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2012/09/28
お題「中間期末ですので(違)世間話雑談」
米国地区連銀の皆様の百家争鳴振りのフォローが追いつかないですの(汗)。
○基金国債買入の対象年限分けを撤廃
こんなん出ました。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120927a.pdf
資産買入等基金による国債買入の当面の運営について
『同国債買入については、本年4月27日付「資産買入等基金の国債買入・社債等買入の当面の運営について」により、これまで、買入対象銘柄を「残存期間1年以上2年以下」と「残存期間2年超3年以下」に区分して入札を行ってきましたが、今後は、残存期間による区分を行わず、買入対象銘柄を「残存期間1年以上3年以下」として入札を行うことがあります。』
ということで、先般基金国債買入の応札下限金利を撤廃しましたが、その後に基金国債買入を実施したら落札金利が逆イールドになっちゃいましたなという現象もございますし、まあその前から手前が札割れして後ろが按分とか、逆に手前にどどんと札が入っているのに後ろが札割れとか起きて、まあ毎度毎度入札オファーをする金融市場局の調節担当部署も需給動向ヒアリングするのも大変ですがなという感じでございました。市場金利に関しても既に3年までは実質0.10%割れ状態(買いに行けば10割れで売りに行くと10)とゆーのが続いておりましたので、まあこれはそのような市場状況を追認したというのと、オペレーションをやりやすくしました、という所でしょう。
今回の措置に関しては上記URL先にありますように「金融市場局」名で出ておりますので、建付けとしては「金融政策としての何らかの政策的意図はございません」という事になります(何らかの政策的な意図を持ってアナウンスしたい時には決定会合での議決事項に持って行く)ので、これ自体は特段の政策的な意味合いは無いという事になりますが、市場的に言えば3年以内の国債金利形成の部分で、2年と2年超の所での需給の差(=新発国債が出る分)に伴う逆イールドチックな動きが無くなり、まあこの期間の利回り形成がスムーズになる、というと格好いいですけれども、要するに横一線になるということですな(^^)。
とか何とか考えますと、昨日の2年新発が0.10%一本値入札(なお一本値ではありますが電波発信装置のドクターZ先生にお断りしますがどう見ても日銀のご指導とかございませんので念の為^^)で按分が9%強となりまして、先月よりやや弱めの入札になった(先月は平均が0.10%割れで足切り100円の按分が5%でした)のですが、この銘柄が買入対象になって(発行日が来月15日なのでまだ対象にならない)以降は0.10%をちょっと切った辺りでこの銘柄が捌けて、その間は他の銘柄もまあその辺の金利に収斂する、とかまあそんな感じになるんでしょうかね、よー判らんけど(もうちょっと詳しく話をすると、当然ながら対顧客でショートセール対応をしたりするとカバーニーズが発生するので、その分だけ金利が下がりやすくなるので新発債よりもそれ以外の方が多分実力ベースの金利は低くなると思う)。
ま、今さらいう話でも無いですが、基金国債買入自体は来年の末まで継続するのが確定している(そらまあ状況が激変して物価でも物凄い勢いで上昇すれば別ですが)という大変に素敵な状態になっておりますので、どう見ても来年の秋口位まではこの調子の金利形成になるんでしょうなあ、とほほのほ。
○その他市場雑談
といっても短国とかGCとかの話ですが^^;
昨日の3か月TB入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20120927.htm
(3)募入最低価格 99円97銭2厘5毛
(募入最高利回り) (0.0994%)
(4)募入最低価格に 15.3673%
おける案分比率
(5)募入平均価格 99円97銭2厘6毛
(募入平均利回り) (0.0990%)
ちなみに前回の3MTBの結果はこちら
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20120920.htm
(3)募入最低価格 99円97銭5厘0毛
(募入最高利回り) (0.0992%)
(4)募入最低価格に 6.1397%
おける案分比率
(5)募入平均価格 99円97銭5厘2毛
(募入平均利回り)(0.0984%)
直近3回(3週間)の3MTB入札では足切りが0.10%割れとなっておりまして(それまでは足切りが0.10%に乗っておりました)、まあ今回も足切りは0.10%割れとなっております。
足元では期末要因というのがあるのと、20日の国債大量償還の資金が当座預金残高水準に見られるように余っているということで、短期国債に資金潰しのニーズが絶賛到来の図となっておりまして、短国対象となるタームの現先レートとか全力で低下しておりますし、まあ短国に関しても在庫が減りましたぞなという状態。今回の3MTBに関しては発行日が期末越えになる(来週月曜)のですが、まあ若干平均が安くなった(今回の3MTBからは年末をまたぐ関係で13週間物では無くて14週間物で出てくるので価格で単純比較できません)かも程度しか変化も無く、引き続き堅調という形に。
まあタームの短国現先ニーズの強さとか見てますと、どう見ても待機資金です本当にありがとうございましたという風情を醸し出している所ではございまして、タームじゃない現先レートに関しても今回は期末接近のタイミングで瞬間的にはニーズありありの結果モノナシ状態になって急速に低下した(その後末初の所では戻りましたが)りしてまして、GCに関してはまあ相変わらず0.10%で張り付き状態で、0.10%割れでも買わざるを得ない人の買いで10を割るものの、持続的にどんどん下がる訳では無いという所のようで、まあ引き続きGCや現先市場でのレートは低い状況ですし、短国などのニーズは強いという短期市場銭ウナール状態は続くのでございました。つーかこれから日銀の買入残高増えるともっと銭が唸るのですけれども。
○佐藤審議委員のロイターニュースインタビュー
一昨日の記事でどうもすいません。
写真の背景が何故真っ暗???
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE88P00D20120926
インタビュー:物価1%到達、後ずれの可能性=佐藤日銀審議委員
2012年 09月 26日 22:27 JST
『[東京 26日 ロイター] 日銀の佐藤健裕審議委員は26日、ロイターとのインタビューに応じ、日銀が事実上の目標に掲げている消費者物価(CPI)の前年比上昇率1%の達成について、現段階で日銀が展望している「2014年度以降、遠からず」というタイミングの「不確実性が強まっている」と後ずれを示唆した。』(上記URLより、以下同様)
まあ元々不確実性が高まる以前の問題で佐藤さんってそれ無理じゃネーノという指摘をしていたような気もしますが(^^)。
『世界経済は引き続き下方リスクが大きいとし、日銀が描く日本経済の見通しから、さらに経済・物価が下振れるがい然性が高まる場合には追加金融緩和を「躊躇(ちゅうちょ)しない」と語った。』
10月展望レポートで追加緩和ですねわかります。
『就任会見で新たな政策手段として言及した日銀による外債購入は「期待インフレ率を引き上げる有効策」と述べる一方、法律上の制約や海外当局との関係など実現に向けた課題の多さをあらためて指摘した。』
まあこれに関しては第一に米国財務省様に対して誰が鈴を着けに逝くのでしょうかという話があり、更には日本の場合「通貨政策は財務省が行いますぞな」という仕切りがありますし、というか欧米の場合も大国に関しては中銀は通貨政策には(間接的に金融政策でどうのこうのはしますが)直接的にはタッチしないというのがまあ了解になっているようです(スイスとかデンマークみたいなのは小国なので話は別)のでして、そーゆー従来からの流れからもその手の交渉ルートがあるのって財務省様でございますので、それを日銀に移せるものなのかという話もあります罠。
でその次が<中国経済減速は想定以上に長引いている、内需に変調の兆し>というお題。
『日銀は9月18、19日の金融政策決定会合で、資産買入基金の10兆円増額を柱とする追加金融緩和に踏み切った。理由について佐藤氏は、海外経済の減速の強まりを背景に、輸出や生産が減少する中で、先行きを含めて景気判断を「はっきり下方修正した」と指摘。日本経済が持続的な成長経路に復帰するという「当初想定していた経路を踏み外さないために追加緩和を実施した」とした。』
ここまでは公式の話。
『起点となった海外経済は、特に中国経済について「景気の減速した状態が想定以上に長引いている。中国の景気刺激策も発動ペースが抑制的だ」とし、「その他の新興国にも相乗作用をもたらしており、中国の需要動向が今一つ芳しくないことで輸出が軒並み弱含んでいる」との見方を示した。一方、年前半に堅調に推移していた国内需要も、個人消費などに「変調の兆しが見られ始めていることを懸念している」と指摘。こうした足もとの経済状況を踏まえれば「景気回復の時期は後ずれしていると率直に言わざるを得ない」と語った。』
まあさよですの。でまあ追加金融政策に関する話の部分(上記URLの2ページ目部分になります)ですけれども。
『こうした情勢を踏まえた金融政策運営では、前回会合で下方修正した景気見通しをベースに点検するとしたが、「さらに経済・物価が下振れるがい然性が高まってくると判断された場合には、新たな手を打つことを躊躇(ちゅうちょ)しない」と強調。』
ほう。
『その際の手段について「期待インフレ率に働きかけ、実質金利の低下を促すことが重要」とし、1)バランス・シートの拡大、2)自国の為替レートの減価、3)リスク性資産の買い入れという3つが考えられると語った。』
ふむふむ。
『日銀は国債を中心とした資産買入基金の累次の増額でバランス・シートを拡大させており、リスク性資産の増額も「オプションとしてある」としたが、「必要性が生じた段階で効果と副作用などを総合的に勘案して対応の是非を探っていきたい」と述べた。その上で、経済見通し下振れの可能性が景気回復の障害になる場合は、「新たな措置も当然オプションとして出てくる」と基金以外の緩和手段も選択肢になるとの考えを示唆した。』
基金以外の緩和手段とな??例えばコミュニケーションポリシーの強化という形で物価安定の目途に関する表現を変えるとかそういう話ですかな???????
まあ何ですな、とりあえず佐藤さん安定の緩和派なのですが、佐藤さんのエコノミスト時代の説明がそうだったのですが、ベースとして「物価」の部分で「日本の物価が中々アガランチ会長になっており、それを脱却する為には従来の延長の政策だけでは足りない」という主張を以前からしていたので、そーゆー意味ではハト派とか緩和派というよりは本当は物価重視派というべきなのではないかとも思うのですけどね。
ちなみに物価に関しては一昨日ネタにしましたが25日に出ていた日本経済研究センターの愛宕さんのブルームバーグインタビュー記事も合わせてご参考ということでURL再掲しておくだよ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MATYGE6KLVRD01.html
日銀は来月末追加緩和も、14年度物価1%未達なら−愛宕・前日銀課長
○ニュース雑談というか悪態というか
・安倍さん高支持率とな
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/newsl/post_27717/
緊急世論調査 自民党 支持率上昇
内閣支持率が上昇しながら自民党の支持率も上昇しているという中々不思議ちゃんな結果で、これは何ぞねという感じですが、とりあえず支持率上昇して良かったですねという所で、まあお手並み拝見。前回に関しては衆議院での圧倒的な議席を持ち、景気も良かったというのに何かやりましたっけ感が非常に強かったのですが(後任の2名は色々と仕事をしていた気がするんですが)まあどうなる事やら。あたくし的には相変わらずの「美しいスローガン」に「ポッポ右バージョン」の悪寒がするのですが杞憂に終わる事を期待。
・これはワロタというか何というか
何とかホイホイとして評価の高い維新の会でございますが。
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/news/20120927-OYT1T00627.htm
維新の候補者選定委、竹中平蔵氏が委員長に
・・・・・・・・・・・・いやもう何と申しますか。
これで平蔵先生が現職議員も含めて「お前ら全員選良としてふさわしくないから辞めろや」とか宣告すると格好良いのですが、まあどう見ても何とかホイホイに集まる何とかの(以下全力の悪態に付き全力で自主規制)。
2012/09/27
お題「自民党総裁選とな/虫干しネタ状態になりましたがFOMC後のバーナンキ会見」
ぐぬぬ、明日は上期末・・・・・・あたしゃ上期は何をしていたのでしょうorzorzorz
○自民党総裁選挙雑談メモ
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120926-OYT1T00783.htm
自民新総裁に安倍氏…石破氏を重要ポストで処遇
第一回投票
党員票 議員票 合計
石破 165 34 199
安倍 87 54 141
石原 38 58 96
町村 7 27 34
林 3 24 27
第2回投票
安倍 108
石破 89
ということで、最初に(今回見た時に改めて議員投票の前に党員投票の結果が出るのか不思議だなとか思いましたが、そもそも党員投票やった多分第1回の大角連合での福田逆転時からそうだったですわな)党員票の結果が出てゲル過半数と出た時点では何となく債券先物が毛ほど買われましたがまあ様子見。
その後決選投票で安倍さん逆転で瞬間先物が5銭少々売られましたが、その後はまあ良く考えたら今すぐ何か変わる訳でもないですよねそれより今日は国債の9月内最終受渡しですぞなもしという事もあって結局債券堅調という所で、まあ市場はあんまり反応しないどころか、安倍さんの演説が報道されているタイミングのイブニングセッションでは債券先物続伸してました。まあそれは恐らく欧州懸念とかの方で買われていただけだと思いますが。
でまあ安倍さんの場合はいわゆる「上げ潮派」という事になっていますが、消費税増税の前にデフレ脱却云々はまあそらそうなのですが、財政問題に関しては現実的に考えた場合にデフレ脱却したら問題が解決するのかというと、何をどう考えても歳入云々よりも歳出の方を何とかしないと景気が少々良くなったとしても財政が真っ赤っ赤なのは変わらないと思う(それに物価が上昇したら黙っていても歳出が増えますし)ので、上げ潮で全て解決みたいな感じの言われ方をしているのがいかがなものかという感じがします。
つーかね、安倍さんの場合って、昨日テレビ番組で喋っていたのを見るとそう極端に無茶な話をしている訳でも無いのですが、どうも取り巻きおよび自称取り巻きの応援団に碌でも無いのがウジャウジャ居るイメージが強くて、その取り巻きおよび自称取り巻きが極論やら何やらを振りまくのでどうも何だかねえというのがあたくし的にございますがなというのがまず一点。
ご参考としてはもと切込隊長氏のこんなエントリーとか、つーか先日の野球ネタ投下前に何本もシリアスモードでのエントリー投下の方がビビりましたぞな(^^)。
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2012/09/post-e1f0.html
あとですな、まあこれは相変わらず思うのですが、「美しい国」みたいな何だかよく判らないけど具体的な中身が見えないけれども格好はいいスローガンというのが出てくるのが安倍さんの仕様で、今回の総裁就任でも何かそういうお話をしていたように思えるのですが、そーゆーのって現実を見ないで突っ走ってあじゃぱーという結果になり兼ねない、と申しますか既に鳩ぽっぽで散々痛い目にあっておりますので、まあそうならない事を期待したいのですけれども、前回の総理在任期間中の記憶を戻すとどうもその懸念ががががが。
決選投票になったのが40年位ぶりで、2位が逆転したのが50年以上ぶりでという報道があったのですが、そもそも40年前の時って党員投票無かったのですからあまり関係ないぞなもしという感じがする(三角大福時代で、田中、福田、大平、三木の順番だった筈)し、2位が決戦で逆転した時って2位3位連合を組んでいて、当時は3位の石井支持の池田とか大野とかが岸を嫌って2位の石橋に突っ込んで行ったとか、まあ何かややこしい派閥論理があった訳ですが、今回は特段の2、3位連合があった訳でも無いですし、大体からして国会議員票だけ見たらゲルって3位なのでそういう意味では逆転でも何でも無いとも言えますぞなもしという感じで、まあ昭和時代とはだいぶ違いますなあとか思うのでありました。
しかしまあ何ですな、国会議員票で第1回の20票差が殆ど縮まらなかったゲル様の議員内における人望というのも誠にアレではないかと思われる次第ですが、国会議員票だけでやっていたら1回目が石原、安倍で2回目では恐らく2、3位連合が出来ていたので安倍にひっくり返ったという形になったでしょうから、そう考えると形は全然別ですが逆転は逆転という所なのでしょうか。
いずれにせよ、党員票でろくすっぽ票が取れなかった石原様におかれましては、この際親子共々政界からぜひ引退して風月でも楽しんで頂きたく存じます。つーか尖閣騒動を大騒動にするきっかけを作った親父出てきてちょっと説明してみろゴルァと思うのだが。
でまあ安倍さんですかそうですかという所なのですが、自民党的には安倍さんなのかねとは思うものの、世間的に見て安倍さんってやはりあの施政方針演説やった翌日にいきなり辞任という意味不明にも程がある攻撃のイメージが強くて、何で今さらという感じじゃないかと思いますし、経済政策だってまあデフレ脱却は良いとしてもインフレ3%とかこのインフレフォビアの国でその話どうなのよとか、改憲だって(まあゲルも改憲だからそこは似たようなもんですが)歯切れは良いけどそれはコアな支持者は掴めても国民政党としての支持を集めるという意味ではどうなのよとか、まあ何っつーかどっしり構えていれば普通に選挙に勝てそうな所なのに、わざわざこういうやや政治的主張が立ち過ぎている人を総裁に選ぶというのはどうなのよという感じがします。
まあ谷垣さん続投で何がまずかったのか良くワカランチ会長でございますし、別に普通に無難にやっておけば良かったような気もするんですが、週末に自民党と民主党の支持率がどう推移するのか楽しみに眺めたいと思います。
日銀法改正だの3%のインフレ目標だの威勢の良い話をしていますが、債券市場的にはまあ政権付いたら結局ヘタるだろうなあと高を括っている節があるような気がしますけどね。つーか威勢の良いことを言えば世の中がその通りになるならだれも苦労せんぞなもし。
○華麗にスルーしていた虫干しネタを虫干し(FOMC後の会見ネタ)
まあ他の地区連銀の皆様が色々と百家争鳴状態なのでそっちをフォローしないといけないのですけれども、良く考えたら会見質疑応答ネタを全力で放置プレーでしたので(汗)。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120913.pdf
今回はURL先がFINAL版になっていますが、最初の版とページ数が同じという形になっていまして、まあ初稿部分で殆ど同じものになっている、というのはFRBのロジが進歩しているということですな。
ネタとしてはまあ沢山ありますけど、最重要とあたくしが勝手に思っている部分を。
・インフレ上昇を容認するのかという質問に対して
質疑の3番目です。
『STEVE LIESMAN. Mr. Chairman, I want to talk about that same line in the
statement. Does that mean that your tolerance for inflation will be higher
in coming years, in the middle of the recovery? And, if not, what good
is that language there if it doesn’t tell people that the reaction function
relative to inflation has changed? Secondly, stock prices are up today,
so are oil prices and gold. Why aren’t those part of the same reaction
to the Fed’s acts today?』
インフレを容認するのかという質問と、金や原油価格上昇に関する見解をただしています。
『CHAIRMAN BERNANKE. Well, our policy approach doesn’t involve intentionally
trying to raise inflation. That’s not the objective.』
ということで、インフレを(必要以上に)引き上げる事は目的では無い、と表明。
『The idea is to make sure we provide enough support so the economy will
grow fast enough to bring unemployment down over time. I mean, as we look
back at the last six months or so, we’ve seen unemployment at basically
the same place it was in January. We’ve seen not enough jobs growth to
bring down the unemployment rate, and what we need to see is more progress.
And that’s what we will be looking at.』
今年に入っての経済の成長は労働市場を改善させるまでの勢いがないので、それをどげんとせんといかんので今回の追加緩和を行いましたとゆーのがロジック。
『In terms of the mid-2015 date, we think by that point that the economy
will be recovering, we’ll be providing the support it needs. But if you
look at our projections, you’ll see it doesn’t involve any inflation,
that we still believe that inflation is going to be close to our 2 percent
target.』
ということで、2%がゴールじゃなくてターゲットという言い方になっていまして、まあそこの部分は強調しているのですが、やはりこの説明では許してもらえず追加質問。
『STEVE LIESMAN. All right, I just need to follow up. Does this-so you’re
saying it does not include greater tolerance for inflation, that you will-you
would reverse course if inflation were to be above your target level, even
given that statement?』
ターゲットを超えた場合には追加緩和を元に戻すのかという質問。
『CHAIRMAN BERNANKE. Well, if inflation goes above the target level, as
we talked about in our statement in January, we take a balanced approach.
We bring inflation back to the target over time, but we do it in a way
that takes into account the deviations of both of our objectives, you know,
from their targets.』
ここは慎重に答えていて、「バランスアプローチ」という言い方(この会見ではデュアルマンデートのどちらを重視するのかというような趣旨の質問が手を変え品を変えなんども出てくるのですが、そのたびにバランスアプローチという言い方をしている)をして、先々の金融政策運営をフレキシブルにしたいという意向がありますわなという風に読みましたがどうでしょうかね。
・金融緩和の効果について
7番目の質問である。
『MIKE MCKEE. You’ve made an eloquent explanation over the past couple
of weeks of the Fed’s ability to lower interest rates. But what’s missing
for many economists is how the transmission mechanism is going to work.
Most people think this will have a minimal effect on rates. Can you give
us an idea of how much you think it might push rates down, and why moving
rates down a few basis points might change demand, which seems to be the
problem in the economy?』
eloquentってのを英和辞典で見たら「雄弁な」ってあったので、最初の文は「逆さ絵先生は「FRBには金利を引き下げる能力があります(キリッ)」って説明していましたよね」とかそういう訳になるんですな(ならない)。
で、質問は今更金利が下がって何の効果がありますねんという趣旨ですな(要約し過ぎ)。
そのお答え。
『CHAIRMAN BERNANKE. Well, the ultimate effect is going to depend, of course,
on how much we end up doing, and that, in turn, is going to depend on what
the economy does. This is a conditional program; we’re going to be providing
accommodation according to how the economy evolves.』
『I think that’s the virtue of putting it this way, is that if the economy
is weaker, we’ll provide more support; if the economy strengthens on its
own or other headwinds die down, then it will require less support. So
the amount of support we provide is going to depend on how the economy
evolves.』
とまず逃げを打っておいて(^^)。
『We do think that these policies can bring interest rates down-not just
Treasury rates, but a whole range of rates, including mortgage rates and
rates for corporate bonds and other types of important interest rates.
It also affects stock prices. It affects other asset prices-home prices,
for example. So looking at all the different channels of effect, we think
it does have impact on the economy. It will have impact on the labor market,
but, as again, the way I would describe it is a meaningful effect, a significant
effect, but not a panacea, not a solution for the whole issue. We’re just
trying to get the economy moving in the right direction, to make sure that
we don’t stagnate at high levels of unemployment, that we’re making progress
towards more acceptable levels of unemployment.』
ああだこうだと言ってますが、(1)金利を下げる、国債だけでは無くてモーゲージや社債の金利を下げる、(2)株価を上げる、株だけは無く他の資産か買うも上げる、たとえば住宅とか、というのが直接的な話で、これが労働市場の改善に寄与する、という話をしています。
・経済条件紐付けのコミュニケーションなど将来的な導入の示唆
今はこの緩和継続がどのくらいになるのかについては曖昧にしているので、FEDの高官がああだこうだ言うとぶれるリスクもあるのですが、それを無くすには経済条件紐付け攻撃という日本の量的緩和時代の戦法があります罠。
8番目の質問から。
『ROBIN HARDING. Robin Harding from the Financial Times. Mr. Chairman,
is this the limit of what the Fed could do? You refer in your statement
to other policy tools. If the unemployment situation doesn’t improve,
then what other measures do you have available? Thank you.』
質問は「効かなかったら他のツールはあるの?」という話ですが。
『CHAIRMAN BERNANKE. Well, there’s a variety of possibilities, and we
continue to look at all different options. But the two primary types of
tools, as I’ve discussed, are balance sheet actions-and, of course, we
can restructure those, change those in various ways; the other type of
tool is communication tools.』
ということで、基本がバランスシート政策とコミュニケーション政策という話で、超過準備への付利引下げの話になっていないのはまあ短期市場的にはそうしてくれないと更に金利が潰れて死ぬのでさすが逆さ絵先生よく判っていらっしゃるという所です(^^)。
『And we could-we continue to work on how best to communicate with the
public and how best to assure the public that the Fed will remain accommodative
long enough to ensure recovery. So, working with our communications tools,
clarifying our response to economic conditions, might be one way in which
we could further provide accommodation.』
とまあここにありますように、再度のコミュニケーション強化ということで、特定の経済条件に対応して追加の金融緩和を行うというようなものを導入するような話をしていますが、おそらくは所謂日本の量的緩和コミットメント型(というかエバンス総裁の提言型というか)のコミュニケーション強化の可能性はなるなあと思いました。
・労働市場の改善の定義とは?
最後(25番目)の質問に全力でワープします。
『MARCY GORDON. Marcy Gordon with the Associated Press. One of the aspects
we’ve seen in recent reports on unemployment is the shrinking labor force.
Is that something that’s of specific concern to you, and what does it
tell us about the labor market and the economy?』
レーバーフォースが縮小しているのも問題ですよね?という質問に対して。
『CHAIRMAN BERNANKE. Well, you are absolutely right.』
キタコレ。
『And as I mentioned earlier, the unemployment decline last month was more
than 100 percent accounted for by declines in participation. Some decline
in participation is anticipated, is as expected. We’re an aging society.
We have more people retiring. Female participation has flattened out; it
hasn’t continued to climb as it did for several decades. We’re seeing
less participation among younger people, fewer college students taking
part-time jobs and the like. So part of this decline in participation was
something that we anticipated quite a long time ago, but part of it is
cyclical. Part of it reflects the fact that some people-because they have
essentially given up or at least are very discouraged-have decided to leave
the labor force. And the anticipation is that if the economy really were
to strengthen, and labor markets were to strengthen, at least some of those
people would come back into the labor force. They might even temporarily
raise the unemployment rate because they’re now looking again.』
この辺はレーバーフォースが低下している件とその要因の話。
『So the participation rate over and above-the decline in participation
rate over and above the downward trend is just one of the other indicators
of a generally weak labor market. And it’s why I said earlier that we
do want to look at a range of indicators, not just the unemployment rate,
although that’s a very important indicator, not just payrolls, although
that also is a leading indicator, but participation, hours, part-time work,
and a variety of other measures which suggest that our labor market is
still in quite weak condition.』
ということで、労働市場の改善という場合には「総合的に判断する」というのを強調していまして、まあだからこそこの後各地区連銀総裁がここの総合判断の定義を巡ってああだこうだという話をする(まあそれ以前に反対意見の話をする人も居ますが^^)の図という形になっているのでございましたです、はい。
2012/09/26
お題「8月決定会合議事要旨から少々/その他メモ」
さあ気が付けば半期末ですよ今年も4分の3が終了ですよorz
○8月決定会合議事要旨から少々
まあこの翌月にご案内の通り景気見通し引き下げと追加金融緩和があったので今更感のある議事要旨なのですが、まあ鑑賞素材として。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120809.pdf
・この回の議事要旨を見ても大勢意見が9月にコロッと変わった事が今一歩ワカランチ会長な件について
小見出しが長いですかそうですか(^^)。
まあ何ですな、8月会合から9月会合まで6週間ほどありましたので、そう考えますと6週間もあるから世の中その間にどどーんと変わりましたという話はあるにせよ、その6週間の間に何か外的ショックってありましたっけ?と考えると外的ショックがあった訳でも無い(というよりも外的ショック要因は改善しているぞなもし)んですから、普通(議事要旨だって後付で作っているのですし)もうちょっとこの議事要旨に次回の決定会合での大きな変更を示唆する文言があるような気がする(というか傾向としてそういうのはある)のですけれども、執行部報告の部分は思いっきりそうですし、『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』部分でもうちょっとその辺を強調したような書き振りがあって然るべきだと思って読んだので不思議感は否めません。
勿論懸念を示す部分はあるのですが、何と申しますか毎度この議事要旨を飽きもせず読みはじめて早10年近くというこのあたくしが文章の全体の雰囲気として思ったのが、何となくそーゆー感じ、という事でございますので、だいぶあたくしの主観的なイメージが入っております事を念の為申し上げます。
つーことで該当部分について少々。
・海外経済について
『海外経済について、委員は、緩やかながら一部に改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していないとの見方で一致した。何人かの委員は、欧州債務問題を背景に、グローバルに企業の景況感が悪化していることもあって、減速した状態がやや長引いているとの認識を示した。』
『先行きについて、委員は、不確実性は引き続き大きいが、次第に減速した状態から脱していくと見込まれるとの認識を共有した。一人の委員は、ユーロエリア経済が停滞した状態から脱するには時間がかかるとみられることから、期待される海外経済の回復は、米国や中国の動向次第の面が大きいとコメントした。』
ということで米国や中国の動向ガーという話はあるものの、指摘しているのが一人の委員という表現になっていてまして何だかなーって感はございます。つーかその後の西村さん、山口さん、宮尾さんの講演ではもうちょっと海外経済に対する懸念の話を強調していたように見える中で、8月頭の会合ではこのあっさり味ぶりというのも微妙にアレ。
で、肝心の米国経済ですが。
『米国経済について、委員は、基調としては緩やかな回復を続けており、先行きも、緩和的な金融環境などを背景として、緩やかな回復を続けるとの見方で一致した。多くの委員は、バランスシート調整圧力が残る中で、家計や企業には支出スタンスを積極化しにくい面があり、企業マインドなどに弱めの動きがみられるものの、ガソリン価格の下落に伴う実質購買力の改善や比較的堅調な株価を背景に個人消費が底堅い動きをみせ、住宅販売にも持ち直しの兆しがみられているとの認識を示した。』
ということで、まあ確かにバランスシート調整圧力の話はしているものの、何かトーンが明るめ。
『複数の委員は、住宅投資に動意がみられているが、GDPに占める住宅投資の比率が低下しているため、個人消費への波及を含め、景気全体を押し上げる効果については、慎重にみておく必要があると述べた。』
その中で複数の委員が「住宅が底打ちしているけど景気全体の押し上げ効果はどうよ」という指摘で、これはまあ確かにそうですなとは思いますが、何かこの翌月に「住宅が上がると景気が良くなるんです」という触れ込みでMBS買入を打ち込んだ逆さ絵おじさんがいるのがまた皮肉っちゃあ皮肉(^^)。
ユーロ圏は華麗にスルーして中国経済。
『中国経済について、委員は、高めの成長を続けつつも減速した状態がやや長引いているとの見方を共有した。』
ほう。
『何人かの委員は、こうした減速には、物価安定と成長の両立するかたちでのソフトランディングを目指して、金融引き締めや不動産投機の抑制策などを講じてきた効果が時間をかけて現われている面があると述べた。』
というと何となくポジティブに見えますが・・・・・・
『先行きについて、大方の委員は、不動産販売の持ち直しなど改善の兆しも見受けられており、回復の時期は多少後ずれしているものの、徐々に回復傾向が明らかになっていく可能性が高いとの認識を示した。これらの委員は、最近のインフレ率の低下を受けて、累次の金融緩和策が実施されているほか、インフラ投資の前倒し執行や消費喚起策も実施されており、家計の実質購買力の改善とも相俟って、政策効果が次第に発現していくと考えられると述べた。インフラ投資について、ある委員は、一人当たり資本ストックがまだ乏しく、生産的な投資を拡大する余地があると付け加えた。』
と、ここまでは威勢の良い話。
『何人かの委員は、中国経済の先行きについて、当局の慎重な政策スタンスが減速局面を長期化させる可能性や、景気刺激策が不動産投資に向かうことにより、経済停滞下での資産価格上昇となる可能性があるとコメントした。』
つーことで、まあ直近で言えば米国経済よりも中国経済のモメンタムの方が金融政策運営に影響があったと思われますが、そちらに関しては「何人かの委員」が指摘という事で、まあこの辺りについては先ほど申し上げた「何でこの後の6週間で豹変しましたねん」ネタからしますと一応先行き警戒に関する話が示されている点、という所ではあるのですけれどもね。
・国内経済情勢に関して
『以上の海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。』
ほうほうそれでそれで?
