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2015/02/27

お題「石田審議委員金懇は執行部へのイヤミ成分強し/市場雑談等/国会でコミュニケーションを詰められるの巻(メモ)」

うむ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NKCTTA6K50Y001.html
浜田氏:日銀はコアコアCPI目標に、達成期間も3年に変更可
更新日時: 2015/02/26 11:18 JST

『浜田氏は日銀が物価目標の指標を変えれば、市場参加者が金融政策を予想しやすくなり、日銀と市場とのコミュニケーションがスムーズになるとみている。』(上記URL先より)

コアコアにしてもかつての携帯料金がらみのCPIショックのような事例がありまして、コアコアにしたから必ずしも政策を予想しやすくなるというもんでもない(エネルギー価格が大きく動かない状況なら変わらんでしょ)ですし、コアコアにしてしまうと消費コンポーネントに対するカバー率が更に低下してしまい、国民厚生のための物差しとして使う物価指標として適切かという問題があると思います。という指数のテクニカルな問題もさることながら、「デフレ均衡状態になっているインフレ期待を新たに2%均衡状態にアンカーさせ直す」という「インフレ期待に直接働きかける政策」を実施しているという建付けからしますと、期間内の達成が困難だから達成目標の時期を遅らせる、という事をしますと「期待に直接働きかける」の部分を大きく毀損することになると思いますので、そもそものQQEの建付けを否定することになると思うのですけどねえ。

#まあ同時に置物のクビを飛ばせば整合性は取れるのですけど


○石田審議委員の金懇は最後に思いっきり皮肉というか爆弾投下というか(^^)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150226a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 神奈川県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

経済物価見通しのところまでは基本的に展望レポートに則した話をしておりますのでその辺りはスルーしましてその後の『(3)景気・物価面での注目点』から。

・原油価格下落の背景と影響についての辛口指摘

『@原油価格下落の影響』という小見出しが最初である。

『まず1点目は原油価格下落の影響です。原油価格の推移をみると、足もとは?し戻していますが、昨年6月頃のピーク水準からは大幅に下落した状態にあります(図表10)。この間の大幅下落の背景については、米国のシェール・オイルの生産などが増加するもとでの産油国における減産合意の見送りといった供給要因のほか、新興国や欧州の景気減速による需要減など、様々な要因が指摘されていますが、それらが複合的に影響してきたと考えられます。』

うむ。

『原油価格の下落がわが国経済に与える影響については、種々言われているとおり、景気面では、企業収益の改善や家計の実質購買力の上昇を通じて全体としてプラスの効果をもたらすとともに、物価面では、エネルギー価格の下落により短期的には下押し圧力がかかるものの、やや長い目でみれば、需給ギャップの改善を通じて押し上げ要因になる、ということだと思います。つまり、時間の経過とともに、景気・物価の両面でプラスの効果が出てくるというのが基本シナリオだと思いますが、その一方で、個別には留意すべき点もあるとみています。』

留意すべき点とな。

『先ほど、IMFの世界経済見通しが調査回ごとに下方修正されている点に触れましたが、そのこと自体は、世界的な回復トレンドの中にも脆弱な部分が存在しているとみられます。そうした状況のもとで、原油価格の下落により、世界の資本投資支出の4割程度を占めると言われるエネルギー・資源セクターの資本投資支出に調整圧力がかかってくるとみられ、わが国が競争力を有する資本財の受注・生産・輸出に下押し圧力が働く可能性もある点は、注意してみていく必要があると考えています。』

キタコレ!!ということで執行部のバラ色シナリオに対してピリリと辛口の指摘ですな。


・実質賃金に関してもチクチク執行部にイヤミかも

次が『A実質賃金の動向』である。

『2点目は実質賃金の動向です。今年度入り後の実質賃金の動向をみると、消費税率の引き上げの影響を含む消費者物価の伸び率が大幅に上昇していることもあって、前年比マイナスで推移しています(図表11)。』

実質賃金キタコレ。

『この間、消費については、駆け込み需要の反動からの戻りがやや弱い状態が続いてきましたが、これには天候不順の影響に加えて、実質賃金の下落が大きく影響していることは否定できないと考えています。』

>実質賃金の下落が大きく影響していることは否定できないと考えています

(;∀;)イイシテキダナー

『このため、来年度以降、個人消費の持ち直しが明確になり、緩やかながらも増加基調を維持していくためには、名目賃金がしっかりと上昇し、物価上昇率を加味した実質賃金のベースでプラスになっていくことが必要と考えています。』

つーことで実質賃金の下落という中には消費税の影響もありますけれども、「物価上昇率を加味した実質賃金のベースで」としらっと指摘しており、物価だけ無理やりコストプッシュで引き上げても意味がないんじゃと「とにかく物価を上げないといかん」というQQEの執行部理論に対してイヤミがチクチクでもありますな、うんうん。

『この点、足もとの日本経済をみると、企業収益は、為替円安の恩恵を受ける輸出関連企業と逆風にさらされる内需関連企業で業績にやや違いがみられるものの、全体としては増益傾向が続いています。また、雇用情勢が引き続きタイトな状況にあることや物価の状況なども踏まえると、ベースアップやボーナスなどのかたちで賃金が上昇していく環境は整ってきています。家計所得を巡っては、来年度から適用される年金のマクロ経済スライド等の影響にも留意する必要がありますが、今春の賃金交渉において、実質賃金の上昇に繋がるような賃金改善が実現できれば、来年度以降の家計部門における前向きな循環をサポートする大きな原動力になるとみています。』

ということでまあここは順当な指摘。


・輸出の話は概ね執行部と平仄があっていますが一層の円安を求めなさそうな説明にニヤリ

『B輸出動向』についてですが、まあそもそも執行部の方が「輸出出る出る詐欺」モードをさすがにマイルドにしてきていますから概ねここは執行部の話に近いようには見えますが・・・・・・

『3点目は、輸出動向です。「量的・質的金融緩和」の導入以降、為替相場は大幅に円安方向に変化してきましたが、その間、実質輸出については、伸び悩みが続いてきました。Jカーブ効果がなかなか現れてこなかったことについては、新興国経済のもたつきなどの循環要因のほか、製造業における海外生産移管の拡大といった構造要因など様々な要因が指摘されてきました。そうしたなかで、円安環境にあっても輸出が以前のような景気の力強い牽引役となることはなかなか難しくなっています。』

うむ。

『もっとも、足もとの状況をみると、実質輸出ははっきりと増加に転じています(前掲図表7)。また、一部には国内生産回帰や輸入代替を進める動きがみられるなど、先行きの国内事業の拡大方針を示す企業も増えてきています。円安環境のもとで経済の好循環を生み出す動きは着実にみられ始めており、為替相場が安定していけば、今後もそうした動きは徐々に強まっていくものとみています。生産・輸出動向の先行きを見通すうえでは、こうした企業行動の変化にも注目していく必要があると考えています。』

>為替相場が安定していけば
>為替相場が安定していけば
>為替相場が安定していけば

・・・・・・・・・(^^)。

つまり「強引に円安に持っていくのではなく、為替水準をこの辺で安定させた方がよろしいのではないでしょうか」という事を暗に表明しているのではとも読み取れる説明でありまして、これまた実に味わいが深い講演テキストになっておりますな、うんうん。


・金融政策に関して:物価指標に関して

『4.今後の金融政策運営について』の『(1)原油価格の下落と金融政策運営』に飛びます。

『次に、今後の金融政策運営について、2点お話したいと思います。まず1点目は、原油価格の下落と金融政策運営の関係です。』

『1月の展望レポートの中間評価では、消費者物価の見通しが2015 年度にかけて下方修正されましたが、その主因である原油価格の下落は、やや長い目でみれば、景気刺激効果を通じて物価に対する基調的な押し上げ要因になります。家計や企業の中長期的な予想物価上昇率は、各種サーベイをみる限り安定的に推移しているなかで(図表16)、今後、消費者物価が2%程度に向けて再び上昇していく道筋がみえているのであれば、政策運営上、特に問題になることはないと考えています。』

そもそも10月緩和に反対していますしこういう説明になるのは当然。

『また、物価動向の把握という観点からは、原油価格の大幅な変動により、消費者物価の基調的な動きが見極めにくくなっている状況にあります。消費者物価の基調的な動きについては、生鮮食品を除く総合指数を中心に様々な指標を点検しながら総合的に評価することが基本ですが、足もとの状況に鑑みると、当面は、エネルギー価格の寄与度を踏まえつつ、評価していくことが適当と考えられます(図表17)。今回、日本銀行が2016 年度までの物価見通しに当たって、エネルギー価格の寄与度の試算を公表したのは、こうした考え方によるものと言えます。』

まあここは良いとしまして。

『この点、食料・エネルギーを除いた物価指数、いわゆるコアコア指数を中心にみていくという考え方がありますが、私自身としては、わが国は家計支出に占める食料費の割合は米国などと比べても大きく、また、昨年来、生活必需品の値上がりが消費者マインドを圧迫してきたことを考えると、物価の基調的な動きを捉える際に、食料品を含めた指数をみていくことも大切だと考えています。』

消費バスケットを考えた場合、本来は総合をみるのが筋でしょという話で、これはきわめて重要な論点ですし、石田審議委員の指摘が妥当と考えます。

『また、その際、擬制的な支出であり、実質賃金算出の際にも控除される「持ち家の帰属家賃」も除いた指数も重視しています。「持ち家の帰属家賃」は長期にわたり下落基調を続けていますが、今後もそうしたトレンドが続く場合、特に財・サービスの価格が上昇率を高めていく局面では、物価全体に対する大きな下押し要因になると考えられます。その場合、家計の実感との乖離、あるいは賃金上昇率との関係という点から、諸々の問題が生じる可能性があるとみています(前掲図表17 の<参考>)。』

以前より石田さんが指摘している論点ですが今回も登場していますね。



・そして最後(金懇は最後にご当地経済の話をするので本当の最後ではないが)にこの金懇講演の白眉が!!!

『(2)「量的・質的金融緩和」の継続』という所ですけどね。

『2点目は、「量的・質的金融緩和」の継続についてです。「量的・質的金融緩和」を導入してから、今年4月で丸2年となります。これまで、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続するとしています。また、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うこととしています。』

さよですな。

『物価見通しについて、現状、2015 年度は原油価格の大幅下落により1.0%にとどまりますが、2016 年度は2.2%となっています(前掲図表9)。今後、経済・物価情勢が想定どおり展開していけば、時間の経過とともに2%の「物価安定の目標」の実現が近づいてくるということになります。』

ふむふむ。

『現時点で出口に関する議論は時期尚早ですが、そうした見通しのもとで先行き物価が上昇スピードを増していけば、現在力いっぱい踏み込んでいる「量的・質的金融緩和」のアクセルを徐々に緩めていくことも、いずれ必要になってくるものと考えています。』

早期に達成する!と言いながら早期に達成するなら必要になるはずの出口政策の話になると時期尚早と言い出す執行部に対するイヤミですね!!!!

『その観点からも、今後4月、10 月の展望レポートの作成、7月、1月の各々の中間評価において、足もとの景気動向や物価の基調的な動きをしっかりと把握・判断し、先行きについて見極めていくことが一段と重要になってくると考えています。』

そしてこの次に盛大な爆弾投下が来ますよ。

『なお、先行きの金融政策運営方針で示している「必要な調整」については、経済・金融面での不均衡が生じた場合など、より長期的な視点から、物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現が損なわれるリスクが大きくなった場合に対応して行うものであり、2%の「物価安定の目標」の達成の時期やそのペースに対応して行うものではないと、私は理解しています。』

>2%の「物価安定の目標」の達成の時期やそのペースに対応して行うものではないと、私は理解しています
>2%の「物価安定の目標」の達成の時期やそのペースに対応して行うものではないと、私は理解しています
>2%の「物価安定の目標」の達成の時期やそのペースに対応して行うものではないと、私は理解しています
>2%の「物価安定の目標」の達成の時期やそのペースに対応して行うものではないと、私は理解しています
>2%の「物価安定の目標」の達成の時期やそのペースに対応して行うものではないと、私は理解しています

これはまた石田さん見事な砲撃で参りました。


会見の方も素敵だったようですので会見テキストを楽しみに待ちたいと思いますが、しかしまあこういう審議委員の中にジンバブエ理論の先生が投下される訳で、どういう議論が展開されるのか、それともそもそも会話が成立しないのか、という辺り決定会合をライブで見たいのですがそれは叶わぬ願いですな(−−;



○市場雑談メモ

・相変わらず落ち着かない債券市場ちゃんで

http://jp.reuters.com/article/jptokyomarket/idJPL4N0W02L120150226
〔金利マーケットアイ〕国債先物は前日比変わらず、長期金利は一時0.350%に上昇
2015年 02月 26日 15:36 JST

『<15:20> 国債先物は前日比変わらず、長期金利は一時0.350%に上昇

国債先物中心限月3月限は前日比変わらずの147円85銭で取引を終えた。前日の米債高や良好な需給環境を受けて買いが先行。午後の取引開始直後には一時148円ちょうどまで買い進まれ、2月3日以来の水準に上昇した。その後は、戻りピッチの速さや株価上昇が警戒され、上値で利益確定売りに押された。現物市場は、朝方から長期・超長期ゾーンを中心にしっかりと推移していたが、午後に入ると、来週の10年債、30年債と続く国債入札が意識され、急速に上値を重くした。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時同1bp低い0.325%と2月3日以来の水準に低下したが、午後に入ると反転し、一時0.350%に上昇した。』(上記URLより)

ということで昨日の超長期は前場はワッショイとブルフラットしていたのに午後1時過ぎくらいから急に大失速して終わってみたら7年10年は引けで20年は2甘で30年は4.5甘というスティープ祭りになるとか、まあ昨日も途中から先物の位置がそんなに変わらないのに超長期が短時間でホイホイ強くなったり調子に乗ってますかねという状況だったのでナンジャラホイとか見ていたらカウンターパンチとか何とも落ち着きがない展開が続きますな、というメモだけ置いておくのでした。


・3M短国は平均マイナスも引けはプラスとな

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150226.htm

(3)募入最低価格 99円99銭9厘5毛(募入最高利回り)(0.0020%)
(4)募入最低価格における案分比率 3.7495%
(5)募入平均価格 100円00銭0厘6毛(募入平均利回り) (-0.0024%)

ということで足切はプラス利回り(ただし極薄案分)だったのですが、平均が100円どころか100円0厘6毛ということで、100.0005どころか100.0010にも札が結構入っているのかよと中々こう?????な結果だったのですが、海外勢の買いでも期待したのかよというにせよマイナス金利での買いはマージナルな人と日銀短国買入で、決算要因での買いはもしかしたら足元の債券市場の動きからしたら減っている可能性があるし、日銀の買入はご案内のように減る可能性が高い中で、そこまで上を入れる必要あるのかとあたしゃ思いながら結果を見たのですけれどもね。

・・・・・・と思ったら案の定というかなんというかで結局セカンダリーではマイナス金利では玉が捌けずの巻となったようで終わってみればプラス金利になってBBの引けは0.6bpとテールより甘くなっておりまして何やってるんだという入札になったのでした。

なおご参考に毎度のロイターさん。
http://jp.reuters.com/article/jptokyomarket/idJPL4N0W02FP20150226
〔金利マーケットアイ〕翌日物の加重0.07%後半か、3カ月物TB入札結果は弱め
2015年 02月 26日 15:05 JST

『財務省が実施した新発3カ月物国庫短期証券の入札結果で、最高落札利回りは0.0020%と前回(0.0060%)に比べて低下した。落札利回りは前回に比べて低下したが、3月の日銀買い入れに不透明感がある中、マイナス水準での応札に慎重姿勢が示され、事前予想に比べて弱めの入札結果となった。新発3カ月物は、入札結果発表後の業者間取引で、プラス0.005%付近で出合いを付けたもよう。』(上記URL先より)

そんな予想だったのかと???ですがまあそういう事のようですな。いずれにせよマイナス金利をホイホイ買い進むような市場環境ではないという事が確認できた3M短国入札結果でした。なお2年入札は平均2.7bpに対して第U非価格がボウズなので、BB引けは2.5bpなのですがまあ勢いがあるという感じではないんじゃねーのという所で。


○国債決済T+1化関連で少々気になる別の論点についての雑談

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/gov_debt_management/proceedings/index.html
国の債務管理の在り方に関する懇談会(議事要旨等)

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/gov_debt_management/proceedings/material/d20150225-3.pdf
国債の決済期間の短縮(T+1)化に向けた取組

・・・・・・ということで相変わらず国債流通市場の現状が日銀大量買入で市場流動性にプレッシャーをかけている(から足元のようなドタバタ相場になる)という状況になる、という当初このT+1化をどうしようって話をしていた時期とは前提状況が大いに異なるのに相変わらず線表通りに推進してどうしますねんという案件ですけどね。

#なお毎度申し上げておりますように、QQE政策が終了して金利水準や国債流通市場の状況が平常に戻ったら別にやっても良いんじゃないですかねえというお話

この資料の『(参考1) 国債決済短縮(T+1)化のイメージ』と『(参考2) 銘柄後決め方式GCレポ取引のスキーム』を見ていてだいぶ気になったのは、T+1でアウトライトSCがT+1になる問題もさることながら、GCがT+0になることに関してで、GCがT+0になった時点でのスキーム図を見ておりますと、これってJSCC使うのが前提になっていますけれどその費用負担とか事務体制構築(関連システム投資も含めて)についていけない規模の投資家はGC市場から振り落とされる格好になると思うのですよね。

でまあ日証協はそんなものは振り落としてしまえという発想なのでしょうけれども、そうなってしまいますと、国債流通市場における在庫ファイナンスを担うGCレポ市場の参加者が債券ディーラーと大手機関投資家(というか多分大手銀行)だけという話になってしまい、「市場の規模は大きいけれども参加者の多様性が確保されていない市場」というものになってしまう惧れがある訳で、その結果としてどういうことが起きるかというと、市場の構造的にショック耐性に弱い市場が出来上がることになりませんかねと思うんですよね。

まあそうなるのかどうかは知らんですけれども、仮にアタクシの懸念(杞憂であれば良いのですが)が顕在化した場合って決済リスクの削減で市場の安全確保みたいな話に逆行する皮肉な結果も待っている(そもそも論として今の市場状況でSC取引にストレスを与える国債決済期間の短縮化それ自体の問題も思いっきり有る訳ですが)ような気がする訳ですが、この手の市場ストレスだの参加者の多様化喪失によるショック耐性だのという話というのは定量的な評価が難しい一方で未決済残高の圧縮のようなものは定量評価が一発で計算できるので、直接的に見えるリスクを削減しようとして見えにくいテールリスクを拡大する、というような結果にならないように、推進するにしても慎重に進めていただきたいものだと思うのでありました。




○大門先生キター!(後日用メモ)

昨日は参議院財政金融委員会で恒例の日銀半期報告。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150226b.htm/
通貨及び金融の調節に関する報告書
参議院財政金融委員会における概要説明
日本銀行総裁 黒田 東彦 2015年2月26日

でまあ質疑やっていて幾つか面白かったのですけれども、実際にちょっと聞いたのをヘッドラインと比較してみると例によって例のごとくベンダーのヘッドライン詐欺っぽいのが散見されますので注意した方が良いかもしれません。

そんなヘッドラインの中で市場の中の方々の腰が抜けたと思われるのは「2016年度末には2%達成」という説明で、おいおいQQEの「2倍」の最後の落ちは「達成期間が実は2倍に延長」かよと思いましたが、一応「2016年度末にはどう見ても達成しておりますが何か?」という意味の発言だったようですけれども、2015年度に達成しますよもしかしたら2016年度にはみ出すかもしれませんという話が更に後ろに倒れやがってどうなっているんだこのウソツキという白けた空気が漂ったで有ろう事は申すまでもありません。

でまあこちらに逝くと審議中継が見れます(アドビのフラッシュプレーヤーの最新版がインスコされている事と、WinだとOSはVista以上が必要のようです)ので、昨日の財政金融委員会の毎度おなじみ大門先生の質疑を見るとこれがまた素敵だと思いますので、いずれ会議録が出たらネタにする所存ですが先にメモを置いておきますね。

http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
参議院インターネット審議中継

大門委員の質問は金融政策のコミュニケーション論だったのですが、そこのツッコミどころが昨年の追加緩和に関する話というのが見事すぎるツッコミどころでして、詳しくは会議録が出てからネタにしますが、質問だけでそのまま金融政策のコミュニケーションに関する論点整理になるようなお話でした。

でまあだいたいどんな質問をしていたかというと、昨年10月の追加緩和に関しての説明で、追加緩和を実施する直前に国会で黒田総裁や岩田副総裁が委員会答弁をしていた時の内容が「経済物価情勢は順調に推移しており物価は2015年度を中心とする期間に目標に達する可能性が高いと判断しています」という説明になっていたのに、その直後にサプライズ緩和をしたのはどういう事だ、何をしに国会にきているんだ、という所から攻めてきて、最終的には「サプライズ狙いの金融政策を続けると市場は更に大きなサプライズを求めるようになりキリがないし、一番重要なことを伝えたいという時に市場に伝わらなくなるという問題がある」ってな話になりまして、最後の方はもう黒田総裁反論不能状態で言われるがまま状態になっておりましたな。

んでまあその時に10月の追加緩和は「サプライズを狙ったものではない」と黒田総裁思いっきり言ってしまいましたのはほほーという感じでしたし、あとまあこの点はそういう流れになるのかどうかは微妙ではありますが、国会発言と直後に行われた政策行動の整合性を問われる、という事になりますと、「2年で2%」の期限がやってくる4月以降になりますと岩田副総裁の就任時の見解聴取との整合性についてゴリゴリと来るという変化も想定されますなという所ですな。





2015/02/26

お題「遅ればせながら金融経済月報比較/市場雑談とか原田大先生関連雑談とかの雑談で」

朝日新聞の「金融政策私の視点」連載の内容がここ2回急にゴミとなり盛大に劣化しているのだが、折角のコーナーが台無しになるからもうちょっと聞く相手を考えろやと朝日新聞の為に惜しむ。
http://www.asahi.com/articles/ASH2F4WQQH2FULFA01N.html

○市場雑談メモ

・5年が0.1%割れとか何か妙に堅調な件について(メモ)

久々にロイターのこちらから。
http://jp.reuters.com/article/jptokyomarket/idJPL4N0VZ1JY20150225
〔金利マーケットアイ〕国債先物が大幅続伸で引け、長期金利は3週ぶり0.335%に低下
2015年 02月 25日 15:19 JST

『<15:10> 国債先物が大幅続伸で引け、長期金利は3週ぶり0.335%に低下

国債先物中心限月3月限は前日比35銭高の147円85銭と大幅続伸で引けた。前日の海外市場で、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言がハト派的な内容と受け止められ、米債が買われた流れを引き継いで買いが先行した。日銀の買い入れに加えて、年限長期化に絡んだ買いで、需給引き締まりを意識。午後に入ると先物が一段高の展開となった。3月限は一時147円88銭と2月3日以来、約3週ぶりの高値を付けた。現物市場は長期・超長期ゾーンが堅調。現物受渡ベースの月内最終売買日を迎え、年金勢などからの年限長期化目的の買いを、カレント債を中心に観測。10年最長期国債利回り(長期金利)は同3.5bp低い0.335%と2月6日以来約3週ぶり、20年超長期国債利回りは同4bp低い1.140%と2月9日以来約2週ぶりの水準にそれぞれ低下した。』

ということで超長期輪番が強くてブルフラットヒャッハーとなっていたのですけれども、それはそれといたしまして地味に???だったのは中短期で、2年は1.5bpまで低下するわ(引けは2bp)5年は堂々の10bp割れで9bpの引けになるわとなりまして、まあ2年の方は短いところに買いがあってその関連で強いのかなとは思うのですが、5年の10bp割れをそんなに買い進むものなのかという点は何かよくわからんですな。

どこからどう考えても追加緩和をする雰囲気がなくなってしまっているという状況になっているのに昨年末以来の相場が復活するというのもなんだかなあという感じですが、早期2%達成の断念→低金利政策の時間軸政策へのシフトというイメージで中期買うのは分からんでもないけど、それにしても付利金利割れを買い進む必要はない(量的拡大の追及よりも低金利時間軸にシフトするなら短期市場金利がそこまで盛大に下がらなくても良いはずなのでベース金利のイメージに違和感がある)のですけどねえと思いつつ?????な中で2年国債入札を迎えるのでありました。


・短国関連雑談

今日は3M入札ですが、なんか知らんけど足元で前回の短国買入謎の増額が効いたのか前週の新発3Mの514回債が昨日の引けでは-0.9bpとこちらも堅調になっておりまして、これまた何でしょうかねという所ではあるのですが、そうは言いましても5.7兆円の入札をマイナス金利でやってしまって投資家が買えないようになりますとさすがに短国買入だけでは玉がなくなりませんので、プラス金利で入札した方が話が丸く収まりそうな気はしますけどね。

あとまあ足元での債券市場の堅調さが期末に向けた残高積み上げの動きに起因するものであれば、その分だけ期末帳尻ニーズからの短国ニーズも減りますので、そんなこんなでそこまで期末に盛り上がるかねとは思いますけれどもまあ油断はできないので。


ところで短国買入残高ですが。

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額

ということでこちらなのですが、今回は2/9の短国買入2.5兆円と2/13の短国買入2兆円分が前回対比の増加分として出てくるのですが・・・・・・・・・

買入上位銘柄は、509回20081億円、511回10195億円、508回5521億円、510回4738億円、507回3479億円となっておりまして、509回というのが1月末に入札があった新発3Mでして、新発出た瞬間ではなくてそのあとに買入が増えているというのがお洒落というかなんというか。511回が2/6に入札が行われた新発6Mでして、あとの銘柄は3Mが続くのですけど507回って1月新発の1年短国でして、まだそんなに持っていたのかとちょっと目がテンな結果になっております。なお、こちらは買入銘柄の前回対比増減と売買参考統計値の推移を比較して侘び寂びの世界を感じるのが通。



○ちと遅くなりましたが金融経済月報

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2015/gp1502.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2015/gp1501.pdf(前回)

・現状判断は基本的に声明文通りですが声明文比較の時に見落としていたのがありましたので(大汗)

『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、基調的に緩やかな回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も全体として和らいでいる。』(前回)

という上方修正をしておりまして・・・・・・・・・

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直しの動きがみられている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

輸出が引き上げというのも声明文通りですね。

『個人消費は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体としては底堅く推移している。』(今回)
『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。』(前回)

ここなんですけれども、個人消費の表現が微妙に変化していて、たぶんこれは微妙ながらも下向き修正ですなという話を声明文比較の時にしましたが、これ良く良く見ると雇用所得の部分が「着実に改善するもとで」だったのが「着実な改善を背景に」と改善の所の表現がスッキリ系になっていまして、しらっと表現が強くなっているのですね、というのを声明文比較の時に不覚にも見落としておりました(大汗)。

『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)
『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は下げ止まっている。』(前回)

ということで生産の引き上げ、というのも声明文で示されている通りです。


・先行き見通しは消費と生産が引き上げ

『先行きについても、景気は緩やかな回復基調を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も収束していくとみられる。』(前回)

ということで消費税云々の所が消えて更にスッキリ系になったのは声明文の通り。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、高めの水準を維持しつつも、緩やかな減少傾向に転じていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。』(今回)

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、当面、高水準で横ばい圏内の動きを続けたあと、緩やかな減少傾向に転じていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。』(前回)

先行き見通しの個別項目は声明文にはありませんので今回初比較になりますが、輸出は判断不変、公共投資は若干下(ただし水準そのものは高い)、設備投資は不変ですな。

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。住宅投資は、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に収束していくとみられる。住宅投資は、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかな増加に復していくと考えられる。』(前回)

個人消費の部分で駆け込み云々が抜けておりますが、それ以外の表現は同じで判断不変ですけれども、まあこれは表現がスッキリ系ですなという所です。住宅投資も判断不変で、生産は表現を強めていますが、これはまあ現状判断の引き上げとリンクしていますね。


・リスク要因は毎度同じ

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

これはまあ判で押したように毎回同じですな。


・物価に関しても判断不変とな

まあここは声明文通りですけどね。

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の大幅な下落を反映して、3か月前比で下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の大幅な下落を反映して、3か月前比で下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

事実関係としての数値については変化がありますが、予想物価上昇率の部分は毎度毎度の「やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる」となっておりましていやはやとしか申し上げようがございませんがががが。

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小するとみられる。』(前回)

先行き判断も不変ですが、物価の水準が下がっているのに「当面下落を続ける」と表現しているので、もう思いっきり足元の物価マイナス化進行も知らんがなという展開になっているというのが実にこう味わいが深いというものです。


なお、この先は金融環境ですが毎度の『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』からいつもの表現になっているので割愛します。



○デフレよりもハイパーインフレがマシとはこりゃ恐れ入りました

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS25H02_V20C15A2EAF000/
日銀審議委員に原田氏 国会、15機関58人を承認
2015/2/25 10:37

・・・・・・参議院では民主党の大久保先生の反対見解表明を受けて当初の賛成予定から反対に替わった議員さんなども出たよう(某議員のツイッターによると)ですが、まあ順当に原田大先生の審議委員就任が内定したようで何よりです(吐血)。

でまあその大先生ですが、ちょっと前にはこんな主張もしておられたようで。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3727
歴史に学ぶ インフレより怖いデフレの危険性
2014年05月15日(Thu)  原田 泰 (早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員)

・・・・・・・なんか頭がクラクラするような説明でツッコミどころ満載なのですが、何が凄いって「デフレよりもハイパーインフレの方がマシ」との事でして、ああそうですか上流階級であらされます所の原田大先生様は中産階級がハイパーインフレで死滅して上流階級の肥やしになるべきだという事ですかさすがですなあと感心する事しきりでございますが、ハイパーインフレの害よりデフレの害の方が大きいというご高説まさしくジンバブエ理論でございますなという所で、就任記者会見以降で続々とツッコミどころがあって楽しそうですなあ(棒読み)というかこのウェッジでの大先生の投下している記事がこれ以外も色々と中々こう何と申しますかだったりしますな。

いやまあ同じリフレ派にしたってもう少し普通の話する人居なかったのかねとは思いますし、資産と負債の関係も分からないで日銀が国債買うと統合政府の債務が消滅とか言い出すのがそもそも大学の教授になれるという世の中が分からんぞなという所ではあるのですが、奇しくも某置物大先生が「日銀に入って理解が深まった」などとおめーの勉強の為に貴重な国費を使ってるのかよヴォケというような事案のパート2がこれから展開される事になるのでしょうなあと思うと俺にも勉強させろと申し上げたくなりますな(白目)。

#ということで雑談大会状態で恐縮至極




2015/02/25

お題「寝起きでイエレン議会証言:ガイダンス文言は削除の方向ですな/1月MPM議事要旨ネタの続き」

ジンバブエキター!!
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS24H6I_U5A220C1PP8000/
衆院、日銀審議委員らの人事案可決
2015/2/24 19:36

『衆院は24日の本会議で、日銀審議委員に原田泰早大教授、預金保険機構理事長に三国谷勝範元金融庁長官を充てるなど、15機関58人の国会同意人事案を与党などの賛成多数で可決した。参院は25日に採決する。』(上記URLより)

ということで予算委員会は止まっていましたが議院運営委員会はやっていたようで、ついでに審議委員の場合所信表明みたいなのって会議録が出てこない筈なので惜しくもこの辺の内容が分からんというのが残念です。でもって審議委員就任が決まるとジンバブエ理論についての入れ知恵大会が日銀企画方面から入るので就任会見でジンバブエ理論について突っ込みを入れても企画様謹製の屁理屈しか聞けないのが実に残念なところです。


○寝起きでイエレン議会証言だがタカ内容を警戒していたのですかね

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/yellen20150224a.htm
Chair Janet L. Yellen
Semiannual Monetary Policy Report to the Congress
Before the Committee on Banking, Housing, and Urban Affairs, U.S. Senate, Washington, D.C.
February 24, 2015

・労働市場と物価に関して

最初は『Current Economic Situation and Outlook』だが海外経済とか原油価格ガーな話の部分はスルーして労働市場と物価の所だけ引用。最初のパラグラフから。

『Since my appearance before this Committee last July, the employment situation in the United States has been improving along many dimensions.』

ということで最初が労働市場の話で、ああだこうだと改善したという数字が並んでおりまして、具体的には失業率の改善とペイロールの増加とか長期失業とかその辺の数値が改善しており、一方で労働参加率の改善が過去平均対比で遅れているという話や、賃金の改善が遅れているという指摘がありまして結論。

『In short, considerable progress has been achieved in the recovery of the labor market, though room for further improvement remains.』

つーことで大幅に改善しているが改善の余地はまだあるという大体そうでしょうなあというお話。そのあとは米国経済の話と海外経済の話やら金利の話などありましたが、物価に関してはこのコーナーの最後の方に。

『U.S. inflation continues to run below the Committee's 2 percent objective. In large part, the recent softness in the all-items measure of inflation for personal consumption expenditures (PCE) reflects the drop in oil prices. Indeed, the PCE price index edged down during the fourth quarter of last year and looks to be on track to register a more significant decline this quarter because of falling consumer energy prices.』

原油価格の影響でヘッドラインの物価が下がっていますよと。

『But core PCE inflation has also slowed since last summer, in part reflecting declines in the prices of many imported items and perhaps also some pass-through of lower energy costs into core consumer prices.』

コア物価に関しては輸入価格の値下がりと一部にエネルギー価格下落のパススルーで低下していると指摘していてこの辺はややハト風味。

『Despite the very low recent readings on actual inflation, inflation expectations as measured in a range of surveys of households and professional forecasters have thus far remained stable.』

しかし家計やプロフェッショナルフォーキャスターのインフレ期待は安定しているといつもの話。

『However, inflation compensation, as calculated from the yields of real and nominal Treasury securities, has declined. As best we can tell, the fall in inflation compensation mainly reflects factors other than a reduction in longer-term inflation expectations.』

市場のBEIは低下しているがほかの要因もある攻撃キタコレ。

『The Committee expects inflation to decline further in the near term before rising gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of lower energy prices and other factors dissipate, but we will continue to monitor inflation developments closely.』

ということで、まあそんなに変わった話はしておりませんな。


・フォワードガイダンス文言を次回外してもうガイダンス政策は実施しないということですかねえ

次が『Monetary Policy』である。最初は資産買入を終了しましたよという話をして問題はその先。

『Even so, the Committee judges that a high degree of policy accommodation remains appropriate to foster further improvement in labor market conditions and to promote a return of inflation toward 2 percent over the medium term.』

まあこれも声明文通りではあります。

『Accordingly, the FOMC has continued to maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and to keep the Federal Reserve's holdings of longer-term securities at their current elevated level to help maintain accommodative financial conditions. The FOMC is also providing forward guidance that offers information about our policy outlook and expectations for the future path of the federal funds rate. In that regard, the Committee judged, in December and January, that it can be patient in beginning to raise the federal funds rate. This judgment reflects the fact that inflation continues to run well below the Committee's 2 percent objective, and that room for sustainable improvements in labor market conditions still remains.』

でまあこの辺も声明文通りで、現在のガイダンス文言に関する説明をしていますな。

『The FOMC's assessment that it can be patient in beginning to normalize policy means that the Committee considers it unlikely that economic conditions will warrant an increase in the target range for the federal funds rate for at least the next couple of FOMC meetings.』

モーサテの説明だと妙に反応しているのですが、そもそもpatientの意味は「現時点でのアセスメントによると向こう2回のFOMCで利上げ着手をする必要はないと判断している」だと文言変更したときに説明が入っているし、12月FOMC議事要旨でもその説明が入っているので、これはただの従来路線の継続であり、反応する意味がイマイチ良くわからんのだが。

『If economic conditions continue to improve, as the Committee anticipates, the Committee will at some point begin considering an increase in the target range for the federal funds rate on a meeting-by-meeting basis. Before then, the Committee will change its forward guidance.』

ガイダンス文言を変更した後にはFOMC会合毎に利上げを実施するかの判断を行う(キリッ)ということなのですが、もともとがpatientというのが「次回」ではなくて「今後2回」の利上げ判断は無いという建付けになっているので、patientを外した次の回に利上げしたら食言になってしまうのですけれども(なお「ガイダンスはその時点での見通しであり、別に絶対やらないと予告している訳ではない」という屁理屈が用意されているのですけどね)大丈夫かよと思いますが・・・・・・・・

『However, it is important to emphasize that a modification of the forward guidance should not be read as indicating that the Committee will necessarily increase the target range in a couple of meetings.』

クソワロタという所で、patientを削除したからと言って次の2回のFOMCの間に利上げ着手をするわけではないということです(キリッ)ってどこからどう見てもガイダンス文言が却って自分の手足を縛る結果になっているので外したいという意向満々という感じ。

まあ何ですな、こうなるとなんでpatientとか入れたのかよとはやや思うのですが、一度にガイダンス文言外すとややこしい事になるから、1回patientをかましてその間コミュニケーションが混乱しても、急に文言外して債券市場があばばばばーになるのを避ける、という遠大な作戦を練っていた(FRBのスタッフならそのくらいの計画を立てているかもしれないと最近は割とこの人たちの計画性が高いなとか思いだしている)のかも知れませんね。

『Instead the modification should be understood as reflecting the Committee's judgment that conditions have improved to the point where it will soon be the case that a change in the target range could be warranted at any meeting.』

ということで、これは利上げ着手可能な時期になったらガイダンス文言を外すという説明ではありますけれども、先ほどの説明からの流れを敷衍しますと、本当に利上げ可能な時期直前になった所でガイダンス文言を外すとやはり「次回利上げ予告」扱いになってしまうので自分たちの手足を同様に縛る格好になってしまう、と考えますと、逆に「次回の利上げがなさそうと皆が思っているうちにガイダンス文言を外せば文言削除が次回利上げ予告とみられない」という事になりますので、これは3月にガイダンス文言撤廃待ったなしと見ましたけれどもどうでしょうかね。

#逆に3月に外さないと更にコミュニケーションがグダグダになりそう

『Provided that labor market conditions continue to improve and further improvement is expected, the Committee anticipates that it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when, on the basis of incoming data, the Committee is reasonably confident that inflation will move back over the medium term toward our 2 percent objective. 』

だそうです。

『It continues to be the FOMC's assessment that even after employment and inflation are near levels consistent with our dual mandate, economic conditions may, for some time, warrant keeping the federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』

暫く前からその傾向はありますが、FOMCとしては利上げ着手時期よりも「経済にスラックがあると認識される間は中立金利への金利引き上げを急ぐ必要が無いと考えている」という所に注目を持って行こうとしています罠。

『It is possible, for example, that it may be necessary for the federal funds rate to run temporarily below its normal longer-run level because the residual effects of the financial crisis may continue to weigh on economic activity. As such factors continue to dissipate, we would expect the federal funds rate to move toward its longer-run normal level.』

でまあその辺の問題(ここでは金融危機の後遺症という表現ですな)が残るうちは利上げを急がないという話ですが、一方でそれらのファクターが解消されれば中立金利への利上げを行うとも言ってまして、正直その辺が残存しているかどうかというような話って鉛筆舐め舐めの世界だったりすると思いますので、改善が進むとどこかの時点で中立金利への調整を早める可能性もありますよねこれって。

『In response to unforeseen developments, the Committee will adjust the target range for the federal funds rate to best promote the achievement of maximum employment and 2 percent inflation.』

というころであくまでも今後の経済状況及び見通し次第で調整するという話で、そんなに市場が大喜びするほどのハト内容かよというのは少々疑問で、新しい情報とすれば「ガイダンス文言がどうも邪魔なので外しますが政策インプリケーションはありませんのでよろしくお願いいたします」という予告をしただけにしか思えないのですけどね。

なお、その次が『licy Normalization』ですが、こちらは正常化着手における政策オプションの話なので今回はパスしておきます。


○1月金融政策決定会合議事要旨ネタの続き

昨日は体が花粉症に慣れてなくて朝から超ヘロヘロだった(今日は花粉慣れ?した)という極個人的事情により物価に関する部分だけネタにしましたが、引き続き1月会合議事要旨が意外に面白いので昨日の続きを。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g150121.pdf

・12月と比較すると「基調的な物価の動き」の話が盛大に強調されている件について

2月会合後の定例会見では総裁が「物価の基調ガー」というのをひたすら連発していてもう目先のコアCPIが(消費税抜きで)マイナス転しようと知らんがな状態になっているというのは把握したのですけれども、昨日ネタにした物価に関する政策委員会の政策判断にかかわる部分での内容が12月会合と1月会合で変わっているのですよね。

つまり、2月の会見見た後だからこの1月議事要旨自体は予定調和的なイメージを受けるのですが、12月会合の議論と比較するとナンジャソラという感じになっているのは何なんでしょというお話。

昨日引用しましたが1月会合議事要旨での『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について』というパートを前回と比較してみると非常に味わいが深いのですよ。

『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、「物価安定の目標」は安定的に達成すべきものであり、金融政策運営に当たっては、物価の基調的な動きが重要であるとの認識で一致した。(中間割愛)また、多くの委員は、物価の基調の判断に当たっては、様々な物価指標を点検することが重要であり、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率、さらには背後にある経済の動きとも併せて総合的に評価していくとの考え方に変わりはないと述べた。さらに、これらの委員は、予想物価上昇率の動向を点検する際には、ブレーク・イーブン・インフレ率など市場の指標やエコノミスト、企業、家計などへのサーベイ調査の結果だけでなく、企業や家計の物価観やそのもとでの行動の変化、例えば価格設定行動や賃金交渉などを評価することが重要であると指摘した。』(1月MPM議事要旨)

『原油価格の下落と金融政策運営の関係について、何人かの委員は、「量的・質的金融緩和」の拡大が原油価格の下落そのものへの対応と市場の一部では受け止められており、その後の原油価格下落を受けて追加緩和を予想する声も聞かれると指摘した。大方の委員は、「量的・質的金融緩和」の拡大は、原油価格の下落そのものに対応したものではなく、需要面の弱めの動きや原油価格の下落から物価上昇率が短期的に伸び悩む中で、デフレマインドの転換が遅延するリスクの顕現化を未然に防ぐために実施したものであるとの認識を示した。ある委員は、今後の金融政策運営を考えるうえで重要なのはあくまで物価の基調的な動きであり、広い意味での予想物価上昇率の動向がポイントになると述べた。』(12月MPM議事要旨)

ということで、まあ書き方が違うので比較して読みにくいかもしれませんが、「基調が重要」という話が12月会合時点では「ある委員は」という表現になっていたのに、1月会合では思いっきり全員一致に近い見解となっているという表現になっておりまして、これはまあつまりこの間に「2年で達成」に対してポッキリと折れてしまった誰かさん(達)がいるという事を示しているのではないかと思われる次第で、実にこう味わいが深いと思うのですがどうでしょうかねえ。


・資産買入政策の持続可能性について留意すべきとの議論にも政策的含意が無いわけではなさそうなのだが

でまあ昨日引用した部分の続きですけどね。

『先行きの金融政策運営の考え方について、多くの委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとの認識を共有した。』

これはまあヨロシとしまして。

『この間、何人かの委員は、「量的・質的金融緩和」のもとで、このところ金利が一段と低下していることについて、リスク要因の点検に当たっては、金融機関経営への影響や金融面の不均衡が蓄積するリスクなども、注視していく必要があると述べた。また、このうち複数の委員は、買入れを継続することは技術的には当分可能であるとみているが、先行きにおける持続可能性についても留意しておくことが必要であると述べた。』

まずここで分かるのが金融不均衡などに言及している「何人かの委員」というのが少なくとも3名以上であり、しかもどうせ執行部がこういう話をする訳が無いですし、学者2名はこの手の実務的なお話に関して全くの役立たず(なお更に弩級の役立たず所かマイナス寄与に入れ替わる模様)なので、そうなりますとこれは残り4名のうち少なくとも3名ですので、森本さんが入っているかは微妙ですけれども、石田さん、佐藤さん、木内さんはガチで指摘しているという事で実に頼もしいですね。

さらに複数の委員なので2名以上になりますが、「買入の持続可能性について留意」という指摘をしておりまして、ただ一方でこの指摘をしている委員の皆様って多分昨日引用した中で「物価安定目標の達成は2015年度を中心とした期間という時期からは更に遅れそう」という指摘をしている人と多分重なると思われます上に、この方々が別に追加緩和という話をしていない。とまあそういう事を考えますと、「現在の緩和政策が長期化することを考えて、緩和政策をより長期間継続できるようなデザインに変更すべき」という話にいずれ繋がって来ると思うのですよね。

つまりどういう事かと申しますと、今やっている「MB年間80兆円拡大」などというのは、枠組みとして「短期決戦」を前提にしている訳で、そもそも物価安定目標を2年を念頭にできるだけ早期に(と言いつつ遅延していますけど)達成することが前提にあるので、このような短期決戦フレームを組む事が出来るわけです。現状オープンエンドという話にはなっていますが、上記の政策委員のご指摘を待つまでもなく、市場の中の人たち的にはどこをどう見てもこのペースでの買入が向こう2年も3年も続けられないと確信している訳ですし、だいたいからして日銀だって「できるだけ早期に達成」という事で今の枠組みが長期化することを前提にしている訳ではありません。

然るに、物価安定目標達成時期を柔軟化する(さすがに2%は実際に物価が上がって怨嗟の声が出まくる事が起きて政治的に持たなくならない限り下げないでしょ)という話になると、そもそも論として緩和政策の継続期間も長くなる訳で、そうなった場合は短期決戦を前提にしている今の枠組みを変える必要がありますし、今後は「一気に投入」じゃなくて「状況を見ながら適宜調整」というフレームワークに変わるでしょとなる(のですがそれはどこの白川ドクトリンですかと思うので少なくとも置物一派の皆さんは白川さんと山口さんに土下座してそれまでの罵詈雑言を謝罪すべきだと思うの)と思いますよね、とゆー話でして、しかも12月から1月の間で「基調ガー」の勢力が拡大している訳ですから、そんなこんなでこの政策枠組みの技術的な持続可能性という問題が重要になってきそうですねと。

なお、そんな状況の中で「国債をただで買っているから1000兆円買える(キリッ)」という政策の技術論も何もないド素人な上に複式簿記にも理解が無いジンバブエ理論を提唱される方(つーかなんでそういうのがエコノミストはともかく大学教授になるのかと日本の経済学会には自浄作用とか競争原理とか働いていないのかと小一時間問い詰めたいのだが)が政策委員会に加わるので、どのようなオモシロ議論が発生するのか10年後の議事録まで待ってられないので議事要旨でジンバブエ先生のジンバブエ理論ご開陳の巻という部分を大公開していただきたいと思います。副総裁だと執行部の一員だからスットコドッコイ発言をあまり公開しにくいかも知れないけど、ヒラ審議委員だったら事務方的にも別に問題ないでしょ(ニヤニヤ)。


などと話が逸れてしまった上に気が付いたら時間が無くなってきたので議事要旨ネタはこんな所で(あとたぶん追加はないのですがあったら追加します)。





2015/02/24

お題「安倍ちゃんブレーン方面から2年2%の梯子を外す動きが/1月会合議事要旨時点でどう見ても追加緩和無し」

今週分の日経ヴェリタスですけど最終面だかこの1つ前だかにある記者座談会形式の「放電塔」コーナーが色々と剛球を投げ込んでいるようなのでオヌヌメ。

#そういや今日は議運でジンバブエ先生だったような気がしましたが農相辞任でずれるちゃうの?

