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2014/06/30

お題「オペ雑談/虫干しネタですいませんが5月決定会合議事要旨から少々」

さて今年も半分終わってしまいましたなorz

○オペ関連メモ

・輪番4本キタコレ

金曜のオペオファー

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140627.htm
国庫短期証券買入 15,000 2014年7月1日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,000 2014年7月1日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,000 2014年7月1日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,000 2014年7月1日
国債買入(残存期間25年超) 300 2014年7月1日

短国の話は後ほどしますが、今回は長期国債買入が中期と超長期でのオファーとなりまして、本数的には4本ということで従来3本までの実施だったのでほほうという所ですな。一応3区分まではオファーする事があり得て、今回の打ち方は2区分ただしどちらも区分の細分化ありという形なので本数的には多目となっておりますが、まあ事務的に回ればこういう打ち方も有りという事なんでしょうね。

でまあ輪番超長期区分分けによる影響が暫く前にあった市場ちゃんの方は全般的に金利低下モードになっておりましてその辺りの影響は一時的な物に留まった感じになっているのは良かったですね(棒読み)という所ではあるのですが、まあ金利低下の背景が先行きの米国の金利見通しの低下とかなのですからそれってまあ本来2年で2%の目標達成だぜヒャッハーという話とは逆の方向だったりしますけどね。


・短国買入1兆5000億円とな

でまあ金曜のオペですが、短国買入も上記のように1.5兆円オファーされまして、平均2bp台前半、足切りも2bp台後半で3bpに届かないという事で、それって有担保コールレート(無担保ではない)比べてどうなのよ的な水準で木曜の入札が終わった訳でございますが、全く情け容赦無しで1.5兆円のオファーキタコレであります。

オペ結果(めんどいので短国だけ)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140627.htm
国庫短期証券買入 38,798 15,005 -0.001 0.000 50.5

ということで2bp台の新発ともなるとさすがにそこそこ在庫もあったようで、応札が3.8兆円入ったのですが、まあ落札結果は平均が引けで足切りが強になっていまして、前日の強い入札をそのまま追認するような格好になって来ました。でまあ7月入ってからの短国買入のペース(今回のも受渡しベースでは7月ですが)がこの調子で続きますと短国のセカンダリーの位置が下がりますと有担保コールの金利とかに影響して来て全般的に金利に影響してきますなというのと、コールの金利が下がってくると市場機能に影響してきますんですけどねえという所で、MB拡大に関して長期国債の比重を上げないと厳しいんじゃないですかねえ(というか少なくとも2016年にこのMB拡大を続けるような事になった場合「国債50兆円、MB70兆円」という組み合わせは短期市場的に無理)と思われますが、さて7月はどうなるんでしょうかねえ。


○すっかり忘れていたのですが思い出して5月会合議事要旨

どんだけ忘れてましたねんという話で申し訳ございませんが。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140521.pdf

・海外経済に関してはそんなに弱くないが市場の示す認識には留意とな

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

『国際金融資本市場について、委員は、新興国も含め全体としては落ち着いているとの見方を共有した。そのうえで、委員は、ウクライナ情勢などを背景に神経質な動きもみられており、地政学リスクには引き続き注意が必要であるとの認識で一致した。最近の欧米での長期金利の低下について、何人かの委員は、緩和的な金融政策の長期化観測などが背景にあるとみられるが、市場参加者が中長期的な成長率見通しの下振れを意識している可能性も考えられるため、今後の長期金利の動向とその背景について、注意深くみていく必要があるとの認識を示した。』

ということで、まあ基本的に急にどうのこうのという話ではないのですが、「中長期的な成長率見通しの下振れを意識」というのを指摘していますな。

『海外経済について、委員は、新興国の一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつあるとの見方で一致した。先行きについても、委員は、先進国を中心に、緩やかに回復していくとの認識を共有した。』

ということで、基本的に海外に関しては特段弱いという話ではなく(5月声明文での海外経済認識は横ばいで6月声明文で上がっています)、地域別内訳に関しても特段大きなネタは無いのですが、欧州の所ではこんなのがあってほうほうという感じです。

『ユーロエリア経済について、委員は、1〜3月の実質GDP成長率が4四半期連続のプラスになるなど、緩やかに回復しているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、マインドの改善などに支えられて内需の回復が続き、輸出も改善すると見込まれるため、緩やかな回復を続けるとの認識で一致した。何人かの委員は、周縁国を中心にディスインフレ傾向が続いている中での金融政策運営に注目していると述べた。』

周縁国のディスインフレ傾向とな。


・国内景気については今回のレビューが6月にどういうレビューに繋がっているかを確認したいですな

国内景気に関しては5月会合時点の認識よりは6月、7月にどういう認識になっていくのかというのを見て行きたい所で、それによって金融政策の先行きの話、つまり出口攻撃とかそっちの方に向かえるのかという点に示唆を与えると思うので、そういう意味で5月会合での認識を確認しておこうという所ですな。

『わが国の景気について、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが働き続ける中で、基調的には緩やかな回復を続けているとの見方を共有した。』

ということでまずは全般的な部分。

『何人かの委員は、1〜3月の実質GDP(1次速報値)成長率は前期比年率+5.9%と、個人消費の駆け込み需要や設備投資でのソフトウェア更新に伴うパソコン需要など、一時的な需要増加を勘案しても、高めの伸びになったとの認識を示した。景気の先行きについて、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとの見方で一致した。』

とまあそれは良いとして。

『輸出について、委員は、ASEANなど一部新興国向けに弱さが残る中で、横ばい圏内の動きになっているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。』

という事になっているのですがさて・・・・・・・・

『ある委員は、情報関連分野で高付加価値部品の受注に増加の動きがみられており、今後の輸出増加に期待ができるとの認識を示した。何人かの委員は、米国の寒波の影響や駆け込み需要への対応に伴う国内出荷優先の動きなどの一時的な下押し要因が解消した後、輸出が増加してくるかに注目していると述べた。』

でまあその米国が伸びていないような気がするので、さてその辺に関してどのような認識を示しているのかという辺りは今後の議事要旨で確認したいですな。

『複数の委員は、タイの政情不安が、わが国からの輸出に悪影響を与えることがないか、注視していきたいとの見方を示した。』

まあこちらは一時的なものにとどまって落ち着いて良かったですな。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、緩やかに増加しており、先行きも、緩やかな増加基調を辿るとの見方を共有した。委員は、1〜3月のGDPベースの設備投資が前期比+ 4.9%と高い伸びとなったほか、機械受注も1〜3月まで4四半期連続増加し、先行きも小幅増加見通しであることを踏まえると、ソフトウェア更新に伴うパソコン需要など一時的な需要増加を勘案しても、設備投資は緩やかな増加基調にあると判断できるとの認識で一致した。ある委員は、労働市場のタイト化を背景に、今後は労働力を代替するための設備投資の増加も期待できると述べた。』

と、こちらは強気。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに持ち直しているとの認識を共有した。』

でまあこちらも強気なのですけどね。

『ある委員は、これまで上昇傾向にあったパート比率に頭打ち感が出てきているが、これは人材確保のためにパートや非正規社員を正規社員化する動きを反映している可能性があり、労働需給タイト化の一つの表れであるとの認識を示した。』

労働需給タイト化とな。

『今春の賃金改定交渉について、何人かの委員は、労働需給のタイト化や企業業績の改善を背景に、ベースアップも含めた賃金上昇の動きが中小企業や非正規雇用にも拡がってきていると指摘した。』

ほほうベースアップも含めた賃金上昇の動きですかそうですか。実際にその数値出てくるの大手企業だとこれからですな。

『ある委員は、実際に賃金決定の際、予想物価上昇率の高まりが考慮されるようになってきていると述べた。』

ほうほうそうですか(棒)。

『先行きの雇用者所得について、委員は、経済活動や企業業績の回復につれて、持ち直しがさらに明確になっていくとの見方で一致した。何人かの委員は、先行き継続的に賃金が上昇していくか、来年度のベアも含め、注視していく必要があるとの認識を示した。』

という事で。


で、個人消費ですけど。

『個人消費について、委員は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移しているとの見方を共有した。委員は、4月の全国百貨店売上高、新車登録台数といったデータや企業からのヒアリング情報などを踏まえると、駆け込み需要の反動の影響は想定の範囲内との見方が多いとの認識で一致した。ある委員は、駆け込み需要の反動の大きさについて、今後公表されるデータでさらに確認していく必要があると述べた。』

つーことでまあ消費に関しては消費増税の影響は想定の範囲内という話。

『先行きの個人消費について、委員は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとの見方で一致した。』

まあ所得と消費の見通しは強いですよね。

『複数の委員は、景気ウォッチャー調査の先行き判断の大幅な改善は、消費税率引き上げの影響が一時的であることを示唆しているとの見方を示した。』

キタコレ。

『何人かの委員は、駆け込みとその反動といった短期的な振れに加えて、消費税率引き上げに伴う実質所得の減少が消費に与える影響について、やや長い目で注視していく必要があるとの認識を示した。このうちのある委員は、足もとでは名目所得の上昇がみられていることから、喫緊のリスク要因としての懸念は低減したと付け加えた。別の一人の委員は、消費者態度指数の悪化や実質雇用者報酬の伸び悩みを指摘したうえで、先行き個人消費の増勢が弱まる可能性があるとの見方を示した。』

ということで、より長期的な面については見解が分かれているという感じですが、所得に関して言えば雇用者全体でみた総額ベースが上がっているプラスの影響と、実際問題として消費増税をカバーするだけの上昇にはなっていないし、非正規の拡大で上がっている部分ってマージナルな部分であって、コアの部分で実質がマイナスとなっている場合の影響がこれから出てくる可能性とか考えますとどうなんでしょうかねえという話で、さてどっちに出るんでしょうかね。

他の需要項目の話は割愛します。続いて物価ですけど。


・サイレントデフレ脱却モードの声明文だが議論の方はあっさりとな

この回の声明文では最後のパラグラフの所でQQEについて『所期の効果を発揮』というのが入ったのと『デフレからの脱却へと導く』というのが削除されたのが話題になっていましたが、所期の効果云々は後ほど出てきますが、では物価に関する議論の部分はどうかというとこれがまたあっさり味。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%台前半となっており、先行きも、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方を共有した。複数の委員は、1〜3月のGDPデフレーターが前年同期比0.0%と、下げ止まってきたことを指摘した。』

デフレーターが下げ止まった話はありますが、デフレ云々の文言を削除するという辺りに関しては(この先もそうですが)特段の話がある訳でもなく、何かこうサイレント脱却宣言そのままでサイレントなままにさらっと認識が強くなったという感じですね。

『複数の委員は、新たな付加価値を付けて販売価格を引き上げるという動きがみられ始めており、企業の価格設定行動が変わり始めている可能性があるとの見方を示した。』

とまあ物価に関する部分はこれだけでして何というあっさりという所ですが、この次に供給力の天井論が来ております。


・供給力の天井論について

次に供給力の天井論に関する話があるので引用。

『委員は、「量的・質的金融緩和」などのもとで需要が増加した結果、人手不足など供給面の問題が顕現化してきたとの認識を共有した。多くの委員は、中長期的な観点から成長力を高める様々な取り組みが重要であるとの見方を示した。』

ということで、成長力強化が重要というネタです。

『この点に関し、これらの委員は、「量的・質的金融緩和」によってデフレマインドを早期に払拭することは、潜在成長率を高めていく上でも重要であるとの見解を述べた。すなわち、ある委員は、デフレマインドを転換することによって、企業が積極的な投資や生産性上昇に取り組みやすい環境を作り出すことは、潜在成長率の引き上げにも寄与すると考えられるとの見方を示した。』

こういうマインドで気合でという話が出るのは白日銀とは違いますなという感じがします。

『複数の委員は、長期失業者が存在したり、設備投資やイノベーションが停滞している場合、これを解消することによって潜在成長率を高める余地があり、金融政策は緩和的な金融環境を維持することによって、これを後押しすることができるとの認識を示した。』

まあ成長力強化の話も諸刃の剣で、この話を推し進めるとじゃあ金融政策は何の効果があるのかという話になってしまうので、さっそくこういう話も入ってくるのがお洒落。

『ある委員は、実際、非製造業を中心に、設備投資は堅調であり、幅広い業種で様々な需要の掘り起こしが進んできていることなどを踏まえると、収益力や生産性は上昇してきているとの見方を示した。』

ほう。

『別のある委員は、労働需給のタイト化によって賃金上昇圧力が高まってくると、低い賃金コストを前提に安価な商品を提供するビジネスモデルは成立しなくなると述べたうえで、企業が付加価値の高いビジネスモデルへの転換を図れれば、潜在成長率の引き上げにも繋がるとの認識を示した。』

どこぞの外食チェーンですねわかります。


・金融政策に関する話が超あっさり味な件について

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』というコーナーが毎回あるのですが・・・・・・・

『金融政策運営の考え方について、大方の委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとの認識を共有した。』

『委員は、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、現在の方針のもとで、「量的・質的金融緩和」をしっかりと推進していくことが適当であるとの認識を示した。』

で、従来だと他に何かコメントがあったりするのですが、今回はこの「所期の効果」キタコレというのが非常にこうさらっと出ているだけでして、まあそのあっさりな部分はあっさりなだけに益々自信の表れという所で、「静かな勝利宣言」という所でしょうか。

なお木内委員の反対論は毎度の通り。

『一方、一人の委員は、「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しいとみられる中で、「量的・質的金融緩和」が長期間継続される、あるいは極端な追加措置が実施されるという観測が市場で高まれば、金融面での不均衡累積など中長期的な経済の不安定化に繋がる懸念があるため、継続期間を2年程度に限定し、その後柔軟に見直すとの表現に変更することが適当であると述べた。』

ということでこのあっさり味さが却って大勝利宣言という感じがしますな。

『「量的・質的金融緩和」の効果について、委員は、効果は引き続きしっかりと働いており、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは、着実に強まっているとの認識を共有した。長めの金利への働きかけについて、委員は、わが国の長期金利は、日本銀行による巨額の国債買入れが行われるもとで、低位安定しているとの見方で一致した。委員は、名目金利が安定的に推移するもとで、予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利は低下しているとの認識を共有した。』

でまあこの効果に関しても超あっさり味にも程がありますという事で、今回は金融政策運営に関する部分で特段の議論らしきのが無いという所で、まあこの前の回が展望レポートの会合で、そこではああだこうだという話がありまして、まあ前回議論しているから同じ話を2か月連続でせんでもエエジャロというのはあるとは思いますが、実際問題として「2年で2%」の手形の期日は着実に迫ってくるので、物価目標に関する論点整理というのはどこかで行わないといかんと思うのですけどどうなるんでしょうかねえという所で。


#虫干しネタでどうもすいません






2014/06/27

お題「短期市場雑談メモ/企画局謹製の「長国買入でポートフォリオリバランスかも」レビューを鑑賞」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140626/k10015522561000.html
石原新党 党名は「次世代の党」に
6月26日 14時40分

次世代とは何のギャグかと思ったのですが、もしかして現世の(自粛)。

○市場雑談メモ

・短国入札ェ・・・・・・・・・・・

昨日の3か月TB入札結果は順当にあばばばばー
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140626.htm

(3)募入最低価格 99円99銭3厘5毛 (募入最高利回り) (0.0260%)
(4)募入最低価格における案分比率 37.2161%
(5)募入平均価格 99円99銭3厘9毛 (募入平均利回り) (0.0244%)

ということで3bpに足切りが届くかねえどころか足切りすら3bpを盛大に割り込むという誠にアレな結果となっておりまして、平均は2.5bpも割るという玉がスッカラカンであるという話でまあそれは分かってはおりましたがこの水準に突っ込むかという所で。

まあ今月に関しては資金需給から考えるとそんなに日銀が短国買ってこないでしょそれに貸出増加支援オペの実施もありますしおすしなどと思われていたので、月初直後から順調に短国の買入が進捗し、その結果短国の需給が締まって行った上に、たぶんECBの預金マイナス攻撃も需給に効いていると思われる節があるのですが、まあそんなこんなで金利が若干緩むかと思われた中で徐々に金利が低下するという逆方向になってしまってはや一か月という展開になりますと、まあそろそろ買いを控えているのも厳しいとなって来たでしょうし、更に今回の短国は発行日が月末なので月末&四半期末残高の帳尻ニーズもありますからニーズがキタコレとなったんですかねえ、よー知らんけど。

ただまあTKRRとか見るとレートやや戻ったりしていまして、まあ今月は途中からずーっとそうなのですが、GCレポレートと対比して短国のレートが思いっきり低いという市場分断状態が継続していまして、とにかく短国の需給が突出して逼迫というのがスポ末まで続くのでありました。


・固定金利オペ関連

昨日のオペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140626.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(6月30日スタート分) 1,590 1,590

ということで来月はシグナルオペのエンドをロールした3か月くらいのオペの足が3本到来するのと、まあそれ以外でも4月は割と通常の3Mオペのロールが増額で進捗したりしておりましたので、固定金利オペが7兆円弱のエンド(うちシグナルオペを引っ張ったのが3本合わせて4兆円弱)となっていまして、これがどの程度ロールされるのかによって短国買入のフローがどの位になるのかというのに影響してくる(と思われるのだが今月のように市場が想定する以上に日銀がMBの積み上げを進捗させに行くと想定の前提が崩れる)わけですな。

でもって昨日のオペ結果は1590億円の応札あんど落札なのですが、この折り返しの元になっているオペは3月期末に実施されたオペで3月期末と言えば短期市場が玉無しヒャッハーとなっていた時ですのでニーズが皆無に近くて990億円しか無かったので、これでも増額ロールとなっておりますし、TKRRとか見てると先ほども申し上げましたように短国需給はヒャッハー状態になっていますがそれがレポまで波及してレポもヒャッハーという程でも無い(まあ金利は当然引っ張られて水準としては下がりましたが、3末のようにゼロだマイナスだという話ではない)ので、オペが落ちまくってアヒャーとなるかどうか今後の推移を確認したい所ではありまする。


○ちょっと前のネタですがポートフォリオリバランスに関連して

日銀レビューである
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j04.htm/(要旨)
日本銀行の国債買入れに伴うポートフォリオ・リバランス:資金循環統計を用いた事実整理

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j04.pdf(本文)

でまあ要旨の方を見ますとこんな事が書いてありましてですな。

『要旨

2013年4月の量的・質的金融緩和導入以降、日本銀行による国債買入れが大きく増加する中、日本銀行以外の主体は、全体として国債投資を減少させ、貸出のほか、株式・投信や社債への投資フローを増加させている。こうしたポートフォリオ・リバランスの程度には主体間で違いがあり、国内銀行と海外部門でリバランスが見られる一方、生・損保や企業年金基金、公的年金には、現時点までのところ、こうした傾向は観察されない。』

でまあこの辺りの部分に関してはFSRというのがあるのだがそれは後ほど。

『国内銀行による貸出の増加には、銀行のバランスシートの状況や銀行が直面する資金需要といった金融経済状況の変化に加え、日本銀行が買い入れた国債の残存年限の長期化も影響している可能性がある。』(以上要旨(htmlの方)より)

ということで、ナンジャソラという所ですが、本文の方でその説明があったりする。


・国債買入のポートフォリオリバランス発生経路なのだが・・・・・・・・

ということで以下日銀レビュー本文の方からになるのですが、まずは本文2ページ目の『ポートフォリオ・リバランスの発生経路』の所から。

『今次局面におけるポートフォリオ・リバランスは、主に以下の2 つの経路で発生しているものと考えられる。』

ほうほうそれでそれで?

『第1 に、日本銀行の国債買入れに伴い、長期国債金利が低水準となり、さらなる低下余地が小さくなったため、国債価格が先行き上昇するという期待(キャピタルゲインが得られるという期待)が小さくなった。この結果、金融機関や投資家は、国債への投資を減らし、相対的に高いリターンの見込まれる他の資産への投資を増やしたと考えられる。』

えーっとですな、ディーラーじゃないんですからキャピタルゲイン期待できないから債券買わないという投資家の動きというのはそら大昔のポートディール(よく考えたら凄い言葉が昔はありましたなあ普通に皆で言ってたけど)の世界なので、そういうのはマージナルな部分では存在するにせよ、普通の投資誘因ではないと思います。

『また、期間収益を得ることを目的に、満期保有を念頭に国債を保有する主体も、長期国債金利が十分に低い水準まで低下した結果、国債に投資する誘因が小さくなり、他の資産への投資を増やしたと考えられる。』

まあこの「リスク対比の期間収益が合わなくなったからシャープレシオ的に行けそうな所に逝く」という行動が起きるという方が自然なので、ここの説明は順序を逆にした方が説得力があると思います、つーかたぶん前者の説明はシロウトにはなるほどと思われるかも知れんが、実際の金融機関の投資行動インセンティブを考えた場合にはメインの話ではないので、これを最初に出すとその瞬間にプロの皆様からするとこれはシロウトを煙に巻いているだろという読まれ方をされそうなのでお勧めしない。

『第 2 に、1 つ目の経路によって国債保有を減らした主体の国債保有にかかる金利リスク量が減少した。この結果、追加的なリスクをとる余力が生まれ、他の資産への投資が促された。金利リスクとは、金利上昇時に国債保有からキャピタル・ロスを被るリスクのことであり、この経路は、上記1 つ目の経路を補強するように働く。』

いや普通アセットアロケーション考えた場合って金利リスク量が減った分についてよーしパパ金利リスク減った分株を買っちゃうぞーとはならんと思う訳で、戦略的に金利リスクを減らして他に振り替えるというのなら兎も角、日銀の買入に応じて落ちた金利リスク量というのはアロケーション変更という話では無いのですからそのまま金利リスクの再構築に回るだけだと思うのですけど。

もちろん戦略的に金利リスク量を落とす時に日銀の買入があるので金利リスクの削減方向での操作をやりやすいとかそういう意味での日銀買入の効果はあるかも知れんけど。

つーかですな、そもそもこの手のポートフォリオリバランスについては前回の量的緩和時代にも思いっきり期待されていた効果だったのですが、実際問題としてその効果ってありましたっけという話になると、まあ無いとは言わないけれども誤差の範囲内とかそういう世界じゃね?という話だったと思いますので、今次QQEの場合に何で効いたかという話を読みたいのですが、日銀レビューの方ではその辺りはスルーされていたりするというのが実にこう巧妙というか何というかで味わいが深いものでありまする。

まあそもそも論として長期国債買入による金利押し下げ効果がどの程度あるのかという話もこれまた難しい所で、まあ多分押し下げ効果そのものはあるというのはその通りだと思いますが、実際問題としては市場の方が相変わらず2年で2%とか無理無理無理というのがメインシナリオになっており、何とかストの皆様におかれましては(だいぶ転んできた人もいますが)2年で2%無理だから追加緩和ですよという話をしていたりするという要因もあるでしょうからどうなんでしょというのもありますし、そもそも貸出や株式などの投資に回るというのは日銀の国債買入の直接的な効果というよりは金融緩和政策全般の効果ではないかという気もしますがその辺はさすがに後の方に出てきます。


・まあやはり国債買入でポートフォリオリバランスという直接的な話には無理があるような希ガス

でまあその次に『主体別にみたポートフォリオ・リバランス』というのがありますが。

『もっとも、全ての主体についてポートフォリオ・リバランスが確認される訳ではない。国内銀行と海外部門(非居住者)は、日本銀行の国債保有シェアが国債買入れによって拡大した時期に、国債保有シェアが低下する傾向がみられる(図表3)。一方、生・損保や企業年金基金には、現時点までのところ、国債保有シェアを低下させる傾向はみられない。』

そらそうよ。

『この理由の1 つとして、生・損保や企業年金基金は、支払いが先行き長期にわたるという債務構造を持つため、資産と債務のデュレーション・マッチングを目的として、資産側に長期国債を保有しておく誘因が強いことが挙げられる。なお、公的年金と中小企業金融機関等(ゆうちょ銀行を含む)は、2000 年代の終わり頃から継続的に国債保有を減らしている。このうち、公的年金の国債保有の減少については、年金支給のための資産の取り崩しなど、日本銀行の国債買入れとは直接関係のない要因によるものであると考えられるため、以下の分析では捨象している。また、中小企業金融機関等の国債保有の減少についても、ゆうちょ銀行における預金残高減少に伴う資産減少などを反映したものであり、日本銀行の国債買入れとの関係は強くないと考えられる。』

ということで、日銀の国債買入の拡大で国債保有が減りました(これは誰かが減らさないといけないから減るという話)という主体はオペ先がオペに応じましたよという話であって、少なくとも日銀の国債買入がアセットアロケーションに影響しているという話ではないでしょという話になるような気がだいぶするのだが気のせいでしょうかねえ。もし世間全体のアセットアロケーションに影響するようなポートフォリオリバランスが起きると言うのであれば、生損保や企業年金基金などのアロケーションが変わるという現象が必要な気がするのだが。

『次に、国債保有を減らした国内銀行と海外部門が、代わりにどの資産への投資を増やしたのかを確認する。まず、国内銀行についてみると、量的・質的金融緩和が導入された2013 年以降、日銀当座預金が増加するにとどまらず、貸出を増加させている(図表4)。一方、海外部門は、日本の株式・投信のほか、社債への投資を増加させている(図表5)2。』

という図がありまして、まあ個別金融機関の資産構成という意味ではこういう話になるのかもしれませんが、一方で資金需給という面で言えば日銀当座預金の増減は中央銀行(および政府部門)の対民間部分との資金収支尻であって、日銀当座預金の増減に関係なく貸出の増減は起きうる話になるので、資産構成の話と資金需給の話を混同してしまいそうな感じがしますな。書いてる本人もあれれとなって泡吹き状態になったりしてますがががが。

でまあちょっと飛ばしてその次に『銀行貸出増加の背景』という小見出しがある。

『国内銀行による貸出の増加には、銀行のバランスシートの状況や銀行が直面する資金需要といった金融経済状況の変化に加え、日本銀行が買い入れた国債の残存年限の長期化も影響している可能性がある。』

大きく出ましたな。で、日銀の買入年限長期化で金利が下がると貸出の誘因が増えるとかいう能書き部分は割愛しましてその次。

『もちろん、銀行貸出の増加には、企業の資金需要の高まりなど、金利リスク量以外の要因が作用している可能性がある。そこで、量的・質的金融緩和導入後に国債保有を大きく減らしている都銀等に注目し、貸出を被説明変数とし、国債保有にかかる金利リスク量のほか、貸出に影響すると予想される他の変数(預貸金利鞘、企業の資金需要を表すD.I.、銀行の不良債権比率)を説明変数とする回帰分析を行った3。』

お得意の回帰分析キタコレという所ですが、

『3 分析の詳細は、次の論文を参照。齋藤雅士・法眼吉彦「日本銀行の国債買入れに伴うポートフォリオ・リバランス:銀行貸出と証券投資フローのデータを用いた実証分析」BOJ Reports &Research Papers、2014 年6 月.なお、都銀等は、都銀5 行、三菱UFJ 信託銀行、みずほ信託銀行、三井住友信託銀行、新生銀行、あおぞら銀行の計10 行。』

とありますように、日銀のページ見てると判りますが、同時発表でもうちょっと詳細なレポートが出ていますので回帰分析の内容とかはそっちを見るのが吉。

『分析の結果、資金需要の高まりは貸出を増加させる方向に、預貸金利鞘の縮小と不良債権比率の上昇はそれぞれ貸出を減少させる方向に働く傾向があること、そして、これらの効果を勘案しても、国債保有にかかる金利リスク量の減少は貸出を増やす方向に働く傾向があることが確認された。』

ほほう。

『また、回帰分析の結果をもとに、量的・質的金融緩和導入前後の銀行貸出を要因分解すると、預貸金利鞘の縮小が継続的に銀行貸出を下押しするもとで、日本銀行が買い入れる国債の年限長期化に伴う金利リスク量の低下は、銀行貸出の押し上げに寄与していると考えられる(図表7)4。』

ほうほうそうですか、という所ですが、ここで脚注4というのがありまして・・・・・・・・・

『4 ここでは、国内銀行の国債保有にかかる金利リスク量の変化が銀行貸出に影響するという因果関係を想定しているが、実際には、これとは逆の因果関係も存在する可能性がある。この点については、脚注3 に示した論文を参照。』

ということで、同時発表のペーパーの方でも説明があったりするようですが、回帰分析の結果でドヤッとするだけではなく、前提とする因果関係がそもそもどうなのよという点について脚注とは言え触れている辺りに良心を感じる次第ですが、単にツッコミが来るのが明白だから書いたのかも知れず(^^)。


・国債買入効果の宣伝コーナーではあるが一応留保も入れている訳で

でまあもうちょっと分析した部分はスルーしまして最後の所で『おわりに』という小見出しの所。

『2013 年4 月の量的・質的金融緩和導入以降、日本銀行による残存年限の長い国債の買入れが大きく増加する中、主に国内銀行と海外部門において、国債保有が減少し、銀行貸出のほか、株式・投信や社債への投資フローが増加している。』

ということですが・・・・・・・・・

『なお、本稿の分析は、国債買入れを起点としたポートフォリオ・リバランスを捉えることを目的としているが、分析結果の一部が、それ以外の要因によるリバランスを捉えている可能性は否定できない。』

えーっと一部ですかそうですか(棒)。

『例えば、予想物価上昇率や為替減価期待の高まり、景気見通しの改善による株価上昇期待の高まり等も、国債から他の資産へのリバランスを促す可能性がある。こうした期待の変化は、中央銀行の国債買入れによって生じることも考えられるが、中央銀行の目標とする物価上昇率の引き上げ等、国債買入れ以外の要因によっても生じ得ることには留意が必要である。』

ということで、さすがに国債買入の効果が直接的に出たのでポートフォリオリバランスとまで言い切る程は図々しくないようですが、まあ逆に言えばこの手の実証分析に関しても前提とする因果関係とかの置きについて良く良く見ないと適宜都合の良いようなリードをされてしまうという常識的な結論に落ち着くのでありました(^^)。


・なおFSRでの分析も折角ですのでURLだけつけておきます

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr140423a.pdf

FSRの中で『V.金融仲介活動の点検』というのがありまして、該当するのが本文9ページから28ページ(PDFで14枚目から33枚目)になりまして、こちらでは金融システムの各主体における資産構成の変化に関する状況についてより細かく分析しておりまして、まあこちらは特段政策効果の宣伝コーナーでは無いというのもあるからでしょうが、日銀の長期国債買入がポートフォリオリバランスを促した云々のような図々しい話は特段無くて、緩和的な金融政策がサポートみたいなまあふわっとした説明(自画自賛の香りもせんでもないが)になっておりますので、併せてご確認されるのも吉かと。

あと、先ほどの所にありましたより詳しいペーパーというのはこちら。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/data/ron140619a.pdf
日本銀行の国債買入れに伴うポートフォリオ・リバランス:銀行貸出と証券投資フローのデータを用いた実証分析




2014/06/26

お題「国債決済期間短縮化の進捗状況ネタというマニアネタ/イエレン議長会見ネタ少々/その他少々」

ギリシャはサッカーで見せたその計画的にも程がある戦略眼と戦術眼をなぜ政府債務問題に生かさないのでしょうか、というツッコミをした市場関係者は昨日何人いたでしょうか(^^)。

○国債決済T+1の進捗状況とな

進捗状況の報告とな。
http://www.fsa.go.jp/news/25/syouken/20140624-1.html
平成26年6月24日 金融庁
証券決済リスク削減に向けた市場関係者の取組の進捗状況について

ということで、詳しくはそこにあるリンク先にありまして、まあ国内債券の人的には国債決済T+1の話が気になるので日証協のページに行きますが。

http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/kessai/jgb_kotei/index.html
国債取引の決済リスク削減に関する工程表及び貸株取引に係る決済リスク削減に関する工程表の進捗状況
平成26年6月24日

んでもってそちらの中の上から2番目のリンクの『国債取引の決済リスク削減に関する工程表(平成26年6月24日)』というのが状況の報告みたいになっている(最初のは単に「こういうのを出しました」という表紙みたいなもん)ので、まあそちらをご覧になるのがヨロシアル。

http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/kessai/jgb_kotei/files/20140624koutei.pdf
国債取引の決済リスク削減に関する工程表

でまあ項目の中で最初に出てくる項番1『1.国債取引の決済期間の短縮化』の直近の所はこうなっております。

『@ 日証協WGが調査・分析等を依頼した外部コンサルティング・ファームは、幅広い市場関係者へのヒアリング及びアンケート調査を行い、平成26 年3月、コンサルティング報告書を取りまとめた。

A WGでは、引き続き、コンサルティング報告書も踏まえ、アウトライトT+1化(GCレポT+0化)の実現に向けた取引手法及び担保管理インフラ機能の導入等の論点を中心に議論を行っており、平成26 年6月に、その実現に向けた課題の整理及び解決策をグランドデザイン(暫定版)として取りまとめる予定。これを踏まえ、同暫定版を周知するとともに、平成26 年9月を目標に、同確定版を取りまとめることとしている。

B 上記グランドデザインを踏まえ、市場参加者、インフラ提供機関等は、平成29 年以降の速やかなアウトライトT+1化の実現に向けて、システム整備や市場慣行の見直しに取り組む。』
(以上上記工程表の2ページ目より引用)

ということでまあそういう具合との事ですが、時々このネタになりますと申し上げておりますように、まあその「決済リスク削減」という趣旨は理解しますし、そらまあ削減できるリスクは削減した方が良いに決まっておりますが、ただまあ現状でアウトライトT+1、GCレポT+0というのはさすがにどうか(まあ実現するの2017年以降という話にはなっているけど)という話でございまして、ちょっと頭を整理する為に論点を整理してみるというごくごく一部のマニア向けネタになって恐縮至極。

現実問題としてアウトライトT+2とT+1の間にはかなり大きな事務面でのギャップが発生するというのはレポ取引がT+0になってしまうことで、そらまあ業者としてはベースの部分はT+0になる前にGCでもSCでも手当はすると思いますが、当日発生した売買に関する部分の調整はどうしてもT+0になだれ込まざるを得ず、そうなると事務的な負担と事務リスク(例えばセールスが伝票回し遅れてとかてコンファメーションが遅延したとか、売買のフロントシステムへの入力が遅れてポジションの把握が遅延するとかその手の話が起こす影響を処理しなければいけないケツの時間が物凄く短くなるとかそういう話ね)が従来のアウトライトT+2と比較するとかなり厳しくなる訳で、T+3をT+2にした時とは話のレベルが相当違う(のでまあ慎重にやっているという事なんでしょうが)のですな。

でまあ今一般的に行われている現担レポ方式だとT+0で事務を回すの事務量的に無理とか、レポのT+0での貸債とか出来るかよとか、まあその辺の話に関しては取引慣行の変更(新現先方式への全面移行)とかトライパーティーレポ方式への移行というような対策はあるのですが、ここで思いっきりネックになるのが「それに掛かるコストどうすんの」という残念な話でして、ご案内の通り短期資金取引の金利が雀の涙にもならない状態になっている中で、そらまあ業者は商品有価証券の手当てと在庫ファイナンスをしないといけないからなったらなったで対処するんでしょうが、投資家サイドとしてはそれだけのコスト掛けるメリットはどこにありますねんとかそういう話になるでしょうと思う訳で、決済短くなる分在庫ポジションや資金ポジションの把握をよりリアルタイムに近くしないと言う話になったり、取引のSTP化(これは債券決済ではそれなりに進んでいる筈だが短期資金取引の場合は取引によって別途になっている)でもシステム改修のコスト掛かるでしょうし、レポ取引の取引手法が変わればそれ用のシステム対応が必要(なのかどうかは少々良く判らん所があるが)かも知れませんし、そもそも論としてトライパーティーレポやるのは良いけど、そこに出すフィーがどこをどう叩いても出てこないという状態な訳で、まあ色々とその銭の問題がある訳ですよ。つーか事務リスク高まる分人も配置しないといけないからその人件費もありますし。

でまあそのゼニの問題は短期金利が0.5%位まで上がってくれればほぼ問題なく解決する筈なのですけれども(だから別に正常化が全部完了しなくてもいけると思う)、当然ながらこの手の改修は準備段階において対応の為のシステムコストが掛かる部分がある訳ですからして、準備に1年半とか2年とか掛かる事を考えるとやっぱりしんどいので早く2%に物価上昇して下さいよろしくお願い申し上げますという話になる訳ですな。

んでもって更にそもそも論に突っ込みますと、そもそもそれだけのコストと事務負担の拡大をして国債決済をT+1にするメリットって何ですねんという所で、国債の決済リスクって言いましても国債なんですから基本的には取引再構築コストの部分であって(これが非国債だとカウンターが飛ぶのと証券そのものが飛ぶのとという問題があるのですが、国債だったら証券そのものは飛ばないのだから最終的にはそれを持って日銀に駆け込めばマージナルレンディングファシリティーがあるのですから資金繰りそのものは何とかなるでしょ)、それが膨大に積み上がったからと言ってシステミックリスクに繋がるような話じゃないでしょと思う訳ですし、市場参加者の方でカウンターパーティーリスクの管理をしているでしょうし、まあその辺りに関してはバーゼルとかIOSCOとかその辺の規制も強化されている訳ですから、別に米国に合わせなくてもエエヤンとは思うのですけどね。

あと、決済リスク削減以外のメリットとしては、国債決済の期間を短縮することによって資金化が容易になるので円の国際化に資するという話もあるのですが、現実問題としては国債決済は全てT+2でやっている訳ではなくて、必要であればT+1でもT+0でも相対でやろうと思えば出来ない事はない(さすがにT+0は事務回す手間が重いけど)ので、それよりも日銀ネットでの担保差入回収とかそっちの方をよりスピーディーにやれる方に持っていった方が(というか今それもやっている最中の筈だが)良さそうな気もしますし、決済期間短縮したら国際化が進むんだったら欧州市場の国債とかどうですねんと思う訳で、まあそのメリットという考えも判らんことは無いですけれども、それと事務リスク拡大のプロコン分析ってどうなんでしょと思うのだが、何せ事務リスク拡大という話って実際に回してみないと判らないという面があるせいかどうしても計測が難しくて、なかなかこう現場の感覚としてどうのこうのと言っても通じにくい所ではあるなあと思うのでありまする。

で、これまた以前にも申し上げましたが、足元では日銀のQQEによる国債馬鹿買入による玉吸い上げによって国債の流動玉が激減し、その結果セカンダリー売買の流動性が(特にオフザランになると)落ちているという状況な訳で、一方で日銀におかれましては補完供給貸付は5営業日までしか連続して同じ銘柄を同じ先には出さないなどと大変にケチ臭い話をして、国債売買の流動性なんぞ知らんがなというスタンス(大体からしてセカンダリー市場とかをちゃんと理解してるならこの前の騙し討ち輪番変更とかやらんだろと思う)でございまして、そういう状況下においてアウトライトがT+1になるとレポがT+0になる訳で、レポ市場に掛かるストレスはそらまあ決済のケツが短くなる分だけどうしても高くなってしまうので、QQEの出口の時に国債流通市場にストレスをより強く掛けた状態で迎えるという事になった場合に不測の事態が起きませんかねえというのも気になる所でして、まあ要するにQQEが終わって国債の馬鹿買いも終わって短期金利が0.5%に上昇して、となった所でその手の取り組みを加速させれば良いように思えるのですがどうでしょうかねえとゆー所ではございます。

というこの前も話をしましたのでだいぶ繰り返しになっておりますが、またちょっと頭を整理してみたのでごく一部の方向けのマニアネタを投下すると同時に、一応円債やっている方に無縁の話でも無いと思いますので意識のどこかに置いてちょという意味で投下したのでありました。

#頭の整理をしてもまた起きてから頭の整理をしたりしながら書くと時間がかかるなあと思ったのですが、それにしてはお前全然整理できていないのではないかというツッコミをしてはいけません


○さて短国入札ですがががが

えーっと本日は3MTBの入札があるのですが、昨日の日本相互証券さんの短国の引値を見ますと償還が近くて使いにくい銘柄(オペにも入らん)は別ですが、あとはまあ見事に0.03%だの0.03%割れだのという素敵なレートが並んでおりまして、日銀の短国買入の対象になっているゾーンは軒並み3bp割れの引値という大変に素敵な状態になっております。

でもってそんな感じで短国市場の玉がカラカラ帝となっておられる中で月末発行日の3か月TBが出るという事ですが、3bp割れかよと落涙を禁じ得ない状態になっているのですが、ご案内の通り7月は共通担保オペの落ちがあるのと資金需給上放置しておくとMBが落ちやすくなる筈ですので、MB維持するなら短国買入が続くとなるともうエライコッチャでございますがなという話ですが、ディレクティブに忠実に運営すると短国市場の玉が無くなってマイナス金利になっても知った事かですし、短期金融市場の機能がおかしくなっても知った事かという話でございましょうから(金利の馬鹿低下は兎も角市場機能がおかしくなったら金融政策運営上ゆゆ式だと思うのだが)このしょうもない金利水準VS先行きの短国需給見通し(って言ったって単なるオペ読みですが)の対決はどうなるでしょうという所ですな、ナムナム。


○マクロプルーデンスか金融機関経営問題かその心は?

昨日はこんなんでてますが。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140625a.pdf
2014年6月25日 金融庁 日本銀行
「金融庁・日本銀行連絡会」の開催について

『金融庁と日本銀行は、本日、金融システム・金融市場を巡る諸情勢について意見交換を行うため、金融庁長官と日本銀行副総裁を含むメンバーからなる「金融庁・日本銀行連絡会」を開催しました。今後も、連携強化を図っていく観点から、連絡会を半年に一回程度の頻度で開催していく予定です。』

ほほう。

『(主な参加者)
・金融庁 畑中長官 ほか
・日本銀行 中曽副総裁 ほか

(開催頻度)
・半年に一回程度。必要に応じ随時開催。

(目的)
・最近の金融システム・金融市場の諸情勢に関する意見交換』

金融システム云々と言えば日銀からはFSRというのが出ておりまして、暫く前に出た奴をちょっとだけ以前ネタにしましたが、まあ今回ですと地域金融機関の経営課題というか、基礎的な収益力の弱い金融機関と強い金融機関の差が拡大傾向にあるみたいなレビューの部分がヒジョーにこう気になった訳ですけれども、まあ直近ではその手の話がネタになり、将来はまたどうなるかというのはそれこそFSRで問題意識の一端を垣間見せてくれるんでしょうかねえなどと思いつつ、何でまたこの時期に急に出てきたという感じ(そらまあ金融システムの監督という面では被る所が多いから現場レベルでの協力関係とかはあるでしょうから全くない所から急に始まった訳ではないでしょうけれども)ではありますなという所で。

つーかまあこういう話はもう一人いるはずの木彫りの置物状態の人にはどだい無理なのは判りきっておりますけれども、しかし対外の部分でも役立たずで内部管理とか更に役立たず(内管どころか自分の管理出来てるんかいなという世界でしょ)とか随分とお高い置物でございますなあとふとこのメンバーを見て思うのでありまして、黒田さんも大概お忙しいですけど中曽さんは更にまた負担が掛かってますなあと同情の念を禁じ得ません。



○などと書いているうちに時間がアレなのだがイエレン会見ネタの続きをちょっとだけ(大汗)

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140618.pdf

今朝見たらFINAL版になっていました。

・この質問の観点はオモロイですな

質問者の名前がアップルバームさんで、アップルバーム→林檎→W杯脱力テーマソングとか連想してしまう位にはニュースフローに影響されているアタクシ。

『BINYAMIN APPELBAUM. Binya Appelbaum, New York Times. You’ve spoken about the sense that the recession has done permanent damage to the economic output and you’ve reduced gradually over time your forecast of long-term growth. I am curious to know to what extent you think stronger monetary and/or fiscal policy could reverse those trends. Are we stuck with slower growth? Is there something that you can do about it? If so, what? If not, why?』

リセッションの影響で成長力が下がっている(ので低金利はより長くなり得る)というオープニングコメントがありました(なお先日もご紹介したようにその件は前回も指摘している)が、それに対して「成長力が下がっていて成長がスローならもっと強力な政策を実施すればよいじゃないか」というツッコミとは中々オモロイ。

『CHAIR YELLEN. Well, I think part of the reason that we are seeing slower growth in potential output may reflect the fact that capital investment has been very weak during the downturn in the long recovery that we’re experiencing. So, a diminished contribution from capital formation to growth does make a negative contribution to growth. And as the economy picks up, I certainly would hope to see that contribution restored. So, I think that’s one of the factors that’s been operative.』

ポテンシャルなアウトプットが落ちている事が資本財投資を弱くしており、それが回復ペースを遅くしているという要因の一部になっているという話をして、ただまあその点は今後回復していくでしょうという話をしておりますな。

ただまあそれってそれこそ日本の「3つの過剰」の調整局面と同じ話が起きているのであれば、より構造的な問題でありシクリカルな回復でカバーできるのかねという話でもあったりするので、そらまあ連銀の中ではその辺も考えているとは思うのですが、会見の場所ではこの辺の説明が実にこうカメレオンというかレインボーマン(ウーマン)という所で、低金利継続のガイダンスの所では構造的な話をしつつ、実際の経済成長力に関する話の場合は構造ではなく循環の話をしてくる辺りがお洒落ですな。

『Of course, we’ve had unusually long duration unemployment. A very large fraction of those unemployed have been unemployed for more than six months. And there is the fear that those individuals find it harder to gain employment, that their attachment to the labor force may diminish over time and the networks of contacts that are-they have that are helpful in gaining employment can begin to erode over time. We could see what’s known as hysteresis, where individuals, because they haven’t had jobs for a long time, find themselves permanently outside the labor force.』

てな感じでレーバーフォースの話を始めると急に構造の話が出てきて、長期失業者などが多くなっているのでどうのこうのみたいな話になってくるのよね。まあ話の筋は通っているから別にいちゃもんつける話ではないのだが、ただまあ構造の話と循環の話を自分の説明に合わせて都合の良い使い回しをしているようには思えるのでありまする。

『My hope would be that as-and my expectation is that as the economy recovers, we will see some repair of that, that many of those individuals who were long-term unemployed or those who are now counted as out of the labor force would take jobs if the economy is stronger and would be drawn back in again, but it is conceivable that there is some permanent damage there to them, to their own well-being, their family’s well-being, and the economy’s potential.』

ということで、経済の成長力が高まってその辺の問題が解決できるように希望しますという話をして、結局質問の筋は微妙に外したままというこちらでもイエレンクオリティを発揮しているなあという感じでして、じゃあ金融政策はその点に対してどうするのよという肝心の質問の筋は微妙に外してお答えをするのですな。

ということで時間の都合上今日は1つの質疑応答しかネタにしなかったのですが、どうもこう逆さ絵先生と違って質問の筋を微妙に外して答えをするのがイエレンクオリティのように見えまして、途中までですがこの前FEDのサイトにある録画映像を見たのですが、記者の皆様が微妙に「むむ?その答えは質問と違くないか??」というような表情をしているように見えたのはアタクシの目の錯覚でしょうかと思いつつ、この調子でやっていると運営が苦しくなった所で記者のツッコミが無慈悲になりそうな予感もするのでありまして、じゃあ運営が苦しくなるのはどういう時かというと、物価がちゃっかり上昇してくる場合と、金融市場がバブルヒャッハーとなる場合だと思いますが、後者はまあ判りにくくて前者は分かりやすいので、やはり前者なんでしょうなあと思うのでありました。





2014/06/25

お題「顎が外れた発言があったので軽くネタに/森本審議委員会見/イエレン会見ネタ続き」

「お前が言うな」発言でもしないとニュースにならないという所でしょうけど・・・・・・
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140623/waf14062319030017-n1.htm
「もうアウト。東京の自民は最低」 橋下大阪市長、セクハラやじをばっさり
2014.6.23 19:03

いやーこういう恥知らずだと人生楽しいんでしょうかねえ。

○恥知らずと言えばこれは昨日の顎が外れたニュースの白眉

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N7MS2K6S972V01.html
伊藤教授:GPIFは日本株の高値づかみ避けよ、国債売却直ちに (2)
更新日時: 2014/06/24 16:19 JST

『6月24日(ブルームバーグ):年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF )は、保有国債を直ちに売却すべきだが、国内株式などの高値づかみは避ける必要がある−。伊藤隆敏政策研究大学院大学教授は、債券を売却した後は、リスク資産への運用時期を見極めるまで現金などで一時保有することも一案だと話す。』(上記URLより)

ということで、昨日はこのヘッドラインが出た瞬間に顎が外れたり席から転げ落ちたりした方々が続出されたものと存じますが、ついこの前こんな事をおっしゃっていた筈なんですけれどもねえ。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N1VX6G6JTSF701.html
伊藤教授:GPIF改革は受給者のため、国内債52%まで落とせる (2)
更新日時: 2014/03/04 15:05 JST

『伊藤教授は午後にも都内で講演し、国内債の保有比率の引き下げに関連して、「日銀が大量の国債を買っている今がチャンス」との見解を表明した。国内株については、「株価はまだバブルでない」と指摘し、GPIFが買い増す好機だと語った。また、不動産やインフラ投資など新たな資産に運用を拡大すべきだとの考えも示した。』(上記URLより)

えーっと今年の3月の頭から見ますと株価インデックスベースですと3月4日の引けで日経平均が14721円でTOPIXが1204とかでして株価って1割も上がっていませんが、前回はバブルでは無く今回は高値掴みを避けろとか急に何を言い出しているんでしょうかこの先生はという所ですが、要するに無責任に好き放題言ってたのが実際に行われそうになってくると急に自分の吹いていた与太話の結果が恐ろしくなって逃げに入るというようなことは全く無いと存じますのできっと前回と今回との間での株価分析に関して我々のような凡下の及びもつかない高度な計算をしておられるものと存じます(棒読み)。

でまあ更にツッコミ所があるので生産性の無いツッコミでも。

『国債の売却と、日本株や外貨建て資産に投資する時期には「ズレがあっても仕方がない」と、伊藤教授はみる。GPIFの資産構成見直しに先回りした投資家の買いでリスク資産が割高化した場合には、慌てて後追いせず「ひとまず現金や国庫短期証券(TB)で保有し、投資機会をうかがうのが賢明だ」と言う。』(最初の記事の方つまり昨日のニュースのURLから、以下同様)

いやーその間って運用利回りが物凄い勢いで低下するんですけど大丈夫ですかねえ。その「ひとまず」がどんだけ継続するのかというのが判れば誰も苦労はしないのですけれども、そんなに売買タイミングがネ申様のように判断できるのでしたら大学のセンセなんぞやるよりもグローバルマクロのヘッジファンドでも立ち上げて頂きまして、御自身も全財産を担保にしてそこに突っ込んで全力で100倍レバレッジでも掛けて頂いて大儲けして下さった方が世のため人の為になると存じますが如何でございましょうか。

『国債についても、経済・物価情勢が長期的な安定状態に入り、「利回りが上がり切ったら、再び買い増す選択肢もある」と指摘。例えば、「いったん35%まで落とし、将来的に長期金利が4%程度で安定したら45%に戻す」運用もあり得ると語った。』

えーっとアタクシ頭が悪いので良く判らないのですが、年金の基本ポートフォリオからのアローワンスの範囲内で動かすのは相場観でというのがあると思うのですが、基本ポートっていうのはもっと長期的な財政計算とかを元に検討するもんで、相場観でホイホイ動かすものじゃ無かったようにも思えるのですがきっとそれはアタクシの気のせいに違いありません(白目)。

『ただ、伊藤教授はインフラ投資を含めたオルタナティブ(代替)投資の本格的な拡大には現時点で反対だ。リスク資産への投資拡大にはガバナンスの抜本的な強化が不可欠だと言う。』

何の責任も無い外野から散々お話をしている人がガバナンスの強化とか鏡をプレゼントしたくなる件は兎も角として、えーっとオルタナ投資に関して先生様3月には何を仰っておられましたっけ先ほど引用しましたけどねえという所で、もしかしてこの大先生におかれましては記憶力や思考能力に重大な(以下の部分は諸般の事情により削除されました^^)。

まあしかし何ですな。

『米沢委員長は3日付の日本経済新聞で、何年何月までにどの資産を何%にするかの工程表を示すと表明した。しかし、伊藤教授は「市場に先取りされる」恐れがある工程表は「事前に出さない方が良い」と指摘。GPIFは「過小評価されている国や産業分野、企業などを巧みに拾っていく」ことで「年金受給者のため、長期的に運用利回りを上げるのが至上命題だ」と話した。』

