるが。

『一人の委員は、現状、金融面での不均衡の蓄積を示す具体的な根拠は示されていないと述べた。』

ふーん。

『ある委員は、資産買入れの減額に関する現時点での情報発信は、タイミングや方法次第でせっかくの緩和効果を削ぐリスクもあり、細心の注意を払う必要があるとの見方を示した。』

それは「やり過ぎて足抜け出来なくなっている」という話だと思いますが。


・・・・・・・しかしまあ何ですな、毎度反対意見は出るのですが、今回は前回よりも反対意見の書き方が細かくなっているのが気になりましたですよ、うんうん。

#ということで師匠の会見ネタが後回しになってしまいましたすいません





2015/05/28

お題「師匠の札幌金懇ネタをやっていたら他のネタが出来なくなるの巻(すいません)」

何か為替オプションのコールとプットのどっちが「割高」かという講義がモーサテ方面で展開されているのだが、何と比べて割高なのかの説明がおかしいというか、それは単に「どっちサイドのボラティリティが高まっているのか」という観点での話であって割高割安関係ないだろ!と思うのでした。

なお、単に「オプションのコールサイドが買われているので先行きの上昇期待が高まっていますね」だけだと話が当たり前っぽいので割高割安という言葉を使って高度な分析をしているように(銃声)


○師匠の高座キター!!!!

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150527a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 札幌市金融経済懇談会における挨拶 ──
2015年5月27日

なお、折角の機会ですので本日は時々こちらから過去の説明も引用してみようと思います(^^)。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf
総裁・副総裁就任記者会見要旨
―― 2013年3月21日(木)
午後6時から約1時間45分


・経済の話はどうでもよいので金融政策の話から参ります

経済に関しては何せ期待インフレの計測方法すらご存じなかった置物大師匠様に独自の知見がある訳もないので展望レポート棒読みとなっておりましてそちらはどうでもよいので割愛致しまして、金融政策の能書きを鑑賞しましょう。『3.金融政策運営とわが国の物価情勢』の『(2)早期実現へのコミットメント』辺りから鑑賞。

『実は、日本銀行はそれ以前にも、金融政策の歴史におけるフロントランナーとして、ゼロ金利政策や量的緩和の導入など、「非伝統的」とも形容される様々な金融緩和措置を講じてきました。これらはいずれも非常にパワフルな政策ツールであり得たにもかかわらず、結果として、デフレからの脱却を果たすほどの力を発揮するには至りませんでした。』

ほうほうそれでそれで?

『この理由についての分析は百家争鳴の感がありますが、私としては、「金融政策によってデフレは克服できる」という政策当局としての信念と、その実現に向けたコミットメントが十分でなかった、言い換えると、金融政策のレジーム転換が不十分だったために、家計・企業・金融機関など民間経済主体のマインドの転換が進まなかったことが大きな要因だと考えています。』

どう見てもただの根性論です本当にありがとうございました。

『こうした反省を踏まえ、2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した際には、従来とは次元の異なる大規模な緩和措置を打ち出すとともに、目標の実現時期について、「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に」ということを申し上げました。「できるだけ早期に」というスタンスだけでなく、我々がイメージしている「2年程度」という具体的な期間まで踏み込んで提示することで、物価安定目標の早期実現に向けたコミットメントを、これまでにない強い形で示したわけです。』

ところで達成していないのですけれども。

『後ほどご説明するように、日本銀行は現在、インフレ率が2%程度に達する時期が「2016年度前半頃」になると予想しており、これは従来の想定からは多?後ずれしています。しかし、物価の基調自体は、想定した政策効果の波及メカニズムが機能する形で着実に高まっており、現時点において、物価安定目標の早期実現に向けたコミットメントを変更する考えは全くありません。』

後ずれしている時点でコミットメント達成していないのですが、「このように見込み客の確度は上がったので来期に目標達成できますので今期の目標達成に向けたコミットメントを変更する考えは全くありません(キリッ)」って言った日には普通は営業会議で物凄い勢いで詰められて泡を吹くレベルなんですけどこれで済むのは何ででちゅかねえ。


・まあ今回の一番の笑い所はこの小見出し

でまあ上記の様な状態なのですが、それを受けて次の小見出しがもう出落ちにも程がある。

『(3)インフレ率が2%に達していない理由』
『(3)インフレ率が2%に達していない理由』
『(3)インフレ率が2%に達していない理由』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

さて、ここで2013年3月21日の就任記者会見を確認しましょう。

『私は、2%のインフレを達成するため、あるいはデフレを脱却するためには、2 つの条件が必要だと思っています。1 つは、2%のインフレ目標を大体いつ頃までに責任をもって達成するのかということに日本銀行がコミットするということです。これにコミットすることが、非常に大事なことです。』(2013年3月21日の就任記者会見より、以下暫くこの続きです)

なるほど昨日もこの説明をしていますね!!!

『大体いつ頃までに達成するかということについては、主要国の中央銀行は、大体、「中期的」とか「ミディアムターム」という言葉で表現しています。その「ミディアムターム」というのが実際何年くらいなのか、色々な研究者が調べたところ、大体2 年くらいということになっています。平均すると2 年くらいでインフレターゲットの中に入っているので、そういう経験から言っているわけです。』

ぷぷぷ。

『2 つ目は、そういう意味で、2 年くらいで責任をもって達成するとコミットしているわけですが、達成できなかった時に、「自分達のせいではない。他の要因によるものだ」と、あまり言い訳をしないということです。

ゲラゲラゲラ。

『そういう立場に立っていないと、市場が、その金融政策を信用しないということになってしまいます。』

(;∀;)イイハナシダナー

『市場が金融政策を信用しない状況で、いくら金利を下げたり、量的緩和をしても、あまり効き目がないというのが私の立場です。』(ここまで2013年3月21日の就任記者会見より)

・・・・・・・・なんなんですかねえ、これだけ大口叩いていたのにいきなり言い訳以外の何物でもない説明が小見出しと共に登場するとか、こういう事言ってて恥ずかしくないのかと思うのですが、学者先生ってのはやはりこう普通に仕事とかしたことが無いから社会的に何か欠落してるんですかねえと思ってしまいますので、まあこの置物にホイホイ喋らせると経済学者一般のレピュテーションに関わるような気がするんですが。



・物価が上昇しない理由に消費税を出すのはおかしいだろお前

とまあ小見出しだけでいきなりコーナーが出来てしまいましたがその内容。

『生鮮食品を除いた消費者物価の前年比(いわゆるコアインフレ率)の推移をみると、「量的・質的金融緩和」の導入直前に▲0.5%のボトムをつけた後、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで、昨年4月の+1.5%までは順調な上昇傾向を辿りました。つまり、コアインフレ率を1年余りで2.0%ポイントも押し上げたわけで、この時期は「量的・質的金融緩和」の効果が物価面ではっきりと確認できました。』

円安コストプッシュと消費税前の駆け込み(以外にもXPパソコンサポート切れ要因とかエコ関連減税切れ要因とかあったと思うが)需要による価格設定の強気化という要因については触れないと。

『もっとも、2%の物価安定目標は、現時点ではまだ達成できていません。コアインフレ率は昨年4月をピークとして徐々に低下傾向を辿り、足許では0%程度となっています(図表7)。このようにインフレ率が低下した背景には、主に二つの大きな要因があると考えています。』

さあ言い訳が来ましたよ!!!!

・・・・・・ではあるのですが最初の小見出しでまた腰が砕けるのだ。

『@消費税率の引き上げ』
『@消費税率の引き上げ』
『@消費税率の引き上げ』

・・・・・( ゚д゚)

えーっとすいません、それは織り込んで異次元緩和を決めた筈なんですけどと思いつつ内容を読む。

『一つ目の要因は、昨年4月に実施された消費税率引き上げによる、需要の下押しです。』

いきなり語るに落ちているのですが、消費増税で需要が下押ししているならその前の駆け込みがある訳で、駆け込みの分でかさ上げされた需要が一時的に物価を押し上げた部分について計算しないでそっちの方だけ「この時期は「量的・質的金融緩和」の効果が物価面ではっきりと確認できました。」(キリッ)とかお前それでも学者かというか、そんなの学者じゃなくても考えるだろこいつは馬鹿か。

『税率引き上げ前の駆け込み需要の反動が生じること自体は想定されていましたが、1997年4月に消費税率が3%から5%へと引き上げられた時と比べて、その影響の度合いはさほど大きくならないとみられていました。しかし実際に生じた影響は、大方の予想よりも大きく、かつ長引きました。』

ということは駆け込みも大きかったのですからQQEの効果を割り引いて考えないといけないのではないでしょうかどういう検証になっているのでしょう日銀スタッフの皆様はカカシか何かでいらっしゃるのでございましょうか。

『この要因は一概に言えませんが、低調な雇用環境が長く続いたことによる低所得者層の拡大や、高齢化の進展による年金生活者の増加も一因ではないかとみています。』

えーっとすいませんそんなのずーっと前から分かりきっている事なのですし、大体からして外部環境が1997年と全然違うのに単純分析だけしかしないで政策運営していたんですかアホですかと。

『もっとも、先ほどもお話ししたとおり、雇用・所得環境や企業収益の着実な改善が続く中、家計部門・企業部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムはしっかりと作用し続けており、消費税率の引き上げがもたらした需要の下押し圧力は収束しつつあります。』

とか言ってますが、そもそも論として消費増税だってコストプッシュ要因による価格上昇だって消費者が支出の際に負担増になるという点では結果として同じ話な訳で、だったら物価が再上昇した際に再び需要が減速しないという確証はどこにあるのか小一時間問い詰めたい。

まあだいたいからして物価に関しては中央銀行の政策で責任もってやるし2年で達成するという話をしていたのに消費税のせいで達成できないとか単に置物理論の破綻を消費税のせいにして責任なすりつけているだけの話であって、もともと消費増税を見込んで緩和の規模を決めていたのだから見込み違いを認めて追加緩和して、それでもだめならそもそもの置物理論の破綻を認めて執行部総退陣だろと思いますがねえ。

消費税のせいにする説明とか見苦しいにも程があるし説明になってないわヴォケという所で。


・はいはい原油のせい原油のせい

『A原油価格の下落』というのが次の小見出しでまあ内容はお察しだがせっかくなので引用。

『足許のインフレ率が低下した二つ目の要因は、昨年の夏場以降に起こった原油価格の急速で大幅な下落です。』

ああそうですか。

『原油価格下落の影響については、どのくらいの期間を前提とするかによって見方が変わってくることに注意が必要です。すなわち、原油安によって様々な経済活動のコストが下がることは、実体経済に幅広くプラスの影響を与えますので、「長期的」にみれば、総需要の増加によって物価を押し上げる方向に作用します。しかし、そうした総需要の拡大効果が物価面に現れるまでの間、すなわち「短期的」にみれば、エネルギー価格下落の直接的な影響の方が強くなりますので、物価は一時的に押し下げられることになります。』

『今後の市況に左右される面はありますが、原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに上昇していくとの前提にたてば、今年度の後半以降、原油価格下落の「短期的」な影響は徐々に剥落していくとみています。』

この辺の屁理屈は聞き飽きた、というかこれだけかよ。

で、この後は『(4)物価の基調的な動き』という小見出しがあるのですが、これは毎度おなじみ展望レポートで示されている盛大な屁理屈なのでどうでもよくて、しかしまあ2年で2%行かなかった場合の説明責任をこれで取ってるつもりなのかよというか、今にして思えばいわゆる岩田-翁論争の時にこの置物を叩き潰さないで妙な裁定をして有耶無耶にしやがった植田和男先生の責任も重いわとか思う訳で是非ご見解を賜りたいものであります。


では講演テキストの引用の最後に就任記者会見からのお言葉でも入れておきましょう。

『先程申し上げた「中期的」とは、大体2 年ぐらいであり、2%は2 年ぐらいで達成しなければいけないということです。2 年経って、2%がまだ達成できない、2%近くになってもまだ達成できていない場合には、まず果たすべきは説明責任だと思います。ただ、その説明責任を自分で果たせないということ、単なる自分のミスジャッジだったということであれば、最高の責任の取り方は、やはり辞任だと思っています。まずは説明責任を果たせるかどうかが基本だと思います。』(2013年3月21日の就任記者会見より)



○なお置物金懇挨拶ではアドリブ発言が凄まじいのだがベンダーヘッドラインも相当意地悪(^^)

置物金懇ではスピーチの所にメディアも入っていたようで、このテキストに無いアドリブ発言がヘッドラインで報道されていて、そのヘッドラインが出た瞬間に椅子からずり落ちる人やら木彫りの熊になってしまわれた方など続出したのではないかと思われます。


・インフレ期待上昇はバブルで上げるんですねわかります

ということでまずはブルームバーグニュースから。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NOZMPH6K50XZ01.html
岩田日銀副総裁:株は「皆が上がると思えば上がる」
2015/05/27 16:22 JST

『(ブルームバーグ):日本銀行の岩田規久男副総裁は27日、札幌市内で講演し、皆が上がると思えば株は上がる、と述べた。』(上記URL先より、以下暫く同様)

『それに続いて講演録にはないアドリブで、「人間は不思議なもので、皆がデフレを予想すると結果的にデフレになる。予想が実現してしまうことを自己実現型の持続という。デフレとインフレにはそういう要素がある」と指摘。「一番分かりやすい例は、皆が明日、株が上がる、明後日、株が上がると予想して行動すると、今、株を買うので、明日でなく、今、株が上がる。それも自己実現型だ」と述べた。』

・・・・・(;゚д゚)

『その上で「要するに、皆が同じことを予想して同じ行動をすると、結果は予想した通りになる。そのことに注目しているのが今回の金融政策のレジーム転換のポイントだ」と語った。』(ここまで上記URL先より)

という事はつまり単に実体のないものに対してバブル的にインフレ期待を上げようという話のようですが、バブルは実態が伴わないと一昨年から昨年のコストプッシュに間接税増税での物価上昇が持続しなかったように持続性というのは無いんですけどアホですか????

というかですね、そんな単純な話なのでしたらそもそも論としてお前ら置物一派が日銀の政策についてデフレ政策だ何だと散々っぱら鉦や太鼓で宣伝しまくっていた行為そのものがデフレマインドを広める国賊的な行動であったという事になるんですけど大丈夫ですかおじいちゃん???

人がやっているときには散々批判してデフレマインドを広げておいて自分たちが実践すると結局翼賛して信じろとかアホか馬鹿かという話ですなマッタクモウ。


しかしまあ何ですな、メディアのヘッドラインの打ち方に悪意が感じられて実にワロタという所で、このブルームバーグのヘッドラインも一番笑える部分をヘッドラインにしているのですが、ロイターも相当意地悪なヘッドラインに作り上げていまして全く皆さんひどいですねえ(棒読み)という所で。


・久々の置物直線理論が今度はもっと凄い形で出てくるとはこれまたワロタ

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0OC05P20150527
消費増税前の物価上昇続けば昨年7月に2%目標達成=岩田日銀副総裁
2015年 05月 27日 12:16 JST

ヘッドライン見た瞬間に吹いたコーヒー返せと。

『[札幌 27日 ロイター] - 日銀の岩田規久男副総裁は27日札幌市内で講演し、一昨年4月にスタートした量的・質的緩和(QQE)1年目のペースで物価が上昇を続ければ、昨年7月にも2%の物価目標を達成できたと指摘。』(上記URL先より)

やべえこれはやべえ・・・・・・・・・

というか久々に置物直線理論炸裂という所でございまして、そら確かにその線引っ張れば達成できるのでしょうけれども、先ほど来申し上げておりますように、消費増税前の駆け込み需要が永遠に続いて為替の急激な円安が永遠に続くとかいう面白い事態が発生するという前提を元にした直線理論に何の意味があるのかと小一時間問い詰めるまでもないのですが大丈夫でしょうか師匠。

大体からして物価目標って一時的な需要とコストプッシュで2%達成しても意味が無くて、持続的に2%というか、景気が1サイクル循環的に回る中で平均的に2%近辺で安定推移するって概念じゃなかったでしたっけと小一時間ですからね。



・個別物価と一般物価は関係なかったのではないかと

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0OC0I520150527
電気代値下げによる予想インフレ率への影響注視=岩田日銀副総裁
2015年 05月 27日 16:24 JST

『[札幌 27日 ロイター] - 日銀の岩田規久男副総裁は27日午後札幌市内で講演し、日銀が金融政策運営で重視している予想インフレ率は、足元の物価に影響されやすいとの見解を示した。電気料金値下げで予想インフレ率が下がることはないが、「絶対ないとは言えない」として注視する姿勢を強調した。』(上記URLより)

・・・・・・・・・・・そのうち「昨年はイワシやサンマが豊漁だったためにインフレ期待の上昇が遅れているが、基調に変化はなく、2%達成が一時的に遅れているに過ぎないので達成時期は後ずれします」とか言い出すんじゃないかこのスットコドッコイ共はという感じがするのでありましたとさ。



まあ会見も色々と面白かったようなのでそれは明日なのですが、ついうっかり師匠スペシャルをしてしまいましたので肝心の「展望レポートの回の金融政策決定会合議事要旨」が後回しになるというバットプレイを演じておりまして誠に申し訳ありませんm(__)m

ああそれから今日は2年と3MTBの入札も注目でして、3Mに関しては連日の固定金利謎残高増加があって、GCとかの動き見てると多分マイナスにはならないような気がするし、そもそも6月の短国買入は相当フローで減る筈なのでそこまで日銀トレードヒャッハーとはならないと思いますが、2年に関しては需給がわけわからん。



2015/05/27

お題「先週のイエレン講演は「フォワードルッキング」がインパクト/札幌で師匠の高座があるので前祝いに国会会議録鑑賞」

・・・・・・・ということで本日は分量だけは多いのだがただの引用増量企画ですすいませんすいません。

ところでこんなのが。
http://www.asahi.com/articles/ASH5R42WTH5RUTIL00T.html
アベノミクス、議員も株売買「証券会社の助言受けてる」
伊木緑、飯島健太、贄川俊
2015年5月25日16時45分

いやまあこういう記事がありますなあということで他意はありませんけどね。


○先週のイエレン議長のスピーチから少々

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20150522a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20150522a.pdf
Chair Janet L. Yellen
At the Providence Chamber of Commerce, Providence, Rhode Island
May 22, 2015
The Outlook for the Economy

・経済のアセスメントは堅調という話と留保の話が交錯します

『Today I would like to speak with you about the outlook for the U.S. economy. I should note at the outset that my remarks today reflect my own views and not necessarily those of others in the Federal Reserve System.』

てな訳で話が始まるのですが、前半の経済に関する説明は今申し上げたように堅調という話をしていながらも色々と留保やらリスク要因やらを述べるという内容で、慎重な強気とかそんな感じの印象を受ける内容でそこだけ読むと特段にタカ反応の必要はないのですが、問題は後半の金融政策スタンスだったりします。でも前半も確認ね。

これまでの経済状況の話という所で前半はリセッションとそれ以降の対応という話なので割愛しましてその次から。

『In recent months, some economic data have suggested that the pace of improvement in the economy may have slowed, a topic I will address in a moment. And even with the significant gains of the past couple years, it is only now, six years after the recession ended, that the labor market is approaching its full strength.』

足元弱いけど労働市場はfull strengthに向けて近づいているとか強いんですけどね。

『I say "approaching," because in my judgment we are not there yet.』

と、すかさずこういう説明をする感じで、まあ基本的に経済の部分は楽観だけどカンカンの強気ではないという感じではないかと。

『The unemployment rate has come down close to levels that many economists believe is sustainable in the long run without generating inflation. But the unemployment rate today probably does not fully capture the extent of slack in the labor market. To be classified as unemployed, people must report that they are actively seeking work, and many people without jobs say they are not doing so--that is, they are classified as being out of the labor force. Most people out of the labor force are there voluntarily, including retirees, teenagers, young adults in school, and people staying home to care for children. But I also believe that a significant number are not seeking work because they still perceive a lack of good job opportunities.』

イエレンせんせの講演って基本的に説明が丁寧なので、たとえばここのように「full strengthに至っていません」という事の説明をこんな感じでああでもないこうでもないと説明してくれるので非常に分かりやすいのは良いのですが、引用していると引用大会になるのが難点でして、経済の所だけでもこの調子でやっていると量が多くなりすぎますので以下適当に端折りますね。


ちょっと先に行って物価に関して。

『This improvement in the labor market has brought the economy closer to one of the two goals of monetary policy assigned to the Fed by the Congress--maximum employment. Less progress has been made toward the other goal, price stability.』

てなことで物価に関しては労働市場よりも「Less progress」ですとまあ順当ながら来ました。でまあ途中の説明は飛ばして結論。

『Inflation has been held down by the continued economic weakness during the slow recovery and, more recently, by lower prices of imported goods as well as the fall in oil prices. With oil prices no longer declining, and with the public's expectations of future inflation apparently stable, my colleagues on the Federal Open Market Committee (FOMC) and I believe that consumer price inflation will move up to 2 percent as the economy strengthens further and as other temporary factors weighing on inflation recede.』

ということで従来の物価の弱さについては需要の弱さという要因もあったものの、最近の物価の弱さに関しては原油によるものが殆どで、いずれ物価は戻りますぜうはははははという話ですな。

『A number of economic headwinds have slowed the recovery, and to some extent they continue to influence the outlook.』

という話をした直後にこのように「でも見通しを考える場合には経済の向かい風を考えないといけません」と来ますのでこれがもうねという所です。引用すると長くなりますが、3つ並べていまして(1)これまで発生している住宅価格下落による家計の資産毀損や負債の負担、(2)財政引き締めの影響、(3)海外経済の回復が弱い事、でありますな。


でもって次が『Factors Affecting the Outlook』という小見出し。

『With the waning of the headwinds that I have discussed, the U.S. economy seems well positioned for continued growth. Households are seeing the benefits of the improving jobs situation, and consumer confidence has been solid.』

ということで基本的には見方は楽観ではあります。

『In addition, the drop in oil prices amounts to a sizable boost in household purchasing power. The annual savings in gasoline costs has been estimated at about $700 per household, on average, and savings on heating costs--especially here in the Northeast, where it was so cold this winter--are also large.6 Given these energy savings on top of the job gains, real disposable income has risen almost 4 percent nationally over the past four quarters.』

原油の下げがプラスという話ですな。

『Households and businesses also are benefiting from favorable financial conditions. Borrowing costs are low, supported by the Fed's accommodative monetary policies. And credit availability to both households and small businesses has improved.』

金融環境の緩和がプラスという話ですな。で、この次に目先ちょっと弱いですねという点について先ほどと同じような説明をしておりまして、その次。

『All of that said, the headwinds facing our economy have not fully abated, and, as such, I expect that continued growth in employment and output will be moderate over the remainder of the year and beyond. 』

ということで、見通しは楽観なものの先行きに関しては向かい風があるので回復はモデレートでしょうという話をしていまして、以下は家計消費の伸びとか企業の投資動向とか、エネルギーセクター企業の動向とかについての話をしていますが、結論はいつものFEDの中心的見解になります。


・金融政策はフォワードルッキングキター!!!!!

でまあここまでは前座でして(なお前座の方が圧倒的に分量が多い)、問題となったのは『Implications for Monetary Policy』でありまして、4つのパラグラフしかないのですけど冒頭からいきなりのブチカマシキター!!!というのがこれです。

『Given this economic outlook and the attendant uncertainty, how is monetary policy likely to evolve over the next few years?』

ほうほうそれでそれで?

『Because of the substantial lags in the effects of monetary policy on the economy, we must make policy in a forward-looking manner.』

アイヤー!!!!!!!

「we must make policy in a forward-looking manner」ですよ大変ですわという所でして、ついこの前までFOMC声明文に「フォワードガイダンス」を入れていた中央銀行がいきなり「金融政策の効果が出るのには顕著な期間のラグがあるので金融政策はフォワードルッキングで実施しなければならない」(キリッ)とか言い出すとかもう何という君子豹変という所ではあります。

『Delaying action to tighten monetary policy until employment and inflation are already back to our objectives would risk overheating the economy.』

金融政策の引き締めが遅れると経済を過熱させるリスクがあります(キリリッ)とな!!!


『For this reason, if the economy continues to improve as I expect, I think it will be appropriate at some point this year to take the initial step to raise the federal funds rate target and begin the process of normalizing monetary policy.』

で、こちらが例の「年内利上げが適切」発言な。

『To support taking this step, however, I will need to see continued improvement in labor market conditions, and I will need to be reasonably confident that inflation will move back to 2 percent over the medium term.』

とは言ってますが、この部分だけではなくその前の「フォワードルッキングに行動」というのがまあインパクトありますなというか、やはり時間的不適合の話が出口になると出てくるのよねというようなお話ではありますけれども、この手の地均しってのはまあどこまでピュアに経済物価情勢を見られるのかという点もさることながら、やはりアタクシ思いまするに、今行っている非伝統的金融政策というかバランスシートの規模の大きさがいざ経済強そうになってくると中央銀行としては脅威に見えてくるんでしょうなあ(その点で言えば黒田さん中央銀行家じゃないからそういうの無頓着っぽいし置物師匠は頭の中も含めて木彫りなので考えないから平然としてられるんだと思いますよ)と。

『After we begin raising the federal funds rate, I anticipate that the pace of normalization is likely to be gradual. The various headwinds that are still restraining the economy, as I said, will likely take some time to fully abate, and the pace of that improvement is highly uncertain. If conditions develop as my colleagues and I expect, then the FOMC's objectives of maximum employment and price stability would best be achieved by proceeding cautiously, which I expect would mean that it will be several years before the federal funds rate would be back to its normal, longer-run level.』

そうは言っても慎重にやりますしモデレートにやりますし経済の向かい風がありますから数年かけて正常化とかそんな話になりますよいういつもの話もしているものの、その前のフォワードルッキングがどう見てもインパクトあり過ぎでこちらの話はかすんでいますな。

『Having said that, I should stress that the actual course of policy will be determined by incoming data and what that reveals about the economy. We have no intention of embarking on a preset course of increases in the federal funds rate after the initial increase. Rather, we will adjust monetary policy in response to developments in economic activity and inflation as they occur. If conditions improve more rapidly than expected, it may be appropriate to raise interest rates more quickly; conversely, the pace of normalization may be slower if conditions turn out to be less favorable.』

データディペンデントで実施するから事前に予告してどうのこうのとか、プリセットされたコースがあったりする訳ではないですよという話もしていますがその前のフォワードルッキングが以下同文。


・最後は生産性強化で成長力強化みたいな話をしております

『Longer-Run Growth 』というのが最後の所ですが、こちらではお題の通りで長期的な成長力を強くして行くのが重要ということで・・・・・・・

『Here the recent data have been disappointing. The growth rate of output per hour worked in the business sector has averaged about 1-1/4 percent per year since the recession began in late 2007. This rate is down from gains averaging 2-3/4 percent over the preceding decade. I have mentioned the tepid pace of wage gains in recent years, and while I do take this as evidence of slack in the labor market, it also may be a reflection of relatively weak productivity growth.』

『Productivity depends on many factors, including our workforce's knowledge and skills and the quantity and quality of the capital, technology, and infrastructure that they have to work with. Economists debate how optimistic to be about our nation's productivity prospects.』

てな感じでリセッション以来落ちている長期的な成長力を上げるのに生産性の向上が必要ですねという話をしておりますが、まあこちらは金融政策そのものに直接影響する話ではないのですが、最後に持ってきているのでイエレンさん的には強調したい話ではあるでしょうから敬意を表して以下の部分を次に引用しておきます。

『Economists debate how optimistic to be about our nation's productivity prospects. Some argue that the decade starting in the mid-1990s was exceptional, with unusually large advances in information technologies, and that the more recent period provides a better guide to the future. Others are more optimistic, suggesting that recent technological innovation remains as impressive as ever, and that history shows it may take some years to fully reap the economic benefits of such innovations.7』

『I do not know who is right, but I do believe that, as a nation, we should be pursuing policies to support longer-run growth in productivity. Policies to strengthen education, to encourage entrepreneurship and innovation, and to promote capital investment, both public and private, can all be of great benefit.』

『It also is possible that a portion of the relatively weak productivity growth we have seen recently may be the result of the recession itself.8 Firms slashed their capital expenditures during the recession, and as I noted earlier, the increases in investment during the recovery have been modest. In particular, investment in research and development has been relatively weak. Moreover, a lack of financing may have impaired the ability of people to start new businesses and implement new ideas and technologies.』

『As the economy strengthens further, many of these processes could work in reverse, boosting our productivity prospects. To the extent this is so, Federal Reserve actions to strengthen the recovery may not only help bring our economy back to its productive potential, but it may also support the growth of productivity and living standards over the longer run.』

ということで、金融政策の話の最後の部分に長期的な成長力強化の重要性という話をしているのはまあこれはこれで味わいがありますなという所で。



○今日は札幌で師匠の高座があるようですので参議院で実施された蒟蒻問答をお送りいたします

http://www.boj.or.jp/announcements/press/index.htm/
講演・記者会見
日本銀行の役職員による講演要旨や記者会見要旨などを掲載しています

『今後の講演・挨拶等の予定 
2015年 5月27日 岩田副総裁 札幌市金融経済懇談会における挨拶』

(;∀;)イイハナシダナー

ということですので先日参議院で面白い演目が披露されていたと聞き早速会議録にあたってみることにしました。

物件はこちら↓
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/189/0060/18904230060008a.html
第189回国会 財政金融委員会 第8号
平成二十七年四月二十三日(木曜日)

上記リンクだと直リンで見れると思いますが、見れない場合は国会会議録検索システム(http://kokkai.ndl.go.jp/)から上記会議を検索するか、発言者「岩田規久男」で探すとヨロシアル。

2番目の質問者の前川清成委員(民主党)と師匠の問答がかなりの抱腹絶倒モノなのですが、これがまた引用しているととんでもない量になってしまうので詳しくは上記URLから鑑賞して頂きたいと存じますものの、まずはまあこの辺から。

『○前川清成君 おはようございます。

 今日はいつもと違いまして報道用のマイクも出ております。岩田副総裁におかれましては、教壇にも立っておられましたので分かりやすく説明することはお得意だろうと思いますので、是非、報道を接して副総裁の発言を見聞きされる国民の皆様方にも分かりやすいように、端的に御答弁をいただければ幸いでございます。

 今日は、まずはいわゆる量的緩和についてお尋ねしたいんですが、不景気になりますとお金がない、だから、企業は設備投資をしない、個人も住宅を建てない、その結果需要が生じないと。そこで、かつては公定歩合、日銀の各金融機関に対する貸出金利を下げた。公定歩合が下がったら、各銀行は言わば仕入れ値が下がるわけですから安く金を貸すことができると。金利が安いんだから、そうしたら借金してでも工場を建ててみようか、住宅を建ててみようかと。これらの需要が言わば呼び水となって景気が回復すると、これがいわゆる教科書に書いてあったような金融政策であります。』

うむ。

『 ところが、今、日銀がやろうとしているのは、いわゆるマネタリーベース、世の中に供給するお金の量を増やそうと、二年間で二倍に増やそうと、そうしたら二年間で物価が二%上昇すると、これがアベノミクスの一本目か二本目か知りませんが三本の矢の一つであって、クロダノミクスと言う人もあります。

 そこで、まず岩田副総裁、お尋ねしたいのは、何のためにこの金融緩和を行うのかと。インフレを起こして庶民の暮らしを厳しくする、これは目的ではないだろうと思います。今お金が眠っている、だからインフレを起こすことでそのお金に目を覚ましてもらうと。デフレからインフレに誘導することで企業や個人がお金を使うようにする、お金が回り出すことによって企業や個人が景気が良くなっていくと。こういう理屈だろうと思うんですが、そうだとすると、世の中に供給するお金の量を増やしたらどうして企業や個人はお金を使うようになるのか。この点を、期待に働きかけるとかいうことはおっしゃらずに、分かりやすく御説明をいただきたいと思います。』

(・∀・)ニヤニヤ

『○参考人(岩田規久男君) 日本銀行は、十五年にわたるデフレから脱却するために、二〇一三年四月に御案内のとおり量的・質的緩和を導入したわけでありますが、この量的・質的金融緩和というのは大きく分けて二本の柱から成っておるということであります。

 一つは、二%という物価目標というのを、安定ということに、その実現に強くコミットメントする、コミットするということであります。

 そして、もう一つの柱は、そのコミットメントを裏打ちするようなですね……(発言する者あり)大規模な金融緩和によって、今、予想物価上昇率を引き上げるということをして、実際に予想物価上昇率はこの金融緩和、量的緩和以後、緩やかにですが、振れを伴いますけれども、上昇傾向を示しているわけであります。

 そして同時に、名目金利というのは、長期名目金利、短期金利だけでなく長期金利も下げるということによって、名目金利から予想物価上昇率を引いた実質金利ですね、これを引き下げるということであります。この実質金利を下げるということによって実物の民間需要が刺激されて経済の需給ギャップが縮小し、物価上昇に圧力が掛かるというメカニズムになります。

 ただ、その際に、同時に、実質金利が下がるということは、どうしてそういうことが起こるのかと申しますと、デフレの予想が……』

ここでなんで3点リーダー2つ攻撃になっているかと言いますと・・・・・・・・・・・

『○委員長(古川俊治君) 答弁は端的に、質問者の趣旨に正面から答えるようにしてください。』

ちょwwwwwこれわwwwwwwwwwww

なお念のため申し添えますが、古川俊治委員長というのは自民党の方でございまして、自民党の財金委員長から言われる師匠クソワロタとしか申し上げようがありません。

『○参考人(岩田規久男君) はい。

 そういうメカニズムがあるということですが、ただ、その所期の効果がきちっとやはり発揮しておりまして、消費税率引上げ前は、直接の影響を除くベースで、二〇一四年四月には一・五%まで実際に物価は上昇したわけであります。これは、量的緩和の前よりも二%ポイント上昇したということを意味します。

 しかしながら、その後、消費税率引上げ後の反動減が長引いて、需要面の弱さが見られたことや、昨年夏場以降の原油価格が大幅に下落したということで、実際は二%になっておりますが……』

ここでまた3点リーダーが出るのですが・・・・・・・・・

『○前川清成君 あのね、副総裁、僕はその実質金利が云々かんぬんとか、そういうへ理屈は聞いていないんですよ。お金の供給量を増やしたらどうして企業や個人はお金を使うようになるんですかという質問、端的に答えてください。』

『○委員長(古川俊治君) 今の質問に端的にお答えください。』

委員長にまで言われておるわwwwww

『○参考人(岩田規久男君) やはりそれは実質金利が影響するということなんですね。つまり、デフレの中でデフレ予想をしている場合には、お金を現金や預金で持っているだけで価値が上がるということになります。実際にそういう状況の中では、企業というのは普通はお金を、内部留保などを設備投資に使うわけですが、実際はそれに使わないで現預金で持ってしまうというような、企業までもが持っているお金をため込むだけになってしまうと。それはやはりデフレ予想を変えてしなければできないということであります。』

『○前川清成君 今、岩田さんが答えているのは、金利が上がったら企業がお金を使うようになりますということを答えている。僕が聞いているのは違うんです。通貨の供給量、お金の供給量を増やしたらどうして使うようになるんですかと聞いているんです。』

上がったらというのは下がったらの間違いですね。まあいいけど。

『○参考人(岩田規久男君) 先ほどから申し上げましたとおり、物価安定の二%目標にまず強くコミットメントするということです、日本銀行が。このコミットメントが非常に大事だということです。そして、それを裏打ちするためにいわゆるマネタリーベースをどんどん増やしていく。その場合には、長期国債のような、そういう少し長めのものを買っていく、あるいはリスク性のあるものを買っていくということが大事であります。それによって予想がやっぱりデフレから実際インフレ予想に転換したわけですね。

 ですから、そういうことで、お金を持っているだけでは、現預金だけ持っているだけでは駄目だということで、企業が支出に使い出す、あるいは消費者も支出に使い出すと、それが実際に起こったことであります。』

『○前川清成君 僕が岩田さんの講義を取っていたら、必ず単位を落としますね。言っている意味が分からないもの。

 それで、岩田さん、何というのか、机上の空論じゃなくて、もっと分かりやすく具体的に答えてほしいんですが、例えば今極めて大事とおっしゃった、日銀が物価にコミットメントすると。中身はどういうことですか、具体的に。』

以下延々と続くのですが、まあ置物直線一気理論については答えないで判で押したように同じ話しかしないとか、この人本当に学者としての見識とか誠意とか全くないですねというか、そもそもこういう輩をのさばらせておく経済学会って何なんですかと思いますと、この置物師匠もさることながら経済学者全般にも猛省を促したいものでございますわマッタクモウという感じでいい感じで血圧は上昇しますが、まあそこまでトサカに来ないで読むとお笑い劇場にしか見えないので中々おすすめしますが、読んでいてトサカに来て血圧が上昇して健康に影響が発生しても自己責任でお願いいたします(−−;


この後「2年間」の話と「言い訳はしない」の話があってこれまたオモロイのですが一部だけ。

『○前川清成君 岩田さん、僕は今言い訳をしてくださいと言っているんじゃないんですよ。これはこの後また聞きますよ、あなたが言いたいんだったら。違って、二年前に、マネタリーベースを二倍にしたら物価が二%上がりますと、こうおっしゃったのはどういう根拠なんですかと聞いているわけです。

 もう一つ。じゃ、二倍にしたら二年後に二%とおっしゃった。二年後というのはどういう根拠だったのか。これを因果の流れで、僕、最初言ったでしょう、公定歩合を下げると銀行の仕入れが下がる、仕入れが下がるから安く貸し出すことができる、こういう因果の流れで説明してくださいよ。』

『○参考人(岩田規久男君) 因果に関しては先ほどから申し上げているとおりでありまして、一方でデフレマインドからインフレマインドに変えていくということと、長期名目金利を下げて実質金利を下げるということであります。それによって人々がお金を使い出すということであります。

 二年ということでありますが、ある程度、それは、一般に中央銀行のこれから二%の目標を、物価目標を挙げている国が、これはもう二十年ぐらいの経験があるわけですが、その中で、大体二年程度でその目標を反映しているという実績がある。そのためにはどのぐらいマネタリーベースを増やせばいいかということを一応モデル計算をしているということであります。

 しかし、そういう中で、実際想定しなかったような原油価格の下落とかいうことが起こる、そのために今その物価目標の二%が少し遅れているということであります。しかし、実際の原油価格の下落というのは、総裁先ほども申し上げたとおり、中長期的に見ると、経済を活性化して物価を押し上げる要因ですので、今のその下がっていることということはそれほど心配するということではないということであります。』

黒田総裁がこの前に質疑応答で答弁をしておりましたので総裁云々はそういう話です。

『○前川清成君 あなたは二年以内に達成できなかったら辞めるというふうにまでおっしゃったんだけど、その二年の根拠は大体二年なんですか。大体二年って何の大体二年なんですか。』

『○参考人(岩田規久男君) 二年といいますか、二年程度ということで、大体二年程度ということになります。』

クソワロタ。

『○前川清成君 いや、聞いているのは、あなたが先ほどの答弁で大体二年だとおっしゃったでしょう。それはどういう根拠で大体二年とおっしゃってるんですかと具体的に聞いているわけよ。』

『○参考人(岩田規久男君) それは、先ほど申しましたとおり、物価目標の安定を二%に挙げている国という実績が、大体二年程度ではそこに上げているということであります。ただ、実際の物価はその周りでどうしても振れますけれども、大体その二年で行っていると。そのためにはどのくらいのマネタリーベースを増やせばいいか、あるいはマネタリーベースを増やす手段はどれがいいか、あるいはコミットメントをどういうふうに強めたらいいか、そういったことがやはり影響してまいります。』

『○前川清成君 その今大体二年と言っておられるのは、どこかの国のことをおっしゃっているの。何をおっしゃっているの。』

『○参考人(岩田規久男君) その二%の物価をうたう、二%だけじゃないんですけど、三%の国もあります、目標は。ありますけれども、多くの国は大体二%の周りに目標を設定している。それが、ニュージーランドが始めたのが一九九〇年ぐらいでありますが、それ以来いろんな国が二%ぐらいで大体やっていて、その実績は大体二年程度で、中期的といっていますが、実績はそこ、大体それを達成しているということであります。』

『○前川清成君 大体二年と言い出したのはあなたで、それに対して大体二年というのはどういう根拠ですかと言えば大体二年ですと言えば、こんなの永遠に終わらないですね。これトートロジーというんですけれども。

 それで、原油が下がったことをぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ言い訳しておられますけれども、じゃ、日銀の金融緩和というのは、原油価格は下がらない、言わば原油神話というのを前提にしていたんですか。そうであれば、そのことを二年前に説明しておられたんですか。』

でまあ原油が下がった件についての話が続くのですが割愛してこの質疑の最後の方に参ります。

『○前川清成君 二十五年三月二十二日の記者会見において、達成できなかったときに、自分たちのせいではない、ほかの要因によるものだと言い訳はしない、そういう立場に立たないと市場が金融政策を信用しない、市場が金融政策を信用しないと幾ら金利を下げたり量的緩和をしても効き目がないというのが私の立場ですと、こういうふうに岩田副総裁はおっしゃいましたが、この委員会で、聞かれる前から原油が下がったとか、あれがこうだこうだと言い訳をしておられたのはどなたでしょうか。』

『○参考人(岩田規久男君) それは申し上げましたが、それは今申し上げましたように言い訳ではなくて、言い訳というのは、誰もそれが実際の真の理由にならないようなことを言う場合でありまして、しかし原油価格というのは、足下で下がっているのはどこの国でも、二%の物価目標を達成しようとしている国、どこの国でも起こっている現象でありますので、私は、それは説明できているという意味で言い訳とは違うというふうに思っています。』

ナンジャコリャ。

『○前川清成君 ちょっと今、言い訳の定義について何かよく分からなかったんですが、要するに、私先ほども聞きましたよ。原油にしたってサンマにしたってお米にしたって何にしたって、物価というのは上がったり下がったりしますよね。それを一切想定していないというのは、賢明な岩田副総裁やあるいは賢い方ばっかり集まっておられる日銀の方が、物価の上下を勘案していないというのはあり得ないですよね。それにもかかわらず、原油が下がったのは言い訳じゃないんだと。言い訳じゃなくてそれは何と言うんですか。』

しかしまあ何ですな、こう考えるとそもそも論として「期限を明示する」というのが本質的に無理がある上に、昨年10月に追加緩和を行ったのが明らかに説明をわけわからなくしているなあという所で。

『○参考人(岩田規久男君) 先ほども申し上げましたように、原油が上がったり下がったりというのはある程度想定して備えているということであります。下振れリスクがあったり上振れリスクがあるということはそれで対応するということでありますが、ただ、原油価格が半年もしないうちに五割六割下がるというようなことは、事前にやはり想定して金融政策を組むことはなかなか難しいということであります。

 余りそれで、本当にそれを予想してしまうと、金融政策がずっと変わってしまうということであります。』

そらそうなんだがタイムコミットメントをしているんだったらはやり追加緩和をしないとおかしいんじゃないですかねえという話になるわなそら。

『○前川清成君 原油価格は、例えば過去二回のオイルショックもありました。逆にですけれども、大幅に変動していることもあります。だから、それは想定している範囲を超えたんだと言われたら、それはその程度の理屈なの、金融緩和って。今の岩田さんのぐちゅぐちゅした言い訳を聞くと、結局、量的緩和によって物価が上がるんじゃなくて、原油が上がることによって、原油が上がることによって物価が上がりますと。原油が上がったら人々が、ああ、お金を使わないと駄目だなと思い出してお金が動くようになると。これ、金融緩和じゃなくて、じゃ、日銀はもう仕事をやめなさって、どうですか、神様にお願いするのと、あるいは原油価格の上昇をただただ期待するということしか中身はないのかなと、こういうふうに思います。』

ワロタ。

『  ただ、いずれにしても、もう私の時間も僅かですので、岩田副総裁、あなたが心配されたように、我々は投げ出したというふうには思いません。ここであなたが言い訳を繰り返せば繰り返すほど、市場は日本銀行を、そして岩田さん、あなたを信用しない。信用しなかったら、市場が信用しなかったら幾ら金融政策を、金融緩和をしても、更なる第三弾の金融緩和をしても効き目がない。それならば、いつまでも副総裁というポストにしがみつくんじゃなくて、名こそ惜しけれという言葉もあります、あなたが人生を懸けて研究してきた金融政策のためにも、ここは潔く辞職するべきだと。辞職するべきだというのは私が言い出したわけではありません。恨まれたくないので申し上げておきます。あなたが衆参それぞれの議院運営委員会で自ら言い出したことなんです。

 そうであれば、あなたは、この責任を取るというのが、学者の世界ではなくて、日銀という組織の責任者としては当然に取るべき対応ではないかと、私はそう思いますが、いかがでしょうか。』

まあ以下の答弁はお察しですので割愛しますが、そもそも人生を懸けて研究してきた置物マネタリーベース直線一気理論を師匠ご自身が弊履のように捨てていらっしゃるとしかどう見ても思えない件については本日の札幌金懇でご説明または質疑応答における鬼ツッコミがあるのではないかと存じますので正座して待ちたいと思います。




2015/05/26

お題「短国買入・・・・/金融経済月報は事実上の物価見通し上げですな/総裁会見は潜在成長率と予想物価上昇率の質疑がオモロイ」

スペイン統一地方選挙結果(スペイン語だけど図と字面でわかると思います)
http://resultados.elpais.com/elecciones/autonomicas-municipales.html

第一党の分布だけ見ますと南が赤(PSOE)で北が青(PP)でバスクとカタランが別の色という安定のクオリティではあるのですが、細かく見ていくと新興政党だらけなんですよね(なお新興政党のネーミングセンスが全般的にアレらしいのですけれどもスペイン語を読める人に聞いてみてください)。

○短国買入ェ・・・・・・・・・・・・・

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150525.htm
国庫短期証券買入 22,500 2015年5月27日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,750 2015年5月27日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,750 2015年5月27日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2015年5月27日

輪番の方はどうでもよいのですが、短国買入に関しては直近で固定金利オペの残高が増えているので別に増額することも無いじゃんと思いつつも、まあ先週木曜の3Mがだぶついているようですし、1Y入札も先週月曜にあったので2500億円刻んで増やしてきたのかなあと思ったのですが・・・・・・・・・

オペ結果のうち短国買入だけ引用
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150525.htm
国庫短期証券買入 26,581 22,502 -0.007 0.001 26.9

・・・・・・・・・orz

あちゃーとしか申し上げようがないこのクソ結果という所でして、2500億円増額するのですから少なくとも3.5兆円ほどは札があると思ったのですが2.6兆円しか札が無いのにわざわざ2500億円増額して買入を実施するとかヒアリングちゃんとやってるのかこのヘタクソとしか申し上げようがない訳でして、その2500億円ぽっちを増額した結果、またまた買入が流れるとか、昨年9月以降ずっとなのですが何でこうオペ先の足元見られて日銀トレードヒャッハーとなるようなオペの打ち方をするのかと小一時間な訳ですし、しかも何回同じようなことをすれば気が済むのかという学習能力のなさに涙が出る訳でございます。まー昨年10月の追加緩和の前までは短国買入に掛かる圧力も高かったのでやや同情の余地もないではないのですけどね。

とは言いましてもそもそもの話からすると昨年9月に期末要因も兼ねてマイナスになった短国市場が10月頭に期末要因が抜けて緩和するかと思ったところに日銀の買入加速によって短国市場を壊してしまし、その結果10月の追加緩和の時に短国買入にこれ以上負荷をかけられない(=オペの限界を露呈した)となった訳でして、まあ結局の所短国買入に関しての学習効果が全然働いていないというか学習してねえというかそもそも学習する気無いんでしょうなあという所で。別に昨日なんて札を2500億円増やす意味あったのかよと思いますし、増やさなければ足元見るような応札も減っていたと思われますけどね。

