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2012/10/31

お題「決定会合レビューでござる」

まあごちゃごちゃとありましたので色々と。

○しかしまあ時間が掛かりましたな

金融市場調節方針に関する公表文 2012年
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2012/index.htm/

『2012年10月30日 金融緩和の強化について(14時46分公表) [PDF 305KB] 』

ということで結果発表は14:46という事で、ご案内の通りに展望レポートの公表が30分後ろ倒しになって総裁会見が15分後ろ倒しになりましたけれども、まあ散々引っ張ったので為替市場はやや円安(と言っても80円乗せ程度だが)に時間の経過と共に振れるわ、株式市場は為替を見て平均株価先物で9000円手前近辺にじり高になるわとやっておりました。

で、結果出たのは良いのですが、あまりにも引っ張った上に何か情報ベンダーを見るとややこしいヘッドラインがゴタゴタ出てきたということで、ナンジャコリャとなるのが人情というもので、その人情が殺到した結果日銀のサイトへのアクセスが鬼のように重くなり(かく言うあたくしも暫くエラーで往生しまっせ〜状態)という事になりましたが、どうもAPP拡大11兆円という数字が、事前にどこぞの電波浴新聞辺りが20兆とか意味不明の煽りをしたせいもあってインパクトがイマイチだったのかどうか知らんですが、まあその数字の件と、他に色々とゴタゴタと文書が出たり貸出制度が出たりで何が何やらと混乱したせいもあるのかどうか知らんですが、ドル円は80円近辺からいきなり79円30銭位まで(最近の為替市場の値動きからしたら)急落ちっくな円高になってしまい、それを見て株価も指数先物で8800円レベル位までどどーんと落ちるの巻。

債券は最初どうしたもんかという感じで、0.1%の貸出制度で4年だのとかいうヘッドラインで確りしかかったような感じもありますが、APPは拡大されたものの、まあ債券関連の買入については債券的には予想通りだったという事だったのか、単に何かよく判らないからクローズしたかったのかどうか知らんですけど、前場安値の1銭上まで押し込む(47銭近辺から28銭近辺まで下げたでござるの巻)という動きになりましたが、引けに掛けては先物とか10年とか戻って結局144.40(+0.18)で終了の巻となりました。

でですな、今回は以下に申し上げるように色々と変な物がでたせいもあって、本来もっと注目されないといけない声明文での経済現状認識の大下げとか、市場の煽り文句は兎も角として、実際問題として総合指数型ETFの市場規模というか流通残高から勘案するとそんなに買って大丈夫かというレベルになりそうなETFの5000億円追加購入という、他が無ければ結構目立つネタがスルーされてしまったのが日銀クオリティと申しましょうか、それよりは前何とかさんがドヤ顔で首を突っ込むとロクな事にならない(どこぞの偽メール事件に始まり、どこぞのダムとかどこぞの離島の侵犯船問題とか)の法則が炸裂して日銀残念無念と言った所では無かろうかと存じます。


○では本線から参りますので声明文比較:景気の現状認識を下げるが先行きの所が良くワカランチ会長

今回の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121030a.pdf

前回(10/5)の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121005a.pdf

APPとか貸出支援何とかの話は後ほど行いますのでまずは声明文相当部分から。

・景気認識(その1)海外経済は減速感を高める

『海外経済は、減速した状態が強まっている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退した状態が続いているものの、今後の市場の展開には十分注意していく必要がある。』(今回)

『海外経済は、減速した状態がやや強まっている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退した状態が続いているものの、今後の市場の展開には十分注意していく必要がある。』(前回)

一瞬同じかと思いますが、前回は減速に関して「やや強まる」という表現だったのが「強まる」となっておりまして、これは即ち海外経済の減速感が高まっているということです。


・景気認識(その2)輸出や鉱工業生産を下げ、内需にも悪影響という認識を示す

ちょうどまた間の良い事にというか悪い事にというか、当日朝に公表された鉱工業生産が華麗にうんこな内容でございましたが・・・・・

『こうした状況のもとで、わが国の輸出や鉱工業生産は減少し、これまで堅調に推移してきた内需にもその影響が一部及び始めている。』(今回)
『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっている。一方、国内需要は、復興関連需要などから底堅く推移している。』(前回)

ということで、この辺思いっきり下がっておりましてその結果ですが・・・・・・・


・景気認識(その3)総括判断を引き下げる

『このため、景気は弱含みとなっている。』(今回)
『わが国の景気は、横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

通常は総括判断が最初にあるのですが、今回は追加緩和の実施というのもあったりしましたので、語順がいつもと違いまして、その辺に関しては今回の声明文の語順に合わせております。



・景気の先行き見通しについては不確実性のコメントのみで、こちらも下方リスク物拡大

『先行きについては、欧州債務問題の今後の展開や米国経済の回復力、新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行の可能性、日中関係の影響の広がりなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。金融・為替市場動向の景気・物価への影響にも、引き続き注意が必要である。』(今回)

ということで、リスク要因の話はあれども見通しの話は無しということで、これは展望レポートの方では中長期見通しが出ますけど、金融経済月報は月初のMPMで作っていますのでちょっと比較の仕様がありません。

『先行きのわが国経済についてみると、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられるが、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

というのが前回の先行き見通しで、リスク要因はこうなっています。

『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きいほか、金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要である。』(前回)

でまあ今回の声明文での話と比較してみますと、新興国資源国に関しては従来は「物価安定と成長の両立の可能性」とあったものが「持続的成長経路への円滑な移行の可能性」とありまして、これは即ち新興国資源国において、成長という認識から、持続的成長になれるかどうかですねえというステージに変化しているという事でこれまた下げな上に、今回は「日中関係の影響の広がり」というのも入っているということで、下方リスク拡大という格好になっておりますな。


・謎の文書に関連して政府への要望が入る

今回の第6パラグラフになりますが。

『政府と日本銀行は、この課題を達成するために、それぞれの役割を果たしていく必要がある。日本銀行は、上述の認識に立って、強力な金融緩和を推進していく。日本銀行としては、政府が「デフレからの脱却のためには、適切なマクロ経済政策運営に加え、デフレを生みやすい経済構造を変革することが不可欠である」との認識のもとで、日本経済の成長力強化の取組を強力に推進することを強く期待する。』(今回)

まあ政府もやれやゴルァ!としたのは結構な話ではありますが・・・・・・・・

『こうした両者の取組について、共有している認識を改めて明確に示すため、本日、政府とともに「デフレ脱却に向けた取組について」を公表することとした(別紙3)。このことは、それぞれが行う政策をより効果的なものとしていくと考えている。』(今回)

この謎文書に関しては後ほどコメントというか悪態を申し上げますが、また前原かという感じでございまして、この人が首を突っ込んだ案件はその場あるいは近い将来地雷化するの法則からしますと、何だかなあという文章がでましたねという所です。



○APPの拡大なんですけどね

声明文3ページ目の(別紙1)がAPPの増額内容に関してです。

声明文本文の最初のパラグラフにもありますように、今回の買入拡大は・・・・・・・

長期国債:5兆円程度
国庫短期証券:5兆円程度
CP等 :0.1 兆円程度
社債等 :0.3 兆円程度
指数連動型上場投資信託:0.5 兆円程度
不動産投資信託:0.01 兆円程度

となっております。CPとか最早買入せんでええぞなもしという所ではあるのですが、何気に今回ETFの買入を5000億円打ち込んでいるのは市場規模的に頑張っていると思うのですが、他に色々あって霞んだのは残念というのはさっき申し上げた通り。

あと国債買入のペースについてまた計算してみた(ただし電卓片手にやっつけで計算しているので間違ってたらゴミンナサイ。計算ロジックは以下の通りだから自分で計算できるでしょ)ので一応書いてみる。

データ元はこの辺。

営業毎旬報告(平成24年9月30日現在)
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120930.htm/

日本銀行が保有する国債の銘柄別残高(2012年9月28日現在)
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/release/2012/mei1209.pdf

でまあこちらの銘柄の額面残高を償還毎に集計するとこうなる(はずですが間違っていたらスイマセン)のですけどね。

2012年12月までの償還:4898億円
2013年1月〜6月の償還:12529億円
2013年7月〜12月の償還:46966億円
2014年1月〜6月の償還:80847億円
2014年7月〜12月の償還:12549億円
2015年1月〜6月の償還:22663億円
2015年7月〜12月の償還:43億円

んでもって、9月30日時点でのAPPでの長期国債買入残高が営業毎旬報告の別表2にありますように18.1兆円程度ある(ちなみにこれは簿価ベースの数字で、上記のは額面ベースなので微妙に違います)のですが、ここから10月の買入が4回で合計3.1兆円の購入となっておりますので、10月末時点での買入残高が21.2兆円。12月までに4900億円の償還があるので、それを差し引くと今のラップは20.7兆円。年末の目標残高24兆円に対して残り3.3兆円の買入が必要になりますので、11月12月の買入は月に1.7兆円程度の買入を行えばヨロシという計算になりますな。

でもって来年前半ですが、今回の基金国債買入の割り振りは何故か前半に全部振らないで2.5兆円ずつ前半と後半に拡大分を振っていますので、目標31.5兆円なので残高拡大での必要額が7.5兆円、償還(買入は1年超なのでここの償還額は確定)は1.3兆円弱となりますので8.8兆円の買い増しが必要となり、6で割ると月に1.5兆円弱の買入ペースになります。

来年後半に関しては償還額が増える可能性も無いでは無いですが、普通に考えると残存1年はあまり入らないと思いますのでまあこの償還額と思いますと、目標拡大額が7.5兆円で償還が4.7兆円になりますので買い増し額が12.2兆円になり、月に2兆円強の買入ペースになりますな。

でまあ目標達成後も残高維持という話になりますと、2014年の前半は黙っていても8兆円の償還手当の買入が必要になりますので、結局月に1.4兆円弱の買入ペースになるという計算。

恐らく買入で入りやすいのは2年超の部分と2年カレント近辺になると思われますが、そうなると今後の買入では2014年後半以降の償還物が打ち込まれやすくなると思いますが、いずれにせよ基金残高を維持するだけでも結構な買入を継続する、という話になる訳で、そんな中で長期国債の買入額をもっと増やせ云々という話をするのってお前らこういうフィージビリティー考えているんかいなと小一時間という気はする訳です。

まあいずれにせよ、今回の拡大は11月以降の買入ペースという意味ではスムージングな割り振りにも見えるのですが、何気に来年後半の方が厚い割り振りになっておりまして、来年後半になると買入ペースが加速するというお洒落な配分になっているのはどういう意味なのでしょうかねとゆー所ですが、ありそうな推測ではありますが、まだ来年前半の買入拡大余地(つーても5兆はもう物理的に無理なので買入の期限を半年延長しながらとかしながら嵌めるのかな)が辛うじて残っているという事で念のため温存したのかも知れませんが、後半にペースが拡大する形になるというのも「先々の買入ペース拡大を確約して買入が強力に続く事を示す」という所ではあるかと思います。


○企業向け貸し出し云々は物凄く効くのかニーズが無いのかよく判らんのですが・・・・・・

声明文にこんなのがありましたが。

『(2)貸出増加を支援するための資金供給の枠組みの創設(全員一致)

金融機関の一段と積極的な行動と企業や家計の前向きな資金需要の増加を促す観点から、金融機関の貸出増加額について、希望に応じてその全額を低利・長期で資金供給する。資金供給の総額の上限は設定せず、無制限とする。議長は、執行部に対し、この新たな資金供給の枠組みについて具体的な検討を行い、改めて金融政策決定会合に報告するよう指示した(骨子素案は別紙2)。』

・・・・・・・・無制限とアピールしたかったんですね判ります。

で、別紙2ですが。

『「貸出増加を支援するための資金供給」骨子

・取引先金融機関の貸出増加額(基準時点からのネット貸出増加額)について、当該金融機関からの希望に応じて、その「全額」を日本銀行から資金供給する。
・ 本措置による資金供給の総額の上限は、設定せず、「無制限」とする。
・ 貸付金利は、貸付実行時の誘導目標金利(現在は0.1%とする。)による長期固定金利とする。
・ 貸付期間は、各取引先の希望に応じて、1年、2年または3年とし、最長4年までロールオーバー可能とする。
・ 本措置の開始後、1年程度の間、適宜の頻度で資金供給を行う。
・ 資金供給の方式は、共通担保を担保とする貸付けとする。
・ 対象先は、預金取扱金融機関とする。
・ 貸出増加額を算出する対象与信は、対民間(金融機関向けを除く)貸出とし、円貨建て・外貨建てを含む。
・ 本措置による資金供給と「成長基盤強化を支援するための資金供給」を合わせて、「貸出支援基金」とする。』

ということで詳細は次回以降の会合で決定のようですが、これはFLSチックではあるのですが、FLSの場合は貸出先に対していちゃもん付けたり、プログラム参加した銀行の貸出動向を公表したり、貸出が伸びないとFLSで出したものに対してペナルティー金利を適用したりと、割と喧しい制度であるのに対して、日銀の出した今回の資金供給はかなりの「掴み金」的な風情を漂わせるものがございます。

つまりですな、金融機関向けを除く対民間貸出の増加額について、資金使途を問わずに4年まで0.1%まで貸出をしますよというのはこらまた結構な大盤振る舞いという話。しかも円貨外貨問わずということですから、どこぞの携帯電話会社の海外買収資金だろうが、REIT向けの貸出だろうが、じゃんじゃんオッケーですよという事ですし、まあ金融機関は預金超過で金イラネというのはあるかも知れませんが、それはそれとして0.1%で最大4年まで調達サイドをFIX出来るのはこらまあオイチイ話である、という面もありますので、これはこれでワークしたらかなりの大漢和辞典じゃなかった大緩和になると思いますが、銀行さんがどういう反応するか次第ですわな。

記者会見では(会見要旨は今日出るので続きは明日)全部出たら15兆円との事ですが、さてどうなりますやら。

・・・・・・・・・でもって、このスキームに関してはまたまた共通担保方式の貸出を行うという事でして、銀行の担保繰りがまあ足元で逼迫というような話は聞いていませんので特段の問題は無いと思うのですけれども、今後の基金国債や基金短国の買入拡大に加えて、全力で今回のスキームがワークした暁には更に担保が使われるという事になります。

まあ国債発行自体も増えていますし、また為替介入でもやってくれれば更に短国の発行が増えてくれるとは思いますが、日銀がこの調子で色々と資金供給をしてくると少なくとも共通担保オペの固定金利物のニーズが落ちてきたりするでしょうし、まあ短期市場的な悪夢としては量的緩和で当座預金30兆円とかやってた時にターゲット達成の為に無理無理短国の買入をした結果、短国市場が割引債なのに100円入札という勘弁してください状態になり、担保不足で有担保コール市場が瀕死状態となるとかゆーのがございますので、まあ買入等もほどほどにという感じであります。つーかCP買入増やさんでもええちゅうに。

あとですね、何気に言えるのですけど、今回のスキームに関しても固定金利オペと同様で「貸出実行時の金利が適用」という形になっておりますので、つまりこれは途中で利下げをした場合には日銀のこれらの資金供給の趣旨を踏まえて一生懸命応札した金融機関の梯子を盛大に外すという事になりますので、益々付利下げとかの措置が遠くなると思うのですが、相変わらず付利下げをすると当座預金に滞留している資金が市中に出回って云々という資金需給の基本すら抑えない議論をする方が本職の方々の中でも存在するのが甚だ遺憾の極みでございます。


○謎の文書ですがまあ前原さんの法則炸裂という感じですなあ

声明文別紙3にもありますが、この文書は何ですねんという感じで。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121030b.pdf
デフレ脱却に向けた取組について

『政府及び日本銀行は、我が国経済のデフレ脱却に向けて、当面、以下のとおり取り組む。』

ということでうだうだとクソ長い文章がありますが一応全部引用である。

『1. 政府及び日本銀行は、我が国経済にとって、デフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であるとの認識を共有しており、一体となってこの課題の達成に最大限の努力を行う。』

はあそうですか。

『2. 日本銀行としては、上記1.の課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しがあいまって実現されていくものであると認識しており、政府が成長力強化の取組を強力に推進することを強く期待する。』

まあこういう共同文書出すんですから「政府もやれやゴルァ!」という文言はいれます罠。

『日本銀行としては、「中長期的な物価安定の目途」を消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく。その際、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』

従来から説明していることですね。

『日本銀行は、『経済・物価情勢の展望』(平成24年10月30日)において消費者物価の見通しを公表した。日本銀行としては、引き続き「1%」を目指して、強力に金融緩和を推進していく。今後の物価動向については、「デフレ脱却等経済状況検討会議」において定期的に報告する。』

何じゃこの会議と思ったらこんなのがあるのね。

http://www5.cao.go.jp/keizai1/deflation/
デフレ脱却等経済状況検討会議

『また、日本銀行は、金融政策運営の考え方を市場にわかりやすく説明していく努力を続ける。』

判りやすく説明するよりも、麿の麿節を止めさせて、ハッタリをかまして配慮をしたプレゼンをさせればそれだけでこうかはばつぐんだではないかと思いますけどねえ・・・・・・・

で、政府ですが。

『3. 政府は、日本銀行に対して、上記2.の方針にしたがってデフレ脱却が確実となるまで強力な金融緩和を継続することを強く期待する。』

それは判ったがあんさんは何をするのよ。

『政府は、デフレからの脱却のためには、適切なマクロ経済政策運営に加え、デフレを生みやすい経済構造を変革することが不可欠であると認識している。このため、政府としては、足下の景気下押しリスクに対応し経済活性化に向けた取組を加速すべく、平成24年10月17日の内閣総理大臣指示に基づき、経済対策を速やかに取りまとめる。』

日銀の緩和実施に対してお前ら何やってますねん。

『また、政府は、「日本再生戦略」(平成24年7月31日閣議決定)に基づき、平成25年度までを念頭に、「モノ」「人」「お金」をダイナミックに動かすため、規制・制度改革、予算・財政投融資、税制など最適な政策手段を動員する。』

で、何かしましたっけ??

『デフレ状況を含めた経済状況及び経済運営については、「デフレ脱却等経済状況検討会議」において、定期的に点検を行う。』

とまあそういう事で、どうせこんなの政府、というか前原さんがお手柄にしたいから作らせたというものでしょうが、ここには新しい取り組みとかの話は1ミリも無く、更に政府に関しては特に何もしていなくてこれから頑張りますよという「明日から本気出す」みたいな話な上に何らコミットメントも無い、という事でまあはっきり言ってただの作文じゃねえかと思うのですが、前ナントカさんは会見でドヤ顔で画期的などうのこうのとか仰せで全くもって何やってるんだかと申しますか、政府が実は何もやっていない事をこの文書で大々的に大公開しているのによくもまあ恥ずかしげもなくドヤ顔出来るわと呆れる次第。

つーかね、小泉首相と福井総裁時代だったらこんな文書を書くまでも無く、ここの文書に示されたような話って共通認識されていましたし、経済財政諮問会議に俊ちゃんも出席していた訳で、わざわざこのような作文を公表してドヤ顔で会見をしなくてもこの程度というよりはこれ以上の連携感を出していた訳ですよ。

然るに民主党政権は日銀がデフレ脱却でどうのこうのとか言ってる側から何の対策もセットにしない「デフレ宣言」をするアホウは居るわ、本来当たり前の事をわざわざ作文にさせてドヤ顔して自分の手柄アピールするアホウは居るわとか、もういい加減にしろと思うのですよね。


でまあこの文書はこれ自体では何も言っていない(どころか政治の無策を浮き彫りにしているだけ)代物なので、このままこのしょうも無い文書がフェードアウトしてくれれば何の問題もないのですけれども、将来更にアホウな政権が発足して、「過去にこういうの出したんだからウチの政権時にも文書出せやゴルア!」と言い出して今度は中央銀行の独立性を裏口からおかしくしていって財政発散マネタイズで通貨価値毀損で誰も得しない悪性インフレの種を撒くとかになりますと、全くもって糞としか言いようがない訳でございまして、こういうのがハンス・フォン・ゼークトの言う(実際はゼークトの言葉じゃないそうですが)ところの以下暴言の為割愛という所ではないかと存じます。

つーかこんな文書公表を入れるもんだからMPMがアホのように長引いて引け際15分しかなかったのは全く参りましたぞな。MPM引っ張るから変な期待が高まっちゃった(先般の学習効果で今回はそこまで極端に為替や株が動かなかったのが不幸中の幸いでしたが)じゃねえかゴルァという所です。

でまあ余談ですけど。

『平成24年10月30日

日本銀行総裁    内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)
白川 方明      前原 誠司
        
            財務大臣
            城島 光力』

署名している皆さん来年の今頃はこの地位に居ませんよねとかいうブラックなツッコミは兎も角と
いたしまして(^^)。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel121030a.pdf
「資産買入等の基金運営基本要領」の一部改正等について

の別紙3にある財務大臣宛認可申請書を見たら宛先が『財務大臣 城島 正光 殿』となっていまして、間違えたのかと思ったら城島財務大臣って堺屋太一あるいは扇千景スキームで本名が正光さんで光力さんというのは芸名というか政治活動名なんですね。不覚にも存じませんでしたです。


○展望レポートですが詳細は会見要旨と共に明日である

本当は展望レポート詳細(というほど詳細でも無いが、汗)のあたりもあるのですが、つい例によってノリノリで悪態を書いていたら時間ががががが。

基本的見解が昨日でまして、全文は今日出ます。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1210a.pdf
経済・物価情勢の展望(2012年10月)

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1204a.pdf
経済・物価情勢の展望(2012 年4月)

展望レポート9ページです。

『以上の環境を前提に、消費税率引き上げの直接的な影響を除いて物価情勢の先行きを展望すると、国内企業物価は、当面、国際商品市況が弱含みで推移することを反映して、前年比で下落するものの、2013年度以降は、国際商品市況の緩やかな上昇や、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、緩やかな上昇基調に復していくと見込まれる。消費者物価の前年比は、当面ゼロ%近傍で推移した後、マクロ的な需給バランスの改善などを反映して、徐々に緩やかな上昇に転じ、2014年度には当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に着実に近づいていくとみられる。』(今回)

ちなみに前回の同様部分ですけどね。

『以上の環境を前提に、物価情勢の先行きを展望すると、国内企業物価指数の前年比は、国際商品市況の緩やかな上昇や、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、見通し期間を通じて緩やかな上昇を続けると見込まれる。消費者物価の前年比は、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、今回の見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い。』(前回)

ということで、「遠からず達成する可能性が高い」というのと「着実に近づいていくとみられる」の表現がこれがまたどっちが強いのかがさっぱり判らんという難解ホークスにも程があるのでございますのでこういうイミフ表現は勘弁願いたいのですが、会見の報道を見る限りでは「着実に近づいているというのは1%を見通せるという意味では無い」という話らしいのですが、2014年の物価見通しが平均で0.8%となっているという数字を出した上に「着実に近づいていくとみられる」と表現されると、素直に考えると「えーっと、2014年後半には1.0%になってくるという話ですよねえ」と受け止められても仕方ないと思うのですよね。

で、その一方でいつものように金融政策の所では16ページにありますように、

『すなわち、第1に、日本銀行は、当面の「中長期的な物価安定の目途」である消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく方針である。』(今回)

と説明していまして、上記の「着実に近づいていくとみられる」のワーディングと、2014年0.8%という数字(この数字が妙に高いのではないかという話は明日また行いますとして)と、この文言のセットを見ると、何かあっさり金融緩和が終わりそうな感じで読めてしまいまして、誤解を招くのではないかと思うのですけどどうなんでしょうかねえ・・・・・・・・・

とまあそんな所で本日は勘弁。




2012/10/30

お題「決定会合とかPD懇談会とかの雑談と悪態だけで終了の巻orz」

いやね、遂に注目の決定会合ですとかドヤ顔(かどうか電話コメントだから判らんけど)でモーサテの市場コメントをしている他市場の皆様におかれましては何の話をしてるのやらという感じですな。

○ということで決定会合だが最早そーほわっと状態なので

もうね、債券市場的には「だから何なの」という状態で別に盛りあがる訳でもないですし、大体からして既に買入のせいで3年から手前の金利が0.10%割れで運用するのにどうしろちゅうねんという状態だと言うのに更に買入増やされてもねえという感じですし、これで買入対象の年限でも延ばされた日には特に銀行業態は困りますがなという所。しかし一方で(まだまとまったネタにしてなくて恐縮ですが)この前出たFSRとかでは地方銀行の金利リスクが大きいだの何だのとか解説がありましたが、そもそも国債買入しまくって特に短い所の金利を潰して長い所をポートに入れざるを得なくなったのは誰のせいだと小一時間。

などという話はまあどうでも良い(よくないが)のですが、今回に関しては基本的には展望レポートでの見通し期間が延びて、やはり物価安定の目途達成までの時間が遠くなりましたねという事になるので追加緩和、というのが極めて自然ですが、緩和については物理的に考えて基金国債買入を5兆円増やしておまけに短国を5兆買入とまあここまでは順当。

長期国債買入を更に増やせと言う意見もあるのですが、どうせ物価安定の目途に関してそう簡単に達成という話にならないのですから、半年後にはおかわりをしないといけないという話になりますが、ここで長国10兆とか打ち込むと半年後に突っ込むのがしんどくなりますぞなという話でして、大体からして基金買入だって償還分の再投資もしないと行けないのですから、基金残高拡大を延々と続けろというのは実は物理的に困難な話だという考察がどうもあまり見られないのは困ったもんだという感じでございまする。

リスク性資産の買入に関しては先日のMPM議事要旨にあったような理屈もさることながら、そもそも買入が市場のシェア的にどうなのみたいな事も勘案するとそうそうバカスカ買入を増やす訳にも行かないという面もあってムツカシヤという所でしょうか。まあ個人的にはETF買入増やして、その一方で総合指数型の上場ETFをもっと編成して株式市場から株式吸収しちゃえばとか思うのですけどそう簡単には行かないもんですかね。

CPはもうイラネという感じで、社債は期待はあると思うのですが、まあ社債に関しては買入総額がどうのこうのよりも買入銘柄の範囲を拡大とか適格要件を緩和してくれ的な期待の方が大きいと思われまして、それはまあどちらもムツカシヤな感じはしますな。

ということでETFが4ケタの前半億円位のオーダーで増えるというのがおまけでつくかねという所ですが、ヤケクソで来年1年間で1兆円のおかわり位入れて頂ければ株式市場歓喜という所かとは思いますが期待はしません。


でですな、まあそれはそれとして所謂オープンエンド型導入って話なのですけれども、まあ例えば大体月に2.1兆円とか2.2兆円とかの基金買入を行いますという形にして、その基金買入は物価安定の目途達成まで期限を切ることなく(というのが既にインチキ的な言い方ですがこれで「無期限」という話になるのですから何だかなあという感じですが・・・・・・)買入を継続します(キリッ)という事にすれば実はこれから償還がうじゃうじゃ来て残高維持だけでも大変という基金買入の枠組みが一転して運営しやすくなります(ついでに固定金利オペもそのどさくさに紛れて廃止して通常のオペにしておけばヨロシアル)のでまあオヌヌメではあるのですが、これはこれで将来の金融政策運営という事を考えた場合にどうなのかという論点がございます。

つまりですね、まあクレクレの連中が「オープンエンド型」をクレクレ言うからそれを出す、というのでありますと、一見すると市場の期待に沿っているように感じられますが、これ一つ重大な問題がございますのよ。で、それは何かと申しますと「先に作った資産買入等基金の枠組みのコミットメントを途中で破棄する」というのがどうなのか、という金融政策運営のコミットメントの信頼性という部分に関して将来に禍根を残さないかという点なのですよね。

即ち、米国のオープンエンド方式というのは、もともとQE2が終了していてツイストオペをやっている途中に上乗せ措置としてオープンエンドの買入を突っ込んだ形なので、まあ従来の金融緩和政策の枠組みにおけるコミットメントのどこかを破棄してこの政策を打ち込んだ、という形では無いですな。

で、仮に日銀が今回オープンエンドみたいな基金買入を行うと言った場合ですが、従来の枠組みってのは資産買入等基金の残高達成に対して来年末までの期間を使ってこの残高を達成しますお!とコミットして居る訳でして、そのコミットメントを達成しようとする期間中であり、特段その政策の枠組みの前提が崩れる不具合(=金融緩和を継続できないような事態の急変発生)が発生しているという訳でも無いのに途中で政策の枠組みを破棄する形になるのが如何なものかというのはあるのですよね。

いやまあそんなの気にしないという理屈も有るのですが、やはりまあ普通に考えますと途中でのコミットメント破棄というのは、「日銀はコミットメントをすると言っても都合が悪くなると途中でそのコミットメントを発展的解消とか何とか言って無かったことにするので信用ならん」というような見方をされるリスク、つまり政策実施におけるクレディビリティーの問題が生じるという事で、実はそうホイホイと枠組みの変更が出来る訳でもありません。というのが政策作る側のロジックだと思うのですけれどもどうでしょうかね。

そもそもコミットメントの残高目標の第1回期限すら来ていない状態でありまして、せめて第1回目標を達成して、「我々はこの通りコミットメントを達成しましたですお(キリッ)」というのをやって「コミットメントの達成」を見せないとマズーなのではないかと思います。


ま、そんな事よりも今回は総裁会見で是非最近の金融政策クレクレ政治に対して悪態をついて頂きたいと思う次第でございまして、「例えば特例公債法案の成立遅延によって予算執行が遅れて経済に悪影響を与えたり、債券市場を混乱させる先行き懸念を起こさせると言ったような事は極めて遺憾であり、我々の金融緩和効果を減殺するものであって、金融緩和効果を発揮する為の取り組みを進めて頂きたい」とかもう言って下さいなと思うのは最近のてめえらは引っ掻き回すばっかりで金融政策にはクレクレ言うどころか恫喝するアホー政治家連中を見ていて思うのですがね。まあどうせ白川さん再任とか無いでしょうからこの際政治に悪態ついたらどうでしょうかと(笑)。



○PD懇では市場の懸念と言うよりは最早怒りのメッセージとな

国債市場特別参加者会合(第46回)議事要旨
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/20121026.html

配布資料はこちら
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/20121026pdset.pdf
特例公債法案の成立遅延による国債発行への影響

でまあ議事要旨の理財局の説明から引用。

『特例公債法案については先の通常国会で廃案となっており、臨時国会において再提出する予定である。財務省としては、法案の早期成立に向け、引き続き努力してまいる考えであるが、仮に、特例公債法案が成立しない状態が続く場合、利付国債の入札及び発行については、11月中の利付国債の入札を最後として、12月以降の利付国債の市中発行、具体的には、12月4日の10年債入札から支障が生じ、その後は、特例公債法案が成立するまでの間、利付国債の発行は休止せざるを得ない。』

だそうです。

『一方、発行が休止となった場合、特例公債法案が成立した後は、休止されていた間の発行額を取り戻す必要があるため、毎月の利付国債の市中発行額を現在よりも増額する必要が生じる。』

まあそうですな。

『このように特例公債法案の成立が遅延した場合の国債市場への影響について、国債市場特別参加者会合の皆様の御意見を伺いたい。また、仮定の話ではあるが、利付国債の発行を休止せざるを得なくなるような場合において、市場への影響を少しでも緩和する方策についてアイディアがあれば、あわせて伺いたい。なお、特例公債法案の状況にかかわらず、国債の元利払いを行う国債整理基金特別会計には十分な資金を確保できていることから、本年度の国債の元利払いに支障を生じることはないことを念のため申し上げておく。』

支払いに支障を生じたらそらヤバスとしか申し上げようがないのでそれは一安心ですが、どう見ても碌な話ではありませんぞな。

ということで参加者の意見ですけど、最初の人のコメントをまずは全部引用しておきますが、市場の懸念というよりはもはや怒り心頭モードとなっているのが誠に当然とは言え、市場の憤怒を伝えるのには結構なお話ですわな。

『この時期に本会合において、今回の議題が議論されることに関しては、プライマリー・ディーラーの一社として極めて強い危機感と、これまでにない大きな不安を抱かざるを得ない。』

全くで。

『例年、この時期には、年々膨れ上がる翌年度の国債発行をどのような計画で安定発行・安定消化するかという、非常に重要な議論の準備を行っている。ところが、この時期に今年度予算の4割超に及ぶ財源に対する法案成立の目処が立っておらず、目の前に迫る12月債の発行が危ぶまれるという現状は、金融市場に対して極めて大きな悪影響を及ぼし得るものであり、待ったなしで打開する必要がある。』

『本邦の国債残高や年間発行額は、国の生産力、成長力対比で極めて高い水準にある。それだけでなく、近年は政治リスクが懸案事項として加わり、国際的な格付機関は、日本国債に対して、格下げを含めた極めて厳しい評価を下している。その中で、弊社を含むプライマリー・ディーラーは、これまで発行当局及び市場関係者等とともに、そのときどきの金融市場環境を踏まえ、幅広い業態にわたる多くの投資家との対話を通じて、大量発行が続く国債の安定消化を維持すべく、長い年月をかけて、国債に対する信頼構築に尽力してきた。こうした努力により維持してきた安定発行・安定消化が、今日の国債費抑制に寄与しているという認識もある。』

普段のPD懇談会では参加者の皆様ここまで大きく出る事は無いのでありまして、それだけ市場の人たちが怒っているという事であるという話ではございます。

『来週から予定されている臨時国会において、法案が成立せず12月債の発行が不可能な状況となれば、これまで築いてきた市場との信頼関係が基礎から崩れ落ちる。』

何度も出ていますが「市場との信頼関係」なんですよね。

『また、年度末に向けて安全資産として40兆円近い運用を予定する投資家への影響も避けられないことから、国債市場とその参加者に対しては、多大な混乱を及ぼすものと考えている。加えて、法案不成立による発行停止は、政治リスクの顕現化を懸念してきた国際的な格付機関に対しても、大きなマイナス要因になると想定される。主要国の中で相対的に低い日本国債への現在の格付を考えると、格下げによる市場の動揺は、将来的に大きな不安材料を残すだけでなく、それに伴う金利上昇によって、これまでの努力で抑制してきた国債費が増大し、本邦の債務管理政策にとって負のスパイラルを招きかねない。』

全くで。

『法案の成否に関する今回の件がなかったとしても、足元の大量発行を支える市場環境は綱渡りの状況が続いている。今年度実施された国債発行額の増額に対しても、供給に対する需要が必ずしも十分とはみられず、年限によっては、イールドカーブの変形を伴って価格が崩れている。』

『以上のように、極めて困難な状況下で、今後市場の動揺や国の債務管理政策に対する信用失墜も想定される中、法案の成否に伴う混乱は、日本国債の将来と本邦財政にとって致命的なダメージを及ぼしかねない。』

というのに与党も野党も何やってるんですかという所ですが。

『最後になるが、膨大な発行残高と発行額に至った今日の国債市場を支えるべく、これまで力を尽くしてきたプライマリー・ディーラーの一社として、今回の臨時国会において、会期中一日も早い法案成立を強く要望させて頂きたい。』

とまあかなり大きく出ていますが、政治家の先生方ちょっと読めやという所ですな。


まあ他にもこんなのが。

『特例公債は一般会計予算の約4割以上の歳入であり、発行できないとなれば、株式・債券・為替市場のみならず、日本経済に甚大な影響を及ぼすことは明らかである。それにもかかわらず、年度の半ばを過ぎても法案が成立していない中本会合を開催することになったことについて、強い懸念と落胆を覚える。』

『今回の問題のポイントは、財政の運営・債務管理におけるマーケットとの信頼関係であり、国内外の投資家が注目している。この信頼関係が崩れてしまうと、悪い金利上昇を引き起こし、国民の負担に大きく跳ね返ってくる。一旦この信頼関係が崩れてしまうと、回復には非常に大きなコストと時間を要する。早いうちに法案を可決し、市場の混乱を回避してほしい。』

ということなのですが、まあどうなんでしょうね。さすがに自民党も法案審議して来月の前半には成立の方向みたいな段取りみたいなのがどこかのニュースベンダーにあったような無かったような気もするのですが、そうは言っても解散総選挙の絡みで何が飛び出すか判らんというのがオソロシスなのが政治ですからねえ。


http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121029/k10013096641000.html
赤字国債発行法案 国会に再提出
10月29日 18時39分

『政府は、先の通常国会で廃案となった、今年度予算の執行に必要な財源を確保するための、赤字国債発行法案を、29日、国会に再提出しました。』(上記URLより)

との事ですが、一方でこの人は相変わらずのクオリティ維持。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE89S05920121029
30日の日銀会合、出席して意見を表明する=前原経財相
2012年 10月 29日 17:04 JST

・・・・・・・・・いやだからそんな事より特例公債法案の成立に努力してくださいな。

#うむ、BOEの議事要旨ネタ(昨日の続き)とかあったのだが時間ががががが









2012/10/29

お題「資産買入政策の限界という話が海外ではトレンドになりつつあるというのに・・・・・」

明日はMPMでございますが、さて・・・・・・・・

#モーサテでどこぞの株式コメンテーターが「10兆円を遥かに上回る追加緩和」を期待みたいな話をしているのですが、物理的に長期国債を10兆とか15兆とか買い増しをするのって買入額ベースに直すと来年の月の買入額が3兆を軽く超える事になってしまう筈(詳細には計算していないが)でフィージビリティー的に無茶です。日銀の保有国債残高の公表データを見て償還スケジュールを見れば誰でも計算できる話なのですが、何でそういうフィージビリティーを確認しようという発想が起きないのでしょうかねえ他市場の皆さんは・・・・・・・・・・・・


○まあ詳細が判らんので何だがこれは残念な認識

時事通信の記事から。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012102600918
日銀は「無制限緩和」を=自民・安倍総裁

『自民党の安倍晋三総裁は26日の時事通信とのインタビューで、日銀の金融政策運営について「何兆円という枠を決めて金融緩和をしても効かない。無制限にいかなければいけない」と述べ、無制限あるいは無期限での資金供給を約束している米欧型の緩和策が必要だとの認識を明らかにした。(2012/10/26-21:06)』

・・・・・・・・・・・orz

えーっとですな、そもそも「無制限に金融緩和をします」とかおっぱじめたら財政を物凄い勢いで引締めをするなら話は別かもしれませんけれども、普通の状況だったら「無制限」に実施したら財政マネタイズの無限実施になって通貨価値がゼロに向けて驀進するのでありまして、そもそも「無制限緩和をしろ」とか次期首相最有力候補のお方がそういう事言いだす時点で本来的に言えば無茶苦茶にも程があるお話なのですけれども、まあこのインタビューの全文を読んでいないのでどういう言い方をしているのか判断致しかねるのでまあその程度で。

つーかですね、それ以前の問題として海外の金融政策に関しても何か誤解をしているのではないかという不安が起きるのがこの短い記事の中からうかがえるのですが、『無制限あるいは無期限での資金供給を約束している米欧型の緩和策』というのが安倍さんの発言なのか時事通信の記者が勝手に端折って書いているのかが判らないですから、まあ時事の記者が勝手に書いているものだと信じたい所ではある(とは言え、それはそれでインタビューして記事書いた記者は日銀記者クラブに何で確認しないのと思います)のですけれども、米国にしても欧州にしても別にやっている資産買入は「無制限」でも「無期限」でもございませんがなという所です。

つまりですね、米国に関してはMBSの買入実施をしていますが、「物価安定の文脈の元で労働市場が相応に改善されるまで」という期限があり、「今の環境だと2015年半ば位までの異例の低金利政策実施が適切になると予想される」と言うとりまして、別に無期限でも無制限でもありませんぞなとゆーのって普通に金融政策を理解している人が居ればちゃんとご進講される筈なのですが(安倍さんは別に金融政策とかの専門家じゃないですし、そちらはご本人的にも売りにしている訳では無いでしょうから要するに周囲のスタッフなりがご進講しているんでしょ)、今の自民党にはその程度のご進講をする人も居ないのかよと禿しく不安になると同時に、誰がこんなしょーも無いロジックを吹き込んでいるのやらと小一時間問い詰めたい所ではございます。

それにですよ、そもそも欧州の場合はOMTの実施をするとは決定していますが、そのOMT実施においては「コンディショナリティー(つまり条件)」をドラギ総裁は連呼しているのでありまして、その条件を達成するのは政治の仕事であり、今は政治に球があるという話を強調している訳でございます。という事はどういう事かと申しますと、そもそもECB様におかれましてはOMTプログラムにおいて国債の購入を現在の所1ユーロも実施していない訳でございまして、どこがどう無期限無制限の資金供給なのか小一時間問い詰めたい所でございます。ECBの場合は「条件が達成されるまでは買入を実施する」ので「その条件が達成されるための額が事前には判らないので予め買入額の上限とかは設定しません」と言っているだけの話でありまして、別に無期限とか無制限とかで買入をするとは言っておりませんし、そもそもOMTで買入を行った分の資金については見合いの吸収措置を実施すると言ってるのですから「資金供給」ですらありませんがな(信用緩和措置です)というお話。

更にツッコミを入れますと(ってこの短い記事で何ぼツッコミいれられますねんという感じでございますが^^)安倍さん『何兆円という枠を決めて金融緩和をしても効かない』と仰せとこちらの記事ではございますが、ついこの前まで米国の資産買入は「ある期間までの間にこれだけの資産買入を行う」という形で実施している訳でございまして、それは効かなかったのでしょうかと小一時間問い詰めたい、というよりは安倍先生にご進講させて頂きたいと思う次第でございまして誠にアレ。それを言うなら従来から実施している輪番オペが「月に幾ら購入」という形で、かつ期限を特段切っている訳でも無いという方式(ですが所謂銀行券ルールが存在しているという了解があるのでまあ別ではございますけれども、ただしこの購入は経済物価情勢関係なく成長通貨供給という形で続くという面もある)なのですけど・・・・・という感じでして、何とも残念としか申し上げようが無い所でございます。

一方で先般来ネタにしておりますが、米国でもダドリー総裁やスタイン理事など、普通にFRBの執行部サイドと思われる方が直近の講演で「資産買入政策の効果が逓減している」という論点を提示しておりますように、非伝統的政策の実施において資産買入政策の効きが悪くなっているとか、資産買入政策の限界論のような物が議論されている、という状況になっているなどとゆーのはあたくしのような者であっても最近の講演などをチェックしておりますと判る次第なのでございまして、その一方で日本では1周回以上遅れた話を未だに行っているとか残念というか情けないというかという所ですし、大体からして安倍さんのような次期首相最有力候補の方のご理解がこのレベルというのはどういう事だと誠に遺憾に存じますという次第。


でですな、資産買入効果の限界という論点で言えば、従来から「これが本来の量的緩和政策である(キリッ)」とドヤ顔で国債買入を行っておりました英国におかれましても、先般はFLSという銀行の貸出促進スキームを打ち込んでほほーと思っておりましたが、10月のMPC議事要旨を見ますとそこには興味深い部分がありますぞなもし。というのが次のネタになるのでした(^^)。



○10月BOE議事要旨では「資産買入政策の効果限界論」ががががが

ということで先般(実は公表されたの先々週の水曜なので出遅れにも程があるのですが、汗)公表されましら10月のBOE金融政策決定会合議事要旨を見るとそこにはオモシロスな論点が。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1210.pdf

資産買入政策の効果限界論という話は『The immediate policy decision』ということで、金融政策運営に関する議論に関する議事要旨部分になります所の第31パラグラフにございます。

『There were, as ever, limits to what monetary policy could be expected to achieve. The Committee discussed the likely effectiveness of further asset purchases, should they be required.』

追加の資産買入の効果検討キタコレ。

『Some members felt that there was still considerable scope for asset purchases to provide further stimulus.』

ということで「Some members」は追加の資産購入はかなりの範囲において追加の刺激効果を与えることが依然として可能であると考えているのですが・・・・・・・・

『Other members, while acknowledging that asset purchases had the scope to lower long-term yields further, questioned the magnitude of the impact that lower long-term yields on corporate debt and equity would have on the broader economy at the present juncture.』

キタコレという感じですが、他のメンバーは追加の資産買入は英国債の長期金利を更に引き下げることはできるものの、その長期国債金利の低下によってもたらされる企業の借入の金利や株価などに対する影響が現在の状況下においてより幅広く経済に与える効果の大きさに対して懐疑的な見解を示した、とかまあそんな話をしておりまして、つまりは「国債をジャンジャン買っても効果が限界的になってきており、ここから先の買入をする必要があるのか」という話に英国でもなっております。とまあそういうお話でございます罠。


ということで、「正しい意味での量的緩和を実施しています(キリッ)」のBOEですら国債買入政策の限界論が出てきている、という意味で今回のMPC議事要旨のこの部分は非常に興味深い所ではございますが、それはそれと致しまして、経済物価情勢に関する検討状況の部分で明らかにポイントになるのが「productivity」であります。

んでまあそこの引用をおっぱじめるとオワランチ会長になりますので本日は割愛しますけれども、第19パラグラフから第24パラグラフの部分および第30パラグラフの部分にその辺の話があるのですけれども、英国の場合はとにかく生産性が低いまま推移した状態が続いていまして、その結果としてちょっと需要が上に振れると直ぐに物価が上に振れやすい、という状況にあるという問題点がありまして、「何で生産性がいつまで経っても上昇しないのか」という事に関しての議論があーだこーだと続いていまして中々興味深いです。

まあ生産性がどうのこうのという話だと何が何やらという感じもしますが、まー端的に言ってしまえば景気が大して良くならないのに物価はホイホイと上に跳ねやすい、という現象に関するお話でもございまして、つまりは英国の場合直ぐにスタグフレーション的な状態になりやすいという英国の悩みとゆー所でありまして、こうなってくるとそらまあ「今までの資産買入政策は何だったんだ」という話になってくるのも致し方ない罠という所で。


○その他少々

・ラッカー怒りの反対理由

http://www.richmondfed.org/press_room/press_releases/about_us/2012/fomc_dissenting_vote_20121026.cfm
October 26, 2012
Richmond Fed President Lacker Comments on FOMC Dissent

『"I dissented for the same reasons that I did at the September meeting.』

ということで基本的には前回の反対理由と同じです。以下鑑賞しますね。

『I opposed continuing additional asset purchases. Further monetary stimulus now is unlikely to result in a discernible improvement in growth, but if it does, it’s also likely to cause an unwanted increase in inflation. Economic activity has been growing at a modest pace, on average, and inflation has been fluctuating around 2 percent, which the Committee has identified as its inflation goal. Unemployment does remain high by historical standards, but improvement in labor market conditions appears to have been held back by real impediments that are beyond the capacity of monetary policy to offset. In such circumstances, further monetary stimulus runs the risk of raising inflation in a way that threatens the stability of inflation expectations.』

資産買入の追加実施は効果よりもインフレ期待の引き上げを招くリスクが大きいので反対、労働市場の改善に関して金融政策で行う事は限定的で金融政策以外が必要ということですね。

『"I also dissented because I disagreed with the characterization of the time period over which the stance of monetary policy would be highly accommodative and the federal funds rate would be exceptionally low. I read the Committee statement as saying that the federal funds rate will be exceptionally low for a considerable time after we observe a marked increase in the growth of employment and output. I do not believe that a policy conforming to this characterization would be appropriate, because it implies providing too much stimulus beyond the point at which rate increases will be required to keep inflation in check. Such an implied commitment would be inconsistent with a balanced approach to the FOMC’s price stability and maximum employment mandates. I do believe that it is useful for the Committee to characterize economic conditions under which policy would be likely to change in the future, but specific calendar dates are a highly imperfect way of doing so.』

異例の低金利政策を実施する期間に関しては、労働市場が顕著に改善するまでは、経済が改善したとしても実施する、というフォワードガイダンスに反対していまして、それは金融緩和を過大に実施することに繋がり、適切な金融引き締め時期を遅らせることによる弊害が大きい。というのと、フォワードガイダンスの期間を特定の時期にするよりは、異例の低金利政策の実施を継続する閾値となる経済情勢を特定した方が良い、という話をしているのもこれまた従来通り。

余談になりますが、フォワードガイダンス改善の一環でエバンス方式と申しますかこの「経済情勢紐付け型」の金融緩和継続フォワードガイダンスに関してはタカ派もハト派も支持しているという素敵な状態なのですけれども、これは即ちどういう事かと言えば、その「条件」を決めるときにタカ派とハト派が思いっきり違う主張を始めて収拾がつかんぞなもしという事になるんだろうなあというのは想像に難くない所であります。


『"Finally, I strongly opposed purchasing additional agency mortgage-backed securities, or MBS. Purchasing MBS can be expected to reduce borrowing rates for conforming home mortgages by more than it reduces borrowing rates for nonconforming mortgages or for other borrowing sectors, such as small business, autos or unsecured consumer loans. Deliberately tilting the flow of credit to one particular economic sector is an inappropriate role for the Federal Reserve. As stated in the Joint Statement of the Department of Treasury and the Federal Reserve on March 23, 2009, 'Government decisions to influence the allocation of credit are the province of the fiscal authorities.'』

で、資産買入の資産がMBSであることについては、「中央銀行が資源配分に対して介入をしてはいけない」というこれまた前回と同じ説明をしておりますが、まあそういう所で。




・日銀給与削減とな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel121026b.pdf
平成24年度および25年度における日本銀行の職員給与の減額支給措置について

・・・・・・・・・・orz

復興財源確保の為にとか言って公務員給与の時限的な引き下げ措置が実施されましたのでそれに平仄を合わせるというお話ではあるのですが、デフレ脱却の為に金融政策を打っている側から給与削減というデフレ政策をしてどないしますねんという気はする。つーかこの削減率結構でかくねえか。

『減額率

管理1級▲9.79%
企画役補佐級▲8.24%
その他の職員▲5.94%』

まー公務員給与下げたら平仄を合わせないといけませんぞなもしというのは今の世の風潮で有ります所の引き下げデモクラシーに沿っているので如何ともし難いのですけれども、給与削減して復興財源にというくらいならば、削減相当分に関して「被災地域の物産購入や被災地域への観光限定で利用可能な期限付きの商品券」形式で交付した方が宜しいんじゃねえかとか思うのですけれども浮く額よりも実施コストの方が掛かりますかそうですかorz







2012/10/26

お題「決定会合前にじゃんじゃん事前報道が出ていますので感想とかプレビュー雑談/特例公債法案に大人の対応来るか???」

石原さんやっと都知事辞めますかところで東京五輪招致はどうするんですかねえ新銀行東京はどうするんですかねえ。

○えーっと「10兆円では足りない」んじゃなかったんですか???

