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2012/08/31

お題「今日もジャクソンホール待ちを理由に雑談である^^」

まさか今月の値動きが一番無いのが今週だとは思いませんでしたよ。
#今日一日残っていますけど・・・・・・・

○毎度の短期市場方面の市場雑談メモ

・3か月短国入札

昨日の3MTBの落札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240830.htm

5.価格競争入札について
(1)応募額 124兆4,317億円
(2)募入決定額 5兆3,394億7,000万円
(3)募入最低価格 99円97銭5厘0毛
(募入最高利回り)(0.1002%)
(4)募入最低価格における案分比率 0.4855%
(5)募入平均価格 99円97銭5厘5毛
(募入平均利回り )(0.0982%)

ということですが、前回は平均が99.9752円(0.0994%)で足切りでの按分比率が3.3246%だったのですが、今回は平均がいきなり0.03銭(3毛って書くとイールドと紛らわしい^^)上昇して按分比率が3.32%から0.48%とだいぶ減ってやがりまして、殆どが上の札で入りましたという結果に。

東京レポレート(http://www.boj.or.jp/statistics/market/short/trp/index.htm/)もここもと0.100%(T/Nを見ておくと吉)に張り付いていますし、水曜はT/Nが0.098%に低下したりしてまして、まあさすがに資金運用目的で0.10%割れのGCを買う人は日銀当座預金非対象先限定となります(担保繰りで買う場合はその限りに非ず)ので、今のところの市場状況では0.10%割れでは調達ニーズが全部充足できるわけでも無く、さすがに0.10%が基本という感じになっているようですが、まあ背景としては足元で資金の余剰感が高まっている事から短国の買いニーズが高まったという所なんでしょうかね、よー知らんですけど。ちなみにいわゆる不明玉に関しては金融ファクシミリ新聞様によりますと今回が18380億円で前回が24847億円ですので、平均が上がった分だけニーズは減っているのかもしれませんが。

月曜の基金短国買入は普通に0.099%の買入でしたので、そこから見ると短国の平均がまんま上の値段になっているという今回の入札はちと強いような気もしますが、今週に入ってからのGC金利低下が影響したんでしょうなあと思いつつ、来週に多分やるであろう基金短国買入のレートが低下するのかどうかがマニア的には注目なのですが、所詮0.099%か0.098%かという残念なマイクロな世界であることには変わりありませんので、関係者以外にはあまり影響のない話ですかそうですかorz

そういや応札がまた最大を更新(大昔の99兆円応札可能時代を除く)したようですけれども、何か100兆円をある程度超えると110兆でも120兆でもあまり気にならなくなってくる感覚のマヒ化恐るべし(^^)。


・2年国債入札である

2年国債入札の結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2012/resul035.htm

(3)募入最低価格 100円00銭0厘
(募入最高利回り)(0.100%)
(4)募入最低価格における案分比率 5.5840%
(5)募入平均価格 100円00銭2厘
(募入平均利回り)(0.098%)

ということで、こちらにつきましては前回の平均100円00銭6厘足切り100円00銭5厘というアヒャヒャヒャヒャな入札から見るとやや落ち着いた結果に。0.10%入ったのはまあ良かったですね(そらまあ0.095/0.100の気配だったのですから入るでしょうが)とは言いましても相変わらず0.10%割れの所が多くの札というのはカワランチ会長。

こちらも短国と同じ理由で0.10%割れを資金運用目的で買う人は日銀当座預金の非取引先という話になりますし、担保ニーズだったら短国の方が良い(何も2年を付利割れでフィックスする必要は無い)のでその手のニーズは少ないということですので、まあ前回債もそうでしたけれども、今回債に関しても(それはそれで売れているとは思いますが)0.10%割れをホイホイと買う人ってそんなにいるもんなんですかねえとか思いつつ。

前回の入札の時には今月のMPMで基金国債買入の下限が撤廃されるかも(とあたくしも申し上げましたが・・・・・)とか、それ以上には付利の引き下げに関する期待とかもあったでしょうからそれで盛り上がって強くなったというのがありますが、付利下げに関してはまあ米国の方もだいぶ遠い話になりそうなので日本の付利下げも遠いでしょと思われますし、基金国債買入の下限撤廃に関してはあたくし的には来月のMPMでやっておいた方が無理なく基金の積み上げが出来るからやっておいた方が良いとは思いますが、足元で基金国債買入が札割れしていないという実績があると来月のMPM(まで当然ながら時間がございますので状況はこれから変化し得るのですけど)で基金国債買入の応札金利下限の撤廃も無いでしょうなあと思われますので、そんなこんなで0.10%割れをドンドン買い進むという訳にもいかんという所ですかね。

まあ2年に関しては中期ゾーンの決算益出し調整売りとかの影響も受けるかとは思いますし、5年とかもカレントが0.20%台に乗った後はさすがに0.24%はやり過ぎにしても、その後も案外伸びないで金利の方サガランチ会長になっていて何気に0.20%台で推移してるとか、どうも中期が重そうにしているのも影響してるのかねなどとつらつら思ったのでメモだけしておくのでありました。


・4か月オペとな

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120830.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年9月3日 2013年1月11日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120830.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(9月3日スタート分) 11,135 8,006 71.9

ということで昨日は3Mのオペのロールを何と年末越え4か月なんぞで実施しやがりまして、足元で6か月のオペが盛大に札割れしてて水曜の3Mオペも札割れしやがったというのにここで何で長いオペ打ってくるんじゃ何という無謀なチャレンジとか思ったのですが、ちゃんと札が入っておりまして事前のヒアリングで需要を確認してオファーしたんですねこりゃどうも失礼いたしましたと一人で勝手に盛り上がって勝手に謝罪する昨日のあたくしでございました(^^)。

年末越えにニーズがあったのか12月の頭とかに落ちるオペが要らなかったのかは札を入れた本人じゃないから知らんですけど、年末越え4か月オペが実施されたのもほほうという感じでしたが結果を見て更にほほうという感じ。GC高いのなら判るのですけれども、足元GCは低い(高い低いと言っても0.100なのか0.108なのかとかそういう世界なので大差ないですけど)ですし、短国の入札に示されているように金余っているっぽい中でしたのであたしゃ意外でしたけど、まあヒアリングの勝利ということですかそうですかという風に申し上げておきまふ。


○西村副総裁の世界行脚は続くよどこまでも

昨日もこんなのが
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120830a.htm/
英語版HPへの掲載のお知らせ
Market Intelligence, Market Information and Statistics in Central Banking
第6回アービング・フィッシャー委員会主催コンファランスにおける西村副総裁基調講演(8月29日)

『第6回アービング・フィッシャー委員会主催コンファランスにおける西村副総裁基調講演(8月29日)を英語版ホームページに掲載しました。』

ということで講演はこちら。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko120830a1.pdf
Market Intelligence, Market Information and Statistics in Central Banking
Keynote Speech to the 6th Irving Fisher Committee Conference Basel, Switzerland, August 29, 2012

21日にはRBAとBISの共同主催コンファランスで『How to detect and respond to property bubbles: Challenges for policy-makers』というのをやり、日本に戻ってから今度は27日にトルコ中銀のセミナーで『Demographic Transition, Impact of ICT, and Globalization: A Long View of the Post-Crisis World』という講演をやって、まあさすがに今回は中1日ですからトルコからバーゼルに飛んでまた講演という世界行脚モード。

で、しかもそれぞれテーマが違っていて(最初のと2つ目のは人口動態が経済に与える影響に関する話の部分が被っているのですが、今回の講演は思いっきり別のお題になっています)まあポイントも色々とある講演でございまして、これ準備も大変でしょうし事務方のロジも大変でしょうが、西村副総裁急に何で世界行脚祭りになってますねんという所でございまして、任期あと半年とかになって西村教授モードになって来て本領発揮モードになっているのはこれはこれで中々興味深い所ではございます。と申しますのも、任期終了を意識して皆様が揃いも揃って本性発揮モードとなった場合はそらまあ政策意思決定でも本性発揮モードになって下さったりする可能性も高まりますので、その辺も加味しながら行動を予想(妄想とも言う)しないと行けませんからね(^^)。

一方、すっかり山口副総裁が城代家老というか国家老状態になっているのではないかと思われる所がこれまた味わい深いのでございますが、国家老は国家老で先般の広島での講演とかいい感じで「追加緩和やってもいいんじゃないですかねえ〜」って感じになっておりますのが味わいがあるというものです



ということでまあ今回の講演を大体よんでみたのですが、内容はまあオモロイというか興味深いのではございますが、何せ講演の量がやたら長い(英文本文貫録の18ページ)のでどこをどうネタにするのかが難しいですな。

つーことでとりあえずざっと纏めますと、前半は「中央銀行が政策判断を行うのにどのような情報を取得していくべきか」という話をしていまして、その中として「起きた事」を知るための経済のハードデータ、「これから起きうる事」を知るためのサーベイなどのデータ、そして「これから起きるかもしれない事」を知るためには通常の経済統計などだけではなく、市場からのデータや市場参加者からの情報など、それから中央銀行として知りうる市場における取引状況や市場参加者のポジション状況などにより注意を払っていくべきであるというようなお話をしています。後半では今般の金融危機に対して具体的にケーススタディーという形で検証を行っておりまして、シャドウバンキングとか市場での取引状況とかの注意をより払う必要があったので、今後は中央銀行はこれらの知見を活かして行動するのが吉とか、まあそんな趣旨の話をしているように読めましたが、間違っていたらご指摘プリーズ。

#ということで本当は引用して内容を紹介しようと思いましたが、最後のまとめの所を引用するだけでも死ねるのでどうネタにするかは週末に悩んでおきます・・・・・・・




2012/08/30

お題「世界的にジャクソンホール待ちのようなので虫干しネタでも」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120829-00000083-mai-pol
<首相問責可決>焦点、9月の党首選へ
毎日新聞 8月29日(水)21時43分配信

ふむ、特例公債法案は当分成立しないということですかそうですか。


○この前ちょっと頭出しだけしたSF連銀ウィリアムス総裁のスピーチ

サンフランシスコ連銀の「エコノミックレター」から。

FRBSF Economic Letter
http://www.frbsf.org/publications/economics/letter/2012/el2012-21.html
Monetary Policy, Money, and Inflation
By John C. Williams

で、最初のサマリーは先日ネタにしたのですが。

『Textbook monetary theory holds that increasing the money supply leads to higher inflation. However, the Federal Reserve has tripled the monetary base since 2008 without inflation surging. With interest rates at historically low levels and the economy still struggling, the normal money multiplier process has broken down and inflation pressures remain subdued. The following is adapted from a presentation by the president and CEO of the Federal Reserve Bank of San Francisco to the Western Economic Association International on July 2, 2012.』

2008年以来FEDはマネタリーベースを3倍に拡大したけどインフレは加速しませんでした。という厳然たる事実がある訳で、その背景にはいわゆる貨幣乗数の低下があるというお話なのでございます。

でまあこの理屈って諸刃の剣みたいなものがありまして、メリットとしては「追加のLSAPをどどーんと実施しても別にインフレは加速しませんよ」って論理展開が可能なので追加のLSAP導入に対するフォローにはなるのですが、デメリットとしては「じゃあLSAPやって何の効果があるんですか今まで何やってたんですか」というツッコミが飛んでくるというのがあるのではないですかねえとか思います。


・「インフレは常に貨幣的現象である」という教科書の記述は試練に

『And I’ll begin my presentation with a reference to another pathbreaking monetary theorist. Milton Friedman (1970) famously said, “Inflation is always and everywhere a monetary phenomenon in the sense that it is and can be produced only by a more rapid increase in the quantity of money than in output” (p. 24). We are currently engaged in a test of this proposition.』

ですなあ。

『Over the past four years, the Federal Reserve has more than tripled the monetary base, a key determinant of money supply. Some commentators have sounded an alarm that this massive expansion of the monetary base will inexorably lead to high inflation, a la Friedman.』

という記述になっておりますように、まあウィリアムス総裁の趣旨としては「LSAPを突っ込むとインフレが加速するという批判は的外れ」という話をしようとしているのが判るかと存じます。まあそういう批判が政治方面から多いという事も踏まえてのお話という事なのでしょう。

『Despite these dire predictions, inflation in the United States has been the dog that didn’t bark. As Figure 1 shows, it has averaged less than 2% over the past four years. What’s more, as the figure also shows, surveys of inflation expectations indicate that low inflation is anticipated for at least the next ten years.』

インフレが貨幣的現象なのでマネーの急激な拡大は高インフレをもたらすという批判に対して、実際のインフレは安定的に推移しています、ということですが図表の引用はスキルが無いのでスルーである。

『In my remarks, I will try to reconcile monetary theory with the recent performance of inflation. In my view, recent developments make a compelling case that traditional textbook views of the connections between monetary policy, money, and inflation are outdated and need to be revised.』

ということでございますが、どこぞの国では相変わらず震災要因で増えた資金供給が前年比で減ったので「日銀の引き締めガー」とか言い出す人たちは(そういえば最近はすっかりその手の人たちが黙っているのがはいはいワロスワロスという感じですが)何なんでしょうねという所です。


・マネタリーベースとマネーストック

『Monetary base and the money stock』という所から。

『I’ll start with two definitions. The monetary base is the sum of U.S. currency in circulation and bank reserves held at the Federal Reserve. Figure 2 shows the key components of the monetary base since 2007. Up until late 2008, it consisted mostly of currency, with a small amount of bank reserves held mostly to meet regulatory requirements. Since then, the monetary base has risen dramatically, primarily because of a $1.5 trillion increase in bank reserves.』

ということでまずはマネタリーベースの話で、通貨+銀行のリザーブという形で示していますが、ご案内の通りリーマンショック以降は超過準備の拡大によって銀行リザーブが急増しているという図になっています。

『The money stock is a related concept. It is the total quantity of account balances at banks and other financial institutions that can easily be accessed to make payments. A standard measure of the money stock is M2, which includes currency, and certain deposit and money market accounts.』

マネーストックは金融機関などが支払いの為にアクセス可能なバランスの量ですという話をしまして、その先の説明が中々。

『Here I should make an important point about something that often confuses the public. The worry is not that the Fed is literally printing too much currency. The quantity of currency in circulation is entirely determined by demand from people and businesses. It’s not an independent decision of monetary policy and, on its own, it has no implications for inflation.』

>The quantity of currency in circulation is entirely determined by demand from people and businesses.

まあさいですが、FEDは自分から能動的に過剰なプリンティングマネーをしている訳ではありませんぞなもしとかどこの日銀ですかという話になっているのが味わいのある所です。

『The Federal Reserve meets demand for currency elastically. If people want to hold more of it, we freely exchange reserves for currency. If people want less, then we exchange it back. Of course, currency doesn’t pay interest. People hold it as a low-cost medium of exchange and a safe store of value. In fact, over the past four years, U.S. currency holdings have risen about 35%.』

ここ4年で通貨が35%拡大したとな。

『This reflects low interest rates, which reduce the opportunity cost of holding currency. It’s also due to worries about the economy and the health of the banking system, both here and abroad. In fact, nearly two-thirds of U.S. currency is held outside our borders (see Goldberg 2010). U.S. currency is widely seen as a safe haven. When a country is going through economic or political turmoil, people tend to convert some of their financial assets to U.S. currency. Such increased demand for U.S. currency is taking place in Europe today.』

その要因は低金利による通貨保有コスト低下の他に、金融システム不安や海外からのセイフヘイブン需要などによると。

『For monetary policy, the relevant metric is bank reserves. The Federal Reserve controls the quantity of bank reserves as it implements monetary policy. To keep things simple, I’ll start with what happens when the Fed doesn’t pay interest on reserves, which was the case until late 2008. I’ll return to the issue of interest on reserves toward the end of my talk.』

ということでリザーブへの付利についての話が始まるのだ。


・リザーブへの付利に関して

『Before interest on reserves, the opportunity cost for holding noninterest-bearing bank reserves was the nominal short-term interest rate, such as the federal funds rate.』

付利が無ければ準備預金の保有コストはFF金利になりますわな。

『Demand for reserves is downward sloping. That is, when the federal funds rate is low, the quantity of reserves banks want to hold increases. Conventional monetary policy works by adjusting the amount of reserves so that the federal funds rate equals a target level at which supply and demand for reserves are in equilibrium. It is implemented by trading noninterest-bearing reserves for interest-bearing securities, typically short-term Treasury bills.』

中央銀行がリザーブをコントロールすることによって金利収入を生まないリザーブから他の金利を生む商品へのリバランスが起きるという効果で市場金利をコントロールしているというのが従来の金融政策での運営ですよと。

『Normally, banks have a strong incentive to put reserves to work by lending them out. If a bank were suddenly to find itself with a million dollars in excess reserves in its account, it would quickly try to find a creditworthy borrower and earn a return. If the banking system as a whole found itself with excess reserves, then the system would increase the availability of credit in the economy, drive private-sector borrowing rates lower, and spur economic activity. Precisely this reasoning lies behind the classical monetary theories of multiple deposit creation and the money multiplier, which hold that an increase in the monetary base should lead to a proportional rise in the money stock.』

で、リザーブを無駄に置くよりも貸し出しなどに回る筈というのが通常の状態での理屈になりますがなというのがあって、伝統的な理屈ではそのリザーブが世の中に回るという形になるのでマネタリーベースを増やすとマネーストックが増えて効果が出るという話になるのですが・・・・・・・

『Moreover, if the economy were operating at its potential, then if the banking system held excess reserves, too much “money” would chase too few goods, leading to higher inflation. Friedman’s maxim would be confirmed. Here’s the conundrum then: How could the Fed have tripled the monetary base since 2008 without the money stock ballooning, triggering big jumps in spending and inflation? What’s wrong with our tried-and-true theory?』

でもFEDはマネタリーベースを3倍にしたのにインフレって加速しませんでしたよねと。

『A critical explanation is that banks would rather hold reserves safely at the Fed instead of lending them out in a struggling economy loaded with risk. The opportunity cost of holding reserves is low, while the risks in lending or investing in other assets seem high. Thus, at near-zero rates, demand for reserves can be extremely elastic. The same logic holds for households and businesses. Given the weak economy and heightened uncertainty, they are hoarding cash instead of spending it. In a nutshell, the money multiplier has broken down (see a discussion in Williams 2011a).』

まあ当然ながらこの間に貨幣乗数が低下しているという話で、引用しない図表の方では「貨幣乗数が急落」というようなお題になっていて、名目GDP対マネタリーベースというのとM2対マネタリーベースというのを出しておりまして、どちらも急落の図となっています。


・リザーブ拡大は目的では無く結果であるという話

『Why did the Fed boost reserves?』というのが次になるのですが。

『A natural question is, if those reserves aren’t circulating, why did the Fed boost them so dramatically in the first place? 』

まあ当然ですが、上記のような説明によれば、リザーブ拡大してもそれが回らないというのであれば、FEDは何でリザーブ拡大しましたねんというツッコミが自然に置きます罠という事で。

『The most important reason has been a deliberate move to support financial markets and stimulate the economy. By mid-December 2008, the Fed had lowered the federal funds rate essentially to zero. Yet the economy was still contracting very rapidly. Standard rules of thumb and a range of model simulations recommended setting the federal funds rate below zero starting in late 2008 or early 2009, something that was impossible to do (see Chung et al. 2011 and Rudebusch 2010).』

『Instead, the Fed provided additional stimulus by purchasing longer-term securities, paid for by creating bank reserves. These purchases increased the demand for longer-term Treasuries and similar securities, which pushed up the prices of these assets, and thereby reduced longer-term interest rates. In turn, lower interest rates have improved financial conditions and helped stimulate real economic activity (see Williams 2011b for details).』

ということで、リザーブ拡大を行うにあたって長期資産の購入を行っている訳ですが、これによってゼロ金利制約でこれ以上下げられない短期金利に対して長期金利を引き下げる事によって効果を出しましたという説明になっています。

『The important point is that the additional stimulus to the economy from our asset purchases is primarily a result of lower interest rates, rather than a textbook process of reserve creation, leading to an increased money supply. It is through its effects on interest rates and other financial conditions that monetary policy affects the economy.』

キタコレという感じですが、追加の金融緩和として実施している資産の購入は「金利を下げる」という目的の為に実施しているのであって、金融論の教科書にあるような「マネーを拡大する」事を目的にした訳では無いというお話で、未だに「マネーガー」という話をしている人たちが引き合いに出すお手本って大体「米国ガー」なのですが、その米国ではこういう話が出ているのって何なんでしょうねという事です罠。


・リザーブ付利の意義

『But, once the economy improves sufficiently, won’t banks start lending more actively, causing the historical money multiplier to reassert itself? And can’t the resulting huge increase in the money supply overheat the economy, leading to higher inflation? The answer to these questions is no, and the reason is a profound, but largely unappreciated change in the inner workings of monetary policy.』

で、経済が十分に回復した所ではこの貨幣乗数が復活してインフレになるのでは?という質問に対してはNoだそうでして・・・・・・

『The change is that the Fed now pays interest on reserves. The opportunity cost of holding reserves is now the difference between the federal funds rate and the interest rate on reserves. The Fed will likely raise the interest rate on reserves as it raises the target federal funds rate (see Board of Governors 2011). Therefore, for banks, reserves at the Fed are close substitutes for Treasury bills in terms of return and safety. A Fed exchange of bank reserves that pay interest for a T-bill that carries a very similar interest rate has virtually no effect on the economy. Instead, what matters for the economy is the level of interest rates, which are affected by monetary policy.』

リザーブに付利をする事によって、リザーブが短期国債の代替物として機能するので、実質的に資金を吸収することができますよねというようなお話でして・・・・・


・マネーガーではありませんと

『This means that the historical relationships between the amount of reserves, the money supply, and the economy are unlikely to hold in the future.』

というのが大体の結論になりますわな。

『If banks are happy to hold excess reserves as an interest-bearing asset, then the marginal money multiplier on those reserves can be close to zero. As a result, in a world where the Fed pays interest on bank reserves, traditional theories that tell of a mechanical link between reserves, money supply, and, ultimately, inflation are no longer valid.』

なるほど。

『In particular, the world changes if the Fed is willing to pay a high enough interest rate on reserves. In that case, the quantity of reserves held by U.S. banks could be extremely large and have only small effects on, say, the money stock, bank lending, or inflation.』

ということで、出口政策ではリザーブ付利も活用しながらという事になる次第。


つーことでですな、「長期金利引き下げ」の部分は日銀と言ってることが思いっきり違うのですけれども、もはやマネーを出してどうのこうの的な話になった場合には(そらまあ市場現場実務的な観点からしたら誰がどう見ても同じ結論になる筈なのですが)FEDも日銀も言ってる事はカワランチ会長である、という事が判りますなあというのが本日の趣味のコーナーの結論なのでございます。

ちなみにSF連銀って前任の総裁がイエレンおばちゃんでして、ここの出しているリサーチレポートって傾向としてはFEDの現在行っている政策に対して説明をするというかサポートするような理屈を捻りだしてくる傾向にございまして(独自にわが道を行く地区連銀もある^^)、今回の場合は元ネタがウィリアムス総裁の講演なのですが、まーこんな感じで纏めているという所からしますと、最早マネーガーの話でのアプローチってのは米国ではしませんよね、という所なのかとも思いますし、今後行う可能性のあるLSAPおかわりに向けての予防線でもあるかなという所なのでしょうか、と思うのでございました。


・出口政策に関してはまあ普通の話

最後に『The Fed’s exit strategy』というのがありますがそんなに変わった話をしている訳でも無いので引用だけしておきます。

『As I noted earlier, inflation and inflation expectations have been low for the past four years, despite the huge increase in the monetary base. Of course, if the economy improved markedly, inflationary pressures could build. Under such circumstances, the Federal Reserve would need to remove monetary accommodation to keep the economy from overheating and excessive inflation from emerging. It can do this in two ways: first, by raising the interest rate paid on reserves along with the target federal funds rate; and, second, by reducing its holdings of longer-term securities, which would reverse the effects of the asset purchase programs on interest rates.』

出口政策は利上げ(+リザーブ付利引き上げ)→長期債を減らすという2段構えと。

『In thinking of exit strategy, the nature of the monetary policy problem the Fed will face is no different than in past recoveries when the Fed needed to “take away the punch bowl.” Of course, getting the timing just right to engineer a soft landing with low inflation is always difficult. This time, it will be especially challenging, given the extraordinary depth and duration of the recession and recovery. The Federal Reserve is prepared to meet this challenge when that time comes.』

まあそうですな。


#ということで趣味の虫干しネタコーナーで恐縮至極、相場動かないので勘弁という事でよろしゅうに




2012/08/29

お題「小ネタを幾つかという所でありますが」

小ネタ雑談である。

○ジャクソンホールにドラギ総裁が出ないとな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M9GKWR6JTSEO01.html
ECB総裁:ジャクソンホール参加取りやめ−日程立て込む

『8月28日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、米ワイオミング州ジャクソンホールで31日から開催されるカンザスシティー連銀の年次シンポジウムへの参加を取りやめた。9月6日の政策委員会後の会見では新たな債券購入プログラムの詳細を発表するとみられ、その準備などで多忙となる見込みだ。』(上記URLより、以下同様)

いやいやいや、ジャクソンホールの日程って大昔から決まっている訳で、定例理事会を9月6日に実施するのも前から決まっているのに急に「多忙」になるとかECBの事務方のロジはどうなっているのだと小一時間だと思うのですが・・・・・

『ECBの報道官は28日、ドラギ総裁は向こう数日に「多忙を極める」と予想されるため、参加を取りやめると明らかにした。』

要するに「次回理事会での決定すべき事項について全然根回しが進まないし文句は出まくっているし纏められないでござる」って事ですかねえ。

『米シンポジウムにはECBの理事は出席しないものの、バイトマン氏は出席する。』

根回しする相手のブンデスバンクのおっちゃんは出席するようなのになぜドラギ総裁出席しないという所でして、根回しが進まないよりは各国政府に対してECBが買入を行うための前提条件を詰める方で固まっているとかいう話ですかねえ。

ま、そんなことよりもECB総裁として話をする内容を決めることが出来ないので多忙を理由にだんまり攻撃に走ったという事なのかも知れないですが(^^)、今回のお題が「Changing Policy Landscape」とか何とかいう話で、ゼロ金利制約下における金融政策がどうのこうのとかの話をする中でドラギ先生ではなくてブンデスバンクのおっちゃんが颯爽と登場すると大変に台無しな話をおっぱじめそうで今からワクワクテカテカでございます。つーかバイトマンと麿がコラボして共鳴現象なんぞ起こした日には誠にアレな展開が起きるかもしれませんなあなどと勝手な妄想が広がるというものです(いやまあシンポジウムの段取りはもう決まっているでしょうけどコラボとかあるかどうかは知らんで勝手に言ってるので念の為^^)。


○時間稼ぎが厳しくなっているということですかねえ(米国ですな)

毎度のブルームバーグ記事。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M9HCGA6K50YE01.html
米国債:続伸、2年債入札が好調−量的緩和第3弾の観測で

『8月28日(ブルームバーグ):米国債相場は続伸。連邦公開市場委員会(FOMC)が年内に量的緩和第3弾を実行に移すとの観測を背景に、2年債入札(規模350億ドル)は過去の平均を上回る需要を集めた。』(上記URLより、以下同様)

『RWプレスプリッチの政府・機関債取引担当マネジングディレクター、ラリー・ミルスタイン氏(ニューヨーク在勤)は「入札は比較的好調だった」と指摘。「ジャクソンホールでの議長の講演を皆が待っている状態だ。追加緩和があるとの見方が強まっている」と述べた。』

はあそうですかという感じでございますが、良く良く考えてみますとこの前(6月)のFOMCでツイストオペの延長を年末まで行うというのを決定したばかりでございまして、ツイストオペの延長で本来は半年時間稼ぎをした筈なのに、早速時間軸の延長がほぼ確定的というような話になって居る上に、年内にはLSAPの打ち込みを期待する向きが高まるという流れ。

まー要するに「ゼロ金利制約のある中で追加金融緩和を打っていくと効用が逓減していく」というのを絵に描いたような展開が米国でも始まっているという事でしょうなあとも思いますし、そもそもQE2の後に実施したツイストオペと時間軸の延長が下支えにはなったにせよ物価や失業に対して直接的な改善効果を与えるには力が無いですなという風になっているのか、それともデフレ均衡的な世界に入りつつあるのかと言うような色々な論点が気になる所ではございまする。

そもそも時間軸延長だって最初の時は結構前回から時間を引っ張ったというのに、今回は半年経った所で早くも延長議論が出る(さらに言えば何らかの強化の話も出そうですが)という時点で、時間軸の効きが悪くなっているという事の証左(つーか長期金利が下がり切っているから下支え以上の効果が無いという所なのかもしれませんが)でございますし、逆さ絵おじさん的には色々と苦悩が尽きませんなあという所ですかね。


しかしまあ何ですな、この前ネタにしたようにFOMC議事要旨の最後の所で『At this meeting, participants discussed various aspects of the exercise, such as the possible monetary policy assumptions on which to condition an FOMC consensus forecast, the measurement of the degree of uncertainty surrounding each of the projected variables in the forecast, and the potential for communications benefits.』ってな部分がありましたが、緩和効果らしきものをコミュニケーションポリシーで強化しようというお気持ちは判るのですけれども、その手の舌先三寸スキームというのは自分で自分の手足を縛るという面があり(大体からしてコミットメント的な政策はそういうもんですし)、状況が変化した時に却って話がややこしくなりますし、後から色々と付け加えていくと段々複雑骨折状態になって、収拾するのがエライコッチャになるリスクがあるのでどうかなと思います。まあ言ってみればどこぞの中央銀行のやっている資産買入等基金オペみたいなもんで、とりあえず買入の期間を少しずつ長くして逝ったら手前の方のニーズが無くなってしまって話がややこしくなるみたいなもんですな(ちと違うか^^)。


