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2013/11/29
お題「昨日の続き雑談/市場雑談メモ/クソ長い引用大会ですが白井審議委員スペシャル!」
今回は引用が多くてやたらクソ長くなる点を最初にお断りいたします。白井さんの講演と会見が長すぎで、月末進行でご多忙な方は週末にでもご覧いただくのが吉かもしれませんぞ(−−;
○木内審議委員講演ネタ追記雑談
昨日は木内さんの講演をネタにしたら「何かエライ絶賛してるじゃん」というお問い合わせ(というか何というか)を結構頂きまして書いた本人の方がちとビックラしたので追記雑談。
んーっとですね、今回の木内さんの講演ですけれども、まあシンプルに纏まっていたのと、ロジック内容が良く判って「こりゃ執行部(つーか今の日銀の基本ロジック)とは水と油だわ」というのが理解できましたし、木内さんの論点はなるほどこれは筋通っていますなと読んでてご機嫌モードになったのでそれがあったのかとか思ったのですが、良く良く考えたら木内さんのロジックって債券市場的にも無理がないっすなあというのがあるので、それもあったかもねと思いました(^^)。
つまりですな、今の無理繰りなMB拡大大会ってフィージビリティー的に3年も4年も続けられる物ではなく、それどころか既に債券市場の流動性は数値的に何といわれようとも市場前線労務者の体感的に言って明らかに盛大に低下している状態でこの政策あと丸々1年は最低続く上に、どうせ来年末時点で2%達成してねえだろと債券市場の多くの人は見ているだけに、そうなると(やり方の変更がなければ)更にこのおかわりが続くというオソロシスな流れになりますと債券市場そのものが市場の体を成さなくなりそうですよねどうしましょアヒャヒャヒャヒャとまあそんな意識があるので、まず2年やってみてその後は別途考えるという話と、MBの無理繰り拡大をやり過ぎると弊害があるでしょという話はいやもうそうですわとなるっつーことですね。
てな訳で絶賛モード(?)であったのですが、しかしこの木内さんのロジックって基本的にその気合でフィリップスカーブをどうのこうのという話と全然違うグラデュアリズムの世界でありまして、それって実は以前からの日銀ドクトリンでもありますので、これはこれで筋は通っているし、話として無理がないという点でアタクシ的にも共感する所はあるのですが、じゃあ4月4日の時点でこのロジックを全面的に押し出して追加金融緩和をして「期待の変化」が起きたかというとそれは相当怪しいですし、大体からして対政治という面を見た場合に全然通らないでしょという話でもありますので、現実世界にこのロジックを押し出していくのはまあ普通に時期尚早ですよねと思います。つまり、少数意見としては有りかも知らんし、異次元緩和を実行してその後さてどうしましょとなった時点では異次元世界からの徐々に足抜けをしてこの話へとシフトするというのも有りかも知らんですが、惜しくもそういう環境を勘案するとフィージブルではないという話で、実際の政策運営的には異次元イリュージョンよりも無理なくフィージブルではあっても中々難しいでしょうなと思うのでした。
そういや9月のきさらぎ会での総裁講演も何だかんだ言って後からネタにしてこれまたあたくし絶賛モード(?)だった記憶があるのですが、あれはあれで異次元緩和イリュージョンのロジック(というかイリュージョンなのでロジックは怪しい部分があるのだが^^)を丁寧に総括して説明していて非常に分かりやすかった(のに微妙に誤解したのが最初に色々と出ていたのでトサカに来て後からネタにしたのだが)という所でして、異次元イリュージョンにとりあえず乗っている状況(だけどポジションはそうじゃない人の方が多そうだが)でもありますので、日銀の動きがどうなるのよと考える場合はやはり異次元イリュージョン劇場で気合だ気合だとゆーロジック(??)を把握するのも重要ということですな、うんうん。
恐らくですね、きさらぎ会で総裁が言っていた「デフレはそれが長期化することによって脱却が困難になる」というのもこれまた相当正しい話で、セントルイス連銀のブラード総裁が言う「望ましくないデフレ均衡」から「望ましい適正なインフレ均衡」へと遷移させる為にはグラデュアリズムだけでは厳しい(だいたいからしてそれをやって今まで遷移できていなかったのだし)からイリュージョンでも何でもいいから兎に角思い切った政策の実施で均衡をぶち破る必要があるというのもこれまでの推移だと全く可能性無しという訳でもないかもね程度の進展はしている訳ですから、今の異次元イリュージョンもこれはこれで有りだと思いますし、じゃあ何が正解なのかと言われるとワタクシも良くわかりません。どうなんでしょうかねえ。
・・・・・・・・・・てな独り言でした。何か勝手な独り言でどうもすいません。
○2年入札&3MTB入札ェ・・・・・・・・・・・・・
・3M入札は前場祭りで後場アフターフェスティバルとな
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20131128.htm
(3)募入最低価格 99円98銭8厘0毛 (募入最高利回り)(0.0446%)
(4)募入最低価格における案分比率 80.0873%
(5)募入平均価格 99円98銭9厘9毛 (募入平均利回り)(0.0376%)
何か流れましたなと見るのか金利が低いですねと見るのかがこれだけ出されると謎の結果ではございますが、実際問題としましてはこの入札、何か知らんけど前場からWI取引がホイホイ買われてしまい、前日は4bp台が普通にオファーレベルの筈だったのに気が付けば前場の引けには0.035%まで買われてしまうというお祭り状態。何かそんなに盛り上がるのかオソロシスという事で入札を迎えたのですが・・・・・・・・・・
実際に蓋を開けてみたら平均も前場引けより甘いわ足切りは1bp位甘いわという盛大な大流れ入札となりまして、そらまあそこまで金利が低下すると付利と関係ない人であってもさすがにニーズが減ります罠という事で実際にはそれほど最終投資家の札が集まらず、とは言っても前場のあの勢いだと最終投資家からオーダー来ている分は入札空振りすると死亡確定なので、その分は強い所に札をいれざるを得ず、一方でうっかりするとコールより低いだろという水準になっているしGCレートはそこまで下がっていないしと考えると在庫を大量に仕込むのも無茶なので在庫用はてきとうに安い所まで流して札入れますというのが揃った結果がこの有様と。
でまあ後場はさすがにコケたようでして、いやはやという感じですが、まあ今月これまでの日銀短国買入2兆円×4攻撃の効果てきめんで玉がスッカラカンの所に買いが入って気配がお祭りになったものの、新発は全部捌けませんでしたという話なのですが、ここでまた今日は日銀の短国買入攻撃があるのが誠にアレという所ですが、まあこれは日銀買入の累積効果によって市場がスカスカになってきているからこその相場大暴れという事で、日銀の買入は止められませんので一発ヤケクソで短国増発して欲しいものですな(まあ増発したらMBの帳尻で結局その分買われるので同じという説はあるがorz)。
・2Y入札はつええええええ
なんじゃこりゃ。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2013/resul060.htm
(3)募入最低価格 100円02銭5厘 (募入最高利回り)(0.087%)
(4)募入最低価格における案分比率 94.8867%
(5)募入平均価格 100円02銭7厘 (募入平均利回り)(0.086%)
水曜にWIが0.095とかになっていてうげげと思ったのですが、昨日は前場引けに掛けて0.090%出合いとかやらかしやがって更に落札結果はその上を逝くという展開なのですが、えーっとあのその超過準備付利金利ェ・・・・・・・という所でして、とにかく日銀の現在の異次元金融緩和は「量で勝負」をしている以上、付利金利って普通にしていると下がらない(量で勝負を止めれば別だがそれはロジック大崩壊ですし、量を積むためには付利金利を下げるとオペレーショナルな面で自分で自分の首を絞めるから)筈なのですが付利から1bp以上も下の2年債を買うとなおいおいナンジャソラという所で。
まあ色々とその超過準備付利におくよりもこの水準であっても2年債を買わないとアカンというお家の事情があるんでしょうなというのは分かるのですが、しかしまあこの手のお家の事情的な債券買いが中短期に入るということは今後MB拡大すると益々こういうの増えるかも知れませんねとかあまり考えたくないのに加え、そもそもこういう動きというのはつまり超過準備の積み上げがオペレーショナルにも色々と大変になるんじゃネーノという話でもあったりするような無かったりするようなでありまして、何ともいやはや入札でありました。
○白井審議委員の講演&記者会見であるがこれがまた・・・・・・・・・・・・・・
水曜日徳島での金懇です
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131127a1.pdf(講演)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1311e.pdf(会見)
えーっとですね、講演がフォント小さ目の字で本文20ページ(+資料13枚)というのも量が大杉だわという所ですが、金懇の会見で会見要旨が12ページって金融政策変更した総裁会見かというような量になっておりまして、「わかりやすさ」を主張されておられる白井さん講演の分量大杉勝男なんですけど勘弁して下さいなどとは申してはいけませんし、そもそも何でこんなに会見が長いのかはこの後明らかになりますよ!!!
まず講演をサラサラと。
とりあえずここから暫くは講演からの引用になりますので『』部分は上記URLのうち講演の方からということでご理解下さい。
・勝手に総評
まあそういう事で文章がやたらめったら長い上に、前日の別の審議委員講演と違いましてこのまたロジックが良くワカランチ会長でして、ワカランチ会長なのはきっと不肖このアタクシの知能に問題があるからだとは思うのですが、何となくは分かるけどイマイチ腑に落ちないという点で???感の残る物件ではございました。
・下振れ要因評価について
前半の方では下振れ要因の評価について、展望レポートの見解と白井さんの見解の違いがどこにあるのかというのを説明しています。本文5ページの『(2)経済見通しのリスク要因についての私の見解』以降になります。
『なお、展望レポートにおける経済見通しのリスク評価の記述について、私は10
月末の決定会合において反対意見を表明しておりますので、この場を借りて私の見解をご説明したいと思います。私は、4
月から一貫して経済の上振れ・下振れ要因についての全体のリスクバランスは、「どちらかと言えば下方に傾いている」と評価してきました。』
ふむ。
『それはまず、海外経済の回復ペースについての不確実性が高いなかで、わが国の輸出の回復ペースが既に私自身のベースライン・シナリオに織り込まれている以上に緩慢になる可能性が否定できなかったからです。また、円の為替相場が大きく減価してから暫く時間が経過していますが、Jカーブ効果や海外需要の緩慢な回復力以外の要因、例えば、海外生産へのシフトや企業の競争力の変化といった構造的要因が予想以上に強く働いているとも考えられ、わが国の輸出構造の動向を注視する必要があると考えているからです。』
つまり財政で吹かしているものの、将来的に持続的な回復の為に必要な輸出の回復が見込みにくいのではないかという話ですな。
『今回は、この点についての不確実性が4 月・7 月評価対比でやや強まっていることに加えて、賃金の伸びが物価上昇率に追いつかない可能性、あるいは資産効果が実質所得の減殺を十分相殺できない可能性、家計・企業の中長期的な成長期待が下振れる可能性等についても、4
月・7 月評価時点と比べてやや明確に意識しておく必要が高まっていると考えました。例えば、本年9
月の日本銀行の「生活意識アンケート調査」では、調査時点がオリンピック招致の成功が報道される前ということもあるのかもしれませんが、わが国の「経済成長力D.I.」が本年6
月調査結果から悪化していることを示しています。』
ふむふむ。で、この後色々と説明があるのですが、その詳説を一々引用していると後半まで辿りつきそうもないので超端折って参ります。この経済部分を色々とああだこうだ指摘しているのですが、引用パスしますのでお暇な方は白井さんの講演テキストをお読みくらはい。
・中長期の予想インフレ率の動向の不確実性
『最近の中長期の予想インフレ率の動向』という小見出し(本文10ページ)まで飛びます。
『2%の物価安定目標の実現に向けて、予想インフレを「安定化(アンカー)」させる観点から重要な役割を果たすのが(「フィリップス曲線」の切片に影響を及ぼす)中長期の予想インフレ率の動向です。中長期の予想インフレ率はこれまで上昇してきましたが、足もとでは一部の指標では上昇傾向が続いているものの、複数の指標ではその上昇ペースが緩慢または横ばい圏内の動きとなっているようにみえます(図表3)。』
さいですな。
『また、物価安定目標である2%からもまだ距離がありますので、今後、見通し期間中にこれが2%まで上昇していくのかについては不確実性があるとみています。例えば、上昇がみられていた物価連動国債のブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)の動向をみてみますと、かつては円ドル相場との相関はさほど明確にはみられませんでしたが、2012
年末以降は円安傾向と整合的なかたちで急速に上昇しており、この間の相関はかなり高い水準にありました(図表5)。しかし、今年半ば以降は、円ドル相場が振れはあるもののほぼ横ばいに転じた動きにあわせるかのように横ばいに近い状態となっているようにみえます。足もとでの円安の動きを含めて、今後の予想インフレ率の動向を注視しています。』
ほう。
『2%の物価安定目標の実現に向けて、需給ギャップに対する物価の感応度の動向――すなわち「フィリップス曲線」の勾配の変化――も重要な役割を果たすと考えられます。一般的に、フィリップス曲線の勾配は、同じ需給ギャップの水準にあっても企業にとって販売価格の引き上げや価格転嫁が以前よりも容易になり、価格改定頻度も高まるにつれ、スティープ化していくと考えられます。現在は、勾配が緩やかにスティープ化しうる環境へと改善しつつあると思います。』
ふむふむ。
『しかし、企業間の競争が厳しいなか、販売価格の引き上げに伴う個人消費の減少を懸念する企業が多い場合には、フィリップス曲線はさほどスティープ化せず、想定よりも物価の上昇幅が下振れる可能性があります。特に2014
年度については、企業が消費税率の上乗せ分以上の(需給ギャップの改善見合いや予想インフレ率の上昇による)販売価格の引き上げをどれだけ実施するのかは予想しにくい面があり、消費税率を除いた消費者物価の引き上げの一部は2015
年度以降に先送りされる可能性もあります。』
この辺日銀の中心見解とはだいぶ乖離してますなという所で。バックワードルッキングも含めて上昇するぜ気合だ気合だという話には与してい無さそうですね。
・バックワードルッキングのインフレ期待上昇に関する説明に少々違和感ががががが
でまあ更に盛大にワープしまして、本文14ページに参ります。この辺延々と予想物価上昇率(中長期の)がどうなるかという話をしていてこれはこれでふむふむと思いながら読めるのですが、腑に落ちるかというと少々微妙ではありますがそれは兎も角。
『実際のインフレ率は中長期の予想インフレ率の引き上げをもたらすのか』という小見出しの所から。
『まず、「1 つ目のチャンネル」として、実際の消費者物価上昇率は足もとまでは緩やかに上昇してきており、本年度下期中には1%程度に達する可能性がありますが、そうした実際のインフレが社会で定着していくなかで、中長期の予想インフレ率が一段と上昇していくことが考えられます。』
『日本銀行の「生活意識アンケート調査」によると、家計の今後5 年間の予想インフレ率はガソリン価格や頻繁に購入する品目(例えば、食料品、日用品)の物価動向に影響を受けていることが分かります。このため、これらの品目の物価が足もとで上昇が続いていると、予想インフレ率もそれに影響を受けて上昇していくと考えられます。』
とまあここまでは良いとしまして。
『次に、参考として、英国の事例――実際のインフレ率が高い水準で推移するなかで中長期の予想インフレ率を引き下げていった事例で、わが国とは逆の状態ですが――をみてみたいと思います。』
・・・・・・・・うーん。
ということで説明してこういう結論になっているのですが・・・・・・・・
『以上の英国の事例をわが国に置き換えますと、以下の点が指摘できるかと思います。
・ 実際のインフレ率が2%目標に向けて上昇していく途上において、中長期の予想インフレ率も上昇しうると考えられること。
・ 中長期の予想インフレ率が2%に向けて収束していく途上でアンカーが確立するまでの間は、実際のインフレ率は(国際商品市況やその他の影響を受けるため)中長期の予想インフレ率をオーバーシュートして上昇することが起こりうると考えられること。
・ 2%の物価目標については、一定のレンジよりも、ポイント水準の方が望ましいと考えられること。』
いやまあ英国の話(引用割愛してますが)を上下ひっくり返せばそういう事になるのですけれども、現実問題として期待インフレ率を「下げる」方は金融大引き締めをすれば良いのですから(政治的に実行できるかという話をさて置けば)簡単な話なのですが、じゃあ期待インフレ率を「上げる」方って(無茶苦茶やって通貨価値大毀損ヒャッハーというのではないアプローチでね)難しいというそもそもの大前提への考察が抜けているような気がするんですよね。大体簡単に上げられるんだったら当座預金残高100兆円とかの昨今、木久扇師匠の理論によればとっくの昔に期待インフレは2%になっている筈なんですけどね。
・展望レポートを読みやすく云々の話
最後にまあそういうのがありまして。例の謎提案の趣旨説明がございます。
『この趣旨をご説明いたしますと、私は審議委員に就任した当初から、金融政策についての外部の理解を促進するために、展望レポートを含む様々な公表文書について日本銀行によるコミュニケーションを大幅に改善することの重要性を訴えてきました。とくに二つの柱の記述に関しては、このレポートを読んでくださる国民の皆様の視点に立つと、趣旨を理解することが困難であるうえに、一読して理解できるような親切な書きぶりとなっていないのではないかと問題提起してきました。』
はあそうですか。
『そこで、正副総裁の交代以降初めての展望レポートを議論した4 月末の決定会合を見直しの絶好の機会ととらえ、二つの柱という用語を全く使わずに、全体の文章を通して該当箇所に必要な説明を織り込むという提案を行いました。この提案は否決されましたが、今回の展望レポートでは、私の問題意識を踏まえて、二つの柱による評価を行っている箇所(「3.金融政策運営」)に「脚注」を新たに挿入し、関連する今年1
月の公表文を参照するよう指摘する修正を加えています。』
はあそうですか。
『しかし、読者の立場にたった分かり易さという視点では、同じレポート内で説明が完結していません。そこで、さらに追加的な改善の余地があると思われましたので、今回も新たな提案を行うことにいたしました。今回の提案では、読者の方々が最初から同レポートの流れを意識することができ、かつ2
つの柱についても冒頭で簡単に解説されていますので、格段に読みやすくなると思いました。』
はあそうですか。
『因みに、こうした導入部分の挿入は2011 年10 月から2012 年10 月までの展望レポートでもみられますが、私の提案は特に二つの柱についての説明の追加という点で、より前進した内容になっていると思います。』
ふーん。
『現在、日本銀行は2%の物価目標を掲げて異例の金融緩和を実施中という重要な時期にあります。日本銀行はコミュニケーションの改善に努めてきてはおりますが、金融政策の内容や日本銀行の意図について国民の皆様に理解を一段と深めていただく余地は大きいと感じております。』
・・・・・・・・と言ってるご本人が謎の提案はするわ異次元緩和の気合理論を説明しないわとはどういう事でございましょうか????と思ったら会見が凄い事になっております。
○会見が前代未聞モード!!!!
改めて会見URLを。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1311e.pdf
何で12ページあるのかというのはまあ読めば分かります。メインイベントの前に前座を引用。
・追加緩和言い過ぎなのですが・・・・・・
『(問) 2点質問があります。1点目、委員は経済・物価見通しの下振れリスクに関して指摘していらっしゃいます。具体的にどういう大きさのリスクとみているのでしょうか。2点目、それらのリスクに対応して、具体的にどのような追加金融緩和策、あるいは調整が必要であるとお考えでしょうか。』
『(答) 私の中心シナリオに関しては、若干慎重ながらも、概ね展望レポートの中心的見通しに沿っていると判断しています。とはいえ、経済に関しては、海外経済の下振れリスクがあるのではないかということと、家計の雇用・所得動向に関して慎重にみていく必要があるのではないかということから、やや下振れの方に傾いているのではないかと、様々な分析等から判断しています。物価に関しては、これも中心的な見通しに対して若干慎重な見方をしていますが、概ね沿っていると判断しています。下振れリスクとして、中長期の予想インフレ率が想定した通りに上がっていかない可能性と、需給バランスに対する物価の感応度が想定したほど高まらないことに関して、現在はより下振れに傾いているのではないかと意識しています。これは、下振れリスクですから、中心シナリオとして反映させているわけではないので、ここをきっちりみていきたいという判断です。』
これはさっきの講演の通り。
『ご質問の追加金融緩和という点について、私は、否定はしません。』
あちゃー。
『もし将来的に追加金融緩和を考える場合には2つの可能性があると思っています。1つは、今申しましたように、経済あるいは物価の下振れリスクが顕在化して、それが中心シナリオを明確に大きく下振れさせるような可能性があると判断された場合には──これは日本銀行の金融政策の信認に関わることですので──、躊躇することなく、追加緩和すべきだと思っています。』
まあこれは良いのですが・・・・・・・・
『もう1つは、金融政策の信認だと思っています。』
はい??
『私どもは2%の「物価安定の目標」という大変チャレンジングな政策を今やっています。この私どものコミットメントを維持していくことが大事です。金融政策に対して、信認が大きく低下するようなことが仮にあるとすれば、その場合には、追加緩和を検討すべきではないかと考えています。』
最初の信認の低下とこの話と何がどう違うのかわからんのですが、後の方で質問されていまして、そこでの説明を読んでも判らん(ただしこの時にはメインインベント発生後だったのでそもそも質疑応答がアレになっていたというのがあります)。
『2つ目のご質問について、追加緩和を検討するのは、中心シナリオが下振れるケースと、もう一つは信認が大きく低下するケースです。信認というのは、私の考えでは、物価が2%に向けて着実に上昇していく経路を辿っているかということが1つで、中長期の予想インフレ率が2%に向けて上昇していく傾向がみられるのかということと、もう1つは市場参加者の見方とのズレがありますが、そこのところがどうなっていくか、をみています。』(これは別の質問に対する答えです)
??????市場に追い込まれたら追加緩和するという事なのでしょうか??????
ということで、そもそも追加緩和を強調する時点で異次元イリュージョン政策の建付けと全然違う話をしている訳でして、まあこの辺のヘッドライン出た時に相場何となく反応してましたように、何か分かりやすさを強調する白井さんの方が肝心の異次元政策の骨子を理解しないでノイズを振りまいているようにしか見えませんな。
○さて本日のメインイベント(え?)
ここまで延々引用大会をご覧いただいた上に実は本編はここから始まります。とある一連の(というか2つだが)質疑で延々と6ページ分を消費しているという前代未聞の恐ろしい事案がございまして・・・・・・・・
『(問) 分かりやすさを主張されていますが、主張されている内容自体はもっぱら分かりにくいというのが率直な感想です。』
ひえー。
『まず、ご自身の見通しが、委員の中央値よりも低くて、さらにその上に下振れリスクを意識する必要があるというのであれば、ご自身のメインのシナリオ自体を引き下げて、佐藤委員とか木内委員のように展望レポートそのものに反対をされればよいのではないかと思うのですが、この点どうかというのがまず1点です。』
『2点目として、今の質問にも関連しますが、委員の中央値よりも緩やかなペースでしか2%に向かって上昇していかないとご覧になっていて、2%への道筋が「順調」というのは不適切であるとまでおっしゃっているわけです。だとすると、2年で2%という目標そのものを反故にするものでなければ、2年で2%を達成するために今この時点で追加緩和を提案すべきではないかと思うのですが、如何でしょうか。』
『3点目として、展望レポートの分かりやすさということで、展望レポートそのものに反対をされていますが、我々読者からすると、ちょっと問題としては瑣末ではないかと、それぐらいのことで反対するのではなく、この程度の話であれば、決定会合以外の時間にボードの方々とか事務方と一緒に議論されて、変えるところは変えればいいのではないかというのが率直な感想です。この3点目についても、ご意見をお願いします。』
3点目辛辣にも程がある・・・・・・・
で、それに対する白井さんの答えですが、もはや細々茶々を入れるのもアレですので合いの手をあまり入れずに引用しますからご鑑賞下さい。
『(答) まず、3点目からお答えすると、私は4月にも同様の提案を出していますが、その趣旨について、もし展望レポートの表現・表記上程度のことに異議を唱えたとお考えの方がいれば、そうではないのです。私自身がなぜこれを4月から主張しているか理由を申し上げますと、実は私は審議委員に就任する前から、日本銀行の公式文書の書き方、表現が分かりづらい、どうしてこういうあまり一般的には使わない言葉を用いるのか、色々な説明が抽象度が高くて分かりづらい、という印象を個人的に持っておりました。』
『審議委員になる機会を得た2011年4月以降、私は与えられたあらゆる機会を捉えて、私自身が感じている分かりにくさを私なりのやり方で訴えてきました。この点、日本銀行も色々なところで努力をしていると思います。しかし、それでも分かりにくさがあり、日本銀行の書いていることは分かりづらいとして、文章を読むのを諦めてしまっている方達も多くいると思います。今回の挨拶要旨の脚注にも書きましたように、日本銀行の生活意識アンケート調査では、「日本銀行の外部に対する説明が分かりにくい」と言っている方達が約60%で、「分かりやすい」と言っている方達が6%です。』
『なぜ私がこれを主張するかということを理解して頂きたいのですが、私どもは1月に2%の「物価安定の目標」を掲げました。これは、予想インフレ率を引き上げていくという、先進国で他の中央銀行がやったことがない大変チャレンジングなものです。一般的に言って、国民の皆様、消費者の皆様からみてインフレを下げる政策の方が上げる政策よりも理解しやすいです。ですから、15年間のデフレの下で経済は決してよかったわけではないのですが、それでもインフレ率を上げるとなると、なかなか感情的に納得いかない方達が多いというのが事実です。今多くの国民の皆様は、メディアの皆様のご協力もあり、日本銀行が2%の「物価安定の目標」を実現したいということはおそらく分かっていると思います。しかし、知っているだけでは実現しないのです。知っていることから、共感、理解があって初めて日本銀行の金融政策に対するサポートが生まれるわけです。そうなって初めて社会に根付いていくと思うのです。そのためには、これまでのような対外的な説明で十分なのかというと、おそらく十分ではないのです。そのぐらい大変なことをやっているのです。』
『私は2011年4月から改善について多くの指摘をしており、いくつかは私の意見を踏まえて反映されてきています。例えば、4月の展望レポートは、それまで非常に量が多くて重複感があったものが、かなり簡素化されました。この点は、私も訴えてきたことなので、歓迎しています。また、4月に私が行った提案に関しては、消費税率引き上げの実質所得への影響の書き振りが中立的でしたので、もう少し踏み込んだ書き方が必要ではないかと提案しました。これは否決されましたが、10月の展望レポートでは改善されています。』
『また、2つの柱の記述が分かりにくいとの私の提案については、10月の展望レポートでは、脚注に、今年の1月の公表文を参照するようにと書かれています。それでもまだ、1月の公表文をみなければ分からないようになっているわけです。文章はその中で完結するようにしなければならない、という趣旨で、私はあえて一度否決された提案を出すのではなく、今回は、2つの柱が何かということを冒頭に説明する形にすれば、少なくとも流れは読めるようになると思い、提案しました。』
『もちろん、私の提案だけで分かりやすくなるとは思っていません。やはり普通では使わない言葉があって難しいので、満足しているわけではないのです。ただ、9人の政策委員で決めることですし、そうした言葉に慣れている方、今のやり方がよいという方もいるかもしれません。しかし、少なくとも2つの柱だけは説明が書かれていないので明らかに分かりにくいのではないかと思います。これは、日本銀行が2%の「物価安定の目標」を実現するためにあらゆる努力をしなければならない中の一つとして言っているシンボルなのです。』
『ですから、展望レポートのみの問題ではなく、対外的な説明の分かり易さ向上に向けた一歩として、そういう考え方に向かっていきませんか、ということを言いたいのです。私どもからみて分かりやすいかどうかではなく、国民の目線に立った時に本当に分かりやすくなっているのか、展望レポートを読んでくださる読者の数を増やしていかなくては、どうやって金融政策に対するサポートが得られるのか、と私は思いました。これが、今回こうした提案に踏み切った背景です。』
・・・・・・・・・とりあえず湯気ポッポーとなりながら話をしているのは把握したが、まだ続きます。
『2点目について、私は、確かに中心的シナリオについて中央値の見通しよりもやや慎重だと申しました。ただ、リスクチャートをみて分かるように、中央値に対して上の見方をする方もいますし、下の見方をする人もいます。そういう中で多少のズレはありますが、中心シナリオの表現に関しては、概ね同意するということです。完全に一致するというのは中央値に近いことですが、審議委員の見方はそれぞれ違うわけです。その中で、私は確かに2%の達成時期に関しては中央値に比べれば遅れるとみていますが、それでも「見通し期間の後半にかけて、2%程度に達する可能性が高い」という表現に大きな違いがないと判断したので、中心シナリオに関して反対していません。』
『それよりも、私どもは、今、前例がない新しいことをやっているわけですから、実証分析をするにも非常に難しいわけで、当然、不確実性があります。私はそれを率直に言っていきたいと思いました。』
それこそ「分かりにくい」のですが・・・・・・・・・・
『今回の挨拶要旨の中で、「概念的チャンネル」として説明しましたように、2%を達成するためにはこういうチャンネルがあるかもしれないと思っています。概念的と申しましたのは、やったことがないものだからですが、頭では考えることができるチャンネルで、少しその兆しもみられます。ですからこれをしっかりみていきたい、と考えており、これが実現していけば私が懸念している下振れリスクは減っていくわけです。こうした観点から、下振れリスクをしっかり意識して、金融政策運営をやっていることを国民や市場参加者の皆様に率直にお伝えすることが、金融政策に対する信認を高め、将来の経済・物価見通しに不安をお持ちの方に少しでも安心して頂くことに貢献できるのではないかと思い、議案を出しました。』
・・・・・どうも白井審議委員におかれましては「期待に直接働きかける」という異次元イリュージョンに対するご理解が不足されているように思われます。積極的に期待に水をぶっかけてどうするんでしょうかねえ。
『「順調」という表現に関しては、それぞれの見方がありますので、他のボードメンバーがどのようにお考えになるかは、尊重したいと思います。ただ、挨拶要旨にも書きましたように、確かに今のところコアCPIは順調に0.7%まで上がってきましたが、主因はエネルギー関連価格の上昇です。GDPギャップが改善していく、あるいは予想インフレ率が上がっていくことによる物価上昇は、これから本格化するのではないかと考えており、今はそれを見極める段階ではないかと思います。それから予想インフレ率はかなり上がってきましたが、足許はやや横ばいか緩やかな上昇となっているようにデータでみえますし、2%からは距離がありますから、そういうことを考えますと2%の目標達成への道筋の辿り方が順調かと言われると、そこまではちょっとまだ判断ができない、ということで「緩やかに」という表現が適切ではないかと判断しました。』
さらに答弁は続くのだ。
『そして、私の提案が瑣末だというように表記上の問題だと捉える方がいらっしゃるかと思いますが、瑣末ではないのです。』
・・・・・・・・・・・・・・・すまんが吹いたコーヒー返して下さい。
『2%を達成することがいかに大変かということを踏まえると、国民の皆様が2%の「物価安定の目標」を知っているだけでは駄目なのです。私どもは期待に働きかけようとします。その期待への働きかけは2種類あるのです。一つは、私どもの金融緩和に対する期待です。私どもの本源的な時間軸表現である2%を安定的に実現するまで、「量的・質的金融緩和」を継続することを約束しており、しっかりとコミットを示していくということでやっていきます。もう一つの期待というのは、市場参加者と企業や家計の期待を上げていくということです。この点、2%をなぜ実現したいと思っているのか、なぜ1%より2%がよいと判断しているのか、そういうことをもっともっと皆さんに理解して頂き、共感して頂かなければなりません。共感して頂いて初めて2%は社会に根付くのだと思います。展望レポートの文章の改善はそのための一つのきっかけに過ぎないのです。あらゆる努力をしなければならない。その中の一つとして言っていますので、決して瑣末なものではなく、非常に重いものだと思っていますし、これからも私はそれを訴えかけたいと思います。』
だったら何で行くのが難しいとか下振れリスクとか強調するのでしょうかだったら緩和が足りないと主張しないんでしょうかと質問者と同じ質問したくなります。
『本日の懇談会でも、分かりやすさを高めていく点に賛同する声があったことは、国民の声ではないでしょうか。』
国民の声ねえ・・・・・・
『私はそういう立場から内部で色々な形で言ってきました。そして一部は、確かに改善されていますし、また色々な形で日本銀行が努力しているのは事実です。しかし、やはり国民の目線に立った分かりやすさ、いかにして2%が重要かを理解して頂くところでは、大きな改善の余地があることは、生活意識アンケート調査をみても明らかなわけですから、ここは日本銀行が率直に真摯な気持ちでやっていく必要があるということです。』
だんだんうんざりしてきたとは思いますがあと一息です。
『4月の展望レポートにおいて提案を出したのは、新総裁になり、コミュニケーションを重視するというきっかけがありましたので、それを捉えて言いました。議案を出すことによって私の主張がより明確になりますから、これをきっかけにまたボードメンバーの中で色々な議論が出てくる可能性もあります。そして、もう一つなぜ議案を出したかと言いますと、国民の皆様に、「日本銀行が今まで対外説明してきたことがまだ難しいのではないか、改善の余地があるのではないか」、ということを日頃考え、また、それを改善できるように努力していきたいと思っている人がいることをお伝えし、そこからまた日本銀行のコミュニケーションが改善していくきっかけが生まれるかもしれないと、そういう気持ちで議案を出しました。』
・・・・・・・・・・・・延々と引用して恐縮でございました。なお、この後もう一つ続きの質疑応答(これは1ページ程度)があるのですが、さすがに疲れたと思われますので引用割愛します。
しかし一つの質疑応答でこの量って前代未聞というか何というか。質問された記者の方もお疲れ様でございましたが、是非とも師匠の金懇が実施される際は全力で質問を投下して頂きたくエールを送らさせて頂きます。
なお、良く見たらこれ白井さん1点目と2点目の質問に殆ど答えていないような気もします・・・・・・
2013/11/28
お題「木内審議委員の講演は主張が非常にクリアカットで分かりやすいという話」
特定秘密保護法案って知る権利云々よりも運用次第で言論活動に強いプレッシャー掛けることが出来ちゃうリスクが有る部分があるのが問題だと思うのだが、今の与党って自分らが下野するリスクを考えていないのかなあ・・・・・・・・・
まあそれはさておき、一昨日は木内さんの講演、昨日は白井さんの講演があって、白井さんの講演の会見ヘッドラインは微妙に昨日の引け近くの債券市場に影響あったような気もするのですが、今日は時間と量の関係上木内さんの講演ネタで終わってしまいましたので(すいません)白井さんの講演は会見と合わせて明日にネタにしますどうもすいません。
なお、何故そうなったかと言いますとお題にありますように今回の木内さんの講演は従来どういうロジックで反対提案を行っていたのかという点について、そもそもの物価安定目標に関する考え方と共に、いいもん見せて貰いましたという講演だったのでついつい話が長くなるのですな。
つーことで一昨日の木内さんの講演である。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131126a1.pdf
内外経済の展望と金融政策
─ 日本証券経済倶楽部における講演 ─
今回の講演では一応展望レポートの話を最初にしていますが、その後は基本的に木内さんとしての説明をしていまして、んでもって今回の講演テキストは論点が非常に分かりやすく説明されています。これまで議事要旨とかの中で断片的には示されていた木内さんの金融政策および経済物価見通しに関してですが、この講演でやっと整理できました今まで判らんとか言ってどうもすいません。
でですな、今回の木内さんのロジックを見てひじょーに良く判ったのですが、これはこれで筋の通った話でして、その一方で現執行部が現在実行している金融政策で行おうとしている政策ロジックとは思いっきりロジックが合わずというのも分かります。まあつまり水と油ということですので執行部がバンザイしない限り木内さんは常に少数意見反対側となるというのが結論なのです。
なお、以下鑑賞する訳ですが、木内さんのロジックは異次元ロジックではなくて基本的に無理のないロジックで展開されておりまして、これはこれで普通というか真っ当な話だと思う(ただし今は異次元イリュージョンで踊っておりますのでそうは言われましてもいやはやという所ですが^^)のですな。
○経済の先行きリスクは主に海外とな
経済のリスク認識部分についても重要ではあるのですが、今回主に鑑賞したいのは金融政策ロジックの部分でして、正直そっちの方が見せ場になるので経済の所は簡単に。
講演テキスト2ページ目(PDFファイルの3枚目)の『2.先行きのリスク要因』から先が「木内さんの説明」部分になります。なおさっき言い忘れましたが、今回は金懇じゃないので日銀ロジックを説明して回るという必要があまりないので、その分だけ木内さんのロジックを説明しやすくなっているのは日銀も一応考えてアレンジしたんでしょうかね。
『「展望レポート」では、以上の中心的な経済・物価見通しに対する上振れ・下振れ要因を挙げていますが、私自身は下振れリスクをより意識しています。また、4月に続いて10月公表の「展望レポート」でも、物価見通しなどの記述を修正する議案を出しました。以下では、そうした私自身の考えに基づき、先行き見通しに関する留意点を幾つか述べたいと思います。』
『私が一番注目しているのは、海外経済の動向に関する不確実性です。IMFの世界経済見通しは、ここのところ下方修正が続いています(図表2)。直近でも、7月時点から10月時点までの僅か3か月間で、2013年の世界成長率見通しは0.3%ポイント、2014年は0.2%ポイント下方修正されました。中国など新興国・資源国経済の見通しが下方修正されたことが主因です。』
うむ。
『この背景には、新興諸国における不均衡の調整があると思います。リーマン・ショック後の財政・金融面からの過剰な政策対応や、過大な成長期待に基づく海外資金の流入により、新興諸国でも民間債務の大幅増といった形で不均衡の蓄積が進み、現在はその調整過程にあるとみています(図表3)。そうだとすれば、成長に勢いを欠く状態が長引く可能性が高いと思います。』
新興国の調整が長引くとの見通しのようです。
『他方、米国経済を中心とした先進国経済の回復力についても、不確実性が残っています。私が特に注目しているのは、米国をはじめとして、先進国の労働生産性上昇率のトレンドが低下しているように窺われることです(図表4)。』
キタコレ!
『労働生産性上昇率のトレンドが低下すれば、安定した雇用増加が続いていても先行きの所得増加期待は容易に高まらず、米国経済の先行きを大きく左右する個人消費に容易に力強さが戻らないことも考えられるため、その動向を注視しています。』
ですな。んでもってあと国内に関してはマインドがここもと頭打ちからやや下がっている事と、製造業の投資がそう簡単に戻るのかねという話をしていますがその辺は割愛しまして物価について。
○物価見通しの木内さんの説明が執行部のロジックとはだいぶ違う件について(^^)
本文3ページのケツの方から始まる『(3)物価見通し』のところが最初の見どころ。
『政策委員会の中では少数意見ですが、10月の「展望レポート」の物価見通しについて、私は修正議案を提出しました。具体的には、(1)見通し期間後半にかけての物価見通しについて「「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみている」から、「上昇幅を緩やかに拡大させていくことが見込まれる」に変更する、(2)予想物価上昇率の見通しについて「「量的・質的金融緩和」のもとで、実際の物価上昇率の高まりもあって上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく」から「実際の物価上昇率の高まりもあって緩やかな上昇傾向をたどると考えられる」に変更するという内容です。』
ですな。
『「物価安定の目標」の実現に当たっては、わが国経済が全体として持続的に成長し、国民生活がより豊かになるなかで、物価上昇率が徐々に高まっていく、という好循環を作り出すことが大切です。』
なるほど。
『そうした観点からみたとき、私自身は、2年程度という短い期間で2%の「物価安定の目標」を達成することは容易でないだけでなく適当でもない、と考えています。』
キターーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーー!!