『景気の現状について、委員は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつあるとの見方で一致した。委員は、海外経済は減速した状態から脱しておらず、外需はやや弱めの動きとなっているが、国内需要は堅調に推移しており、景気全体としては7月の中間評価の見通しに概ね沿って推移しているとの認識を共有した。』
>7月の中間評価の見通しに概ね沿って推移している
まあ何ですな、そうじゃないとこの時点で何らかの措置になるというのが政策ロジックですので、こう表現しないといけない面はあるのですが、この6週間後に景気認識と先行き見通しをガラッと変えたのを拝読すると何ともねえという所で。
でまあ話は脱線しますけど、金融政策変更の前後を比較するとどうも最近の日銀というか白川総裁の体制になってからその傾向が強い気がするんですが、景気判断とかの部分がいきなりドカンと変更になるというイメージが強くて、しかも後付で出てくる議事要旨見ても今回のように前回との差が何でここまで生じたのかがワカランチ会長というような場面もありというのが、これまたコミュニケーションという意味で日銀の情報発信を受ける方からするとムツカシヤという所と思います。
議事要旨が次回会合前に出ないという甚だ残念な件についてはこらまあ日銀法の規定上どうしようもないのでそれはあきらメロンという所なのですが、もうちょっとこの辺の景気認識に関する見解が(その後に出てきた講演を見ると)この回だってそれなりに見解があったと思われる所で、議事要旨が決定事項に近い線で丸めてしまう形で出されると、何がどうなって前回と今回の間の判断変更になったのかというのが見えにくくなると思うのですよね。
FRB方式はあれはあれでカオスにも程がある(しかし今朝はNY市場プロッサー総裁発言で株安とか言ってましたけど、物価重視派のプロッサー総裁がQE3にいちゃもん付けるのはお約束みたいなもんで、単に市場が下がりたがっていたのの言い訳に過ぎないでしょ)のですが、日銀方式(?)も今回のような場合に何か????化する所もあり、まあその辺のバランスって難しいですよねと思うのでございました。
などと話が逸れましたが元に戻しまして。
『設備投資計画について、ある委員は、日本政策投資銀行の調査で改めて前年度をはっきりと上回っていることが確認されたが、機械受注の4〜6月実績および7〜9月見通しが弱めであることから、計画通り設備投資が実施されるかどうかについては、引き続き注意してみていく必要があると述べた。』
というのもありますが、まあこの辺りは「先行き警戒」という話がございまして。
『委員は、輸出は、欧州向けの減少等から、持ち直しの動きが緩やかになっており、そうした輸出の影響を強く受ける鉱工業生産も足もと弱めとなっているとの認識で一致した。』
『複数の委員は、中国経済の減速に伴い、中国向けの中間財や資本財の出荷が影響を受けていると指摘した。また、別の複数の委員は、中国経済が不動産投資などを主因に減速局面を脱するとしても、わが国の輸出にそれほど大きなインパクトをもたらさない可能性もあると述べた。何人かの委員は、このところの鉱工業生産指数の実績が予測指数を下回る傾向があることを指摘し、今後の動きを慎重に確認していく必要があると述べた。足もとの生産が力強さを欠いている点について、何人かの委員は、基本的には足もとの輸出の動きを反映したものとみられるが、企業が先行きの輸出の減速や政策効果の剥落を見越して生産調整を始めている可能性もあるとの認識を示した。』
とまあそういう感じで、数名の委員による輸出と生産に関する懸念はこの辺で示されているのですが、全体でみた時に当時はその辺のトーンがあまり反映された形になっていなかったというのがふーんという所ではございます。
・物価に関して
経済のリスク要因の所は華麗にスルーしまして物価に関して。
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、委員は、概ねゼロ%となっており、先行きは、当面、ゼロ%近傍で推移するとの見方で一致した。足もとの動きについて、大方の委員は、原油価格の反落を受けて石油製品が前年比マイナスに転じたことの影響が大きく、経済の動向も併せてみれば、7月の中間評価時の想定に概ね沿って推移しているとの認識を示した。』
ほうそうですか(棒読み)
『複数の委員は、足もとの消費者物価の背景として、原油価格の反落の影響のほか、昨年末以降需給ギャップの改善ペースが鈍化している影響がラグを伴って反映されている可能性や、企業の価格決定力の回復にもたつきがみられることを指摘した。』
需給ギャップの改善ペースが鈍化している影響キタコレ。
『物価の先行きを巡るリスクについて、委員は、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要があるとの認識を共有した。』
ふむ。
『何人かの委員は、家計や企業の短期的な予想物価上昇率が物価動向の実績の影響を受けやすい点を指摘したうえで、消費者物価の前年比上昇率が低い状態が長く続き、物価は上昇しにくいという予想が強まることにより、需給ギャップの改善ほどには実際の物価が上昇していかない可能性に注意する必要があるとの見方を示した。ある委員は、2008
年にかけて需給ギャップがプラスとなった局面での経験を踏まえると、今回の局面でも、食料・エネルギーを除く消費者物価はなかなかはっきりとしたプラスにはならない可能性があるとの見方を示した。また、複数の委員は、夏季ボーナスの支給状況や所定内賃金の動向を踏まえると、物価の先行きについては慎重な見方をとらざるを得ないと述べた。』
とまあそういう事で、当然ながら展望レポートの時点でこの辺の点検が行われると思うのですが、9月の金融政策決定では景気判断をどどーんと下げたのが背景にあるという理屈になっているのでございますが、8月の議事要旨を見ると景気ガーの話よりも物価に関する話の方が指摘事項が目に付くという印象を受けましたけど実際はどうなんでしょうかね。10年後にならんと判らんのですけれども10年後に覚えているとも思えず(^^)。
・佐藤さんと木内さんの主張キタコレ
最後の『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。
『ある委員は、包括的な金融緩和政策の実施から2 年近く経過した現時点でデフレを脱却できていないことを踏まえると、為替相場への働きかけなど、インフレ期待を高める一段の工夫が必要ではないかとの認識を示した。』
どう見ても佐藤委員です本当にありがとうございました。
『また、一人の委員は、市場からデフレ脱却に向けた日本銀行の姿勢に疑念を抱かれれば、政策効果が減殺される可能性があると述べた。』
これは木内委員と見ましたがどうでしょうか。
『これに対し、別の委員は、緩和的な金融環境を実体経済に波及させていくにはやはり成長力の強化が欠かせないと指摘したうえで、物価安定のもとでの持続的成長経路への復帰を目指すことは日本銀行の固い意志であることを明確に情報発信していくべきと述べた。』
・・・・・・・・いやまあそれはそうなのですが、昨日の山口副総裁講演へのマニアックな悪態を書きながら思ったのですが、「成長力の強化が必要」というのは確かに正論でして、日本の場合物価が上がりにくい背景に構造的な問題があるでしょとも思いますし、経済に対して人口動態とかも影響ない訳は無いぞなもしとは思うのですが、それら構造問題に関して直接働きかける事が出来ない立場にいる政策部門の人が構造問題を強調するというのは、「構造問題のせいにして言い訳をしている」という風にみられますぞなもしという話になるんだなあとか思ったりする訳ですな。
ですからして、まあ成長基盤強化に関してはまあ趣旨は趣旨でその通りだとは思うのですが、それを前面に主張しまくるのも如何なものかという話になるのかなあとか思うのでございました、はい。
○その他メモである
・これは後でじっくり読みたい
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2012/ron120925a.htm/
金融機関間の資金決済のための流動性について
― 次世代RTGSプロジェクト第2期対応実施後の変化を中心に ―
要旨をまる引用。
『金融機関は、コール取引や外国為替取引等、様々な取引を行っており、取引の約定成立後、資金の支払側は、決済に必要な流動性を自らの日銀当座預金に用意したうえで、日銀ネットに対し振替依頼を送信すること等により決済している。本稿では、こうした金融機関が決済のために用意する流動性の状況について、日銀ネットの決済データを使って分析した。この結果、2011年11月の次世代RTGS第2期対応(1件1億円以上の大口内為取引のRTGS化)の実施に伴い、金融機関がRTGS決済のために投入した流動性は大きく増加したが、このうち結果的に決済に利用されなかった流動性が、相応に存在することが分かった。また、次世代RTGSプロジェクトによって導入された流動性節約機能は、現在の緩和的な金融環境の下でも、一定の節約効果を発揮していることが確認された。
足もとでは、決済のために多額の流動性を恒常的に用意している金融機関が少なくないとみられる。今後、金融環境等が変化した場合には、金融機関の流動性コストに対する意識にも変化が生じる可能性がある。そうした下で、決済の円滑性を維持していくためには、各金融機関や市場・制度運営者等の幅広い関係者における対応が必要となる可能性がある。本稿の分析が、そうした検討に資することを期待している。』
本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2012/data/ron120925a.pdf
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2012/ron120925b.htm/
流動性節約機能付RTGS下における業態別・取引別の資金決済動向について
同じく要旨をまる引用。
『2011年11月の次世代RTGS第2期対応(1件1億円以上の大口内為取引のRTGS化)の実施により、次世代RTGSプロジェクトが完了した。これにより、大口内為取引、市場取引、外為円取引が、流動性節約機能付RTGS下で決済されるようになり、決済の安全性と効率性が一段と向上した。本稿では、次世代RTGSプロジェクト完了後における金融機関間の資金決済動向について、業態別・取引別に分析を行った。その結果、流動性の投入量や日中の時間帯別の受払状況、流動性節約機能の活用状況など各種の決済指標は、業態や取引によって大きく異なることが確認された。こうした違いは、日中の資金決済全体の進捗において、各業態が与える影響が異なることを示唆している。例えば、都市銀行は、大口内為取引について、支払指図の決済を朝方早くから進めているために支払いが先行しており、これは取引全体の円滑な決済に寄与しているものと考えられる。
こうした現状分析は、今後、金融機関を巡る環境変化が生じた際に、決済動向にどのような影響が現れるのかを考察するうえでの検討材料の一つになると考えられる。』
本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2012/data/ron120925b.pdf
・このインタビュー記事は中々良いです
本当はネタ投下予定だったのですが、時間が無くて投下できずにメモで勘弁。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MATYGE6KLVRD01.html
日銀は来月末追加緩和も、14年度物価1%未達なら−愛宕・前日銀課長
『9月25日(ブルームバーグ):日本銀行の物価統計課長を務めた愛宕伸康氏はブルームバーグ・ニュースのインタビューで、日銀が来月30日の金融政策決定会合後に公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、2014年度の物価上昇率見通しが目標の1%に届かなければ、同会合で追加緩和が行われる可能性があるとの見方を示した。』(上記URLより、以下同様)
ということですが・・・・・
『愛宕氏は「7−9月、10−12月は2期連続マイナス成長もあり得る」と指摘。12年度の成長率も「どんな試算をしても2%は厳しい」と語る。日本経済を左右する最大の鍵は中国経済だが、「仮に改善に転じても、反日ムードがどの程度、日本からの輸出に影響するか分からないので、日本の輸出も回復するかどうかは慎重に見た方がよい」という。
同氏は13年度成長率はプラス1.3%を予想。前年度からの統計的な上乗せ要因であるゲタが0.3ポイント、消費税引き上げ前の駆け込み需要が0.7ポイントとみており、それらを差し引くと「実力は約0.3%。潜在成長率をやや下回る水準で、需給ギャップはよくて横ばい」とみる。14年度は駆け込みの反動が出るため、「住宅投資で税制面等の経過措置をとらないと、マイナス成長になってもおかしくない」という。』
とか
『愛宕氏は「いろいろな業種の人と話すと、やはり値上げなどできないという人が圧倒的に多い。皆が価格を据え置きに決めると、物価指数は品質調整で0.2−0.3%程度は必ず下がる」と指摘。さらに、「原材料価格の上昇や、品質を向上させるためのコストを人件費の圧縮で補うことになり、そうすると消費が盛り上がらず、ますます値上げができないという悪循環に陥っている」という。』
という辺り、まあそうですなあと思いましたです、はい。
2012/09/25
お題「一読するとハトに見えるが精読すると色々怪しい山口副総裁講演@東京」
お題が長いですかそうですか^^;
○その前に雑談
・当座預金残高は過去最大を更新して今日も更新するのですが
昨日の当座預金残高速報
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx120924.htm
当座預金残高 442,100
本日の当座預金残高増減予想
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jp120925.htm
当座預金増減 +7,800
ということで、昨日は予定通りに7月2日のピーク残高を上回り、さらに本日は当座預金残高が44兆9000億円まで増えるという大変に素敵な状態になりますが、まあ見事に話題になりませんなあ(いやまあさすがにベンダー見ると時事とか共同とかはフラッシュは打っていますが)ということで。
・20日なので償還マジックである^^;
20日の営業毎旬報告
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120920.htm/
10日の営業毎旬報告
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120910.htm/
発行銀行券は10日が80兆5128億円で20日が80兆2861億円なのでまあそんなにぶれていない(当たり前だが)のですが、20日と言えば四半期大量償還になりますので長期国債の残高が10日の84兆1581億円から20日の79兆9497億円に減少となりましてまたも発行銀行券残高を下回るの巻になりましたですな。いやまあそれだけの事ですが(・∀・)。
とまあどうでも良いのですがとりあえずメモという事で。
で、追加緩和後一発目の講演しかも副総裁の講演というのをネタに(決定会合議事要旨ネタは多分間に合わないのでそれはそれでまた投下予定)。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120924a.pdf
内外経済の下振れと金融緩和
── アジア調査会における講演 ──
まあここの所白川総裁や西村副総裁が海外で華々しく(かどうか知らんが)講演をしていまして、何か山口副総裁が地味に留守居の城代家老みたいな感じでちょっと目立たなくてカワイソスと思っていたのですが、追加金融緩和実施後一発目の講演という晴れ舞台(かどうか知らんが)に山口副総裁颯爽と登場の図でございますので、まあこういうポイントの講演はヲチャー的にはじっくり読んでみたりするのですが、さて・・・・・・・・
○最初読むと普通に見えるのですが処々にツッコミどころがあるという不思議な講演
講演を総括するとまあそんな感じでございまして、お題からして「内外経済の下振れと金融緩和」ということで、この講演さらっと斜め読みしたり、ベンダーのヘッドラインだけ見ているとまあ普通に追加金融緩和に関する説明と景気の見方の弱さを示したハト講演に見えるのですが、あたくしのように一々ツッコミを入れながら読まないと気が済まない人種に掛かりますと、色々と引っ掛かる部分が存在するのですよね。
表面的には最初の『1.はじめに』を読むとまあ普通の講演に読めるのですよね。
『本日、私からは、「内外経済の下振れと金融緩和」というテーマでお話ししたいと考えています。前半では、世界経済および日本経済の現状と先行きについて概観します。後半では、そうした内外経済の状況を踏まえた日本銀行の金融政策運営についてご説明します。予めポイントを申し上げますと、以下の5点に纏められるかと思います。』
ほう。
『第1に、海外経済をみると、欧州債務問題の影響により、各地で製造業を中心に企業マインドが慎重化しており、減速の度合いをやや強めています。先行きの不確実性も依然として大きいと考えています。』
海外経済の減速および先行きの慎重な見方とな。
『第2に、こうした海外経済の減速の背景を考えるうえでは、欧州債務問題の影響ばかりに着目するのではなく、より大きな視点で捉えた方が良さそうです。すなわち、「大いなる安定(Great
Moderation)」と呼ばれた2000年代半ばにかけての時期に、先進国ではバブルが生じ、その崩壊後のバランスシート調整に今なお苦しんでいる一方で、新興国では、「大いなる安定」を支えた一因である低賃金労働力の供給余地が乏しくなる中、経済成長と物価安定の両立を図ることが難しくなっている、という大きな構図を念頭に置く必要があるということです。』
趣味の日銀ストーじゃなかったヲチャーのあたくしはこの部分で最初に「つまり欧州問題だけではなく減速という話=ハト的」と読みながらも何か引っかかるような気がピーンとするのでありまして、そのネタ(あるいは悪態)は後ほど(^^)。
『第3に、日本経済は、本年前半は高めの成長を実現してきましたが、海外経済の弱い動きを反映して、持ち直しの動きが一服しています。先行きも、当面、横ばい圏内の動きにとどまるとみられます。』
『第4に、日本銀行は、こうした景気見通しの下振れに対応し、先行きの経済が「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく」という軌道を踏み外すことのないよう、先週の金融政策決定会合において、金融緩和を一段と強化しました。』
まあこれは決定会合での説明と同じじゃな。
『第5に、日本経済がデフレから脱却するためには、このような金融面からの下支えに加えて成長力強化の取り組みを行い、緩和的な金融環境を活かしていくことが重要です。以上をご説明したうえで、今回の金融緩和を巡って聞かれる幾つかのご質問にお答えしたいと思います。』
しかしここだけ読んで終了してしまうと「山口副総裁はハト講演をしていますね」だけになってしまい、ネタにならないので更に読み込むと微妙にツッコミどころが出てくるのですな、うんうん。
○構造問題を強調するというのは一つの見解ではあるのですが・・・・・・・・
海外経済の部分で米国と中国の話をしていまして(欧州については問題が長引くというまあ普通の話)、その双方でこんなのが。
『米国では、住宅バブルが崩壊したことに伴う家計のバランスシート調整が、相応に進捗してきているとはいえ、なお根強く残っています。そうしたもとで、欧州債務問題の影響に加えて、いわゆる「財政の崖(fiscal
cliff)」について解決の目途が立っていないことや、やや長い目でみた財政再建の不確実性も意識されるようになっていることが、企業や家計のマインドの慎重化を通じて、当面、景気の抑制要因として働き続ける可能性が高いとみられます。米国経済は先行き、緩和的な金融環境にも支えられ、回復を続ける見込みですが、当面の回復ペースは、緩やかなものにとどまると考えられます。』
『中国では、政策当局が金融緩和やインフラ投資の前倒しなど政策対応を実施しており、その効果が顕在化していけば、徐々に成長ペースを高めていくとみられていました。この想定自体は今でも維持できると思いますが、減速は予想以上に長引いており、景気が減速した状態から抜け出す時期が後ずれすることは確実です。』
まあ中国の減速が予想以上だったというのが見通し下げの主因というのがこの辺りで示されてはおりますが。
『原因としては、最大の貿易相手である欧州経済の予想以上の低迷が挙げられますが、より構造的な問題もあるように思います。ひとつは、政策当局が成長の方向にアクセルを踏むことを躊躇しているようにみえることです。これは、リーマン・ショック後の大規模な財政出動や金融緩和が、物価の上昇や不動産価格の高騰に繋がった苦い経験があるためと考えられます。物価の安定と成長の両立は、多くの新興国・資源国に共通の課題です。この点は、次の話題の中で詳しくお話しします。また、中国は、長年公共投資や設備投資に偏った成長を続けてきた結果、素材産業などが構造的な過剰投資の問題を抱えており、需要と供給のバランスが崩れやすいことも原因と考えられます。』
というような話をしているのですが、より構造的な問題があるというのであれば、従来のあんさんらの「内需から外需へバトンタッチされて持続的な景気回復経路に復する」というシナリオはそもそも妥当なのかというツッコミをしたくなるのでございまして、循環的な落ち込みが想定以上というのなら兎も角、構造問題ガーとか言うのってまあ確かに先行きの厳しい見方を示すからハト的ではあるのですが、じゃあこれまでのあんさんらの見通しは何でしたねんというツッコミをしたくなるのは意地悪ですかそうですか。
更にですな、『世界経済の大きな構図』というのがありまして・・・・・・
『以上、欧州、米国、中国と個々にみてきましたが、それだけでは世界経済の全体像はみえません。先進国に共通する課題、新興国が抱える課題など、世界経済の大きな構図の中で理解すべき要素もあるように思います。』
ということでああだこうだと説明しているのですが(講演本文実質19ページの中でこの部分が3ページ分ある)、その中の説明はまあ構造要因の話。
『その後、米欧をはじめとする先進国が経験していることは、大規模なバブルが崩壊し、金融危機が起きると、経済の調整は長期にわたり、その間は低成長を余儀なくされるという、過去の歴史において度々繰り返されてきた事象です。』
『バランスシートの調整過程では、景気は思うように回復しません。上に弾みにくく、下に落ち込みやすい経済が長期間続くことになります。この事実を認識しないと「これだけの政策対応をしてなぜ成長率が高まらないのか」、「なぜ失業率は下がらないのか」というフラストレーションが表面化しやすくなります。米国にしても、欧州にしても、なおバランスシート調整過程における「普通の成長ペース」が見極められていないようにみえます。そのことは、経済政策への期待の高まりや、社会的な不安・不満といった難しい問題を生じさせているように思います。』
一見するとサラッと流しそうな部分ですが、これってまあポイントではございまして、バーナンキ議長の主張では基本的に「現在の問題は循環的に景気が悪い所に住宅問題などがあり、いわゆる自然失業率や潜在成長率が下がっている訳では無いので主に金融政策対応によってリセッション前の水準を回復できる(ただし金融政策で全て万能という訳では無いが)」というような話をしております(なお、ブラードセントルイス連銀総裁などは「リセッション前の水準はバブルで下駄を履いているので、その水準がノーマルと考えるのはおかしい」という主張していますぞな)が、山口副総裁のこの説明を見ますと「構造要因」を強調しているという事でありまして、それって「景気の悪い状態が続きます」という話ではあるのですが、別の点から言いますと「構造問題があるので金融政策の役割が限定される」というロジックにも繋がる話。
いやまあどちらが正しいとかはワカランチ会長ではあるのですが、こういう話を強調しますと、FRBが失業について「循環要因によって悪い数字になっている」というロジック(一部の地区連銀総裁は反対意見ですがまあ決定事項として出ている)で追加金融緩和を打ち込んでくる(循環要因なので金融政策による経済刺激が効くというロジック)のに比較すると、まあ意地悪な言い方をしますと日銀が「ボクたちは金融緩和やってるんだけど構造問題が有るから仕方ないんだよね」的なスタンスを取っていると見なされますぞなもしという話ではございますなあと。
という辺りをスルー致しましてこの部分を読めば、結論の
『このように、世界経済は、欧州債務問題の影響と、各国・地域が抱える固有の要因、すなわち先進国におけるバランスシート調整、新興国における持続的な成長パスの模索という、それぞれに大きな課題とが複合的に作用するかたちで、減速した状態をやや強めています。先行きは、先ほどご説明したとおり、米国経済が緩やかな回復を続け、中国において政策効果が徐々に顕在化してくるもとで、次第に減速した状態から脱していくと考えられますが、そのタイミングは後ずれしています。』
という部分を見てまあハトですなあという話になるのですが、どうもこの構造要因の強調(ちなみに最初に引用したように「成長力の強化が必要」という話をするのもこれまた構造要因の強調ではございますわな)部分が何回か読み直すうちに気になったのでツッコミという所です。
○日本経済のお話もまあハトはハト
『3.日本経済の現状と先行き』から少々。
『ただ、このところ個人消費で弱めの指標も一部にみられます。天候要因による部分もありますが、生産の弱さから製造業中心に時間外賃金が伸び悩んでいることや、夏のボーナスが減少したことが、所得面から消費を抑える方向に寄与している可能性もあります。また、エコカー補助金の受付が先週末で終了しましたが、直前にかけて駆け込みがみられなかった点は、終了後に補助金に代わるキャッシュバックを行ったり、人気の高い低燃費タイプの新型車を投入するといった販売側の対応が予想されている面もあるにせよ、需要の先食いが限界にきているとみるべきかもしれません。』
まあダメじゃんという感じですな。
『設備投資についても、基調としては増加を続ける可能性が高いと思いますが、グローバルな企業マインドの悪化の影響が出てこないか、注意してみていく必要があります。全体として、内需は底堅さを維持するとみられますが、外需の不振を補って、さらに景気を持ち上げるほどの力は期待しにくいように思います。』
ということでまあ先行きの見方も慎重。
『この間、リスク要因をみても、欧州債務問題、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きいほか、金融・為替市場動向が景気・物価に及ぼす影響には、注意が必要と考えています。』
声明文どおりですが、もうちょっと為替の言及有るかなと思ったのでやや拍子抜け。
○でまあ問題は追加金融緩和の説明部分でして・・・・・・・・
まあここまでは前座である。
『4.日本銀行の金融政策運営』の『金融緩和の強化の内容』以下がツッコミどころ(その前は大体普通の説明で声明文とか月報とかの通り)でありまして・・・・・
『先ほども触れましたとおり、今回、「資産買入等の基金」の枠を10兆円程度と大幅に増額することにしました。現下の経済・物価情勢に関する認識のもとで、長い目でみた経済・物価の見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくという軌道を踏み外さないようにするためには、大きな金額が必要と考えたためです。増額の対象については、リスク性資産という選択肢もありますが、現在わが国では、投資家の不安心理やリスク回避姿勢からリスク・プレミアムが拡大するような状況にはないため、短期国債および長期国債としました。』
ここでまあある意味丁寧というか馬鹿正直にリスク性資産の購入をしなかった説明をしているのですけれども、現状ってたとえば社債やCP市場でややスプレッドの二極化みたいな動きが起きていたりしてますし、金融環境という意味では相変わらずの円高ですしCPIはアレですし、さらに言えばまあ株価は相変わらずの低空飛行ですし・・・・・・と考えますと、
>投資家の不安心理やリスク回避姿勢からリスク・プレミアムが拡大するような状況にはないため
という状況かよ!という気がする訳でございまして、何でまあわざわざこういう事を言うんだか(確かに金融環境に関する認識は8月の決定会合で「緩和した状態」という認識に引き上げているのですが、それもまあいわゆるFCI的な観点からして如何なものかという気がしていたら、その後からCP市場での金利二極化が絶賛進行したりするのが日銀クオリティだったりします)という感じで、こういうのは正直言って黙っておけば良いのにと思うのでございます。
あとですね、この説明でおもったのですけど、そもそも包括緩和って信用緩和と量的緩和のハイブリッドでやっておりましたが、ここもとは「量で勝負」という話に傾斜している訳でございまして、一方で海外中銀では従来は量で勝負していたBOEはFLSという貸出促進スキームを打ち込み、FEDはMBS市場に特化した買入を突っ込むという信用緩和的な色彩の強い物を打ち込む(もともとECBは量では勝負していない)という流れになっている訳で、背景としては「量で勝負しても限界がある」という話になっている筈。
然るに、日銀はそもそも包括緩和した時には「単純な量で勝負しないで、買入資産の中身を見て下さい(キリッ)」という話をしていた筈なのに、何故かこのタイミングで「量で勝負」という話になってくるのかと思いますと何とも違和感というか何というか。元々は景気刺激の為にリスク資産購入して量だけでは無く質でも勝負というのが日銀の包括緩和導入当初の話ですし、大体からして構造要因に問題があるという話だったら単純な量で勝負というのは効きが悪いという結論になる(まあ日銀的には成長基盤支援オペをしていますという話になるのでしょうが)ような気がするんですが。
○景気判断に関する言い訳の往生際が悪い件について
でまあその先に『情勢判断と金融緩和のタイミング』というのがありましてですね。
『以上で、今回の措置について、背景となる経済・物価に関する判断と狙い、具体的な措置の内容、想定している波及経路とそれを活かすための成長力強化の重要性といった大きな考え方を説明してきました。以下では、今回の措置に関連して聞かれるいくつかのご質問にお答えしたいと思います。』
ほう。
『一つ目は、「なぜ今回の会合で金融緩和を行ったのか」という質問です。これは、「今までの景気判断が甘かったのではないか」という方向からの問いかけと、逆に、「10月初公表の短観や10月末の展望レポートでの点検を待っても良かったのではないか」という方向からの問いかけとがあり得ます。』
いやまあ普通に前半の論点しか無いと思いますが・・・・・・
『この点、まず景気判断につきましては、ここ数か月、欧州債務問題の影響などを背景に、世界経済の減速した状態が続いてきていたことは、総裁の記者会見、講演、インタビューなどの機会に申し上げてきました。』
はあそうですか。
『そうした中で、ここにきて多くの国・地域で製造業を中心に減速の度合いが強まり、それがわが国の輸出や鉱工業生産に明確に波及してきたことが確認されたということです。』
まあ足元でそういう数値になっています罠、ということで中国経済を中心にする海外経済の予想以上の減速が8月末の指標でアチャーとなったという話で、まあここで話を止めておけば良いものがですなあ・・・・・
『この間の世界経済の下振れは、企業マインド指標の悪化にも表れているとおり、私どもを含め大方の想定を超えるものであったと思います。』
>私どもを含め大方の想定を超えるものであったと思います
>私どもを含め大方の想定を超えるものであったと思います
>私どもを含め大方の想定を超えるものであったと思います
>私どもを含め大方の想定を超えるものであったと思います
>私どもを含め大方の想定を超えるものであったと思います
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(Д)°°キョウチョウシチャイマシタヨ
いやあのどうして「ちょっと強気の予想を引っ張り過ぎましたどうもすいません」って言えないんだか・・・・・・
とまあそういう事で、今回の山口副総裁の講演なのですが、冒頭部分を見た時にはまあサラサラ読む講演ですなとか思い、斜め読みして何か微妙に違和感が起き、さらにもう一度読むと色々とツッコミをしたくなる、とまあそういう講演でございまして、雉も鳴かずば撃たれまいという風情の内容ではございましたという所ですが、こんなに細かくツッコむ方が変態ですかそうですか(^^)。
2012/09/24
お題「月曜につき市場雑談ネタで勘弁」
たまたまここ2場所連続で大相撲千秋楽の結びの一番をテレビ観戦致しましていやもう結構なものを見せて頂きました(^^)。
ということで(どういうことだ)各種市場雑談ネタでありますが、MPMネタとかその前のFOMCネタとかでバタバタしておりましたが、スルーしておりました市場雑談ネタを少々。
○当座預金残高が7月2日のピークを上回るようです
金曜の当座預金残高
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx120921.htm
>当座預金残高 437,400
今日の当座預金残高見込
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jp120924.htm
>当座預金増減 +5,400
ということで、9月20日の四半期恒例国債大量償還の巻の影響によりまして、当座預金残高は絶賛増加中で、現在の見込み段階では今日の当座預金残高は442800億円となる予定でございまして、既往ピークの7月2日(これも6月20日の国債大量償還の余波による)の当座預金残高440500億円を上回る予定となっております。
・・・・・・・・・でまあそれはどうでも良いのですが、当座預金残高が減って日銀の引き締めで円高ガーとか言ってた人たち出てきやがれゴルァと思うのですが、すっかり話題にならんとは何たる事ぞと思って悪態がてら書いただけである。
まあ当座預金残高が積みあがっているから金利がクソ低下するのかと言われますと必ずしもそういう訳では無く、短国の入札はまあ強めで推移していますがGCレートがどどーんと下がるという話でも無いですがなという所。そもそも当座預金残高の拡大は日銀の資産買入の拡大が背景としてあるので、これからも買入残高が拡大する中ではまー普通に当座預金残高が拡大していくのですが、拡大している時はだんまりでその前に震災の影響による前年比縮小の時だけ大騒ぎとかどんだけ悪意を持った人たちだよという所で、どこぞの夕刊紙で電波浴シリーズを垂れ流しているウォッチマンとかもそうですが、それより本職の何とかストで本件のネタを大騒ぎしていた以下悪態。
○物は試しに基金国債買入ペースを計算してみたお
8月末時点の営業毎旬報告
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120831.htm/
8月末時点の日銀保有国債銘柄別残高
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/release/2012/mei1208.pdf
営業毎旬報告を見ますと基金国債残高が15兆7099億円となっておりまして、まあここから年末までに24兆円、来年6月末までに29兆円、来年末までに34兆円の残高に持って行くという計算になるのですが、一方で既往の購入分の償還分の買入も実施しないといけない(目標は買入額ではなくて残高だから)ので、それを計算しようとすると上記保有銘柄別残高を確認する必要がございますな。
ということで、あたくし上記の保有銘柄別残高に対して各銘柄の償還確認して電卓(汗)で手計算した結果(でございまして、一応検算したつもりなのですが間違っていたらスイマセン)以下のような結果に。(縦長ですいません)
2012/12までに償還するもの
2年債(296-299)3723億円
5年債(68-69)448億円
10年債(244-245)800億円
合計:4971億円
2013/06までに償還するもの
2年債(300-305)8672億円
5年債(70-74)2497億円
10年債(247-252)1360億円
20年債(24)138億円
合計:12667億円
2013/12までに償還するもの
2年債(306-311)33186億円
5年債(75-80)1469億円
10年債(253-257)4711億円
合計:39366億円
2014/06までに償還するもの
2年債(312-317)65584億円
5年債(81-84)10088億円
10年債(258-262)559億円
合計:76231億円
つーことで、実は後に来ると償還が何気にドカドカ来るので、たとえば基金残高の期間をあと半年延長しようものなら、残高維持であっても既に現時点で償還見合いで半年で7兆6200億円(これ額面ベースで、実際の買入残高ガーの話は時価ベースになると思うので多少のブレはありますけれども、まあ今の所は2年債中心なのでそんなに派手にはぶれないとは思います)あるという大変に素敵な状態で、その上これから買う分だって普通に残存1年〜2年を買ったら残高が積みあがる可能性はある(まあ基本的にカレント近辺が多いとは思いますが、カレント買ってから暫くして打ち込む投資家もいるでしょうからまだこのゾーンの買い残高が増える余地はあるでしょう)のですから、まあ中々残高維持だけでも大変というお洒落な話に。
で、肝心の手前に関してですが、9月渡での基金国債買入は先週末までの時点で3本あって、それぞれ2508+4000億円、3425+4000億円、7000+3001億円の買入となっていますので、合計しますと23934億円になりまして、只今基金国債買入残高が(アタクシの計算が間違っていなければ)18兆1000億円の所まで確定している、という事になります。
んでもって償還が上記の通りですので、年末までには24兆円−18.1兆円+5000億円(償還分)ということで、あと6.4兆円の積み上げが必要となりますので、これを残り3か月で割ると月に2.2兆円弱の購入が必要と。
んでもって来年6月末までにはこれに5兆円の残高積み上げを行うのですが、償還が上記のように1.3兆円ありますので、半年で6.3兆円の積み上げが必要で月割りすると月1.1兆円弱の購入が必要ですの。
同様に来年の年末までには5兆円積み上げ+3.9兆円の償還対応がありますので、これを月割りすると月1.5兆円弱の購入が必要になるという事で、何気に今回の基金積み上げは来年の前半よりも後半の方が買入ペースが拡大するというオサレな結果になっておりますの。
なお、2014年6月末までの買入残高維持という話になると、この半年は償還対応だけで7.6兆円の積み上げが必要ですのでそれだけで月に1.3兆円弱の購入が必要となりますぞなもしという所です。
・・・・・・・・・・・とまあそんなものはどうせどこかの本職の方がレポート書いている筈なので皆様先刻合点承知の助だとは存じますが、まあ一応あたくし自力で計算してみたのでドヤ顔でご報告という話ですが(と言いつつこれで計算ミスしてたらアホス)、この数字を見ますと次の追加緩和(10月末の会合では展望レポートで中長期的な見通しおよび中長期的な物価安定の目途に対する見通しを示すのですが、まあどう見ても中長期的な物価安定の目途の達成が遅れるのは見え見えですからして、政策ロジックとしてはそこで何らかの追加緩和が行われるでしょという話になりますぞな)では来年前半の国債買入をあと5兆円積む(だけだとしょぼいので短国買入を5兆円追加がセット)のが一番据わりが良いという話になりますな。ほとんど絵合わせパズルの世界ですが。
また、この償還スケジュールを見ておりますと買入基金の期間延長を行った場合、残高の積み上げを行ってしまうと買入が相当のペースで実施しないと回らなくなるという中々アレな事態になりますなあ実務的にそれ大丈夫かという話になりますぞな。
まあいずれにしましても、基金買入に関しては物価安定の目途達成が展望レポートの見通し期間内になる辺りになるまでは最低でも続けないといけませんでしょうし、それに加えまして、そもそも1%の目途が達成できればそれで良いかというと必ずしもそうではなく、本来的に言えば欧米並みの2%を目指すもんでしょう(いきなり2%とか言うと余りにも遠すぎるという観点から1%として置いている、という説明はさすがの麿様でも仰っていますがな)とか何とかまあそういう話になれば残高維持しましょうとかいう話になってもおかしくは無いとか考えますと、何か短い所に関しては延々と日銀様絶賛お買い上げモードが続くのではないかとオソロシスなお話。
○基金国債買入の逆イールドとな
買入下限金利撤廃後の最初の基金国債買入が木曜なので、本来はこれも先週ネタにするべきものだったのですがすいませんすいません。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120920.htm
国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 23,331 7,000 0.100 0.100
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 8,172 3,001 0.096 0.100 9.9
・・・・・・・・・ということで、2年超3年以下の方が買入予定額3000億円と少なかったのですけれども、こちらの買入は平均こそ0.100%ですけれども足切りはきっちり0.096%となって、一方の1年以上2年以下の方が0.100%足切りだったので貫録のレート逆転となったのですが、こらまあ2年の所は2年国債の発行がある分だけ需給が違いますからある意味こういう事案になってもシャーナイナイなのですが、買入の逆イールドが定着しちゃうのも何だか思いっきり「日銀の買入によって市場の需給を必要以上に歪めている」というような話になりゃーせんですかのという気はするのですけど、じゃあ買入の割り振りをどうするかとゆーのもこれまた難しく、調節担当部署におかれましては買入下限金利撤廃で積み上げの方はまあ行くにしても今度は「市場の需給を必要以上に歪める」的な部分でのお悩みが発生と言ったところで、誠に同情の念に堪えない所でございます。
○などと雑談してたら時間が無くなったのですが・・・・・・・・
ということで市場ネタ(と申しましても例によって短期物のマニアネタですが)を投下したのでございますが、FOMC以降各地区連銀がああだこうだと皆様ここぞとばかりに色々とお話になっていまして、本当はそっちのネタも投下しないといかんぞなもしという所ではございますので、まあそちらも追々投入。
まー何ですな、FEDに関してはとりあえず目先追加打ち込んだので次のアクションが直ぐにどうのこうのという話では無いと思いますので、読み物の方はネタとしての優先順位考えて(ちなみに優先順位1番はコチャラコタ総裁の失業率相当下がるまで緩和継続すべき(ただしインフレが高進しない条件で)という従来の主張よりもハトな講演ね)投入しようと思うのでございまする。
でまあ折角FEDネタの前振りだけしたので本日は一発ネタ。
・シカゴ連銀VSセントルイス連銀(^^)
シカゴ連銀の「The Federal Reserve's Dual Mandate」特設コーナー
http://www.chicagofed.org/webpages/publications/speeches/our_dual_mandate.cfm
セントルイス連銀の「inflation-targeting」特設コーナー
http://www.stlouisfed.org/inflation-targeting/
まあどちらのコーナーも暫く前からあるのですが、両総裁の主張とシンクロしていて味わいがあるというものでございます(^^)。
#ということで本日は雑談ネタで簡単で勘弁ということで
2012/09/21
お題「月報とか総裁会見とか」
決定会合レビューネタはまだ続く^^;
○金融経済月報:先行き見通しが下がっているのですが・・・・・・
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1209.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1208.pdf(前回)
例によって概要部分だけで勘弁。
・現状判断
『わが国の景気は、持ち直しの動きが一服している。』(今回)
『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(前回)
ということで総括判断が下がったのは声明文と同様です。で、個別需給項目に関しては今回の声明文では無かったので以下概要部分で確認となるので確認ですな。
『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっている。一方、国内需要は、復興関連需要などから底堅く推移している。すなわち、公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、雇用環境が改善傾向にあるなかで、底堅く推移している。住宅投資も持ち直し傾向にある。』(今回)
『海外経済は、緩やかながら一部に改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。輸出は持ち直しの動きが緩やかになっており、生産も足もと弱めとなっている。一方、国内需要をみると、公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(前回)
海外経済が「減速した状態がやや強まる」と判断が下がったのはこれまた声明文どおりでございまして、以下個別需要項目を見ると輸出が「持ち直しの動きが緩やか」から「弱め」に下がり、生産に関しても「足もと弱め」から「弱め」という形で、まあこちらは前回と同じちゃあ同じですが、「足もと」というのを抜いて弱くなっているニュアンスをやや強めています。
個人消費に関する部分では、「緩やかな増加」から「底堅く推移」とこれまた判断を下げておりまして、その背景になっている部分について「消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果」となっているのが「雇用環境が改善傾向」という形に変わっておりますな。
・先行き見通しなのですが・・・・・・・・
『先行きのわが国経済は、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられるが、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)
ということでほほうという感じなのですが、声明文では「当面横ばい圏内の動きにとどまる」という所で終了している訳ですが、月報の方ではその次の部分がありまして、そこは従来の見通しを残しているという何とも微妙なテイストで、一瞬「あれ見通し下がってないのか」と思ってしまいましたぞなもし。
・・・・・・・でまあ次にネタにする総裁会見を見るとまあその答えがあるのですが、会見での説明は「景気のメインシナリオを下方修正した」とありまして、「回復時期が後ずれしている」という説明をしております。でもって今回の追加緩和の意図として「従来の見通していた軌道を踏み外さないようにするために」という説明になっておりますので、これはまあつまり「今回の追加緩和が効果を出すことによって先行きの回復という流れが維持できると良いなあ」ということでまあ見通しの後半部分を維持しているという話でございましょうな、うんうん。
個別需要項目は以下のような感じです。
『輸出や鉱工業生産は、当面弱めに推移するとみられるが、その後は、海外経済が減速した状態を次第に脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などから、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、当面海外経済減速の影響を受けつつも、企業収益が総じて改善を続けるもとで、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費は、雇用環境の改善傾向が維持されるもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。』(今回)
『輸出は、海外経済が減速した状態を脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が改善傾向をたどるもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)
ということで、輸出と鉱工業生産の部分では「当面弱めに推移するとみられるが」というのが入っておりまして、当面の見通しが下がっているものの、その先に関しては引き続き「海外の減速が脱却したら増加」という見通しを維持しているのが微妙にアレではございますけど。
でもって他の部分に関してはまあ微妙に変化はあるものの、基本的な部分についてはそれほど大きな変化はありませんな。まあ何でそんなに変えていないのかは先ほどの通りだと勝手に推察します。
・不確実性の部分では「欧州債務問題」が抜けて「円高」が入る
ここは声明文でもございましたが、要するに円高懸念というのが入るというのが今回の変化として大きな部分の一つでございます罠。
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きいほか、金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要である。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。とくに、欧州債務問題に伴う国際金融資本市場の状況については、十分注意してみていく必要がある。』(前回)
ということで為替市場動向というのに思いっきり言及しているのが何度も申し上げていますが、まあ今回踏み込んだなという所かと思います。
・物価見通しは変わっていないようですが
物価の現状認識。
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、既往の国際商品市況の反落などから、下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、既往の国際商品市況の反落などから、下落に転じている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)
まあここは数字的な話なので良いとしまして先行き見通し。
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、下落幅を縮小していくとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、国際商品市況の反落の影響が残ることなどから、緩やかな下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)
ということで、物価見通しは変わっていないのですけれども、金融経済月報では「当面」の話しかございませんで、金融政策運営として呈示している「中長期的な物価安定の目途」というのが有る訳で、では中長期的な物価見通し、つまり例の「遠からず1%に達する」というのがどうなったのかという話は総裁会見の方に。
#金融面は特に言及する部分も無いので引用割愛します。
○総裁会見から:今回はメインシナリオの下方修正
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1209b.pdf
・冒頭説明部分から
冒頭説明の所が例によって長くていきなり3ページ分あるのですが、メインシナリオを下方修正しましたぞなというのが2ページのケツ辺りから説明されています。
『これまで、景気の先行きについて、やや長い目でみれば、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していく、という判断を行ってきました。また、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、徐々に緩やかな上昇に転じ、2014
年度以降、遠からず1%に達する可能性が高い、と判断してきました。』
『しかし、先程申し上げたような情勢判断を踏まえると、日本経済がこうした「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく」という軌道を踏み外さないようにするためには、一段の金融緩和を行うことが適当であると判断しました。すなわち、資産買入等の基金を10
兆円程度と大幅に増額するとともに、資産の買入れを着実に進めるための措置を講じることとしました。』
という事で、「「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく」という軌道を踏み外さないようにするためには」とか微妙な物言いをしていますが、まあ要するに「追加緩和措置を打たないと見通しの達成が難しくなってきた」という話ですな。
・シナリオ下方修正を明言し「展望レポートを待たずに」追加緩和実施ということは・・・・・・
で、冒頭説明の後に最初の質問がこうなっていまして。
『(問) 景気判断については、前回の決定会合に比べると下振れリスクを強く意識した内容に変わっていますが、景気回復の時期、あるいは物価上昇率が1%に達する時期は、日銀のこれまでの想定に比べて後ずれしているという認識でよいのでしょうか。』
その答えですが・・・・・
『(答) 最初に申し上げると、下振れリスクを意識したというよりも、メインシナリオ自体を下方修正したということです。』
メインシナリオ下方修正キター!
