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2014/11/28
お題「お伽の国のさゆりワールドへようこそ!!(なお政策インプリケーション皆無ですので念の為)」
来週から師走とな!!!!
○市場関連ネタ
・3M入札は100円足切りでしたが・・・・・・・・・
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20141127.htm
(1)応募額 41兆7,359億7,000万円
(2)募入決定額 5兆2,164億9,000万円
(3)募入最低価格 100円00銭0厘0毛 (募入最高利回り)(0.0000%)
(4)募入最低価格における案分比率 16.9844%
(5)募入平均価格 100円00銭0厘3毛 (募入平均利回り)(-0.0011%)
今週に入って円安無双状態が一服して為替絡みのニーズが減ってマイナス金利の買い圧力がやや軽減されたのと、そもそもMB積み上げの目標から逆算するとそろそろ短国買入のペースが落ちてもおかしくない(ただし固定金利の落ちや貸出支援オペの伸び悩みを考えると少し下駄を履きに来る可能性もある)という見込みもあってとゆーことで、朝一の時点ではもしかしてプラス利回りかも的な話も飛んでいましたが、前場引けは順当(?)にマイナス利回りがビットサイドに置かれていましたので、まー100円足切りですかねという感じで入札を迎えるの巻。
で、落札結果は上記の通りで100円足切りという事ですが、そらまあゼロ以下の利回りを買えない人が先週からろくすっぽ買えていない(入札はあの有様)わけですから、アンダーパーになったらブラックホールの如く買いニーズが発生するでしょうから残念ながら順当という所ですかね。
・・・・・・・でまあそこまでは良いのですが、その後結局セカンダリーはマイナスビットになって引け近くになりますと結局6Mカレントがマイナス4.5bpだの3Mの前回債がマイナス3bpだのとかの出合いになって新発もマイナス5.5bpとかまたまたアオリイカ状態になって終了ということで、もう何だかねという所であります。
まあ何ですな、プラス金利で入札をすると今の状況だとプラス金利だと買うという人のニーズがワサワサとやって来ますので入札後のセカンダリーでバカ売れになってしまい、今日の短国買入の前に業者の在庫がすっかり軽くなるので短国買入で思いっきり強いレートになってしまうという展開が想定されましたし、先週並みのやや深めのマイナス金利の入札だと業者の持ちになるので今日の短国買入がちょっと減ると調整モードの可能性とか、まー色々と妄想はしていたのですけれども、いずれにせよ今日の短国買入が幾らで入ってくるのか次第で次の展開が見えてくると申しますか、今日は2年入札があるのでその前に短国買入でどうなるのかというのがまた何とも難しいですな。
つーことで結局の所日銀買入に振り回される市場なのですが、いずれにせよ本日の短国買入が超注目という良く良く考えたら不毛にも程がある話ではありますな、うんうん。
・T+1化ってQQEやってる時は無理じゃないですかねえ
更新キタコレ
http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/kessai/jgb_kentou/index.html
国債の決済期間の短縮化に関する検討状況について
http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/kessai/jgb_kentou/files/20141126_grand-designgaiyou.pdf(概要)
http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/kessai/jgb_kentou/files/20141126_grand-design.pdf(本文、重いので注意)
このネタ出る度に毎度申し上げるのですが、特に足元ではQQEによって国債市場の流動性とか市場機能が壊滅的な状況になりつつあるとか、まあそういう状況になっている訳でして、この国債決済期間の短縮化ですけど、アウトライトT+2とT+1の間には事務的なハードルが高い訳でして、それは即ち施策を導入した場合に国債流通市場に対して(未決済残高の縮減というメリットはありますが)決済事務面でストレスを掛けることになりますのでありまして、ただでなくさえQQEによって国債流通市場に強烈なストレスが掛かっている中なのに、そこに更にストレス掛けてどうしますねんとしか申し上げようがないので、QQEが終わってある程度日銀買入による国債流通市場に対するストレスが掛からなくなって来た所で導入時期を考えれば良いんじゃないですかねえとしか申し上げようがないですな。
つーかそもそも足元の短期国債市場などにありますように、もはや市場の状況はT+1決済に対応するシステム投資をする収益が出るとかいうようなレベルを超越したマイナス金利という状態な訳でして、元々対応に費用が掛かる案件をこの時期にどうのこうのってのは無理無理無理という話だと思いますけどね。T+2をT+1にするメリットと比較して掛かる費用が(今の市場状況だと)高いというのと、決済事務面に与えるストレスの弊害を考えた方が吉じゃないですかねえ(T+3をT+2にするのだったら大きな費用やストレスが掛かる話では無かったがT+1にするのはメリットデメリットのバランスがだいぶ違ってくると思う)。
#大体からしてカウンターパーティーのリスクって市場参加者が個別に管理すべき問題だし
まあいつもの話で恐縮ですがメモ置いときますという事で。
○今日もさゆりワールドへようこそ!!!(白井審議委員広島金懇会見ネタ)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1411e.pdf
なお最初にお断りしておきますが、この質疑応答から金融政策の先行きに対する有益なインプリケーションは1ミリも得られることはございませんで、あくまでも夢の国のお伽噺の不思議ワールドへの旅へのお誘いという事で宜しく。
#まあ夢の国というよりは夢の島のような気もします(「夢の島」の含意って若い衆は知らんのかな)
・いきなりの出落ちで腹筋崩壊
最初の説明部分はさておきまして、2ページ目に最初の質問がございましてですね。
『(問) 追加緩和から1か月経ちますが、出席者からその評価も出たのではないかと思います。評価する声が多かったのか、しない声が多かったのか判りませんが、そのあたりのことも含めて、追加緩和が及ぼす広島県経済の今後の見通しと、追加緩和を決めるにあたって、地方ではまだ景気回復の波が波及していないと言われていますが、そういった地方の回復の遅れといったようなものも、緩和にあたって考慮事項に入ったのでしょうか。その2点をお尋ねします。』
QQE(とかアベノミクスとか)と地方経済の関係についての質問ですが・・・・・・・・
『(答) 今回の追加緩和については、私が今日ご説明するまでは、「正直言って、なぜしたのか理由がよく判らない」という声が聞かれたのですが、私なりの説明をいたしましたところ、「非常にその趣旨が判りました」という声を伺いました。』
・・・・・(;゚д゚)
もうこの時点で降参wwwwwwwww
『それから何よりも、今回の金融懇談会で共有できたのは、これは日本銀行だけが頑張ればよいというものではないということです。』
まだネタにしていませんが先日の名古屋での総裁講演でも経済界にお願いモードになっていましたが、ついにこのモードに入ったかという所ですな。
『インフレ目標を設定して、インフレを実現するのは金融政策だとしても、そこにはやはり持続可能な成長が必要な訳であり、私の挨拶要旨にもありますように潜在成長率が落ちてきている経済ですから、それを底上げしていくのはやはり皆の努力が必要なので、今、日本銀行が金融緩和をしている、この状況を、是非、活かしていただいて、企業も金融機関も頑張っていくと、地方政府も頑張っていくと、そういうことが共有できたと思います。』
デフレは貨幣的な現象なので金融政策だけで達成できるという置物理論is何処??
『そういう意味で、追加緩和の理由がよく判ったということと、皆で頑張りましょうという、その意識が共有できたと思います。』
ぽかーん。
『地域経済に対して、私たちの「量的・質的金融緩和」の影響が少ないのではないかとの意見があるかも知れませんが、今、日本の潜在成長率がどんどん落ちてきている中で、それを底上げしようとしている訳です。』
事務方がもはや要旨を纏める事ができないような発言が展開されています!!!
『今の日本は、成熟していますから、高度経済成長期のような大きな成長を期待できる社会ではないです。そういう中で、成長率が落ちているところを皆で努力して上げて、潜在成長率も上げて、物価もマイルドなインフレ、2%を実現しようということです。』
結局物価目標は日銀単独で達成できないと言いたそうな説明だが、それは今のQQE理論とは違いますよね。
『そういう意味では、広島県も色々なところで影響を受けていると思います。』
以下寝言が続くのでこの質疑部分は割愛しますが、最後の所だけ引用しておきましょう。
『地方に効果が及んでないとおっしゃいますけども、地方経済の活性化のひとつは観光です。今、観光客が世界から日本に沢山来ている、そういうことによって地方経済も恩恵を受けていると思いますので、私は金融緩和政策の効果はあるとみています。』
いやあの円安によるコストプッシュのマイナスと観光収支のプラスとは比較にならないスケールでしょ足し算引き算大丈夫でちゅか????
・マネタイゼーションがどうのこうの
質問も長いので困るのですが。
『(問) 3点お伺いしたいと思います。まず、追加緩和についてですが、昨日公表の議事要旨にも出ていたところですけれども、今日の講演でも、ここで追加緩和をしないことによって、信認が崩れるようなことになれば、2%の実現性自体も成り立ち得なくなる、というご論旨だったのではないかと思いますが、一方でマネタイゼーションの懸念というか、財政ファイナンスという面からの信認ということへの懸念というのも、多くの委員から示されたところではないかと思うので、――その円安ということで経済に悪影響が来ているということをさっきの質問でも出ましたが、その辺に加えて――このマネタイゼーションへの懸念ということについて、どのようにお考えなのか、それがあるのに何故、今このタイミングで追加緩和に賛成を示されたのかというところをお伺いしたいと思います。(以下割愛)』
『(答) 質問は4つあったと思います。まず1つめは、マネタイゼーションへの懸念があるなかでなぜ賛成したのかとのことですが、私たちは――金融政策は、どこの中央銀行でも同じですけども――、見通しをたてて、その見通しの内容によっては、必要であれば金融緩和をやるというのが中央銀行の政策です。(以下無駄に長いので途中割愛)ところが、今年の夏からは、横這いを示すものだけではなく、下がっている指標もいくつかみられた訳です。物価上昇率が落ちていて、予想物価上昇率も落ちていて、見通しも下方修正があるときに、金融政策運営をしている当事者として、それを放置することができるのだろうかと考えました。(以下無駄に長いのでまたまた割愛)』
えーっとですね、予想物価上昇率は「全体として上昇している」というのが政策委員会の認識なのですが、そうなると白井さんだけ追加緩和賛成のロジックが異なるという理解でよろしいでしょうか??
『(さっきの続きだが途中は割愛)中央銀行の金融政策にとって、物価の動きと予想物価上昇率の動きは大変重要です。それらが下がっている時に、しかも見通しも下がっている時に、放置できるということがあり得るのだろうか、私は金融政策運営者としてそれはできないというのが最大の理由です。それはマネタイゼーションへの懸念を越えて重要な問題だと思います。』
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚) バカデスカコノヒトハ
『なぜ今、先進国の中央銀行が皆、そこを懸念するかと言うと、一回デフレに陥るとなかなかデフレ脱却が難しい。例えば、今、物価上昇率は一応プラスになりデフレ脱却がみえてきても、企業や家計のデフレマインドはそう簡単には変わりません。まだやはり特売とかを求める方も多いですし、賃金も消費税率の引き上げもあって実質賃金はマイナスになっていますから、なかなか、インフレは根付かない訳です。』
ほうほうそれでそれで?
『そういう中で、掲げた目標を中途半端にしていいのか、日本銀行は、もの凄い大胆な金融緩和をして「これまでと違った」という評価を受けている中で、中途半端にすることによって、「やっぱり同じだった」と、「中途半端でやめるのですか」と、そういうことになったら取り返しがつかない訳です。私は金融政策に携わる者として、それは放置できない、それが最大の優先課題だと思いました。』
財政マネタイゼーションと財政赤字の発散の合わせ技で制御不能な事態になった方がもっと取り返しがつかないと思うのですけれども、まるで負けが込んで最終レースに有り金勝負するかのような説明振りに頭を抱えざるを得ませんな。
・物凄く質疑が噛み合っていない一例
さっきの質疑で割愛した方にこんなのがありますが会話になっていない感が凄いので観賞用に引用。
『(問)(前半割愛)最後の1点は、2014年度は潜在成長率、またはそれを下回る程度で推移するということを、今日、おっしゃったと思うのですが、これは、普通に考えれば、来年1月の成長率見通しを引き下げなければいけないのではないかと思えるのですけれども、そこについてのご所見をお聞かせ下さい。』
たしかに。
『(答)(前半割愛)4つ目の質問ですけれども、2014年度の成長率は、10月末までの情報をもとにして、見通しを立てていますので、そのもとでは2014年度の経済成長率は潜在成長率と同程度か、それを下回るぐらいと考えています。その後、11月17日に7〜9月期のGDPの第一次推計値が発表され、正直申しまして、予想以上に消費の回復のペースが緩やかですし、設備投資も前期比マイナスになりましたし、比較的回復ペースが弱いということが確認されました。次回の見通しを出すのは1月ですが、12月にはGDPの第二次推計値が発表されますので、そのときには在庫のデータについても、もう少し明確な情報も入ってくると思いますし、2013年度のGDPの改定も行われる可能性もありますので、そういうことも含めて、1月には新たな見通しを立てたいと思っています。ただ、現時点で出ているGDPの一次推計値によれば、2014年度の経済成長率は、現在掲げている数値よりも下振れる可能性は高いというふうに思います。』
?????????何を言ってるのか良く判らん。
・講演での説明と会見の説明がおかしい件など
『(問) 午前の講演で潜在成長率について、足もと0%台前半まで低下していると、さらに14年度の成長率がそれを下回る可能性についても言及されました。日銀では経済の先行きについて、「潜在成長率を上回るペースで成長を続ける」というふうにしているのですけれども、少なくとも14年度の成長が、潜在成長率を下回るようなことになった場合、これは需給ギャップの改善ペースとかシナリオの下振れということにならないのでしょうか。』
これは先ほどの質疑の直後に打ち込まれていまして、要するに先ほどの質疑が話が噛み合っていない証拠。
『それとも15、16年度と潜在成長率を上回る成長を続けていれば基調として問題ないのか、潜在成長率を下回った場合の政策対応の追加的な必要性についても含めて、お伺いしたいと思います。』
でまあ答えが無駄に長いのだが。
『(答) 7〜9月期のGDP一次推計値が公表され、そのデータに基づくと現時点では2014年度の経済成長率は下振れる可能性が高いですし、マイナスになる可能性もあります。その意味では確かに潜在成長率を下回り得ますので、需給ギャップの改善ペースは10月末に想定したよりも、もう少し緩やかになる可能性はあると思います。』
ふむ。
『ただそうは言いますものの、やはり9月以降のデータをみますと、消費ですと、例えば、幅広い関連指標で既に前期比プラスに転じているものもあります。(以下無駄に長いので途中割愛)ですから、やはり我が国の経済は少しずつ回復の方向に向かっているのは事実だと思います。そういう意味では、日本銀行が考えてきた前向きの循環メカニズムは否定されるものではないと思います。』
おいおい下振れリスクが顕在化して見通し下がったんじゃないのかよ・・・・・・・・
『労働指標は、9月のデータを見ますと、新規求人者数も前月比増加に転じています。失業率は上昇しましたが、非自発的失業者は減少していまして、ミスマッチ以外の失業者はほとんど見当たらない状況になってきています。かなり人手不足になっていますし、労働市場は極めて好調です。(さらにクソ長くので途中割愛)』
・・・・・(;゚д゚)
えーっと講演では
『私は本年1 月から4 月にかけて、金融政策決定会合の「対外公表文」に示すわが国経済の下振れリスク要因として、海外経済要因だけでなく「国内の雇用・所得環境の改善ペース」も明記すべきだと主張しました。結果として、私が指摘したリスクが顕在化し、経済が下振れる主因になったと思います。』(これは講演より)
って話をしているのに労働市場は完全雇用状態だったら「私が指摘したリスクが顕在化」とは白井さんの想像上の産物なのでしょうか??????
でまあだいぶ割愛しまして答弁の最後の方を。
『私自身の見通しは、元々経済成長率も物価上昇率も政策委員の中央値対比で慎重です。そこに、今日の挨拶要旨にも書かれているように、私が2016年度、見通し期間の終盤までに、2%程度に達している可能性が高いと考える理由は、今回の7〜9月期のGDP実質成長率の内訳を見ても確認されるのではないかと思います。』
わけわからん。
『そういう意味で今回の追加金融緩和は先手を打ったと思っています。私たちは昨年の4月に「量的・質的金融緩和」を始めたときに逐次投入はしないと申し上げました。その方針は現在も変わっていないと私は思っています。ですから、今回はそういうことも踏まえて、現在取りうる最大限の追加緩和をしていますので、今後、何らかの理由で私たちの見通しが下振れるからといって、機械的に追加緩和をするというようなことはないと思っています。』
えーっとすいません先ほどは下振れたから追加緩和をしたと言ってたのですが・・・・・・・・・
『今しばらくは、この追加緩和をやったことで今後の経済物価情勢がどうなっていくのか、金融緩和の効果をしっかり見極めていきたいと思っています。』
ということで不思議ワールドなのであります。
・さらに不思議な説明は続く
『(問) 今回の追加緩和の背景として、物価の下振れというのを挙げておりましたけれども、今回は5対4という非常に際どい採決で成立した訳です。白井委員が、もしそこで反対していれば、これは追加緩和が成り立たなかったということも言えると思うのですけど、どういうふうに採決されているかはよく判りませんが、その辺のいわゆる危機感、――もし自分が否決、反対したら水泡に帰してしまうみたいな――、そういった危機感みたいなものを感じられたのでしょうか。』
ってな質問なのですが、答えの最後の方にまたオモシロ説明(途中はマジでどうでも良いので割愛)が。
『(答)(途中までほとんど割愛)。こういう異次元緩和と言われる大胆な金融緩和は、何度も出来るものではないです。』
オープンエンドを強調してませんでしたっけ白井さん???
『また、確かに今私たちは、政府や企業の努力によって、潜在成長率を上げていって欲しいし、上げなければならないと思っています。しかし、2%のマイルドなインフレ率の実現というのは、これは金融政策によってしかできないのです。』
さっきと話が違いますが・・・・・・・・・・・・
『私たちが目標を掲げ、そのコミットメントをしっかり示していくことによってできる、そこが問われていたと思いますので、先程から申していますように、こういう物価上昇率が低下し、予想物価上昇率も低下しており、見通しも下振れるという状況で、何もしないということがもたらすことのマイナスの効果のほうが大きいと判断いたしまして――私は個人的には、挨拶要旨にも書いておりますし、前からも申し上げていますように、金融緩和の延長が望ましいとこれまで考えてきましたが、それ以上に日本銀行の信認を守ることが重要だと思いましたので――、今は、最大限の努力をして、2%の実現に向けて努力していくときではないかと思っております。』
そもそも見通しの下振れという時点で日銀公式と説明が違うと思うのですけどねえ・・・・・・・・
・辛辣な質問を鑑賞するの巻
質問がほぼ2ページという作品だが質問の方が面白いので観賞しましょう!!!
『(問) 10月31日の追加緩和と、白井委員ご自身のこれまでのご主張との整合性についてお聞きします。』
キタコレ!!!!
『5月29日の那覇での講演・会見で、「我々は2%の達成を目指すときに、他のインフレーション・ターゲティングを採用している国と同じで、『フレキシブル・インフレーション・ターゲティング』を採用している」、「何が何でも絶対に2年で2%を達成するというものではない」とおっしゃっています。』
でしたな。
『「もともと日銀の中心的な見通しからは1年遅い2%達成を見通していらっしゃるのに、なぜ『2年、2年』というふうに日銀全体が言っているときに、追加緩和をご主張されないのか」という質問に対してのお答えでした。』
そうでした。
『ここでは、その「何が何でも絶対に2年で2%ではない」とおっしゃっていることと、フレキシブル・インフレ・ターゲットだとおっしゃっていることについてお聞きします。』
さあもりあがってまいりました!!!
『今回の10月31日の追加緩和が、先程の地元の方々への説明会でも「なぜか判らない」という声があったとおっしゃっていましたが、それは当然でして、日銀としては「景気が緩やかに回復していて、先行きも回復基調が続く」、「前向きな循環がしっかり維持されている」と、そういう中で短期的に原油価格が下がったからといって追加緩和をすると、原油価格が下がること自体は日本国民のほとんどの人にとってはプラスであって、足もと物価が下がっても、先行き景気についてはすごく良いことだと、そういう状況で大規模な追加緩和をやるのは一体なぜなのかというのは、非常にごく自然な発想だと思います。』
ですねー。
『そこで、今回10月31日に追加緩和に踏み切った理由について、黒田総裁がその後の講演でおっしゃっていますが、「デフレ自体を払しょくして人々の気持ちの中に2%を根付かせるためには、それなりの速度と勢いが必要だ」と、「これが日銀が2%の達成にこだわる理由である」と、「2%の早期達成のためにできることは何でもやる」とおっしゃっています。』
その通りですな。
『これはもともと白井委員がおっしゃっている「何が何でも絶対に2%ではない」という考え方とは非常に対極にある考え方ではないかと思います。』
(;∀;)イイシテキダナー
『つまり、インフレ・ターゲットというのは、今採用されているのはフレキシブルであるということを白井委員は何度もおっしゃっています。しかし、今回の日銀の追加緩和というのは、フレキシブルの対極にある、非常にリジッドなインフレ・ターゲットだというのが、おそらく世界中ほとんどの人たちの理解ではないかと思います。』
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
『実際にフレキシブル・インフレ・ターゲットだということを重視されている佐藤委員、木内委員、石田委員、森本委員は、今回反対されています。今日の講演の中でも、インフレ・ターゲットはフレキシブルだとご指摘されていますが、10月31日の追加緩和に賛成して尚、「この今の日銀の金融政策はフレキシブルだ」とおっしゃられているということは、これは学者としての良心に反しないのかということをまずお聞きします。』
最後で大爆笑してしまいました(褒め言葉ですので念の為^^)。
さらに追及は続く。
『それともう一つ、もともと「2016年度までの見通しの終盤頃に2%に達する可能性が高い」とおっしゃっていた訳で、今回の原油価格が下がったということで、これが主な理由として日銀は追加緩和に踏み切った訳ですけれども、この原油価格が下がったということは、これは1年経てばほぼ中立になる話でして、物価に対する影響というのは1年で消えてしまう訳です。その後は、これまでの需給ギャップという面においても、この原油価格の下落というのはプラスに働いてくる訳です。』
(・∀・)ニヤニヤ
『これはつまり、2016年度に2%に達するという見通しをされている白井委員の見通しにはほぼ影響がないのではないかと思うのですけれども、そもそも、なぜこの短期的な原油価格の下落が白井委員の見通しに影響があり、それでこの追加緩和に踏み切らないといけないとなったのかがさっぱり判らないというのが2番目の質問です。』
クソワロタ(褒め言葉です)。
ということで辛辣な質問を鑑賞しましたので答えなのですが、これがまた丸々2ページあるのですが全然答えになっていないのですよね。
・そもそも説明が色々とおかしい白井さん
『(答) まず、私だけではなくて、日本銀行の基本的な立場として、フレキシブル・インフレーション・ターゲティングを導入しています。それは、総裁も今まで説明されてきたと思います。そのフレキシブル・インフレーション・ターゲティングというのは、何が何でもきっちりと、ある決めたカレンダーの日付で、2%を実現するということではありません。』
『様々な予期せぬ色々なことが起きます。例えば、今回の場合、天候要因によって消費が打撃を受けるといったことが起きる訳です。アメリカの場合ですと、寒波があって1月から3月にマイナスになったように、そういう予期せぬことが起こります。そういう時に、何が何でもあらかじめ決めた時期に、2%を達成するものではないということで、そういう時には柔軟に、成長のところも配慮しながら、インフレ目標、物価安定目標を実現しようという考え方は、日本銀行も全く同じだと思います。』
QQEでは「2年を念頭に出来るだけ早期に」と言っているのでして、達成時期までの2年が置物理論によりますとグローバルスタンダードらしいのでそういうリジットな対応をしているのでして、今の建付け全然フレキシブルではないのですが。
なお、説明のどさくさに紛れて自分の宣伝に余念がない辺りがさゆりワールドの恐ろしい所なのでその先をちょっと見てみましょう。
『重要な点は、もう一度遡りますと、これまで「量的・質的金融緩和」をする前の日本銀行では、昨年の1月に、あらゆる角度から考えて、2%の物価安定目標を掲げることが大事だと決定した訳です。その時に、当時、我々が行っていた包括的金融緩和では、2%を達成できるというふうに思っていた国民、市場の方は、ほとんどいなかった訳です。そういう中で私は、昨年3月に自分で議案を出して、30年までの長期国債を毎月5兆円程度買い入れていくオープン・エンドのやり方を提案し、否決されましたけども、その時もその私の提案では2%を達成できないというふうにみている方が多かったと思います。(以下思いっ切り割愛)』
いきなりこうやって過去のアリバイ提案の正当性を主張する訳ですが、あの提案出した事がその後のコミュニケーションポリシーに随分と禍根を残したという認識が1ミリも無い(あったらそもそも退任直前の執行部相手にあんな提案しないわな)というのがさすがというか面の皮がどんだけの鋼鉄で出来ているのか頭(内務省検閲)なのかと。
なお、この後延々と意味不明の供述が続くのですが、全くと言っていいほど質問に対する説明になっていないので、引用するだけインターネットのリソースの無駄(そもそもこのネタ自体が不毛とか言わないでね!)ですので会見要旨を直接ご覧ください。
2014/11/27
お題「今回も意味不明さゆりワールドを堪能しつつ緩和政策の波及経路説明は一応真面目に鑑賞の巻」
色々と意味不明と言えばこの辺も。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NFLAH76K50YA01.html
本田内閣府参与:日銀審議委員に2人目の女性起用の可能性
更新日時: 2014/11/26 10:11 JST
『本田氏は10月末の追加金融緩和が5対4で決まったことについて、「今後、黒田総裁が追加緩和したくてもできない状況に陥る可能性がある。新しい審議委員を任命することは日本経済にとって極めて重要だ」と述べた。』(上記URLより)
・・・・・・・えーっと何のために合議制を取っているのかご理解しておられますでしょうか???
あと今日は3Mの入札で明日は2年の入札ですけれども、3Mはお察し状態として2年入札が夢の100円20銭5厘とか見たくない光景なのですがさてどうなるのやら。
○色々と意味不明な白井審議委員講演
いやまあ意味不明なのは今に始まった訳ではないですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141126a1.pdf
・その前にこれは酷いとしか
でまあその講演ですが、さらに会見の所で凄い発言をしておりましたので詳しくは会見要旨が出てからまたネタにしますがロイター記事から。
http://jp.reuters.com/article/idJPT9N0SX00920141126
BRIEF-デフレマインド転換しないことの方が、マネタイゼーションより重要な問題=白井日銀委員
2014年 11月 26日 14:29 JST
『[広島市 26日 ロイター] - 日銀の白井さゆり審議委員は26日、金融経済懇談会後の記者会見で、予想以上のペースで物価上昇率が落ちているとし、10月の消費者物価指数(生鮮食品、消費増税の影響除く)が1%を割る可能性があるとの見通しを示した。また、デフレマインドが転換しないことの方がマネタイゼーションより重要な問題だと指摘した。』(上記URLより)
>デフレマインドが転換しないことの方がマネタイゼーションより重要な問題
>デフレマインドが転換しないことの方がマネタイゼーションより重要な問題
>デフレマインドが転換しないことの方がマネタイゼーションより重要な問題
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)
いやどう考えても財政マネタイゼーションは不味いだろとしか思えませんというか、昨日ネタにした10月30日の金融政策決定会合議事要旨でも追加緩和に対して財政ファイナンスと見られるリスクについての指摘があったし、総裁会見なんかでも財政ファイナンスのリスクについての質問があってそのリスクはありませんという応酬が毎度続いているのですが、このオバハンは何という発言をしているのでしょうか。
白井さんが特段注目されるような方じゃないからスルーされて無事に終わったから良いようなもので、これ総裁が同じ事言ったらそれだけで日本格下げ食らっても文句が言えないレベルの話で、現象面として日銀が財政ファイナンスとしか思えない買入をしている事と、日銀の政策委員が財政マネタイゼーションも辞さずという事の間には思いっきり差がある訳でして、それって日本の財政運営に関する現象面とスタンス面はまた別でしょというお作法の世界と同じ話だと思うのですけれども、どうも今回の講演の中でもそうなのですが、白井審議委員におかれましては現実の世界で金融政策運営をしている筈なのにもかかわらず、勝手にアタクシワールドのお花畑の世界に飛んで逝っておられるのではないかという疑問がわき起こってくるというものです。
ということで講演を鑑賞。
・後付両建大作戦とか見苦しいにも程がある件について
経済物価情勢と見通しの部分ですが、一々『ここで、私自身の経済見通しを申し上げますと、』とあって、しかも「私自身の経済見通し」の部分に下線が引いてあるというどんだけ自己顕示欲が強いんだよという辺りが既に白井クオリティなのですが、その説明が何とも見苦しい。
『ここで、私自身の経済見通しを申し上げますと、まず2014年度の経済成長率については、もともと政策委員見通しの中央値対比で慎重ですが、今回はさらに下方修正いたしました。主因は、個人消費の下振れです。本年7月中間評価時点では消費税率引き上げ後の消費の反動は「想定内」との企業の見方が多く聞かれていましたが、実際には予想を超える反動減となり、本年8月以降も回復がもたついていることにあります。この背景には、実質所得の低下の他、天候要因や株価等の資産効果が振るわなかったことも影響しているとみています。』
「もともと慎重」ねえ・・・・・・・・
『こうした点を懸念して、私は本年1 月から4 月にかけて、金融政策決定会合の「対外公表文」に示すわが国経済の下振れリスク要因として、海外経済要因だけでなく「国内の雇用・所得環境の改善ペース」も明記すべきだと主張しました。結果として、私が指摘したリスクが顕在化し、経済が下振れる主因になったと思います。』
何か「ねえねえアタシは指摘していたのよ」という話をしておられるのですが、今回の追加金融緩和は建付け上は「リスク対応」の追加緩和だった訳でして、リスクがあるという認識を前から持っているなら何で追加緩和の提案をしていないのかと小一時間ですし、大体からして5月以降にその提案してねえだろということで、両建てしておいて後から当たった方だけ出して来るとか、四季報見ながら殆どの銘柄の買い推奨をして当たった物だけ後から出して来るよりも見苦しいわと大変に素敵な味わいがする訳です。
しかもですよ、そもそも白井さんが指摘していたリスクは「雇用・所得環境」のリスクであって、そちらに関しては引き続き堅調に推移しているというのが展望レポートで示された認識でありますし、一般的にも雇用関連に関しては強い状況が続いているという認識の筈であって、別に白井さんが指摘したリスクが顕在化しているとも思えないのですが、何で当たった事になっているのか理解に極めて苦しむものです。
つーかだいたいその前の部分でアンタ『雇用の増加傾向と名目賃金の上昇によって「雇用者所得」(1人当たり名目賃金×雇用者数)も対前年比で増加しており、消費を下支えしています。』って説明してるじゃないかと思う訳で、まさかとは思いますが論理的思考力に重篤な問題を持っておられるのではないかと心配したくなる次第でございます。
大体からして「ねえねえアタシのリスク認識が当たったのよ凄いでしょ凄いでしょ(実際は別のリスクが出ているだけでそもそも指摘しているリスクについては当たっていないのでその時点で間違いだがそれは措く)」とか自慢されましても困る訳でして、政策運営の立案をする人なのですから、そのようなリスク認識に対して事前に何らかの施策を提案するとか、そういう行動に出て頂かないと当たったとしても何の意味もございませんがなとしか申し上げようがないですな。
・QQEの枠組みと違う話を前提にするならその旨議案をだすべき
物価の話がまた色々とぶっ飛んでいまして。
『ここで、私自身の物価見通しを申し上げますと、2014 年度の消費者物価上昇率の見通しは、本年7
月中間評価時点よりも幾分引き下げました。その理由として、@需給ギャップの改善ペースがより緩慢になると見込まれること、A中長期の予想物価上昇率が以前から概ね横ばいの指標(例えば、家計と一部エコノミストの指標)も見られる中で、本年夏場以降からブレーク・イーブン・インフレ率、インフレ・スワップ・レート、国債市場参加者の指標、企業の自社販売価格の現在水準と比べた変化率等が低下を示してきたこと、また(実際の物価上昇率も本年5
月から下落が続いていることから)それらが直ちに持続的な上昇傾向を示すとは考えにくいこと(前掲図表4−1、4−2)、B商品価格の下落の影響がラグを伴って消費者物価に反映されると見込まれること等が挙げられます。』
ほうほうそれでそれで?
『つまり、消費者物価の上昇率は、暫くの間、1%前後で推移した後、2015 年度前半にかけて再び上昇傾向を辿るとみており、上昇に転じるタイミングを幾分後ずれさせました。』
2年で2%との整合性はという気はしますが、まあ15年度1.7%平均が展望レポートの中心的な見通しになるのでここはスルーしましょう。
『2015 年度以降の私の物価見通しについても7 月中間評価時点よりも幾分下方修正していますが、今回の追加緩和の効果を織り込むことで(追加緩和がなければさらに後ずれする見通しがほぼ元に戻る形で)、これまでの見通しに概ね沿ったものとなっています。すなわち、「見通し期間の終盤にかけて2%程度に達する可能性が高い」とみています。』
えーっとすいません2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に達成という話なので見通し期間の終盤だと2016年度終わりという形ですからQQE導入からみたら4年近くになってしまってタイムホライズン全然おかしいんですけど。
それに2017年4月に消費税率上げようって話をしているんですから、その判断をする頃には物価目標達成してないと不味いんじゃないですかねえ。
『なお、中心的な見通しでは、2%程度に達する可能性が高いとみる時期について「見通し期間の中盤頃、すなわち2015
年度を中心とする期間」としていますが、私を含めた多くの政策委員の見通しを網羅する表現としては、この表現よりも、「見通し期間の終盤までに」の表現の方が適当と考え、10
月末の金融政策決定会合で修正案を提案しました。』
QQEの今の考え方を前提にするなら(なお木内さんはそもそも中長期で目指せと言っていますし、佐藤さんはフォーキャストターゲットの枠組みでの話をしているのが展望レポートの提案部分で明確に示されています(石田さんはその提案してませんが講演とかではそういう趣旨の話をしてますな)し、大体からして今回反対に回っていますのでその辺りの人とは別)白井さんは「その緩和では物価目標達成時期が遅いのでもっと緩和すべき」という提案をすべきですし、そうでないのなら物価目標達成時期に関する文言について何らかのアクションをするべきだと思うのですけれどもねえ・・・・・・・・・・・・・
『私の見通しが中心的な見通しよりも一貫して慎重なのは、人手不足が賃金上昇をもたらすペース、及び、需給ギャップや予想物価上昇率が物価上昇をもたらすペースがより緩やかに高まっていくと予想しているからです。言い換えれば、少子高齢化が進むわが国では潜在的需要がそもそもさほど旺盛ではないため、@他国のように需給ギャップの改善が必ずしもすぐに賃金上昇やインフレ圧力をもたらすわけではなく、A予想物価上昇率の持続的な上昇には時間がかかると、私自身は以前から考えていることにあります。』
だったら緩和政策が元から足りないという主張を何でしないのでしょうか????
・金融政策に関する説明が完全に俺様ワールドに入っている件について
でまあその後もクドクドと説明があるのですがその辺は盛大にスルーしまして『3.日本銀行の「量的・質的金融緩和」の拡大について』の中にある『(3)金融緩和の拡大についての私の考え方』ということで、背景に関して説明がきちんと行われている追加金融緩和に関して一々「私の考え方」とか説明せんでもヨロシというか、お前は銀座とか赤坂界隈に雨後の筍のように乱立する某チェーン店(?)かと小一時間問い詰めたい所です。
『私は今回、追加緩和策に対して賛成票を投じました。金融政策決定会合における議論の内容は、議事要旨・議事録という一定のルールに則って開示される扱いとなっていますので、ここでは、金融緩和に関する私の考えをご説明したいと思います。』
まあわざわざ説明する位ですからアナザーワールドにぶっ飛んでいるのですけどね!!!!
『繰り返しになりますが、私は、2013 年4 月の量的・質的金融緩和の導入時から、無理なく2%の物価安定目標を達成するためには2
年以上かかり、「2015 年度末に2%程度に近づいていく」との見通しを示し、現在でもこの見方を概ね維持しています。つまり、「2
年程度」については幅をもって解釈してきた訳ですが、今年4 月の展望レポートで新たに見通し期間を2016
年度まで延長した際に、従来の私の見方をより明確化する必要があると判断し、「見通し期間の終盤にかけて2%に達している可能性が高い」と表現することにしました。』
それってほぼ4年なのでして、幅を持って解釈するにはあまりにも無茶苦茶なタイムホライズン。
『重要な点は、日本銀行が「持続的な成長を伴いながら2%の安定的な実現」を目指す「フレキシブル・インフレーション・ターゲティング」の枠組みを採用していることであり、そのもとで「家計・企業に対して過大な調整負担をかけずに持続可能なインフレ率2%を社会に定着させるには、2
年よりも長い時間をかける経路が望ましい」と私は考えてきました。』
・・・・・( ゚д゚)
そもそもフレキシブルターゲットの意味を間違えて使っているだろと思いますし、現在の日銀が行っているのは「短期間で物価目標を達成させよう」という話(今や反対している審議委員がうじゃうじゃいますけど)であって、「2年よりも長い時間をかける経路が望ましい」というのが「2013
年4 月の量的・質的金融緩和の導入時から」の考えだったらそもそも導入当初の時点から反対するとか、まあQQE導入当時に関しては色々と期待形成やら大人の事情やらもあるから反対できない部分もあるにせよ、少なくとも木内さんが色々と提案しているのを横で見ながら何もしないのに講演ではこういう話をしてくるのが意味判りません。
『この観点から、「2%の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、量的・質的金融緩和を継続する」との枠組みのもとで、2015
年度以降も「金融緩和の継続」が望ましいとの考えをこれまで明確にしてきました。』
何か提案とかしてましたっけ???つーかそれQQEの今の建付けの考えと合ってないのですけど。
『その上で、金融市場調節方針であるマネタリーベースの増額ペースについては、2013
年4 月4 日の対外公表文に明記されているように、「年間約60〜70 兆円に相当するペースで増額」し、マネタリーベースが「2
年間で2 倍」になるのは、2013 年4 月を起点とすれば2015 年4 月前後であることから、まずはこの時期まではその増額ペースを維持することが適当だと考えてきました。』
QQEは2年程度を念頭に出来るだけ早期に達成という建付けなのですが、一人全然別の見通しを基に金融政策運営を是としているとか訳が分かりません。
『そして、その後の「金融緩和の継続」については、同じペース(及び資産買い入れ内容)をオープンエンドで維持していくこともひとつの方法として考えられましたし、別の方法としては、私自身は2%程度の達成には2016
年度までかかるとみてきたことから、その頃までを念頭に(買い入れ資産の構成について)多少の工夫を伴いつつも継続することに力点をおいた方法も考え得ると思っていました。』
後出しじゃんけんキタコレ!!!!
・某ベンダーのヘッドラインがこの辺りをクローズアップしているのに悪意を感じました(^^)
さらに謎説明は続く。
『他方、私は「追加緩和」が検討され得る場合として、昨年、2 つのケースに言及したことがあります。ひとつは、「経済・物価の下振れリスクが顕在化して、それが中心的見通しを大きく下振れさせる」ケースです。もうひとつは、「金融政策に対する信認」が低下したと国民・市場に見做されるリスクがあるケースで、例えば、日本銀行がこれまで示してきたコミットメント(何らかのリスク要因によって中心的な見通しに変化が生じ、2%の物価安定目標を実現するために必要であれば、躊躇なく調整を行うとの方針)をしっかり果たしていないと判断されるリスクがある場合です。』
えーっとすいませんどちらも「見通しが下振れた場合」の話をしているようにしか見えませんが・・・・・・・・
『私自身は、今回は、物価上昇率および一部の中長期の予想物価上昇率を示す指標が低下しているのと相俟って、これら2つのケースが該当し得ると考えました。』
???????
『そこで、追加緩和によって2%の物価安定目標の実現に向けた道筋をより確実なものにしていくことを、この際、最も重視すべきだとの思いに至りました。』
????????
『仮に、そうしないことで、日本銀行がこれまで築きあげた信認が崩れることになれば、私自身の物価見通しはおろか、2%の実現性自体も成り立ち得なくなるからです。』
いやその前に貴女様の・・・・いやまあどうでもよいです。
なお、某ベンダーは思いっきりこの信認云々の所をヘッドラインとして盛大に打ち込んできて、それをみた金利市場関係者の皆様が「ひょっとしてそれはギャグでいっているのか?」と総ツッコミをしたであろうことは言うまでもありません。
・緩和政策の波及経路の説明がありますがどうも内容がパッとしませんな
その次が『(4)量的・質的金融緩和の波及経路』という話なので鑑賞鑑賞。
『つぎに、改めて、日本銀行の金融緩和政策の波及メカニズムを確認しておきたいと思います。量的・質的金融緩和では、幾つかの波及経路を通じて(名目・実質)長期金利に下押し圧力をかけ、様々な市場の「資金調達コストの低下」と「資産価格の上昇」をもたらし、最終的には企業・家計等の総需要を増やし、インフレ率を高めて物価安定目標を実現すると想定しています。ここでは、中心的なツールである国債の買い入れに焦点を当てて、その波及経路について簡単にご説明いたします。』
これは茶々を入れずに鑑賞ですね!!!!