追加緩和報道が日々出る、というそらまあ金融政策動向に関しては金融商品取引法上のサイダーには該当しない話なのですが、サイダー関係者は証券業界永久追放を検討というような流れ(基本的に当然の流れだと思うのですが)になっている中で何でこちらはゆるふんにも程がある状態なのでしょうか流す方も流す方だし書く方も書く方だろふざけんなヴォケと思うのですがまあそのような悪態は兎も角として。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC25007_V21C12A0MM0000/
日銀、追加金融緩和へ 基金増額10兆円軸に検討
異例の2カ月連続 2012/10/25 14:00 情報元 日本経済新聞 電子版

『日銀は30日の金融政策決定会合で追加の金融緩和に踏み切る方針だ。国債などの資産買い入れ基金の規模を10兆円積み増す案を軸に検討する。日銀は同日に2014年度の物価上昇率の見通しを示すが、目標とする1%には届かない見通し。日銀は9月に10兆円の金融緩和を決めた。異例となる2カ月連続の緩和でデフレ脱却への姿勢を明確にする。』(上記URLより)

でまあこの先は会員記事になりますので読みたい人は電子版の会員登録してちょという話になる訳ですが、10兆円にプラスアルファがあるかもしれませんとかいう話みたいなので反応したのかもしれませんが、日経電子版の記事を引いた報道では「10兆円」の話がメインだったので、はあ10兆円ですかそうですかまあそれは既に予想されてますからねえとか思っていたのですが・・・・・・・・

日経電子版の記事が出た時&日経電子版が追加緩和報道をしましたという他のベンダーの報道が出た時というタイミングから為替市場というかドル円が反応しまして、それまで80円ちょっと手前でうだうだしていたドル円が80円10銭近くまで上昇。まあ15銭とかその位の動きなのですが、大台替わりなのでインパクトはあって平均株価が反応して上昇して債券は下落・・・・・と思ったら債券先物は数銭程度下がったのですが、それよりも前場超長期が弱くて中期から10年までが強かったのに何故かその逆になって終わってみれば中期以降がツイストスティープと貫録のワケワカランチ会長な動きだったのはご愛嬌。

引け後もドル円は円安モードで、夕方には80円20銭近辺までドル高とか思ったら今朝はNYが80円30銭近辺で戻ってきているようでございまして、えーっと待ておまいら「市場予想程度の緩和じゃ足りない」とか言ってた為替何とかストちょっとどうなってるんじゃ説明しろやゴルァという感じなのですが、まあよーするに為替がドル高円安をやりたがっているんでしょ目先的に(長期的な話は知らん)という事だとは思うのですけれども、「長期国債5兆円んと短期国債5兆円では他の市場は失望するでしょう」と債券市場的には思いっきり認識していたと思われますので、恐らく債券市場および金利市場の皆様におかれましては昨日来の為替市場の動きはポカーンという所では無かったかと思うのですがどうでしょうかね。

しかしまあ何ですな、「異例となる2カ月連続の緩和」っておまいらついこの前までクレクレ言いまくっていた癖に今度は「異例となる」とかどの口がそれを言うのかと申しますか、つまりおまいらのクレクレは「異例のクレクレお願い」をしていたという事ではないかちったあ前の発言の整合性とか考えろやと小一時間問い詰めたいと存じます次第でございますけれども、全くもって何なんでしょうね。

・・・・・・・・・・などと申し上げておりましたら、今朝の公共放送ニュースでは朝6時台のトップで日銀の追加緩和検討というのが出まして、火曜日(さくらレポートの翌日)は「追加緩和の実施必要性の有無も含めて検討」みたいな報道っぷりでした(下のURL記事の下の方にある関連ニュースをご覧あれ)が、今朝は追加金融緩和ダンディールっぽい報道になっておりますわよ奥様。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121026/k10013027191000.html
日銀 追加の金融緩和策を検討へ
10月26日 5時10分

『日銀は、来週開く金融政策決定会合で、景気が一段と弱い動きになっていることから、2か月連続となる追加の金融緩和策を検討することになり、国債などを買い入れ市場に大量の資金を供給する基金の規模をさらに拡大することなどを議論することにしてます。』(上記URLより、以下同様)

でまあ中長期的な展望として物価1%の達成が厳しいですからどうのこうのというのがありますけれどもそこはスルー致しまして。

『具体的には、市場に大量の資金を供給するために設けている、国債などを買い入れる基金の規模を現在の80兆円からさらに拡大することを検討し、この中で、幅広い株式を組み込んで証券取引所で売買されている上場投資信託=ETFを買い入れる規模を拡大するかどうかについても議論するものとみられます。』

ほっほー。

まあ何ですな、国債買うよりもETF買った方が(リスク量の話はさておきまして^^)買う額自体は少なくてもこうかはばつぐんだだと思うのですけれども、海外の金融政策が「量で勝負」から脱却しているという中で日本の場合は相変わらず「量ガー」という批判ばかりが飛んでくるという状況でございまして、5兆円だの10兆円だのという話をするのには国債しかございません(つーか5兆の総合指数型ETFとか存在しないので物理的に無理ですし^^)のでこの話になるとかはあそうですかという所ではございます。

でまあETFの買入拡大の議論がという話はまあリスク性資産の方に踏み込んでますなあとは思うのですけれども、先般の追加緩和を行った時の議事要旨が出た時のあの執行部の説明っぷりを見ると本当にリスク性資産をオリャーと買うのかいなという気は思いっきりするのです(12日の駄文でネタにしましたのでご参考になれば有り難き幸せ)けれどもどうなんでしょうかねえ。

『さらに日銀が、いつまで金融緩和を続けることになるのか分かりにくいという指摘もあるため、今の「物価上昇率1%を目指してそれが見通せるまで金融緩和を推進する」としている表現を見直すべきかどうかについても、会合で議論される見通しです。』

これはまた。

・・・・・・・・「中長期的な見通し」ベースでは無くて量的緩和コミットメント方式で「安定的に1%となるまで」というのでもやるというのであればそれはそれでほほうという感じなのですが、しかし何か将来に渡って政策決定を思いっきり拘束するようなコミットメントをもうすぐ総裁副総裁全部入替の可能性が高いという時期に打ち込むのかねという気もするのですが、まあこの表現の所に関しては、決定会合の議事要旨を額面通りに受け止めますと議論されている形跡がないという状態の中でいきなり出るもんかねとも思いますが、現在の日銀はコンセンサスというか全員一致を重視しているように見える節がございまして、地区連銀総裁や理事が入り乱れて好き放題言いながら、徐々に大勢見解が遷移していく状況が見えやすいFOMCと違って、変化する時はいきなり変化するというのが仕様になっておりますので、まあ確かに出るときは兆候なくいきなり出る可能性はあるのですけれども、さすがに時期尚早のような気もしますけどどうなんでしょうかね。


・・・・・・ということでプレビューもへったくれも無くなっている今日この頃ですが、とりあえず長期国債5兆円分は嵌め所がある(来年前半の残高拡大)ので入れるとして、それだけだとしょぼい感があるので短期国債5兆円、とまでは順当に予想できますが、何かあるのかと言う話についてはここまでの日銀から出ている決定会合議事要旨や白川総裁会見などからは微妙としか申し上げようがないですの。

大体からしてどうせまたクレクレ言われるのですからして、弾を出し尽くす訳にもいかんでしょと思いますし、それよりも最近すっかり貿易赤字体質になってきているなど、放置していても実は円高止まって円安に向かうんじゃネーノとかいう気もしますし、欧米の金融政策運営も徐々に「量で勝負」じゃなくなっているので、そんなに頑張って量で勝負する必要があるんかいなという気もするので、普通に普通の結果になるような気もします・・・・・・・が、普通の結果にならないというのがこういう時のパターンでもありますので、ETF3000億円位おまけがつきますかねえとかそんな予想しかできませんですすいません。

つーかそれよりも展望レポートで示される経済物価パスの数値、というよりも、より重要なのは回復パスのメカニズムをどう表現する(あるいはギブアップする)のかというのが本当はヲチャー(というよりただの見物人だが)としてはポイントなのでして、ロジックに何らかの変化があって、その変化ってどうなのというのを重要視したいですけどねえ、と申し上げておきますです、はい。


○追加緩和報道や石原新党ネタに埋もれてしまいましたが・・・・・・・・・

追加緩和報道とか石原新党報道とかの中、何気に重要な気がするニュースがこちらに。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2503A_V21C12A0PP8000/?dg=1
自民総裁「審議拒否考えず」 赤字国債で柔軟論も
2012/10/25 20:53 (2012/10/26 1:25更新)

『自民党の安倍晋三総裁は25日、鹿児島県薩摩川内市の街頭演説で、29日召集の臨時国会について「審議拒否など全く考えていない」と表明した。当初は解散時期の明示が無ければ審議に応じない構えだったが、世論の批判を懸念して方針を転換した。ただ野田佳彦首相の所信表明演説や代表質問の本会議を欠席する案も残っており、他の野党の動向を見ながら最終的な対応を決める方針だ。』(上記URLより、以下同様)

>審議拒否など全く考えていない
>審議拒否など全く考えていない
>審議拒否など全く考えていない

・・・・・・・・・これは特例公債法案チキンレース終了のお知らせですか???

『会合後、党首脳は記者団に「所信表明を聞かなくても法案の審議はできる」と語った。首相問責決議をした参院に配慮し、衆参両院の首相の所信表明演説や代表質問は欠席するが、首相が出席しない赤字国債発行法案などの委員会審議には応じることを検討する趣旨だ。一方、別の幹部は「自民党だけが欠席することは難しい」と述べ、公明党などと26日に協議して決める考えを示した。』

>赤字国債発行法案などの委員会審議には応じることを検討する趣旨だ

まあこれは特定の人名を出さない形の「党首脳」の発言ではありますが・・・・・・・

まあ何ですな、特例公債法案成立の目処も立ちませんので、11月2日だったと思いますが、地方交付税交付金の次の支払いも誠に遺憾ながら致しかねますという状況になり、官公庁関連の支払いに関してもそもそも節季払いなのが多い中でこの調子で特例公債法案成立が越年しちゃうとかになったら年末の支払だって渋滞して困る人続出でございますがなという事で、さすがにマズイでしょとゆーことで自民党の方が本件に関しては大人の対応モードになる、というのであれば国民経済的には結構なお話ではないかと存じますが、まあそれがすんなり行くかというと政治は一寸先は闇みたいですし、大体からしてそんなのシロートのあたくしが知る由も無いのでワカランチ会長。

『こうした「奇策」が浮上したのはかたくなな参院側に党執行部が苦慮しているためだ。浜田靖一国会対策委員長は25日、参院の脇雅史国会対策委員長と協議したが、脇氏は「参院で所信表明と代表質問はやらない」と譲らなかった』

『衆院側が解散カードと位置付ける赤字国債発行法案についても、参院は独自論を展開する。参院の溝手顕正幹事長は党内の会合で「解散の件は自分たちのことではない。参院に送ってくれば通る」と述べ、野党が採決を欠席すれば、与党が半数に満たない参院でも同法案が成立すると語った。』

・・・・・・・・もはや何がどういう理屈の展開になってそういう話になっているのかがシロートのあたくしには判りかねますので誰かあたくしに教えてジェネラル。

『公明党の山口那津男代表は記者会見で、参院自民党の赤字国債法案への協力論について「自民党内の一部の意見にすぎない。政党としてどう対応するか決めてほしい」と、不快感を示した。』

そら自民党と一緒になってチキンレースをしているのにいきなり自民党が大人の対応モードになったら梯子外されにも程があるから不快感示しますな。


・・・・・・でまあこちらも日経→NHKのニュース引用の流れとなって恐縮至極ですが、こちらに関しても今朝の公共放送ニュースでやや詳しく説明しておりましてですね。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121026/k10013026831000.html
自民 赤字国債法案の成立図る意見
10月26日 4時40分

『自民党は、来週、召集される臨時国会への対応を巡って、25日夜、幹部が協議し、衆議院の年内解散を確約しない場合には、野田総理大臣の所信表明演説に応じるべきではないという意見が相次ぎました。』(上記URLより、以下同様)

『ただ、赤字国債発行法案は、国民生活に与える影響が大きいとして、成立を図るべきだという意見が出され、公明党とも調整したうえで最終的な対応を決めることになりました。』

キタコレ。

『参議院側を中心に、「先の通常国会で野田総理大臣に対する問責決議が可決されたことは重く、野田総理大臣の所信表明演説や代表質問に応じるべきではない」という意見が相次ぎました。ただ、赤字国債発行法案については、成立が遅れれば国民生活に与える影響が大きいとして、何らかの形で成立を図るべきだという意見が出されました。さらに、衆議院のいわゆる1票の格差の是正や、将来の年金制度などを議論する「国民会議」の早期の設置について、「大人の対応をすべきだ」という意見が出され、今後、対応を検討することになりました。』

>大人の対応をすべきだ
>大人の対応をすべきだ
>大人の対応をすべきだ

・・・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー


既にご案内の通り(月曜にアナウンスされております)、本日は特例公債法案成立遅延の影響というお題でのPD懇が実施されますので、発行がどうなるとかその辺の話は議事要旨と共に月曜には財務省のサイトに公表されるでしょう(ネタが重いからその前に出る可能性もあるかもしれませんが、その場合は関係者の皆様が夜勤はするわ休日出勤はするわという状態である、という事です)。

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/press_release/20121022.html
国債市場特別参加者会合(第46回)開催日程

○日 時:平成24年10月26日(金) 16:00から
○テーマ:特例公債法案成立遅延の市場への影響について
○場 所:財務省 第3特別会議室


まあ今臨時国会で無事に成立してくれれば良いですねという所でありますな。

・・・・・・良く良く考えてみると東京都知事選挙が知事辞任受理から50日以内に実施されるというスケジュールになると思ったので(だとすると12月9日日曜が大安なので9日投票ではないかと勝手に思料したがどうでしょ)ですが、民主自民公明的にダブル選挙にした方が良いのか、都知事選挙専念モードにした方が良いのか次第で解散時期とかも変わるでしょうし、何かチキンレースでデッドロック状態になりそうだった情勢が動くという事になるんでしょうかねえ、よく判らんけど。

(追記:読売新聞によれば16日みたいですね:http://www.yomiuri.co.jp/election/local/news/20121025-OYT1T01250.htm


2012/10/25

お題「FOMCである/スタイン理事講演ネタその3」

自分の所では全廃するけど海外に輸出という発想が素敵ですね(棒読み)。
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/news/20121024-OYT1T00685.htm
維新公約に30年代までの原発全廃…輸出は促進

しかしどうでも良いがモーサテの朝刊クリップで「日本版財政の崖について社会のストレステストが必要です」とかドヤ顔でお話していますが、この前ご紹介したwhat_a_dudeさんの所での話もそうですし、あちこちの現場では既にドタバタやっているようなのですけどねえ。

更に悪態だが、最近のダドリーとかスタイン講演を見ると「LSAPの効きが徐々に逓減している」という話をしているのにモーサテ解説様は「住宅市場を見ると緩和効果が顕著に出ていて金融緩和の効果について反対派も認めざるを得ない」とか言ってましてナンジャソリャでございます上に、そもそも反対派は「効かない」事を問題にしているのでは無くて「要らない所に効く事による副作用」を問題にしているのですけどとかツッコミ出すと止まらなくなるので止めておきます(^^)。

と言いつつ最後の所で更にずっこけたのだが、「日本はECBのOMTを参考にすべき」とかドヤ顔で言うんだが財政問題国の国債買い支え策のどこをどう日本に当てはめるのか具体的にご説明を頂きたいのでございますけど(・・??)



○FOMCは殆ど変更なしですな

しかしFOMCは「前回大きな変更をしたので今回は無いのが織り込み済み」なのに日銀は盛大にクレクレ攻撃というこの対称性が何ともアレではございますなorz

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20121024a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120913a.htm(前回)

まあ今回は元より会見もSEPも予定されていない会でございますので、慌てて何かやらないといけないのであれば別ですが普通は今回はスルーの回という感じですわな。

・第1パラグラフ:家計消費と物価を上げて企業固定資産投資を下げ

『Information received since the Federal Open Market Committee met in September suggests that economic activity has continued to expand at a moderate pace in recent months. 』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in August suggests that economic activity has continued to expand at a moderate pace in recent months.』(前回)

ご覧の通り変化なしなので、まあ前回って追加緩和しているのに微妙に判断は上がっているというお洒落な状態だったのを継続しているのですな。

『Growth in employment has been slow, and the unemployment rate remains elevated. Household spending has advanced a bit more quickly, but growth in business fixed investment has slowed.』(今回)

『Growth in employment has been slow, and the unemployment rate remains elevated. Household spending has continued to advance, but growth in business fixed investment appears to have slowed.』(前回)

でまあ今回声明文で変更がある箇所としてはここだけ(あとで「ほほー」という場所もある)なのですが、家計消費が「ちょっとだけ拡大が速まっている」となる一方で、企業の固定資産投資に関しては前回の「減速している事が見られている」だったのが「減速している」という風になっているというのでこちらは下げ、というか企業行動の減速化が継続しているという認識ですな。


『The housing sector has shown some further signs of improvement, albeit from a depressed level. Inflation recently picked up somewhat, reflecting higher energy prices. Longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『The housing sector has shown some further signs of improvement, albeit from a depressed level. Inflation has been subdued, although the prices of some key commodities have increased recently. Longer-term inflation expectations have remained stable. 』(前回)

住宅セクターの認識には変化なし。インフレに関しては商品価格の上昇に関しては前回から指摘されていましたが、足元ではその影響が出て上昇しているという認識ですが、まあこれは例によって例の如く一時的現象扱いでございまして、長期的なインフレ期待は安定というのが継続、と申しますか安定してないとマズーにも程がありますが(^^)。


・第2パラグラフ:「十分な金融緩和が無いと改善しない」という文言を入れるとな

というのがほほーという部分ではございます。つまりですね・・・・・・・

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee remains concerned that, without sufficient policy accommodation, economic growth might not be strong enough to generate sustained improvement in labor market conditions.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee is concerned that, without further policy accommodation, economic growth might not be strong enough to generate sustained improvement in labor market conditions.』(前回)

最初の一文はいつものお題目なので良いとしまして、2番目の文につきましてほほーと思ったのは、前回はまあ追加緩和をしたのだから当たり前のように入っていた「追加の金融緩和を行わないと」経済成長が労働市場の持続的な改善に対して不十分な強さに留まるでしょうという「追加金融緩和の必要性」の所でして、今回別にその部分をスルーしても良い所をわざわざ「十分な金融緩和が無いと」云々と言う文章を入れているので、まあ説明としては「十分な金融緩和が必要」というのを強調する事によってハト風味を醸し出すという効果を出している、と取るのが順当な取り方ですが、微妙に変な読み方をすると「毎月のようにMBSを購入するから緩和を引き続き強化しているんですよ(キリッ)」というどこぞの日銀のような説明という風情でもあったりしますけどね。

『Furthermore, strains in global financial markets continue to pose significant downside risks to the economic outlook. The Committee also anticipates that inflation over the medium term likely would run at or below its 2 percent objective.』(今回)

グローバルな金融市場が見通しのダウンサイドリスクとか物価は当面2%またはそれ以下で推移するとかいう部分は前回と全文一致ですので今回のだけ引用します。


・第3パラグラフ:実質的には変化なしですかね

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee will continue purchasing additional agency mortgage-backed securities at a pace of $40 billion per month. The Committee also will continue through the end of the year its program to extend the average maturity of its holdings of Treasury securities, and it is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities.』(今回)

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee agreed today to increase policy accommodation by purchasing additional agency mortgage-backed securities at a pace of $40 billion per month. The Committee also will continue through the end of the year its program to extend the average maturity of its holdings of securities as announced in June, and it is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities.』(前回)

ということで、前回は「このように決定しました」という話でしたが今回は「引き続き買入継続」となっております。

『These actions, which together will increase the Committee’s holdings of longer-term securities by about $85 billion each month through the end of the year, should put downward pressure on longer-term interest rates, support mortgage markets, and help to make broader financial conditions more accommodative.』(今回)

その政策の期待する効果、長期金利を下げてモーゲージ市場をサポートして、金融環境を幅広くより緩和的にする、というのも同じで全文一致ですので前回分は割愛します。


・第4パラグラフ:フォワードガイダンスも不変

華麗に全文一致なので今回分の引用だけ。

『The Committee will closely monitor incoming information on economic and financial developments in coming months. If the outlook for the labor market does not improve substantially, the Committee will continue its purchases of agency mortgage-backed securities, undertake additional asset purchases, and employ its other policy tools as appropriate until such improvement is achieved in a context of price stability. In determining the size, pace, and composition of its asset purchases, the Committee will, as always, take appropriate account of the likely efficacy and costs of such purchases.』(今回)


・第5パラグラフ:ラッカー先生お約束の反対

票決は例によって例の如くラッカー総裁だけ反対です。

『Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who opposed additional asset purchases and disagreed with the description of the time period over which a highly accommodative stance of monetary policy will remain appropriate and exceptionally low levels for the federal funds rate are likely to be warranted. 』(今回)

『Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who opposed additional asset purchases and preferred to omit the description of the time period over which exceptionally low levels for the federal funds rate are likely to be warranted.』(前回)

基本的には言ってることは同じで、詳しい理由の説明はリッチモンド連銀のサイトの方にラッカー怒りの反対説明が出るでしょうということで。



○スタイン理事講演ネタの続きの続きである

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20121011a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20121011a.pdf
Evaluating Large-Scale Asset Purchases

LSAPのコストの話の辺りをサラサラと流して参ります。PDF版で言えば本文10ページ目の後半からになります。

『Let me turn now to the cost side of the equation. Several potential costs of LSAPs have been discussed.』

・出口戦略について

『One is the exit problem--that a large balance sheet may make it harder for the FOMC to raise rates when the time comes.』

まあさよですな。

『Between the ability to pay interest on reserves, as well as various reserve-draining methods that the Fed has been methodically testing, I am confident that we have the tools to raise rates. If the FOMC needs to act in the face of an emerging threat to price stability, there is little doubt in my mind that we can. As to whether we will, the Federal Reserve has repeatedly made clear its commitment to both sides of its mandate--to price stability as well as to maximum employment.』

基本的にはまあ大丈夫でしょうという認識。


・市場機能について

『A second set of costs has to do with the possible effects of further asset purchases on various aspects of market functioning, including bid-ask spreads and market depth. And it would indeed be a concern if large Fed ownership of some segments of the Treasury or MBS market were to cause market liquidity to deteriorate significantly.』

買入のし過ぎで市場の価格形成やスプレッド、流動性などに問題が生じる可能性とな。

『We have seen little evidence of such problems so far, and we continue to closely monitor market conditions. If problems do begin to crop up, we will know it, and we will be able to adjust.』

今のところ問題は無いが必要があれば政策の修正を行うと。


という2点はまあマクラみたいな感じで、この先がやたら長くてまあポイントみたいです。

・米国金利が低下するのは良いのですが・・・・・という話のようだ

『A final notion of cost relates to the currently low yields and term premiums on Treasury bonds.』

ということで、一昨日引用した「負のタームプレミアム」の話の続きだったりもするのですが。

『At an intuitive level, one might think that, for the Fed, as for any other buyer contemplating a large asset purchase, information on prices and expected returns should be a relevant factor in the decision. Said differently, the case for an LSAP might seem more appealing if the term premium on Treasury bonds were at plus 200 basis points instead of its current level of roughly minus 80 basis points.』

FEDが買う事を前提にした価格形成によって負のタームプレミアムが発生するという話で。

『However, to make sense of this intuition, we have to return to the question of why LSAPs move term premiums. One interesting possibility is that, in a world where other sovereign debt has come into question, long-term Treasury securities are uniquely able to provide a money-like safe-haven service to certain investors. By analogy, think of currency, which investors are willing to hold even at a zero yield, because of the flow of convenience services it provides. Similarly, the negative term premium on long-term Treasury securities may in part reflect the relative scarcity of this money-like asset. If so, it would be economically costly to remove Treasury securities from the system. This logic is an application of the so-called Friedman rule.』

で、ここで負のタームプレミアムが何で発生したかという考察に話が戻ってしまうのですが、LSAPによる買入での金利低下の背景として、安全資産志向によって他国のソブリンの代わりにUSTが買われているという状態が現在起きているという認識を示しておりまして・・・・・・・

『So a key question is to what extent removing long-term Treasury securities is like removing currency. This question is hard to answer precisely and depends on the details of how you tell the story. If you believe that only nominal Treasury securities--but not something similar, such as agency securities or AAA-rated corporate bonds--provide money-like services to investors, you can try to measure the value of these services by looking at the spread on Treasury securities relative to something else that is very safe but not literally a Treasury bond--for example, corporate bonds coupled with credit default swap protection to minimize the credit risk. Arvind Krishnamurthy and Annette Vissing-Jorgensen of Northwestern University take this approach and conclude that between 24 and 70 basis points of the yield premium on Treasury securities is attributable to a "money-ness" effect. Numbers in this ballpark suggest that the costs of further LSAPs on this dimension are likely to be modest relative to even a conservative estimate of their potential benefits.』(本当は「Annette Vissing-Jorgensen」さんのoの部分はoに斜め線の入った文字ですが都合上これで勘弁)

めんどいので華麗に一パラグラフ引用しましたが、要するに安全資産志向によって米国債が買われる中、AAA債券とUSTのスプレッド動向を考察して考えた場合に、LSAPで吸い上げを行う事によって24〜70bp程負のタームプレミアムを拡大させているという研究もあるとかそんな話をしております。でまあこのような考察からすると、LSAPによる米国債吸い上げは「負のタームプレミアムの拡大」によってマイナスの効果をもたらしている、という判ったような判らんような話なのですが、どうもこの部分の説明がクソ長い所を見ると力を結構入れている部分であります。

で、この先にクリントン時代の買入消却との話での比較も例としていまして、今回のLSAPによる金利低下は安全資産不足によっておきている面もありますとかいう話をしております。

でまあこの次に「だからUSTじゃなくてMBSを買ったんですよ」という説明に繋がる訳でして・・・・


・MBS購入とUST購入の比較論考

『For the sake of concreteness, I have couched the discussion in terms of a hypothetical all-Treasury LSAP. In light of our recent initiation of an MBS purchase program, it is natural to ask what the salient differences are between buying Treasury securities and buying MBS. In my view there are two, both of which suggest that MBS purchases may offer a better cost-benefit profile than Treasury purchases in the current environment.』

ということで二つの利点があるとな。

『First, on the cost side, I have just alluded to the idea that Treasury securities may provide money-like services to certain investors, such that removing them from the system may entail a welfare cost. Presumably, MBS are less money-like than Treasury securities, so this element of cost could be reduced when buying MBS.』

先ほどの話になるのですが、USTの購入は安全資産志向とバッティングするのでそれよりはMBSの方が宜しいのではないかとまあそういう話ですな。

『Second, if the efficacy of Treasury purchases is diminished by the fact that many corporate borrowers already have plentiful access to low-cost funds, it is natural to focus on a sector that is more sensitive to financing costs. The housing market would seem to fit this bill. To the extent that markets are segmented and MBS purchases therefore have a more powerful effect on primary mortgage rates than do Treasury purchases, this possibility may be another appeal of going the MBS route.』

で、これはもうちょっと前の所で引用しましたけど、同じく負のタームプレミアムによって金利低下の効果が企業の投資行動への効果が下がっているという話をしていましたので、まあUST買うよりはMBS買った方が良かろうという話ですわな。



・LSAPの金融安定に対するインプリケーションキタコレ

『Finally, let me touch on the implications of LSAPs for financial stability. Some observers have argued that a long period of low rates can create incentives among market participants (such as banks, insurance companies, and pension funds) to reach for yield by taking on higher levels of risk with adverse consequences for stability.』

低金利長期化による「利回り追求」の動きが金融の安定に悪影響を与えるという件ですが・・・・・・

『These concerns should be taken very seriously, and a lot of work at the Fed is devoted to monitoring such risks.』

>These concerns should be taken very seriously
>These concerns should be taken very seriously
>These concerns should be taken very seriously

ほほう。だからこの前の9月FOMC議事要旨の「スタッフの金融環境報告」部分で突如金融の安定の話が出てきたのねと。

『A short summary would be that there is some qualitative evidence of reaching-for-yield behavior in certain segments of the market, but that we are not seeing anything quantitatively alarming at this point.』

>there is some qualitative evidence of reaching-for-yield behavior in certain segments of the market
>there is some qualitative evidence of reaching-for-yield behavior in certain segments of the market
>there is some qualitative evidence of reaching-for-yield behavior in certain segments of the market

まあ後半で「今の所アラームを鳴らすほどではありません」とは言っていますが、一部に利回り追求の行動が見られるという認識を示しているのが結構びっくらこきましたぞな。

『Of course, the worry is that one often sees only the tip of the iceberg in these kinds of situations, so one needs to be cautious in interpreting the data.』

と、意外にこの辺強調しているのがへーという感じでした。


・とは言え今の経済状況では低金利政策が必要と

『Taking as a given that reaching for yield could be a problem, what are the implications at the margin for monetary policy, and for LSAPs in particular? First, it is just a fact of life that we are likely to be in a low-rate environment for a considerable period of time, in light of the economic outlook. It is not a choice at the margin. While we are going to have to pay careful attention to the attendant financial stability issues and be prepared to intervene with supervisory and regulatory tools as needed, I would find it hard to accept the proposition that we should preemptively resolve them by, say, starting to raise the federal funds rate today. The potential damage that could be caused by choking off the recovery is too great.』

今の経済状況では低金利政策が必要で、利回り追求の動きがあるからと言って利上げをするのは経済に大きなダメージを与えるので望ましくなく、利回り追求の動きは監督や規制で対処しろという話ですので、さっきの話があるからと言ってタカ派ではありませんので念の為。


・この理論は何か変だとおもう・・・・・・

その次に微妙な話が。

『Second, one can argue that, by reducing term premiums, LSAPs in particular have potentially significant benefits in terms of financial stability.』

LSAPで長期金利を押し下げることによって金融安定に寄与するという見解もあるとな。

『A major source of problems during the recent crisis was the excessive maturity transformation undertaken by financial firms. Put simply, these firms were relying too much on short-term debt. One of the thrusts of regulatory reform has been to attack this problem--for example, via the constructs of the Liquidity Coverage Ratio and the Net Stable Funding Ratio that are a part of Basel III. However, a complementary way to deal with the problem is to influence the underlying incentives for short-term debt issuance. And these incentives are in turn shaped by the structure of rates and term premiums in the market.』

『As I noted earlier, a natural response for any firm facing an unusually low term premium is to adjust its capital structure by issuing cheap long-term debt to replace its shorter-term debt. It is therefore not surprising that the average debt maturity of large nonfinancial firms has increased notably over the past few years. Moreover, the same pattern shows up among large financial firms--they too have been significantly lengthening their average debt maturity.』

正直言ってこれは無理筋の理屈だと思うのですが、そもそも金融危機は過剰な長短ミスマッチが流動性枯渇を招いてその被害を拡大したという事を考えると、長短スプレッドが縮小することによって負債サイドの長期化が進むので、ミスマッチが縮小すると流動性枯渇が起きにくくなるので金融安定に寄与するとかいう話をしているのですが、いやその理屈はさすがにおかしいでしょう。

で、その説明がまだ続くのですがそこはスルーしまして最後の部分を。


・結論はMBSの購入に賛成と

最後の部分です。

『To conclude, I believe that our recently announced policy of MBS purchases, coupled with the change in our forward guidance, are strong positive steps. I am hopeful that these actions by the Federal Reserve will help to give economic growth a much needed boost.』

さよですか。

『At the same time, I am keenly aware of the many uncertainties we still have about the workings of nonconventional policies, and of LSAPs in particular. As I have tried to explain, LSAPs really are a different animal, and it is important for us to try to better understand these differences, and to do our best to take them into account when making policy judgments. In short, there is a lot left for us to learn. Thank you very much.』

ただし、非伝統的政策には不確実な部分もたくさんあるので、その点検をしながら政策を運営していきます。と割とバランスを取った話をしているなあというのがスタイン理事のデビュー講演でございましたと纏めておきます。









2012/10/24

お題「色々と酷い金融緩和関連ニュースに悪態である」

本当は明日のFOMCステートメントネタ投入の前にスタイン理事講演の続きを投入しようと思っていた(ちなみにLSAPおかわりのプロコンの話で「市場機能」とか「金融不均衡」とかの話も出てきて、「UST買うよりもMBS買う方がベターである」という一応の結論が出てくるという代物です)のですが、昨日のニュースフローに対してああだこうだと悪態を書いていたら時間が無くなってしまうでござるの巻となりましたので、ただの悪態コーナーとなるのでありました。

#役立たずコーナーでどうもすいません

○手続きというものをどうしてすっ飛ばすんでしょうねえ

まあ産経のニュースに反応したら負けなのかも知れませんが。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/121023/fnc12102306070001-n1.htm
政府、日銀に20兆円の追加緩和を要求 資産買い入れ基金100兆円規模へ
2012.10.23 06:07 (1/2ページ)

『景気浮揚を狙い、金融緩和圧力を強めている政府が日銀に対し、国債などの資産買い入れ基金を20兆円増額する追加金融緩和策を求めていることが22日、分かった。2年前から行っている日銀の資産買い入れ総額は、100兆円規模に拡大する』(上記URLより)

・・・・・・・・・えーっとですね、具体的な数字まで出して「要求」とかこらまた随分と筋の悪い話をしていますなあ(報道がその通りなら)という所ですが、更にアホウとしか思えないのはそういうのが平場で出てきて報道されちゃうって所でありまして、中央銀行の手段の独立性とかどこに逝ったんでしょうかという話ですわな。

大体ですね、本当に経済のために20兆円の追加緩和が必要で、日銀に強力に要請したいというのであれば、まああまり良い話では無いとは思いますけど、圧力掛けるなり何なりするとしたって裏でこっそりと行う話(まあそれ以前の問題として通常からちゃんとコミュニケーションしていれば圧力とかの以前で会話が成立しているでしょと思いますけどねえ)であって、その結果として日銀がサプライズ緩和を行って「おお!日銀どうしたんだYO!」となって目出度し目出度しとなるのが美しい姿。

まあ何処の誰が産経にネタ提供したのか存じ上げる由もございませんが、まあ日銀の追加緩和(20兆は兎も角まあ追加緩和自体はあるでしょ)についてもてめえらの手柄にしたいという浅ましい政治家様の動きが反映されているものと拝察いたしますが、その結果として仮に報道通りに日銀の買入等基金拡大が20兆円になっても「政治圧力」とかの話になり、「中央銀行の政策手段の独立性を政治が冒している」という評価になる訳でありまして、産経新聞およびこのネタを提供している「政府関係者」とやらにおかれましては経済よりも自社ニュースの売り上げや自分の手柄が大事である、とまあ斯様にご認識であるとしか思えない次第でございます。

つーかさ、こんな具体的な数字出して要請とかいう記事が出るのって手続き的にもちょっとおかしいんじゃネーノという感触は無いのかねとか思うのですけれども、まあ所詮は金融政策絡みでは電波浴に最適な産経新聞様のヨタ記事にそんなに釣られる必要も無いという気もするのだが色々な意味で酷いのでつい悪態を。


まあ同時にこんな記事出ているから産経およびこの記事のネタ元のポジショントークではあるのでしょうけれども、題名見て呆れるというか何というか。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/121023/fnc12102306070002-n1.htm
20兆円の追加緩和要求 背景に政府の苛立ち 日銀法改正議論加速も
2012.10.23 06:07

特例公債法案放置プレイに見られるような無策モードになっておいて何が苛立ちなのかと・・・・・・


閣僚などのコメントはこんな感じ。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCBQG86K50YL01.html
城島財務相:日銀は果断な金融緩和推進を−20兆円緩和要求の報道否定

・・・・・・・そらまあ報道否定しないと色々な意味でオワットル罠。


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCBR296KLVR901.html
経財相:追加緩和要求「コメントしない」−次回の日銀会合出席に意欲

・・・・・・・あんさんがしゃしゃり出ると話が混乱するだけなんだが。


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCCAYZ6K50YZ01.html
細野民主政調会長:日銀の政策決定に関心、前原氏と足並みそろえたい

・・・・・・・しかしこの党って自民党が日銀に色々と言った時に散々批判した上に「財金分離」とか言って武藤さん(と田波さん)の総裁就任を拒否した癖に何を今更ゆうとるんじゃと言うか記憶力が鶏並みかと小一時間。

なお、何となくのイメージ論だけで申し上げますと、20兆円拡大というのは多分物理的に無理が生じると思われます(長期国債についても償還が来るから5兆円超の拡大をするのは市場からの吸い上げが多くなりすぎるように感覚的には思えますし、短国もさすがに20兆とか買うと需給バランスが崩れそうです。まあ大丈夫かもしれないけど)ので、まあここから先は枠拡大をするというよりはFED方式(FEDは先日来ご紹介しているように「量で勝負」から政策の枠組みが変わって来てますぞな)で「通常の輪番と別の時限的措置として」という枠組みの中で「月に幾ら購入し、物価安定の目途である中長期的に1%を達成するまでそれを続ける」という風にした方が無理が無いと思いますがどうでしょうかね。



○もっとアレな記事がございましたので晒し上げ

昨日の午後にこんなのが出てましたけどね。

http://jp.wsj.com/Japan/Economy/node_534550
日銀、インフレ目標の提案を素通り=石田前副大臣
2012年 10月 23日 14:41 JST