『わが国の景気は、振り返ってみると、本年前半は「年率3%」と「緩やか」という形容詞で表現できる以上の高めの成長を実現しましたが、その持続性については慎重に見極めていく必要があると考え、「緩やかに持ち直しつつある」と表現してきました。とりわけ世界経済の下振れリスクに注意を払ってきましたが、実際このところ、世界経済は減速感を強めてきました。』
ということで海外経済の減速がメインシナリオ下方修正の最大のトリガーのようですな。後はまあ先月末の鉱工業生産とかも衝撃の弱さでしたけれども、その背景がこれまた同じで海外の減速に伴う輸出の減速なのですから、まあよーするに従来の回復シナリオにあった「海外が回復してそれに回復ドライバーが内需からバトンタッチ」というのがどう見ても無理ですなという話になったという所。
『そうした中で、わが国の景気についても、本日の会合で「持ち直しの動きが一服している」と判断を下方修正し、先行きも当面横ばい圏内の動きにとどまるとみています。そうした状態から脱して緩やかな回復経路に復していく時期については、半年程度後ずれすると予想しています。』
その半年の根拠はどうなんでしょとか思いますがまあ兎も角。
『これまで、景気の先行きについては、やや長い目でみれば国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくという判断を行ってきました。また、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、徐々に緩やかな上昇に転じ、2014
年度以降、遠からず1%に達する可能性が高い、と判断してきました。』
さいですな。
『しかし、先程述べたような情勢判断を踏まえると、日本経済がこうした「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく」という、日本銀行として当初想定していた軌道を踏み外さないようにするためには、展望レポートを待たずに一段の金融緩和を行うことが必要であると判断し、本日の決定を行ったということです。』
>展望レポートを待たずに
>展望レポートを待たずに
>展望レポートを待たずに
・・・・・・・・・つまり、経済物価見通しが展望レポートで示された経路ですすんでいるのであれば、展望レポートの見直し時期の点検作業によって金融政策をどうするかというのを決定する、というパスで問題は無い筈なのですが、今回に関しては「経済物価見通しが展望レポートで示された経路で進んでいない」ので「展望レポートを待たずに」追加緩和をする、とまあそういう理屈になっているのですな、うんうん。
・今回の対応はまあ協調緩和では無いです罠
まあ当然こういう質問が来ますが。
『(問) 9 月に入り、ECBが無制限の国債買入れを表明し、続いてFRBがいわゆるQE3を表明しましたが、こうした欧米の中央銀行の動向が今回の日銀の政策判断に影響したのかどうか、お伺いします。』
『(答) 各国の中央銀行は、常にそれぞれが置かれた経済・金融情勢に応じて、最適な政策を行うよう努めており、日本銀行も含めてどの国の中央銀行も、他国の中央銀行がある政策を行ったから自分たちも行う、という機械的な対応は採っていません。(以下割愛)』
でまあ別の質問に関する説明部分でこういうのがありまして。
『少し具体的に3 つの次元で申し上げます。1 つは、政策課題との関係です。FRBの場合は、米国経済の問題の中心である住宅市場の下支えが重要であるとの観点から、MBSや期間の長い国債の買入れを行っているということです。ECBの場合は、周縁国の国債金利が財政の問題も反映して上昇している中で、その周縁国の国債を一定のコンディショナリティのもとで買い入れることで、金利上昇に対応した政策を採っているということです。日本銀行については、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが重要な課題だという認識のもとで、リスク性資産を含めて様々な資産を幅広く買い入れると同時に、成長基盤強化の支援という、中央銀行としては異例の措置にも踏み込んでいるということです。』
これは金融緩和が積極的かとかいう質問に対する答えの部分なのですが、まあここの説明にありますように、今回の措置ってECBは危機対応の国債買入、FRBは景気判断を引き上げながらの労働市場重視の追加金融緩和となっていて、日銀の場合は景気判断の引き下げによる追加金融緩和と、まあ「景気判断による追加金融緩和」という一番素直な金融緩和措置でございまして、そういう意味では各国中銀のロジックが全然違う中ですから協調行動とかそういうのは表面的な見方という話になろうかと思います。
・日本の方がコミットメントが強いんですがという説明ではありますが・・・・・
上記の後半部分の答えの元質問はこちら。
『(問) 2 つお伺いします。1 つ目は、欧米の中央銀行の政策との比較についてです。9
月にECBとFRBがそれぞれ緩和の強化を打ち出しています。ECBは無制限に国債を買い入れる、FRBは期限をはっきり定めずに毎月MBSを買っていくという策を打ち出しています。日銀も、今回、緩和を強化したわけですが、ECBやFRBと比較すると、外形的には、「無制限」「無期限」という形の欧米に比べ、緩和姿勢が弱いとみる向きもあると思います。この点について、総裁はどうお考えですか。(2番目は次に)』
『(答) まず、各国の中央銀行は、それぞれの国や地域の政策課題や金融経済情勢を踏まえ、最も効果的な政策手段や政策の枠組みを選択するよう努めていると思います。従って、FRBあるいはECBとの比較で、日本銀行が、金融政策において、先程おっしゃった「大胆さ」あるいは「積極性」において見劣りするとは思っていません。』
ほう。
『緩和に対する姿勢は、どのような手段あるいは武器を使ったかではなく、どのような手段あるいは武器を使おうとも、最終的にどのような金融緩和の状態を実現したかという結果でもって判断されるものと思います。』
ほうほう。
『そういう意味では、先程も少し触れましたが、日本の金融環境は、先進国の中でも最も緩和的だと思っています。』
実質金利ェ・・・・・・・
というのは兎も角として、まあこの先の説明部分は中々良い説明。最初の部分はさっき引用した通りなのでその先から。
『第2 に、資産買入れの上限や期限についてです。FRBは、先週のFOMCにおいて、MBS買入れの上限や期限を予め定めず、労働市場の見通しが改善するまで継続すると決定しました。もっとも、予め上限や期限を定めておくかどうかに関わらず、政策目的の達成に不十分と判断されれば金融緩和を強化するという考え方は、どの中央銀行も同じです。』
これは仰る通りで、ECBにしてもFRBにしてもコンディショナリティ―付の「無制限」であって、ドラギ総裁が定例理事会の冒頭で説明したように「あらかじめ上限を設けない」というのが正確な話なんですよね。
『例えば、日本銀行では、資産買入等の基金に上限や期限を定めていますが、それらを累次にわたって拡大、延長してきており、当初の残高目標は35
兆円程度で期限2011 年末であったのが、現在は80 兆円程度で期限2013 年末と、当初の予定を遥かに上回る、大規模かつ長期の緩和政策となっています。』
ということで、必要ならば延長を続けるというのは物価安定の目途で示しているので、別に日銀の基金だって期限が来たら自動終了ではないのですよね、という話を更に詳しく説明。
『第3 に、実質的なゼロ金利を維持する期間の示し方です。FRBは、例外的に低い水準の政策金利が、少なくとも2015
年央まで正当化される可能性が高いとしていますが、これはあくまでも現時点での経済・物価見通しを前提にした場合の蓋然性を述べているものであって、2015
年央まで低金利を維持するというコミットメントではありません。』
その通りですな、というかこういうのを説明する辺りちょっと白川さんバーナンキにムッとしているのではないかと勝手に妄想を逞しくするあたくし。
『一方、日本銀行の場合は、当面の「中長期的な物価安定の目途」である消費者物価の前年比上昇率1%が見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していくこととしています。これは、政策の時間軸を日本銀行が目指す状態を見通せるかどうかに紐付けた明確なコミットメントです。』
こらまた微妙な説明ですが、この「中長期的な見通し」という部分だって裁量部分が入るので、「紐付けコミットメント」というのは説明的にどうなのかねという気はせんでもないが、まあ経済状況から考えて日本の方が結果的に低金利が長期化しそうなのはその通りでしょうな。
『従って、「日本銀行の政策の方が大胆さに欠ける」という批判については、政策の内容についてもそうは思っていませんし、政策の結果として実現している金融環境についても、そうした批判は全く当たっていないと強く思います。』
だそうな。
・物価見通しについて
先ほどの質問の2番目。
『もう1 点は、先程の質問と関連しますが、景気の先行きについて、当初のシナリオよりも回復時期が半年程度後ずれする可能性があるとの認識を示されましたが、物価についても、「2014
年度以降、遠からず1%に達する」という見通しが後ずれする可能性があるのか、お考えをお聞かせ下さい。』
これは良い質問。
『それから、物価上昇率1%の達成時期が後ずれしたのかというご質問です。半年に1
回、展望レポートを示す時には、経済・物価について包括的、体系的に検討を行い、その上で数字を出していくわけですが、今回は、経済のシナリオを基本的に修正していくに当たり、先々の経済・物価についてもある程度の見方を共有しながら議論を進めました。』
ほう。
『政策判断に当たって、私ども自身が望ましいと思っている姿を目指して最適と思われる政策を展開するわけですが、そうした軌道を踏み外さないように、今回、こうした対応を採ったということです。数字については、10
月末の展望レポートでお示ししますが、私どもの政策判断との関係でいえば、そうした望ましい状況に至る軌道を踏み外さないように、今回の対応を採ったということです。』
何か答えを誤魔化しておりますが、まあ要するに「遠からず1%に達する」というのはどう見ても遠ざかっている(大体からして物価見通しの前提に「経済回復で需給ギャップが縮小して物価が上昇する」というのがある訳で、その一方で見通しの経済回復が遅れるというのですから当たり前ではあるのですが)という所なのでしょうが、その辺は展望レポートで、という事でしょう。
つまり、展望レポートの所ではきっちりとその「遠からず1%に達する」の見通しが少なくとも後ずれするという形になって、そうなりますと必然的に追加金融緩和が必要という、まあそんな流れになるんでしょうなあというのは把握しました。
#もうちょっとあるのですが今日はこの辺で勘弁
2012/09/20
お題「さすがに今回は評価したい追加金融緩和」
ええまあ昨日は「どうせ麿だから」と思いっきり悪態を散々申し上げておりましたが、こりゃまた大変すいませんでしたという所でございます。なお、予想のような物は豪快に外しましたので謝罪はしないでも無いですが賠償は受け付けませんのでよろしゅうに。
○声明文より:景気認識と先行き見通しを引き下げ、リスク要因に為替動向を追加
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120919a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120809a.pdf(前回)
なお、英文声明文の比較も入れていきますので英文版の声明文のURLもつけておきます。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120919a.pdf(今回英文)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120809a.pdf(前回英文)
今回は追加緩和に関する部分があるので景気に関する表現が前回(は現状維持)と比較して全体感のみの説明となっていますが、まあその辺は何かの措置を実施した時の仕様につきご勘弁ありたし。
・海外経済について
『海外経済は、減速した状態がやや強まっている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退しているものの、今後の市場の展開には十分注意していく必要がある。』(今回)
『海外経済は、緩やかながら一部に改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。国際金融資本市場では、欧州債務問題を巡る懸念等から、神経質な動きが続いており、当面十分注意してみていく必要がある。』(前回)
ということで、海外経済についてこれまで入れていた「一部に改善の動き」というのが外れて、「減速」という形になっているのが下げ。欧州債務問題に関しては(そらまあECBのOMTが打ち込まれたのですから当たり前ですが)「リスク回避姿勢はやや後退」と現状認識を上げていますが、先行きについては「十分注意していく必要がある」が不変ですな。
でですね、この海外経済の部分を英文で見るとこうなります。後半の国際金融市場云々の前の部分だけを比較しますと・・・・・
『Overseas economies have moved somewhat deeper into a deceleration phase.』(今回)
『Overseas economies have shown moderate improvement, though limited in
scope; on the whole, they still have not emerged from a deceleration phase.』(前回)
まあ日本語の表現と同じちゃあ同じですけれども、deceleration phaseから依然としてemerge(=持ち上がる)していないというのが、思いっきり今回はimprovementの文言が外れてdeceleration
phaseに向けてmoved somewhat deeperとなっておりまして、英文で見た方が下方修正のニュアンスがより見やすいという感じがします。
・国内経済について:景気の現状認識
ここの部分も細々見てみるのだ。
『わが国の景気をみると、本年前半は堅調な内需を背景に高めの成長を実現してきたが、上述の海外経済の状況を反映し、持ち直しの動きが一服している。』(今回)
『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。(以下個別需要項目の部分は割愛)』(前回)
現状認識を「持ち直しの動きが一服」と下げていますが、こちらの英文はと申しますと・・・・・
『Japan's economy registered relatively high growth in the first half of
2012, supported by the firmness in domestic demand. Nonetheless, the pick-up
in economic activity has come to a pause, reflecting the aforementioned
developments in overseas economies.』(今回)
『Japan's economic activity has started picking up moderately as domestic
demand remains firm mainly supported by reconstruction-related demand.』(前回)
ということで、「started picking up moderately」としていたものが「the pick-up
in economic activity has come to a pause」と、こちらも英文で見た方がニュアンスとして下方修正しましたねえという感じがするのですがどうでしょうか。しかし「aforementioned」って確かに英和辞典見ると「先に述べた」って訳があるのですが、中々お目に掛かれない単語のような気がするんですけれども(^^)。
・国内経済について:物価の現状認識
『この間、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっているが、既往の原油価格の下落が下押し要因となっている。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)
ここはまた微妙で、下押し要因の説明をしつつも、その要因は一時的要因ですよというアピールをしているという中々難しい説明(英文読んでもニュアンスは同じような感じなので引用割愛)。
・国内経済について:先行き見通し
でまあ今回は展望レポートを待たずに先行き見通しを下げたのは、まあタイミング的にはここで下げておくのが良いという話を昨日申し上げた通りの結果になってほほーという感じです。
『こうしたもとで、当面、景気は横ばい圏内の動きにとどまるとみられ、消費者物価の前年比はゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)
まあようやく「緩やかな回復経路に復していく」から「当面横ばい圏内」に見通しを引き下げたかという感じですが、その見通しの引き下げによって資産買入基金拡大と基金買入の期間延長を行っているという建付けになっておりますぞなという所です。
あとですね、消費者物価の見通しですが、これはここの日本語の接続の関係上仕方ないのですが、今回の声明文の日本文を見ると「当面」がどう掛かっているのかが微妙で、消費者物価の見通しが下がったかのように見えるのですが、英文声明文を見ますと・・・・・・
『Against the backdrop of these developments, economic activity is expected
to level off more or less and the year-on-year rate of change in the CPI
to remain at around 0 percent for the time being.』(今回)
『As for the outlook, Japan's economy is expected to return to a moderate
recovery pat has domestic demand remains firm and overseas economies emerge
from the deceleration phase. The year-on-year rate of change in the CPI
is expected to remain at around 0 percent for the time being.』(前回)
ということで、CPIの見通しの所に前回も今回も「for the time being」ってありますので、CPIの見通しそのものに変化がある訳ではありません。しかし横ばいって「level
off more or less」って言うのか・・・・・
・景気リスク要因:ついに円高(と株安かも)に言及とな!
『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きいほか、金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要である。』(今回)
『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。』(前回)
今回は思いっきり「金融・為替市場動向」というのを入れていまして、まあ金融市場というのが海外金融市場なのか株価なのかがよく判りませんが、為替市場動向というのはどこからどう見ても円高の影響懸念ですので、まあリスク要因部分ではありますが円高進行の悪影響について言及したのは、ちょうど昨日ネタにした先般の大阪での麿講演での為替に関する言及っぷりから見たら上出来上出来。
英文でもその部分はちゃんと記載されています、当たり前ですが。
『Regarding risks, there remains a high degree of uncertainty about the
global economy, including the prospects for the European debt problem,
the momentum toward recovery for the U.S. economy, and the likelihood of
emerging and commodity-exporting economies simultaneously achieving price
stability and economic growth. Furthermore, attention should be paid to
the effects of financial and foreign exchange market developments on economic
activity and prices.』(今回)
『Regarding risks to the economic outlook, there remains a high degree
of uncertainty about the global economy, including the prospects for the
European debt problem, the momentum toward recovery for the U.S. economy,
and the likelihood of emerging and commodity-exporting economies simultaneously
achieving price stability and economic growth. Regarding risks to the price
outlook, careful attention should be paid to future developments in international
commodity prices and in medium- to long-term inflation expectations.』(前回)
大体日本語通りですけれども、こちらでも為替市場への言及をしてアピールしておりますな。
・追加緩和実施で「一段と強力な追加緩和」と
まあそらそうですが。
『こうした景気・物価情勢を踏まえ、日本銀行は、資産買入等の基金を10 兆円程度と大幅に増額するとともに、資産の買入れを着実に進めるための措置を講じることが適当と判断した。これらによる一段と強力な金融緩和の推進は、長めの金利やリスク・プレミアムへのさらなる働きかけを通じて、企業や家計等の金融環境をより緩和的にする。本日決定した金融緩和の強化は、これまでの措置の累積的な効果と相まって、日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくことを確実なものにすると考えられる。』(今回)
ここは追加緩和実施で今回入っている文言ですが、これに対応する英文では、
『Based on these economic and price developments, the Bank of Japan judged
it appropriate to expand the total size of the Program substantially by
about 10 trillion yen and take the aforementioned measure to ensure the
steady implementation of asset purchases. These measures in pursuit of
powerful monetary easing will make financial conditions for such economic
entities as firms and households even more accommodative by further encouraging
a decline in longer-term market interest rates and a reduction in risk
premiums. The Bank expects that, together with the cumulative effects of
earlier policy measures, today's decision to enhance monetary easing will
ensure the return of Japan's economy to a sustainable growth path with
price stability.』(今回)
ということで、ここで「measures in pursuit of powerful monetary easing」と入れていまして、最後のパラグラフには元々「the
Bank has been providing support to strengthen the foundations for economic
growth and pursuing powerful monetary easing.」というのがございまして、「pursuing
powerful monetary easing」というのを2回入れる形でまあ強調していますなという所ではございます。
・最終パラグラフは同じ
ここの文言は前回と同じです。
『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。こうした認識のもとで、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進している。今後とも、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて間断なく金融緩和を進めていく。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく方針である。』(今回)
前回と全文一致ですので前回分の引用は割愛します。でまあどうでも良い話ではあるのですが、英文の声明文のこのパラグラフなのですが、英文自体は全文一致なのですが、何故か改行位置が違うのでどこか変更があったのかやたら悩んでしまいましたです、はい。
○基金買入の拡大と買入期間の延長と資産買入の下限金利撤廃
声明文別紙(ファイルの3ページ目以降)とこちらを参照。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120919b.pdf
「資産買入等の基金運営基本要領」の一部改正等について
ということで今回は、
(1)短国買入5兆円拡大で拡大分を来年前半に積み上げる
(2)長国買入5兆円拡大で拡大分を来年後半に積み上げる
(3)(2)の結果として来年末まで他の買入分の残高を維持する(=基金の期間来年末まで延長)
(4)従来1年以下だけだった買入系オペの買入下限金利の0.1%を撤廃する
というセットになっています。
でですな、まああたくし的解釈からしますと、買入の拡大分の積み上げ期間について、短国なら年内、長国なら来年前半でも十分回ると思ったのですが、今回わざわざ買入分を後に持って行ってまして、その点で言いますと買入のペースが足元で拡大しないという話ではあるのですけれども、逆に来年になっても買入の残高が拡大するということですので、買入がオファーベースでは継続するという形になります。手前でどどーんと増やすよりも先の方まで買入が続くという形を取っているのは、米国のいつまでやるのかワカランチ会長なMBS買入のメソッドをちょっと意識しているのかなあと思いましたけれども、まあ市場的には手前でどどーんと買入が増えてその後は残高維持ペースに買入オファーが減るよりは日銀要因による需給のブレが平準化されますなという所でしょうか。
でもって今回は基金の期間を来年末まで延長となりましたが、景気見通しを引き下げた事にも対応しておりますぞなという所で、展望レポートを待たずに景気見通しの引き下げと買入期間の延長を行ったのは、まあ従来のシナリオがちょっとお前それ楽観的だろという内容でしたので、現実的な対応で誠に結構という話ではございますな。
さらに買入系オペの買入下限金利の0.1%を撤廃したわけですが、これは基金残高の積み上げという意味では撤廃するのがテクニカルに必要な話でして、これによってとりあえず基金買入対象銘柄の3年以内の国債金利がどの程度下がるかというとまあそんなに極端には下がらないとは思いますけれども、0.1%じゃないと入れられないという状態が解消されるので札が入りやすくなる分だけ需給が良くなりやすいという面もありますな。とは言え金利が下がってくると今度は当該年限の国債売って日銀当座預金に積み上げてしまえばヨロシという動きが出ますので、そうそう金利が馬鹿下がりとかにはならないという所でしょうな。
でね、この下限金利撤廃というのは「基金残高の積み上げをしやすくする」という事に繋がるのですけれども、それは当然ながらその買入拡大の結果として、「日銀当座預金残高が拡大する」という事になります。従いまして逆から言いますと「日銀当座預金残高の拡大をしやすくする」事によって「基金残高の積み上げが進む」という事になる訳でございまして、それはどういう事かと申しますと、日銀当座預金残高の積み上げをしにくくするような超過準備付利金利の撤廃などの引き下げ措置は施策として遠のいた、という事になる訳でございますのでその辺は誤解の無いように。
まあそれから、これによって買入オペの札割れ問題は解消されますから、買入対象銘柄の期間長期化も遠のいたという風に解釈できると思います。
○つーことでちょっと雑感
まあ何ですな、今日のモーサテでどこぞの株式コメンテーター(電話)が「日本の緩和が足りない」とか言ってましたが、日銀って元から他の中銀が買わないETFとかREITとか中銀的には結構無茶なもん買っているんですけどねえ。つーか長期債の購入だって昔から輪番を無期限に実施しているのは日銀だけですがな、というような従来からの話をスルーして目の前の現象面だけで日銀ガーとかクレクレ言ってるとか何なんでしょうねとか思いましたがそれは兎も角。
まあ先般のFOMCだも重要なのはMBSの買入がどうのこうのというのもありますが、それに加えて「ビハインド・ザ・カーブ」的な緩和スタンスの表明というのが重要なポイントであったと思いますので、まあそういう意味では今回の日銀の措置はここもとの麿モードからちょっと軌道を変えたというのが同じく重要ポイントだなあと思いましたけどどうなんでしょうか。
昨日の駄文でも申し上げましたが、もとより足元では政策委員の皆様の中で宮尾委員が明確に為替への懸念なども含めて下振れリスク強調の話を強いトーンで行い、山口副総裁も為替に振れて下振れリスクの話をしていましたし、西村副総裁は中国の不動産バブルへの言及など、やはりやや景気に弱いトーンの話をしておりました。
で、新任の佐藤委員は景気物価見通しが明らかに弱く、木内委員についてはちょっとその辺微妙によく判らない面があるのですが、まあ基本的には景気への見方は強くはない、というのは概ね示されていたと思いますので、先月末の鉱工業生産の衝撃の糞数字とか、海外経済のアレとかを見て麿がやっと諦めたのか、中の人たちが頑張って麿を押し切ったのかは存じませんが、まあ昨日申し上げた「そうは言ってもどうせ麿が突っ張るだろうからねえ」というイメージとは思いっきり違う結果になったのは中々結構な結果ではございました。
この前のFOMC出た時にも申し上げましたが、そもそも「景気認識を引き上げながらも追加金融緩和」というのは4月29日の時に実施しています(ちなみに2月の物価安定の目途とのセットでの金融緩和時には景気認識は引き上げてはいなかったものの下げてもいなかった)が、その後麿総裁が何か変なもんでも食ったのかという勢いで急に麿モードになっていて何かどうも顔が麿のきかんしゃトーマスが突っ走るでござるの巻という感が漂っていたのがここへ来て軌道修正というか元々の軌道に回帰してきたという感じでまあ良かったですねという所ではございます。足元で日銀の政策変数が何が何やらワカランチ会長的な所があったのですが、景気見通しに基づく中長期的な物価見通しと、その見通しのリスク認識を見ながらの緩和スタンスの継続強化というロジックが少し元に戻って見えやすくはなったかなあ、などと斯様思うあたくしではございました。
なお、市場の反応としては株高円安で債券は先物20銭とか上昇したのですが、その後はとりあえず上がったので戻り売りの人の実弾だか何だかの影響で先物は失速するわ、カーブはスティープするわという結果だったようですが、まあそんなもんですかね。
#とまあそんな所で本日は勘弁
2012/09/19
お題「決定会合プレビュー関連雑談/バーナンキ会見ネタ続き」
ここ数日のモーサテでの為替コメント聞いてますと「決定会合に注目」とか言ってるのですが、その割には「今回の追加緩和は無し」という予想が多かったりするのは何ですねんという気がしますが・・・・・・・
○決定会合プレビューのマクラで今さらの大阪での麿講演&会見(8月24日分)
ということで本日はMPMなのでございますが、ここの所の政策委員の皆様の講演などを拝読しますと、西村副総裁が中国のバブル警戒の話をしてみたり、山口副総裁、宮尾委員が景気下振れリスクに対する話をしてみたりと、まあ割とその系統の話も多いのですが、何せ麿が・・・・・・・
8月24日の総裁講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120824a1.pdf
記者会見
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1208c.pdf
この時期はECBの方が注目ネタだった上に、講演内容も会見内容も毎度の麿モードだった事もあって債券市場的には華麗にスルーという感じでしたけれども、では改めて何で華麗にスルーしていたかを観察、と言いつつネタにしないでサボっていた言い訳をするあたくし。
まずは講演からですが、景気の先行き見通しに関して。
『いずれにせよ、先行きのわが国景気の展開を考えるうえでは、堅調な内需が景気を支えている間に、海外経済が減速局面を脱し、外需が回復していくかどうかが重要なポイントになります。』
ということで、まず内需の要因の説明をしているのですが、
『第1に、エコカー補助金等の政策効果が挙げられます。』
『第2に、広い意味での震災関連需要があります。』
『第3に、企業収益の改善を背景とした企業マインドの改善とそれを受けた賃金・所得の下げ止まりが挙げられます。』
『第4に、高齢化対応ビジネスなど、企業が潜在需要の掘り起こしに成功する例が増えてきているようです。』
『第5は、円高による輸出下押し効果と裏腹の要因ですが、実質購買力の高まりです。』
ということで、まあこの辺の話は前回決定会合後の記者会見でも同じような話をしておりまして、まあ円高の実質購買力高まりとか言わずもがなでしょという悪態も以前申し上げた通りなのですが、この講演後に国内もそうですし海外もうんこな経済指標がホイホイと出ているように見えますが、その辺を受けて麿様がどういう判断をするのかという話でしょうかね。
でまあ外需。
『他方、問題の外需ですが、回復のタイミングも含め、様々な不確実性が存在します。』
というのもいつもの話。
『先ほど申し上げたとおり、欧州債務問題は既に世界経済やわが国経済に大きな影響をもたらしており、この点は私どもの経済・物価見通しにも既に織り込んでいるところですが、この問題がさらに深刻化し、国際金融資本市場の動揺、ひいては世界経済の一段の下振れにつながるリスクについては、引き続き、最も強く意識しています。』
なのですがECBの対応でリスクが下がったとか言い出しそうな悪寒。
『中国経済については、金融緩和などの政策対応の効果もあって、インフラ投資や不動産販売など内需の一部で改善の兆しが見られ始めていますが、欧州向け輸出の弱さが続く中で、減速局面がさらに長引くことがないかどうか、十分な注意が必要です。』
てか固定資産投資も遅れてね?
『米国経済についても、緩和的な金融環境等に支えられ、緩やかな回復が続くとみていますが、バランスシート調整が徐々に進みつつあるとはいえなお重石として作用するもとで、財政政策に関する先行き不透明感が強い状態が続いており、その回復力を注視していく必要があります。』
まあそれよりも雇用回復が遅れているのですが。
・・・・・・でまあこの辺の話も従来の話と特段カワランチ会長ですが、この講演後に景気判断の変更をするような感じになっているのかどうかは麿の腹次第的なイメージがががが。
でまあ今月の追加とか麿的にどうでしょうかねと思われるのは金融政策に関する話の部分。
『実際に金融緩和を推進していくため、日本銀行では、「資産買入等の基金」と呼ばれる金融資産の買入れプログラムを実施しています。これは、国債をはじめとする幅広い金融資産を市場から買入れることにより、長めの市場金利の低下やリスク・プレミアムの縮小を促すための措置です。日本銀行は、2月と4月にこの基金の枠を相次いで拡充し、来年6月末までに、残高を70兆円程度まで積み上げることとしています。ちなみに、現在の残高は57.8兆円です(図表12)。』
ほう。
『日本銀行の金融緩和については、金融政策決定会合の都度、この基金の残高目標引き上げの有無に注目が集まりがちですが、現在はさらに12
兆円強の基金の積み上げを行っている途上にあります。このことは言い換えると、金融緩和の効果は今後も間断なく強まっていくということを意味しています。』
・・・・・・・・・・これまた毎度の説明なのですが、結局これかよという話。まあここにありますように、わざわざ大阪に総裁出張った割にはいつもと同じ話しかしていないのが残念な上に、こんな事まで言い出して、円高で困っているのにお前は喧嘩を売ってるのかという風味を醸し出す話までするところがどう見ても余計です本当にありがとうございましたという感じ。
『今必要なことは昨年の本席で詳しく述べたように、外需の取り込みと内需開拓の両面作戦です。そのためには、マクロ的には思い切った規制緩和が必要であり、個々の企業経営レベルでは、差別化戦略を意識したビジネス・モデルの確立だと思います。ちなみに、スイスは過去10
年の間日本以上に自国通貨の為替レートが上昇した国ですが、輸出金額の伸びは日本をはるかに上回っています(図表16)。』
・・・・・・・・・えーっと、それは正論かも知れませんが、何も円高でヒーヒー言ってる人たちを前にそんな事を言わんでも良かろうと思うのでありまして、正論も時と場合を考えて言って欲しい物ですな。
んでもって会見からですが、質問の方がオモロイ。
冒頭の質問がこれ。
『(問) 本年は、地元の財界から「劇薬もやむを得ないのではないか」とか、「メッセージの出し方が弱いのではないか」といった、例年以上に強い発言があったかと思います。どのような印象を持たれましたでしょうか。』
正直言って答えの方はどうでも良い(いつもの「適切な運営を心がける」発言でサービスフレーズ一切なし)ので引用しません。
こんな質問も。
『(問) 総裁が出席される懇談会の場にも何度か同席させて頂きましたが、本年は例年になく、出席された方の切実な声が大きかったと思います。特に六重苦の中でも、円高ということに関しては、それへの対応について、前例や従来の色々な対応にとどまらないものを望む声が聞かれました。これに対しては、日銀の役割を踏まえた総裁のお答えがあったわけですが、こうした切実な声に対する総裁ご自身の思いを今一度お聞かせ頂けますでしょうか。』
ということで、先ほどの引用部分にありましたように、「円高で購買力が高まる」とか「スイスは自国通貨高でも輸出を伸ばしています」とかいう話をこういう席でするという麿のセンスっていやまあ学者様としては誠実なのかもしれないけれども、少なくともゼロ金利制約下における金融政策運営というのが「期待に働きかける政策」という要素が強い中で、人々の神経を逆なでするような(本当に逆なでしているのかどうかは参加者じゃないから知らないけど)講演をして何の得があるのかという事についてもう少し物事というものを考えて頂きたい物だと思う次第。
んでまあこの答えですが。
『円高への対応については、3 つの次元に分けて考えた方が良いと思います。』
『1 点目は、円相場水準それ自体にどう対応するのかということです。これは、為替介入政策のあり方ですが、懇談会の席上で申し上げた通り、日本政府が適切に対応されていると考えています。』
『2 点目は、円高の影響を受けた経済に対して、どう対応するのかという話です。日本銀行としては、昨年来、円高が景気・物価に与える影響も勘案した上で、金融緩和の強化を行ってきたということです。』
『3 点目は、現実に円高が発生しているもとで、これをどのように利用していくのかということです。わが国の急速な少子高齢化あるいは人口減少のもとで、市場が拡大していくという意味では、海外市場のウエイトがどうしても大きくなってくるわけです。そうであれば、海外に生産拠点を作っていくことは、企業経営からすると合理的な判断として出てくると思います。その際、円高を使ってM&Aを行っていく、M&Aを行っていく上で円高は1
つのチャンスでもあります。現実に、日本の企業は円高を使ってM&Aに取り組んでいると思います。そういう意味で、円高の対応については、今申し上げた3
つの点を分けて考えていく必要があると思います。』
・・・・・・・・どう見ても「ボクはちゃんとやってるもんね」という答えとしか受け止めてくれないぞなという感じですし、大体からして円高を使ってM&Aとか中小企業金融ガーとかいう話も懇談でしている(と質疑にございましたが)中でそんな話すんなよと思うのですけどにゃあ。
ちなみに、中国経済に関してですけれども、西村副総裁が中国の不動産バブル警戒の講演をした直後だったのでその意見を求められましたのですが・・・・・・・・
『(答) 第1 問の中国経済に関するご質問ですが、西村副総裁の講演自体については、日本銀行という組織としての見解ではありません。会議の性格上、リサーチのコンファレンスですから、西村副総裁がご自身の考え方を講演という形で表現されたことであると思います。』
という風にあっさり片付けた後に中国経済の話をしていて、その説明の途中から中国経済の不確実な面がどうのこうのという話をしているのですが、これももうちょっと物の言い様があるようにも思えたのですが、まあこういう風に片付けるというのは、そこまでの文脈から勘案するにこの時点で何だかんだ言っても白川総裁的には強気の旗を降ろしていない、とまあそういう事になるんでしょうな。
○無駄に前振りが長くなったが決定会合プレビュー雑談
とまあそういう訳で3週間前の麿講演ネタを今さら引っ張り出した(あの時点では他のネタが多かった上に麿講演が毎度の麿クオリティであまりにも新味が無かったのでついスルーした訳ですが)のですけれども、直近他の政策委員の皆様が下振れ警戒的なお話をする中で貫録の麿クオリティを堂々展開しているというのがこの時点での状況。
まあこの後月末に掛けてダメダメな経済指標が並ぶわECBはOMT導入するわFEDは追加緩和を実施するわとまあそういう動きになっていますし、政府の景気判断も下がっていますしというような状況を麿がどう捉えるか次第という所ではあるのではと思いますけどどうですかね。
つまりですね、海外の金融緩和もありますし、そもそも足元で経済指標がダメっぽい状況になって来ていて、物価も相変わらずの状態の上に肝心の輸出が伸びそうもない所に来て追い打ちを掛けるように日中関係の悪化とか(まあそれが長期化するかは微妙ではありますが)、景気の現状判断を下げるのは勿論ですが、先行きの認識を下げたり、リスク認識を引き上げたりするのにはまあ良いタイミングでもありますし、前回のMPMから6週間ほど経過しているという事で時間も経過しているというのもありますから、今回のMPMって追加緩和打つ方がまあセンスが良さそうに思えるのですよね。
ただまあ肝心の麿が上記の状態ですし、あちこちの講演などでもすっかり麿モードになっていて何かここで追加緩和サービスしましょうとかいうような動きになりそうもないというのが見え見えとまあそんな状態なので期待薄という所ですので期待できませんけど、べき論からしたら今回はやって置くのが何かと良いと思いますけどね。
まあ政治圧力ガーとか言い出すとまたぞろ麿先生辺りは御機嫌を悪くしそうですが、民主、自民の代表選挙を見ていると経済政策の部分で金融緩和ガーという話は多い訳ですから、どうせ与野党の体制が整った日にはまたぞろ「追加金融緩和ガー」の大合唱になるのは見え見えでございまして、逆に政治圧力が直接来ていない上に経済物価情勢的に追加を打っても別に幾らでも説明ができそうなタイミングのこの時期だからこそしらっと追加緩和を実施しておくのが政治との関係上も良いと思うのですけれどもどうなんでしょうかねえ白川総裁。
とまあべき論としてはそう思いますが、まあ中々そうはならずでして、さすがに今回景気の現状判断は引き下げになるでしょうが、先行き見通しは中々下がるとも思えず(展望レポートで下がるんでしょ)精々リスク認識が引き上げになるという所ではないかと思います。
ただまあそれだけでは余りと言えば余りでして、経済指標とか出ているのを見れば先行き判断がここで引き下げになって追加緩和実施となってもおかしくは無いというのを勘案すると、追加緩和提案が佐藤審議委員か宮尾審議委員辺りから出ても不思議ではなく、木内審議委員も含めて追加緩和賛成3票くらい入るとまあ追加緩和への布石という事で一応日銀の姿勢へのエクスキューズにはなるんじゃないのとは思いますので、ここはひとつ佐藤さんや宮尾さんや木内さんに期待をしておりますので何卒何か理由を付けて追加緩和提案をして頂きたく存じます(^^)。
たぶん2票だとあまりインパクトなく、3票あると良いなあとか思うのですけど。というか本来は下振れ警戒の話をしている西村、山口両副総裁も賛成するとそれで既に5票で過半数(^^)。まあ森本さんとか石田さんとかも景気の厳しさは認識しているんじゃネーノとは思うのですが、やはりまあ日銀の場合は何だかんだと言っても総裁のリーダーシップの要素強いように見えますから麿包囲網が出来るか、それとも麿が麿モードから脱却するかというのがポイントなんでしょうなあorzorz
仮に何かするとして、あたくし的には他の中銀やっていない施策のアピールという事と、円高や海外減速に対応という意味では株価の下支えの方がインパクトあるでしょと思う所でありますので、ETFを景気よく1兆円位買う(さすがに年内だとアレなので来年前半までに)とかだとかなりのお洒落感があるのですが、どこをどう見てもそれはやるとは思えませんので、順当に予想するなら基金短国買入10兆円増額か、基金長国買入5兆円増額+応札下限金利撤廃(しないと増額するのは技術的にキツイ)かで、できればそれを年内に実施とした方が美しい(前述のセットなら年内実施で行けると思いますが)のですが、まああまり期待はせずに(というかそれやって債券市場に何の影響があるのか正直ワカランチ会長・・・・・・)待ちたいと思います。
○決定会合プレビューが無駄に長くなってしまったのですが逆さ絵会見から少々:とにかく質疑の最初の方がやたら辛辣
またも時間配分に失敗の巻
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120913.pdf
本日から(今日終わらない気満々)は質疑応答をネタという事で。
冒頭からの質疑応答が(上記URLの初稿版だと5ページ以降になります)やたら辛辣なのが目に付きまして、まあ会見をする方もすっかり慣れてきたという感じでしょうか(^^)。
勝手に超意訳するとこんな感じ。
Q1:これまで資産買入実施した結果の労働市場が今の有様なのに追加購入して意味あるの?買入止めるための目安って何なの??もっと具体的な表現は無いの???