つーことでまあこの結果短国カレントマイナス金利ヒャッハーでレポGCも短国現先市場も玉なし芳一で金利絶賛大低下・・・・・・・・というとBBの引けはカレントで金利下がったけど引けは0.0bp(0.2bp強)だったりしますし、レポとか現先の状況を見ておりますと少々もにょる所もあって、そもそもこの2.6兆円という応札額がホンマカイナ(端から3M入らないだろうから札入れなくて応札減るという可能性は無いでもないがそれはちょっと???です)という気もするのだが、まあいずれにせよ2500億円余計に買おうとしてまたまた短国市場の板を無くしてしまうというプレイに出てしまう日銀のオペレーションって、強欲婆さんが大きなつづらを持ち帰って来るの図というか、腹が減っているので来年の種もみまで食ってしまうの図というか、何かこう人間としてその心理は良くわかるのですがいいからそこはグッと我慢できないのかねと思うのでありました。

まーそうは言っても次回の短国3Mの入札がマイナスじゃないと買えないというほどの事にはならないんじゃネーノとは思っています(ここで進捗させると6月の買入がバランス上更に減るから)けれども、まーた短国買入が流れやがったかということでメモメモなのです。


まあしかし何ですな、更にそもそもの話をすると、輪番のように事前にアナウンスする形式でやらないでの買入オペというのは、その買入規模が市場対比大きいという事になると明らかに無理があるというのがご教訓という感じで、しかも短国買入の場合は財政要因を主とする資金需給の帳尻に使っているという所に重大な問題があって、財政要因の季節的なブレが巨大なものを通常の共通担保オペのような形式ではなくて買入系のオペで調節するという行為そのものに無理がある訳ですよ。

ということで、マネタリーベース云々という文言があるのが宜しくない訳でして、すっかりマネタリーベース直線一気理論を放棄しておられる(のにその反省の弁が無いという厚顔無恥な)置物副総裁大先生もおっしゃるように、「長期国債の買入を積み上げていく」事に意味があるのであって、短期国債の買入でMB積み上げても効果は超限定的というのであれば、月次でMBの積み上げ帳尻プレイをするのを放棄すれば市場に無駄なフリクションを与えないと思うのですが、まあ元々のマネタリーベース直線一気理論だけは操作目標をMBにしているという時点で残っているのが問題なんですよねえ、ナムナム。


○金融経済月報:何気に物価の先行きが事実上上がっており益々追加緩和は遠のくの図ですな

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2015/gp1505.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2015/gp1504.pdf(前回)

・現状部分は声明文比較と同様です

『わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(前回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

公共投資を下げね。

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。住宅投資は、下げ止まっており、持ち直しに向けた動きもみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)

『個人消費は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体としては底堅く推移している。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は持ち直している。企業の業況感は、総じて良好な水準で推移している。』(前回)

消費が結構な上げ、住宅投資もやや上げ、業況感云々は短観直後の時に出るものなので今回は割愛されています。


・先行き見通しの需要項目別展開・・・・・・・は現状判断ほどの強い変化はない

『先行きについても、景気は緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きについても、景気は緩やかな回復基調を続けていくとみられる。』(前回)

こちらは声明文通りの基調抜け。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、高めの水準を維持しつつも、緩やかな減少傾向を続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。』(今回)

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、高めの水準を維持しつつも、緩やかな減少傾向に転じていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。』(前回)

公共投資の所が「減少傾向を続ける」となっていますが、まあこれは現状判断の所を下げたのに併せて表現が変わっている訳でして、現状判断自体は前回の見通し通りに推移しているという意味においてはまあこんなもんでしょう。


『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。住宅投資は、持ち直していくと予想される。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。住宅投資は、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

住宅投資について「次第に底堅さを取り戻していく」と上方修正しているのですが、個人消費に関しては現状判断は強くなったけれども先行き判断をより強い表現にするほどまでは自信満々という訳でもないという事ですねわかります(^^)。


・リスク要因

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

ところでなんでこの「低インフレ長期化のリスク」というのが「景気・物価のモメンタム」という謎表現になったのやら。まあ「低インフレ長期化のリスク」とか言ってるとブーメランが突き刺さるからあまり言いたくない(追加緩和をする気もないようですし)という事なのかも知れませんけどね。


・物価に関してはしらっと現状判断事実上引き上げ

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、3か月前比で下げ止まっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、これまでの国際商品市況の大幅な下落を反映して、3か月前比で下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

声明文では記述しないことになっている国内企業物価に関してはしらっと今回「3か月前比で下げ止まっている」となっておりまして、国内企業物価が消費者物価に先行性があるという話になっているはずなので何気にここは現状判断を上げています。


『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面緩やかに上昇していくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面下落幅を縮小していくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(前回)

先行きに関しても遂に国内企業物価は「下落幅を縮小」→「緩やかに上昇」となっていまして、ここの判断を見ますと目先のCPIがもたついていても先行きに関しては「年度後半からもうバンバン上昇してウマーですよウェーハッハッハ」という見通しの確信度が更に上がっているというお話になりますので、どう見ても追加緩和はありません本当にカムサハムニダという所であります。

#金融環境以下の部分は現象面の計数以外での定性判断には変化が無いので割愛します


○総裁記者会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1505c.pdf

昨日申し上げましたように今回の会見ってマジで超つまらん会見という感じではあったのですが、そうは言っても一応ネタにするのだが。

・日銀としてはシナリオ通りに進んでいますよウェーハッハッハという所です

最初の説明の次の幹事社質問。

『(問) 国内景気認識を少し詳しく伺います。前回会合の後、1〜3月期の GDPが発表され、実質成長率が+0.6%と市場予測を上回る水準であり、今回の声明では、個人消費や住宅投資の表現振りを前向きな方向に修正されています。1〜3月期のGDPの数字の評価を含めて、この個人消費や住宅投資、内需のあたりを、総裁はどのようにとらえていらっしゃるのでしょうか。また、今回文言を変更したことが、今後の金融政策のシナリオに変化を及ぼすものなのか、お考えをお聞かせ下さい。』

ちなみに今回の質疑応答なのですが、総裁の説明が全般的にクソ長いという最近の傾向が継続されていまして、想定問答の朗読タイムを長くすることによって話が誤魔化されるという効用もあるのですが、そもそも論として今回の会見はこの質問の後GDPのコンポーネントに関する質問が延々と続くという意味のない質疑が続いておりまして、記者連中時間の無駄だからそんな質問するなよと思うのでした。

いやね、これが麿だと色々と有意義な説明してくれる可能性もあるのですが、経済のコンポーネントに関する計数的な質問したって黒田さんがそんなのに細かく興味持って自分の言葉で細かい話をしてくれるわけはない(なお俊ちゃんの場合は興味はあるけれども口八丁手八丁で誤魔化されると思う)のですから想定問答の朗読会が展開されるの火を見るより明らかじゃんとか思うのですけどね。

ということでまあこの幹事社質問に対する回答を引用しておけば以下4ページ分ほどは読む必要なし。

『(答) ご案内の通り、1〜3月期の実質GDPは、前期比年率+2.4%となりました。需要項目別にみると、個人消費が、3四半期連続のプラスとなり底堅さを増しているとみられるほか、住宅投資についても、4四半期ぶりのプラスに転じました。また、輸出は、持ち直しの動きが続いており、設備投資も増加しました。このようなGDPの内容は、雇用・所得環境の着実な改善が続き、企業収益も改善する中で、家計部門・企業部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと作用し続けていることを示していると思います。』

所得から支出への前向きな循環メカニズムとはどこのパラレルワールドなのでしょうかと思いますがまあ日銀がそう思っているということで。

『すなわち、わが国の景気が緩やかな回復を続けているという見方に沿ったものであると思っています。GDP統計は、四半期毎にしか出ませんし、全体をアグリゲートした統計ですが、他方で、経済全体の動きを総括して示す意味では極めて重要な統計であり、従来からの経済についての見方が確認されたということだと思います。』

シナリオ通りのアピールキタコレ。

『そうした中で、ご指摘のように、消費が底堅さを増している、住宅投資が回復してきていること等を踏まえて、景気判断を若干前進させたということです。』

だそうです。何でここで上げるかねえと思いますが自信満々と言いたいらしい。

『今後とも、毎月毎月の様々な統計、さらには短観や支店長会議における議論、その他の様々なデータを十分に踏まえて、経済・物価動向についてフォローしていきたいと思っています。』

はあそうですか。

『私どもの考えていた線に沿って経済・物価が動いていますので、当面、金融政策について何か特別に変わったことになるとは思っていません。先程申し上げた通り、「量的・質的金融緩和」を継続すること、また、金融政策決定会合毎に上下双方向のリスク要因を点検して、必要があれば調整を行うということにも、全く変わりありません。』

ということで追加緩和無いという話だがそらまあさっき引用した金融経済月報でしらっと物価の部分を事実上判断引き上げているんですから自信満々度が高まっているという事でしょうな。


・潜在成長率に関しての質疑がありましてこれが微妙にアレ

いきなり9ページ目までワープするのですが。

『(問) 潜在成長率に関してお伺いします。先日のIMFのWorld Economic Outlookは、世界経済の成長率は、今年の1月とはそれほど変わっていませんが、表面上は変わっていなくても、その後のレポートでは、先進国も新興国も潜在成長率がなかなか上がらないということが指摘されています。日銀としても、数年前から、展望レポートでは、見通し期間の終盤にかけて潜在成長率が──現状だとまだ0%から0.5%と言われていると思いますが──上がっていくということを何回も言われています。』

「何回も言われています」という中に「結局上がっていないですよね」という嫌味が含まれています。

『潜在成長率は、基本的に資本と労働の供給と生産性の伸びで決まり、先日の展望レポートでも、物価上昇と賃金上昇の好循環メカニズムが強まるとありました。潜在成長率が上がっていく道筋というかパスについては、労働人口が減っていくと設備投資は必要なのでしょうが、企業収益がいいとは言いつつ、先行きの需要がなければ投資もしないと思います。その辺も絡めて、日本の潜在成長率を上げていくことに関して、どういうふうにみていらっしゃるかお伺いします。』

どうせなら「以前からずっと潜在成長率が上がる上がる言って全然上がらないですよね」とか「潜在成長率が上がらない中で、中長期的な目標として掲げるのは理解できますが、物価上昇率2%を短期間で安定的に達成する事は可能なのでしょうか」とか質問すると面白いのかも知れませんが、論点が拡散するので潜在成長一本に絞っていますね!!!!!

『(答) 私どものスタッフの見方では、潜在成長率はリーマンショック前までは1%強程度にありましたが、リーマンショック後に低下し、足許では0%台半ばに落ちてきているわけです。その主たる理由は、いわゆる生産性というかTotal Factor Productivityの上昇率が大きく下がったということではなくて、まず資本の寄与が、リーマンショック前はプラスだったのが、その後設備投資が大きく落ち込んだためにマイナスになっていたこと、それから労働力の寄与は、マイナスがだんだん大きくなってきていたことだと思います。』

ほほう。

『ただ、資本の寄与は、これから設備投資が行われていきますので、プラスになっていくと思いますし、労働力の寄与も、近年女性の就業率が大幅に上がってきていますので、プラスになるかどうかは分かりませんが、少なくとも大きなマイナスにはならない、ゼロ近傍になっていくということになれば、潜在成長率はそれほど時間がかからずに1%台に戻る可能性は高いと思います。』

>潜在成長率はそれほど時間がかからずに1%台に戻る可能性は高いと思います
>潜在成長率はそれほど時間がかからずに1%台に戻る可能性は高いと思います
>潜在成長率はそれほど時間がかからずに1%台に戻る可能性は高いと思います

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいません、潜在成長率ってそんなにホイホイ動くものじゃないと思うのですが・・・・・・・・・・・

『ただ、2%にするというのは──中期的な潜在成長率を2%にするというのは政府の成長戦略の重要な目標ですが──、これはそう簡単なことではないと思います。他方で、不可能ということでもないだろうと思っています。』

何で1%にはホイホイ戻るのに2%はすぐに戻らないのでしょうかよくわかりません><

・・・・・というかそれ物価も同じことなのではないでしょうかねえ(ゲス顔)

『政府は、成長戦略、色々な規制緩和であるとか、構造改革であるとか、その他各種の努力によって、潜在成長率を全体として2%に持っていくということを目標として考えておられます。これは容易であるとは思いませんが、不可能であるということでもなくて、しっかりした成長戦略を着実に実施していけば、2%に達することは十分期待できるだろうと思っています。』

要するにただの大和魂ですね分かります。

『なお、諸外国、特に米国あるいは英国などは、リーマンショック前の中長期的な潜在成長率はかなり高かったわけです。英国の場合は大きく落ちてきているとか、米国の場合も落ちて、それがまだ元になかなか戻りにくい状況にあるとか、そういったことを踏まえて色々なことを言っておられるわけですが、日本の場合は、リーマンショック前に既に1%台まで落ちていまして、その後の落ち方が欧米のように大きく落ちているということではなくて、先程言ったような状況ですので、若干事情は違うのかなと思っています。』

ということは普通粘着した状態にある訳だからそんな簡単に上がらないようにしか思えませんが。



・もう一つの今回のオモシロ問答はインフレ期待に関してである

なお質問がクソ長いのですがしょうがないので質問から引用。

『(問) 先程もお話に出ていましたが、「『量的・質的金融緩和』:2年間の効果の検証」が話題になっています。一番の反応は、この中で、日銀の「量的・質的金融緩和」の一番の柱、大きな旗になっているマネタリーベースについて一言も触れられていない、日銀は、結局、マネタリーベースでは何とも効果を挙げることはできないとして、実質金利を取り上げざるを得なかったのではないかと。』

ということでマネタリーベース直線一気理論の質問ならそれでも良かったと思いますが。

『政策委員会の中には、就任前に、マネタリーベースをいくら増やしたらどれだけ物価が上昇する等と言われていた副総裁もいらっしゃるわけですが、今となってはもう、マネタリーベースという言葉すらもこの検証の中に出て来ない、あまり物価を上げる効果はなかったのではないか、というのがまず大きな反応でした。』

クソワロタが質問の筋は別なのでマクラは余計な気がする。まあイヤミ言いたかったんでしょうけど。

『私は、少し違う観点から質問させて頂きます。』

ほうほうそれでそれで?

『実質金利が1%くらい下がったことによって物価が0.6%動くであろうと思っていたところ、株価とか為替が望外に動いたので、それを勘案すれば1%ぐらい動くであろうというのが、この検証の中身の筋だと思いますが、期待インフレについては――これもその大きな柱だと思いますが――、この2年間で0.5%上がったと書かれています。ただ、総裁は、常々、2%まで引き上げることが目標である、2%の「物価安定の目標」を安定的、持続的に達成するためには、やはり2%のインフレ期待がないといけないと言われていますが、2年間で実は0.5%でした。』

ふむ。

『結局、この検証は、2年間で「量的・質的金融緩和」は足りなかったのではないか、力が及ばなかったのではないかということを認めているという理解でよいのでしょうか。これがまず第1点の質問です。』

これは挑発。

『また、あと1年ほどで2%に達して、それからできるだけ早い時期に安定軌道に乗せていくのが日銀の目標だと思いますが、この足りなかった量的緩和をこのまま1年やそこら続けていくだけで、足許で0.5%の期待インフレ率がこれから2%に到達するのかどうかも、民間のエコノミストをはじめ市場関係者が大いに疑問に思っているところです。2年間でこれだけしか効果がなかったものをこのまま続けていくだけで、2%という期待インフレ率に達するのかどうか、よく分からないというのが多くの人の感想だと思うので、どうやってそこに持っていくのか、教えて下さい。』

これまた更に挑発、というか同じ質問で、QQEがインフレ期待にどのように定量的に効いたのかと考えると今の実績じゃあ足りないよね、という質問ですので、「単純にQQEの量とインフレ期待が1対1で対応する訳ではなくて、インフレ期待のシフトアップが起きるところではある種の不連続な変化が生じえる」みたいな説明をした方が良いのですが、現実問題としてこの質問者が指摘するように何となく量的にリニアな説明をペーパーとして出してしまったのでこういうツッコミも来ます罠という所で。

つーか話が脱線しますが、あの検証ペーパー出したタイミングが「MPMやって展望レポート基本的見解を出した翌日」というのが喧嘩売っとるのか的なタイミング(全然その意図はなかったと思いますし展望レポートの背景説明に織り込んだのだから同時に出したと言いたいのでしょうが)でして、あれを定例記者会見の翌日に出されると、定例会見が炎上しないためにわざと翌日に出したと思われてしまう(あの日の会見でもメカニズムとか効果の質問があって、後付で見たら企画のペーパー見れば質問しなくても良かった質疑があった次第)のでして、もうちょっとそこのロジは考えた方がよかったんじゃないですかねえ、とは思う(4月1回目のMPMの後に出しておくとか)。

でまあ話戻って総裁の答えですがね。

『(答) まず1点目ですが、「量的・質的金融緩和」の波及メカニズムに関する考え方は、導入当初から変わっていません。』

「マネタリーベース2倍」と思いっきり説明していましたがマネタリーベースの効果is何処?

『「量的・質的金融緩和」は、2%をできるだけ早期に実現するという明確なコミットメントをしたうえで、それを裏打ちする、量と質の両面で次元の異なる金融緩和を行う政策です。量の面では、金融市場調節の操作目標を従来の金利からマネタリーベースという量に変更し、これを大幅に増加させることとした上で、その供給のために、長期国債などの資産買入れを大幅に増やしています。また、質の面では、買入れ国債の平均残存期間を延長し、ETFやJ−REITの買入れ額を増加させています。』

ここはもうどうでもよい。

『「量的・質的金融緩和」では、こうした量と質の両面の大幅な緩和によって、長めの期間も含めてイールドカーブ全体にわたって名目金利に下押し圧力をかけ、それと同時に、デフレマインドを転換して人々の予想物価上昇率を引き上げることで、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利を引き下げています。こうしたことによって、民間需要を刺激して経済の好転をもたらして需給ギャップを改善させ、そして実際の物価を押し上げていき、実際の物価が上昇すると予想物価上昇率もさらに上昇していくといった一連のプロセスを波及メカニズムとして想定しており、基本的にそうした「量的・質的金融緩和」のメカニズムは働いてきたと思っています。』

実質金利が下がった以降がダウトですがまあここまではどうでもよい。

『予想物価上昇率についても、様々な計測の仕方がありますので一概に言えませんが、現時点で1%台の半ばあるいは1%台の前半といったような数字が様々な形で出ています。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいませんそんな数字言って大丈夫なんでしょうか、というか1%台半ばだったらもうほとんど達成に近いのですけれども、ニュースヘッドラインに出なかったせいか特段ここに関する市場の反応が無かったと思うのですけど、あたしゃこれ聞いて席から落ちそうになったのですけど。

『おそらく、1.5%とか1%台前半へと予想物価上昇率が引き上がった分の全部が「量的・質的金融緩和」によって引き上げられたということではないと思いますが、予想物価上昇率の引き上げにも貢献していることは間違いないと思います。足許で潜在成長率をかなり上回る成長が続いており、さらに今年、来年と続き、需給ギャップが縮小して、いずれプラスになっていくと思います。そして予想物価上昇率も長い目で見れば上昇しており、特に、昨年の夏以降の原油価格の大幅な下落によって、足許の消費者物価上昇率がだんだん下がり現在0%程度になっているにもかかわらず、予想物価上昇率は低下していません。』

『こうした需給ギャップの動きと予想物価上昇率の動きから、私どもは2016年度前半頃には2%程度の物価上昇率に達するであろうとみています。』

そら予想物価上昇率がそんなに現時点で高いならそういう見通しになるわな。

『先程申し上げた通り、2016年度全体で+2.0%、2017年度全体で+1.9%といった消費者物価の上昇率を見込んでいます。そうした状況のもとでは当然ですが、予想物価上昇率も、2%に向けて収斂していくであろうと考えています。』

えーという感じですが、実際問題として昨年発生した事象は現実の物価が上昇する中で実質消費が手控えられて来ていたというお話であって、内生的な物価上昇メカニズムとは大きく異なる事態だったと思うのですが、何でこう自信満々なのかと不思議としか申し上げようがありませんが、まあ今回はこのインフレ期待の部分と先ほどの潜在成長率に関する質疑応答が面白問答だったのでそこだけは良かったですね。


しかし今回はダメ質問が散見されたので晒し上げしようかと思ったが馬鹿馬鹿しくなったので割愛します(−−;




2015/05/25

お題「2年と短国のインバートとかの雑談/決定会合声明文は現状判断を展望レポートから早速引き上げとな!!」

金曜にネタにしたドラギのおっちゃんの講演ネタですが、「financial dominance」をうっかり財政従属とか申し上げましたが、金融市場に対する従属(正常化をしようとしても緩和をやり過ぎてしまって正常化即悪影響みたいになって正常化が遅れるとかそういう話ではないでしょうか)というのが正しいと思われますので訂正いたします(汗)。

○本日は短国買入とかですが

・固定金利オペ謎の残高増加が続く&今日は短国買入

金曜のオペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150522.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(5月26日スタート分) 7,210 7,210

ということですが、5/26の落ち分の固定金利オペの期落ちは3860億円でして、今回もまた増額ロールになっておりまして、ここもと微妙に謎ながら固定金利オペが連発で増額ロールされていまして、今月固定金利オペが落ちたら落ちた分だけ短国買入に皺寄せが来るわと思っていたのですがあにはからんやで推移しておりまして誠に結構なのだが謎は謎。

まあこの辺は個別のオペ先さんの懐具合(担保繰りとか商品在庫繰りとか)によるものだと思うので何とも言えないのですが、これで6月は6月で貸出増加支援貸出が実行されますからこちらも(全体の担保繰りはその分厳しくなるのですが)短国買入的には買入の減る要因キタコレという所です。

しかしまあ何ですな、短国3Mもカレント部分のBB引けは0.2bp(新発WIの引けは0.5bpとかになっているがWIは全然あてにならないので無視)となっておりまして、これは普通に今日は短国買入の玉がある訳ですが、本来入るべき本命の1年カレントちゃんの引けは普通にマイナス1.5bpとかになっておりまして、こちらは平均落札がマイナス0.79bpだったのでこちらが堂々の落札という事になって3Mカレントは入らないという事になる筈なのですが、そこで急に「あるだけ買うオペ」を実施されるとまた日銀トレード万歳状態になってヒャッハーとなってしまいますので油断も隙もありませんな。


・ところで2年がマイナス継続なのですが

ここもと2年の金利がマイナス推移している時間が長くて、なぜか超長期と連動しているような局面もあって一時プラス圏に浮上したと思ったのですが、先週もちゃっかりマイナス推移で金曜の引けもカレントでマイナス1bpとかの水準ですのでここに来て明らかに3Mとインバート。

以前は「短国マイナス」→「1年以内の利付国債」→「そんなことも言ってられないのでより長い中短期利付国債」という形でのヒャッハー相場になっていて、短国の需給が緩むと中短期の需給も緩むという図もあったのですが、ここに来ての2年とかのマイナス金利状態ってえのは明らかにこのゾーン独自の需給要因によるものでして、そうなりますと短国の金利がプラスに浮く(普通に考えると四半期末の買い要因が巨大でない限りにおいて6月は末近辺以外は短国の需給はそんなにタイトにならない筈)中で2年マイナスでインバート状態継続という事になりそうな悪寒。

となりますと毎度おなじみの思惑としては来月の輪番で3年以下を削ってどこかを増やすのではないか疑惑はあるのですが、そもそも論として買入そのものの総額の問題があって、3年以下の輪番を減らしても総額のバッファーが無いので他の年限の買入を増やすしかなくて、仮に減らすなら1回500億円は減らすことになるとその分振る先が無いという残念な事になりますので、まあ今月も普通に枠の変更なしで進むしかないのではないかと存じますがこればっかりは末の引け後にならないと分からないのでよー知らんけどなという事で。



○しかし相変わらず付利下げの話多いですけど「それによって何をどうしたいの」かが分からん

という雑談な訳ですが、相変わらず「追加緩和で付利下げ」という話が多い訳ですが、そもそも論として付利もクソも現状で2年はマイナスだし5年は新発以外10bp割っているという状態な訳でございまして、付利を下げて何をしたいのかという事について付利下げ連呼している何とかストの皆様はどうお考えなのか小一時間問い詰めたい訳ですよ。

つまりですね、金融政策の効果としての日銀の説明自体がまあインチキ臭いにはインチキ臭いですけれども、それはともかくとしましても効果としてのルートが「実質金利」のルートであって、最近はすっかり転向された師匠の説明においても「MBを短期国債などで出すのではなくて長期国債を買う事に意味がある」というお話になっている訳ですからして、そういう文脈で考えれば短期ゾーンの金利をこれ以上下に掘るよりも、別の方法が無いのかねという風に思うのですよ。


でまあMBに関してもすっかり転向者となられた置物師匠も仰せのように、短期のオペでMB積み上げをするのではなくて、長期国債を大量購入することに意味があるというお話をしており、そういう建付けになっているのがこの前の日銀企画のペーパーだったりしますので、資産買入をやりにくくする(ECBは今の所マイナス金利との組み合わせでもワークしているではないかと言われているがそもそも連中は開始してから2か月そこらの話で、日銀は既に2年継続した上に物価見通しからしたら最低でもあと1年近く続ける破目になりそうなので全然比較にならない)付利下げをして短期の所を数ベーシス深堀りするだけの意味があるのかよとしか申し上げようがありません。

ちなみに、金利フレームに転向するのでしたら敗北宣言とならないようなインパクトが必要で、そのインパクトはマイナス金利とかではなくて、アタクシが最近勝手に妄想しているのは「無制限買入」というキーワードでして、では何を無制限買入するかと言うと、たとえばの話「残存5年までの中長期国債は出来上がり金利0.10%の水準で無制限に購入するのでいつでも日銀にお持込下さい(キリッ)」というような感じにしておけば、5年の国債金利が(政策が継続されると思われる限りにおいて、なので時間軸と組み合わせると効果を出しそう)0.10%から1ミリも上昇しなくなるのでそらまあその先の金利にも効くでしょうと思いますし、「国債無制限購入」で「金利ペッグ」ですから異次元買入並みのインパクトはあると思うのですけどね。単に利下げとかだと「政策の限界」とか「政策の枠組みが失敗」みたいな話にならんかねと思います。

なお、5年0.10%だとただの現状追認だったりするし、短期の金利が上がるのではないかという説はだいぶありますので(^^)、あくまでも単なる妄想ですからね妄想。

#まあもうちょっと色々と考えてはみます


○決定会合レビュー:景気の基調判断を早くも引き上げとはこらまた強気ですな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150522a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150408a.pdf(4/8)

前回は展望レポートの回でしたので基本的にはその前の4/8の会合声明文と比較します。

・ということで出落ちみたいなもんですが基調判断

『わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(4/8)

ということで「基調」が抜けて上方修正なのですが、これ何が凄いって展望レポートの基本的見解では、

『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(4月展望レポート基本的見解より)

となっておりまして、何と展望レポートを出したばっかりだというのに基調判断が強くなっているということでして、これですとまあ理屈からすると益々追加緩和は遠くなっているとしか申し上げようがありませんな。


・現状判断:重要部分の判断が盛大に上昇

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(4/8)

海外経済、輸出、設備投資は横ばいで公共投資はやや判断引き下げ。


『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。住宅投資は、下げ止まっており、持ち直しに向けた動きもみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)

『個人消費は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体としては底堅く推移している。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は持ち直している。企業の業況感は、総じて良好な水準で推移している。』(4/8)

個人消費がゴテゴテしたヘッジクローズを全部削除するという威勢の良い状態になっていまして、住宅投資も「下げ止まり持ち直しの動き」なのでこれまた判断前進。


『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(4/8)

金融環境と物価の話は同じです。

・・・・・・ということで今回えーと思ったのは個人消費の所を盛大に上方修正していることでして、えーっとそうなんでしたっけとじっと手を見るアタクシなのでしたorz


・先行き見通し:順当にこちらも「基調」を外しています

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(4/8)

ということで先行きも「基調」が外れていますがまあこれは現状判断上げたのですから順当ですが、

『先行きを展望すると、国内需要が堅調に推移するとともに、輸出も緩やかに増加していくと見込まれ、家計、企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続すると考えられる。』(4月展望レポート基本的見解)

てな訳ですから、今回の判断いきなり上方修正攻撃は展望レポートでの見方の通り上手く行ってますよほら凄いでしょうだから物価が一時的にゼロ近傍とか小さい事は気にしないのよ!!!という決意を改めて示したものだ、と思えば不思議ではありませんが、それってなんか「やりたい事が先にあるから景気判断が後からついてくる」という形になっていないのかという風に思ってしまうのはアタクシの心が濁っているからですね!!!!!


・リスク要因に謎の変更があったのだが良く見たら展望レポートで出ていた件

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(4/8)

なんじゃこの欧州の表現変化はと思ったのですが、実はこれ展望レポートの所で直っていまして、

『先行きの海外経済を巡るリスク要因としては、米国経済の成長ペースやそれが国際金融資本市場に及ぼす影響、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、新興国経済における持続的な成長に向けた構造調整の進展度合い、資源価格下落の影響、地政学的リスクなどが挙げられる。』(4月展望レポート基本的見解)

となっていて、要は4月展望レポートの時点でしらっと変わっているのですが、背景説明部分では

『ただし、先行きの海外経済については、以下のような上下双方のリスク要因が存在する。(途中割愛)一方で、欧州経済については、ギリシャ情勢を含む債務問題の帰趨や景気・物価のモメンタムに注意を要するほか、(以下割愛)』(4月展望レポート背景説明)

となっていて、基本的には下振れリスクなんでしょうが、表現だけで言えば下振れだけではなくて上振れの時にも使える万能表現に変更している辺りが、先行きについても強めで見たいというのと、ついでに言えば国内の物価がゼロ近傍になっている中なので欧州の低インフレ云々の所をあまり書きたくないというのも分かりますという事で。


・いつものところはいつもの通り

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。』(4/8)

で、反対の木内さんに関しましては今回もMB拡大ペース45兆円(長期国債も同じ)、2%目標は中長期的に目指す云々という提案も出たという所です。


・ちなみに会見は近来稀にみるしょうも無い会見でした

会見録は今日出ますが、まー今回の会見はしょうもない質疑応答の連発でして、質問する方の質問も全然ツッコミが足りないし、答える方は暖簾に腕押し状態で一方的に日銀公式ロジックを話すだけという流れで実にこうつまらん内容ではありました。

一か所だけほほーと思ったのは、現在の予想物価上昇率に関して「1%台前半から半ば程度」という説明を黒田さんがしたところでして、それどこからその数字が出てきたのかというのが非常に気になる上に、なんかずいぶん高い数字だしてるな大丈夫かという所でして、ここだけは失言のような気がするのですがテキスト見てから改めてネタにしたいと思います。


#今朝は諸般の事情によりこの程度で勘弁、週末の黒田講演は何だかなーとしか申し上げようがないです


2015/05/22

お題「3M短国6週ぶりにプラス金利とな/引き続きECB関連ネタ(小ネタですかね)である」

本気で期待している人とか居ないと思っているのですが茲許の円為替と日本株の動きが今日期待だとすると寂しいのですがねえ。

○3M入札プラス金利キタコレ

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150521.htm

(3)募入最低価格 99円99銭9厘0毛(募入最高利回り)(0.0040%)
(4)募入最低価格における案分比率 57.9216%
(5)募入平均価格 99円99銭9厘7毛(募入平均利回り)(0.0012%)

ということで6週間ぶりに入札の平均がプラスになったわけですが、何せ3M短国というのは13週間物で発行される訳ですから、6週間ぶりというのはターンオーバー的に言えば半分近くの間マイナス金利で推移していたという事になりますので、モノとしての国債だからマイナス金利でも構わんという人とか、マイナスファンディングだからマイナス金利でも構わんという人ではない限りにおいてポジションの満期構成が盛大に歪む事になる訳で、しかもそれが個別参加者における資金繰り要因とかによるのではなくて市場要因であるからして、そうなりますと市場の全員のポジションが同じように歪なところが出来ている、とまあそんな事になってしまいますので金利がプラスになったのは結構ですが、まー色々と困るわなと。

つーかですな、こういう市場要因で参加者のポジションが強制的に一律になってしまうような事案って、これはモノが短国であるからまだしもなのですが、規制要因なども含めまして何らかの強制力を持って(短国の場合は日銀が買入をしてマイナス金利をキープしたのだからこれまた強制の一種だわな)参加者のポジションが揃うというのは将来の市場不安定化を内包するリスク要因になるのですから、今の日銀の短国買入の「MB進捗調整先にありきで短国市場の需給要因知らんがな」状態というのは短国市場の市場機能(とっくに無いが)とか市場の安定性(流動性がなくなっているので安定してるのかどうかも分からんが)とか、そういう点において宜しくないんですけどねえとは思うのですが、「次回会合まで年間80兆円ペースのMB拡大」というディレクティブをもう少し柔軟に解釈して短国買入をもうちょっとフローベースで平準化できないもんですかねえと。

なお、6月は資金需給的に余剰月の予定で、MBの進捗も順調な筈なので短国買入のフローが思いっきり減って四半期末要因の買いを全部吸収してくれるからテクニカル的には四半期末の所で買入が減ると四半期末の担保繰りとかも含めて助かる話ではあるのですが、それにしてもさすがにその前に5週間マイナス金利とかやられますと、残りの8週間でポジションを構築しないといけなくなってしまいますからもうちょっと極端じゃない動きになってほしいのですけど。


なお固定金利オペ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150521.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(5月25日スタート分) 2,840 2,840

昨日は25日エンド分のロールで、一昨日は22日エンド分のロールがありましたが、何とこの2本とも増額ロール(ネタにしなかったけど一昨日のは3600億円→7256億円と倍額ロールとなるという珍事発生していますた)となっていまして、まー固定金利オペも共通担保使うから担保繰りという点では短国需給に影響しますけれども、ただまあMB目標的にはこちらのオペが増えると短国買入を減らすことに繋がるので、足元の固定金利オペ残高拡大はほほーという所ではありまする。


つーことでまあ月曜に急に短国買入で大増額とか入れてくるとまた雰囲気が一変すると思うので油断も隙もないのですけれども、順当に6月に向けて短国買入のフローが落ちる、というのであれば、6月の末初取引の所以外では短国3Mはプラスがキープされそうではあるのですが、ではそれで国債の金利の方がどうなるかと言うと、2年の辺りが輪番拡大と発行減額とこれまでの輪番累積効果と海外とかの買いだか何だか知らんですけど無暗矢鱈と堅調でマイナス金利状態になっているのでそっちに影響してくれるのかどうかは知らんがなという所です。


○ECB関連ネタはまだ続く

・ECB定例理事会議事要旨の読みどころはこの辺ではないかと思うという雑談メモ

http://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2015/html/mg150521.en.html
Account of the monetary policy meeting
of the Governing Council of the European Central Bank,
held in Frankfurt am Main on Tuesday and Wednesday, 14-15 April 2015

こいつなんですけど、『1. Review of financial, economic and monetary developments and policy options 』というパートがあって、その後に『2. Governing Council’s discussion and monetary policy decisions』というのがあるのですが、内容に重複が多い上に説明が妙にくどくて読みにくくて(慣れてないせいもあるが)、わざと読みにくく作っているんじゃないか疑惑が出るレベル(と、自分の英語力の無さを人のせいにするアタクシ)。

でですね、4月15日の所ですから買入開始してから1か月という所ですし、ドイツ様の金利が絶賛低下していて昨今のようにボカスカ金利が上昇してあばばばばーとなっている前の超幸せの時期ですから、こういう時期の議事要旨というのは実は後から見るのには非常に面白い素材であります。つまり、この時点では市場の動きについてどう評価していたのか、というのを見ておくと、先日来金利が上昇して泡を吹いていたと思われるECB高官が、債券市場のどの辺を見て泡を吹いていたか(金利水準なのか市場のボラなのか、クーレ理事の講演だと表面上はボラだけど本音は別かもしれないですからね)というのが逆算的に読み取れるのではないかと思います。

そうなりますと、今後に関しましても、そもそも今やっているソブリンQEっぽいAPPとマイナス金利の組み合わせという量をやりたいのか金利をやりたいのかについて矛盾も孕んでいる政策をどう収拾していくのかというのも想像できるというものであります。

・・・・・・・・・などと偉そうなことを申し上げましたが、この議事要旨はまだ寝起きでインスタント速読をするような経験値が無いもので要するにまだ読んでいないことの言い訳をしたというメモなのでありました(汗)。


・今更状態の先週木曜ドラギ講演の「金融政策の副次効果」部分

すいませんすいません。

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150514.en.html
The ECB’s recent monetary policy measures: Effectiveness and challenges
Camdessus lecture by Mario Draghi, President of the ECB,
IMF, Washington, DC, 14 May 2015

だいぶ間が空いてしまいましたから再掲しますと、一連の非伝統的金融政策(マイナス金利→TLTROとABS買入→PSPPなどのAPP)に関しては(1)金利を下げて政策を効かせ、その中で貸出などの実体経済へのチャネルの機能を注目した、(2)低インフレの長期化によるインフレ期待の低下、というのがあって、海外経済などの弱さによる対応で利下げ→銀行貸し出し金利の引き下げと貸出条件緩和の為にTLTROやABS買入実施→「原油価格下落だけではなく基調としての需要が弱まっていることから」物価の低迷が長期化しそうなのでPSPPなどを実施、となっているという話で、単純に量が効果があるというよりは「金利」であって、その「金利ルートがきちんと機能するための整備」という話をしているのが特徴的ではありましたな。

・副作用に注意論キタコレ

『3. Collateral consequences of monetary policy』というのがネタにしなかった続きだがこれも中々。

『A prolonged period of accommodative monetary policy can, however, come with side effects. And the fact that our policy has so far proven effective should not blind us to them.』

あのドラギのおっちゃんですらこのように「長期的な緩和政策は副作用もありますし、我々が現在実施している政策が(この講演の前の方でああだこうだと言っている)これまでの所は効果的であるからと言って副作用に対して無視してよいものではない」と仰せな訳で、2年間経過して当初想定していた政策ルートは全て効いています(キリッ)とだけ言って副作用のふの字も出てこないどこぞの中央銀行がどれだけ傲慢なのかというのが非常に良くわかりますね。

『This is not a question of trade-offs. We cannot shy away from implementing a policy that ensures price stability on account of potential collateral effects. Nor can we extend the medium-term to horizons that compromise our objective. Yet at the same time we need to understand and manage those collateral effects - and in pursuing our mandate we should attempt, to the extent possible, to minimise them.』

『Where this is not possible, we have a duty to raise awareness so that mitigating or corrective action can be taken by other relevant authorities.』

つーことで副作用を最小化するように行動する必要があるとかどこぞの中央銀行に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいですなあ。

『So in this context, I would like to address specifically two concerns that have arisen about the possible collateral effects of our actions. These are the consequences for allocation and distribution.』

「allocation」と「distribution」の点からの副作用という話ですが、後半の「distribution」の方はどちらかというと一般的な批判に対応みたいな感じで、前半の指摘がほうほうという感じです。

『In terms of allocation, a key concern at the present time is that very loose financing conditions could result in a misallocation of resources, which would ultimately undermine financial stability.』

緩和的な環境が資源の不適切な配分(misallocation)をもたらして金融不均衡につながるという金融緩和ヒャッハーバブルの懸念ですな。

『In particular, it has been suggested that a prolonged low rate environment can lead to excessive financial risk-taking, delayed balance sheet repair and, ultimately, a form of financial dominance as the pressure on the central bank to delay a normalisation of monetary policy increases.』

バブル懸念よりもこっちの方がほほうなのですが、過大なリスクテイクによってバランスシートの修復が遅れる話に加えて金融正常化が遅れれば遅れるほど財政従属(financial dominance)の問題が生じるので宜しくないという話をしていまして、どこぞの中央銀行に爪の(以下同文)。

『I can of course see the logic to these arguments: a long period of very low interest rates is potentially conducive to imbalances. But it is important to underline two points.』

ほうほうそれでそれで??

『First, one has to analyse carefully the balance of effects between monetary policy and financial stability. For example, in a debt overhang environment it is not clear that accommodative monetary policy is inimical to balance sheet repair. In many countries low interest rates have in fact helped stabilise debt dynamics via reduced interest rate burdens, and thereby facilitated balance sheet adjustment.』

この副作用とのバランスに関しては考慮が必要で、そもそも過重な債務があるときには金利を下げて債務負担を減らすというのも重要ですから、その点と上記の点を衡量しないとねという話。

『The interest spending-to-GDP ratio of euro area governments has declined on average by 0.4 p.p. of GDP between 2012 and 2014. Similarly, the debt burden of households and firms has fallen and reduced bank funding costs have contributed positively to retained earnings, which accelerates the deleveraging of bank balance sheets. All this makes it easier for monetary policy to normalise over the medium-term.』

利子負担が軽くなることによってバランスシートの改善が加速すれば中期的には金融政策の正常化を早めることができますよ、という話をしている訳でして、この講演って「QEを完遂する」という部分ばかりやたらクローズアップされて報道されたから「金融緩和をじゃんじゃんやるスタンスヒャッハー」ってなっていますけど、こういう話もしていまして、本来的には正常化をしたい訳で、正常化への道を早めたいからとにかく緩和を色々と頑張っています、という話が根底にある訳でして、正常化に向けた意識の欠片も見せてくれないどこぞの中央銀行に(以下同文)。

『Second, our monetary policy decisions have not been taken in a vacuum - they have been taken in the context of a broader policy framework that helps mitigate some financial stability concerns.』

真空でおこなれた訳ではないとかなんのこっちゃと思いましたが、要は金融安定化に関してはプルーデンス政策をかつてよりも厳しく実施しているという点を主張していまして、そういう意味からすると副作用論の話は確かにしているのですが、一方で金融不安定化に関しては規制監督の方で対応するのが基本ですという文脈になっているので、別にバリバリのBISビューを持ち出している訳ではないから、スタイン元理事的なタカ文脈にはなりようがない、というのもこれまた事実だと思いますので、まーこの辺はバランスを良く取っているんじゃないのでしょうかと思うのですけどね。

『For instance, our recent measures were launched against the backdrop of the Comprehensive Assessment of bank balance sheets, which included an asset quality review of unprecedented depth and breadth. Our monetary policy has therefore been associated with both de-risking and de-leveraging of bank balance sheets, not the opposite. [3] Moreover, we are now operating in a new regulatory and supervisory environment, including the creation of a European banking supervisor in the SSM, which has been specifically designed to reduce capture and temper pro-cyclicality. And remember it is banks that historically have been at the centre of the most serious financial crises.』

規制などでプロシクリカルな問題が起きないようにしているとかそういう話をしていますが、最後の所にもあるように銀行のバランスシート問題に関してはしつこく言及していて欧州金融機関というか銀行の財務に関してはいろいろと言われますなあという所で。

『While we are monitoring developments closely, at the moment there is little indication that generalised financial imbalances are emerging. As a matter of fact, the two most important indicators of growing financial imbalances - real estate prices and credit growth - show only tentative signs of turning upwards.』

で、ここでキタコレではありますが、今の所特段の兆候はない(at the moment there is little indication)ものの、金融不均衡が出てくる所として「不動産」と「クレジット市場」を挙げていまして、日銀の金融システムレポートでもそうですけれども、不動産に関しては全世界的に注目度アップ中(バブル懸念な意味で)というのがトレンドとなっていますな。ただしドラギのおっちゃんの認識では、不動産もクレジット市場も今の所は「only tentative signs of turning upwards」であるという話ではありますけどね。

『What this underlines is that following a major financial crisis accommodative monetary policy does not necessarily blur a prudent assessment of risk. On the contrary, it can help produce a more regular pricing of risk, which may have become too high and adverse to productive risk-taking.』

『In sum, while a period of low interest rates will inevitably result in some local misallocation of resources, it does not follow that it has to threaten overall financial stability. This hinges crucially on monetary policy being embedded in a complementary set of supervisory and regulatory policies that create incentives for balance sheet adjustment and responsible financial behaviour.』

ということで、金融緩和によるミスアロケーションそのものというよりも、それらの動きによる金融不安定につながるようなリスクの認識をどう行うのかというのが重要なのでありますという話なので、まあBISビュー的な結論ではないですな。


『Another concern, which has accompanied the fall of interest rates to their effective lower bound and the introduction of unconventional measures, is the distributional consequences of monetary policy. In particular, there have been concerns that very low rates for a prolonged period might penalise savers to the benefit of debtors; or that rising asset prices as a consequence of our purchases might benefit the wealthy disproportionately and thereby increase inequality.』

ということで、後半はdistributionalな副作用という話なのですが、こちらに関しては上記に見られますように、「低金利で年金生活者の収入ガー」的な話に対するお答えなのでまあ一般的な話に終始しています。その中でちょっとだけ面白かったのは最後の所で、

『That being said, we have to be mindful that too prolonged a period of very low real rates can have undesirable consequences in the context of ageing societies, where many households save not just to smooth consumption over the cycle, but to smooth consumption over their lifetime. For pensioners, and for those saving ahead of retirement, low interest rates may not be an inducement to bring consumption forward. They may on the contrary become an inducement to save more, to compensate for a slower rate of accumulation of pension assets.』

ということで、高齢化社会においては低金利の長期化によって、貯金主体の資産をもつ主体が増えるのと、年金資産の増加ペースが遅れてしまうので、消費への悪影響や、将来不安の拡大による現役世代の貯蓄拡大インセンティブを与えることについては注意しないといけない、というのがおもろかったです。

ということで結局1週間遅れですいませんすいません。



2015/05/21

お題「3M入札6週ぶりのプラス金利か????/寝起きでFOMC議事要旨だが今回のは興味深い議論が幾つか示されている」

今日明日は決定会合ですが何か期待する人でもいるんですかねえ、期待する理由が全く分からん。

#まあ先週のブルームバーグの風雪のルルレベルのヘッドライン詐欺記事もありましたけど

○今日は3M入札である

本日は3M短国入札ですが、先週の3M入札が5打席連続マイナス金利となってウギャーとなっていたところに対して金曜日の短国買入が珍しく気を利かせたのかどうか知らんけど前週と同じ2兆円の買入で打ち込んできて2糸甘とかになったせいか、カレント3Mに関してはまだ流通在庫があるようで、BB引けも一昨日くらいからカレントはプラス金利(つーても1bpに届いていませんで昨日の引けは0.2bpだけどな!)となっています。

・・・・・・・・・ということでさすがに今日は6週目にしてやっとプラス利回りになってくれるのではないかとの期待が起こる訳ですが(しかも次回の短国買入はMPMの関係で月曜なので日銀に即座に放り込むにしてもキャリーコストが余計にかかるのもある)、いざプラス金利となってみますとこれがまた居場所がどこなのかよくワカランチ会長というのが面白い所。

つまりですな、マイナス金利状態になっているときってもうどうせ良くて100円足切とかそういう感じで後は在庫が重いか重くないかというのと、1Yとか6Mのような日銀打ち込み専用銘柄(違うけど)か否かとか、そんなファクターで考えておけば宜しくて、どうせマイナス金利で通常の買いは来ないのだから逆に言えばプラス金利になったら今止まっている通常の買いが復活するぞなバックストップヒャッハーという話になる訳で、投資家を無視して価格形成をしているので逆に水準感が見えやすいという皮肉な展開。

で、こうやって金利がプラスになってみますと、まあ通常の投資家が買えなくて虫の息になっているときは重湯だろうが水増しすいとんだろうがガツガツと食するのでしょうが、そこを凌ぎますとそもそも論としてレベル感ってどうなんだったけというのが発生する次第でありまして、大体からして投資家を排除するようなレベルまで日銀買入で金利を下げてしまった後なので、市場の価格発見機能がおかしくなってしまうという事になる訳ですな。

まードイツ国債とかもそういう事なのかもしれませんが、中銀買入ヒャッハーとやって投資家を排除した価格形成をやっているうちはそのままヒャッハーヒャッハー相場になるのですが、ふと我に返った時に中銀の買入で市場機能がおかしくなっているので今度は価格水準感が訳分からずにボラ上昇という話になる、とまあそんな図なのかも知れませんななどとエラソーな愚考をするのでありました。

・・・・・・・とは言いましても、短国の場合は単にフローベースの短国買入がMBの調整弁に使われているので季節性が発生した結果で需給がここから暫く緩むだけの話であって、どうせ7月以降になるとまた無慈悲買入をするのでしょうし、大体からして需給が緩んだと思うとすかさず「たくさん買いたい病」が発生するのが最近の日銀調節クオリティだったりしますぬおで、精々今回の入札位でしょうなあ居場所どこですねんという話になるのは、とは思うのでした(汗)。