○黒田総裁が登った梯子が盛大に外されそうな件

昨日は本田先生や浜田先生から以下のような情報発信が。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NK5C006K50XT01.html
本田氏:円は心地の良い水準、現在は追加緩和の必要なし
更新日時: 2015/02/23 11:52 JST

『(ブルームバーグ):安倍晋三首相の政策ブレーン、本田悦朗内閣府参与は足元の円が「心地の良い」水準になっており、経済の状況を踏まえると日本銀行が追加緩和する必要はないとの見方を示した。』(上記URLより)

物価の状況を踏まえると2年で2%目標が達成できなくなりそうなのですがそれは気にしなくてよろしい、となりますとそもそもリフレ派諸氏の提唱されておりましたインフレ目標とは何ぞやという話になると思うのですが、すっかりその辺は無かったことになって経済状況が良いので無問題という話になっておりますが、それって世界標準の政策であるところのインフレ目標政策を導入しないで常に恣意的な判断を加えている日銀ケシカランと批判していた時代の政策判断基準とどこがどう違うのか小一時間。


http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0LR0G920150223
インタビュー:日銀は物価目標の再考を、1%や3年など=浜田参与
2015年 02月 23日 18:29 JST

『原油安は外生要因であり、かつ日本経済に恩恵をもたらすと指摘。目標水準を1%近くに引き下げたり、達成期限を現行の2年程度から3年程度に延長しても日銀への信認が損なわれることはないとし、目標を再検討すべきと語った。』(上記URLより)

・・・・・・えーっとどこの白川総裁ですかという風情で、いやまあ現実的に考えれば先生の仰せの通りではあるのですが目標って簡単にホイホイ変えてしまうと目標に対する信頼性が下がってしまうのではないかと存じますので、目標を再検討って中々そう簡単な話でもないと思うのですけれどもねえ。というか1%とかに下げたら円高に思いっきり振れそうな悪寒が。


いやまあ最近すっかり「2年」がフレキシブルになって「2015年度を中心とする期間」とかになっている時点で色々と先送りする気満々ですねという雰囲気はプンプンと漂っていたのですけれども、「中心とする期間」に先送りしたのですから秋口前位まではその流れで有耶無耶のうちに目標達成期間が延びた状態でのらりくらりと躱していくのかと思っていたのですが、今年4月の「2年で2%」の当初設定していた期限が到来するところで目標の解釈を変更する動きが早速キタコレというのが少々意外感があって、そんなに早い時期にこういう話がドンドコと持ちあがるとはねえと思う次第。

ただまあ実際問題としては4月の時点でそんなに慌てる必要あるのかという気もしますし、そうは言っても当初大口叩いたのだから大風呂敷はどうなったとゴリゴリ突っ込まれるのも具合が悪いという事なのかも知れずでして、今年の10月から遅くとも12月の所でそれなりに落とし前をつけに逝くからその時点で色々とコンフリクトが起こるでしょうとかノンビリ考えていたのがそうも言ってられないとなるとやや意外感はあるところですが、まあ今の所何が何やらワカランチ会長な状況ではあります。

ま、一つ確実に言えそうなのは、目先の所で追加緩和をしろというような雰囲気にはなっていないという話(これからネタにしますが1月決定会合議事要旨がこれまた追加緩和無し無しモード全開になっている)ですなというお話ですな。

ただし黒田総裁としては昨日も国会でこのように言及していましてね、

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0LR05Y20150223
物価見通し、2年程度で2%達成の目標変わらず=日銀総裁
2015年 02月 23日 16:28 JST

なんちゅうか2年で2%の置物ドクトリンに基づきまして盛大に屋根に上って置物踊りを始めたものの、ふと気が付けばリフレ派の皆様が梯子を盛大に外しているという風情に大変味わいの深いものを感じる今日この頃ですが、黒田さんってQQE導入後の長期金利上昇ではビビらずに「逐次投入はしない(キリッ)」でしたし、昨年10月は2年で2%が相当ヤバくなって追加緩和を果敢に突撃した(消費税の後押しとか色々と言われていて決め打ちできませんがまあ公式見解に敬意を表するとそうなる)とか、実は「2年で2%」に対して最も忠実(最近はさすがに2年を誤魔化しにかかってはいるものの)でして、梯子を外された黒田総裁ブチ切れて果敢に特攻という変化も考えられない訳でもないですので黒田さんがどう出るかは楽しみ(?)ですな。


・・・・・そういや置物ドクトリンと言えばこんなのがありましてね。

http://www.seijo.ac.jp/keiken/kankou/nenpo.html
成城大学経済研究所年報 1〜27号

こちらの25号(2012年4月)にこんなのがあります。
http://www.seijo.ac.jp/files/www.seijo.ac.jp/univ/keiken/kankou/nenpo/keiken_nenpo25_iwata.pdf
なぜ,日本銀行の金融政策ではデフレから脱却できないのか
岩田規久男

これを拝読すると中々じわじわと来るのですよね、具体的にどこがと言い出すと鑑賞の妨げになるかもしれませんが特に8ページの下の方とか9ページとか10ページのグラフの縦軸にある「予想インフレ率」という文言(どうやって計測したんでちゅかねえ)とか17ページの置物理論(その通りに行ってましたっけ)とか、心がほっこりしますのでお暇な方はどうぞ(^^)。


○1月決定会合議事要旨を見るとそもそも1月時点で追加緩和する気が碌にない件について

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g150121.pdf

ということでこちらを鑑賞するのですが、このトーンならそらまあ2月の会合での会見はああなりますわなというような内容でございまして、では10月の追加緩和とは何だったのかという風情が更に高まるのでありました。


・まずは展望レポート中間レビュー状況を見ましょう

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の『3.中間評価』から参ります。

『以上のような認識を踏まえ、展望レポートの中間評価についての議論が行われた。』

つーことで。

『委員は、このところ原油価格が大幅に変動しており、消費者物価の見通しは、先行きの原油価格の想定によって大きく影響を受けることを踏まえると、今回の中間評価では、前提となる原油価格を委員間で揃えることが適当であるとの認識で一致した。具体的には、最近の原油価格の推移や市場における先物価格などを参考に、原油価格(ドバイ)が1バレル55 ドルを出発点として、見通し期間の終盤にかけて70 ドル程度に緩やかに上昇していくと想定した。また、大方の委員は、その場合におけるエネルギー価格の寄与度の試算を公表することが有用であるとしたうえで、消費者物価指数(除く生鮮食品)前年比におけるエネルギー価格の寄与度は、2015 年度で− 0.7〜− 0.8%ポイント程度、2016 年度で+ 0.1〜+ 0.2%ポイント程度になるとの認識を共有した。』

原油価格の置きを入れた話ですな。

『ある委員は、消費者物価(除く生鮮食品)からエネルギー価格の寄与度を差し引いた数値が、物価見通しのベンチマークと誤解されないよう、丁寧に説明していく必要があると述べた。』

ほうほう。まあそこまで気にしていないとは思いますけどね。

『こうした原油価格を前提に、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、昨年10 月の展望レポートでの見通しと比較して、2014 年度は下振れているとの認識で一致し、その主な要因として、年度前半の個人消費が弱めの動きとなったことを挙げた。』

14年度の成長見通し下げで要因は年前半の個人消費が弱いって要するに消費税の影響を読み間違えたという話でしょうが、物価上昇による実質所得減少の悪影響もあるんじゃないですかねえ。

『一方、委員は、2015 年度、2016 年度については、原油価格の下落、為替円安、政府の経済対策の効果、消費税率引き上げの延期などから上振れており、潜在成長率を明確に上回る成長になるとの見方を共有した。』

2015年度、2016年度は潜在成長率を明確に上振れる成長へと「上方修正」しているとはこれはこれは。

『また、物価情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、原油価格の大幅下落の影響から、昨年10 月の展望レポートでの見通しと比較して、2015 年度にかけて下振れているとの認識で一致した。』

というころで物価の先行き見通しキタコレですが・・・・・・

『もっとも、多くの委員は、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率に規定される物価の基調的な動きに変化は生じておらず、着実に高まっていくとの見方を示した。』

「基調的」攻撃はすでに始まっております!!!

『これらの委員は、原油価格下落の影響は前年比でみるといずれ剥落することを指摘したうえで、その影響が剥落するに伴って消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は伸び率を高めることになると述べた。』

基調が強いのでこうなります。

『「物価安定の目標」である2%程度に達する時期について、多くの委員は、原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに上昇していくとの前提に立てば、2015 年度を中心とする期間に達する可能性が高いとの見方を示した。これらの委員は、先行きの原油価格については不確実性が高く、原油価格の動向次第では、その時期は多少前後する可能性があると付け加えた。さらに、これらの委員は、2016 年度については、10 月の展望レポートでの見通しから概ね変化していないと述べた。』

・・・・・・・すでに2年で2%という話は前提にも出てこないというのが実にチャーミングな上に、原油価格が弱かったら更に後ろ倒しになるのも平然と容認している訳で、そもそも論としてこの時点で物価の動向を受けた形での追加緩和の可能性がほぼ皆無という状態になっているのがわかるというものでありまする。

『これに対し、一人の委員は、円安にもかかわらず消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比プラス幅が足もとゼロ%台前半にとどまっていることを踏まえると、先行き2%を持続的に実現することは難しいとの認識を示したうえで、2016 年度までの成長率および物価は政策委員の中央値を大きく下回るとの見通しを示した。』

あちゃー。

『別の一人の委員は、原油価格の下落、中長期的な予想物価上昇率の上昇モメンタムの弱まりなどから、2016 年度までの見通し期間を通じて物価見通しは下振れており、消費者物価(除く生鮮食品)は見通し期間中に2%に近づくにとどまるとの見方を示した。』

ありゃー。

『さらに別の一人の委員は、先行きの物価は委員の中央値よりも低いとみており、2015 年度を中心とする期間に2%に達するのは難しいとの見方を示した。』

ナムナム。

・・・・・・ということで3名の見通しはそもそも展望レポートの見通し期間に2%の物価目標達成は展望れきませんという話になっているのですが、その割にはこの3名から追加緩和などの提案が出ていないのは何ででしょ、というのが今回の議事要旨では示されていない(なおこのうち1名は多分木内さんで、木内さんだけは政策提案をしているのですが)のがこの議事要旨の不親切なところですなと存じます。

まあこの2名に関して追加緩和とかの提案が出ない理由としては「そもそも短期間で目標をリジッドに達成しようというのが無茶なのであって、基調がしっかりしていれば少々目標達成が遅れても問題はないし、そこを無理するのは良くない」という話だとは思います。

#そう考えるとここの3名は木内、佐藤、石田の各氏ですかね


・金融政策決定に関する物価に関する議論部分から

続いて『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」は、昨年10 月末の金融政策決定会合で拡大を決定した後も、引き続き所期の効果を発揮しているとの判断を共有した。多くの委員は、10 月末の決定は、デフレマインドの転換が遅延するリスクに未然に対応したものであるが、その後、原油価格が一段と低下し、消費者物価指数の前年比伸び率が低下しているにもかかわらず、中長期的な予想物価上昇率はしっかりと維持されていると指摘した。』

鉛筆なめ要素が強い中長期的な予想物価上昇率が維持されているので云々ということで、では10月に追加の判断をした時とこの1月の時とどこがどう違ってきているのかという事について具体的に示した上で中期的な予想物価上昇率ガーという話をして頂きたいのですが、このままだと結局のところはやりたい施策に合わせて中長期の予想物価上昇率を自由自在に持ち出してくるという流れになりそうですな。


『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、「物価安定の目標」は安定的に達成すべきものであり、金融政策運営に当たっては、物価の基調的な動きが重要であるとの認識で一致した。』

・・・・・・・・お、おう。

まあ何ですな、この基調的な動きが重要というのは全く持ってその通りではあるのですが、一方で日銀っていままで「バックワードルッキング的に形成されるインフレ期待」というのも重視していて、10月の追加緩和でもその部分を注目して政策対応したはずなのに、このMPMでは完全に「基調」の方に逃げてしまっているという形(だからこそ2月決定会合後の総裁会見が物価に関する質疑でひたすら「基調」で逃げる形になっていたわけですよ)でして、屁理屈の出し入れ自由自在というものです。

『そのうえで、委員は、@「物価安定の目標」は消費者物価の総合指数で定義している、A展望レポートにおける見通しでは、基調的な物価の動きを比較的よく表す「消費者物価指数(除く生鮮食品)」を用いている、B今回は原油価格が大幅に変動していることを踏まえ、消費者物価におけるエネルギー価格の寄与度を示すことが適切であるとの考え方を共有した。』

というのはまあともかくとして。

『また、多くの委員は、物価の基調の判断に当たっては、様々な物価指標を点検することが重要であり、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率、さらには背後にある経済の動きとも併せて総合的に評価していくとの考え方に変わりはないと述べた。』

置物BEI万能論is何処という所ですな(ニヤニヤ)。

『さらに、これらの委員は、予想物価上昇率の動向を点検する際には、ブレーク・イーブン・インフレ率など市場の指標やエコノミスト、企業、家計などへのサーベイ調査の結果だけでなく、企業や家計の物価観やそのもとでの行動の変化、例えば価格設定行動や賃金交渉などを評価することが重要であると指摘した。』

賃金交渉キタコレですが、このあたりの白黒が付いた結果として物価に対する影響が指標として見えて来るのが夏以降という話になりますので本来はその時点が正念場になるのですが、先ほどネタにしましたように、そもそも政府サイドの方が2年で2%に対して腰が砕けている辺りが今後どう金融政策運営に影響してくるかですね。

『このところの予想物価上昇率の動向について、多くの委員は、原油価格が一段と下落し、物価上昇率が低下する中でも、デフレマインドの転換は着実に進んでいるとの認識を示した。』

ということで鉛筆成分の高い予想物価上昇率に関する認識が出てくるのだ。

『複数の委員は、今春の賃金交渉に向けて連合では2%以上のベースアップを要求する方針を決定したほか、経営者側も賃上げに前向きな姿勢を示していることなどを指摘し、企業や家計のデフレマインドの転換は着実に進んでいると述べた。』

うむ。

『また、何人かの委員は、中長期的な予想物価上昇率は、市場指標では低下する動きもみられるが、家計や企業、エコノミストなどのサーベイ調査では、総じて維持されていることを指摘した。この点に関し、このうち一人の委員は、中小企業を対象とするサーベイは、経営者自身の見方をもとに回答される場合が多いため、個々の企業の見方をより反映していると付け加えた。』

ほうほうそうですか(棒)。

『この間、ある委員は、今春の賃金交渉で賃上げが実現したとしても、それが経済・物価情勢に大きな影響を与えるとまでは期待すべきでないと述べた。』

これは冷や水キタコレですな(ニヤニヤ)。


更に話は続いて今度は「原油価格下落と金融政策の関係」というのがありますよ。

『原油価格下落と金融政策運営の関係について、委員は、@原油価格の下落は、やや長い目でみれば、経済活動に好影響を与え、物価の押し上げに寄与するものであり、また、前年比のマイナス効果(いわゆるベース効果)はいずれ剥落する、A物価に対する短期的なマイナス効果が、予想物価上昇率の変化を通じて物価の基調に影響を与えるのでなければ、ベース効果の剥落に伴って物価上昇率は高まっていく、B金融政策運営上は、予想物価上昇率や需給ギャップなどに規定される物価の基調に変化がないかを見極めながら政策判断を行う、との考え方を共有した。』

それは分かったが10月との整合性は????と言うと次にこんな指摘が。

『この点に関し、複数の委員は、昨年10 月の「量的・質的金融緩和」の拡大は、原油価格下落そのものに対応したものではなく、原油価格の下落等に伴う物価上昇率の低下が予想物価上昇率に及ぼす影響、すなわちデフレマインドの転換を遅らせるリスクを懸念して行ったものであるという点を、より丁寧に説明していく必要があると述べた。』

まあ理屈は理解したが、ではそう判断するに至った根拠となる経済指標や経済情勢に関する認識などがどうなっているのかというのを説明して、その説明が合理的だと思えるような内容なのかという点について小一時間問い詰めたい。

でまあそういうことで、

『以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、「マネタリーベースが、年間約80 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う」という現在の方針を継続することが適当であるとの見方を示した。』

以上、物価および予想インフレ率の部分に絞ってネタにしてみた訳ですが、まあこのロジック展開を見るとどう見ても追加緩和にはならない、という事になると思う訳ですがいかがでしょうかね。


#花粉症キタコレで本日はこの辺で勘弁してちょ




2015/02/23

お題「1月FOMC議事要旨は良く見ると連銀スタッフとFOMCメンバーの温度差が目立つのだ/その他ちょっとだけ雑談」

例のニュースでのネタの続報が金曜に出ていましたな。
http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000044868.html
「議事録から削除と箝口令」 日銀黒田総裁の発言(02/20 11:48)

この件はそもそも最初に出てきたのがFNNというフジサンケイ系だったのが中々味わいがあるなあと思ったわけですが(金曜のはテレビ朝日系)、そういえば最近は暫く前から財政再建の指標でPBだけではなく政府債務の対GDP比がどうのこうのという話もあったりするのですが、まさかとは思いますがジンバブエ理論を持ち出して「政府債務の対GDPは日銀が買っている分は事実上控除」とかうっかり安部ちゃんが言い出さないかが不安でありますな。

しかしまあ何ですな、リフレ派の主張ってついこの前までは「2%インフレ目標達成でめでたしめでたし」だったのが最近は「日銀が国債を買うと政府債務がチャラ」となっていますが、結局言ってることって「耳障りの良い単純安直な解決方法(しかも別に解決方法になっていない)」なんですよねえ。


#どうでもいいけど「実質値上げ」の話をしているモーサテのおねいさん、「私たち買う時にグラムまで見ませんよねえ」ってパッケージの大きさが微妙に変わってるんだから手に取ったら普通気が付くし1回買ったら内容物減ってるの気が付くだろどんだけ高給取りのお大尽様なんですかというアタクシは小市民ですかそうですか(−−;


○市場雑談メモである

・短国買入2.5兆円とな

金曜のオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150220.htm
国庫短期証券買入 25,000 2015年2月24日 (めんどいので短国買入だけ引用)

落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150220.htm
国庫短期証券買入 46,457 25,002 -0.001 0.002 2.8

ということで短国買入が2.5兆円に増額になっているのですけれども、ちょっとネタにしていない隙に固定金利オペの残高が6.5兆円レベルに落ちてきたので、その落ち分を埋めに2.5兆円で打ってきたのかねという風に思われるのですが、前週はMB進捗を過度に重視しないで短国買入のペースをスムージングしに来たのかと思ったのに3M短国の入札が平均もプラスになってやっと正常化かとなったところでやはりMBの前月比を気にするような打ち方ねえとゆー事で、気が利いてるんだか利いてないんだかよくわからんですな。

#まあMB進捗について拘りまくると3兆円とかの可能性もありましたので

でまあ平均は2糸甘だったのですが足切が1糸強だったので、新発3Mを足切で応札すれば普通に入っているという結果になっておりまして、そもそも新発自体が投資家にそこそこ嵌っている(514回の売参は0.6bpだったので足切で入れれば前日比利回り較差ゼロで応札できる)なのでこれは行けるとばかりに早速また新発3Mが0%ビットになっているのがチャーミングというか懲りないですなあというかでありまして、実にこう見苦しいものを感じる次第で、売買参考統計値もちゃっかり514回債は0%に金利低下となっております(その前の銘柄群は2糸強で0.4bpです)なという所で。

つーてもまあ3月の短国買入は減るはずなのでだからまたドンドン金利が下がるという話でもないとは思いますけど案の定油断ならんですな短国市場は。



○消費者物価指数構成品目の価格粘着性に関するレポートというか論文

http://www.nikko-fi.co.jp/release/3655/
東京大学大学院教授との共同論文を発表

『我が国の消費者物価は、デフレ期を脱しつつも上昇ペースは緩やかなものとなっている。当社では、物価について、何が起こっているのか、その原因はどのようなものか、また、金融緩和が物価の押上げにどの程度効果を有しているか等を解明すべく、渡辺努東京大学大学院経済学研究科教授(当社客員研究員)をリーダーに、物価に関する共同研究を進め、その成果を「デフレ期における価格の硬直化 原因と含意」として取り纏め公表した。』(上記URLより)

ということで、東大物価指数の渡辺先生ならではで、物価に関する考察を思いっきり個別の積み上げの方から行っている時点で「個別の積み上げで考えるのはおかしい(キリッ)」っと言っておられたどこぞの置物大先生に対する盛大なイヤミになっている(ちなみに本文でも「マクロでみるべきであり、ミクロの積み上げで見ると本質を見失うという考え方とは異なっています」と明言しています)のがお洒落というものですな。

ということで概要と本文はこちら。

http://www.nikko-fi.co.jp/wp-content/uploads/2015/02/oab_article_02.pdf(概要版)
http://www.nikko-fi.co.jp/wp-content/uploads/2015/02/oab_article_01.pdf(本文)

なお本文の方ですが、フォントが非常に良く見慣れたものでございまして、日銀がペーパーを出すときの構成およびフォントに良く似ているのはこれは何かのイヤミなのか単にこの手のペーパーはこういうフォントや台組みを使うのがデファクトなのかはよくわかりません。

公的機関が出しているものではないので内容の詳しい話は割愛しますけれども、フィリップスカーブの話とかを見ているうちに、ターニングポイントとなっている80年代から90年代への変化(フィリップスカーブがこの時期から平坦化してくる)という辺りで、そういや1975年体制という説明をしているのが昔読んだ「平成バブルの研究:バブルの発生とその背景構造(2002)」にあったなあとか思い出して久々に引っ張り出して再読しておりますのでそのうちに読書室を更新するかもです(^^)。



○1月FOMC議事要旨ネタのおまけというか:連銀スタッフと委員会の温度差が面白い

引き続き1月FOMC議事要旨ネタなのですが、重要なのかおまけなのかは判断が難しいですが、今回まあ面白いなあと思ったあたりを。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20150128.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20150128.pdf

・連銀スタッフの景気認識とか市場への認識部分が味わいがあるのだ

いつもだと割と流して読むことも多いのですが、改めて『Staff Review of the Economic Situation』とか『Staff Review of the Financial Situation』を読むと中々こう味わいが深かったりするのが今回出てきた1月議事要旨の面白いところです。

と申しますのは、経済物価情勢に関する認識について言えば、連銀スタッフのパートの方は普通に正常化前のめりっぽい強めの認識が示されていまして、更にはファイナンシャルスタビリティに関する部分では踏み込んだ認識を示したりしておりまして、一方でFOMC参加者の議論に関する部分では(金曜までにご紹介しましたように)まあ普通に読むと及び腰という感じになっている(ので米国債券市場は初期反応として「ハト派議事要旨キタコレ」で動いていた次第)という形になっております。

そういえば最初にご紹介した時にも冒頭の『Liftoff Tools and Possible Liftoff Options』の記述が妙にやる気満々な記述で、FOMCメンバーの議論部分と比べて温度差があるなあと思ったわけですが、あちらも良く良く考えたら連銀スタッフがここまで色々と試してきた話と今後新たに試したいプランなどの話でして、連銀スタッフマターだったりしますので、これはつまりトータルで見ると「出口政策やる気満々のFRBスタッフ」であり、その一方で「出口政策に及び腰なFOMCメンバー(というかイエレン議長が及び腰なんでしょうと想像される訳ですが)」という対比になっているというのがミニッツ全体を見た場合に感じられる(したがって全部を通して読むとなんか分裂気味の印象を受ける)のですな。

つーことで、まあギリシャを巡るエトセトラが米債金利上昇の背景だとは思うのですが、相場後講釈的に「FOMC議事要旨の内容を改めて評価する動きもあって金利上昇」というのは確かにこの1月議事要旨を全部通して(なお今回の議事要旨は年次決定事項がアホほどあるのでそこは読み飛ばしてオッケーでPDFで出すと21ページあるうちの最初の9ページ目の途中までな)見た場合に「連銀スタッフは正常化のやる気がずいぶんあるじゃん」という評価になるという意味合いだったらまあ分からんでも無いなあという所だったりするのですな、うんうん。

ということで『Staff Review of the Economic Situation』のどこがどう強いのかという話をしようかとも思うのですが、要はここのパートが全体的に強めの話が多い、という事になってしまうので、うっかりするとここ全部引用しないといけなくなって、それは量が多すぎにも程がありますから、上記の項目の各段落の頭の部分(ようは需要項目別の結論)を引用してみますよ。

最初のパラグラフだけ全部引用しておく。

『The information reviewed for the January 27-28 meeting indicated that economic activity expanded at a solid pace over the second half of 2014, and that labor market conditions had again improved in recent months. Consumer price inflation moved further below the FOMC's longer-run objective of 2 percent, held down by continuing large decreases in energy prices. While longer-term market-based measures of inflation compensation declined substantially in recent months, survey measures of longer-run inflation expectations remained stable. 』

まあだいたい声明文にも反映されていますな。以下が需要項目別。

『Total nonfarm payroll employment expanded in December and the gains for October and November were revised up, putting the increase for the fourth quarter above that for the third quarter.』

『Industrial production rose at a robust pace in the fourth quarter, with a strong increase in manufacturing output and a modest gain in mining output.』

『Real personal consumption expenditures (PCE) appeared to have risen at a robust pace over the second half of 2014.』

『The pace of housing market activity improved somewhat but remained slow.』

『Real private expenditures for business equipment and intellectual property appeared to decelerate in the fourth quarter.』

『Real federal government purchases appeared likely to have decreased sharply in the fourth quarter, reversing much of the surprisingly strong increase in the third quarter.』

『The U.S. international trade deficit narrowed substantially in November, with imports declining more than exports.』

『Total U.S. consumer prices, as measured by the PCE price index, increased 1-1/4 percent over the 12 months ending in November, while core prices, as measured by PCE prices excluding food and energy, rose about 1-1/2 percent; consumer energy prices declined, and consumer food prices increased faster than overall prices. 』

『Foreign real GDP growth appeared to increase slightly in the fourth quarter.』

ということで各パラグラフの頭を並べるという手抜きをしましたが、消費と政府支出の所が弱めで、住宅市場については水準そのものが弱いという話をしていますが、他の項目は基本的に強くなっているという話をしておりまして、まあ経済状況については基本的に強めの話。もちろん物価に関してはパッとしませんなあという話ですけど。


・金融環境に関する部分でキタコレなコーナーが

んでもって次が『Staff Review of the Financial Situation』ですが、金融市場に関する状況の説明の部分でキタコレ状態なのは最後のパラグラフになりますので途中をすっ飛ばして最後のパラグラフに参ります。

『The staff provided its latest report on potential risks to financial stability.』

financial stabilityに関する連銀スタッフのレポートって議事要旨を見ると2回に1回のペースでアップデートされていまして、FOMCメンバーの議論はその時々であったりなかったり(最近はあまりない)という感じなのですが、今回のアップデートされた説明がやたらキタコレ状態になっているように思える訳でして・・・・・・・・

『Relatively high levels of capital and liquidity in the banking sector, moderate levels of maturity transformation in the financial sector, and a relatively subdued pace of borrowing by the nonfinancial sector continued to be seen as important factors limiting the vulnerability of the financial system to adverse shocks.』

最初に金融機関の資本水準や流動性が厚い状況や期間ミスマッチリスクの取り方がモデレートな状態、弱いペースの非金融機関の借入行動などが、金融システムのショックに対する影響を限定的にしています、とあるのですがその先がキタコレなのです。

『However, the staff report noted valuation pressures in some asset markets.』

ここまで直球を投げてくるのは従来よりもかなりトーンが強い(後で過去2回分を引用します)。

『Such pressures were most notable in corporate debt markets, despite some easing in recent months. In addition, valuation pressures appear to be building in the CRE sector, as indicated by rising prices and the easing in lending standards on CRE loans. Finally, the increased role of bond and loan mutual funds, in conjunction with other factors, may have increased the risk that liquidity pressures could emerge in related markets if investor appetite for such assets wanes.』

つーことで、主に企業負債にかかわる市場についての価格形成にvaluation pressuresが生じているという話をしております。で、具体的には商業用不動産セクターに表れているという話で、それらの債券価格の上昇や貸出基準の緩和が見られる、と来まして、締めとしては「これらの市場における投資家の選好が弱まった時に、流動性リスクのプレッシャーが高まることによって、これらを対象にする債券や投資信託に対してリスクを高めている」という締めをしておりまして中々こう具体的にきましたという感じです。

『The effects on the largest banking firms of the sharp decline in oil prices and developments in foreign exchange markets appeared limited, although other institutions with more concentrated exposures could face strains if oil prices remain at current levels for a prolonged period.』

原油価格の急落や為替市場の動向に関しては大手銀行に対する影響は限定的だが、一部これらのエクスポージャーに集中している機関においては原油価格低下の長期化によって厳しい状況にあるという話をしておりますが、まあこちらはさほどでもないかなとは思いますけど、前段の方が色々と気になる指摘ですなという所。

ちなみに前回と前々回にどういう指摘をしていたのかを引用しておきます。

『The staff's periodic report on potential risks to financial stability noted that recent developments in financial markets highlighted the potential for shocks to trigger increases in market volatility and declines in asset prices that could undermine financial stability. Nevertheless, the U.S. financial system appeared resilient to shocks of the magnitude seen recently due to the relatively strong capital and liquidity profiles of large domestic banking firms, subdued aggregate leverage in the nonfinancial sector, and relatively restrained use of short-term wholesale funding across the financial sector. However, the staff report also pointed to asset valuation pressures that were broadening, as well as a loosening of underwriting standards in the speculative corporate debt and CRE markets; it noted the need to closely monitor these developments going forward.』(10月FOMC議事要旨より)

『The staff's periodic report on potential risks to financial stability concluded that relatively strong capital positions of U.S. banks, subdued use of maturity transformation and leverage within the broader financial sector, and relatively low levels of leverage for the aggregate nonfinancial sector were important factors supporting overall financial stability. However, the staff report also highlighted that low and declining risk premiums, low levels of market volatility, and a loosening of underwriting standards in a number of markets raised somewhat the risk of an eventual correction in asset valuations. 』(7月FOMC議事要旨より)

ということで、今回は従来から指摘していた問題について「価格圧力が発生しており、これらの商品に投資している債券や投資信託に対してリスクが拡大している」という認識を示している辺り、こちらの観点からも正常化着手についてやる気満々というのを把握したという所でありまする。


・で連銀スタッフの経済見通しですけどまあこれも基本的に強い

『Staff Economic Outlook』である。

『The staff estimated that real GDP growth in the second half of 2014 was faster than in the projection prepared for the December meeting, primarily reflecting stronger-than-expected consumer spending. Even so, real GDP was still estimated to have risen more slowly in the fourth quarter than in the third quarter, as changes in both net exports and federal government purchases appeared likely to have subtracted from real GDP growth in the fourth quarter following large positive contributions in the previous quarter.』

つーことで想定よりもやや強かったGDPということですが、そうは言いましても4Qは足踏みという状況になりそうですとな。

『The staff's outlook for economic activity over the first half of 2015 was revised up since December, in part reflecting an anticipated boost to consumer spending from declines in energy prices.』

2015年の経済活動の見通しは引き上げとな。

『However, the forecast for real GDP growth over the medium term was little revised, as the greater momentum implied by recent spending gains and the support to household spending from lower energy prices was about offset by the restraint implied by the recent appreciation of the dollar.』

とは言えドル高がその活動上げをオフセットするので実質GDP見通しについてはあまり変更していないそうな。

『The staff continued to forecast that real GDP would expand at a modestly faster pace in 2015 and 2016 than it did in 2014 and that it would rise more quickly than potential output, supported by increases in consumer and business confidence and a pickup in foreign economic growth, as well as by a U.S. monetary policy stance that was assumed to remain highly accommodative for some time.』

『In 2017, real GDP growth was projected to begin slowing toward, but to remain slightly above, the rate of growth of potential output. The expansion in economic activity over the medium term was anticipated to lead to a slow reduction in resource slack, and the unemployment rate was expected to decline gradually and to move slightly below the staff's estimate of its longer-run natural rate for a time.』

ということで2016年まで成長拡大で2017年はやや成長鈍化するものの潜在成長を上回る成長が続くと。

『The staff's forecast for inflation in the near term was revised down, as further sharp declines in crude oil prices since the December FOMC meeting pointed toward a somewhat larger transitory decrease in the total PCE price index early this year than was previously projected. In addition, the incoming data on consumer prices apart from those for energy showed a somewhat smaller rise than anticipated.』

経済に関しては威勢の良い話が続くものの物価に関しては原油価格の弱さが効いて見通しがリバイスダウンとなっておりますな。まあ順当。

『The staff's forecast for inflation in 2016 and 2017 was essentially unchanged, with inflation projected to remain below the Committee's 2 percent objective. Nevertheless, inflation was projected to reach 2 percent over time, with inflation expectations in the longer run assumed to be consistent with the Committee's objective and slack in labor and product markets anticipated to fade.』

とは言え2016年以降の見通しは基本的に同じで2%物価目標に向かって徐々に上昇していくという絵になっておりますの。

『The staff viewed the uncertainty around its projections for real GDP growth, the unemployment rate, and inflation as similar to the average over the past 20 years.』

不確実性についての認識が「過去20年の平均と同じようなもんですよ」となっているのよね。

『The risks to the forecast for real GDP growth were viewed as tilted a little to the downside, reflecting the staff's assessment that neither monetary policy nor fiscal policy was well positioned to help the economy withstand adverse shocks. At the same time, the staff viewed the risks around its outlook for the unemployment rate as roughly balanced.』

実質GDP見通しのリスクはややダウンサイド、失業率に関するリスクはバランス。

『The downside risks to the forecast for inflation were seen as having increased somewhat, partly reflecting the recent soft monthly readings on core inflation. 』

インフレのリスクは下方リスクが拡大という事で。

・・・・・・ということで今回は久々に連銀スタッフの経済認識やリスク認識、先行き見通しに関する説明をネタにしてみましたが、確かにこのあたりを見ますと全然ハト派じゃねえええええというお話でして、連銀スタッフとFOMCメンバーの温度差が如実に出ているという意味でかなり珍しい議事要旨だったのかもしれないなという所です。




2015/02/20

お題「3M入札が平均プラス利回りキタコレ/総裁会見ネタ/1月FOMC議事要旨(経済物価情勢の検討部分)から」

債券市場の乱高下は業者はマズーにしてもやっと金利がついてきたので投資家はウマーですが気温の乱高下は誰得にも程があるので止めていただきたいものです。

○市場雑談関連

・3M入札がやっとプラス金利ですよ!!!!

イイハナシダナー

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150219.htm
(3)募入最低価格 99円99銭8厘5毛(募入最高利回り)(0.0060%)
(4)募入最低価格における案分比率 37.5335%
(5)募入平均価格 99円99銭9厘1毛(募入平均利回り)(0.0036%)

ということで昨日の3M短国入札は11月の頭以来の平均プラス利回りという結果になりまして、まあ実に結構なお話でございます。でまあプラスになったから投資家の需要が飛ぶようにあるかと申しますと、プライマリー段階ではニーズが結構あったかとは思うのですが、その後プラス利回りだからセカンダリーでよーしパパ新発短国買っちゃうぞーとは逝かないようで、セカンダリーイマイチで、日本相互証券の引けもテールの0.6bpで終了の巻となっております。

市場推計の落札分布をみるといわゆる不明玉が3.5兆円ほどあるので、もうちょっと盛り上がっても良さそうなものなのですが、まあこれまでの長期的な短国利回りマイナス攻撃によって、投資家サイドとしては「価格を見ながら買うかどうか考える」などというような行動をとっている場合ではなくなり、とにかくプライマリー段階の所で必要な分について動いておかないとそもそもの必要額が確保できない、という飢餓状態でして、その習慣というのはまだ続いているとみらますので、そらまあみなさん今回の入札でもプライマリーでは行くかも知れんけどそのあと別におかわりは要らんわなという話になりますよねという話です。

まあこの調子でプラス金利が定着してくると徐々に「有担保コールよりも低い利回りの国債を買う必要があるのかよ」的な衣食足りて礼節を知る(違)状態になってくるのでしょうが、まだ飢餓状態の記憶が生々しい状態ですから今しばらくは「プライマリーでの買いが一巡すると投資家ニーズ終了」という展開になるんでしょうかね、よー知らんけどな。

なお、本日は例によって例のごとくの短国買入が実施される訳ですが、ここで19日付の売買参考統計値と20日付の売買参考統計値を見ますと中々味わいが深くて、3M新発の入札がプラス水準になってBBの引けは0.6bpですし、売参も0.6bpとまあそんなもんですかねという利回りとなって、まあ需給的には軟化していますよねという状況ではあるのですが、ふとここでほかのカレント利回りがどうなっていますかと見ますと、先々週に入札があった6Mカレントの511回債が-1.1bp→-1.6bp、今週入札があった1年カレントの513回債が-0.5bp→-0.8bpという推移となっている一方で、先週入札があった3Mカレントの512回債の売買参考統計値は+0.4bp→+0.5bpとなっている辺りに幽玄の詫び寂びというものを感じる今日この頃でございますな。


・しかし長いところは落ち着きませんなあ

一昨日の債券市場は後場途中から引けにかけて7年10年だけやたらやや叩かれて、イールドカーブは7-10だけ甘くなるという引け方をしたと思ったら昨日は昨日で盛大にブルフラットするという展開。

一応巨大イベントの超長期入札をクリアしたからというのはあると思いますが、それにしても戻るなら戻るでもうちょっとマイルドに戻って頂きませんといつまで経っても安定しないのですがそろそろ安定しませんかねえという所ではありますな、うんうん。



○総裁会見は想定問答のオンパレードでしたな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1502d.pdf

・原油安でCPIがマイナス転した場合はどうなるという質疑

そらまあ聞くのがお作法ではあるのですが、203高地に銃剣突撃しに逝くようなものでしてそれは普通に想定問答で返されますがな。ということで質問の引用はあほらしいのでパスして答えを引用。

『(答) 従来から申し上げている通り、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現することにコミットすると同時に、2%を「安定的」に実現することを目指しています。』

2年程度が3年になっていますけどね!!!!