政府から何か提案あったという記録はどこにも見当たらないのですが何ですねんこれは?と思って記事を見たら色々な意味で酷いクオリティでもうね。

『石田氏はインタビューで、「目処(めど)や目途(もくと)という言葉はわかりにくいので、もっと皆がターゲティングと分かる言葉にしたらどうか、と話したことはある」と語った。』(上記URLより、以下同様)

そんな発言があったとかいうのは過去の議事要旨に無かったと思うのですが、と思って記事を見るとこれは酷いとしか申し上げようがないのが続く。

『石田氏は政府を代表するオブザーバーとして今回の会合に出席し、自らの見解を示すことができたが、投票権はなかった。提案は会合の休憩中に日銀当局者に対して行ったという。』

>提案は会合の休憩中に日銀当局者に対して行ったという
>提案は会合の休憩中に日銀当局者に対して行ったという
>提案は会合の休憩中に日銀当局者に対して行ったという

・・・・・・・・いやあの色々な意味で手続きもへったくれも無い無茶苦茶な話でございまして、「会合の休憩中」ってそれ公式発言扱いにならないのに「提案」とか認識してるというのは手続きという言葉をご存知ないのでしょうかというお話ですし、そもそも話した相手の「日銀当局者」って誰なのよという話。政策委員に話をするならばまあ個人的見解を雑談で行ったという事ですから手続き的にはどうかとは思いますがまだ話は分からんでも無いですが、その当局者が理事だの局長だのというような面々だとしますと(というか政策委員と言ってないのですから理事とか局長なんでしょ)、そんな人たちに意見を言ったって言われた方だって困りますがなとしか申し上げようが無い話。

でまあそれを記事見出しのように『日銀、インフレ目標の提案を素通り』とするとか無茶にも程がある話で、まあ例えが難しいですがハンバーガーチェーンのアルバイト店員に「こんな新商品を作ったらどうだ」と言ったらスルーされてファビョーンとかなっている訳のわかんない人みたいな光景が例えとして出るような話ですわな。

つーかさ、決定会合で意見表明は出来るのですから、何で討議の最中に「目処とか目途とかいう言葉は判りにくいのでわかりやすい言葉にして欲しい」と正式に発言しないのかという所でございまして、正式に発言するとその発言には当然ながら責任が伴う訳だから、その責任を取りたくないという事で「休憩中」に「日銀当局者」に行ったとか邪推したくなるわけでして、そういう文脈で考えますと、「個人的にはこう思うんだけどなあ」とか部下に言って、うまく行ったら俺の手柄、失敗したら部下のミスで済ませるようなロクデナシの姿も想起される所ではございますが何なんでしょこの人。

『デフレ脱却に向けた超党派グループに参加する石田氏によれば、日銀がインフレ目標を設定すると決めたのは、2月の会合前にデフレ対策を強化するよう求める圧力を政府から受けた結果だ。』

>デフレ脱却に向けた超党派グループに参加する
>デフレ脱却に向けた超党派グループに参加する
>デフレ脱却に向けた超党派グループに参加する

・・・・・・・・・・デフレ脱却議連ですかあ。つーか議員は兎も角として、あの議連やら国民会議とやらが出来た時にそこに名を連ねていた何とかストとかの皆様におかれましてはこのような記事を見てどういう感想をお持ちなのか小一時間問い詰めいたいのですがその関連悪態も後ほど。

でね、「圧力を政府から受けた結果だ」とか自分たちの手柄顔で話をする訳ですが、本来は圧力はスマートに掛けるものであって、その結果良かったら日銀に花を持たせておけば良い話であって、経済の事を本当に重要だと思っているのであれば「金融政策に政治が一々介入する」というような認識を広めるという中長期的な観点から国民経済に寄与するとは思えない行為をして自分たちの手柄をアピールというのは、先ほどの産経記事でついた悪態と同じ理屈でまあ何考えてるんだと。

『石田氏は、もう日銀とはコンタクトしていないとした上で、日銀には30日の次回金融政策決定会合で追加緩和を決める以外に選択肢がないとの考えを示した。』

>もう日銀とはコンタクトしていない
>もう日銀とはコンタクトしていない
>もう日銀とはコンタクトしていない

まあ追加緩和の方はともかく、「もう日銀とはコンタクトしていない」ってデフレ脱却議連だか何だかやっていて副大臣やってMPMに出席という形で日銀とコンタクトが出来たのに、その後「コンタクトしていない」とかお前は何のために副大臣やっていたのかと小一時間でありますわな。本当にデフレ脱却に対して真剣に取り組むというのであれば、この時に出来た日銀とのルートを生かして色々と政策について議論を深めて、自分たちの主張する政策とやらの実現に向けて取り組めよと思うのでありますよ。まあこれだけ「圧力を掛けました」アピールをする人間が「引き続きコンタクトして圧力を掛けているんですけど」とか言ってもまあアレではございますけどねえ。

しかしまあ何ですな、更に申し上げますとこういうのを平気で記事にするWSJ日本版の見識って何なんですかと思う訳で、言う方も言う方ですが書く方も書く方であって、ここまでダメダメ感漂うものをそのまま垂れ流すとか「WSJ」の看板が泣くわとしか思えませんが、所詮は日本版で出先だからこんなもんなのでしょうかねえとか思う次第なのですけど、色々な意味で酷いので悪態モードになってしまいましたがな。


○その他関連悪態

・まあこういうのに権威づけしちゃう「専門家」もアレなのですけどね

まあどこの誰とは敢えて申しませんが、昨日ベンダーのニュースをつらつら眺めておりましたら、どこぞの何とかストさんが「日銀が追加緩和しても意味が無い」というようなコメントをしていたとのニュースがございましてね。

いやまあその方が前からそういう話でもしているのならそうですかねという話なのですが、この何とかストさんって従来より日銀の緩和ガーとか言って政治家先生(と言ってもデフレ何とか議連とかではないと記憶してます)などを散々煽っておられたお方と記憶しております次第で、何でしょうかね、足元のクレクレ合唱と露骨に過ぎる政治圧力の大合唱にさすがにマズイとでも思ったのかもしれませんし、米国の金融政策が明らかに量で勝負の世界から脱却しているので、それに追随しようとしているのかも知れませんけど、それまで散々煽っておいて火が燃え広がりまくってそれに驚いているという風情が実にアレ。

結局ですな、上記ネタのように手続き論もへったくれも無くて騒ぐ政治家も政治家なのですが、そういう政治家にとりあえず目立ちそうな派手なネタを吹き込む「専門家」という存在が更に如何なものかと思われる訳でございまして、そういう連中が駆逐されねえかとか思うのですけれども、残念ながら政治方面にしてもメディア方面にしても、とにかくキャッチーで派手な物に飛びつく傾向にあるように見えまして、その手の世に阿る系の専門家が排除される気配も無いというのが誠に遺憾の極みであると存じます次第。


#などと悪態を書いておりましたら、昨日の続きであります所のスタイン理事講演ネタが出来なくなってしまいましたが、明日はFOMCステートメントが出るので恐らくそっちが優先になるかと存じますです(汗)






2012/10/23

お題「さくらレポート&昨日の続きでスタイン理事講演ネタ」

ほほう。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121022-00000136-jij-int
日本国債格下げも=財政健全化なければ―米S&P
時事通信 10月22日(月)22時37分配信

格下げで円安でウマーですね、わかります・・・・・とは言いたいですが、足元の貿易収支だの特例公債法案問題などは少々アレでございますな。


○さくらレポート関連

まあサラサラと参りますが。
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer121022.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer121022.pdf(全文)

ちなみに前回の概要はこちらです。
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer120705.htm/

概要の方から。

・概要では生産、消費の引き下げが目立ちますな

『各地の景気情勢を前回(12年7月)と比較すると、8地域(北海道、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、海外経済の減速した状態がやや強まっていることなどを背景に、前回までの持ち直しや回復の動きが一服している、またはそのテンポが緩やかになっているとの報告があった。この間、東北からは、「一部に弱めの動きがみられるものの、公共投資が大幅に増加しているなど、全体として回復している」と、前回までの回復の動きが続いているとの報告があった。』

何という事でしょう(某番組風に^^)、3か月前のさくらレポートでは9地域全部が上方修正だったというのに、今回は8地域が下方修正(1地域は横ばい)という急変振りでございます。いやあこのような経済の大きな急変は皆様の予想の範囲を大きく超えるもの・・・・・・という事になっているんでしたっけ(ニヤニヤニヤ)。


でまあ需要項目についてほぼ引用祭りでサラサラと参りますが、前回との比較に関しては引用すると長くなりすぎるのとゴチャゴチャするので上記URL先を見て確認してちょ。


『公共投資は、東北から、「大幅に増加している」、5地域(北陸、関東甲信越、近畿、中国、四国)から、「増加している」や「持ち直しつつある」等の報告があったほか、3地域(北海道、東海、九州・沖縄)からも、「下げ止まっている」、「概ね横ばいで推移している」との報告があった。』

まあ公共投資に関しては前回対比で総じて上方修正になっていますが、その公共投資に関しても例の復興予算の使途問題で絞られそうですし、大体からして特例公債法案が通らなかったら新規事業に関する執行とか先送りになりますぞなと思うのですが。


『設備投資は、8地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、九州・沖縄)から、「増加している」、「持ち直している」等の報告があったほか、四国からも「底堅い動き」との報告があった。』

設備投資に関してはだいたい前回と同じトーンですが、今回まあ当然ちゃあ当然だと思ったのは前回ありました「企業収益が改善しつつあるもとで」という文言が削除されました。


『個人消費は、3地域(東北、関東甲信越、九州・沖縄)から、「底堅く推移している」との報告があったほか、5地域(北陸、東海、近畿、中国、四国)からは、「横ばい圏内の動きとなっている」、「持ち直しの動きが一服している」との報告があった。この間、北海道からは、「このところ弱含みとなっている」との報告があった。』

で、その個人消費関連で幾つかの項目に関して記載があるのですが・・・・・

『大型小売店販売額は、関東甲信越、九州・沖縄から、「底堅く推移している」、北陸、四国から、「横ばい圏内の動き」との報告があった。この間、残暑の影響などもあって、北海道からは「このところやや弱めとなっている」、東北からは「前年を下回った」との報告があった。また、東海や近畿、中国からは、「スーパーは弱めの動き」との報告があった。』

前回は増加だの堅調だのというのが7地域にありまして、今回はここの落ちがアチャーという感じでございます。

『乗用車販売は、全ての地域から、エコカー補助金の終了を背景に、「このところ減少している」、「水準を切り下げている」等の報告があった。』

『家電販売は、多くの地域から、薄型テレビを中心に「低調に推移している」や「前年を下回っている」との報告があった。』

『旅行関連需要は、ほとんどの地域から「持ち直している」、「総じて堅調に推移している」等の報告があった。なお、ごく最近では「外国人観光客の来訪が減少している」等の報告があった。』

ということで、ここに出てくる項目に関しては旅行以外景気の悪い話が並んでおりますが、前回と比較してダメダメ感高まったのは小売販売と乗用車販売ですの。


『住宅投資は、東北から、「増加している」、3地域(関東甲信越、近畿、九州・沖縄)から、「持ち直している」との報告があったほか、東海からは、「底堅く推移している」との報告があった。一方、北海道、中国からは、「持ち直しの動きが鈍化している」等の報告があったほか、北陸や四国からは、「弱い動きとなっている」との報告があった。』

まあ大体同じです。中国地方が「持ち直し」から「持ち直しの動きが鈍化」に下がっている程度。


『生産は、海外経済減速の影響などを背景に、6地域(北海道、関東甲信越、東海、近畿、中国、九州・沖縄)から、「減少している」、「弱めの動き」との報告があった。また、東北からは「横ばい圏内の動き」、四国からは「持ち直しのテンポが緩やかになっている」との報告があった。この間、北陸からは、「全体としては高操業を続けている」との報告があった。』

消費と並んでアチャーなのが生産でして、こちらに関しては前回は「増加」だの「持ち直し」だのというのが計6地域(2+4)に見られていたのがいきなりこの落ち込み方。

『業種別の主な動きをみると輸送機械は、5地域(北海道、関東甲信越、東海、中国、四国)から、「減少している」、「生産水準を引き下げている」等の報告があった。一般機械、電子部品・デバイスでも、多くの地域から、「弱い動きとなっている」等の報告があったほか、鉄鋼についても、5地域(北海道、北陸、東海、中国、九州・沖縄)から、「一部に弱めの動きがみられる」等の報告があった。この間、化学については、複数の地域から、医薬品の堅調などもあって「高水準の生産を維持している」、「横ばい圏内の動きとなっている」等の報告があった。』

でまあ輸送機械、一般機械、鉄鋼に関しては前回は増加だの高水準の操業だのという話をしていたのですがその辺がアチャー状態。電子部品・デバイスに関して前回から残念な状況だったのでここは横ばいですが、チャーミングなのは前回のっけていなかったケミカルに関して概要に記載をしていることですな。


『雇用・所得動向は、多くの地域から、厳しい状況の中で、引き続き改善の動きがみられるとの報告があった。もっとも、一部の地域からは、「改善の動きに一服感がみられる」等の報告があった。』

今回は「改善の動きに一服感がみられる」というのが一部の地域からあったというのが前回と違う所ですが、ここは改善の動きというのは変わらないですの。

『雇用情勢については、多くの地域から、「回復している」や「改善傾向にある」等の報告があった。雇用者所得は、北陸、四国から、「持ち直している」や「前年を上回って推移している」との報告があった一方、東海、近畿からは「持ち直しの動きが一服している」、「足もと幾分弱含んでいる」との報告があったほか、3地域(北海道、関東甲信越、中国)からは、「弱めの動きが続いている」等の報告があった。』

雇用情勢に関しては同じですが、雇用者所得に関しては前回は「多くの地域で「下げ止まっている」と報告があった」という形でしたが、今回は持ち直しと弱めとの報告が出ていまして、まあ製造業と非製造業の動きの違い高まるとかそんな文脈ですかね。


・地域の視点では観光業とな

こらまた中国との問題がどうのこうのという中でこのテーマというのがアレですが。

『II. 地域の視点

各地域における最近の観光関連需要の動向各地域における最近の観光関連需要の動向をみると、全体として堅調に推移している。すなわち、各地域とも、東日本大震災後は、旅行自粛ムードなどから観光関連需要が一旦減少したものの、その後は、国内観光客を中心に、「持ち直している」とか、「堅調」といった声が多く聞かれている。ただし、地域別には、震災からの回復度合いに幅がみられている。新たな観光スポットがオープンした地域や交通インフラの整備が進んだ地域では、観光客が震災前の水準を上回っている一方、震災や豪雨などによる被災地域では、客足の回復が遅れている。この間、外国人観光客については、「欧州や韓国からの旅行客の戻りが鈍い」という声が多く聞かれる。また、増加していた中国などからの観光客についても、ごく最近では「中国からのツアーがキャンセルになった」とか、「中国や韓国からの新規申し込みが減少している」という声が聞かれる。』

ほほう。

『観光関連分野における最近の特徴としては、需要サイドで構造的な変化が生じていること、また、供給サイドでも、そうした変化への対応を進めていることが挙げられる。こうした需要・供給両サイドの動きがかみ合いつつあることが、最近の観光需要を下支えする一因になっていると思われる。』

ということで、需要供給サイドの話とかあるのですが長くなるので割愛しますが、まあ皆様この部分に釣られクマーと言った所だと思いますが、ワタクシも盛大に釣られておきます。

さくらレポート本紙の12ページ(PDFファイルの14ページ目になります)から。

『(c)ブログやSNSの普及による「クチコミ」での需要喚起

● さらに、スマートフォンやSNSの普及に伴い個人による情報発信が一般化したことで、「クチコミで人気を集める施設や商品が生まれたり、今まで注目されていなかった観光資源が一躍人気を集める」など、需要サイドからの情報発信による新しい観光関連需要の発掘がみられている。』

ということで【クチコミなどによる観光関連需要の喚起についての声】というのがあるのですが、その最初の所で盛大に釣られクマーである。

『・SNSなどを通じて、アニメファンの聖地巡礼(アニメの舞台となった地域を訪問すること)が自然発生的に始まった(本店<埼玉>)。』

・・・・・・・・・・ワロタ。


・でまあ円高とか景況感悪化に関するコメントが雨宮大阪支店長からキタコレ

ブルームバーグニュースから。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCA97T6K50Z301.html
日銀大阪支店長:景況感が急速に慎重化、円高是正の声一段と (1)

『10月22日(ブルームバーグ):日本銀行の雨宮正佳大阪支店長は22日午後、本店で会見し、世界経済と日本からの輸出の先行き不確実性が高まっている中、近畿地域の企業経営者の間で、景況感が「短期間で急速に慎重な方向に傾いている」とともに、円高の是正を求める声が「一層強まっている」と述べた。』

『日銀が同日公表した地域経済報告で、同地域は「全体として足踏み状態となっているが、一部に弱めの動きがみられている」として、前回7月から判断を下方修正した。雨宮支店長はその背景として「外需の弱さが目立ち始めた。内外のIT(情報技術)需要が期待に反して回復感が乏しい状態が続いている」と指摘。近畿は電機産業が集約していることから、「IT産業の苦境の影響は幅広く及んでいる」と述べた。』

『さらに、「アジア、特に中国向け輸出の低迷が長引いている」と指摘。日中関係が悪化している影響に言及した上で、「中国は日中関係の問題が発生する前から減速が長引いているので、これにこうした問題の影響が加わることの影響は、大きい可能性がある」と述べた。』

『雨宮支店長は「現段階で明確に影響が出ているのは観光だ。中国人にとって大阪は観光の人気スポットで、欧米の訪日客のうち大阪を訪問するのは2割くらいだが、中国人の訪日客のうち5割以上が訪れる」と指摘。最近の観光客のキャンセルなどで「特に中国ビジネスに注力してきた業界や小売業には、相当の影響が及ぶとみている」と述べた。』(以上上記URL先より)

ということで、円高、輸出低迷、日中関係の悪化、とまあダメダメな話の連発という事になっていまして、こらまあアチャーという所ですぞな。


・と思ったら公共放送も追加緩和検討報道

今朝の公共放送ニュースから。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121023/t10015937051000.html
日銀が政策決定会合で議論へ
10月23日 4時16分

『日銀は、中国をはじめとする海外経済の減速が国内の生産などに悪影響を及ぼし、景気が一段と弱い動きになっていることを踏まえ、来週開く金融政策決定会合では景気を下支えするための追加の金融緩和策が必要か議論することにしています。』(上記URL先より)

ということのようです。



○スタイン理事講演ネタの続きである

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20121011a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20121011a.pdf
Evaluating Large-Scale Asset Purchases

でまあ昨日の続き。

・「負のタームプレミアム」という概念

LSAPで米国債の金利を低下させる云々という話ですが、一応スタイン理事は金利下げの効果はまだあるし、5000億ドルの国債購入で10年国債のイールドを15〜20bp位の金利引き下げはあるという話をしておりますが・・・・・・・・

『For the sake of concreteness in what follows, let's think in terms of a hypothetical $500 billion LSAP, conducted entirely by buying longer-term Treasury securities; later I will speak to the differences that arise when the program is carried out with MBS purchases. A reasonable estimate based on the literature would be that such a program reduces the term premium, and thus the 10-year Treasury yield, by 15 to 20 basis points. In my mind, this step is the least controversial piece of the transmission mechanism. Moreover, I have no reason to expect any diminishing efficacy on this market-impact dimension, so in this instance the past evidence seems like a good guide to future outcomes.』

つーことで、買入で金利が下がる云々の話をしている部分はスルーしましてその後です。

『Naturally, all models rely on a host of assumptions, so the true effect could be larger or smaller than what comes out of the FRB/US model. But I will focus on two sources of uncertainty in particular.』

でまあ米国債金利が下がるのは良いとして、その効果に不確実性がある、という事を2つ述べています。

『A first uncertainty relates to a point raised earlier--that a given impact on Treasury bonds may not pass through fully to other rates that are more relevant for consumption and investment decisions, such as corporate bond rates or primary mortgage market rates. The recent academic literature seems divided on this point, as some papers argue that the pass-through is near 100 percent while others claim that it is quite low. My own reading of the evidence is that, thus far, there has been substantial pass-through from LSAPs to corporate bonds and mortgages, and some, but considerably less, to other, more distant asset categories like equities.』

そのうちの1つ目が「米国債の金利低下が他の有効な金利(企業の借入金利など)にきちんと波及するかどうかの不確実性」ということで、これには見解が分かれている所だが、スタイン理事は概ねこの経路に関してはワークしている(多くの金利の低下に効果がある)としています。

で問題はもう一つの部分でして。

『Leaving aside this set of complications--so that we suppose our $500 billion LSAP has an impact of 20 basis points on corporate bond rates as well as on Treasury rates--there is a second, perhaps more fundamental, issue. How should one expect a company to respond when its long-term borrowing costs fall not because of a change in the expected future path of short-term rates, but because of a change in the term premium? As noted earlier, many macro models--like the Fed's FRB/US model--treat the two sorts of shocks as having similar effects. But is there any reason to believe that, in reality, the response to the two might differ?』

前振りが長いというか説明が丁寧なお方で、文章引用する方もどこを割愛していいか難しいのでつい長く引用しますが、要するに「金利の低下が企業の借入や投資行動に対して影響を与える」というルートに関しての考察がここから始まるのですよ。

『A basic corporate-finance analysis suggests the answer may be yes. To see why, consider the following example. A risk-neutral firm faces a rate on its 10-year bonds of 2 percent. At the same time, it expects that the sequence of rolled-over short-term rates over the next 10 years will average 3 percent. Hence, there is a term premium of minus 1 percent. What should the firm do?』

ということでここの部分がスタイン理事の考察のポイントで、何かホンマカイナという気もせんでも無い所ですが、「リスク中立的な企業が、短期買入のロールオーバー金利が10年間で3%だと考えている時に、10年債の利回りが2%、即ちタームリスクプレミアムがマイナス1%となっている時にどういう行動をするでしょう」という設問です。

『Clearly, it should take advantage of the cheap long-term debt by issuing bonds. But it is less obvious that the bargain 2 percent rate on these bonds should exert any influence on its capital spending plans. After all, it can take the proceeds of the bond issue and use these to pay down short-term debt, repurchase stock, or buy short-term securities. These capital-structure adjustments all yield an effective return of 3 percent. As a result, the hurdle rate for new investment should remain pinned at 3 percent. In other words, the negative term premium matters a lot for financing behavior, but in this stylized world, investment spending is decoupled from the term premium and is determined instead by the expected future path of short rates.』

この場合、短期借入のロールオーバーよりも社債発行した方がお得になるのは明らかなので、企業は社債発行をするのはするのだが、それは設備などの投資には回らず、短期借入の返済や株の買戻しなどのような「金融的な行動」にしか結びつかないという話。

まあそうですかねえという感じではあるのですが、よーは「負のタームプレミアムで実際の金利は下がっているけれども、経済主体の行動の背景となっている中長期的な期待短期金利、即ち設備投資などの金融以外への投資行動に必要とされるリターンとしての期待利回りには変化が無いので、タームプレミアムのマイナスが拡大した場合、企業の借入は他の金融商品への振替にしか回らない」という話です。

『This reasoning suggests why one might expect future rounds of LSAPs to have diminishing returns. As noted earlier, the data make clear that past rounds of LSAPs have pushed down interest rates and term premiums. But the further the term premium is driven into negative territory, the more the previous logic comes into play, and hence the weaker is likely to be the response of aggregate spending to further downward pressure on long-term rates.』

でまあ「負のタームプレミアム状態になっている」ことが「LSAPのお代わりの効果が逓減してきている」という事の背景にある、というのがスタイン理事のロジックであります。で、ホンマカイナという気はするのですが、実際の企業行動がその辺を裏付けているという話もしております。

『The corporate-finance example is also consistent with what we have observed in markets in recent months. Issuance of both investment-grade and high-yield bonds has been robust. Indeed, domestic nonfinancial corporate bond issuance is on pace to set a record in 2012, and the speculative-grade segment may also register a new high for the year. At the same time, a large fraction of issuance has been devoted to refinancing--either to retiring existing debt or to payouts to equity holders via dividends and share buybacks. These uses of proceeds have accounted for about two-thirds of all issuance by speculative-grade firms so far this year. Such patterns are what one would expect in a world of segmented markets and negative term premiums.』

つーことで、社債の発行は多いけれども、それがリファイナンスや株の買戻しなどには使われるものの、設備投資が盛り上がらないという最近の企業行動が理事のロジックの正しさを裏付けるという話をしています。

『This caveat about the diminishing effectiveness of LSAPs can be thought of as a specific version of Goodhart's law.』

というのがあるそうな。

『It may be that under normal circumstances, changes in 10-year rates have significant explanatory power for economic activity, perhaps because they are a proxy for the expected future path of short rates or other aspects of financial conditions. But it doesn't follow that when one sets out to influence the 10-year rate directly, via asset purchases--without changing the future path of short rates--the usual historical relationships will continue to apply.』

利下げを行う場合は当然ながら「将来の予想短期金利パス」に影響を与える事は出来るが、LSAPの場合は直接的にそこまでツッコむことができませんぞなもしとかそんな話ね。


・ただし他の効果がある、ということでこのコーナーを締めています

『While we should acknowledge these doubts, it is important to keep them in perspective.』

ということで。

『In addition to lowering interest rates, LSAPs also boost equity prices and other asset values. Taken together, these effects of LSAPs seem likely to be meaningful, even if the benefits of an impetus to rates are less than in the baseline scenario sketched earlier. And to be sure, there is a wide confidence interval around any estimate we might make of the benefits.』

LSAPは株価や他の資産価格を引き上げるという効果があり、それはコストを上回る効果であると。

『Moreover, it is worth repeating a point made earlier: whatever direct hydraulic effects LSAPs create by pushing down term premiums and discount rates, their overall impact may be reinforced via a signaling effect, whereby they enhance the credibility of our forward guidance about the future path of the federal funds rate. Indeed, this signaling benefit strikes me as an important part of the argument in favor of LSAPs in the current environment.』

で、これは昨日引用した部分の繰り返し強調になりますが、直接的な効果は減っても期待やらコンフィデンスに効果を与えるという重要なポイントはあるので、そういう意味ではLSAPに関して現在の環境では支持する。とまとめています。


ということで、まあ昨日も書きましたように、ダドリー講演といいこちらのスタイン講演といい、金融緩和は継続するでしょうし強化される事もあるのでしょうが、その中身は従来の単純な「量で勝負」から色々と変わってくるという事なんでしょうけれども、そうなってくると見せ方の違いという超重要ポイントでの違いはありますが、中身と背景ロジックを見るとFEDと日銀の政策が益々類似してくるという話になるんでしょうなあと思うスタイン講演でありました。

#プロコンの話は明日続きをやるかも知れません




2012/10/22

お題「また一ひねりしてスタイン理事講演ネタである/ところで特例公債法案は・・・・・」

何か段々シャレにならなくなっているのですが・・・・・

○特例公債法案どうなっとるのよ

金曜の3党首会談は始まったと思ったらあっという間に何も決まらず終了。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121019/k10015872891000.html
首相は解散時期示さず 会談物別れ
10月19日 18時16分

小見出しがorz

『首相“理解いただけなかった”』
『安倍総裁“正直驚いている”』
『山口代表“国民をバカにした話”』

どう見てもチキンレースです本当にありがとうございました。

で、国会召集だけはするようですが。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121019/k10015877091000.html
臨時国会 今月29日に召集へ
10月19日 19時4分

『野田政権は、民主・自民・公明の3党の党首会談のあと、「政府・民主三役会議」を開き、赤字国債発行法案などの成立を図るため、臨時国会を今月29日に召集し、会期はおよそ1か月とする方針を決めました』(上記URLより)

で、今朝の解説。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121022/t10015909211000.html
臨時国会にらみ与野党の駆け引き続く
10月22日 5時6分

政治的には特例公債法案が回らなくなってもどうでも良しという雰囲気が漂っている訳ですが、先日ご紹介したwhat_a_dudeさんの所みたいに、そこら中で特例公債法案通らないと大変な事になるぞなという懸念で色々と準備作業に追われているというのを何となく聞くにつけまして、こいつら何考えてるんだというお話。まあ与野党とも相手のせいにする攻撃に余念がないのでどっちもどっちという感じですが、あたしゃ当初は野党ふざけるなと思っていた節があるのですけれども、どうも最近は政権サイドがもうちょっとやる気だせよと思ってみたりするざんす。

まあ何ですな、これが店晒しになるとどの年限の国債発行にどのタイミングで影響が来るのかという話は詳細に確認しないで書くのも何ですので割愛しますけど、どこからどう考えても碌でも無い波乱要因ではあるというのは確かで、債券市場のボラを高める話でしょうなあという所です。

しかし前原さん貫録のクオリティで安心した。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK21007_R21C12A0000000/
首相は年内に解散 前原戦略相「約束守る人だ」
2012/10/21 11:16

何でこの人は一々余計な首の突っ込み方をして話をややこしくするんでしょうねえw



○スタイン理事のデビュー戦講演は何気に論点が色々と

先般の空席補充で選出された2名の理事の1名のスタインさん。

Jeremy C. Stein
http://www.federalreserve.gov/aboutthefed/bios/board/stein.htm

『Prior to his appointment to the Board, Dr. Stein was the Moise Y. Safra Professor of Economics at Harvard University, where he taught courses in finance in the undergraduate and Ph.D. programs. From February to July 2009, Dr. Stein served in the Obama administration as a senior adviser to the Secretary of the Treasury and on the staff of the National Economic Council. 』

『Before joining the Harvard faculty in 2000, Dr. Stein taught finance at the Massachusetts Institute of Technology's Sloan School of Management. Prior to joining the MIT faculty, Dr. Stein was an assistant professor of finance at the Harvard Business School from 1987 to 1990.』

オバマ政権のアドバイザーとかをしていたようですが、基本的にはアカデミアの方のようで。

んでまあ10月11日にデビュー戦講演があったのでございますよ。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20121011a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20121011a.pdf
Evaluating Large-Scale Asset Purchases

どういう報道されてたかと言いますとこんな感じ。

ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPJT825090520121011
UPDATE2: スタイン米FRB理事、緩和決定を強く支持 心理面の効果も強調
2012年 10月 12日 02:58 JST

ブルームバーグ
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MBQLE16S973Y01.html
スタインFRB理事:MBS購入の効果、リスクを上回る
更新日時: 2012/10/12 01:35 JST

・・・・・・・・でまあこちらのヘッドラインを見ると普通にハト派で執行部ペースの方なのかとも思ってしまうのですが、記事の方もよく見ますと(特にブルームバーグの方)書いてありますように、今回の講演ってまあ微妙な論点もあるなあと思いましたです、という話をこれからサラサラと参る所存。


・先に何となくまとめ

スタイン理事の講演ですが、先日のNY連銀ダドリー総裁の講演(超手抜き引用ですいませんとか思ったら創刊来の読者様であるお友達(または師匠)から「お前これ本当の本当にざっとしか読んでないだろう(笑)」と指摘されまして汗顔の至り^^)で指摘されていた「追加の緩和の効きが逓減してきている」というお話に続きまして(というかスタインさんの方が先に行われておりますが^^)こちらでも講演のお題は「LSAPを評価する」という事ですが、その効果は認めつつもやはりLSAPに関しては「直接的には段々効かなくなってきている」という指摘をしております。

つまりですね、NY連銀総裁に続いて理事の方も(と言ってこの理事が執行部寄りなのか必ずしもそうでは無いのかはまだ判断保留である)この手の指摘をしている、という事実は何を意味するかと申しますと、「これからの追加金融緩和において、単純な『量で勝負』という形にはなりにくい」という事ではないかと思うのですよ。

オペレーションツイスト終了後は何らかの形でおかわり、というのが市場的にコンセンサス(あたくしもまあそうでしょうかねえとも思いますが)ではあるのですが、こういう話がポンポン出てくるのを見ますと、単純な従来型の長期財務省証券購入のおかわりにはならないのではないか、とも思えるのであります。まあ勿論市場を失望させて金利を上昇させるような事はしないと思いますけれどもね。


で、スタイン理事の講演ですが、これまた結構長くて本文16ページもありやがりまして、色々とああだこうだと話をしているのですが、最初の指摘は「LSAPがここへ来てマージナルに効かなくなっている」と言う所でして、その理由として「タームプレミアムが負の領域に入っているから」という説明をしているのがまあ面白い論点だなあと。

でもって後半は結構プロコンの話が多くて、その中で「金融不均衡」の論点も出ているのがほほーという感じです(もちろん結論としては「現在懸念すべき状態ではない」という事になっています)し、「金融不均衡の論点は兎も角として、現在の経済状況で緩和政策を締めるという選択肢はあり得ない」という話もしているので、別にタカ派な訳でも無いのですが、後半はプロコンの話をしたうえで「財務省証券の追加購入よりもMBSの購入の方が適切」という話を展開していまして、論点に微妙な独自ポイントがあるようにも見えてこれまた面白い、という所でした。

ただまあスタイン理事ってアカデミアの人なのでそんなもんだろうなあとは思いますが、市場の動きに関してとかの分析のような部分で市場現場労働者的に見て微妙に違和感を受ける部分はございまして、その辺はうーんとは思いましたです、はい。

ということでかいつまんで。


・冒頭はまあどうでも良いのですが雑談ネタで

最初にドナルド・コーンさんのお名前が出てくるとな。

『It's a pleasure to be here at Brookings. And it's a special thrill and honor for me to be here alongside Don Kohn. One of my only regrets about coming to the Fed is my timing. I wish I had had the good fortune to arrive a few years earlier, so I could have had the privilege of being Don's colleague, and of learning from him.』

コーン理事と言えば生え抜きの大物理事というか名物理事でしたよね。

『Now I can only do so indirectly. Several of the best bits of advice I've gotten since joining the Board have been preceded by words like: "Here's what Don Kohn would have done in this situation…." So Don, thank you, and I look forward to our discussion.』

ほほう。

しかしまあどうでも良いのですが、当然ながら現在のFOMC内部って結構な見解の相違がありますよねと思う次第で、スタイン理事も「色々なビューはあります」としている一方で「ここで明らかにしておきますが、私は9月のFOMCの決定を支持します」と最初に断っているのですな。

『There is a considerable diversity of views within the FOMC, and among economists more generally, about the use of LSAPs and other nonconventional policy tools. This diversity is both inevitable and healthy given the unprecedented circumstances in which we find ourselves.』

『To be clear on where I stand, I support the Committee's decision of last month--namely, to initiate purchases of mortgage-backed securities (MBS) at a rate of $40 billion per month, in tandem with the ongoing maturity extension program (MEP) in Treasury securities, and to plan to continue with asset purchases if the Committee does not observe a substantial improvement in the outlook for the labor market. Given where we are, and what we know, I firmly believe that this decision was the right one.』

まあどうでも良いのですが、さっきのロイターの記事だとこういう風になっているのだが、どこを読んでそういう解釈になるのやらという所です。

『FRB内のタカ派からは追加緩和に対する批判も出ているが、スタイン理事の発言は、緩和決定に関して、バーナンキ議長が内部で厚い支持を集めていることを示唆している。』(先ほどのロイターの記事より)

まあ支持はされているのでしょうが、どちらかと言うと色々な見解の最大公約数を取りつつも、そこは頑張ってバーナンキ議長が押し切ったという所にしか思えんのだが。この前のMinuteから見ても。


・基本的にはバーナンキ議長の見解を支持しつつも・・・・・

LSAPの評価に関して。

『With respect to LSAPs, my belief--which echoes the views expressed by Chairman Bernanke at Jackson Hole--is that past rounds of LSAPs have played a significant role in supporting economic activity and in preventing a worrisome undershoot of the Committee's inflation objective.』

ということで、「バーナンキ議長がジャクソンホール講演で示したように」とマクラが付くのがチャーミングですが、過去のLSAPには顕著な効果がありましたという事ですな。

『The case is especially strong with respect to the first round of LSAPs, which was a very potent policy action that helped to bring the economy back from the brink in 2009. 』

特にQE1には大きな効果があって有効でしたとゆーことですが、ここから先がほほーという話になる。

『However, we now face a harder set of questions--not about the value of past LSAPs, but about the marginal benefits and costs of further LSAPs.』

今までのは良いとして、問題なのは今後のLSAPの効果とそのコストなのですよと。

『A number of observers have raised concerns about diminishing returns, or escalating costs.』

多くの観測者は効果の減少とコスト増加の懸念を表明していますとな。

『I think that, at least in the limit, these concerns must be right; we could in principle push this tool to the point that the hurdle for additional usage would become very high.』

少なくとも限定的にはこれらの懸念は正しく、追加のLSAPの使用に関してはハードルが高いとキタコレ。

『As policymakers, it is our responsibility to be as clear as possible about the nature of the costs and benefits, and how they might evolve. In that spirit, I will try in what follows to outline the mechanisms that can give rise to decreasing marginal efficacy of LSAPs, or to increasing marginal costs.』

ということで、プロコンの話キタコレという事です。


・追加LSAPの直接的な波及効果によるインパクトは減少しているという話&フォワードガイダンスの重要性

先週末に手抜き引用をしたダドリー講演でも似たような説明がありましたが、スタイン理事も「直接的な効果が減ってきており、それよりもシグナリングやコンフィデンスという形の波及チャネルに移行している」という認識を示しておりまして、まあその政策インプリケーションは先ほど述べた通り。

『While much of my discussion will focus on the direct hydraulic effects of LSAPs on the economy, it should be emphasized that their overall impact may be augmented via a signaling or confidence channel.』

なので、9月の追加緩和のキモはフォワードガイダンスですというのが次に来ますぞな。

『Another important tool in the Committee's arsenal these days is its use of forward guidance about the expected path of the federal funds rate. And a change in this guidance was a key part of the September FOMC statement, with the Committee stating that "a highly accommodative stance of monetary policy will remain appropriate for a considerable time after the economic recovery strengthens." I believe that the LSAP component of the statement helped bolster the credibility of the forward guidance component by pairing a declaration about future intentions with an immediate and concrete set of actions. And I suspect that this complementarity helps explain the strong positive reaction of the stock market to the release of the statement.』

つーことで、9月の追加緩和に関しては量で勝負の話では無く、フォワードガイダンスが重要で、資産買入の補完的な効果も出しているしコンフィデンスなどにも効いていますというような話をしてます。ついでに言えば後半で財務省証券じゃなくてMBS購入するメリットについても説明してますので、MBS買入がどうでも良いという話ではありませんことを念の為付け加えます。


・LSAPの直接的な効果に関して

LSAPの直接的な効果は金利を下げるチャネル、というのはまあ皆さんそう説明している話でございますのでこの辺はサラサラと。

『In addition to this signaling channel, LSAPs of course also have a variety of direct effects on the economy, as I just noted. To understand these effects, it is useful to compare them with those that make monetary policy work in normal times. Away from the zero lower bound, conventional monetary policy is thought to work via an expectations channel; when the Fed cuts the federal funds rate, long-term rates also fall, primarily because expectations regarding future short-term rates shift down.』

『By contrast, a principal motive for doing LSAPs is to influence interest rates not just through expectations, but via supply-and-demand effects in the long-term bond market.』

まあ微妙にこの辺はホンマカイナという気がしますが、金利政策の場合は将来の金利期待の変化で長期金利に影響を与えるが、LSAPの場合は需給に直接影響を与えて長期金利に影響を与えると。

『As the Fed buys more long-term bonds, their price goes up, and their yield falls, even if expectations of future short rates are unchanged. Said differently, the so-called term premium on long-term bonds declines, which means that post-LSAP, long-term bonds are expected to perform less well as an investment relative to short-term bills.』

で、これまでの買入で10年金利を80〜120bp押し下げたという話の部分は引用割愛してその次。

『A central theme of my talk today is this: When policy works by moving term premiums, as opposed to moving expectations about the path of short rates, the transmission to the real economy may be altered in subtle yet important ways that can have implications for the benefits of a policy action, its costs, and even its consequences for financial stability. Moreover, to address these issues, we need to understand not only by how much an LSAP moves term premiums, but also why it does so. It should be noted that many standard macro models completely set aside the distinction I am emphasizing here. For example, in the Board staff's main model, FRB/US, a fall in the long rate is assumed to have the same effect on economic activity irrespective of whether this fall comes from the term premium or from expectations of future short rates.』

LSAPはタームプレミアムを下げることによって金利を引き下げる効果があるが、その点に関して「どの程度の引き下げ効果があったのか」だけではなく、「下がっている背景は何か」という事を知るべきである。という何だか判じ物のような説明をしております。

あと、LSAPの問題点としては「実体経済への波及チャネルが未だに捕えがたい点」と「金融安定化を阻害するというリスクがある」という点も指摘しております。

ではその中身は何ですねんという肝心の所で例によって時間が無くなった(寝起きが悪くてすいません)ので続きは明日なのですが、一応頭出しをしておきますと「米国財務省証券のタームプレミアムがマイナスの領域に入ることによって、金利低下によって企業が低金利での借り入れを設備投資などに振り向けなくなり、既存借入の返済やら、自社株買いなどの金融的な利用をするようになっている」という現状認識をしておりまして、従いまして今後米国財務省証券の買入をさらに増やしたとしても、負のタームプレミアムを拡大させる効果になり、その結果として金利低下によって企業などが設備投資などに資金を振り向けるという期待されたチャネルが機能しないのではないか、とまあそんな話を展開しておりますので、興味のある方は上記URL先のPDF版の場合7ページ目から10ページ目辺りを読んでちょという所です。その先の10ページ目以降がコストの話です。







2012/10/19

お題「何か昨日の朝刊で緩和記事出ていたようで/ダドリー講演斜め読み」

下期が始まったなあとか思ってるうちに来週はもう下旬で再来週は11月ですよorz

○追加緩和関連記事はあちこち出ていたようで

こんなのとか
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121018-00000006-mai-bus_all
<日銀>追加緩和検討へ 2カ月連続、基金積み増し
毎日新聞 10月18日(木)2時31分配信

こんなのとか
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC1700Y_X11C12A0MM8000/?dg=1
物価上昇0%台後半 日銀、追加緩和検討へ
14年度見通し、1%目標に届かず
2012/10/18 2:00 情報元 日本経済新聞 電子版

が出ておりまして、まあ要するに昨日の朝刊で追加緩和検討がどうのこうのという記事があちこちから出ていたようですが、世の中に疎いこのあたくし(自慢にならんが)は日経朝刊とかそのような物はここ10年以上読まない(ので朝の話題についていけない事は多々あるというのは如何なものかと思いますので良い子は真似しないように)のでそんなのつゆ知らずに昨日はブルームバーグが出した前日の記事に微妙な悪態(という程でも無いが)を付けておりましたな(汗)。

で、これに債券市場が反応したかと言いますと、昨日も申し上げましたように、そもそも金融政策のロジックを真面目に考えて素直に足元の経済物価情勢および9月の日銀の見通し下方修正を解釈すると、30日の決定会合(ちなみに会話ではめんどいから月末月末と申しておりますが本当は月末前日でおじゃる)で出す展望レポートで中長期的な物価見通しを出してそれが下方修正になるのが必至ですから、物価安定の目途というのを出している手前、追加緩和しないとロジックの整合性が取れないという結果になる(いやまあ経済物価見通しを4月と同じにすれば追加しなくても良いですけど、9月の時点で4月見通しの下方修正しているのですから)のは必定、とまあそういう事ですので、そちらには債券市場ちゃん全然反応せず。

それよりも為替市場が追加緩和期待で反応した、という事になっておりますが、まあそんなアホウな事はねえだろと思いまして、単にここもとドイツ国債やら米国債やらが欧州解決期待だか足元の経済指標だか知りませんが、微妙に売りモードになっていて、その流れで円を売りたがっていたので言い訳に使われただけでしょと思うのですが、まあ何はともあれ円安になって株高になった方に債券市場が反応して、ついでに超長期国債入札もありましたのでという所だとは思いますが、そっちの方に反応しているのがチャーミングというものです。