Q2:声明文で「経済が回復しても緩和継続」とか言ってるけど特定の状況を示さないのは要するにそういう状況を明言したくないということですか?
Q3:声明文のその文言ですが景気の回復途上でインフレが上昇する事については容認するという意味ですか?株価と原油価格と金価格が上昇していますがどうお考えで??
Q4:なるほどインフレの大きな上昇は容認しないというのは判りましたが、じゃあインフレがターゲットから上昇したら緩和は継続しない、とそのように仰せですか???
Q5:今年になって2回の追加緩和措置を実施したけど結果として労働市場に効いていませんよね。で、今回の追加緩和政策はどういう風に効くんですか?過去2回との違いは何ですねん??SEPでの見通しだと前回比失業率が0.4%も改善すると言ってるけど、これまで効いていないのに今回の追加緩和でそんなに効くとどうやって信じさせるんですか????
Q6:(Q5の答えがその話無かったので)0.4%の根拠は??
Q7:金利を低下させる(キリッ)というのは判ったのだが、それがどのように実体経済に効くのかのトランスミッションメカニズムはどないなってますねん?金利って既に下がっていて、ここからちょっとの金利低下が実体経済に何の効果を出しますねん???
・・・・・・・とまあそんな調子で最初から4ページ分位延々と意地悪質問が飛んでいて、大変にお洒落なのですが、これを延々と引用やっているとオワランチ会長になりますので本日はあたくしのいい加減な超意訳だけお付けするという事で勘弁。
A1:追加緩和は経済の回復を早めて労働市場の改善を進める為に実施するので、完全雇用に達するまで延々と継続する訳では無く、新規雇用が拡大して失業が下がるようになるのが目安。(政策が効かない云々の質問は華麗にスルー)
A2:色々とコミュニケーションの方法は考えているが、とりあえず早期引き締めを行う事はしない、という事はご理解頂きたい。
A3:我々の政策アプローチはインフレを意図的に引き上げるという事は含んでいません。経済の活性化をして労働市場を改善させることを目的としたアプローチです。今の所物価は安定しているけど失業がさがらないので追加緩和をする次第。
A4:インフレが高進してターゲットレベルを超えた場合、我々は1月に申し上げたように「バランスアプローチ」を取ります。デュアルマンデートの双方について配慮してバランスの取った政策をします。(とは説明しているが、慎重に具体的な話を避けて自分の手足を縛らないように工夫しています)
A5:ジャクソンホール講演で申し上げましたように、我々のこれまでに取った政策は経済に対して効果を与えたと推察されています。それに以前から申し上げておりますように金融政策は万能薬ではないですし、それだけで全ての問題は解決できません。
A6:どの程度改善するかについてはその時の経済状況次第ですが、前回のSEPでは今回の金融緩和を織り込んでおらず、今回のSEPでは今回および今後の金融政策についての予想が入っております。でも控えめに言ってる人も多いかもしれません。あ、さっきも言ったように金融緩和だけでは全ての問題が解決しませんので念のため。
A7:金融緩和の効果は我々がどの程度の緩和まで行うのか、そしてその時の経済状況がどうなのかという所に依存します(と段々話が苦しくなってくる^^)。それに今回の追加緩和は「conditional
program」であって、景気の動向次第で追加緩和を増やしたり減らしたりしますので定量的にどうとは言えません。
(で、ここから先がポイント)経済のサポートしての効果としては、金利の引き下げについては米国債だけではなくモーゲージや社債の金利などの他の重要な金利の引き下げ効果があり、株価や他の資産価格、たとえば住宅価格を上昇させて経済にプラス効果を与え、これらのインパクトが労働市場にも好影響をもたらす「でしょう」。
金融緩和は何度も申し上げているように、顕著な効果を出しますが一方で万能薬でも解決策でも無く、我々は経済が正しい方向に向かうためのサポートをしています。
・・・・・・とまあこんな感じでしょうか、間違ってたらゴミンナサイという事で解釈は自己責任で。
#諸事情により更新が遅れまして申し訳ございません
2012/09/18
お題「FOMCレビューである」
金曜の朝はひたすら出たのを読んでいるだけに終始しましたので、FOMC後の会見を中心にしつつもあたくし的雑感も。
○とりあえずあたくし的愚考を
今般のFOMC決定の最大のポイント(とあたくしが勝手に解釈している)は2つあって、まあセットなのですけれども、
(1)景気判断および先行き見通しの引き上げを行っているのにMBSの追加買入という形での追加金融緩和を実施
(2)ガイダンス文言の前に入れた『To support continued progress toward
maximum employment and price stability, the Committee expects that a highly
accommodative stance of monetary policy will remain appropriate for a considerable
time after the economic recovery strengthens.』
の2つのセットでして、記者会見の方を見るとこれは逆さ絵先生的には従来から行っている「バランスアプローチ」の一環である、という事になっているようなのですけれども、この2つをセットで出されるとやはり「物価安定のゴールを出したのは何だったんだ」という風に読まれてしまうんじゃネーノという所だと思います。つまり、ついこの前出した「物価安定のゴール」では確かにバランスアプローチの話がありましたが、景気に対する遅行指標である失業率に関して「労働市場の持続的な改善が見込めるまでは少々景気が強くても超緩和政策を継続する」という言い方は「物価と雇用のバランスを取るアプローチ」というよりはやはり「雇用改善にフォーカスしたアプローチ」と解釈されやすい訳でございまして、(物価も遅行指標ですけれども、物価のゴールは「中長期的に」という話ですので、その点では遅行指標の実際に出てくる数字そのものに必ずしも紐付け状態になっている訳では無い)まあスタンスとしては相当強いと解釈されますわな。
今回の措置のうちMBS買入の効果に関しては「住宅市場を強くする」という話を思いっきりしている訳でして、結局逆さ絵先生も前任と同じくバブルの傷をバブルでお返しという作戦に出ましたかそうですかとまあ市場的には解釈しそうな所で、(月曜はちと戻りましたが)木曜金曜と市場が株高商品高長期金利上昇で反応しておりまして、まあそうなる罠と思いつつも、期待のコントロールが更に難しくなっているなとは思います。
つまりですな、金曜時点でまあお仲間の皆さんとああでもないこうでもないと話をしておった訳ですが、仲間内のお題は「何でここまでの政策を打ち込まないといけなかったのか」というお話。そらまあ確かに失業の改善は遅いのですけれども、FOMCステートメントにあるように住宅市場はボトムアウトしかかっているし、株価はご覧の有様ですし、先行き見通しも改善してヘッドラインの物価はピックアップしているという中で、何でここまでの政策を打ち込まないといけないのかという話。
実際はまあそうは絶対言わないだろうが先般のECBの買入方針決定の後にFRBのこれですから、欧米中銀はインフレの上昇に目をつぶって資産価格支持政策に出たととか、この先実はとんでもない悪い事が起きるまたはその懸念が高いので先に打ち込んだんじゃネーノなどと、まあ色々と話をした訳ですけれども週末に出た議長会見の方を見ても結局は「総合的なリスク判断」という感じにはなっていたものの、質疑応答のニュアンスだとFiscalCliffに対して金融政策を動きやすくする為に先に手を打ったのかいなというような感じなんでしょうかねえ。
まあいずれにせよ、この措置って普通の受け止めだと「資産バブルかインフレ高進のどちらか、下手したらその両方が起きる」という話になる(どっちも起きなかったらそれはそれで金融政策が無効という話になるのでそれも問題)と思うのですが、逆さ絵先生としては「まあ物価はそう簡単に上昇しないでしょう」という判断の元に結構な勝負をしてきているという感じではございまして、これまあ労働市場が改善する前に物価上昇が先に来ると、まあ逆さ絵的には「いやこの物価上昇はヘッドラインのコストプッシュでコアインフレガー」とか言って説明するのでしょうけれども、まー普通に中央銀行としての信認維持が難しくなって来る罠とゆー所ではないでしょうか。
まさかとは思いますが、これを打ち込むだけ打ち込んでおいて任期切れになったら後はイエレンおばちゃんにでも任せて後は野となれ山となれというヤケクソスキームだったりしたらバーナンキは髭を剃って詫びるべきという所でして、まあこれだけやったのですから出口政策まで責任取ってケツ拭きをしろとまあ思うのであります。
○ラッカー総裁の反対声明
毎度おなじみのラッカー怒りの声明ですが、今回は気合の入り方が違います。
http://www.richmondfed.org/press_room/press_releases/about_us/2012/fomc_dissenting_vote_20120915.cfm
September 15, 2012
Richmond Fed President Lacker Comments on FOMC Dissent
『The Federal Open Market Committee (FOMC) decided on September 13, 2012,
to purchase additional agency mortgage-backed securities at a pace of $40
billion per month. The Committee released a statement after the meeting
saying that it expects a highly accommodative stance of monetary policy
to remain appropriate for a considerable period after the economic recovery
strengthens, and that it currently anticipates that exceptionally low levels
for the federal funds rate are likely to be warranted at least through
mid-2015.』
と、ここまでは決定事項なのでまあどうでも良いですが。
『I dissented because I opposed additional asset purchases at this time.』
追加の「資産買入」に反対とな。
『Further monetary stimulus now is unlikely to result in a discernible
improvement in growth, but if it does, it’s also likely to cause an unwanted
increase in inflation.』
追加のマネタリーな刺激を現在行っても経済成長に対する改善はあまり見込めず、一方で望ましくないインフレを引き起こす可能性があります。
『Economic activity has been growing, on average, at a modest pace, and
inflation has been fluctuating around 2 percent, which the Committee has
identified as its inflation goal. Unemployment does remain high by historical
standards, but improvement in labor market conditions appears to have been
held back by real impediments that are beyond the capacity of monetary
policy to offset. In such circumstances, further monetary stimulus runs
the risk of raising inflation in a way that threatens the stability of
inflation expectations.』
経済活動は平均してみれば緩やかながらも成長しており、インフレは2%近辺で推移しており、FOMCのゴールとしている水準にある。失業率は歴史的に見れば高い水準にあるが、労働市場の改善の足を引っ張るのは金融政策でオフセットできないような実際の障害物がある為である。このような状況下での追加緩和はインフレの拡大のリスクを起こし、インフレ期待の安定化を危うくする可能性がある。
とまあそんな感じで追加の金融緩和に反対。
『I also dissented because I disagreed with the characterization of the
time period over which the stance of monetary policy would be highly accommodative
and the federal funds rate would be exceptionally low.』
金融緩和スタンスの強化に対して反対と。
『I believe that such an implied commitment to provide stimulus beyond
the point at which the recovery strengthens and growth increases would
be inconsistent with a balanced approach to the FOMC’s price stability
and maximum employment mandates.』
この文言の含むコミットメントは、強すぎる景気刺激を与え、デュアルマンデートに対するバランスアプローチの考え方に対して反すると。
『Finally, I strongly opposed purchasing additional agency mortgage-backed securities.』
で追い打ちを掛けるように「strongly」まで付けてエージェンシーMBSの買入に反対。
『These purchases are intended to reduce borrowing rates for conforming
home mortgages. Such purchases, as compared to purchases of an equivalent
amount of U.S. Treasury securities, distort investment allocations and
raise interest rates for other borrowers. Channeling the flow of credit
to particular economic sectors is an inappropriate role for the Federal
Reserve. As stated in the Joint Statement of the Department of Treasury
and the Federal Reserve on March 23, 2009, “Government decisions to influence
the allocation of credit are the province of the fiscal authorities.”』
この措置は資産に対する資源配分に介入するものであり、そのような事は中央銀行が取るものではないという「中央銀行が実施する財政政策」に対する反対というお話ですな。
更にラッカー先生ラジオにも登場。
http://www.richmondfed.org/press_room/appearances/2012/npr_20120917.cfm
September 17, 2012
Lacker Interviewed on National Public Radio
記事はこちら。
http://www.npr.org/2012/09/15/161208104/feds-latest-stimulus-lacked-unanimous-support
Fed's Latest Stimulus Lacked Unanimous Support
テキストもありまして、まあコメント自体はそんなに多くないのでサラサラ読めるのですが、その中で上記の論点を指摘しているのは当然なのですが、それ以外の部分を。
『JEFFREY LACKER: The effects are very hard to gauge, but my sense is that
this is going to have a greater effect on inflation and a minimal impact
on jobs. And while asset purchases are not without some costs and risks
down the road, at some point, we're going to need to sell these securities
and raise interest rates when the economy recovers more fully. And the
larger a balance sheet is, I think the riskier that process becomes. It
becomes more sensitive to fine errors and trickier to get out of the large
asset positions we're in.』
最初の一文は効果の話なのでさっきの所でも話有りますが、それ以外の論点として「買入があまりにも多くなってバランスシートを拡大させると出口政策の困難さが増す」というのを指摘していますな。
で、何で今回FEDがMBSを買おうとしているのか、という質問に対してのラッカー先生の説明。
『LACKER: Well, that's a good question and that's a very controversial
aspect to this decision as well, an aspect I opposed as well. I think the
theory behind it, first of all, it's a deep and liquid market, and the
impetus, I think, is to aid the housing market. That's an area that's fallen
short in this recovery. In most other U.S. postwar recoveries, we've seen
a pretty sharp snapback in housing.
Of course, the reason it hasn't come back in this recovery is that this
recession was essentially caused by us building too many houses prior to
the recession. We still have a huge overhang of houses that haven't been
sold that are vacant. And it's going to take us a while before we want
the houses we have, much less need to build more.』
ということで、前半が説明で「住宅市場の改善を目指しています」という話なのですが、後半ではラッカー節の話になっていまして、「でも今回のリセッションってそもそもが住宅等の不動産バブルで発生したのですから、改善には時間がかかるんじゃネーノ」というお話をしていますな。
あとまあ「労働市場の改善に対してFRBの出来る事には限界がある」とかいう話もありますけれども割愛。
○前置きが長くなりましたがバーナンキ会見からあれこれと
9月18日日本時間の朝時点では初稿です。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120913.pdf
・まずは冒頭説明部分から
冒頭の話はインフレが安定しているというのをちらっと話をした後に延々と労働市場の改善が遅いという話をしており、その上に長期失業者の話もしておりまして、まずは今回の問題意識が労働市場にあるという見せ方をしています罠。金曜も引用しましたけれども再掲。
『As you know, the Federal Reserve conducts monetary policy under a dual
mandate from Congress to promote maximum employment and price stability.
The United States has enjoyed broad price stability since the mid-1990s
and continues to do so today. The employment situation, however, remains
a grave concern. While the economy appears to be on a path of moderate
recovery, it isn’t growing fast enough to make significant progress reducing
the unemployment rate. Fewer than half of the 8 million jobs lost in the
recession have been restored. And, at 8.1 percent, the unemployment rate
is nearly unchanged since the beginning of the year and is well above normal
levels.』
『The weak job market should concern every American. High unemployment
imposes hardship on millions of people, and it entails a tremendous waste
of human skills and talents. Five million Americans have been unemployed
for more than six months, and millions more have left the labor force--many
of them doubtless because they have given up on finding suitable work.
As the skills of the long-term unemployed atrophy and as their connections
to the labor market wither, they may find it increasingly difficult to
get good jobs, to their and their families’ cost, of course, but also
to the detriment of our nation’s productive potential.』
ということで、これが説明の冒頭第2パラグラフと第3パラグラフになるのですが、わざわざ1パラグラフ使って労働市場の状況が色々な問題を与えるという説明をしておりまして、まあこの辺を見ると明らかに労働市場を問題視しているというメッセージになっていますな。
んでもって最近実施したアクションの説明をしているのですが、そこでは物価のゴールに関する話をスルーしているのが微妙にチャーミング。いやまあ勿論質疑応答では物価のゴールの話もしておりましてあくまでもバランスアプローチを強調しておりますが。
『The FOMC has taken several actions this year. In January, it extended
its forward guidance, stating that it anticipated that the federal funds
rate will remain near current levels until late 2014. In June, the Committee
decided to continue through the end of the year the previously established
program to extend the average maturity of the securities it holds by buying
longer-term securities and selling an equivalent amount of shorter-term
securities. However, incoming data confirm that the modest pace of growth
continues to be inadequate to generate much progress on unemployment. With
inflation anticipated to run at or below our 2 percent objective, the Committee
has become convinced that further policy accommodation is warranted to
strengthen the recovery and support the gains we have begun to see in housing
and other sectors.』
まあ物価のゴールに関しては従来のスタンスを改めて説明したものでスタンス変更では無いからしてここで説明に加えるものでは無い、という事なのかもしれませんが、今年行った措置の説明の中で物価のゴールの話が抜けているのがふーんと思いました。
でもって今回の施策ですが・・・・・・
『Accordingly, the FOMC decided today on new actions, electing to expand
its purchase of securities and extend its forward guidance regarding the
federal funds rate. Specifically, the Committee decided to purchase additional
agency mortgage-backed securities (MBS) at a pace of $40 billion per month.
The new MBS purchases--combined with the existing maturity extension program
and the continued reinvestment of principal payments from agency debt and
agency MBS already on our balance sheet--will result in an increase in
our holdings of longer-term securities of about $85 billion each month
for the remainder of the year.』
声明文にもありましたが、MEPの買入も含めて今年末までには850億ドルの長期債購入をしますという嵩上げアピールキタコレという所ですな。
『The program of MBS purchases should increase the downward pressure on
long-term interest rates more generally, but also on mortgage rates specifically,
which should provide further support to the housing sector by encouraging
home purchases and refinancing.』
MBSの買入に関しては「モーゲージ金利の押し下げ」に寄与して、「住宅の購入やリファイナンスの活発化を通じて住宅市場へのサポートとなる」という説明。
ですが、この後2パラグラフを使って説明しているのが今回のスタンス変更に関する部分でして、まあ今回の眼目は実はこっちにあるんでしょうなあと思うのであります。
『The Committee also took two steps to underscore its commitment to ongoing
support for the recovery.』
commitmentキタコレ。
『First, the Committee will closely monitor incoming information on economic
and financial developments in coming months, and if we do not see substantial
improvement in the outlook for the labor market, we will continue the MBS
purchase program, undertake additional asset purchases, and employ our
policy tools as appropriate until we do. We will be looking for the sort
of broad-based growth in jobs and economic activity that generally signal
sustained improvement in labor market conditions and declining unemployment.
Of course, in determining the size, pace, and composition of any additional
asset purchases, we will, as always, take appropriate account of the inflation
outlook and of their efficacy and costs.』
今後の状況を見ながらMBSの買入プログラムの調整を行いますし、必要であればMBSだけではなく追加の資産購入や金融緩和のツールを用意すると言う事で、一応ここではインフレの見通しや各種政策のメリットやコストを勘案するという話をしています罠。
『Additionally, the Committee emphasized that it expects a highly accommodative
stance of monetary policy to remain appropriate for a considerable time
after the economic recovery strengthens.』
ということで、もう一つの「経済が回復した後でも超金融緩和政策スタンスをかなりの期間維持する」というスタンスを示しましたというのがもう一つのstepですな。
『This should provide greater assurance to households and businesses that
policy accommodation will remain even as the economy picks up.』
経済がピックアップしても相当の期間に渡って超金融緩和が継続するという大きな安心感を与えるとな。
『In particular, the Committee today kept the target range for the federal
funds rate at 0 to 1/4 percent and stated that it anticipates that exceptionally
low levels for the federal funds rate are likely to be warranted at least
through mid-2015.』
で、最後にガイダンス文言の延長に触れていますが、どう見てもここでのガイダンス文言っておまけみたいなもんで、それまでの部分の方が「コミュニケーションポリシーの強化」という事になろうかと思います。
○そして肝心の質疑は時間なし(汗)
質疑応答なのですが、あたくしが勘定したら25本の質疑応答があったのですけれども、質疑応答の前半から中盤にかけてが結構辛辣な応答が続いていまして、中々面白いのですが、終盤になりますと手を変え品を変えて前半に出たツッコミが来る→逆さ絵先生同じ答えをするというのが目立って参ります。
とは申しましてもこの質疑応答、前半部分が中々面白いというかツッコミが厳しいので、その辺りに関しては明日にでも投下しようと思いますです。
#日銀はよー判らんですなあ。個人的にはここで「うちは他と違うんですよ」と言ってETFの買入をちょろっと拡大したらお洒落だと思うのですけれども、まあそんなのはよーしませんでしょうなあとは思います。それよりも景気見通しこのままで良いのかという方が気になりますけど・・・・・・
2012/09/14
お題「FOMCである」
まあ本当は自民党総裁選挙悪態とかのネタやら、昨日注目と申し上げた3か月TB入札レビューとかのネタもある筈なのですが、どこからどう見ても今回のFOMCネタが大杉なのでそっちまで手が回らない予定。
さてさて、今回は会見の冒頭説明のPDFが早速公開(会見の質疑応答がFRBのサイトで「LIVE」って出ている段階でPDFが出ているというやる気満々にも程がある状態^^)されるという事で(従来は画像は見れましたが文字起こしが出るのは質疑応答も含めて翌日)、まあ気合を入れてみましたという所でしょうか(^^)。
ということで今回のセット。
声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120913a.htm
MBS買入に関する具体的な説明(NY連銀のサイト)
http://www.newyorkfed.org/markets/opolicy/operating_policy_120913.html
SEP(のまとめの表)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20120913.pdf
記者会見の質疑応答前のバーナンキ議長の説明部分(初稿)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/FOMCpresconf20120913.pdf
(上記URL先は恐らく日本時間で今日の夜以降になると質疑応答も入ったものに変わる筈です。)
ではまずは声明文から。
○声明文:ガイダンス延長+月400億ドルのMBS購入決定・・・・・以外にも見るべき点があったりする
声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120913a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120801a.htm(前回)
・景気の現状判断が上がっているようにしか見えないのだが追加緩和とな
当然ながら最初にステートメントを見るのですが、最初の2行を見た時に「追加緩和はどうなったんじゃあああ」と思いまして、その後を読んだらMBSの買入は入るわガイダンスの延長は入るわだったので慌てて前回と逐語比較(とゆうても今回は追加措置が入ったので段落構成が変わっていて逐語比較しにくい)してみたあたくし。
ということで今回と前回のまずは第1パラグラフ(景気の現状判断部分)を比較。
『Information received since the Federal Open Market Committee met in August
suggests that economic activity has continued to expand at a moderate pace
in recent months. 』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in June
suggests that economic activity decelerated somewhat over the first half
of this year.』(前回)
ベンダーのニュースとかじゃなくてネットを開けて最初に見たのがFRBのトップページなのはいつものこと(ベンダーのヘッドラインで変なバイアスを掛けたくないから)なのですが、ステートメントの最初の所をみるとご覧の通りで前回「経済活動は年前半に若干減速している」となっていたのが、今回は最近の平常運転モードの「ここ数か月緩やかなペースで拡大している」に戻っているのよ。
『Growth in employment has been slow, and the unemployment rate remains elevated. 』(今回)
『Growth in employment has been slow in recent months, and the unemployment rate remains elevated. 』(前回)
労働市場の部分に関して「ここ数か月の雇用の伸びが遅い」の「ここ数か月」が削除されたのはまあ下方修正っぽい言い方です。
でまあこの先のMBS買入の理由と今後の扱いの中でも出てくるのですが、今回の声明文の最大の特徴とあたくしが思ったのは「マンデートの労働市場重視」という部分でして、ついこの前中長期的な物価に関する考え方のような物を出して「インフレターゲットっぽい金融政策運営」という感じになっていたのに、半年ちょっとでいきなり今度はデュアルマンデートのもう一方である労働市場にフォーカスした形での追加緩和実施という事で、意地悪な言い方をすればこの前のインフレ目標的な政策運営の発表は一体全体何だったんだという話ではありますが、何せ今回は上記にありますように&SEPを見ると先行きの見通しが上がっている(正確に言うと今年の見通しが下がって先の見通しが上がっている)という状況なのですが、まあそんな感じで経済の現状認識と先行き見通しはやや改善しているというのに追加緩和実施という中々画期的な動き(良い意味でも悪い意味でも)とあたくしは見ましたけどどうでしょう。
つまりですな、経済見通しに関してはまあ今回の追加緩和効果を加味して上がっている分はあるにせよ、足元の総括判断も下がっていない中で労働市場にフォーカスして追加緩和を実施(見通しは上がったものの、このペースでは労働市場の改善に不足というロジック)ということで、デュアルマンデート重視という姿勢を打ち出した&経済見通しが改善しても労働市場の改善が見通せない場合は更に追加緩和が実施されるでしょうという訳で、かつご案内のように失業率とか遅行指標にも程がある物を重視ということですから、文字通りに解釈するとスタンスとしての緩和姿勢は更に強まるの巻という所でしょう。
ただ一方で、労働市場改善に軸足を掛けたようなスタンス変更と取られるような今回の追加緩和というのは、今後物価の推移次第によっては政策運営ロジックが更に苦しくなると思われます。まあそれに関しても後の方で一応ヘッジは掛けているものの、市場的に言えばこれだけ「労働市場ガー」という表現にされると、今度は「失業率ターゲット」というような政策スタンスと受け止めて動いてしまい、物価の推移によってはFRBとのコミュニケーションギャップがまたまた起きそうな悪寒もせんでもない、という所でしょうか。
・・・・・・・などと最後に書けばよいのについ書いてしまったわけですが現状見通しの続き。
『Household spending has continued to advance, but growth in business fixed
investment appears to have slowed. The housing sector has shown some further
signs of improvement, albeit from a depressed level. 』(今回)
『Business fixed investment has continued to advance. Household spending
has been rising at a somewhat slower pace than earlier in the year. Despite
some further signs of improvement, the housing sector remains depressed.
』(前回)
表現がちまちま変わっていますが、家計消費に関しては現状判断が上がり、企業投資については現状判断が下がっています。んでもって住宅セクターに関しては従来主文が「the
housing sector remains depressed」となっていたのに対して今回は主文が「The
housing sector has shown some further signs of improvement」となっておりまして、「更に幾らかの改善の兆しが見られている」が主文ということでこちらは
現状判断改善ですな。
『Inflation has been subdued, although the prices of some key commodities
have increased recently. Longer-term inflation expectations have remained
stable.』(今回)
『Inflation has declined since earlier this year, mainly reflecting lower
prices of crude oil and gasoline, and longer-term inflation expectations
have remained stable.』(前回)
物価に関しては足元での商品価格などの推移部分での変化はありますが、中長期的な見方やインフレ期待に関する認識については変化ありません。
・先行き見通しでは「物価安定の中で労働市場が改善しない」と強調
ということで第2パラグラフ。
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster
maximum employment and price stability. The Committee is concerned that,
without further policy accommodation, economic growth might not be strong
enough to generate sustained improvement in labor market conditions. 』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster
maximum employment and price stability. The Committee expects economic
growth to remain moderate over coming quarters and then to pick up very
gradually. Consequently, the Committee anticipates that the unemployment
rate will decline only slowly toward levels that it judges to be consistent
with its dual mandate. 』(前回)
文章構成が変わっているので比較の仕方が難しいのですが、とりあえずここで切ります。
でもって今回は「追加緩和を行わないと景気の拡大は持続的な労働市場の改善に結びつかない」というロジックになっておりまして、まあ先ほどの経済現状認識の改善と合わせると「押し上げ介入」的な話になっております。まあ物価さえ上昇しなければ良いのですけどねえ・・・・・・・
『Furthermore, strains in global financial markets continue to pose significant
downside risks to the economic outlook. The Committee also anticipates
that inflation over the medium term likely would run at or below its 2
percent objective.』(今回)
『Furthermore, strains in global financial markets continue to pose significant
downside risks to the economic outlook. The Committee anticipates that
inflation over the medium term will run at or below the rate that it judges
most consistent with its dual mandate.』(前回)
海外の金融市場ガーという話はまあいつも通りでして、今回は物価の所に関して「it
judges most consistent with its dual mandate」という言い方ではなくて「its
2 percent objective」という言い方に変更していまして、まあこれは今回の追加緩和決定において労働市場重視のようなスタンスになっている事に対して「物価についてもちゃんと見て行きます」というのを強調するために「2%」という数値を明示化してバランス取っているという所だと思います。
・第3パラグラフ:MBS購入決定なのですが今回は「定額購入」
前回の第3パラグラフは途中からフォワードガイダンス文言になりますのでそこの辺りの比較は後ほど。
『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation,
over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee
agreed today to increase policy accommodation by purchasing additional
agency mortgage-backed securities at a pace of $40 billion per month. 』(今回)
最初の所はいつもと同じですが、今回は「毎月400億ドルのMBS購入」を決定。
『The Committee also will continue through the end of the year its program
to extend the average maturity of its holdings of securities as announced
in June, and it is maintaining its existing policy of reinvesting principal
payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities
in agency mortgage-backed securities.』(今回)
これは従来やっている政策の話。
・・・・・・・でですね、これはまあ将来の話ではあるのでしょうけれども、今回って「定額購入」方式になったのですけれども、これによって買った分償還になった場合には償還再投資するのかしないのかが謎ですなあと思ったんですが。まあ従来の分が償還再投資されているのですからこれも買入を継続する限りにおいては償還再投資するという事になるのかなあとは思いますが、もしそうで無いならただの「輪番オペ」状態じゃねえかという説もありますな(^^)。
『These actions, which together will increase the Committee’s holdings
of longer-term securities by about $85 billion each month through the end
of the year, should put downward pressure on longer-term interest rates,
support mortgage markets, and help to make broader financial conditions
more accommodative.』(今回)
ここでわざわざ「年末まではMEPがありますので、あわせると長期債を月に850億ドル購入する計算になります」とかアピールする所も抜け目ないのですが、今回の措置は「長期金利に引き下げ圧力を掛けて、モーゲージ市場をサポートし、幅広い金融環境をより緩和的にする」という風に目的を示しています。
でね、今朝の書き物でそこまで詳細説明が行けるか判らないのですが(大汗)、会見の冒頭での「Opening
Statement」を読みますとそちらでは『The program of MBS purchases should
increase the downward pressure on long-term interest rates more generally,
but also on mortgage rates specifically, which should provide further support
to the housing sector by encouraging home purchases and refinancing.』(最初の方で並べたURLの中にある会見のオープニングステートメントの2ページのケツの辺りにあります)と言う風に説明していまして、「モーゲージ金利に対してより効果がある」という形でモーゲージ金利の引き下げを強調しておりまして、一つには長期金利の引き下げを強調しすぎないようにしているのと、もう一つは「住宅市場」を強調することによってQE批判への答えにしようとしているのかなと思いました。
何せ今回のプレコンでは説明の最後の部分で「質問に入る前に今回の追加緩和に対して皆様が考えるであろう3つの懸念に対して説明させていただく」とか言い出していまして、まあQE批判に対する説明は結構気を使っている感じですわな。
『Before I take your questions, I’d like to briefly address three concerns
that have been raised about the Federal Reserve’s accommodative monetary
policy. The first is the notion that the Federal Reserve’s securities
purchases are akin to fiscal spending. The second is that a policy of very
low rates hurts savers. The third is that the Federal Reserve’s policies
risk inflation down the road.』(最初の方で並べたURLの中にある会見のオープニングステートメントの4ページの真ん中辺りにあります)
でまあその説明部分は時間があれば後ほど、間に合わなければ皆さんとりあえず読んで下さいサーセンという所ですな。
・第4パラグラフ:状況によって購入額を変えますという事で先行き政策の自由度を確保
次のフォワードガイダンスの所でもそうなのですが、今回の政策決定において、いわゆる「コミットメントの強化」的な物を入れてこなかったのが正直申し上げてあたくしの予想と違う展開でございました(フォワードガイダンスは次に申し上げますが期間の延長と若干の文言強化は行ったものの、コミットメントの強化などは実施していない)。まあFRBは何だかんだ言っても先行きの金融政策に関するフリーハンド確保については結構重視するんだなあと思うのでありました。
『The Committee will closely monitor incoming information on economic and
financial developments in coming months. If the outlook for the labor market
does not improve substantially, the Committee will continue its purchases
of agency mortgage-backed securities, undertake additional asset purchases,
and employ its other policy tools as appropriate until such improvement
is achieved in a context of price stability. 』(今回)
状況を注視しつつ、労働市場の改善が顕著に進まないようであればエージェンシーMBSの買入を継続した上で追加の資産購入や、その他適切な政策を「労働市場の顕著な改善が物価安定の元で到達するまで」実施します、という表現ですな。
ということで、先ほど申し上げた「ヘッジ」はここで入っているのですけれども、労働市場が顕著に改善するまでのMBS購入および効きが悪い場合の追加購入を宣言という威勢の良い話をしていまして、超遅行指標の失業の改善にコミットキターではあるのですが、そこには「in
a context of price stability」をさすがに入れているのがヘッジですわな。
んでもってまあ中長期的に物価が安定しているという見通しの元では買入の継続および労働市場状況によっては買入拡大が続くという意味では緩和的スタンスの拡大キタコレ(何せ経済の現状認識改善しているのですし)なのですけれども、物価が上昇してくると政策運営が禿しく難しくなるでしょうなあと思われる次第でして、特に来年になると物価重視派の地区連銀総裁が票決権持つので、「in
a context of price stability」の解釈でFOMC内部の意見が割れそうな悪寒も致します。まあ物価が上昇しなければ無問題なのですけれども。
『In determining the size, pace, and composition of its asset purchases,
the Committee will, as always, take appropriate account of the likely efficacy
and costs of such purchases.』(今回)
という事で、買入の量や買入資産の構成に関しては「その買入によって予想される効果とコストを常に適切に考慮する」という風に(ジャクソンホール講演でも説明していた)非伝統的政策のプロコン考慮をしますというのをこれまた明記する事によって、QE批判への対応もしているという所ですな。
まあつまりこの辺りの文言って追加緩和のおかわり有るべしという積極的な話をしながらも、「労働市場の顕著な改善」という部分はまあ具体的な数値とか出さないで裁量の余地を残した上に、「in
a context of price stability」というのも入れて、物価情勢にも配慮するとかプロコン比較の文言も入れて、先行きの自由度を確保するようにしていますな。
・第5パラグラフ:フォワードガイダンスの延長と関連文言の強化、ただしSEPとの整合性が微妙な気も
今回はMBS買入を打ち込んだのでまあこんなもんになったのかとは思ったのですが、もう少しコミュニケーションポリシーの方をいじってくるのかなと思ったのですが、こっちに関しては意外に普通の流れでして、もうちょっと時間軸の強化をするのかと思っていたあたくしとしては拍子抜けでございます。まあ失業に軸足を置くという風に読める政策スタンスを示しているのが最大のコミュニケーションポリシーちゃあコミュニケーションポリシーですが・・・・・・
『To support continued progress toward maximum employment and price stability,
the Committee expects that a highly accommodative stance of monetary policy
will remain appropriate for a considerable time after the economic recovery
strengthens. 』(今回)
『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation,
over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee
expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy.
』(前回)
前回分は第3パラグラフになります。最初の所で金融政策の「highly accommodative
stance」について今回は「for a considerable time after the economic recovery
strengthens」という表現で押し上げ介入チックな表現にしていますが、それは最初の方でありましたように、今回は経済の現状認識と先行き見通しが改善している中での追加緩和を実施しているというのがあるので、そういう意味では先行きの経済見通しと金融政策運営スタンスが直接リンクしませんよ(=先行きの見通しが引き上げになっても金融緩和スタンスを継続するかもしれませんよ)という話っすな。
『In particular, the Committee also decided today to keep the target range
for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates
that exceptionally low levels for the federal funds rate are likely to
be warranted at least through mid-2015.』(今回)
『In particular, the Committee decided today to keep the target range for
the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that
economic conditions--including low rates of resource utilization and a
subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant
exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late
2014.』(前回)
今回のフォワードガイダンス延長では「FOMCの想定する経済状況がFFレートがいついつまで低位推移をすることを正当化します」という表現からよりシンプルに「FOMCはFFレートがいついつまで低位推移をすることを予想します」ということで、フォワードガイダンス文言を単に「予想」としていまして、こっちは微妙な感じです。ただまあ前半で「a
highly accommodative stance of monetary policy will remain appropriate
for a considerable time after the economic recovery strengthens」という事で文言を強化しているので、まあ差し引きすれば文言が強化されてるちゃあされてるかなとは思います。
ただまあ元々のフォワードガイダンスからの変化としては、コミットメントもどきのように見せていたものが単なる「予想します」というのに変わっているので、そういう意味ではこちらもフォワードガイダンスの延長とか表現を強くしたりしている点では追加緩和ではあるのですが、先行きの自由度の方は上げているという感じでして、あたくし個人的には先行きの自由度を縛る方向でコミュニケーションポリシーをいじってくるかと思ったのでこれは正直予想の反対方向でした(汗)。
・・・・・・とまあそこまでは良いのですが、今回のSEP図表3枚目(最初の方に入れたURL先を見てちょ)になります『Figure
2. Overview of FOMC participants’ assessments of appropriate monetary
policy, September 2012』を拝見いたしますと、『Appropriate timing of policy
firming』の方では「想定される適切な金融引き締め時期」で2012年から2014年までが合計6/19票で、2015年が12/19票(残りの一票は2016年)なのでまあフォワードガイダンス文言と整合的に見えるのですが、毎度おなじみの『Target
federal funds rate at year-end』を見ますと、2015年末のFF金利予想で1%以下が10/19でその次のレートが1.5%となっていて、1.5%以上が9/19という事で、またまた毎度の如く整合性的にちと微妙な感じではございます。
まあ2015年の半ばまで実質ゼロ金利継続してそれから利上げですからして、2015年半ばというのをどこに置くかにもよりますけど、FOMCミーティングがまあ精々4回でしょうから、少なくとも1.5%以上に予想を置いている人ってフォワードガイダンスと整合性取れませんよねと思いますと、全体で見た場合は思いっきり僅差にも程があるように見えます。
ついでに申し上げますと、それ以前の問題で2015年末の政策金利が1.5%以上の人が9人なのに適切な引き締め時期を2014年までに置いているのが6人というのも何か微妙に計算が合わないような合うような。まあ年前半から引締め開始ならそんなもんですが・・・・・・
・第6パラグラフ:票決はラッカー総裁貫録のクオリティを維持
まあこれはお約束。
『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman;
William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Dennis P. Lockhart;
Sandra Pianalto; Jerome H. Powell; Sarah Bloom Raskin; Jeremy C. Stein;
Daniel K. Tarullo; John C. Williams; and Janet L. Yellen.』(今回)
というのは前回と同様で、ラッカー先生の反対も同様です(^^)。
『Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who opposed additional
asset purchases and preferred to omit the description of the time period
over which exceptionally low levels for the federal funds rate are likely
to be warranted.』(今回)
『Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who preferred to omit
the description of the time period over which economic conditions are likely
to warrant an exceptionally low level of the federal funds rate.』(前回)
買入反対に加えて引き続きフォワードガイダンスを削除しろ攻撃でございました(^^)。
○SEPについて少々
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20120913.pdf(今回)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20120620.pdf(前回)
・1〜2ページ目:足元の見通しは下がっているけど先行き見通しが改善とな
この表組みってテキストサイトにコピペするのが難しいので勘弁(しばらくするとコピペしやすいバージョンが公表されるのですが)なのですけど・・・・・・
Change in real GDP. . . . . 1.7 to 2.0 2.5 to 3.0 3.0 to 3.8 3.0
to 3.8 2.3 to 2.5
June projection . . . . . . 1.9 to 2.4 2.2 to 2.8 3.0 to 3.5
n.a. 2.3 to2.5
Unemployment rate. . . . . 8.0 to 8.2 7.6 to 7.9 6.7 to 7.3 6.0
to 6.8 5.2 to 6.0
June projection . . . . . 8.0 to 8.2 7.5 to 8.0 7.0 to 7.7
n.a. 5.2 to 6.0
PCE inflation. . . . . . . 1.7 to 1.8 1.6 to 2.0 1.6 to 2.0 1.8
to 2.0 2.0
June projection . . . . . . 1.2 to 1.7 1.5 to 2.0 1.5 to 2.0 n.a.