『単純化のために、波及経路を3 つに大別して話を進めたいと思います。まず、第一の波及経路(シグナリング・チャネル)は、日本銀行が金融緩和スタンスについて国債買い入れを通じて国民・市場に伝えることで、「将来の短期金利の経路」に関する市場の予想(期待)を下押しすることで、(名目・実質)長期金利の低下に導く経路です。』
以下説明がありますが、金利が下がると効果が出るという話。
『リスクフリー金利が低下することで証券価格や不動産価格等が上昇しますし、金利の低下や担保価値の上昇によって企業・家計の資金調達コストも下がります。』
ただこの部分って既に十分に金利は下がっていたし、金融機関の貸出態度は十分に緩和的な状況が続いていたと思うのですけどね。
『ハードルレートも下がるため企業が採択する投資案件も増え、企業・家計が保有する幅広い資産価格の上昇によって設備投資や消費も促されます。』
ダウト。
『金融機関等の財務基盤も自己資本の充実や保有資産価格の上昇を通じて改善するため、内外投融資に積極的になり得ます。』
「なり得る」のと「なる」のは別問題。
『この経路では、当初は名目長期金利には下押し圧力が強くかかりますが、物価上昇率が高まるにつれて次第に上昇していくことが予想されます。』
ふむ。
『第二の波及経路(ポートフォリオリバランス・チャネル)では、「タームプレミアム」の下押しによって(名目・実質)長期金利を下押しし、金融機関等がポートフォリオ構成を変えることを促し、直接的に資本調達コストの低下と資産価格の上昇を実現する経路です。』
結局金利が下がる話か・・・・・・・・・・
『まず日本銀行が長期国債を買い入れますと、金融機関等の保有資産の中で長期国債が減少し、日本銀行へ預ける当座預金が増加します。このとき当座預金と長期国債は「不完全な代替資産」であるため、金融機関等は増えた当座預金を減額して新たに長期国債を購入しようとするので、長期金利は低下します。』
そこが本当に不完全な代替資産なのかというのは微妙ではないでしょうかねえ。完全代替では無いとは思いますが、それで効果出したいのなら国債じゃなくて他の物買った方が話が早いし、少ない買入で効果がでませんかねえ。
『この結果、金融機関等は相対的に利回りが高い他の金融資産への投資を増やそうとします。なお、国債の残存期間が長くなるほど当座預金との代替性が低くなりますが、当座預金と長期国債の代替性が低いほどこのインセンティブは高まります。また、市場に出回る長期国債の供給量が減り市場で取引される国債の平均残存期間が短期化するため、市場のタームプレミアムが低下するわけです。』
何か微妙な説明だが、そもそも第1の波及も第2の波及も結果としては金利低下と資産価格の上昇を狙っているのですから波及経路の説明としては同じじゃないですかねえ。
『一般的に、中央銀行がより長めの国債を買い入れるほどタームプレミアムの下押し効果が大きくなります。その結果、金融機関等の金利リスク量が減少してリスクテイク余力が高まることから、リスク性資産への投資インセンティブが高まると考えられています。』
ダウト。
『リスク性資産への投資は、まずは長期国債との「代替性が高い」(又は長期国債との期待収益率の相関が高い)社債やローン等へ向けられますが、それらの利回りが低下すればさらにリスクの高い低格付け債、株式、不動産、投信、海外投融資等も増えていくと考えられます。その結果、幅広い資産価格が上昇し、資金調達コストも低下すると想定されています。』
信用リスクフリー扱いの国債の金利リスクの部分と、クレジットリスクなどの発生する投資の部分に関しては代替性が低い訳で、そもそも金利リスクを除去しなくても金融機関の資本規制の部分でも対応できるし、そっちのファクターの方が大きいでしょと思いますが。
つーか、資本状況に変化が無い中で金利リスクを強制的に召し上げて他のリスクを取るように仕向けるというのは、将来そのクレジット等の商品がリスクに見合う適正な水準を超えて上昇するようなバブル的状況が発生した場合に金融不均衡の発生を促す事になりますがそっちの話はどうなのよと。
『第三の波及経路(インフレ期待チャネル)は、実際の物価上昇率の引き上げだけでなく、国民・市場の中長期の予想インフレ率も引き上げて実質長期金利の低下に導く経路です。』
どうやって上がるのでしょうか??
『前述の2 つの経路によって実際の物価上昇率が高まることで間接的に予想インフレ率が上昇するという経路の他、』
そもそも金利が下がって資産価格が上昇すると実際の物価上昇率が高まるという話って当初想定していたような設備投資ルートとかで回っていないでしょ。
『2%の物価安定目標を達成するために国債買い入れによる金融緩和を続ける姿勢を示すことで、予想物価上昇率が直接的にも上昇し得ると考えられます。』
気合キタコレ。
『予想物価上昇率が上昇しますと名目長期金利には押上げ圧力が働きますが、その一方で前述したタームプレミアム等の下押し圧力が作用するため、名目長期金利の上昇幅はその分限定的となります。その結果、実質長期金利が低下すると考えられます。』
で、その実質長期金利の低下が本当に設備投資に効いているの???とかその辺の検証がちゃんとできているのかが謎ですな。
『また、日本銀行では長期国債に加えてリスク性資産を買い入れているため、こうした経路以外にも、直接的に様々な市場に働きかける効果が期待されます。』
という事で、波及経路の説明はここまでなのですが、まあこの部分に関しては白井さんオリジナルというよりは政策委員会の中心的な見解を思いっきり踏まえて説明していると思うのですけど、何か1年半たってまだこの程度の説明だとしますと、そもそも今回追加緩和をした数値的な根拠とかその手の話って説明ちゃんと出来るのかいなと疑問が百万回位頭の中を飛び交うのでありました。
つーかMBの量に関する置物副総裁直線一気理論が全く出てこないのは如何なものかと・・・・・・・
#生産性の無い講演ツッコミでどうもすいませんすいません
2014/11/26
お題「追加緩和決定会合の議事要旨が出ましたよ!!」
日銀ネタがてんこ盛り過ぎて消化が追いつかないとは俺様涙目ですが、議事要旨の前に少々。
○FOMC議事要旨ネタ補足(メモ)
昨日FOMC議事要旨で冒頭部分の出口政策に関連する部分で字面を見てもイマイチ良く判らんかった(のはあたくしが米国のFF市場とかの細かい話に不勉強だからなので誠に申し訳ございません)部分ですけどね(再掲)。
『Finally, the manager reported on potential arrangements that would allow
depository institutions to pledge funds held in a segregated account at
the Federal Reserve as collateral in borrowing transactions with private
creditors and would provide an additional supplementary tool during policy
normalization; the manager noted possible next steps that the staff could
potentially undertake to investigate the issues related to such arrangements.』
ここの話なのですが、東短リサーチの加藤さんが昨日レポートで説明をしていましたのでそちらを参照して頂きたいのですが、実質的な準備預金付利+準備預金部分を適格担保として使えるようにするということによって正常化の中で短期市場の金利上昇圧力を更にかけたいという話らしいと理解致しました(アタクシもこの辺は研究しないといかんのでもっと研究したら後日ネタにする事が出来るといいですねと思います)のですが、詳しい話は加藤さんのレポートをご確認あれ。
○久々にアリバイ会合キタコレ!
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141125c.pdf
「市場参加者との意見交換会」の開催について
『日本銀行金融市場局では、以下の要領で「市場参加者との意見交換会」を開催します。本会合は2013
年4 月以降、適宜の間隔で開催されてきているものです。』
適宜の間隔って前回だいぶ前だった気がしますが。
『3.参加予定者
・市場調節取引先、機関投資家などの実務担当者
・日本銀行金融市場局長、金融市場局市場調節課長、金融市場局市場企画課長、企画局政策企画課長 ほか』
『4.内容
日本銀行より、@「量的・質的金融緩和」の拡大後の市場動向と市場調節運営、および、A「市場参加者との対話の強化に向けた取り組み」(「債券市場サーベイ」の開始等)についてご説明し、意見交換を行う予定。』
との事ですが、昨年の場合は折角大規模緩和を打ち込んだのに名目金利を下げたいのか実質金利が下がれば名目金利が下がらなくても問題ない(=インフレ期待が上がれば無問題)のかに関して説明が混乱(導入前に黒田総裁は名目金利を下げるような言い方をしていたのに実際に始まってみると金利が上昇しているのに放置プレイな発言をしたのがそもそもの間違い)したので実施されたという所ですが、今回は日銀的に言えば「政策効果が出て金利が下がっている」という状況なのに会合を久々に実施とはこれ如何にという所ですな(ニヤニヤ)。
でまあこれだけ市場機能を圧殺するわ騙し討ちオペやらバキュームオペやらを実施しておいて対話とかヘソが茶を沸かす事案ではございますが、まーこういうのやると言い出しているのはそれだけ苦情が出ているんでしょうなあというのだけは把握した(^^)。
さて、まあ施策のご説明なんぞはどうでも良いのですが、これだけ市場にフリクションを与えて、金融市場における金融仲介機能を阻害している(ゼロ金利制約における資産買入系の非伝統的政策というのは本来的にそういう副作用があるっつーか、それをする事によって別の効果を出そうという政策なんだから仕方ないのだが)訳でして、しかもそれをさらに強化するという話なのは別に説明されなくても分かっておりますので、折角「ご説明」するのでしたら「市場に死んで頂きます」という政策が「いつになったら出口になるのか」という明確な目処を出して頂きたいですし、目処が無理なら必達目標時期を出して「ここまで籠城戦をしていただければ包囲網が解放されますからそこまで籠城して我慢して下さい、なおその時点でダメなら執行部全員切腹して死にゆく市場の皆様と心中するので許してください」という話をして頂きたいものですな(無理なのを承知な上で言ってますので念のため^^)。
そもそも超大規模国債買入を1年半も実施して「目標達成しないなら更に追加すれば良いじゃないか」という理屈でおかわりをするというのも良く良く考えたらおかしい話で、普通これだけハチャメチャな買入を実施してしかも導入当初には2年で達成できるのは当然で達成できなければ辞任とかこの政策の理論的バックボーン(笑)の副総裁様が仰せだった訳ですから、更に追加緩和して(月によっては)新発国債の当月市中消化部分を全部買う位の勢いでの買入を実施するのにまた半年後くらいに「足りないなら更に追加緩和」とか言い出す前に「そもそも国債買入MB直線一気理論ではデフレ均衡脱出は出来たかも知れない(この調子でスタグフ的に推移するとそれも怪しい気がするが)けれども、2%を達成させるためには別のアプローチがあるのではないか」という話になって頂きたい訳でして、その辺の見極めの目処の時期はいつですねんという話だとは思いますけどね。うんうん。
#しかし今の黒田さんだとそのまま「目標達成が遅れているのは国債買入が足りないから」と言いそうで・・・・・
ということで他にも講演ネタ等沢山ございますが消化不良にも程があるので本日は以下決定会合議事要旨ネタで。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g141031.pdf
まあ全体的に読みますと「物価安定目標」のありかたについての考え方が思いっきり激突(従来より異論が結構出てはいましたが)した会合でしたなあというのと、そもそも追加緩和の効果に関する疑問も打ち込まれていまして、政策の副作用に関する反対派の見解ご尤もとしか言いようがない内容ではございましたな。
○テクニカルな注目ネタが最初と最後に2つありましてですな
・事務局メンバーが強化(?)されているのに非常に深い味わいを感じましたが・・・・・・・・
議事要旨の1ページ目(PDFファイルの3枚目、以下同様に本文のページと2枚ずれます)には『(開催要領)』というのがあるのですけれども、ここの一番下にある『(事務局)』というのは政策委員会室の室長と企画役1名、企画局から企画役2名というのが基本的なメンバー(審議役とかが入っている場合もある)になるのですけれども、今回は企画局の企画役が何故か3名になっているのに非常に味わいの深いものを感じた次第で、過去の決定会合議事要旨をパラパラ見たのですが、3名になっているのは結構稀ですなあと思いましたので真っ先にメモとして置いておきます。
なお、そのインプリケーションについてはさっぱり判らんのですけれども、いつもより1名多いというのは何かの意味があるのでしょうなあ(てきとう)と思います。
・追加緩和でご相談(報告?)とな
本文11ページにワープしまして『W.政府からの出席者の発言』から。
『金融市場調節方針の変更等に関する議論を踏まえ、政府からの出席者から、財務大臣および経済財政政策担当大臣と連絡を取るため、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した(
12 時31 分中断、12 時42 分再開)。』
ちなみに前回のQQE導入時の議事要旨はこちらですが
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130404.pdf
こちらを見ましても「中断の申し出」というのは無いのですが、では中断っていつありましたねんと見ますと例えばこの時なんぞですな。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2006/g060309.htm/
金融政策決定会合議事要旨(2006年3月8、9日開催分)
『議長が金融市場調節方針の変更および新たな金融政策運営の枠組みの導入についての議案を取りまとめたことを受け、財務省および内閣府の出席者より、議案への対応について政府部内の意見を調整し、また、必要に応じて財務大臣および経済財政政策担当大臣と連絡を取るため、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した(午後1時17分中断、午後1時46分再開)。』(上記2006年の量的緩和解除時の議事要旨より)
ということでこの時は量的緩和解除に関しての会合で30分間中断していた訳ですけれども、今回は緩和解除ではなくて追加緩和で中断というのがこれまた味わいのある流れではございますなという事ですが、これまたそのインプリケーションについては良くわかりません(白目)ということで(^^)。
○景気認識に関する議論は途中まで全く追加緩和の必要性が無いのが実に笑える件
執行部報告の部分も大概に強い話なのですが『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』を見てもまあ基本はそんな感じなのがワロエルというかワロエナイというか。
『わが国の景気について、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、家計・企業の両部門において、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと働いており、基調的には緩やかな回復を続けているとの見方で一致した。』
以下需要項目別展開。
『輸出について、委員は、振れを均せば横ばい圏内の動きとなっているとの認識で一致した。設備投資について、委員は、企業収益の改善が続いていることなどを背景に緩やかに増加しているとの見方を共有した。雇用・所得環境について、委員は、労働需給が着実な改善を続けるもとで、雇用者所得は緩やかに増加しているとの見方を共有した。』
ほほう。
『個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に基調的に底堅く推移しており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響は、ばらつきを伴いつつも全体として和らいできているとの認識で一致した。その一方で、多くの委員が、消費税率引き上げが個人消費を下押しする影響は、駆け込みの大きかった耐久財や住宅を中心に長引いているとの見方を示した。』
ほうほう。
『鉱工業生産について、委員は、足もとの前月比はプラスとなった一方、自動車などの耐久消費財や建設財を中心とした在庫調整の動きはなお続いているとの見方で一致した。』
で何故追加緩和??と思いながら物価へ。
『物価面について、大方の委員は、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、このところ物価の下押し要因として働いていると指摘した。多くの委員は、原油価格の下落の影響などから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%前後で推移するとの見方を示した。』
「暫くの間」ですかそうですか。
『多くの委員は、現状程度の原油価格を前提とした場合、前年比でみた物価上昇率への下押し圧力は、来年度前半頃まで継続することとなるため、物価見通しは7月の中間評価と比べて下振れるとの見方を示した。』
でもそれは一時的要因ですよね。
『このうち何人かの委員は、こうした物価面での下押し圧力が、予想物価上昇率に与えるマイナスの影響について懸念を表明した。』
予定調和理論キタコレ!!!
『現状の予想物価上昇率について、何人かの委員は、全体として上昇しているとの認識を示した。別の一人の委員は、やや長い目でみれば上昇傾向は続いているものの、消費税率引き上げの影響を除いたブレーク・イーブン・インフレ率など中長期の予想物価上昇率を示す指標は8
月頃から横ばいないし低下していると指摘した。』
これで追加緩和の理由とはこれまた弱いですなあ・・・・・・・・・
○追加緩和の理由に関しての話が微妙にアレな件
でまあその次が今回頑張って長くなっている『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』である。
『多くの委員は、原油価格の下落は長い目でみて日本経済にとってプラスであるものの、このところの大幅な下落は、消費税率引き上げの後の需要面での弱めの動きと合わせて、短期的には物価の下押し要因として働いていると指摘した。』
この現象部分に関しては「多くの委員」でしょうな。
『そのうえで、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクが大きいと述べた。』
えーっと、それは5人の委員がそう言っている話ではないかと思いますが、まあ確かに5対4なので「多くの委員」である事には違いは無いのですが、何となく執行部案が超優勢であるような威勢の良い表現テクを使うのが日銀文学鑑賞の上での楽しみというものです。
・・・・・・というか延々と1年以上に渡って月報で「予想物価上昇率は全体として上昇していると見られる」って現状認識示して置いて今更「デフレマインドの転換が遅延」というのは意味が判らんのですが、1年以上も予想物価上昇率が全体として上昇しているのにまだデフレマインドが転換しないとか意味が判らんのですが。
#デフレマインドに逆戻りするリスクがある、というのならまだ話は分かる
『これらの委員は、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、このタイミングで追加的な金融緩和を行うべきであると述べた。このうち何人かの委員は、わが国では、長年にわたってデフレが続いたため、予想物価上昇率の形成は、実際の物価上昇率の動きに大きな影響を受ける傾向があり、ここで物価上昇の足踏みが長引けば、影響が懸念されると述べた。』
何ちゅうかな理屈だがまあこの話は何度か出てましたな。
『このうち一人の委員は、このことは、年末から来年にかけて、企業が事業計画を策定したり、賃金交渉を行う重要な時期であることを踏まえると、特に重要であると付け加えた。』
言ってる事は判らんでも無いが、それが効果をだすのに時間がかかるので2年で2%との整合性という意味ではどうなのよという感じで、そもそも2年で2%を目指しているのに、そんなにタイムホライズンの長い話を持ち出してQQEの目標達成のタイムホライズンの方はどうなってますねんという気はするし、こんな話が普通に出てくるという事はそもそも直接的に「2年なりの短期で達成するパス」が見えて居ない事の証拠ではないかとも思ってしまうのですけどねえ。
『また、何人かの委員は、日本銀行は、昨年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した際、「2年程度の期間を念頭に、できるだけ早期に」「物価安定の目標」を実現するとのコミットメントを行っているが、追加緩和を実施するに当たっては、デフレ脱却に向けた揺るぎない決意を示すために、こうした考え方にいささかも変わりがないことをしっかりと説明していく必要があると述べた。』
ニヤニヤ。
『このうち一人の委員は、日本銀行は、これまで、何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、2%の「物価安定の目標」を実現するために必要であれば、躊躇なく調整を行うとの方針を繰り返し述べており、ここで政策対応を行わなければ、そうしたコミットメントを反故にするものであると理解され、日本銀行に対する信認が大きく損なわれる可能性もあると述べた。』
ポカーン。だったら最初から「見通しが下振れたから追加緩和」と説明して欲しいのですが、追加緩和の理由は「足元の物価伸び悩みが期待インフレの低下を起こすリスクに対応」でしたので、そもそも説明が変じゃないですかねえ。
『この間、別の一人の委員は、今回、追加的な金融緩和を実施することによって、2015
年度下期には、2%の「物価安定の目標」の安定的な達成が十分視野に入ると考えられ、そうであれば、その時期には、出口戦略の議論が開始できる状況になる可能性もあると述べた。』
どう見ても宮尾審議委員です本当にありがとうございました。
『また、一人の委員は、今回提案された追加緩和措置は、景気の前向きな循環メカニズムが維持される中で、回復を後押しするものであり、企業収益や雇用・賃金などに対してこれまで以上にしっかりとした効果を発揮していくことが期待できると付け加えた。』
ではその効果についてメカニズムを説明して頂きたい。
○逐次投入がどうのこうのの部分ワロタ
更に追加緩和賛成派の見解が続く。
『この間、複数の委員は、もともと「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」を安定的に持続するために必要な時点まで継続するものであり、オープンエンドの措置であることをしっかりと説明していくべきであると述べた。』
それは良いのだが2年の方の期限は??
『具体的な追加緩和の内容について、何人かの委員は、今回の措置が人々のマインドに働きかけるものであることを踏まえると、戦力の逐次投入と受け取られないよう、リスク量や副作用も勘案のうえ、可能な限り大きな規模を目指すべきであると述べた。』
クソワロタという感じですが、逐次投入しないで出来るだけ大きな規模にしたら「その後に調整」ってどうやってやるんでちゅかねえ。
『そのうえで、複数の委員は、@マネタリーベースの増加ペースを年間約60〜70
兆円から約80 兆円に拡大するとともに、A長期国債の買入れ額についても、年間約50
兆円から約80 兆円に拡大することが望ましいと述べた。このうち一人の委員は、このところ短中期金利が大きく低下する一方で、やや長めのゾーンは相対的に高めであることを指摘したうえで、イールドカーブ全体の金利低下を促すという「量的・質的金融緩和」の基本的な狙いを実現するためには、短期国債買入れとのバランスや、長期国債の買入れ平均残存期間などもあわせて検討すべきであると付け加えた。』
短期国債買入とのバランスですかそうですか。
『この点に関し、何人かの委員は、資産買入れ方針は、金融市場調節部署が金融市場の動向を踏まえてある程度柔軟に対応できるようにする必要があると述べた。』
丸投げキタコレ!
『また、複数の委員は、ETFおよびJ−REITといったリスク性資産の買入れについても、思い切って増加すべきであると述べた。』
まあこれはどうでも良い。
『この間、委員の質問に対応して、執行部からは、オペレーション面の対応可能性やリスク量などについて補足説明を行った。』
補足説明してこれですかそうですか。
○反対意見がどう見てもまともな件について
以下反対意見を鑑賞。
『一方、何人かの委員は、現時点で追加的な金融緩和を行うことに慎重な見方を示した。これらの委員は、先行きの物価見通しに対するリスクが大きくなっているとの見方は共有しつつも、経済・物価の基本的な前向きのメカニズムは維持されており、現行の金融市場調節方針・資産買入れ方針を継続することが適当であると述べた。』
まあそうですな。先行きの見通しが大きく変わったというのではないならそうなる罠。しかも別に大きな外的ショックがあった訳でもないし。
『また、何人かの委員は、追加的な金融緩和による効果は、それに伴うコストや副作用に見合わないと述べた。』
(;∀;)イイシテキダナー
『追加緩和の効果について、何人かの委員は、追加緩和によって金利は一段と低下すると見込まれるものの、名目金利は既に歴史的な低水準にあり、実質金利も大幅なマイナスとなっていることや、資産買入れの効果はその進捗とともに累積的に強まる性質のものであることを踏まえると、経済・物価に対する限界的な押し上げ効果は大きくないと述べた。』
>経済・物価に対する限界的な押し上げ効果は大きくない
ですなあ。
『また、期待への働きかけについて、何人かの委員は、「量的・質的金融緩和」は導入時には人々の期待を変化させる効果を持ったが、追加的にこれを拡大しても、その効果は導入時と比べてかなり限定的なものにとどまると述べた。』
(;∀;)イイシテキダナー
『このうち一人の委員は、効果の持続性についても疑問があると付け加えた。』
これは手厳しい(^^)。
『追加緩和のコスト・副作用について、複数の委員は、市場機能の一段の低下を指摘した。このうちの一人の委員は、MMFやMRFなどで運用難のリスクが高まる可能性があると述べた。』
(;∀;)イイシテキダナー
『さらに、複数の委員は、一段の金利の低下が金融機関の収益や仲介機能に与える影響について懸念を示した。』
そもそも非伝統的政策は市場の金融仲介機能を阻害する性格がありますが、低金利の長期化と必要以上の低下はそういう話にもなりますわな。
『この間、何人かの委員は、年間約80 兆円の増加ペースで国債買入れを行うとなれば、フローでみた市中発行額の大半を買い入れることになるため、国債市場の流動性を著しく損なうだけでなく、実質的な財政ファイナンスであるとみなされるリスクが、より高くなると指摘した。』
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
『また、一人の委員は、結果として円安が進めば、これまで景気回復を下支えしてきた内需型の中小企業への悪影響が懸念されると述べた。』
これはまた黒田さん(および執行部)にイヤミですな。
○物価安定に関する議論部分も味わいが
『この間、人々のインフレ予想について、ある委員は、人々の行動様式は、緩やかな物価上昇を前提としたものに着実に変わりつつあることを踏まえると、「量的・質的金融緩和」は、その役割を十分に果たしていると評価できるとしたうえで、月々の消費者物価の前年比に逐一反応すべきではないと述べた。』
>月々の消費者物価の前年比に逐一反応すべきではない
>月々の消費者物価の前年比に逐一反応すべきではない
>月々の消費者物価の前年比に逐一反応すべきではない
(;∀;)イイハナシダナー
『複数の委員は、帰属家賃を除いた消費者物価の前年比は1%台後半で推移しており、消費税率引き上げ分も考慮すると、物価は相応に上昇しているというのが家計の実感であると述べた。』
石田さんは確実ですがもう一人は佐藤さんと見ましたがどうでしょうか。
『この間、別の複数の委員は、2%の「物価安定の目標」は、成長期待の高まりなどを踏まえて中長期的に達成すべきものであり、「2年程度の期間」に過度にこだわるべきではないと述べた。』
ここがほほうという所で、2%を「中長期的に」という人が「複数」となっていて木内さん以外にも「そもそも2%という設定は良いのだが2年程度の短期で達成というのに無理がある」という話になってきているのが味わい深いですな。
以下もう少しありますがパスして展望レポートの反対部分を鑑賞。
○採決の後に展望レポートとな
『X.採決』の次に『Y.「経済・物価情勢の展望」に関する検討と決定』というのもいつもと順番が違っていて味わいがありますが、中断時間から考えてこの部分の検討時間が50分も無さそうな辺りが何ともアレ。
『以上の議論によって決定された金融市場調節方針および資産買入れ方針を前提としたうえで、「経済・物価情勢の展望」に関する議論を行った。経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けるとの見方で一致した。そのうえで、従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、駆け込み需要の反動の影響や輸出の弱めの動きなどから、2014
年度について幾分下振れるものの、2015 年度、2016 年度については、従来の見通し対比、概ね不変との見方を共有した。』
ということでサラッと流していますが、本来は「追加緩和が無かった場合に見通しがこうなるので追加緩和を実施します。で、それによって見通しはこう変わります」というのが示されるべきだと思うのですが、そうなると「見通しが下振れたので追加緩和」という第一の柱的な話になってしまいまして、過去の「必要な施策は全部実施した」(キリッ)というのは何だったのだという話になってしまうので、採決の後に「追加緩和を前提とした」見通しの話をしている(ことになっている)辺りが実に日銀文学の侘び寂びというものを感じさせてこれだけで抹茶3杯は行けますわという所で。
でまあ途中は良いとしまして『2.「経済・物価情勢の展望」の決定』を鑑賞。
『白井委員からは、物価見通しについて、「見通し期間の中盤頃に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い」を「見通し期間の終盤までに2%程度に達する可能性が高い」に変更すること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』
何ですかねえこの先生は・・・・・・・・議案に賛成しておいてこれは無いだろ。
『佐藤委員からは、@物価見通しについて、「次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する」から「見通し期間の中盤頃に2%程度を見通せるようになる」に変更すること、A第1の柱の中心的な見通しについて、「2%程度の物価上昇率を実現し」から「2%程度の物価上昇率を目指し」に変更すること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』
この@の部分はフォーキャストターゲットの考え方であって、Aの部分は「足元の物価を実際に2%を付けることを過度に重視すべきではない」という考え方で、さらっと流されていますがかなり重要な論点を含んでいますので覚えておくのが吉。
『木内委員からは、@予想物価上昇率の見通しについて、「中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく」から「中長期的な予想物価上昇率も安定的に推移する」に変更すること、A物価見通しについて、「当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する」から「今後も概ね現状程度の水準で安定的に推移する」に変更すること、B先行きの金融政策運営について、「2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」から「中長期的に2%の「物価安定の目標」の実現を目指す。そのうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付け、その後柔軟に見直すこととする」に変更すること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』
木内さんの論点は「中長期的に目指せば良いじゃないか」という話で、これは毎度の提案でも示されている話ではありますな。対外公表文に関してもその趣旨の提案をしていますがそこは引用パスということで。
#とまあそんな所で何とか読み終わりましたな^^;
2014/11/25
お題「オペに振り回される債券市場である/10月FOMC議事要旨だが主にスタッフ報告部分を鑑賞する企画」
選挙モードになってブログやらツイッターランドやらでも右や左の旦那様(思想的に)がハッスルしておられるようで何より。
○市場雑談というかオペ雑談
金曜のオペですけどね。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of141121.htm
国庫短期証券買入 25,000 2014年11月26日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年11月26日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,400 2014年11月26日
国債買入(残存期間25年超) 1,600 2014年11月26日
ということで、短国買入はやや多めの気もする2.5兆円オファー&超長期輪番は前回ダマテンで増額したのをそのまま継続となりました。
で結果。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba141121.htm
国庫短期証券買入 34,860 25,001 -0.030 -0.008 88.0
国債買入(残存期間5年超10年以下) 13,413 4,003 -0.011 -0.009 1.5
国債買入(残存期間10年超25年以下) 4,383 2,406 -0.009 -0.003 13.2
国債買入(残存期間25年超) 4,900 1,604 -0.004 0.003 17.0
短国に関しては応札がまたカツカツだったら何考えとるねんという感じですし、応札が多いのならああそうですか在庫あるんですねという感じでしたが、応札が3.5兆をちょっと切る位という第一感的に微妙な額ではあったのですが、落札の方が平均8糸強の足切り3毛強ということで、盛大に強い結果になっておりまして、益々のアチャー感からマイナス1.4bp平均とかいうハチャメチャな入札になったものBB引けはマイナス0.1bpで売参がゼロだったカレント3MもBB引けは貫録のマイナス2.4bpですし、その近辺の3Mカレントも1つ前のがマイナス7.7bp(これは前日比甘)だのもうひとつ前がマイナス3.5bpだのともう実に残念な展開。
直近ではドル円のベーシススワップが思いっきりワークしているので海外からの短国買いも多めでして、その需給に日銀が更に拍車をかけているという動きになっているのですが、MB積み上げの目標から考えたらそろそろ短国買入のペースが落ちても良いと思うのですが一向にペースが落ちないで市場にある玉を盛大に買い続けるような動きなのは何ですねんという所。
まーいずれにせよ10月の追加金融緩和で確か「短国市場の市場機能に配慮」という触れ込みだったのに短国買入が全然配慮もへったくれも無くて、それよりも「俺が買う買う」攻撃をしているのですから世話は無い訳で、誠に遺憾というか史上最大級のへっぽこオペレーションに落涙を禁じ得ません。
ところで超長期ですけれども、まあ他に売買要因もあったとは思うのですが、金曜の債券市場では朝から超長期の気配が激強となって30年3毛強とかやってたと思ったら輪番の額が変わらずで盛大に失速して、その後超長期25年超の輪番がイマイチの結果になったと思ったら後場は大甘になって30年3甘とか40年5.5甘とかもう何だかねという展開でして、超長期のカーブが日中に上下で5毛以上フラットスティープするとか日中のボラが凄まじい展開になっております。
でまあボラは大きいものの実際に店頭の売買が動いているかと言えば、まあ皆無では無いとは思いますが板は薄い状態でして、日銀の輪番が増えるか増えないかの方で思惑があって、ちょっとした売買の動きがその思惑を加速するという形になっているのが誠に残念な状態になっております。
つまりですね、前も申し上げたかも知れませんが、今般「柔軟に運用」ということで輪番の運営を市場動向見ながら柔軟に対応しましょうという話になった訳ですが、既に1年半も馬鹿買入を実施している結果として、日銀の買入が市場内での超大きな存在となっておりまして、その為に日銀の買入に対する思惑だけで金曜のような日中値動きが発生したりしちゃうという話で、大規模買入を実施した直後の市場ボラ対応の柔軟な運用と同じように考える訳にはいかないですねという話。
でまあ何でこんな思惑みたいな話になるかと言えばそれはこれまた毎度申し上げておりますように先々週金曜にいきなり超長期25年超の輪番を増額したのが間違いの元でありまして、「1か月ごとに見直します」と言っておきながら実質1週間ほどで見直しをするという動きをやった結果、参加者の皆様が超長期でポジション取りにくくなってしまい、その流れで20年入札は滑るわ、超長期輪番が予想されて実際にオペがあった日には日中の超長期のカーブが盛大にフラットスティープするわという動きになっている訳で、「毎月見直す」って言ってるんだから1か月は最初に言った数字で運営してくれないと、今や市場の圧倒的なプレーヤーになっている日銀の動きに対する思惑だけで振り回されて死ぬがなという話ではあります。
そういえば先般「市場との対話強化」らしき施策を出していましたが、そんなのを出す側から市場をシッチャカメッチャカにするオペ運営を実施している時点で「市場との対話とか市場機能とかどうでも良いと思っている」あるいは「市場との対話をしようとしているのだがホームラン級の無能な為にやる事が思いっきり逆に出る」としか見えない訳でして、それならもう市場との対話とか市場機能とかそういう話をしないで、「現状は物価安定目標達成の為に市場機能を犠牲にしていますが、物価安定目標は早期に達成しますのでその後はまた市場機能にも配慮します」という風に開き直ってくれた方がまだマシというか、このままだと日銀はマーケットに関して無能(しかも財務省の方が国債発行計画で色々と市場機能を考えた施策を出して来るのでその比較からなおさら)であるという評価が定着しかねませんですし、そうなると出口政策がきちんと運営できるのかという点での懸念も益々高まってしまって日銀が全然得をしない展開になりますので、そろそろ「市場機能なんぞ知らんがな物価目標達成するまで我慢しやがれ」とアナウンスして頂いた方がよろしいのではないでしょうかねえ(吐血)。
○FOMC議事要旨ネタである
今週は日銀ネタが多いので成敗は早めに。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20141029.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20141029.pdf
・出口政策に関する話の所が色々と面白い件(ただし目先のインプリケーション無)
冒頭の部分『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's
Balance Sheet』がかなり面白いので鑑賞鑑賞。
『In a joint session of the Federal Open Market Committee (FOMC) and the
Board of Governors of the Federal Reserve System, the deputy manager of
the System Open Market Account (SOMA) reported on developments in domestic
and foreign financial markets as well as System open market operations
conducted during the period since the Committee met on September 16-17,
2014.』
ということで。
『In addition, the deputy manager summarized the outcomes of recent test
operations of the Term Deposit Facility, described the results from the
overnight reverse repurchase agreement (ON RRP) operational exercise, and
reviewed the implications of recent foreign central bank policy actions
for the international portion of the SOMA portfolio.』
海外中銀の金融政策がFEDの外貨バランスシートに与える影響のインプリケーションとは何ぞという所ですが惜しくもその辺の話は詳しくは出ていないのが残念。
『The SOMA manager then discussed the Open Market Desk's plans for modestly
expanding the list of counterparties eligible to participate in ON RRP
operations based on substantially the same criteria established in the
past for such counterparties. The manager also described ongoing staff
work on improving data collections regarding bank funding markets and possibly
using those data to provide more robust measures of bank funding rates.』
オーバーナイトレポファシリティの研究(テスト)が進んでいるようで。
『Finally, the manager reported on potential arrangements that would allow
depository institutions to pledge funds held in a segregated account at
the Federal Reserve as collateral in borrowing transactions with private
creditors and would provide an additional supplementary tool during policy
normalization; the manager noted possible next steps that the staff could
potentially undertake to investigate the issues related to such arrangements.』
何かまた新しいツールの導入を考えているようで、字面を見ると何かイマイチ良く判らん(どうもFEDのアカウントで分別管理されている部分について担保がどうのこうのと書いているようだが、この辺のアカウント管理に関してよく分かっていないので何をどういうツールにしようかというのが分からんですいませんすいません)のですが、何か新たに補完的なツールを導入するようですな。
『Next, the staff outlined two proposals that the Committee could consider
for further testing of RRP operations.』
次のパラグラフに行きますと、RRPの新たな活用のテストということですな。
『In the first proposal, the Desk would vary by modest amounts the interest
rate on ON RRP operations according to a preannounced schedule. Varying
the spread between the ON RRP rate and the interest on excess reserves
rate could provide the Committee with information about the effect of that
spread on money markets and the demand for ON RRP. In addition, changes
in the ON RRP rate would provide further information about the effectiveness
of an ON RRP facility in providing a floor for money market rates during
policy normalization.』
翌日物RRPの金利を変動させて、短期市場金利に対するフロア効果がどう出るのかについて確認していきたいとな。
『In the second proposal, the Desk would conduct a series of preannounced
term RRP operations that would extend across the end of the year.』
もう一つは年末越えのRRPについてターム物をオファーするという話。
『In their discussion of term RRP testing, participants noted that the
testing could provide information about the potential effectiveness of
another of the Committee's supplementary policy tools and would help address
expected downward pressures on short-term rates at year-end.』
でまあこの話についてFOMC参加者がこういう話をしていますというのが出てくるのがお洒落。
『But it was also noted that by conducting the term RRPs, the Committee
would be losing information on how market participants might adjust and
make investment arrangements prior to year-end with only the $300 billion
in ON RRP available.』
タームRRPを実施したら翌日物だけで現在3000億ドルの上限で実施している翌日物RRPの効果(金利フロア形成効果というのですから量的緩和状態だから当然なのかもしれませんが米国では年末の所では短期市場金利が盛大に低下するのですな)が判らなくなるのがデメリットとか中々の細かさ。
『One participant commented that the downward pressure on rates at year-end
might be more directly addressed by raising the overall size limit on the
ON RRP exercise.』
ターム物実施するよりも年末だけRRPの総額を増やせば良いのではという指摘が1名からとか細かい細かい。
『However, it was emphasized that increasing the cap on ON RRP operations
at year-end could raise the risks for financial markets that had led the
FOMC to impose the cap; these concerns were seen as less pronounced with
a temporary program of term RRP operations. It was also noted that the
proposed term RRP operations were only a test and that the Committee had
not yet decided the conditions under which such operations would be used
in the future.4』
この細かさよという所ですが、そんなわけでターム物RRPの実施とかになるんでしょうな年末限定で。
ちなみにターム物RRPオペに関してですが。
『By unanimous vote, the Committee approved the following resolution on term RRP operations:』
『"During the period of December 1, 2014, to December 30, 2014, the
Federal Open Market Committee (FOMC) authorizes the Federal Reserve Bank
of New York to conduct a series of term reverse repurchase operations involving
U.S. Government securities.』
ということでして。
『Such operations shall: (i) mature no later than January 5, 2015; (ii)
be subject to an overall size limit of $300 billion outstanding at any
one time; (iii) be subject to a maximum bid rate of ten basis points; (iv)
be awarded to all submitters: (A) at the highest submitted rate if the
sum of the bids received is less than or equal to the preannounced size
of the operation, or (B) at the stopout rate, determined by evaluating
bids in ascending order by submitted rate up to the point at which the
total quantity of bids equals the preannounced size of the operation, with
all bids below this rate awarded in full at the stopout rate and all bids
at the stopout rate awarded on a pro rata basis, if the sum of the counterparty
offers received is greater than the preannounced size of the operation.』
1月5日エンド、期間中の最大額は3000億ドル、応札金利の上限は10bp、全てのRRP参加者対象で利回り競争コンベンショナル方式またはイールドダッチ方式で実施するとのことで。
『Such operations may be for forward settlement. The System Open Market
Account manager will inform the FOMC in advance of the terms of the planned
operations. The Chair must approve the terms of, timing of the announcement
of, and timing of the operations. These operations shall be conducted in
addition to the authorized overnight reverse repurchase agreements, which
remain subject to a separate overall size limit of $300 billion per day."
』
T+0ではなくて先日付スタートで実施するとの由。
・スタッフ報告の部分から少々ネタを:現状認識に関する部分
『Staff Review of the Economic Situation』の所ですけれども、途中の需要項目の所はさておきまして、(基本的に「おおむね堅調推移」という感じで特段大きな問題やオモシロネタは無い)海外経済の所が最近徐々に詳しくなっているのが気になりますな。
『Foreign economies appeared to have continued to expand at a moderate
rate in the third quarter, although with considerable divergence across
countries. In Japan, consumption staged a mild rebound after contracting
in the previous quarter in response to a tax increase, while indicators
for the euro area pointed to only continued sluggish growth. Third-quarter
growth in real gross domestic product (GDP) remained healthy in the United
Kingdom, and indicators for Canada also were positive. Among emerging market
economies, GDP growth remained strong in the third quarter in China and
Korea and indicators for Mexico were favorable as well. The Brazilian economy
appeared to be stabilizing. Foreign inflation remained generally subdued
and in some regions quite low, especially in the euro area, where headline
inflation was well below 1 percent.』
別にまあ書いていること自体は特段変わった話ではないのですが、最近ここの記述にやたらと色々な国の名前が出るようになって(以前は欧州と中国の話がメインで後時々日本やアジア、カナダや中南米という感じでもうちょっとあっさり味だった)いるのが気になりますなあと思いますが、そらまあ米国だけで世界引っ張っている感じですからさすがに海外動向が気になるのかもしれませんな。
次の『Staff Review of the Financial Situation』では10月15日の市場の動きに関する話をしている件と、それを受けて金融安定に関する記述が久々に詳しく復活しているのが目立ちました。
『The Treasury market experienced significant volatility on October 15,
with 5- and 10-year Treasury yields dropping as much as 30 basis points
in about an hour before retracing much of those moves by the end of the
day.』
そういやそうでしたな。
『Amid very high trading volumes, Treasury market liquidity, as measured
by bid-asked spreads, worsened significantly, and measures of the implied
volatility of longer-term rates jumped on the day but subsequently fell
back.』
とりあえず日本橋本石町のどこぞの中央銀行におかれましてはこの部分を百回音読して自分たちの市場破壊行為を猛省して頂きたいですが決めているのは政策委員会だから知らんがなですかそうですか。
『While the release of the somewhat weaker-than-expected data for September
U.S. retail sales was seen as the trigger for these sharp movements, market
participants indicated that a number of technical factors related to investor
positioning and trading strategies likely amplified the swing in interest
rates.』
まあこういう報告が出てきているというのが議事要旨に出ている訳ですが、一方でジャパンにおける短国金利のマイナスヒャッハーとかそういう話について背景とか市場の厚みとかそういう話ってちゃんと政策委員会メンバーに伝わっているのかねと考えると背筋が寒くなるのですな。
でまあその他の部分では概ねいつも通りで、金融環境は緩和的だけれども不動産貸出関連に関しては(モーゲージ関連はまずます)まだぱっとしませんぞなという話ですが、金融安定に関する報告が中々味わいがありますぞな。
『The staff's periodic report on potential risks to financial stability
noted that recent developments in financial markets highlighted the potential
for shocks to trigger increases in market volatility and declines in asset
prices that could undermine financial stability.』
(・∀・)キタコレ!!ということでボラの上昇となるようなトリガーが発生すると資産価格の急激な下落に繋がって、金融安定化に対して問題となるような状況もアリエールという指摘がキタコレでなのです。
『Nevertheless, the U.S. financial system appeared resilient to shocks
of the magnitude seen recently due to the relatively strong capital and
liquidity profiles of large domestic banking firms, subdued aggregate leverage
in the nonfinancial sector, and relatively restrained use of short-term
wholesale funding across the financial sector.』
とは言いましても価格ショックはあっても金融機関の資本などは充実していますし、金融セクターの短期ファンディング依存体質は改善されていますので、それによって金融危機とかそういうリスクではないという認識。
『However, the staff report also pointed to asset valuation pressures that
were broadening, as well as a loosening of underwriting standards in the
speculative corporate debt and CRE markets; it noted the need to closely
monitor these developments going forward.』
とは言いましても、金融機関経営とかファンディングとかいう話では無くて、投資適格級以下の社債とか、商業用不動産市場とか、そういう脆弱な部分に対しては影響がありますので、今後もこのような価格ショックに対する動きを十分に監視していきます。という事で、まあ出口政策を見据えた備えを色々とやっているというのが判る連銀スタッフの報告やら出口政策やらの部分でございましたです、はい。
・スタッフ報告の部分から少々ネタを:先行き見通しから少々
『Staff Economic Outlook』で面白かったのは2か所。
『The information on economic activity received since the staff prepared
its forecast for the September FOMC meeting was close to expectations,
and therefore, the staff's projection for real GDP growth over the remainder
of the year was little revised.』
見通しはあまり変わっていないのですが。
『However, in response to a further rise in the foreign exchange value
of the dollar, a deterioration in global growth prospects, and a decline
in equity prices, the staff revised down its projection for real GDP growth
a little over the medium term.』
ということでドル高と海外の減速に対応してGDPの中期見通しを下げたという事で「ドル高」の話があったのがほほーという感じ(FOMC参加者の所でも出てきます)。
でまあ思いっきり飛ばしてリスク要因の部分。
『The staff continued to view the uncertainty around its projections for
real GDP growth, the unemployment rate, and inflation as similar to the
average over the past 20 years. The risks to the forecast for real GDP
growth and inflation were seen as tilted to the downside, reflecting recent
financial developments and concerns about the foreign economic outlook,
as well as the staff's assessment that neither monetary policy nor fiscal
policy appeared well positioned to help the economy withstand adverse shocks.