まあ為替市場様におかれましては、大体からして誰がどう考えても政策変更無いとしか思えない先々週の決定会合の時に前原さんが出席するから何かあるかもとか、政治圧力で金融政策が左右されたとみられるのが望ましくないという万国共通の中央銀行ロジックをまる無視する講釈を元に、現状維持で何故か反応する位のオモシロマーケットでございますので、もしかしたら本当に反応しているのかとか思うのですけど(苦笑)。


・・・・・・でですな、それはそれとしまして記事見ててふーんと思ったのですけどね。

上記の毎日新聞(のヤフーニュース転載分)記事から。

『日銀は17日、今月30日に開く金融政策決定会合で追加の金融緩和に踏み切る方向で検討に入った。』(上記ヤフーニュース経由の毎日新聞記事URLより)

いやね、「17日に検討に入った」という書き方が何ですかねという所でございまして、政策決定そのものは決定会合で行うという建付けでございまして、そらまあ展望レポートの文章を決定会合で一から作っていたら決定会合を3日徹夜くらい実施しないと間に合わないでしょうから事前のたたき台というものがというのは判りますが、「検討に入った」ってその見てきたかのような言い方が誠にアレ。

まあ何ですな、それが各社報道しているので、何となくこういう記事の出てくる背景って想像できるのですけれども、まあ妄想でああだこうだ書くのも微妙ですのでその辺は控えておきますけど、一つ言えるのは、この手の話ってまあ確かに金商法的な意味でのインサイダー云々には該当しないですけれども、やはり金融市場に対して影響を与える(今回は債券市場では追加緩和あるでしょというのと、まあそうは言っても金利が下がるかどうか判らんぞなと思っていましたので反応してませんが)話であって、そういうのが正式なルート(例えば公開の記者会見とかでそういう示唆が総裁から出る、とかそういうのであればまあそれはやや勘弁だがありとは思いますが)じゃない所からこうやって出てくるとかマジでふざけんなと思う所でありまして、こういうのメディアに漏らす(漏らしているのがいるのなら、ですが)アホウはドラム缶で逝く日本海溝海底片道クルーズツアーなり三途の川観光渡し船片道ツアーなりのご参加を全力でお勧めしたい物でございます。



○ところで市場雑談

・いやあ動いて良かったですねえ(棒読み)

ということで昨日の超長期入札の俺様用メモ。

海外市場で米債10甘で10年1.8%とゆーことで、寄り直後からあっさり144円割ってスタートして先物が一番安く推移しておりましたが、前場引けは143.91円(▲28銭)で10年が+2.0/+2.5で20年が+1.5/+2.0とかの気配。その後も株や為替が債券を売りたくなるような動き続きましたが、落札結果は前場引けのオファーサイドよりも強い所で決着して、その後は超長期の気配が入札の強さを是認するような形になって20年カレントの気配が5糸以上強くなるの巻(先物90銭割れ水準で+1.0/+1.5とかになってやがるというバランス)。

で、相場の下げも収まるのかと思ったら先物とかもう一発先物下がってキタコレとか思ったのですが、よくよく見ればその間に超長期カレントの気配は+1.0/+1.5のままでまるで不動の三塁手イ・マオカ選手(仮名)のような状態になっておられまして、何という貫録のウゴカンチ会長とか思っていたら結局10年も0.80%には届かずに引けに掛けて先物戻って5年カレントのカーブが修正されて何となく途中の先物独歩安状態がマイルドにされましたでござるの巻。

まあ何ですな、これで相場が本当にうんこだと入札をした超長期から崩れてあばばばばーとなるのですが、長期とか先物回りとかが下がる中で入札のあった新発超長期が不動の三塁手状態になっておられるとか、どう見ても手前との入れ替えです本当にカムサハムニダという所でございます(先物の出来高も多いので先物回りの現物が出たんでしょとか勝手に妄想するが事実は知らんので念のため)が、とりあえず昨日動かなかったらどうしようかと思ってましたが動いたので一安心。

ただし、前場の先物の値動きは甚だ息をしていないの状態だったので、前場はおいおいこれはどういう事やと思っておりましたというのは付け加えさせて頂きます。


・短国の落札レベルがまたまた金利低下な件

昨日の3か月TB
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20121018.htm
国庫短期証券(第319回)の入札結果

(3)募入最低価格 99円97銭3厘0毛
(募入最高利回り) (0.1005%)

(4)募入最低価格における案分比率 1.4772%

(5)募入平均価格 99円97銭3厘3毛
(募入平均利回り) (0.0994%)

先週の3か月TB
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20121011.htm
国庫短期証券(第317回)の入札結果

(3)募入最低価格 99円97銭3厘0毛
(募入最高利回り) (0.1005%)

(4)募入最低価格における案分比率 2.2696%

(5)募入平均価格 99円97銭3厘2毛
(募入平均利回り) (0.0998%)

・・・・・・ということで、先週は2か月TB3か月TBともに足切り0.10%に届き、ほっほーと思っていたのですが、今週は1年TBが足切り0.10%割れしたと思ったら昨日の3か月TBに関しても足切り自体は同じなのですが、按分比率が若干下がった上に、平均が1毛上昇しておりまして、期末特別需要が片付いたと思ったら今度は現実問題として当座預金残高の水準に見られますように銭が余っておりますぞなの巻となっておりまして、そちらから需給の方が良くなっておられる悪寒がしたのでメモをしておきます。

まあ要するに金が余っておいでということですが、基金短国買入もあと5兆程度は増やせそうではあるものの、あんまり増やすと短国レートが0.10%からそこそこ沈む可能性もあるかねえとかいう悪寒も漂う今日この頃でございましたとさっつーことで。


○ダドリーNY連銀総裁の先日の講演を斜め読みで

http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2012/dud121015.html
The Recovery and Monetary Policy
October 15, 2012

まあ何となく読んでみたというレベルなので、精読したらまた追加ネタを投入する所存。


・回復の遅い背景に関して

景気に関する話の小見出しが『The disappointing recovery』っていうのがまあそうですけどこらまたアレなと思いましたが、「では何でダメダメなのか」という考察の論点が興味深かったので引用するでござる。

『So why has the recovery disappointed?』

って所以下になります。

『One possibility is that the negative dynamics of a post-bubble environment are even more potent than had been appreciated. Feedback loops may be more powerful and frictions may be larger. In the U.S. case, this is particularly germane with respect to housing and mortgage finance. For example, we have found significant shortcomings in those institutional structures available to support the workout of the overhang of mortgage debt in an efficient and timely manner.』

バブル崩壊のネガティブフィードバックが想定より大きいという可能性ですな。

『A second reason may be the series of additional negative shocks experienced since the initial phase of the financial crisis. The largest of these relate to the crisis in the eurozone. But one could also add the periodic commodity price shocks, the disruptive impact of the tragic Japanese earthquake and tsunami on global trade and production, and the effect of the uncertainties around the impending fiscal cliff on hiring and investing.』

それに加えてバブル崩壊後も欧州問題や日本の震災などのネガティブショックがあったと。

『That said, the shocks since the acute phase of the crisis in the United States were not uniformly negative. Take, for example, the sharp increase in U.S. oil and natural gas production stemming, in part, from the innovations in drilling and extraction technologies. Not only does this rising production directly boost real GDP, but also the large drop in natural gas prices has significantly improved the industrial competitiveness of U.S.-based businesses.』

なるほど。

『A third reason for the weaker than expected recovery likely lies in the interplay between secular and cyclical factors. In particular, I believe that demographic factors have played a role in restraining the recovery. The developed world's populations are aging rapidly. In the United States, for example, the baby boom generation, which is a particularly large cohort, is now beginning to retire. As the population ages, this has two consequences.』

人口動態の話キタコレ。

『First, the spending decisions of the older age cohorts are less likely to be easily stimulated by monetary policy. That is because such age groups tend to spend less of their incomes on consumer durables and housing. Second, as the population ages and the number of retirees climbs, the costs associated with Social Security, government pensions, and healthcare retirement benefits increase. This creates budgetary pressure and leads to a choice of raising revenue to fund these costs, cutting other government programs, or cutting benefits.』

人口動態の影響の説明ですな。

『Now if this all had been fully anticipated by retirees and near-retirees, then this would already be factored into their spending and saving decisions. But, I doubt that this has been the case. I suspect that many have been surprised by the swift change in economic circumstances as the housing boom went bust. I doubt that many fully anticipated the budget crunch and the prospect that their future retiree and healthcare benefits would likely be curbed or their taxes would have to rise in the future. When households begin to anticipate this, they reduce their assessment of their sustainable living standards. This downward reassessment then feeds back to current spending and saving decisions.』

この辺は貯蓄率の話で、人口動態による変化というよりは、経済の大きな環境変化と、先行きに対する不安の方が貯蓄の引き上げと消費支出の抑制につながっているのではないかという話。

『A fourth reason why the recovery has been slower than expected may be that we overestimated the capacity for fiscal policy to continue to provide support to growth until a vigorous recovery was achieved. On the fiscal side, the authorities can cut taxes or increase spending to support income and demand during the deleveraging phase that follows the financial crisis. But the ability of such stimulus to continue to support economic activity ultimately encounters budgetary limits. For example, the need to keep the long-term fiscal trajectory on a sustainable path limits the size and duration of federal fiscal stimulus measures. For state and local governments, the statutory requirements for balanced budgets meant that fiscal policies turned restrictive relatively quickly once budget surpluses and rainy day funds were exhausted, and this was only temporarily mitigated by federal transfers to the states as part of the initial fiscal stimulus program. Fiscal policy is now a drag rather than a support to growth in the United States, and this will likely continue.』

つーことでFiscalの話が延々と説明されておりますが、財政刺激による効果を過大評価して財政を打ったものの、弾が切れてしまいましたぞなもしという話が。


・金融政策の使い方をどうするというお話

次の小見出しが『Monetary policy』になるのですが、上記の話の続きだったりする。

『I would give each of these four explanations some weight for why the recovery has been consistently weaker than expected. But I would add a fifth, monetary policy, while highly accommodative by historic standards, may still not have been sufficiently accommodative given the economic circumstances.』

でまあここにありますように、金融政策が依然として十分に緩和的では無いという可能性を5つ目の可能性として挙げております。

・・・・・・・でですな、確かこの講演ネタがニュースベンダーで出た時は、この「現在の金融政策がまだ不十分」という所が強調されて「追加緩和のおかわり示唆キタコレ」みたいな反応をしていたような記憶がありまして、いやまあ確かに「まだ不十分」というのはそういう話なのですが、この後の辺り斜め読みすると必ずしもだからおかわりヒャッハーとかいうのと違う面もあるような希ガス。

『Now let me be clear. I believe the evidence overwhelmingly indicates that our monetary policy has been effective in easing financial conditions and supporting economic activity.』

まあこうやって金融政策限界論は否定するのは雨人クオリティではあります。

『After reducing the traditional policy tool, the target for the overnight federal funds rate, to close to zero, the Fed has aggressively employed two complementary types of non-traditional tools?asset purchases and forward guidance on the policy rate-to provide additional stimulus through their effects on long term rates and various risk premia.』

『Effective forward guidance on interest rates causes market participants to lower their expectations and uncertainty about future path of interest rates and to anticipate that easier financial conditions will persist well in to the future. This pushes down the yield curve and leads to easier financial conditions.』

『Federal Reserve asset purchases also make financial conditions more accommodative. Such purchases, by taking duration out of private hands, push down term premia and lead to lower long-term rates than would otherwise be the case for any given economic outlook. Agency MBS (mortgage-backed securities) purchases absorb prepayment risk and reduce secondary and primary mortgage rates, stimulating demand for housing and increasing purchasing power through refinancing. Lower long-term rates support the prices of equities and housing, boosting wealth and easing balance sheet constraints, while an accommodative monetary policy stance reduces downside risks for the economy and this leads to lower default risk premia on corporate debt.』

『Our two tools work in a complementary manner. Asset purchases strengthen the credibility of the forward guidance on interest rates, while forward guidance provides information about how long the FOMC is likely to hold on to the assets it purchases.』

この辺は今やっている資産買入やらフォワードガイダンスやらが効果を出しているという話ね。

『My conclusion is that the easing of financial conditions resulting from non-traditional policy actions has had a material effect on both nominal and real growth and has demonstrably reduced the risk of particularly adverse outcomes. Nevertheless, I also conclude that, with the benefit of hindsight, monetary policy needed to be still more aggressive. Consequently, it was appropriate to recalibrate our policy stance, which is what happened at the last FOMC meeting.』

『As I argued in a recent speech, simple policy rules, including the most popular versions of the Taylor Rule, understate the degree of monetary support that may be required to achieve a given set of economic objectives in a post-financial crisis world. That is because such rules typically do not adjust for factors such as a time-varying neutral real interest rate, elevated risk spreads, or impaired transmission channels that can undercut the power of monetary policy.』


でまあさっきと同じですが、必要でありかつ副作用が小さいのであればよりアグレッシブな政策をしますよ、という話をしているのでまあやる気は出ている話なのですが、単純にそれだけではないような気もする訳で。

と申しますのはこの先なんですけどね。

『One reason that monetary policy may have been less powerful than normal is that one of the primary channels through which monetary policy influences the real economy-housing finance-has been partially impaired. This has both quantity and price dimensions.』

金融緩和が今一歩効いていない可能性の考察という部分になるのよ。で、波及チャネルが一部毀損しているという論点が最初。

『Credit availability to households with lower-rated credit scores remains limited and households with homes that have fallen sharply in value have lost most or all of their home equity and this makes it very difficult for them to refinance these mortgages.』

でまあその為にMBSの購入を行ってそれが効果ありましたので云々という話があるがこれ以上引用が長くなるとアレなのでそこはパスして次の理由。

『Another reason why monetary policy has become less effective in stimulating the economy is because the impetus from a given level of monetary accommodation likely has become attenuated-that is, less powerful-over time. Historically, attenuation has not been important because monetary policy typically has not stayed exceptionally easy for long periods of time. But this time is different and that difference may be important.』

バンバン緩和したので段々緩和の効果が薄められてくるとかそんな事を仰せのようです。

『So how might the monetary policy impulse on economic activity have become attenuated over time? I would suggest two potential channels.』

『The first channel is that monetary policy works, in part, by changing the timing of purchase decisions. If interest rates decline, the drop in financing costs may induce some households to buy a motor vehicle or purchase a home now rather than in the future. Of course, if the car or home is purchased today, this will borrow at least a portion of those sales from the future. There is a limit to how many cars and homes most people will want to buy, given their budget constraints. In this case, as the stimulus from the policy stays in place, the impulse on economic growth will gradually "wear off" as there are fewer and fewer households who can be induced to pull their future planned purchases forward to the present. The same argument applies to mortgage refinancing activity. The stimulus comes from the refinancing activity, which increases the amount of income that borrowers have available for other expenditures. The impetus to growth wears off unless mortgage rates keep dropping, stimulating additional rounds of refinancing activity.』

実はこの辺はざっと斜め読みしただけなので誤読してたらすいませんが、要するに金融緩和効果というのは金融環境の改善によって「先の需要を手前に持ってくる」という効果があるのだが、その金融緩和を長期間やり過ぎると持ってくるべき先の需要が先食いをしている分だけ減ってくるから効果が段々薄まってくるという話をしているように読めましたがどうでしょうか。

『The second channel is that low interest rates will gradually reduce the interest income of savers and this could eventually affect their consumption. Household interest income has fallen considerably over the past few years.』

これはホンマカイナという気がしますが、低金利の長期化で貯蓄者の収入が減って消費が減るという話。


・・・・・とまあそんな感じで、確かに追加緩和がまだ足りないのではという考察はしているものの、実は構造的に効きが悪くなっている可能性に言及したりしている辺り、100%ハトであると読むのもどうなのかという感じだったので、引用大会をさせていただきました。

もうちょっとこの続きがあるのですが、雑にしか読んでいないのと既に量が大杉状態なのと時間が無いのとなどの事情によりまして華麗にスルー致します(汗)。








2012/10/18

お題「今日も何となく雑談ネタですいません」

10月後半だから当たり前なのですが急に涼しくなってきましたな@東京

○市場雑談

・・・・・・・と言いましても短期どころか長期までウゴカンチ会長になっているという素敵な今日この頃で相場雑談ネタに枯渇の悪寒がする訳ですが、そういや今日は超長期入札でございまして、超長期入札と言えばどこぞの誰かさんがコジツケレポートをお出しになられるのが最近の風物詩ではありますが、さて今回ってどうなんでしたっけ(ニヤニヤ)。

でまあ米債が10年10毛甘とかになって帰ってきている上に超長期入札なのですが、これで今日ウゴカンチ会長だったら「先生!債券相場ちゃんが息をしていないの!」にも程があるのでご勘弁願いたい所ではございますがさて・・・・・・・・・


・当座預金残高が46兆円になっても話題にならない件について

昨日の資金需給速報
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx121017.htm

当座預金残高 460,900

まあ連日雑談ネタにしているのはマネー業界方面だけでありまして、実際問題としては当座預金残高は勿論ベースの残高だからそれが多い少ないというのも大事な話ではあるものの、それはそれとして実際問題としては超過準備からお家の事情的に強制的に出てくる資金がどんだけありますねんというのも市場の需給に影響する話なので、そーゆー意味では業態別準備預金残高の所で都市銀行さんが超過準備をじゃんじゃん積み上げるの上等というスタンスになったのかもしれません(実際の所はまあ市場での資金の出しっぷり見ればスタンスはある程度推測できると思いますが)的なのもこれまた重要で、そーゆー意味では直近との比較というのは当然ながら需給的に意味がありますが、半年前や1年前と比較した場合にはその辺の構造変化を加味しないと市場の価格形成がどうなりますかという点では意味ないですよねと思う訳ですが。

でまあそのような短期市場の金利形成に関する話は兎も角として、マネーガーの皆様におかれましては以下毎度おなじみの悪態なので割愛しますが、過去このネタでレポート書いてて今完全スルーとかしている輩に関してはレポート読む価値無しという判定を勝手に自分の中だけで認定というあたくしは粘着質ですかそうですか(^^)。


・1年短国は0.10%割れですが

国庫短期証券(第318回)の入札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20121017.htm

(3)募入最低価格 99円90銭1厘
(募入最高利回り) (0.0993%)

(4)募入最低価格における案分比率 63.4010%

(5)募入平均価格 99円90銭1厘
(募入平均利回り) (0.0993%)

他のと違って0.10%の一つ下のレートの所で切れましたが、一本値ですし按分もやや厚くなっていますので、前回9月の1年入札よりはだいぶまし(前回は平均が0.10%の二つ下のレートになってしまいました)で、前々回8月の1年入札並み(0.10%の一つ下の一本値で按分が61.6%)の結果ということで、期末モードは一巡という感じでしょうな。

しかし他の短国入札は0.10に乗った所も極薄按分ですが届くのに1年が届かないとなという所ではございますな。まあ発行2.5兆円しかないですからちょっと大口のニーズが見えていたら0.10で札入れても仮に落札できてもそこの札カスほどしか在庫確保できないですから、まあシャーナイナイという所ではあろうかと存じます。


○そういえば昨日クリップ忘れたのを少々

・ドル特則の成長基盤強化オペ

火曜日の結果を今頃で恐縮ですが。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel121016a.pdf
成長基盤強化を支援するための資金供給の実施結果【米ドル特則分】

LIBOR云々で初回のオファーが遅れたといのも何だかなあという感じでしたが、ドル特則の成長基盤強化の第1回めでたく実施。

『貸付日における貸付予定総額 711 百万米ドル
貸付先数 6 先』

2ページ目に内訳が。

『(1)資金が国外において使用される外貨建て投融資にかかる成長基盤強化への効果別分布状況(注1)』

『国内における生産・サービス活動、設備投資または雇用の増加に資することが見込まれるもの 482 (61.6%)
国内における企画・研究開発機能の強化、新規事業の立ち上げ、業務継続態勢の強化等を伴う
国際的分業態勢の構築に資することが見込まれるもの 234 (29.9%)
国内において使用する原材料の安定調達に資することが見込まれるもの 66 (8.5%)
その他 0 (0.0%)』

で、4ページの注1にありますように・・・・・

『(注1)本資金供給の米ドル特則(成長基盤強化を支援するための資金供給における米ドル資金供給に関する特則)は「第1期(2012 年4 月〜6 月)分」として、2012 年7 月2 日から同7月19 日までに提出され、成長基盤強化に向けた取り組み方針(米ドル特則用)のもとで実行されたことが確認された「個別投融資実績」の分布状況。なお、本資金供給は、個別投融資実績の範囲内で貸付対象先が希望する金額に基づいて実施されるため、貸付予定総額と個別投融資実績の合計金額とは必ずしも一致しない。表中の成長基盤強化への効果の分類は、「成長基盤強化を支援するための資金供給における米ドル資金供給に関する特則」の別紙で例示された3 つの効果に基づいている。』

でまあ何だ6件しか無いのかという風に一瞬読めますが、注2、注3の方に・・・・

『(注2)2012 年5 月28 日から同7 月10 日までに「成長基盤強化に向けた取り組み方針(米ドル特則用)」の提出を行い、当該取り組み方針が本資金供給の要件を満たすと確認された金融機関等の数。』

『(注3)2012 年5 月28 日から同7 月10 日までに提出され、本資金供給の要件を満たすと確認された「成長基盤強化に向けた取り組み方針(米ドル特則用)」において、表に掲げる効果を「当該取り組みによってもたらされ得る、資金が国外において使用される外貨建て投融資にかかる成長基盤強化への効果」として選択した金融機関等の数。表中の成長基盤強化への効果の分類は、「成長基盤強化を支援するための資金供給における米ドル資金供給に関する特則」の別紙で例示された3 つの効果に基づいている。なお、複数の効果を選択している金融機関等が存在するため、先数の合計は「『成長基盤強化に向けた取り組み方針(米ドル特則用)』について確認を受けた金融機関等の数」とは必ずしも一致しない。』

とまあ長々と脚注があるのですが、3ページの所にこのような記載が。

『(1)「成長基盤強化に向けた取り組み方針(米ドル特則用)」について確認を受けた金融機関等の数(注2)30 先』

『(2)「成長基盤強化に向けた取り組み方針(米ドル特則用)」における資金が国外において使用される外貨建て投融資にかかる成長基盤強化への効果の分布状況(注3)』

ということで、まあ実際はもう少し対象はあるようでございますな。内訳の部分を引用すると長くなるので上記URLを見てちょという所ですが。

・・・・・・・でまあそれはそれで良いのですが、このオペってそれなりに長期間のものになるのですけれども、1Wと3Mのドル資金供給オペと違って元の銭が日銀の「現に保有しているドル」(ドル資金供給オペは中銀間のスワップ取極めによる)なので、そーゆー意味では外債購入議論が実際に検討とか言うようなことになった場合に(まあ量的緩和状態の中では日銀が買っても財務省が買っても実質何が違うんだと思うので無駄な議論だとは思うけど)実務上の論点としてここの日銀保有資産が貸し出しによって実質固定化されて動かせなくなってくる点についてはちょっとややこしい事になるような気がせんでもないです。


・こんなんありましたぞな

バーゼル銀行監督委員会による「国内のシステム上重要な銀行の取扱いに関する枠組み」の公表について
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel121016b.htm/

『バーゼル銀行監督委員会は、10月11日、「国内のシステム上重要な銀行の取扱いに関する枠組み」(原題:A framework for dealing with domestic systemically important banks)を公表しました。』


プレスリリースの仮訳の方を。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/data/rel121016b.pdf

『2011年11月、バーゼル委はグローバルにシステム上重要な銀行(G-SIBs)に関する最終規則文書を公表した。G20首脳は2011年11月のG20サミットでG-SIBの規制枠組みを承認し、バーゼル委と金融安定理事会に対し、同枠組みを国内のシステム上重要な銀行(D-SIBs)まで拡張するよう要請した。』

ほほう。

『グローバルな観点からは全てのD-SIBsは重要でない一方、そのような銀行の破綻はシステミックでない銀行と比較して国内の金融システムおよび経済に、さらに重要な影響を持つ可能性がある。こうした銀行の中には、その(破綻や損失による)影響が、本来グローバルではないものの、クロスボーダーの負の外部性をもたらすものもあり得る。』

ほうほう。

『こうした背景に対して、バーゼル委はD-SIBsに関する評価手法およびより高い損失吸収力の要件に関する一連の原則を策定した。この枠組みは、銀行がストレス下にある場合および銀行の破綻が国内経済に与える影響に焦点を当てることによって、G-SIBsの規制枠組みに対する補足的な視点を取り入れている。』

それでそれで?

『D-SIBsの規制枠組みは、G-SIBsの規制枠組みを補完することから、バーゼル委は、各国当局がD-SIBsであると特定した銀行に対して、G-SIBsの規制枠組みの段階的実施と同様、2016年1月1日から原則を満たすよう求めることが適切であると考える。』

>G-SIBsの規制枠組みの段階的実施と同様、2016年1月1日から原則を満たすよう求めることが適切である
>G-SIBsの規制枠組みの段階的実施と同様、2016年1月1日から原則を満たすよう求めることが適切である
>G-SIBsの規制枠組みの段階的実施と同様、2016年1月1日から原則を満たすよう求めることが適切である

・・・・・・・・orz

いやまあバーゼルさんの仰ることも重々わかるのですが、どうしてこう財政締めろ(はバーゼルでは無いが)だの金融機関の規制枠組みを強化するだの、この景気がグローバルにアレな中にシバキアゲモードになるかねという所でございまして、1990年代後半から2000年代前半までの日本が不景気化のシバキアゲでどんだけエライコッチャだったか(途中にITバブルはありましたが)という件についての考察はお前らどうなってるねんという気がするのであります。かつての日本の場合はバランスシート調整を大量に血を流しながら何とか目処付けた所で海外経済という神風が吹きましたけど、今は世界揃ってあばばばばーでございますからのう・・・・・・


○観測記事には【観測記事】とか入れて頂きたいもので

昨日のブルームバーグニュース。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MC0IJ66KLVRY01.html
日銀:物価1%達成を半年以上先送り、追加緩和も−30日会合 (訂正)

『10月17日(ブルームバーグ):日本銀行は消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)前年比上昇率が「2014年度以降、遠からず1%に達する可能性が高い」との見通しを少なくとも半年先送りする方向で検討している。関係者への取材で明らかになった。』(上記URLより)

ということで「関係者への取材」って何ですねんという所ですが、内容を拝読しますと単に市場の皆様の観測を合計したような話で、まあ一部に日銀の〜みたいなのも書いてありますが、まあごく普通の観測記事ではございます。

・・・・・・は良いのですけど、これニュースヘッドラインで出た時って、特に英語の方を見て思ったのですが、如何にも「日銀からのリーク記事」みたいな印象を与えるのでございまして(日本語だって「日銀:」って書いてあって如何にも日銀がそう言ったという形ですし)、いやまあ本当に独自の迫真取材なのかも知れませんのであたくしのいちゃもんが間違いだったらどうもスイマセンですけれども、内容的に観測記事じゃねえかと思うものを思いっきりリークっぽい話になるとか何なんでしょ。

まあ今回は(あたくしもそんな駄文を書いてますが)普通に考えたら物価目処1%の達成だって時間がより掛かるってのは先般の総裁会見でも明らかにそういう話をしていますし、物価安定の目途との整合性をロジカルに考えたら追加緩和でしょと思いますし、丁度うまい具合に(笑)来年の前半に基金での長期国債購入を5兆円乗せると買入額がスムージングになるとか、大体そんな予想は出来るのでニュース出ても「ああそうですか」で終了なのですが、観測記事なら【観測】とか頭に入れてほしいものだと思いますが、そんなのを頭に入れたら誰も記事読まなくなるから入れませんですかそうですか。

あとさ、毎度思うのですがリーク(日銀のそれなりの所からリークが出るとかいう妄想をする方も多いようですが、色々見ておりましてそんなこたあ有り得んと思いますよ。だってリークしたって何の得にもならないですから)みたいな事前報道が出ると、市場が先に織り込んでしまって実際に政策が出た時に打ち止めになってしまうので、大きな意味では国益的に如何なものかと思うのでありますのでいい加減何とかして欲しいものだと思いますけどね。


○そういえばIMF世銀総会では麿がこんなのを

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/ko121010a.htm/
【挨拶】在日スイス商工会議所30周年記念会合における挨拶の邦訳
日本銀行総裁 白川 方明 2012年10月10日

例によって実際の挨拶は英文なのですがこちらは邦訳。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121010a1.pdf(本文)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121010a2.pdf(スライドショー)


ちなみに本チャンを見たければこちらからリンクを辿ってちょ。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/ko121010a.htm/

でまあめんどいので邦訳の方からですがね。本文1ページ(ファイルの2ページ目)から。

『当然のことながら、スイスと日本はかなり違います。例えば、スイスには海がありません。ただ、実際には、スイスはEUという大海に浮かぶ島とも言えます。同国の輸出の6割、輸入の8割がEUを相手方とするものです(図表1)。人口を比較すると日本の方がはるかに大きいですし、経済規模は日本がスイスの約9倍あります。一方、共通点もあります。たとえば、どちらの国も非常に安定した物価を享受し、一面ではその安定した物価に悩まされています。1992 年から2011 年までの20 年間の平均インフレ率を消費者物価(総合)の前年比上昇率でみると、スイスでは+1.1%、日本では+0.1%でした(図表2)。また、本年8月の実績は、スイスでは前年比−0.5%、日本では同−0.4%でした。そのことを反映して、両国の金利も、ともに非常に低い水準で推移しています(図表3)。ここ数週間の10 年物国債の利回りの動きをみると、日本の0.7%〜0.8%に対し、スイスではこれを僅かに下回る0.5%前後となっています。また、ジョーダン総裁からご説明があったように、両国通貨の為替相場は、歴史的な高水準にあります。』

・・・・・・・・とまあここまで見ると日本もスイスも為替相場でエライコッチャという話をしているのですけれども・・・・・・

『為替に関するマスコミや世論の関心は、スイス・フランとユーロ、あるいは、日本円と米ドルといった、特定の通貨間の為替レートに集中しがちです。これらのレートは重要ですが、為替相場を表す指標はこれ以外にもあります。』

『為替相場の変動が経済に及ぼす影響を理解するためには、すべての貿易相手国の通貨との為替相場を考慮に入れなければなりません。こうした観点からは、貿易額で特定の通貨間の為替レートを加重平均した、いわゆる「名目実効為替レート」をみていくことになります。』

キタコレ。

『スイスと日本の名目実効為替レートをみると、2000 年1月から本年8月までの間に、それぞれ41.4%と17.4%上昇しています(図表4)。』

スイスの為替上昇の方が遥かに大きいとな、ということですが、スライドショーの図表4を見ると更にこのニュアンスが判りやすいのでお勧め。

『また、インフレ率が高いと競争力が低下するという面も考慮に入れなければなりません。この点、名目の為替レートをインフレ率で調整した、いわゆる「実質為替レート」から追加的な情報を得ることができます。』

あちゃー。

『仮に名目為替レートが上昇しても、低いインフレ率により相殺されれば、実質為替レートの水準は変わりません。もちろん、インフレ率の比較が一筋縄ではいかないため、評価は慎重に行う必要がありますが、2000 年1月から本年8月までの間における実質実効為替レートの動きをみると、スイスでは12.5%上昇しているのに対し、日本では19.3%下落しています(図表5)。』

これまた図表5を見れば判るのですが、「日本はそんないう程円高じゃないもん」的な図になっているのですが、それ日本がデフレなのを「実質」という概念で正当化しているように読めますので、こういう話を持ち出すのはもっと慎重であるべきだと思うのですが。

まあ為替介入とか外債購入議論でスイスとの比較の話が出ることに対して釘を刺したいというのは判るのですけれども、足元でのスイスフランの急騰の話はまあ良いとしても「実質為替」の話を持ち出すと「だから日銀はデフレを容認している」というような言われように繋がる訳でございまして、折角「物価安定の目途に向けて強力に金融緩和をする」という話をしているのですから、コミュニケーションポリシー的な観点から考えてあまりこういうのを持ち出さない方が吉だと思うのですけどねえ。

というツッコミをするのを忘れておりました(訳でも無いが)ので、忘れないうちにクリップしときます。








2012/10/17

お題「今日は色々と小ネタシリーズでござる」

what_a_dudeさんの所で復興予算の流用ガーの話題がございまして、仰せご尤もと思ったのでリンクをさせていただきたく候。

http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20121014/
2012-10-14 復興予算「流用」騒動の顛末

・・・・・・・でまあ最近の報道を見ると、what_a_dudeさんのご指摘のようにこの復興予算に関してまたガチガチにしようって話になっていますが、未執行が増えたら増えたで「執行不足ガー」という話になるというのがもう見えているだけに脱力ですわなあ。

○昨日の総裁講演ネタ補足

実は昨日引用大会をしていながら最後の最後の部分でちょっと引っ掛かったもののスルーしたら読者様からの早速のご指摘がありましてですね。

14日の講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121014a.pdf
公共財としての国際金融システムの安定
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko121014a.pdf
International Financial Stability as a Public Good

のあたくしが引用した最後の部分、すなわち『3.グローバル化する世界のもとでのグローバルなガバナンス』のケツの所なんですけどね。

『そうであるならば、私たちは、公共財の問題を解決するために知られた選択肢を組み合わせる、より現実的なアプローチを追求するべきです。グローバルに重要な金融機関の効果的な監督といった一部の公共財は、個々の国のレベルで供給できます。グローバルな金融環境を監視し、マクロプルーデンス上のリスクを特定するといった個別具体的な課題への対応を、超国家的な組織に民主的な原理と整合的なかたちで任せることは可能です。民間の主体に、バーゼル自己資本規制といった一定のルールを守らせることも可能です。これは、国際金融システムの安定を消費するルールにほかなりません。』

ってのを引用して引用しながら「消費?」とは思ったのですが、原文の方を当たりますとこの部分こうなっています。

『We therefore should aim for a more practical approach, combining various options that are known for solving the public good problem. Some public goods, such as effective supervision of globally important financial institutions, could be provided at the national level. Supranational institutions could be asked to take on specific tasks, such as monitoring global financial developments and identifying macroprudential risks, without undermining democratic principles. Private actors could be made to follow certain rules, such as the Basel rules on capital adequacy, which are in fact rules regulating the consumption of global financial stability.』

まあ確かにconsumptionって書いてあるから消費は消費なのかもしれませんが、話の流れからするとニュアンスって「消費」とは違うと思いますので、これはもうちょっと適切な訳語があるような気がするんですけど。つーかこれ原文が実はconsumptionじゃなくてassumptionじゃネーノという気もするんだが、まあいずれにせよここの「消費」というのが何か違和感があったのですが、やはり同じようなご指摘を読者様から頂きましたので、折角ですので原文も出してこの部分を再度ご紹介でありました。

ついでですのでその次も引用しておきますね。

『さらに、課税や補助金の支給によって民間の主体の行動に影響を与えることができるかもしれません。たとえば、自己資本規制も、リスクの高い投融資活動のコストを高めるという意味で、この一例と位置づけることもできるでしょう。さらに、私自身は市場流動性に対する悪影響などを踏まえると、ベネフィットがコストを上回るとの考えには賛同していませんが、金融取引課税も選択肢であると主張する方もいらっしゃると思います。いずれにしても、私たちは、グローバル・ガバナンスにかかる柔軟かつ複線的なアプローチを目指さなければなりません。これは、ますます多様化する国際社会にふさわしいものだと言えます。』

『It may even be possible to devise ways to influence the behavior of these actors through taxes and subsidies. For example, capital adequacy standards could also be seen in this light, considering that they would increase costs of engaging in riskier behavior. Some might even argue for financial transaction taxes as an option, though I do not believe that benefits would outweigh the costs, such as their impact on market liquidity. In any case, we must be willing to adopt a flexible and multi-tracked approach to global governance, which should be more adaptable to and consistent with the increasingly diverse global landscape.』

まあ話の内容はその通りという所でして、グローバルなマクロプルーデンスや金融レギュレーションの枠組みの構築、というコンテクストの中で、包括的なアプローチにこだわることなく、まずは出来る事からやっていくという現実的なアプローチをしながら、合成の誤謬を避けるというのが重要ですねという話には、実務家としての今までの経験の重みというのを感じる次第でして、直ぐに机上の空論的な包括アプローチに走りたがる国際機関に対しても一定の釘を刺しているという所ではないでしょうか。

とかまあ考えますと、昨日引用したの総裁講演3連発は色々な意味で色々な公的主体に対する提言にもなっているというお話だったなあとか思います。


○規制云々の話が出ましたので小ネタを

・何でそうなるし??

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20121016-OYT1T01404.htm
外銀国内支店の円預金、預金保険制度の対象に

・・・・・・・うーむ、何かそんなことすると預金保険制度にまたまたストレスが掛かるリスクが高まるような気がしますし、大体からして「故日本振興銀行スキーム」を盛大に実施して集めた円預金が盛大に海外に流出して本国の方で使い込まれてお父さんとかされちゃうといった場合に誰得な話になると思うのですが。故日本振興銀行の場合はそうは言いましても不良債権せっせと作ってもまあそれは主に国内で費消された(のかどうか本当は知らんので推測で書いています、為念)でしょうが、外銀の東京支店が金をせっせと集めて全部本国に持って行ったらただの国富をドブに捨てるスキームになるのでご勘弁願いたい物でございます。

いやまあ預金保険制度の対象にするからその代り外銀の活動に関して本国まで乗り込んで行ってちゃんと経営を行っているのかをモニタリングして、必要であれば改善命令を出すとか言うのであればそれはそれで意欲的な話なのでどんどんやれと思いますけどね。

つーかね、別に何でもかんでも保護すりゃ良いものでもなくて、「これは保護されていませんよ」というような形できっちり周知することによって、自己責任原則というのも普及させないといかんと思いますけどなあというのって変ですかねえ。いやね、何でもかんでもいざとなると「お上」が出てきて何とかしてくれるみたいな発想が意識のどこかにあると、金融商品に見せかけた訳の分かんない詐欺商品とかに対する判断のハードルが下がって、その手の詐欺商品にホイホイ引っ掛かる人が後を絶たない、という事になりゃせんかと思うのですけどねえ・・・・・・・・・

#あ、別に外銀の預金をdisってる訳では無いので念のため申し添えます^^;


・MMF規制の話

http://www.fsa.go.jp/inter/ios/20121012-2.html
IOSCO(証券監督者国際機構)による最終報告書「マネー・マーケット・ファンド(MMF)に関する政策提言」の公表について

『IOSCO(証券監督者国際機構)は、10月9日、「マネー・マーケット・ファンド(MMF)に関する政策提言」と題する最終報告書を公表しました。内容については、以下をご覧ください。』

ということですが、この最終報告書の原文が8Mもある(みたいです)上に何か知らんがIOSCOのサイトが糞重くて全然ダウンロードできないという素敵な代物なのでまだ内容を読めませんというか読む気力が起きないので是非ここは金融庁様の仮訳をお願いしたい所ですが(すぐ人に頼るダメダメですなあ>あたくし)。

リリースの仮訳がでております。
http://www.fsa.go.jp/inter/ios/20121012-2/01.pdf
IOSCOによる最終報告書
「マネー・マーケット・ファンド(MMF)に関する政策提言」の公表について

『IOSCO 代表理事会は10 月3−4日にマドリッドで開催された会合で本報告書を承認した。米SEC の多数派の委員は本報告書の公表に反対したが、その他に反対はなかった。』

ますます報告書見たい所ですな。

『MMF の資産運用残高合計は約4.7 兆米ドル(2012 年第1 四半期末時点)であり、世界の集団投資スキームの約5 分の1 を占め、その市場規模は相当なものである。重要な信用及び流動性供給源であるMMF が金融危機を招いたわけではないが、2007−2008 年にかけての金融危機におけるMMF のあり方は、MMF が金融危機を蔓延させ、増幅すらさせる可能性を持ち合わせていることを浮き彫りにした。』

という国もありますがそうじゃない国もありますぞなもしという所ですが・・・・・・

『MMF の規模、特徴及びシステミック・リスク性は各国により大きく異なる。したがって、政策提言の適用も各国の既存の法規制構造の特殊性のみならず、各国の状況次第で、法域毎に異なる。』

『政策提言は全てMMF 市場の安全性と頑強性のために重要である。しかし、いくつかの政策提言の適用は、MMF 市場ひいてはより広い金融システムの機能に対する破壊的な影響をもたらさないよう段階的に実施されるべき場合がある。』

仰せの通りでございまして、国によって存在の意味合いが全然違うものをグローバルに一律規制みたいな話に持って行くのは如何なものかという論点からしましても結構なお話だと思いますし、それこそさっきの白川総裁のいう現実的なアプローチという意味では、話としては理に叶った措置ではないかと、このリリースの仮訳だけを見たら思う所でして、国際交渉の中で現実的な解決に落とし込む事ができたという点で政策当局の動きに対して評価できる話だなあとか思うのでございました。



○当座預金残高45兆円キタコレとかの短期市場的雑談

・当座預金残高45兆円キタコレ

10月16日資金需給速報
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx121016.htm

>当座預金残高 453,100
>当座預金残高 453,100
>当座預金残高 453,100
>当座預金残高 453,100
>当座預金残高 453,100

またまた既往ピークを越えまして45兆円キタコレという所ですが、今日もここから7700億円資金需給が上に振れる予想となっておりますので、その予想通りに推移しますと本日は当座預金残高が46兆円に届くという大変に素敵な状態。

・・・・・・・・・・えーっと、3月辺りに「昨年対比のマネーガーで円高ガー」とか仰せだった本職の何とかストの皆さんちょっと出て来なさいとか何か7月と9月にも同じ事言ってますかそうですか(^^)。

まあ為替市場のアレな方々がソロスチャートガーとか言って自己責任によりまして為替投資するというのはまあしゃーねーなーとか思うのでございますが、本職の何とかストの皆様は「まあそういう人も居ますけどそれ関係ないですから」て解説するのがお仕事であって、そーゆーのの尻馬に乗って「当座預金残高ガーで日銀の緩和ガー」とかいう話をおっぱじめる何とかストとかちょっとその席どけやという所でございますな、と何か7月と9月(以下同文^^)。



・業態別準備預金残高

業態別の日銀当座預金残高(2012年9月)
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/jcabs.pdf

四半期の国債償還要因がありますので、四半期国債償還が入る積み期間の超過準備額が拡大するのはまあ仕様なのでございますが、ここの超過準備預金残高の月平(ちなみに「げっぺい」と打つとあたくしのPCは「月餅」と変換しますのでPCは金融業職業病には罹患していないようです^^)の数値を見ておりますと、「都市銀行」の超過準備が今回どどーんと増えたのが目立ちますな。

あとば「その他準備預金制度適用先」ですが、その他さんの場合は過去の国債償還要因月よりは拡大が少ないので単月ベースでは特段目立たないのですけれども、推移をみますと順調に増加傾向となっておりまして、まあ皆さん超過準備を普通に積み上げるようになっていますなという所です。

でまあ何ですな、資金需給の理屈からしまして、日銀が資産買入基金で買入を増やせばそれに伴いまして超過準備が増えざるを得ないのでありまして、この超過準備が増えているのを捕まえて「超過準備が経済にどうのこうの」とかいう変な議論が時々出るのですが、問題なのは「超過準備の額」ではなくて「マネーの流通速度が高まらない」の方でありますぞなという所をスルーしてまたそんな話が出てくるに1万ドラクマと言いたい所ですが、そもそも超過準備がどうのこうのとか世間の話題にもなりませんですかそうですかorzorzorz


・つーことでコール金利が低下気味のようで

別に回し者ではありませんが上田八木短資さんの所から。

http://www.ueda-net.co.jp/uedayagi/02-market/02_1.html
(直近のが出ますので後日見る際には画面右上の「履歴メニュー」からご参照下され)

こちらの市況解説にもありますようにとりあえずコール金利がここの所低下気味で、昨日は準備預金の積み期間がリフレッシュされた訳ですがそれでも委細構わずコールレートの平均は0.080%に低下。

無担保コールO/N物レート(10月16日<火>速報)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/mp121016.htm