『足もとの物価上昇は、一部に需要増加を背景とした要素も含まれるものの、これまでのところ、エネルギー価格上昇や為替相場の変動の影響といったそれ以外の要因を反映している面も大きいとみています(図表6)。しかし、経済の改善と一体で進む持続的な物価上昇を実現するためには、賃金の上昇、とりわけ所定内給与の上昇が鍵を握ると考えています。』
賃金上昇が重要というのはまあ皆さん言っているのですが、木内さんの場合は前段の説明にあるように、今の執行部が示唆している(けど露骨に言うとポリティカリーインコレクトだから言わないけど)とにかく物価が上がればインフレ期待が高まってウッシッシという説明はまあ軽くDisってます罠こりゃ。
『注目される来年の春闘では、一部企業でベースアップも実施され、平均賃上げ率はある程度上昇する可能性が高いと思います(図表7)。ただ、企業が基本給を大幅に引き上げる動きが広がり、それが基調的な物価押し上げへとつながっていくには、先行きの成長期待の高まりを通じて、労働需給がさらに改善することが必要です。』
というのはどういう事かと言いますと・・・・・・・
『雇用・賃金は景気に遅行するため、賃金の上昇を伴いながら物価上昇率が高まっていくまでには、相応の期間がかかると私自身はみています。実質賃金上昇率が労働生産性上昇率と一致するという前提のもとで、労働生産性上昇率を仮に1%程度とした場合、2%の「物価安定の目標」と整合的な名目賃金上昇率は3%程度、労働生産性上昇率を0.5%程度としても2.5%程度となる計算ですが、賃金水準をそこまで引き上げるには、相当の時間を要するものと思われます。しかし、肝心なことは、賃金の上昇を伴いながら、徐々にであっても物価が上昇していくという好循環が作り出され、維持されていくことだと考えています。』
つまり「2年程度で目指す」という無茶振りをするのではなく、景気に遅行する雇用賃金の改善を伴う「望ましい形の安定した物価上昇」を目指すのであれば、雇用賃金の改善は景気に遅行する訳だから当然ながら中長期で目指すべきである、というのが木内さんの主張という事になります。
でまあこれはこれで無理のないご尤もなロジックで、謎の気合とかそういう成分が入っていないだけにエコノミスト的にもクリアカットだし理にかなっている話ではあるのですが・・・・・・・・
皆様ご案内の通り現在の日銀の2%物価目標れっつらゴーのロジックは気合でゴーと言ってしまえばそれまでですが、もちょっと丁寧に書くと、「単に需給ギャップを改善させるだけではなく、期待をシフトさせることによって短期間にフィリップスカーブを上方シフトさせる」という話であり、その背景にあるのは(きさらぎ会で総裁が説明していた中での一つのポイントなのですが)「デフレはそれが長期化すると脱出するのが困難になる」ということでして、つまりはデフレ均衡状態から望ましいインフレ均衡状態に遷移させるのにグラデュアリズムでは困難が伴うので異次元政策を実施するという話な訳で、その為には2年で2%達成気合だ気合だ気合だああああとやるのが吉である、とまあそういう話になる訳ですよね、うんうん。
となりますと、ここの部分で分かる事なのですが、木内さんが考える物価安定目標達成へのアプローチと現在の異次元緩和政策で異次元に実施している物価安定目標達成のアプローチは思想の根本が違うという話になる訳でして、つまりは執行部のアプローチ方法に対してマッコウクジラで脳天唐竹割りを打ち込んでいるのでして、こらまあどちらかが折れてこないと永遠に水と油だわと思ったのでした。
でもってまあこれまでは木内さんの説明をこんな感じでまとまった形で読ませる機会が無くて、議事要旨の中で断片的に書かれていただけだったのでイマイチどういうロジックなのかが分かりにくかったのですが、今回の講演を読むとその辺が分かりやすくなったという事で、最近の政策委員の講演の中では出色の出来栄えになっているなあと思ったのでした。
さてその続き。
『なお、時間の経過とともに賃金と物価がバランス良く上昇していく局面に至っても、現在、海外先進国でディスインフレ傾向にある点を踏まえると、日本の物価上昇率に下向きの圧力がかかりやすい状況がなお続いている可能性もあると考えています1。』
これも重要な指摘ですな。つーか(この進行だと今日ネタにしている時間がなさそうなのだが)白井さんも講演でこの点に言及しているし、最近とみにこの話がクローズアップされていますな、うんうん。
○金融政策に関する論点でも執行部にマッコウクジラである(^^)
その次のコーナーが『3.金融政策』でございましてですな。
『「量的・質的金融緩和」は、これまでのところ、金融市場や家計・企業などの期待形成への影響等を通じて、日本経済に好ましい効果を与えてきています。ただ、私自身は、「量的・質的金融緩和」の具体的な緩和策には賛成しつつも、政策委員会の中では少数意見ではありますが、2%の「物価安定の目標」の達成時期と、「量的・質的金融緩和」の継続期間について、4月の「量的・質的金融緩和」の導入時点から修正議案を出し続けています。以下では、そうした点も含めて、金融政策運営を巡る幾つかの論点について、私自身の考えを申し上げたいと思います。』
でまあここの修正議案の背景が分かりにくかったのですが、先ほどの部分とこの先の部分での説明で木内さんのロジックがこれまたクリアカットに理解できた(つもり)なのですな(^^)。
○2年で達成&オープンエンドの気合コミットメントを排除とな
まず最初のポイントが『(1)コミットメントの柔軟化』です。
『私の議案では、先行きの政策運営方針について、「日本銀行は、中長期的に2%の「物価安定の目標」の実現を目指す。そのうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付け、その後柔軟に見直すこととする」と修正することを提案しています。この修正議案のポイントは、コミットメントの柔軟化を目指していることです。すなわち、第1に、2%の「物価安定の目標」の達成時期を2年程度と限定していないこと、第2に、「量的・質的金融緩和」の継続期間については2年程度を目途とし、その時点で必要に応じて柔軟に見直すとの考えを明確にしていることです。』
とはどういう事かと。
『4月3、4日会合の議事要旨に記述されているように、このような修正を提案したのは、(1)2%の「物価安定の目標」を2年程度の期間を念頭に置いて達成するには、大きな不確実性がある、(2)そうした中、「量的・質的金融緩和」が長期間にわたって継続するという期待が高まれば、同措置が前例のない規模の資産買入れであるだけに、金融面での不均衡形成などにつながる懸念がある、と考えたためです。』
でまあ確かに記述があったのですが、この時点ではそもそも執行部が打ち込んだ異次元緩和に関しても何をどうやって2年で2%達成させるのかという話が整理されていなかった面がありましたし、受け止める方も何を言ってるのかワカランチ会長だったりした(から債券市場があの有様になった訳だ)し、日銀の方でも何をしたいのかという情報発信に混乱があった(ので5月上旬の黒田総裁会見が梯子外し発言キタコレという認識になった)というのがありまして、その分だけ木内さんのこの説明も伝わり難かったのかもしれませんな。
『同会合の議事要旨では、このほかの潜在的なリスクとして、財政ファイナンスの観測を高める可能性のほか、金融機関の収益を圧迫して金融システムの脆弱性を高める可能性、市場機能を大きく損なう可能性なども指摘されています。』
先ほどのように「そもそも2年で達成させようという気合政策に無理がある上に、それは本来目指すべきアプローチじゃないだろう」というのが木内さんの主張の根底にあるというのが分かりましたので、まあなるほどという感じです。
『これらの潜在的リスクを十分に認識した上でなお、私自身が「量的・質的金融緩和」の具体的な施策に賛成しているのは、政策で生じる経済的なプラス効果の大きさが、それに伴う潜在的なリスクないしは副作用の大きさを僅かでも上回っていると判断しているためです。』
つまり、木内さんのベースの考え方として「そらまあ緩和は必要」だけども「このような規模の量的拡大政策は2年くらいで期限を切って実施するのがフィージブルであり、それを超えて実施すると財政ファイナンスガーとか市場がぶっ壊れるとかの問題が爆裂する」ので「オープンエンドで実施するのではなく期間は切った方が良いでしょ」という説明になるわけですよね。
以下の説明はまあそういう事ですよという説明っす。
『しかし、仮に現在の大規模な緩和が長期化あるいは強化されれば、逆に副作用がプラス効果を上回ってしまう可能性があります。この点、現在のコミットメントのもとでは、「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しいとの見方が広がれば、プラス効果よりも副作用のほうが大きいと判断される場合でも、金融市場の期待等の外部要因に影響されて、日本銀行の政策がそうした対応を余議なくされる可能性も否定できません。私が修正議案において、「物価安定の目標」の達成時期を特定せず、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けているのも、効果と副作用の比較考量を一定期間経過した後にしっかりと点検し、経済・金融情勢次第で柔軟に見直す環境を予め確保しておくことが適当との
判断に基づいています。』
結局この「集中対応措置」という表現が木内さんの主張を分かりにくくしている訳で、ここの「2年の集中対応」という表現によって木内さんの「中長期で目指すべき」というロジックの骨子部分がぼやけてしまう(2年で集中という表現だとやはり短い期間で達成という話に見えてしまうから)のでして、単純に「2年後の状況によってその後の措置は考える」的な普通の表現にした方が良いのかも知れませんねと思うのでありました。
○2年で実施は無茶振りだし気合で何とかなるもんでは無いと言う主張
次の部分は『(2)「物価安定の目標」と中長期の予想物価上昇率』ですな。
『私の修正議案で2%の「物価安定の目標」の達成時期を中長期としているのは、2%の「物価安定の目標」は中長期でみた場合にのみ、日本経済のファンダメンタルズと整合的になりうると考えているためです。』
>中長期でみた場合にのみ
>中長期でみた場合にのみ
>中長期でみた場合にのみ
・・・・・・・・どう見ても執行部にマッコウクジラです本当にありがとうございました。
『日本銀行が実現を目指している2%の「物価安定の目標」は、物価上昇率が一時的にでも2%に到達するということではなくて、2%を安定的に持続することです。そのためには、現実の物価上昇率だけでなく、中長期的な予想物価上昇率も2%程度になることが必要です。実際の物価上昇率が平均的に2%程度で変動し、物価が概ね2%程度上がることを前提に企業や家計が行動するようになれば、中長期的にも物価の安定につながると考えられます。』
んだんだ。
『しかし、実際の物価動向は足もと上昇していますが、それにも関らず、各種関連指標に照らすと向こう5年、10年といった中長期の予想物価上昇率の上昇は緩やかです(図表9)。』
でBEIの図表とクイックのサーベイ図表が出てたりします。
『このことは、日本銀行が2%の「物価安定の目標」を決定しても、それだけでは中長期の予想物価上昇率はその水準に容易に誘導されるものではないことを示唆しています。』
>2%の「物価安定の目標」を決定しても、それだけでは中長期の予想物価上昇率はその水準に容易に誘導されるものではない
>2%の「物価安定の目標」を決定しても、それだけでは中長期の予想物価上昇率はその水準に容易に誘導されるものではない
>2%の「物価安定の目標」を決定しても、それだけでは中長期の予想物価上昇率はその水準に容易に誘導されるものではない
>2%の「物価安定の目標」を決定しても、それだけでは中長期の予想物価上昇率はその水準に容易に誘導されるものではない
>2%の「物価安定の目標」を決定しても、それだけでは中長期の予想物価上昇率はその水準に容易に誘導されるものではない
・・・・・・・・・・・・これは!!!!!!!!!!!!!
つーことで全力で執行部の気合ロジックを否認している訳でして、こらどう見ても水と油です本当にカムサハムニダというのが判るかと存じます(;∀;)
○予想物価上昇率上昇は需要側より供給側とな
この部分の後半もほほうという感じです。
『私自身は、中長期の予想物価上昇率は、財や労働市場の需給関係よりも、潜在成長率や労働生産性上昇率などの供給側の要因で決まる部分が大きいと思っています(図表10)。』
ほう。
『「量的・質的金融緩和」をきっかけに民間の経済主体の前向きな動きが引き出され、日本経済の成長力を強化するような経済政策が併せて講じられていけば、成長力の高まりとともに中長期の予想物価上昇率も上がってくると思われます。しかし、「展望レポート」の予想物価上昇率の見通しについて修正議案を出したことに示されているように、私自身はその実現には相応の期間を要すると考えているため、「物価安定の目標」の達成時期も特定しないのが望ましいと考えています。』
なるほど。
『さらに、今後の成長力の変化や中長期の予想物価上昇率の変化を踏まえて、将来的には2%という「物価安定の目標」の水準を再検討する余地もあると考えています。』
ほほー。これ上なのか下のかは興味深いですな。まあその時しだいでどっちもという話なのでしょうがたぶん下でしょうな。最後の部分の認識も踏まえますと
○纏めの部分から少々引用だけ
その次のコーナーでは財政健全化に向けた取り組みの必要性について説明していて左様でございますなというのがあるのですがそこはパスして最後の部分を引用しておきます。
『最後に、こうした最近の海外の動向や議論のうち、先行きの日本の金融政策運営を考える上で私自身が注目している点を、2つだけ挙げておきたいと思います。』
『第1に、先ほど海外経済の動向のところで述べましたが、先進国の労働生産性上昇率のトレンドの低下傾向が示唆しているように、主要先進国では潜在成長率が低下している可能性があります。こうした構造変化に対して、金融政策は必要な構造調整を行うための時間を買うことはできますが、生産性上昇率の引き上げや労働市場のミスマッチ解消といった構造改革そのものを行うことはできません。従って、政策当局は、こうした構造変化を正しく認識して、金融政策が果たすことのできる役割とその限界を識別しながら、適切に対応していくことが必要です。構造変化を認識せずに金融緩和が行き過ぎれば、経済・金融面での不均衡が蓄積されてしまいます。』
『第2に、非伝統的金融政策と伝統的金融政策という2つの政策ツールの役割分担についてです。』
ふむ。
『この2つの政策ツールの運用についてFRB(米連邦準備制度理事会)の例をみますと、資産買入れ策は名目金利の非負制約があるもとで経済・物価に上向きのモメンタムを生じさせ、その方向性に影響を与える手段と位置付ける一方、金利政策は経済・物価を望ましい水準へと誘導していく手段と位置付けている、と私は理解しています。』
『米国でのこうした政策ツールの役割分担は、日本の先行きの金融政策を考える上でも、いずれ参考になるのではないかと考えています。』
なるほど。
『日本について、試みにテーラー・ルールに基づく政策金利水準を計算してみると、これまでマイナスであった水準が、足もとではマイナス幅が縮小し概ねゼロ%となっています。もちろん、こうした試算値は、前提条件の置き方によって変わってくるので、幅をもってみる必要がありますが、これは、「量的・質的金融緩和」導入以降の物価上昇や需給ギャップの改善を映じて、金融環境の緩和度合いが強まっており、ゼロ金利を維持すれば景気浮揚効果が先行き累積的に高まっていく可能性を示しています。』
キタコレ。
『将来、「量的・質的金融緩和」の奏功により、わが国の経済・物価の拡大モメンタムが十分に高まってきた際には、こうしたゼロ金利政策の経済効果の高まりにも注意を払いながら、2つの政策ツールについてそれぞれ異なる効果と副作用を十分に比較考量し、その最適な組み合わせを模索していくことが重要になるのではないかと考えています。』
つまりオープンエンドでMB拡大じゃねえだろと言う事ですねわかります。
ということで木内さん講演鑑賞会でございました。
2013/11/27
お題「10月2回目の決定会合議事要旨ネタだけになってしまいました(汗)」
昨日の法案採決は従来の定義からすると強行採決(しかも重要法案なのに本会議起立採決かよ)の筈なんですが公共放送ニュースは自分たちの口からは強行採決の文言が出ませんでしたが、これはやはり(銃声)。
なお、どこぞの知事は本件の目くらましに盛大に身を捨てて自爆芸を展開しているという陰謀論を考えたくなるくらいの芸風なのでアタクシも返す意志はあるから無利子無担保無催促で都から金を貸して頂きたいですなあ(棒)。
本日は展望レポート公表となった回の決定会合議事要旨ネタの他に木内さんの講演もあったのですが、議事要旨ネタをいじっていたら時間が無くなってしまうという時間配分の失敗によりまして議事要旨ネタだけとなってしまいましたすいませんすいません。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g131031.pdf
反対3票の辺りを中心に拝読する訳ですが・・・・・・・・・
最初の方から延々と流しまして『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』の後半になります『2.経済・物価情勢の展望』から鑑賞開始である。
○景気対策の効果
『経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、@内需が堅調さを維持する中で、外需も緩やかながら増加していくと見込まれ、生産・所得・支出の好循環は持続する、Aこのため、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けるとの見方を共有した。そのうえで、委員は、7月の中間評価時点と比べると、成長率は概ね不変であるとの見解で一致した。』
ということで年別の展開が以下書かれていますが、まあその内容自体は展望レポートで記述されている話なので割愛するとしましてその先。
『複数の委員は、海外経済見通しの下振れなどは、経済成長率見通しを押し下げる要因となるが、政府による経済政策パッケージの効果を含めた内需の押し上げによって、全体としては横ばいないしは幾分上振れするとの見方を示した。』
としらっと記載されていますが、結局のところ経済対策パッケージがなかりせば下振れしていたんですねわかります、というのは会見などでツッコミを結構受けていて答えがムニャムニャとなっている部分ですがまあこういうことですな。
○中長期的な期待インフレに関して
『消費税率引き上げの直接的な影響を除いて物価情勢の先行きを展望すると、大方の委員は、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを反映して上昇傾向を辿り、見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとの見方を示した。』
『一人の委員は、物価が見通し通りに上昇するには、賃金、特に恒常的な所定内給与が上昇することが、@個人消費をより下支えするとともに、A中長期的な予想物価上昇率を上昇させるうえで、非常に重要であると指摘した。』
『消費税率の引き上げ前後の時期の物価動向について、ある委員は、短観における中小企業の販売価格DIが依然としてマイナスであると指摘し、中小企業による税率上昇分の転嫁が順調に進むかどうか注視していく必要があると述べた。』
というのはまあ良いとしまして。
『中長期的な予想物価上昇率について、大方の委員は、「量的・質的金融緩和」のもとで、実際の物価上昇率の高まりもあって上昇傾向を辿り、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくとの見方を共有した。』
大方ですねわかります。
『ある委員は、マネーストックが着実に増加しており、これがラグを伴って実際の物価上昇率を引き上げ、さらに予想物価上昇率も引き上げるとの見方を示した。』
師匠キターーーーーー(・∀・)ーーーーーー!!
・・・・是非その辺の定量的な分析についてのご発表を金融経済懇談会でお願いしたいのですが(棒読み)。
『一方で、一人の委員は、2%に向かって予想物価上昇率が上昇することは不確実性が高いと指摘し、見通しが下振れた場合、日本銀行の見通しや金融政策に対する信認を毀損する惧れが大きいと述べた。』
『また、別のある委員は、足もとまでの予想物価上昇率の推移を踏まえると、「物価安定の目標」である2%に向かって予想物価上昇率が上昇し、収斂していくのは難しいとの見方を示した。』
えーっとこれはもっと露骨に言うと現在執行部が説明している「需給ギャップがゼロの状態で物価が安定して2%になるという状態のフィリップスカーブ」という物価安定目標2%の姿について、1名の委員はそら相当怪しいのではないかという意見ですし、もう一人は既にどう見ても無理ですぞなという身も蓋も無い見解を述べておられますな。
『この間、一人の委員は、今後、米国の金融緩和縮小によって日米の金融政策のスタンスの違いが明確に認識されれば、為替の円安傾向や株価上昇などが起き、これらを通じた予想物価上昇率の上昇・実質金利の低下によって、実体経済の好循環がさらに強まる可能性が高いとの見方を示した。』
・・・・・・・となると良いのですが、もとよりその姿勢であるECBに続いて米国が「金利で勝負」という姿勢を明確にした場合、何故か突然量じゃなくて金利に注目して為替市場が円高に反応して量で勝負している梯子を盛大に外されるに1万ドラクマとかそういう話にならないことを心から祈念申し上げます(棒)。
しかしもう円安株高で予想物価上昇率の上昇とか、それは所得と生産の前向きの循環メカニズムと違いますがなただの輸入インフレと資産効果狙いじゃないですか普通に格差拡大ですなあなどという無粋なツッコミをしてはいけません。何でも良いので先ずは現実の物価が上昇する事によって人々の物価観を変える事によってフィリップスカーブを上方シフトさせるんですよ!!!!!ということでまあ兎に角ヤケクソで良いから現実の物価が上がってちょというのがこの一人の委員の発言から垣間見えると存じますので、そういう点からすると消費税増税の価格転嫁でインフレ期待上がらないかなあと思っている訳で・・・・・・・
少々ワープして「上振れ・下振れ」の部分で経済の方はまあさておき物価に関する部分で予想物価上昇率の話がまたまた出てきます。
『中長期的な予想物価上昇率について、多くの委員は、過去にみられた物価や賃金の緩やかな下落を反映してなかなか高まらない可能性がある一方、実際の物価や賃金の上昇率が高まっていく過程で、予想物価上昇率が比較的早期に上昇する可能性もあるとの見方を示した。』
もうちょっと露骨に言いますと・・・・・・・・・
『さらに、委員は、消費税率引き上げに伴う幅広い品目の一斉の価格上昇が、人々のインフレ予想に与える影響についても注意してみていく必要があるとの認識で一致した。』
でまあこの部分なんですけれども、良く良く考えてみますと今の政策委員会メンバーの方々って一番若い宮尾さん(その辺の世代が4人なのですが)でも第一次石油ショックの時に小学生とかで実は物価上昇時代を知っている世代でして、この「現実の物価が上がると物価観って変わるんじゃネーノ」という件については思いっきり世代による感覚差があるだろうなあと思うのでした。
でまあそこは兎も角として、昨日ネタにした黒田総裁の会見でも申し上げましたが、最近はこの物価上昇によるバックワードルッキング的な期待インフレ率上昇に関連して、いわゆる悪い物価上昇と良い物価上昇という論点を華麗にスルーするようになっていますね、うんうん。
『一人の委員は、所定内給与が上昇してくれば、人々が物価や賃金の上昇を前提に行動する傾向が強まるため、中長期的な予想物価上昇率が上がりやすくなるとの見方を示した。』
所定内給与・・・・・・・orz
『別のある委員は、実際の物価上昇に伴うインフレ予想の上昇に加えて、景気が持続的に改善するとの見通しが拡がることなどを通じて、フォワード・ルッキングな予想形成の力がどの程度強まっていくかに注目していると述べた。』
景気が持続的に改善の見通しとな!!
『この間、一人の委員は、足もとの中長期的な予想物価上昇率の上昇ペースは緩慢ないしは横ばい圏内であり、下振れリスクは大きいと指摘した。』
さっき難しいとか言ってた人ですねわかります。
○物価そのもののリスク認識まとめ部分も味わいが
ちょっと飛ばしましてその続き。
『これらの議論を受けて、何人かの委員は、自身の経済・物価に関するリスク認識は、全体として下方に厚いと述べた。もっとも、多くの委員は、見通し分布チャートが示す通り、委員全体のリスク分布は、上下にバランスしており、展望レポートの記述としては、委員の全体としての判断を示すべきであるとの見方を示した。』
下方に厚いのが何人かいるのに「全体のリスク分布は上下にバランス」とはこれは不思議ですねえ(棒読み)。
『こうした経済・物価見通しに対する上振れ・下振れ要因に関する議論を経て、委員は、特に海外経済や中長期的な予想物価上昇率の動向を巡る不確実性は大きく、これらがわが国の景気・物価に与える影響について、引き続き注意が必要であるとの認識を共有した。』
という割には展望レポートでの記述では強気の自信満々にしか見えないのはどういう認識共有なのでしょうか。
○第2の柱の点検で財政の指摘
これは重要な論点なので引用しておきます。ということで第1、第2の柱の点検部分から。
『委員は、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されないものの、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は引き続き高水準である点には留意する必要があることを改めて確認した。』
まあ実際は財政健全化に向けた取り組みが必要とかもあったのでしょうがそこは丸めているのでしょうかね。
○展望レポートの記述を変更とな????
後の方で白井委員が提案したと書いてあるので白井さんの見解であることが分かるのですが、最後に白井さんの謎提案。
『この間、一人の委員は、「2本の柱」による点検とは何かということを対外的に丁寧に説明する必要性を指摘し、「基本的見解」の冒頭で展望レポート全体の構成について記述するべきであると述べた。』
んーっとですね、まあ確かにこれ最初出た時にアタクシも勘違いしてた位の案件でございますが、不肖このアタクシがこのようなブツを以前書いておりますので白井さんにおかれましては是非ご鑑賞ありたいと思ったのですが良く考えたら過去ログ見られてケチョンケチョンに書いているのが見つかるのでやっぱりいいです見ないで下さい(^^)。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakudainino.html
金融政策の枠組みの「第1の柱」「第2の柱」とは何ぞやというお話(特集ページ)
なお読めば分かりますが書いたの6年前だわナツカシス。
○でまあ途中を飛ばして3名の反対提案を拝読の巻
先行きの金融政策運営に関する討議の部分というのも鑑賞箇所なのですが、まあ今回の場合は展望レポートの反対提案部分を読むとその辺の論点が指摘されているという理由で手抜きしてそのコーナーをスルーしまして。
『2.「経済・物価情勢の展望」の決定』の部分から。
・白井さん
『これに対し、白井委員からは、@分かりやすさ向上の観点から、「基本的見解」の冒頭に「今回の展望レポートでは、まず、わが国の経済・物価の先行き1年から3年の中心的な見通しについて示し、次いで、そうした中心的な見通しに対する上振れ、下振れ要因を指摘する。最後に、その見通しについて、物価安定のもとでの持続的な成長の経路をたどっているかという観点による点検(第1の柱)、および、より長期的な視点を踏まえつつ、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現するとの観点から、金融政策運営に当たって重視すべき様々なリスクの点検(第2の柱)を行い、先行きの金融政策の考え方を整理する。」との段落を挿入する、』
はあそうですかとしか申し上げようがないので論評不能。
『A経済情勢の上振れ・下振れ要因について、海外経済の動向と家計の雇用・所得動向等の不確実性が大きいことから、また、物価情勢の上振れ・下振れ要因について、中長期的な予想物価上昇率の動向とマクロ的な需給バランスに対する物価の感応度等の不確実性が大きいことから、それぞれ「下振れリスクを意識する必要がある」ことを記述する、』
『B金融政策運営について、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた「道筋を順調にたどっている」から「道筋を緩やかにたどっている」に変更することを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』
最初の謎提案は兎も角としまして、白井さんの骨子は「経済に対する下振れリスクの強調」と「2%物価目標ってそんなに順調じゃねえだろ」という部分になりますな。
・佐藤さん
『佐藤委員からは、@見通し期間後半にかけての物価見通しについて「2%程度に達する可能性が高い」から「2%程度を見通せるようになる」に変更する、A中心的な見通しについて「2%程度の物価上昇率が実現し」から「2%程度の物価上昇率を目指し」に変更する、B物価見通しのリスクについて「上下に概ねバランスしている」から「下方にやや厚い」に変更する、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』
佐藤さんの骨子は物価にフォーカスしていて、展望レポートで示されている分布からしてまあ佐藤さんの見通しが下の方にあるんでしょうなあと想像がつきますが、「物価見通しが弱め+下方リスクの指摘(強調ではない)」という所になっているようですな。
・木内さん
『木内委員からは、@予想物価上昇率の見通しについて「「量的・質的金融緩和」のもとで、実際の物価上昇率の高まりもあって上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく」から「実際の物価上昇率の高まりもあって緩やかな上昇傾向をたどると考えられる」に変更する、』
木内さんの場合は「物価見通し」だけではなくて「予想物価上昇率の見通し」の方にも反対提案で、2%の予想物価上昇率達成に向けて時間がかかるでしょという指摘ですな。
『A見通し期間後半にかけての物価見通しについて「「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみている」から「上昇幅を緩やかに拡大させていくことが見込まれる」に変更する、』
物価見通しが弱いのは佐藤さんと同じですが、そもそも2%を見通せるとも書かないとはそらかなり厳しめのお話。
『B先行きの金融政策運営について「2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」から「中長期的に2%の「物価安定の目標」の実現を目指す。そのうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付け、その後柔軟に見直すこととする」に変更する、などを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』
でまあ3番の提案は今に始まった事では無いのですが、異次元緩和の資産絶賛買入は長期化させると弊害の方がでかいので一旦2年で切ってという話なのですが、この木内さんの提案の弱い部分は「中長期的に目指すんだったら結局2年後にも何らかの緩和政策を実施しないといけない筈だが逸れに関するグランドデザインはどうなっているの」というのが無い点かなと思うのです。
そらまあ2年先とかの話なんぞ知らんがなという所ではあるのですが、そうなると何で2年間はこの盛大な買入を継続せにゃならんのよという話にもなって、中長期的にやるならもっとゆっくりやれば良いじゃんというような提案内容でもとは思いますが、ただまあそれをすると現在の気合でフィリップスカーブを上方シフトさせるとか、デフレはそれが長期化することによって脱却が困難になるという説明と背馳するロジックになるのでまあ難しいでしょうな。
○せめて展望レポートの経済物価部分の記述くらいは提案一致できませんかね
ということで3名とも提案ポイントが微妙に違う上に、議案として出ているのは@から番号振っているように全部まとめて一つの提案になりますので、この形だと各人がオールオアナッシングの形で突撃する事になって、執行部が構築しているトーチカに対して個別撃破されるという旅順203高地絶賛突撃状態になっている訳ですな。
この前の講演で示されましたように宮尾審議委員も下振れ強調で潜在的には4名反対となってもおかしくは無いのですが、惜しい事に反対票は揃ってもその後の議案が個別提出個別撃破となると実際問題としてはそんなに執行部に対するプレッシャーにならんのではないかと存じますので、宮尾さんの講演を見て夢の展望レポート書き直しで決定会合徹夜で執行部悶絶事務方ヒャッハー(なお来年4月30日は惜しくも翌日土曜でも祝日でもありませんので念の為)という話になるのかというとこれがまたそうでも無さそうな気がするのが惜しい所です。
んな訳で次回の展望レポートの際には是非経済物価部分の記述くらいは反対提案の票決が一致すると吉(なのか凶なのかは知りませんが^^)っつーかまあそうじゃないと執行部へのプレッシャーにならんでしょと申し上げておきますが、念のため申し上げますと野次馬根性で面白がってゆうとる訳では全くございませんのでよろしくご理解ご賢察賜りますようお願い申し上げます(棒)。
2013/11/26
お題「総裁定例会見から3つほど/金融経済月報は無風を確認」
道新なんで道新バイアス分を考慮する必要はありそうですが・・・・・・・・
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/506142.html
秘密保護法案、国会への情報提供是非 政府が判断 国政調査権、機能しない可能性も
(11/24 19:23、11/24 19:51 更新)
『「この法案は、極めてさまざまな課題がある。修文が必要だ」。20日夜、東京・永田町の衆院議長公邸で開かれた議院運営委員会メンバーとの懇親会。冒頭、伊吹文明議長は同法案に苦言を呈した。』(上記URLより)
拡大解釈がホイホイ可能な建付けで新たな刑法を策定するという事にならないようにして頂きたいところであります。無暗矢鱈とガラを押さえるような事案はそう簡単に起きないでしょうけれども、ホイホイとガサ入れが可能になるだけで十分にプレッシャーになり得ると思いますからねえ。
ところで全く話が違いますが某モーサテで日銀の出口戦略で損失が云々とかいう話をしているが、何も他の変化が無くて出口で付利だけ上がるような設定で日銀の損益の話をしても無駄どころかただのミスリードになるだけなので、そういう解説を公共の電波で垂れ流すのは百害あって一利ないと思う訳でして、まあ放送する方は簡単な説明でシンプルと思っているのかも知れんが、こういう現実をワープした前提の解説は却って人々に変な先入観を与える弊害の方が多いと思いますがどうでしょうかねえ。
○総裁定例会見から少々
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1311d.pdf
・悪い物価上昇でも上がるのは結構という雰囲気がございましてですな・・・・・・
悪い物価上昇だと持続性が無いんじゃネーノという質問がありましてですね、
『(問) 2 点お伺いします。まず、物価の認識についてですが、足許、総裁がおっしゃる通り物価上昇傾向にあるのですが、その要素の中で、エネルギーを中心に、円安による影響が一定程度あると思います。総裁は、それをどの程度であると認識なさっているのでしょうか。相当程度あるとみていらっしゃるのか、あるいは、大したことはないとみていらっしゃるのか。もう1
点は、こうした物価の構造がある中で、総裁がおっしゃるような物価の上昇は、持続可能なのでしょうか。』
これに対する答えに味わいが。
『(答) 2 つの質問は関連していると思います。消費者物価指数の動きをみると、確かに、初めはエネルギー価格の上昇――これは円安の反映でもあると思いますが――が先導していた傾向がありましたが、このところ、幅広い品目に改善の動きがみられており、食料・エネルギーを除いた物価指数――いわゆるコアコア指数――の前年比も、5
年振りくらいでしたでしょうか、マイナスからゼロになってきており、物価の動向は、今や、かなり幅広い品目で下げ止まりないし上昇がみられるようになっていると思います。為替は、今後も変動があると思いますが、現在のような内需を中心とした経済成長が持続していくもとで、消費者物価の上昇率も次第に上昇していく、そして2%の「物価安定の目標」を達成できると考えています。』
ということで、ロジック的にコストプッシュであってもまずは上昇したらこっちのものみたいな感じの説明になっていますが、まあそらコストプッシュで持続性がという話をするほど図々しくは無いので、説明が概ね(展望レポートなどでもそうですが)足元では堅調なディマンドを背景に物価上昇が幅広く及んでいるという形で何となくディマンドプルっぽい話をしていたりもするのですが、展望レポートでも記されたように「実際に物価が上昇すると期待にも影響」という話も持ち出しておりまして・・・・・・・・・
別の質問から。
『(問) 2 点お伺いします。最近、宮尾審議委員など色々な方が講演で、物価の期待を上げるに当たって、足許の物価水準が日本の人々の物価観を上げていってくれるというご説明をされています。具体的に、CPIの前年比が毎月だんだん高まることが期待を上げていくのか、今の0.6%なり0.7%という水準がしばらく続けば「デフレには戻らないな」という形で浸透していくのか、もしくは、やはりCPIが下がり始めると期待も上方シフトは難しいと考えざるを得ないのか、ご見解をお願いします。(後半割愛)』
『(答) 期待物価上昇率がどのようなメカニズムで変わっていくかについては、学界でも色々な議論があります。大まかに言って、当局がコミットメントを示すことによって期待が上昇するという、いわゆるフォワード・ルッキングに期待が上昇する要素もあるでしょうし、足許の物価上昇率に応じて、いわば適応的に物価上昇期待が変化するという、いわゆるバックワード・ルッキングな期待物価上昇率の変化も、両方あり得ると思います。現在、色々なアンケート調査や市場の指標などから推計される予想物価上昇率の上昇の中にも、おそらくその両方の要素が入っているのだろうと思います。』
ふむふむ。
『従って、足許でプラスの物価上昇が続き、さらにはその物価上昇のテンポが上昇していくということになると、おそらく、予想物価上昇率にもプラスの影響が出てくるだろうと思います。』
ということでやはりコストプッシュでも上昇すればこっちの物だという話ですねわかります。
『先程申し上げたように、現時点でも、既にある程度、予想物価上昇率が上昇しているとみられますが、そこには、足許の物価が上がってきていることの影響もあるでしょうし、当局として2%の「物価安定の目標」に強くコミットし、「量的・質的金融緩和」を続けていることの影響もあろうと思います。(後半割愛)』
ということで、コストプッシュとディマンドプルに関しては従来の日銀はそこは峻別して説明してて、コストプッシュや為替ドリブンで物価が上がってもそれは国民厚生的にどうなのかとか持続性として如何なのものかというようなニュアンスが強かったと思うのですが、そらまあ異次元でございますのでその辺はすっかり割り切って異次元モードで黒い猫でも白い猫でも鼠を取れば良い猫という展開になっているんですねわかりますという所。
ま、この理屈の怖い所は実際にコストプッシュで物価が上がり、一方で一般ピープルの実質可処分所得は減少する(つーか10月からまた社会保険料上がってるだろおい)という状況において世間様が急に「こんな筈じゃなかった」と言い出すとコストプッシュの物価上昇を演出した日銀ケシカランと盛大に梯子が外されて集中砲撃の対象となるリスクがあることですが、まあ今の枠組みの中でそうはならないことを祈っております(棒読み)。
・海外経済がどうのこうの
まあそういう質問も出ます罠。
『(問) 2 点伺います。先程、欧米景気について「回復していく」とおっしゃいましたが、最近の欧米の中央銀行の動きをみると、欧州で利下げしたり、米国の次期議長に内定しているイエレン副議長が雇用について非常に厳しい見方をされたりと、比較的、厳しくみている印象があります。米国は金融緩和を継続する、欧州ではこれからさらに強めるような動きになっていますが、今後、再び緩和競争的な動きになってくる可能性があるのか、総裁はどのようにご覧になっていますか。(後半割愛)』
という質問に対して海外経済半歩前進というお答えが。
『(答) 欧米など諸外国の金融政策、なかんずくその今後について、直接的にとやかく言うことは避けたいと思いますが、初めに申し上げた通り、欧米先進国の改善は続いています。これは、欧米の中央銀行自身が認めているところです。特に、米国経済については、政府機関の一部閉鎖や債務上限問題などの色々な動きがあったことで心配する向きもあったようですが、結果的に、短期的な小さな影響にとどまったとみられており、先行き財政面からの下押し圧力がさらに小さくなっていくもとで、米国経済の回復テンポは徐々に速まっていくとみています。米国を含めて、海外の方もそのようにみていると思います。』
ということで米国の判断を進めましたな。
『また、欧州は、長く景気低迷が続いていましたが、4〜6 月、7〜9 月と2 四半期連続でユーロ圏の成長率がプラスになり、持ち直しに転じつつあります。企業や消費者のマインドも改善が続き、生産も底入れしているようです。先行きについても、今後も持ち直しの動きは続いていくと考えていますし、ユーロ圏、その他海外の方も同様に考えていると思います。欧米先進国の景気は、緩やかな回復ではありますが――欧州は特に緩やかですが――、引き続き回復テンポは次第に高まっていくと考えられますので、そうしたもとで、海外経済について、半歩程度ですが、判断を前進させたところです。』
つーことで半歩前進とゆー所ですが、では新興国はどうなのかという別の質問がありましてそちらに対するお答えはこちら。
『(答) まず、新興国のうち、日本経済との関連が非常に大きい中国経済をみると、内需が極めて堅調であり、安定した経済成長を続けています。今後についても、経済改革を進めつつ、安定した成長を続けていくとみています。』
ほほう。
『その他の新興国は、確かに、一時に比べると金融環境がタイト化している影響もあって、当面、成長にやや勢いを欠く状態が続く可能性もあります。このところ一部の新興国への強い成長期待に陰りがみられる中で、構造面の課題に焦点が当たっており、新興国の間でもやや区々になっている状況です。ただ、もう少し長い目でみると、米国をはじめとして先進国経済の回復の好影響が及んでいくにつれ、新興国の成長率は再び持ち直していくと見込まれます。構造問題への取組み、あるいは国際金融資本市場の反応などをよくみていく必要がありますが、全般的に、新興国経済が大きく下方にいくリスクは、あまり大きくないと思っています。』
先進国の回復の好影響が及んで回復とはこれまた中々虫の良い話をしているように思えるのは気のせいですねわかります(棒)。
・追加緩和に関して
ECBが追加緩和で世界的に緩和強化の流れが云々みたいな質問が(引用してないけど)ありまして、そこの質問での答えを黒田さんが華麗にスルーしたせいでこんな質問が出た訳ですが。
『(問) 今の質疑に関連して、ECBが過去最低の金利に利下げしたということを踏まえて、市場関係者の間からは日銀への追加の金融緩和の期待の高まりもあるのですが、その点について、総裁はどのようにみていらっしゃるのでしょうか。』
これはまた直球な。
『(答) 先程も申し上げたように、あるいは毎月の「当面の金融政策運営について」で繰り返しているように、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。その際、物価あるいは経済情勢について上下双方向のリスク要因を引き続き点検し、必要な調整を行っていくという方針に変わりはありません。当然、今申し上げたような上下双方向のリスクが仮に顕現化すれば、躊躇することなく政策は調整されるわけですが、現時点では、先程申し上げたような実体経済および物価の動向を踏まえ、現状の「量的・質的金融緩和」を継続するということで、本日の金融政策決定会合は一致しています。ご質問の点については、この決定で回答は出ていると思います。』
こうやって説明の全体を見ると(って微妙な言い回しに関してはこれ「会見要旨」なので一応編集は入っていますので念の為、つーてもブルームバーグプロフェッショナルとかで会見の動画出ているから大幅な編集はできませんけど)普通にゼロ回答しているようにしか見えないのですが、何せ足元では報道バイアスが追加緩和ワッショイになっていますので、ここの質疑に関しても「リスクが仮に具現化すれば」云々の方ばかりがクローズアップされて報道されるという流れになっておりまして、まあ債券市場みたいに年がら年中日銀チェックしてて会見とかに関してもちゃんと日銀の出すテキストに当たって確認している人々だと別だと思いますが、ベンダーヘッドラインとか丸められているベンダー記事とかでの印象で判断する人が多いと(というか他市場だと普通そうなる)、またまた他市場の方での追加緩和期待が勝手に盛り上がるという構造になりそうですなあと思うのでした。
とまあそんな所ですかね。
○金融経済月報から:見事なまでに無風である
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1311.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1310.pdf(前回)
・現状認識
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(前回)
現状認識部分は基本声明文どおりですけどね。
『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体として緩やかに持ち直している。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(今回)
『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は、改善を続けている。』(前回)
ということで、海外経済の部分が「半歩前進」となっている以外は同じなのは声明文と一緒です。
・先行き見通し
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)
というのは声明文でも前回対比変わらずでしたが、では項目別展開に関してはどうよというのは声明文に無いのでこちらはチェックじゃ。
『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)
ほう。
『国内需要については、公共投資や住宅投資は増加傾向を続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(今回)
『国内需要については、公共投資や住宅投資は増加傾向を続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(前回)
ほほう。
『個人消費も、雇用・所得環境の改善に支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加を続けると考えられる。』(今回)
『個人消費も、雇用・所得環境の改善に支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加を続けると考えられる。』(前回)
どう見ても全文一致です本当にありがとうございました。ということで見事な無風ですなこりゃ。
・リスク認識
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)
こらまた声明文と同様であっさり味の全文一致モード。
・物価に関して
『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)
現状についてはそらまあ大本営発表するのも限界がありますのでそんなにバイアスは無いのですけれども、まあCPIの前年対比伸び率の数値がヨコだったせいもあって要因含めて見事に同じなのですが予想物価上昇率に関しては物国17回のBEIェ・・・・・・・と思うのですが良い子の皆さんはゴリゴリとツッコんだりしてはいけません(−−;
でまあ物価の現状に関しては声明文での記載がありますので良いとしまして先行きですが・・・・・・
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇幅が縮小するとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(今回)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(前回)
先行きに関しては国内企業物価に関してちょっと見通しを下げましたな、といっても「上昇幅が縮小」なのでそんなに目くじら立てる話でも無さそうではあります。なお声明文には企業物価に関する先行き見通しの記載がありませんが、これは別に今に始まった事では無くて大昔(麿総裁時代でも同様)からそういう仕様なので特段の意図はございません(筈です)ので念の為。
・金融環境の細かいところは引用だけしておきます
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)
とまあこちらの表現も同じでして、あとまあ細かい所に関しては今回もまた現状について淡々と説明しているだけで特段政策的にどうのこうの的な示唆はありませんが今回分の引用だけしておきます。
『マネタリーベースは、日本銀行による資産買入れが進捗するなか、大幅に増加しており、前年比は4割台半ばの伸びとなっている。』(以下ここから先は全て今回分のみの引用)
『企業の資金調達コストは低水準で推移している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、緩やかに増加している。』
『以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%台前半のプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、プラスとなっている。企業の資金繰りは、総じてみれば、改善した状態にある。この間、マネーストックの前年比は、4%程度の伸びとなっている。』
『金融市況をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利は横ばい圏内の動きとなっている。前月と比べ、株価は上昇している一方、円の対ドル相場は下落している。この間、長期金利は前月と概ね同じ水準となっている。』
ということで、まあものの見事に無風という結果でございましたが無風というのも記録しておかないと忘れてしまうので引用しましたがただの増量企画ではないかと言われるとぐうの音も出ませんのでツッコミは謹んで却下させていただきとう存じます(^^)。
#なお総裁の講演が昨日ありましたが、内容的に特段新しいネタも面白い話も無かった(と思います)のでスルーの所存
2013/11/25
お題「大体FOMCミニッツネタである」
土曜の東京新聞朝刊には会見の一問一答が詳細に掲載されていて実にこうアレでございましたことよ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013112302000116.html
猪瀬知事「個人の借り入れ」 5000万円 徳田議員から
2013年11月23日 朝刊
無利子無担保無催促というのを融資とは普通言わないと思いますがさて・・・・・
○市場雑談等
・短国買入キタコレ
金曜は毎度お馴染み短国買入がオファーされまして額は2兆円が継続されましたが、その結果がががが。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba131122.htm
国庫短期証券買入 31,907 20,002 -0.010 -0.005 40.9
(補完供給の結果は引用割愛)
ということで、5糸強平均の1毛強足切りという素敵な結果になりやがりまして、まあ当然のことですが落札結果出て3Mゾーンは軒並み5bpがビットサイドになるというお約束のような展開になっておりました。んでもって今週は短国の入札が木曜まで無しと来てやがりますので、このまま物無芳一モードで今週は推移するでしょうという結果ですな、うんうん。
でまあ短国買入キタコレの影響というかその前からそうなのですが、CP買入の方が年末の帳尻的にまだまだ入りそう(つーか保有銘柄内容が判らないのでアレなのですが、12月も償還がそこそこあると思いますのでもしかしてCPって残高行かないんじゃねえのかという気もしますがががが)というのもあってオペに入りそうな銘柄の新発CPのレートも低位推移となっていまして、まあ何ちゅうか全般的にオペ効果でうひょーという感じではあるのですけれども、その割にはGCの下げがイマイチ足りない感があって、まさしく日銀の買入効果というかそれでレートがオサレな事になっているというかですかねえ。
・例のニャンコ先生ネタ
金曜の駄文の頭にちょっと書いたのですけどね。
>何かモーサテでニャンコ先生が妙な数字入りの工程表(どうも一部にニャンコ先生の勝手な個人的見解っぽいのが入っているような言い方だが)を出して色々と能書きを垂れているるのですが、「海外の年金基金と同じくらいのポートフォリオ構成に」ってあのその単純に海外との比較とか言ってるけど年金財政のキャッシュフローは人口構成が違ったら当然違うのですが、そこだけ聞いているともしかして負債の方を考えないで資産の方だけ考えて議論してねえか大丈夫かと思ってしまうのでもうちょっと丁寧なご説明をお願いしたいものでありまする(−−;
(金曜の駄文の頭を再掲)
んーっとですね、実際にこれモーサテでフリップ出してニャンコ先生が能書き垂れていたのを見たのですが、だされた数字とその時間軸があまりと言えばあまりで、放送されたものではあってもネタに数字入れてあたくしが風雪のルル拡散装置になるのも如何なものか(ただの自意識過剰)と思って華麗にスルーしたのですが、日経クイックがニュースにしているっぽいので追記。
NQNスペシャル
http://www.nikkei.com/markets/features/26.aspx?g=DGXNASFL220RB_22112013000000
伊藤東大教授の私案か GPIF資産、 1〜2年後に「国内債35%」テレビ東京番組で
2013/11/22 16:51
『伊藤隆敏・東大教授が22日朝のテレビ東京番組に出演し、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオ(資産運用構成)の1〜2年後の姿として国内債券が35%、国内株式20%、外国債券2・・・(続きを読みたい人は会員登録をヨロ)』(上記URLより)
フリップでは国内債券52%までの引き下げを行ったあと、「1〜2年後」としてその国内債券35%というのを出して、さすがに池谷さんが「これは報告書に出ていましたっけ?」とツッコミを入れてニャンコ先生が「これは報告書では無くて私の考えですが」と言っていました。
そもそも報告書の結論部分に自分の個人的見解を加えて一つのフリップにするとか、その時点でお前それ誤認を誘発するだろ何考えてんだという所ですが、そんな事よりちょっと待て資産規模から勘案してオペレーションのフィージビリティーを考えているのかこの有識者会議座長様はというお話な訳ですよこれがまた。
いやあのそういうの勝手に吹くのもどうかと思いますし、大体からして基礎年金部分でそんなにリスク取って良いのかよとか、年金財政のキャッシュフローはどうなのよとか、とてもそういうのを真面目に考えての発言に見えないのがホイホイと出てくるのが如何なものかと思いましたし、金曜はその隣にいる別の解説者として出演していたどこの誰とは申しませんが(まあモーサテのHP見れば分かりますが)どこぞの何とかストの方がニャンコ私案の「1〜2年で国債比率を17%(52%から計算するとそうなる)下げ」という無茶振りネタに1ミリも突っ込まないというのはまあ露骨にツッコむのは難しいにしたってイヤミの一つでもいうかと思ったら、ものの見事に普通にヨイショしておりまして、もう何なんだかと。
いやまあ確かに株の方からしたら株式の買いが期待ということだから株の絶賛大資金流入ってのを単体で見たらウハウハかも知れんけど、そんな無茶振りで国債売りをぶつけたらそもそも金融市場にどういう影響がとかそういう観点を持てば普通何らかのツッコミ待ったなしだと思うのだが、専門家の何とかストとしての知見は大丈夫なのかこのオッサンっつーか、こういう時にツッコミ入れないで何の存在意義があるんだよとか、まああたしゃそっちの方にトサカが立って朝から血圧急上昇だったのですよマッタクモウ。
というただの悪態メモでありましたとさ。まあ数字に触れないと悪態書けないので我慢したのが金曜の出来事だったので。
○FOMC議事要旨ネタの方が面白いので(^^)こっちを先に成敗
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20131030.htm(HTML)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20131030.pdf(PDF)
要するに「金利は上げないけれども量的緩和で勝負は止めますよ」というのが結論ということです。
・連銀スタッフ見通しに見る「金利上昇の弊害」
木曜の朝はそれこそ寝起きで読んだので精読以前の問題でしたが、落ち着いて精読してみますと今回の議事要旨はああだこうだ言ってますけれども「QEでの勝負はもうしません」「でも金利が上がると困るので金利で緩和を確り実施します」という事でしょうな。スタッフの経済見通しの所辺りからも「金利が低いことが先行き経済のプラス材料」というようなアピール攻撃が数か所ありまして、もちろん委員の皆さんもそういう認識を示している、という辺り議事要旨の「見せ方」からもうその辺が露骨という感じです。つーことで『Staff
Economic Outlook』から。
『In the economic projection prepared by the staff for the October FOMC
meeting, the forecast for growth in real gross domestic product (GDP) in
the near term was revised down somewhat from the one prepared for the previous
meeting, primarily reflecting the effects of the federal government shutdown
and some data on consumer spending that were softer than anticipated.』
政府閉鎖の影響と幾つかの消費支出関連指標が若干弱かったので近いタームのGDP見通しを若干下げたと。
『In contrast, the staff's medium-term forecast for real GDP was revised
up slightly, mostly reflecting lower projected paths for the foreign exchange
value of the dollar and longer-term interest rates, along with somewhat
higher projected paths for equity prices and home values.』
一方で中期的見通しは若干上がったとの事ですが、その要因として「先行きの為替レートと長期金利の見通しの変化」というのを株価および住宅価格の先行きパス引上げと共に挙げているというのがお洒落としか申し上げようがなく、もう思いっきり「金利を低い水準に維持させることが大事なんです」という連銀スタッフのアピール、というかそういう見え方をするように書いている辺りがもう露骨ですな。
んでまあちょっと飛びまして見通しのリスクなのですが。
『The staff continued to see a number of risks around the forecast. The
downside risks to economic activity included the uncertain effects and
future course of fiscal policy, concerns about the outlook for consumer
spending growth, and the potential effects on residential construction
of the increase in mortgage rates since the spring.』
フィスカルドラッグと消費者支出の先行きというのはまあ当然としまして、もう一つのリスク要因に「この春からのモーゲージ金利上昇による住宅建設の潜在的な影響」というのがあるのがこれまたモーゲージ金利上がらないようにというFEDのアピールっぷりが出ていてワロタ。
なお物価に関してですけど。
『The staff's forecast for inflation was little changed from the projection
prepared for the previous FOMC meeting. The staff continued to expect that
inflation would be modest in the second half of this year, but higher than
its level in the first half. Over the medium term, with longer-run inflation
expectations assumed to remain stable, changes in commodity and import
prices expected to be relatively small, and slack in labor and product
markets persisting over most of the projection period, inflation was projected
to run somewhat below the FOMC's longer-run inflation objective of 2 percent
through 2016.』
ということで見通しはあまり変わらず。リスクは今しがた引用した経済の見通しリスクの続きです。
『With regard to inflation, the staff saw risks both to the downside, that
the low rates of core consumer price inflation posted earlier this year
could be more persistent than anticipated, and to the upside, that unanticipated
increases in energy or other commodity prices could emerge.』
物価に関しては引き続きのリスクを両方向で見ているのですが、先にダウンサイドというのを入れて説明も入れているので、印象としては下警戒度の方が高そうに見えるというのがFED文学、と申しますか、従来割とその辺淡々と(というかぶっきらぼうにというか)書いていたFED公表文書なのですが、この引用部分の書き方とかも妙に趣向を凝らしている感がありまして(書くなら「the
staff saw risks both to the downside and upside」って書いて、その後に「downside
risk relates to 〜」とするのが普通のお作法)、特にここ1年というか今年になってから位ですけれども、FOMCミニッツとステートメントに中央銀行文学の香りがするようになっているのは気のせいですかそうですか。
・委員会の議論でも金利上昇イクナイアピールがある一方で物価にはあっさり味
でまあ『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の所でも同じく金利の下がったアピールがありましてですね。
『Financial conditions eased notably over the intermeeting period, with
declines in longer-term interest rates and increases in equity values.』
キタコレ。
『Financial quotes suggested that markets moved out the date at which they
expected to see the Committee first increase the federal funds rate target.