部下の下士官や兵にバンザイ突撃させるだけさせて本人はのうのうと生き残る上官といった風情を感じて誠に趣が深いというのはあたくしの理解が間違っていると思いますので、ワタクシのどこがどう間違っているのかを教えてジェネラルと言った所でございますな、うんうん(棒)。

という訳でまあタカ&トシ先生の仰せになられる事は現世の凡下のアタクシには中々理解に苦しむ所ではあるのですが、もしかすると大先生様におかれましては現世の人間には理解できないような超越したお立場におられるのではないかと愚考致したくなる所で、そうであれば大先生様におかれましては可及的速やかにra(内務省検閲)。


#いかん朝から生産性の無い悪態がががががが。


○森本審議委員会見

ちょっと遅くなりましてすいませんすいません。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1406c.pdf

・輸出に関して

『(問) 海外経済の動向次第では輸出が上下双方向に変動する可能性があるということを言われていますが、現状ですと、昨日出た5月の実質輸出は数字も弱く先行きなかなか輸出の回復のタイミングが難しいと思うのですが、ここで言われている上下双方向ということで、上振れ・下振れリスクに関して、どのような状況を想定しているのかもう少しお伺いします。』

とまあこれは聞かれます罠という所ですが・・・・・・・・・・

『(答) 今ご指摘がありました実質輸出の伸び率ですが、10〜12月期は若干のプラス、1〜3月期は若干のマイナス、そして4月はややプラスになりましたが、5月にはまたマイナスとなりました。このところ輸出には弱さがみられていると思いますが、横ばい圏内あるいは若干の力強さに欠けるという状況かと思います。この状況はご承知の通り、基本的には、わが国経済との結びつきが強い東アジア経済等のもたつきの影響が大きいと思っていますが、ベースにはわが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も相応に影響している可能性があるのかなと思っています。また、駆け込み需要への対応で国内向け出荷を優先する動きであるとか、米国の記録的な寒波といった一時的な要因が作用していたと思います。』

ということで、講演の方では消費税駆け込み対応で云々という言及が無かったので、これはついに駆け込み対応の話は実はたいした影響では無かったという話にするのかと思いましたが、昨日ネタにした総裁講演でもそうでしたけれども、やはりこの件は引き続き輸出の一時的な下押し要因に入れっぱなしという事のようですな。

『そういうもとで、先行きについては、一時的な下押し要因が剥落していくのは間違いないわけであり、そうした状況にプラスして、米国等先進国を中心に海外経済の成長率が高まっていくということで、輸出は緩やかながらも増加していくのではないかと考えています。』

ほうほう。

『そういう中で、上下のリスクという点について、上については、ASEAN等新興国で政情不安とか構造的な問題も抱えて、ここのところもたついているわけですが、その辺の状況が改善して、しかも米国等の先進国の景気が回復していくことに伴って、輸出等が拡大していくという、こういう上振れがありますし、それから、米国自身も記録的な寒波から抜け出して、今、回復基調の経済指標が色々確認されているところです。こうした上振れ要因にプラスして、機械受注でも外需がここのところ伸びを強めてきており、こうした面も先行き輸出が少しずつ伸びていく下支えにもなるのではないかと思っております。』

と、講演では微妙に下振れの話をしていたようにも見えたのに会見では上振れの話となという所なのですけれども・・・・・・・

『それから、プラス面ばかり言うようで恐縮なのですが、やや長い目でみると、本日の講演でも触れましたように、これまでの円高水準の修正で、これからは一定レンジでの為替の動きになると思われますので──今もそういう状況で動いています──、海外生産比率の上昇ペースを鈍化させるということもあるのではないかと思っています。一方で下振れ要因としては、新興国等のリスク要因が顕現化してきて、東アジア自身の経済が下振れていくという要因も考えられるかと思っています。』

ということで上振れの話ばかりされておりますが、記者の方が気を利かせて次の質問をしたのですかねえ。

『(問) 追加の質問ですが、現状ですと両方のリスクがあるけれども、どちらかといえば上振れが起こって困るような状況でなければ、下振れの方のリスクを注視するという、そちらの方に軸足があるということでよろしいのですか。』

これは記者の優しさを見た感じですな(^^)。

『(答) 項目的には上振れの方を多く挙げましたけれども、やはりリスクについては両方起こり得る話ですから、下振れの方をより強く意識というか、これはしっかり注視していかないといけないと思いますが、一方で基調というものをみる上で、やはり上下双方向についてみていくべきではないかと思っています。』

質問の誘導に乗ってかどうか知らんが上手くまとまっていますなという所で、つまり見通しの基本的な部分は上振れというか強く、リスクは下を見て注意しましょうという結論で綺麗に纏まっていますが、要するに強気なんでしょという所ではあります。


・物価について夏場にいったん下がるという話はここでも出ていますが数字は微妙に違いますな

順序が逆になったのが却ってよいネタになったかも知れません(別に狙った訳ではなくただの偶然)が、昨日ネタにした月曜の総裁講演ちゃんでの「夏場に向けて物価が1%近傍に下がるかもしれません云々」が日銀の見通し弱気化みたいなネタとして何とかストの皆さん歓喜でレポートを出すの展開となっております(が、そもそもそれが変だろ見通し更に自信を深めてるし大勝利宣言があちこちにあるでよという話は昨日申し上げた通りです)けど、森本さんの会見でもこのような言及がございますので念の為。

『(問) 2点お伺いします。1点目は、物価についてですが、夏場にいったん下がって、またその後は上がっていく、シナリオ通りにいくと今日もおっしゃっていると思いますが、そう言われる根拠を、今の情勢を踏まえて、お伺いします。(以下引用割愛)』

『(答) 物価については、直近4月は、消費増税の直接的な影響を除いて1.5%という数字だったわけですが、それまでは大体1.3%くらい、いわゆる1%台前半で推移してきたわけです。この背景には、経済が緩やかに回復して、生産・所得・支出の好循環が働くもとで、ある程度バランスよく回復しながら、労働需給の引き締まり等もあって、雇用・賃金の増加を伴いながら、物価が上昇してきている状況だと思っています。』

しらっと直近の数字を出してくるあたり強い訳で。

『その背景には、需要も強くなってきていますので、需給ギャップも、縮小してきて日本銀行の試算ではゼロ近傍まできていますし、予想物価上昇率についても、家計、企業、市場の色々見方はありますが、全体としては、この経済的な状況を背景に上昇してきているのではないかと思っています。』

まあ森本さんなので別に市場に嫌味を言っている訳ではないと思いますが、ここの「色々の見方はありますが」というのはどう見ても市場の見方が弱いですねえあっはっはという話でありまして、昨日の総裁講演でも市場の見方がどうのこうのですがウヘヘヘヘヘ(意訳)というのがありましたように、どう見ても市場の何とかストの皆さん喧嘩売られてますなあウヒョヒョヒョヒョ。

『そうしたもとで、いわゆる為替の影響を受けやすい食料や工業品を除いても、非常に幅広い品目で──上昇品目も全体の5割以上になってきていますし──、上昇がみられるといった状況ではないかと思っています。』

ここの所はまた別の見方でも物価が上がっていますよという話で中々。

『そういうことで、円安による部分が夏頃にかけて、エネルギー関連を中心に剥落していくわけですが、一方で、幅広い品目が、需給ギャップの縮小あるいはプラス転化、予想物価上昇率の高まりと共に、雇用・所得環境の改善──ご承知の通り、失業率も構造的失業率に近い状況になっていますし、色々心配されたベースアップについても、中小企業も含めて幅広く行われたということだと思いますし、それから夏季のボーナスも非常に堅調な数字が出ています──の中で、幅広く上昇してきていますので、この剥落していく部分と伸びる部分のせめぎ合いだと思います。それで、暫く夏場くらいまで1%台前半で推移するかと思いますが、年度後半以降、消費増税の影響からも逃れて経済も回復していきますし、連れて需給ギャップも改善していくと思います。』

まあ何ですな、ここでは確かに1%近くに云々というのは無いので、その辺を見て飛びつきたくなるのは判らんでも無い。

『また、予想物価上昇率も上がると思いますので、そうしたことを背景に、年度後半からは、また物価も上昇局面に入っていくのではないかと考えているところです。』

てなことで、結局の所は強い見通しという話になっている訳ですな。


・この質疑は盛大にワロタ

『(問) 先月、白井審議委員が那覇で会見された時に、日銀が昨年4月4日にお決めになった、約2年を念頭に2%を達成するという宣言について、何が何でも絶対に2年で2%を達成するということではないとおっしゃいました。こういう見方に森本審議委員も賛同されるかどうか、やっぱり何が何でも絶対に達成するべきものであるとお考えなのか、あるいは白井委員のように絶対ではないとお考えなのか、お聞かせ頂けますでしょうか。』

これはワロタとしか申し上げようがないですが答えも中々。

『(答) 昨年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した時に、2年程度の期間を念頭にできるだけ早期に物価安定目標を実現する、その2%の「物価安定の目標」の実現を目指して、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続するという、こういうコミットメントをして、今、この大規模な資産買入れを着実に進めているところでありまして、当初考えておりました所期の効果は発揮されているのではないかと思っています。』

ふむふむ。

『そうした中で、4月の展望レポートで、私どもの中心的な物価見通しとして、消費税率引き上げの影響を除いたケースですが、14年度1.3%、15年度1.9%、それから16年度は2.1%という数字を出したわけです。そういうことで、大きく言って、その見通しの期間の中盤頃にこうした2%程度が達成できるのではないかという見通しを持っており、色々リスク要因はありますけれども、今、私どもが展望している状況の中では、当初お約束しているような、ある程度の期間を念頭に置いた中で、順調に物価上昇のパスは辿っているのではないかと考えているところです。これが大勢見通しということであり、私も大体それと同じような考え方をしています。』

「当初お約束している」という辺りに微妙に白井さんをdisっていてワロタという所ですが、まあ大勢見通しと同じということで普通に与党審議委員ですなうんうん。

『白井委員については、2016年度に達成ということでありますが、白井委員の考え方について私がコメントをすることは差し控えさせて頂きます。これは色々議論した中で、日銀としての大勢見通しは、先程申し上げたような数字になっているわけで、今のところ頭に描いているような物価上昇のパスを辿っているのではないかと思っています。』

差し控えるとか言ってますがまあその前に盛大にコミットという話をしているのが実にお洒落な質疑応答で、最初の所の引用ネタもそうですが、何か阿吽の呼吸みたいな会見になっていて今回の会見はそういう意味で(どういう意味だ^^)味わいというか侘び寂びの世界というか誠に心の温まるものを感じる会見ではございましたです、はい。


○イエレン議長会見ネタの続きでおじゃる

ちなみに今朝の段階でまだPRELIMINARY版である。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140618.pdf

・こらまあハト風に市場は取る罠という質疑が続くのだ

てな訳で最初の2つの質疑が「直近のCPIが上昇してますがそんなにハトで大丈夫?」→「直近のCPIの上昇はノイズ(キリッ)」と「SEPの数値で金利の所に変化がありますね」→「変わったっていいじゃないメンバーいれかえだもの(byみつを)」という所で、ナンジャソラという質疑でございましたが・・・・・・

『YLAN MUI. Hi. Ylan from the Washington Post. My question is sort of the flip side of Steve's and it's about your outlook for unemployment.』

スティーブというのはCNBCの人で最初に質問した人ですが、最初の質問は物価の方でしたがこちらのねえさんは雇用と金融政策に関連して。

『Your predecessor has said that the Fed has been consistently too pessimistic about the level of the unemployment rate, and today, you guys lowered your outlook again.』

ほう。

『Can you tell me a little bit about how you see the unemployment rate evolving to meet your forecast? Why you believe the rate of decline will start to level off? And what an unexpected drop might mean for the first-rate hike.』

ということで失業率と金融政策の関係はどうなるねんという話ですかな。

『CHAIR YELLEN. So, it's true that unemployment has declined by more than the committee expected and you do see a small downward revision in the committee's projections, at least the central tendency for the unemployment rate. Now, first of all, I mean, the labor market I think has continued to broadly improve.』

雇用は改善を続けているとな。

『We have seen continued job growth at a pace that is certainly sufficient to be diminishing labor market slack over time. Over the last three months for example, payroll employment has been rising around 230,000 jobs per month and we're running close to 200,000 over the last year. So, it's no way surprising to see it decline in the unemployment rate.』

と、威勢の良い話をした後に・・・・・・・・

『That said, many of my colleagues and I would see a portion of the decline in the unemployment rate as perhaps not representing a diminution of slack in the labor market.』

ということで、労働市場のスラックは無くなった訳ではないというのを入れているのがイエレンクオリティという感じだと思います。

『We have seen labor force participation rate decline. And while I think most of us would agree that there has been and will continue to be secular decline in the labor force participation rate for demographic reasons, I think a portion of the decline we've seen in the unemployment rate probably reflects a kind of shadow unemployment or discouragement, a cyclical part of labor force participation. Now, if that's correct, we may see that as the economy picks up steam and we see further recovery in the labor market, that those, let's call them discouraged workers, will return either to unemployment or to employment. And as labor force participation begins to stabilize, the unemployment rate will come down less quickly. And I think for a number of people, that's a component of the forecast.』

でまあ更に話は続き、先行きは経済の改善と共に労働参加率も改善するでしょうとかそういう話をしておりますな。

『You asked about implications, for the path of policy and I would just say, the guidance that we've given, our forward guidance states that the timing of liftoff will depend on actual progress we see and the progress we expect to see going forward in terms of achieving both of our goals, namely maximum employment and our 2 percent inflation objective. So, we're not going to look at any single indicator like the unemployment rate to assess how we're doing on meeting our employment goal, we will look at broad range of indicators. That said, as I try to emphasize in my opening statement, there is uncertainty about monetary policy. The appropriate path of policy, the timing in pace of, interest rate increases, ought to and I believe will respond to unfolding economic developments.』

てな訳で、政策運営というか利上げサイクルに関しては物価と雇用のデュアルマンデートに沿ってバランスアプローチするし、単一の指標だけでの判断はしないという話を強調していますな。

『If those were to prove faster than the committee expects, it would be logical to expect a more rapid increase in the fed funds rate. But the opposite also holds true. If we don't see the improvement that's projected in the baseline outlook, that the opposite would be true and the pace of the timing pace of interest rate increases would be later and more gradual.』

これはオープニングリマークでも話がありましたな。でまあこの失業に関する説明がやたら長いというのもイエレンクオリティでありまして、物価に関する質疑応答での説明部分(最初の所)に比較してこっちの方が丁寧という辺りが今回の会見でのイエレン節全開のイメージを持たせる所でもあって、そういう意味からもハトのイエレンキタコレという感じになるんでしょうなあと。




次の質問はこんなのです。

『JON HILSENRATH. Jon Hilsenrath from the Wall Street Journal. Chair Yellen, some Fed officials and some market commentators have noted that market conditions recently have looked a little bit like they did last spring before a period of turbulence.』

市場がまたぞろゴルディロックスヒャッハー相場になっていませんかとな。

『Volatility is very low in stock and bond markets. Risk premiums are very low, and in particular, the market expectations for interest rates, for short-term interest rates look below even the Fed’s own projections as laid out in your dot plot.』

市場の予想政策金利パスがSEPのドットよりも低いですなという指摘。

『I wanted to ask two questions related to that. One, what is your read on these--on market activity and are you at all concerned about a sense of complacency in markets? And two, what is your view on market expectations for the rate hike cycle that the Fed has laid out in its dot plot? Or, is the market where you think the Fed is on that?』

という市場の状況に関する見解を求めた質問ですが・・・・・・・・・

『CHAIR YELLEN. Well, I mean, I'll start by saying that a volatility both actual and expected in markets is at low levels.』

ふむ。

『The FOMC has no target for what the right level of volatility should be.』

そらそうよ。

『But to the extent that low levels of volatility may induce risk-taking behavior that for example entails excessive buildup in leverage or maturity extension, things that can pose risks to financial stability later on, that that is a concern to me and to the committee.』

と一般論のマクロプルーデンスは言うものの・・・・・・・

『I don't know whether a number of reasons have been cited for what we're seeing in the marketplace. I don't know if overconfidence or complacency is one of those reasons. But I guess I would say, it is important as I emphasized in my own opening statement for market participants to recognize that there is uncertainty about what the path of interest rate, short-term rates will be. And that's necessary because there's uncertainty about what the path of the economy will be. And I want to emphasize as I have that the FOMC will adjust policy to what it actually sees unfolding in the economy over time and that necessarily gives rise to a certain level of uncertainty about what the path of rates will be. And it is important for market participants to factor that into their decision making.』

ということで今の市場にオーバーコンフィデンスが発生しているかとかいう事には微妙に外して言及していますが、まあこの説明は単に「金融政策に関する市場の先行き見通しはまあ皆さんが考える事ですなあ」という話をしている感じで、特段こう何か警戒させようという発言では無く、そうなりますと例えばスタイン前理事辺りがいうような感じとは全然違う訳で、そら市場がゴルディロックスヒャッハーとなりますわなという所ですな。

『You asked me about the dot plot, our forecast or projections for the Fed funds rate, and you do see a range of disagreement among the participants there so, by the time you get to 2016, there is a considerable range of opinion and I think in part, that reflects the uncertainty that I'm talking about that participants do see different pace of recovery, different trajectories for inflation, and it's appropriate for them to adjust their thinking about what the path of policy should be to their own view of how the economy will evolve over time.』

先行きに関してはSEPのドット見ても見解が分かれているでしょ不確実性は多いんですよ政策だってそれによってデータ次第ですよあっはっはとな。

『And around each of those dots, I think every participant who's filling out that questionnaire has a considerable band of uncertainty around their own individual forecast.』

ということで、市場の状況に関する評価という質問の趣旨を微妙に外した説明をしているという辺りがイエレンさんの逆さ絵とは別の種類の狸クオリティでありまして、逆さ絵の場合は質問には割と明確に答える(ただし言語明瞭意味なしというのも結構あってそこは狸だった)感じだったと思うのですが、イエレンさんの場合はこの微妙にねちっこいベシャリをもって「そんなこといわれたらアンタ、往生しまっせ〜」と言いつつ相手の質問の筋を微妙に外して自分のペースで答えるという感じがするのでありますが、まあここでの質疑応答を見るとイエレンさん的なのかFOMCの一致した見解なのかが超謎なのですが、マクロプルーデンス的観点で市場のリスクテイキングが過剰になっていてケシカランというような主張を出すのには消極的ですなあというのが読める訳で、そらまあ市場がゴルディロックスヒャッハーとなりたくなるという同じ事の繰り返しですがそうなるでしょうねという所です。

#以下なお後日に続く(と思います)


2014/06/24

お題「本日は予定を変更して黒田総裁講演ネタをお送りします(汗)」

先週のニュースというか元ネタはもっと前だったみたいですが。
http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0EV06V20140620
アングル:浜田・河合教授らが日中韓関係改善を提言、首相官邸は受け取らず
2014年 06月 20日 11:20 JST

○総裁講演があったので後入先出でそちらのネタから:微妙なヘッジはあるけれども物価メカニズムは大勝利宣言ですよ

昨日はこんなんありました。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140623a1.pdf
2%の「物価安定の目標」の早期実現と日本経済の持続的な成長に向けて
―― 経済同友会会員懇談会における講演 ――

・物価が夏に向けて1%に近づくの所で若干盛り上がっておりますが

ヘッドラインで出て先行きの見通しが弱めになっているよキタコレ!とこれまで日銀の見通しに負けまくっております何とかストの皆様ニッコリという感じで、ちょっと盛り上がって日銀物価見通しを弱気化かと色めき立つ向きもあったようですが、当該箇所は『(物価情勢)』の所になりますので引用。講演本文4ページ(PDFファイルの5枚目)

『先行きについては、需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力が強まっていく一方、エネルギーを中心とした輸入物価の押し上げ効果が減衰していくことから、暫くの間、1%台前半で推移すると予想しています。特に、これから夏場に向けては、前年比プラス幅が一旦1%近傍まで縮小するとみられます。』

ということでキタコレとなる訳ですが、実際問題としてこの講演の全体的なトーンを確認しますと物価目標に向けてフィリップスカーブの上方シフトに関して思いっきり言及していますし、従来通りの「これまでは順調に推移しています」という話もありますし、物価の先行きに関してもここの引用部分以降はいつも通りの話をしております。

つーかですな、そもそも一旦足踏みするという話は日銀も以前から示していまして、今回は「1%近傍まで縮小」という具体的数値が前面に出たのが従来と違う点なのでおーと思わせてくれる部分でメディアもここをヘッドラインにする訳ですが、まあこれは単にちょっと先の物価数値に関して言及(日銀は何せ日本で一番物価に関するデータとか集めていますから、積み上げ方式で近いタームの物価の見通しは正確に出ていると思いますよ)しているという話であって、逆にいいますと「これから若干物価の伸びが鈍化しても追加緩和とかにはならないですよ」という話をしている事でもありまして、ここの部分だけ見て日銀弱気化ヒャッハーと喜ぶ(?)のは残念ながらポイントを外していると思われます。

でまあこの1%云々の先ですけどね。

『その後は、基調的な物価上昇圧力が引き続き強まっていく中で、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、2014 年度から16 年度までの見通し期間の中盤頃、すなわち15 年度を中心とする期間に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いと考えています。さらにその先は、中長期的なインフレ予想が2%程度に向けて収斂していくもとで、需給ギャップのプラス幅が拡大することから、強含んで推移するとみています(前掲図表1)。このように、日本経済は、2%程度の物価上昇率を実現し、その後、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと考えています。』

となっていまして、どう見てもいつも通りです本当にありがとうございましたという所ですな。


・話を戻して経済に関する話

まず冒頭でこういう話をしていますが、まあいつも通りの説明を三題話にしているという感じですな。

『昨年4月、日本銀行は、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現するため、「量的・質的金融緩和」を導入しました。それから1年余り、この政策は所期の効果を発揮しており、日本経済は2%の目標実現に向けた道筋を順調にたどっています。ただし、なお途半ばであり、今後も、「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していく方針です。』

所期の効果を発揮、順調に辿っている、なお道半ば、物価安定目標の安定持続までQQE継続、と来ていますが、まあ基本的にこの話しかしませんなあというぶれなささに関してはイエレンおばちゃんあたりは見習った方が良いのではないかと思う次第ですが、ただまあデータディペンデントという政策スタンスを強調するFEDの場合は仕方ない(という割にはイエレンおばちゃんの場合は経済が弱い時にタカ派的な話をして、強めの時にハト派的な話をする(ってまだ2打数しか打席に立っていませんが)のが不思議ちゃんではあるのですが)かなあとも思います。


でまあ経済に関してですが、こんな説明をしています。本文1ページ目の『(経済情勢)』から。

『先行きについても、国内需要が堅調さを維持し、輸出も緩やかながら増加していくと見込まれることから、生産・所得・支出の好循環は持続すると考えています。したがって、この先3年程度を見通して、わが国経済は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想しています(図表1)。2』

まあ冷静に考えたら「潜在成長率を上回る成長を続ける」のであったら安定していないような気がしますがそれは兎も角。

『こうした見通しが実現するにあたっては、第一に、海外経済の回復を背景に輸出が増加に転じていくこと、第二に、これまで景気を牽引してきた国内需要の堅調さが持続すること、の2点がポイントとなります。これらの点について、詳しくお話します。』

ということでその2点の説明だが、前者についてはまあご案内の通りですし、後者については基本強いのですが微妙にヘッジも入っていまして、一方で本当に日銀の言うように物価が強いのであれば、実は佐藤審議委員などが指摘する潜在成長力の低下による需給ギャップの縮小要因によって物価が上振れやすくなっているだけなのではないかという可能性もアリエールな訳ですが、何せそこは物価がマンデートですからという所でヘーキヘーキ、というか本来は政策担当者としてはヘーキではない筈なのだが、何せ政府との共同文書ですからねえという所で。

で輸出。

『まず、輸出についてみますと、過度な円高水準の修正にもかかわらず、このところ横這い圏内の動きとなるなど、伸び悩んでいます(図表2)。こうした動きには、製造業を中心に海外生産が拡大していることなど構造的な要因も影響しているとみられますが、基本的には、ASEANをはじめとする新興国経済のもたつきなど循環的な要因の影響が大きいと考えています。』

ということで、海外が強くなると外需復活輸出拡大ヒャッハーという理屈が繰り返される訳でございますが、実際問題として米国経済は1Qは落ちましたが基調的に暫く強い状態になっていた筈で、その間に日本の対米輸出ってそんなに伸びてましたっけとか考えると、循環的に外需が戻っても輸出ってそんなに伸びないんとチャイマスカという気もせんではなく、構造要因って結構あるんじゃネーノとも思うのだが。

『また、消費税率引き上げ前の駆け込み需要への対応から国内向け出荷を優先する動きや、米国の寒波といった、一時的な要因も輸出を下押ししたとみられます。』

森本審議委員の講演(そういや会見をまだネタにしていません)ではここの消費税率引き上げ駆け込み需要云々の言及は避けられていましたし、大体からして駆け込み需要対応での要因が有意に大きいのであれば直近の貿易統計で輸出に現れるだろとか思うので、この話はしらっと言及しないで無かった事にするのかと思っていたのでここの言及はほーという所です。

『したがって、先行きについては、こうした一時的な要因が剥落するとともに、新興国も含めた海外経済の成長率が徐々に高まっていく中で、緩やかながらも増加に転じていくと予想しています。』

まあホンマカイナという感じですが、以下の地域別展開についてはパス。


内需ですけれども基本的には強いのですが・・・・・・・・・・・

『個人消費については、消費税率引き上げの影響をどうみるかがポイントです。この点については、駆け込み需要の反動という短期的な影響と、税率引き上げによる実質所得の押し下げという徐々に現れてくる影響とに分けて考える必要があります。』

ということで、実質所得の低下に関する言及は前からもありましたが、今回は一応そこの現状認識について言及しているのがほほうという感じです。

その前に駆け込みの反動部分ですがこれは予想通りにヘーキヘーキという話。

『このうち、駆け込み需要の反動について、これまでに出た経済指標などで確認すると、自動車など駆け込み需要が大きかった耐久財を中心に、反動減がはっきりと現れています。もっとも、企業からは、「反動の大きさは概ね想定の範囲内であり、消費の基調的な底堅さは維持されている」との声が多く聞かれており、現時点では、反動の影響は夏場から減衰していくとみておいて良いと思います。』

でまあ実質所得の低下に関しては「徐々に現れてくる影響」というだけにさすがにヘッジ入りという感じになっています。

『一方、実質所得の押し下げを通じた影響については、雇用・所得環境の改善によってどの程度緩和できるかがカギとなります。この点、労働需給の着実な改善が続くもとで、雇用者所得は今後も緩やかに持ち直していくとみており、個人消費の底堅さは維持されると考えています。いずれにしても、消費税率引き上げの影響については、もう少し時間をかけて点検していく必要があると思います。』


・物価上昇のメカニズム:一段の円安が無くても行きますという毎度のロジックを鑑賞

でまあ物価の方に戻りまして本文5ページの『3.2%の「物価安定の目標」への道筋』を鑑賞。

『ところで、今ほど申し上げた物価の見通しは、市場参加者やエコノミストの平均的な見方に比べて、かなり強めの数字となっています。』

ワロタ。

『そこで以下では、2%に向けた物価上昇のメカニズムについて、日本銀行の考え方をもう少し掘り下げてご説明したいと思います。』

市場のウマシカ連中におかれましては耳の穴かっぽじって良く聞きやがれこのボケナス共がということですねわかります。

『予めまとめますと、第一に、需給ギャップが着実に改善していくこと、第二に、中長期的な予想物価上昇率が高まり、それが実際の賃金・物価形成に影響を与えていくこと、この2つの理由から、先行きさらに物価上昇圧力が高まっていくとみています。』

ということでまあいつもの説明が始まるのですが、『(需給ギャップの面からの物価上昇圧力)』という所と『(予想物価上昇率の面からの物価上昇圧力)』は毎度会見などでも示している説明になっておりまして、まあそこも引用しても良いのですがそちらはパスしましてその先のフィリップスカーブの話が中々味わいがあるのでそちらへ飛びます。

本文6ページに『(フィリップス曲線の上方シフト)』という小見出しがありましてですな。

『以上のことを、やや専門的になりますが、「フィリップス曲線」という概念を用いて整理してみたいと思います(図表9)。』

ということで図表9というのがPDFファイルの17枚目(最後から2枚目)の下段にありまして、この図表を磔刑にするスキルがアタクシにないので講演テキストの方を皆様ご覧いただければと思うのですが、この図表にある赤文字で示された矢印を見て吹いたコーヒー返せと小一時間(^^)。

『フィリップス曲線は、需給ギャップと物価上昇率の関係を示したもので、「景気が良く、労働市場や財・サービス市場で需給が引き締まれば、物価は上がる」というメカニズムを表しています。ここでは、縦軸が物価上昇率、横軸が需給ギャップを示しており、景気が良くなって需給ギャップが右方向に進めば、物価上昇率が高まって上方向に進むという、「右肩上がり」の姿が想定されています。』

さてそれで・・・・・・・

『なお、物価上昇率については、円安の影響を受けやすい食料品とエネルギーを除いたベースの消費者物価を使っています。』

ということでコアコアを使っているのがこれまたお洒落でして、展望レポートやら金融経済月報でもこのフィリップス曲線の図表があるのですけれども、そちらではコア使ったのとコアコア使ったのがありまして、コアで直近の4四半期程度の数字を取って線を引くとY切片が2%というお洒落な事になっているのでその図を使うのはあまりにも話が無理矢理というのもあるでしょうし、あと重要なのはここで総裁が説明しているように「円安の影響を受けやすい食料品とエネルギーを除いたベース」という点でありますな。

つまりこれは、一段の円安が無いと物価が上がらんわという市場何とかストの皆様に対抗して、「円安の影響を受けにくい物価でみた場合でもフィリップスカーブが上方シフトしていますが何か?」という話をぶちかまそうという事を示しているのでありまして、何と申しますかこのコアコア物価を使ったフィリップスカーブ上方シフトの説明って軽く流しながら読んでいると妙に怪しげな説得力だけはあるというのがオソロシスなのでその説明を鑑賞しましょう。

『そこでまず、「量的・質的金融緩和」を導入する前の状況を振り返ります。緑の線は1990 年代前半までのデータに基づくフィリップス曲線、青い線は1990 年代後半以降のデータに基づくフィリップス曲線を示していますが、両者を見比べると、デフレが長らく続く間に、下方にシフトしたことが分かります。この結果、例えば需給ギャップがゼロの時、すなわち、景気が普通の状態の時でも物価上昇率が0%程度という経済・物価の関係が出来上がってしまいました。こうした世界では、企業や家計の間には「物価は下がる、あるいは、上がらない」という意識が定着していました。』

『「量的・質的金融緩和」は、こうした企業や家計のデフレ・マインドを抜本的に転換し、予想物価上昇率を2%に向けて引き上げることを狙っています。このことをフィリップス曲線に即して言えば、緑の線より若干上方までシフトさせ、需給ギャップがゼロ、すなわち、景気が「普通の状態」の時に物価上昇率が2%になるような経済・物価の関係を作り出そうとしているということです。』

ということは実は需給ギャッププラスの経済状態で2%になっても目標達成じゃないとか、この事後的にしか判らないフィリップス曲線の話というのも説明には便利な概念なのですが、政策運営と絡めてこの曲線を出すと話がややこしくなると思うんですけどね。


で、直近の状況についての『(最近1年の動き)』の所が今回の鑑賞ポイントである。

『では、こうした狙いに照らして、現状はどこまで進んでいるのでしょうか。そこで、「量的・質的金融緩和」導入後の変化を確認します。図表の赤い丸は最近1年の動きを示していますが、2つの特徴がみて取れます。』

ほうほうそれでそれで?

『1つ目は、「量的・質的金融緩和」のもとで潜在成長率を上回る景気の回復が続いているため、需給ギャップが改善し、右方向に動いてきていることです。これにより、物価には上昇圧力が加わっています。』

まあそれはヨロシとしまして・・・・・・・

『2つ目は、赤い丸が青い線で示したデフレ期のフィリップス曲線よりも上方に位置していることです。これは、需給ギャップの改善だけでは説明できないほどの物価上昇がみられていることを意味します。』

キタコレ!!

『その理由としては、いくつかの要因が考えられます。ひとつには、先ほど申し上げたとおり、ここでは食料品とエネルギーを除いていますが、これら以外の品目に対しても円安の影響は一部働いていると思われます。』

「一部」ですかそうですか。

『また、青いフィリップス曲線の時期、とりわけ2000 年代の中盤には、雇用の非正規化の進展や新興国からの安値輸入品の流入など、賃金・物価を押し下げる要因が強く働いていましたが、現在は、これらがさらに強まる局面ではないことも影響していると考えられます。』

これは展望レポートの脚注部分で説明されています(確認したい人は展望レポートを見てちょ)。

『さらに、「量的・質的金融緩和」のもとで、人々の予想物価上昇率が上昇し、フィリップス曲線の上方へのシフトが始まっているとみられます。このことは、先ほど述べたとおり、様々なアンケートや市場の指標でみた予想物価上昇率の動向や最近の賃金・価格形成の特徴からも裏付けられます。』

キター!!!

『これらの要因の影響を厳密に区分することは困難です。ただ、昨年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した時点で多くの人々が予想していたよりも、かなり高い物価上昇率が実現したことは事実であり、少なくとも、この1年の経済と物価の関係は従来想定されていたものと違っていると言うことはできると思います。私どもは、端的にこれを「量的・質的金融緩和」が所期の効果を発揮しているため、と考えています』

どう見ても大勝利宣言です本当にありがとうございました。

『すなわち、現在までの物価の動きは、日本銀行が昨年4月に公表した物価見通しに概ね沿ったものであり、私どもにとっては予想外の物価上昇が起きているわけではありません。』

えーっと成長率の方が従来の見通し対比で下振れているのですが、そこは華麗にスルーする所が物価目標マンデートクオリティの恐るべき所でもあります。

『ここまでは、「量的・質的金融緩和」を導入した際に思い描いていたメカニズムに沿って、消費者物価上昇率が上昇し、1%台前半に達したということです。』

と、大勝利の大見得で成駒屋もビックリ(違)。

『今後もこのメカニズムが働き続けることで、目標である2%に向かっていくと考えています。もっとも、「量的・質的金融緩和」の目的は、2%に一時的に達することではなく、これを安定的に持続することです。そのためには、予想物価上昇率を2%に向けて収斂させ、ここで定着させること──「錨を下ろす」という意味で、アンカーすると言います──が必要になります。噛み砕いて言えば、人々が2%の物価上昇率を当たり前のものとして経済活動を行う世界を実現するということです。ここに向けては、現実の物価上昇率と予想物価上昇率をさらに引き上げていくことが必要であり、その意味で「途半ば」であると申し上げたわけです。』

はあそうですか。

『したがって、今後も、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していきます。そのうえで、何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、「物価安定の目標」を実現するために必要になれば、躊躇なく調整を行う方針です。』

でもその大勝利宣言の見通しで下振れというのも無さそうですけどね。


・そして成長力が強化されなくても物価目標達成との話も

ということで物価に関する所だけでは妙に大勝利宣言が出るという所(そらまあ輸出とかあの状況ですから)なのですが、その後に成長力強化に関する話がありましていつもの話をしているのですがそこは全面的にスルーしますので最後の所から少々。

『最後に、成長力強化と金融政策運営の関係について、一言申し上げたいと思います。成長力強化の取り組みは極めて重要ですが、中長期的な課題です。それが実を結び、実際に潜在成長率が引き上げられるまでにはある程度の時間を要します。その際、潜在成長率が順調に高まっていくことが望ましいことは言うまでもありませんが、仮に潜在成長率が上昇しないからといって、金融政策運営上、「物価安定の目標」の達成が困難になるということはありません。』

ということで、この辺が一部の審議委員の方々の主張している(と思われる)趣旨と違ってくる部分になりますけれども、経済の実力に沿った安定的な物価水準というのは、経済の実力によって変わり得るものなのか、それとも潜在的な成長力などに関係なく一定のものとして捉えられるものなのか、という話に関する部分になってくる話ですが、現在の日銀執行部のスタンスというか黒日銀スタンスとしては後者の一定2%であるという話になっています、というか白日銀の時には「まず経済の実力から言って1%程度をめざし、その後経済の実力が上がってくれば2%を目指していけば良い」という話をしていたので、前者のロジックを大々的に打ち出すと少なくとも置物副総裁辺りのクビはすっ飛んでもおかしくないので中々そうは言いにくいでしょうなあとは思いますけど。

『「量的・質的金融緩和」を着実に推進することで、先ほど申し上げたメカニズムに沿って、すなわち、需給ギャップの改善と予想物価上昇率の上昇を通じて、2%は達成できると考えています。また、潜在成長率がどうであれ、日本銀行の「物価の安定」についての使命は変わりません。日本銀行は、自らの責任において、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現するよう、金融政策運営を行います。』

ということでありますが、そこまで堂々と言い切って大丈夫かねという気もせんでもないが、恐らく日和るにしてもまだこの時期では時期尚早にも程があるということでしょうなあ。

#ということですっかり他のネタが累積債務なのですが本日は総裁講演鑑賞会となってしまいました


・おまけで信用金庫協会でのあいさつ

なお、先週は全国信用金庫協会でこんな挨拶をしていましたが・・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140620a.pdf

まあ基本的に金融政策運営的には特段変わった話をしている訳ではないのですが。

『もっとも、貸出利ざやの縮小にはなお歯止めがかかっておらず、安定した収益基盤の確保という面では、課題が残されています。こうした課題への対応は、もとより容易ではありませんが、金融機関においては、やはり、各地域の経済やそこで活動する企業の活力を高めていくことが重要であると考えています。』

経済の実力対比でイールドカーブ全体を押し下げる政策を実施したり、貸出に対して低利ファンディングをつけて金利ダンピングをしろと言わんばかりの政策を実施しているその口がいうかという気がするのは気のせいですかそうですか。



2014/06/23

お題「オペとか投資家懇とかのメモ/イエレン会見から(その1)」

えーっとですねえ。
http://www.asahi.com/articles/ASG6P6555G6PUTIL010.html
複数の自民都議「ヤジここまで問題になるとは」
2014年6月21日20時11分

セクハラとかパワハラの研修教材でこういう言い訳をする残念な人が出てきますねえというテンプレートのような状況にワロタと言いたいが笑えんわこら。

『ベテラン都議の一人は「党幹事長が発言した以上、発言者が会派内にいるなら名乗って謝罪するしかない」と話した。』(上記URLより)

しかもゲル幹事長に言われたから謝罪とかそもそも発想がおかしい訳で大丈夫か。

○市場関連メモ

・短国買入2兆円とな

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140620.htm
国庫短期証券買入 20,000 2014年6月24日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3) 7,205 2014年6月20日 2014年6月23日

ということで金曜は何か知らんが短国買入2兆円のオファーということで、そんなにMBを積まないといかんのかねとか、

ちなみにMBですけど19日のMBは
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd140619.htm
マネタリーベース 2,307,600

となっておりまして、金曜は国債償還と貸出増加支援オペ要因があって
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx140620.htm
当座預金増減 +107,400 +107,100

となっておりますので、要するに240兆円とかになっているのですけれども、貸出増加支援オペが思ったより伸びなかったから2兆にしたのかも知れませんがしかしまあ短いのでそんなに威勢よくMBを途中で積み上げてどうしますねんとは思いますが、その結果・・・・・・・

http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

こちらからエクセル形式で数字落とせますけれども、TKRRベースではレポレートも5割れとかになっていますが、短国現先とかのレートは更に需給ひっ迫を反映して低下の巻となっているようでございまして、既に玉が無いのくらいはヒアリングしてるだろと思うのですが、その状況にも構わずオペ実施ですかそうですかまあいつもの話ですねえという所で。

まー今回に関しては直近で1年TBの入札があったので、年末の買入残高に跳ねる1年TBを購入したかったというのがあるのは把握しましたが、ここもとではまあどこからどこまでが本当の影響かは判らんですけれども、ECBのマイナス預金金利攻撃が出て以来短国の需給が逼迫している中でそのハイペースでの短国買入積み上げは何ですねん(どうせ主に買うのは3か月なのだから今買っても年内にまた再購入しないといかんのだが)という風に思いますが、もっとオソロシスなのは7月になるとシグナルオペをロールした分の落ちがバカスカ来ることでして、6月に積み上げたMBの残高を7月にも維持するという話になった場合に、貸出増加支援オペの残高で積み上がった分の見合いで1年シグナルオペ(のなれの果て)の残高が落ちるのが見えるので、その分を埋める為に短国買入とか思うともう財務省に発行増額して頂かないと短国市場が物凄くお洒落な事になりそうですな。

なお金曜のオペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140620.htm
国庫短期証券買入 27,047 20,002 -0.010 -0.006 55.1
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4) 20 20 -0.400 -0.400

金利がかなーり低い水準にいるというのに1毛強まで入ったのかよという所ですが、まあそもそも2兆もオファーして札が割れて夢の出来上がりマイナス金利になるんじゃネーノとか恐れていたので札が割れなくて良かったですね(棒読み)という風情ですな、うんうん。


・国債投資家懇談会から少しだけ

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbi/proceedings/outline/140619.html
国債投資家懇談会(第55回)議事要旨
日時 平成26年6月19日(木)14:30〜15:30

ということでFOMC直後に実施となりましたが。

『2. 最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて〔参考配布:参考資料〕』から先の所を読みますと、まあ見事なまでに「先行きはいずれ金利が上昇」という話になっていて、そらまあそうなのですがこれだけ皆さんの見解が「どこかで金利が上昇」となりますとこりゃ暫く金利が上昇しねえわという感じですな。

『国債市場の見通しについては、引き続き日銀買入オペの影響が極めて大きいため、当面動きづらい相場が続くと感じている。物価水準などを考慮すると足元の金利水準は本来あるべき水準よりも低いと感じており、また、現時点では現実味がないが、日本銀行の出口戦略についても頭の片隅においておく必要があるため、積極的に国債を購入するのは難しい。しかし、償還資金の再投資や、キャリー収益を確保する必要があるため、引き続き一定額は買うつもりである。』

『上向きになりつつある景況感や物価動向から考えると現状の金利水準はかなり低いと思われるが、日銀買入オペの影響が圧倒的に大きく、政策に大きな変更がない限り、当面は膠着状態が続くと考えている。当面は日銀買入オペを上回る材料は見当たらない。しかし、BOEの利上げやFRBの緩和縮小など海外の中央銀行が金融緩和の出口に向かっており、また、海外の経済状況からも良い影響を受けて市場がファンダメンタルズにより注目するようになれば、具体的な時期は分からないが、円金利の水準が変化してくると考えている。現在はデュレーションを短くして耐えている状況。』

てな感じで「今の金利水準は日銀の買入によって下駄を履いている」「金融政策の変化が起きれば金利が上昇するのでそれを念頭に置いてポジションは軽く」「金融政策の出口については直ぐに来るとは思わないが意識はしないと」というのが揃っているのが見所ちゃあ見所ですな、うんうん。

でまああと見ててふーんと思ったのと少々アレだったのが2つほど。

まずは最後の人の意見ですけどね(全部同じ発言の流れです)。

『円債に関しては、実質金利がマイナス0.8%台と、大幅なマイナスになっており、債券投資家としては極めて受難の時代である。これは、すなわち債券を保有していることで、顧客の実質的な富が移転をしているということであり、その運用に関しては慎重にならなくてはいけない。』

うーむ。

『中長期的に考える必要があるのは、JGBの市場のみならず、グローバル市場でも流動性は極めて低下しているという点である。その背景としては、リーマンショック以降のグローバルな金融機関に対する資本規制強化の動き及びそれによるバランスシートの縮小がある。』

ですなあ。

『短期的な見方だけで運用を行うということは、流動性がそれなりに確保できて、見方が変わった時に手仕舞いできるということが前提となると思うが、流動性に乏しいマーケットが中長期的に続くと考えると、流動性のプレミアムを要求しながら、長い感覚で行う必要がある。』

確かに。

『世界中で積みあがった債務等を考えると、中長期的にグローバル経済は低成長・ディスインフレとなることが見込まれるため、日本だけが2%のインフレ、2%の実質成長になっていくというシナリオは考えづらい。行き着くところは恐らく1%の程度の実質成長、1%程度のインフレという均衡の模索になるのではないか。』

一々ご尤も。

『この環境で円債の投資をする際重要になってくるのが、国内の預金動向・預貸ギャップであり、それ程大きく預貸ギャップが縮まらず、預金が大きく動かず、そして1%程度のインフレであれば、日本の今の財政状況を考えると、日本銀行の金融政策は極めてゆっくりと進み、しばらく正常化のシナリオにはならないと考える。したがってイールドカーブは端が長期間にわたって抑えられる状況が続くと考える。イールドカーブが立つ、すなわち10年金利が上昇してくると、その際はキャリーを取りたい投資家が再参入してくるため、恐らく円金利はそう大きくは上がらないのではないか。』

なるほどとしか申し上げようがありませんな。

であとちょっと読んでてうーむと思ったのはこのコーナーの中盤辺りの人のご意見っすけどね。

『これまで日銀買入オペによって超長期ゾーン、特に30年債、40年債について、発行量対比大量に買い入れられていたところ、18日の日銀買入オペの方針変更で、30年債、40年債の買入が一定額に抑えられることとなった。これに伴い、需給がやや緩み、投資家目線の水準に徐々に近づいていくのではないかと期待している。(続きがあるが後で)』

日銀買入オペの変更に関するコメントはこの人だけだったのですけれども、まあ言いたい事の気持ちは判らんでも無いが見事なまでのポジショントークで実にアレなテイストを示しているのでついネタになるのでした。

えーっとですな、日銀の買入オペの方針変更のそもそものやり方に問題があるだろという話はさて置いて自分が買えて居なかったので日銀の買いが減って金利が上がって期待とか中々こうポジショントークにも程があるので大変に微笑ましいのですが、こういう方は逆に自分のポジションに都合の悪い話になると物凄い勢いで批判とかしそうですし、ニーズがあるから増発しろと言っていざ増発して金利が上がると中々買わないとかいうようなテイストも感じさせてくれるのがまあ何と申しますかでありまして、いやそれで金利が上昇しても業者がリスク取れなくなった結果としての金利上昇になると最終的にブーメランとなると思うんですが何という目先感の強いコメントと大変に敬服する次第であります。

でその続き。

『(さっきの続き)そして、これまで日本銀行を見て仕事をしていた証券会社が、投資家の意向等にしっかり目を向けて取引を行うという、良い循環が生まれることを期待している。』

えーっとですな、証券会社は別に投資家のドレイじゃなくて営利企業なのですから、そら日銀との取引の部分で収益チャンスがあって流動性も無いのにゴリゴリやってくる投資家の売買打ち込まれたら死亡確定というのであれば投資家の意向に目を向けるよりも前に目を向けるところがあるでしょうと思うのですけれども、中々心温まるテイストでここまでくると一種の清々しさまで感じてしまいますな、誠に素晴らしい。

とまあそんな辺りが少々目についたので市場雑談系のネタという感じです。しかしこの人以外のコメントって債券市場に関しては日銀買入の話を連発しているのに前日の突然の買入変更に関するコメントが無いのはこれまたどうなんでしょうねえとは思うのでありました。

まあPD懇では誰か暴れた人いますかねえというのは今日になったら議事要旨が出るのでワクテカしながら待つのでありました。


○イエレン議長会見である(普通に考えて今日は終わらん)

今日はオープニングコメントと最初の質疑を少々という感じで。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140618.pdf
Transcript of Chair Yellen’s Press Conference
June 18, 2014


・どうでも良いが逆さ絵先生とテンポが違いますな

過去の講演とか会見とかはこちらから見れるのでお暇な時に比較して頂くと面白いのですけど。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/media.htm

逆さ絵先生の会見とかも聞いてみたりした事はあるのですが、逆さ絵先生の場合は声に張りが凄いあって、ついでに発音が明瞭で綺麗というか標準的な発音というかですが、スピードが無暗矢鱈と速くて、発音が超明瞭でハキハキしているから分かりやすいのですけれども、これをライブで聴くとなると全くもって気を抜けないなあ(物凄く速いので気を抜くと直ぐに判らなくなる)という感じでした。でまあ逆さ絵先生のプレコンの場合はTranscriptを印刷したものを手元に置いて、字幕(笑)を見ながら聴くとちょうど良いヒアリングの勉強素材になるのでTOEICでも受けようという人にはマジオヌヌメ(話が変になっていますかそうですか)。

でまあイエレンおばちゃんですけれども、今回のを真面目(?)に聞いてみたのですけれども(前回のは聞いてない)、話すテンポが逆さ絵対比で遅めで、しかも微妙に訛っているんだか何だか知らんけれどもねとーっとした感じというかネチネチした感じがする喋り方で、質疑応答の途中で調子に乗るとちょっと早めになるので慎重に喋っているのかも知れませんけれども、どうも微妙なテンポで話すのは仕様のようでして、まるで大木こだま師匠が「往生しまっせ〜」と喋っているような感じを受けたのはアタクシだけですかそうですか。


・オープニングステートメントは基本的に声明文の説明になっています

でまあ最初のオープニングステートメントですけれそも、特段変わった話はしておりませんので引用しないで途中のパーツパーツを勝手にまとめてみる。

最初から順にこんな感じかなと思います。

景気認識:景気認識の最初が雇用というのがイエレンっぽい。1Qの落ち込みは一時的という話は声明文どおり。
物価認識:まあ普通に普通の話をしている。
SEP:こちらも単純に説明、向こう2年間は潜在成長率を上回る成長が続くと付け加える。
LSAPのTapering:ここは淡々と説明
金利のフォワードガイダンス:フォワードガイダンスにおける状況の判断は幅広い数字を見ると強調しているのも当然ながらイエレンっぽい。金融危機の影響から潜在成長率が低下しているという話は前回の会見のオープニングステートメントでも行っています。

でまあその先が今回のオープニングステートメントでの追加部分ですな。4ページのケツから。

『Let me reiterate, however, that the Committee’s expectation for the path of the federal funds rate target is contingent on the economic outlook.』

先行きの金利パスは経済見通しによって変化する、というのを強調したいという事で、まあ要するに市場が暴れたら困るがなという事ですねわかります。

『If the economy proves to be stronger than anticipated by the Committee, resulting in a more rapid convergence of employment and inflation to the FOMC’s objectives, then increases in the federal funds rate target are likely to occur sooner and to be more rapid than currently envisaged. Conversely, if economic performance disappoints, resulting in larger and more persistent deviations from the Committee’s objectives, then increases in the federal funds rate target are likely to take place later and to be more gradual.』

そらそうよという所ですが、わざわざこんな当たり前の話をするのは、これ以上変なガイダンスを出して話をややこしくしたくないという考えもあるんじゃネーノとは思いました。

『Before taking your questions, I’d like to provide an update on the Committee’s ongoing discussions on the mechanics of normalizing the stance and conduct of monetary policy.』

ここから先は出口政策に関する話なのですが、あくまでも技術論の話であって政策スタンスの変更では無い、というのと、出口でのツールは色々と準備していて金利が上げられなくて困ったちゃんという事にはならないよ、という話をしていますので以下鑑賞。

『To be clear, these discussions are in no way intended to signal any imminent change in the stance of monetary policy. Rather, they represent prudent planning on the part of the Committee and reflect the Committee’s intention to communicate its plans to the public well before the first steps in normalizing policy become appropriate.』

ふむ。で以下技術論各論。

『The Committee is confident that it has the tools it needs to raise short-term interest rates when it becomes appropriate to do so and to control the level of short-term interest rates thereafter, even though the Federal Reserve will continue to have a very large balance sheet for some time. The Committee’s recent discussions have centered on the appropriate mix of tools to employ during the normalization process and the associated implications for the degree of control over short-term interest rates, the functioning of the federal funds market, and the extent to which the Federal Reserve transacts with financial institutions outside the banking sector. The Committee is constructively working through the many issues related to normalization and will continue its discussions in upcoming meetings, with the expectation of providing additional details later this year.』