ちなみに話は関連しますが昨日の固定金利結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150520.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(5月22日スタート分) 7,256 7,256
(他のは割愛)

22日エンドの固定金利オペは期落ちが3600億円でしたので、何と増額ロールとなっていまして、足元の短国需給の若干の緩みとかの影響があるのかねと思ったが、まあトレンドとしてこの額が増えるという話でもないでしょうとは存じますが一応メモ置いときます。




○4月FOMC議事要旨:参加者の議論部分は声明文の「見通し変化なし」より慎重な見解も出されていることを示す(と思う)

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20150429.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20150429.pdf

ということで寝起きでFOMC議事要旨ネタですが、今回の議事要旨は割と色々な論点に関してああでもないこうでもないという議論の跡があって、次の金融政策アクションは利上げであるのは確実なのですがさてどうやって行きましょ的な所では突っ込んだ話をしているという感じです。

と申しますのは、『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のコーナーの記述なんですけど、毎度の全体感に関する話の部分(ここの最初のパラグラフ)はいつも通りなのですが、そこから先の記述がいつもとちょっと雰囲気が違うのよね。

・1Qの民間消費が弱かった件についての議論が行われる

『Participants generally agreed that data on private spending for the first quarter had been disappointing, with unexpectedly weak household expenditures and investment spending.』

という民間消費の話が出ていまして・・・・・・

『Retail sales had continued to be tepid, although consumer sentiment stayed high and auto sales rebounded in March. The recovery in the housing sector remained slow. Business fixed investment softened, in part reflecting sizable reductions in capital expenditures in the energy sector. Exports contracted, likely reflecting the damping influence of the dollar's appreciation. In combination with a decline in government spending, the weakness of private spending had led to a substantial slowing in economic growth in the first quarter. 』

とまあ状況認識についての記述があるのですが、この次のパラグラフからはこの件に関しての議論がああでもないこうでもないと記載されているのがやや違うパターン。

『Participants discussed whether the weakness of spending in the first quarter primarily reflected temporary factors or instead suggested a longer-lasting loss of momentum for the economy.』

一時的なものなのか実はもっと長期的な要因があるのかという議論ですな。

『A number of reasons were advanced for believing that the weakness in spending observed during the first quarter was partly or even largely transitory. Most notably, the severe winter weather in some regions had reportedly weighed on economic activity, and the labor dispute at West Coast ports temporarily disrupted some supply chains.』

天候の問題とかストの問題とかがありましたので、1Qの弱さは「partly or even largely transitory」だそうな。

『Furthermore, a pattern observed in previous years of the current expansion was that the first quarter of the year tended to have weaker seasonally adjusted readings on economic growth than did the subsequent quarters.』

ここ数年のパターンとして季節調整を掛けた後の1Qのデータが弱めに出る傾向がありますよねという話で、そういやこの前SF連銀がそんなペーパーを出していましたがななめ読みしかしていないのでネタにしていません。

『This tendency supported the expectation that economic growth would return to a moderate pace over the rest of this year.』

そういう傾向があるから1Qが少々弱くてもヘーキーヘーキとな。

『Participants also pointed to other reasons for anticipating that the weakness seen in the first quarter would not endure. A number of the fundamental factors that drive consumer spending remained favorable, among them low interest rates, high consumer confidence, and rising household real income. In addition, business contacts in several parts of the country continued to be optimistic and expected sales, investment, and hiring to expand over the rest of the year. In the agricultural sector, drought effects had worsened in some parts of the country, but effects on production were limited and planting intentions remained strong.』

1Qの弱さはトレンドとなる訳ではないほかの要因ということでこれ要するに「経済の基調が強い」というどこかで聞いたような話をしているようなもんですな。

『Finally, if the decline in oil prices and the rise in the foreign exchange value of the dollar did not continue, then their influence on the growth rate of investment and the change in net exports would likely recede.』

うーんこの。これは先行きの楽観的な見方ともいえるが裏を返せばドル高進行するとやっぱり足を引っ張るという見解でもありますな、とおもったら次のパラグラフに続く1Qに関する議論はここまでのやや楽観部分の逆に慎重な見解が示されています。

『Various reasons were also advanced for believing that some of the recent weakness in the pace of economic activity might persist. A number of participants suggested that the damping effects of the earlier appreciation of the dollar on net exports or of the earlier decline in oil prices on firms' investment spending might be larger and longer-lasting than previously anticipated.』

ドル高と原油価格の話はドル高継続による輸出を弱くする要因だったりしますし、原油価格の下げによる関連投資の弱さの悪影響は想定よりも長くなる可能性がという話で。

『In addition, the expected boost to household spending from lower energy prices had apparently so far not materialized, highlighting the possibility of less underlying momentum in consumer expenditures than participants had previously judged.』

原油価格の下落が個人消費にプラスになるという話はあるのだが、実際にそれって実現しているのかというと明確なデータに出てないですよねという指摘も。

『Some participants expressed particular concern about this prospect, as their expectations of a moderate expansion of economic activity in the medium term, combined with further improvements in labor market conditions, rested largely on a scenario in which consumer spending grows robustly despite softness in other components of aggregate demand.』

消費支出の強さが需要を引っ張るので経済活動は拡大して労働市場が改善する、というシナリオがFRBの基本シナリオにある中で本当に大丈夫なのかというのは気になりますなあという数名の指摘キタコレ。

『Participants discussed downside risks to economic growth, and a few indicated that, in their assessment, such risks had risen since the March meeting. However, most participants continued to see the risks to the outlook for economic growth and the labor market as nearly balanced. 』

経済の先行きリスクについては多くの参加者はリスクはバランス(声明文でもそうなっています)しているものの、数名の参加者はダウンサイドリスクが拡大しているという認識。


・6月利上げがどうのこうのに関して

こちらのコーナーの最後から2番目のパラグラフ以降も面白い。

『In their discussion of communications regarding the path of the federal funds rate over the medium term, participants expressed a range of views about when economic conditions were likely to warrant an increase in the target range for the federal funds rate.』

利上げの適切な時期についての見解が交換されましたとな。

『Participants continued to judge that it would be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when they had seen further improvement in the labor market and were reasonably confident that inflation would move back to its 2 percent objective over the medium term.』

『Although participants expressed different views about the likely timing and pace of policy firming, they agreed that the Committee's decision to begin firming would appropriately depend on the incoming data and their implications for the economic outlook.』

それは当たり前。

『A few anticipated that the information that would accrue by the time of the June meeting would likely indicate sufficient improvement in the economic outlook to lead the Committee to judge that its conditions for beginning policy firming had been met. Many participants, however, thought it unlikely that the data available in June would provide sufficient confirmation that the conditions for raising the target range for the federal funds rate had been satisfied, al-though they generally did not rule out this possibility.』

でここが6月利上げの妥当性に関する話で、数名(A few)は6月利上げが適切と今のところ考えているとの見解ですが、多く(Many)はまだ6月利上げが可能というにはデータが足りないでしょという話はしているものの、今後のデータしだいで6月利上げは排除しないとはしています。が、その後の経済データはイマイチさんですから、まー素直に読めば6月利上げはここから鬼のように強いデータでも連発しない限り無理でしょうなあというところで。

『Participants discussed the merits of providing an explicit indication, in postmeeting statements released prior to the commencement of policy firming, that the target range for the federal funds rate would likely be raised in the near term.』

次回FOMCで利上げをするという事前お知らせを入れるかどうかについての議論ってまたやっているのかという感じですが、これってもしかしたらSEP+会見のセットの無い回での利上げを行う場合には事前にお知らせしてその時に会見で説明すれば良しとか考えているのかねとちょっと思ったんですけど。

『However, most participants felt that the timing of the first increase in the target range for the federal funds rate would appropriately be determined on a meeting-by-meeting basis and would depend on the evolution of economic conditions and the outlook. In keeping with this data-dependent approach, some participants further suggested that the postmeeting statement's description of the economic situation and outlook, and of progress toward the Committee's goals, provided the appropriate means by which the Committee could help the public assess the likely timing of the initial increase in the target range for the federal funds rate.』

ということで、やはり基本的には「会合毎に判断」なので事前に予告するというのは適切ではないという見解が多数のようですが、声明文で何らかの見方を示す(強い見方を示すとかですかねえ)のも考慮するというのはどうでしょうとの見解も一部にはあるのね。


・中立金利に関する議論

このコーナーの最後のパラグラフも面白い。

『During their discussion of economic conditions and monetary policy, participants also commented on different concepts of the equilibrium real federal funds rate--that is, a reference value of the inflation-adjusted federal funds rate consistent with the economy achieving, over a specified time horizon, maximum employment and price stability.』

将来の中立FF金利に関する議論が行われているというのも興味深い。

『Estimates of such equilibrium real interest rates were highly uncertain, but some participants reported that their estimates were currently unusually low by historical standards, reflecting, for example, factors weighing persistently on aggregate demand. In light of their low estimates, afew of these participants questioned whether the Committee was providing sufficient accommodation at the present time and cautioned against initiating policy firming in the near future.』

中立金利水準が過去の平均よりも下がっているのではないかという見方を示す人が複数名(some)いて、この人たちの見解としてはそうだとすれば現在の緩和とか今後の出口政策の話に関しては実は想定よりも引き締め的なのではないかという指摘をしていますな。

『However, other participants cited factors, including the current low level of term premiums, that might cast doubt on the notion that the equilibrium real federal funds rate was particularly low. Some participants observed that more discussion of this topic was likely to be helpful in assessing these issues.』

タームプレミアムが小さい事が見かけ中立金利が低下しているように作用している可能性もあるのではという見解がほかの参加者から出ていまして、結論としてはもっと検討が必要というまあ当然の話。

この先がまた面白い指摘。

『One participant suggested that, in part because of the evidence that the equilibrium real interest rate was low by historical standards, the Committee should discuss the possibility of increasing its longer-run inflation objective.』

おーこれ誰が言い出したんだろという所ですが、中立金利が低下しているのであれば物価目標の引き上げを議論すべきではないかというタマを投げ込んでいる人がいますな。

『This participant and a few others thought such a discussion could be useful but emphasized that any decision to change the Committee's longer-run goals and policy strategy should not be made lightly. One of these participants noted, in particular, that a decision to raise the Committee's longer-run inflation objective might work against the achievement of maximum employment and price stability because such a change could undermine the Committee's credibility and, in addition, lead to adverse changes in inflation dynamics that could pose significant challenges for policymakers.』

ただまあこれ言った本人も含めての指摘のようですが、この考えを論議するのは有用ではあるものの、ロンガーランのゴールをホイホイと変更するのはFRBの中長期的な政策スタンスに対するクレディビリティを損なうリスクがあったり、それにより望ましくないインフレの高騰を招く可能性があるので、政策担当者としては「significant challenges」が多いですなという話になっています。

でもそういう話をしている、というのはつまり「中立金利水準が下がっていることを勘案すると物価目標に対する若干の上振れ要因的な考え方もアリエールのではないか」ということを投げこんだ人がいますね、という訳でして、今回の『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』に関しましては、出来上がりの声明文自体は「先行き見通し不変」という出来上がりになっているものの、色々な慎重な見解が出されているという内容になっていますので、そういう点で言えば声明文よりは慎重めという感じではありますけれども、そもそも論としてこの回のFOMCの時って声明文における「先行き見通し無変化」よりも「足元の認識を下げた」方に市場が反応していてましたので、アタクシの愚見解はともかくとして、市場的に言えばロング組が期待する程のハト派成分ではないという感じなのかもしれませんね、よー知らんけどな。

#ドラギのおっちゃん講演ネタはどこに逝ったというツッコミはしないでくださいすいません





2015/05/20

お題「ドラギのおっちゃんネタを片付ける前にクーレ専務理事がネタ投下なので予定を変更してお送りします」

いやーんネタの成敗が一歩ずつ遅れているわよ〜orzorz

○先にクーレ専務理事のネタなのですが「市場のボラに配慮」した発言がボラを拡大とかもうね

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NOL7H96K50XY01.html
欧州債:軒並み上昇、QEの購入ペース加速とクーレ理事が言及
2015/05/20 02:01 JST

ということで昨日はクーレ専務理事の発言ヘッドラインでユーロは急落するわ債券は買われるわ株は買われるわなのですがね・・・・・・・・・・・・


・その前にまず報道されたクーレ発言の背景がある

ECB週次の買入に関してはこんな便利なページがありましてね。

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/index.en.html
Weekly financial statements
Publication dates 2015
The weekly financial statements of the Eurosystem are published on a Tuesday, and they relate to the preceding Friday.

つーことで、こちらの週次バージョンを見ますと・・・・・・・
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150519.en.html
Consolidated financial statement of the Eurosystem as at 15 May 2015

Covered bond purchase programme 3       EUR 80.8 billion +EUR 2.8 billion
Asset-backed securities purchase programme  EUR 6.1 billion +EUR 0.3 billion
Public sector purchase programme       EUR 122.5 billion +EUR 13.7 billion

てな感じで推移しているのですが、PSPPを見ますと5/8までの週が +EUR 13.6 billionとなっていて、5/1までの週が +EUR 10.0 billionとなっていますので、今月になって買入ペースが加速しているんですよね。

でまあそこでクーレさんの講演に関して市場が思いっきり反応したヘッドライン部分なんですけどね。

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150519.en.html
How binding is the zero lower bound?

Speech by Benoit Coure, Member of the Executive Board of the ECB, at the conference “Removing the zero lower bound on interest rates”, organised by Imperial College Business School / Brevan Howard Centre for Financial Analysis, CEPR and the Swiss National Bank,

London, 18 May 2015

でまあこの講演の中で記事として思いっきり取り上げられていたのが小見出しの『The lower bound and non-standard measures』の最後(小見出し『Other options for dealing with the lower bound』の直上)になるんですけどね。


・どう見ても朝三暮四です本当にありがとうございました

『Against this background, we are also aware of seasonal patterns in fixed-income market activity with the traditional holiday period from mid-July to August characterised by notably lower market liquidity. The Eurosystem is taking this into account in the implementation of its expanded asset purchase programme by moderately frontloading its purchase activity in May and June, which will allow us to maintain our monthly average of ユーロ60 billion, while having to buy less in the holiday period.』

という部分が英文ニュースだと引用されていて、そこでヒャッハーと反応しているのですが、これは単に7−8月に市場の板が薄くなるから同じ買入ペースでやっていると板の薄い中で債券市場を大きく動かすことになるのを避けるために前倒しで買って、板の薄い時期は買入ペースを遅くするという話をしているのに過ぎないと思う訳で、どう見ても朝三暮四の故事そのまんまでお前らエテ公の集まりかと小一時間問い詰めたいところですが今日の輪番はどのゾーンと言ってああだこうだやっている円債野郎に言われたくはないですかそうですか。

『If need be, the frontloading may be complemented by some backloading in September when market liquidity is expected to improve again.』

でまあ板の薄い時期に買入を減らした分が多すぎて5−6月の買入増やした分でも足りなくなるた場合には9月になって市場の板が厚くなったら埋め合わせするかもしれませんよという話をしている訳で、これは7月中旬から8月にかけて買入ペースを結構落とすという宣言をしているのと同じですが、トータルは別に変わらない(4月単月ではPSPPとCBPP3とABSPPでちょうど600億ユーロ程度の買入をしていたので均すとそのペースでの買入)という話であり・・・・・・・・・・・

『The slightly higher purchase volume that market analysts may observe in the coming weeks is therefore unrelated to the recent episode of market volatility.』

ということで、足元(5月に入ってから)行った買入ペースの若干の増加は別に足元の市場のボラ上昇(つまり金利の上昇)を受けたものではありませんよ金利上昇のお助けオペではありませんよ。と言っているようにしか見えないのですが何でこういう反応をしたのかというとニュースベンダー見ると今引用した中で「If need be」以降がブッチされているからではないかと愚考。


・足元までの欧州国債金利の反転上昇は「市場の悲観的な経済物価情勢の見方が修正されたから」と説明してますが

でですね、更にこの部分のひとつ前のパラグラフを読みますと・・・・・・・・・・・

『As you know, this combination of measures has created strong price effects in certain asset markets, going beyond what many observers initially anticipated. German yields, for example, were briefly negative out to around the 8-year maturity point and were below the deposit rate until almost the 4-year maturity.』

これ前の話を読まないと少々アレではありますが、「this combination of measures」というのはマイナス預金金利と資産買入という最近実施しているECBの政策のお話でして、その効果がこのように出ましたウェーッハッハッハという話。

『We have always stressed, however, that the objective of our programme is to influence prices but not to impair price discovery.』

しかし我々は「価格に影響を与える」ことはこのプログラムの目的ではあるが「価格発見機能を損なう」ことは目的としていない、という説明をしております。話はちょっと脱線するけどこの点はやはり中央銀行だなあと思う所でして、どう見ても介入上等というスタンスの黒田さんとは違いますなあと思います。

『For this reason I do not see the recent reversal in the price of Bunds and other sovereign bonds as a cause for concern, insofar as it reflects a market correction, recreates two-way risk in the market and reflects the fact that, as our programme takes effect, some of the more pessimistic assumptions of future growth and inflation trends are being revised. It is the rapidity of the reversal that worries me more. After several similar episodes, it is yet another incident of extreme volatility in global capital markets showing signs of reduced liquidity. [6]』

ということで、最近のドイツ国債やらその他国債の金利上昇については別に懸念すべき問題ではなく、それよりもむしろ市場のより悲観的な経済物価見通しが修正された結果としての市場推移であると考えている、という話をしておりまして、足元の金利上昇上等上等という話をしているのに何でこれがQEの強化を示唆という解釈になるのか小一時間どころではなく問い詰めたいのですが、要するに下がりまくった金利がドカーンと上がって怪我人が出たから何か金利低下ネタに縋りたいという市場心理の表れなんじゃネーカと思いますけどにゃあ。

でまあそれよりも懸念しているのは戻りの速度が速い事で、グローバル資本市場においてエクストリームなボラティリティの拡大は市場の流動性が低下していることを示唆している、というエピソードが良く見られます(ので欧州債券市場のボラが上昇しているという事は市場の流動性が下がっているからではないかという懸念をしている)という話をしていますな。

でもってさっきの部分になる訳で、だからこそ市場の流動性低下に配慮して市場の薄くなる夏休みシーズンに買入を減らす代わりに足元の買入を増やしているのですよというお話をしている訳よ。


・・・・・・つーことでですね、「足元の市場の動きが急激なのは流動性の低下を意味しているので懸念している」とかお前が馬鹿買いしていて何を言う的なツッコミどころではありまして、まあ本音として金利の急上昇は困ったなあというのがあって、だから債券買っても良しみたいな解釈もできるとは思いますけれども、いちおうこの文脈を真面目に読みますとQEの強化を示唆とかそういう話にはどう見てもならんと思う(いやまあ最初からちゃんとネタにしないといけないのですが手抜きですいません)のですがねえ。

しかしまあ何ですな、市場の流動性低下を懸念とか市場の過度なボラティリティに配慮とか説明している講演が欧州債券市場とユーロ為替市場に盛大なボラティリティを与えるとか実にこう間抜けな話でありまして、市場との対話とか考えすぎて結果として自分の行動が更に市場にボラティリティ燃料を投下する格好になるとか、アラン・ブラインダー元FRB副議長の言う「自分の尾を追う犬」状態になっているのが実に香ばしい展開ではありますが、どこぞの極東の中央銀行も大概ではある(というよりも急速な劣化が嘆かわしい)のですが、このECBっつーのは更に輪を掛けてトンマなプレイを炸裂させている(大体からしてマイナス金利は当初QEやらないで効果だすための物だったのにマイナス金利残してQEとかもうねという感じですし)なあという所ではあります。


・せっかくなので「ゼロ金利制約を突き抜けるための政策オプション」部分も鑑賞

次の小見出しが『Other options for dealing with the lower bound』である。

『The fact that non-standard measures can help to overcome the lower bound constraint does not mean that there might not be other, even more effective ways to deal with it. 』

『In this context two types of policy have been put forward: those that take the existence of the effective lower bound as a given and seek to improve the traction of monetary policy in that environment; and those which aim to remove the lower bound constraint altogether.』

ゼロ金利制約の下における金融緩和オプションとは、という話で「remove the lower bound constraint」をするためのオプションという話。

『As regards the first type, several options have been proposed in the literature, but most are unfortunately not very appealing to policy-makers. For instance, Blanchard and Ball, among others, suggest increasing the inflation objective, for example from 2% to 4%. [7] This option, however, would impose permanent costs on the economy in terms of the inefficient allocation of resources associated with a higher inflation rate.』

実質金利を下げるには名目のインフレ目標を引き上げればよいではないかという議論があるが、それは社会厚生的に如何なものかという話で政策担当者にはアピールせん罠とのお告げ。

『Another important casualty would be the credibility of the ECB, given that economic agents would entertain the possibility of further changes in the objective in response to future shocks. All in all, raising the inflation target is “too blunt an instrument” for achieving the desired objective of stabilising the economy in a low interest rate environment.』

さらに言えばいずれ目標をまた通常に戻さないといけないのだが、それは政策遂行に対するクレディビリティにも悪影響でしょうという時間的不適合性の問題があり、やはりインフレ目標上振れさせるというのはちと無理があると。

『Additional proposals are even more far-reaching. They involve the use of “active” fiscal policy to create inflation, or to increase policy interest rates to coordinate expectations on the desired equilibrium of inflation of below but close to 2%. [8] But neither proposal is practical given our context in the euro area.
Our forward guidance is based on the notion that we do not intend to raise rates for an extended period of time. And explicit monetary-fiscal policy coordination is neither possible within our institutional framework of 19 different national fiscal policies, nor is it desirable given our independence from fiscal authorities.』

財政政策と金融政策をリンクさせてという話もあるのか〜と思いました。

『Moreover, the aggregate stance is broadly neutral today, and if its allocation across countries can be questioned, it would not be desirable for it to become much more active given the high legacy debt and the requirements of our fiscal rules.』

まあユーロ圏はそもそも財政統合どころか財政ルールすらアレな状況ですからね。

『As regards the second type of policy - those aimed at removing the effective lower bound on short-term rates - perhaps the most prominent proposal is to either to tax currency holding a la Gesell or abolish it altogether, and hence to remove the arbitrage between bonds and cash. [9]』

現金への課税とな。

『One can indeed imagine several advantages associated with such a policy, on top of pushing the lower bound further into negative territory. For example, tax on cash can act like a tax on illegal activities and would foster greater transparency. In addition, we could economise on the costs of storage and use of currency, which are not insignificant. 』

『There are important reasons, however, why it is difficult for policy-makers to give this option serious consideration. They have mainly to do with psychological and operational factors.』

話としてはアリエールではある(つーかまあマイナス預金ファシリティ金利やってますからねえ)心理的な面とか実務上の問題がありますなあと。

『The use of cash with a zero guaranteed nominal rate of return and a non-negative nominal interest rate on deposits is deeply ingrained in the psyche of economic agents. Savers already perceive a negative nominal interest rate on deposits as an unfair wealth tax and extending it to cash would deepen this perception and affect even more vulnerable members of our society. Beyond looking for a different bank which might offer slightly better conditions, depositors would have no other option than to keep hold of their savings, unless there were to be rapid shift in attitudes towards saving in more risky types of assets such as equities. In addition, this would raise serious financial inclusion issues as not all people today can use computers or operate smartphones.』

うーんこのというかそういう話になるのかねとは思うが、現金課税するとリスク資産への過度な投資が進むのも問題だけどそういう資産購入できない人は名目資産が減るのを指くわえて眺めていないといけないし、電子機器使ってホイホイと資金の移動とかするスキルが無かったりPC使ってなかったりする人もいますしとか、まあそんな話をしているようで、現金課税というのも理屈としてはあり得ても無理でしょというお話のようで。

『In short, while I can very well envisage a world without cash, I view it as the outcome of changing technologies and social perceptions, not of policy prescriptions.』

現金の無い世界になったら現金課税というのもあり得るかもしれないけどそれって技術と社会の問題なのでねえと。


・最後の所とか見ると全然ハト派講演に読めないのだがアタクシの読み方間違っていますかね

『Besides, I do not believe that it would be desirable to remove the zero lower bound in the euro area at the current juncture. I say this for three reasons.』

さらに言えば今の状況でゼロ金利制約を取り除く(上記のような施策のことですかね)のが望ましいとは思わないとキタコレで3つの理由が出ている。


『First, removing the lower bound would not solve all problems related to monetary policy.』

ゼロ金利制約をぶち破ることが金融政策の諸問題を全て解決するわけではないとか言ってますが。

『The experience of the global financial crisis taught us that the type of shocks which can drive policy interest rates to the lower bound are also shocks which produce severe impairments to the monetary policy transmission mechanism. Suppose, for example, that the interbank market freezes and prevents a smooth transmission of the policy interest rate throughout the banking sector and financial markets at large. In this case, any cut in the policy rate may be almost completely ineffective in terms of influencing the macroeconomy and prices.』

金融危機後の市場に見られたように、市場機能が壊れて「severe impairments to the monetary policy transmission mechanism」が発生すると金融政策の有効性が損なわれるのであって、金融政策のトランスミッションメカニズムが効くような状態にしておくのが重要と。

『Given the persistent signs of fragmentation in some euro area financial markets, it is therefore not clear that the ability to lower key ECB rates deep into negative territory would by itself help ensure a faster return to growth in the euro area.』

fragmentationキタコレでして、ユーロ圏の金融市場の幾つかでfragmentationがある中で、ECBがこれ以上預金ファシリティー金利のマイナスを拡大させることそれ自体がユーロ圏のより早い回復をもたらすかどうかは不確実ではないかと言ってるようにしか読めませんがこれ。

『On the contrary, this could have an impact on the business model of banks and insurance companies, and impair their capacity to perform financial intermediation and support monetary policy transmission.』

それよりもマイナス金利は銀行や保険会社のビジネスモデルに(マイナスの)インパクトを与え、彼らの金融仲介機能に対してマイナスに働くがゆえに、金融政策のトランスミッションメカニズムに対して悪影響を与えるでしょうとは(;∀;)イイハナシダナーではあるが、だったらマイナス金利にするなよヴォケと言う所で何というマッチポンプ。

『And where fragmentation is now receding, our non-standard measures have in any event pushed real rates well below the long-term growth rate, creating sufficiently strong price incentives to invest.』

で足元でfragmentationが緩和されてきているので効果はいよいよこれからですという事らしい。


『Second, we are mindful of the risks of persistently low interest rates to financial stability. [10]』

これネタにするのが後回しになっているけどドラギのおっちゃんが木曜に講演で話をしたのの最後の方にもある。

『It is accepted today that real rates will remain below the long-term growth rate for as long as is necessary in order for investment to recover. Throughout this period, private agents may be tempted to borrow to purchase assets of which the supply is limited or inflexible, such as real estate. [11]』

不動産価格に特に金融不均衡が表れやすいとかこの話もドラギのおっちゃんしていた筈なのですが、この件は日本のFSRでも指摘されていますしまあアレですな。

『We are prepared to use our micro- and macro-prudential instruments to face the risks of bubbles and excessive leverage, but if the lower bound were effectively abolished, those risks would increase and may lead to macroeconomic instability along this dynamically inefficient path.』

プルーデンス政策での対処はしますがそうはいっても長期的な低金利政策によってバブルが発生するリスクを考える必要がありますよねという話をしている訳ですが。


『Third, we have to reflect on why we have reached the lower bound in the euro area in the first place.』

ほうほうそれでそれで?

『An important issue here is the possibility that the natural real rate may have fallen very low or even gone negative; this could occur for various reasons such as low productivity or a slowdown in population growth, both of which are relevant for the euro area.』

そもそも何でゼロ金利制約になったかと言えばそれは均衡金利水準が低下していることにあり、それは生産性の低下とか人口増加の鈍化みたいなのがユーロ圏ではありますよねと。

『A protracted period of deleveraging in the euro area, similar to the one which occurred in Japan in the 1990s, could also have pushed the natural real rate down, even into negative territory, and potentially for a long time. [12] This is related to the so-called “secular stagnation” hypothesis. [13]』

で、ユーロ圏でのレバレッジ縮小の長期化というのは90年代のジャパン(要はどっちも資産バブル崩壊によるバランスシート縮小ですな)にも似ていますが、こいつらは均衡金利水準を下げたりマイナスにしたりする訳で、この現象を「secular stagnation」とか言います罠と。

『This scenario may also be consistent with a gloomier view of recent bond market developments than the one I have provided above.』

ということでこの講演ネタ最後の方だけを使っているので「I have provided above」の部分割愛していますが、最近の債券市場の価格が示す経済物価見通しはワシがさっき言ったビューよりも暗いですけどこれは「secular stagnation」の考えに沿ったものですぞなと。

『Real forward interest rates indeed suggest that the expected short-term real interest rate about ten years ahead is around -1%, while expected euro area GDP growth for the period six to ten years ahead stands at 1.4% (according to the Consensus Forecast). If forward markets were correct, then the fall in long-term yields would not due to a generalised reduction in the market price of risk, and thus a flattening of term and risk premia induced by our extended asset purchase programme. It would be rather a reflection of a generalised fall in real interest rates, signifying bleaker prospects for euro area growth.』

『For monetary policy to remain “neutral” in such an environment, a lastingly low or negative actual real rate would be needed.』

とまあ市場の織り込んでいる経済シナリオが悲観シナリオであるという話をしまして・・・・・・・・

『It is in response to this that some are proposing to remove the effective lower bound. But my question is, why not instead focus on raising the natural real rate? Why not introduce structural reforms that will raise investment demand?』

で、均衡金利水準を引き上げるんだったら成長力を引き上げればいいじゃないかにんげんだものという話で・・・・・・

『This would be unambiguously positive for employment and productivity growth and, as I have discussed elsewhere, could have positive effects even over a relatively short time horizon. The answer could in principle be to do both, but we know that in reality political capital is often scarce, and my suspicion is that taxing deposits would use up much of the political capital that could be better spent on structural reforms.』

ということで話が終わる訳で、預金課税してどうのこうのとかにポリティカルキャピタルを使う位だったら構造改革にポリティカルキャピタル使って成長力を引き上げる方が重要だろという話をしておりますし、その話は別に今に始まったわけではなく前から申しておりますが何か?ということで、前半は飛ばし読みしかしていないからアレなのですが、少なくともこの結論部分を読んでいると「ジャンジャン追加緩和しますよ」という話には読めないと思うのですが何であんな反応になっているのでしょうかねえ・・・・・・・・・・







2015/05/19

お題「黒田総裁の講演ネタ続き:見通しと政策スタンスという辺りの説明は将来に問題起こしそうなのですが」

ほほう。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NODK786S972B01.html
池尾氏:金融政策の限界、ゼロ金利超えた量的緩和に効果なし
2015/05/18 12:00 JST

『(ブルームバーグ):池尾和人慶応大教授は2年で2%の物価目標を掲げた日銀の量的・質的金融緩和について「金融政策には限界がある」とし、量的緩和をしてもゼロ金利政策を上回る追加的な効果は期待できず、「手詰まり感が出てきている」との認識を示した。 』

『その上で、「実体経済の変動は財政政策によって引き起こされていた。日銀が国債を大量に買うことで金利を低位安定にし、ピュアに財政政策の効果が出てくる環境を用意した」と指摘。「安倍政権の発足当時に景気が良くなったのが金融政策のおかげで、景気が悪くなったのは消費税のせいというのはご都合主義だ」と批判した。 』

『金融政策の在り方については「望ましい経済環境が達成されるまでゼロ金利政策を続けると時間軸でコミットすれば良い。1−2割増の超過準備があれば維持できる。それでは不十分ということになるが、それが金融政策の限界だ」と、ゼロ金利政策への回帰を主張した。 』(以上上記URLより)


○業態別当座預金(メモ)

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

4月積み期間に関しては日銀の無慈悲買入もありまして当座預金残高はトータルで10兆円増えているのですが、その中で減っていたのが信託銀行と外国銀行で、残りはほぼ万遍なく拡大しており、証券はまあ概ね横ばいという結果で、とりあえず誰かが超過準備の積み上げを意図的に止めているという感じではないようには見えましたがどうでしょうかね、という程度の感想が出てきたのですがどうでしょうかね。


○黒田総裁のアレな講演ネタの続き

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150515a1.pdf
「量的・質的金融緩和」の2年
── 読売国際経済懇話会における講演 ──
日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年5月15日

『以上のような金融・経済・物価の動きは、定性的に言えば、「実質金利の低下」「株高・円安」「企業収益の改善」「労働市場のタイト化」「雇用者所得の増加」「消費者物価の上昇」と、いずれも「量的・質的金融緩和」で想定したメカニズムに概ね沿ったものでした。』

というような自画自賛満載なのに物価が何で上昇していないんですかねえという講演の残り部分。

『もっとも、現在は、エネルギー価格下落の影響によって消費者物価の前年比は0%程度まで伸び率が縮小しています。2%の「物価安定の目標」を安定的に実現するためには、予想物価上昇率がさらに上昇する中で、現実の消費者物価も高まっていく必要があります。』

という話なのですが、展望レポートでの見通し(ここでもこの先に言及されます)だと安定的実現は2016年度に入ると達成という絵になっているのは何なんでしょとしか申し上げようがない。

『先ほど述べた通り、予想物価上昇率は、昨年10 月の「量的・質的金融緩和」拡大の効果もあって、原油価格の下落にもかかわらず、やや長い目でみれば全体として上昇しています。引き続き、現実の消費者物価上昇率が低下している中でも、予想物価上昇率の上昇傾向が続くかどうか、確認していく必要があると考えています。』

図表2のインフレ期待の部分を見ると足元でじりじり低下しているようにしか見えませんが。

『そこで以下では、経済・物価の先行きについてお話しします。』

ということで・・・・・・・・・・


・輸出と設備と消費が全部強いという見通しですががががが

『わが国経済の先行きを展望すると、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが働いている中で、原油安という好環境も加わっていますので、回復基調が持続すると考えられます。』

足元の話はともかく、先行きは原油が徐々に上昇するという見通しになっているので原油安をサポートというのは話に無理がないでしょうかねえ。

『まず、輸出についてみると、海外経済が先進国を中心に回復するもとで、これまでの為替相場の動きも下支えに働くことから、緩やかに増加すると見込まれます。』

出る出る詐欺状態だった輸出が最近やっと上向きになってきたので最近はすっかり見通しの中で輸出の所を強調するようになりました。

『国内需要に目を転じると、設備投資は、企業収益の改善や金融緩和効果が引き続き押し上げに作用する中、国内生産強化の動きなどもあって、しっかりと増加するとみられます。』

この国内生産強化の話だが、そんなに言うほど一般化されている話かよと思いますし、設備投資に関しては出る出る詐欺状態なのは相変わらずなのでは?

『個人消費については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響が収束しつつあり、このところ消費者マインドが改善してきていることも踏まえると、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、先行き伸びを高めていくと予想されます。』

その消費者マインドって物価が下がったことではないか疑惑がありますし、物価が上がったらあの程度のベアだと実質賃金あっという間にマイナス転するんですけどねえ。


・・・・・・で、この後が計数の話になりますので、要するに輸出が出て設備が出て消費も出るというのが見通しになっているのですが、先日来申し上げておりますようにこれ一つ一つのコンポーネント的にはシナリオの中で一番強く振れたらそうかもしれませんね的な見通しなのですが、結局の所すべての需要項目について最大の強気シナリオを見ているので、それを全部合わせると無茶苦茶ナローパスな見通しになるという形になっている訳ですが、まるで大本営発表の見通しみたいで実に味わいがある。

でまあ結果は展望レポートの通りだが一応引用しておく。

『以上を踏まえ、この先3年間の日本経済を展望すると、2015 年度から2016年度にかけては、潜在成長率を上回る成長を続けるとみています。そのもとで需給ギャップはプラスに転じ、その後プラス幅を拡大していくと考えられます。具体的に展望レポートにおける政策委員の成長率見通しの中央値で申し上げると、2015 年度は+2.0%、2016 年度は+1.5%になるとの見通しです(図表6)。その後、2017 年度にかけては、同年4月に予定されている消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響を受けるとともに、景気の循環的な動きを反映して、潜在成長率を幾分下回る程度に減速しますが、プラス成長を維持すると考えています。政策委員の見通しの中央値で申し上げると、2017 年度は+0.2%になるとの見通しです。』


・物価見通しですがそう言い切ったら目標達成じゃないでしょうかねえ(ゲス顔)

『次に、物価の展望についてお話しします。先行きも、需給ギャップの改善と予想物価上昇率の上昇が続くと予想されますので、物価の基調は着実に高まっていくと考えています。また、エネルギー価格下落の下押し圧力は次第に剥落していく性質のものです。したがって、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面は0%程度で推移するとみられますが、エネルギー価格下落の寄与が縮小に転じる今年度後半には上昇率を高め、2%に向かっていくと考えられます。』

さてどうなんでしょうね。

『消費者物価の前年比が2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されますが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格下落の寄与が概ねゼロとなる2016 年度前半頃になると予想されます。』

そしてですね、

『その後については、消費者物価は月々様々な要因によって変動しますが、平均的にみて2%程度で推移すると見込まれます。』

ちょwwwwww

えーっとすいませんそれですと物価安定の目標思いっきり達成していることになるのですが。

・・・・・ということでですね、2年で2%達成というタイムコミットメントみたいなのが入っている点の弊害が思いっきりその2年が接近して発生している訳でして、タイムコミットメントのような話をしている以上上記のような威勢の良い話をしておかないと「追加緩和が必要ではないか」という批判にも耐えられないですし、そもそも論として「必要な措置は全部打った」という最初の大見得に対する批判も出てくる訳でして、威勢の良い話をするという事になるんでしょうが、これって明らかにコミュニケーションを訳分からなくしている元凶です罠と思います。

だって「平均的に見て2%で推移」というのであれば2016年度前半には物価目標達成している訳で、金融政策の効果のタイムラグを考えると当然その前に出口政策を検討しないと物価が望ましくないオーバーシュートをすることになるのですが、展望レポートで前提にしている金融政策運営というのは現在の政策金利水準が見通し期間中(つまり2017年度中まで)継続という事になっているのでして、どう見ても話がおかしい。

逆に言うと「平均的に見て2%程度で推移」というのがQQEの継続が前提なのであれば、そもそもQQEという超強力な金融緩和のサポートによってしか2%を維持できないという時点で物価安定目標の設定がおかしくないですかと思いますし、もっと言えばこれだけの超強力な金融緩和を2%の物価水準に到達してから1年間継続しても物価が安定的に推移するというのであれば、実は金融緩和に物価を押し上げる力が無いんでしょうかと言いたくなる訳です。

数字の話はまあ展望レポートの数字をだしているだけなので割愛しまして。


・金融政策の実際の実施スタンスが「time-dependent」なのか「state-contingent」なのかが訳分からん件について

次の『4.金融政策運営』から。

『以上のように、「量的・質的金融緩和」は所期の効果をしっかりと発揮しています。また、先行きも経済・物価情勢の好転は続き、消費者物価の前年比は、2016 年度の前半頃に「物価安定の目標」である2%程度に達する見通しです。金融政策の面では、従来通り、2%の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していく方針です。』

でまあここは日銀のペテンな所なのですが、「QQEを継続する」とは言っているものの、その規模についての説明はどこにもないので、QQEの枠組みの中で買入ペースを落とすとか、極端に言えば緩和度合いを緩める(資産規模の縮小をする)とかでも「依然として緩和効果が」とか言う事は可能という建付けになっている筈で(前者はともかく後者の場合はさすがに出口政策とは言わないでQQEの範囲内での調整と言い切れるか難しいですが)、市場の方としては普通に今後も年間80兆円ペースの長期国債買入とその他諸々の買入が継続するというのが前提で展望レポートの見通しが出来ていると思っていますから、ここの辺りの認識のズレもまたコミュニケーション的に訳の分からん所なんですよね。

つーことでですね、そもそも見通しで「安定的に推移」とまで言っているのに出口論になると「時期尚早」というのがおかしい訳で、ここがこの政策の建付けを訳分からなくしている所でしょうなと思います。まあこの点は当初は先の話だったので有耶無耶のまま進めましたけれども。


『この点に関して、2%程度に達する時期が「2016 年度前半頃」に後ずれしたことと、「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に」というコミットメントとの関係はどうなっているのかとの声も聞かれます。』

まあこの言い訳はこの前の会見と同様に「スタンスはスタンス、見通しは見通し」でありますが・・・・・・・・

『私どもの考え方を申し上げますと、日本銀行が2%の「物価安定の目標」の早期実現にコミットすることで人々のデフレマインドを転換し、予想物価上昇率を引き上げることは、デフレ脱却という目的そのものであると同時に、「量的・質的金融緩和」の政策効果の起点となるものです。すなわち、日本銀行が「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に」という期限を示し、「そのために必要なことは何でもやる」と明確にコミットしたことで、企業や家計の物価観が大きく変化してきたのです。』

『もちろん、実際の物価は様々な要因で変化します。昨年夏以降、物価上昇率が低下しているのは、諸外国と同様、主として原油価格の下落によるものです。昨年夏以降の原油価格の下落は、半年程度の間に約6割にも達する非常に大きなものでした。こうした大幅な原油価格の変化など国際商品市況の影響で、実際の物価が「物価安定の目標」から乖離する期間が生じることは、各国の中央銀行においても、いわば当然のこととされています。』

ということで、政策スタンスとしての気合は気合だが実際には気合通りに逝かない場合もあるからテペヘロという説明になっています。

『実際、消費者物価(総合)の前年比は、米国、英国、ユーロエリアなどにおいて、ゼロないし小幅のマイナスとなっており、2%に戻るのは2〜3年先と予想されています。』

米国の場合は除くエネルギーは比較的確りですが日本のコアコアはあまり強くないと思いますが(ゲス顔)。それにユーロ圏の場合は物価の基調「も」弱いから追加緩和をしているのであって、ユーロエリアと比較するんだったら追加緩和を実施しないと話がおかしいと思いますが。

『本日ご説明したように、わが国の物価の基調は着実に改善しており、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、消費者物価の前年比は2%の「物価安定の目標」に向けて上昇率を高めていくとみています。こうした動きは、「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に」というコミットメントに沿った動きとなっていると判断しています。もとより、物価の基調が変化し、2%の実現のために必要となれば、躊躇なく調整を行う方針です。』

そもそも日銀の言う「物価の基調」というのが需給ギャップに期待インフレとなっているので恣意的に変化しうるものですよねというのは毎度突っ込んでおります通り。

でですね、この「2年で」を掲げ続ける意味というのが最早まったく分からないとしか申し上げようがないところでして、スタンスとしての気合で「2年」と期限を区切るというお気持ちは分かるのですが、実際問題として肝心の2年は超過してしまった訳でして、その達成期間については「2年程度を念頭に出来るだけ早期に」→「2015年度を中心とする期間」→「2016年度前半頃」(ちなみに「頃」とあるので更に後ずれ可能)とドンドン後ズレする結果になっている訳で、そうやって結果が出ない状態で気合だ気合だと連呼しましても、それは政策達成に対する日銀の信認を徐々に削っていく結果になるとしか見えません。

しかもですね、昨年10月の場合は物価が下がる中で追加緩和をしたから「time-dependent」であるという強いメッセージが出ましたが、その後に関しては見通しだけズルズル後ずれさせる中で気合だ気合だ基調だ基調だという空手形にしか見えない動きになっている訳でして、「time-dependent」であるという期待はドンドン低下していませんかねえそれはという状況な訳ですよ。

いやね、今の日銀の説明だと「物価の基調は以前よりも強くなっているのだから、足元の原油安に過度に対応して無理にアクチュアルの物価を上げようという金融政策を実施するのは却ってイクナイ」という話になっている訳で、過度に足元の物価にstickした金融政策を実施している訳ではない、という話になっていて、その方がスタンスとして普通(物価の基調が本当に強いのかよというツッコミ所は大いにあるが)だと思う訳ですが、それであれば過度に「time-dependent」ではない、というのが実際の政策でして、気合とかスタンスとかはともかくとして実際にやっているのは「state-contingent」でしょと思う訳ですよ。

でまあ期間を切る→やっぱり行かないで言い訳をする、というのだって限界というのがあって、これをもう1回か2回やるようだったら最早信認も蜂の頭も無い訳でございまして、そうなるのを避けるには「出来るだけ早期に」という形で期限を区切らないけれども気合だけは満々ですよ頑張りますよやりますよ、という風に説明を持って行った方が日銀の将来のクレディビリティが落ちるリスクが軽減されるんじゃネーノとは思うのですが、なぜかこの「2年で」を下げないというのがもう自爆特攻しているようにしか思えない訳で、日銀の将来の為に惜しむという所ではあります。


・最後の所から少々

『本日は、「量的・質的金融緩和」導入後の2年間を振り返りながら、経済・物価情勢と金融政策運営についてお話ししてまいりました。最後に、私自身の感想を付け加えさせて頂き、講演を終えたいと思います。』

『経済政策では、思った通りのこと、想定外のこと、いろいろと起こります。』

えーっとすいません、QQE導入時に「必要な政策は全部打った」と堂々と説明していたのは何なんでしょ。

『「量的・質的金融緩和」導入からの2年を振り返ってみても、いくつかの「思い通り」や「想定外」がありました。1年目の2013 年度は、経済が好転し、物価上昇率も着実に高まる中で、多くのことは「思い通り」か「予想以上」でしたが、輸出の伸び悩みは予想を下回る動きと言えました。過度な円高の中で進んでいた企業の海外移転の影響は予想以上に大きく、輸出が好転したのはようやく最近のことです。』

企業の海外移転の影響だけなんでちゅかねえ。

『2年目の2014 年度は、個人消費の動きが予想よりも弱かったと言えます。これには、消費税率引き上げの影響がやや長引いたことや夏場の天候不順などが影響しました。消費者にとっては当然のことながら消費税込みの物価が意識されますので、それには賃金の上昇は追い付かず、個人消費を下押したと考えられます。このこと自体は消費者が負担する税である以上予想されたことですが、その影響がやや大きかったということです。』

賃金上昇の前にコストプッシュの物価上昇も来ましたからねえ。ああそれから2%に物価が上昇したらまた実質賃金マイナスだしそこに2017年の消費増税が来るんですけど大丈夫ですかねえ。

『そして、最大の「想定外」は、半年で6割にも及ぶ原油価格の下落です。この結果、現実の消費者物価上昇率は+1.5%から0%程度まで低下しました。このことは、「量的・質的金融緩和」のメカニズム、とりわけ、予想物価上昇率の形成にリスクをもたらし、日本銀行は「量的・質的金融緩和」の拡大を決断しました。』

はいはい原油価格原油価格。また時間が無くて(すいません)続きが出来ない木曜のドラギ総裁講演ですと欧州の場合は「物価の基調も弱い」という話をしていましたが日本の場合はひたすら原油のせいですね。

『もっとも、こうした「想定外」にもかかわらず、「量的・質的金融緩和」のメカニズムはしっかりと働き続けています。この2年間で、政府の様々な施策と合わせて、デフレ下で凍りついていた人々のマインドセットは明らかに変化しました。このまま経済の好転が続き、デフレ脱却が実現すれば、経済政策によるレジームシフトを実現した稀有な成功例になるのではないかと思います。』

スタグフレーションになってきてるような気がしますがまあいいです。

『私は、いくつかの「想定外」より、むしろ、大きな構図が「思い通り」であることに、確かな手ごたえを感じています。日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」の早期実現に向け、引き続き「量的・質的金融緩和」を着実に推進してまいります。ご清聴ありがとうございました。』

つーことでまあ基本的に想定通りの連呼でして、何ちゅうかまさかドラギのおっちゃんの方が謙虚な説明に見えるようになるとは日銀も変わりましたなあ(ただし悪い方に)という感想なのですが、肝心のドラギのおっちゃんの講演ネタの続きをやる時間が(こっちのネタに粘着しすぎで)なくなってしまいましたすいません。