At the same time, the staff continued to view the risks around its outlook
for the unemployment rate as roughly balanced.』
ということで、GDPと物価のリスクはダウンサイドに大きいとはほほうという感じでして、まあこの辺り見ますと出口政策の研究は余念がないですが、では早速出口ですかというとそういう話では全然無いですなというのが見えてくると思います。
#で、肝心のFOMC参加者の議論の部分が時間の都合上明日以降に順延となりました(大汗)
2014/11/21
お題「3M入札が平均でマイナス1bp越えとな/総裁会見を鑑賞するの巻」
さすがにここもとの円安ホイホイ進行するけど株が上がらん(債券は知らんがな)というのを見ていると非常に気持ちが悪いんですけど・・・・・・・・・・
○市場雑談メモ
・短国入札ェ・・・・・・・・・・・・・
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20141120.htm
(1)応募額 46兆2,106億円
(2)募入決定額 5兆2,718億6,000万円
(3)募入最低価格 100円00銭1厘0毛 (募入最高利回り)(-0.0037%)
(4)募入最低価格における案分比率 80.6526%
(5)募入平均価格 100円00銭3厘8毛 (募入平均利回り)(-0.0142%)
・・・・・・・・・・orzorzorz
まあ今週はカレント3Mの利回りがドンドン下がってマイナス5だ6だ7だ(ちなみにbp)とやっておりましたので、入札が100円超になるのもシャーナイかなとか思ってましたが、平均がマイナス1bpを超えたマイナスになったのは今回が初物となりまして、日銀の底引き網漁によってマイナス滞在期間が長期化する結果として、短期資金運用以外の国債ニーズがどんどんあぶり出しの刑を食らってマイナス購入しないといけなくなるとか、ここもとの為替市場でのベーシススワップの影響でドル投円転絡みでのマイナス金利調達分のカバーでマイナスでも無問題な買いとかも強まり傾向という事で、まあこんな有様になっている次第なんでしょうな、よー知らんけど。
でまあ2年とかの中期もあばばばばーな事になっていて2年カレント昨日はマイナススタートとかしてた筈(引けではゼロだのプラスだのでしたが)ですし、大体からして5年近くの所まで付利金利よりも低い利回りの引値とかもう吐き気を催す展開で誠に遺憾の極みではございます。
ただまあMBの「その他」部分の年末目処が付けば短国底引き網漁はいったん終了する筈なんですけど、というか前倒しで達成とか変な事するから需給が無茶苦茶にぶれるのでもう勘弁して頂きたいものでして、必要額を日割りして毎日(入札とかMPMとか無視して)坦々と買ってくれた方が市場にストレス掛けんわと思いますがねえ。
・固定金利オペとか輪番とか
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of141120.htm
国債買入(残存期間1年以下) 1,100 2014年11月25日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 5,500 2014年11月25日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 5,500 2014年11月25日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 8,000 2014年11月25日 2015年2月23日
しかしまあ日程的に厳しいから仕方ない面はあるのですが、昨日は2年がゼロとかマークして話題になっている日の翌日だというのに堂々とその中短期対象の輪番を打ち込みに行くとか日銀は債券市場に喧嘩を売りに行っているとしか思えん次第ですが・・・・・・・・・・・
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba141120.htm
国債買入(残存期間1年以下) 2,377 1,100 0.018 0.022 99.5
国債買入(残存期間1年超3年以下) 14,565 5,503 0.004 0.005 96.9
国債買入(残存期間3年超5年以下) 16,292 5,505 0.001 0.002 42.4
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(11月25日スタート分) 2,650 2,650
1年以下は12月償還物の打ち込みなのでこういう数字になるのは良いとしまして、中短期輪番でレートがかっ飛んだらどうしようとか思っていましたが穏当にオファービットの範囲内での結果になっていてホッと一息(^^)。
なお固定オペの方は4032億円の足に対するロールで2650億円に減りまして、このロール後のオペ残高が8兆円をかすかに切るという状況になりますな。でもって12月に足が来るのは5本あって全部で1.4兆円ほどになるのですが、まあ足元のこの金利環境やら担保繰り環境からすると歩留まりはあまり良くないでしょうなあとは思います。
○総裁会見である
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1411c.pdf
まあ今回の会見ですけど、昨日ちょっと申し上げましたように会見の出来が全般的に宜しくなく、総裁は想定問答集を見ながら質問に対して的を外した答えに終始し、一方で質問する方は同じ質問が多くて、結果として質疑が同じところで話が噛み合わない中でグルグルするという内容になっていて遺憾にも程がある状態でございました。
・「一般論として申し上げると」ワロタ
質問に対して回答できないけど一般論として申し上げる攻撃で微妙に「それはその通りだが言うと地雷」という説明をするのはどこぞの麿総裁の得意技ではございましたが、黒田さんがこのフレーズを炸裂させるとな。
『(問) 安倍総理大臣が昨日、消費税率の10%への引き上げを1年半先送りすることを表明致しました。国内景気への影響や財政の信認の観点からの影響について、あらためて総裁のご所見をお伺いします。』
『(答) 以前から申し上げている通り、消費税率の引き上げについては、政府・国会において、経済状況等を総合的に勘案して判断されるものと認識しています。』
ここで止めるのではなくて・・・・・・・・・・
『その上で、一般論として申し上げれば、国全体として財政運営に対する信認をしっかりと確保することが重要です。』
キタコレ!!!
まあ何ですな、麿先生の場合って「公式見解としては大人の事情もあるからこう答えないといけないのだが本来はこういうもんじゃろ」という話をしたい時に「一般論として申し上げれば」攻撃が出ていたのですが、黒田さんも似たような感じだなあと思われる次第でして、増税先送りでハラワタが煮えているのが示されている物と推察致します(^^)。
『この点、政府は、「中期財政計画」において、数値目標とその達成に向けた取り組みを明確に示しておられます。税制や歳出のあり方など財政運営の内容について私の立場からコメントすることは差し控えますが、こうした計画に沿って持続可能な財政構造を確立するための取り組みが着実に進められていくことを期待しています。』
ってことで要するに財政再建ちゃんと実施しろゴルァ!!と言いたいのでしょうが、ただまあ総裁会見の映像見た感じですと今回の黒田さんは弱っている感が強くて、麿先生の(後日ベースなら以前から会見映像はベンダーで見れましたので念の為)「一般論として申し上げれば」よりもだいぶパッとしないなあという風には思います。
つーかまあ黒田さん的には増税サポートという事も考えて追加緩和に舵切ったのではないかという所だったのに、それに対して増税先送りもさることながら、「デフレ脱却に向けた取り組みを続ける」というような返しを政治サイドから打ち込まれていまして、それって「日銀の取り組みがまだ足りない」と言われているようなもんですから、黒田さんからしてみれば追撃追加緩和して以前の共同声明に則って政府の財政健全化と成長力強化政策推進しろという球を打ち込んだつもりが10倍返し位の勢いで叱責が飛んできているという流れと推察しますので、この一般論云々も何か「政治に向けた強いメッセージ」というよりは「引かれ者の小唄」っぽく感じるのはアタクシの目が偏っていますかそうですか。
・ということで共同声明に関する質疑
上記質疑の次がこれ。
『(問) 先程の質問に関連して、政府と日銀の共同声明の有効性についてお伺いしたいと思います。消費増税の先送りが昨日首相により表明され、10%への引き上げが1年半先送りされることが決まるわけですが、日銀は追加緩和をし、一方で政府は先延ばしするということは財政規律が失われているということにならないのでしょうか。』
(・∀・)ニヤニヤ
『いわゆる共同声明が空文化しているのではないかという指摘もあろうかと思います。かねて総裁は、財政再建が大事だとおっしゃっていたわけですが、2020年度のプライマリー・バランスについて、何ら裏打ちがない状態の中でも財政規律が保たれているとお考えなのかお尋ねしたいと思います。また、もし財政規律が失われた場合、金融政策の有効性が問われる状況になろうかと思いますが、そういったご懸念は一切ないのでしょうか。』
(;∀;)イイシツモンダナー
『(答) ご指摘の共同声明は、昨年1月に政府と日本銀行が示した共同声明ですが、その中で、日本銀行、政府は、お互いの役割を明確に認識した上で、それぞれが取り組むべきことをはっきりと示しております。そのもとで、日本銀行は2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指し、ご案内のように最大限の努力をしています。政府も機動的な財政政策や、成長力・競争力強化とともに、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進するとした上で、中期財政計画を策定し、財政健全化に向けた数値目標と、その達成に向けた取り組みを明確に示しておられます。』
そんな事は今更説明されんでも分かっとるわ。
『日本銀行としては、こうした計画に沿って、持続可能な財政構造を確立するための取り組みが着実に進められていくことを期待している次第です。』
「期待する」んじゃなくて取り組みが進まないと思うのなら財政ファイナンスと見られるような緩和は継続できないちゅう話なんじゃないですかねえ。
『また、後段で述べられた財政規律の問題というのは、極めて重要な点であります。』
そんな事は今更(以下同文)。
『この点については、今申し上げたような共同声明、さらに中期財政計画に沿って持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に進めるということが、財政規律を保つために極めて重要であると考えています。』
思いっ切り話が循環しているだけで、結局共同声明の内容を読み上げたのと全然変わらない答えをしていまして、懸念がどうのこうの的な話を全然答えていないのですな。
でまあこの質疑っちゅうのが冒頭説明に続く3つ目の質疑となっているのですが、これ以降の質疑応答が延々とこんな感じで推移しているのが今回の会見の特徴ではあります。
・ところで前提が変わったのですが見通しは変わらないのですかという質問
ちょっと先に行きまして。
『(問) 総裁はかねてから、消費税率が予定通り引き上げられることを前提に政策運営を進めておられるというご説明をされていたかと思うのですが、今回、総理が先送りを表明されたことで、今実施している金融緩和の効果に変化が出るのか、または日銀の経済・物価見通しに変化が生じるのか、についてどうお考えかということと、本日そうした議論がなされたのかどうか教えて下さい。』
当然の質問。
『(答) ご承知のように、展望レポートの経済・物価見通しは、一昨年の夏に成立した法律に基づいて、2015年10月に消費税率を2%引き上げることを前提に作成しています。またそうした見通しを踏まえて、2%の「物価安定の目標」の達成を確かなものとするために、「量的・質的金融緩和」の拡大を先般決定しました。』
そんな事は今更・・・・ですけど、まあこういう感じで説明しているのが多い訳よ。
『従って、今回の追加緩和は、あくまでも「物価安定の目標」を達成するために必要な調整として決定したものであり、消費税率の引き上げについては、先程申し上げた通り、政府・国会において議論し、決定されるものと認識しています。なお、今後の展望レポートあるいは中間評価については、当然のことながら、今後の経済動向、さらには政府・国会の決定等を適切に反映して、必要に応じて調整されていきます。あくまでも、経済動向をみてやっていくことになると思います。』
えーっとすいません、金融政策決定会合の度に政策判断をしている訳ですから、その度に情勢の変化に応じて調整する筈ですけど、何で「展望レポートあるいは中間評価」という話になるんでしょうかと思います。
つーかですね、会見冒頭で説明している声明文に含まれる見通しが前回対比でどうなったかという話をすれば、それが「消費税率予定通り引上げを前提にした時点との違い」になるので(それですとまあ微妙な差異はあるけれども昨日ネタにしたように展望レポート基本的見解と特段の変化はない)、「大きな変化はありません」ってな話になりますし、従来からの説明を敷衍すると「消費税率の引き上げは短期的には駆け込みと反動がツーペーなので中立、中長期的には実質可処分所得への影響とか財政健全化期待によるコンフィデンスの改善などの影響を総合的に勘案」という話になる筈。
ただまあそういう説明では無くて、何か想定問答の別のページ読みながら答えたような微妙に質疑が噛み合わない説明をするのって、よーするに黒田さんとしては増税先送りが想定外のショックな上に、政府にタマを投げたつもりが全力で打ち返されてさて困ったという感じなんでしょ。
あとついでに申し上げますと、毎月の会合で点検している件じゃなくて「展望レポートおよび中間評価」という言葉が出てくる辺りが微妙に味わいがある訳で、これは先行きの追加緩和をしないといけなくなるという意識がどこかにあるんじゃないですかねえと思うのは深読みのし過ぎですかそうですか。
・財政健全化に関する質疑が続くのですが財政へのコンフィデンスについては知らんがなという話から
まあこんな感じで「今回の消費増税見送りって追加緩和の梯子外しですよね」VS「知らんがな」という質疑が続いてしまって残念なのですが、その中からこんな質疑を。
『(問) 先程の幾つかの質問と関連しますが、増税が先送りされた場合のリスクについて、政府・日銀とも対応のしようがないということになりかねないと、確率は非常に低いとおっしゃっていますが、その影響は甚大なものになる可能性があるという意味ではリスクが大きいとおっしゃっています。』
うむ。
『今回ともかく増税が先送りされたことで、リスクはやはり出てくるのではないかと思います。日銀が追加緩和に踏み切ったことで、年間に発行されている国債の発行量のほぼ全額を日銀が買い取ることになり、その結果、増税が先送りされても長期金利は引き続き低い水準にとどまっています。結局、長期金利の低さが財政の規律を弛緩させているという指摘は結構強くあります。』
うむ。
『もし、対応不可能になるようなリスクが顕在化した場合には、黒田総裁、そして日銀はどのような責任をお取りになるつもりなのか、まずそれをお聞きします。(後半割愛というか次に)』
(・∀・)ニヤニヤ
『(答)(前半が後半の質問への答えなので次に)なお、財政規律の問題については、政府・国会の責任であり、中央銀行が責任を取るといった問題ではありません。あくまでも中央銀行としては、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することが課せられた課題であり、それに向けて着実に前進するということが何よりも重要であると思っています。』
まあこれはこう言っておかないと全て日銀(というよりは黒田岩田コンビ)のせいになるという話でございますのでそうですなとは思いますが、そもそも論として国債を馬鹿買いすることによって金利を押し下げる事によって「財政規律に関して市場が早期警戒を示すという機能を喪失させていますよね」という論点に関して責任が無いというのは図々しいのではないでしょうかねえ。
・マイナス成長で物価が上がるのかという質疑だが追加緩和の逐次投入あるで!!という答えを見た
上記の質疑はもう一つのネタがありまして。
『(問)(前半割愛)もう1点、これも先程質問がありましたが、今年度の成長率はマイナスになる可能性が高いとの見方が専らです。日銀が次回の中間評価で下方修正すると5回目になります。』
(・∀・)ニヤニヤ
『昨年4月4日に黒田総裁は、2年で2%の物価目標を達成するために必要な措置は全て決定したと高らかに宣言されましたが、つい最近10月31日には追加緩和に踏み切りました。結局、QQEは円安をもたらして物価をその面から押し上げる効果があったとしても、景気を良くする力はほとんどなかったということ、これはお認めになった方が良いのではないかと思うのですが、如何でしょうか。』
そら認めないでしょう・・・・・・・
『(答) 後段のご質問については、全くそのように考えていません。公表文や展望レポート等で政策委員会の支持を得て示されている通り、「量的・質的金融緩和」は、景気あるいは物価に対して所期の効果を発揮していると思います。』
「公表文や展望レポート等で政策委員会の支持を得て示されている通り」って言ってる辺りが微妙な味わいもありますが。
『もとより、世界経済の回復がもたついていたとか、あるいは最近時点では、商品市況、特に原油価格がかなり大幅な下落をしているなど様々な要因が景気や物価に影響していることは事実ですが、経済見通しはその時点でのあらゆる情報を総合して、そしてその時点で最適と思われる政策をとり、その後、結果がどのように出るかに応じて、上下双方向のリスクを点検して、必要があれば躊躇なく政策を調整するということでやってきています。「量的・質的金融緩和」が所期の効果を発揮していることは間違いないと思っています。』
まあこう答えるしかないのでしょうが、そもそもの置物直線一気理論だとマネタリーベースを必要なだけ出せば期待インフレが適切な水準に向かって調整されるので、それによって内生的に需要が発生するというメカニズムを説明していた訳で、金融ショックのような要因なら兎も角、上記説明のレベル程度の要因で一々調整しなきゃいけないような話では無かった筈なので、その辺に関しまして置物副総裁の置物理論を小一時間問い詰めたいのですが。
まあ悪態は兎も角としまして、上記の説明からしますと「必要があれば躊躇なく調整」というのが、これまでの説明では「必要があれば調整するけどそもそも必要な措置は全部打ってますし見通し通り推移していますよ(キリッ)」というニュアンスとでしたが、追加緩和実施以降のこの文言は(発言の字面は同じですけど^^)、「躊躇なく調整」の方に思いっきり力点が置かれていまして、そもそも足元の物価と短期的な物価見通しを基に追加緩和実施しているというのを勘案しますと、声明文で示された「当面」に相当する期間以降も物価が1%辺りでウロウロしていると追加緩和待ったなしと考えるのが妥当でありまして(まあ今回みたいにまた豹変するかも知れないけど)、少なくとも市場の方が(債券市場的にはもうお腹一杯でお腹破裂しそうな状態なので勘弁なのですが)追加緩和マダーと催促してくる展開になるんでしょうなあという所です。
・答えが噛み合っていないものの白川ドクトリンを全否定したいのが判る質疑
小見出しが長いですかそうですか。
『(問)(前半割愛)2つ目は原油価格下落の影響についてです。総裁が着任されたばかりの頃に、中国のスローダウンなどで一次産品が下落しても「物価安定の目標」達成は大丈夫ですか、と質問させて頂いた時に、日本は世界から孤立して15年間デフレだったので、世界の商品市況の動きとは割と独立に、デフレ脱却し2%を達成できる、というような解説をされたかに記憶するのですが、それと現在との整合性をお願いします。』
インフレは貨幣的現象なのだから適切な貨幣を供給すればインフレを制御できるし、それができるのは中央銀行だけなので中央銀行の責務として物価安定目標がある、という話ですが何で足元の動きで反応したんですかねえという質問でもあるとは思いますが。
『(答)(前半割愛)それから、以前にどういうことを申し上げたか、今のご質問では必ずしもはっきりしませんが、私が従来から申し上げていたのは、中国から安いものが入ってくるとか、あるいは日本が少子高齢化しているとか、そういったことが原因でデフレになっており、金融政策では如何ともしがたいといったような議論がかつてありましたが、それはおかしいのではないかということです。』
まあ白川ドクトリンにしても別に「如何ともし難い」という話をしているのではなくて、それよりも「経済の実力に見合った物価水準というのがあるので、2%を短期的にアプリオリに目指すものではない」という考えのもとで「金融政策で時間を稼ぎつつ成長力の強化をして適正な物価水準を徐々に押し上げていく」というような話であって、別に「金融政策では如何ともしがたい」という話をしている訳ではないのですが、どうも日銀批判サイドが白川さんの発言を針小棒大に宣伝するのが効いていた面はあるなあ(そういう意味では「期待に働きかける政策をしろ」とか言いながら白川さんを批判していた向きが一番その「期待形成」の邪魔をしていたんですけどねえ)とは思うのですけどまあこの話をああだこうだ言い出すと話が発散するのでこの辺で。
『中国から物をたくさん買っているのは日本だけではなく、米国あるいは欧州、アジア諸国もそうです。それから少子高齢化となっている国は、日本だけではなく、欧州にもたくさんありますし、実はアジアにも他にあります。そうした中で、世界で唯一15年続く日本のデフレを、今言ったような国際化あるいは少子高齢化とかで、説明するのは無理なのではないかということです。様々な事情で、物価押し上げ圧力あるいは押し下げ圧力は色々あると思いますが、そうしたもとで、やはり物価を安定させる責務が、中央銀行にあるのではないかということです。その点は、今でもそのように思っており、そうした観点から「量的・質的金融緩和」を導入し、拡大をしたと、私自身も理解しております。』
ここのこだわりが強いのは分かるし、まあ言ってる事はわかるのですけど、だからと言って「短期間で2%を達成」というのが本当に適切なのかというのは別のような気がしますし、そらまあ均衡を破る為にやや極端な動きをする必要があるのも判るのですが、適当な時期に勝ち逃げを検討した方が良かったような気がします。
ただ残念なことに、足元で官邸サイドからまだデフレみたいな言い方をされてしまっていますので、ちょっと「勝ち逃げ」が難しくなってしまったのもありまして、いやこれは黒田さん相当追い込まれていますなあとか言ってますが、黒田さんが追い込まれると債券市場に再度追加緩和のおかわりが打ち込まれて来ますので、そういう意味では債券市場も追い込まれるのですけどね(吐血)。
2014/11/20
お題「金融政策決定会合レビュー/2年がゼロ%とかヒャッハーにも程がある展開」
いやまあこの方のこれまでのキャリアとか詳しく存じませんから何ですけど、PE投資と年金全体の統括はだいぶ話が違うと思うので(運用の一環としてのPE投資にアドバイスするような運用委員なら兎も角としまして)何ぼ何でも偏り過ぎじゃないですかねえ・・・・・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NFA77Q6K50YR01.html
GPIF:初代CIOに水野弘道氏、運用委員で英PE会社の首脳
更新日時: 2014/11/19 20:31 JST
○決定会合レビュー:声明文は相変わらずゴテゴテして見苦しい
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141119a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141007a.pdf(10/7)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1410a.pdf(展望レポート基本的見解)
今回は基本的に月報タイミングに合わせて前々回と比較しますが、たまに展望レポート基本的見解の記述と比較するという感じで。
・現状認識:何か知らんが細かく上げ下げしていますな
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きが残っているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(10/7)
という総括判断は同じ。
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。』(10/7)
輸出引き上げたのか。
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は、ばらつきを伴いつつも全体として和らいできている。』(10/7)
設備投資の部分は「増加している」が「増加基調」ということで下がっていまして、公共投資は同じ、個人消費の所は基本的な部分は同じなのですが駆け込み需要の反動の影響の部分で10月7日の所で「ばらつきを伴いつつも」という文言を加えたのを削除するという訳のわからん動きを示しておりまして、微妙に引き上げ。
『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いているが、足もとでは下げ止まりに向けた動きもみられている。鉱工業生産は、在庫調整が続くもとで、弱めの動きが残っている。』(今回)
『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いている。鉱工業生産は、在庫調整の動きもあって、このところ弱めの動きとなっている。企業の業況感は、消費税率引き上げの影響などから改善に一服感がみられるが、総じて良好な水準を維持している。』(10/7)
住宅投資は「下げ止まりに向けた」云々となって引上げとなっております。生産の所もこれまたややこしくて、在庫調整の所は「動きもあって」が「続くもとで」という事で表現が変わっていますけれども要するに在庫調整が起きているという説明ですが、生産全体については弱めの表現の部分が「残っている」という形で願望入りながら上げているという感じですか。業況感に関しては短観に関する部分なので今回は入っていません。
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(10/7)
ここは毎度同じ。
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる(注1)。』(10/7)
まず、物価の現状については遂に「1%程度」に変わりましたが、これは英文の所を見ますと、
『On the price front, the year-on-year rate of increase in the consumer
price index (CPI, all items less fresh food), excluding the direct effects
of the consumption tax hike, is around 1 percent.』(今回)
『On the price front, the year-on-year rate of increase in the consumer
price index (CPI, all items less fresh food), excluding the direct effects
of the consumption tax hike, is around 1-1/4 percent.』(10/7)(4分の1の所はフォントの関係上改変しています)
ということでやっと下げましたかそうですかという所ですが、インフレ予想に関しては「やや長い目で見れば」と思いっきり見苦しい文言が加わっています。これは直近の直近の展望レポートに登場しておりまして・・・・・・・・
『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(展望レポート基本的見解5pより)
ということで、これが声明文に出てきたという話ですが、英文を見ると更に見苦しさがががが。
『Inflation expectations appear to be rising on the whole from a somewhat longer-term perspective.』(今回)
『Inflation expectations appear to be rising on the whole.[Note 1]』(10/7)
「from a somewhat longer-term perspective」って英訳する方も相当困ったんですねという感じで実に味わいが深い。
・先行き見通しの物価に関しては「もうすぐ1%近辺から戻ります」と来ましたが大丈夫ですかねえ
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も次第に収束に向かっていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も次第に和らいでいくとみられる。』(10/7)
何ちゅうかもう泣ける表現ですな。なお英文。
『With regard to the outlook, Japan's economy is expected to continue its
moderate recovery trend, and the effects including those of the subsequent
decline in demand following the front-loaded increase prior to the consumption
tax hike are expected to dissipate gradually.』(今回)
『With regard to the outlook, Japan's economy is expected to continue its
moderate recovery trend, and the effects including those of the subsequent
decline in demand following the front-loaded increase prior to the consumption
tax hike are expected to wane gradually.』(10/7)
waneがdissipateに変わっていまして、まあ後者の方がより「無くなる」という意味が強い筈だったので言いたい事は伝わったが何ちゅうかねえという感じです。
『消費者物価の前年比は、当面現状程度のプラス幅で推移するとみられる。』(今回)
『消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(10/7)
なお英文。
『The year-on-year rate of increase in the CPI is likely to be at around the current level for the time being.』(今回)
『The year-on-year rate of increase in the CPI is likely to be around 1-1/4 percent for some time.』(10/7)
これがまあキタコレではありますが、実際は展望レポートの時にこのように表現が入っていまして・・・・・・
『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると、当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い10。』(展望レポート基本的見解6pから)
ということですので、展望レポートの時と同じではあるのですが、1月の声明文以降続いていた「for
some timeは1%台前半、ああそれからfor some timeって半年程度な」といったもののその半年程度とは何のことだという感じだったものに対して、今回は発射台の数字を「現状程度のプラス」とか微妙な言い方して、英文でも「the
current level」とかナメトンノカという表現ではございますが、まあ要するに足元の1%近辺(総裁会見でついに今回1%割れの可能性に言及していてフラッシュも打たれていましたがそれは明日にでも)まで発射台を下げましたな。
しかしながら今後上昇していくパスについて、従来の「半年程度横ばう」という意味をもつことになっている「暫くの間」から、それよりも期間の短い「当面」という表現に変えて来ましたので、これは即ち次回の展望レポートの時に1%近辺とかですと物価見通しのパスから外れているという話になりますので、その時は追加緩和待ったなしという話になりますし、だいたいからして「当面」なのですから来年の4月を待たずしてもアクチュアルな物価が上昇してこないと追加緩和しないと話がおかしくなるという事になりそうです。
でまあ前回の追加緩和によって「足もとの物価動向を重視して兎に角アクチュアルの物価を2%まで持って行く事を重視」というのを鮮明に打ち出した(ので4人も反対が出た訳だが)のですから、足元の物価が中々アガランチ会長(来年前半はそもそも論として前年比の所が苦しい筈なのだが)となりますと結構早い時期に追加緩和に追い込まれるという「バズーカの逐次投入」ってな意味不明な展開になるとか思うと落涙とかいうよりも吐き気を禁じ得ません。
・リスク要因は欧州低インフレ長期化とか今更入るが表現が紛らわしい
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(10/7)
これ「欧州における」がどこまで掛かっているのかが一瞬分かりにくいので、欧州の話なのか日本の話なのかが分かりにくいぞなと思いますので表現の改善キボンヌ。なお英文見たら分かりました。
『Risks to the outlook include developments in the emerging and commodity-exporting
economies, the prospects regarding the debt problem and the risk of low
inflation rates being protracted in Europe, and the pace of recovery in
the U.S. economy.』(今回)
『Risks to the outlook include developments in the emerging and commodity-exporting
economies, the prospects for the European debt problem, and the pace of
recovery in the U.S. economy.』(10/7)
・最後の部分はいつも通り
『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注3)。』(今回)
『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。』(10/7)
木内さんの提案もいつも通りでしたな。
・票決に関して
『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成8反対1)(注1)。』(今回)
『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。』(10/7)
でまあ反対が木内さんで「元に戻せ」とことで反対なのですが、前回反対した他の3名は賛成となりまして、まーここの所は微妙ちゃあ微妙なのですが、前回決定された事項を覆すという事になると、今度は覆す方に色々と説明する義務が生じてきますし、一旦決定した事を極端な情勢の変化も無いのに直ぐに戻すというのも妙な話ではありますので、まあ賛成する方も反対する方も言いたい事はわかるという感じです(ちなみに2000年のゼロ金利解除の時も解除に反対した植田審議委員(当時)が次の会合で賛成に回っています)。
今回に関しては「消費増税先送り」というのが出たので財政規律に対する懸念がやや高まるという変化が生じているのですが、まあ選挙モードの中ですから選挙終わってみないと今後どうなるのかというのも判らんという所でもあって、今回の会合で早急に「財政規律の懸念が高まっているので過大な国債購入は財政規律との絡みで問題である」と提案するのも難しいという所で、まあ前回反対の4名がどちらに回ってもそれほど違和感無いなという所ではあります。
ただまあ今後に関しては財政規律の絡みの問題に加え、前回追加緩和で反対が出たのと同様の感じで、足元の物価にフォーカスした動き(つまり追加緩和のおかわり)が来た時には色々と反対の動きが高まるんでしょうなあと思われます。
○決定会合レビュー:総裁会見に関してのファーストインプレッション
まあ会見テキストが出てからという感じではありますが、今回の会見の中継をベンダーで見ていたのでその感想だけ先にメモを置いておきます。
・質疑応答が全然噛み合っていなかったので話が循環していた件
今回の会見ですが、前回以上に黒田さんが悄然としていた感じが強くなっておりまして、質問に対する答えが全然噛み合っていなくて、ひたすら「QQEは所期の効果を上げています」みたいな話を繰り広げるという誠に残念な状態になっていました。
従ってこれ会見をテキストに起こす事務方涙目という感じだと思うのですが、どう作っても今回の会見は質問と答えが全然繋がらないような会見要旨に仕上がるしか無いと見られますので、その出来上がりを鑑賞したいという所です。
当然ながら「質問に対して全然答えていない」という動きになっていますので、質問する方がややお怒りモードで同じような質問を繰り返し、それに対して答えになっていない答えを繰り返すという感じで会見がひたすらループしていまして、聞いている方が途中で辛くなるという状況になっていて、会見放送を開始したばかりの時の自信満々の黒田さんは何処へ???という誠に残念な感じになっていました。
・やたらめったら想定問答を見ていた件
あと、今回の会見中継をベンダーで見ていて物凄く印象が強かったのは、質疑応答の間に黒田さんが手元にある想定問答集(しかし見てましたが結構な量ですなあ^^)を何度も繰りながら話をしていた所でして、これまた会見放送を開始したばかりの時に市場の皆さんビックリした自信満々モードの時には想定問答を何度も繰るなどという光景は無かったので、物凄く強い印象を受けましたですよ。
まあ何ですな、もともと「追加緩和」自体が黒田さんロジック(だか置物理論だか知らんが)的に崩壊気味の所へ来て「消費増税延期」というショックまであって黒田さんの中でもはやロジック崩壊状態になっているので想定問答をきっちり読んでいかないと説明が付かんという状態になっているのではないかなどという甚だ遺憾な状況を想定してしまったのですが、それは杞憂であることを願いたいものでございます。
いやまあ従来も想定問答を繰る場面などあったのですけど、今回は会見の最初から最後まで想定問答をピラピラめくりながら行ったり来たりしていたという感じで、今までにない状態だったのが凄まじく気になりまして、これは黒田さん弱ってますなあという風に映ってしまうので何かどうだったのかと思いますよ。
なお、仮に政策ロジックが崩壊(というか分裂というか)で、足元の物価にフォーカスした動きに思いっ切りシフトしているという事は即ち従来の「全部投入」も反故になっているという事になりますので、兵力の逐次投入が今後も割と抵抗なくホイホイと行われるという事を意味するので、今後の物価動向次第ではあります(円安が神風になるといいですね棒読み)けれども、物価がアガランチ会長ならばホイホイ追加緩和が飛び出す事になるでしょう。何をするのかを想像すると頭がクラクラしますが。
○2年がゼロ金利でウギャーの巻
アイヤー!!!!!
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0T92GX20141119
〔金利マーケットアイ〕国債先物が反発、長期金利0.470%に低下 2年債は初のゼロ%
2014年 11月 19日 15:27 JST
『<14:30> 2年債利回りが初のゼロ%、短国もマイナス金利
2年利付国債(第346回債)利回りは前日比1bp低いゼロ%と、10月17日に付けた0.005%を下回り、過去最低を付けた。市場筋によると、ゼロ%での取引額は少額とみられている。レポ(現金担保付債券貸借取引)市場では、第346回債の品薄感が強まっていることが影響しているとみられている。
きょうの市場では、国庫短期証券(TB)が新発3カ月物がマイナス0.075%、新発1年物がマイナス0.035%とマイナス金利を記録。「2年債はTBに引っ張られる形で低下圧力がかかりやすい地合い」(国内証券)という。』(上記URLより)
来年度国債発行計画への思惑(来年度はどう見ても超長期増発中短期減額なので)もあるとかいう講釈もありますが、短国の金利が上記にありますように盛大にカレント近辺がマイナスになっていて、BB引値とか見ますと短国はほぼ全ゾーンマイナス利回りだわ利付もゼロ利回りだわというような凄まじい展開になっておりまして、中短期の利付に関しては輪番効果、短国に関しては底引き網短国買入効果が炸裂して悲惨な状態になっております。
つーかどちらかというと中短期の輪番が増額されたので2年と3Mがいずれインバートする日が来るのかと思ったのですが、まさかの日銀短国ヘタクソ買入攻撃で短国金利のマイナスを盛大に深くして2年の金利が下がってしまうとは想定の斜め上を行く展開でもう何だかねという所です。
という状況の中で本日は3M短国の入札がありまして、1年の2.5兆円のうちどこからどこまでが投資家の買いと日銀の買い(つまり底引き網オペ狙い攻撃)なのか知らんですが、まあ本当は金曜のオペで少しは日銀が自制すれば3Mの新発分と合わせて需給緩むと思うのですが、どうせ底引き網オペをして再び在庫を全部吸い上げてマイナス金利を促進して更に市場を締め上げるという死亡スパイラルに自ら特攻するというプレイが炸裂しますので、金曜は今日の3Mと火曜の1年のオペ狙い在庫を全部お買い上げという連続大開放オペになるでしょ、とまあそういう予想が普通に立ちますから今日の3M入札もマイナスになるというストーリーになっておりますな。
・・・・・・・確か短国買入の部分を追加緩和のどさくさで調整したのはこういう動きを緩和しようということだったような気がするのですが、何なんでしょうかねえマッタクモウ。
つーか、この調子ですと中期の輪番そのうち札割れとか凄まじいマイナス金利とかになるんじゃないですかねえ・・・・・・・・・・
#FOMC議事要旨はちょっとだけ斜め読みしかけましたが時間が無いので後日で勘弁
2014/11/19
お題「総選挙ですな/国債入札2本がオモシロ結果に/佐藤審議委員のロンドン講演から」
いやーまさかの展開にも程がありますがこれで選挙結果出るまで動きようが無くなりますのう。
○解散総選挙ヒャッハー!
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NF8E7C6JIJVG01.html
安倍首相:衆院解散を表明、消費増税は1年半延期−12月選挙へ
更新日時: 2014/11/19 00:13 JST
ということで解散総選挙ですが、消費増税1年半延期するのは兎も角として景気条項外して1年半後に「必ず実施」なんだったら悪材料は先にやっておいて早期出尽くしにした方が良いんじゃねえのという気もだいぶするのですが、これでとりあえず来年の所で発生し得る駆け込みと反動が無くなったので少しトレンド読みやすくなるかもしれませんな、うんうん。
でまあ選挙がどうなるかはワカランチ会長なのですけれども、会見で勝敗ラインを自公で過半数の所と超安全圏ゾーンに置いていたからどこからどう見ても定義的に負けというのは発生するとは思えませんし、前回さすがに勝ち過ぎですから少しは減らすでしょという程度だと考えるとまあその後どうなのという話ですぞなという事で。
となりますとどうせ政権公約の方で出てくると思いますが成長戦略の方をよろしく実施の程願いたい訳で、選挙後も経済モードで進行して頂きたいと思いますし、まあそう考えますと自公または自民+維新で3分の2を切ってくれた方が憲法改正モードとかにスイッチ入りにくくなるから経済に専念してくれるかも知れませんな。
#なお成長戦略の内容は会見では特に説明が無かった模様なので政権公約でよろしく
・・・・・・・・・しかし「1年半延期するけどその後必ずやるので信を問う」というのは何が何だかよく判らん(消費税増税は一旦止めて別の方法で財政運営しますよ、という方が分かりやすいのだが・・・・・・)ですなあという感じで、為替の動きとか見てたけど延期するけど景気条項外すし財政再建しますよ的な説明の所でいきなり円高に振れていましたな。
しかしまあ何ですな、昨日の会見でも安倍ちゃんが説明していましたが、「デフレ脱却していない」という説明をここの所何度も官邸方面から飛び出しているというのが実に味わいがありまして、これってつまり日銀というか黒田さんにとっては結構プレッシャー掛かっているんじゃネーノと思われるのでして、まーアクチュアルの物価に反応した日銀ですし、2%へのこだわりを無茶苦茶見せてしまった以上、物価上昇率が1%カツカツで推移する期間が続けばまたまた追加緩和(もはや何をするのか知らんが国債100兆にペース拡大くらいしか思い浮かばん、外債買った方が話が早そうだが色々な事情で難しいでしょ)という話になるのが近そうですなあという感じです。
でまあ1年半延期ではありますが、その時に状況的にダメという時は退陣とまで仰せでしたので、逆算して考えたら2016年の秋口には増税大丈夫ですねという状況になっていないといけない訳ですな。さてそうなりますと今回の消費増税の影響が大きかった理由としてデフレ脱却で2%物価目標の達成前に増税したというような理屈も思いっきり成り立つと思われます(というか多分就任前からの話を総合すると安倍ちゃん的にはそーゆー整理になっているのではないでしょうかねえ)ので、そうなりますと秋口がジャッジメントタイム(^^)であります関係上、その前にデフレ脱却して2%物価目標を達成していないとどう見てもマズイという事でもありますなというのが日銀に重くのしかかってくると思われる次第。
ということで、まあ1年半延期したから2年で達成の方はお許しされているような感じがだいぶ漂って参りましたが、では中長期的に目指せば良いというスキームになってくれるかと言いますと、これがまた難しい所で、浜田先生辺りからはデフレ脱却すれば良しという話が出ていますのでそっちに方向性が変わってくれると穏当な方向に収まるのですが、今のままで推移致しますと2016年度の前半には2%物価目標達成宣言ができるような状態になっていないと日銀が火あぶりの刑に処せられるという話じゃネーノと色々と頭を捻っている内に結論付いた次第でございまして、そう考えますと黒田日銀様におかれましては物価目標達成に向けて更に短期決戦大勝負モードになってくるという債券市場涙目の展開になりそうな悪寒。
まあ債券市場涙目になっても物価目標を早期に達成してその後出口政策になってくれれば目先はビバークなのか冬眠なのか分かりませんがとりあえず気を失っていれば良いのですが、問題は猛吹雪も止まずに春も来ない場合に気を失ったままだとお陀仏さんになってしまう事でございますし、金利市場の中の人たち的にはどう計算しても物価がそう簡単に2%目標に達成して安定推移という絵が描けないという話の方が超優勢でして、お願いですからその辺の説得力のある絵が描けるようなストーリーをと思うのですが、相変わらず異次元緩和の波及経路とそのパスが全然具体的じゃないのを何とかして頂きたい物ですな。
・・・・・・と最後は選挙と全然関係ない雑談になってしまいました(−−;
○20年入札&1年TB入札ェ・・・・・・・・・・・・・・
20年国債入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2014/resul059.htm
(1)応募額 3兆1,583億円
(2)募入決定額 1兆976億円
(3)募入最低価格 101円55銭(募入最高利回り)(1.301%)
(4)募入最低価格における案分比率 72.9850%
(5)募入平均価格 101円96銭(募入平均利回り)(1.276%)
テール41銭キタコレということで債券先物は30銭位落ちるわ超長期ゾーンは4毛位甘くなるわと久々にお洒落な入札になりましたが、今回の20年国債入札に関しては元々追加緩和で金利がヒャッハーとなった後からここぞとばかりに戻り売り食らっていたゾーンな上に、先週金曜に超長期輪番のうち25年超だけ増額するという日銀による闇討ちプレイ(市場的には闇討ち、日銀的には別に書いてある範囲内でやっているので何で闇討ち呼ばわりされなきゃいかんのよ買入銘柄だって10日時点の数字出してるじゃんというところですけど)が炸裂しまして、30年の方が馬鹿強になって20−30とかあばばばばーになってしまうわ、まてよこの状況だとまた平均年限調整の為に超長期の輪番がいじられる可能性がある罠という話になるわで、思いっ切り日銀のオペによって不確実性が上昇してしまい、その結果入札が大コケになるとか中々味わいが深いというものです。
ま、そのうち買入パワーの力でボラが無くなっていくと今度は先生!金利市場ちゃんが息をしていないの!!となってしまうでしょうからボラがあるうちが華かもしれませんけどね!!!!!!!