It was noted that interest rate volatility was substantially lower than
at the time of the September meeting, and a couple of participants pointed
to signs suggesting that reaching-for-yield behavior might be increasing
again.』
そもそもボラを供給してたのおまいらだろというのは兎も角、2名が「利回り追求の動きが復活している」ことを指摘するというのもありますな。
『Nevertheless, term premiums appeared to only partially retrace their
rise of earlier in the year, and longer-term interest rates remained well
above their levels in the spring.』
いやまあその動きはまだ限界的でしょうと。
『A few participants expressed concerns about the eventual economic impact
of the change in financial conditions since the spring; in particular,
increases in mortgage rates and home prices had reduced the affordability
of housing, and the higher rates were at least partly responsible for some
slowing in that sector. One participant stated that the extended period
of near-zero interest rates continued to create challenges for the banking
industry, as net interest margins remained under pressure.』
またまた前半の方で春からの金利上昇について住宅市場への悪影響があったという指摘がという事で、金利上昇はあばばばばーという話をしていますな。最後の人はゼロ金利継続で銀行の経営に悪影響というお話をしていますが。
一方で物価に関する部分は超あっさり味。
『Available information suggested that inflation remained subdued and below
the Committee's longer-run objective of 2 percent. Similarly, longer-run
inflation expectations remained stable and, by some measures, below 2 percent.』
こらまた超あっさり。
・政策見通しは要するに「量で勝負はもう止めます」ということですねわかります
でまずは改めて新小見出し『Policy Planning』を熟読。
『After an introductory briefing by the staff, meeting participants had
a wide-ranging discussion of topics related to the path of monetary policy
over the medium term, including strategic and communication issues associated
with the Committee's asset purchase program as well as possibilities for
clarifying or strengthening its forward guidance for the federal funds
rate.』
具体的議論キタコレ。
『In this context, participants discussed the financial market response
to the Committee's decisions at its June and September meetings and, more
generally, the complexities associated with communications about the Committee's
current policy tools.』
6月と9月の市場の反応について議論ワロタ。
『A number of participants noted that recent movements in interest rates
and other indicators suggested that financial markets viewed the Committee's
tools--asset purchases and forward guidance regarding the federal funds
rate--as closely linked.』
この反応は市場が資産買入とフォワードガイダンスがリンクしているという市場の見方を示しますってそらまあどっちも経済(しかも主に雇用指標)を見ているんですからねえ。
『One possible explanation for this view was an inference on the part of
investors that a change in asset purchases reflected a change in the Committee's
outlook for the economy, which would be associated with adjustments in
both the purchase program and the expected path of policy rates; another
was a perspective that a change in asset purchases would be read as providing
information about the willingness of the Committee to pursue its economic
objectives with both tools.』
という論点が出ていますが前段の方はまあそうでしょうなと。
『A couple of participants observed that the decision at the September
FOMC meeting might have strengthened the credibility of monetary policy,
as suggested by the downward shift in the expected path of short-term interest
rates that had brought the path more closely into alignment with the Committee's
forward guidance.』
2名が「decision at the September FOMC meeting might have strengthened
the credibility of monetary policy」とこれまたナンジャソラな話。
『Participants broadly endorsed making the Committee's communications as
simple, clear, and consistent as possible, and discussed ways of doing
so.』
いや複雑にしているでしょうと小一時間。
『With regard to the asset purchase program, one suggestion was to repeat
a set of principles in public communications; for example, participants
could emphasize that the program was data dependent, that any reduction
in the pace of purchases would depend on both the cumulative progress in
labor markets since the start of the program as well as the outlook for
future gains, and that a continuing assessment of the efficacy and costs
of asset purchases might lead the Committee to decide at some point to
change the mix of its policy tools while maintaining a high degree of accommodation.』
キタコレ!ということで、資産買入に関する一つのサジェスチョンということでこれまた怪しげな理屈が展開されていますが、コミュニケーションポリシーとして、データディペンデントという政策の中には「資産買入の労働市場に対する累積的な効果」も説明すべきであるとか、「効果とコストを勘案した場合、どこかの時点で緩和政策に用いるツールの組み合わせを変化させる必要があるかもしれない」とかもうキタコレですよね。
『Another suggestion for enhancing communications was to use the Summary
of Economic Projections to provide more information about participants'
views.』
SEPでコミュニケーションを強化、というのはまあ難しいんじゃネーノ。
『During this general discussion of policy strategy and tactics, participants
reviewed issues specific to the Committee's asset purchase program.』
ほうほう。
『They generally expected that the data would prove consistent with the
Committee's outlook for ongoing improvement in labor market conditions
and would thus warrant trimming the pace of purchases in coming months.』
これは木曜にも引用したように「見通し通りに改善すれば数か月以内に買入ペース縮小」の部分。
『However, participants also considered scenarios under which it might,
at some stage, be appropriate to begin to wind down the program before
an unambiguous further improvement in the outlook was apparent.』
木曜にうっかりスルーしましたが、さらにキタコレなのはここでして、先行きの改善見通しが明白になる前に資産買入プログラムを縮小するのが適切になるというシナリオも考察しているとかこっちの方がよっぽどキタコレなのでありましたどうもすいませんすいません。
『A couple of participants thought it premature to focus on this latter
eventuality, observing that the purchase program had been effective and
that more time was needed to assess the outlook for the labor market and
inflation; moreover, international comparisons suggested that the Federal
Reserve's balance sheet retained ample capacity relative to the scale of
the U.S. economy.』
2名はおいおいとツッコミを入れているのですが、逆に言えば2名以外は普通に上記の発想ということですねわかります。
『Nonetheless, some participants noted that, if the Committee were going
to contemplate cutting purchases in the future based on criteria other
than improvement in the labor market outlook, such as concerns about the
efficacy or costs of further asset purchases, it would need to communicate
effectively about those other criteria.』
『In those circumstances, it might well be appropriate to offset the effects
of reduced purchases by undertaking alternative actions to provide accommodation
at the same time.』
まあそらそうだわなという事ですが、コスト分析でのTaperingになった場合はコミュニケーションが重要との複数名の指摘とかもうやる気満々じゃないですか。で、その場合には資産買入の悪影響をオフセットする為の何らかの緩和措置を追加投入するのが適切と。
で、以下がどうやって買入減らすかという話でまさにやる気満々。
『Participants generally expressed reservations about the possibility of
introducing a simple mechanical rule that would adjust the pace of asset
purchases automatically based on a single variable such as the unemployment
rate or payroll employment. While some were open to considering such a
rule, others viewed that approach as unlikely to reliably produce appropriate
policy outcomes.』
雇用に関する一つの指標で買入ペースを自動調整するという論点については留保表明がされたと。
『As an alternative, some participants mentioned that it might be preferable
to adopt an even simpler plan and announce a total size of remaining purchases
or a timetable for winding down the program. A calendar-based step-down
would run counter to the data-dependent, state-contingent nature of the
current asset purchase program, but it would be easier to communicate and
might help the public separate the Committee's purchase program from its
policy for the federal funds rate and the overall stance of policy.』
ただまあ自動的にというのもコミュニケーション上は便利なのでメリットもありますね、でも今までのデータディペンデントでステートコンティンジェントというのとはちと違うからねえと。
『With regard to future reductions in asset purchases, participants discussed
how those might be split across asset classes.』
どの買入を減らすのかという話とな。
『A number of participants believed that making roughly equal adjustments
to purchases of Treasury securities and MBS would be appropriate and relatively
straightforward to communicate to the public. However, some others indicated
that they could back trimming the pace of Treasury purchases more rapidly
than those of MBS, perhaps to signal an intention to support mortgage markets,
and one participant thought that trimming MBS first would reduce the potential
for distortions in credit allocation.』
1名はMBSを先に減らせというのが居ますが、まあそれ以外は「同等で減らす」というのと「国債減らすのが先」というのに分かれているようです・・・・・・ってやる気満々ですな。
更に実際にやるとなった場合のコミュニケーションの話に続くのだ。
『As part of the planning discussion, participants also examined several
possibilities for clarifying or strengthening the forward guidance for
the federal funds rate, including by providing additional information about
the likely path of the rate either after one of the economic thresholds
in the current guidance was reached or after the funds rate target was
eventually raised from its current, exceptionally low level.』
つーことでその場合における追加の措置ということでフォワードガイダンスの強化という話で、利上げをしない物価のスレッショルドを入れるとか、現在の利上げスレッショルドに達したあとの金利引き上げパスについて明示するとか、まあそういうことで。
『A couple of participants favored simply reducing the 6-1/2 percent unemployment
rate threshold, but others noted that such a change might raise concerns
about the durability of the Committee's commitment to the thresholds.』
2名は6.5%のスレッショルドを引き下げるのはどうよということですが、他の人たちはいや一度決めたスレショルドをホイホイと変更するのはそもそもスレッショルドとは何ぞやみたいな話になり兼ねないので不味いだろという見解。
『Participants also weighed the merits of stating that, even after the
unemployment rate dropped below 6-1/2 percent, the target for the federal
funds rate would not be raised so long as the inflation rate was projected
to run below a given level. In general, the benefits of adding this kind
of quantitative floor for inflation were viewed as uncertain and likely
to be rather modest, and communicating it could present challenges, but
a few participants remained favorably inclined toward it.』
金利引き上げ後のパスという「質的」指標を出すのに興味のウェイトがあるようですが、ただまあ効果がどうなのよという論点もありますと。
『Several participants concluded that providing additional qualitative
information on the Committee's intentions regarding the federal funds rate
after the unemployment threshold was reached could be more helpful. Such
guidance could indicate the range of information that the Committee would
consider in evaluating when it would be appropriate to raise the federal
funds rate. Alternatively, the policy statement could indicate that even
after the first increase in the federal funds rate target, the Committee
anticipated keeping the rate below its longer-run equilibrium value for
some time, as economic headwinds were likely to diminish only slowly. Other
factors besides those headwinds were also mentioned as possibly providing
a rationale for maintaining a low trajectory for the federal funds rate,
including following through on a commitment to support the economy by maintaining
more-accommodative policy for longer.』
ああだこうだと論じられていますが、まあ問題になるのは正常化プロセスという事になるとSEPで出している「中立金利水準」が結構高い所にある点でして(まあそれはそう簡単に下がらんが)、これに対してどのようなアプローチをするのか、という点についてより詳しい説明をして、その際に、どのような経済の中間数値においてどのような金利パスになるかとか、経済に対する向かい風がある際の金利パスについてとか、まあ色々な物が出てくる可能性がありますわなと。
『These or other modifications to the forward guidance for the federal
funds rate could be implemented in the future, either to improve clarity
or to add to policy accommodation, perhaps in conjunction with a reduction
in the pace of asset purchases as part of a rebalancing of the Committee's
tools.』
でまあこれらは量で勝負から脱却する際に投下されるでしょうと。
で、最後には付利金利引き下げの話まで投下とかもう完全にこの部分「量で勝負から金利で勝負」という決意表明状態になっているのがオソロシスですな。
『Participants also discussed a range of possible actions that could be
considered if the Committee wished to signal its intention to keep short-term
rates low or reinforce the forward guidance on the federal funds rate.』
ほうほうそれでそれで?
『For example, most participants thought that a reduction by the Board
of Governors in the interest rate paid on excess reserves could be worth
considering at some stage, although the benefits of such a step were generally
seen as likely to be small except possibly as a signal of policy intentions.』
超過準備付利下げにmostとキタコレ。
『By contrast, participants expressed a range of concerns about using open
market operations aimed at affecting the expected path of short-term interest
rates, such as a standing purchase facility for shorter-term Treasury securities
or the provision of term funding through repurchase agreements. Among the
concerns voiced was that such operations would inhibit price discovery
and remove valuable sources of market information; in addition, such operations
might be difficult to explain to the public, complicate the Committee's
communications, and appear inconsistent with the economic thresholds for
the federal funds rate.』
そのほかとして短期のオペをもっと活用して金利に対するシグナルを出すとかどこの日銀だよという所ですが、これは市場機能という面で問題あるしコミュニケーション難しいんじゃネーノという指摘も。
『Nevertheless, a number of participants noted that such operations were
worthy of further study or saw them as potentially helpful in some circumstances.
』
ただまあそういうのも手段としてありそうですなという結論にほっほーという感じです。
『At the end of the discussion, participants agreed that it would be helpful
to continue reviewing these issues of longer-run policy strategy at upcoming
meetings. No decisions on the substance were taken, and participants generally
noted the usefulness of planning for various contingencies.』
ということでここの部分全部引用しちゃいましたです。
2013/11/22
お題「MPMは無風でしたが雑談を少々/オペ雑談とかその他雑談(って全部雑談か!)」
何かモーサテでニャンコ先生が妙な数字入りの工程表(どうも一部にニャンコ先生の勝手な個人的見解っぽいのが入っているような言い方だが)を出して色々と能書きを垂れているるのですが、「海外の年金基金と同じくらいのポートフォリオ構成に」ってあのその単純に海外との比較とか言ってるけど年金財政のキャッシュフローは人口構成が違ったら当然違うのですが、そこだけ聞いているともしかして負債の方を考えないで資産の方だけ考えて議論してねえか大丈夫かと思ってしまうのでもうちょっと丁寧なご説明をお願いしたいものでありまする(−−;
#しかしニャンコ先生に「普通の会社がやってるみたいに」ってお前普通の会社勤務したことねえだろと小一時間
まあ全文真面目に読んでから感想を書くかもしれませんし書かないかもしれません。
○決定会合レビュー:声明文では海外経済の現状認識を若干引上げのみの変化
無風の割には昨日は12時を回ったのは何ででっしゃろ?ってまあそれまでの12時前終了の連発の方が早いんですけどね。
でまあ声明文比較は前々回の10月4日会合の物を使います(前回は声明文に景気判断に関する文言が入らない(金融経済月報が出なくて現状維持の場合は1行声明になるのです)ので)。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k131121a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k131004a.pdf(10月4日)
・経済の現状認識部分で1か所の変更(判断に関わらない所でもう1か所ありますが)
声明文の変更箇所は2か所ですが、うち1か所は政策的含意の無い部分ですので実質的に変更箇所1か所になります。経済現状認識部分の海外経済部分ですが、そこだけ出しても芸が無い(誰ですか増量しようとしてるだろというツッコミをするのは!)ので一応この部分は全部比較。
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(10月4日)
総括判断は同じ。
『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体として緩やかに持ち直している。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(今回)
『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(10月4日)
つーことで輸出の判断は変わらないのですが、海外経済に関する部分が微妙に文言変更となっております。でまあ今回なのですが「徐々に」というのと「緩やかに」という形容詞の変化の方に目が行ってしまうと判断が上がっているのか下がっているのかワカランチ会長となってしまうのですが、判断の変化はそこではなくて当該文の後半にある「持ち直しに向かっている」が「持ち直している」と変化した方を見るのが正しくて、つまり今回は海外「経済」の認識(輸出の認識ではない)をちょっと前進させた、という解釈になるのであります。
#ニュースヘッドラインを見ると総裁会見で「半歩程度前進」と説明していたようですね
まあ何ですな、こういう文学(じゃないけど)に関しては普段から見慣れていると最初の形容詞ではなく後半の方に目がサックリと最初に行くのですが(ドヤァ)、そうは言ってもんなの判るかヴォケという方にオヌヌメなのは「英文版で比較」という作戦でありまする。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2013/k131121a.pdf(今回声明文英文版)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2013/k131004a.pdf(10月4日声明文英文版)
該当部分を比較してみましょう(輸出部分は割愛しますよ)。
『Overseas economies as a whole are picking up moderately, although a lackluster
performance is partly seen.』(今回)
『Overseas economies as a whole are gradually heading toward a pick-up,
although a lackluster performance is partly seen.』(10月4日)
つまりですな、先月の判断は「pick upに向かっている」だったのが今月の判断は「pick
upしている」となりますのでこれは判断が前進している、とまあこういう事になる訳ですので、日本語を読んでワカランチ会長の場合は英語の方がニュアンスが伝わりやすい場合がありますので困ったときは英文比較を見るのがオヌヌメということでありまする。
なお、念のため付け加えますと、声明文の正本は日本語版でありまして、日本語のワーディングに関しましては決定会合議決事項となっております(ので決定会合議事要旨を見ると議事要旨の最後の部分に記載されています)が、英語版に関しましては決定会合議決事項とはなっておらず、あくまでもご参考版として日銀スタッフが声明文の趣旨を踏まえて翻訳している物件となりますのでよろしくです。
#たぶん英文声明文を議決事項にするとそれだけでMPMが2時間くらい長くなると思う^^;
ということで明日(というか来月)役立つ(かどうか知らんが)豆コーナーになってしまいましたが、まあ今回の決定会合声明文はその位しかネタがねえちゅうことですな。とはいえ一応続き。
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は改善を続けている。』(10月4日)
需要項目別の判断部分は全文一致ですが、企業の業況感云々という部分が今回抜けとなっておりますな。ただまあこれは短観が出た直後の決定会合声明文の場合に出る判断なので、今回抜けているのはそもそもの仕様となっておりますので政策判断に関する含意はありません。
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(10月4日)
何せ今回はコアCPIについてもヨコヨコでしたからここの文言も同じとな。
・先行き判断、リスク認識等にも変更なし
並べるほどのもんでも無いですが。
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(10月4日)
『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(10月4日)
なお、別にこれは今に始まった事ではありませんが、リスク要因の中に「今後予定されている消費税増税の経済に対する悪影響」という文言は入っておりません。実際に予定通り引上げですよというアナウンスのあった10月4日の声明文(と金融経済月報)にも入っておりませんので念のため。
・決意表明みたいな文言と木内さんの提案も同じです
『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15
年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている』(今回)
『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15
年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(10月4日)
はあそうですかという所ですが。
『(注)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)
『(注)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(10月4日)
ちなみに木内審議委員の提案ですけれども、決定会合議事要旨での説明を読むとまあ判るかもしれないけど判らないかもしれませんのですが、木内さんの提案というのは「2%は2年じゃなくて中長期で目指す」という意味では緩和継続の期間が長くなる可能性もあるのですが、実際問題としての行動提案は「とりあえずQQEは2年で切っていったん終了」という話で、終了した後QQEをどうするのかの話は無いので、まあそれはそれでその時点で改めて考えるって事になります、というのはまあ分かりますな。
一方で日銀が現在声明文で示しているのは「MBを年間60〜70兆円拡大する」という部分だけです。つまりこの声明文の文言の項番1と2を文字通りに読めば、「日銀が今後何らかの変更決定をしない場合は、MBを年間で60〜70兆円拡大するというのは自動延長」「その際の内訳は国債を平均7年で50兆円、ETFとJ−REITは年間1兆円と300億円、残りの10〜20兆円相当部分に関しては成長基盤強化とか短期オペとかその他諸々で調整(社債とCPは今年末の買入残高を維持するに留まる)」という事になりますので、何の決定行動も起きないで現状維持が続くと勝手にドンドン延長になる(それが技術的にフィージブルなのかという論点は別)のですな。
ただしここでややこしいのは物価目標を2年を念頭に出来るだけ早期に実施するとぶち上げて「必要な措置は全部投下した」と言っている部分でして、つまりは日銀の見通し通りになったら(なると思ってない人の方が民間エコノミストでは圧倒的主流と思われますが^^)当然ながらこのMB拡大ペースの修正とか場合によっては縮小という話になるので、書いてある文書を文字通り読んだ場合と、2年で達成という強い意志の部分で示されている先行き政策行動の含意が微妙にずれているというのがヤヤコシスなのですな、うんうん。
つーことで、木内さんの提案というのは(議事要旨見れば書いてありますが)(1)そもそも2%の物価安定目標が2年で行くのは厳しい(2)今は2年で行かせようとしてMBの馬鹿拡大をしているが、2年で2%行くのが怪しいのでこのままだと更に馬鹿拡大が継続になる(3)それはどう考えても副作用が大きい(4)だから2年で行かせるための馬鹿拡大ペースについては再考が必要(5)よって目標は中長期的に物価目標を目指すことにして、MBの馬鹿拡大も一旦2年で切ってその後様子を見ましょう、という趣旨になっている、ということだと思われるのですが、これがまた議事要旨での説明もイマイチ判りにくいですし、木内さんももうちょっと丁寧に説明してくれるとわかり良いのだがと思うのでありまする。
・・・・・・って今さら何か月も経過してそういう話をするのも何ですが、追加緩和がどうのこうのという話の中で議論が混乱しているようですのでちょっと補足してみました。
○オペ雑談:固定金利オペが増額ロールとな
昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of131121.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 8,000 2013年11月25日 2014年2月24日
国債補完供給(国債売現先)・即日(注3) 4,000 2013年11月21日 2013年11月22日
結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba131121.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(11月25日スタート分) 6,140 6,140
国債補完供給(国債売現先)・即日(注4) 103 103 -0.400 -0.400
25日にエンドが来る固定金利オペですが、1160億円の落ち(8/29に実施したオペで9/2-11/25の固定金利オペ)に対して何とまあ奇跡のように今回増額となりまして、しかも何と5000億円も増額になるってこれは調節担当ニッコリですわな。短国のレートが3か月でも1年でも0.05%から0.06%の間で絶賛低位安定している中で0.10%の3か月って要るのかよと思うので突如誰かが変なもんでも食って札入れたのかと思ってしまいますけれども、良く良く考えると足元の東京レポレートのT/N取引の金利が微妙に安定していないで時々0.10%とかに跳ねたりしているので、そっちが影響しているのかね良く判らんぞなもしという所ではあります。
まあ何かの都合があったというような特殊要因じゃなくて固定オペが減るトレンドが岩盤に当たったという事だと良いですね(棒読み)という感じではあるのですが、普通に考えて固定オペってドンドンロールニーズが落ちてくる(共通担保の中でも市場ファンディングしにくい部分を固定オペに放り込むというニーズは存在する筈ですし、そもそも全部をレポ市場やコール調達という訳にも行かないでしょうから使えるものがあったら使います罠なので全くのゼロにはならないと思いますが)と思ったのでこんな所で急に札が入ったのが意外ではありました。
○ECBとかFEDとかちょっとメモ
・ECBマイナス金利ねえ・・・・・・・・・・
しまった昨日(というか一昨日)はこのネタもあったのか!
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MWKKL26TTDSM01.html
ECB:預金金利マイナス0.1%検討、追加緩和必要なら−関係者
更新日時: 2013/11/21 01:34 JST
『11月20日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)は中銀預金金利 をマイナスにする場合は通常よりも小幅な引き下げとすることを検討していると、事情に詳しい関係者2人が明らかにした。』(上記URLより)
なんだよこの「事情に詳しい関係者」ってという所ですが、下にある翌日のニュースを見ると「事情に詳しい中銀当局者2人」らしいので、誰かがポジショントークでブルームバーグの記者に吹き込んだ与太話というよりはマシみたいですが、まあそれにしてもこういうのに反応するというのはまあそういう市場センチメントなんでしょ。
・・・・・・・・・と思ったら早速ドラギ先生否定ということでワロタ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MWMATN6K510R01.html
ECB総裁,ユーロ圏はスローモーションのディスインフレ体験
更新日時: 2013/11/21 23:51 JST
『ドラギ総裁は「私の言葉からマイナス金利の可能性について何かを推測しようとするのはやめてほしい。それについては前回の政策決定会合で話し合った。それ以降に新しいニュースは何もない。これを明言しておく」と強調した。』(上記URLより)
ワロタという所ですが、実際問題として預金ファシリティーをマイナスにするという事は、超過準備保有にペナルティーを科すという事になりますので、つまり超過準備を極力持ちたがらなくなり、その結果として量的な意味では結構な引き締め政策になってしまうというオモシロ事案が発生しますし、当然ながら緩和政策の実施が困難というか不可能になりますぞなという事で、そこまで考えるとそう簡単に超過準備に過料をチャージするというのは踏み込めないと思うのですけどねえ。
・FRBですが
ミニッツ更に読み中なのですが、何かまあTaperに関する議論は混乱というか話ややこしくなっているなあと思うのですけれども、ある意味綺麗な方向になっているともいえるかも。
まあ詳しくは後日整理しますが、要は「労働市場の顕著な改善」というTaperの判断っていうのは経済情勢に紐がついている訳でして、それはつまりTaper実施の先には当然ながら経済情勢がさらに改善して緩和政策の正常化というのがありますよね、という風にまあ普通は考えるので、5月以降のTaperingトークの中でさあ金利正常化も早まって参りました!!となった訳ですよ。
でも、ざっとミニッツ読んでみると今回は「量的緩和拡大と低金利政策は別箇」というのを更に強調した形での先行きの金融政策運営の話をしていまして、つまりはFEDの金融政策運営が「量で勝負」から脱却して「金利で勝負」という流れになっている(まあその一方で日本の金融政策運営は「量で大勝負」になっているのがチャーミングなのですが)という事で、この建付けの変更に関する市場の理解が進んだらさっさとTaperとなっても何ら不思議ではないという話ですが、市場の理解というのはつまり中短期金利が早期利上げを織り込んで上昇するのは極めてケシカランのでそうならないようにしないとイカンという話でもありますので、その辺をどうコントロールするか、というのにどうメドをつけるのかが重要なんでしょうな、うんうん。
というような話は整理してミニッツ読みながら来週にでも再度申し上げますの所存ですが一応メモという事で。
2013/11/21
お題「市場雑談/米国Taperネタと聞き早速食いついてみました^^」
論点としては旧治安維持法みたいな運用を可能にしない事だと思うの。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131121-00000000-mai-pol
<秘密保護法案>維新も与党と修正合意…主要論点で譲歩
毎日新聞 11月21日(木)0時5分配信
てか反対大会してるメディアとか法案出てから大騒ぎするんじゃなくて検討段階で何で大騒ぎせんのよとゆー所でアリバイの為にゆうとるんかと小一時間。
○市場雑談等
・3MTB入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20131120.htm
(3)募入最低価格 99円98銭4厘5毛 (募入最高利回り)(0.0577%)
(4)募入最低価格における案分比率 61.4137%
(5)募入平均価格 99円98銭4厘5毛 (募入平均利回り)(0.0577%)
一昨日の2Mは0.06%台でしたが昨日の3Mは結局0.06%割れの水準に落ち着き、まあ若干堅調程度だった程度なのでセカンダリーでも一昨日のようなショートカバーとかにも成らずに(5.7兆出てるんだからそらそうよという所ですが)という所でして、まー何となくレンジ感が出て良かったですねというお話。ただまあ微妙にGCレートがフラフラしてたりするのも気になりますが、どうせ金曜にまた短国買入が入るので需給は普通に調整され、来週は木曜の3Mしか短国入札が無いので入札に向けて徐々に堅調ですねわかりますということでしょうかね、よー知らんけど。
・有識者会議報告書キタコレでちょっとだけ雑感
ほいな
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/koutekisikin_unyourisk/index.html
んでもって最終報告書の概要はこちら。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/koutekisikin_unyourisk/houkoku/h251120_gaiyou.pdf
『・デフレからの脱却を図り、適度なインフレ環境へと移行しつつある我が国経済の状況を踏まえれば、国内債券を中心とする現在のポートフォリオの見直しが必要。』
うむ、適度なインフレ環境だったら一旦債券減らしてもその後金利が適正水準になったらまた債券を持った方が良いような気がしますがまあいいです。
まあそれよりも見ててふと思ったのですが、QQEやっている間って基本的に経済物価状況に対して適正と考えられる金利よりも実際の金利水準を低い所に置くことによって実質金利の引き下げを行い、政策効果を出しましょうって話をしておりますので、そらまあ2%インフレの物価安定が具現化できるというのであれば10年0.6%ってどうよという論点も判らんではないのですが、QQE政策を後ろから撃つような話でもあったりしまして、うーんこのという気もせんでも無い。
#実際問題として債券を今すぐ売却とかそういう話では全くないのでそこまでナーバスにならんでもよかろうという説はだいぶありますけど(^^)
昨日ネタにした国の債務の在り方がどうのこうのの懇談会資料見てても思ったのですが、日銀が異次元亜空間政策を実施してしまい思いっきり債券市場のスーパープレーヤーになる事によって政策効果を出しましょう、というプレイを演じるようになってしまいましたので(従来もまあ買いはザクザクしていましたが積極的に長期金利を適正水準より低くしましょうとかいう事はしてなかった訳で)、そーゆー意味では各部門が自分の庭先を綺麗にするような動きだけするとゆーのもどうなんですかねという気がするのですがどうっすかね。
とはいえ、その整合性について日銀も含めて思いっきり表でああだこうだやっていると今度は中銀による財政ファイナンスしてるじゃねえかとかそっちに話が発展するリスクがあるのでこれまたムツカシヤといずれにしてもQQEが拡大する中で「国債発行流通市場における広義の政府部門における動きの整合性をどうするのか」というのが段々重いネタになってくる、つーかそこ適当にやっていると出口政策時点とか、QQEの技術的限界の時点とかであばばばばーのリスクも高まるというような希ガス。
#ちらっと書いてみましたが実際問題としてはこれ結構重いネタなのでもうちょっと考えてみます(そもそも今日明日の話ではないので正月にでものんびり考えますかね^^)
○米国がTaperネタと聞き早速食いついてみましたの巻でブラード総裁キタコレ
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MWKKAH6VDKHT01.html
セントルイス連銀総裁:債券購入縮小、12月会合で議論へ
更新日時: 2013/11/21 03:20 JST
『11月20日(ブルームバーグ):米セントルイス連銀のブラード総裁は雇用統計が力強ければ、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で債券購入の縮小を決定する可能性が高まるとの認識を示した。総裁は20日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで、「緩和縮小が議論されることは確実だ。ただ決定するかどうかはデータ次第になるだろう」とした上で、「雇用統計で力強い内容が示されれば、12月の緩和縮小の可能性がやや高まると思う」と続けた。ブラード総裁は今年のFOMCで投票権を持つ。
力強さをどう数値化するのかとの質問に対しては、「力強い、と言うだけにとどめておく」と答えた。』(上記URLより)
タカ派が何かいうのはお約束の展開なのでどうでも良いのですが、どちらかというと最近では物価重視でハト派的(そもそも声明文にインフレの低迷懸念をいれろとか言ってFOMCで反対を入れたこともある)なブラード総裁がこういうネタを振るとはどっひゃーという感じです罠。
肝心のインタビューの文字起こしみたいなのはもしかするとブルームバーグニュースの方を見るとあるのかも知れませんが、探す根性が無かった(セントルイス連銀のサイトの方では今の所記事へのリンクとか無いですし)のでパスしますが、今申し上げましたようにブラード総裁って最近ではタカハト分類するとハト系に分類される人なのでTaper話がでるとはアチャーではありますが、このブラード総裁というのも何か微妙に面白い人で、色々と金融政策に関する新しい論点を呈示しながら結果としてタカになったりハトになったり自由自在な面があって、しかも新しい論点を呈示するだけに恐らく本人金融政策議論のフロントランナーを目指しているようにも思える人でございますので、ここでTaper話をするとはその背景は如何に??となりますな。
なお、ブラード総裁の「金融政策のフロントランナー」ペーパーですが、セントルイス連銀のサイトにございますこちらのページがいつの間にか豪華構成になっていまして、
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/index.html
Key Policy Statements
暫く前まではペーパーなどの題名とリンクだけだったのですが、いつの間にかテーマ別分類してペーパーなどへのリンクが貼ってありまして、ブラード先生ドヤ顔状態ですねわかります。
ちなみに何回かネタにしましたが、「The Seven Faces of 'The Peril.'」というペーパーは一読するとほえ?となりますが何回か読みますと大変に面白い論点(QQEで期待の転換みたいな話にも通じる論点)を呈示しているのが伝わると思いますのでちと古いですが一読推奨。
○さらにFOMCミニッツである
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20131030.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20131030.pdf
寝起きでこんなの全部読めないので詳しくは後日ですけど、超速読をしたい場合にアタクシが行うのは、まず最初に『Participants'
Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツの部分からパラグラフを逆に読んで行って政策アクションに関する論点整理部分を読んで、その後時間が有れば『Committee
Policy Action』を読むのですが・・・・・・・・・・
・新しい小見出しキタコレ!!
つーことでこれまでのパターンですと『Participants' Views on Current Conditions
and the Economic Outlook』の次が『Committee Policy Action』になるので、最初に読むのは実際にはCommittee
Policy Action』と書いてあるところの一つ上から読むのですよ。
でですな、今回その部分をさかさまに読むとコミュニケーションの重要性とかフォワードガイダンスの話とか色々と出て来まして、今回はこれまた随分と政策をどうすんべの話が多いなあと思いながら斜め読みしていて戻ってびっくら。
『Policy Planning』という小見出しがあって、中長期的な金融政策をどうするのかという話から始まって延々と色々な話が書かれていましてパラグラフが6つもあるの巻。まあその位の量だから小見出しが登場するという事なのでしょうが、従来この手の話は『Participants'
Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツにあって、もともと1パラグラフ程度入っていたのが最近はうっかりすると3パラグラフ位入るようになっていたのでだいぶ長くはなっていたのですが、今回はこの小見出し部分を読むとかなり面白いと思われます。
#が6パラもあると斜め読みしてから頭整理してとか無理なので今日はパス(ついでに言うと後ろから読んだので頭を整理するのにまた最初から読んでると時間ががががというアタクシの能力の問題がorz)
・ということでまずは目先の金融政策に関する議論部分で市場が反応したと思われる部分を
つーことで新見出しの読む部分があまりにも従来比多いので日和って『Committee
Policy Action』に参ります(汗)。最初のパラグラフから順に参ります。
『Committee members saw the information received over the intermeeting
period as suggesting that economic activity was continuing to expand at
a moderate pace. Although indicators of labor market conditions had shown
some further improvement, the unemployment rate remained elevated. Household
spending and business fixed investment advanced, but the recovery in the
housing sector slowed somewhat in recent months, and fiscal policy was
restraining economic growth. The Committee expected that, with appropriate
policy accommodation, economic growth would pick up from its recent pace,
resulting in a gradual decline in the unemployment rate toward levels consistent
with the Committee's dual mandate. Members generally continued to see the
downside risks to the outlook for the economy and the labor market as having
diminished, on net, since last fall. Inflation was running below the Committee's
longer-run objective, but longer-term inflation expectations were stable,
and the Committee anticipated that inflation would move back toward its
objective over the medium term. Members recognized, however, that inflation
persistently below the Committee's 2 percent objective could pose risks
to economic performance. 』
だいたい毎度お馴染みのパターンなのですが、ここの最初のパラグラフはそのままFOMC声明文で示される景気認識等と同じだったりしますので、ここは基本的に超斜め読みで可だと思います。ただし時々ここの景気認識に関して見解に大きな(声明文に入れるか入れないか位のレベル)相違が出てきた時にはここのパラグラフかこの次のパラグラフでそれに関連する記述が出てくる場合も無い訳では無いので要注意(通常はその前の経済物価情勢の議論の部分で出てくるので基本そっちを見る)。
でもって今回の次のパラグラフは普通に「目先の金融政策」に関する話。
『In their discussion of monetary policy for the period ahead, members
generally noted that there had been little change in the economic outlook
since the September meeting, and all members but one again judged that
it would be appropriate for the Committee to await more evidence that progress
toward its economic objectives would be sustained before adjusting the
pace of asset purchases.』
前回FOMCから経済見通しに関する認識に大きな変化はなく、1名(ジョージおばちゃん)を除くメンバーは資産買入プログラムの調整を行うにはより多くのエビデンスが必要との認識で一致。
『In the view of one member, the cumulative improvement in the economy
indicated that the continued easing of monetary policy at the current pace
was no longer necessary.』
これはジョージおばちゃんなのでまあ良いとしまして・・・・・・・・
『Many members stressed the data-dependent nature of the current asset
purchase program, and some pointed out that, if economic conditions warranted,
the Committee could decide to slow the pace of purchases at one of its
next few meetings.』
多くのメンバーは資産買入政策についてはデータディペンデントであると強調して、そのうち「some」メンバーは経済状況がおっけーであれば今後の数回のFOMCミーティングのうちに資産買入を開始することが可能であると指摘とな。
『A couple of members also commented that it would be important to continue
laying the groundwork for such a reduction in pace through public statements
and speeches, while emphasizing that the overall stance of monetary policy
would remain highly accommodative as needed to meet the Committee's objectives.』
んでもって2名のメンバーはTaperingをしても金融政策スタンスは緩和的であるというメッセージを示すのが重要であるということを同時に指摘しているということですな。
・ちょっとだけ前のパラグラフから市場が反応したと思われる部分をば
さきほどの『Policy Planning』の第2パラグラフの頭の部分に反応したのかな?と思いますので引用。
『During this general discussion of policy strategy and tactics, participants
reviewed issues specific to the Committee's asset purchase program. They
generally expected that the data would prove consistent with the Committee's
outlook for ongoing improvement in labor market conditions and would thus
warrant trimming the pace of purchases in coming months.』
ニュースの見出しから判断するに市場が反応したのは多分こっちですなすいませんすいません。こっちだと「They
generally expected」ってあるからさっきの所よりもややトーンがTaper寄りになっていますね。
『However, participants also considered scenarios under which it might,
at some stage, be appropriate to begin to wind down the program before
an unambiguous further improvement in the outlook was apparent. A couple
of participants thought it premature to focus on this latter eventuality,
observing that the purchase program had been effective and that more time
was needed to assess the outlook for the labor market and inflation; moreover,
international comparisons suggested that the Federal Reserve's balance
sheet retained ample capacity relative to the scale of the U.S. economy.