○西村副総裁がワールドツアーを実施しているようです

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120828d.htm/
英語版HPへの掲載のお知らせ

Demographic Transition, Impact of ICT, and Globalization: A Long View of the Post-Crisis World
トルコ中銀主催セミナーにおける西村副総裁講演(8月27日)

ということで講演テキストはこちら。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko120828a1.pdf
Demographic Transition, Impact of ICT, and Globalization:A Long View of the Post-Crisis World
Speech at the Central Bank of the Republic of Turkey

「人口動態の変化、情報通信技術のインパクト、そしてグローバリゼイション、危機後の世界における長期的な見方」とか何とかいうお題(ICTというのはInformation and Communication Technologyの略です)で、題名と小見出しを見た所(このテキスト出たの昨日の多分遅めの時間だったので中身気が付いたのは不覚にも今朝)西村副総裁というよりは西村教授の講演の香りが致しまして、先般は豪州で不動産バブルの発生に関して人口動態と信用の急速な拡大が寄与しているという話(とバブルへの金融政策対応に関する話)をしておりましたが、今度はトルコにお出掛けという事で、まあこの時期はあちこちで中銀のこの手のセミナーがあります(一番の大玉がジャクソンホール)けれども、何かこう連続でお出掛けになっているのもあまり無かったような気がする次第。

まあ何ですな、政策委員会の皆様におかれましては任期終了が近づくと最後に言うべき事は言わないと状態になって(なるのは当たり前っちゃあ当たり前ですけど^^)急に本領(?)を発揮しだす方が多いのでございますが、西村副総裁も何か本領発揮モードのスイッチが入ったのではないかと思うとこれはこれで胸の熱い展開ですが、総裁ともう一人の副総裁が本領発揮モードに入られてしまって山口副総裁におかれましてはその収拾モードに入らないと行けない場面もあろうかと存じますとか思いますとこれはこれでキングカワイソスではございますな、うんうん。


○何となく市場雑談

・毎度のオペ雑談

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120828.htm

米ドル資金供給(固定金利方式) 2012年8月30日 2012年9月7日 0.640
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年8月30日 2012年12月5日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120828.htm

米ドル資金供給(固定金利方式)(8月30日スタート分) 0 0
共通担保資金供給(資産買入等基金)(8月30日スタート分) 5,180 5,180

昨日のオペは3か月オペ8005億円の落ちに対してロールが行われたのですけれども、貫録の札割れと相成りました。まあここもと3か月オペの応札が減って来ていたのでそろそろ札割れかという所でしたし、そもそもオペ残高の方がろくすっぽ減っていないので少々減った方が良いというのもあるのですが。

ただまあ何ですな、相変わらず6か月の固定オペは札割れしているのにロールのオファーを8000億円とかやっていますし、これ年末時点の着地に向けての調節ってどうやるのかなあというのはさすがに9月ともなると段々気になって参ります。何か変な力技みたいな調節が入らない事を希望するのですが・・・・・・・


・相場雑談というか何というか

先日の20年国債入札以来超長期が軟調のようで。

・・・・・・・・超長期入札の日ってFOMC議事要旨で米債強くなって帰って来た日で、前場途中まで強かったのですが前場途中から超長期に売りが出ましたと言わんばかりの気配になっていきなり20年30年が大失速した上に入札は流れるわ不明札は少ないわという結果。その後の超長期ヘロヘロは追加の売りなのか流れた入札が入っちゃったので外しますかなのかはワカランチ会長ではございますがまあ超長期ゾーンヘロヘロの巻。

でまあそれはそれで良いのですが、某どこぞの業者様が入札の日の後場に20年のスティープニングポジション推奨というナンジャソラというレポートを出していて、しかもそれ良く見ますとただのアノマリーじゃねえかという題名インパクト狙いのレポートが出ていて何だかなあという感じでございましたけど、とりあえず題名にインパクトがあったので話題になっていたようで何だかなあという所ですわ。つーか別に売り推奨するなら売り推奨でも良いのですが、内容的にアレなレポートで何考えて出してるんだと考えると以下自主規制。

まあ先週の20年国債入札に関しては微妙に色々と考えさせられるものがあるのですよね、という話ではございますが頭の中が纏まっていないのとおりませんのでとりあえず忘れないようにメモしておきます。



○まあしょうも無いニュース雑談ですが

即刻原発ゼロを熱心に主張する反原発の中日新聞(東京新聞)様におかれましては先日こんな社説をだしてましたが。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012082402000119.html
原発ゼロ 熟慮の民意が表れた
2012年8月24日

『二〇三〇年の原発比率をめぐる「国民的議論」の結果が出た。負担増を受け入れても安全を優先させたい「原発ゼロ」の民意が読み取れる。国民の覚悟の選択を、政府はただちに尊重すべきだ。』(上記URLより)

だそうですが、ついこの前東電などの値上げ申請に対して「延命」などと酷評していた新聞が何をおっしゃるやらという感じでございますの。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2012051202000140.html
国民に破綻経営のツケ回し〜東電、関電の傍若無人
2012年5月12日

大体からして民意ガーとか言うけどこの手の内容で意見募集して意見出すのってアクティブな連中だから極端な結果が出るのが当たり前だし、7万人って多いように見えるかも知らんけど全人口の0.07%じゃないですか。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012082790135709.html
原発「ゼロ」7万6800件 意見公募 集計結果
2012年8月27日 13時57分

・・・・・・・などと思うのでございますが、まあどうなんでしょうかねえ。ちなみにあたしゃ「そらまあ原発がゼロにできれば良いとは思いますが、実際にゼロにする為に掛かるコストやデメリット考えた場合に、原発の安全性をより高めるという方策も検討課題ではないかね」とは思う次第で、即刻原発ゼロは何ぼなんでもワークしないでしょと存じますがね。




ということで本日はただの雑談になってしまいましたです。サンフランシスコ連銀のペーパーも虫干しネタにしようかと思ってたのですがこれを始めるとオワランチ会長になってしまうので明日にでも(^^)。




2012/08/28

お題「麿先生麿節のようで何より(棒読み)」

大阪での白川総裁講演は会見の方が見ものでありますが講演の方からも麿節の香りが・・・・・・

○大阪での白川総裁講演から少々

先週金曜に講演があったのですけれども・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120824a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 大阪経済4団体共催懇談会における挨拶 ──

まあ講演の方は基本的にそんなに変な話をしている訳でも無い(ので市場的にもスルーだった)のでちょっとだけ。

・欧州債務問題における中銀対応は時間を買う政策です

というのは毎度話をしていることですが、まあお約束なので引用。

『いずれにせよ、このように厳しい状況が続く中にあっても、リスクの極端な形での顕在化が回避されているのは、金融システムの要である銀行間の資金調達市場が、総じて安定した状態を維持しているためと考えられます。この点では、欧州中央銀行による大量のユーロ資金の供給や、日本銀行を含む6中央銀行によるドル資金供給面での協調対応策といった、中央銀行による流動性供給の枠組みが存在するという安心感が大きな役割を果たしています。』

という事を日銀は毎度強調していまして、まあ確かにそれはそうではございますけれども、流動性供給の枠組みではソルベンシー問題から来るリスク対応はできませんという事で、「極端な形での顕在化」は無いかもしれませんけど「リスクの顕在化」自体は別に起こらない話では無いと思いますし、それこそ他の主要国の中銀(ってFRBとBOEだったりしますが)がリスクの顕在化を全力で懸念するような情報発信をしている中ではちょっと浮いている感じがするので、この話ってあまり強調しない方が良いような気がするんですけどね。

『それと同時に、どの国でもそうですが、中央銀行による流動性支援は、あくまでも「時間を買う」、あるいは「痛みを和らげる」という性格の政策であることも冷静に認識する必要があります。欧州当局は、財政・経済構造改革や金融システムの安定・強化等において着実に取り組みを進めていくことが何よりも重要です。この点、我々も国際会議をはじめ様々な機会を通じて、欧州の当事者に対し、そうした対応を強く促しています。』

つーことで欧州債務問題の影響の可能性として貿易、企業マインド、金融市場(内容が為替なのですが為替市場と言わないのがチャーミング)、金融システムと挙げていますけれどもそこは引用割愛します。


・経済先行き見通し

『わが国の景気の先行きについては、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと判断しています。数字に即して申し上げると、2012 年度は2.2%、2013年度は1.7%というのが我々の成長率見通しです。』

ということで・・・・・・

『そうしたもとで、物価については、需給ギャップのマイナス幅が次第に縮小し、物価を押し上げる方向に作用していくと考えられます。』

そうなんですかねえ。

『再び数字に即して申し上げると、消費者物価の前年比は、原油価格反落の影響などもあり、当面はゼロ%近傍で推移するとみられますが、やや長い目でみれば、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、2013 年度には0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高いとみています(図表10)。物価を巡る環境という点では、最近は、労働需給が徐々に改善するもとで、賃金も下げ止まってきていますし、中国の賃金上昇等を背景に、以前ほどには安値輸入品の流入は目立っていないことも注目に値します(図表11)。』

と仰せなのですが、そもそも需給ギャップが着実に改善していくという見通しがどうなのよという話なのでございますが、まあその辺に関しては置きが甘いんじゃないですかという所ですな。まあ詳しくは会見でもツッコミがありますので後ほど。

『いずれにせよ、先行きのわが国景気の展開を考えるうえでは、堅調な内需が景気を支えている間に、海外経済が減速局面を脱し、外需が回復していくかどうかが重要なポイントになります。』

で内需と外需に関してですが。

『こうした問題意識から、堅調な内需を支えている要因を改めて整理しますと、第1に、エコカー補助金等の政策効果が挙げられます。第2に、広い意味での震災関連需要があります。(具体例の説明部分割愛)第3に、企業収益の改善を背景とした企業マインドの改善とそれを受けた賃金・所得の下げ止まりが挙げられます。第4に、高齢化対応ビジネスなど、企業が潜在需要の掘り起こしに成功する例が増えてきているようです。第5は、円高による輸出下押し効果と裏腹の要因ですが、実質購買力の高まりです。』

また円高の実質購買力の話をしてらあと思うのですが、確かにそらそうなのですけれども、こんな事を言うと当然ながらこの部分を切り取って「日銀は円高を容認している」と難癖をつけられたり、まあ難癖つけないにせよ「日銀は円高阻止に対する姿勢が強くない」という認識を持たれるだけ損じゃねえかと思うのですよね。

まあ白川総裁におかれましてはこういうのはすべて正確にという事で丁寧に話をしようという事だと思うのですが、金融政策の説明している時もそうなのですけれども、すべて正確に話す事によって自分たちの政策姿勢に疑問を持たれたりして政策効果を自分から下げる必要は無いと思うのですけどね。勿論説明の際に嘘八百のペテンをしろという話では無く、それは言うだけ損という時は沈黙は金というのもアリなのでは無いでしょうか、と今となっては更生不能の時既にお寿司状態ですけど思うのでございまする。

『内需の先行きについては、エコカー補助金の反動などを念頭に置いておく必要はありますが、広い意味での震災関連需要や企業収益・雇用者所得の改善基調、高齢者消費などは、ある程度持続性を持ち得ると考えられます。』


で、外需。

『他方、問題の外需ですが、回復のタイミングも含め、様々な不確実性が存在します。先ほど申し上げたとおり、欧州債務問題は既に世界経済やわが国経済に大きな影響をもたらしており、この点は私どもの経済・物価見通しにも既に織り込んでいるところですが、この問題がさらに深刻化し、国際金融資本市場の動揺、ひいては世界経済の一段の下振れにつながるリスクについては、引き続き、最も強く意識しています。』

『中国経済については、金融緩和などの政策対応の効果もあって、インフラ投資や不動産販売など内需の一部で改善の兆しが見られ始めていますが、欧州向け輸出の弱さが続く中で、減速局面がさらに長引くことがないかどうか、十分な注意が必要です。』

『米国経済についても、緩和的な金融環境等に支えられ、緩やかな回復が続くとみていますが、バランスシート調整が徐々に進みつつあるとはいえなお重石として作用するもとで、財政政策に関する先行き不透明感が強い状態が続いており、その回復力を注視していく必要があります。』

ということですが、先日ネタにしたFOMC議事要旨と比較してちょっとお前さんの見通し楽観に過ぎないかというツッコミは明らかにあると存じます。



・金融政策について

まあ毎度の話をしておりますがね。

『実際に金融緩和を推進していくため、日本銀行では、「資産買入等の基金」と呼ばれる金融資産の買入れプログラムを実施しています。これは、国債をはじめとする幅広い金融資産を市場から買入れることにより、長めの市場金利の低下やリスク・プレミアムの縮小を促すための措置です。』

『日本銀行は、2月と4月にこの基金の枠を相次いで拡充し、来年6月末までに、残高を70兆円程度まで積み上げることとしています。ちなみに、現在の残高は57.8兆円です(図表12)。日本銀行の金融緩和については、金融政策決定会合の都度、この基金の残高目標引き上げの有無に注目が集まりがちですが、現在はさらに12 兆円強の基金の積み上げを行っている途上にあります。このことは言い換えると、金融緩和の効果は今後も間断なく強まっていくということを意味しています。』

という理屈はまあそらそうなのですが、そういう理屈を打ち出すとそもそも買入のアナウンスをしただけでは効果が無いという話になりまして、却ってオペレーションの細かい部分までああだこうだと言われるだけじゃねえのという気がしますし、大体からしてこのロジックで話をすると今度は輪番オペの方にも話が波及してくるような気も。

『強力な金融緩和の波及という観点から、金融機関の貸出金利をみますと、引き続き低下しており、史上最低水準を更新し続けています。こうしたもとで、企業の支払い金利は、収益力に比べて、十分低い水準で推移しています(図表13)。金融機関の貸出態度や資金繰りに関する企業の判断をみましても、足もとは、中小企業を含め、2000 年以降の平均を上回る水準まで改善しています(図表14)。』

まあこの辺は経済団体向けの講演ですので。で、金融緩和の効果ですけれども。

『金融緩和政策の効果はこのように低下した金利が企業の投資・支出の増加につながることを通じて実現するものです。金融緩和政策の狙いのひとつとしてしばしば議論される予想インフレ率の上昇についても、支出の増加が物価の上昇につながることを通じて実現するものであり、出発点はあくまでも金利水準全般の低下です。』

という話をしているのですが、金利水準一本槍で効果の説明をするというのが少々どころかだいぶ他の中銀、つーかFRBが主にという事になりますが、他の人たちの説明との比較で温度差を感じる所でございます。つまりFRBの場合は説明をコロコロと変えてはいますけれども、少なくともLASPに関しては期待インフレ率の上昇とかの話をしておりまして、金利に関しては(最近は名目金利の話が多いですけれども)名目では無くて実質金利の下げという話をするのが通常運転モードだと思うのですが、麿の場合は名目金利の話一本槍ですかそうですかという感じです。

でですな、名目金利一本槍という事はど〜ゆ〜事かと申しますと、当然ながら国内の金利は既に10年で1%割れ水準を延々とやっているというように既に下げ余地が乏しいので、そうなりますと「次の手段は何ですねん???」というツッコミにつながるのですが、名目金利一本槍であることからこういう説明になりますぞなもし。

『緩和的な金融環境は日本経済がデフレから脱却し物価安定のもとでの持続的な成長を実現するうえで、強力な後押しとなるものですが、現在の最大の問題は、そもそも企業が国内での投資に魅力を感じていないことです。』

『実際、上場企業をみると、手元資金の量が有利子負債を上回る実質無借金の上場企業の割合は2000 年代初頭の20%台後半から現在は40%を超える水準にまで上昇しています(図表15)。今必要なことは昨年の本席で詳しく述べたように、外需の取り込みと内需開拓の両面作戦です。そのためには、マクロ的には思い切った規制緩和が必要であり、個々の企業経営レベルでは、差別化戦略を意識したビジネス・モデルの確立だと思います。』

まあこういう所が麿の麿たる所以で、読んでいる方としては「あちゃー」という感じでございまする。いやね、仰ることはそらまあその通りでございますが、そういう言い方をしますと「日銀はこれ以上の金融緩和に対して消極的」という言われ方をする訳でして、少なくともこの話の流れで言うのであれば、この仰る通りの話をする前に「金利は既に低下しているのですが、日銀としてはあらゆる手段で経済を下支える為の施策を工夫しております」とか何とか言えば印象は全然違うのですけどねえと思いますが、まあ麿の本音がそもそもやる気満々モードじゃないからこういう物言いになるという正直者モードなのでしょうけど、まあ困ったもんでございます。

『ちなみに、スイスは過去10 年の間日本以上に自国通貨の為替レートが上昇した国ですが、輸出金額の伸びは日本をはるかに上回っています(図表16)。現在の日本経済が直面する真の課題は成長力の引き上げであり、デフレからの脱却という課題は、上述した幅広い主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しの両方が揃って実現されていくものです。こうした認識のもと、日本銀行では、中央銀行としては異例の措置ですが、「成長基盤強化を支援するための資金供給」という取り組みも行っています。』

ということですが、成長基盤強化の話はまあ良いのですけれども、その前の説明ってこれまた仰る通りかもしれませんけれども、やはり言い訳じみているというか、日銀はこれ以上何をせえちゅうねん的な話の展開に読める(というか麿的にはそうなんでしょうけど)のでございまして、まあ麿節炸裂という感じなのですが、折角色々と異例の資産購入とかしているというのにその辺のアピールは無くて「ゼロ金利下における金融政策の限界」的な話を展開するというのが説明の損得勘定として如何なものかという気がします。


○会見はどう見ても吊し上げです本当にありがとうございました

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1208c.pdf

・円高に対する文句が出まくるの巻とな

いきなり冒頭の質問で吹いた。

『(問) 本年は、地元の財界から「劇薬もやむを得ないのではないか」とか、「メッセージの出し方が弱いのではないか」といった、例年以上に強い発言があったかと思います。どのような印象を持たれましたでしょうか。』

メッセージの出し方に関しては先ほどまであたくしも悪態をついた通りですが(^^)。

『(答) 昨年10 月に当地へ参った時にも、円高についての強い問題意識、あるいは日本銀行の金融政策に対する様々なご要望を頂きました。財界の方々の声が、昨年との比較で本年が一段と強かったとは受け止めていません。』

ほうほう。

『昨年、本年とも、円高についての問題意識が強いということ、それから金融政策について様々な工夫を凝らして欲しいという要望があったと受け止めさせて頂きました。懇談会でご質問に対してお答えしたことの繰り返しになりますが、日本銀行としては、この為替の問題については、常に景気・物価への影響を注意深くみており、そうしたことも踏まえて適切な金融政策運営を心掛けていきたいと思っています。それから、情報発信の仕方についても、これまでも様々な工夫を凝らしてきていますが、これからも努力していきたいと思っています。』

ほうほう。

『(問) 懇談会での意見の中でも、財界の方々から、かなり動き出したという人もいれば、五重苦、六重苦で経営は非常に厳しいという双方の意見がありましたが、今後の関西景気はどうなっていくのかを教えて頂きたいと思います。』

『(答) 関西景気については、持ち直しの動きもみられるものの、足踏み状態が続いていると認識しています。これは、内需が全体として堅調に推移する一方、輸出や生産でやや弱めの動きが続いていることが背景です。この間、懸念された電力事情については、需要者、供給者、双方のご努力や工夫の結果、これまでのところ安定的な状況が続いており、景気の大きな下押し圧力として作用する事態は回避できていると判断しています。関西の景気を全国と比較してみると、全体として改善方向にあることは共通していますが、緩やかに持ち直しつつあると判断している全国との比較では、関西にやや出遅れ感があることは否めません。こうした違いの背景として、2 点指摘できると思います。』

ということですが関西の話の部分は引用割愛します。


・円高に関する質問に対する答えが麿節であるorz

で、その次に更にこの質問。

『(問) 総裁が出席される懇談会の場にも何度か同席させて頂きましたが、本年は例年になく、出席された方の切実な声が大きかったと思います。特に六重苦の中でも、円高ということに関しては、それへの対応について、前例や従来の色々な対応にとどまらないものを望む声が聞かれました。これに対しては、日銀の役割を踏まえた総裁のお答えがあったわけですが、こうした切実な声に対する総裁ご自身の思いを今一度お聞かせ頂けますでしょうか。』

いやあ吊し上げますなあ。

『(答) 円高が輸出関連企業を中心として景気に対して下押し圧力となっているということは、かねてより認識しており、本日のお話を聞いても、私自身の認識と基本的には同じだと感じました。』

はあそうですか(棒)

『円高への対応については、3 つの次元に分けて考えた方が良いと思います。』

ほうほうそれでそれで?

『1 点目は、円相場水準それ自体にどう対応するのかということです。これは、為替介入政策のあり方ですが、懇談会の席上で申し上げた通り、日本政府が適切に対応されていると考えています。』

政府の仕事ですかそうですか・・・・・・・(・ω・)

『2 点目は、円高の影響を受けた経済に対して、どう対応するのかという話です。日本銀行としては、昨年来、円高が景気・物価に与える影響も勘案した上で、金融緩和の強化を行ってきたということです。』

既に対処していますかそうですか・・・・・・・(・ω・)

『3 点目は、現実に円高が発生しているもとで、これをどのように利用していくのかということです。わが国の急速な少子高齢化あるいは人口減少のもとで、市場が拡大していくという意味では、海外市場のウエイトがどうしても大きくなってくるわけです。そうであれば、海外に生産拠点を作っていくことは、企業経営からすると合理的な判断として出てくると思います。その際、円高を使ってM&Aを行っていく、M&Aを行っていく上で円高は1 つのチャンスでもあります。現実に、日本の企業は円高を使ってM&Aに取り組んでいると思います。そういう意味で、円高の対応については、今申し上げた3 つの点を分けて考えていく必要があると思います。』

お前ら頑張って海外進出しろですかそうですか・・・・・・・(・ω・)

ということで、何というかそらまあ麿的には正論の話ですが、それはすなわち「日銀に何でもやれと言われても知らんがな」という話で、そらまあそういう面は多々あるのですけれども、それを中銀総裁が言っちゃあ台無しにも程がある訳で、麿の麿節も大概にした方が良くないかと思うのですけれども、最近ますます麿節パワーが拡大しているようで誠にアレでございます。


・景気認識に関して

2つほど質問があるのですが。そのうち1つだけ引用しておく。

『(問) 先程の質問にも関連しますが、日本銀行は、これまで、展望レポート等で、緩やかな景気回復経路に復する時期を「本年度前半」としていたように思いますが、本日、総裁はその時期には言及されなかったようです。「本年度前半」と言いますと、厳密には来月末ということになりますが、この時期に回復経路に復していくと判断するのはなかなか難しいと総裁もお感じになっているのか。色々と経済指標をみると、輸出もかなり弱いようですし、先程、総裁は「内需の力強さで外需の弱さが相殺されている」とのお話でしたが、それ以上に外需の弱さが目立ってきて、もう相殺できないような、かなり外需が下振れしつつあるのではないかという感じもするのですが、改めて総裁のご認識を聞かせて下さい。』

・・・・・・・・・(;∀;)イイシツモンダナー

『(答) 先立って、本年第2 四半期のGDP成長率の数字が公表されました。この数字をどう評価するかですが、1〜3 月期のGDPが年率で5%を超えるという高い伸び率でしたから、それとの比較では減速ということになりますが、4〜6 月期のGDP成長率の数字自体は、潜在GDP成長率をかなり上回る数字です。これをどういう言葉で表現するのが良いのかということです。いずれにせよ、年前半の成長率自体は、多分、G7の中で一番高いものになったと思います。その意味で、回復ということを成長率でみると、現に緩やかな回復をしているわけですが、私ども自身は、数字の動きも然ることながら、今後、回復、成長率がどういう見通しで、どういうテンポで変化していくのかを注意してみているということです。この点については、また9 月の決定会合でも点検していきたいと思っています。』

激しく煙に巻いている感じですが、そらあーた前年比で言えば震災の反動分があるのだから成長しているように見える筈で、1−3が強くて4−6もまあ良くてG7の中で一番高いとか言われましても、そもそもそのG7であります所の世界経済が強くないから相対感で強いという話で、そう考えると外需がこれから立ち上がって内需の落ちを埋めるという説明には無理があるんじゃないの?と思わせるお答えではございますな。


・西村副総裁の豪州講演に関して

『(問) 2 つあります。今週初めに西村副総裁がシドニーでの講演で人口動態とバブルの生成・崩壊についての一般論的な文脈の中で、中国について、“danger zone”と指摘されていたのですが、中国経済のバブルの破裂の時期が近いという認識が行内で結構共有されていることなのか、一般論として副総裁が示唆されただけなのか、その点、中国経済の見方について確認させて下さい。(2点目割愛)』

『(答) 第1 問の中国経済に関するご質問ですが、西村副総裁の講演自体については、日本銀行という組織としての見解ではありません。会議の性格上、リサーチのコンファレンスですから、西村副総裁がご自身の考え方を講演という形で表現されたことであると思います。』

うーむ・・・・・・・

でまあ後何故か知らんが中国経済について延々と長広舌をふるっているので、それを一応引用しておきましょう。

『中国経済自体について、どうみているかということについてお答えします。成長ペースが鈍化した状態が続いています。こうした減速には、欧州向け輸出の減速に加え、これまでの金融引き締めや不動産取引抑制策から民間不動産投資等が減速してきたことが影響しています。この影響が製造業の生産にも波及しています。』

『先行きについては、目先は成長テンポが鈍化した状態が続くとみられますけれども、その後は、中国経済の成長ペースは徐々に高まっていく可能性が高いと考えられます。金融緩和やインフラ投資の前倒しなど中国当局による政策対応は強化されており、その効果が次第に顕在化してくると見込まれます。実際最近では、インフラ投資の増加や不動産販売の持ち直しなど、一部では改善の兆しも見受けられています。また良好な雇用・所得環境は維持されており、最近の物価上昇率低下の影響も相俟って消費は堅調な伸びが続くとみられます。』

『もっとも、先行きの中国経済については、不確実な面が残っているのは事実です。第1 の要因は、欧州債務問題の波及が強まるリスクです。中国の輸出の約2 割は欧州向けであり、欧州債務問題が深刻化すれば、中国経済にも影響が及ぶことになります。第2 の要因は、中国の高度成長から安定成長への移行が円滑に行われていくかという、もう少し長い目でみた問題意識です。どの国の経済も、ずっと高度成長を続けることはできません。農村部から都市部への人口の移動・労働力の移動ということがある程度の段階に達すると、追加的な成長力は下がってくるわけです。』

『日本も、かつて高度成長が終わる局面でそういう段階を迎えたわけですが、中国の場合、農村から都市部への人口移動という調整と、生産年齢人口が、もう数年して減少に転じるという2 つの調整が、割と短い時間の中で起きる中で、うまく高度成長から中程度の成長にソフト・ランディングできるかが課題になります。中国当局は、日本のかつての経験も含めて様々な研究を行っていますが、私としては、中国の当局が適切な政策対応をし、高度成長から中程度の安定的な成長にうまく移行していくことを強く願っています。』

とまあそういう事で、西村副総裁の豪州の講演は見事にスルーしているのですが、実際に西村副総裁が中国の不動産バブルに懸念を示す中で総裁はその点全くのスルーとか何という温度差という感じではございます。

という訳で本日は麿節鑑賞会で終了してしまいましたな(汗)。




2012/08/27

お題「FOMC議事要旨ネタの追補である」

ジャクソンホールと言えば逆さ絵おじさんにドラギの大爆笑だけではなくて我らが麿様も講演だか何だかをする筈ですので少しは注目してみましょう、というあたくしもスルーしてますけど(^^)。

○FOMC議事要旨ネタ追補

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120801.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120801.pd

木曜の朝に寝起きシリーズでピンポイント爆撃をしましたが、寝起きの割には精密爆撃が出来ていたようで誠に結構でしたが(自画自賛^^)、案の定補足する所もあるので追補である。

といっても前半の執行部云々では無くて『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の方の追補詳細という感じですのでよろしゅうに。まずはスルーしていた経済のポイントに関する論点から。

・労働市場と生産市場のスラックに関して

同部分の第3パラグラフ以降が幾つかの経済に関するポイントについての説明。

『Meeting participants again exchanged views on the extent of slack in labor and product markets. A number of participants expressed the view that structural changes in the labor market were not sufficient to explain the high level of unemployment. Those participants saw substantial slack in resource utilization and hence continued to judge that inflation was likely to remain subdued over the medium term as the economy continued to recover.』

ということで、経済のスラックに関する考察ですけれども、多くの(A number of)参加者は労働市場の構造的な変化は現在の高い失業を説明するのに十分では無く、リソースの活用状況にかなりのスラックがある事によって、経済の回復が続く中においてもインフレが抑制されている事の要因と判断されるという指摘。

『However, several other participants interpreted the moderate pace of the recovery as pointing to a more substantial markdown in the trajectory of potential output. In particular, a couple of participants noted that they would have expected inflation to have fallen more in recent years if the output gap had been as substantial as some measures suggested.』

これに対して、他の数名(several other)の参加者は経済の回復ペースが遅い事には潜在生産がかなり下がっている事を示すのではないかと指摘。特に2名(a couple of)の参加者は生産ギャップが幾つかの推計方法によって示されるように大きい場合、期待インフレはより下がるのではないかと指摘しています。