1年短国入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20141118.htm
(1)応募額 18兆5,492億円
(2)募入決定額 2兆3,123億7,000万円
(3)募入最低価格 100円00銭1厘 (募入最高利回り)(-0.0009%)
(4)募入最低価格における案分比率 77.6752%
(5)募入平均価格 100円00銭3厘 (募入平均利回り)(-0.0029%)
またまたマイナス入札になってしまいまして、しかも足切りもマイナスということですが、何せ発行が2兆5000億円しかないですし、日銀は市場の在庫が有れば買います買いますという息せき切った買い方をするのが見え見えになっていますからそらまあ日銀の足元見て入札強い所になるわなと思われますし、マイナス金利は買えないという人も国内だと結構多い(というか投資家的には買わないという方が平常運転)ですけど海外とか、国内でも担保繰りとか決算残高調整的な部分ではマイナスでも買う可能性がある訳で、そらまあマイナス金利が続けばそういう人も暫くは我慢してもそんなに長く我慢できないでしょうしという事で、日銀の買入によってクラウディングアウトされて結局マイナスを買って買えない事が無い人は買わざるを得なくなるという民業圧迫オペの面目躍如という所であります。いやまあ一時的に民業圧迫してもその結果物価目標が速攻で達成できて政策終了してくれれば良いのですけど以下同文。
ということで、先々週悪態を軽く申し上げましたように、そもそも先々週金曜のオペで底引き網漁かと言うような在庫ゴッソリ購入するような買い方をするからこういう流れになっている訳でして、こちらもまた日銀オペによって入札がオモシロ事態になるの図ということで、もう何だかねという所でしたのでメモを置いておきます。
○佐藤審議委員の講演はマクロプルーデンス
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141112b1.pdf(邦訳)
マクロプルーデンス政策と日本銀行の取り組み
(ジャパン・ソサエティ<ロンドン>における講演の邦訳)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko141112b1.pdf(こっちが本チャン)
Macroprudential Policy and Initiatives by the Bank of Japan
Speech at Japan Society in London
で、またまた手抜きなので邦訳の方から。
・マクプル政策の発動タイミングの難しさ
実質最初の小見出しが『2. マクロプルーデンス政策の発動に関する課題』ですが、確かにこの発動の難しさというのが重要な話であって、今はすっかりマクプルブームですけれども現実問題としての適用の難しさ、というのはもっと論じられるべき点だと思います。
『日本でも、過去にこうした政策手段が採られた事例がある。例えば、1990年に導入された不動産融資の総量規制は、過熱していた不動産業向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑制することを求めた政策であった。当時の位置付けがどうであったかは別として、これをマクロプルーデンス政策の手段に含めることは可能であろう3。これらの政策は典型的なマクロプルーデンス手段として取り上げられるものであるが、その他の手段、すなわち個別金融機関の考査・検査や決済システムのオーバーサイトなど、既存の政策についても、関係者との協調を図りつつ、マクロプルーデンスの視点を踏まえて運営していくことも重要である。』
『そこで、これらマクロプルーデンス政策の発動についてであるが、以下の課題に留意する必要があると考えられる(図表2)。1点目は、幅広い政策手段の中でその時点で識別される金融不均衡の抑制に有効と考えられる手段を適切なタイミングで発動することの重要性である。この点、政策手段の発動が適切なタイミングから遅れた場合、経済の平均的水準の低下と変動の拡大をもたらすとの実証研究の結果がある4。』
確かに。
『かつて日本で導入された不動産融資の総量規制については、発動のタイミングが遅きに失したことで、必要なタイミングで地価上昇を抑制することが出来ず、むしろ地価が下落に転じて以降、その下落を加速させる結果となったとの指摘がなされている5。』
当時あたしゃ金貸しの手先だったから体感的には同感できる話。
『このように政策発動のタイミングが非常に重要であることは認識されているが、その前提となる金融不均衡の識別については、現時点においてもなお知見が十分には蓄積されていないように思う。これは、過去において金融システムを脅かす不均衡の蓄積とその崩壊がその都度異なる経路を経て顕在化してきたことと関係しているかも知れない。』
『いずれにせよ、金融システム内部にシステミックリスクにつながり得る不均衡が生じているか否かをリアルタイムで把握し、発動のタイミングの判断につなげていくことは、大きな課題である。』
ともすればマクプル万能的な話になりがちな昨今の流れですが、これは佐藤さんの指摘通りではないかと。
『2点目の課題は、1点目と関係することでもあるが、政策発動時の対外説明の難しさがあげられる。』
というのは・・・・・・・・・
『金融不均衡の兆しがあることについて、政策当局の判断の正しさを「事前に」証明することは難しい。金融不均衡の兆しを確信を持って捉えるのが難しいことは、それへの対応が必要である、という説得的な議論を展開することが難しいことを同時に意味している。』
ということでして・・・・・・
『たとえ金融当局が、分析と経験に基づき、金融不均衡の兆しが強いと判断できたとしても、早い段階では、その必要性について、ステークホルダーから十分な支持が得られないかもしれない。あるいは、金融不均衡の蓄積が多くの人の目に明らかになるまで待つと、政策を発動するタイミングとしては遅すぎてしまう可能性がある。』
さいですな。
『一時期、国際的な金融危機後の議論の中で、金融不均衡をなるべく事前に察知し対応を講じていくべきとの見解と、事前の察知は難しいので実際にバブル崩壊が生じてから対応すれば良いという見解が分かれた時期もあった。』
いわゆるBISビューとFEDビューね。
『そのこと自体、1 点目、2点目の課題にあげたような判断や説明の難しさを物語っているが、現在においては、なるべく不均衡の察知に努め、可能な対応を講じていくという方向で、程度の差はあれ、多くの国が制度や枠組みを設計しているように思う。』
ただまあ今の説明にもありますようにBISビューが使えるかというと実際には難しい部分があるという話ですな。
『3点目として、政策効果の漏れをいかに防ぐかという点にも難しさがある。漏れが生じる例としては、規制アービトラージがあげられる。政策発動により規制対象となる銀行が貸出を減らしたとしても、シャドーバンキングなど規制対象外の金融機関が削減分を肩代わりして貸出を実行してしまうと、政策効果が相殺される可能性がある。先述の日本における不動産融資の総量規制でも、同様の事象が生じた。』
海外店貸出を使ったりですなあ・・・・・・(^^)
『政策効果の漏れを最小化するため、幅広くシャドーバンクに対して規制をかける場合、複数の政策当局間の連携が必要になることも想定される。連携が十分でないと、政策効果が減殺されてしまう可能性もある。金融技術の発展に伴い、規制の対象とならない新たな金融商品が生まれ、それに対して規制対象の拡大で対応しても、また新たな商品が生まれるといった事態も想定される。さらに、自由な資本移動の下で、規制の国際的な調和を図っていくことも必要となるかも知れない。』
とは言え、規制の国際的な調和を図るという中でそもそも同じ名前でも商品の性質が国によって違う場合(MMFとかが典型)に同じような規制を掛けると国際的には調和が取れるけど国内的にスットコドッコイな規制になるという可能性もあり中々難しい所だと思います。
・不均衡を見るには最終的にはジャッジメンタルな部分ですよねという話
次の『3.日本銀行のマクロプルーデンス面での取り組み』ですが、途中の話は飛ばしましてFSRの話がありましてですね。
『そうした視点からこのレポートの中で行っている分析の一例として、この場では、2012年より作成を開始した「金融活動指標」を紹介する(図表3)。「金融活動指標」とは、システミックリスクにつながる可能性のある金融活動の過熱をいち早くとらえるため、総与信・GDP比率や地価の対GDP比率など14の指標を設定し、それぞれの指標が過去のトレンドからどの程度乖離しているかをみる指標である。』
『金融システムレポートでは、こうした個別指標の過熱・停滞に関する判定結果を、過熱を赤色、停滞を青色、それ以外を緑色に色分けした「ヒートマップ」の形で示している。これらの指標を総合的に分析・評価することを通じ、マクロ的な金融不均衡の蓄積状況の把握に努めている。』
ということでマップ自体は図表にありますが具体的にはFSRを見るのお勧め。ちなみに直近では個人の投資部分が住宅駆け込みの関係で赤くなっているだけです。
『無論、「ヒートマップ」が万能なわけではない。例えば、金融循環の代表的な指標である総与信・GDP比率をみると、1980年代後半〜1990年代初頭の資産バブルの生成とその崩壊のマグニチュードがあまりに大きいため、基調を把握しにくくなっている(図表4)。金融循環の周期は長く、かつ不安定で金融システムの強靭性回復にも時間がかかることから、この種の指標のトレンドからの乖離をどの程度の期間許容するかは、結局、「判断」の問題となる。そうした留意点はあるが、同指標は金融不均衡の蓄積を捕捉するツールとして有用であると考えられる。』
でまあ他の話もあるのですがその辺はパスしまして・・・・・・・・・・・
・政策割り当ての問題については「金利を使う事もあり得る」という見解ですな
まあここまでの説明の流れ(かなり端折って引用していますが)からしてそういう話になりますが、金融不均衡の問題に関してはマクプル的な判断だけでは限界があるという話になる訳でして・・・・・・・・
『過去を振り返ると、実体経済の循環すなわち需給ギャップの循環と、金融循環すなわち金融不均衡の生成と崩壊とは、しばしばシンクロナイズしてきた。これは、需給ギャップの変動と金融循環の変動との間に相乗作用が発生し、それぞれの変動幅の拡大につながったためである。このため、日本では、金融政策とマクロプルーデンス政策は、基本的には相互に補完的なものと位置付けられている。』
ということで・・・・・・・
『しかし、長い目でみれば金融政策とマクロプルーデンス政策は相互に補完的なものであるとしても、局面によっては、低インフレのもとで、資産価格が急上昇するといったことも生じ得る。このように、短期的に物価の安定と金融システムの安定の間にトレードオフが生じているような場合に、中央銀行は、どちらをより重視して行動すべきかということが議論とはなり得るように思う。』
という問題が発生した場合についてですが。
『その際の一つのアプローチは、最優先の目標である物価の安定が満たされている場合に限って、他の目標も追及するという辞書的序列に基づく政策フレームワークである。』
『例えば、先進国全般で物価が趨勢として低位安定するなか、物価の安定は既に達成されたものとして、金融システムの安定がより重要との見解が聞かれることもある。リーマンショック前後のような大規模な金融不均衡の生成と崩壊が概ね物価安定のもとで生じたことを考えるとこうした見解は一理あるだろう。』
ふむ。
『また、日本の場合は、デフレが長期に亘って続いてきたことから、当面は物価の安定が金融システムの安定に優先すべきという論者もいるかも知れない。その背景には、これまでのところ、低金利環境の下でも金融機関によるリスクテイクは限定的で、金融不均衡の蓄積がみられないこともあるだろう。』
ふむふむ。
『そうした考え方自体は否定しないが、私自身は、物価の安定には金融政策を割り当て、金融システムの安定にはマクロプルーデンス政策を割り当てるという二分法まで受け入れることには抵抗がある。』
ほほう。
『こうした二分法は、一見分かりやすいが、あらゆる状況において万能な訳ではないからである。それで対応できる場合は勿論あるが、金融循環が十分抑制されず、需給ギャップの変動との相乗作用に繋がっていくような状況においては、結局はマクロプルーデンス政策とともに、広範かつ強力な影響力を持つ金融政策も活用していかざるを得ない。』
キタコレ!!!
『日本のバブル崩壊後の対応のように、金融循環の変動が大きくなってから初めて金融政策を割り当てるとなると、その時点の政策対応は非常に困難なものとなる惧れがある。このように考えると、中央銀行が金融政策を遂行するうえでは、需給ギャップのみならず、金融循環の抑制にも一定の配慮をするというのが望ましい。』
現場職人および過去の金貸し手先経験とかアネクドートな話しかできませんが多分それが一番望ましいんじゃないかと思うので同意であります。
『こうした考え方のもとで、日本銀行の金融政策運営の枠組みは、物価安定のもとでの持続的成長を実現する観点から、経済・物価の現状と見通しに加え、金融面での不均衡を含めた様々なリスクも点検しながら運営している。短期的な物価の安定を優先し過ぎると、先行き金融システムは不安定化し、ひいては中長期的な物価の安定が損なわれる惧れがある。一方、金融システムの安定を優先し過ぎると、中央銀行の物価安定への取り組みに対する信認が低下してしまう。こうした状況に陥らないよう、中央銀行はバランスのとれた政策運営を行っていくということである。』
・・・・・・・・・・これはもしや現執行部に対する嫌味ですか(^^)。
とまあここまでがマクプル話で最後に金融政策の話があるので少しご紹介しておきます。
・金融政策運営に関しては物価安定目標の位置づけに関する説明を行う
『日本銀行は10月末の金融政策決定会合で「量的・質的金融緩和」の拡大を決定した。私自身はこの決定に反対票を投じたことから、この政策変更について話すには微妙な立場にあるが、決定されたことについて、この場を借りて改めて説明した上で、可能な範囲で私自身の考え方をお示ししたい。』
>この政策変更について話すには微妙な立場にあるが
・・・・・・・・・・(^^)
でまあ決定事項の話はさておきまして佐藤さんの見解ですが・・・・・・・
『以上申し述べた決定に対する私の見解については、議事要旨が公表されていない段階であるので、現時点では詳細は控えさせていただきたい。ただし、2%の「物価安定の目標」実現の意味と「安定的に持続するために必要な時点まで」の意味については、従来より私なりの考え方を示してきたので、この場をお借りして改めて話したい。』
ということで説明があるので正座して読みます。
『もとより「物価安定の目標」は消費者物価指数(総合)で定義されているが、私としては、消費者物価指数が前年比2%に達すれば、この政策はその使命を果たしたことになると単純に考えているわけではない。日本銀行が目指す「物価の安定」とは、本来、全般的な経済状況が実体経済・資産市場ともに良好に推移するなかで、賃金の改善とともにバランスよく物価が上がっていく姿である筈である。そのためには、諸外国対比低位に張り付いているとされる人々の中長期的な予想物価上昇率を米国並みの2%程度に引き上げ(リアンカリング)、人々の行動様式が2%程度の物価上昇を前提としたものとなることが重要である。』
ですなあ。
『幸い、人々の短期的な予想物価上昇率は、消費税率引き上げの影響を除くベースで消費者物価コアの前年比1%台前半での安定が続いたこともあり、やや長い目で見れば、全体として上昇しているとみられる。』
まあこの点についてはQQEの効果があったと思うのは多分衆目の一致する所だと思うのです。
『中長期的な予想物価上昇率のリアンカリングには、こうした短期的な予想物価上昇率の上昇により人々がバックワード・ルッキングに予想を改訂するプロセスのほか、賃金の改訂状況等から人々がフォワードルッキングに予想を改訂するプロセスも考えられる。その点、本年の賃金改訂結果は、デフレの下で基本給は上がらないものという人々の消極的な予想形成に風穴を開ける貴重な一歩であった。来年の賃金改定を巡り、政府のイニシアティブの下、新たな政労使協議が現在進行中だが、こうした動きが実際の賃金改定に繋がり、人々の予想形成に前向きに作用することで、中長期的な予想物価上昇率に好影響が及ぶことを期待している。』
まあ本当は政府がイニシアチブ持たなくても動く方向にならないとイカンのですけど最初のうちだから仕方ないという事ですが、そう考えますとそもそも論として日本の雇用慣行から考えると賃金改定って年度替わりの所で起きることを勘案すると、そもそも「2年」での達成というのはスタート時点が年度の頭であった事を考えるともともと無理があったような気がせんでもない(その間に賃金改定のタイミングが実質的に1回しかないから)。
『もとより量的・質的金融緩和の継続期間については、「安定的に持続するために必要な時点まで」というフォーキャスト・ターゲティングの考え方がベースにある。』
フォーキャストターゲットキタコレ!!
『「物価安定の目標」は、消費者物価(総合)の前年比上昇率で示しているが、この精神からすれば、上述のように人々の予想形成にフォーカスし、賃金を含む幅広い物価指標の先行きを丹念に点検していくことが今後も重要と考えている。また、人々の中長期的な予想物価上昇率のリアルタイムでの計測手法に決め手がない以上、政策の継続の必要性については、毎回の金融政策決定会合で政策委員会が改めて「判断」していくべきものと考えている。』
ということで、足元の物価動向に一々反応するのではなくて、本来物価安定目標は少なくとも中期的な物価見通しとインフレ予想を軸にして考えるべきであって、今般の追加緩和のように足元の物価動向および短期的な物価見通しに対応したような動きをするのは政策フレームに対する理解を混乱させる元になるし、その結果中長期的な物価予想の安定化にも却って弊害になる可能性もありますよね、という事を言いたいのだと思いますし、「判断」というカギカッコが入っている(英文テキストの方は普通にjudgeでしたが)というのは、足元の物価にフォーカスするのではなく、フォーキャストターゲットとしてのジャッジメンタルな部分をより強調すべきで、それは中長期的な期待インフレのアンカーという本来の物価安定目標が含む意味を人口に膾炙できるでしょ、ということではないかと(これまでの佐藤さんの説明を読んでいて勝手に)脳内で内容を補足いたしましたがどうでしょうかね。
ただまあ一方で、今回の緩和で黒田さんの説明を見ますと執行部は2%の物価ヒットの方に相当傾斜しているようでして、フォーキャストターゲット的な話よりもまずはとにかく実際の数値という感じなので、この辺りに関しては意見の対立が相当続きそうですし、今日のMPMの後で前回の議事要旨がでますので、議論内容を正座して拝見したいと思います。
2014/11/18
お題「GDP雑談/金曜のオペ雑談/その他少々」
MPMも始まるのに佐藤さんのマクプル講演ネタが後回しになっておりましてすいませんすいません。
○GDPキタコレ
まあ皆様ご案内の通り。というか最初に数字のヘッドラインを見てあまりの数字に乾いた笑いしか出ませんでしたわorzorzorz
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NF075C6K515801.html
7−9月GDPは2期連続マイナス成長、1.6%減−予想と逆行
更新日時: 2014/11/17 15:54 JST
『内閣官房参与の浜田宏一・米エール大名誉教授は同日午後、都内で英語で講演し、消費増税は日本経済にマイナスの影響をもたらし、アベノミクスと逆方向だったと述べた。さらに消費増税の影響から回復するにはもう1四半期以上が必要だとした上で、将来は引き上げられるべきだが、「今はベストではない」と述べた。』(上記URLより)
との事ですが、金融政策で物価目標達成すれば全てハッピーという話は何処へとゆー所でありまして、そんなに消費増税に破壊力があるんだったら別に異次元緩和とかしなくても消費税を下げればあっという間に経済が回復したんじゃないでしょうかって気がする訳で、マンデルフレミングで財政は効果が小さいから金融政策をもっとやれという話は何だったのかと小一時間。
つーか先生リフレで一人あたりの実質所得が減っても雇用が増えるから問題ないって話をしてまして、確かに労働市場はタイトはタイトだと思うので先生の仰せの通りの展開になった結果個人消費が中々伸びてない気がするんですがががががが。
まあ何ですな、円安に振ってコストプッシュで物価上昇させて、そらまあブラードの言う「望ましくない均衡」からは一旦脱却できたのかも知れませんが、為替頼みで物価を上げてアダプティブな期待インフレの上昇も(2%とはいかないけどそれなりに)起きましたけれども、肝心の生産や投資(金融資産への投資では無い投資な)がそれに伴わないと単なるコストプッシュで中期的に見たら却ってディスインフレ圧力を高めるという話で、やはり無理矢理物価だけを上げようというので2%とかまで持って行くとゆーのは無理あるんじゃないですかねえという気が益々してきましたな。
となりますと取り敢えず1%を目指してその後中長期的に2%に向けて頑張りましょうという話の方が分があったように思えますし、金融政策は(LLRとかの話は別として)基本的には経済のデコボコを均す事や時間稼ぎをする事は出来るけれども、それ以上の事を無理矢理進めるというのはやはり限界があるんじゃネーノという気がしますけどねえ。
#つーかこの状況で解散総選挙やってる場合なのか????
あまりん
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0T71A920141117
再送-UPDATE 1-最大の要因は在庫調整の進展、GDPマイナスで甘利担当相
2014年 11月 17日 14:20 JST
『そのうえで甘利担当相は「デフレマインドが払拭しきれないなかでの消費税引き上げは、想定よりインパクトが大きい」との認識を示し、安倍晋三首相が近く判断する10%への増税可否について、「消費増税で景気が失速し、デフレに戻ってはいけない。あす以降、(消費増税や景気対策、解散などの)何らかの判断が出ると思う」と語った。』(上記URLより)
デフレマインドが払拭云々なのかな〜とは疑問に思う訳で、そらまあアタクシなんぞは市井のただのオイチャンでしてアネクドータルな話しかしないから何とかスト様からは鼻で笑われると存じますが、デフレマインドがどうのこうのじゃなくて「実際に物価が上がっているのに気がついた」から消費が落ちてきたんじゃネーノと思う訳で、駆け込みその他の雰囲気もあって確かに今年のGW辺りくらいまではアタクシもこれは落ち込み大した事ないし回復行けるやんとアネクドート的には思っていたのですが、5月下旬あたりからヘロヘロになってきましたねというような動きで、W杯予選の辺りから更にアチャーという感じになっていたとゆーのはだいたい「いつも通りに消費していたら意外に金が無くなっているじゃん」という話になってアカンという事になったって流れのように思えます。
何か「デフレ」と「景気後退」が混同して使われてるんじゃネーノというのもありますが、とりあえず「まだデフレ脱却していない」的な話をしておけば便利という事なのでしょうねえとは思ったりしますけど、異次元緩和開始してから1年半も経過しているのにまだ「デフレ」という話になっているというのは何なんでしょうかねえ・・・・・・・・・・・
安倍ちゃん
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0T73TK20141117
UPDATE 1-来年消費税上げるべきか冷静に分析し、判断したい=安倍首相
2014年 11月 17日 19:06 JST
『安倍首相は「いい数字ではなかった」とし「長く続いたデフレから脱却するチャンスをやっとつかんだ。私たちはこのチャンスを手放すわけにはいかない」と述べ、「来年消費税を引き上げるべきか、冷静に分析し判断したい」と語った。』(上記URLより)
CPIが(間接税効果抜きで)+1%を延々とキープしているのにまだデフレから脱却していないとは何という事ぞと申しますか、確かりふれのセンセイによりますと適切な金融政策を実施すると数か月でデフレ脱却が可能という話でしたけどアレは一体全体何だったのかという気がしますがそれは兎も角。
『「経済の好循環が今まさに生まれようとしている」と成果を強調。「3本の矢の政策は着実に成果をあげている」と胸をはり、』(上記URLより)
三本目の矢はどちらに???という気がするのですが好循環が今まさに生まれようとしているのか・・・・・・
つーことで、何ちゅうか丁度良い言い訳の数字が出てこれなら景気条項を使って先送り(ただし1年半とかではなくてもうちょっと短い期間の方が良い気がするが)するのは別にまあ行けそうで、何も解散総選挙をせんでも良かろうという気がだいぶするんですけどねえ。ま、それよりも実は消費増税を予定通りに実施した方が駆け込み需要が発生して景気上向くんじゃないですか(冗談)。
○金曜のオペ雑談(レビュー)とか少々
金曜のオペが色々とアレでございましたなという話で皆様的に今更の話で恐縮ですが。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of141114.htm
国庫短期証券買入 12,500 2014年11月18日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 5,500 2014年11月18日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 5,500 2014年11月18日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,400 2014年11月18日
国債買入(残存期間25年超) 1,600 2014年11月18日
・短国買入がヘタクソすぎて泣ける件について
ということで先週金曜の短国買入は1.25兆円と思いっきり前回の2.75兆円から減額されてオファーされた訳ですが、先々週の金曜のオペのせいでまたまたマイナス金利とかになったじゃねーかと言って土曜日にこっそり更新して悪態を書いていましたが、先週の場合は「1.25兆円しかオファーが無い」→「そんなにマーケットに玉が無いのか!!」となってヒャッハー状態となって(後で引用しておきますが)オペ結果は平均2毛6糸強の足切り5毛1糸強とか盛大にマイナス買入ヒャッハーとなるわ、金曜も昨日もカレント3Mはマイナス5bpだの6bpだのというような水準で出合うわ(ベンダーもヘッドライン打ってますな)という状況に。
ちなみに今日は1年TBの入札がありますが、これぞ日銀お買い上げ向け銘柄となりますので、まあ投資家不在入札をやって投資家不在のまま日銀にお吸い上げになっていくような動きになるんでしょうなあとしか思えませんので予想をする気がそもそも起きませんわマッタクモウ。
でまあこのオペクオリティは何なんだという感じでして、そもそも前々回の短国買入で欲張って5000億円買入を増やすという動きをしなければ恐らく玉がそこそこ残ったでしょうし、そもそも短国の水準がそこまで突っ込むこともなく、1bp〜2bp辺りの目線が継続していた筈でして、目先の5000億円の残高積み上げを急いだ結果として短国市場の需給を思いっきり締めてしまって市場の流通玉は無くなるわオペトレードヒャッハーが復活できる(してるかどうか知らんが)ような相場付きにするわで、その結果翌週の買入を極端に減らさないと行けなくなったとか、お前は9月頭にやらかして10月頭にやらかした事をまたやるのかという事で、同じチョンボを3回もするとかお前の頭はキャベツか何かかと小一時間問い詰めたい訳でございます。
・超長期輪番がいきなり増額された件について
でまあ金曜は超長期輪番がいきなり増額されまして、超長期輪番の25年超が1200億円→1600億円にダマテンで拡大されまして30年ヒャッハーとなりやがりまして、あたくしがおサボリしている間に相場の位置って金曜→金曜で他の年限は結果としてそんなに動いていないのに30年の所だけはカレントで8毛5糸フラットニングしてやがりましてナンジャソラという結果(1日で20-30がカレントの単利比較で4毛フラットニングしてやがった)に。
この前こんなの出てましたよね。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141031e.pdf
当面の長期国債買入れの運営について
『日本銀行は、長期国債買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2014年11月4日より適用)。なお、来月以降は原則として、毎月、最終営業日に公表することとします(次回は11月28日に公表する予定)。』
『(注4)2014年11月4日以降の最初のオファー金額は、残存期間1年以下1,100億円、残存期間1年超3年以下5,500億円、残存期間3年超5年以下5,500億円、残存期間5年超10年以下4,000億円、残存期間10年超25年以下2,400億円、残存期間25年超1,200億円、変動利付債1,400億円、物価連動債200億円とする予定です。』
・・・・・・・・えーっとですね、まあ確かに増額そのものは運営で示しているレンジの範囲内ですから、別にまあ日銀からしたら不意打ちしている積りでもないでしょうし、その前の超長期輪番で手前の銘柄がバカスカ入った(相場付きの関係で致し方なし)結果として買入平均年限がいきなり7年を切りそうになったから超長期の後ろの輪番を拡大して帳尻をするというのは日銀のオペ部隊的には別に「ディレクティブの通りに実施しようとしたらこうなります」という話なのかも知れませんが、市場からしますと「毎月最終営業日に公表」として、脚注の4番にあるような具体的な数字を出されますと、普通に考えて「予定よりも年限とかがずれた場合には翌月の買入で帳尻を合わせる為に買入の割り振りが変わるでしょう」という風に考えますがなという所。
これまでは別に「毎月公表」とかしていなくて適宜変更みたいな感じだったのですが、わざわさ「月末に毎回公表します」と銘打っておきながら月の途中で変更とかされますと(途中で札割れでもするような異常事態が発生しているなら途中の変更も分かりますけど)どう見ても不意打ち以外の何物でも無い訳で、日銀による市場マニュピレーションと言われ兼ねない話ですがな。
つーかですね、こちらに関しても前回輪番の買入割り振りの見直しを行ったと思ったら3週間でまた見直しを実施とかしている前科がある訳でして、まーた同じチョンボをしているのかという話でございまして、もうアホかとしか申し上げようがないですが、日銀買入で散々需給を振らされている上にマイナス金利まで突っ込まれて投資ができない状況が頻発しております短期市場の気持ちが長期の皆様にもご理解頂けたかと存じます(−−;
まあ何ですな、恐らく短国の方に関しては「年末の目標に向けて出来るだけ早く数字を積み上げたい」というのがあって、長期の方に関しては「とりあえず7-10年とは言われたけれども出来ればあまり買入年限を長期化したくないので7年少々の所で止めておきたい」というのがあるんだなあというのがアタクシのような部外者からも見え見えの動きになっているのが泣ける訳でございます。
何ちゅうかオペによって起きる市場のフリクションとかをある程度軽減した方が実は買入がスムーズに行くし、市場に無駄なボラを与えない方が金利が安定しやすいので目先ビックリさせたり需給を締めたりして金利を下げるよりもより金利が安定して低下するというのが市場現場職人の考えなのですけれども、ど〜も日銀のオペ部隊の方、というよりはより上の方も含めてそういう認識無いんじゃネーノと思われる節がありまして、それならそれで結構なのですが、そうでしたら「市場機能」だの「市場との対話」だのというような綺麗事は言わない方が良いと思いますし、出口政策のオペレーションをスムーズに実施するとかいうような幻想も持たないでシッチャカメッチャカになることをご覚悟頂ければと思います。
これでもしギャグでは無く市場との対話とか考えているのでしたら、旧法時代から(ずっと短期にいる訳ではないですが)オペを色々眺めておりましたアタクシ的に申し上げますと、そらまあ今のオペが難易度一番高いのは高いですし、まああまりそういう事言いたくはないのですが、学習効果が全然ないオペの打ち方をしてくるとか(さすがに自粛しておく)としか申し上げようがないオペレーションの打ち方を何とかした方が良いんじゃないのとしか言いようがありませんわ。
○決定会合プレビュー雑談
まあ決定会合よりも今日の解散総選挙ですよねという所ですが、今回はまあさすがに政策自体は動きようがないのですが、面白ネタとしては二つほど。
一つ目が「そもそも消費再増税を前提にしていた経済物価見通しがどのように変更になるのか」というのが俄かに面白ネタとして浮上して参った訳でして、基本的には月報や声明文などで出てくるのはそんなに先の話が出てこないというのはあるのですが、理屈から言えば消費再増税の先送りによって経済物価見通しのパスが手前の駆け込みがなくなるけれども来年9月以降の悪化が無くなるいう事になるので、そうなると物価安定目標の達成時期の2015年度を中心とする期間というのはどうなるのでしょうなあというところで。まあ基本的には特段の変化なしという話だとは思いますけどね。
で二つ目は「ところで政府との紙との関係は?」という話でして、こちらの方が当然ながら話は重いのですけれども、消費増税先送りでしかも総選挙という事になりますと、当然ながら財政健全化の話に加えまして政府による成長力の強化という取り組みはどこへやらという話になる筈なのですけれども、そうなりますと日銀の緩和の馬鹿拡大だけやっていて良いのでしょうかという話になりませんかねと思われます。
とは申しましても、一応今回は「取りやめでは無く先送りなので財政健全化の動きには変わらない」という話になるので反故になったという事にはしない(というよりできない)とは思いますが、増税は先送りするわ経済対策ばらまきヒャッハーの話はホイホイ出てくるわという状況で日銀がドンドン緩和拡大というのは財政ファイナンスって何でしたっけねえというような素敵な展開となっておるような気がします。
どちらの件にしても目先の声明文や金融経済月報で何かが出るという話では無いのでしょうが、議事要旨を確認したいという所になると存じますし、今回のMPMの後に出る追加緩和の決定会合議事要旨が更に楽しみという所ですね!!!!
○業態別当座預金残高
毎度のこれ
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/
10月の月平を見ますと目立つのは「その他準備預金制度適用先」と「その他の当座預金取引先」が割といい感じで増えているなあという所ですが、他の業態も大体平常運転で増えている感じではありますが、まあここの所ずっとそうなのですが、「都市銀行」があまり伸びてくれないのは今後更に異次元緩和するのに超過準備本当に積み上がるのかいなという気はせんでもない。
というところで雑談ネタばかりですいません。
2014/11/17
お題「12日宮尾審議委員の長崎での金懇は説明はダメダメで会見は大炎上とな」
どもども、お久しぶりです。
20時7分更新ということはゼロ当確だったのですね
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141116/t10013245361000.html
沖縄県知事選 新人の翁長氏が当選確実
11月16日 20時07分
しかし一昨年も1週間更新しなかった時期に衆議院解散があった訳だがどういう巡り合わせだと(まあタイミングも同じで年内の投票に間に合うギリギリ^^)。
#モーサテのゲスト見てげんなりしたので早速別の局にスイッチだが、そもそも3%だかの間接税増税に耐えられないりふれ金融政策についての考察とかどうせ説明しないでしょうし質問もしないでしょうなあと勝手に妄想
なお、市場雑談系では金曜の短国買入と輪番が非常に味わいがあったようなのですが前後の詳しい状況を見ている訳ではない(おサボり中でしたんで)ので詳しくは明日にでもメモメモという事で。
○増税先送りで解散総選挙とな
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141116/k10013244221000.html
首相 消費税率の引き上げ先送りを示唆
11月16日 18時12分
まあ一連の流れに関してはおサボリしていた不肖このアタクシよりも皆様の方が詳しいと存じますので個人的備忘メモという感じではありますが、感想としてはまあ二つくらいっすかねえ。
まず一つ目は「いや〜黒田さん見事に食い逃げされてしまいましたね〜(・∀・)ニヤニヤ」ってなもんでして、消費税増税を確実なものにする為に追加緩和という説は一体全体何だったのかというお話ですが、そもそもそのような理由での追加緩和はせんじゃろと言ってただけにその部分だけは当たってちょっとホッとしましたというだいぶ不謹慎な個人的感想ががががが。
しかしまあそうなると「では今回は何の為に追加緩和をしたのですか」という話になる訳で、政策判断として明らかに「足もとの物価重視」を示してしまった上に、追加緩和の貴重なカードを無駄遣いにも程がある使い方をしており、しかも今回の消費税率引き上げ先送りってどこからどう見ても日銀の追加緩和を足蹴にした格好で、QQE導入時に稼いだ政治資源はいつのまにやら使い果たしてしまった挙句にもうカードが無い(いやまあ重篤な副作用を無視すれば芋の葉っぱでも便所紙でも対象にして買切オペやれば何ぼでも緩和はできますけれども、それは中央銀行の金融政策として実施して良いのかという話です罠)とかm9(^Д^)プギャーとしか申し上げようがない状態ですなあ。
でまあ二つ目は「先送りするだけで何で解散総選挙になるのよ」という話で、消費税増税そのものを行わないというのであればそらまあ全面的な話の組み替えになるから解散総選挙かも知らんが、先送りだったらそもそも今般の引き上げの付則によって示されている「必要な措置」とやらを取れば良くて、それってつまり法案内容の修正を議会で通すだけの話じゃんと存じますけど、それでわざわざ解散総選挙する(とは決まってませんが)のが意味判らん。結局増税するんだったら前回の選挙での公約と同じじゃねえかとしか申し上げようがないのだが・・・・・・・・・・・・・
今回は内閣改造をして地方創生だの女性活用だのアベノミクス第三の矢だのというのを更に推進するという話だったような気がするのですが、その手の話は華麗にスルーというのもワケワカメですけど、「単なる先送り」で選挙の理由になるかいなと思いますし、まあ先送りによって何らかの問題が生じた時に「国民の選択」を大義名分、というと格好いいですけれども、要するに言い訳の隠れ蓑にして「先送りの決断」に関して起きる結果に対する責任を自分たちではなくて選挙即ち国民にケツ持ちさせようとしてるんじゃないですかねえと誠に無責任なサムシングを感じる所存。
つーかですよ、そらまあ足元は消費税絡みの件がある分で嵩上げされていると思いますけど、それにしても株価は高値水準にあるっちゅうような状態でも予定通りの消費税増税が出来ないという事でごじゃりますと、そらもう一生消費税率上げられないんちゃいますかと思いますし、一方でやれ円安対策だ地方創生だとか言って出るモノは直ぐに出そうとする昨今のクオリティの中でプライマリーバランスとかどうするんでしょうかねえとしか申し上げようがございません。
でまあそういう文脈からすると「でも追加緩和が必要になっているのだからそらまあ消費増税も先送りした方が良いですよね」というツッコミが飛んでくるという素敵なツッコミ所を作っている日銀の追加金融緩和が黒田さんの意図がどこにあるのか知らんけど、増税露払いも兼ねている積りだったら馬鹿じゃネーノというか見事な道化師になってしまいましたねうははははははm9(^Д^)という所で。
でまあここで今日のGDPがつよかったら面白いのですがもう結論は出てるんでしょうかねえ・・・・・
○お休み中のネタシリーズでまずは宮尾審議委員ネタ:講演はオッペケペー
12日の長崎金懇ですがまずは講演から
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141112a1.pdf
・基本的に説明は展望レポートの通りだが内容はツッコミ所が多数
ということでまあ展望レポート通りの話が大体展開されていくので、宮尾さんにツッコミを入れているのか展望レポートにツッコミを入れているのか自分でもワカランチ会長ではありますが(^^)。現状の話はまあどうでも良いので先行き見通しから。
まずは『(経済の見通し)』から。
『まず、経済の見通しについては、国内需要が堅調さを維持する中で、輸出も緩やかな増加に向かっていくと見込まれ、家計部門、企業部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムは持続するものとみています。』
でまあこの辺りは展望レポートの通りなので単なるネチネチツッコミになりますが、従来示していた「前向きの循環メカニズム」というのは生産の拡大というのがこの中に入っていまして、最近はその話は華麗にスルーして労働需給がタイト化するから所得が伸びて支出が増えるというそれはサステイナブルなのかという話をしているのですが、そこの説明が見通しの2番目の所にありますので念の為鑑賞してみましょう。
『第2に、経済の供給サイドの改善を背景に、消費の基調的な底堅さも持続するとみています。
足元、耐久財消費などで反動減の影響がやや長引いている点は留意が必要ですが、過去約2
年を振り返ると、従来の景気回復要因である輸出や設備投資の顕著な増加を伴わずに、消費が伸びを高め、景気回復を牽引してきたことは、特筆に価する動きと言えます(図表6)。』
たぶんそれは特筆に価するのではなくてサステイナブルでは無いという事のように思えますが。
『この間、経済の実力である供給サイドの改善がさまざまな形で進んできており、企業・家計が前向きな取組みを進める下で、企業収益や雇用・所得、労働参加などで表される経済の所得形成力が全体として強まってきています(図表7〜9)。』
えーっとすいません展望レポートによりますと直近の潜在成長率が下方修正されていたと思いますが〜と思いつつ図表7〜9を見ると、図表7が法人企業統計の売上高経常利益率で、それは円安の部分があ〜りませんでしょうかとか、図表8が労働参加率で確かに足元で改善しているけど1997年以降からの落ちから見たら全然戻ってませんよねとか、図表9で、潜在成長率の日銀調査統計局の推計値を出しているのですが、直近の推計値って確か低下していると展望レポートで書いてあったのにそう見えないようなグラフの作りになっているのは「本年分が1〜6月の数値」だからなのか、グラフの表題にあるように「一人あたりの潜在成長率」という事で人口減少を捨象した数値にしているからなのかが良く判らんですが、何か誤魔化しの香りがプンプン致しますな。
『その基本的な傾向は今後も続くと見られるため、経済全体の恒常所得の見通しが改善し、あるいは将来への雇用不安や不確実性がさらに後退して、消費の回復基調は維持されるとみています。』
どう見てもサステイナブルじゃないでしょと思いますし、大体からして潜在成長率の推計値が下がっているのに何ゆう取るねんこのオッサン(という程のお歳ではないですが)という所で。
あと、順序が後先になってしまいましたが、メカニズムが持続する理由のうちの輸出の説明もまあアレ。
『こうしたもとで、輸出は、為替相場の動きも下支えとなり、緩やかな増加に向かっていくとみています。』
いままでその見通しは散々外れてますが。
『主要な輸出企業がグローバル・ベースでの生産・調達に向けた取組みを続けていることは、輸出の増加ペースを抑制する要因となります。他方で、高い競争力を維持する財の輸出(資本財や電子部品・デバイスなど)、ならびに訪日外国人数の増加に伴う旅行収支(サービス輸出)の改善は、さらに進んでいくと見ています(図表5)。2』
でまあ脚注2の所でさくらレポートの話があるのですが、では図表5を見てみますと「訪日外国人数と旅行収支」というのがございまして、そこの「旅行収支」の数値を見るとそらまあ足元盛大に増えているのですが、その額たるや受取2兆円とかそういうスケールの話で、実質GDPが500兆円(図表1)で民間消費支出が90兆円(図表6)だのとか言ってる中で殊更にこの話をクローズアップするのって何なんでしょうねという所ではありますな。
・原油価格の下落は経済にプラスとな
まあ何ですな、宮尾さんは良く言えば正直者という事なのでしょうが、何もわざわざこういう話をせんでもよかろうにとしか申し上げようがないのが、上記の続き(つまり今後の経済が順調に回復経路をたどるという根拠の説明部分)にあるのが追加緩和を決めた理由の原油の話とかもうアホかと馬鹿かと。
『第3に、本年夏場以降の原油価格下落については、実体経済には、企業収益、家計の実質所得の両面から、プラスの影響を及ぼすものと考えられます(図表11)。』
だったらそもそも「無理矢理でも短期間に物価を引き上げよう」とするのではなくて、「経済の成長に伴った物価上昇が徐々に起きる事によってインフレ期待が徐々に改善するのが良い」という白川ドクトリンの方が分があるちゅう話じゃないのよという所でしょと思いますが。つまり所得の拡大などが伴わない中で為替要因や原材料価格要因などで物価だけ上昇するのが上記説明の逆の現象でしょという事よ。
『足元までの原油価格の下落には、グローバル需要の鈍化という需要要因と、米国などの増産といった供給要因の両方が影響しているものと思われます。今後の原油価格動向を正確に見通すことは難しいですが、仮に足元の水準を出発点として、世界経済の成長ペースにあわせて緩やかに上昇していく姿を仮定すると、前年比でみた物価上昇率への下押し圧力は当面の間継続する一方で、企業収益や家計所得への下支えを通じたプラス効果は相応に顕現化してくると見込まれます。』
だったらそもそも物価目標を「2年」で達成する意味は何だったのかという話になると思いますけどね。つーか普通はこの話を殊更に持ち出すと色々な面で「2年で2%」政策との整合性という意味で説明がややこしくなるからこの話しないのが常識的な(?)対応だと思うのだが何でこれを入れたんでしょうねセンスないですね宮尾さん。
・物価の見通しの説明もまあ展望レポート通りだがワロタ
これ後で質疑で思いっきり出てきますけどね。
『第1に、マクロ的な需給バランスについてですが、日本銀行による需給ギャップ推計値をみると、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、足元は過去平均並みのゼロ近傍の水準にあります(図表13)。』
この話は展望レポートで出ているのと同じで、足元「ゼロ近傍」とはモノは言い様で、普通は「マイナスにまた戻った」と言わんかね。
『第2に、中長期的な予想物価上昇率はやや長い目でみれば全体として上昇しているとみられ、今般拡大した「量的・質的金融緩和」を進めるもとで、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられます(図表14)。』
ちなみに図表14に当然ながら物価連動国債のBEIなどが全く記載されていないのですが、そもそも「中長期的な予想物価上昇率が上昇している」のであれば何で追加緩和したんでちゅかねえ。
でまあ輸入物価で目先下押しという話はさておきまして結論も展望レポート通り。
『以上の点を総合すると、消費者物価(除く生鮮食品、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の上昇率は、2015
年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いとみられます。』
はあそうですか。
『私としては、主として原油価格下落に伴う下押しが上昇圧力を抑制することにより、2015
年の夏場までは現状程度の前年比1%前後で推移すると見込んでいます。その後は、前年比でみた原油価格下落の影響が剥落するとともに、需給ギャップのプラス幅が一段と拡大することから、2015
年度の後半にかけて伸び率を高め、2015 年度後半頃には物価安定目標である2%程度に達する可能性が高いと予想しています(図表16)。』
なお図表16を見ると何ちゅうかクソワロタという感じの鉛筆舐め舐め感が漂っております。
リスクバランスに関しては・・・・・・・・
『これらのリスクについて、私自身は、経済見通し、物価見通しともに、概ね上下にバランスしているとみています。』
ということで、更に追加緩和の意味が判らなくなりますが、その後に金融政策の説明がありますよん。
・まずは能書きを鑑賞
まあ概ね執行部説明の通りになりますが。
『強力な金融緩和を導入して1 年半余りが経過しましたが、この間の実体経済の回復を金融面から強力にサポートしてきたと見ています。その結果、物価面では「量的・質的金融緩和」を導入する直前の昨年3
月の時点でマイナス0.5%であった消費者物価の前年比が、現在はプラス1%台前半まで改善しました。』
もう1年半も実施したんだからマネタリーベースの定量的な効果はレビューできますよね。
『もっとも、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として作用しており、直近の9
月には前年比+1.0%まで伸び率を縮小しました。需要の一時的な弱さはすでに和らぎ始めているほか、原油価格下落の影響は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用するものです。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがあります。』
さっき予想物価上昇率は全体として上昇と言ってませんでしたっけ???