Nonetheless, some participants noted that, if the Committee were going
to contemplate cutting purchases in the future based on criteria other
than improvement in the labor market outlook, such as concerns about the
efficacy or costs of further asset purchases, it would need to communicate
effectively about those other criteria. In those circumstances, it might
well be appropriate to offset the effects of reduced purchases by undertaking
alternative actions to provide accommodation at the same time.』
えーい長いぞなという所ですが、(全体にここの部分のパラグラフは長い、これで1つのパラグラフ)じゃあTaper本当にするのという話になるとそもそも資産買入の効果に関する考察やコストに関する考察の部分で結構意見に差があるように見えますな、というのがこの辺に書かれているような感じで、最後の方には(この次以降のパラグラフに話が続くのですが)Taper着手となった場合にその影響をオフセットする為にコミュニケーションの強化、ということでまあ結論としては(斜め読みした感じですと)フォワードガイダンスをどう強化しましょうかとか、その他コミュニケーションなどで対応しないといけませんねとなって、先ほど引用した部分にも掛かる話になるという感じのようでごじゃります。
つまりまあTaperとフォワードガイダンス強化がほぼセットというのも確定という感じなんでしょうね。詳しくはもうちょっと精読してから後日ということで(大汗)。
2013/11/20
お題「各種雑談系メモメモ/展望レポートの物価記述部分にも味わいがあるので今さらネタですが」
そういえば今日明日はMPMですな(だから短国の入札が週前半に3連発なのだが)という位にMPMだったのを忘却しかかっていた今日この頃(−−;
○市場雑談メモ
・2MTB入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20131119.htm
(3)募入最低価格 99円98銭9厘0毛 (募入最高利回り)(0.0669%)
(4)募入最低価格における案分比率 8.5512%
(5)募入平均価格 99円98銭9厘6毛 (募入平均利回り)(0.0632%)
ということで2Mって基本的に短国買入に入らないので入札は6bp台になったのですが、いわゆる不明玉が多め(2.5兆のところ1.4兆)だわ大手1社が4000億円超落札するわとまあ強めの入札になってショートカバーもあって結局5bp台に戻るの巻となっていたようで、先週の3M入札前には5bpの所で売りが並んで跳ね返され、今週の2M入札では6bp台に入った所で買いが来て戻るとか、何か目先のレンジはこいつですという所になったんでしょうかねえ良く判らんけど。
つーことで本日は3Mの入札ですが、だいたいレンジは落ち着いた感じという所かなとは思いますが、あとは今後MB中間目標達成との絡みで短国買入をどの位まで積み上げてくるかというのが(行ったらペース落ちるのか余計に積み出すのか)ネタになる訳ですが、12月は財政余剰月ですのでそちらの資金需給との絡みをどう見るのやら。
・20年国債入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2013/resul057.htm
(1)応募額 5兆1,768億円
(2)募入決定額 1兆895億円
(3)募入最低価格 102円75銭(募入最高利回り)(1.519%)
(4)募入最低価格における案分比率 51.3056%
(5)募入平均価格 102円83銭(募入平均利回り)(1.514%)
入札のだいぶ前から超長期をカーブ上押し込んだ上にご丁寧に昨日は前場超長期を押し込んで入札を迎えたらさすがに押し込んだ効果で入札は強めの落札になるわ応札倍率は高いわという素敵な結果になったのですが、セカンダリーのお時間に相場上昇を牽引したのはなぜか7年10年という意地の悪い展開となっておりましたな。まあこの前の在り方懇とかもネタになっていたんですかよく分かりません。
○国の債務管理の在り方懇だが議事要旨マダー
まあ先週金曜のネタですけど。
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/gov_debt_management/proceedings/index.html
国の債務管理の在り方に関する懇談会(議事要旨等)
議事要旨マダーという所ですが、まあ一応こちらの資料1にありますように、議論の中に「平均償還年限長期化」というのがあるので一応超長期を押し込む言い訳にはなっているようでごじゃりますな。
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/gov_debt_management/proceedings/material/d20131115-1.pdf
第25 回会合の議論の整理及び当面の進め方(案)
1.年内
○ 国債流通市場の現状を踏まえた国債管理政策
○ 平均償還年限長期化
○ 26 年度国債発行計画
2.来年以降
○ 人口高齢化に伴う家計金融資産の動向、国債の海外保有、マクロ的な資金フローの変化など中長期的な国債を巡る環境変化
○ 中長期的な国債を巡る環境変化を踏まえた国債発行制度、商品性の在り方
○ 投資家等への情報発信
でまあ今回の資料2以降を見ますと、基本的に上記のお題のうち最初の部分にあたる「国債流通市場の現状を踏まえた国債管理政策」ということで国債市場の流動性がどうのこうのという話が議事になっていたように見えますが、まあ国債管理政策として市場の流動性を確保するのは大事っつーか、たぶんこの調子で流動性が順調に低下していきますと何らかのショックが有った際に国債市場があばばばばーで金利がヒャッハーとかなり兼ねない、という問題意識を今年の華麗な金利ランコルゲで再認識されたとゆーことですかな良く判らんですが。
ただまあそう言ってしまうと身も蓋も無いのですが、そもそも日銀が異次元緩和とか言って国債をバカスカお買い上げしているわ、その買入年限が国債インデックス位の平均まで伸ばして来るわという状況になっているのが全ての努力をいきなりひっくり返してしまうという物でございまして、大体からして国債の平均償還年限を長期化している側から日銀がジャンジャン長めの国債を買っているとなりますと、統合政府で考えた場合に確かに償還年限は長期化されるかも知れませんが、金利リスクという意味では日銀が全力で変動金利に変換しているというのがチャーミングな所ですな。
で、流動性に関しては日銀がせっせと買入を行っているのですっかり流動性低下しているのはご案内の通りですし、そもそも日銀の異次元金融政策における「実質金利の低下」には期待インフレ率の上昇というのもありますが、「経済物価情勢から妥当と思われる金利水準よりも実際の金利水準を低位水準に押さえつけることによって実質金利を低水準(またはマイナス)にする」というのがございまして、大体からしてそういう時点で日銀が市場を歪める意志満々という状況な訳です(もちろん本当は歪めない方が良いに決まっているのですが、名目ゼロ金利制約に引っ掛かってしまった中央銀行としては何らかの形で歪めないと政策意図を達成できないですからね)からして、発行サイドでの努力も色々とございますが、とりあえず日銀の異次元緩和が続くうちは何をやっても日銀が全部ブルドーザーで踏みつぶしそうですなナムナム。
ま、その辺は全部承知の上で「そうは言っても発行サイドとして何か工夫の余地はありませんか」という話だと思いますし、来年のお題を見ると(というか元々のこの懇談会の趣旨から言って)年内の話は市場の現状認識に関する部分で、より中長期的な課題に関しての情報発信の方を期待したい所ではございますな。うんうん。
つーかまあ今年のMB目標は良いとしまして、来年になるともっと買入残高が拡大する訳ですし、これで2年で2%間に合わなくて「MBを60兆〜70兆円のペースで拡大」の自動延長措置が発動となりますと、国債市場の流動性が益々あじゃぱーになるのでこの際増発してくれや位の勢いになる(まあそれを財政マネタイズというような気がするが)のでして、結局の所財務省の事務方が気を揉むものの最終的には日銀の馬鹿買いがどのような形でいつまで続くかというのが最大の国債管理政策上の課題だったりするのが誠に遺憾というか、中銀の国債買入が国債管理政策上重要問題になりそうという時点でそれは財政マネタイズというか自主規制(−−;
○えーっとECBは量的緩和をしにくいと思いますけどねえ
だいたいOECDの経済見通しは兎も角、金融政策でああせいこうせいという時ってスットコドッコイな話が多いのが仕様なんですけど。
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N0J43F920131119
WRAPUP1-ECB、日本型デフレ回避に向け米FRBのように量的緩和実施する必要=OECD
2013年 11月 20日 01:47 JST
『[ブリュッセル/フランクフルト 19日 ロイター] - 経済協力開発機構(OECD)は19日に発表した世界の経済見通し(エコノミック・アウトルック)のなかで、欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ圏が日本のようなデフレスパイラルに陥ることがないよう、米連邦準備理事会(FRB)が実施しているような量的緩和策を実施する必要があると提言した。』(上記URLより)
まあ特にOECDネタとかIMFネタというのは出ているペーパーを細々確認する人が相対的に少ないというのもありまして(中銀から出てくる講演とかミニッツだとそんなにヘビーじゃ無いからまあ読んでヘッドライン鷺がまた飛んでらという風になるのだが)とりあえず記事に釣られてしまいますが(お前が読めというツッコミは謹んで却下)、「日本のようなデフレスパイラル」と書いている時点で怪しさの香りがする訳で、日本の場合は「長期デフレ均衡」ではあったもの、特段スパイラルであったとは思えん(資産価格下落と不良債権拡大のスパイラルはあったけど一般物価の方でのスパイラルとは違うでしょという事で)わけで、その時点でロイターの記者が勝手にOECDのペーパーを拡大解釈してねえかという気がしますけど、まあ一応記事に釣られて雑感を。
んーとですね、ECBなんですけれども、基本的に「量的緩和政策」というのをやろうとするのは預金ファシリティー金利をゼロにしている中では、そらまあある程度の量的緩和はできますけれども、日本や米国のようにアホウのような量を出すのは技術的に困難な作業になるんですよね。
つまりどういう事かと申しますと、日本の場合でもゼロ金利で量的緩和というのを速水さんおよび俊ちゃん総裁時代にやりましたが、ご案内の通り途中で技術的な壁にぶち当たりました(ただし俊ちゃんは長期国債の買入はフローベースでは拡大していませんので念の為)ように、そもそも「量的緩和」を行うためには「超過準備の大幅な拡大」が必要になりますが、超過準備を持つ持たないは銀行の判断によるものですからして、超過準備の付利がゼロという状況ですと、そもそも超過準備を持つインセンティブが銀行になくなる訳で、つまりは超過準備の拡大をすることに対してどこかで限界が来る訳ですよ。
日本だって付利置いてますけれども、正直言ってどこまで超過準備積み上げ出来るのかという事になりますと、ここまでは何とか行ってますけれどもこの調子で年間60〜70兆円拡大を出来るのかというのは実に怪しいでしょと思われますし、もしこれ付利が無い状態だったらここまで順調に超過準備の積み上げができたのかどうかも怪しい罠という所ではあります。付利金利が無いのであれば超過準備というのは基本的には資金繰りバッファー以上に持つ意味は無い訳で、金融危機モードにでもなればそのバッファーは拡大するから超過準備ニーズは増えますが、それで量的緩和ヤッホーという訳にはならんでしょうし(^^)。
とまあそういう事でして、ECBの場合は技術的問題から大規模量的緩和というのは非常に難しいという状況(まあそれ以前にドイツ連銀が猛反対するでしょうけど)になっている訳ですし、しかも預金ファシリティーマイナスの可能性を否定しないとかいう話をしている状況でして、預金ファシリティーをマイナスにしたら超過準備そのものが罰ゲームですから皆さん超過準備を積むことも無くなり、量的な面で言えばマイナス金利導入というのは急速な引き締め政策になるのでございまして、そんな可能性の議論がという話をする中銀の元でホイホイゼロ金利の超過準備を積み上げる民間金融機関がどこにいるのかという話ですわ。
つーことで、まあ実際のペーパーを1ページも読んでいないので実際にどういう話をしているのかというのをワカランチ会長のまま雑談を展開しましたが、もしOECDがECBの量的緩和政策の実施というのを政策の可能性として指摘しているのであれば、それはあーた実務的問題への理解が全然ないですな困ったお方だという話になると存じますです、はい。
なお、例えばヤケクソでMRO金利を0.1%に利下げして、そのどさくさに紛れて預金ファシリティー金利を0.1%に引き上げるという訳のわからん技を使えば大規模量的緩和は可能になるので、もしECBが大規模量的緩和にシフトしようとしたらそういう手を使うしかないと思います。ただまあ英国だって量的緩和からフォワードガイダンスと貸出推進スキームに政策運営をシフトしているという状況(まあ物価の状況が違うが)ですし、米国に関しても先日のロックハート講演でも示されているように金融政策の中心をフォワードガイダンス政策に持って行っているという潮流の中(日本だけ真逆^^)、今さらECBが量的緩和に踏む込むというのも何かメイクセンスしないのですけどねえ・・・・・・・・・・・
○展望レポート全文ネタたぶんファイナル
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1310b.pdf
最後に物価の部分を引用します。本文29ページ以降(ファイルの31枚目)『(物価変動を取り巻く環境)』から。
・まず要因分解ですがその中に今回のレポート中でも味わいの深さでは白眉級のものが
『先行きの物価情勢を展望するにあたり、物価上昇率を規定する主たる要因について点検する。』
ということで。
『第1に、マクロ的な需給バランスは、緩やかな改善を続けている(図表39(1))。先行きのマクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げによる振れを伴いつつも、潜在成長率を上回る成長が続くという景気展開を反映して20、見通し期間中、緩やかな改善基調をたどると考えられる。そのもとで、見通し期間の半ば頃にはマクロ的な需要超過に転じ、見通し期間後半にかけて需要超過幅を拡大させていくと予想される。』
ということですが、この脚注20の部分、潜在成長率幾らで置いているのかについて記載されていましてね。
『20 潜在成長率については、リーマン・ショック後の経済の落ち込みを受けて、資本ストックの伸びが鈍化したことなどから、一時的に0%近傍まで低下した(図表39(2))。その後は、実体経済が緩やかに成長する中で、潜在成長率は幾分持ち直している。見通し期間中の潜在成長率については、生産関数アプローチに基づく一定の手法で推計すると、期間平均では「0%台半ば」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて資本蓄積などに伴い徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当の幅をもってみる必要がある。』
という記述は前回展望レポートと同じでして、ここの部分に変化はなく、本文の記述に関しても4月と同様です。
『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、マーケットの指標や各種アンケート調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられる。』
はあそうですか(棒)。
『債券市場関係者に対するサーベイ調査をみると、昨年末以降、予想物価上昇率は高まりつつある。』
昨年末以降と来たか(棒)。
『固定利付国債と物価連動国債の利回り較差から求められるブレーク・イーブン・インフレ率についても、やや長い目でみた上昇傾向を維持している21
22。』
やや長い目と来たか。まあ10年物国のBEIは1%程度なんですけどね!!
で、さすがに脚注22の所で『22 ブレーク・イーブン・インフレ率や一部のサーベイ指標には、消費税率引き上げの影響が含まれていることにも注意する必要がある。』とありまして、まあそこまで図々しくはないですねというのはニコリとします(^^)。
『エコノミストに対するサーベイ調査をみても、中長期の予想物価上昇率は上昇している(図表40)。また、各種サーベイ調査から家計の見方をみても、短中期の予想物価上昇率は上昇している(図表41)。』
とまあここまでは良いとしまして。
『先行きについても、「量的・質的金融緩和」のもとで中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。景気の持続的な改善が続くとの見通しのもとで、実際の物価上昇率が高まっていくとみられることも、こうした動きに寄与していくと考えられる。』
前半の所は同じなのですが、実際の物価上昇率が高まったことにより後半の分が加わったのがお洒落ではあります。ただまあ足元の物価上昇はどう見てもコストプッシュだろと思うのですけれども、一応日銀の説明では幅広い拡大の中に個人消費などの強さを背景にしているとかディマンドプル的な意味合いも込めようとしていたり、後半の文の頭に「景気の持続的な改善が続くとの見通しのもとで」とかこうディマンドプルインフレみたいなフレーバーを入れているのが味わいがあるというものです。
ただまあこの辺も微妙なのですが、とにかくコストプッシュでも良いから物価が実際に上昇してしまえば期待の転換が進みやすくなるだろという論点も思いっきりある訳でして、(それが多くの国民にとって幸福なのかどうかは知らんですが)達観してコストプッシュでもいいじゃない物価が上がれば物価上昇期待が上がるかも知れないよというテイストもこの中には入っているように見えます(つーか最近黒田総裁の説明が段々そんなテイストを示しているように見えるのだが)次第で、ここに入っている文言の味わいがまたこう滋味深いものがあって茶の湯の世界のような表現ではございます。
ということでまあ今回の展望レポートは色々と味わいがある部分があるのですが、味わいの中でも白眉の一つがこの部分、ということで終わりにするとちょっとアレですので後を少々引用しますね。
なお、念のため申し上げるとこの表現は「基本的見解」の部分でも記載されていますので、基本的見解を見た段階でも何か一応申し上げた気はしますが、コストプッシュとディマンドプルの区別とかその辺りに関するイメージをあまりその時に感じていなかったような気がするので(記憶が怪しい^^)、改めて白眉ということでご紹介の巻なのでありまする。
第3の要因は輸入物価ですがこれはさすがに前回対比見通しが下がっています。
『第3に、輸入物価は、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、一頃に比べ上昇している(図表42)。先行きについては、世界経済の持ち直しに沿って、総じてごく緩やかな上昇傾向をたどると考えられる。』
・フィリップスカーブがどうのこうの
でまあ物価見通しの方は飛ばしまして最後の部分。
『こうした物価見通しをマクロ的な需給バランスとの関係(いわゆるフィリップス曲線)で整理すると(図表43)、消費者物価の前年比は需給バランスの改善に伴い過去の正の相関に沿って上昇していくとともに、予想物価上昇率の高まりからフィリップス曲線自体も徐々にシフトアップしていく姿を想定している。』
徐々にシフトアップってのがこれ微妙で「期待の転換」だったら一気にシフトアップするんじゃないのかねとは思いますが、この辺り気合系とエコノミスト系の間で違うのかもしれませんね。
『この点、刈込平均値や上昇・下落品目比率など消費者物価の基調的な変動を捉える指標の動きをみると(図表44)、前回の景気回復局面(2003〜2007年頃)では、需給ギャップ対比で抑制的な動きとなっていたが、最近はそうした乖離はみられていない。当時は、労働派遣の規制緩和や輸入品を活用した低価格戦略など、マクロの需給とは別の「負の価格ショック」が物価の押し下げ要因となっていたと考えられる。一方、今次局面では、新興国における賃金上昇や為替相場の動向、労働規制面の動き、さらには企業の価格設定行動の変化等を踏まえ、当時のような「負の価格ショック」は発生しないと想定している。』
ほっほー、ってここをゴリゴリやるとまた一席できそうな気がするがめんどいのでパス。
『ただし、わが国経済では15年近くにわたってデフレ状態が続いてきただけに、@マクロ的な需給バランスに対する物価の感応度(フィリップス曲線の傾き)、A企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向(フィリップス曲線のシフトアップの程度)ともに不確実性は大きく、消費者物価が想定通り上昇していくか十分注意してみていく必要がある。』
『この間、物価と名目賃金の関係を確認しておくと(図表45)、消費者物価と時間当たり賃金との間には、長い目でみれば概ね同時に変動するといった安定的な関係が確認される。上記の見通しでは、先行き、労働需給の引き締まりや人々の予想物価上昇率の上昇を反映して時間当たり賃金が緩やかに上昇していく中で、消費者物価も徐々に上昇率を高めていく姿を想定している。』
前回はここで労働生産性の動向によって物価と名目賃金の関係が異なってくるという解説があったのですが、その部分がバッサリ削除されているのが少々気にはなるのですが何でじゃろ????
ということで2週間も引っ張ってどうもすいませんでした。
2013/11/19
お題「市場雑談少々/展望レポートの経済部分では雇用所得環境の改善の話が結構強めに見えます」
木曜にQUICKでコメントが出ていてキタコレと一部の好事家の話題を攫っておりましたが、金曜相場と週末の米国株式市場を見て満を持して大先生お告げ投下。
http://www.musha.co.jp/5083
2013年11月18日ストラテジーブレティン (108号)
日本株、前例なき3つのプラスアルファ上昇要因
〜始まった、長期上昇相場「第二の波」〜
何かもうツッコミどころが凄いのですが、「レバレッジ50倍で日本株を買うと1年の配当収入で投資元本回収」ってあのすいませんそんなにレバ掛けてMTM損益でのロスカットルールも無く1年間持っていて良いってどんな投資家ですか信用49階建てですよ大先生の所ではそういうポジション取れるんですかという所ですな(ゲス顔)。
・・・・・・・・・先週金曜の浜田センセイ仰せの株が上がってアベノミクス大勝利宣言といい、ここまで戻った所でのムーシャ先生の砲撃といい頼むからフラグを立てないで頂きたいと存じますのですがががが。
○金曜の訂正ですすいませんすいません
金曜の訂正が有る事について金曜に読者様(しかも数名の方から速攻で・・・・・・・・)指摘を賜りましたというのに金月処理によって脳味噌がリセットされるという鳥頭脳と化しているこのアタクシは昨日訂正の話をするのを忘れておりました(過去ログの方は訂正しています)。
えーっとですね、何を訂正するかと申しますと、宮尾さんの会見ネタに絡んでこの調子だと次回展望レポート夢の5対4キタコレとかいう話を書きまして、「そんなに際どい票決って新法以来無かったですよね」とか書いたのが大間違いのコンコンチキという話です(超大汗)。
では、素敵な票決があったのはいつかと言いますとこれです。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2008/k081031.pdf
2008 年10月31日 日本銀行 金融政策の変更等について
リーマンショック後の混乱に対応して利下げをした際に、執行部案は50→30への利下げで、審議委員5名(日銀総裁人事のゴタゴタの余波で1名欠員)のうち3名(須田さん、中村さん、亀崎さん)が執行部案の下げ幅が中途半端で積極性に欠けるというのが主な理由で50→25への利下げを主張して反対、1名(水野さん)はそもそも実施すべきはGCレポ市場やCP市場での金利上昇という資金の目詰まり対策で利下げしたからオープン市場の金詰りが解消する訳では無いのでプライオリティー間違っとるという理由で利下げ反対、ということで、執行部案が4対4のスプリットとなるという凄まじくお洒落な事案があったのをすっかり忘却しておりましたです(超大汗)。
ちなみにこういう場合は議長決定となりますので結局執行部案が通過したのですけれども、そういやこういうのがあったのですがすっかり忘れるとはいただけませんな、というより月曜に訂正書こうと思ったのに書くのをすっかり忘れた方が誠に遺憾に存じますが(自爆)。
○市場雑談ネタ少々
・業態別当座預金残高ェ・・・・・・・・・・・
積み期間終了しましたので毎度の業態別当座預金残高が公表されました。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/jcabs.pdf
・・・・・・・・・10月の月平ベースの超過準備(当座預金でも良いが)残高の増減をみると、思いっきり「都市銀行」と「その他準備預金制度適用先」が増えているのですが、あとは「その他の当座預金取引先」がやや増えているだけで残りの業態全部前月比の月中平残(といってもこの場合の月は積み期間になるので10/16〜11/15ですので念の為)が縮小しておりますな。
まあその前の月が国債償還月になりますので、自然体でやっていると減るとかそういう面はありますからこの単月の動きだけでどうのこうのという訳でも無いのですが、ただまあ日銀がこれからも当座預金残高を積み上げて行かないといけない(ざっくり年末まではあと少しですけど来年年末に向けてMB60から70兆円拡大するのだからどう少なく見積もってもここから60兆円は増えるでしょ)となりますと、結局の所今回超過準備拡大をしている大どころが「積み上げに協力」みたいな動きをしてくれないと厳しいぞなもしという所でございます罠とは思われますがどうなんでしょうかね。
・CP買入
昨日のCP買入結果(めんどいので他のは割愛)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba131118.htm
CP等買入 8,345 3,956 0.058 0.067 42.7
前回(11/7)のCP買入結果(これまたCP部分だけ)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba131107.htm
CP等買入 5,954 4,244 0.042 0.079 34.0
前回(今月の買入分)から年末残高帳尻モードに入った為に(かどうか知らんが)1回の買入オファー額が4500億円に拡大したCP買入ですが、拡大の初回は札も少なくて全力で足切りが流れて0.042%まで入るというどこの有担コールだよという利回りになってしまいましたが、今回は札は増えた分足切りは0.058%まで上昇しましたが、平均買入利回りが0.067%と前回から1.2bpも金利低下するというアチャーな結果。
そらまあCP発行金利も低下します罠という所で、日銀のCP買入に入れられそうな銘柄の発行利回りが(まあ単純比較するのはイクナイのですが)社債のセカンダリーの利回りと整合性が付かなくなっているように見えますが、まあ1年以内の社債はオペに入らないですからとか、毎度お馴染みの市場分断攻撃になっているのですけどね。まあ先日も申し上げましたが別にCP買入すんなとは申しませんが、別に日銀がCP買っているからと言ってCPの発行が増えて企業の資金需要が喚起されているという訳でもなく、元々そこのスプレッドは十分に低いのですからそのスプレッドが縮小して何か企業金融的に物凄い効果があるのかというとそれは少々アレな気がするんですけどねえ。
つーてもまあ今回の金融政策は惜しくも異次元政策なので、テクニカルにどうのこうのというのはあっても基本的な枠組みには手を付けないのが「必要な政策を全部投入」という事ですので、まあ普通にCP発行減ってきているよねという状況でも買入は続きますぞなもしという話っすね。いやはや。
・TKRRとな
だいたいここにあるレポレートの翌日物T/N取引というのを見るあるよろし。
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
今月に入ってからのトモネGCレートの推移ですが、0.097→0.090→0.069→0.080→0.076→0.064→0.050→0.046→0.091→0.100→0.098となっておりまして、率的な意味で言えば今や円モノの金利市場で一番動いているんじゃネーカ位の勢いになっております。まあ今月に関しましては日銀の保有短国の償還が多くあって、償還の分は結局日銀が買入を行うので最終的にはツーペー(というか残高は積み上げ方向なので基本拡大)となるのですが、償還時点で日銀が持っている分というのは市中投資家の持ちになっていない分になるのでつまりは市中投資家の償還ロールニーズが少なくなるという話になる訳で、その為に日銀の保有分のデコボコとか、発行と買入の足ずれとかそういう要因で短国の需給が瞬間的にぶれるのが影響してるんですかね良く判らんけど。
あとはまあ中長期にしても買入効果でゼニ余りんぐ状態になって在庫ファイナンスニーズが限界的になりつつあるという状態なだけに、これまた入札や投資家のちょっとした売買で在庫水準が拡大する時の市場金利に与えるインパクトがでかくなるという話なんですかね。つまり日銀の買入とかが少なくてそんなに超過準備がアホほど積み上がっていないのであれば、当然ながら国債市場における在庫ファイナンスニーズが底溜まりとして相当量あるので、売買やら入札やらでの業者の在庫変動によるニーズの変化が市場全体に与えるインパクトが相対的に小さかったのが、直近のように基本が超越超過準備状態になると、在庫ファイナンスの変動が全体に与える影響が相対的に大きくなる、ということですか良くわかりません><;
なお、今週は昨日の1年に続きまして今日の2M、明日(木曜はMPM2日目なので入札が無い)の3Mと短国入札3連発となっておりますのでさてどうなるのやら。
○展望レポート全文ネタの続きを忘れていましたので投下(汗)
あと少々である(汗)。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1310b.pdf
・見通しの需要項目別展開は雇用所得環境部分がほほーという感じです
本文26ページ(ファイルの28枚目)の『(雇用・所得環境)』から。
『雇用・所得環境をみると、労働需給面では、底堅い内需を受けて非製造業の労働需要が増加を続けていることに加え、輸出や鉱工業生産の持ち直しを背景に製造業にも漸く前向きの動きがみられ始めていることから、全体でも緩やかながら着実な改善が続いている(前掲図表9)。』
という現状認識を示しておりまして、その説明はこうなっています。
『労働投入量(雇用者数×総労働時間)も、雇用者数の伸びを主因に、このところ緩やかに増加している(図表36(1))。この間、労働力人口比率の動きをみると(図表36(2))、高齢化に伴う人口動態の変動が趨勢的な押し下げ要因として働いているが、このところ女性や高齢者の労働参加の増加によって幾分上昇するなど、これまでの低下トレンドには歯止めがかかっている。非労働力人口の中で、「就業を希望し、かつすぐに仕事につける状態にあるが、適当な仕事がないため求職活動を行っていない人(求職意欲喪失者)」の割合が歴史的な低水準となるなど(図表36(3))、潜在的な労働供給余力が低下しているとみられるなか、経済活動の高まりに伴って企業側の雇用不足感が高まるもとで(前掲図表9(1))、女性や高齢者の労働力活用が一段と進んでいると考えられる。』
ほほう。
『こうした労働需給の改善は、名目賃金にも影響し始めている。』
(キリッ)って感じですが、この辺の(キリッ)振りは前回展望レポートでの雇用所得環境の認識部分からかなーり(キリッ)成分が高まっているなあという書き振りになっていますが、どこを比較するとどうとは説明しにくいので前回のを全体として読んで確認してちょ。
『すなわち、一般労働者の一人当たり名目賃金の前年比は、所定外賃金の増加や夏季賞与の3年振りのプラス転化に伴い、小幅のプラスとなってきており、パートの時間当たり名目賃金もごく緩やかに前年比プラス幅を拡大している(図表37(2))。』
とまあここまでは威勢がヨロシのですが。
『そうしたなかで、労働者全体でみた一人当たりの所定内給与が未だ前年比マイナスとなっている点については、パート比率の趨勢的な上昇に加え、最近では、前述した通り女性や高齢者の一層の活用に伴い、パートの労働時間がさらに短時間化していることも作用している(図表37(1))。』
『こうした平均賃金の動きは、前述した労働需給の改善や雇用者数の増加と同時並行的に進んでいる現象であり、雇用者数と一人当たり賃金を乗じた雇用者所得をみれば、前年比でプラスに転じてきているなど(前掲図表9(4))、所得環境は全体として改善しつつある。』
ということで、所定内給与がマイナス継続となっている件については労働市場の需給改善と構造的な問題の両方から説明できるけど全体としてはポジティブである、と結局ポジティブで締めているのが今回の現状認識部分の強めなところです。
先行きの見通しの表現では基本的に4月の展望レポートと同じとなっていまして、一方で現状の表現が結構強気感が強くなりましたねという事ですから4月はどんだけ強気見通し出していたんですかねという感じです。念の為引用。
『先行きについては、労働需給の改善傾向が続き、失業率は引き続き緩やかな低下傾向をたどっていくと見込まれる(前掲図表9(3))18。そうしたもとで、名目賃金にも、次第に上昇圧力がかかっていくと考えられる(図表37(3))。とりわけ見通し期間の後半にかけては、労働需給の引き締まりの影響に加え、予想物価上昇率の高まりもあって、ベースアップも含めた所定内給与の上昇を伴いながら、賃金の上昇傾向がはっきりしてくると想定している。』
実はここ読んで「おーつえーわー」と思って前回と比較しようとしたら実は前回もこういう見通しを出していたのを見て(@∀@)となったアタクシです。
『こうしたもとで、雇用者所得は、見通し期間中、徐々に伸びを高めていくと考えられる。労働分配率については(図表37(4))、先行き景気回復が続くもとで、緩やかな低下基調をたどるものの、見通し期間後半にかけては、前回の景気拡大局面の後半に当たる2004〜2007年の平均をやや上回る水準で下げ止まっていくと想定している19。』
でもってこの脚注19ですが。
『19 これは、規制緩和もあって派遣労働者を中心とした非正規雇用が大きく拡大し、そのことが賃金の下方圧力として作用していた2004〜2007年頃と異なり、現下の局面では、こうした面からの賃下げ圧力は幾分弱まっていると考えているためである。』
ほほうという感じですが、ちなみにこの指摘は前回の展望レポートでも入っております。
・雇用改善の認識は個人消費見通しにも反映する一方で資産効果をしらっと削除
その次が『(家計の支出行動)』でしてね。
『個人消費については、引き続き底堅く推移している。その背景には、団塊の世代をはじめとした高齢者層の活発な消費行動が下支え要因として底流に作用するもとで、年初以来、消費者マインドの改善、株価上昇や為替相場動向を反映した金融資産の価値増加による資産効果が(図表38(4))、個人消費の押し上げに働いてきたことがあると考えられる。』
さいですな。
『最近は、年初来の押し上げ効果が持続しつつも徐々に緩やかとなる一方で、個人消費の底堅さを支える要因として、前述した雇用・所得環境の改善の重要性が増しつつある。』
キタコレ(・∀・)という所で。
で、先行きの個人消費は消費税増税の影響を受けながらも増加しますよという話が展開されているのですが、その要因として示しているのが以下のようになっています。
『こうした見通しの背後にあるメカニズムとして、第1に、高齢者の消費が、需要側(団塊世代の高い消費意欲)と供給側(企業による高齢者需要の掘り起こし)双方の要因から、持続的に消費全体を下支えしていくことが考えられる(図表38(3))。』
『第2に、前述のとおり、雇用者所得の改善が次第にはっきりしていくことが、勤労者世帯を中心に消費を後押ししていくと考えられる。ただし、名目可処分所得の伸びは税や社会保障の負担増加もあって緩やかなものにとどまるうえ、消費税率引き上げや電力値上げなどが実質所得を抑制する方向に働くと予想される(図表38(1))。』
へえへえそうだっかという所ですが、前回の展望レポートではこの第2が実は第3になっていまして、じゃあ第2には何があったかと言いますと小見出しでも書いた通り「株価上昇などの資産効果」となっていまして、今回しらっと「資産効果が消費を支える」という部分を削除しています。まあ元々引用部分の最初にあったように資産効果が緩やかにという認識をしめしていますので、そういう意味ではしらっとという程でも無いのかもしれませんが、当初QQE投下時点では実質金利の低下からの政策効果として資産効果やらポートフォリオリバランスやらを強調していた(まあ実際に株が上がったからというのがデカイ気がしますがががが)のと比較するとだいぶ違ってきているなあとは思うのでありました。
・・・・・・・・とここまでやった所で時間がががが(汗)。物価の話はまたいずれするかもしれませんがしなさそうな気がします。まーこの前の総裁講演で結構出ちゃいましたからね。
2013/11/18
お題「コウモリ派のアトランタ連銀ロックハート総裁講演からTaperingの反応関数が読めない件について/その他」
えーっと琉球新報の釣りで・・・・・・・すよね???
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-215377-storytopic-62.html
文科省の教科書改革 「愛国心」なしは不合格
2013年11月16日
『全教科で愛国心を養うなど教育基本法の趣旨を生かすため、検定申請時に教科書会社が編集方針をまとめて文科省に提出する書類に、どの程度、教基法の趣旨を反映しているかも明示させることを明らかにした。』(上記URLより)
全教科で愛国心ってあの数学とか化学とかで愛国心って何ですかと申しますか、生物学ではルイセンコという事案がですなあ・・・・・・・・・
#それはそれとしてモーサテは連日日銀追加緩和期待を煽りますなあ
○消費税増税で追加緩和というのは元々の黒田さんの話からは無いと思うのですが・・・・・・
金曜は久々に浜田先生の講演ヘッドラインが。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL150X0_V11C13A1000000/
浜田氏「日銀総裁は責任もって金融政策を」 消費税で敗戦の弁
2013/11/15 16:48
『浜田宏一内閣官房参与(米エール大名誉教授)は15日午後の講演で「日銀の黒田(東彦)総裁が積極的に消費税を上げろと言ったのだから、責任とって金融政策はちゃんとやってもらわなければ困る」と述べた。』(上記URLより)
えーっとですね、そもそもデフレ脱却に向けての政府と日銀の共同声明では、デフレ脱却の為に日銀は積極的な金融緩和を行うとは書いてありますが、政府に関しても中長期的な財政健全化の努力なども書いてありますので、別に黒田さんが音頭取ってやれと言った話じゃないですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130206a2.pdf
『また、政府は、日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する』(上記共同声明の3番より)
てかそもそも消費税増税は元々決定していた話なので、それを前提にして「必要な手段は全て投入した」というのが異次元緩和でしたので、そこで元々のスケジュール通りに実施された消費税増税を材料に追加緩和を実施しちゃいますと「異次元緩和」が普通の「戦力の逐次投入」という従来の緩和になってしまいまして、異次元政策でインフレ期待のシフトアップという話が崩れてしまうのですが・・・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE9AE06J20131115?sp=true
黒田日銀の政策発動期待、消費増税に大きな心配ない=浜田内閣官房参与
2013年 11月 15日 18:30 JST
講演内容のリファーはロイターの方が良いのですが、ヘッドラインの打ち方がどう見ても恣意的でして、他の所では見た所消費税増税反対というトーンになってましたのですがそれは兎も角として。
『浜田氏は大胆な金融緩和を主張するリフレ派は、家計などが将来について合理的な期待を形成するとの学派に影響を受けていると指摘。インフレ期待など「人々の期待がそのまま実現する社会は存在しない」とし、「日本銀行の物価目標2%が達成されなくても、景気がよくなればよい」との見解を示した。』(上記ロイター記事URLより)
んーっとですね、どうも講演の一部を切り取って報道されているような気がせんでも無いのですが、まだ物価が1%にも行っていないし異次元緩和スタートして半年少々しか経っていないのに、この時点で「2%行かなくても景気が良ければよい」という話をしちゃうのは(つーか浜田先生異次元緩和投入直後からそんな話をしていましたけど)、そらまあ物価安定は国民厚生の向上の為に目指しているのですから仰ることはその通りなのですが、現状2%の物価安定目標を実施しようとすると期待の転換を伴ってフィリップスカーブがシフトアップしないとそう簡単には達成できないのですから、「期待はそのまま実現しない」とか「2%行かなくても景気が良ければ」とかはそれを言っちゃあおしマイケルでごじゃりますがな。
てかですな、「2%行かなくても景気が良くなれば」というのを容認しちゃうと結局の所金融政策のマンデートとして物価目標を明確にして恣意的な金融政策を防ぎましょうねという話をしていたのとも矛盾を抱えることになりますんで、折角日銀が期待の転換でインフレ目標達成という話で進んでいるのに梯子を外す(あるいは後ろから銃撃とか)ような印象を与えるヘッドラインを打たれるような表現(実際に全文が有る訳では無いのでそう言っておく)をするのはうーんこれはという所ですな。
しかしまあ何ですな、
『昨年の衆院解散以来のアベノミクスについて、今年株価が最も上がった国が日本であることを挙げ「アベノミクスは成功しつつある」と強調。』(上記ロイター記事URLより)
株価については上昇すると成功派の皆さんが強調、下落すると失敗派の皆さんがそれ見たことかと言い出すのは平常運転の光景ですなあ。
○ロックハート総裁講演:これはまた「Taperingの反応関数」がワカランチ会長
この前ちょっとだけネタにしましたが。
http://www.frbatlanta.org/news/speeches/131112_speech_lockhart.cfm
http://www.frbatlanta.org/documents/news/speeches/131112_speech_lockhart.pdf
Monetary Policy and the Economic Outlook
Dennis Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta
まあ地区連銀総裁講演についてはタカとかハトとか分かりやすい人の場合は題名見て読むのを後回しにしちゃったりするのですが(それで重要な論点を見落とす事があるので良い子はちゃんと読まないといけませんが何せアタクシの語学力ががががが)、コウモリの人に関してはさてどういう話をしてるやらと思いながら読むのですが、アトランタの先生は多分コウモリ分類になる(微妙だが)と思うので先に拝読した訳ですなこれがまた。
でまあ読んだ訳ですが(長くないのでそんなに読みにくくは無い)とりあえず読んでいて分かったのは、(1)景気には基本的に慎重派で下振れリスクをやたら強調(自分でも「cautiously
optimistic」と言っている)、(2)雇用、物価に対する見方は厳しくて「低金利政策」については相当期間の長期に渡って実施する必要を強調、とまあここまではハト的なのですが、どうもTaperingの話になると急に何を言いたいんだかワカランチ会長になる、という代物でして、だいたいコウモリ派の地区連銀総裁がこういう話をするから益々Taperingに関して訳分からんぞなもしとなるんだなあと思いました。
いやあのイエレン先生のTestimonyについても質疑応答は兎も角地の文ってそんなに言う程ハト派か(まあタカでは無いのは確かだが)という気もしますし、中立派がこの調子だとやはり方向性としては「量で勝負のQE政策から金利で勝負のフォワードガイダンス強化に転換」して「量じゃなくて金利で勝負する分だけ政策の継続期間が長くなる」という話がやっぱりメインなんじゃネーノという気がするのですがどうでしょうかね。
・景気に関する話ではハト色が強い
でまあ前半の方ですがね。
『For the sake of clarity, I'm going to lay out my arguments right up front.
Here are my key arguments: the Fed is pursuing two objectives-full employment
and low and stable inflation.』
でまあそのデュアルマンデートに対して・・・・・・・・
『Currently, the economy is growing slowly. A lot of progress has been
made since the end of the recession on employment, but there is a way to
go before we should be satisfied. Inflation is too low. It is well below
the FOMC's goal of 2 percent.』
ということで、ここで思いっきり「雇用は改善したが満足するべき水準にはまだ道がある」「インフレは低すぎる」とまあキタコレな話をしています。
『My baseline outlook calls for an improved economy in 2014-growing a bit
faster than it has been. But that may not happen. There is a nontrivial
chance that 2014 will look like 2013. Next year's economic outcomes will
swing importantly on fiscal drag and consumer spending. Even with better
growth, in all likelihood, at year-end 2014, inflation will still be too
low and employment levels will be well short of the goal.』
後の方でさっきの「cautiously optimistic」というのがありますが、フィスカルドラッグと個人消費の先行き次第ではそのcautiously
optimisticがoptimisticの方じゃなくてcautiousの方になり得るという認識を示していて、さらに後の方ではこのフィスカルドラッグに関して相当問題視しているというのが出てきますので、まあその見通しがあいまいなうちは政策動かすという事にはならんでしょうなロックハート総裁的にはというのは把握した。
『Therefore, monetary policy overall should remain very accommodative for
quite some time. The mix of tools we use to provide ongoing monetary stimulus
may change, but any changes will not represent a fundamental shift of policy.』
一方でほえ?というのがこの下りでして、「緩和政策スタンスは変わらないが、政策ツールの構成については変化し得る」というのはどう見てもTapering有りうべしです本当にありがとうございましたという話になる訳ですが、これまた後の方で説明があるのですがどうもそういう事のようですな。
・インフレは低すぎるのだがディスインフレのサインは乏しいとな
ちょっと飛ばしてインフレの部分ですけど。
『My interpretation is that inflation has been reasonably stable, but at
a low level-well below the desired level of 2 percent. It's not falling,
but it's also not showing much tendency to move toward our targeted goal.』
安定しているが水準は低い、低下を続けている訳ではないがゴールに戻る傾向も見られないと。
『I don't think the inflation situation is that alarming yet. There are
few signs of disinflation (the slowing of the rise of prices), let alone
outright deflation (that is, broadly based falling prices). And inflation
expectations of the public remain stable. But I would like to see the inflation
rate rise to around 2 percent and stay there.』
つーことですので、まあ追加でQEがとかそういう話では無いという事なんでしょうかね。
・経済見通しに関しては財政協議に強い懸念
まず基本的な見通し。
『Now let's look ahead to 2014. I'm assuming stronger economic activity
next year-a growth rate in the range of 2 1/2 to 3 percent. Even with the
preliminary third-quarter GDP estimate of 2.8 percent, full-year 2013 is
likely to come in closer to 2 percent. To achieve a faster pace of growth,
it's my opinion that we'll need to see two developments. First, we'll need
a pickup in consumer activity and, second, we'll need a fall-off of intensity
of fiscal drag.』
さっきも言ってた件。
『The fiscal drag weighing on the economy has a number of elements. They
include the ongoing effects of the tax increases at the beginning of this
year, the effects of the sequester, any lingering effects of the recent
government shutdown, and the effects of fiscal policy uncertainty on business
investment and consumer spending.』
フィスカルドラッグが経済に与える問題が色々あるとな。
『As regards the shutdown, we at the Atlanta Fed expect the direct impact
of the shutdown to be relatively small and temporary. We expect to lose
half a percent of GDP growth in the fourth quarter, with a similar amount
added back, in all probability, in the first quarter of 2014.』
政府閉鎖に関しては特段の大きな問題は無いという認識ですが・・・・・・・・・
『My greater concern relates to fiscal policy uncertainty because it can
affect consumer and business confidence.』
キタコレ。
『I've recently heard opinions among contacts in the region to the effect
that consumer confidence took a hit with the debt ceiling drama and the
shutdown. In fact, consumer confidence did fall sharply between August
and October this year. Whether these effects are long-lasting remains to
be seen.』
フィスカルドラッグはコンフィデンスに悪影響を与え、現にこの8月から10月に掛けて消費者信頼感がどどーんと落ちておりますそなという事で、財政協議に関する懸念が相当大きいというのが把握した。
『To sum up, I remain cautiously optimistic that growth will pick up next
year. This is my baseline outlook. But, at this juncture, I can't fully
discount the possibility that the expected economic improvement won't materialize
and that we'll see a replay of the weak growth of the past three years.