>平均 0.080%

ありゃまあという所ですが、さすがに超過準備が増えてきますと調達サイドのニーズはタダでなくさえ無い中ですから徐々にこういう辺りから影響が出てくるという事なのでしょうかねえ。

一方で運用サイドという面で言えば、都市銀行さんに見られますように、従来超過準備額が割と同じような水準で推移させていたプレーヤーさんが「別にまあ超過準備を無理して削減する事もねえだろ」という話になってきますと、0.10%を割った水準での金融商品への投資意欲がダダ下がりになるという事になります(つーか本来的に事務コスト考えたら0.101%の短国を買うのと0.100%の超過準備に放り込んでおくのとどっちが得かという気もしますけど、まあ債券残高は債券残高でという事でしょうからね)ので、あとは日銀当座預金取引の外側にいる皆様の所にどの位のゼニが流れ込んでくるのかというのが今後の水準を決めるという話です罠、まあ当たり前の話ではございますが。


ということで、今日は雑談シリーズでしたが、本当は昨日のダドリー講演とかもうちょっと前の麿講演とかネタがあったような気がするのは気のせいという事にしておきます(汗)。





2012/10/16

お題「総裁講演が絶好調なので色々と流し読み(今日は引用祭りですいません)」

IMF世銀総会で色々な人が色々と発言とか講演をしたのですが、さすがにこれだけ膨大に出てくるとフォローするのも難しいですなあ、と泣き言モード。

ということでまずは直近の総裁講演(スピーチ)3連発から少々。

ということで、講演やスピーチがある訳ですが、時間的に前の分からサラサラと参ります。でまあ本当は英語の講演なのですが、手抜きで日本語訳の方から(汗)。

でですね、この先が引用大会になって読むのもアレという感じですので、あたくしのどうでもよい感想を先に申し上げますと、この3連発については全てにおいて格調高いお話であいて、本来の白川総裁はこういう所に真骨頂が現れるのであって、アホウな世間を相手に追加緩和で何を買うとかいう目先の話に忙殺されるというのは白川さんという貴重な資源(とか言うと語弊がありますかそうですか)の使い方間違ってるよなあとか思うのでございましたよ


○金融危機の教訓、という話をさせると白川総裁はさすがとしか言いようがない件について

・金融危機の後始末に時間が掛かる&マクロプルーデンスという話

12日の講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121012d.pdf(日本語訳)
国際金融危機の含意:5年間を経て
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko121012d.pdf(原文)
The Consequences of the Great Financial Crisis:Five Years On

というのがこちらの話になるのですが、『金融危機発生から5年間を経て』という小見出しの部分から。

『BNPパリバの傘下にあった3つのヘッジ・ファンドの償還停止という、今回の世界的な金融危機の起点となった出来事が発生したのは2007年8月9日のことでした。それから5年以上が経過しました。官民を挙げた対応にもかかわらず、世界経済の成長ははかばかしくない状況が続いていますが、より幅広い観点からこの5年間を評価するとどうなるでしょうか。危機管理、危機後の経済の回復、そして危機の再発防止策という3つの評価軸を設定したうえで、私なりの評価を述べたいと思います。』

ということで。

『第1の評価軸は危機管理です。この点では、1930年代のような大恐慌の再来を回避することには成功しました。その背景として、危機直後の先進各国の積極的かつ協調的な政策の発動も大きく寄与したものと考えています。』

ふむ。

『中央銀行の政策に即して申し上げると、まず、非常に積極的な金融緩和が行われました。そして、より重要だったのは、いわゆる最後の貸し手として中央銀行が積極的に流動性を提供したことで、これは事態が手に負えない状況に陥ることを防ぐ点で大きな役割を果たしました。』

ふむふむ。

『それと同時に、過去20年近くにわたり当局も交えて粘り強く推進されてきた、さまざまな金融インフラ改善の効果を過小評価してはなりません。』

これはまあ確かに。

『たとえば、証券と資金の同時決済化、中央銀行の口座を使った即時グロス決済化、外貨決済の時差リスク、いわゆるヘルシュタット・リスクの解消を目的としたCLS(Continuous Linked Settlement)といった取り組みです。』

まあ支払い不能の連鎖はRTGSによって起きない、というのは確かにそうなのですが、RTGSにするデメリットとしてはフェイルの連鎖が起きますので、そういう点を考えた場合に、「カネの流動性」だけではなく「モノの流動性」に関しても何らかの施策が打てるようになると、リーマンショック後に発生した市場のシュリンクが起きにくくなるとは思うので、決済システムのデザインにおいて中央銀行などがモノの流動性を何とかできるようになるとベターという気はしますけど無理かなあやっぱり。

あとはまあ前回は初回だったから仕方ない面はありますが、セントラルカウンターパーティーとしてJGBCCが有る訳ですが、このJGBCCが大規模フェイル時に思いっきり大規模フェイルしてしまい、その解消に時間が掛かって市場のシュリンクに拍車を掛けた次第で、まあそれに関してはその後のリカバーはきちんと行えましたからああだこうだ今更悪態つく訳でも無いですが、少なくとも当時は結構大変であたくしも悪態ついてたような記憶だけは思いっきりございます。

つまりですね、これからデリバティブのセントラルカウンターパーティーとかその手の話も出てくるとは思うのですけれども、ただの決済処理機関であれば別にその辺はどうでも良いと思いますけれども、オブリゲーションネッティングとかをして取引処理の効率化を行う、という風になるようなセントラルカウンターパーティーをデザインする場合、その機関が潰れない場合であっても取引が大規模に止まるというようなケースがあれば、結局の所市場の一大シュリンクが発生するという問題が生じますので、デザインの際にはリーマンショック時の混乱に関して「JGBCCは一時的に混乱したが直ぐに復旧して良かったですね」という総括で終了させないで、その辺りを加味して設計を願いたい物だと思います。

・・・・・・などと思いっきり話が逸れましたが続き。

『第2の評価軸は危機が収束した後の経済の回復です。さきほど申し上げたように、世界経済は力強い成長軌道に復帰したとはいえません。実際、過去5年の間に、先行きに対するかすかな期待が台頭した時期が何度かありましたが、私自身の日本のバブル崩壊後の経験に照らせば、そうしたものは「偽りの夜明け」ではないかと当初より懸念していました。』

ちなみにこの部分、後半の文の英文本チャン版はこちら。

『In fact, over the last five years, there were only occasional glimmers of hope. Nevertheless, in light of the experience of the bursting of the Japanese bubble, I had always been a little skeptical and suspected that those glimmers might just be false dawns.』

うむ、これは(^^)。

『先進国のGDPは、現在、リーマン・ショックの前年の水準をかろうじて上回る程度に過ぎません。債務が大きく積み上がった経済では、債務の返済資金を確保しなければならない経済主体が支出を抑制することにより、経済活動が停滞することになります。』


で、「山高ければ谷深し」という話がここで出てくる。

『やや脇道に逸れますが、こうした状況を形容するためしばしば使われる、「失われた10年」という言葉は、ややミスリーディングではないかと思います。』

ほほう。

『この表現には絶対的に失われたというニュアンスが含まれていますが、「失われた10年」の前に「肥大した10年」があったことを忘れてはなりません。』

なるほど。

『いずれにせよ、過剰債務の調整がおわるまでは、本格回復は始まらないという事実を社会として冷静に認識することが重要です。そうでないと、人々の間に不満が高まり、そのことが経済政策のタイミングや内容を不適切なものとするおそれがあるほか、世界経済全体の効率性を低下させたり、安定を脅かしたりすることで、経済の回復をさらに遅らせかねません。その意味で、危機が収束した後の局面においては、目先の状況にとらわれて二次被害をもたらさないようにすることがきわめて重要だと思います。』

これはこれで見解として筋が通っているとは思うのですが、一方で昨日ネタにしたミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁講演にありますように「トレンドラインからの乖離が続いているのでケシカラン」という論調もあり、というよりは米国FOMCの現在の中心的見解って恐らくそーゆー見解でありますからして、読みようによってはどさくさに紛れて盛大に米国の金融政策をDisっているようにも見える所がお洒落ですな(^^)。

ちなみにこれまた毎度ネタにしているのでご案内の通りだと思いますが、セントルイス連銀のブラード総裁は「リセッション前の正常状態」というのに経済を戻そうとする動きは、そもそものリセッション前の状態が住宅バブルで下駄を履いている事に対する考察に欠けている、というような主張を全力で行っていますので、別にFOMCが一枚岩な訳でもありませんが、白川さんの話はブラード総裁の論点と同じ話ですにゃあと言った所です。


『第3の評価軸は、危機の再発防止に向けた取り組みです。この点に簡単に触れておくと、2009年秋のピッツバーグのG20サミットで採択された声明に沿って、銀行の資本規制が強化され、OTCデリバティブ市場改革が行われたほか、金融システム上重要な金融機関の責任が強化されるなど、重要な前進がみられます。しかし、こうした努力を単純に延長した先に、危機のない楽園(nirvana)が待っていると考えるのは楽観的に過ぎます。』


ということでマクロプルーデンスキターという所ですが。

『金融危機の重要な教訓の1つは、個々の金融機関に対する規制・監督を十分に行い、金融機関がしっかりと経営されるだけでは、金融システムの安定性が実現するとは限らないということです。そのために必要な政策対応を表現する言葉として、「マクロ・プルーデンス」という言葉が使われるようになっています。この概念自体は新しいものではなく、危機の前からその重要性が徐々に認識されてきていました。危機によってその重要性が広く認識されるようになった今日、各国の政策当局は、こうした政策を具体的に推進していかなければなりません。』

キタコレ。

『この点に関連して、今回の危機を境に強く意識されるようになったのは、金融の安定性を確保するにあたって、国が果たす役割の重要性です。2008年に経験したように、金融システムが崩壊の危機に瀕している状況のもとでは、国だけがそれを食い止めることができます。したがって、国が支援する能力が疑われるような場合には、金融システムの安定性と財政の持続性に対する信認の間で悪循環が生じます。』

さいですな。

『この問題は、グローバル化が深化するもとで金融システムの安定性を維持する負担がますます大きくなり、民主的な国家の負担能力を超えかねなくなっている中、ますます先鋭化しています。「納税者の負担による金融機関の救済拒否」という考え方は、国際的に活動する金融機関の破たん処理にかかる費用を、国家の徴税能力ではまかないきれないのではないかとの疑問に基づくものと思われます。』

でまあこの辺の話は翌日の13日講演にあったりするので後ほど。

『この点について妥当な解決を阻んでいるのは、金融機関に対する信認がなかなか回復しないことです。市場の信認が得られない金融機関はごくわずかなショックでも経営危機に直面し、国の支援を必要とする可能性が高まるため、国が戦略的に安全網を提供することをより難しくするからです。本日、ここにお集まりの皆様には、この問題について、これからも考えていただきたいと思います。』


・日本の教訓からすると回復に時間が掛かるという話

『日本の経験を振り返って』から。

『以上みてきたように、危機発生後の世界経済は多くの課題に直面していますが、希望はあります。私としては、世界経済が持続的な成長軌道に戻ることは可能であり、それには政策も貢献できると考えています。残された時間の中で、先ほどの第2の評価軸の箇所で触れた二次被害の問題も意識しながら、持続的な成長軌道への復帰にかかる課題について述べてみたいと思います。この点でも、日本の経験はいくつかの貴重な手掛かりを提供しています。』

ほう。

『日本経済は、バブル崩壊の兆しが見え始めてから10年以上を経た2003年ごろから回復軌道に復帰し、その後、期間としては戦後最長となる景気拡大を経験しました。これを可能にした条件は3つありました。』

『第1は、過剰債務がようやく解消されたことでした。GDP対比でみた銀行貸出残高は、1990年代の初頭にピークを付けましたが、2003年ごろまでには1980年代半ばの水準に戻りました。』

『第2は、世界経済の高い成長が長期にわたって続いたことでした。2004年からリーマン・ショック前までの世界経済の平均成長率は実に+5.0%程度と、1990年代の平均成長率+3.0%程度をはっきりと上回るものでした。今から振り返ってみると、この時期の世界の高い成長率の少なからぬ部分は未曾有の信用バブルに支えられていました。』

『第3は、その期間中、為替が円安方向に振れていたことです。実質実効為替相場は、2003年末にかけてやや円高に振れた後、2007年半ばにかけて長期の下落トレンドに入り、下落幅は3割ほどになりました。一般的なイメージとは異なり、日本銀行が量的緩和を拡大した時期に概して円高傾向で推移したのに対し、2006年3月に量的緩和を解除してから2007年にかけて円安傾向が加速しました。この円安の進行は、高い成長率を背景に海外の金利水準が引き上げられる中で、日本ではきわめて低い金利水準が続いたこともあって、いわゆる円キャリー・トレードが活発に行われたことなどを反映しています。』

どさくさに紛れて「量的緩和を拡大したから円安になった訳では無い」という話をしているのがチャーミング。

『こうした日本の経験を聞くと、皆さんの気が重くなるかもしれません。世界経済が抱える過剰債務の解消に日本と同じくらいの時間がかかるとすれば、まだ道半ばということになります。また、世界経済で大きなシェアを占める先進国全体が低成長を続けていることから、世界全体の成長も低位にとどまらざるを得ず、「外需」に大きな期待をおくことはできません。すべての通貨を同時に減価させることはできません。』

全くおっしゃる通りです。

『こうした状況のもとで、新興国経済が世界経済のけん引力になるとの議論が多く聞かれています。理屈の上では、新興国経済が世界経済に占めるウェイトがますます大きくなる中、新興国が先進国を停滞から抜け出させることは可能かもしれませんが、本当にそのように考えてよいのでしょうか。これを考える際には、世界経済の成長力というという視点が重要になります。』

ということでじゃあ威勢の良い話が出るのかと思いますと、これがどうも威勢の良い話は出てこないのが白川総裁クオリティではあるのですが、まあこれはこれでそういう理屈は話として通ってますなあとは思います。これまた長いのですが、よーするに中国などは高度成長から安定成長へという話をしています。


・潜在成長率の低下を認識すべきという景気の良くない正論

高度成長から安定成長への移行という意味での日本の教訓部分から。

『どの国もそうですが、経済は一直線に変化する訳ではありません。結果的に、10年間の平均成長率が2桁となるにしても、その間、何年か毎に景気が減速しても不思議はありません。このため、このような潜在成長率の低下をリアルタイムで認識することは容易ではありません。』

ですなあ。

『しかし、そうした判断が難しいとしても、潜在成長率の低下に即応してマクロ経済政策を運営しなければ、問題が生じます。』

キタコレ。

『日本の場合、1970年代から80年代にかけては、経済の状況は、他の先進国と比べれば、総じて良好でした。しかし、この20年間において、日本は、1970年代前半には高い物価上昇を長期間にわたり経験し、また、1980年代後半にはバブルを経験しました。これらの原因は複雑ですが、潜在成長率の低下を十分に意識しない中で、マクロ経済政策が行われたことや、企業や金融機関の経営者がそれ以前の高い成長率に基づいた積極的な経営を行ったことが原因の1つと思われます。』

>潜在成長率の低下を十分に意識しない中で、マクロ経済政策が行われたことや
>潜在成長率の低下を十分に意識しない中で、マクロ経済政策が行われたことや
>潜在成長率の低下を十分に意識しない中で、マクロ経済政策が行われたことや

まあこれは高度成長から安定成長という文脈なので新興国、というか中国経済の話をしているとは思うのですが、読みようによってはバブルで下駄を履いた潜在成長率を前提に金融政策を実施しているのではないかとFRBに対して壮大なダメ出しとも取れますが(^^)。

『たとえ困難であったとしても、政策当局者は、高度成長から安定成長への円滑な移行を図ることによって、経済が被るコストを最小化していくことが求められます。』


・そして最後も白川総裁すっかり麿モードで何より

『国際的な視野からの政策運営の重要性』という所が白川総裁絶好調状態。

『それでは、世界経済における先行き数年間の政策課題は何でしょうか。抽象的にいえば、各国の政策当局者が、世界経済全体の安定ということを意識しながら、それぞれの国の政策運営を行うことではないかと考えています。』

キタキタ。

『先進国では短期金利は事実上ゼロ%となっているほか、長期金利も歴史的な低水準になっています。中央銀行のバランスシートは、危機前には考えられなかったほど著しく拡大しています。金融政策の伝統的な効果波及メカニズムの出発点は金利低下ですが、金利低下の余地は小さくなってきています。』

『しかも、多くの先進国経済は財政状況が悪化するもとで、財政政策もかなり制約されています。このように国内的なルートを通じる景気刺激策が限られている状況のもとでは、為替レートや新興国・資源国からの需要に期待する議論が多くなることも理解はできます。』

『こうした政策対応は、新興国・資源国の立場を難しいものにします。これらの多くの国では、固定的な為替レート制度を採用していることもあり、先進国の金融緩和が直接的に国内の金融緩和をもたらします。先進国にしても新興国にしても、それぞれの行動自体は理解できるのですが、世界全体としての効果や、各国の政策の他国への波及といった観点からみると、緩和方向へのバイアスがあるかもしれません。』

・・・・・・・・ということでキターの話がこの次に。

『こうした意図せざる帰結は、2000年代半ばの未曾有の世界的な信用バブルが発生したときの環境と似た側面を持ってくるのかもしれません。』

キター!

『現在、中央銀行の積極的な金融政策によってグローバルな規模でインフレや信用バブルがすぐにでも発生しかねないと申し上げるつもりはありません。これは誤解していただきたくない点です。』

『しかし、政策の射程を狭くとらえ過ぎることにより、本日お話ししたような二次被害が発生する可能性はあります。グローバル化の深化を踏まえると、責任ある政策当局者として、自国の政策の他国への波及と、その自国への跳ね返りを無視することはできなくなっていると感じます。』

いやまあそう仰いますがここまでこういう話をすると「白川総裁はバブル警戒」と言われますがな。


『各国の中央銀行が現在行っているのは「時間を買う」政策です。中央銀行は、過剰債務の調整の痛みを和らげるなど、金融緩和から得られる便益がそのコストを上回っていると判断して、こうした政策を採用しています。同時にこうした金融政策は、過剰債務の調整をはじめ、政府による構造改革を代替するものではないことも認識する必要があります。買った時間はうまく使われなければなりません。』

と、この部分が実にその通りではあるのですが、要は「金融緩和を行っている間に政府による構造改革を推進しないと本当に長期化した金融緩和の弊害がグローバルに発生するリスクが高まるから政府は何とかせえ」という話をしたかったと思いますし、それは全くおっしゃる通りだと思います。

・・・・・・思うのですが、前振りの部分がバブル警戒とかその手の話を強調し過ぎで、折角の最後のこの良い話が霞んでしまうのが惜しいなあと思うのでありました。



○13日の講演でも「国際的な配慮」と「政府の取り組み」を強調

13日の講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121013a.pdf
グローバル金融危機の教訓 ―アジアの視点とグローバルな視点―
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko121013a.pdf
Lessons from the Global Financial Crisis: Asian and Global Perspectives

まあ上記の講演と話の筋は同じなので、おもろそうな所だけ引用。

『第二の教訓は、自国経済の安定を確保することは、各国が持続的な成長を達成するための必要条件ですが、十分条件ではないということです。マクロ経済政策に取り組むにあたっては、自分の家を身ぎれいにすること(put one’s house in order)、すなわち自国経済の安定を確保すること、が伝統的に強調されてきました。しかし、そうした各国の政策対応を単純に積み上げただけでは、世界全体にとって最適な結果になるとは限りません。各国の政策担当者が自国の立場から見て合理的に行動しているとしても、全体としては「合成の誤謬」が生じるリスクがあります。』

いやもうね、読みようによってはこれまたバーナンキ盛大Disとも読めるのですが(^^)。

『このほかにも、国内の経済成長を促すために外需への依存を高める傾向も指摘できます。これは、内需が弱い時には自然な反応です。こうした反応は、世界経済全体が急速に成長している時には問題になりませんが、世界的に経済成長が弱い時には、他国経済の潜在的な成長機会を奪ってしまう可能性があります。一方、急速に成長する新興国が自国通貨の増価を食い止めようとする誘惑に屈してしまえば、グローバルな視点からみると、むしろ望ましくない効果をもたらしうるでしょう。』

これまた一般論としては仰せの通りですが、読みようによっては円高ガーというのに嫌味を言っているようにも読めるところがオソロシス。

『第三の教訓は、危機時における中央銀行の政策対応は、個々の中央銀行による対応も中央銀行間の協調行動によるものも、経済や金融システムを安定化するうえで成果を挙げてきましたが、だからといって、中央銀行を含む政策担当者がそれで安心してしまってはならないということです。』

『例えば、欧州中央銀行による新しい国債買入プログラム(Outright Monetary Transactions、OMT)は、ユーロ圏におけるテイル・リスクを縮小させました。しかし、こうした状態は一時的なものに過ぎず、この機会を欧州債務問題の本質的な原因を根本的に解決するために活用していかなければなりません。』

ということで・・・・

『中央銀行による流動性供給は、経済の調整過程に生じる痛みを緩和する場合や、危機時に状況を一時的に安定化させるうえで非常に有効です。重要なことは、この一時的な小康状態の期間を活用して、抜本的改革のための好循環を起動し、強固で持続可能かつ均衡ある成長に向けた基盤作りを進めることです。』

と、こちらでも政府の取り組みの重要性について主張しているのですが、残念ながら報道ベースを見てもこの白川総裁のメッセージが報道されているという雰囲気は見当たらない(あたくしが見落としているだけかもしれませんが)のが残念無念な所であります。


○14日の講演はちょっと毛色が変わってグローバルな金融ガバナンスに関して

14日の講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121014a.pdf
公共財としての国際金融システムの安定
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko121014a.pdf
International Financial Stability as a Public Good

こちらもまた格調の高い講演でありまして・・・・・・

『グローバル化が進展し、各国の金融システムがますます相互依存性を強める中では、金融システムの安定性はグローバルに達成されなければならなくなっています。これを実現するには、グローバルなレベルにおいて良いガバナンスを確保しなければなりません。幸いなことに、グローバルなガバナンスを強化することに対し原理的に反対する人はいません。金融システムが国境を越えて展開し、グローバルになってしまった状況では、何らかの対策なくして金融システムがその機能を適切に発揮できないということを誰もが直感的に理解しています。他方、金融危機によって加速されたとはいえ、この面における進展は決して速いとは言えません。それはなぜでしょうか。』

『ハーバード大学のダニ・ロドリック教授の視点が参考になります。同教授は、深化したグローバル化と、国民国家と、民主的な政治を同時に達成することはできないと指摘しています。』

なるほど。

『たとえば、近年、情報通信技術の進歩は、国境を越えて金融機関が活動することを可能にしました。アイスランドやアイルランドで最近生じたように、金融機関は母国以外における活動で経営危機に陥ることがあります。仮に、母国の政府が、国際金融システムの安定性を確保するためにこれらの金融機関を救済しようとする場合、母国の納税者が負担し得る以上の巨額のコストがかかり、民主主義が制約される可能性が生じます。』

『こうした結果を回避しようとすれば、グローバルな安全網を提供できる民主的な世界政府を樹立するか、民主的に選出された各国の政府が制御できる程度までグローバルな金融活動を制限するしかありません。前者の場合は国民国家を、後者の場合はグローバル化の深化を制約することになります。』

確かに・・・・・・・

『3つの選択肢のうち、ロドリック教授は、3番目の選択肢、すなわち、過度なグローバル化ではなく、賢いグローバル化(smart globalization)を提唱しています。合理的な考えをする方の多くもこれに賛成すると思います。グローバルなガバナンスの強化がなかなか進まず、近い将来これが加速しそうもないとみられることを考えると、このような選択は常識的にみえます。』

『しかしながら、問題は、グローバル化を効果的に制御しようとしても、これが難しいことです。公共財の過剰消費は裏を返せば、そうした財の供給のためのコストが十分に内部化されていないということです。これは、グローバル化した金融活動がもたらし得る利益がかなり大きくなり、金融活動に対する制約を回避するようなインセンティブが強く作用することを意味している可能性があります。また、交通手段や情報通信技術の進歩は、民間の経済主体が不都合なルールや規制をすり抜けることをますます容易にしています。』

『私たちの経験に照らせば、この面における民間の創意工夫の才を過小評価してはなりません。ブレトン・ウッズ・システムの崩壊を覚えておられると思います。同システムは、賢いグローバル化の試みと言えましたが、それが崩壊してしまったことは、賢いグローバル化の難しさを示しています。さらに、経済活動にかかわるさまざまな公的あるいは民間の主体がますます多様になるもとでは、何が望ましいグローバル化であるかについて合意を得ることは難しいと考えられます。もし、そうした合意が得られないまま、貿易の制限、支店による進出の禁止や、海外業務からの強制撤退といった一方的な措置がとられるようなことがあれば、すべての人々が不利益を蒙ることになります。こうした問題を回避することはできるのでしょうか。』

ということで、グローバルガバナンスをどうすれば良いか、という話になるのですが、ここで白川総裁は変な理想論ではなくて現実的にどうしたら良いかという話をしているのがさすがとしか申し上げようがございません。

『私がこれまで参加してきたさまざまな国際的な議論の場における経験を振り返ってみると、私たちは、もっとも直截な方法、すなわち公的部門による公共財の提供という解を追求することによって、問題の解決をかえって難しくしているような気がします。』

ほほう。

『パドア・スキオッパ氏が指摘した通り、個々の国民国家がグローバルな公共財を提供することにはおのずと限界があります。単一のグローバルな公的な主体によって体系的に公共財が提供されることが望ましいのは事実ですが、そうした仕組みを私たちが依って立つ民主的な原理に基づいて実現することは難しいといえます。』

どういう事かと言いますと・・・・・・・

『国際機関は、民主的なアカウンタビリティに欠けているという批判をしばしば受けます。他方、徴税力をもった民主的に選出された世界政府を樹立することが近い将来に実現するとは考えられません。最近のユーロ圏に起きている問題はこの難しさを示しています。』

確かにおっしゃる通り。

『そうであるならば、私たちは、公共財の問題を解決するために知られた選択肢を組み合わせる、より現実的なアプローチを追求するべきです。グローバルに重要な金融機関の効果的な監督といった一部の公共財は、個々の国のレベルで供給できます。グローバルな金融環境を監視し、マクロプルーデンス上のリスクを特定するといった個別具体的な課題への対応を、超国家的な組織に民主的な原理と整合的なかたちで任せることは可能です。民間の主体に、バーゼル自己資本規制といった一定のルールを守らせることも可能です。これは、国際金融システムの安定を消費するルールにほかなりません。』

ということで、国際金融システムの安定という意味で国際協調の下でのガバナンスが重要である、という話がここから先にも続くのですが、引用ばかりで今日はむやみやたらと長くなってしまいましたのでこの辺で。





2012/10/15

お題「ミネアポリス連銀コチャラコタ総裁はハト派転向したのかどうかという件」

ノーベル平和賞にEUが受賞というニュースが出た瞬間に皆さん盛大にズッコケたと思いますが、最近は何のギャグだというのが多いですな。まあ「期待料込み」って奴なのでしょうかねえ・・・・・・

という話は兎も角、既にとっくの昔にございました講演で、ネタとしては重要ネタだったのに放置プレイをしておりまして誠に恐縮至極のコチャラコタ総裁ネタでございます。素材は9月20日の講演とそれにおまけがちょっとついた10月10日の講演であります。

9月20日の講演
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4952
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/planning_for_liftoff_092012.pdf
Planning for Liftoff

10月10日の講演
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4956
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/nrk10-10-12.pdf
More Thoughts on a Liftoff Plan

題名見れば判りますように、9月20日の講演の追補なのですが、読んでみたらそれほど大きな違いが無くて、まとめの所に追補があったような感じですので9月20日講演の方から拾ってまいります。


○「中期的なインフレ見通しが2.25%超に上昇しない限り失業率が5.5%に低下するまで緩和継続」

コチャラコタ総裁のこの2発の講演ですが、ガイダンス文言の改善策であり(後で引用しますが)「更なる追加緩和効果を出す為」という所がほほうと思うのですが、まあそういう事も含めまして、そもそも「失業率が5.5%まで低下」という閾値がどう見ても低い数値で、そこまで低下するのに何年かかるんじゃ(4-5年掛かると仰せです、後で引用します)という事から、従来どちらかというとタカ派分類されていたコチャラコタ総裁がハト派に大転換したという風に見られて話題になったという話ですな。

従来のコチャラコタ総裁のアプローチを(あたくしの認識している範囲で)整理いたしますと、コチャラコタ総裁は失業に関しては以前から結構問題視をしていたのですけれども、その労働市場に関しては構造的な問題の部分を指摘していまして、構造変化に伴い自然失業率が上昇している可能性があるので、金融政策の緩和のし過ぎは物価が上昇するリスクを伴うので注意する必要がある、とまあそんな感じのロジックで物価動向に注意しているという感じでしたので、今回の転向はまあ似非ヲチャーのあたくしもへーという所であります。

3ページ(ページ数はPDFバージョン)にありますように、コチャラコタ総裁の推奨するフォワードガイダンス文言は以下の通りとなります。

『As long as the FOMC satisfies its price stability mandate, it should keep the fed funds rate extraordinarily low until the unemployment rate has fallen below 5.5 percent.』

でまあその説明がその後延々とあるのですが、まあこの直後に説明している部分が大体端的に説明しております。

『The fed funds rate is a short-term interbank lending rate that is the FOMC’s usual vehicle for influencing credit conditions. I’ll be much more precise later about the meaning of the phrase “satisfies its price stability mandate.” Briefly, though, I mean that longer-term inflation expectations are stable and that the Committee’s medium-term outlook for the annual inflation rate is within a quarter of a percentage point of its target of 2 percent.』

「物価安定」の定義は「長期的なインフレ期待が安定している事」と「FOMCの総体としてのインフレ中期見通しが2%ターゲットから0.25%の範囲内にある事」との由。

『The substance of this liftoff plan is that, as long as longer-term inflation expectations remain stable, the Committee will not raise the fed funds rate unless the medium-term outlook for the inflation rate exceeds a threshold value of 2 1/4 percent or the unemployment rate falls below a threshold value of 5.5 percent.』

ということで、先ほどの文言の説明ですな。

『Note that neither of these thresholds should be viewed as triggers-that is, once the relevant cutoffs are crossed, the Committee retains the option of either keeping the fed funds rate extraordinarily low or raising the fed funds rate.』

更に付け加えて、この2つの閾値はどちらも自動的なトリガーではない、という事を強調しております。どういう事かというのは後の細かい説明の所であるのですが、よーは「失業が望ましい水準に下がっても物価が低下しそうだったら緩和を継続しますよ」というのと、「物価見通しが2.25%を上回っても総合的判断を行い、自動的に引き締めに転じる訳では無いですよ」という話なのですが、まあこの部分は微妙な気がしますが、閾値を自動的なものにはしたくない、という中央銀行政策担当者としての本能的な仕様みたいなもんでもあるなあとは思いますです、はい。

『Thus, my proposed liftoff plan contains a specific definition of the phrase “a considerable time after the economic recovery strengthens.” In my talk, I will argue that this specificity-about an event that may not take place for four or more years-will provide needed current stimulus to the economy.』

コチャラコタ総裁推奨の文言は現在のフォワードガイダンス文言の概念を含むものであり、この文言を適用するとおそらくコチャラコタ総裁の見通しによれば「4年〜5年は緩和政策が継続される」ということで、この部分は全力で報道されてその時に市場は一応反応していたと記憶していますがどうでしょう。


○物価の安定という概念について

その次が『OMC Objectives』ということでデュアルマンデートの説明なのですが、これは1月に示したデュアルマンデートの理解に関する説明をしておりまして、そのうち物価の安定とは何ぞやという説明をしております。まあそんなに変わった話をしている訳では無いのですが、「中期的な物価見通し」という先ほどの概念に関わる部分を引用しておくだよ。

『In contrast, the January statement does provide a specific definition of price stability as representing a goal, over the longer run, of 2 percent inflation. But there are a couple of reasons why this definition of price stability is not as operational as one might like.』

2%という数値は操作上の数値ではないという話ですが、まあニュアンスとしては自動的な閾値というものではありませんよという話ですな。

『One issue is that monetary policy affects inflation with lags. Policymakers are generally thinking about making current choices so as to influence the annual inflation rate in about two years’ time. Thus, monetary policy choices made toward the end of 2012 should be evaluated in terms of their impact on the annual inflation rate in the calendar year 2014. As a result, policymakers’ choices are shaped by what I will call the medium-term outlook for the inflation rate-that is, the forecast for the annual inflation rate in two years.』

ということで、金融政策の効果がラグを伴って物価に反映するという事を踏まえると「中期的な物価見通し」というのは向こう2年間の物価見通しというのを差す、という説明ですので、コチャラコタ総裁の説明する「委員会の大勢の(とはさっきの所には書いていないがそれは後で触れられています、たぶんめんどいから引用しないけど)中期的物価見通しが2%プラスマイナス0.25%」というのは、SEPで示す委員会の物価見通し部分とちょうどマッチしますなという所です。

2番目の「オペレーショナルでは無い」という話でプラスマイナス0.25%の話になります。

『A second operational issue is that in some circumstances, it may be appropriate to follow policies that lead the medium-term outlook for inflation to deviate from the long-run target.』

2%からある程度の逸脱は問題ないというお話。

『Indeed, most central banks-including ones that do not have an employment mandate-find that this kind of flexibility is desirable. Of course, the public may cease to regard 2 percent as a meaningful long-run target if it sees too much of a gap between 2 percent and the Committee’s medium-term outlook for inflation. A key question is: How much leeway around 2 percent is appropriate?』

『The Committee has made no formal decision about this issue, and my own thinking continues to evolve. But I currently believe that allowing the medium-term outlook for inflation to deviate from 2 percent by a quarter of a percentage point in either direction would provide sufficient flexibility to the Committee, while posing no threat to the credibility of the long-run target. I’ll provide more details on my thinking about this issue later in the talk.』

とありますように0.25%の根拠はこの後に出てくるのですが、先に紹介しておくと本文15ページにPCEインフレーションのフォーキャストの説明がありまして(その図ですが本文16ページにあるのですが、HTML形式の方でjpgで埋め込んであったのでリンクをしておきます)。

図はこちら。
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/images/liftoff_092012_chart4_large.jpg

『The proposed liftoff plan does allow the FOMC to contemplate raising the fed funds rate if the Committee’s medium-term inflation outlook rises above 2 1/4 percent. However, the following chart shows that recent historical evidence suggests that this possibility is unlikely to occur.』

中期的(2年後の)物価の見通しが2.25%をそう簡単に上回らないでしょうという話でもあるのですが、上記の図にあるように1997年以降のFOMCの見通しは2.25%以下の水準で安定しており、逆に1%まで低下した事もありますよという図ですな。

『It documents that the medium-term inflation outlook has not risen above 2 1/4 percent in the last 15 years. Thus, this historical evidence suggests that, as long as the unemployment rate remains above 5.5 percent, it seems unlikely that the price stability mandate would be violated.』

ということで、この2.25%という閾値を置いておけば過去からの経緯を勘案すると物価安定を阻害する事が無いですよという話ですが、この部分に関しては脚注がありますので念の為。

『Strictly speaking, the chart does not depict the FOMC’s medium-term outlook for the PCE inflation rate, because the Committee does not formulate a collective quantitative outlook. Instead, for the period 1997-2006, the chart depicts the medium-term outlook for PCE inflation prepared for December FOMC meetings by Federal Reserve staff (Greenbook). Beginning in 2007, FOMC participants released summary information about their projections for inflation conditioned on their individual assessments of appropriate policy. The chart depicts the midpoint of the central tendency of those medium-term outlooks (Summary of Economic Projections, or SEP) for inflation from the fourth quarter of each calendar year.』

SEPが出る前のGreenbookは年末に連銀スタッフが出している見通しでして、FOMCが総体として出すようになったのはSEP以降となっておりますがまあコチャラコタ総裁のお話は分かりますがな。


○経済はトレンドラインに到達していないので遺憾であるという話

この理屈はセントルイス連銀のブラード総裁が聞いたら全力で否定しそうなロジックなのですが。

本文7ページの『A Look Back and Associated Monetary Policy Considerations』から。

『Economists typically measure the output of a country through its gross domestic product, adjusted for inflation-what’s called real GDP.』

実質GDPの推移に関してですな。

『This graph shows the behavior of real GDP over the past 10 years. The gray area on the graph marks the time that was dated as the Great Recession by the National Bureau of Economic Research.』

で、このグラフなのですがHTML版だとリンクがありますので貼っておきます。
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/images/liftoff_092012_chart1_large.jpg

『During this time, real GDP fell by about 5 percent. The gray bar tells us that the economy is considered to have been in recovery since the middle of 2009-that is, for over three years.』

トレンドラインとのかい離に注目とな。

『But the recovery has been, at best, a slow one. The black line on the chart depicts how, as of December 2007, we would have typically expected real GDP to grow, given long-run averages. Over the course of the recession, a gap emerged between real GDP and this black line. By the middle of 2009, that gap was about 10 percent. This is not surprising-pretty much by definition, we expect a gap of this kind to open up during recessions. But, historically, large declines in real GDP have been followed by sufficiently strong output growth to close this gap within a few years. During the recent recovery, though, the gap has actually widened noticeably.』

足元の成長はそれなりに角度としては良くなっているものの、その前のサブプライムショックだのリーマンショックだので落ち込んだ分があって、トレンドラインから1割くらい低い所で推移しておりますぞという話で、この理屈をブラード総裁に言わせるとそもそもその前のトレンドラインがバブル経済込みなのだから、そこまで戻そうという発想が貪りである、という話になるのですがそれは兎も角。


○過去5年のまとめとその結果としての推奨政策(というのはさっきありましたが)の背景

本文10ページから。

『That’s a brief review of the past five years. Real output has grown over the past three years, but remains well below what one would expect in light of historical growth patterns in the United States. Unemployment remains well above 2007 levels.』

GDPに関しては上記の通り。

『Inflation is below the Fed’s target inflation rate of 2 percent. 』

長くなるので物価推移の方は引用しませんでしたが詳細は本文ご覧ください。


『What do these data imply about the appropriate stance of monetary policy?』

キタコレ。

『The FOMC has two mandates-to promote price stability and to promote maximum employment. Whenever an organization has two goals, it is logically possible that those goals may conflict. Indeed, many observers have expressed exactly this concern about the FOMC’s current position. 』

物価安定と最大雇用のコンフリクトが起きるというのは概念的には有り得て、現在もその点を懸念する人たちは多いですよねと言う事ですが・・・・・・

『But these data and public communications from last week’s FOMC meeting reveal that there is no such tension at this time.』

現在はそのような緊張はありません(キリッ)ということですが、要するに「失業率を下げようとして緩和的政策を継続しても物価はそう簡単に上昇しないのでモウマンタイ」という事です。

『The unemployment rate is elevated above a level that the Committee sees as consistent with its employment mandate. Most FOMC participants’ medium-term outlooks for PCE inflation are at 2 percent or below. These observations imply that, by increasing monetary accommodation, the Committee can better meet its employment mandate while still satisfying its price stability mandate.』

ということですが、自然失業率が上昇していて云々という話をしていた人にしては随分とこの辺は大胆に方向転換したとも言えますし、でもまあ物価の閾値が2.25%なのでヘッジは入れているとも言えない訳でも無いという所ですが、ただまあ普通に捉えてコチャラコタ総裁のインフレ懸念度合が相当低下しているというのはありますのでハト転換という風に言われるのは普通だろうなあと思います。


○5.5%という数字を出す根拠らしき部分

本文13ページにさらっと説明があります。

『A Liftoff Plan』の中から。

『To understand this critical point, consider two possible scenarios. In the first, the public believes that the FOMC will initiate liftoff once the unemployment rate hits 7 percent. In the second, the public believes that the FOMC will defer initiation of liftoff until the unemployment rate hits 6 percent. The higher unemployment rate in the first scenario means that monetary policy will be tightened sooner, which, in turn, will lead to the unemployment rate being higher for longer. Foreseeing that, people will save more in the first scenario than in the second, to protect themselves against these higher unemployment risks. Because they save more, they spend less, and there is less economic activity. In other words, the FOMC can provide more current stimulus if people believe that liftoff will be triggered by a lower unemployment rate.』

一気に引用しましたが、要するに「低めの数値を置いておく方が、緩和政策が長期間継続するという期待がより高まるので政策効果が出やすい」という中々なお話。


○ということでこの提案は追加緩和効果を出すという話やその他少々

さっきのご提案文言が改めて示された後にこんな説明が。

『As discussed earlier, by “satisfy its price stability mandate,” I mean that longer-term inflation expectations are stable, and the Committee’s outlook is that the annual inflation rate in two years will be within a quarter of a percentage point of the target inflation rate of 2 percent.』

これさっきもありましたが、理念的にはこれで正しいなとは思うのですが、問題はこの「中期的な物価見通し」というのが「見通し」となっているだけに、従来コチャラコタ総裁も指摘していたように自然失業率が実は高かったですよ(例えば7%とか)という事になった場合に、物価が割とあっさり上昇しちゃうものの、「見通し」は見通しなだけに英国パターンになってしまうリスクもこれまたございますぞなという所でありまして・・・・・・

『Why is this liftoff plan an appropriate one? I argued earlier that the FOMC can provide more current stimulus by using a lower unemployment rate threshold for liftoff. Of course, additional monetary stimulus will give rise to more inflationary pressures, and those pressures are problematic because they could lead the FOMC to violate its price stability mandate.』

とは言ってますが・・・・・

『However, in my view, the Committee should choose the lowest unemployment rate threshold that it sees as unlikely to generate a violation of the price stability mandate. 』

だそうなのですが、これまた同じ理屈で実はこの5.5%という数値が自然失業率よりも遥かに低い数値で、5.5%に全然届かないという状況下で物価が上昇しだした場合に、結局物価条項の方に引っかかってしまいましたとなった場合に、FOMCの信認という点でどうよというリスクもあるんじゃないかなあと思います。

まあそんな事は当然承知のうえで、従来の構造要因ガーの話からちょっと踏み込んでみた、というのが今回のコチャラコタ総裁のアプローチだと思います。


○高インフレは許容しませんというのを最後に強調

でまあそのプランの説明はまだ続くのですが、要点は大体こんな所かと思いますのでまとめに。

『Before concluding, I want to be clear about the economic mechanism by which the proposed liftoff plan generates stimulus.』

キタコレ。

『First, it does not generate stimulus by having the FOMC tolerate higher rates of inflation, as has been espoused by many observers. I am doubtful about the efficacy of the inflation-based approach. I suspect that many households would believe that their wage increases would not keep up with the higher anticipated inflation rates. Those households would save more and spend less-exactly the opposite of the policy’s aim. In any event, I think that this approach is a risky one for central banks to use, because it requires them to raise inflation expectations-but not too much.』

高インフレを許容する訳では無いし、そもそも高インフレになった場合はやはり経済に悪影響でしょと。

『Thus, the liftoff plan that I’ve discussed only applies when the FOMC satisfies its price stability mandate. How then does the proposed liftoff plan generate stimulus? The plan recommends that the FOMC clearly communicate its intention to pursue policies that are fully supportive of much higher levels of economic activity. Thus, the plan commits to keeping the fed funds rate extraordinarily low until the unemployment rate is much nearer historical norms, as long as inflation remains under control.』

『With that commitment, households can anticipate a lower path for unemployment, and they can save less to guard against the risk of job loss. People will spend more today, and that will drive up economic activity.』

ということで、物価安定の下でという大前提の下で緩和を出来るだけ引っ張って失業が低下するという期待を高めることによって効果を出すというお話ですな。


○おまけその1:これはワロタ

『President Charles Evans of the Federal Reserve Bank of Chicago has also proposed what I’m calling a liftoff plan. As I said last year in answer to a media query, I very much liked his approach to thinking about the problem. Those familiar with his plan will see that my thinking has been greatly influenced by his. This is perhaps hardly surprising, since he sits next to me at every FOMC meeting!』