ということでレポファシリティーが使えそうという事に対しての感触をもっているなあというのが判る所ではあります。

『Thank you. I’ll be happy to take your questions.』

ということで。

・今回の質疑応答は冒頭から何というかワロタというか何というか

何ですかね、もう最初からこだま師匠が「おもろいこと言うやないか〜腕上げたな〜」とか言っているようなテイストではあるのですが。

『STEVE LIESMAN. Steve Liesman, CNBC: Is every reason to expect, Madam Chair, that the PCE inflation rate, which is followed by the Fed, looks likely to exceed your 2016 consensus forecast next week? Does this suggest that the Federal Reserve is behind the curve on inflation? And what tolerance is there for higher inflation at the Federal Reserve? And if it's above the 2 percent target, then how is that not kind of blowing through a target the same way you blew through the six and a half percent unemployment target in that they become these soft targets? Thanks.』

物価が足元強くなってきているけれどもこのままでは物価にビハインドするんじゃないですか?それとも少々の物価上昇は容認ということですか??だったらどの辺まで容認するんですか???とな。

でお答え。

『CHAIR YELLEN. Well, thanks for the question. So, I think recent readings on, for example, the CPI index have been a bit on the high side, but I think it's--the data that we're seeing is noisy.』

直近のCPIの上昇はノイズとかこれはワロタ。

『I think it's important to remember that broadly speaking, inflation is evolving in line with the committee's expectations. The committee it has expected a gradual return in inflation toward its 2 percent objective. And I think the recent evidence we have seen, abstracting from the noise, suggests that we are moving back gradually over time toward our 2 percent objective and I see things roughly in line with where we expected inflation to be.』

データディペンデントと言いながらノイズがと言い出すあたりが何とも。

『I think if you look at the SEP projections that were submitted this time, you see very little change in inflation projections of the committee.』

見通しはご覧のとおり変わっていませんとか何というか答えをはぐらかしてますなあ。


『STEVE LIESMAN. What about the tolerance for higher inflation?』

再度質問。

『CHAIR YELLEN. Well, the committee has emphasized that we are at the two percent objective for as a longer term matter for PCE inflation and we would not willingly see a prolonged period in which inflation persistently runs below our objective or above our objective and that remains true. So that hasn't changed at all in terms of the committee's tolerance for permanent deviations from our objective.』

許容度を変えた事はありませんとな。

『And we continue to see the data coming in abstracting from from the noise in line with what we had expected, and continue to see a gradual pick up over the next several years toward our 2 percent objective.』

ということですが、ノイズを除去してってあーた(ちなみに時々同じ接続詞や助詞などを繰り返すのがイエレンおばちゃんの癖で、これがまたねちっこく聞こえる原因だと思う)という感じですが、まあ足元の数字のブレの問題があるからノイズ言いたいのは分かりますけどね。


次の質問はSEPでのロンガーランの金利見通しという重要ネタの質問。

『ROBIN HARDING. Robin Harding from the Financial Times. Madam Chair, could you comment a little bit more on the decline in the long-run interest rate projection? Is that more to do with temporary headwinds from the recovery or is it something more permanent about the economy? And is this it? First decline to 3.75 percent or do you think there's potential for this rate to go lower yet? Thank you.』

3.75に下がった件ですけれどもさて・・・・・・・・

『CHAIR YELLEN. Well, you do see a very slight decline this time in the committee's longer-term normal rate of interest projections. You know, I would caution you, however, we've had turnover in the committee two new participants who joined and are submitting projections and two who departed and that can create changes in the projections, small changes that are difficult to interpret.』

メンバーが変わったから変わったのですとはこれはまたワロタという躱しだ。

『But I think it's fair to say there has been a slight decline. And I think, you know, the most likely reason for that is there has been some slight decline, as I mentioned in my opening statement, of projections pertaining to longer-term growth, and typically estimates of the longer-run normal federal funds rate or short-term interest rates would move inline with growth projections.』

ということでそのままだと喧嘩を売っているような答えなので判ったような判らんような話をつけてはいますが、結構こんな調子で聞かれた事に答えないで別の話をする攻撃をしている部分が目立った気がしたのが今回の会見でしたということで明日以降に続きます(大汗)。




2014/06/20

お題「輪番に関するネタの続き(市場の反応のメモ含む)/森本審議委員講演から」

何でこうネタが来る時にはまとめてやってくるざんしょ・・・・・

○輪番変更でイールドカーブのロンガーエンドが火の海とな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N7CP2F6JIJUP01.html
債券、日銀オペ変更で30年や40年ゾーンが大幅安−10年以下には買い
更新日時: 2014/06/19 15:36 JST

ということで昨日の債券市場ですが、前日の輪番買入内訳の突如の変更攻撃によりまして前日から超長期の後ろが弱かったのですが、当然ながらその流れを引き継ぎまして超長期の30年、40年(たぶん25年超なのでしょうけれども)がヘロヘロだった訳ですが、前場は途中で30年1.7%(3甘)の所で一旦止まったかなあとも思わせてくれたのですが、後場中盤以降一段安という感じの2段下げモードという展開になって日本相互証券さんの引けは30年カレントが5.5甘の1.715%で40年カレントが6甘の1.800%となりまして、一方で引けベースで言いますと10年カレントが0.5強の0.585%でして、BB引値ベースで見ると10年30年が6毛、10年40年が6.5毛のスティープでして、20年が1.5甘だったので20年30年の所で4.5毛スティープという事で、輪番オペの運営変更ネタでイールドカーブのロンガーエンドに無慈悲な攻撃が行われて火の海になるの巻。

まあやっちまいましたなあというのは一昨日に紙が出た所で予想されてはいたものの、昨日の相場的には一旦節目(30年カレントの1.7%という絶対水準)で止まった感を見せつつ2段下げしてくれたので残念感が更に漂うという所で、しかも原因が輪番に関する不意打ちにも程がある変更という事で、ポジションで逆を食らった皆様におかれましては誠にお気の毒としか申し上げようのない展開であります。

これがまあ経済指標の結果とか、金融政策決定会合の結果とか、そういう要因での動きで食らったのであればまあ世の中そういう事もありますがなという感じでしょうけれども、妙ちくりんなタイミングあんどついこの前に変更したばっかりの輪番買入内訳変更とか誰も読めんわこんなのというプレイによって食らってしまうというのはまあ食らった人としては納得いかんわという所でしょう。

でまあ昨日も申し上げたような気がしますがしつこく申し上げますと、この調子で突如の「機動的見直し」攻撃が飛んできますと、只でなくさえ流動性が下がっていて業者としてクオートしにくい状況になっているのに、日銀将軍様の無慈悲な攻撃が突如飛んできてイールドカーブの特定ゾーンが焼き払われてしまって火の海になるというような話になりますと、業者的には店頭での引き合いに対してレートをクオートしにくくなるにも程があるという事になる訳でして、そうなりますと国債の流通市場への悪影響も必至ですし、ひいては国債の円滑消化にも悪影響を与えるでしょと思うのですが、今日のPD懇で誰か指摘する向きが出るのではないかとワクテカしているアタクシなのでありました。

なお、昨日は偶々こんな案件があって更に市場の皆様の神経を逆撫でする辺りが何とも見事なタイミング過ぎて落涙を禁じ得ません。

http://www.nikkei.com/markets/features/12.aspx?g=DGXNASFL190S7_19062014000000
黒田日銀総裁、国債の流動性「極度に低下した状況にない」
2014/6/19 14:20
〔日経QUICKニュース(NQN)〕

『日銀の大量の国債買い入れ影響については「(昨年4月の)量的・質的金融緩和の導入当初から問題意識を持って対応してきている。市場参加者との密接な対話を行いながら進めている」と説明した。』(上記URLより)

http://jp.reuters.com/article/idJPT9N0OT00920140619
BRIEF-市場と密接な対話しながら国債買い入れている=黒田日銀総裁
2014年 06月 19日 14:10 JST

『日銀の黒田東彦総裁は19日午後、参院財政金融委員会に出席し、国債買い入れについて、市場と密接な対話をしながら行っており、今後も点検し、市場参加者と対話を続けたいと述べた。』(上記URLより)

・・・・・・・・まあ元は同じネタなのですが、市場と密接な対話をした結果が輪番運営の不意打ち変更かよという辺りが市場の中の皆様のトサカを盛大に刺激する訳でございまして、もしかしてこのような頻繁(といっても3週間で2回目が出てきたという話ですが)な変更を打ち込んでくるのが「市場との対話」というご認識をシャチョー様が持ってらっしゃるという事になりますと、そういう動きも時と場合によっては「日銀が能動的に債券市場を焼き払いに行っているだけ」という場合もありますがなというのが今回のケースな訳でございまして、昨年5月6月の場合と今回とでは状況が全然違うのでありまして、昨年輪番の運営方法をこまめにいじって上手く行ったから今回も上手く行くとは限らんというのが相場様のオソロシスな所でありまして、そういう定性的な部分というのは頭のよろしい方におかれましてはイマイチ気が付いて下さらないのかも知れませんが、ちったあ気がついて頂きたいという所でありますな。

つーことでですな、市場における日銀買入のシェアがフローにしてもストックにしても巨大になっているという状況を鑑みますと、まあ市場職人という訳でも無さそうな皆様が変にジャッジメンタルに介入しようとするのは無理があるというか、今回のように結果として日銀がイールドカーブを能動的に焼きに行く(しかもそれがボードの決定などとは関係ないオペ技術的な部分でというのがミソ)事になってしまうような話になるというのは避けた方が無難であって、より機械的というかシステマティックに長期国債の買入を運営した方が宜しいのではないか、という昨日の結論を繰り返すのでありました。

結局の所、市場としては不確実性というのがボラを高める要因になる訳で、そらまあ不確実性が全部無くなったら商売あがったりだからそれは困るのですが(^^)、経済予測とか政策動向予測とかそういうのと全く関係ない部分で想定の出来ない不確実性が恣意的な形で炸裂するのが一番困るのであって、だったら最初から読める形でシステマティックに輪番運営した方が良かろうと思いますし、大体からして正常化のせの字も出てこない状況でこの有様ですと、QQEからの正常化を行う際に債券市場に何の燃料を投下しだすねん日銀はというヒジョーにオソロシスなものを感じさせてくれますので勘弁して頂きたい所であります。

・・・・・・・でまあ一番起きて欲しくないのは今回の輪番変更に関して「市場との対話を行って機動的に変更しています(キリッ)」とか「国債市場はこのように健全に値動きをしており流動性が極端に低下した状況というような質問を国会でされたような状態では無いです(キリッ)」とか謎の形でシャチョーを始めとした偉い人に認識されてしまう事でありまして、そういうような事になりますとそれこそ出口政策での債券市場がどうなるのかというのが非常に危惧されますな、という事になるので一応声を出してみましたという所でございまする。

#なお昨日の金融ファクシミリ新聞さんの朝刊では早速「金融緩和の縮小にらむ」とかいう題字が載っておりまして、まあ当然そういうヘッドライン出るわなと思ったりするのでありました


○森本審議委員講演は基本的に執行部見解ベースと見られます

秋田での金懇です
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140619a.pdf

・経済物価情勢に関する今後のポイントについての説明から

講演ですけれども、最初のパートが経済物価情勢の現状と先行き見通しの話なのですが、これは概ね展望レポートのロジックと同じ説明になっています(まあ政策委員会メンバーとして説明したらそうなるのは当然なので別にだからどうという話ではないので念の為)のでスルーしまして、その先の『(3)経済・物価見通しを巡る主な論点』という小見出しから。

『以下では、先ほど申し上げた経済・物価見通しが実現していくに当たって私自身が注目しているポイントを、内需、外需、物価の順にお話ししたいと思います。』

ということでまずは内需ですが、最初の小見出しは『(家計支出動向と雇用・所得環境)』。

『まず、家計支出動向とこれを支える雇用・所得環境についてお話しします。家計支出に関連しては、消費税率引き上げの影響を見極めていくことが重要ですが、個人消費は、雇用・所得環境が改善するもとで、基調的な底堅さが維持されており、反動減の影響は夏場以降減衰していくと考えています。4月入り後の消費動向については、自動車など駆け込み需要が大きかった耐久財を中心に、反動減がはっきりと現れていますが、これまでのところ、企業からは、「反動減の大きさは概ね想定の範囲内であり、消費の基調的な底堅さは維持されている」との声が多く聞かれています。』

以下アネクドータルな話と景気ウォッチャーのデータの話になりますが割愛。

『このように、個人消費や住宅投資が底堅さを維持していくうえでは、雇用・所得環境の持続的な改善が鍵になります。労働需給をみると、完全失業率は3.6%にまで低下、有効求人倍率は1.08倍に上昇しており、いずれもリーマン・ショック前の最も良好な水準並みとなっています。また、3月短観の雇用人員判断DIは、非製造業で1992年12月以来の大幅な不足超となり、製造業でも不足超に転じるなど、労働需給は引き締まり傾向が強まっています。』

ふむ。

『企業側では、建設業や小売業などの人手不足感の強い業種を中心に労働条件の見直しを通じて人材確保を図る動きも広がっており、女性や高齢者の労働参加も高まっています。こうして新たに活用される労働力は、これまでのところ、パートなどの短時間労働が中心ではありますが、所得増加などを通じた需要面への影響のほか、中長期的な成長力の押し上げにもつながっていくと考えられます。』

という説明も何かそういえば執行部方面から出ていたような気もせんでもないですが、しかし実はこの後の方での説明にあるのですが、先行きの物価動向に関する説明をする中で森本さんは需給ギャップの説明をしていまして、そちらでは供給力の天井に達している可能性があって需給ギャップは盛大に改善みたいな説明をしていまして、経済の持続性という意味での成長力の押し上げの話をこちらでは行っていて、物価見通しの方では需給ギャップの改善の話を行っているというのが何といいますか「いいとこどり」な説明にも程があるような気がするのは気のせいですかそうですか。

『こうした労働需給の引き締まりは、賃金にも影響し始めており、労働者全体の時間当たり名目賃金は、振れを伴いつつ緩やかな上昇に転じています。今春のこれまでの賃金改定交渉では、連合集計で、中小企業を含めた全体で0%台半ばのベースアップ、全体では2.1%程度の賃上げが実現する方向となり、各種調査からは夏季賞与の増加も見込まれています。先行きについても、わが国経済が潜在成長率を上回る成長を続ける中で、企業が正社員を含め採用意欲を高めていることもあって、労働需給の引き締まり傾向は強まっていく可能性が高いとみられますので、失業率は、過剰労働力が解消した状態である構造的失業率並みの水準に向けてさらに低下していくと予想しています。そうしたもとで、賃金そして物価には、上昇圧力がかかっていく可能性が高いと考えています。』

という説明になっていまして、まあ基本的には強い見通しという執行部見解を踏襲した形ですな。

で、次が『(設備投資動向)』になっているのですが、こちらもまあ強い話なのですが、先行き見通しに関する所ではこんな話が。

『こうした設備投資を支える要因としては、第一に、投資採算の改善があります。実体経済の改善に伴い資本収益率が上昇していくと同時に、予想物価上昇率の高まりなどを反映して実質金利が低下していくため、金融緩和の投資刺激効果は強まっていくとみられます。』

実質金利が低下すると企業がよーしパパ設備投資しちゃうぞーとなるのかねというのは極めて????な気がするんですけどねえ。

『第二には、潜在需要が大きいことが挙げられます。設備投資は、4四半期連続で増加したとは言え、リーマン・ショックや震災後の落ち込みからようやく回復過程に入った段階ですので、経済活動の水準が高まることで、維持更新投資などの潜在需要が顕在化しやすい状況にあると考えられます。』

逆に何でここまで潜在需要が顕在化しない件について考察するのが先のような気がするんだが。

『第三に、政府の規制・制度改革や企業の事業再構築など、競争力・成長力強化に向けた前向きな取り組みなどもあって、企業の中長期的な成長期待が高まっていくことも、設備投資を下支えするとみられます。』

ほうほう中長期的な成長期待が高まるとな(棒)。という事で設備投資に関しても見通しは強いのだがホンマカイナという感じもする部分があったり無かったりですが、次の『(輸出動向)』に来ると更にこう微妙な所がががががが。

『次に、輸出動向についてお話しします。輸出は、わが国経済との結びつきが強いASEANなどの新興国経済のもたつきや、米国の寒波の影響など一時的な下押し要因もあって、横ばい圏内の動きとなっていますが、このところの輸出の弱さの背景には、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も相応に影響している可能性が高いと考えられます。』

となっていまして、はあそうですかという所ではあるのですが、ここでちょっとお洒落なのは従来輸出について一時的な下押し要因として日銀執行部が挙げていた「消費税増税前の駆け込み需要対応の為に輸出ではなく国内向け生産を優先したための落ちこみの可能性」という点についての言及がすっぽりと抜けている事でして、これはまあ何ですねんというと、現実問題として貿易統計的に駆け込み需要要因が剥落している筈の時期に入っても別に輸出が伸びている訳では無くて、つまり従来の可能性は所詮可能性程度(全くない訳ではないでしょうが有意に輸出の全体を押し下げるような効果があった訳ではないという話)の話だったという所ですな、うんうん。

『先行きは、先進国を中心に海外経済が全体として緩やかに回復するにつれて、緩やかながらも増加に転じていくと想定しています。なお、海外経済の動向次第では、輸出が上下双方向に変動する可能性がありますので、今後とも、新興国経済の先行きや、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の動向等を注視していく必要があります。』

ということで、まあこちらに関してはさすがにあまり威勢の良い話をしにくいというのも執行部見解と同じような感じですな。


・物価の先行き動向に関する論点では若干慎重な説明も入るのだ

次が『(物価と予想物価上昇率の動向)』であります。まず物価の現状に関する話がありまして、そちらはスルーしまして予想物価上昇率やフィリップスカーブ的な話の部分を。

『そうしたもとで、需給バランスに対する物価の感応度や短期を含めた予想物価上昇率も高まりつつあるとみられます。』

ふむ。

『3月短観から調査をはじめた企業の物価見通しでは、大企業と中小企業で差はありますが、全産業全規模でみて1年後が1%台半ば、3年後、5年後のいずれについてもややこれを上回る形となっており、先行きの物価上昇率が高まっていくとみているように窺えます。』

「窺えます」という微妙な表現を使っているのはさすがに気を使っているなあとは思いますが、しかしこの短観データって公表されたのまだ1回分なのですからして、あまりこのネタを持ち出さない方が吉のような気がするんですけどねえ。

『足もとでは非製造業を中心に労働需給が逼迫しつつありますので、今後は、企業や家計も含めて予想物価上昇率の上昇に弾みがつきやすい環境になってきています。ただ、実際の物価上昇率が中長期的な予想物価上昇率に影響を与えていくという側面もありますので、夏場にかけて、仮に既往の円安効果の剥落や反動減による需給緩和の影響で消費者物価上昇の勢いが鈍るような場合に、予想物価上昇率がどのような影響を受けるのか、夏場以降の景気が再び緩やかに回復していく過程も含めて、引き続き注視していく必要があります。』

ということで、この辺に関してはバックワードルッキングで予想物価上昇率も高まるぜ円安要らずで持続的な物価上昇だぜヒャッハーという執行部的な説明だけではなく、いやいや上昇止まったら期待も変化するかも知れませんぜという注釈を加えているのが味わいがありますな。


・成長力引上げ云々の話で供給の天井論が出ているのですが・・・・・・・・・・・

でその続き。

『このように、先行きの日本経済は、企業収益が改善し、雇用・賃金や設備投資の増加などを伴いながら実体経済がバランスよく持続的に改善していくもとで、物価上昇率も次第に高まっていく姿を見込んでいます。』

ほうほうそうですか(棒)。

『このところ、わが国のマクロ的な需給ギャップは、国内需要が底堅く推移する一方で、少子高齢化が潜在的な労働供給を減少させる方向に作用していることなどを背景に、過去の長期平均並みであるゼロ近傍となるなど、供給面の問題が顕現化してきました。したがって、中長期的に日本経済の成長率を底上げし、持続的な経済成長を実現していくうえでは、供給力を強化していくことが重要な課題となっています。そのためには、女性や高齢者の活躍推進による労働力の確保や、企業の前向きな投資の促進、さらには規制・制度改革を含めて生産性向上にしっかり取り組み潜在成長力を高めるとともに、そうした供給力の向上に呼応する需要を創造し続けていくことが不可欠です。』

ということで、需給ギャップの改善という話と共に供給面の問題が顕現化してきたという認識を示しているのですが、その面において物価が上昇傾向にあるという事は、それって潜在成長力が強化されたら物価の上昇力落ちるんじゃないですかという話でもあったりして、基本的な見通しの部分での置きに変化が生じませんかねえというのはありますし、では潜在成長力が強化されなかったらどうかというと、その場合での物価上昇のサステイナビリティーの問題とか、そもそもそんな状況で物価上昇して誰得なのかとか、そういう論点になりますよねというのは先般の佐藤審議委員の講演で示されている話の受け売りになるので割愛しますけれども、話を通していくとここの「成長力強化」の部分で全体の話の整合性が微妙に変になるというのが現状での日銀ロジックの微妙な所なのではないか、とまあそんな事を思いつつ森本さんの講演を鑑賞するのでありましたとさ。

なお、この先は金融政策運営に関する説明ですが、特段変わった話をしている訳でも無いのでスルーします。


○今後のネタ関連(俺様備忘録)

ということでネタが盛大に投下されているので一応ネタの整理を。

・国債買入でポートフォリオリバランスはどうなったというネタ

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j04.htm/
日本銀行の国債買入れに伴うポートフォリオ・リバランス:資金循環統計を用いた事実整理

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/ron140619a.htm/
日本銀行の国債買入れに伴うポートフォリオ・リバランス:銀行貸出と証券投資フローのデータを用いた実証分析

資金循環統計が出たと思ったらポートフォリオリバランスに関する考察で日銀レビューシリーズとWPが出るという攻撃が(なお本文は上記URL先にリンクがあります)出ておりまして、中々面白そうだがネタにするにはさすがに週末真面目に読まないと(汗)。


・5月会合議事要旨

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140521.pdf

なんか妙に成長力がどうのこうのみたいな議論が多いのが気になる所ですがこれまた後日。


・中曽副総裁の講演

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/ko140619b.htm/
The Conquest of Japanese Deflation: Interim Report(英語のみ)
ギリシャ政府主催シンポジウムにおける発言要旨
日本銀行副総裁 中曽 宏
2014年6月19日

ということで昨晩このような物が打ち込まれているようで。


でまあ後はイエレン会見の質疑応答とか、今後の輪番とか短国買入とかの試算もしないととか、何かもうネタが目白押しですな。



2014/06/19

お題「FOMCの前に日銀からネタ投下/FOMC関連でございます」

今朝はFOMCネタですなあとか思ったらその前に幾つかネタが投下されているのでそちらを先に成敗してFOMCでありまする。なお本当は5月MPM議事要旨ネタもあるのですがそこまでは手が回らんので(たぶん)明日で勘弁。

ということで、本日もまたまた大ネタ2本立てになってしまいましたので、量がアホのように多くなってしまいましたが、この次にあるネタは日銀がFOMCにぶつけてネタを打ち込んで来たのでして、その為に大量攻撃になってしまった点誠に恐縮至極。

#FOMC声明文は全文一致部分が多いので引用総量は減らしました(^^)

ということでまずは日銀ネタから参ります。

○輪番の予定がもう見直しというのは大悪手だと思うという悪態シリーズが先に来るのだ

昨日は決定会合議事要旨だの1年TB入札だの貸出支援オペだのというネタが色々とあったのですが、それらのネタを粉砕する大ネタがしらっと金融市場局から投下されたのが夕方タイム。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140618a.pdf
2014年6月18日
日本銀行 金融市場局
当面の長期国債買入れの運営について

ということで紙が出た訳ですが、ついこの前6月2日から適用の運営の紙を出したばかりだというのにその舌の根も乾かぬうちに、というか3週間でまた差し替えの紙が出てくるとはどういう事ですねんという感じですが、さて内容はと言いますと・・・・・・・・・

5月29日に出ていた紙
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140529b.pdf


・超長期の減額&もう30年40年は打ち込むんじゃねえ攻撃

別紙にありますように、今回の変更点は(1)超長期(残存10年超)の1回辺り買入額を前回の「1,500〜3,500程度」から「1,300〜3,500程度」としたことで、ついこの前減額してその下限での買入をおっぱじめたばかりだというのに3週間で更に減額とかナンジャソラというのが一つ。

でまあ更にアレなのはその下にある(注4)という所でして・・・・・・・・・・・

『(注4)残存期間10年超については、残存期間の区分を細分化して同時にオファーすることがあります。2014年6月23日以降に行う最初のオファーは、残存期間10年超25年以下1,000億円、残存期間25年超300億円とする予定です。』(今回の紙から)

ということで、今回のもう一つの眼目は超長期のゾーニングをした上に、超長期手前の方を厚くして超長期の後ろの方は要らんぞなというのを思いっきり明確にした事でして、超長期のゾーニングという話だったら前からそういう提言はあった筈で、だったら最初からやっておけやという感じなのですが、1年間(途中で「程度」を活用して下限を切る買入をしていたのにもかかわらず)放置プレイをしていた「紙」について変更したと思ったら3週間でまた変更とか何ということでしょうと言う話でありまして、何考えとるんじゃゴルァという声が債券市場で飛び交ったのは言うまでもありません。

背景として恐らくここまでの日銀保有国債の残高の増え方から考えると、40年カレントとかが超長期輪番でバカスカ打ち込まれてしまって、買入平均残存が中々短期化しないという事があって、まあそれに対して調整しましたよという事なのでしょうが、それにしてもここまでの輪番の札の入り方から考えたら40年のカレントが出た(直近の40年国債入札は5月27日です)後の超長期輪番で40年カレントがバカスカ打ち込まれる事くらいちょっと想像力があれば想像できると思うのですが、いざ輪番で超長期の中でも長いのが打ち込まれてしまってから(この前償還銘柄が沢山入りそうなタイミングで1年未満の輪番を増額したのはやはり平均残存の帳尻オペだったのでしょうなあ)泡を吹きながら(かどうか知らんが)更に超長期の輪番を減額&新規ゾーニングをしてくるとか朝令暮改にも程があるわという所であります。


でまあ30年40年をバカスカ打ち込まれると中々平均残存が7年に近くなってくれないから超長期のゾーニングを今さらながらに入れてきたというのは把握致しましたが、その結果として従来30年だの40年だののカレントがバカスカ入っていた超長期輪番の実態からすると、30年40年の日銀による輪番での買入が激減するという計算になりますので、この紙が出た後の債券市場では超長期の後ろ(実際問題としてのゾーニングは25年の所で切れていますが)の所、20年から30年の所で盛大にイールドカーブがスティープするような気配になりまして、何ともかんともという所ではございます。


・不確実性を思いっきり拡大させる今回の「紙」の書き換え

ということでまあそんな紙が出た訳ですが、今回まあ色々とナメトンノカという論点が多々見つかる訳で、そらもう湯気出ます罠という論点が幾つかあるので湯気を出しながら少々。

まず先ほど申し上げましたように、先月末近くに「これで当面行きます」というのを1年ぶりに出して来たというのにそれを3週間で新しくリバイスするということで、まあ債券市場からしてみれば朝令暮改にも程がある(しかも超長期減額ですし)話でして、それだったらその前の時点で紙をわざわざ出すなよとか思いますし、大体からして紙が出ても1か月すら持たないんだったら端から紙の内容が当てにならないという事ですから、そらまあ市場からしてみたら「不確実性にも程がある」という話になります罠。

特に足元では日銀の輪番と国債入札(と強いて言えば月末の債券インデックス長期化)が債券市場のイベントとなっている訳ですが、その中で輪番に関して紙が出たと思ったらあっという間に変更の紙が出るとかなりますと、輪番だけ無駄に不確実性が高いという話になりますし、しかもご案内の通りで輪番が債券需給に大きく影響する一大イベントとなっている中でその一大イベントが不確実と来た日には、マーケットメーカーだってポジション取れません罠(他の要因で動くなら兎も角、日銀が輪番スケジュールを急にホイホイ変えてくるというのは日銀が恣意的に決める話なので予測可能性もへったくれもないから、そうなるとポジションの持越しもリスクとかそういう話になる)ということでして、只でなくさえ流動性が無いからポジション取りにくく、ポジションが取りにくいからちょっとした売買でイールドカーブが振れ、それがポジションの取りにくさに拍車をかけるという流動性低下の負のスパイラルになっているというのに、それを助長してどうすんねんというお話です罠。


でまあ更にアチャーとしか申し上げようがないのが、超長期輪番ゾーニングの内容についての説明部分で、『2014年6月23日以降に行う最初のオファーは、残存期間10年超25年以下1,000億円、残存期間25年超300億円とする予定です。』(再掲)となっているこの「最初のオファーは」というのが何とも債券市場というかマーケットメーカーに対してフレンドリーさの欠片も無い部分であります。

つまりですね、まあダマテンでゾーニング出されても死亡しますからそれを出すのは判りますし、中期の輪番のようにウェイトを似たような感じ(当初は半々だったのが直近比率が動いた訳ですが)にしないで、超長期の後ろはもうイランという意志表示をするのに、ダマテンでいきなり実施したら債券市場がビックリするから事前にアナウンスして起きましょう、という日銀の意図はまあ判るのですが、残念な事に今回「最初のオファーは」という言い方をしているのがウンコにも程がある所です。

と申しますのは、まあこれはとりあえずこのウェイトでオファーしてみて、買入の平均残存年限の状況をみたり、超長期の後ろのイールドカーブ状況を見て必要ならばウェイトをいじってマーケットフレンドリーにしようという意図を持っているんだろうなあというのもこれまた判るのですが、そもそも輪番の買入が需給を大きく左右するという状態になっている訳ですから、「必要に応じて機動的に対応」というのは「日銀が恣意的にイールドカーブの形状に大きな影響を与える」というのと同義であり、しかもその変化が急に月の途中のエライ中途半端なタイミング(このタイミングに関しても後で悪態の予定)で行われるとなりますと、そらまあマーケットメーカーが店頭の売買に対応したり入札に参加したりする際の超不確実要因が日銀の胸先三寸という事になりますし、そもそもその胸先三寸の反応関数もよく判らんとなりますと、安心してマーケットメークもできませんという事になります罠。

もうちょっと端的に言ってしまうと、次回の超長期輪番が1000億/300億になったとして、その次の回の配分が判らんとかいう時点でどうひっくり返るか判らんとなると超長期ゾーンのマーケットメーカーは店頭での投資家からの引き合いに対応してポジションをとる事そのものがリスクになる訳でして、しかもこの年限がこの先どういう切られ方になるのかも謎とかになりましたら、昨日この紙が出た後は超長期の20年よりも後ろ(正確に言えば25年の所なのかもしれないが板が無いので判らん)の部分でカーブがスティープしましたが、そこのスティープフラットの関係も次の次のオファーでひっくり返るかもしれないし、下手したらカーブ形状が変わるグリッドですら変わるかもしれないという状況でマーケットメークまともに出来るかよという話になる訳で、せめて「当面はこうする」位の表現にしてくれよと思いますし、まあその「当面」も今回3週間如きでひっくり返されるという事案が発生した以上は当てにならんぞなもしという話ですし、まあ困ったもんだよという事ですよねこれって。


という訳で、まあ金融市場局様におかれましては恐らくそれなりには考えたと思われる部分もあるのですけれども、それがどこをどう見ても結果的にはマーケットフレンドリーどころか業者がリスクを取れなくなる方向に思いっきり燃料を投下するという材料になっている辺りがオッペケペーにも程があるプレイでして、何ちゅうセンスの無さとしか申し上げようがない次第ではあります。



・アナウンスするタイミングと1年以下の上限引き上げに対する悪態である

でもって更に悪態を申し上げますと、これを打ち込んだタイミングがFOMCの前日で、そのほかにもBOEの議事要旨が出るとか、新方式による貸出支援オペの結果が出るとか、そういう話題目白押しの中で出して来るという辺りが実にあざとい訳でして、超長期の買入減額と言う下手するとTaperingみたいな言われ方をするリスクのあるネタをFOMCにぶつけて、株式市場や為替市場がそっちに気をとられているタイミングを狙ってくるというのがもう何ともあざといというかセコいというか甚だケシカラン訳ですよ。

しかも今回超長期の買入の下限を減らしているのですが、良く良く見ますと残存1年以内の買入について、一回当たりの買入予定額の上限を500億円増やしておりまして、超長期の買入予定回数が月に5回で、1年以内の買入予定回数が月に2回、そして今回は1回辺りの買入について超長期の下限を200億円減額して1年以内の上限を500億円増額しているので、200×5=500×2という謎の計算式によりまして「総額ベースで下限が減っていますが上限も増えていますよ(キリッ)」とか、そもそも殆どの年限で下限の買入(つーか5〜10年は下限を切ってますけど)を行っているのに、帳尻的な意味しかない年限(1年以内という短期国債と同じ年限ですから)の上限増やして「下限を減らしたが上限も増やしている」という見せ方をする辺りが実に貧乏臭いというか(内務省検閲)丸出しというかでございまして、そういうのがまた分かりやすく見えてしまう所が債券市場をナメトンノカという話になる訳でして甚だ遺憾にも程がある所ではあります。


そして今申し上げましたように、今回の「紙」の変更にも何故か反映されていないのは、現実問題として下限を切って「程度」の中で運用されている5〜10年の買入の表示でして、今回も引き続き『4,500〜6,000程度』と表示しているのは、先般のバージョンが出た時に申し上げたように、買入のコアゾーンとなる部分の数字を小さくするとそれこそ細かいゾーニングとか見ていない為替市場とか株式市場辺りがネガティブな反応をするリスクを意識しているのでしょうなあとしか思えませんが、ここはここで「程度」の運用でレンジを逸脱した買入オファーが続いているのを紙の方で実態に合わせないという時点で紙の内容を墨守する気ねえだろという話になる訳です。


・紙の在り方に関してとかそんな点

もちろん、金融市場局として墨守しないといけないのは決定会合で示されているディレクティブであって、そちらを実務的にどう運用しようかという話になった時に出しているおまけが「紙」であるので、紙の通りに運用してディレクティブを逸脱する方が問題ではある、というのはその通りではあるのですが、墨守しない紙だったら変に出されると却って市場参加者に対して不確実性を与えるだけになる訳でして、まあ確かに昨年出した当初の時点では紙にも効用があったとは思いますし、機動的な対処にも効用があったかもしれないですけれども、実際に買入が累積してきて、債券市場における価格形成に対する日銀買入の影響があまりにも大きくなった現在となっては、変に「機動的な対応」や「柔軟な対応」をする方が市場に対する不確実性を与え、マーケットメーカーのポジションニングに対するリスク要因となり、ひいては債券市場の流動性の低下に拍車をかける結果を生むようになっているのではないか、とまあそんな事を今回の公表とそれに対する市場の反応やら感想やら苦情やらを見ていると思う訳ですよ。

つまりですね、こうなってくると実はもうここから先の輪番に関しては月の中でのタイミングの入り繰りとかは適宜調整するにしても、買入の対象や額に関しては、ディレクティブを順守する為にどのような年限をどのようなウェイトで買えば良いかを月当たりでブレークダウン(その際にもう少し年限区分を細かくしても良いと思いますし、その方がやりやすいでしょう)して、債券市場がどう動いても淡々とそのペースを守って買入を行うという、FED方式に近いやり方で輪番オペを運営した方が、却って市場に対する不確定要因を除去する結果になるんじゃないですかとも思う訳で(これはアタクシがそう思うだけで見解は分かれると思いますので念のため申し添えます)、しつこく申し上げますがこうホイホイと「紙」の内容をいじられますと、市場(特にマーケットメーカー)はポジションすら取れないわという話になってくると思いますが如何でしょうかねえという所ですな、うんうん。

#と、すこし穏当に纏めてみたつもりだが


・注記について少々追加

今回の追記に関して少々あたくしなりの解釈をば。

『(注1) 2つまたは3つの残存期間区分を同時にオファーします。』
『(注4)残存期間10年超については、残存期間の区分を細分化して同時にオファーすることがあります。2014年6月23日以降に行う最初のオファーは、残存期間10年超25年以下1,000億円、残存期間25年超300億円とする予定です』

ということで(注2と3は前回と同じ話)、今回ちょっと話題になっていたのは「残存期間区分が3つまでだとすると中期と超長期の輪番は同時にオファーしないのでは」という話でしたが、これは純粋に原則論で言えば「同時オファーはあり得る」という事になると思います。あくまでも残存期間区分として提示されているのは紙の表の中に出ている部分であって、その中でのゾーニングに関しては残存期間区分という大枠から見て細かい部分の話になると思います。

ただし、オファーバックして落札結果を決定して通知してというような事務フローが円滑に回るのかという観点からしますと、同時に応札する種類が増えると事務が輻輳してくると思いますので、その事務リスクという点で回避するというような事はあるかもしれません。ただまあ月のトータルの部分にこれは影響を与える話では無いので、そこでああだこうだという話をするのは狙公の家で飼われているエテ公が朝3つか暮れ3つかでウッキーと言うようなレベルの話なのでまあ細けぇこたあキニシナイという事ですが、事務輻輳がしんどいという話ですと先ほどの「もっと細かくしたら」という話も実務面で机上の空論化してしまうのでそこは気になる所。

あと、ウダウダ申し上げましたが、まあ基本的に注4に関しましては常識的に考えると「次回以降当面はこの配分とゾーニングで行きます」というのを事前にアナウンスしているだけで、何で数字の話をしているかと言えば、先ほども申し上げましたように、従来ゾーニングしている中期がほぼイーブンウェイトでの買入をしているのに対して今回は偏りがあるので、実際のオペオファー時にサプライズを与えるよりも、先にアナウンスしておきたいという事であって、毎回買入の入り方を見ながらホイホイと配分を変えてくるというような事はしないと思います。


○その他昨日のネタを少々

・貸出増加支援オペ結果

本来ならこれも大ネタなのですが(汗)。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140618b.pdf
貸出増加を支援するための資金供給の実施結果(2014 年6 月実施分)

新規貸付の概要
貸付期間 4 年
貸付予定額 49,368 億円
貸付先数 60 先

ということで巷間5兆から6兆程度出るのではないかと言われていた貸出増加支援オペですが、結局ほぼほぼ5兆円の落札となりまして、まあこれで4年の0.1%ファンディング確定したからよーしパパ4年ゾーンの国債買って雀の涙の鞘抜きで明日はホームランだ!とは成らんとは思いますが、ALM的に言えば4年の固定金利ベースの負債が入ったのでその分当該金融機関の金利リスクプロファイル的にはリスク耐性が向上しているといのは言える話ですので、そういう意味では債券市場にフェイバーという話になるんでしょう。

でまあこの分の固定金利オペが期落ちで減るんだろうなあとか思いますがその辺りに関してはまた後日。


・資金循環統計

これまた本当は超大ネタ。
http://www.boj.or.jp/statistics/sj/sj.htm/
資金循環統計(速報)(2014年第1四半期)

このページから各種計表へのリンクが貼ってありまして、そこからヘコヘコと数字やら文書やらを落として来るとそれはそれで面白いのですが、そのネタもまた後日できればやります(やらないかもしれないが)。

でまあほほうというのは最初の所にある「資金循環統計(速報)(2014年第1四半期) [ZIP 79KB](注1)」からデータ落としてきて表を眺めている中であったのですが、ここからデータ落とすとエクセルファイルが展開されますけれども、その中で公的年金の国債残高の今年1Qの増減を見ると(シート6のJ36セルになると思うのだが)「18418億円の売り越し」となっている(筈だが間違っていたらすいません)所でして、色々と味わいが深い事よとか思うのでした。



・BOE議事要旨のポイント部分はマンションハウスでのカーニー総裁講演と同様

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2014/mpc1406.pdf
MINUTES OF THE MONETARY POLICY COMMITTEE MEETING
4 and 5 June 2014

ということでサラッと斜め読みだけしたのですが、基本的な論点は実は先般来ネタに使用中のマンションハウスにおけるカーニー総裁の講演とだいたい同じだったりしまして、まあそれは良いのですが、先般はNY連銀のダドリー総裁の講演での論点が直後に出たFOMC議事要旨の論点とモロ被りとかいう事案もありまして、最近は中銀の議長副議長クラスが事前にお漏らしをするのが流行なのかと悪態の一つもつきたくなる次第です。

まあ本来議事要旨を見て判断すべきものが先に出てくるとか勘弁してというのはありますが、それだけ出口政策というか金融政策の正常化にあたっては慎重なコミュニケーションポリシーを取ろうという事になっているのかなあとは思うのでした。と申しますのは、ミニッツがポンと出る時って別に説明付で出てくる訳でもない(筈)ので、ポンと出した時に市場が望ましくないような過剰反応を示さないようにする為には、講演という場を使って事前に先駆け説明をじっくりしておこう、とまあそんなイメージがあるのかもしれませんね、と思うのでありました。


○FOMCである:声明文は景気の現状認識を引き上げるも先行きや政策関連は見事に全文一致とな

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140618a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140430a.htm(前回)

・第1パラグラフ:景気の認識に関しては結構いろいろ改善している

『Information received since the Federal Open Market Committee met in April indicates that growth in economic activity has rebounded in recent months.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in March indicates that growth in economic activity has picked up recently, after having slowed sharply during the winter in part because of adverse weather conditions.』(前回)

まあ前回に関しても足元の弱さは天候要因による一時的なものという事になっていましたので、そういう意味では想定通りに戻って参りましたという事ではありますが、表現が「rebounded」となっているのはまあ良かったですねという感じ。

『Labor market indicators generally showed further improvement. The unemployment rate, though lower, remains elevated.』(今回)
『Labor market indicators were mixed but on balance showed further improvement. The unemployment rate, however, remains elevated.』(前回)

雇用に関する文言は前回あったヘッジクローズが外れてきているので判断引き上げ。

『Household spending appears to be rising moderately and business fixed investment resumed its advance, while the recovery in the housing sector remained slow.』(今回)
『Household spending appears to be rising more quickly. Business fixed investment edged down, while the recovery in the housing sector remained slow.』(前回)

家計消費の拡大ペースは鈍化したという形で下げですが、企業の固定資産投資が拡大を回復したということでこちらは上げ、住宅セクターの判断は回復がスローという弱めの見方継続。

『Fiscal policy is restraining economic growth, although the extent of restraint is diminishing. Inflation has been running below the Committee's longer-run objective, but longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)
『Fiscal policy is restraining economic growth, although the extent of restraint is diminishing. Inflation has been running below the Committee's longer-run objective, but longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

財政の影響に関する文言、インフレおよびインフレ期待に関する文言には変化がありません。


・第2パラグラフ:見事に全文一致

第2パラグラフは先行き見通しと先行きのリスク認識ですが、不肖このアタクシが透かし読みと音読を併用した結果全文一致であると認識致しましたので、先行き見通しやリスク認識は見事に不変である、とまあそういう話かと存じますが、皆様におかれましてもまあ確認してくらはいませ。

つーことで念のため引用するが前回との比較はしないよ(量を妙に増やしたくない)。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace and labor market conditions will continue to improve gradually, moving toward those the Committee judges consistent with its dual mandate. The Committee sees the risks to the outlook for the economy and the labor market as nearly balanced. The Committee recognizes that inflation persistently below its 2 percent objective could pose risks to economic performance, and it is monitoring inflation developments carefully for evidence that inflation will move back toward its objective over the medium term.』(今回)

先行きは徐々に回復するだの、物価が低い水準で長くとどまるのはリスクだけど今後は戻るだの、リスクバランスは上下に概ねバランスしているだのという話で前回と全く同じです。


・第3パラグラフ:テーパリングのスタンスも不変、表現で違うのは減額後の数値と月の名前だけ(^^)

第3パラグラフは資産買入に関するパートになりますが、こちらもアタクシが人力にて確認した所、「7月から資産買入によって拡大する月額ペースはMBSが200億ドルから150億ドルに、米国債が250億ドルから150億ドルに」という部分だけは違います(当たり前)が他は全文一致ではないかと思われますので手抜きでパラグラフ纏めて引用あんど比較無しの巻。

『The Committee currently judges that there is sufficient underlying strength in the broader economy to support ongoing improvement in labor market conditions. In light of the cumulative progress toward maximum employment and the improvement in the outlook for labor market conditions since the inception of the current asset purchase program, the Committee decided to make a further measured reduction in the pace of its asset purchases. Beginning in July, the Committee will add to its holdings of agency mortgage-backed securities at a pace of $15 billion per month rather than $20 billion per month, and will add to its holdings of longer-term Treasury securities at a pace of $20 billion per month rather than $25 billion per month. The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. The Committee's sizable and still-increasing holdings of longer-term securities should maintain downward pressure on longer-term interest rates, support mortgage markets, and help to make broader financial conditions more accommodative, which in turn should promote a stronger economic recovery and help to ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with the Committee's dual mandate.』(今回)

テーパリングしていますが買入は拡大してるだの、資産買入残高は長期金利やモーゲージ金利に低下効果だのという話はいつも通りです。


・第4パラグラフ:今後の資産買入に関する文言も全文一致

ということで更に手抜きが続きますが今回分だけ引用ね。

『The Committee will closely monitor incoming information on economic and financial developments in coming months and will continue its purchases of Treasury and agency mortgage-backed securities, and employ its other policy tools as appropriate, until the outlook for the labor market has improved substantially in a context of price stability. If incoming information broadly supports the Committee's expectation of ongoing improvement in labor market conditions and inflation moving back toward its longer-run objective, the Committee will likely reduce the pace of asset purchases in further measured steps at future meetings. However, asset purchases are not on a preset course, and the Committee's decisions about their pace will remain contingent on the Committee's outlook for the labor market and inflation as well as its assessment of the likely efficacy and costs of such purchases.』(今回)

今後もFOMCごとにテーパリングだの先行きは決め打ちじゃないよとかそういう話も同じです。


・第5パラグラフ:金利政策に関するガイダンス文言やスタンスもこれまた全文一致

物の見事にこちらも全文一致で、先行きの金利に関する何らかの追加情報は1ミリも出てこなかったというのはまあ予想通りちゃあ予想通りですがサービス精神は無いですね(笑)。

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that a highly accommodative stance of monetary policy remains appropriate. In determining how long to maintain the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial developments. The Committee continues to anticipate, based on its assessment of these factors, that it likely will be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate for a considerable time after the asset purchase program ends, especially if projected inflation continues to run below the Committee's 2 percent longer-run goal, and provided that longer-term inflation expectations remain well anchored.』(今回)

こちらでの表現もまったく同じという実にぶれない作戦ですな、うんうん。


・第6パラグラフ:票決は今回も全員一致です

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Stanley Fischer; Richard W. Fisher; Narayana Kocherlakota; Loretta J. Mester; Charles I. Plosser; Jerome H. Powell; and Daniel K. Tarullo.』(今回)

でまあ今回からクリーブランド連銀の総裁がピアナルトさんからメスターさんに交代、スタイン理事が退任してブレイナード理事とスタンレーフィッシャー理事(副議長)が加わっています。


ということで、今回は先行きの金利ガイダンスなどに全く新しい情報が無い、というのが特徴っちゃあ特徴ですなという所です(声明文的に)。


○FOMCネタその2:SEPの数字は何かこう色々と微妙ではある

SEP概要(本当に細かいSEPは実は議事要旨と共に出るのだ)はこちら。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20140618.pdf(今回)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20140618.htm(今回、簡略版)

前回3月数値はこちら
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20140319.pdf(3月)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20140319.htm(3月簡略版)

・GDP見通しは足元だけ下がっています

セントラルテンデンシーの数値は以下の通り。

              2014     2015    2016     ロンガーラン
Change in real GDP 2.1 to 2.3  3.0 to 3.2  2.5 to 3.0    2.1 to 2.3
March projection   2.8 to 3.0  3.0 to 3.2   2.5 to 3.0    2.2 to 2.3

実質GDPは2014年の所がどどーんと下がっていますがこれはここまでのGDP減速を反映したもので、政策インプリケーション的には先行きの方が重要でこちらはカワランチ会長ですが、ロンガーランの数値が超微妙ですが下がっていましてほほうという所です。なお、ロンガーランのGDPについては全員のレンジが前回の1.8-2.4から1.8-2.5になっておりまして、全員のレンジで見ると微妙に上がっているのがまた味わいがありますな。

ただし、ファンチャートの方で見ると何となく気持ち全体的には先行きのGDP見通しパスが若干下がっているかなという気はします。


・一方で失業見通しは改善、物価見通しは超微妙に下がっているとな

セントラルテンデンシーの数値は以下の通り。

              2014    2015     2016     ロンガーラン
Unemployment rate 6.0 to 6.1  5.4 to 5.7  5.1 to 5.5    5.2 to 5.5
March projection   6.1 to 6.3  5.6 to 5.9  5.2 to 5.6    5.2 to 5.6

PCE inflation   1.5 to 1.7    1.5 to 2.0  1.6 to 2.0      2.0
March projection 1.5 to 1.6   1.5 to 2.0   1.7 to 2.0      2.0

失業見通しは改善していまして物価見通しは概ね横ですが微妙に下がっています(全員のレンジも同様)なあという所ですが、まあ概ね横という感じですかねえ、超微妙にも程がありますが、ファンチャートの方を前回と比較してみる(というか透かし読みすると^^)失業率見通しパスが微妙に改善していて、物価見通しパスは概ね横ばいに見えますがどうでしょうかね。

・・・・・・・でまあそれはそれで良いのですけれども、相変わらずGDP見通しパスは下がっているのに失業率パスは改善して、物価見通しパスはほぼ横ばいというこの見通しって整合性としてどうなのよというのは相変わらずのSEPクオリティなのですけれども、これは参加者の個別の見解をドットで示すという形式を取っている弊害でもあって、個別では整合性のある見通しをだしていてもそれを出来上がりの数字だけでアグリゲートすると整合性が取れないという話になる訳ですな、うんうん。


・金利見通しだがロンガーランの数字が下がっている方にだけ注目する積りが思わぬ所にも孔明の罠

つまりですな、ロンガーランの政策金利見通しですけれども・・・・・・・・・

今回
3.25: 1
3.50: 3
3.75: 7
4.00: 3
4.25: 2

前回
3.50: 4
3.75: 2
4.00: 8
4.25: 2

となっていますので、ロンガーランの政策金利見通しを4%から下げた人が明らかにいますし、3.5%から3.25%に下げたと思われる人が1名いますなあという感じで、モードの数値も4%から3.75%に下がったので、中立金利の読みが下がったよヒャッハーという話になるのですが、それにしては下げ方が微妙ですなあとは思いますが、そらまあ急に下げる訳にも行かないでしょうという感じで、今回は人の入れ替わりが微妙にあったのでそのどさくさで下げる人がもうちょっと居るかと思ったのでこの微妙さ加減に侘び寂を感じるアタクシなのですけどどうっすかねえ(^^)。

・・・・・・・・というのは兎も角として、何かあまり話題にされていないような気もせんでもない(つーてもモーサテで示されている「反響」というのもかなり当てにならないのでそこは割り引くとしまして)のですが、実は先行きのFF金利に関する数値の変化の方を見てありゃりゃと思うあたくし。

つまりですね。

2015年末のFF金利見通し
0.25: 3
0.50: 1
0.75: 1
1.00: 3
1.25: 3
1.50: 1
1.75: 1
2.00: 1
2.25: 1
2.50: 0
2.75: 0
3.00: 1

前回の同数値はこちら
0.25: 2
0.50: 2
0.75: 2
1.00: 5
1.25: 1
1.50: 1
1.75: 0
2.00: 1
2.25: 1
2.50: 0
2.75: 0
3.00: 1

ということで、何気に2015年末のFF金利見通しって1%未満の部分が減っていて1-1.25%の部分が増えているのと、0.25%(つまり政策維持)という人も1名増えているという微妙なバランスになっております。

更に2016年末の数値ですけれども・・・・・・・・(縦長ですいません)

2016年末のFF金利見通し
0.50: 1
0.75: 0
1.00: 1
1.25: 1
1.50: 0
1.75: 0
2.00: 2
2.25: 2
2.50: 2
2.75: 1
3.00: 2
3.25: 0
3.50: 1
3.75: 1
4.00: 1
4.25: 1

前回の同数値はこちら
0.50: 0
0.75: 1
1.00: 0
1.25: 1
1.50: 0
1.75: 2
2.00: 3
2.25: 2
2.50: 1
2.75: 2
3.00: 1
3.25: 0
3.50: 1
3.75: 0
4.00: 1
4.25: 1

ということで縦にクソ長くなってしまいましたが(アタクシのスキルのせいです)、これドットの方を見て比較した方が分かりやすいのですが、2016年末の数値になると前回対比が更に分かりやすくなっていまして、2016年末時点の政策金利見通しで下の数値を出しているのが増えている(2015年末時点で利上げ無しとしている3名に相当しますな)上に、その人たちの見通し数値分布も下がっているのですけれども、それ以外のまあ中間層の部分のレンジが前回よりも上昇傾向になっています。

これは何ですねんと言いますと、ロンガーランの金利数値が全体的に下がったよヒャッハーと喜んで居るようですけれども、そこまでに至る金利パスの予想は基本的に前回対比で速くなっているという諸葛孔明の罠にも程がある数値になっていまして、つまり中立金利は下がったけれども正常化パスは速くなっているという事ですので、中立金利が下がったよヒャッハーとだけ見ているのはシロウトという話になる訳ですな、うんうん。

なお、今回はメンバーの出入りもありますし、そもそもここのドットにあまり深い意味合いを持たせて見ること自体も足元をすくわれる原因になるので、ここの数字をああだこうだとひねくり回し過ぎるのも怪我の元ということで念のため申し添えます。


○イエレン会見についてはまあ明日以降ですな

とりあえず朝の時点でテキストに落ちているのはオープニングステートメントです。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140618.pdf

でまあ前回と今回のオープニングステートメントを比較するのはさすがに無茶振りにも程があるのでとりあえずざっと音読した(人力ですいません)感じですと、今回のオープニングステートメントでは最後の所がちょっと長くなっていまして、そこでは「金利パスに関しては今後のデータ次第」(4ページ目の最終パラグラフから5ページ目の頭)というのと、「出口政策においてはバランスシートの規模を維持しても短期金利を引き上げるツール(レポファシリティの事ですな)がありますし、その点については今後も討議しますがそれが出口早期化を意味するものではない」(5ページ目)という話をしている点が追加されていて、あとはまあ基本的に声明文の内容をなぞる形になっているように見えますが、これから引用大会とかしているとオワランチ会長になるので今日の所はそういうメモだけ置いておきます。



2014/06/18

お題「市場メモ/雇用・所得に関する日銀レビューから少々/カーニー総裁の講演から(続き)」

良く良く見たら中々お洒落ですな。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140616/k10015260921000.html
首相 新成長戦略で「日本経済が一変」
6月16日 18時11分

『「日本人の創造性を解き放って付加価値を高めていくには、残業代という概念がないような時間で働く人々が成果を上げて、上がった成果について評価をしていくことが大切だ」』

『「大切な年金をお預かりして運用しており、損になることをするわけがない。経済が成長しているなかで、同じように国債を中心に運用しているのであれば、むしろ年金受給者や年金を納めている方々に対して不誠実な運用で、先を読んだ運用をするのは当然だ」』(以上上記URLより)

・・・・・・・・・・・・ほうほうそうですか(棒)。

○市場メモ雑談

・業態別当座預金残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

5月の当座預金残高は月平ベースで2兆円弱しか増えていませんが、今回の特色としては都市銀行以外の銀行業態が超過準備減らしていて信託銀行の超過準備に結果的に振り替わっているというのと、証券の当座預金残高はもう伸びませんなあというのがほぼ明確になっているということですか(まあ今に始まった事ではないが)。

信託の超過準備が増えているのが要因がよく判らんですけれども、銀行業界とは割と逆の動きをするのが中々興味深いですなという所ですな。でまあ証券に関してはそらまあ所要準備が無くて商品有価証券を持っている業態ですし、運用として日銀当座預金を持つというのは利回り付くにしたってまあ利回り低いですし、ROE的に言えばバランスシートの無駄使いになってしまいますから、やはり資産買入拡大、つまり当座預金積み上げには銀行業態がせっせと超過準備を積んでくれないと厳しいですねという当たり前の結論を確認するのでありました。


・短国ェ・・・・・・・・・・

今日は1年短国の入札で明日は3か月短国の入札なのですが、足元では短国の玉が逼迫しているのに日銀が何考えてるのか知らんが短国買入をせっせと継続して下さる(今月は四半期償還と年金定時払いがぶつかる月なので財政は盛大に払い超になるからMBは放置しても積み上がる)ので短国のセカンダリーのレートとか現先のレートが盛大にヒャッハーとなっているようで誠に遺憾なのですけれどもさてどうなるのやら。

つーかですね、良く良く考えますと1年TBの償還って当たり前ですけど来年の6月足な訳でして、QQEでのMB積み上げヒャッハーというのが確約されておりますのはあくまでも今年の年末でごじゃりまして、別にその後同じペースでMB積み上げの実施するかどうか判らんですし、長期国債の買入ペースをフローベースでそこそこ確保するという話になった時に短期オペの帳尻的にこのペースで短国買入が継続しやがるかというとこれは一度くそまじめに計算しないといけないテーマだったりするので(まあそもそも論として実際に政策がどうなるのかは不確定要素が多すぎて何がどうなるのか想像するのもヤヤコシヤだが)、はてさて短期と言っても持ちきり前提で考えた場合にどうなのというのは微妙ちゃあ微妙。ま、足元ではどうせ日銀バキュームカーが吸い上げにやってくるので日銀に放り込んでしまえば良いのでもちきり前提とかややこしい事を考えなければ無問題ですけどね。


○日銀から幾つかペーパーが出ているのでメモ

・雇用・所得に関する日銀レビューですよ!!!