2.0
Core PCE inflation . . . . .1.7 to 1.9 1.7 to 2.0 1.8 to 2.0 1.9
to 2.0
June projection . . . . . . 1.7 to 2.0 1.6 to 2.0 1.6 to 2.0
n.a.
左から順に2012年、2013年、2014年、2015年(前回は予想対象期間外)、ロンガーランでの『Central
tendency』をコピペしてみました(見にくくてすいません)。
まあご覧の通りで、今回って足元のGDP見通しは下がっているものの、先行きのGDP見通し、失業率見通しは改善しており、物価見通しは若干ではありますが上昇しているという事で、経済見通しを引き上げながらの追加金融緩和という事で、これはどこぞの日本銀行が今年の4月に実施していたのですが、あの後何故か日本銀行様におかれましては麿節モードの強化が行われた結果、折角実施した「景気認識を引き上げながらの追加金融緩和実施」という強いメッセージを全力で打ち消すプレイになってしまったわけですが、当然ながら逆さ絵おじさんにおかれましてはそのようなトンチキな事は起こさないであろうとは思いますので、そーゆー意味からも今回の追加緩和って「金融緩和に対する強いスタンスの表明」であると思います。つーか日銀勿体ねえ・・・・
2ページ目はファンチャートですが磔スキルがございませんので華麗にスルー。
・3ページ目:金融政策見通しが・・・・・・
まあ大体さっき書きました通りで、フォワードガイダンス延長したのとの整合性が結構微妙という所です。一応前回と比較してみます。
Appropriate timing of policy firmingについて(前回→今回という書き方をしています)
2012年:3名→1名
2013年:3名→3名
2014年:7名→2名
2015年:6名→12名
2016年:0名→1名
Target federal funds rate at year-endについて
2012年
(前回)0.75%1名、0.50%2名、0.25%16名
(今回)0.50%1名、0.25%18名
2013年
(前回)1.75%1名、1.25%2名、1.00%1名、0.75%1名、0.50%1名、0.25%13名
(今回)1.75%1名、0.75%1名、0.50%2名、0.25%15名
2014年
(前回)3.00%1名、2.75%1名、2.50%1名、2.00%1名、1.75%2名、1.50%2名、0.75%1名、0.50%4名、0.25%6名
(今回)3.00%1名、2.50%1名、1.75%2名、1.50%2名、0.25%13名
2015年(前回は対象期間外のみ)
(今回)4.50%1名、4.00%1名、3.75%1名、2.50%2名、1.50%3名、1.00%4名、0.75%3名、0.50%2名、0.25%1名
ロンガーラン
(前回)4.50%5名、1.25%5名、4.00%6名、3.75%1名、3.50%1名、3.00%1名
(今回)4.50%4名、1.25%5名、4.00%6名、3.75%2名、3.50%1名、3.00%1名
ちなみにあたくしがポチポチ数を勘定したベースなので間違ってないとは思いますが間違っていたらゴミンナサイ。
○そしてプレコンまで行かずに力尽きるあたくしorz
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/FOMCpresconf20120913.pdf
Transcript of Chairman Bernanke’s Press Conference Opening Statement
September 13, 2012
ということで、今回は気合が入っていることにこの時間からいきなりプレコンの冒頭部分のTranscriptが読めるという仕様になっていて、FRBのやる気元気井脇を感じましたでございます事よ。
・・・・・・・・・でまあ超斜め読みはしたものの、惜しくもあたくしの時間がががががでございまして、会見Q&Aも含めて後日です。
冒頭部分だけ引用しておきますが、労働市場ガーという話を強調しておりまして、前回のジャクソンホール講演でも言ってたgrave
concernというのがありますなあ(以下引用中の第2パラグラフにあります)のはというのはまあ声明文のロジック通りですが、労働市場の話をする前に「物価安定」の話をしてから「然るに労働市場は〜」という流れにしている辺り、まあ物価安定のマンデートも重視していますというのを強調していますなあというところではございますが、詳細は後日。
『CHAIRMAN BERNANKE: Good afternoon. Earlier today, the Federal Open Market
Committee (FOMC) approved new measures to support the recovery and employment
growth. I’ll get to the specifics of our actions in a few moments, but
I will first describe the economic conditions that motivated the Committee’s
decision to take additional actions.』
『As you know, the Federal Reserve conducts monetary policy under a dual
mandate from Congress to promote maximum employment and price stability.
The United States has enjoyed broad price stability since the mid-1990s
and continues to do so today. The employment situation, however, remains
a grave concern. While the economy appears to be on a path of moderate
recovery, it isn’t growing fast enough to make significant progress reducing
the unemployment rate. Fewer than half of the 8 million jobs lost in the
recession have been restored. And, at 8.1 percent, the unemployment rate
is nearly unchanged since the beginning of the year and is well above normal
levels.』
『The weak job market should concern every American. High unemployment
imposes hardship on millions of people, and it entails a tremendous waste
of human skills and talents. Five million Americans have been unemployed
for more than six months, and millions more have left the labor force-many
of them doubtless because they have given up on finding suitable work.
As the skills of the long-term unemployed atrophy and as their connections
to the labor market wither, they may find it increasingly difficult to
get good jobs, to their and their families’ cost, of course, but also
to the detriment of our nation’s productive potential.』
という所で本日は勘弁(汗)
2012/09/13
お題「今さらですが宮尾審議委員会見ネタと関連雑感とその他少々」
えーっと、7人中4人は討ち死にするし、「真の勝者は自分たちを雇った農民たち」になるというのが映画の結末な筈ですが、まあそこまで判っていて自称しているのなら凄いですねえ(棒読み)。
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/news/20120912-OYT1T00434.htm
離党届提出の7議員「俺たちは7人のサムライ」
大体お前らサムライ自称しやがってサッカー日本代表に失礼にも程があるわ。7匹の猟官わんわんとか7羽のコウモリとか7個の風見鶏とか・・・・・・・
などという悪態は兎も角として、FOMC前なのでネタの都合で後回しにしていたネタの成敗ということで宮尾審議委員の会見ネタを。
○とは言っても足元のネメモもしておく(ただの備忘録)
・ドイツ憲法裁判所
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE88B05C20120912
ドイツ憲法裁が条件付きでESM批准を承認、市場好感
2012年 09月 13日 04:06 JST
プライスアクションを見ますと、最初「条件付き」という方に引っかかったのかユーロが瞬間売られたのですが、条件そのものがあまり無茶なものでもなかったということだと思うのですが(ドイツの負担が1900億ユーロ上限云々の条件)、瞬間だけ売られたユーロはその後反発し、ドイツ国債は長期も売られましたが中短期も売られて(2年とか出た直後にそれまでの0.04%レベルから0.06%レベルに金利上昇していましたな、その後は知らんが)という中々素敵な展開。
ちょっとソースを拾ってこれなかったのですが、昨日は日中にスペインが欧州安定化基金に支援要請する方向で云々というのが出て債券先物とか下がったりしておりましたが、まあ欧州に関しては流れを見て反応するしかないですわなという所ですが、とりあえずまあ常識的な線で落ち着く方向になっているのは誠に結構な展開ではないかと。
つーてもどうせまた有権者ガーとか言い出して話がややこしくなるんでしょうけれどもね。
・今日は入札2本とな
本日は20年と3か月TBの入札で、まあ普通は20年国債入札の話をするのですが、ここでマニアのあたくしは3か月TBの入札の雑談をする次第。
ここもと新発3か月TBの入札って足切りは0.10%台なのですが、按分は1%入るか入らないかという流れになっております上に、平均落札価格の方が札ベースで0.10%台の1つ上の所になっていて、メインの札が明らかに0.09%台に入るというのが連続しております。足元ではGCレートが0.10%ビットで余剰資金が列をなして並んでいる上に、20日には四半期定例の国債絶賛大量償還があるとゆー事でまあ足元資金の余剰感高まるの巻。
おまけに短期市場的にはCPという運用ツールもあるのですけれども、こちらの方は最近の絶賛格下げ攻撃によって色々と持ちにくい銘柄が増えてきて、格下げ食らった銘柄とか格下げ懸念の高そうな銘柄とかのレートが微妙に上昇ということで、余剰資金がうじゃうじゃあるという中でクレジット物に関しては選別化の動きが目に着くという状況。
まあつまり金は余るわクレジットに関しては選別色が強まるわという流れの中で、短期方面では国債や高格付け安心感銘柄(電力以外の公益系とかのCPが典型)にはニーズが更に高まるという流れになっておりまして、さらに20日から金がどどーんと余るというのが見え見えという展開になっておりますので、本日の3か月TBは発行日が18日になるのですが、これはまあ20日渡しの買いを睨んで在庫確保もしたいでしょうし、もとより金が余っている人が更に余るという事で買う動きもあるでしょうしとか思うと、まあ落札がどの水準になるのかというのと、落札分布どうなるのかはマニア的に注目しております。一方で欧州の金利コンバージョンの動きがドイツの2年国債のマイナス金利解消とかに作用していて、そっち方面からのニーズがどのくらい落ちるものなのかというのもあって、その辺りのニーズをどう踏まえた動きになるのでしょうかねえとかまあ長い所からみたらどうでも良い誤差かもしれませんが、色々とインプリケーションがありそうな無さそうな入札ではございます、というメモなのでございました(^^)。
#しかし昨日の某社の20年単買い推奨レポートの根拠がどう見ても「20年が安い」じゃなくて「10年が高い」にしかなっていないのはアレなクオリティですな
○後回しになっておりました(汗)宮尾審議委員会見より
先週のネタを今さらで申し訳ございません
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1209a.pdf
・今回の最大の特徴は「会見が割と普通に進んでいる事」ですな^^;
会見テキストを読んで最初に受けたのが上記の事。まああたくしの駄文の過去ログでも当たって頂ければ判ると思うのですが、前回の宮尾審議委員の記者会見って妙に質問する記者の皆さんが喧嘩腰モードになっていて、宮尾さんの答えの方も微妙に話が噛み合っていないという感じ(だから会見が進むうちに益々喧嘩腰モードになって行ったのですけれども)で、まあコミュニケーションがちゃんと取れていないなあという印象を強く受けた訳ですよ。
でまあそんな宮尾審議委員の会見だったので、今回の会見はどうなるのやらとか思って会見テキストを見たのですが、今回はまあ普通に普通の進行になっているという印象でございます。まあ今回も割と建前論っぽい答えも目に付くのですが、前回の会見での宮尾さんの応答が全力で建前論的な感じでして、その辺がちょっとマイルドになっていると申しますか、講演にあるハト風味あるいは下振れ警戒メッセージを会見でもニュアンスとして伝えよう、という感じになっている分だけ前回とは違うなと思いましたでございます。
・長期金利の低下に関する評価
まあこの質問はツッコミとしては微妙ではあるが(1点目は割愛)。
『(問)2点目は、本日の挨拶の中で、従来、金融緩和によって長めの金利を低下させることでポートフォリオ・バランス効果を狙ってきたが、投資家のリスク回避姿勢による長期金利の異例の低下によって「向かい風」になっているというご指摘がありましたが、「向かい風」になっているということは「長めの金利を低下させることによる刺激効果は当面期待できない」というご見解なのか、そうだとすると、講演の中で指摘された景気・物価の下振れリスクについて、宮尾委員個人として意識しておられる処方箋があるのか、手詰まりだということなのか、この点についてのご見解をお伺いします。』
政策の手詰まり云々というよりは「足元の長期金利の低下をどう評価するか」という質問をした方が良いのでは??と思ってここを読んだら宮尾さんがそういう答えを展開していたのでニヤリという感じです。
『(答)2点目ですが、日本銀行では、包括緩和、資産買入等を含めて金融緩和を強化してきたわけですが、その効果についてどう考えているのかというご質問であったかと思います。本日の講演で触れているように、長めの金利の低下あるいは各種のリスクプレミアムの低下を通じて、幅広く金融環境の改善を促すことで、例えば、投資家や企業、家計のコンフィデンスが改善し、最終的には景気・物価を下支えるという効果が期待されるなど、これまでの累次の資産買入、金融緩和によって効果が発揮されてきていると認識しています。』
というのはまあ良いとして。
『その上で、足もと、投資家のリスク回避あるいはリスクに対する慎重姿勢、安全志向が、政策効果への「向かい風」になっていると申し上げているわけですが、これは政策効果がないという意味ではなく、政策効果が基調として働いている一方、それを上回る逆風、向かい風というものが作用していて、政策効果を全体として見えにくくしているということを申し上げています。従って、政策効果がない、あるいは手詰まりであると認識しているわけではありません。そうしたリスク回避の動きが今後終息に向かうのか、引き続き重石となっていくのか、あるいはさらに増大していくのかという点については、引き続き十分に状況を注視していきたいと考えています。』
ということなので、今の長期金利の低下状況が必ずしも政策効果で金利低下だヒャッハーという話では無い、という指摘をしているのはまあ当然ちゃあ当然なのですが良い論点ですな。
・経済見通しもそうだが物価見通しの所に注目
『(問) 景気と物価の見通しに対する認識について、本日の冒頭挨拶の中でも、全体として改善方向にあるが気懸かりな要素が増えつつあるといった発言もされていますし、下振れリスクを意識して3点挙げられていますが、そうすると、今後、日銀の対応として追加の金融緩和の必要性をどう考えていくのか、現段階での見解を教えていただきたいと思います。あわせて、物価については、10月に公表予定の展望レポートに向けて、今後、どのような点をチェックしていく必要があるのか教えて下さい。』
まあ直球質問。
『(答) 1点目ですが、景気の現状認識、先行きのメインシナリオ、あるいはリスクの評価という点について、ご質問があったとおり、足もとまでは、外需の減速を堅調な内需がカバーしており、全体としては緩やかに持ち直しつつある、という回復のシナリオは変えていません。一方、ごく直近では、幾つかの懸念材料があるということで、3点指摘していますが、「輸出・生産の減速が続き一部で在庫の積み上がりもみられる」、「設備投資の先行きに関して機械受注に弱めの動きがみられる」、「幾つかのマインド指標に鈍化の兆しが窺われる」などの懸念材料がみられるため、こうした動きが一時的なものかどうか注意深くみていく必要があると認識しています。』
ということで、まあ明らかにこれは講演での話と同様で先行きの見方を慎重にしていると言うか、先行き見通しの引き下げの可能性を示唆という所でありますのでハト風味強し。
『先行きのリスクに関しても3点、「海外経済が一段と減速するリスク」、「円高が進行するリスク」、「輸出・生産の回復がさらに後ずれして、内需から外需へのバトンタッチが上手くいかないといったリスク」があると認識しています。こうした先行きの見通しとそれに伴うリスクの評価について、毎回の決定会合でも点検していますが、特にこれから10月にかけてしっかりと点検して参りたいと思います。』
さっきと同じと言う感じですな。
『そのうえで、金融緩和の必要性についてですが、これはいつも繰り返し申し上げているとおり、景気・物価の先行き見通しを入念に点検し、必要と判断される場合にはしっかりと対応する、細心かつ果断に措置を講じるという姿勢でいます。そういう意味で、今後も適切な金融政策運営に努めていきたいと考えています。』
ここの所は建前論になるのが宮尾さんクオリティ。
『展望レポート作成に向けて、物価の見通しについても同様です。今日の冒頭挨拶でも触れていますが、景気に対する下振れリスクを意識していることから、物価の見通しに対してもやや下振れリスクを意識しています。そういう点も含めて、しっかりと今後の見通しとリスク評価について入念な点検を行っていきたいと思います。』
・・・・・・・・でまあ当然ながら現在の金融政策の枠組みとして「中長期的な物価安定の目途」というのがある訳ですからして、この目途に対して物価の下振れリスクを意識という発言をするというのは、追加の金融緩和の必要性を検討、という意味によりダイレクトに繋がるロジックですので、まあ宮尾さんもそのへん意識して発言しているとは思いますが、意味合いとしては物価見通しについての下振れリスク意識表明というのは追加緩和の必要性を示唆という話になりますので、その点では「経済見通し」だけではなく「物価見通し」に言及しているのはネタとしては重要だと思います。
・内需の持続性について
『(問) 外需を堅調な内需が補ってシナリオ通りという話だと思いますが、一方で、内需をみていると、個人消費を中心に最近やや弱めの数字もちらほら出ているかと思いますが、内需の持続性をどのようにみているのか教えていただけますでしょうか。』
『(答) 内需の持続性については、基本的な回復のメカニズムとして、例えば個人消費に関しては、まず、堅調な企業収益を背景として、雇用所得環境が緩やかに改善し、賃金も下げ止まる中で、個人消費が支えられていくというメカニズムがポイントの一つになろうかと思います。』
『あわせて、内需でもう一つの重要な項目である設備投資に関しても、やはり企業収益が出発点になると思います。短観等でもみられるように、今年度は非常にしっかりとした投資計画が示されており、足もとまでは設備投資は緩やかな増加基調を続けていますが、先行きに関しては、先程申し上げたように、機械受注の動きなど、懸念材料が散見されますので、そういった設備投資や個人消費の両面から、内需の持続性についてより入念に点検して参りたいと考えています。』
ということで、まあ企業収益に注目という所ですが、足元ご覧の通りの有様という事で、まあ展望レポートは兎も角としてその前に宮尾さんがどういう見方を示してくるのか注目です。
・基本的な見方の変更はあるのですかという質問に対して
『(問) 講演を聞きますと、内外需、世界経済の回復に対して随分慎重な見方をされていると思いますが、そうした中で日銀が言われている今年度の上期の回復への復帰ということですが、現状まではシナリオ通りに来ているけれども、先行きのリスクが多いということで、中国にせよヨーロッパにせよ、この先すぐに回復が早まることは考えづらいかと思います。一方で、内需も先程言われていた懸念材料がある中で、日銀が想定していた日本経済が緩やかな景気回復に復する時期が多少後ずれしているような印象もあります。1カ月、2カ月遅れても、その回復のメカニズムが壊れていなければ問題ないかと思うのですが、こうした点についてお伺いします』
まあこういうツッコミもありますわな。
『(答) 先程のご質問への回答とやや重複しますが、回復のメインシナリオは変えていませんが、一方でリスクには注意が必要だと思います。』
まあメインシナリオ変えたら追加金融緩和提案しないと整合性取れませんからね。
『回復が後ずれするという点に関しては、先行きのリスクで申し上げた3番目――輸出・生産の回復が更に後ずれし、内需から外需へのバトンタッチがうまくいかないといったリスクに注意していかなければならないという認識です。基本のメカニズムに関しては、先程企業収益を起点としたメカニズムをご説明申しましたが、そういったメカニズムは引き続き期待できるのではないかと考えています。』
とは言っているものの企業収益ェ・・・・・という所ではあるのですが、まあ企業収益ガーという話ではございますので、その辺の動向が宮尾さんの見通しの変化や金融政策決定会合での追加緩和提案などの動きとどうリンクしていくのかというのを今後は注目したいと思います。
まあ総じていえば下振れ警戒のメッセージをかなり強めに出しているという感じで、先般の山口副総裁の広島での講演&会見でも割と下振れ警戒の話が出ていましたが、宮尾さんの方がより下振れ警戒に対するメッセージが強いなとは思いました。
でまあ普通こういうのが政策委員サイドからポロポロ出てくる(その前に西村副総裁は中国経済に関して不動産バブル崩壊の警告をしていましたがな)と一般的には「景気見通し下方修正の示唆」であり「追加金融緩和政策実施方向を示した」という評価になる筈なのですが、何せ日本銀行におかれましては総裁であらさられます麿様におかれまして相変わらずの麿クオリティを炸裂させておられる所が実にアレでございまして、麿が今日も元気だ麿節だという風になっておられるので、どーしても他の政策委員の発言が霞んでしまうのが遺憾にも程がある所です。
まあ趣味のヲチャー的には政策委員の皆様がそうは言っても麿節に全て巻き込まれている訳ではないという動きをしているのはそれはそれでメッセージとして受け止めるのではございますが、ただまあ市場一般的に見た場合には麿の出すメッセージが強いのでそっちの印象が強くなってしまうという所ではないかと思います。つまり麿もうちょっと自制しろと思うのですが、残り半年の任期中にちゃんと言うべきことは言っておきたいというモードになっておられるので難しいだろうなあ(まあそのお気持ちも判りますし)とは思われる所でございます。
○しまった!ジャクソンホール講演の景気見通しの部分のネタ出しを忘れてた!!!!orzorz
という遺憾な事実があるのですが、今晩のFOMCでどうせ結果が出るのでまあ勘弁(こら)。
引用とかおっぱじめるとオワランチ会長になるのでそこはスルーしますが、ひたすら労働市場の話を延々としている(まあ本職の方のレポートがとっくの昔に出ているのでご案内の通りだとは思いますが)ということで、まあ労働市場がイマイチ→労働市場に関する指摘というのは、まー普通に読めば追加緩和示唆という話。
ではその追加緩和に何をするのか、というのがその前にネタにした「非伝統的政策に関する説明」部分になると思いますが、それについてはネタにした通りで、「コミュニケーションポリシー」については淡々と説明して「金利ルート」を強調する形になっていて、一方の「バランスシート政策」に関しては説明もしていますが追加LSAPに対するツッコミへの答えとかしている訳ですから、これを素直に読むと「フォワードガイダンスの強化やSEPを利用したコミュニケーションポリシーの強化」が先に実施されて、ツッコミに対しての答えが少々微妙な面もあるLSAPのおかわりに関してはもう少し状況が悪化してから、という事になると思います。
あと、労働市場に関しては「構造問題が発生して自然失業率が上昇している」という見解(コチャラコタ総裁がそのロジックの最右翼)に対して「そうではない」という話をしているのはまあ目立つところで、その部分のまとめでは「回帰が回復したら従来のリセッション回復と同様に失業率はリセッション前の水準まで改善して然るべき」という見解を出していまして、これはブラード総裁のロジックとは違いますなあという所でそれだけ引用しておきますね。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20120831a.htm
の『Economic Prospects』から。
『In light of the policy actions the FOMC has taken to date, as well as
the economy's natural recovery mechanisms, we might have hoped for greater
progress by now in returning to maximum employment. Some have taken the
lack of progress as evidence that the financial crisis caused structural
damage to the economy, rendering the current levels of unemployment impervious
to additional monetary accommodation. The literature on this issue is extensive,
and I cannot fully review it today. However, following every previous U.S.
recession since World War II, the unemployment rate has returned close
to its pre-recession level, and, although the recent recession was unusually
deep, I see little evidence of substantial structural change in recent
years.』
2012/09/12
お題「だいたいECB国債買入プログラムレビュー」
まあ別にあずみんが臨時事務代理で実務的には問題は無いと思いますが、「財金分離」とか言って日銀総裁人事に反対したのは一体全体何だったんでしょうかという話ではございますな。つーかそもそもの意味での「財金分離」って金融行政と財政の分離だったように思えるのですが。
あと、所有権移転如きでこれだけ中共(と台湾)が騒ぐんだったら結局静かに実効支配を継続すれば良かっただけの話で、馬鹿都知事がドヤ顔で騒ぎを大きくしたのが万死に値するって事のような希ガス(アキヒロが竹島で自分から大騒ぎをするのがアホウなのと同じ理屈ぞな)。もともと最初から地権者からの購入話だってあった訳でヒーロー気取りの馬鹿が騒ぎにしなけりゃもっと静かにしらっと所有権移転できた可能性もあったんじゃないですかねえ。
#まあ中共も台湾もそれでも文句は言ったとは思いますけど
○ECBドラギ総裁会見ネタの続きでござる
http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120906.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
・IMFの関与、SMP購入分の優先権、利下げの検討の有無について
conditionality関連の質疑が多いので(当たり前だが)その辺から少々。まずは最初の方の質問から。
『Question: I also have a question on the conditionality. In your statement,
you say that “the involvement of the IMF shall be sought”. Does that
mean that the involvement of the IMF is a firm condition or is it just
the preferred scenario? My second question is: am I right in understanding
that you will retain your senior status for bonds bought under the Securities
Markets Programme (SMP) and for all other bonds held by the Eurosystem?
And finally, did you discuss a change in interest rates at your meeting
today?』
質問3つあって、1つはステートメントで「IMFの関与も求められるべき」というのがあったけど、救済に関するIMFの関与は絶対条件になるのかそれとも単なる推奨条件になるのか、というので、2つ目はSMPで買った債券に関しては優先権が継続するのかというので、3つ目は利下げの論議はどうでしたというのですな。
『Draghi: The involvement of the IMF is sought for the design of the policy
conditionality, but we cannot dictate what it should do. It is an independent
institution, but if the Board of the IMF, its management and its Managing
Director want to participate in the programme, they would be more than
welcome. This is definitely the preferred scenario.』
IMFの関与は「推奨シナリオ」であるという事のようです。
『However, because I can read the question on your mind - is this a condition
sine qua non? - it is important to explain how the ECB is retaining its
independence in all this. We have provided governments with a broad framework
for conditionality, but it is very much up to the governments themselves,
the European Union, the European Commission and the IMF to decide on the
precise nature of this conditionality. It is important that the Governing
Council retains full discretion and full independence when deciding on
issues relating to monetary policy.』
絶対条件(sine qua nonって絶対に必要な物とかそういう意味らしい)なのかという件に関しては、ECBは独立してこれらの機関から独立しているという事を強調したいという話を頼まれもしないでおっぱじめておりまして、まあこれって普通に読めば「球は政府にあります」という話をしているのでしょうけれども、ことさらに「independence」の話を強調するのは「政府との協力」をあまりにもアピールしながら明らかにお助け措置となる国債買入を実施することによって、「財政ファイナンス」と言われるのを避けようという配慮があるんでしょうなあと思います。
『What we have put in place today is an effective backstop to remove tail
risks from the euro area, and the ECB will retain its independence throughout.』
つーことでこの購入プログラムは「an effective backstop to remove tail risks」と明言しておりますな、うんうん。
『With regard to seniority, the statement on outright monetary purchases
does not apply to the SMP holdings.』
優先権に関してはSMPでの購入分については変化なしですが、そもそもSMPが停止となりましたので、まあ問題はさほど大きな話では無いかもです。
『Finally, yes, we discussed interest rates today, but it was decided that
it was not the right time to make a change. The reason for this is, in
a sense, given in the introductory statement. When we last decided to reduce
rates, we had anticipated this weakening in the business cycle.』
利下げの検討もおこなったようですが、今回は前回利下げしたのでとりあえず様子見という所のようですな。
・unlimitedという言葉がヘッドラインに出るのですが・・・・・・・
正面切ってこういう質問をされると答えがどうなるかという事を鑑賞。
『Question: Mr Draghi, will the purchases be unlimited in amount and time?
And my second question is: Spain is facing a huge refinancing hump at the
end of October. Will the ECB’s new programme be up and running in time
for this?』
購入は量とか時間とかに関して「unlimited」となる訳ですよね、そういやスペインは10月末にリファイナンスがありますがその時に打ち込むんですかという質問ですけど。
『Draghi: Well, on the first question, there are no ex-ante limits on the
amount of Outright Monetary Transactions. And the size - as I think it
said in the first press release or the introductory statement - is going
to be adequate to meet our objectives.』
ということで、「事前に上限を決めて実施する訳では無い」というステートメントでの言い方を繰り返していて、量に関しては「我々の目的を達成する為に必要な量を買う」という言い方になっておりまして、unlimitedというヘッドラインから想定されるイメージとは違いますってニュアンスの話はしているものの、別の質問では
『On the second point - yes, we think that having it, ex ante, unlimited
in size is adequate to reach our objectives.』
ということで「ex ante, unlimited」ということで、まあ意味としては「no ex-ante
limits」と同じなのですけれども、unlimitedという単語を使ったりしていますので、まあドラギのおっちゃんとしては威勢よく見せる為にも「unlimited」って言いたかったのかもしれませんけれども、(威勢の良いことを言って市場の方が勝手に買入を織り込んでくれて市場金利が低下してくれるのが一番ウマーな展開なので)あまり調子の良いことを言い過ぎると今度は金主の政府は兎も角として政府のバックにいる国民の皆様がヘソを曲げだすのでそこは自制という所かと勝手に妄想を逞しくするあたくしでございました。
『As regards Spain, we have designed a parcours, a path, and it is now
in the hands of the government and the Eurogroup - in the hands of the
government of Spain and the governments of the euro area.』
スペインの件についてはスペイン政府に球がありますという事ですが、ラホイのおっちゃんがそこで渋っているのが少々アレ。まあこんな大変な時だから降りちゃえば良いのにとか思うのですけれども、国民党(外務省表記方式だと「民衆党」です)も下野してから長かった(2004年の総選挙以来)からしがみつきたいんでしょうかね。
・LTROの検討はしましたか?
ネタの事情で(^^)質問を分割。
『Question: I have two questions, Mr Draghi. First of all, was there any
discussion in today’s meeting regarding any other liquidity programmes,
like an LTRO?』
これについては「今回は検討していない」と明確に否定。
『Draghi: No, there was no discussion on LTROs.』
・この質問はワロタ(^^)
で、上記の質問の2つ目の質問がこれまた酷い質問でテラワロタ。
『And my second question is: All global markets were waiting for this today.
Even the Turkish central bank was waiting for it. Does this put pressure
on you when deciding things?』
Even the Turkish central bank was waiting for it.って何だよという感じですが、世間のプレッシャーは影響していますかとかちょっとお前自制しろwwwwww
『And we are obviously all under pressure. It is not just me; the whole
of the Governing Council has taken very important decisions today - also
for the ECB as an institution - so we are fully aware of that.』
いやいや私たちの決定はいつもプレッシャーを伴うものですよ何を仰る兎さんという所で。
・「目的が達成される」というのはどのような所を見て判断するのかという質問
『Question: Mr Draghi, I think I am right in saying that in the statement,
you are explicitly not providing any kind of level at which you think a
bond yield of a country that applies for this is excessive. In fact, the
language seems to basically say “you will know when it is there and then
you will do it and you will tell us about it afterwards” - is that broadly
it? Is there any more detail you can give us in terms of the work that
the experts were doing over the last few weeks to try and figure out how
you decide when a bond is suffering from convertibility risk?
And the second question is, since this is all designed to protect the transmission
mechanism or repair it, would you say that the transmission mechanism is
also broken in a sense in Germany, where perhaps the bonds are suffering
from a sort of convertibility premium, and will you be doing anything to
fix that?』
ということで質問が長いのですが、答えの方が見もの。
『Draghi: The answer to your last question is, if bond markets are distorted
in the euro area, they are distorted in all directions. And this is one
of the causes of the impairment of monetary policy transmission. And that
is really the objective of this programme: it is to repair monetary policy
transmission and to recreate the singleness of monetary policy for the
euro area.』
でまあその辺の理念的な話は兎も角として。
『Now, on the specific question you had whether we had in mind a specific
yield target - the answer is no. No, just because the repair of monetary
policy transmission is a complex concept, so we will be looking at a variety
of issues.』
ということで、何かの市場利回りなどの特定数値に対してターゲットを設けて買入をする訳ではないというお話。「金融政策の波及経路の修復というのは複雑なコンセプト」とな。
『The level of yield ceilings is one, but there are also spreads - CDS
spreads, bid-ask spreads - and more generally the conditions of liquidity,
so we have a variety of indicators. Volatility is also very important,
in terms of the indicators that we plan to take into consideration in planning
our interventions.』
ということで、具体的にはイールドだけではなく、CDSスプレッドや市場のオファービットのスプレッド、そしてより一般的には流動性の状況(オファービットスプレッドもそういう話ですわな)など多くの指標を見る、としたうえで「ボラティリティーも重要」という事を強調していますな。
・購入は各国中銀が実施
『Question: Under the new OMTs, will the purchases continue to be conducted
by the national central banks according to the capital key, and will they
take the risks associated with these purchases according to the capital
share that they have of the ECB?』
という質問に対してですが。
『Draghi: Well, the answer to the first question is yes.』
ということですが、この次の質問の方が意地悪でしてアレ。
・過去にも国債買入をしたけれども、結局今回また買入することになりましたよねという意地悪質問
『And my second question is, this is kind of the third attempt at making
a bond purchase programme work: you did it in May 2010, you did it again
in August 2011, and they did not seem to work. What makes you think and
why should people be convinced that this third attempt will work?』
過去2回の買入は対してワークしていなかったように見えますが、どの面下げて今回買入を実施するんでしょうか何で効くんでしょうかとまあそういう質問ですな。
『And the second is actually very, very important. We certainly discussed
that. I would, by the way, disagree that the other two programmes have
not worked in such a kind of decisive way, but let me talk about the present
programme.』
前の2回が効かなかったことについても否定したいですが、まあそれはそれとして今回のプログラムについて説明しましょうと。
『The present programme is very, very different from any other programme we had in the past.』
ほうほうそれでそれで?
『First of all, we have this conditionality element. That is, I would say,
the most important difference, because it really puts together our intervention
with an ownership of the economic programme that a certain country has,
by the country’s government, but also by the other governments that have
to vote in favour of the EFSF interventions. That is one of the differences,
and I think it is probably the most important.』
今回の買入はconditionality elementであるのが違いますというのが最初。
『The second one is that there is going to be much greater transparency:
as I said before, we will publish the OMT holdings, the duration, the issuer,
the market value. So there is going to be much more transparency.』
今回は何を幾ら買ったかについての開示が違いますとな。
『The third is that the duration is different.』
買入の期間が違う、ということですが、まあ勝手にあたくしが脳内補足すると、「中短期金利を低下させる」という目的がしっかりしているという事を言いたいんでしょうかね。
『And the fourth is the explicit statement that we will accept pari passu
treatment with the other creditors.』
今回の買入分には優先権を主張しないと。
『So, there are very many differences with the previous ones, which lead
us to think that it will actually work.』
だそうですが、次の質問者の2つ目の質問で似たような嫌がらせ質問が。
『Question: Two questions, please. (最初のは割愛)And my second question
is: Unlimited bond purchases are something very new. The SMP is in the
past. Now, we have unlimited purchases. What is the rationale for this?
Is it to say: “Look guys, we have spent more than ユーロ200 billion buying
these bonds and still monetary policy measures are not being transmitted.”-
Is it to ensure better transmission of monetary policy that you have decided
this, which is a big step?』
で、この質問はもはやスルーして先ほど引用した
『On the second point - yes, we think that having it, ex ante, unlimited
in size is adequate to reach our objectives.』
とお答えでした。
○ということでECBスキームなんですが・・・・・・
まあ何ですな、こちらのスキームは「バックストップとしてはこうかはばつぐんだ」という奴でして、まあ大きな方向として政治が馬鹿方向に発狂モードにでもならない限り、ユーロ各国の国債金利がコンバージョンする方向に大きな意味ではなって行くでしょうなあという所だと思われます。
まあ当然ながらリスクはそもそも各国の国民の皆様の意志がコンバージョンを阻害する方向になった場合という話なのですが、それはそれとしてこちらのスキームって1つだけ盛大に大穴が開いている部分があって、「いざ買入を実施した後に、買入対象国が条件に違反した場合に本当におまいら買入止めるのか」という所ではないかと。
いやまあ買入止めますよとはゆうとるものの、実際にそれをするとECBが対象国を地獄送りにするトリガーを引いてしまう事になって、それってECBとして判断できるのかよというのが問題のその1ですし、さらに言えば今回は優先権を主張しないということですから、地獄送りになった後にECBのポートフォリオには紙屑化した買入国債が残るという大変に素敵な事態になる訳ですが、その場合ECBの資産毀損という話でユーロ通貨の信認問題とかになって、地獄に送った方も三途の川ドラム缶クルーズツアーへの強制参加モードになるのではないかとまあそんな辺りはスルーしている(せざるを得ないというのは判るが)なあと。
まあそもそも各国がオラシラネとなったらユーロが崩壊するのだから同じっちゃあ同じと言う議論もあるのですが、国としてのToo
big to fail大作戦がこのスキームだと可能ですので、ラホイのおっちゃんにおかれましてはもう欧州安定化基金の救済に手を挙げてジャンジャン国債をECBに買わせて、うちがコケたらECBも共倒れ、という状況まで持って行ってから、「いやあちょっと状況的に赤字削減には時間が掛かりますなああっはっは」と開き直った債務者攻撃をかましたらどうするんでしょうというのは提案したらダメですかそうですか。
○時間が無いので一発ネタ
先週の木曜にこんなのがあったんですけどね。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120906b.pdf
ブンデスバンクの東京での新たな門出に寄せて
ブンデスバンク駐日代表事務所開設25周年
祝賀レセプションにおける挨拶の邦訳
『さて、ブンデスバンクについて、かつてドイツのコール首相は、「政治家としてブンデスバンクの金融政策決定を好ましく思ったことはあまりないが、一市民としての自分はブンデスバンクの存在を喜ばしく思う」と述べたと伝えられています。このエピソードが示すように、ブンデスバンクが独立した中央銀行として物価の安定を実現してきた実績はつとに有名です。』
・・・・・・・・・・・・いやまあお気持ちは判るのですが、何でそういう一々物議を醸さなくても良い所でそういう物議を醸すような発言するかねこの麿は・・・・・・・・
ちなみに本チャンではこう言ってますのでまあ同じですな。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko120906b.pdf
『It is said that the German Chancellor Helmut Kohl once stated that "I
did not like many of the monetary policy decisions of the Bundesbank, but
as a citizen, I am very glad about the existence of the Bundesbank."