『消費者物価指数は、当面、エネルギー価格の下落を反映して、前年比プラス幅を縮小していくとみられますが、2%の物価目標を「安定的」に実現するためには、物価の基調的な動きが重要だと思います。』

基調キターーーーー!!というか想定問答キタコレ。

『この点、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率に規定される物価の基調は改善傾向を辿るとみています。』

で、その基調というのが「需給ギャップ」と「中長期的な予想物価上昇率」であり、かつそのうちBEIが使い物にならないという認識は前回の会見で堂々示されていた訳ですから、つまりどちらも正確な数値がリアルタイムで分からない、即ち鉛筆の舐めようによってかなりのところまで恣意的に言い張ることが出来るものをベースに「基調ガー」となる訳ですから、こらもうどこからどう見ても「基調」を言い訳にのらりくらりと逃げる気満々というのがこの想定問答通りのご説明。

『原油価格の下落については、原油価格そのものというより、それが予想物価上昇率をはじめとする物価の基調にどのような影響を与えるかという点がやはり重要だと思います。』

予想物価上昇率と基調を持ち出しておりまして、完全にアクチュアルの物価動向の話を切り離しておりますのでどういう説明になりますかと申しますと・・・・・・・・・

『従って、仮に物価の基調的な動きに変化が生じ、「物価安定の目標」の早期実現のために必要になれば、躊躇なく調整を行う方針には変わりはありません。』

となりまして、実際の物価がマイナス転したからと言っても知らんがなという事になるというのが結論になります。


・したがって「追加緩和は今しません」となる

ということで、2か所で「今は追加緩和の必要なし」という説明がありますのが、そのうち先に出た方だけ鑑賞しておきましょう。

『(問)(前半割愛)もう1点は、効果についてです。先程も言及がありましたが、原油安のもとでは消費者物価は当面プラス幅が縮小していくと思います。その中で、今の原油相場の水準が続いたとすると、今年の後半からは、その影響は剥落していきますが、それまでの間に物価の基調が変化した場合、原油安の影響が続いている中では、追加の緩和をしても効果は限定的ではないか、という声も一部にはあります。この期間に追加緩和をして、実際に物価の基調を変えることができるのか、効果について総裁のご所見をお伺いしたいと思います。』

『(答)(前半割愛)2番目の点ですが、先程、昨年10月31日の決定について申し上げたように、原油安そのものというよりも、物価の基調がどのような影響を受けるかということが重要です。』

えーっとすいません10月31日の時は「原油安で物価が下がるとバックワードで形成されるインフレ期待の部分に悪影響がある恐れがあるから追加緩和」とは説明していましたが、基調の物価がどうのこうのという言い方にはなっていなかったはずですけど、という所で既にこういう辺りにイカサマ説明(なお「これはイカサマではないか」と質問した場合の答えは「基調というのにはインフレ期待が含まれますから10月31日の説明と変わりませんですが何か?」と回答できる、という中々憎たらしいロジックが組んであるのに直ぐ気が付いてしまう位には日銀文学および企画屁理屈の鑑賞は習熟しています)な訳ですが。

『ご指摘のように原油価格がいつまでも下がっていくことはなく、私どもの見通しの前提のように、緩やかに――ごく緩やかですが――、上昇していくもとでは、原油価格の下落が物価に与えるマイナスの影響もいずれ剥落していきますし、一方で、原油価格の下落による経済成長へのプラスの効果も出てきます。拡大された「量的・質的金融緩和」は累積的な効果を持ってくると思います。』

『今のところ、物価の基調に変化が生じているとは全く思っていませんので、直ちに追加的なことを考える必要はないですが、今後、仮に物価の基調に変化が生じるようなことがあれば、躊躇なく金融政策を調整するという意志に変わりはありませんし、そうした場合にも、それに応じた効果が十分あると思います。今の時点で、物価に関する基調は変化していませんので、何か追加的なことを今すぐ検討する必要はないと思っていますが、常に上下双方向のリスクを点検し、必要があれば躊躇なく調整するということに尽きると思います。』

ということで、追加の必要なしを連呼するのですが、必ずそれと同時に「しかし必要と判断した場合には躊躇なく調整(キリッ)」と入れて期待だけは残しておくという毎度の説明。


・もうちょっとこっちをゴリゴリ突っ込んでほしかった件

為替の質問と足元の物価の質問については答えが出来上がっているし、だいたいからして先月の時点で勝負付けがついているものですので、それよりも「そもそものメカニズムがワークしていると本当に言えるのか、そこまで言うなら確信度はどのくらいなのか」というのをもっとゴリゴリと突っ込んでほしかったのですが、その関連の質疑はこんな所に。

『(問) 「量的・質的金融緩和」の波及のメカニズムについて、お伺いします。総裁は、常々、実質金利を押し下げ、設備投資、個人消費を押し上げて、物価を上げていくという道筋を描いていると思うのですが、先程も所期の効果を発揮しているというお話がありました。一方で、設備投資は、事業計画でみるとかなり強い数字でしたが、先日発表があった10〜12月のGDPをみると、プラスになったとはいえ、かなり小幅です。実質金利も物価の伸びがかなり鈍化していく一方で、長期金利がこのところかなりボラタイルになっていて、やや不透明感が増しています。そういう意味では、実質金利がどんどん下がっていくという状況でもなくなってきていますが、その中で、「量的・質的金融緩和」の波及メカニズムは、今まで通り、想定通り作用しているといえるのかどうか、改めてお尋ねします。』

この質問の惜しいのは「実質金利」を攻めるのに市場金利の動向の方で逝っている事でして、市場金利がボラタイルになっている件はメカニズムのほうではなくてオペレーションの限界や技術的な弊害論の角度から攻めるべきであり、実質金利で攻めるのはQQE理論の王道である「インフレ期待」の方から攻めないと。

つまり「期待インフレは本当に上昇しているのか」とまずは質問するとそらまあ「上昇している」と答えられると思いますが、そうなると今度は「日銀の言うとおりに期待インフレが上昇しているのであれば、少なくとも大幅なマイナスの実質金利が少なく見積もっても1年は続いているという事になるはずだが、それだけのタイムラグを持っても設備投資や個人消費の押し上げは増税駆け込み程度のものしか起きていない訳で、それはそもそものQQEが想定するメカニズムが間違っていたということではないか」と2段構え(あるいは2名の共同)で質問すべきだと思うのよね。


でまあ総裁のお答えはこちら。

『(答) その点については、波及メカニズムは作用していると思っています。従来から申し上げているように、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために、大規模な資産買入れを行うことによって、金利のイールドカーブ全体を押し下げるとともに、物価上昇期待を引き上げていくということです。「量的・質的金融緩和」を導入した2013年4月の直前、3月の状況をみると、物価はかなり下がっていましたし、色々な指標でみても、物価上昇期待は非常に低かったわけですが、その後、物価上昇期待は上がってきていますし、物価自体も上昇してきました。昨夏あるいは秋以来の原油価格の大幅な下落は、足許で確かに物価上昇率を引き下げていますが、先程申し上げたように、物価上昇期待自身は比較的維持されていますので、やはり実質金利は、低い状況、おそらくマイナスの状況にあると思いますし、それが経済──投資、消費──にプラスの影響を与えていることは事実だと思います。』

そのプラスの影響があったのに今の状況では全然効きが悪いにも程があるんじゃないですか、と質問したいですね。

『なお、そういった形で直接的に金利を下げる、押し下げるということの他に、ポートフォリオ・リバランスという形で貸出やその他のリスク資産に投資していくという動きも実際に出ていますので、それも一定の影響を持っていると思います。』

もはや話が相当横道に逸れている。

『設備投資については、10〜12月のGDP1次速報値をみると、実態よりも若干弱めに出ているのかなと思っています。各種の指標をみる限り、設備投資は緩やかに回復してきていると思われますし、先行きさらに堅調になっていくと思っています。そういった意味で「量的・質的金融緩和」は、昨年10月31日の拡大を含めて、所期の効果を発揮していると思っています。』

設備投資の出る出る詐欺は聞き飽きたんですけどねえ・・・・・・・・・・


・ブルームバーグの記事に対して黒田総裁が粉砕したとのおめでたい誤解があるようですが・・・・・・・・

もうちょっと早めの所に例のブルームバーグの記事に関する質疑があるよ。

『(問) 2点お伺いします。先般、通信社の報道で、現時点で一段の追加緩和を行うことは逆効果であるという声が日銀の中から出ている、というものがありました。それをきっかけに為替相場も大きく動いたということがあります。現時点で、総裁はどの程度逆効果とお考えかお伺いします。(後半割愛、強調部分は引用者による)』

でまあこれ質疑のかなり早い方で来まして、さっそくキターと中継放送聞いている方は盛り上がったのですが、出てきた回答を聞いてナンジャソラと盛大にずっこけていたのですが、どうも選択制難聴の症状をお持ちの方が多数おいでのようでブルームバーグ記事粉砕と盛り上がっている向きもあるようなのが微笑ましい限りです。

『(答) まず前段の点について、昨年10月31日の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」の拡大が決定されましたが、私はそれで逆効果があったとは全く思っていません。』(強調部分は引用者による)

前段の点、というのが上記の質問ですが、上記の質問でもそうですし、ブルームバーグニュースの記事でもそうですが、問題になっていたのは「これ以上の追加緩和は逆効果ではないか」という話なのであって、前回の追加金融緩和が逆効果であったかというのは質問のすり替えにも程があるイカサマですが、想定問答がこれだとしたら大狸にも程があるわ問答作成担当。

でまあ以下説明は続くのですが・・・・・・・・

『実際、あの決定の時には、消費を中心に需要がかなり弱めの状況が続いており、消費者物価の上昇率も次第に下がってきていました。そこへ原油の大幅な下落が起こり、消費者物価の上昇率がさらに下がっていくと見込まれる状況にありましたが、そうしたことが物価上昇期待、さらにはそれを踏まえた賃金決定、その他様々な物価の基調に影響を与え、デフレマインドの払拭に向けて進んできたモメンタムが逆流し、弱まってしまうということを止めるために、日本銀行として強い意志を示したわけです。その後の状況をみますと、幸い、原油価格の下落により消費者物価の上昇率が徐々に縮小してきているもとでも、物価上昇期待は比較的保たれており、そういう意味でも効果があったと思っていますし、今後とも、拡大された「量的・質的金融緩和」の政策を続けることによって、累積的に経済・物価に対してプラスの効果を持っていくと思っています。』

この辺はどうでもよいというか聞き飽きた説明です。

『為替相場については、特に私からコメントすることはありません。』

まあここにきて先ほどのブルームバーグ記事に関する質問の答えの一部は示されている格好(ブルームバーグの記事は追加緩和の弊害としてこれ以上の円安が日本経済にマイナスだから、というロジックになっていたわけですから)にはなっておりまして・・・・・・・・・・

『前から申し上げていますように、為替相場の変動の影響は、産業、企業その他色々な状況によって異なり、プラスの影響が出てくる部分とマイナスの影響が出てくる部分とがありますが、為替相場が経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移している限り、経済にマイナスになることはないと思います。(後半割愛)』

ということで、円安が望ましいというような言い方もしない(円高が望ましいとは口が裂けても言わないのは自明としまして)のが中々チャーミングでして、つまりは物価を早期に押し上げるために少々無理筋でも円安に振ってしまえばこっちのもの的な話しっぷりがすっかり無くなっていますなという所ではありますが、一方でご案内のように師匠の金懇講演でもそうですし、最近の政府方面からの情報発信からも「早期に物価を押し上げろ」的なものがなくなっている訳ですから、まあそういう意味での押し上げ介入的な流れは無いですよね、という話になるので、つまりはブルームバーグ記事については特段の回答をしていない、というのが今回の会見内容だと思うのですが、何かこう鬼の首を取ったかのようにブルームバーグ撃墜みたいな盛り上がり方をしているのはこらまたおめでたいにも程がありますなという所ではございます。


・今回の会見で誰か質問して欲しかったテーマが実はもう一つありましたな

今回の会見は要旨見てもそうですし、中継画像見てもそうでしたがまあ盛り上がりに欠ける会見で、そらまあ基本的に想定問答にずっぽり嵌るような質問ネタしかないという所があったから仕方がないというのもあるのですけど・・・・・・・・・・・・・

こういう質問があったらどういう答えをしてくれたのでしょうか???

「(仮の質問)日本銀行による国債買入についてお伺いいたします。最近「日本銀行が国債を購入すると政府の債務負担がその分軽減される」という根拠をもって、日本銀行による国債の購入余地は十分にあるとの説明をする向きがありますが、この「日本銀行が国債を購入すると政府の債務負担が軽減される」という理論は日本銀行として受け入れられるロジックなのでしょうか?日本銀行あるいは黒田総裁としての見解のいずれでも結構ですがご教授頂きたくご質問いたします。」

ということで、まあとあるどこかのジンバブエさんの名前を出すと現時点でのお答えは控えさせて頂きますで逃げられるので、「こういうロジックは正しいでしょうか」と聞くわけですが、もしかして最終兵器として「そのような説明があるとは承知しておりませんし、当行はそのような説明をしている訳ではございませんので、特定の学説の当否について申し上げることは差し控えさせていただきます」という技を使ってきそうな予感もしますね!!!!!


#総裁会見ネタはこんなもんで


○FOMC議事要旨ネタの続き:経済物価情勢に関するFOMC参加者の議論部分を鑑賞

昨日の続きです。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20150128.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20150128.pdf

昨日間に合わなかった『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』をば。


・海外情勢に関する議論部分

2月FOMCで急に「海外情勢にも注意」という話が入ってきましたが、そこと比較する意味もあるので1月議事要旨ではどうなっていたかを確認するのだ。

『In their discussion of the foreign economic outlook, participants noted that a number of developments over the intermeeting period had likely reduced the risks to U.S. growth.』

ということで、1月会合時点では「海外のいろいろな情勢進展が米国の成長に対してのリスクを軽減しているのではないか」という認識を示しています。

『Accommodative policy actions announced by a number of foreign central banks had likely strengthened the outlook abroad. The decline in energy prices was also seen as potentially exerting a stronger-than-anticipated positive effect on growth in the domestic economy and abroad.』

海外中銀の緩和的な金融政策が海外経済の見通しを高め、原油価格下落のポジティブな影響も当初想定よりもプラスが大きいと来ました。

『However, the increase in the foreign exchange value of the dollar was expected to be a persistent source of restraint on U.S. net exports, and a few participants pointed to the risk that the dollar could appreciate further.』

ドル高キタコレで、一方でドル高が米国のネット輸出に悪影響を与え、数名の参加者はドル高のリスクは更に高まっているという認識を示しております。

『In addition, the slowdown of growth in China was noted as a factor restraining economic expansion in a number of countries, and several continuing risks to the international economic outlook were cited, including global disinflationary pressure, tensions in the Middle East and Ukraine, and financial uncertainty in Greece. Overall, the risks to the outlook for U.S. economic activity and the labor market were seen as nearly balanced.』

でまあその他は中国経済の減速リスクとか、グローバルなディスインフレ圧力や中東とかウクライナ情勢とかギリシャ情勢に関して言及されていますが、全体としてはリスクはバランスということで締めていまして、ここの認識がこれからどう変化していっているのかを確認する為に起点としておいておきますねという所です。


・物価について

『Participants noted that inflation had moved further below the Committee's longer-run objective, largely reflecting declines in energy prices and other transitory factors.』

ほうほうそれでそれで?

『A number of participants observed that, with anchored inflation expectations, the fall in energy prices should not leave an enduring imprint on aggregate inflation. It was pointed out that the recent intensification of downward pressure on inflation reflected price movements that were concentrated in a narrow range of items in households' consumption basket, a pattern borne out by trimmed mean measures of inflation. Several participants remarked that inflation measures that excluded energy items had also moved down in recent months, but these declines partly reflected transitory factors, including downward pressure on import prices and the pass-through of lower energy costs to the prices of non- energy items.』

この辺までは物価の上昇鈍化は一時的要因だし、そもそも物価が弱いのはエネルギー関連とかその他輸入価格関連とかの狭い範囲のものだしヘーキヘーキという話。

『Nonetheless, several participants saw the continuing weakness of core inflation measures as a concern. In addition, a few participants suggested that the weakness of nominal wage growth indicated that core and headline inflation could take longer to return to 2 percent than the Committee anticipated.』

複数(several)の参加者はコアインフレが弱いのは懸念としており、数名(a few)の参加者は更に名目賃金の弱さについて言及して2%への戻りが想定より弱いリスクを指摘と弱めの話。

『In contrast, a couple of participants suggested that nominal wage growth provides little information about the future behavior of price inflation.』

これ暫く前にも指摘されていますが、2名の参加者はそもそも賃金の伸びと物価の上昇に関する明確な相関がみられない(ので賃金を物価の文脈で重視しすぎるのは間違い)という話をしていますな。

『Participants also discussed the possibility that, because of the infrequent occurrence of reductions in nominal wages, wages may not have fully adjusted downward in the period of high unemployment, and therefore pent-up wage deflation might have weighed on wage gains for a time during the expansion. If this was the case, nominal wage growth could be expected to pick up in coming periods and to resume a more normal relationship with labor market slack.』

賃金水準のペントアップという理屈で、現在は下方硬直性のある名目賃金について上昇を抑えることによって水準をペントアップしている段階なので、物価よりも労働市場のスラックという文脈で考えるべきという指摘な。

『Most participants expected that continuing reductions in resource slack would be helpful in returning inflation over the medium term to the Committee's 2 percent longer-run objective, but a few participants voiced concern that nominal wage growth might rise rapidly and inflation might exceed 2 percent for a time.』

ということで、物価に関しては上振れを指摘する向きは無くて、下向きのリスク認識が強い人がいる(a few participants voiced concern)という記述になっている点、まあハト的な部分がありますよという所ですね。


・BEIの推移についてああでもないこうでもないと

その次がBEIに関する話なのが味わい深い。

『Participants discussed the sizable decline in market-based measures of inflation compensation that had been observed over the past year and continued over the intermeeting period.』

ちなみに市場のインフレ期待に関しては「inflation compensation」という表現をするようになっていますな。

『A number of them judged that the decline mostly reflected a reduction in the risk premiums embedded in nominal interest rates rather than a decline in inflation expectations; this interpretation was supported by results of some analytical models used to decompose movements in market-based measures of inflation compensation and also by the continuing stability of survey-based measures of inflation expectations.』

例の「リスクプレミアムが下がっているのでBEIが縮小しているように見える」ネタですな。

『However, other participants put some weight on the possibility that the decline in inflation compensation reflected a reduction in expected inflation.』

一方で「実際はインフレ期待も下がっているんじゃねーの」という指摘もありまして・・・・・・・・

『These participants further argued that the stability of survey-based measures of inflation expectations should not be taken as providing much reassurance; in particular, it was noted that in Japan in the late 1990s and early 2000s, survey-based measures of longer-term inflation expectations had not recorded major declines even as a disinflationary process had become entrenched.』

いきなり日本が出てワロタのですが、日本の1990年代から2000年代にかけてもサーベイベースのインフレ期待は安定していたのにあのざまですから、サーベイベースのインフレ期待が安定しているから問題ないとは言えないのではないかというごもっともな指摘。

『In addition, a few participants argued that even if the shift down in inflation compensation reflected lower inflation risk premiums rather than reductions in expected inflation, policymakers might still want to take that decline into account because it could reflect increased concern on the part of investors about adverse outcomes in which low inflation was accompanied by weak economic activity.』

そうであれば適切な対処をしないといけないのではないか、ということで、まあこのあたりもハトっぽい感じですよね。

『Participants generally agreed that the behavior of market-based measures of inflation compensation needed to be monitored closely.』

というのがありきたりですが結論。


・労働市場に関して:自然失業率の低下を指摘する向きが

『Participants saw broad-based improvement in labor market conditions over the intermeeting period, including strong gains in payroll employment and a further reduction in the unemployment rate.』

労働市場に関しては威勢の宜しいお話が最初にあるのですが・・・・・・・・・

『Some participants believed that considerable labor market slack remained, especially when indicators other than the unemployment rate were taken into account, including the unusually large fraction of the labor force working part time for economic reasons.』

さっそく威勢の悪い話になる次第でして、いやいや労働市場のスラックはまだ大きいでしょうと来まして・・・・・

『A few observed that the combination of recent labor market improvements and continued softness in inflation had led them to lower their estimates of the longer-run normal rate of unemployment.』

これはキタコレネタで、従来の自然失業率の推計だったらそろそろ物価が上がっても良いはずなのにそうなっていないという事は、完全雇用となる自然失業率が低下しているという意味ではないかとの数名(A few)の指摘がキタコレなのであります。

『However, a few others saw only a limited degree of remaining labor underutilization or anticipated that underutilization would be eliminated relatively soon.』

一方で他の数名は労働市場のスラックは小さく、まもなくほぼ完全雇用に近い水準に達する、と指摘しています。

でまあこの部分の話は終わる(利上げの話とかコミュニケーションの話は昨日引用した『Participants' Discussion of Policy Planning』小見出し部分として独立したので)のですが、全体的にこちらのトーンはやはりハト派的になっておりますなという感じで、昨日ネタにしました冒頭部分の出口政策の具体的なオペレーション手段に関する説明と検討部分のやる気満々振りとの落差が大きい記述だなあとゆー所ではあります。



○積み残し分俺様用メモ

ECB議事要旨が出ましたよ!!!
http://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2015/html/mg150219.en.html
Account of the monetary policy meeting
of the Governing Council of the European Central Bank
held in Frankfurt am Main on Wednesday and Thursday, 21-22 January 2015

ただし初回なのでインスタントではなく真面目に読みたいので本日はパス(他のネタも多いし)

あと、金融経済月報とかFOMC議事要旨の出口政策部分の話とか、BOEの議事要旨とか、その手の物もあったりするのだ(超大汗)。





2015/02/19

お題「金融政策決定会合レビュー/だが寝起きのFOMC議事要旨ネタの方が多くなっている気がするのだが^^」

総裁会見で質問があったので知ったニュースがこれ。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00286636.html
日銀総裁、安倍首相に直談判 財政健全化に本腰入れるよう訴え
02/18 18:11

『黒田総裁は、日本国債の格付けの引き下げで、国債を大量に保有する日本の銀行の経営に対する影響を懸念し、状況は極めてリスキーと指摘した。』

『これを受け、安倍首相は、格付け会社に働きかけるのが重要との考えを示した。しかし、黒田総裁は、以前、格付け会社のトップと話した結果として、格付けを変えることはできなかったと答えた。』(以上上記URL先より)

>格付け会社に働きかけるのが重要との考えを示した
>格付け会社に働きかけるのが重要との考えを示した
>格付け会社に働きかけるのが重要との考えを示した

つまり財政再建努力についての丁寧な説明をより一層行うということですよね(白目)!!!!!

・・・・・・しかしその一方で「日銀が国債を買うと国の債務が消滅する」という珍理論を提唱する人をいやまあどうでもよいです。


○決定会合声明文:今回は前回比較よりも文章構成的に景気判断が強くなっていますな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150218a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150121a.pdf(前回)

・景気判断全体の構成がシンプルになっています

前回との比較をした時に一番目立つのは「今回は文章がすっきりしている」という事であります。つまり各部分の前回比較を見ると強くなっている部分というのはありますけれども、全体の文章がすっきりしているというのはつまりヘッジクローズ部分が減っているという事であり、それは即ち「判断に自信度が上がっていることを示す」という状況であるという事を意味します。

でまあ今の景気判断というのは足元の物価はともかくとして基調は前向きの循環メカニズムが回っていますという話ですので、その状況下で文章がシンプルになるというのは前向き循環メカニズムについて自信を深めている、というのを意味するのですけれどもホンマカイナという感はだいぶ致しますな。

なお、物価目標の2年での達成についてすっかりスルーとなってしまったので、せめて景気判断だけでも強くしないと格好がつきませんし、まあここは一発鉛筆を舐めますか、などというようなことは無いと存じますが・・・・・・・・・・


・ということで現状判断

『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、基調的に緩やかな回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も全体として和らいでいる。』(前回)

まあこの時点で思いっきりシンプルになった罠という所ですが、「基調的に」が抜けて駆け込み需要云々のところをすっぱりと外したものの、その「基調」が回復の所に入っている所が微妙にチャーミングという所です。以下需要項目別のお話。


『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直しの動きがみられている。』(前回)

海外経済は同じ、輸出はこれまた文言をすっきりさせて判断を引き上げています。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

設備投資の緩やかな増加基調は分かったがいつ本格的に出てくるんでしょうかという所ですな。でもって設備投資と公共投資は文言同じです。

『個人消費は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体としては底堅く推移している。』(今回)
『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。』(前回)

個人消費に関しては「一部で改善の動きに鈍さが〜」というのが入りましたが、「基調的には底堅く推移」というのが「全体としては底堅く推移」という表現に変更しておりまして、これ引き上げなのか引き下げなのか訳分からんという感じですが、まあ前段の改善の動きに鈍さ云々というのがあるので微妙に下方修正をしたという事でしょうかねえ。

『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)
『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は下げ止まっている。』(前回)

住宅投資は文言一致ですが、生産は下げ止まりから持ち直しということで、生産に関しては上方修正という形になっておりまして、今回は輸出と生産という結構大きな項目を上方修正しておりますな。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

物価の数値に関しては0%台後半から半ばに下がっておりますが、他の所の話は同じですな。


・先行き見通しも表現がスッキリ

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も収束していくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小するとみられる。』(前回)

駆け込み需要云々の文言が現状判断から抜けているので先行き見通しからも抜けまして、これまた表現がすっきりした形になっておりまして、物価見通しに関しては現状判断を下げておりますが先行きの見通しが下がっておりまして平然と先行きの一段の低下を容認する形になっていますな。


・リスク要因と毎度の決意表明っぽい部分は文言一致

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

文言一致ですな。

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注3)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注3)。』(前回)

ということでリスク要因と毎度の所期の効果を発揮して云々というのは文言一致となっておりまして、ついでに言いますといつもの木内さんの提案も同じ文言となっております。

つー訳で、今回の声明文は文章がスッキリとした上に生産と輸出を上方修正するという攻撃にでておりますので、何でまたこのタイミングでこんなに上方修正をしてくるの(しかも直近出たGDPがあじゃぱーだったというのに)という所ではありますが、まあ1月決定会合の動きが明らかに「2年」を形骸化する(ただし2%については変わりませんですよ)流れになってくる中で景気判断の部分を威勢よくしておきましょうという感じになっているのではという先ほどの邪推はあくまでも邪推ですけどなんかそういうサムシングを感じるというのは意地が悪いですかそうですか。

なお、今回は会見も40分ほどで終了しまして、まあ2年の話にしても目先の物価が下がる件についても前回の決定会合での会見でのロジック立て直しに加え、政府方面からも基調さえ確りしていれば目標達成の期間にあまり拘る感じではないというような情報発信が続きましたので、そういう意味では勝負付けが終わっている話になっておりまして、そういう辺りからも会見の質疑は前回会見よりもスムーズではございましたがその辺に関しては会見要旨が出てからまた明日という事で。


○FOMC議事要旨を例によって寝起きで

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20150128.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20150128.pdf

寝起きでざーっとインスタント読書したわけですがいくつか。

・正常化におけるテストについては更にやる気満々

最初(と言っても1月FOMCは年次で決定することがたくさんあるので議論の冒頭に入るまでが無茶苦茶長いのだが)の辺りにございます『Liftoff Tools and Possible Liftoff Options』の部分が今回は益々長くなっているのがチャーミングです。

でまあそこをゴリゴリと読んでネタにするのもかなり楽しそうなのですが何分にも寝起きなものでちょっとだけネタを。

『In their discussion of these issues, participants generally agreed that it was very important for the commencement of policy firming to proceed successfully. Consequently, most were prepared to take the steps necessary to ensure that the federal funds rate traded within the target range established by the Federal Open Market Committee (FOMC).』

利上げ着手時に市場金利をFOMCで決定したレンジ内に収めるようにすべきである、という認識をFOMC参加者が持っているというのにほほーと思ったわけで、もっと昔だとFF金利がターゲットから一時的にぶれるのは無問題という感じでFF市場金利動向放置プレイなオペレーションだったようなイメージがある(当時そこまで米国短期市場の事に関心なかったからそこまで詳しくないので記憶違いかもしれませんが、少なくとも実際のFF金利が飛んでもそんなに騒ぎにならなかった気がするのですけど)のでこの点はほほーという感じ。

まあ「正常化着手しました」という事になったのに実効FF金利が全然レンジ内に居ない(でまあ基本はそこから下に逸脱の可能性が高いのですよね)という状況だとそもそも正常化が進むのかという疑問が出てくる可能性があって、それがインフレ期待に悪影響を与える可能性があるって認識を持っているのでしょうなあとは思いますが、短期金融市場金利のコントロールに結構こだわっているのねとゆーのがちょっと新鮮です。

『However, a few participants noted that day-to-day volatility in the federal funds rate, potentially including temporary movements outside the target range, would not be surprising, and that historical experience suggested that such temporary movements had few, if any, implications for overall financial conditions or the aggregate economy.』

まあ昔と同じくその辺はアバウトでよかろう的な反論も来ているのですが「a few」なのねという所で。

で、こちらのコーナーでは色々と利上げ時点でのツールについての検討があって、そこもかなり面白かったのですが、本文の方の鑑賞が間に合わなくなるのでパスしまして、鑑賞していてへーと思ったのはこの部分。

『The staff presentation also discussed a technical issue related to the calculation of the payment of interest on reserves.』

ほうほう。

『Under current arrangements, an increase in the IOER rate that is implemented in the middle of a reserve maintenance period is not fully reflected in interest payments to depository institutions until the beginning of a new maintenance period.』

これはwww

『Participants generally suggested that it would be useful for the staff to investigate changes in the method used to determine the interest payments on reserves that could tighten the link between the IOER rate in place each day and the level of reserve balances held by depository institutions each day.』

どうもIOERの金利計算においては「準備預金積み期間における最初の時点のIOER金利を適用」というメソッドになっているらしくて、それだと準備預金積み期間の途中で政策金利の引き上げをした場合に実効IOERがリンクして上昇しない(IOER自体が上がったとしても)という制度上の欠陥があるそうで、まあそれは直すことになるそうです。

更にワロタのがタカ派芸人ラッカー総裁の出口ツールの今後のテストに関する反対票(!)。

『Mr. Lacker dissented in the votes on both resolutions because he felt that the testing to date had already provided sufficient information about this tool, and that authorizing further testing could encourage the incorrect impression that the Committee had already decided that it would be engaging in term RRP operations during the period of policy normalization. 』

出口ツールのテストはさんざん実施して情報も十分に得られた訳で、これ以上テストをすると正常化過程におけるタームRRPの活用がダンディールになったと思われるのがよろしくないみたいな話をしておりまして、この部分もう少し説明を聞けるものなら聞きたいと思いますけれども、いずれにせよここの部分はテクニカルな話を延々と議論しているのが興味深い訳です。


・今回は堂々『Participants' Discussion of Policy Planning』という小見出し項目が!!!

いつもの『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』と『Committee Policy Action』の間に上記の小見出し項目があるとな!ということでそこを鑑賞するだよ。

『Participants discussed considerations related to the choice of the appropriate timing of the initial firming in monetary policy and pace of subsequent rate increases.』

いきなり直球。

『Ahead of this discussion, the staff gave a presentation that outlined some of the key issues likely to be involved, including the extent to which similar economic outcomes could be generated by different combinations of the date of the initial firming of policy and the pace of rate increases thereafter, how these combinations could affect the risks to economic outcomes, a review of past episodes in the United States and abroad in which monetary policy transitioned to a tightening phase after a lengthy period of low policy rates, and issues related to communications regarding the likely timing and pace of normalization.』

ディスカッションの前に正常化のペースや金利水準などがどういう影響をあたえるのかという点についての過去の実績なども踏まえたシミュレーションみたいなのを連銀スタッフが出したそうな。

『Participants discussed the tradeoffs between the risks that would be associated with departing from the effective lower bound later and those that would be associated with departing earlier.』

ほうほうそれでそれで?

『Several participants noted that a late departure could result in the stance of monetary policy becoming excessively accommodative, leading to undesirably high inflation. It was also suggested that maintaining the federal funds rate at its effective lower bound for an extended period or raising it rapidly, if that proved necessary, could adversely affect financial stability. Some participants were concerned that a decision to delay the commencement of tightening could be perceived as indicating that an overly accommodative policy is likely to prevail during the firming phase.』

利上げ着手が遅れるとインフレが高進したりファイナンシャルスタビリティに悪影響を与えたりするという問題点についてノートしたと、先にこっちが来てますな。

『In connection with the risks associated with an early start to policy normalization, many participants observed that a premature increase in rates might damp the apparent solid recovery in real activity and labor market conditions, undermining progress toward the Committee's objectives of maximum employment and 2 percent inflation. In addition, an earlier tightening would increase the likelihood that the Committee might be forced by adverse economic outcomes to return the federal funds rate to its effective lower bound.』

でその次に早すぎる利上げ着手のリスクについての話をしているのですが、ここでお洒落なのはさっきの所では「Several participants noted」となっていたのに対してこちらは「many participants observed」となっていまして、ここを比較してみると「(多分後者の方が人数が多いという意味の筈ですから^^)早すぎる利上げ着手のリスクについてより強い警戒をしている人が多いです」というメッセージになっている事ですな(^^;

『Some participants noted the communications challenges associated with the prospect of commencing policy tightening at a time when inflation could be running well below 2 percent, and a few expressed concern that in some circumstances the public could come to question the credibility of the Committee's 2 percent goal. Indeed, one participant recommended that, in light of the outlook for inflation, the Committee consider ways to use its tools to provide more, not less, accommodation.』

んでもってこちらは「2%よりも低い物価水準における利上げ着手の際にはより丁寧な説明(見通しベースでの物価上昇に関する説明ですな)が必要である」というお話ですね。

『Many participants indicated that their assessment of the balance of risks associated with the timing of the beginning of policy normalization had inclined them toward keeping the federal funds rate at its effective lower bound for a longer time.』

では利上げが早いのと遅いのとのリスクバランスはどうなのよというのを示しましたが・・・・・・・

『Some observed that, even with these risks taken into consideration, the federal funds rate may have already been kept at its lower bound for a sufficient length of time, and that it might be appropriate to begin policy firming in the near term.』

ここでは数名が「リスクを考慮しても近いうちに利上げ着手すべきであるすでに相当な長期間の緩和政策実施してるじゃん」というお話をしていてここはタカ風味。

『Regardless of the particular strategy undertaken, it was noted that, provided that the data-dependent nature of the path for the federal funds rate after its initial increase could be communicated to financial markets and the general public in an effective manner, the precise date at which firming commenced would have a less important bearing on economic outcomes.』

で、それに反対する見解が出ないで次の話になっているのがちょっとお洒落なのですが、こちらでは「利上げタイミングの特定の日が重要なのではなく、データディペンデントで利上げを進めていくというようようなコミュニケーションを確りやっていくのが重要」という話になっておりまして、利上げの着手時期よりもその後のペースが重要という話になっております。

ということで、こういうのが出てきますと、さすがにアタクシも「こりゃメジャードペースの利上げは無いわ」と思ってしまう(実際はメジャードペースの方がマーケットフレンドリーなので、予想的にはメジャードペースをみていたのですけど・・・・・)のでして、メジャードペースで上げるのであれば相当の確信度が必要なので利上げ着手が後ずれするかと思ったわけですが、そうじゃないのであれば普通に6月に着手しても不思議ではないというかそっちの方がアリエールという感じには見えますけどね。

『Participants discussed the economic conditions that they anticipate will prevail at the time they expect it will be appropriate to begin normalizing policy.』

で、利上げ着手に必要な経済条件はどうよと。

『There was wide agreement that it would be difficult to specify in advance an exhaustive list of economic indicators and the values that these indicators would need to take.』

そらそうや。

『Nonetheless, a number of participants suggested that they would need to see further improvement in labor market conditions and data pointing to continued growth in real activity at a pace sufficient to support additional labor market gains before beginning policy normalization.』

報道だとここがハト派的という話になっているのだが、別にまあこれは普通の話だろと思う訳で、それよりもアタクシ思うに(今日は時間の関係でそこまで紹介できないのだが)『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の後半の記述が割と慎重な表現になっているのと、これ以降の表現の合わせ技がハト派的に感じた次第で、どちらかというとここのコーナーの流れは普通に前のめり感は無いけど淡々と話をしている感じですけどね。

『Many participants indicated that such economic conditions would help bolster their confidence in the likelihood of inflation moving toward the Committee's 2 percent objective after the transitory effects of lower energy prices and other factors dissipate.』

多くは一時的な物価下落要因が剥落した後の動向を見極めたいとな。

『Some participants noted that their confidence in inflation returning to 2 percent would also be bolstered by stable or rising levels of core PCE inflation, or of alternative series, such as trimmed mean or median measures of inflation.』

コアとか刈り込み平均の推移も見ていきたいと。

『A number of participants emphasized that they would need to see either an increase in market-based measures of inflation compensation or evidence that continued low readings on these measures did not constitute grounds for concern. Several participants indicated that signs of improvements in labor compensation would be an important signal, while a few others deemphasized the value of labor compensation data for judging incipient inflation pressures in light of the loose short-run empirical connection between wage and price inflation.』

でこちらは市場のBEI動向とか賃金動向とかその辺の話なのですが、ここの部分に関してもこの前の委員会における経済状況の検討部分での議論と合わせて読むと確かにまあ慎重姿勢に読めるかなという所(なので冒頭のテクニカルな部分でのやる気満々振りとはちと温度差)なのですが、肝心のその部分が今朝はどう見ても間に合わない(結構真面目に読んでいたら時間が足りなくなったという間の抜けたお話なのですすいませんすいません)のがあばばばばーな所ですが、まあお暇な方はそっちも読んでちょという所で。

『Participants discussed the communications challenges associated with signaling, when it becomes appropriate to do so, that policy normalization is likely to begin relatively soon while remaining clear that the Committee's actions would depend on incoming data.』

コミュニケーションに関してということで事前の予告をどうするかという話だが、そもそも論としてpatientが次の2回のFOMCでの利上げを行わないという意味だ(キリッ)とかして、わざわざpatient文言を少々の時間をもって事前変更しないといけなくしたのが間抜けだと思うのですけどねえ。

『Many participants regarded dropping the "patient" language in the statement, whenever that might occur, as risking a shift in market expectations for the beginning of policy firming toward an unduly narrow range of dates.』

そうは言ってもそれは身から出た錆だと思う。

『As a result, some expressed the concern that financial markets might overreact, resulting in undesirably tight financial conditions. Participants discussed some possible communications by which they might further underscore the data dependency of their decision regarding when to tighten the stance of monetary policy.』

patientの定義をナローにしておいて今更間抜けな・・・・・・・・・・

『A number of participants noted that while forward guidance had been a very useful tool under the extraordinary conditions of recent years, as the start of normalization approaches, there would be limits to the specificity that the Committee could provide about its timing.』

ということで、今更気が付いたようで何よりですが、正常化の際に事前予告型のガイダンスを弄り回すのはdata-dependentでやるのであれば自分の手足を縛るだけ(前回の正常化はメジャードペースでやったから事前予告型でも問題がなかったわけで)という指摘ですな。

『Looking ahead, some participants highlighted the potential benefits of streamlining the Committee's postmeeting statement once normalization has begun. More broadly, it was suggested that the Committee should communicate clearly that policy decisions will be data dependent, and that unanticipated economic developments could therefore warrant a path of the federal funds rate different from that currently expected by investors or policymakers.』

つーことで、どうも先ほど申し上げましたように、正常化局面においてはメジャードペースではやってこないという話になると、まあ普通に債券市場にはストレスがかかってボラが上がりやすくなる(どういうペースでの利上げかが経済物価情勢によってぶれる=市場の期待がぶれるという事だから)と思います。

#ということでその前の『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』が時間切れで明日(できれば)になります







2015/02/18

お題「20年入札がウヒョーなど/決定会合はまあ無風でしょ/ローゼングレン総裁はハト風味&QE評価がだいぶアレ」

ついこの前まで「日米の中銀バランスシートガー」という話ばっかりだった為替のコメントの人たちが「金利ガー」という話しかしないようになっている辺りが誠にアレでございますが、そもそもECBが量的緩和政策のフレームに変えた筈なのだがマイナス預金ファシリティを維持するという意味不明プレイをしているのが混乱の元で毎度ECBはお騒がせですわと。

#日銀MPMとFOMC議事要旨が同時に打ち込まれるとか誠に遺憾

○20年入札がウヒョーとか

・20年国債入札ェ・・・・・・・・・・

昨日の20年国債入札はまたまた他市場注目らしかったのですが、そういえばそんな触れ込みの入札がこの前30年国債入札とかいうイベントでありましたなあとか思っておりましたら、30年国債入札とは違いまして朝からじりじりフラットニングとなりまして、前場引けにかけては20年カレント中心に一段強くなって1.280/1.285(-2.5/-2.0)の気配で終了。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2014/resul082.htm

(3)募入最低価格 98円80銭 (募入最高利回り)(1.275%)
(4)募入最低価格における案分比率 74.6538%
(5)募入平均価格 98円82銭 (募入平均利回り)(1.274%)

ということで落札結果は前場引けのオファーサイドの5糸上で切れてしまうという形になったわけですが、まあ後場の寄りから先物GUして始まっていたので強いんでしょうなあと思われたものの、ここまでの入札が(入札後の動きはともかくとして)テール長めでコケ気味なのが続いていたのでスパッと上で切れてしまって空振り組涙のショートカバー祭りとなったか盛大にブルフラットの巻となりましたな。

・・・・・・でまあ後付でしたら何とでも言えますけど、超長期に関してはしばらく前から親の仇のように水準調整していて、20年はほぼ追加緩和前の水準に戻るところまで叩かれていた(30年はそこまで売られていない)わけですし、だいたいからして前日とかも引け際に超長期いきなり2毛位押し込みとかしていたりと事前に散々売り込んでいましたので、そらまあ前日比MTMだとブルフラットでしょぼーんですけれどもその前から準備していれば上で切っても利食いでしょうとゆーところで、前場に久々の先回り買いが入っているというのであれば上に入れに行く向きがあってもおかしくはないですかねえという所ですかね、よー知らんけど。ちなみに市場推計の落札結果ですと大きく落札したのが2社ほどという感じみたいですね。

しかしまあ何ですな、入札結果が強くて債券反発したのを受けて株とか為替が反応したように見えたのがお洒落でありますけど、20年国債入札が強くて下げ止まるなら落ち着いたという話になるのでしょうが、反動でここまでブルフラット(引けは先物45銭高で20年8.5毛強とかヒャッハーにも程がある展開)となってしまうと落ち着いたという感じではないのでちょっとねえと思いますがどうっすかね。


・1年短国入札は足切100円ですかそうですか

超長期の陰に隠れてすっかり無注目の1年TB結果はこちら。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150217.htm

(3)募入最低価格 100円00銭0厘(募入最高利回り)(0.0000%)
(4)募入最低価格における案分比率 14.8406%
(5)募入平均価格 100円00銭1厘(募入平均利回り)(-0.0009%)

どうせ今週の短国買入はそんなに減額されないと思われる(1年新発を買入で入れておくと残高が1年残るので先々の買入運営が楽になるので1年とか6か月の新発が出た直後の短国買入は基本的にロットが大きめになる傾向にある)ので1年TBで日銀買入ヒャッハーというのは(そもそも1年は2.5兆円で発行が少ないし)アリエールでしょとか思いながら売参を見たらマイナス4bpですかそうですかという所で、今週末の短国買入の結果を見るのが楽しみですなあ(棒読み)という所で。

もう1年TBって完全に異世界の物体になっているので直近の2年入札と3M入札の平均落札利回りでスプライン引いてその利回りで全額日銀が引受してその分短国買入減らしてくれた方が皆幸せになると思いますけどねえ、ああ幸せにならないのは日銀ト(銃声)。


○決定会合プレビュー雑談

つーてもまあ今回は見事に無風(この前決定した「日銀当座預金非取引先向けの成長基盤強化等オペの実施要綱」が出るという案件があるのは念のため申し添えます)でございますが、声明文で示す経済物価情勢のうち、どうせ物価はアレですので問題は経済の方でして、どうせどこかの項目を上方修正ということになるんでしょうが、どの程度強くしてくるのかはちょっと確認ですかね。

まああと会見という話になるのですが、これ以上の円安がどうのこうのというブルームバーグの飛ばし記事関連質問についてはどう見ても「円安が別に問題だとは思っていませんが何か?」という話をして終了だと思いますし、物価安定目標の2年での達成に関しては前回の決定会合およびその前後の政府方面からの情報発信も相まってすっかり2年という期間が1年延長の巻となってしまいましたので、これについてツッコミを入れても暖簾に腕押し糠に釘でしょう。もしゴリゴリやるなら師匠を国会に呼び出して連日その点について過去の説明との整合性をゴリゴリ突っ込んで辞任しないのかとやればもしかしたら効果があるかもしれませんけどね!!!(ただしリフレ派の皆さんというのはその時その時で自分の説明に都合の良い理屈を繰り出してくるけれどもトータルとしての主張の整合性というのは重度の健忘症なのか全くもって気にしない傾向があるようなのではいはいおじいちゃんその理屈は前言ったのと違うでしょと言っても暖簾に腕押しの悪寒もしますが)

でですね、それよりも気になるのは「そもそも2%物価安定目標が達成されるためのメカニズムがきちんとワークしているのか」という話でして、先般のGDPを見ますと個人消費と設備投資が盛大に見通しから下振れしている訳でして、まあ他のデータとの整合性的にGDPが過小推計しているのではないか的な話もあるにせよ、そもそも消費が伸びないと前向きのメカニズムが回らないですし、物価安定目標が持続的に実現できるためにという観点で言えば潜在成長率を引き上げないといけない訳で、そのためには設備投資が出てこないと行けない筈なのですけど、この設備投資が出る出る詐欺でいつまでたっても伸びない件についてはヒジョーに気になっておりますな。

つーことで、足元の物価とか為替水準がどうのこうのという話ばかりがどうせ注目されると思うのですけれども、日銀のシナリオに示されるメカニズムの蓋然性とか、物価目標の安定的な達成という意味での成長力の引き上げ的な話という方向のメカニズムに関してのツッコミおよびそれに対する説得性のある答え(があるのかただの大本営発表で返されるのか大和魂根性論で返されるのかは知らんけど)というものを質疑の中で期待したいとは思うので誰か質問して下さいお願いします。



○ボストン連銀ローゼングレン総裁のQE評価と出口に関する講演から少々

これは2月5日に投下されていた案件です。

http://www.bostonfed.org/news/speeches/rosengren/2015/020515/index.htm(講演サマリー)

http://www.bostonfed.org/news/speeches/rosengren/2015/020515/020515text.pdf(講演本文)
http://www.bostonfed.org/news/speeches/rosengren/2015/020515/020515figures.pdf(図表)

Lessons from the U.S. Experience with Quantitative Easing
by Eric S. Rosengren, President & Chief Executive Officer
The Peterson Institute for International Economics and Moody's Investors Service's
8th Joint Event on Sovereign Risk and Macroeconomics
Frankfurt, Germany
February 5, 2015

で、アタクシのPC環境ですとこの講演本文のPDFを出そうとするといきなりフルスクリーンになってしまってしかも上のメニューバーが出てこないので作業に支障をきたすという実に残念な状態になっておりまして(アドビのバージョンがブラウザーと有っていない悪寒)、本当は講演本文からネタにしたいのですが(問題解決したら改めて投下するかもしれません)涙を飲んで上記講演サマリーの方から参ります。

『Speaking in Frankfurt, Germany, Federal Reserve Bank of Boston President Eric Rosengren gave his perspective on the United States' largely successful experience with quantitative easing.』

ということでQE政策に関してのレビューをするという中々壮大なテーマですけど・・・・・・・・

『 "It may be some time before a full assessment of the effects of our quantitative easing policies can be made, since a full evaluation will require a successful return to a normalized monetary policy," he said.』

>a full evaluation will require a successful return to a normalized monetary policy
>a full evaluation will require a successful return to a normalized monetary policy
>a full evaluation will require a successful return to a normalized monetary policy

(;∀;)イイシテキダナー

とりあえず「所期の効果を発揮しているが出口を考えるのは時期尚早(キリッ)」と言い続けて間もなくお約束のはずだった2年が到達しそうなどこぞの中央銀行の執行部の皆様はローゼングレン総裁の爪の垢を煎じて飲むべきだと思います。

『 "Nonetheless, I think it is quite possible and appropriate at this point to consider which design features of the Federal Reserve's asset-purchase program were effective, and which were less successful, in achieving our monetary policy goals."』

ということで現時点でのQE政策の評価という話ですけどね。

『Based on the U.S. experience with QE, Rosengren observed that (1) a significant undershooting of the inflation target should be treated with the same policy urgency as a significant overshooting of the inflation target;』

顕著な物価の上方向のオーバーシュートに金融政策で迅速に対応べきというのと同じくらいに顕著な物価の下方向のオーバーシュートに対応すべきである、というのはまあ分からんでもない。

『 (2) that open-ended quantitative easing tied to policy goals is likely to be much more effective than limited quantitative-easing programs;』

ここの説明なんですけど、本文テキストでああだこうだと述べていまして割と面白いのですけれども、ただまあ説明は雑だろと思う所でして、図表のPDFを見ますと図表の5から7辺りになるんですが、この辺でQE1から3における(緊急対応の1というよりは主に2と3の比較です)新築住宅件数とか住宅価格とか自動車販売とかの推移を示しているのですが、金融政策の期間に対してこれらの指標を別に数か月遅行とか全然しないままで並べていて、「QE2の時にはそんなに伸びなかった住宅とか自動車とかがQE3の時には伸びたのでQE3のオープンエンドの方が効果があった(キリッ)」っていう説明になっていまして、いやいやオッサン金融政策の波及がそんなに時間のラグなく動くのかよと小一時間問い詰めたい説明になっていて、どうも結論先にありきの話っぽい雰囲気は盛大に漂うのであります。

『and (3) that clarity on monetary policy communications is difficult to achieve, but critically important for the success of the program.』

まあこれはそうですが、何をやろうとしているのかのスコープを広くした方が効きが良いみたいな話をしている節があるのがちょっと無理やりかなとも思います。

『Rosengren emphasized that program design and communication are both important when it comes to quantitative easing. A program that is open-ended and focused on areas where spreads are large-in conjunction with a communication strategy tied to goals-seems to have made a material difference in outcomes for the U.S., he said.』

でまあこの「経済情勢に対する目標ベースのオープンエンドのやり方が「material difference in outcomes for the U.S.」でありますキリッというのが先ほどアタクシが申し上げた説明になっているのはちょっとこじつけ感が強い気がします。過去の緩和政策がラグを持って効いてきているという考察は盛大にネグられています。

『He went on to say that the so-called "dual mandate" is one reason why the Federal Reserve moved more aggressively than many other central banks to address the significant undershooting of inflation in the U.S., and that many other countries have experienced.』

この話は本文の説明ですと「デュアルマンデートで失業率も見ていたのでインフレが安定している中でもアグレッシブな緩和政策を実施できました(ドヤァ)」というものですが、まあ別にそれってデュアルマンデートじゃなくてもフレキシブルインフレーションターゲットだったら普通じゃんBOE見たらどうよと思いますけどまあ良いとしまして。

『"How aggressively a central bank reacts to this situation depends on whether that central bank's mandated goals involve inflation alone, or as in the U.S., a dual mandate that includes employment," said Rosengren. "I felt it was important that the focus on weak labor markets, as well as the undershooting of inflation, together provided important support for U.S. monetary policymakers to decide to move aggressively during the financial crisis, and indeed its long aftermath." 』

でまあその辺のデュアルマンデートが良かったですねという話がサマリーの方で妙に長い希ガス。

『"However, I would argue that regardless of mandate, delays by central banks in moving to address the undershooting on inflation can be costly-especially if such delays lead households and firms to expect very low inflation rates."』

『In the absence of the dual mandate, significant and needed policy actions, like Operation Twist or QE3, may not have occurred, Rosengren said. Had these policy actions not occurred, he believes it would have "prevented what was ultimately important pre-emptive action against a persistent undershooting of the inflation target that could have become much worse, as in some other parts of the globe."』

ということで、実は講演本文テキストの方では『Exit Strategies』というのがありまして、このサマリーの方ではその部分の表記が無いのがなんちゅうかお洒落ですが、どうもうまくこのテキストが引用できませんので詳しくは上記本文の12ページを読んでちょという所ですが、出口政策に関しては「今のところはまだ2%のマンデートに達するという十分な確信がない」という話をしておりまして、さらに「コアPCEについても2%を大きく下回っている現状では出口政策に向かう事に対してpatienceであることが適切である」とコアPCEの推移を重視しており、最後の所では「名目ゼロ金利制約という金融政策手段の非対称性がある(=金利が下げられないという状況の中で、という意味ですな)中では、経済に対するネガティブショックへの対応を考えた場合に、このpatienceという姿勢はparticularly trueである」という文章で締めているので、まあ普通にハト風味ですかなと思ったのですがどうでしょうかね。

#技術的都合により本文引用無しでアタクシの説明ばかりになってすいませんすいません。ご興味のある方は本文もぜひ






2015/02/17

お題「市場雑談関連とか計数関連/ロックハート総裁講演は物価に懸念あり注目と言いつつ年央正常化を支持とな」

そこでジンバブエ理論ですよ!!!
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NJVQI26JTSEF01.html
ギリシャ救済協議は物別れ、ユーロ圏の要求は「不合理と当局者
更新日時: 2015/02/17 04:48 JST

そういや日銀の負債は返さなくてよいのだからジンバブエ理論は正しい(ドヤァ)という人もおられる(それも結構なロットで)ようですが、政府債務を通貨発行でファイナンスするのを永遠に続けられるのであれば無税国家になる(のでそうはならないでしょ)ってジンバブエ先生一派の信奉するバーナンキの背理法まんまだと思うのですが貴殿の頭の中にあるのはオガクズか何かでいらっしゃいますでしょうか????