2015/05/18

お題「短国買入2兆円とな/ブルームバーグでまた憶測釣り報道だが内容の劣化が甚だしい/黒田講演はイヤミ付きつつ鑑賞の素材」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150517-00000052-mai-soci
<大阪都構想>橋下市長、敗北の弁…住民投票で否決
毎日新聞 5月17日(日)23時42分配信

なんか単なる引退するする詐欺のような気がしますが、まあタレント活動に戻って好き勝手言う姿が今から目に浮かびます。しかしまあ今までやってたことに対する検証もして頂きたいところではありますわ。

○短国買入は増額せずとな

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150515.htm
国庫短期証券買入 20,000 2015年5月19日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,750 2015年5月19日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,750 2015年5月19日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,400 2015年5月19日
国債買入(残存期間25年超) 1,400 2015年5月19日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3) 8,000 2015年5月15日 2015年5月18日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2015年5月19日 2015年8月28日

ということで短国買入は2兆円で実施となりまして、6Mの後だから2.5兆円に増額しやがるのかと思っていたのですが、さすがに5週連続で3M短国がマイナス金利になる(前回は足切は100円に届きましたが案分は27%)という結果になった訳で、何ぼ何でも異常事態という所ですし、大体からしてこの間って期末でもないし海外がそこまで買っているかというと(ニーズ自体は強めではあるけど)そこまでマイナス金利を維持するような需給状況かと考えますと、どう見ても日銀買入期待の仮需要でかさ上げされてるだろこの金利という所でしたので、今回のように「増額間違いなし」的な所で軽く外してくるというのはまあ緊張を与えるのには結構なお話。

つーかここで2兆円ペースで行くなら何で5月1日の短国買入で2.25兆円のオファーをするのかと小一時間問い詰めたい訳で、ここで2兆円だったら買入沢山クルーという話にもならなかったと思うのですが、こうやってマイナス金利が5回連続とかいうような事態になって減額というのを見ると結局はたくさん買いたいんですよねという風にみられるのがどうにもこうにも。

ということで落札結果。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150515.htm
国庫短期証券買入 35,589 20,001 0.002 0.002 95.1
国債買入(残存期間1年超3年以下) 12,216 3,756 0.004 0.005 61.5
国債買入(残存期間3年超5年以下) 14,916 3,753 -0.011 -0.009 23.1
国債買入(残存期間10年超25年以下) 5,519 2,401 -0.043 -0.035 68.9
国債買入(残存期間25年超) 3,066 1,400 -0.038 -0.028 70.0
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4) 28 28 -0.400 -0.400
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(5月19日スタート分) 11,251 11,251

ということで短国買入は+0.2bp/+0.2bpという落札結果ですので、これだと木曜に入札した3M新発を入れると+0.2bpなので投げですし、その前の週の3Mカレントを入れても+0.0bpになるのでこれまた投げになる(しかもその間のファンディングコストもある)という形で、その前の3Mだと利食いになるのでしょうが、最近は2週間熟成させてから3Mを日銀オペに突っ込むのが流行なのですかね。

今月の短国買入ですが、今週末はMPM2日目がありますので買入オファーは普通に考えると月曜になりますけど、どうせ今日入札の1Y入札が打ち込まれるんじゃネーノと思いますし、6月は短国の償還も少ないですし国債償還要因で財政は払い超になります(はず)ですので短国買入のペースが落ちる筈ですから需給もう少し何とかならんのかねとは思いますが。

なお、固定金利オペに関しては今回シグナルオペの成れの果てのロールだったのですが、13630億円の満期分に対してロール分が11251億円となりましたの2400億円ほどの減額となりましたが、まあさすがに極端な減少ということにはなっていないようで何より。


ちなみにどうでも良いですが悪態。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150515b.pdf
「債券市場参加者会合」の開催について

『日本銀行金融市場局では、本年1月28日公表の「市場参加者との対話の場の拡充について」の中で、「債券市場参加者会合」を創設することを公表しましたが、第1回の会合を以下の要領で開催します。』

ほうほう。

『本会合は、本年2月に開始した「債券市場サーベイ」を有益に活用し、債券市場参加者とよりきめ細かな対話を行う観点から、比較的少人数のグループに分けて開催することとしています。』

日程はどうでもよいのですが、そもそも債券市場サーベイというのがオペ先に対して実施しているということですので『「債券市場サーベイ」を有益に活用し』という時点でスタンスはお察しという所が何ともであります。

つーかね、そもそもこれ麿の時代にやるのならまあ話は分かるのですが、黒田総裁って本質的に市場介入をするのは当然というスタンスであるのは従来からの言動で見え見えでありまして、それなら最初から「市場機能への配慮がどうのこうの」とかおためごかしなことは言わないで「市場に対して中央銀行が積極的に介入して資源配分を変えることによって政策効果をだすのですから市場から見たら歪みが出るというような意見が出るのは致し方ない」と明言してくれた方がまだマシというものですが、どこぞの副総裁とかは「市場機能はありまぁす!」とか言い出すし、FSRでも思いっきり「市場機能に問題はない(キリッ)」とか出すというスタンスの時点で市場舐めてるだろとは思うのでして、まあ何やっても無駄じゃないですかねえ今の総裁の金融市場に対するスタンスを前提にすると、とは思うのでありました。



○ブルームバーグの釣りヘッドラインが更に劣化が禿しい件について

金曜の引け後にまたこれ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NODT2V6JIJVX01.html
日銀:付利金利引き下げ含むあらゆる手段排除せず、追加緩和
2015/05/15 18:25 JST

またこの「関係筋」かよと思う訳で、こういうのにリンクをつけると見た目注目記事になっておそらくブルームバーグの社内評価的には良い記事という扱いになるのですが、どう見ても劣化の度合いがドンドン酷くなって見るも無残な出来になっている訳ですけど、まあ良く考えたらこういうクソ記事の評価が高まることによってブルームバーグ記事の信頼が更に下がったらメディアとして駆逐されるので災い転じて福となりませんかねえ位の悪態を申し上げたくなる状態ですわホントに。

『(ブルームバーグ):日本銀行は当面追加緩和は必要ないとの姿勢を維持しつつも、追加緩和が必要な際には、日銀当座預金の超過準備にかかる0.1%の付利の引き下げや撤廃を含め、あらゆる手段を排除しない方針であることが複数の関係者への取材で明らかになった。』(上記URLより)

ということで複数の関係者とやらに取材しているのですが、単なる何とかストに対するコメントを集めているだけですし、もう何だかね(ちなみにそこのコメントについてどうのこうの的な話はしようと思ったけど自主規制)という感じでございまして、単にヘッドライン詐欺狙いの記事ですし、出すタイミングが金曜の引け後とか板の薄いところで出しているとか何の狙いがあるんでちゅかねえ(銃声)という所ではございますな。猛省を促したい。

#そら手段は全て検討対象ですよ、やるかやらないかについての可能性が問題でしょ


○黒田総裁講演がまた行われていましたが「実質長期金利の低下は利下げ10回分」とかキャッチー狙いも段々劣化ですなあ

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150515a1.pdf
「量的・質的金融緩和」の2年
── 読売国際経済懇話会における講演 ──
日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年5月15日

『前回、本席でお話しさせて頂いたのは、一昨年の4月、「量的・質的金融緩和」を導入した直後でした。それから2年が経ちましたが、「量的・質的金融緩和」を進めていくもとで、わが国の経済・物価情勢は大きく改善しています。昨年夏以降の原油価格の大幅な下落の影響などから、消費者物価の前年比上昇率は低下し、最近では0%程度となっていますが、後ほど詳しくご説明するように、物価の基調は着実に改善しています。』

物価は2年での目標を達成できなかった上に0%だけれども基調は改善しているとは毎度の言い訳。

『本日は、まず、この2年間の経済・物価の動きを振り返り、「量的・質的金融緩和」がどのような効果を発揮してきたかご説明したいと思います。そのうえで、経済・物価の先行きと金融政策運営について、先日公表した展望レポートにも触れながら、お話しします。』


で、ここにありますように

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130412a1.pdf
量的・質的金融緩和
── 読売国際経済懇話会における講演 ──
日本銀行総裁 黒田 東彦
2013年4月12日

というのが2年前に実施されていますので、ここの図表を比較すると味わいがあったりします。

でまあ更に申し上げますと

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a1.pdf
「量的・質的金融緩和」のトランスミッション・メカニズム ―「第一の矢」の考え方―
京都商工会議所における講演
日本銀行副総裁 岩田 規久男
2013年8月28日

辺りと比較するとなおヨロシ。では講演に戻ります。


・政策のトランスミッションメカニズムの説明部分にスタンスとしての傲慢さを感じますな

『2年前「量的・質的金融緩和」を導入した際、日本銀行は、主として次のような波及メカニズムを想定しました(図表1)。すなわち、第1に2%の「物価安定の目標」に対する強く明確なコミットメントとこれを裏打ちする大規模な金融緩和によって予想物価上昇率を引き上げる、第2に巨額の国債買入れによってイールドカーブ全体に下押し圧力を加える、第3にこの2つによって実質金利を引き下げる、これが政策効果波及の起点です。』

でまあこの図表1というのは図表貼り付けスキルがないからつけられませんが、PDFの12枚目にありますように「大規模な長期国債買入れ」と「2%の「物価安定の目標」への強く明確なコミットメント」があって実質金利が低下すると経済がアプリオリに良くなって、その結果物価上昇率が上昇するので内生的なサイクルが働くような絵になっています。

2年前の黒田講演ではこんなこと書いてありました。図表というかフリップの最後の部分になりますけどね。

『「量的・質的金融緩和」の効果
長めの金利や資産価格のプレミアムへの働きかけ
リスク資産運用や貸出を増やすポートフォリオリバランス効果
市場経済主体期待の抜本的転換』(2013年4月12日総裁講演より)


師匠に関しては上記の講演の図表6(PDFの22枚目)で『2%インフレ目標コミットメント』と『マネタリーベース増加』によって全てが効果出てくるという話をしておりまして、前の説明と微妙に違うじゃねえかと思うのに、なぜか「2年前「量的・質的金融緩和」を導入した際、日本銀行は、主として次のような波及メカニズムを想定しました(キリッ)」と言い出すのが何ともアレ。

金曜に速読でネタにしましたドラギ総裁のIMFでの講演でもそうですが、普通の中央銀行というのは「非伝統的手段というのは政策に関する経験がすくない領域の政策だから、その効果や副作用に関しても考え通りに進まない場合もある」という発言をする筈(ちなみにドラギ講演の内容は速読じゃなくて精読したらかなり面白いので今日は間に合わないのですいませんが明日にでもネタ投下の所存ですが一読推奨)なのですが、最初の説明とちと違う話をしているのに平気で「最初からこう考えていましたので考えた通りに機能しています(キリッ)」と言い出すのは謙虚さの欠片もない傲慢な発想にも程があると思いますがどうでしょうかねえ。



・実質金利が下がった話が微妙にアレな件

でまあ毎度の説明部分は割愛しまして実際に効果がありましたという話。

『実際の成果はどうだったでしょうか。まず、「量的・質的金融緩和」のメカニズムの起点である実質金利の低下について見ていきたいと思います。』

で??

『長期金利は、「量的・質的金融緩和」以前に既に歴史的な低水準にありましたが、日本銀行の大量の国債買入れによって、さらに低下しました。10 年債利回りで言えば、▲0.3%ポイント程度の低下です。』

途中で上昇したけどな!

『この間、予想物価上昇率は上昇しています。皆様の実感としても、「物価がどの程度上がると思うか」と聞かれて、2年前と今では違う答えになるのではないでしょうか。「デフレ」という言葉も「デフレ脱却」という文脈以外ではあまり聞かれなくなりました。』

いやあの「デフレ脱却がまだ」という話は何度も聞かれますけどしかも貴殿のお好きなリフレ派の皆様から。

『企業の価格や賃金設定行動も変化しており、10 数年来途絶えていたベースアップが、昨年、今年と2年続けて実現しました。こうした事実がある以上、予想物価上昇率が上昇したこと自体は、疑いようがありません。』

そら円安コストプッシュに消費増税がありましたからねえ。問題はそれが実際に経済が持続的に強くなるためのパスに繋がっているかという話じゃないですか?????????

『ただ、これを数値で示そうと思うと、人々の頭の中のデータであるだけに、なかなかひとつの値には決まりません。家計や企業やエコノミストなど様々な主体へのアンケートや、市場で取引される物価連動国債から計算する値などからは、かなり幅を持った数字が出てきます。』

ほう。

『とりあえず、数値での回答が得られるエコノミストや市場参加者の中長期の予想物価上昇率は+0.5%ポイント程度上昇しています。これらを使うのであれば、実質金利の低下幅は、先ほどの名目長期金利の低下幅と合計して、▲1%ポイント弱程度となります(図表2)。』

おいこら。ちなみに図表2を見ますと脚注に『2. 予想物価上昇率はQUICK調査の値。QUICK調査は、2013/9月調査から、消費税率引き上げの影響を含む計数を回答するよう質問項目に明記。』とありまして、それ以前の数値については消費税込みなのか抜きなのかが回答者によって違うという物体なのでそもそもデータの連続性としてどうなのかというものでして、それをそのまま使う(しかも起点が消費増税の話がまだ全然なかった2012年1月から)というのがインチキ臭くて大変に結構でございます(棒読み)。


・利下げ10回分ネタはこちら

でまあそんなことで実質長期金利を1%ほど下げたという話(企画局の先日のレビューでもまあそんな感じのが出ていましたけど)をしているのですが、その結果が例の利下げ10回分。

『なお、欧米の研究などによれば、経済・物価に対して長期金利の低下は短期金利の低下の数倍の政策効果を持つとされています。また、「量的・質的金融緩和」がイールドカーブ全体を下押ししている効果について実証分析を行ったところ、同じ効果を短期金利の引き下げのみで得ようとすれば、2%程度の引き下げが必要になるという結果が出ました。』

うーんこれは・・・・・・・・

えーっとですね、
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/rev15j08.htm/
「量的・質的金融緩和」:2年間の効果の検証
2015年5月1日
企画局

だと『計測の結果、(1)「量的・質的金融緩和」は、実質金利を▲1%ポイント弱押し下げた、』という説明がありまして、これって企画局が出しているペーパーですからこっちを元に説明する分にはそうですなという話になるのですけれども、政策金利2%押し下げ云々というのは、

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab15j03.htm/
均衡イールドカーブの概念と推移
今久保圭、小島治樹、中島上智(日本銀行)
Research LAB No.15-J-3, 2015年5月1日

の中の最後の所に『均衡イールドカーブ・モデルを用いた試算によると、こうした量的・質的金融緩和の効果は、短期金利コントロール(イールドカーブのスティープ化)のもとで翌日物金利を190bps程度引き下げた場合の効果に相当する規模となっている。』ってある話の引用になっていて、いやあのすいません日銀レビュー関連っていうのはどこかの部局名で出しているもの以外には『本稿の内容と意見は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではありません。』ってありますので、これだと総裁がペーパーのヘッジクローズを否定しているような話になってしまいますので、説明するのにこの話をしない方がよかったんじゃないでしょうかねえと思うのですが(というような試算もあります、程度にしておけばよかったのではないかと思う)。

『こうした分析は、各国の状況や様々な前提にも依存しますので、十分幅を持ってみる必要はありますが、伝統的な短期金利誘導による金利政策が通常は1回0.25%ずつ行われることを踏まえると、「量的・質的金融緩和」は、10 回近くの利下げを同時に行ったのと同等の政策効果を持っているとも言えると思います。』

なお別に25ずつ下げるのがスタンダードな訳ではありませんが10回というのを強調したかったんですね下手な落語だなあ。

つーかそれだったらMBに焦点を当てるのではなくて最初から長期金利ターゲット(という下品な)政策を実施していた方が早かったんじゃないですかねえというかもっと市場にストレスをかけないで長期金利を下げる方法はあるんじゃないですかねえと思うのですがそれは。

『この間、「量的・質的金融緩和」の導入に、金融市場は比較的早く反応し、株価は大きく上昇し、為替市場では円高の修正が起こりました。また、貸出も緩やかに増加方向に動き、現在は中小企業向けを含めて、2%台後半の伸び率になっています。これらは、実質金利の低下による金融環境をさらに緩和的なものとしました。』

ということで結局資産価格ルートかよ!という所ですな。


・結果の説明に日銀文学キタコレ!!!

でまあ『「量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価の動き』という小見出しに行く。

『こうした「量的・質的金融緩和」の緩和効果のもとで、企業・家計の両部門で所得から支出へという前向きな循環メカニズムが働き、経済は大きく好転しました。』

前向きな循環メカニズムが働いているのに何で消費や設備投資が伸びないんでしょうかねえ。

『まず、企業部門をみると、収益は、過去最高の水準まで改善しており、設備投資も緩やかな増加基調にあります(図表3)。この間、わが国の輸出は円高が修正された割には伸び悩んできましたが、昨年7〜9月期以降は3四半期連続で増加するなど、ようやく持ち直しが明確になってきました(図表4)。』

図表3を見ると資本財総供給は2005年の水準に届きませんし、図表4で出ているの実質輸出ですから為替調整による数量部分はどうなっているでちゅかねえ的なアレを感じる。

家計の部分はパスして物価の部分。

『こうした経済の好転を受けて、物価の基調も着実に高まってきました。失業率の低下にみられるように労働や設備の需給は引き締まってきており、需給ギャップは、既に過去の平均であるゼロ%程度まで改善しています。先ほど述べた通り、予想物価上昇率も上昇しています。この結果、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、「量的・質的金融緩和」導入前は▲0.5%程度でしたが、昨年4月には、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで、+1.5%まで改善しました。』

>昨年4月には、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで、+1.5%まで改善しました。
>昨年4月には、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで、+1.5%まで改善しました。
>昨年4月には、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで、+1.5%まで改善しました。

直近のゼロ近傍の話をしないで昨年4月の話をする辺りが日銀クオリティ。

『その後、消費税率引き上げ後の需要面の弱めの動きや、昨年夏場以降、原油価格が大幅に下落したことを背景に、消費者物価の伸び率が鈍化しました。』

>消費者物価の伸び率が鈍化しました
>消費者物価の伸び率が鈍化しました
>消費者物価の伸び率が鈍化しました

ゼロとは言わないところがもう日銀文学っぽくて素敵です!


・そんなに効果があるのに何で実際の物価は行かないんでちゅかねえ

でまあその後追加緩和をしましたという話の続きですがね。

『その後の予想物価上昇率の動きをみると、マーケット指標や各種アンケート調査などは、原油価格の下落にもかかわらず、下落していません。また、今年の春闘では、多くの企業で昨年を上回るベースアップを含めた賃上げが実現する見込みです。』

2%物価上昇したら実施賃金マイナスになるレベル程度のベアだけどな!!!

『企業の価格設定行動をみても、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる動きが拡がりつつあります。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇していると判断できます。』

『以上のような金融・経済・物価の動きは、定性的に言えば、「実質金利の低下」「株高・円安」「企業収益の改善」「労働市場のタイト化」「雇用者所得の増加」「消費者物価の上昇」と、いずれも「量的・質的金融緩和」で想定したメカニズムに概ね沿ったものでした。』

概ね沿っているのに何で実際の物価は(以下同文)ですが定量の話も一応していて・・・・・・・・

『この点、定量的にみるとどうでしょうか。この2年間──正確には四半期のデータが揃っている昨年末までですが──実際に生じた変化は、実体経済の面では、需給ギャップでみて+2%ポイント、金額にして約10 兆円の改善、物価の面では、消費者物価前年比が+1.0%ポイントの上昇です。一方、先ほど述べた▲1%弱の実質金利の低下の影響を、マクロ計量モデルでシミュレーションしますと、株価や為替相場の変化をどの程度「量的・質的金融緩和」によるものと考えるかによって幅が生じますが、需給ギャップが+1〜+3%ポイントの改善、消費者物価前年比は+0.6〜+1.0%ポイントの上昇との試算が得られます。このように「量的・質的金融緩和」の効果について、モデルによる試算と実際の経済・物価の変化は、概ね同じ大きさとなっています。』

ということで実質金利が下がったから需給ギャップが改善したという話になっていますが。

『もちろん、この2年間には、「量的・質的金融緩和」以外にも、大規模な公共投資など政府の様々な政策、消費税率の引き上げ、株価や為替相場、原油価格の変動など、多くのことが起こり、経済や物価に上下双方向の影響を及ぼしました。しかし、全体としてみれば、実際の経済・物価は、定量的に見ても、概ね「量的・質的金融緩和」が想定したメカニズムに沿った動きになっていると評価できると思います。』

だったら何故この物価水準なんだかねえ。


という感じの講演でまあイヤミたらたらで鑑賞する素材なのですが、時間配分をミスって(というかそれなら土日あるんだから下書きしておけよお前というツッコミはお受けいたしますすいませんすいません)今日は途中ですがこの辺で。ドラギのおっちゃんネタと合わせて明日に続きをば(大汗)。




2015/05/15

お題「短国入札ェ・・・・・・・/ドラギのおっちゃんが2014年以降の政策効果について講演」

こんなニュースの出た直後に・・・・・・・
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150511/k10010075071000.html
ネット通じた未上場株の勧誘 解禁へ
5月11日 4時04分

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150513/k10010078221000.html
「新規公開株」持ちかける詐欺容疑 9人逮捕
5月13日 16時52分

何という様式美。

○5打席連続マイナス入札キタコレとか雑談

うむ。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150514.htm

(3)募入最低価格 100円00銭0厘0毛(募入最高利回り)(0.0000%)
(4)募入最低価格における案分比率 27.1817%
(5)募入平均価格 100円00銭0厘6毛(募入平均利回り)(-0.0024%)

ということで5週連続のマイナス入札ではありますが、足切100円じゃんとか思ってみていたものの、結局その後は平均落札価格水準での推移になって、引けではまた100円の水準になっていましたようで、引値とか売買参考統計値は0.000%になっておりますな。

しかしまあこれでプラスの利回りになった短国入札って4月の第1週の3M入札と2Mだけという展開で、延々と1か月以上にわたってカレントの短国金利がマイナスで推移するという展開(昨日もゼロ%までは行ったがプラスにはなっていない)でして、こうなってくるとさすがに短国を運用とか担保繰りとかで使っている人からすると色々と大変な状態になっているのではないかと。


でまあそういう中で本日は日銀の毎度の短国買入が実施されるのですが、今回の短国買入は6M入札後の買入になりますので買入オファー額が増えるのではないかという予想になっておりまして、そうすると2.5兆円ほど買入が実施ではないかというような下馬評になっているかと思われますが、まあその通りに推移となりますと相変わらずの日銀トレードヒャッハーも続きまして、起きている現象って投資家を排除して日銀トレードやっている業者と日銀との間で玉が動いているだけという状態な訳ですが、そうやって投資家を排除した短国市場にすることによって一体全体何の意味があるのかと小一時間。

いやまあお話の上からは「短国を買えないのならポートフォリオリバランスすれば良いじゃないか」という事なのでしょうが、世の中そう簡単に話が行くわけではなくて、各種の規制問題もありますし、そもそもの資金の性格をそうホイホイと逸脱した投資だってできませんですから、そう簡単なものでもない訳で、市場から投資家を完全に排除するような動きをするというのは色々と弊害があると思うのですけどねえという所で。

まあ短国買入に関してはオファー額もそうですが、落札結果のレートがどうなるのか、応札総額が幾らになるのかという辺りも注意して確認したいものです。

ちなみに直近発行銘柄の売買参考統計値ですが、3Mものでは532回:0.0bp、530回:-0.2bp、529回:-1.8bp、528回:-1.9bpで、6M531回は-1.6bp、先月の1Y526回は-2.2bpとなっていますので、落札結果が引け甘だと昨日の新発は入れにくいでしょうなあという所ですな。



○ドラギのおっちゃんが金融政策の効果云々の話とな

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150514.en.html
The ECB’s recent monetary policy measures: Effectiveness and challenges
Camdessus lecture by Mario Draghi, President of the ECB,
IMF, Washington, DC, 14 May 2015

『Over the past year the ECB has taken a series of major monetary policy measures, culminating in our decision in January this year to expand our asset purchases towards public sector securities. While the aim of these measures is the same as it has always been - maintaining price stability over the medium-term - their form is unprecedented for our central bank. And as such our policy decisions have become more complex in two key ways.』

『First, as interest rates have reached their effective lower bound in the euro area, we have become more constrained in our ability to deploy conventional monetary policy tools. This has required us to develop new instruments to achieve the same results.』

『Second, because the use of these new instruments can have different consequences than conventional monetary policy, in particular with respect to the distribution of wealth and the allocation of resources, it has become more important that those consequences are identified, weighed and where necessary mitigated.』

『In my remarks today I would like to discuss how our monetary policy has evolved within this new environment - both in terms of how we have deployed our instruments and how we are managing their consequences.』

ということで、ゼロ金利制約の中での金融政策運営にあたってどういう風に政策を拡大させて、その非伝統的政策の効果と副作用をどうマネージしていますかという話のようですな。


・2014年に実施した政策の意義付けを説明しているのですな

最初の『1. Monetary policy in an uncertain environment』という所では冒頭で2014年に色々と政策を打つにいたる環境としてインフレの推移とかの話をしていますがそれは上記ページに図表と説明有るから読んでちょということで最初は飛ばして途中から。


『Given that uncertainty and its impact on expectations of future monetary policy, it became much more important for us to communicate clearly how we would respond should different risks to the outlook emerge. In this context, in a speech in Amsterdam in April I laid out our reaction function to what we saw as the three most likely contingencies. [1]』

先行きの不確実性に対応するために金融政策はこういう状況に反応しますという話を4月に行ったとな。

『These were, first, an unwarranted tightening of the policy stance emanating from external developments, which would warrant a more conventional response. Second, a persistent impairment of the bank lending channel to which we would react with targeted credit easing measures - that is, measures to provide longer-term refinancing for banks and free up capacity for new lending on their balance sheets.』

最初の2つが金融政策のトランスミッションメカニズムが効きにくくなるというケースですな(前者は外的要因による効きの悪さ、後者は銀行貸し出しチャネルの弱体化)。

『And third, a worsening of the medium-term outlook for inflation and/or a loosening in the anchoring of inflation expectations, which would justify overcoming the lower bound constraint on interest rates by engaging in a broad-based asset purchase programme.』

で3番目が「インフレ期待の低下によるインフレ期待の不安定化並びに実質金利の高止まり」ですよと。


『Through 2014 each of these contingencies materialised.』

昨年はそういう危機が顕在化したとな!!


・マイナス金利はイールドカーブを下げるためでTLTROはその金利を貸出環境に効かせるため

『As the discussion of exit from accommodative monetary policy in the US gathered pace it became increasingly important for us to distinguish the diverging paths of monetary policy on either side of the Atlantic.』

ほうほうそれでそれで?

『From June onwards we therefore entered the first contingency and brought our main refinancing rate to its effective lower bound, while also introducing measures to strengthen the propagation of short-term rates to the medium-term curve. This included strengthening our forward guidance and introducing a negative interest rate on our deposit facility, which combined to measurably increase the traction of our policy rates over the shape of the yield curve.』

MROの金利が下限制約に掛かって金利低下効果が出なくなってきたからガイダンス文言の強化とマイナス金利を導入したよという説明ですな。

『But crucially, by the middle of the year we were still not seeing movements in the yield curve being reflected in the actual borrowing conditions faced by firms and households across the euro area, which meant this considerable easing was not having the impact we would normally expect (Chart 2).』

このチャート2というのが『Chart 2: Impairments in transmission』ということで金利が下がったが貸出チャネルに金利も含めて効いていないという話があります。


『It was in this context that we moved into the second contingency and launched our credit easing measures.』

したがってクレジット関連の緩和を打ち込んだよと。

『This took the form of targeted long-term refinancing operations (TLTROs), which provide cheap long-term funding to banks on the condition that they expand loans to the real economy, and thereby help restore a more normal supply and pricing of credit.』

TLTROってのがありましたなあ(今でもあるけど)そういえば・・・・・・・・・・・

『When we introduced these measures there were some doubts among outside observers as to how powerful a boost to credit supply could be, given uncertainty over the health of the euro area banking sector and signs that credit demand was also weak. It was therefore crucial that at this time the Comprehensive Assessment was also reaching its conclusion, which had encouraged banks to frontload their deleveraging and strengthen their balance sheets ? by over ユーロ200 billion in advance of the outcome. This put the sector in a stronger position to transmit this new monetary impulse.』

『Moreover, in our view there was a large degree of endogeneity in credit developments: banks were attaching higher margins to new loans to reflect their elevated risk perceptions; those higher interest rates were then taxing borrowers with outstanding credit and limiting the demand for new credit; this was in turn weighing on the economic recovery and contributing to higher loan delinquencies for banks; and then banks were justified in charging those higher risk premia ex post. If our measures could therefore incentivise banks to start competing again for good credit, rates would start to fall and this cycle could be put into reverse.』

ということでこの辺りはTLTROが効果を出しましたよというお話の部分です。

『As the credit easing programme has gathered steam, this is indeed what we have seen. Our bank lending survey confirms that competition for good credit among banks has increased. This has squeezed margins and caused bank lending rates to fall. Lower rates have in turn created more net demand for borrowing. And banks have then begun to search for the “next tier” of borrowers, leading to a gradual easing of credit standards and - we expect - a further strengthening of competitive pressures (Chart 3).』

『Importantly, this process has been driven predominantly by banks that have drawn on the TLTROs and has been operative in both stressed and non-stressed countries. As a result, it has led to a convergence in the cost of borrowing across euro area countries, with measures of dispersion in average lending rates approaching levels unseen since the start of the sovereign debt crisis (Chart 4).』

つーことでチャート3というのが『Chart 3: Effect of TLTROs on determinants of credit supply and demand』ということでクレジットの需要と供給にどう効いたか、チャート4というのが『Chart 4: Overall impact of credit easing package』となっていましてこんな効果が出たで〜という話になっています


・その次の施策はインフレ低下に対応するものだが良く見ると説明が日銀とは結構違う

『2. Moving into the third contingency』というのが次の小見出し。

『In the latter part of last year, however, the inflation outlook for the euro area began to materially deteriorate, as I acknowledged in a speech I delivered in Jackson Hole. [2]』

インフレ期待が下がる懸念キタコレ。で、ジャクソンホールで申し上げた通りといちいち説明する辺りがニクイね。

『The macroeconomic situation worsened unexpectedly over the summer as the underlying impetus that we saw earlier in the year faded (Chart 5, rhs). This removed an important force behind the reflation scenario we had expected. The sharp fall-off in oil prices that began in late summer then added further disinflationary pressures, feeding also into core inflation (Chart 5, lhs). The result was that, by January 2015, the euro area was experiencing negative headline inflation rates and a generalised decline in measures of actual and expected inflation. And while the medium-term orientation of our monetary policy strategy allows us to “look through” such price developments if they are temporary in nature, there were two reasons why we feared this would not be the case.』

物価見通しと経済見通しが急速に悪化して、特に物価が急速に悪化してマイナスまで見える状態になったので、物価の一時的低下がインフレ期待を下げたりするリスクが顕在化したと。

『First, while the fluctuations in inflation in the second half of the year were clearly being driven by supply factors, there were strong signs that the trend was being driven by weak aggregate demand. This was visible both at the macro level in a still wide output gap and a declining rate of core inflation; and at the micro level in subdued negotiated wages and low pricing power among firms.』

『In other words, we were not facing merely a downward shock to prices, but also a downward shock to inflation dynamics - a sustained adverse development.』

ということで、ドラギのおっちゃんの説明はここがどこぞの日銀と比べてクリアカットになっていまして、ドラギの説明ですと昨年の物価低下の背景には「単に供給サイドのショックによるものだけではなく、需要の弱さに起因するものがあった」という認識を示していますので、そうなりますと追加緩和のロジックって非常に分かりやすくなるわけですが、一方でどこぞのジャパンの中央銀行は「見通し通りに推移しているけれども物価が下がってインフレ期待に悪影響」という説明で追加緩和をしたので、コミュニケーションが混乱して今でも混乱したまま推移しているというお話。日本に関しても10月の追加緩和は「想定よりも駆け込みの反動が長引いているのでインフレ期待を下げないために追加緩和」というのを前面に出せば良かったんじゃないですかねえ今更の後知恵ですけど。


『Second, because of this weak underlying trend in inflation, there was a higher risk that the oil price fall could feed into second round effects.』

原油価格の下落がいわゆる2次的効果を発揮して幅広い物価の低下を引き起こすリスクにも言及してます。

『Indeed, several factors suggested that the situation was more worrying than past episodes of oil-induced disinflation, particularly the most recent case in 2009 following the collapse of Lehman brothers. Our analysis showed that the persistence of low inflation across a range of statistical metrics was higher than in 2009. Inflation expectations had also become, at all horizons, less well anchored to our objective and more sensitive to that low realised inflation, whereas in 2009 they hardly moved at all. And measures of core inflation had become less sticky, implying a higher risk that this low realised and expected inflation would become entrenched in wage setting behaviour (Chart 6).』

これは過去の2次的効果の例についての話な。

『Also relevant was the fact that this loosening of inflation expectations occurred while policy rates were already at the effective lower bound. At the lower bound a fall in inflation expectations implies a rise in real interest rates, so this development risked generating a contractionary effect that would offset, at least in part, the benefits of the fall in oil prices. Moreover, given high debt levels in parts of the euro area, this would be amplified if second round effects set in and real debt burdens increased, as borrowers tend to have higher propensities to consume and invest than lenders.』

そして今回については原油価格下落の2次的効果の懸念の話と、欧州周縁国の債務問題に関する影響についても懸念していたというお話をしているのがほほーという感じ。


・資産買入政策の目的と効果

『It was in this context that we moved into the third contingency by engaging into outright asset purchases. This began in September 2014 with our announcement that we would purchase asset-backed securities and covered bonds. And it was then scaled up in January 2015 with the addition of public sector securities to our purchase programme. These asset purchases work in two main ways.』

ということで9月にABS買入、1月にPSPPを投入しましたよと。

『First, they have a signalling effect, which contributes to re-anchoring inflation expectations more in line with our medium-term objective.』

政策効果としてのルートの1つは「シグナル効果」とな。

『This has been instrumental in reversing the rise in real interest rates that we observed at the start of this year. The euro area spot 5-year real interest rate had increased by around 60 basis points between September 2014 and January 2015; it then fell by 85 basis points between mid-January and April.』

シグナル効果によってインフレ期待のリアンカーも行われ、その結果5年物でみた実質金利が9月から1月までに60bp、その後のPSPPで4月までに更に85bp低下したとな。

『The signal that liquidity will keep expanding is also supporting a flattening of the term structure, thus further reducing real rates out along yield curve.』

流動性が拡大するというシグナル効果によってイールドカーブがフラット化したと。

『In addition, as this contributed to the diverging paths of monetary policy across jurisdictions, it also put downward pressure on the exchange rate.』

しかもこれによってユーロ安の効果があったとな。

『Second, even though we purchase only a comparatively narrow range of high-quality securities, our purchases have a direct and indirect effect across the whole financial system, through a portfolio balance effect.』

政策効果のもう一つのルートはECBの国債などの購入によってポートフォリオリバランス効果が起きたという話になっています。まあそこは基本的に眉唾なのですけど。

『They not only alter the price of risk-free securities, which forms the basis for the pricing of all financial instruments. They also generate scarcity in the market in which we buy, which encourages investors to shift holdings into other asset classes - e.g. from sovereign to corporate bonds, from debt to equity, and across jurisdictions, reflected in a falling of the exchange rate (Chart 7).』

一応『Chart 7: Portfolio rebalancing effects』にそれらしい図があるよ。

『In combination, a lower cost of debt finance, a lower cost of equity and a lower exchange rate all contribute to making investment projects profitable that were previously deemed unattractive.』

で、ファイナンスのコストや為替レートの押し下げは投資収益性のサポートになるので投資が伸びるという効果が
あるという話なのですが、それって確かに仰せのとおりではあるのですが、逆に言えば低金利政策が長期化した場合に採算性の低い投資が積みあがって資源の配分が非効率になって中長期的な経済の成長力を下げる効果があるような気もしますがね。


・2014年からの政策の総合評価はまあ当然自画自賛ですが微妙なヘッジが入っている気がしますよ

『As a result of the comprehensive easing cycle from June 2014 to January 2015, both the inflation and growth outlook have improved considerably and consumer confidence is now on the rise (Chart 8).』

『Chart 8: Macro and inflation landscape in early 2015』を見ると物価の下げは止まって上昇見通しになってきたわ成長の下げも止まって先行きの見通しは更に上向きだわもうウハウハですよ奥様!という図表があります。

『And this may indeed have come as a surprise to some observers: one of the key objections to our programme was that it would be ineffective in a low interest rate environment and/or following a balance sheet recession.』

効果は限定的とか言っていた連中も驚いた事でしょうこの効果は(キリッ)ということでただでなくさえドヤ顔なドラギのおっちゃんがここで盛大にドヤ顔になっているのが目に浮かびますね!!!!!!

『An important reason why this objection has proven questionable, in my view, is that it concentrated exclusively on the interest rate channel of transmission. What we can see, however, is that the other transmission channels of large-scale asset purchases are meaningful.』

金利のチャネルだけしか考えないと確かに効きがどうなのかという見解があるが、大規模資産買入(わざわざPSPPとかじゃなくてFED用語のlarge-scale asset purchasesを使うのがチャーミング、なお講演しているのはワシントンのIMFです)の起こすトランスミッションチャネルが効いているのですよ!!!!

・・・・・・・という説明をしていて、ちょっと前までの所で金利の話ばっかりしてねえかと思うのですが、ドラギ大先生の事ですから足元でドイツ国債の金利が上昇していることもありますので、あまり「金利」を連呼すると、「金利が上昇しているのに大丈夫か」と逆ねじ食らわされる可能性をきちんと意識してこの「金利だけではありません(キリッ)」というのを入れているというこのヘッジ文言恐るべし。

『The portfolio balance effect is still powerful in a bank-based economy and when interest rates are low or even negative - indeed, it is perhaps even more powerful in this environment as investors are displaced into more risky asset classes, such as equity.』

銀行ベースの経済でも金利をマイナスにしてしまえばポートフォリオリバランスチャネルが効くんですという話ですが正直それはどうなのという疑問は湧き起る。

『And when there is high uncertainty, signalling effects can become commensurately stronger if well-timed and clearly communicated.』

シグナル効果も十分にコミュニケーションしていると効くんです!だそうな。

『While we have already seen a substantial effect of our measures on asset prices and economic confidence, what ultimately matters is that we see an equivalent effect on investment, consumption and inflation. To that effect, we will implement in full our purchase programme as announced and, in any case, until we see a sustained adjustment in the path of inflation. After almost 7 years of a debilitating sequence of crises, firms and households are very hesitant to take on economic risk. For this reason quite some time is needed before we can declare success, and our monetary policy stimulus will stay in place as long as needed for its objective to be fully achieved on a truly sustained basis.』

でまあベンダーニュースになっていたのはここの部分ですね。このように政策が効いてきましたがより効果を出して経済を望ましい状態にするには今の政策を継続しますということで。


で、この講演その後にリスクマネジメント的な話があるのですが時間の都合上今日は割愛します。




2015/05/14

お題「佐藤審議委員講演はレポ市場の整備に関するお話で金融政策ネタではないがマニアネタ」

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL13HFH_T10C15A5000000/
4月街角景気、現状判断指数が5カ月連続改善 基調判断は維持
2015/5/13 14:54

『内閣府は「景気に前向きな見方が増える半面、物価上昇などを背景に消費の慎重さへの指摘も根強い」と指摘。街角景気の基調判断は、3月と同じ「緩やかな回復基調が続いている」に据え置いた。』(上記URLより)

>物価上昇などを背景に消費の慎重さへの指摘も根強い
>物価上昇などを背景に消費の慎重さへの指摘も根強い
>物価上昇などを背景に消費の慎重さへの指摘も根強い

この調子では物価が上がった日には消費が落ちるとしか見えませんな。

ちなみにモーサテ様での朝刊紹介コーナーでは威勢の良い部分だけを連呼する中でこちらの記事はきっちり指摘あるじゃんと思ったら書いているの本紙じゃなくてNQNですかそうですか。

○本日は3M入札であります

ええまあ市場メモ書こうと思っていたのですが下の話で時間を全部使ってしまったのでアレということで、備忘で3Mの入札ありますがまたマイナスですかプラスになりませんかねえとい話と、なんか知らんけど米債また金利上昇していますね何なんですかというメモだけ置いて本日のネタは佐藤審議委員講演ですがネタがマニアックなので3行読んで面白くないと思う方は全部読むのは時間の無駄と思いますので念のため申し添えます。



○佐藤審議委員の講演は金融政策的には特段の話ではないがトピックとしてはマニア向け

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150513a1.pdf
東京金融市場のさらなる発展に向けて── レポ市場改革の取り組みを中心に ──
(FIAジャパン金融市場会議2015における講演の邦訳)

めんどいので日本語版をネタにします(汗)。

・お話自体は金融政策とは関係ないです

『わが国のレポ市場は、国債の先物市場がそうであるように、国債の発行・流通市場に対して流動性を供給し、円滑なマーケットメイクと価格形成に貢献するという非常に重要な機能を果たしている。その意味で、国債の先物市場とレポ市場はいわば車の「両輪」の関係にあり、レポ市場の発展は、国債市場の流動性向上を通じて、先物市場のさらなる発展にも繋がると考えられる。そうした金融市場間における相乗効果を期待しつつ、レポ市場を巡る国際的な議論の動向や市場の発展に向けた市場関係者の取り組みについて、日本銀行の考え方や役割なども交えながらお話したいと思う。』

という話ですので、金融政策とは関係ない短期金融市場とか債券市場とかの市場整備の話になっております。本件に関しては何で今この時期に推進をするのか意味が分かりかねる国債決済T+1化に向けた取り組みに対して、国債決済T+1を実施するにはレポ市場において現状の取引手法ですと事務が回らないのが明白(そもそも今の時点でも債券ディーラーの事務が繁忙)であって、この点を回すためにはトライパーティーレポのような形で業務の効率化を業界全体ではからないと無理ですから、そもそも論としてT+1実施の前提にレポ市場改革があるという話。

なお、確かに取引未決済リスクの削減とかの為にはT+2よりもT+1取引の方が良いに決まっているのですが、そのリスクというのは参加者が個別にコントロール可能なものであって、そこの削減に伴って発生する膨大なシステム投資や事務的な人的含めたインフラ整備のコスト、(取引に慣熟するまでの)事務リスクの高まりといったコストとの勘案でみた場合に、今のように短期市場金利がゼロ近傍になっていて、かつ日銀による大規模資産購入で債券現物市場の流動性が大きく低下しているときに、そのようなストレスのかかることをするというのはどう見てもダメだろと言うのは昔から申し上げている通りです。この件って大昔からある「取引のDVP化」から始まる一連の流れではあるのですが、国債決済期間の短縮化の為にレポ市場改革という流れになっているのもどうなのかというか、そもそも市場環境が変わっているのに当初の計画を碌に見直さないで突き進もうというのがどうなのかと思うのですがその辺のそもそも論はこの辺にしておいて先に逝きます。


・残高自体はまあそうなのですが短期市場の実質的な主力”運用”商品は別だと思うの

『さて、皆さんご承知のとおり、レポ取引は、資金と証券を一定期間交換する取引であり、多くの主要な金融市場において、資金や証券の運用・調達を行うための重要な取引手段となっている。わが国のレポ市場の残高をみると、2008年のリーマン・ショックの後一旦減少したが、足もとにかけては一段と増加しており、短期金融市場の約半分を占める中核的な存在にまで成長している(図表1、2)。』

何せQQEの前から預金金融機関は基本的に全てがローンポジション状態になっている上に、足元ではQQEの拡大により各行とも超過準備をこれ以上積めるのか、という状態になっていて、無担保コール取引自体は勿論あるのですけれども、そらまあ恒常的にマネーポジションの銀行というのが(一時的にマネーになっているとか、超過準備積み上げのご協力的なマネーという話は別)原則として居ませんがな、という状況において、無担保コール取引自体がそもそも指標性に欠けるし、その市場自体も重要性が落ちているのはその通り。

でまあ現状マネーポジション的になっているのはどこかと言えばそらもう国債大量発行を背景にして取扱高が大きくなっている国債のマーケットメーカーという事になりまして、在庫ファイナンス分は(資本勘定とかCP発行などの無担保調達もありますが)在庫の国債使って有担保調達になりますし、日々在庫は動くのでトランザクションも多いですしということで、まあ残高が大きいのはその通り。

おっちゃんが小僧の頃は都市銀行などが恒常的にマネーポジションでコール市場などで恒常的に資金を取っていて、しかもそのブレを毎日調節しないといけないので必然的にコールへの依存度が高くなり、そういう調達サイドの事情がある一方で農林系とか地域金融機関が恒常的にローンポジションとなっていましたが、調達サイドのニーズがそこにあるから運用サイドも必然的にそちらに向かうという構造で、ターム物に関しては短期国債市場では発行残高が不足していたので常に公定歩合よりも大幅に低い金利で取引されていて運用商品としての妙味がなくて、銀行発行のCDが大きかったとかそういう時代ではありましたな。

然るに、現状では短期金融市場の恒常的なマネーポジションってそういう意味では国債ディーラーが一番大きくて、そちらのニーズとしては当然レポ調達という話になるから図表の2にあるように資金調達サイドのニーズがそこにあるという話。

でまあそらそうなのですが、良く良く考えてみると短期市場で昔から比較して爆発的に調達を拡大しているのは政府もそうなのでありまして、短国市場の残高がこれだけあって、3か月物国庫短期証券が毎週5.4兆円ペース(今の所)で発行されている、という事になるとそらまあ運用サイドはそっちに逝ってしまいます罠という話で、レポ取引自体の残高が大きいのはその通りなのですが、では取引の参加者の広がりとか深みという点で特に資金取引サイドがどうなんでしょうというのは毎度ながら微妙ですなと思うのよね。

『このレポ市場について、わが国では、「市場改革」ともいえる取り組みが、国際的な議論も踏まえつつ、市場関係者の間で進められている。今、「市場改革」と申し上げたが、私なりにこの「改革」でポイントとなる視点を整理すると、「透明性」、「安定性」、「効率性」、「グローバル化」の4 つになると思っている。』

ということで先に進む。


・FSBのレポ改革

『レポ取引については、リーマン・ショックを契機とするグローバル金融危機の経験も踏まえ、G20 のイニシアティブのもと、FSB(金融安定理事会)などの国際的なフォーラムにおいて、その「透明性」や「安定性」を一段と高めるために、さまざまな改革に向けた議論が行われており、日本銀行のスタッフもこうした議論に参画してきている(図表3、4)。』

『こうした議論の背景には、主として米国において流動性の低い証券化商品を対象とするレポ取引が大きく増加し、いわゆる「シャドーバンキング」としてレバレッジの拡大や過大なリスクテイクが生じていたことが、金融危機をより深刻なものにしたのではないか、との問題意識がある。』

後の方で説明がありますが、そもそも日本のレポ取引というのは国債発行額の拡大と共にショートセールのカバー取引と在庫ファイナンスの為に拡大した市場であって、流動性の低い金融商品のファイナンスによってレバレッジを高める取引として使われている訳ではないので、FSBの問題意識を日本にそのまま持ち帰りされても迷惑以外の何物でもないので、FSBにおける議論においては関係各位の奮闘に期待します。

『FSB の議論では、こうした「行き過ぎ」を防ぐためには、まず、金融当局がグローバルなレポ取引の動向を適切にモニターする必要があるとされた。また、適切なヘアカットを導入することでレポ取引のリスク管理をより強化していくことも求めている。つまり、グローバルな金融安定上のリスクに対応するため、プルーデンス政策の観点から、レポ取引の「透明性」と「安定性」を更に高めて行くことが国際的に合意された。』

なお後にありますが国債はヘアカット義務がありませんので中曽副総裁でも安心です(違)。


『(「透明性」の向上に向けた改革<データ収集体制の構築>)』

『FSB は、レポ取引の担保となる証券などの詳細なデータを収集し、レポ取引によるレバレッジの積み上がりのほか、満期ミスマッチの状況、特定の市場参加者へのリスクの集中度合いといった金融安定上のリスクを把握することを狙いとして、レポ取引に関するデータの収集体制を各国およびグローバルの2 段階で整備していく方針を示している。現在、FSB 内の専門家グループにおいて具体的な検討が進められており、日本銀行もメンバーとして議論に参加している。』