This possibility is an influence on my thinking about the appropriate direction
of monetary policy, the topic I'll turn to now.』
でまあcautiously optimisticということですな。
・金融政策に関しては「フォワードガイダンスと資産買入は補完的だが別のモノ」キタコレ
『Monetary policy is highly accommodative-as central bankers say. The FOMC
is currently using two tools to maintain the desired degree of monetary
accommodation-the policy interest rate and bond purchases. Importantly,
the FOMC has stated that it intends to keep the short-term policy rate
low at least until the unemployment rate falls below 6 1/2 percent. This
"forward guidance" is meant to convey a sense of how long short-term
interest rates will stay near current levels.』
とまあここはマクラのようなもんですので次。
『There is some confusion about how the Fed's forward guidance and asset
purchase program relate to each other. I will give you my view.』
キタコレ。
『In the toolkit the FOMC has at its disposal, there is a sense in which
asset purchases and low policy rates are complementary.』
資産買入と低金利政策は補完的という考え方がありますと。
『Asset purchases and forward guidance on interest rates are complements
in the sense that they are both designed to put downward pressure on longer-term
interest rates.』
どちらもロンガータームの金利を下げるためのデザインという意味では補完的とな。
『Asset purchases obviously exert downward pressure through the act of
buying in specific maturity sectors of the Treasury and mortgage-backed
securities market. Forward guidance on the short-term policy rate (the
fed funds rate) influences market beliefs about the path of policy, and
that too influences longer rates. Lower long-term rates encourage spending
on business investment and consumer activity in interest-rate-sensitive
sectors like autos and housing.』
資産買入は特定の資産にフォーカスしており、フォワードガイダンスは政策金利の先行きへの見方に影響を与えることによってより長期の金利に影響を及ぼすとまあこの辺は皆さんご案内の通りの説明。
『But there is also a sense in which these tools are substitutes.』
ここからキタコレになるのですが、これらのツールキットは代用可能という見方もありますぞなもしとな。
『By substitutes I mean that guidance pointing to a sustained low policy
rate and asset purchases are discrete tools that can be deployed independently
or in varying combinations.』
資産買入はフォワードガイダンスとは独立した政策という見方キタコレ。
『They can be thought of as a particular policy tool mix chosen to fit
the circumstances at this particular phase of the recovery.』
回復の過程に応じて状況によってツールのミックスは変わり得るキタコレ。
『In my view, the use of these two tools has been effective in combination
over the last many months. Both have provided stimulus. I think of asset
purchases as supplemental stimulus on top of low short-term interest rates?current
and prospective.』
ということで、フォワードガイダンス(による低金利政策)は政策のトップに今後も置くが、資産買入に関しては低金利政策の補足的なものであり、これまでの長い期間はこの組み合わせが効果があったが、それはそれということを仰せのようです。
『Going forward, it may be appropriate to adjust the policy tool mix. That
will depend on circumstances and the economic diagnosis of the moment.』
つまりこういう事でして、つまりQE3長期化ヒャッハーとあまり喜んでいると足元救われるんちゃいますかという気がする、つーかそもそも米国長期金利もその辺はさすがに警戒している値動きですかねこりゃ。
・最後にとどめがありまして・・・・・・・・・・
最終2パラがまとめです。
『I want to close where I began and repeat the basic points of my remarks
today. The economy is growing at a slow pace. Even with that slow growth,
substantial progress has been made on the employment front, but there is
more to be done. At the same time, inflation is too low, and that carries
some risk of a weakening economy.』
とまあここはハトです。
『I expect things to pick up in 2014, but it's possible the economy will
stay on its current track and we'll see no acceleration. The right monetary
policy for these circumstances is continued strong stimulus.』
さらにここもハトですが、この最終パラグラフ最後の文ですけど・・・・・・・・
『That is not to say, however, that the mix of policy tools needs to or will stay the
same.』(ボールドはワタクシが勝手にしたのではありません)
ちなみにこのnotなんですけど、地の文章で思いっきりここだけ太字(PDFだとちと分かりにくいけどHTMLの方だと良く判る)になっているのがチャーミングでして、QE3継続ヒャッハーというのには全力で五寸釘を指しているという所がコウモリ派の見解のようです。
・でもTaperingの政策反応関数が判らん
つーことでやたらハトの割にはTaperingに関してはいかにもやりそうな勢いという謎講演なのですが、じゃあそのTaperingをどう判断するかという部分については先ほど引用した金融政策の説明部分(念の為当該コーナーは全部引用しています)ではご覧のとおりで何の説明も無いというのが実にチャーミングでして、一方で最初の方に戻りますとロックハート先生こう話しているんですよね。
『The content of our public communication includes assessments of economic
conditions, the outlook for the economy, risks to the outlook, and, importantly,
the framework for making a future policy decision. Since policy must respond
to evolving conditions and developments, the public and the markets are
understandably interested in what is often called the "reaction function"
of the Committee.』
でまあ低金利政策が重要という話はよーーーーく分かったのですが、Taperに関する判断材料がさっぱりワカランチ会長のまま終了するというコウモリ派先生の講演でありまして、これはつまりやってる中の人たちの間でも混乱があるんだろうなあと妄想するのでありました。
2013/11/15
お題「宮尾審議委員会見を読みつつコミュニケーションポリシーとか来年の展望レポートとかに思いを馳せるのだ」
ふむ、まあ後で色々と確認してみます。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MW9FTR6S973901.html
イエレン氏:力強い景気回復の達成に向け全力を尽くす−証言
更新日時: 2013/11/15 03:15 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MW9ODY6VDKI801.html
イエレン氏:超過準備の預金金利引き下げ検討は可能
更新日時: 2013/11/15 04:20 JST
○宮尾審議委員の会見ですがこれは野党審議委員への道ですわという憶測ががががが
つーことで宮尾さんの会見。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1311c.pdf
・そらそういう質問が出るわな
実質最初となる2番目の質問(最初の質問は必ず「今日の懇談会どんな感じでしたか」ですので)はそらそういう質問が出るわなという物件。
『(問) 本日の講演の中で、「下振れリスクを意識している」とコメントされた点について伺います。先日の展望レポートでは、「リスクは上下にバランスしている」という評価があり、総裁の記者会見では、1
人の委員が下振れリスクを心配しているとか、2 人の委員が2%達成は難しいと言っているということをおっしゃっていました。それからあまり時間がたっていませんが、今回の講演で「下振れリスクを意識している」と言われた理由はどういうことか、また、前回の展望レポートで宮尾委員がなぜ下振れリスクを重視しているということを言われなかったのか、お伺いします。』
こらまあ昨日あたくしも悪態を申し上げましたが同じ文脈でございまして、展望レポートにも決定会合にも賛成していますし、これまででも特に何らかの対案を出している訳でも無い宮尾審議委員ですので、当然ながら金懇での講演でも執行部ベースでの主張が普通に展開されるものと想定して講演テキストを見ますし、つまりは宮尾さんの説明はまあ執行部ベースの話に近い話と見なされる可能性が当然高くなる(これがそもそもから反対している木内さんや佐藤さんの講演だと「私の主張」をしてもなるほどですなという事になる訳ですから)のであります。
然るに、質問の方が仰せのように「MPM直後」のこのタイミングで「展望レポートのリスク認識と全然違う話」を「賛成している審議委員」が言い出すというのはそもそもコミュニケーションポリシー的に言えば混乱の元にしかならん訳ですな。しかも総裁会見を除くと今回展望レポート出た後の最初の講演が特段の反対をしていない宮尾さんという事ですから、これって単に宮尾さんがコミュニケーションポリシーというかQQEの「断固たる意志表明」の重要さを理解していないだけで単純にエコノミスト的な(って宮尾さんエコノミストちゃいますが)見通しを述べただけなのか、それとも賛成派の振りして後ろから銃撃を加えているのかがさっぱりワカランチ会長ではありますが、前者だったらあまりにも悲しいので後者なんですかねえという推測になる訳で。
つーか宮尾さんって今に至っても何かこうキャラ設定(^^)が出来ていなくて、執行部ベースの話をしているかと思えば急に今回みたいに変な物食ったのかという位に違う話をおっぱじめたりとか、どうもよー判らんお方でありますなという所でその辺小一時間お伺いしたいものではございますな(−−;
と、思わず質問の所で悪態が長くなりましたが宮尾さんの答えを読めばわかるかも^^;
『(答) 1 点目の、私自身のリスク評価についてですが、講演でも申し上げたように、上下双方向の不確実性がある訳ですが、私自身は、全体としてみれば、やや下振れリスクを意識しているということです。具体的なリスクとして、講演では4
点ほど挙げています。(以下その話はどうでも良いのだが講演で説明した4点を改めて説明しているが途中割愛)以上の4
点をみると、上下双方向にリスクがバランスしている項目もありますが、全体としては、やや下振れリスクを意識すべきと思っています。』
『次に、2 点目の、前回の展望レポートにおけるリスクバランスの評価との関係についてです。私自身は今申し上げたように、やや下振れリスクを意識していますが、展望レポートでお示ししているのは、政策委員全体のリスクバランスに関する見通し分布チャートです。政策委員の様々な見通しがそこに集計されていますが、見通し分布チャートの散らばり具合をご覧いただくと、景気に関しては、上下にバランスしています。また、物価に関しては、2015
年度はやや下方に厚いようにも窺われますが、2014 年度は上下にバランスしており、全体として概ね上下にバランスしているという表現になっています。私自身としては、9
人全員のリスクバランスの表現としては、展望レポートの表現で違和感はないということです。』
・・・・・・・・うーむ。何ちゅうかこのQQEで断固たる日銀の物価目標達成への意志を示すという点への顧慮が無いというか(昨日悪態つきましたように講演で「フィリップスカーブが上方シフトするかどうかがポイントだと思います」とか他人事満載の言い方をする時点でそれは把握しましたけれども)というのもありますが、「いやそう思うなら具体的に票決行動などで示してよ」という問いに対する答えになっていないのが残念というか無頓着というか。
つまりですな、白川総裁時代の「包括緩和」と今回の「質的・量的緩和」の違いっていうのは物理的に量がすげえええとかいうのも勿論ありますが、ベースに「(無理繰りであっても)期待に直接働きかけて期待の転換を行う」というのが前面に強烈に出ているのかどうかという違いがあるのですが、どうもこう宮尾さんの説明って従来の白川総裁的包括緩和によるグラデュアリズム的な枠組みに留まっているように見えるんですよねえと思う所。
でまあそれを宮尾さんが意識して「いややっぱり期待に直接転換とか無茶だからそれよりも徐々に積み上げて行けば良いじゃないか」という発想で今回の講演の話をしているのかというのがど〜もこの会見見ててイマイチ見えないのがアレです罠という所なんですよね。
・物価の説明を見ると腰が引けているのは分かりますな
昨日講演をネタにした時に申し上げたのを再確認する感じですけど。
『(問) 今の質問(引用者追記:直上で引用した質問のことです)とも関連しますが、2
点お聞きします。景気については、やや下振れリスクを意識しているということですが、物価については、今おっしゃったことからすると、下振れリスクは意識してないのかどうか、あるいは物価についても下振れリスクを意識されているのかどうか、これが第1
点です。(2点目はその後続の質問と共に正直意味不明なので引用割愛)』
『(答) 1 点目ですが、講演で、やや下振れリスクを意識していると申し上げたのは、経済・物価見通しに対するリスクということです。先程、経済に対してやや下振れリスクがあると申し上げましたが、当然、それが原因となって、物価に対してもやや下振れリスクがあるということです。』
キタコレ。
『一方、中長期的な予想インフレ率に関しては、本日の講演で、景気の持続的な改善期待が浸透していけば、フォワードルッキングな予想形成がより強く働き、中長期的な予想インフレ率が高まっていく、そういうメカニズムが働く可能性は相応にあると申し上げました。景気動向による下振れリスクは、物価に対しても下振れリスクになりますが、中長期の予想インフレ率に関しては、当然、上手く働かないリスクと、私が申し上げたように割としっかり働く可能性と、両方の可能性があるとみています。(以下割愛)』
ということでして、どうも実際の物価が上昇して自己実現的にインフレ期待が高まるというパスは採用しておられない(展望レポートには今回物価がプラスになったのをいい事にその旨の記述がしらっと入っておりますので念の為申し添えます^^)という訳でして、物価上昇および期待インフレの上昇パスに関しては宮尾さんやや弱気であるというのが伝わって参ります。
・追加緩和に関する質問ですが
『(問) 先程、リスク要因としていくつか挙げておられましたが、例えば、海外要因とか賃上げ動向というのは、日銀では、はっきり言ってどうにもできない部分があると思うのですが、こうしたリスクによって、例えば、予想インフレ率が思うように高まらない、そういう状況が発生したような場合は、日銀の金融政策でそれを押し上げるという対応は可能なのかという点と、その場合、具体的にどういった政策展開が考えられるのかという点について、仮定の話ですが教えて下さい。』
まあこういう質問は飛ぶ罠。
『(答) 1 点目ですが、私どもの現在のメインシナリオでは、今後、消費税増税等々下振れリスクもある中で、実体経済は、基調的には潜在成長率を上回る成長を続け、物価に関しては、2%目標に向けた道筋を順調に辿っていくとみています。その前提として、中長期的な予想インフレ率も、徐々にではありますが、立ち上がっていくという姿を考えています。今後、そういった見通しに変化が生じた場合には――例えば、中長期的な予想インフレ率が思うように立ち上がらないということも含めてですが――、かねてから明確にしているように、必要な調整を行っていくということです。従って、海外経済や賃金動向の下振れリスクについても、それによって我々の見通しに変化が生じる場合には、必要な調整を行っていくということです。』
まあそうなんですけどもうちょっと「まあそもそも行くんですよウェーハッハッハ」というような気合が欲しい所で、これはまあフォワードルッキングにプリエンティブに追加緩和クルーと盛り上げる人たちに絶好のエサ提供の巻ですよね。うんうん。
『2 点目は、その必要な調整を行う際の具体的な手段ということかと思いますが、それは、発動するその時々の経済・物価情勢あるいは市場の動向などによって変わり得るものですので、事前に申し上げるのは適切ではなく、ここではコメントを差し控えたいと思います。ただ、これはいつも申し上げていることですが、何らかの政策対応、政策判断をする場合には、予め何か特定の手段を排除するということではなく、それぞれの手段を、効果、コスト、リスクなどを総合的に勘案して、最も適切な手段を選択していきたいと思っています。』
たぶんこう丁寧に答えちゃうから気合や根性や大和魂が伝わらない(というか多分先ほど申し上げたように宮尾さんがそういうのに乗って一緒にヒャッハーというのを好まないから白川イズムに段々戻ってきているんじゃないかと思いますけど。まあ宮尾さんそもそもアカデミズムの人だから気合根性論でウヒョーというのは・・・・・ってのもあるでしょうし)のであって、こういう「異次元緩和の枠組みに悖る質問」にはもっとあっさり味で答えないと異次元緩和の異次元振りが伝わらず、ひいては期待に直接働きかける事が難しくなると思うのですがどうでしょうかね。
○次回展望レポートがかなり(観客席的な意味で)楽しみになって参りました!!!
まあ何ですな、現在のQQEにおける2年で2%達成安定的にという為には、通常の需給ギャップのプラス転換での物価上昇だけではなく、期待に直接働きかけて気合と根性と大和魂でフィリップスカーブを無理繰りでも良いからシフトアップさせて、実際に物価上昇したら期待だって変わるかもしれませんよヒャッハー!!というまあ従来の日銀とは違う無茶振りモードをしておるわけです訳ですが、どうも今回の宮尾さんの講演あんど会見読んでて思ったのですが、ヒャッハー成分が足りないというのはつまりちょっと冷静になって考えたらヒャッハーじゃねえだろと薄々(なのか盛大になのか)考えているのではないかと推察させて頂く次第であります。
でまあ実は展望レポート時点でもご本人は下振れリスクを意識していたけれども、まあアグリゲートしたらバランスと言う事でシャーナイ罠と思って賛成しました(と先ほどの質疑を素直に読むとそうなりますが)って所だと思われますぞなもし。
・・・・・・・となりますと、実際には事実上展望レポートでのメインシナリオに対して下を見ている人が審議委員の6名中4名という素敵な状況になりつつあるという事ではないかとこれまたあたくしの妄想ではございますがなっている、ってな事を勘案しますと、2016年度の経済物価見通しの数値を出すことになり、かつ「2年で2%」の中間地点に到達し、消費税も上がる来年4月末の展望レポートが観客席で見ている分にはさあ盛り上がって参りました!!!という感じであります。
いやまあ別に票決5対4でもそら多数決だから決定はできるのですけれども、執行部以外の審議委員の賛否が2対4になってしまうとなりますとちょっとそれは如何なものかという話になって参りまして、そうなりますと色々な意味で外野観客席的には盛り上がるのですが、どう見ても日銀的にマズーという話ですから、さてどうするんでしょうねえと勝手に(通常の何とかストの皆様の関心とは論点がだいぶずれていますが)盛り上がってしまうアタクシなのでありましたとさ。
#新法になってから今まで5対4というような際どい票決は無かった筈です
(後日追記:一回「4対4で最終的に議長によって執行部案採択」という凄まじいのがあったのを失念していました。2008年10月31日(2回目)の会合で、0.50%→0.30%に利下げをした時に審議委員5人(1名欠員)中4名が0.25%に投票したという事案です。この時はリーマンショックの余波でえらいことになっているのに執行部提案の下げ幅が微妙に少ない点が問題にされていましたな)
○会見ネタおまけ:オモシロ質疑鑑賞
その1はお前が言うなという話。
『(問)(前半部分割愛)また、宮尾委員は、今回の講演で、FRBのコミュニケーション戦略について言及されていますが、これは、はっきり言って、「次は、もうちょっと上手くやって欲しい」という気持ちを込めておっしゃったのかどうか、お伺いしたいと思います。』
『(答)(前半部分割愛)2 点目の、FRBのコミュニケーションについては、私の立場で良いとか悪いとか、評価したりコメントしたりするのは差し控えたいと思います。従来から、各国の中央銀行は、様々な形で、より良い情報発信、より透明性を高める政策運営の努力を続けてきていると思います。FRBも、その1
つとして、将来の政策のガイダンスという形で工夫を凝らし、より良い政策やより良いコミュニケーション、情報発信のあり方を追求していると考えています。』
えーっとですからMPMに賛成した政策委員の方が直後に展望レポートと違うベースの話をするわ、異次元緩和の腰の入れ方から見たら盛大に腰の引けた期待インフレ率見通しのメカニズムの話をするわという先生こそですなあ・・・・・・・・・・・・
その2
これは質疑共にオモシロである。
『(問) 2 つ目の質問です。(引用者追記:2つの質問を途中で切った形になっているのでこれはこれで合っています)本日の講演の中で、コミュニケーションについて言及されており、最後に「日本銀行としては、引き続きより良いコミュニケーションを心掛けてまいりたい」とおっしゃっていて、素晴らしいことだと思います。ただ、実態としては、私は日銀の記者発表に時々出るのですが、極めて難解な言葉が多く、一般の方々が理解するのはかなり難しいというのが率直な印象です。今回、良い機会なので、宮尾審議委員が、例えば、日銀は今後、むやみに英語を使わないとか、分かりやすくするような方針転換を宣言していただけないでしょうか。』
日常語を使うと解釈に幅が出てしまう可能性がより高くなるので正確を期そうとすると却って説明がややこしくなると思いますし、その用語について噛み砕いて説明するというのもメディアの機能だと思うのですけれども(それをしないなら普通に公表文並べておけば良いだけです罠)、大体からして「方針転換を宣言」っていち政策委員で勝手に出来ないと存じますが、会見要旨作った人ちょっと意地が悪くね??
『(答) コミュニケーションのあり方に関しては、まだまだ工夫、改善の余地があると私自身も感じています。いま頂いたようなご意見も含めて、より分かりやすい情報発信を、これからもしっかりと心掛けてまいりたいと思います。その1つの試みとして、展望レポートの記述の仕方に関しても、より良く国民に伝わるような形にならないかということを念頭に置いて、できるだけ簡潔に、以前よりは短めで平易な言葉を使うように心掛けてまいりました。そうは言っても、いまコメント頂いたような、さらなる改善の余地がないか、探ってまいりたいと思います。』
そういや以前白井審議委員も公表文書の言葉づかいがどうのこうのみたいな話をしていたように思えるのですが、そらまあ一から百まで超専門用語使って阿呆陀羅経みたいになったら困りますけれども、言葉づかいがどうのこうのとか言う前に、それ以前に今回散々悪態をつかさせて頂きましたように、「説明の混乱」が起きてますぞなみたいな方がよっぽど問題だと思いますし、大体からしてそういう政策の本質論と関係ない所で努力するとかどうなんですかねと思うのですが、これって学者先生の仕様なんでしょうかねえ・・・・・・・・・・・
2013/11/14
お題「これは惜しくも異次元成分が足りない宮尾審議委員講演」
また某モーサテが中銀預金ファシリティーをマイナスにすると企業融資が増えるという説明をしているのだが市中銀行が預金ファシリティーのマイナスを避けたかったら超過準備を中央銀行にお返しするしか無くて企業融資をしても超過準備は減らないんですが。つーか今日のゲスト解説のセンセイは金利ストラテジストなんですから(段取りに無くても)ちゃんとこういう時に説明入れろよと思うのだが。
ということで(どういうことだ)展望レポートネタの続きをやらずに宮尾審議委員講演ネタですがまあ異次元成分がまるで足りませんぞなもし。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131113a1.pdf
○何という異次元不足の講演
えーっとまず全体を拝読して思ったのですが、今回の講演なのですが「異次元成分がまるで足りません」という事で、端的に申し上げると先般の展望レポートやら既往の決定会合で賛成している「与党審議委員」としてはどう見てもこれ赤点再履修モノの講演テキストとしか申し上げようがございませんし、会見のヘッドラインみたら更にのけぞったのですが、共同のヘッドラインに出ていた文言が無いなあと思って検索掛けたらあまり好まないのですが産経ビズのヘッドラインがあったので引用。
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/131114/mca1311140501002-n1.htm
「消費増税、想像以上のリスク」 日銀、宮尾龍蔵審議委員
2013.11.14 05:00
『日銀の宮尾龍蔵審議委員は13日、長野県松本市で記者会見し、来年4月の消費税率引き上げの影響について「私たちが考えている以上に景気を下押しするリスクはある」と懸念を示した。』(上記URLより)
えーそもそもですな、今日銀がやっている異次元緩和で2年で2%という政策ってえのは最終形の「安定的に2%」というのがワンタイムの2%ではなくて(直接観測はできないけれども理念的に言えば)需給ギャップがゼロ近傍の時に2%のインフレ率が達成できるような状況である、と総裁が9月のきさらぎ会での講演で説明している訳で、それを達成するには従来の金融緩和で景気浮揚して需給ギャップがプラスに転じて云々だけでは足りないので異次元政策とコミットメントを実施することによって期待に直接働きかけてフィリップスカーブの上方シフトを起こさせますという事です罠。
然るに宮尾さんの講演って一応その話の言及はあるのですが、話の流れが思いっきり従来の金融政策で景気が改善してどうのこうのの話がほとんどである上に、会見では上記URLのような話をしておられるという事であれば(詳しくは今日会見テキスト出るからそれを見ないといけませんが)なんちゅう「普通の金融政策」の話をしているのかと小一時間な訳ですよ。
だいたいですな、宮尾審議委員はつい2週間前に出た展望レポートに対して反対とかしておらず、しかも消費税増税に関しては4月の展望レポートから消費税増税2回予定通りを織り込んでいる(異次元緩和時点でもそもそも織り込んでいるのだが)訳で、わずか2週間で何でこういう腰の入っていない話をするのかと言う事で、与党審議委員(^^)であるのであれば、足元のQQEの異次元政策に対してもっと日銀としての強い意志を示すような情報発信をしないといかんでしょと。与党審議委員としては「何を言ってるんですか必要な政策全部打っているし物価だってインフレ期待だってご覧のように強含みになって当初の私たちの見通しに沿って進んでいるじゃないですか2年で2%行くんですよあっはっは」という異次元な説明をしないといかんと思うのですよね。
つまりですな、直近でホイホイと追加緩和観測が出て来るというのはどういう事かと申しますと、だいたい言っている何とかストとかの話を見ますと、どうせ2%行かないのだから(という部分は経済物価見通しだから人それぞれ意見があるでしょうけれども)日銀はフォワードルッキングでプリエンティブに対応するというのが説明の筋になっている訳ですけれども、そもそも論として異次元緩和政策というものが普通の従来型なフォワードルッキングでプリエンティブな金融政策を超越した所にある訳でして、そこの認識に相変わらず齟齬がある(2年オペ実施の追加策がどうのこうのという思惑が出た時にも齟齬があった訳ですがそれを黒田総裁は綺麗に撃破しましたのですがねえ)という状況にある中でして、決定会合とか展望レポートとかに反対している審議委員が反対の理由として筋を通した話をするなら兎も角、与党審議委員状態になっている宮尾さんが何でまた従来型の金融政策話をして、しかも先行き見通しに弱腰発言するんだかと存じます次第でして、そんなに消費税増税が下振れリスクなら何か提案するなり反対するなりしろよと小一時間ですな。
ということで、与党審議委員としては赤点再履修ということで、きさらぎ会での総裁講演を20回音読してテキストを作り直される事をお勧め致します。
なお、このように黒田総裁の回し者のような説明をしておりますワタクシでございますが、これはきさらぎ会その他の黒田総裁の講演や会見の説明などを読んで「現在の黒田総裁、というか日銀執行部サイドがどのようにQQEを位置づけて金融政策のデザインを行っているのか」ということを考えた結果としてこうでしょうなあという事について申し上げているのでありまして、じゃあ本当に2%行くと思ってるのかとか、コストプッシュで2%行って世の中ハッピーなのかとか、そもそも国債を大量に買ってMB増やすとインフレ期待がシフトアップ出来るのかよおいおい、などという論点についてはまた別問題だったりしますので念のため申し添えます(台無し)。
が、QQEやっている中の人の与党構成員だったら黒田総裁の説明に沿ってガツンと異次元な説明をしないとダメでしょと思いますし、それとだいぶズレた話をするならMPMの議決で態度を明らかにして欲しいですなという所ではございます。
・・・・・・・・・うむ、講演テキストの前の悪態が長くなってしまった。
○物価の上昇メカニズムの説明に異次元成分が足りない件について
講演テキスト2ページから。
『こうした見方は、4 月の岐阜県金融経済懇談会の際にお示しした2%物価安定への道筋と今のところは概ね整合的とみています。4
月には、2%の目標を達成する道筋として、@世界経済の回復、A資産価格や為替レートを含む金融環境の緩和、B企業の設備投資や構造改革などを伴う潜在成長率の緩やかな上昇、C堅調な家計消費支出のもとでの需給ギャップの改善、Dインフレ予想の緩やかな上昇というメカニズムを示し、その下で2014
年度中に消費者物価が1%程度を超えて高まっていくことが重要であること、その後も@〜Dの好循環が持続し、中長期的なトレンド・インフレ率も2%へ向けて高まっていけば、実際の物価上昇率も2%の目標に近づいていくことが期待できることをお伝えしました。』
ほほう。
『その後、@の世界経済の回復はやや後ずれしている一方、Cの家計消費支出がやや強いといった状況が生じていますが、総じてオントラックと判断して良いとみています。特に、個人消費や非製造業関連中心の回復は、波及する経済の裾野が広いだけに、物価上昇を幅広く支えていく可能性があります。』
ま、宮尾さん的にアンラッキーなのは(今にして思えばですけど)4月の講演の時点ではそもそも日銀の説明もあまり異次元ではなくて、一生懸命金融政策の波及効果の話をして、どちらかと言えば需給ギャップを解消してプラスにする中で物価も上昇していくのでインフレ期待が上がります的な波及メカニズムの話をしたいた訳ですが、昨日ご紹介したように(しまった!展望レポートネタがあるんだったorz)展望レポートの説明でも堂々の金融政策波及メカニズムの説明盛大に割愛というプレイが炸裂しておりますように、当初の説明よりも現在の説明の方がより「期待に直接働きかけてインフレ期待をシフトアップ」という方向を強調しているので、そーゆー意味では真っ先に金懇に駆り出されて講演する破目になり、そこでの発言の整合性も考えながら今回の金懇テキストを作ることになったという点では宮尾さんも貧乏くじ引いている部分はあるんですけどね!!!
#とさっき散々悪態ついた分のフォロー^^;
んでもって講演テキスト6ページにインフレ期待に関する話があるのですけどね。『(ロ)人々のインフレ予想について:フォワードルッキングな予想形成』という部分。
『人々の予想インフレ率は、全体として上昇してきています。例えば、今年度あるいは今後1
年間といった短期のインフレ予想をみると、家計、エコノミスト、市場参加者によるサーベイ調査など、多くの指標で徐々に高まってきています。また5
年先や10 年先といった中長期的なインフレ予想についても、エコノミストのサーベイ調査などで上昇してきています(図表14)。』
まあ消費税増税分が加味されてますけどね!!
『将来のインフレ率に対して、人々はどのように予想を形成するでしょうか。一般に、将来の経済変数に対する予想には、大きく2
つの考え方があります。1 つは過去の実績を将来予想として直接用いるという考え方です(バックワードルッキングな予想形成)。例えば、単純に前期のインフレ率を予想インフレ率とみなすという考え方が典型的です。この場合、将来に対する予想は、過去のインフレ率の実績といった形で固定化されます。』
『もう1 つは先々の経済の変動メカニズムに沿って将来のインフレ率を予想するという考え方(フォワードルッキングな予想形成)です。例えば、いま単純に「景気が良くなると物価が上昇する」というフィリップス曲線の関係に沿って考えてみます。』
ほうほう。
『この場合、成長力強化の取り組みや政策効果の浸透などによって、先行き景気の持続的な改善が続くという見通しが広まれば、将来時点の景気と物価の関係から、人々は将来物価が上昇すると予想する、つまりインフレ予想は高まることになります。この時企業サイドでは、先々の景気や売上見通しの改善を受けて、値下げ競争を緩和したり、コスト上昇を販売価格に上乗せしたりすることが可能となるでしょう。その結果、今期の物価に上昇圧力がかかりやすくなり、観察されるフィリップス曲線が上方にシフトする、あるいは傾きがより急になる、という効果が考えられます。』
ふむふむ。
『実際のインフレ予想の形成には、バックワードルッキングとフォワードルッキングの両方の側面が混在しているものとみられます(ハイブリッド型の予想形成)。』
そらまそうじゃろうな。
『日本では、経験的に、バックワードルッキングの側面が強いことが知られています。その一方で、政府と中央銀行は、現在、フォワードルッキングな予想に働きかける政策を強力に推進しています。』
『政府は、財政出動とともに規制・制度改革などを推進して、成長期待を高めようとしています。日本銀行は、2%の物価安定目標を掲げ、その早期実現を目指して大規模な金融緩和を実施しており、景気回復が持続するよう金融面から強力な後押しを続けています。』
うーむこのという所なのですが、もっとこの部分を講演の中で強調すりゃいいのに、前半部分でこれに関連する話をしていないで、需給ギャップが改善して物価が上昇すると次第に期待インフレが高まるというような話をしているのが残念というか腰の弱い所。
『また企業部門でも、先に述べた非製造業のイノベーションや設備投資などが継続すれば、労働生産性は更に高まり、所得見通しの改善が続く可能性があります。』
ちなみに労働生産性の論点はここの前の部分で説明が有りますが引用割愛。
『これらを合わせて考えると、景気の持続的な改善が続くとの見通しのもとで、フォワードルッキングな予想形成を指向する人々の割合が増える可能性があります。』
『もちろん、それぞれの企業・家計を取り巻く環境は引き続き厳しい中で、今後このロジックが示すように進むかどうか不確実性はあります。しかしその一方で、消費や所得の持続的な改善を示唆するマクロデータやヒアリング情報、足もとの中長期的な予想インフレ率の緩やかな高まりは、この方向で日本経済全体が徐々に動き出していることを示唆しているようにもみえます。このメカニズムからも中長期的なインフレ予想が高まっていく可能性が相応にあると私自身はみています。』
ここの説明が正直弱いと思うのですが、実際問題として物価がちったあ上昇している点がバックワード的にインフレ期待を高めているかもしれませんという話を織り込んだ方が良いと思うのですよね。成長戦略の結果として成長期待が高まるとか、設備投資が今後伸びたらとか、そういう先の話をするのも勿論良いのですけれども、折角足元で(たとえコストプッシュであっても)実際の物価が上昇に転じだしている事をもっと強調して「それ見たことか(ドヤッ)」と言う説明をしないとやっぱり腰が弱い感じが否めない訳でございますよ。
○ついでに金融緩和政策に関する説明も腰が引けている件について
でまあ宮尾さんの講演ですが、更に金融政策の説明パートがありまして本文9ページのケツの辺りからこのような話が有ります。
『なお、「量的・質的金融緩和」の実体経済・物価への効果の最終的な評価は、政策終了後まで待つ必要がありますが、2000
年代の日本の量的緩和政策について私自身で実証的な分析を試みました。』
ほうほう。
『その結果、暫定的ながら、景気(生産)に対しては相応の効果があり、その際、株価や為替レートなど資産価格を通じた波及ルートが機能していたとの実証結果が得られました。一方、物価に対する効果は、景気への効果ほど明確ではありませんでした。』
あばばばばー。
『これは、1つの可能性として、政策による景気の改善に対して、物価の反応はそれほど大きくはない、つまり当時のフィリップス曲線の傾きがより緩やかだったと解釈できます。』
ほうほうそれでそれで??
『このため、私自身は、前節で述べたようなメカニズムで、今回の「量的・質的金融緩和」によってフィリップス曲線の傾きがこれまでよりも急なものになるかどうか、あるいはフィリップス曲線自体が上方にシフトするかどうかがポイントだと思っています。』
いやあのフィリップスカーブの上方シフトをを強力に推進するのがQQEなのでして「ポイントだと思っています」とか他人事のように言わないで欲しいんですけどマジ勘弁。
『今回の消費主導を中心とした景気回復において、フォワードルッキングなインフレ予想形成の力は、これまでよりも強く働く可能性があるとみています。政府や企業部門の前向きな取り組みも、景気が持続的に改善するとの見通しをより強めて、その力をサポートするでしょう。各経済主体の取り組みとともに、フィリップス曲線の傾きの変化や上方シフトが進んでいくかどうか、今後の動向をしっかり点検していきたいと思います。』
いやだから実際の物価上昇というバックワードルッキング(というか同時進行の自己実現という方が近いかも知れませんけど)なパスの話を何でしない(ポリティカルにはマズーだけど本当は「消費増税で物価が上昇する所で自己実現サイクル発生したらそれはそれでもウッシッシ」の筈なんですけどね、するためには名目所得の上昇が必要ですけど)んじゃと思うのでどうもねえという感じです。
どうせ説明するなら「前回のは物価に効かなかったという結果になりましたが、今回は何せ期待に直接働きかける政策を政府と協力して実施しているんですから前回と違ってフィリップス曲線の上方シフトが期待され、物価に対しても効果を発揮するものと確信しています(キリッ)」位の気合を入れた説明をして欲しい物でありますな、与党審議委員と致しましては(−−;
○なお景気には下振れリスク意識ですが消費税の影響ェ・・・・・・・・
一応本文3ページまで戻って『(2)経済・物価見通しに対するリスク』というのを引用します。
『第1 に、海外経済の動向に関する不確実性があります。特に中国以外の新興国・資源国については、一部の国が経常収支赤字など構造的な問題を抱えており、下振れリスクがあります。また、米国の財政問題の帰趨によっては米国および世界経済の回復が後ずれする可能性がある点にも注意が必要と認識しています。』
『第2 に、家計の雇用・所得動向です。先行きも国内需要が堅調さを維持していくためには、雇用・所得環境が消費を支えるという前向きな循環が持続していくかどうかがポイントです。この点、下振れリスクはある一方で、次節で述べるような上振れ方向のメカニズムが働く可能性もあるとみています。』
まあこの辺は順当としまして。
『第3 に、消費税率引き上げの影響です。税率の引き上げは家計の実質可処分所得にマイナスの影響を及ぼしますが、政府における各種の経済対策などである程度は減殺されると思います。そのうえで、想定以上に経済を下振れさせるかどうかは、その時々の雇用・所得環境や物価動向によって変化するため注意が必要と認識しています。』
他の話は「起きるか起きないか判らない件」なのですが、消費税引き上げに関しては確実に起きる件なので、その点についてわざわざ項目を作っちゃうのが腰が引けている感を出してしまう訳で、そもそも宮尾さんその後で「想定以上に下振れするかはその時々の動向で変化する」と言っているんですから、だったらこの項目はその前の第2の雇用所得動向の中に含めまれる概念であり、わざわざ話さないのが吉という話で、この項目を作るのがプレゼンとしては弱気感を出すのではないかと思いますが如何なもんでしょうかね。
#特に消費税に関しては他の項目と違いまして以前より総裁が「何を仰る兎さん当然織り込んだ結果の見通しですよ(キリッ)」とやっているだけにここで急に出てくるとちょっとねえと思います
『第4 に、企業や家計の中長期的な成長期待に不確実性があります。企業による需要の掘り起こしを伴うイノベーションや、規制・制度改革、税制改正の今後の展開などによって、上下双方向に変化する可能性があります。』
まあこの第3の部分が弱気感を出しちゃってるなという所でありますが、まー結局の所宮尾さん自体が腰引け気味なんでしょうなあと思いますと、何か今後の金融政策に関する日銀からの情報発信も少々分裂気味なのが拡大モードとかになるのかも知れませんね!!!