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j03.htm/
今次景気回復局面における雇用・所得環境の特徴点
2014年6月16日

本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j03.pdf

でまあ要旨の方にきっちりとまとめがあるのでそちらから引用。

『今次景気回復局面での雇用環境の特徴点として、(1)雇用誘発力の高い内需主導で回復が進むなか、雇用の改善が非製造業部門で目立っていること、(2)需給双方の要因から、女性や高齢者を中心とした労働参加が活発化していること、が挙げられる。新たに活用される労働力は、これまでのところ、平均賃金が相対的に低い非正規雇用・短時間労働が中心となっており、その結果、単純に労働者一人当たりの平均賃金をみると弱めとなっているが、労働者一人ひとりが直面する賃金は上昇しているほか、労働参加の拡大効果も含めて雇用者数の増加がマクロの雇用者所得の増加につながっている。』

ほう。

『より長い目でみると、わが国経済が持続的に成長していく上では、(1)特定の雇用形態に偏らない高齢者や女性の一段の労働参加が促進されるか、(2)賃金の上昇が生産性向上を伴いつつ継続していくか、といった点が重要なポイントとなる。』(以上上記HTML先の方から)

ということですが、更に本文の6ページ以降で『先行きの雇用・所得環境を見通す上でのポイント 〜結びにかえて〜』というまとめがありますので引用を。

『最後に、先行きの雇用・所得環境を見通す上でのポイントと、やや長い目でみた日本経済へのインプリケーションを考えてみたい。』(上記PDF本文の6ページから、以下同様)

『1つ目のポイントは、製造業部門における労働需要の動向である。部門別の雇用者数の伸び率を改めて確認すると、本稿で強調した非製造業の雇用環境の改善のほか、足もとでは製造業でもマイナス幅が縮小傾向にある(前掲図表4)。また、先行きの雇用スタンスを窺うと、非製造業だけでなく、製造業も、雇用者数の伸び率を高める方針を示している(図表17)。』

ということで製造業の雇用がポイントとな。

『海外生産移管が進む製造業において、正社員を含め国内の採用計画が積極化している背景には、@本社機能や研究開発の強化を中心に、海外との棲み分けを意識しながら国内の活動充実も図ることや、A「団塊の世代」の退職が進むなかで現場の技術継承を進めることが、強く意識されるようになっていることがあると考えられる。こうした製造業の雇用スタンス積極化の動きが持続していくことで、マクロ全体ではバランスのとれた雇用者数の増加が期待できる。』

マクロ的なバランスという話もあるのですが、実はこの後に賃金の先行きに関する話があって、そこで説明されていますが労働生産性が相対的に高い製造業の雇用が伸びないと実質賃金が上がらんという話に繋がったりしますので。

『2点目は、労働参加を巡る今後の進展である。とりわけ女性の労働参加については、上述したようにこれまでのところ、家事・育児との両立や家計補助といったインセンティブから行われてきた面も強く、それが労働需要増加への初期対応としての企業側のニーズにも合致して、非正規雇用・短時間労働が中心となってきた。もっとも、やや長い目でみると、高齢化の一層の進展や、潜在的な労働供給余力の低下が、雇用者数の伸びに対して下押し圧力となっていく可能性が高く、この点、政府の成長戦略においても具体的な取り組み方針が示されているように8、女性の労働参加をより広い形態で一段と高めていくことは極めて重要な観点である。』

ふむ。

『実際、女性の労働力率を年齢階層別にみると(前掲図表10)、日本においては、結婚・出産期に一旦労働市場から退出する傾向―いわゆる「M字カーブ」―が、徐々に解消されつつあるものの、他国対比でなおはっきりと確認できるなど、女性のさらなる労働参加の余地はなお少なくないといえる9。現在の景気回復を契機として、出産・子育て等を理由とした離職の減少や、指導的地位に占める女性の割合増加など、特定の労働形態に偏ることのない、歪みのない労働参入が促されることが期待される。』

まあそうですなとは思いますがそうなると人口の話はどうなるという気はせんでも無いがそこの話をしている訳ではないので華麗にスルーという事でしょうな、うんうん。

で、実質賃金の話ですが労働生産性との関係という話が出てくるのがさっきの論点と被るのだ。

『最後に、より長期でみた先行きの賃金、特に物価変動分の影響を除いた実質賃金の動向を見通す上では、労働生産性との関係も、大きなポイントとなる。』

ということで。

『実質賃金と労働生産性の間には、理論的に一定の関係があることが知られている10。過去、非製造業の実質賃金の動きは、製造業対比で上昇テンポが緩やかであったが、これは、基本的には、両部門の労働生産性の違いを映じたものと考えられる(図表18)。』

ふむ。

『もっとも、近年は、シニア消費の掘り起こしや物流部門の改善といった企業の取り組みが奏功しつつあるなど、循環的な要因を除いても非製造業部門の生産性が向上に向かう兆しもみられる11。こうした動きが持続性を持つならば、長い目でみて、生産性の向上を伴った非製造業の賃金上昇が期待できると考えられる。』

ということで引用ばっかで恐縮ですが簡単にネタにしてみました。


・金融高度化がどうのこうの系

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140617a.htm/
本店で金融高度化セミナー「金融機関の経営管理の高度化―理論と実践」を開催
2014年6月17日

『金融高度化センターでは、5月29日、30日および6月5日、6日に日本銀行本店で、取引先金融機関を対象に、「金融機関の経営管理の高度化―理論と実践」と題するセミナーを開催しました。セミナーの内容は以下のとおりです。』

ということで資料が毎度のように付いているのですが、今回は何となく従来比資料が多い上に、基本的なお勉強資料まであって中々の充実ぶりで、充実しているので全然読めていない(ちょっとだけチラ見したけど)という残念なアタクシ。




○カーニー総裁講演ネタ続き

FOMCネタとかBOE議事要旨ネタとかが出てくるので泡を吹きながら続きを。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/speeches/2014/speech736.pdf
Speech given by Mark Carney, Governor of the Bank of England
At the Lord Mayor’s Banquet for Bankers and Merchants of the City of London at the Mansion House, London
12 June 2014

・経済のバランスに関する説明の冒頭にぶちかましががががが

イントロの次の小見出しは『Macroeconomic balance』であります。

『The UK economy is currently unbalanced internally and externally.』

ということで始まる部分でぶちかましが来るのでした。以下引用。

『Internally, there is wasteful spare capacity - an output gap - concentrated in the labour market. The Monetary Policy Committee (MPC) currently estimates this gap to be around 1-1.5% of GDP, though we caution against false precision as there are wide confidence bands around this central view.』

ということで、労働市場中心に経済の余剰生産力がありますという事で、生産ギャップが1%台前半程度ある(本文では1.5の所は1/2という表示になっていますが作業環境の文字コードの関係で改変しました)との認識です。

『The MPC’s current guidance makes clear that we will set monetary policy to meet the inflation target while using up that spare capacity. This has implications for the timing, pace and degree of Bank Rate increases.』

でまあこのギャップが大きいうちは低金利政策継続という話は前からしていますが・・・・・・

『There’s already great speculation about the exact timing of the first rate hike and this decision is becoming more balanced.』

ふむ。

『It could happen sooner than markets currently expect.』

キタコレということで、ここが「利上げは市場の皆様が考えているよりも早くなるかもしれませんなああっはっは」というぶちかましの部分です。

でまあそうぶちかまして置きまして、その後はフォロー文言が入ります。

『But to be clear, the MPC has no pre-set course. The ultimate decision will be data-driven. At this point it is safest to conclude, as the MPC has, that there remains scope for spare capacity to be used up before policy is tightened and that a host of labour market, capacity utilisation and pricing indicators should be watched closely to determine how that slack is evolving.』

つーことで、とは言いましたものの別に決め打ちしている訳では無くて、今後のデータを見ながら利上げに関しては慎重に見て行きますよ特に労働市場のスラックを確認しながらという話をしてフォローする、とまあそういう構成になっています。


・ぶちかましの後にはフォローで利上げのペースは遅いですそっちが重要ですお前ら市場金利馬鹿上げするなよという話

でまあ少し飛ばしましてさらにフォローの説明部分があります。つまり利上げ以降のペースの話ですな。

『The MPC has rightly stressed that the timing of the first Bank Rate increase is less important than the path thereafter - that is, the degree and pace of increases after they start.』

最初の利上げのタイミングより重要なのはその先のパスですという話をしていまして、まあつまりこの辺の話ってそれこそ(論点となるポイントは違いますが)FEDの高官が話しているような正常化パスに関する説明と同様でして、まあ要するに先行き決め打ちするほどの自信もないからお前らそんなに先走って市場金利を上げて景気冷やすなよ冷やすなよ絶対冷やすなよ!!という話をしている訳ですな。

『In particular, we expect that eventual increases in Bank Rate will be gradual and limited. That is because the economy will face the ongoing challenges of public and private balance sheet repair, a 10% appreciation of sterling over the past year or so, and muted growth in our main export markets. In addition, in the medium term, higher capital, liquidity and other prudential requirements can be expected to lead to higher spreads between borrowing rates and risk-free rates than before the crisis.』

『Moreover, a highly indebted private sector is particularly sensitive to interest rates.4』

『Caution over the path of rate increases once they begin is also needed because we start at a point from which interest rates cannot easily be reduced. The effects of an excessive or an excessively rapid tightening of monetary policy could prove damaging and difficult to undo.』

『Perhaps for these reasons, financial markets expect Bank Rate to rise to only 2-1/4% over the next three years and, on that basis, the MPC expects the economy to move towards internal balance - almost closing the output gap - in the same period.』

てなわけで、今次回復局面は従来とは違ってホイホイと利上げできませんという理由(バランスシート調整が続いているとかポンドが上昇しているとか民間セクターの負債が大きいので利上げの影響がキツイとか)を並べている訳でございまして、だったら別に利上げそのものを待てば良いじゃんとか思うのですが、そうはイカのキ(規制)というのはその後の理由によるものでしょうなという話。


・で肝心の経済のバランスとはということでイントロでも出ていた話が出る

ちょっと飛びまして経済のバランス云々という話。

『The UK’s current account deficit is at a record level. The perennial trade deficit has been reinforced by the fact that the UK is growing much faster than its main trading partners. More recently the sharp fall in the returns we earn on our investments abroad has led to a negative 3% swing in our net investment income.』

経常収支やら貿易収支が赤いですよという話ですな。

『This is not an immediate cause for alarm. As the world and particularly Europe recovers, demand for our products and returns on our investments should increase. More competitiveness gains from the past depreciation may yet be realised, and in any event, unlike for much of Montagu Norman’s time, our exchange rate will remain flexible.』

イントロでも述べられていた昔(第2次大戦前)の金本位離脱とかの時代との比較の話が出ていますが、収支が赤いのは大陸欧州のリセッションや金融危機要因もありますし、そもそも為替が固定じゃないですしという話で、これが直ぐに問題になるという訳ではないとな。

『Nonetheless, sustained borrowing from abroad to consume at home is hardly a recipe for a balanced and sustainable expansion. Borrowing to invest, improve productivity, competitiveness and incomes is. 』

『Amidst much commentary about an unbalanced recovery, it should not be forgotten that business investment has accounted for more than a quarter of GDP growth over the past six months. The MPC’s forecasts rely on continued rapid growth of business investment over the next few years, leading to a revival in productivity and real wages, which in turn will allow consumption to grow without an unsustainable decline in household savings.』

『Creating the right conditions for investment is thus essential. In a world of corporate caution this will likely require interest rates consistent with our guidance.』

で、この辺は貯蓄とか投資とか海外からの投資とかのバランスの話をしていまして、直近の英国では海外からの資本流入で投資をしている形になっていて、更に足元では企業の投資がトレンドラインを上回って推移すること6か月とかになっていて、バランス的にあまりサステイナブルでは無いというのをリスク認識していますな。

『The Bank is well aware that such a monetary stance could encourage other risks to develop.』

で、リスクの所の最後でキタコレなのが以下に出てくる「金融市場の脆弱性拡大」と「住宅市場のバブル」という話になります。

『For instance, there is evidence of growing vulnerabilities in financial markets. Across asset classes, implied volatilities are well below their long-term averages. Spreads in high yield and peripheral bond markets have collapsed. And covenant-light loans are the new normal. While the banking system is much more robust to spikes in volatility, end investors may not have fully absorbed the extent to which financial reforms will distribute shocks across the financial system.』

でまあこちらが金融市場の脆弱性拡大という話で、ハイイールド債市場のスプレッドが急縮小(collapsedとはこらまた強い言い方ですな)しているとか、コベナンツの緩いローンが非常に増えている(new normalともこらまた強調ががががが)とか、要するに低金利継続長期化の見通しでサーチフォーイールドでクレジットバブルがキタコレという話。

『This may be a case of still waters running deep - often the most dangerous time on the river.』

まだこれは水面下の動きではあるが危険な兆候でもあるとな。

『That is why an essential counterpart to our monetary stance is macroprudential vigilance and activism. Nowhere is the need for that more acute than in the housing market.』

で、更に注意しないといけないのは住宅市場である(キリッ)と来て次の小見出しが『Balance in Housing』となるのですが、時間の配分を間違えてこの先は後日また投下致します。

で、しかもその次の小見出しが肝心の金融政策に関する話があるのですがががががということで先走って勝手にまとめておきますと、まあ要するにここのパートでの説明にありますように、基本的に「最初の利上げはお早めに」というのはサーチフォーイールドに対する対処というか、ゴルディロックスヒャッハー相場が株とかに行ってる分にはまあ大問題にはならんけど、クレジットバブルになると死亡確定になるからそこは何とかしたい、ってえのがあって、一方でバランスシート調整が完全に終わった訳でも無いですし、経済の潜在的な成長力が落ちているかもしれないという認識も(たぶん)ある中ではそうホイホイと利上げ加速する訳にも行かないよね、とまあそういう考えが基本的にあるんでしょうというお話がベースにあるのだと理解しましたがどうでしょうかねえ。

・・・・・と考えますと、段階としてはちと違いますが米国も結局似たような話になるんじゃネーノという気もしますが、英国と米国ではまた物価の強さが違ったりしますので一概に括るのは乱暴な話なのでその点は念の為。






2014/06/17

お題「CPオペでヒャッハー/金融経済月報とか総裁記者会見とか」

ふーん。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N79AEB6JTSET01.html
GPIFで法改正含め検討、運用見直し速やかに-成長戦略素案
更新日時: 2014/06/16 18:58 JST

まあ皆様も盛大にツッコんでおられますが、年金資金が株式投資を拡大すると成長するという理屈がおじちゃん頭悪いのでさっぱりワカランチ会長で、何と申しますか「物価を上げれば景気が良くなって全てハッピーで雇用も分配の問題も解決して世の中が変わります!!!」という1次関数直線番長のセンセイ方の超越理論を彷彿させる気がするのは気のせいですね(−−;

#ところでニュースの映像でうっかり見てしまったのですが、内閣人事局の看板の字は誰が書いたんだよという大変に素敵な出来栄えになっていて頭がクラクラして参りますが書道なのに絵画になるアタクシも人の事は言えません(^^)


○CPオペでアチャーとか

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140616.htm
CP等買入 4,500 2014年6月19日
国庫短期証券買入 10,000 2014年6月18日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,000 2014年6月20日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,000 2014年6月20日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年6月20日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140616.htm
国庫短期証券買入 23,410 10,003 -0.001 -0.001 80.7
国債買入(残存期間1年超3年以下) 12,745 3,004 0.003 0.003 59.0
国債買入(残存期間3年超5年以下) 7,890 2,005 0.002 0.003 12.1
国債買入(残存期間5年超10年以下) 14,742 4,004 -0.006 -0.005 47.2
CP等買入 4,434 4,014 0.001 0.080

>CP等買入 4,434 4,014 0.001 0.080
>CP等買入 4,434 4,014 0.001 0.080
>CP等買入 4,434 4,014 0.001 0.080

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとあのその全取レートの0.001%って利回り較差・・・・・ではなくて出来上がりの利回りでございまして、札割れの巻という事になっておりましてアチャーとしか申し上げようがない結果に。

昨日のCP買入は事前にも応札する物がねえという状況ではあった(ちなみに金ファクさんが朝刊でその件を話題にしていましたぞ)のですが、札割れ(割れたのに切られた400億円が謎なのだがマイナス応札でもして切られたのか銘柄の限度に引っかかったのかは切られた当人とオペ担当部署しか判らんぞな)するわ(ちなみにQQE以降は初のようです)足切りは全取0.1bpになるわという大変にあじゃぱーな結果に。

最近は企業さんの調達も社債シフトになっていて、元からのCP発行常連の皆様(金融系)は残っているのですが、全体としての発行も特段の盛り上がりはないですし、結果としてCP市場の発行の業態とかも偏ってきているという形になっておりますので、日銀のCP買入に入れる玉が枯渇しているという状況にある中で、CP買入は残高維持の為にホイホイと買入が続くので今回のような結果になっている訳ですが、一方で発行が偏っている関係もあって日銀のCP買入の枠が一杯になっている状況というのも良くある話で、その場合はレートが日銀買入とは無縁のレートになるという感じですので、まあ端的に言って日銀のCP買入が市場を歪めてるだろという感じなんですけどねえ。

つーかもうとっくの昔に企業に対する金融環境が盛大に緩和された状態という認識を示し続けている(後で金融経済月報ネタに出てくるかもしれんが^^)というのにCP買入とか継続する意味あるんかいなという気も盛大にする訳で、そもそもCPや社債の買入はリーマンショック後の短期金融市場やクレジット市場における金融の引き締まりに対応するために実施したものですし、まあ社債はそれでも3年まで買うから企業金融緩和的な意味合いでは政策的な意味があると思いますが、CPとか短期金融市場もクレジット市場も超緩和状態になっている中ではMB積み上げ以外の意味があるのかよと思うのですけどねえ。

とは言いましても、これは金融政策決定会合のディレクティブにどどーんと書いてあるという建付けになっておりますので、アホラシカという状況になっているとしても継続せざるを得ないのが残念無念な所ではありますな。


あと、短国買入が1兆円にやっと減額になったのですが、減額しても買入結果がご覧のとおりで前日比利回り較差マイナスで決定されていまして、何かよく判らんけどやたら玉が枯渇してスッカラカンになっているという状況(一方でGCレートはそれほど派手に下がっていないので、明らかに短国の需給が突出して良いという状態)なのにまだ買うかね(下手にスキップすると保有銘柄の償還構成に変な歪みが出るのでスキップしたくないというのも判りますが)という所ではありまして、まあ短期市場におかれましては日銀の各種買入オペが市場の需給関係を盛大におかしくして回っているという大変に素敵というかMB積み上げを政策目標としているのでそらまあしょうがないのですが、一体全体何のために市場機能をグチャグチャにしてまでMBを積むのよという理論について置物副総裁の明確な説明を賜りたい物であります。


○金融経済月報の表現が声明文の表現と語順的な意味などで微妙に違うのが気になった件

金融経済月報である。
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1406.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1405.pdf(前回)

何っすかねえ、今回の月報に関しては前回比較的には特段これというのは無いのですが、なんか声明文と微妙に語順的な話とかで違うのがあるという方が気になったのですけど・・・・・・・

・現状認識:基本的に声明文と同じです

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

ここは同じ。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

これ昨日ネタにした声明文比較の所でチェックが抜けていましたけど(すいません)緩慢さを「残しているが」→「残しつつも」に加えて、先進国を中心に「回復しつつある」→「回復している」となっていますので、やっぱり海外経済についてはきっちり上方修正になっていますな。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。鉱工業生産は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどっている。』(前回)

ということで生産以外の項目は前回と同じ、生産の判断を駆け込み需要の反動という一時的な要因とされるものを理由としてはいますが判断下げは下げという事で。


・先行き見通し:現状判断で海外経済を上げているのに何故か同じとは

『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

というのは声明文と同じくで前回同様です。声明文では載っていない需要項目別の話ですけど。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

同じなんですねえという所ですが、海外経済の現状認識は上がっているのに輸出の方は見通しが変わらずに「緩やかに増加」となっているのは何とも残念な所で。

『国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費や住宅投資は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費や住宅投資は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(前回)

ということで国内需要に関しての先行き見通しにも変化はなく、生産に関しては声明文および月報で示されている「駆け込み需要の反動」という現状認識の変化に対して先行きの見通しは不変ですが、まあ基本的に駆け込み需要の反動なので織り込み済みというのと、駆け込み需要の反動なので一過性という事で、こちらが変わっていないのはまあ話としては分かります。


・リスク要因も声明文と同じ

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

まあ順当。


・物価に関する部分:声明文よりもこちらの表現の方が分かりやすいように見えるのだが

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、3か月前比で横ばい圏内の動きとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

今回は国内企業物価の現状判断が上昇となっていますが、前月の先行き見通しが次に出て来ますけど、前月時点では企業物価の見通しが横ばいでして、実はここの現状認識は前回の見通しを「外した」格好での上方修正になっていて日銀もニンマリですね。

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)
『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

ということで今回は国内企業物価の見通しを上方修正していますので、物価目標という面で見れば若干ではありますが強気化への道という所ではあります。

でまあそれはそれとして、声明文ですと「消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると」という文言が現状認識では今回から入り、先行き見通しでは今回から外れるというややこしいことをしていまして、こちらでは普通にこの文言が両方に入っているというのは一体全体何ですねんというのが気になる、というかこっちの方が分かりやすいのですがががががと思うのですがどうなんでしょ。


・金融環境では企業の資金需要に関する部分が

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』以下の所は基本的に事実関係を淡々と記述しているので特段の意志は無いのですけどね。

『資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、緩やかに増加している。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%台半ばのプラスとなっている。CP・社債の発行残高は、概ね前年並みとなっている。』(今回)

『資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、緩やかに増加している。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%台前半のプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、マイナスとなっている。』(前回)

ということで、まあ事実関係の話ではあるのですが、貸出の増加ペースが上がっている事と、市場調達の残高が減少から前年並みに戻っているという企業の資金需要が高まっている結果というのを示しているのがほっほーという感じですな。


○総裁会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1406b.pdf

今回は正直クソ面白くないというか何というかなので簡単に。

・消費税増税の影響に関して

『(問) 消費増税の影響についてお尋ねします。増税から2 か月が経って、ハードデータも出てきています。総裁からは、冒頭、駆け込み需要の反動減は想定通りだとの話がありましたが、具体的に、どういうデータをもって判断されているかをお伺いします。』

うむ。

『もう1 点は、今年4 月の展望レポートでは、夏場にかけて消費増税の影響は減衰していって、7〜9 月から需要は戻るという見通しだと思います。そういう日本銀行の見通しについて、消費増税を乗り越えて達成される確度というのは、5 月の決定会合の時よりも高まっていると言えるのでしょうか。言葉を変えれば、4 月の消費増税に伴う景気の下押し圧力というのは、乗り越える目途がついたとご判断されているのかどうかを教えて下さい。』

ということで、まあ質疑応答の基本という所で、先方のロジックに乗ってそこをウリウリウリと突くというのは一つのやり方。つーかクレクレ質疑とか見てて見苦しいですから、こういう質疑で攻めて(まあ軽めですけど)頂きたい。

『(答) 相互に関連したご質問だと思います。まず1 点目については、既に色々な形で経済指標も出ていますし、企業からの発言も色々あるようですが、4 月に入ってからの消費動向全体では、自動車等駆け込み需要が大きかった耐久消費財を中心に、反動減がはっきりと現れています。ただ、企業からは、反動減の大きさは概ね想定の範囲内である、消費の基調的な底堅さは維持されているという声が多いようです。こうした見方は、景気ウォッチャー調査等においても2、3 か月先の先行き判断DIがはっきりと改善していることにも表れているように思います。』

ウォッチャー調査とアネクドータルな話ですかそうですか。

『以上のことを踏まえると、4〜6 月の成長率は、反動の影響からマイナスに一旦落ち込むと予想していますが、ベア実施を決めた企業が増えて、夏のボーナスもはっきりと増加する見込みにあることなど、雇用・所得環境の明確な改善が続くと見込まれていることから、個人消費の基調的な底堅さは維持されて、夏場以降、駆け込み需要の反動減の影響も減衰していくのではないか、とみています。そうしたもとで、潜在成長率を上回る成長経路に、わが国経済は復していくだろうとみています。』

まあ良く考えたら潜在成長率を上回る成長経路によって経済が推移して物価が目標達成してもそれってサステイナブルじゃない(理念的には需給ギャップがゼロの状態でその水準にいないとサステイナブルとは言わん)んですけどね。

『2 点目の夏場以降の回復の確度について、私どもは夏場以降、駆け込み需要の反動減の影響は減衰し、潜在成長率を上回る成長経路に次第に復していくとみており、そういう意味では確実だと思っています。しかし、色々なリスク要因もあり得るので、今後とも各種の経済統計をよく詳細にフォローするとともに、ヒアリング情報も含めて利用可能な情報をできる限り活用して、丹念に点検していく必要があると思っています。先程申し上げた通り、夏場以降反動減の影響が減衰していき、次第に潜在成長率を上回る成長経路に復帰する確度が高いと思っています。』

しかしこうやってみると(いやまあ聴いても思うのだが)潜在成長率を上回る成長で云々ってのをやたら強調しますが、これはつまり「外需に頼らなくてもシナリオが達成できます」(キリッ)という事を言いたいからそういう話になるという事で、つまりは月報などで出している見通しは兎も角として外需はちと厳しいだろうという本音が見え隠れする部分でもあるという事ですな、うんうん。


・資産買入を継続するか云々の質疑

ヘッドラインになっていたので一応引用。

『(問) 2 点伺います。1 点目は、今後の資産買入れについてです。日銀は2015年以降の資産買入れの見通しを公表していませんが、総裁は、現在の政策はオープンエンドとおっしゃっています。そうであれば、今後も、物価が日銀の見通しに沿って推移する場合、目標が達成されるまでの間は、2015 年の1 月以降も、今の資産買入れを続けていくという理解でよろしいのでしょうか。(以下割愛)』

と質問されたら・・・・・・・・

『(答) 昨年4 月4 日に「量的・質的金融緩和」を導入した際の公表文でも、毎回の金融政策決定会合後の公表文でも示している通り、「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続すると言っています。カレンダーで何月まで等と決まっているのではなく、その意味でオープンエンドであり、あくまでも2%の「物価安定の目標」の実現、そしてそれを安定的に持続するために必要な時点まで続けるということに変わりはありません。2015 年になったら、2%にも達していないのに、あるいは安定的に持続するような状況になっていないのに、「量的・質的金融緩和」をやめるというようなことはありません。(以下割愛)』

という答えをするのはまあ当たり前田のクラッカーな訳で、この質疑を捕まえてQQE継続発言の如くヘッドライン詐欺を打ち込んだ共同通信様におかれましては(以下の表現は自主規制されました)。


・潜在成長率に関する質問だがこれは質問が惜しい

『(問) 潜在成長率に関連してお伺いします。足許、設備投資が増えており、経済の供給力の向上にも貢献してくるかと思います。その中で、最近、総裁、副総裁も含めてですが、政府の成長戦略への期待とか、成長力、供給力の向上が必要だというお話が増えているかと思います。こういったことについて、市場では、潜在成長率が上がらないと物価が上がらないと日銀が考え始めているのではないか、という、うがった見方をする人もいるのですが、そういったことに関して、総裁はどうお考えでしょうか。』

えーっとですね、そうじゃなくて潜在成長率が上がらない状態の中では物価が上昇しても安定しないのではないかという話であって、足元の「成長は下振れているのに物価が上昇」というのがまさにその証拠ではないか、というのが展望レポートの前後から盛大にツッコミが飛んだりしている事なので、残念ながらこれは質問が失敗としか申し上げようがない。

『(答) それは、うがった見方というか、間違った見方だと私は思います。私どもは、潜在成長率が下がると物価安定目標が達成できないとは考えておりません。あくまでも「量的・質的金融緩和」を着実に推進することによって2%の「物価安定の目標」は達成できるとみています。ただ一方で、物価は2%の上昇を達成するけれども、実質成長率は非常に低いままということは好ましくなく、予想以上のスピードで労働需給がタイトになり、GDPギャップが縮小してきていますので、中長期的にみて成長率を高めていくための政府・民間の努力は、極めて重要であると思っています。(以下めんどうなので割愛)』

ということですが、問題は潜在成長率が低い中で本当に2%の物価安定目標がサステイナブルに達成できるのか、それをするにはどうしたら良いのかという話と、潜在成長率が低くて供給制約によって物価が上昇している場合の物価上昇は本質的にサステイナブルではないという話(というかまあアタクシの駄文よりもこの前ネタにした佐藤審議委員の講演を見た方が良いと思うが^^)なので、この質疑は質問する方は的を外していますし、答える方はすっかり煙巻きモードになっているのが惜しいですな。


・白井審議委員を質問者と回答者で盛大にdisるとな!!!

この質疑はクソワロタ。

『(問) 先日、白井審議委員が講演と記者会見を行われました。日銀の中心的な見通しとしては、消費者物価指数が2015 年度を中心とする期間に2%に達する可能性が高いとなっていますが、白井委員は、それからほぼ1 年くらい遅れるというご自身の見通しを示されました。その上で、追加緩和は必要ないのかという質問に対し、ご自身の見通しから後ずれする、あるいは下振れるようなことがあれば必要かもしれない、裏を返せば、ご自身の見通し――中心的見通しに比べ1 年遅い見通し――が実現するのであれば追加緩和は必要ないのではないか、ということを示唆されました。』

何という分かりやすい説明(^^)。つまり白井さんは「2年で行かなくったっていいなじゃいか2%だもの」という理論ですが、と説明しまして・・・・・・・・・・

『黒田総裁あるいは政策委員会の中心的な考え方としては、2015 年度を中心とする期間から1 年も遅れるようなことになれば、追加緩和が必要だとお考えになるかどうか、お聞かせ下さい。』

どう見ても答えは一つです本当にカムサハムニダ。つーか「1年”も”」って中々素敵。

『(答) 昨年4 月4 日の導入時に申し上げた通り、私どもの意図としては、2%の「物価安定の目標」を、2 年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に達成するために、必要にして十分な金融緩和を導入したわけです。その後、着実に2%への物価上昇の道筋を辿っているとみており、このところ、政策委員見通しの数字も、成長率については若干振れがありましたが、物価上昇率の中央値は変わっていません。』

ニヤニヤ。

『すなわち、先日の展望レポートにある通り、2014 年度から2016 年度までの見通し期間の中盤頃、ですから2015 年度を中心とした時期に、「物価安定の目標」である2%に達する可能性が高いとみています。幅はありますが、政策委員の大勢はこのような見方であると言ってよいと思います。』

大勢ねえというツッコミはここではスルーしておく。

『こうした見通しと違った、上振れでも下振れでも上下双方向のリスクが出てくれば、当然、躊躇なく政策についての調整を行うことも申し上げている通りであり、』

珍しく読点で切りますが(^^)、2年で2%達成という話をしているのですから当然にも程がある。

『この点についても、政策委員の考え方は大方、一致していると思っています。』

ワロタというかイイハナシダナーというかで、質問者と回答者が一致団結して(かどうか知らんが)白井審議委員disとはこれはまた実に心の温まる光景ですなあという所で。


#時間切れでカーニー総裁の講演ネタががががががが(すいません)







2014/06/16

お題「決定会合レビュー/BOEカーニー総裁のロンドン市長公邸での講演から(その1)」

まあ何だ、モミーテレビが流すあの脱力しかしないテーマソングが悪いテーマソングが(違)。

○決定会合レビュー:まずは声明文比較

ええまあ最近は「決定会合2日目は輪番も入札も無いので材料が無いですねえ(笑)」という会話が盛大に行われるという今日この頃でありますが、その通りに無風の結果たあどういう事よという次第で(^^)。

声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140613a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140521a.pdf(前回)

・現状判断:海外を微妙に引き上げ、生産を微妙に引き下げ

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

ということで基調判断としては駆け込みの反動の影響が継続しているという事になっておりますな。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

今回変化している部分その1の海外経済ですが、緩慢さを「残しているが」が「残しつつも」という表現に替わっていますが、さてこの違いが判りにくいのでこういう時の必殺技「声明文英訳版」を見るという事にしてみましょう。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140613a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140521a.pdf(前回)

『Overseas economies -- mainly advanced economies -- are recovering, albeit with a lackluster performance still seen in part.』(今回)
『Overseas economies -- mainly advanced economies -- are starting to recover, although a lackluster performance is still seen in part.』(前回)

お、おう・・・・・・・

この接続詞表現の違いがどう違うのかさっぱりワカランのだが、多分日本語のニュアンスからすると多分前回より強いと思うのだががががが。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。』(前回)

とまあここまでは全文一致。

『鉱工業生産は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどっている。』(前回)

ということで今回生産の認識を下げていますが、まあこれは駆け込み需要の反動の影響という話なので想定内という事になるかと思うのでそれほど政策インプリケーションは無くて、さっきの海外経済に関する部分についてはまあ超微妙な表現変化で微細にも程があるのですけれども、輸出が伸びねえというのをずーっと問題にしているので、そういう意味ではまあちったあ威勢の良い話という事にはならんでも無い、という所だと思います。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

ここの「消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて」というのが見通しの部分でも変化がありまして、単に税率引き上げに伴うテクニカルな部分に関する話だとは思うのですが、先行き見通しの所では逆にこの文言を外しておりますな。


・先行き見通し:特に無いけど消費税率の直接的な影響云々に変化

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

経済の見通しに関しても物価の見通しに関しても基本的に同じ話をしているのですが、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみてという文言を外しておりまして、これはまあ直接的な影響は2か月程度で終了という事になっているのでそういう事ですねというテクニカルな話ですが、間接的な影響の方はどうなんでしょうというのはスルーっつーかまあそもそもその辺りは有耶無耶な訳でして、何か「直接的な影響」というのを出して直ぐ引っ込めるんだったら(現状認識はまあ良いですけど)先行き見通しの所で出したり引っ込めたりしない方が見やすいと思うんですけどね。


・リスク要因と最終パラグラフは同じです

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

ということでリスク要因の文言は同じ。


『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(前回)

こちらも前回と同じで、デフレ脱却云々の文言は外れたままで継続となっております。なお木内審議委員の毎度の提案があって毎度のように却下されているのも同じです。


○会見は記者のツッコミ不足が目立ちますが内容はテキスト出てから

ブルームバーグから。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N73N3W6TTDSK01.html
黒田日銀総裁:恒久減税は恒久的な財源が必要なのは当然−法人減税
更新日時: 2014/06/13 18:12 JST

見出しが恒久減税の話になっている時点でもう無風だったのが非常に良く判る会見ですが、金曜の会見は多分3分の2位は聞いてみたのですが、質問が途中で出なくなりそうになるという位にツッコミパワーの無い会見でございましたが、ヘッドライン詐欺がちょっとだけありましたなということだけメモしておきます。

『15年になったらやめるということない』(上記URLより、以下同様)

という小見出しがありまして、その先にこんな記事が。

『日銀が量的・質的金融緩和について、今年末までしかマネタリーベース残高の見通しを示していないことについて、目標が達成されるまでは、15年1月以降も現在の資産買い入れを続けていくのか、という質問も出た。』

『総裁は「カレンダーで何月までと決まっているのではなく、オープンエンドで、あくまで2%の物価目標の実現、そしてそれを安定的に持続するため必要な時点まで続けることに変わりはない」と指摘。「15年になったら2%に達してないのに、あるいは安定的に持続する状況になってないのに量的・質的緩和をやめるということはない」と述べた。』

ということで、まあ確かにそんな感じで「2%達成できなかったらそらQQE続けます罠当たり前ですがな」ってニュアンスの答えをしていただけなのですが、ここのブルームバーグニュースの小見出しでもその次に『目標達成が後ずれなら追加緩和か』って微妙な小見出しを入れてみたり(良く良く記事を見れば判りますけれども「後ズレなら追加緩和か」というのは質問の趣旨の方であって黒田さんはその件についての説明はしていない)、まあ他にネタが無いからだと思うのですが、微妙にミスリードなヘッドラインを入れていますなあとも思います。

ちなみに盛大にミスリードっぽいヘッドラインを打っていたのは共同通信なのですが、共同のヘッドラインはネットには出てこないので惜しくもネタにするのは今回はパスという事で。


○カーニー総裁の講演がウヒョーと聞いてやって参りました!

今(16日の朝)BOEのサイトを見に行くと思いっきり「Top News」の所にカーニーさんのドヤ顔と共に講演へのリンクが貼られています。

http://www.bankofengland.co.uk//publications/Pages/speeches/2014/736.aspx
Mark Carney's Speech at the Mansion House Bankers and Merchants Dinner, London
Speech given by Mark Carney at the Lord Mayor's Banquet for Bankers and Merchants of the City of London at the Mansion House, London on Thursday 12 June 2014.

確かマンションハウスのスピーチって前任のキング総裁の時にはFLS導入に関する話をぶち上げてみたりとか、割とこう大ネタを投下してくる傾向にあると思ったのですけれども、今回は盛大に大ネタを投下して参りました。というか大ネタ投下したの木曜なので本来は金曜にネタにしていないとBOE趣味で観察している(という事に勝手に自称している)アタクシの名折れにも程がありましたすいませんすいません。

でまあそのテキストがこちら。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/speeches/2014/speech736.pdf
Speech given by Mark Carney, Governor of the Bank of England
At the Lord Mayor’s Banquet for Bankers and Merchants of the City of London at the Mansion House, London
12 June 2014

・まあ「早期利上げ示唆」と出ていましたけれども・・・・・・・・

でまあ市場の反応で既にご案内の通りですが、今回の講演は思いっきり「バランスが重要」という話をしておりまして、よーするに早期利上げ示唆という内容になっておりますが、出口政策という意味ではそもそもが英国の場合無駄に物価が上昇しやすい地合いにあるので確かにまあ英国の場合は出口の方がより難しいという話ではあるんでしょうな、うんうん。

などと思いつつ講演を鑑賞(なお多分今日は途中までね)。

最初が『Introduction』ですがイントロというよりは最初に纏めを打ち込んでいるという感じで、あまりイントロ感の無いイントロなのですけどね(^^)。

『My Lord Mayor, Ladies and Gentlemen. A year ago when my predecessor Lord King delivered his final Mansion House speech, he noted “clear signs that a recovery in the UK, albeit modest, [was] underway.” That recovery was due in no small part to measures he and his colleagues had initiated including extraordinary monetary stimulus, recapitalisation of the banking system and innovative support for lending.』

昨年のキング総裁のマンションハウスでのスピーチをまずはマクラにして昨年からの改善の話を以下おこなっています。

『The task a year ago was to secure that recovery in the face of continued domestic frailties and ongoing international weaknesses. At home, unemployment and underemployment remained elevated, productivity growth was anaemic, and debt levels were high. Abroad, the European crisis had moved only from its acute to its chronic phase and financial markets were demonstrating their fragility during the ‘taper tantrum’. With this backdrop and with real wages around 10% below their pre-crisis levels, it was not surprising that consumer confidence, though improved, remained low. Business confidence was similarly shaken by past shocks and current scepticism about the ongoing strength of demand. The Bank responded to these challenges.』

でまあ昨年はこのような状況でして、それに対してBOEは対処してきましたとな。

『Forward guidance gave households and businesses confidence that Bank Rate would not be raised at least until jobs, incomes and spending were growing at sustainable rates. Guidance encouraged businesses to hire and spend, and helped keep expected interest rates low, even as the economy recovered strongly.』

『In parallel, we encouraged banks to continue repairing their balance sheets. Changes to the Bank’s liquidity policy further supported lending. The core of the financial system is now on a sound footing and making an increasingly important contribution to the recovery. We are now faced with the challenge of turning that recovery, which has steadily gained momentum and breadth over the past year, into a durable expansion.』

フォワードガイダンスや銀行のバランスシート改善に向けた当行の取り組みによってコンフィデンスは改善し、モメンタムは改善し、景気の拡大は持続的になってきましたと勝利宣言キタコレ。

『To do so, we need balance.』

キターーーーーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーーーー!!