○例によって私家版市場メモ雑談

・昨日の短国買入関連雑談の訂正をば

その前に昨日の訂正。

短国買入関連のところですが、思いっきり単純計算間違えていたのと、書きながら考え事をしておりまして(ってまあいつも考えながら手が動くクチなのですからそれはいつものことで単に月曜日の朝なので頭が寝ぼけているだけのことですが)何を言いたいのかワカランチ会長な記述があったので訂正いたします。

短国買入の応札の辺りに関する記述ですが、

応札が49744億円でして、前回の短国買入では2.5兆円の買入に対して応札が62995億円だったので、前回の札の空振り分が「47954億円」と書いたのですが、これは単なる引き算の桁繰り下げ間違えという小学校4年生でもやらない間違いをしましたが理由は筆算していたからです(汗)。正解は「37954億円」でして、前回からの札の増分は「2000億円」ではなくて「12000億円」ですけれども、いずれにせよ新発3Mは5.7兆円の発行ですからそれなりに投資家に嵌ったという感じなのは同じです。

あと、次の段落で書こうとしたのは「売参から考えるとそもそも3Mカレント2銘柄が入っていないなあ(ロットで投げた場合は別だが)というのと、「オペ結果を受けてもGCや現先レートが特段さがらなかったので、まだ業者の在庫があります」という話だったのですが、月曜ボケのせいで意味不明文言を書いてしまいましたすいませんすいません。


・短国買入残高関連

暫くサボっておりましたので(大汗)。

直近のはこちらからDLできます
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/

過去のはこちらから
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/index.htm/

まず今後の短国買入スケジュールですけれども、2月10日の短国買入銘柄別残高を見ますと、3月の償還額が70794億円になっておりまして、1月に短国買入残高を積み上げたので、2月10日の時点で12月末対比で1兆円ほどの残高増加になっています。

でまあ3月の時点で短国買入残高が12月末のところに着地するとしますと、2月の償還が10日以降でみて49321億円、これに対して10日以降に受渡の来る短国買入がすでに9日と13日に4.5兆円打ち込まれていますので今月の20日に同様に2兆円買入をすると1.5兆円ほど買入残高が積みあがる格好になりますな。

んでもって3月の償還は先ほど申し上げたように7兆円になりますので、3月の要買入額は4.5兆円程度になってしまう(末残が12月と同じとして計算)ので、1.5兆円3回として考えると2月27日から3回で終了しちゃいまして、まあその方が期末の投資家短国ニーズの邪魔しないから投資家的にはウマーではあるのですが、業者的には在庫を盛大に成行で買ってくれる人がいないのでマズーという感じでして、さてどうするんでしょという所ですけど、まあ需給的に考えたらそういう打ち方になるんでしょうかね良くわからんですけど。


更にどうでもいい話ですが、短国買入残高が旬報で出るようになったので「この回の短国買入でどういう応札だったか」というのを鑑賞するのがたまに味わいがあったりしますな。

1/30-2/10に関しては途中にあったのが1/30に実施した短国買入1発になっておりますので、1/30との差分を取ると思いっきりそれは1/30の短国買入での落札銘柄になります。でこれを見ますと意外に銘柄が分散されているのがお洒落でして、多い順に508回7223億円、498回5337億円、507回5093億円、506回3361億円、505回3214億円(あとは3ケタ億円以下)となります。

でですね、508回というのが中々味わいがあって、これは前日の3M新発なのですが、平均が-0.27bpで足切が0.0の入札で、30日発表の売参が-0.1bpとなっておりまして、この時の短国買入が平均5糸甘足切1糸甘であったことを踏まえますと、508回をさっそくダメダコリャと外した向きがいるというのが注目されるところで、従来のオペ入れてウマーはどこへやらというのに滋味がある訳ですな。

その次の銘柄が498回というケッタイな回号ですけどこれは12月の6M新発でして、ここまで在庫引っ張っていたのか12月に期末ニーズで持っていたのが出てきたのか訳分からん(期末ニーズで持っていたなら6月償還もの売る必要もない気がするし)ですな。ちなみにこの銘柄は平均-0.2bpで足切0.0の入札でしたが、この辺の銘柄は軒並み引けが-1.6bpになっていましたので、まあそうですかねえという感じで、あとは順にカレント1年、カレント6M(この2銘柄は売参がともに-1.6bp)、1週前の新発3M(これは売参が-2.5bp)となりますが、まあその辺はカレントばかりという事ですな。

ちなみに同じように遡ってみていきますともっと素敵なのが1/20-1/30の差分計算でして、この差分は1/19と1/23の短国買入ということで3兆円2回で6兆円の買入になるのですが、1銘柄きっちり3兆円の落札がある銘柄というのがありましてそれが506回短国だったりしまして、実にこう味わいがあるとしか申し上げようがない結果なのですが、以下細々やっているとキリがないので後は売買参考統計値や入札利回りを見ながら味わいというのを感じていただきたいと思います(^^)。


・業態別当座預金残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

毎度の当座預金残高ですけれども、1月は都市銀行の超過準備平残が4兆円も拡大しておりまして、ここもと頭打ちだったのでほほーという感じですけど、これって単に短国を買えないマイナス状態が続いていたので4半期の国債償還とか通常の短国償還の部分がロールできないで日銀当座預金に滞留したということでしょうかねえ、良くわからんですけど。

一方で地方銀行やその他準備預金先が落ちていて、証券と外国銀行は増えているという形になっておりまして最近都市銀行と他の銀行業態の超過準備の動きが逆ですなあと思うのでした。


・さて20年国債入札

何かしらんですが昨日も昨日とて超長期が親の仇のように叩かれておりまして、引けでは更に一段甘となっていて先物18銭安で5年は5糸甘(なので5年7年が1.2毛位スティープ)ですが10年が3毛甘で20年が6.5毛甘で30年が8甘とか中々お洒落なスティープ。

いやね、追加緩和以降途中からは投資家不在の中で日銀買入ヒャッハーヒャッハーと言って債券市場の水準がドンドンと強くなりましたなあと思いますと、そらまあ投資家不在で上がった相場は投資家不在でも下がることもあります罠とは思うのですけれども、追加緩和前の水準に戻ると考えた場合に各カレントの引けは何ぼですねんと考えますと、昨年10月30日の引け(追加緩和は31日)は面倒なので全部単利で書きますけど、2年が2bp、5年が0.115%、10年が0.465%、20年が1.315%、30年が1.650%となっておりまして、昨日のBB引けが2年4bp、5年0.140%、10年0.445%、20年1.305%、30年1.540%ということですから30年がまだ調整足り申さんでごわすという所ですかよくわかりません><

なお2年や5年に関してはそもそも昨年10月が日銀無慈悲短国買入によって短国金利マイナスが長期化しだした時で、日銀の短国買入残高が10月末時点で43兆円ありました(足元は39兆円)ので、そもそも短国の部分が違っているので金利水準が違うのはある意味当然なのでこれは別に追加緩和前よりも上昇していても変ではないとは思いますけどね、うんうん。



○アトランタ連銀ロックハート総裁の出口着手には物価動向が結構意識されているようで

南フロリダビジネスリーダーランチでのスピーチのようですな。2/6に行われたやつです。
https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2015/150206-lockhart
https://www.frbatlanta.org/-/media/Documents/news/speeches/2015/150206-lockhart.pdf
Considerations on the Path to Policy Normalization

Dennis Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta

Southwest Florida Business Leaders Luncheon
Hilton Naples
Naples, Florida
February 6, 2015

・経済に対する先行きの自信がキーポイントだそうですが・・・・・・・・

最初のところに纏めがあるので便利でしてまずはそこを見るのだ。

『・Atlanta Fed President and CEO Dennis Lockhart, in a February 6, 2015, speech to the Southwest Florida Business Leaders, shares his thoughts on the monetary policy "liftoff" decision ahead.』

ということで正常化着手に関する講演。

『・Lockhart says the linchpin in a decision to make a significant policy change is confidence in the economic forecast.』

linchpinというのは車の輪止めとか急所とかいう意味のようで。

『・Lockhart's baseline outlook for 2015 and 2016 assumes growth at around 3 percent per annum.』

経済見通しはいつもの通りでSEPの中心線よりはやや強めの実質3%成長継続を見ています。

『・In Lockhart's view, this outlook, combined with the improvement of economic conditions to date, indicates the economy is on a path to a satisfactory and desirable state of health.』

『・Lockhart says that the weakness of inflation and wages is a concern, and that firming of inflation readings will give him confidence that the outlook on which monetary policy decisions will swing remains realistic.』

ということで、先行き経済見通しについては割と自信があるようですが、物価と賃金の動向を懸念しているという事で、物価動向に対して自信を持てるようになるのがロックハート総裁的な正常化着手への条件っぽい表現になっておりますな。

『・From a Main Street perspective, Lockhart says, the important point for business planning is that monetary policy is likely to shift sometime this year, and that decision should be a signal that the FOMC is confident that the economy is on track to achieve its objectives.』

企業経営者向け講演ですからこういう話になりますなと思うのですが、金融市場だと出口着手の時期が重要ですが、それよりも皆様の場合はその出口政策が企業経営環境にどういう影響を与えるのかが重要ですよね、という話をしております。

冒頭のマクラの部分でこんな説明をしています。

『If you follow the Fed-watching industry, as I do, you are well aware that a top-of-mind question regarding policy is: At what meeting will the Fed decide to lift off? At what meeting will the Federal Open Market Committee (FOMC) raise the policy rate target above its current near-zero range?』

うむ。

『If you are an investor in fixed-income or interest-paying assets, a lot of money may ride on the precise answer to that question.』

そらそうよ。

『In contrast, if you are a business person operating in the nonfinancial real economy, you may be less concerned about the precise timing of the first policy adjustment. You are likely to be more concerned about what a change in the interest-rate environment means for the outlook for overall demand conditions and the general direction of the economy.』

『Today I will orient my remarks mostly to the concerns of Main Street. This keeps the focus where, in my opinion, it ultimately should be-that is, on the health, resilience, and momentum of the broad economy.』

ということで経済物価情勢の話になります。


・経済のパートはまあ強めは強めっぽいのだが結構両睨みみたいな感じになっている

『Economic progress and outlook』ですけれども、途中の雇用に関する話から引用。

『Maximum, or full, employment is less explicitly defined. Most economists assume that what constitutes full employment changes over time. Structural shifts in the economy cause the natural rate of unemployment to move around. For a good part of the recovery period, a number of Fed policymakers, me included, have estimated the unemployment level consistent with full employment as between 5 1/4 and 5 1/2 percent or a little higher. Today's report has the headline unemployment rate at 5.7 percent. So, on that basis, we would seem to be approaching an acceptable steady-state level of employment.』

失業率で言えば完全雇用ゾーンですよと。

『It's a fair question, then, why the FOMC has not already started to normalize interest-rate policy. My answer is the recovery has been sluggish for much of its five-and-a-half years. To accomplish what we have, the recovery has required the support of extraordinary policy measures-measures such as a policy rate set effectively at zero and three rounds of quantitative easing. Furthermore, the economy has endured periodic headwinds that threatened to dilute or reverse progress. And although the economy is growing, its strength has sometimes seemed tentative and fragile.』

では何故今すぐに正常化着手をしないのかというと、経済の回復がこの5年半の回復期間中も力強さに欠け、時に向かい風に見舞われることによって経済の拡大が時々一時的だったり脆弱だったりするように見えるからですという話で。

『A moment ago, I said the job is not finished. Some gaps remain.』

『Employment progress, for instance, may be less than meets the eye. Many of us have held that the conventional measure of unemployment probably overstates actual progress. There are still almost 7 million workers counted as employed who say they are working part-time involuntarily. As a point of reference, 7 million is about 4 1/2 percent of a labor force of 157 million. There are always people in this involuntary part-time category, but the number is still elevated compared to historical levels. Over the last few years, there has been a worrisome outflow of prime-age workers-especially men-from the labor force. I believe some of these people will be enticed back into formal work arrangements if the economy improves further.』

また雇用に関してもギャップは存在するということで、失業率以外で見られるギャップがありますよという説明もありますな。

『The distance between current conditions and our goals doesn't have to be completely closed for the FOMC to start moving interest rates higher. Monetary policy is, of necessity, forward looking. If, as we look forward, it seems likely we will achieve our policy objectives, then we can consider beginning to adjust policy.』

でまあロックハート総裁の今回の講演ですけれども、強い話と弱い話が交互に来るので結局どっちなのか良くわからんという所でして、雇用に関しても強い話をしたかと思えばギャップがあってという話をして、その直後に今度は「そうは言いましても金融政策はフォワードルッキングに対応するのですから完全に目標達成したという状態になるよりも前に政策の正常化を検討しますよ」という話をするという形で、まー結局のところ決め打ちが出来ないんでしょうなあと思われる所です。



・先行きの自信が欲しいのは物価動向

『Confidence as linchpin』という小見出しにまいります。

『The linchpin in a decision to make a significant policy change is confidence.』

confidenceが原文ではゴシック文字になっています。

『By that, I mean confidence in a forecast-an outlook narrative, if you will-that has the economy on track to achieve the FOMC's policy objectives in a reasonable timeframe. I think a reasonable time horizon is one to two years.』

1年から2年程度の先行き見通しに対する自信(つまり物価目標達成の見通しがそのくらいの時期に来ると自信を持って言える状態になれば、という話ですな)が必要とな。

『I really want to emphasize this point. The Committee has repeatedly stressed that the first and subsequent policy moves will be data-dependent.』

それは知ってる。

『One hundred percent confidence is never attainable. The test is one of sufficiency-that is, sufficient confidence that, in a defined period of time, the broad economy will reach conditions consistent with sustainable full employment and stable prices.』

『It is confidence based on clear evidence in the data that will trigger the start of normalization.』

で、その自信とは??

『At this particular moment, I don't quite have sufficient confidence.』

今のところそこまでの自信はないと。

『There are factors at work at the moment whose effects I consider to be transient. Key among these factors is inflation.』

で、自信のキーは物価動向ですよキタコレ。

『Inflation, by almost every measure, has been running considerably below the FOMC's target of 2 percent. This was the case well before the recent drop in energy prices. Because of the sharp falloff of energy prices-especially gasoline prices-headline or total inflation has gone negative in the most recent readings. Core inflation-the measure that excludes the direct impact of energy and food prices-has recently been running below 1 percent.』

これは足元の状況。

『In my baseline forecast, I have inflation getting past this period of broad disinflation and resuming a gradual rise to 2 percent. It's important, in my opinion, to be confident that this will occur, and certainly that the trend in overall prices is not continuing to move away from the FOMC's target.』

ベースラインの見通しでは徐々に2%に戻るとみているようですが・・・・・・・・

『Just as current readings of inflation give some pause, broad wage trends seem to suggest we are not yet on the cusp of full employment. The quite modest growth of wages across the economy does not seem normal given the solid growth numbers we've seen in recent quarters.』

『Inflation and wages ought to be telling indicators that the gaps are closing. Their weakness is a concern.』

賃金の伸びが弱くてまだ完全雇用ではなく、まだ回復もそこまで強い訳ではないという認識でして、これらの弱さが懸念されますということで、要はこの辺の指標が確りしてくると利上げ着手ヒャッハーという話で
ございますな。

ということで、こちらも最初の方は割と威勢が良いのだが後半はハトっぽいとか中々こう両建てな話になっておりますな。


・本年前半がノイズとな

『A noisy first half』という小見出しの部分ですけどね。

『The first half of 2015 will present challenges in evaluating the validity of economic assumptions.』

ほう。

『I've mentioned oil prices. After seven months of decline, prices firmed in trading sessions last week, then fell again. Financial market participants interpreted the firming as a positive development. A number of oil and gas sector analysts forecast that global petroleum supplies will exceed demand through the first half of the year.』

『The dollar has appreciated by 13 percent on a trade-weighted basis since last June. Exports in the fourth quarter seem to have been negatively affected by the dollar's rise. I will avoid predicting exchange rates, but suffice to say that the impact of the dollar on exports, as well as imported consumer goods prices, is part of the current swirl of variables making the state of the economy harder to assess.』

ということで、ここでは原油価格とドル高が基調的な物価を見るのに対してノイズを与えるみたいな話をしておりまして、さっきは物価が懸念と言ってたじゃないですかあという感じで実にこう微妙な両にらみになっているのがチャーミング。途中を飛ばしてこの部分の結論。

『To put an exclamation point on the proviso that the first half of 2015 may be noisy and hard to read, I'll just catalog a few of the obvious things that might confuse true underlying conditions: oil prices, the dollar, the effects of both oil prices and exchange rates on headline inflation, their possible impact on core inflation, slow-to-improve wages, the ups and downs of quarter-to-quarter growth, and mixed messages from measures of inflation expectations.』

ということで、色々なかく乱要因があって読みにくいですねえという話をしているのですが・・・・・・・・


・でも結局6−9辺りに利上げ着手とな

最後の『What am I looking for?』ですけどね。

『So, if the linchpin in a policy decision, for me, is confidence, what am I looking for?』

『For starters, as I said earlier, key indicators of economic conditions should not be moving away from my basic outlook. Assuming no substantial softening of GDP and employment growth, my attention will likely be on the path of inflation.』

ベースラインからは離れないで推移しているとみていまして・・・・・・

『I'd like to see some evidence that what we believe to be transient factors driving recent weak inflation readings are, in fact, passing. I would like to see firming of inflation readings. This will give me confidence that the outlook on which important decisions will swing remains realistic and likely to play out.』

インフレに注目しているが基本的には基調的な物価が強くなってきているとの認識を示していますぞ。

『Inflation is appropriately a focal point because its firming will reduce concerns that the economy is somehow stalling, that prophesies of long-term stagnation have any basis, and that chances of accomplishing the FOMC's policy goals are receding.』

インフレがフォーカルポイント(焦点)とな。

『As of today, I remain comfortable with the assumption that circumstances will come together around mid-year, or a little later, that will deliver sufficient confidence to begin normalization with the liftoff decision.』

んでもって結論は6月またはそのちょっと後くらいに正常化着手ということで、途中で物価の懸念を示している割には結論が普通だったりするのは中々謎のお方ではあります。

『I won't be more definitive than that. I think all possibilities from June on should remain open. I don't at this juncture have a prediction or preference. Timing will depend on what the data tell us.』

決め打ちではありません、とは言ってますが、途中があまり強気ではない話をしている割には結論が普通というのが中々こう味わいがある訳で、これは9月からメジャードペースじゃなくて6月に利上げ着手して様子見ながら状態になるという債券市場的にはちょっとストレスになる動きがFOMCの中心的な見解に近いのかもしれないなあとか思ったりするのですが、いずれにせよ1月FOMC議事要旨を見たいところです。





2015/02/16

お題「例によって市場メモ/いまさらですが12月FOMC議事要旨ネタを1月が出る前に慌てて投下」

金曜のずっこけ相場にこんなのが出て国内債券市場には関係ないけどまあずっこけだ罠。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NJOJWI6K50Z001.html
GPIFは為替ヘッジ検討を、リスクゼロあり得ず−清水運用委員 (3)
更新日時: 2015/02/13 14:35 JST

『(ブルームバーグ):年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF )の運用委員会の委員を務める清水順子学習院大学教授は、外貨建て資産を大幅に増やす中で、円高到来時の為替差損を回避する金融取引(ヘッジ)を検討していくべきだと主張している。』(上記URLより)

・・・・・・・・・orz

えーっとすいません、外貨建て資産はアセットアロケーションとして増やしているのだと思うのですけれども、そこでヘッジしたら何のためにアセットアロケーションしているのか分からないのですけれども。つーかヘッジするくらいなら原資産のアロケーション減額した方が一般論としてはコスト安くつくと思いますし、だいたいからして「リスクゼロあり得ず」ってタカ&トシ大先生は円債持ってるのもリスクだとか仰せな訳で、何を言ってるんだこの人は。

・・・・・と思ったのですが、良く良く見たら置物大先生がこの前まで教鞭をとっておられた学習院大学の先生でいらっしゃいますかそうですか。しかしこんな認識の方が運用委員でございって中の方々には深く同情せざるを得ないですな、ナムナム。

#日本の経済成長への課題ガーとかモーサテの特別ゲスト様が仰せのようですが、一番の課題は「勝手放題言うだけ言って肝心の実行段階で逃げ出す政策提言者」みたいな無責任な人を排除することじゃないですかねえ

#逃げなかったものの置物になって責任も取らないというのも居るみたいですけど


○今日も市場メモである(毎度只の俺様備忘録ですいませんが)

・短国買入は2兆円に減額とな&固定金利オペ大幅減とは

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150213.htm
国庫短期証券買入 20,000 2015年2月17日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2015年2月17日 2015年5月29日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注3) 2,000 2015年2月13日 2015年2月16日

ということで短国買入が2兆円に減額オファーとなりまして、前日木曜の新発がプラスになったから投資家に札が嵌ってその結果応札可能玉が減ったんのでしょうなあと思いましたが結果は以下の通り。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150213.htm
国庫短期証券買入 49,744 20,002 0.002 0.003 87.6
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(2月17日スタート分) 4,711 4,711
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注4) 275 275 -0.400 -0.400

応札が49744億円でして、前回の短国買入では2.5兆円の買入に対して応札が62995億円だったので、前回の札の空振り分が47954(37954の間違いです、ただの計算違い)億円あったという計算になるので、新発3M分はやはりそれなりに投資家に嵌っているという計算になる(なお日取りがずれる分買入対象銘柄がずれるのでその分の落ちがあるから単純に2000(12000です。12000にしても5.7兆円の発行ですから少なめではあります)億しか増えたという話ではない)とは思われました。

ただし落札金利が平均3糸甘で足切が2糸甘なので3Mのカレント2銘柄を入れると新発をテールで入れていない限り投げレートになるので、実際に入っているのは先週の6Mとかオペ対象ギリギリの銘柄とかのようにも思えますなという感じで、まあその後のレポや現先の感じからしてまだ在庫は残っている感じではありますな、オペ結果を受けてもうんうん(訂正:「オペ結果を受けてもGCや現先レートが特段さがらなかったので、まだ業者の在庫がありますという話をしようとして意味不明文言を書いてしまいました)

でまあ2兆円に減額したのは札がやや少なめであった事に加え、この調子で単純に2月を2.5兆円で走っていると3月に買入のフローが一気に減ることになるので、そこをややスムージングする為に減額攻撃に打って出たという所でしょうかね。短国プラス金利定着に向けて減額したのでしたらセクシーなのですが、どう考えてもそんな気の利いたプレイをするタマではないのが日銀クオリティでございます(ので同じ理屈で債券市場が少々ずっこけ状態になっているからと言って輪番が増えるとか期待するのは間違い)ので、まー単純にスムージングなんでしょうな。


あとへーと思ったのが固定金利オペでして、上記にあるように今回は4711億円の落札になったのですけれども、12710億円の落ちに対するロールでして、8000億円の減額となっておりまして、その前に木曜に行われた固定金利オペが同様に3370億円の落ちに対して1751億円の減額ロールとなっていて、こちらも1600億円の減額になっていまして、ここへ来て固定金利オペの残高が(ロール後の落ちを考慮すると)7兆円台後半から6兆円台後半に落ちる形になりまして、短国の金利がプラスになったのと固定金利オペのロールが急に低調になったのが同じタイミングで来ているのは何か意味があるのか偶然なのか知らんですが、短国市場で投資家を排除した日銀とオペ先と入札のキャッチボール状態が解消に向かっている(実際に本当に解消するのかは予断を許さんが)中でパターンにも変化がという所なのかもしれず、ただの偶然かもしれずという所で。


・5年入札であじゃぱーだがあじゃぱーなのは結局超長期とな

5年国債である
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2014/resul081.htm
(3)募入最低価格 99円85銭 (募入最高利回り)(0.131%)
(4)募入最低価格における案分比率 73.6413%
(5)募入平均価格 99円89銭 (募入平均利回り)(0.122%)

テールが4銭ということで1毛近く流れるとはこれはこれはという所でございまして、落札結果が出た時にはお約束のように先物が急落して中長期が叩かれていたのですが、その後戻ってうだうだとしているうちに5ね円とか先物は戻るのに超長期の方があばばばばーとか、おまえらどんだけ超長期が嫌いなんだよというような展開になりまして結局弱いのは20年だの30年だのというお話。

途中では2年とかも結構甘かったのですが、2年は引けは引けに戻っていましたし、5年も入札が盛大にこけた割には引けは1.5毛甘の0.135%だったりしますので、まあそちらは押し目買いというものも入るのねとは思いましたが、まだ別に安いとも思えない短いところの方に買いが入ってしまう辺り腰が引けているというかやる気がないというかという感じではありますな。

まあ後講釈的には「5年入札ですらこれだけコケたのですから20年債入札も大丈夫かという話になって更に水準訂正をしに逝きました」という話になるのでしょうが、まあ12月以降の相場は投資家をおいてきぼりにしながら日銀輪番オペに打ち込みに行くぜヒャッハーと言いながら投資家不在の中で水準だけドンドン強くして逝っておりましたが、達観してみれば追加金融緩和以降にこういう相場になり、1月になると付利下げネタなどの「あり得ないと思うのだがヤケクソになっている黒田日銀の事だから何をしでかすか分からん」という追加緩和おかわりへの恐怖感で更に加速したという流れがあったのの逆をやっていると思いますと、まあ10月追加緩和の前まで戻る頃には相場は止まるんじゃネーノという程度に達観しておけば宜しいのではないでしょうか、と根拠のないてきとうな事を書いておく。


○1月の議事要旨出る前に慌てて12月FOMC議事要旨(すいません)

ということで金曜の続きです。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20141217.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20141217.pdf

毎度の『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から。

・労働市場に関して

基本的な認識は声明文で示されている通りのまとめになっていまして(そのため議事要旨チェックをすると声明文で読みましたわというのが2か所(ここと政策決定に関する部分)出てくるのだ)、家計と生産、海外経済の話もあるのですがそこはスルーしまして労働市場の所から。

『Participants saw broad-based improvement in labor market conditions over the intermeeting period, including solid gains in payroll employment, a slight reduction in the unemployment rate, and increases in the rates of hiring and quits. Positive signals were also seen in the decline in the share of workers employed part time for economic reasons and in the increase in the labor force participation rate.』

幅広い指標において労働市場の改善が見られますとな。

『These favorable trends notwithstanding, the levels of these measures suggested to some participants that there remained more labor market slack than was indicated by the unemployment rate alone. However, a few others continued to view the unemployment rate as a reliable indicator of overall labor market conditions and saw a narrower degree of labor underutilization remaining.』

引き続き労働市場のスラックをどういう指標でみるのかについては色々と見解があるようですな。

『Although a few participants suggested that the recent uptick in the employment cost index or average hourly earnings could be a tentative sign of an upturn in wage growth, most participants saw no clear evidence of a broad-based acceleration in wages.』

賃金の上昇については数名(a few)は最近の指標が今後の賃金上昇を示唆するとの見解を示すものの、多くの参加者は今のところは幅広い賃金上昇は観測されていないという認識ですが、この数名の見解を示している人はまあ当然早期利上げが必要という話を始めるでしょうなあということで。

『A couple of participants, however, pointing to the weak statistical relationship between wage inflation and labor market conditions, suggested that the pace of wage inflation was providing relatively little information about the degree of labor underutilization.』

2名の参加者は賃金上昇と労働市場のスラックの関係が強くないことを指摘していまして、これはまあつまり「賃金上昇が強くないからと言って労働市場のスラックが大きいという訳ではない」という事を言いたいのでしょうな。


・インフレに関して

『Participants generally anticipated that inflation was likely to decline further in the near term, reflecting the reduction in oil prices and the effects of the rise in the foreign exchange value of the dollar on import prices.』

目先インフレは石油価格の下落とドル高を反映して弱いでしょうと。

『Most participants saw these influences as temporary and thus continued to expect inflation to move back gradually to the Committee's 2 percent longer-run objective as the labor market improved further in an environment of well-anchored inflation expectations.』

殆どの参加者はこれは一時的でその後は2%目標に向けて上昇しますよということで、インフレ期待が強力にアンカーされているのがその背景にあるとな。

『Survey-based measures of longer-term inflation expectations remained stable, although market-based measures of inflation compensation over the next five years, as well as over the five-year period beginning five years ahead, moved down further over the intermeeting period.』

そこで市場のインフレ期待(BEI)が弱い件についての議論。

『Participants discussed various explanations for the decline in market-based measures, including a fall in expected future inflation, reductions in inflation risk premiums, and higher liquidity and other premiums that might be influencing the prices of Treasury Inflation-Protected Securities and inflation derivatives. Model-based decompositions of inflation compensation seemed to support the message from surveys that longer-term inflation expectations had remained stable, although it was observed that these results were sensitive to the assumptions underlying the particular models used. It was noted that even if the declines in inflation compensation reflected lower inflation risk premiums rather than a reduction in expected inflation, policymakers might still want to take them into account because such changes could reflect increased concerns on the part of investors about adverse outcomes in which low inflation was accompanied by weak economic activity.』

『In the end, participants generally agreed that it would take more time and analysis to draw definitive conclusions regarding the recent behavior of inflation compensation.』

つーことで、BEIの弱さに関してそこそこ長めのスペースで記載されていますが、インフレに関するリスクプレミアムの低下などによってBEIが低下しているという話になっておりますが、最終的にはもっと調べないと分からんぞなという話にはなっておりまして、結局のところ「これは謎ですな」攻撃によって華麗にスルーの方向という説明でどこぞの置物副総裁の置物リフレ理論涙目という展開ですな。


・金融市場に関してということで市場金利が先行き正常化を碌に織り込んでいない件について

『In their discussion of financial market developments, participants observed that movements in asset prices over the intermeeting period appeared to have been importantly influenced by concerns about prospects for foreign economic growth and by associated expectations of monetary policy actions in Europe and Japan.』

最近の金融市場に関してという事ですが、マクロプルーデンスな話ではなくて、最近の金融市場における予想される将来の政策金利に関するお話が始まります。

『A couple of participants remarked on the apparent disparity between market-based measures of expected future U.S. short-term interest rates and projections for short-term rates based on surveys or based on the median of federal funds rate projections in the SEP.』

2名が指摘ということでSEPで示されていたり、市場のサーベイで示されている先行きの米国政策金利パスに対して市場でインプライされている先行き政策金利のパスが思いっきり異なる点についての話。

『One participant noted that very low term premiums in market-based measures might explain at least some portion of this gap. Another possibility was that market-based measures might be assigning considerable weight to less favorable outcomes for the U.S. economy in which the federal funds rate would remain low for quite some time or fall back to very low levels in the future, whereas the projections in the SEP report the paths for the federal funds rate that participants see as appropriate given their views of the most likely evolution of inflation and real activity.』

ということで色々と可能性は示されていますが、タームリスクプレミアムが極めて低いことや、足元の経済指標が弱い事、SEPの見通しが楽観的と思われていることや、最初にありますような欧米の金融緩和の影響などという事のようですが、「ワシらの考えている正常化パスと比較して市場金利があまりにも低いんだがどういう事や」というのが思いっきり記載されているというのはこれはこれで味わいがあるというものです。


・リスク認識は物価がやや弱め

『Participants discussed a number of risks to the economic outlook. Many participants regarded the international situation as an important source of downside risks to domestic real activity and employment, particularly if declines in oil prices and the persistence of weak economic growth abroad had a substantial negative effect on global financial markets or if foreign policy responses were insufficient.』

海外の状況が重要な下方リスクですよと。

『However, the downside risks were seen as nearly balanced by risks to the upside. Several participants, pointing to indicators of consumer and business confidence as well as to the solid record of payroll employment gains in 2014, suggested that the real economy may end up showing more momentum than anticipated, while a few others thought that the boost to domestic spending coming from lower energy prices could turn out to be quite large.』

とは言え国内要因を見るとアップサイドの方が大きくて、結局のところリスクはバランスと。

『With regard to inflation, a number of participants saw a risk that it could run persistently below their 2 percent objective, with some expressing concern that such an outcome could undermine the credibility of the Committee's commitment to that objective. Some participants were worried that the recent substantial fall in energy prices could lead to a reduction in longer-term inflation expectations, while others were concerned that the decline in market-based measures of inflation compensation might reflect, in part, that such a decline had already begun.』

インフレに関しては下のリスクの話をしている人というかその記述が(さすがに)ちと多めになっている感じがします。

『However, a couple of others noted that if the unemployment rate continued to decline quickly, wage and price inflation could rise more than generally anticipated.』

一方で2名は失業率の改善で賃金や物価が上がるという話もありますが、まあ物価に関してはやや下振れ警戒のニュアンスになっていまして、先ほどの市場金利に関する話では威勢が良いもののリスクのところは(物価に関して)やや警戒的という所ですな。


・ということでフォワードガイダンス文言について

『In their discussion of communications regarding the path of the federal funds rate over the medium term, most participants concluded that updating the Committee's forward guidance would be appropriate in light of the conclusion of the asset purchase program in October and the further progress that the economy had made toward the Committee's objectives.』

ガイダンス文言が変更されましたがその件について。

『Most participants agreed that it would be useful to state that the Committee judges that it can be patient in beginning to normalize the stance of monetary policy; they noted that such language would provide more flexibility to adjust policy in response to incoming information than the previous language, which had tied the beginning of normalization to the end of the asset purchase program. This approach was seen as consistent, given the Committee's assessment of the economic outlook at the current meeting, with the Committee's previous statement.』

でまあしらっと「more flexibility to adjust policy」とか言っていまして、一方でこの時はガイダンス文言を謎の2本立てみたいな形にして、「従来の相当の期間というのと同じ意味」とか言い訳をしておりましたが、まあこういう話なのでスタンス変更ではないけれども正常化プロセスへのスタンス強化だろと思うのですけれども。

『Most participants thought the reference to patience indicated that the Committee was unlikely to begin the normalization process for at least the next couple of meetings.』

patienceはこの先2回のFOMCでは利上げをしないという意味ですよというのもほぼ認識一致とな。

『Some participants regarded the revised language as risking an unwarranted concentration of market expectations for the timing of the initial increase in the federal funds rate target on a narrow range of dates around mid-2015, and as not adequately allowing for the possibility that economic conditions might evolve in a way that could call for either an earlier or a later liftoff date.』

数名(Some)の参加者は文言変更は市場の期待する利上げ時期が2015年央に集中するリスクがあって、先行きの状況によって利上げ時期がずれることに対する柔軟性を失うのではと指摘。

『A few participants suggested that the statement should focus on the economic conditions that would likely accompany the decision to raise rates. Participants generally stressed the need to communicate that the timing of the first increase in the federal funds rate would depend on the incoming data and their implications for the Committee's assessment of progress toward its objectives of maximum employment and inflation of 2 percent.』

数名(A few)の参加者は声明文ではより「経済情勢次第」というのを強調すべきという指摘をしていますな。

『With lower energy prices and the stronger dollar likely to keep inflation below target for some time, it was noted that the Committee might begin normalization at a time when core inflation was near current levels, although in that circumstance participants would want to be reasonably confident that inflation will move back toward 2 percent over time.』

でもってこれは会見でも示されていましたが、エネルギー価格やドル高でインフレが低い水準にあるとしても、正常化の際に足元の金利が低いからと言って正常化着手をしないという事ではない、というのに関しては「it was noted」となっていまして、これは当然のことであるというような共有認識になっているのもあまりこうクローズアップされていないように思えるのですが、「原油が下がって物価が上がらないから緩和政策の継続だヒャッハー」という訳ではないという意味で重要な指摘だと思うのですけどねえ。


『A few participants spoke of the importance of explaining to the public how economic and financial conditions would influence the Committee's decisions regarding the appropriate path for the federal funds rate after normalization begins. It was noted that to the extent that such guidance can be effectively communicated, the precise date of liftoff becomes less important for economic outcomes. In this regard, some participants emphasized that policy will still be highly accommodative for a time after the first increase in the federal funds rate target, given the difference between the current setting of the federal funds rate target range and the Committee's view of the longer-run normal rate as well as the Federal Reserve's elevated holdings of longer-term securities.』

最後のところでは利上げ後の政策金利パスに関してのコミュニケーションについての話で、政策金利パスに対する説明というのも必要でしょとか、正常化サイクルにおいてもその間の金融政策は緩和的であるというのを説明することも必要とか、まあそんな話をしておりまして、普通に正常化着手という話になっていますな。

という感じで1月議事要旨が出る前に駆け込み虫干しでしたすいませんすいません。まあ普通に正常化コースでしょこれって所ですな。









2015/02/13

お題「短国久々のプラスとな/また憶測記事ですな/FEDの正常化ツールテスト状況を12月議事要旨から鑑賞」

ふーん。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150213/k10015424161000.html
維新 歳費自主返納認める法案を提出へ
2月13日 4時17分

『江田代表はNHKの取材に対し、「法案に賛成するかどうかで、どの党が身を切る改革に前向きかどうかが浮き彫りになる」と述べました。』(上記URLより)

えーっと、法案をわざわざ出さなくても政党交付金の受取団体の登録だったら代々木の人たちが拒否してますからすべての政党に受取団体の登録を辞退するように提唱した方が早いんじゃないですかねえ。まずは江田さんのところからどうぞ(ニヤニヤ)。


○短国3M入札が久々のプラスになりましたよ!!!