『One participant posited that the sharp decline in net worth and reduced credit availability in recent years not only weighed on aggregate demand, but also reduced aggregate supply by hampering new business formation and product innovation; another participant cited evidence that structural unemployment was elevated as a result of mismatches between the skills demanded by employers and those of the long-duration unemployed.』

1名の参加者は、ここ数年のバランスシートの悪化やクレジットアベイラビリティーの悪化は需要サイドだけでは無く供給サイドにも悪影響を与えるという指摘をして、他の1名の参加者は雇用のミスマッチの問題や、長期失業者の問題などは、労働市場の構造的な問題を意味しているという指摘をしています。

つーことでこのパラグラフですけれども、よーするにインフレと失業に関して、構造的な問題なのか循環的な問題なのかという所のウェイト付けが変わってくると、金融政策をどの程度拡張的にすべきかという論点に繋がってくる話でして、具体的検討状況の最初にこの話が来たという事で、まー追加金融緩和に対してどういうスタンスなのかという意見がそれなりに差があるってのが背景にあるからこの話が最初に書かれているのかなあとか思ったりして。


・家計と住宅

第4パラグラフは家計と住宅。

『In discussing developments in the household sector, many participants noted the recent deceleration in overall consumer spending, although a couple cited new autos and tourism as areas of relative strength. Participants saw several factors as likely contributing to slower consumer spending, including the weakness in earned income and a high level of uncertainty among households about the economic outlook. Several pointed out that while households had made considerable progress in reducing their debt and rebuilding their savings, the deleveraging process was still ongoing, the level of housing debt remained high, and a significant number of mortgage borrowers continued to be underwater on their loans.』

とまあここまでが家計部門の話ですが、前提として多くの(many)参加者が指摘するのは足元の消費支出の減速。でまあ2名は新車や旅行などが強いという指摘をしてますな。で、消費支出の先行きの阻害要因としては、家計のバランスシート調整、モーゲージのアンダーウォーター問題を複数名の参加者が指摘していますの。

『Home sales and construction were generally viewed as gradually improving, supported in part by historically low mortgage interest rates. Many participants reported that house prices in their Districts were rising or had bottomed out, and several noted that their contacts saw signs of progress in reducing the overhang of unsold properties. However, it was noted that the reduction in inventories should be viewed cautiously because owners who are underwater on their mortgages may be withholding their homes from the market, implying a substantial "shadow" inventory.』

でまあ住宅に関しては「generally viewed as gradually improving」ということで、その要因の一部として「historically low mortgage interest rates」というのを挙げておりまして、まあ(今日はネタにしませんけど)地区連銀総裁などの講演などでも最近はすっかり金融緩和政策の効果として「金利」が前面に打ち出されるようになっておりまして、そういう点からしますと「長期金利を低位安定させる」というのが追加金融緩和政策におけるキモになる筈だなあと思われる次第。

とは言いましても、たとえば先般引用したハト派最右翼のローゼングレン総裁のCNBCインタビューではQEの効果として(ちなみに地区連銀総裁とかはQEという言い方をする事がありますが、執行部はLSAPと言いますので念のため)「資産価格の上昇」というのを挙げていますし、まあこちらの議論の中でも「家計バランスシートの改善」という話をしておりまして、資産価格の上昇についてもまあ注目する訳なのですが、そもそも論として資産価格の上昇と長期金利の低位安定というのは本質的にはサステイナブルに両立するものではない(一時的にはありますし、低位というのをどの程度の数字で見るのかにもよりますけれども)のでして、そんな事を考えますと米国の金融緩和に関する論点というか波及効果に関する話ってのも結構無理矢理な所があって、ロジック的に破綻している所があります罠とゆー所でして、だからこそ逆さ絵のおじさんは色々と手を変え品を変えて目くらましをしたりロジックを適当に都合のいいものを出したりしながら誤魔化すの巻となっているのですな。

住宅市場の話に戻しますと、多く(Many)の地区連銀の管内で住宅価格の反発や底打ちが見られており、複数(several)では住宅在庫の減少の兆しが見えているという指摘をしていてまあそこまでは明るい話ですが、市場回復と共に水面下にあった物件が復活する「影の在庫」が存在するので注意しないといけませんね、とまあ先行きは警戒的。


・企業セクターについて

その次のパラグラフ。

『Regarding the business sector, many participants reported that, with the exception of motor vehicle production, manufacturing activity in their Districts was slow or had declined in recent months. Nonetheless, forward-looking surveys of orders and manufacturing production in a couple of Districts were more positive. Energy-related activity continued to expand, and investment projects in that sector were reported to be moving forward.』

工業部門の活動は自動車を除き概ね低下しているものの、2地区連銀では先行きのサーベイにポジティブな兆しがみられると。で、エネルギー関連は強いとな。

『However, contacts in several Districts indicated that export demand had weakened as a result of the slowdown in economic activity in Europe; Asia; and some emerging market countries, including China.』

複数(several)の地区連銀では欧州とアジアや中国を含む新興国などの経済の落ちによって海外需要が落ちているとの指摘。

『More generally, some participants reported that their business contacts regarded the economic outlook to be highly uncertain, in part due to unresolved fiscal and regulatory matters. Although several participants noted that the uncertainty had not led businesses in their Districts to reduce payrolls or cut back spending, others cited reports of shortfalls from business plans that could lead to cost-cutting, of restructuring to position firms for leaner operations, or even of postponed investment and hiring.』

でまあここの部分がオモロスなのですが、米国のフィスカルクリフや規制改革の遅れの影響が大きな不確実性で企業行動がこれによって防衛的になっているという話はあるのですが、それだけでは必ずしもないのではないかという指摘が複数(several)から出ていまして、つまりまあフィスカルクリフなどの問題だけでは無い問題があるのでは、ってえ指摘なんでしょうなあと思うのでありました。

『Two participants provided an update on the situation in the agricultural sector in light of the drought in the Midwest: With crop yields projected to be down markedly and prices rising, livestock producers appeared likely to suffer losses as a result of higher input costs while crop producers would need to rely on higher prices and crop insurance to stabilize their income.』

干ばつの影響による農産物価格上昇の話ですな。価格上昇で農産品仕入れ価格の上昇が悪影響という話です罠。


・インフレについて

『The incoming information on inflation over the intermeeting period was largely in line with participants' expectations. Consumer prices had decelerated as a result of the pass-through of lower crude oil costs to retail prices of gasoline and fuel oil. Crude oil prices had turned up again more recently, but one participant noted that global inventories of oil were elevated and, with world demand easing, prices should be restrained going forward. Participants acknowledged that the drought would likely result in a temporary run-up in consumer food prices later this year.』

インフレについては基本的に従来の見方通りで推移。原油価格の推移と農産品価格の推移の影響の話をしていますが、基本的には持続的かつ大きな影響となる物では無いという認識。

『Nonetheless, inflation was expected to remain subdued, on balance, over coming quarters. In explaining that outlook, participants cited the lack of upward pressure from labor costs and prices of imported commodities as well as the stability of inflation expectations. 』

でまあ見通しも変わらずで、賃金の上昇圧力の弱さと、輸入物価の落ち着きによってインフレ上昇プレッシャーは低下しているという認識。

『A couple of participants referred to information from business contacts suggesting that inflation was unlikely to decline further, and a few expressed concerns that maintaining a highly accommodative stance of monetary policy for an extended period could erode the stability of inflation expectations over time and hence posed upside risks to the inflation outlook. 』

2名(A couple of)の参加者は企業などからの見解ではインフレはこれ以上そんなに低下しないという指摘をしておりまして、また少数名(a few)の参加者は超金融緩和の長期化はインフレ期待の不安定化に繋がるという毎度の指摘を。


・金融市場に関して

その次である。

『Financial markets remained sensitive to ongoing developments related to the sovereign debt and banking situation in the euro area, and participants continued to view the possibility of an intensification of strains in global financial markets as a significant downside risk to the domestic economic outlook. Several participants indicated that recent trends in euro-area equity indexes and sovereign debt yields had not been encouraging, and some noted that the uncertainty prevailing in global financial markets was showing through in a cautious posture of investors.』

ということで欧州問題の金融市場への影響は相変わらず大きく懸念という感じで、どこぞの中央銀行のように「とはいってもファンディング市場が安定しているので以前よりマシ」というような話が無いのがチャーミング。

『Nonetheless, participants generally agreed that conditions in domestic credit markets remained more favorable than they were a year ago. One participant pointed out that credit risk spreads--while still above pre-recession norms--may have been boosted by safe-haven demands for Treasury securities and indicated that broader financial market conditions seemed reasonably accommodative. Banks were reported to be seeing an increase in their residential mortgage business along with a continued rise in C&I lending, especially to large firms; consumer credit was also increasing.』

一方、国内の金融環境に関しては危機以前ほどではないものの、基本的にはポジティブとなっているという話をしていて、銀行が貸出の姿勢をやや拡大気味なのも結構な話という指摘ですな、うんうん。


・金融政策決定に関連して

『Committee Policy Action』をかなりスルーしていたのでその辺から少々。

例の文言があった第2パラグラフですけれどもね。

『The Committee had provided additional accommodation at its previous meeting by announcing the continuation of the maturity extension program through the end of the year, and more time was seen as necessary to evaluate the effects of that decision. Nonetheless, many members expected that at the end of 2014, the unemployment rate would still be well above their estimates of its longer-term normal rate and that inflation would be at or below the Committee's longer-run objective of 2 percent.』

前回追加は打ち込んだものの、先行き見通しは引き続き失業が高止まりという話ですが。

『A number of them indicated that additional accommodation could help foster a more rapid improvement in labor market conditions in an environment in which price pressures were likely to be subdued. Many members judged that additional monetary accommodation would likely be warranted fairly soon unless incoming information pointed to a substantial and sustainable strengthening in the pace of the economic recovery.』

で、これが木曜に引用した所(後半ね)ですが、上記の流れで「先行きの顕著な改善が見込めないのであれば追加緩和が正当化される」という話になっていますので、まあ普通に追加金融緩和を実施する気満々という話ではございますわな。

『Several members noted the benefits of accumulating further information that could help clarify the contours of the outlook for economic activity and inflation as well as the need for further policy action.』

とはいえ、複数(Several)の委員(ここはparticipantsではなくてmembersなので投票権のある人を示します)は追加の経済情報によって景気見通しの輪郭をより明確にすることができた所で追加金融緩和をするのが吉と指摘していますので、まあ結局今回は追加の打ち込みが無かったという話ですな。

『One member judged that additional accommodation would likely not be effective in improving the economic outlook and viewed the potential costs associated with such action as unacceptably high.』

どう見てもラッカー総裁です本当にありがとうございました。

『At the conclusion of the discussion, members agreed that they would closely monitor economic and financial developments and carefully weigh the potential benefits and costs of various tools in assessing whether additional policy action would be warranted.』

つーことで今後のデータ次第ということですが・・・・・・

その次のパラグラフは声明文とかディレクションをどうするかという話です。

『With respect to the statement to be released following the meeting, members agreed that it should acknowledge the deceleration in economic activity, the small gains in employment, and the slowing in inflation reflected in the economic data over the intermeeting period. Because most saw no significant changes in the medium-run outlook, they agreed to continue to indicate that the Committee anticipates a very gradual pickup in economic activity over time and a slow decline in unemployment, with inflation at or below the rate that it judges most consistent with its dual mandate.』

声明文における経済見通しは大きく変化させる必要なし(というか変化してなかった)という話と、足元の経済認識を引き下げる(そうなっていました)という話ですの。

『Many members expressed support for extending the Committee's forward guidance, but they agreed to defer a decision on this matter until the September meeting in order to consider such an adjustment in the context of updates to participants' individual economic projections and the Committee's further consideration of its policy options.』

ということで、今回フォワードガイダンスの延長を多く(Many)の委員が賛同してものの、9月にSEPが出るのでその時に出した方がスマートでしょという話になったという事でございますので、まあ9月にフォワードガイダンス延長なり強化なりはダンディールと読まれますわな。

『The statement also reiterated the Committee's intention to extend the average maturity of its securities holdings as announced in June.』

まあこれはどうでもよい。

『Consistent with the concerns expressed by many members about the slow pace of the economic recovery, the downside risks to economic growth, and the considerable slack in resource utilization, the Committee decided that the statement should conclude by indicating that it will provide additional accommodation as needed to promote a stronger economic recovery and sustained improvement in labor market conditions in a context of price stability.』

ということで、声明文の中で「必要ならば追加緩和」という文言が入ったのは多く(many)の委員が先行きのダウンサイドリスクおよび資源の大きなスラックに対応して入れるべきという話をしたようですな。


・ラッカー先生の新手の反対理由

最早様式美となっているお馴染みラッカー総裁の反対理由。

『Mr. Lacker dissented because he did not believe that exceptionally low levels for the federal funds rate were likely to be warranted for the length of time specified in the Committee's statement. In his view, significant uncertainty regarding the evolution of economic conditions over the next few years made the future path of interest rates difficult to forecast, and the Committee's statement implied more confidence on this score than justified by the current outlook.』

フォワードガイダンスに関して「こんなに先行きの不透明感が高い状況において、2014年遅くまで超緩和を継続するのが適切と考える(キリッ)とか断言できるかヴォケ」という理由によって反対という事で、これは中々斬新な反対理由。

ちなみに前々回(前回はツイストオペお代わりの反対なので理由がちと別)はこうなっていました。

『Mr. Lacker dissented because he did not believe that economic conditions were likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate through late 2014. In his view, an increase in the federal funds rate was likely to be necessary by mid-2013 to prevent the emergence of inflationary pressures.』(4月のラッカー先生)

前回は2013年半ばの金融正常化が必要、という話でしたのですが今回の理由は何というかまあ言いたいことは判るけど前回(正確には前々回)と比較すると何かワロタという感じです。


・よく見たらコミュニケーションポリシーの話が最後にありました

木曜に引用した時には「コミュニケーションポリシーの話が無いですな」とか申し上げましたが、最後の所にございまして、まあ内容的にはFOMCの先行き見通しを出す際に「可能性のある金融政策の仮定」というのを示すという話のようですが、詳しくは次回のFOMCのSEPに反映される模様です。『Consensus Forecast Experiment』から引用。

『In light of the discussion at the previous FOMC meeting, the subcommittee on communications developed an initial experimental exercise intended to shed light on the feasibility and desirability of constructing an FOMC consensus forecast. At this meeting, participants discussed various aspects of the exercise, such as the possible monetary policy assumptions on which to condition an FOMC consensus forecast, the measurement of the degree of uncertainty surrounding each of the projected variables in the forecast, and the potential for communications benefits. In conclusion, participants generally expressed support for a second exercise to be undertaken in conjunction with the September FOMC meeting.』

次回までの宿題のようですが、この感じですと次回のSEPに反映されるのではないでしょうかね。

#ということでだいぶ趣味のコーナーでどうもすいません。




2012/08/24

お題「オペ雑談と米国雑談/豪州での西村副総裁講演から」

つまり何ですな、あたくしの頭の中が整理整頓されていないので雑談と称してああでもないこうでもないと書く次第(汗)

○オペ関連雑談

ネタにしてなかった水曜日のオペの話からまず。

オファー(22日水曜日)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120822.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 5,000 2012年8月24日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 2,000 2012年8月24日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年8月24日 2012年11月22日

結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120822.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 5,028 5,006 0.000 0.000 99.6
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 5,056 2,010 0.000 0.000 39.8
共通担保資金供給(資産買入等基金)(8月24日スタート分) 15,385 8,001 52.0

ということで、水曜は基金国債買入が実施されましたが、めでたく両方とも札が割れずに予定量の7000億円の購入が出来ましたという結果に。まあ直近ではこの前夜にドイツ2年国債の入札があって終わってみたらレートがプラスになっていた(と思ったら昨日の夕方見たら2年国債って0%挟みで上行ったり下行ったりしとりましたな)ということで、ECBの預金ファシリティレートゼロ攻撃以降にマイナスが延々と続いたドイツ国債の金利とかがノーマルな水準になってくれると、海外絡みの買い意欲が落ちるので札はやや入りやすくなるかなというような市場環境の話もありますし、さらには時期的に決算の益出しでの売り(というか入替)ニーズもありますので、変に場で売るよりは日銀の買入に突っ込んだ方が市場インパクト無く売却できるぞなというようなニーズもあるでしょうな。

とまあそんな需給環境なので札は確かに入ったには入ったのですけれども、0.10%だとビットサイドという状態は別に変っている訳でも無く、市場環境次第ではまた札割れのリスクもありますぞなもしという状態は変わらないのでございますから、買入ペースを少し早めにして年末のちょっと前に目標行くようにしておくとか、札が入りやすくなる工夫(要するに応札下限金利の撤廃)とかはしておいた方が吉のような気がするんですけどね〜。

何かね、日銀の毎度おなじみの間の悪さというか様式美の世界から類推致しますと、今回札がめでたく入ったのですっかり安心してたら年末近くなって市場環境が変わって札割れ連発→でも次の決定会合まで応札下限金利の撤廃ができないお!となるとかいうようなお洒落な展開になりそうですので、その辺をご考慮の上買入を進めて頂ければと存じます(大体からしてその後も買入しないといけないし)。


・とか言ってるうちに固定金利オペの応札が減るでござるの巻

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120823.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年8月27日 2012年11月28日

結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120823.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(8月27日スタート分) 8,690 8,005 92.1

ということで3か月物の固定金利オペが2日連続でオファーになったのですが、応札が足元急減少でござるの巻。

資金需給的には年金の定時払いが15日に入りまして財政要因で3兆円弱払い超になって、当座預金残高が38兆円位まで拡大(木曜に財政が3兆円揚げ超で今日の当座預金残高は36.8兆円とかになると思います)したりして、GC市場的に資金が余り気味で資金運用ニーズの方が強いという状態になっていますので、固定金利オペの応札が減って来た感じではございます。

ただまあ何ですな、固定金利オペ自体が残高減っていないというのもありまして、あたくしの手計算ベースですろ固定金利オペのオペ残ってまだ31.3兆円位ございまして、7月の決定化合以降殆ど残高が減っていない(7月16日とかだと30.6兆円だったので却って増えてたりする)のでございまして、こちらは25兆円に減らすというのが逆に進捗していないという謎展開。

何で減ってないのという話ですが、時々新規で3か月のオペが入っていたのに加えて、20日にオファーされた6か月オペは前回札割れした(初めて札割れになった2月16日オファーのオペで残高が7010億円だった)オペの折り返しを普通に打ってきたというような格好(まあ今回はより札割れしたので折り返しで残高減りましたが)ですので、今後札割れオペが普通に8000億円でオファーされて、まあ6か月は札割れするんでしょうけれども、何か思ったよりも固定オペの残高を落としてこないのも面白いですな。

まあ目標以上に残高積む分には誰も怒りはしない話ですから固定金利オペの残高が減らなくてもよかばいという考え方もありますのでそれはそれで良いのかもしれませんが、一応資金需給を元にして短期市場の需給を考えて、価格形成どうなるのとか考える側と致しましては、別に全部が全部100%予見可能である必要も無いのですけれども、何か減らすと言ってる固定金利オペは減らないし、国債買入の方はペース的に間に合うのかよ(確かに札割れしなければ無問題なペースなのですが)という感じで淡々と進んでいるのも何か微妙にずっこけ感はするんだよなあとか思うのであります。

いやね、それこそ年末になって急に調整して固定オペのロールが来なくなるとか言う風になっちゃうとこれまた攪乱要因(その分を通常の金利入札オペでリプレースという話になるのですが)になるので、着地前に急に調整が入らないように願いたい所ではございますが、まあ確かに水物相手なのでオペ打つ方も大変だなあと同情を禁じ得ない部分はございます、と言いながらああだこうだといちゃもん付けているのですけどね(^^)。


○米国の「追加緩和観測」の定義がよく判らない件について(雑談)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M985QN6S972A01.html
米国債:10年債は5営業日続伸、米追加緩和観測が強まる

『8月23日(ブルームバーグ):23日の米国債は上昇。10年債は5日続伸。朝方発表された失業保険申請件数が増加し、米金融当局による追加緩和観測が強まった。』(上記URLより)

とのことでございますが、記事のコメントを拝読いたしますと・・・・・

『キャンター・フィッツジェラルドの金利責任者、ブライアン・エドモンズ氏(ニューヨーク在勤)は、「議事録は信じられないほどハト派的だった」と述べ、「議事録でトーンが決まった。市場は量的緩和第3弾の実施は決定しているかのように受け止めている」と続けた。』(上記URLより)

とか何とか仰せなのでございますが、あの議事要旨見ると「追加金融緩和」はまあ近々実施するでしょうなあとは思うのですけれども、「新たな大規模資産購入プログラム」については色々とケチがついている(効果がホンマにあるんかいなとかデメリットがあるじゃろとか)訳でして、あの文面見てどこがどうQE3がダンディール扱いになるのか判らんですけど、どうもベンダーのコメントとか見ていると「追加金融緩和期待」がQE3の期待なのか、それ以外の目くらまし追加緩和期待を意味しているのかがワカランチ会長ではございまする。

まあ何ですな、とりあえず出尽くし感を出さないようにする、ってえのと、下手に長期金利を上げないようにする、ってえのは逆さ絵のおじさんが意識していると思われますので、そこらのコントロールは何とか努力するとは思うのですけれども、どうも昨日のFOMC議事要旨でQE3期待が盛り上がってしまったという事になりますと、期待のコントロールが段々難しくなってきているのかなあとか思うのであります。


○西村副総裁講演から少々

先日こんなのが出てましたぞな。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/ko120821a.htm/
How to detect and respond to property bubbles: Challenges for policy-makers
Remarks at the Reserve Bank of Australia-BIS Research Conference "Property Markets and Financial Stability" in Sydney

Kiyohiko G. Nishimura
Deputy Governor of the Bank of Japan
August 21, 2012

んでもって本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko120821a1.pdf

本文の構成ですが、小見出しを見ますと・・・・

1. How to Detect Malign Bubbles
2. How to Respond to a Malign Bubble

ということで、不適切なバブルの発生をどう抑制するかというお題と、発生したらどう対処するかというお題なのですが、この1番の所を拝読いたしますと・・・・・・

『Let me start with the first question: How can we detect malign bubbles? Here we should be aware that not all property bubbles lead to financial crises, and not all financial crises are preceded by property bubbles. International panel studies have shown that two-thirds of 46 systemic banking crises were preceded by house price boom-bust patterns, while 35 out of 51 house price-bust episodes were followed by a crisis. So there are both malign bubbles and benign ones.』

過去世界で起きた46回の金融システム危機のうち、その3分の2が住宅価格のバブル発生とその崩壊の後に起こったとはほほうという話ですが。

『Then, what leads to a malign bubble? Looking back at past experience of malign bubbles, we find another factor which has not been touched upon by the presentations so far: the demographic transition from a “population dividend” to the “burden of an ageing population.”』

どうも最近日銀的にはこの「人口動態」の話がお好きのようですが、これはプレゼンを上手くやらないと「人口動態の問題というのを口実に日銀は逃げを打っている」と言われるネタになるので要注意という所ですな。いやまあ仰ることはその通りであるにせよ。

『Let us look at the charts comparing the Japanese property bubble of the 1990s, the US house price bubble of the 2000s, and the possible Chinese property bubble. In these three charts, I juxtapose, first, the ratio of working-age population to the rest (the inverse dependency ratio), second, the real property price index, and third, total loans in real terms.』

>the possible Chinese property bubble
>the possible Chinese property bubble
>the possible Chinese property bubble

ではどういう事かという話ですが、過去の日米を比較して足元の中国の話になるのですな。

で、日本の場合。

『In Japan (Chart 1), we have two peaks in the working-age population ratio,accompanied by two peaks in the real property price index, which is the real land price index. Of these two, the second peak, around 1991, happened to be a malign bubble which triggered a subsequent long period of stagnation. Then, what is the difference between the two? The volume of total loans in real terms may suggest an answer. Real loans were increasing at the time of the first peak, but their level was not as high as during the second peak.』

これは図表も比較してみると面白いですが、日本の2度の不動産ブーム(列島改造と80年代後半のバブル)を比較して、前者ではローンの拡大が比較的穏健で、後者ではローンの拡大がとんでもないことになっていますという話っすな。

米国の場合。

『A remarkably similar picture is found in the United States (Chart 2). We have two peaks in the working-age population ratio, though not as pronounced as in Japan. And the real property price index, which is the real house price index, seems to have two peaks, roughly coinciding with the demographic change. Again, the second peak triggered the financial crisis of 2008, though the first peak coincided with the S&L problem, which had a far less severe effect on the economy. Adding the real total loans to the chart, we find a quite similar pattern to the Japanese case. The level of the real total loans in the first peak was high, but far lower than in the second peak.』

これまた日本と同じ話なのですが、労働人口のピークが2回来て、それに若干遅行した形で不動産ブームが起きるのですが、2度目の時にはローンがどどーんと伸びたので不動産ブームが大きなバブルになったという話なのはチャートを見ると判ります。

でもって中国の場合。

『The last chart shows the figures for China (Chart 3). China has not yet peaked with respect to working-age population ratio, but it is close. The property price index was taken from the web site of a Shanghai index provider, who unfortunately and unexpectedly shut down their site and vanished about a year ago (June 2011). I tentatively use this index since it has a longer span than other indexes, although I am not entirely sure how it was constructed. The chart shows a clear upsurge in property prices up to 2010. Again the real total loan also shows a tremendous increase along with the working-age population ratio and the property price index.』

つーことで、中国の場合労働人口ピークはまだ来ていないけれども、価格の上昇とローンの上昇が顕著であるという指摘ですな。

『What lessons can we learn from this rather cursory examination of the recent history of two advanced economies and the present situation of one emerging economy? It is clear that not every bubble-bust episode leads to a financial crisis. However, if a demographic change, a property price bubble, and a steep increase in loans coincide, then a financial crisis seems more likely. And China is now entering the “danger zone.”』

>China is now entering the “danger zone.”
>China is now entering the “danger zone.”
>China is now entering the “danger zone.”