エバンス総裁とコチャラコタ総裁が席が隣と。まあ地理的にもミネアポリス連銀の管轄とシカゴ連銀の管轄は隣ですが、という話は兎も角、ここでこういう言い方をしているのはまたハト風味をだす所。

実際問題としてはエバンス総裁は一時的なインフレの上振れを容認する立場なので、必ずしもコチャラコタ総裁の見解と一致するわけでは無いのですけどね。


○おまけその2:反響に関して(10月10日講演より)

10月10日講演も読んだのですが(こちらは12ページ組なのでやや短い)まあ大体同じ話をしているのですけれども、最後の所でこんなのがあります。ということで10月10日講演の12ページ目から。

『I first described the ideas in this speech about three weeks ago, in Ironwood, Michigan. It evinced mixed reactions. Some observers felt that the proposed liftoff plan was dovish, in the sense that it seemed to put a lot of weight on the employment mandate. Others argued that the plan was hawkish, in the sense that it put a lot of weight on the price stability mandate.』(10月10日講演より、以下同様)

失業の閾値が低すぎるのでハトだという反響と、物価の閾値が低すぎるのでタカだという反響がありましたが。

『I think that this dispersion of views reflects a simple fact: The plan is neither hawkish nor dovish.』

そ、そうなのか・・・・・・・

『The terms “hawkish” and “dovish” presume that the Committee faces a tension between its two mandates. But the Committee does not see any tension between its two mandates now. And its long-run unemployment forecasts suggest that it does not anticipate any tension between the two mandates until the unemployment rate is considerably lower.』

『The liftoff plan in this speech essentially says that as long as the Committee continues to perceive no tension between its mandates, it should not begin to raise the fed funds rate. I see this plan as providing an appropriate policy framework regardless of how the data evolve over time or how one approaches the two mandates of the FOMC.』

だそうです。




2012/10/12

お題「追加緩和決定時の議事要旨来ました/その他少々」

IMF世銀総会絡みで色々と発言が出て追っかけるのも間に合わないんですけどorz

○9月決定会合議事要旨から少々

9月議事要旨が出たのですがね。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120919.pdf

・執行部報告を珍しくネタにしてみる:海外経済に関して

ちょっと『T.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要』から見てみます。

この時の会合ではご案内の通り追加緩和が打ち込まれたのですが、その中で声明文などで下げましたなという『3.海外金融経済情勢』に関する執行部の報告をまず読んでみたりする。

『世界経済は、減速した状態がやや強まっている。』

というのは声明文で示された通りですが、まずは米国。

『米国経済は、企業マインドなどに弱めの動きがみられるが、基調としては緩やかな回復を続けている。企業部門をみると、生産は緩やかな増加を続けているが、先行きへの不透明感の高まりを受けて、企業マインドは慎重化しており、設備投資の増勢は鈍化している。一方、家計部門をみると、バランスシート問題の重石が徐々に和らぐ中、雇用情勢も緩やかな改善傾向を辿っていることを背景に、個人消費は緩やかに増加している。住宅投資についても、低金利の後押しもあって、低水準ながらも持ち直している。物価面では、財市場や労働市場の緩和的な需給環境が引き続き物価押し下げ圧力として作用するもとで、既往のガソリン価格下落の影響から、総合ベースの消費者物価の前年比はプラス幅が縮小している。もっとも、足もとでは、原油価格上昇から、ガソリン価格がやや大きめに上昇しており、その影響は顕在化しつつある。』

ふーんという所ですが、良く良く考えますと9月FOMCで追加緩和(MBS買入)を実施していますが、実はFOMCの景気認識は上がっていたのでこんなもんなんでしょうかね。

『欧州経済をみると、ユーロエリア経済は、緩やかに後退している。輸出は伸び悩んでいる。内需についても、民間設備投資は減少し、個人消費も概ね横ばいとなっている。更に家計や企業のマインドの悪化が、周縁国からコア国にも拡がっている。こうしたもとで、生産は減少している。物価面をみると、緩和的な需給環境などが物価押し下げ圧力として作用しているが、ガソリン価格が足もと上昇していることなどを映じて、総合ベースの消費者物価の前年比はプラス幅が幾分拡大している。この間、英国経済は停滞している。』

まあこの辺もこんな所ですかの。

『アジア経済をみると、中国経済は、減速した状態が長引いている。輸出は、欧州向けの減少を映じて、弱めの動きとなっている。固定資産投資は、民間不動産投資の減速を主因に、また個人消費は自動車販売などの減速を受けて、各々伸びがやや鈍化した状態が続いている。こうしたもとで、在庫調整圧力の強まりもあって、生産の増加ペースも鈍化している。もっとも、足もとでは、インフラ投資の増加や不動産販売の持ち直しなど、一部では改善の兆しも出てきている。』

でですな、今回明らかに認識が下がったのって中国経済でございまして、前回8月議事要旨での執行部報告ではこういう表現になっているのですよね。

『アジア経済をみると、中国経済は、なお高めの成長を続けながらも、そのペースは鈍化している。固定資産投資は、民間不動産投資の減速を主因に、また個人消費は、家電など耐久財消費の減速を受けて、各々高めながらも伸びが鈍化している。こうしたもとで、在庫調整の動きもあって、生産の増加ペースは鈍化している。もっとも、足もとでは、インフラ投資の増加や不動産販売の持ち直しなど、一部では改善の兆しも出てきている』(8月8、9日決定会合議事要旨の執行部報告部分より)

まあ昨日ネタにした先日の総裁定例記者会見では「中国経済が高度成長をいつまでも続けるのは無理ゲーなので持続的な安定成長に向けて変わるのは結構な事」とかいうような話をしておりましたけれども、そもそも中国経済などの高めの成長がドライバーとなって海外経済が拡大して、その外需が今後の日本経済成長のドライバーになるという先行き見通しの前提を考えますと、元々の前提が狂う話です罠という所で、その辺は後の委員会の議論の所にも出てくるのでした。


ちなみにその他アジア新興国はこんな感じ。

『NIEs、ASEAN経済は、持ち直しつつあるが、その動きは企業部門を中心に緩やかになっている。内需についてみると、個人消費は底堅く推移している一方で、設備投資の増加テンポは緩やかになっている。輸出や生産は、欧州や中国向け輸出の減少などを映じて、弱めの動きとなっており、企業マインドも慎重化している。物価面をみると、これらの国・地域の多くでは、労働需給の逼迫を受けた賃金上昇が持続するなど、物価上昇圧力はなお残存しているが、物価上昇率は横ばい圏内で推移している。インド経済は、減速した状態が続いている。』


・執行部報告を珍しくネタにしてみる:輸出と生産について

こちらも声明文で下方修正されていたので読んでみる。

『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっている。実質輸出は、4〜6月は3四半期振りに前期比増加したが、7月は4〜6月対比で大きめの反動減となった。前月比の動きをみると、4月に増加したあとは、7月まで3か月連続で減少している。先行きについて、輸出や鉱工業生産は、当面弱めに推移するとみられるが、その後は、海外経済が減速した状態を次第に脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。企業からの聞き取り調査などを踏まえると、7〜9月の鉱工業生産は幅広い業種で減少が見込まれる。10〜12 月は、小幅ながらプラスに転化すると予想されるが、海外経済の持ち直しの時期が後ずれしてきているだけに、そうした動きが実現するかどうか不確実性が高い。』

ほほう(棒)。

でもって委員会の検討部分に参ります。


・海外経済に関して

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

『海外経済について、委員は、減速した状態がやや強まっているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、当面減速した状態を続けたあと、次第に減速した状態から脱していくと見込まれるとの認識を共有した。』

ほほう。

『減速した状態がやや強まっていることについて、多くの委員は、欧州債務問題の影響が拡がる中で、グローバルに企業の景況感が悪化していることが大きいと述べた。』

まあそれはそうなのですが、そもそも欧州債務問題については従来から解決に時間が掛かるという見方を政策委員会でもしていた筈で、そっちは見通し通りなのに、減速の状態がやや強まっている事に関しては今回改めて気が付きましたちっくな話になるのは何ですねんというか、まあ要するに元の見通しが楽観でしたという事でしょ。

『このうちのある委員は、前回会合以降、多くの国・地域で製造業を中心に減速の度合いが強まっており、この間の世界経済の下振れは、企業マインド指標の悪化にも表れているとおり、想定を超えるものであったとコメントした。』

>企業マインド指標の悪化にも表れているとおり、想定を超えるものであった
>企業マインド指標の悪化にも表れているとおり、想定を超えるものであった
>企業マインド指標の悪化にも表れているとおり、想定を超えるものであった

・・・・・・・・・おお、山口副総裁講演に出ていたフレーズという感じですが、「想定を超えるものであった」と元々の見通しが楽観的だったというのを認めているのは率直で宜しいのですが、そこに何故「企業マインド指標の悪化にも表れているとおり」って「ボクだけじゃないもん」みたいなのが入るしとゆー悪態は先日も申し上げたので悪態割愛。

『一人の委員は、7月の中間評価以降、気がかりな材料が少しずつ増えてきていたが、これまでの情報を累積的に判断した場合、海外経済の減速した状態がやや強まっていると述べた。複数の委員は、リーマンショック後のバランスシート調整などを背景に、海外経済の中長期的な成長率が低下している可能性があるのではないかと指摘した。』

まあ何ですな、中長期的な成長率が低下して云々ってのも総裁もかねてから仰せだったと思うのでありまして、こういう所で構造要因の話を出すのってロジック的には見方を変えるときの言い訳行動として使えるには使えるのですけれども、そもそも構造要因だったらそう1か月や2か月で話が豹変するようなものでもない(まあ偶にはそういう事もありましょうが)という事を勘案すると、やはり従来の見方が甘かったですよねという話になろうかと存じますがどうでしょうか、と嫌味連発(^^)。

で、この後は地域別の話になるのですが、順序として「ユーロエリア」「中国」「アジア新興国」「米国」の順になっているのがほほうという感じでございます。ちなみに8月の議事要旨ではこの順序が「米国」「ユーロエリア」「中国」「アジア新興国」の順になっていまして、これは執行部報告の順序と同じなのですが、この回の議事要旨の順序が上記のようになっているというのは、つまりは「先行きのリスク要因」「予想よりも悪化している地域」というカテゴリーを先に入れるという事で、まあ検討における重要性をこの順序で示したのではないかと思ったのですが、深読みのし過ぎでしょうかねえ(^^)。

でまあユーロエリアは普通に普通の話をしているので割愛して中国の部分を引用します。何故かと申しますとこの部分が同コーナー中で一番量が多くなっていまして、つまりは中国経済の減速に関する議論が色々と行われていて、そういう意味では今後の政策委員会の景気認識に関しても中国経済の状況に影響されやすそうですなという事を示しているのではないかとあたしゃ勝手に思ったのですがどうでしょうかね。

『中国経済について、委員は、欧州向け輸出の落ち込みや在庫調整圧力の高まりなどから、減速した状態が長引いているとの見方を共有した。』

『先行きについて、委員は、徐々に回復傾向が明らかになっていく可能性が高いものの、回復の時期は後ずれするとの見方で一致した。』

で、この後が色々と。

『ある委員は、既に金融機関の新規貸出増加額は拡大しており、先行きは不動産投資を中心に回復傾向が明らかになってくる可能性が高いと述べた。一方、別の複数の委員は、供給過剰である鉄鋼などではなかなか減産が進んでおらず、在庫調整の終了までには相当程度の時間を要するのではないかと指摘した。』

『減速した状態が長引いている背景について、ある委員は、銀行の不良債権問題等の構造問題によって、所期の政策効果が減じられている可能性もあると述べた。9月上旬に認可された中国当局による景気刺激策について、何人かの委員は、リーマンショック後の政策対応と比べると慎重であり、政策効果は限定的となる可能性が高いとコメントした。この点について、複数の委員は、リーマンショック後の景気刺激策が不動産市場の過熱や銀行の不良債権増加という問題を引き起こした経験から、積極的な景気対策をやや躊躇しているのではないかと指摘した。一人の委員は、対策の中心は不動産投資であり、わが国の輸出に対するプラスの影響は限定的であると指摘した。』

まあ話としては分かるのですが、循環要因の話よりも構造要因の話が多いのですが構造要因って急に出てくるような話では無いという事を勘案しますと以下同文の悪態(^^)。

『やや長い目でみた中国経済の先行きについて、ある委員は、固定資産投資に偏重した経済構造からの転換やこの先訪れる人口減少の問題に対処しながら、いかに高成長から安定成長にスムーズに移行できるかが課題であるとコメントした。別の一人の委員は、経済規模や高い成長率を追及するいわゆる「量」の成長から、高付加価値産業と消費中心の「質」の高い成長への転換が課題であるが、成長力は依然として高く、ハードランディングの可能性は低いと述べた。ある委員は、中国経済の回復力について、構造的に回復のモメンタムが弱まっている可能性が高いとの見方を示した。』

だそうで。


・なぜ後ずれが「半年」と言い切れるのかと

でまあ国内経済に関する検討部分なのですが、先行き見通しの部分にヲチャー的に味わいの深い部分が。

『景気の先行きについて、委員は、当面横ばい圏内の動きにとどまるとの見方で一致した。』

これは声明文に示された通り。

『委員は、輸出や鉱工業生産は、当面弱めに推移するとみられる一方、国内需要は、復興関連需要などから先行きも底堅さを維持すると見込まれるが、これまでのように、輸出や鉱工業生産の弱さを補えるほどの盛り上がりは期待し難いとの認識を共有した。』

ほほう。

『一人の委員は、当面の実質GDPは横ばい、ないしはかなりの低成長にとどまるのではないかと述べた。別のある委員は、先行きの景気の方向性を示すと考えられる景気ウォッチャー調査も、低調な動きが続いていると述べた。』

とまあ先行きの見方が厳しい方が2名。

『委員は、先行きの景気はいずれ緩やかな回復経路に復していくとみられるが、その時期は、4月の展望レポートで示した回復時期よりもかなり後ずれする可能性が高いとの見方で一致した。』

さいですな。

『何人かの委員は、海外経済の回復時期にも依存することから不確実性が大きいものの、後ずれの長さは半年程度となる可能性が高いとの見方を示した。』

・・・・・・・・・・・?????

えーっと、かなり後ずれする上にそもそもの海外経済、なかんずく中国経済がアレという議論をしているのになぜ「半年程度」とかいう見通しになるのやらと。「半年以上になるかも」みたいな話ならまあ分かるのですが、資産買入等基金の期限半年延長を行ったという結論から逆算したかのような「半年程度」というのが出てくるのが何とも味わいというか何というかアレなものを感じるのでございますが(−−)。


・物価について先行きの伸びが厳しいという意見が複数

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、委員は、概ねゼロ%となっているが、既往の原油価格の下落が下押し要因となっているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、当面、ゼロ%近傍で推移するとの認識を共有した。』

というのはまあ声明文どおり。

『ある委員は、ガソリン価格の動向や電気料金の値上げ等を勘案すると、前年比の下落幅が更に拡大していく状況にはないが、これらの要因を除いた基調的な物価がどのように推移するかを慎重に見極める必要があると指摘した。複数の委員は、刈込平均値などはここ数か月間弱めの動きとなっており、物価の基調自体が幾分弱まっているのではないかとコメントした。ある委員は、賃金の動向を踏まえると、物価の先行きについては慎重な見方をとらざるを得ないと述べた。何人かの委員は、当面、景気が横ばい圏内にとどまるとすれば、需給ギャップの縮小ペースは鈍化し、消費者物価の上昇ペースは幾分弱まる可能性があると指摘した。』

ということで、まあ先行きに関してもアガランチ会長になるのではという指摘が相次いでいまして、展望レポートでどういう風に反映されるのかが今からワクワクテカテカでありまする。



・資産買入拡大決定に関連して:決定の背景、量で勝負するのか金利で勝負するのか、リスク性資産については?

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に参ります。

『資産買入等の基金の運営について、委員は、足もとおよび当面の景気・物価情勢の下振れを踏まえると、日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくという軌道を踏みはずさないようにするためには、このタイミングで基金を増額し、金融緩和を一段と強化することが適当であるとの認識を共有した。』

ほう。

『何人かの委員は、足もとの景気が想定対比下振れていると現時点ではっきりしている以上、展望レポートでの点検を待つまでもなく、今回のタイミングで政策対応すべきであると述べた。このうちのある委員は、政策対応が遅れた場合には信認を低下させるリスクがあり、今回のタイミングで政策対応を行うことにより、日本銀行の政策運営スタンスを市場にはっきり示すことが必要であると述べた。』

>政策対応が遅れた場合には信認を低下させるリスクがあり

いやもう仰る通りでして、9月時点で追加やっていて良かったですねという所ですが、まあそれ以前の見通しが甘くて時既にお寿司ではないかという気もしますが、そこはスルーする事と致しましょう(^^)。

その次なんですけどね。

『基金の増額幅について、委員は、10 兆円程度などといった大幅な増額が適当との認識を共有した。そのうえで、委員は、イールドカーブ全体への影響を考えると、短期国債と長期国債をバランスよく大量に買入れていくことが適当との見方で一致した。大方の委員は、企業の資金調達が基本的には円滑に行われている現状を踏まえれば、今回は、増額対象を短期国債と長期国債とするのが適当であるとの意見を述べた。』

イールドカーブ全体もクソも3年までの買入やっているのにイールドカーブとは何ぞねという話もさることながら、基金の増額に関して「額が多いのが良い」的な話になっている辺りってどうも「量で勝負」しているのか、本来の包括緩和の「リスク性資産も含めた買入」で勝負しているのかがワカランチ会長というか、すっかり包括緩和じゃなくてただの量的緩和になっているような気がしますが・・・・・・と思いつつその先を読みますと・・・・・・

『ある委員は、これらに加えてリスク資産の買入れも増額することによって、リスク・プレミアムへ更に働きかけ、国債買入れの波及メカニズムを補強する効果が期待できるとの認識を示した。』

『また別の一人の委員は、為替相場への働きかけなどインフレ期待を高める一段の工夫も必要ではないかとの見方を示した。』

というような指摘(後者はどう見ても佐藤審議委員ですな)はあるのですが・・・・・・・

『以上の委員の議論を踏まえ、議長は、日本銀行のリスク許容度や市場規模等からみた各種金融資産の買入れ余地について、執行部に説明を指示した。執行部からは、@短期国債や長期国債については、市中の保有残高やフローの発行額からみて増額後の買入れは可能であること、A増額に伴うリスク量は自己資本で吸収可能であること、Bリスク性資産の増額に伴うリスク量は国債より相当程度大きいことを報告した。』

・・・・・・・・・・orz

いやね、ベンダーのニュースとか見てると前段の「リスク性資産買入の提言」の方がクローズアップされていますが、注目すべきはこちらの執行部説明の方でありまして、「リスク量を自己資本で吸収出来る」云々ってこれまたアレな論点でございまして、包括緩和やってて必要だという話なのであればどちらかと言えば日銀の自己資本を増強するような形(つまり政府が日銀の資本増強をするという方向ですな)でリスク性資産の購入余地を高めるというようにして行きましょう!というような議論になって然るべき所でありまして、ここの下りを読んでいますと日銀執行部がリスク性資産買入の拡大をやりたくない気満々である、という風にしか解釈できない所でございます。

まあ日銀の国庫納付金ガーとかいう問題とか、その手の事情もあるんでしょうなあとは勝手に忖度する所ではあるのですが、しかし何ちゅうかこういうのが出てくると「やはり日銀は海外中銀と違って緩和の積極姿勢に欠ける」という話になる訳ですな。

つまりですな、このちょっと後にこんなのがあるんですけど・・・・・・

『9月中旬に決定されたFRBによるMBS買入れについて、ある委員は、予め上限や期限を決めずに買入れる点が注目されているが、日本銀行でも資産買入等の基金の上限や期限を累次にわたって拡大・延長してきており、当初の予定をはるかに上回る大規模かつ長期の緩和政策を行っていると述べた。』

そらそうなのですが、上記のような話が折に触れて出てみる(昨日ネタにした先週の決定会合後の総裁定例会見でも「適切なベースガー」とかいう麿発言があった訳ですが)という中で、こういう話をしましても「おまいらの見せ方、というか姿勢の出し方に問題があるからそうなるんじゃヴォケ」としか申し上げようがございませんなあという話になろうかと存じますが如何でしょうかねえ。

・・・・・・いかん、また悪態になってしまった(^^)。


○その他少々ネタ

・自民党安倍総裁発言

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012101100727
日銀の量的緩和不十分=総裁人事にも言及−自民・安倍氏(2012/10/11-17:35)
 
『また白川総裁が来年4月に任期満了となることに関し「わが党が政権を取っていれば、(新総裁には)政府と協調してデフレ脱却のために大胆な金融緩和を行う方、2〜3%のインフレターゲットを持ってもらえる方が良いのではないか」と語った。』(上記URLより)

時事メインで最初「白川総裁を解任して」みたいなヘッドラインが出て「はあ?」という話になったそうなのですが、まあそれはさすがに間違いだったようで(そもそも政策委員については本人が申し出るか欠格事由に該当しない限り任期途中で首が飛ぶことは無い)ヘッドラインそのものが取り消されていましたが、高めのインフレターゲットの方に反応したのか総裁クビの方に反応したのか知らんけどまあ金先とか反応してましたな(債券先物は反応して無かったような気もするが)。

まあ別に2%でも3%でも結構でございますが、そもそも雇用所得環境が改善するというような期待が世の中で持てないどころか直ぐにやれ賃下げだ首切りだという話は横行する中でCPIが2%になる世界って政治的に耐えられるのかというような話に安倍さんどういう見識を持っておられるのかが聞きたい所ですな。物価が上がってそのままスライドで所得が上がってくれればそれはそれで良いのですが、どー見てもそんな雰囲気が毛ほども見られないという中ですし、大体からして(毎度申し上げていますが)ちょっと物価上昇の話があると直ぐに「物価上昇ガー」という報道が始まるという状況なんですからねえという所で。

てな事に関してお友達と雑談してたら「そもそも物価云々というから良くないのであって、本来行うべきは所得引き上げ政策だろ常識的に考えて」という指摘を賜りまして、まあ確かにそうでございますわなあとか思った昨日のひとときでございました。


・前原先生は相変わらず目立ちたがり屋さんですなあ

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE89A01A20121011
前原経財相がバーナンキFRB議長と12日に会談=内閣府
2012年 10月 11日 11:27 JST

・・・・・・・・・えーっと、何の話をするのか存じませんが、有益な会談になる事を祈念して止まないところでございます(棒読み)。


・短国入札に関して

まあメモだけですが。

一昨日の2か月入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20121010.htm

(3)募入最低価格 99円98銭6厘0毛
(募入最高利回り) (0.1022%)

(4)募入最低価格における案分比率 0.5542%

(5)募入平均価格 99円98銭6厘4毛
(募入平均利回り) (0.0992%)


昨日の3か月入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20121011.htm

(3)募入最低価格 99円97銭3厘0毛
(募入最高利回り) (0.1005%)

(4)募入最低価格における案分比率 2.2696%

(5)募入平均価格 99円97銭3厘2毛
(募入平均利回り) (0.0998%)

つーことで、期末前から暫く足切りが0.10%割れでしたが、ここへ来て足切りがまた0.10%に乗ってきておりまして、まあ背景には恐らく0.10%割れを積極的に(か渋々かは兎も角として^^)買う人が減ったというか、買う量が減ったのがありそうですな。入札の所謂不明玉も少なめですし。





2012/10/11

お題「ちょっと遅れましたが決定会合後の総裁会見から少々」

某モーサテでのIMF総会ネタで学生の提言とやらをやってまして、その提言の中でIMFにはもっと頑張ってほしいとか危機の予防をして欲しいとか学生様が仰せでしたけど、現場労務者的感覚からすると現実からすっ飛んだ話をする正直糞迷惑にも程がある連中に頑張られても邪魔だわヴォケとか思ったのですが、まあそもそもIMFヨイショな「提言」じゃないとコンテストで優勝しないからシャーナイのではあります。

いやね、そこら辺まで理解した上でわざとそういう話をしていたらとてもお洒落なのですが、マジで言っていたらまずは現場労務をやってくれやと思うあたくしは所詮現場叩き上げの意識の低い人ですかそうですか。


○総裁会見は特段の波乱はありませんでしたが

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1210a.pdf

・物価見通しに関して:下方修正は認めるものの細かい説明で微妙にボロが

元々何かやるとか言うような期待があった訳でも無く、注目は次回の展望レポートであるという状況でしたので、問題はそちらに関する質疑の辺りとかになりますかな。

『(問) わが国の景気は「横ばい圏内の動き」ということで、日本経済の停滞感が強まっているわけですが、物価の持ち直しの動きも、これに伴って遅れが生じているという認識をお持ちかどうかお聞かせ下さい。』

『(答) 私どもは、前回の金融政策決定会合で、景気・物価の基本的なシナリオを明確に下方修正しました。』

>明確に下方修正しました
>明確に下方修正しました
>明確に下方修正しました

ほほう。

『物価を規定する1 つの大きな要因は、需給ギャップです。その需給ギャップのマイナス幅が解消するスピードが、この景気の下方修正のもとで、その分緩やかになってくるわけですから、その分、物価の上昇圧力が低下することになってくるわけです。定性的には、そうした整理になります。そうしたことは、既に前回の決定会合で定性的に織り込んで対応を採ったわけですが、現在、数量的あるいは時期的にどういうイメージになるのかという点検作業を進めています。今月末の展望レポートで、その辺を入念に点検した上でお示ししたいと思っていますが、定性的にはそうしたことだと思います。』

(;∀;)イイハナシダナーという所でございますが、「その需給ギャップのマイナス幅が解消するスピードが、この景気の下方修正のもとで、その分緩やかになってくるわけですから、その分、物価の上昇圧力が低下することになってくるわけです。」とこの辺をすんなり認めておりまして、まあこらどう見ても物価見通しが下がります罠という所。

ただまあこの後にこんなのが続くのが毎度の麿クオリティ。

『その際、物価の短期の動きには足許の景気動向が影響しますが、物価がどういう大きな方向へ向かっているかが、非常に大事であると思っています。現在、日本の潜在成長率はゼロ%台半ばであり、それを上回る成長率であれば、概念的には、需給ギャップが縮小していくわけですから、経済がそうした方向に向かっているかどうかが、物価をみる上では非常に大事だと思っています。』

つまり展望レポートで示しているような成長率(実質GDPが2013年度で1%台後半)ですと概念的には需給ギャップが縮小という話になるのでしょうが、いくら方向性がそうだからと言いましても、その間に掛かる時間がアホウのように必要だというような状態、即ち「景気の回復ペースは物価安定の目途を達成する為に十分な強さでは無い」というような状態の場合にどうしますねんという話になりますし、大体からして日銀だって「成長基盤強化」の推進をしている訳で、その成長基盤強化が奏功すれば潜在成長率だって高まるという話になる筈なのですから、まああまりこういう説明をするのも如何なものかという気がするのであります。

まあ何ですな、これはFRBとかも同じなのですが、次の金融政策についてどうするかという話であまり予断を強く持たせるような事を言わないようにしたい、という発想があって、その為に前半の部分だけで済ませると「次回の追加緩和確定」みたいに言われるので、方向性ガーとかいう後半の話をして予断を強くさせたくないというのが背景にあったのではないかとも思えるのでございますが、そう好意的に解釈したとしても何か後半部分って言わずもがなじゃないのという気がします。

いやね、「経済がそうした方向に向かっているかどうか」だけじゃなくて、それと同様に重要なのは向かっていく「速度」であって、その速度があまりにもチンタラしていたら結局の所現状維持に関する皆さんの期待が定着してしまい、結果デフレ均衡みたいな話になるんじゃネーノという風に思うのですからして、せめて「方向」に加えて「ペース」について言及した方が吉だと思うのですよね。そこを言わないと、悪意を持ってこの発言を解釈すれば「日銀は低成長を容認している」「日銀は物価上昇のペースが極めて遅くても問題無いと言っているという事はやっぱり現状のデフレ容認だ」という風に読めるのでありまして、こーゆー所で配慮がどうも無いのが麿クオリティだと。

いやまあ勿論理念的に言えば麿の話がおかしい訳では無いと思うのですが、やはり物には言い方というものがあるのではないか、と斯様思うのございまする。


でまあその後にもこんな質問が。

『(問) 3 点お伺いします。1 点目は、先程、前回の金融政策決定会合で景気見通しを明確に下方修正したとおっしゃいましたが、その時に、景気だけでなく物価シナリオも明確に下方修正したとおっしゃったのかどうかお伺いします。2 点目は、もともと日本銀行は、14 年度以降、遠からず消費者物価指数の前年比が1%に達する可能性が高いという大きな「旗」を掲げてきたと思うのですが、物価見通しも下方修正したということであれば、この見通しも撤回されたのかどうかお伺いします。3 点目に、もしまだ撤回されていないのであれば、展望レポートで、改めてこの見通しがやはり達成できない、遅れてしまうということであれば、もともと1%を目指して強力な金融緩和を推進してきているとおっしゃっている手前、やはり追加的な対応が新たに必要になってくるのではないかと思いますが、その点についてお聞かせ下さい。』

こうやって日銀のロジックを踏まえて質問してくるのが良いのでありまして、日銀のロジックを踏まえないで外債購入ガーとか不胎化介入ガーみたいな質問をするのは時間の無駄であるとしか申し上げようがありませんので記者の皆様におかれましてはよろしくお願いいたします。

『(答) まず1問目については、先程の問いに対する答えで申し上げたつもりですが、景気、成長率について下方修正するということは、その分、需給ギャップについて下方修正するということになります。そのため、物価についても、定性的には、下方修正することになってくるわけです。』

素直に認めましたな。前もまあ同じ事言ってますけど改めて認めています。

『近年、需給ギャップに対する物価の感応度が低下しているため、短期的に非常にビビッドに影響するということではないかも知れませんが、先程申し上げた通り、定性的には修正を行ったということです。その数字や時期については、展望レポートでお示ししたいと思いますが、これは「旗」ということではなく、「見通し」を再度点検していきたいということです。』

でまあこの辺も麿的に物価がアガランチ会長なのに対して説明が苦しいなあと思う所なのでございますが、「需給ギャップに対する物価の感応度が低下している」というのはまあその通りなのですが、そこの話をしますとじゃあさっきの「潜在成長率を上回る成長をしていれば需給ギャップが縮小して物価が望ましい方向に向かうので方向性が重要」という理屈はどうなりますねんという所でございまして、おそらく麿的にはここでの説明は「需給ギャップに対する物価の感応度が低下しているので、需給ギャップの縮小が遅れるまたは拡大するようになっても物価はビビットに低下する訳では無い」ので「見通しを定量的に大きく下げるかは判りませんぜ」というロジックだと思われますが、さっきの話はどうなってますねんという気がする訳でございまして、まあ要するにこの辺の物価に関する説明が苦しいですなという所ではございます。

『それから、政策対応ですが、9 月は、日本銀行が望ましいと考えているパスから踏み外すことがないように、強力な金融緩和をさらに追加したということです。大事なことは、1%という物価上昇率に向けて経済が向かっているか、ということです。これは、物価に限らず、FRBの場合でいえば、米国の失業率についてもそうだと思いますが、ある政策的な目標を考えていく場合に、それを追求する上での「最適なスピード」が常にあると思います。』

ふーん。

『最適なスピードを無視して、例えば、今、どんどん国債を買い入れるということをすれば、確かに、一時的には長期金利が下がるかもしれませんが、そのことによって、何かのきっかけでまた反転上昇していくようになると、却って金融機関の経営にもマイナスの影響が出てくるわけです。従って、私どもとしては、常に、最適なスピードを考えながら政策を運営していくことが必要です。』

何で長期金利の話になるの???という所ですが、じゃあ今の回復ペースや物価のペースが最適なペースなのかと小一時間問い詰めたい訳で、ここの説明ってもうちょっと何とかならんのかと。

まあ麿が言いたいのは「そんな強引にたとえば突如200兆円国債買うとかそういう無茶振りをするのはできませんぞなもし」というような話をしたいのだと思うのですが、これまた悪意で解釈すると「日銀は現在の景気回復ペースが最適なスピードだと考えていてデフレ容認していてケシカラン」という話になる訳で、というかこれ悪意で解釈しなくてもそう解釈され兼ねないのでありまして、何ちゅうか言ってることそのものは仰せの通りなのですが、物には言い様というものがあろうかと思うのですけれども、と大事なことなので2回申し上げました(^^)。

『そうした意味で、物価の見通しと政策対応が機械的に1 対1 に対応しているわけではありません。いつも申し上げている通り、様々なリスクも含めて点検をし、最適なスピードで行っていきたいということです。』

まあ要するに「次回やる」とは言えないという所なのでしょうが、そもそも麿の場合は普通のトークをしているだけで緩和積極的では無いという印象を与えるというのが仕様になっておりますので、別に次回やるかどうかに関する話でも普通トークをしておけば良いのではないかと存じますが、まあ残り半年ですのでそんな話をしても時既にお寿司ではございますが。


・海外経済について

特に中国経済の質問がありましてね。

『(問) 2 つ質問します。1 点目は、中国経済の調整について、先程もご説明がありましたが、だいたいどの程度で終了しそうだというイメージをお持ちでしょうか。日本の自動車メーカーが減産するという話も出ていますが、中国経済の減速が日本経済や日本企業に与える影響について、どういう分析をされているのでしょうか。(2点目は割愛)』

先ほどの説明というのは冒頭での説明になるのですが、

『中国経済は、ウエイトの高い欧州向けの輸出が落ち込んでいることに加え、素材産業など幅広い分野で在庫調整圧力が増していることなどから、減速感の強い状況が長引いています。』

という話を総裁がしております。

で、その答え。

『(答) まず1 問目ですが、いつ頃、どの程度でと、定量的にお答えするのは難しいように思います。お答えになるかどうか分かりませんが、こう考えています。』

で、この後が長いのよ。

『中国経済は、なお高めの成長を続けながらも、成長ペースが鈍化し、減速局面が長引いていますが、その要因を整理すると2 つあると思います。第1は、欧州景気が緩やかに後退するもとで、輸出の2 割を占める欧州向けが落ち込んでいることです。第2 は、素材を中心に在庫が積み上がる中でも、生産の抑制が進んでいないために、生産調整に時間が掛かっていることです。』

さいですな。

『先行きを展望した場合、当面は成長ペースが鈍化した状態が続くとみられます。もっとも、その後は、良好な雇用・所得環境のもとで、堅調な消費が見込まれる上に、金融緩和やインフラ投資の前倒しなど財政面からの刺激効果も加わるため、徐々に成長ペースは高まっていくと考えています。』

ほう。

『ただ、そう申し上げた上で――前回の会見の時も申し上げましたが――、やや長い目でみると、かつての日本と同様、中国も、いずれかの段階で、高成長から中成長に移行してくことが避けられないと思います。むしろ、中成長への移行自体は望ましいものであり、重要なことは、そうした移行を円滑に進められるかどうかという点にあると考えています。』

『中国の当局者と議論していると、日本の安定成長への移行期の経験などを含めて大変良く研究されていると感じることが多いです。5 月以降の金融緩和やインフラ投資の前倒しなどの一連の政策は、中国景気の減速局面がやや長引いていることへの対応であると同時に、経済を持続可能な成長経路に円滑に移行させることも意識しているように思われます。ご質問は、具体的に自動車メーカーへの影響ということでしたが、いずれにせよ、不確実性が大きいので、中国経済が抱えるこれらの点についても、引き続き注意を払ってみていく必要があると考えています。』

ということでまあ要するに「高度成長はそろそろ無理ゲーで安定成長に向かうための調整中です」という認識でして、まあこれはちょっと長めの話です罠。でもって更にちょっと後にも質問が。


『(問) 2 点質問します。(最初の質問割愛)もう1 点は、中国の尖閣問題に関連して、経済的な影響が大きいのではないかという懸念が特に広まっています。このことについて、本日の決定会合において議論がされたかどうか、もし議論があったのであれば、差し支えない範囲でご紹介頂きたいと思います。』

で、その答え。

『(答)(前半割愛)次に、2 つ目のご質問です。最近の日中関係の悪化が日本経済の現状および先行きに対して影響を与えるのではないかという観点、問題意識での議論は、昨日の執行部からの報告、それから本日の会合における政策委員間の議論でもありました。』

『貿易面において、言うまでもなく中国は日本最大の輸出先で、中国にとっても日本は米国に次ぐ大きな輸出先です。国際的な分業体制のもとで、日本から中国には資本財・部品や中間財が輸出され、中国はこれらを加工した最終財を、日本を含めた各国・各地域に輸出しています。このように、日中両国の経済はグローバル・サプライチェーンのもとで、重層的な相互依存関係にあります。このように日中経済の相互依存関係が高いだけに、今後の展開や経済面の影響を注意深くみていく必要がある、という議論でした。』

・・・・・・・・何か判ったような判らんような説明ですが、まあ要するに最初の所で懸念しているという議論が出ていましたという所なのですが、後半にああだこうだと謎の説明を入れているので何が何やらという感じになりますな。さっきの方の質疑でもそうでしたが、まあよーするに説明がうだうだ長くなっているというのは「中国経済に対する見方がちょっと楽観的で外していましたなあ」という辺りが背景にあるんだろうなあ、などと意地悪な解釈をしてしまいました。


・前原さんの出席に関しては質疑は多いが正直どうでも良いので外債購入について

正直どうでも良いのでちょっとだけ引用するに留めておきますが。

『(問) 念のためですが、本日の会合で、前原大臣からどういう発言があったのかご紹介ができるのであれば、教えて頂けますか。また、前原大臣は、アコードについての発言もありますが、外債購入について、「デフレ脱却に向けた有力な材料の1 つ」とおっしゃっています。改めて、外債購入について総裁のお考えを伺います。』

『(答) まず、前原大臣のご発言ですが、決定会合での各参加者の発言については、議事要旨、議事録という形で公表する扱いになっています。前原大臣のご発言については、来月に議事要旨を公表するので、それをご参照頂きたいと思います。』

『次に、本日の決定会合から離れて、一般的に、日本銀行による外債購入についてどう考えているかとのご質問にお答えします。あくまでも一般論として申し上げると、現在聞かれている日本銀行による外債購入議論は、為替相場を円安に誘導することを目的として論じられていると理解しています。こうした為替介入と同等の効果を狙った外国為替の売買については、日本銀行法上、日本銀行は「国の事務の取扱いをする者」――これは法律の用語ですが――として行うこととされており、為替介入は財務大臣の所管となっています。』

『これは、現在の日銀法を議論した時における、国会での政府の答弁にも示されていますが、為替の問題は常に相手国が存在するので、通貨外交の面で一元的に対応すべきであるという考え方に基づくものと認識しています。こうした点については、先般の国会において、安住前財務大臣も、為替介入は「財務大臣が一元的に対応すべきであって、日銀が為替介入に代わるものとして外貨建て資産の購入を行うことは適切ではない」と説明しておられます。』

『また、藤村官房長官や城島新財務大臣も、日本銀行による外債購入については、慎重な検討が必要と述べておられ、政府の法律解釈は以上のようなものであると理解しています。』

とまあこういう説明をしているのに報道ベースでは「総裁は外債購入に否定的」とか言われるのってどうなのよという風に思うのですけどね。単に「今は法律および制度の建付け上から言ってちょっと無理筋です」という話をしているだけなのですが。

『もちろん、為替相場の動向は、家計や企業の購買力やマインド面への影響等を通じて、日本経済や物価に大きな影響を及ぼし得るものであることは言うまでもありません。こうした観点から、日本銀行は、為替相場の動向や、その経済・物価への影響を常に点検し、金融政策運営に当たってしっかりと考慮に入れてきています。今後とも、先行きの金融経済動向を丹念に分析しながら、適切な金融政策運営に努めて参りたいと思っています。』

まあ何ですな、この部分をもっと前の方で言うだけでも印象が違うと思いますので、この説明をする際には「為替相場の動向については常にその影響を点検しています」という話を先に行いまして、おもむろに「とは言いましても現在の制度の建付け上は為替介入は日銀の仕事ではありませんぞな」という話をすればもうちょっとその「否定的」的なニュアンスでの報道も軽減されるのではないかと。

話がやや飛びますけど、ネットの発達でPVが多くならないと売れないとか、まあその手の話って恐らく紙媒体の時よりも更に傾向が強くなっていると思いますし、更には金融機関が情報ベンダーの経費削減とかやっているので、ニュース配信するベンダーもPV稼ぎたいという風になっているように思えるのですよ。

その結果として、情報ベンダーとか報道機関とかが出すニュースヘッドラインがどうも釣りというか誇大広告系の物が昔に比べて増えているような印象があります(まあ読むヘッドラインの総数がそもそも増えているからというのはあると思いますが)し、何かウケの為に直ぐに「○○と○○の対決」みたいなのをフレームアップするようなのが目につくようになっているんですよね。

という事も勘案しますと、情報発信する方もその辺フレームアップされるというのを考慮に入れて発信しないと勝手に変な報道されて真意が伝わりにくかったり曲解されるリスクが高まっているのではないかなあとか思うあたくしでございました。いやまあ勿論ヘッポコなのはオモシロヘッドラインを打とうとする報道サイドなのですけどねえ。





2012/10/10

お題「8月FOMC議事要旨ネタを先にということで」

総裁会見と金融経済月報のネタもあるのですがその前にFOMC議事要旨をば。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120913.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120913.pdf

○まずは勝手にまとめ

えーっと今回のFOMC議事要旨なのですが、読んでいて(−−?)と思ったのは「追加緩和を打ち込んだその日のあの威勢の良さとだいぶ違うんですが・・・・・」という所でございます。

つまりですな、米国市場がどのくらいの威勢の良い追加緩和祭りを織り込んでいるのか存じませんけれども、少なくともFOMC後のバーナンキ会見などで見られた威勢の良いトーンおよび、その後にやたら報道が強調していた「無制限QE」というのは何だったんだ位の勢いでございます。

ということでまあその辺からまずは少々。

○冒頭にこれがあるのはどう見ても追加緩和する気満々です本当にありがとうございました

最初に今回の特設コーナーとして『Potential Effects of a Large-Scale Asset Purchase Program』というのがあって、小見出し見た途端にカフェオレ吹いたわ。

『The staff presented an analysis of various aspects of possible large-scale asset purchase programs, including a comparison of flow-based purchase programs to programs of fixed size.』

どう見ても追加緩和先にありきです本当にカムサハムニダ。

『The presentation reviewed the modeling approach used by the staff in estimating the financial and macroeconomic effects of such purchases. While significant uncertainty surrounds such estimates, the presentation indicated that asset purchases could be effective in fostering more rapid progress toward the Committee's objectives.』

そらまあ効くというわな。

『The staff noted that, for a flow-based program, the public's understanding of the conditions under which the Committee would end purchases would shape expectations of the magnitude of the Federal Reserve's holdings of longer-term securities, and thus also influence the financial and economic effects of such a program.』

『The staff also discussed the potential implications of additional asset purchases for the evolution of the Federal Reserve's balance sheet and income. The presentation noted that significant additional asset purchases should not adversely affect the ability of the Committee to tighten the stance of policy when doing so becomes appropriate.』

フローベースのプログラムってまあ要するに今回突っ込んだ方式ですが、この方式も効果がありますし、出口政策を実施する際にも顕著な買入拡大をしてもそんなに問題にならないでしょうという話のようですが、その根拠は要旨には示されていないので判らんですの。

『In their discussion of the staff presentation, a few participants noted the uncertainty surrounding estimates of the effects of large-scale asset purchases or the need for additional work regarding the implications of such purchases for the normalization of policy. 』

さすがに「a few participants」がいやその「出口政策問題ありません(キリッ)」って大丈夫かおいおいというツッコミをしているようでございますな。



○何でこんなのが出るのかと思えば・・・・・

でまあワープしましてPDF版だと5ページの所なのですが、『Staff Review of the Financial Situation』の最後の所になりますがこんなのがあって「ほえ?」と思ったのよ。ちなみにその前の『Staff Review of the Economic Situation』も色々と面白いのですがそこはとりあえずスルーしますね。

『The staff also reported on potential risks to financial stability, including those owing to the developments in Europe and to the current environment of low interest rates.』

何とpotential risks to financial stabilityというのが報告されるとは。

『Although the support for economic activity provided by low interest rates enhances financial stability, low interest rates also could eventually contribute to excessive borrowing or risk-taking and possibly leave some aspects of the financial system vulnerable to a future rise in interest rates.』

マクロプルーデンスあるいは第二の柱キタコレ。

『The staff surveyed a wide range of asset markets and financial institutions for signs of excessive valuations, leverage, or risk-taking that could pose systemic risks. Valuations for broad asset classes did not appear stretched, or supported by excessive leverage. The staff also did not find evidence that excessive risk-taking was widespread, although such behavior had appeared in a few smaller and less liquid markets. 』

ということで、結論としては「過度のリスクテイクやレバレッジなどの動きによる金融バブルの兆候は見られません」という当然の分析になるのですが、そもそもこんな話は前回のFOMC議事要旨には出ていませんで、?????と思いながらその先を読んだら意味が分かったでござるの巻。


○委員会の討議の状況が実にアレですがまずは景気認識の辺りから

でまあ『Staff Economic Outlook』をこれまたワープしましてPDF6ページ目以降のメインイベント『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』になるのですが、ここを読んでいて先ほどの前振り部分の意味が分かったという感じです。

景気現状認識の話は声明文と同じような感じで、要は「労働市場の現状に不満」なのと、「景気の拡大ペースが強くないので労働市場の改善が進まない」という現状認識は恐らくFOMCの出席者の全員が一致する所のようでございますな。

『In their discussion of the economic situation and outlook, meeting participants regarded the information received during the intermeeting period as indicating that economic activity had continued to expand at a moderate pace in recent months. However, recent gains in employment were small and the unemployment rate remained high. Although consumer spending had continued to advance, growth in business fixed investment appeared to have slowed. The housing sector showed some further signs of improvement, albeit from a depressed level. Consumer price inflation had been subdued despite recent increases in the prices of some key commodities, and longer-term inflation expectations had remained stable. 』

先行き見通しもまあそんな感じ。

『Regarding the economic outlook, participants generally agreed that the pace of the economic recovery would likely remain moderate over coming quarters but would pick up over the 2013-15 period. In the near term, the drought in the Midwest was expected to weigh on economic growth. 』

先行きの向かい風は「住宅市場」「家計のデレバレッジ」「家計や企業のタイトなクレジット環境」「財政の緊縮」という所で、更に先行きの不確実性は「欧州問題」と「フィスカルクリフ」およびそれがコンフィデンスに与える影響という所ですな。

『Moreover, participants observed that the pace of economic recovery would likely continue to be held down for some time by persistent headwinds, including continued weakness in the housing market, ongoing household sector deleveraging, still-tight credit conditions for some households and businesses, and fiscal consolidation at all levels of government.』

『Many participants also noted that a high level of uncertainty regarding the European fiscal and banking crisis and the outlook for U.S. fiscal and regulatory policies was weighing on confidence, thereby restraining household and business spending. However, others questioned the role of uncertainty about policy as a factor constraining aggregate demand.』

ただまあ上記の中でも「本当にその不確実性って実際の生産減とかに繋がってるの?」というツッコミを入れている人もいるようで。

『In addition, participants still saw significant downside risks to the outlook for economic growth. Prominent among these risks were a possible intensification of strains in the euro zone, with potential spillovers to U.S. financial markets and institutions and thus to the broader U.S. economy; a larger-than-expected U.S. fiscal tightening; and the possibility of a further slowdown in global economic growth. 』

で、実は欧州とかフィスカルクリフが片付いたらもっと景気が上昇するのではないかという意見もあったりするので。

『A few participants, however, mentioned the possibility that economic growth could be more rapid than currently anticipated, particularly if major sources of uncertainty were resolved favorably or if faster-than-expected advances in the housing sector led to improvements in household balance sheets, increased confidence, and easier credit conditions.』

まあ結論は声明文やSEPなどに出ているような話です。

『Participants' forecasts for economic activity, which in most cases were conditioned on an assumption of additional, near-term monetary policy accommodation, were also associated with an outlook for the unemployment rate to remain close to recent levels through 2012 and then to decline gradually toward levels judged to be consistent with the Committee's mandate.』


○問題は「追加資産買入のプロコン」部分である

でまあその後需要項目別の話があった後、特に労働市場に関する話とかがあるのですが、そちらの話をスルー致しまして追加資産買入に関するプロコンの部分が実は今回重要でした。

・・・・・・・・・・えーっとですね、FOMCの議事要旨出た日の朝に無理矢理読んだのが『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の最後のパラグラフなのですけれども、実は今回の議事要旨ではこの「最後のパラグラフ」がその前のパラグラフとセットになっておりまして、この2つのパラグラフが重要でございました(汗)。

金曜日に申し上げましたように、最後のパラグラフが「フォワードガイダンスのあり方についての議論部分」だったのですが、今申し上げましたようにその前のパラグラフが「追加LSAPのプロコン」という内容になっていてこれがまた奥が深い。

『Participants again exchanged views on the likely benefits and costs of a new large-scale asset purchase program.』

againというくらいですからその前にもあるのですがそこはスルーします(汗)。

『Many participants anticipated that such a program would provide support to the economic recovery by putting downward pressure on longer-term interest rates and promoting more accommodative financial conditions.』

長期金利を下げることおよび金融環境を緩和する事によって効果を出しますと。

『A number of participants also indicated that it could lift consumer and business confidence by emphasizing the Committee's commitment to continued progress toward its dual mandate.』

更にFOMCのやる気を見せてコンフィデンスを改善するとかイイハナシダナーですな。

『In addition, it was noted that additional purchases could reinforce the Committee's forward guidance regarding the federal funds rate.』

でまあ買入とフォワードガイダンスの強化のセットでその効果が増強されます。とまあここまでが買入拡大としてのメリット。

『Participants discussed the effectiveness of purchases of Treasury securities relative to purchases of agency MBS in easing financial conditions.』

国債を買うかMBSを買うかという話。

『Some participants suggested that, all else being equal, MBS purchases could be preferable because they would more directly support the housing sector, which remains weak but has shown some signs of improvement of late. One participant, however, objected that purchases of MBS, when compared to purchases of longer-term Treasury securities, would likely result in higher interest rates for many borrowers in other sectors.』

住宅市場にフォーカスするという意見が多いのですが、ラッカー先生と思われる人は特定資産の買入には反対しております。

でまあここまでが前振りでして、ここから先がキタコレなのですよ!!!!