しかし在庫ファイナンスとショートセールの在庫確保という観点からするとファンディングがオーバーナイトになってSC借入がタームになるのですが、それを捕まえて「期間ミスマッチが拡大しているのでご指導」とか飛んできたら困るので「国債市場が巨大だから自然に起きている現象」というのと「レバレッジの積み上がりによって起きている現象」というのは良く良く考えて規制をかけていただきたいものです。

『昨年11 月には、データ収集の項目等の詳細を示した市中協議文書が公表され、この市中協議の結果を踏まえて、本年末までに最終的なデータ収集の枠組みが取り纏められる予定である。』

それは良いのですが、いちいち取引データ出せという話になったら只で無くさえ事務面が煩雑な今のレポ取引に対して「単なる余裕資金運用の一環」としてしか考えていない恒常的な資金の出し手が面倒を避けてGCレポ運用から手を引くようなことが起きないようにお願いしたいものです。そらまあ調達サイドは調達できないと困るから当然こういうのは頑張るでしょうけどね。


『今後を展望すると、本年末にかけて、グローバルレベルでのデータ収集に関する議論が深まるもとで、わが国においても、各国レベルでのデータ収集をどのように行っていくか、といった議論が徐々に本格化していくと思う。その際、円滑なデータ収集を行うためには、当然のことながら、システム対応など市場参加者の負担や取引実務にも十分な配慮が必要である。』

と思ったらちゃんと言及している所を見ると相当言われてますな(^^)。

『そのうえで申し上げると、政策当局の間では、今回のデータ収集プロジェクトは、レポ市場、さらに言えば、銀行システムの外側にあるシャドーバンキングの「透明性」を高める効果的な手段であり、金融安定上のリスクを抑制していく上で、とても重要な政策対応であると広く認識されている。』

言いたいことは分かるが米国だけでやってくれとしか申し上げようがない。

『従って、今回のデータ収集プロジェクトにしっかりと対応することは、わが国金融市場に対する国際的な信認を確保し、グローバルな金融市場間の競争力を高めるだけでなく、グローバルな金融安定への貢献といった観点からも大切なことだと思っている。日本銀行としても、レポ取引のデータ収集体制の円滑な構築に向けて、内外の関係者と協力しながら、引き続き積極的に貢献していく考えである。』

そもそも米国様が無茶な取引をしてチョンボをしたのに対して、そういう事を全然していない他国がそのチョンボの後始末に巻き込まれて、無茶をしてないのにわざわざ手間暇かけて(もとより実施していない)無茶取引をしていませんというのを疎明しないと国際的な信認を確保できないというのが話の筋として何だかなあという感じでして、それよりも「まずこれらの取引を行っている米国に対して厳しい開示を求める」という話を他国と組んでやった方がよろしいんじゃないでしょうかとか言うと米国ではドットフランクでという話になるんですかね。


『(「安定性」の向上に向けた改革<適切なリスク管理の実施>)』

『レポ取引における「ヘアカット」とは、担保となる証券の価格変動リスクを反映した「掛け目」をかけたうえで資金のやり取りを行うことで、取引の安全性を高めるリスク管理の仕組みである。金融危機の際には、レポ取引の担保となっていた証券化商品の価格が急落し、そのヘアカットが急激に引き上げられた結果、証券化商品の価格下落や流動性の低下がスパイラル的に加速し、レポ取引の「安定性」が著しく低下したとの指摘がある。』

それはそうだが日本はそもそも国債レポばっかりなのですけど。

『こうした経験を踏まえて、FSB では、各国当局に対し、中央清算機関(CCP)で清算されない全てのレポ取引について、「ヘアカット」に関連した2 つの政策対応を求めている。』

つーことだがそもそもCCPで取引飛んだ時にちゃんとCCPが補填してくれないのであればCCP清算とそれ以外を分ける意味がないのだがその辺はどうなっているのでしたっけ。

『まず、一つ目が、レポ取引のヘアカットに下限値を設定する「最低ヘアカット規制」である(図表5)。景気が良い時には、市場参加者がレポ取引の担保となる証券の価格変動リスクを過小評価し、過度に低いヘアカットを設定する傾向が指摘されている。この規制の狙いは、レポ取引を行う際に、過度に低いヘアカットを適用するインセンティブを抑制することで、好況時の行き過ぎたレバレッジの拡大や、不況時の急激なデレバレッジ、いわゆる「プロシクリカリティ」(景気循環性)を防ぐことにある。』

まあ趣旨は分かる。

『なお、現在の政策提言では、国債を対象とするレポ取引は「最低ヘアカット規制」の対象外とされている。これは、国債の価格動向は景気循環的でない傾向がみられることや、国債のヘアカットは多くの取引でゼロ、あるいはゼロに近いためとされている。この点、わが国のレポ取引は、証券化商品を担保とするレポ取引のウエイトが相応にある米国などとは異なり、その殆どが国債を対象としており、ヘアカットを行わないものが大部分を占めている(図表6、7)。このため、「最低ヘアカット規制」が、わが国のレポ市場に与える影響は、現時点で、全体としてそれほど大きくならないのではないかとみている。』

ということで、順当な話がやっと出てきたわけですが、そこまでの話が米国市場において発生した問題を軸に展開されていて、日本の事情に関する話をここに持ってきているのって、講演の相手が外国の方を念頭に置いている(もともと英語だし)からそれでも良いのかもしれませんが、こうやって邦訳テキストに落とされると文章構成的に先に「なんか日本市場と関係ない話をしていますが」という印象を与えてしまいますので構成上宜しくないのではと思うのですが何とかならないのですかねえ・・・・・・・・・・・・

『さきほど申し上げた通り、わが国のレポ取引は、その殆どが国債を対象としており、ヘアカットを行わないものが大部分である。もっとも、十分な信用力と流動性を備えた国債であっても、金融商品である以上、価格変動のリスクがあることは否定できない。』

『このため、ヘアカットのメソドロジー基準のあり方も含め、レポ取引の安定性を確保していくうえで、どのようなリスク管理が望ましいのか、市場参加者間で議論を深めながら、共通の認識を作り上げていくことが大切だと思う。』

そらまあそうなのですが、図表5の最低ヘアカット基準って担保の残存期間と種別の概念があるのですが、レポ取引そのものの期間の概念がないのが変でして、今の日本のレポ市場みたいにT+1スタートの翌日物取引が主体とかになっているときに、3か月ものとかの取引と同様のヘアカットを適用するのが適切なのかどうかとか(マージンコールの問題もありますが)、その辺の概念って無いのかねとは突っ込みたくなるのでありました。

『この点、FSB では、法域間の規制裁定を抑制する観点から、最低ヘアカット規制の実施状況を定期的にモニタリングする枠組みを導入する予定である。このモニタリングの結果によっては、将来的に、現在国債を対象とする取引をグローバルな規制対象から除外している最低ヘアカット規制の「適用対象」や「最低ヘアカット水準」の見直しを検討する可能性があるとしている。』

日本国債格下げでどうのこうのという話がありましたな。ドメ取引における自国国債担保取引にヘアカット掛けるというのは何だかなあという感じはしますが(価格変動リスクという観点でかけるのなら取引期間やマージンコール適用の有無も勘案して欲しい)。

『日本銀行としては、2017 年末までの導入が予定されている最低ヘアカット規制が、グローバルなレポ市場の流動性などに「意図せざる影響」を与えることがないかどうかにも留意しつつ、今後とも、最低ヘアカット規制の枠組みの検討に関する国際的な議論に積極的に参加していく必要があると思っている。』

自国ソブリンに関しては除外の方向でお願いします。ECBに関しては「財政統合していないからお前らはソブリンじゃない」という事で(^^)。


・国債決済期間短縮化の話は毎度のお話ですがレポ市場と絡めて

次が『3.「効率性」の向上に向けた改革(国債取引の決済期間短縮化)』のコーナーキタコレ。

『以上申し上げたレポ取引に関する国際的な議論と並行して、国内では、国債取引(アウトライト取引)の約定から決済までの期間を2 日(T+2)から1 日(T+1)に短くする取り組みが進められている。』

進めさせられ(銃声)。

『国債決済期間の短縮化は、リーマン・ショック後の国債市場におけるフェイル急増の経験を踏まえた取り組みであり、未決済残高の圧縮を通じて決済リスクの削減を実現するものである。』

それは分かるがカウンターパーティーリスクを厳格に管理すればそんなのは削減できるのであって、しかも各種金融規制により金融市場参加者の資本バッファーが強靭化された中でこの未決済リスク削減を急ぐ必要があるのかというのが甚だ疑問で、市場環境の変化に対応しないで当初決めたからそのまま続けるというのはどこぞのマネタリーベース目標政策のようで実にジャパン的であります。

『しかし、金融市場インフラの整備の観点からみると、国債決済期間の短縮化は、わが国のレポ市場に大きな変革をもたらし得る重要な取り組みであることに気付く。』

つーかT+1するのに今のままだと事務が回らんという話。

『国債のT+1 決済を実現するためには、国債のアウトライト取引等の結果として生じる資金や債券の過不足の調整に用いられるGC レポ取引について、T+0 決済(即日決済)を実現することが大前提となる。そのためには、レポ取引にかかる事務処理の一段の効率化を進める必要がある。これが3 つ目のキーワードである「効率性」の向上である。これを実現するため、わが国では、GC レポ取引に係る「銘柄後決め方式」の導入、そして、そのための担保管理サービスを行うインフラの整備が予定されている。』

『レポ取引における「銘柄後決め方式」と「担保管理インフラ」の導入、つまり、レポ市場における効率化の一層の進展は、わが国の短期金融市場に大きな変革をもたらす可能性がある。なぜならば、それが大規模な即日資金市場の創設を意味するからである。』

・・・・・・・だと良いのですが、そもそもこれらのインフラ整備に金がかかる上に、担保管理サービスに対してもフィーを払わないといけない訳でして、そのフィーが少なくともコール媒介手数料などの現状のコール取引に関するコストと同等かそれ以下じゃないと資金運用サイドの積極参加が見込めないと思うのですがそれは。

つーかですね、このレポT+0の話って国債決済T+1の方から話が先に来ているので、そらまあそうなったら国債のマーケットメーカーは対応するために色々と動くのが必然なので、資金調達市場としてはT+0レポ市場ってのが出来るのですけれども、運用サイドのニーズは特段斟酌して話が進んでいる訳でもないので、運用サイドとしては参加するだけの運用面での有利性が必要で、このウルトラハイパー超低金利の中でシステム対応の投資が必要でフィーが安いのかどうかとかレートが有利なのかどうかとかが分からない上に事務面でどうなるか分からない取引に参加するのかよと言いますと、先ほども申しあげましたように偉大なる3か月もの国庫短期証券市場があり、保振で超便利になったCP市場があり、事務周りがあっという間のSTPで回る短資約確システムに乗るコールローン取引がありとなっているのがどうも。

まあそうは言いましても決済がたくさんある銀行業態もシステム対応はしないといけない口でしょうから、銀行業態と国債ディーラーの所で取引は回るでしょうし、残高も当然ながら積みあがるとは思うのですが、ロット的にそれほどではないにせよ安定的な余資放出主体が参加しやすいような取引になる事によって取引の厚みが出ると思いますのでその辺は宜しくお願いしますというか、日銀のこの手の講演とかを聞いて(見て)おりますと、資金調達サイドの事情については良く把握しているようですが、運用サイドの話になると途端に疎くなる傾向が見られるのでして、まあそちらへの考慮もして頂きたいものです。


・レポ市場の将来の展望に関して

『かなりざっくりとした見積もりだが、現在T+1 決済で行われている翌日物GCレポがT+0 決済に単純に全て移行すると想定すると、その市場規模は20〜30 兆円に達することが予想される(図表8)。一方で、例えば、翌日物の無担保コール市場(短資経由)の残高は、現在2〜3 兆円程度である。つまり、わが国のT+0決済のGC レポ市場は、将来的に、コール市場の規模を大きく上回り、東京短期金融市場において最も大きな翌日物の即日資金市場となる可能性がある。』

そもそも銀行業態が全部ローンポジションの中では翌日物コールというのはマージナルな取引にならざるを得ないのですが、レポ市場に関しても資金調達プレーヤーが「証券会社」に偏ってしまうので、それはそれで残高は大きいにしても本当に指標性のある取引なのかというのは微妙な気がします。まあ将来にわたって無担保コールを政策金利にするというのもどうかと思いますが。

#一番指標性が高いのは今や3か月もの国庫短期証券利回りだと思いますけど

『冒頭に申し上げたとおり、わが国のレポ市場の残高は大きく伸びているが、金融危機以降の資金市場の動きを振り返ってみると、無担保の資金取引が世界的に縮小している一方で、有担保の資金取引は相対的に活発である。これには、金融危機後のインターバンク取引における信用リスクに対する意識の高まりや、無担保の短期資金取引の増加をディスカレッジする金融規制の導入といった、構造的な要因が影響しているように思う。』

まあそれはそうですが、金融緩和によって恒常的なマネーポジションが縮小しているというのもあるような気がします。

『こうした大きな流れを踏まえると、T+0 決済のレポ市場という即日資金市場が創設されることは、既存のコール市場における資金取引への影響のみならず、中央銀行が行う金融調節オペレーションにとって重要な市場である短期金融市場全体に構造変化をもたらす可能性があると思う。』

つまりレポ金利を誘導目標にしたりレポ市場向けオペをすることを正常化後の展望として考えていると。

『この点、現在のコール市場とGC レポ市場の参加者を比べると、資金調達面でのプレゼンスは、前者は「銀行」や「短資会社」が高い一方、後者は「証券会社」が高くなっている(図表9)。』

さっきも申しあげたが何故この話を先に持ってこない・・・・・・・・・・

『また、将来を展望すると、即日決済のレポ市場が発展することによって、即日資金市場の厚みや参加者の多様性が増し、短期金融市場全体の活性化に繋がる可能性もある。』

まあどうなんでしょうね。将来にわたって銀行全部がローンポジションであるという訳でもないでしょうからそうなった時にはまた変わるのでしょうね。


・新現先の話はマニアすぎるので割愛します

『4.「グローバル化」に向けた改革(レポ取引の新現先取引への移行)』という所で新現先方式への移行という話があるのですがこちらは時間の関係もあってスルーしておきます。

ただ、このグローバル化に関する話では日本国内の破綻法制との整合性というのをどう担保するのかも重要で、一括精算条項とか入れても保全命令との関係って実際に誰か勇者が裁判起こしたら本当に大丈夫なのかという法律的整合性がどうなっているのかとか、その辺がどうもよくわからん(アタクシの不勉強で本当はちゃんと破綻法制の改正が行われているのだったらすいませんとしか申し上げようがないのですが)次第なので誰か詳しい人教えてジェネラルという所です。




2015/05/13

お題「6M入札は毎度の結果&10年入札などなど/展望レポートの物価上昇メカニズムはどう見ても楽観にすぎる件」

昨日は台風で今朝は地震とな。

○市場メモ関連

・6M入札ェ・・・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150512.htm

(3)募入最低価格 100円00銭3厘(募入最高利回り)(-0.0060%)
(4)募入最低価格における案分比率 66.2644%
(5)募入平均価格 100円00銭3厘(募入平均利回り)(-0.0060%)

100円の一つ上どころか3つ上の所で切られてほぼ一本値(ほぼ、というのは市場推計の落札分布からすると3厘満額応札以上に落札したことになっている人がいるようなので)という結果になりまして、100円の一つ上で切れてその後ワッショイとか言ったのよりも強い結果でしたすいませんすいません。

つーてもマイナス利回りなのは同じでして、6Mって昨年の11月に行われた入札の時が丁度10月のQQE拡大を受けて短国オペへの負担を軽くしようという話だったので短国オペが抑制されるという期待から一旦金利がプラス化した時(その後日銀が無慈悲買入を実施して短国市場への負担を軽減とは何だったのかという事になり、いわゆる日銀トレードも活発化しだしたのはさんざん悪態を申し上げた通りです)でしたので、まあそれ以来延々と6M短国はマイナス推移という事でして、3Mの金利がプラスになった3月でもマイナスだったので結果そのものはシャーナイナイ。

ちなみにBB引けも売買参考統計値もマイナス1.6bpになっていますので、入札水準から1bp強い所になっていまして、まー100円の一つ上で切れて引けがマイナス1bpとかテキトーに書いたのもそれほど外していないな等と謎の言い訳をしながら売参を見ますと、直近入札の3Mカレントの引けは530回がマイナス0.5bpですけどその前2銘柄の3Mカレントの引けがマイナス1.9bpになっているので、金曜に向けてもうちょっと6M強くならんとカレントが残っているんだったら買入でどっちが入るか分からんですなという気もするのだがもう玉が無いですかね。

まあ6Mは日銀オペ専銘柄になっていると申してもおかしくない状態なので勝手にやってればという感じですが、3M入札のマイナス金利状態が続くっつーのがもう何だかねという所で、この6Mはオペに打ち込まれ銘柄として今週の3Mがどうなるかですけど、まー3つ上で切ってくる位には業者のポジションにも余裕があるんでしょうから今週も厳しくて、6月になって短国買入のフローが落ちるのが見えているだけにその手前辺りでどうにかなるかならないかという話っすかねえ(呆然)。

#どうせ今週は3Mの翌日の短国買入が6M買いたいニーズで増額だろうと予想されるので入札も強くなりやすいし


・なお米国では短国をニーズに合わせて増発しています

余談ですがね。

http://www.treasury.gov/press-center/press-releases/Pages/jl10045.aspx
Quarterly Refunding Statement of Acting Assistant Secretary for Financial Markets Seth B. Carpenter
5/6/2015 Page Content

でまあこちらなのですが、短国の所を見るとこのような記述が。

『Bills Supply』

『The supply of bills outstanding as a percentage of the total Treasury portfolio is at a multi-decade low of approximately 11 percent. Demand for Treasury bills is high and is expected to grow even more significant. Therefore, Treasury believes that it is prudent to increase the level of Treasury bills outstanding, at least somewhat, within the total amount of securities issued for authorized purposes.』

(;∀;)イイハナシダナー

『This increase in issuance will help achieve our objective of lowest cost of funding over time and will enhance market functioning and liquidity. Furthermore, this increase in Treasury bill supply should not be interpreted as changing Treasury’s debt issuance strategy of extending the weighted average maturity of the debt.』

ということで米国財務省様におかれましては市場におけるT-Bill(日本でいう短国)のニーズが高まっており、今後もそのニーズが高まっていること、その一方で発行のうち短国の残高シェアが下がっていることを鑑み短国の発行を増額することが適切と判断したというお話で、これにより市場機能と流動性を高めるという実にイイハナシダナーという動きが行われている訳ですな、うんうん。

背景としてはLCR規制の問題とかMMF規制の変化とかの問題があって短国へのニーズが従来以上に高まっているのに発行年限長期化しちゃっているし財政締めているから短国の発行が追い付いていなくて、その結果米国でも短国の金利が下の方に突っかけに逝っているという状態があるっつーことですが、そこでどこぞの国のようにやれマイナス金利だの金利低下は政策効果(キリッ)だのという話をするのではなく、発行当局が短国の発行を拡大するというのは実にイイハナシダナーとしか。

いやまあECBとか日本と違って金融政策が出口モードだからだろうというツッコミはあろうかと思いますけれども、QE2とか開始したころにはFRBってなんちゅうぶっきらぼうなオペレーションをしやがるなあとか思っていましたが、今となっては3極の中で米国の金融政策および国債発行当局が一番市場機能への配慮がある(ECBの買入は市場への流動性云々という触れ込みはあるがそもそも預金ファシリティをマイナスにしている時点で短期金融市場への配慮がマイナス無限大で、債券市場と短期金融市場は根っこでリンクしているのだから結局ダメなのは同じ)という事になっているのがオソロシスという所ですな。

まあこの増発やってもまだ足りない感は強いみたいですけど「長期化するという方針は変わらないですけれども、市場のニーズが高まっているのでそれはそれとして短国の増発をしますよ」というその姿勢が大変にイイハナシダナーでありまして、規制などの動向も踏まえて自分の庭先だけではなく総合的に判断しているというのが良いですな。


・10年国債入札&欧米金利

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20150512.htm

6. 価格競争入札について
(1)応募額 4兆9,186億円
(2)募入決定額 2兆1,945億円
(3)募入最低価格 99円57銭 (募入最高利回り)(0.445%)
(4)募入最低価格における案分比率 32.3968%  
(5)募入平均価格 99円67銭 (募入平均利回り)(0.434%)

欧米金利謎の上昇を受けて前日まで楽勝という感じだった雰囲気が一転して急にうーむという感じにはなっていましたが、前場から10年甘くしてしかも前場引けにかけて0.430%→0.435%→0.440%と勢いよく叩いて来ましたので、これは入札直前に甘くして安く見せておいて前場引けよりも強く入札して戻すパターンですなとか思ってみていたら足切は前場引けよりも5糸甘くして来るわ応札倍率は低いわという中々残念な状態になっておりまして、何度か戻るかと思う動きもあったものの結局14時過ぎ位から失速してヘロヘロの巻となってしまいましたな。引けではちょっと戻ったけど落札結果水準は回復せずにナムナム。前場引けのバランスから見ると先物の方が叩かれた格好で引けている(前場引けに10年を勢いよく叩いたというのはあるのですが)ので10年の買いなのか先物の叩き料理があったんでしょうけどね。


なお前場引けに掛けてちょうどこのヘッドラインが出ていたのですが。
http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0NX07J20150512
当座預金付利の引き下げや撤廃、検討してない=黒田日銀総裁
2015年 05月 12日 12:30 JST

これは参議院財政金融委員会での民主党大塚耕平委員に対する答弁で、文脈としては大塚さんが「超過準備に付利して膨大な金利を銀行に支払っているがそれだけ払って然るべき効果が出ているのか、効果が小さいなら止めるべきでは」という質問をしたのに対しての答弁という事のようですが、債券市場的にはこの件は別に織り込み済み(大体からしてその後に実施された6M短国入札が上記の結果ですし)だとは思うのですけれども、ここもと追加緩和否定チックな自民党からの発言もありましたし、この辺って心理的に効くんですかねえ良くわかりません。


ところで欧州とかの金利。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NO87SJ6KLVRO01.html
世界の債券売り続く、独10年債利回り今年最高付近-ユーロ上昇
2015/05/12 17:06 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NO93R66VDKHT01.html
米国債:上昇、投資妙味に買いが戻る−世界的な売りに一服感
2015/05/13 06:43 JST

ということで欧州時間では途中まで盛大にドイツ債売られてあばばばばーとなっていたものの、いったんPSPP実施前の金利水準まで上昇したので止まって、それを見て米国長期債の金利上昇も一服というお話のようですが、まあジャパンの例を考えてみますと2013年は黒田バズーカ期待でドンドン下がった日本の長期金利がバズーカ打って盛大に下がって0.315%まで瞬間やったあと上昇して0.6%近辺で一旦うろうろした後に、黒田総裁が長期金利の上昇について「実質金利の低下が重要」と名目金利の上昇をスルーする発言をしたのが一段安のきっかけになりまして(なおGUがその時期に期間限定で打ち込んだきゃりーぱみゅぱみゅさんがマーライオンになるファッションモンスターのCMが影響していたというギャグは今でも唱えますがががが)一段の金利上昇という2段下げ(価格的に)をやらかしておりますので、そう考えますと本当に止まったのかはワカランチ会長。

まーこれがPSPP盛大に進んで今のジャパンのように「そもそも投資家に売るものが無い」という素敵な状態になってしまえば話は別なのですが、「預金ファシリティがマイナスなのでキャッシュ保有にコストがかかる」という状態の中では将来のキャリーを飛ばして売るにしても金利が下がり過ぎると却って売るに売れないという状態になっていたと思いますので、そーゆー意味ではどちらに転ぶのか良くわからん。PSPP始まってからの上げ局面で「投資家の踏み」的なのもあったと思いますし、元々の時点で投資家には売るものが無くて今でもあまりないのかもしれないし、その辺の需給次第じゃないですかと適当なことをほざいてまとめにならない纏めをしておく。


○展望レポート全文ネタ続き(すいません)

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1504b.pdf

最後の所の『(物価変動を取り巻く環境)』の部分で、物価見通しの中で需給ギャップの観点からの話は昨日引用しましたが、ではこれがフィリップスカーブ的にどうなのかという話に参ります。

そのまえに見通しから。

『以上を踏まえ、消費税率引き上げの直接的な影響を除いて物価情勢を展望すると、国内企業物価は、2015年度は原油価格下落の影響から横ばい圏内の動きとなるものの、2016年度以降は、海外経済や製品需給の改善、国際商品市況の上昇を背景に、緩やかな上昇を続けると予想される。』

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、エネルギー関連の下押し効果とそれ以外の品目の改善効果が相殺し、0%程度で推移すると予想される。もっとも、2015年度下期以降は、エネルギー関連のマイナス寄与が減衰する中で、需給ギャップの改善と中長期的な予想物価上昇率の高まりの影響が続くことや、そうしたもとで既往の円安などによるコスト上昇の転嫁が再び進んでいくことから、全体として上昇率を高め、2016年度前半頃には2%程度に達する可能性が高い。』

『その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると考えられる。2016年度までの消費者物価の見通しを1月の中間評価時点と比較すると、やや下振れている。』

ということですが、昨日も散々申し上げましたようにそもそも円安のコスト転嫁がスムーズに進むのかとか、進んだとしてそれが消費を抑制する結果になって景気のモメンタムを下げて結局のところ物価の上昇を抑制するんじゃないのかとか、まあ見通しそのものが楽観過ぎのような気がしますがね。


でもってフィリップス曲線での整理。

『以上の物価見通しをマクロ的な需給バランスとの関係(いわゆるフィリップス曲線)で整理すると(前掲図表15(2)、45)、2015年度の消費者物価は、直前に円安が急速に進行した2013年度の動きと同様に川下へのコスト転嫁が進捗することや、中長期的な予想物価上昇率が高まることから、需給ギャップの改善ペースをはっきり上回るかたちで上昇率を高めると予想される。』

2013年度はその結果として消費がコケてしまって実際問題として原油以外のコアコアだって弱くなったと思うのですけど何故今回は大丈夫と言い切れるのか小一時間問い詰めたいが、「2年連続ベアに見られるように所得面にも変化があり、ここまでの物価上昇という実績で物価観に変化が生じているから今回は大丈夫です(キリッ)」という屁理屈で返されるという位の想定問答はアタクシのような浅学菲才でも作れます。

『2016年度は、円安の効果が徐々に剥落する一方、中長期的な予想物価上昇率の上昇が続くため、需給ギャップの改善をやや上回るペースでプラス幅が緩やかに拡大し、2017年度は、消費者物価の前年比は2%程度の状態を続けると考えられる。』

それは良いのだがこれまた昨日申し上げたようにだったら何で見通しの期間中の金融政策が実質ゼロ金利なのか小一時間問い詰めたいし、実質ゼロ金利政策でQQE状態なままな前提じゃないと2%に行かないのであれば、そもそも論としてそれは「安定的に2%」というのには不適当ではないかと思うのですが(中立的な金融政策の元で安定的に2%じゃないと物価安定の目標達成とは言わないでしょ)。

『このように、中心的な見通しでは、消費者物価の前年比は、需給ギャップの改善に比較的明確に反応していくとともに、フィリップス曲線自体も中長期的な予想物価上昇率の高まりを反映して、次第にシフトアップしていくと想定している。』

はあそうですか(棒読み)。


その背景の説明が続くのでさらに鑑賞。

『こうした動きの背後には、日本銀行の「物価安定の目標」の実現に対する強いコミットメントに加え、以下に指摘するような家計の消費行動や企業の価格設定行動の変化も、複合的に作用していくことがあると考えられる。』

ほうほう。

『第1に、家計についてみると、長期にわたって続いてきた低価格志向はなお残存しつつも、全体として和らぎつつあり、購入単価の上昇にみられるように、高齢者や女性労働者を中心に、これまでよりも地理的利便性や高付加価値商品を好む傾向が徐々に強まっているように窺われる(図表46(1))。』

高齢者は賃金上昇のメリットが及びにくいという話があった気がするんだが。つーかそれ上流の話でボリュームゾーンの所がそうならないとマズーなんだしボリュームゾーン的には生活品とかを見てると足元で「単価が上がった分購入を抑制して総額は同じ」的な感じになっているように見えるのだが。

『第2に、小売業や各種サービス業の価格支配力(マークアップ率)が、やや長い目でみた業界再編などを背景に、幾分高まっている可能性が考えられる22。』

『第3に、そうしたもとで、小売・サービス業の価格設定についても、従来の安値輸入品を梃子とした低価格戦略から、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる戦略に切り替える動きがみられる。』

単にコストプッシュで仕方ないので言い訳に付加価値を見せているだけのような気もするんですがね。

『これらの点とも関連して、為替相場の動きを含めた投入コストの変化を川下の販売価格に転嫁する動きは、以前の局面に比べて、よりはっきりとみられるようになってきている(前掲図表44(2))。』

多分転嫁は進むと思うのだが、それによって物価が上昇しても名目の量が出なくなったら生産とかが出なくなるので前向きの循環メカニズムが頓挫すると思うのだが。

『この間、物価と名目賃金の関係を確認しておくと、消費者物価と時間当たり賃金との間には、長い目でみれば概ね同時に変動するといった安定的な関係が確認される(図表47)。』

なおこの図表47ですが本当に安定してるのかよとか、そもそも安定してるの物価が下がってからではないかとかいう気はだいぶするし、なんで時間当たり賃金というのも気になるのだが。

『上記の見通しでは、先行き、賃金交渉において物価面の動きが考慮されることなどを通じて、賃金上昇と物価上昇の好循環が次第に明確となる姿を想定している。すなわち、時間当たり賃金が、労働需給の引き締まりや予想物価上昇率の高まりを反映して緩やかに上昇していく中で、消費者物価も徐々に上昇率を高めていくと考えられる。こうした見通しを実現していくうえで重要な鍵となるのは、景気回復の持続性や成長力強化の拡がりとともに、ベアをはじめとする賃金引き上げの動きであると考えられる。』

はて。

『すなわち、ベアが伸びを高めることなどにより賃金の持続的な上昇が実感されるに伴って、消費者の物価上昇への抵抗感が和らぐとともに、そうしたもとで、企業も、賃金コストの上昇を販売価格に転嫁できることを前提に行動するなど、賃金上昇と物価上昇の好循環が形成されていくと考えられる。』

ベアもそうなのだが賃金の持続的な上昇の実感っていうのはもうちょっと別の問題があって、将来に渡る予見可能性というのが無いと厳しいから雇用の安定感とか成長期待とかそっちが無い中で賃金と物価の内生的な上昇プロセスというのは難しいのではないかと思いますけどねえ。

という所でありました。なおBOX1と2も面白い(2はこの前の企画局謹製ペーパーの話)のですがパスということで。




2015/05/12

お題「短国買入ネタ/追加緩和とかその関連の雑談メモ/展望レポート鑑賞会の続き」

米国がしらっと13毛甘とかになっているようですが。

○短国買入とかのメモを置いておきますね

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150511.htm
国庫短期証券買入 20,000 2015年5月13日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,750 2015年5月13日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,750 2015年5月13日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,400 2015年5月13日
国債買入(残存期間25年超) 1,400 2015年5月13日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3) 12,039 2015年5月11日 2015年5月12日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注4) 16,000 2015年5月11日 2015年5月12日

ということで昨日は短国買入が2兆円のオファーとなりまして、さすがに4打席連続3M短国マイナスを受けてちったあ気を使ったのかどうか知りませんけれども、何はともあれ落札結果を見ないと何とも。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150511.htm
国庫短期証券買入 36,045 20,002 0.001 0.002 99.7
国債買入(残存期間1年超3年以下) 9,501 3,765 -0.004 -0.002 73.5
国債買入(残存期間3年超5年以下) 10,360 3,755 -0.008 -0.005 41.7
国債買入(残存期間10年超25年以下) 5,040 2,403 -0.030 -0.024 10.8
国債買入(残存期間25年超) 5,222 1,404 -0.017 -0.014 33.3
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4) 117 117 -0.400 -0.400
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注5) 27 27 -0.400 -0.400

ということで応札が3.6兆円でして、前回の短国買入が2.25兆円の買入予定に対して4兆円の応札だったので、そういう意味ではオファー玉から見たらバランスはそんなもんだから単に札読みから自動的に計算しているのかも知れませんが、前回の短国買入では盛大に流れてしまいましたのでエライコッチャ感が強かったですけれども、今回は平均2糸甘の足切1糸甘と普通の落札結果になりましてまずは一安心。

つーかですね、そもそも論として今月ってそこまで短国買入を積み上げる必要あるのかよという感じでして、今年の1−3パターンを踏襲して1月は積み上げるにしても2月は残高維持程度に止めておけよとか思うのですが、今の流れだと償還以上に買入をすることになり、ただでなくさえ3Mが月に1.2兆円発行減額になっているのに、そこに残高の積み上げするとか市場にストレスをわざと掛けに逝っているとしか見えないですし、大体からして今月も残高盛大に積み上げてしまいますと今度は6月の短国買入が殆ど実施されないというような流れになってしまいますので、需給のブレが大きくなりすぎるんですがそれは。

何だかんだと言いましても短期金融市場の中で一番の残高があって一番安定的に運用ができるのが短国でして、その中で毎週発行と償還がある3Mは一番便利な商品なのですけど、日銀短国買入がフローで思いっきりぶれるので市場の需給関係も思いっきりぶれるという結果になっていますな。

でまあその結果短国の需給がぶれる→短期金利がぶれるという事になる訳ですが、この前企画局が出したレポートみたら実質金利ガーの話はあるけどMB目標の数字の細かいところに特段の意味が無くて、要は「気合を示すためのもの」という事のようでして、そうなのであれば月々の国債発行償還要因を含む財政要因のブレに対して事細かにMBの進捗をチューニングした結果短国市場の需給を日銀要因で無駄に振らせる方が政策効果的には宜しくないのではないかと存じますので、政策委員会の皆様におかれましてもちったあそういう点に留意した議論をしていただきたいものだと思うのでありました。

てな訳で本日は6MTBの入札がある訳でして、まあこの状況下で入札やってもどうせ金曜のオペ狙いヒャッハーという事で入札は100円の1つ上で切ってセカンダリーでワッショイワッショイとマイナス1bpとかになって売参がマイナス1bpとかになるんでしょまあご随意にどうぞという感じですし、まーた6M1Y買いたい攻撃で金曜の短国買入が増額されるんでしょとか衆目の一致するところなので、投資家を排除して勝手にやっているという図になるんでしょうなあと呆れて眺めるの巻となりそうで。

つーかまあ6Mと1Yの後には買入が増額されるというのが市場の皆さんの確信状態になっている時点で市場の価格形成が日銀の足元を見た状態になっている訳でして、そういう市場にしてしまっている時点で金融不均衡の種をせっせと撒いている状態でもあるんですけどねえ・・・・・・・・・・・


あと、話は違いますが昨日は超長期前半の輪番が強かったのですが、今回は輪番強い結果が出たのに後場寄りは下がってその後も下がる(そのあと後場途中から謎の先物急上昇をしていましたが)という展開になっておりまして、引けてみたら結局先物から10年が一番強くて超長期とか置いて行かれているんですがという結果で、輪番とリンクしてないじゃんとか思う1日でありました。


○追加緩和とか政策の枠組みとかいう外野からのお話が2題ほど雑談

・自民党も追加緩和不要とな

http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0NT11720150511
インタビュー:現時点で追加緩和は必要ない=稲田自民政調会長
2015年 05月 11日 10:31 JST

『[東京 11日 ロイター] - 自民党の稲田朋美政調会長は、ロイターのインタビューに応じ、足元コアCPIはゼロ近辺からマイナス圏に陥る可能性が指摘されるが、現時点で「追加緩和は必要ない」と述べた。2%物価目標の達成時期の後ずれは「許容の範囲」とも語り、デフレ脱却に向けて順調に歩みを進めていると評価した。』(上記URLより、以下同様)

えーっと何の権限でそういう話になるんだという感じですが、ヤマモトコーゾー先生が追加緩和を盛大に吹いた挙句に国内債券市場以外の人たちのうちの一部が真に受けてポジション作った結果あの有様となっていたという事例もありましたので最早どこから話が飛んできてもおかしくないという所ですな。

『一方で、追加緩和を行った場合に懸念される円安の加速に関しては「円安は、大企業やグローバル企業には有益だが、円安が加速することによる中小企業や地方に対する弊害はある。資材高騰など、マイナス面を指摘する声が地方では大きい。十分配慮していかなければならない」と指摘。「これ以上の円安には、きちんと目を向けていかなければならない」と警戒した。』(上記URLより)

ということで、統一地方選挙が終わったらその話をしないのかも知れないんじゃネーノとか思っておりましたが、普通に円安加速のコストプッシュイクナイという話になっておりまして、既に最近マズーと思ったのかあまり言わなくなりましたが、「コストプッシュでもなんでもいいから実際の物価が上昇したらアダプティブに期待インフレが上昇するんです(キリッ)」という日銀の理屈に対してダメだしを食らっているのが実に心温まるものを感じます。つーかまあ追加緩和を実施して円安に振った結果がそうなったのですけどね。

『物価目標達成時期は後ずれしているが、日経平均株価は安倍政権下で8000円程度から2万円台まで上昇し、47都道府県すべてにおいて有効求人倍率は1前後に上昇。稲田氏はさらに、日本経済が好転するとのマインドの変化などをあげ、「デフレからの脱却は順調に進んでいる」と述べた。』

・・・・・・・デフレとは物価のことなんですけれどもそれは。

まあいずれにせよこれ以上円安に振るなとか言ってますが、円高になったらなったで泡吹き状態になると思いますのでその時は追い込まれ追加緩和あるでとは思いますがね。


・早川さんマイナス金利は長期的に続けられる政策じゃないんですけど

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NO074C6K50Z201.html
日銀は3つの呪縛で狼少年に、緩和は限界で修正必須−早川氏
2015/05/11 06:00 JST

相変わらずのケチョンケチョンですが。

『早川氏は「物価がゼロ近辺に戻った理由としてはともかく、2%に行かなかった理由に原油価格を挙げるのは無理がある。エネルギーを除くコアコア消費者物価も0.5%以下にとどまっており、ほとんど理由にならない」と言う。黒田総裁はコアコアにも原油下落の影響がそれなりに出ていると述べたが、「コアコアに対する原油の影響は極めて小さい。円安の影響の方がはるかに大きい」と反論する。』(上記URLより、以下同様)  

『そして、「結局、2年で2%達成の約束はどうなったのか。16年度前半だから3年以上かかる。普通に考えればできなかったということだが、黒田総裁は所期の効果を上げているとひたすら言い続けるだけで、『できなかったけど、できた』みたいな答えになっている」と言う。』

ケチョンケチョンワロタという所ですが。

『3つ目は、マネタリーベース(日銀券、日銀当座預金、貨幣)を目標にしたことだ。「私自身は今すぐ追加緩和すべきだとは全く思ってないが、欧州や中国情勢などを考えると何が起こるか分からないので、常に緩和手段を持ってなければならない。ところが、マネタリーベースを目標としている結果、もはや有効なカードがなくなっている」と言う。 』

という話をしてMB目標という建付けを変えろという話をしているのですが・・・・・・・・

『逆に言えば、マネタリーベース目標さえ捨てれば、「追加緩和の手段はいくらでもある。ETF1兆円でも追加緩和だし、地方債や社債でもいい。貸出支援基金の枠を増やすという手もある。現在0.1%の付利の引き下げはマネタリーベース目標をやっている限りできないが、これをゼロ、あるいはマイナスにするという選択肢もある」としている。 』

という話をしている辺りが惜しいところでして、マイナス金利政策の実施というのは「短期的に」ショックを与える政策として使うのであればまあ有りかも知れませんが、実社会との関係で言えば一般向けの預金金利を名目でマイナス金利にすることが出来ない以上、政策金利のマイナスと実体経済におけるゼロ金利制約の間に生じる差分というのは金融システムに対する負担になってしまいます。となりますとその負担を長期化させるというのは単に金融システムに対して無駄な負荷をかけるだけの話で合って、システム全体の健全性という意味でも問題の大きい政策であるとしか申し上げようがありません。

いやね、短期的なショック政策としてマイナス金利にしてショックを利用して短期間で脱却しましょうという話をして、その文脈でマイナス金利政策の実施というような話をするのでしたら分かるのですが、早川さんのこの説明って「2年での達成を取り下げて中長期的に政策を続けよう」という話なのですから、中長期的にマイナス金利政策というのは話として筋が悪いとしか思えないのですけれども、どうも最近はECBのせいかマイナス金利と言うとモダンで格好の良い話をしているように見えて頭が良いけど金利市場現場から遠い所にいる人ほどそういう話をしたがりますなと思ったので愚感想を申し上げてみましたとさ。


・なおケチョンケチョンという意味ではこちらの方がはるかに面白いですよん

http://toyokeizai.net/articles/-/68600
「日銀は政治に支配され、動けなくなった」
ストラテジストの森田長太郎氏に聞く
大崎 明子 :ニュース編集部長 2015年05月02日

こちらはまあURLだけ置いておきますのでご案内の方も多いとは存じますがご覧になっていない方はどうぞ。



○展望レポート全文ネタの続きである

先週のやっつけ引用大会の続きです(汗)。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1504b.pdf


・基本的な経済メカニズムの話

11ページ目からが背景説明でして、先週木曜にネタにしたときは個別項目の方を先にやってしまいましたが、最初の経済メカニズムの話をまずは引用しましょう。

『1.2014年度後半の経済・物価情勢』というレビューの部分からで『(経済動向)』をば。

『2014年度後半の日本経済を振り返ると(図表1)、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響が和らぐ中で、輸出の増加も後押しとなり、企業の生産活動は持ち直しに転じた。そうしたもとで、わが国経済は、原油安や為替円安、株高といった外部環境の改善にも支えられ、前向きの所得形成の力を維持しながら、緩やかな回復基調を続けた。』

外部環境の改善にも支えられ、とな。

『やや詳しくみると、海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復を続けた(図表2(1)(2))。主要国・地域別にみると、米国経済は、家計部門の堅調さが企業部門に波及するもとで、しっかりとした回復を続けた。欧州経済も、昨年夏場にかけてみられた前向きなモメンタムの鈍化には歯止めがかかり、基調として緩やかな回復経路をたどった。中国経済は、総じて安定成長を維持したが、製造業部門における過剰設備問題や不動産市場の調整が下押し圧力となり、成長モメンタムが鈍化した状態が継続した。中国以外の新興国・資源国経済についても、一部の国における資源価格下落に伴う負の影響もあって、全体として勢いを欠く状態を続けた。』

まあこの辺はヨロシ。

『こうしたもとで、年度前半に弱めの動きとなっていた輸出は、世界的なIT関連需要の堅調さと為替円安の効果にも支えられて、米国向けやNIEs向けを中心に、持ち直しが明確となった(図表2(3)(4)、3)。この間、公共投資は、2013年度補正予算などの押し上げ効果が残る中で、高水準で横ばい圏内の動きを続けた(図表4(1))。』

輸出キタコレ!!!!

『企業部門についてみると、駆け込み需要の反動減に端を発した耐久消費財や建設財の在庫調整が進捗するもとで、輸出の増加も後押しとなり、夏場まで弱めの動きとなっていた生産活動は持ち直しに転じた(図表5)。企業収益は、製造業を中心に増益傾向を続け、一部に慎重な動きがみられていた企業マインドについても、持ち直しの動きがみられるなど、総じて良好な水準を維持した(図表6、7)。そうしたもとで、設備投資は、建設関連がやや勢いに欠けたものの、全体としては緩やかな増加基調をたどった(図表8)。』

生産も持ち直しとな。設備は出る出る詐欺なんですけどね。

『家計部門についてみると、ひと頃やや緩慢になっていた労働需給の改善が再び明確となり、冬季賞与もしっかりと増加するなど、雇用・所得環境は着実な改善を続けた(図表9、10)。この間、個人消費における駆け込み需要の反動減については、長引いていた乗用車や家電などの耐久財を含め、徐々に和らいだ(図表11(1)(2)、12)。そのもとで、個人消費は、実質所得減?や消費者マインド慎重化の影響などから一部では改善ペースに鈍さがみられたが、全体としては底堅さを維持した。』

実質所得の減少から改善ペースに鈍さがみられたら物価がまた上昇したらダメじゃん。

『消費者マインドも、年度末にかけてはガソリン価格下落の効果や賃上げに対する期待もあって、持ち直しの動きを示した(図表11(3)(4))。住宅投資も、駆け込み需要の反動減が続いていたが、年明け後は下げ止まりに向かった(前掲図表4(2))。』

ガソリン価格が下落してマインド改善したならガソリン戻ったらダメじゃん。

『以上のような景気展開のもとで、労働と設備の稼働状況を捉えるマクロ的な需給ギャップは、年度前半には消費税率引き上げの影響からマイナス幅が幾分拡大したが、年度後半にかけてはゼロ近傍まで改善した(図表13)。』

つーことでレビューですからあまり景気づけ的な話は出来ないのでしょうが、それにしても各コンポーネントの話についてはまあそうかなと思って読んでいても、それを全部足すとなんか知らんが妙に強い話になっているというのが今回の展望レポートの特徴かなと思うのですが。


でまあ先行きの所に飛びまして『3.2015年度〜2017年度の経済・物価の見通し』の『(経済・物価見通し)』に。

『先行きの日本経済を展望するにあたって、まず、2013年4月の「量的・質的金融緩和」導入後の2年間の経済・物価情勢を振り返る(図表28)。「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた強く明確なコミットメントを通じて予想物価上昇率を引き上げるとともに、巨額の長期国債買入れによってイールドカーブ全体にわたって名目金利に下押し圧力を加え、実質金利の低下をもたらした。同時に、行き過ぎた為替円高の是正や株価の上昇も生じ、期待成長率の改善を伴いつつ実体経済面における前向きのモメンタムが働き始めた。』

は???