『わが国は長年にわたってデフレが続いてきており、米国のように予想物価上昇率がすでに2%程度にアンカーされている国とは異なり、国民の物価感そのものを2%程度に引き上げる途上にあります。』
ほうほうそれでそれで???
『そのプロセスにおいて、仮に短期的であっても、実際の物価上昇率の伸び悩みが続けば、これまでの予想物価上昇率の好転のモメンタムを弱めるリスクがあると考えました。』
よくよく考えたら凄まじい説明でして、それはつまり@足元の物価動向にモロに対応した金融政策を実施ということですが、金融政策のタイムラグを考えたらやり過ぎのリスクは無いのか、Aそれに加えてマインド転換の為に強引に物価の数値を上げたいという事だが、生産や所得の持続的拡大を伴わないで無理矢理物価を上げると却って将来のディスインフレ圧力になるだけなんじゃないの、オーバーシュートしないの?というようなツッコミをしたくなりますな。
『日本では、過去のインフレ率の実績が人々のインフレ予想の形成に影響を与えるという「適応的な」予想形成メカニズムが相応に強いとみられる点も留意が必要です。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、このタイミングで「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断しました。』
でまあお伺いしたいのは「じゃあ今回の追加緩和によってやらない場合と比較して何がどう変わるのでしょうか」という話でして、それ即ち政策の定量的な部分のアセスメントとも絡む話ですよね(ニヤニヤ)という所でもあるのですが、それらしいツッコミも会見であったりします。
・政策の効果とコストの説明が中々香ばしい件について
『今回の「量的・質的金融緩和」の拡大に際して、私自身、期待される効果と懸念されるコストやリスクをどう考えたか、述べたいと思います。』
ということで見苦しい説明の上塗りコーナーが実に心温まる内容なので鑑賞するのだ。
『まず効果についてですが、昨年4 月からの「量的・質的金融緩和」は、イールドカーブ全体にさらに低下圧力をかけ、また資産価格にも強力に働きかけることで、金融環境は一段と緩和的となり、企業収益や雇用、賃金の改善を強力に後押ししてきたとみています。企業・家計の所得形成力が高まり、需要の持続的な改善が続くとの見通しが広がる中で、物価上昇圧力も高まってきました。6』
でまあこの脚注6というのが・・・・・・・
『6 これまでの物価上昇圧力の高まりや「量的・質的金融緩和」の効果に関するより詳しい説明については、「日本経済と金融政策」(2014
年10 月18 日、日本金融学会2014 年度秋季大会における特別講演)をご参照ください。』
ということで、ついこの前実施した追加緩和のつの字も無い講演を「ご参照ください」とか書いてしまうというのはわざわざツッコミ所をご提供するという意味で(次にネタにする会見で当然のごとく盛大に炎上しております)もしかして宮尾さんというのは自ら炎上する系のご趣味でもお持ちなのではないかと疑ってしまうような所です。
『所得から支出への景気の前向きな循環メカニズムが今後も維持されるというのがメインシナリオであり、企業の収益力、家計の労働供給などの面で、経済の実力である供給サイドの改善も着実に進むと見込まれます。その中での今回の追加緩和措置は、これまで以上にしっかりとした効果を発揮していくことが期待できます。』
所得から支出だけでサステイナブルなのかとか潜在成長率が下がっている件はスルーですかそうですか。
『すなわち、企業の収益力が高まるなかで、極めて緩和的な金融環境を生かして、前向きな取組みやリスクテイクが促され、景気浮揚効果はより高まります。』
は????という感じですが。
『大規模な国債買入れにより長めの金利に低下圧力がかかり、資産価格にも上昇圧力がかかりますが、企業収益などのファンダメンタルズが同時に改善していれば、資産価格の上昇はより持続可能となり、正当化されやすくなります。』
そういうのを普通「ユーフォリア論」って言いますけどね。
『経済の実力の改善とあいまって、継続的な支出の増加が促されることで、より持続的な政策効果が期待されるのです(前掲図表12)。』
まあここまでは追加緩和あんまり関係ないですよね。さらに続く。
『一方で、今回の措置に伴う潜在的なコストやリスクについては、どのように考えられるでしょうか。』
ほうほう。
『国債買入などの非伝統的な緩和措置の拡大が「一時的な資産価格バブルをもたらすだけで、経済をむしろ不安定化する」とのリスクについては、供給サイドの成長力や競争力の改善が伴っているか、不採算事業の見直しなど先送りされてきた構造転換が進むかどうかがカギであると見ています。』
で??
『この点は、私自身は、再三強調しているように、この間日本経済の実力を高めるような前向きな取組みは着実に進展してきており、今後もその傾向が続くと見ていることから、このリスクは抑制されていると判断しています。』
ナメトンノカという所で、だったら展望レポートで「足元の潜在成長率がやや下方修正されている」件との整合性はどうなっているんだと小一時間問い詰めたい、ってこっちもさっきから同じ事言ってるけど。
『いま述べたように、ファンダメンタルズの改善が伴うことで資産価格上昇がより持続的となり、正当化されやすくなることで、金融面の不均衡の蓄積という潜在的な副作用は抑制されやすくなると考えます。』
そう言ってバブルが正当化されるんですけどねえ・・・・・・・・・・・・
なおその後のコストの説明は最早ワケがワカランので引用もしません。
・出口の見通しはいいから今回の措置でどう変わったかの説明を早よ!!
『(3)「出口」の見通し』という所ですが。
『今回の「量的・質的金融緩和」の拡大によって、緩和策からの「出口」を見通すことがより難しくなったという指摘があります。しかし、この点について、私は必ずしもそのようには考えていません。』
????????????????
『今回の拡大措置のもたらす重要なポイントは、従前の緩和策を遂行している場合に比べて、2%目標に到達する時期がより早まり、その実現可能性も増すと見られる点です。』
はあああ??????????
えーっとですね、潜在成長率が下がっていると見られる中で何で急いがないといけないのですかねえというのはさて置くとしても、よーし時期が早まるというのだったら追加緩和しなかった場合とした場合の差分を計算できるんですなという事で、その数値を具体的に示せやゴルァと思いますし、大体からしてその数値が出せないのだったら「やり過ぎてインフレが望ましい水準以上に上昇するリスク」の方への対処ができんとちゃいますかと思いますがどうでしょうかねえ。
『今回の措置の結果、私自身は、企業収益や雇用・賃金の改善を伴うバランスの取れた形での2%目標の実現は、2015
年度後半の時期に十分可能であるとみています。実際、来年夏場以降の物価上昇率は、原油価格下落の前年の裏がはける形で、上昇ペースが速まっていくとみています(前掲図表16)。』
というのはさっきもあった通りです。
でまあその後に急に出口の話があるのですが・・・・・・・・・・・・
『そうなれば、2015 年度下期の時点で、先行きの2%目標の安定的な達成が相応の確からしさを持って見通せるようになります。したがって、今回の措置が実行されることで、私としては、具体的な出口戦略の議論―たとえば、米国の中央銀行にあたるFRBがこの間歩んできたように、どういうペースで資産買入れのアクセルを緩めるのか、どういうステップで金利政策に移行していくかといった検討―も、2%目標の実現が可能とみている2015
年度後半の時期には開始できる可能性が高いと考えているのです。』
ということで、結局の所「今回の追加緩和は兎に角効くんだから2%物価目標達成時期が早まるんですよだから出口を見通すのが難しくなったという指摘はおかしい」というだけの話をしているにすぎませんで、そもそも論としてこれまでの緩和および追加緩和に関する定量的な政策効果や政策波及メカニズムの説明も碌すっぽ無い(概念的な話しか1年半たってもされていません罠)という中で「私が効くというから効くのであって、政策が効果を出したら出口の話になるでしょそれは」という話をするだけというのは最早説明にも何にもなっていないという大変に見苦しい話。
じゃあこれだけ積み上げてしまった国債買入やETF買入などをどう軟着陸させる&残高落としていくのかという話があるかと思いますとまあそんな話は1ミリもないですし、大体からしてこのオッサンもう直ぐ任期切れですから具体的な話をする気もないでしょうし、そもそもその手の金融市場に関する知識がまるでなさそうなのは見え見えなのでもうねという所です。
・最後に執行部に代わりまして増税のお願いですかそうですか
最後に『(4)政府と日銀の「共同声明」の意義』というのがある。
『ここで改めて、昨年1 月に公表した、政府との「共同声明」の意義を確認しておきたいと思います。その骨子を改めて示すと、』
でまあそこの紙の内容は割愛しまして、
『こういった日本銀行と政府双方の取組みが、共同声明には明記されています。日本銀行による今回の追加緩和措置は、この共同声明に沿って、デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的成長の実現を目指して、一段と強い決意のもとで、決定されたものです。政府の取組みについても、この共同声明に沿って、強力かつ着実な進展が図られることを、改めて強く期待します。』
つまり追加緩和の食い逃げはしないでね(はあと)という所ですが空しい結果になりそうなのはご案内の通り。
○続きまして宮尾さん会見ネタだがどう見ても大炎上です本当にありがとうございました
これはクソワロタとしか申し上げようがない。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1411b.pdf
最初から3ページまでは普通の会話なのですが、4ページ目の質疑から大変に面白い事になっております。
・何で追加緩和に賛成したのかという質問
『(問) 2 つございます。10 月31 日の追加緩和ですけれども、何が最大の理由で賛成されたのか、簡単にお願いします。5
対4 ということは薄氷の決定だったと思います。今日の懇談会をみても、やはり基調として経済はそんなに弱くない、というか、やはりタイトな労働市場をベースにそれなりに物価がアンカーされているようにもお見受けするのですが、もしギリギリの決断であったとすれば、どこを重視して賛成されたのかを教えて下さい。(以下割愛)』
ですなあ。なお2番目の質問はあまり面白くないので割愛。
『(答) まず、第1 点目ですが、今回、私自身、追加緩和が適切であると判断したわけですが、何が最大の理由か、どこを重視したのかというご質問でした。まず、懇談会でも申し上げていますが、これまでの「量的・質的金融緩和」の効果がしっかりあった、具体的には、これまでの「量的・質的金融緩和」は実体経済の回復を金融面から強力にサポートしてきたことで、企業収益や雇用・賃金の回復・改善をしっかりと後押ししてきたと私自身思っており、それに伴って、物価上昇圧力も高めてきたと考えております。同時に、中長期の予想インフレ率も全体としては、この間上昇してきており、デフレマインドの転換も着実に進んできたと考えています。』
で何で追加緩和するんでちゅかねえ〜。
『そうした中で、このひと月、ふた月ですが、原油価格の下落がより顕著になってきた影響、あるいは増税後の需要面の弱めの動き──いずれも一時的な要因とみられるわけですけれども──、それらは物価の下押し要因として作用してきており、これまで順調に進んできたデフレマインドの転換が後戻りするリスクがあると考えました。』
( ゚д゚)ポカーン
『実際、経済・物価見通しを10 月31 日の会合で点検したわけですが、私自身の見通しとしては、物価の見通しが下振れし、リスクバランスも経済・物価とも下方にやや厚いという判断になりました。』
さっき講演で「リスクはバランス」と言ったのは追加緩和実施後にリスクがバランスという話みたいですけどナンジャソラという感じではありますな。
『こうした状況のもとで、やはりデフレマインドの転換が後戻りするリスクを未然に防ぐ、好転している期待形成のモメンタムを維持するということは極めて重要であると考えましたし、また、まだ崩れていない景気の前向きな循環メカニズムが維持される中で現在の回復をさらに強力に後押しすることで、より大きなまた持続的な政策効果も期待できると考え、そういった予想される政策のベネフィットと懸念されるコストやリスクを慎重に比較考量した結果、追加緩和が適切であると判断した次第です。(以下割愛)』
・そんな説明では許してもらえないようで・・・・・・・・・・
『(問) 前回決定会合の2 週間前の講演では、かなり物価について強気な見通しを示されております。いくつか挙げますけれども、「消費需要を中心に景気回復が持続してきた背景には、いくつかの側面で、経済の実力である供給サイドの改善が進んできたことが考えられる」、「経済の供給サイドの改善によって物価上昇圧力が高まる可能性がある」、「供給サイドの改善というのは人々の中長期的なインフレ予想を高めるというメカニズムも考えられる。実際、中長期の予想インフレ率は徐々に高まっている」、「このようなメカニズムが作用する中で消費者物価インフレ率への上昇圧力は高まっている」、最後にしますけれども、「一段と緩和的な金融環境に後押しされて、供給サイドの改善と景気の持続的な回復の基調、そして予想インフレ率の緩やかな上昇基調は今後も維持されるとみている。雇用や賃金、企業収益の改善などを伴いながら、バランスの取れた形で、2%目標へ向けた道筋を歩んでいくだろう」。追加緩和に踏み切った10月31
日の決定会合の2 週間前にこれほど強気な見通しを示しております。』
無慈悲な砲撃クソワロタ。
『今日の懇談会の中では、原油安や一時的な需要の弱さで、短期的とはいっても現在の物価下押し圧力が残存する場合には、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがあると、180
度違うことをおっしゃっているわけです。』
(;∀;)イイハナシダナー
『因みに、10 月31 日の原油相場、そして、その2 週間前に講演が行われた時点での原油相場──日本に中東から送られてくる原油の指標となるドバイ原油──は、大体80〜85
ドル/バレルで同じ水準で推移しています。原油価格自体が変わらないのに、2
週間でなぜこれほど見方が変わるのかと、この2 つの講演を見比べてみれば、今回の追加緩和でなぜこのように急に見方が変わったのか、人々は理解できないのではないかと思います。』
素晴らしい質問過ぎて腹筋崩壊不可避(^^)。
『つまり、宮尾先生ご自身、どこまで主体的にこの決定に賛成されたのか、執行部の提案に対して唯々諾々と従ったのではないかという印象を受けるのではないかと思います。この2
週間で何が急にそれほど見通しが変わったのか、見方が変わったのか教えて下さい。』
これは無慈悲な砲撃にも程があるとしか申し上げようがない。
うっかり質問の鑑賞にふけってしまいましたがお答えは・・・・・・・・
『(答) 先程、なぜ追加緩和が適切であると判断したのかという理由を申し上げましたが、やはり一時的とはいえ、原油価格の下落の影響というのがあります。』
しかし原油価格下落が中長期的に見て景気に良い話なのに追加緩和ねえ・・・・・・
『先程、ドバイ原油の価格の言及がありましたけれども、10 月初めがおそらく90
ドルくらい、元々7 月頃が100 ドル前後であったと思いますけれども、10月初めで10%くらい下がった後、10
月半ばに85 ドル、10 月末には80 ドルと10 月ひと月でもさらに10%下がるということで、私が10
月初めの段階で思っていた以上に原油価格の下落のスピードが早かったというのが1
つあります。』
はあそうですかという所ですが直後に無慈悲な砲撃が追加されます。。
『それに加えて増税後の需要面の弱めの動きも引き続き懸念材料です。この反動減の影響が長期化しないかどうかに一定の留意が必要であると10
月半ばの講演で指摘していたかと思いますけれども、そのリスクは引き続き留意しなければいけない。』
ちなみに前回の講演テキストで「原油」でキーワード検索を掛けても何もかかりませんけどね!!!!
『そういった状況も踏まえて、元々これまでの「量的・質的金融緩和」の効果というのは、実体経済ならびに物価上昇圧力を高めるという面でしっかりと効果を果たしてきていますし、今後も経済の実力、供給面の改善が着実に進むというのが、私自身の経済・物価見通しの重要な前提、背景として考えていますので、そういった意味で景気の前向きな循環メカニズムは崩れていない。ただし、足許、急激に進んだ原油価格の下落の影響というものが実際に物価の下押し要因となり、10
月31 日に、経済・物価見通しを入念に点検した結果、私自身の物価見通しが下振れたということで、これは「物価の安定目標」である2%を達成する時期が後ずれするリスク、可能性が高まってきたと考えました。』
全然説明になってない・・・・・・・・・・・
『良いメカニズムは維持されているけれども、せっかくここまで順調にデフレマインドの転換が進んできた中で、それを後戻りさせるというリスクは未然に防ぐ必要があると判断して、追加緩和を行うことが適切であり、当然、コスト、リスク等々も慎重に比較考量した結果、より大きな政策効果も期待されると判断して、追加緩和が適切であると考えた次第です。』
ということですが無慈悲砲撃は更に続く。
・無慈悲砲撃の追い打ちキタコレ
『(問) 繰り返しになりますけれども、10 月18 日の講演をされた時点で10 月16
日のドバイ原油は81.79 ドル/バレルでした。この81.79 ドル/バレルは10 月31
日の会合が行われた当日の83.24 ドル/バレルより安かったのです。つまり、講演を行った時点では原油については一言も触れられていません。講演のときには、全く感じていなかったリスクを2
週間後には突然感じたということでしょうか。』
実に無慈悲な追い打ちですな。
『原油自体は講演されていた時点にそこまで下がっていたわけです。だけど、そのときは全く心配なかったのが、2
週間後、水準は少し上がっているのだけども、やはり大きいとお感じなったということでしょうか。』
どうみても「執行部の言いなりになったんだろオラオラオラ」という質問ですが・・・・・・・・
『(答) 政策判断は、毎回の決定会合当日まで、それまでに利用可能な情報をできるだけ丹念に精査して、先々の経済・物価見通しと照らし合わせて、どういった政策が適切かということをしっかりと検討し、政策の必要性について考えます。そういう姿勢は、これまでもずっとそうでしたし、10
月31 日の決定会合の時もそうでした。とりわけ、10 月31 日の決定会合は、経済・物価見通しの新しい見通しを公表する、自分自身も入念に点検するという機会でしたので、しっかりと当日までの動きを反映して、適切に判断を行ったということです。』
どう見ても火の海で焼け野原です本当にありがとうございました。つーかこれだけボコボコにされて最早言い訳にすらなっていない説明しか出来ないとか本当にお前は学者なのかと小一時間問い詰めたい。
・出口がどうのこうのに関する質疑
『(問) 2 点お伺いします。1 つは出口に関してですが、これまで10 月31 日の追加緩和の時も含めて、総裁も出口についての議論は時期尚早であるという発言を繰り返されていたと思いますが、今日の懇談会の中で、見通しで2015
年度後半には開始できる可能性が高いと言及されています。この言及の意図と、どういった方法が考えられるのかについてお聞きしたい。(後半割愛)』
まあ講演の文脈を見ますと何かわざわざ出口がどうのこうのという話をせんでも良かったように見えますからこういう質問も来るわなあと思います。
『(答) まず、第1 点目は、出口に関してですが、出口の具体的な議論を、早い段階から、たとえば今の段階で、具体的なイメージを持ってお話しするということは適切ではないと、私自身、そう思っております。具体的な出口のあり方につきましては、当然、出口を議論するときの経済・物価情勢や市場の状況などによって変わり得るわけですので、早い段階から具体的なイメージをもってお話しすることは却って混乱を招く恐れがあるので、それは適切ではないと考えております。』
・・・・・・えーっとですね、これ毎度毎度しょうもない話になっているので非常に遺憾なのですが、実際問題として重要なのは「出口で何をするか」という話では無くて「出口を判断するのはどのような基準で行うのか」という話であって、それは2%の物価安定目標の位置づけに関わる話なので、そっちの話をして頂きたい(予想インフレが2%でアンカーとかフィリップスカーブのY切片が2%だとかそういう概念的な話はもうさんざん聞いているのでそうではなくて具体的な話)と思うのだが。
『本日の懇談会では、2%の物価安定目標に到達する時期が2015 年度を中心とする時期であり、私自身は、その2%目標を達成し、先行き安定的に2%目標を実現する展望を十分持つことができる状況になるのが2015
年度後半というのが一番蓋然性の高いシナリオだと考えており、そういった状況になれば、出口の具体的な話というのが当然できる状況になるということを申し上げました。』
だったら別に何時に出口とかそういう話しなくて良かろうに・・・・・・・・
『出口で具体的に用いる様々な調節手段について、今ここでこれを使うということを申し上げるつもりは、もちろんありません。具体的な調節手段については、様々な各種の市場調節手段を日本銀行は有しています。たとえば、保有国債の償還を行うとか、各種の資金吸収オペレーション、あるいは付利金利の引き上げ等です。具体的な出口で用いる市場調節手段を有しておりますので、出口を具体的に検討することになったときに、しっかりと議論すべきことであると考えています。(以下割愛)』
保有国債の償還を「行う」というのは何か主体的にやるような表現なのであまり適切ではないと思うのですが、会見要旨作る事務方がその辺分かっていない訳は無いと思うので、まあ本人がそういう発言をしたんだろうなあと思うのですが、「保有国債の償還を行う」という説明が意味不明にも程がある訳で(財務省に買入消却をさせるのは国債発行計画との絡みがあるので日銀だけの考えでは出来ないし、単なる償還だったら「償還を行う」は表現として変)、4年半審議委員やっていてこの表現を使うという時点でこのオッサン今まで何をしてたんだと小一時間。
・物価目標達成時期に関して
最後の質疑も中々素敵。
『(問) 懇談会の内容についてお伺いしたいのですが、10 月31 日の追加緩和の前ですと、2015
年度を中心とするということを言われていたかと思います。10月31 日の追加緩和によって、今日の懇談会の中で2%目標に達成する時期がより早まるということも言われていますが、一方で宮尾委員は、その2%の実現を2015
年度後半の時期にと言われていて、そのタイミングのところがよく分かりません。』
(;∀;)イイシテキダナー
『宮尾委員が言われているのは、追加緩和をして早まって、2015 年度の後半ということです。最初には、3
年間の見通し期間の中頃──2015 年度──ということを言われていたと思うのですけれど、ここで2015
年度の後半ということになると、時期が遅れているような感じがします。(後半割愛)』
さてそのお答えは。
『(答) まず、2%目標が達成される可能性が最も高いタイミングに関してですが、懇談会で達成する時期がより早まった、あるいはより確実なものになったと申し上げているのは、追加緩和を決定する前の経済・物価見通しと比べてより早まった、あるいはより確実なものになったという趣旨です。』
ワロタ。
『従って、追加緩和を決定する前の経済・物価見通し、私自身の経済・物価見通しはそれ以前の、7
月の中間評価見通しと比べて、下振れたあるいはその達成時期が後ずれする可能性が高いと判断して、その後、追加緩和が決定され、それによって、後ずれした達成時期がまた前に戻ってきてより早まったという
主旨です。(後半割愛)』
何ちゅうかもう説明がグダグダ過ぎで、要するに本来の意味での見通しとかと違う所で追加緩和をしたんですねえとかまあそういう話なんでしょうな。ナムナム。
2014/11/08
お題「休日特別更新編:短国金利がまたマイナスとな!というメモ」
諸般の事情で来週はお休みです(キリッ)とか申し上げたのですが土曜日の夜にこっそりメモだけ置いておきます。なお来週は本当にお休みですのでよろしくです。
○短国金利がまたマイナスになりやがったのでメモを置いておく
・短国買入の結果またまたカレント短国がマイナス金利に逆戻り
水曜の6Mに続き木曜の3Mもプラス金利とはなりましたが、そうは言っても木曜は入札後に結局強含みになって平均落札よりは堅調となるの巻となっていた辺り、投資家の買い意欲は強いですなあという短国市場だったのですが金曜の短国買入が・・・・・
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of141107.htm
国庫短期証券買入 27,500 2014年11月11日
(短国買入分のみ)
・・・・・・・ということで、何でまた前回並み(2.25兆円)にしないで増やすのしかも刻んで来るのかねとは思ったものの、オペ部隊の方はヒアリングちゃんとやっている筈なのでまあ札はあるんでしょうかねえとか思っていたら前場中に妙に強めの出合いとかがあってただまあそれは買入強く入れたいんでしょうかねえとか思っていた訳ですよ・・・・・・・
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba141107.htm
国庫短期証券買入 33,055 27,502 -0.008 -0.005 87.8
(短国買入分のみ)
・・・・・・・・・・・・orzorzorz
8糸強まで入りやがるかというのもさることながら、市場の腰が砕けたのは「応札3.3兆円」の方でして、これって10月の頭と全く同じ事をやっている訳で、学習効果というものは存在しないのかともう小一時間問い詰めたい訳ですよマッタクモウ。
でまあ日経とかにまで書かれていましたがロイターでもこういう風に報道されておりましてね。
http://jp.reuters.com/article/jptokyomarket/idJPL4N0SX40120141107
〔金利マーケットアイ〕翌日物0.05%後半が中心、レポGCレートは低下
2014年 11月 7日 15:34 JST
『日銀が実施した国庫短期証券の買い入れは、強めになった。この結果を受けて、国庫短期証券は業者間取引で強含みで推移した。新発3カ月物は再びマイナス金利となった。』(上記URLより)
・まるで学習していない・・・・・・・・・
10月の頭というのは9月にオペ要因に加えて期末要因で短国特需絶賛大発生となって、玉が盛大に枯渇したあとでちょっと需給が緩み出すんじゃないですかねえとやっている所に、過去最大の3.5兆円の短国買入をオファーしておい何だよそんなに玉があるのかと思ったら応札が3.9兆円しか無くて9糸強まで流れた短国買入でしたが、この結果日銀が市場の金利がマイナスになろうとも知らんがなという勢いで短国買入を進めることを宣言したと受け止められ(まあ実際にその後のオペの打ち方がそうでしたからねえ)、その2週間後には短国入札の平均落札金利がマイナスになってしまい、どうみてもオペ狙いのトレードです本当にありがとうございましたというような国債市場の価格形成を日銀が自ら破壊しに行くという前代未聞の動きが起きるという事案が発生したのはご案内の通り。
でまあ他の理由もあって先般の追加緩和実施のついでに資産買入の短期と長期の割り振りをいじって短期オペに無用な負担を掛けないようにという配慮も入った資産買入方式の見直しが行われた訳でございますが、それを受けまして日銀オペ狙いマイナスヒャッハーというのもさすがに見直しという感じになって5日、6日と短国の入札金利が徐々に上昇してまあ1bp台後半ですから相変わらず低いには低いのですが、それでも0bp台前半とかいうような状態ではなくなるという感じで推移し始めた所に、またまた市場の流動玉を全部買いに行くようなオペの入れ方をするとか、10月の頭に行ったオペのやり方がトンチキだった結果市場が盛大に壊れたという流れを全く認識していないとしか思えない次第で、もう何ちゅうか学習効果が無いんだか市場の機微というか何というかを全く分かっていないというか分かろうとしないというかな話で、その直前に出ていた「市場との対話を重視する為にサーベイを実施」とかいうアナウンスが悪い冗談にしか見えなくなるんですけどねえという所です。
・舌きり雀のゴウツクバーサンかと小一時間
えーっとですね、特殊要因(9月なら期末、10月ならオペ狙いヒャッハートレードとそれを何も考えずに買ってしまう日銀のプレイ)が剥落してちょっと需給が緩んできたら、そこはしばらく我慢して「市場の目線を変える」のがポイントでして、一旦ゼロだマイナスだという目線が定着した場合にはその目線が変わる為には色々なポジションがこなれる必要があると思うのですが、ちょっと需給が緩んだ所で「よーし需給が緩んだから早速多く買っちゃうぞー」とやってしまうと折角変わりかけた市場の目線がまたゼロだマイナスだという話になってしまい、そうなるとまたまた日銀の買入が市場を壊して価格形成ガーという話になる訳でして、金曜日だって5000億円余計に買おうとした結果またまた市場の目線が変わってしまったという話な訳ですよ。
つまり、目先ちょっと多く買おうとして市場の目線をまたまたゼロだマイナスだに戻している訳ですが、こうなるとまたぞろ短国買入をやりにくくなる(いやまあ市場を完全にぶっ壊す積りで買うのなら何ぼでも買えますが、そもそも今回の買入割り振りの変更の中には短国市場へのストレスへの配慮というのもあった筈なのでその趣旨からしたら変な話ですよね)という話で、舌きり雀に出てくる欲張りばーさんが大きなつづらを持って帰ってあばばばばーみたいな風情を醸し出しているのが実にこう侘び寂びの世界というものであります。
いやね、大きなつづらを持って帰って中から毒蛇だのがゾロゾロでてくるのを一種のプレイとしてお楽しみになりたいというようなご趣味でもあれば欲張りメソッドが絶賛発動するのも有りなのかもしれませんけど、わざわざ目先の買入5000億円ぽっちを欲張って将来の買入を打ちにくくするとか自分で自分の首を締めに行くこたあねえと思うのですけどねえマッタクモウ。
まあそれでも10月の時点では延々と短国買入残高をこれからも積まないといけない(年末以降も継続したら更に積まないといけないという無理ゲー状態でしたから)というプレッシャーがあったので同情の余地も無い訳で無かったのだが、今回の買入はさすがに同情の余地が・・・・という所ではございますが、もっとマズイのは実はこういう形で短国またまたマイナスとかになった件について特段問題視していないような気がするのがもっとオソロシスな所です。
とは言いましても、現実問題として先般の追加緩和で短国買入に掛かるプレッシャーは軽減されている筈でして、そうバタバタ買いに行かなくてもという所で、この調子で買入継続していくと12月の早い時期に短国買入の予定分が終わる筈(詳しい計数と長期の方なども含めた計数シリーズはお休みモード終了後に投下する所存)なので、今度はそうなるとフローの買入がいきなりドロップするのでそこで需給の段差が生じるという感じ(ただし一方で長期国債の買入ペースがやたら早くなって中期ゾーンの吸収が進むので四半期末とは言え国債残高調整や担保ニーズが出てきそう)でして、もう何だかねとしか申し上げようがございません。
というメモだけこっそり置いておきます。もうちょっと計数の話とか書こうかと思ったが検算とか精査してからにしますので後日ね。
2014/11/07
お題「ECBの声明文は半歩前進程度なのでは?/10月1回目議事要旨は追加緩和のサイン無しと」
なるほど。
http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0IQ0QQ20141106
荒れ始めた日本株市場、日銀ETF買いめぐり思惑交錯
2014年 11月 6日 18:00 JST
ETFのフィージビリティとか今十歩ほど判りませんけど、そらまあ日銀購入対象の指数型ETFを新たに編成すれば良いでしょう(従来から日銀はそう説明していますし)という事なのかも知れんが、これはこれで市場に新たにインデックス型の大量買い投資家(しかも売らない)が投下される話なので、ベータ値が高い銘柄が相対的に有利になりやすく、個別銘柄のアルファで勝負という形のアクティブ受難の時代になって(そらまあマクロ系で突っ込んでくるファンドとかはヒャッハーだけど)これまた市場の多様性という意味では微妙な気がせんでもないのですがどうなんですかねえ。
#よく判らんのでツッコミ待ち(汗)
ま、それはそれとして為替は何か知らんが日中に1円飛んだり株も上がったり下がったりしますし、株も上がったり下がったりしますし、債券は超長期輪番増えてヒャッハーとか言ってた筈が調子にのって強くし過ぎてカウンター食らったのか水曜からは一転してベアスティープとかどういう判じ物なのかと小一時間。
○市場雑談メモ(ただしいつものように短期で超長期は知らん^^)
・3M短国入札も1bp台とな&本日は短国買入とな
うむ。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20141106.htm
(1)応募額 27兆4,229億円
(2)募入決定額 5兆2,947億円
(3)募入最低価格 99円99銭4厘5毛 (募入最高利回り) (0.0204%)
(4)募入最低価格における案分比率 74.1769%
(5)募入平均価格 99円99銭5厘6毛 (募入平均利回り) (0.0163%)
平均1.63bpで足切りが2bpにのってますが、まあそこまでくると需要も当然ある。つーかついこの前の2年カレントのレベルになりますのでまあ捌けるでしょという所で日本相互証券さんの引値は1bp近辺となっていてやっとまあ普通の入札になったという感じですが、冷静に考えるとこの絶対水準で普通の入札ってコール金利とかGCレポ金利との整合性はどうなってますねんという気が全力で起こるのですけれども、何せ日銀が盛大に国債買うので致し方なしというのは毎度の悪態(−−;
でまあ本日は短国買入なのですけれども、まー前回並み程度の買入が入ることが想定されていると思うのですが、6Mと3Mのカレントの引値が強くなってマイナス銘柄とかオペ対象外銘柄とかの引けが甘くなっているので、日銀買入が調子にのってホイホイ入って来るとまた需給締まっちゃったりするかもしれませんし、結局の所買入フローの入り方という話になってしまうのよね。
でですな、まあ余談になるのですが、年内は目標数値が書いてあるから良いとして来年は「MB拡大目標=国債残高拡大目標」になっているのですが、実際問題としては財政要因でMBの方は季節的な振れが大きくて、ここまでの日銀オペ運営を見るとMBを出来るだけ目標に向けてリニアに拡大しようという努力の跡が見られていたのですが、短国買入残高がここまで拡大して残高効果が出ている上に、そもそも超過準備がアホほどある状態なので財政要因による資金需給が資金繰りに特段の影響を与えない中なので、財政の出入りに合わせて短国買入を増減させると無駄なストレスを与えることになるので、運営どうするのかある程度明確化すると変な思惑は出てこないとは思います。まあこう書いてる位ですからあたしゃ基本的には「他の短期オペに変化が無ければ短国買入残高を維持する方向&ETF買入増えた分だけ買入残高を微減」という残高ベースの形にした方が良い(償還スケジュールは事前に分かっているのだから市場が読みやすい)と思うのですけどね。
これまあ同様の話が長期の買入にもあって、月次の償還のデコボコに対して長期国債の買入をどのように調整するのかという部分についてもどうなのかねというのは気になりますが、短期にしろ長期にしろ、ここまでくると「そもそも買入が出来るのか」という方が気になるという状態でして、つい先日までは「予定は判ったがそれをやると短期市場が爆発するのだが」という状況の中の買入であったことも考えますと、まー確かにフィージビリティを買入進めながら確認しつつ運営していくしかないのかなあとも思えます。と考えますと実際は12月まで買入をやってからまた考えるということかもしれませんし、その後もまあ実際にやってみないとわからん状態でしょうかね。いずれにせよその辺のテクニカルな部分をどう解釈するのかという不透明感は残るんでしょうけど。
○ECBネタを寝起きなのでほんの少々
量的緩和がどうのこうのというからいきなりやったのかと思ったわ。
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr141106.en.html
6 November 2014 - Monetary policy decisions
『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the
interest rate on the main refinancing operations and the interest rates
on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged
at 0.05%, 0.30% and -0.20% respectively.』
『The President of the ECB will comment on the considerations underlying
these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』
ということで会見の方で説明があった訳ですが・・・・・・・・・・・・
・バランスシートをどうのこうのの部分を前回と比較して確認
ベンダー見ていると「全員一致で必要な場合の追加緩和」という話がある訳ですが。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is141106.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 6 November 2014
なお前回の定例理事会後の会見はこちら
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is141002.en.html
バランスシート云々の部分は今回のステートメントの実質冒頭パラグラフ、前回の実質第1と第2パラグラフになります。
『Based on our regular economic and monetary analyses, and in line with
our forward guidance, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged.
Following up on the decisions of 2 October 2014, we last month started
purchasing covered bonds under our new programme. We will also soon start
to purchase asset-backed securities. The programmes will last for at least
two years. Together with the series of targeted longer-term refinancing
operations to be conducted until June 2016, these asset purchases will
have a sizeable impact on our balance sheet, which is expected to move
towards the dimensions it had at the beginning of 2012.』(今回)
『Based on our regular economic and monetary analyses, and in line with
our forward guidance, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged.
Following up on the decisions of 4 September 2014, we also decided on the
key operational details of both the asset-backed securities purchase programme
and the new covered bond purchase programme.
This will allow us to start purchasing covered bonds and asset-backed securities
(ABSs) in the fourth quarter of 2014, starting with covered bonds in the
second half of October. The programmes will last for at least two years.