As this episode shows, the Bundesbank is well known for its independence
and achievements in securing price stability.』
2012/09/11
お題「本日は諸般の事情で雑談シリーズです」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120910-00000045-mai-soci
<松下金融相>自宅で自殺 首相ら宛ての遺書3通
どのような事情があったのが存じ上げる事もできませんが、松下金融担当大臣のご冥福をお祈り致します。しかし昨日ってWHOの世界自殺予防デーなんですよね・・・・・何ということorzorz
http://www.who.int/mediacentre/events/annual/world_suicide_prevention_day/en/index.html
○FOMCプレビュー雑談
まあ雑談ちゅうか何ちゅうかなのですけど。
・・・・・・・いや今週のFOMCですけれども、まあ何とかストの皆様もそうですし、ベンダーのコメントとか、そもそも皆様の言っているお話もバラバラでして、正直何がどうなっているのかワカランチ会長。
どうもあたくしが個人的に聞いたりして回った感じですと、世界的な債券市場的にはいわゆるQE3みたいな政策の実施の予想が半々よりもやや実施側に傾いているという感じに見受けられるのですが、そのQE3にしてもMBS買うのか国債買うのか、買った分を資金吸収する形のツイストオペもどきをするのかしないのかとか意見がまあバラバラにも程があるという所。
こうなるとFOMCで何が出るかを予想するのもアレですし、何が出たらどういう反応をするのかという方を予想する方が建設的ではあるのですが、そもそも市場のコンセンサスが無いに等しいと思われますのでそれすら出たとこ勝負という感じで、まあ知らんがなという所。
・・・・・・でですな、あたくし思いまするに、先週末の雇用統計を受けた市場の反応がまさにそれだと思うのですが、あの商品価格上昇+株高+イールドカーブのスティープっていうのがまさにQE3実施の後の市場の姿を織り込みに逝くような流れだと思うのですけれども、つまりQE3実施した場合には「ヘッドラインの物価と資産価格には効く」という話であって、それって「労働市場の改善にどう効くの?」という話になるんじゃネーノとか思うのですけどね。
いやまあ名目金利上昇してもインフレ期待が上がれば実質金利が低下するのでという論点はあるのですが、QE2の時のようにデフレ均衡入りへのリスクが意識されない中で、中長期的なインフレ期待がマンデートに資するように安定する中でわざわざそこで期待インフレ率を引き上げる必要があるのと単純に思うあたくし。
もちろんその辺のツッコミに関してはジャクソンホールの講演で逆さ絵のおじさんは一応お答えはしているのですが、「バランスシートをこれだけ拡大しても別にインフレになっていませんから問題ありませんぞなもし」という理屈でございまして、それは経済の条件が変わった場合にも未来永劫そのままなのかというと別問題で、特に足元ではフォワードガイダンスを絶賛大強化しようという話もある中でさていつまで大丈夫なのよというのもありますし、大体からして市場の方がそういう反応をしているというのはやはり色々とややこしい事になるのではないかと思われるのでございまする。
それから「買入しながら吸収オペ」というのは「長期金利を下げる」というネタとしてまあ話としてはあるかもしれませんが、それはツイストオペと何の違いがありますねんという話で、それをするなら今やっているツイストの期限来てからやればいいんじゃネーノとか思いますし、大体からして買入と吸収オペセットにすると短期市場金利が上昇してイールドカーブがフラット化するので中々誰得な展開になりそうな気もするのですけどね。
という訳で、まああたくしと致しましては今回は「フォワードガイダンスの延長」に加えて「SEPでの見せ方の改善で政策金利見通しパスをより明確化」というのが入って、もしかしたらフォワードガイダンスに関しても現在の漠然とした「FOMCの委員の大勢となる経済見通しの反映」ではないような強化(コミットメントにより近づける)というような形で、今回はコミュニケーションポリシーに相当の重点を置いて実施し、QEについては「やる準備はあります」とチラリズムというかやるやる詐欺で引っ張るんじゃネーノと思いますけどねえ。
つーか、今回フォワードガイダンス強化とQE3をいちどきに打ち込んでしまうと、年末のフィスカルクリフ前に打ち込むネタがどう見ても無くなると思うので、まあQE2終了後からは色々とネタの出し惜しみをしている感の強い(その背景にはネタ切れを自覚しているというのがあると思いますよ)逆さ絵おじさんとしては、とりあえず期待を繋いで時間稼ぎしか無いと思うのですけどねえ。
などと散々書きましたが、大外しした場合は謝罪くらいはしますが賠償は致しかねますので念の為申し添えておきます。
○中身は中々面白いのですが・・・・・・・・・・・・
最近は西村副総裁の世界行脚とか麿のブンデスバンク東京事務所25周年挨拶とか、面白ネタが色々と投下されているのですが、ECB会見ネタですらまだ全部成敗していないというのにこれまた追加ネタが投入されるでござるの巻。ネタ切れで困って居た時にこの辺のネタ投下してケロよと思うのですが(笑)。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120910a.htm/
人口動態の変化は我が国のマクロ経済に影響を与えているのか? ― 金融政策へのインプリケーション ―
白井審議委員が上記のお題で講演をしているのですな。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko120910a1.pdf(原文)
Have Demographic Changes Affected Japan's Macroeconomic Performance?
-- Some Implications for Monetary Policy --
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120910a1.pdf(邦訳)
でまあこちらの中身がこれまた面白いのですが、これ引用していると結構長くなるので本日は諸般の事情で中身の細かい話はスルーというか後日にさせて頂きたく存じます。
では何でこれがネタになるかと申しますと、そこの第4部にこんなのがありましてですな。
『4.人口動態、需給ギャップ、緩やかなデフレ
高齢化がマクロ経済に与える影響についての私の考え方を要約する形で図表12に示してみました。この図表をご覧頂きながら、第
4 部では、我が国の需給ギャップと緩やかなデフレに関わる問題、そしてそれに関連して日本銀行の金融政策運営についてお話しを進めて行きたいと思います。』
ということでお話がありまして、その中でこんな論点を。
『ちなみに、人口動態に関するデータ(例えば生産年齢人口の伸び率)と需給ギャップの関係をプロットしてみますと、これらの変数の間には明確な相関関係は確認されません。』
ほう。
『ただし、このことは、直ちに人口動態と需給ギャップが無関係であることを意味するものではなく、むしろ、人口動態が需給ギャップに及ぼす影響が、様々な複雑なチャネルを通して発揮されている可能性があることを示唆していると考えています。』
とまあ悪態をつけば往生際が悪いという話ですが、まあそこはそこ(^^)。
『複数の研究では、マイナスの需給ギャップに寄与している要因として主に 3
点指摘しています。それらは、(1)自然利子率の低下とゼロ金利制約による金利ギャップの存在、(2)潜在成長率の低下に起因する経済の期待成長率の低下、(3)リスク回避的な銀行行動といった要因です。もちろんこれらの要因は相反するものではなく、同時に成立している可能性はあります。』
でまあそこの説明の引用は長くなるので結論の所だけ引用しますが。
『このことから、自然利子率が長期間にわたってマイナスに陥っていたかどうかについては確かではありません。付け加えれば、斎藤他(2012)では(推計される金融政策ショックがゼロ金利制約のショックをとらえると仮定する
DSGE モデルにもとづき)名目金利のゼロ金利制約の効果は比較的小さかったと指摘しています。したがって、要因(1)が、需給ギャップが長くマイナス圏で推移したことに対して、有意な説明力を有しているかどうかについては議論の余地があるように思われます。』
『次に、要因(2)についてですが、潜在成長率の趨勢的な低下の一因が高齢化にあることは明らかですが、こうした潜在成長率の低下が経済の成長期待の趨勢的な低下をもたらし、これが需給ギャップを悪化させている可能性があります(図表
15)。(途中割愛)こうした状況が潜在成長率の低迷をもたらし、それが企業や家計の成長期待を抑制することで需給ギャップの悪化をもたらしているという説明は実感にも近く、それなりに説明力があるように思われます。』
『最後に、要因(3)では、金融規制の強化や資本制約によって金融機関の貸出行動が抑制される点に注目しています。(途中割愛)ただ、私自身としては、このような効果が現実にそれほど重要なのか多少疑問があります。』
というお話のようです。
・・・・・・・・でですな、そらまあ良いのですけれども、まあ日銀がこういう話をすると、その話の内容が正論であろうとも「まーた日銀はデフレを人口動態のせいにして言い訳している」という批判になる訳でございまして、最近人口動態の話が日銀大好きなのは判るのですが、あまりそれを強調するのはそれこそ「金融政策では何もできません」と言い出していると受け止められるリスクが高い話であって、それはそれであのドラギ総裁ですらハッタリかまして色々と見せ方工夫してびりーぶみーとか言ってる訳でございまして、逆さ絵おじさんの雨人クオリティを見習えとは申しませんが、もうちょっと何とかならんのか日銀の情報発信ってとは思ったのでその悪態を書くだけのために引用しました次第。
なお、内容そのものは色々と興味深いので、それはそれとして後日ネタ投下の所存。
○政治関連ニュース悪態雑談を少々
まあどうでも良いですけどね。
・谷垣さん残念とか自民党方面
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120911-00000007-mai-pol
<自民党総裁選>谷垣氏、長老の壁に屈し出馬断念
毎日新聞 9月11日(火)2時32分配信
・・・・・・・谷垣さん自体は政策遂行という点では非常に良いと思ってたのですけれども、まあ残念な所ですが、これはある意味石原の倅に対する嫌がらせで最後っ屁かと思ったのですがどうですかね。
しかし石原の倅ってろくすっぽ閣僚経験が無い筈(確か道路公団がどうのこうのの時に1年ちょっと国土交通大臣やったのと、何とか改革関連の実務と関係ない所の担当やっただけだと思う)で、それで首相目指すとかお腹ポンポンの安倍先生の二の舞になるだけという嫌な予感しかしないのですが。
かと言いましてもゲルはゲルで安全保障関係がアレだし、大体からして政権公約で憲法改正謳って選挙に出たら一定の支持は集まるかも知れんが逆に広範な支持を得るのが難しくなるだろとか思いますし、それに協力するのがお前はどの面下げて立候補するのやらという安倍さんという時点でこれまた悪い予感しかしない次第。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120910/plc12091014310004-n1.htm
「国防軍」へ改編公約 石破氏、安保の責任強調
2012.9.10 14:30
・どうしてこう出来もしない事を公約にするのやらと民主党方面
まあ民主党は野田再選のようで、他よりはマシと思ったのですが・・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE88901C20120910
民主党代表選に4人が立候補、首相は1年以内のデフレ脱却を公約
2012年 09月 10日 12:24 JST
えーっと、1年以内のデフレ脱却ってあーたそもそも日銀の物価安定の目途の中長期的1%達成すらまだいつになるかワカランチ会長という見通しになっているのに、何をどうやって1年以内にデフレ脱却を「公約」できるのかと小一時間。
だいたいてめーこの前国家公務員の俸給カットとか盛大なデフレ政策実施したばっかりじゃねえか何考えてるんだヴォケとしか申し上げようがない訳で、もしかしたら野田首相におかれましては電力料金の大幅値上げとか公共料金の大幅値上げでもおっぱじめるとか、はたまた総務省に圧力掛けてヘドニックの価格調整の掛け方を変えさせるとか、そんな事でもお考えなのでしょうかね、つーかそうでもしないと「1年以内のデフレ脱却」って無理だろそれ。
#まさかちょっとだけCPIプラスになったら「デフレ脱却」とか言う気なのか??
まあ何ですな、デフレ脱却に向けて取り組むのは結構なのですが、前任のアホウが「何の対策も無しにデフレ宣言」とかした例に続いて、今度は「どこをどう頑張っても出来もしないデフレ脱却公約」とかお前らがそういうアホウな事ばかりやっとるからデフレ脱却に対するマインドが盛り上がらないんじゃボケアホカスと存じます次第でございまして、甚だ遺憾にも程があります罠。
だいたいからして「出来もしない事を宣言」とか連発していると「宣言に対する実行への信認が落ちる」という事になる訳で、期待に働きかける政策という意味では最もやってはいけないと思うのですが、まあ小選挙区制度になってからすっかりこの詐欺フェスト手法が定着しておりまして、そらまあ政治家の言う事への信認が落ちて変な新政党が毎度ブームになるでしょうなあと思う訳です。
・みんなの党3名離脱とな
まあ既に報じられている話ではありますが。
http://www.47news.jp/CN/201209/CN2012090901001611.html
維新の会、公開討論 7議員が新党参加へ
設立当初は比較的金融関連の皆様からは評判が宜しい中で、あたくしが全力で悪態をついておりましたみんなの党が分裂含みとなりまして、まあ何と申しますか当初の悪態モードの通りの流れになりましてドラめもんドヤ顔と言った所ですが、だってもともと渡辺代表が金融担当大臣だった時の「金融士構想」とか、ここの代表は「一見すると良い事を言ってるようだが結局机上の空論だよねそれって」というのを弄ぶ傾向があったのでその当時から悪態対象だった次第で、まあ所詮新党ブームに乗って議席を取りたかった人が寄ってきたのが去っても致し方ないという所でヨッシー残念でしたね(棒読み)という所で。
まあそのような猟官しか頭にない輩の更に質が落ちたのが維新の会とやらに集結とか、ろくなもんじゃねえなとか思いますし、大体昭和維新だの金融維新だの言い出すのは大体においてアレですし、そういえば維新の志士気取りで船中八朔とか何とか仰せでございますが、この前高速バスで大惨事起こしていた会社の手配主だか何だかも「陸援隊」とか明治維新由来のネーミングしていましたわなあとか思ったり思わなかったり。
・・・・・などとどうでも良い悪態でございますが、最近の政治ニュースを見ておりますと世を儚みたくなるのですが、残念な事にあたくしは人間の出来が悪い俗物でございますので、首陽山に蕨取りにお出掛けしたり泪羅江に石を抱えてお出掛けしたくなるような心境には1ミリも達する事も無く今後とも悪態を申し上げさせて頂きたく存じます次第でございます。
2012/09/10
お題「ECBドラギ総裁会見がまあ色々とネタとして面白い件について」
ADPで期待が高まって雇用統計でズッコケというギャグ展開が今回また発生した訳ですが、まさかのQE3期待で株価高値更新で債券イールドカーブがスティープで30年金利上昇とか中々のオモシロ展開である。
で、どうでも良いけどモーサテでFRBのマンデートを説明しているどこぞの為替電話コメンテーターの説明で「長期金利の抑制」という説明があったが、
http://www.federalreserve.gov/aboutthefed/section2a.htm
『The Board of Governors of the Federal Reserve System and the Federal
Open Market Committee shall maintain long run growth of the monetary and
credit aggregates commensurate with the economy's long run potential to
increase production, so as to promote effectively the goals of maximum
employment, stable prices, and moderate long-term interest rates.』
moderateというのは「抑制」ではないと思うのですが。実体経済の活動に猛烈な悪影響と与えるような急騰急落を起こさないである程度動く分には問題無い筈で、別に長期金利を抑え付けるのがマンデートな訳ではございませんと読めると思うのですがどうですかねえ。
といういつもの重箱ツッコミは兎も角としてECBドラギ総裁会見から少々。
#麿講演とか宮尾さんの会見ネタとかジャクソンホールの続き(経済見通し部分)とかもネタとして存在しているのに放置しているような気がするのは気のせいです
○ドラギ総裁会見である:まずは説明部分を簡単に
http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120906.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 6 September 2012
ちなみに冒頭にありますが、今回の理事会にはユンケルさんにレーンさんも出席の巻。
『Ladies and gentlemen, the Vice-President and I are very pleased to welcome
you to our press conference. We will now report on the outcome of today’s
meeting of the Governing Council, which was also attended by the President
of the Eurogroup, Prime Minister Juncker, and by the Commission Vice-President,
Mr Rehn.』
・背景説明部分では「景気見通し引き下げ」「物価見通しは足元引き上げ基調は変化なし」
まずは最初の所から。
『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep
the key ECB interest rates unchanged.』
金利は変更なし。
『Owing to high energy prices and increases in indirect taxes in some euro
area countries, inflation rates are expected to remain above 2% throughout
2012, to fall below that level again in the course of next year and to
remain in line with price stability over the policy-relevant horizon. Consistent
with this picture, the underlying pace of monetary expansion remains subdued.
Inflation expectations for the euro area economy continue to be firmly
anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but
close to, 2% over the medium term.』
ユーロ建てベースでのエネルギー価格の上昇と、一部の国における(財政再建の為の)間接税引き上げの影響を受けて、今年中は物価は2%超で推移し、来年には2%以下となり、その後は物価目標に沿った形で推移するでしょう。インフレ目標は安定的に推移しています。
ということで、細かい話はその後の説明部分にありますが、足元の物価見通しの引き上げと、短期的な先行き見通しを引き上げ、より長い期間で見た場合の基調的見通しには変化なしというのが物価に関する説明です。
『Economic growth in the euro area is expected to remain weak, with the
ongoing tensions in financial markets and heightened uncertainty weighing
on confidence and sentiment. A renewed intensification of financial market
tensions would have the potential to affect the balance of risks for both
growth and inflation.』
経済に関しては依然として弱いという話をしていますが、詳しい説明部分では見通しの引き下げが行われています。また金融市場の緊張は成長とインフレに対するリスクバランスに影響を与えるでしょうという話ですが、これまた先の詳しい説明部分では金融市場の緊張は成長およびインフレにダウンサイドリスクを与えるという話になっております。
・OMTs導入に関して(金曜の再掲)
『It is against this background that the Governing Council today decided
on the modalities for undertaking Outright Monetary Transactions (OMTs)
in secondary markets for sovereign bonds in the euro area. As we said a
month ago, we need to be in the position to safeguard the monetary policy
transmission mechanism in all countries of the euro area.』
金融政策の波及経路を保護する為にOMTsを導入するという建付けですな。
『We aim to preserve the singleness of our monetary policy and to ensure
the proper transmission of our policy stance to the real economy throughout
the area. OMTs will enable us to address severe distortions in government
bond markets which originate from, in particular, unfounded fears on the
part of investors of the reversibility of the euro.』
金融政策の単一性を保持し、金融政策が域内の実体経済にもたらす正しい波及効果を確実にする事を我々は目指します。OMTsは国債市場が本来の姿から、特に一部の投資家によるユーロ解体への根拠のない不安によってもたらされた深刻な歪みに対して対処することを可能にします。
『Hence, under appropriate conditions, we will have a fully effective backstop
to avoid destructive scenarios with potentially severe challenges for price
stability in the euro area. Let me repeat what I said last month: we act
strictly within our mandate to maintain price stability over the medium
term; we act independently in determining monetary policy; and the euro
is irreversible.』
適切な条件の下で、我々は十分に有効なバックストップを持ち、ユーロエリアの物価安定に対して深刻な挑戦をもたらす破壊的なシナリオを避けます。先月も申し上げたように、我々は中長期的な物価の安定を維持するという使命に対して厳格に行動し、金融政策を独立して決定します。そしてユーロは解体することはありません。
・OMTsを突っ込むと共に政治の動きを要望(再掲)
これも金曜に引用しましたが再掲。
『In order to restore confidence, policy-makers in the euro area need to
push ahead with great determination with fiscal consolidation, structural
reforms to enhance competitiveness and European institution-building. At
the same time, governments must stand ready to activate the EFSF/ESM in
the bond market when exceptional financial market circumstances and risks
to financial stability exist - with strict and effective conditionality
in line with the established guidelines.』
財政統合への重要な決断に向けて政治家は進む必要がありますとか、ユーロ圏の競争力回復の為に構造改革(ここでは説明していないですが細かい話の部分で「生産市場と労働市場の規制改革と構造改革」という話をしています)が必要ですという話をして、さらに欧州安定化基金の稼働の準備を進めろと来ておりまして・・・・・・
『The adherence of governments to their commitments and the fulfilment
by the EFSF/ESM of their role are necessary conditions for our outright
transactions to be conducted and to be effective. Details of the Outright
Monetary Transactions are described in a separate press release. 』
ということで、政府によるEFSF/ESMのコミットメントと条件を満たす事がOMTsの実施とその有効性に対して必要な条件ですとゆーところで。
・担保の緩和(再掲)
まあ一応再掲しておくだよ。
『Furthermore, the Governing Council took decisions with a view to ensuring
the availability of adequate collateral in Eurosystem refinancing operations.
The details of these measures are also elaborated in a separate press release.』
・経済のリスクはダウンサイドで物価に関しては概ねバランスも債務問題はダウンサイド
詳しい説明の部分は先ほど申し上げたような感じですが。
『The risks surrounding the economic outlook for the euro area are assessed
to be on the downside. They relate, in particular, to the tensions in several
euro area financial markets and their potential spillover to the euro area
real economy. These risks should be contained by effective action by all
euro area policy-makers.』
ということで経済のリスクは債務問題を受けてダウンサイドです。物価に関してですが・・・・
『Risks to the outlook for price developments continue to be broadly balanced
over the medium term. Upside risks pertain to further increases in indirect
taxes owing to the need for fiscal consolidation. The main downside risks
relate to the impact of weaker than expected growth in the euro area, particularly
resulting from a further intensification of financial market tensions,
and its effects on the domestic components of inflation. If not contained
by effective action by all euro area policy-makers, such intensification
has the potential to affect the balance of risks on the downside. 』
物価のリスクはバランスも、債務問題に関してはダウンサイド要因。
○ドラギ総裁会見である:質疑応答が色々とオモシロな件について
ということで質疑の方に参りますが、金融市場のクレクレに対して質疑応答の方が全然そうじゃないというのが何はともあれ一番「へー」という所でございます。まあ読んでみましょ。
・冒頭質問は「全員一致でしたか?」
で、それに対する答えですが。
『Draghi: Well, it was not unanimous. There was one dissenting view. We
do not disclose the details of our work. It is up to you to guess.』
「It is up to you to guess.」ってまあ普通ちゃあ普通の答弁だが何か吹いた(^^)。
・でまあいきなり意地悪質問が連発する
次の質問がこれまた意地悪。
『Question: Mr Draghi, you repeated that the euro is irreversible. What
gives you the democratic legitimation, the authority to say that? Because
I have looked it up in the Treaty. It does not say anywhere that it is
the role of the ECB to decide what kind of currency the European countries
have. Thank you.』
条約では欧州域内各国がどの通貨を使うかをECBが決定するとか一行も書いておりませんが、あんさん「ユーロは解体しません」とか何回も言ってますが何の権限でそんな事言えるんですか?
・・・・・・どう見ても嫌がらせ質問です本当にありがとうございました。まあ答えは予想通りですけど。
『Draghi: What I said exactly is that - and I repeat what I said in London
the first time - we will do whatever it takes within our mandate - within
our mandate - to have a single monetary policy in the euro area, to maintain
price stability in the euro area and to preserve the euro. And we say that
the euro is irreversible. So unfounded fears of reversibility are just
what they are: unfounded fears. And we think this falls squarely within
our mandate.』
ユーロを維持するのが物価安定のマンデートに資するという説明ですな。
次は「ユーロがリラ化してますねえ」という質問である。
『Question: The FAZ warned the other day about what they have called -
pardon me - the “liraisation” of the euro, moving away from a Deutschmark
culture to a lira culture. The FDP wants to protest the decisions you have
taken today, because they say they are in breach of Article 123 of the
EU Treaty of financing governments. Can you explain to us why they are
wrong?』
財政ファイナンスとかおっぱじめてECBはブンデスバンクのカルチャーを離れて「リラ化」していませんですかとかこれまた意地悪。
『Draghi: As far as the “liraisation” or whatever goes, I think that
the voting today speaks for itself.』
>the voting today speaks for itself
>the voting today speaks for itself
>the voting today speaks for itself
・・・・・・・・・・・・まあもちろんこの次の説明にあるように、この意味は「殆どのメンバーがこれに賛成したとのであってリラ化だの財政ファイナンスだの面白おかしく言うのは間違いです(キリッ)」という事なのですが、えーっと確か今回ブンデスバンクが反対したんじゃなかったでしたっけ??
『It shows that it is not only the decision of former lira members or others,
it is basically the almost unanimous decision of the Governing Council.
So, first of all, I would not identify with this caricature of it being
a southern cabal or an Italian thing. No, it is not. It is the Governing
Council that, in its almost unanimous decision, has taken this measure.』
殆どが賛成したというのを強調していますがブンデス(以下同文^^)。
『Second, no, we are sure that we are acting within our mandate, that we
are not violating Article 123. It is pretty explicit: it says for purchases
on the primary market, this is a violation, not for purchases on the secondary
market as I have stated this programme will work. And incidentally, outright
purchases of bonds are identified, in Article 18 of the Statute of the
ECB, as one of the various possible tools that our monetary policy has
and can use. So we are not creating anything new here.』
セカンダリーマーケットから購入するのは財政ファイナンスではありませんという理屈ですな。
更に意地悪質問は続くという3連発恐るべし。
『Question: Mr Draghi, how can you be sure the fact that the monetary impulse
of the ECB seems not to be reaching a big part of the euro area is really
a problem of “monetary transmission” and not maybe a problem of “liquidity
trap”?』
マネタリーの刺激がユーロ圏の大きな部分に届いていないのは、金融政策のトランスミッションメカニズムが問題なのではなくて、流動性トラップが問題なのではないかというツッコミ。
『Draghi: We have substantial, significant and important evidence that
the European monetary area is now fragmented. We see this from a variety
of indicators: not only the level of yields, the yield spreads, but also
volatility, and especially liquidity conditions in many parts of the euro
area. So, the actions we decided on today are geared to repairing monetary
policy transmission channels in a way that our standard monetary policy
can address its primary objective, i.e. maintaining price stability. In
other words, these decisions are necessary to restore our capacity to pursue
the objective of price stability in the euro area and to restore the singleness
of monetary policy in the euro area.』
でまあその質問に関しては「いやいやいや今まさにユーロ圏の金融市場が分断化しているでしょ」という話で流動性トラップの話は華麗にスルーしてますな。
・しかし今度は別の方向からの的確なツッコミというか意地悪質問
普通に印刷すると6ページ目になるのですが、この質疑の流れはワロタとしか言いようがないので引用。
『Question: When I listened to your words, I thought that there was quite
a lot of Weidmann in it. I was quite surprised. But outside, there is a
lot of pressure on you to put less Weidmann in your statements in the future.
I fear that that will happen. What do you think?』
今回の会見を拝聴しますと(適用条件ガーを連発する事もあって、というのは次の質問にあります)今日はバイトマン総裁がドラギ総裁の着ぐるみで登場しているのではないかと思う位驚いています。でも着ぐるみ総裁のステートメントには将来的にバイトマン成分が減る圧力が掛かるのではないかと私は懸念しておりますがどうお考えでしょうか???
・・・・・・・・ってこれは酷い(^^)のですが答弁はこちら。
『Draghi: I am what I am, really. I think one thing that is required for
this job, for me and my colleagues in the Governing Council, is that you
have to think with your head, and external pressures do not really have
a role to play in your decision-making.』
>I am what I am, really.
>I am what I am, really.
>I am what I am, really.
ワロタ。がそれで容赦する訳では無い意地悪記者の意地悪質問が。
『Question: Especially, Mr Weidman - I mean, Mr Draghi - all the conditionality.
You have talked constantly about conditionality. Every second word was
“conditionality”. I am a German. I really think your approach is great,
but you know the markets. You know all these markets are putting pressure
on you and your colleagues. In four weeks we will be sitting here again
at another press conference. I hope that this conditionality will stay
and you will not give ground regarding this issue of conditionality.』
いやもう読んでてマジでカフェオレ吹いたわ。
『Draghi: Certainly, certainly. And as I have said before, you know, all
of us are convinced, all of the Governing Council is convinced, that really
you need two legs to make it work. We are all convinced that having just
one leg does not work. As you have said, Brian, we have had previous experience
of this, and that was basically one leg and did not work. We need both
to make it work. And I think that is a general conviction. Again, I think
there is unfortunately a misconception - especially, I would say, in this
country - about how the Governing Council works, and this is not accurate.』
普通質疑応答で相手の名前出さないのですが、Brianってこれ相手の記者の名前じゃないですかね。
・条件に関する質問から少々(というか明日に続く)
ということで意地悪質問が続いていたのですが、意地悪質問のトーンが思いっきりドイツ人モードになっている(というかそれ系の質問なんでしょうが)のがアレですなとか思った訳ですが、条件に対する質疑応答を見ますと確かにさっきの「着ぐるみ疑惑質問(笑)」の人の言うようにconditionalityを強調しているようには見えますな。
つーことで少々引用。
『Question: Mr Draghi, on the maturity of the assets that you would intend
to purchase under the OMTs you said between one and three years. Could
you explain: does this involve bonds that have a residual maturity of that
amount of time, i.e. a ten-year bond that has two or three years left to
run as well as ones whose face maturity is that time? And my second question
is about the conditionally aspect: you mentioned that the OMTs would be
suspended if countries did not fulfil the necessary conditions set out
in the MoU. Given that these purchases are explicitly for monetary policy
purposes, does this mean that you will suspend the ECB’s independence
if the countries do not fulfil the conditions? I don’t quite understand
this contradiction; maybe you could elaborate on that for me?』
最初の質問は「1年〜3年を買う」というのは例えば10年債の残存1〜3年も対象になるのかという話で、次の質問は条件に関する質問ですが中々これも意地が悪いちゃあ悪いのですが、「欧州安定化基金の条件を満たさなくなったら買入を停止する」といってますが、それは政治問題などから独立した金融政策判断という文脈して如何なものかという質問ですな。
『Draghi: On the first question, the “three years” is to be understood
in the way you mentioned. And it is three years because it seemed to us
the maximum most effective maturity to target: it is close to our short-term
policy rates; it affects also the medium-term yield curve; it is close
to the rates that are being used to lend to the private sector; it is,
in a certain sense, similar to the maturity we used for the LTROs; and
also, in a very indirect way, it decreases concerns about our seniority
over the bond holdings. So, there are many good reasons for choosing the
“three years”. 』
年限に関する質問は質問者の言うとおりで、既発の長期債でも残存が1〜3年物は購入対象。何で1年〜3年を買うかという説明もしていますが、中期ゾーンのイールドカーブに影響を与える事を目的としていて、その金利は「民間セクターの借入金利として使われる金利に近いから」という理屈になっておりまして、これはまあタームもの金利に影響を与えようという場合に日銀もFRBも持ち出すロジックですな。
んでもって3年というのは中期的な見通しとか、LTROの期間とか、債務優先性への懸念を考えてあまり長いのは持たない方が良いとか、諸々の事情を勘案しましたと。
『On “conditionality”, the assessment of the Governing Council is that
we are in a situation now where you have large parts of the euro area in
what we call a “bad equilibrium”, namely an equilibrium where you may
have self-fulfilling expectations that feed upon themselves and generate
very adverse scenarios.』
まず現状はリスク回避的に自己実現的な「悪い均衡」にあるのでこれを打開する必要があると。
『So, there is a case for intervening, in a sense, to “break” these expectations,
which, by the way, do not concern only the specific countries, but the
euro area as a whole. And this would justify the intervention of the central
bank.』
従ってその悪い均衡の自己実現を打開するべく市場介入をしますと。
『But then, we should not forget why countries have found themselves in
a bad equilibrium to start with. And this is because of policy mistakes.』
しかしまずはそのために各国が行動する必要があるという事を忘れてはいけませんと。
『That is why we need both legs to fix this situation and move from a bad
equilibrium to a good equilibrium.』
この「both legs」というのはさっきの着ぐるみ質問への回答で「two legs」というのがありましたけれども、この会見で後から何度も出てくるので、まあ「conditionality」と「two
legs」が大体キーワードになってましたねという感じです。
『If the central bank were to intervene without any actions on the part
of governments, without any conditionality, the intervention would not
be effective and the Bank would lose its independence. At the same time,
we see that we are in a bad equilibrium and, therefore, policy action,
though convincing, does not seem to produce - at least not in the relatively
medium term - the results for which it is geared. So that is why we need
both legs for this action.』
ということで、政府の経済財政構造改革への取り組みと、中央銀行の取り組みがセットになって効果を発揮しますという話をしているのですな。
で、その後も条件に関する質疑が続くのですがうだうだ引用しているうちに時間が無くなったので続きは例によって明日にでも(どうもすいません)。
2012/09/07
お題「ECB引用祭りである」
とりあえず会見まで起きている根性は無かったので会見その他は寝起きでおじゃるorz
○金利は変更なしで国債買入プログラム決定と
金利は据え置き
http://www.ecb.int/press/pr/date/2012/html/pr120906.en.html
『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the
interest rate on the main refinancing operations and the interest rates
on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged
at 0.75%, 1.50% and 0.00% respectively.』
国債買入プログラム(Outright Monetary TransactionsでOTMsというそうな)について
http://www.ecb.int/press/pr/date/2012/html/pr120906_1.en.html
6 September 2012 - Technical features of Outright Monetary Transactions
『As announced on 2 August 2012, the Governing Council of the European
Central Bank (ECB) has today taken decisions on a number of technical features
regarding the Eurosystem’s outright transactions in secondary sovereign
bond markets that aim at safeguarding an appropriate monetary policy transmission
and the singleness of the monetary policy. These will be known as Outright
Monetary Transactions (OMTs) and will be conducted within the following
framework:』
前回の理事会で申し上げましたように、理事会は本日ユーロシステム圏内の流通市場におけるアウトライト取引に関する技術的な内容につきまして決定致しました。これは域内の国債市場が分断されている状況を改善し、域内における金融政策の波及効果を適切にするためのものであります。この施策は「アウトライトマネタリートランザクションズ(OMTs)」と言う名称になりまして、以下のような枠組みで実施します。
『Conditionality』
まずは実施の条件。
『A necessary condition for Outright Monetary Transactions is strict and
effective conditionality attached to an appropriate European Financial
Stability Facility/European Stability Mechanism (EFSF/ESM) programme.』
EFSF/ESMの定めた適切なプログラムに厳格かつ有効に適合している事が必要な条件ですとな。
『Such programmes can take the form of a full EFSF/ESM macroeconomic adjustment
programme or a precautionary programme (Enhanced Conditions Credit Line),
provided that they include the possibility of EFSF/ESM primary market purchases.