『Its absence can have serious consequences. One has only to look back to 1931 when Britain’s economic prospects were strained by high unemployment, a large budget deficit and a deteriorating balance of payments. In the ensuing crisis sterling was forced off the gold standard and the government of the day resigned.』

『And the Governor? With the uncanny foresight of a central banker, Montagu Norman had already left the scene “to get a bit of rest [in Quebec]”, he said, “for I have had a very hard time of it lately and I have not been so well as I would like to be.”1』

経済の不均衡を放置すると宜しくないという話をするのにこれがまた1930年代の話を出して来るのが(カーニーさんはカナダ人だけど)英国クオリティという所ですな。

『However tempting, I will lean on Canada not for restoration but for a nautical analogy to describe how we can address the challenges we now face. Rather than appeal to the stately Duchess of York on which my predecessor sailed, I will look to the trusty canoe - a craft that can navigate the most rapid and treacherous waters…provided its paddlers work in sync.』

『Those economic currents are flowing swiftly, with the economy expanding at an annualised rate of 4% and jobs growing at a record pace.2 But there are rapids ahead, with old imbalances persisting and new ones emerging.』

『The economy is still over-levered. The housing market is showing the potential to overheat. And the current account deficit is now at a record level.』

『Navigating these hazards requires close coordination between all those in the boat; that is, between fiscal, monetary and prudential authorities.』

ということで、思いっきり「経済のレバレッジが過大」だの「住宅市場にバブルの可能性を示している」だの「今の財政赤字レベルが記録的な水準」だの素敵なインバランスの指摘を行っておりまして、BISビューでございますかコリャコリャという感じですが、まあ英国の不動産がバブルだという話は普通に指摘されていますもんね。

『Tonight I want to explain the Bank’s contribution to delivering a durable expansion characterised by balance in the macroeconomy, the housing market, and the financial sector.』

ということで、ではどういう論点でどういう対処をしますねんという話が以下続きまして、その後の小見出しが『Macroeconomic balance』『Balance in Housing』『Balance in financial markets』と来て最後に『Conclusion』と来ますが、そちらに関しては明日以降に続くということで勘弁(大汗)。

以下はイントロの最後で謝辞のコーナーになっています。

『Before doing so, I would like to join the Chancellor in paying tribute to two individuals.』

2名に対する謝辞で、最初がBOEコート(監査委員会みたいなもんだったと思うが)のデビット・リーズ委員長ですな。

『The first is Sir David Lees, who as Chairman of Court has overseen the transformation of the governance and responsibilities of the Bank. David, I am extremely grateful for your support during my first year as Governor.』

もう一名がマネタリーポリシーウイング担当だったチャーリー・ビーン副総裁(追記:今月退任予定でまだ副総裁でした)。

『I’m also enormously grateful for the wise counsel of Charlie Bean during the past year. Always working, Charlie is tonight discharging his duties as President of the Royal Economic Society. Throughout his career, at the Treasury, in academia and at the Bank, Charlie has been a leading thinker and practitioner in the pursuit of macroeconomic balance. Internationally he has inspired countless policymakers, myself included. On behalf of all colleagues past and present, I would like to echo the Chancellor by thanking Charlie for his exceptional period of public service and the enormous contribution he has made to the economic well-being of this country.』

ということで以下明日に続くのですが、まあイントロの所とレポートとか記事を見れば大体そういう内容です罠、というのが判るかと思います。



2014/06/13

お題「決定会合前なので(ってあまり関係ないが)各種雑談&昨日の訂正だったりします」

13日の金曜日に金融政策決定会合ですかそうですか(−−;

○輪番関連ネタおよび昨日の訂正(すいませんすいません)

・1年以下の輪番は2日にもオファーがありました&その他訂正など(大汗)

まずは昨日の駄文を伏して訂正(汗)。

えーっとですね、1年以下輪番が2000億円に増額になった話をした時に、今月の1回目の如き話を申し上げた訳ですけれども、6月2日に1年以内輪番を1100億円オファーしていたのを勘違いして忘れておりまして、そうなりますとオファーベースでは今月は何と(通常の利付だけで言えば)買入が前月よりも多いオファーになりそうというオソロシスな話になるのですが、昨日申し上げましたように一昨日の輪番の1年以内に関しては償還銘柄の当期利払口閉鎖直前になる受渡になるので、償還銘柄を打ち込みやすい(償還銘柄は償還直前になるとGCとかで使えなくなるのでファンディングのつけられない純粋な運用になってしまい、業者などからすると使い勝手が宜しくない)ので思いっきり打ち込みに行くインセンティブが生じる(しかも輪番は基準価格からの利回り較差競争入札になるので償還まで数日とかになるとレートを大甘にしてもヘーキヘーキとなる)訳で)のですが、そこまで狙って2000億円を打ち込んだのかは謎。

まあいずれにせよ今月の流れとしては長めに推移している買入平均残存年限の調整をしたという所だとは思うのですが、1−3/3−5の買入のバランスを1−3に重めに振り直すとか、1年以下の買入額を増やすとかいうのはただの帳尻オペではあっても印象としては白日銀時代の短い所の買入重視みたいに見える訳でして、まあそんな細けぇこたあ他の市場の皆様は見てないから良いようなものの、何やってるんだかという印象は拭えない所ではありまする。

あと訂正なのですが、昨日10日までの日銀保有銘柄旬報が出てきたので色々と計算していて気が付いたのですが、今年12月末までに償還の来る日銀保有銘柄の計算で(除く物国変国)10年267回債までの計算をしていた積りだったのですが266回債までを足し合わせた数字で計算してしまいまして(大汗)、この銘柄そこそこ保有があるので再計算(ただしめんどいので昨日書いた月末旬報ベースの数字での計算の再計算)してみました。

5月末の日銀保有国債残高:164.9兆円
昨年12月末の同残高:141.6兆円
年内に償還の来る銘柄の額面残高:14.4兆円(昨日の計算は13.9兆円)
(相変わらず物国変国の償還分をスルーしています)

ということで計算し直しますと、12月末までの償還分を差し引くと買入残高の増加は9.0兆円となりまして、目標50兆円に対してあと41.0兆円ほど積まないといけないという形になりますが、これを7で割ると5.9兆円という月割りになって、昨日の計算よりも0.1兆円ほどずれてきます(なお全部端数を四捨五入しています)のですいませんすいませんなのですが、そうは言いましてもまあ昨日申し上げていたような話の趣旨には実はあまり影響しないのでした。

つまりですね、現在の残存1年以内を除いたベースで考えた場合の買入が月に6.2兆円程度あるので、やっぱり50兆円に対して足が出る感じになるのは同じでして、いやまあ長期国債の残高の方で足が出る分短期の買入が減った方が馬鹿みたいに需給が逼迫しやすくなっている短国市場の惨状から考えると結構な話ではあるのですけれども、只でなくさえ財政ファイナンスガーとかいう話になりやすい中で目標を上振れて買う件について日銀的にどう考えているんでしょうねえというのは気になります。

大体からして少々の上振れはヘーキヘーキという話だったらそもそも論として買入平均年限が8年超える(あるいは超えそうになる)となると細々と買入の微調整を繰り返す事もねえだろという気はする次第で、いやあどうするんでしょうねえと思いますし、さらにそもそも論として考えた場合、本当の本当に日銀の目標達成という話になるのでしたら、フィッシャー効果様によりまして名目長期金利の上昇圧力は先に逝く程高くなるのですからして、50兆円残高目標に対する買入余力を後の方に残しておいた方が良いのではないかとも思うのですけれどもね。つまり、後になって目標達成の認識が高まっている中で買入残高調整の帳尻とか言っていきなり月の買入ペースを下げられると予想外の市場アクションを招くと思うということですな、うんうん。


・ところで6月10日の買入残高明細

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/mei.htm/

でまあ折角10日の残高が出ているので計算してみようとか思ってああだこうだいじっている内に前述の話になったのですが(大汗)、残高の差分をヘコヘコとみておりましたが、5月末対比で残高が4桁億えん増えたのは以下の銘柄と相成りました(なおあたくしの計算ベースなので例によって内容無保証)。

10年333:4693
5年106:3101
2年336:2636
40年7:1759
10年285:1732
10年323:1672
10年332:1355
5年105:1209
5年117:1171

長い所はカレント近辺ばっかりで、短い所に関しては投資家の売りが出て来そうな所(実勢の利回りが付利金利近辺の5年既発債と新発出た後暫く経過して用済みになった2年既発債)に銘柄が集中していて中々心が温まりますな。まあ保有残高見ると更にワロエルのだがそれはまた別の機会にというか皆さん計算してますよね。

なお、1年以内の1100億円のうち、12月末までに償還が来る銘柄の買入残高が886億円(残りは来年償還の銘柄)となっていまして、これらの部分に関しては年末買入残高の積み上げには寄与しない部分になりますな、うんうん。


・3M短国入札結果である

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140612.htm

(3)募入最低価格 99円99銭0厘0毛 (募入最高利回り) (0.0396%)
(4)募入最低価格における案分比率 39.5526%
(5)募入平均価格 99円99銭0厘6毛 (募入平均利回り) (0.0372%)

ということでまあ予想通りの4割れ入札となっておりまして、まあ短期市場金余りなのは今に始まった事ではないのですけれども、短国の需給はその中でも突出して良いように見える次第でして、短国のレートが低いとCPやレポ現先のレートなどにも影響しそうなもんですが、CPレートは意外にサガランチ会長ですしレポ現先はまあ先週頭からホイホイ低下しましたけれども昨日とかはまた上昇していまして、一方で短国の需給は妙に建長寺というのはこれはまあ単純に短国をアウトライトで買う人がどこかにいるのでしょう(って当たり前過ぎる推論ですが)というのと、その人がCPとかレポ現先とかではなくて短国アウトライトの選好性が高いというようなお家の事情がある人なのかねえとか、まあその程度の想像は付くのですけれどもどうなんでしょうかねえという所で良くワカランチ会長です(つまり結論は無い)。


・ところで超過準備マイナススタートですかそうですか

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N71YPD6K50YO01.html
ECBがマイナス金利を適用、市中銀行の翌日物預金が急減
更新日時: 2014/06/12 20:21 JST

『 6月12日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)への市中銀行からの預金にマイナス金利が適用されたことを受け、同中銀への翌日物預金は2011年以来の低水準 となった。』(上記URLより)

ミーはまだECBの各種計数を確認して無いので記事引用だけ備忘で置いておきます。



○久々のブラックアウト期間中の飛ばしネタキタコレ(まあ市場はスルーしていましたが)

折角ブルームバーグニュースが渾身(かどうか知らんが)の飛ばし記事(かどうか知らんが)を飛ばしているというのに市場が盛大に無反応ではいはいワロスワロス。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N6ZYOB6TTDS101.html
日銀:出口後も大量の国債購入継続を検討、量的質的緩和−関係者 (1)
更新日時: 2014/06/12 15:47 JST

『6月12日(ブルームバーグ):日本銀行が現在行っている量的・質的金融緩和に関して、2%の物価目標が安定的に持続すると判断して出口政策を開始して以降も、長期金利の急騰を避けるため、引き続き大量の長期国債買い入れを続けることを検討していることが関係者への取材で明らかになった。』(上記URLより、以下同様)

まさかとは思いますがこの「関係者」とはあなたの想像上の存在に過ぎないのではないでしょうか、という林先生メソッド(「まさかとは思いますが」で検索するアルよろしだが予備校の林先生ではありません)はさて置きまして、関係者言いましても色々といますし、大体からしてこれいつ話をしたのかも書いていないという時点でまあアレ。

『関係者によると、出口政策の選択肢の1つとして、長期国債の買い入れ額を一気に削減してバランスシートを縮小させるのではなく、米連邦準備制度理事会(FRB)と同様、量的・質的緩和の出口以降も拡大したバランスシートを当分の間維持し、場合によっては、短期金利の引き上げを先行させることもあり得るという。』

ということですが、こんなのその時の状況次第としか言いようがない訳で、置物副総裁の当座預金残高直線理論が正しければインフレ期待の引き上げがトマランチ会長になるのですからそんな悠長な話をしている訳にも行かないですし、そうじゃなくて不胎化してしまえば長期国債残高なんぞヘーキヘーキ(ただし日銀の期間損益が毀損するので財政によってお注射チューが必要になるかもという話はあるが)というのであればそらまあ不胎化するでしょうしという話。

でも、この「関係者」が完全にスルーしている話として、銀行券ルールって「一時停止」しているに過ぎず、しかもQQE実施時に一時停止している訳で、財政ファイナンスガーと言われるのを避ける為の歯止めとか何とか言っている(まあそれよりも銀行券ルールって単なる調節技術上の問題だと思うのだが)件との整合性についての話を出さない時点で優は付けられませんな、うんうん。

『継続する買い入れ額の目安としては、日銀が保有する長期国債のうち、償還が到来した分の再投資を行いバランスシートを維持する案が有力となっているが、再投資分を上回る規模の買い入れを続ける可能性も排除していないという。』

だから銀行券ルールとの問題はどうするのと思いますし、再投資を上回る規模の買入を実施となると置物副総裁当座預金直線一気理論からしたらそれはインフレ期待がアンカーされなくなるんじゃなかったでしたっけという話ですが、それ以前の問題として「それはそもそも出口でじゃねえだろ」という某識者のツッコミが的確過ぎてワロタです。

まあこんなのその時の状況次第ということですし、長期金利の急騰を云々という話ですけれども、一方でここの所日銀の政策委員の皆様が折に触れて言及しているように、そもそも日銀がバカスカ国債を購入する中で財政がノーズロゆるふん状態で褌外しっぱなしとなって全裸中年男となってしまった日には、政府と日銀の共同文書が反故紙になる訳ですからして、そらまあ大規模買入がどうのこうのとか中々言ってられませんよねという話になるんでして、単なる「長期金利上昇を抑制」というだけの論点で大規模買入の維持に期待するというのはちょっと期待のし過ぎになる可能性があると思います。

つーかね、黒田総裁って市場に対してそこまでヘイコラするタイプじゃないのは昨年の5月以来の展開を見れば大概に気が付くべきであって、おそらく「早すぎる出口への思惑で市場金利が先走って上昇して景気(または株価や為替市場)に盛大な悪影響を与える」というような事態ではない限り平然とスルーしてくると思いますし、米国の住宅市場ほど日本の住宅市場って長期金利の動きにビビットに反応するとも思えないので、米国のようにテーパリングトークで長期金利が急上昇して住宅市場が大失速してあじゃぱーなので火消しに奔走というような姿は読みにくいと思うのですよね。

だいたいからして長期金利に対してセンシティブだったらこの前出した金融市場局謹製の輪番絡みの「紙」だって端から「程度」を適用して提示しているレンジの下限を下回る買入を実施するとかしないと思う訳で、あれはまあ色々な所に気を使ったからああいう数字の紙になった訳でして、色々な所に気を使うという事はつまり長期金利なんぞは自分の庭が盛大に燃えない限り別に知らんがなというのが本音であるという事を盛大に示しているという事である、としか思えないんですけどねえアタクシには。

ということで、何だか当初の記事と全然関係ないネタに走っていますが、まあ久々に金融政策ネタでブラックアウト期間中という日銀がコメント不可能なタイミングでの謎の「関係者」発言ソースという記事が出てきたのでついでに雑談にして、市場が反応どころか知り合いからの質問も無かったような残念な反応で誠に心が温まる事態でもあったので可哀想にも程があるのでサルベージして差し上げたという所でございまする。


2014/06/12

お題「輪番の1年以下謎の増額で輪番雑談/調節年報でまたポートフォリオリバランスと資産買入と当座預金の説明ですね」

ほほう。
http://mainichi.jp/select/news/20140610k0000m020048000c.html
経団連会長:税収増加分を減税財源に
毎日新聞 2014年06月09日 20時10分

『経団連の榊原定征会長は9日の記者会見で、法人税の実効税率引き下げの財源について、「今まで税金を払っていない欠損(赤字)法人が減り、納税する会社が増えている。ある意味で恒久性のある財源だ」と主張し、企業業績の回復に伴う法人税収の増加分を充てるべきだとの考えを示した。』(上記URLより)

では景気が悪化して税収が減った場合には法人税を増税するという事になるのですな。不肖このアタクシは確か高校の政経の授業でビルトインスタビライザーという言葉を勉強した気がするのですがどういう事でしょうよくわかりません><;


○市場雑談メモ

・輪番オペの1年以下を増額とな

昨日の輪番オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140611.htm
社債等買入 1,000 2014年6月17日
国債買入(残存期間1年以下) 2,000 2014年6月13日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年6月13日

社債買入は事前アナウンス付なのでまあ良いのですが、昨日の数字でほえ?となったのは1年以下の輪番が2000億円で打ち込まれている事でありまする。

この前金融市場局が出した紙によりますと1年以下の輪番に関しては1回の買入額が1100億円〜2000億円というレンジになって(従来は1100億円としていた)おりまして、今回何故か謎のレンジ上限攻撃を実施した訳で、何でそういう事わざわざしますねんという事で、まあどうでもいいちゃあどうでも良いのですが雑談ネタとしてはオモロイので勝手に外野から愚考。

まずは「買入平均残存をここで思いっきり調整しよう」という点が普通に想像される訳でして、特にこのタイミングで輪番を打ち込むと6月20日償還銘柄が盛大に打ち込まれる可能性がある(落札結果は平均6糸甘の足切り3糸甘だったので償還物はそこそこ打ち込まれたんと違いますかねえ。まあ20日現在の日銀保有国債旬報見て10日の残高との差分を取れば今回の2000億円オファーのうち(落札は2003億ね)どれだけが償還銘柄だったのかが判りますので再来週確認してみたいですが)ので、長期国債買入の平均残存7年近辺という数字への帳尻に絶好の調整玉にも程があるという大変に素敵な展開になりますし、まあ償還銘柄ではなくてもいずれにせよ1年以内の所が打ち込まれますので、ここの買入を増やすと買入平均年限の調整が楽になるでしょうなあというのはあります。

でまあこの前から中期の買入で2500/2500だったのが3000/2000になっていたりするので、この辺とも合わせると買入平均残存年限の調整を相当意識しているなあというのと、ついでに平均残存年限がだいぶ調整されてきたから長い所の買入に影響が無くて良かったですねと考えたくなるのですが、もう一つの問題点として「ところで買入残高の方はどうなりますねん」という話もあって、1年以下とは言え買入オファー額増やすのどうなのという気もせんでもない。

と申しますのは、5月30日時点での買入銘柄残高と5月末の日銀旬報、12月末の旬報を見て長期国債買入残高の推移と今後の必要買入額を計算するとこんな感じになると思うのですよね(一応検算したけれども内容は無保証なので皆さん確認したければ自力で計算してちょ)。

5月末の日銀保有国債残高:164.9兆円
昨年12月末の同残高:141.6兆円
年内に償還の来る銘柄の額面残高:13.9兆円
(ちなみに手抜きで物国は計算していない、2年323回まで、5年87回まで、10年267回まで、20年27回までの額面残高を合計したつもり)

となりまして、年間50兆円の残高増加という目標に対して5月末までの増分は23.3兆円なのですけれども、13.9兆円の償還分があるから実質的な増分は9.4兆円になりまして、残り7か月で40.6兆円の長期国債残高増加が必要、という計算になります。

で、こいつを7で割るとどう見ても5.8兆円にしかなりませんで、今のペースでの買入だと1年超のところで物国変国を除いても月の買入フローが7.15兆円になっていますので、帳尻をどう合わせるのでしょうかという話になっている訳で、これに1年以内の買入で年末越え銘柄が入ってくるとその分も加算されますし、物国変国だって合計で6200億円の買入が行われますので、この調子ですとどう見ても残高増加が50兆円では済まなくなるはず。

でまあ単純に計算しても3兆円近く足が出てしまう(と思うのだが間違ってるかもしれないから検算して下さいませ)のですが、そこはいざとなったらディレクティブにあるのは「約50兆円」なので3兆円如き「約」の範囲内なのでヘーキヘーキと開き直れば今のペースでも無問題なのですが、たぶん日銀文学的には「約」と「程度」ではアローワンスが違う筈で、四捨五入して50兆円だから大丈夫だぜヒャッハーとなるのかは謎な面もあって誰か記者会見で質問して欲しいもんだという所です。

ということでして、買入平均残存調整するのは良いのですが、短い所の買入を増やす方向での調整をした場合に、全部償還銘柄が打ち込まれて年内に落ちてしまえば残高の悩みにはつながらないのですけれども、年末越えが沢山入るとそれはそれで残高の問題というのが発生する訳ですが、そうなって来ますと例の「紙」の運用における必殺技が一つありまして、例の紙では1回の買入金額に「程度」という必殺文言が入っているのですけれども、良く良く見ますと買入オファーの回数に関しても「程度」という文言が入っているというのが諸葛孔明の罠でありまして、別に買入の回数を1回いじっても「程度」の範囲内に収まるという究極必殺技があるにはある(まあやったらまた日銀か!となると思いますのでお勧めしません)ので、はてさてどうなんでしょという所ではあります。

まあ他に考えられるのは、実は今月の1年以内の買入は6月20日償還銘柄打ち込み大会を促進する為に償還銘柄の振決当期利払口閉鎖直前の受渡日になる辺りに1回で全部打ち込んでくるという作戦を取って、残高問題も平均残存問題も帳尻合わせだヒャッハーという事かも知れませんなあとか、まあそんな事を思うのですが、実際にどうなるのかは今月の後半の輪番オファーや買入銘柄の状況を見ながらという所ですな。


・・・・・・・・などとまあ色々と雑談ネタは尽き無いのですけれども、しかしながら長期国債買入とか言いながら短国買入よりも足の短い銘柄が入ってくるような買入(になっているかどうかは蓋を開けてみないと判らないですけれども)を実施する事に何の政策的意味があるのか(ただの資金需給の足ずれ調整にしかなってないだろという話)という気もするので、1年未満の輪番のオファー額を増やすという行為そのものが何ちゅうかQQEの本筋から考えるとどうなのかねえという気はしますけどね。



・短国ェ・・・・・・・・・・・

昨日の2M短国入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140611.htm

(3)募入最低価格 99円99銭4厘0毛 (募入最高利回り)(0.0421%)
(4)募入最低価格における案分比率 8.4580%
(5)募入平均価格 99円99銭4厘8毛 (募入平均利回り)(0.0365%)

足は微妙に流れているのですが、そもそもの平均4割れが強いですなあという水準でして、この銘柄基本的に短国買入に入らないので、ニーズがある時と無い時の差が結構ある物件でして、まあ今回は短国が全般スッカラカン(なのでGCも低いのだが一方でCPのレートは特段サガランチ会長だったりするという若干の謎展開が続いている)という事で、短国ニーズが強いですねというのが反映されてそもそも入札前からきっちりビット入っていたので強いなあという感じではありましたからやはり強かったですねという所で。

でまあ本日は3MTBの入札になるんですけれども、3Mが玉無芳一の所に来ての入札という事で(なのになぜか短国買入は月曜も1.5兆円でしたが)いやはやという所ですがどうせ堅調なんでしょう(白目)。



○調節年報から少々ですが本日は本当に少々(汗)

出たのは先週ですが佐藤さんの講演とかECBとかで遅くなりましたな。

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/ron140605a.htm/
2013年度の金融市場調節

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/data/ron140605a2.pdf(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/data/ron140605a1.pdf(全文)

ということですが、まあこれは全文をつらつらと読んでいただくのが吉ですので、そこそこ量はありますがまあ全文読むことを推奨させて頂きます。で、本日はこちらのネタでも盛大に実施という所ではあるのですが、例によって例の如く段取りが宜しくない不肖このアタクシは時間ががががとなっておりますので、まあとりあえず皆様におかれましては大概に耳タコではあるかと思いますが、当座預金残高とポートフォリオリバランスのテクニカルな面での意味合いについて説明している部分がありますのでそこから引用ということで、全文の本文10ページ(ファイルの11ページ目)にある『BOX2 資産買入れと日銀当座預金残高の増減』を引用。


・毎回この説明を入れているというのは実に味わいがあるという話だが今回はポートフォリオリバランスの話も

『BOX2 資産買入れと日銀当座預金残高の増減』から引用しますが本当は図表があって図表を貼り付けると更に分かりやすいのですがそれは上記URLから見てちょという事で。

『日本銀行が資産買入れ、例えば長期国債買入れを行うと、取引相手の民間金融機関のバランスシート上、バランスシートの規模は変わらないが、資産サイドで国債が減少する一方、日銀当座預金が増加するという構成の変化が生じる。一方、日本銀行のバランスシート上は、資産サイドで国債が増加し、負債サイドで日銀当座預金が増加する(図表5)。』

さよですな。

『このとき、日本銀行の長期国債買入れの進捗により、国債利回りに低下圧力がかかるため、日本銀行に国債を売却した金融機関が、当該売却資金の再投資を検討する際、ポートフォリオ全体としての収益性を維持するために、リスク性資産への投資や貸出等を積極化することが期待される(ポートフォリオ・リバランス効果)。』

という説明でして、「再投資」という観点から説明しております。まあ当たり前ですけど。

『なお、ある金融機関がポートフォリオを変化させるために株式投資や貸出を積極化した場合でも、株式の購入代金や貸出金はいずれかの金融機関に預金として流入することとなり、その預金を受け入れた金融機関の日銀当座預金残高が増加する。』

その通りですな。

『言い換えれば、民間部門内での取引により個々の金融機関の日銀当座預金残高は変化するが、その増減は相殺されるため、全体の日銀当座預金残高が増減することはない。全体の日銀当座預金残高は、あくまでも日本銀行の資金供給(資産買入れ等)によって決定される。すなわち、ポートフォリオ・リバランス効果は、全体の日銀当座預金が株式投資や貸出に振り替わるという形で現れるのではなく、民間金融機関のバランスシートの構成を変化させるとともに、その投資行動に影響を与えることを通じて、発揮されると言える。』

ということで、まあ読者の皆様におかれましては耳タコだと思うのですが、調節年報出る度にこの話が毎度のように説明されていまして、どんだけ「超過準備から貸出に回らないのはケシカランので日銀は何とかしろ」みたいな話を日銀は打ち込まれているのかと想像すると落涙を禁じ得ない次第ではありますけれども、何せECBの超過準備マイナス金利チャージ攻撃の翌朝に経済クオリティ番組であらされる所の某テレひがしの番組様が堂々と「超過準備を貸出に回すことを期待しての措置うんぬん」とか言い出す次第でありますので、調節年報出る度にこの話を書かないといけないとは実にこう残念な話ではあります。

・・・・・・・しかしまあ何ですな、この説明は技術的には全く持って仰せのとおりの話なのではあるのですが、良く良く考えてみますと、ポートフォリオリバランスが発生するのは「民間金融機関の投資行動に影響を与えることを通じて発揮される」という話なのですから、それだったら長期国債の買入などという二階から目薬な話をするのではなく、もっと直接的に民間金融機関のバランスシート構成に影響を与えるような制度インセンティブを与えれば良いだけ(資産のリスクウェイトをいじるとか)のような気がするんですけどねえ(すっとぼけ)という所であって、期せずして金融政策によるポートフォリオリバランス効果の発生という政策波及効果の限界の説明にもなっているのが実に味わいが深いと思うのでありました。

#いやまあ書いている方はそういう意図はないと思いますけど

なお、今回の調節年報はQQE導入の影響から「この辺をこう変化させました」系の話が例年よりも多くなっている(当たり前だが)こともあり、何か淡々と事実関係を記述しているというようなあっさり味なテイストを感じるのですが、前年度との詳細比較とかしていないので単なる印象かもしれません。まあBOXと書いてあるコラムは割と面白いので他を飛ばしてBOXだけ拾い読みでも良いかもしれません。

#ということで続きはやるかもしれませんしやらないかもしれません




2014/06/11

お題「黒田総裁講演ネタ&佐藤審議員記者会見ネタである」

先週月曜のお告げなんですけどね。
http://www.musha.co.jp/short_comment/detail/121
2014年06月02日 ストラテジーブレティン 第121号
なぜ米国長期金利の急低下が株高ドル高要因なのか

経済のスラックが拡大する話がいつの間にか「余剰資金が拡大」という金融相場の話になっているという謎にも程がある理論が展開されていて???だったのですが、実は米国長期金利に対するお告げだったのかもしれませんな。お告げは難しい・・・・・・・・・・

○なんかあんまり実践と理論になっていない『非伝統的金融政策の実践と理論』(総裁講演ネタ)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140608a1.pdf(邦訳)
非伝統的金融政策の実践と理論 国際経済学会の第17回世界大会における黒田総裁講演の邦訳

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140608a1.pdf(本チャンはこちら)
The Practice and Theory of Unconventional Monetary Policy
Speech at the 17th World Congress Hosted by the International Economic Association (IEA) Held in Jordan

ということで例によって例の如く手抜きで邦訳の方を拝読するのですが、本チャンの英文を真面目に読んでないので論評しにくい所ではあるのですが、最近の総裁講演の中では今回はまた随分と雑なクオリティで出して来たなあという感じは否めないですな。


・ちなみに別に新しい話は無い(のでサラサラと参ります)

まあ本文8ページでゼロ金利政策(最初の)以降の推移と変化についての説明があるのですけれども、過去の政策の批判と現在の政策の自画自賛というのはまあ通常クオリティではありまして、過去の政策が不足だった云々という話をしているのがまあいつもよりも多いなあという感じであります。

でまあそれはそれで良いのですけれども、今回は過去の経緯の説明が盛大に雑な上に、過去との対比で現在の政策ってどうよという話をすると、結局の所「従来よりも規模が派手です」というのと「従来よりも気合があります」という話をしているだけ(まあ実際問題としてそうなのだが)でありまして、「このような政策を実施すると定性的および定量的にはどのような面に効果があって、その結果このような効果が出ました」という話が全然ない(そらまあ気合なのだから当たり前だが)のですな。

でまあそうなりますと、結局の所QQE政策って何がどういう経路で効いて、その定量的な部分はどうだったのかという話のレビューが全然進んでいないという話(まあ全部出せと言われても困るというのは判るが)でありまして、それって今回は今の所上手い所行ってますけど、将来似たような事をしたいとか、まあ現在ECBがおっぱじめていますがデフレリスク回避の為に他の国が非伝統的金融政策で対処しようという時に何をどうすれば良いのかという知見が得られないという誠に残念無念な話になると思うのですよね。

ただまあ結局の所QQEの本質がただの気合とタイミングが良かっただけという話だったり、そもそも論としての金融政策の波及に掛かる時間からすると実は白川総裁時代の緩和策の効果がQQE以降に出ただけじゃネーノとか、そういうツッコミも飛ばせそうな「実践と理論」のような気がします。

でまあその辺に関してはさすがに説明に無理というか気合オンリーだけという認識はあるのか、最後の所で黒田総裁の私見という事で説明している部分で「期待に働きかける経路はまだよく理解されていない」という話はしているので自覚はあるんでしょうなあとは思いますがね。

つーことで、まあ今回の講演が読んでいて(特に大昔からの金融政策推移と市場の推移を眺めている人的に)何かこうパッとしないなあというのは恐らく「過去との対比」をしているからでして、過去ともうちょっと子細に比較しちゃうと過去もQQEでやっていた事を色々とやっていたと思うのですよねえ、ということで簡単にツッコミ。


・結局の所理論が「期待へ働きかける」なのですが・・・・・・

『(初期の非伝統的金融政策の理論)』って所ですけどね。

『こうした日本経済の状況も踏まえ、1998年に、クルーグマン教授は非伝統的金融政策に関する理論モデルを構築し、流動性のわなへの処方箋を提示しました1。具体的には、当時の日本経済がゼロ金利のもとでも需要不足にあることを指摘したうえで、デフレを克服するためには、金融政策によって、マネーサプライを大幅に増加させ、インフレ予想を高めることにより実質金利を十分にマイナスにする以外方法はないと主張しました。クルーグマン教授による理論は、その後の非伝統的金融政策の手法を先取りしたものであったと理解しています。もっとも、マネーサプライは中央銀行が直接的に操作することは実務の観点から困難なことや、金融政策が期待形成に働きかけるメカニズムについて十分な確信が得られなかったことなどもあり、日本銀行がこの理論をそのまま実践に移すことはありませんでした。』

ということで、その後の方の『(ゼロ金利政策・量的緩和政策に関する理論)』という部分ではこんな話をしていますけどね。

『日本銀行が「ゼロ金利政策」や「量的緩和政策」を実施していた時期の金融政策理論をみると、2003年にウッドフォード教授と当時IMFのエコノミストであったエガートソン氏は、クルーグマン教授の理論を発展させ、デフレとゼロ金利制約のもとでも有効な施策を理論的に導きました2。そこで最も重要なことは「民間主体の期待形成に働きかけること(expectation management)」であり、そのためには将来の金融政策を十分緩和的にするというコミットメントが不可欠である点を強調しています。この際、単に量的緩和の目標額を拡大したり、買い入れる資産を多様化したりするだけで効果をあげることはできないと指摘しています。コミットメントが効果を発揮するためには歴史依存性が必要であり、そのためには物価水準目標(price level targeting)を設定し、それが実現するまで「ゼロ金利政策」を継続することにコミットすべきであると提言しています。』

では前回の量的緩和政策の実施にあたってどういう話をしてましたかねという事なのですが・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2001/k010319b.htm/
(参考1)今回の金融緩和措置のポイント 2001年3月19日 日本銀行

『新しい金融市場調節方式
・市場メカニズムに配慮しつつゼロ金利政策の有する金融緩和効果を実現
・過度の金利変動はロンバート型貸出制度により抑制』

『強力な時間軸効果
・消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続
・デフレ予想の是正に貢献
・イールドカーブ全体の低下』

『調節手段の強化と明確な歯止めの設定
・円滑な資金供給のために必要な場合には長期国債オペを増額
・銀行券発行残高を上限とし金融政策の信認を確保』

という話をしていて、実際問題として2001年の量的緩和政策においても「期待に働きかける」という事を提唱している訳でして、そういう文脈で考えると過去の比較において何がどう違うのかという面は色々と怪しくなってくるのですよ。

・・・・・・と申しますのは、過去の金融政策の説明の部分でこういう話をしているんですけどね。

『こうした経済情勢に対応するため、日本銀行は2001年3月に、操作目標を日本銀行当座預金残高とする「量的緩和政策」を導入しました。同時に、量的緩和政策を「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで」継続するというフォワードガイダンスを示しました。』

『この時期の「量的緩和政策」には、2つの特徴があります。第1の特徴は、中央銀行のバランスシートの負債項目である当座預金残高、すなわち準備(reserve)を政策目標としたことです。その際、準備の供給は主として短期オペレーションの拡充によって行っており、現在、先進国中央銀行が行っているような大規模な長期国債の買入れは実施しませんでした。その意味で、純粋なreserve targetingと言うこともできます。』

でまあその後の説明は引用割愛しますが、流動性供給は金融システム不安などに対処するのに効果があったという評価になっています。なお、長期国債の買入拡大をしなくなったのは福井総裁になってからで、当初速水総裁が量的緩和政策を実施した時には先ほど引用したように長期国債の買入拡大を実施しているんですけどねえというツッコミは行わない事にしておく。

『「量的緩和政策」の第2の特徴は、フォワードガイダンスが消費者物価指数の前年比の実績値に紐付いていることです。前年のゼロ金利政策解除の経緯から、「日本銀行にはデフレバイアスがある」という認識が生じるもとで、こうした認識を解消するため、あえて裁量余地の乏しいフォワードガイダンスを設定したということです。実際、「量的緩和政策」は、「ゼロ金利政策」よりもイールドカーブをフラット化させており、この点では大きな効果を発揮しました。』

という説明をしていまして、イールドカーブに対する評価の話をしているのですが、まあ正直言ってこの市場アクションに対する説明が盛大に雑だろというのが1つと、もう一つは先ほど引用したように2001年の量的緩和政策導入時においても「期待への働きかけ」というのは提唱している訳でして、その部分を盛大にスルーしているのが説明が雑というか、これは先で自画自賛する為に過去の政策における狙いの部分をわざとスルーしてるだろこのインチキ説明というツッコミをしたくなる訳でございますな。

ちなみに、量的緩和政策なんですけど、定量的なイールドカーブ推移のデータが手元に無いから当時の記憶で書いちゃうのがアタクシの根拠レスな所ではあるのですが(超大汗)、量的緩和政策を導入した時って導入した翌日(翌営業日)は盛大にイールドカーブがブルフラットしたのですが、その後はイールドカーブって基本的にスティープしていって、じゃあその後何でイールドカーブフラットして20年0.8%とかになりましたねんと申しますと、それは量的緩和政策の効果でも何でも無くて、単なる金融システム不安(というか銀行の経営不安)ネタとそれに伴う株価下落だったでしょと思う訳ですし、そもそもゼロ金利と量的緩和では実施した期間が違うのですがというのもあって、この辺の説明が雑にも程があるだろという所です。


・過去との比較でこれが足りない云々の話はたぶん後で自分の足を引っ張ると思う

でまあ過去との比較で今般の政策ガーみたいな説明部分に戻るということで先ほど引用していたウッドフォードとエガートソンの話の続きに戻りますけどね。

『以上の金融政策理論の変遷をみたうえで、日本銀行の過去の政策を振り返ってみると、私は2つの要素が足りなかったのではないかと考えています。』

まあこの辺は前から説明してますけどね。

『過去の政策に足りなかった第1の要素は、物価安定への強いコミットメントです。』

以下気合が足りないという話が続くが一応引用。

『ゼロ金利政策のフォワードガイダンスは、「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢となるまで」という定性的なものでした。また、量的緩和政策のフォワードガイダンスは、「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで」と、設定した閾値はゼロ%と低いものでした。しかも、実際の解除の判断は、その時点における経済・物価情勢を踏まえて議論を尽くした結果であったとはいえ、結果的にみれば早めの解除になってしまったと言えます。このことは、日本銀行が「デフレファイター」としての信認を十分に得られなかった原因になっていると思います。』

『その後の「中長期的な物価安定の目途」についても、設定された数値は1%と低いものでした。このように物価安定へのコミットメントが弱かった結果、期待への働きかけが十分ではなく、民間主体に根付いたデフレマインドを払拭することはできませんでした。』

という事なのですが、この話を敷衍してしまうと「成長と物価のバランス」という問題にぶち当たってしまった場合に物価安定目標数値の柔軟性を持った対応というようなオプションを自分から盛大に否定する事に繋がりますので、途中までの話はともかく「目途」の所までdisる必要は無かったんじゃないのと思いますし、これを強調すると引っ込みが付かなくなるリスクが出てくると思うのですけどねえ。

大体からして「目途」だって1%は「とりあえず中間的に目指すもの」であって将来はその1%を引き上げるでしょうという話をしていた訳で、そこに関して殊更に1%を強調しまくったのはどこぞの置物副総裁の在りし日の姿だったりで、足引っ張ってたのは日銀批判の人たちじゃなかったのと嫌味の一つも申し上げたくなりますけどね。


『過去の政策に足りなかった第2の要素は、イールドカーブ全体への押し下げ圧力です。フォワードガイダンスや残存年限3年までの長期国債買入れによって、イールドカーブをある程度フラット化させることには成功しましたが、長い期間を含めたイールドカーブ全体を押し下げるには十分ではありませんでした。』

まあおまいのQQEも金利盛大に引き上げたし、その後の金利低下は単に2年で2%達成を市場が信じてないからでしょと思いますがねえ。

『グローバル金融危機後に実施されたFRBとイングランド銀行による長期国債の大量買入れは、その後の研究で効果的であることが実証されており、中央銀行の実践が理論の発展に先行した例であると理解しています。』

という話なのですが、まあこの手の「実証」は色々と手前味噌分析が可能なんですけどねえ。


・トラスミッションメカニズムの説明が無いのと「出るまでが政策」の話は一応触れています

QQEの説明の所はまあ最後だけ引用しますけど。

『このように、「量的・質的金融緩和」は、インフレ予想を引き上げることで実質金利の低下を促し実体経済を刺激するという、クルーグマン教授およびウッドフォード教授やエガートソン氏による理論に共通するメカニズムを実践したものです。』

ということで(キリッ)という話ですが、ではそもそも論としてQQEが何でインフレ予想を引き上げたかという肝心の部分についての説明が無い件については一応「私見」コーナーがあるのですけどね。

『もっとも、非伝統的金融政策の効果や波及メカニズムについては未だに解明されていない点が残っています。』

『その要因の一つは、現在実施中の非伝統的金融政策から脱し、全体を評価しうる段階に達した中央銀行が未だない、という実践的な経験が我々に欠如しているためかもしれません。』

さらりと言ってますけど、実はこの問題が重篤でして、しかも日銀の場合が一番重いと思うのは、先ほど自画自賛コーナーで話をしていた「イールドカーブ全体の強力な押し下げ」の点です罠と思うのですよね。

つまり、正常化を実施する事になった場合には当然ながらこの効果の部分が逆方向に思いっきり作用することになるのですが、米国や欧州の場合は(実際にどうなのかという話はさて置くとしても)インフレ期待がアンカーされている(ということになっている)状況下での非伝統的政策であり、その正常化であるからしまして、インフレ期待がシフトする分の名目長期金利への影響(フィッシャー効果でしたっけ)というのはさほど大きくないのですが、日本の場合はそもそも論としてインフレ期待をシフトアップさせようという事ですから、それに成功した場合にはインフレ期待がシフトアップした分のフィッシャー効果が炸裂する訳で、他人事のように言ってるバヤイではないと思うのですけどねえ。

『また、非伝統的金融政策に関する見方が分かれている要因のもう一つは、「期待」が大きな役割を果たしているにもかかわらず、その理論的な発展が遅れているためかもしれません。』

「かもしれません」じゃねえよ。

『インフレ予想がアンカーされていることの重要性は広く共有されており、多くの中央銀行は、インフレ予想がしっかりとアンカーされている(well-anchored)ことを、金融政策を評価する1つとしています。もっとも、一旦インフレ予想が低下した場合、インフレ予想をどのように目標へ修正させるのかという理論は、これまでのところ確立されていないと思います。特に、ゼロ金利制約のもとでどのようにインフレ予想を引き上げるのかという点について、実務的に実現可能な政策手段まで含めた理論は不十分であり、今後のさらなる発展が期待されるところです。この点では、我々の「量的・質的金融緩和」の経験は、重要な材料を提供していると思います。』

ということで、まあ要するに単なる気合ですという話をしているのと自画自賛の余り過去の説明が雑にも程がありますなあという感じで、ちょっと今回の講演は出来がイマイチのように思えるのですが、これは過去との比較というのをおっぱじめるとどうしてもこうなってしまうので、講演のアジェンダセッティングが宜しくないという事かなあとは思うのでありました(今の話と未来の話だけをする分には良いんですけどねえ)。



○遅ればせながら佐藤審議委員会見

遅くなりましてすいませんすいません。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1406a.pdf

・今回の会見は基本的に講演の話通りです

今回の佐藤さんの会見ですが、会見で大暴れするどこぞの審議委員とは違いまして(比較するなですかそうですか)基本的に講演での説明を敷衍したような内容で、会見で変わった話などはございません。

ということでまあ簡単にサラサラと参りますぞな。


・ポートフォリオリバランスに関して

『(問) 2 点お伺いします。まず、午前中の懇談会で、委員は、「いわゆるポートフォリオ・リバランスの進展や中長期的な予想物価上昇率の上昇といった『量的・質的金融緩和』の波及メカニズムが実施当初に期待されたほどには今のところ明瞭に観察されているわけではない」とお話されています。そうであるならば、政策の調整や追加的な金融緩和が必要という考え方もあるかと思いますが、その辺りをどのようにお考えなのか、それが必要でないということであれば、どうしてなのか教えて下さい。(後半割愛、というか後で)』

まあそこの説明は講演でもしていますし、クレクレになるのの意味がさっぱりワカランチ会長なのですが、佐藤さんの説明が整理されているので答えを引用しますね。

『(答) 第1 点の、ポートフォリオ・リバランス効果が当初期待されたほど明瞭に観察されないということについて、若干敷衍します。「量的・質的金融緩和」の波及メカニズムとしては、主に3 点を想定していまして、1 点目は「期待の抜本的な転換」、2 点目は「実質金利の低下」、3 点目は「ポートフォリオ・リバランス」ということです。』

うむ。

『「期待の抜本的な転換」、あるいは、「実質金利の低下」ということに関しては、概ね当初に目指していたことが実現しているのかなと思います。』

ほほう。

『その一方で、ポートフォリオ・リバランスに関しては、これは業態によって色々違いはありますが、例えば、生損保あるいは年金、投資信託といったところが、対外資産、リスク資産を大幅に増やすような動きに出ているかというと、現状では、諸般の金融規制等もあって、なかなか当初期待したほどには進んでいないということは事実かと思います。』

ですなあ。

『しかしながら、私は、このポートフォリオ・リバランスの動きを、全面的に否定している訳ではありません。例えば、限界的な動きではありますが、金融機関、特に銀行では、貸出は着実に増えつつありますし、その伸び率も着実に拡大していると思います。若干なりともリスクを取る動き、よりリスクの高い分野に資産を振り向けるという動きも出つつあると理解しています。そういう意味では、期待水準未満ではありますが、ポートフォリオ・リバランスはゆっくりと着実に進展していると思います。』

なるほどです。なおクレクレという愚問に対しては以下のような説明ですな。

『そういう中で、政策の調整が必要かどうかという点ですが、本日の懇談会挨拶の中でも触れましたように、「量的・質的金融緩和」は、当初描いていたパスをこれまでのところ順調に辿ってきており、所期の効果を発揮しつつあると思います。』

ちゃんとテキスト読めやゴルァというのを丁寧に言うとこうなります(^^)。

『そういう点では、これまでも声明文で、政策の調整に関しては、「上下双方向のリスク要因を点検し」と申し上げていますが、その上下双方向のリスク要因が顕在化したという状況ではないと思いますので、現時点では政策の調整が特に必要な状況には至っていないのではないかと判断しています。(以下割愛というか次に)』

そらそうよ。


・フォーキャストターゲットに関して

先ほど引用した質問の続きになります。

『(問)(前半割愛)2 点目は、同じく午前中の懇談会で「『安定的に持続するために必要な時点』の部分は、私の理解では、見通しベースで判断するということである」とお話しされている点についてです。先般、委員は、「見通し期間の中盤頃に2%程度を見通せるようになる」というふうに日銀の見通しを変更することを求められたと思います。懇談会での挨拶要旨をみると、見通し期間の中盤である2015年度に必ずしも2%程度に達しなくても、そうなる見通しであるならば、「必要な時点」の要件を満たして、出口、あるいは終了に向かうことも考えられるというように読めますが、その点はどのようにお考えですか。すなわち、2015 年度に2%程度に達していなくても、出口に向かう、終了に向かうということがあるべきなのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。』

でその答えな。

『(答)(前半割愛)2 点目のご質問の、消費者物価の前年比2%が安定的に持続するかということを見通しベースで判断するという点ですが、この「見通しベースで判断する」というのは、フォーキャスト・ターゲッティングということで、要は「見通し期間の中盤に見通せるようになる」という修文議案を提案したのは、私自身の物価の見通しがそういう状況であることを示している訳です。』

ほほう。

『2%に達しなくても出口に向かうかどうかというところは、基本的には、見通しベースで判断するというところが全てだと思います。』

つまり見通しが有ればヨロシという話。

『2%という物価の概念も、本日の懇談会での挨拶で触れましたように、基本的に「物価安定の目標」というのは、消費者物価の総合であってコアではない訳ですが、それによって私は総合だけで判断すると申し上げている訳ではありません。基本的には消費者物価の総合、除く生鮮食品、除く食料・エネルギーのいわゆるコアコアと言われているもの、あるいはより広い包括的な概念、例えば賃金といったものを含めて、幅広い物価指標を丹念に点検していくことが必要です。そういう中で、2%を安定的に達成することが見通せるかどうかが重要だということです。』

ということで、単にコアCPIが2%に達するか否かという単純な話ではないという事を指摘しています。


・物価上昇の背景に関連して

『(問) 2 点お願いします。前の質問と関連しますが、本日の懇談会挨拶の中の「幅広い指標を丹念にみていく」というところで、帰属家賃を除く指数も取り上げられています。そのベースだと、4 月は4%を超えていますが、ここから先、物価目標の達成が思いのほか早まる可能性はないのでしょうか。また、その時には、どういう順番でどう対応することが委員としてはベストとお考えなのか、今の時点でお話しできる範囲でお願いします。(後半割愛)』

質問は微妙なのですが(今回の質疑は割とそんな感じ)答えの方が面白いというか論点整理されているので答えを鑑賞。

『(答) 1 点目のご質問ですが、幅広い指標をみていくということについて、帰属家賃を除く消費者物価総合指数の上昇率が、4 月は4%を超えているという指摘がありました。4 月は、ご案内のとおり消費税率引き上げの影響を含んでいますので、これを除くと2%に達しているかどうか、微妙な状況だと思います。』

なお帰属家賃除く消費者物価指数の話は石田審議委員も以前行っています。

『また、物価上昇が思いのほか加速する可能性がないかという点ですが、私どもの展望レポートでは、本年1 月の中間評価の時点と比べると、GDP は政策委員の中心的な見通しから下方修正となる一方、物価に関しては、2013 年度の実績が、わずか3 か月前の見通しと比べても上方修正になっています。そういう意味では、やや思いのほか、物価が上昇しているということが言えるかと思います。』

ということで供給の天井に関する話になります。

『物価上昇の背景については、私以外のボードメンバーからも、これまで幾つか説明があったかと思います。私も、本日の懇談会挨拶の中で触れていますが、人手不足ということで、労働力の供給が限られてくる中で、日本経済が思いのほか早く供給の天井にぶつかりつつある、そういう可能性があるかと思います。』

キタコレ。

『供給制約に直面した経済がどういう経路を辿るかというと、供給制約の結果として賃金が上昇し、これは企業にとってみると減益要因になるため、やや長い目でみれば設備投資、あるいは株価に影響が及んでくるということですから、基本的には、そうした人手不足による賃金上昇を背景とした物価上昇は、持続的ではない訳です。私どもが当初思い描いていた望ましい物価上昇の姿ともやや異なると思います。』

(;∀;)イイシテキダナー

『そういう点では、より望ましいのは、生産性の向上に見合った賃金の上昇であり、それとバランス良く物価が上がっていく姿です。生産性の向上の鍵を握るのは、やはり設備投資だと思いますので、企業が設備投資を行い、このところ低下気味と思われる潜在成長率を引き上げていくことで、生産性を引き上げ、そういった努力の上に賃金が上がっていくことで、それとバランス良く物価が上がっていく、そういう姿が望ましいのではないかと思います。』

ということですな。


・財政制約による「マネタリストのある不快な算術」に関連して

この質問は答えにくかろう。

『(問) 今の質問の関連でお伺いしますが、本日の挨拶の中で、出口戦略に関して、「現時点では頭の体操程度」として、「財政の持続性への配慮が金融政策を左右することはあってはならない」、「『量的・質的金融緩和』を最終的に成功に導くうえで、政府の中長期的な財政健全化へのコミットメントが重要な役割を果たす」と言われている部分については、逆に言うと、政府が財政健全化をきちんと進めなければ、日銀は出口に出られないということとイコールなのかと思うのですが、そうであるなら、健全化に向けたコミットメントのイメージがどういうものなのかということをもう少し伺いたいと思います。また、それが例えば、消費税率を10%に上げれば十分なのか、さらにそれ以上に上げる必要があるのか、あるいは歳入だけでなく歳出の改革も必要なのか、その辺りのもう少し具体的なイメージをお聞かせ下さい。』

これは良い質問過ぎて微妙な答えしかできませんわなと思ったら案の定答えは微妙な言い方になっております(^^)。

『(答) 政府の中長期的な財政健全化へのコミットメントが非常に重要であるということについてですが、これは政府が現在そうしたコミットメントをしていないということではなく、既に政府としてプライマリーバランスの赤字を2015 年度までに半減するということを国際公約として打ち出しています。そういう意味では、政府のコミットメントというのは既に厳然としてある訳ですし、そのコミットメントに沿うかたちでこの4 月に消費税率が引き上げられ、さらに来年10 月に消費税率が10%に引き上げられようとしているということです。そういう点では、コミットメントは既に厳然としてあるということだと思います。』

(・∀・)ニヤニヤ

『それから、財政健全化を進めないと出口に出られないのではないかとのご指摘がありましたが、そういう観点からは、政府の財政健全化の努力というのは、今しっかりとなされているというふうに認識しています。』

つまり放漫財政ボヨヨンボヨヨンだと出口で死ねるという事ですねわかります(^^)。





2014/06/10

お題「ドラギ総裁会見鑑賞会の続きで他のネタが後回しですいません」

ほほう。
http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0EK1M720140609
利上げ開始時期予想、前倒しの可能性=米セントルイス連銀総裁
2014年 06月 10日 02:32 JST

ブラードのおじちゃんは毎度毎度何か新しい話でフロントランナーになるのが好きな人ですので、これはこれでほうほうそうですかという風情ですが、関連講演ネタはパス(なお先週はエバンスとコチャラコタとパウエルの講演があったりしますが追いつかないですなあ涙)。

#従来「物価目標達成の為には円安が必要」と言っていた人が「物価目標を達成すれば円安になる」という因果関係を逆にした新説を唱えているような気がしますがお前は何を言っているのかと小一時間>モーサテのゲスト解説


○市場メモ

・オペ関連雑談

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140609.htm

国庫短期証券買入 15,000 2014年6月11日

・・・・・・ということで予想されていた輪番オペがパスされていまして、先物が5銭位下がったのですが、冷静に考えますと朝三暮四のエテ公みたいなもんで、別に月中の買入総額が落ちるという話でもない(と思う)ので別にそれ以上の動きは無し。

で、短国買入ですが1.5兆円の買入オファーということで、そんなにMBをせっせと積む必要あるんかいなとは思いますし、大体からして足元で短期市場では短国が謎の需給の良さを示している訳で、そこで日銀がせっせと購入とか民業圧迫にも程があるのですが、まあその流れに沿ってGCは低いわ短国は物無し芳一だわという状況になっておりまして、明日の2Mは短国買入対象外となると思いますが、需給が良いから強いんでしょ(てきとう)という感じで。


・超長期国債先物ェ・・・・・・・・・・

あと少しで先物の当限が売買最終日になる訳ですが、ここで超長期国債先物の状況を確認してみましょう。

http://www.ose.or.jp/market/trading_data/today_overview
当日取引高等

こちらから『JPXデリバティブ取引市況(日通し)(2014/06/09) 』とか『JPXデリバティブ建玉残高表(2014/06/09) 』などというのをDLしますとこのような数値が拾えます。

超長期国債先物売買高

夜間:10 (0)
前場:101 (1)
後場:38 (0)
合計:149 (1)

(1)という立会外があるのがほえーという感じですが、それはそうと100枚ですかそうですか・・・・・・と言いたいですけれども、これはカレンダースプレッド含むでしたっけ。

超長期国債先物建玉残高

26年06月限 92 316 -14 330
26年09月限 57 88 +57 31
26年12月限 0 0 ±0 0
合計   149 404 +43 361

左から取引高、当日建玉残高、前日比、前日建玉残高となっていますので、超長期国債先物の建玉合計が400枚もありますようわー凄いですねえ(棒読み)という所で、盛大な出オチ攻撃に落涙を禁じ得ませんな。

#このままだと自分でも存在を忘れそうなので備忘代わりにメモを置いておきましたということで


○ECBドラギ総裁会見鑑賞会の続き

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140605.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 5 June 2014

ということで昨日の続きで出遅れてすいませんすいません。

・威勢の良い話はいいから何時になるんだオラオラオラという質問

『Question: Thank you very much. I also have two questions for you. You announced a big package of measures. How long do you expect it will take for the full effect of these measures to develop? In other words, how soon will you have a good sense of whether this will be enough for you to achieve your aim of returning to the close to 2 percent target?』

今回の政策は何時になったら効果が出て2%のターゲットに戻るのでしょうかとな。

『The second question pertains to the preparatory work for the ABS. Did you already discuss a potential scope of such a programme? And if so, could you give us an indication?』

ABS買入に関してはプログラムのスコープについて既に議論していますかとな。

ドラギ先生のお答え。

『Draghi: Well the first question is actually important and it's also difficult to answer.』

まあそう答えるしかない罠。

『Let me say why is this. The package has basically three parts.』

とまあ話の筋をそらして説明というのは良くあるテクニックの一つ。

『The first part is to ease the monetary policy stance. The second part is to enhance the transmission to the real economy. And the third part is the reaffirmation that we'll also use unconventional instruments if needed, if further easing is needed.』

今回のパッケージは金融政策スタンスを緩和する、実体経済へのトランスミッションメカニズムを強化する、必要な場合には非伝統的政策を更に投入する、という3点であります。と聞かれもしない説明をしています。

『Because this will give you an idea of how long it may take to do this.』

というこのパッケージの内容が貴殿の質問に対する答えを示唆するでしょうとな。

『First of all, the first part, namely ease the stance of monetary policy. There we lowered the corridor and we reinforced our forward guidance.』

ここの部分で面白いなあと思うのは、「MROの金利を下げた」とか「マイナス金利を導入した」というようなコンテクストでの説明をしてこない事でして、「lowered the corridor」とコリドア全体の話をしている事だと思うのよね。

つまりですな、マイナス金利に関して「マイナスですよ凄いでしょう」という話をするのではなく、あくまでもコリドアの話とか、金融政策スタンスの緩和とか、そっちの方面での話をしていて、あまりマイナスをアピールしてこないのが味わいがあるなあと思うのです。まーさすがにドラギ総裁的にはマイナス金利の部分が量的な意味での引き締め策になっているという点に気が付いているからマイナスの金利に関するアピールをしないのかも知れませんけどね。

『The reinforcement of our forward guidance was based on two facts. First of all, the extension of the fixed-rate full allotment until the end of 2016, and second, the fixed rate on the TLTRO. So this will say that interest rates will stay low for long, possibly longer than previously foreseen.』

フォワードガイダンスの強化については、MROやLTROの延長と、ターゲットLTROの導入でして、これにより金利が従来よりもより長い期間低位に維持されるという事を示します、という話になっているのですが、実際問題としてはMROやLTROについては変動金利ですし、ターゲットLTROについては先々の分は「貸出が増加」しないと増えないのですから、これがフォワードガイダンスの強化で金利がより従来考えるよりも長い期間の低位推移が示されましたというのは、そらかなりインチキだろうと思われます。

『And this will feed into the money market conditions via the yield curves and the exchange rate. This is the first block.』

でまあ(ここだけではなく先の所でも)言及されていますが、金利と「為替」に影響を与えるという話をしていまして、まあ意図したいのはユーロ高阻止であるというのは良く判る部分です。