なお念の為再度申し上げますと、このように黒田総裁の回し者のような根性論を展開しておりますワタクシでございますが(以下同文^^)。
2013/11/13
お題「ロックハート総裁講演メモ/すっかり遅延しましたが展望レポート全文から少々」
あちゃー。
http://jp.reuters.com/article/idJPTYE9AB03S20131112
10月消費者態度指数は2カ月ぶり低下、物価上昇見通し増加
2013年 11月 12日 14:14 JST
『内閣府が12日に発表した10月消費動向調査によると、消費者態度指数(一般世帯)は、前月から4.2ポイント低下の41.2となった。2カ月ぶりに低下した。前年比は4.1ポイント上昇となった。「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4項目すべてが悪化した。』(上記URLより)
○結局どっちに寄っているのかヘッドラインだけだとワカランチ会長な地区連銀総裁講演(大体メモ)
そもそもブルームバーグとロイターのヘッドラインを見ても微妙に差がありまして、まあコチャラコタ総裁の方は多分ハトっぽいのかなあと想像がつくのですが、ロックハート総裁の方がこれまた分からんなという感じです。
コチャラコタ総裁
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MW623P6S974C01.html
米ミネアポリス連銀総裁:近く緩和縮小なら経済の足かせに
更新日時: 2013/11/13 05:17 JST
http://jp.reuters.com/article/idJPTJE9AB02X20131112
低インフレ下、金融刺激を恐れる理由ない=米ミネアポリス連銀総裁
2013年 11月 13日 04:35 JST
ロックハート総裁
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MW5W026S973601.html
アトランタ連銀総裁:債券購入縮小の前にインフレ率上昇望む
更新日時: 2013/11/13 03:12 JST
http://jp.reuters.com/article/idJPTJE9AB03820131112
10月米雇用統計、12月緩和縮小に影響せず=アトランタ連銀総裁
2013年 11月 13日 04:58 JST
ロックハート総裁の話はどっちですねんという風情ですが・・・・・・・・・・・・
アトランタ連銀のページに行ってロックハート総裁講演を見るとこんな感じ。
http://www.frbatlanta.org/news/speeches/131112_speech_lockhart.cfm
Monetary Policy and the Economic Outlook
アトランタ連銀の総裁講演では最初にキーポイントというのを書いてあるのでまあ何となく雰囲気は掴めるのでその後半から。
『The economy is growing at a slow pace, Lockhart says. Substantial progress
has been made on employment, but there is more to be done. At the same
time, inflation is too low, which carries some risk of a weakening economy.』
『Lockhart's baseline outlook for next year is for stronger economic activity-a
growth rate in the range of 2 1/2 to 3 percent. But he is concerned about
the possibility that the economy will stay on its current track and we'll
see no acceleration.』
『Lockhart stresses that the right monetary policy for these circumstances
is continued strong stimulus, but that is not to say that the mix of policy
tools needs to or will stay the same.』
つーことでどうも物価が低めに推移しているのが経済成長を弱くするリスクという話をしてて、一方で先行き見通しは特段弱気では無いものの、リスクは思いっ切り下で見ているという話なので、緩和政策は継続すべきという話だが、「それは政策ツールのミックスが現状と同じままの状態が必要だとか推移するであろうということを意味しません」とか仰せでして、多分本文だと最後の方になると思うのですがこういうのがありますな。
『But there is also a sense in which these tools are substitutes. By substitutes
I mean that guidance pointing to a sustained low policy rate and asset
purchases are discrete tools that can be deployed independently or in varying
combinations. They can be thought of as a particular policy tool mix chosen
to fit the circumstances at this particular phase of the recovery. In my
view, the use of these two tools has been effective in combination over
the last many months. Both have provided stimulus. I think of asset purchases
as supplemental stimulus on top of low short-term interest rates-current
and prospective.』
『Going forward, it may be appropriate to adjust the policy tool mix. That
will depend on circumstances and the economic diagnosis of the moment.』
ということですので、つまり緩和政策において低金利の方が重要で資産買入は金利政策を強化するための補完的措置であって、金利と資産買入は別途調整される、つーか金利は上げないけど資産買入は調整する可能性がありますぞなという事のようで、それは経済状況あんど見通しによりますよという事ですな。
んでもって(当然全部読んでいる時間が無いので本文もピンポイント爆撃で読んだのだが)物価に関してはインフレ低水準状況が遺憾という話をしているので、これどっちに力点を置いて読むかによってハト的(低インフレ懸念だから)ともTaperやりまっせ的(上記引用部分からすると金利は据え置くが買入ペースは平然と減らしそうだから)にも読めるという代物のようで、まあ本当は全文をじっくり読む必要がありそうです、という無責任な結論で終了というか後日に続く(−−)。
○他のネタをやっているうちに1週間以上経ってしまったが展望レポート全文ネタを少々(大汗)
展望レポート全文である
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1310b.pdf
ちなみに前回分はこちら
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1304b.pdf
でまあこれ例によって図表を横に置いて本文読んだ方が良いのですが、図表の貼りつけスキルはございませんのでURL先をご覧になりながらということでお願いいたします。
・基本的に色々と改善してウッシッシとな
背景説明のパートは10ページ(PDFファイルで12枚目)から始まりますが、経済動向のパートと物価動向のパートでは前回記述していなかった話の中でそのウッシッシ感がでているのが味わいを感じますな。
例えば経済動向のパートですけれども4月ではその経済動向の説明を外需、内需、雇用所得環境という感じで説明して終了なのですが、今回の展望レポートではその後にこんなのが付いております。本文11ページから。
『最近の景気展開の特徴を、GDPの需要項目に即してみると(図表11)、海外経済の成長率がはっきりとは高まらないもとで、輸出は持ち直しつつも勢いをやや欠く動きとなっている。設備投資についても、全体として持ち直しているが、製造業では回復の動きはなお緩慢である。一方、個人消費や政府支出は、しっかりした増加を示しており、景気全体の回復をけん引している。こうした状況を反映して、サービスや建設など非製造業の活動は、製造業の生産に比べて、改善の姿がより明確となっている(図表10(3))。』
ということで「景気展開の特徴」というのを今回はちゃっかり入れて説明する辺り、まあ足元の景気回復状況に関してウッシッシと思っているのが伝わるという意味で誠に味わいがあるというものでございます。
まあ問題は個人消費にしても政府支出にしても足元のしっかりした増加というのがどこまでサステイナブルなんですかねえという所ですけど。
・物価の説明に地価動向キタコレ&物価の説明ェ・・・・・・・
今申し上げたウッシッシは物価の所にも散見されていまして、これまた前回はスルーしていた地価動向の話が入っているのがお洒落です。物価動向パートの本文12ページに当たるのですけれども。
『この間、地価は、下落幅が徐々に縮小してきている。都市部では、小幅ながら上昇に転じている一方、地方圏では、下落を続けている。2013年の都道府県地価調査(7月1日時点)で地価の前年比をみると、東京、大阪、名古屋の三大都市圏では、商業地がプラスに転じたほか、住宅地は概ね下げ止まった。また、地方圏においては、商業地・住宅地ともに、マイナスとなったが、マイナス幅は縮小している(図表17)。』
キタコレという所なのですが、これがまた更に味わいがある事に4月の展望レポート、すなわち異次元緩和をローンチしてヒャッハーとなっていた時点で作成されたと思われる前回の展望レポートにおかれましては、物価動向パートのこの当該部分で書かれていたのは何と「金融市場動向」でございまして、えーっともしもしその時々で一番自分たちの見通しに都合の良いネタを繰り出してきてませんかという所ではありますが、そもそも「純粋エコノミスト的な見通しを出すもの」というよりも「(良く言えば)金融政策コミュニケーションツール(悪く言えば「政策プロパガンダレポート」)」と思えばまあ都合の良いネタを手を変え品を変えホイホイ繰り出してくるのは当然ですな(−−)。
でまあ物価動向の所ですけどね。
『物価面をみると、国内企業物価の前年比は、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、年度初にプラスに転じ、その後はプラス幅を緩やかに拡大している(図表13(1))。企業向けサービス価格(除く国際運輸)の前年比は、企業収益の改善などを背景にマイナス幅が縮小傾向を続け、最近は概ねゼロ%となっている(図表13(2))。』
企業収益の改善ですかそうですか。
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の推移をみると(図表14(1))、年度初は昨年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、一旦マイナスとなった。その後は、原油市況や為替相場を反映して、エネルギー関連(石油製品・電気代)が再び上昇している。また、個人消費が底堅く推移するもとで、コスト高を転嫁する動きがみられたこともあって、財(除く農水畜産物)に分類される耐久消費財、食料工業製品やその他財、一般サービスの内訳である外食などで、徐々に改善の動きが広がった(図表15)。』
うーむこの。いやまあアグリゲートすると企業収益改善しているし個人消費が底堅いからコストプッシュを転嫁する動きという形になるのかも知れないけど、短観DIとか見てると確かに販売価格のDI上がっているけど仕入価格のDIはもっと上がっていて、それって本当は個人消費が底堅いから転嫁しているというよりは仕入価格が上がってもうタマランチ会長だから転嫁しているだけのような気もせんでもないのですがどうなんですかねえ。何か図表15を見ると結局石油関連ばっかりのような気もしますし・・・・・・
『このため、除く生鮮食品全体の前年比もプラスに転じ、最近は0%台後半となっている。消費者物価の基調的な変動を捉える指標として、刈込平均値7やラスパイレス連鎖指数8、消費デフレーターをみると、昨年央以降、改善が一服していたが、このところ再び改善している(図表14(2))。また、消費者物価(除く生鮮食品)を構成する各品目の前年比について、上昇品目の割合から下落品目の割合を差し引いた指標をみても、このところ比較的はっきりと改善している(図表16(1))。』
ほう。
『家計調査における単価の動きをみても、前年比の上昇傾向が続いている(図表16(2))。』
んーっとですね、図表16(2)を見ると一旦改善(上昇)した後に落ちているようにも見えるのですけれども。ってゆーか最近スーパーとかホカ弁屋とかで買い物してて思うのだが、販売物件の単価を上げるのではなく量を減らしたり質を落としたりして調整してお値段同じとか、お買い得価格にしたりしてる動きが徐々に露骨になってきている気がするんですが身の回り5メートルとマクロ状況は違いますかそうですか。
・QQE波及経路の説明を思いっきりカットキタコレ
本文13ページからが金融情勢のお話で最初が金融環境というパートです。
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。日本銀行は、4月に導入した「量的・質的金融緩和」のもとで、マネタリーベースが年間約60〜70兆円に相当するペースで増加するよう、長期国債買入れなどを進めている。こうしたなか、マネタリーベースは大幅に増加しており、前年比の伸び率も拡大を続けている(図表18)。日本銀行は、今後も、「量的・質的金融緩和」のもとで、マネタリーベースが上記のペースで増加するよう金融市場調節を行っていく9。』
とまあそういう説明があるのですが、前回はこの金融環境のトップの小見出しのお名前がそもそも『(量的・質的金融緩和)』となっていまして、QQEをローンチしましたよという話をした後に、QQEの波及経路の説明が延々とございまして(前回の本文11ページ以降)、ああだこうだと話(買入をバンバン実施してイールドカーブ全体を下げて桶屋が儲かるみたいな話ね)があったのですけれども、今回はこの部分をバッサリ削ったのがこれまた実に味わいの深く、まさに侘び寂びの世界という所です。
まあつまりQQEに関しましてですが、波及経路がどうのこうのみたいな具体的な話をまあ当初は色々としていましたが、足元では基本的にQQEという名の気合と大和魂によってインフレ期待に直接働きかける事によってインフレ期待が上がって期待が転換してフィリップスカーブがシフトアップするという異次元期待転換理論を強調しておりますのと、そもそも当初説明していた名目金利が下がってどうのこうのみたいな話も直近では金利下がりモードではありますが、まあQQE突っ込む直前より金利高いんでネーノとか為替って結局100円程度しか行かないですよねとかやいのやいの言われるとアレというのもあって、そういう突っ込まれる脇は見せずに行きましょうとなったという事ですね、と読むとこれまた実に滋味深い代物でありまする。
・見通しを展開すると強いっつーか前提が色々というか
でまあ金融環境の部分は華麗にスルーしまして本文16ページ以降の『3.2013年度後半〜2015年度の経済・物価の見通し』ですが、全体感の展開を鑑賞しましょう。
『わが国経済の先行きを展望すると、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも10、前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』
今回初出じゃないですけど、前向きの循環メカニズムキタコレという所でこの後も何回も連呼されるのでありまする。その期間別展開が以下に続きます、まずは今年度後半。
『先行きの景気展開についてやや詳しく述べると、2013年度下期には、内需が堅調に推移するもとで、外需の改善も次第に明確になっていくと考えられる。』
外需も改善ですかそうですか。
『まず、公共投資は、当面、増加傾向で推移したあとは、高水準で横ばい圏内の動きとなると見込まれる。輸出や鉱工業生産は、海外経済が持ち直すにつれて、緩やかに増加していくと予想される。そうしたもとで、企業収益が改善を続けることに伴い、これまで先送りされていた維持更新の動きが広がることもあって、企業の設備投資の持ち直しがより明確となるほか、雇用・所得環境の改善に支えられるかたちで個人消費の底堅さが続くなど、企業、家計双方の部門において、前向きの循環メカニズムがよりはっきりと働いていくと考えられる。』
ということで設備投資が企業収益改善をドライバーにしてヴィンテージ更新なども含め堅調で、雇用所得環境の改善がサポートで個人消費が強いそうです。
『加えて、個人消費を中心に、1回目の消費税率引き上げ前の駆け込み需要が相応の規模で発生すると予想されることから、下期の成長率は上期からさらに幾分高まり、年度全体の成長率もかなり高めになると考えられる11。』(ちなみに脚注11は消費税が10%まで予定通り上昇を前提にしていますという脚注です)
さいですか。んでもってその後。
『2014年度から2015年度にかけても、消費税率引き上げによる振れの影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長が見込まれる。』
ほほう。
『2014年度については、今後予定されている総額5兆円規模の経済対策の実施を前提とすると、公共投資は、上期中、引き続き高水準で推移したあと、次第に減少傾向となると見込まれる。輸出は、海外経済の持ち直しが次第にはっきりするもとで、伸び率を高めると考えられる。さらに、国内民間需要は、基調的な動きとしては、前向きの所得形成が続き、各経済主体による成長力強化への取り組みの効果もあって成長期待が次第に高まるもとで、金融緩和効果も強まっていくため、設備投資を中心にしっかりした動きを続ける可能性が高い。経済政策パッケージの一環として実施が予定されている各種企業減税策も、設備投資にプラスに作用していくと考えられる。この間、個人消費については、各種の税負担が実質可処分所得の押し下げに働くなか、上期を中心に、消費税率引き上げ前の駆け込みの反動も相応に生じるとみられるが、基調的には、雇用・所得環境の改善に支えられて、底堅さが維持されると考えられる。』
つーことでやたら強気ですけれども、(クソ長くなるので前回分は引用しませんが)この中で海外経済に関する記述はさすがに前回よりは弱くなっていましてそこは下がっています。でもってこれ読みますと結局の所公共投資がドライバーですかそうですかというのと、本当に雇用所得環境が改善を続けるのでしょうかという所がキモになるという話ですな。
『2015年度については、公共投資が減少傾向をたどるほか、設備投資も、資本ストックの充足に伴い、循環的にみれば次第に減速方向となる。ただし、海外経済が長期平均並みの成長ペースに復すること、国内面では、成長期待がさらに幾分高まるもとで、金融緩和効果や各種企業減税の効果も強まっていくこと、などを背景に、潜在成長率を超える成長が続くと予想される。』
ということで内需から外需に一部がバトンタッチしてバランスの良い成長という話になっているのですが、どさくさに紛れてしらっと「成長期待がさらに幾分高まるもとで」とかこらまた都合の良い話がございますなあというのが味わいがある所ではございまする。
つーことでやたら強い罠と思いながら、この後の需要項目別展開と物価見通しの部分は時間と量の関係上明日以降(汗)。
2013/11/12
お題「ドラギ総裁の会見が色々とアレな件について鑑賞会でも」
ほう。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131112/k10015980051000.html
富久娘酒造 純米酒と虚偽表示
11月12日 5時7分
あちこちで虚偽表示という事ですけど、これつまり過去の物価指数における品質調整が機能していなくて実はデフレじゃなかったのかも知れませんよ(大嘘)。
でまあ米債が15毛甘で帰ってきても貫録の円債先物前日比変わらずで何も書きようがないので今朝はドラギ先生のオモシロ会見の鑑賞の続きということで。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2013/html/is131107.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 7 November 2013
でまあ昨日は「何で今回利下げしたか」の背景説明が結局の所「物価が1%割ったんで」以外の部分が何が何やらワカランチ会長というのをネタにしましたがその他色々と怪しげな話が展開されているのでその鑑賞会ということで。
○その前にテクニカルな話:コリドアが非対称の理由
めんどいから質問を割愛しますが何でコリドアが非対称になったのよああそれから預金ファシリティをマイナスにしないのかという質問がありましてその答えですけどね。
『Draghi: On the first question, remember that we are in a context of fixed-rate
full allotment in all our ECB refinancing operations. The EONIA fluctuates
between the deposit rate and the main refinancing rate, so the fluctuation
range is unaffected by the level of the marginal lending rate.』
EONIAレートは貸出ファシリティと預金ファシリティの間で動くというのが本来のコリドア設定の意味なのですが、実際問題としては今はMROなどの全ての資金供給オペがフルアロットメント方式で実施されているので、本源的にはEONIAレートはMRO金利を上限とするという事になります。
『But we wanted to preserve the incentive for banks to actively manage
their liquidity positions between the two weekly main refinancing operations.
This is why we left the distance between the marginal lending facility
rate and the main refinancing rate unchanged, which explains why we now
have a corridor which is asymmetric.』
で、貸出ファシリティーまでのコリドアを50bpで維持したのは、この差を縮めるとMROに行かないで貸出ファシリティーに行くインセンティブが生じる(なぜならMROなどのリファイナンスオペレーションは毎日ホイホイオファーされているものではないので、資金効率をギリギリやろうと思ったらMROの取りを絞って限界的な部分を市場調達なり貸出ファシリティーを使うなりする方が合理的な動きになり得る場合があるからっつーことでしょう)ので、差を敢えて大きいままにしておきますと言う事のようです。
『We also discussed the deposit facility rate and, as I said on other occasions,
we are technically ready and it is part of our artillery, and in a sense
it also answers the previous question about what we will do if we see a
low rate of inflation. We do not see one and we do not think it is going
to materialise because we see that inflation expectations are firmly anchored
at 2%, or less than 2%. However, we want to have some instruments in our
artillery and this is one and another is certainly the one you mentioned,
the LTROs. We did not discuss this in any depth today, but there are a
whole range of instruments that we can activate, if needed.』
預金ファシリティ金利のマイナスについては結局毎度の話になっていまして、テクニカリーには準備できています(キリッ)とはゆうとりますが、まあこれは現実問題としてやったら色々と市場に不測の(まあある程度は読めますけど)動きが生じるのでこればっかりは大国の人柱事案が無いと何ともかんともでしょうな。
○コミュニケーションポリシーに関するいくつかの質疑から
ちなみに今回の質疑ですが、物価に関する質疑、票決に関する質疑、コミュニケーションに関する質疑、政策効果に関する質疑、銀行資産査定問題に関する質疑という感じで大体の質疑が回っていましたが(これはミーの勝手な分類)、コミュニケーションに関する幾つかの質疑を鑑賞。
『Question: What seems to be astonishing about today’s announcement is
how unprepared the market generally was for it. I have seen various comments
that it was a shock announcement and that it was very aggressive, and it
has clearly taken the market by surprise when you look at the reaction
in euro/dollar and some of the equity markets.』
今回の決定は市場にはサプライズでベリーアグレッシブでしたよ為替市場が反応しましたねと。
『So, my question really is about the communication strategy currently
that you are pursuing, and the fact that you have decided to make this
announcement today.』
ふむ。
『And I ask you, if you could put some texture on this: do you think that
the markets have become overly complacent and doubted the credibility of
your will to act? You can clearly see in euro/dollar that people seem to
have taken it for granted that there would not have been a cut now, or
possibly even in December. And I saw one market commentator describe you
as having a pea-shooter to deal with the deflationary tanks that were approaching
you. Well, it seems to me that you have pulled out a bazooka or, possibly,
even an anti-tank weapon today. Could you put some texture on the communication
strategy for us?』
でまあ今回の市場に対するショックを与えるようなアグレッシブな施策でバズーカキタコレなのですが、つまりそのようなコミュニケーション戦略になられたとかそういう事ですかね??とか何とか質問しておられますが・・・・・・・・・・・
『Draghi: In doing so, I think I will abstain from judging the markets.
This is one of the hardest things to do and it is usually quite useless
because they do what they want, no matter what.』
市場の反応にはコメントしないとな。
『So, I will actually urge all of you to read the introductory statement
that I read at the last press conference. And it says: “The Governing
Council confirms that it expects the key ECB interest rates to remain at
present or lower levels for an extended period of time. This expectation
continues to be based on an unchanged overall subdued outlook for inflation
extending into the medium term, given the broad-based weakness in the economy
and subdued monetary dynamics.” Note “unchanged”: it has changed.』
でた声明文(というか長いのでステートメントというべきか)読み上げ攻撃という所ですが、今回は前回の声明文読み上げ攻撃でして、前回は「This
expectation continues to be based on an unchanged overall subdued outlook
for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness
in the economy and subdued monetary dynamics.」とありましたが、の部分にunchangedが入っていたのに注目してくれと。
つまり、この読み上げ部分の該当箇所ですが、今回の最初の声明文の部分だと同様の部分は第3パラグラフに相当しまして、「This
expectation continues to be based on an overall subdued outlook for inflation
extending into the medium term, given the broad-based weakness of the economy
and subdued monetary dynamics.」となっていまして、こちらには前月あった「unchanged」が抜けていますよという話っすな。
『Since then, it has changed. And it has changed in a variety of ways.
First of all, as I was saying before, it is now broadly-based over a certain
category of goods: we see that it is now based on services, energy, processed
food, non-energy industrial goods and unprocessed food. It has also changed
in the sense that, if you look at the quarterly annualised figures for
inflation, they do actually go down in September and October. So that is
the big change. Basically, we observe what has happened and that is exactly
what our forward guidance was saying. So, if there were to be a change,
we could change. In this sense, I have to remark that the credibility of
our forward guidance comes out strengthened out of the decision today.』
つまり今回の決定において変わったのはこの「物価先行き見通し」でありますということで、物価の見通しとしてやや低い水準のインフレが暫くの期間継続するでしょうという見通しになったので、それに対応するために利下げを行ったという話です罠。
・・・・・・・・って良く見れば分かりますように、これ質問されていない事を説明するの巻になっているのですけれども、実は今回の会見ってテキスト見ててああこれは混乱しとるわという雰囲気があるのは、昨日引用した部分にも一部ありましたが、このような感じで「聞かれもしない件について延々と説明」という部分があるのと、あとは2か所ほどあるのですが、記者の質問の意味が通じていなくて答えが混乱するという部分がありまして、まあ何というかドタバタ感があるなあと思いました。
ただまあドラギさんほどの方が相手の言ってる事を分かっていない訳もない(混乱部分はその気がありますけど)次第で、この答えの部分もそうなのですけれども、「人の質問を使って自分が説明したいこと(今回だったら物価に関する説明)を滔々と述べて強調することによって広く知らしめたい」という意志の表れなのかも知れませんな。肝心の答えたい事に関して必ずしも質問が飛んでこない可能性も有る訳ですからね!!!
で、答えになっていない答えなので再度質問が。
『Question: My colleague’s question was focused more on the communications
strategy. Maybe I can ask in my words: you said that within the Governing
Council today the question was not so much whether to act, but when to
act, and so you decided to act in a reflex way today, the motive being
more to create a kind of surprise and to obtain a better reaction…』
『Draghi: I see your point and no, that is not the reason. The reason why
a significant majority of the Governing Council members thought it was
time to act was exactly because of the reasons I gave before. Last month,
we said that the expectation is based on an unchanged overall subdued outlook
for inflation extending into the medium term. Well, that outlook has changed.
So, there have been changes since I last read the introductory statement.
And these changes have been judged to be of significance, both in terms
of category of goods and in terms of length of time. We can go into further
details to explain this but these two things are important. Sorry, you
had another question?』
驚かすために実施したのではないです物価の先行き見通しに変化があったから変更したのですから通常の政策判断ですが何か??だそうです。
まあ確かに「インフレ期待はアンカーされている」という説明をしているだけに、QE2やQQEのように「期待に働きかけてインフレ期待を引き上げる為に衝撃と畏怖作戦なり異次元バズーカなりを打ち込んだのですよどうです凄いでしょう」とは言えないのですが、「普通の判断ですよ普通」とか言われましても甚だ違和感がががががが。
○利下げでクレジットフローにどういう効果があるんですかという問い
『Question: Mr Draghi, two questions. First of all, you said that fragmentation
has decreased in the eurozone, but how much do you think that this rate
cut will help credit flow to some other countries that need it most? Do
you see it reducing fragmentation further and, if so, perhaps you can explain
the mechanism where that will happen?』
『And the second thing is how much is the Governing Council concerned about
the level of the euro against the dollar and did that play any role in
the discussion today?』
そもそも利下げでフラグメンテーションにどういう効果があるぞなという質問と、ユーロ高対応の利下げですよねという質問ですな。
『Draghi: I can answer the second question. As I have said many times,
the exchange rate is not a policy target. It is important for price stability
and growth and it certainly didn’t play any role in today’s discussion
and, as far as I can remember, it was not mentioned. So, that’s the first
answer. But as I said it remains important for our price stability objective
and for growth.』
為替レートターゲットでは無いとか言いながらも為替は経済物価に影響を与えるし経済物価情勢は金融政策に重要ですとかどう見ても通貨安意図です本当にありがとうございました。
『On fragmentation: fragmentation has been steadily declining since July
last year until about three to four months ago. All indices, bank indices,
mostly on the funding side, but also Target 2 and other indices, would
show that. After that, while we continue to observe improvements in market
performance across the board, both interest rates and volatility indices,
etc., we are actually observing that this improvement has stopped.』
『So fragmentation is basically a little better than it was four months
ago, but rather than observing dramatic improvements month by month, we
are observing by and large a static situation. We are also observing many
favourable facts here, for example interbank lending from the non-stressed
countries to some stressed countries has improved, which is a major piece
of news. When we look at the overall areas and the aggregate numbers, we
have to say that we are now in more or less the same situation as we were
three months ago.』
つーことでどうもここ3〜4か月はフラグメンテーションの改善が止まっている(一部は改善続いているものの全体として止まっているし改善も相当遅い)という事のようです。
『So I think this change in interest rates now would certainly reduce the
fragmentation and is something that will help healthy banks that are located
in stressed parts of the euro area to have an easier access to the interbank
market. In this sense, it is an instrument for reducing fragmentation.』
正直この説明は牽強付会にも程があると思うのですが、利下げって基本的に短期金融市場的に言えば投資リターンを下げる事によって、特に現状のユーロ圏のようにクレジットやらカウンターパーティーリスクがどうのこうのみたいな話が有る中では、相対的にクレジットの弱い所の調達能力を下げる事につながるので、フラグメンテーションの改善と言われましてもハア?という感じなのですが。
『We are also confident that as the overall economic situation improves,
fragmentation will also decrease, because let us not forget that fragmentation
began with a very high risk perception, both by the core countries towards
the stressed countries for a variety of reasons but also by the very same
banks in the stressed countries vis-a-vis the private sector in those countries.
And it had much to do with the recession.』
まあ経済が改善したらフラグメンテーションが改善するというのは分かりますけれども。
『So as we come out of that and we see the extent of what we call the three
uncertainties - political uncertainty, economic uncertainty and financial
uncertainty - we see that, broadly speaking, these three categories are
decreasing significantly in the euro area. So I would also expect fragmentation
to decrease.』
まあホンマカイナという感じですな。
○フォワードガイダンスの強化をしないのですか政策反応関数が分かりにくくなっていますがという質問
これもまあコミュニケーションポリシー系の質問だが。
『Question: Mr Draghi, coming back to the issue of market expectations,
you have mentioned that it is your feeling that the forward guidance has
been strengthened by this decision. On the other hand, one could argue
that markets were caught on the wrong foot by today’s decision and you
were not successful in guiding expectations as regards your reaction function.
You mention it quite often, at almost every meeting, but, apparently, the
markets are still not quite clear about your reaction function.』
ニヤニヤ(・∀・)
『Draghi: Well, I am not sure, because the money market term structure
has reacted very well. Our evidence is that, actually, our forward guidance
has been successful.』
この前導入したフォワードガイダンスは効果を上げていますが何か?という返しキタコレ。
『As soon as we issued the forward guidance, we saw that, after the May
Governing Council decision, the curve flattened. Of course, there are other
factors that influence money market rates.』
FG導入したら金利のカーブがフラット化したではありませんかと。
『We do not live on an island or on another planet. We had several announcements
concerning the tapering or not tapering of monetary policy in the largest
financial centre in the world.』
別に米国と言えばいいのにこういうのね。ジョンブルみたいですな。
『We had announcements in other jurisdictions as well, and it would be
unthinkable that these announcements would not produce any effect on our
own money market rates. But, by and large, as we have seen, there has been
a kind of mean reversion - a return of money market rates to levels that
are admittedly higher than the ones that were produced in the aftermath
of thestatement of forward guidance, but certainly below the rates that
these announcements would have produced.』
ふーん。
『What we are pretty sure of is that the forward guidance has been effective
in reducing the volatility of money market rates. It has also been effective
in reducing the sensitivity of money market rates to news that would not
warrant any change in fundamentals or, in other words, the sensitivity
of our money market rates to news coming from the rest of the world of
the kind I mentioned before. We are pretty sure of that. And we are also
pretty sure that the forward guidance has reduced the excessive sensitivity
to news that has to do with our fundamentals.』
フォワードガイダンスによって足元の経済指標などからの影響を(先行きの金融政策について言及したからという意味で)減らしましたよとな。
『But I would also say - as I have said many times - that we are also fairly
successful in controlling the level of interest rates and, recently, the
term structures have actually flattened.』
金利水準の操作に成功したって・・・・・そうなのか???
『Of course, it is very difficult to measure all these effects exactly,
because there are many other things happening at the same time. You are
never sure whether it is your own forward guidance that is the determining
factor, or other factors. 』
とまあそういうことで、フォワードガイダンスをどうにかしないのかという質問に対して「先般導入したフォワードガイダンスはこのように効果がありました(キリッ)」と質問の筋を微妙に外して政策アピールをするというドラギのベシャリーヌ攻撃恐るべしという所ではあります。
○日本的なデフレにならないかという質問だが
『Question: Let me go back to the topic of deflation or lower inflation.
Some experts are saying that the euro area is now facing the risk of deflation,
which is similar to Japan’s experience. Of course, Japan has experienced
a prolonged period of deflation, and some experts are saying that the reason
for this deflation is that companies put priority on the adjustment of
balance sheets and did not borrow money from banks and did not make investments
and that this led to deflation. Do you think that the situation in the
euro area is now similar to Japan?』
キタコレ。でこの答がこれまた長い(つーか今回は元々多いドラギのベシャリが更に長いですよね)。
『Draghi: No, I do not think it is similar to Japan. We have to go back
to 2009 and think of what things should have happened since then.』
ほうそうそれでそれで?
『What is quite clear is that, to different degrees across euro area countries,
the public sector, the private sector and the banking sector where all
over-leveraged. Being over-leveraged meant that they had too much debt
and not all of their assets were of good quality.』
日本と同じですが・・・・・・・・
『So, they had to deleverage. We should not forget that there where bubbles
in the construction sector in Spain. But, more generally, it was the situation
that in some countries - not all - there was a very high degree of debt.
This had to be reduced, or the ratio of debt to assets had to be reduced,
or, in the case of the public sector, both deficits and debts had to go
down. There was a period of time when most countries actually ran fiscal
consolidation programmes and, on the private sector side, there was significant
deleveraging, both by corporations and by banks.』
デレバレッジだの不良債権処理だのも日本も行っていましたが・・・・・・・・・
『And these went hand in hand with some other changes in the euro area,
especially changes in risk perception which took place in 2011.』
まあ日本でも途中でリスクパーセプションが上がったりしたことありましたけどね!!!
『You will remember the stress test, the mark-to-market valuations of debt,
the absence of a backstop for a long time, and the PSI. All these things
have changed the risk perception with respect to sovereign debt. All these
factors are at the root of the recession. Now we are coming out of that.』
ほうほうそうですかじゃあ何で利下げしたんでしょうねえ(ゲス顔)。
『If you look at the euro area from a distance, you see that the fundamentals
in this area are probably the strongest in the world.』
すいませんここ読んでマジで爆笑しました。
『This is the area that has the lowest budget deficit in the world. Our
aggregate public deficit is actually a small surplus. We have a small primary
surplus of 0.7% [1](It is actually a small deficit)-, compared with,
I think, a deficit of 6 or 7% deficit in US, - 6 I think - and 8 % in Japan.
This is the area with the highest current account surplus.』
そう来たかwwww
『And it is also the area, as we said before, with one of the lowest -
if not the lowest - inflation rate. This does not translate automatically
into a galloping recovery. But, actually, it gives you the fundamentals
upon which you can pursue the right economic policies. Structural reforms
are the necessary and sufficient condition for this to happen. In the absence
of that, unfortunately, we are going to stay here for quite a long time.』
結局これは「日本タイプのデフレーションにはなりません」(キリッ)の説明に全然なっていないような気がするのですがどういう理解をすれば良いのかさっぱりワカランチ会長。
つーことで鑑賞会でございましたが、何か今回のドラギ先生色々とアレ感が漂う会見だなあと思うのでした。
2013/11/11
お題「ECBの利下げに関する説明が色々と今後コミュニケーション上の障害になりそうな件について」
いやはや雇用統計が何ともアレですなあ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MVY5OK6TTDSV01.html
10月米雇用統計:20.4万人増、失業率上昇−労働参加率は低下
更新日時: 2013/11/09 02:41 JST
話は違いますが、物価の個人消費への影響について話をするのに総合じゃなくてコアコアがゼロだからまだ無問題みたいは事を言う某モーサテの某コメンテーターは冷暖房も使わずに光合成でもして生きているのかと大変に不思議に思うのですが、つまりネガると折角のそれまでの翼賛コメ(銃声)。
○市場メモで短国買入メモ
金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of131108.htm
国庫短期証券買入 20,000 2013年11月12日
国債買入(残存期間1年以下) 1,100 2013年11月12日
国債買入(残存期間10年超) 2,000 2013年11月12日
オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba131108.htm
国庫短期証券買入 40,480 20,006 -0.005 -0.004 68.4
国債買入(残存期間1年以下) 5,171 1,102 0.001 0.002 62.4
国債買入(残存期間10年超) 5,777 2,006 -0.019 -0.016 26.4
ということで短国買入はまあ想定通りに2兆円の打ち込みになりまして、落札結果も平均4糸強の足切り5糸強ということで、これまたほぼ順当に堅調になりまして、今週は先週末から強くなった水準からスタートという展開になる訳でして、まあ今月は短国買入オペがやや多めに入る以上、堅調推移となるんでしょうなあという所で。
まあ良く考えてみると日銀保有の短国が7兆からあるという事は、その分民間保有短国の償還を食っているのだから、本来は償還ロールに対する投資家ニーズがその分減っているという話になるのですが、じゃあそれで入札が流れるのかというと、フローとしての日銀買入がどどーんとあるとなりますとそれがバックストップになってしまいますし、業者も入札で在庫を持ちやすくなりますので、やはりフローの買入が大きい方が金利の元々の発射台が下がりやすくなる罠という事ですな。
○ECBの利下げに関する会見説明が微妙にわけわからん件について
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2013/html/is131107.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 7 November 2013
今回のECBの決定ですが、まあ基本的に物価が下がったから対応して利下げしたいとか、ユーロが強いのも色々と困るのでユーロに調整して欲しい(しかし英国欧州は米国のTaperingトークで金利が連れ上昇してフォワードガイダンスを突っ込み、今度はTapering先送りでユーロ高になってECB利下げとかお洒落にも程がありますわな)とか、まあ大体そういう感じなのは把握できるのだが、利下げに関するロジックが最初のステートメント部分でもわけわからんかったのですが、会見の説明でもやはり同じ感じで謎なのでありました。
・Introductory statementでの説明を再掲
金曜にネタにしましたが、利下げの理由に関して説明している文言は「大事なことなので3回言います」とばかりに行っていまして、ステートメントの最後のまとめの方で3回目の説明。
『To sum up, taking into account today’s decisions, the economic analysis
indicates that we may experience a prolonged period of low inflation, to
be followed by a gradual upward movement towards inflation rates below,
but close to, 2% later on. A cross-check with the signals from the monetary
analysis confirms this picture.』
ということで、今回の決定は「物価水準がやや長い期間において低水準となる事が想定されるので利下げした」という話をしているのですが、一方で金曜にも引用しましたように、インフレ期待はアンカーされているという認識を示しているのが説明的にちょっと意味がワカランチ会長な所ですなあと申し上げましたが、会見の方を読むと更に謎は深まるという所ですな。
なお、金曜に引用しましたが物価に関しては以下のように説明していまして、インフレ期待はアンカーされているとか、低水準の物価が続いた後その先に関しては徐々に上昇という話になって居るのです罠。
『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation
decreased in October 2013 to 0.7%, from 1.1% in September. This decline
was stronger than expected and reflected, in particular, lower food price
inflation, a larger fall in energy prices and some weakening in services
price inflation. On the basis of current futures prices for energy, annual
inflation rates are expected to remain at low levels in the coming months.
Underlying price pressures in the euro area are expected to remain subdued
over the medium term. At the same time, inflation expectations for the
euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in
line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.
Such a constellation suggests that we may experience a prolonged period
of low inflation, to be followed by a gradual upward movement towards inflation
rates below but close to 2% later on.』
ということで質疑。
・そらまあ物価の認識に関する質問が来る罠
最初の質疑である。
『Question: My first question is on the prolonged period of time over which
we are going to see low inflation. Is there any chance you could elaborate
a bit on how long we are going to see low inflation for and do you fear
that inflation may drop even lower than it already is, meaning there is
a high chance of deflation?』
「prolonged period of time」については当然質問されますし、デフレーションのリスクが高まったという意味ですかとかまあ普通に質問する罠。
『And my second question is: what options do you have in place to fight
inflation if it drops even lower than it is currently? I am considering
the fact that the main refinancing rate is at 0.25% now and you have only
one traditional rate cut left.』
更に物価の低下リスクが高まった時にどうするんですか??という質問キタコレですがその答え。
『Draghi: On the first question, I think you will have a fuller picture
in December with our macroeconomic projections. Based on our updates and
the latest figures on inflation, we expect that it will extend for some
period of time, for an “extended” and “prolonged” period as we said,
and we will be clear on the length of time of this period in December.
But certainly it is not going to be a very short time.』
詳しい物価見通しに関しては12月にマクロ経済見通しをだすのでそこで勘弁とな。
『As regards the second question, I have actually answered this question
on other occasions. If by deflation we mean a self-fulfilling fall in prices
across a very large category of goods and across a very significant number
of countries, we do not see that happening.』
数多くの国において大変に大きなカテゴリーの物品に関して自己実現的な物価下落が起きているかというとそういう訳では無い(ってこれ2番目じゃなくて質問者的には最初の質問のような気がするが)ということですからまあデフレリスクがどうのこうのという訳では無いと言いたいんでしょうな。
『Certainly, we have one country where the fall in prices is more marked
than in others, but we have to be careful to separate the various effects.
Some of it is actually welcome in a sense because it shows that there are
some relative price adjustments, a certain amount of rebalancing across
countries. Some of it certainly reflects the price of the various commodities,
namely energy and other commodities, and I will say more about that later.』
でまあ相対価格の調整はエネルギーとかその他の商品価格のように下がってウッシッシというものもありますし、域内の国々のリバランスというのもありますぞなもしという説明をしていまして、特にこの中の説明にある「域内の国々でのリバランス」というのは後の質疑で聞かれもしないのにまた説明しておりまする。
『But by and large we are not seeing deflation. What we see is a broadly
based and protracted period of low inflation.』
ということでデフレ見通しを見ている訳ではなく、あくまでも幅広いベースおよびやや長い期間の低インフレを見ておりますとな。
『Remember that the objective of the ECB is to have an inflation rate which
is below, but close to, 2%, and there are many reasons why this was chosen
as the ECB’s objective many years ago - I think it was 12 years ago, in
2001?』
『Constancio: May 2003.』
『Draghi: May 2003. We can go into this further in upcoming questions if you are interested.』
ということで、いかにも質問してくれ状態になっていますが、我々は何故「2%より低いけどそれに近い」物価目標を設定したかを説明しましょうと言ってまして、その後質疑を途中に挟んでいますが、この人の質問の続きがちょっと後に。
『Question: I want to get back to your point that there may be a prolonged
period of low inflation. Is that satisfactory to you that there is prolonged
period of low inflation or should the ECB be doing something to make it
less prolonged? And my second question is: when other central banks have
approached the zero bound, they have bought assets, quantitative easing.
You didn’t mention that as one of the options in your tool kit. Is that
an option for you to buy private sector assets, government bonds?』
でまあ先ほどの質問でスルーされた「これ以降の追加策」ですけれども・・・・・・・・
『Draghi: I will answer the second question immediately. We haven’t reached
the lower bound. As I said, we have a whole range of instruments that we
can still activate before reaching the lower bounds. I mentioned some of
them before but, in principle, we could even cut the interest rate, the
MRO rate, further. So, we are not there yet.』
まだゼロ金利制約に達していないとのお告げですので、もう一発利下げの可能性があるようですよという事ですが、MROを0.10%に下げるとかそういう話になるのですかねえ。
『On the first point: as the introductory statement says, taking into account
today’s decision, the risks are broadly balanced for inflation. We believe
that we have contributed to shortening this protracted period of time with
today’s decision.』
声明の方でも説明があったように、インフレのリスクはバランスという話になっていまして、利下げに関しては今見通している「より長くなった期間の低インフレ」の期間を短くすることを期待しているというお話になっておりますの。
・インフレ期待がアンカーされているのに何故低インフレの継続がリスクになるのか??
という大変に根源的な質問をしている人が居まして誠に良い質問。
『Question: Why is a prolonged period of low inflation representing a risk
if expectations are still so well anchored?』
で、ここでまあ確かにこの質問への答えでもあるのですが、微妙に筋を外した答えをしているのです。
『Draghi: Well, why did, may I say, our founding fathers actually want
to have something below but close to 2%? There were three reasons for this.』
何で「something below but close to 2%」なのかというさっき説明しかけていた件を聞かれもしないのに説明キタコレ。
『First of all, they very wisely thought about possible measurement errors
in HICP data, so they wanted to keep a significant cushion between price
behaviour and deflation. In other words, you may well have a situation
where you think that you are at say 1% inflation but, instead, it turns
out that you are actually at minus 2%. Unfortunately, this has happened
before, in other parts of the world.』
物価統計には計測誤差があるからデフレ入りしない為にはそれなりの糊代が必要であり、その数値からすると1%割れという水準は低いですってのはいいとして最後の「Unfortunately,
this has happened before, in other parts of the world.」ってのは言わずもがなではないかと思うのだが(−−;
『The second reason is that (and this is very relevant now) they thought
about the adjustment within the euro area, the rebalancing of the different
country members. They knew that these countries are very different. And
so, the possibility of having imbalances was always being looked at and
considered. Now, in order to rebalance these disequilibria, countries have
to go through a readjustment of their prices - since they do not have the
exchange rate, they have to readjust their prices. This readjustment is
much harder and difficult if you have zero inflation than it would be if
you have 2%. That was the second reason.』
ユーロ域内での国ごとにおけるリバランスが行われる際に、ユーロ適用域内の場合は為替レートで調整ができないので物価での調整が起きることになり、その調整をやりやすくするために2%近い水準がある方が良いとな。
『The third reason is that, as we have discovered in many other jurisdictions,
the effectiveness of standard measures of monetary policy is greatly reduced
as you reach the lower bound of inflation, as you go down to zero.』
伝統的金融政策はゼロ金利制約に達すると効果が逓減するので、そのための糊代が必要と。
『Finally, there is also a fourth reason why you want an inflation rate
of 2%, particularly in the current stage of a recovery which is still proceeding:
it is proceeding, but it is still relatively weak, it is uneven, it is
fragile (as I have said many times before) and, most importantly, it starts
from low levels. So the unemployment rate is still very high. Incidentally,
it looks like it is stabilising. But it is stabilising at the top, so it
is very important at this point in time to have lower real interest rates.
I think that is why it is important to have an inflation rate which is
close to but below 2%.』
足元の経済が弱いので物価が下がると実質金利が高止まりして経済の回復を阻害すると。
ということで、まあ聞かれもしないのに説明しているのですが、「だから1%割れの物価水準に低下し、さらにインフレ率の低迷が長期化しそうだから利下げしました」という説明をしておりますな。
で、もう一つの質問ポイントの「コミュニケーション」ということで、何でまたサプライズ利下げをしたんですかというのがあるのですが、時間ががががで(すいません)以下明日に続くのでありましたが、ちなみに先に結論だけ書いておきますと、「いえいえ今回のはごく通常の判断でして特に皆様にサプライズを与えようとしている訳ではありませんよ今説明したような理由ですから」という説明になっておりましたですぞな。
でまあこの説明も確かにそらそういう話になる罠と説明ロジックを読むと思うのですが、そうは言いましてもそのロジック市場向けとしては分かりにくいわと思うので、今後のECB金融政策も益々ヤヤコシスな市場とのコミュニケーションになりそうですなと思うのでした。
2013/11/08
お題「ECB利下げとな/短期市場雑談と10月MPM議事要旨での9月短国あばばばばーのレビュー部分」
デポジットファシリティーの金利は下がっていないな!!!!
○よ、予想外にも程があるわ・・・・・・・・・・(ECB利下げ)
ということでこれはビックリのECB
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2013/html/pr131107.en.html
PRESS RELEASE
7 November 2013 - Monetary policy decisions
『At today’s meeting the Governing Council of the ECB took the following
monetary policy decisions:
The interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem
will be decreased by 25 basis points to 0.25%, starting from the operation
to be settled on 13 November 2013.
The interest rate on the marginal lending facility will be decreased by
25 basis points to 0.75%, with effect from 13 November 2013.
The interest rate on the deposit facility will remain unchanged at 0.00%.』
ということで今回あっと驚く利下げでありますが、預金ファシリティーマイナスにしやがったらどうしようかと思ったらそっちは下がっていなかったので、まあ伝統的政策の利下げという形(ただしフォワードガイダンスがあるので100%伝統的では無いが)になったのですが、コリドアの下が25bpで上が50bpとなりまして非対称状態になりましたな。
ドラギ会見ですが、今回はさすがに大ネタ投下だったせいかQ&Aまでは(今見ている時点では)アップされておらず最初の説明のアップとなっております。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2013/html/is131107.en.html
Introductory statement to the press conference
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 7 November 2013
今回はドラギさんのワンマンショーとな。
『Ladies and gentlemen, I am very pleased to welcome you to our press conference.