Together with the series of targeted longer-term refinancing operations
to be conducted until June 2016, these purchases will have a sizeable impact
on our balance sheet.』(前回)
ということで、資産買入政策のバランスシートへのインパクトが「which is expected
to move towards the dimensions it had at the beginning of 2012.」と思いっきり書いてあることが違いますが、そもそも預金ファシリティがゼロになっている時点で超過準備を積むインセンティブが無いので、インターバンク市場での資金調達に対してストレスが特段無ければ予備的な超過準備保有需要が無いので徐々に超過準備の全体的な水準が縮小していて、そこに先般の預金ファシリティマイナス化が追い打ちをかける(超過準備保有にペナルティを課すのだから)という形になっているのですが、それで「2012年初頭の規模にバランスシートが拡大」というのはどういう事ですねんとかなーり疑問。
ただまあここの表現を見るとあくまでもバランスシートへのインパクトが「期待される」と言っているだけでそこにターゲットを置いて拡大するとは言ってないので、国債買入系資産買入をやりたい人からすれば一歩前進だけど、反対の人からすると「期待しているだけで実際にやるとは言ってない」とかこらまた玉虫色の表現ですなあとは思うので、ドラギのおっちゃんが考えるイメージとドイツの石頭連中の考えるイメージは別のような悪寒が漂います。
・全員一致云々の部分
(最初の挨拶を除き)第4パラグラフ目になります。
『However, looking ahead, and taking into account new information and analysis,
the Governing Council will closely monitor and continuously assess the
appropriateness of its monetary policy stance. Should it become necessary
to further address risks of too prolonged a period of low inflation, the
Governing Council is unanimous in its commitment to using additional unconventional
instruments within its mandate. The Governing Council has tasked ECB staff
and the relevant Eurosystem committees with ensuring the timely preparation
of further measures to be implemented, if needed.』(今回)
『Together with the monetary accommodation already in place, the determined
implementation of the new measures will underpin the firm anchoring of
medium to long-term inflation expectations, in line with our aim of maintaining
inflation rates below, but close to, 2%. As all our measures work their
way through to the economy they will contribute to a return of inflation
rates to levels closer to our aim. Should it become necessary to further
address risks of too prolonged a period of low inflation, the Governing
Council is unanimous in its commitment to using additional unconventional
instruments within its mandate.』(前回)
これだと長いので全員一致の部分だけ抜いてみましょうか。
『Should it become necessary to further address risks of too prolonged
a period of low inflation, the Governing Council is unanimous in its commitment
to using additional unconventional instruments within its mandate.』(今回)
『Should it become necessary to further address risks of too prolonged
a period of low inflation, the Governing Council is unanimous in its commitment
to using additional unconventional instruments within its mandate.』(前回)
・・・・・・・・うーんこの、全然変わってないやんけという所で、これをもって「不協和音解消ヒャッハー」というのはちと希望的観測が過ぎる気がします。そもそもここの話って「必要な時に必要な施策をすることで一致しています」ってな話だから当たり前の話を尤もらしく書いているに過ぎない、とバイトマンのおじちゃんの立場だったら言うと思いますよ。
でまあその後に『The Governing Council has tasked ECB staff and the relevant
Eurosystem committees with ensuring the timely preparation of further measures
to be implemented, if needed.』というのがあって、まあ検討指示っぽい表現だからこれまた量的緩和派からしたら一歩前進なんでしょうが、バイトのおっちゃん的な立場だったら「必要な時に必要な施策ができるように事務方があらゆる可能性を検討するのは当たり前ですが何か?」と答えるだけのような気がしまして、何ちゅうかこう玉虫色文学にも見えまして、結局の所は理事会内でどっちが強いのかという話になるんでしょう。まあこういう風に玉虫色ながらも表現が前進しているんだから量的緩和に一歩前進という解釈は判るのですが。
なお、会見質疑応答を2012という文字列で検索すると2つほど質疑が引っ掛かってきたのですが日銀議事要旨ネタもありますので以下はパスの方向で(汗)。
○10月1回目の会合議事要旨の特色は「追加緩和の予兆が無い」事ですなあっはっは
ほいな。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g141007.pdf
・経済の検討部分を読んでも追加緩和の予兆が見られない件について:国内経済編
『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』を読むのだが、まあ予想通り(?)次の会合で追加緩和政策を実施した件についての予兆が無いのが味わい深いというものです。今回の追加緩和は物価要因での緩和でしたから国内経済と物価の部分だけ鑑賞しましょう。
『わが国の景気について、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、家計・企業の両部門において、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと働いており、基調的には緩やかな回復を続けているとの見方で一致した。景気の先行きについても、委員は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も次第に和らいでいくとの認識を共有した。』
ほほう。
『輸出について、委員は、弱めの動きが続いているとの認識で一致した。先行きについて、委員は、海外生産移管など構造的な要因を考慮しても、海外経済の回復などを背景に、緩やかな増加に向かっていくとの見方を共有した。複数の委員は、9月短観で大企業製造業の海外での製商品需給判断DIが先行き改善していることも、こうした見方を裏付けていると指摘した。』
短観を見て裏付けとな。
『設備投資について、委員は、企業収益の改善が続いていることなどを背景に緩やかに増加しており、先行きも、緩やかな増加基調をたどるとの見方を共有した。』
でまあここの設備投資の話が長かったりする。
『委員は、9月短観をみると、企業の業況感は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響などから改善に一服感がみられるが、総じて良好な水準を維持しているとの認識で一致した。企業収益について、複数の委員は、過去最高益となった2013年度に続き、2014
年度も最高益を更新する可能性が高いと述べた。委員は、こうした業況感や収益動向を背景に、9月短観における2014年度の設備投資計画は上方修正され、しっかりとした増加になっているとの認識で一致した。』
短観キタコレ。
『何人かの委員は、こうした良好な企業マインドや堅調な事業計画は、企業がこのところの景気の弱さを一時的なものと捉え、前向きな姿勢を維持している証左であるとの認識を示した。』
企業の姿勢が前向きという認識だったのが何故その後にインフレ期待の低下懸念という話になったのかと小一時間。
『ある委員は、こうした前向きな判断の背景として、海外子会社の良好な業績を受けて連結利益が好調であることも指摘できると述べた。別の一人の委員は、人手不足で賃金が上昇する環境下では、企業は省力化のための設備投資等を通じて生産性を高める必要があり、中長期的にはこれが経済全体の生産性を高めていくと考えられると述べた。』
ほうほうそうですかという所で次は展望レポートでの先行きメインドライバーである所の雇用情勢。
『雇用・所得環境について、大方の委員は、労働需給が着実な改善を続けるもと、雇用者所得は緩やかに増加しており、先行きも緩やかな増加を続けるとの見方を共有した。』
うむ。
『多くの委員は、消費税率引き上げ後の反動にもかかわらず、企業の積極的な雇用スタンスが維持されていることを指摘し、人手不足感の強まりや好調な企業業績を踏まえると、先行き雇用・所得環境の改善が続く可能性が高いとの見方を示した。』
『この点に関し、一人の委員は、冬のボーナスや、来春にかけての賃金交渉に対する期待を示した。この間、別の委員は、失業率は引き続き低下傾向にあるが、新規求人は減少しており、経済活動が幾分減速していることを反映していると述べた。さらに別の委員は、ここ数か月の一人当たり名目賃金の上昇は、ベースアップやこれに伴う調整的な一時金などで高めとなっているが、景気のもたつきが長引く場合には、先行き上昇ペースが鈍化する可能性があるとの見方を示した。』
何気に2名ほど先行き懸念している人がいるのね。展望レポートでは盛大に強気一辺倒という感じだったのですが・・・・・・・・・・・
さて個人消費。
『個人消費について、委員は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は、ばらつきを伴いつつも全体として和らいできているとの認識で一致した。委員は、家計支出のうち自動車などの耐久財消費や住宅投資については、駆け込み需要が大きかった分、反動減の影響が長引いているが、百貨店やスーパーの売上高は持ち直し傾向にあり、天候不順の影響も減衰してきているとの見方を共有した。』
ほう。
『先行きの個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響もさらに和らいでいくとの認識を共有した。そのうえで、多くの委員は、実質所得の低下が個人消費に与える影響の大きさと、それがどの程度の期間にわたって続くかについては不確実性が大きく、予断を持つことなく点検していく必要があるとの見方を示した。』
なるほどここは懸念しているのね。
『このうち一人の委員は、9月の「生活意識に関するアンケート調査」において、家計の景況感や暮らし向き、収入DIが悪化している点を指摘し、実質所得低下の影響は非正規雇用者や低所得者に強く現われている可能性があると述べた。』
そらそうやろ。
『鉱工業生産について、委員は、自動車などの耐久消費財や建設財を中心とした在庫調整の動きもあって、このところ弱めの動きとなっているとの見方で一致した。何人かの委員は、在庫調整の影響が自動車以外の関連業種にも及んでいることを指摘した。先行きについて、大方の委員は、当面、在庫調整の影響などから弱めの動きとなるものの、短観における売上・収益計画が下方修正されていないことを踏まえると、駆け込み需要の反動の影響が次第に和らぐ中で、緩やかな増加に復していくとの認識を共有した。』
まあ気になるのは短観出た直後だから短観の話が出るのは致し方ないにしても、先行きが明るいという話の根拠にやたらめったら短観が出てくることで、ハードデータとマインド指標の乖離が続いて居ますが何なんでしょという話が指摘され続ける中で短観短観と連呼して先行きの明るさの話をするというのも何だかなあという感じではあります。
『ただし、何人かの委員は、先行きの回復ペースには不確実性があり、しっかりとした回復の時期は後ずれする可能性があるとの見方を示した。』
ですなあ。
・物価部分を見る訳だが(たぶん)白井さんの謎理論にクソワロタ
『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、足もと幾分プラス幅が縮小していることを指摘したうえで、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方で一致した。委員は、最近の前年比プラス幅の縮小は、エネルギー関連品目の押し上げ寄与の低下が主因であるとの認識で一致した。』
ほうほうそれでそれで?
『この点について、大方の委員は、消費税率引き上げ後の反動にもかかわらず、企業の価格設定スタンスに特段の変化はみられないとの見方を共有した。もっとも、複数の委員は、いわゆるコアコア指数の上昇に一服感がみられることを指摘し、個人消費のもたつきが影響を及ぼしている可能性もあると述べた。』
企業の価格設定スタンスに特段の変化が見られないのにいきなり3週間後にインフレ期待の低下懸念とな。
『先行きについて、何人かの委員は、エネルギー価格の動向によっては、一時的に消費者物価の前年比は1%を割る可能性もあると述べた。ただし、大方の委員は、マクロ的な需給バランスが着実に改善を続け、中長期的な予想物価上昇率も上昇していくもとで、消費者物価は再び上昇傾向をたどるとの見方を共有した。』
前回の会合でここらの記述がどうなっているのやら(白目)。では予想インフレですけど・・・・・・・
『予想物価上昇率について、大方の委員は、全体として上昇しているとの認識を共有した。』
ほっほーーーーーーーー!!!!!!
『これに対し、一人の委員は、基本的な認識に差異はないものの、消費税率引き上げの影響を除いたブレーク・イーブン・インフレ率など中長期の予想物価上昇率を示す指標は8月頃から横ばいないし低下しているため、「足もとでは横ばいになっている指標が多くなっているものの、やや長い目でみれば上昇傾向は続いている」と表現すべきであるとの認識を示した。』
ちなみにこれ白井さんの謎提案の話だと思うのですが、そもそも物価連動国債のBEIは消費税率引き上げの影響が加味されていて(コアCPIの数字使ってるんだから当たり前)、当然ながら先行きの物価見通しだけではなく消費増税などのような制度要因に対する思惑部分も加味されるのですが、どうやって「消費税率引き上げの影響を除いたBEI」というのを計算したのか小一時間問い詰めたい。
『別のある委員は、他の経済指標と異なり予想物価上昇率は直接観察できないため、これまでも様々な指標をやや長い目で評価してきていると述べた。また、複数の委員は、予想物価上昇率の評価にあたっては、アンケートや市場の指標だけでなく、実際に人々の経済行動が予想物価上昇率の高まりを前提にしたものに変化してきているかどうかという点が重要であることを指摘した。』
ということで、何ちゅうか別に今回の追加緩和理由になった「期待インフレ率の上昇が遅れて云々」という記述が無いのが非常にこう深い味わいを感じるのでありました。
・円安の影響はまあこういう話になる罠
まあ順当ですな。
『この間、円安のわが国経済への影響について、大方の委員は、現時点では、全体としてみるとプラス方向に働いているとの認識を共有した。』
ほう。
『委員は、円安は株高や対外資産の増加に伴う資産効果を通じて個人消費を押し上げるほか、製造業の収益増加を通じて設備投資や賃金を増加させるとの見方を共有した。複数の委員は、円安が定着すれば、製造業の海外生産移転のペースを抑制し、国内での設備投資が促されるとの見方を示した。また、何人かの委員は、円安に伴う訪日客の増加により、旅行収支も改善していると指摘した。一方、委員は、円安には輸入価格上昇による交易条件の悪化や、それに伴う実質所得の減少といったマイナス面があるとの認識を共有した。複数の委員は、こうしたマイナス面は、中小企業や非製造業、地方経済に現われやすい点に注意が必要であると述べた。』
まあ順当で、ここで円安イクナイとは言えんですわな。
『この間、複数の委員は、最近の国際商品市況安を踏まえると、今次円安による交易条件の悪化は、2008年にかけての円安局面に比べ限定的であるとの見方を示した。』
ほっほー。
『一人の委員は、円安のネットの経済効果は明らかではないが、貿易構造の変化などから、円安のプラス効果は従来よりも低下しているとの認識を示した。』
なるほど。
・短期金利マイナスの評価
『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。
『短国レートがマイナスを付けたことについて、何人かの委員は、日本銀行が「量的・質的金融緩和」のもとで強力な金融緩和を行っていることの現われであると述べた。』
・・・・・・・・・・・・・・・orzorzorz
『複数の委員は、期末要因が剥落した後も短国レートはマイナスとなっており、市場機能などへの影響を注視していく必要があると述べた。』
ということで、複数の委員はご理解しているようですが、どうも理解はされていないようですので(まあ総裁があの調子だからお察しという所ですが)今後国債買入が拡大する中で更にまたあばばばばーな阿鼻叫喚が起きるのではないかと今から心配されるところではあります。まあ阿鼻叫喚の声を出さずに先生!債券市場ちゃんが息をしていないの!!状態になりそうな気もしますがががががが。
○お休みのお知らせ
何かECBネタの消化が途中とか月初計数ネタはどうしたというようなツッコミが飛んできそうな気がしますが、諸般の事情によりまして来週は駄文の更新を行いません(溜まったネタの消化するにしても来週末でしょうなあ)ので、お越しになられた際には過去ログでも見て笑いものにしてやってくださいませ。
ではでは(^^)/
2014/11/06
お題「市場関連雑談など/きさらぎ会講演はまあ基本同じ話だが要するに気合と足元の物価対応という話」
な、なんだってー!!!
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141106/k10015977461000.html
閲覧すると別ページに誘導 日経新聞も被害
11月6日 5時26分
『セキュリティー機関のJPCERTコーディネーションセンターによりますと、情報が書き換えられていたのは、ことし9月から先月までの間の数時間から数日とみられるということで、この間、利用者は、別の場所にあるページを閲覧していたことになり、ウイルスが仕込まれたページに誘導されたおそれもあるということです。』(上記URLより)
で、どう対処したら良いのかと小一時間。
○市場雑談ですが計数関連は今日はパスですすいません
・6M入札はプラス金利とな
追加緩和後最初の短国入札でしたが・・・・・・・・・
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20141105.htm
(1)応募額 20兆6,700億円
(2)募入決定額 3兆2,396億5,000万円
(3)募入最低価格 99円99銭1厘(募入最高利回り)(0.0177%)
(4)募入最低価格における案分比率 26.1585%
(5)募入平均価格 99円99銭4厘(募入平均利回り)(0.0118%)
プラス金利かくにん!よかった!!
というのは良いのですが、そうは言いましても平均1.18bpで足切り1.77bpですから相変わらず絶対水準は低い状態ではありまして、そらまあここ2回連続で3Mの入札がマイナス金利で決着していますからその2回分の空振りがありました(まあ490の引けが月曜からプラス金利になっていますからこの間に少しは空振り分の修復は進んでいると思われますが)し、この銘柄6か月物だから当たり前ですが年末も3月期末も通過できる物件なのでそらまあニーズあるでしょうなあとは思いますので、さて今日の3Mはどの程度になるんですかねえというのがこれまた注目されるところです。
・固定金利オペのロールが一転順調となるとな
めんどいのでオペ結果だけ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba141105.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(11月7日スタート分) 12,710 12,710
今回のオペは11月7日にエンドが来る分のロールで、昔のシグナルオペのなれの果てなのですけれども、オペの期落ちが10060億円だったので12710億円でのロールとなって何と増額ロールとなるでござるの巻。まあ実際にはどのような要因があって増えたのかは知らんですけれども(入れる人の懐具合による要素が大きいと思われるので)、足元で短国金利がマイナスから脱却したのは効いたんじゃないですかねえとは思いますがどうでしょうかね。
まあそんな訳で、短国金利をプラスにキープして置けば固定金利オペもそれなりに進捗するということで、金利をマイナス圏に持って逝ってしまうと量的な拡大という面では逆効果になり得る、というのが示されたという事なのかもしれませんなあと思いますが、今回単なる特殊要因かもしれないのであまり強調はしません。ただ、市場現場労働者的な体感的に申し上げますと、やはりマイナス金利にしてしまうと市場参加者が一気に減ってしまい、市場の流動性がこれまた一気におかしくなるので、オペレーションも却ってやり難くなるんじゃネーノと思う訳で、「量的拡大を推進する」という文脈で考えた場合はマイナス金利というのは排除しておくに越したことはなさそうに思えます。
とは言いましても、その辺の微妙なニュアンスって「なぜそうなる」と言われるとアネクドータルな話を並べる事はできるのですが、こちとら市場現場叩き上げで別に高級な理屈の訓練も受けておりませんので頭のよろしい方々向けに頭のよろしい説明を理論立って出来る訳も無く(吐血)、「マイナス金利は緩和効果(キリッ)」と言われてしまう頭のよろしい方々に対しては「事件は会議室じゃなくて現場で起きてるんだよ」としか言えないのが残念なので誰か説明してくらはい。
・短国の方は判るがサーベイは微妙ですなあ
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141105b.pdf
市場参加者との対話の強化に向けた取り組みについて
『日本銀行は2013年4月に導入した「量的・質的金融緩和」のもと、国債や各種のリスク性資産など、広範な金融資産を買い進めてきている。さらに、本年10月31日には、「量的・質的金融緩和」を拡大し、国債などの買入れペースを引き上げている。
こうしたもとで、日本銀行金融市場局では、新たに以下のようなイニシアチブを通じて、金融市場の動向や機能度、日本銀行の各種資産買入れなどのオペレーションが市場に及ぼす影響などについて注意深く点検するとともに、市場参加者との対話を一段と強化していく考えである。』
ほうほうそれでそれで?
『1.「債券市場サーベイ」の導入』
ほほう。
『日本銀行金融市場局では新たに、四半期毎の「債券市場サーベイ」を導入する。このサーベイを通じて、市場参加者からみた債券市場の機能度や先行きの金利見通しなどを継続的に把握するとともに、サーベイから得られた情報を有益に活用し、市場参加者との対話を一段と強化していきたいと考えている。
本サーベイは、2015年入り後、準備が整い次第速やかに開始する予定である。』
で、どのようなものをやるのでしょうかというとその先のBOXが。
『(参考)「債券市場サーベイ」の概要
【調査対象先】国債売買オペ先のうち、サーベイにご協力頂ける先
【調査項目】債券市場の機能度や金利見通しなど
【調査頻度】四半期毎(2月、5月、8月、11月に調査実施)
【公表時期】原則として調査月翌月の金融政策決定会合初日の5営業日前
【公表方法】日本銀行ホームページに掲載』
うーんこの。オペ先相手にサーベイって別にオペ先だったら通常のヒアリングとかあるんだから時間のかかるサーベイやってどうすんだかという感じで、もしやるならオペ先以外にヒアリングを掛けて、アネクドータルなデータを拾っていった方が効率的じゃネーノと思うのだが。
まあ何ですな、正面切ってサーベイでございと言って集めてしまうとアリバイサーベイになってしまう恐れがあってどうもねという感は拭えませんが、これは読むほうが表面の結果を見るのではなく、この手のサーベイで何らかの苦言が表明されている場合は実際はその1000倍くらい不満があると考えて読んで頂ければまあ良いと思うのですけど、この前堂々と短期市場サーベイ出して「市場機能に特段の問題が生じている訳ではない(キリッ)」と基準日が違うとはいえ出してしまうっつーのを見ておりますと単なるアリバイサーベイになりそうな悪寒がプンプンしますな。
『2.国庫短期証券の銘柄別買入額の公表頻度の引き上げ』
ほうほうこれは。
『国庫短期証券について、市場参加者が個別銘柄毎の市中流通額の把握・分析を行う際の利便性向上に資する観点から、「日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額」の公表頻度を、下記のとおり引き上げることとした(本年11月10日時点の残高にかかる公表<11月12日公表予定>から開始)。』
ということで短国も残高を旬報で出すことになりまして、これ下手すると「前回のオペで入った銘柄はこれです」というのがバレバレになる(11月10日〜20日の間には短国買入が1回しか実施されない筈^^)という中々素敵な話ですが、今回は正面切って『個別銘柄毎の市中流通額の把握・分析を行う際の利便性向上に資する観点』と書いている点はほほうと思いました。
と申しますのは、長期国債の残高公表に関しては国債補完供給を利用する際に残高が分かっていた方が良いので公表頻度を上げるという建付けだったので、今回は「個別銘柄の流通額の把握」とより市場の需給動向に配慮したような表現になっている辺りは(まあ短国の補完供給というのは物理的には可能な筈ですがそもそもそんな状態にならないので利用する人がいないから補完供給の円滑化と言いにくいというのもあったとは思いますが)ちょっと変わりましたかねとは思うのでございました。
『3.「東京短期金融市場サーベイ」の公表早期化と一段の活用』
『日本銀行金融市場局が2008年以降実施している「東京短期金融市場サーベイ」については、従来、サーベイ実施時点(8月)から結果公表(同年12月〜翌年2月)までかなりの期間を要していたが、今般、市場参加者からの要望などを踏まえ、可能な限りの公表早期化を図ることとした。すなわち、調査の基準時点は従来同様7月末時点とし、時系列的な比較可能性を確保する一方、結果の公表は従来比2〜4か月以上前倒しし、本年については10月10日に公表した。』
7月末時点と10月10日であんなに市場の状況が変化しているとは!!という意味ではまあ間が悪くて可哀想というのはあるのですが、市場の状況なんぞ2か月もあったら全く変わってしまうのでサーベイの公表早期化はこれ以上早くするのも無理だと思いますけど、その部分はちゃんと留保をつけて公表するとかしないと、先日のように短国市場がピャーと言ってる中で「市場機能に大きな問題は生じていない(キリッ)」とか出して盛大に市場の人がズッコケる結果になりましたが。
『 日本銀行金融市場局としては、前述の「債券市場サ−ベイ」ともあわせ、これらのサーベイから得られる情報を極力速やかに関係者と共有するとともに、市場参加者との対話や、市場機能の維持・向上に向けた取り組みにおいて、これらのサーベイを一段と活用していきたいと考えている。』
まあ調節年報を半期化するとかしてそこにぶつけるとか、そんな感じにするのも一法かも知れませんが、そもそも非伝統的金融政策において資産買入を実施するというのは金融市場機能への介入を行う事を意味する訳で、それを超大規模に行っておりますという政策を実施しております以上、「市場機能の維持向上」とかあまりお為ごかしな事を言わなくても良いんじゃないですかねえとか言われてもそれは政策委員会に文句言ってくれですねわかります。
○これは面白そうだがまだ精読していない
なお債券市場に関係あるかと言われると多分ない。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j07.htm/
主要国における資金決済サービス高度化に向けた取組み
全文はこちらの日銀レビュー
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j07.pdf
主要国における資金決済サービス高度化に向けた取組み
エグゼクティブサマリーから。
『主要国の金融機関では、資金決済サービスの高度化という観点から、様々な取組みが進められている。具体的には、資金の即時振込の実現や、国内送金における商取引情報の添付・拡張(金融EDI
<Electronic Data Interchange>)が挙げられる。こうした中、本年6月に公表された政府の「『日本再興戦略』改訂2014」では、わが国の金融・資本市場活性化の一環として、資金決済サービスの高度化について検討を進めることとされている。これらの取組みを進めるにあたっては、諸外国の先進的な取組みを参考にしながら、わが国の実情に即した形で、資金の即時振込と金融EDIの活用をともに進めていくことが望ましい。日本銀行としても、政府と連携しつつ、こうした決済サービスの高度化に向けた取組みを支援していく方針である。』
でまあこの一環で新日銀ネットにおける各種の機能拡張が進んでいる訳でして、これは決済の鬼(かどうか知らんが)青木前決済機構局長の置き土産ですねわかりますという所ですが、内容はリテール資金決済の利便性向上でありますが、リテール資金決済の利便性、効率性向上によって企業や個人の経済活動の利便性、効率性を向上させるという話で、実は輪番で長期と超長期どっちを買うのというような話よりも地味だけど重要なんじゃネーノと思いますし、円の国際化という文脈にもつながる話ではございますなというところで。
○きさらぎ会キタコレ
いやー今回の政策決定がアタクシ(だけではないですが)が妄想するようにあまり練って無くて一気に決まったとしたらこの講演テキスト作るのも大変だったんじゃないですかねえとは同情。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141105a1.pdf
2%の「物価安定の目標」の実現を確かなものに
── きさらぎ会における講演 ──
昨年のきさらぎ会ではQQEに関して「デフレ均衡からの遷移を狙う」というような話を強調したり、その他にも色々と理念的な部分の説明がありましたが、それから1年経過してどうなったでしょうか。
・追加緩和はありていに言えば足元の物価対応という説明がより明確に
『2.「量的・質的金融緩和」および今般の拡大の意義』から。
『はじめに、「量的・質的金融緩和」の目的と効果について、振り返っておきます。日本銀行は、昨年の4月に、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するために、「量的・質的金融緩和」を導入しました。「量的・質的金融緩和」は、次のような基本方針に基づいて設計されたものです。』
『第1に、長年にわたって日本経済を劣化させてきたデフレから脱却するために、「できることは何でもやる」ということです。第2に、日本銀行が「物価安定の目標を責任をもって実現する」と強く明確にコミットするということです。第3に、こうしたコミットメントを裏打ちする量的にも質的にも従来とは次元の異なる金融緩和を行うということです。』
えーっと確かその出来ることは何でもやるというのに則って必要な施策を全部打ち出したのではなかったでしたっけ???
『15 年にわたるデフレの間に、人々の間には、「物価が上がらない」あるいは「物価が緩やかに低下する」という考え方が定着してしまいました。これが「デフレマインド」や「デフレ期待」と呼ばれるものです。デフレマインドが定着すると、企業や個人はそれを前提に行動するため、デフレと景気の低迷が自己実現的に長期化することになります。このような悪循環から脱却するためには、従来とは全く次元の異なる金融緩和によって、人々の間に染みついたデフレマインドを抜本的に転換する必要があります。「量的・質的金融緩和」は、まさにこうした効果を狙ったものです。』
なんちゅうかね、それは判るのだがではなぜ潜在成長率が足元で低下する中で2%という実際の数値を短期にヒットしにいけないのかが良く判らんのですが、これはもしかして「キリッ」としながら実は「チラッ」と助け船(浜田先生スキーム的なの)を待っているのかも知れませんね(違うか)。
『もっとも、消費税率引き上げ後の反動減は、自動車などの耐久消費財を中心にやや長引いています。また、このところ原油価格が大幅に下落しています。こうした需要面の弱めの動きや原油価格の下落は、物価の下押し要因として作用しています。』
『生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、昨年末から1%台前半で推移してきましたが、9月には+1.0%まで伸び率を縮小しました。もとより、消費税率引き上げに伴う需要面の弱さは既に和らぎはじめていますし、原油価格の下落は、やや長い目でみれば、日本経済に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用すると考えられます。ただ、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできた「デフレマインド」の転換が遅延するリスクもあると考えられます。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、ここで「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断しました。』
ということでこの辺は会見での説明と同じで・・・・・・・
『以下では、今回の決定の前提となった経済・物価情勢について、ご説明します。』
とありますが、基本的に展望レポートの(微妙な)説明と会見での説明と、従来からの説明とのミックスで特段新しい話は無いのですが、物価の辺りでこんな話があるのがほほうという感じ。
『月々の物価は様々な要因で変動しますが、物価の基調的な動きは、経済全体としての需給ギャップと予想物価上昇率によって規定されると考えられます。「量的・質的金融緩和」導入以降の物価情勢の改善は、需給ギャップの改善と予想物価上昇率の上昇を背景とするものです。』
だそうですよ円安コストプッシュも消費税増税便乗も無い(それらは個別要因という括りになっているので)とのことで。
でまあ需給ギャップは改善していますという話があって、問題はインフレ予想だという話ですな。
『こうした経済活動の変化は、企業や家計の将来の物価に対する見方が変わり、予想物価上昇率が徐々に高まってきていることを示唆するものと考えられます。問題は、こうした変化が今後も継続するかどうかという点です。後程詳しく申し上げるように、このところ、消費税率引き上げ後の需要面の弱めの動きや原油価格の大幅な下落が物価の下押し要因として働いており、こうした下押し圧力が残存する場合、予想物価上昇率の改善が遅延するリスクがあります。今般の「量的・質的金融緩和」の拡大は、このようなリスクを未然に防ぐことを狙いとしています。』
ということで、予想物価上昇率の改善が遅れるリスクと言っていますが、その背景にあるのが実際の物価上昇率の改善が遅延している事であるという説明をしておりまして、これは結局のところ「足もとの物価上昇率改善足踏みを受けた追加金融緩和です」という話になっていますので、今後も物価上昇率の改善が足踏みすると追加緩和クレクレになるでしょうし、同じ理屈で追加緩和をしないと許してくれないという流れになるんじゃないですかねえ。
・中長期的に望ましい物価下落なのに何故追加緩和をするのかという話
これまた会見でも説明していましたがここでは少し詳しいので引用しておきます。
『この点、原油価格のような一時的な要因によって実際の物価上昇率が多少変化しても、中長期的な予想物価上昇率はあまり影響を受けないというのが基本的な考え方です。たとえば、米国では、原油価格の下落にもかかわらず、中長期的な予想物価上昇率を示す指標は、さほど変化していません(図表11)。ただ、米国の場合には、長年にわたって予想物価上昇率が中央銀行の設定する目標近傍にアンカーされている一方で、わが国は、「量的・質的金融緩和」によってデフレマインドを抜本的に転換しようとしている最中にあります。わが国では、米国などに比べれば、実際の物価上昇率の変化が予想物価上昇率の形成にも相応の影響をもたらす可能性があると考えておくべきだと思います。』
ということなので物価を上げる為に追加緩和するという話。以下続きますがめんどいので引用割愛します。まあその追加緩和がどういう効果で物価に波及するかのメカニズムの説明はこの講演でもろくすっぽ無いのですけどね!!
・2%を目指す意味についての説明がありますよ
最後の方に『2%の「物価安定の目標」を実現することの意義』ってのがありまして。
『日本銀行は、「量的・質的金融緩和」の導入当初から、2%の「物価安定の目標」の早期実現に強くコミットしています。物価の下振れリスクが大きくなったのであれば、追加的な措置を行うことは当然の論理的帰結です。その意味で、今般の措置は、我々の揺るぎないコミットメントを示すものに他なりません。』
屁理屈キター!!!!!
『もっとも、こうした日本銀行の方針に対しては、「成長率が高まらないもとで、物価だけが上昇するのは望ましくないのではないか」とか、「必ずしも2%にこだわる必要はないのではないか」といった意見も聞かれているところです。消費税率引き上げにより物価上昇が強く実感されることが、こうした見方を後押ししている面があります。』
これ超イカサマ説明にも程があるのですが、木内さんの提案とか佐藤さんや石田さんの講演とかを見ても、別に2%そのものに反対している訳では無くて、木内さんで言えば「中長期的に目指すべきではないか(という白川ドクトリン)」だし、佐藤さんや石田さんは「フォーキャストターゲットやより幅広い物価指標を総合的に見ながら柔軟に判断すべきで、単に足元のCPIの数値を2%ヒットさせに行くような政策運営を取るのは如何なものか」という話をしている(佐藤さんと石田さんの話を適当に混ぜてしまったのでご両人の真意と異なっていたらスイマセン)という話をしている(森本さんは前触れが無かったので判らんが佐藤さん石田さんに近いんでしょ)訳で、反論の筋を外して説明する辺りはまあ要するに説明が苦しいという事なんでしょうな。
『我々は、「物価が上がりさえすればよい」と思っている訳ではありません。しかし、緩やかな物価上昇を実現することは、悪い「デフレ均衡」から脱却するための必要条件です。』
だから何故短期に2%ヒットさせに行こうとする???
『デフレのもとでは、企業や家計がリスクテイクを消極化する中で、価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落という悪循環が続きます。こうした「デフレ均衡」から抜け出すためには、人々の期待を変化させ、経済主体が「緩やかに物価が上昇する」ことを前提に行動する状況を作り出す必要があります。そのような状況になれば、デフレ下での悪循環とはちょうど逆の循環が作用します。つまり、価格の緩やかな上昇を起点として、売上・収益の増加、賃金の上昇、消費の活性化、価格の緩やかな上昇というかたちでの経済の好循環が実現するということです。2%の「物価安定の目標」を達成することの意義は、「デフレ均衡」という「縮小均衡」を脱却して、国民生活がより豊かになる状況のもとで物価も緩やかに上昇する「拡大均衡」への転換を実現することにあります。』
と、「短期的にCPI2%ヒットさせに行くのがどうなのか」というのと別の理念的な話をするのはもう聞き飽きたのですが。
なおこの後も話が続くが飛ばしてその先。
『また、「2%の物価上昇率にこだわる必要はなく、1%程度でも十分ではないか」との意見も聞かれるところです。この点については、諸外国の例をみても明らかなように、物価上昇率は、景気変動に伴って、ある程度の幅をもって上下に変化するものであることを理解しておく必要があります。ある時点の物価上昇率が1%程度であるからといって、将来にわたってその水準で安定するという訳ではありません。「2%」の物価上昇率を目標とすることがグローバル・スタンダードとなっているのは、景気変動に伴って物価上昇率が変化することを勘案した上で、デフレに陥らないための「経験知」と言えます。』
「ある時点の物価上昇率が1%程度であるからといって、将来にわたってその水準で安定するという訳ではありません。」って何か凄い理屈を展開しているのだが、それだったらお前2%の物価安定目標をどういう風に判断するんだよオイオイオイとしか申し上げようが無くて、昨日引用した会見質疑応答での謎の「過去の見通しがおかしい」発言同様、白川ドクトリンに対する異常なまでの敵意が起きているようにしか見えませんで、まあ何ちゅうか置物ドクトリンが相当苦しくなって余裕がなくなったんだなあと思います。
ということで、潜在成長率が下がっているけどその中で早期に2%をヒットさせにいくのが国民厚生上良いのかという話は残念ながら今のドクトリンでは期待できず(反対派の審議委員はその問題意識がありそうですが)、あくまでも潜在成長とか関係なく2%を「早期に」達成するという話になっています。
ただですよ、フレキシブルターゲットの考えからすると経済情勢に応じてマンデート水準への着地への期間は適宜調整する、という考えでBOEとかFRBとかも運営している訳で、そんな中で何で早期にやる必要あるのよ?とは思うのですけれども、それに対しては前段の方にあった「インフレ目標がアンカーされていない」という理屈で返してくるのだと思います。
・たとえ話は程々に
で決め台詞だが。
『本日、ご説明したように、「量的・質的金融緩和」のもとでデフレマインドの転換は着実に進んできています。今、この歩みを止めてはなりません。デフレという慢性疾患を完全に克服するためには、薬は最後までしっかりと飲み切る必要があるのです。中途半端な治療は、かえって病状を拗らせるだけです。』
そもそも処方している薬が間違っていないか、正しいにしても使っている量が適切なのかという事を検討しないと、一時的には薬が効いて良くなったとしても飲み続けている内に副作用の方が大きくなって却って疾患が悪化しませんでしょうかとか、そもそも論として慢性疾患だったら体質改善も大事じゃないですか直ぐに治そうとするのは無茶じゃないですか、などとツッコまれるので、上手い話をしたつもりでしょうが多分ツッコミ所を提供するだけだと思います。
まあここにツッコミ所を作っておいて他の所をツッコませないという諸葛孔明の罠の可能性はありますけどね!!!!!
・短期的に達成しようとする件についての説明は説明になっていない件
『さらに、「2%を目指すにしても、2年程度という期間にこだわることはないのではないか」という意見もあります。この点、日本銀行は、昨年4月、「物価安定の目標」を「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に」実現すると宣言して、「量的・質的金融緩和」を導入しました。同じ月に公表した「展望レポート」では、2015
年度の消費者物価上昇率の見通しを政策委員の中央値で1.9%と公表しました。その後、この見通しは、最新の展望レポートでは幾分下振れていますが、引き続き、「2015
年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高い」と予想しています。2%の「物価安定の目標」を2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するという方針に変わりはありません。』
全然説明になってませんが。
『今回の原油価格の下落でもわかるように、実際の消費者物価の計数は、需給ギャップや予想物価上昇率のような基本的な要因のほかにも様々な要因の影響を受けます。2年ちょうどで2.0%にできる中央銀行は世界中にありません。』
置物先生の説明責任を願いたい。
『だからといって、「いつかは2%にする」というのでは、デフレマインドが蔓延していた企業や家計が「これからは2%を前提として行動しよう」とは思わないでしょう。デフレ期待を払しょくし、人々の気持ちの中に2%を根付かせるには、それなりの速度と勢いが必要なのです。これが、日本銀行が2%の達成時期にこだわる理由です。同時にそれは、今回の措置によって期待形成のモメンタムを維持することを重視した理由でもあります。』
結局気合の話だけでMBの量的な話とか買入資産の定量効果とかそういうレビューは無いのね。
・どうみてもこれは・・・・・・・・・
『最後に昨年4月に言ったことをもう一度繰り返します。「物価安定の目標」を早期に実現するため「できることは何でもやる」。ご清聴ありがとうございました。』
何ちゅうかもうねという所ですが、こんなヘッドラインがあって債券市場関係者一同(かどうか知らんが)のけぞるの巻。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NEJRTP6S972I01.html
日銀総裁:国債買い入れ含め「限りがあるとは思ってない」
更新日時: 2014/11/05 13:00 JST
『11月5日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁はさらなる緩和の手段について、長期国債の買い入れを含めて、「限りがあるとは思ってない」と述べた。5日昼、都内で講演後の質疑応答で述べた。』(上記URL先より)
いやー何ゆうてますねんという感じなのですが、この一連の動きを見ておりますと、まあ比較するのが不穏当のような気が思いっきりしますが、昭和の帝国陸海軍が負け戦を延々と続けて行った理由の一端を垣間見たような気がする訳で、強引に無理のある施策をおっぱじめた時に負け戦になった場合に全然止まるという事なく却ってドンドン突き進むという組織(日本的なのか世界もそうなのか知らんが)の恐ろしさというのを見せられているような気がして実にこうアレですな。
いやまあこれがそこらの民間企業だったら勝手にコケるだけの話なのですが、政策当局なもんでねえと思いますし、まあこういうの見ますと強引に何かやって突き進むという事の恐ろしさというのを見ているような気がしますがこれはきっと敗戦思想に毒された考えだからただの杞憂にも程があるんですね(白目)!!!!