・・・・・・・・・ほほうという感じですが、まあ人の心配してる場合かというツッコミも有ろうかと思いますが、中国コケると色々と困りますので気にするのは重要(しかもこの講演やっているのって豪州なので猶更^^)ではありますもんね。

で、この後のお題が「バブルにどう対処するか」的なお話ですからして、大体どういう話が出るのかというのが想像付くかと思いますが、時間の関係上本日はここで終了、というか続きはやるかもしれないけどネタ切れの時だけだと思います^^;





2012/08/23

お題「問題は追加緩和で何をするかですかね」

ということで寝起きでFOMC議事要旨だがこんなの全部読めません。

#モーサテのゲストのおにいさん、元日銀職員なのに「議事録」というとは如何なものかと思ったらどうも前の人に釣られただけで、本人のペースで喋ると「議事要旨」という所がチャーミング^^

更にどうでも良いですが、公共放送で早速「穀物価格が上昇して大変な事になっています色々な物が値上がりします大変です」とインフレフォビア煽りまくりのネタを「ここに注目」とかいうコーナーでやってますが、総合CPIへの寄与からしたら屁程度の話でこんなに大騒ぎする国に本当にデフレ脱却できるのかよと毎度思うのでありました。日銀ガーしか言わない皆様におかれましてはこういうインフレフォビア煽り報道の批判もして欲しいもんですなあ。

なお、本日は基金国債買入が札割れしなかったぞなもしとか、その背景にドイツの2年国債金利がやっとプラス圏になってきましたねあっはっはという話とかのネタもあるのですが、FOMCネタをやってたら見事に時間が無くなってしまったので誠に申し訳ございませんがスルーで勘弁m(__)m


○適当にあたりをつけてFOMC議事要旨ピンポイント爆撃

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120801.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120801.pdf

・今回はコミュニケーションがどうのこうのの話は無し

前回の議事要旨では冒頭に『Discussion of Communications regarding Economic Projections』というのがあって、SEPにおけるコミュニケーション方法をどうしましょ的な話があったのですが、今回はヌルーという事は前回ある程度話がまとまったのかねという所ですな。まあどうでも良いですが。


で、この後の政策云々の話の事を考えますと、経済状況に関する連銀スタッフの報告内容とか先行き見通しとかを熟読しておくのが良いのですけれども、日々熱帯夜の寝起きにつき『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から先を全力斜め読み。

・景気の現状認識は引き下げ

んでまあ『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の最初のパラグラフから。

『In their discussion of the economic situation and the outlook, meeting participants agreed that the information received since the Committee met in June suggested that economic activity had decelerated in recent months to a slower pace than they had anticipated. Although business investment had continued to advance, consumer spending had slowed considerably since earlier in the year. Conditions in the housing sector appeared to have improved somewhat, but from a very low level. Indicators of manufacturing activity had softened. Recent monthly gains in payroll employment had continued to be small, and the unemployment rate in June remained at an elevated level. Consumer price inflation had been low in recent months, as declines in the costs of crude oil were passed through to retail energy prices. Longer-term inflation expectations had remained stable.』

声明文の話と同じですが、ここ数か月の経済活動が想定よりも減速しているという全体感ね。詳しい中身は華麗にスルー。


・景気の見通し

『Regarding the economic outlook, most participants agreed that economic growth was likely to remain moderate over coming quarters and then pick up gradually.』

これまた声明文と同じですが、見通しに関しては「今後徐々に引きあがる」というのは同じなのですが、この先が声明文では示されていない色々な意見になりますの。

『However, some participants indicated that they had lowered their near-term forecasts for economic growth in light of the weaker-than-expected increases in consumer spending and employment in recent months. In addition, some participants expressed concern about the persistent headwinds restraining the pace of the recovery, including the weak housing sector, still-tight borrowing conditions for some households and firms, and fiscal restraint at all levels of government.』

数名(some)の参加者は近いタームの先行き見通しについて引き下げています。その背景には消費支出や雇用のここ数か月の伸びが予想よりも弱いことにあります。更に数名(some)の参加者は景気回復のペースを阻害する持続的な向かい風として、弱い住宅セクター、一部の家計や企業に対して依然としてタイトな借入環境、政府などの多くの公的機関による財政制約を挙げています。

『Many participants judged that a high level of uncertainty about possible spillovers from the fiscal and banking strains in the euro area and about the outlook for U.S. fiscal or regulatory policies was holding back household and business spending. And they saw the possibilities of an intensification of strains in the euro area and of a sharper-than-anticipated U.S. fiscal consolidation as significant downside risks to the economic outlook.』

これもいつもの話ですが、不確実性に関しては欧州債務問題のスピルオーバーと、米国のフィスカルクリフの問題ですよという話で、これはまあ多くの参加者が示す見解ということでございますな。

『Although participants generally agreed that improvements in recent years in the capital and liquidity of financial institutions and in the strength of household and business balance sheets have increased the resilience of the economy, some were concerned that at its current pace, the recovery was still vulnerable to adverse shocks.』

バランスシート調整問題の話で、参加者は概ねバランスシート調整が進捗しているとの見方で一致しているものの、数名(some)はこのペースでのバランスシート調整ではショックに対して脆弱な状態が続くと指摘と。

『Given participants' forecasts of economic activity, they generally anticipated that the unemployment rate would decline only slowly toward levels that participants judge to be consistent with the Committee's mandate.』

失業率に関する見通しは声明文と一緒で特段のおまけなし。

『Participants' assessments of the outlook for inflation were largely unchanged from those reported in June. Smoothing through the effects of fluctuations in food and energy prices, participants anticipated that inflation over the medium term would remain at or below the Committee's 2 percent longer-run objective.』

物価に関する見通しもまあ声明文と一緒ですな。

で、この後は労働市場と生産のスラック、住宅市場、企業部門、インフレ、金融市場の緊張、というお題で議論が5パラグラフ程話が続くのですが、その辺りは後日読むのでパス。


・追加緩和のツール検討キタコレ

んでもってその辺の話の次が追加緩和ツールの話でして、今回追加緩和ツールがどうのこうのという話が3パラグラフも続くという中々アピール度の高い議事要旨になっておりますのが市場が「おお〜」と思ったであろう(あたくしもおお〜と思いましたもん^^)ところ。

『Participants discussed a number of policy tools that the Committee might employ if it decided to provide additional monetary accommodation to support a stronger economic recovery in a context of price stability.』

キタコレ。

『One of the policy options discussed was an extension of the period over which the Committee expected to maintain its target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent.』

まずはフォワードガイダンス文言の延長。

『It was noted that such an extension might be particularly effective if done in conjunction with a statement indicating that a highly accommodative stance of monetary policy was likely to be maintained even as the recovery progressed.』

うむ、これは時間軸の質的強化の話でして、従来FOMCステートメントにおけるフォワードガイダンス文言は「conditional」というのを強調していまして、経済状態の改善が予想よりも進んだ場合は、フォワードガイダンス文言の限りでは無い、というのが(最初出た時は「約束」と騙されて解釈していた人も多かったですが)人口に膾炙している(からこそ昨年の前半とかFF先物などが示す市場が認識する時間軸が盛大に短期化した)のですが、ここにありますように「回復が進んだとした場合であっても、高水準の金融緩和スタンスが維持されるという事を示すステートメントと一緒にガイダンス文言を出した場合はより緩和効果が高まる」という指摘は、経済指標紐付けコミットメント(昨日ネタにしたボストンのローゼングレン総裁やシカゴのエバンス総裁が以前から主張している話)に近い話になりますので、これはまあ時間軸強化になります罠。

『Given the uncertainty attending the economic outlook, a few participants questioned whether the conditionality of the forward guidance was sufficiently clear, and they suggested that the Committee should consider replacing the calendar date with guidance that was linked more directly to the economic factors that the Committee would consider in deciding to raise its target for the federal funds rate, or omit the forward guidance language entirely.』

フォワードガイダンスのコンディショナリティーが十分に明確ではない(つまりフォワードガイダンスがコンディショナルで、「今の状況を勘案すると〜までの異例の低金利が正当化される」といってるけど、経済状況の変化に応じて市場がFOMCの考える以上に思いっきり反応するリスクがあるんじゃないですか、ということでしょうかね)点についての疑問を示した少数(a few)の参加者は、より経済指標に紐を付けた形での金利引き上げタイミングのガイダンス文言(かつての日銀のコミットメントみたいな形)をつけるか、それともややこしいので外しちゃった方がよいんじゃネーノとは中々の指摘ですが、これはエバンス総裁たちの指摘ですかね。


『Participants also exchanged views on the likely benefits and costs of a new large-scale asset purchase program.』

QE3キター!

『Many participants expected that such a program could provide additional support for the economic recovery both by putting downward pressure on longer-term interest rates and by contributing to easier financial conditions more broadly.』

長期金利の低下圧力を与え、幅広く金融環境をより緩和する効果がありますとはまあそうですわな。

『In addition, some participants noted that a new program might boost business and consumer confidence and reinforce the Committee's commitment to making sustained progress toward its mandated objectives.』

一部(some)の参加者はQE3は企業や家計のコンフィデンスにも好影響を与えるし、FOMCのマンデート達成に向けた強い姿勢を示す効果もある、と気合面(^^)の効果も指摘と。

『Participants also discussed the merits of purchases of Treasury securities relative to agency MBS.』

ほう。

『However, others questioned the possible efficacy of such a program under present circumstances, and a couple suggested that the effects on economic activity might be transitory.』

でまあ議論の話がデター!と言う話をする中でしらっとこの辺の指摘が厳しいちゅうか何ちゅうかだとおもうのですけれども、QE3打ち込んでもそんなに効かないんじゃねえのかとか、効いてもそれって一時的じゃね?という指摘をしている人がいる、ということですからして、追加緩和はやるとしてもQE3でしかも国債バンバン買う、という線で委員会を纏めるのは難しいんじゃないでしょうか、とあたしゃ思ったんですけどどうでしょうかね。

つーか、逆さ絵おじさんが国債大量購入のやる気満々だったら、前々回のFOMC後の会見とかでもっとその辺やる気出して話をするでしょうし、声明文での先行き見通しがもうちょっと変わっていても良いと思うのですけどどないなんでしょうかねと思うのですが。

『In reviewing the costs that such a program might entail, some participants expressed concerns about the effects of additional asset purchases on trading conditions in markets related to Treasury securities and agency MBS, but others agreed with the staff's analysis showing substantial capacity for additional purchases without disrupting market functioning.』

メリットとコストの論議の中では「買入やり過ぎると国債市場やMBS市場の市場機能を阻害することにならないか?」というツッコミまで数名(some)から出る次第。ただまあ連銀スタッフの分析ではまだ相当の買入を行っても市場機能の阻害は起きないでしょうという事になっているようですな。

『Several worried that additional purchases might alter the process of normalizing the Federal Reserve's balance sheet when the time came to begin removing accommodation. A few participants were concerned that an extended period of accommodation or an additional large-scale asset purchase program could increase the risks to financial stability or lead to a rise in longer-term inflation expectations.』

さらに追い打ちを掛けるようにツッコミが飛んでまして、「買入をやり過ぎると出口政策の時に死ねるのではないか」というツッコミが複数名(Several)からでるわ、少数名(A few)からは「大規模な資産買入は金融の安定を損なったり、長期インフレ期待を望ましくない形で引き上げるリスクがあるのではないか」というツッコミが飛ぶ有様。

『Many participants indicated that any new purchase program should be sufficiently flexible to allow adjustments, as needed, in response to economic developments or to changes in the Committee's assessment of the efficacy and costs of the program.』

まあそらそうだという感じで、結論としては「QE3やるなら買入の量とかについて、経済情勢に加えて効果とデメリットを勘案しながら柔軟に変化できるようにするべき」と多くの(Many)参加者が示したという話ですので、QE3キターとか言って次回はQE3実施キタコレとかいうのは多分読みが足りないように見えます。これでもないあれでもないとデメリットの指摘を並べ立てた後に「じゃあ大規模な国債購入しますお!」とは逝かないと存じますがね(少額のMBS購入とかなら有り得ると思うけど)。


・付利下げに関してはまあdisられてるっぽい&貸出スキームの導入など

『Some participants commented on other possible tools for adding policy accommodation, including a reduction in the interest rate paid on required and excess reserve balances.』

他の手段として付利下げの話が。

『While a couple of participants favored such a reduction, several others raised concerns about possible adverse effects on money markets. It was noted that the ECB's recent cut in its deposit rate to zero provided an opportunity to learn more about the possible consequences for market functioning of such a move.』

2名(a couple of)が付利下げを支持しているようですが、他の複数名(several)は短期金融市場に対する悪影響を懸念していますが、この件に関しては直近のECBが人柱になっているので、これを見てメリットデメリットを検討していくのが吉という話になっていますな、まあ当たり前ですが。

『In light of the Bank of England's Funding for Lending Scheme, a couple of participants expressed interest in exploring possible programs aimed at encouraging bank lending to households and firms, although the importance of institutional differences between the two countries was noted.』

つーことで、BOEのFLSについて、2名が興味を示していますが、そもそもの金融構造の違いも考慮しないといけないですよね、とまあ当然の結論になっておられます。


・最後に「早期の追加緩和が必要になる」云々の所を

『Committee Policy Action』の第2パラグラフの中盤にございますので、当該パラグラフをどどーんと引用します。というのは単に時間切れで死ねるので手抜きをするだけの話なのでございますが(汗)。

『The Committee had provided additional accommodation at its previous meeting by announcing the continuation of the maturity extension program through the end of the year, and more time was seen as necessary to evaluate the effects of that decision. Nonetheless, many members expected that at the end of 2014, the unemployment rate would still be well above their estimates of its longer-term normal rate and that inflation would be at or below the Committee's longer-run objective of 2 percent.』

『A number of them indicated that additional accommodation could help foster a more rapid improvement in labor market conditions in an environment in which price pressures were likely to be subdued.』

ということで当該部分になります。

『Many members judged that additional monetary accommodation would likely be warranted fairly soon unless incoming information pointed to a substantial and sustainable strengthening in the pace of the economic recovery.』

多くのメンバーは、今後出てくる経済指標が、経済拡大のペースが、顕著かつ持続的な強さを示さない場合には、ちゃっちゃと追加金融緩和を行う事が正当化されると判断しました。

・・・・・うむ。

『Several members noted the benefits of accumulating further information that could help clarify the contours of the outlook for economic activity and inflation as well as the need for further policy action. One member judged that additional accommodation would likely not be effective in improving the economic outlook and viewed the potential costs associated with such action as unacceptably high.』

ふむ。

『At the conclusion of the discussion, members agreed that they would closely monitor economic and financial developments and carefully weigh the potential benefits and costs of various tools in assessing whether additional policy action would be warranted.』

つーことで、まあ次回に何かのネタは打ち込まれる(たぶんフォワードガイダンス)のでしょうなあという所でありますが、これで市場の期待値がどのくらい上がっているのかというのは市場に聞かないとワカランチ会長なので、詳しい人教えてつかーせ。

#という事で寝起きネタで恐縮でした。まあ寝起きなので抜けとかあると思いますが勘弁してちょ




2012/08/22

お題「ローゼングレン総裁ネタの続きという趣味のコーナーである」

まあ何と申しますか、何とかホイホイとしか言いようがない状態。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120822/t10014442521000.html
渡辺代表・橋下市長 合流含め協議
8月22日 4時27分

橋下様におかれましてはハーメルンの笛吹き男よろしく集まったアレな方々と一緒に(自主規制の為以下割愛)。


○趣味ネタの前にちょっとだけ雑談

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120821.htm

国庫短期証券買入(資産買入等基金) 6,000 2012年8月23日
米ドル資金供給(固定金利方式) 2012年8月23日 2012年8月30日 0.640
米ドル資金供給(固定金利方式) 2012年8月23日 2012年11月16日 0.640

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120821.htm

国庫短期証券買入(資産買入等基金) 30,505 6,016 0.099 0.099 17.5
米ドル資金供給(固定金利方式)(8月30日エンド分) 2 2
米ドル資金供給(固定金利方式)(11月16日エンド分) 0 0

ドルオペ1Wに札が入ったとはメズラシヤという感じですが、まあ事務の練習は時々やっておかないとアレですからねという所。まあそれよりもふーんと思ったのは基金短国買入のオファーが今回は減ったこと。

まあ何ですな、足元の需給環境を考えると今オファーしても年内償還物がバカスカ打ち込まれるだけの事ですからあまりジャンジャン買ってもシャーナイというのはあるのでしょうかねと思いましたが、前回8000億円にしたと思ったら今回6000億円とか需給動向見てるのか何だか存じませんが、適当に目先が変わるのが今の調節クオリティでございますなという所で。

まあ昨日は5年国債入札に配慮したのか基金長期国債買入はスルーでしたが、今日はそろそろ日程的に基金長期国債買入があるような気がする(保証はしませんので悪しからず)ので、応札がどうなるかワクワクテカテカでございますな。


○ローゼングレン総裁ネタの続き

例によって盛大にCNBCの番組がおっぱじまるので音声注意。
http://video.cnbc.com/gallery/?video=3000107563&play=1
Fed's Rosengren: 'Treading Water' on Jobs & the Economy
Tue 07 Aug 12 | 08:31 AM ET

でまあ昨日の続きですけど。

・追加のQEは従来のような「短期間で大規模に」とは別の建付けになりそうな気も

話の流れ上昨日引用していた最後の部分であります所の、「長期金利のペッグよりもバランスシートのコミットメントの方が良い」というローゼングレンさんの説明部分から再掲します。ちなみにビデオの4分30秒くらいの所からになります。

『so the one issue with pegging a rate is that you may not have complete control over your balance sheet at that point. if you want to have more control over how rapidly your balance sheet's increasing then you'd set a rate.』

という所まで引用しましたが、そこで質問が入るのですな。

『hold on, you've just -- -- (引用者注:この部分はローゼングレン総裁の発言の最後の部分の続きになっています)trying to push the rate down. -- (ここから質問者の発言再開)you're advocating open-ended qe which means you don't care how big the balance sheet gets. 』

レートのペッグは難しいからバランスシートにフォーカスするって言ってましたが、さっきおっちゃんが提案してたのはオープンエンドQEだからバランスシートがどのくらい拡大するのかって最初の時点ではワカランチ会長じゃないですかとご尤もなツッコミ。というか日銀総裁会見でもこのくらいのレベルのツッコミを見てみたいわ。

『open-ended in terms of not setting a time or calendar date and not setting a magnitude, but it's not saying that we would purchase everything in a short period of time or not purchase anything for a short period of time, depending on where market rates were relative to your peg. it would be setting a quantity that you're going to continue to buy until you get the kind of economic outcomes you want.』

まあそうだわなという答えですが、ローゼングレン総裁が主張(エバンス総裁も主張していますが)する「オープンエンドQE」は要するにかつての日銀が行った消費者物価指数紐付けの量的緩和政策コミットメントみたいなもんでして、ただまあ日銀の時と違うのは「引き続きQEの継続を実施しますお」というのはコミットするものの、その量をどうしますかという事については月次の購入額をコミットするようなイメージはあるようですが、具体的にどうするかはややフワフワした話になっているようですの。

で、その説明にありますように、「it's not saying that we would purchase everything in a short period of time or not purchase anything for a short period of time」という言い方をしていまして、まあハト派の主張するような形でQE3が突っ込まれた場合であっても、QE1やQE2の時のような「大規模な資産買入」という形になるというよりは「長期間に渡る買入の漸進的な拡大」というテイストになるのではないかと思われるのですがどうでしょうかねえ。

まあ何ですな、ハト派にしても一気に大量購入してそのストックが効果を出すというビューよりはちまちま購入を続けるフローの効果が実はあるんじゃないかと思いだしているのかもしれないなあとか、単に一気にドカンと買うとその後のタマが無くなるので、それよりもタイムコミットメントを絡めた形の方が良いと思うようになっているのかなあとか、まあ色々と妄想は広がる所ではございますが、とりあえずQE3が出るにせよQE2みたいな「短期間でドドーンと買う」というスキームにはなら無さそうだなというのは想像ができるこの部分でございました。

で、別の質問でバランスシートの拡大に関して実務的な限界ありますか?という話。

『do you feel like there's any practical limit to the size of the fed's balance sheet?』

まあ当然ちゃあ当然のお答え。

『there's clearly a limit to how large the balance sheet can be because we're limited in what we can purchase so we can only purchase treasury securities and mortgage-backed securities so the stock of those two is certainly the maximum amount that we could hold.』

市場にあるもの以上は買えませんというのは仰せの通り。

『my hope would be that the policy would be substantial enough that we actually wouldn't have to carry it on for that long and we'd start seeing real improvements in the economy, that we'd see stronger growth in the economy. 』

オープンエンドQEが効果をちゃっちゃと示して、そんなに購入を馬鹿みたいに行わなくても済む位に効果を発揮することを希望しますというような締め方をしてますな、うんうん。


・QEに対する批判とそれに対する答えはオモロス:まずはQEの政策効果

質問は5分42秒くらいの所から始まります。

『i want to talk about some of the criticisms of quantitative easing but maybe in the first order, could you explain why this would do any good? you were already talking about, i looked this morning, a 3.6% 30-year mortgage, 1.5, call it 1.6 on the ten-year yield, if you must. interest rates are already low. real rates are actually already negative. why would an even lower rate have any practical impact on things that matter to people, the level of growth, and mortgage rates, interest rates?』

既に足元では30年モーゲージ金利が3.6%、10年金利が1.6%など、金利はすでに低く、実質金利に至っては既にマイナスですが、追加QEによって金利を下げると主張するローゼングレン総裁におかれましては、既に散々低下している金利をさらに下げることによってどのような効果を見ているのでしょうか?というまあご尤もな質問。

まあ何ですな、日銀批判でもまあ質問でもよか話でごわすが、質問するときにはこういう感じで相手のロジックに乗った形でツッコミを入れないと単なる役立たず質問になる訳で、メディア方面やら国会質問する議員様あたりにおかれましてはもうちょっとそういう勉強をして頂きたく存じますとか思うのですが余談はさておきローゼングレン総裁の説明(6分13秒くらいの所から)。

『there are a number of areas quantitative easing can help in. one it does push up asset prices so around times when we're announcing quantitative easing program, stock prices, equity prices tend to go up, that increases consumption as people's wealth improves.』

ということで、ローゼングレン総裁の説明するQEの効果の1発目に出てくるのは予想通りでございますが「資産価格の上昇」でありまして、株価が上昇して家計資産が改善する事によって消費が拡大すると誠に直球ストレートの説明。

でまあ麿におかれましてはバランスシート調整の問題に関する話はするけれども、上記のような話はしないというのもまあ何ちゅうかバランスとしてどうなのという話ですな。まあ麿的には「中央銀行が資産価格の価格形成に関与するのは資源の適切な配分を阻害するので良くない」という理屈になるんでしょうけれども。

『second area is the housing market, before we went on we were commenting on the housing market has been improving in boston. look at what people are renting for apartments in boston and looking at what a condo is, and factoring in what the current mortgage rates are, the lower the rates are and given prices are quite low relative to historical standards there's more opportunity for people to make a decision instead of renting they'll purchase a condo or a house and the housing market has been improving, partly a reflection of what we've done to date.』

ホンマカイナという気はしますが、低金利によって住宅市場が改善という文脈の中で、低金利によって住宅の購入意欲がここボストンでも高まる傾向にあるという話をしておりますが、まあそれに対してツッコミが。

『aren't we at a point the marginal person who would qualify for a mortgage rate is not qualifying not because of the rate, but because their home is deeply underwater and that's really an issue for the fiscal side, not really a rate issue?』

持ってる住宅が水面下状態にあるような、レートが下がったから買えるとかいう状況じゃない限界的な人の部分だと財政サイドの話と思いますがどうですかという質問が。

『i think it's both a rate and availability issue, as the rates go down, part of it is you need to be convinced that housing prices are going to go up and you're getting a rate that's low relative to the cycle, so if we're artificially pushing rates down it encourages some of those waiting to determine when they want to purchase a house or purchase a condo, that this is a particularly good time to do so. and i think that's actually true and that's why we're starting to see some legs in the housing market, and you certainly see it in boston, where the housing has picked up.』

まあそらそうですねという説明ですけれども、限界的じゃない人の購入意欲を高めることによって、住宅市場価格の下落を止めて上昇するようになれば、全般的に好影響になるでしょうという話で、まあ現実にボストンでも住宅価格の底打ちから上昇傾向がという話。


・QEは商品価格の上昇やインフレの拡大をもたらすのではないかという質問に関して

で、話は変わりまして、QEに対する批判の第2弾が「商品価格などの上昇に繋がっているのではないか」という話ですな。7分41秒あたりからでこれが最後の質疑です。

『some say some of those assets whose price, pushed up are things like oil and commodities and overall inflation which tends to undermine spending power. isn't that a big negative for additional quantitative easing?』

原油やコモディティー価格やら、全体のインフレを引き上げることによって購買力の引き下げに繋がるという意見もあります。これは追加のQEを実施した際の大きなネガティブな影響とならないでしょうか?という質問ですけれども・・・・・・・

『you would be concerned about the inflationary effects if you thought that we would have big inflationary effects. we've had two quantitative easing programs, right now the total inflation rates, 1.5% so our balance sheet expanded in 2008, it's now 2012, many people were concerned about the involitionary impact of expanding our balance sheet and both of the quantitative easing programs. our problem right now is we're below our 2% target, not above our 2% target. that's despite two quantitative easing programs and the fact that our balance sheet is much larger, so i think the inflationary effects, while that's a real concern and we have to factor that in, to date we haven't seen the inflationary pressures because we haven't got the economic growth we were hoping to get.』

ということで、これまでQEを2回打ち込んでバランスシートは大いに拡大しましたが、現在のインフレ(総合)は1.5%であって、今の問題はインフレが2%を超えている事では無く下回っている事であります。つーことはQE3を打ち込んでインフレが加速するというような懸念はそれほど大きくないのではないか。とまあそういう話。

いやまあ現象面から見たらそうですなあとしか申し上げようがないのですが、そもそもあんさんら物価のデフレーショナリープレッシャーを避けるためにQE2を打った(QE1はQEとは名がついてますが実質的には危機対応の信用緩和性格が強いので本当はCreditEasingである)んじゃなかったでしたっけ????という話になる訳ですが。

まあ雨人のプラグマティズムというかプラクティカルなというか、そういう傾向がFEDにも多分に見られまして、ロジックの整合性よりもまずは対応をとゆー流れでここまでFRBは色々と政策打ち込んでいるのですが、QEに実際に物価を押し上げる力がそんなに大きくない的な話を持ち出してQE打ち込んでも無問題的な話をすると、じゃあ前のアレは何だったんだという話がさすがに雨人と言えども出てくるんじゃないかなあとか思うのですけど、その辺はどうなんでしょうかねえ。


そういやQEと物価という話では、これまたやりかけというか頭出しをしていただけで終了している放置プレイネタがあるのですが再掲しておきますね。

http://www.frbsf.org/publications/economics/letter/2012/el2012-21.html
Monetary Policy, Money, and Inflation
By John C. Williams

サンフランシスコ連銀のウィリアムス総裁の講演をレター形式にしているもの(元講演は7月2日)なのですが、こちらでも「FEDはバランスシートを拡大したけどインフレ圧力には繋がっていませんですお」とうのをしらっと行っていたりして、どうも最近のFEDの論調はこちらの方になってきている、というのがあるかと思われます。何か従来のQEを否定してねえかという感じなのですが、まあ「金利を下げる」「資産価格を上げる」という方向にフォーカスした形でのQEと、いわゆる純粋なマネタリーのビューとは違った変遷をしていますねというのがマニア的にはオモロスと申しますか、こちとら人柱状態で量的緩和政策状態が続いていた訳でして、もと人柱のジャパンの金利市場の皆様におかれましては「まあ当然ですな」という論調の変化でもあるなあとか思うのですけどね。

まあFEDの場合は早い時期から資産価格だのというような話をしていましたし、先にお助けCEの実施を強いられたので、まあもともと純粋なマネタリー的な話はしていませんでしたけれども、そーゆー意味では純粋マネタリー的な香りが高く、「我々は国債買入によって増えたマネーの効果によって緩和を行っているので、かつての日本や今の米国の自称量的緩和とは違った本来の量的緩和です(キリッ)」とか言ってたBOEが思いっきり「銀行貸出ガー」とか言い出すようになっているのもまたいとをかしという感じでございまして、まあ何だかんだと言いましても結局収斂される所って(各国の制度的なバックグラウンドで差異はありますが)似てくるもんだなあとか思うのでありました。

という訳で完全に趣味のコーナーでどうもすいませんでした。





2012/08/21

お題「例によってオペ雑談とかその他雑談/ハト派最右翼ローゼングレン総裁のインタビュー記事ネタ」

まずは昨日の訂正からorz

○オペ雑談と昨日の訂正

昨日の当駄文で「金曜のオペが〜」とか申し上げたのですが、当該のリンク先を見ればすぐわかりますように、URL添付してたのは木曜のオペオファーでして、じゃあ金曜はどうだったのかと言いますとそもそもオペのオファーが無かったというのが正解でした。謹んでお詫びして訂正致します(過去ログの方に訂正表記しますた)。

さてまあ昨日ですが、昨日もしらっと基金国債買入オファーの実施はスルーされておりまして、はてこんなペースで大丈夫なのかいなとは思うのですけれども、まあ確かに直近では大体10日ごとに買入のオファーがあった事を勘案すると今日(か明日)辺りに買入のオファーがあるのですかねという話ですわな。

つーことでまあ今日明日辺りに入ると思われる基金国債買入の応札状況とゆーのは気になる所でして、まあこの札の入り方次第ではオファーのペースを再検討とかそういう事にもなろうかとは思いますが、そもそも買入対象ゾーンの金利が0.10%ビットが続くのは当面はカワランチ会長となる訳ですから、実は下限撤廃してもしなくても市場的に大変化があるのかというとそれもなあという気もせんでも無い(まあ買入総額がこれ以上拡大すれば別ですが、今の額だとせいぜい3年の金利が0.095%になる位じゃネーノと思うので大差ないちゃあ大差ない)ので、市場的にあまりインプリケーションが無い(既にかなりの所まで織り込んだ状態なので)んじゃネーノ疑惑もありまして(^^)、あとはちゃんと残高積めますかとかそっちのまあマニア的興味に移るのでした。

とは言いましても、基金の残高については必達ということが先週出た7月会合議事要旨でも示されている(一方で麿会見では麿節の為その必達のニュアンスがあまり伝わらない辺りがどうかと思いますが)ので、残高は必達と相成りますが、必達させるためにとか言って国債買入と短国買入を一緒くたにして誤魔化すという技を使うのは難しいでしょうなと。つまり「長いものを買っていた話が短いものに化ける」というのはそもそも長めのターム物金利を下げるという理屈に整合的では無い上に、この前は固定金利オペの代替物として短期国債の買入を拡大させたというのをやったばかりですので、今度はそれを国債買入の代替にするというのはさすがに理屈の整合性がががががという所でしょうな。

つーことで、まあ今週オペやって札が普通に入って買入のペース的に大丈夫だとなりますと無問題ではあるのですが、札がまたまた割れるとなりますと、残高必達の為にどういう工夫をするのかという話をネタにする何とかストの方がまた出てくると思われる次第でして、まあ短期国債買入の利用という荒業も有り得ますが、上記の理由にてちと理屈に無理があるので、やはり応札下限金利の撤廃か、買入対象年限の長期化が必要になるという話になるのですが、応札下限金利の撤廃について8月会合後の麿会見で「現在は必要が無い(キリッ)」とか妙に突っ張って発言していたのが少々アレでございまして、下限撤廃したくないというのは把握しましたけど、下限撤廃とか比較的どうでも良い所で突っ張る結果「やっぱり買入年限を延長して5年まで買う」とかいう方向になる方がよっぽど日銀的にマズーな話になると思う(買入終了後の反動がより大きくなるのと、出口政策の運営がより難しくなるのと、財政ファイナンスがどうのこうのの話に繋がりやすくなるから)ので、まあ買入オペ以降の変な思惑には注意という所ですな。

7月会合の議事要旨を額面通りに捉えると基金買入残高目標は必達になるので、そのためにオペのテクニカルな手直し(=応札金利下限撤廃)をするのは別に抵抗はなさそうなのですけれども、麿会見が微妙にアレだったのがアレ。


○電力債の一般担保がどうのこうの

日曜の日経新聞でこんなネタがあって、既に本職の皆さんがコメントしておられるので、特段あたくしがどうのこうのという話でも無いのですがちょっと雑談。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS18007_Y2A810C1MM8000/
政府、電力債の担保廃止検討 原発賠償の円滑化狙い
起債条件、新電力と公平に (1/2ページ) 2012/8/19 2:05 情報元 日本経済新聞 電子版

『政府は電力会社が発行する債券(電力債)に認めている特殊な担保を廃止する方針だ。担保があると、債券の保有者が優先的に資金を回収でき、原子力発電所事故が起きた場合などに被害者への賠償の妨げになると判断した。担保を持たない新電力(特定規模電気事業者)との競争条件を公平にする狙いもある。発送電分離など経営改革を進める場合には例外も検討する。』(上記URLより)