『The second is we want to make sure that these improved conditions in the money markets would be transmitted to the real economy. And that's where the TLTRO comes in. So that's why we want to make sure that this feeds into the bank lending channel because our economy is 80 percent based on banks. So it lowers the cost of term funding for banks, but only for loans to the real economy, notably for the non-financial companies of the private sector.』

金融政策効果による緩和的な金融市場のトランスミッションメカニズムの強化という観点での説明としては、ターゲットLTROによって貸出を促進する事という話でして、特に欧州の場合は80%が銀行チャネルの間接金融なので、銀行のファンディングコストを引き下げて非金融部門へ波及させますという話ですな。

『When do we foresee we'll see some outcome? It's very difficult to say. Most likely we will see immediate effects on the money markets and we will see delayed effects on the real economy attributable to this programme. I'm not saying that in the meantime the real economy couldn't actually recover more. But attributable to this programme, it would probably take three or four quarters.』

でまあ効果はいつ出るのの話に戻るのですが、金融市場には即座に効果が出るでしょうが、実体経済にという話は少々お時間がかかります罠という話で、まあ3〜4四半期は掛かるんじゃネーノという話。

『On the ABS, we did not discuss the scope of the ABS, other than again reaffirming that it should be real economy-oriented, oriented towards non-financial companies of the private sector. And on ABS, you know that last Friday we published the paper with the Bank of England, and if I have to summarise what's the ideal ABS we are looking, we are striving for, should have three features. It should be simple, so no complex CDOs, cubes or squares. It should be real, so ABS based on real loans, not based on derivatives. And it should be transparent, namely there should be information available for ABS underwriters, whoever trades the ABS. They should understand what they trade, what they are trading on.』

ABS買入に関してはああだこうだと言っていますが、よーするに実際にどういう買入をするのかというような話は議論していないようですな。まあABS市場の拡大に関するあれやこれやというのは暫く前から色々とやっているというのは説明の通りですが、そちらの説明をくどくどと行っているけれども肝心の買入に関してはまだまだのようですな。


・流動性の供給に関する微妙な仕上がりの質問&物価水準の低い方の危険水位はどのへんなのという質問

『Question: I think most would agree that the European Central Bank has been very good in providing the Eurozone financial system with cheap and plentiful supply of liquidity. So what is it exactly about this targeted LTRO that makes you think that you'll get a lot of demand from the banks for the liquidity you're putting on offer here given that we have seen a reduction in excess liquidity.』

分かっててわざと質問しているのかが微妙ですけれども、今般の流動性供給によって足元でLTRO返済などで減ってきている超過準備に対して今回の措置がどのような流動性供給を行えるのでしょうかという質問ですが、そもそも超過準備にマイナスチャージする時点で超過準備減るインセンティブが発生するだろうという部分がスルーされて微妙な仕上がりになっています。

『For my second question, the inflation projections I'd assume would not take into account the May figure given that that was released after the cut-off point. How much does the May figure of 0.5% concern you? How much closer does it take you to thinking that there's a real threat of what you refer to as a pernicious negative spiral?』

どんだけ物価が下がるとデフレ均衡へのスパイラルになるのですかというのが2つ目の質問。

『Draghi: Well first of all, let me correct what we said before in answering to an earlier question. Yes, there was a commitment for OMT to sterilise, so I'm correcting this. But having said that: It is a different programme, completely different programme.』

これは昨日引用した質疑部分の修正で、OMTも不胎化するというコミットがありました(最初はそれは無いという話でしたが、まあそもそもOMT実施どころか要綱も出てないのだからどうでも良い)という話ね。

『Now let me say something I haven't said. The first question you ask in these press conferences: “Was it unanimous?” Now this time it was unanimous. I'm really very grateful to all my colleagues in the Governing Council because being able to agree to have unanimity on such a complex set of instruments means a very, very extraordinary, unusual degree of consensus.』

なんか微妙に質問と違う演説が入っていますが、「全員一致です(キリッ)」というのをアピールとな。

『And you can imagine we had a very deep, prolonged discussion because, of course, there were different ideas about different components, although it was pretty clear there was a great consensus emerging immediately. And in the end, I think the Governing Council was capable to reach unanimity around one concept, which is the one I have illustrated to you.』

大変多くの深い議論を経た後にこのような結果になりました(キリッ)ってもうその話はいらんがな。

『Now what is in this LTRO, in this TLTRO that makes it different? Several things; The cost, obviously it's very low. The term maturity is four years. And the determination that this money not be spent on sovereigns and on sectors that are already experiencing or are just coming out of a bubbly-ish situation. So that's what is in it.』

ターゲットLTROはコストがややお高いですし、この資金はソブリンやバブル崩壊で死亡中のセクターには回らないでしょうという説明をしているが、前者は制度の建付けの話で後者はAQR絡みなのかね、良く判らんが。

で、この後は物価の質問に対する答えになっておりまして、結局の所「流動性供給と言っても従来のLTROとは違いまして民間向け貸出にスコープしています」という事をいいたいようです。まあ超過準備云々の話を詰めるとマイナス金利の話になってきて説明が苦しくなるからだと思いますが巧み(かどうか知らんが)にその辺は逃げていますな。

『Now on the threat, when I've been asked in the past about whether I was seeing deflation, the answer was, and still is, by the way, we don't see deflation. We don't see that typical feature of a self-fulfilling negative spiral of self-fulfilling expectations. We don't see households postponing their spending plans and we don't see the various features of this phenomenon that I have mentioned on other occasions.』

現状は自己実現的な物価の下落にはなっていないという状況認識ですな、まあそうでしょうけど。

『Let me also say that in the past we said that the main factors of this low inflation were the basically low growth rate of prices for food and energy and the exchange rate and also, to some extent, the persistent weak demand. Now not much has changed in terms of the causes of inflation. But what is changing and is in the process of changing is what I often say, the longer it lasts, the higher the risks. And that's what we are reacting to. We are reacting to a risk of a too-prolonged period of low inflation.』

足元までの物価下落は食糧とかエネルギーとかの問題などがあるというのと、為替レートという話をしていまして、為替レートキタコレなのですが、需要が弱い件については「to some extent」というような言い方で一時的要因を強調しています。で、一時的要因としても下がった状態が続くと良くないという話はいつも通り。

『The other cause I mentioned, for example, was the relative price adjustment that was needed and is needed in some countries, the idea being that relative price adjustment is a once-and-for-all phenomenon. It stops and then inflation goes back. Now the longer the inflation doesn't go back, without denying the need for the relative price adjustment, which is essential to restore competitiveness and growth and job creation in these countries, but the longer the inflation doesn't go back, the more the Governing Council is in a, say, watchful position.』

でまあここはほほうという感じですが、域内の相対物価調整が進む中では物価水準が全体として低いと調整の中で個別国でデフレ入りしてしまう恐れが高まるので、それも重要な点であるというのはまあそうですねという感じです。これも以前から指摘はしていますが今回はわざわざ指摘していますね。

ということで、肝心の危険水位に関する説明は全然ないのですが、まあ現状認識と問題意識についての説明はありましたねという所です。


・ドラギ先生の次回作はLSAPですかという直球質問から

次はこんな直球質問。

『Question: You said a few minutes ago that you're not finished. Is it safe to assume that the next step, given the comprehensiveness of the measures that you've announced today, that the next step would have to be some form of large-scale asset purchases or QE? And if so, can you give us any idea of how that would work in the European context given the structure of the capital markets here? 』

ドラギ先生の次回作にご期待くださいと言われたらそらLSAPを期待しますが何かヒントでもございますかとは豪直球質問を(^^)。

『Draghi: Let me ask you, when we lower interest rates, are you going to ask when you lower interest rates again? No. Not. So we've just taken a decision which, as you can see, is fairly articulated and certainly in reach of different aspects and certainly very significant. It's quite clear that we are not finished if need or further reason is going to come out, is going to be needed.』

追加利下げ方向の話は否定気味(テクニカルな変更という文脈はありということなのでコリドアの幅を縮小するというのはありなんでしょうけど)ですが、しかし「ドラギ先生の次回作にご期待ください」という答えワロタ。

『If such a need were to come, the introductory statement says that the Governing Councilis ready to use also unconventional instruments. The broad-based asset purchase programme that you mentioned is certainly one of these unconventional instruments.』

で、ここの説明がまたドラギ先生のイカサマ説明振りを発揮しているのですが、質問者は「large-scale asset purchases or QE」と質問しているのですが、ドラギ俊彦総裁は「broad-based asset purchase」と説明していまして、LSAPとは言っていない所がイカサマにも程があるという話ですな。

まあ物理的にマイナス金利やっているのにLSAPできないというのもありますし、そもそも間接金融が大きい上に域内の国債購入が色々な意味で課題があるという状態になっていて物理的にLSAPが難しいという事で、まあここでドラギ総裁が「broad-based 」という表現で言外に示しているのは「大規模資産買入による量的緩和政策では無く、幾つかのスコープに特化した資産買入による信用緩和政策」の実施を今後示唆しているのだと思いますよ。


・マイナス金利は預金者に対してどうのこうのな質疑が幾つかありましたが・・・・・・・・・

マイナス金利導入に関する質疑では預金者の金利収入がどうのこうの的な質問が幾つかあって、なるほど洋の東西を問わずそういう質問があるのねということですが、そのうちの一つの質疑応答がこれは酷いという物なので。ちなみにここで引用されているのはドイツの貯蓄金融協会みたいな所の親分の発言のようです。

『Question: Mr Draghi, the President of the German Saving Banks Association is accusing the ECB of an expropriation of savers. What is your response to that criticism?』

ふむ。

『And secondly more generally asked what is your message today to the German savers who suffer from very low interest rates?』

で、その答えですが・・・・・・・・・

『Draghi: Let me address first the first question. I think there is a deep misunderstanding here.』

深い誤解とな!

『The rates that we've changed are for the banks, not for the people.』

これは酷い責任転嫁ですね(^^)。

『Of course, commercial banks may react to our decision by choosing to lower their rates if they think they should do so, and this would be then transmitted to savers. But it's not us. It's a decision taken by the banks. So it's completely wrong to suggest that we want to expropriate savers.』

銀行のせいですワシら知らんがなとは清々しいまでの責任転嫁。

『Our package of measures actually means exactly the opposite. It's meant to restore growth, to promote the recovery. And this will allow interest rates to return to a higher level.』

何だかなあと思うのですが、答えはここ(この政策は富を拡大しようというものなので預金者から収奪するものではありませんという話)だけにしておけば良いのに何という責任転嫁発言という感じですな。

『And this is part of the response that I want to give you to your second question. The concerns of the savers should be taken very seriously. When we say savers here, we should have clear in mind, these are people who have saved most of their lives to provide for their retirement. These are people who've signed a policy, insurance policies with insurance companies and they see the value of these insurance policies going down. So these concerns are serious. And here the answer is that the interest rates will go up, will go up when the recovery will come back, when growth will come back.』

この政策で景気が良くなったら金利が上がって長い目で見れば皆様の為になるんです(キリッ)とはまあ模範解答ですな。


・量を出してもインフレになっていない国がありますがという嫌味質問

少々先の方に参りましてこんな質問が。

『Question: So my first question is you have given us a new TLTRO, a sterilisation programme. You have extended the full allotment period and so forth. So if I'm not mistaken, this means over EUR500b worth of liquidity. Of course we'll each have to go back home and calculate what it means.』

不胎化吸収を停止したりターゲットLTROを導入すると5000億ユーロとかの流動性が出るような計算が出来るようにも思えますが、まあその正確な数値は兎も角としまして流動性が出ますよね、と来まして・・・・・・・・

『But my main question is how sure can the ECB be that these programmes are going to create inflation?』

(;∀;)イイシツモンダナー

『And I'm saying this when I'm looking at your forecast for 2015 and 2016, 1.1 and then 1.4, because even the Federal Reserve, after three periods of quantitative easing, was not successful enough to create that sort of inflation. And this was one of the major drawbacks that money markets couldn't predict. So that's my first question.(後半の質問割愛します)』

ワロタという感じですが、FRBのLSAPもインフレを起こしてはいませんが何で物価が戻るということになるのでしょうとな。

俊ちゃんもといドラギ先生の答え。

『Draghi: Well we are confident. I think it's been said in the introductory statement, we are confident the measures that we've taken will drive inflation close to 2 percent in the medium term.』

行くから行くんですとは木久扇師匠ばりの説明で、いやあの政策のトランスミッションメカニズムの話を聞いているんだと思うぞ。

『It says, "Together, the measures will contribute to a return of inflation rates to levels closer to 2%. Inflation expectations for the euro area continue to be firmly anchored," etcetera. So we do expect these measures to take effect. So that's the answer to the first question.』

どう見ても根拠レスです本当にありがとうございました。

『But also keep in mind that the recovery isn't finished. The recovery is low, as I've said many times. It's fragile. It's uneven. But it's there. And we've also observed the labour market has shown signs of stabilisation. The unemployment rate in particular has stabilised and also has shown some signs of going down. So this gives us relative confidence that the measures we've taken today will contribute to reach our objectives in the medium term.(後半部分割愛)』

回復の傾向はあるがまだリカバーしているとは言い難いという話は分かったが、で結局どういうメカニズムでインフレが2%に戻るのかは説明していませんな、というか説明できないんでしょうなあという所です。






2014/06/09

お題「ECBレビュー雑談&ドラギ先生の落語鑑賞会」

ECBの資金供給量に注目とかモーサテの為替コメンテーターが言ってるとゆーことは為替市場の皆様におかれましてはマイナス金利クレクレと言いながら流動性は拡大しろと言っていたんですかそうですか・・・・・・・・・

○ECBレビュー雑談などなど

・欧州市場の初期反応はブルスティープ&イタスペ金利更に低下

金曜の結果に関しては既にあちこちで解説があると思うのでまあそういう事ですという感じですが、市場ちゃんの反応(ドラギ総裁会見は兎も角肝心の要綱が出たのが欧州の午後3時過ぎとかなので金曜も初期反応が続いていたと思う)ですけど欧州市場はカーブがブルスティープするわイタリアスペインの金利は引き続き低下するわという反応で、ユーロはまあ反応イマイチという感じのようで。

でまあベースレートが下がったのですからブルスティープするのはまあ良いとしまして、イタリアスペインの金利が一段低下というのは良くワカランチ会長なのですが、仮に追加策で国債買入期待だとちょっと外すんじゃネーノという気はします。

と申しますのは、毎度申し上げておりますからご案内の事だと思いますが、今回の預金ファシリティーマイナスは結構広範にいわゆる中銀預け金的な物に対してチャージを掛けてくるものでして、当然ながら流動性という意味では結構強烈な吸収オペになる訳でして、そんな中でユーロ高阻止でマイナス金利という事にしていた筈なのですが、資金供給量に注目とか為替市場が言い出すとまさに何をしようとしているのか判らんという所ですな、うんうん。

で、流動性を引く政策を実施するという事は、基本的に日米英などが実施している国債買入によるバランスシート政策を実施する際に限界がある訳で、国債買入というのは要するに国債と中銀預金の交換ということで、ある意味金と金の交換になるのですけれども、肝心の中銀預金がマイナスチャージされるという事になりますと国債を売る人がいるのかねという話になる訳で、つまりLSAPとなるような「規模の緩和」を実施する事が技術論として極めて困難になるという話です罠。

となりますと、実はマイナス金利導入の裏の狙いは大規模量的緩和の実施を阻止したいブンデスバンクによる諸葛孔明の罠ではないかという気もだいぶするんですけど、というかECBの中でもその孔明の罠に関して気が付いてい無さそうな委員とかいそうに思えます。


・施策の中でやはりマイナス金利が他の政策と整合性が取れない&色々悪手だろという雑談

ということで先週打ち込んだECBの施策ですけどね。

(1)超過準備にマイナス金利チャージ、MRO金利10bp引き下げ(コリドアを50bpに)、なお利下げはこれで基本的に打ち止め

(2)民間向け貸出残高の7%(4000億ユーロ相当らしい)を2018年9月まで0.25%の固定金利で貸出、その後は貸出増加額の3倍相当を2018年9月までの固定金利(金利はMRO+10bp)で貸出

(3)MRO、3MLTROを2016年12月までフルアロットメントで延長、SMPの不胎化資金吸収を停止

(4)ABS買入について更に検討

でまあ(4)はただのやるやる詐欺ですからどうでも良いとして、明らかに変なのは(1)と(3)が流動性供給という観点で何をやりたいのか判らんという件でして、特に不胎化吸収の停止がワケワカランとゆー所です。超過準備にマイナスチャージをするという事は基本的に参加者が超過準備を減らすインセンティブを与えれる訳で、特に資金繰りや流動性確保に余裕のある金融機関は極力超過準備を減らそうとするでしょうとなっている中で、吸収を停止する事に何の意味があるのか判らんにも程があるというものです(会見で別の観点から質問があって説明をしていたが説明を読むと意味がかなり不明)。

でまあ超過準備マイナスですから基本的に資金繰りに懸念が無ければ不要な流動性は持たないというのが合理的という事になるでしょう、となりますと、これ裏を返しますと「超過準備を大きく保有している金融機関は流動性確保に不安があるという事を意味すると受け止められる可能性がある」という話でもありまして、そらまあペナルティー金利が設定されているのですから当たり前ですけれども、これはつまり「超過準備保有に対するStigmaが発生」という話にもなりかねない訳で、まあ実際にそこまでの話に直ぐに繋がるのか判らんですけれども、まあそういう可能性はある訳でして、その辺りもまあ悪手だなあと思う次第。

んでもってスティグマ云々はさておくにしても、基本的には超過準備を減らしていくのが金融機関の合理的な行動になりますので、流れとしては超過準備を減らす方法としては、個別行ベースでは国債買うというのもアリエールですが、システム全体としてはそれは別の個別行に対して超過準備が発生するだけの事ですので、基本的にシステム全体として発生する現象は(1)期落ちになるMROやLTROをそのまま返済する、(2)銀行券の形で準備預金を取り崩す、という形になるでしょうという事ですが、まあ(2)はさすがにコスト掛かるからそうはならないと思う(つまりマイナス金利を深くすると銀行券需要が出てくるという事です、各行と連日中銀との間で現送車が行き来する姿とか想像するとシュールですが^^)のですが、まあ基本的に(1)の現象がこれから起きるでしょうという所ですな。

となりますと、限界的には翌日物のEONIA金利がぶれやすくなる訳で、特にユーロシステムの場合は日銀のような細かい調節を実施する訳ではないですから、超過準備がほとんどない状況ですと資金需給のブレによって翌日物金利が大きく動きやすくなる可能性は高まる罠(その点も勘案しているのかどうか知らんですが、ユーロシステムの預金準備率は高めなので超過準備をカツカツにしたとしてもリアル資金繰り部分でどうこうという話にはならない)という事になりますぞな。

まあそれに対してはMROがフルアロットメントで実施されますからそちらで担保というのはありますけれども、つーてMROは毎日実施しているようなファシリティーでもありませんので、まーやはり翌日物金利はぶれるでしょうなあと思います。

結局の所今回のマイナス金利導入というのは他の施策と並べると実務上の矛盾が生じるという問題がありますし、流動性吸収という意味でもどうなのと思いますが、先ほどの与太話ではないですがブンデスバンクの罠なのかも知れませんけど、まあそれよりは「マイナス金利」というのを事前にECB高官が吹聴してしまったせいで引っ込みが付かなくなった(恐らく今回マイナス金利やらないとユーロが盛大に失望でユーロ高になっていたんでしょ)というのもデカイと思います。で、良く良く考えるとマイナス金利吹いていたのはブンデス方面だったような気もするんですが・・・・・・・・・・・(^^)。


さてまあ(2)なんですけれども、これがまた微妙で(会見で説明していた)4000億ユーロの資金を金融機関が仮にフルに利用しますとなったとして、じゃあそれは何に使うのよという事ですが、何せ借入金利的には超過準備対比で35bpのコストが掛かっている訳で、この分でよーしパパ2018年9月までの期日の債券買ってウハウハ(ただし貸出が減ったら2年後には期日前返済の刑になる)だぞーとかそういう事になるという想像もあって短い所の金利が盛大に下がった訳ですが、実際問題としてはそういうオペレーションって資本の無駄遣いのような気もしますし、大体からしてAQR(資産査定)とかされている中でこの7%部分が全部掴み金だヒャッハーとかいう話になるのかねというのは少々謎。

何となくこれで負債サイドのデュレーションを長くした分はMROやLTROをせっせと返済してしまうといかそういう風になりそうな気がしますし、まあ金利の引き下げ効果についてはイニシャルの4000億ユーロ部分が効きそうな気はしますが、それ以降の貸出増加のインセンティブになるのかはかなり謎な気がします。

まあ日銀の貸出増加支援もそうなのですが、この手の固定金利で出してやる系の施策というのは金利先高観が発生するとか、資金需要が発生して放っておいても貸出が増える、というような時に凶悪な効果を発揮するものであって、欧州の場合は今まさに金融機関の資産査定をおっぱじめている中なのでどうなんでしょうねえ感はあるのでして、貸出増加支援に本当になるのかは謎としか申し上げようがありません。

#という辺りが論点のような気がするが漏れがあるかも知らん


・マイナス金利のメリットとしてナントカ発見器というかナントカホイホイというか

なおたまたま目についただけで殊更にこの記事を晒し物にしようという意図ではありません。

http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0EH03320140606?sp=true
ECB、マイナス金利など追加緩和決定:識者はこうみる
2014年 06月 6日 10:15 JST

ここでも誰とは申しませんが、「大規模流動性が供給」とか「量的緩和実施へ」とか説明している方がいまして、いやだから超過準備にマイナス金利をチャージしているんだから金融機関は超過準備を持たなくなるだろう貴殿の頭には虫でも湧いてらっしゃるんですかと小一時間問い詰めたい方がおいででして、今回のマイナス金利に関してはそういう意味ではナントカ発見器と申しますかナントカホイホイと申しますかというリトマス試験紙的な効果は抜群にも程がある(金曜朝のモーサテも「超過準備が貸出に回ることが期待されます」とか寝言を仰せになっていたのは金曜に悪態をついた通り)訳で、こういうコメントをするバカスケに対して金融政策に関するコメント取りに行ったりレポート出させたりするなよと関係各位におかれましてはお願い致したい所存でありますな。


○ということでドラギ総裁の落語である(たぶん終わらないので続く)

今朝は頭が整理された積りだったが書いてみるとイマイチ整理されていない論点整理駄文で時間を食ったのでドラギ総裁の落語は多分明日にも続くのだが、この間に佐藤審議委員の会見とか調節年報とかのネタもあるのであじゃぱーとしか申し上げようがない(汗)。

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140605.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 5 June 2014


・利下げは打ち止めという話

まずは冒頭の説明から。

『The decisions are based on our economic analysis, taking into account the latest macroeconomic projections by Eurosystem staff, and the signals coming from the monetary analysis. Together, the measures will contribute to a return of inflation rates to levels closer to 2%. Inflation expectations for the euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%. Looking ahead, the Governing Council is strongly determined to safeguard this anchoring.』

でまあ質疑応答の方でもうちょっと詳しく言及していますが、ここにありますように「インフレ期待は引き続きアンカーされている」という認識を示していまして、今回の措置については物価の低迷が続く中での「下振れリスク対応」であり「金融政策のトランスミッションメカニズムの強化」であるという形になっています。でまあそのトランスミッションメカニズムを強化するのに超過準備を減らす施策実施してどないすんねんとは思いますが。

『Concerning our forward guidance, the key ECB interest rates will remain at present levels for an extended period of time in view of the current outlook for inflation.』

ここに関しても質疑応答で質問が出ていましたが、従来は先行きの金利に関して「現在のレベルまたはそれ以下を継続」だったのが今回「それ以下」が無くなっておりまして、会見での説明では打ち止めと明確には要っていませんが、「ローワーバウンドに達した」という言い方をしていますので、まあ基本的には利下げは打ち止めという話ですな。

『This expectation is further underpinned by our decisions today. Moreover, if required, we will act swiftly with further monetary policy easing. The Governing Council is unanimous in its commitment to using also unconventional instruments within its mandate should it become necessary to further address risks of too prolonged a period of low inflation.』

毎回のインチキ的なクオリティーですが、そら「必要がある時に必要な施策を取る」のはunanimousだわなと思うのですが、この威勢の良すぎる物言いで段々マズーになっていると思う。


・各種施策の説明部分

『Let me now briefly describe the individual measures decided today. Further details will be published at 3.30 p.m. on the ECB’s website.』

要綱ださないで会見するというのも良く考えたら無茶苦茶だが、質問されたら困る部分を「詳しくはWebで」攻撃で逃れるという荒業も使える(某どこかの中央銀行は「詳しくは背景説明を含む全文でご説明しています」としてスルーしたけど翌日に全文見たら載ってねえええという事案があったような無かったような)のです。

『First, we decided to lower the interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem by 10 basis points to 0.15% and the rate on the marginal lending facility by 35 basis points to 0.40%. The rate on the deposit facility was lowered by 10 basis points to -0.10%. These changes will come into effect on 11 June 2014. The negative rate will also apply to reserve holdings in excess of the minimum reserve requirements and certain other deposits held with the Eurosystem.』

超過準備および各種預け金のチャージに関してはまあこの通り。

『Second, in order to support bank lending to households and non-financial corporations, excluding loans to households for house purchase, we will be conducting a series of targeted longer-term refinancing operations (TLTROs).』

何で住宅ローンを抜くのか知らんけどターゲットLTROの導入な。

『All TLTROs will mature in September 2018, i.e. in around 4 years. Counterparties will be entitled to borrow, initially, 7% of the total amount of their loans to the euro area non-financial private sector, excluding loans to households for house purchase, outstanding on 30 April 2014. Lending to the public sector will not be considered in this calculation. The combined initial entitlement amounts to some 400 billionユーロ.』

ユーロのフォントが無いから勘弁という事ですが(汗)、4000億ユーロはイニシャルで枠として発生するようですな。まあここの数字は正確でしょう。

『To that effect, two successive TLTROs will be conducted in September and December 2014. In addition, from March 2015 to June 2016, all counterparties will be able to borrow, quarterly, up to three times the amount of their net lending to the euro area non-financial private sector, excluding loans to households for house purchase, over a specific period in excess of a specified benchmark. Net lending will be measured in terms of new loans minus redemptions. Loan sales, securitisations and write-downs do not affect the net lending measure.』

3倍貸すとか貸出減ったら返済なとかそういう話で、貸出金を証券化した場合も貸出を伸ばした扱いになりますということですので、証券化したものをアウトライトでECBが購入するとさらに効く・・・・かも知れませんが良く判らん。

『The interest rate on the TLTROs will be fixed over the life of each operation, at the rate on the Eurosystem’s main refinancing operations (MROs) prevailing at the time of take-up, plus a fixed spread of 10 basis points. Starting 24 months after each TLTRO, counterparties will have the option to make repayments. A number of provisions will aim to ensure that the funds support the real economy. Those counterparties that have not fulfilled certain conditions regarding the volume of their net lending to the real economy will be required to pay back borrowings in September 2016.』

金利とかの条件関係ね。


『In addition, the Governing Council decided to extend the existing eligibility of additional assets as collateral, notably under the additional credit claims framework, at least until September 2018.』

適格担保要件の緩和措置を継続しますとの由。

『Third, the Governing Council decided to intensify preparatory work related to outright purchases in the ABS market to enhance the functioning of the monetary policy transmission mechanism. Under this initiative, the Eurosystem will consider purchasing simple and transparent asset-backed securities with underlying assets consisting of claims against the euro area non-financial private sector, taking into account the desirable changes in the regulatory environment, and will work with other relevant institutions to that effect.』

ABS買う買う詐欺の部分な。

『Fourth, in line with our forward guidance and our determination to maintain a high degree of monetary accommodation, as well as to contain volatility in money markets, we decided to continue conducting the MROs as fixed rate tender procedures with full allotment for as long as necessary, and at least until the end of the reserve maintenance period ending in December 2016. Furthermore, we decided to conduct the three-month longer-term refinancing operations (LTROs) to be allotted before the end of the reserve maintenance period ending in December 2016 as fixed rate tender procedures with full allotment. The rates in these three-month operations will be fixed at the average rate of the MROs over the life of the respective LTRO. In addition, we decided to suspend the weekly fine-tuning operation sterilising the liquidity injected under the Securities Markets Programme.』

MROとLTROのフルアロットメント実施期間延長とSMP不胎化オペ停止とかその辺の話。

で、経済の説明部分がこの先にあるのですが、そちらは飛ばして質疑応答から少々、というか時間が無いので明日に続きます。


・追加利下げの可能性、金融緩和効果が国債市場で留まる可能性の指摘

時間がアレの為最初の2つの質問だけ行きますが、まあその後もオモロイですよ。なお前半の方が比較的オモロイ。

『Question: I think I need 27 questions - just joking. I'll take two, to please everybody else.』

ワロタ。

『The first question is on forward guidance. I noticed you dropped the lower part of the interest rates. Does that mean you can exclude any further interest rate cuts no matter what?』

さっきの「現在またはそれ以下の水準」部分な。

『And the second question on the targeted LTROs. How exactly will you make sure that banks will use the money in a way you would like them to use it? Will there be any extra reporting standards introduced that you can actually see the money will land at the real economy and not somewhere else?』

イイシツモンダナー

『And if I may follow up on a second question on the LTROs related to this, the 7 percent number, I was wondering if that's based somehow on the Bank of England Funding for Lending scheme, and if you could elaborate very briefly to what extent that is related or not. Thank you.』

FLSの真似ですねわかりますとは嫌味。

ドラギ先生のお答え。

『Draghi: On the first question, I would say that for all the practical purposes, we have reached the lower bound. However, this doesn't exclude some little technical adjustments and which could lead to some lower interest rates in one or the other or both parts of the corridor. But from all practical purposes, I would consider having reached the lower bound today.』

ということで、コリドアの金利をいじる可能性などのテクニカルなのはあるけれども、基本的にはローワーバウンドに到達したとな。

『The second question is about how we make sure that this credit-enhancing measure is actually going to be used to lend to the real economy. The answer is yes. You're absolutely right, there are going to be additional reporting requirements. The spirit underlying this measure is the following really: First of all, the ultimate view, don't forget, is always price stability, to ensure the transmission from the financial-monetary economy to the real economy, with the objective of achieving price stability. The underlying spirit is that we want to enhance lending to the non-financial companies in the private sector. Also there are several provisions here that would require enhanced reporting on the use of the initial allocation and on the use of the quarterly allocations. So there will be checks.』

だいぶ煙に巻いていますが、「物価の安定の為に金融政策のトラスミッションメカニズムを強化する」というために「クレジットエンハンシングメジャー」を導入しましたよという話をしておりますが、肝心の質問にあまり答えていないように見えますが、後でもそういう説明でお茶を濁すのがドラギ俊彦クオリティ。

『There will also be, as I said, a press statement at 3.30 going through various details like that and also debriefings by the ECB staff on this. But there will be checks.』

詳しくはWebで攻撃とな。

『The second intention is not to interfere with the AQR and the comprehensive assessment. And the third is not to incentivise the weak banks. So that's how this has been conceived. 』

AQRやっている中で3倍だすといってもクオリティーが悪い貸出に対するインセンティブにはならないとかそういう説明ですかねこれ。

『The third question is part of the second, in a sense. We certainly looked at the other central banks' experiences with this, and especially Bank of England. Of course, the final result is fairly different from the Bank of England's.』

ワロタ。


・流動性に関する説明部分が混乱している件について

次の質疑である。

『Question: Given the weakening in your inflation outlook, why didn't you go ahead and do a broad-based asset purchase program today, because you've mentioned that as one of the options if you have a weakening in the medium-term inflation outlook. Why didn't you just go ahead and do QE?』

何でQEを実施しないのかと。

『My second question is on the SMP sterilisation suspension. You've said you sterilised these purchases and now you're not going to do it any more. What does this say about how ironclad your commitment is to sterilise purchases under OMT?』

SMPおよび(実施していないけど)OMTでは不胎化吸収をするのが原則(キリッ)って話だった筈だが何で今回吸収停止するねんと。

俊ちゃんもといドラギ総裁。

『Draghi: Let me say that we've done this. We think it's a significant package. Are we finished? The answer is no, we aren't finished here. If need be, within our mandate, we aren't finished here.』

ドラギ先生の挑戦はまだまだ続きます!!!ドラギ先生の次回作にこうご期待下さい!!!!!

・・・・・と言って打ち止め感をださせないのは重要ですからね(棒読み)。

『The second point is actually quite a good question. Let me answer this way. The main reason to commit to sterilisation, by my predecessor first and by myself later, was based on the effects, on the potential effects that this additional liquidity might have on inflation. When the SMP started, the inflation rate was above 2 percent. Now we are in a completely different world, so that now this decision actually takes place in the background characterised by low inflation, a weak recovery, weak monetary and credit dynamics. So that's the reason for suspending this commitment.』

ということで、SMP導入当時は物価が2%以上というような状態でしたので、SMPによって供給された追加の流動性がインフレに対して何らかの影響を与える可能性がある、と当時および我々は認識していました、という話をしている訳ですが、それはそれとしてまあ理屈は通っている(今はインフレが低いから無問題という説明じゃな)のですが、そうなりますと益々超過準備吸収を促進するマイナス金利導入は何の意味があるのでしょうかという話になる訳で、ECB内部でもマイナス金利の影響に関しては何かちゃんと分かって居ないのではないかという気がする訳で、何か適当な言い訳をしてそのうちマイナス金利をあっさり撤回するに100ドラクマと言った所です。

『OMT has nothing to do with this. It's a completely different program. But the Vice President points out to me that we never said that we would sterilise with OMT. But anyway, it's a completely different program.』

ふむ。

#すいません冒頭だけのご紹介になってしまいました時間ががががが(土日あるなら事前準備できるだろうというツッコミはしないように)





2014/06/06

お題「ECBマイナス金利は底引き網で適用だがさて・・・・・・/佐藤審議委員の講演が色々良い論点提示なので読むべし」

なんか「更なる追加策も検討」がサプライズとモーサテの後講釈が言っているけど、んなもん「ドラギ先生の次回作にご期待ください」が続くの当たり前じゃネーノとおもうのですけれども。

で、「ECBに預金する際に利子を支払うので企業や個人への融資拡大が期待」という解説を未だにしている(しかも一度ならず二度もしてやがる)モーサテが経済番組の看板を掲げるのは誤認勧誘にあたるとしか申し上げようがないので可及的速やかに入検されることをお勧め致したいし、その説明に(解説コーナーで)ダメ出しをしないゲスト解説のお方は何の為に存在しているのか貴殿はもしかして置物でいらっしゃいますかと小一時間問い詰めたい。

と思ったらモミーテレビがこういう指摘してるぞおい大丈夫かテレひがし。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140606/t10015015691000.html
欧州中央銀行の異例の政策 疑問視の声も
6月6日 4時19分

『この「マイナス金利」と呼ばれる政策は金融機関の収益を圧迫し、逆に貸し出しが減るおそれが指摘されるなど、効果を疑問視する声も出ています。』(上記URLより)

(;∀;)イイシテキダナー

(お断り)なお、今朝は明らかにヘビーなネタを2本同時に突っ込んでおりまして、駄文の分量最後に確認したら過去最大分量を軽く3割ほど上回るという大増量状態になっておりまして(引用が多いせいもある)、誠に申し訳ございませんがお付き合いください。


○短国入札ェ・・・・・・・・・・(メモ)

昨日の3M短国入札。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140605.htm

(3)募入最低価格 99円98銭8厘5毛(募入最高利回り) (0.0461%)
(4)募入最低価格における案分比率 76.0283%
(5)募入平均価格 99円98銭8厘8毛 (募入平均利回り) (0.0449%)

ということで微妙に強いかなという感じだったのですが、いわゆる不明玉多くてセカンダリーでいきなりショートカバーとなって3bpレベルに低下して日本相互証券さんの引けも3.4bpとかナンジャソラの展開。まあ今朝のECBの思惑もあったのかも知らんがおいおいおいという感じでして、今日の6Mどうなりますねんという所ですな。

でまあそのECBですけどね。


○ECBの追加緩和とな

・最初の公表内容

これは日本時間20時45分のリリース。
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr140605.en.html
PRESS RELEASE
5 June 2014 - Monetary policy decisions

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB took the following monetary policy decisions:

1.The interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem will be decreased by 10 basis points to 0.15%, starting from the operation to be settled on 11 June 2014.

2.The interest rate on the marginal lending facility will be decreased by 35 basis points to 0.40%, with effect from 11 June 2014.

3.The interest rate on the deposit facility will be decreased by 10 basis points to -0.10%, with effect from 11 June 2014. A separate press release to be published at 3.30 p.m. CET today will provide details on the implementation of the negative deposit facility rate.

The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today. Further monetary policy measures to enhance the functioning of the monetary policy transmission mechanism will be communicated in a press release to be published at 3.30 p.m. CET today.』

会見が先で新たな政策フレームの紙が後から出るという謎の仕様はECBの毎度の話なのですけれども、マジでこれはいつ見ても何のためにこの順序にしているのかさっぱりワカランチ会長でございます。

ということでMRO金利が0.15%に引き下げという謎の下げ方ですが、10bpにすると日銀と同じだから避けたんですね判ります(^^)。で、預金ファシリティーマイナスにしましたがさてどういう運用になるのかというのは最初にこれが出た時点だとまだ謎なのでした。

今回のコリドアは▲0.10%〜0.15%〜0.40%ということで上下25bpのコリドアになっているので、まあ50のコリドアを念頭に置いたと思うのですが、この15bpというMRO金利に何かのしょぼさを感じるのは気のせいですかそうですか。


で、ドラギ先生の落語を見る前にあっさり寝てしまったアタクシなので落語の前に後から出たリリースの方を先に読んでみるのだ。というのはドラギ先生のインチキ解説を先に読むと騙されそうな気がするからなのだが・・・・・・・・・


・色々な要綱:マイナス金利は所要準備以外はほぼチャージですかな

まずはマイナス預金金利のリリース。

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr140605_3.en.html
PRESS RELEASE
5 June 2014 - ECB introduces a negative deposit facility interest rate


『・Deposit facility interest rate cut effective as of 11 June 2014』

それはさっきも見た。

『・Negative rate to apply also to average reserve holdings in excess of the minimum reserve requirements and other deposits held with the Eurosystem』

マイナス金利は超過準備の平均保有額や、ユーロシステムの他のデポジットに対しても課せられるとは要するに超過準備部分はマイナス金利とな。で、その解説。


『When deciding to lower the key ECB interest rates at its meeting today, the Governing Council of the ECB took the decision to cut the interest rate on the deposit facility to -0.10%. This change will come into effect on 11 June 2014, together with the changes to the interest rates on the main refinancing operations and on the marginal lending facility.』

それはさっきも見た。

『The negative deposit facility interest rate will also apply to:

(i) banks’ average reserve holdings in excess of the minimum reserve requirements;
(ii) government deposits held with the Eurosystem that exceed certain thresholds that
will be set in the relevant Guideline to be published by 7 June;
(iii) Eurosystem reserve management services accounts if not currently remunerated;
(iv) participants’ account balances in TARGET2;
(v) non-Eurosystem NCB balances (overnight deposits) held in TARGET2; and
(vi) other accounts held by third parties with Eurosystem central banks when stipulated that they are not currently remunerated or are remunerated at the deposit facility rate.』

マイナス金利の適用範囲が結構広いなという感じでして、超過準備、政府預金(一定の部分はマイナス免除)、ユーロシステムのリザーブマネジメントサービスの口座にあるもののうち無利息となっているもの(あまり詳しくないので勉強しておくが、恐らくこれは無利息にしておくと無利息当座預金の抜け穴になってしまうのでそれを塞ぎに行っているのだと思う)、ターゲット2のアカウントにあるユーロシステム外の翌日物預金や、その他サードパーティーがユーロシステムに保有する預金などで無利息あるいは預金ファシリティー金利が適用されているもの(とか何とかいう感じだがこれもまた先ほどと同じ理屈で穴を塞ぎに行っているのだと思う)。

ということで尻抜けにするとさすがにバレるのでせっせと穴を塞いで、要するに所要準備に相当する部分以外はマイナス金利を適用しまっせという話になっているという事は把握しましたが、リアルマイナス金利やるとはこれはちとサプライズだがこれでは流動性が縮小してしまうではあーりませんかと思うのだがそれで良いのかECB。


・金融政策効果の波及メカニズムを強化する施策とは:ターゲットLTROという貸出増加支援策

これURL見れば判るように出ている順の逆順にネタにしていますので念の為。

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr140605_2.en.html
PRESS RELEASE
5 June 2014 - ECB announces monetary policy measures to enhance the functioning of the monetary policy transmission mechanism

『In pursuing its price stability mandate, the Governing Council of the ECB has today announced measures to enhance the functioning of the monetary policy transmission mechanism by supporting lending to the real economy. In particular, the Governing Council has decided:』

物価安定のマンデート達成の為に以下のような金融政策波及メカニズムの活性化をするということで、それは「貸出を実体経済に出す」ことをサポートするらしい。

しかし超過準備にマイナス金利を課すという事は普通に金融機関に対してコストを課すことになる訳で、コストを課された金融機関は預金金利を下げるか貸出金利を上げるかして対応しないといけないので、金融政策効果を実体経済に波及させたら民間のコストが上がる話ですがなという所ですが、もちろんMRO金利の下げの方が大きいからそんなこたあ無いという話をするんでしょうけどね。銀行経営的に実際問題としては明確に超過準備にコストが掛かるというのはやはり問題になると思う。

『1.To conduct a series of targeted longer-term refinancing operations (TLTROs) aimed at improving bank lending to the euro area non-financial private sector [1], excluding loans to households for house purchase, over a window of two years.』

『[1]The euro area non-financial private sector is defined as euro area households and non-financial corporations.』

ターゲットLTROですとな。ということで詳しくはその先にあります。

『2.To intensify preparatory work related to outright purchases of asset-backed securities (ABS).』

ABSの買入に関しては今後更に準備を進める、という毎度のやるやる詐欺ですかそうですか、という事でターゲットLTROですけどね。

『Modalities of the series of TLTROs』

ということで。

『Counterparties will be entitled to an initial TLTRO borrowing allowance (initial allowance) equal to 7% of the total amount of their loans to the euro area non-financial private sector, excluding loans to households for house purchase, outstanding on 30 April 2014. In two successive TLTROs to be conducted in September and December 2014, counterparties will be able to borrow an amount that cumulatively does not exceed this initial allowance.』

ユーロ圏の非金融民間セクター向け貸出(ただし住宅ローンを除くようだが)の2014年4月末の残高に対して7%の枠をイニシャルアローワンスとして、9月と12月のターゲットLTROではこのイニシャルアローワンスまでの借り入れが可能ですとな。

『During the period from March 2015 to June 2016, all counterparties will be able to borrow additional amounts in a series of TLTROs conducted quarterly. These additional amounts can cumulatively reach up to three times each counterparty’s net lending [2] to the euro area non-financial private sector, excluding loans to households for house purchase, provided between 30 April 2014 and the respective allotment reference date [3] in excess of a specified benchmark.』

『The benchmark will be determined by taking into account each counterparty’s net lending to the euro area non-financial private sector, excluding loans to households for house purchase, recorded in the 12-month period up to 30 April 2014.』

『[2]Net lending will be measured on the basis of the transactions concept of the BSI statistics, i.e. new loans minus loan redemptions, adjusted for the impact of loan sales and securitisations.』

『[3]The allotment reference date is defined as the most recent month for which net lending data will be available for each TLTRO allotment.』

どこぞの貸出増加支援とかFLSとかに似ていますが、来年の3月から再来年の6月まで四半期ごとにターゲットLTROのオファーが行われまして、その限度額は(証券化した貸出分は補正されるようですが)貸出増加額の3倍(2倍にしない辺りが日銀のトレースをしたくないというのが判るわw)までターゲットLTROの限度が設定されるそうな(ちょっと訳が雑ですいません)。

『All TLTROs will mature in September 2018.』

全てのターゲットLTROの期日は2018年9月に来るそうな(なお次の所にあるように期日前返済可能のようだ)。

『The interest rate on the TLTROs will be fixed over the life of each operation at the rate on the Eurosystem’s main refinancing operations (MROs) prevailing at the time of take-up, plus a fixed spread of 10 basis points. Interest will be paid in arrears when the borrowing is repaid.』

で、この貸出金利は貸出実行時のMRO金利にスプレッド10bp乗っけるという事で、ここは今回まあ少し真面目にやった所で、従来のLTROなどは「期中のMRO金利を変動金利で適用」だったのですが、4年の貸出をするのに変動で実施しても借入サイドにメリットが無い訳ですから(昔のLTROは流動性対策だったから変動金利でもメリットあった訳ですが今は流動性対策でLTRO借りる意味に乏しい)、固定金利にしたのはまあ順当。ただし10bpのスプレッド乗せるのがいじましいというかセコイというか。

ということで4年の固定負債が借りれる、というのはメリットなのですが、一方で先ほどにあるように超過準備がマイナスなので、これをホイホイ借りたとしてもその分は従来のMROやLTROの返済に回ってしまいそうな気もする所ですので、マイナス金利をやっている間はそこまで効果が出るのか少々謎な面がありますな。

いやまあ、超過準備保有に関してMROとの金利差という概念で言えばゼロ-25bpでもマイナス10bp-15bpでもスプレッドは同じなのですが、企業的に言って「マイナスとなる資産の保有というのは如何なものか」という話になる訳で、ゼロならばまだ許容されてもマイナスというのは明らかに持てないという事になるのが企業財務というものだと思いますので、折角この政策を投下しても、まあこれで増えた分については見合いでMROとか昔のLTROの返済に回りそうですし、必要以上には借りないような気もしますけどねえ。

なお、全ての借入の期日を2016年9月に置いているのは、恐らくこの施策をまともに全部「4年貸出」にしてしまうと金利がまともに付けられるようになった時にやり過ぎにも程がある施策になるという点を懸念しているんでしょうねと思います。

『Starting 24 months after each TLTRO, counterparties will have the option to repay any part of the amounts they were allotted in that TLTRO at a six-monthly frequency.』

さっきの期日前返済の話はここにありました。借入から2年後からは返済オプションが半年ごとにあるそうな。

『Counterparties that have borrowed under the TLTROs and whose net lending to the euro area non-financial private sector, excluding loans to households for house purchase, in the period from 1 May 2014 to 30 April 2016 is below the benchmark will be required to pay back borrowings in September 2016.』

で、貸出枠いっぱいまで借りている場合にはローンが減った場合はそれに対応する新たな枠(減額となる枠)の所まで返済しないといけませんよというFLS方式ですな。

『Further technical details and an exact calendar of the operations will be announced in due course. 』

だそうです。

次が『Intensification of preparatory work related to outright purchases of ABS』というのですが、まあ要するに頑張りますやりますという話ですな。

『The Governing Council has decided to intensify preparatory work related to outright purchases in the ABS market to enhance the functioning of the monetary policy transmission mechanism, given the role of this market in facilitating new credit flows to the economy. Under this initiative, the Eurosystem will consider purchasing simple and transparent ABS with underlying assets consisting of claims against the euro area non-financial private sector, taking into account the desirable changes in the regulatory environment, and will work with other relevant institutions to that effect.』

『The Eurosystem will work out the appropriate modalities for this policy measure, including the key requirements that the ABS will have to meet in order to be eligible. Further details of the initiative will be announced in due course.』

つまりやりますやりますという話です(おい)。


・MRO、3か月LTROの2016年末までのフルアロットメント継続、資産買入不胎化吸収オペの停止など

順序が逆ですいませんすいません。
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr140605_1.en.html

PRESS RELEASE
5 June 2014 - ECB announces features of monetary policy operations with settlement until December 2016

ということで。

『The Governing Council of the ECB has today decided to continue conducting its main refinancing operations (MROs) as fixed rate tender procedures with full allotment for as long as necessary, and at least until the end of the Eurosystem’s reserve maintenance period ending in December 2016.』

MROのフルアロットメントの貸出を2016年12月にエンドの来る準備預金積み期間まで継続します(キリッ)ということですが、少なくともマイナス金利やっているうちは1ミリも意味が無いので、期限を2016年末とか結構非常識な所まで伸ばしましたな。

『Furthermore, the Governing Council has decided to conduct the three-month longer-term refinancing operations (LTROs) to be allotted before the end of the Eurosystem’s reserve maintenance period ending in December 2016 as fixed rate tender procedures with full allotment. The rates in these three-month operations will be fixed at the average rate of the MROs over the life of the respective LTRO.』

3か月LTROについては2016年12月エンドの来る準備預金積み期間まではフルアロットメントで継続し、適用金利は従来通りに期中のMRO金利を変動金利で適用(実際には期中金利の平均という形です)しますということで、期限を非常識な所まで伸ばしたのはほほうという所ですが少なくともマイナス金利やっているうちは以下同文。

『In addition, the Governing Council has decided to discontinue the Eurosystem’s special-term refinancing operations with a maturity of one maintenance period, following the operation to be allotted on 10 June 2014.』

6月からは積み期間に合わせたスペシャルタームリファイナンスオペを停止するみたいですな。

『Finally, the Governing Council has decided to suspend the weekly fine-tuning operation sterilising the liquidity injected under the Securities Markets Programme, following the operation to be allotted on 10 June 2014.』

で、資産買入の不胎化吸収も停止という事で。


○なおドラギ総裁の落語はパス

ということで、実際の施策を並べてみたのですが、マイナス金利というのが盛大に他の施策と矛盾していまして、量を出したいのか出したくないのかがさっぱりワカランという感じでして、何というか整合性の取れていない政策っつーか一体全体何をやりたいのかが判らんというのが印象です。

なお、こちとらドラギ先生の落語タイムとか白河夜船状態でございましたし、最初のリリース見た時点でまたも毎度のECBクオリティかという「会見が先で要綱が後」攻撃なので、これは実際の影響に関しては会見読む前に要綱を読まねば!!!!ということで先に要綱ネタを突っ込むという荒業をやってみましたが如何でございますでしょうか(^^)。



ではECBネタで皆様盛り上がっていると思いますが、昨日の佐藤審議委員の講演を忘れてはいけませんので以下お付き合いくらはい。


○佐藤審議委員講演から:色々な論点が示されています

大分の金懇での佐藤審議委員の講演であります。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140605a1.pdf
わが国の経済・金融情勢と金融政策
── 大分県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

まあ何ですな、ここの所非常に見苦しいテキストを連発で読まされておりました事もございまして、昨日はこちらのテキストを拝読して心が洗われるような気持になりましたが、あのオッペケペーズと比較論考するのがそもそも失礼ですかそうですか(^^)。

というのは兎も角として、今回の佐藤審議委員の講演は(も)幾つかの興味深い論点を示している(と思った)のでオヌヌメでありまする。

・消費税増税の影響について

前半の『2.内外経済・金融情勢』では景気認識に関しての話が展開されます。最初の小見出しは『(消費税率引き上げ後の国内経済・物価情勢)』です。

『国内経済の現状について、4 月の生産、販売統計等では国内民需に相応の消費税率引き上げの反動減がみられるが、基調としては、景気は底堅く推移しているとみられる。』

ふむ。

『留意すべき点は、想定されていたとはいえ一部マインド統計に弱めの動きがみられること、供給制約により駆け込み需要の反動減がやや見えにくくなっていることであろう。後者を補足すると、例えば自動車業界では、反動減に伴う減産は7-9 月期には全体として下げ止まるとみているが、一部には、供給制約からこの1-3 月期の受注残が積み上がり、4-6 月期に反動減の影響があまり出ない見込みの一方、7-9 月期以降が逆に不安との声もある。』

なるほど。

『このように、足許までは概ね想定通りとの声が多いなかでも反動減については引き続き警戒を要するが、やや長い目でみると、先行きは足許みられるベースアップ等、雇用・所得面のプラス影響により増税による実質可処分所得減のマイナス影響をどれだけ吸収できるかがポイントと思う。』

ということですが、雇用者所得の状況に関しての説明がありますが、基本的には雇用者所得は今後も総じて堅調に推移し、消費税率引き上げに対しては頑健という話になっています。で、消費増税の影響に関する結論はこうなります。

『増税後の消費者物価統計が、消費税要因を除けば、総合除く生鮮食品(以下、コア)で概ね前月並みの前年比上昇率であったことも、先ほどの基調判断を裏付ける材料の一つである(図表2)。事前には税率上昇分以上の値上げや値引きセールといったアネク情報が錯綜したが、全体としてみれば概ね消費者への税率上昇分の転嫁がなされたとみられる。』

『見方を変えれば、消費者が税率上昇分の転嫁を受け容れるほど需要の趨勢は底堅かったとも言える。夏場以降、駆け込みの反動減が一巡するにつれ、日本経済は緩やかな回復基調に復するとみている。』

ということで、消費税増税後の景気認識に関してはそんなに弱いという訳ではありません。


・足元までの物価推移に関して

『(成長率の下振れと物価の上振れの併存をどう見るか)』という小見出しから。

『ところで、昨年後半の日本経済は前半の年率+4%前後の高成長から同+1%前後へ減速した(図表3)。円安でも輸出の足取りが鈍かったことがその一因だが、輸入の大幅な増加も特筆すべきである。輸入は、堅調な内需や消費税率引き上げ前の駆け込みの動きから急増し、GDP 成長率を表面上押し下げた。』

ふむ。

『もっとも、ネット外需を除く国内需要に着目すると、昨年は年間を通じて年率+3%程度の成長ペースを保ったことから、経済にさほど減速感は生じなかった。』

これ重要。

『昨年後半のGDP 成長率下振れで今年度のゲタが下がるというテクニカルな要因もあり、先の展望レポートにおける政策委員会の見通し中央値は2013 年度とともに14 年度も下方修正となったが、輸出の回復に加え、内需の基調としての堅調さが続くもと、景気回復のメカニズムは維持されるとみている(図表4)。』

で、先ほどありましたように、消費税増税後の景気認識も特に弱い訳でも無いという話ですな。ちょっと飛ばしまして物価の話ですが。

『消費者物価上昇の要因として円安によるエネルギー価格上昇が挙げられる。』

いきなり木久扇師匠にしらっとダメ出しをしているのが実にチャーミングです。

『ただし、消費者物価(総合除く食料・エネルギー)(以下、コアコア)の前年比上昇率は直近4 月が消費税を除くベースで+0.8%と、エネルギー価格以外でも物価上昇がみられる。こうしたエネルギー要因以外での物価上昇について、私はデジタル家電類1の価格変化に注目している(図表5)。』

で、デジタル家電に関しては輸入浸透度上昇による円安効果の影響の拡大を指摘しています。

『デジタル家電類の消費者物価は2012 年2 月の前年比-22%台から2014 年2 月は同+6%台へ約30%ポイントの変化となり、コアコアの上昇に無視できない影響を及ぼした。』

そうですな。

『背景として、これらデジタル家電類の価格が極限まで下がり切るとともに家電業界の極端な安売り競争が終息に向かったことが挙げられる。』

ですです。

『デジタル家電類の価格低下一巡の背景としては、輸入浸透度上昇とともにこれらの製品が円安の影響を受けやすくなったことも見逃せない。背景として、国内家電業界の競争力及び価格支配力低下がしばしば指摘される。ただし、足許の円安一服のなかで、デジタル家電類の消費者物価はこの3-4 月は消費税要因を除くベースで前年比ほぼ横ばいとなった。また、5 月の東京都区部のコアコアは前月から前年比で0.2%ポイント伸び率が低下した。こうした為替円安傾向の一巡が今後物価に与える影響を注視する必要がある。』

ということで、ここでさらっと日銀執行部の最近の説明である所の「円安がこれ以上進行しなくてもプラスの需給ギャップによる影響とインフレ期待上昇によるフィリップスカーブの上方シフトによって物価目標の達成はヘーキヘーキ」という理論(それを超粗雑に言うと先般の師匠の落語になる)に艦砲射撃を加えているのがチャーミングです。


・主に海外のディスインフレの長期化リスク

海外経済の話がその後に続くのですがそちらはスルー致しまして、その後の『(海外経済のリスク)』から。

『以上の海外経済の見通しについては、上下双方向のリスクがあると考えられる。短期的には足許のウクライナ情勢等の地政学的リスクなどに着目しているが、個人的には、特に中長期的な米欧のディスインフレ傾向や潜在成長率低下の可能性を懸念している(図表10)。』

キタコレ!!!!