2014/11/05
お題「総裁会見とか市場雑談とか」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0IO1ZY20141104
欧州株続落、ECB内部対立を不安視
2014年 11月 5日 04:25 JST
『[ロンドン 4日 ロイター] - 4日の欧州株式市場は、続落して取引を終えた。ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁の政策運営が秘密主義だとしてユーロ圏諸国の中央銀行総裁らが異議を唱える計画だとする報道が不安視された。ECBの内部対立は追加緩和導入を妨げかねない。』(上記URLより)
・・・・・・って今に始まった話じゃないと思うのだが今さら何で材料にするのでしょうか(というかまあ売りたいからネタに使われただけの話でしょうけど)。
○昨日の市場関連メモである(俺様備忘メモ)
・オペ関連メモを置いときますね
オペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of141104.htm
国庫短期証券買入 22,500 2014年11月6日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 5,500 2014年11月6日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 5,500 2014年11月6日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,400 2014年11月6日
国債買入(残存期間25年超) 1,200 2014年11月6日
米ドル資金供給 2014年11月6日 2014年11月20日 0.580
落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba141104.htm
国庫短期証券買入 43,042 22,500 0.022 0.023
米ドル資金供給(11月6日スタート分) 0 0
国債買入(残存期間1年超3年以下) 17,782 5,500 -0.010 -0.010 94.5
国債買入(残存期間3年超5年以下) 16,943 5,503 -0.017 -0.015 79.8
国債買入(残存期間10年超25年以下) 6,073 2,400 -0.059 -0.053
国債買入(残存期間25年超) 4,766 1,201 -0.174 -0.161 52.7
まずは短国買入ですが、前の週と同じく2.25兆円のオファーとなりまして、応札限度の方で味わいがあったような気もしますがそれはさておきまして落札結果は思いっきり甘くなりましたが、これは先週の足切りもマイナス金利入札になった490回債ではなくて、売参がやたら強かったその前の2銘柄の488(-4.3bp)489(-4.2bp)辺りが打ち込まれたという形になったんでしょう。これだと2毛3糸投げてもマイナス2bp近辺で外せますから、当初の見込みからは外れているかもしれませんが(ニヤニヤ)そこまで痛くもないかなとか思ったりして。
ただまあ何ですな、これですと入札の足切りをマイナスでやってプライマリー段階では全然投資家に嵌らなかった(と想像される)490回をよーしパパオペ狙いで特攻しちゃうぞーなどとやった方は居なかったとは存じますが、間違ってそのような方がおいでの場合はプギャーとしか申し上げようがない展開で誠に香ばしい展開ではございますな。
なお恐らく短国買入は売参マイナスの深い銘柄が入ったんでしょうなあと想像されるのは、短国買入がクソ甘かったのですが引値見ると調整しているのはマイナスの深い所で、ゼロ近辺の物がそんなに甘くなったわけではない(ちなみに売買参考統計値でも同様で488と489のマイナスは-1.2bp、-1.5bpとそれぞれだいぶ緩和されたものの490は0.0bpから0.2bpに上昇しただけでした)ので、ここもとマイナス金利状態で買えていない投資家サイドのニーズはまだあるでしょうから投資家の買わないレベルであるマイナス金利部分は調整するけれどもプラス金利方面がドンドン甘くなる訳でも無いでしょという所で、需給の問題もあるでしょうし、そもそも9月のマイナス金利での買入以来の動きで目線がすっかり変わってしまったというのもあると思いますので、そもそも短国買入をもうちょっと丁寧に実施すればもうちょっと違ったような気もしますが、これが無かったら今回の追加緩和で短期部分の調整も無かったかも知れないのでよく判らん。
でまあ短期に関しては今日明日で6Mと3Mの入札があって、金曜がまたまた短国買入な訳ですが、TKRRの推移を見ますとS/NのGCレートは高めの所で推移していますので、別にまあ在庫がスッカラカンという訳ではないでしょうから何ぼ何でもマイナス金利に突撃するという展開にはならないでしょと思いますけど、プラス金利になると投資家需要はきっちりありますから別に金利が上がるとも思えませんがどうなんでしょうかねえ。
でもって輪番の方ですが、昨日は増額となる中期+超長期の輪番となりまして、とりあえず金曜に出ていた紙の通りのオファーで(当たり前だが)打ち込みとなりまして、まずはこのバランスで行くのでしょうが、中期の買入額が「残存期間1年超3年以下5,500億円、残存期間3年超5年以下5,500億円」の6倍という数字になりますので、2年にしても5年にしても新発債の発行額を上回る買入を実施することになりまして、まあこの年限は過去の10年債とか20年債とかのなれの果てもあるとは言え、普通に新規供給よりも多い買入を実施し続けたらいずれ中期の買入が行き詰まる事になりそうで、それも1年とかそういうタームじゃないでしょと思われます次第で、ここが買えないとなると次はさてどこを買うんでしょうという流れになりまして、イナゴの群れが大農地を襲うの巻という状態になって参りますなってな話になるんでしょう、ナムナム。
・超長期フラットニングに味わいを感じますな
まあ政策アナウンスからその流れではありますが、昨日も超長期は朝から盛大にフラットしていまして、そらまあ全体の買入が市場を叩き殺す方向になっている訳ですから相場は強くなるでしょうし、中期と超長期の買入が増える訳ですからそらまあろくすっぽ低下余地が物理的に無い中期(何ぼ何でも今すぐマイナスにはならんでしょ、将来は知らんが)からしたら超長期の方がここもとスティープしていた反動もありましてそらまあ金利下がります罠ということで、特にヘロヘロだった30年とかもうエライコッチャな展開。
・・・・・・・ということでまあ需給で説明しても良いのですが、これだけ盛大に超長期がフラットニングしているというのは「日銀の追加緩和で別に2%行くとは思えませんなあ」と債券市場の皆様が盛大に認識しているという事もまた意味される訳で、本来この追加緩和によって2%目標達成が早まる、というのであれば、明確にオープンエンドにしているだけに極端に言えば目標達成したら来年頭だろうと実は買入終了してもおかしくないという建付けではあるのですが、このように盛大にブルフラットしているというのは「追加緩和のアフガン介入(ソ連的な意味で)化が確実になりましたなあ」となっている訳で、実にこう味わいの深い物を感じます。
ただ一方で、物価が中々再加速しない上に消費増税の話が怪しくなっていた昨今は物価連動国債のBEIが弱含みという感じだったのが今回の追加緩和でちゃっかり強含みとなっておりましたので、次回の執行部の誰かまたは与党審議委員の皆様の講演では債券市場の超長期ブルフラットに関しては「金利低下を促す本行の施策が効果を発揮している」という説明になり、物国BEIの戻りに関しては「追加緩和によって市場の期待インフレ率が再び加速の方向になっている」というお手盛り評価をするに100木久扇と言った所ですな。
前回は追加緩和投下後に利食いとかも出ましたし、その後株や為替も動いてボラが上がって相場が甘くなってきたところで黒田さんの梯子外し発言もあって、何となく自己実現的に相場売られて「もしかしてこれは2年で2%行ける可能性もあるのでは」的な動きになりましたけれども、今回はまあここまで1年半の実績を踏まえて「2%達成どころかいずれ追加緩和に追い込まれるでしょウヘヘヘヘ」ってなもんですからそこの動きは異なって来るんじゃないですかねえ(白目)。
○総裁会見だが文章に落としたのを見ると「質問に答えていない」のが多いですなあ
いやね、この総裁会見はさすがにベンダーさん提供の中継放送を見たのですが、黒田さんの表情って説明の時にはまあいつもの感じではあったのですが質疑応答が始まると段々表情が険しくなったり目が泳いでいたりと、今年前半の自信満々モードはどこへやらという辺りに今回の決定の背景が垣間見れるような気がするのは気のせいですかそうですか。
でまあさすがに会見をじとーっと見ているだけの余裕は無かったので半分流して聞いていましたが、途中から「何か質疑が噛み合っていないような気がするのだが」と思って音を聞かないで画像だけ見てましたがやはり文章を見るとそうでしたなという感じです。
これはつまりどういう事かと申しますと、今回の決定は確かに騙し討ち的な意味では効果的ではあったのですが、別に狙った訳でも何でも無く事前に練り込んだ訳でないんでしょうなあという印象でありまして(まあ日経あたりがどうせ迫真とか言ってみてきたような自主規制を書いているんでしょうけど読んでないから知らん)そもそも練り込んでいるなら反対4票も出ませんし、質疑応答がここまでグダグダになることも無かろうと思うのですがどうでしょうかねえ。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1411a.pdf
○冒頭説明では「2%の達成」への拘りを示すがこれは「足元物価にリンクした政策運営化」を意味しますな
冒頭説明(形式上は最初の質問に対する答え)から。
この辺から声明文の項番2にある今回の追加緩和理由の説明になります。
『「量的・質的金融緩和」の導入以降、1年半が経過しましたが、これまでのところ、所期の効果を発揮しています。すなわち、わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けています。物価面では「量的・質的金融緩和」を導入する直前の昨年3月の時点でマイナス0.5%であった消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、プラス1%台前半まで改善しました。』
所期の効果を発揮というのは声明文では図々しいと思ったのか外して居ましたが、展望レポート基本的見解の最後の所にも入っていましたし、こちらでもその説明。でも所期の効果というのをQQE導入前と比較する時点でだいぶ大本営発表の香りがしますが、まあここまでは追加緩和の理由ではありませんな。
『もっとも、消費税率引き上げの後の反動減は、自動車などの耐久消費財を中心にやや長引いています。また、このところ原油価格が大幅に下落しています。こうした需要面の弱めの動きや原油価格の下落は、物価の下押し要因として作用しています。消費者物価の前年比は、9月には+1.0%まで伸び率を縮小しました。もとより、消費税引き上げに伴う需要面の弱さは既に和らぎ始めていますし、原油価格の下落は、やや長い目でみれば、日本経済に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用すると考えられます。ただ、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクもあると考えられます。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、ここで「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断しました。』
これは声明文の項番2で書いてあった「しかし」以下をもうちょっと詳しく説明しています。でまあ以下の部分が今回の声明で(キリッ)とやりたい部分ですな。
『「量的・質的金融緩和」は、人々のデフレマインドを払拭し、予想物価上昇率を引き上げることを狙った政策です。予想物価上昇率がどのようなメカニズムで形成されるかについては様々な議論がありますが、長年にわたってデフレが続いたわが国では、米国のように予想物価上昇率が既に2%程度にアンカーされている国とは異なり、実際の物価上昇率の変化が予想物価上昇率の形成に大きな影響を与えていると考えられます。実際の物価上昇率の伸び悩みが続けば、それがどのような理由によるものであれ、予想物価上昇率の好転のモメンタムが弱まる可能性があります。そうなれば、せっかくここまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅れてしまうリスクがあります。その意味では、わが国経済は、デフレ脱却に向けたプロセスにおいて、今まさに正念場、critical
momentにあると言えます。今回、追加緩和を決定したのは、こうした考え方に基づくものです。』
今はインフレ期待を上げようという中なので、バックワードルッキングによるアダプティブなインフレ期待形成を重視して物価上昇のモメンタムを与えたい、という理屈は理屈として判るのですが、ではなぜMB拡大ペースを10兆円ほど増やすと物価上昇のモメンタムが付くのか、という点についての定量的な説明が無い訳ですし、そもそも論としてここまでの物価上昇におけるMB拡大の効果が定量的にどの程度あって、どういうメカニズムで作用したのか、というレビューも無い状況で「これまでの政策が所期の効果を発揮したから更に兵力を投入すれば効果を発揮するに違いない」というようなノリだけで突っ込まれても丸腰輸送船で戦地に送られる兵隊の方としては全く納得いきませんが、という話は昨日申し上げた通り。
『今回の措置はデフレ脱却に向けた日本銀行の揺るぎない決意を改めて表明するものです。デフレのもとでは、価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落という悪循環が続きました。』
デフレだと好循環が起き難いというのはまあそうですな。
『「量的・質的金融緩和」によって、デフレマインドの転換が実現すれば、価格の緩やかな上昇を起点として、売上・収益の増加、賃金の上昇、消費の活性化、価格の緩やかな上昇というかたちで経済の好循環が実現することになります。』
でも「デフレだと好循環が起き難い」から「何でもいいから物価が上がれば好循環が起きる」というのは別問題ではないかと思われますし、(後の方の質疑できっちり突っ込んでいる優秀な方がいますが)今回の展望レポートで足元の潜在成長率推計を引き下げているような経済状態の中で短期的に強引に物価を上昇させる(そもそもMB拡大で物価が都合よい所に上げられるんですかねえ上がるにしてもハチャメチャな事になりませんかねえという話は一旦措く)のって本当に好循環の達成に繋がるんですかねえと思うのですが、そういう検証や点検は無く「最初にこう決めたのがアプリオリに正しい」という無反省理論で特攻するのが今回の追加緩和の本質であるというのが良く判ります。
『この春の労使間の賃金交渉で物価上昇率の高まりが意識され、多くの企業でベースアップが実施されました。企業の価格設定行動も変化の途上です。』
消費増税とかコストプッシュとかまあいいです。
『いま、この歩みを止めてはなりません。「物価安定の目標」が人々の気持ちの中にしっかりと根付き、これからは2%の物価上昇を前提として行動しようと思うためには、日本銀行がその早期実現に強くコミットし、これを実現していくことが何よりも大切です。昨年4月に申し上げた通り、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の早期実現のためには、できることは何でもやる方針です。』
とまあそういうことで、結局の所追加緩和がどういうメカニズムで効果を発揮するかとか、その定量的な意味は何かという話はこの政策おっぱじめて1年半も経過しているというのに何が何だか判らんというまま特攻が続くという戦争末期状態で、気合だけは十分ということでありまして、それはもしかしたら物価は上がるのかもしれないけれども国民厚生的にどうなんでしょうかねという話っすな。
『今後も日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続します。何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、「物価安定の目標」を実現するために必要になれば、躊躇なく調整を行うという方針にも変わりはありません。』
ということですが、まあこれを見て明確なのは「今後も足元の物価次第で政策がフラフラする」という話でありますので、目先は当分物価上がらんでしょという事ですから追加緩和クレクレがそのうち始まるでしょうし、将来間違って円安効果で物価が上に振れてくると今度は急に雰囲気が変わる可能性も微粒子レベルでは存在するかなとも思われますしという所っすかねえ、よー知らんが。
・急に決まりましたねえという質問
幹事社の実質最初の質問。
『(問) 2点目の質問ですが、今回の提案というのは総裁の提案という理解でよろしいのでしょうか。また、先程critical
moment というご説明がありましたけれども、総裁がその辺のことを胸に抱いたタイミングというのがいつ頃だったのかをお聞かせ下さい。』
『(答) 金融政策決定会合における議論については、議事要旨という形で公表されることになっていますので、具体的に申し上げることは避けたいと思います。』
まあこれは良いとしまして。
『展望レポートが議論される中で、金融政策について、ここで、追加的な緩和──「量的・質的金融緩和」の拡大──を検討すべきだという意見が委員の方々から出され、それを踏まえて執行部に案を作ってもらい、それを巡って議論し、「量的・質的金融緩和」のかなり思い切った拡大を決めたわけです。』
まあ執行部も「政策委員」ですから委員の方々からというのは貴殿の事ではないでしょうかと思いますけれども、展望レポートを議論しているんだったら潜在成長率が下がっている中で追加緩和をして2%の物価目標に短期的に強引に近づけようというのは必ずしも正しいかどうか判らんという話になると思うのですけれども何で追加緩和を検討すべきかという話になるんでしょうかねえ。
つーか景気回復と物価上昇のメカニズムが労働需給一点張りになっていますが、でしたらまあ追加緩和が需給ギャップにどのような影響を与えるのかという説明を頂きたいのですが、この先の質疑でも残念ながらそのような説明は無く、単なる「決意」とか「3」とかの話しかない訳でして、そらまあ初回の昨年4月は気合も判るのですが1年半継続して結局また気合かよという所ですな。
『その理由は、先程申し上げた通りであり、また、この点は「量的・質的金融緩和」の拡大についての公表文でも触れている通り、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがあるということから、日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を思い切って拡大するべきであるという結論に至ったわけです。』
こうやって無駄に繰り返しをするのは好意的に見れば気合を強調したいという事ですが、悪意を持って見ますと他に話すことが無いので同じ話を繰り返して時間を稼いでいるという事でもあります。
『私自身も色々な指標を見て、感じるところもありましたし、政策委員の方々も色々とお考えだったと思いますが、より具体的には、政策委員の経済見通しが出され、議論する中で、「量的・質的金融緩和」の拡大が必要であるという意見が出され、今申し上げたような決定に至ったということです。』
ほうそうですか(白目)。
・量的な説明皆無キタコレ!!!
これは直球質問。
『(問) 2点お尋ねします。まず、なぜ10〜20兆円の拡大をしたのかという理由です。もう1点は、日銀はこれまでも大規模な金融緩和を続け、所期の効果を発揮しているとおっしゃっていましたが、今回、10〜20兆円増やすことによって、人々のインフレ期待が急激に変わるのか、その効果についてもう少し詳しく教えて下さい。』
(;∀;)イイシツモンダナー
『(答) マネタリーベースの増額ペースを約60〜70兆円から約80兆円に拡大する際に、資産の内容として、長期国債の保有残高の増加幅を更に30兆円拡大するなどの措置を講じました。これは先程申し上げた通り、足許の消費の弱さや、特に原油価格のかなり大幅な下落によって、物価上昇率が、やや下がってきており、そうしたことが続くと物価上昇期待自体も下がってきてしまいます。そうなると、例えば、将来の賃金や価格の設定についても下がってくる恐れがあります。そうなると、せっかく実現しつつあるデフレマインドからの転換が大幅に遅れてしまう懸念があり、そうしたリスクを未然に防ぐ観点から、必要十分な拡大をしたということです。』
全然答えになってNEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!
『また、今回の政策により、どのような効果が期待されるかという点については、それぞれの委員がそれぞれの考えで経済見通しを出し、今回の展望レポートに添付されています。それを見て頂いてもわかりますように、物価面を中心に、それなりの効果が出るのではないかと思います。』
もうお前ナメトンノカという答えですが、要するにそういう答えしか出来ないということですので、ここは一発木久扇師匠の木久扇モデルとやらがある筈(以前山本幸三先生がモデルを使って必要なMBについて説明していたから無いとは言わせない)なので、師匠のご登場を切にお願いしたいと思いますし、2年で2%に届かない場合の説明責任を果たすと仰っていたのですから今こそ説明をお願いいたしたく存じますのではよ出てこいやオラオラオラ!!!!
・2年で2%は諦めたんでしょうかとか何で見通し下がっているのかという件
『(問) 今回の追加緩和を受けても、昨年4月の導入時におっしゃられた、2年程度で物価2%を目指すという考えは、今の時点でもお変わりないでしょうか。また、今回の追加緩和を織り込んでも、展望レポートの政策委員の物価見通しをみると下振れていますが、これは政策委員の中で緩和効果に疑問を持っている人がいるということなのでしょうか。追加緩和をしても物価見通しが下振れている理由について、総裁のお考えをお聞かせ下さい。』
そらまあこの調子でゴリゴリやられたら目が泳ぐわなとは思います(・∀・)
『(答) 第1点目については、全く変わっておりません。2年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に物価安定の目標を実現するという、そもそもこの「量的・質的金融緩和」の目的がそういったものでありまして、この考え方は全く変わっておりません。』
ほほう。
『もちろん、2年程度というのはもともとある程度幅を持たせた表現であり、そのうえで、昨年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した直後の展望レポートでは、2014年度、2015年度の見通し期間の後半にかけて2%程度に達する可能性が高いとしていました。その後、本年4月の展望レポートでは、見通し期間が2016年度まで延長されましたので、2014年度から2016年度までの見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高いとしていました。』
言い逃れキタコレ。
『今回の展望レポートも全く同様に、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いとみており、そういった見通しに変化はありません。いずれにせよ、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現するという考えに変わりはありません。』
ということで「追加緩和をしているのに見通しが下がっていているとはナメトンノカ」という質問に対しては全く答えていませんな。
・円安進行は国民厚生上問題があるのではないかという質問だが・・・・・・・・・
『(問) 総裁は、本日の会合より前も、原油価格が下がり、ガソリン価格が下がるという現状がある中で、基本的に需給ギャップの縮まり等を通して物価が上がるモメンタムは変わっていないというご説明をされていました。それがうまくいっていると言っていて、国会でもそういった答弁をされていたと思います。それがこの2、3日で急に変ったような唐突感を覚えるのですが、物価上昇の基本的なメカニズムというものが変わっていないのかをお伺いしたいと思います。』
これ前段の質問なのですが最後の聞き方が非常に残念で、コミュニケーションポリシーの方で質問すれば良いのにとしか思えん。
『また、既に円安も進んで、地方を中心として円安によるコストプッシュインフレみたいなものを非常に気にされている声もたくさんあり、かえって消費の減退を招くのではないかというリスクも懸念されてきたわけです。あえてここで追加緩和により、さらにリスクを高めるとも言えると思うのですが、そこについてはどのようなご見解でしょうか。』
なので質問するならコミュニケーションで質問するか円安のインフレが目指す姿なのかのどちらかを聞けばよかったと思う。なぜなら答えですけど・・・・・・・・・
『(答) 「量的・質的金融緩和」の基本的なメカニズムは、全く変わっていませんし、その好循環のメカニズムがなくなってしまったということはないと思います。』
と逃げた挙句に以下繰り返しの説明を延々と展開されるのですが、まあ誤魔化しの見本として引用しておきますね。
『基本的に、非常に明確な形で、2%の「物価安定の目標」に強くコミットし、それを裏打ちするために大規模な量的・質的な金融緩和を行うもとで、イールドカーブ全体、名目金利全体を押し下げることを行い、さらにはリスク資産も買い入れて、リスクプレミアムを圧縮しています。同時に、物価上昇期待を引き上げて、実質的な金利、あるいは実質的なリスクプレミアムを圧縮することを通じて投資や消費を刺激し、経済全体を成長させることによって、いわゆるGDPギャップを縮小し、賃金、物価の上昇圧力を作っていきます。そして、またそれを物価上昇期待でさらに押し上げていくという基本的なメカニズムは、変わっていませんし、それはこれまで予期していた効果を発揮してきたと思います。』
『ただ、先程申し上げたように、このところ消費税の駆け込みの反動減の影響が自動車等でやや長引いています。そうしたもとで、ごく最近ですが石油価格が大幅に下落し、そういったことから現に消費者物価の上昇率も少しずつ縮小してきているといったことが起こって、それが今後さらに続くとすれば、やはり物価上昇期待に対する影響も懸念されますし、そもそも好循環にマイナスの影響を与えるリスクがあります。そういったリスクに未然に対処するために、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定したということです。』
クドクドと同じ話を繰り返す攻撃キタコレ!!!
『なお、この緩和措置というのは、あくまでも今申し上げたようなことを通じて物価安定目標の早期達成をより確実にするために行うわけであり、為替相場等に対する影響を目的としたものではありません。』
ということで、前半のクドクド説明は肝心の「円安の国民厚生」という質問に対して全然答えないで逃げるための前振りでして、これは同じ話をクドクドとされると聞いている方も疲れてきて肝心の所を答えて居ない事にその場では気が付かない可能性が高まる、というこの手の会における基本的なテクニックの一つであります。
・どう見ても戦力の逐次投入ですが
『(問) これは、いわゆる戦力の逐次投入という指摘は当たらないのでしょうか。』
剛速球質問キタコレ。
『(答) 全く当たらないと思います。』
クソワロタ。
『というのは、先程申し上げたように、基本的に「量的・質的金融緩和」の効果は予期した通りの成果を上げてきています。ただ、様々な要因があって――原油価格の大幅な下落も1つですが、消費税の反動減がやや長引いていることや、あるいは世界経済の見通しが、最近のIMFの見通しでも、さらに若干引き下げられたことなど、様々な要因がある中で――、ここで示したリスクが出てきているのです。これが実際に顕在化し、せっかくデフレマインドを転換させてきている途中で、またデフレマインドの方に戻ってしまっては、これまでの成果が減ってしまいますので、そういったことにならないように、こういう対応をしました。』
『様々な要因からリスクが出てきたので、それに対応したということで、戦力の逐次投入にもなりませんし、逆に言えば、これでは不十分でこういったリスクに対応できないとは全く思っていません。これだけのことをやれば、こういったリスクに十分対応できると思っています。』
いやシナリオ通りに行ってて効果を発揮しているのに追加緩和だからどう見ても逐次投入だろ。
・質問が長いが面白いかつ辛辣ですが答えは完全に逃げです
『(問) 昨年4月4日に異次元緩和を実施されて1年半が経ちました。金融政策は、大体1年から1年半ぐらいで効果を現すということですが、今がちょうどそういう時期になっています。』
師匠もそう言ってますな。
『新たに示された経済見通しをみると、今年度の成長率は0.5%に引き下げられて、物価見通しは1.2%に若干引き下げています。これを黒田総裁が就任される前の、2013年1月の白川前総裁の最後の見通しと比べると、当時の2014年度の見通しは、コアCPIが0.9%、成長率が0.8%でした。つまり、物価については、まだ辛うじて上回っていると言えますが、成長率については当時の見通しすら下回っています。』
(;∀;)イイシテキダナー
『つまり、物価はどうにか上がっても成長率は上がらないということを端的に示していると思います。今日の展望レポートでも、こっそりとまでは言いませんが、潜在成長率の評価を引き下げられています。つまり、日本経済は一段と成長しないという姿になっています。』
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
『先程、「量的・質的金融緩和」は、予期していた効果を発揮してきたとおっしゃいました。ただ、結果としては、物価がちょっと上がったけれども成長率は一向に上がらない、むしろ下がったという姿になっています。』
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
『日銀法では、物価の安定を通じて健全な経済発展に資することを理念とすると書いています。この理念にすら反していると思うのですが、このQQEというのは本当に効果があったのか、これからあるのか大いに疑問があるのですが、如何でしょうか。』
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
『(答) その点は、私は全く意見が違いまして、今おっしゃったことは単にかつての見通しが甘かったということを語っているというふうに思います。』
まずこの時点で全然違うだろおいという事ですし、言うに事欠いて前任者の見通しが甘かったので今の見通しが前と対比して弱く見えているだけですとかもうヤケクソですな。
『私どもは、昨年4月4日に「量的・質的金融緩和」を導入して以来、経済の実態を常に慎重、冷静に点検し、金融政策として必要かつ十分なものかどうかというのを毎回の政策決定会合で議論をして参りました。そうした中で、先程申し上げたような消費税の駆け込みの反動減が耐久消費財でやや長引いているとか、世界経済の見通しが全体としてやや下振れているとか、そうしたもとで原油価格がかなり大幅に下がったといった現状を踏まえて、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成するために、デフレマインドの転換が遅延するリスクを未然に防ぐという観点から、「量的・質的金融緩和」を拡大したということです。』
またこれです。
『実質成長率は、色々な要因で様々に振れています。そうした中で、中長期的にみた潜在成長率は、常に申し上げている通り、基本的には金融政策でどうこうするというよりも、構造政策、成長戦略に係わるものだと思います。ただ、その中でも、デフレ下では、どうしてもイノベーションが行われない、リスクテイクが行われない、十分な投資が行われないということになりがちです。』
『そこで、2%の「物価安定の目標」を安定的に持続できる形になれば、企業や家計が緩やかな物価上昇を前提にして、賃金とか価格あるいは投資その他を決める、ということで、より望ましい経済成長になるということであり、この点、私どもの考えは現在も全く変わっていません。』
デフレが良くない、という話と「短期間で2%の物価目標を目指す」というのは別次元の話で、デフレが良くないのであればデフレ脱却に向けた動きをすれば良い話で、そのための方便で短期間で2%の物価目標を目指すと言いましたが潜在成長率が中々上がらないので2%目標は急いで目指すものでは無くてもうちょっとだけ長めのスパンで目指した方がプレッシャーかからないですよね的な現実路線に転向する(浜田先生とかそういう話をしてますよね)のかと思いきや足元では潜在成長率が下がっているのにより過激に特攻するという流れになっているという答えになっていますな、オソロシス。
・1.7%だが後半大きく伸びるという見通しのようで
『(問) 今回の緩和は必要かつ十分な緩和とおっしゃいましたが、2015年度のCPI見通しを見ると、中央値で1.7%、かつ分布チャートを見ますと下振れリスクがあるような形です。これで本当に必要かつ十分なのかと疑念の余地もあるわけですが、必要かつ十分だと言い切れるその理由をもう少しご説明頂けますでしょうか。』
そらそうなるわな。
『(答) これはもちろん、政策委員の方々に年度で見通しを出して頂いており、半年とか四半期とかそういうものでは全然ありませんので、何とも申し上げられませんが、基本的に、2015年度の前半は、原油価格の下落が物価の下押し要因として働いていきます。そして、年度の後半にかけて、こうした下押し要因が剥落するもとで、需給ギャップの改善や予想物価上昇率の上昇を背景にして、消費者物価の前年比は伸びを高めていくとみられます。従いまして、引き続き2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いと思います。つまり、2015年度の消費者物価の見通しが幾分下振れたのは、1.9%という中央値から、1.7%に落ちたわけですが、それは主として原油を初めとする国際商品市況の下落によるものであり、そういったものは先程申し上げたように、年度後半に剥落しますので、十分この1.7%という見通しの中央値のもとでも、2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いと、そのように考えられるからこそ、展望レポートにそのように書いてあるわけです。』
つまり見通しが低い委員がいるから下振れリスクが高くなり、1.7%になっているのは手前が落ちたから年度平均の数字が下がっただけで後半の見通しは同じですという言い訳になっている訳ですな、うんうん。
2014/11/04
お題「追加緩和の論点:コミュニケーションについて&オペのフィージビリティについて」
ということで追加緩和の論点ネタ続きであります。
#うひゃー最も見たくないアレな物体がモーサテに出てるからチャンネル変えるか
○騙し討ちキターということで旧法時代に里帰りですねわかります
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf
今回の声明文における決定に至る理由の部分を引用しましょう(しつこいですが)。
『2.わが国経済は、基調的には緩やかな回復を続けており、先行きも潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。ただし、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断した。』
でまあ今回はアダプティブなインフレ期待の維持というような話と、モメンタム維持という文言に見られますように物価の上昇に勢いを付けたいというのがあるのは把握しました。
・・・・・というのは判るのですが、直近までの黒田総裁をはじめとする執行部の見解はこの声明文の「しかし」以前の話しかしておりませんで、この「しかし」以降の話は別にしてませんでしたよね急に何を言い出しているんですかというのが誠に遺憾としか申し上げようがないことであります。
会見(はテキスト出たらやりますが)での説明ではやたらと早期に2%をヒットさせる事に拘った説明をしているように見受けましたし、声明文にある「モメンタム」というのも踏まえて考えますと、急に「何でも良いから強引に2%に引き上げに行かないといけません(キリッ)」という話に急転換したとしか思えませんで、その間のプロセスがさっぱりワカラン
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141018a1.pdf
2014年10月18日
日本経済と金融政策── 日本金融学会2014年度秋季大会における特別講演 ──
だいたいですな、この前執行部の腰ぎんちゃくと思われる宮尾さんの講演でも、
『国民の望む「物価の安定」とは、単に物価が上昇するだけでなはなく、雇用、賃金、企業収益の改善などを伴いながら、経済がバランス良く持続的に改善し、その結果として、物価の緩やかな上昇が実現する状態を指します。』(上記URLの宮尾審議委員講演より、以下同様)
ということでモメンタムとかそういう話じゃなかったですし、
『その目標を、消費者物価上昇率で「2%」としたのは、経済の成長力や競争力強化へ向けた幅広い主体の取組みが進展し、持続可能な「物価の安定」と整合的な物価上昇率は上昇していくという認識に基づいています。』
って言ってるけど今回の展望レポートでは潜在成長率の推計値を引き下げているんだから、そうであったらそもそも論として「短期間で2%」を目指す事自体が妥当なのかという議論になってしかるべき(よりフレキシブルに考えるのなら話は別だが)ですが、そういう話も何も無しで急にロジックがワープしている辺り何ちゅうかお前ら昔の「衆議院解散と公定歩合についてはウソをついてよい」時代に戻ったのかよとしか申し上げようが無くて、新日銀法とは何だったのかという話になりますな。
○プレゼンの「3」は悪乗りに過ぎる件&追い込まれるのが先か爆発するのが先か
でまあ会見の中継も当然ながら見たのですが、そこに用意されているフリップが「3」を並べているのにもう血圧急上昇ですよ先生(ちなみにETFとREITが3倍で7年が10年までになるので年限が最大3年で長期国債が50兆から80兆だから30な)。
えーっとですな、前回が2倍だからとりあえず3の数字を出してこけおどしをしようという事なのだと思いますが、何度も申し上げておりますように、展望レポートのメカニズムとかも単なる「労働需給の改善で需給ギャップ改善」「賃金上昇で経済の前向きメカニズムが回る」という労働市場一点張りになっていますし、先般来申し上げておりますように、そもそも論としてMB拡大の効果についてのレビューも説明も無い状況なので「追加緩和やって物価目標行くんですか」というのが信用されてないでしょうから、株価とか為替が頭打ちになると早速催促相場になって「じゃあ次は4ですか」という事になるんでしょうね。
何か薬使っている内に効きが悪くなってもっと薬をとか言って更に強いのをやっているうちにラリパッパ状態になっているとしか思えないプレゼン振りに落涙を禁じ得ないですが、良く良く考えてみると今回の政策はMB拡大ペースは10兆円増えただけで、短国拡大できないから長期に振り替えたのと、ETFとREITの買入ペースを拡大した(これがどの程度の定量的な物なのかは株の人に聞かないとよく判らんのでパスしますが)という内容ですので、「3」という数字でも出して威勢よくプレゼンする(のと騙し討ちしてサプライズ演出する)のしかできないのかねとは思う所であります。
つまりですね、今回逐次投入(逐次投入にしては小出しじゃなくて有り金勝負っぽいが)を開始しましたので、次回に関しては市場から催促攻撃が来て「4」を出すしかないですなという話になるでしょうし、別に今回の施策によって「安定的な2%」のタイミングが近くなるとは到底思えない訳ですから、今回の追加の賞味期限いつまででしょうねという話になりますし、次はより無茶振りな「4」を出さないと効きません罠、というラリパッパ状態の拡大から廃人コースというのが見え見えなだけに実に辛いですな。
だいたいですな、この次で申し上げますが輪番のフィージビリティを簡単に考えますと、来年のフローの買入ペースがカレンダーベースの国債市中発行にかなり接近してくるという状況であって、一方で2%物価目標達成がどうのこうのという話をする訳ですから早いうちに実際の物価が1.5%位まで上がらないと話にならないという状況なのですが、オペのフィージビリティを勘案しますと2%以前の1.5%水準に行くよりも前に債券市場の方がオペ回らなくなって爆発する方がオソロシスという話でもあったりしますorzorz
○来年の長期国債買入はフローベースで110兆円(以上)とな
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf
声明文にありますように今回は年間80兆円ペースで長期国債の買入を拡大ということになっております。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/mei.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高
直近の数字は10月20日の残高になりますが、こちらの残高から来年の償還銘柄の額面を拾って来まして(2年324-335、5年88-94、10年268-276、20年28-30、変国8-10、物国4-6)全部足し合わせると29兆9833億円となりますので、既に現時点で来年の償還額が貫録の30兆円となります。
これから買う中でも来年償還物があるでしょうし、大体からして1年以内輪番での買入は1年以内で償還が来るので、それも加えるとフローベースでの来年の長国買入額は110兆円以上になるという事ですが、ここで今年度のカレンダーベース市中発行額を見てみましょう。
<カレンダーベース市中発行額>
http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2014/calendar131224.pdf
なるほど当初ベースで155.1兆円かまだ45兆円少ないな・・・・・・などと瞬間思ってしまいそうですが、よくよく考えるとここには1年短国が入っていますので、長期国債の市中発行額を計算する際には27.5兆円引かないといけないので、カレンダーベースの市中発行を昨年並みで置くと長期国債の市中発行が128兆円程度の所にフローベースで110兆円を購入するということで、これを新発国債引受と言わずして何というのでしょうかという大変にアレな話で、しかもこの日銀ちゃんは短国買入で見られましたように別に割高割安とか適正価格とかいう概念が無く高級掃除機のように盛大に成行で国債を買ってくるというのは既にご案内の通りで、その結果短国市場が見事に死亡してしまった訳ですから、どこからどう見ても次に死亡するのは債券市場(まあ既にだいぶ死んでいるのですが)です本当にナムナムという所ではございます。
○ということで買入の方も相当苦労しそうですな(買入予定表キタコレ関係)
夕方5時前くらいに出てましたっけ。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141031e.pdf
当面の長期国債買入れの運営について
『日本銀行は、長期国債買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2014年11月4日より適用)。なお、来月以降は原則として、毎月、最終営業日に公表することとします(次回は11月28日に公表する予定)。』
何せ今回は量をどどーんと増やすので実際に買うにあたってちゃんと回るのかというのが心配されるという状況でして、もはや平均残存を揃えに行くとかそういう細かい話を気にするよりも「物理的に回るのか」というのが重大という流れになりそうなので、様子を見ながら毎月変更するのは買入する方としてはそうなるなあとは思います。
でまあそれはそれで仕方ないとは思うのですが、年間フローベースで110兆円の買入を行い、しかも買ったものを全く売らないというオソロシスな投資家(ついでに言えばレポ市場への品貸しも消極的(国債補完供給はT+0じゃないと出てこないし5営業日までしかロール出来ないとか市場基準で言えば「買い占め締め上げ投資家」にしか見えません)という人の動きが毎月可変というのも何ともアレな話ではございます。
つまりですね、日銀の買入内容が債券市場の需給に圧倒的に影響を与えていくのが明白な中で、買入の内容が毎月変わるという事になりますと、債券市場の読みで一番重要なのが「来月のオペ明細がどうなるのか」って最早それ相場でも何でも無いですがなと思います。
それから金融市場局気が利かねえなあと思うのはこの公表が「月末」となっている事でして、どうせ月末ったって月末の引け後に公表だと思うのですが、月末というのは債券インデックス対比で投資を行っている人たちが翌月のインデックス更新に対応して売買をするタイミングでございまして、翌月のイールドカーブに思いっきり影響を与える案件が月末の引け後に出てくるとなりますとインデックス系の投資家は月末にインデックス更新の売買するの非常に困るんですけど、まあこれは25日くらいに公表することにしてくれれば済むだけの話ではありますので改善をお願いいたしたく存じます。別に金融市場局で出すものだしタイミングの問題だったら数日前に倒すのも別に問題ないでしょと思いますのでよろしゅうに。
では内容に関して。
『1.買入金額 毎月8〜12兆円程度を基本とする。ただし、政策効果の浸透を促すため、市場動向を踏まえて弾力的に運用する。』
政策効果の浸透云々よりも「買入が出来るか」という感じだと思いますが、これだけのレンジを取っているのは何でですねんというのはあります。今後の買入はオープンエンドになるので、償還ペースに合わせて買入の増減をある程度やって、残高の増加ペースをできるだけ一定に近くしたいという積りなのでしょうかねえ。
『3.国債種類・残存期間による区分別の買入金額 別紙のとおり』
ということで別紙の方ですけどね。
1年以下:1,100〜2,500程度×2
1−5年:5,000〜12,000程度×6
5−10年:4,000〜6,000程度×6
超長期:1,300〜4,000程度×5
変国:偶数月1,400程度
物国:奇数月200程度
ということですが、今生きている紙と比較しますと、中期の上限が7000億円から1.2兆円、超長期の上限が3500億円から4000億円に引き上げられていまして、これはとりあえず中期の買入を思いっきり増やして残高を稼ぐという事でしょうが、中期って今さらポートから外すほど玉持っている人いるのかよと思いまするに実にいやーな予感しかしません。中期の金利が馬鹿低下するのか買えなくなって輪番の買入が長期にシフトするのかよく判らんですが兎に角開けてみないと判りませんな。
ただまあいずれにしても月額10兆円近くの買入フローとかどう見てもこれ1年持たせられるのかも微妙じゃないのと思われますし、金利先高観でも出てくればそらまあ日銀に売りたい人はワサワサ出てくるかもしれませんが、今回の追加緩和決定が物価を2%に上げる事に直接的に繋がるとは到底思えない(円安で瞬間芸で押し上げは出来てもそれはただのコストプッシュ)という風に思っている中なのでそう簡単に売りが出てこないでしょと思いますけどねえ。
あと、今回追加緩和のどさくさに紛れて長期の下限を4000億円に下げて現状追認しているのですが、そもそも今生きている紙の時点でもとっくの昔に1回の買入額が4000億円でして、追加緩和のどさくさに紛れて下げてくるとか姑息にも程がありまして相変わらずディテールを見ると市場をナメトンノカという感じではありますな。
ちなみに、これ買入資産サイドの話だけしましたが、そもそも論として「これによって拡大する超過準備を誰が持つのか」という事を考えますともっと絶望的になる訳で、誰が超過準備を持つのかと考えますと結局短期市場とかにも盛大にプレッシャーが掛かってくる事になるんでしょうなあと非常にくらーい先行き見通ししか出てきませんが、これで物価全然上がらなかったらおまえら常盤橋公園の便所に頭突っ込んで反省してこい(くらいでは済まないが)という所ですな。
#なお、年内の短国買入に少し負担が軽くなる筈(その後は上記の理由でやっぱり酷い事になると思われますががががが)なのですが、いつものパターンだと5日に保有銘柄残高が出るのでそこで長期国債の方も含めて計数確認をアップデートする所存
2014/11/03(休日特別更新シリーズ)
お題「こりゃビックリの追加緩和:その1政策ロジック編」
で余りにも論点が多いので幾つかに分けてこれから徐々にアップしていきます。まずは政策ロジックの面からツッコミ所を幾つか申し上げようかと思います。本当は土曜日からアップするもんなのですが例によってぐうたらと頭を眠らせてあまり動いていなかったので週明けに向けて祝日だが月曜日なのでリズムを取り戻す為に書くというものです。
○全体を一応確認しつつ追加緩和はわかったがこれまで行った政策効果の検証は無いのかという点
やや時間が長かったのは展望レポートの楽観見通しで揉めたのかと思っていたらこんなに早く「降参」するとは思ってませんでした。いやはや話が違うじゃねーか。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf
「量的・質的金融緩和」の拡大
『(1)マネタリーベース増加額の拡大(賛成5反対4)(注1)
マネタリーベースが、年間約80兆円(約10〜20兆円追加)に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。』
実際は足元が70兆円のペースで拡大しているので「10〜20」と書いてある20兆円の方はイカサマにも程があってまずこの時点で毎度おなじみのイカサマプレゼンが出ていますがその話はまた後ほど。
『(2)資産買入れ額の拡大および長期国債買入れの平均残存年限の長期化(賛成5反対4)(注2)
@ 長期国債について、保有残高が年間約80兆円(約30兆円追加)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する。買入れの平均残存期間を7年〜10年程度に延長する(最大3年程度延長)。
A ETFおよびJ−REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円(3倍増)、年間約900億円(3倍増)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。新たにJPX日経400に連動するETFを買入れの対象に加える1。』
MB拡大ペースを年間10兆円分引き上げるのですが、従来の70兆円の枠組みの時に20兆円拡大するという事になっていた短期国債およびその他固定金利オペや貸出支援がどこからどう見ても無理になり、現実問題として短期国債入札までもがマイナス金利に突入してしまい、そこら中からカチコミが飛んできているのは兎も角として、この調子で来年も継続するとなると短国金利がどこまでマイナスになるのかもわからんという状況でしたので、短期が買えなければ長期を買えば良いじゃない攻撃を行ったのに加え、当初QQE導入した時よりも発行年限が新規発行分でもストック分でも長期化したことを踏まえて買入の平均年限を長期化しましたという話だが、短期のフィージビリティは一息ついた(が結局これだけの長期国債を買ったら担保足りなくなるだろうし、そもそも誰が当預を積むのかという話もあるがそれも後ほど)けど今度は長期国債市場の方に無茶苦茶なプレッシャーが掛かるという話なので、結局国債市場は長期も短期も将来的に碌な事にならないのは自明。
でまあおじちゃんあまり詳しくないのですが、ETFとREITってこれフィージブルなのですかねえ。何か1兆円のペースをいきなり3兆円とか3の数字合わせみたいな言葉遊びの勢いで3倍にされているのですけどインデックスばっかり強くなるとかREIT物あるのかよとか大丈夫なんですかねえ。
・・・・・・・とまあそういうことで盛大に戦力の逐次投入が実施された訳でございますが、何せ今回の施策の説明に関して声明文および会見(会見テキストはどうも週明けのようなのでそのネタはまた水曜にでも投下予定ですけど今回の会見放送見たら黒田さん顔ひきつってましたよね)での説明を見ますと「下振れ対応」なのは判るが、そもそも論として昨年4月5日のQQE実施において何度も黒田さんは「必要かつ十分な措置を実施」したと説明していましたし、その後の展望レポートなどでも含めて2回の消費増税についても織り込んだ見通しを出していた筈なのですよね。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1304a.pdf
『(答) 今回、必要な措置は全て採ったと言ってよいと思います。もちろん、経済も金融も生き物ですので、その時々の状況をみて、必要があれば躊躇なく調整していきますが、2