以下の部分は上記URL先にもありますように、有料会員のみ閲覧可能という事ですので引用割愛(というか引用不能)でございますが、このニュースに関してはもう「いやそのりくつはおかしい」というような話で、これ日曜の日経1面トップ記事だったみたいなのですが、こんな奇天烈な理屈がそのまま経済クオリティーペーパーに掲載されるのが誠に残念ですなという所です。

まあどの辺の理屈が「いやそのりくつはおかしい」かと申しますと、無料閲覧可能な上記掲載部分だけで普通に2か所。

>担保があると、債券の保有者が優先的に資金を回収でき、原子力発電所事故が起きた場合などに被害者への賠償の妨げになると判断した。

・・・・・・・・・・・いやあのすいません、事業破綻する事を前提にした理由を元に「担保付の発行はしません(キリッ)」とか言いながら無担保社債で資金を調達しましょうとかお前はどこの取り込み詐欺集団かよと小一時間問い詰めたい訳でして、そういう潰れる気満々の話をしながら「無担保で貸せ」とかいう理屈を持ち出す発想がそもそもビジネスセンスの欠片も見当たらないと存じます次第でございます。どうも無料記事の最後の部分にある「電力システム改革専門委員会」とかいう所について直近の配布資料みたらメンバーが学者(しかも電力関係あるのかいなというのが)ばっかりじゃねえかという事に気が付きました、いやはや何とも。
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denryoku_system_kaikaku/pdf/008_02_00.pdf


更にこれもワロタ。

>担保を持たない新電力(特定規模電気事業者)との競争条件を公平にする狙いもある。

意味判らん。東京電力に関して言えば公的資金突っ込んでいるのであって、そういう会社が保有資産を活用してコストを下げるのって物凄く重要な話であって、ちまちましたリストラした分を調達金利の上昇で全部すっ飛ばす位の勢いのレベルになるんですけれども、調達コストを上げるような話をして収益力を下げてどうすんねんという話なんですけどねえ。

大体からして担保持ってないから競争条件がどうのこうのという話をするのであれば、新電力に対して政策金融対応すればよい話で、電力会社の調達コストを引き上げる事によって競争条件を公平にするとかどんなシバキアゲの理屈あるいは引き下げデモクラシーなんだよという話で、そのアンチビジネス的な発想力に落涙を禁じ得ない所でございます。

いやね、一般担保を廃止してその分で他の資金調達手段(銀行借り入れとか)をとかいう話とか、資産のより一層の活用をするとかいう話ならまあ理屈としては判らんでも無いのですけれども、どこの世界に潰れる事や他社の為に貧乏になる事を前提にした理屈でこういう話が出てくるのかとゆー事で、まあ正直って頭おかしいんじゃネーノというアンチビジネスなのでございますが、こういうのが平然と出てくるのもそうですし、それをそのまま垂れ流した上に1面トップ記事にしてしまう日経新聞のセンスもどうなっているんだという所でございますな。という悪態でございました。


○ボストン連銀ローゼングレン総裁のCNBCインタビューから(虫干しネタ)

いきなり番組がおっぱじまるので音声注意。
http://video.cnbc.com/gallery/?video=3000107563&play=1

Fed's Rosengren: 'Treading Water' on Jobs & the Economy
Tue 07 Aug 12 | 08:31 AM ET

ということで、ボストン連銀のページに逝くとCNBCへのリンクが設定されているので踏みに行きますといきなりCNBCの番組がおっぱじまりますが、放映時間は8分半ほどで右の方にTranscriptがありますので(ただしマジにダダ打ち状態)それをプリントしてから番組を聞くとヒアリングの練習になって吉(ってそんなヘボい英語力かよというツッコミはしないのが大人の対応でありますorz)。

でまあローゼングレン(どうでも良いが名前(つーか苗字)だけ見るとどこかのドールみたいな華麗な名前ですが画像を見るとただのおでこの広いオッサンである^^)総裁はシカゴ連銀のエバンス総裁と双璧のハト派ですので、ハト派の代表的な主張として読むのが吉ですけれどもまあ一部引用してみます。


・経済状況はTreading Waterでより緩和的な政策が必要とな

Treading Waterというのを英和辞典で引くと「立ち泳ぎをする」とか何とかございまして、まあそういう状況ですよねという話。冒頭の経済全般に関する質問から。

『as you highlight we've only been treading water. we started the year with 8.3% unemployment. we now have 8.3% unemployment as well. we started with the population ratio and participation rate in the market of what we've been seeing now. we've only been treading water in the labor markets and the gdp reports are disappointing. first warter 2%, second quarter 1.5%. my expectation is the second half of the year won't be much better so given that we're only treading water that's the reason why my expectation is the second half of the year won't be much better so given that we're only treading water that's the reason why i would advocate for a more accommodative monetary policy. 』

まあこれは以前の講演でもありましたが、経済見通しが元々弱めなんですよね。で、年末の失業率とインフレに対する質問に対する答え。

『my own forecast is a little bit lower than the consensus for gdp and higher for the unemployment rate. my own expectation is, in the absence of any kind of policy, that we'd have an 8.4% unemployment rate at the end of the year, and i'd expect the second half of the year not to be much better than the first half. we did 1.75% the first year, roughly that, maybe a little worse. we've gone from the first quarter to the second quarter the economy slowed down, both consumption and investment got weaker and i think that's a reflection of concerns of what's going on in europe, concerns about how our own fiscal deficit will play out. 』

更にインフレに関してもそんなに強い予想ではなく、フィスカルクリフと欧州問題が懸念との話ですが、ではその見通しに基づいた時に適切な金融政策は何ですねんという質問についてこのように話しています。

『if treading water, even if you're a good swimmer, at some point you need to get to land. we were expecting a pickup in the economy, if you looked at our january meeting, when we produced the forecast, peerm expecting 1% to 3% for real gdp, we'll be substantially below that over the course of this year so it calls for accommodative monetary policy.』

ということですが、Transcriptには表示されていませんが、放送の方では「it calls for much more accommodative monetary policy」と話をしておりまして、経済が立ち泳ぎ状態でGDPギャップが1%〜3%あるのですからしてより積極的な緩和が必要という話をしておりますな。

『i think it needs to be substantial enough that it offsets some of the shocks we're getting from abroad and some of the concerns people have with how weak the world economy has been so we're in a global slowdown so that would argue for a quantitative easing program and one of sufficient magnitude that it has an impact.』

更に、経済のショックに対する観点からも積極的な緩和が必要という話っす。


・具体的には「経済データ紐付けでの緩和政策継続のコミットメント」を提言

ということでエバンス総裁とその辺は大体同じようなニュアンスの話ですね。

『it would be one -- what we'd argue for, actually, is to have it open-ended, that we focus on economic outcomes, so i've argued for the guidance should be tied to economic outcomes, president evans suggested the same thing.』

というかここでエバンス総裁も同じことをサジェストしていると仰せですが。

『i would argue that if we do quantitative easing program again, we should be using economic outcomes as what we're trying to get. we want a stronger economy. we want faster growth in the in, and we want a labor market that has an unemployment rate that's clearly declining.』

どのように実施するのかという質問に対して。

『 i would focus on the mortgage-backed securities and it would be a monthly rate that you could alter if you wanted to, but an expectation that you would have it of a substantial magnitude, so rather than setting a calendar date, rather than setting a magnitude, you'd say we're going to do this monthly growth rate until we see an improvement in the economy we're hoping to get』

つーことで、具体的には経済状況(何の数値という話はしていないが要は特定の経済指標にフォーカスする)が目標に達するまでMBSの買入を継続するという話で、現在のフォワードガイダンスにあるような買入の期限を設ける訳でも無く、買入の総額を設ける訳でも無く、「買入を継続しますよ」という風にするという話です。

『growth rate of q snerks. of purchases, yes. you'd grow the balance sheet by x% per month? or x dollar amount. and you would raise that or lower that based on incoming economic data? exactly』

ここは質問している人とローゼングレン総裁の会話モードになっているのでアレですが、まあ基本的には毎月の買入の額を決めて目標経済状況に達するまで淡々と継続するとかそういう話をイメージしているようです。


・長期金利のペッグは難しいという話

面白い質問が。

『(これは質問です)what targets -- first of all, why not just set a rate, why not peg the 30-year to a 3%? have you thought about that?』

『i have thought about that. i think there are some have that argued we should be pegging a rate. i think it's very difficult to peg a rate in an environment where a lot of things are occurring in the world that we don't have much control over, so you could be in a situation where you're flooded with securities that you're purchasing or that nobody, that you're not purchasing any securities, so the one issue with pegging a rate is that you may not have complete control over your balance sheet at that point. if you want to have more control over how rapidly your balance sheet's increasing then you'd set a rate. 』

ということで、長期金利のコントロールは難しく、レートにペッグするよりはバランスシートのサイズをコントロールするのが良いという話になります。


で、この後の質疑もオモロスなのですが、あたくしの時間配分がヘボの為ここで本日は時間切れでございまする(汗)。この後の質疑に関しては、金融政策の効果に関する話とか、インフレ圧力を高めるのではないかという話とかまあそういう論点に関する質疑なので、具体的にどのような政策を実施するのか系の話はこの辺で終了という感じですけど、論点としては後半も面白いのでマニアとしては続きは明日と言う事で(汗)。



2012/08/20

お題「オペ雑談メモ/BOEの8月MPC議事要旨」

先週のニュースですが。
http://www.nikkei.com/article/DGXDASHC1600A_W2A810C1EB1000/
維新、中田前横浜市長らに衆院選出馬打診
東国原氏ら擁立も検討

『地域政党「大阪維新の会」(代表・橋下徹大阪市長)が次期衆院選で中田宏・前横浜市長、テレビキャスターの辛坊治郎氏らに出馬を打診したことが16日、分かった。東国原英夫・前宮崎県知事や大阪府市特別顧問で元経産官僚の古賀茂明氏、元財務官僚の高橋洋一氏の擁立も検討している。』(上記URLより)

・・・・・・・・・ゴミの集積場ですかそうですか。

ところで、尖閣諸島って普通に日本領で日本が実効支配してるんですからわざわざ出張って示威活動するとか「領土問題があります」と宣伝するだけじゃネーノと思うのですがどうなんでしょうかねえ。


○市場雑談というかメモ

・基金国債買入は???

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120816.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年8月20日 2012年11月21日
(追記:翌日訂正しましたがこれは木曜のオペで金曜はそもそもオペがありませんでした)

ということで金曜は何故か基金国債買入のオファー無し。

ちなみにオペのオファーと結果の直近分はこちらにリンクがあってそこのリンク先をポチポチ押すと判るのですが、前回のオファーが10日金曜日でMPMの翌日だったのですが、何故か先週は基金国債買入がスルー。(追記:翌日訂正しましたがこれは木曜のオペで金曜はそもそもオペがありませんでした)

http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_o.htm

えーっと、基金国債買入って単純計算で毎週5000億円ずつ進捗させないと目標数字行かない筈なのですが、1週オペオファーをスルーしている余裕とかあるんでしたっけ?という気がする上に、先週と言えば何だか訳判んないけど急に売りが出て5年は0.24%になるわ(一応先週申し上げましたようにお家の事情的な売りでしょという説ではありますが)10年は0.86%になるわというような相場になった訳ですが(金曜の後場から何か知らんが長期超長期が戻っておりましたけれども)、まー短い所もお家の事情的な売りが出ているまたは売りニーズがあるとすれば、もしかしたら先週金曜だったら基金国債買入をオファーしたらそれなりに札が集まったんじゃネーノと思ったので、オペをオファーしなかったのが少々不思議ちゃん。

まー明日の5年入札前にまだ短い所が重いのかもしれませんので別に今日オファーをすればという感じなのかも知れませんが、基本的には業者が0.10%以上の金利で基金国債買入に応札する積極的な意味が無い(0.10%割れでオファーしておけば売れるのですが売れると言っても限界的ではあるので、在庫ファイナンスの金利(=GCレート)との絡みで沢山持つのもどうなのかという話があり、在庫が重くてコストが0.10%なら応札する意味もあるでしょ)でしょうから、札割れが続きやすいという状況は変わらないと思われます。

そんな中で従来通りのペースでオファーをしている場合では無いように思えるのですが、札が入る自信でもあるのならまあ良いですけど、札割れ続いて目標達成の為に年末近くに急に買入加速されると市場の需給を急に歪めることになるので勘弁して頂きたいとか思ったりする訳ですが、札割れに関して楽観しているのか、それとも金曜にオファーをして札がしこたま入るとまた「何だ札割れしないじゃないかやっぱり応札金利の下限撤廃要らないじゃないか」とか言われるのがシャクだったとかだと面白いのですが(^^)。


・金曜の相場メモ

まあ備忘だけですがね。

金曜は前場はちょっと上がったと思ったら上値重くなってウダウダしてて前場引けの先物は前日比5銭高とか(ちなみに前場の安値は前日比2銭高)で、どちらかと言うと先物は強いものの現物が重そうで上値重いでござるの巻。

とか何とかゆうとったら、後場途中から現物強くなって、長期とか超長期とか堅調に推移して現物が引っ張るの巻となって推移した上に、BBの引値が全般的にビットサイドでついているような感じなのでが中々お洒落。

まー何ですな、先週は板の薄い中でいきなり売りが出たと思ったら金曜は金曜で後場急に目が覚めたかのような戻り方とか、お盆時期にありがちなパターンでしたねと言ってしまえばそれまでなのですが、何ともアレでございました。単なるあたくしの備忘メモ。


○BOE8月会合議事要旨から

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1208.pdf

ということで8月1日、2日のMPC議事要旨が先週出ていた訳ですが、最近はどこぞの日銀ですかというようなFLSという新企画を打ち込むという具合で、まあ趣味の中銀観察日記を書く人的に中々面白い論点を次々提供してくるので、まあ今回もその辺を少々。

・どう見ても窓口指導です本当にありがとうございました

金融市場関連の第5パラグラフに貸出金利関連のお話が。

『Libor rates had fallen further relative to OIS rates. That would reduce lending rates for businesses with floating-rate loans linked to Libor.』

従来この金融市場関連の話の中では金融機関のファンディング状況に関する話はあったのですけれども、ここまで直球で貸出金利ガーという話は無かった(別の所で話をしていた)のでございます。

『The details of the Bank of England and Government Funding for Lending Scheme (FLS) had also been issued during the month and the drawdown window had opened. In response, a number of banks had already announced reductions in the rates on certain mortgage and small-business loans.』

どう見てもFLS実施による無言の圧力または窓口指導です本当にありがとうございました。

『It would take a while, however, before it would be possible to assess with any confidence the impact the Scheme was having on lending.』

とのことですが、要はMPCとしてはFLSスキームを突っ込んだのだから貸出金利を下げろコノヤローという事を仰せとな。


・景気の阻害要因のレビューと先行きに関して

景気の現状認識とかの部分はまあ読んだのですがスルーしておきます。海外経済に関しては結構厳しい認識をしていて、ユーロ圏に関してはまあ当たり前ですけれども、米国に関してもフィスカルクリフに関連する落ちについて懸念しておりまして、どこぞの国の強気見通しとは対照的な内容ではございました(が長くなるので引用割愛)。

また、物価に関しては石油価格と農産品価格の影響について指摘しています。

んでもって、経済に関する部分の最後の所は景気の足を引っ張ってきた要因と、その先行きに関してという分析でして、第15パラグラフと第16パラグラフを引用。

『Looking back over a longer period, the recovery had stalled at the end of 2010, following a period of growth from the middle of 2009. Output had been broadly flat since then, a considerable shortfall compared to expectations formed at the time. It was possible to point to factors that could plausibly account for much of this disappointing performance.』

ということで、ここまで景気の足を引っ張ったものは何ですねんという話。

『The rise in commodity prices and other import prices, and the increase in VAT, had depressed real incomes and household spending. Government spending on goods and services had recently been lower than planned. The recovery in overseas demand for UK goods and services had been weak, particularly in the euro area, where the outlook remained fragile and unusually uncertain. Funding conditions for banks had worsened, again in part as a result of the deterioration in the situation in the euro area, and credit conditions had tightened.』

ということで、商品価格や輸入価格の上昇、VAT引き上げなどによる実質所得の引き下げ、財政支出の下振れ、ユーロエリア中心に海外需要が弱かった、銀行のファンディングの環境が悪化し、クレジットコンディションが悪化した、というような要因を挙げています。で、今後どうなるかという話ですが次の第16パラグラフ。

『The impact of some of these factors, such as the drag on growth from commodity and other import prices, had begun to wane. The recent expansion of the asset purchase programme, together with the FLS and other policies that aimed to boost bank lending, would act to underpin activity. It was probable, therefore, that GDP growth would begin to pick up somewhat; indeed four-quarter growth in broad money had already increased to 3.5% in the second quarter, having been growing at less than half of that pace at the end of 2011.』

ということで、商品価格などの悪影響は低下していて、資産買入やFLSで銀行の貸出は伸びるでしょうということで、GDPもこれらの要因で若干のピックアップはあるでしょうという話。

『But other factors, such as the uncertainty over the evolution of the euro-area crisis, were unlikely to dissipate quickly and so would continue to dampen demand growth. More broadly, many previous financial crises had been associated with sustained periods of weak output; it was by no means clear when the effects of the recent financial crisis would cease to restrain the recovery.』

でもユーロ問題の不透明感は直ぐに消えないですし、過去の金融危機は継続的に続く生産の落ち込みを伴ったことから、今回に関してもその傾向はあるのでは、ということで、まあ結局あまり強くない話な上に、そもそもFLSとか本当に期待通りに効くのかは希望的観測が入っているっぽいのですよねえ。


・BOEの最近のテーマ:弱い経済の中で雇用だけ妙に確りなのは何で???

という話が延々と繰り広げられているのが今回のBOEの議事要旨でのお題。第18〜21パラグラフでその話が続いています。長いけど引用。

『The labour market had continued to be surprisingly resilient in the face of the contraction in activity.』

経済活動が落ち込む中で労働市場はサブライジングリーに回復力が強いとな。

『The unemployment rate had fallen to 8.1% in the three months to May and employment was estimated to have risen by 181,000, with increases in the numbers of both full-time and part-time employees. Despite recording a large fall in the output index for July, the Markit/CIPS employment index for manufacturing had risen.』

と堅調推移と。

『During the month, the ONS had published the first results of the 2011 Census for England and Wales. These had revealed a larger population than previous estimates, due in part to net immigration higher than previously assumed. But, by and large, the new estimates had simply confirmed the message from direct indicators of migration flows, such as air passenger numbers, and so did not change the Committee’s understanding of the labour market to any great extent.』

移民要因による人口の予想以上の伸びの話をしているようですが結論的にはそれは重要な話では無いという話のようですな。要約しすぎていて意味が取りにくいorzorz

『Employment growth had outpaced the growth in output over the previous two years meaning that measured productivity had fallen. Strong hiring could indicate that activity was stronger than currently measured, although the measurement error would have to be unusually large to account for most of the productivity shortfall. While it was possible to identify factors that had contributed to the weakness in activity, there was as yet no clear explanation as to why at the same time employment had continued to increase and why productivity had therefore been so weak.』

ということで、次のパラグラフに突入しましたが、雇用の延びはこの2年間生産の伸びよりもペースが高いということで、生産性の低下という話になります罠という所なのですが、まあ生産性の計測自体は計測誤差のある話なので、決め打ちするのもという所でしょうか。

『On the one hand, the weakness could reflect a persistent slowing in underlying productivity growth. Problems in the banking system might have prevented some companies from obtaining finance to expand their operations, while others might have found their production constrained by restricted access to working capital. Contacts of the Bank’s Agents had reported that some companies had increased their professional staff devoted to risk and compliance.』

ということで、生産性の弱さが構造的な物か循環的な物かという話を上記の第20パラグラフと次の第21パラグラフで行っているのですが、構造的な部分に関して「金融システムが弱くなっていることによって、企業の業容拡大の為に必要な資金調達を妨げている可能性がある」という指摘をしていまして、まあ我田引水っぽい気もしますけれども(^^)、そういうことだからFLSを導入しましたねんとかいう話になるのでしょうが、しかしまあ金融政策というよりも窓口指導というか何というかな話になっておりまして、金融政策は金利だけ動かしていれば良いんじゃというステージから発展した、というよりは先祖返りしたという話っすかね(^^)。

『On the other hand, the weakness in productivity might be cyclical. Some companies might have needed to retain a certain minimum level of staff to continue operating, and depressed trading conditions could mean that employees had to work harder to generate new business. In addition, companies might have maintained or taken on new employees in the expectation of an increase in demand, either domestically or overseas, depressing measured productivity in the interim. Should that increase in demand fail to materialise, they could be forced to reduce staffing again, perhaps significantly.』

とまあこちらは循環要因に重きを置いた話。

『But equally, some might be taking advantage of the lower exchange rate and the rebalancing of global demand by seeking to enter new markets. The process of reorienting production and shifting labour accordingly could be quite long and drawn out, during which time measured productivity might increase only slowly, but might nonetheless be fruitful in the longer run.』

後半の部分はそうかねえという気がするんですけど・・・・・・


・政策決定に関して:資産買入の拡大を検討

政策決定に関する議論でも上記の話がありまして、第36パラグラフに改めて『Even though it was possible to identify factors that had limited the recovery in activity, the conjunction of weak output and moderate growth in employment that had prevailed over the past two years was more difficult to understand.』というのがありますけれども、まあそこの引用は割愛いたしまして、最後の方になります第38パラグラフ。

『The Committee discussed whether it was appropriate to expand or continue with the programme of asset purchases it had agreed at its previous meeting.』

ということで今回のMPCで追加措置として検討したという話になっているのはこの話だけになっていまして、利下げの話のメリットデメリットがどうしたこうしたというような記載はございませんでしたので、まあ次にBOEが何かやる(やりそうな雰囲気ですが)となると、普通に資産買入の拡大になるんでしょうなあという所です。以下引用。

『Inflation was still slightly above 2% but likely to remain close to the target in the coming months. The level of underlying activity was perhaps not as weak as the GDP data for the second quarter had suggested and, with the squeeze on real incomes beginning to ease, some recovery in spending was probable.』

というのが経済物価見通し。

『The FLS had the potential to improve funding conditions for banks materially and to encourage lending, thus providing some support to both demand and supply. These effects might be particularly marked if the FLS allowed some households and companies to borrow who had previously been unable to obtain bank credit.』

FLSの効果に期待という話ですな。

『Set against that, the FLS might prove less effective if uncertainty and risk aversion among households and businesses were the dominant factors holding back spending in the current environment. These same factors might also limit the effectiveness of additional asset purchases.』

ただ一方で、リスク回避的な動きや不確実性が高まった場合には、FLSにしろ追加の資産購入にしろ、その政策の有効性を下げる、という指摘をしているので、それらの要因によって追加を実施しないといけないとなった場合はまた別の方策があるかもしれませんね、というニュアンスは出しています。

なお、政策は全員一致でした。前回買入拡大に反対した委員も拡大した買入を下げるのは混乱の元なのでその必要なしという話でした。

#ということで以上趣味のコーナーで恐縮でした




2012/08/17

お題「虫干しネタなどを少々」

what_a_dudeさん久々の更新。お久しぶりです♪

http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20120815/p1
2012-08-15
ネット断ちの途中ですが、あまりにゲンダイクオリティすぎるクソ記事を見たので書かざるを得ない

ツッコミのやり方はこうあるべきというお手本でございまして、毎度勉強させていただいておりますので、ウェルカムバックトゥーネット廃人という事でひとつ宜しくお願い致したくm(__)m

#あたくしはSNSやってませんので廃人化しないで済むのですな♪


○5年カレントの引けが0.240%とな

ということで珍しく柄にもなく連日の債券市場メモ(このサイトの題名は何だったっけというツッコミは全力で却下)であるが。

えーっと、昨日の債券市場様におかれましても金利が上昇した訳ですが、10年ゾーンとか中々重そうにしておりまして朝っぱらから0.85%になってそこで止まったかと思ったらその後もう一発売られておまけに引け際にもう一発売られて引けでは4.5毛甘/5.0毛甘の0.860/0.865とか素敵な事になっておりました(BBの引けは0.860%)けれども、それはそれとして誠にアレなのが5年近辺でござりまして、5年ゾーンは今日もヘロヘロというかゲロゲロというかで105回債は3.0毛甘/3.5毛甘の0.235/0.240というこれまた売り込みましたなあという水準(BBの引けは0.240%)。

時間軸とか日銀買入とか考えたらああだこうだというのは昨日も申し上げましたので割愛致しますが、まー相場観として考えた場合にそこまで売るのかよという気はするのですけれども、世の中にはお家の事情というのがあって、お家の事情というのは基本的に成行売買と相成りますので、相場観ガーとか言って立ち向かっても成行さんのパワーがでかければこうなりますがなという所なんですよね、いやまあ本気で5年の金利水準の適正値はもっと高い所にあるとか思っているのだったらどうもすいませんという感じですけど。

まあ何ですな、新発105回債に関しては来週5年入札がありますので、とりあえず中期の売りは105回でヘッジして逝くっちゅう話でヘロヘロ振りが際立つんでしょうけれども、まあ少々びっくらこいたことですよ。地味に金先もここもとヘロヘロしていて、気が付けば金先3限月が99.70割っているのもチャーミングですが何で売られてるのかワカランチ会長なので後講釈保留(^^)。

しかし何もお盆中にやらんでもとか思いますが、よくよく考えますと中間決算まで1か月半でございますし、入替売買するならその反対やるのに絶好の5年新発入札が来週火曜日という訳ですからなるほどなあとか言うのは後からなら何ぼでも言える訳でして(超大汗)、そーゆーのを今さらドヤ顔で語るとかどう見ても時既にお寿司です本当にありがとうございましたなので恥ずかしくてあまり後講釈する気が起きませんぞなもし。

あとまあ相場観的な話ですと、消費税増税法案の景気条項ガーとか、選挙が前倒しになって自民公明が勝つと大公共事業マニフェストガーとか、その手のネタも一応ありますし、米債が10年1.8%とかに売られてみたり、株価が妙に堅調だったりなどというのもありますので、そーゆー意味ではお家の事情だけと決め打ちするのもどうかとは思いますけれども、中期の売られっぷりを見てそういう後講釈をしてみましたという所で、本当の所は売ってる当人たちしか判らないお話でございますのでその辺はよろしくお願いいたします。



○マクロプルーデンスがどうしたこうした

今月の頭(3日)に出てたのですが。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j13.pdf
マクロプルーデンス政策手段を巡る最近の議論

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2012/data/ron120803a.pdf
日本銀行のマクロストレステスト:信用リスクテストと金利リスクテストの解説


・マクロプルーデンスにルールベースを入れるという論点

で、まずはマクロプルーデンス関連から少々(URL再掲)。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j13.pdf
マクロプルーデンス政策手段を巡る最近の議論

最初のアブストラクトの所から。

『金融システム全体の安定を確保するための「マクロプルーデンス」に関する取組みが各国に広がっている。「マクロプルーデンス」の考え方自体は決して目新しいものではないが、その具体的な政策論はまだ途上であり、政策当局におけるコンセンサスが形成されているとは言い難い。こうした中、中央銀行をはじめとする各国の金融当局の間では、マクロプルーデンス政策の実用化に向けた議論が活発になっている。本稿では、政策手段の選択、政策発動のタイミング、政策効果の波及経路を中心に、最近の実用化に向けた議論を紹介する。』

ということでして、んじゃまあ今回のお題は何ですねんという話ですが、

『本稿では、マクロプルーデンス政策の実用化に向けた最近の議論の中から、次の3つの論点を中心に紹介する。

(1)政策手段の選択。多種多様な候補の中から、どの政策手段を選択するか。
(2)政策発動のタイミング。いつ、どのような状況で政策手段を発動するのか。
(3)政策効果の波及経路。引締め局面と緩和局面では、どのような波及経路が想定されているのか。』

ということで説明がある訳ですが、政策手段の所はスルーしまして政策発動のタイミングの所ではルールベースにするかというような論点が紹介されております。

『冒頭で紹介したマクロプルーデンスの考え方を踏まえ、横断的な観点と時系列的な観点の双方から金融システムのリスクを評価することが、関係者間の共通認識となっている。マクロプルーデンス政策手段は、これら2つの観点から金融循環の過熱状況を評価した結果に基づいて、発動することが想定されている。』

金融循環の過熱状況の評価という話は金融システムレポートの所でネタになっておりまして、直近版は2012年4月19日に出ておりますのでご参考までに。
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr120419a.htm/


『既にマクロプルーデンス政策手段を導入している国・地域をみると、こうした様々な情報を吟味しながら、裁量をある程度重視した政策運営がなされている。彼らの考え方の基本的な背景には、リスクや市場構造は常に変容するため、特定の限られた指標に頼った機械的な政策運営は危険という認識がある。また、金融循環のメカニズムが十分に解明されていないという問題もある。』

まあさいですな。

『もっとも、既にマクロプルーデンス政策手段を導入している国・地域の中には、ルールの要素を採り入れようとする先もみられる。前述のとおり、マクロプルーデンス政策は、政策目標やその達成状況を数値化しにくく、政策の透明性を高く保ち、説明責任を果たすことが難しい。このため、コミュニケーションを円滑にする手段として、何らかの指標を参照した政策運営が検討されている。』