さあ久々のプラスですよ!
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150212.htm

(3)募入最低価格 99円99銭9厘5毛(募入最高利回り)(0.0020%)
(4)募入最低価格における案分比率 12.8163%
(5)募入平均価格 100円00銭0厘1毛(募入平均利回り)(-0.0004%)

・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

ということで平均はオーバーパーでしたが足切はプラス金利まで戻りまして、何か月ぶりかよとか思ったのですが、よく考えたら10月追加緩和の直後にMB拡大に対して短国買入に掛かるストレスを軽減するというのが出て、一瞬金利が上昇したというのがあるので、3か月ぶりというお話(つまりその間に3M短国が綺麗に1回転している)であります。

ただまあ11月の頭の金利プラス化も一瞬で、その後日銀短国買入が全然減らないどころか無慈悲買入ををして金利がまたマイナスになるという追加緩和の時の説明は何だったのかという動きやら、中曽副総裁の講演での「マイナス金利は政策効果(キリッ)」ってのがあって短国金利形成マイナス長期化待ったなしとなって、その後短国マイナスの長期化が利付債にも波及となって色々と騒ぎになったのですけれども、さらに申し上げるとその前に9月に期末要因と短国買入の打ち方のコラボでマイナス金利になったのが10月の頭に一旦緩和された筈なのにその直後に過去最大の短国買入をやっていきなりマイナスに突入した、という事案がありまして、そう考えますとまあ短国やっている人の気分的な点からしたら半年近く短国マイナス金利で青息吐息状態だったという状況でしたな。

でまあ昨年9月とかその後の10月の推移とかでは確かに玉が枯渇していたのでそらまあマイナスになるのも仕方ない(日銀の買入残高が大きい)面はあったにせよ、特に12月以降とかの動きですとGCレートや現先レートは下がらない中で短国の気配(とか引け値とか売参)だけは何故か不思議に値持ちする、という何だかなあという動きになっていた訳でして、違和感のある価格形成が続いておりましたな。

一方で昨日は足切がプラス利回りに流れてセカンダリーでもプラス利回りで取引されていたようで(なおBBの引けが0.1bpで売参は0.0bpですが)、プラス利回りになればそらまあ普通の運用として買える投資家が出てきますので、マイナス金利の時と違って新発段階で投資家にそれなりに玉が嵌る訳で、短国の金利はプラスになる一方で新発の業者の在庫は軽めになっているので短国発行日スタートになるけどGCレポや現先のレートは低下気味という流れになっておりますが、こちらの方がどう見ても自然な価格形成だわというお話。

まあ何ですな、今の状況から考えると短国買入が3月になるとかなりフローベースが減る(一方で期末要因のニーズについては高まるから短国買入が減っても需給はそこまでコケないと思うけど、期末だけ現先ニーズとかその手の可能性もありますからね)のが読めるから在庫を軽くしておきたいという事で金利がプラスになったという事でしょうけれども、ついでに言えば短国入札で買ってマイナス金利維持して成行買いの日銀買入に打ち込んでウマー的な動きも短国買入のフローが減れば意味がなくなるので、というようなサムシングもあるんでしょうな。そういやうっかりしていましたが先週末のヴェリタスでは1面に堂々と「縮む日銀トレード」という見出しがありまして大変に味わいの深いものを感じましたですよ。


・・・・・・・とは言いましても、在庫が捌ければ日銀短国買入に入れる玉も減る訳でして、そうなるとレートもタイトになる可能性があり、そこでやっぱり玉がないジャン的な事になればマイナス金利ヒャッハーとなるというのは今後も発生するでしょとは思いますけれども、日銀短国買入をバックにした需要(というのか?)でマイナス金利を維持する的な動きが駆逐されますと市場の価格形成がより健全なものに近づくでしょとは思うのでありますが、そういう点でも本日の短国買入から来週の入札(なお1年ものがあるのが味わい深い)、短国買入という一連の流れを確認しないとまだまだ安心はできませんなという所ではあります。


○毎度の憶測記事キタコレ

憶測飛ばし記事はかつてはロイターの専売特許でしたが最近はブルームバーグが得意としておりますようで。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NJN6936TTDS601.html
日銀の追加緩和は逆効果、10月緩和は消費者マインドに悪影響
更新日時: 2015/02/12 19:25 JST

『(ブルームバーグ):現時点で一段の追加緩和を行うことは日本経済にとってむしろ逆効果になるとの見方が日本銀行内で浮上している。関係者への取材によると、足元で輸出と生産が持ち直しており、原油価格の下落、消費増税の先送り、政府の経済対策などにより、日銀は景気の先行きに自信を深めている。そうした中、原油安により消費者物価だけはさえない動きとなる可能性が高いが、日銀内では、ここで追加緩和を行えば、さらなる円安を引き起こし、回復しつつある消費マインドに水を差すなど悪影響の方が大きい、との声が上がり始めている。日銀幹部の一部で、為替相場に対する考え方に変化が生じている可能性もある。』(上記URLより)

・・・・・・・・ってもともと10月緩和には反対が4票入っていたのですから10月緩和に加えて更に緩和とか言ったらそら反対が出るでしょうし、経済情勢に関する見方が強くなっているのは12月の決定会合議事要旨や1月の声明文および月報、黒田総裁の会見などからも明らかでして、これただの記者の観測記事じゃねえかよと思うのですが、なんか為替が飛んでいましてこれはまた例のアレかと思ったら、英文ヘッドラインがまたまた「BOJ said〜」というのになっておりましてまた例のアレかよという所で。

これ日本語の方はともかくとして、英文ヘッドラインがヘッドライン詐欺じゃねえかというところでして、こういうお馬鹿なヘッドラインというか注目浴びて商売ヒャッハー的なベンダーの姿勢というのはちょっと酷いんじゃないのと思うのですよねえ。


まあ何ですな、この憶測記事の出し方には相変わらずどうなのよとは思いますが、内容的には別に新しい話ではないですし、そもそも政府与党の方からも過度の円安必要なしとか追加緩和必要なし的な発信が出ていたりしますし、原油価格絶賛下落を受けて「2年で2%」の2年の方はすっかり達成期限を誤魔化す方向に走っている訳で、10月追加緩和時に見せた「2年という時期に拘っているから追加緩和」的な説明が1月会合での総裁会見からすっかり消えてしまっている、などという事を考えますと、今の日銀の説明ロジックから普通に論理的に考えれば「賃金動向と原油価格下落の経済に対する好影響が確認されるまでは次の政策判断は保留する」という結論になるはずで、そういう意味では憶測記事ではありますが言っている話の基本線がそこまで変な訳ではない。

ただし妙に追加緩和のデメリットを強調しているのでその点はちょっとフカシが入っているだろとは思うのですが、まあそこは差し引いて考えましても、相変わらず追加緩和待ったなし的な期待が特に海外投資家などでは多いようで、マネタリーベース目標の量的緩和とマイナス金利政策は親和性が悪いというのも良く分からん連中が欧州マイナス金利で通貨戦争だから日本もマイナス金利みたいな話を相変わらず行っている(金利政策から量的緩和に移行したのにマイナスの預金ファシリティを維持するという実務的にオッペケペーな施策をしているECBのバカスケが混乱を招く元凶なのだが)ようですので、そういう向きからするとガックリという所で為替が飛んだんでしょうなあとは思いますが、国内債券の人たち的には今更言われんでも分かっとるわ的なお話ではあると思います。



○すっかりネタにするのを忘れていた12月FOMC議事要旨(すいません)

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20141217.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20141217.pdf

でまあ本日は出口政策におけるオペレーションの各種テスト状況に関する部分が非常に興味深い(マニア的に)ので鑑賞の巻でありまする。

『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's Balance Sheet』という小見出しのところが最初にありましてここが中々。

『In a joint session of the Federal Open Market Committee (FOMC) and the Board of Governors of the Federal Reserve System, the manager of the System Open Market Account (SOMA) reported on developments in domestic and foreign financial markets as well as System open market operations conducted during the period since the Committee met on October 28-29, 2014.』

ということでここはまあいつものマクラ文言。

『In addition, the manager reviewed the implications of recent foreign central bank policy actions for the international portion of the SOMA portfolio.』

これはほほーという所ですが、海外中銀が色々とやったのでその影響がFEDのバランスシートにどういう影響を与えたかという話があったという記載はありますが、これはまあ今回が特殊なのではなくて毎回そうなのですが「説明がありました」で済ませているのがFOMC議事要旨の仕様でして、相当何か伝えたいことが無ければこの調子で流されますので、逆にここに何か書いてあるとちょっとオッとなるのですな、うんうん。

『The manager also provided an update on staff work related to potential arrangements that would allow depository institutions to pledge funds held in a segregated account at the Federal Reserve as collateral in borrowing transactions with private creditors and which could potentially provide an additional supplementary tool during policy normalization.』

次に出てきたのはしばらく前に出ていた「預金金融機関が保有する準備預金に対して分離勘定を設けて、その分離勘定部分をコラテラルの担保として使えるようにする(ことによって預金金融機関の担保余力を拡大して非当座先の資金を吸収する余力を増やして超過準備の非不胎化に資するということでしょうな)」という施策に関する検討状況。

『After further review, staff analysis suggested that such accounts involved a number of operational, regulatory, and policy issues.』

本件に関しては制度上もオペレーション上も色々とネックがありますよと。

『These issues raised questions about these accounts' possible effectiveness that would be difficult to resolve in a timely fashion. It was therefore decided that further work to implement such accounts would be shelved for now.』

そんな訳でこの構想はいったんお蔵入りとなりましたとのこと。


『The deputy manager followed with a discussion of the outcomes of recent tests of supplementary normalization tools, namely the Term Deposit Facility (TDF) and term and overnight reverse repurchase agreements (term RRPs and ON RRPs, respectively).』

続きましての話はターム預金ファシリティと翌日物およびターム物のレポファシリティについてのテスト状況ですな。

『Regarding the TDF testing, the introduction of an early withdrawal option led to significant increases in the number of participating depository institutions and in take-up relative to earlier operations without this feature. As expected, both participation and take-up in the operations continued to be sensitive to the offering rate and maximum individual award amount.』

ターム預金ファシリティに早期引出可能オプションを設けたら利用が増えて、資金吸収が増える結果になりましたとな。あと応札状況は金利と期間を変えるとそれに応じて変化すると。

『The Open Market Desk successfully conducted the first two of four preannounced term RRP operations extending across the end of the year to help address expected downward pressures on short-term rates. Commentary from market participants suggested that these operations may help alleviate some of the volatility in short-term rates that would otherwise be expected around the year-end.』

年末越えのターム物レポファシリティを実施すると年末越え金利のボラが下がりますというお話。

『Regarding the ON RRP testing--during which the offered rate was varied between 3 and 10 basis points--increases in offered rates appeared to put some upward pressure on unsecured money market rates, as anticipated, and the offered rate continued to provide a soft floor for secured rates. Changes in the spread between the rate paid on reserves and the ON RRP offered rate did not appear to affect the volume of activity in the federal funds market.』

翌日物レポファシリティに関してですが、この金利を上げると無担保取引の市場金利に幾分かの上昇圧力をかけ、この金利水準は担保付市場取引のソフトなフロア金利としての機能も果たしていて、今のところはこの金利を上げた(上げたといっても付利金利+10bpまでしかやっていませんが)場合でもFF市場の取引ボリューム自体に大きな変化が起きるという事はない(=市場機能を大きく阻害している訳ではない)というお話。

『While the tests of ON RRPs had been informative, the staff suggested that additional testing could further improve understanding of how this supplementary tool could be used to achieve greater control of the federal funds rate during policy normalization.』

というような有益な情報は得られましたが、今後も色々とテストを行い政策正常化に向けての準備を行い短期金利の円滑な誘導を行いたいというお話で、まあ今までが雑だったというのはありますが、ずいぶんとまあこれは丁寧ですねという所でありますが、こういうのって結局のところオペレーション専門スタッフを張ってやっていかないと難しい話なのですよね・・・・・・・・・

『Accordingly, participants discussed a draft resolution to extend the Desk's authority to conduct the ON RRP exercise for 12 months beyond the expiration of the current authorization on January 30, 2015. It was noted that a one-year extension to what had been a one-year testing program was a practical step and signaled nothing about either the timing of the start of policy normalization or how long an ON RRP facility might be needed.』

ということで各種テストについての実施時期をもう1年延長とのことですが、延長している間に正常化の方が先に来るのではないでしょうか、と思ったら「1年延長するから1年間正常化を行わないというようなインプリケーションはありません」とありますな(^^)。

『Following the discussion of the extension of ON RRP test operations, the Committee unanimously approved the following resolution: 』

以下はNY連銀に向けたインストラクションですがたまには引用してみますがコメントは簡単に(汗)。

『"The Federal Open Market Committee (FOMC) authorizes the Federal Reserve Bank of New York to conduct a series of overnight reverse repurchase operations involving U.S. government securities for the purpose of further assessing the appropriate structure of such operations in supporting the implementation of monetary policy during normalization.』

ここまでがある意味マクラ。

『The reverse repurchase operations authorized by this resolution shall be (i) conducted at an offering rate that may vary from zero to five basis points; (ii) for an overnight term or such longer term as is warranted to accommodate weekend, holiday, and similar trading conventions; (iii) subject to a per-counterparty limit of up to $30 billion per day; (iv) subject to an overall size limit of up to $300 billion per day; and (v) awarded to all submitters (A) at the specified offering rate if the sum of the bids received is less than or equal to the overall size limit, or (B) at the stop-out rate, determined by evaluating bids in ascending order by submitted rate up to the point at which the total quantity of bids equals the overall size limit, with all bids below this rate awarded in full at the stop-out rate and all bids at the stop-out rate awarded on a pro rata basis, if the sum of the counterparty offers received is greater than the overall size limit.』

RRPオペレーションの概要がここまで記載されていますよ。

『The Chair must approve any change in the offering rate within the range specified in (i) and any changes to the per-counterparty and overall size limits subject to the limits specified in (iii) and (iv). The System Open Market Account manager will notify the FOMC in advance about any changes to the offering rate, per-counterparty limit, or overall size limit applied to operations.』

取引の上記内容を変更する際はFOMC議長の承認が必要ですとな。

『These operations shall be authorized for one additional year beyond the previously authorized end date--that is, through January 29, 2016." 』

で、このテストは1年間実施期限を延長します、ということで。




2015/02/12

お題「森本審議委員会見&佐藤審議委員講演である」

中央銀行が国債を買うと政府の債務が消滅するという責任ある金融政策のプロ中のプロであるらしい原田大先生の珍理論を今こそギリシャ問題の解決に活用するしかありませんね(白目)。

○森本審議委員会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1502b.pdf

・経済に関する説明は会見の方がやや慎重なニュアンス

冒頭の説明の中で読んでてほほーと思ったのでその辺からまず。

『まず1点目ですが、足許の千葉県の景気情勢については、全体としては緩やかに回復しているとのことでした。企業活動の面では、行政の支援もあって、設備投資の動きがみられ、それに伴う資金需要もみられるとの指摘も聞かれました。また、雇用・所得面ですが、有効求人倍率が改善傾向にあるほか、冬季の賞与も前年を上回ったということでした。』

ここは景気の見方云々ではなくて、行政支援で設備投資の動きという部分がほほーと思ったりしました。

『2点目は、ただ、こうした前向きな動きが企業全般に波及しているわけではなく、地域経済を支える中小企業を中心に、依然として景気の回復を実感できない先がまだ多いということでした。』

ということで・・・・・・・

『具体的には、為替円安に伴う原材料価格の上昇により、販売価格への転嫁が難しい内需型の中小企業を中心に収益が圧迫されているとの指摘が聞かれたところです。』

円安デメリット指摘キタコレ。

『この間、今春の賃上げ交渉に向けた動きについては、企業側の方々からは、中小企業を中心に一律のベアは難しいという声も聞かれたところです。』

あいやーという所ですな、3点目もあるけど割愛しますです。


・物価は基調で判断という話は当然として師匠にイヤミキタコレ

物価に関する質問に対しての答えを途中から。

『(答)(冒頭割愛)そういう中で、物価の見通しについて大変重要なことは、今おっしゃったように基調だと思っています。この基調を規定する要因としては、以前より申し上げている通り、需給ギャップと予想物価上昇率がどうなっていくかということが大変重要だと思っています。そういう意味では、需給ギャップについては、足許長期的な平均であるゼロ近傍になっていますし、これから原油価格の低下等も経済に好影響で効いてきますので、そういう意味で潜在成長率を上回る成長を期待し、見込んでいるところです。そういう中で、需給ギャップも改善していくものとみています。』

需給ギャップについてはそういう話ですがさてインフレ予想はと言いますと・・・・・・

『それから予想物価上昇率ですが、これはどういうデータでみていくのか、本当に難しいわけです。』

置物副総裁に対する悪態ですねわかります。

『我々としては、企業、家計、それから市場、こういうところの色々なデータを総合して、判定していきたいと思っています。家計については消費動向調査とか、生活意識アンケート調査、企業については短観もあります。それからエコノミストについてはESPフォーキャスト等、色々出ていますし、市場としてはBEIがあります。』

うむ。

『そういう中で、今、BEIについては、世界的にもこの原油価格の影響のもとで、足許若干低下している状況は事実だと思います。ただ、そのほかの色々なデータをみますと、やや長い目でみると先行き上昇していくという傾向は維持されているのではないかと思っているところです。』

そもそも追加緩和に反対する立場をとっているから基調的な予想インフレについてそんなに弱い話はしませんな。

『また、賃金の動向をみても、連合で2%のベアを要求しているとか、賃上げについて前向きな動きがありますが、こういった点、また企業の価格設定行動についても変わってきていますので、そういった色々な意味で、予想物価上昇率についても先行き上がっていく状況が確認されるのではないかと思っています。』

賃金に関しては相当期待しているみたいで、この後ネタにしますが佐藤審議委員が英国で講演をしていて、そこでも思いっきり賃金上昇に対する期待が入っています。


・今追加緩和しろと言われたらやはり反対ですとな

『(問) 2点お伺いします。1点目は、追加緩和について反対されていて、その理由を公の場で言及されたのは今回が初めてだと思いますが、もし当時追加緩和の議論がなくて、足許のこの経済状況で、今初めて追加緩和の議論が金融政策決定会合で出ていたら、今でも反対していたか、それとも今ならば賛成していたか、お聞かせ下さい。(後半割愛)』

これは(^^)。

『(答) 1点目に関しては、昨年10月時点では、私自身色々議論した中で、反対票を投じたわけですが、このときの反対理由については皆さん議事要旨の中でお読みになっていると思います。私自身もこれは同じような考え方でして、当時、原油価格の下落により、先行きの物価見通しのリスクが大きくなっていたことは認識していました。ただし、そういう中で「量的・質的金融緩和」については、累積的に効果が出てきますので、所期の効果を発揮し、経済・物価の前向きの循環メカニズムは維持されているとみていました。また、原油価格の下落についても、短期的には物価の下振れ要因となりますが、やや長い目でみて経済・物価に好影響を与えると考えていました。』

正論である。

『こうした状況のもとで、拡大措置による効果はある程度限定的ではないかという一方、市場機能の低下リスクとか、実質財政ファイナンスとの見方をされるリスクが高まる可能性があるなど、副作用への懸念が大きいと考え、反対したわけです。』

ですな。

『期待される効果として、金利については、先行きも一段と低下すると見込まれるわけですが、既に歴史的な低水準にありましたし、実質金利も大幅マイナスになっていました。また、買入れの効果も先程申し上げましたが、これからも累積的に高まっていくほか、期待への働きかけという面では、導入当初に比べ、効果はかなり限定的ではないかと考えていました。』

仰せのとおり。

『こういうもとで、私としてはこれまでの方針を継続することが適当で、特にその段階での拡大措置は必要ないと考えていました。』

うむ。

『そのときはそういうことですが、今の原油とか経済の状況の中で、追加緩和の議論が出てきた場合はどうかというと、仮の質問なので非常に答え難いのですが、今申し上げましたような状況をみますと、原油価格については当時から一段と下落していますが、それ以外の状況については、私としてはそんなに大きく基調としては変わっていないと考えています。原油価格の下落により、短期的には物価は一段と下振れになると思いますが、基調は私自身は変わっていないのではないかと判断しています。それから、原油価格の下落についても、日本はご承知の通り原油輸入国ですから、交易条件が非常に改善されるわけです。そういう意味で、景気についても好条件になるというのが先程申し上げたようなことだと思います。』

なるほど。

『そういう意味では、仮にあの時ではなくて、今提案されたらということについては、多分色々条件を比較してみると、判断についてはあまり変わらなかったのではないかと思います。厳密に申し上げれば、当時やらなければデフレマインドの転換が遅れるのではないか、その為の予防的な措置と言っていますが、それがどういう形で働いたかについては検証が難しい面があります。私としてはあまり基調の動きとして大きく変わっていないのではないかと思っています。』

>それ(追加緩和)がどういう形で(期待インフレに)働いたかについては検証が難しい面があります
>それ(追加緩和)がどういう形で(期待インフレに)働いたかについては検証が難しい面があります
>それ(追加緩和)がどういう形で(期待インフレに)働いたかについては検証が難しい面があります
>それ(追加緩和)がどういう形で(期待インフレに)働いたかについては検証が難しい面があります
>それ(追加緩和)がどういう形で(期待インフレに)働いたかについては検証が難しい面があります

(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー

しらっとこの前の追加緩和について「それがどういう形で働いたかについては検証が難しい面があります」と砲撃を行っているのが実にすばらしいとしか申し上げようがありません。この会見で一番強烈な所ですな。



・円安デメリットに関して

『(問) 2つお聞きします。1つは、挨拶要旨の6ページ〜7ページにかけて「消費者マインドについては、足許小幅の改善はみられますが、慎重さが残る点はやや気掛かりです。急速な円安もあり」と、以下一部を省きますが、「家計には負担感がより強く意識されているとみられ、今後の動向を注視したい」と述べています。この円安が消費マインドをやや慎重にさせているのではないかと推測できるようなご発言ですが、昨年10月の追加緩和によって10円内外の大幅な円安がもたらされたと多くの人がみているわけですが、10月の追加緩和は、結果としてはこういった消費者マインドを悪化させる要因になったのではないかとお考えなのかどうか、それがまず第1点です。(後半割愛)』

これはワロタという質問ですな。

『(答) まず、1点目の昨年10月時点で、追加緩和により結果として円安方向に振れたということで、それが消費者マインドに影響したとみているのかどうかについて、為替水準そのものについては様々な要因によって左右されますので、水準についてはコメントを控えたいと思いますが、いずれにしても一般論として、ご承知の通り、円安については、輸出企業にとっては輸出の増加ということで好影響がありますし、グローバルに展開する企業は企業収益という面でもプラスです。また、資産効果という面でもプラスであろうかと思っています。』

とまあここまでは良いとしまして。

『一方では、いわゆる内需型の非製造業ですとか、規模の小さい中小企業にとっては、輸入価格の上昇、これをどう価格転嫁するかといった面でなかなかつらい面があり、そういう企業にとっては影響があるでしょう。また、家計にとっては、やはり実質購買力という面で食料品等に影響があるのは事実だと思います。一般的にはこういう影響はあろうかと思います。』

『そういうことで、我々としても、為替の動向については、しっかり見守っていきたいと思っています。景気ウォッチャー調査とか、消費者態度指数、こういうところに円安が直接的に影響しているのかどうかという点については、なかなか定量的にチェックするのは難しいのですが、ただし、先程申し上げた通り、家計の実質購買力に影響を与えているのは事実なので、そういう意味では、影響がないことはないと思っています。そういう意味で、影響も少しあったのではないかと私としては考えています。(以下割愛)』

「家計の実質購買力に影響を与えているのは事実」キタコレという所ですな。


・市場機能に関しては残念ながら踏み込み不足だが別の含意もありますね

先ほどの質疑の後半。

『(問)(前半割愛)もう1つの質問は、やはり10月の追加緩和についてですが、先程反対された理由として、副作用やコストとして市場機能の低下リスクや実質的な財政ファイナンスとみなされるリスクを高めてしまうのではないかと挙げられました。今、昨年10月の追加緩和から3か月、4か月経とうとしていますが、実際にこういった副作用やコストは出てきているとお考えなのかをお答え頂きたいと思います。』

こちらの答えはやや踏み込み不足かなとは思いますが、答えの流れを見ると大本営の参謀の皆さんが偉い人にどういう戦況説明をしているのかは何となく伝わる気がするので鑑賞。

『(答)(前半割愛)次に、副作用で市場機能低下リスクと実質財政ファイナンスとみられるリスクを代表例として挙げているわけですが、今、それがどうなのか、というご質問です。この市場機能の低下について、これも皆さんもご承知の通り、まず国債市場の流動性低下リスクについてですが、これが特に今、何か重要な問題が起きているとは思っていません。』

重要な問題が起きるとは思っていません、で締められると「特段問題なし」というニュアンスでヘッドラインを打たれてしまうので何だかなあとは思うのですけど。

『ただ、市場の流動性が極端に低下した場合は、何らかのショックをきっかけに金利が非連続的に変動する可能性が高まるので、それが顕現化した場合は、市場の不安定化を通じて実体経済とか、金融システムに悪影響が及ぶことにつながりかねないわけです。また、金利の低下に伴い資産運用が困難化するリスク、あるいは金融機関の収益が低下すること等を通じて、金融仲介機能に与える影響も懸念されるということもあります。』

うむ。

『いずれにしても国債の需給に影響を与えることでイールドカーブ全体を引き下げ、金利低下を促すことを狙った政策ですので、私どもが「量的・質的金融緩和」を導入した当初から市場に影響を与えることは十分認識していたところです。』

そらまあそうですな。

『そうしたことで、導入当初の公表文でも色々明記しているように、買入れを進めるに当たっては、市場参加者との間で、市場調節ですとか市場取引全般に関して密接な対話を行ってきました。また、オペ運営も柔軟化していますし、国債補完供給制度の実施条件を緩和するといった対応を行ってきています。』

まあそういう事になっているのだが補完供給制度をジャンジャン使えるようなものではなくてどちらかと言えばスティグマ付という状態になっているのは変わらないと思いますけどね。

『これからも新たに実施する債券市場サーベイを活用するとか、債券市場参加者会合を定期的に開催していくとか、そういうことで対話をより密にしたいと思っています。まずサーベイで市場をより詳細に分析、点検して、対話もより深めていきたいと思っています。』

まあどう見てもただのアリバイにしかならないと思いますけどね。

『そうしたもとで、国債市場の流動性について、特に取引量も含めて、流動性が極端に低下している状態とは思っていません。それから、金融仲介機能ですとか、資金運用の問題についても、何か大きな問題が起こっているとはみていません。』

・・・・・・・・・えーっとまあそらいきなり凄まじい問題が噴出するような状態とはアタクシも思いませんけれども、こういう形で纏められると「ああ状況が伝わってませんなあ」というのが見えてきて、それはそれで含意のある話だなと思います。

つーかですね、この前も蒸し返しましたけどリーマンショックの後にカウンターパーティーリスク(に伴う取引執行リスク)を意識した動きが強烈になって利下げしたのにGCレポレートが上昇してCP金利に波及して大概に悲惨な状態が続いたのですが、その間の日銀の腰の重さったら全くもう何なんだよという所でございましたが、森本さんの示す認識を見ますと「ああ昔も今も変わってないなあ」というお話でして、インターバンクのところだけは日銀ちゃんと認識しているのですが、そこから先のオープン市場とかさらには債券市場とかに関しての認識能力が相変わらず低水準だなあ(MOFの理財と比べると正直月とスッポンレベル)と思いますし、この調子で出口政策できるかよ(そういやうっかりネタにするのを忘れていたので明日から投下しますがFEDの出口政策へのテストをエライ細かくやっているのよね)と思いますよ。

『いずれにしても、私も本日の懇談会の中で申し上げたように、こういったリスクの顕現化を止める、あるいは最小化する努力は、我々としては、全力でやらないといけないと思っていますので、今、そういったことで、市場の分析ですとか、対話をより密にしていきたいと努力をしている段階です。』

市場との対話と言っている時点でまあ中々ねと。対話じゃなくてまずは聞くことなんですけどね。


○佐藤審議委員が講演をしておりますな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150211a1.pdf
デフレ脱却に向けた日本銀行の取り組み
(第7回日本証券サミット<ロンドン>における冒頭発言の邦訳)

例によって面倒なので邦訳の方をネタにします。本文は3ページ少々なのでサラサラと。

『日本経済は、家計部門・企業部門とも所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと作用し、基調的に緩やかな回復を続けており、先行きも緩やかな回復基調が続くとみられる。前月の中間評価における政策委員見通しの中央値は、原油価格下落や政府の経済対策の効果等もあり、2015、2016年度とも成長率が10月と比べて上方修正となっている。』

ほほう。

『一方、物価面をみると、最近の原油価格低下を受け、日本も含め、主要国のインフレ率は軒並み低下傾向にある。こうしたなか、主要国の中央銀行はインフレ率の低下が人々の中長期的な予想物価上昇率に影響し、それがインフレ率の一段の低下をもたらすフィードバックループに陥るのではないかという問題意識を共通に抱えている。日本銀行が昨年10月に「量的・質的金融緩和」を拡大したのもそうした理由からであった。』

とは言え・・・・・・

『私は「量的・質的金融緩和」の拡大に反対票を投じたので、この場でこの政策を語る人間として適切でないかもしれない。』

ワロタ。

『しかし、デフレ脱却に向けた日本銀行の揺るぎない決意は私も共有している。ここでは、第一に「量的・質的金融緩和」の効果について、第二に日本銀行の掲げる「物価安定の目標」について、第三に、「量的・質的金融緩和」を最終的に成功に導くに当たり、財政健全化努力の重要性について、私の考えを述べたいと思う。』

ということで説明が始まるのだ。


・QQE拡大で債券市場の機能低下に関して言及しているのが順当ではあるがイイハナシダナー

『第一に、「量的・質的金融緩和」の効果は資産買入れの進捗とともに累積的に強まっている。』

債券市場に対する効果が副作用状態になっています、という点についてこの後に指摘があるのが佐藤さんらしいところです。

『日本銀行は、年間約80兆円に相当するペースで長期国債保有残高が増加するよう国債の買入れを行っている。年間約80兆円という額は、政府の新規財源債の発行額を大幅に上回るが、これは最終投資家の国債保有残高の減少を意味する。もっとも、日本の機関投資家は、国際的な金融規制に対応するなか、国内において貸出など他の投資機会が不足していることもあり国債への選好が強い。』

ということで・・・・・・・

『このため、日本銀行による大規模な買入れが続くなかで、その金利形成面への影響は「量的・質的金融緩和」拡大以降一段と顕著になっている。』

(・∀・)キタコレ!

『実際、イールドカーブは中期ゾーンが一時マイナス化したほか、超長期ゾーンも大幅に低下するなどフラット化が更に進んでいる。一方、このところ、金利のボラティリティの高まりがみられる。私としては、こうした金利形成が、政策効果として、様々な資産価格や投資家の資産配分に及ぼす影響を注視している。一方で、広義の決済システムを含めた金融システムの安定性や市場機能などに影響をもたらさないかどうか、副作用も注視している。』

(;∀;)イイハナシダナー

『日本銀行が現状、グロスベースでみた市中発行額の約9割の国債を買い入れていることから、やや長い目でみて、「量的・質的金融緩和」が出口を迎える際には、市場の価格発見機能の円滑な回復が課題となろう。』

まあしかし先ほどの森本さんの会見で示されておりますように大本営参謀の上げてくる市場の認識がアレという時点で課題は解決しないまま出口に突入することになるんでしょうなあと思うのでございました(出口が無いというツッコミは置く)。


・物価安定目標に関する説明はいつもの佐藤節であるが執行部に砲撃

『第二に、「物価安定の目標」の達成状況の評価について、私は、特定の物価指標に着目するのではなく、賃金を含む幅広い物価指標を丹念に点検していくなかで、企業や家計など人々の行動様式がある程度の物価上昇を前提としたものに変化していくかどうかが重要と考える。』

それこそが期待インフレのシフトを見るという事ですな。

『もとより人々の中長期的な予想物価上昇率を計測する決め手がない以上、長期にわたり欧米対比で低位にあった人々の中長期的な予想物価上昇率が上方にシフトしつつあるかどうかは、幅広い経済主体の行動様式などから定性的に判断していくほかはない。』

「人々の中長期的な予想物価上昇率を計測する決め手がない以上」「定性的に判断していくほかはない」とは全く同意なのですが置物直線一気BEI理論を盛大に棄却しているのが実に素敵(^^)。

『その点、デフレ下で顕著であった家計の極端な低価格志向はかつてほどではなくなり、企業の価格設定行動にも前向きな変化がみられる。何よりも重要なのは、デフレ下で大方忘れ去られていた物価上昇率に応じた基本給の改訂という賃金決定の基本的なメカニズムが労使交渉の場で復活しつつあることである。基本給は上がらないものという人々のデフレ下の固定観念に風穴があけば、人々の中長期的な予想物価上昇率に好影響が及ぶ可能性がある。』

なお極私的アネクドートでは最近価格設定が徐々に弱気化しているようにも思える(たぶん高額品のようなものは高いのでしょうからコモディティ化した商品との2極化なんでしょうけど)し、賃金に関しても別にこう全体が上昇するような感じにはなっていないと思うので、マクロ的に見るよりも実際はそこまで行ってないようにも思えるのですけどね。

まあいずれにせよ賃金が重要ですよという話をしておりますが、その次に賃金だけではなくて設備投資上昇(とそれに伴う生産性の向上)の重要性を指摘しています。

『加えて、私としては、「物価安定の目標」実現には、幅広い主体の構造改革努力を通じた生産性上昇とそれによる潜在成長力向上も必要と考える。そうしたもとで緩やかな物価上昇が生じ、生産性に見合う賃金の改善が持続的に進むことで人々はデフレ脱却の恩恵を享受できるようになるであろう。生産性上昇の鍵を握るのは設備投資であり、最近の労働市場の逼迫などが企業行動の変化の呼び水となることを期待している。』

ということで。


・そらまあこれだけやっているのですから財政再建もちゃんとやってほしい訳で

『第三に、「量的・質的金融緩和」を最終的に成功に導くうえで、財政運営への信認確保は重要である。この点、2013年1月の共同声明では、「政府は、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」とされている。2015年度の予算案をみても、政府は財政健全化の努力を続けているものと理解している。』

消費増税は先送りするわ、おまけにジンバブエも裸足で逃げ出す珍理論を唱える人を次期審議委員候補としてノミネートしていますけれどもね!!!!!!

『日本銀行による国債買入れは金融政策目的であり、財政ファイナンスではない。』

あーかコーナー!早稲田大学政治経済学部所属!ジンーバブエーーー(略)

『そうした日本銀行の説明が説得力を持ち得るのは政府の財政健全化努力があるからである。仮にそうした努力に市場が疑念を持てば、リスクプレミアムの拡大から「量的・質的金融緩和」の効果が損なわれる可能性がある。』

ジンバブエ理論によりますとそういう事は起きないそうですが是非政策決定会合でその辺の議論を行っていただきたいものです、って佐藤さんが頭痛を起こすだけですかそうですか(−−;

『リスクプレミアムが一旦拡大すればその制御は困難である。日本銀行の大規模買入れにより、国債市場でリスクプレミアムが拡大する余地は乏しいとの意見が一部の市場参加者から聞かれるが、リスクプレミアム拡大の可能性は国債市場に限られる訳ではなかろう。』

さらっと言っているけどこの「リスクプレミアム拡大の可能性は国債市場に限られる訳ではなかろう」というのは仰る通りでございます。

『政府の財政健全化に向けた取り組みは、やや長い目で見て、「物価安定の目標」を安定的に実現し「量的・質的金融緩和」からの出口を探る際にも、同様に重要になってくると思われる。今後も、持続可能な財政構造の確立に向けた取り組みが着実に進められることを期待している。』


・最後に改めてQQEの説明をしている中に執行部砲撃成分も

『「量的・質的金融緩和」は名目金利を国債買入れにより抑えつつ、人々の中長期的な予想物価上昇率の引き上げを図ることで実質金利を押し下げるという難度の高い政策である。』

置物先生によればMBを拡大すると自動的にインフレ予想が高まってその時に長期国債を大量に購入しているからフィッシャー効果を相殺して結果として実質金利が下がれるという実にこう簡単な政策っぽい説明になっているのに対してこの説明は良いイヤミですな。

『これまでのところ、資産市場をはじめ、家計や企業の行動様式に前向きな変化が生じるなど「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しているとみている。日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に維持するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続することとしている。また、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行っていくこととしている。』

まあこれは良いとしまして。

『私としては、先に述べたように、人々の行動様式がある程度の物価上昇を前提としたものに変化していくかどうかが、その際の判断の基準になると考えている。』

ということで、「人々の行動様式を見て定性的に判断」というあたりがポイントになっていますね。

#つーことで講演会見ネタだけになってしまいましたです、なお今日は3M入札で明日は5年入札が色々と味わいがありそうですな




2015/02/10

お題「市場は落ち着きませんなあ/森本審議委員講演は最後の方に来ると味わいが」

水曜日が休みだと疲れがたまらなくてヨロシですな。

○例によって市場俺様メモ

・短国買入応札増加とな

短国買入はまあ順当に2.5兆円のオファーでしたがその結果はこちら。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150209.htm
国庫短期証券買入 62,955 25,001 0.001 0.005 32.6
(短国買入分だけ引用しました)

ということで2.5兆円のオファーに対して6.3兆円の応札となりまして、前回の短国買入(1/30オファー分)が2.5兆円オファーに対して4.1兆円の応札でして、単純に計算すると4.1兆円から2.5兆円吸い上げとなったところなので先週の入札によって応札玉が4.7兆円増えた格好になっておりますな、うんうん。この間に3Mと6Mの新発債の入札がありましたので、入札そのものは5.7兆円+3.5兆円入っております。

ちなみに同じような雑な計算をすると、1/30の週って前週対比で応札玉が3000億円ほど減った計算になっておりまして、この時は3Mの入札が1本ありまして5.7兆円の供給があったのですが、短国買入への応札玉は増えていないという格好。

今回の短国買入の場合は直近の3Mは100円案分4割とかなのでそこそこ投資家に入っていると思う(1/30の週の3M入札は3週間ぶりに100円案分になったので同様に投資家に入っている分があるはず)のですが、結局6M新発をマイナス水準で足切にしてしまっている結果としてこの分が投資家にろくすっぽ嵌らずに浮いている状態だったので応札がどどーんと増えたという事と思料されまして、相変わらずの短国買入クオリティは平常運転であるというお話。

しかしまあ何ですな、別に普通に投資家が参加できる利回り水準で推移させれば応札がどどーんと増えることもないと思うのですが、プライマリーで投資家を排除してオペの応札が増えて今日も買入が出来たよやったねパパ明日はホームランだ(古くて若人は知らんか)とか最早何のために短国買入やっているのかよくわからんので、面倒だから短国についてはMB維持に必要な残高になるような買入を発行額プロラタで逆算してその分だけ入札時に市中公募減額して普通に入札してその分平均落札価格で日銀引受してくれればいわゆる一つのオペ狙いトレードの人以外皆さんハッピーになると思うのですけどねえ、って毎度申し上げてますが改めて。


・長い方はまた超長期が弱いとな&金曜戻った中短期は行ってこい

でまあ昨日の債券市場でございますが、雇用統計ヒャッハーで結局金曜の上げは何だったのかという展開になって、朝から全般弱めで推移しておりましたが、超長期20年がまたまた親の仇のように売り込むの巻で軟調推移。まあ単純に超長期が主戦場状態になっているので、要は先物やら10年やらの値動きよりも相場全体の動きという意味では超長期ですよという話ではあるのですが、しかしまあ毎日ボラが高い事よという所で。

何気にチャーミングだったのが中短期で、まあ5年とか最初から重めに推移していたからそんなもんちゃあそんなもんなのかも知れませんが、金曜日には6M短国の入札が強い結果になった辺りで強めになっていた2年とかもあっさり味で金曜の戻りをお返しする辺りが何とも。短国買入の結果がレートはともかく応札が盛大に増えていた辺りが影響しているかどうかは知らんですけど、まあそういうことにしておくとお話としては面白いところではありますな。

まーいずれにせよ中々落ち着かない相場ちゃんではありますが、一つには1月追加緩和(特に最後の方に出てきた付利下げネタ)の思惑でヘッジポジションみたいなのが積みあがってしまったことと、それに加えて1月展望レポート中間レビューでの総裁の説明やロジック展開が10月追加緩和での動きと全然違うじゃないかという話になってしまい、それまでが「遅くとも4月の展望レポートまでには追加緩和待ったなし」だったのがいきなり「4月の追加緩和の可能性はなくなったし下手したら10月展望レポートまで判断を引っ張るつもり」となった上に、政府の方が急に追加緩和不要的なトークをしてくるので、それまでが追加緩和待ったなしという状態だったのが急に金融政策に対する見方が変わったからという話っすな。

しかしまあ何ですな、たかがこの程度(というのかどうかは人によって見方違いますけど)の思惑の揺らぎでこの相場変動ということですので、より真面目な話としてたとえば「QQEの2年で達成の看板が長期化される(=その結果買入残高拡大ペースをスローにしてQQEの長期化ができるようにする)」とか「とりあえずデフレ脱却宣言をして大勝利モードにして勝ち逃げモードになる」とか、あんまり期待できないけど「原油があっさり戻って物価がホイホイ上昇する」とか、まあその手の本当の本当に現在のQQEのフレームワークの見直しという話になった場合に債券市場がどういう反応をするのかというのを考えますと大変に素敵な事しか思い浮かびませんな、ナムナム。

でまあその一方でそういう市場云々に関しては思いっきり無責任な素人としか思えないような「国債発行残高が1000兆円あるのだからもっと国債は買える」的なお方が審議委員に就任するというような流れ(まだ確定じゃないけどまあ就任するでしょ)になっているというのがこれまたお洒落としか申し上げようがない訳で(まあ素人の前にジンバブエ理論の方が凄いのだがそれはさておき)、何ちゅうかこう「家に帰るまでが遠足」な金融政策について帰宅が出来ないのではないかという気がだいぶしますな。


・・・・・・なお、念のため追加しますと、実際問題として「経済が好転して物価が本当の本当に安定的に物価目標達成が見えてくる」というような状態でしたら出口政策ってまあそうは言っても何とかなるように思えるのですが、それよりも問題は「ダラダラとQQEを継続した結果として目標達成の前に出口政策を強いられる状態」だとは思いますが、そうは言いましても米国様でもtaperingトークで金利上がって瞬間景気に悪影響出ていましたので、判断というのも難しいのですけどね(=taperingトークで金利が上がった結果景気が腰折れするのであればそもそもトークの判断が早すぎたという事になりますが、米国の場合は結局そのトーク入れる判断が早すぎたという事ではなかった(ただし遅すぎだったのかはまだ分からない)という話ですからね)。


○森本審議委員講演は最後の部分に味わいが

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150209a.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 千葉県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

再任などという罰ゲームはあり得ないと思うので多分最後の金懇になるんでしょうかね。森本さんは最初の金懇会見でやや不用意な言葉尻をヘッドラインにして森本ショックとか言われてしまってその後発言が超慎重になってしまったのが残念な上に、その後は出身母体が震災でアレという事になってその点でも発言に気を使っていたように見える(実際どうかは知らんけど)のが外野的にはちと残念なところではありましたな。

でまあたぶん最後の金懇なのでやや長めに引用しましたが見どころは大体最後のところに集中しております。


・経済見通しについては概ね執行部見解通り:海外について

ということですので概ねその辺は流しますけど海外経済について。

『こうしたもとで、海外経済は、新興国経済の回復にばらつきはみられますが、先進国を中心に全体として緩やかに回復しています。先行きについても、先進国が堅調な景気回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及する中で、緩やかに成長率を高めていく姿を見込んでいます。1月に公表されたIMFによる世界経済の成長率見通しは、昨年10月時点の見通しから下方修正されましたが、2014年実績である+3.3%から、2015年+3.5%、2016年+3.7%と、緩やかに高まっていく見通しは維持されています。』

まあこの辺の海外見通しに関しては政府も日銀もだいたいこんな話をしておりますので特段変わった話ではありません。

『主要国・地域別にみると、米国経済については、良好な雇用環境に加えて、大幅なガソリン価格の低下もあり、個人消費は堅調に推移しています。また家計部門の好影響が企業にも波及し、企業活動のモメンタムは確りとしており、景気の前向きな循環が維持されるもとで、しっかりとした回復を続けるとみられます。』

米国は強め。

『欧州経済については、債務問題に伴う調整圧力が残り、低インフレが長期化するリスクやウクライナ・ロシア情勢が実体経済やマインド面に与える影響に注視していく必要がありますが、個人消費の底堅さなどに支えられ、ごく緩やかながらも回復を続けると考えられます。なお、低インフレが継続するリスクに対し、ECB(欧州中央銀行)は、1月下旬に各国の国債等を買入れ、市場に大量の資金供給を行う資産買入れの拡大1を3月から開始することを公表しており、今後の景気や物価への効果の波及を見極めていきたいと思います。』

欧州は底抜け脱線ゲームにはならないでしょうという見通し。

『中国経済については、投資や生産面に減速感がみられるほか、不動産市場の調整が長引く可能性や、政府が構造調整を優先する姿勢にあることから内需減速にも留意が必要です。もっとも、新常態(ニューノーマル)への移行を見据え、金融面を含めて時宜に応じた政府の景気対策が導入されてきており、先行きは成長ペースをやや鈍化させながらも7%程度の安定成長が続くとみています。その他の新興国・資源国経済については、国・地域によるばらつきはありますが、先進国の景気回復の波及と、緩和的な金融環境を受けた内需の持ち直しから、成長率を緩やかに高めていくと見込んでいます。但し、新興国市場を取り巻く金融資本市場の動向次第では、成長に勢いを欠く展開が続く可能性もあります。』

ということで金融資本市場の動向次第では云々という最後の部分がほほうという所で、要は米国の金融正常化サイクルの中で新興国経済の成長が弱いままで推移する可能性がありますよという認識ですな。

ただまあ直近では世界経済の成長ドライバーが大体米国になっておりますので、新興国があばばばばーでも成長鈍化程度ならそこまでの悪影響はないでしょとかいう話になるのでしょうかね。

『今後、米欧経済の回復ペース、FRB(米連邦準備制度理事会)やECBの政策対応と波及効果、ウクライナ・中東情勢等の地政学リスクなど、先行きのリスク要素は多岐に亘っており、幅広い視点から十分な目配りが必要と考えています。』