The involvement of the IMF shall also be sought for the design of the country-specific
conditionality and the monitoring of such a programme.』
でまあそのEFSF/ESMプログラムってのは要は財政健全化とかの話で、この経済プログラムはIMFも同様に監視しとりますと。
『The Governing Council will consider Outright Monetary Transactions to
the extent that they are warranted from a monetary policy perspective as
long as programme conditionality is fully respected, and terminate them
once their objectives are achieved or when there is non-compliance with
the macroeconomic adjustment or precautionary programme.』
でまあその経済プログラムがきちんと実施されていることを前提にOMTsを実行して、OMTsの目的が達成されるまたはプログラムの実施が行われなくなったと所で終了します。
『Following a thorough assessment, the Governing Council will decide on
the start, continuation and suspension of Outright Monetary Transactions
in full discretion and acting in accordance with its monetary policy mandate.』
徹底的な査定にしたがい、理事会は十分な慎重さをもって、金融政策のマンデートに沿った形で本プログラムの実施、継続、中止を決定致します。
・・・・・・とまあとりあえず訳してみましたが要するに欧州安定化基金による経済財政健全化プログラム実施中の国に対して国債の買入を実施するという話ですが、買入をどこまでやるかは「目的が達成されるまで」という微妙に訳の判らん玉虫色にしておりますな。
続きまして範囲『Coverage』です。
『Outright Monetary Transactions will be considered for future cases of
EFSF/ESM macroeconomic adjustment programmes or precautionary programmes
as specified above. They may also be considered for Member States currently
under a macroeconomic adjustment programme when they will be regaining
bond market access.』
欧州安定化基金による経済財政健全化プログラムが実施されている域内国において、これらの国が債券市場へのアクセスを取り戻した時に実施が検討されます。
・・・・・・まあ会見の方をQ&Aまで詳しく読んだ(つーか朝のこの時間だとQ&Aはまだ文字起こしされていないのでPodcast聞く事になるのだが)方がよさそうですがそこまでの時間はさすがに朝だけではしんどいので勘弁っすけど、この「債券市場のアクセス」とは何ぞねというか、まあ普通に考えるとこれは「ギリシャは債券市場のアクセスが出来てないから買わねーよ」と解釈するような希ガス。
『Transactions will be focused on the shorter part of the yield curve,
and in particular on sovereign bonds with a maturity of between one and
three years.』
購入はイールドカーブのより期間の短い部分に焦点を当てますので、1年から3年までの期間のソブリン債が対象となります。
『No ex ante quantitative limits are set on the size of Outright Monetary Transactions.』
OMTsによる購入に関してはあらかじめ購入限度額を設定することはありません(キリッ)。
・・・・・・・ってことですけど、まあそもそもさっきの所で「本政策の目的が達成されるまで買入を継続する」とゆうとるのですから、購入限度額が決まらんわなという所ではございます。
次は『Creditor treatment』って項目。
『The Eurosystem intends to clarify in the legal act concerning Outright
Monetary Transactions that it accepts the same (pari passu) treatment as
private or other creditors with respect to bonds issued by euro area countries
and purchased by the Eurosystem through Outright Monetary Transactions,
in accordance with the terms of such bonds.』
パリパスとか大昔に小僧の時に社債の勉強している時に聞いた言葉だったですなあとか思いつつ読むわけですが(^^)、まあ要するにこれは「ECBの購入した国債については他の国債保有者と同順位での弁済条件になります」という事です。
ECB意地の不胎化については『Sterilisation』という項目が。
『The liquidity created through Outright Monetary Transactions will be fully sterilised.』
まあ昨日も申し上げたように、MROやLTROでフルアロットメントの資金供給をしているのに不胎化がどうのこうのとか意味あるのかという感じですけどね。
透明性については『Transparency』。
『Aggregate Outright Monetary Transaction holdings and their market values
will be published on a weekly basis.』
購入総額(時価ベース)は週次で公表とな。
『Publication of the average duration of Outright Monetary Transaction
holdings and the breakdown by country will take place on a monthly basis.』
購入した国債の平均デュレーションと、国別の残高については月次で公表だそうです。
このOMTsの実施によりSMPは終了ですというのが『Securities Markets Programme』に。
『Following today’s decision on Outright Monetary Transactions, the Securities
Markets Programme (SMP) is herewith terminated. The liquidity injected
through the SMP will continue to be absorbed as in the past, and the existing
securities in the SMP portfolio will be held to maturity.』
SMPはこれにより終了となります。既に購入済みの証券の非不胎化措置は継続し、購入済みの証券は満期償還によって終了となります。
○担保基準についての公表もありましたな
http://www.ecb.int/press/pr/date/2012/html/pr120906_2.en.html
6 September 2012 - Measures to preserve collateral availability
『On 6 September 2012 the Governing Council of the European Central Bank
(ECB) decided on additional measures to preserve collateral availability
for counterparties in order to maintain their access to the Eurosystem’s
liquidity-providing operations.』
MROやらLTROの担保のアベイラビリティーについて追加の措置を決定したと。
『Change in eligibility for central government assets』
ほう。
『The Governing Council of the ECB has decided to suspend the application
of the minimum credit rating threshold in the collateral eligibility requirements
for the purposes of the Eurosystem’s credit operations in the case of
marketable debt instruments issued or guaranteed by the central government,
and credit claims granted to or guaranteed by the central government, of
countries that are eligible for Outright Monetary Transactions or are under
an EU-IMF programme and comply with the attached conditionality as assessed
by the Governing Council.』
国債の適格担保要件において「最低格付け要件を一時停止する」ということでキタコレという感じですが、その銘柄の要件としては、「of
countries that are eligible for Outright Monetary Transactions or are under
an EU-IMF programme and comply with the attached conditionality as assessed
by the Governing Council」という事ですから、OMT買入対象銘柄であればオッケーであり、その条件を満たしている(けどOMTの対象にはしていない)ものも対象ということで。
『The suspension applies to all outstanding and new assets of the type described above.』
『The decision on the collateral eligibility of bonds issued or guaranteed
by the Greek government taken by the Governing Council on 18 July 2012
is still applicable (Decision ECB/2012/14).』
7月18日に決定されたギリシャ国債・政府保証債の適格性に関しても依然として生きていますと。
『Expansion of the list of assets eligible to be used as collateral』
担保として使える資産のリストを拡大とな。
『The Governing Council of the ECB has also decided that marketable debt
instruments denominated in currencies other than the euro, namely the US
dollar, the pound sterling and the Japanese yen, and issued and held in
the euro area, are eligible to be used as collateral in Eurosystem credit
operations until further notice.』
ユーロ建てだけでは無く、米ドル、英国ポンド、日本円建てで発行されたものについてもユーロシステムの適格担保として有効とする。というのを今後ご連絡致します。
『This measure reintroduces a similar decision that was applicable between
October 2008 and December 2010, with appropriate valuation markdowns. These
measures will come into force with the relevant legal acts.』
2008年や2010年の措置と同様の決定ということで、まあ要するにマルチカレンシーのスワップの逆みたいな話ですよという事ですな。
○その他関連項目
・会見である
http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120906.en.html
Introductory statement to the press conference
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 6 September 2012
OMTs実施の部分を引用して置くだよ。
『It is against this background that the Governing Council today decided
on the modalities for undertaking Outright Monetary Transactions (OMTs)
in secondary markets for sovereign bonds in the euro area. As we said a
month ago, we need to be in the position to safeguard the monetary policy
transmission mechanism in all countries of the euro area.』
ユーロエリアの金融政策トランスミッションメカニズム確保の為の安全装置とな。
『We aim to preserve the singleness of our monetary policy and to ensure
the proper transmission of our policy stance to the real economy throughout
the area. OMTs will enable us to address severe distortions in government
bond markets which originate from, in particular, unfounded fears on the
part of investors of the reversibility of the euro.』
OMTsの目的ですが、域内国債市場の分断状態を是正することにあるという話ですので、まあある程度のコンバージョンが達成されたらめでたしめでたしという事なのでしょう。
『Hence, under appropriate conditions, we will have a fully effective backstop
to avoid destructive scenarios with potentially severe challenges for price
stability in the euro area.』
backstopとちゃんと言ってますね。
『Let me repeat what I said last month: we act strictly within our mandate
to maintain price stability over the medium term; we act independently
in determining monetary policy; and the euro is irreversible.』
ということで、前月言った話を繰り返すの巻。
『In order to restore confidence, policy-makers in the euro area need to
push ahead with great determination with fiscal consolidation, structural
reforms to enhance competitiveness and European institution-building. At
the same time, governments must stand ready to activate the EFSF/ESM in
the bond market when exceptional financial market circumstances and risks
to financial stability exist - with strict and effective conditionality
in line with the established guidelines. The adherence of governments to
their commitments and the fulfilment by the EFSF/ESM of their role are
necessary conditions for our outright transactions to be conducted and
to be effective. Details of the Outright Monetary Transactions are described
in a separate press release.』
まあ要するに対象国政府は経済財政健全化プログラム実施に向けて頑張りましょうという話ですな。
『Furthermore, the Governing Council took decisions with a view to ensuring
the availability of adequate collateral in Eurosystem refinancing operations.
The details of these measures are also elaborated in a separate press release.』
ということでこの辺に関してはさっき引用した通り。
・東京でしらっとブンデスバンクからのメッセージが
麿がこんな挨拶してたのですけどね。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/ko120906b.htm/
そちらにこんなリンクが。
http://www.bundesbank.de/Redaktion/EN/Standardartikel/Press/Current_issues/2012_09_06_dombret_nagel_tokyo.html
Bundesbank's representative office 25 years in Tokyo
Opening of the enlarged representative office of the Deutsche Bundesbank in Tokyo on 6 September 2012
http://www.bundesbank.de/Redaktion/EN/Reden/2012/2012_09_06_dombret_tokyo.html
Dr Andreas Dombret Member of the Executive Board of the Deutsche Bundesbank
Twenty-five years of Bundesbank’s representative office in Tokyo
Welcoming Remarks at the opening of the enlarged office of the Deutsche Bundesbank in Tokyo
でですな、そこの『2 The European sovereign debt crisis』というコーナーがありまして、まあ色々とお話しているのでネタにしようと思ったのですが、時間と量の関係で華麗にスルーして最後の3パラグラフだけ引用しておくだよ。
ちなみに、これで出たの何時だかはワカランチ会長ですが、あたくしが気がついたのは昨晩でECBの決定とか出る前でございます(日銀のページから見に行ったのですが、麿の挨拶が出たのがそもそも夕方過ぎ)。
『The Eurosystem responded to the crisis by cutting interest rates and
launching non-standard monetary policy measures. It provided, for the first
time, three-year liquidity in two longer-term refinancing operations.』
とまあここまでは良いとして。
『Another non-standard measure, the Securities Market Programme, has been the subject of debate.』
ほう。
『We at the Bundesbank continue to believe that purchases of government
bonds by the Eurosystem reduce pressure on governments of countries that
are in the markets’ spotlight to consolidate their budgets and embark
on structural reforms.』
ほほう。
『By no means, they should become the “new normal”.』
しかし買入はnew normalになるべきではありませんとな。
『Through these measures, monetary policy is increasingly strained.』
金融政策は益々束縛されますとな。
『It makes a world of difference whether it is the Eurosystem or a stand-alone
central bank, like the Bank of Japan, that is using its balance sheet as
a tool to combat a crisis. In the Eurosystem’s case, balance sheet measures
and the risks of losses related to them have an important implication.』
バランスシート政策が危機対策に一定の効果がある事はさすがに認めていますな。
『They involve shifting burdens from the taxpayers of one member state
to those of another. Such burden-sharing, however, is the task of democratically
elected fiscal policymakers and not of monetary policy.』
納税者の負担を一部の国から別の国に付け替える行為であり、それは選挙で選ばれた人たちが行うものであり、金融政策ではありませんとブンデスクオリティ。
『There is no quick fix for the European sovereign debt crisis. However,
the measures already taken by some countries are steps in the right direction.
If this direction is maintained, if the segregation of monetary policy
from fiscal policy is upheld and once a decision is taken on the monetary
union’s future institutional shape, the foundations for a lasting solution
should be in place.』
解決には時間が掛かるという話ですが、その前の部分では「ファイヤーウォールは防火壁になっても火消しはできません」という話もしていますし、まあそらそうよという感じ。
ということでメモだけでした。宮尾さんの会見とか麿の講演とかまでさすがに時間がががががが。
2012/09/06
お題「宮尾審議委員講演はハト風味を強めに/ECBプレビュー雑談」
今晩はECBで明晩は雇用統計ですなあ(・ω・)
○そのECBに先走り報道キタコレ
どう見てもお漏らしです本当にありがとうございました。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M9VMFV6KLVS401.html
ECB総裁:無制限の国債購入約束へ、不胎化は行う−関係者
『9月5日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が計画している債券購入案は、無制限に買い入れる一方で不胎化措置によって通貨供給増加に対する市場の懸念を抑える内容だと、説明を受けた中銀関係者2人が明らかにした。』(上記URLより、以下同様)
まあ何ですな、ECBの場合は前の総裁時代に毎度会見で次回の予定を仄めかすというしょうもないプレイが出ていましたが、こういう感じで事前のお漏らしが出ちゃうと先に市場が反応しちゃうので、「事前報道内容に対してどうなのか」というような形で市場の反応が起こってあまり上手くないのですけどまあそれはともかく。
『関係者2人によれば、ECBは新たな購入プログラムに巨額の資金を投じることは想定していないものの制限は設けない計画。また、購入した債券についてECBが優先債権者となることはなく、スプレッドの目標や利回りレンジを公にすることもしないという。2人の関係者によれば、非公開の目標も設定せず、裁量的に購入する方針。』
だそうなのですが、昨日例に出しました日銀の初回の方の社債買入(企業金融支援の一環)の事を考えますと、バックストップとして機能させる買入と、ファンディングをフルアロットメントで付ける(企業金融オペに関してはフルアロットメントで実施していました)ののセットが金利押し下げ効果をより強く発揮して効果があるので、何か吸収をわざわざせんでもとは思いますが、そもそもMROとLTROでフルアロットメントの資金供給をしている訳で、それをやりながら吸収オペを実施というのもまあ尻抜けにも程があるので、単にECBというかブンデスクオリティの趣味の世界以外の何物でも無さそうですの。
しかしまあ何ですな、事前の期待をアホほど盛り上げているのですが、本来的に言えば今回導入されるであろう国債買入って別にスペイタの国債金利をドイツ並みに下げるというような物になる訳が無く、昨日比較ネタにしたように、日銀がリーマンショック後に行った「バックストップとしてのCP、社債買入」のような措置になる筈でございまして、そう考えますと、例えば2年国債どのくらいの金利まで買うのがバックストップとして適切かとか考えますと、一応物価目標を2%
or lessといいう数値に置いているECBでございますので、2年金利で3%とかに置くもんじゃネーノとか思いますと、既にその近くまでイタスペ国債の金利って下がっているような気もするんですけどね。
何かどうもECBに関しても妙に「お助けイメージ」が拡大しているような感じですが、そもそもは短期ゾーンの金利を抑えておけばとりあえず時間は稼げますし、そこにバックストップを置くという話で済む所をわざわざ話をややこしくしている感がございまして、話がややこしくなった結果妙にお助け期待が上がり過ぎてネーノという気はするあたくしなのでございました。
○宮尾審議委員講演はハトのテイストが強いですな
宮尾審議委員講演である。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120905a1.pdf
・米国経済と中国経済に下振れ警戒
海外経済に関する説明部分ですが、欧州はまあスルーしまして経済見通しに関わると言えば米国と中国の話ですのでそちらから。
『米国経済は、緩和的な金融環境などに支えられ、緩やかな回復を続けていますが、そのペースが幾分減速しつつあるように窺われます。本年4-6
月期の実質GDP 成長率(季調済前期比年率)は+1.7%に止まり、個人消費、設備投資、住宅投資といった内需の伸びが鈍化しました。7
月以降の経済指標は強弱まちまちですが、これまで家計部門の回復を支えてきた堅調な企業部門に翳りが窺われる点が気がかりです。』
ということで懸念を示していますな。
『今のところ、企業収益や設備投資などは底堅く、家計部門が総じて堅調な点も踏まえると、企業部門を起点とした回復のメカニズムはなお崩れてはいないとみられますが、コンフィデンスの一段の悪化を通じて雇用や設備投資などが手控えられ、景気失速に繋がらないか注意が必要と認識しています。』
『米国経済を巡る今後のリスクとしては、欧州や中国の景気回復の後ずれのほか、いわゆる「財政の崖(fiscal
cliff)」の問題を指摘しておきたいと思います。財政支出の削減や減税措置の終了は景気下振れ要因ですが、対象や規模など現時点では不確実性が非常に高く、民間調査機関の米国経済成長見通しへの織込み度合いもまちまちです。一部には、本問題を巡る不透明感によって、既に企業が投資や新規採用の決定を先送りしているといった指摘もあり、今後状況を見極めていく必要があります。』
ということで、まあ下振れ懸念モードという感じですの。んでもってアジアですが。
『アジア新興国経済については、足もと欧州向け輸出の減速もあり、成長ペースが鈍化した状態がやや長引いていますが、先行きについては、中国が牽引する形で成長ペースを回復していくとみています。ただし、その時期については秋以降へと一段と後ずれする可能性もあるため注意が必要です。』
『中国経済については、新規貸出額の増加や住宅価格の下げ止まりなど、当局による各種政策対応の効果もみられ始めていますが、欧州経済の停滞が貿易ルートを通じて中国経済に波及する動きや、在庫積み上がりの懸念も払拭されていないため、今後の経済指標などを良く確認していく必要があります。』
『NIEs・ASEAN 諸国については、内需は堅調に推移しておりますが、足もと韓国や台湾などで輸出や生産関連の指標が低迷ないし悪化している点が気がかりです。今後は、中国の成長ペースが回復し、輸出が持ち直すかどうかがポイントとみております。』
ということで、まあ普通に下振れ警戒でして、麿の見通しが妙に楽観というかサガランチ会長な中で、審議委員の方からは(つーかまあ山口副総裁や西村副総裁も普通に下振れ懸念を表明していますけど)下振れ懸念を示すようになっているというこのギャップは誠にアレという感じでございまして、展望レポートを待たずして今後の展開にワクテカではございます。
・日本経済に関して、下振れリスク警戒キタコレ
日本経済の話はまあ前半は公式見解ベースの見通しなのですが、その後にしらっとこういう話が入ります。
『ただし、懸念材料もみられています。』
キタコレ。
『輸出、生産の減速が続くなかで、一部に在庫の積み上がりが見られる点や、設備投資の先行指標である機械受注に弱めの動きがみられること、景気動向指数(一致指数)が「改善」から「足踏み」の動きを示していること、マインド指標に鈍化の兆しが窺われていることなどです。経済全体としては改善方向なのですが、気がかりな要素が増えつつあるように思います。』
ふむふむ。
『先行きについては、内需が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。そのイメージを、政策委員の大勢見通し(中央値:7
月時点)で確認しますと、実質GDP 成長率は、2012 年度が+2.2%、2013 年度は+1.7%ということになります(図表6)。』
というのは公式見解ですが・・・・・・・
『こうした見通しに対しては、上下双方向のリスクがありますが、以下の3 点を中心に私自身はどちらかと言えば下振れリスクを意識しています。』
キタコレ。
『第一に、海外経済が一段と減速するリスクです。既に申し上げたように、欧米アジアいずれの地域でも経済の減速が長期化するリスクがやや高まってきていますが、実際に長期化すれば、わが国の輸出・生産から所得・支出へとつながる自律回復の動きを弱めることになります。』
まあそうですな。
『第二に、円高が一段と進行するリスクです。円高にはメリットもある一方で、行き過ぎた円高は、輸出企業の競争力や収益を再び悪化させ、企業に対する逆風となります。また、円高基調とともに、株安の傾向が強まれば、企業や家計のコンフィデンスが悪化して、足もと堅調な設備投資計画や個人消費などを抑制し、わが国の景気回復にとって重石となります。』
円高警戒キター!!
『第三に、第一・第二の点とも関連しますが、輸出・生産の回復時期が後ずれし、内需から外需へのバトンタッチが上手くいかないというリスクです。』
まあリスクというより現実の気がしますが(−−)
『エコカー補助金もすでに相当程度予算を消化したようですし、復興需要の伸びも年度後半以降鈍化していくとみられるなか、内需の減速を補う形で外需が回復するかどうか注視していく必要があります。併せて、意欲的な設備投資計画がしっかりと実行されていくかどうか、雇用・所得環境の緩やかな改善傾向は維持されていくかどうかなどにも注意が必要と認識しています。』
そして最後に物価の話をしていますが、そこでもこのように下振れ警戒モード。
『物価面についても上下双方向のリスクがありますが、私自身は、景気見通しに対する懸念が強まっている点や、2012
年度前半の商品市況の下落が当面の物価下落圧力として作用してくる点など、下振れリスクをより意識しています。また、短期的なインフレ予想が引き続き低い水準にあることが先行きの物価動向に及ぼす影響にも注意しなくてはなりません。』
これは結構頑張って下振れ警戒の話をしてますなという所でして、物価に関しては何せ「物価安定の目途」というのがあって景気見通し以上に金融政策運営に直結する話でございますので、まあこれだけ警戒してくれたら次回会合で何か提案してくれませんかねえとか思っちゃうレベルですが、麿があの調子なので他の政策委員がフォローしないと浮世離れした状態になってしまうのでそれに対応してハト風味を強めているのかもしれませんが。下振れリスク対応だけだと提案理由として弱いのかもしれないけど・・・・・
・「金融政策と長期金利の関係」というテーマで長期国債買入の効果について考察
金融政策に関する話ですが、金融政策の説明部分はまあどうでも良いのでスルーしましてその次に『(2)金融政策と長期金利の関係』というのがあるので引用。
『次に、上記の金融緩和効果を考えるうえで、金融政策と長期金利の関係を改めて整理しておきたいと思います。先進国の長期金利は、足もと、歴史的な低水準で推移しており、その背景を理解するためにも重要です。』
ほうほう。
『まず長期金利の決まり方について振り返ってみます。長期金利は、大きく2つの要因、すなわち「@将来の短期金利の予想」と「A長期債投資に伴うリスクに対して要求される上乗せ部分」から決まると考えられます。まず前者の「短期金利の予想」ですが、たとえば将来の成長率あるいはインフレ率が高まると予想されると、それに応じて短期金利の将来経路も上昇し、短期債に繰り返し投資する方がより高いリターンが期待されます。その結果、長期債への投資が減り、長期債の価格は下落、長期金利は上昇します。また、後者の「リスクに対する上乗せ部分」ですが、長期債での運用には、途中で換金が必要となる可能性や、換金する際の売却価格に不確実性があるなどのリスクが伴います。それらのリスクを引き受ける対価として上乗せ利回り(リスクプレミアムもしくはタームプレミアムと呼ばれる)が要求され、その分、長期金利は上昇します。』
というのはまあ教科書の話ですが話の流れ上引用しておく。
『以上のメカニズムをベースに、中央銀行による資産買入れ、具体的には長期国債の買入れが及ぼす効果を、2
つに分けて整理します。』
これは(^^)。
『1 つ目は、資産市場の需給に着目した、上記Aのプレミアム部分を通じる効果です。これは「ポートフォリオ・バランス経路」と呼ばれる効果ですが、中央銀行が国債市場で買入れを行って、その流通量を吸収すると、価格は上昇、金利が下落します。この場合、需給要因による価格変化であるため、上記Aの上乗せ金利部分が低下して、長期金利、あるいは長めの金利が全般に低下しうると考えられます。』
この話はバーナンキのジャクソンホール講演でもバランスシート政策の波及経路の説明の冒頭部分で紹介されていた経路です。
『2 つ目は、リスクとは中立な、上記@の「短期金利の予想」を通じる効果です。資産買入れという非伝統的な政策行動やその発表が、中央銀行の景気・物価見通しがより悪化したというシグナルと解釈される場合には、たとえば予想されるゼロ金利期間が長期化するなど、短期金利の将来経路が低下し、中短期ゾーンを中心に長期金利が低下します。あるいは資産買入れが、中央銀行の今後の政策姿勢が変化したシグナル(たとえば景気・物価への政策反応のあり方がより積極化する、あるいは政策目標のウエイトが変化するなど)と受け止められる場合にも、短期金利の予想経路が低下し、中短期ゾーンを中心に長期金利が低下すると考えられます。』
ちなみにジャクソンホール講演ではこの短期金利予想に関する説明も当然あったのですけれども、宮尾さんが説明している中で前半部分に関する説明は華麗にスルーしていまして、後半の「金融政策の予想パス」という部分の説明しかしていませんでしたが、そらまあ逆さ絵クオリティですからネガティブな話はせんわなとか思うのです(^^)。
『これら2 つの効果は、ともに「長めの金利の低下」を促します。しかし、さらに重要なのは、こうした「長めの金利の低下」が、より広範囲な金融環境の改善へとつながり、それが支出の増加を通じて、最終的に景気・物価を刺激することに繋がるかということです。そしてこうした効果波及メカニズムが発現していくことが予想されれば、長期金利には、上記@とAの部分ともに上昇圧力がかかることになります。』
全くその通りですが、当然ながらそんな話は逆さ絵おじさんは行わないのでありまして、ここからの説明はジャクソンホールの話とはだいぶ違ってくる訳で(^^)。
『この点をもう少し敷衍しましょう。国債買入れにより長めの金利が低下すると、その1つの効果として、投資家や企業・家計のコンフィデンスが改善し、国債などの安全資産からより広範囲なリスク性資産(社債や株式、海外資産など)への投資を促して、それら資産のリスクプレミアム低下と資産価格の上昇を促す効果が期待されます。』
『これは、より広義に捉えたポートフォリオ・バランス効果と言え、広範囲な金融環境の改善を意味します。そのもとでは国債への需要は減少することから、国債のタームプレミアムには、むしろ上昇圧力がかかることになります(上記Aの上昇)。さらに、より長い可変的なラグを伴って支出が増え、景気や物価を刺激すると予想されると、短期金利の予想経路が上方にシフトすることにより、イールドカーブをスティープ化させ、長期金利に上昇圧力がかかることになります(上記@の上昇)。長めの金利低下を促しながら、やがては長期金利の上昇を期待するというのは、一見矛盾しているようですが、決してそうではありません。』
まあそうなんですけど、「長期金利の低下」を思いっきり効果として出して、LSAPは長期金利を押し下げましたのでこうかはばつぐんだ(キリッ)という説明をしているFRBはこの辺を華麗にスルーするのが仕様となっていまして、この辺りは雨人クオリティとジャパンクオリティの違いですな、うんうん。
・主要国の長期金利低下の要因は???
で、続きの部分は長期金利に関する考察。
『では、このところ先進国の長期金利が歴史的な低水準で推移していることは、どのように理解すればよいでしょうか。各国の長期金利の低下基調には、資産買入れなどの強力な金融緩和の効果が含まれていると考えられます。』
まあそうですが・・・・・・
『しかし、より足もとでは、世界経済の減速懸念、欧州債務問題などを背景としたリスク回避の流れが長期金利の低下を一段と促しているように窺われます。』
キタコレ。
『米欧の10 年債金利が1%台というのは、長期的な潜在成長力とインフレ予想の一般的な認識から見て、かなり低い水準であるといった声も聞かれます。また米国では、長期的に実現する政策金利の水準は4%程度と見込まれています(FOMC
メンバーによる長期見通し)。これらの見方が正しければ、国債市場におけるリスクへの慎重姿勢、安全志向はそれだけ強い状態で維持されていると解釈できます。そしてそれは、さきほどお話しした、より広義に捉えたポートフォリオ・バランス効果を通じて景気・物価を刺激するという効果波及メカニズムへの向い風として働いている可能性があります。』
ふむふむ。
『世界経済の減速や欧州債務問題といった懸念材料が今後収束に向うのか、それとも引き続き重石となりさらに増大するのか、一層の注意が必要と認識しています。』
と締めておりまして、まあ先行き警戒を強く示した講演になっておりました。
ちなみに、話はワープしますが、長期金利の考察という話ではだいぶ前になりますがこんな日銀レビューシリーズもございましたので(ネタにはしなかったと思う)ご覧あれ。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/rev12j01.htm/
安全資産の需給と国債の希少性プレミアム
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j01.pdf
#ということでジャクソンホールの続きがスルーされているような気がするかもしませんが気のせいですorz
2012/09/05
お題「ニュース悪態やらその他雑談/ジャクソンホールの続き」
益々ゴミ集団と化してまいりましたな。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120905-00000504-san-pol
「橋下氏は衆院選出馬、市長後継は中田氏」東国原氏が私案
産経新聞 9月5日(水)1時44分配信
まあ大体「維新」とか言う連中ってこんなもんでしょ。
http://www.amazon.co.jp/dp/4776201194
○ニュース悪態
民主党が円高対策で日銀の外債購入の話を。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0402V_U2A900C1PP8000/
日銀に外債購入要請 民主公約素案の要旨
2012/9/5 2:10 情報元 日本経済新聞 電子版
まあその前に自民党も言ってるんですけどね。
http://jp.reuters.com/article/JPpolitics/idJPTYE87U06120120831
物価目標2%で政府・日銀が協定=自民党の日本経済再生プラン
2012年 08月 31日 19:48 JST
『実質3%、名目4%の成長を巡航速度とするため、今後5年間で集中改革を行うとし、円高・デフレから脱却するために政府・日銀で2%程度の物価目標を協定として締結。日銀による外債購入など、日銀法改正を視野に大胆な金融緩和措置を講じることなどを盛り込んでいる』(上記URLより)
・・・・・・・・えーっとですな、おまいら日銀の外債購入言うけど、そもそも為替対策で中央銀行に介入させるって話をするのに一番の難関は米国財務省をどう納得させるかという話で、そんなもん出来るのか出来ないのか考えてから出せやアフォと思うのでございますけれども。
まさかとは思うが、「そういう交渉は日銀がやるもの」とか思ってねえだろうなあという所でございまして、まあ物事よく判っていない民主党が絵空事言い出すのは仕様なので仕方ありませんが、自民党まで何を言い出すのやらという所ですな。
つーか自民党も「大胆な金融緩和政策の為に日銀法改正」とか言うけど、それやっていざ出口政策の時に必要な事が出来なかったら碌でも無い事が起きるんだがちゃんとそういうの担保できるんだろうなと思う訳で、財金のあの暴走振りとか総裁選のドタバタぶりとか見ていると自民党の方が余程危ないわこりゃという感じになって来ている今日この頃。
しかしあたくし頭が悪いのでよく判らないのですが、物価目標が2%で実質成長が3%なのに何で名目成長が4%になるの???と思いますが、そもそも人口減っている国で実質3%成長とか何をどうすると達成できるのか小一時間問い詰めたい訳で、明らかに後からケツが割れたどこぞの政党の「埋蔵金があるから財源があります(キリッ)」という詐欺よりも質が悪い詐欺にしか見えませんな全く。
大体からしてな、消費税増税の便乗値上げのモニターガーとか消費者庁がさっそく言い出すとか、インフレフォビアにも程がある国でCPIが前年比+2%になる頃には「庶民の生活ガー」とか与野党メディア総出で言いだして結局物価上昇率のアコードが骨抜きにされて、却って将来のデフレ均衡を助長するに100万ドラクマなんすけど。
などと今朝も悪態からスタート(-_-メ)。
○普通の雑談等
・経済指標ェ・・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M9TWEP6K50XS01.html
米ISM製造業指数:3カ月連続の縮小、生産は09年来の縮小
まー何ですな、日本の経済指標も最近クソな上に、ジャクソンホールでバーナンキさんが経済の話でこれでもかと労働市場がうんこな話をしておりましたが、ISMもどうもこの有様という所でございまして(しかしこのヘッドラインなのだが生産の縮小も兎も角として在庫の増加も問題だと思うのだが)、日銀(というか麿様)の回復シナリオってどう見ても怪しいような気がするんですがどうなんでしょうかねえ。
まあこれだけ各国の経済見通しがアレの中で、日本だけ「内需主導で回復が継続したあと海外経済の回復に引き継がれて成長継続」とかいうのはさすがに何ぼなんでもちょっとアレなのでは無いでせうか。
・ECBとな
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M9TZQH6K50Y801.html
ECB総裁:ユーロ存続のために国債購入が必要−議会を説得
『9月4日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、同中銀の主たる責務が国債市場への介入を不可欠にするとの認識を示した。ユーロの存続を確実にするため、金利をコントロールする力をECBが取り戻す必要があると主張した。』(上記URLより、以下同様)
ほう。
『同総裁は3日、欧州議会の非公開会合で、ユーロ圏17カ国の借り入れコストをコントロールする力をECBが失ったと語り、同中銀が国債を購入する最も強い根拠となる議論を展開した。ブルームバーグ・ニュースが録音された総裁発言を入手した。発言内容の一部はイタリアの通信社AGIが3日に報じた。』
ほうほう。
『ドラギ総裁は「ユーロ圏が分断化されている今、物価安定という目標を追求することができない。金利の変更が域内の1国かせいぜい2カ国にしか影響しないからだ」とし、「ユーロ圏の残る諸国に対して、政策金利は全く意味を持たない」と指摘。従って、ECBによる国債購入は「われわれの第一の責務を果たすための手段だ」と述べた。「率直に言って、これらすべてはユーロの存続に大いに関わってくる」と付け加えた。』
まあこの「市場が分断されている」というのは折に触れてドラギ総裁が強調している現状認識で、市場の分断により金融政策のトランスミッションメカニズムが機能しませんというのは、これまた従来より強調しているロジックでございますので、まあここら辺りはさもありなんという感じでございます。
『ECBは会合が非公開だったことを指摘し、一段のコメントを控えた。同中銀の政策委員会は6日に債券購入案について決定する見込み。ECBへの期待は既に、イタリアとスペインの国債利回りを押し下げている。議会証言でドラギ総裁は国債購入が中銀に託された責務の枠を超えるとの指摘を否定。「われわれは物価安定という第一の責務を放棄することになるだろうか。いや、全くその逆だ」と語った。』
とのことで。
・・・・・まあ何ですな、どういう制度になるのかは存じませんが、ベースとしてのロジックは「金融ショックによって市場機能が麻痺している状況を是正する」という話でございますので、そーゆー意味では米国のQE1とか日本で言えば2008年末から2009年頭に掛けて導入された企業金融円滑化支援関連の固定金利オペとか資産買入に似たような話になるかと思いますので、あたくし何ぞは昔のこういうのをイメージとして考えるのですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/un0902c.pdf
社債買入れの概要(2009年2月に導入された方の社債買入です)
この時は「危機前の市場実勢からしたら高めのレートだが、現在の市場実勢からするとお助けレート」という水準での買入を行い、まあこれの他に実施した企業金融オペの方も効きまして、クレジット市場が落ち着くと共に(というよりは、実際にはこの後暫くした所から急速に状況が改善して金利が急低下したというのが市場体感的には正しいのですが)この辺の金利も低下して、社債買入やCP買入の応札も減ってきた(CP買入は1月に導入)という流れになったのですが、その時と比較するとLTROやらMROはフルアロットメントで実施していますし、適格担保についても緩和されていますからその辺は企業金融オペ(0.10%でフルアロットメントの資金供給)実施しているのと似ていますし、まあ指値での国債買入をするというのも(そのレートがドイツ国債並みとかだとアレですが)そんなに変な話でも無いような気もしますけどどうなんでしょうかね。
・そういえば今月もマネタリーベースは・・・・・
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/base1208.pdf
マネタリーベース(2012年8月)
えーっと、震災の危機対応による大量資金供給の影響が剥落してきたら順調に前年対比のマネタリーベースは拡大しているのですが、今年の3月や4月にマネタリーベースが減ったから日銀が金融引き締めしていて円高ガーとか抜かしていた本職の皆様が護国寺方面とか溜池山王方面にいたような気が思いっきり致しますが、おまえらちょっとこれについてコメントしろやゴルァとしか申し上げようがございませんな(-_-メ)。
・社債オペとか営業毎旬報告とか
これは先週末のネタですが(汗)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120831b.pdf
CP・社債等買入(資産買入等基金)オペレーションのオファー日程について
『オファー日等については、今後も決定の都度、公表する予定です。なお、社債等買入オペの9月オファー分のオファー金額については、2,000億円から2,500億円に変更しています。』
ほほうと思って営業毎旬報告を確認する訳で。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120831.htm/
営業毎旬報告(平成24年8月31日現在)
下の方にある別表2の「資産買入等の基金」の内訳に基金オペの買入残高明細があるのだが、社債に関しては2,577,295,279千円、と書くと書いてる本人も一瞬なんだかワカランチ会長になる(どうせなら円単位で書いてもらった方が見た瞬間わかるぞなもし)のですが、よーするに2.57兆円の買入残高という数値。
ご案内の通り買入の目標額が年末基準で2.9兆円ですので、単純計算すると残り3300億円買えばオッケーという話ですが、基金社債買入に関しては既に買入をした銘柄の償還も始まっていますので、まあその辺も加味してオファー金額を拡大しましたという話なのでしょうかねという所ですが、償還スケジュールがワカランチ会長なので11月と12月に買入どうしますねんというのはワカランチ会長ではございますな。うんうん。
○ジャクソンホールの更に続きでござる
まあ小出しにしているつもりでも無いのですが、とにかく量が多い多い。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20120831a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20120831a.pdf
・コミュニケーションポリシー
『Communication Tools』でございますが、こちらに関してはプロコンがどうのこうのというよりは淡々と説明している感じでして、まあ次回のFOMCでもすんなりこちらでの追加金融緩和ですなと想像される次第。
『Clear communication is always important in central banking, but it can
be especially important when economic conditions call for further policy
stimulus but the policy rate is already at its effective lower bound. In
particular, forward guidance that lowers private-sector expectations regarding
future short-term rates should cause longer-term interest rates to decline,
leading to more accommodative financial conditions.』
ということで、フォワードガイダンスは長期金利の引き下げに作用して、それを通じて金融環境を緩和させる効果がある、という説明ですの。
で、実際にどのようなフォワードガイダンスの変更を行ったかという説明があるのですが、まあそこは割愛して、フォワードガイダンスの文言の「意味」を改めて説明している部分から引用再開。
『As the language indicates, this guidance is not an unconditional promise;
rather, it is a statement about the FOMC's collective judgment regarding
the path of policy that is likely to prove appropriate, given the Committee's
objectives and its outlook for the economy.』
(拙訳)このフォワードガイダンスは無条件の約束ではなく、むしろFOMCのマンデートおよび経済見通しに沿った金融政策見通しの大勢見解を示した文言であります。
という事で、相変わらず「2014年遅くまで金融緩和を継続すると表明している」とか説明する人が偶に見受けられるのですが、とりあえずこの辺の文言を目の玉おっ開いて嫁という所ではございます。
『The views of Committee members regarding the likely timing of policy
firming represent a balance of many factors, but the current forward guidance
is broadly consistent with prescriptions coming from a range of standard
benchmarks, including simple policy rules and optimal control methods.』
現在のフォワードガイダンスは概ね一般的なルールベースで考えた場合の政策金利パスに一致しますとかいう話だが、何かこの前どこぞの地区連銀総裁の講演ではテイラールールで計算する政策金利パスと違うとかいう話をしていたような気がするんだがまあスルー。
『Some of the policy rules informing the forward guidance relate policy
interest rates to familiar determinants, such as inflation and the output
gap. But a number of considerations also argue for planning to keep rates
low for a longer time than implied by policy rules developed during more
normal periods. These considerations include the need to take out insurance
against the realization of downside risks, which are particularly difficult
to manage when rates are close to their effective lower bound; the possibility
that, because of various unusual headwinds slowing the recovery, the economy
needs more policy support than usual at this stage of the cycle; and the
need to compensate for limits to policy accommodation resulting from the
lower bound on rates.』
ということで、インフレ数値やら生産ギャップやらにフォワードガイダンスを紐付けるという話について、ダウンサイドリスクの顕在化を防ぐ保険になるという考察がありますというような説明しとりますの。
で、フォワードガイダンスの有効性について。
『Has the forward guidance been effective?』
『It is certainly true that, over time, both investors and private forecasters
have pushed out considerably the date at which they expect the federal
funds rate to begin to rise; moreover, current policy expectations appear
to align well with the FOMC's forward guidance.』
こっちではフォワードガイダンスが市場の政策金利予想パスに与える影響に対して「It
is certainly true」と仰せになっていまして、まあそらそうですなという感じですけれども、効果が計測しやすいですねという話になっております。
『To be sure, the changes over time in when the private sector expects
the federal funds rate to begin firming resulted in part from the same
deterioration of the economic outlook that led the FOMC to introduce and
then extend its forward guidance. But the private sector's revised outlook
for the policy rate also appears to reflect a growing appreciation of how
forceful the FOMC intends to be in supporting a sustainable recovery.』
フォワードガイダンスはガイダンスという関係上、市場の経済見通しが変化した場合に、市場の政策金利の予想パスが変化する場合がありますと。
『For example, since 2009, forecasters participating in the Blue Chip survey
have repeatedly marked down their projections of the unemployment rate
they expect to prevail at the time that the FOMC begins to lift the target
for the federal funds rate away from zero. Thus, the Committee's forward
guidance may have conveyed a greater willingness to maintain accommodation
than private forecasters had previously believed. The behavior of financial
market prices in periods around changes in the forward guidance is also
consistent with the view that the guidance has affected policy expectations.』
ということでフォワードガイダンスの説明は割とあっさり味で終了していて、まあこういう感じであっさり説明している所を見ますと、次回の金融緩和措置についてはフォワードガイダンスの所を何らかの形でいじってくるんでしょうなあと思うのでありました。
・さてプロコン部分
でまあ次がマニア的には興味のあるプロコン比較の部分で、その小見出しもズバリ『Making
Policy with Nontraditional Tools: A Cost-Benefit Framework』という話なのですが、これがまた引用するとクソ長くなって、あたくしの時間配分および量の関係上ちと引用大会は明日以降に持ち越しであります(大汗)。
でまあとりあえず引用の方は後日行いますが、このコーナーで何の話をしておりますかと言いますと、効果の説明に関しては当然ながら前の部分でああだこうだと行っていますので、話の展開としてはこんな感じになります(と言って冒頭部分を引用^^)。
『Making monetary policy with nontraditional tools is challenging. In particular,
our experience with these tools remains limited. In this context, the FOMC
carefully compares the expected benefits and costs of proposed policy actions.』
非伝統的政策は実際に試された機会が少ないので実施にあたってはメリットとデメリットを比較して慎重に行わなければいけません。
『The potential benefit of policy action, of course, is the possibility
of better economic outcomes--outcomes more consistent with the FOMC's dual
mandate. In light of the evidence I discussed, it appears reasonable to
conclude that nontraditional policy tools have been and can continue to
be effective in providing financial accommodation, though we are less certain
about the magnitude and persistence of these effects than we are about
those of more-traditional policies.』
でまあメリットに関してはその前の所で延々と話をしているので、「実施しなかったらエライコッチャになっていましたよね」で片付けまして・・・・・・・・
『The possible benefits of an action, however, must be considered alongside
its potential costs. I will focus now on the potential costs of LSAPs.』
という事で、ここから先このコーナーは全部LSAPに対する話で、追加でLSAPを打ち込む事に対する批判とそれに答える形になっています。で、その引用はスルーして内容だけまずは書いておきますね。
(1)市場機能の阻害→エージェンシー債や国債市場の規模は大きく当面はFEDの追加買入が市場機能を損ねる懸念はございません(キリッ)
(2)バランスシートの拡大によってFEDのバランスシートコントロール能力への疑念が生じインフレ期待を無用に高める→今の所そのような懸念は顕在化しておらず、さらに我々には出口政策ツールを色々と持っていてテストもしているので出口政策がアンコントローラブルになるリスクはございません(キリッ)
(3)金融の安定化を損ねる→今の所そのリスクは無いがFSOCなどとも協力してモニターを続けるぞなもし
(4)長期国債買い過ぎると金利上昇した時にFEDに損失が発生するのでは→そらまあそれだけ見たら損が出るという話になるが、もっと大きな視点で見て経済にメリットがあれば良い訳で一部だけ見てああだこうだ言うべきではない、ついでに言えば今はFEDの長期国債買入は収益上がっているんですが何か?