『そうしたもとで、日本経済は、消費税率引き上げの影響を受けつつも、緩やかな回復基調を続け、労働や設備といった生産要素の稼働状況は改善傾向をたどった。所得形成面でも、企業収益や雇用者所得は着実な改善を続け、このことは家計や企業の前向きな支出活動を後押しした。また、賃金・物価といった価格面では、労働市場を中心とした需給の改善などを背景に、基調的な動きは、それ以前の緩やかな下落傾向から緩やかな上昇傾向へと変化した。』

ふーん(棒読み)。

『先行きについても、2015〜2016年度は、緩和的な金融環境が維持されるもとで、原油安等の押し上げ効果も加わって15、潜在成長率を上回る成長が続く見通しである。2017年度については、景気が循環的には減速方向に向かい、2017年4月の消費税率再引き上げも押し下げに働くことから16、成長率は前年度からはっきりと鈍化するが、基調的な底堅さを維持すると考えられる。そうしたもとで、物価の基調は、需給ギャップが改善する中、中長期的な予想物価上昇率の高まりにも後押しされて着実に高まるとみられ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベース)は、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度前半頃になると予想される。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると予想される。』

この辺は基本的見解と同じです。

『先行きの経済情勢について仔細にみると、2015年度は、内外需がバランスよく増加し、潜在成長率をはっきりと上回る成長となる見通しである。この結果、需給ギャップははっきりとしたプラスに転じ、景気は緩やかな拡大基調をたどると見込まれる。需要項目別には、公共投資は緩やかな減少傾向に転じるものの、輸出は、海外経済の回復と既往の円安の効果に支えられて、緩やかな増加を続けると予想される。個人消費は、ベースアップ(以下、ベア)の高まりやエネルギー価格下落などを反映した実質可処分所得の増加に加え、前年度の落ち込みからの反動もあって、しっかりと増加するとみられる。設備投資も、緩和的な金融環境に加え、原油安に伴う企業収益の明確な改善にも支えられて、高めの伸びとなると見込まれる。』

ということで、先日コンポーネントの細かいところを引用しましたが、説明一つ一つはまあ強く出ればそうなるかもしれませんね的な説明なのですが、結局の所各コンポーネントの説明が全部想定の中で一番強気の話で纏めているので、全部足し合わせると謎の強気見通しになる、という事なのでしょうな。

『2016年度については、資本ストックの蓄積に伴い、設備投資が循環的に景気を押し上げる力は減衰していくとみられる。』

2015年度にそんなに設備投資が出ることになるのか・・・・・・・・・・

『もっとも、海外経済の回復と既往の円安の効果に支えられて、輸出が引き続き緩やかに増加するうえ、金融緩和効果や成長期待の高まりが国内民間需要を支え続けると考えられる。さらに、下期には消費税率引き上げ前の駆け込み需要が再び発生するため、前年度から減速しつつも潜在成長率をはっきり上回る成長が続くと予想される。』

まあ良く考えたら2016年度前半に2%到達してたら金融緩和の縮小という話になるのですが、なぜか展望レポートでの置きは基本的見解部分の2ページ脚注にあるように『具体的には、短期金利について、市場は、見通し期間を通じて、実質的にゼロ金利が継続することを織り込んでいる。』という事ですのでこういう記述になるのですが、冷静に考えたら金融緩和効果についても2016年度後半からは減衰してこないとおかしい。

『2017年度については、資本ストックの蓄積に伴い設備投資への減速圧力が高まる中で、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減や実質所得の減?効果が発生するため、成長率は前年度から大きく鈍化すると見込まれる。ただし、海外経済の成長率の緩やかな上昇を背景に輸出の増加が続くほか、国内民間需要は、金融緩和効果に加え、成長期待の高まりやオリンピック関連投資による下支え効果もあって、基調的な底堅さを維持すると考えられる。このため、成長率は潜在成長率を幾分下回るものの小幅のプラスを維持し、需給ギャップはプラスで推移すると見込まれる。』

すいません2016年度はまだわかるのですが2017年度にも金融緩和効果という話を経済の下支え要因に置いておくのはさすがにおかしいのではないでしょうかねえ。

『以上の景気見通しを年度ベースの実質GDP成長率で示すと、2015年度は2%程度、2016年度は1%台半ば、2017年度は0%台前半と想定される。2016年度までの見通しを1月の中間評価時点と比較すると、概ね不変である。』

あっそう。


・物価に関する記述に微妙な味わいが

でまあ物価の方の話ですが、最初の『1.2014年度後半の経済・物価情勢』の『(物価動向)』というレビューを見ると味わいがある。

『物価面について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価の前年比は、国際商品市況の大幅な下落を反映して、昨年11月以降マイナスに転じ、その後もマイナス幅は拡大傾向をたどった(図表14(1)(2))。企業向けサービス価格(除く国際運輸)の前年比は、国内需要のもたつきの影響を一部に受けつつも、企業収益の改善が続く中で、0%台後半のプラスで推移した(図表14(2))。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は(図表15(1))、原油価格下落の影響からエネルギー関連品目の寄与がマイナスに転じたほか、エネルギー以外の品目も、個人消費のもたつきに伴うコスト転嫁の一服などを背景に、プラス幅を幾分縮小させたことから(図表15(2))、全体でも伸び率は縮小し、年度末にかけては0%程度となった。』

>エネルギー以外の品目も、個人消費のもたつきに伴うコスト転嫁の一服などを背景に、プラス幅を幾分縮小させたことから
>エネルギー以外の品目も、個人消費のもたつきに伴うコスト転嫁の一服などを背景に、プラス幅を幾分縮小させたことから
>エネルギー以外の品目も、個人消費のもたつきに伴うコスト転嫁の一服などを背景に、プラス幅を幾分縮小させたことから

しらっとこういう記述があるのが中々の滋味がありますな。

『除く食料・エネルギーの前年比については(図表16(1))、昨春以降プラス幅が縮小したものの、縮小幅は除く生鮮食品の前年比に比べ小幅にとどまった。この間、基調的な動きを捉える指標の一つである刈込平均値をみると(図表16(1))13、プラス幅は緩やかな縮小傾向にあったが、年度末にかけてはわずかに改善した。また、消費者物価(除く生鮮食品)を構成する各品目の前年比について、上昇品目の割合から下落品目の割合を差し引いた指標をみても(図表16(2))、昨春以降横ばい圏内の動きを続けてきたが、年度末にかけては幾分改善した。』

ふむ。

『この間、GDPデフレーターの前年比は、内需デフレーターのプラス寄与が幾分縮小する一方で、外需デフレーターの寄与がプラスに転じたことから、全体では+2%程度で横ばい圏内の動きとなった(前掲図表14(3))14。』

ということで、まあ先行き見通しに関してはご案内の内容ですのでそこはスルーしまして、個別コンポーネントの物価部分の話で本文29ページの『(物価変動を取り巻く環境)』から。

『先行きの物価情勢を展望するにあたり、物価上昇率を規定する主な要因について点検する。』

『第1に、マクロ的な需給ギャップは、振れを伴いつつも緩やかな改善傾向にあり、足もとは若干のマイナスとなっているが、先行きは、成長率の高まりに伴ってはっきりと改善していくと予想される。仔細にみると、2015年度前半には、過去の長期平均並みを示すゼロを超えてプラスに転じ、その後も景気拡大に伴う生産要素の稼働状況の高まりを反映して、プラス幅は拡大していくと予想される。2016年度にかけては、成長率の減速と潜在成長率の高まりから改善ペースが次第に鈍化し、2017年度には、消費再増税の影響もあって横ばい圏内の動きとなっていくが、水準としては引き続きプラスで推移し、物価への上昇圧力が働き続ける姿を想定している。』

とまあ需給ギャップの先行き推計に関しても経済見通しと同じになりますが個別コンポーネントを強く強くで評価してますな、うんうん。

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、マーケットの指標や各種アンケート調査などを踏まえると、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。原油価格が大幅に下落してきた中にあって、エコノミスト、債券市場参加者、家計、企業に対するアンケート調査でみた中長期的な予想物価上昇率は、総じて維持されている(図表42、43)。』

市場の方は維持されているけどそれはそもそもの絶対水準が低いからですし、家計の方はそもそも昔から高めの水準で粘着したままなのですが。

『市場参加者の予想物価上昇率を、固定利付国債と物価連動国債の利回り較差から求められるブレーク・イーブン・インフレ率でみると、昨年末にかけてグローバルに低下していたが、原油価格が下げ止まる中で再び上昇に転じている。』

原油が戻って戻っているんだったら追加緩和関係ないじゃん。

『こうしたやや長い目でみた予想物価上昇率の高まりは、企業の価格設定行動や労使間の賃金交渉、家計の消費行動などに変化をもたらしているとみられる。』

えーっとすいません確か市場の予想物価上昇率はクソで実際には家計や中小企業の予想物価上昇率の方が正しいとかいうレポート昨年の春にだしてたはずなのですが、今回は市場の方が改善しているから変化が出ているとか中々こう説明が自由自在ですな。

『先行きについても、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。』

まあやはり一番鉛筆なめなめ成分が高いところなので説明にも鉛筆を舐めた感じがしますね。

『第3に、輸入物価について、原油価格(ドバイ)は1バレル55ドルを出発点に、見通し期間の終盤にかけて70ドル台前半に緩やかに上昇していくと想定している。そうした前提のもと、当面は、国際商品市況の下落の影響が為替円安の効果を上回るため、輸入物価は前年比で下落を続けるが、2015年度後半には下落幅が縮小すると予想される(図表44(1))。このため、消費者物価に対する波及ラグが短いエネルギー関連の寄与度については、当面マイナス幅を拡大した後、2015年度後半にはマイナス幅縮小に転じ、2016年度前半には概ねゼロになると考えられる。一方、それ以外の品目を通じた消費者物価へのパススルーについては、消費の基調的な底堅さが維持されるもとで、既往の為替円安によるコスト高を転嫁する動きが徐々に進むため、2015年度の消費者物価の押し上げ要因として作用し続けると考えられる(図表44(2))。』

さっきのレビューでパススルーがイマイチ進んでいないという話があったと思いますが、この先ではちゃんとパススルーが行くという根拠はどちらに?????

という事で、この先はフィリップス曲線とか使ったメカニズムの話になるのですが、アタクシの時間配分と労力配分の失敗により時間が無くなってしまったので続きは明日で勘弁してくださいすいませんすいません。





2015/05/11

お題「3M短国が4週連続でマイナス金利であばばばばー/4月1回目決定会合議事要旨は展望レポートと微妙に整合性がががが」

まーた週末に政策変更か。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NO4RVA6JTSE801.html
中国人民銀、0.25ポイント追加利下げ-景気減速阻止で支援強化
2015/05/10 19:59 JST

成長率と政策金利の整合性が取れない気がするのですけどねえ(棒読み)。


○市場雑談というか短国があばばばばー

世の中的には物国入札の話と行くところですが短国入札ネタで参ります。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150508.htm

(3)募入最低価格 100円00銭0厘5毛(募入最高利回り)(-0.0020%)
(4)募入最低価格における案分比率 98.7622%
(5)募入平均価格 100円00銭0厘9毛(募入平均利回り)(-0.0036%)

・・・・・・ということでまたまたマイナス金利の入札になってしまいまして、これで遂に3M入札で4打席連続のマイナス入札になるということでアイヤーとしか申し上げようがない展開。

でまあ何ですな、昨年の場合だと9月に金利がマイナスになった時は日銀の買入効果に加えて期末の買いとかでモノ無し芳一状態だったので現先とかレポとかの金利も下がっていたりしましたり、10月の場合は期末終わったのに無慈悲買入の実施でやはり金利が下がったのですけれども、その辺りから日銀トレードとか言われる動きが徐々に目だって来たというような展開になっておりましたな。

でまあ足元はどうなっていますのやらという所ですが、連休前に実施された短国買入では2.25兆円の買入予定に対して4兆円の応札があったのですが、落札結果が盛大に流れるという中々セクシーな結果になっていたというのも効いていると思うのですけれども、まーあの結果見せられると新発の入札であまり馬鹿みたいに突っ込まない限りにおいて買入でそこそこ強いところ入れられるじゃんという安心感が出ますのでそらもう在庫持ちやすくなりますなっつー所でして、本来だったら1日の短国買入を見ると玉がある筈なのでそんなに入札強くしなくても良いだろという話になる筈なのですが、そうならない辺りが日銀買入効果恐るべしという所ですかそうですか。

現先とかレポとかがモノ無しという訳でもないので玉自体はあると思うのですが、日銀の短国買入が4月からハイペースで飛ばしていまして、前回のオペも2.25兆円オファーと「5月は9兆円は買いますよウヘヘヘヘ」と言わんばかりのオファーをしてくるというプレイでして、市場的にマイナス入札が連続している中で今月は日銀保有分の償還以上に購入してきますよ宣言とか全くもって市場機能とか丸無視という最近の調節クオリティですし、これがまた1日の短国買入の結果から逆算すると今日も札は普通にあるでしょうから買入オファーは2兆円超で打ち込んでくるのでしょうなあとか思うと頭痛を禁じ得ませんが、何せ企画局様がQQEの効果を金利引き下げで話をしているだけに(安定的に金利を下げるのであれば市場を不安定化させない方が良いので今のやり方が必ずしも的を射ているとは思えないのだがそういうのは債券市場の中の人にしか理解され難いところなのよね)まあ市場への配慮とかしないんでしょと思いますけどね。

しかしまあ先ほども申しあげましたが、現先とかレポとかまで玉が無いというのとも違いますし、昨年11月から12月のようにCPの金利が一部高格付けの所でバカスカ下がってしまうというような現象も発生していないのに4週間連続で3M短国入札がマイナスでその間カレント3Mが全然プラス金利になる気配無しというのは実にこう整合性の取れない謎市場ではありますな。

ちなみに金曜に「今月の短国買入は11日の後は各週金曜」と申し上げましたが、良く良く考えたら22日はMPM2日目ですので22日ではなくて25日に実施でしたね(大汗)。



○4月1回目の金融政策決定会合議事要旨を鑑賞

ふむ
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g150408.pdf

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

・国内経済に関する討議内容が展望レポート基本的見解のやたら強気な見通しとあまり整合的ではない気がする件

海外景気の話はめんどいので割愛しまして

『わが国の景気について、委員は、家計・企業の両部門において、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと作用し続ける中で、緩やかな回復基調を続けているとの認識を共有した。景気の先行きについても、委員は、緩やかな回復基調を続けていくとの見方で一致した。』

はあそうですか。

『輸出について、委員は、持ち直しているとの認識で一致した。委員は、年明け後は春節の影響で月々の振れが大きく、2月の実質輸出は1月の反動減からやや弱めとなったものの、均してみれば改善傾向が続いているとの見方を共有した。先行きについても、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。何人かの委員は、3月短観をみると海外での製商品需給判断DIが幾分悪化しており、企業は海外需要を慎重にみていると指摘した。』

ということで輸出については展望レポート基本的見解での見通しがやたら強気になっていましたが、この時には何人かの委員が先行きに関して必ずしも楽観していないという記述でして、この認識と展望レポート基本的見解で示す強気との差分はどこにあるのよという感じがします。

でもって展望レポート基本的見解でもう一つ強い見通しが示されている設備投資。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、緩やかな増加基調にあるとの認識を共有した。先行きも、企業収益が改善傾向を辿る中で、緩やかな増加基調を続けるとの見方で一致した。』

ほうほうそれでそれで?

『3月短観について、委員は、企業の業況感は、総じて良好な水準で推移しているとの認識を共有した。何人かの委員は、業況判断DIが小幅ながら2期連続で改善しており、リーマン・ショック前の景気拡大期のピークに近い水準にあると指摘した。』

その状況でこの設備投資ねえ・・・・・・・

『何人かの委員は、2015 年度の事業計画をみると、増収増益が続くもとでしっかりとした設備投資計画となっており、企業の前向きな姿勢が維持されているとの見方を示した。ある委員は、非製造業の業況判断DIをみると、不動産や小売を中心に大企業・中小企業ともに改善していると指摘した。』

いやですからそういう状況なので設備投資が出る筈という話をして2年ほど経っている気がしますが。

『この間、何人かの委員は、過去最高水準にある企業収益に比べれば、企業のマインドや支出姿勢はなお慎重であるとの見方を示した。その背景として、一人の委員は、企業が先行きの内外需要になお慎重な見方を崩していないとの認識を述べた。』

ですよねえ。

『複数の委員は、現在の好調な企業収益には、円安に伴い海外における利益が円換算で押し上げられている面もあり、企業はその持続性を見極めている可能性があると指摘した。これらの委員は、為替相場が安定的に推移し、それが企業の中長期的な経営計画に反映されていけば、国内設備投資の積極化などに繋がっていくとの見方を示した。』

何となく言いたいことは分かるのですが、海外の利益が円安定着で円ベースで増えた状態で維持されるとして、それが国内の設備投資に繋がるという話になるのかは希望的観測なのではないかという気がするのですけどね。海外での設備投資になるとかになりそうな気がしますし、まあ国内の投資ではなくて収益の分配という形でのメリットにはなるのかも知れませんが、だからと言って国内設備に回る気はあまりしないのですけどね。


次が雇用。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給が着実な改善を続けるもとで、雇用者所得は緩やかに増加しており、先行きも緩やかな増加を続けるとの認識を共有した。』

まあここはベアでウハウハという話が出てくるのは見る前から想像がつきます。

『多くの委員は、企業収益が好調に推移し、労働需給がタイト化する中で、今春の賃金改定交渉では、ベースアップを含め昨年を上回る回答を示す企業が増えているとの見方を述べた。これらの委員は、賃金引き上げの動きは、大企業だけではなく、中小企業や非正規労働者にも拡がっているとの認識を示した。』

ほうほうそうですか。

『このうちの一人の委員は、「生活意識に関するアンケート調査」をみると、収入について、1年前に比べて「増えた」と回答した世帯や、1年後は「増える」と答えた世帯が増加していると指摘した。ある委員は、このところ人手確保の観点から企業は正社員化を進めており、今後は非正規雇用へのシフトによる平均賃金の下押し圧力が次第に和らぎ、賃金の緩やかな上昇傾向が定着するとの見方を示した。』

とまあそういうことで雇用の所は威勢の良い話が続く。次は消費。

『個人消費について、委員は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体としては底堅く推移しているとの認識を共有した。』

全体としてはですかそうですか。

『多くの委員は、消費者マインド関連指標について、雇用・所得環境の改善などを背景に、持ち直しの動きがみられていると述べた。』

うむ。

『何人かの委員は、雇用・所得環境の改善やマインド指標の持ち直しに比べて、個人消費関連指標の改善がやや遅れているとの見方を示した。一人の委員は、3月短観の小売業の業況判断DIをみると、訪日外国人向けの販売増による面もあるが、明確な改善傾向がみられるとの認識を示した。』

ふーん。

『先行きの個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとの見方で一致した。何人かの委員は、昨年4月以降、消費税率引き上げに伴う実質所得減少などの影響がみられたが、それが一巡した今後は、所得面の改善が支出増加にはっきりと繋がってくると述べた。一人の委員は、今回の賃上げは消費性向の高い若年層に手厚く行われたとの指摘があり、その効果にも期待しているとの見方を示した。この間、複数の委員は、年金生活者には賃金上昇の恩恵が及びにくいため、こうした層の消費動向に注意する必要があると述べた。』

ということでまあ消費が出るという部分は展望レポート基本的見解の方でも結構どどーんと出ていましたけれども、実際にどうなのかというのは微妙に思えます。それから一人の委員が指摘している「今回の賃上げは消費性向の高い若年層に手厚く行われたとの指摘があり、その効果にも期待しているとの見方を示した。」という話ですが、あまり期待しない方が良いんじゃないのと思ったりする訳で、若年層の消費が伸びないのはそういう問題じゃなくて将来における賃金見通しとか雇用見通しに対する安心感の方が重要なので、単発的にベアが出たからと言ってそう簡単にホイホイ消費が増えるとも思えませんけどねえ。逆に年金生活者の場合は消費行動の方で期待される向き(要は年金の中でも相対的に金持っている方)は資産価格上昇の恩恵受けてるんじゃネーノという気がするので指摘的に何か逆のような気がするんだけどなあ。

住宅投資に関してはまあどうでもよいが引用だけ。

『住宅投資について、委員は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつあり、先行き、次第に底堅さを取り戻していくとの見方で一致した。』

次は生産。

『鉱工業生産について、委員は、内外需要の緩やかな増加に加え、在庫調整の進捗もあって、持ち直しているとの認識を共有した。多くの委員は、年明け後は春節の影響で月々の振れが大きいが、均してみれば改善傾向が続いているとの見方を示した。先行きについて、委員は、緩やかに増加していくとの認識で一致した。』

ふむ。

『複数の委員は、企業からの聞き取り調査などを踏まえると、素材関連における在庫調整や輸送機械における在庫調整からの回復の一巡から、生産は当面横ばい圏内の動きにとどまるとの見方を示した。』

ということであまり強くないが展望レポートでも生産はあまりドライバーとしての位置づけになっていなかったのでまあこんなもんでしょ。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%程度となっており、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移する可能性が高いとの見方で一致した。何人かの委員は、エネルギー価格などの動向次第では、小幅のマイナスになる可能性があると述べた。』

とりあえずこの前のCPIは無事でよかったですね(棒読み)。


・金融面の動向部分でちょっと吹いたのが一か所

『2.金融面の動向』である。

『わが国の金融環境について、委員は、緩和した状態にあるとの認識で一致した。委員は、マネタリーベースは日本銀行による資産買入れの進捗を反映して大幅に増加しており、企業の資金調達コストは低水準で推移しているとの見方を共有した。』

5月1日に出てきた企画局のペーパーにはマネタリーベースのマの字も無かったけどな!!!!!!!

『委員は、企業からみた金融機関の貸出態度は改善傾向を続けているほか、CP・社債市場では良好な発行環境が続いており、企業の資金繰りは良好であるとの認識で一致した。』

短観などを受けての話ですな。

『委員は、資金需要は緩やかに増加しており、銀行貸出残高は中小企業向けも含めて緩やかに増加しているとの見方を共有した。』

MBをあれだけ出してこの程度かよとか言ってはいけません。

『ある委員は、全体として緩和効果がしみ通った金融環境になっていると述べた。』

>緩和効果がしみ通った金融環境
>緩和効果がしみ通った金融環境
>緩和効果がしみ通った金融環境

・・・・・(;゚д゚)


・2年たったので政策の効果に関するレビューっぽい議論があったようです

続きまして『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』である。

『多くの委員は、導入から約2年が経過した「量的・質的金融緩和」について、所期の効果を発揮しているとの認識を共有した。』

まあ所期の効果を発揮してたら目標を達成している筈なんですけどね!!!!!!!!!!!

『これらの委員は、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率に規定される物価の基調は、今後も改善傾向を辿るとの見方を共有した。』

ちなみにここにあるように「多くの委員」は認識を共有しているけど共有していない委員もいるようですな。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」の導入以降、名目金利が低位で安定的に推移する一方、やや長い目でみた予想物価上昇率は全体として上昇しており、実質金利は低下していると述べたうえで、そのことが企業・家計の支出行動を支えているとの認識を示した。』

低位で安定的にっていうのは導入以降とは違う気がするが。

『何人かの委員は、株価など資産価格の上昇や過度な円高水準の修正が生じたと指摘した。ある委員は、企業収益が過去最高水準まで増加しているほか、失業率低下など雇用環境の改善を背景に雇用者所得も増加していると述べた。別の一人の委員は、デフレ的なマインドセットを転換させる効果があったとの見方を示した。』

どうも2年経過したので一応レビューっぽい議論があったのではないかと思わせる下りでして・・・・・・・・・

『これに対し、ある委員は、実質金利がマイナスまで低下したもとでも、消費や設備投資が明確に加速するほどの効果はみられなかったと述べた。』

(;∀;)イイシテキダナー

『昨年10 月末の「量的・質的金融緩和」拡大の効果について、何人かの委員は、原油価格の大幅下落を背景に実際の物価上昇率が低下するもとでも、予想物価上昇率は維持されており、賃金や価格設定などへの二次的な影響は生じていないと指摘した。』

出たなインチキ説明、というか今更昨年10月の追加緩和の話がこういう形で記載されているという事はやはり政策の効果に関する見解に差があって2年たったのでレビューみたいな話をした時点で色々と論議があったものと思われます。

『一人の委員は、銀行貸出の伸びが高まっているほか、最近では金融機関による成長分野や外貨建て金融資産への投資が増加するなど、ポートフォリオ・リバランス効果が次第に拡がってきていると述べた。』

?????????????


・国債買入に関する話は何故か財政の方の話になってしまっている

『大量の国債買入れが国債市場に及ぼす影響について、複数の委員は、最近の国債市場では流動性プレミアムが相応に意識され、名目金利が下がりにくくなっていると指摘した。』

キタコレ!と思ったらこの先が財政の信認ガーの話になっているのは何故??

『何人かの委員は、金利の安定を確保するためには、財政運営に対する信認が維持されることも重要であり、政府が財政健全化に向けた取り組みを着実に進めていくことを期待しているとの認識を示した。複数の委員は、日本銀行の国債買入れにより金利の低位安定が保たれるとの期待が過度に強まることなどを背景に、財政健全化に向けた政府の取り組み姿勢が後退するリスクには引き続き注意が必要であると述べた。何人かの委員は、仮に政府の財政健全化へのコミットメントが薄れたと市場が判断すれば、国債に対する信認低下から長期金利が上昇し、結果的に日本銀行の政策効果を減殺する可能性があると指摘した。』

いやおまいらそんなことより国債買入の持続可能性とか、市場流動性を下げ過ぎて却って市場を不安定化させる事になっている件とかの話をしろよと思うのだが。



・インフレ期待に関する話と物価見通しに関する話

『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、「物価安定の目標」は安定的に達成すべきものであり、金融政策運営に当たっては、物価の基調的な動きが重要であるとの認識を共有した。』

そらまあそうです。

『多くの委員は、3月短観における企業の物価見通しをみると、原油価格が下落するもとでも、先行き物価上昇率が高まるという予想が維持されているとの見方を示した。』

維持されているもクソもあれ最初の数値から延々と粘着したままじゃねえかと小一時間。

『複数の委員は、非製造業・大企業では、仕入価格判断DIの「上昇」超幅が縮小する一方で販売価格判断DIの「上昇」超幅が拡大しており、価格転嫁を巡る環境に改善がみられるとの認識を述べた。』

まあその差分は仕入れの上昇の方が圧倒的に多いけどな(なおアンケートバイアスがあるのは事実)。

『このうちの一人の委員は、仕入価格が上昇しても最終段階での価格転嫁が難しいというこれまでの企業の声と比べると、こうした改善の動きは今後の物価動向を見通すうえで大きな変化だといえると付け加えた。』

まあそうかも知れんが日常品だと価格上げた傍から数量減らしたりして販売単価を下げないようにしているっぽいが。

『何人かの委員は、「生活意識に関するアンケート調査」をみると、家計も引き続き物価上昇を予想していると指摘した。』

えーっとすいません、その数値ってQQE実施のだいぶ前からずーっと粘着しているんですけど。

『何人かの委員は、ベースアップも含めた今年の賃金改定交渉の結果は、賃金の増加を伴いながら物価上昇率が徐々に高まっていくという好循環のメカニズムが作動し始めていることを示しているとの認識を示した。ある委員は、やや勢いを欠いているとはいえ2年連続でベースアップが実現する見通しとなったことは、基本給は上がらないという固定観念を変え、前向きの予想形成を促す重要な契機になると述べた。これらの議論を受けて、委員は、予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとの認識を共有した。』

ふーん。

『そのうえで、多くの委員は、先行き、物価の基調を規定する需給ギャップは着実に改善し、予想物価上昇率も高まっていくことから、原油価格下落の影響が剥落するに伴って消費者物価は伸び率を高め、2015年度を中心とする期間に2 % 程度に達する可能性が高いとの見方を共有した。』

えーっとすいません、その3週間後に見通しが何故変わるのでしょうか????????????????????

『一方、ある委員は、需要の弱さを背景に耐久財や衣料品の価格上昇率が低下していることなどを踏まえると、この先、消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比上昇率の拡大はかなり緩やかなものにとどまると述べた。』

ですなあ。

『この間、需給ギャップについて、複数の委員は、推計手法の違いによって乖離が生じ得るため、各手法の特徴を踏まえながら総合的に点検していくことが重要であるとの見方を示した。』


・木内さんの提案に関しては骨子の確認&反対の説明に味わいがある

この後が金融政策をこうしますという話ですがそこはご案内の通りの話なのでさておきまして木内さんの提案の所から。

『一方、一人の委員は、需給ギャップがゼロ近傍まで改善する中、逓減している「量的・質的金融緩和」の追加的効果を副作用が既に上回っているため、導入時の規模であってもこれをなお継続することは、金融面での不均衡の蓄積など中長期的な経済の不安定化に繋がる懸念があるとの見方を示した。』

>追加的効果を副作用が既に上回っているため
>追加的効果を副作用が既に上回っているため
>追加的効果を副作用が既に上回っているため

これはまた大きく出ましたな!

『そのうえで、この委員は、@金融市場調節および資産買入れ方針については、マネタリーベースと長期国債保有残高の増加ペースを、段階的減額を視野に入れて、「量的・質的金融緩和」導入時を下回る水準まで減額するほか、買入れ国債の平均残存期間およびETF、J−REITの買入れペースを導入時と同様にすること、A先行きの金融政策運営については、「物価安定の目標」の達成期間を中長期へと見直すとともに、金融面での不均衡など中長期的なリスクにも十分配慮した柔軟な政策運営のもとで、早期に「量的・質的金融緩和」の終了や金利引き上げに向かうのではなく、資産買入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれぞれ適切と考えられる時点まで継続するとの表現に変更することを主張した。』

ということで、木内さんの提案の骨子は「2%は中長期的に目指す」「そのためには金融緩和は長期的に持続可能なものにする」というお話でして、買入の規模も長期的に持続可能なように徐々に縮小はするけれども政策そのものは長期化する、というお話。


でまあ反対意見。

『これに対し、何人かの委員は、2%の「物価安定の目標」に向けてなお途半ばである現時点での減額開始は、政策効果を減殺する可能性が高いとの見方を示した。』

まあ政策枠組みを大きく変えてという話だが買入減らすといったんは長期金利とかが跳ねるでしょうからそういう反対が起きるのはまあそうかなと思いますが、この後の反対見解に実にこう深い味わいを感じます。

『複数の委員は、日本経済がようやくデフレ脱却への道筋がみえてきたという段階であることを踏まえると、現時点ではデフレに戻るリスクを避けることを最優先すべきであると指摘した。このうちの一人の委員は、現状、金融面での不均衡の蓄積を示す具体的な根拠はないと付け加えた。ある委員は、資産買入れの減額に関する情報発信は、タイミングや方法次第でせっかくの緩和効果を削ぐリスクもあり、細心の注意を払う必要があると述べた。』

そもそも論としてこれだけ馬鹿買入を実施しても物価が思うように上がっていないのですから馬鹿買入そのものに意味があったのかよという気がする訳で、他のやり方でもっと効率良く実施するという発想は無いのかと思ってしまいますが、無謀でもなんでも一度始めてしまうとその開始したことを拡大再生産するのを得意技とするというジャパンクオリティ恐るべしというのがここの纏めによく現れていてナイスではありますな。満州の防衛を確保するために華北分離工作して華北を確保するために日華事変とかどこまでも拡大再生産状態になるというような事案がありましたなとか思うと実に頭が痛くなるものを感じるのでありました。


#ということでほぼ引用状態になってしまいましたすいませんすいません




2015/05/08

お題「市場雑談ネタ少々/展望レポート背景説明から企業収益、設備、雇用、消費の部分を鑑賞」

今日が金曜というのはお得感もあるけど忙しくてかなわんですな(小市民)。

○市場雑談

・欧州債ェ・・・・・・・は一旦おちついたのかね

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NNZIAW6KLVRQ01.html
ドイツ国債の一斉売り、03年の日本国債安に類似−バークレイ
2015/05/08 01:37 JST

『同氏によれば、利回りの変化とボラティリティ、連邦公開市場委員会(FOMC)が発している政策シグナルが当時と類似している。』

『同氏は「資産配分という点で03年から得られる最も重要な教訓は、債券利回りが極めて低くなれば最終的に債券から株式への資金移動が起こるということだ」とした上で、「これが既に起こっている兆候がある。債券に比べ株式のパフォーマンスが高いことは、今年の資産配分においてこれまでのところ圧倒的に最大のテーマだ」と指摘した。』(以上上記URLより)

何か色々とツッコミどころがあって、なんでドイツ金利の話をするのにFOMCの政策シグナルなんだよとか(米金利の話なら分かるが)別に2003年の日本債券下落はポートフォリオリバランスとか関係なく発生したんですけどねえとか、たぶんこの解説してる人日本債券市場分かってねえだろうなあと思わせてくれますがそれはともかく。

ドイツ様の金利が素敵に上昇してほんの2週間ほど前に10年10bp割ってこりゃダメだ状態だった所からジャンジャン金利が上昇して昨日の日中は一時0.7%水準まで上がってその後戻ったようで、まーECB買入パワーとそれに対して投資家も売るに売れない状態(売るとその後の期間収益を放棄するのですから金利が下がりっぱなしだと思ったら誰も売れない)になっていたのの反転という事なんで、2003年のように投資家全員参加で債券を買い上げて逝った金利低下局面とは全然違うので2003年の日本と類似とか言ってる時点でシロウトだと思う(いや直近の金利低下が投資家全員参加だったらアタクシの間違いなので謝罪しますが)のでありまする。

なお、金利の先高観が出てくればそらまあ一旦売ってその後の期間収益を放棄することになっても、より金利の高いところで買い戻せば良しみたいな話になりますので目先の大収益ウマーとなって売る人もいるでしょうしというのはあるのですが、なんかこう真空地帯を駆け上がって勝手に駆け下りている感があって何が何やらという所ですな。


・ついでにECB買入関連メモ

http://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omt/html/index.en.html
Asset purchase programmes

このページの作りがだいぶ丁寧になってきて見やすいですな。

Eurosystem holdings under the expanded asset purchase programme
(なお普通にコピペするとうまくいかないので表示はアレンジしてます)

March 2015

ABSPP:4,624
CBPP3:63,606
PSPP:47,356

April 2015

ABSPP:5,785
CBPP3:75,070
PSPP:95,056

ということで、Change from previous monthはと言いますと・・・・・・・

ABSPP:1,162
CBPP3:11,464
PSPP:47,700

となってトータルではAPP:60,326となって、結局4月単月ではAPP全体で600億ユーロとなって、PSPPはそのうち477億ユーロになりましたので、PSPP買入開始当初の勢いはやや弱まったという所でして、これは単に4月になってペースを合わせに来たのか、それともマイナス金利の影響で買えないものが増えた影響になるのかは欧州債券市場の需給がどうのこうのとかまでフォローしているヒマも能力も無いこのアタクシには手に余るので誰か教えてジェネラルという所です。まーこのペースダウン自体はあまり金利に影響しているとも思えないのですが、買入に関してファジーにも程がある形になっているECBの買入プログラムな上に、「金利が低下して効果を発揮した(キリッ)」とドラギのおっちゃんがのたまう中で一時は買入開始前水準に近いところまでドイツ10年金利が上昇などというお洒落な事になったので、そらまあオペレーションが注目されるのかもしれませんな。

なおFRBの買入の場合、QE2に関しては買入の効果のルートとしては金利低下の話ももちろんしているのですが、基本的には「QEによる買入の量に意味がある」っぽい言い方をしていて、QE2実施後に金利が上昇してもしらんぷりで淡々と最初に決めた買入をしていましたし、QE3の時はより金利の話をしていたはずですがTaperingトークで金利上昇しても買入を特にいじることなく推移させていましたが、そもそもFRBの場合はあまり金利ルートを強調しすぎていなかったのでそこはまあ上手くやってましたなあと思うのでした。さてECBはどうしているのやら。


・今月の資金需給見込み&今日は3M入札

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1505.htm/
日銀当座預金増減要因(2015年5月見込み)

こちらを見ますと今月は財政要因の資金不足が15.74兆円ありますが、輪番オペの買入が今月は奇数月なので8.96兆円の買入。先月の輪番は受渡ベースで月末を跨いでいるのが無いのに対して今月は日程上月末の所で輪番が入ると思われるので、そのオペがどう入るのかが結構効くのですけれども、前月同様に月末に中期と長期が入ると7.85兆円の買入になりますな。

つーことで15.74兆円のうち7.85兆円が埋まるので残り不足が7.89兆円。固定金利オペの落ち分とかETF等の買入とかの出入りが少々ありますのですがその辺はスルーしておいて8兆円買入を行えば前月対比のMBは減らなくて済むので、まあ8兆円は買入が入るのかよという感じですかそうですか。

でもって今月の短国買入は1日、来週月曜ときてその後は毎週金曜に入る筈なので、月内受渡に掛かるのは4回分となりまして、ネタにしませんでしたが1日の買入オファーが割と無慈悲に2.25兆円とか入りやがりましたので、これを単純に4倍すると9兆円ですかそうですかという所で。

しかしまあ何ですな。

1日の短国買入結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150501.htm
国庫短期証券買入 40,512 22,502 -0.017 -0.004 9.4
(他のオペは割愛)

1日って買入の札自体は4兆円あったのですが、そもそも3打席連続3M入札マイナスという状況を受けてのオペだったせいか、応札する皆さんも2.25兆円というオファーを見て「おおこれは流れる」と思ったのでしょうか足切って結局1.7毛強とか結構なところまで流れてしまいまして、この日は債券市場がコケる中(なお昨日の方が更にコケていましたが)短国だけはあちゃーという感じ(ただし応札4兆あってああ玉はあるのねという話にはなったけど)になった訳ですな。

でもって本日は3M入札で、これがマイナス入札になると1か月丸々マイナス入札になってしまいまして、さすがに短期金融市場的には色々な弊害が生じてくると思われるのですが、1日のオペ時点で1.8兆円の空振り分があるのでどうなんでしょうかね、というのと、この入札がマイナスで決着してセカンダリーでもマイナス利回りで推移するとなった場合に短国買入をどうしてくるのかというのも注目されますが、どうせ「玉が無ければ減らすけど別に市場に配慮して減らすことは無い」という毎度の無慈悲パターンだとは思うので期待はしませんがね。

なお、企画局様からは「MBニバーイニバーイ」には特段の定量的な意味はないという有り難いお告げが出た訳ですので、別に短国買入でせっせとMBを稼がなくてもいいじゃないかとか思ってしまいますが、どうせ「金利低下で効果」という部分を見て「よし!短国金利をマイナスにしないと!!」と間違った使命感を持ちかねないのがオソロシスな所であります。


まあしかし何ですな、金利を低位安定させようとするのでしたら、本来的に言えば「中短期金利を安定させる」というのと「イールドカーブを適当に立たせておく」というのが一番安定する方法でして、つまりそれは「低金利政策の時間軸コミットメント」が一番効くという話だったりすると思うのですよ。

つまりですな、そもそも債券投資というか金利物の投資っていうのは調達金利と運用金利の利ザヤで食うのが基本的な部分であることからして、イールドカーブを極端に潰すと長短スプレッドが取りにくくなりますので、市場参加者は減るし、そうなれば流動性も落ちるし、投資している人だって収益減ると相場が逆に逝ったときのバッファーが少ないのだから投げも早くなるし、となって、イールドカーブを極端に潰して「金利低下で効果が(キリッ)」ってやっても実は不安定の上での代物というのをECB様が実演中な訳ですな。

それから、調達金利っていうのは本質的に名目ゼロ金利制約があってマイナスにはなりえない以上(市場調達オンリーならマイナスの可能性はありますが、投資という意味では原資は市場ではなくて預金者なり保険契約者だったりするのですからそこでは名目ゼロ金利制約が発生する)、マイナス金利政策というのもこれまた金利物への投資という意味では投資家を排除する代物であり、その結果として市場が壊れてしまい、やはり不安定化へと繋がるという事になりますのでこれまた「目先の金利は低下するかもしれないが金利を安定的に推移させるという意味」においては下策というかマイナス効果だと思うのですよね。

しかしながら何となくこうマイナス金利みたいなのとかカーブを無理やり潰すみたいなのが効果みたいな話になっている風潮があるのですが、それって「安定的な推移」という意味においてはあまり良い策ではなく、短期的な一時的ショック政策のような短期勝負政策に使うものであると思うのですよね。でまあECBにしろ日銀にしろ、その政策が何気に長期化しそうな形になっているのが運営上マズーだと思う所(日銀の場合は最初は短期決戦だったのに泥沼の長期戦になっているのですが)ではありまする。

つーことでですね、非伝統的なことを手段としては実施するけど伝統的な政策ルートで行くのであれば、「金利の低位」だけではなく「金利市場の安定推移」というために何が必要か(投資家を排除して金利を無理やり下げるのではなく)というのをもうちょっと考え直して政策の立て直しをしていただきたいものだと思うのでありましたとさ、という雑談にいつの間にかなってしまいましたな(大汗)。


○しまった展望レポート背景説明ネタの時間ががががが

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1504b.pdf

最初の10ページが基本的見解と見通しの表とファンチャートですが、11ページ目からは背景説明というのがありまして、これがまた味わいが深いのでネタにするつもりが久々の労務のせいか寝坊したこともあって時間がありませんですかそうですか、ということで今日は掴みのところだけ。

・読んでの感想だが

えーっとですな、ここの背景説明を読んでいますと、まあ物価に関しては毎度の需給ギャッププラス拡大とインフレ予想の上昇によるフィリップスカーブのシフトアップによって上昇して、最終的にはインフレ予想の上昇による内生的な物価上昇メカニズムが機能する的な話ではあるのですが、経済見通しの方を見ますと、結局の所「設備投資と輸出」がドライバーになっていて、特に輸出の所について先行きを強めにみているのか、輸出の着実な伸びによって輸出企業中心に企業収益の拡大が今後も期待され、そこを起点とする前向きの循環というようなストーリーがメインになっているように見えた(間違ってたらごめんなさいなのだがアタクシにはそう読めた)のですな。

まあ確かに輸出も伸びてきているし、今度こそ設備も出るのではという感じ(稼働率が絶賛改善ちう)ではあるので話としては分からんではないのですが、そんなに強いのかねというのが??????な所ではありますし、内生的な物価上昇メカニズムって本当にワークするのかよという風に思う訳で、毎度申し上げておりますように物価が上昇した時に消費って本当に大丈夫なのかよ(賃金が2%CPI物価上昇に耐えられるほど上がってないだろそもそも2%CPI上がる間に日常品幾ら上昇するんだよ)とか、まあそういうのを華麗にスルーした見通しではあるのですが、基本的見解よりはもうちょっと控えめに書いているなあとは思うのですけどどうでしょうかね。


ということで『(企業の収益環境)』『(設備投資)』『(雇用・所得環境)』『(家計の支出行動)』辺りを見る(24ページ以降)のだ。


『(企業の収益環境)』から。

『企業収益の先行きについては、@原油安などによる交易条件の大幅な改善(前掲図表33(2))、A内外需要の増加に伴う売上数量(出荷)の回復(前掲図表5(2))、B好調な海外部門からの配当・利息の受取増加に支えられて、しっかりとした増益基調を続けると予想される(前掲図表6)。ただし、見通し期間の終盤にかけては、景気が循環的には減速方向に向かい、2017年度には、駆け込み需要の反動も予想される中で、人件費の増加など家計への分配がより進んでいくため、収益の伸び率は鈍化していくと考えられる。』

つーことで。

『原油安と円安は、企業収益の改善、さらには企業の支出活動の積極化を通じて実体経済にプラスの影響を及ぼすが、原油安は幅広い分野にプラスの影響を及ぼす一方で、円安のプラス効果は製造業に偏りやすく、非製造業、とりわけ価格転嫁力の相対的に弱い中小企業にはマイナスに働きやすいなど、部門別にみた差異が大きい。』

ほうほう。

『この点、中心的な見通しでは、製造大企業の収益拡大が、国内における研究開発を含めた投資や雇用者所得、さらには取引先からの購入スタンスの変化を通じて、経済全体に対し徐々にプラスの効果を及ぼしていくことを想定している。このところ、製造大企業において、@昨年を上回るベアの回答、A取引先に対する値下げ要請の修正、B国内設備投資の積極化、C株主還元の拡大などがみられているのは、そうした見方を裏付ける動きと評価できる。』

ということなのですが、これって従来ワークしなかったメカニズムでして、今回ワークするという根拠はよく分からんとしか申し上げようがない。


『(設備投資)』から。

『先行きの設備投資は、企業収益が既往の原油安や円安にも支えられて明確な改善傾向を続ける中で、緩やかな増加基調をたどると予想される。企業の中期的な成長期待は、2014年度のマイナス成長見込みにもかかわらず、改善傾向が維持されており(図表35(1))、株高・低金利・緩和的な貸出スタンスといった資本コスト面で投資刺激的な状況が続くことも、設備投資をしっかりと後押ししていくとみられる。ただし、見通し期間の後半から終盤にかけては、資本ストックの蓄積に伴って、設備投資の循環的な増加テンポは徐々に鈍化していくと想定している。』

という威勢の良い見通しになっています。

『こうした見通しについて、「設備投資は、一定の成長期待のもとで、生産活動に必要とされる資本ストックを実現するよう行われる」との考え方のもと、資本ストック循環の観点から設備投資の伸び率を評価すると(図表35(2))、当面、期待成長率が「0%台前半ないし半ば程度」と推計される潜在成長率と同程度であっても、設備投資の増加余地は相応に大きいと考えられる。その後も、「量的・質的金融緩和」のもとで、金利面、アベイラビリティ面ともに極めて緩和的な金融環境が維持されることが、成長期待の緩やかな高まりやオリンピック関連需要の顕在化とも相俟って、設備投資を後押ししていく姿を想定している。』

それはそうなのだがそう言い続けて全然設備投資が出てこないという現実もあるのだがががが。

『大企業の設備投資対キャッシュフロー比率は(図表36(2))、国内・単体ベースでみると、リーマン・ショック以降、水準をはっきりと切り下げ、最近でもその傾向に目立った変化はみられないが、海外分を含む連結ベースでみると、リーマン・ショック後のボトムから水準をはっきり切り上げている。海外需要を含めて考えれば、企業の成長期待は着実に回復しており、そのもとで企業は、基本的には海外に軸足を置いて成長投資などのリスクテイクを行ってきている。もっとも、既往の円安の進行などにより国内投資の採算が回復するにつれて、海外投資の拡大という基本的な方向性は維持しつつも、国内投資のウエイトを高める動きもある程度出てくると考えられる。』

願望のような気がしますが。需要のある所で生産するという形になっている訳で円高だから円安だからという話でもないのではないかと。

『実際、最近では、2年以上にわたる円安傾向の定着を眺め、国内において、老朽化した既存設備の維持・更新だけでなく、新製品などの一部の戦略分野における能力増強投資も出始めている19。』

ということで脚注19を見ますと・・・・・・・・

『19 内外成長率格差を勘案したうえで、内外設備投資比率(海外設備投資額/国内設備投資額)と為替相場の関係をみると、為替相場は2年程度のラグを持って、内外の投資の意思決定に相応の影響を及ぼすことが確認できる(図表36(3))。』

ということで、なるほどそれは分かったのだが、そんなにタイムラグがあるのに何でQQE実施した時に「2年」という話したのかさっぱり分からんのですがと突っ込みたくなる。


『(雇用・所得環境)』から。

『雇用面についてみると、労働需給の改善傾向は、昨年度前半の経済活動のもたつきを反映して、ひと頃やや緩慢となっていたが、足もとでは再び明確となっている(前掲図表9)。経済活動に必要な労働力は、失業者の減?のほか、女性や高齢者などの労働市場への参入によって確保されており、労働投入量(雇用者数×総労働時間)は、雇用者数の増加を主因に緩やかに増加している(図表37、38(1))。こうした動きを反映し、失業率は、失業期間別に分けてみると(図表37(1))、このところ短期(1年未満)の失業率の低下が顕著であり、足もとはバブル期並みの水準まで改善している。長期(1年以上)の失業率についても、改善ペースは短期より緩やかとはいえ、低下基調ははっきりしており、足もとはリーマン・ショック前のボトム並みにまで低下している。』

『また、通常の失業率(U3)に加え、現在職探しをしていないが潜在的に労働意欲を持つ非労働力人口や、現状より長い時間の労働を希望しているパート労働者の存在も勘案した、より広義の失業率(U6)をみても(図表37(2))、労働需給の引き締まりの程度に対する評価は変わらない。先行きも、2016年度にかけて、潜在成長率を上回るペースでの経済成長が続くとみられる中で、企業の中期的な採用意欲もさらに強まっていることも踏まえると(図表38(2))、引き続き雇用者数は増加し、労働需給の着実な改善が続く可能性が高い。』

頭数の話はまあ強い罠。

『賃金面をみると、労働者全体の時間当たり名目賃金は、労働需給の引き締まりにつれて、振れを伴いつつも緩やかに改善している(図表38(3))。』

緩やかにしか改善してないと(涙)。

『先行きについても、後述のとおりベアが伸びを高め、所定内給与を中心に賃金に明確な上昇圧力がかかっていくと予想される。以上のような雇用・賃金の見通しのもとで、雇用者所得の伸びは、緩やかに高まった後、見通し期間の後半には、次第に安定的なプラス幅となっていくとみられる(前掲図表10(3))。』

ふーん。

『先行きの労働分配率は、過去の景気回復局面にみられたような明確な低下傾向を示さず、横ばい圏内で推移すると想定している(図表38 (4))。』

その根拠は???