とまあここまでが海外。


・経済見通しについては概ね執行部見解通り:国内について

これまた概ね執行部通りですけど途中から引用しますね。

『需要項目別にみると、個人消費は、雇用・所得環境が引き続き改善する中で、家計支出も持ち直しつつあり、基調的に底堅く推移しています。また、設備投資は、高水準の企業収益もあり、企業の前向きの設備投資スタンスが維持されるもとで、緩やかな増加基調にあるほか、輸出は、資本財等の米国向けやNIEs向けを中心に全体として持ち直しています。こうした内外需要のもとで、在庫調整が進捗しており、鉱工業生産は下げ止まっています。以上から、景気の前向きの循環メカニズムは、企業収益や労働需給の着実な改善を伴いながら、しっかりと働き続けていると考えています。』

ほうほうそうですか。

『先行きを展望すると、消費税率引き上げに伴う影響は全体として和らいでおり、雇用・所得環境の改善が続くもとで国内需要が底堅さを維持するとみられるほか、海外経済の回復や円安による下支え効果などを背景に、輸出も緩やかに増加していくと見込まれます。』

ほうほう。

『さらに、原油価格下落による経済への好影響も期待されます。』

キタコレ。

『わが国経済は、家計部門、企業部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムは持続していくと考えられ、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けるとみています。具体的な数値で申し上げると、日本銀行が1月に発表した展望レポート・中間評価における政策委員見通しの中央値は、昨年10月時点と比較し、2014年度の成長率は−0.5%と下振れる一方、15年度は+2.1%、16年度は+1.6%と共に上振れています。』

ということでこの辺は大本営発表通りですな。


・物価に関してもこれまた執行部通り

ですのでちょっとだけ引用します。

『当面の間、足許の円安による物価上昇圧力がある一方で、原油価格の大幅下落による下押し影響が大きいことから、消費者物価の前年比プラス幅はさらに縮小するとみられます。もっとも、原油価格の下落は、交易条件の改善を通じて、やや長い目でみれば経済活動へ好影響を与え、物価を押し上げる方向に寄与していくと考えています。先行きの物価は、当面の間、前年比プラス幅を縮小するとみられますが、その後は景気の前向きな循環メカニズムが持続し、物価上昇期待が維持されるもとで、原油安の経済活動への好影響を通じたマクロ的な需給バランス改善が見込まれるほか、原油価格の下落については前年比でみた影響はいずれ剥落する性質のものであり、次第にその上昇率を高めていくとみています。この結果、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみています。』

という見通しになっておりますな。


・森本さんの論点コーナーである

とまあこのあたりまでが前座で、次が(経済・物価見通しを巡る主な論点)というコーナー。

『以下では、先ほど申し上げた経済・物価見通しが実現していくに当たって私自身が注目しているポイントを、お話ししたいと思います。』

ほほう。で、小見出しが以下の通り。

『イ.雇用・所得環境と家計の支出動向』
『ロ.輸出動向』
『ハ.設備投資動向』
『ニ.物価動向』


・雇用所得に関してはやはり賃上げへの期待が大きい

雇用所得に関しての途中から。

『こうした労働需給の引き締まりは、賃金にも影響しており、名目賃金は、昨年春のベースアップの実施に伴う所定内給与の増加や、賞与や一時金を含む特別給与の増加を背景に改善しています。以上のような雇用・賃金動向を反映して、雇用者所得は緩やかに増加しています。』

『先行きについては、基調として潜在成長率を上回る成長が見込まれるもとで、労働需給の引き締まり傾向は強まり、所定内給与を中心に賃金に上昇圧力がかかっていくとみています。昨年12月に政労使間で今春の賃上げに向けた合意文書が取り纏められるなど、今春の賃上げに向けた動きが拡がりをみせています。』

ということで賃上げに期待で、その結果として家計支出の先行き見通しは・・・・・・・

『先行きは、一時的な下押し要因が剥落するもとで、雇用・所得環境の改善が続き、団塊の世代を中心とする高齢者の旺盛な消費意欲もあって、ごく緩やかながらも増加基調を続けるとみています。もっとも、消費者マインドについては、足許小幅の改善はみられますが、慎重さが残る点はやや気懸かりです。急速な円安もあり、生活に密着する食料品等の値上げが目立つほか、消費税率引き上げに伴う実質所得低下もあり、家計には負担感がより強く意識されているとみられ、今後の動向を注視したいと思います。』

見通しは強いのですが留保付となっていますな。なお極私的なアネクドートで言えば最近は生鮮系じゃない食品などで従来よりも値下げ品が増えているように思えまして、そういうあたりの消費の基調は弱まってきているのではないか(実質所得が下がってもお財布の状況を見てそれに気が付くまでラグがあるのが普通だと思うの)って気はだいぶしますけどね。


・輸出について

輸出である。

『先行きは、海外経済が先進国を中心に全体として緩やかに回復する見通しにあることや、円安による下支え効果などを背景に、緩やかに増加していくとみています。』

『なお、これまでの輸出の弱さの背景には、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因が相応に影響していたと考えられます。こうした要因は、短期的に解消するものではなく、先行きも相応に輸出の下押し要因として残るとみられますが、円高修正を背景に海外生産比率の上昇ペースが鈍化することなどを通じて、輸出を下押しする程度は和らいでいくとみています。最近では、生産拠点の国内回帰を検討する動きも一部にみられ始めており、今後、輸出面も含めて国内経済へのプラス寄与も期待されます。』

国内回帰が進んでウハウハですよ的な説明にはなっていないですな、もうちょっと控えめ。

『一方で、ガソリン価格の低下で北米向けの大型車は好調なものの、優位性のある低燃費車の輸出に影響を及ぼす可能性等もあり、今後の動向を注視したいと思います。』

ほほうという所で、執行部見解を踏まえつつもやや慎重ですかね。


・設備投資について

『次に、設備投資動向についてお話しします。持続的な経済成長を実現していく上では、企業収益の改善や需要の増加が、前向きな投資に繋がっていくことが重要です。足許は、企業の前向きの投資スタンスが維持される中、機械投資の一致指標である資本財総供給が持ち直しています。先行きも機械受注が緩やかながら回復傾向にあるほか、建築着工床面積も増加に転ずるなど、緩やかな増加基調を辿るとみています。』

ということですが・・・・・・・・

『こうした設備投資を支える背景としては、以下の点が挙げられます。第一に、潜在需要が大きいと窺われることです。これまでの長期間に亘る投資抑制によって設備老朽化が進んでおり、維持・更新投資などの潜在需要が顕在化しやすい状況にあると考えられます。』

ヴィンテージが高まっての話。

『第二に、円高修正が進む中、海外生産を加速するペースが鈍化しているとみられる点です。企業の設備投資計画では、今年度から国内投資のウェイトを高める計画となっています。』

国内回帰で戻るぜヒャッハーという表現でないのがチャーミング。

『第三に、政府の競争力・成長力強化に向けた前向きな取り組みなどもあって、企業の中長期的な成長期待が緩やかに高まり、国内本社を研究開発やマザー工場の拠点として再構築しつつ、戦略分野では能力増強投資に踏み切る動きがみられる点です。』

そ、そうなのか・・・・・・・・・・・・?????

『さらに、非製造業を中心に人手不足感が強まるもとで、省力化投資を進める動きも今後の設備投資の下支えになるとみられます。』

これも前から出ている話ですな。まあ基本的に控えめな説明&政府のなんちゃら部分は希望的観測というところですね。


・物価に関して

まあそんなに変わった話はないのですが、インフレ予想に関する部分の後半くらいから引用します。

『この点、金融市場のデータから得られるブレーク・イーブン・インフレ率は、世界的な低下の中で幾分低下していますが、家計・企業などのサーベイ調査でみた中長期的な予想物価上昇率は総じて維持されています。さらに、企業の価格設定行動についても、従来の低価格戦略を見直し、付加価値を高めながら販売価格を引き上げる行動は続くもと、今春の賃上げ交渉に向けて、連合では2%以上のベースアップを要求する方針を示しているほか、政労使による賃上げに向けた前向きの合意がみられるなど、企業や家計の物価観に変化がみられています。以上を踏まえ、予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみています。』

ということですが、その価格設定行動に関しては本当にそうなのかというと2極化みたいな感じになっている気がしますし、あとはもう賃上げに期待の話がここでも出るということで、結局のところこの賃金がきちんと上昇するのか、その結果個人消費がどうなるのかというあたりを見極める期間までは金融政策の次の判断は行われません、という事になるんでしょう。


・金融政策に関しては置き土産メッセージ的なモノが(^^)

で、金融政策に関してですが、後半部分の『(2)今後の金融政策運営上の留意点』に味わいが。

『昨年10月末の金融政策決定会合における「量的・質的金融緩和」の拡大については、政策委員会メンバーの間で慎重な見方もあり意見が分かれましたが、議決の結果、その実施が決定されました。慎重な見方を示した委員の考え方は、「先行きの物価見通しに対するリスクは大きくなっているとの見方は共有しつつも、経済や物価の基本的な前向きのメカニズムは維持されており、原油価格の下落もやや長い目でみて経済や物価に好影響を与えるとみられる」ことや、「金利は既に歴史的な低水準にある等、大規模緩和の導入時に比べ、期待される効果は限定的なものに止まる一方、それを上回るコストや副作用が懸念される」ということが中心でした。』

ふむ。

『コストや副作用として、市場機能の低下リスクや実質的な財政ファイナンスとみなされるリスク等を挙げています。』

イイシテキダナー。

『私自身は反対票を投じた立場ですが、政策委員会として機関決定した以上、これを早期に変更することは中央銀行の信認を損ないますので、決定された政策を適切に実行し、早期の物価安定目標の実現に繋げていくことが重要と考えています。』

まあここは判断に悩むところですがその考えもありだと思います。

『但し、政策遂行に当たっては、そのリスクの顕現化を防ぎあるいは最小限に止めるよう努力すべきと考えており、今後、以下の点に十分な留意が必要です。』

(;∀;)イイシテキダナー

『第一に、市場機能の低下リスクへの対応です。この点、市場参加者との対話を一層強化しつつ、金融市場の動向や日本銀行の資産買入れが市場に及ぼす影響等について多面的な分析やモニタリングを通じ、丹念に点検していくこととしています。また、市場と適切なコミュニケーションを図りながら、市場の状況に応じ、柔軟なオペ運営を行っていくことが肝要だと考えており、引き続き適切に対応していきます。』

まあそれがきちんとできていない(別に今に始まったわけではなくてリーマンショックの時の対応も大概だった)のが日銀クオリティなんですけどね!!!!!!

『さらに、金融仲介機能への影響にも留意が必要です。金利が低水準となる中、金融面の不均衡が蓄積される動きがないかについても、しっかりと点検を行っていくことが重要です。』

マイナス金利は政策効果(キリッ)とか言われますと不均衡が蓄積すると思いますけどね。

『第二に、財政健全化への信認の維持です。金融緩和政策を円滑に遂行する上では、財政健全化に向けた取り組みが不可欠です。昨秋の10%への消費税率引き上げの延期決定以降、日本国債の格下げが行われ、本邦金融機関の格下げにも波及しています。現時点ではその影響は限定的とみていますが、今後、政府の財政健全化へのコミットが薄れたと判断された場合には、金融緩和の効果が減殺されることに繋がる可能性があります。また、量的・質的金融緩和の出口を円滑に迎えるためにも、財政健全化への信認が確りと維持されていることが重要です。夏頃に新たな財政健全化に向けた計画が策定されることになっていますが、引き続き財政健全化に向けた政府の努力を期待したいと思います。』

まあこれはその通り。

『また、原油価格の下落が続くもとで、月々の消費者物価指数の動きに注目が集まる傾向がみられますが、今後の金融政策運営において物価動向を判断する際には、需給ギャップや予想物価上昇率、賃金などの動向を点検しながら物価の基調を捉えていくことが重要と考えています。』

(;∀;)イイシテキダナー・・・・・というか執行部に対するイヤミですねわかります。

『物価指標については、消費者物価の総合指数は勿論、生鮮食品を除くベース(コア指数)や食料およびエネルギーを除くベース(コアコア指数)、さらには刈込平均値等も含めて、総合的に点検することが重要です。いずれにしても、物価指標を点検する際には、様々な物価指数の点検を行い、その背後にある実体経済の動きと併せて、総合的な判断を行うことが適当と考えています。』

これ極めて当たり前の話で、置物リフレ理論のように物価目標達成すれば景気が良くなるはずだからハッピーハッピーみたいな話ではなくて、金融政策判断にあたっては森本さんが言うように「実体経済の動き」が重要なのでありまして、過度に物価にフォーカスするリジッドなインフレーションターゲット政策とか2周回遅れ位の話だろと思うのですが、今の執行部って(足元でややロジックを立て直した感じですけれども)2年で2%ばっかり状態が置物理論によって継続しておりましたというのに対して森本さんの方が思いっきり正論の置き土産というのが実にこう何と申しますかという所ですにゃ。

なおこの後に貸出支援基金の説明などがありますがパスします。

#多分最終回になると思ったので今日はちょっと引用を多めにしてみました




2015/02/09

お題「6M短国で中短期復活ワロタ/ブラード総裁の正常化利上げペースに関する論考とな」

リフレの方々がこんなこと言ってお元気のようですが。

http://biz-journal.jp/2015/02/post_8838.html
日銀、消費増税による深刻な課題克服に向け追加金融緩和か 無責任な素人審議委員は一掃せよ

・・・・・・・するってぇと何ですか、「BEIだけではインフレ期待を見るのに欠陥があるということを日銀に入ってから認識した」上に、「公開情報からBEIを取得する方法も知らずに「BEIはなかなか手に入らないもの」とか言いきってしまう」というような素敵な「素人」さんであり、その上「就任前には国会で『遅くとも二年では達成できるのではないか、またしなければいけないというふうに思っています』と大口を叩いていたのに達成できそうもないのに言い訳だけで済ませようとしている」というような「無責任」な方を一掃すべきですという事でしょうかねえwwwww

#てか大体「リフレ派以外は無責任な素人」ってどうするとそういう発想になるんだか

そういえばジンバブエ原田って拳闘の選手みたいで格好良い二つ名ですね(特定の方を指している訳ではありません)。


○市場雑談である

・6MTBはマイナス足切ですかそうですか&本日は短国買入

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150206.htm
(3)募入最低価格 100円00銭1厘(募入最高利回り)(-0.0020%)
(4)募入最低価格における案分比率 89.6994%
(5)募入平均価格 100円00銭2厘(募入平均利回り)(-0.0040%)

ということで100円足切とか申し上げていたらちゃっかり1つ上で厚め案分という切られ方となっておりまして、いわゆる不明玉が発行3.5兆円に対して2.2兆円ほどございまして、ふーんという所ですけれども、なかなかワロタのはこの短国入札がマイナスで切れたのを受けたのかどうかは本当のところはどうなのか知らんですけれども、中短期の気配が堅調になりまして、引けの2年は1毛強(カレントだけ、他は5糸強)だわ5年は2毛強だわとなりまして、短国入札が中短期の気配を強くした(本当は知らんが)と考えますとなかなか胸が熱い展開。

なお、売参値を見ますと新発6Mがマイナス0.9bp、1年がマイナス0.9bp、新発3Mは0.0bpで前週の3M509回債がマイナス1.3bpとなっておりますので、入札コストからの利回り差的には509回ですが、bpv加味すると6Mの方が入りそうな気もしますがよくわからん。

ということで本日はまたまた短国買入があるのですが、どうせ2.5兆円で打ってくるというパターンで来るんでしょとは思われますが、しかしまあ短国をマイナスでキープするよりもマイナスにならないようにオペを打ってイールドカーブの起点を下手に沈めないようにした方が全体的なイールドカーブの無用な沈降を防ぐことが出来ますので、輪番とかも順調に実施できると思うのですけどねえ。


・固定金利オペである&短国買入予想(というほどでもないが)

めんどいのでオペ結果の固定金利部分だけ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150206.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(2月10日スタート分) 3,600 3,600

こちらは元はと言えば固定金利オペのなれの果て(なのでオファーが1.5兆円なのですが)だったりしますけれども、折り返し元が4701億円だったのでまあそこそこの歩留りを今回も示しておりまして、この調子ですと今月ドカドカ来る予定の固定金利オペは精々1兆円程度の落ちで済むのではないかと思われるのですが、まあこればっかりは実際にオペが進まないとワカランチ会長。

でまあ固定金利オペの落ちが1兆円程度としますと、今月は10兆円ある短国買入の落ち分を普通に埋めればマネタリーベースは前月比伸びるという結果になるのかなとゆーところで、まあこの調子で2.5兆円のペースで短国買入が継続すると思われますな、うんうん。


しかしまあ何ですな、MBが目標で設定されているから仕方ないのですが、財政要因で盛大にぶれる資金需給の部分を短国買入で調整するという形になっているので、これ3月になると短国買入のフローが大きく落ちることになる事が想定されまして、そらまあ3月は期末ニーズがあるので買入が全然なくても問題ないというか無い方がアリガタヤ位の話ではあるのですが、短国買入の残高そのもの自体が市場のキャパ的には依然として厳しい状態(厳しくないのだったら金利がマイナスにならん)となっている訳なので、その状態から買入のフローがぶれるというのは、市場の価格形成的に厳しいものがありますなあと思うのですけどね。


○ということでちょっとオペ雑談とか

そういえば先週は途中で「超長期がこれだけコケているのだから輪番で超長期の増額でも」みたいな話もあったやに聞きましたが、短国市場がご案内のようにマイナス継続であばばばばーとなっているのに放置プレイとなっている現状を見ますと、そんなもん債券市場に気を使って超長期輪番が増額とかするくらいならとっくの昔に短国買入のやり方を工夫してマイナス恒常化にならないようにしているわヴォケという所で、超長期の輪番を増やしてほしいなら皆さんでせっせと超長期輪番で短い年限の所を応札して日銀の買入平均残存年限を短くするようにしないと超長期輪番が増えるとは思えんわと存じます次第。

・・・・・・・てな感じで、まあ今のオペがいろいろと微妙なのってそもそも論として「国債(と短国)買入の建付けが量を出したいのか金利を下げたいのかがはっきりしていない」からであって、それは更にそもそも論で言えば「マネタリーベース直線一気理論」なのか「(実質)金利を下げて効果をだす」のかが不明瞭であるという事に起因すると思われます。

つまりですね、本来の建付けで言えば「MB直線一気理論で予想インフレ率が上昇する」というのがあって、それに対してフィッシャー効果で名目金利が上昇してしまいますと宜しくないので長期国債の長いところまで購入して名目金利の上昇を抑制する、というのがQQEの基本的なスタンスなのですな。

しかしながら、問題となるのはそもそも論のMB直線一気置物理論がワークしていないから最近は「実質金利」の方に話が傾斜していて、しかも予想インフレ率の方が思いのほか上昇してくれないものだから「実質金利を下げるには名目金利を下げればよいじゃないか」という話になって「マイナス金利は政策効果(キリッ)」という話になってしまい、その流れでマイナスだろうとなんだろうと無慈悲買入をすることによって「金利が下がって政策効果かくにん!よかった!」という話になってしまい、挙句の果てには付利下げだのという話まで出てくる次第。


最近だと欧州の金利がアレですのでマイナス金利ガーという話もあったりしますが、そもそも日本の場合は「現在2%でアンカーされていないインフレ期待を引き上げて2%にアンカーさせる」というのが2%物価目標達成に必要な手段でありまして、一方の欧州の場合は建付け上では「2%以下で2%に近い水準のインフレ期待」に関しては中長期的には現在アンカーされている(ただし下がる懸念あり)という状態になっておりますので、ゼロ金利制約化における実質金利の引き下げによって政策効果を出す、という政策を実施するためには欧州の場合は名目金利を下げるしかないので無理繰りマイナス金利を投下しているのであって、日本の場合はそもそもインフレ期待を引き上げる方が圧倒的に重要なファクターであることを考えますと、名目金利の引き下げをせっせと図るのが重要なのではなくてインフレ期待を引き上げる必要があり、米国にしろ欧州にしろ「インフレ期待を上げる(または下げない)」という政策は「量的緩和系の政策」で実施しているのがスタンダードであります。

とまあそう考えますと、普通に考えて付利下げとかそっちの政策って「量的緩和政策がインフレ期待に対してワークしないので金利で勝負すます」という事を意味する政策フレームワークの大転換であり、置物副総裁の置物直線一気理論の全面否定になりますので、まあ普通に無いんじゃないですかね、黒田さんのキャラクターからして。

#すいませんあんまりまとまっていませんでした


○例によってセントルイス連銀ブラード総裁の提言コーナーである

ブラードのおっちゃんである。
https://www.stlouisfed.org/publications/regional-economist/january-2015/presidents-message
Liftoff: A Comparison of Two Normalization Cycles

ということで久々にFEDネタ(すいません)ですが、相変わらず「新しいネタ」に関する新たな視点でのオモシロ提言(別にいちゃもんの意味ではない)をしているのでちょっと鑑賞。

まあ今回のは簡単なコラム(これはセントルイス連銀のいわゆる調査月報の巻頭言コーナー)でございますのでサラサラと。

・2回の「正常化局面」の比較をするとな

『Many Federal Open Market Committee (FOMC) participants have said that the policy rate (i.e., the target for the federal funds rate) should come off the zero lower bound in 2015, with the exact timing dependent on how key macroeconomic indicators evolve. Given that this initial increase would mark the start of a normalization cycle, now is a good time to review the previous two major normalization cycles to see what we can learn from them.』

過去の正常化局面に学びつつ正常化局面について考察しましょうというお話。


・1994年2月〜1995年12月に3%→6%に引き上げたケースについての説明

『The first normalization cycle for comparison began in 1994. The policy rate since September 1992 had been at 3 percent, which at the time was considered exceptionally low relative to the federal funds rate during the 1970s and 1980s. U.S. macroeconomic data indicated a strong economy toward the end of 1993. For instance, real gross domestic product (GDP) growth accelerated in the fourth quarter, job growth was slightly stronger on average and inflation was threatening to move higher.』

ここまでがその正常化過程に至るまでの説明な。

『In what was largely a surprise to financial markets, the FOMC began a normalization cycle in February 1994 and continued raising rates throughout that year.』

で、1994年2月から利上げ開始しましが・・・・・・・・

『In contrast to the second normalization cycle I will highlight, the FOMC raised the policy rate by 25 basis points sometimes, by 50 basis points other times and by 75 basis points on one occasion. Also, the policy rate was left unchanged at a few meetings.』

この時はFOMCの度に適宜利上げ幅が調整されて、ついでに利上げ見送りの回もありましたと。

『The pace was adjusted in reaction to the incoming macroeconomic data and in this sense was data-dependent, or state-contingent. The normalization cycle ended in February 1995, with a policy rate of 6 percent. 』

でまあここに「data-dependent, or state-contingent」とある時点でブラードのおっちゃんの見解が見えてまいりますがまあそういう事です(^^)。

つまり・・・・・・・・

『Financial markets generally viewed this adjustment to higher interest rates as disorderly. In fact, the bond market had one of its worst years in 1994. The 10-year Treasury yield, for instance, rose roughly 2 percentage points that year.』

この正常化サイクルはディスオーダリーということで金融市場には不評でしたし債券市場はあばばばばーになりましたけど・・・・・・・

『Despite being disorderly, the 1994 normalization turned out to be a success for the U.S. economy. The policy rate was returned to a more normal level, and the economy boomed in the second half of the 1990s-one of the best periods for economic growth in the postwar era.』

その後の米国経済が素晴らしいパフォーマンスを示したことを見ると大勝利とな。


・2004〜2006年のメジャードペースは宜しくなかったとな

で、その次。

『The second normalization cycle for comparison took place in 2004-06. The policy rate had been 1 percent since June 2003. Leading up to the June 2004 FOMC meeting, real GDP growth remained solid, gains in nonfarm payroll employment had increased in recent months and inflation had risen.』

さいですな。

『The FOMC raised the policy rate to 1.25 percent in June 2004 and continued with a mechanical pace of increase of 25 basis points at each of the next 16 meetings. Thus, there was almost no state contingency with this normalization cycle.』

メジャードペースでの利上げで「no state contingency」ときましたな。

『In terms of communication, the FOMC was more transparent regarding its expectations for future increases in the policy rate than it had been previously. This cycle ended in June 2006, bringing the policy rate to 5.25 percent.』

一方で政策に関しては透明性が高いといわれていましたよねと。

『Financial markets viewed this form of normalization as much more orderly than the 1994 case and, therefore, a success.』

とまあ金融市場には評判の良かった2004年からの正常化過程ですが・・・・・・・・

『However, this normalization cycle may have been counterproductive.』

このサイクルは良くなかったキタコレ!!!

『The housing bubble inflated even more during this two-year period as financial markets found ways to create investments in housing based on cheap financing-nvestments that ultimately proved disastrous. Although policymakers were cognizant that house prices were rising and that mortgage finance was increasing, the general view was that the air could be let out of the bubble slowly and without dramatic macroeconomic consequences. In actuality, the opposite occurred. The housing bubble burst, starting in 2006, right about the time the normalization cycle ended. House prices fell about 30 percent, and the U.S. experienced a severe recession. 』

この間に住宅バブルが拡大してそれが破裂した結果大変なことになりましたとな。

・・・・・・ではあるのですが、さすがにこの説明はちょっとこじつけ成分が強いようにも思えますが、まあ一つの考え方としてブラード総裁的に提唱しているという事ですし、本人そこまで露骨には言ってないけど「金融市場が喜ぶような正常化過程をすれば良いってもんじゃねえ」というなかなか金融市場的には痺れる説明をしている訳で、1994年タイプで正常化されると米国債券市場がなかなかワンダホーな事になるのではないでしょうかとは思います。

たぶん正常化のゴールが今回の場合そんなに遠くない筈だし、Taperingも結局はメジャードペースになっていることを考えると、ブラード総裁のいうような形になるのかも微妙ですけど、まあこのおじちゃんはオモシロネタを繰り出して議論をリードするのが好きそうな方なので、これはこれで注目しておく必要もあるかなと思ってノートしておくという感じです。で、一応結論は折衷型になっていますので最後の部分も引用(結局全文引用しています)。


・結論は「両方の利点をうまく使う」的にはなっています

『What are the lessons from these two episodes? Although the 1994 normalization cycle was considered disorderly (i.e., uneven amounts that were somewhat unpredictable), it seemed to set up the U.S. economy for success in the second half of the 1990s. On the other hand, the 2004-06 normalization cycle was considered orderly (i.e., perfectly even amounts that were generally anticipated) but, in retrospect, turned out to be suboptimal because it allowed for the continuation of speculation in housing markets and in mortgage finance.』

先ほどの説明のようにメジャードペースの正常化で金融不均衡が発生したという評価になっていますな。

『For the upcoming normalization cycle, some combination of the two-the data dependency from the 1994 case and the transparency from the 2004-06 case-would probably provide the optimal method of returning the policy rate to normal.』

いやそうは言いますが中々その兼ね合いって難しいと思いますよ。もしかしたらSEPを出して中立金利水準を示しているのが効果を出すのかもしれませんけど。



2015/02/06

お題「市場雑談メモ/原田先生に引き続き若田部先生も債務消滅理論とな/師匠の会見鑑賞会!!」

ということでなんでこうネタがある時と無い時の差が大きいんでしょうかねえ最近は・・・・・・

○市場ネタ30年国債とか中期とか

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2014/resul079.htm
(1)応募額 1兆4,716億円
(2)募入決定額 5,510億円
(3)募入最低価格 100円20銭  (募入最高利回り) (1.490%)
(4)募入最低価格における案分比率 42.2279%
(5)募入平均価格 100円74銭  (募入平均利回り) (1.464%)

ということで何故か株式市場まで注目していたらしい(らしいというのは30年国債の落札結果が順調というのが出た時に株価指数先物が盛大に戻りを試しに行っていたからそう申し上げておくのだが)30年国債入札ですが、前場の引けでのオファーサイドが平均落札になって、1.5クーポンの100円レベルの手前で止まるという結果でまずは事前に懸念されていたあばばばばー結果とはなりませんでした。

・・・・・・でまあそれは良いのですが、入札前の前場は結構調整していましたが、落札結果出た途端に先物が吹いて何故か堅調落札の超長期も戻るには戻ったものの先物の方が戻りが早いとは何事ぞとか思っていたら、時間の経過とともに超長期特に30年の気配がヒャッハーヒャッハーと強くなって前場引けでは1.465%オファーとかのレベルだったのが大引けになってみると1.350%の引け(7強)とかもうチョッピーにも程がある展開。

でもって昨日超長期も盛大に暴れましたが、まあこれは入札という要因があったからシャーナイナイとしましても、中短期の暴れっぷりが結構な暴れん坊将軍で、5年は12bpレベルとかまで盛大に叩かれた後に入札結果出た後に8.5bp辺り(でしたっけ?)まで戻って、そのあと売りが出て(そのせいで先物が引けにかけて大失速したと思われ)結局10bpレベルに戻って引けは10.5bp(0.5甘)とか中々の暴れ。

更に貫禄の暴れを示したのがなぜか2年でして、前日引けの3bpに対して朝からやたら弱くて前場に前日比利回り2ばい2ばーい以上の6.5bpまで金利が上昇し、超長期落札発表後にはいったん3.5bpレベルまで戻ったものの、その後また叩かれて5bpレベルとかになる(引けは4.5bpで1.5甘)とかジェットコースターにも程がありますし、そのゾーン普通ヘッジできないからこんな凶悪な動きをされたらマーケットメーカー死ねるわ。

なお、この次に申し上げますが、実際には後場の中短期の戻りは超長期の落札結果よりも3M短国が事前のトークよりも強くて100円で切れたので中短期安心感が出たという話もあったりしてまあ謎ではありますわ。


てな感じで、まあとりあえず日銀トレードヒャッハーだけの相場から一転していろいろとオモシロ展開(というかこれだと面白くない人も続出してそうですので不謹慎ですかそうですか)になっておりますが、一応30年国債入札は順調に終了して相場は戻った形になっていますが、これだけ動きがチョッピーですとまだまだ落ち着いたとは言いにくいとゆーところですかね、よー知らんけど。


○市場ネタ:短国とかオペとか

よく考えたら今日は6MTBの入札なので短国買入は月曜に実施されるんでしたすいませんすいません。

で、昨日の3M

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150205.htm
(3)募入最低価格 100円00銭0厘0毛(募入最高利回り)(0.0000%)
(4)募入最低価格における案分比率 44.8519%
(5)募入平均価格 100円00銭0厘4毛(募入平均利回り) (-0.0015%)

昨日は駄文の方では100円足切でしょとか申し上げておりましたが、直前にはプラス利回りの可能性もありそうという話にはなっていましたので、100円4割案分は何となく強いという評価になって、そのせいで先ほど申し上げた中短期の利付債の戻りが出てきたという話もあるのですがよくわからん、つーか短国と利付は別世界の面もある(同じようなモノという動きをする場合もありますけど)ので、そこでそんなに戻すのかよとも思いますが。

・・・・・・・・まあ何ですな、昨日の短期(というか2年カレント)ゾーンの大暴れぶりを見ますに、さすがにこの動きでマーケットメーカー(最近は一般的に2年くらいも短国も同じカテゴリーに入れられてることが多いわな)がリスク許容度落としていて、今更日銀トレードヒャッハーでも無いだろとなり、その一方で在庫はある程度持たないといけない、となりますとそらまあ100円にドカンと札入れて案分狙って余ったら日銀トレードヒャッハーなどと言っている場合でもないということで、必札分だけを上に入れて後は100円以下で札を流した結果アベレージが上になったんでしょうかね、よー知らんけど。

でまあ一部体力のある人がいたのか、銀行業態さんあたりでマイナス利回りじゃなかったら担保だバランスシートの調整玉だとしてニーズがあったのかは知らんけど、まあそういう人たちが100円に札を入れたので上記の結果になったという感じでしょうかね、まあただの推測ですけど。

さてさて本日は短国6Mの入札がありますが、なにせ6か月ものと言えば四半期末を2回通過できるという夢のような素敵な商品でありまして、発行量が3.5兆円しかない(3Mは5.7兆円な)となりますとまあ普通にニーズを集めて100円足切ですかそうですかという所で、月曜の短国買入が目先の注目材料となりそうですな。


ところで固定金利オペ。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150205.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(2月9日スタート分) 2,160 2,160
(固定金利オペの結果のみ)

これは2360億円のロールで、2160億円入っているので結構順調な歩留りになっておりまして、昨日はシグナル以外の細かいのが残高落ちるかねとか勝手な予想をしたらこちらも順調な歩留りでして、このオペの歩留りが良いと短国買入に掛かる負担が軽くなるのでニッコリという所ですな、うんうん。

以上市場雑談メモでした。


○原田先生に加えて若田部先生の珍理論コンボキタコレ!

原田先生に加えて若田部先生も「日銀が国債を買うと政府債務が消滅」という珍理論を展開していまして、都の西北方面には何か瘴気でも漂っているのではないかと申し上げたくなる次第なのでございますが早稲田の政経の経済出身の方のご見解をお伺いしたい。

http://www.asahi.com/articles/ASH1V5GGDH1VULFA024.html
日銀法改正でアベノミクス再起動 若田部昌澄・早大教授
聞き手・福田直之
2015年2月5日09時17分

・原田先生のジンバブエ理論と同じ話もあるのですがその前の話も大概にアレ

ということで色々とツッコミどころはあるのだが金融政策の効果に関する説明もかなりアレなので鑑賞しましょう。

『「日銀の金融緩和には基本的に賛成だ。日本経済によい影響をもたらしている。緩和でまず株や不動産といった資産価格が上昇する。人々が物価が上がると思うようになり、消費と投資が増える。そして輸出が増える。そうした経路が予想通りに来ている。就業者数が増えて、失業が減って、企業倒産件数が減っている。株高と円安は金融緩和の直接的な結果と言え、経済全体により影響を及ぼしている」』(上記URL先より、以下同様)

金融緩和の効果が前向きの循環として効いてきているとのご解釈ではあそうですかという所ですが・・・・・・

『「アベノミクス全体で見た場合、財政は3分の1、金融は3分の2を牽引(けんいん)していると思う。さすがに今、金融政策が効いていないというのは難しいだろう」』

・・・・・・・えーっとすいません、財政政策と金融政策での牽引が100%でしたら先ほど仰せになっておられました前向きの循環は働いていないと思いますけど。自律的な成長拡大サイクルに入っていないのであったら単なる一時的なカンフル剤あるいは未来から力を前借りしてくるドリンク剤みたいなもんで、その効果を捕まえて「効いた効いた」と言われましても、それは無いよりはマシ程度の話にしかならないと思いますけどねえ。


・物価は貨幣的な現象じゃなかったのでしょうか??????

しかしこの先生の説明の一番のアレは直線一気置物リフレ理論を擁護しようとしてものすごい勢いで過去のリフレ理論と全然違う話をしているところ。

『――日銀が掲げる2年程度で2%の物価上昇率を実現するという物価目標はどうご覧になっていますか。

 「達成するのはかなり怪しくなってきた。ただ、それは日銀自身だけではなく政府の問題が大きい。昨年4月の消費増税による景気低迷が大きな足かせになっているからだ。消費増税の影響で2015年度の成長率はマイナスになりそうだが、それがなければもっと良い数字になっていただろう」』

>それ(物価目標達成の遅れ)は日銀自身だけではなく政府の問題が大きい
>それ(物価目標達成の遅れ)は日銀自身だけではなく政府の問題が大きい
>それ(物価目標達成の遅れ)は日銀自身だけではなく政府の問題が大きい

・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいません確か置物リフレ理論によりますと「物価は貨幣的現象であるから、物価は金融政策で対処する問題であり、他の要因を理由にしている(当時の)日銀は無能で屑であり、今すぐ置物リフレ理論を用いてインフレ目標を金融政策のみで達成すべし」だったと思いますけれども、実際にMB直線一気置物理論を投下して大口叩いた達成期限になったら消費増税ガーに政府の政策ガーですかそうですか。


・政府と日銀の共同文書の建付けも否定していますね!!!!

『「本当にコミットメント(公約)を強めたいのならば、元々のアベノミクスの基本文書である政府と日銀の共同声明を強化して、具体的に法律にしてしまうのが一つの方法だ。その次は、年来の課題となっている日銀法に物価目標を正式に入れ込む改正をすることだ」』

ご高説によりますと金融政策だけで達成できない場合もある物価目標なのですが、それを法的に義務付けるって無茶苦茶でござりますがな。

『「ただし、デフレ脱却には政府の責任が大きい。これらは安倍晋三首相が主導権を握って進めるべきだ。アベノミクスを再起動するときに、そういう『レジーム・チェンジ(体制転換)』的なことを強化する手立てが必要だ」』

えーっとすいません。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122c.pdf
「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」

を見ましてもデフレ脱却に関しては日銀の責務であり、政府の責務は持続的な経済成長をもたらす成長力の強化や構造改革、財政の長期的な持続可能性の構造構築ということになっておりますが、いつの間にデフレ脱却が政府の責任になったのでしょうか?????それに今申し上げましたけど、人の責任によって決まる物価目標の達成可能性に対してなんで日銀が法的に責任取るような制度を作らないといけないのでしょうか??????


・都の西北に漂う珍理論再び

なお他にもツッコミどころがあるような気がしますが、この後に本日は師匠会見というメインイベントがございますので適当に切り上げて早稲田大学政治経済学部に漂う瘴気もとい珍理論の説明を鑑賞しましょう!!!

『――国内総生産(GDP)比240%の政府債務残高は重荷になります。

「財政の話をするときに見過ごされている観点がある。日本政府が持っている資産から国債残高などの負債を差し引きすれば、純債務は13年度で490兆円。仮にこれまでと同じペースで増えたとすると、14年度は530兆円弱だ。』

なるほど。

『もちろん政府資産は全部は売れないとしても、巨額だし、売却やリースが可能なものも多額に上る。』

・・・・・・・・ここは一応好意的に解釈すると聞き手の人が変に端折っているから一瞬ビビるのですが、政府資産を削減して国債も削減しようという話のようです。もちろん余計な遊休状態になっている政府資産と国債の両建てを落とそうというのは分かりますが、政策遂行に必要な政府資産は売却とかリースとかできませんなと思いますけどまあここまでは良い。

『そのうえで、政府と一体と考えられる日銀が持っている国債260兆円は国のバランスシートから落とせる。』

>政府と一体と考えられる日銀が持っている国債260兆円は国のバランスシートから落とせる
>政府と一体と考えられる日銀が持っている国債260兆円は国のバランスシートから落とせる
>政府と一体と考えられる日銀が持っている国債260兆円は国のバランスシートから落とせる
>政府と一体と考えられる日銀が持っている国債260兆円は国のバランスシートから落とせる
>政府と一体と考えられる日銀が持っている国債260兆円は国のバランスシートから落とせる

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2015/ac150131.htm/
営業毎旬報告(平成27年1月31日現在)

まあ確かに日銀はバランスシートに国債260兆円を持っていまして、日銀と政府を統合して考えてみれば政府の発行している国債残高とこの260兆円部分が両建てになっておりますので、それを落としても結構なのですが、そうなりますと日銀バランスシートの負債サイドにあります「日銀当座預金」と「銀行券」の部分(他もあるけど大きいのこれね)はどうなるのでしょうか????????????

この後の若田部大大大先生の説明だと「負債は270兆円弱」という説明をしておりますので、どうも(銀行券は還流しない限り永久負債という風に考えれば実質上は負債というより資本みたいなもんだとも言えますが)185兆円ほどあります所の当座預金に関しては踏み倒す以外に消滅させる方法はないのでして、つまり若田部大大大大大先生の理論は「民間保有資産の強制接収を行えば政府の債務が減ります」と言ってるのと同じなのですけど、窃盗現行犯タイーホとかチャチなレベルではない壮大な構想に思わず頭がクラクラしてしまいます。

一応そのあとを鑑賞しておきましょう。

『政府が利子を払う相手は日銀になるので、日銀はそれを納付金として国庫に納めるだけになる。そうすると負債は270兆円弱でGDPに対して57%ぐらいだ。だから、日本では財政破綻(はたん)が誇張されすぎている感じがする」』

ということで「負債は270兆円弱」と思いっきり仰せになっておりまして、結局のところ原田大審議委員候補者様の仰る「日銀はタダで国債を買っているので日銀が国債を買うと政府債務が消滅する」というジンバブエが裸足で逃げ出す珍理論と同じような話をしているのが分かると思います。

・・・・・・・ちなみに超余談になりますが、この若田部先生様の珍理論自体はゴミにも程がありますが、この論法で参考になるのは、いわゆる「銀行券ルール」には妥当性があるという話がこの論法から導かれる訳ですよ。つまり、統合政府という意味でみた場合に、発行銀行券の底溜り分を永久無利子負債として、見なしの資本的性格のものだと考えれば、日銀が発行銀行券の範囲内で保有する国債に関しては銀行券見合い部分なので、実質的には統合政府の純債務と考えなくても済むという話であり、それを超えて保有する分においては財政ファイナンス部分であって、統合政府の純債務の政府から日銀への付け替えにすぎないという話になると思いますがどうでしょうかね。

まあそんな余談はともかく、日銀当座預金を踏み倒さないとすると国道とかが日銀当座預金の見合いとして民間金融機関に譲渡されるとなるのかも知れませんが、そうなると民間金融機関は預金者などへの預金支払いの原資を賄うために国道に関所作って通行料を徴収するとか、戦国時代もビックリの群雄割拠の時代が到来するのかもしれませんね!!!!!!!!!1111



○師匠の会見がお笑い劇場というよりは最早恥ずかしいというレベルである件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1502a.pdf

質疑応答自体はそこそこあるのですが、その中でもアタクシ的にアレとしか思えない3つの質疑応答をネタにしたらそれだけでものすごい量にwww


・2年の定義が盛大に変わっている件について過去のご高説と比較対照の巻

途中の辺りから参りますかね。

『(問) 副総裁はかねて「量的・質的金融緩和」の柱として、2年で2%達成への強いコミットメントと、それを具体的に行動で示す、と一貫して説明してこられたかと思います。その点、1月の展望レポートの中間評価では2015年度の物価の見通しの中央値が+1.0%になり、2年での達成は難しく、2%の達成には3年かかるようにみえます。』

そうですね。

『QQEは2年という具体的な期限を明示したことが政策の効果や信頼性を高めたと思うのですが、2年で2%のコミットメントが現状揺らいでいるということはないのでしょうか。原油安が理由ということであれば、2%のコミットメントが守れなかったとしても具体的な行動は必要ないというお考えなのでしょうか。』

これは助け船のようで泥船を出すという質問。

『(答) 「2年程度」の点については、今のところ中央値では「2015年度を中心とする期間」という2年程度の幅におさまっていると思っています。2年程度で、できるだけ早くということには変わりはありません。』

・・・・・・・ほうほうそうですか。ところで副総裁任命の同意を求める際の国会での説明はこうなっておられましたよ。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/002018320130305012.htm
第183回国会 議院運営委員会 第12号(平成25年3月5日(火曜日))

幾つかございますけど先ずは質疑冒頭の御法川信英委員(自民党)の質問に対する答えを引用しましょう。

『○岩田参考人 達成の期間ですが、一般に、私はインフレ目標採用国の研究をずっとしているんですけれども、そこでは、ミディアムタームと英語では書いてあって、中期的と書いてあって、それで、それのいろいろ研究をした研究書などでは、実際には一年半から二年で大体その目標圏内にきちっとインフレ率が維持されているということであります。』(上記2013年3月5日での国会発言より以下暫く同様)

>一年半から二年で大体その目標圏内にきちっとインフレ率が維持されているということであります
>一年半から二年で大体その目標圏内にきちっとインフレ率が維持されているということであります
>一年半から二年で大体その目標圏内にきちっとインフレ率が維持されているということであります

で、その続き。

『ですから、私も、それが標準的なスタンダードだということで、ただ、日本の場合、非常にデフレが長くて、デフレマインドがもう定着しておりますので、これを金融政策である程度マイルドなインフレに転換することが必要ですので、今言った中期的のうちの二年は、遅くとも二年では達成できるのではないか、またしなければいけないというふうに思っています。』

>遅くとも二年では達成できるのではないか、またしなければいけないというふうに思っています
>遅くとも二年では達成できるのではないか、またしなければいけないというふうに思っています
>遅くとも二年では達成できるのではないか、またしなければいけないというふうに思っています

ついでにその次の質問者となる津村啓介委員(民主党)の質問に対する質疑応答を前も引用しましたけれども念のため。

『○津村委員 (冒頭割愛) 二%ということを先ほどおっしゃられていましたが、岩田さんは、全責任を負う、マンデートだ、それを市場が信頼するからこそインフレ期待が上がるんだ、それについては現行の日銀法では不十分ということをおっしゃいましたが、これから中央銀行のトップ、副総裁につかれるとなれば、運用で、自分はこうやるんだ、全責任を負うんだということを明確にされることで、ある意味では、岩田さんのおっしゃる今の法の不備といいますか、そこを補っていかれるということだと思います。そこで、お伺いしたいんです。一つは、二年とおっしゃるのは、この就任の三月から二年後、つまり再来年の春ということでよろしいかというのが一点。それから、もう一つは、全責任を負って市場の信頼をかち取るということですから、それが達成できなかった場合の責任の所在ということははっきりとさせていかなければいけないと思いますが、それは、職を賭すということですか。』

『○岩田参考人 それは当然、就任して最初からの二年でございますが、それを達成できないというのは、やはり責任が自分たちにあるというふうに思いますので、その責任のとり方、一番どれがいいのかはちょっとわかりませんけれども、やはり、最高の責任のとり方は、辞職するということだというふうに認識はしております。』

『○津村委員 二年間というのは、二年後の春、つまり、二〇一五年の春の消費者物価の上昇率二%ということを目標とされる、そして、最高の責任のとり方としては、職をかけるということでよろしいですね。』

『○岩田参考人 それで結構でございます。』(ここまで上記2013年3月5日での国会質疑より)

・・・・・・・とまあ著名(かどうか知らんが)な質疑も念のため引用しておきましたよ!!!!!