ほほう。

『例えばスイスの可変資本バッファーは、不動産融資の対GDP 比率と居住用不動産価格を主な参照指標として明示しており、ルールを一定程度重視する方針をとっている。』

全体に網掛けるような政策の発動という意味では特定の経済数値に紐付けするのも難しいですが、確かにまあマクロプルーデンス政策そのものがどう見ても不人気方面の物でありますので、ある程度説明が出来るようにした方が政策発動をしやすいです罠という面もあり、中々難しい論点ではありますなとゆーところでしょうか。


でまあその後に金融循環におけるマクロプルーデンス政策の効果の波及経路に関する説明として、可変資本バッファーを例にして図解をしているのですが、長くなるので引用割愛(図表を引用するスキルもございませんのでorz)ということで、上記URL先を読んで味噌という所です。


・マクロストレステストはまあ毎度の悪態ツッコミを少々と興味深い所を少々引用

続きましてマクロストレステストのお話から。(URL再掲)

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2012/data/ron120803a.pdf
日本銀行のマクロストレステスト:信用リスクテストと金利リスクテストの解説

『要旨

世界的な金融危機以降、金融システムのリスクを評価する手法の一つとして、マクロストレステストが各国で注目を集めている。日本銀行も、金融システムレポートの中で、その時々の金融経済情勢を反映したマクロストレステストを毎回実施している。本稿では、金融システムレポートで実施しているマクロストレステストの分析手法について、信用リスクテストと金利リスクテストを中心に詳しく解説する。』

ということで、まあそもそものネタ元が金融システムレポートなので、金融システムレポートの時に突っ込んだ話をまた行うでござるの巻という所なのですがw

『本稿では、金融システムレポートで実施しているテストの分析手法について、信用リスクテストと金利リスクテストを中心に解説する。』

ほう。

『信用リスクテストは、マクロ経済環境の悪化を想定するものである。景気後退局面において、貸出ポートフォリオから生じる信用コストと株式ポートフォリオから生じる株式関係損失の双方を銀行の期間収益で吸収することができるか、さらに、銀行の自己資本は損失に対するバッファーとして十分かどうかを検証している。』

『金利リスクテストは、市場金利の上昇を想定するものである。運用・調達の期間ミスマッチは銀行の本源的な役割である満期変換機能を通じて生じるものであるが、このミスマッチが金利上昇を通じて資金利益や債券評価額に及ぼす影響を検証している。』

『いずれのテストも、銀行ごとのバランスシート情報と日本銀行金融機構局が推計したパラメータをもとに、金融機構局が一元的に行っているトップダウン型のテストである。』

ほほう。

『本稿の構成は次のとおりである。2 節では、わが国銀行のエクスポージャーの中で比較的大きな割合を占めている国内企業向け貸出、株式保有、国債保有を中心に、これらのリスク特性を簡単に整理する。これらのエクスポージャーがわが国の金融システムに及ぼす影響を計測する手法として、3 節では信用リスクテスト、4 節では金利リスクテストを順に解説する。最後に5 節では、マクロストレステストの活用事例を紹介し、結びに代える。』

ということで、まあ銀行の中の人とかだと先刻ご承知の話だとは思いますが、こちらの解説ペーパーではどういう置きによってどういう計算をしていますかとかについての説明を金融システムレポートよりもやや細かく話をしておりまして、まー日銀のプルーデンスウィングがどういうロジック構成でこの辺りを認識しているのかというのを読むのに吉かと存じます。

でまあそれはそれとして、毎度の悪態ツッコミを少々。

『2.わが国銀行のリスク特性』って所から。

『わが国の銀行収益は、信用コストと株式関係損益に大きく左右される傾向が続いている。特に2000年代以降、景気後退局面において信用コストと株式関係損失が同時に発生する傾向がみられ、Tier I 資本の減少要因となってきた。その背景には、保有株式の評価差益の減少や、減損処理の厳格化のもと、企業向け貸出からの信用コストが増加するような景気後退局面では、当該企業に対する市場評価も悪化するため、株式関係損失が発生しやすいことが考えられる。とりわけ、貸出先企業との取引関係を重視した政策保有株は、安定株主として長期保有することを目的としたものであり、銀行は相場動向に応じて機動的に売買しにくい。このため、株価が大幅に下落すると、減損による損失の計上を強いられることになる。また、大口貸出先の株式を銀行が大量に保有する傾向があることも、集中リスクの高まりを通じて、銀行の損失を拡大させる一因となっている。』

というのはいつもの指摘で、そらまあ仰る通りなのでございまして、プルーデンスウィングの方からは保有株式の削減をしましょうね(はあと)というのが折に触れて発信される訳ですが、そもそも論として日本の取引慣行ガーとかいう話もありますが、そんな事よりも最近の成長基盤強化の取り組みの中で・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110614b.pdf
「成長基盤強化を支援するための資金供給における出資等に関する特則」の制定について

とかやっておられる訳で、いやまあ確かにプルーデンスウィングとマネタリーウィングでは見ているポイントが違うからそうなるというのは当然ちゃあ当然なのですが、やはり中央銀行様という一つの組織という事を考えますと別のウィングだから言ってることがほこたてですとか言うのは如何なものかという話じゃネーノとは思いますけどね。

いやまあプルーデンスウィングが言ってるのは「銀行の自己資本対比過度な集中」であって、成長基盤強化の話とは別ですよ、という風に説明するんでしょうけどね。


『銀行の運用・調達動向をみると、貯蓄超過主体である企業・家計の銀行預金は引き続き増加傾向にある一方、銀行貸出が伸び悩んでいる(図表3)。こうした中、貸出を上回る預金流入は債券投資に振り向けられている。世界的な金融危機以降、特に国債保有残高の増加が目立っている。保有債券を残存期間別にみると、大手行は、金利リスクを抑制する観点から、短中期ゾーンを中心とした年限構成を選好する一方、地域銀行は長期ゾーンを中心とした年限構成をとっている(図表4)。地域銀行は、大手行に比べて貸出利鞘の縮小幅が大きいことから、相対的に利回りの高い中長期債投資によって有価証券利回りを確保することで、収益力の維持を図っているとみられる。債券保有残高の増加により、以前に比べ、地域銀行を中心に銀行経営は市場金利の影響を受けやすくなっている。』

というのもいつもの話ですが、いつものツッコミと致しましては、そもそもそんな状況を作っているのは包括緩和政策による「長めの金利の低下を促す」政策なんですけどねえと思うのでして、毎度毎度出る度に悪態つくあたくしも大概にしつこいのですが(^^)、どうなんでしょうね。


などと悪態ばかりついても何ですので、信用コストモデルの説明部分なんぞも引用。

『3.信用リスクテスト』の所から。

『日本銀行の信用コストモデルは、銀行ごとの債務者区分の格付け遷移行列を基礎情報としている点に特徴がある12。』

で、その脚注12番ですがこうなっています。

『12 各国金融当局のテスト手法を概観すると、金融システム全体の貸出債権のデフォルト確率とデフォルト時損失率をもとに、マクロの信用コストを推計する手法が多数派である。詳細は次の論文を参照。Otani, A., S. Shiratsuka, R. Tsurui, and T. Yamada, "Macro stress-testing on the loan portfolio of Japanese banks," Bank of Japan Working Paper Series, No.09-E-1, March 2009. Foglia, A., "Stress testing credit risk: A survey of authorities' approaches," International Journal of Central Banking, Vol.5, No.3, September 2009.』

『債務者区分は金融庁の金融検査マニュアルで指定されている自己査定区分に準拠しており、正常債権である「正常先」と「その他要注意先」、要管理債権である「要管理先」、「破綻懸念先」、「破綻先・実質破綻先」の計5 区分からなる。格付け遷移行列により、期初から期末にかけて、それぞれの区分に分類されていた貸出債権がどこの区分に遷移したか、半期ごとに捕捉することができる。』

なるほど。

『国内企業向け貸出のうち、貸倒引当金の繰入対象となる未保全の貸出残高について、先行きの債務者区分の遷移を推計したうえで、遷移後の貸出残高に限界的な貸倒引当率(下方遷移のときは正、上方遷移のときは負)を乗じることで、信用コストの増減を求めている。』

こら面白いとか思うのですが、まあこの部分の最後にありますように・・・・・

『信用コストモデルに関する留意点は次の2 点である。信用コストモデルの中では、先行きの銀行ごとの貸出残高を一定と仮定している。この仮定のもと、「破綻先・実質破綻先」に遷移した貸出債権はその期のうちに償却され、償却分に相当する貸出残高は、基準時点における債務者区分の構成比を用いて、5 つの債務者区分に按分している。また、このモデルでは、貸出条件緩和債権の要件見直しなど、制度要因を明示的に勘案していない。このため、現実にストレスが生じたとしても、何らかの政策措置がとられている場合には、テスト結果に比べ、信用コストの増加が抑制される可能性がある。』

ということですが、逆に言うとヒストリカル分析を行う際に、制度要因によってストレスが過小評価される可能性もあるという事ではないかなあとか思ったのですがどうでしょうかね。


あとまあここの信用リスク計算の中でコア業務純利益の試算という話がありまして、そこも少々引用。

『コア業務純益は、資金利益および非資金利益の合計から経費を控除したものと定義される。ここでは簡単化のため、貸出に関連した資金利益のみが先行きのマクロ経済環境に応じて変化し、その他の収益と経費は基準時点の水準から不変と仮定している。』

『貸出関連の資金利益に関しては、長期貸出金利に連動して、銀行の貸出利鞘が変化すると想定している。わが国の現状をみると、資金調達金利の変化が相対的に緩慢なため、長期貸出金利が低下する局面では、貸出利鞘は縮小する傾向がある。』

ほう。

『実際には、長期貸出金利が低下する局面であっても、運用・調達の期間ミスマッチによって貸出利鞘が短期的に拡大する可能性や、債券売却によって益出しが行われる可能性があるが、ここでは勘案していない15。』

脚注にありますけれども、それは金利リスクのテストの方で検証していますが、「わが国の現状をみると、資金調達金利の変化が相対的に緩慢なため、長期貸出金利が低下する局面では、貸出利鞘は縮小する傾向がある」となという所でありまする。


でまあ金利リスクテストの方ですけど。

『4.金利リスクテスト』

『市場金利の変動は、銀行の運用・調達にかかるキャッシュフロー(運用・調達利息)や割引率の変化を通じて、銀行収益に影響を及ぼす。金利リスクテストは、実体経済その他の条件は一定との仮定のもと、市場金利の変動に伴う銀行の期間収益の変化を検証するものである。金利リスクテストでも、信用リスクテストと同様、3 段階の手順を踏んでいる(図表9)。まず、市場のイールドカーブに関するストレスシナリオを選択する。次に、ストレスシナリオとして描写した市場金利の上昇ショックが、貸出利息、調達利息、債券利息、債券評価額に及ぼす影響を試算する。最後に、これらのファクターをもとに、Tier I 比率に換算する。』

ということでふーんという感じなのですが。


『金利リスクテストでは、ベースラインシナリオと3 種類のストレスシナリオを選択している。ベースラインシナリオでは、基準時点の無担保市場金利(1 年以下はLibor、1 年超はLibor ベースのスワップ金利)に織り込まれていた金利経路が実現すると想定している。具体的には、基準時点における市場のフォワードレートカーブに沿って、短期の市場金利が先行き推移していく16。』

つーことなのですが・・・・・・・

『ストレスシナリオには、3 種類の金利上昇シナリオ(パラレルシフト、スティープ化、フラット化)を選択している(図表10)。パラレルシフトシナリオでは、全年限の金利がベースラインシナリオ対比で1%pt 上振れする。スティープ化シナリオでは、10 年物金利がベースラインシナリオ対比で1%pt 上振れする。フラット化シナリオでは、翌日物金利がベースラインシナリオ対比で1%pt 上振れする。』

とまあここまでは良いのですが。

『1%pt の上昇幅は、いずれもショック発生後1 年間の累積変化であり、四半期ごとに基準年限の金利が0.25%pt ずつ上昇していく。なお、金利上昇のパターンや程度は、金利リスクの特性を明らかにする観点から設定したものであり、蓋然性を勘案したものではない。』

・・・・・・・・・つーことで、まあこの話って金融システムレポートが出た時にも同じ悪態ついたのでただの繰り返しになるのですが、四半期ごとに25bpの金利上昇なんぞそれショックでも何でも無くて普通の金融正常化局面の話ですので、もしかすると金融機構局では金融政策正常化なんてそんなのはショックシナリオみたいなもんでそう簡単に正常化なんぞ出来るかよウエーハッハッハとか思って作っているのならお洒落だなあという風に今回も思うあたくしなのでありました。

まあ何ですな、貸出と違って債券ポートフォリオに関しては(こちらの説明で引用していない部分に指摘されていますが)イールドカーブ形状の変化に対して動態的に変化していくものでして、シナリオの期間が1年間という中でポートの構成が不変という置き自体が動態的な観点からすると非現実的だとは思うのですが、結論部分を見ますと静態的に見た場合の特性は良く示されているのかなとか思うのでありました、ということで『Tier I 比率に及ぼす影響の検証』の部分から引用。

『最後に、以上4 つのファクター(貸出金利、資金調達金利、債券利回り、債券評価額)をもとに、先行きのTier I 比率を試算する。信用リスクテストとは異なり、ここでは、運用・調達の期間ミスマッチを明示的に勘案した形で、資金利益を算出している。一方、非資金利益、経費、信用コストは、基準時点の水準から不変と仮定している。』

という置きのもとにどうなったかと言いますと・・・・・・

『実際のテスト結果をみると、運用・調達の期間ミスマッチのために、運用金利と調達金利は一様に変化しない。住宅ローンなど、満期の長い固定金利型貸出を多く扱っている銀行や、残存期間の長い固定利付債を多く保有している銀行ほど、期間ミスマッチが大きく、金利上昇局面で資金利益が伸び悩む(または減少する)傾向がある。また、こうした銀行は、債券評価損が増大しやすい18。15 年変動利付国債による金利上昇ヘッジが効きにくいフラット化シナリオの場合、この傾向はより顕著になる。大手行と地域銀行を比較すると、これらの特徴は地域銀行に多くみられる(図表11、12)。』

ちなみに脚注18はこうなっています。

『18 現実には、満期保有目的の債券は時価が著しく下落しない限り、会計基準上、償却原価で評価される。一方、金利リスクテストでは、全ての債券を時価評価の対象としている。これは、会計的な価値ではなく、経済価値の変化を評価していることに等しい。』

ということで、まあなるほどなと思う結論になっておりました。

#ということで虫干しネタ恐縮至極




2012/08/16

お題「ちと遅れましたが金融経済月報/その他小ネタ雑談とか悪態とか」

いやーよりによってあの安倍さんですか、うぷぷのぷ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120815-00000061-mai-pol
<維新>安倍元首相に合流要請 国政進出にらみ幹部が接触
毎日新聞 8月15日(水)20時6分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120815-00000896-yom-pol
「維新の会の力を借りるべき」…安倍元首相
読売新聞 8月15日(水)19時16分配信


○小ネタ系であるが雑談とか悪態とか

・結局インフレフォビアだったり清貧シバキアゲだったりするのよねえ

一昨日のニュースですけど。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20120814-00000528-fnn-bus_all
消費者庁、消費税増税を受け「物価モニター」の復活検討
フジテレビ系(FNN) 8月14日(火)21時27分配信

『消費税増税を受け、消費者庁は、主婦などが物価の動きを監視する「物価モニター」の復活を検討していることがわかった。物価モニターは、主婦など一般消費者に生活関連商品の価格の定期的な調査を委託する制度で、2001年から2009年まで「国民生活モニター」として内閣府が行っていたが、消費者庁発足にともない中止していた。』(上記URLより、以下同様)

ほう。で、この物価モニターさんが物価の単なる調査をするかというとさにあらず。

『消費者庁では、2014年4月に消費税率が8%に引き上げられた際に、必要以上に価格を上乗せする「便乗値上げ」が懸念されるのをふまえ、「物価モニター」を早ければ2013年度にも復活する方向で検討を始めた。1989年の消費税導入の際や、税率が現在の5%に引き上げられた際には「便乗値上げ」が見られたことから、消費者庁は「物価モニター」を復活して厳しく監視したい考え。』

>厳しく監視したい考え
>厳しく監視したい考え
>厳しく監視したい考え

・・・・・・・・・・いやー何ですなあ。デフレマインドを変えるという意味では今般の段階的消費税増税を機に「物価は上がるもの」という流れを作るチャンス(そらまあ経済成長に伴う物価上昇の方が良いに決まってますが)ではあると思うのですが、早速物価モニターとかインフレフォビア丸出しの話が出てくる所が何とも。つーか政府としてデフレ脱却したいんだったら何で「厳しく監視したい」とか物価上昇ダメゼッタイみたいな話が出てくるんだかという所でございますなあ。


昨日は昨日で毎度毎度デフレ脱却に日銀はもっと緩和しやがれコノヤローという東京新聞(中日新聞)様の社説にこんなのが。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012081502000144.html

『◆内なる成長信仰なお

原発に関する世論調査では奇妙な傾向に気づきます。新聞やテレビの調査では、原発ゼロを求める声は、街頭に繰り出しているような勢いがなく、日本経済のために原発推進が少なくないことです。四十年前、水俣病の原因がチッソ水俣工場の廃液だったことが判明したあともチッソ擁護市民が少なくなかったように、フクシマ後も。われわれの内なる成長信仰は容易には変わらないようです。』(上記URLより一部引用)

まあ全文読んで頂ければ判りますように、東京新聞(中日新聞)様は中々強烈な反原発モードになっていまして、いつぞやは東電の電力料金値上げに関して「東電延命の為の値上げはケシカラン」みたいな記事を書いてまして、お前の新聞は未来永劫値上げしない積りなんでちゅかとか思ってしまった事もございます大変アレな新聞社なので、社説の流れは終戦の日の話なのに何故か反原発ネタになるという電波テイストの高い話ではございます。

でまあそれはそれではあそうですかという感じなのですが、お前の所の新聞はデフレ脱却の為に日銀は無茶筋の緩和もしろとか言ってる筈なのに、いきなり「内なる成長信仰なお」とか何を清貧思想の流布をおっぱじめているのかという感じでありますな。

・・・・・・・・とまあそんな感じで、こーゆーインフレフォビアとか清貧シバキアゲ思想とか、そういうのが何だかんだと言っても人口に膾炙する中で「日銀ガー」とだけ言えばデフレ脱却というのってナイーブというか現実問題としてどうなのよ、とか思うのでございまして、正直言ってヘドニック効きまくりのCPIが本当に前年比1%なんぞに上昇したらメディアが大騒ぎして政治家が日銀叩きとか始めるんじゃネーノという懸念が思いっきりするのでございますけれども、日銀ガーとか言ってれば解決とかおめででーなと存じます次第。

と、ただの悪態でした(−−)


・5年が久々の0.20%台乗せとか

昨日の債券市場ちゃんは金利上昇の巻だったのですが、まあ長い所は兎も角としてほほうと思ったのは中期が取引途中からヘロヘロ化して5年カレントが2毛甘の0.210%とか出合ってみたり(日本相互証券の引けは0.205%でした)という所でしょうか。

3年までの所は時間軸に加えて日銀買入効果がありまして0.10%で張り付いている(つーか0.10よりちょっと低い水準ですな)ので、その後ろの金利も0.10%に近い所で推移となっておりまして、5年が0.20%乗せると手前対比でみた時に結構安く見えるような気がするんですが、昨日は0.20%乗せてもヘロヘロモードと。

まーどこのどなたがご売却されたのかは存じませんが、入札準備にしてはちょっと豪快な売り方ですので、単なる入札準備というよりは別の話だと思いますし、0.20%乗せても叩かれるという動きってへーという感じで、まあお家の事情的な売り方もあるのかねえとか思いつつ眺めるの巻となるのでした。

しかし昨日は2年カレントが0.10%出合いとかベンダーに出て「ほえ?」と思ったのですが、単に業者間で0.10%にあるビットを洒落で少額叩いた人がいただけのようですけど、まあ地合いを悪くしたいから叩いたのか、単にギャグで叩いたのか存じませんが(^^)、中短期がヘロヘロになると雰囲気が悪くなりますのおと思った昨日のひとときでしたので俺様備忘録として残して置きますね。

#まあ2年とか3年とかが本当にヘロヘロになったら基金買入が積みあがって日銀的にはウマーなのでしょうけれども・・・・・・



○金融経済月報では下方修正項目が判るように(^^)表示してます

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1208.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1207.pdf(前回)

例によって【概要】部分だけ比較という手抜きですいません。

・現状の総括判断は変わらず

『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(前回)

まあ声明文で示されている通りです。


・現状判断の項目別部分ですが・・・・・・・・・

項目別の部分を一気に引用してみますね。

『海外経済は、緩やかながら一部に改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。輸出は持ち直しの動きが緩やかになっており、生産も足もと弱めとなっている。一方、国内需要をみると、公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(今回)

『海外経済は、緩やかながら改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。わが国の国内需要をみると、公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。輸出にも、持ち直しの動きがみられている。以上の内外需要を反映して、生産は、振れを伴いながら、緩やかに持ち直しつつある。こうしたもとで、企業の業況感をみると、内需関連業種を中心に緩やかに改善している。』(前回)

ということで、前回と今回を比較してみた場合、現状判断を引き下げた部分が最初に並んでいるというのが見えるかと思います(どこをどう下げたのかという話は声明文の比較でやりましたので割愛)。海外経済に関してはまあ毎度最初に示されるのでこれは平常運転なのですが、その後に輸出、生産と今回現状判断を引き下げた需要項目への言及が続いていますな。

で、この月報と声明文を比較すると、声明文のほうでは

『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。輸出は持ち直しの動きが緩やかになっており、生産も足もと弱めとなっている。この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている』(8月会合の声明文より、海外分は別項なので引用割愛)

となっていまして、月報の方が語順的に下方修正しましたというのが目立つような格好になっているのがチャーミングとしか申し上げようが無いワーディングになっておられまして、はてさてこれはどういうインプリケーションがあるのでしょうかとか直ぐに考えてしまうのがドラめもんクオリティでございます(^^)。

まあ声明文では突っ張っているものの、やはり現状判断を下げざるを得ないだろ常識的に考えて・・・・・という事務方の思いが出ているのではないかとか考えるのは深読みのし過ぎですかそうですか(^^)。


・先行き見通しは変化なし

総括判断、需要項目ともに見通しには変化がありません。

『先行きのわが国経済は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『輸出は、海外経済が減速した状態を脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が改善傾向をたどるもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

リアルに全文一致でして、一言一句変わらない所か改行位置も同じ(あたくしは引用時に改行を改変しています、為念)という有様です。


・リスクの話も同じ

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。とくに、欧州債務問題に伴う国際金融資本市場の状況については、十分注意してみていく必要がある。』(今回)

ここも全文一致です。


・物価に関しては現状は実際の状況を反映、先行き見通しは同じ

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、既往の国際商品市況の反落などから、下落に転じている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況の反落などから、下落に転じている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

国際商品市況に関して「既往の」というのが入ったのが違いますな。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、国際商品市況の反落の影響が残ることなどから、緩やかな下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、緩やかな下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

ここも文言は微妙に変化していまして、国内企業物価については「国際商品市況の反落の影響が残る」という言い方なので、まあそのうち下げ止まるでしょうというニュアンスはありますが、基本的な部分での見通しが変化した訳では無いようです。


・金融面なのですが・・・・・・・

普段は概ねスルーするのですが今回はチェック。

『金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利も横ばい圏内の動きとなっている。この間、円の対ドル相場、長期金利および株価は前月と概ね同じ水準となっている。』(今回)

『金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利も横ばい圏内の動きとなっている。この間、円の対ドル相場、長期金利および株価は前月と概ね同じ水準となっている。』(前回)

さいですな。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。』(前回)

と、ここの文言が変化した件については声明文に反映されていたので話題になりましたよね。

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは緩やかに低下している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、増加の動きがみられている。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、プラスで推移している。CP残高の前年比もプラスで推移している。一方、社債残高の前年比は、電力債の償還超が続くもとで、マイナスとなっている。こうした中、企業の資金繰りをみると、総じてみれば、改善した状態にある。この間、マネーストックの前年比は、2%程度のプラスとなっている。』(今回)

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは緩やかに低下している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、増加の動きがみられている。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、プラスで推移している。CP残高の前年比もプラスで推移している。一方、社債残高の前年比は、電力債の償還超が続くもとで、マイナスとなっている。こうした中、企業の資金繰りをみると、総じてみれば、改善した状態にある。この間、マネーストックの前年比は、2%程度のプラスとなっている。』(前回)

・・・・・・・・・ということで敢えてこのクソ長い部分を前回と今回と全文引用してみましたけれども、金融面に関する記述が思いっきり全文一致にも程がある状態でありまして、じゃあ何で今回ここの文言を変えたのか、というのは結局ワカランチ会長のままであるという結論になるのでございました。

先般ネタにしましたように、会見での質問がイマイチ(買入を途中で止めちゃうのかみたいな質問だと答えが明らかなのでダメでしょ)だったというのもありますし、そもそも金融経済月報は会見の翌日にならないと出ないのでシャーナイナイなのではございますが、この金融経済月報を出されてから会見をしたら「金融面に関する認識に変化が無いのに何で声明文の文言を変更したのか教えてください」という直球質問が飛んだんだろうなあとか思うのでありました。結局謎が残るままですなあ。

#BOEネタとかその他ネタは明日にでも







2012/08/15

お題「7月決定会合議事要旨ネタを先に/その他オペネタ少々」

かつてはみんなの党にノコノコ加わる連中あり、今度は大阪維新にノコノコ加わる連中ありと相変わらず誠に浅ましいとしか申し上げようがございません。というひねくれ者のあたくしはどうも負けそうなところばかり支持する傾向がorz

○小ネタ少々

・営業毎旬報告

直近のが出ました
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120810.htm/
営業毎旬報告(平成24年8月10日現在)

でまあこちらの中でニュースネタになっていたのは保有長期国債残高が発行銀行券残高を上回りましたという話で、発行銀行券残高が80兆7876億円なのは一目瞭然なのですけれども、長期国債の残高については下の方を見ないとワカランチ会長でして、別表1と別表2にある長期国債を足すとが80兆9697億円になりまして、長期国債保有額が銀行券をオーバーですという所で。

つーてもそもそも短期国債も含めれば上回っているというの今に始まった話では無いですし、基金国債買入はまあ一応3年以内の物ですし、どこぞの米国みたいにやたら長期化している訳でも無いんですが、ただまあそうは言いましても「公共事業を200兆円やりますが財源は赤字国債です」というような人たちが政権取ってそのままそれをおっぱじめるとかいうような話になりだすとどうなんでしょうかねえという気は。

まあ何ですな、資金バランスから言ってそう簡単に国債消化構造が崩れるという話にはならんでしょうけれども、だからと言って調子に乗って赤字国債全力で増発して公共事業バンバンやりますとか、社会保障の支出は増えるがままに放置プレイでこれまた穴は赤字国債とかやっておりますと、まあどこかでしっぺ返しが来ると思うのですけどねえ。で、そのしっぺ返しがどこで来るのかが定量的に判れば誰も苦労はしない話でございまして、それがどこなのか判らないから困るんですけれども、国債バンバン発行して日銀引き受けとかゆうとる人たちは定量的に判らないというのでは根拠にならんとか言い出すので頭が痛くなる話なのですけどね。

ま、銀行券ルール自体は一種の歯止めとして判りやすい数値として使っている話ではあるのですが、一応の根拠としては資金供給の長短バランスという話で、金融市場調節を無理なく行う為には長短バランスを確保しておいた方が金融政策の運営上やりやすいちゅう話ではございますので今のように絶賛量的緩和状態の時よりも問題になるのは平常時ではございますな、うんうん。


・基金国庫短期証券買入が増額とな

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120814.htm

国庫短期証券買入(資産買入等基金) 8,000 2012年8月16日
米ドル資金供給(固定金利方式) 2012年8月16日 2012年8月23日 0.640
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年8月16日 2012年11月19日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120814.htm

国庫短期証券買入(資産買入等基金) 40,327 8,009 0.099 0.099 28.4
米ドル資金供給(固定金利方式)(8月16日スタート分) 0 0
共通担保資金供給(資産買入等基金)(8月16日スタート分) 34,671 8,008 23.1

ということで、基金国庫短期証券買入が前回の6000億円オファーから今回は貫録の2000億円増額の8000億円の買入実施でしたが、応札は4兆ありまして落札レートは0.099%とすっかり0.099%オファー0.100%ビットが定着でござるの巻という感じになって参りました。まあ0.10%を割って買う人(含む日銀)の量に対して発行量の方が思い切り多いですねという訳で、まあ超過準備付利が受けられる人が0.10%割れの短国をそんなにホイホイ買うようになっている訳では無い(担保繰りとかの限界的な部分を除く)という事なんでしょ。

というのはともかくとして、何でまた今回短国買入のオファーを増やしましたねんという所ですが、今回の応札に示されましたように応札意欲もあるので増やしたからと言っても市場金利を無駄に下げないというのが大体公式見解みたいな所になるのでしょうけれども(^^)、まー足元で基金国債買入の方が暫くの間札割れ状況が続く事になろうかと思いますので、せめて短国の方でも買入ペースを上げておきましょうというのがあるのかなと(^^)。

つまりですな、先般のMPM声明文で『今後とも、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて間断なく金融緩和を進めていく。』という一文が新たに加わりましたけれども、つまりは資産買入等基金の残高の積み上げが進捗する事によって金融緩和効果が高まる、という理屈(ホンマカイナというツッコミはここでは華麗にスルー^^)が強調された訳でございますからして、基金国債買入が札割れ連発で進捗が遅れる分はとりあえず基金短国買入の残高を積み上げて全体の基金残高の積み上げを進捗させましょうという話なのではないか、とまあ勝手に愚考する次第。