年で2%の物価安定目標を達成するために、現時点で必要な措置は全て決定したと考えています。』(昨年4月4日総裁会見の4ページより)
そらまあリーマンショックみたいな外的ショックが起きれば2年を待たずして何らかの追加緩和を実施するのも仕方ないのですが、今回の声明文の説明がどうなっているのか確認しましょう。再び今回声明文から引用します。
『2.わが国経済は、基調的には緩やかな回復を続けており、先行きも潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。ただし、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断した。』(今回の声明文、以下同様)
消費税増税の影響という当初予定通りの事象に加えまして、原油価格の下落というのを入れていますが、そらまあ高値からは下がっているけど別に価格ショックという程の物でも無いですし、大体からして原油輸入国の日本では原油価格が下がって別に困る話ではない(まあさすがに書いてありますが)訳で、この原油価格の下落を捕まえて外的ショックというのは無理があります罠というところです。
・・・・・・・・となりますと、そもそもの経済物価見通しがおかしかったという可能性があるのですが、基本的に消費税そのものは理念的には短期的に言えば駆け込み需要とその反動がチャラ、中期的には消費税で減少する可処分所得分が財政による分配によってどのようにカバーされるのかという点がポイント、とまあそういう話になりますので、経済見通し云々よりは「そもそも論として過激なまでに行っているMB拡大政策が妥当なのか」という点を考え直さないといけないのではないでしょうかねえ。
なお、今回若干良心の呵責でもあるのか声明文の3番がちょっと面白くなっていますけどね。
『3.今後も、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う2(注3)。』
前回の声明文の当該箇所ではこのように記述がありました。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141007a.pdf
『6.「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。』(これは前回10月7日の声明文)
ご覧になれば判りますように、今回はさすがに恥ずかしいと思ったのか『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており』というのが抜けておりますが、ただまあ総裁会見の説明ではやはり効果を発揮している的な説明をしていたように記憶しておりまして(詳しくは週明けに出る会見要旨を見る)、結局の所MB投入は効果がある(キリッ)という話になっているのですよ。
しかしですね、少し考え直して頂きたい訳でして、そらまあMB拡大は金融緩和方向になる(少なくとも量的な意味での引き締めにはならん)のですが、そのMB拡大の定量的な効果に関してのレビューも無い状況で「足りないから追加すれば良いじゃないか」というのは、戦局が好転しないから兵士を輸送船で送り込めば良いじゃないかと言いながら大した護衛もつけずに丸腰同然の輸送船を送り込んでバシー海峡でガンガン沈められるわ無事に到着しても物資も武器弾薬も無いので結局使い物にならないわとなっていたどこぞの国の戦争末期とどこがどう違うのかと小一時間問い詰めたい訳でありまして、そらまあ作戦参謀でございと言って椅子にふんぞり返って動員する方は数字合わせだけしてれば満足かも知れませんが、バシー海峡で海の藻屑にされてしまうが如き仕打ちを受ける金利市場関係者としては何の為にその動員を行っているのかきちんと説明しろやと蓆旗でも立てて押し寄せたくなる心境であります。
ええまあQQEの当初導入時に関しては定量的な部分ってやってみないと判らない的な所もあったかもしれませんけれども、既に始まってから1年半も行ったのに未だに定量的なレビューが何もないとか非伝統的政策だから判らんで済ますには余りにも無茶苦茶な話で、これがまあ市場機能とかその辺に対して特段毒にも薬にもならない話ならああそうですかでスルー出来る可能性はあっても、ここまで市場にプレッシャーを掛けた上に、更にもっと強烈なプレッシャーを掛けて金利市場そのものを壊そうとしているのですから、これまでのMB拡大政策がどのように2%物価目標に対して効果があったのか、そしてこれから拡大する予定のMB(および資産サイドの構成)がどのように効果を出して2%物価目標を早期に達成できるのか、という点について「量を出せば効くに違いない」とか「気合」とかでは無いきちんとした見方というのを「政策委員会として」示して頂きたいですし、まさかそのような事は無いと信じていますが、「2じゃインパクトが無いから3だ」みたいな木っ端役人の数字遊びをベースにしてこの追加緩和の数字が作られたなどとい事では無いという事を(日銀レビューみたいな「日銀の見解ではなく個人の見解です」的な逃げの入ったモノではなく)政策委員会としてきちんと示して頂かないと、ほとんど丸腰の輸送船でバシー海峡に送り込まれる方はたまったもんじゃないですよと申し上げておきましょう。
とまあそういう事でして、話の途中で決定内容の確認もしたのでグダグダになったので改めて纏めますと、今回の決定を見て明らかになったのの一つが「政策手段の妥当性に対する効果測定も検証も行っていない」という事でありまして、これだけの市場へのプレッシャーおよび価格形成を歪ませるような副作用を発生させても実施する程の定量的な効果が本当にあるのかのレビューも無ければ先行きの見通しも無いとか、戦争末期で敗戦待ったなし状態のダメダメ軍隊のようで落涙を禁じ得ません。
つーかですな、MB拡大の定量的効果が明らかでこの追加によって確実に早期2%物価目標達成出来るのであればそらまあ一時的なプレッシャーは耐えるしかないでしょうとなりますが、そもそも1年半MB拡大を盛大に実施したのに実は足りませんでしたという状況なのにここから追加して意味があるのかというのもありますし、大体からしてフィージビリティを検証(は後でやります)するまでも無く年間80兆円の国債買入残高拡大とか何年も継続できるとは到底思えない(というか1年持つのかも分からん)のですが、そのフィージビリティが爆発する前にきちんと2%目標が達成されるというグランドデザインが全く示されない(示すも糞も検証していないのだから無理)のに3だから80兆円とか悪乗りプレゼンのノリで政策投下して大丈夫かとしか思えん。
○そもそも2%物価目標に関する定義もちゃんとできていない点について
さてさて、今回の特徴は何せ「実務家の政策委員が全員反対に回った」という所でして、毎度の木内さんは兎も角として、石田さん、佐藤さんに加えまして、基本的に今まで執行部提案に反対はしなかったし、講演などでも執行部見解のリファーから大きく外れる事のなかった森本さん(前職は東電副社長)が反対に回ったというのが前回のQQE実施とは大きく異なる点です。
まあ反対した委員の理由はさすがに今回の決定会合議事要旨では詳しく出るでしょう(それより10年後にじっくり読みたい)とは思いますが、声明文では反対理由に関しての説明は無いのが仕様なので理由は足元では想像するしか無いのですが、今回の追加緩和決定理由に該当する声明文の項番2を見ると大体状況が推測できるというものです。ということでさっきの項番2を再掲。
『2.わが国経済は、基調的には緩やかな回復を続けており、先行きも潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。ただし、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。』
という所まででは追加緩和をする理由になっていません。以下がポイント。
『しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断した。』
ナンジャソラとしか申し上げようがない説明ですけれども、期待インフレ率上昇のメカニズムとして、
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1401a.pdf
『そういった政策のアナウンスメントに対応してフォワード・ルッキングに上昇する部分もあると思いますが、実際に物価上昇率が上がっていく過程の中で、いわばバックワード・ルッキングに予想物価上昇率が上昇していく要素も、両方あると思います。』(本年1月22日総裁会見の6ページから)
ということで、バックワードルッキングにアダプティブなインフレ期待形成、というのがあって、この説明ですとまずはその点を意識しているというのもあるのでしょうが、「好転している期待形成のモメンタムを維持」とは何ですねんと考えた場合に「2%物価目標」に対する実務家の皆様と日銀執行部(および腰ぎんちゃくの役にしか立っていない曲学阿世の学者審議委員諸氏)の見解の相違というのが見えてくるように思えます。
つまりですね、「期待形成のモメンタム」というのはよーするに「とにかく勢いで2%を何とかヒットさせる」ことによってバックワードの期待形成も更に強めて2%インフレ予想をアンカーさせたいというお話でありますし、これまた会見での総裁の説明が(記憶に間違いが無ければ)明らかにそういう趣旨の説明になっていて、CPI(中長期的には総合なのですが短期的にコアでしょうかね)2%という数値をできるだけ早期に叩きだしたい、というのが今回の「実際には途中でゴメンナサイしている追加緩和」になった訳でしょう。
一方で木内さんの場合は2%は中長期的に目指すという話ですし、佐藤さんの場合は2%目標という概念についてよりフレキシブルに考えるべきであり、足元のCPI数値を過度に重視するのではなく、よりフォワードタ―ゲット的な説明ですし、石田さんも佐藤さんと似たような話をしていました。森本さんは今まであまりその辺に触れていないのでよく判りませんけれども、実務家として考えた場合にやはり同様に足元のCPIヒットを過度に重視するあまり、国民厚生的に必要が無い施策を実施するのは如何なものかという論点なんでしょうなあと想像しますが、こればっかりは議事要旨を見ないとよく判りませんのでとりあえずこの会合の議事要旨担当の方には出来るだけ分かりやすい記述をお願いいたしたく存じます。
まあそんな訳でして、2%物価目標というのはあるけれども、それに対する具体的な形がどうなのかという点について政策委員会での意見が分かれているということで、そらまあ超コンセプチュアルに言えばフィリップスカーブの切片が2%であり、景気が1サイクル回る中でCPIが平均すると2%程度で安定推移する、という点は全員一致だと思うのだが、足元の数値をどう評価するのかという点で意見が大きく異なっていると思われますし、まあフレキシブルインフレーションターゲットの考え方からすると反対している実務家の皆様の見解に分があると思いますし、実務家の皆さんはこの追加緩和で起こり得る様々な副作用も勘案して実務家として賛成しがたいという事になったと思いますので、今回の反対4票しかも全員実務家で賛成しているのは執行部と腐れ学者2名というのは非常に重い意味を持つと思います。
まあそもそも追加緩和をしたら何で物価上昇のモメンタムが強くなるのかがさっぱり判らない(だいたいからして追加緩和ったって単にMB拡大ペースをちょっと上げているだけ)のですが、まあそれは兎も角としましても、検証という意味で言えば先ほどの「政策効果の検証」の他に「2%の物価数値をを短期的にヒットさせに行くのが本当に妥当なのか」という点についても、先ほどのMB拡大と同様に当初の決定がアプリオリに正しいのでその通りに突き進むだけ、という政策当局者としてあるべき姿勢を逸脱しているのではないかと思われるロジックが絶賛展開されている、という点にこの追加緩和の先行きが危ぶまれる訳です。
いやまあこれによって2%物価上昇して、しかも経済は良くなる(ただの円安コストプッシュ物価上昇だったらそれは短期的には物価上昇だが中期的に見た場合には購買力の低下から需要の低下を通じて先行きのデフレ圧力を高めるだけ)というのであれば別にこれはこれで勢いと気合で結果オーライかもしれませんが、そうなるメカニズムも結局期待と気合だけなのですからまあ先行きは暗いですよね。
2014/11/03
お題「追加緩和に関する論点その2:展望レポートの見通しを点検するとボロがボロボロ」
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1410b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404b.pdf(前回4月)
超長くなるので何回かに分けます(って結局アップするから同じなのだが)。
決定内容の方で皆さん(ってワシもそうですが)ビックリしていて肝心の展望レポートにおける見通しの方へのツッコミが瞬間反応できなかったかと思いますが、展望レポートのとりあえずは基本的見解部分に対してツッコミを入れると色々とボロがあるので逐語確認をしていこう、というかなり無謀な企画を投下します。
土曜日の昼に背景説明を含む全文が出ておりまして、本当は全文を逐語確認をすると更に味わいが深いのと、そもそも前回の展望レポートでも基本的見解部分と背景説明部分で微妙にニュアンスが違う所があったりしてかなり面白かったのですが、今回は前回4月と比較しながら色々と確認していこうと思います。
というのはですね、今回ロジック崩壊の謎追加緩和を実施した訳ですが、そもそも論としてこれだけの謎緩和を実施するのですから、先ほど申し上げたような「MBの定量的効果」についてもそうなのですが、じゃあこの政策を追加投入した結果何がどうなって物価が上昇してインフレ期待が上昇して2%物価目標が達成できるのかという点を確認するのは展望レポ―トなのであるので、メカニズムを確認したいという話な訳ですよね。
○結論から先に申し上げると「労働需給」以外に物価が上昇する明確なメカニズムが無い
まあ小見出しの通りでして、まー大体そこしか物価が上昇します(キリッ)の説明のしようがないという事もありますが、ものの見事にメカニズムが労働需給に関する話に集中しておりまして、雇用所得環境の改善が弱まったらどうするんでしょうねえとしか申し上げようが無いかなーり脆弱な話が以下展開されるのでお楽しみに。
それから政策のそもそも論に関わる部分なども最初の方からいきなり飛び出すので中々面白いのですけれども、結局基本的見解の部分を何度読んでも労働需給以外の状況は物価2%達成に背を向けている状態にしか見えない説明になっています。
なお数値については予想通りで手前はGDPと物価が下げ、2015年度はGDPほぼ横で物価は下げて中心が+1.7なのは兎も角として大勢見通しの上限が+1.9で全体の一番強いので+2.0という下げ方。2016年度はGDPが微かに下がっているけれども物価は変わらず、という中々謎の数値になっていますが、これって「追加緩和込みでこの数字」ですからねえ・・・・・・・
○物価見通し時期とメカニズムの説明が更に雑になっているエグゼクティブサマリー
最初の『<概要>』が全体纏めです。
『2014年度から2016年度までの日本経済を展望すると、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される2。』(今回)
『2014年度から2016年度までの日本経済を展望すると、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(前回4月)
ということでこちらは同じ。
『消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高い。その後、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』(今回)
『消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高い。その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』(前回4月)
でまあこれに関しては直近の金融政策決定会合声明文も比較したいのですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141007a.pdf
『消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(10月7日決定会合声明文より)
となっておりまして、今回の展望レポートで物価先行き見通しの文言を変更しています。つまり従来示していた「1%台前半」という数値が「現状程度のプラス幅」となりまして、その現状とは何ぞやと言いますと直近公表された全国コアCPIが消費税抜きで+1.0%となっている事から、物価の先行き見通しについて手前の部分を下げた格好になっていまして、その期間に関しては従来の「暫くの間」という半年程度を意味するとされる文言から、より期間の短い「当面」に変更になっています。
数値が下がっているのは、以前の会見で黒田総裁が1%を割らないという趣旨の発言を行ったことに対するヘッジ文言でありまして、これで目先1%割れの数字がヒットした時の申し開きが出来た形になっていますが、そこの数値を下げた以上半年程度の期間を意味する「暫くの間」というのを入れると、そもそも論として最初にご紹介した展望レポートの物価見通し2015年度+1.7%という数字がどこからどう見ても無理という話になる(+1.7%と出ている数値は年度平均なので、足元の弱さが継続して発射台が低くなると達成に対しては相当厳しくなる)ので「当面」としない訳に行かなかったのでしょうな。
でまあその辺の操作をして先行きに関しては同じとしているのがもうだいぶ無理がある。
『従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、駆け込み需要の反動の影響や輸出の弱めの動きなどから、2014年度について幾分下振れている。物価の見通しは、2015年度については、国際商品市況の下落などから幾分下振れるものの、2016年度については概ね不変である。』(今回)
『従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、輸出の回復の後ずれなどから、2014年度について幾分下振れるものの、物価の見通しは、@雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移するもとで、労働需給が引き締まっており、この傾向はさらに強まることや、A中長期的な予想物価上昇率の高まりが実際の賃金・物価形成に影響を与え始めているとみられることから、概ね不変である。』(前回4月)
となっていまして、従来との見通し対比の部分の文言がこれまた実に味わいがありまして、成長率の見通しに関して従来無かった「駆け込み需要の反動の影響」というそもそもそれって見込んだうえでの成長率見通しでは無かったのかと小一時間問い詰めたい文言が入っており、消費増税の影響を読み誤りましたというのを本人たちは言わないのでしょうが、どこをどう見てもそうですよねとしか申し上げようがない表現になっているのが味わいがありますな。
更に申し上げますと、物価の見通しの所がもっと味わいがありまして、まず2015年度の所にある「国際商品市況の下落など」からというこの「など」の文言が実に怪しげな雰囲気を醸し出しておりまして、ではこの「など」とは何ですかと小一時間問い詰めたい。
そしてもっと面白いのは、先行きの物価上昇メカニズムに関して前回の展望レポートでは引用した通りにメカニズムの説明があるのですが、今回はその物価上昇メカニズムに関しての言及が無く、要は物価上昇メカニズムが薄弱であるという事を意味しているんでしょとしか申し上げようが無い辺りも実に香ばしい所ではあります。
○中心的な見通し:おいこら潜在成長率下がっているぞという話など
続いて『1.わが国の経済・物価の中心的な見通し』の『(1)経済情勢』から参ります。
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。4〜6月における成長率は、自動車などの耐久消費財を中心に駆け込み需要の反動の影響が大きかったことや輸出が弱めの動きとなったことなどから、大きなマイナスとなった。また、夏場には天候不順も、個人消費の一時的な下押し要因として作用した。もっとも、駆け込み需要とその反動といった振れを均してみれば、潜在成長率を上回る成長が続いている4。また、今回の景気回復は、雇用誘発効果の大きい国内需要に主導されていることもあって、雇用の増加と労働需給の引き締まりは、着実に進んでいる。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている。輸出は弱めとなっているが、国内需要が堅調に推移するもとで、景気の前向きの循環メカニズムはしっかりと作用し続けている。国内需要は雇用の誘発効果が大きいため、2013年度の成長率の下振れにもかかわらず、労働需給は概ね想定に沿って引き締まり傾向が強まっている。』(前回4月)
まずご覧になれば判るように、前回対比で文章が長くなっている時点でヘッジクローズ満載の香りという訳ですが、前回対比で異なっているのが「生産面の弱さ」への言及が最初にある部分、次が足元までの弱い要因に関する言い訳文言が入っていて、消費増税駆け込み需要の反動、輸出の弱さ、夏場の天候などを言い訳としております。
従って今回は前回あった「景気の前向きの循環メカニズムはしっかりと作用し続けている」という文言が外れ、「雇用の増加と労働需給の引き締まりは、着実に進んでいる」という表現に替わって(生産が弱いのだから前向きの循環メカニズムとは言えないでしょうからね)、これから先にも頻発するのですが、最初に申し上げたように「雇用情勢の改善」一点突破でメカニズムを説明して行きましょうという流れが鮮明なのが特色です。
ま、それ以外に説得力のある改善メカニズムを示すことが出来ないんすけどね(迫真)!!!!!
・・・・・・・・・・とまあそれよりももっと重大なのはここの脚注4にとんでもない記述があるのですよ。
『4 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、このところ「0%台前半ないし半ば程度」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。』(今回)
『3 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、このところ「0%台半ば」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。』(前回4月)
ちょwwwww潜在成長率推計が下がっているとはどういう事やねんという話でして、後の方でありますけれども先行きの成長メカニズムの説明の中で前回も今回も「規制改革や成長戦略、企業の生産性向上や内外需掘り起しで中長期的な成長期待や潜在成長率は次第に高まって行く」という説明が入っているのに足元では下がっているとはどういう事ですかという話でもありますし、より深刻な問題としては、そもそもの物価目標2%に関連する話に繋がると思うのですが、「そもそも潜在成長率が極めて低い状態の中で、2%の物価上昇率を短期的にヒットさせるべく政策運営を行う必要があるのか」という点が浮上するのではないかと思うのですけどどうなんでしょうかねえ。
○先行きの見通しは雇用情勢一点張りのメカニズムにしか見えない件について
『先行きを展望すると、国内需要が堅調さを維持する中で、輸出も緩やかな増加に向かっていくと見込まれ、家計部門、企業部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムは持続すると考えられる。このため、わが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(今回)
『先行きを展望すると、国内需要が堅調さを維持する中で、輸出も緩やかながら増加していくと見込まれ、生産・所得・支出の好循環は持続すると考えられる。このため、わが国経済は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される3。』(前回4月)
まず輸出の見通しが「増加していくと見込まれ」から「向かっていくと見込まれ」に下がっているのと、好循環メカニズムで示されている「生産」も諦めてしまって外れておりますので、従いまして「所得が上昇しないと循環メカニズムは持続しません」という完全なまでに雇用一点張りの見通しになっていますので、賃金が上昇しないと話が始まりませんという所でして、先の方でも当然ながら「お賃金は上がります(キリッ)」という説明はしているものの、それ以外のメカニズムが無いというのがダメじゃんというのに加えまして、そもそも足元の需給ひっ迫がそれこそ設備のペントアップじゃないですけれども一時的なペントアップ需要によるものだとしますと結局の所好循環という風にはならないんじゃないですか大丈夫ですか検証しているのですかというお話ではございます。
『こうした見通しの背景にある前提は、以下のとおりである』(今回)
という所で一旦アップします。
2014/11/03
お題「追加緩和の論点:その2展望レポート基本的見解のロジックを鑑賞(経済情勢メカニズム編)」
さあ続きですよ!!
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1410b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404b.pdf(前回4月)
○経済が見通し通りに推移するメカニズムに関して鑑賞
さっきの続きから。
『第1に、日本銀行が今般拡大した5「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる6。すなわち、「量的・質的金融緩和」のもとで、名目長期金利の上昇圧力は抑制されている一方、予想物価上昇率は全体として上昇しており、実質金利は低下している。銀行貸出残高は、緩やかに増加している。このような緩和的な金融環境が民間需要を刺激する効果は、景気の改善につれて強まっていくと考えられる。』(今回)
『第1に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる4。すなわち、「量的・質的金融緩和」のもとで、名目長期金利の上昇圧力は抑制されている一方、予想物価上昇率は全体として上昇しており、実質金利は低下を続けている。銀行貸出残高は、緩やかに増加している。このような緩和的な金融環境が民間需要を刺激する効果は、景気の改善につれて強まっていくと考えられる。』(前回4月)
ということで、基本的に言ってる事が4月の展望レポートと変化していないというのは、これ即ち先ほどの政策ロジック編で申し上げましたよう所の「政策の効果測定や検証が出来ていない」という話のような気がしますがそれは兎も角として、実質金利に関して前回「低下を続けている」とあったのが「低下している」に変わったのは何ですねんというのがまず最初の疑問。名目の金利に関してはどう見ても下がっているのですから、予想物価上昇率が横ばいであっても実質金利は「低下を続けている」とするのが妥当でして、然るに「予想物価上昇率は全体として上昇しており」とはどういう事やという所でワロタとしか申し上げようがない。
その他の効果として貸出残高の緩やかな増加とかあるけど、そもそも論として「緩和的な金融環境が民間需要を刺激する」という前提そのものに関してのレビューは全然なくて、実質金利が下がれば消費や投資が拡大されるという置物理論についての検証は皆無のまま推移しているというのが如何な物かと申し上げざるを得ない。
次が海外経済ですが、この調子で前回分まで全部引用しているととんでもない量になってしまうので、基本的にゴリゴリ突っ込まない部分では前回分引用を割愛しますね。
『第2に、海外経済については、先進国が堅調な景気回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及する中で、緩やかに成長率を高めていく姿を見込んでいる。』(今回)
ちなみに前回との違いは新興国に関して先進国の回復が徐々に波及「していく」だったのが「する」となっている点で、新興国改善について微妙ではあるが若干上げている感じです。
『主要国・地域別にみると、米国経済については、家計支出を起点とする前向きな循環に支えられながら、徐々に成長率を高めていくと予想される。欧州経済については、債務問題に伴う調整圧力が残り、物価上昇率の低下傾向もみられるものの、個人消費の底堅さや輸出の増加などに支えられ、緩やかな回復を続けると考えられる。』(今回)
米国は前回よりも強い表現、欧州は物価に関する表現が加わっているのと、先行きにあったマインド改善の文言が抜けていてやや弱くなっています。
『中国経済については、当局が構造改革と景気下支え策に同時に取り組んでいく中で、僅かに成長ペースを鈍化させながらも、概ね安定した成長を続けると想定している。その他の新興国・資源国経済については、国・地域によるばらつきはあるが、先進国の景気回復の波及と、緩和的な金融環境を受けた内需の持ち直しから、成長率を緩やかに高めていくと見込んでいる。』(今回)
中国は同じ、新興国は金融市場の落ち着きが云々という前回にあった文言が抜けて微妙に上方修正です。
『第3に、公共投資は、経済対策の押し上げ効果から高水準で推移してきたが、本年度下期中には緩やかな減少傾向に転じていくと想定している。』(今回)
これは前回の見通しを横に伸ばしただけ。
『第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどもあって、企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率は、緩やかに高まっていくと想定している。』(今回)
ここも前回と同じですが、先ほどの所で申し上げましたように、既に足元で推計される潜在成長率が低下している中でこの説明って何なんですかと小一時間ではある。
では年度別展開を。
『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2014年度下期については、個人消費は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響がしばらくは残るものの次第に減衰し、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、底堅く推移すると見込まれる7。』(今回)
『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2014年度については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響から、4〜6月の成長率は、耐久財などの個人消費を中心に、いったん落ち込むと予想される5。もっとも、雇用・所得環境の改善に支えられて、個人消費の基調的な底堅さは維持され、駆け込み需要の反動の影響も夏場以降、減衰していくと考えられる。』(前回4月)
ということで雇用環境に関して「着実な」改善とここだけは自信満々のようで、雇用所得環境改善の一点突破で突撃というのが良く判りますな。
『設備投資は、企業収益の改善や金融緩和効果が引き続き押し上げに働くもとで、長年の投資抑制による設備老朽化に対応した更新投資や、労働需給の引き締まりを受けた省力化投資、為替相場の動きも踏まえた国内拠点の再構築などの投資ニーズの高まりがみられることから、しっかりと増加するとみられる。この間、輸出は、海外経済が回復するもとで、為替相場の動きも下支えとなり、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。こうしたもとで、鉱工業生産は、在庫調整の進捗もあって、緩やかな増加に復していくと予想される。』(今回)
『この間、輸出は、2013年度末にみられた駆け込み需要への対応から国内向け出荷を優先する動きや米国の寒波などの一時的な下押し要因が剥落するもとで、先進国の成長率が高まっていくことから、緩やかながらも増加に転じていくとみられる。設備投資についても、企業収益の改善や設備稼働率の上昇、金融緩和効果などから緩やかな増加基調をたどると見込まれる。以上の内外需要を反映して、わが国経済は夏場以降、潜在成長率を上回る成長経路に復していくと予想される。』(前回4月)
ということで、語順が変わっているので何ですが今回の語順で整理して見ますと、設備投資の先行きが強くなるメカニズムとして説明しているのを順に見ていくと、まずは「収益の改善」「金融緩和効果」なのですが、収益の改善が輸出企業の円ベースの収益改善なのであれば経済には好影響かも知れんが、それ単体で設備伸びるかよという話で、金融緩和効果も同様なのですが、それが直接的に投資に繋がるというのをアプリオリに正しいとして良いのでしょうかねえと思われるところです。
前回の時点では「設備稼働率の上昇」というのが説明にあって、まあそれは確かに生産拡大に伴う設備投資だから王道ですなあというのがあったのですが、今回はその部分が抜けていて以下にあるようなそれは前向き循環メカニズムちゃうやろという物しか出ていないのが実に残念というものです。
つまり「長年の投資抑制による設備老朽化に対応した更新投資や、労働需給の引き締まりを受けた省力化投資」というのは基本的に一時的な効果でありますし、省力化投資されたらそもそも労働需給が緩和するだろと思う次第でして、何ちゅうかそれを持って設備が伸びるというのはどうなのかねと思います。それから「為替相場の動きも踏まえた国内拠点の再構築などの投資ニーズの高まり」とは言いますが、そもそも海外生産になっている要因の中に為替以外の「需要地に近い所で生産する」という動きもある訳ですし、円安が一時的にしか進行しないのであればそう為替だけの要因でホイホイ生産拠点を動かしてくるとは思えん。
それともっと意地の悪い話をすると、国内生産拠点に回帰というのは「コスト勘案して国内の方が安くてウマー」という事でもあるのですが、それって結局の所「生産拠点としての国際競争力を為替調整でしていますよ」ってな話で、それは海外の労働者との相対比較で日本が安いという状態になったという話なので、それって単に為替調整で日本が海外対比で相対的に安くなったつまりビンボになったという話であって、本当に国民厚生上正しい姿なのでしょうかねえとは思うのでありました。
『2015年度から2016年度にかけては、2回目の消費税率引き上げによる振れは予想されるが、@緩和的な金融環境と成長期待の高まりを受けた国内民間需要の堅調な増加と、A海外経済の成長による輸出の増加に支えられて、前向きの循環メカニズムは維持され、潜在成長率を上回る成長が続くと見込まれる。』(今回)
『2015年度から2016年度にかけては、2回目の消費税率引き上げによる振れは予想されるが、@緩和的な金融環境と成長期待の高まりを受けた国内民間需要の堅調な増加と、A海外経済の成長による輸出の増加に支えられて、前向きの循環メカニズムは維持され、潜在成長率を上回る成長が続くと見込まれる。』(今回)
でまあここのメカニズムは往生際悪く同じになっています。
『2016年度までの成長率の見通しを、7月の中間評価時点と比べると、2014年度については、駆け込み需要の反動の影響や輸出の弱めの動きなどから幾分下振れるものの、2015年度と2016年度については概ね不変である。』(今回)
あっそう。
○物価の見通しもひたすら雇用情勢の改善による物価上昇の話のオンパレード
次が『(2)物価情勢』である。
『消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、このところ1%台前半で推移している。』(今回)
『消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、プラス幅を拡大しており、このところ1%台前半で推移している。』(前回4月)
現象面なので比較することも無いのですが兵どもが夢の跡っぽいので引用してみた。
『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、雇用誘発効果の大きい国内需要の堅調さが雇用の増加をもたらすもとで、労働面を中心に着実に改善傾向を続けている8。すなわち、失業率は3%台半ばとみられる構造的失業率近傍で推移しているほか、現在職探しをしていないが求職意欲を持つ人々なども含めた広義の失業率も低下傾向を続けるなど、労働需給は着実に引き締まり傾向が強まっている9。企業は、駆け込み需要の反動による需要の落ち込みを一時的とみているとみられ、前向きな雇用スタンスを維持している。こうしたもとで、所定内給与がはっきりとした増加に転じるなど、賃金の改善も続いている。また、非製造業を中心に設備の不足感も強まってきている。このため、マクロ的な需給バランスは、本年度後半にプラス(需要超過)基調が定着し、それ以降、プラス幅が一段と拡大していくと考えられる。そうしたもとで、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていくと予想される。』(今回)
需給バランスに関しては基本的に労働需給が改善してますぜ凄いですぜという話なのですが、とにかく労働需給が改善しているという話を一生懸命にしたいらしく、前回は(引用しませんが)この部分11行だったのが今回は15行に絶賛拡大しておりまして、涙ぐましいアピールの跡が見受けられます。
ということで需給ギャップに関しては労働需給改善の一点張りで勝負に来ておりますが、もう一つの予想物価上昇率を鑑賞してみましょう。
『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。こうした予想物価上昇率の動きは、実際の賃金・物価形成にも影響を及ぼしていると考えられる。例えば、労使間の賃金交渉において、企業業績などに加え、物価上昇率の高まりも意識され、ベースアップが久方ぶりに多くの企業で実施された。企業の間でも、従来の低価格戦略から、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる戦略へと切り替える動きがみられている。』(今回)
ま、この辺もまた前回と基本的な話は同じなのですが、「ベースアップが久方ぶりに多くの企業で実施された」(キリッ)ってのにはそもそもの政府からの要請もありーの、消費税増税するから仕方無い罠的な話もありーのでございまして、本当にそれがインフレ期待に基づくものなのかねというのは甚だ疑問でありますし、毎度説明されて耳タコなのですが、企業が付加価値高めつつ販売価格を引き上げる戦略云々に関しても結局全体的な意味ではコモディティー化の流れがそう簡単に逆回転するとも思えないので、ミクロの話としては面白いのですが全体の一般物価に関する議論でこの話を持ち出すのはどうかという気がします。
『先行きも、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。』(今回)
あっそうという所ですが、前回はこの部分、「実際の物価上昇率が1%を上回って上昇する中で」とありましたので、これは即ち日銀が目先1%割れ突入も覚悟しているということを示す訳ですな。最初のエグゼクティブサマリーにもありましたように。
『第3に、輸入物価についてみると、このところの為替相場の動きは、消費者物価の押し上げ要因として作用する一方、原油価格をはじめとする国際商品市況の下落は、当面物価の下押し圧力となる。』(今回)
『第3に、輸入物価については、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、エネルギーを中心とした押し上げ効果は本年夏頃にかけて減衰していくと予想される。』(前回4月)
ということで原油が当面下押しという話が入りましたな。
『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると、当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い10。』(今回)
『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると8、暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い。』(前回4月)
ということで、とうとう「2015年度を中心とする期間」に正式に降参してきましたが、岩田副総裁の辞任マダーという所なのですけれども、国会で既に「説明責任を果たすのが重要(キリッ)」と意地汚く地位に執着する姿勢を明らかにしましたので、説明責任とやらを果たしてもらおうじゃないかという所っすな。
『その後は、中長期的な予想物価上昇率が2%程度に向けて収斂していくもとで、マクロ的な需給バランスはプラス幅の拡大を続けることから、強含んで推移すると考えられる。2016年度までの消費者物価の見通しを7月の中間評価時点と比較すると、2015年度については、国際商品市況の下落などから幾分下振れるものの、2016年度については概ね不変である。』(今回)
基本的な見通しは同じです。
#では次はリスク認識と金融政策部分になります
2014/11/03
お題「追加緩和の論点:その2展望レポート基本的見解のロジックを鑑賞(リスク要因&政策編)」
ということで展望レポートの続き参ります。
○上振れ下振れ要因では輸出の所の降参ぶりと雇用の自信満々振りが好対照
続きまして『2.上振れ要因・下振れ要因』のまずは『(1)経済情勢』から参ります。
『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、輸出動向に関する不確実性がある。輸出の伸び悩みが続いている背景には、新興国経済を中心とする海外経済のもたつきや世界的な投資活動の弱さに加え、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も影響している。』(今回)
『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、輸出動向に関する不確実性がある。このところの輸出の弱さの背景には、基本的に、わが国経済との結びつきが強いASEANなどの新興国経済のもたつきの影響が大きいが、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も相応に影響している可能性が高い。』(前回4月)
ということで、一番外しまくっている輸出の部分ですが、今回やっと海外生産移管に関する構造的な要因について「影響している」と認めた(今までは影響している可能性云々)のは降参モードという感じですが・・・・・・・・
『先行きの海外経済を巡るリスク要因としては、米国経済の回復ペースやそれが国際金融資本市場に及ぼす影響、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、新興国経済における構造調整の進展度合い、地政学的リスクなどが挙げられる。また、わが国企業の先行きの内外生産ウエイトについても、為替相場の影響や生産移管のペースなどに伴う不確実性は高い。なお、海外生産の拡大は、輸出を抑制する要因であるが、子会社からの配当など、企業収益の押し上げを通じて成長に寄与する面もある。』(今回)
『このため、新興国経済の先行きや、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどの海外経済の動向やわが国企業の内外生産ウエイトの状況次第で、輸出は上下双方向に変動する可能性がある。』(前回4月)
だいたいこうやって文章が長いのは往生際が悪い状態になっているというものでして、内外生産ウェイトに関しては設備投資の先行きにあるように今後国内回帰が起きるといいなという話をしているんでしょうし、海外生産の拡大で子会社からの配当で企業収益の押し上げ言いますけど、それって別に国内の雇用に必ずしも結びつくかどうかは謎じゃないですかね、というのは毎度お話をしている通りです。
『第2は、消費税率引き上げの影響である。1回目の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減や実質所得減少の影響はなお残存しており、引き続き見極めていく必要がある。また、2回目の消費税率引き上げがどのような影響を及ぼすかについても、その時点の消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得る。』(今回)
これは前回分引用しませんが、前回は消費税率引き上げの影響は大丈夫という話でしたので今回は明らかに下げとなっています。
『第3に、企業や家計の中長期的な成長期待は、規制・制度改革の今後の展開や企業部門におけるイノベーション、家計部門を取り巻く雇用・所得環境などによって、上下双方向に変化する可能性がある。』(今回)
『第4に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下するような場合には、人々の将来不安の強まりや経済実態から乖離した長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道筋に対する信認が高まり、人々の将来不安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。』
この2つは前回と同じです。
では『(2)物価情勢』を見てみましょう。
『上述のような経済の上振れ、下振れ要因が顕在化した場合、物価にも相応の影響が及ぶとみられる。それ以外に物価の上振れ、下振れをもたらす要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。中心的な見通しでは、実際の物価と賃金の上昇率が高まっていく中で、人々の予想物価上昇率も一段と上昇していく姿を想定しているが、その上昇ペースには、実際の物価の動きやそれが予想物価に及ぼす影響の度合いなどを巡って不確実性がある。』(今回)
前回はこの部分がこうなっていましてですね。
『第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。中心的な見通しでは、実際の物価や賃金の上昇率が高まっていく中で、人々の予想物価上昇率も一段と上昇していく姿を想定しているが、どのようなペースで上昇していくかについては注意する必要がある。加えて、消費税率引き上げに伴う幅広い品目の一斉の価格上昇が、人々のインフレ予想に与える影響についても注意してみていく必要がある。』(前回4月)
アダプティブなインフレ期待の高まりに関して記述しているのは前回も今回も同じですけれども、今回はそのアダプティブなインフレ期待の高まりが足元の物価上昇モメンタムの鈍化で弱まる件について懸念して追加金融緩和を実施した、ということになっていますので、記述が思いっきり弱気トーンになっています。
でまあ今回のは上記に更に続くのですけどね。
『この点では、来年度に向けた労使交渉において、過年度の物価動向や先行きの物価見通しが賃金にどのように織り込まれていくかが重要である。また、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が物価の下押し要因として働いているが、この下押し圧力が残存する場合、予想物価上昇率の改善が遅延するリスクがある。』(今回)
ということで、先ほどの所でもありましたが、要するにインフレ期待を押し上げる為には賃金が上昇しないとどうもならんという話をしている訳ですな。
『第2に、マクロ的な需給バランス、とくに労働需給の動向がある。中心的な見通しでは、労働供給面で、近年の高齢者や女性による労働参加の高まりや最近みられているパート労働の正規雇用化が、今後もある程度続くことを前提としているが、この点を巡っては不確実性がある。とくに、通常の失業率に加え広義の失業率も低水準となっているだけに、人手不足感が一段と強まる可能性がある。』(今回)
ここだけ嘘のように強気の話になっていて、前回対比でもここの表現は強くなっていますので、まあ何度も申し上げておりますように、今回の展望レポートのメカニズムは雇用情勢の改善一点突破になっているのですが、そもそも何でMB拡大ペースを引き上げると雇用情勢が改善するのかさっぱり判らん訳で、今回の追加緩和のメカニズムの説明はどうなってるんだと小一時間ですな。
『第3に、物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度、すなわち、企業が需給の引き締まりに応じて価格や賃金をどの程度引き上げていくかについて留意する必要がある。この点、消費税率引き上げ以降の消費動向が、先行きの企業の価格設定行動にどのような影響を及ぼすか不確実性が高い。』(今回)
こちらについては「この点」以下のやっぱり需要が落ちて物価が上がりませんでしたの可能性について言及が入ったのが前回と違う所で、やはりダメじゃんという風情ではありますな、うんうん。
『第4に、国際商品市況や為替相場の変動などに伴う輸入物価の動向や、その国内価格への波及の状況によっても、上振れ・下振れ双方の可能性がある。』(今回)
これは当たり前の話なのでまあヨロシ。
○金融政策の点検作業だが「物価のリスクが下に大きい」だと?????
最後の『3.金融政策運営』部分である。
『以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する。まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、わが国経済は、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断される。』(今回)
こちらに関しては2015年度云々が明示されたというのは前の方でもご紹介したとおりです。
『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、輸出の動向や消費税率引き上げの影響など不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしていると評価できる。』(今回)
『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、輸出の動向など不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしていると評価できる。』(前回4月)
あらら消費税の影響入りましたなあ。
『物価の中心的な見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きく、下振れリスクが大きい。』(今回)
『物価の中心的な見通しについても、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きいものの、リスクは上下に概ねバランスしていると考えられる。』(前回4月)
ちょっと待てお前下振れリスク対応で追加緩和を実施しているのに何でリスクアセスメントが追加緩和込みで前回対比下振れになっているんだと小一時間問い詰めたい。大丈夫かこのアセスメント。
『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されない11。もっとも、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は、漸減傾向が続いているが、なお高水準である点には留意する必要がある。』(今回)
『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されない9。もっとも、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は、このところ減少しつつも引き続き高水準である点には留意する必要がある。』(前回4月)
えーっとすいません、既に散々っぱら国債を購入した挙句にペースを引き上げる決定をしているのに今更金融機関の国債保有残高の話をしてどうするんですかというか、人の心配するよりもてめえの心配をしろと小一時間。
『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)
『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(前回4月)
ということで最後の文言は一緒でして、こちらには「所期の効果を発揮しており」とあるのに、冒頭のエグゼクティブサマリーの部分ではこの文言が削除されているというのは何なんでしょうというか、良心の呵責でもあるんですかというかな話ですな。
ということで展望レポート基本的見解の全文鑑賞会となってしまいましたが、何度も申し上げておりますようにメカニズムが全て「労働需給が改善して需給ギャップも改善するし経済物価情勢が良くなる」攻撃一点張りで勝負しておりまして、労働需給コケたらそもそもQQEとは何だったのかという話になる筈なのですけれども、再び兵を集めて輸送船で送り出すという作業になりそうなのがオソロシス。