などと、さっそく過去のご発言との比較対照をしてしまいましたが(^^)、そもそもの会見質疑に戻りたいと思います。


・物価って金融政策で達成できるんじゃなかったでしたっけという件を過去のご高説(以下同文)

でまあさっきの続きですが、見事に諸葛孔明の罠に嵌っているのが師匠のチャーミングなところです。

『先程の金融経済懇談会の冒頭挨拶でも申し上げましたが、消費が、消費増税後少し弱かったということ、それが予想外に長引いたということが物価引き下げ要因として働いたわけですが、もうひとつ強く働いたのが原油価格で、これは半年でマイナス6割と、半値以下になってしまいました。これは、すぐに金融政策でどうこうするということではないと思っています。』(最初のURLにある一昨日の記者会見より)

>これは、すぐに金融政策でどうこうするということではないと思っています
>これは、すぐに金融政策でどうこうするということではないと思っています
>これは、すぐに金融政策でどうこうするということではないと思っています

なるほど。

・・・・・・・では先ほど引用した副総裁任命の承認を得るべく国会で行った質疑に関して、3番目に質問に立ちました阪口直人委員(日本維新の会)との質疑を途中から引用してみましょう。

『○岩田参考人 私が一番懸念しているのは、どうも日本銀行が、物価の安定あるいは一%とか二%とかそういうインフレ目標達成を金融政策だけではなかなかできないという立場に立っている。やはり、世界のインフレ目標国のように、物価の安定は責任を持って日銀がやるんだ、中央銀行がやるんだ、そういうような考えをもう少し持っていただきたいというふうに思っておりますので、それが組織上の問題でそうなっているのかどうかよくわかりませんが、私、そういうふうな考え方も、もう少し柔軟になってほしいなという気持ちは持っております。』

『○阪口委員 岩田候補の、とにかく、そのときの経済や政府の政策のせいにはせず、日銀の責任で二%を達成する、この覚悟、これは大変にすばらしいものだと思います。また、先ほど、それが二年という期間内に達成されなかった場合には責任を負うんだと。このことも、ある意味、きょうは、市場を動かす上での大きな御発言であったかと思います。(以下割愛)』(以上上記2013年3月5日での国会質疑より)

ええまあこれも暫く前にネタにした、というかこの日の為にサルベージしてすぐに自分の駄文の過去ログから拾えるようにしていたんですけどね!!!!!

なお、会見質疑では以下「そのときの経済や政府の政策のせいにする」言い訳が続きますが鑑賞用に引用しておきますね。

『ある程度の時間は物価下押し圧力がかかり、その結果、ある程度、物価上昇を少し遅くするということは確かだと思います。もっとも、物価の上昇を抑制する一番大きな要因である原油価格の下落の影響も徐々に剥落していきます。また、これは経済活動に良い影響を与え、長い目でみれば物価押し上げ要因となるため、2015年の最初の頃は物価下押し圧力は強いかもしれませんが、次第に2015年度を中心として平均的には2%に向けて回復してくる、軌道に乗ってくると考えています。』(最初のURLにある一昨日の記者会見より)



・マネタリーベース直線一気置物理論は政策実務上全くの役立たずだという事のようですという話

ちなみにこれは質問後半部分への答えで実はベンダーの名前とかが出ていまして(日銀サイトにアップされている要旨では固有名詞が割愛されている)、ベンダー記事ではそこの名前とかもあったので、質問したのはブルームバーグの某H記者だと思われます(^^)。砲撃の前半とその答えを鑑賞しましょう。

『(問) 副総裁は就任前の2013年3月4日の講演で、「日銀当座預金が10%増えると予想インフレ率が0.44%上昇する」ということをおっしゃったという報道がありますが、これが事実かどうかをお伺いします。また、実際に日銀当座預金残高の推移をみますと、講演をされた2年前の水準が44兆円で、足許の水準が185兆円、これは10%どころか4倍以上に達しています。それにもかかわらず、予想インフレ率を表す一つの指標であるBEIは足許で1%を切っている水準です。これは、もともとのご発言自体が誤っていたのかどうか、それとも今でも同じようにお考えなのでしょうか。(後半割愛)』

(・∀・)ニヤニヤ

師匠のお答えである。

『(答) 最初のご質問について、何月何日に何を申し上げたか、何%であったのか、具体的な日時、数字までは記憶になく、調べてみないと分かりません。』

えーっとすいません。日時の方はどうでもよいのですが、マネタリーベース直線一気理論の一次関数の傾きの係数忘れたら困りませんか・・・・・・・と突っ込もうとするとそのあとに驚愕の言い訳が待っています。

『はっきりお答えはできませんが、日銀当座預金あるいはマネタリーベースと、BEIで測った予想インフレ率とはある程度強い相関関係があります。私が研究していた際には、過去のデータで、日本銀行の最初の量的緩和時代と、その後のリーマンショック以降の期間におけるBEIとベースマネー、当座預金の関係を前提にお話したことは事実です。』

ほうほうそれでそれで??

『ただし、その場合でも、最初の量的緩和の時代とリーマンショック以降では、日銀当座預金あるいはマネタリーベースと、BEIの関係は少し異なっています。経済環境によって、日銀当座預金あるいはマネタリーベースとBEIの関係は変わるもので、当時はそれを前提として、これぐらいの変化があれば、これぐらいになるだろうという発言をしたと思います。(以下割愛)』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

あのーすいません、「経済環境によって、日銀当座預金あるいはマネタリーベースとBEIの関係は変わるもので」ってので済むのでしたら2013年4月にQQEを導入した時にはどういう計算であのMB目標を出したのか、昨年10月に追加緩和を実施した時にはどういう計算でMB拡大ペースを増やしたのでしょうかとお伺いしたい訳で、「必要額が事後的にしか分からない」ような理論って実際にフォワードルッキングで政策を実施するのに何の役にも立たない所か有害にしかならない理論じゃないでしょうかね???????

まあ1兆歩譲ってその置物理論を政策として活用するとしまして、「その時の状況で関係が変わってしまう」直線置物理論でしたら、そもそも論として「2%のインフレ期待を達成するために必要となるマネタリーベースなり日銀当座預金の量は事前には分からない」という事になると思うのですけれども、なぜ事前に分からない筈の置物理論を使ってQQE導入時に黒田総裁が高らかに宣言していた「2%達成の為に必要な措置は全て投入した(キリッ)」とは一体全体なんだったのかと小一時間問い詰めたいのでありますが、あれは全て嘘八百であったという事なのでしょうか???

んでもって更に1京歩譲って腰だめの数字なら腰だめの数字でもよいのですが、「必要な額が事後的にしかわからない」のであれば、金融政策が物価に対して波及するまでのタイムラグというのを考慮に入れれば、必要以上に額を出して望ましくないインフレーションを起こして国民厚生を悪化させることを避けるためには、「必要な措置は全て投入」ではなく、「政策の効果を見ながら徐々に投入」するのが政策アプローチとして妥当なのではないでしょうかと思うのですが、置物直線一気理論の言い訳をして、もっと致命的なツッコミどころをご提供するという師匠のハイブロー振りに憧れてしまうアタクシであります。


・BEIに関する話がもう目を覆う惨状である

んでもって先ほどの多分ブルームバーグさんの質問と思われる中盤も鑑賞しませう。中盤というからには後半もあります(^^)。

『(問)(前半割愛)これに関連する質問として、大学の研究者ではなく、日本銀行の中で政策担当者として実務を2年近く経験されて、何か変化というか、ある程度分かったこと、あるいは分からなかったことがあるでしょうか。(以下割愛)』

どう見ても諸葛孔明の罠です本当にありがとうございます。

『(答)(前半割愛)BEI、予想インフレ率は、日本銀行の金融政策において非常に重要なキーポイントと思っていますが、これをどのように計測するかは非常に難しいということです。』

えーっとすいません。先ほどの就任前の国会説明もそうですし、昨日ネタにしたときに引用しましたが、副総裁就任後の2013年10月の中央大学での講演でも散々BEIを持ち出して説明していた(引用するとくどくなるので当該箇所は適当に確認してちょ)と思いますが何を今更仰せなのか、というよりは単にBEIの数値が自分の説明上都合が悪くなったからごまかしているだけでしょ。

『特に日本の場合は、米国や英国と比べてBEIに対する信頼性があるかという点、市場も非常に小さく取引関係者が限られているという点に問題があります。』

何を今更言ってるのでしょうかねえ。

『ただ、研究者のときには、予想インフレ率を知る手掛かりはBEIしかなく、ある程度欠陥はありながらも利用せざるを得なかったということです。』

http://www.jcer.or.jp/esp/result.html(ESPフォーキャスト調査、ただし非会員だデータはちょっと前のしか取れない)
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/index.htm/(生活意識に関するアンケート調査)

その他色々とあると思いますし、いろいろなものを総合してみていくもんだと思いますが、もしかして貴殿におかれましてはそのような努力もしないでポッと出てくる数字のうち自分の論に都合の良いものを取り出していただけだったという事なのでしょうか???

『先程の「日本銀行に入って変わったのか」という質問とも関係しますが、日本銀行に入ってからは、予想インフレ率をみる上で様々な指標を提供してもらえるようになりました。研究者の時にはなかなか手に入らなかったようなものや、研究者としては気付かなかったようなデータもあります。実際、BEIもなかなか手に入らないもので、研究者としては手が縛られていました。』

ここの部分でベンダーのニュースではブルームバーグのようなものは高いのでBEIもなかなか手に入らないと仰せだったようですが・・・・・・・・・・・

http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/marketdata05.html(日本相互証券)
http://www.mof.go.jp/jgbs/topics/bond/10year_inflation-indexed/bei20150210.pdf(財務省)

などと簡単に参照できますし、大体からして・・・・・・・

http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php(売買参考統計値)

こちらから物価連動国債にしろ利付国債にしろ売買参考統計値のデータが無料で取れますし、しかもCSVでもエクセルでも取得できますから、BEIはここから名目債と物価連動国債の利回りから計算すれば算出できる訳で、「なかなか手に入らないもの」となる理由がさっぱり理解できませんが。

まさかとは思いますが、BEIに関してその程度の知識レベルしか無いのに、その数値を金科玉条のごとく持ち出して日銀の金融政策をケチョンケチョンに誹謗した挙句に、ついには日銀副総裁にご就任された、などというような信じ難い事などが我らが美しい国ニッポンで起きる訳はないですから、きっと置物大師匠様におかれましてはジョークを飛ばしているんだと思いますよ(吐血)!!


『それが、日本銀行では様々な、膨大な指標が提供されるようになり、予想インフレ率は様々なサーベイデータをみなければならないということがだんだんと分かってきました。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)ナンカイコウナルノケサハ

いやーここまで「私は今まで無知の上に不勉強でした」って堂々と悪びれもなく言えるのってどういう神経してるんだろと思うのですが、「予想インフレ率は様々なサーベイデータをみなければならない」とか普通に当たり前だろと思いますし、何でしたらこんな分かりやすい解説も日銀レビューシリーズで出ていますけどご覧になったことはなかったのでしょうか(これ出た時にワタクシも読みましたよ)???

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2008/data/rev08j15.pdf
インフレ予想(Inflation Expectations)について
2008 年12 月

・・・・・・・まあ気を取り直してその先を鑑賞しましょう。

『最近BEIが非常に下がっていますが、実は長い間2%くらいでアンカーされていた米国でさえ、この原油価格のもとでは、ピークから30%〜40%下がっています。こうしたBEIの動きにはよく分からないところがあります。。従って、それだけをみて予想インフレ率がどうなっているかを判断するのは少しリスキーで、サーベイデータとか、賃金の交渉状況や企業の価格設定行動がどうなっているかといった広い範囲でデータをみるようにしています。』

何を今更の二乗という所ですが、要するにBEIだけで説明していたのが都合悪くなったから急に別のものを繰り出してくるという言い訳のスキルを日銀で学んだということですね!!!!

『その結果、広い範囲でみると、足もとの予想インフレ率が落ちているからといって、中長期の予想インフレ率がそれほど崩れているというわけではないということが分かってきました。』

分かってきました(ドヤァ)ってお前は小学生か。

・・・・・・そしてこの質疑のある意味白眉部分はこちら。

『そういう意味で情報を集め、分析し、提供してくれるスタッフのおかげで、研究者の時代よりも、深く分析できるようになったと思っています。』

>研究者の時代よりも、深く分析できるようになった
>研究者の時代よりも、深く分析できるようになった
>研究者の時代よりも、深く分析できるようになった
>研究者の時代よりも、深く分析できるようになった
>研究者の時代よりも、深く分析できるようになった

つまり従来は不勉強なうえに浅い分析に基づいて日銀を盛大に罵倒して白川総裁や山口、西村副総裁を石持て追い出したということを告解されておられるという理解でよろしいでしょうか???

#何がすごいって多分自分でそういう意味だと思っていないで発言しているとしか思えないところだが


・2年で2%厳しいなら枠組みを見直すべきではないかという話には案の定の回答

更に先ほどのブルームバーグH記者と思われる質疑の後半部分を鑑賞しましょう。

『(問)(前半割愛)もう1点は、就任後半年くらい経った2013年10月18日に中央大学で講演されたとき、「2年くらいでなかなか達成できないなら、どこに問題があるかを見直す」と「量的・質的金融緩和」についておっしゃっています。2年が経とうとしているなかで、まだまだ程遠い水準にあるとなれば、「量的・質的金融緩和」のメカニズムを含めて見直さなければならない時期に来ているのではないかと思います。この点についてどのようにお考えでしょうか。』

(;∀;)イイシテキダナー

『(答)(前半割愛)物価安定目標の達成について、例えば2年が、私が就任してから2年の今年4月ぴったりとすれば、そこまでうまくいかない状況だということは事実です。可能性はそういうことだと思います。』

辞任か焼き土下座マダー??

『ただ、消費増税の影響は、だんだんと和らいで、消費も回復してくるでしょう。足許の予想もしなかったような原油価格の下落も、中長期的にみれば、むしろ経済活動に良い影響を与えることを通じて、物価上昇をもたらしてくるということです。私がこのくらいにできるだろうと思っていた2015年の4月とかその辺りには間に合わないかもしれませんが、需給ギャップを縮めながら予想インフレ率も上げていくことによって物価が上がっていくという基調は変わっていないと思っています。』

えーっとすいません間に合わなかったら世界標準じゃないですし金融政策だけで達成しようという気概がないのが今までのレジームの問題だったと国会で言ってましたよね????

『従って、今の「量的・質的金融緩和」を続けていくのが適当だと思います。また、様々な下振れ・上振れリスクはあると思いますので、それに対してはいつでも対応する構えではいます。』

よくもまあ恥ずかしげもなく・・・・・・・・・


・辞任マダーの質問には見苦しい言い訳

『(問) 2013年3月5日の国会衆議院議員運営委員会で行った所信表明において、「就任から最初の2年で達成できない責任は自分たちにある。責任の取り方はどれが一番良いのか分からないが、最高の責任の取り方は辞職することだと認識している」とおっしゃいました。その後、答え方を変更されたこと、「電車の時刻表の通りにきっちりいかない」というような答弁をされたことは承知しています。先程も、きっかり2年ではうまくいかないとおっしゃいましたが、今、お考えにある責任の取り方とはどのようなものでしょうか。また、うまくいかなかった原因というのは、消費増税でしょうか、もしくは原油安でしょうか。4月を迎えるにあたって、期待に働きかける政策を採っている以上、これに対するご説明を頂きたいと思います。』

まあ想定通りの言い訳が来ますので鑑賞しましょう。

『(答) まず、副総裁として目標達成に向けて全力を尽くすということに変わりはないのですが、仮に、達成がどんどん遅れてしまう場合に、国会答弁では、「最終的に」とか「最高の」と言っているわけで、その前の段階の責任は「説明責任」であって、まずは説明責任を果たさなければ話にならないということだと思います。』

金融政策で達成するといっていたのに達成できていないのですから説明責任というのは政策の枠組みのどこかに間違いあるいは見込み違いがあったという点について説明するものですよね!!!!!

『説明責任を果たすとして、その時思ったよりも遅れる理由は、消費増税なのか、原油価格なのかということですが、もちろん消費増税は、ある程度遅らせる要因となっていると思いますが、私は、主として、原油価格がこれだけ下がっているということが大きいと思います。』

それは説明責任ではなくてただの言い訳です。そういう言い訳をするのがケシカランって日銀批判するときに言ってましたよね大師匠。

『原油価格の低下は、経済活動としては非常に良いわけで、政策委員の中央値としてはそんなに遅れてはいないのですが、就任時などに私がお話した時より遅れているのは、ここまでの原油価格の下落は予想できなかったためです。』

リーマンショックガーとか大震災ガーというのを言い訳呼ばわりして一刀両断にしておられた筈ですが。

『英国、米国や欧州などでも物価は下がっています。』

海外が下がっているからというのはエクスキューズにはならないのでは無いでしょうかねえ貴殿のかつての日銀批判の論調を踏まえますと。

『日本の場合は消費税の影響も加味されていますが、これは徐々になくなっていくと思いますので、基本的に大きな要因は原油価格の急落であろうと思います。』

ということで、これを説明責任というのでしたらもっと丁寧な説明責任を過去の日銀はしていましたけれどもねえ・・・・・・・・

てなわけで、美しい国日本の倫理というのは凄まじい勢いでマリアナ海溝よりも深く沈んでしまったのでしょうかねえなどと嘆きつつ質疑3本をネタにしたら量が膨大になったのでまあこのくらいにしときますわorzorz





2015/02/05

お題「超長期があばばばばばーなので市場メモを少々/きくちゃんお笑い劇場キタコレ!」

30年国債入札が不安だの注目だのという話がだいぶ流布されているようなのでそろそろ底打ちですかねえ(根拠なし)。

○日経新聞は別にどうでもいいことでリーク記事書くなと小一時間

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NJ8ATZ6K50Y001.html
政府:日銀人事の国会提示、5日に−事前報道で1日延期
更新日時: 2015/02/04 18:23 JST

『民主党の笠浩史衆院議運委理事は4日昼、ブルームバーグ・ニュースの取材に対し、「一部で日銀審議委員の後任が報じられた。情報漏えいの調査をして理事会に報告すべきだ、今日の提示は認められない」と主張したことを明らかにした。同氏によると、その後の調整の結果、与野党は5日午後12時30分から両院の議運理事会を開催し、日銀を含めた国会同意人事の提示を受けることで一致した。』(上記URLより、以下同様)

・・・・・・・・いやまあ正副総裁人事とかだったらそれなりに影響あるからハッスルしたくなると思いますけれども、執行部追認機関学者委員の後任人事なんぞ別に速報する程のものでもないのですから、日経新聞も報道しないでスルーしておけよと思う次第。

『日銀審議委員人事をめぐっては、民主党の野田佳彦政権下の2012年3月、一部報道で伊藤忠相談役の渡辺康平氏が候補として報じられたが、結局、提示されなかった経緯がある。』

ってやらかしの前科があって、事前報道ルールに関してはなくなったとはいえ、リーク報道が出ると必ずこういう話になるわけですから、別に急いで報道しなくても問題ないようなネタでリーク報道するなよとしか思えないですな。

いやまあ一瞬「提示見送り」のニュースを見て、あの珍理論に対して日銀審議委員としてふさわしくないという文脈でリストの差し替えという話になったのかと思いましたが、ただの手続き問題とは惜しいですけど、まあいずれにせよあのジンバブエも裸足で逃げ出す「日銀が国債を買うと債務が消滅」という珍理論を持った人が日銀の政策委員会の委員としてふさわしいと判断していること自体についての審議をきっちりとやっていただきたいと思いますし、大塚なにがしさんとか津村なにがしさんとかこういう時の為にいると思うので精々頑張っていただきたいものです。



○市場雑談系あれこれ

・超長期があばばばばーとな

毎度のロイターさん
http://jp.reuters.com/article/jptokyomarket/idJPL4N0VE31120150204
〔金利マーケットアイ〕翌日物の加重0.07%半ばか、3カ月物TBレートが低下
2015年 02月 4日 15:13 JST

表題が短国ですが長期の方の記事を引用。

上記URLの小見出しを見ると『<14:15> 国債先物が2カ月ぶり安値、30年債入札に警戒感』となっている前が『<12:35> 国債先物が下げ幅縮小、日銀買入で売り圧力が強まらず』となっている辺りが味わいが深い訳でして・・・・・・・・・

昨日は寄りではそんなにサガランチ会長で輪番待ちキタコレと思ったのですが、中期と超長期が弱めに推移して輪番を迎え、輪番そのものは割と強かったので後場最初は戻ったのですが、その後またまた超長期主導でゲロゲロマーライオン相場という展開になってしまいまして、なんと申しますか超長期そこまで親の仇のように売るかと思いつつも、明日(つまり今日)の30年入札ガーとか言いながら叩く叩くで遂に30年1.5%100円まであと8毛という所まで来ましたですよあばばばばー。

でまあ中期もしらっと0.10%水準まで戻っていますが、ここで面白いというか記憶力が置物並みではないかと思うのは「5年の0.10%は強いビット」という講釈する人が結構いることで、いやお前らついこの前まで「付利金利を下回る5年国債とかアホジャネーノ」と言ってただろうと小一時間な訳で、付利越えが岩盤なのはせいぜい2年カレントだろと思うのでして、今日は30年国債の入札ですが、あと8毛調整すれば絶対水準系の投資家も買うでしょと思いまするに、5年とかの中期がどうなるかも注目したいものですな。


・なお3M短国はどうせ貫禄の100円足切りと想定

先ほどのロイター記事の短期部分ですけどね。

『国庫短期証券(TB)はしっかり。新発3カ月物(509回債)は一時前日比0.006%低いマイナス0.020%で出合いを付けた。年度末を見据えた買い需要が示された。レポ(現金担保付債券貸借取引)GCレートは低下。日本証券業協会が公表した「東京レポ・レート」で、5日スタートのGC翌日物レートが0.051%と前日(0.059%)に比べて低下した。』(上記ロイターの市況記事より)

ということで昨日は2年も3bp水準までやっと上昇している中で短国は貫禄のマイナス継続という動きでして、まあ今日は3M新発の入札がありまして、後で書きますけれども固定金利オペシグナルオペがまさかの増額となっていて短国買入のペースにも影響がでるかもという要因はあるのですが、まあこの調子だとどうせ100円足切(オーバー足切になったら泡を吹く)でしょという所です。

しかしまあ何ですな、上記にありますように「年度末を見据えた買い需要でカレントの3M短国の金利が低下」という事のようですが、年度末を見据えた買い需要という意味では別に509回だけではなくほかの銘柄でも年度末を見据えた需要が高まって当該ゾーンの引け利回りが全体として低下してマイナスが深めになっているのでは?と思うのですが、売買参考統計値やBB引けなどを見ますと(以下の部分は内務省検閲によって削除されました)。



・固定金利オペがまさかの増額

昨日のオペオファーと結果のうち固定金利部分

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150204.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2015年2月6日 2015年5月19日

てな訳で今回はシグナルのロールでその結果。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150204.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(2月6日スタート分) 13,630 13,630

今回の固定オペは折り返し元が10031億円でして、そのロールが13630億円となっているのでまさかの増額ロールでして、固定オペが半分くらい落ちてその分の穴埋めに短国買入のハイペースが続くのでしょうなあと思って計算している向きにとっては「おー」という数字で、今月の固定オペの動向も面白いかもしれませんね(なんとなくだがシグナル分は割と普通にロールされて細かいのが落ちるような流れのような気がします)。



ということでさて本日は以下きくちゃん師匠のお笑い高座鑑賞でございます。


○お笑い劇場の前座は挨拶(メインは会見ですよ)だが2013年10月と比較も入れると味わい深い

今回の金懇挨拶
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150204a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
宮城県金融経済懇談会における挨拶
日本銀行副総裁 岩田 規久男 2015年2月4日

・・・・・・・・・ということで金懇挨拶キタコレなのですが、今回は新機軸の導入といたしまして、こんなのを引っ張り出してみようと思います。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/ko131018a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131018a1.pdf
「量的・質的金融緩和」の目的とその達成のメカニズム
中央大学経済研究所創立50周年記念公開講演会における講演
日本銀行副総裁 岩田 規久男 2013年10月18日

てな訳で、以下『』(今回)『』(前回)とか比較している部分がございましたら、今回というのが上記の宮城金融経済懇談会の挨拶、前回というのが2013年10月のご講演、とまあそういう風に比較して確認していると思ってください。なお、特段(今回)とか(前回)となっていない場合は基本今回分になりますが前回の小見出しなどをいちいち前回と書かない場合がありますが、文の流れを見れば理解できるかと思って割愛している部分がありますのでよろしくお願いいたします。


・当然ながら金融政策のメカニズムに関する説明しか読まない

今回の金懇挨拶ですが、前半部分は『2.日本経済の現状と先行き』となっておりまして、その辺はまあ普通に執行部の見解を話しておりますのでどうでもヨロシというか会見のほうでちょっとネタにするかもですという事で盛大にパスしまして、『3.金融政策運営について』という所から参ります。

『さて、ここからは、現在日本銀行が進めている金融政策について、いくつかの切り口からお話ししたいと思います。日本銀行は、2013年1月に、消費者物価の前年比上昇率2%という「物価安定の目標」を設定しました。所謂「インフレーション・ターゲティング(インフレ目標政策)」の導入です。この目標の実現に向けて、2013年4月以降、「量的・質的金融緩和」と呼ばれる強力な金融緩和を進めており、2014年10月には、この「量的・質的金融緩和」を拡大する措置も講じたところです。』(今回、以下暫く同様)

ほうほうそれでそれで?

『これらの政策は、長年にわたるデフレの中で人々の意識に定着してしまった「デフレマインド」を「緩やかなインフレマインド」へと転換すること、言い換えると、「物価の緩やかな上昇が継続することを前提に人々が行動するような状況」を作り出すことを意図しています。』

ふむふむ。

『したがいまして、皆さまに積極的にマインドを転換して頂くためにも、私たちの政策について丁寧にご説明し、理解を深めて頂くことがとても重要であると考えています。』

・・・・・・・????

えーっとすいません。導入してもうすぐ2年になろうとしているのですが、まだ「マインドを転換して頂くためにも」とか仰っている時点でどう見ても2年での目標達成が出来ていないという事になるとおもうのですが、いまだにそんな話をしている場合じゃないんじゃないですかねえ(ニヤニヤ)。

とまあそういうマクラが入りましてその次。


・気合なのか貨幣的現象なのかの説明が明らかに前回対比トーンダウンというか混線状態

『「量的・質的金融緩和」の核心は何かと問われた場合、私は「政策レジームの転換によるデフレマインドの払拭」であると答えることにしています(図表5)。』(今回)

まあ前回の講演でもレジームシフト云々というのがあったのですが、こんな文脈で出ていますな。

『なぜこのようなこと(引用者注記:市場の金利や市場の予想インフレ率の変化が生じた、という例を出しています)が起こるのでしょうか。それは、市場参加者が、マネタリーベースや超過準備の動向から中央銀行の金融政策レジームを判断し、将来の貨幣ストックや将来の金利およびインフレ率を予想するからです。金利や予想インフレ率に影響するのは、中央銀行の金融政策レジームと、そのレジームを前提とした市場参加者の将来の貨幣ストックの予想であって、現在の貨幣ストックではありません。』(前回)

えーっと、前回は金融政策レジームの転換が市場参加者の将来の貨幣ストックの予想を転換するので市場の予想インフレ率の変化が生じた、ということで前回講演の図表22と図表23で、「超過準備とインフレ予想」というお題でグラフを示しておりました。

しかしながら今回の講演では図表5では市場のインフレ予想がどうのこうのという話は皆無となっており、なぜか「デフレマインドの払拭」という話になっておりましてこれ如何にという所ですが、そらまあマネタリーベースを盛大に拡大した挙句に師匠ご推奨のBEIの方はろくすっぽ上がらんどころか下がっているのですから説明ができませんよね!!!!!

しかしそのあとの方ではレジーム転換の話として・・・・・・

『現在の日本銀行の金融政策も、従来と異なる政策レジームへの転換、すなわち「インフレもデフレも最終的には貨幣的現象であるから、積極的な金融緩和によってデフレからの脱却は実現できる」という考え方に転換したことが出発点となっています。』(今回)

という話をしているのですが、その割には貨幣の量がどうのこうの的な話については上記で比較しましたように、前回は思いっきりMB直線一気置物理論が登場していたというのに、今回は「政策レジームの転換でデフレマインドを払拭」と言いながら「貨幣的現象なのでデフレ脱却ができる」という風にそれお前ただのトートロジーじゃねえかという話に留まっている辺りが何とも訳ワカランチ会長としか申し上げようがありません。


・しかしながらレジーム転換に関する説明がいろいろとアレな件

でまあ今トートロジーと申し上げましたが、どうもこう説明がワケワカランチンなのよね。つまり、さっき引用したように・・・・・

『これらの政策は、長年にわたるデフレの中で人々の意識に定着してしまった「デフレマインド」を「緩やかなインフレマインド」へと転換すること、言い換えると、「物価の緩やかな上昇が継続することを前提に人々が行動するような状況」を作り出すことを意図しています。したがいまして、皆さまに積極的にマインドを転換して頂くためにも、私たちの政策について丁寧にご説明し、理解を深めて頂くことがとても重要であると考えています。』(今回、以下暫く今回)

という話をしつつ・・・・・・・

『「量的・質的金融緩和」の核心は何かと問われた場合、私は「政策レジームの転換によるデフレマインドの払拭」であると答えることにしています(図表5)。』

と言ってるのがそもそも訳分からん次第でして、

『人々の行動パターンは、人々が参加しているゲームのルールに依存します。そして、ルールが変われば、人々の行動も変わります。ほぼ自明とも言えるこの原理が、なぜ経済政策に関して重要かというと、「政策レジームの転換」が起こるかどうかによって、家計や企業など様々な経済主体の予想と、その行動が左右され、最終的に政策の効果それ自体も大きく異なってくるからです。』

と説明していて、最初のところでは「マインド転換のために説明してご理解いただきたい」とお話をしているのに、QQEについての説明では急に「レジーム転換すると経済主体の行動が変化するのは自明」(キリッ)と言い出すわけで、レジーム転換して経済主体の行動が変化しているんだったらそもそも「丁寧にご説明し、理解を深めて頂くことがとても重要」という必要がないと思いますし、だいたいからして先ほども申しあげましたがレジーム転換とやらをして2年近く経過しているのに今更説明して理解を求めるような状態だったら「レジーム転換で経済主体の行動が変化」というのがそもそも間違いとは言わないけど誇大広告だったんじゃないですかねえ。

でまあそのレジーム転換に関しては、

『例えば、極端なインフレに直面した政策当局が金融の引き締めを行うとしても、そうした政策が持続的なものと認識されなければ、将来の物価動向についての家計や企業の予想は変化せず、高インフレを前提とした行動も変わらないため、インフレは終息しません。逆に、インフレの克服に向けた政策当局の姿勢が確固たるものであることについて信認が得られれば、将来の政策経路についての企業や家計の予想の変化と、それを前提とした行動につながり、自己実現的にインフレが鎮静化することになります。』

てな訳で政策の信認が重要とのことですが、大口叩いた「2年で2%」がドンドン後ズレしているのにレジーム転換で行動の変化は自明(キリッ)とか言ってる場合かよと思いますが・・・・・・

『現在の日本銀行の金融政策も、従来と異なる政策レジームへの転換、すなわち「インフレもデフレも最終的には貨幣的現象であるから、積極的な金融緩和によってデフレからの脱却は実現できる」という考え方に転換したことが出発点となっています。』

その結果マネタリーベース直線一気置物理論でマネタリーベース拡大しましたが2年で2%is何処?という所で、結局のところこの辺の説明がただの循環論法になっているのが実に香ばしいのですが大口叩いた通りの実績が出ていないのだから仕方ないですね!!!


しかしここはある意味ワロタ。

『日本銀行はそれ以前にも、ゼロ金利政策や量的緩和の導入など、金融政策の歴史におけるフロントランナーとして様々な金融緩和措置を講じてきました。にもかかわらず、15年以上の長きにわたってデフレからの脱却が果たせなかったのは、「金融政策によってデフレは克服できる」という政策レジームが採用されていなかった(?なくとも民間経済主体からそうした信認を得られていなかった)ことに原因の一端があると思います。』

>?なくとも民間経済主体からそうした信認を得られていなかった
>?なくとも民間経済主体からそうした信認を得られていなかった
>?なくとも民間経済主体からそうした信認を得られていなかった

えーっとすいません、「日銀はデフレ脱却の意欲がない」だの「日銀はデフレ推進」だのと散々罵っておられたの置物先生一派のリフレ派の皆さんだと思うのですが、そう考えますとリフレ派の皆様におかれましては日銀のデフレ脱却に向けた取り組みに対する信認を損なう事を推進していた訳でして、そうなりますとデフレ脱却に向けた取り組みを邪魔しておられたのがリフレ派の皆様という事になりまして、「リフレ派の日銀批判がデフレ脱却への阻害要因になっていた」という話になるのではないでしょうか(^^)。

そういや相変わらずMB直線一気理論とかに悪態をつくとリフレ界隈の皆様が「債券市場の人間はデフレ派」とか面白い見解を示してくれて素敵なのですが、デフレ脱却に向けた政策に対してその政策スキームはおかしいのではないかというのがデフレ派ということでしたら、かつてのリフレ派の皆様はもっと強力なデフレ派だったという事になりますねうははははは^^;

でまあ結局MB直線一気一次関数理論で全然2%達成しないという状況って信認の問題になると思うのですがそこは盛大にスルーして達成時期を先送りしているのに「レジーム転換すると経済主体の行動が変わる」(キリッ)もへったくれもないと思うのですけどねえ。


とまあそんな感じでレジーム転換云々の話が結局ただの気合じゃねえかというツッコミでありました。


・2年での話がトーンダウンとは恐れ入りますな

さらに味わいがあるのはその次の『(2)「量的・質的金融緩和」の波及経路』であります。

『政策レジームの転換が信認を得るためには、政策当局からの明確で具体的なメッセージが必要です。』(今回)

まあ明確で具体的なメッセージをだしても先ほどの話のようにそれを実現しないと意味がないのですけれども2年で2%というのはどうなりましたっけなどとツッコミをしないで次を読みましょう。

『現在の金融政策においては、@「消費者物価の前年比上昇率2%」という物価安定の数値目標を設定し、その達成に強くコミットしていること、Aそのための具体的な行動として、「量的・質的金融緩和」を強力に進めていることによって、政策レジームの転換が具体化されています(図表6)。』(今回)

さて前回ですけどね。

『「量的・質的金融緩和」は、次の二つを柱としています。第一の柱は、2%の物価安定目標の早期達成についての「コミットメント」です。すなわち、「2%の物価安定目標を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現すること」について、日本銀行は「明確に約束している」ということです。』(前回)

えーっと、2年程度とか早期にという文言が今回のテキストにないのは何でですかねえ(棒読み)という所ではございますが、一応今回の図表6のところには「2%の物価安定目標を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現することについて、日本銀行が明確に約束。」とは書いてありますので、まあ別にひっこめた訳ではないのでしょうけれども、講演テキストに堂々と書くにはどこからどう見ても2年またはそれよりも早期に実現できそうもないので外したとしか思えないのですが、それはアタクシの目が濁っているからですかそうですか。


・「予想インフレ率が上昇するのは所与」なるもその「予想インフレ率」が変わっている件

でまあ『(2)「量的・質的金融緩和」の波及経路』の続きですけどね。

『「量的・質的金融緩和」に伴う長期国債の大規模な買入れによって、名目金利には強力な下押し圧力が働いていますので、政策レジームの転換が人々の予想インフレ率を上昇させると、人々の予想実質金利が引き下げられることになります(図表7)。予想実質金利とは、「将来の物価の変化を考慮すると、実質的な金利はいくらになるか」という主観的な予想であり、人々の貯蓄・投資行動や資産価格に様々な影響を及ぼします。』(今回)

まあ相変わらず予想インフレ率が上昇するのは所与というのがワロタとしか申し上げようがないですけれども、ここも前回と比較してみると興味深い点が発見されます。

『こうした2本の柱から構成される「量的・質的金融緩和」は、名目金利と、金融市場で資産運用を行う市場参加者の予想インフレ率に対して、それぞれ次のような作用をもたらします。まず、長期国債を中心とした各種資産の買入れにより、民間にお金を大量に供給することは、名目金利を引き下げる方向に働きます。加えて、2%の物価安定目標にコミットした「量的・質的金融緩和」は、のちほどご説明するように、市場参加者の予想インフレ率を引き上げる方向に働きます。』(前回)

ご覧いただきますとわかりますように、2013年10月の講演では「市場参加者の予想インフレ率」ということで思いっきりBEIにかかわる話をしていた(さっきのところでもそうでしたよね)のですが、2015年2月になりますと「人々の」とか「主観的な予想」とか、市場のBEIの推移が自分の説明にとって都合が悪くなっているのですっかり無かったことにしているという辺りに侘び寂びと申しますか幽玄の世界というものを感じる次第であります。


・そして市場が反応しているけれどもBEIの話はスルー&トリクルダウンキタコレ

で、その結果として・・・・・・・

『ご存じの通り、こうした変化にもっとも敏感に反応したのが金融市場であり、株式や外貨建て資産などリスク性資産の価格上昇は、資産効果を通じて民間消費を増加させる方向に作用しています(図表8)。』(今回)

ということで金融市場の話をしているのですが、肝心の金融市場におけるインフレ予想(つまりBEI)に関する話を完璧にスルーなされるとか、2013年10月にBEIを連呼していた講演との整合性はどうしたのでしょうかはいはいおじいちゃん満州の話はさっきもしたでしょお薬の時間ですよといった風格を漂わせるアレなものとなっております。

ちなみに、資産効果で消費増加という話ですが・・・・・・・・

http://mainichi.jp/select/news/20150203k0000m010025000c.html
アベノミクス:首相「トリクルダウン、我々の政策と違う」
毎日新聞 2015年02月02日 18時50分(最終更新 02月03日 00時40分)

どうも師匠の説明する金融政策の波及経路はアベノミクスでは無いと首相が仰せのようですが、その辺りの整合性についても小一時間お伺いしたいものでございます。


・しかしながら波及経路の説明が実にこうさびしいですなあ(棒読み)

でまあその続きですけどね。

『また、過度な円高の修正は、輸出採算性の改善などを通じて輸出関連企業の収益好転につながっているほか、海外からの観光客も目に見えて増加しています。』(今回)

輸出採算性の改善とのことですが、前回はこのように説明しておりましたよね!!!!

『また、外貨高の効果として輸出の増加はすぐに思い浮かびますが(図表6)、海外から日本への旅行者による国内サービス需要を増やす要因である点も見逃せません。』(前回)

>輸出の増加はすぐに思い浮かびますが
>輸出の増加はすぐに思い浮かびますが
>輸出の増加はすぐに思い浮かびますが

・・・・・・・・すぐに思い浮かんだ輸出の増加はどうなったんでしょと思いますし、全体でみた場合に観光収入の増加ってそんなに特筆大書するような話かよ(別に効果がないとは言わんが)と思いますけどね。

『加えて、これまでデフレマインドのもとで貯蓄や現預金の保有増に励んでいた家計や企業も、予想実質金利の低下や所得・財務状況の改善を受けて、住宅投資や設備投資を拡大させることが期待されます。』(今回)

えーっとすいません、QQE始まってもうすぐ2年で約束の期限なのですけれども「投資の拡大が期待されます」じゃあtoo lateにも程があるんですが、前回の講演ではこのあたりについて「(6)設備投資の増加」などと思いっきり小見出しを打ってこんな説明をしていましたよね。

『こうした動きは、企業の設備投資にも、複数の経路を通じて前向きな動きをもたらします。まず、家計の消費が増えれば、企業は消費の増加に応じて生産の増強を図る必要が出てくるため、設備投資に積極的になります。株高や外貨高によって、他社株や外貨を保有する企業(主として輸出企業)の純資産価値が増大すること(バランスシートの改善)も、企業が設備投資を増やす要因となります(図表8・9)。(途中割愛)また、企業利益の増加による企業マインドの改善も、設備投資を増やす要因です。(そのあといろいろあるがめんどいので割愛)』(前回)

ってな感じで、もう今にも投資が出るような話になっておりましたのは1年と4か月前のお話になりますけれどもね。

つーかですね、前回の講演では「(3)なぜ予想インフレ率は上昇するのか」ということでただの気合と信心としか思えない意味不明な供述をおこなった後、「(4)予想インフレ率の上昇は株高や外貨高をもたらす」、「(5)消費や輸出の増加」、「(6)設備投資の増加」、「(8)労働需給の改善と雇用者所得の増加」と、風が吹けば桶屋が儲かるのかピタゴラススイッチなのか知りませんが、インフレ期待が上がると勝手にすべてがうまく回りだすという説明を延々としていたのですが、今回は上記のような超あっさり味な話だけして、

『このように、政策レジームの転換による予想インフレ率の上昇を起点に、複数のチャネルを通じて総需要を拡大させていくというのが、現在の金融政策が想定している効果波及のメカニズムです。』(今回)

という話で終了しているのが何ともまあ前回の威勢良さはどこへという感じで実に奥ゆかしい味わいを醸し出しております。


・実質所得ガーに対する説明部分を鑑賞しましょう

でまあその予想インフレの維持のために追加緩和みたいな説明がある部分は割愛しまして、その次が『(4)雇用・賃金をどう考えるか』という所です。

『さて、予想インフレ率の上昇を起点に総需要が拡大し、生産から所得、支出という前向きの循環が働いた先には、働く人々の雇用の安定と労働条件の改善が待っていなくてはなりません。』(今回)

・・・・・・・えーっとすいません、アタクシ馬鹿なのでよくわからないのですが、そもそも論として被雇用者の雇用が安定しなかったり労働条件が改善しなかったりした場合にどうやって「前向きの循環」とやらが働くのかがさっぱり理解できないのですが、まず論を立てるところでの話がおかしくないですか????

しかもですよ、前回の講演ではすでにこのような認識を示しておられたのですけれども・・・・・・

『所得が増えると消費が増え、消費が増えると労働需給が改善して雇用所得が増え、それがさらに消費を増やすという好循環が生じてきます(図表18)。』(前回)

前回の講演で説明していた「(8)労働需給の改善と雇用者所得の増加」という部分では高らかにこのように宣言しておられた筈なのですが、何でまた今回こんな話になっているんでちゅかねえ(棒読み)。

『雇用者数の増加については、「非正規雇用が増加しただけで、正社員は増えていない」という批判があります。しかし、この議論は、雇用のパイ全体が拡大する中で起こっている、「まずは非正規から段階的に雇用を増やそう」という前向きな動きと、過去に続いてきた「正社員から非正規雇用への置き換え」という後ろ向きの話とを混同している面があると思っています。』(今回)

『景気回復の初期段階において、より柔軟に調整が行える非正規型の雇用が増えるのは当然のことであり、この段階では、多くの不就労者が職に就き、賃金収入を得られるようになったという点を、まずは公平に評価すべきだと考えます。』(今回)

それは一理あるが、すでに「2年程度で達成」といっている政策のうち1年10か月が経過しているのに、いまだに「景気回復の初期段階」ってお前は何を言ってるんだと小一時間問い詰めたい。

『また、これと似たような議論として、賃金の上昇傾向が継続していることに対しても、「名目賃金の上昇が消費者物価の上昇に追いつかず、実質賃金は低下している」という批判があります。』(今回)

ほうほうそれでそれで??