ただまあ何ですな、短国買入って概ね3か月新発近辺が一番多く入ると思いますので、8月のこの時期に短国せっせと買入しても11月には償還祭りになるのでまた買入オファーしないといけないんですけどね。


○7月決定会合議事要旨から少々

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120712.pdf

・国際金融市場に関して

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から

『この間、委員は、金融システムの安定確保という観点からは銀行間の資金調達市場の状況が重要であるが、この点は欧州中央銀行による大量の資金供給の効果などから、総じて安定した状態が続いており、リーマンショック時のように国際金融資本市場が動揺し、これを起点に世界経済が大きく下振れるといった昨年末頃に強く懸念されたような事態が生じる可能性は低下しているとの認識を共有した。』

『もっとも、何人かの委員は、欧州債務問題の解決には時間を要するとみられる中で、問題解決に向けた各国の政府・中央銀行などの動きが市場の期待と乖離することなどにより、市場が急速に不安定化するリスクには、引き続き十分注意する必要があると付け加えた。』

まあそうですなという所ではありますが、ただ欧米の中銀が示している懸念に比べてちと懸念度弱い気もするざます。

で、長期金利の話があるのがへーという感じなのですけどね。

『米独を中心に長期金利が既往最低水準まで低下している点について、委員は、欧州債務問題への懸念が払拭されない中で、安全資産とみなされている米、独、そして日本の国債に対する需要が高まっていることが影響しているとの見方を共有した。』

ほう。

『複数の委員は、米独の長期金利が名目成長率を下回る水準となっていることを指摘したうえで、いずれ金利が成長率と整合的な水準に上昇する可能性がある一方、成長率が金利水準と整合的な水準に低下する可能性も考えられると述べた。』

後者の可能性を先に考えるのではないかと思いますけど・・・・・・・・

『そのうえで、これらの委員は、その動向については、わが国の長期金利にも影響する可能性があるので、注視していく必要があると指摘した。』

やや謎気味の指摘なのですが、何かこの部分のトーンを見ると「欧州債務問題で安全資産プレミアムが乗っている主要国金利が上昇したら日本の金利もどどーんと上昇するのではないか」的な懸念を示しているように読めるのですけれども、そもそも欧米主要国金利がアホのように低下する中で日本の長期金利って1.1%位から0.8%位まで下がったに過ぎないのでして、そんなに注視するもんかいなという風に思うお話(つーか債券市場投資家的には金利ちったあ上がってくれないと利息収支が改善せんぞなもしと思っている人の方が多いんじゃねえのかと)でして、何を懸念してますねんという違和感を感じた所ではございます。

が、わざわざ議事「要旨」に載ってきた話ですので、何かを懸念しているのでしょうかね。どういう文脈で議論されていたのかが興味あるっつーかよく判らんので何なんでしょという所です。


・海外経済見通し

8月に現状判断がやっと下がった訳ですが、7月議事要旨を見ますとこの時点ではまだ見方が強いというか楽観モードというか。めんどいので各国の所スルーしてまとめの所を。

『こうした議論ののち、複数の委員は、先行き海外経済が減速から脱していく際のメカニズムとして、米国経済と中国経済が相互に好影響を及ぼしながら、世界経済の牽引役としての役割を担うことになる可能性が高いと述べた。』

ほうそうですか(棒読み)。

『一人の委員は、先行きの海外経済の成長率を評価するうえでは、金融危機や欧州債務問題の影響によって、海外経済の潜在成長率が低下している可能性も念頭においておく必要があると付け加えた。』

・・・・・・・一人ですかそうですか(棒読み)。


・国内経済

8月に現状判断を下げた輸出と生産について

『また、輸出について、委員は、持ち直しの動きがみられているとの見方で一致した。生産について、委員は、こうした内外需要を反映して、振れを伴いながら、緩やかに持ち直しつつあるとの認識を共有した。複数の委員は、足もとの生産の回復が力強さを欠いている点を指摘したうえで、基本的には海外需要の弱めの動きが表れているものとみられるが、生産面の動きからは内需の堅調さが必ずしも十分確認できない面もあるので、今後のデータをしっかりとみていきたいと述べた。』

この辺の認識が8月でどう変化しているのでしょうかねえ、という意味でメモメモ。


先行きに関して

『景気の先行きについて、委員は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくとの見方で一致した。そのうえで、委員は、外需の回復が明確化するまでの間、内需の堅調さが持続するかどうかがポイントであるとの認識を共有した。』

ここは毎度同じで8月も同じ。

『この点、複数の委員は、エコカー補助金の予算切れや震災後のペントアップ需要の一巡など、足もと堅調な個人消費を支えている要因のうちのいくつかは今後剥落することが見込まれるが、一方で企業収益や雇用・所得環境の改善など、ある程度持続性を持ち得る要因も働くと見込まれると指摘した。多くの委員は、6月短観で示された2012 年度の事業計画について、売上・収益が改善するもとで、企業が設備投資を増加させていく方針であることが確認されたことを指摘したうえで、先行き企業収益が改善していけば、設備投資の増加が見込まれるほか、雇用・所得環境の改善を通じて個人消費を下支えすることも期待できるとの見方を示した。』

・・・・・・何かそうなのか???という気はするんですけど。

『一人の委員は、昨年度の厳しい企業業績を背景に夏の賞与が弱めの動きとなると見込まれることを指摘したうえで、こうした動きや各種政策による需要刺激策の終了が個人消費の動向に影響を及ぼさないかも注意してみていく必要があると付け加えた。』

と思うのですけどねえ。


・物価に関して

毎度こういう話になっているのですけれどもね。

『多くの委員は、国際商品市況の下落を背景に、当面の物価は弱含みで推移するとしても、これが実質購買力の向上を通じて個人消費を支える効果も期待されるため、基調的にみると、需給ギャップが着実に縮小するもとで、物価が緩やかな改善傾向を辿るとの見通しは変わらないとの認識を示した。』

とのことで更に・・・・・・

『一人の委員は、需給バランスの状況が現在と近い水準にあった2004 年頃と比較して、@中国における賃金上昇を背景に輸入物価の低下圧力が和らいでいること、A流通構造の再編などがかなり進展しており、一段の効率化余地が低下していると考えられること、B企業による利益重視の価格設定行動がみられるようになっていること、C消費者の低価格志向は根強いものの、一部に高付加価値消費へのシフトもみられていること、などを指摘したうえで、当時と比較すれば、マクロ的な需給バランスの改善に連れて物価が上昇しやすい面があるとの見方を述べた。』

あたしゃーはあそうなんですかとしか申し上げようがございません程度の知見しか持ち合わせておりませんので残念なのですが、どちらかというと米国とか英国とかの物価に関する論議を見ておりますと、需給ギャップに対する感応度が下がっているのではないか的な指摘をよく見るような気がするんで、何かここの部分見ててそうなのかねえという気がしたのですが、おじちゃんは頭が悪いので良くワカランチ会長でございまする。


・金融政策運営に関して:コミュニケーションギャップと申しますか

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から少々。

どう見ても麿です本当にありがとうございましたという部分を発見。

『一人の委員は、中長期的な物価安定の目途を実現していくうえでは、物価が景気と関係なく上昇することは望ましくなく、景気が良くなり需給ギャップが改善するもとで、企業収益や賃金の上昇ともバランスの取れたかたちで物価上昇が実現していくよう、金融緩和の最適なペースを引き続き意識する必要があると付け加えた。』

>金融緩和の最適なペースを引き続き意識する必要がある
>金融緩和の最適なペースを引き続き意識する必要がある
>金融緩和の最適なペースを引き続き意識する必要がある

まあ前提部分はその通りなのですが、結論が何かこう先日の8月定例会合後の麿会見での麿モードを彷彿させてくれますの。

でまあそれはそれとしまして、この部分で為替市場が反応したとかどこぞのベンダーが言ってましたがそれは無いと思うのだが・・・・・・

『複数の委員は、欧州債務問題を起点として大きなリスクが顕在化した場合などには、わが国に色々なルートで悪影響が及ぶ可能性があるため、様々な選択肢を予め排除することなく、適切に対応できるよう備えておく必要があると述べた。』

えーっと、そんなの当たり前の話をしているだけでしょというか、こちらの部分が「複数の委員」なのかよとか思っちゃう方なんですけど(本来この話って「委員は〜の認識を共有した」となるものでしょ、だって当たり前の話じゃないですか)、何かこれで反応した事にしているとかんなアホなと思いましたですけど、本当にこれを為替市場の人が材料にしているとすれば、逆に日頃の麿様の麿節によってどんだけ日銀の姿勢に対する見方が曲がっているのかという話でもあろうかと存じます次第。今申し上げましたように、「大きなリスクが顕在化したら様々な選択肢を予め排除せずに適切に対応」ってあーたそんなの当たり前田のクラッカーな話でありまして、それで反応されるっちゅうことは麿発言によって日銀の包括緩和とか物価安定の目途とかにおける見解を自ら否定しているのかちゅう事ではないかとゆー話。


まあ何ですな、先日の麿会見の要旨見てて思ったのですが、どうも会見(ただし現状維持の時)で麿様が言ってることとと、たとえば先般の山口副総裁の広島での講演などもそうですが、ここで示されている議事要旨とかにあるような情報発信との間に微妙なギャップがあって、更に言えば麿がやりたくないでおじゃるとか言っても結局そうはなっていなかったりするとゆーよーな現実がありますと、総裁発言の重みが無くなるちゅうか発言がスルーされてしまい、金融政策のコミュニケーションポリシー的にどうなのかね、と思ったりもするのですが、もうちょっと色々と纏めてみたいと思います。


・金融政策運営について:札割れ対策関連

そもそも何で札割れ対策をしているのかという話から当たり前ですが始まります。

『このところ、応札額が未達となるいわゆる「札割れ」が固定金利オペ等において頻繁に発生し、基金の着実な積み上げに支障が生じていることについて、委員は、「札割れ」の発生自体は、短期の市場実勢レートが低下し、しばしば0.1%を下回るようになっていることによるものであり、日本銀行による強力な金融緩和が市場に浸透していることのひとつの表れではあるが、日本銀行の強力な金融緩和を推進する姿勢を明確にする観点からは、そうした状況のもとでも、資産買入等の基金の積み上げを着実に行っていくことがきわめて重要であり、そのための具体的な方策を検討すべきであるとの認識を共有した。』

>そうした状況のもとでも、資産買入等の基金の積み上げを着実に行っていくことがきわめて重要であり
>そうした状況のもとでも、資産買入等の基金の積み上げを着実に行っていくことがきわめて重要であり
>そうした状況のもとでも、資産買入等の基金の積み上げを着実に行っていくことがきわめて重要であり

・・・・・・・・まあ政策の建付け上当然ちゃあ当然の話なのですが、こちらに関しても先日の麿様会見におかれましては後半部分の「日本銀行の強力な金融緩和を推進する姿勢を明確に〜」以降の話を質疑応答ではしてませんでしたし、同日の別の質疑でも「そうした市場の状況や入札の状況等を点検しながら、資産買入等の基金の着実な積上げを進めていく方針です」と上記にあるような強い認識を示していなかったりする訳でして、この辺もさっきのコミュニケーションギャップになるのではないかとか思ったりして。


でまあ実施した措置に関しての部分はご案内の通りなので割愛しまして。

『この措置に伴う短期の市場金利への影響について、委員は、固定金利オペや補完当座預金制度の適用金利をこれまでと同様0.1%とし、これらの金利との間で金利裁定が働くことを踏まえると、市場金利が大きく低下するとは考えにくいとの認識を共有した。』

まあ結果そうなりましたが、買入額を増やしていくとその限りでは無いでしょうな。

『この間、一人の委員は、市場において一部で補完当座預金制度に基づく付利金利の引き下げの思惑が生じていることが「札割れ」につながっている面があり、今回の措置がこうした付利金利の引き下げ予想を強めることがないよう、適切な情報発信を行う必要があると指摘した。』

この部分はほほーと思ったのですが、わざわざ議事要旨にこのように記載しているという所には意味があると思われる話でして、つまり基金の積み上げを行う際にはその反対側サイドに超過準備が積みあがるのですが、その超過準備の積み上げをしやすくするという観点からすると付利金利の引き下げはその逆になる話ですよね、という事をちゃんと説明しておきましょうねという事をここに載せて、さらに強調しようということですな(^^)。まあ付利下げガーとか言ってる人たちは目をよく開けて読むべしという所ですな。

『こうした指摘を踏まえ、委員は、今回の一連の措置と補完当座預金制度に基づく付利金利との関係について改めて議論を行い、現在の0.1%の超過準備への付利と「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す」という金融市場調節方針の組み合わせのもとで、金融緩和効果が最大限発揮されるとの認識を改めて確認した。』

基金の積み上げがしやすくなるという話のような気もするが(^^)。

『固定金利オペについて、委員は、「期間3か月」と「期間6か月」をその時々の市場の状況に応じて柔軟に使い分けていくことが適当であるが、そのうえで、さらにきめ細かく資金需要に対応していく必要がある場合に備えて、「期間6か月以下」と広い表現で示していくことが適当との認識で一致した。』

せっかくですからもっと使い勝手の良い1か月位で一つお願いします。

『今回の一連の措置について、何人かの委員は、資産買入等の基金の積み上げをより着実に進めることに資するものであり、本年末に65 兆円程度、来年6月末には70 兆円程度まで積み上げていくとしている資産買入等の基金の積み上げは予定どおり達成することが可能であると述べた。』

基金国債買入札割れ攻撃ェ・・・・・・・・・


とまあそんな感じで、中盤以降読むべしという感じですが、前半の景気認識に関しては8月でどのように変わったのかを見ておくためにメモメモという感じでした。




2012/08/14

お題「総裁会見ネタ続きである」

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE87C05A20120813
銀行は五輪からフェアプレーを学ぶべき=英中銀総裁
2012年 08月 13日 19:26 JST

まあ何ですな、BOEが銀行叩きしてどうするという感じですが、先般の貸出促進に関するどう見ても窓口指導です本当にありがとうございましたとかいうのをみますに、資産買入やっても結局景気浮揚になってねえのでイラつき感高まるBOEが銀行に当たるの図なのかとか勝手な妄想を(^^)。


○その前にメモだけ

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240813.htm
国庫短期証券(第302回)の入札結果

(3)募入最低価格 99円98銭6厘5毛
(募入最高利回り) (0.1026%)
(4)募入最低価格における案分比率 1.6530%
(5)募入平均価格 99円98銭6厘8毛
(募入平均利回り) (0.1003%)

ということで2MTBの入札も0.10%乗せになりまして、今回は平均も0.10%乗せとなりました。まあ応札レートの刻みの関係でこうなった面があるので単純に「金利上昇」という話でも無いのですけれども、ただまあ2Mの方が3M対比で担保玉とかに使うというような使い勝手が悪いというのもありますし、この銘柄10月2日足なので足的に使いにくいというのもありまして、まあ平均0.10%ですかそうですかという所で。

GCレートが0.100〜0.105%の間で安定推移してるようですし、一方でより長い所では0.10%は強力ビットで基金国債買入は絶賛札割れとかになっているとなりまして、ほんのちょっとではありますが見事なインバートと中々お洒落ですねえという所ですが、これは先ほど申し上げた担保玉としての使い勝手的な話とか、運用期間をどこまでフィックスできるのかというような話にもつながる「モノとしての価値」という部分を反映しているのではないでしょうか、とか強引なこじつけ成分がかなーり入っていますがまあそんな事を思った昨日のひとときだったのでメモだけおいときますね。

ということで以下総裁会見ネタ。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1208b.pdf

○総裁会見ネタ:基金国債買入の応札下限金利に関連して

まあ当然ながらこれに関する質疑が少々あったのですけれども・・・・・・

『(問) 前回の決定会合で、札割れ対策として一定の政策を講じていたわけですが、その後も8月1日に長期国債の買入れオペで札割れが発生するなど、まだ問題があるように見受けられます。基金残高の積上げ目標を確実に実施していくために、追加的な札割れ対策を講じるお考えがあるかどうか、お聞かせ下さい。』

キタコレという感じですが。

『(答) まず、札割れが生じている背景ですが、今申し上げた通り、主要先進国の長期国債利回りが、欧州債務問題を背景とする「質への逃避」もあって低下しており、そうしたもとで、わが国の国債利回りは、日々の振れはあるものの低下しています。このように、国債利回りが低下する中で、国債の売却を控える先がみられたことから、8月1日にオファーした資産買入等の基金の長期国債買入れは札割れになったわけです。』

『金融機関の応札行動は、今申し上げたグローバルな金融市場の動向を反映した国債金利の動向に加えて、個々の金融機関のポートフォリオの内容や投資方針などにも依存して変化します。』

ということで特に欧州コア国の2年金利がマイナスとかになっているという辺りも背景になっているのはご指摘の通りなのですが、これがまた残念としか言いようのない事に、欧州コア国の2年金利マイナス状態って相変わらず続いている(昨日ちょっと見たらドイツはマイナス6bpだわオランダはマイナス1bpだわ)訳ですし、まあ0.10%のビットは強力ですしという状況。

じゃあ投資家が売りに行ったら0.10割れで売れるかというとショートカバーとか別の人の買いにでもぶつかれば別ですけれども、4ケタ億売りに行けば0.10%なので、まあそういう意味では日銀に売る人もいるでしょうというのが金曜のオペ結果でしたという話は昨日申し上げた通りでありまする。

『市場の状況は日々変動するわけですが、現状において基金の積上げが困難となっているわけではなく、長期国債買入れの下限金利撤廃が必要な状況ではないと考えています。いずれにせよ、日本銀行としては、基金の着実な積上げを通じて、既に発表している残高目標を達成していく方針です。』

>長期国債買入れの下限金利撤廃が必要な状況ではないと考えています
>長期国債買入れの下限金利撤廃が必要な状況ではないと考えています
>長期国債買入れの下限金利撤廃が必要な状況ではないと考えています

・・・・・・・・・・・いやあの市場の中の人として言わせて頂ければ麿様がそこまで力強く言い切る状況ではないと考えています(^^)という所なのですけれどもねえ。まあ調節担当部署におかれましては残り9.5兆円をどう積み上げるのか(昨日は単純に毎旬報告の数字から計算しましたが、実際には月初第2営業日に『日本銀行が保有する国債の銘柄別残高』というのがアップデートされまして、こちらを見ますと基金国債買入の中で年内に償還が来る銘柄(2年299、5年69、10年246までの各銘柄)の残高があたくしのリアル手計算によりますと4971億円ございまして、目標残高24兆円に対して今まで購入したのが15兆円なのですが、償還が5000億円来るという素敵な状況だったりするのでございます。ちなみに内訳は→http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/release/2012/mei1207.pdf
という事に対してより一層の工夫とやらが必要とか誠に同情の念に堪えません。

同情の念には堪えないものの、まあとっととバンザイしておけば良いのにと思うのでありますけれども、もしかしたら神風が吹いて市場金利が上昇してくれれば買入が普通に進むかもしれないと思って6週間粘ってみるとか言う光景を終戦記念日を前にして見ますと以下自主規制。


でまあこの買入下限ガーの話ですが他の質問でこんな話も。

『(問)(前半割愛)2点目は、札割れが相次いでいることについて、正直言って、金融政策に少し手詰まり感が出ているという感じもあります。例えば、最近、外債購入論などが出てくるのも、「ハードルが高いことは分かっているが、なかなか他に手立てが見つからない」という手詰まり感の反映ではないかと考えられます。包括緩和という枠組みに、少し手詰まり感があるのか、総裁の見解をお聞かせ下さい。』

『(答)2つ目の札割れの話ですが、これはある種の「手詰まり感」の表れとおっしゃったわけですが、この札割れという現象自体は、日本銀行による金融緩和がそれだけ強力に浸透していることの表れだと思います。例えば、3年以下の期間で、ECBの長期資金供給オペ(LTRO)による無制限の資金供給に対して、あれだけの金融機関が応募してきています。日本銀行も、残存期間3年以下の国債も買っていますが、時として札割れが起こることは、実は金融機関には、もう十分に資金があるということであり、それだけ日本銀行による金融緩和が強力だということの証だと思っています。』

でも「量を出す」というのをコミットしている訳でして、金利が下がって応札が割れているから問題ないとかいう話では無いと思うのですけれどもねえ、つーかその辺がどういう建付けになっているのかという話になった時に、どうも麿様におかれましては「金利が下がっているから良いじゃないですか何で無理やり買わないといけないのですか」という意識があるように受け止められそうな言い方をするのがアレ。

『その上で、「手詰まり感」とおっしゃったことの意味合いは、こうした金融環境が支出や投資活動の増加に繋がっていくことをどう実現していくのか、という点にあるように思います。それを「手詰まり感」という言葉で表現するのももちろん1つの方法ですが、私としては、それは「手詰まり」と考えるのではなく、前向きに捉え、成長力の強化にしっかりと取り組めば、経済が成長する余地が大いにあるということだと思っています。「手詰まり」と後ろ向きに考えるのはどうかと思っています。』

質問の趣旨を自分の都合の良いロジックに持って行く攻撃で凌ぐの巻でした(^^)。

でまあその後も質疑がありましてね。

『(問) 1つ確認させて下さい。下限金利の撤廃については、今、その必要はないとのことですが、資産買入等の基金の着実な残高積上げをしていく中で、また、強力な金融緩和をしていく中で、札割れが生じていった場合、やはり長国買入れの下限金利撤廃も辞さないということなのでしょうか。』

『(答) 決定会合では、毎回、市場の状況についても点検を行っています。繰り返しになって恐縮ですが、「札割れ」には、国際的な低金利環境のもとで、わが国の国債金利も極めて低い水準まで低下していることが影響しています。日本銀行としては、引き続き、そうした市場の状況や入札の状況等を点検しながら、資産買入等の基金の着実な積上げを進めていく方針です。』

「着実な積み上げを進める為に必要な事をしていきます」とでも言えば良いのにそう言わないのがこの正直者という感じですが、まあやりたくないというのは判った(別の質疑で長期金利の話をしているので、その辺とかとも総合して文脈読めばそうなるのだ^^)。

で、これまた直球の質問(^^)。

『(問) 札割れについて1点質問です。札割れの直接的な原因は、基金で買入れ対象としている残存期間1〜3年までの国債利回りが継続的に0.1%を下回っていることだと思います。この状態が継続するなら、オペの下限金利が設定されている限り、オペに札が集まることは今後も少し難しいと思います。現在の金利の状態が一時的とお考えだから、まだ札は入るとお考えなのでしょうか。今の状況について、総裁のお考えを教えて下さい。』

『(答) 金融機関がオペに応じるには、様々な動機があると思いますし、それに影響を与える1つの大きな要因がイールドカーブの形状なり、あるいは金利水準だと思います。足許で長期金利が低下するもとで、それが札割れを起こす1つの要因になっているとは思います。そういう事態が解消すれば、その分、オペへの応札が増え易いということは言えると思います。ただ、金融機関がオペに応じる理由がそれだけかというと、それ以外にもあると思います。従って、今申し上げた金利変動も含めて、マーケットの状況、オペに参加する金融機関の行動は、これからも注意深くみていきたいと思っています。』

・・・・・・・・・・・・・・えーっと、何を言いたいのか判ったような判らんような話ですが、やはりどうもワカランチ会長ですな。


○総裁会見ネタ:金融政策の限界的な話とか長期金利水準に言及というのはちょっと

欧州関連の質問に対する答えの中で聞かれても居ないのに金利水準に言及しているのでその前後も含めて引用。

『2つ目は、中央銀行のできること、あるいはできないこと、というご質問です。ご質問された方が引用された通り、ドラギ総裁も、「中央銀行のマンデート(責務)の範囲内で」とおっしゃっています。私も、ドラギ総裁の発言に共感します。中央銀行は、無制限で流動性を供給できるという大変大きな力を与えられています。この力を、どういう形で使っていくのかについて、各国の中央銀行法では――表現は少し違いますが――、金融システムの安定、物価の安定のために遂行していく、と規定しています。』

とまあこういうマクラの次に・・・・・

『現在の経済・金融環境に即して考えてみると、先進国の金利水準は、短期金利は概ねゼロ、長期金利も非常に低い水準にあります。もちろん、先程申し上げたように、長期金利については、留意事項はあります。長期金利について低下余地が全くないわけではありませんが、大きくみて長短金利とも非常に低い水準であることは明らかです。そういう意味で、金利低下による景気の刺激効果は徐々に限定的になってきているというのがエコノミストの間での共通の理解になっているように思います。』

まあ言いたいことは金融政策の限界ががががが的な話だとは思うのですが、少なくともバーナンキ議長にしろキング総裁にしろドラギ総裁にしろ、こういう話はトップが率先してしたら少なくとも損得勘定的にダメじゃんと思うのでありまして、正直なのはまあ個人的属性としては美徳ではあるのですが、政策をやっている本人がその政策の限界について話したらそれだけで政策効果が減殺されるじゃネーノとか思うのですけどねえ。そういうのは副総裁なり審議委員なりに喋らせておけばヨロシアル。つーか長期金利水準についての話とかして低下余地がどうのこうのとか言うのもどうかと思いますけどねえ。

『一方、金融システムの安定をしっかり維持することは、現在の環境のもとでも、非常に大事だと思っています。あえて申し上げると、今のような欧州債務問題、つまり財政と金融システムと実体経済の負の相乗作用が心配される時、金融システムの安定性が本当に維持されるかが懸念される時、中央銀行のこの面での機能――これは流動性供給ですが――は大事であり、かつ、できることです。』

『しかし、中央銀行のできないこととして、先程私が欧州について述べた様々な経済・財政の構造改革が挙げられます。これらは、しっかりと取り組んでいく必要があると思っています。流動性供給は、時間を買うことはできますが、本来必要となる構造改革の必要性をなくすものではありません。そのことについての認識を踏まえた上で、中央銀行として適切に行動していくことが大事だと思っています。』

結局ですな、最後の出来ない事の話はその通りで、こらまあ皆さん中銀の偉い人が仰せではあるのでございますが、前半の出来る事の説明の中で自ら限界について話したうえで、長期金利水準まで言及するというのは口が滑るというかこの正直者という感じですなあと。


○総裁会見ネタ:アラン・ブラインダーの「自分の尾を追う犬」ネタキタコレ

この質疑は中々のイイシツモンダナーである。

『(問) 少し抽象的な質問になるのですが、市場との対話について伺います。』

キタコレ。

『マーケットは、常に日銀に対して金融緩和的な政策を求めています。ただ、いちいちマーケットの注文に応えて緩和的な政策はできないわけです。』

まあマーケットったって別に短期市場的にはこれ以上緩和されてもはた迷惑なんですけどまあそこは措く。

『マーケットは、常に短期的な成果を求め、総裁から市場に対して非常に優しい言葉を求めているわけですが、総裁は往々にして、非常に正確に金融政策についてお話され、真面目に、真摯に話すことが、時に、マーケットからは「緩和的でない」と逆のベクトルで受け止められることもあるわけです。そういう市場との対話に関するジレンマについて、どうお考えなのでしょうか。』

ニヤニヤ(・∀・)

『時には、マーケットに対して、リップサービスのようなことも必要なのか、それとも、リップサービスあるいはマーケットの催促に応えて緩和的な政策を必要以上に打つことが、長い目でみると良くない結果を招くということなのか、その辺のジレンマについて、単に金融政策だけではなく、総裁としての発言の仕方も含め、どういうことをお考えか、お聞かせ下さい。』

どう見ても誘導質問です本当にありがとうございました。で、麿節を鑑賞しませう。


『(答) 中央銀行の金融政策は、物価安定のもとでの持続的な成長を実現していくことが目標です。そういう意味では、本質的に、時間の長さは中長期的なものです。一方、「マーケット」という場合、その参加者には、非常に短期のタイムスパンで投資をなさっている方もいますし、非常に長期のタイムスパンで投資をなさっている方もいます。従って、今おっしゃった「マーケット」とは、短期から長期、超長期までを含めた全ての市場参加者かというと、必ずしもそうではなく、実は、より短期の市場参加者を意味しているケースもあるのではないかと思います。いずれにせよ、市場参加者のタイムホライズンは、金融政策のタイムホライズンに比べ、往々にして短いということは、現実問題としてあると思います。』

この短期は短期市場じゃなくて説明にある通り「目先筋」という意味ですな。

『以前、この席でも申し上げましたが、かつてFRBの副議長を務めたアラン・ブラインダー氏が、中央銀行の金融政策の独立性について語った言葉があります。1つは「政治からの独立性」、もう1つは「市場からの独立性」、という2つのことを言っておられます。長い目でみた経済の安定を図っていくという中央銀行の行動原理と市場参加者の行動原理が、時として衝突することについて、経験に基づいた議論展開をされています。』

ブラインダーキター!