『とりわけ、ユーロ圏では、周縁国を中心にディスインフレ傾向が長引く恐れがある点には注意を要する。幾つかの周縁国を中心に、ユーロ高のもとで競争力を確保するために賃金抑制圧力がかかり続けると見込まれ、欧州委員会や欧州中央銀行(ECB)も今年と来年の物価見通しを下方修正している。』

その結果として・・・・・・・

『中長期の予想インフレ率はこれまで米欧ともに2%程度で安定しているとされ、ユーロ圏の政策当局にとってはそこが日本のような長期デフレに陥らないとの根拠の一つであった(図表11)。しかし、日本の経験では、低いインフレ率が長く続くことで人々の予想がバックワード・ルッキングに変化し、中長期の予想インフレ率も適応的に低下した可能性も示唆される。実際に、ユーロ圏でも、ディスインフレ傾向が続くもとで、経済主体や市場の短中期の予想インフレ率は、既に幾分低下してきている。』

キタコレですな。

『中長期の予想インフレ率の安定に揺らぎが生じれば、今後政策面で様々な対応がとられる可能性がある。既にECB はディスインフレ長期化のリスクに対し、非伝統的手段の活用を排除しない方針を明らかにしており、今後の政策運営に注目している。金融システムがなお脆弱性を抱えている点も引き続き念頭に置く必要がある。』

でまあこれに対しては追加緩和を実施したのはご案内の通り。で、米国ですけれども・・・・・・・・

『米国では、今のところデフレ懸念は見受けられず、目先的にはむしろ民間の短期の予想インフレ率も上振れている。しかし、シェール革命によりエネルギー価格が落ち着いていることもあって、インフレ率はこのところFRB の見通しを下振れ続けているだけに、やや長い目でみたときに、インフレ率が望ましい水準との対比で低位にとどまり続けるリスクを念頭に置く必要性を感じている。』

ということで、欧州に対する懸念よりは温度は相当低いですが、まあこちらもディスインフレのリスクを懸念しています。


・論点の提示としてと「潜在成長率の低下」に関連する事項

で、潜在成長率低下の話。

『また、世界経済の長期停滞を懸念する議論がやや目立ってきていることも注目される。』

キタコレ。

『例えば、Summers は米国では金融危機の前後を通じて実体経済に超過需要がなく、実際のGDP が潜在GDP の水準を大きく下回ったままで物価も落ち着いていることから、2000 年代後半から長期にわたり、完全雇用と整合的な均衡実質金利(自然利子率)の水準が-2〜-3%まで低下した可能性を論じている2。』

『1990 年代後半の金融危機や2000 年代以降の人口動態の変化等を背景に、需要が持ち上がりにくい状況が続いた日本の経験からすると危機後の長期停滞論は違和感が少ない。』

さいですな。

『Krugman はかつて日本の均衡実質金利が一時的に-4%程度まで低下したと主張していた3。もっとも、Summers は、経常収支黒字国の過剰貯蓄や資本財価格低下から生じる名目投資額の減少などを背景に、グローバルに均衡実質金利が、一時的でなく長期にわたり低下したとしている点が目新しい。』

ほほう。

『実際に均衡実質金利が長期にわたりマイナスの領域まで低下しているかどうかはさておき、IMF による最近の世界経済見通しがこのところほぼ一貫して下方修正続きであること、新興国もリーマン・ショック以前との対比で成長ペースが大きく見劣りすること等を踏まえると、需要の長期に亘る停滞や、労働投入や技術革新のテンポ鈍化を背景に、世界経済の成長力が単なる景気循環を超えて幾分低下した蓋然性は高いように思われる。』

>世界経済の成長力が単なる景気循環を超えて幾分低下した蓋然性は高いように思われる
>世界経済の成長力が単なる景気循環を超えて幾分低下した蓋然性は高いように思われる
>世界経済の成長力が単なる景気循環を超えて幾分低下した蓋然性は高いように思われる

キタコレですな。

『潜在成長率の低下などにより均衡実質金利が低下し、そうしたもとで需要の伸び悩みが慢性化しつつあると考えれば、足許の先進国のディスインフレ傾向や新興国におけるインフレ率の趨勢的な低下も理解できよう。』

とここまでは潜在成長率が低下している場合の話ですが、この逆の論点もありまして・・・・・・・・・・

『もっとも、即断は禁物である。潜在成長率や経済のslack の把握は容易でない4。インフレ率の低下の背景について、単に循環的なものか、あるいは上述のように構造要因に根差すものかは様々な議論があるほか、循環と構造の識別はしばしば困難である。』

『仮に、潜在成長率がさほど低下していなければ、足許のディスインフレ傾向は単に資本ストックや労働市場のslack を反映したもので、先行きslack の解消とともに、ディスインフレ圧力が軽減することもあり得る。このように、潜在成長率の見方次第でインフレの先行き、ひいてはマクロ政策への含意は変わり得るため、引き続き関心をもってこの問題を見守ってまいりたい。』

なるほどそうですなという所です。佐藤さんは恐らくこのトーンだと基本はインターナショナルにも前者を見ているようですけれども、後者の場合はグローバルな物価上昇圧力がだいぶ変わってくる話でもありますなという所ですな。


・金融政策のパートでは「供給力の天井」に関する論点と「物価と経済のバランス」に関する論点などが提示

つーことで次のパートは『3.当面の金融政策運営』ですが、引き続き物価の話で、先ほどはグローバルディスインフレーションの話でしたがこちらは日本の話になります。

『(量的・質的金融緩和の中間評価)』の部分ですが、足元で効果を発揮しているという展望レポートの評価については特段否定していませんが、留保もついていまして・・・・・・・・

『ただし、物価見通しの上振れといっても、いわゆるポートフォリオ・リバランスの進展や中長期的な予想物価上昇率の上昇といった「量的・質的金融緩和」の波及メカニズムが実施当初に期待されたほどには今のところ明瞭に観察されているわけではない。』

ですなあ。

『無論、それらを否定するわけではなく、金融機関のリスクテイク姿勢が徐々に積極化するといった限界的な変化はみられる。しかし、足許の物価上昇は、円安・エネルギー価格上昇とともに、相対的に生産性の低い非製造業中心の回復で経済が主に雇用面から意外に早く供給力の天井にぶつかりつつあることも影響しているように思われる。以下でこの点に触れる。』

置物副総裁の「失業率と実質GDPが改善しているからディマンドプルです(ドヤァ)」理論と比較しまして何というちゃんとした考察でしょう!!って比較するのがそもそも失礼ですねすいませんすいません。まあ置物は爪の垢を煎じて飲んで頂く事を希望致します。


で、『(物価上昇のメカニズム)』のパートに入ります。

『先行きの物価上昇メカニズムについて、4 月展望レポートでは、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスが、雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移していることを反映して労働面を中心に改善を続けており、最近は過去の長期平均並みであるゼロ近傍に達しているとみられることから、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は先行き着実に強まっていく、としている。』

「としている」という位ですから艦砲射撃タイムになりますよ。

『実際、人出不足によるボトルネックは各方面で生じており、その影響はアルバイト、パートなど非正規雇用の時給に現れている。とりわけサービス産業は相対的に労働集約的で賃金上昇の影響が価格に出やすく、外食などサービス価格にはそうした影響が既に出ているように見受けられる(前掲図表5)。』

URL先には図表もありますので図表を見ながら確認してくらはい。

『ところで、需給ギャップについては様々な推計方法があり、その水準は幅をもってみる必要があるが、足許の雇用情勢のタイト感や先の短観における生産設備過剰感の縮小等のマクロ情報を総合すると、需給ギャップはゼロ近傍かどうかはともかく、既に相応に縮小していると考えてよかろう。こうした需給ギャップの縮小が足許の物価に幾分影響を及ぼしているとみられる。』

ということで需給ギャップ縮小(あるいはプラテン)で物価が上昇してきてという執行部理論そのものはそうですねという話ですけれども・・・・・・・・・・

『ただし、これには需要面の持ち直しに加え、供給面の制約も影響しているとみられ、経済・物価の回復メカニズムとして日本銀行が本来目指している姿とは異なり得る点には注意を要する。』

>経済・物価の回復メカニズムとして日本銀行が本来目指している姿とは異なり得る点には注意を要する
>経済・物価の回復メカニズムとして日本銀行が本来目指している姿とは異なり得る点には注意を要する
>経済・物価の回復メカニズムとして日本銀行が本来目指している姿とは異なり得る点には注意を要する
>経済・物価の回復メカニズムとして日本銀行が本来目指している姿とは異なり得る点には注意を要する
>経済・物価の回復メカニズムとして日本銀行が本来目指している姿とは異なり得る点には注意を要する

・・・・・・・・・・(;∀;)イイシテキダナー

で、その背景説明に加えて、供給制約による物価上昇は持続的なものになり得ないという点を指摘していまして、MPMの議事要旨でかねてより指摘されている部分でもあるので、あの指摘は佐藤審議委員による指摘なんですね、というのが判るというものです。以下引用します。

『すなわち、リーマン・ショック以降、製造業の国内での設備投資が低迷したことから設備ストック蓄積のペースが鈍り、生産性も低下した結果、日本経済の潜在成長率が低下した可能性がある。非製造業中心の回復で雇用情勢が逼迫しているのも、非製造業の生産性が製造業対比劣ることが影響しているとみられる(図表12)。』

需給ギャップ縮小ヒャッハーと単純に喜んでいい話かという事ですな。

『もっとも、企業にとり、人出不足による賃金上昇は利益圧迫要因であり望ましくない。企業収益が人件費で制約されれば、設備投資が圧迫され、株価に影響が及び、結果的に賃金の伸びも持続的でなくなろう。望ましいのは、生産性の上昇に見合った賃金上昇である。』

法人減税するから賃金上げろとか円安になったから賃金上げろという話では持続的ではないということですねわかります。

『その意味で持続的な賃金の上昇には、例えば省力化投資等による非製造業の生産性底上げ等が必要なのであろう。そうした非製造業の生産性改善努力が製造業にフィードバックされ、全体として好循環が形成されれば、先行き潜在成長率が底上げされ、ひいては中長期的に2%の「物価安定の目標」達成の蓋然性も高まると思われる。』

つまり今の調子での物価上昇や賃金上昇が起きて瞬間風速で良い数値になってもそれは瞬間風速であるという認識ですな、中々結構な艦砲射撃が連続砲撃されております。

『足許は各所で人出不足が叫ばれ、雇用逼迫感が統計に示されている以上に強まっている印象があるが、供給面の制約から先行き経済が伸び悩むか、あるいは制約を梃子に一段の生産性向上を成し遂げ、新たな成長ステージに向かうか、その岐路にあるように思われる。』

まさにイイハナシダナーとしか申し上げようが無いですな。どこかの置物とかねえねえアタシがやったのよの人(なおアタシがやったのよ先生は良い話もしているんですけど自己アピール部分が無駄目立ちしているのと謎の俺様理論のせいで良い話が霞んでいる面も無いでは無い)とは大違い。


・物価安定の目標に関する論点および成長と物価の関係

その次が『(柔軟な金融政策運営の重要性)』というパート。

『ところで、昨年1 月「物価安定の目標」決定に際し、日本銀行は、金融政策が、物価安定のもとでの持続的成長を実現する観点から、経済・物価の現状と見通しに加え、金融面での不均衡を含めた様々なリスクも点検しながら、柔軟に運営していく必要があることを明示している。』

というのはマクラでして。

『柔軟な金融政策の重要性については、これまでも述べてきたとおりで、金融政策の効果は、経済活動に波及し、それがさらに物価に波及するまでに、長期かつ可変のタイムラグが存在するので、金融政策は、物価安定のもとでの持続的成長を実現する観点から、経済・物価の現状と見通しに加え、金融面での不均衡を含めた様々なリスクも点検しながら、先行きの見通しを踏まえつつ、柔軟に運営していく必要がある。』

ということでこの辺り以前も佐藤さん講演で主張していますが改めて確認の為に引用しますね。

『また、「日本銀行は2%の『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、『量的・質的金融緩和』を継続する」とのコミットメントを明示しているが、「安定的に持続するために必要な時点」の部分は私の理解では、見通しベースで判断するということである。』

フォーキャストターゲットの話と、先ほどの所にあるように物価と経済の関係に関する話でして・・・・・

『その点、「物価安定の目標」は単に物価を実績として2%に引き上げさえすればよいといった硬直的かつ表面的な枠組みではなく、柔軟性のある、経済実勢に即した実践的なものである。』

キタコレ!

『私は、4 月末の金融政策決定会合議事要旨に示されているように、政策委員会の中心的な見通し対比で物価の先行きを幾分慎重に見ているが、これは私が「量的・質的金融緩和」の効果に懐疑的であったり、そのメカニズムを否定しているからではない。』

ふむ。

『「物価安定の目標」は、もとより2%をピンポイントで目指す硬直的な枠組みではなく、上下双方向にアローワンスを持つ柔軟な枠組みであると私は理解しており、そうした理解のもと、その達成のハードルを柔軟に考えているのである。』

これも以前講演で説明している話ですが引用しますね。

『その点、「物価安定の目標」が目指すのは、物価だけが上昇するのではなく、全般的な経済情勢の改善とともに賃金が上昇し、それとバランスよく物価が上昇する世界である。日本銀行が単に物価上昇だけを追求していくといった誤解は避けなければならない。』

まあ執行部の従来の説明は(最近は給料泥棒の置物野郎まで低インフレと低成長というのは良くないとか今更お前何言ってるの2%インフレ目標で世界は変わるって言ってただろという風になっていますがそれは兎も角)まあ誤解じゃなくてその通りの話をしてましたがね。


・物価安定を判断する「物価」とは??という意外に重要な論点

これ重要な論点なのですが市場の皆さん意外にスルーしている件。

『また、こうした判断の基準となる物価指標についてだが、展望レポートにおける政策委員会の物価見通しが消費者物価のコアで示されていることから、「物価安定の目標」の達成度合いがあたかもコアのみで判定されるかのような誤解も見受けられる。』

うむ。

『しかし、「物価安定の目標」の定義は消費者物価(総合)であってコアではない。』

そうなのよ。

『だからと言って、私は「物価安定の目標」の達成度合いを総合指数のみで判定すると言っているわけでもない。』

では何で判断するのでしょうかと言いますと・・・・・・・・

『その時々の物価情勢を評価するに当たっては、一時的なかく乱要因の影響を取り除き、物価の基調的な変動を的確に見極めていく必要がある。その際、どの指標が適当かは国毎の経済構造に依存するが、日本銀行は、天候要因等で大きく変動する生鮮食品を除くコアを重視し、展望レポートにおける見通し計数もコアを採用している。』

『ただし、物価の基調を判断するに当たっては、それぞれの指標の持つ特性を十分踏まえつつ、総合やコア、あるいはコアコアのみならず、総合除く帰属家賃といった生計費に近い概念を示す指標、ひいては賃金を含む幅広い指標を丹念にみていく必要があり、特定の指数に政策が紐付きになっているわけではない(図表13)。』

という話ですが、ここで図表13を見ると例えば今の説明の中で「生計費に近い概念」という国民厚生上のインプリケーションがありそうな「総合除く帰属家賃」の数値はどうなってますねんとなりますと堂々の2%乗せとなっていたりしまして、フォーキャストターゲットの概念と合わせて考えますと味わいのある部分だと思いますよ。

なお、この「総合除く帰属家賃」に関しては先般の石田審議委員講演(ちなみに石田さんも「物価だけ上がれば良いと言うものではない」という事を明確に述べていました)でも言及がありまして、足元(当時の)で2%に乗っているという話をしているのがこれまた味わいがあるという物です。



・出口政策と長期金利や財政問題など

実質最後の(最後は大分県経済の話)小見出しは『(長期金利の動向)』であります。

『次に長期金利の動向について触れたい。市場参加者の物価見通しはこれまでの本行の中心的な見通しより低く、結果的に長期金利は本行の買入れの効果もあり低位安定している。先行きの長期金利は市場参加者の経済・物価見通し次第だが、消費税要因を除くベースのコアの上昇率が+1%台前半という状況が6 か月続いているなかで、今後、物価情勢と名目長期金利が整合的に形成されていくかどうかという点に注目している。』

「整合的に形成されていくか」キタコレ。

『ここで、改めて「量的・質的金融緩和」が名目長期金利に働きかけるメカニズムを確認すると、名目長期金利は、将来にわたる名目短期金利の予想値の平均にプレミアムを加えた値というのが一般的な理解である(図表14)。日本銀行は、「物価安定の目標」を安定的に達成するまで、粘り強く金融緩和を続けていくことをフォワード・ガイダンスとして述べており、これは「将来にわたる名目短期金利の予想値の平均」を押し下げる方向に作用する。一方、日本銀行は満期の長い国債を大量に購入することによって「プレミアム」の押し下げにも貢献している。』

まあこの辺は皆様ご案内の通り。

『ただし、こうした非伝統的金融政策では、政策効果が実際に発現すれば経済・物価情勢の改善を先取りする形で名目金利に上昇圧力がかかるのが自然である。先ほどの整理でいえば、市場は出口が近付いてきたと判断すれば、名目短期金利の予測値を引き上げるからである。』

ですなあ。

『また、そうした名目長期金利の上昇に際して、政府の調達コスト抑制のために、仮に中央銀行が国債市場での買入れを増やす、あるいは増やす圧力に晒されるとしても、そのことが財政規律を弱めると市場が判断すれば、却って「プレミアム」部分が上昇する可能性もある。長期金利水準の形成において重要なのは中央銀行が何を意図するかではなく、結局は市場がどう判断するかに依存するからである。』

その通りでイイハナシダナーとしか申し上げようがないです。

『この辺りは仮定の話であり、現時点では頭の体操程度に考えておけばよいかもしれないが、経済がデフレ脱却に向かいその影響が長期金利に及び始める時、日本銀行の金融政策は、将来における出口のプロセスを含め、あくまでも2%の「物価安定の目標」を実現する観点からのみ実施していくのであって、財政の持続性への配慮が金融政策を左右することはあってはならない。』

「マネタリストのある不快な算術」キタコレ。

『その点、「量的・質的金融緩和」を最終的に成功に導くうえで、政府の中長期的な財政健全化へのコミットメントが重要な役割を果たすことを改めて強調したい。』

ということですが、つまりこれは裏を返しますと財政が放漫ボヨヨンボヨヨン状態の時に出口政策に向かうのは難しく、ボヨヨンボヨヨン状態の中で物価が上昇した場合には(上昇しなければ緩和継続だから表面化しないが)マネタリストのある不快な算術問題が思いっきり表面化するという話になる訳ですな。

ということで、ECBネタに埋もれてしまうのは極めて遺憾なのでち延々とご紹介させて頂きましたです、はい。

#全部お付き合いいただきまして誠に恐縮至極であります






2014/06/05

お題「輪番関連雑談など/4月FOMC議事要旨関連で少々」

クソワロタ。
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0OK3CV20140603
中ロ、格付け会社を共同で設立へ=ロ財務相
2014年 06月 3日 22:05 JST

大公国際信用格付っていう立派な物が中国には既にあるじゃないですか(棒読み)。


○市場雑談関連

・輪番ェ・・・・・・・・・・・・

うっかり4500億円オファーされたら「焼き土下座の時期や場所についてはまだ明言していない」という言い訳を用意していたのですが、無事に(?)焼き土下座は回避と相成りました。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140604.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,000 2014年6月6日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,000 2014年6月6日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年6月6日

ふむふむ長期4000億で焼き土下座回避かとか思っておりましたら、良く良く見ると(というか良く良く見なくても気が付くのですが)今回中期のオファーの割り方が変わっておりまして、従来1−3年と3−5年のバゲットに分けている割り振りが前回までの2500/2500から3000/2000と中期の手前というか3年以内の所を厚くした格好になっていておーという話。

でまあ長期4000(って普通想像するとそうなる筈なのだが一部今回の「紙」を全面信用していて4500で来るという人もいたようですな)に反応したのか、それとも中期の配分に反応したのか知らんですけど先物が瞬間5銭位下がっていましたが直ぐに戻っていたのがチャーミングではありましたが、まあそういう反応を瞬間だけしていましたな(オペ結果は特段波乱無かったようですけど)。

中期のバゲットの割り振りを変えてきたのはまあ誰もが予想できますように、恐らくは平均買入残存年限対策でして、買入平均が8年近辺まで伸びておいおいどうなるんやという話が毎度毎度のように発生されても困るので、それなら中期のバゲットをいじって調整すれば良いじゃないかという話になったという所(長期の4000はさすがに4500-6000程度を銘打っているだけにこれ以上は減らせないでしょう)ですし、元々あるのは買入平均年限の7年程度という方なので、要するにこれはディレクティブに合わせるためのただの調整になります。超長期の買入を1回辺り200億円(月に1000億円)減らしたのですが、それだけですとちょっと余裕が無いので中期をいじって来たんでしょうなあという事です。

ということでディレクティブに合わせるためのただの調整ではあるのですが、そらまあ債券市場的には「買入の短期化狙い」という事になりますのでうーんこのという感じではありますし、1−3年という麿ゾーン(勝手に命名)の買入拡大というのは黒日銀の漂白というイメージも与えるのでいやーあっはっはっはとゆー所です。

さてさて、まあ長期4000に関しては予想通りではあるものの、「紙」を出した適用開始の初回にいきなり「4500-6000程度」の程度(about)を使ってレンジブレイクとかナンジャソラという話ではありまして、何の為にあの「紙」を出しましたねんという話にはなると思いますし、まあ前回の量的緩和解除から良く良く考えますと結構時間が経過している訳でして、前回の量的緩和解除における動きとかの時に学生さんだったとかいう人が結構いるんだよなあとか非常に当たり前の事を思い出しますと、まあ色々と味わいもあるというものです。

というのはですな、こちとら前回の量的緩和解除の時も債券市場のらくろ二等兵だった訳ですが、当時は福井の俊ちゃんというイカサマ成分満載の大狸(なおこれは褒め言葉ですので念の為申し添えます^^)が日銀総裁だった訳ですが、この大狸先生(褒め言葉)におかれましては量的緩和解除に向けた地均しを開始してからというもの従来の話を一転して翻してくるという狸技をカマシてきまして、それに対して散々悪態をついていたという事案がありまして、まあ梯子というのは平然と外してくるのが中央銀行クオリティであるという認識は一応記憶のどこかに残っている訳ですよ。

然るに、そういうの実際に見て怪我したりウハウハになったりするような経験値が無いと、案外この手の梯子外しプレイに対する耐性が無い訳で、まあそういう意味では今回いきなり紙のレンジを初回から切るという何のための紙ですねんというのを出したというのは、「梯子は外される時には盛大に外される」という君子はジャガーチェンジする事もありますよという中央銀行クオリティを示すという意味では良い先触れだったのかも知れませんなという事でもあります。

ただまあやはりこういうのはどうせ4000億円でオファーするのが見え見えなのだったら最初の時点で誠実に「4000-7000程度」というように出した方が良かったんじゃネーノとは思う訳で、何もこんなしょうもない事で「中銀はいざとなったら盛大に梯子を外す」というのをお見せしなくても良い訳でして、梯子外しプレイをするのは明確に出口政策を志向するようになってからで良い(現時点で出口の地均しするのはちょっとねえ)と思われるのよ。つまりこういう紙の所で「日銀の出すものを真正直に捉えると梯子を外される」という風な認識を債券市場関係者に与えてしまうと、今後めでたく出口政策になるにせよ、追加金融緩和をしなければならないにせよ、日銀の出してくるものを額面通りに受け止めてくれなくなってしまうリスクが発生する訳で、それが市場の価格形成に日銀の意図しない影響を与えるリスクがありますよね、とか考えますと、こんなつまらん所で梯子外しプレイをするのは技術論的な観点からは実に残念としか申し上げようがありませんが、こちらは焼き土下座を回避できたので別に問題はありませんので念の為(違)。

ということで何か話が拡散しちゃいましたが、まあ要するにあの紙を見た時点でナメトンノカと申し上げて先週金曜にああだこうだと砲撃しましたが、まあ4000-7000と変更しなかったのはコアゾーンの買入額をいじって債券以外の市場が何か反応するのを恐れた訳で、そこの数字を同じにしておけば毎回の買入額が何ぼですねんという話はどうせ債券市場以外の人たちは見てないから、紙で目くらまししておけばヘーキヘーキという忍法その場凌ぎの術が出たという事でもありますので、今後の忍法その場凌ぎの術に惑わされないように注意が必要である、という事でもありますな、うんうん。

#そこで妖術に対処するためには経験値が重要ということです(自画自賛)


・3MTB入札と6MTB入札である

本日が3MTBで明日が6MTB入札ですが、今月(というか今週)に入ってから急にGCのレートが下がっていまして、まあ先週GCが妙に上がったのも???ではあったのですが、なんか良く判らん需給の変化というか、誰かのポジション繰りか担保繰りの変化でもあったのですかねという所なのですが、まあ謎は謎。

今週のGCレート低下は先週末の短国買入意表の2兆円オファー(資金需給的にはそこまで買わなくてもMBは進捗する)が効いているのかもしれませんが、いずれにせよまあそんな感じで入札が炸裂しますのでさてどうなるのやらというのと、今週は金曜に6Mの入札があるので、次回の短国買入が9日オファーとなり、その額が減るのか減らないのか(減らないと買い過ぎにも程があると思うが)という結果が出るのがいつもよりも遅いのが微妙な所ではありますなという所です。



・佐藤審議委員講演がありますな

本日は大分で金懇があって佐藤審議委員の講演があるのですが、今夜はECBの定例理事会がありまして今日は話題になっても明日になるとECBにかき消されてしまうというのが残念なタイミングな訳ですが(つーか佐藤審議委員が出る金懇って毎度他の重要イベントにぶつけられている気がするのは気のせいですかそうですか)、先般の展望レポート反対に関連する説明や、物価安定目標のありかた(以前もフォーキャストターゲット的な説明をしていましたが)に関して何らかの論点が提示されるのを期待したい所ではありますので明日のネタに(^^)。


○超今さら&だいぶタイミングがボケボケですが先般のFOMC議事要旨ネタから少々

5月21日に出た物に対して今更ネタにも程があるが。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140430.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140430.pdf

・なおとんがった話は無かった模様

市場がろくすっぽ反応して居なかったのはまあ当然(でまあ市場が反応しないもんだからネタにするのも遅くなりましたが)でして、出オチの「出口政策に関する議論」の所はおーという感じなのですがそのほかにじゃあげげげのげというような物があるかというとそういう訳ではなく、しかも『Committee Policy Action』の部分とか近来稀に見る無風の記述でして、そらまあネタにするのも遅れるというものです(違)。

#ま、政策に関しては無風という事にも一定のインプリケーションがありますがね、Taper中ですから

ではまあネタが皆無かというとまあそこまで皆無でも無いので一応メモメモ程度に置いておきますね。

・RRPレポファシリティーの短期金融市場への影響に関して

冒頭の所に出オチでRRPオペの話がありましたが、『Staff Review of the Financial Situation』の所には関連するこんな記述がありました。

『Conditions in short-term funding markets remained fairly stable over the intermeeting period. Take-up in the Federal Reserve's fixed-rate ON RRP exercise continued to be sensitive to the spread between market rates and the rate offered in the exercise, with higher take-up occurring on days when the market rate on repurchase agreements was close to or below the ON RRP rate.』

ほうほう。

『As has been the case since the ON RRP exercise began, money market funds increased their usage at quarter-end; take-up reached a record level of about $240 billion at the end of March. Part of the increase in ON RRP usage at the end of March relative to the end of December likely reflected higher counterparty allotment limits, which were raised from $3 billion to $7 billion during the first quarter. The allotment limit was subsequently increased to $10 billion per counterparty in early April.』

四半期末とかになるとMMFなどがこのレポファシリティーを活用するという話で、ディスインターミディエ―ションが発生するのですねうんうん。

『The seasonal paydown of short-term Treasury debt following the April tax date was accompanied by a notable pickup in participation at ON RRP operations, but Treasury repo rates generally remained very close to the ON RRP rate of 5 basis points.』

ということで、ここの話はまあ政策云々と直接絡まないですけれども市場の中の人的にはオモロカッタのでメモメモ。


・労働市場とインフレの関係に関して

だいぶワープして『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から労働市場とインフレに関して。

『In discussing the effect of labor market conditions on inflation, a number of participants expressed skepticism about recent studies suggesting that long-term unemployment provides less downward pressure on wage and price inflation than short-term unemployment does.』

長期失業が短期失業よりもインフレや賃金の下方圧力により影響しているという論に対する懐疑という事で、これ裏を返せば「長期失業があるので賃金や物価が上がりにくいというのはホンマカイナ、短期失業の改善が進めばやっぱり上がるものは上がるんじゃネーノ」という話ですよね。

『A couple of participants cited other research findings that both short- and long-term unemployment rates exert pressure on wages, with the effects of long-term unemployment increasing as the level of short-term unemployment declines.』

長期も短期も同様に影響を与える筈という研究もあるぞなと。

『Moreover, a few participants pointed out that because of downward nominal wage rigidity during the recession, wage increases are likely to remain relatively modest for some time during the recovery, even as the labor market strengthens.』

リセッションの時に賃金の下落基調が強かったので暫くは物価上昇圧力が弱いという話ですかそうですか。

『It was also noted that because inflation was expected to remain well below the Committee's 2 percent objective and the unemployment rate was still above participants' estimates of its longer-run normal level, the Committee did not, at present, face a tradeoff between its employment and inflation objectives, and an expansion of aggregate demand would result in further progress relative to both objectives.』

という議論を紹介して最後の所にこういうのが出ているのがズコーという感じではありますが、今のところは失業率と物価のトレードオフ問題が発生するような状態ではありませんという認識ではありますが、一応気にはしているのねという所ではあるのでちょっとふーんと思いました。


・ファイナンシャルスタビリティーに関して

続いてファイナンシャルスタビエリティーに関して。

『In their discussion of financial stability, participants generally did not see imbalances that posed significant near-term risks to the financial system and the broader economy, but they nevertheless reviewed some financial developments that pointed to potential future risks.』

こちらはキタコレ!でありますが、大きな問題があるという認識では無いものの、一方でファイナンシャルスタビリティーの観点からは将来に向けての潜在的なリスクが指摘されているとはこれはこれは(^^)。

『A couple of participants noted that conditions in the leveraged loan market had become stretched, although equity cushions on new deals remained above levels seen prior to the financial crisis.』

2名はレバレッジローン市場に関する指摘がありますが、一方でまだエクイティ部分のクッションなどは金融危機の時ほど少なくはなっていなくて確保されているという指摘もしていますな。

『Two others saw declining credit spreads, particularly on speculative-grade corporate bonds, as consistent with an increase in investors' appetite for risk.』

別の2名はクレジットスプレッド、特に投資不適格級の社債のスプレッド縮小が投資家のリスク選好の拡大を示しているという点を指摘。

『In addition, several participants noted that the low level of expected volatility implied by some financial market prices might also signal an increase in risk appetite.』

ほほーという感じですが、市場のボラ低下もリスクアペタイトの拡大を示している可能性とな。

『Some stated that it would be helpful to continue to explore the appropriate regulatory, supervisory, and monetary policy responses to potential risks to financial stability.』

でまあ数名の方は規制や監督「and monetary policy」によるファイナンシャルスタビリティーへの潜在的なりすくに関する適切な対応を検討する事が重要と仰せですな。うんうん。


・・・・・・・・ということでファイナンシャルスタビリティーに関する話がしらっと出ていて、しかも主にクレジット市場(投資適格というよりも投資不適格級の話が中心ですが)に関する指摘がしらーっと入っているのが中々チャーミングですなあと思うのでありました。


#あとフォワードガイダンスの話とかもあったけど普通に「フォワードガイダンスの3月変更は順調でしたね」という話と「ロンガーランの金利よりも低い水準が長く続く」というダドリー講演でも示されていた論点(ただし中立金利に関する話はこちらでは出ていません)でもありますのでパスしますね





2014/06/04

お題「市場雑談系ネタを少々/師匠の韓国巡業は前回講演との比較がワロエル」

なんか昨日は日経にインタビューが出ていたのだが結局基本ポートフォリオが相場観で変わるというのは何なんでしょうねえという疑問は拭えませんなあ。

#基本ポートフォリオの中でのアローワンスが相場観で動くのは当然なのでオーバーだから基本に戻す方向というのも如何なものかとは思うが

○市場メモや雑談など

・国債保有銘柄別残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/mei.htm/

例によって例の如くここからZIPで落としてきて比較とかするのですが、4月末との比較をしますとあたくしの計算ベースでは平均残存期間が7.9年半ばという数字になったように見えます(あたくしがやっつけで計算したら物国変国含まず7.95年で含んで7.93年ですが、手抜きで平均残存を計算するのに閏年修正を掛けていない(償還日から5月30日を引いて365で割っているだけなので多分長い方に誤差が出る)のでその分は正確ではないがまあ勘弁)ので、8年以内に収まって良かったですね(棒読み)という所ですな。

でまあ今月から輪番超長期が1500億円になったのでとりあえず8年は切ってくれそうですね良かったですねという所ですが、しかしまあ5月の増加銘柄見ていると当然のようにカレント辺りが出てくる訳で、333回債19151億円の増加とかナンジャソラという所で、結局の所QQEを打ち込んでいる間じゅう各年限のカレント、特に10年カレントは盛大に打ち込まれる事になりますので、QQEやっているうちはまあシャーナイナイだとしてもこれ真面目に金融正常化しようと思ったら特定ゾーンの銘柄の需給が極端に逼迫するという状態を延々と続ける訳にも行かないから「国債入替売買オペ」でも実施してこの近辺のゾーンの需給を均しに行かないと国債市場における価格形成に悪影響を将来に渡っても与えることになると思いますけどねえ。

なお、短国の償還計算とか国債保有銘柄の償還額計算とかはまだ終わっていないので明日にでも(大汗)。

#ところで今日は長期の輪番でしたっけ焼き土下座の準備が必要でしたっけ(なお全身白塗り暗黒舞踏ショーはやっぱり準備していませんので念の為申し添えます)

・雨宮理事再任とな

暫く前から観測報道が出ておりました通り。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140603a.htm/

理事の任期は4年ありますので金融政策の正常化完了までよろしくお願いいたしますm(__)m


・ECBプレビュー雑談・・・・・というか何というか

木曜の夜にECBの理事会がありまして、ドラギ先生のマジックイリュージョンショーが挙行される段取りとなっている訳ですが、今回ほど何がどうなるのかさっぱり判らんというのはありません。

で一応整理しておきますと・・・・・・・・・

マイナス金利はリアルにマイナス金利を実施すると量的な意味での引締めが発生する

⇒リアルマイナス金利は流動性の保有に対してのペナルティーとなる訳ですから超過準備にマイナス金利を適用したら超過準備を誰も持たなくなる(所要準備があれば資金繰りバッファーには足りるので所要準備が極端に少ないような人じゃない限り超過準備は持たない)し、当座預金そのものにマイナス金利を付けるとか所要準備にマイナスとかしたら(さすがにそんなことはしないが)それこそ「預金お断り」状態になる罠という所で量的な大引締めが発生します

資産買入系の量的緩和は財政が統一されていないと中々難しいんでしょうなあ

⇒まあ普通は国債買入で量的緩和をするというのが毒にも薬にもならない(財政ファイナンスと言われず、金利正常化局面にならない限り)のですが、欧州の場合は国債買入をECBが始めた所で各国政府がECBが国債買うぜヒャッハーとなってよーしパパ公共投資で内需拡大しちゃうぞーとか言い出す件をどうするのよという点でブンデスバンクが首を縦に振らないという所で

ただの短期オペ系での量的緩和は可能だが限界がある

⇒これまあ資産買入系でもリアルゼロ金利状態だと同じなのですが、特に短期オペ系でやる場合は更にそうです。日米のように超過準備に付利していれば資産買入の嵩は稼げるのですが、短期のオペでは基本的に超過準備付利金利よりも低い短期資金供給オペというのは余りにも露骨に掴み金状態になってしまうのでまあ普通は中銀的にはハードル高いので出来ません罠。やったら幾らでも量は積めますけどね


そもそも間接金融がデカイので債券市場に手を突っ込んで貸出拡大というのも限界がある

⇒BOEのFLSみたいなのを打ち込む可能性はあるし、日本の成長基盤オペみたいなのをEIBとかその辺り相手に行うというのはアリだろうなあとは思いますが、証券化市場に手を突っ込んでどうのこうのというのは目くらまし以上の効果は無さそう(FLSもどきも目くらましと言われるとぐうの音も出ないが)

為替介入はさすがに恥ずかしいのでやらない

⇒言うまでもありませんな

という所で、まあ意外に八方ふさがりなのですけれども、本来的に言えばこのセットがオヌヌメ、というのはアタクシ思いまするに「MRO金利0.10%への引き下げ」「貸出ファシリティー0.25%への引き下げ」をするのとセットで「域内国債買入」と「預金ファシリティー0.10%への引き上げ」を行って量的緩和方向を明確にしておきますと、量を小出しに拡大することによって結構な間時間稼ぎが出来るので、かなーりオヌヌメなのですけれども、どう見てもドイツの酢キャベツジャガイモおじさんたちが反対するのでダメですよねえ・・・・・・

現実には小ネタを幾つか繰り出した挙句に「まだまだドラギ先生の緩和ショーは続きます!ドラギ先生の次回作にご期待ください!!!」というインチキ攻撃をするしか無さそうですけどね。



○師匠の韓国巡業とな

師匠が韓国中銀の国際コンファランスに登場とな。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140603a1.pdf
Japan's Growth Potential and Quantitative and Qualitative Monetary Easing
Remarks at a Panel Discussion at The Bank of Korea International Conference 2014

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140603a1.pdf
日本経済の潜在成長力と「量的・質的金融緩和」

・・・・・・・・・ということで本チャンは英語なのですが、まあ当然ながら地の文章は日本語だと思われるので日本語の方を拝読しますと、物凄い勢いで既視感がある文章ですな。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140526a1.pdf
「量的・質的金融緩和」とわが国の金融経済情勢
―― 共同通信加盟社論説研究会における講演 ――

まあ何ですな、この師匠の高座と同じ話をしておりまして・・・・・・・・・・・・


・「前回と比較してどこが削られているのか」を見ると味わいが深いという話

でまあこの前の共同通信での講演と同じ話をしている、というか同じ話が地の文になっているという事でして、盛大な使い回しワロタという所ではございますが、更にワロエルのは前回の共同通信の講演と比較してみますと、講演本文が10ページ⇒5ページ(ただし最後のページは1行にもならないので本当は4ページ)、図表が16枚⇒6枚と大幅に削減されておりまして、まあ要するに「内輪に近い所なら兎も角海外で話をさせるので削るべき所は削らないといけませんなあ」という事でバッサバッサと削るべきものを削ったらこうなりましたという事ですね判ります。


でまあどこが削られているかと言いますと・・・・・・・・・・

まず最初の『2. インフレ目標政策とデフレ』に関する部分がバッサリ削られていまして、何故デフレになるのかという話をすっ飛ばしてデフレは良くないという説明を延々と繰り広げている部分が無い訳ですよ。でまあそこでは「物価が継続的に上昇すると需要が喚起されるし、先行きの需要を常に前倒しする効果がある」とかいうような大変に素敵な部分が割愛されているのが誠に遺憾の極みでありまして、是非そのオモシロセオリーを中銀コンファランスでして頂きたかったのですが、ヒラ審議委員と違いまして「副総裁」の肩書があるので(以下の部分は諸事情を勘案して割愛しております)。

更に実に残念なのはインフレ目標政策に関する『(3)インフレ目標政策』という部分での

『それでは、「安定した緩やかなインフレ」を実現するためには、どのような政策が望ましいのでしょうか。その一つの答えが、インフレ目標政策(インフレーション・ターゲティング)と呼ばれる枠組みです。』(5月26日共同通信主催の講演から)

『日本銀行の政策に対する懸念として、「いざ金融緩和を止めようと思っても、金融市場や政府からの圧力がかかるため、なかなか止められないのではないか。そうすると、結局ハイパーインフレになってしまうのではないか」という懸念の声が聞かれますが、この点についても、インフレ目標政策を採用していることが有効に働きます。なぜなら、インフレ目標政策というのは、将来のインフレ率についての具体的な数値目標を掲げて、それを上回るインフレにもデフレにもしないことを約束する仕組みだからです。』(5月26日共同通信主催の講演から)

などという大変に素晴らしい「インフレ目標政策を実施するからインフレがコントロールできます」というだけのスポンジボブもビックリの中身であります所の師匠のリフレ理論を展開して頂きますと更に素敵だったのですが、これらの記述部分がバッサリ削除されているのは痛恨の極みとしか申し上げようがございません。なお、この部分のプレゼン資料が更に素敵なので暇な人は鑑賞する事を勧めますが月初で忙しいですねすいませんすいません。


・更に波及メカニズムの説明が大幅にカットされているのが実に味わいが深い

今回の講演は最初が『(量的・質的金融緩和の概要)』でその次が『(量的・質的金融緩和の波及メカニズム)』となっていますが、最初のQQEの概要の所は前回と同じでして、まあアプリオリにコミットメントと具体的な行動でインフレ目標が達成できるという話をしているのはいつもの話なのですが、今回と前回を比較すると中々かこう味わいがあります。

まずは今回の説明を拝読しますが、段落の頭に番号を振っているのは元の講演にある訳ではなくて、この次の説明の所で必要なので打っている点最初にお断り致します。

@『「量的・質的金融緩和」の波及メカニズムの鍵となるのは、予想実質金利の引き下げです(図表2)。インフレ目標の達成にかかる明確なコミットメントと、それを裏打ちする大規模な金融緩和によって予想インフレ率を引き上げることに加え、短期名目金利がほぼゼロである下で、巨額の長期国債買入れによって長期名目金利の上昇圧力を抑制することにより、予想長期実質金利に対する下方圧力が生じます。』(6月3日の韓国中銀コンファランスの講演から)

その予想インフレ率が引き上げになるメカニズムは何ですねんというのは前回と同様にアプリオリになるからなりますというオボカタ女史もビックリの説明。

A『予想実質金利の低下による刺激の効果として総需要が拡大することで、デフレの原因となっている需給ギャップが解消されます。また、需給ギャップが解消すれば、現実の物価上昇率が高まり、それが予想インフレ率を物価安定目標に向けてさらに上昇させるという、好循環も期待できます。』(6月3日の韓国中銀コンファランスの講演から)

そもそも予想実質金利が低下したからと言ってよーしパパ設備投資しちゃうぞーとなるかという話に関してはこれまたアプリオリなのですけどまあそういう説明。

B『物価安定目標の実現に懐疑的な意見として、「為替レートの円安化が進まないのであれば2%の物価安定目標の実現は難しい」との指摘が頻繁に聞かれますが、今申し上げたように、「量的・質的金融緩和」の波及メカニズムのポイントは、「予想インフレ率の引き上げと需給ギャップの改善の好循環によって2%の物価安定目標を実現する」ということであり、円安による輸入物価の上昇に依存したものではありません。』(6月3日の韓国中銀コンファランスの講演から)

この前のツッコミ祭りの駄文をご覧頂いた方なら気が付くと思いますが、確か前回の説明の際には円安による輸出企業の採算改善や資産効果などの効果の説明をしているのにここで円安に依存しませんとかはいはいおじいちゃん朝ごはんはさっき食べたでしょという話がありましたよね。

C『日本では、1990年代後半から長期にわたりデフレが続く中で、人々の予想インフレ率が低下し、「デフレ予想」が定着した状況にありました。人々の予想に直接働きかけて「デフレ予想」を払拭すること、すなわち、人々の予想インフレ率を引き上げることを政策効果の中心に据えた点が、「量的・質的金融緩和」の大きな特徴となっています。』(6月3日の韓国中銀コンファランスの講演から)


ということで、この部分は共同通信での波及メカニズムの最後の部分になります。


さて、前回の共同通信講演ではこの『(2)波及メカニズム』の部分がどう説明されていたでしょうか。

@『「量的・質的金融緩和」の波及メカニズムの鍵となるのは、予想長期実質金利の引き下げです(図表6・7)。予想実質金利とは、金融市場や銀行の店頭などで観察される名目金利から、個々の経済主体が予想する将来のインフレ率を差し引いた数値にあたります。例えば、借り手の側に立って考えると、一定の名目金利でお金を借りたときに、「物価の変化を考慮すると、実質的な借入れコストはいくらになるか」ということについての、借り手の主観的な予想ということになります。インフレ目標の達成にかかる明確なコミットメントと、それを裏打ちする大規模な金融緩和によって、予想インフレ率を押し上げる効果が生まれます。一方で、短期名目金利がほぼゼロである下で、巨額の長期国債を買入れることによって、長期名目金利の上昇を抑制する効果が生じます。こうした、名目金利の上昇抑制と、予想インフレ率の押し上げの効果が相まって、その差分である予想実質金利に対する下方圧力が生じることになるわけです。』(5月26日共同通信主催の講演から)

まあ実質金利の説明をしている部分とか説明がくどい部分は聞いている相手が違うからヨロシ。

A『企業や家計の予想実質金利が下がると、様々な面から実体経済における需要が刺激されます。例えば、予想実質金利が低下すると、現預金や債券から株式や土地・住宅等の実物資産、あるいはより金利の高い外貨への資金シフトが起こり、株高や外貨高などによる資産効果によって、家計の消費が刺激されます(図表8・9)。また、予想実質金利の低下に加えて、消費の増加や円安による輸出環境の改善など複数の要因に後押しされた企業は、設備投資に積極的になると考えられます(図表10)。』(5月26日共同通信主催の講演から)

ということで、先ほどのAの部分では予想実質金利が下がるとこういうルートで効果がある、という話をしていた訳ですが、この説明部分が全面的に削除されているのが実にこうお洒落で、予想実質金利が下がると資産効果が出て為替市場で自国通貨が下がって設備投資も増えますよという桶屋理論部分を盛大に削除しているのが実にこう味わいが深いというものです。

『こうして消費や投資などの需要が増加することによって、経済全体の総需要不足が解消されていけば、おのずと物価水準は上向き、それが予想インフレ率を物価安定目標に向けてさらに上昇させるという好循環が期待できます。』(5月26日共同通信主催の講演から)

ということで、金融政策の波及メカニズムの説明をしている部分だというのに肝心のメカニズム部分をすっ飛ばしてアプリオリに需要が拡大して需給ギャップが解消するという話をしている形にしている(なおそれ以前の問題として何故インフレ期待が引きあがるのかは全くの謎だが前回も謎なので致し方無いのです)という辺りに事務方の(以下の部分は諸般の事情を考慮して削除されました)。

B『物価安定目標の実現に懐疑的な意見として、「為替レートの円安化が進まないのであれば2%の物価安定目標の実現は難しい」との指摘が頻繁に聞かれますが、今申し上げたように、「量的・質的金融緩和」の波及メカニズムのポイントは、「予想インフレ率の引き上げと需給ギャップの改善の好循環によって2%の物価安定目標を実現する」ということであり、円安による輸入物価の上昇に依存したものではありません。』(5月26日共同通信主催の講演から)

これは前回と同じですね!!と思いますが、実は・・・・・・・・・・

『仮に、昨年4月以降の「量的・質的金融緩和」による消費者物価の上昇が、もっぱら円安による輸入物価の上昇を原因としたコスト・プッシュ型インフレであれば、実質GDPは減少し、それに伴って失業率は上昇したはずです。つまり、スタグフレーションが起きたはずです。』(5月26日共同通信主催の講演から)

から始まる大変に素敵な説明部分が全部カットされておりまして、さすがにこの部分を海外で説明させるのは(以下の部分は諸般の事情を考慮して削除されました)。

折角ですので前回の高座を再度鑑賞しましょう。

『しかし、実質経済成長率の実際の推移をみると、12年11月にアベノミクス構想が発表される直前は、2四半期連続のマイナス成長(12年第2四半期▲0.6%、第3四半期▲0.8%<季調済前期比>)でしたが、12年第4四半期以降は、6四半期連続してプラス成長になっています。また、13年度の実質経済成長率は、12年度の0.7%から2.3%へと大きく上昇しました。失業率についても、「量的・質的金融緩和」を開始する直前の13年3月は4.1%でしたが、14年3月には3.6%まで低下しています。3.6%の失業率というのは、リーマン・ショック前の好況期(07年7月)の失業率と同じ水準です。』(5月26日共同通信主催の講演から)

ということでGDPと失業率の数字だけでこの結論が出てくるというこの時の講演の白眉とも言える(つーかそこらじゅう白眉で馬良もビックリですけど)部分になります。

『つまり、「量的・質的金融緩和」以降のインフレ率の上昇は、実質GDPの拡大と雇用の改善を伴うディマンド・プル型だということです。』(5月26日共同通信主催の講演から)

という決め台詞に対して「ナントカ屋!」とか声の掛かりそうな場面ですな!!!!!!!!!!