『先行きの賃金動向を占ううえで鍵のひとつを握るベアについて、今春の動向をみると、最終的な着地には不確実性が残るが、足もとの連合の中間集計では0.7%程度と、昨春(0.4%)対比で上積みが図られている(図表39(1))。来春以降についても、物価上昇も勘案した労使交渉姿勢が定着していけば、景気回復に伴う需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の上昇が次第に明確になっていく中で、ベアは伸びを高めていくと予想される20。』

まあそうだと良いですねとしか申し上げようがないところである。

脚注20では内生的な物価上昇という話をしている。

『20 組合のベア要求率と消費者物価の関係をみると、要求率は除く食料・エネルギー(消費税の影響を除くベース)の前年比との相関が他の指標に比べ相対的に高めである(図表39(2)(3))。これは、エネルギー価格の下落等によって消費者物価が一時的に伸びを低下させても、基調的な物価上昇率が景気の改善を反映してしっかりと伸びを高めていれば、それにつれて組合の要求率も相応に高くなっていく可能性を示唆している。』

そうだといいですね(棒読み)。


『(家計の支出行動)』である。

『個人消費については、駆け込み需要の反動という面での下押し圧力が概ね収束し、需要側統計のサンプル要因や天候要因の影響も剥落したとみられる昨秋以降も、一部に鈍い動きがみられた。こうした個人消費のもたつきには、実質所得が減?したことだけでなく、2014年度のマイナス成長見込み、さらには昨秋以降の円安進行も受けた物価上昇に対する抵抗感の若干の強まりを背景として、消費者マインドが年初頃まで慎重な動きを続けたことも、影響している可能性がある(図表40)。』

>昨秋以降の円安進行も受けた物価上昇に対する抵抗感の若干の強まりを背景として
>昨秋以降の円安進行も受けた物価上昇に対する抵抗感の若干の強まりを背景として
>昨秋以降の円安進行も受けた物価上昇に対する抵抗感の若干の強まりを背景として

こちらではちゃんと言及しているのは良い事であります。

『もっとも、足もとでは、ガソリン安や賃上げ期待などを背景に消費者マインドは持ち直しつつあり、今春以降は、年金支給額の増額や電気代の下落も予想されるため、消費者マインドの改善は明確になっていく可能性が高い。加えて、労働需給の引き締まりや昨年以上のベアを背景とする雇用者所得の増加、株高による資産効果も、家計部門にプラスに作用するとみられる(図表41)21。』

となりますとやっぱり物価上昇が日銀の見通し通りに逝くと普通に考えて(この前の日興リサーチさんのレポートの受け売りになりますが)粘着性の高い品目が多い事からすると日常品の価格が盛大に上昇するの図になってしまいますから同じように消費者マインドが落ちるのでは、というかそもそも今の状況で2%物価上昇は日本経済の実力的に無理という話なのでは、と言うと「いやそうではない」という理屈が日銀公式見解からは返ってくる筈です。

『以上を踏まえると、先行きの個人消費は、2015年度から2016年度にかけて底堅く推移し、2016年度後半には消費税率の再引き上げに伴う駆け込み需要も生じると予想される。一方、2017年度の個人消費については、駆け込みの反動とともに、実質所得減少の効果が現れることから、2014年度ほどではないとはいえ、減少に転じると想定される。ただし、その度合いについて不確実性は大きい。』

以下住宅投資の部分はめんどいから割愛しました。ほとんど引用手抜き企画ですが、輸出以外の基本コンポーネントの部分をべた引用しておきました。続きはまた後日。





2015/05/07

お題「総裁会見は堅牢な屁理屈の城に籠った状態/企画局からQQEの効果検証ペーパーが出ましたよ!!!」

マクプルキター!!!なのかどうかこれだけだとよくわからん。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NNXS716JTSEK01.html
FRB議長:株式はかなり割高、債券利回りは急上昇の可能性も
2015/05/07 04:44 JST

しかしすっかりこんな流れになっておりますな海外債券は。
http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPL4N0XX4IL20150506
ユーロ圏金融・債券市場=利回り総じて年初来の高水準、世界的な国債売り継続
2015年 05月 7日 02:03 JST

ついでに土曜の東京新聞にこんなのが。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015050202000110.html
年金、海外より高リスク 最低給付部分も株式運用
2015年5月2日 朝刊

『年金積立金の株式運用について、安倍政権は成長戦略の一環として重視。政府の「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」(座長・伊藤隆敏政策研究大学院大教授)は二〇一三年十一月、収益性を高めるために株式投資を増やすよう促す報告書もまとめた。』

『株式の積極運用に際し、有識者会議の報告書は米国やカナダ、ノルウェーなどの年金も高い比率で株式運用していることを紹介した。しかし「米国では全国民共通の老齢・遺族・障害保険は全額が市場を通さない国債で運用され、損失リスクがない仕組みだ」とニッセイ基礎研究所年金研究部長の徳島勝幸氏。報告書は各国の年金が株式運用しているのは日本の厚生年金の部分のみで、最低限の給付水準に影響が出ないよう基礎年金部分は株式運用をしていない点には触れないまま、方針変更を促していた。』(以上、上記URL先より)

ええまあこんな記事がありましたなあという事ですからね(・ω・)

なお、展望レポート基本的見解に関しては恒例(って2回目だが)で休み中にこっそりと更新しているので本日の駄文の下につけております(ので今日のこのページはやたら量が多いっす)。


○総裁記者会見は想定問答というか俺様ロジックの説明会だった件

こういうのを暖簾に腕押し糠に釘というのでしょうな。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1505a.pdf

お休み中にネタにした(本日分の続きに掲載しています)展望レポート基本的見解の前回対比の確認でもそうでしたが、展望レポート基本的見解と同様に今回は「堅牢な屁理屈で城を築いて立て籠もっているので何を聞いても屁理屈城から出てこない」というのが特色となっておりまして、まあ読んでて目立つのは「質問に対して全然正面から答えない(これは質問する方がもうちょっと考えてほしい面はある)」のと、「ツッコミに対してはまず全否定から入って後は俺様ワールド」という所で、実にこう見ていてナンジャソラ的な残念感が致します。


・展望レポートの反対に関して

冒頭説明の所から。

『なお、展望レポートについては、消費者物価が2%程度に達する時期に関し、白井委員から「2016年度を中心とする期間に」とする案が、また、佐藤・木内両委員からは、見通し期間中には2%程度に達しないことを前提とする記述の案が提出され、それぞれ否決されました。また、金融政策運営について、木内委員から前回決定会合と同様の提案があり、否決されました。詳細については、議事要旨をご覧下さい。』

ということで、展望レポートについては3名が反対ってナンジャソラという話は展望レポートネタでもやりましたが一応つけておきます。

ただ、白井さんが何を考えてこういう謎の反対をしているのかがよくワカランチ会長な所で、佐藤さんと木内さんに関してはそもそもの2年で2%というアクチュアルな物価に対するタイムコミットメント的な政策の枠組みに反対しているというのが分かる反対なのですが、白井さんの場合は単に目立ちたがりというか後になって「ほらアタシが見通していた通りじゃない」という後だしジャンケンをしたいだけじゃネーノ疑惑は有る訳で、木内さんのように中長期的に目指すとか、佐藤さんのようにフォーキャストターゲットの考え方で柔軟に考えろというような主張を前面に出しているのかというと白井さんって別にそういう話はしていないので、他の2名はともかくとして白井さんは何故追加緩和の提案をしないのかの方が不思議ではありますが、まあ白井さんクオリティですからねえ・・・・・・・・・・・とは思ったりもします。

とはいえ、そもそも展望レポートの基本的見解が執行部以外の審議委員6人中で3対3ってそらどういう事やという所で。


・基本的屁理屈については最初の質疑で集約されています

つーことで鑑賞。

『(問) 展望レポートで、物価上昇率が2%程度に達する時期の見通しが、従来の「2015年度を中心とする期間」から「2016年度前半頃」と変更されました。物価安定目標の達成時期が遅れる可能性が高まっているということなのかご見解をお願い致します。』

うむ。

『また、この見通しに基づきますと、物価安定目標の達成には、日銀が念頭に置いている「2年程度」よりも1年以上長い期間を要するということになりますけれども、「2年程度」の目標は降ろさないのか、また、追加の政策対応は必要ないのか、お尋ねします。』

まあ普通にそう聞きますな。

『(答) 物価の基調については、着実に改善していると考えており、今回の展望レポートにおいてもこうした見方に変わりはありません。』

いきなり基調の話で誤魔化す攻撃キタコレ!!!

『すなわち、需給ギャップは、概ね過去平均並みの0%程度まで回復、あるいは改善していますし、今後更に改善していくと見込まれます。また、中長期の予想物価上昇率は、昨年10月に「量的・質的金融緩和」を拡大した効果もあり、原油価格の下落にもかかわらず、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられます。』

『さらに、今年の春の賃金改定交渉では、多くの企業で昨年を上回るベースアップを含む賃上げが実現する見込みです。企業の価格設定行動をみても、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる動きがみられています。』

ホンマカイナという感じですがそのようにくどくどと説明しまして・・・・・・・・

『このように、良好な企業収益の状況や労働需給の引き締まりを背景として、賃金の上昇を伴いながら緩やかに物価上昇率が高まっていくというメカニズムは作用し続けていると思います。』

こういうと内生的な物価上昇メカニズムという話になるのだが、実は展望レポートの背景説明(たぶんそこまで今日は手が回らない、つーかだったら休み中に投下しろよと言われそうですがそこはまあ勘弁ということで)まで読むと先行きの成長メカニズムが輸出と設備投資主体の輸出企業主導のトリクルダウンっぽい話になっているんですよね。まあそれとは別に内生的に物価が上がるという話をしているのでしょうが。

『確かに、「2015年度を中心とする期間」というところから、「2016年度前半頃」ということで、若干2%程度に達する見込みが後ずれしているということは事実ですが、今申し上げたように、物価の基調は着実に改善していますし、今後とも改善が続く見通しですので、今の段階で何か追加的な緩和を行う必要はないと考えています。』

屁理屈キター!!!

『もっとも、物価の基調が変わってくることがあれば、躊躇なく政策の調整を行うという考え方に変わりありません。』

ということで、その基調というのは日銀の説明的に言いますと需給ギャップと予想物価上昇率であって、どちらもリアルタイムで正確な数値を掴むのは難しい代物ですので、要するに日銀が鉛筆なめ放題というものですから、結局の所黒田さんが急に食当たりでも起こして追加緩和病に罹患すると追加緩和だしそうじゃないならやる気なし、というのが展望レポート基本的見解を見ると(下に置いてますが、計数については下振れしているのに経済物価を構成するコンポーネントに関しては見通しをやたら強くしているという内容になっています)読み取れます。

『また、2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現するというコミットメントについては、変更する考えはありません。』

ぽかーん。

『何といっても、日本銀行が、2%の「物価安定の目標」の早期実現にコミットすることで、人々のデフレマインドを転換し、予想物価上昇率を引き上げるということが、デフレ脱却という目的そのものであると同時に、「量的・質的金融緩和」の政策効果の起点でもあるわけです。実際、そのもとで、企業や家計の物価観等は大きく変化をしてきています。』

数字は行っていないし達成は遅れるけれども数字の早期実現のコミットメントは変わらんということで、実績は実績でコミットはコミットとかずいぶんとお気楽なコミットメントですなあ(笑)と存じます次第。

『もとより、実際の物価が様々な要因で変化し得ること、特に、例えば、原油価格が昨年の夏から半年くらいの間に5割以上下落するといった、国際商品市況の大きな変化で「物価安定の目標」からかい離する期間が生じるということは、各国の中央銀行でも当然のこととされています。』

物価はマネーの量で決まって他国ガーというのは関係ないしそういう言い訳をしてはいけないという置物副総裁の見解をお伺いしたい。

『現状、物価の基調は着実に高まってきていることから、原油価格の影響が剥落するに従って2%を実現していくとみており、「2年程度の期間を念頭にできるだけ早期に」というコミットメントに沿った動きになっていると考えています。』

ということでして、つまり「原油が戻ると物価が上がるのでお待ちください」という足元で検証が出来ない説明を持ってきているのが最強の屁理屈城であると言える訳ですな。

つまり、「大体からしてコアコアとか東大物価指数みたいなのが弱い訳で原油が戻っても物価があがらないんじゃネーノ」というツッコミやら、「原油が戻ってその分で物価が戻ったとしても、昨年の動きに見られたように名目物価が上昇することによって実質賃金に悪影響を与えた結果消費が再度落ち込んで景気回復のメカニズム自体がコケるんじゃネーノ」というツッコミをしようとしましても、ツッコミ入れる方だって100%の確信持って言える訳ではないのですから、結局の所結果が出てくるまでは「戻るのだから戻るのです」という説明で押し通せるというのが難攻不落の日銀企画屁理屈城のオソロシスな所ではございます。


・・・・・・とまあそういうことでして、「QQEの効果で物価の基調が強まっている」「そしてここもと物価の基調は更に強まっている筈」「したがって原油価格下落の影響の裏が出てくる時期には物価は上昇傾向を強める筈」という理屈を繰り出してきまして、「そのように効果は出ているのだから2年で2%のコミットメントに違背している訳ではない、単に原油価格が攪乱しているだけなのでコミットメントに変化はない」というようなロジックで以下延々と質疑というか何というかが展開されておりますが少々鑑賞してみましょう。


・今回の質疑応答の中で一番イイシツモンダナーと思ったのはこいつ

幹事社の次に質問した人だった希ガス。

『(問) 物価に関して2点お伺いできればと思います。1点目ですけれども、今回、やや後ずれということなのですが、先程の総裁のご説明だと、物価の基調は特に大きく変わっていないとのことです。』

ですなあ。

『今回の展望レポートの前提になっている原油価格をみても、前回出された時と想定は大きく変わっていません。しかも足許の原油価格をみると、ブレントなども特にそうですけれども、上がり気味になっています。ということは、原油価格の想定はあまり変わっていないのに、見通しだけ後ずれし、でも基調は変わっていないことになります。なぜ後ずれしたのか、ちょっと分かりにくいので、そこをブレークダウンして教えて頂ければと思います。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『その「前半頃」というのもかなり幅を持った見方ではあると思うのですが、これは普通に考えれば、9月ぐらいまで、その前後、というようにも読めると思うのですが、どうみていらっしゃるのでしょうか。』

『2点目ですが、これまで総裁のご発言の中では、今年の秋以降に物価の上昇がかなり加速していくと、「かなり」という言葉もつけて、おっしゃっていたかと思うのですが、今回、全体が若干後ずれするということは、物価がもう1回上がってくる、秋頃かなり加速するとおっしゃっていたのも、後にずれるというイメージでよろしいのでしょうか。』

ということで屁理屈を鑑賞。

『(答) まず、1点目のご質問ですが、確かに原油価格の前提については、実際の価格は前提とほぼ変わらない動きをしています。55ドルぐらいから2016年度末にかけて70ドルぐらいに緩やかに上昇していくだろうという前提に、概ね沿った動きになっています。その一方で、物価の見通しが若干下方修正されて、2%程度に達する時期が少し後ずれしたということの背景には、各委員毎に、それぞれ色々なお考えがあろうと思いますが、個人消費の一部で改善の動きに若干鈍さがみられ、需給ギャップの改善がやや後ずれしているのではないか、というようなことを指摘する声も聞かれましたので、そういったことを反映して、おそらく物価について若干ですが、やや下方修正になったのではないかとみています。』

おいこらさっきその説明なかったぞ(ちなみに展望レポート基本的見解でもその辺は微妙にぼかしている)という所ですが、そういう状況で基調が強いis何?という気がしますし、そもそも論として消費の改善が遅れている背景に消費増税を含む名目物価の上昇があるのであれば、年度後半にかけて物価が上昇した日には同じことが起きて消費が落ち込んで景気回復のメカニズム自体が頓挫しねえかと小一時間問い詰めたい。

『物価上昇率については当面0%程度であろうと思いますが、年度後半には物価上昇率は加速していくとみています。そういう意味では従来申し上げてきたことと、物価上昇率が上昇を始める時期については、変わっていません。と申しますのは、原油価格下落の影響が当面むしろ大きくなっていくわけですが、年度後半から、原油価格下落の下押し圧力が小さくなっていくことが見込まれており、そういう意味では、今年度の後半にかけて物価上昇率が再び上昇していくとみている点では変わりはありません。』

ということで、まあ物価がどこかで上がりださないと他の言い訳を見つけないとロジックが盛大に崩壊するという大変に素敵な事態になるのですが、この場合は景気の方はたぶん持ってしまうので(アタクシ的には物価が再上昇して景気がコケる方がリスクだと思うのだ)、何だかんだと言っててきとうな言い訳をひねり出してきて「景気が良いのだからいいじゃないかにんげんだもの」という作戦に出る可能性もあったりすると思う。


・相変わらず出口は検討していないという説明なのだがもっと言い方はないのか

『(問) 今回の展望レポートでは、物価について、2016年度、2017年度と2年連続で目標とする2%程度で推移するとの数字を示しました。見通しの上では、2017年度までのどこかの段階で「量的・質的金融緩和」からの出口に入っていてもおかしくないような数字だと思うのですが、本日の会合ではこうした点について議論があったのか、またそういうことに触れられる委員はいらしたのか、可能な範囲で教えて下さい。その関連で、2年連続で物価が2%程度で推移する状況とは、2%が安定的に持続している状態と理解してよいのか、この点について教えて下さい。』

きわめて順当な質問。

『(答) 今ご指摘のような出口についての議論があったかと言われますと、そういう議論はありませんでした。今回の政策委員会での議論は、次回の決定会合以降に議事要旨が公表されますので、それをご覧頂きたいと思います。』

木内さんェ・・・・・・・・・

『2点目は、様々な指標や経済・物価の動きをみて総合的に判断することだと思いますが、確かに2016年度、2017年度にかけて2%程度の物価上昇になる見込みであることは非常に好ましいと思います。何度も申し上げてきた通り、現在の「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続することになっており、その判断はその時点までの物価上昇率の実績だけではなく、予想物価上昇率の動向やその先の経済・物価見通しがどうなっていくか等々を見極める必要があります。その上で、2%の「物価安定の目標」を安定的に持続するような政策運営を具体的に検討することになると思いますので、今の時点の見通しで出口の時期を特定できるものではないと思います。』

別に出口の時期を特定しろという質問をしている訳ではないのだが話をすり替えて説明していますね!!!!!

『いずれにしても、現在は2%の「物価安定の目標」に向けて最大限の努力を払っている最中であり、出口のあり方や出口の時期について議論するのはやはり時期尚早であろうと思います。』

時期はともかくあり方については考えるだろ、というか「異例の規模となる強力な金融政策」という政策を実行するのに最終形と最後の風呂敷の畳み方について考えない政策とか無責任にも程があるだろおいこらという所で。


・後ずれさせているのに追加緩和しないのはコミュニケーション的にダメなのでは?という質問だが

これは質問のやり方がうまくないとしか言いようがない。

『(問) 本日、株価がかなり下がっています。2年で2%という目標を掲げ続けているにもかかわらず、物価が2%となる見通しを後ずれさせて、追加緩和という行動を採らないことが、もしかすると、マーケットとのコミュニケーションを上手くいかなくしているのではないか、2年で2%を掲げ続ける副作用のようなものが見え始めているのではないかという気もするのですが、この点についてのお考えは如何でしょうか。』

これ2年で2%の副作用とか言い出すから訳分からなくなるのであって、もっと単純に「2年で2%達成にコミットしているのに目標達成時期が遅れる中で追加緩和をしないから株価が下がるような形でマーケットとのミスコミュニケーションが起きてませんか」と聞いた方が良いと思う。

『(答) 私どもはそのようなことは全く考えていません。』

ちなみに今回の総裁会見では「質問」→「開口一番に全否定」というのが4回もあります。

『「量的・質的金融緩和」が所期の効果を上げていることは、従来から縷々申し上げている通りです。先程も申し上げたところです。株価の日々の動きについてコメントはしませんが、色々な報道でも、日本銀行の決定が本日の株価に大きな影響を与えたという報道はなかったと思います。』

ほうほうそうですか。

『ただ、いずれにせよ、株価の日々の動きについて申し上げるのは差し控えたいと思っていますが、その意味で、市場とのコミュニケーションについて何か問題が生じているとは思っていません。』

これは酷い。

『日本銀行として、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するという強いコミットメントを持って金融政策を遂行してきましたし、今後とも遂行していくつもりです。他方で、物価の実際の動きは色々な要因で影響されますが、中でもこれほど大幅な原油価格の下落は誰も予想していなかったわけであり、しかも下落自体は経済にとってはプラスになり、中長期的には物価の押し上げ要因として効いてくるはずですので、足許で物価上昇率が0%になり、当面0%程度で推移することはありますが、これが物価安定の目標の達成に向けた日本銀行の強いコミットメントと矛盾するものではないと考えています。』

ということでさっきから展開されている屁理屈の説明をしております。


・実際にそんなに物価は強いのでしょうかという質問について

でまあその後も延々と後ずれの質問が出て上記のような日銀企画屁理屈城に籠城した回答が返ってくるという流れが続くのでめんどいからその辺は割愛しまして。

『(問) 先程、2年程度でできるだけ早期に達成するコミットメントの重要性を説かれていましたが、総裁のお考えとして、できるだけ早く2年程度で達成するというコミットメントを持ち続けることが重要であって、2%に届くタイミングというのはそれほど重要でないとお考えになっているのかどうか、その点について1つお伺いします。』

これも良い質問(^^)。

『もう1つは、最近の物価指標をみると、物価の基調が改善しているようにはみえないです。確かに賃金とか、雇用、労働市場は、タイト化していますが、実際に物価を表す指標は改善がみられない中で、物価の基調がよくなっているというのは、少し苦しい面もあるのかなと感じるのですが、その点如何でしょうか。』

ですなあ。

『(答) 最初の点については、先程来申し上げている通り、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を達成するというコミットメントは、極めて重要であると思っています。』

で?

『他方、具体的な物価の動きは、色々な要因によって影響されます。その影響が物価の基調を変えるようなものであれば、それは金融政策の調整が必要になると思いますが、今の状況をみますと、昨年の「量的・質的金融緩和」の拡大によって、懸念されたデフレマインドからの転換が遅れる惧れは一応払拭されて、中長期的な予想物価上昇率は、概ね維持されています。』

『そうしたもとで、需給ギャップも着実に縮小してきていますし、2015年度、2016年度と、潜在成長率を相当上回る経済成長が続く見通しであり、需給ギャップがさらに縮んで、プラスになっていくように見込まれます。先程申し上げた2年続きのベースアップを含めて、賃金の上昇が続いていること等々、物価の基調は着実に高まってきているということは言えると思います。』

またこれか。

『そういう意味で、生鮮食品を除く消費者物価の対前年同月比が足許ゼロになっており、当面その近傍で推移するといったこと等、足許の物価が原油価格の大幅な下落等の影響を受けて、低迷していることは事実なのですが、その背後にある需給ギャップ、予想物価上昇率、さらには賃金あるいは企業の価格設定行動等々、物価の基調を決定する要因をみるに、引き続き改善していますし、さらに改善していくという見込みにあるということは言えると思っています。』

何という説明、と思ったらちょっと後に更にツッコミが。

『(問) 前回も聞いていますし、他の方々も何人も聞いていますが、あえて伺うと、やはりCPIのコアコアが非常に弱いのは、前回、それはエネルギー価格の下落も影響するのだというご説明をして下さったのですが、それでは説明しきれないほど弱いのでないかと私は思うので、あえてもう一度お伺いします。』

『(答) コアコアが弱いのではないかというのは、確かに米国などと比べると弱いわけですが、先程申し上げたように、エネルギー価格の下落が輸送費その他を通じて、コアコアの指標にも影響を与えていることは事実です。同様な状況は、実は欧州でも出ており、あちらでもエネルギー価格等を除いた指標でみても、やはり下がっており、それは彼らもエネルギー価格の下落の影響が交通費その他、輸送費その他を通じてそちらに影響している面もかなりあるということを指摘しています。』

ちょwwww欧州と同じって不味いだろと思ったらさすがにこれは同じ人(だと思った)がツッコミを。

『(問) だからこそ欧州はデフレだと言われているわけで、もし欧州と同じだと言ってしまったら、日本はデフレなのだということになってしまうのではないでしょうか。』

(・∀・)ニヤニヤ

『(答) それは全く違います。欧州の場合は、従来は物価上昇率がマイナスでなかったわけです。そうした中で、最近になって──ここ数か月ですが──、特に、原油価格が下落して以降、マイナスに転じています。』

それだからデフレ懸念があって追加緩和を矢継ぎ早に行っているのではないでしょうか。

『日本の場合は、2013年まで平均を取るとマイナスということで、15年続きのデフレにありました。そうしたところから、プラスに転化してきていたわけですが、足許では、米国や欧州と同じく石油価格の影響によって物価上昇率が下がってきて、足許でコアでゼロ、コアコアではまだプラスではありますが、そういう状況になっているということです。』

などと意味不明な供述を繰り返しており・・・・・・・・・・

『従って、米国、欧州、日本とそれぞれに状況は少しずつ違いますが、それぞれにヘッドライン・インフレーションの率が下がってきて、そしてコアというか、コアコアというか、いわゆるエネルギー価格を除くものであっても、やはり下がってきているということには変わりはないと思います。』

もうなんか無茶苦茶ですが、要するにまともに答えるとマズーな結果になるから答えないという事ですな。


・オペの限界は当然認めないのですけれども・・・・・・・・・

『(問) 本日の見通しに沿うと、2016年度に入ってからも大規模な緩和を続ける可能性が高いかと思いますが、市場では2016年度に入ると国債の買入れが難しくなるのではないか、札割れが出るのではないかという懸念も高まっています。総裁はかねて、買入れには問題ないとおっしゃっていますが、2016年度以降を見渡しても国債の買入れには何ら問題ないというお考えなのか、また、本日の政策決定会合で他の委員からその点について懸念はなかったのか、お伺いします。』

まあその前に札割れとかになりそうですけどね。

『(答) 2016年度といいますか、むしろこれからの金融政策につきましては、今日の決定会合での決定とその公表文に示されていますし、また従来申し上げている通りであり、2%の「物価安定の目標」を達成し、それを安定的に持続できるようになるまで、現在の「量的・質的金融緩和」は継続すると申し上げています。そうしたもとで、2016年度にどうなるかを今から何か申し上げるのは適切でないと思いますので、それを前提に云々することも適切でないと思いますが、国債買入れについて何か現在問題が生じているとか、あるいは今後ご指摘のような問題が生ずるとは考えていません。』

これは酷いというか。いやまあオペの限界があるとは言えないのは分かるのですけれども、物価が2%に達する時期が16年度前半であって、そこから時間をかけて2%を安定維持するパスに乗るという見通しだったら16年度に入ってもQQE継続となるだろ何言ってるんだこのオッサンはという感じで、まあ今回の質疑応答は全般的に「質問に正面から答えない」「ひたすら展望レポート基本的見解の堅牢な屁理屈を繰り返す」という内容になっていまして、まあそういう意味では(まともに答えないという確信犯で対処しているから)今回の総裁の説明って説明にはなっていないのですが余裕はある感じ(そらまあ説明しないんだから楽だわな)という所ではございましたとさ。


○企画局謹製のQQEの効果検証レポートは「マネタリーベース」の効果が見事に皆無な件について

金曜にこげなものが出ていますた。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/rev15j08.htm/(要旨)
「量的・質的金融緩和」:2年間の効果の検証
2015年5月1日 企画局

全文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/data/rev15j08.pdf(全文)
「量的・質的金融緩和」:2年間の効果の検証
2015年5月1日 企画局

でまあ今回はクレジットが「企画局」ですので、毎度おなじみの「これは個人的見解です」というのではなくて、企画局が堂々と出してきたというのはまあ評価したいところではありますが、内容については何ちゅうかアレという所ですけど出さないよりはかなりマシな話ではありますな。

なおこの内容は展望レポートの背景説明の方に思いっきり記載されておりますのでそちらでも読めます。


まずは要旨から引用してみませう。

『要旨』

『日本銀行が2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入してから2年が経過した。本稿では、「量的・質的金融緩和」が金融・経済に与えた政策効果についての定量的な検証を試みる。』

定量的検証キター!!

『「量的・質的金融緩和」の効果の波及メカニズムは、(1)2%の「物価安定の目標」に対する強く明確なコミットメントとこれを裏打ちする大規模な金融緩和により予想物価上昇率を引き上げると同時に、(2)巨額の国債買入れによってイールドカーブ全体に下押し圧力を加えることで、(3)実質金利を押し下げることを起点とする。』

物価は貨幣的現象であってマネーの量で決まるという置物リフレ理論はどこに????????

・・・・・・・・ということで、まあこの検証云々ペーパーにおける最大のインプリケーションは「マネタリーベースの量そのものに効果がある」という理屈を全く持ち出していないことでありまして、政策効果をインフレ期待の引き上げと国債買入による金利低下効果としている事です。

まあ理屈を言えばそのインフレ期待に対してマネタリーベースの量が効果があるという話であって、「これを裏打ちする大規模な金融緩和」って所にそれが含まれるちゃあそうなのかも知れませんが、その説明に「マネタリーベース」という文言が無く、定量効果の所でも(本文にありますので後程)マネタリーベースの話が無いのであって、これはつまり置物直線理論とかマッカラムルールとかその辺の話を盛大に「無かったこと」にしようとしている布石であるという可能性があるということですな。

でまあ「コミットメント」でインフレ期待を上げて、「国債買入」で「名目金利」に押し下げ圧力をかける、というのであれば、コミットメントに関しては先ほどの総裁会見での説明(や展望レポート基本的見解の記述)にもありますように「強力なコミットメントに変わりはない」と言ってるのですから、長期金利を低位安定させるためのオペレーションという意味では別に今のような国債馬鹿買入をするよりもより効果的な方法があるんじゃネーノとは思うのですが、その手段云々の雑談は色々と思考中につきまた後日。


『このことを踏まえて、効果の検証は2段階で行った。まず第1段階として、実質金利がどの程度低下したかを計測した。次に、第2段階として、この実質金利の低下がどの程度実体経済や物価に影響を与えたかを計測した。』

ほうほうそれでそれで???

『計測の結果、(1)「量的・質的金融緩和」は、実質金利を▲1%ポイント弱押し下げた、(2)実際の経済・物価は、概ね「量的・質的金融緩和」が想定したメカニズムに沿った動きを示している、と評価できる。ただし、最近では、原油価格の下落を主因に消費者物価上昇率は低下しており、これが人々の予想物価上昇率の形成との関係でどのような影響を与えるか、注視していく必要がある。』(ここまでの引用は要旨、または本文のサマリー部分から)

と、ここまでが要旨(本文のエグゼクティブサマリーと同文)でありまして、えーっとすいませんその実際の経済物価への影響とQQEの実質金利引き下げとやらの相関は分かるのだがそれ本当に因果関係あるのかよとか思ったりするのですが、まあそこはともかくとして本文の2ページと3ページから少々。


まずは本文2ページから。

『(観察アプローチ)』

って所から。

『まず、名目長期金利の低下幅は、10 年物で▲0.3%ポイント程度である。予想物価上昇率は、用いるアンケートによってかなり幅があり、0〜+5%ポイント程度である(図表2)。仮に、エコノミスト(ESP フォーキャスト)や市場参加者(QUICK 調査)による長期の予想物価上昇率(+0.4〜+0.5%ポイント)を用いれば、実質金利の低下幅は、▲0.7〜▲0.8%ポイント程度である。』

ということで、予想物価上昇率の変化に関しては結果だけの話になっていまして、その間にマネタリーベースがどう効いた的な話はもちろんの事、そもそもマネタリーベースがどうなったかという話も皆無。


でもって3ページなのですが。

『(回帰分析アプローチ)』

ということで・・・・・・・・・・

『日本銀行の国債買入れの実質金利押し下げ効果を、10 年物長期金利を被説明変数とする回帰分析を用いて推計すると、累積の買入れ効果は、10年物金利換算で▲0.8%ポイントとの結果が得られた(図表4)5。』

ということで、まあそんなもんですかねえという感じですが、そこの図表4というのが中々味わいがあります。図表を貼り付けるスキルが無いので箇条書きチックに改変しちゃいますが。

『【図表4】国債買入れの長期金利押し下げ効果

2013/3月末から2014/12月末までの変化

日本銀行の長期国債保有残高の増加額:+110兆円
日本銀行の国債保有割合の上昇幅:+19.3%ポイント
長期金利の押し下げ効果:▲0.8%ポイント

(注)日本銀行の国債保有割合は、対発行総額ベース。日本銀行の保有国債の平均残存期間の変化(変動利付債、物価連動債は除く)を勘案して算出。
(出所)Consensus Economics、QUICK、日本銀行、Bloomberg 等』

・・・・・・・ということで、マネタリーベースのマの字も出てこないというのが実にこうチャーミングでありまして、だったらMB拡大とかやるよりもツイストオペでもやればとか注記にある「日本銀行の国債保有割合は、対発行総額ベース。日本銀行の保有国債の平均残存期間の変化(変動利付債、物価連動債は除く)を勘案して算出」というのが効果があるのだったら、そもそも論として日銀が買入をしなくても財務省が発行を短期化すれば済むだけの話ではないでしょうかとか、だったら中短期買わなくても良いのでではとかそういうツッコミが出てくると思うのですが。

#念のため申し上げますと、長期金利を低位安定させたければイールドカーブを潰しすぎるのは良くないと思いますので、さっき申し上げた「金利にフォーカスした効率の良い政策」というのはこれとは別になると今は思ってます


なお、順序逆になりますが2ページ目に定性的な話がありまして。

『「量的・質的金融緩和」導入後の金融経済の動き』

ってのですけどね。

『「量的・質的金融緩和」の導入以降、金融市場、実体経済面、物価面それぞれにおいて、大きな変化がみられた。上記@〜Gの点に即してみると、少なくとも定性的には、「量的・質的金融緩和」によって、何らかの変化が生じたことは、各種の指標や経済現象によって確認できる。』

ほう。

『例えば、予想物価上昇率は各種のサーベイや市場指標で上昇しているほか、2 年連続の賃上げなど企業の賃金・価格設定行動も変化している。また、イールドカーブ全体に強い下押し圧力が加わっていることは市場金利から明白であり、したがって、実質金利も大きく低下し、マイナスで推移していると考えられる。こうしたもとで、需給ギャップが改善していることは、人手不足などから、広く実感されている。』

賃上げ要請ェ・・・・・・・・・・

『物価面では、マイナス圏内にあった消費者物価(CPI、除く生鮮食品、消費税の直接的な影響を除くベース)前年比は、2015 年1 月まで20 か月連続でプラスとなった(最近は原油価格の急落の影響でゼロ%程度となっている)。』

はいはい特殊要因特殊要因。

『金融面をみると、株価は大幅に上昇し、為替市場では円安方向の動きが進んだ。貸出も、同政策の導入前は前年比マイナスから若干のプラス程度の伸びであったが、現在では中小企業向けを含めて前年比プラス幅が拡大している。以下ではこれらを定量的に検証する。』

なんちゅうかほかの政策の効果もあったと思いますし、大体からして金融政策の効きにタイムラグがあるのだったら過去における金融緩和の累積的な効果だってあるだろとか思いますが、まあそれを言い出すと宣伝にならないですから仕方ないですね!!!!!!!


#市場雑談ネタがスルーになってしまいましたすいませんすいません



2015/05/05

お題「展望レポート基本的関係にツッコミを入れてみるの巻(休日特別編)」

GWももうすぐ終了の巻という状況になってえっちらおっちらアップするの巻であります(汗)

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1504a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1410a.pdf(前回)

でまあとりあえず基本的見解の逐語ツッコミを恒例なので(?)せっせとやってみます。

○最初に概要を読む前に少々

まずは最初に鏡の部分で『概要』というのがありまして箇条書きになっている(そういやこの箇条書き部分はアタシの言った文章構成なのよ!と言ってる白井さんという方がいましたな)のですが、その話は金曜に簡単に引用しましたから基本スルーしますがその前に少々追加で。

・3人の審議委員は更に見通し期間が後のようですな

えーっとこちらだと微妙に記載されていないのですが、さすがにこれは重要な論点なので総裁記者会見の冒頭で『なお、展望レポートについては、消費者物価が2%程度に達する時期に関し、白井委員から「2016年度を中心とする期間に」とする案が、また、佐藤・木内両委員からは、見通し期間中には2%程度に達しないことを前提とする記述の案が提出され、それぞれ否決されました。』とありまして、審議委員6人のうち3人が思いっきり2%達成の見通しが後になっています。

でまあ木内さんは毎度のTaperingちっくな提案をしていますが、白井さんと佐藤さんは2%の物価目標達成時期が白井さんの場合は微妙に後というのがナンジャソラという感じではありますが、佐藤さん(と木内さん)はそもそも2017年度中にも2%に達しないという事を前提に考えるべきだという話をしている訳でして、その前提の元ででは金融政策はどうなるのかというと、白井さんにしても佐藤さんにしても順当に追加緩和提案ではない訳でして、白井さんの方は少々謎ですけれども佐藤さんの場合は「フォワードターゲット」としての物価安定目標を提示していますし、「タイムコミットメント」ではなくて「2%は目標として掲げるけど実際の物価が2%に行くかどうかを重視するのではなくて、経済物価情勢が中期的な見通しとして2%に向けた動きになっているのか(上や下にぶれるのではなく)」という話を講演などでしているので、そもそも少なくとも木内さんと佐藤さんの場合は見通しが後ずれしても追加緩和にはならんわな(そもそも見通し弱かったし)というお話で。白井さんはイマイチその辺の整理がよく伝わってこなくて、この見通し期間が「2年を念頭にできるだけ早期に」と整合的と考えているのかどうかは分からないです。

つーことで何ですな、そもそも論として6名の審議委員のうち3名が実はこの見通しに対して反対しているというのが中々お洒落でして、執行部は3名で1名ですから何のことは無いこれ実質4対3でして、執行部の見解はこの通りなのでしょうが政策委員会の総意というよりは多数派見解(しかも少数派が結構多い)という代物になっているという事でございますな。


・なお今回はロジックだけは堅牢にできている観がありましてですな

更にツッコミの前に前座ではありますが、今回の展望レポートなのですけど、なんか知らんけどやたらめったらこの基本的見解部分の作文が良くできていまして、前回10月の展望レポートでは結構ロジックが崩壊していてツッコミ甲斐があったわけですが、今回の展望レポートは相当に作り込みが出来ていて、ロジックだけでみると中々攻め所が難しくなっております。

これはつまりどういう事かと申しますと、まあアタクシが勝手に妄想しますに、前回展望レポートにおきましてはご存じの騙し討ち追加緩和が実施されましたが、この追加緩和は我々もすっかり騙し討ちに遭いましたけれども、展望レポートのロジックのあちこちに穴があったのは「敵を欺くにはまず味方から」ということが背景にあったのではないかと妄想したくなる訳でございまして、今回については別に何か特別なイベントがあったわけでもないので、従来の政策ロジックをより堅牢に説明しましょうということで(全文および金曜に出た企画局ペーパーなどもありましたように)ヒジョーによく練られた理屈が展開されている訳です。

とまあそういうことでして、ロジックが非常に堅牢にできております関係上、現時点で何かツッコミを入れてもきっちり想定問答が返ってくる、というのが今回の仕様になっていますが、まー最大の問題は相変わらず「QQEは所期の効果を発揮している」という話をしている所でして、足元に関しては原油価格の一時的要因で物価は伸びていないだけ、ってな説明になっておりますし、これからご紹介しますけれども、先行き見通しの各コンポーネントに関しては前回の展望レポートよりも強い説明になっておりまして、実はこれ年度後半以降の物価上昇というシナリオに対して実際の物価が上昇しないとロジックが完全に崩壊するという結構危険な内容なんですよね。

まあ何ですな、つまりどういう事かと申しますと、結論が先にあってその結論に整合的なロジックを緻密に構成しているからこういう内容になるのであって、おまいら本当に経済見通しとかからの積み上げで作ってねえだろこの基本的見解という事で、そらまあ逆算でロジック構築すれば堅牢にできますけど、結果がついてこない場合にどういう言い訳をするのでしょうかねえ。あの執行部は中々意地汚く粘るので色々と言い訳を繰り出してくるのかも知れませんけど。


などと悪態をつきながら基本的関係のまずは最初の部分の1ページ目『概要』については1日に駄文でツッコミを入れましたが、せっかくなので前回と比較してみましょう。


・成長見通しは概ね不変ということだがこれ下がってるだろうよ・・・・・・・・・・・

『2017年度までの日本経済を展望すると、2015年度から2016年度にかけて潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。2017年度にかけては、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響を受けるとともに、景気の循環的な動きを映じて、潜在成長率を幾分下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持すると予想される2。』(今回)

『2014年度から2016年度までの日本経済を展望すると、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される2。』(前回)

前回との違いは見通し期間なのは兎も角、次回の消費増税時期について今回は17年4月、前回は15年10月になっていまして、前回の見通しでは15年度の実質GDP見通しの中央値が+1.5%になっていましたので、消費増税の駆け込みと反動を年度でツーペーでみているんだなあという感じだったのですが、今回に関しては17年4月に消費増税になる筈なのに16年度の見通し中央値が+1.5%になっていて17年度の見通し中央値が+0.2%になっています。

この点は良く考えたら1月の時点であまり深くツッコミを入れてなかったのですが、16年度の見通し中央値が前回+1.2%→+1.6%になっているのですが、消費増税の時期が後ずれして駆け込み需要が見れる筈の所で+0.4%しかその分を見ていなくて、さらに今回はその16年度の見通しが1月の+1.6%→+1.5%と下がった上に、その後の反動が来る17年度の方はきっちりと見通しが低いというのもナンジャラホイという感じではありまして、見通しは変わっていないという触れ込みにはなっているけどいやおめー下がってるだろと小一時間ではありますな。

あと、1月対比という点では14年度と15年度の見通しに関しては前回対比で今回は14年度も15年度も中央値が下がっていまして、その点も加味するとGDP見通しは下がっているとしか思えないのですが、物価見通しに関しては達成時期自体は後ずれしているけど年度後半から上昇という絵になっているのですよね、という事でその次。


・物価見通しはさすがに誤魔化せなくなったので先送りなのだがロジカルには妙

『消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調が着実に高まり、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる3。2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度前半頃になると予想される。その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』(今回)

『消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高い。その後、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』(前回)

ということで見通し期間が後ずれしましたが、原油価格の置きを入れたのは前回の中間評価からになりますので、1月の見通しと比較するのがヨロシアル。


『3 各政策委員は見通し作成にあたって、原油価格の前提を次の通りとした。すなわち、原油価格(ドバイ)は、1バレル55ドルを出発点に、見通し期間の終盤にかけて70ドル台前半に緩やかに上昇していくと想定している。その場合の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対するエネルギー価格の寄与度は、2015年度で−0.7〜−0.8%ポイント程度、2016年度で+0.1〜+0.2%ポイント程度と試算される。また、寄与度は、当面マイナス幅を拡大した後、2015年度後半にはマイナス幅縮小に転じ、2016年度前半には概ねゼロになると試算される。』(今回)

『2 今回の中間評価では、原油価格が大幅に変動していることを踏まえ、政策委員は、見通し作成に当たって、原油価格の前提を次の通りとした。すなわち、原油価格(ドバイ)は、1バレル55ドルを出発点に、見通し期間の終盤にかけて70ドル程度に緩やかに上昇していくと想定している。その場合の消費者物価指数(除く生鮮食品)におけるエネルギー価格の寄与度は、2015年度で−0.7〜−0.8%ポイント程度、2016年度で+0.1〜+0.2%ポイント程度と試算される。』(1月中間評価)

ということで原油価格の置きは同じでして、まあ実際問題としてどこまで下がるのかと思わせてくれた原油価格も見通し通りに推移しているのに何で物価見通しが下がってるのですかねえ(棒読み)という所ですし、そもそも論としてその次の所で「成長率見通しは概ね不変」って言ってて、要因として大きい原油価格の置きも同じ状態になっているのに見通しが今回先送りになる理由が訳分からん(なお総裁会見でナイスなツッコミが入っていたのによりますと「足元までの消費が予想より弱かった」からだそうですよ)ですな。


・成長率見通しが概ね不変とは????

『2016年度までの見通しを従来の見通しと比べると、成長率の見通しは概ね不変である。物価の見通しは、やや下振れている。』(今回)

『従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、駆け込み需要の反動の影響や輸出の弱めの動きなどから、2014年度について幾分下振れている。物価の見通しは、2015年度については、国際商品市況の下落などから幾分下振れるものの、2016年度については概ね不変である。』(前回)

成長率の見通しは概ね不変とは何ですねんという話で、ちなみに潜在成長率の推計部分は変わっていないと思いますが、どう見てもさっきの部分的には下がってるだろと思うのですけどまあ概ね不変だそうですがな。それで何で物価見通しが下がるのかが訳分からんですよね(棒読み)。


・所期の効果云々は別途オモシロペーパーが出ているので後程

『「物価安定の目標」のもとで、以上の中心的な見通し(第1の柱)と、これに対する上下双方向のリスク要因(第2の柱)を点検した4。金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)

『「物価安定の目標」のもとで、以上の中心的な見通し(第1の柱)と、これに対する上下双方向のリスク要因(第2の柱)を点検した3。金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(前回)

ということで全文一致ですが、所期の効果を発揮しているのに何で物価がゼロ%なんでちゅかねえというツッコミに関しては企画局謹製のペーパーが金曜に出たのと、同時に展望レポート全文の方でもコラム形式でその部分の記載がありますのでそれはまた別途。

しかし所期の効果を発揮した結果が見通しの先送りな訳で、本当は2015年度に入ったころ、あるいは当初の置物マネタリーベース理論だとそれよりも早くに達成しているはずの物価がゼロ近傍な訳で、その上後程ご紹介する企画局謹製ペーパーでも展望レポート全文でもマネタリーベースの定量的効果に関しては何も触れていないという時点で置物師匠は目標未達に対して焼き土下座をすべきだと思うのですが全くその気配が無いという辺り人間としてどうなのかとは思ってしまいます。


ということでここまでが1ページ目である。


○展望レポートメインシナリオに関して(経済):経済のコンポーネントは強くなっているのよね

ということで2ページ目の『1.わが国の経済・物価の中心的な見通し』となりまして最初は『(1)経済情勢』である。

・まずは全体感:内容的には強くなっていますよ

『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

ということで、そもそも論として最初の部分で現状認識が強くなっている(変なヘッジクローズがなくなったから)というのがまず強いのですよね今回は。

『企業部門では、輸出、生産が持ち直すとともに、収益は過去最高水準まで増加しており、前向きな投資スタンスが維持されている。家計部門については、雇用・所得環境の着実な改善が続き、個人消費も全体としては底堅く推移している。』(今回)

『4〜6月における成長率は、自動車などの耐久消費財を中心に駆け込み需要の反動の影響が大きかったことや輸出が弱めの動きとなったことなどから、大きなマイナスとなった。また、夏場には天候不順も、個人消費の一時的な下押し要因として作用した。もっとも、駆け込み需要とその反動といった振れを均してみれば、潜在成長率を上回る成長が続いている4。また、今回の景気回復は、雇用誘発効果の大きい国内需要に主導されていることもあって、雇用の増加と労働需給の引き締まりは、着実に進んでいる。』(前回)

つーことで前回は最初のヘッジクローズに合わせてああでもないこうでもないという説明が有った部分が全般的にスッキリとした形になっていまして、今回は前回よりも素直に景気が回復基調で云々という話になっています。

でまあそれはそれで良いのですけれども、企業の投資スタンスが前向きだの個人消費が底堅く推移だのというのは何ですかそれは(消費増税の影響がどうのこうのはともかくとして)という感じでして、そもそも論として足元の見通しとかも下がっているというのに何がどうなるとこういうスッキリ表現になるのか小一時間という所ではあります。

で、先行き見通しですが。

『先行きを展望すると、国内需要が堅調に推移するとともに、輸出も緩やかに増加していくと見込まれ、家計、企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続すると考えられる。』(今回)

『先行きを展望すると、国内需要が堅調さを維持する中で、輸出も緩やかな増加に向かっていくと見込まれ、家計部門、企業部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムは持続すると考えられる。』(前回)

国内需要が「堅調さを維持する」から「堅調に推移」となったり、前向きの循環メカニズムの部分の助詞が「は」から「が」になったのですが、見た感じですと今回の方が全体的に先行き見通しを強めにしている感じがするのですがどうでしょうか。

『そうしたもとで、わが国経済は、2015年度から2016年度にかけて潜在成長率を上回る成長を続けると予想される5。2017年度にかけては、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動などの影響を受けるとともに、景気の循環的な動きを映じて、潜在成長率を幾分下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持すると予想される。』(今回)

『このため、わが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(前回)

見通し期間が1年度違っているので17年度の所が新たに入っているのと、消費増税の予測時期がずれている(昨年10月の展望レポート時点では15年10月増税)のでそのあたりは違いますが、今回は「基調的に」というのが抜けていまして、一方で17年度の見通しはあまり強くないという感じになっていまして、見通しの内容は強いのに計数があまり強くないとは何ですかこれはという所で。

つーかですね、そらまあ16年度に2%の物価になってその後安定的に持続する経路に移行するんですから、そうなったら17年度は潜在成長みから若干下でも2%という図にしておかないと話の整合性が取れないというのは分かるのですが、どう見てもその最後の図から逆算して見通しの計数作ってるだろうと小一時間問い詰めたいというのが今回の展望レポート基本的見解の図でもありまして、まあそういう形で出来上がりに対して逆算でロジック組んで作っているからそらまあロジックは整合的だし説明もしやすいわなとは存じますけど、実際にそういう風に推移するのかよゴルァというのはヒジョーに不思議なんですけどねえ。


・見通しの背景について:微妙なのが幾つか

『こうした見通しの背景にある前提は、以下のとおりである。』以下の部分を比較してみる。

『第1に、日本銀行が、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続する中で、金融環境は緩和した状態が続き、景気に対し刺激的に作用していくと想定している6。』(今回)

『第1に、日本銀行が今般拡大した5「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる6。』(前回)

今回は「緩和度合いは一段と強まっていく」じゃないのは何でですねんと思いますが、さては物価の見通しパスが弱まったから緩和度合いは一段と強まるというのが図々しいからかねとか思ってしまいましたが実際の所どうなんでしょう。

ちなみに脚注6の『6 各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については市場の織り込みを参考にして、見通しを作成している。具体的には、短期金利について、市場は、見通し期間を通じて、実質的にゼロ金利が継続することを織り込んでいる。長期金利について、市場は、見通し期間を通じて、低位で推移すると予想しているが、これは、展望レポートに比べて低い市場参加者の物価見通しを反映している。各政策委員は、こうした市場の見方を踏まえ、物価見通しの違いも勘案して、長期金利の先行きを想定している。』というのは前回も今回も同じです。

しかしまあ毎度思うのですが、展望レポートの見通し通りだったらどこからどう考えても遅くとも17年度の所ではQQEが出口政策に向かっていないと物価安定の目標と整合性が取れないのになんで先行きの政策運営の置きをQQEの出口と関係なく作れるのか良くわからんですけど、もしかしてそのツッコミを避ける事もあって「一段と強まる」という表現にしなかったのかなとも思いました。

つまりですね、16年度前半に2%になって、その後の見通しを見れば17年度の時点でどう見ても物価安定が1年以上続いた形になっているのに、その時点で「緩和度合いが強まっている」金融政策を継続したら緩和政策のやり過ぎであって、物価が望ましくない上振れをしてしまうだろうよと思うのですが、そのあたりも勘案して上記の表現にしているとか、その前にありますような17年度は成長率落ちるよ(だから緩和的な政策が続いていますよ)という表現が入っていることによって中和されているという実にニクイ作りになっているのですよねこの見通しって、イヨッ、ニクイねえ!!