I will now report on the outcome of today’s meeting of the Governing Council,
during which we took a number of decisions on key ECB interest rates, forward
guidance and liquidity provision.』
ということで。
『First, based on our regular economic and monetary analyses, we decided
to lower the interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem
by 25 basis points to 0.25% and the rate on the marginal lending facility
by 25 basis points to 0.75%. The rate on the deposit facility will remain
unchanged at 0.00%.』
これは上記の決定事項。
『These decisions are in line with our forward guidance of July 2013, given
the latest indications of further diminishing underlying price pressures
in the euro area over the medium term, starting from currently low annual
inflation rates of below 1%.』
でまあ利下げの理由ですが、中期的に物価上昇圧力が弱まっている事と、足元のインフレ率水準が1%を割っている事を挙げていますが、いやまあ確かにそらそうなのですが、これまで「足元で物価が弱まっているのは一時的で、中長期的なインフレ期待は確りアンカーされています(キリッ)」「物価の先行きリスクは概ね上下にバランスしています(キリッ)」と言っていたので、足元の物価数値1%割れ一発でいきなり利下げ打ち込むというのが意外。
ECBって大体従来のパターンだと事前に何らかの示唆(例えば今回は物価の先行きリスク認識をダウンサイドにするとか、物価動向などに関して何らかの警戒発言をするとか)をして事前に「お知らせ」があるというパターンだったのですが、今回は従来のパターンを外してきた形です。
しかしまあ何ですな、確かに市場ちゃんがECBが近いうちに利下げ必至という感じになっていたので、このパターンでやると実際に利下げする頃には「利下げじゃ足りんのでマイナス金利はよ」とか「利下げじゃ足りんので量的緩和はよ」という話になってしまっている可能性があって、市場にそう言われる前に先に利下げを打ったという事なのかもしれませんけど、Q&Aが出ていないのでその辺何かの質疑があると面白いですな。
つーてもMRO金利を25bpに下げてしまったのでこれで金利政策は打つ手無くなりました(いやまあ日銀みたいに10bpに下げるというプレイはあり得ますが)な。
『In keeping with this picture, monetary and, in particular, credit dynamics
remain subdued. At the same time, inflation expectations for the euro area
over the medium to long term continue to be firmly anchored in line with
our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』
マネタリーとクレジットの動きは抑制されていて中長期のインフレ期待は政策目標に沿ってアンカーされていますよという認識を示しているのですが、そこの認識をいじっていない上に先ほどの所で1%という数字が思いっ切り出ているので、何か足元の物価指数低下に思いっきり反応したような見せ方になっているのはちょっと微妙な気がします。つーのはつまり物価がどうのこうのという通常の金融政策運営(つまり危機対応で信用緩和政策をする場合は別)的には、金融政策の実体経済への波及に対するラグと勘案して理念的にはフォワードルッキング的に行う筈であり、しかも物価というのは基本的には遅行しやすいという事ですから、ここに示されているように中長期的なインフレ期待がアンカーされているという見方を利下げ前も利下げ後も変化させておらず、足元の物価が低下して暫く物価が低そうだから利下げするというのはちょっと運営的には妙ではあるんですよねと思います。
#ちなみに米国のQE2は「インフレ期待が低下するのを避けるため」という言い方をしていましたよね
『Such a constellation suggests that we may experience a prolonged period
of low inflation, to be followed by a gradual upward movement towards inflation
rates below, but close to, 2% later on. Accordingly, our monetary policy
stance will remain accommodative for as long as necessary. It will thereby
also continue to assist the gradual economic recovery as reflected in confidence
indicators up to October.』
でまあ足元の物価水準が低位状態にある事が長期化しており、先行きに関してもこのままだと物価の上昇ペースが緩やかなので低位水準の物価が継続するという見通しとなるので利下げしましたぞなという話です。
『Second, following today’s rate cut, the Governing Council reviewed the
forward guidance provided in July and confirmed that it continues to expect
the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an
extended period of time.』
ほーと思ったのですが、フォワードガイダンスをレビューしまして「ECBの政策金利は相当の期間に渡って現在の水準またはより低い水準であることを期待する」という7月のガイダンスを確認しました、という言い方をしていますが、この「7月のガイダンスを確認」というのとフォワードガイダンスにある政策金利の「present
or lower levels」という「より低い」方はまあいいのですが「現在の」というのが0.50%を意味するのか0.25%を意味するのかが微妙にワカランチ会長なので質疑で誰か聞いたかな???
『This expectation continues to be based on an overall subdued outlook
for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness
of the economy and subdued monetary dynamics.』
経済及びマネタリーのダイナミクスの幅広い弱さに基づきまして中期的にインフレが引き続き全体的に抑制されているという見通しに基づいてこのフォワードガイダンスを確認しましたとかそんなことをゆうとる。
『Third, we continue to monitor closely money market conditions and their
potential impact on our monetary policy stance. We are ready to consider
all available instruments and, in this context, we decided today to continue
conducting the main refinancing operations (MROs) as fixed rate tender
procedures with full allotment for as long as necessary, and at least until
the end of the 6th maintenance period of 2015 on 7 July 2015.』
固定金利フルアロットメント方式のMROを2015年7月実施のオペレーション分まで継続することを決定ということですのでこれは足が伸びたのですが、3年LTROとかの派手目のオペに関して手を付けていないのはまあ次のタマ取っているんでしょという感じですかねえ、よー知らんけど。
『This procedure will also remain in use for the Eurosystem’s special-term
refinancing operations with a maturity of one maintenance period, which
will continue to be conducted for as long as needed, and at least until
the end of the second quarter of 2015. The fixed rate in these special-term
refinancing operations will be the same as the MRO rate prevailing at the
time.』
MRO以外のスペシャルタームオペレーションに関しても2015年6月いっぱいまでのオファー分について継続しますとな。
『Furthermore, we decided to conduct the three-month longer-term refinancing
operations (LTROs) to be allotted until the end of the second quarter of
2015 as fixed rate tender procedures with full allotment. The rates in
these three-month operations will be fixed at the average rate of the MROs
over the life of the respective LTRO.』
なお3か月LTROについても同様に2015年6月末までのオファー分について継続ですが、1年とか3年とかのLTROの話はしておりませんな。
○しかしながら経済物価のリスク認識とかは変わっていないのですよね
でまあ景気と物価の全体感、先行きリスク認識ですが・・・・・・・・
『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis.』
でまずは経済の話だが引用だけにしておきます(汗)。
『Real GDP in the euro area rose by 0.3%, quarter on quarter, in the second
quarter of 2013, following six quarters of falling output. Developments
in survey-based confidence indicators up to October are consistent with
continued, albeit modest, growth in the second half of the year.』
ここまでが現状認識。
『Looking ahead, output is expected to continue to recover at a slow pace,
in particular owing to a gradual improvement in domestic demand supported
by the accommodative monetary policy stance. Euro area economic activity
should, in addition, benefit from a gradual strengthening of demand for
exports. Furthermore, the overall improvements in financial markets seen
since last year appear to be gradually working their way through to the
real economy, as should the progress made in fiscal consolidation.』
この辺が先行き見通しな。
『In addition, real incomes have benefited recently from generally lower
energy price inflation. This being said, unemployment in the euro area
remains high, and the necessary balance sheet adjustments in the public
and private sectors will continue to weigh on economic activity.』
しかし物価下がってケシカランと言って利下げしているのに全般的にエネルギー価格が低下しているので実質所得が高まってウハウハですよとか言うのか?とは思いますけどね。
で、経済の先行きリスクは引き続きダウンサイドに寄っているという話が続きます。
『The risks surrounding the economic outlook for the euro area continue
to be on the downside. Developments in global money and financial market
conditions and related uncertainties may have the potential to negatively
affect economic conditions. Other downside risks include higher commodity
prices, weaker than expected domestic demand and export growth, and slow
or insufficient implementation of structural reforms in euro area countries.』
この部分ってまんま前回と同じです。
物価に関して。
『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation
decreased in October 2013 to 0.7%, from 1.1% in September. This decline
was stronger than expected and reflected, in particular, lower food price
inflation, a larger fall in energy prices and some weakening in services
price inflation.』
低下幅が予想以上ですってよ奥様。
『On the basis of current futures prices for energy, annual inflation rates
are expected to remain at low levels in the coming months. Underlying price
pressures in the euro area are expected to remain subdued over the medium
term. At the same time, inflation expectations for the euro area over the
medium to long term continue to be firmly anchored in line with our aim
of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』
ふむ。
『Such a constellation suggests that we may experience a prolonged period
of low inflation, to be followed by a gradual upward movement towards inflation
rates below but close to 2% later on.』
まあ先ほどの説明と同じですな。
『Taking into account today’s decisions, the risks to the outlook for
price developments are broadly balanced over the medium term. Upside risks
relate in particular to higher commodity prices as well as stronger than
expected increases in administered prices and indirect taxes, and downside
risks stem from weaker than expected economic activity.』
で、今回の決定を含めて考えますと物価のリスクバランスは概ねバランスという事で、こういう説明だと
思いっ切り足元の物価低下に反応したような取られ方になりますなあと思うのでした。
ということでとりあえずECBネタはこの辺までで。
○またまたジャパンの短期市場がががががが
まずは3MTB入札結果である。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20131107.htm
(3)募入最低価格 99円98銭4厘0毛 (募入最高利回り)(0.0596%)
(4)募入最低価格における案分比率 22.4232%
(5)募入平均価格 99円98銭4厘2毛 (募入平均利回り)(0.0588%)
ということで堂々の0.06%割れとなった訳ですが、先週の3MTBが0.0726%/0.0733%でして、水曜の6MTBが0.0618%/0.0618%だったのですが、今回は2日連続の入札で(期間が6Mと3Mと違うとは言え)後になって入札した新発短国の方が金利低下しやがるというどこかで見たようなパターンになりまして、これはどう見ても短国市場のボーナスステージ(買い方的に)終了のお知らせです本当にありがとうございましたという風情でございました。
何せ今月は日銀買入の短国が7兆円以上償還する予定になっていまして、さらにどこからどう見ても絶賛残高減少予定の固定金利オペのロールが大体1.5兆円とかありまして、最近の歩留まり具合だと下手すると1兆円位固定金利オペの残高が落ちそうで、その分を短国買入で埋めるとなると今月の短国買入って(先週も2兆円でしたが)どう見ても2兆円ペースでジャンジャン打ち込まれていくでしょうとなる訳です。
ちなみに今月の資金需給見込みはこちら。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1311.htm/
でまあ財政要因で今月は不足月になるので月末のMB(というか当座預金残高)の着地を前月から減らさないようにとかするとその辺も勘案して買入等が必要になるとか考えるとまあ11月は短国買入オペ要因で短国需給が引き締め気味になる罠というのは衆目の一致する所だったのですが、今日の短国買入を前に金利が下がるとはぐぬぬぬぬ。
そんな入札が終わって(入札後も短国は堅調)CP買入の結果が引け後に出た訳ですが・・・・・・・・
木曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of131107.htm
CP等買入 4,500 2013年11月12日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,500 2013年11月11日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,500 2013年11月11日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2013年11月11日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 8,000 2013年11月11日 2014年2月10日
国債補完供給(国債売現先)・即日(注3) 2,000 2013年11月7日 2013年11月8日
オペ結果(結果通知順に表示されるので上と順序が違う)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba131107.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 7,569 2,507 0.000 0.001 37.0
国債買入(残存期間3年超5年以下) 13,926 3,501 0.002 0.003 49.6
国債買入(残存期間5年超10年以下) 11,944 4,010 -0.005 -0.003 23.4
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(11月11日スタート分) 2,440 2,440
国債補完供給(国債売現先)・即日(注4) 97 97 -0.400 -0.400
CP等買入 5,954 4,244 0.042 0.079 34.0
>CP等買入 5,954 4,244 0.042 0.079 34.0
>CP等買入 5,954 4,244 0.042 0.079 34.0
>CP等買入 5,954 4,244 0.042 0.079 34.0
まあそもそも事前にそういう話がありましたが、CP買入の額が多い上に、ここの所趨勢的にCP発行額が減少傾向(事業会社さん中心にCP発行が社債発行に振り替わっているから)となっている中でまあこれだけ買入打ち込んだらレート下がります罠という所ではあるのですが、0.042%ってこらまた豪快に下がりましたなという所ではあります。
いやまあ確かにQQEの資産買入の中でコンポーネントごとに残高の目途が張り付いているから残高達成の為に買わないといかんというのは分かるのですが、CPの場合はそもそもCPの発行需要が無ければ発行が減る訳でして、そのあの日銀様の残高目標の為に市場のCPが減っている中でジャンジャン購入されますと需給が変な形で逼迫してしまうのですがと思いますし、これがまあ社債とかで少し足が長いのであれば金利が低いので発行しておきますかとかいう話になるかも知れませんが、CPの場合所詮は数週間から数か月の短期調達ですので金利が低いからと言ってよーしパパCPをたくさん発行しちゃうぞーとは普通ならないと思われ、別にこれでCP発行意欲が盛大に高まるとも思えませんので、下がったのが下がったまま攻撃になりそうな悪寒。
いやまあオペ止めてCPの金利だけホイホイ上昇されてもQQEの建付け的に変だから買入すんなという話では無いのですが、しかしこの金利はという所で、本日は先ほども申し上げましたように短国買入が想定される中で前日にこーゆーのを見せられると誠にアレという所ですな、うんうん。
ということで債券市場が2日掛けて下げた分を1日で取り返して押し目待ちに押し目無しですなあなどという話題では無く局地的な市場雑談をお送りしました(−−;
○いやあ一時的要因ですかそうですか(10月MPM議事要旨ネタの続き)
まあ何ですな、そんな短期市場様なのでございますが・・・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g131004.pdf
『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の所ですが、政策変更なしはまあ良いと致しまして、9月の末に掛けて短国レートなどが盛大に低下してあばばばばーとなった件について議論が有りましてですな、
『最近の短国レート低下の影響や短期オペの応札倍率の低下について、多くの委員は、中間期末を控えた短国保有ニーズの高まりという一時的な要因が影響しているとの認識を示した。ある委員は、マネタリーベースの積み上げは予定通り進捗していると指摘した。別の一人の委員は、「量的・質的金融緩和」が効果を発揮するためには、目標に沿って積み上げを進め、経済主体の期待に働きかけ続けていくことが重要であるとの認識を示した。こうした議論を経て、委員は、期明け後の状況を含めて今後の動きを注視しながら、マネタリーベースの着実な積み上げを図っていくことを確認した。』
「中間期末を控えた短国保有ニーズの高まりという一時的な要因」っていやまあそれはそういう面はありましたけど、そもそも一番買っているのは日銀様でございまして、かつ短国の買入というのはQQEを継続してMB拡大を行っている中では趨勢的に拡大される訳でございますので、これは「MB拡大におけるオペレーション上の問題が発生する兆候」という危機感を持って頂きたい訳でして、先程も申し上げましたように今月については短国買入のペースが上がる関係上、その間に何らかの需要側の要因(海外要因とかバランスシート要因とか)で短国のニーズがピョコンと高まるとアチャーという展開になったりしますので、まあこれで今月短国のレートが下がった時にMPMでどういう話になるのかは鑑賞したい所ではありますな。
ま、こちらはあくまでも「議事要旨」でありますので、あまりそのオペレーションの限界ががががみたいな話を思いっきり書くのも如何なものかということで、上記表現の中にある「期明け後の状況を含めて今後の動きを注視しながら、マネタリーベースの着実な積み上げを図っていく」という辺りに金融市場局に対して何かちょっとアレだがとりあえずお前ら何とかうまくMB積み上げ頑張れやという部分が含まれているかなとも思いますので、まあそれはそれとしてという事なのかもしれません。
しかし今年の年末に関しては(どうせ12月は財政要因資金余剰ですし)MB達成楽勝としまして、来年末に向けてここから60兆から70兆円程度MB拡大ってどういう姿になるんでしょうなあ。
#ということで何か議事要旨ネタが小出しで誠に恐縮ですがまだ続くかも知れませんし続かないかもしれません(大汗)
2013/11/07
お題「大阪での総裁会見から論点を少々/10月1回目のMPM議事要旨から少々(その1)」
連銀の人たちが色々と発言しているのですが、ヘッドラインを見ただけだとヘッドライン詐欺に引っかかる可能性があるので読まないといけませんよね。
ピアナルトさん
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0IR56820131106
米FRB、量的緩和継続には慎重期すべき=クリーブランド地区連銀総裁
2013年 11月 7日 03:38 JST
ローゼングレンさん
http://jp.reuters.com/article/idJPTYE9A302D20131104
米FRB、緩和縮小時期決定で辛抱強く見極め可能=ボストン連銀総裁
2013年 11月 5日 08:29 JST
ウィリアムズさん
http://jp.reuters.com/article/idJPTYE9A500320131106
米FRB、経済に自信持った時点で債券買い入れ終了すべき=SF連銀総裁
2013年 11月 6日 10:21 JST
ラッカーさんの場合はあまり読まなくても端から言う事明白と思いますが(^^)
http://jp.reuters.com/article/idJPTYE9A407S20131105
米FRBのQE縮小、財政問題に左右されるべきでない=地区連銀総裁
2013年 11月 6日 07:52 JST
・・・・・・・・・・しかし月初早々に3連休を打ち込まれると後続の仕事が押すのでてーへんでございますことよマッタクモウorzorz
#ということで週末は読み物祭りですかねえ(汗)
○黒田総裁会見からサラサラと
大阪での講演は会見もついているので金懇と同じ感じですな。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1311b.pdf
・中小企業金融に関して
質疑の最初の所で中小企業に成長資金をという要望が有ったという話がありまして、それを受けてこんな質問が。
『(問) 先程、何度か、話題あるいはテーマに出てきている、「中小企業向けに長期の資金が回るようにして欲しい」、「そういうふうに日銀のほうで配慮して欲しい」という声が何度か出ているのですが、これについては、何か具体策をお考えでしょうか。』
まあ現実問題としてはこれって日銀がどうこうするというよりは金融行政の方で信用保証制度とか公的金融機関とかその他の制度対応の世界ではないかという気もしますが、まあこんな答えでございます。
『(答) 本日の懇談会でもお話したように、日本銀行は、成長基盤強化支援と貸出増加支援という2つの仕組みを持っており、これは、大手銀行も地銀その他もかなり活用しています。その最終的な借入者の中には、中小・中堅企業も沢山あるようで、そうした意味では――中小企業だけに対する仕組みではありませんが――、中小・中堅企業、特に、成長していく産業に対する低利融資、比較的低い金利での貸出を支援する仕組みがありますので、大いに活用して頂きたいですし、現に、かなり活用されていると思います。』
ふむ。
『また、特に、地銀など、中小・中堅企業と密接な関係を持っている地域金融機関も貸出を増加させています。その増加のテンポ自体は、実は、大手行よりも高いのですが、大手行は、もともとマイナスの伸び率だったのが、最近、急速に伸び率を高めてきているのに対し、地域金融機関は最近特に伸び率が高まっているわけではありません。今後、もう少し中小・中堅企業向けに、前向きの設備資金の供給が進むことが望ましいとは思っています。』
この辺って今回のFSRでも一つのテーマになっていましたな。
『このように、そういうことができる金融的な環境は十分整っているとは思います。』
まあ現状で日本の場合は資本制約がどうのこうのとかいう形でのクレジット供給不足が問題になっている訳でないですから「金融的な環境は十分整っている」というのはそうです罠。
『ただ、そうした地域金融機関と中小・中堅企業との関係で、中小・中堅企業側の業況判断や、それとの関連で、中小・中堅企業側の設備資金あるいは運転資金という需要サイドの状況もありますし、供給サイドとしての地域金融機関側は、貸出をする場合、当然ですが、そのプロジェクトなり、企業なりの将来性等を勘案して貸しますので、私どもが、一方的に押し付けるというわけにはいきません。』
そらそうよ。
『それでも、先程申し上げたように、現在、貸出の伸び率自体は、比較的、地域金融機関の方が高くなっています。再生エネルギー関係、医療関係あるいは不動産関係などの資金需要はある程度伸びており、そうした中小・中堅企業に対する地域金融機関の貸出も伸びているということだと思います。』
『中央銀行としては、今後も最大限の努力を重ねていきたいと思いますし、今後、中小・中堅企業も、業況感の改善とともに、設備投資も伸びていくのではないかと期待しています。』
この辺まさにFSRでの話ですな。
・金利が下がっているのはインフレ期待が下がっているからのではないかという質問
『(問) 長期金利についてお伺いします。先程の講演の中でも、日本の長期金利は0.6%ぐらいで安定しているというお話がありました。これは、異次元緩和の効果ということも言えるかと思いますが、予想インフレ率が上昇すると名目金利も上昇していくことが見込まれます。これに関して、現段階で、金利が上がらない、あるいはじりじりと下がっていくことについて、総裁はどのようにお考えでしょうか。』
インフレ期待が下がっているんじゃネーノという質問では無いですが、どこからどう見てもそういう質問ですな。まあインフレ期待が下がっているのではなくて、市場の見るインフレ期待が日銀の2年で2%達成無理ですから追加緩和待ったなしという見方をしているという事なのかもしれませんが。
『(答) インフレ期待は、先程の懇談会でご説明した資料の中にもあるように、物価連動国債を使って計算される、いわゆるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)などをみても、最長期のもので1.6%〜1.7%というところまできていますし、エコノミストの予想も、1%台半ばくらいのところまできています。』
「最長期のもので1.6%〜1.7%」というのはどういう計算をするとそうなるのでしょうか???たぶん10年新発のBEIは1%をちょっとだけ切る程度の水準だと思うのですけど・・・・・・・・
『そういった意味で、色々な形で、インフレ期待は、徐々にではありますが、上昇してきていることは間違いないと思います。他方、そうした中でも、長期金利は低位安定しており、このところ、若干下がり気味で0.6%くらいになっていること自体は、「量的・質的金融緩和」のもとで、大量の国債を購入していることによる金利低下圧力が効いているということであり、その結果として実質金利は低下を続けており、一部にはマイナスになっているという見方もあるかもしれません。』
ほほう。
『そういうことで、インフレ期待が徐々に上昇している中でも、長期金利は、現在のところ低位で安定している結果、実質金利は下がっているということで、「量的・質的金融緩和」が効果を表しているということだと思います。』
まあ何ですな、実際問題としてコストプッシュとか間接税増税ドリブンで物価が上昇したりインフレ期待が上昇したりしている中で金利が低位安定している状況というのはそらまあ定義上は実質金利が低下するという事になるのでしょうが、その場合って実際問題としてその実質金利の低下が投資意欲を本当の本当に刺激することが出来るのでしょうかというのは甚だ疑問な気もするのですけどねえ・・・・・・・・・
『(問) 現状の動きについて、特に懸念を持たれているということはなく、政策の効果が出ているという方に、むしろ重きを置いておられるのでしょうか。』
これは良い追撃(^^)。
『(答) 物価上昇率がさらに上がっていき、インフレ期待も上がっていくもとで名目金利がどうなっていくかは、今後の注目点だとは思います。しかし、「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するのに必要な時点まで続けるわけですので、大量の国債購入による長期金利に対する低下圧力は続きます。従って、インフレ期待が上がっていき、それに伴い、仮に名目金利が上がるとしても――現在は下がってきているわけですが――、その上昇の程度は、より小さく、やはり実質金利は下がり続けていくだろうと思います。そういうことで、「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」が安定的に達成されるのに必要な時点まで続け、引き続き効果を持っていくと考えています。』
どうも景気が刺激されて需給ギャップが改善して行く中で実質金利を低めに推移させることの効果を前面に出している(昨日引用した講演でもそういう話になっていた)のですが、それって時間が少々掛かる話であって、それよりももっと開き直って(これまた昨日引用した講演の中でもその説明がちらっとありましたが)コストプッシュでも為替ドリブンでも間接税効果でも何でも良いので、まずは「物価は上昇するものだ」という現象を発生させることによって「期待の転換」を促進して経済主体のインフレ期待を無理繰りにでも引き上げてフィリップスカーブを上方シフト(あるいは曲率のスティープ化ですかねえ)させてしまうという方が「短期間でのデフレマインド払拭」という意味では実践的なような気がします。
つーかですな、2年で2%を達成するためのメカニズムという話をする際に、どうもこの「需給ギャップが改善する中で実質金利が低いのが効果を」という話と、「期待を(やや強引であっても)転換することによってフィリップスカーブを上方シフトさせる」という話がまあ2本柱で有る事は分かるのですが、どうもこの柱に関するウエイトの置き方が説明をする人によっても微妙にぶれていますし、黒田総裁の説明を見てもこの2つの間で微妙にぶれている感じがします。まあどちらも重要と言ってしまえばそれまでではあるのですが、確かに国民厚生という点で言えば前者の方が正統的な話かも知れんですが、「デフレはそれが長期化することによって脱却することが難しくなる(きさらぎ会での講演)」という点からすればそこは後者のやや開き直りモードが必要であって、それこそが異次元緩和の異次元たる所以だと思うのですが、異次元緩和実施しているんですから異次元攻撃を継続して頂きたい訳で、ちょっと経済物価情勢がシナリオ通り進行しているからと言って政策の次元を異次元から通常の次元の説明重視にしないで欲しいなあとは思うのですけどね。
#なお、異次元にしたから行くかというとそれは別問題ですが(−−;
・出口政策どうのこうのの質疑だが・・・・・・・・
質問は講演後の質疑であったんですね。
『(問) 懇談会において、緩和の出口について質問があった中で、総裁が「現時点では具体的な議論は時期尚早だ」と述べられる一方で、「もとより出口の当てもなく入口に入ることはない」と述べておられましたが、この「当て」というか、その点についてどのようにみていらっしゃるか。』
まあ「出口の手段は色々ある(キリッ)」と言っていたFEDが出口どころかただの緩和拡大ペース縮小ごときであのテイタラクというのを見るとさてどうなんでしょうというのは興味の起こる所です。
『(答) 懇談会でも申し上げた通り、現在、出口戦略について具体的に議論するのは、やはり時期尚早だと思います。足許、生鮮食品を除く消費者物価の対前年比が0.7%とプラスにはなっていますが、「物価安定の目標」である2%からは、まだまだ程遠いわけです。』
>足許(略)「物価安定の目標」である2%からは、まだまだ程遠いわけです
ほっほーという所でございますが、出口がどうのこうのの話のどさくさに紛れて現状を目標からまだまだ程遠いと定義したのは後で自分の首を絞めることにならないと良いですな(棒読み)。
『何度も申し上げているように、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するのに必要な時点まで現在の政策を続けるという、まだ途上ですので、今から具体的に出口戦略を議論することは、やはり時期尚早であろうと思います。』
まあそういう話をしたかったのでしょうが、じゃあ例えばCPIが1%だったらどの位遠いのかとかその辺の定義が論点になってくると実際問題として物価安定目標の定義そのものが微妙に曖昧なまま放置されているという問題が出てくるでしょうなあと思うのでありました。
『このように申し上げるのは、出口の議論になってくれば、当然、その時の経済・金融情勢等々と関連して議論されるわけですので、そういうことについて、今から、こう仮定したらこうなるとか、ああ仮定したらああなるとか、色々言うこと自体、あまり現実的な意味はありませんし、かえって市場に余計な雑音を与えてしまうことになります。従って、やはり、今の時点で出口戦略を具体的に議論するのは、時期尚早であると思います。』
まあこれはそうですけどね。
で、他の質問。
『(問) 先程の出口戦略について、もう少しお尋ねしたいのですが、「時期尚早だ」ということですが、一方、「内部、日本銀行の中で考えていきたい」というようなことをおっしゃったと思うのですが、これは、今後、議論を公表はしないが、内部で検討を進めていくということなのか。さらに、出口戦略については、やはり今まであまり踏み込んでおっしゃらなかったにもかかわらず、本日、おっしゃったということは、何らかのメッセージを市場に与えようとしたのか、あるいは、副作用を気にする人もいるので、あまり心配しなくてよいというメッセージを与えたかったのか、その辺をお伺いします。』
(・∀・)
『(答) あまり深読みして頂く必要はないと思います。従来から申し上げていることと全く変わっておりません。先程申し上げたように、基本的に、今の段階で出口戦略について具体的に云々することは時期尚早であると考えています。』
FEDがTaperingトークをすることによって結果的に市場金利を経済実態から適正と思われる水準から大きく上振れさせることによって経済に悪影響を与えたというチョンボ事案が発生していますので、まあ導入時点よりはその辺マズーではないかという認識はあるとは思いますし、だからまあ質問に対してそのような回答になったのかなとは思いますが。
とまあそんな感じで。
○10月一発目のMPM議事要旨はそんなに面白くないのですがががががが
正直総裁会見の方が面白かったのでつい時間を大消費してしまったので続きがあるかも知れません。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g131004.pdf
・景気の先行きに関する認識がここの文言だけ見ると大きくぶれていないような気がする件
『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の所なんですけどね。
『景気の先行きについて、委員は、生産・所得・支出の好循環が続くもとで、緩やかな回復を続けていくとの見方を共有した。』
ふむ。
『複数の委員は、景気が持続的に回復していくためには、内需から外需、非製造業から製造業へと回復の動きが拡がっていくことが重要だが、これまでのところ輸出や生産の回復ペースは力強さを欠いていると指摘した。』
『一人の委員は、製造業には海外経済の回復の後ずれなどにより下振れる可能性がある一方、非製造業には高齢化に対応したサービスなどの需要掘り起こしが進むことにより上振れる可能性があるとの認識を示した。』
だそうなのですが・・・・・・・・・・
『委員は、先行きも国内需要が堅調さを維持していくためには、雇用・所得環境の改善が消費を支えるという前向きの循環が持続することが重要であるとの見方を共有した。そのうえで、委員は、雇用者所得について、今後、持ち直しの動きが次第に明確になっていくとの認識で一致した。』
うーむ、ここの認識が一致していると前向きの循環メカニズムで堅調な内需がサステイナブルに推移するという話になるのですよね。ちなみに現状認識についてはこういう話になっているのですけど。
『わが国の景気について、委員は、企業・家計の両部門で所得から支出への前向きな循環メカニズムが働いているとみられることから、緩やかに回復しているとの見方で一致した。』(これは今引用している部分のちょっと前の方にある話です、為念)
これがまた日本語マジックとしか申し上げようが無いのですが、「一致した」という文言がどこの部分に掛かるのかが非常に解釈が難しくて、「緩やかに回復しているとの見方」が一致したのは日本語の文法的に間違いないのですが、問題はこの「前向きな循環メカニズムが働いているとみられる」という部分でありまして、この部分について一致したのかしていないのかが日本語文法的に曖昧になっているのが議事要旨作文マジックとしか申し上げようがない所でございます。一瞬読むと一致しているようにも見えるのですが、実際問題として一致しているなら展望レポートの見通しがあれだけ上下にぶれる訳がないのでありまして(^^)、はてさてこれはどう解釈したら良いんでしょうと申しましてもこればっかりは低い方の見通しを出していると思われる審議委員の皆様の見解をお伺いしないとワカランチ会長なので金懇キボンヌという所ですな。
で、まあ話を戻しまして。
『ある委員は、とくに定例給与の増加が重要であるとの見方を示したうえで、労働市場の流動性が低いわが国では、正社員を繋留するために定例給与を引き上げるインセンティブが経営側に生じにくいと指摘し、賃金引上げに向けた各種取り組みの成果に期待していると述べた。』
なるほど。
『別のある委員は、来年春の定例給与引上げに期待しているが、それまでの間は賞与による押し上げ以外に所得環境の目立った改善は見込みにくいとの認識を示した。』
まあそうです罠とは思いますが、労働需給にスラックがある状況(何か展望レポートでは労働需給について引き締まりという話があるし、さっきの黒田総裁会見でも(引用割愛しましたが)労働需給に関しては結構強めの話をしているので日銀の認識はそうでない可能性がオオアリクイですので念の為申し添えます)の中で無理繰り定例給与の引き上げを行うと、他の部分(非正規とか新規雇用とか)に皺寄せが行くだけのような気もするんですけど、その辺に関する論点ってどうなんでしょうかねえ。
で、消費税の影響に関して。
『消費税率引上げの影響について、一人の委員は、労働生産性の上昇を背景に消費者の恒常的な所得見通しが改善すること、雇用環境が改善するもとで家計の借入制約が弱まり消費を平準化しやすくなること、低所得者層への影響緩和措置が講じられることなどから、個人消費の下振れリスクはある程度抑制される可能性があるとの見方を示した。』
そ、そうなのか・・・・・・・・・・
『この点に関連して、ある委員は、わが国の産業構造に占めるサービス産業のウエイトが高まる中で、そうした産業の相対的に低い労働生産性をいかに引き上げるかが賃金上昇の鍵になると指摘した。』
上昇しませんなそら。
『政府の経済政策パッケージの効果について、複数の委員は、景気が下振れる可能性は低下したと述べた。』
まあそらそうですが、財政サステイナビリティーの話はという件に関してはイイシテキダナーな部分があるので紹介しようと思ったら時間ががががなので続きは明日。
#とか言ってるうちに展望レポート全文ネタがドンドン後回しになっていましてすいませんすいませんすいません
2013/11/06
お題「総裁講演が展望レポートダイジェストみたいな感じなので予定を変更して安定の総裁講演をお送りします」
食品の表示がどうのこうのよりも、アタクシの場合はいつも買っていた食品の内容量が突如10グラム減った時のしょんぼり感の方が強いのですけどね。特に真空パック物(ハムとか)の場合同じパッケージで10グラム減ると商品を手に取った瞬間に気が付いて意味も無く敗北感を受ける(ので結局買わない^^)のでパッケージのサイズを変えた方が良いんじゃないかと思うアタクシはセコいですかそうですか(−−)。
#まあ既に作っている分があるからという事かも知れませんけどね
というしょぼい話は兎も角として総裁講演が展望レポートの論点説明にもなっていてダイジェスト版という感じなので予定を変更して総裁講演をお送り致します。
○総裁講演は展望レポートのダイジェストっぽくもあり
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131105a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 大阪経済4団体共催懇談会における挨拶 ──
ということで総裁講演なのですが、これがまた(当たり前ではありますが)展望レポートのまんまという大変に素敵な講演でして、これ展望レポートをネタにする前にネタにすると展望レポート関連の論点を食うわ(笑)という感じで、まあ実に安定の講演ではあります。
・先行き日本経済の注目点(内需その1)個人消費
『今後の日本経済を展望するうえで、特に注目すべき点を2つ挙げると、ひとつは堅調な内需の持続性、もうひとつは海外経済の先行きです。』
ということで先行き日本経済の注目点は内需の持続性と海外経済の先行き、というのは展望レポートでも示されていますがまずは『(堅調な内需の持続性)』という小見出し部分から。
『まず、内需の持続性からお話しします。今回の景気回復の特徴は、個人消費や公共投資といった内需を起点として、非製造業部門が回復を牽引していることです。これは、輸出と生産の増加が起点となって、製造業部門を中心に景気が回復するという、戦後の日本の景気回復の典型的なパターンとは異なっています。実際、製造業の生産はリーマン・ショック前のピークの約8割にとどまっている一方、非製造業の経済活動の状態を示す第3次産業活動指数はリーマン・ショック前の水準近くまで回復しています。また、短観の業況判断DIをみても、今回の回復局面では、非製造業の業況感が、製造業の業況感を上回って推移しています(図表2)。』
『堅調な内需のうち、個人消費については、団塊の世代を始めとするシニア層の活発な消費行動が下支え要因として底流に作用するもとで、年初以来、消費者マインドの改善、株価上昇などによる資産効果が押し上げに働いてきました(図表3)。それが、最近では雇用・所得環境の改善にも支えられる姿になってきています。』
>最近では雇用・所得環境の改善にも支えられる姿になってきています
ということで、展望レポートでも全力で説明しているのですが、とにかく今回の展望レポート、つーかその前の金融経済月報からそうですけれども、日銀の認識としては「前向きの循環メカニズムが働いている」「労働市場は引き締まってきている」というホンマカイナという感じがする強い認識になっていまして、その結果個人消費の現状認識に関しても従来は資産効果とかマインドという持続性の怪しいものをドライバーにしていたのが、雇用所得環境改善という持続性があるという話になっている訳ですな。
『すなわち、雇用情勢をみると、失業率や有効求人倍率がほぼリーマン・ショック前の水準まで回復するなど、雇用環境は緩やかながらも着実な改善が続いています。企業側の雇用不足感も高まっています(図表4)。こうした雇用環境の改善は、賃金にも影響し始めています。1人当たり名目賃金は、夏季賞与が3年振りにプラスとなるなど、全体として下げ止まりつつあります。』
所定内給与ェ・・・・・という話はこの直後に。
『1人当たりの所定内給与は未だ前年比マイナスとなっていますが、これには女性やシニア層のパート形態での労働参加が進んでいることで労働時間が短時間化していることも影響しています。』
なんという物は言いよう。
『いずれにしても、雇用者数は増加していますので、雇用者数と1人当たり賃金を乗じた雇用者所得は、前年比プラスに転じてきています(図表5)。このように、所得環境も全体として改善しつつあります。』
とまあそういう事で
『先行きについては、景気が緩やかに回復するもとで、雇用環境の改善傾向が続き、1人当たり名目賃金にも、次第に上昇圧力がかかっていくとみています。また、やや長い目でみれば、労働需給の引き締まりの影響に加え、予想インフレ率の高まりもあって、賃金の上昇傾向がはっきりしてくると考えています。』
賃金の上昇傾向がはっきりしてくるとな!!
『もとより、企業を取り巻く競争環境が厳しいことは認識していますが、企業収益が改善するなかで、「政・労・使」の連携による取り組みもあって、賃金の上昇につながることを期待しています。』
ということで、個人消費と雇用環境に関しては認識を強めているのもさることながら、その内容がひじょーに質的にも強いものになっているとの説明になっていまして、それをベースに先行きの見通しが立っているのですから、どう見ても日銀の見通しは「持続性のある個人消費の拡大」という話になりますな。
でまあやや話はずれるのですが、以下も内需に関してやたらめったら強い認識を示しており、つまり日本経済は「内需主導で今後も持続的回復」という基本認識を示している訳で、そんな認識を示して居る中で急に追加金融緩和を実施するという方が日銀のロジックを考えれば変としか思えないのですけれども、何故か知らんが(というか判るのだが^^)何とかストの皆さんにおかれましてはもう追加緩和が来年4月までには実施で問題はやるかやらないかではなく何をするのかという位のレポートがホイホイ出てきているのはどういう事なんでしょうね。
・先行き日本経済の注目点(内需その2)設備投資
『内需の先行きを考えるうえで、もうひとつ重要なのは、企業部門における設備投資の動向です。設備投資については、今回の景気回復の特徴を受けて、これまで非製造業が底堅く推移してきましたが、最近では出遅れていた製造業にも改善に向かう動きがみられており、全体として持ち直しています(図表6)。』
キタコレ。
『先行きの設備投資を巡る環境をみますと、「量的・質的金融緩和」のもとでの緩和的な金融環境が、設備投資を後押ししていくと考えられます。』
この話は展望レポートでも示されていまして、まあ基本的に前回の時点でもそういう話をしていて、今回の展望レポートではさらにその見通しをサポートする材料が増えましたよという感じの話になっておりまする。
『すなわち、投資採算の観点からすると、景気回復に伴い資本収益率が上昇していくと同時に、予想インフレ率の高まりなどを反映して実質金利は低下していくと考えられますので、金融緩和の投資刺激効果は強まっていくとみています。』
予想インフレ率上昇で実質金利が低下するので投資刺激効果とな。
『また、各種企業減税の効果も、資本コストの低下やキャッシュフローの上振れといったルートを通じて設備投資を支えていくと考えられます。さらに、これまでの企業の投資抑制姿勢を反映して、設備の老朽化が進んでいることから、設備の維持更新投資に対する潜在需要は強まっているとみられます。経済活動の水準がさらに高まり、企業収益の改善が続けば、循環的にそうした需要が顕在化しやすい状態にあります。』
ちなみに各種企業減税効果云々は今回の展望レポートで新登場しています。なお、展望レポートでは成長力強化の取り組みによって企業の成長期待が高まって設備投資意欲が拡大というような絵も描いてありましたが、さすがに相手が経済団体なのでそこまで書くのは図々しいという認識になったのかどうかは知りませんが、そこは割愛されていますな。
・先行き日本経済の注目点:海外経済
『次に、海外経済の展望についてお話しします。先ほど申し上げたように、日本経済は、先行き、内需が堅調さを維持するなかで、外需も緩やかながら増加していくと想定しています。その前提として、海外経済については、金融資本市場が総じて落ち着いて推移するもとで、次第に持ち直していくとみています。IMFが先月公表した世界経済見通しでも、世界経済の成長率は、2013
年の2.9%から、2014 年は3.6%となり、2015 年は4.0%と次第に伸びを高める予想となっています(図表7)。』
基本的には海外経済の見通しはIMFの数字と大体同じですよというのが展望レポートの見通しの前提になっています。でまあ地域別の展開を引用しようと思ったのですが、大概に長くなってしまいますので割愛しますけれども、米国、欧州、中国に関してはリスクはあるけど見通しは強めになっていまして(ちなみに4月展望レポートで懸念されていた日中関係悪化による輸出の減少という話は無くなっていますな、まあそうでしょうけれども)、弱めなのは新興国となっています。
『このように、各国・地域それぞれにリスク要因を抱えていますが、中心的な見通しとしては、海外経済は、先進国を中心に、次第に持ち直していくとみています。そのもとで、わが国の外需は、緩やかに増加していくと考えています。』
ということで、先行き見通しを見るとまあ強気継続というか強気の確信度が上がって更にドヤ顔としか読めませんので追加金融緩和って何それって感じしか読み取れないんですけどねえ・・・・・・・
・物価情勢:需給ギャップはもうすぐプラス圏に
『現在、日本経済には、なお、マイナスの需給ギャップ、すなわち、労働力や設備の余った状態が残っていると考えられます(図表10)。』
図表10というのを見ると需給ギャップは−2%台後半から−1%近辺にこの半年で縮小したというピクチャーになっています。
『しかし、潜在成長率を上回る成長が続くもとで、労働や設備の稼働状況はさらに高まっていくと考えられますので、先行き需給ギャップはプラスに転じていくとみています。』
とのこと。
『こうしたもとで、財やサービス、労働に対する需給の引き締まりが明確になり、価格や賃金は上昇していくとみています。』
需給の引き締まりが明確になるとな!