C『日本では、1990年代後半から長期にわたりデフレが続く中で、人々の予想インフレ率が低下し、「デフレ予想」が定着した状況にありました。人々の予想に直接働きかけて「デフレ予想」を払拭すること、すなわち、人々の予想インフレ率を引き上げることを政策効果の中心に据えた点が、「量的・質的金融緩和」の大きな特徴となっています。』(5月26日共同通信主催の講演から)

という最後の所は同じです、というのはさっき申し上げた通りです。

・・・・・・・・・とまあそういう事で、メカニズムの説明部分を盛大に割愛しておりまして、しかもこう前回の講演で思いっきりツッコミ所だった部分をきっちりと削除している辺りが実にこう味わいが深い訳でして、実際の英文の講演テキストの方を読みますと、英文なのでまずは読むという行為から入るあたくしが読んでみても「何か表面的な説明しかしていないけどまあダイジェスト的な話を纏めてますねえ」と読めてしまうという事で、地の日本語の講演に関する推移を見ないで英文だけ見る分には「特に響くものは無いけど別にまあそうですか」ってな感じの仕上がりになっておりまして、日銀スタッフの皆様のご苦労がしのばれるというものでございます(あ、言っちゃった)。


・なお以下の部分は前回と同様ですが・・・・・・・・・

今回の講演ですとその次が『(日本経済の現状)』となっていまして、これが前回の講演における金融政策の『(3)現状の評価』と同じでして、その後の『(金融政策と成長戦略の役割分担)』が『4.金融政策と潜在成長力』という割には中身が大したことが無かった部分になるのですが、これは基本的に全部同じ(たぶん全文一致ですけど逐語確認はめんどくさいので斜めでの目視しかしていない)です。

従ってデフレの話がいつのまにか『デフレ不況』になっているのは何ですねんとか、『仮に、成長戦略に基づく政府の施策や民間の取り組みが停滞し、潜在成長力の強化が進まなければ、物価安定目標の達成は、「マイルドなインフレ下における低実質成長」をもたらす可能性があります。』っていうような従来師匠が振りまいておられました「マイルドインフレで世界は変わる」というマイルドインフレで色々な問題がホイホイ解決するかのような話との整合性はどこに逝きましたねんという部分も同じなのですが、まあ過去の話との整合性云々に関しては別に海外で師匠がこれまでああだこうだという話をしていた訳ではないので誰もツッコミを入れないでしょうから特段の問題も無いという話になるんでしょうな。


なお、『デフレ不況』の部分ですが日本語と英文テキストを並べてみると・・・・・・・・

『経済がある程度好調でなければ、経済の効率性とダイナミズムを高め、生産性を引き上げるための構造改革も進めることができません。デフレ不況下では、規制緩和を通じた競争促進政策等による痛みに対して、強い抵抗が生じるためです。「創造的破壊」という言葉がありますが、デフレ不況が継続していては、「破壊」の後に「創造」が続かないということです。』

『Unless the economy is more or less in good shape, the government cannot promote structural reforms to enhance the efficiency and dynamism of the economy to raise productivity. The reason is that in a deflationary recession there will be strong resistance to the pain that pro-competition policy measures through deregulation might bring. You will have heard of the term creative destruction. When deflation continues, destruction will not be followed by creation.』(双方とも6月3日の韓国中銀コンファランスの講演からで英文が本チャンです)

ということで、同じ「デフレ不況」を英文テキストでは「deflationary recession」と「deflation」を使い分けている辺りが中々こう味わいがあるのですが、味わいがあり過ぎてドメスティックおじちゃんのアタクシには良く判らんぞなもしという世界ではございます(^^)。


・・・・・・・・おお、また生産性の無い駄文を書いてしまった(いつも生産性が無いやんというツッコミは自動的に却下されるようにプログラミングされていますので念の為申し添えます)。






2014/06/03

お題「輪番関連雑談/白井さんのしょうもない質疑応答鑑賞会」

元々「政治介入されたくないから単独事業」だった気がしますが・・・・・・・・・
http://mainichi.jp/feature/news/20140531k0000e020213000c.html
新成長戦略:リニア中央新幹線 大阪延伸前倒しを明記へ
毎日新聞 2014年05月31日 15時00分(最終更新 05月31日 15時25分)

リニア新幹線大阪早期延伸がどのように成長戦略になるのかしかもJR東海に無利子貸付するのが成長戦略なのかと小一時間問い詰めたいのですが葛西会長(内務省検閲)。

『前倒しを推進する政府・与党関係者は、東京-大阪間の開業で、17兆円もの経済効果が生まれるとの民間試算も示しながら「経済効果がコストを上回れば、将来の税収増などで国費負担は回収可能」と理解を求めていくことにしている。』(上記URLより)

さすが景気変動で上振れただけの税収を財源にして法人税率引き下げという恒久措置をしようといいだす方々だけに説明も一味違いますなあと存じます(−−)。


○輪番ネタとかその他市場雑談メモ

・超長期輪番1500億円キタコレ&関連して雑談

まあ市場の予想通りだと思いますけどね。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140602.htm
国債買入(残存期間1年以下) 1,100 2014年6月4日
国債買入(残存期間10年超) 1,500 2014年6月4日

ということで超長期輪番は先週示されたテーブルで広げた下限に買入を減らして先週までの1700億円→1500億円となりまして、案の定1年以下に関してはレンジにして上限を上げたけれども変わらず1100億円となった訳で、まーこれは例の紙が出た所で1500に下げるでしょうねえというのが見え見えだったので金曜の時点で織り込んでいたと思われます。なお輪番オペのもう一つのネタの長期ゾーンに関しては明日以降となりますが、こちらは4000億円でどうせ実施してくるでしょうというか、まあさすがに4000からは減らないでしょうというのは把握したという感じですかね。

でまあそれはそれで良いのですが、買入平均年限の6〜8年に拘るのでしたらば、この超長期輪番をもっとバゲット切れば良いのにと思う訳で、10年までの所はカレントが3つある中でバゲットが3つあるのに超長期は平均残存年限的に言えば20年と40年では倍違う上に思いっきり買入平均残存の所に影響する訳でして、だったらバゲット切ってもうちょっと細かく分ければ超長期各カレントがその時に入れやすくなるので輪番使いやすくなるし、日銀も年限が読みやすくなってお互いめでたしめでたしに思えるのですが、変にここでバゲットを分けた時に海外投資家や株式市場への説明が難しいですかそうですか。

つーかですね、1500億円に減らしてもそれこそ40年カレントばかり集中的に打ち込まれたら平均残存長いままになってしまいますので、10日毎の買入残高推移見ながら輪番ゲームみたいな話が続くという生産性の無い話(しかし日銀の馬鹿買入が市場を圧倒しているので生産性が無いと言われようとも輪番ゲームで市場が盛り上がるのは致し方ないところです)ではございまして、どうせ紙を出すならもうちょっと練って欲しかったと思うのですが・・・・・・・・・


・更に超どうでも良いが正常化だけの事を考えたらバーベル輪番の方が吉かも

なお更に超どうでも良い事を申し上げますと、将来的な金融政策正常化という事を考えますと、実は今のように中長期を厚く買うよりも「短い所と超長期」というバーベル型で買入をした方が将来の金融政策正常化においてウマーの可能性がありますと存じます。

・・・・・・と申しますのは、まあ何だかんだと申し上げましても実は国債買入をバカスカ実施したとしても不胎化する事と、財政ファイナンス懸念を持たれないようにすることである程度の所までは何とかなるように見える(と言いつつ今のところはそうだというだけで実際に米国が正常化プロセスに入ってみないと本当の事は分からないのですが話の都合上今回はそういう事にしておく)ようで、そうなりますと出口政策における喫緊の問題は「国債売却しないといけない事態」というよりは「保有する膨大な国債の利息収支が赤字って財政負担になる事」のように思えます。

#なお、本当に問題なのは「マネタリストのある不快な算術」のケースですけどね

でまあ普通に正常化やるという事になった場合に、日銀のファンディングコストが利上げすると当然上昇しますし、金利政策をする場合には保有長期国債を基本的に不胎化(資金供給的な意味での不胎化ね)しないといけませんので、そうしますと保有長期国債の購入時利回りと不胎化に掛かるコスト(=誘導しようとする市場金利にほぼ等しい)との差が逆鞘になると財政負担マズーという話になる(準備金をこの前多目に積み増した理由にその対策が全く無いとは言わせない)訳ですが、ご案内の通り今の金利水準ですと中期ゾーン以下は1回の利上げで逆鞘確定ですし、長期も2回利上げして0.5%になった所でカツカツとなる次第で、そういう事を考えますと本当は短期と超長期にしておけば、短期は金利低いけど直ぐに償還が来るのでまあ気にしないで済みますし、超長期は利回り水準があるので短期金利が1%になってもまだ余裕という事で、出口まで考えるとバーベルの方が魅力あるように見えますなうんうん。

まあそんな事しますと市場の価格形成を思いっきり歪めそうなので無理でしょうけどね(^^)。


・そういえば「年内追加緩和なし」の転び何とかストが続出している件について

先週末のCPIを受けてなのかどうか知らんですけれども、金曜はアタクシが見た範囲内では3名ほどの何とかストの皆様が従来の追加緩和予想(だいたい7月)から転んで年内追加緩和無しという事で、先日来黒田総裁はじめ日銀のペーパーなどでも書かれておられます「民間エコノミストは物価動向にビハインド・ザ・カーブ」という民間エコノミストdisりモードを裏打ちする結果がゴロゴロと出てきておりまして、転びサヨクの姿を見るようで誠に心が温まるものを感じる次第。

しかしまあ何ですな、4−6の反動減だったら4月単月だけ見てもまだ変動要因あるでしょうし、その他アネクドータルな数値は実際は5〜6月の辺りの動向の方が重要にも思えるのでして、だったらもっと前に転向するかこの際4−6全部見てから転べばと思うのですけれども、このタイミングってねえとか思いつつ、これが何かの死亡フラグで無いことを祈る今日この頃でございまする(棒読み)。


○生産性は無いが白井審議委員VS記者の怪獣大戦争を鑑賞しましょう

昨日の続き。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1405d.pdf

昨日引用した超長い質問(ただし良く整理されている)と超長い答え(だいぶハチャメチャ)の続きですが、まあ説明が全然噛み合っていないという事で更に砲撃は続く。なおこの記者様におかれましては前回の金懇の際も砲撃を加えていましたが、今回はその砲撃が十字砲火状態になっておりまして誠にワロタとしか申し上げようがありません。

・日銀が出さないからアタシも出さないとは許さん&2年で達成しなくて良いとはどういう事やという砲撃

なお昨日の駄文をもう一度確認あるいは上記URLの4ページから8ページをご覧になってから以下の砲撃を確認するのが吉。質疑応答の8ページめ半ばから。

『(問) 最初の質問について、今年末までしか示していないマネタリーベースの残高見通しを、何故来年以降もお示しにならないのかというふうに聞いた訳です。』

先ほどの答えは答えになっていないキタコレ!

『日銀が示していないから示さないというのはある種、これは鶏と卵と言いますか、白井委員ご自身が1 票持っていらっしゃる訳であって、白井委員が属される政策委員会が政策を決める訳でいらっしゃるので、日銀と白井委員が別人格であると語られるのはちょっとおかしいと思います。』

「ちょっとおかしい」キタコレ!!!

『つまり、私が言いたいのは、何故そういうふうな主張をされないのかということで、主張して提案しないのかということです。』

ワロタ。

『もう一つ、何が何でも2 年で絶対に2%を達成するという訳ではないとおっしゃいましたけれども、少なくとも我々が黒田総裁がおっしゃっている話を聞く限りにおいては、そのように主張されていると思います。白井委員はそうでないとおっしゃるのであれば、何故それに対して黒田総裁、あるいは、日銀の中心的な政策・考え方に反対しないのかということです。』

(;∀;)イイシツモンダナー

さてそのお答え。

『(答) 1 つ目の質問は、これは色々な考え方があると思いますが、私は今の2016 年度までの見通しを立てるに当たり、「量的・質的金融緩和」の継続は必要だと、その前提の上でないと見通しが立たないと思いましたので、それを明記しました。更にその具体的な内容を申し上げるかどうかも考えましたので、ご質問の趣旨は分かりますけれども、それは日本銀行が明確に示す際に、私の見解を申し上げます。』

これは日銀事務方が答えの日本語の意味をどうしても理解できなかったので逐語でアップしたと見た、つーか俺も判らん。

『2 つ目の2%を何が何でも実現するということが黒田総裁のご意見かどうかは黒田総裁にお伺い頂きたいですが、私自身の理解では、何が何でも実現するというよりも、2%を無理して達成して、その次の年に出来なくなるというようなことは避けると、つまり安定的に実現することが最大の重要目標ですから、その中で無理なく実現していくことだと思っています。』

まず根本的に間違っているのですが、日銀が今言っているのは「2%の物価安定目標」を「2年を念頭に出来るだけ早い時期に達成する」という話であり、サステイナブルでは無い2%のアクチュアルの数値を2年でヒットさせるとは一言も説明していない(確かにその部分を曖昧にしている面はあるが)訳でございまして、しかもまた「無理なく」とか言っていますが、そういう「グラデュアリズム」の白川ドクトリンは否定してデフレ均衡からのジャンプを目指してQQEを打ち込んだ訳で、こういう説明はそもそものQQEの基本理念から相当程度逸脱している訳で、何をゆうとるねんこのオバハンとしか申し上げようがありません。

『ですから、私は、無理して多大な負担を家計や企業にかけてするということではないと理解していますし、またそういう理解で常に自分の考えを申し上げています。(以下割愛)』

で、その話を企業や家計へ負担とかいうフレーズで逃げ口上を図るのが実にこう姑息です罠と思うのですけれどもねえ。均衡からの脱却を行うには良くも悪くも何らかの摩擦が起きる筈なんだが。

なお、以下割愛としているのは何故かこの先に物価見通しの話をして「だから見通し期間の終盤に掛けて物価が2%に向けて上昇する」という聞かれもしない説明をしておりますので割愛。


・ねえねえアタシがやったのよアタシがやったのよに冷や水ワロス

次の質疑。

『(問) 3 ページのところに言及されている、1 月から白井委員が反対意見を表明されてきた所得・雇用の部分についてですけれども、ここによると展望レポートの中にも消費税引き上げの影響という中で消費マインドの変化とか所得・雇用について言及されているので、敢えて反対を示さなくてもということだったと思うのですが、ただレポートをみるとあくまで一般的な言及に止まるようにも見えて、この程度の認識の上で中盤頃に達成するという見通しを出されているということについて、改めてご見解を伺いたい。』

ワロタ。

『また、今回の挨拶要旨でも下振れのリスク要因を引き続き意識する必要があるというようにおっしゃっていますが、特に雇用について人手不足ということが言われ始めているのですが、実際に本当に雇用の状況が改善されているのかどうか、下振れリスクについて特に消費・雇用というところについての認識を改めてお聞かせ頂ければと思います。』

ニヤニヤ。で、答えですがこれがまた無用に長い上に内容が散漫でまとまっていないので、引用する方としてもどうやって一部引用するのか非常に難しい。

『(答) まず私が1 月から4 月まで公表文に対して反対表明をしてきた理由は2つあります。私は去年の4 月に実は1 回、金融政策決定会合で議案を一旦出しています。その1 つの理由は、当時はまだ消費税率引き上げについて国民の方で十分にご存知ない方もいらっしゃるようだったので、今年の4 月に消費税率が引き上げられると、急に物価が上昇してサプライズとなり、もしかしたら消費が急減するリスクがあるかも知れない、あるいはもし消費税率引き上げが周知されたとしても実質所得が目減りすることによって消費が減退する可能性があるのではないかと考えたのですが、そうしたリスクに対して、去年4 月の展望レポートの書きぶりは非常に少ないのではないかと思い、議案を出しました。』

昨年4月の展望レポートって全般的にシンプルにする中で織り込んでいる筈の消費税率引き上げの影響に関して何でまた提案するねんという件ですね。

『私の考えではこうした私の懸念も反映され、去年10 月の展望レポートでは大変詳しくこの辺について書かれています。その時の展望レポートでは、経済の見通しの下振れリスクとして、「家計の雇用・所得動向」と、「消費税の影響」の2つに分けて書いています。』

ねえねえアタシがやったのよですかそうですか。単にベースアップの時期と消費税の時期が近づいてきたのと税率引き上げが確定したからじゃないですかねえ。まあいいけど。

『これはよく読んで頂きますとお分かりのように、1 つに纏められる内容ですが、いずれにしても家計の雇用・所得ということを非常に重視していました。』

???????????????

『それにも拘わらず今年1 月の公表文からは当面のリスク要因として、その部分にあたる記載がなく、海外の動向だけが書いてありましたので、それはどうなのかなと思い、皆様の関心もそこに集中しておりましたので、雇用・所得の改善ペースは書いた方が良いのではないか、というのが1月からの私の反対の趣旨でした。』

まあその時点で既にベースアップがどうのこうのという話は出だしてましたけどね。

『こうした私の懸念も反映していると考えておりますが、4 月の展望レポートでは、10 月の展望レポートで2 つに分けて記載していた当該部分を1 つに纏めたものと私は理解しておりますが、引き続き「消費税率引き上げの家計支出への影響は、その時々の消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得るため注意が必要である」と明記されたのです。』

えーっとだからそれは雇用所得の下振れ懸念にリスクウェイトを置いた表現とはちゃいますがなと思うのですけれども、何で「当面のリスクは低くなったので提案を下げた」とか言えないんでしょうかねえ。何という意地っ張り。

『私自身が今まで重視していたのは、家計サーベイ調査によると、去年の末から一貫して消費者マインドは悪化し続けているということと、今のところ先行きの収入が上がっていくという期待が確認できないということです。4 月の展望レポートには、消費者マインドという新しい言葉も入りましたし、私の懸念が反映されたと思っています。そこをリスク要因として、日本銀行もみているということが確認できたというのが第1 点です。』

とまあここまでで第1点というのがもう泣ける訳ですけれども。

『もう1 点は、どれくらいのベアの上昇になるかが、次第に分かってきたこと、今年の夏はボーナスも対前年比で上昇が見込まれること、それから公務員の給与減額措置が終了することもあって、名目賃金は上昇の方向を向いていることから、足許ではどちらかというと、さほどリスクとしては大きくないのかなと、思います。(以下割愛)』

で、その後にやってやっと現実の事象に対しての認識変化の話をするというのがもう何だかねという感じで、これ逆順に説明してたらまだ説得力があるのですが、明らかにまずは「自分の考えが反映された」というアタシがアタシがというのが先に出てくるから何じゃこのオバハンという話になる訳で、もう少し物の言い方を考えたらちったあ話を聞く気も起きるのですけどねえと思うのでありました。


・2%の物価安定目標の定義はどうなっていますねんという件について

でまたその次。

『(問) 今のご発言をお伺いしておりまして2 点ほどお伺いします。まず、委員の中で、いつ2%を達成すべきか、あるいは達成するであろうという見通しに違いがあると、今の段階で追加緩和は必要かという議論がうまく噛み合わないのではないかと思われます。』

うむ。

『もう1 つは、何が何でも2%ではないと、それと無理なくということを強調されました。そしてコミュニケーションの大切さもおっしゃっている訳でして、もし分かり易いということでは2%がピンポイントではなくて、ある程度レンジを持つべきだということで数字を出しても宜しいのではないでしょうか。もし出さないにしても、白井委員の中で2%というのは何%から何%というレンジが想定されているのでしょうか。』

まあこれは白井さんの説明が判りにくいというのがあって、恐らく白井さんとしては「目標数値として掲げる安定目標は2%のピンポイントであるが、実際の運営に際して常に2%は無理だから、そこは安定的にその近辺で推移するのが妥当である。ただしそこもレンジで示すとそもそも目標を幾らで置いているのかに対して解釈の幅が生じ得るからインフレ期待をアンカーさせる為には2%のピンポイントで示すのが重要」という話をしたいのだなあというのはこの会見とか講演をネタにしようと思って私も一回読んだだけでは何が何だかワカランチ会長で都合7回位は(頭を抱えながら)熟読した結果そういう事じゃないのという認識に至った位なので、そらまあ質疑も噛み合わない訳でして・・・・・・・・・・

『(答) まず、最初の2%を達成するという見通しと追加緩和がかみ合わないということですが、私がコミットしているのは昨年1 月の、2%の「物価安定の目標」の実現です。政府とそれぞれがやるべきことをやるという前提の下で、2%の「物価安定の目標」の実現に最善を尽くすことにコミットしております。それで、それに相当する時間軸の表現は何かといえば、昨年4 月4 日の公表文の「『量的・質的緩和』は2%の『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するのに必要な時点まで継続する」というところです。これが最も重要だと思っています。その上で、もちろん出来るだけ早く目標は実現した方が良いですし、インフレーション・ターゲティングを採用している国は通常2 年程度というようにしていますから、そういう気持ちに変わりはありません。(以下割愛)』

・・・・・・・・悪文にも程がある答えでございますわな。なお以下は経済物価状況と見通しの話をまた聞かれもしないのにしているのでその部分は割愛。

なお、その中で金融政策に関してはこんな話もしているのだがマジ意味不明。

『(先ほどの割愛部分の続きになります)もしかしたら今私が想定しているようにならない可能性が出てきた時には、企業や家計に多大な負担を与えることなく無理なく2%を達成し、その後に安定的に実現するという見通しが変わる可能性があります。その時にどういう金融緩和政策が必要かについては、当然見直す必要が出てくる訳で、その中でもし追加緩和をすることで、何らかのプラスになるのであれば、私は否定しないと言いましたが、あくまでも、無理なく2%をまず達成し、そして安定的に実現するという道筋が大事なので、その中で金融政策として何が出来るかということを考えていくべきだと、昨年からずっと考えており、そのような情報発信をしております。』

ネタの為とは言え、この政策インプリケーションが1ミリも存在しない質疑応答を都合7回だか8回読み直す自分の根性を褒めてやりたい(自画自賛)。

『レンジに関しては、私はかつて意見申し上げたのですが、例えばイギリスとかカナダとか先進国で、インフレ目標を明確にしているところもありますし、インフレーション・ターゲティングを採用していなくても、類似したような政策として、2%のロングラン・ゴールを提示しているアメリカもあります。2%あるいはその近傍という表現をしているECBもありますように、各々がだいたい2%のあたりで目標を立てている訳です』

ということでレンジの話ですけどね。

『だからといって、そういう先進国の物価上昇率が毎年2%かというとそうではありません。これは前に黒田総裁もおっしゃったと思いますが、物価は、日々燃料価格が上がったり天候の変化があったりして変動し得る訳ですが、長い目で均してみると、平均して2%ぐらいになっている、というのがインフレーション・ターゲティング、あるいはそれに類似した政策をしている国がやっていることです。そういう社会を目指そうと言っている訳ですから、そこでわざわざレンジにする必要があるのかと言えば、今の段階では必要ないと思っています。』

つーことで、この質疑にしたって最初にこのレンジの話をすればこの部分は先ほど私が申し上げた解釈をもうちょっとくどくど説明しているだけの事なのでして、その前の謎の説明が無駄にも程があってそのせいで会見要旨が全般的にお笑い怪獣大戦争になってしまうのですよね。

『まして、今そのレンジを言うことによって、私たちが去年1 月にコミットしている2%の「物価安定の目標」から、それを取り止めたいかのような、何か弱さを示す誤解を与えてしまう状況があるのであれば、レンジの採用を今検討するべきではない、と前にも申し上げたことがあります。(以下割愛)』

とまあここの説明単体では話は判るのですが、一方の2年間のコミットメントの説明が先ほどのようにオッペケペーなので結局ダメダメなんですけどね。


・何というかこう質疑が最後までかみ合わないのでした

この質疑はワロタ。

『(問) 先程と関連し、確認に近いと思うのですけれども、白井委員が見通し期間の終盤にかけて、日銀の中心的なシナリオよりもやや遅い段階で2%を達成するというシナリオでテールリスクとか突発的なリスクが発生しなければ追加緩和は必要ない、追加緩和しなくて現状の金融政策を続けていけば良いというお考えでらっしゃるのかということと、見通し期間の終盤にかけてというのは、もう少し具体的にもし時期を明確化できるようでしたら、例えば2016 年度の後半と思ってらっしゃるのか、もしくは2016 年度中なのかという辺りを少し詳しくお聞かせ下さい。』

助け船キタコレ。

『(答) テールリスクがなければ追加緩和しないのかと言えば、私は必ずしもそういうことではなく、やはり重要なのは2%の「物価安定の目標」を実現することだと考えています。』

いきなり助け船を砲撃ワロタ。

『それはどういうことかというと、2%を安定的に実現するというのは、企業や家計や様々な人達の長期インフレ予想を2%程度に安定させるということです。それがあると、例えば、現在、先進諸国の実際の物価上昇率は目標である2%を下回って推移していますが、長い目で見ると、彼らの企業や家計のインフレ予想は2%程度で安定しているので、2%に向けて戻っていく訳です。』

ホンマカイナと思うがスルー。

『日本でもそういう社会を実現したいと思っている訳で、それが大事なことなのです。2%を安定的に実現する社会を目指す上で、追加緩和をすることがプラスになるのであれば、私は否定をしないと申し上げている訳です。(時期の話に関する部分は引用割愛)』

そりゃまた急に曖昧な話を始めましたなという感じです。なお、以下まだ質疑は続きますがまあ白井さんのしょうもない説明が続きまして、その中で「無理なく」を連呼しているのが何だかなあというかあんさん誰に向かってそれアピールしてますねんという風情で、まあ困った方だというか、こういうへっぽこ質疑を満天下に公開されるのもどうかなあという感じではあります。

#以上ただの鑑賞会恐縮至極






2014/06/02

お題「白井審議委員講演&会見鑑賞会」

どこの誰とは言いませんが、リフレ派系の何とかストのレポート見てたら成長戦略が効果を出すのに時間がかかるから「2年の時間軸で2%の目標を達成し、金融政策の安定化をするのはマイナス」とかお前は何を言ってるんだという怪電波を先週末に受信した気がします。


○各種雑談系小ネタ

・輪番4000億円・・・・・と思ったら6月適用でした(汗)&短国買入が2兆円だと?

オペネタである
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140530.htm
国庫短期証券買入 20,000 2014年6月3日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,500 2014年6月3日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,500 2014年6月3日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年6月3日

5年〜10年の輪番が4000億円オファーキタコレとか思ったのですが、良く良く考えたら・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140529b.pdf

『日本銀行は、長期国債買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(6月2日より適用)。』

ということですので今月に入ってから先般の「紙」が適用されるので、一応今週になると4500億円のオファーになるかも知れませんよ(棒読み)。なお金曜日の駄文では焼き土下座とか申し上げましたが、最初は全身白塗りで暗黒舞踏をする姿をようつべに上げるとか書こうと思って一応思いとどまる位のイメージではおりますので念の為申し添えます。

なお、この紙の英文にも味わいというのがありましてですなあ・・・・・・

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/rel140529b.pdf
Outline of Outright Purchases of Japanese Government Bonds

月間買入総額は『Approximately 6-8 trillion yen per month in principle.』とありまして、一方のバケット別の月額買入予定は『About 110-200』などという表現になっていまして、日本語だとこれが『毎月6〜8兆円程度を基本とする』と『1,100〜2,000程度』となっていまして、どちらも「程度」という日本語になっているのですが、英語にした場合に単語の使い分けを見るとどう見てもアバウトの方守る気ないですよねあっはっはというところでございまするな。うんうん。

#日本語よりも英文リリースの方がニュアンスが分かりやすいというケースもあるのよね

あと、金曜日は短国買入が2兆円のオファーだったのですが、6月は資金需給的にはそれほど短国を買わなくて良い筈な上に、貸出支援オペが数兆円のオーダーで出ると思われますので、そんなペースで買わなくてもエエジャロと思うのですがここのところがイマイチワカランチ会長でございましたですな。

つーかまあ良く良く考えてみると別に短国買入でヒーコラやらんでも共通担保オペの落札下限金利を撤廃すれば共通担保オペで残高積み上げ出来る訳で、アウトライトだと0.10%を割っても良いが供給オペだとケシカランというのもこの際やけくそで廃止したらどうでしょうかねえ、って両建てで露骨に収益支援になるだけのそれこそタダの数字作りになるからやらないのですけれどもね。


・日銀レビューとな

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j02.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j02.pdf(本文)
米国の労働市場のスラックについて
― 労働参加率を中心に

ということでして中身はまあ読んでちょという感じですが(ネタが無かったら後日ネタにするかも)ここの纏めの部分が実に正論なんだが味わいがあるのでちょっとご紹介。

本文6ページの『おわりに』から。

『本稿では、労働参加率を中心に、米国の労働市場のスラック計測を巡る論点について、整理してきた。金融危機後の経済の大きな落ち込みもあって、各種指標の変動について、「構造」と「循環」を正確に見定めることは難しくなっている。この結果、労働市場のスラックを巡る不確実性は、かなり大きくなっている。』

うむ。

『FRB も、こうした不確実性の高まりを強く意識していることが窺われる。すなわち、3 月のFOMC(米国連邦公開市場委員会)の公表文では、労働市場の「幅広い指標」を点検する必要性が強調されたほか、イエレン議長も、講演において同様の趣旨の発言をしている9。また、ニューヨーク連邦準備銀行やアトランタ連邦準備銀行のホームページでは10、労働参加率に関係する指標や、各種失業率指標に加え、フローデータ(自発的離職率や失業者の就職率等)や賃金など多岐に亘る指標が、「労働市場に関する重要な指標」として掲載されている。』

ですなあ。

『それらをみると、労働市場の相応の数の指標が、失業率が示すほどには労働需給の改善が進んでいない――つまり、労働市場のスラックは、失業率が示す以上に大きい――ことを示唆しているようにみえる(図表11)。一方で、改善の鈍い就業率やディスカレッジドワーカー比率などは、労働参加率と密接に関係しており、そもそも金融危機前の水準と単純に比較することはできない。加えて、長期失業者や非自発的パートタイム労働者などの増加をどのように捉えるべきかについても、コンセンサスは得られていない。「これらを包含した広義失業率(U6)を注視する必要がある」との見方がある一方、「労働市場のスラックの指標としては(長期失業者を対象外とした)短期失業率が望ましい」との指摘もみられている(BOX参照)。労働参加率と同様、失業率についても、その変動を「構造」と「循環」要因に切り分けること、つまり構造失業率を把握することは容易ではない。』

>構造失業率を把握することは容易ではない
>構造失業率を把握することは容易ではない
>構造失業率を把握することは容易ではない

ほほう。

『また、現在のように経済が大きく変動する局面では、「構造」と「循環」に分解する、というアプローチで捉えること自体が、必ずしも適切でなくなっている可能性もある。例えば、最近のFRBの調査統計局長らによる論文( Reifschneider,Wascher and Wilcox [2013])では、循環的に需要の弱い状態が続き、失業期間が長期化していくと、結果として構造失業率が上昇してしまう――循環要因が構造要因に転化する――リスクに言及している。他方、逆の因果関係として、構造問題が強く意識されるもとでは、需要が弱い状態が続き、結果として、経済が停滞してしまうリスクも考えられる。また、技術革新など構造面のポジティブショックが、新たな需要を掘り起こし、景気循環にプラスの影響を与えることもあり得る。こうした議論は、このところ話題に上ることの多い先進国の長期停滞論(Secular Stagnation)とも関連する。』

ということで、ここに述べられている説明は誠に仰せのとおりでありまして、まあ書いている方もピュアにこの問題について書いているという事なのですが、一方で展望レポート基本的見解の中では経済物価見通しの所で思いっきり「潜在成長率を上回る成長が続き」という話をしてみたり、物価上昇のメカニズムの話をするのに需給ギャップを持ち出したりというようなプレイを絶賛実施している訳でございまして、巧まずして大変にイイイヤミダナーになっているのが実にこう味わいがありますなあ、という雑談でした。


○白井さんの講演ネタの続き&記者会見である

まずは講演から。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140529a1.pdf(講演)

全般的に白井さんの話は無駄にくどくて長いので(お前が言うなというツッコミは却下^^)引用が無駄に長くなる(色々とカットはしますが)点最初にお詫びしておきます。

『(3)日本銀行のコミュニケーションについて』だけではなく他の部分でも「ねえねえアタシがやったのよアタシがやったのよ」というのがあちこち散見されまして、お前は何処に向かってアピールしているんだという事ですが、そこの最後の部分にこんなのがあるのが実にこう味わいのある部分でございまする。

『2%の物価安定目標の実現は、国民の理解があって初めて可能になりますので、中期経営計画で示した方針をしっかり果たしていくよう努めて参ります。』

まあその本人が色々と分かっていないんじゃネーノという点について以下ご紹介をば(−−)

・フレキシブルターゲットなのにピンポイントの達成時期に拘る理由が判りません

最初の『(2)物価の見通しと上振れ・下振れ要因』という所からですけどね。

『2015年度以降の私の見通しについては、「2015年度平均で1%半ばかそれを若干上回る程度に達し、見通し期間の終盤にかけて2%に達している可能性が高い。その後、次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく」との見方をしています。私は、昨年4月以降、「2015年度末には2%程度に近づいていく」との判断を示したうえで、「見通し期間の後半にかけて、2%程度に達する可能性が高い」とする展望レポートの中心的見通し表現の「下限」にぎりぎり収まると判断してきました。しかし、今回、新たに2016年度までの予測を示すに際し、「2%程度」という幅のある表現ではなく、日本銀行の物価安定目標である「2%」の達成時期を、明確に示すべきだと判断しました2。』

ということで見通しの記述は明確に2%の達成時期という話をしているのですが、この12行ほど先の所には・・・・・・・

『重要な点は、日本銀行は一時的に2%を実現すればよいと考えているのではなく、持続的な成長を伴いながら「2%の安定的な実現」を目指して金融緩和を実施していることです。この「フレキシブル・インフレーション・ターゲティング」の枠組みのもとで、家計・企業に対して過大な調整負担を掛けずに2%を達成するには、私は「2年」よりも長く時間が掛かるとかねてより考えています。また、そうした経路が2%を安定的に持続する社会の実現性を高めますし、望ましいとみています。この経路についての私の見解は後程お話しいたします。』

いやあのフレキシブルターゲットなのに何で見通しの所で「程度」がダメという話になりますねんと思うのですが、その後の需給ギャップとかフィリップスカーブの説明が少なくとも日銀が展望レポートで示しているような話と違いますがなという気がするんですよねえ。


・成長制約に関する話がそもそも小見出しからおかしい

最近出ている成長制約に関する話ですが、どうも「成長制約による物価の上振れは起きないでしょう」という話をしたいようなのですが、小見出しの時点でアジェンダセッティングがおかしいので説明がワケワカランのですよ。本文8ページから。

小見出しが『需給ギャップの解消は直ちに成長制約をもたらすのか』となっているのですが、そうじゃなくて今のテーマは「構造的に成長制約が低い所になっていて、その結果として需給ギャップの解消が進んだだけ(なのでそれによる物価上昇はサステイナブルではない)」という話なので、そもそも論として白井さんの説明だとアジェンダの置き方がおかしい。

『さて、わが国の需給がほぼバランスしているとなりますと、それがあらゆる産業・企業において直ちに労働や設備を逼迫させ、経済成長を阻害することになるのでしょうか。まずは短中期的な視点で、この問題について考えてみたいと思います。』

順番が逆です。

『まず、需給ギャップが概ねゼロ%近傍にある状態とは、需要量が単に「過去の長期平均的な供給力」とバランスしていることなので、それが直ちに成長制約に繋がる訳ではありません。』

いやだから問題意識は逆だと小一時間問い詰めたいのだが、以下これをベースにああだこうだという話をしていて、結論部分はこうなります。

『以上をまとめますと、わが国の潜在成長率は世界金融危機後に低下しましたが、その一因は景気後退にあったと思います。景気後退局面での潜在成長率の低下は他の先進諸国でも共通して見られます。今後は潜在成長率が1%程度に向けて緩やかに上昇していくもとで、それを上回る経済成長が続くと予想しています。この間の、需給ギャップは今年度夏頃から来年度を通じて改善を続け、その後もプラスで推移するとみています。』

構造的成長制約が発生して潜在成長率が低下しているかもしれません、という問題意識に対する説明になっていない説明が続いた後にこの結論ですとそもそも説明になっていません罠。なおこの次に『需給ギャップが示唆する中長期的な課題』という更に良く判らん部分があって、構造改革が重要みたいな話をしているのですが、だったら構造的な供給力の低下に関しての話をしないで説明をした前段はナンダッタンダという話になる訳で、この人の説明も何ちゅうかパーツパーツと全体の整合性がおかしい。


・フィリップスカーブのスティープ化だけでは安定的な2%にならんだろ

その次が『4.需給ギャップとインフレ期待の物価・賃金との関係』という所で、『需給ギャップと物価の関係:フィリップス曲線について』という説明も何だかなあという感じです。

『まず、CPI(除く生鮮食品)をベースとしたフィリップス曲線を見ると、2012年10−12月期以降に急速に「勾配のスティープ化」と「切片の上昇」(曲線の上方シフト)が生じているように見えます。』

ということで、展望レポートの図表でも出ている話なのですが、直近の特殊要因混じりのプロットで説明というのも如何なものかという感じですな。

『この内の勾配のスティープ化に注目しますと、これは同程度の需給ギャップの「変化」に対して、従来よりも物価が高まり易い状況を示しています(切片については後述します)。これは、企業が販売価格の引き上げや価格転嫁をし易くなっていることを意味します。ただし、足許で起きている勾配のスティープ化の動きは、ごく短期間に大幅な円安が起きたことから輸入物価が急ピッチで上昇し、エネルギー価格やその他の物価に跳ね返ったことが主因と考えられます(図表13)。』

ふむ。

『他方、CPI(除く食料・エネルギー)をベースとしたフィリップス曲線では、勾配のスティープ化はあまり見られていません。CPI(除く生鮮食品)を構成する品目の約3割のウェイトを占める食料・エネルギーが含まれていない分、円安の影響が限定的になるからです。このベースで見ると、2%のインフレ率の達成には今後同曲線の勾配が一段とスティープ化することが期待されますが、それにはまだ時間がかかるように思います。』

ということですが、スティープしてもそれは需給ギャップに対する価格の感応度が高まったという話なのですから、景気が交代したら簡単に物価がコケてしまうという事を意味しませんかねという気がするのですが・・・・・・・・

『フィリップス曲線は、1990年代末から勾配がフラット化したことが知られています。その要因のひとつとして、「価格改定頻度」の低下が挙げられます。企業にとっては、景気が低迷する中、競争相手が設定する販売価格や顧客の低価格志向に配慮して、生産コストが上昇しても販売価格の引き上げが難しい状況が続いてきました。今後、景気回復が続き緩やかなインフレが定着していくなかで、価格の改定頻度が高まり、同曲線の勾配は徐々にスティープ化していくと考えています。』

ということで、どうもスティープ化の話をああだこうだとしているのですが、フィリップスカーブがフラット化したのはもしかしたら均衡に向かっていく過程で、その後デフレ均衡になってしまったのでフラット化が加速したという話じゃないのと思う次第で、スティープしたのはデフレ均衡からの脱却が出来たというだけの話じゃないのかねという風に思うのですけどねえ。


・なお物価が上昇する理由が良く判らん

『物価上昇率が2%に向けて緩やかに上昇していくと考える理由』という小見出しが本文13ページ以降にあるのですけどね。

『 まず、中長期の予想物価上昇率の動きは全体としては上昇していますが、このところ横ばいを示す指標も見られます。とくに家計の長期予想物価上昇率はずっと横ばいで推移しています。今後、インフレがしっかり社会に定着し、同時に2%の物価安定目標への認識・理解が高まるならば、緩やかに上昇していくとみています。』

バックワードルッキングは判るが認識云々とは??

『 しかし、消費者にとって、物価が継続して上昇していく状況に慣れるには時間がかかると思われます。(消費税の影響を含む)CPIでデフレートした実質賃金が低下し、年金給付額も物価の動き対比では抑制的に推移すると見込まれる中で、日本銀行の「生活意識アンケート調査」でも支出において「価格の安さ」を重視する傾向が依然として示されています。家計の成長・所得期待が高まり、財政・社会保障制度に関する将来不安が緩和されるもとで、緩やかなインフレが徐々に容認されていくと考えています。』

それは金融政策でどうにかできる話ではないような気がするのだが・・・・・・・・・


・続いて会見であるが・・・・・・・・・・・

会見なんですけどね。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1405d.pdf

途中から何かオモシロ対決状態になっていまして、白井さんの説明が酷いとしか言いようがないのですが、質問する方もいじめっ子状態になっているので中々アレ。

でですね、白井さんの説明が酷いというか訳判んない状態になっているのはこの「要旨」を書いたスタッフの皆様におかれましても恐らく白井さんの説明というか考え方がよく伝わっていないんでしょうなあという風に思うのですよ。

つまりですね、会見「要旨」でして黒田さんの会見要旨を見ても判るように、別に発言している事を逐語掲載している訳ではなく、発言の趣旨を踏まえて丸めている部分というのも当然あるのですけれども、この会見要旨を見ておりましてまあ白井さんが何を言いたいのかさっぱり判らんという部分が散見される次第で、これはまあ聞いている日銀スタッフも????と思いながら話を聞いているに違いないと思ってしまいましたですよ、いやマジで。

で、今回の質疑応答の中では4ページ目から金融政策に関する質問があるのですが、最初の質疑だけで8ページ目まで逝くという代物でして誠にこうアレです。とりあえずその部分の鑑賞会。

質問がまたクソ長いのですが。

『(問) 2 つお聞きします。まず1 つ目は、挨拶要旨の4 ページで「量的・質的金融緩和」の継続期間に関して、「2%が安定的に持続すると判断するには、2 回目の消費税率引き上げ後の動向を確認する必要がある」とおっしゃっています。その後、ご自身の経済・物価見通しというのは、「量的・質的金融緩和」が「2015年以降も継続されるということを前提にしています」とおっしゃいました。』

ふむ。

『2 回目の消費税引き上げ等の具体的なイベント、経済的なイベントに関連付けて「量的・質的金融緩和」の継続期間ということに言及されたのは、おそらく政策委員の中でも初めてではないかと思います。今のところ日銀は今年末、2014 年末までしか政策の手段であるマネタリーベースの残高見通しを示していません。白井委員のように来年以降も続けると、しかも来年10 月に実施される2 回目の消費税率引き上げの影響まで見なければいけないとおっしゃっているということであれば、来年以降のマネタリーベース残高の見通し等も示すのが筋ではないかと思います。あるいは、示すよう政策委員会の議論の中で提案するなり促すなりということが行われて然るべきではないかと思うのですがいかがでしょうか、というのがまず1 点です。』

つまり見通しと整合的な金融政策ならば2014年末以降の数値を出さないのは変だろという話。

『もう1 点は、日銀の中心的な見通しとしては、消費者物価指数前年比が目標である2%に達するのは、2016 年度までの見通し期間の中盤頃というふうになっている訳ですけれども、白井委員の見通しは、4 ページの初めの方に書かれているように、それよりもほぼ1 年後ずれするという見通しでいらっしゃって、中心的見通しに対して反対意見までお出しになっていらっしゃいます。黒田総裁は、かねがね日銀の中心的見通しがずれてしまう場合、見通しから経済・物価が外れていく場合には、躊躇なく金融緩和を行うというふうにおっしゃっています。白井委員のこの見通し自体は、中心的な見通しとは随分かけ離れている訳でして、既にこの中心的な見通しから外れているという見方が妥当だと思います。だとすれば、なぜ追加緩和というものを主張されないのかというのが2 番目の質問です。』

最初の質問と繋がっていますが、更に踏み込んでいまして「2年で達成」という事に対して2年で達成しないという見通しなら追加緩和するのが筋じゃないかという質問ですな。

『もともと去年4 月4 日の「量的・質的金融緩和」導入時、2 年で2%を目指すということに白井委員も賛同されていらっしゃいます。そこで、2 年で2%が難しいというにも拘わらず、何故追加緩和をしないのかということです。』

イイシツモンダナー。

『去年4 月4 日に木内委員は2 年で2%に反対されています。賛成されていらっしゃいます佐藤委員は、賛成はしていますけれども、これ以上の追加緩和は副作用が大きいとの考え方でいらっしゃいます。したがって追加緩和は必要ないと、お二人ともそういう考えだと思います。』

展望レポートに反対した他の2名の論点整理までするとは何という親切な質問。

『白井委員は去年4 月4 日の2 年で2%には賛成していらっしゃいます。それにも拘らず追加緩和を主張されないということは、佐藤委員と同じように追加緩和の副作用が大きいというお考えなのか、あるいは、去年4 月4 日の「量的・質的金融緩和」導入時の2年で2%という約束は、それほどしゃかりきになって守る必要のないようなものであるというふうにお考えなのか、その辺りをお聞かせ頂きたいと思います。』

ということで、「白井さんの見通しなら今の金融政策の枠組みなら追加緩和を主張するか、2年で目標達成の旗を降ろすのが筋ではないですか」という質問をこれでもかと逃げ道をふさぎながら質問するという鬼質問で質問だけでお腹一杯。

で、その答え。

『(答) 非常に沢山のご質問を一気に頂いたと思いますが、私なりに理解したところから順々に説明させて頂きたいと思います。』

本当は沢山の質問じゃないんですけどね。まず物価見通しの話ですけど結論がワロタ。

『(途中だいぶ割愛)そのような間接的な影響も踏まえて、私たちが、2%が安定的に持続していると判断するには、消費税率引き上げが終わった後の影響をみる必要があり、それは2016 年10 月からなので、そこを見極めた方が良いのではないかということを申し上げた次第です。』

だそうだが世の中には消費税だけじゃなくて色々な「一時的要因」がございますので一生見極めてろとしか申し上げようがない。

『それから、今回私が2016 年度までの見通しを出す時に、「量的・質的金融緩和」の継続を前提としているのならば、なぜマネタリーベース等の残高の増加額なりを示さないのかとのご質問だったと思います。ご質問の趣旨は、私自身も理解できます。』

ほほう。で、この先がもう何が何やらワカランチ会長なのですよ。

『しかし、今私たちは、対外的には2014 年12 月までのマネタリーベースの増加額と、それを達成するための国債を中心とする資産買い入れの増加額を明確に示していますが、2015 年1 月以降のことはまだ明確に対外的に示していません。したがって、私は今回は明確に示していませんが、私の個人的な考えとしては、適切な時期に明確にすることになるのではと思っております。』

???????

『私は、これまでは2015 年度末にかけて2%程度に近づいていくというように申し上げてきて、2%に達するというようにみていると申し上げたことはないです。』

2年で2%は???

『今回2016 年度までの見通しを新たに出すにあたり、私はその辺を明確にする必要があると思い、「見通し期間の終盤にかけて2%に達している可能性が高い」という表現は、従来からの見方が変わった訳ではないですが、より明確に示したということです。』

???????ですが、この先の日本語が日本語なのに何が何だか更に判らなくなります。

『この私の見通しを立てる際に、「量的・質的金融緩和」がストップしているということは考えづらく、──もともと私たちは、去年4 月4 日に2%を目指し、それを安定的に持続するのに必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続するということに合意しておりますから──、その前提が私の見通しに必要であるため、今回明確にしました。それがどういう金額なのかどういう内容なのかについては、先程申しましたように、まだ日本銀行として対外的に明確にしていない以上、私自身の考えはありますが、それを明確にする時期ではないと判断しました。日本銀行が明確に示す際に、私自身の見解を申し上げたいと思っております。これが1 つ目の質問だったと思います。』

意味が掴めないのでスタッフがヤケクソでそのまま逐語で出したんじゃないか疑惑ががががが。

『2 つ目についてですが、私自身はまず、昨年1 月の2%の「物価安定の目標」を実現するために「量的・質的金融緩和」を通して最大限の努力をすると、その際に政府と共同声明を出しておりまして、政府には成長戦略や中期的な財政再建を確りやって頂く下で、2%の「物価安定の目標」の実現に最大限の努力をすることにコミットしております。その上で、昨年4 月4 日の公表文をご覧頂ければ、──少しそこに誤解があると思いますので申し上げますと──、2 つの時間軸表現があります。』

出たよ謎の2つの時間軸。ということで途中を飛ばしましてですね。

『(途中割愛)。但し、我々は、その2%の達成を目指すときに、他のインフレーション・ターゲティング国と同様、フレキシブル・インフレーション・ターゲティングというものを採用しています。フレキシブル・インフレーション・ターゲティングとは、何が何でも、絶対に2年で2%を達成するということではありません。』

ほほう。

『どんなインフレーション・ターゲティングを採用している国も同じですが、無理なく、経済成長の持続性も考えながら、最終的に物価安定目標を達成するというのがフレキシブル・インフレーション・ターゲティングですから、企業や家計に過大な負担を与えることなく達成するという意味で「2 年程度」に合意している訳です。』

今回の白井さんの説明では何度も「無理なく」というのがあるのですが、そもそもQQEというのは金融政策のレジーム転換という「無理」をする事によってデフレ均衡状態を脱却させて、インフレ期待を持ち上げる事によって概念的に言えばフィリップスカーブの上方シフトを行うという話で、そもそもこの「無理なく」という話がQQEの概念と異なるでしょと思うのですけどねえ。

『ですからもともと期間は「2 年程度」です。私は当初から、「程度」には幅をもってみるという意味で賛同しております。また、無理なくやるべきであるという意見をずっと伝えてきましたし、今もそのつもりです。ですから、無理なくやるという視点から、2%が達成している可能性が高いとみるのが、私自身は予てから申し上げているように、見通し期間の終盤にかけてというところに当たると思っています。』

いや3年は2年程度と違うだろと思いますが。

『その上で、追加緩和というのはまた違う話だと思っています。追加緩和というのは、人それぞれで違う意味で使われているようにも思いますが、もし、今年のマネタリーベースに上乗せするという意味であれば、私自身は、今申し上げている見通しを示している訳ですけれども、その見通しが今の私が持っている全ての知識を持ってみると、2%を達成しているという可能性が高いという時期は、見通し期間の終盤というふうに思っています。』

で?

『そのうえで、この見通しが、もし下振れる場合、この見通しが仮に何か想定違いなどがあって、下振れる場合は、その時はどういう原因かをまず追究しなければいけないと思います。その下振れる理由が、何らかの突発的なテールリスク的なことが起きているのか、あるいは、私たちの見通しの前提そのものが何か違っていたのか、色々な事情があると思います。それを見ながら、あくまでも重要なのは、この2つ目の時間軸の表現である、2%を安定的に実現するのに必要な時期まで金融緩和をするということです。』

という事ですがそれ「2年で2%」と違いますがな。

『これが昨年1 月に私がコミットした2%の「物価安定の目標」の実現ですから、これが最も重要な訳です。この2%を無理なく実現し、それを安定的に持続するために必要なシナリオを考えていますから、それがもし下振れる場合があれば、その時には金融政策の内容の再検討が必要な訳で、その時もし追加緩和によって、その見通し、──2%を無理なく実現し、安定的に持続するのに必要な道筋──、にプラスになると判断すれば、私はそれを否定するものではないと思っています。私は、1 月のシンガポールの講演でも申しましたように、追加緩和は、見通しが下振れる場合には検討し得るが、その際に、企業や家計に無理な負担が掛からずに2%を安定的に実現できるかとの視点で金融緩和を考えるべきだと、そのような文脈において否定するものではないと考えています。』

最後の方は質疑が全然噛み合っていないのが判るかと思います。なお以下延々と応酬が続きますが以下明日以降に。