『A number of participants highlighted the uncertainty about the overall effects of additional purchases on financial markets and the real economy.』

何とここで「追加の買入の効果の不確実性」とかキタコレなのですが。

『Some participants thought past purchases were useful because they were conducted during periods of market stress or heightened deflation risk and were less confident of the efficacy of additional purchases under present circumstances.』

『A few expressed skepticism that additional policy accommodation could help spur an economy that they saw as held back by uncertainties and a range of structural issues.』

ということでどうも「Some」の人が指摘していますが「過去の買入についてはデフレリスクやら金融市場のストレスやらがある中であったので効果があった」という話をしておりまして、恐らくその中の「A few」の方だと思いますが、これらのリスクが無い中での追加買入を実施しても「構造的な問題によって足を引っ張られている経済に対して効果があるのかが懐疑的である」と思いっきり「そもそも追加買入が効くのか」という根源的なツッコミが入るでござるの巻。

『In discussing the costs and risks that such a program might entail, several participants reiterated their concern that additional purchases might complicate the Committee's efforts to withdraw monetary policy accommodation when it eventually became appropriate to do so, raising the risk of undesirably high inflation in the future and potentially unmooring inflation expectations.』

今度はプロコンの話ですが、まずは「several」ってんですからそれなりの頭数になりますが、追加の資産買入がFEDの出口政策を困難にし、その「出口政策が困難になる」という認識によってFEDのインフレコントロール能力の低下という認識に繋がってインフレ期待を無用に高める懸念があるという話がキタコレであります。

『One participant noted that an extended period of accommodation resulting from additional asset purchases could lead to excessive risk-taking on the part of some investors and so undermine financial stability over time.』

でまあ1名ですからラッカーとかプロッサーとかその辺だと思いますが、追加資産買入の拡大によって過度のリスクテイクが起きて金融安定化を損なうという認識を示している人がいまして、まあさっきのスタッフ報告でのファイナンシャルスタビリティーがどうのこうのという話はその辺りの指摘も意識しているという所なのでしょうな。

『The possible adverse effects of large purchases on market functioning were also noted.』

市場機能に対する悪影響の話もあるとな。


ただまあその辺に関しては当然ながら「制御可能である」という話にはなっておりますけど・・・・・・

『However, most participants thought these risks could be managed since the Committee could make adjustments to its purchases, as needed, in response to economic developments or to changes in its assessment of their efficacy and costs.』

ということで、資産買入のプロコン比較で欠点の方の指摘についての話が延々と繋がった後にこういう書き方をしているという事は、バーナンキ先生の会見での「どんどん買いまっせ」的なニュアンスよりは「追加買入のデメリットも見ながら買入を実施していきますよ」というような感じになりますよねえという所です。

つまりですね、今日時間が無いからスルーしますが『Committee Policy Action』の所にこんなのがございましてね。

『The Committee agreed that it would closely monitor incoming information on economic and financial developments in coming months, and that if the outlook for the labor market did not improve substantially, it would continue its purchases of agency MBS, undertake additional asset purchases, and employ its other policy tools as appropriate until such improvement is achieved in a context of price stability.』

声明文ではここまでの事は表現されていまして、いかにも「労働市場が改善するまでドンドン買い増ししまっせウヒョヒョヒョヒョ」という雰囲気なのですが、議事要旨にはこの次にこんな下りがあるのよ。

『This flexible approach was seen as allowing the Committee to tailor its policy response over time to incoming information while incorporating conditional features that clarified the Committee's intention to improve labor market conditions, thereby enhancing the effectiveness of the action by helping to bolster business and consumer confidence. While members generally viewed the potential risks associated with these purchases as manageable, the Committee agreed that in determining the size, pace, and composition of its asset purchases, it would, as always, take appropriate account of the likely efficacy and costs of such purchases.』

フレキシブルアプローチであって、プロコンを比較しながら買入のサイズやペース、買入資産の構成を変化させますっていう話をしていまして、確かに声明文や逆さ絵おじさんの会見ではハト丸出しだったのですが、ここの辺りでの指摘をみるとプロコンの「コン」の方を懸念している人とか、「コンは兎も角そもそもプロがあるんかいな」というような人たちから見ると「最初から買入額をドカンとぶち上げるのではなく、徐々に様子を見ながら買入をしていくのが吉」というような慎重なアプローチに見えるのがあら不思議と言ったところであります。


ということで、今回の議事要旨、何かあのFOMC直後に受けた印象と全然違うじゃねえかゴルァという所でございますが、まあ最初の見せ方を派手にしておいて後からしらっとこういうのを出すというのはインチキちゃあインチキなのですが、見せ方としてはお上手とも言えまして、まあ後は実績の問題という話になるかと思いますな、うんうん。







2012/10/09

お題「日本の方の決定会合レビューである」

金曜に打ち込まれた声明文その他少々に加えまして、土曜には総裁会見が打ち込まれ、その間に金曜の朝にはECB定例理事会ネタにFOMC議事要旨も打ち込まれるでござるの巻という流れでありまして誠にネタが多いのでありました、つーかおまいらタイミングずらしてくれよおおおおお。

○声明文比較である

まずは声明文比較。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121005a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120919a.pdf(前回)

んでまあ前回なのですが、ご案内のように前回は追加金融緩和を行ったので、景気認識に関する文言について、需要項目別の内容が無いという形となっておりますので、こういう時には前回の金融経済月報を比較するのが吉。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1209.pdf(9月月報)

ということで、今回の声明文比較ですが、需要項目別の部分は9月月報との比較となっておりますのでよろしくです。そして更に英文の比較もするのですけれども、英文は何故か月報の概要部分だけというバージョンがあるのでそちらのURLを張っておきますね。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k121005a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120919a.pdf(前回)
http://www.boj.or.jp/en/mopo/gp_2012/gp1209a.pdf(9月月報概要)


・海外経済

『海外経済は、減速した状態がやや強まっている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退した状態が続いているものの、今後の市場の展開には十分注意していく必要がある。』(今回)

『海外経済は、減速した状態がやや強まっている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退しているものの、今後の市場の展開には十分注意していく必要がある。』(前回)

「リスク回避姿勢がやや後退している」という状態が「続いている」と文言を追加しております。

英文ではこうなっています。

『Overseas economies have moved somewhat deeper into a deceleration phase. In global financial markets, while investors have remained somewhat less risk averse on the back of the European debt problem, particular attention should be given to developments in these markets.』(今回)

『Overseas economies have moved somewhat deeper into a deceleration phase. In global financial markets, while investors' risk aversion on the back of the European debt problem has abated somewhat, particular attention should be given to developments in these markets.』(前回)

よーするに変化があるのは・・・・・・
「investors have remained somewhat less risk averse on the back of the European debt problem」(今回)
「investors' risk aversion on the back of the European debt problem has abated somewhat」(前回)
ということですが、何となく今回の方がニュアンスとしては認識が上向きになっているような気もするが、正直良くワカランチ会長。


・国内経済現状認識:総括判断

『わが国の景気は、横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『わが国の景気をみると、本年前半は堅調な内需を背景に高めの成長を実現してきたが、上述の海外経済の状況を反映し、持ち直しの動きが一服している。』(前回)

となっていて良くワカランチ会長なのですが、月報と比較すると判りやすい。

『わが国の景気は、持ち直しの動きが一服している。』(前回月報)

よーするに「持ち直しの動きが一服」から「横ばい圏内」に下げたという形ですが、これはまあ後で出ておりますように前回会合時点での見通しに沿った動きちゃあ沿った動きですが、まあ下方修正ではあります。

で、英文なのですが・・・・

『Japan's economic activity is leveling off more or less.』(今回)
『Japan's economy registered relatively high growth in the first half of 2012, supported by the firmness in domestic demand. Nonetheless, the pick-up in economic activity has come to a pause, reflecting the aforementioned developments in overseas economies.』(前回)
『The pick-up in Japan's economic activity has come to a pause.』(前回月報)

まあ同じ事なのですが、英文にしますと前回声明文で色々と余計な説明成分を加えているのが判りやすいぞなもしという所ですな。しかし「leveling off more or less」ってまあ前回の声明文での先行き見通しにもあったのでまあ見覚えはあるのですが、手元のデイリーコンサイス英和辞典を見ると「level off」が「水平飛行に移る」でまあそれはそれで良いのですが、「more or less」が「多分、幾分か」という風になるので、まあ確かに「横ばい圏内の動きとなっている」なのですが、あたくしが英語苦手だからよく判らんだけなのかもしれないけれども、一応金融政策関連のステートメントみたいなのを読んでいるつもりのあたくしが一見して何のこっちゃというような表現になるのってどうなんでしょうかねと思うのであります。

とは言いましても、これは英文作っている人たちの問題というよりは、そもそも決定会合におけるオリジナルの日本文声明文が「日銀文学」と言われるアレな文章であり、その辺りがヤヤコシヤで有る事が英文に直すと何か捏ね繰り回したような表現にならざるを得ない、とまあそういう話になるのでしょうなあと思ったり思わなかったり(^^)。

まあこの「横ばい圏内の動き」というのは、それだけ見るととりあえず下方修正したのですねというのは判るのですが、「more or less」というのを入れている辺り微妙に執行部の気持ちを忖度しているという事ですかそうですかと思ったりするのであります。


・需要項目別

『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっている。一方、国内需要は、復興関連需要などから底堅く推移している。すなわち、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、雇用環境が改善傾向にあるなかで、底堅く推移している。設備投資は、企業収益が総じて改善するもとで、緩やかな増加基調にある。この間、企業の業況感は、海外経済減速の影響などを背景に、幾分慎重化している。』(今回)

『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっている。一方、国内需要は、復興関連需要などから底堅く推移している。すなわち、公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、雇用環境が改善傾向にあるなかで、底堅く推移している。住宅投資も持ち直し傾向にある。』(前回月報)

こちらは前回月報との比較になりますが、まず表現的に言いますと、企業収益の部分が従来の「改善するもと」というのに対して「総じて」という毎度おなじみのヘッジクローズが入って若干弱めにしております。あと、短観直後でしたので、企業の業況感に関する話がありますがまあこれはこんなもんでしょう。

あと今回の違いとしては語順が変わっている所でして、さてそれに何の意味があるのかはワカランチ会長ではございますが、前回月報の表現と比較しますと、「威勢の良い順から並べている」という所に特徴がありまして、つまり設備投資の部分ですけれども、企業収益に関する認識を下方修正したこの項目を需要項目別の部分の一番ケツに持ってきているというのが特色。

まあ何ですな、前回もニュアンスとしては威勢の良い順から並べている積りなのかもしれませんので、だから何なのと言われても困りますが、ただまあここではとりあえず威勢の良い順に並べて行きたいという執行部のお気持ちは把握しました(^^)。

しかし直近の短観を見ると企業の雇用判断とか悪化傾向にあるように見える次第でございまして、「雇用環境が改善傾向になる中で」というのって実際問題としてどうなんでしょという気がせんでもなかったりするあたくし。いやまあイメージだけの問題ですけれども大手電機とかで大量リストラとかの話が出ている昨今を考えますとどうなんでしょうかねえ。


英文である(こらめんどいわ^^)。

『Exports and industrial production have been relatively weak as overseas economies have moved somewhat deeper into the deceleration phase. On the other hand, domestic demand has been resilient, mainly supported by reconstruction-related demand. Specifically, public investment has continued to increase, and housing investment has generally been picking up. Private consumption has been resilient with the employment situation on an improving trend. Business fixed investment has been on a moderate increasing trend as corporate profits have improved on the whole. As for business sentiment, firms have turned somewhat cautious mainly against the background of the deceleration in overseas economies.』(今回)

『Exports and industrial production have been relatively weak as overseas economies have moved somewhat deeper into a deceleration phase. On the other hand, domestic demand has been resilient, mainly supported by reconstruction-related demand. Specifically, public investment has continued to increase. Business fixed investment has been on a moderate increasing trend with improvement in corporate profits. Private consumption has been resilient with the employment situation on an improving trend. Housing investment has generally been picking up.』(前回月報)

語順が変わっているのは同じで、企業収益がどうのこうのの部分ですけれども、「as corporate profits have improved on the whole」が今回で前回が「with improvement in corporate profits」と、「総じて」らしきものが入っていますが、まあ英文の方が下がった感が強いかなという希ガス。


・金融環境、物価等

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回月報)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『この間、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっているが、既往の原油価格の下落が下押し要因となっている。』(前回)

ということで、既往の原油価格云々の話がある程度ですな。英文比較は割愛。


・先行き見通しは変わらず

『先行きのわが国経済についてみると、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられるが、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『こうしたもとで、当面、景気は横ばい圏内の動きにとどまるとみられ、消費者物価の前年比はゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

『先行きのわが国経済は、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられるが、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回月報)

『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回月報)

ということで、こちらの表現は前回月報と同じですので、先行き見通しは変わりません。英文でも同じ表現になっていますので比較は割愛します。


・リスク要因、決意表明に関する部分も同じ

先行き見通しに加えまして、リスク要因などの部分は表現が全く同じですので、今回分だけ引用します。英文はスルーということで。

『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きいほか、金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要である。』(今回)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。こうした認識のもとで、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進している。今後とも、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて間断なく金融緩和を進めていく。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく方針である。』(今回)


○で、結局前原さんは何だったんでしょうか・・・・・・・・・

金曜の決定会合ですが、ベンダー情報などを見ていたら「前原大臣が日銀に入った」というようなフラッシュが11時位(共同のフラッシュは11時02分だったと思う)に打ち込まれまして、ほうそんな時間にやってきましたかそうですかとか思いつつメシに逝ったら・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2012/index.htm/
2012年10月 5日 当面の金融政策運営について(現状維持、12時14分公表) [PDF 158KB]

ご案内の通り、決定会合の結果は12時14分に公表されておりまして、いやあ前原先生が来てから1時間で決定会合結果発表かよとかズッコケにも程があるのですが、先ほど引用した声明文を見ますと政府からの出席者の詳細が判ります。

『上記のほか、
10 月4 日
佐藤 慎一 財務省大臣官房総括審議官(14:00〜17:04)
松山 健士 内閣府審議官(14:00〜17:04)
10 月5 日
武正 公一 財務副大臣(8:59〜12:00、12:04〜12:09)
松山 健士 内閣府審議官(8:59〜10:56)
前原 誠司 経済財政政策担当大臣(10:57〜12:00、12:04〜12:09)
が出席。』(声明分から)

で、この12時00分〜12時04分というのは採決を行っている時間で、この時間帯は政府から出席者は席を外していまして、出来上がった声明文などをリリースするまでのロジに必要な時間(声明文の紙をスキャンしてPDFに出してとかやってるんでしょうなあ)が5分という事になりますので、前原先生がおいでになった時間はほぼ1時間。

直近で閣僚の方がご出席していたのは報道されてご案内の通りですが、2003年4月8日(銀行が潰れるだの何だの言ってメガの合併最終時期でしたなあ)の決定会合となりますけれども、この時は・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2003/k030408a.htm/

『上記のほか、
4月7日
津田廣喜 財務省大臣官房総括審議官(14:00〜15:52)
小林勇造 内閣府審議官(14:00〜15:52)
4月8日
谷口隆義 財務副大臣(9:00〜12:46、12:55〜13:17)
小林勇造 内閣府審議官(9:00〜10:28)、
竹中平蔵 経済財政政策担当大臣(10:41〜12:46)
が出席。』(2003年4月8日決定会合声明文より)

となっておりまして、竹中平蔵大臣(当時)は採決前の2時間5分に渡って参加しておりまして、開始から採決前までの時間が3時間46分あるのですが、その半分以上に参加していますがなという所でございます。決定会合の議事要旨を見ると判りますように、「経済物価情勢に関する委員会の検討」というのと「当面の金融政策に関する委員会の検討」というパートがあって、各審議委員が一人一人意見表明を行います。あと、過去の議事録見ていると声明文の表現とかで議決前にああだこうだという場面もあり(今回は割とすんなりだと思うけど)まして、そんなこんなを考えますと前原先生のように最後の1時間の出席だとどこからどう見ましても討議の最後の方にしか出てないだろという風に思える次第でございます。

いやね、まあ当然日銀サイドとしてはヨイショしますから、総裁会見では『大臣には、私どもの真剣な議論を聞いて頂き、また大臣も自らの考え方を披瀝され、私も大臣のお考えとして受け止めさせて頂きました。私どもの真剣な議論を直接聞いて頂くことは、意義があることと考えています。』(今日ネタにする時間が無いがこれは総裁会見からです)というようにヨイショヨイショとなりますけれども、結局の所肝心の議論の内容とか別に全部見ているとも思えない次第でございまして、お前は一体全体何をしに来たのかと小一時間問い詰めたい所ではございますが、まあ前原先生が勢い込んでドヤ顔で乗り込んで予想通り過ぎる展開に落涙を禁じ得ないものでございます。

まあ何ですな、ボロクソ言うばかりでは申し訳ないのでちょっとだけ前原さんの為に前回の竹中さんの時と比較すると、出席した時間の頭については10時41分VS10時57分ですから16分違いで大差ないというのが支援材料なのですが、まあ結局そこから1時間で会議が終了しているという事は即ち前原先生議論に特段貢献しないで、最後だか最初だか知りませんが「ぼくのかんがえたきんゆうせいさく」の話をして「いやあご高説ありがとうございました(棒読み)」となったのでしょうなあとか思うと更に落涙がトマランチ会長となるのでございました。

ということで悪態書いてたら時間が来ましたので総裁会見やら何やらは明日お送りいたしますm(__)m



2012/10/05

お題「色々と金融政策決定会合系の雑談」

FOMCの議事要旨とか色々あるのですが全部読むのはどう見ても無理ぽなので週末の宿題でご勘弁でその辺はサラサラと。

○ECBは特段何も無かったようで

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is121004.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Brdo pri Kranju, 4 October 2012

Q&A付の状態でこの時間(日本時間の翌朝)に見られるとか随分と仕事が速いなECBという感じですが。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged.』

金利据え置き。

『Owing to high energy prices and increases in indirect taxes in some euro area countries, inflation rates are expected to remain above 2% throughout 2012, but then to fall below that level again in the course of next year and to remain in line with price stability over the policy-relevant horizon.』

物価見通しも従来通りで「目先はエネルギー価格と間接税引き上げの影響で2%超だがその後は低下して2%以下の水準になるでしょう」というのが継続して維持。

『Consistent with this picture, the underlying pace of monetary expansion remains subdued. Inflation expectations for the euro area continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term.』

マネタリーとかインフレ期待とかの話も同じ。

『Economic growth in the euro area is expected to remain weak, with ongoing tensions in some euro area financial markets and high uncertainty still weighing on confidence and sentiment. Our decisions as regards Outright Monetary Transactions (OMTs) have helped to alleviate such tensions over the past few weeks, thereby reducing concerns about the materialisation of destructive scenarios. It is now essential that governments continue to implement the necessary steps to reduce both fiscal and structural imbalances and proceed with financial sector restructuring measures.』

でまあ市場のテンションがどうのこうのという部分では、OMT導入の決定でここもと市場の懸念がやや払拭されましたという話をして、最後には各国政府の取り組みが重要ということで実質最初のパラグラフを締めています。

『The Governing Council remains firmly committed to preserving the singleness of its monetary policy and to ensuring the proper transmission of the policy stance to the real economy throughout the euro area. OMTs will enable us to provide, under appropriate conditions, a fully effective backstop to avoid destructive scenarios with potentially severe challenges for price stability in the euro area. Let me repeat again what I have said in past months: we act strictly within our mandate to maintain price stability over the medium term; we act independently in determining monetary policy; and the euro is irreversible.』

こちらのパラグラフはOMT導入でユーロ圏市場の分断を抑止してどうのこうのという話をしていまして、最後に「我々は独立して金融政策を実施しています」「ユーロは分解しません」とまあ気合の話をしていますな。

『We are ready to undertake OMTs, once all the prerequisites are in place. As we said last month, the Governing Council will consider entering into OMTs to the extent that they are warranted from a monetary policy perspective as long as programme conditionality is fully respected. We would exit from OMTs once their objectives have been achieved or when there is a failure to comply with a programme. OMTs would not take place while a given programme is under review and would resume after the review period once programme compliance has been assured.』

でまあOMTの準備はできていますという話をして、ただし条件が満たされないと実施しませんのでそこの所はひとつよろしく、という説明をしておりまして、まあ球は各国政府サイドにありますよという所なんでしょう。

で、この後が経済個別項目に関する話になりますのでとりあえず引用はここまでで勘弁。


○FOMC議事要旨ですが他に見るところもありそうですがフォワードガイダンスに関して

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120913.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120913.pdf

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の一番最後のパラグラフを真っ先に見るのがあたくしの仕様なのですが、そちらではフォワードガイダンスの議論が展開されていましたのでその辺を。

『Participants also discussed issues related to the provision of forward guidance regarding the future path of the federal funds rate.』

ということでフォワードガイダンスの話。

『It was noted that clear communication and credibility allow the central bank to help shape the public's expectations about policy, which is crucial to managing monetary policy when the federal funds rate is at its effective lower bound.』

まあこれは一般的な前提の話。

『A number of participants questioned the effectiveness of continuing to use a calendar date to provide forward guidance, noting that a change in the calendar date might be interpreted pessimistically as a downgrade of the Committee's economic outlook rather than as conveying the Committee's determination to support the economic recovery. If the public interpreted the statement pessimistically, consumer and business confidence could fall rather than rise.』

特定の期日のガイダンスを設定するのは、FRBの景気見通し引き下げという悲観的な解釈をされるとマズーではなかろうかというのを「A number of participants」が指摘しているとな。

『Many participants indicated a preference for replacing the calendar date with language describing the economic factors that the Committee would consider in deciding to raise its target for the federal funds rate.』

で、期日指定ガイダンス文言の代替として「このような状況になったらFFレートを引き上げる」という条件を示す方法はどうよというのを「Many participants」が指摘していますな。

『Participants discussed the benefits of such an approach, including the potential for enhanced effectiveness of policy through greater clarity regarding the Committee's future behavior. That approach could also bolster the stimulus provided by the System's holdings of longer-term securities. It was noted that forward guidance along these lines would allow market expectations regarding the federal funds rate to adjust automatically in response to incoming data on the economy.』

特定の経済状況(というのがどういう物なのかはこの次で出てきます)をガイダンスとして示すことによって、景気の状況によって市場が勝手に時間軸を判断するようになるので、期日指定ガイダンスよりもウマーではないかという議論をしています。

『Many participants thought that more-effective forward guidance could be provided by specifying numerical thresholds for labor market and inflation indicators that would be consistent with maintaining the federal funds rate at exceptionally low levels.』

で、そのガイダンスで示す特定の経済状況というのは、物価指標と労働市場に関する数値的な指標を用いるのがより効果的でしょう、というのを「Many participants」が考えていますと。

『However, reaching agreement on specific thresholds could be challenging given the diversity of participants' views, and some were reluctant to specify explicit numerical thresholds out of concern that such thresholds would necessarily be too simple to fully capture the complexities of the economy and the policy process or could be incorrectly interpreted as triggers prompting an automatic policy response. In addition, numerical thresholds could be confused with the Committee's longer-term objectives, and so undermine the Committee's credibility.』

ただし、この「特定の数値」をいくらにするのかという点については委員の意見が分かれているので、合意に達するのが難しいという問題が有るのに加え、数名(some)の委員は、このようなあまりにも単純化された数値を示すのは金融政策を総合判断で決定する際に却って弊害になる可能性があるのではないかとか、金融政策の長期的な目標以外にこのような数値が出ることによるFRBの政策目的に対する認識の混乱とか信認の低下が起きるのではないかという懸念を示しています。

『At the conclusion of the discussion, most participants agreed that the use of numerical thresholds could be useful to provide more clarity about the conditionality of the forward guidance but thought that further work would be needed to address the related communications challenges.』

で、結論ですけれども、「most participants agreed that the use of numerical thresholds」ということでフォワードガイダンスは今後「経済指標に対する数値的な時間軸」という形になるんでしょうなあというのは把握しましたが、実際にどのような形になるのかについては今後も議論をしてから、という話になるんでしょうなあという所です。


#他に重要な部分があるかもしれないのですが今日はこのパラグラフだけで勘弁


○さて日本の決定会合ネタですが・・・・・・・・・・・・

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121004-00000128-jij-pol
日銀決定会合に出席へ=「強力な緩和」求める―前原経財相
時事通信 10月4日(木)17時29分配信

『前原誠司経済財政担当相は4日、時事通信などとのインタビューで、日銀が5日に開く金融政策決定会合に自ら出席する方針を明らかにした。日銀が掲げる当面1%の上昇を目指す物価目標について「早急に達成するため、強力な金融緩和を行ってほしいということに尽きる」と強調。早期のデフレ脱却に向けた取り組みを求める考えを重ねて示した。』(上記URLより)

・・・・・・・・・まあ何ですな、このお方が張り切って何かに突き進む時って大体碌な事が無いというのが仕様じゃねえのと存じます次第でありまして、皆様記憶に新しい偽メール事件とか八ツ場ダム問題とかでのこちらのお方の動きというのを見ておりますと、どうも前原大先生様におかれましては脳内に不思議な幸せ回路またはお花畑が設定されていて、何か「これが正しい」と思いこんでしまうとその幸せ回路が絶賛大発動して、周りから見てお前ちょっとという状態になっても全然引かないで、思い込みのまま突き進んでトンデモナイ事になるんでしょうなあとか思うのですよ。世の中見ると割とこの手の幸せ脳のお方って散見されるようにも見えますが、思い込みフィルターが入ると最早全然トマランチ会長とかいうのが閣僚というのがオソロシスという所でございます。

つーかね、アコードとか外債購入とか、そらまあ色々と「個人的見解」がおありになるのはわかりますが、そういう「個人的見解」レベルの話を金融政策決定会合に出席して延々と大演説ぶたれても「だからどうしろとおっしゃる??」というだけの世界でございまして、そういう話は政府部内でのまとめとかを行って「組織として」こういう見解ですがどうでしょうかという風にして頂きませんと何の建設性も無い訳でございまして、まさに「言うだけ番長」の面目躍如としか申し上げようがございません。

とまあそんなこんなを考えますと、前原大先生様が決定会合で張り切った挙句にどんなトンチキモードになるのかというのが非常に楽しみあるいは頭が痛い所ではございますが、幸か不幸か決定会合の議事録(議事要旨では無い)が出るのは10年後でございますので、10年後にオモシロ議事録が出てきてあたくしの駄文の(って10年後にやってますかねえ^^)ネタになって笑いを提供して下さることを願って止まないものでございます。

なお、その手のオモシロ事案と致しましては、1998年4月9日の金融政策決定会合で尾身経済企画庁長官(当時)が張り切って大暴れしまして、10年後に乾いた笑いを提供してくれたというのがございますが、まあ2008年時点では尾身さんも一丁上がりモードでございましたから笑いのネタになっただけで終了でしたけれども、前原大先生様におかれましては10年後もきっとバリバリに活躍しておられると思いますので、その時になってから爆笑ネタを提供するとどうなるのだろうとか考えると更に胸が熱くなります。

ということで、あたくしの過去の駄文になりますが、尾身さん大暴れの図に関しては、2008年の8月1日の駄文で書いておりますので、この辺をご参照下され。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html#gijiroku080801(の後半になります)

また、この尾身さん大暴れの図には後日談がございまして1998年5月19日の金融政策決定会合で尾身さん大暴れ会合議事要旨のまとめをする際に塩谷経済企画庁調整局長(当時)が収拾するの図というのがございまして、こちらも味わいが深いのでその辺引用した駄文のリンクを付けておきますね。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html#gijiroku080818

#なお、続きは明日(キリッ)とか言ってたプロッサー総裁講演ネタが無いように見えるのは気のせいです(大嘘)




2012/10/04

お題「市場雑談/プロッサー総裁の金融緩和強化不要論の背景は「緩和が効くのか」という論点」

さっきモーサテでやってたニュース映像で、どこぞの維新の会の親分が手下の行動に対して「変なパフォーマンスに走らないように」とか発言しているのが放映されてて飲んでいた茶を吹きそうになって慌てて飲んだのでシャックリががががが。

○あまりウゴカンチ会長なのでネタも限定的ですが

短期に関してはまあウゴカンチ会長なのですが雑談ネタを少々。

・短国入札

決定会合と6か月TB入札の関係でいつもの木曜ではなく水曜の入札だった3か月短国入札結果である。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20121003.htm

(3)募入最低価格 99円97銭3厘5毛
(募入最高利回り) (0.0987%)

(4)募入最低価格における案分比率 80.3237%

(5)募入平均価格 99円97銭3厘5毛
(募入平均利回り)(0.0987%)

ということで、ここもと延々と足きりが0.10%割れ状態が続いていまして、期末要因でやたら短国のニーズがあった時期はまあそうですなと思ったのですが、期末を抜けても(つーかまあ先週の短国も発行日は期末明けの1日だったのですが)相変わらずの流れ。

ただまあ前回の3か月が、
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20120927.htm

(3)募入最低価格 99円97銭2厘5毛
(募入最高利回り) (0.0994%)

(4)募入最低価格における案分比率 15.3673%

(5)募入平均価格 99円97銭2厘6毛
(募入平均利回り) (0.0990%)

となっていまして、前回は0.10%割れの水準での足切り水準であるのは同じなのですが、平均を見れば判りますように今回は0.10%割れの2つ上の札は殆ど入らず、按分も上昇となっておりますので、まあそーゆー意味では期末要因の馬鹿需要についてはやや緩和傾向という所で何より。

とは申しましても、当座預金残高は貫録の高水準になっていまして、キャッシュを潰したい人は相変わらずわんさかという所でございますので、そーゆー意味からして別にここから金利が上がるかというとまあ上がらんでしょうなあとは思う所でありました。どうせ0.10%になったら無限に買いが入るんですしね。


・CP関連

CPレートがちょっと前に妙な二極化モードとかやっておりましたなというような雑談をしたと思いますが、その格付けの先行き見通し的に微妙な発行体さんのレートがちょっと高めに推移しているというのは相変わらずなのですが、これまた期初になってから(そもそもCPそのものの期末残高は前年比落ちているらしいので末に償還が結構来たのでしょう)はエクスポージャーに空きが出来たのと運用しないといけないキャッシュは相変わらず唸るという状態のようで、一部で起きていた金利上昇も一服して銘柄によってはきっちりとレートの低下傾向が観察されるということで。

もちろん、その前の二極化ちっくな動きの背景には業績に対する先行き懸念とか格付け動向に対する先行き懸念とかの問題があって、投資家サイドでエクスポージャーを絞る動きがあったというのはまずそんな感じでしょという所だと思いますので、発行体さんによっては従来の額が従来のレートでは捌けず、プレミアムを要求されるような展開が発生する、とかそんな感じの動きは続くのではないかと思われます。まあCP購入するアセマネ系とかですと形式要件で格付けの所って見ない訳に行かないというのが一般的な仕切りの筈(債券系の投資信託のマンスリーレポートとか見れば必ずと言っていいほど「格付け別のエクスポージャー」というのが出ていますよね)ですので、やはりこうバカスカ格付けを下げられる動きが続きますと、どうしても二の足踏むでしょうねえとかそんな感じ。


でまあ昨日出てた短観のCP発行状況に関するDIを楽しみにしてたのですよ。
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/ref/2010/tkref1209.pdf
CPの発行環境(発行企業ベース)<参考系列>

・全産業(大企業)
6月対比で9月のDIが5悪化(34→29)しておりますな。主な要因としては「楽である」が減少。

・製造業(大企業)
6月対比で9月のDIが10悪化(37→27)しておりますな。主な要因としては「楽である」が減少なのですが、「厳しい」も3増加(1→4)というのがアレ。

・非製造業(大企業)
6月対比で9月のDIが2悪化(32→30)で、主な要因としては「楽である」が減少なのは同じですけれども、何と「厳しい」は1減少(1→0)。


・・・・・・まあここ暫くの二極化モードに整合的ではありますが、この調査回収したのが期末直前ではなくてもうちょっと前なのが惜しい所で、もうちょっと時間が経過してからの調査だったらどういう感じになっていたのでしょうかね。

んでもってこちらの方をどう評価するかという話ではあるのですが、アベイラビリティーに若干の悪化傾向がみられるのでなんかお助け措置を検討しましょうかどうしましょうか、という評価になるのか、いや業績などに基づいてスプレッドが拡大しているだけの話ですからそれは市場機能の話であって、別に市場が何らかの要因でシュリンクしている訳では無いのでそんなもんまでお助けする必要はありませんぞな、という評価になるのかはよく判らんですな、まあどっちでも屁理屈は成立すると思いますが。


○お馴染みタカ派のプロッサー総裁講演ネタである

こちらの講演は9月25日だったのですが、何故か「QE3の有効性に疑問を示した地区連銀総裁発言を嫌気して云々」という相場動かしネタになったと報道されていて、元々プロッサー総裁はそういう人なのでそういう発言が出るのは仕様なので、そんなんで一々市場が反応する方が不勉強にも程がある訳ですから、その後講釈市場解説ホンマカイナと思いますが。

http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2012/09-25-12_cfa-society-of-philadelphia.cfm
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2012/09-25-12_cfa-society-of-philadelphia.pdf
Economic Outlook and Monetary Policy


・タカ派のくせに景気見通しは実はまあそんなに強く無い

『Economic Outlook』からですが、まず冒頭で「今の景気はケシカラン」という認識を示しています。

『So let me begin with the state of our economy. We have now seen three years of economic expansion since mid-2009 when the recession officially ended. Yet, no one would describe our nation’s economic state of affairs as satisfactory. Economic growth has come in fits and starts, taking two steps forward, only to then take one step back. Most disheartening is that the unemployment rate remains high, affecting millions of Americans and their families.』

「no one would describe our nation’s economic state of affairs as satisfactory」との事ですからして当然ながら景気に関してはケシカランという認識。

先行き見通しに関してはそんなに強くないのよ。

『Looking out a little further, I anticipate that the pace of growth will pick up somewhat to about 3 percent in 2013 and 2014 - a pace that is slightly above trend. That outlook places me near the high end of the central tendency of FOMC participants’ forecasts for 2013 and near the low end for 2014. In September’s projections, the central tendency showed real GDP growth of 1.7 to 2 percent this year, followed by growth of 2.5 to 3 percent in 2013 and 3 to 3.8 percent in 2014 and 2015.』

プロッサー総裁の見方は2013年、2014年ともに成長率3%で、長期トレンドよりは若干上という話ではあるのですが、FOMCの中心的な見方ではそれぞれが2.5-3.0%、3.0-3.8%となっていて、見通し期間の後半に向けて成長率が高まってくるという見通しなのですから、横ばい傾向のプロッサー総裁の見通しってそんなに強い訳でも無いですな。


・雇用の問題は構造要因

でまあ消費と、住宅セクターの話をしておりましてその辺りもオモロイのですがちと時間が無いので割愛しまして労働市場の部分の結論のあたり。

『In the FOMC’s economic projections in September, the FOMC participants’ central tendency suggested that unemployment in the fourth quarter would be close to where we are now, between 8 and 8.2 percent, and then fall gradually to between 6 and 6.8 percent by the end of 2015. My own forecast is at the low end of that central tendency.』

ということで失業率の予想は割と低めではありますが・・・・

『I wish we had better numbers to report. The sizable shocks that hit the economy resulted in a loss of 8.8 million jobs from the peak of employment in January 2008 to the employment trough in February 2010. We have regained fewer than half of these jobs.』

ふむ。

『In my view, unfortunately the frictions and structural adjustments that are holding back improvements in labor markets cannot be cured by monetary policy, nor can monetary policy do much to speed up the slow progress we are making on the labor front.』

ということで「the frictions and structural adjustments」キタコレという感じでございまして、雇用に関して金融政策が多くの寄与が出来るのは難しいのではという認識ですの。


・金融政策が適切でないのでインフレリスクがあるキタコレ

『Turning to inflation, it has been running near our longer-term goal of 2 percent. Although the drought in the Midwest and higher gasoline prices are likely to push up inflation in the near term, these effects should be transitory. Thus, I do not see much evidence that we will have an outbreak of inflation in the near term, nor do I see elevated risks of deflation. Indeed, over the medium to longer term, I expect inflation to be near our 2 percent target.』

つーことで、農産物や原油の影響は一時的で、インフレ拡大やデフレのリスクは見ていないという認識ではございます。

『But this expectation is incumbent on appropriate monetary policy, and my assessment is that the appropriate policy is likely to be tighter going forward than anticipated by the Committee at this point.』

しかしそれは適切な金融政策によってもたらされるものであり、私の見解では適切な金融政策はFOMCが現在予想している将来時点までの緩和というよりも引締め的であるべきとか思いっきりプロッサークオリティ。

『Thus, I do see some risks to inflation in the longer run given the current stance of monetary policy, as I will discuss in a few moments.』

キタコレという感じでして、結局プロッサー総裁のロジックでは経済の構造変化によって成長力が落ちているのだから、そこを認識しないで無理無理成長を引き上げようとするとインフレリスクが高まり、現在の金融政策は不適切である、という話になるのですな。


・で、金融政策の話になるのですが時間の配分間違えて時間切れorz

『Let me now turn to some thoughts on monetary policy. 』

ということで『Monetary Policy』に入るつもりでしたが、時間切れorzというアホウな状態になってしまいまして、そこのロジックの話はまた明日に続くのですが、先般の金融緩和に関しても思いっきり反対であるとの見解をしているのでその近所だけ引用しておきます。