『また、中長期的な予想インフレ率の高まりも価格や賃金の上昇に寄与すると考えています。中長期的な予想インフレ率は、「量的・質的金融緩和」のもとで、実際の物価上昇率の高まりもあって上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられます。』
まあ素敵(棒)。
・金融政策波及効果の説明コーナー
『4.金融政策運営の考え方』という所ですが、説明の所では昨日ネタにした会見と同様に「実質金利の低下」を前面に出していますが、良く良く見ると結局のところは「気合で期待を転換してフィリップスカーブを上方シフト」という所に尽きるようですな。
『「量的・質的金融緩和」では、効果の波及経路をいくつか想定しています。そのうち最も重要なルートは、実質金利の引き下げです。』
とあるのですが・・・・・・・・・・
『具体的なメカニズムをお話ししますと、まず第1 に、2%の「物価安定の目標」の早期実現を掲げ、それを裏打ちする異次元の緩和策を先々までアナウンスすることによって、人々の期待を抜本的に転換し、予想インフレ率の引き上げを図ります。』
ということで、そもそもこの最初の部分がどうなのよというのは今に始まった話では無いのですが、結局の所気合で期待を転換してフィリップスカーブが上方シフトというのが何ですねんという話なのですけれども、更にここで重要なのは、上記引用部分にありますように「異次元の緩和策を先々までアナウンスする」という事でありまして、これは即ち「戦力の逐次投入はしない」という事でもあり、そう簡単に追加緩和をホイホイと打つという事にはならない、という結論が容易に導き出せる筈。
しかるに、民間何とかストの皆様におかれましては以下同文という所で、つまりそもそも2%達成出来るかできないかの認識が日銀と民間何とかストの間で齟齬があるというのが追加緩和ネタで民間何とかストだけ盛り上がる(どちらかと言うと市場参加者の方が日銀のこの辺のメッセージを読んでいて追加緩和ネタにあまり踊らない(5年の金利とか0.20割って怪しい部分もありますが)感じ)の巻となっている背景ではあるのかねと存じます。
まあそれは良いのですが、異次元緩和をローンチした時に大絶賛していた民間何とかストの方々におかれましては、当初絶賛したんだから当然ながら2%達成に必要十分な施策であるとの認識だった筈で、半年で追加緩和ガーとか言い出すのって如何なものかと思うのですけどちょっとあんたら看板降ろした方が良いんじゃないですかねえ誰とは言わないけど誰かさんとか誰かさんとか誰かさんとか。
『第2に、巨額の国債買入れにより、名目の長期金利に強力な低下圧力を加えます。この結果、予想インフレ率の上昇に比べて、名目金利の上昇を少なめに抑えることができれば、その分実質金利を低下させることができます。』
まあこの時点で市場機能も蜂の頭も無い訳ですな。つまり市場の価格発見機能を潰してでも金融緩和効果を出すという事ですから、出口の時点ではそれが何倍返しかになって返ってくるんですけどねえとか思ったら会見だかでその手の質問あったのね(後でメモを置く)。
で、実質金利低下の効果がこういうこととまあ毎度の説明ですが。
『企業や家計の支出行動は、実質金利に影響されますので、実質金利が低下すれば、設備投資や住宅投資、個人消費を刺激し、景気を後押しする効果が生み出されます。』
そうなんですかねえ、何か他のファクターも効くような気がするんですが
『そして、景気の改善に伴って、財・サービスや労働市場の需給が引き締まれば、物価には上昇圧力がかかります。実際に物価が上昇すれば、それはまた、人々の予想インフレ率を押し上げることにつながります。』
『すなわち、異次元の金融緩和による予想インフレ率の上昇を起点として、実質金利の低下、景気の改善、実際の物価上昇、また予想インフレ率の上昇という好循環を作っていくということです。』
足元で起きているのは単なるコストプッシュの物価上昇と資産効果&財政フルスロットル効果のような気もするのですが、そう思うのは信心が足りない証拠です(−−)。
何故なら以下金融緩和政策の自画自賛コーナーになるのですが・・・・・・
・金融緩和政策の自画自賛コーナーキタコレ
キタコレですが何せ自画自賛コーナーも展望レポートにある所がお洒落。
『この半年、こうした取り組みは成功しています。先ほど申し上げたように、予想インフレ率は全体として上昇しているとみられます。一方で、長期金利は、世界的な上昇にもかかわらず、日本では0.6%程度の低い水準で安定的に推移しています(図表13)。銀行貸出の金利は、既往ボトムの低水準にあります。したがって、実質金利は低下していると考えられます。』
ほう。
『その刺激効果のもとで、日本経済は回復過程にあり、消費者物価はプラスに転化しました。』
輸入と燃料費のコストプッシュいやまあいいです。
『「日本銀行が2%の物価上昇率を実現すると言っている」というだけではなく、「実際に物価が上昇している」ことは、人々の予想インフレ率の上昇に寄与すると考えられます。』
コストプッシュでも物価が上がればインフレ予想が上がるんだよキタコレですなあ(ニヤニヤ)。
『このように「量的・質的金融緩和」は、想定したとおりの効果を発揮してきています。』
どう見てもドヤ顔です本当にありがとうございました。
『この政策のもとで、わが国経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っています。今後とも、日本銀行は、目標実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。また、その際には、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因をしっかりと点検し、「物価安定の目標」実現のために必要であれば、調整を行っていく方針です。こうした金融政策運営によって、15
年来の課題であるデフレからの脱却を必ず実現したいと考えています。』
上下双方向のリスク要因ってあーた上方リスク有った時にどう対応するのよと思いましたがまあ上方リスクなら別に誰も困らない(多分金融市場が困るが)っすかねえ(除く悪性インフレ)という所で、まあ一応「必要であれば調整」という発言はありますが、ここまでの文脈を見ればどう見ても追加で何かという話にはならない筈、となりますな。
つーことで本日は展望レポートネタをするつもりでしたが、何気に展望レポートの説明版みたいな講演になっていましたのでこれで全般を代用して、さらに細かい話について展望レポートを確認したいという感じで参ります。
なお、展望レポートでは先ほどの総裁講演であった波及経路の話はかなりスルー(部分部分の記述にはあるけど)した格好になっているのもちょっとチャーミングです。
・会見テキストにも注目・・・・・かな??(おまけ)
昨日はこんなヘッドラインがががが。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MVS4LE6K50YB01.html
日銀総裁:「当てもなく入口に入ることあり得ない」−緩和の出口 (1)
更新日時: 2013/11/05 18:05 JST
『11月5日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は5日午後、量的・質的金融緩和の出口政策について「現時点で具体的な議論を行うのは時期尚早」としながらも、「もとより出口の当てもなく入口に入ることはあり得ない」とし、「しっかり私どもとしても出口戦略を考えておきたい」と述べた。大阪市内で行った講演後の質疑応答で述べた。』(上記URLより)
「考えておきたい」というのと「出口の当てもなく入口に入ることはあり得ない」というのが何かほこ×たてのような気がするのは気のせいですね!!!!!!
2013/11/05
お題「引き続き決定会合レビューで総裁会見(展望レポートネタは時間切れで・・・・・汗)」
3連休あってうっかりしていたがまだ月初2営業日目ですな。
○総裁会見からあれこれ
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1311a.pdf
・1票ほど相変わらずイミフの反対があったようで
冒頭の説明部分から。
『なお、展望レポートについて、佐藤委員、木内委員それぞれから、「消費者物価の前年比は、見通し期間の後半にかけて、2%程度に達する可能性が高い」との記述を修正する議案が、また白井委員から、より分かりやすい説明に修正するとともに、より下振れリスクを意識した記述に変更する議案が提出され、否決されました。その上で、これら3
名の委員は、展望レポートに反対されました。その詳細については、次回決定会合後に公表される議事要旨をご覧下さい。』
ということで、佐藤さんと木内さんについては見通しそのものに反対なので分かりやすいのですが、例によって白井さんが謎提案でして、より分かりやすい表現云々って前もそんな話をしていましたぞな。
これは前回の展望レポート討議の4月2回目決定会合議事要旨の記述ですけどね。
『白井委員からは、@分かりやすさの観点をより重視した2つの「柱」による点検結果の記述方法の改善とAリスク要因の記述の明確化、具体的には、@として、第1の柱については「1.わが国の経済・物価の中心的な見通し」の最後に、第2の柱については「2.上振れ要因・下振れ要因」の最後にそれぞれまとめる形で記述する、Aとして、経済情勢に関する上振れ要因・下振れ要因のうち消費税率引き上げの影響について、家計の実質所得減少のリスクをより明確に記述する、などを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』(4月26日決定会合議事要旨より)
という事で謎提案をして否決されていましたが展望レポートそのものには反対しないという謎攻撃をしていたのですが、今回は結局展望レポートに反対なのですが、前回の展望レポート討議時の決定会合議事要旨では白井さんの提案に関して『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』部分では特段の記載が無くて、佐藤さんと木内さんの見通しに反対という事に関しては記載がある、というのがあって、つまりこれは白井さんの提案に対する事務方の見解ですねわかりますという事かと思ったのですが、さて今回議事要旨でこの辺どういう記載になるんでしょうかね。
なお、白井さんの提案についてワカランチ会長ということで何回か質問があったのですけれども、結局わからんままではあるのですが、どうも「見通しに反対」の2名とはまた別のようでございます。質問に対する説明を1つ引用しておきます。
『(答) 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することは、本年1月の金融政策決定会合で決まりましたが、2
名の方は反対していたわけです。その後、4 月の展望レポートについても、「物価安定の目標」である2%程度の達成時期について、政策委員会の大勢とやや違った意見の方が引き続き2
人いるということだと思います。白井委員の意見は、先程申し上げたように、このお2
人とは少し違っており、リスクをよりよくみていく必要がある、重視していく必要があるという意見だと思いました。』
・・・・・・・・・・・うーんわけわからん。
・質問も追加緩和モードですな
2番目の質問から。
『(問) 今回、展望レポートでは、2 年程度で2%という物価目標を達成するシナリオを維持したともいえますが、仮に、このシナリオを維持できなかった場合の政策対応について、政策委員の方々が色々ご発言されているようですが、総裁はどのようなお考えかお聞かせ下さい。』
ということでこちらの質問に対する答えが盛大にヘッドラインになっていまして。
『(答) 4 月4 日に現在の「量的・質的金融緩和」を決定した際、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現することを明確に約束しており、そのために必要な施策として「量的・質的金融緩和」を導入し、現在に至るまで着実に実行してきているわけです。』
『そうした中で、先程申し上げたように、先行き、消費税率引上げに伴う駆込み需要とその反動といった振れは予想されますが、わが国経済は、基調的には潜在成長率を上回る成長を続け、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っていくとみています。ただ――これも4
月4 日から常に申し上げていますが――、今後、内外のリスク要因によって、こうした見通しに変化が生じ、「物価安定の目標」を実現するために必要であれば、当然、必要な調整は行っていきます。』
まあこれ自体は声明文にもある話で今般急に変わったという話では無いのですけれども、まあ当然ながら追加緩和で盛り上がる外部(つーても盛り上がっているのは何とかストとかメディアとかで、市場の価格形成がそうなっている訳でも無い)にとっては絶好のエサになるので、まあ言い方にはもうちょっと注意した方が良いのではと思ったのですが・・・・・・・
その次の質問。
『(問) 米国では、債務上限引上げなど財政問題が10 月に入り非常に注目されました。米国の財政問題が、米国経済のみならず世界経済に及ぼすリスクを、総裁はどのように評価しているかお伺いします。』
もうちょっと後ではこんな質問。
『(問) 3 点お伺いします。1 点は、今回、14 年度の経済見通しを引き上げていますが、来年4
月の消費増税前の駆込みとその後の下振れのうち、下振れ時の対応について、消費増税が決まる前の官邸での会議では「何かあれば躊躇しない」との趣旨の発言をされたと記憶しています。現時点で14
年度の見通しが引き上げられたということで、1 回目の8%に上げる時の下振れリスクは下がったとみているのかどうか、追加的な措置が必要となる可能性は低くなっているとみているのかどうか、お伺いします。』
というのがありまして、どうも次の質問あたりで総裁が気が付いたんじゃネーノと思うのですが、あまり下振れリスクの話をしてると却って「日銀が下振れ意識」というヘッドラインになって折角の見通しを打ち消してしまうようなトーンで理解されるとマインド面によろしくないとゆーことで、質疑の最初の部分では上記のような話をしていますが、その後は「そもそもそんなに下振れしませんぞなもし」というトーンの話っぷりになっているように見えますな(^^)。
・米国財政協議の影響は一時的とな
さっきの米国財政協議の質問に対する答えですが。
『(答) 米国経済は、世界最大であり、現在、世界経済の回復を牽引していますから、その先行きは、世界経済にとっても重要なファクターであると考えています。そこで、米国経済の現状をみると、個人消費をはじめとした民間需要は堅調であり、全体として緩やかな回復基調が続いていることは変わりないと思います。』
と、そもそも強い認識。
『もちろん、こうした中で、最近、財政を巡る協議が難航し、政府機関の一部が閉鎖される事態もあったわけです。しかし、その後、協議が進展し、債務支払いの遅延も回避されたため、経済への影響は小幅かつ一時的なものにとどまった公算が大きいと考えています。』
小幅かつ一時的とな。
『従って、先行きの米国経済に関しては、緩和的な金融環境が維持され、財政面からの下押し圧力も次第に和らいでいくことなどを背景に、回復テンポが徐々に速まっていくとみており、こうした見方に変わりはありません。ただし、財政協議は今後とも継続されるため、その帰趨次第では、先行き金融市場や経済主体のマインドへの悪影響から、米国景気が下振れる可能性もあり得ます。その点については留意が必要であり、今後とも十分に注視していきたいと思っています。』
とまあ最後には先行き警戒の話をしていますが、リスク要因として警戒みたいな言い方をしないというのがまあ強気なんですから当然ですけどね。
・QQEの実体経済への効果に関する説明が微妙に微妙
この質問、後半があってそちらもオモロスなのですがまずは前半から。
『(問) 展望レポートの中から2 点伺います。「『量的・質的金融緩和』のもとで、実体経済に好転の動きが幅広くみられる」という記述があると思いますが、少し詳しく教えて下さい。今の金融緩和のどういった効果が――例えば、金利の押下げなど、色々な効果があると思うのですが――、実体経済の具体的などういった分野に効果をもたらして、好転の動きがみられるのか、ここを少し詳しく教えて下さい。(後半割愛)』
『(答) 前者については、現在の「量的・質的金融緩和」を導入した際にもご説明したように、3
つのチャネルを考えています。』
ほう。
『まず第1 に――1 番重要な点かもしれませんが――、大規模な国債の買入れ、あるいはいくつかのリスク資産の買入れを通じて、金利のイールドカーブ全体に下方圧力を加えていくとともに、リスクプレミアムを圧縮することで、全体として金利、資金調達コストを抑制していくことです。』
『第2 に、特に大量の国債買入れを通じて、金融機関その他投資家のポートフォリオ・リバランスを促していくことです。これは、やや中長期的な効果だと思います。』
『第3 に――これも非常に重要だと思いますが――、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現することを明確にコミットし、物価その他の将来予想・期待に働きかけることです。その1
つの効果として、例えば、投資について、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利は明確に低下してきており、一部ではマイナスになっていると思います。これが、投資、特に長期的な投資である設備投資や住宅投資などを刺激する効果が出ていると思います。』
きさらぎ会での講演ではメインを「期待に働きかける」に置いているように見えたのですが、ここでの説明だと相変わらずの「イールドカーブ全体に下押し効果」という話が「一番重要」という説明になっていてほえ?という感じですな。まあ「物価に対する効果」と「実体経済に対する効果」という意味では確かにフィリップスカーブがどうのこうので説明するのも無理があるのかも知れないですけれども。
でもって3番目の話はもうちょっと続いているのだ。
『また、消費にも、実質金利の低下がプラスに働きますが、さらに、株その他の金融資産の価格の上昇が資産効果を通じて消費を刺激する効果もあると思います。輸出などについては、ご承知のようにJカーブ効果等もありますので、名目的な貿易収支に直ちに影響が出てくるわけではないと思いますが、為替の影響はもちろんあります。』
『「量的・質的金融緩和」の効果は、投資、消費、その他の内需に特に大きな効果を持つと思っています。消費は堅調な動きが続いていますが、設備投資についても、これまでは堅調な消費、あるいは住宅投資に支えられて非製造業の設備投資が伸びていましたが、ここへきて、製造業の設備投資も出てきており、今後とも堅調な消費の継続と設備投資のさらなる伸びが期待されます。』
ということで、説明を良く見ると3番目の部分を強調した方が説明としては綺麗な気がしますし、金利に関しては単に(後で質問が飛んできていますが)日銀が「2年で2%の目標が達成できます(キリッ)」と認識しているのに対して市場の方が「行くわけないから来年の早期には追加緩和待ったなし(ニヤニヤ)」となっているという認識でいる、という認識ギャップによって下がっている可能性もオオアリクイなのでございまして、あまりこの「金利ガー」をメインにしない方が良いと思いますけどね。
・なお市場との認識の相違については馬耳東風の模様
つーことで今ネタにした「市場との認識相違」に関する質問も当然飛んでくるのですが・・・・・・・・・
『(問) 2 点お伺いします。1 点目は、今回の展望レポートでも、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っているという内容になりました。一方で、民間の大方のエコノミストの見方は、それよりは厳しくて、日本銀行の見方とはややかけ離れているというか、乖離しているのが現状だと思います。この原因がどこにあると思われるか、総裁のお考えをお聞かせ下さい。(後半割愛)』
これは質問の筋が良いのですが微妙に質問の仕方が惜しいですな。まあいいけど。
『(答) 1 点目については、民間の色々なエコノミストの方々の考え方は、むしろ民間の方々に聞いて頂いた方がよいと思いますが、私どもとしては、2
年程度の期間を念頭に置いて、2%の「物価安定の目標」を、できるだけ早期に実現するために、必要にして十分な措置ということで、「量的・質的金融緩和」を導入したわけです。』
ほうほうそれでそれで?
『これまでのところ、物価上昇率も予定した経路を辿って徐々に上昇してきており、年度内には、1%という水準には達するのではないかと思っています。』
勝利宣言キタコレ。
『どこの国でも、政策当局者と民間の人との見方は、必ずしも一致するわけではないとは思いますが、私どもとしては、こういった政策対応と、上下双方向のリスクを点検し、必要に応じて調整するということで、2%の「物価安定の目標」に向けて、順調にその道筋を辿っていけると考えています。』
どう見ても馬耳東風です本当にありがとうございました。つーか質疑の冒頭部分以外は基本的にこのトーンで終始していまして、「いや皆さん何を言ってるの我々が4月に想定したとおりじゃないですか」という感じの満面のドヤ顔状態(だったかどうかは会見ビデオを見ていませんので知りませんが^^)の質疑応答に終始しているのですよね〜♪
・ちなみに物価上昇のパスについても強気っすよ
さっき引用したQQEのチャネル質問の後半が物価上昇のパスの質問で、そういうのを最初に近いところで質問したら他の人のネタを食っちゃうじゃないですか(^^)。
『(問)(前半割愛)それからもう1 点、物価のパスについてお伺いしたいのですが、足許、為替の状態がこのままある程度なだらかな状態が続くとすると、円高修正による物価の押上げ効果というのは来年の春くらいになると切れてくると思うのですが、その先、来年度以降の物価が上昇していくというパスを――例えば消費財やサービスなど色々な分野があると思うのですが――、どういった分野の、どういった効果で、さらに物価が上がっていくとみていらっしゃるのか、詳しく教えて下さい。』
(;∀;)イイシツモンダナー
『(答)(前半割愛)物価については、ご指摘のように、為替あるいは国際商品市況の影響で、エネルギーを中心とした輸入物価の上昇が消費者物価に影響していたことは事実ですが、最近の消費者物価の動きをみると、いわゆる生鮮食品を除いた消費者物価上昇率がプラスに転じ、8
月には+0.8%、9 月には+0.7%となっただけでなく、食料やエネルギーを除いた、いわゆるコアコアでも、かなり大きなマイナスからゼロ%というところまできています。』
コアコアゼロの指摘キタコレ。
『今後、為替がさらに円安に振れない限り、為替の物価への影響は徐々に小さくなっていくと思います。他方、堅調な内需を受けて、全体として、今後、潜在成長率を上回る成長が続くという前提のもとで、需給ギャップが縮小し、いずれプラスになっていくと思いますので、エネルギー、食料だけでなく、他の品目にも次第に改善の動きが拡がり、一気に2%にいくということはないと思いますが、幅広く、物もサービスも含め、物価は上昇していくとみています。もちろん、品目によって物価上昇の程度は違いますが、ごく一部のものに限って物価が上昇することにはならないのではないかと考えています。』
どう見ても強気です本当にありがとうございましたなのですが、2年は何処へという気はせんでも無い。
・BEI水準の話が???なのだが
『(問) 2 点お伺いします。まず、物価の先行きについてです。物価連動国債からみえるBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)が、財務省の再発行を受けてもあまり変わらず、最近、上昇が止まっていると思いますが、これについてのご所見、解説をお願いします。(後半割愛)』
『(答) 前者の点については、新しい物価連動国債は、若干、元本保証などの性質が違うので、違った計算結果が出てくることもあると思いますが、根っこにあるインフレ予想が新しい物価連動国債によって変化するということではありません。新しい物価連動国債になったから、そこから計算されるBEIが変化するということはないと思います。』
さいですな。
『物価連動国債は、比較的薄いマーケットではありますが、私どもも、指標として十分注視しているわけです。元々発行されていた物価連動国債から算出されるBEIをみると、いったん、2%近いところまで上昇した後に下がり、また少し上がって、最近は、多分、1.6〜1.7%辺りにあると思いますが、半年前、1
年前、2 年前と比べると、やはり、着実に上昇してきていることは事実だと思います。』
えーっとすいません直近の10年新発のBEIって1%近辺なのですが何でそっちの話が出てこないんでしょうか大体からしてBEIって間接税増税の影響込みの数字なんで期間によってその分の寄与が年率換算するとですなあ・・・・・・・・
でまあそういうツッコミを避ける為に上記にあるように、「半年前、1年前、2年前と比べると」というエクスキューズを入れておりまして(まあ展望レポートでもそういう感じで「総じて」という説明してますが^^)何という怪しげな説明。
『BEIは、ここ数か月は、どんどん上がっていく状況ではないのはその通りだと思いますが、他方、インフレ予想には、その他色々な指標があり、それらの中には顕著に上がっている指標もあるので、インフレ予想は全体として上昇してきているし、今後も上昇していくだろうと思っています。』
全体として攻撃キタコレですねわかります。
・微妙に味わいのあるオモシロ質疑から2つほど
うむ、総裁会見は前座の積りだったのにすっかり引用大会になってしまいましたぞなorzorz
『(問)(前半割愛)2 点目は、先程の質問へのお答えの中で、大量に国債を購入する中でポートフォリオ・リバランスを促していくことは、中長期的な効果だとおっしゃっていましたが、大手生保は、運用計画の中で、下期の国債購入を増加させると相次いで発表しています。この辺りはどのようにみておられるのか、ご所見をお願いします。』
ワロタ。
『(答)(前半割愛)2 点目のポートフォリオ・リバランスについては、従来から申し上げているように、やや中長期的にみていくべき話ではありますが、足許でも、例えば、国内の銀行、特に大手行は、相当大幅に国債の保有を減らしており、その代わりに株式への投資を増加させるなど、ポートフォリオ・リバランスの動きが出ています。また、貸出について言えば、大手行だけでなく、銀行全体として、前年比で2%台前半のペースで増加していますので、足許でも、ある程度ポートフォリオ・リバランスが進んでいるということだと思います。これは、最初に申し上げた通り、ある程度時間をかけて効果が出てくると思います。』
ほうほうそうですか。
『一方、今ご指摘があったような、非常に長期の資産を保有する保険会社や年金等が、いわゆるフィックスド・インカム・アセットという長期的にリターンが固定されている資産をある程度持つことは、当然あり得る話だと思います。そうしたところも含めて、中長期的に新しい金融環境にアジャストしていく動きは次第に起こっていくと思っています。』
ほうほうそうですかそうですか。
で、別件でこんなのも。
『(問) 仮定の質問で恐縮です。来年度の成長率の見通しを0.2%引き上げたということですが、これは5
兆円の経済対策を織り込んだ数字だと思います。仮に、その5 兆円がなかったとしたら、今回、見通しは下方修正になった可能性はありますか。』
実にこれは良い質問でワロタ。
『(答) この見通しは、9 人の政策委員の方々の見通しの中央値です。それぞれの方が、経済対策のみならず、その他各種の要因を勘案して、こういう見通しにされたということです。』
ということでそもそもこれは合計ですのでという説明で逃げを打つのだ。
『そこから経済対策分を差し引いてどうかというのは、それぞれの委員がそういう仮定を置いた計算を、モデルなどを使って行うということになります。何回も申し上げますが、9
人の政策委員の方々が、経済対策も含め、その他各種の要因も勘案して見通しを出され、その中央値がこういう数字になっているということです。従って、経済対策なかりせば、どういった成長率になるかと言われても、この展望レポートからはお答えしかねるということです。』
ワロタ。
○展望レポート全文鑑賞会・・・・・・だが時間が無いので前座だけ(大汗)
展望レポート全文(基本的見解を含む)である。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1310b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1304b.pdf(前回4月)
・全体的には・・・・・・・
まあ子細に見ると色々と面白いっつーか味わいがあるのですが、それはそれとして全体として見た印象としまして、今回は「金融政策の効果アピール」というのが目立ちますねという所でして、その一方で「金融政策の波及メカニズムの説明は相当割愛しやがってますね」という辺りが目につきますな。
まあ大体会見のトーンでもそんな感じなので全体のトーンがそういう事ですよねという所ではあるのですが、まー前回の展望レポートで出した大風呂敷に関して「ほうら見通し通り進んでいるでしょ(満面のドヤ顔)」というトーンが全力で漂う内容となっておりまする。
でもって内容に関しては時間が(汗)なので明日以降なのですけど・・・・・・・・・・
・良く良く見たら2014年度の見通しが微妙な件について
ちなみに基本的見解の方になりますが、展望レポート見た時に2015年度の見通しについてネタにしましたが、良く良く見ると2014年度の見通しが微妙なのよ。
つまりですね、2014年度の見通しなのですが、大勢見通しで2014年度って+0.9〜+1.5となっていて中央値が+1.5というどんだけ票が偏っているんだよというのもさることながら、今回の見通しファンチャートの方を見るとリスク認識含めた数値の上限が4月や7月の時以上に上に振れていまして、ファンチャートの上限数値が3%台に乗っているという見通しになっているのですよね。
あと全員見通しですが、こちらは+0.5〜+1.6となっていまして、つまりそもそも+0.5という潜在成長率カツカツかそれ以下の見通し(+0.9でも大概だが)という思いっきりそれ展望レポートの経済パスのビューと違うやんという人が1名(というか2名)いるのがお洒落なのと、全員見通しの上限は+1.6なのにファンチャートの上限が3%ってどういう上振れ認識になるんでしょうか(まあ元々上限+1.5の7月でも上限が2.7%位(?)なのでそもそもこの上振れ予想の人のリスク認識がどんだけ上方バイアスあるんだという事なのかも知れんが)というのがほえ?という感じでした。
・・・・・・・・って図を出さないで説明しても分かりにくいと思いますので、まあリスクバランスチャートと表の方を見てちょという所です。
なお、2013年度に関しては4月対比で見た場合にGDPの見通しレンジは上昇しているのに中心値は下がっているというのも何か謎というかつまり4月に出していた予想数値はより願望度が高かったということですね分かりますというのも味わいがあったなあと思います。
#ということで続きは明日以降(大汗)
2013/11/01
お題「決定会合レビュー:だいたい展望レポート鑑賞」
ということでMPMでごじゃる。
○声明文&中銀スワップ取極常設化
声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k131031a.pdf
『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。
マネタリーベースが、年間約60〜70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。』
ということで今回も展望レポート公表の回なので景気判断云々の話は展望レポートに含まれまして声明文あっさりなのは4月の展望レポート回のMPMと同じです。
中銀スワップの常設化
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel131031c.pdf
『カナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度およびスイス国民銀行は、本日、現行の時限的な中央銀行間の流動性スワップ取極を常設化することを公表した。これらのスワップ取極は、今後、別途の通知があるまで存続することになる。
常設化された取極は、上記の6つの中央銀行において、2つの中央銀行間スワップ取極のネットワークとして構成されており、各中央銀行が自国・地域において、いずれの他通貨によっても、流動性を供給することを可能とするものである。こうした流動性供給は、対象となる通貨に係るスワップ取極の当事者である2つの中央銀行が、市場の状況によって必要と判断した場合に行うことが可能である。
現行の時限的なスワップ取極は、金融市場の緊張を緩和し、金融市場の緊張が経済に及ぼす影響を軽減することに貢献してきた。常設化された取極は、引き続き、流動性の安全弁として機能することになる。』
ということで、セーフティーネットの形として6中銀スワップを常設化して、必要な時には発動しましょうねという話で、まあ順当というか良く良く考えたら何で今まで臨時措置継続状態でやっていたのねという所ですな。
○展望レポート基本的見解:見通し数字は横で書きっぷりは更に強いとな
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1310a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1304a.pdf(前回基本的見解)
・まずは見通し数値
4月、7月、10月と比較すると味わいがあるアルヨ。
2013年度大勢見通し
実質GDP
(4月):+2.4〜+3.0(+2.9)
(7月):+2.5〜+3.0(+2.8)
(10月):+2.6〜+3.0(+2.7)
コアCPI
(4月):+0.4〜+0.8(+0.7)
(7月):+0.5〜+0.8(+0.6)
(10月):+0.6〜+1.0(+0.7)
2014年度大勢見通し
実質GDP
(4月):+1.0〜+1.5(+1.4)
(7月):+0.8〜+1.5(+1.3)
(10月):+0.9〜+1.5(+1.5)
コアCPI(消費税影響抜き)
(4月):+0.7〜+1.6(+1.4)
(7月):+0.7〜+1.6(+1.3)
(10月):+0.8〜+1.6(+1.3)
2015年度大勢見通し
実質GDP
(4月):+1.4〜+1.9(+1.6)
(7月):+1.3〜+1.9(+1.5)
(10月):+1.3〜+1.8(+1.5)
コアCPI(消費税影響抜き)
(4月):+0.9〜+2.2(+1.9)
(7月):+0.9〜+2.2(+1.9)
(10月):+0.9〜+2.2(+1.9)
ということで、実は見通し数値なのですが4月の展望レポートから7月中間見通し、今回の展望レポートと数値ってそんなに変わっていないのですよね。でもまあ読んでみれば判るように、今回の展望レポートって記述内容的には4月の展望レポートよりも更に強気化していまして、文言がこれだけ強気化する中で見通し数値が同じって何じゃそらという所で、最早展望レポートではなくて願望レポートでも無く、どこぞの何か年計画の目標数値ですかこれはという話になりつつあるのではないでせうか。
あと、味わいがあると言えば全員見通しの推移で2015年度の所を見るとオモロイ。
2015年度全員見通し
実質GDP
(4月):+1.3〜+2.1
(7月):+1.2〜+2.1
(10月):+1.2〜+2.0
コアCPI(消費税影響抜き)
(4月):+0.8〜+2.3
(7月):+0.7〜+2.3
(10月):+0.7〜+2.2
んーっとですね、見通しとかドンドン強くなっているのに全員の見通し数値を見ると実質GDPにしてもコアCPIにしても一番の景気強気派の人が見通しを今回微妙に下げていまして、いやあのそれで何で展望レポートの記述文言が更に強くなるのかと小一時間問い詰めたい所ではありますな。
・記述量が増えた部分と減った部分に味わいがありますな
さてさて、ではまあ記述の方に参りますが、今回の展望レポート見てて記述の関連で思ったのはまあこんな所ですかね。
(1)全体の文章量が若干増えた(目の子で5.5ページ→6.2ページとかそんな感じ)
(2)経済認識、経済の先行きに関する記述が前回は全体の話だけだったのが今回は要因をブレークダウンした内容が増えている
(3)一方で金融緩和政策の波及ルートに関する説明文言は見事にカット
(4)先行きの見通しについては明るい話が「所与」状態になっている
とりあえずざっと思いついたのがこの4点で、もう一つの点は今しがた申し上げたように「記述が益々強気になっているのに見通し数値の方が大して強気化していない、つーか4月の時点よりも若干だけど下がってねえか」といううーんこの謎状態というかつまりそもそも4月に出した数値が鉛筆なめ(銃声)。
でですね、全体分量に関しましてはさすがに前回の展望レポートの基本的見解の方であまりにも説明を端折り過ぎていて、こうなると言いたいのは分かるのだが背景説明が無いとそもそもその見通しがどうなのか検討できんぞなもしと言う苦情が結構あったんでしょ(あたくしも当駄文で申し上げていた気がしますが)と存じます。
そして上記(2)と(3)が実にこう味わいがある所でして、つまり(2)で示された経済の状況に関しては(そらまあこれだけ財政吹かしてるんだからそうだ罠とは思いますが)足元で国内経済の状況がまあ堅調に推移していますねということで、説明する方としてもウッシッシとばかりに説明しやすい所なのでつい筆も進むという事ですし、(3)の金融政策の波及ルートに関しては結局の所「異次元政策で期待の変化でデフレ均衡打破でフィリップスカーブが上方シフト」というメカニズム以外の説得力のある説明をするのが苦しいから、余計な突っ込まれ所は削除するというのが正しいあり方ですねわかりますという所になるのでしょうなあと思ったのですがどうでしょうかねえ(ニヤニヤ)。
つーことで、以下引用部分ですけど『』で書いてあるのは今回の展望レポート基本的見解部分からの引用です。前回分との比較の時には(今回)(前回)と注をいれますね。
・読んでて見事に味わいを感じたのはさっきの(3)相当部分である
本文1ページの辺りなのですがね。
『第1に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる。すなわち、「量的・質的金融緩和」のもとで、名目長期金利の上昇圧力は抑制されている一方、予想物価上昇率は全体として上昇しており、実質金利は低下方向にある。銀行貸出残高の前年比は、緩やかにプラス幅を拡大している。このような緩和的な金融環境が民間需要を刺激する効果は、景気の改善につれて強まっていくと考えられる。』(今回)
『第2に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる。すなわち、「量的・質的金融緩和」は、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、期待の転換を通じて予想物価上昇率を上昇させ、実質金利を低下させる効果が期待できる。これらが民間需要を刺激する効果は、景気の改善につれて強まっていくと考えられる。』(前回)
今回無くなっている文言が「長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え」という部分でして、QQEの効果に関して前回は「これこれの波及ルートに加えて期待の転換で実質金利ガー」という説明だったのが今回は思いっきりその波及ルート部分をネグって「予想物価上昇率は全体として上昇」(キリッ)というのをメインにおいて、名目金利に関しては買入による上昇圧力抑制という論点と、まあQQEローンチ当初の説明がやり過ぎだったという事にはなるのですが、当初は名目金利を全力で下げる話をしていたのがすっかり実質金利の話になってしまいましたねという所ですし、資産価格の方は上昇止まってしまったこともあって盛大にスルーですかそうですかという所。
まあつまり金融政策に関する説明で波及ルートがどうこうという話を下手にすると色々とツッコミを食らうので、期待物価上昇率に比重をだいぶかけるようになってきましたねという話っす。
・経済の総括判断および先行き見通しは当然の如く4月対比で強い
同じく本文1ページ。経済情勢の現状認識と先行きという冒頭も冒頭部分ね。
『わが国の景気は、緩やかに回復している。需要面をみると、輸出は持ち直しつつもやや勢いに欠ける一方、個人消費をはじめ国内需要は堅調に推移している。こうした内外需要を反映して、生産面では、鉱工業生産の増加ペースが緩やかにとどまる一方で、サービスや建設など非製造業の活動は強めに推移している。』(今回)
『わが国の経済をみると、下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。』(前回)
先程申し上げたように、今回は前回と違いまして経済物価情勢に関する記述の中で要因にブレークダウンした部分の記載があって読みやすくなりましたが、まあ4月と比較してるから分かりやすいですけれども記述が強気化することすること。
『先行きは、内需が堅調さを維持する中で、外需も緩やかながら増加していくと見込まれ、生産・所得・支出の好循環は持続すると考えられる。このため、わが国経済は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される2。』(今回)
『先行きは、金融緩和や各種経済対策の効果から国内需要が底堅く推移し、海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、本年央頃には緩やかな回復経路に復していくと考えられる。その後は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、生産・所得・支出の好循環が維持されるもとで、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される3。』(前回)
先行きの見通しに関しましては、これまでの金融経済月報の流れでも示されていましたけれども、4月時点ではどちらかと言うと外需ドリブンでの回復を見ていたのに対して、今回の見通しでは主に内需が引っ張って行って、徐々に外需の寄与も効いてくるという形になっているので、成長見通しの質としてはかなり強気化していますし、さっき並べたあたくしの気が付いた点の4番目に相当しますけれども、『生産・所得・支出の好循環は持続すると考えられる』という風な記述が今回ありますように、そもそも現状が「前向きの好循環メカニズムが働いている」という認識になっていて、先行きに関してもその認識が継続というように、うーむそんなに強かったっけという部分が平然と所与として組込まれているというのがセクシーとしか申し上げようがございません。
なお、前回も今回もそうなのですが、この強気の展望レポート見通しにはちゃんと消費税引き上げ2回分出来上がり10%までの動きを織り込んでいるのにご注意くらはい。
・見通しの前提に関して
『こうした見通しの背景にある前提は、以下のとおりである。』
ということで説明があるのですが、前回は「海外経済」→「金融緩和」→「公共投資(第二の矢)」→「規制緩和・制度改革(第三の矢)」という順序でしたが、今回はその1番目と2番目がひっくり返っておりまして、先行きの強気見通しの中で実質金利低下というドヤ顔説明しやすいものを前に持って来ましたねわかりますという所ですな。
でもって金融緩和はさっき引用しましたので海外経済部分。
『第2に、海外経済については、4月の展望レポート時点の想定と比べると幾分弱めに推移しているが、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの前提のもとで、先進国を中心に、次第に持ち直していく姿を見込んでいる。』
ちなみに前回は「米国・中国ドリブン」という絵になっていました。
『主要国・地域別にみると、米国経済については、緩和的な金融環境が維持され、財政面の下押し圧力も次第に和らいでいくことなどを背景に、回復テンポは徐々に増していくと予想される。欧州経済についても、債務問題に伴う調整圧力は残るものの、家計や企業のマインド好転などに支えられ、次第に持ち直していくと考えられる。中国経済については、当局が構造調整を進めつつも、同時に景気下支え策を講じていく中で、現状程度の安定成長が続くとみられる。』
『一方、その他の新興国・資源国経済については、金融環境の引き締まり傾向もあって、当面、成長に勢いを欠く状態が続く可能性が高い。』
つーことでまあ全般ちょっと下がっているのと、新興国に関してはさすがに懸念を示してますな。
あと、第二の矢と第三の矢ですけれども。
『第3に、公共投資は、既往の各種経済対策の効果に加え、新たに策定される予定の経済対策による追加の押し上げ効果も予想されることから、2014年度上期にかけて高水準で推移するとみられる。』
『第4に、政府による規制・制度改革や今後見込まれる各種の企業向け減税措置、企業による内外需要の掘り起こしなどもあって、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』
基本的な部分は同じなのですが、追加の経済対策やら企業向け減税などの第二の矢、第三の矢のおかわり部分が入っているのがまあ当然ちゃあ当然ですがちゃんと入っているのがチャーミング。
・見通しの年度別ブレークダウン
『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2013年度下期については、海外経済が持ち直しに向かう中で、これまでの為替相場の動きもラグを伴いつつ下支えとなり、輸出や鉱工業生産は緩やかながらも増加していくと見込まれる。そうしたもとで、企業収益の改善に伴い設備投資は持ち直しがより明確となるとともに、個人消費も雇用・所得環境の改善に支えられて底堅く推移するとみられる。加えて、個人消費や住宅投資では消費税率引き上げ前の駆け込み需要が発生するため、2013年度下期の成長率はかなり高めになると予想される3。』
ほほう『これまでの為替相場の動きもラグを伴いつつ下支えとなり』ですかそうですか。
『2014年度の成長率については、上期を中心に駆け込み需要の反動が出ることから、前年度に比べればかなり鈍化するとみられる。ただし、海外経済の持ち直しが明確となる中で輸出が伸びを高めるほか、金融緩和や各種企業減税の効果などから設備投資もしっかりとした増加を続けるため、潜在成長率を上回る成長は維持されると考えられる。』
『2015年度についても、2回目の消費税率引き上げによる振れは予想されるが、生産・所得・支出の好循環は維持され、潜在成長率を超える成長が続くと見込まれる。以上の見通しを7月の中間評価と比べると、成長率は概ね不変である。』
つーことで「前向きの循環メカニズムは維持され続ける」「次第に外需が寄与してくる」ということで、2015年度まで潜在成長率を超える成長が続くんですってよ奥様という所です。まあ強いというのは4月の時点でも強かったんですけどね。
・物価情勢に関する記述では期待インフレの部分ががががが
本文3ページから。
『物価上昇率を規定する主たる要因について先行きを展望すると、第1に、マクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、緩やかな改善傾向をたどり、見通し期間後半にかけて需要超過幅を拡大させていくと予想される。この間、労働需給の引き締まり傾向は明確となり、名目賃金にも次第に上昇圧力がかかっていくとみられる。』(今回)
『先行きの物価上昇率を規定する要因を点検すると、第1に、マクロ的な需給バランスは、緩やかな改善傾向をたどり、見通し期間後半にかけて需要超過幅を拡大させていくと予想される。この間、労働需給の引き締まり傾向は明確となり、名目賃金にも次第に上昇圧力がかかっていくと見込まれる。』(前回)
消費税云々の記述が入った以外は同じというか元々の見通しも強いんですよねえ。
『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、「量的・質的金融緩和」のもとで、実際の物価上昇率の高まりもあって上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。こうした予想物価上昇率の高まりは、企業や家計を含めた価格・賃金形成に徐々に浸透していくとみられる。』(今回)
『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、足もと上昇を示唆する指標がみられる。先行きも、「量的・質的金融緩和」のもとで上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。』(前回)
・・・・・・・・・お〜こりゃ強気化してるわという感じで、「実際の物価上昇率の高まり」だの「予想物価上昇率が高まると価格や賃金に浸透」とかどう見ても強気化です本当にありがとうございましたという風情なのですが、何でこれだけ強気化しているのに大勢見通しにおける2015年度の物価上昇率のアッパーが下がっているんでしょうかねえ(棒読み)。
『第3に、輸入物価については、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、当面は上昇要因として作用すると見込まれる。』(今回)
『第3に、輸入物価については、為替相場の動きが当面の上昇要因として働くうえ、国際商品市況が世界経済の成長に沿って緩やかな上昇基調をたどるとの想定のもと、見通し期間中、上昇を続けると見込まれる。』(前回)
さすがに世界経済の成長でどうのこうのというのを削ったか。
・上振れ下振れ要因でほほうという部分を少々
まずは経済情勢に関する上振れ下振れ要因の本文4ページから。
『第2に、家計の雇用・所得動向がある。』
というのが今回新たに入った記述でキタコレなのですが。
『前述のとおり、これまでの景気回復は、個人消費を中心とした堅調な国内需要が主導してきた。先行きも国内需要が堅調さを維持していくためには、雇用・所得環境の改善が消費を支えるという前向きの循環が持続することが重要である。』
ということで既に前向きの循環は所与ですよ。
『この点、企業収益が改善する一方、企業を取り巻く競争環境が引き続き厳しい中にあって、労働需給の引き締まりや予想物価上昇率の高まりに伴い賃金が上昇していくかどうか注視していく必要がある。』
まあ確かにさっきの見通しの所にもそう書いてありましたが、もう今後労働需給が引き締まって予想物価上昇率も高まって行くというのが話の前提として堂々と置かれているのがニャンとも。
でもって物価の所で本文5ページですけどね。
『物価に固有の上振れ、下振れ要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向について不確実性が高い。』
というのは前回も記述されていたのですが・・・・・・・・・
『人々のインフレ予想が、過去にみられた物価や賃金の緩やかな下落を反映して、なかなか高まらない可能性がある一方、実際の物価や賃金の上昇率が高まっていく過程で、予想物価上昇率が比較的早期に上昇する可能性もある。加えて、消費税率引き上げに伴う幅広い品目の一斉の価格上昇が、人々のインフレ予想に与える影響についても注意してみていく必要がある。』(今回)
『企業や家計の予想物価上昇率が過去の緩やかな物価下落を反映するかたちで形成され、これがなかなか高まらない可能性がある一方、期待の転換により予想物価上昇率が比較的早期に上昇する可能性もある。』(前回)
前回の「期待の転換により〜」という願望ですかそうですかという記述部分が今回は堂々の「物価が上昇」だの「賃金が上昇」だの「消費税増税の影響でインフレ予想が上昇」だのどう見ても記述が具体化で物価上昇に対する自信度が高まっているとしか思えない記述内容となっておりまして、ドヤ顔モードの香りがするのですが何故2015年度の物価見通しの数字が以下同文。
・金融政策の効果ドヤ顔キタコレ
金融政策運営に関する説明部分はまあ同じでして、当然ながら追加緩和を示唆するような話とかは無い(必要な調整を行うという文言は前回も今回もありますけど)ですが、本文7ページのこの記述には微苦笑。
『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」のもとで、実体経済や金融市場、人々のマインドや期待など、好転の動きが幅広くみられており、わが国経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調にたどっている。』(今回)
どう見てもドヤ顔全開です本当にカムサハムニダ。
『今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)
前回がこうでしたので。
『先行きの金融政策運営については、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する7。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(前回)
『このような金融政策運営は、実体経済や金融市場に表れ始めた前向きな動きを後押しするとともに、高まりつつある予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(前回)
ということで、まあ結局の所金融政策の効果に関しては「予想インフレ率」の所で効果が出ていますよ凄いでしょうというような説明(が一番やりやすいのでそうなるのは当然ちゃあ当然ですが)になっていて、ドヤァとアピールというのが味わいのあるレポートでございました。