『この点については、まず、需要の拡大がもたらした物価上昇と、消費税率引き上げの影響を分けて考える必要があると思います。』(今回)

ちょwwwwおまwwwwwww円安シフトして物価上昇しているコストプッシュの部分はスルーとは恐れ入る。

『消費税率引き上げによる実質賃金引き下げ効果を除くと、一般労働者の実質賃金もパート労働者の実質時給も、前年と比べて大きく落ち込んでいる状況ではありません(図表12)。また、雇用者全体でみた実質所得も、消費税率引き上げの影響を除くと、2014年3月から9か月連続で前年比プラスとなっています(図表13)。』(今回)

『つまり、「労働者一人当たりの賃金も全体としての所得も、需要の拡大がもたらす物価上昇に見合う程度には上昇しているものの、消費税率引き上げの影響まで相殺するほどの上昇は、さすがにまだ実現できていない」というのが、実質賃金についての公平な見方であると考えます。』(今回)

毎回思うのだが、確かに消費増税はワンタイムエフェクトだから前年比で見た場合に翌年になったらその要因が剥落するけれども、そもそも論として名目賃金の方が昔から緩やかな上昇トレンドをとっているわけではなくて、2014年度に入ってやっと上昇したものであるからして、こちらの方がきちんと来年度も今年度並みに上昇してくれるかの保証がない訳で、本年度の名目賃金上昇が単に増税というイベントを受けて下駄を履いているのであれば、実際問題として来年度の実質賃金はやはり減少となりますよね、という話だと思うのよね。

つーことで、まあここは師匠独自理論ではなくて日銀もだいたいこういう説明になっているから折角なので突っ込んでみましたが、持続的に名目賃金が上昇することが確実ではないのに消費税要因を除けば云々という話で賃金上昇ヒャッハーという話になるのもどうなのよと思うのでありました。


で、最終的には実質賃金は上昇するのです(キリッ)な説明がその次にありましてですね、

『金融緩和によって需要を刺激する場合、通常は名目賃金よりも物価が先に上がるため、初めの段階では、実質賃金はむしろ低下します。しかし、実質賃金の低下が企業の雇用需要を増加させることで雇用者が増え、失業率が低下するという経路がありますので、この段階における実質賃金の低下は必ずしも悪いことばかりではありません。』(今回)

まあここは分かるが、それなら前回の講演の時にそういう話をしろと思うのだが、前回はさきほど引用したように「所得が増えると消費が増え、消費が増えると労働需給が改善して雇用所得が増え、それがさらに消費を増やすという好循環が生じてきます(図表18)。」(前回)という良い事ずくめの話をしているだけだったりするのがチャーミング。

『雇用需給がタイト化するにつれて、名目賃金も上昇し、実質賃金の低下圧力が和らぎ始めますし、生産が拡大すると雇用者もより効率的に働けるようになるため、労働生産性も上がります。こうして、最終的には実質賃金も上昇に転ずることになると考えられます(図表14)。』(今回)

でまあ図表14というのがあるのですが、そもそも論として金融緩和をすることによって需要が上がってディマンドプルが起きるというのがアプリオリになっている時点でナンジャソラであって、金融市場の動きによって円安になってコストプッシュで物価が上昇する方のルートの考察が無い上に、図表14では上記の桶屋理論を謎のフローチャートにしただけで、なんか先行事例でそういう実証データでもあるのならまだ信用しようかなと思うのですが、これではただのお絵かきですよね、というような話で締めている辺りが実に何とも置物クオリティ。


・いつまでまたせるんでちゅかねえ????????

でまあ波及経路の説明の最後である。

『金融政策は確実に実体経済に影響を及ぼしますが、その効果の波及には順番があり、それなりの時間がかかります。ましてや日本経済は、15年以上にわたるデフレからの脱却という難事業に挑んでいる最中です。所得の改善が支出を促し、さらなる生産と所得の拡大につながるという好循環がさらに進展することを、希望を持ってお待ち頂きたいと思います。』(今回)

希望を持ってお待ちいただきたいそうですが、1年4か月前の時点ではどういう説明だったでしょうか???????

『金融緩和政策は国債、株式、外国為替のような資産市場には直ちに影響を及ぼしますが、生産、雇用、物価および賃金などの実体経済に及ぼすまでにはかなりの時間がかかります。日本銀行が「量的・質的金融緩和」を採用してからまだ6か月余りしかたっていないことを考慮すると、むしろ、実体経済への影響は従来よりも早く現れたといえます。』(前回)

影響が早く現れたそうですよ!!!

『それはおそらく、昨年(引用者注:2012年のことです)11月中旬にアベノミクス構想が発表され、そのころからすでに「次元の異なる大胆な金融緩和政策」が期待され、投資家をはじめとする人々がその大胆な金融政策への転換を織り込んで行動し始めたためであると思います。つまり、「量的・質的金融緩和」の効果はすでに昨年11月中旬から始まっていたということです。実際に、昨年11月中旬から株高・円安の動きが始まっています。』(前回)

あれ?

『そのように考えると、現在時点で、異次元の金融緩和の実質的な継続期間はすでに11か月になりますから、実体経済への影響が現在程度の規模になるのは自然なことです。』(前回)

で、そこから1年4か月経過しているのですよね。

『これまで、日本経済は日本銀行が想定している経路に沿って順調に回復してきましたが、金融緩和政策の実体経済への影響の遅れを考慮すると、「量的・質的金融緩和」が実体経済に本格的な良い影響を及ぼし始めるのは、いよいよこれからです。』(前回)

「いよいよこれからです」と言って1年4か月も経過して「希望を持ってお待ちいただきたい」ってそこらの藪医者も裸足で逃げ出す引っ張りっぷりに落涙を禁じえませんなというあたりで金懇挨拶の鑑賞を終わりにしますが、会見の方が更に面白いにも程があるので明日はそのあたりを少々(^^)。


#新機軸でちと読みにくかったかもしれませんすいませんすいません



2015/02/04

お題「10年国債入札/短国買入のてきとうな予想/審議委員に原田さんノミネートとな」

さあ師匠の講演はどうでもいいけど楽しい会見の時間ですよ!!

○市場雑談系

・10年国債でヒャッハー

昨日の10年国債入札はご案内の通りでヒャッハー!
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2014/resul078.htm

(1)応募額 5兆8,822億円
(2)募入決定額 2兆1,912億円
(3)募入最低価格 99円42銭 (募入最高利回り)(0.360%)
(4)募入最低価格における案分比率 10.9581%
(5)募入平均価格 99円87銭 (募入平均利回り)(0.313%)

ということでテール45銭で利回り的には4毛7糸の流れとかかなーり久し振りに10年入札で流れましたなという所ですが、落札結果出てすかさず債券先物と10年が大下げした後は押し目買いとかもあって先物とかの水準は落ちた辺りで推移しておりましたが、まあ前場から中期とかも弱めに推移しておりましたが、5年も0.10%台に戻ってみたり、超長期とかも結局弱くなってみたりということで素敵な調整となるの巻でした。

まー10年はここもとの超長期下げ相場の中で不気味なまでに値持ちしていて他年限比で割高に推移しておりましたし、調整したとはいえ絶対水準が絶対水準ですから投資家の買いが入りにくいところに輪番トレード的なポジションが持ちにくくなっている中で新発債の供給があったらこうなってしまいましたという話で、別にまあ暴落して投資家が困っている訳でもないでしょう(むしろ上げ相場の中で買えないまま泡吹き状態だったと思われます)し、まー普通に最終投資家が買ってもよかろうと思うレベルまで調整したら普通に落ち着くんじゃないのという所ですかね、よー知らんけど。

したがって多分この記事とかの説明は的を外していると思う。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL4N0VD3EP20150203
〔金利ウオッチャー〕長期金利の急上昇、損失抱え動けぬ投資家が背景 変動率に警戒感
2015年 02月 3日 16:27 JST

「損失抱え動けぬ投資家」とかどこにいますねんと思う訳で、単に金利水準的にどう見ても買う訳にも逝かないのだが、そんなことを言っているうちにあれよあれよという間に6年ゾーンまで金利が親指を立てながら溶鉱炉に沈んでしまい、悶絶しながら泡吹き状態になっていたという状況と思われまして、そういう意味では「こんな水準になってしまって動けない」という状態で動かぬというのは多いと思うのですけど、別に投資家がこれで食らって死亡とかんなこたぁねえだろと思うのでありました。

一方で安定の淡々とした説明の同じロイターさんの市場記事をまた貼っておきますね。
http://jp.reuters.com/article/jptokyomarket/idJPL4N0VD30B20150203
〔金利マーケットアイ〕国債先物は入札不調で大幅続落、長期金利一時1カ月半ぶり0.360%
2015年 02月 3日 15:28 JST

『午後に発表された10年債入札結果が不調となったことを受けて、在庫を抱えた業者から調整売りが持ち込まれて急落。先物3月限は一時147円23銭と昨年12月12日以来の水準に下落した。1月下旬からのボラティリティ拡大で損失を抱えた市場参加者のリスク許容度が低下したことが応札を慎重にさせた。急落後はいったんショートポジションをカバーする動きが入ったが、相場の戻りは限られた。現物市場は、朝方から中長期ゾーンを中心に銀行勢や業者などから入札に絡んだ持ち高調整売りが膨らんだ。入札結果発表後に大きく売られた場面では、地方投資家などからいったん押し目買いが観測されたが、あすにも予想される日銀買い入れ結果を見極めたいとの見方から積極的な買いが手控えられた。』(上記URLより)

まあいろいろと後講釈されていますけど、短国市場で展開されていた「投資家不在の業者と日銀買入だけの世界」が中期ゾーンまで波及してしまって投資家不在相場をやらかしている中で、金利水準やりすぎて投資家が本当の本当に不在になってしまって、そこにボラ上昇が来て投資家不在の輪番相場が耐えられなくなったという話だし、投資家の方はと言えば金利上昇したといってもまだまだ全然間尺に合う水準じゃないからこんな所で本格的に買いに入れるかよヴォケという話なだけだと思います。

まーいずれにせよ最終投資家の買いがそれなりに入ってくれるまでは落ち着きにくい相場でございましょうなあという所でしょうかね。


・しかしまあ何ですな

いやー思いのほかあじゃぱー相場が続いておりまして、どうしてこうなったという所ではあるのですが、つらつら考えますに「日銀の輪番で無駄に値持ちしていた」上に「1月に入って投資家不在で輪番ヒャッハートレードが積みあがった」というのがあって、そこに加えて余計だったのが「1月決定会合で付利下げ思惑」というのが出たのが実は結果から逆算すると大きかったのかねという所ですな。

#結果から逆算なので何の役にも立たない考察だが

まーかくいうアタクシも先日申し上げたようにどう考えても無いとは思っても、黒田日銀はヤケクソになっているので何をしでかすか分からんという認識があの10月緩和を受けてアタクシも持ってしまうという状況でしたので、そういう点では「1月追加緩和に対する恐怖感」というのはあったと思うのですよ。

でまあそれが特に中短期の輪番ヒャッハー相場と相まって雰囲気を盛り上げてしまったので、そらまあ今の債券市場的には追加緩和を食らうのが少なくとも投資家的には恐怖以外の何物でも無いので、そういう恐怖からヘッジポジションが入ってしまったという面があって、それこそ先ほど「これは的を外しているでしょ」としたロイター記事も全部が変な訳ではなくて、「追加緩和の恐怖に対してヘッジを入れた部分」だけ投資家の押し目買い意欲が弱まっているともいえますし、追加緩和に対する投資家的な恐怖に対して輪番トレードヒャッハー的な向きはさらにワッショイ状態になるでしょうから、まあその分だけ余計に調整が続いているという事なのかもしれませんね。




・2月資金需給見込みと短国買入がどうなるのかの話

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1502.htm/
日銀当座預金増減要因(2015年2月見込み)

こちらを見ますと財政要因での2月資金不足見込みが17.5兆円程度になっておりますが、これに対して今月の輪番は9.2兆円(受け渡しベースの入り繰りを考えないといけないのだが今回はざっくりで行きます)となるので、残りが8.3兆円の不足になります。

で、今月は固定金利オペの落ちが盛大に入っていまして、シグナルのなれの果てとかも含めて5.4兆円近くの落ちがあります(今の残高は7.5兆円)ので、これがどの程度歩留りになるのかが不確定にも程がありまして、まあざっくり半分落ちるとすると2.7兆円になるので、そうなると短国買入で11兆円の打ち込みの可能性がありますなとかそういう話。

しかしまあ何ですな、毎度申し上げていますがMB拡大の帳尻をアウトライトのオペで実施すると、そのアウトライトを食らっている市場の需給関係が財政要因というファンメタと無関係なところで盛大にぶれるわけでして、その買入の絶対額が小さいうちはどうでもよいのですが、ここまで日銀の買入がフローもストックも大きいという状態になりますと、短国市場が全然安定化しなくていろいろと弊害あるんですけどねえと思うのですが、まあ1月の買入を見ればわかるようにもうそんな市場に対するエトセトラとか知らんがなというスタンスなのが見えているので悪態つくだけ無駄という感じではありますな(でも悪態つくけど)。

でまあ2月はその調子で買入をするのはそうとしまして、3月になると財政が思いっきり払い超になってしまう上に買入短国の償還も少なくなるので、この調子だと2月には主に2.5兆円ペース(共通担保の歩留りと業者の在庫状況を見ながら3兆円の会もありそう)での買入が続くのですけれども、3月になると短国買入がほとんど無状態になってしまうというこの需給のぶらせっぷりは何なんでしょという事になると存じます。

まあ3月は期末のニーズがあるから日銀の買入が止まってくれると需給的には助かりますから別にそういうペースでもよいのですが、いずれにせよ財政要因で大きくぶれる資金需給の尻をそのまま短国買入に反映させるというのは何だかなあというか、市場に対するストレスのかけ方半端ないわと思うのでありました。

なお、この資金需給見込みを見た結果なのかどうかは知りませんが、なぜか昨日の(今日付けになる)売買参考統計値を見ますと(今週に入ってその傾向がありますが)先週入札があった509回債の引けが強くなっておりますが、ほかの銘柄の推移も見ると実に味わいが深いですな。なお売参見るのめんどい人はBBの引けでも大体同じなのでその辺でもヨロシ。




○師匠の講演を前にこの前の講演の日本語版が

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150203a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150203a.pdf
少子・高齢化の視点から見た我が国の金融教育
ADBI・OECD・日本 ハイレベル・グローバル・シンポジウムにおける特別講演の邦訳
日本銀行副総裁 岩田 規久男
2015年1月23日

まあ正直この前ネタにしたのでどうでもよいですが・・・・・・・・・・

『金融広報中央委員会の調べでは、高齢者は他の年齢層に比べ、自己の金融リテラシーに自信を持っている一方、実際のリテラシーはあまり高くないという結果が出ています。このような自信と実際のリテラシーのギャップを埋めていくことが重要です。』

>自己の金融リテラシーに自信を持っている一方、実際のリテラシーはあまり高くない
>自己の金融リテラシーに自信を持っている一方、実際のリテラシーはあまり高くない
>自己の金融リテラシーに自信を持っている一方、実際のリテラシーはあまり高くない

というのは何度見ても実にこうじわじわ来る滋味に富んだ講演テキストで、テキスト原稿を作ったと想像される人の悪意を感じます、などという事は全くございませんので念のため申し添えます。




○日銀審議員人事に馬鹿提示キタコレ!

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NJ6MRS6JTSEF01.html
政府:日銀審議委員人事を4日午前に国会提示へ−関係者
更新日時: 2015/02/03 16:34 JST

ということで昨日こんなニュースが出ていまして、まあ若田部先生辺りですかそうですかとか思っておりましたが、何せ最近の学者審議委員というのは見事なまでに屁の突っ張りにもならない執行部翼賛機関でございますので、まあ宮尾さんが交代してもそんなに変わらんわなとは思いましたが、念のため今朝日経のサイトを見に逝ったらまさかの人選キタコレである。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF03H17_T00C15A2EE8000/?dg=1
日銀審議委員に原田氏起用へ 早大教授、リフレ派
2015/2/4 2:00 情報元 日本経済新聞 電子版

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

先日ネタにしたので単純にURLだけ置いておきますが・・・・・・・・・・

http://www.asahi.com/articles/ASGDS5TCMGDSULFA034.html
さらに金融緩和を、国債まだ買える 原田泰・早大教授
聞き手・福田直之 2015年1月21日11時34分

日銀に国債引受やれとか言っておきながらいざ副総裁にノミネートされると「あれは方便」とか言い出した置物大先生も大概でしたが、今度は「日銀が国債を買うと国の債務が消滅する」というような珍理論のオッサンがノミネートとかもうアホか馬鹿かとって感じですが、おそらくこのレベルの方ですと置物先生のように「例えばオペについても、外部にいたときは簡単だと思っていたが、実務はそのような簡単なものではないとわかった。」とか「日本銀行の実務に対する理解を深めつつある状況だ」とか面白発言がでるのか、それとも何も勉強しないでクソの役にも立たない提案をするのかのどちらかという事になるんでしょうなあとは思われます。まあしかしこれで学者が揃いも揃って馬鹿キター状態になると執行部としてはロボットがさらに増えてウハウハでしょうな。

しかしまあ何ですな、良く良く考えるとMB直線一気理論であるところの置物リフレ理論がその理論を超越するようなMB拡大しているのに「2年で2%」どころか「2年でゼロに逆戻り」だわ、インフレ期待は上がったということになっているけど最初に嬉々として持ち出していたBEIについてはだんまりだわとか、全然そのシミュレーション通りに逝かないという状態になっている訳で、そんな中で審議委員を受けるというのも中々こう大変ですなあとしか思えないところです。

で、日経渾身のリークは事前報道で馬鹿潰しに来たのかと一瞬思いましたが、良く考えたら事前報道があったら人事案受けないでござるのルールは廃止になっていたんでしたっけ。残念無念という所ですな。

まーいずれにせよ「日銀が国債を買うと国の債務が消滅する」という珍理論を唱える方をそのまますんなり通すようでは国会も何やってるんだと思いますので、就任の是非を問う国会審議の場では原田大先生の珍理論に関してきちんと吊るし上げをして頂きたいものだと思います。まあ最終的には与党が絶対多数だから通るでしょとは思いますが、ここまで突き抜けた珍理論を唱える方が講演とかでオモシロ話をして下さいますと円安に振れて物価目標達成でニッコリですね!!!!!!!!!!!!!!!!

#ということで就任前に毒電波を受信しておいてちょうどよかったですな(−−;

しかしまあリフレ派でももう少しマシなのいると思うのだがよりによって「日銀が国債を買うと国の債務が消滅する」という珍理論を平然と唱えるスカタンを選ぶとかどうしてそうなったとしか申し上げようがないですな。

なお先月受信した毒電波はこのへんとかこのへんにおいてあります。

ま、これだけ突き抜けたアレな方ですと多分屁の突っ張りにもならないと思う(結局実務を何もわかっていない人なので勉強して普通の方になるのか、何の勉強もしないでゴミ提案をするだけになるのか、執行部追認ロボットになるのか、という3択だと思いますので)のではあそうですかとだけ申し上げておきまして、ぜひ海外などでその「国債を中央銀行が購入すると債務が消滅する」という理論を吹聴していただきますと、もしかしたらジンバブエ中央銀行の総裁辺りにスカウトされるかも知れませんよ!!!!!1111



2015/02/03

お題「1月はMB拡大を短国買入で調整の巻/追加緩和トーク益々トーンダウン/虫干しネタでドラギ会見続き」

相変わらず後場になると謎の売りが出るのは何なんでしょうかね。

#そして明日は宮城金懇で師匠の焼き土下座ショーになるのか(ならないけど)言い訳が楽しみですね

○1月の調節合計が出ておりますな(メモ)

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqf/juqf.htm/
日銀当座預金増減要因と金融調節(1月実績)

てな事でこちらからエクセルに落としてきますと、1月は当座預金的には6.8兆円の増加になっていまして、うち銀行券還流要因が4.1兆円なのでMB的には2.7兆円程度の増加という形になりました。

で、オペ要因の調節具合を見ると、財政要因が一般財政で2.5兆円の揚げ超、国債要因は中長期国債の発行超過部分を輪番で吸収して、短国の日銀保有分の償還部分8兆円に対して買入が11.5兆円になっていて、この3.5兆円部分がMBの増加部分に寄与(共担オペの落ちとかその他項目とかありますが)した形になっておりますな。

でまあその結果は結果としてわかるのですが、MB目標の建て付け的に2014年末の数値があってそこの数値に向けて調整をしていた時と違いまして、現在の建て付けですと「次回MPMまでのオープンエンド」となっていまして、まあさすがにMPMのところで数字を調整する訳にもいかないのでしょうけれども、1月の動きを見ていると「四半期または半期ベースで調整」ではなくて「月次ベースで調整」という感じで動いているようにも見えますので、実際問題としてここの所をどう調整しようとしているのかによって最後の帳尻部分になる短国市場のレート形成に影響が出るので、どういうやり方なのか気になるところです。

短国買入自体がピークより残高減ったとは言え残高そのものが大きいという事もありまして、そもそも論として需給要因的に札が集まるかという問題があるので、実は事前に決め打ちできない(月次調整しようとしてもそもそも短国買入の札が割れるような状態だと調整できないから、そういう意味で事前コミットしたくないというのは調節技術上の問題として存在する)という問題があって、事前にこの辺りをアナウンスできないという事だとは思われますが、ニュアンス的にどういう感じなのかが微妙に???ではあります。

まあ何ですな、金利形成全体の事を考えると短国のレート形成が投資家参加型で円滑に進む(その結果季節要因で自然体でマイナスも今だったらアリエールでしょ)というのが美しいのですが、そもそも金融政策のディレクティブがMB先にありきになっているので、短国買入を帳尻に使うというのもまあそれはそうでしょうなあとは思うのですけど、その結果として価格形成が歪になってしまうというのは金利市場全体的にどうなのよとは思うのであります。

結局のところQQEの建て付けの中で国債ならびに短国買入で「買入によって直接的に何をしたいのか」が不明確になっているのが問題なのですが、MB直線一気理論がどこからどう見ても棄却されて、いつの間にやら金利を下げたりリスク資産の購入をしたりポートフォリオリバランス的な話にすり替わってしまっているのに、ディレクティブがMB直線一気理論のままなのが根本にあるのですけどね。

#なおマイナス金利を維持しようというオペの打ち方がイミフなのはまた別のレベルの問題


○追加緩和にさらにトーンダウンとな

黒田総裁が国会に呼ばれていまして全然発言でないなとか思ってたら最後の方に出てきました。
http://jp.reuters.com/article/JPbusinessmarket/idJPKBN0L60EY20150202
首相・日銀総裁が円安めぐり慎重発言、デメリットにも配慮
2015年 02月 2日 15:54 JST

『[東京 2日 ロイター] - 安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁はいずれも2日の参院予算委員会で円安についてメリットとデメリットの双方について指摘した。あくまで一般論だが黒田総裁は昨年「円安は全体として日本経済にプラス」と繰り返し発信しており、円安の負の面に対する配慮も感じられる。』

『総裁も「輸入コストの上昇、あるいはその価格転嫁を通じて、中小企業、非製造業の収益、家計の実質所得に対する押し下げ圧力として、作用する面があるのも事実」と指摘。「現時点で為替レートが今の水準にあることで日本経済全体に大きなマイナスになっていることはない」としつつ、「円安の影響は産業・地域・企業規模で異なる面があるので、十分注視したい」と警戒した。』(以上上記URL先より)

とまあそういうことで、追加緩和で円安に振って物価上昇を促すルートに関してこの前は政府から追加緩和不要とかいう謎の情報発信らしきものがニュースベンダーに出ておりましたけれども、黒田総裁もトーンダウンで益々追加緩和の方向が見えにくくなってきましたなという状況ですな。

#その割に最近マイナス金利政策が追加緩和でみたいな話が妙に出てくるのは何なんでしょうかね

たぶん足元では統一地方選挙も近い中で物価上昇で生活がしんどい系のアレがあるのでその中で円安に振ってコストプッシュで物価あげても仕方ないでしょという話になっていて、一連のイベントが片付いた後にどうなるのかというのもまた微妙な気もしますけれども、まあこんな感じで追加緩和がトーンダウンの流れになっているのは味わいがあるというものですな。


しかしまあ何ですな。
http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0L60F020150202
出口での金利・バランスシート取扱い、具体論は時期尚早=日銀総裁
2015年 02月 2日 15:55 JST

『総裁は「金利あるいは日銀のバランスシートの取り扱いについてどういったかたちのことを考えるかは、そのときの経済あるいは金融市場の状況に応じてもっとも適切な対応を取る」と回答。「今から具体的にご指摘のような(再投資見送り、テーパリング)ことをするかどうか、かえって市場に混乱をもたらすことあり、今の時点で具体的な話をするのは時期尚早」と述べた。』(上記URLより)

えーっとすいませんできるだけ早期に物価安定目標を達成するんだったら当然検討していないとまずいんじゃないでしょうか実は早期に達成する気ないでしょというツッコミはさておきまして、出口議論に関しては逆に「全く出口関係ないやろ!」という状況の時にある程度のイメージを出しておいた方が市場が反応しないで意識を持たせることが出来るのではとも思いますので、今のように春に向けてCPIゼロ近傍までの低下待ったなしとか言われているタイミングの時に出口後の本来あるべき姿についてお話をしておくというのも一つの作戦のように思えますけどね。

ともうしますのは、本当に出口が意識されるようなところになってからですと、出口政策の話をするのが時すでにお寿司状態になっており、下手にトークをするだけで市場がヒャッハーとかなると思われますので、その前にある程度イメージを持たせておけば、実際に経済物価情勢が改善する中でよりスムーズに出口の織り込みが進むように思えるのですけどね。まあ理想論かもしれないけどご一考をば。


○虫干しネタアゲインで(すいません)ドラギのおっちゃんの落語ネタ

おっちゃんの落語ネタを今更ですいません。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is150122.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 22 January 2015


・そもそもQEをするとどういう事で物価が上がるのかという質問

これはまた身もふたもない質問。

『Question:(前半割愛)The second question, just in a bigger picture sense, why should the public, why should the financial markets think that QE will work in terms of boosting inflation, in terms of restoring economic growth, employment in the euro zone?』

おっちゃんの説明である。

『Draghi: (前半割愛)On the second question, we would believe that the measures taken today will be effective, will raise inflation, medium-term inflation expectations, and basically will address the economic situation in the euro area.』

で?

『There are several channels through which these measures will be effective.』

さて・・・・・・

『The first is the portfolio rebalancing effect, where you basically substitute bonds with cash, and therefore banks, at that point, will have more incentive to lend to the private sector, households and companies.』

まあポートフォリオリバランスに関しては大体過去のQEでも棄却されていますけどね!!!

『Then you have signalling effects on inflation expectations. This is a quite important channel. Let me just give you an example why.』

気合キタコレ!!

『Of recent inflation expectations, medium-term inflation expectations, dropped by something like 50 basis points. Since our nominal interest rates are at the zero lower bound, this meant that real interest rates went up by about 50 basis points, basically nullifying the effects of our reductions of nominal interest rates, the two reductions of nominal interest rates that we had decided in the course of the year. So we do expect that effect to be also important.』

インフレ期待が下がったから実質金利が上昇したというのは分かるが、では何故QEをすると期待インフレが上昇するのかの合理的説明はどうなっているのでしょうか。

『Finally, let me add something here, because it’s actually quite important. What monetary policy can do, I’ve said this many times, but I think itis worthwhile repeating it. What monetary policy can do is to create the basis for growth, but for growth to pick up, you need investment. For investment you need confidence, and for confidence you need structural reforms.』

で、その気合の部分はさっきの話でおしマイケルでして、最も重要な点は成長のドライバーが投資であり、その投資が拡大するにはコンフィデンスが必要で、そのためには構造改革が必要である、という事で、金融政策以外の施策の重要性を説いていまして、まあドラギのおっちゃんとしてはこの話を一番言いたいんでしょうなあ。

『The ECB has taken a further, very expansionary measure today, but it’s now up to the governments to implement these structural reforms, and the more they do, the more effective will be our monetary policy. That’s absolutely essential, as well as the fiscal consolidation side. So structural reforms is one thing, budget and fiscal consolidation is a different issue. It’s very important to have in place a so-called growth-friendly fiscal consolidation for confidence strengthening. This combined with a monetary policy which is very expansionary, which has been and is even more so after our decisions today, is actually the optimal combination. But for this now, we need the actions by the governments, and we need the action also by the Commission, both in its overseeing role of fiscal policies and in its implementing the investment plan, which was launched by the President of the Commission, which was certainly welcome at the time, now has to be implemented with speed. Speed is of the essence..』(ピリオドが2つありますがこれは原文ママです)

とまあそういうことで、ECBがとにかく政策やったから財政構造改革をやれという話を延々としておりまして、まあドラギのおっちゃんとしては金融政策はつなぎの時間稼ぎにすぎなくて、とにかく財政と構造改革をきちんとやって欲しいという意識が強いという所でしょうな。

ただまあここでドラギ先生がどこぞの麿と違って大狸なのは、「金融政策はしょせん時間稼ぎです」とかこの正直者!と突っ込まれるような発言をしないところでして、「政策のツールキットはいろいろとある」(キリッ)というような話をしてああでもないこうでもないと手品だけは繰り出してくるところでございまして、その結果として時間は稼げているものの、肝心の域内各国政府の取り組みが足りないとトサカにきているのでしょうなあという所で。

#もしかして単に時間稼ぎたいなら最初はワークしない買入をやってその後手直しをして追加緩和感を出すという手もあるのかも知れませんね、大狸だけに


・オープンエンドというのは分かるがいつまで実施するのかの判断は??

『Question: My first question is about this open-ended commitment to conduct asset purchases until you feel as though you’re on a path where it’s consistent with achieving the inflation rates below but close to 2% in the medium term. People seem to have very different views about what medium term means. Would it be possible to clarify?(後半割愛)』

結局いつまで買入を継続するのかが「中期的に2%の目標達成に対して整合的な状況まで継続」だと何が何やらワカランチ会長という事ですな。

『Draghi: On the first question, I really only read again the statement. I just don’t want to speculate, giving horizons of dates, of deadlines. So these purchases are intended to be carried out until end September 2016, and will in any case be conducted until we see a sustained adjustment in the path of inflation. You might as well have asked, what is sustained adjustment? Sustained adjustment in the path of inflation, which is consistent with our aim of achieving inflation rates below but close to 2% over the medium term. You know the medium-term notion is a complex one. I have discussed this notion. It depends on many parameters, and at this point, certainly we wouldn’t want to speculate on precise deadlines.(後半割愛)』

でまあそれに対する答えですが、ある意味仕方ないのですが思いっきり蒟蒻問答状態になっておりまして、この点に関してはこれ以上の説明ができないというのもありますけど、もう一つの想像としましてはそもそも今回の決定に関して相当の反対なり見解の相違なりがあった事から、ふわっとした事しか発言できないというのもあるのかもしれませんな。


・マイナス金利での買入は行うとか年限に関しては何だかよくわからないとかその辺の質疑

『Question: (前半割愛)Second question would be whether you're also considering buying bonds which are actually already trading in negative territory when it comes to yields. 』

『Draghi: Second question, the answer is yes. (後半割愛)』

まあマイナスも買わないと回りませんわなと思いますが、ではマイナス金利を購入することになりそうなドイツ様とかはブンデスバンクがその分で償還損をこくことになりますが国内的に大丈夫なのでしょうかねえというのは気になるところ。

『Question: Could you give us an indication on the maturities of the bond you’re going to buy?(後半割愛)』

『Draghi: The first question is yes, the maturities range between 2 and 30 years. So it’s very long.(後半割愛)』

まあそうですな。


・ちなみに資産バブルの対応に関する話はBISビュー的ではない感じがしますなあ

こんな質疑が。

『Question: Two questions. What do you answer to those arguing that an effect -- a possible effect of the QE will be to rise some price bubbles on certain categories of assets?(後半割愛)』

『Draghi: On the first question, we monitor closely any potential instance of risk to financial stability. So we're very alert to that risk. So far we don't see bubbles.』

そらまあ今はバブルはないでしょう(国債は微妙だけど)。

『There may be some local episodes of certain specific markets where prices are going up fast. But to have a bubble, besides having that, one should also identify, detect an increase, dramatic increase in leverage or in bank credit, and we don't see that now.』

ほうほう。

『However, we, as I said, we are alert. If bubbles are of a local nature, they should be addressed by local instruments, namely macro-prudential instruments rather than by monetary policy.』

ということで、資産バブルが局地的なら局地的なマクロプルーデンス政策で対応すべきであって金融政策の出番ではない、という説明をしているのはまあ普通ちゃあ普通の説明ですが、BISビュー的なニュアンスはなさそうに見えるので、この辺はドラギ総裁はブンデスバンク的な部分はないですよね、というのは把握した。


・細かい質疑がないのは残念だが要綱が出ていない時間帯だから仕方ない

冒頭のステートメントに『Separate press releases with more detailed information on the expanded asset purchase programme and the pricing of the TLTROs will be published this afternoon at 3.30 p.m. 』とありますように、なんでそうなるのよと思うのですが、買入の詳しい話については会見の後に出すという流れになっていて、ナンジャソラと思うのではあるのですけど、そのせいでたとえばマイナス預金金利を残していて買入ができるのか(それは要綱なくても聞けそうなもんだが)とか、買入の比率的に2016年9月まで継続したらドイツ国債の買入対象玉がなくなるのではないかとか、そういう質問が出てこないのが残念なところです。

#ほかにインフレ期待の質疑とか財政サポート的な質疑もあったけどイマイチ蒟蒻問答チックで話があまりかみ合っていない感じなので面倒になってパスしてしまいました(汗)



2015/02/02

お題「短国買入2.5兆円&輪番は据え置き(謎の修正あり)/いまさらですが1月金融経済月報です(大汗)」

いやあの・・・・・・・・。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150202/t10015135311000.html
邦人救出活動 国会論戦の焦点の1つにも
2月2日 5時10分

って直接的な救出活動能力あるのって米国とかロシアレベルでしょ能力も無いのにいきなり法整備とかの話に飛躍するの??????


○例によってオペ関連メモ

・短国買入は2.5兆円ですかそうですか

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150130.htm
国庫短期証券買入 25,000 2015年2月3日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 4,000 2015年2月3日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,000 2015年2月3日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2015年2月3日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3) 2,000 2015年1月30日 2015年2月2日

ということで相変わらず札があるので買う攻撃ですが3兆円打ってきたらどうしましょと思っていたので2.5兆円だと多分市場の予想していた額。しかしこのペースでオペやっていくと3月のところがどうなるんでしょうかねえ。

で結果。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150130.htm
国庫短期証券買入 40,788 25,002 0.001 0.005 92.5
国債買入(残存期間1年超3年以下) 13,996 4,005 0.006 0.007 1.3
国債買入(残存期間3年超5年以下) 13,690 4,002 0.005 0.005 75.4
国債買入(残存期間5年超10年以下) 14,830 4,003 0.005 0.007 10.9
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4) 26 26 -0.400 -0.400

応札4兆そこそこということでさすがに3兆買入連発攻撃が効いてまいりましたという所ではあるのですが、1年短国の売参がマイナス2bpとなっていて新発出た時の平均落札レベルがマイナス1.69bpだったので、平均の5糸甘だと儲かっておらずのように見えますので、今回の平均を下げたのは実は506回債(売参マイナス2.5bp)の方だったりするのかも知れませんね。で、そのほかに1年短国が入っているという感じ(カレント3Mは509回の売参がゼロ利回りで508回がマイナス0.1bpなので足切で入れても入札水準から比較すると負けとなるのでカレント2銘柄は投げ以外では入らない)ですか(あとは引けがマイナス1.4bpの6Mとか)というところで。

しかしまあ何ですな、今月はしばらく2.5兆円のペースで買入が継続となるのでしょうが、そうなりますと短国買入残高が12月末対比で3兆円程度上に振れたままで推移することになって、日銀がわざわざご丁寧に需給を締める格好になっているのですが、毎度申し上げておりますように短国市場の金利をマイナスで推移させない(期末などの一時的な瞬間風速は仕方ないにしても)ようにしておけば債券市場にマイナスが波及してその年限が伸びて長期までヒャッハー相場になる、という債券市場ぶっ壊れモードに火をつけることもなかったと思われますし、だいたいからしてここまで債券市場が壊れなければ国債買入の限界とかそういう話がこんなに早くに来る事もなかった訳で、どうにもこうにも短国のオペの打ち方が痛恨としか申し上げようがないですな。


なお市場ですが
http://jp.reuters.com/article/jptokyomarket/idJPL4N0V93QX20150130
〔金利マーケットアイ〕翌日物の加重0.07%前半か、3カ月物TBは-0.006%に低下
2015年 01月 30日 15:28 JST

『日銀が実施した国庫短期証券(TB)買い入れは無難な結果となった。買入予定額は2兆5000億円と前回(3兆円)から減額。落札結果によると、応札額は4兆0788億円と前回(7兆3892億円)を大きく下回った。案分利回り格差はプラス0.001%。日銀が週1回2.5兆─3兆円ペースの買い入れを継続していることから、需給改善への期待が高まった。日銀買い入れを受けて、新発3カ月物は前日比0.005%低いマイナス0.006%で出合いを付けた。』(上記URLより)

ということなのですが、オペの落札結果的にはカレント3Mは投げないと入らないレベルなのですが日銀買入を受けて3Mが強くなるという辺りに味わいがありますな(棒)。


・2月の輪番実施額は変化なしだが謎の修正あり

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150130d.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141230b.pdf(前回)

『(注4)2015年2月2日以降の最初のオファー金額は、残存期間1年以下700億円、残存期間1年超3年以下4,000億円、残存期間3年超5年以下4,000億円、残存期間5年超10年以下4,000億円、残存期間10年超25年以下2,400億円、残存期間25年超1,400億円、変動利付債1,400億円、物価連動債200億円とする予定です。』(今回)

『(注4)2015年1月5日以降の最初のオファー金額は、残存期間1年以下700億円、残存期間1年超3年以下4,000億円、残存期間3年超5年以下4,000億円、残存期間5年超10年以下4,000億円、残存期間10年超25年以下2,400億円、残存期間25年超1,400億円、変動利付債1,400億円、物価連動債200億円とする予定です。』(前回)

ということで昨今の債券市場大暴れを受けて超長期とかいじるのかと思いましたが特段の変化もなくという事で、その一方で意味不明に買入額のレンジで中期の1回当たりの額を『5,000〜12,000程度』から『4,000〜10,000程度』になっておりまして、なんでそこを減らしたのかよくわからん結果になっています。まあ5000億×2を上限にしますよという事かもしれませんけれどもわざわざ変える必要があるのかがよくわからん。


○超今更ネタですが金融経済月報

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2015/gp1501.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1412.pdf(前回)

遅くなりましたが今回は声明文比較の方もしておりませんでしたので月報比較で声明文比較に替えておきます(超大汗)。例によって【概要】部分から。

・現状判断は一か所だけ上方修正

『わが国の景気は、基調的に緩やかな回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も全体として和らいでいる。』(今回)
『わが国の景気は、基調的に緩やかな回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も全体として和らいでいる。』(前回)

てな訳で総括判断には変化がありません。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直しの動きがみられている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直しの動きがみられている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

海外経済、輸出、設備投資、公共投資の文言も同じです。


『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は下げ止まっている。』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は下げ止まりつつある。企業の業況感は、一部に慎重な動きもみられているが、総じて良好な水準が維持されている。』(前回)

個人消費、雇用所得、住宅投資のところも同じで、これだけ全部同じなのに生産だけ判断が上昇しているという謎展開で、その謎展開の理由は在庫調整の進捗が良い事であるという話のようです。なお業況感云々は短観直後の月報で出るものなので今回は割愛されるのが仕様です。


・先行き判断も一か所だけ文言変更

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も収束していくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も収束していくとみられる。』(前回)

こちらも全文一致。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、当面、高水準で横ばい圏内の動きを続けたあと、緩やかな減少傾向に転じていくとみられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、当面、高水準で横ばい圏内の動きを続けたあと、次第に減少傾向に転じていくとみられる。』(前回)

輸出はいつもどおりの見通し。公共投資のところが「次第に減少傾向」というのと「緩やかな減少傾向」というののどちらが強いのか最早文学過ぎてわかりません><

『設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に収束していくとみられる。住宅投資は、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に収束していくとみられる。住宅投資は、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。』(前回)

全文一致とな。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかな増加に復していくと考えられる。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかな増加に復していくと考えられる。』(前回)

生産も同じですね。


・リスク要因も同じ

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

これまた全文一致。


・物価は先行き判断を下げるの巻

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の大幅な下落を反映して、3か月前比で下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の大幅な下落を反映して、3か月前比で下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

現状判断では相変わらずの予想物価上昇率は全体として上昇攻撃がありましてお前は何を言ってるんだ状態ですが、こちらはまあ現状判断部分なのでそうですかという所ではあるのかも知れませんが、1%程度という数字から0%台後半という数字表現になりましたな、うんうん。


『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面現状程度のプラス幅で推移するとみられる。』(前回)

先行き判断ですが「当面現状程度のプラス幅」という表現だったものを下方修正して「プラス幅を縮小」としておりますが、日銀文学的にはこの「当面」というのは英文でいう「for the time being」でして、数か月程度は数か月程度ですが、半年程度になると「しばらくの間」になりまして、「for some time」となりますので、それよりは短い期間ではあるのですが、目先数か月程度弱含みになりますという話になっておりますな。

ただまあ一方でご案内のように展望レポートでは先行きの見通しに関して手前の物価見通しは下げたものの、先行きの方は下げるどころか引き上げとなっておりますので、それとセットで考えますと、今回展望レポートを出して先行きは別に変わらないどころか上昇ですよ(キリッ)と出すことによって、足元の物価情勢を政策判断から切り離して「一時的なので無問題(キリッ)」とできるようになり、そのため今回やっと判断文言をいじれましたという話でしょうな。

なお物価先行きに関して英文バージョン比較を置いておきますね。

『With regard to the outlook, excluding the direct effects of the consumption tax hike, producer prices are expected to continue declining for the time being, reflecting movements in international commodity prices, and the year-on-year rate of increase in consumer prices is likely to slow for the time being, reflecting the decline in energy prices.』(今回)

『With regard to the outlook, excluding the direct effects of the consumption tax hike, producer prices are expected to continue declining for the time being, reflecting movements in international commodity prices, and the year-on-year rate of increase in consumer prices is likely to be at around the current level for the time being.』(前回)


・金融環境に関する説明には新味なし

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)以下の部分は特段のインプリケーションもなさそうですのですが、せっかくですので本文の方ではどういう記述をしているのかを比較してみましょう。

まずは短期。

『短期金融市場をみると、長めのターム物を含め、金利は低位で安定的に推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.1%を下回る水準で推移している。ターム物金利をみると、3か月物国庫短期証券利回りは、概ねマイナスの領域で横ばい圏内の動きとなっている。3か月物ユーロ円金利およびユーロ円金利先物レートは、いずれも横ばい圏内の動きとなっている(図表36)。』(今回背景説明)

『短期金融市場をみると、長めのターム物を含め、金利は低位で安定的に推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.1%を下回る水準で推移している。ターム物金利をみると、3か月物国庫短期証券利回りは、マイナスの領域で横ばい圏内の動きとなっている。3か月物ユーロ円金利およびユーロ円金利先物レートは、いずれも横ばい圏内の動きとなっている(図表44)。』(前回背景説明)

もしかして年初に短国入札の足切りが100円になったから「概ね」がついたのかという所ですが、どう見てもマイナス状態の長期化は凶悪な事態なのですが「低位で安定的に推移」という表現にまとめられているのはいつものクオリティ。

ヒャッハー長期。

『長期国債の流通利回り(10 年新発債)は、米欧長期金利の低下や昨年秋の日本銀行の金融緩和拡大などを背景に低下しており、最近では0.2%台前半で推移している(図表38)。』(今回背景説明)
『長期国債の流通利回り(10 年新発債)は、米欧長期金利の低下などを背景に低下しており、最近では0.3%台半ばで推移している(図表46)。』(前回背景説明)

ということで、短国マイナスの長期化→利付国債のマイナス化→マイナス領域拡大→ヒャッハーという話についてはもしかしてこの文章には書いていないだけでご認識があるのかもしれませんけれども、まあ思いっきり知らんがな的な表現になっている辺りが市場との対話アリバイ会合の屋上屋を架すのに余念がないだけの事はありますなという所でございまする。


#ということで超虫干しネタで申し訳ありません