とまあそんなそんな感じで追加のLSAPに対する懸念にこたえる形になっていますが、纏めの部分はやや慎重な物言いをしつつ、最後には「必要なら実施します」で締めるという微妙にコウモリの香りもする話っぷりに。
『In sum, both the benefits and costs of nontraditional monetary policies
are uncertain; in all likelihood, they will also vary over time, depending
on factors such as the state of the economy and financial markets and the
extent of prior Federal Reserve asset purchases. Moreover, nontraditional
policies have potential costs that may be less relevant for traditional
policies. For these reasons, the hurdle for using nontraditional policies
should be higher than for traditional policies.』
と、ここまでは慎重バージョン。
『At the same time, the costs of nontraditional policies, when considered
carefully, appear manageable, implying that we should not rule out the
further use of such policies if economic conditions warrant.』
で、締めは威勢よく、という感じでした。
つーことで更に後日残りを成敗します。
2012/09/04
お題「雑談を少々/ジャクソンホール講演続き:非伝統的政策に関する解説部分から少々」
あっそう。
http://www.asahi.com/politics/update/0903/TKY201209030125.html
古賀氏「私は若い人を支持」 谷垣氏に不支持伝える
2012年9月3日13時24分
ゲルは安倍ちゃんと組むとか言い出すし、まあ自民党若いのにして今よりマシになるとも思えず、以前の民主党の更に劣化バージョンになるだけだと思うのですけどねえ。
#つーか小選挙区で落選の分際で総裁選出ようとしている町村さんとか随分とまあ図々しいにも程がありますねという感じなのですけど
などと書いていたら目の前のテレビで「改革」となると小泉郵政改革を想像してどうのこうので「変化」に対して株式市場はポジティブとかモーサテに出ている馬鹿がほざいているのだが、ド素人に政権持たせて散々悲惨な目にあった(と思ったら元の政権与党が急速にゴミ状態になって政権交代しても危ない雰囲気だというのに)ばかりなのに、さらにどうしようなく統治能力が1ミリもあるとも思えない維新が「改革」に加わるのでマンセーとかこの解説者2名は脳味噌がおがくずで出来とるのか今すぐ西方浄土に逝ってろ、ということで不愉快なので音を消したからその後の「マーケットは公共投資に注目?」というお題は聞いていませんwwwww
#維新にすり寄る浅ましい面々を見ておりますとあたしには何とかホイホイというのがぴったりと来るのですけどね
・・・・・などと湯気ポッポ―となっていたのですが、モーサテの次のコーナー冒頭で狩野ちゃんのアップが出たのですっかりご機嫌が戻るあたくしでした(^^)(^^)(^^)
○雑談とか人のふんどしとか
・人のふんどしシリーズ
what_a_dudeさんがすっかり通常運転に戻られたようで誠に慶賀の至り(^^)。
what_a_dudeの日記
http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20120831/p1
2012-08-31特例公債法騒動再び
マシナリさんのこのエントリーは重い。
machineryの日々
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-530.html
「絶対最強の公務員」なんているはずがない(追記あり) 2012年08月31日 (金)
『前回エントリでも繰り返したことですが、拙ブログでは所属する組織や職業、さらに人格を標的とした批判は慎まなければならないと考えております。これは、ブログというネット空間だけのことではなく、現実の問題としても、そうした批判は「批判のための批判」にしかならず、ときには深刻な問題につながる可能性もある危険なものと考えるからです。』(上記URLより)
まあご覧あれ。
・輪番ェ・・・・・・
昨日は輪番
オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120903.htm
国債買入(残存期間1年以下) 3,100 2012年9月5日
国債買入(残存期間1年超10年以下) 2,500 2012年9月5日
結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120903.htm
国債買入(残存期間1年以下) 8,316 3,101 0.031 0.038 83.4
国債買入(残存期間1年超10年以下) 9,894 2,503 0.002 0.003 36.6
うむ、短い方が妙に甘い気がするが、これは懐かしの償還銘柄打ち込み攻撃ですかの???
・一部で話題のようなので貼っておく
ざっくり読んだ後MPMだジャクソンホールだと放置プレイ状態になっていたのですが、話題になっているらしいのでダラス連銀のEconomic
Letter8月号にあったレポートを貼っておきます。
http://www.dallasfed.org/research/eclett/2012/el1208.cfm
http://www.dallasfed.org/assets/documents/research/eclett/2012/el1208.pdf
China’s Slowdown May Be Worse Than Official Data Suggest
by Janet Koech and Jian Wang
PDF版をカラー印刷をすると一番読みやすいのですけれども、PDF版で4ページ組とそんなに長くないのでご覧になって味噌。
PDF版だと最初のページの横に『To get a more accurate picture of China’s
economy, economists examine other measures of activity that closely track
growth but are less prone to political interference than output data.』とありますが、大本営発表データだけでは無く、より経済活動に密着したデータを見た方が良いですよという話をしていて、端的には電力消費のデータを元に中国経済の活動を推計するというような話を簡潔に行っています。
小見出しがアレでして曰く、『Data Reliability』『Composition of Production』『Improving
Data Reporting』という所です。結論部分はお題の通りですが、中々いい感じでケチョンケチョン。
『Although China’s economic growth has slowed sharply in recent months,
evidence suggests that the situation may be worse than reported. Several
factors contributed to China’s slowdown. Demand for China’s exports in
Europe and the U.S. has weakened amid the deepening European sovereign
debt crisis and sluggish U.S. economic activity.』
>the situation may be worse than reported
>the situation may be worse than reported
>the situation may be worse than reported
だそうでございまする(-_-メ)。まあメモだけで勘弁。
○ジャクソンホールネタの続きである(キリッ)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20120831a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20120831a.pdf
Monetary Policy since the Onset of the Crisis
・バランスシート政策に関する説明部分から
本日は最初のやった政策自画自賛部分はスルーして次の『Balance Sheet Tools』辺りから料理である。
『In using the Federal Reserve's balance sheet as a tool for achieving
its mandated objectives of maximum employment and price stability, the
FOMC has focused on the acquisition of longer-term securities--specifically,
Treasury and agency securities, which are the principal types of securities
that the Federal Reserve is permitted to buy under the Federal Reserve
Act.』
ということでバランスシート政策の説明が始まりますが、USTとエージェンシー債の購入にフォーカスしたのはそもそも法的に買えるものがこれですからというまあ細かい所まで説明している(ジャクソンホールのシンポジウムって本来は中銀関連の皆様の集いの筈なのですが、明らかに一般向けにもなるようなやたらめったら細かい部分まで説明するのが逆さ絵おじさんのクオリティなのは素晴らしいと思う)のですが、日本の場合は必殺43条攻撃がありますなあとか思ったあたくし(^^)。
『One mechanism through which such purchases are believed to affect the
economy is the so-called portfolio balance channel, which is based on the
ideas of a number of well-known monetary economists, including James Tobin,
Milton Friedman, Franco Modigliani, Karl Brunner, and Allan Meltzer. The
key premise underlying this channel is that, for a variety of reasons,
different classes of financial assets are not perfect substitutes in investors'
portfolios.4 For example, some institutional investors face regulatory
restrictions on the types of securities they can hold, retail investors
may be reluctant to hold certain types of assets because of high transactions
or information costs, and some assets have risk characteristics that are
difficult or costly to hedge.』
資産買入の波及チャネルとしてポートフォリオチャネルの話を。
『Imperfect substitutability of assets implies that changes in the supplies
of various assets available to private investors may affect the prices
and yields of those assets. Thus, Federal Reserve purchases of mortgage-backed
securities (MBS), for example, should raise the prices and lower the yields
of those securities; moreover, as investors rebalance their portfolios
by replacing the MBS sold to the Federal Reserve with other assets, the
prices of the assets they buy should rise and their yields decline as well.
Declining yields and rising asset prices ease overall financial conditions
and stimulate economic activity through channels similar to those for conventional
monetary policy. 』
ということで、この辺がポートフォリオリバランス効果の話をしておりますが、この辺の説明をって基本的に金利ルートの説明をしているのがほほうという感じですが。
『Following this logic, Tobin suggested that purchases of longer-term securities
by the Federal Reserve during the Great Depression could have helped the
U.S. economy recover despite the fact that short-term rates were close
to zero, and Friedman argued for large-scale purchases of long-term bonds
by the Bank of Japan to help overcome Japan's deflationary trap.』
というロジックに基づくと、大恐慌の時にゼロ金利制約の中でFRBが沢山の長期証券の購入を行っていたら経済の回復に寄与したとか、日本の場合でも長期証券の購入を大量に行ったら日本のデフレ均衡を阻止できた、などとトービンやフリードマンの論を引いて説明していますけれども、マネタリーの話では無くて金利ルートや資産価格ルートでのロジックでそういう説明をするのってどうなんでしょうかねえとは思うのですけれども・・・・・・・
『Large-scale asset purchases can influence financial conditions and the
broader economy through other channels as well. For instance, they can
signal that the central bank intends to pursue a persistently more accommodative
policy stance than previously thought, thereby lowering investors' expectations
for the future path of the federal funds rate and putting additional downward
pressure on long-term interest rates, particularly in real terms. Such
signaling can also increase household and business confidence by helping
to diminish concerns about "tail" risks such as deflation. 』
LSAPの効果の説明の続きをしているのですが、「他のチャネルでも金融環境に影響を与え、経済に幅広く影響」とのことで何ですねんという話ですが、最初に出てきたのが「中銀がより緩和的なスタンスを示すというシグナリング」というのを出しています。
まあ気合の世界っちゃあ気合の世界になりますが、中銀が緩和的な金融政策スタンスを示すことによって市場の想定する将来のFFレートのパスが下がって市場金利が低下するという話をしていまして、さらに中銀スタンスのシグナリングによって「例えばデフレ入りのようなテールリスクの発生懸念を抑えることによって」家計や企業のコンフィデンスを下支えするという話。
『During stressful periods, asset purchases may also improve the functioning
of financial markets, thereby easing credit conditions in some sectors.』
更には金融市場にストレスが掛かっている時には買入によって金融市場の機能を改善して、一部のセクターでクレジットコンディションを改善するという話。
・・・・・・・・・とまあそういうのが効果の説明なのですが、ここでは「金利ルート」「資産価格ルート」「気合(というと語弊があるが期待形成というか)のルート」という話をしておりまして、まあ仰る通りかとは思いますが、マネーガーの話は皆無なのが想定通りながらチャーミング。
で、この後FRBの行ったバランスシート政策として、LSAP(資産買入)とMEP(いわゆるツイストオペ)の実施状況を説明しておりますがそこはスルーして実際の政策の効果に関して。
『How effective are balance sheet policies?』
キタコレ。
『After nearly four years of experience with large-scale asset purchases,
a substantial body of empirical work on their effects has emerged. Generally,
this research finds that the Federal Reserve's large-scale purchases have
significantly lowered long-term Treasury yields.』
ということで、LSAPは「significantly lowered long-term Treasury yields」と金利を下げるという効果の話を思いっきりしています。
まあFRB的にはそのロジックの話をここもとずーっと展開しているのですが、そもそも期待インフレ率が引きあがったり、景気が改善したら名目長期金利は上昇する筈でして、QE2打ち込みの時などはデフレ入り阻止をお題目にして打ったことからも、その辺を意識して「名目金利」じゃなくて「実質金利」を引き下げる(=名目金利は上がっても期待インフレ率が上昇するので実質金利は下がっていますぞなもしという理屈)という話をしていた筈なのですが、最近はすっかり実質の話をしなくなっているのがFEDクオリティ。
いやね、この名目金利引き下げのロジックにあまり固執すると、実際問題として期待成長率が下がって金利が低下しているのを「LSAPの効果です(キリッ)」とか言い出す事にもなり兼ねず、それってQE2実施前にセントルイス連銀のブラード総裁がQE2実施の重要性を説明したペーパーで示した「低金利と好ましくない低インフレの組み合わせとなるデフレ均衡」に陥る惧れがあるんじゃネーノとか思うのですけどね、というような無知蒙昧人間のごたくはどうでもいいですかそうですかorz
『For example, studies have found that the $1.7 trillion in purchases of
Treasury and agency securities under the first LSAP program reduced the
yield on 10-year Treasury securities by between 40 and 110 basis points.
The $600 billion in Treasury purchases under the second LSAP program has
been credited with lowering 10-year yields by an additional 15 to 45 basis
points.』
『Three studies considering the cumulative influence of all the Federal
Reserve's asset purchases, including those made under the MEP, found total
effects between 80 and 120 basis points on the 10-year Treasury yield.
These effects are economically meaningful.』
だそうなのですが、1.7兆ドルの購入で10年金利が40〜110bpの低下で、6000億ドルの購入で15〜45bp低下という話で、更にMEPも加えて全部を計算すると80〜120bpの金利低下という説明になっているのですが、市場のプライスアクション見てた方としてはホンマカイナという感じがする上に、そもそも買入額に対する推計に幅があり過ぎだろとか思う所であります。
まあ一応バランスシート政策の説明って「買入の額ではなくて買入の残高が重要」というような話をしているので、何となく買入額比例みたいな怪しげな数字がここに出ているのですが、そもそも金利水準が高い時も低い金利の時もおなじようにリニアに効くという理屈が怪しげでありまして、普通に考えて、というか市場の中の人的には後の買入の方がどう見ても金利に対しての効きが悪くなっているだろうという風にしか思えませんけどねえ。
で、この次に他の効果の話をしておりまして、MBSの金利を下げただの株価を引き上げただの、株価が上がると消費や投資が上がるだのという話をしております。まあ株価の話を直球でして来るのは米国クオリティではありますな。
『Importantly, the effects of LSAPs do not appear to be confined to longer-term
Treasury yields. Notably, LSAPs have been found to be associated with significant
declines in the yields on both corporate bonds and MBS. The first purchase
program, in particular, has been linked to substantial reductions in MBS
yields and retail mortgage rates. LSAPs also appear to have boosted stock
prices, presumably both by lowering discount rates and by improving the
economic outlook; it is probably not a coincidence that the sustained recovery
in U.S. equity prices began in March 2009, shortly after the FOMC's decision
to greatly expand securities purchases. This effect is potentially important
because stock values affect both consumption and investment decisions.』
で、この後は「とは言いましても、金融政策というのは「やらなかったらどうなったか」というデータを取れませんので正確な効果というのはワカランチ会長なのです」という前提を置きながら、「モデルによると失業は改善して雇用を創出しました(キリッ)」という話になります。
『While there is substantial evidence that the Federal Reserve's asset
purchases have lowered longer-term yields and eased broader financial conditions,
obtaining precise estimates of the effects of these operations on the broader
economy is inherently difficult, as the counterfactual--how the economy
would have performed in the absence of the Federal Reserve's actions--cannot
be directly observed.』
ここから先がドヤ顔部分。
『If we are willing to take as a working assumption that the effects of
easier financial conditions on the economy are similar to those observed
historically, then econometric models can be used to estimate the effects
of LSAPs on the economy. Model simulations conducted at the Federal Reserve
generally find that the securities purchase programs have provided significant
help for the economy. For example, a study using the Board's FRB/US model
of the economy found that, as of 2012, the first two rounds of LSAPs may
have raised the level of output by almost 3 percent and increased private
payroll employment by more than 2 million jobs, relative to what otherwise
would have occurred. The Bank of England has used LSAPs in a manner similar
to that of the Federal Reserve, so it is of interest that researchers have
found the financial and macroeconomic effects of the British programs to
be qualitatively similar to those in the United States.』
でも失業ってまだ駄目なんですよねとか突っ込んではいけない(^^)。
一応ドヤ顔部分がさすがにちょっと図々しいと思ったのか次にこんな事を。
『To be sure, these estimates of the macroeconomic effects of LSAPs should be treated with caution.』
最後はモーゲージ市場の改善やデフレリスクの回避もできたという話をしております。
『It is likely that the crisis and the recession have attenuated some of
the normal transmission channels of monetary policy relative to what is
assumed in the models; for example, restrictive mortgage underwriting standards
have reduced the effects of lower mortgage rates. Further, the estimated
macroeconomic effects depend on uncertain estimates of the persistence
of the effects of LSAPs on financial conditions.』
『Overall, however, a balanced reading of the evidence supports the conclusion
that central bank securities purchases have provided meaningful support
to the economic recovery while mitigating deflationary risks.』
『Now I will turn to our use of communications tools.』
続きは明日(^^)。
2012/09/03
お題「特例公債法案の遅れで早速色々と/ジャクソンホールである」
ネタというのは出るときは同時にでるものですな。
○特例公債法案の遅れで早速色々と
ご案内の通り29日に野田首相の問責決議案が参議院で可決して今国会は事実上終了となった事から、衆議院では通過した特例公債法案は店晒しになったのですが、早速金曜の閣議終了後に安住財務大臣が会見を。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M9LJB007SXKX01.html
財務相:全経費で予算執行抑制、交付税延期も−財源法案不成立なら
『8月31日(ブルームバーグ):安住淳財務相は31日午前の閣議後会見で、赤字国債発行の裏付けとなる特例公債法案が今国会で不成立の場合に備えた、9月以降の予算執行の抑制策を公表した。基本的に全経費を対象とし、同月初旬に予定される4兆円規模の地方交付税の交付も延期となる可能性がある。政府は9月8日の会期末までの国会状況をみて最終判断する。同法案の不成立で執行が抑制されると、初めてのケースとなる。』(上記URLより、以下同様)
ということで、会見でまあ色々と話があったのですが、インターバンク的にあちゃーとなったのはこちらの部分でございました。
『地方交付税については地方自治体の円滑な財政運営に十分配慮して検討するとしながらも、「現時点で、法案が成立していないため、通例の9月初旬の交付は現実的には延期をすることになる」と言明。庁費や旅費などの政府部内の行政経費は毎月予算額の50%以下に抑制するほか、3カ月ごとに支払われる独立行政法人・国立大学法人向け支出も50%以上を留保する方針だ。』
独法の経費とかはまあ関係者におかれましてはエライコッチャでございますが、短期金融市場的には何なのですが、それはそれとして地方交付税の所が問題でございまして、「通例の9月初旬の交付は現実的には延期をすることになる」ってあーたそれ翌週火曜日の9月4日予定のブツでございまして、その額が大体1.4兆円位想定されていましたので、T+2でいきなり資金繰りが1.4兆円下振れしますぞなもしという大変にお洒落な事態。
ちなみに、短国に関しては、
『今年度予算で20兆円枠が確保されている財務省証券を発行して補てんする可能性については「一時的な資金繰りの手段で歳出の財源ではない」と否定した。』
とのことで増発はしないという話のようですが、とりあえずそれよりも目先の資金繰りでございますがなという事で、T+2の所で資金ニーズが急に来たのでここぞとばかりに日銀はこんなオペを実施。
先週金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120831.htm
国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 4,000 2012年9月4日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 4,000 2012年9月4日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年9月4日 2012年10月15日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 16,000 2012年9月4日 2013年1月15日
オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120831.htm
国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 2,508 2,508 0.000 0.000
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 4,465 4,000 0.001 0.002
共通担保資金供給(資産買入等基金)(10月15日エンド分) 21,990 8,011 36.4
共通担保資金供給(資産買入等基金)(1月15日エンド分) 10,725 10,725
午前中の基金国債買入に関しては今回合計8000億円のオファーとなりまして、今月オファーした過去3回の7000億円(いずれも5000+2000)から増額してきたのですけれども、前回2〜3年の方が札がそこそこ入っていた事を勘案したのか、今回は2〜3年の札を2000億から4000億円にした所、1〜2年は盛大に札割れして2〜3年の方は4000億分きっちり入ったという事で、まあ今月のMPMは第3週(18〜19日)ですのであと2回基金国債買入が入る可能性がありますが、札割れ対策の為の応札下限金利撤廃を9月MPMで実施するのかどうかはこの応札状況を見ていると極めて微妙ではございますな。
まあどうせどこかで厳しくなると思いますので、変にギリギリになってバタバタするよりは次回MPMでちゃっちゃと応札下限金利撤廃すれば良いと思うのですけどねえ。
という話は比較的どうでも良い(良くは無いが)のですが、金曜のオモシロオペは何と言いましても基金共通担保オペの2本立て実施でございます。
もともと4日には3か月オペの期落ちが8175億円ありまして、3か月オペをロールするでしょうなあというのはあったのですが、このオペのロールが何と1か月物でのオファー。まあ前から1か月物とかの方が担保繰りに柔軟性が持てるから世間的にはそっちの方がニーズがあるという事ですがなというのは以前から申し上げておりました(つーかあたくしが申すまでも無くヒアリングでそういう声が多く聞こえていると存じますけど^^)が、まあやっとマーケットフレンドリーというか「市場のニーズに柔軟に対応」という固定金利オペの枠組み見直しの当初に話をしていた通りの事が出来ましたですかそうですかという所でこれはまあマーケットフレンドリー。
でですな、もう一本の方が何ともアレなオペでございまして(^^)、急に資金不足が来たのでというプレイになった市場に対して、その不測の不足日(駄洒落では無い^^)に向けて新規で資金供給をオファーするというのは不測の事態に対する迅速な対応ではあるのですけれども、そこに向けて打ち込んでくるオペが「新規で4か月物の固定金利オペ」という所が何とも味わいのある所です。
もうね、こういう所で「ほーれほれ、資金だよ資金♪」と言いつつ新規で出してくるのが短いオペじゃなくて年末越えのクソ長い資金という所が、市場の足元を見たっつーか何つーかという所で、そらまあ資金繰りのブレに対して放置プレイされたらもっと困りますからこれはこれで「臨機応変の対応」である事は間違いないのですし、財政要因の下振れ予定額の1兆4千億円を上回る1兆6千億円でのオファー(単に8000億円の整数倍で打ってきただけのような気もしますが細けぇこたぁ気にすんなYO!)というのは量的にも十分な額のオファーという事で、そーゆー意味ではこれまたマーケットに配慮しているようではあるのですが、この場面で積み上げておきたい固定金利オペの残高を稼ごうという所が、現金持って在庫買いたたくバッタ屋のオッサンみたいな風情を醸し出しておりまして誠に味わいの深い(深くないですかそうですか)ものを感じる所ではございます。
#まあ上記のように一方で1Mのオペも打っている辺りが飴と鞭とでも申しますか
で、そのオペの結果は上記引用の通りで、1か月物固定金利オペには何と2.2兆円近い渾身の応札が入りまして、やはり短いタームのオペの方がニーズがある(ちなみに短期市場以外の人向けに話をしますと、別に常に短い方がニーズがある訳ではありませんで、偶々現在の市場環境としては同じ固定金利の資金供給だったら長いものよりも短いものの方がニーズがあるというだけの話ですので、あまり一般化して考えないように)というのが明確になったのと、4Mものと言えどもやはりT+2で急に財政下振れが来たのでに対しては札が入りますなあというのが判明した、とまあそんな所でしょう。
てなわけで、特例公債法案絡みで急にまた来やがったなという感じではありますが、何となく今回のあずみんの会見はわざわざ騒ぎを大きくして「野党のボケアホカスが協力しねえから色々と悪影響が出るんじゃヴォケ」と政治的にアピろうとしている風情も感じる次第ではありますが、しかしまあ政府支出の一部が止まるだけでは無く、地方交付税交付金の支払いが止まりますと地方行政機関の業務執行にも影響が出て来るとかいう話になるでしょうし、支払いが暫く止まるとなると、まー普通にその間ってあちこちで資金繰りを保守的にしましょうとかいう話になるので、政府および地方公共団体からの財政関連支出が景気に対して影響を与える(もちろん悪い方に)という図も考えられる訳でして、何だかなあという感じがする金曜のひとときなのでございました。
○ジャクソンホールキタコレ!でまあとりあえずかいつまんで
逆さ絵おじさんの講演である。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20120831a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20120831a.pdf
PDFバージョンで本文19ページ(最後の1ページは2行なので実質は18ページ)となる代物ですが、過去の事実の説明部分が結構多いのでどこをどうネタにしたもんかとまあ正直悩んでいるのですが・・・・・・・・
まずは市場の反応ですが、今朝のモーサテを見るとQE3確実みたいな話になっておりますけれども、さて他のベンダーは何ゆうてますねんという事で一応確認。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M9MUT66K50Y001.html
米国債:続伸、FRB議長が追加緩和を示唆−10年債1.55%
『ベーカー・グループのパートナー、ジェフリー・コーロン氏は、「QE3がまだ現実に起こり得るという事実を手掛かりに、期間が長めの国債市場が底堅さを維持している」と指摘。「多くの市場参加者が議長はもっと明確かつ強い姿勢を示すと期待していたが、現段階で発言に用心深くなるのは適切なことだ」と述べた。』(上記URLより、以下同様)
『セージ・アドバイザリー・サービシズ(テキサス州)のパートナーで運用担当者のマーク・マックイーン氏は「市場では、当局が一段と債券を買い入れ、再びバランスシートを拡大させるとの見方が広がっている」と指摘。「議長は追加行動に前向きであることを市場にある程度再確認させた。予想以上の内容だった」と述べた。』
ほほう。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE87U06E20120831
ドル下落、FRB議長講演で追加緩和期待強まる
2012年 09月 1日 08:06 JST
『ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(ニューヨーク)の国際新興市場戦略部長、ウィン・ティン氏は「労働市場をめぐる『深刻な懸念』という文言が、以前と比べてやや強い表現で、唯一目立った」と指摘。「これで来週発表される雇用統計が一層重要となった」と述べた。』(上記URLより)
ほほう。つーか何かモーサテでは次回QE3みたいな話だが、どうも必ずしもそうでも無さそうな気もしますし、まーそもそも市場によって受け止めも違うのかもしれませんな。
とは言いましても、今回の講演でQE3実施に対する市場の期待値はだいぶ上がったものと思われるのですけれども、はてさてこうやって期待を引き上げてしまうと今度は市場がクレクレ状態になる訳ですが、今にして思い起こせばLSAPのその1その2とも何気に市場の方がFRBに追い込みを掛けていたという動きがございまして、こらまあ望むと望まざるに関わらず市場が追い込んで行った場合に逆さ絵のおじさんは市場が追い込んでくると割とあっさりLSAP実施とかするのではないかという気もせんでもないですし、はてさてどうなるんでしょうか。
つーことで逆さ絵ショーをとりあえず読んでみましょう。
・本日のお題は・・・・・・
『Today I will review the evolution of U.S. monetary policy since late
2007. My focus will be the Federal Reserve's experience with nontraditional
policy tools, notably those based on the management of the Federal Reserve's
balance sheet and on its public communications. I'll discuss what we have
learned about the efficacy and drawbacks of these less familiar forms of
monetary policy, and I'll talk about the implications for the Federal Reserve's
ongoing efforts to promote a return to maximum employment in a context
of price stability.』
ということで、まずは2007年からの金融政策レビュー、非伝統的政策に関する考察ということで、バランスシート政策とコミュニケーション政策について、非伝統的政策の利点と欠点について、今後の金融政策に関するお話、とまあそういう構成になっております。
つーことで、小見出しが以下の通り。
『Monetary Policy in 2007 and 2008』
『Balance Sheet Tools』
『Communication Tools』
『Making Policy with Nontraditional Tools: A Cost-Benefit Framework』
『Economic Prospects』
『Conclusion』
・更に全体的な感想を先に書いて読みに入らないあたくし
お前のしょうもないご託なぞ要らんから早く本文出せ本文、という声が聞こえてきそうですが、華麗にスルーしてあたくしの愚感想が続くのでした(^^)。
でですな、まあ内容的には確かに「追加緩和を示唆」ではあるのですが、じゃあQE3に即刻直結するのかというとこれまた微妙でして、途中にある『Making
Policy with Nontraditional Tools: A Cost-Benefit Framework』という部分で追加のLSAPに的を絞ってプロコンの検討をしているのがまあ微妙な所。
プロコンの説明部分では、利点については「確かに効いております(キリッ)」とは言っているものの、ただまあ従来の伝統的政策に比べてどこがどう効いているのかという話はまだ計測しにくいというようにまあ慎重な部分がある一方で、欠点に関しては良く言われている論点に関しての説明がありまして、「ただまあ現状ではその欠点は顕在化しておりません」という風に並べた論点に関して現在は無問題という話をしているので、まあそういう意味で言えばQE3の地均しっぽく読もうと思えば読めるのですが、そのプロコン説明部分と最後のまとめの部分で「追加の非伝統的政策の実施に関しては伝統的政策による追加緩和よりもハードルが高い」という説明もしているのが中々微妙だと思います。
あとですね、これは後日引用祭りをするときにネタにする攻撃になると思います(今日は政策ツールに関する部分まで手が回らないと思いますので)けれども、デメリットの説明の中で最初に出ていた「買入をし過ぎると市場機能が低下して却って金融政策の有効性を阻害する」という話の中で、その前の部分(バランスシート政策の説明部分)でLSAPの効果として説明していた長期金利の低下が実はQE1とQE2ではQE2の方が効果が逓減している事についてスルーしている辺りがあたくし的に残念というか、ある意味貫録の逆さ絵クオリティだなあと感心した部分であります。
バランスシートポリシーに関する説明読んでてまあそらそうだなとは思いましたが、マネーガーの話は1ミクロンたりとも無く、金利引き下げ効果と金融環境の緩和という話はあるのですけれども、そうなりますと、確かにプロコンの説明にあるようにデメリットも今の所顕在化していない(正直出口政策の部分はかなり問題が拡大しているとは思いますが、それは出口政策に差し掛からないと顕在化しない話なので・・・・・・)のですけれども、金融環境や長期金利水準からして、どう見てもここからのLSAPって本当にメリットあるのかねというのが甚だアレな気がするんですよね。
もしかしたらその辺を踏まえて「LSAPの効果を直接的に計測するのは難しい」という話をしているのかも知れません(逆さ絵クオリティはてめえの実施する政策に関して言う時に「効きが悪くなっている」とかいうようなネガティブな話は直接的にはしないのですが、文脈を見るともしかしからそうなのではという感じがする部分があったりするという感じなのですよ)けれども、そこらへんは中々読み取るのが難しいので(あたくしは以上のように「やっても実は効きが悪い可能性が」という意識があるのかも知れないと読みましたが)、まあ読み方次第という所ではないかと存じます。
それから、コミュニケーションポリシーに関してのプロコン検討部分は無かったのですが、直近のFOMC議事要旨を見た感じではどう見ても次回のSEPと同時にコミュニケーションポリシーのおかわりという感じでしたので、まあプロコンを検討するまでも無く導入ですよという話になるんでしょうなあという所で。
・つーことでまずは後ろから確認する(がそこで本日は終了でござる)
『Conclusion』から。
いきなり冒頭がこれ。
『Early in my tenure as a member of the Board of Governors, I gave a speech
that considered options for monetary policy when the short-term policy
interest rate is close to its effective lower bound.31』
この脚注31番というのが『31. See Bernanke (2003).』ということで、2003年に逆さ絵おじさんが東京で行った講演『Some Thoughts on Monetary Policy in Japan』という代物(内容はhttp://www.federalreserve.gov/boarddocs/speeches/2003/20030531/default.htmをご覧あれ)でございまして、麿憤死と言った所でございます(まとめの部分にあるのですが、当然ながら本文中にもここへの参照がもう一か所ございます)。
『I was reacting to common assertions at the time that monetary policymakers
would be "out of ammunition" as the federal funds rate came closer
to zero. I argued that, to the contrary, policy could still be effective
near the lower bound.』
かねてから申し上げておりますように政策金利のゼロ金利制約下においても金融政策は「弾薬切れ」にはならないのです。金融政策は依然として有効です(キリッ)。
『Now, with several years of experience with nontraditional policies both
in the United States and in other advanced economies, we know more about
how such policies work. It seems clear, based on this experience, that
such policies can be effective, and that, in their absence, the 2007-09
recession would have been deeper and the current recovery would have been
slower than has actually occurred.』
これらの非伝統的政策を実施しなかった場合2007-2009のリセッションは更に深刻なものになっていたでしょう(キリッ)。
『As I have discussed today, it is also true that nontraditional policies
are relatively more difficult to apply, at least given the present state
of our knowledge. Estimates of the effects of nontraditional policies on
economic activity and inflation are uncertain, and the use of nontraditional
policies involves costs beyond those generally associated with more-standard
policies. Consequently, the bar for the use of nontraditional policies
is higher than for traditional policies.』
ということで、まあこの部分も当然ながら本文での論考を踏まえてですけれども、非伝統的金融政策に関しては「現在の少ない経験に照らし合わせると適用するのが相対的に難しい」、「伝統的政策に比較して経済や物価に対する効果が不確実な部分がある」という話をしておりまして、「その結果として、非伝統的政策の実施へのバーは伝統的政策の実施より高い」という話をしております(この部分、本文ではbarじゃなくてhurdleって言ってます)。
『In addition, in the present context, nontraditional policies share the
limitations of monetary policy more generally: Monetary policy cannot achieve
by itself what a broader and more balanced set of economic policies might
achieve; in particular, it cannot neutralize the fiscal and financial risks
that the country faces. It certainly cannot fine-tune economic outcomes.』
でまあ非伝統的政策というだけではなく、金融政策の限界とか他の経済政策とのバランスという話をしているのですが、この部分は実は本文ではほぼスルーされている話でして、今回はこのテキストを詳しく読むのに(最初の斜め読みは別ですが)逐語形式で読んでいましたので、最後の最後にこれが出てきたのが「ほー」という感じでした。
『As we assess the benefits and costs of alternative policy approaches,
though, we must not lose sight of the daunting economic challenges that
confront our nation. The stagnation of the labor market in particular is
a grave concern not only because of the enormous suffering and waste of
human talent it entails, but also because persistently high levels of unemployment
will wreak structural damage on our economy that could last for many years.』
経済見通しの所では延々と労働市場の話をしておりまして、これもまた面白い(構造問題ではなく循環問題であるとか、本来リセッションから回復すればリセッション前の水準に戻るのが当然である、とかミネアポリスのコチャラコタ総裁とかセントルイスのブラード総裁が憤死しそうな話をしております^^)のですがまあそれは後日という事ですけど、まとめのこれまでの部分はそうと致しましても、現在の米国の経済状況、就中労働市場の問題が誠にケシカラン状態であり(という話もしている、obviouslyとか入れてちょっとトーンが強め)その状況が続くと経済に構造的な悪影響を与える事を認識すべきとキタコレ。
『Over the past five years, the Federal Reserve has acted to support economic
growth and foster job creation, and it is important to achieve further
progress, particularly in the labor market.』
(キリッ)とだけ訳しておけば良いですな(^^)。
・・・・・ということで纏め部分の最後の一文である。
『Taking due account of the uncertainties and limits of its policy tools,
the Federal Reserve will provide additional policy accommodation as needed
to promote a stronger economic recovery and sustained improvement in labor
market conditions in a context of price stability.』
金融政策ツールの不確実性や限界なども正確に考慮しながら、FRBは「必要なより強い経済の回復ならびに労働市場、金融市場の改善をもたらすのに必要な」追加金融緩和政策を物価安定の文脈の下で実施するでしょう。
・・・・・・と来ましたなという事で、まあ威勢よく出ていますので、市場がQE3期待を高めるのはシャーナイナイだなあとは思いますが、バランスシートポリシーじゃなくてコミュニケーションポリシーの実施であって、バランスシートの方は温存コースだと思う(というか効果よりデメリット大きくねえかという気もするし)のですが、徐々に市場(全部ではなさそうですが)が考える「追加金融緩和政策」とFRBの言う「追加金融緩和政策」の間に齟齬が出ているのではないかという悪寒もする今日この頃ではございました。
#内容部分に関しては後日続編を投入の所存