『I opposed the Committee’s actions in September because I believe that increasing monetary policy accommodation is neither appropriate nor likely to be effective in the current environment. Every monetary policy action has costs and benefits, and my assessment is that the potential costs and risks associated with these actions outweigh the potential meager benefits.』

リスクの方がでかいぞなもしとの事。

『Given the magnitude and nature of the shocks that hit our economy, one should not be particularly surprised by the slow recovery. Both the housing and the financial sectors suffered large declines, and it will take time for the economy to adjust. While unemployment is expected to remain above FOMC participants’ range of estimates of its longer-run level for some time, it is not at all clear that monetary policy can speed up that transition.』

経済ショックからの回復においては色々な点での構造修復が必要なのであって、労働市場の改善にも構造要因があって回復に時間が掛かるのだから、金融政策がこの回復を早める事ができるかどうかは必ずしも明確では無いというお話。

『In other words, the slow pace of the recovery should not be taken as evidence that the stance of monetary policy is inappropriate or that ever more aggressive accommodation can speed up that pace.』

なるほどという感じですが、まあこれだけ金融緩和しても経済の回復ペースが拡大しないのですから、つまり金融緩和バンバンやったから景気回復が加速するというもんでは無いという事を示しているのではないか、という話ですな。

#以下明日に続く




2012/10/03

お題「前原さんはネタとして面白いですなあ(棒読み)/SF連銀総裁は「バランスアプローチ」を強調」

モーサテで解説している「日米欧の金融政策」があまりにも無茶苦茶な件について突っ込もうと思ったが暴言の連発になりそうなので止めときます。

#前回の日銀の追加金融緩和が「織り込み済みだったので」為替があまり反応しませんでしたとか抜かしているように聞こえたが、幾らなんでも聞き間違いだと思いたい

・・・・まあ日銀(というか白川執行部)の「見せ方」があまりにも残念過ぎるというのはあるのですけれども、俊ちゃんのハッタリに関しては俊ちゃん時代には「インチキ」と悪態つきましたが、コストを掛けず効果を出すという点では今更ながら評価という所で、誠に恐縮至極と言った所であります。


○前原さんはやっぱりネタとして面白いですなあwww

まあ昨日の前原さんの続きですが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MB7W6X6TTDSU01.html
前原経財相就任で強まる日銀への緩和圧力、外債購入にも前向き (1)

『10月2日(ブルームバーグ):前原誠司国家戦略兼経済財政担当相は、日本銀行が消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率1%を目指していることに関し、厳しく注視して必要ならさらなる対応を促していく方針だ。』(上記URLより、以下同様)

というのは1日の話の続きですけど、財務大臣は1日にも慎重に検討という話をしていましたけど昨日もこんなお話を。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MB931L1A74E901.html
財務相:景気対策の実施判断は時期尚早−日銀外債購入は慎重に検討を

『10月2日(ブルームバーグ):城島光力財務相は2日午後の閣議後会見で、景気対策を盛り込んだ今年度補正予算の編成の必要性について「今、景気対策をやる、やらないを判断するのは時期が早い」との認識を示した。』

『前原誠司国家戦略兼経済財政相が日銀の外債購入について、金融緩和を進めるための「有力な材料の1つ」との認識を示したことに対しては、「今の日銀法上から言って、慎重な検討が必要だというのが見解だ」と述べるにとどめた。』(上記URLより)

ということで1日に示した見解を繰り返しているのですが、先ほどの前原さんの記事の方から見ますと・・・・・・

『一方、藤村修官房長官も2日午前の記者会見で、前原氏の発言について「政調会長時代から一つの持論として言っていたと承知している。それぞれいろんな意見を持っているが、それぞれの議論をしていくということだ」と指摘。自らの外債購入に関する認識について聞かれると、「日銀法上も慎重な検討が必要だ」と語った。』(最初のURLから)

・・・・・・・・まあ何ですな、日銀が外債購入するという件って一番の問題は「G3とかG5とかG7言われるような主要国の場合、為替に関しては中央銀行じゃなくて財務省が所管するのが現在の一般的な姿である」という点であって、その辺どうするのよというのがそう簡単にクリアに出来る訳無いので、ある程度物事が判っていると「慎重に」としか言いようがないという話になるんでしょというお話で、日銀ガーとか言っても話が始まらん。

でまあ最初のURL先の方の記事に戻りますと、まあ麿様におかれましてもこういう報道をされる辺りが冒頭のマクラ部分にあります他市場の皆様からの見え方問題とかそういう所に繋がると思うのですけどね。

『外債購入は日銀元副総裁の岩田一政氏らが円高対策として国家戦略会議でも提唱したが、政府が7月に閣議決定した日本再生戦略には盛り込まれなかった。日銀内では佐藤健裕審議委員が7月24日の就任会見で一案との考えを表明しているが、白川方明総裁は否定的だ。』(最初のURLから)

日銀は金融政策のツールとして外債購入というのを行って宜しい、という話になった場合には当然ながらそれはそれで「じゃあこのツールをどう使ったら効果的か」という話になるだけの話でありまして、その辺を決めるのは立法府であり、その案件のベースとなる所で従来の財務省の機能としての部分をどうするこうするというような話を検討するのは財務省でございますからして、はっきり言って日銀が否定するもへったくれも無い訳でございまして「やれと言われればやりますぞな」という話なので、何も「否定的」とか報道されるような物の言い方をしなけりゃ良いと思うのですけどね。

つまり「現在の建付けでは外国為替平衡操作は財務省の所管ですから外債購入しろと言われてもちょっと難しいんですけど、その辺の制度的な前提が変わった場合はそれに沿って考えます」とでも言っておけば良いだけの話で、何も日銀が意図的に為替に関して働きかける意図が無いかのような報道のされ方する素材を与えるとか「政治的に損」としか申し上げようがございませんぞな。

大体からして日銀様におかれましては従来より「引締めバイアスがある」という前提で報道をされるというのが仕様でありますので、つまりは本人達的にニュートラルで丁寧な説明をしている積りであっても、聞いている方がそもそもの時点で色眼鏡を掛けているので、ニュートラルな説明がそのまま引締めバイアスとか緩和消極的バイアスという形で捉えられる、という点についてもうちょっと麿様におかれましてはご配慮賜りたいものであるとか、まあこういうのは時既にお寿司にも程があるのですけれども、何か海外中銀対比で色々と変な物(リスク性資産)を買ったり、実質的にな時間軸は随分長かったりするということで、結構まあ色々と実施はしているものの、見せ方があまりにもアレで損をしているのが傍で見てて何とも残念という所でございます。

まあ俊ちゃんの場合は海外経済という追い風もあって今と比較して大した事やっていなくても良かったという面は多分にありますが、ただまあ見せ方のハッタリは効いていましたなあとは先ほど申し上げた通りです。

・・・・・・・うむ、前原先生のネタの積りが何故か麿ネタ悪態になってしまったorz

さて、前原先生の話に戻りますとこのようなお話もしておられるようで。

http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPTYE89103L20121002
日銀にインフレ目標の実現努力を要請、決定会合に出席も=前原経財相
2012年 10月 2日 15:02 JST

『前原経財相は、民主党の政調会長時代に主張していた日銀とのアコード(政策協定)に関連し、2月14日に日銀が打ち出した緩和策に対する日銀の意志と継続性を「しっかり分析する」と強調。その上で「(緩和が)足らざる時には、日銀の金融政策決定会合に出られる立場」とし、「まずは日銀の本気度と実現するための努力をしっかり政府からお願いしていく、あるいは話し合いを強めていくことが大事だ」と語った。』(上記URLより)

「2月14日に日銀が打ち出した緩和策に対する日銀の意志と継続性」ってゆー話をする辺りは何か学習の形跡が見られますが、「(緩和が)足らざる時には、日銀の金融政策決定会合に出られる立場」ってあーたオブザーバー出席で何をどうすると。つーかそれ以前の問題として、本当に有効な事をしたいのであれば、表立って圧力掛けるんじゃなくて他に色々とやりようがあるんじゃないんですかと思う次第で、単なる貴方様の政治的パフォーマンスで物事ひっかき回した挙句にどこぞのダムでややこしい事になりましたなあ前原先生という所ではございます。

何かね、この大張り切りの前原大先生様におかれましては、以前の量的緩和解除局面での自民党中川秀直幹事長(当時)の動きと思いっきり被る所でございまして、結局中川先生も金融関連で言う事はそれなりの話をしてましたけど結局何かそのお話が通りましたっけというようなお話なのですけれども、言うだけパフォーマンスで引っ掻き回すだけで終了の香りがプンプンするぜという所ではございます。

まあ日銀に平場で圧力掛ける政治的パフォーマンスやってる暇があるなら、需要が拡大するような政策(規制緩和も含め)の立案をやっていただきたいものであり、デフレ的政策の実施をしないように進めて頂きたいものである、とまあ斯様思うのでございました。


○SF連銀ウィリアムス総裁講演から少々

ということで頭出しだけしたネタのうちいわゆる「中立派」のウィリアムス総裁の講演から。

http://www.frbsf.org/news/speeches/2012/john-williams-0924.html
http://www.frbsf.org/news/speeches/2012/john-williams-0924.pdf
The Economic Outlook and Challenges to Monetary Policy
September 24, 2012

・現在の景気に関しては「満足な回復では無い」という話

そらまあ追加金融緩和に賛成しているのですから当たり前ですが。

『Still, as discouraging as the economic news has been at times, there’s no doubt the economy is on the mend. Private-sector payrolls have climbed for 30 consecutive months, adding over 4-1/2 million jobs. That’s more than half what we lost in the recession. Despite these gains, economic growth has not been strong enough to bring the jobless rate down to normal levels. After reaching a peak of 10 percent in October 2009, the unemployment rate has declined by nearly 2 percentage points to 8.1 percent. That’s real progress. But we still have quite a way to go to get the economy back to where it should be.』

回復軌道に向かっているのは間違いないものの、「経済の拡大は失業率を正常なレベルに戻すには強さが足りない」という話をしておりますな。

『It’s not that surprising that the recovery has been sluggish. It can take quite some time to get over a financial crisis and a severe recession like we just lived through.』

とまあそんな感じですけどね。


・ただまあ明るめの話も結構目立つ

さっきの続き。

『But the healing process is well under way.』

ほほう。

『Credit conditions are much improved from a few years ago. For many borrowers, interest rates are at or near historic lows. And lenders seem more willing to extend credit. Consumer and business demand pent up during the recession is reviving. We can see that, for example, in car sales, which collapsed during the recession. Now, with auto financing rates at rock bottom and more people working, motor vehicle sales have climbed over 50 percent from their recession lows.』

ということでまずはクレジットの環境が改善していて、その成果として自動車ファイナンスが改善している結果として自動車販売が伸びているという話をしております。

『Another encouraging development is that housing is once more showing signs of life. With the economy improving, mortgage rates at historically low levels, and homes extraordinarily affordable, confidence is returning to the housing market. Home sales are rising, and inventories of unsold homes have come down. We’ve started working off the huge backlog of foreclosed properties. Nationally, home prices have stabilized and are starting to rise. Here in San Francisco, we can even say that the housing market is heating up.』

住宅市場の改善に関しても言及していまして・・・・・・・

『The recovery in housing includes a rebound in home construction, something particularly important for the health of the overall economy. Housing starts simply collapsed during the downturn, plummeting from a seasonally adjusted annual pace of over 2 million new units during the boom to around half a million in the depths of the recession. It’s clear that, as a country, we built too many homes during the housing bubble. But it’s just as clear that the dearth of homebuilding over the past four years can’t continue forever if we are going to have enough homes for the nation’s growing population. The latest data show housing starts rising to an annual rate of 750,000 units. That’s a big increase from three years ago, but still well short of the longer-run trend of about 1.5 million units. Over the next few years, an ongoing recovery in housing construction should be one of the key drivers of economic growth.』

住宅市場が改善すると住宅建築関連も改善しますというお話をしていて、最後には「今後の数年間においては住宅建設が経済成長のキードライバーの一つとなるべきであるでしょう」と締めていまして、まあそういう意味では割と先行きの経済成長に対してのポイント部分では改善を見ています。


・問題は下方リスクと不確実性

『I’ve highlighted a few sectors-autos and housing-that were hard hit during the recession, but are on their way back. Why then are we unable to shift into a higher gear of growth? Three reasons stand out: the European debt crisis and recession, the budget squeeze at all levels of government in the United States, and a pervasive sense of uncertainty.』

ということで、欧州債務問題とそれに伴うリセッション懸念、財政支出の縮小懸念、それらも含めた先行き不確実性というのが問題である、という話をしております。でまあそこの説明がだいぶ長いのですが大幅に割愛しますが、どうもfiscal cliffの懸念が大きいようで。

『The drag on the economy coming from shrinking government employment and lower spending could turn dramatically worse at the beginning of 2013. You may have heard the expression “fiscal cliff.”』

てな辺りから話が始まるのですが。

『It refers to large federal tax increases and spending cuts that will automatically take place under current legislation. These include ending the temporary payroll tax cut and extended unemployment benefits. Caps on some federal outlays and sharp cuts in others are also set to go into effect. In addition, the Bush-era tax cuts are scheduled to expire.』

『To be sure, I don’t expect all these tax hikes and spending cuts to take place as scheduled. For example, it’s likely that the Bush tax cuts will be extended temporarily and that some spending cuts will be deferred. Still, there’s little doubt that a number of austerity measures will hit. I expect that to slow our economy’s forward progress.』

つーことでまあ何らかの措置が取られるでしょう、という想定はしています(当たり前だが)けど。

『If my prediction is wrong though, and the entire range of fiscal cliff measures stays in place, the effects on the economy next year would be much more severe. The nonpartisan Congressional Budget Office estimates that the complete fiscal cliff package would knock 2-1/4 percentage points off growth in 2013 and push unemployment up a percentage point compared with the less draconian scenario I expect. If that happens, the economy could find itself teetering on the brink of recession.』

ということで、措置が取られない場合は2.25%のGDP押し下げ寄与という計算もありますと。


・バランスアプローチを強調するが物価見通しが高くない

でまあ経済見通しの部分すけれども。

『I’d like now to offer my economic outlook and talk about what the Federal Reserve is doing to help keep our economy on the road of recovery, while keeping inflation low.』

てな感じで、この先でもそうですがウィリアムス総裁は割とこの「物価の安定の下で」景気をどう刺激するのかという話をしていまして、物価の安定を含めたバランスアプローチを強調している感じです。デュアルマンデートの説明部分はパスしまして・・・・・・

『So, how are we doing on these goals? As I said earlier, the economy continues to grow and add jobs. However, the current 8.1 percent unemployment rate is well above the natural rate, and progress on reducing unemployment has nearly stalled over the past six months. If we hadn’t taken additional monetary policy steps, the economy looked like it could get stuck in low gear.』

ということで、追加緩和の必要性について「雇用がこの半年全然改善しておりません」という話を。

『That would have meant that, over the next few years, we would make relatively modest further progress on our maximum employment mandate. What’s more, the job situation could get worse if the European crisis intensifies or we go over the fiscal cliff. Progress on our other mandate, price stability, might also have been threatened.』

その雇用の改善遅れに加えて、先行きの不確実性にも対応しましたという話。

『Inflation, which has averaged 1.3 percent over the past year, could have gotten stuck below our 2 percent target.』

でまあ物価は2%以下の水準でスタックするでしょうという上がりませんよという見通しで、金融政策実施後のウィリアムス総裁の見通しでは・・・・・

『Thanks in part to the recent policy actions, I anticipate the economy will gain momentum over the next few years. I expect real gross domestic product to expand at a modest pace of about 1-3/4 percent this year, but to improve to 2-1/2 percent growth next year and 3-1/4 percent in 2014.』

『With economic growth trending upward, I see the unemployment rate gradually declining to about 7-1/4 percent by the end of 2014. Despite improvement in the job market, I expect inflation to remain slightly below 2 percent for the next few years as increases in labor costs remain subdued and public inflation expectations stay at low levels.』

ということで、物価に関しては2%以下の水準が続く、という見通しになっています。


・つまり物価が上昇した場合にウィリアムス総裁の対応が注目されます

まあこれウィリアムス総裁だけじゃなくて逆さ絵のおじさんもそうなのですけれども。

『Of course, my projections, like any forecast, may turn out to be wrong. That’s something we kept in mind when we designed our new policy measures. Specifically, an important new element is that our recently announced purchase program is intended to be flexible and adjust to changing circumstances.』

今回の措置は状況の変化に応じて変更する事にフレキシブルである事に特徴がありますとな。

『Unlike our past asset purchase programs, this one doesn’t have a preset expiration date. Instead, it is explicitly linked to what happens with the economy. In particular, we will continue buying mortgage-backed securities until the job market looks substantially healthier. We said we might even expand our purchases to include other assets.』

『This approach serves as a kind of automatic stabilizer for the economy. If conditions improve faster than expected, we will end the program sooner, cutting back the degree of monetary stimulus. But, if the economy stumbles, we will keep the program in place as long as needed for the job market to improve substantially, in the context of price stability. Similarly, if we find that our policies aren’t doing what we want or are causing significant problems for the economy, we will adjust or end them as appropriate.』

まあ当たり前ちゃあ当たり前の話をしているのですが、ここの辺りの見せ方が逆さ絵のおじさんはお上手というか、まあFRBの従来までの蓄積というのもある訳でして、このようなアプローチをしている訳で、何も「無制限買入」を行っていくという話では一ミリも無いのですけれども、現状ではそもそも金融緩和効果を出したい時期でございますので、無制限買入とか勝手に勘違いして買入額以上に緩和効果が出ればウハウハ、とまあそんな事を考えているのでしょうかねとも思われます。

勿論、その逆さ絵アプローチもインチキ成分がありますので、要はインチキしすぎると信認問題になりますよ、ということで反対している地区連銀総裁がいるのもこれはこれで筋の通った話ではありますけれども、実はこういう感じで非伝統的政策を実施するという段階においては、FRB方式で何か百家争鳴状態にしておいて理屈のネタだけは品揃え豊富にしておいて、都合の良い所で都合の良い理屈を引き出しから取り出す、という方式の方が実は無難なのかもしれないなあという気はするのでございました。今の所まあ回ってますからね。

とは言いましても、まあ米国の今の方式にしても、真価を問われるのは出口政策の方でございまして、さてその時にどうなるのか、というのを逆さ絵先生の手で実施して頂きたいと思うのでございました。

まあそんな所で、結論としては「物価が上昇しなければ緩和継続」というのが明確という所でしょうか。最後の所を引用して終了としますね。

『Clearly, the bigger problem today is high unemployment. Much of the discussion about monetary policy focuses on that issue-as it should.』

キタコレ。

『But, I want to stress, in no way has our commitment to price stability wavered. Inflation is something we watch carefully, and we remain determined to work toward our price stability objective.』

でもバランスアプローチも重要と思いっきり言及ですな。

『Monetary policy cannot solve all problems that affect our economy. But it can help speed the pace of recovery and get our country back on track sooner. Our policy actions are completely consistent with the statement of longer-term goals and policy strategy the FOMC released in January. I’m convinced they represent the best course to move us closer to those goals. Thank you very much.』



2012/10/02

お題「短観とか生活意識アンケートとかのアンケートものである」

確かにまあ元科学技術庁長官ですけどねえ・・・・・
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20100806-849918/news/20121001-OYT1T00580.htm
文科相に田中真紀子氏起用、財務相に城島氏

初入閣8名とか選挙管理内閣を意識して入閣待ちの人たちを一挙整理した感じですかね。


○さて短観ですが

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1209.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1206.pdf(前回)

まあ例によって例の如く短観で債券市場が反応しないのは最近の仕様なのですけど残念なお話ではございますなあという所で。

・前回の先行き予測DIの達成状況

        (6月時点)     (9月時点)
        現状→9月予測    現状→12月予測
製造業大企業   ▲1→+1       ▲3→▲3 
製造業中堅企業  ▲6→▲7       ▲6→▲13        
製造業中小企業 ▲12→▲15     ▲12→▲14

非製造業大企業   +8→+6      +8→+5
非製造業中堅企業  +3→▲3      +2→▲3
非製造業中小企業  ▲9→▲15     ▲9→▲16

前回は「予想より悪くなかったですね」という感じで、まあ今回もヘッドラインの数字そのものは市場予想よりも良かった感じなのですが、今回見ますと6月時点で予想していた大企業製造業の改善が達成されておらず逆方向になっている上に、先行き見通しが改善方向から横ばい方向になっているので、まあ製造業の方がヤバス感がございますぞなもしという所でしょうなあ。

でもって非製造業に関しては前回予測から先行きの所では状況が悪化するかもという感じだったのに結局前回比DIがほぼ横ばいとなっていまして、非製造業が妙に底堅いという所でして、製造業がダメダメ感漂い非製造業が妙にしぶといというある意味二極化ちゃあ二極化なのですが、一般的には製造業がヘロヘロになるとラグを伴って非製造業がうんこ化するという認識だと思いますので、まあ先行き碌なもんじゃねえとは思いますがどうでしょう。

製造業大企業と製造業中堅企業が(まあ事前の市場予想はもっと悪かったのかもしれませんが)突出してダメダメ感、というのが目立ちますなあという所です。


・雇用判断DI

        (6月時点)      (9月時点)
        現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業   +8→+6       +7→+9
製造業中堅企業  +8→+8      +10→+8
製造業中小企業 +10→+8      +11→+11

非製造業大企業   ▲3→▲3      ▲3→▲3
非製造業中堅企業  ▲4→▲6      ▲5→▲6
非製造業中小企業  ▲3→▲5      ▲5→▲6

これまた製造業と非製造業で明暗分かれるの図になっていまして、これも前回と同様の傾向ですし業況判断DIの方でも見られている図ではございます。でまあ見ててまっさきにあちゃーと思ったのは製造業大企業の先行き雇用判断DIが現状から悪化方向になっている所でして、まあその悪化幅自体は大したことないのですけれども、6月時点では改善予想になっていた(と言ってもまあ余剰は余剰ですけど)ところが悪化予想という事は、まあ「雇用環境の改善で個人消費の持ち直しガー」という日銀の見通しに対してそれはいかがなものかというお話でもあるような。それに製造業全体として6月時点での雇用判断に関する目論見が逆方向に進んでいるというのも残念感漂います。

ただまあ非製造業の雇用判断DIに関しては引き続き不足傾向ですし、割と堅調な推移を継続しておりますので、そっちはそっちで悪くは無い話ではございますが製造業がこの調子でこの先大丈夫なのかというのは以下同文。


・想定為替レート

為替が何だかんだ言いましてもウゴカンチ会長のせいかすっかり話題にならなくなった想定為替レートですが、折角前回も数字を拾っておりますので。

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)   2011年度全体(上期)(下期) 2012年度全体(上期)(下期)

2011年6月調査 82.59 82.59 82.59    − − −
2011年9月調査 81.15 81.26 81.06    − − −
2011年12月調査 79.02 80.26 77.90    − − −
2012年3月調査   78.93  80.20  77.69    78.14   78.04  78.24
2012年6月調査   79.27   80.18  78.35    78.95  78.98  78.93
2012年9月調査   −     −   −     79.06  79.16  78.97

・・・・・・・・・・そらまあこんなにウゴカンチ会長だったら話題にもなりません罠。



・金融商品取引業クオリティを今回も鑑賞

これまた毎度耳タコだとは思いますが、ここのカテゴリーが「証券会社」「投資業等」と分かれていた時は物凄い面白いブレを示していたのですが。

        (6月時点)       (9月時点)
        現状→9月予測      現状→12月予測
金融商品取引業 ▲38→▲11   ▲38→▲24

この前の3月短観から6月短観の比較(3月時点での業況判断DI予測+16が何と54ポイントも悪化するという状況)の素晴らしさには敵いませんが、6月時点では「もっと状況が改善するだろう、うんそうに違いない」と思っていた数値が結局全然無理無理無理という結果になった訳ですが、まあ良く良く考えてみますと3月短観の時のように「調子に乗って先行き大幅改善予想」した時よりはだいぶ反省の色が見える先行き予測DIとなっている辺りは、底打ちフラグが見えてきているのかも知れないという意味では良い傾向ではありますな(違)。

とは言いましても、先行きDIがまだまだ「より悪化」になっていない所が往生際の悪さを示しているのでございまして、これがもっと先行き予想もうダメです世の中終了です的な数値が出てきた時には完璧なる底打ちサインであると認識するのが宜しいかと存じます、って何かもうね・・・・・・・・


・在庫判断とか価格判断とか

何となく読んでみたが普段細かく見ていないからあまり数字のイメージがつかないので今回は見ただけ。何となく販売価格判断の数字がパッとしないような気がしましたがどうでしょうかね。

#まあ全体的には「想像していた程悪くは無かったけれども、まあイマイチですなあ」という所でしょ


○生活意識アンケート

これまた毎度の四半期初恒例。
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1210.pdf

以下引用部分に『』つけると体裁が見苦しくなりますので付けませんが、質問と選択肢の部分が引用になります。で、()内は前回6月調査の数値になります(それも引用)。上記URLの本文20ページ以降から引用します。

・景況感ェ・・・・・・

Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。
1 良くなった2.9 ( 4.5 )
2 変わらない50.7 ( 51.3 )
3 悪くなった46.0 ( 44.0 )

ということでまあ「悪くなった」が増えているのですが・・・・・・・・

Q2.Q1のご回答について、そのようにお考えになるのは、主にどのようなことからですか。【2つまでの複数回答】

1 マスコミ報道を通じて27.5 ( 31.3 )
2 景気関連指標、経済統計をみて10.9 ( 12.7 )
3 勤め先や自分の店の経営状況から34.7 ( 35.2 )
4 自分や家族の収入の状況から53.2 ( 48.1 )
5 商店街、繁華街などの混み具合をみて25.2 ( 24.9 )
6 その他4.0 ( 3.6 )

何気に「収入の状況から」というのが増えているのがあちゃーな感じで、比較的堅調な雇用が個人消費を下支え的なシナリオってどうなのよという感じがするのですけどというのは短観の所でもお話しましたがこんな辺りにも。


・物価感ェ・・・・・・

Q12.次に「物価」についておうかがいします。
あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)。

1 かなり上がった5.2 ( 5.9 )
2 少し上がった38.7 ( 39.9 )
3 ほとんど変わらない44.0 ( 42.2 )
4 少し下がった10.4 ( 10.6 )
5 かなり下がった0.9 ( 0.7 )

この部分は数字を見るよりもグラフのある上記URL先の前半部分を見た方が判りやすいのですけれども(ちなみに6ページ以降になります)、上昇の答えが着実に減ってきているという感じになっております。

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。

平均値:+2.7 ( +3.2 )
中央値:0.0 ( 0.0 )

とまあそんな感じで、物価上昇(これは毎度高めに出てくる)に関する実績への見方がドンドンと低下傾向となっておりまして、まあインフレフォビア的には結構なのかもしれませんが、こらまたデフレマインド定着でアチャーという傾向のような話ではありますが・・・・・・・

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。

平均値:+3.9 ( +3.6 )
中央値:+3.0 ( +2.0 )

何故か先行きの方は6月数値よりも上昇という不思議な展開。

Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。

平均値:+4.4 ( +4.0 )
中央値:+3.0 ( +2.0 )

こちらも上昇。消費税の件があるのかもしれませんけれども、こちらに関しては変なのという感じです。現状の物価上昇のイメージが下がっているのに先行きが上がるというこの回答がどういう思考回路によって出るのかがおじちゃん頭が悪いのでワカランチ会長。


・インフレフォビア拡大ェ・・・・・・・

そらまあてめえの収入状況とかが悪化したらそういう傾向になるのはシャーナイナイではあるのですがこれはまたアレ。

Q12-a.(Q12で1または2『上がった』と答えた方へ)「物価」が上がったことをどのように思いますか

1 どちらかと言えば、好ましいことだ1.5 ( 2.1 )
2 どちらかと言えば、困ったことだ86.0 ( 84.6 )
3 どちらとも言えない11.6 ( 12.4 )

Q12-b.(Q12で4または5『下がった』と答えた方へ)「物価」が下がったことをどのように思いますか。

1 どちらかと言えば、好ましいことだ34.9 ( 32.4 )
2 どちらかと言えば、困ったことだ30.9 ( 30.5 )
3 どちらとも言えない32.9 ( 35.5 )

これまた本文9ページにある図表の方を見た方が判りやすいですが、どう見てもインフレフォビア拡大でデフレ歓迎拡大です本当にありがとうございましたorzorzorz


・今回の特集ですがデビットカードプギャー

『以降のQ21〜25は家計の決済行動に関する質問です。(注)今回特別に調査。なお、3月および9月調査ではその時々の情勢を踏まえながら個別のテーマに関する調査項目を設定しています。』

ってなことで、今回は決済手段の利用状況に関する話がございますが、その手のものをろくすっぽ使わないのが仕様のこのあたくしから致しますとほほうという結果も少々ありましたが、まあ興味のある方は見てちょ(解説付き図表は本文11ページ以降)。

Q22. 普段の買い物やサービスの支払いでデビットカードを使いますか。

1 よく使う(月3回以上) 0.8
2 ときどき使う(月1、2回程度) 1.1
3 まれに使う(月1回未満) 5.4
4 使わない/デビットカードを持っていない60.9
5 どんなものか知らない/関心がない25.8

・・・・・・・・・・・(・∀・)

Q22-b.(Q22で1、2または3『使う』と答えた方へ)支払いにデビットカードを使わない場面があるとしたら、その理由は何ですか。【複数回答】

1 暗証番号の入力が面倒である12.5
2 使いたい場所や時間帯での取り扱いがない23.8
3 支払いは現金でしたい(カードで支払うことが好きでない) 30.0
4 クレジットカードなど、他の決済手段の方が使い勝手がよい21.3
5 ポイントなどのお得感が少ない15.6
6 支払金額に上限がある3.8
7 セキュリティなど安全性に不安がある9.4
8 特に理由はないが、なんとなくデビットカードは使いたくない6.9
9 その他2.5

・・・・・・・・・・・(・∀・)支払現金主義が3割もまだいるのですね、つーか3割しか居ないというのか。


○バーナンキ議長、QE3批判に対してお答えする

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20121001a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20121001a.pdf
Chairman Ben S. Bernanke
At the Economic Club of Indiana, Indianapolis, Indiana
October 1, 2012

『My topic today is "Five Questions about the Federal Reserve and Monetary Policy." I have used a question-and-answer format in talks before, and I know from much experience that people are eager to know more about the Federal Reserve, what we do, and why we do it. And that interest is even broader than one might think. I'm a baseball fan, and I was excited to be invited to a recent batting practice of the playoff-bound Washington Nationals. I was introduced to one of the team's star players, but before I could press my questions on some fine points of baseball strategy, he asked, "So, what's the scoop on quantitative easing?" So, for that player, for club members and guests here today, and for anyone else curious about the Federal Reserve and monetary policy, I will ask and answer these five questions:

1.What are the Fed's objectives, and how is it trying to meet them?
2.What's the relationship between the Fed's monetary policy and the fiscal decisions
of the Administration and the Congress?
3.What is the risk that the Fed's accommodative monetary policy will lead to inflation?
4.How does the Fed's monetary policy affect savers and investors?
5.How is the Federal Reserve held accountable in our democratic society? 』

ということでお答えをしているようなのですが、超斜め読みした感じですとそんなに面白い話でも無さそうなので後で精読して面白そうだったらネタにしますが、この質問だと大体答えは想像できる話でして、それならバーナンキ議長の先般のFOMC後の会見での容赦ないツッコミに対する説明(途中から同じ質問に同じ回答の繰り返しモードになってきているのが残念なのですが)を読んだ方が吉のような希ガス。ということでこのネタはクリップしてみただけ(えー)。


○前原先生クオリティキタコレ

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121002/k10015443101000.html
物価上昇策 日銀に対応を促す
10月2日 5時19分

『前原経済財政担当大臣は1日夜の記者会見で、日銀がデフレ脱却のため1%の物価上昇を目指すとしている金融政策について、「しっかりと対応を促すような発言をしていきたい」などと述べ、日銀に対し一段の金融緩和も含め、必要な対応を促していく考えを示しました。』

『この中で前原経済財政担当大臣は、日銀がデフレ脱却のため1%の物価上昇を目指すとしている金融政策について、「私がこの立場に就いた以上は、今まで以上に厳しく、日銀が本当に政策目標を実行する気構えがあるのか厳しく見ていく。まだ足りないというならば、しっかりと対応を促すような発言をしていきたい」と述べました。』(上記URLより)

そこまで言うなら公務員給与のカットとか今すぐ止めろやゴルァとか思うのですけれども。大体政府がもっと物価上昇を煽るような(というと語弊があるが・・・・・・)政策やれよなとか思う訳で、電力料金引き上げ一つとってもああだこうだとゴタゴタするのに何なんでしょうねと思うのですけれども、どうせ前原先生の事ですから言う事は威勢良いのですが肝心の実行に関しては何も考えていないと思いますのでまあ話半分に聞いておけば良いかなとは思います。

『また、新たな円安への誘導策として検討すべきだという意見が出ている、日銀による外国の債券の買い取りについて、前原大臣は、「有効な材料の一つだと思っている」と述べたのに対し、城島財務大臣は、「基本的には慎重に検討していくべき課題ではないかと思う」と述べました。』

ってもうね、最初からこれですから・・・・・・・・・



2012/10/01

お題「大体雑談である/地区連銀総裁講演から少々(頭出しである)」

早いもんで10月ですなあ。

○社債オペのスケジュールとか

基金買入のスケジュールが。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120928a.pdf
CP・社債等買入(資産買入等基金)オペレーションのオファー日程について

『日本銀行では、資産買入等の基金の運営として行うCP・社債等買入オペレーションのオファー日程について、以下のとおり、11月オファー分を追加しましたので、お知らせします。なお、社債等買入オペの10月オファー分のオファー金額については、2,500億円から2,000億円に変更しています。』

これ基本的に月末に翌月分と翌々月分が公表される(総額の変更があった場合は別)のですけれども、前回2000億円の買入額が2500億円に増額されたのですけれども、今回2000億円に戻すという謎プレイ。別に最近の社債買入で変な札割れが起きていたとかゆー訳でも無いのですが、前回増やしたのも微妙に???だったのですが今回元に戻したとかこの経緯がワカランチ会長。

ちなみに買入状況ですけれども。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120920.htm/

コマーシャル・ペーパー等:1,671,098,613
社債:2,722,200,173

でまあ買入目標は
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120919a.pdf
の3ページにありますようにCPが2.1兆円、社債が2.9兆円になっていまして、社債に関しては残り1800億円なのですが、償還分があります(社債に関しては明細は表に出さない)ので、その分の購入をしないといけませんのでまあこんなもんになるんでしょうかね。

CPに関しては買った側からバカスカ償還が来るので、これはまあ最後の最後までせっせと購入し続けないといけないのですが、こっちの目標数字も中々大変ですけれども、まあ世の中に玉自体はありますし0.10%割っても買うのですから(そこまで行かないと思うが)これ自体は目標大丈夫でしょとは思いますです。


○LIBORがどうのこうの

英国財務省のページから
http://www.hm-treasury.gov.uk/wheatley_review.htm
The Wheatley Review  Final Report

『On 28 September 2012 the Wheatley Review published its final report ‘The Wheatley Review of LIBOR’,which included a 10-point plan for comprehensive reform of LIBOR. 』

ということで、LIBOR改革のポイントがどうのこうのというのが出たのですが、この最終レポートが1MBとか書いてある時点でお分かりのように、表紙も含めて92ページ組という代物でさすがに全部読んでいる暇は無かったのできっと誰かが読んでいる(暫く前に途中のレポートというのが60ページ少々で出ている)ので、誰かがちゃんとレポートを出してくれるでしょう(何という手抜き)。

まあ読みやすいレポートが出ないなら週末が3連休のようなので(完全に失念してた今カレンダー見て初めて気が付いた)頑張って読んでみるかもしれないが本人のやる気次第。

公表時のコメントもございます。

財務省の中の人
http://www.hm-treasury.gov.uk/fst_speech_280912.htm
28 September 2012
Speech by Financial Secretary to the Treasury, Rt Hon Greg Clark MP; Wheatley Review Final Report

FSAの中の人(つーかこのレポートのまとめ役)
http://www.fsa.gov.uk/library/communication/speeches/2012/0928-mw.shtml
28 Sep 2012
Speech by Martin Wheatley - Managing Director, FSA, and CEO Designate, FCA at the Wheatley Review of LIBOR


あとThe Wheatley Review公表におけるプレスへの公表文。
http://www.hm-treasury.gov.uk/wheatley_review_pn_280912.htm
Independent Review into Libor published
28 September 2012

Press notice by the Wheatley Review

でまあこちらをざくっと読みますと・・・・・・

『Today the Wheatley Review of LIBOR published its final report.

Recent revelations have demonstrated that the current system of LIBOR is broken and needs a complete overhaul. It is clear that wholesale reform is required to restore credibility in the benchmark.

The Wheatley Review sets out a clear a 10-point plan for reform, which includes:

・new and robust regulation;
・a fundamental overhaul of the way LIBOR is run, including taking responsibility away from the BBA;
・a requirement for banks to back up their submissions with evidence of relevant transactions; and
・detailed technical changes to refine the way LIBOR is put together, to make it much harder to manipulate. 』

ということですが、『the current system of LIBOR is broken』という認識を示しているわけでございますが(まあこれ自体は今に始まった話では無い)、この先の方にこんなのがありまして。

『Financial Secretary to the Treasury, Greg Clark, said:』

ってんですからまあ上の方のリンク先にもあるのですがね。

『“Today’s independent report is very clear - the self-regulation of LIBOR has failed. It’s yet another example of the broken regulatory system that this Government is committed to fixing. 』

『“LIBOR is a hugely important international benchmark and this report makes a series of comprehensive and practical recommendations designed to restore its credibility. The Government will respond, in full, once Parliament returns.”』

でまあ2番目の方は良いとして、こちらにあるように「the self-regulation of LIBOR has failed」というのがまあ実にその通りだけど残念な指摘でありまして、「お前らの自主的な規律に任せておくとロクなことにならん」という論理っていうのはまあ今後の金融に関する規制監督の方向性というの物を考えますと、誠にアレな展開が想定できますなあ、とまあそんな話になろうかと思います。

ちなみに、スピーチの方はめんどいのでパスしますが、とにかく「the reputation of the City of London」というのが連呼されているのが印象に残りました。




○ニュース雑感

・だからまずこの手の話で大騒ぎするのがですなあ

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121001/k10015412791000.html
食用油など相次いで値上げ
10月1日 4時21分

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121001/k10015412801000.html
環境税導入 家計負担増見通し
10月1日 5時8分

まあ環境税の方は微妙ですけれども、そもそもデフレ脱却にはマインドの改善が必要であり、「この手の物価は毎年上昇するもの」という認識が共有されるようにならないとデフレ脱却という話にならんじゃろと思うのでありまして、毎度おなじみの値上げキタコレというような雰囲気にならないとねえという所で。

まあ何ですな、歳がバレるからアレですが(^^)、毎年のように鉄道運賃とかがホイホイ上昇していたのが記憶にあるあたくしと致しましてはこんなんで一々ニュースになって大騒ぎしていたら上がるもんも上がらなくなるぞなもしという気はします。いやまあ当時も物価が上がって大変ですなあ的なニュースはいつもあったのですけれども、まあそうは言っても上がるもんだよねというのがあった(だからこそ「ベア」という言葉(弱気相場という意味では無い方)があった訳で^^)のですけどね。


・自民党人事雑談

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120928/k10015358991000.html
自民 新執行部の陣容固まる
9月28日 14時14分

『自民党の安倍新総裁は28日、新しい執行部を発足させる方針で、新たに、細田博之元幹事長を総務会長に、甘利明元経済産業大臣を政務調査会長に起用する意向を固め、執行部の陣容が固まりました。』(上記URLより)

今回の自民党総裁選ですが、良く良く考えてみれば安倍さん第1回投票で党員票も国会議員票も2位で、まあ国会議員票の2位は僅差ですけれども党員票では大きく水をあけられていたのですからして、小泉さんの後を受けた時に比べたら党内をしっかり固めないといけませんぞなもしという話になるんでしょうなあとか思う布陣。

政調会長の甘利さんというのは報道とか見ると「お友達人事」との話もありますが、まあはまり役だと思いますのでこれはこれで良いと思うのですが。まあ安定感のある布陣にしておいた方が選挙的にも良いような気もするのですけれども、それはあたくしが勝手に思っているだけ。


でもってこちらは意外。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120930/k10015409051000.html
中川元幹事長 衆院選立候補せず
9月30日 23時0分

そちらの記事にもありますように、前回の安倍内閣の時には幹事長になって「閣議で首相入場時に起立して挨拶しないとはケシカラン」とか大変にお洒落な事を仰せになられたりというお方で、いわゆる上げ潮派の重鎮で安倍さん総裁返り咲きで中川さんウハウハだったと思ったのですがこれは何としたことぞ。


○地区連銀総裁が次々に発言しているので徐々にネタに投入していく、というか読む

まずはこの辺から。

サンフランシスコ連銀ウィリアムス総裁講演(9/24)
http://www.frbsf.org/news/speeches/2012/john-williams-0924.html
http://www.frbsf.org/news/speeches/2012/john-williams-0924.pdf
The Economic Outlook and Challenges to Monetary Policy
September 24, 2012

フィラデルフィア連銀プロッサー総裁講演(9/25)
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2012/09-25-12_cfa-society-of-philadelphia.cfm
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2012/09-25-12_cfa-society-of-philadelphia.pdf
Economic Outlook and Monetary Policy
September 25, 2012

例によって直近の物から読みだしているのですが(汗)、プロッサー総裁の場合は大体緩和反対の人ですので、内容は当然ながらそういう内容。ウィリアムス総裁の場合は基本的には割と執行部寄りの人(前任のイエレン姐さんはご案内の通りの絶賛ハト派)ですぞな。

まあ金融政策のロジック的な話からすると、万年タカ派とか万年ハト派みたいな人の話というのは、これはこれで政策ロジックの方向性とかを考える際のネタとして有用ですし、一方でよく言えば状況に対して柔軟で、悪く言えばその辺が微妙にコウモリの人の話というのはFOMCの多数決原理から言えば次のアクションに対する示唆になるのでこれまた有用、とまあそんな感じになるかと思います。


とまあそんな感じで前振りだけしたものの、本文に入るとこれからまた結構な時間を消費しますので、内容については明日以降に続きを実施しますが(こら)ざっとまとめらしきものを。

・共通部分

現在の景気認識については「失業の顕著な改善が期待できるような水準では無く、今の回復ペースは良い状況では無い」という認識はお二方とも示しています。まあさすがにこれは皆さん一緒という所なのでしょうが・・・・・・・


・ウィリアムス総裁

そもそもこの方は物価認識がやや低めになっているのですが、じゃあ金融政策に関してガンガンのハト派かというと「バランスのとれたアプローチ」というのを結構強調している感じでして、そういう意味では必ずしもガンガンのハト派では無く割とバランスを重視しているという感じ。

恐らく政策アプローチに関しては逆さ絵のおじさんとかとイメージが一緒なのではないかという気が致しましたです。


・プロッサー総裁

まあこの方は毎度のクオリティなのですが、景気の先行き見通しに関しては2013年は大勢より強め、2014年は大勢より弱めという「成長率は加速しない」派ではあるものの、例によって例の如く「追加緩和は雇用改善に効くよりもインフレ期待の上昇を招くリスクがある」という話をしております。

でまあそれはそれでいつものプロッサークオリティなのですが、面白いなと思ったのはシカゴ連銀のエバンス総裁が示したような「物価が幾らを超えない限り失業率が幾らになるまで緩和を続ける」型のフォワードガイダンスを現在のカレンダーデート形式のガイダンスよりもベターであると示している所。呉越同舟とはまさにこのこと。

ただし、プロッサー総裁はそのアプローチにも難点ありという話をしていまして、一方でシステマティックなアプローチは勧めているものの、その具体的な細かい話は無かったような希ガス(あたくしが読めていないだけの可能性は大有りだが)。

#詳しくは明日以降に。