『第2に、海外経済については、先進国が堅調な景気回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及する中で、緩やかに成長率を高めていく姿を見込んでいる。』(今回)
『第2に、海外経済については、先進国が堅調な景気回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及する中で、緩やかに成長率を高めていく姿を見込んでいる。』(前回)

次が海外ですが同じですな。

『主要国・地域別にみると、米国経済については、民間需要を中心とした成長が続くと予想される。欧州経済については、債務問題に伴う調整圧力が残り、暫くの間低インフレが続くとみられるものの、個人消費の回復や輸出の増加などに支えられ、緩やかに回復していくと見込まれる。中国経済については、当局が構造改革と景気下支え策に同時に取り組んでいく中で、成長ペースを幾分切り下げながらも、概ね安定した成長経路をたどると想定している。』(今回)

『主要国・地域別にみると、米国経済については、家計支出を起点とする前向きな循環に支えられながら、徐々に成長率を高めていくと予想される。欧州経済については、債務問題に伴う調整圧力が残り、物価上昇率の低下傾向もみられるものの、個人消費の底堅さや輸出の増加などに支えられ、緩やかな回復を続けると考えられる。中国経済については、当局が構造改革と景気下支え策に同時に取り組んでいく中で、僅かに成長ペースを鈍化させながらも、概ね安定した成長を続けると想定している。その他の新興国・資源国経済については、国・地域によるばらつきはあるが、先進国の景気回復の波及と、緩和的な金融環境を受けた内需の持ち直しから、成長率を緩やかに高めていくと見込んでいる。』(前回)


米国の表現では成長ドライバーを家計から民間需要とより幅広になっているのと、欧州は低インフレという表現に物価の表現を弱くしている点、中国は成長ペースを切り下げると下方修正、新興国資源国の話が抜けとなっていて、多分米国上げの中国新興国下げで欧州は横ばいとかでしょうかね。

『第3に、公共投資は、現在の高めの水準から緩やかな減少傾向をたどった後、見通し期間の終盤にかけては下げ止まっていくと想定している。』(今回)
『第3に、公共投資は、経済対策の押し上げ効果から高水準で推移してきたが、本年度下期中には緩やかな減少傾向に転じていくと想定している。』(前回)

ここの見通しは前回と基本的に同じ。

『第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどが続くとともに、デフレからの脱却が着実に進んでいくにつれて、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』(今回)

『第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどもあって、企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率は、緩やかに高まっていくと想定している。』(前回)

で、ここの第4の部分がしらっと色々と変わっているのが非常に気になるところです。

まず最初に今回わざわざ「デフレからの脱却が着実に進んでいくにつれて」という文言が入ったのが謎でして、従来日銀の目標は2%の物価安定目標であって、デフレからの脱却というのはあくまで通過点に過ぎないという建付けのはずでしたが、今回こうやってデフレ脱却云々というのを入れてるのはもしかしたら近い将来にしらっと「デフレ脱却したからいいじゃないかにんげんだもの」という2年で達成からの離脱手段を考えているからここでデフレ脱却云々を書いたのか、というのはちと穿ちすぎですかそうですか。

あとですね、今回見ててほえ?となったのはここの部分で「企業や家計の中長期的な成長期待」は緩やかに高まるという話なのですが、今回そこに潜在成長率という文言が入っていなくて、一方で潜在成長率に関する説明がある2ページ目の脚注の文言では潜在成長率は見通し期間の後半に掛けて上昇という話は維持されているのが謎でございます。

まあ見通しの潜在成長率を上げてしまうと実質GDPと潜在成長率との関係で言えば同じ実質GDPであっても潜在成長率を高めに見てしまうと需給ギャップの改善が遅れるという話になるので、潜在成長率は実際の経済見通しからしたら強くできないというのもあるっつーことでこういう風になっているのでしょうかねえ。まあ謎の部分その2ではあります。


・年度展開部分

『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2015年度から2016年度にかけては、輸出は、海外経済が回復し、これまでの為替相場の動きも下支えに働くことから、緩やかに増加すると考えられる。設備投資は、企業収益の改善や金融緩和効果が引き続き押し上げに作用する中、国内生産強化の動きなどもあって、しっかりと増加するとみられる。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続き、賃金が増加していくほか、2015年度にはエネルギー価格下落による実質所得の押し上げ効果や駆け込み需要後の落ち込みからの回復も見込まれることから、伸びを高めると予想される7。こうした内外需要を反映して、鉱工業生産も、緩やかに増加するとみられる。』(今回)

『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2014年度下期については、個人消費は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響がしばらくは残るものの次第に減衰し、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、底堅く推移すると見込まれる7。設備投資は、企業収益の改善や金融緩和効果が引き続き押し上げに働くもとで、長年の投資抑制による設備老朽化に対応した更新投資や、労働需給の引き締まりを受けた省力化投資、為替相場の動きも踏まえた国内拠点の再構築などの投資ニーズの高まりがみられることから、しっかりと増加するとみられる。この間、輸出は、海外経済が回復するもとで、為替相場の動きも下支えとなり、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。こうしたもとで、鉱工業生産は、在庫調整の進捗もあって、緩やかな増加に復していくと予想される。

2015年度から2016年度にかけては、2回目の消費税率引き上げによる振れは予想されるが、@緩和的な金融環境と成長期待の高まりを受けた国内民間需要の堅調な増加と、A海外経済の成長による輸出の増加に支えられて、前向きの循環メカニズムは維持され、潜在成長率を上回る成長が続くと見込まれる。』(前回)

ということで、16年度までの所を前回と比較してみますが、そもそも展望レポートなのに何で10月のでは高々半年先である14年度下期の説明が長いんだという話はさておきまして、ここも直前の所と話が似ているのですが、先行き見通しの中に「成長期待が高まるから消費や投資が伸びます」的な表現がなくなっているのがチャーミングでして、それってもう「期待に働きかける金融政策」の限界点に近いんじゃなかろうかという気がしますな(^^)。

でまあそれはそれとして、今回の説明は先行きの設備投資に関しての説明が従来の更新需要の話があったのですが、その点ではなくて国内生産強化と大きく出ていますのと、消費ついては「賃金の上昇」を明記した上でエネルギー価格下落のプラス影響についても記載し、「実質所得がプラスになる」というのをアピールとなっていますので、実質的に設備と消費について上向きの修正が行われてメカニズムの説明としてはより強力になっていると見た方が良いと思います。

なお、そのようにメカニズムの基本となる部分での説明がより強くなっているという事ですから、ロジック的に言えば今回の展望レポートでは説明というかロジック構築がより強固なものになっているので、総裁会見でもそうでしたが説明という意味では説明がしやすくなっているという事に繋がっていると思います。

ただし、説明はより整合性を強めていますが、実際に経済情勢がそう推移するのかという問題につきましては知らんがなという感じで、この説明は説明としては分かりやすくなっているものの、その説明するロジック通りなのかはちょっと???感が漂うという代物になっていますな。

なお、17年度の説明は以下の通りです(これは前回との比較はない部分)。

『2017年度にかけては、2回目の消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響を受けるとともに、設備投資の増加ペースが資本ストックの蓄積に伴って低下していくとみられる。』(今回)

そもそもそんなに手前で設備投資が出るのかよとは思いますが。

『もっとも、海外経済の成長などを背景に輸出が緩やかな増加を続けるとともに、緩和的な金融環境と成長期待の高まりなどを受けて国内民間需要は底堅く推移すると予想される。この間、潜在成長率は、見通し期間を通じて緩やかな上昇傾向をたどり、中長期的にみた成長ペースを押し上げていくと考えられる。このため、わが国経済は、潜在成長率を幾分下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持すると見込まれる。』(今回)

ということで先ほどの先行きの説明の中での4番目の中で削除されていた潜在成長率の上昇自体はここにありますように記載は続いていたのですが、先ほどの部分で抜けていたのが気になります。

『2016年度までの成長率の見通しを1月の中間評価時点と比べると、概ね不変である。』(今回)

概ね不変って下がってるだろと思いますし、メカニズムの説明に関する部分は今申し上げたように強くなっているのに成長率見通しそのものはやや下になっているというのが何とも。


○展望レポートメインシナリオに関して(物価):数字は弱いがメカニズムは強いとな

次が『(2)物価情勢』です。

『消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、このところ0%程度で推移している。』(今回)

というのはまあ前回と比較とかする話でもないので良いとしまして。


・構造失業率の推計値が下がっている件について

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、着実に改善傾向をたどっている8。すなわち、失業率が緩やかに低下し3%台半ばになっているなど9、労働需給は引き締まり傾向が続いている。』(今回)

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、雇用誘発効果の大きい国内需要の堅調さが雇用の増加をもたらすもとで、労働面を中心に着実に改善傾向を続けている8。すなわち、失業率は3%台半ばとみられる構造的失業率近傍で推移しているほか、現在職探しをしていないが求職意欲を持つ人々なども含めた広義の失業率も低下傾向を続けるなど、労働需給は着実に引き締まり傾向が強まっている9。』(前回)

ということで、これまた今回は前回のゴテゴテした説明からスッキリ系になっていまして、その背景には今回の表現にあるように労働需給が「着実に改善傾向」というために必要な話として賃金動向が強めに推移しているのと、暫く前から散々言っていた春闘のベアが(その水準で本当に2%物価安定目標に整合的かという話はさておき)前年よりも伸びているというのがあって、表現が強くなっているという訳ですが、その一方で今回の脚注9番には、

『9 労働需給の引き締まり度合いを測る際のひとつの目安として「構造失業率」がある。労働市場では、求人と求職の間にある程度のミスマッチが常に存在するため、好況時であっても、一定の失業者が存在する。こうしたミスマッチに起因する失業の存在を前提に、過剰労働力が解消した状態に対応する失業率が構造失業率と呼ばれている。構造失業率を一定の手法で推計すると、このところ3%台前半から半ば程度であると計算される。ただし、構造失業率の推計値は、時間の経過などに伴って変化する性格のものである点には留意が必要である。』(今回)

とありまして、構造失業率の水準自体は前回3%台半ばだったのが今回3%台前半から半ば程度に引き下げになっています。ナンジャソラという感じではあるのですが、雇用改善している割には物価の方はこの調子ですから構造失業率が下がっていないと整合性が取りにくいのもあるのかなと。


・需給バランスの改善メカニズムの説明は強くなっています

需給バランスの説明には続きがあるのだ。

『こうしたもとで、所定内給与が増加するなど、賃金の改善も続いている。また、駆け込み需要の反動の影響が収束してきたことから、設備の稼働率も高まっている。このため、マクロ的な需給バランスは、本年度前半にプラス(需要超過)に転じた後、2016年度にかけてプラス幅が一段と拡大し、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていくと予想される。その後、2017年度には、マクロ的な需給バランスは、プラスの水準で横ばい圏内の動きになると見込まれる。』(今回)

『企業は、駆け込み需要の反動による需要の落ち込みを一時的とみているとみられ、前向きな雇用スタンスを維持している。こうしたもとで、所定内給与がはっきりとした増加に転じるなど、賃金の改善も続いている。また、非製造業を中心に設備の不足感も強まってきている。このため、マクロ的な需給バランスは、本年度後半にプラス(需要超過)基調が定着し、それ以降、プラス幅が一段と拡大していくと考えられる。そうしたもとで、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていくと予想される。』(前回)

という事で、前回よりも需給バランスの改善メカニズムの説明が自信満々という感じになっていまして、これまた物価の達成時期が後ずれしているので今回の展望レポートは敗北宣言かと思いきや全然そんな話ではなくてメカニズムの話で言えば勝利への確信度が高まる進軍ラッパになっているというのが実にこう味わいが深い訳で、したがって追加緩和も必要ではないという話にもなっていくというのがまあ今回の展望レポートからは読めますなというお話。


・はいはい賃金上昇賃金上昇

次が予想物価上昇率の話。

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。こうした予想物価上昇率の動きは、実際の賃金・物価形成にも影響を及ぼしていると考えられる。例えば、労使間の賃金交渉においては、企業業績などに加え、物価動向を賃金に反映する動きが拡がりつつあり、本年のベースアップを含む賃上げは昨年を上回る伸びとなる見込みである。先行きも、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。』(今回)

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。こうした予想物価上昇率の動きは、実際の賃金・物価形成にも影響を及ぼしていると考えられる。例えば、労使間の賃金交渉において、企業業績などに加え、物価上昇率の高まりも意識され、ベースアップが久方ぶりに多くの企業で実施された。企業の間でも、従来の低価格戦略から、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる戦略へと切り替える動きがみられている。先行きも、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。』(前回)

ここでは「本年のベースアップを含む賃上げは昨年を上回る伸びとなる見込みである」と思いっきり今回の春闘実績をここぞとばかりに入れているのがドヤ顔という感じですが、どさくさに紛れて企業の価格設定行動の部分がしらっと抜けているのは、後のリスク要因でも片鱗がありますが、まあちょっとそこまで図々しくなれるのかという話なんでしょうな。

つまり、価格上げた→消費が落ちたというのが消費増税も含めて円安などのコストプッシュで物価が上昇した時の実際の動きであって、単に価格が上昇するだけでは消費が伸びないからいわゆる実質値上げ的な動きになって数量が出なくなるという問題があって、企業がそこまで強気の価格設定ができるのかというのは今後物価が戻っていく中での懸念材料でしょと思われますし、まあさすがにそこはリスク要因で触れていますので後程。


・輸入物価に関しては同じです

『第3に、輸入物価についてみると、これまでの為替相場の動きが、輸入物価を通じた消費者物価の押し上げ要因として作用していく一方、原油価格をはじめとする国際商品市況の下落は、当面物価の下押し圧力となる。』(今回)

為替に関して「ここのところの」が「これまでの」になった以外同じなので前回分は引用しません。まあこれはこうとしか言いようがない。


・物価の先行きは「基調が強い」という話ですな

『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調が着実に高まり、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度前半頃になると予想される。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる10。』(今回)

『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると、当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い10。その後は、中長期的な予想物価上昇率が2%程度に向けて収斂していくもとで、マクロ的な需給バランスはプラス幅の拡大を続けることから、強含んで推移すると考えられる。』(前回)


『2016年度までの消費者物価の見通しを1月の中間評価時点と比較すると、やや下振れている。』(今回)
『2016年度までの消費者物価の見通しを7月の中間評価時点と比較すると、2015年度については、国際商品市況の下落などから幾分下振れるものの、2016年度については概ね不変である。』(前回)


ということで、今回は2%到達時期についてご案内の通りで後ずれさせているのですが、上記にありますように「物価の基調が着実に高まり」というのが入っていまして、ではその物価の基調とは何ぞやというと需給ギャップと予想物価上昇率な訳ですが、需給ギャップの説明は今見ましたようにメカニズムとしては前回の展望レポートよりも明らかに強くなっていて、予想物価上昇率に関しても賃金の上昇が継続しているというサポート材料をもってメカニズムが強くなっているという話になりますので、結局の所今回の展望レポートは「メカニズムはより強固になっている」という強気のシナリオがメインシナリオとなっているという事ですな。

でもって需給ギャップにしろ予想物価上昇率にしろ、その場ですぐにわかる話ではなくて後にならないと分からない代物で、足元の話をする分には鉛筆を盛大に舐め舐めできますから、その分ロジック構成をするという意味ではやりやすいのでロジックは堅牢、ただし実際にそうなるのかという話はどうですかねえという内容になっているというのがメインシナリオ編でした。

メインシナリオの次は上振れ、下振れ要因です。

○リスク要因を鑑賞の巻でまずは経済に関してだが輸出の表現がやや違うのみ

『2.上振れ要因・下振れ要因』の『(1)経済情勢』』である。

・輸出に関して構造要因の話が抜けてきているのはどうしたのかね

『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、海外経済の動向に関する不確実性がある。』(今回)
『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、輸出動向に関する不確実性がある。』(前回)

ということで、今回は輸出動向ではなくて海外経済の動向という表現になっているのですな。

『先行きの海外経済を巡るリスク要因としては、米国経済の成長ペースやそれが国際金融資本市場に及ぼす影響、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、新興国経済における持続的な成長に向けた構造調整の進展度合い、資源価格下落の影響、地政学的リスクなどが挙げられる。』(今回)

『輸出の伸び悩みが続いている背景には、新興国経済を中心とする海外経済のもたつきや世界的な投資活動の弱さに加え、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も影響している。先行きの海外経済を巡るリスク要因としては、米国経済の回復ペースやそれが国際金融資本市場に及ぼす影響、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、新興国経済における構造調整の進展度合い、地政学的リスクなどが挙げられる。また、わが国企業の先行きの内外生産ウエイトについても、為替相場の影響や生産移管のペースなどに伴う不確実性は高い。なお、海外生産の拡大は、輸出を抑制する要因であるが、子会社からの配当など、企業収益の押し上げを通じて成長に寄与する面もある。』(前回)

とまあそういうことで、今回は輸出の先行きについて強めで見ているせいなのか、足元で輸出が出てきている感があるので楽観視しているのか知らんですが、輸出ガーという言い訳大会がなくなっているのが特徴的であります。


・消費増税、成長期待、財政に関しては基本的に同じです

『第2は、2017年4月に予定される消費税率引き上げの影響である。駆け込み需要とその反動の影響や実質所得減少の影響は、消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得る。』(今回)

『第2は、消費税率引き上げの影響である。1回目の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減や実質所得減少の影響はなお残存しており、引き続き見極めていく必要がある。また、2回目の消費税率引き上げがどのような影響を及ぼすかについても、その時点の消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得る。』(前回)

ということで、消費増税に関しては基本的に同じ話をしているのですが、反動減の影響に関してはスルーされています(まあ1年もたっているのですから当たり前ですが)が見通しという意味では基本的に同じですな。

『第3に、企業や家計の中長期的な成長期待は、規制・制度改革の今後の展開や企業部門におけるイノベーション、家計部門を取り巻く雇用・所得環境などによって、上下双方向に変化する可能性がある。』(今回)

『第4に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下するような場合には、人々の将来不安の強まりや経済実態から乖離した長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道筋に対する信認が高まり、人々の将来不安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。』(今回)

ここは前回と同文なので前回分を引用しませんが同じです。まあ将来不安が軽減されれば経済が上振れるってのは別に財政再建への信認で軽減される訳は無くて、そうなって欲しいなら終身雇用と定期昇給を復活させれば将来不安は軽減されると思いますけどねえ。



○リスク要因物価編

次が物価のリスク要因。

・予想物価上昇率では賃金をリスクから外すもバックワードのリスクを高めるとな

『上述のような経済の上振れ、下振れ要因が顕在化した場合、物価にも相応の影響が及ぶとみられる。それ以外に物価の上振れ、下振れをもたらす要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。』(今回)

ということで。

『中心的な見通しでは、賃金の上昇を伴いながら実際の物価上昇率が高まっていく中で、人々の予想物価上昇率も一段と上昇し、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく姿を想定しているが、その上昇ペースには、実際の物価の動きやそれが予想物価に及ぼす影響の度合いなどを巡って不確実性がある。この点では、エネルギー価格下落の影響から現実の消費者物価の前年比が当面0%程度で推移することが、予想物価上昇率の上昇ペースに影響するリスクがある。』(今回)

『中心的な見通しでは、実際の物価と賃金の上昇率が高まっていく中で、人々の予想物価上昇率も一段と上昇していく姿を想定しているが、その上昇ペースには、実際の物価の動きやそれが予想物価に及ぼす影響の度合いなどを巡って不確実性がある。この点では、来年度に向けた労使交渉において、過年度の物価動向や先行きの物価見通しが賃金にどのように織り込まれていくかが重要である。また、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が物価の下押し要因として働いているが、この下押し圧力が残存する場合、予想物価上昇率の改善が遅延するリスクがある。』(前回)

ということで、賃金動向がリスク要因の説明から外れて賃金が上昇する中でちゃんと物価が上がるかどうかの不確実性という表現になっているのはリスクとしては弱くなっていますが、一方で実際の物価がゼロ近傍まで下がっているので、さすがに下がった物価がバックワードに効いてくる可能性についてをリスクとして明記しない訳にも逝かないという事になりましたな、ニヤニヤ。

とは言いましても、そもそもこれだけ物凄い勢いでプレッシャーがかかる中で何となくベアだけは実施していますが、本当の本当に総賃金上がっているのかとか、パーヘッドの賃金はどうなっているのとか、そういうの気になりますし、大体からしてもう来年度のベアは確実で賃金はこれから毎年上昇みたいな見通しになっているようにしか見えませんが、16年度に本当にベアが継続するのかとか甚だ疑問な所でございます(これが15年10月に増税だったら16年度も賃金改定しておかないと実質所得的にマズーですから賃金上がるのでしょうが)し、大体からしてバックワードルッキングのインフレ期待を気にするなら10月に追加緩和して今回追加緩和しないのは何故かという話。

なお、追加緩和しないのは先ほどのメインシナリオにありましたように、景気の判断自体は計数はともかくとしてその内容自体が上がっているから、という摩訶不思議な状態になっているので、そもそも景気判断的に追加緩和はイラネという話になるのですな、うんうん。


・需給バランスについては構造失業率の低下に伴って?表現変更あり

『第2に、マクロ的な需給バランス、とくに労働需給の動向がある。中心的な見通しでは、労働供給面で、近年の高齢者や女性による労働参加の高まりや最近みられているパート労働の正規雇用化が、今後もある程度続くことを前提としているが、この点を巡っては不確実性がある。』(今回)

『第2に、マクロ的な需給バランス、とくに労働需給の動向がある。中心的な見通しでは、労働供給面で、近年の高齢者や女性による労働参加の高まりや最近みられているパート労働の正規雇用化が、今後もある程度続くことを前提としているが、この点を巡っては不確実性がある。とくに、通常の失業率に加え広義の失業率も低水準となっているだけに、人手不足感が一段と強まる可能性がある。』(前回)

今回構造失業率の水準を下げまして、そのために人手不足感云々の所が抜けておりまして、まあここは労働需給が強いと言ってる割に全然物価に跳ねてこないのでさすがに説明に無理があると思ったのでしょうな。


・価格や賃金が需給バランスの改善に対応しないリスクに一片の良心を発見

『第3に、物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度、すなわち、企業が財・サービス需給や労働需給の引き締まりに応じて、販売価格や賃金をどの程度引き上げていくかについて留意する必要がある。』(今回)

『第3に、物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度、すなわち、企業が需給の引き締まりに応じて価格や賃金をどの程度引き上げていくかについて留意する必要がある。』(前回)

しらっと「労働需給の引き締まり」というのが入っているのが労働市場の強さを受けて自信モードな部分。

『この点、労働需給の引き締まりを背景として賃金の改善ペースが上振れ、物価にも影響を及ぼす可能性がある一方、消費者の物価上昇に対する抵抗感が強い場合や企業の賃上げに対する姿勢が慎重な場合、販売価格や賃金の引き上げがスムーズに進まない可能性もある。』(今回)

『この点、消費税率引き上げ以降の消費動向が、先行きの企業の価格設定行動にどのような影響を及ぼすか不確実性が高い。』(前回)

つーことで、さすがに今回「消費者の物価上昇に対する抵抗感が強い場合や企業の賃上げに対する姿勢が慎重な場合、販売価格や賃金の引き上げがスムーズに進まない可能性もある。」と入っている所だけには堅牢な逆算ロジックの中で辛うじて良心を感じるところでして(^^)、先ほども申しあげたように2012年度後半から2013年度にかけての動きって賃金上昇期待やら将来の期待などが伴わない中で物価だけ上昇しても最終的に需要が伸びなくなって、名目ベースの数量が落ちてしまうと生産も落ちてしまうとか、そういう弊害がモロに出たから個人消費の伸び悩みが長くなったという話であって、その点に関してはさすがにここでリスクとして触れているだけまあ結果から逆算した展望レポートにしては一応良識も残っていますなという所ではあります。つーか普通に考えてここから見通し通りに物価が上がったら消費がまた落ちるだけのような気がするんですけどねえ。


・輸入価格に関してはいつも通り

『第4に、原油価格といった国際商品市況や為替相場の変動などに伴う輸入物価の動向や、その国内価格への波及の状況によっても、上振れ・下振れ双方の可能性がある。』(今回)
『第4に、国際商品市況や為替相場の変動などに伴う輸入物価の動向や、その国内価格への波及の状況によっても、上振れ・下振れ双方の可能性がある。』(前回)

原油価格を前面に出した以外は同じ、というかまあこれはこうとしか書きようがないですからね。



○金融政策運営の第一の柱、第二の柱に関して

『3.金融政策運営』である。

『以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する。』(今回)

ということで。

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、わが国経済は、2016年度前半頃に2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断される。』(今回)

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、わが国経済は、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断される。』(前回)

ということであっさりとこの見通し先送り。

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、海外経済の動向などを巡る不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしていると評価できる。物価の中心的な見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きく、下振れリスクが大きい。』(今回)

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、海外経済の動向などを巡る不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしていると評価できる。物価の中心的な見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きく、下振れリスクが大きい。』(前回)

ということで第2の柱の前半(というか後半もですが)は全文一致とな。

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されない11。もっとも、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は、漸減傾向が続いているが、なお高水準である点には留意する必要がある。』(今回)

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されない11。もっとも、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は、漸減傾向が続いているが、なお高水準である点には留意する必要がある。』(前回)

後半も文言は一致なのですが、FSRに関連してもうちょっとこうツッコミがあっても良かったような気もしないでもないのですが、まあ第二の柱的に何だかんだとは中々言いにくい面もあるのは分かるので、そこは表に出す出さないはともかくとしても問題意識は持ってほしいのですけどね。もちろんFSRだけではなくて金融市場の流動性低下とかそっちの方も問題ですけど。

あと、金融機関の国債保有残高云々という話なのですが、政府が国債発行年限を長期化する中で日銀が統合政府の負債デュレーションをせっせとオーバーナイトに切り替えているという状況に益々拍車が掛かっていく方の方がよほど大きなリスクではないかと思うので、あまりこのネタを毎度書いていると「オマエガナー」と言われるだけのような気がします。

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)

ところで所期の効果を発揮しているのに何でゼロ%なんでちゅかねえ、という点についての説明が企画局から出ているようなのでその辺でも鑑賞しないといけませんね!!!!!!

なお、この最後の部分は毎度同じです。


まあ何ですな、今回の展望レポートは前回の無理繰りというかロジックが崩壊していた追加緩和とのセットになっていた展望レポートほどはネチネチと突っ込む場所が基本的見解部分ではなかったというか、メカニズムを強化している上に物価の2%到達時期を後ろに倒しているのだから当たり前ちゃあ当たり前ですが、説明そのものはそれらしくなっているという所ではありますな。

以上連休も終わりが近くなってきました(つーてまだ1日あるが)が休日をこんなのに費やすアタクシもまあアレでございますな。






2015/05/01

お題「市場雑談&決定会合展望レポート関連」

おおもう5月か今年度も12分の1消化か。

○色々と市場関連雑談メモ

・欧米金利メモ

欧州金利ワロタ。
http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPL4N0XR79D20150430
ユーロ圏金融・債券市場=独連邦債利回り急上昇、デフレ脱却でQE効果ほぼ打ち消し
2015年 05月 1日 02:01 JST

『[ロンドン 30日 ロイター] 30日のユーロ圏金融・債券市場では、独連邦債利回りがこの日も上昇。2日間の上昇幅としては、ユーロ圏の債務危機が深刻化していた2011年以来の大きさを記録した。同日発表された4月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)統計で、5カ月ぶりのデフレ脱却が確認されたことが利回りの押し上げ要因となった。』(上記URLより、以下同様)

「5か月ぶりのデフレ脱却」ってお前その説明おかしいだろうよ。マイナスに突っ込んだらデフレでプラスに戻ったら脱却かよおいこらという所だがベンダーがこの調子だからいつまで経っても金融政策のコミュニケーションって混乱するんだろうなあと。

『独10年債利回り は9ベーシスポイント(bp)上昇の0.37%。欧州中央銀行(ECB)が量的緩和(QE)策を開始する前日に記録した0.397%の水準に迫った。29日の取引開始以降、利回り上昇幅は20bp超に達し、債務危機でユーロ分裂の懸念が高まっていた2011年11月以来の大きさとなった。』

のでQE効果打消しって実質金利って言葉知ってます???と言いたくなるが、まあ日銀にしてもドラギにしてもアクチュアルな物価が弱めで推移しているときに名目金利の下げを金融政策効果のルートとして強調するので逆になった場合に必ずこういう講釈が出てくる訳でして、このあたりの後講釈を見ますと「このように効果があります(キリッ)」というアピールをとにかく続けなければいけない「期待に働きかける政策」のコミュニケーションの難しさというのが分かりますな。

だいたいからして「QE効果」なるものよりも「デフレ脱却」の方がどう見ても重要(ここのデフレ脱却という書き方がそもそもおかしい点はありますが)なのですからこの動きは歓迎するべき話でしょと思うのですが、そこまでのドラギの説明が金利低下ルートをアピールしていたから名目金利が上昇すると「政策の失敗」みたいな話になってしまうのは明らかにミスコミュニケーションだと思います。

『ECBが量的緩和で国債を大量購入しているため、市場の流動性が低下しており、値動きが増幅された面もある。 また祝日を控えていることに加え、市場ではECBの量的緩和で独連邦債利回りはマイナスに低下することもあり得るとの見方が広がっていたため、ここ数日の利回り急上昇で多くの市場関係者が不意を付かれた格好となった。』

ドイツの30年とか先週からヘロヘロ化していて、水曜の5年国債入札札割れとか金利上昇ヒャッハーとなっているのですが、これがジャパンのQQE突入後の一連の動き(日本の方が展開が早かったけど)のエピソードと同じなのかというのは良くわからんですな。


でもって米国。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NNMTZU6JTSEL01.html
米国債:4日連続安、良好な米統計や欧州債券安など重なる
2015/05/01 04:00 JST

『(ブルームバーグ):30日の米国債相場は2月以降で最長の4日続落。米連邦公開市場委員会(FOMC)が年内利上げを準備している姿勢を示唆してから一夜明け、この日は予想より良好な経済統計が複数発表された。また欧州の国債がこの日も売りを浴び、米国債利回りの相対的な魅力が薄れた。外国為替市場ではドルが週間ベースで3週連続安となっている。』(上記URLより)

ほほうという所ですが、確かにまあ昨日の朝聞いたテレビの市場後講釈的にはFOMC声明文ガーということでしたが、昨日読みましたように確かに6月利上げの可能性は残っているけど現状認識を盛大に下げた次のFOMCでいきなり正常化着手(キリッ)とやるにはその間の経済指標の大幅な良化が必要だろ(あるいは相当の金融不均衡懸念の発生)と思われますので、そういう意味では別に急に売る話じゃねえだろと思ったのですけど、まーFOMC単体でというよりは欧州のアレとか、日本は日本で海外方面がやたらめったら期待していたらしい追加緩和実施ネタがあえなく爆死した件など、積み上げたポジションのクローズが起きやすい地合いでその一連の流れでこんな感じですか、という話なんでしょうかねえ、あたしゃよくわからないけど。



・輪番予定に変更なし&今日は短国買入

しかしこの翌月のカーブ形成に影響がある予定を月末の引け後に出してくるというプレイはもう少し改善の余地というのが無いのかと小一時間。どうせ受渡ベースだと月の最後は月を跨ぐんだし。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150430e.pdf
当面の長期国債買入れの運営について

前回はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150331c.pdf

注目なのは2枚目の別表ですが。

『(注4)2015年5月1日以降の最初のオファー金額は、残存期間1年以下700億円、残存期間1年超3年以下3,750億円、残存期間3年超5年以下3,750億円、残存期間5年超10年以下4,000億円、残存期間10年超25年以下2,400億円、残存期間25年超1,400億円、変動利付債1,400億円、物価連動債200億円とする予定です。』(今回)

ということでオファー金額に変更はなく、ついでに別表の表の内訳も変化なしということで、今月は短国の需給逼迫と中短期ゾーンの中長期国債の需給逼迫がダブルコンボで相互作用をかましてくれていまして、中短期特に1−3の輪番が札割れするとか10毛強みたいなスットコドッコイなレートまで流れるのかというような懸念がされておりましたが、それにもめげず(?)に買入は同額継続となっています。

・・・・・・・・となりますと本日の短国買入の結果が注目される訳でして、既に3M入札が3打席連続マイナス金利となっていまして、プラス金利の流通玉は出てきませんなあという大飢饉状態になっているのですが、実際問題として流通玉はないけど本当の本当に玉が全くないのかというとそういう訳でもなさそうで現先玉とかは存在するという状態。つまりこれは物流インフラが破壊されてしまったので人口集積部分で食糧不足が起きているようなもんですなとか思ったのですが、市場の流動性という意味で物流インフラが毀損というたとえ話を考え付きましたけど、それよりは日銀が無慈悲買入をしているからまともな金利の流通玉が無い訳で、そう考えますと農業生産はせっせと行われているけれどもそれがすべからく輸出に回っている飢餓輸出状態になっていて投資家が瀕死で日銀や日銀トレードがウハウハという状態な訳ですね分かります。

・・・・・・・つい話が脱線してしまいましたが(汗)、まあそんなことで短国市場があばばばばーとなっている昨今でございまして、ここの需給が緩和されると中短期の玉なし芳一モードも(モノとしてのニーズだったら代替可能なので)緩和され、結果として中短期の輪番が札割れするんじゃないか懸念を毎度の輪番でいちいち煽られなくて済む、という三方一両得な展開が待っていると思うのですけれども、いずれにせよ今日は短国買入のオファー額もそうですが、応札額に対してどの程度のオファーを突っ込んできたのか、落札結果ではテールがどの程度流れたのか、というのが注目されるところです。

相変わらずの玉根こそぎ購入攻撃の場合は来週金曜日(と言っても実質明後日)に3Mの入札があるのですが、こいつまでマイナスになったまま帰らぬ玉となってしまいますとさすがに1か月連続のマイナス金利状態となってしまいますのでちょっと何ぼ何でも長期化し過ぎじゃないですかねえとなるのですけどさてどうなるやら。



○決定会合声明文は順当ですが

そういや前回の展望レポートでは闇討ち追加緩和の実施があったせいで説明が相当グズグズになっていましたので、展望レポート基本的見解を逐条ツッコミをするという暇人企画を土曜日に打ち込んだ覚えがありますが、今回は何せ5連休もありますので逐条ツッコミとかについては連休中にこっそりアップしたいなあと思っているのでこうご期待。と言いつつゴーロネンウィークにならないように注意したいと存じます(−−;)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150430a.pdf
当面の金融政策運営について

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成8反対1)(注)。

マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。

2.資産の買入れについては、以下の方針を継続する(賛成8反対1)(注)。

@ 長期国債について、保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する。買入れの平均残存期間は7年〜10年程度とする。

A ETFおよびJ−REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。B CP等、社債等について、それぞれ約2.2 兆円、約3.2 兆円の残高を維持する。』

つーことで普通に買入継続なのですが、今回の決定会合の声明文では従来の展望レポートの回と違って1行コメントになっていないのがほほーという感じ(なお前回は政策変更を伴ったので今回と同じような書き方になっている&政策変更の背景説明が入っている)ですが、前回の声明文があったから使い回しをしたのでしょうか???

#ちなみに前々回の展望レポートの時はこういう1行コメントになっていました。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140430a.pdf


ということでまあ今回は声明文の鏡を見た時にちょっとだけ違和感があったのですが、ついでに反対提案の木内さんの内容はと言うと・・・・・・・

『(注)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員、原田委員。反対:木内委員。なお、木内委員より、マネタリーベースおよび長期国債保有残高が、年間約45 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節および資産買入れを行うなどの議案が提出され、反対多数で否決された。』(今回の声明文からです、為念)

ということで木内さんからの提案は今回も45兆円にするという内容でして、そらまあそうだろうなあとは思いましたが毎回この額が減った形の提案が出る説も一部にはあったようですが、そらこの数字減らせば減らすほど賛成票がとりにくくなるから減らさん罠とは思いましたです。


それよりも順当ではあるが失望なのは置物師匠とジンバブエ師匠でありまして、当座預金残高を80兆円にしたら2年で2%なんぞ楽勝という置物MB直線一気理論が崩壊しまくっている中で、物価が上がらないという現状を打破するためには緩和が足りないという話になる筈で、そうであったら追加緩和でMB100兆円でも何でも打ち込んでいかないとダメなんじゃないでしょうか何で提案しないのでしょうかと思いましたが、これはきっと置物師匠もジンバブエ師匠も伏魔殿に入ってすっかり魔物どもに取り込まれてしまって思考や判断を停止させられてしまっているんですね!!!!!!!!(棒読み)

しかしまあ何ですな、置物リフレ理論の一派であるところの外野の皆様(複数名)が4月30日にゼロ回答をすべきではないという話を延々と吹聴して、ものすごい勢いで宣伝されていた訳でして、あまりの勢いで宣伝するもんだから真に受けてしまった海外方面の株方面の方々を中心に昨日の株式市場があばばばばばーとなっておられた訳でして、外野の皆様におかれましては海外投資家筋の皆様からタコ殴りにされるのではないかと他人事にも程がありますが心配ではありますな(棒読み)。



○展望レポートである(詳しくはまた追加投入します休み中のどこかを想定)

なお休日の天気が良いと出かけたくなり、天気が悪いと駄文書きのモチベーションが上がらないという仕様になっているのは内緒です。

今日出ているのは基本的見解です。背景説明含めた全文は本日投下されます。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1504a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1410a.pdf(前回の基本的見解)

今朝は時間と量の関係上目についたところをサラサラと。


・見通しの項目別展開は強くしているのに景気のモメンタムは後ずれさせているというオモシロレポート

今回の基本的見解ですが、まあ最初の<概要>とケツの経済物価見通しの集計表を見るアルヨロシアル。


『・2017年度までの日本経済を展望すると、2015年度から2016年度にかけて潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。2017年度にかけては、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響を受けるとともに、景気の循環的な動きを映じて、潜在成長率を幾分下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持すると予想される2。』

これは末尾の17年度の見通しに出ていますが、17年度に関しては消費増税実施後になるので増税前の駆け込みがあってその反動がある上に、景気サイクル的に落ちてくるのでダブルで効いて潜在成長率を幾分下回るという見通しになっていて、割とあっさり味の弱めの話をしております。

なお、そんな見通しなのだったら普通に考えて消費増税の時期設定がおかしくねえかと思うのですが、その点について日銀に突っ込みを入れても「それは国会でお決めになることですからオラシラネ」という庭先論が炸裂するので暖簾に腕押し糠に釘となります。

『・消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調が着実に高まり、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる3。2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度前半頃になると予想される。その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』

物価目標達成時期をあっさり後ズレさせて来やがったよこの人たちという所でして、まあ会見では当然の如く物価目標達成時期の後ズレというのであれば追加緩和をして然るべきというツッコミが飛んでいましたけれども屁理屈を駆使して華麗にスルーしていたのは言うまでもありません。

というか今回の特徴としては「堂々と物価目標達成時期を後ズレ」させたことにありまして、本来ならば「2年で2%」なのですから今頃盛大に泡を吹いていないといけない筈なのですが、すっかりその辺は2年で達成しなくて宜しいという事になってしまいまして、置物リフレ理論とは何だったのかという気がするし置物よりも鶴光師匠に交代した方が金融政策コミュニケーションに有効なのではないかと思ってしまいますけれども、まあ今回はこの「2年のくびき」を綺麗に外せたのが大きい罠とは思います。


とは言いましても、上記引用部分の3番にありますように・・・・・・・・・・

『3 各政策委員は見通し作成にあたって、原油価格の前提を次の通りとした。すなわち、原油価格(ドバイ)は、1バレル55ドルを出発点に、見通し期間の終盤にかけて70ドル台前半に緩やかに上昇していくと想定している。その場合の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対するエネルギー価格の寄与度は、2015年度で−0.7〜−0.8%ポイント程度、2016年度で+0.1〜+0.2%ポイント程度と試算される。また、寄与度は、当面マイナス幅を拡大した後、2015年度後半にはマイナス幅縮小に転じ、2016年度前半には概ねゼロになると試算される。』

ちなみに会見で(テキストは今日出ますが)聞いてた時にスマッシュヒットと思ったのは幹事社の次(どうでも良いが昨日の幹事社の仕切りはあまり良くなかったように中継では見えた、質問最後の人の後もう一回幹事社が質問というのに????感が)に質問したどこぞの全国紙の記者さん(記憶によれば)でして、「原油が10月の置き通りに推移していて経済も見通し通りに推移しているのに何で物価目標達成時期が後ずれするのでしょうか」というのはツボったですよ、うんうん。

でまあそんな話はともかくとし、とにかく原油価格ガーの説明によって物価目標達成時期の後ズレを堂々と投下できたのは良いのですが、当然ながらその裏として「原油価格の影響によるマイナス寄与が縮小する中で物価安定目標に向かってアクチュアルの物価が推移するのか」というのが問われることになる訳で、そういう意味では「2年で2%問題」は半年程度先送りをした格好ではありますが、問題を先送っただけの話であって、先々では真価が更に厳しく問われるという話になると思います。

つまりですね、今引用しているように「2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度前半頃になると予想される。」となっていまして、かつエネルギー価格の寄与度に関して「寄与度は、当面マイナス幅を拡大した後、2015年度後半にはマイナス幅縮小に転じ、2016年度前半には概ねゼロになると試算される。」とある訳ですから、つまりこれは「エネルギー価格のマイナス寄与なかりせば物価安定目標は達成ですよ」と言う話をしている訳で、他の都合の良い言い訳が出てこない限り、寄与度が減ってくる中で物価が2%に向けてガンガンズンズングイグイ上昇していかないと行けませんという事で。

#まあ寄与度の計算が足りませんでしたと言っていつまでも原油価格ガーで逃げる手もありますがね


『・2016年度までの見通しを従来の見通しと比べると、成長率の見通しは概ね不変である。物価の見通しは、やや下振れている。』

はあそうですか。

『・「物価安定の目標」のもとで、以上の中心的な見通し(第1の柱)と、これに対する上下双方向のリスク要因(第2の柱)を点検した4。金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』

所期の効果を発揮しているのに何で2年でゼロ%なんでちゅかねえというのに対しては引き続き「原油ガー」という話をしてスルーしているのですが、実は見通し通りに原油価格が上昇してくる方が言い訳が効かなくなってくるので日銀にとっては真価が問われる(リスクと言おうと思ったが一応敬意を表しておく)所ではございますな。


・あと少々気が付いた点

でまあ以降が『1.わが国の経済・物価の中心的な見通し』となりまして、前回の展望レポートではこれを逐条ツッコミを前回(14年4月)と並べて行うという暇人にも程があるネタを投下致しましたけれども、そんなのはさすがに休日じゃないとできませんのでこうご期待ということで、それ以外に小ネタを少々。


気になった小ネタその1:構造失業率の推計値が下がっているのですが

4ページ目の脚注9にあるのですが、構造失業率の推計が前回3%台半ばになっているのが今回3%台前半から半ば程度という事になっていまして、構造失業率が下がっているのですよね。何というかこれってどうなのと思うのですがアタクシは頭が悪いので誰かこの含意を教えてジェネラル!


気になった小ネタその2:デフレ脱却という文言

3−ページ目に経済情勢の見通しの話があるのですが、その中に「デフレからの脱却が着実に進んでいくにつれ」云々という表現がありまして、従来は確か日銀の目標は2%物価安定なのでデフレ脱却とかそんなのはただの通過点であってそのことに重きを置いている訳ではない(キリッ)という建付けだった筈なのですが、今回はこういう文言が入っているというのはもしかして「デフレを脱却しているからいいじゃないけいざいだもの」という逃げへの意識がどこかにあるのでこの文言が出たのではないか疑惑をするのは裏読みのし過ぎですかそうですか。


気になった小ネタその3:全体の項目が強い件

というのは小ネタではないですけど(汗)、先行き見通しを見た時に今回は輸出にしろ設備にしろ消費にしろエライ勢いで見通しが前回対比強くなっていまして、一方で物価目標の達成時期が後ずれという大変に不思議なセットになっていますし、GDP見通しも若干下がっているということで、これはそもそも10月の展望レポートの数字の置きがおかしかったですよと告白しているようなもんだなあと思ったのは性格が悪いですかそうですか。


気になった小ネタその4:ところでこれ16年度の成長見通しが弱くねえか???

引用しませんけど最後の見通しの部分、17年度に増税の反動が来るのは分かったが、その前の駆け込み需要があって下駄を履くはずの16年度の年度見通しが実質+1.4〜+1.8しかないってのはどういう事やという気がするんですけど。

まあ潜在成長率を0%台でおいているのでこれでも高成長という話なのでしょうが、そもそもそんな状況で2%の物価上昇が安定的に維持できるのかも疑問だったりして、なんか相変わらずの違和感です。

てな感じですか。詳しくは連休中に投下の予定だがあまり期待されてもアレなので適当にお願いします。