『私としては、何かリップサービスをするということではなく、中央銀行としての考え方をできるだけ分かり易く説明していくことが大事だと思っています。自分自身の説明の仕方について、さらにどうすれば中央銀行としての考え方が正確に伝わっていくのか、これからもしっかり考えていきたいと思っています。いつも記者会見で色々な質問を受けて、その後、反芻をしながら、後から、「こう答えれば良かったかな」と思うこともよくあり、これからも、しっかり考えていきたいと思っています。』

とりあえず「自分のやっている政策の効果を無くすような損な物言いをしない」というのだけ心がけて頂ければ宜しいと思いますけど、相変わらずなのは先ほどあたくしが悪態をついた通りでありまする。


○総裁会見ネタ:緩和的状況云々に関して

『(問) 声明文の中で、わが国の金融環境について、前月までは「緩和の動きが続いている」というところが、今月は「緩和した状態にある」と、現在形というか過去形に変わっています。これは、今までやっている緩和の効果がかなり出てきており、これ以上さらに70兆円まで基金残高を増やすことは、なかなかそこまでやる程は必要ないという意味合いが滲み出ているのでしょうか。』

せめて「これ以上の追加をやらない」位にしておけばよいのに・・・・・・・・

『(答) そのような意味合いは、全く滲み出ていません。本年末までに65兆円程度、来年6月末までに70兆円程度という基金残高の目標は、はっきり書いてあります。先程申し上げたことの繰り返しになりますが、基金残高の目標を達成していくという私どもの方針は全く変わっていません。』

という答えで逃げられるじゃないの〜と思うのですが、まあここの文言自体にはそれほど重大な意味は無いと思うのですが、今回の会見での基金国債買入に関する発言を見てると何かねえという気もせんではない所は若干ある。ただまあ普通に考えてここについてはそれほどナーバスにならなくても良いと思います。それよりも現状判断の中の重要項目3つを下げた方が大きいと思います。



○総裁会見ネタ:LIBORガーの話を少々

質疑応答の中でLIBORに関する質問が4つもありまして正直金融政策のインプリケーション的に無駄としか思えない質疑でして、そらまあメディア的には面白いネタなのかも知らんがあたくしと致しましてはんざりという感じですな。大体からして成長支援資金供給を何でまた延期したのかと小一時間。別にLIBOR使わなくたって「期間中のFRBのディスカウントウィンドウ金利」で何か問題あるんでしょうかと思いますというのは先日も申し上げましたが。

『(問) LIBORについて、前回の記者会見からお立場や見解は変わらないとは思いますが、改めて、不正操作が起きたこと自体、および、これから議論になっていく制度設計についてのご見解をお聞かせ下さい。』

『(答) LIBORは、金融市場における重要な金利指標であり、デリバティブ取引を含め、様々な取引がこの指標を用いて契約されています。この点、今回指摘されている金融機関内部での不正操作の働きかけは、金融市場の公正性に対する人々の信頼を失いかねない重大な問題であると認識しています。まずは、金融機関において、こうした不正を防止できるような体制を確保すること、そして、金利指標の作成に関わる諸機関が、指標の信頼性を担保できる枠組みを整えることが、金融市場への信頼確保にとって重要だと考えています。』

ここで話を終わらされるとアレなのですがまあ続きがあります。

『その上で、金利指標を考える際には、そもそも「金利の実勢」をどのように定義し、把握するのかという基本的な問題があると考えています。』

とまあ総裁も言ってますけど、これはまあ世界どこもそういう報道ですけど、銀行は悪の巣窟でケシカランみたいなステレオタイプがあって、不正ガーの話ばかりが先行して話が進んで行くからややこしい事になると存じます次第で、まず最初にこの部分から掘り下げて頂かないと建設的な話にならんと思うのですよね。ですからして中央銀行におかれましてはまずここから話をして頂きたいとか思うのですが、さっきのマクラにあるような話(元文章のデイリーメールまで読んでないからロイターがオモシロヘッドラインにしている可能性は無い訳でも無いが)になるとか何だかなあとか思うのでありました。

『例えば、リーマンショック後の国際金融市場あるいは足許のユーロの資金市場のように、市場の緊張度が高まり、取引が細っている状況では、そもそも「金利の実勢」というものを定義することが難しくなるほか、仮に取引が薄い状況において、実際の取引データに基づいた金利を市場実勢とみなす場合には、個別性が強くなり、指標性としての問題が生じる可能性もあります。』

その通りで。

『また、仮に LIBORの作成過程を見直す場合や、代替する指標を導入する時には、既存の取引への影響などについても考慮する必要があります。』

まあこれ自体はそらまあ膨大に契約書の書き換えとか当事者同士の合意とかそういう話にはなろうかと思いますが、本当にケシカランインチキレートでどうしようもない、というのであればそもそも取引当事者たちから「じゃあ別の物を使いましょう」という話になるのでございまして、そういう話は声は上がれども具体的に始まっている訳でも無い、という事は即ち「他に代わるに足るものが無い」という状況を示している訳でして、ケシカランから金融機関を叩いて溜飲を下げて満足満足というだけの話では無いとは思うのですけどね。


だから、ジャーナリスティックにこういう質問したくなる心境も判りますけれども、まあこういう論点では何も生み出さないだろうと思う質問が別の記者からありましてね。

『(問) LIBOR改革について伺います。不正がないようにしようとすれば、大きな制度の変更が必要かもしれない一方で、大きな制度変更をすると前の指標と新しい指標とで食い違いが生じ、デリバティブの世界に混乱が起きるかもしれないというジレンマがあると思いますが、総裁としてはどちらを重視されていますか。私は、デリバティブの世界の混乱に少々目を瞑ってでも、ちゃんとやらないと、二度と誰も信じてくれないと思うのですが、如何でしょうか。もう1つは、BISで秋にLIBOR改革の議論があるかと思いますが、おそらく英国や米国から提案があるかと思いますが、日本としては、それを聞いて吟味するだけなのか、それとも日本として具体的に提案する用意があるのかについて教えて下さい。』

まあ後半は兎も角として、「誰も信じてくれない」のであればさっさと別の信頼に値する指標を作れば良い訳で、何なら質問をしておられる記者様が所属する報道機関様(どちらさんだか知らんが)でそういうのを作れば物凄い素晴らしい商売になると思いますけれども、結局「ベストではないかもしれないけれどもまあベターなんでしょ」という結果がこうなっている次第なのでして、ちゃんとやりたいとか高い意識をお持ちであれば御社がやって、従来の指標に取って代わる事が出来るかどうかやってみれば宜しいのではないかと存じますけどねえ。破壊的な話をするだけなら誰でも出来る訳で、混乱しても良いからどうのこうのとか無責任でお気楽ですのう。

・・・・・・まあ何ですな、信用格付けの話にも似たような部分もあるかと思いますけれども、このリファレンス金利問題に関しては金融市場の構造変化によって、元々はバカスカ取引されていた金融市場における無担保物ターム物取引が、有担保物取引とか、短期物国債などの取引に代替されてしまうようになったという背景がそもそも論としてあるのでより話はややこしいという所ですかにゃ。


ということで引用大会で長くなってしまいましたorz



2012/08/13

お題「決定会合レビュー続きとか総裁会見とか」

五輪終了なのは結構ですが、月曜の朝っぱらから五輪閉会式を延々とライブ放送とかこちとら夏休みでも何でも無いので公共放送おめでてーなとかつい思ってしまうのはあたくしの修業が足りませんかそうですか。

○決定会合レビュー続きで肝心の話を忘れていたので

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120810.htm

CP等買入(資産買入等基金) 3,000 2012年8月15日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 5,000 2012年8月14日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 2,000 2012年8月14日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年8月14日 2012年11月15日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120810.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 4,000 4,000 0.000 0.000
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 1,050 1,050 0.000 0.000
共通担保資金供給(資産買入等基金)(8月14日スタート分) 41,485 8,014 19.3
CP等買入(資産買入等基金) 8,380 2,545 0.113 0.114 60.7

ということでオペがございましたが、金曜にあたくし決定会合レビューをした時に肝心の基金国債買入の買入金利下限をどうしたかのネタを華麗にヌルーしておりまして誠にあいすいません事でございまするm(__)m

んでまあご案内のように先週のMPMでは基金国債買入の応札下限金利を0.10%で維持したのでありますが、まー確かに札割れが1日オファー分で1回あったものの、直近ではその1回という事ではございますので、だからいきなり下限撤廃というのもっつーのは判らんでも無いので、まーシャーナイナイかなあという所です。

逆にですな、調節担当部署がMPMの前に堂々のオペオファーをして連続札割れを見せて「さあお願いしますもう無理ぽです」という風にやってくるのかなとも思ったのですが、何せ「頑張れ」と言われると限界まで頑張って三文惜しみの百失いというのが美徳とされますジャパンクオリティを体現したかのように基金買入オペのオファーをMPMの翌日に打ってくる所に味わいというか何というか。

いやね、翌日に打たないで多分一番このゾーンで業者の在庫があると思われる2年新発を入れられるタイミングで打てば良いのにとか思ったのですが、わざわざ14日渡しで2年新発が入らないタイミングのMPM翌日オファーというのが頑張ってるんだか頑張って無いんだか色々な意味でオモシロスなオファーではございますが、まあどのくらい札割れをするのかなあとか見ていたら、1年〜2年は5000億円のオファーに対してきっちり4000億円の応札、2年〜3年は2000億円のオファーに対して1050億円の応札とどちらも綺麗なラウンドの数字になり(前回は3594/5000と964/2000)どう見てもどこかの投資家札です本当にカムサハムニダという結果に。

いやね、このオペだとどうせ0.10%でしか売れない訳ですが、最早水準が見事なまでに0.10%から沈んだ状態の為、業者の場合は0.10%割れでも買う投資家が店頭にいる(超過準備付利と関係ない人がいるから)のでオペに応札する意味はなく、まあ投資家で何らかの事情でロットでこのゾーンを外したい(益出しとか金繰りとか)人で、まあ業者に4ケタ億円売りに行ってもどうせ0.10%ビットになるでしょうから(もっとしょぼいロットなら兎も角さすがに4ケタを0.10割れのビットは中々厳しいでしょ)、日銀オペのタイミングで売ればヨロシアルねという人がいたら札は入りますなあとか思った次第ですけど、金曜は短い方で4000億円も札が入ったのかあという所でありまする。

さてさて、7月末現在の基金買入の残高ですがこちらの(別表2)にございますな。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120731.htm/

「資産買入等の基金」の内訳(単位:千円)

長期国債 14,042,167,260

つーことで7月末で14兆422億円の買入残高になっていまして、8月の買入が金曜のオペも含めまして9608億円なので買入残高が15兆円になった訳ですが、12月末までに24兆円の残高にするのが目標になっている訳で、あと9兆円積まないといけないという中で市場環境が今の調子だと基金買入オペは札割れが続くのが必定、しかも次回のMPMは9月18〜19日でして、前回の基金短国買入の応札金利下限撤廃をMPMの声明文でアナウンスした手前、基金国債買入に関しても応札下限金利の撤廃をするとなればMPMの時にならざるを得ない(まあしらっと通常でやるという戦法はあるのですが、前回との整合性が取れないので日銀的には見苦しいにも程があり、たぶんそうはならない)のですが、この間に幾ら札が入ってくれるのか中々大変じゃネーノという感じです。

たぶん最大打って次のMPMまで5回とか(毎週打つという計算ね)ですけれども、まー目の子で応札が1回5000とかあったらオイシイ方だと思われまして、まあこの間に買入が出来るのが2兆あるか無いかとかそんなもんでしょ(下手したら1兆位じゃねえのと思いますけど)と思いますと、9月19日からの実質3か月で買入を7兆円以上積まないと目標行きませんがなとゆー計算になる次第。

てな事も考えますと、今回素直に下限金利撤廃しておいた方が買入も楽でしょうし、変に年末に向けてペースを加速させる必要も無いですし(余程の市場環境の変化が無い限り買入対象年限を伸ばすか下限金利を撤廃しない限りどう見ても24兆達成は無理でしょ)、何かここでスパッと割り切った方が後で加速買入して市場の需給を歪めるより良いと思ったんですけどねえ、というのを一応数字を出して計算してみました(^^)。


○さて総裁記者会見(時間が無いので最初だけで勘弁)

思いの外ツッコミ所がある会見ではある。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1208b.pdf

・最初の説明に往生際の悪さを感じたのは気のせいですかそうですか

冒頭の説明部分って普段はスルーするのですが、このところ微妙に声明文のニュアンスなどと説明のニュアンスがアレだったりするのが何ともであります。つまり今回の味わいは現状判断を引き下げた海外、輸出、生産についての説明が何とも。

『こうした決定の背景となる経済・物価情勢について、ご説明します。まず、海外情勢をみると、米国経済は、企業マインドなどに弱めの動きがみられる一方、個人消費が底堅い動きをみせ、住宅市場にも持ち直しの兆しがみられるなど、全体としては緩やかながら回復基調を続けています。他方、欧州経済は、停滞した状態が続いており、ここにきて家計や企業のマインドの悪化が周縁国からコア国へ波及しつつあります。中国経済は、金融緩和などの政策対応の効果が内需の一部にみられ始めていますが、欧州向け輸出の落込み等から、減速した状態がやや長引いています。このように海外経済は、緩やかながら一部に改善の動きもみられていますが、欧州債務問題の悪影響を主因として、全体としてなお減速した状態から脱していません。』


ちなみに前回の会見での説明はこちら。

『こうした決定の背景となる経済・物価情勢について、ご説明します。まず、海外経済をみると、NIEsやASEAN経済では、国内需要が堅調に推移しているほか、米国経済も、雇用者数の伸びがこの数か月間鈍化しているとはいえ、ガソリン価格の下落などを背景に個人消費が底堅い動きをみせ、住宅市場にも持ち直しの兆しがみられます。このように海外経済は、緩やかながら改善の動きもみられていますが、他方で欧州経済は停滞し、中国経済も減速した状態がやや長引くもとで、グローバルに企業マインドがやや慎重化しているなど、全体としてなお減速した状態から脱していません』(7月決定会合での定例会見から)

ということで、まあ海外の判断を声明文では下げたのですが、米国経済に関してもしぶとく個人消費が底堅いだの住宅市場の持ち直しだのという所を説明しておりまして、緩やかながら「一部に」改善の動きと判断を下げた割には説明の方が往生際が悪いと申しますか何と申しますかという感じ。

更に国内の説明ですが。

『次に、わが国の景気ですが、外需はやや弱めの動きとなっているものの、国内需要が復興関連需要などを背景に堅調に推移していることから、全体として「緩やかに持ち直しつつある」という前月と同様の判断をしています。』

と、まず総括判断を変えなかった方を先に説明した上で・・・・・・

『国内需要面では、公共投資が明確に増加を続けています。また、設備投資は、最近公表された各種のアンケート調査からも確認できるように、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にあります。個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にあります。』

とまあ強い話を持っていってですな・・・・・・・

『この間、輸出は、欧州向けの減少等から、持ち直しの動きが緩やかになっており、鉱工業生産も足許弱めとなっています。』

と、判断を下げた方は一言コメントという内容。ちなみに今日は時間の都合上そこまでネタに出来なくて申し訳ありませんが(既に時間切れ覚悟モードorz)、金融経済月報における概要部分での説明では、ちゃんと判断を下げた方、つまり輸出と生産を下げた所の説明を先に行っておりますので、まー公式見解的にはその辺の判断引き下げを目立つようにしているのですが、麿の説明はどう見ても判断下げを強調しないような文脈になっておりまして、まー「この正直者!」と申し上げたい所ではございますが、どこぞの逆さ絵おじさんや俊ちゃんのようにおとぼけをした方がお得ではないか(ちなみに会見のこの後でそのような質疑があって味わいがある^^)という気はするんですけどね。


・金融環境に関しての説明

『経済主体の支出・投資活動を支える金融環境は、日本銀行の強力な金融緩和を反映して緩和した状態にあります。すなわち、コールレートが極めて低い水準で推移する中で、企業の資金調達コストは、貸出金利を中心に緩やかに低下しています。CP市場では、良好な発行環境が続いています。社債市場の発行環境についても、これまで起債が見送られてきた電力債も相次いで発行が再開されるなど、総じてみれば、良好な状態が続いています。また、企業からみた金融機関の貸出態度や資金繰りなど企業を巡る金融環境指標は、2000年以降の平均を上回る水準まで改善しています。』

という事なのですが、まあそれはそれで判るのですが、金沢の金融経済懇談会で森本審議委員が円滑化法案の期限切れ以降の中小企業の資金環境に関しての話を聞いてきたばかりで、その話を会見で説明したばかりでこれですかそうですかというのは金曜にも申し上げた通り。これまた当然ながら後に質問があります。


・でまあ質問の1発目も海外経済である

『(問) 海外経済の下振れで日本の輸出回復の時期が後ずれするのではないかとの見方がありますが、総裁の見解をお聞かせ下さい。』

『(答) 海外経済あるいは輸出の動きですが、実質輸出を四半期ベースでみると、4〜6月は3四半期振りの増加となりました。もっとも、月次でみると、5、6月と2か月連続の減少となっており、こうした動きには、欧州債務問題の悪影響を主因とした海外経済の減速が影響していると考えています。』

『地域別にみると、欧州向け輸出は、債務問題の影響を背景に減少しているほか、米国向けは、自動車関連の在庫復元の動きの一巡もあって増勢一服となっています。また、中国向けについては、中国の欧州向け輸出の弱さも間接的に影響し、低い伸びにとどまっています。』

ほう。

『先行きの輸出を規定する最も大きな要因は、言うまでもなく海外経済の動きです。この海外経済の先行きを展望すると、欧州経済は、停滞した状態が暫く続くと考えられます。一方、米国経済については、いつも申し上げている通り、高い成長は期待できないと考えていますが、家計のバランスシート調整が徐々に進捗し、緩和的な金融環境にも支えられて、回復が続くと考えられます。また、中国経済についても、目先、成長ペースが鈍化した状態は続くと考えられますが、その後は、インフレ率の低下に加え、金融緩和やインフラ投資の前倒しなどの政策効果が次第に発現し、かつてのような2桁成長といった高成長ではないにせよ、成長ペースはそれなりに高まっていくと考えられます。このように、海外経済が減速した状態を脱していくにつれて、わが国の輸出は緩やかに増加していくと考えられます。』

まあ確かに先行き判断は変えていないとは言え説明に往生際の悪さ感が漂うのですな。

『もっとも、先程申し上げた通り、欧州情勢の不安定な動きが続く中で、米国経済や中国経済の回復力については、回復の時期を含めて不確実性が小さくありません。日本銀行としては、こうした不確実性も十分認識しながら、先行きの経済・物価動向やリスクの点検を丹念に行っていく方針です。』

まあ何ですな、こういうリスク認識に関しても、ど〜も冒頭部分での往生際の悪いテイストな説明を先に聞かされますと、どうしても棒読み的な印象を受けてしまう訳でして、まあ残り1年でいまさら矯正するのも無理ゲーでしょうが、同じ発言でもそこまでの話の持って行きようでもうちょっと何とかなるような気がするんですけどねえ。

・・・・・・と、ここまで書いたところで時間がががががにつき、超中途半端な所で明日に続くでどうもすいませんすいません。土日に更新すれば良かったですorz




2012/08/10

お題「決定会合レビューである」

昨日のMPMの結果が出た後ドル円が15銭位円高に振れて戻ったのですが、その15銭程度振れた所でブルームバーグが「追加緩和見送りで円高に」というフラッシュを打っててクソワロタです。

もうね、一瞬15銭振れるとか誤差の範囲内だろと思うのですが、とにかくブルームバーグニュース的には完全にテンプレ状態というか思い込み状態になっていて、とにかく日銀の現状維持は必ず円高という固定観念に凝り固まっておられるようでございまして、為替ちゃんが少しでも動いたら予定調和のヘッドラインを打とうとしているというのがよく判る態度でございまして、こういうのを「結論先に有りき」というのですなあと思うのでありまして、関係者一同の猛省を促したいものであると思うのでした。

まあそれはそれとして今回もまた微妙な所に微妙なアレのある内容ではありますた^^;


○声明文:現状判断の総括と先行き判断を変えずに重要需要項目の現状判断を下げるという器用な事を

声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120809a.pdf(今回:日本語版)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120809a.pdf(今回:英語版)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120712.pdf(前回:日本語版)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120712a.pdf(前回:英語版)


・海外経済の判断引き下げ

まずは海外経済に関するパラグラフ。

『海外経済は、緩やかながら一部に改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。国際金融資本市場では、欧州債務問題を巡る懸念等から、神経質な動きが続いており、当面十分注意してみていく必要がある。』(今回)

『海外経済は、緩やかながら改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。国際金融資本市場では、欧州債務問題を巡る懸念等から、神経質な動きが続いており、当面十分注意してみていく必要がある。』(前回)

ということで「緩やかながら改善の動きもみられているが」の中に「一部に」が入るというヘッジクローズてんこ盛り状態となっておりまして、そこまで入れるかという感じですが、これが英文になると最早何が何だかワカランチ会長でして、最初の一文に対応する所だけ引用比較してみましょう。。

『Overseas economies have shown moderate improvement, though limited in scope; on the whole, they still have not emerged from a deceleration phase.』(今回)
『Overseas economies have shown some, albeit moderate, improvement, but on the whole still have not emerged from a deceleration phase.』(前回)

・・・・・・・・いやね、あたしゃ英語が得意な訳では無いのでよく判らんのですけど、この今回の表現って何か普段中々見ない英語になっているように見えるんですが、こういう言い回しって普通に使うものなのでしょうかねえ。


・景気総括判断は変化なし

『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(前回)

ということでこちらは変化が無いのですけれども・・・・・・


・輸出と生産という大物の現状判断が下がりました

下がりましたっつーよりは日銀の景気判断がそもそも市場の見方対比強気過ぎにも程があっただろというのはあるのですけれどもね。

『公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(今回)

『公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(前回)

ということでここまでは同じです。

『輸出は持ち直しの動きが緩やかになっており、生産も足もと弱めとなっている。』(今回)
『輸出にも、持ち直しの動きがみられている。以上の内外需要を反映して、生産は、振れを伴いながら、緩やかに持ち直しつつある。』(前回)

ということで輸出と生産という需要項目の大玉の現状判断が下がったのですが、この部分の英文表現がどうなっているのかを確認。

『The pick-up in exports has moderated, and the recent reading on production has been relatively weak.』(今回)
『Exports have shown signs of a pick-up. Reflecting these developments in demand at home and abroad, production has started picking up moderately with some fluctuations.』(前回)

こちらに関しては、英文の方を見ると更に判りやすいですけれども、ヘッジクローズてんこ盛りだった表現がすっきりとしたという感じで、まあそういうと悪態になりますが、往生際の悪い判断をしていた所をやっと成仏しやがったかおせーよという感じではございます。


・何でここで金融環境の表現を変えるのかが意味不明

次の部分は声明文を見ていて「はて??」と思う所。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『こうしたもとで、企業の業況感をみると、内需関連業種を中心に緩やかに改善している。この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。』(前回)

企業の業況感云々は日銀短観を踏まえた部分ですのでまあ良いとしまして、今回何故か金融環境の表現が変化。でまあこれまた英文と比較。

『Meanwhile, financial conditions in Japan are accommodative.』(今回)
『Meanwhile, financial conditions in Japan have continued to ease.』(前回)

ということで、延々と「have continued to ease」だったのが今回急に「accommodative」に変化しております。

ちなみにこの緩和が続く云々ってそもそもはリーマンショック後に企業金融オペだのCP買入だの導入してその効果が出てきてCPレートとかが思いっきり低下した辺りの2009年5月から6月に掛けて「金融環境をみると、ひところに比べて緊張感が後退しているものの、なお厳しい状態が続いている。」→「この間、金融環境をみると、改善の動きがみられるものの、全体としては、なお厳しい状態が続いている。」となってから延々と改善の動きが続いている形になり、震災で一旦それが止まったものの、(なので2011年3月と4月はその表現が無い)震災の影響が緩和された2011年5月以降にまた改善の動きという話になっておりましたので、まあ確かに延々と引っ張り過ぎというのはその通りではあります。

ただですね、「緩和した状態にある」と表現を変えたとなりますと、「ああもう追加の緩和をしたくないのね」というような受け止め方をされ兼ねない(というのは日銀と申しますか麿の日頃の言動も要因としてある訳で、これがFRBだと別に気にされなかったりすると思うのですけれども・・・・・)訳ですし、何でこのタイミングで・・・・と思う所ですの。

まあ特段の政策意図は無いと思いますし、おそらくは足元での短い所の市場金利の低下(を受けて基金短国買入の買入下限レートを撤廃したのですし)を受けて「もう散々金利が下がりましたがな」という認識を示したとか、短観などの資金繰り判断関係とかが相変わらず良いとかありますし、6月の金融経済月報でも金融環境に関する部分で、従来まで入っていた「実体経済活動や物価との関係でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面がある」というのを削除したりして、布石は打っていたのですけれども、景気判断の中で現状認識の需要な需要項目に関しての引き下げを行いながら「追加金融緩和をやりたくないんですねえ」的な受け止めをされやすい表現変化っつーのも何かチグハグな希ガス。

あとね、あたくし的にここの表現を見た時に思ったのは、ちょうど昨日ネタにした森本審議委員の金沢での講演&会見における、会見でのこの発言なんですよ、ということで再掲。

『中小・零細企業の金融の安定という観点では、行政でもファンドを創設するなど対応を進めておられますが、来年3 月の金融円滑化法の終了に伴う中小・零細企業への影響を懸念するご意見も多数頂戴しました。』(8月2日金沢での森本審議委員講演後記者会見より)

・・・・・・・・何かね、審議委員が地方巡業して折角こういう声を拾ってきているのに、その越えを拾った直後の金融政策決定会合声明文で金融環境についての認識を「have continued to ease」から「accommodative」に変えるってのがあたくし的には何だかな感がするのでございまして、金融経済懇談会を何のために実施しているのよと小一時間問い詰めたいと思ったのは細かいいちゃもんですかそうですか。

それに山口副総裁の広島での金融経済懇談会でも為替円高の影響についての意見が多く聞かれた(貸出とかの方については言及は無かったようですが)とか有る訳で、そういう地方経済における厳しい認識を聞いてきました的な会見を連発してみた後にこれというのも何ですかねという違和感がございます。

とまあ、おそらく特段の政策意図も無い所にこれだけ延々と悪態をつかれて日銀的にはポカーンという感じかもしれませんが、まーあたくしの周囲限定の話ではありますけれども、ここの金融環境に関する文言には引っ掛かる人が結構多かったという局地的なお話も付言させて頂きたく存じますです、はい。


・物価に関しては変化なし

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

まあこれは変わる変わらんという話では無いですから。


・先行き見通し、リスク認識は変わらず

全文一致なので今回分を引用するのみで勘弁。

『先行きのわが国経済については、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。』(今回)



・金融政策の決意表明みたいな部分にも微妙な変化があるのですが

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。』(今回)

という所までは前回と表現は同じです。

『こうした認識のもとで、日本銀行は、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進している。今後とも、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて間断なく金融緩和を進めていく。』(今回)
『こうした認識のもとで、日本銀行は、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進している。』(前回)

ということで、今回「今後とも、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて間断なく金融緩和を進めていく」という一文が入りましたのがほほうという感じです。

日本語版の方を見ますと、これは最近よく説明している「残高を積み上げて行くから毎月緩和を追加しているんですよ」という部分を明文化することによって「毎月毎月追加緩和見送りとか報道するんじゃねえよ」てなメッセージを送りたい、というのはあるのかなあと取れますなとゆー所でして、緩和継続しています的なアピールモードに見えます。


でまあこの英文を見ます。

『Based on this recognition, the Bank has been providing support to strengthen the foundations for economic growth and pursuing powerful monetary easing. It will proceed with the monetary easing in a continuous manner by steadily increasing the amount outstanding of the Asset Purchase Program.』(今回)

『Based on this recognition, the Bank has been providing support to strengthen the foundations for economic growth and pursuing powerful monetary easing.』(前回)

ということで、前半の「pursuing powerful monetary easing」に関する表現は相変わらずの現在完了進行形で、2月の物価安定の目途を出した時の「The Bank will continue to pursue powerful monetary easing and will also engage in efforts to support strengthening the foundations for Japan's economic growth as a central bank.」が5月に引っ込んで、6月から現在完了進行形で復活するという攻撃は継続。

んでもって今回入った一文は「It will proceed with the monetary easing in a continuous manner by steadily increasing the amount outstanding of the Asset Purchase Program.」という事で、まあ基本的にはさっき話をしたアピール系の表現に見えますけれども・・・・・・

ただまあ何ですな、これがもしFRBの声明文だったりしますと、APPの残高枠そのものを拡大するという決意表明をしていると読まれそうな表現でもございまして(日銀だとまあ日頃の言動がアレなのでそういう解釈をされにくいと思う)、ここの文章を見た海外勢がどう解釈するのか聞いてみたいなあと思います。中々味わいのある表現が入ったなと思いましたよ。


で、その次。

『日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく方針である。』(今回)
『日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく。』(前回)


『The Bank continues to conduct monetary policy in an appropriate manner. The Bank will also do its utmost to ensure the stability of Japan's financial system, while giving particular attention to developments in global financial markets.』(今回)

『The Bank continues to conduct monetary policy in an appropriate manner. The Bank will also do its utmost to ensure the stability of Japan's financial system, while giving particular attention to developments in global financial markets.』(前回)

「方針である」になったのですが英文は同じですな。


ということで、英文も読みながら声明文を味わってみましたということで。


○これは微妙にアレな決定ではないかと

金融政策決定会合の声明文とは別に(当日の午後3時ごろ)出たのですがこんなのが話題になってました罠。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120809a.pdf
成長基盤強化支援資金供給(米ドル特則)の第1期貸付の実施延期について

『成長基盤強化支援資金供給(米ドル特則)の第1期貸付については、貸付実施の通知日を本年8月30日、貸付日を本年9月6日、返済期日を2013年9月6日、貸付利率を米ドルの6か月物LIBOR(英国銀行協会が公表するLondon InterBank Offered Rate)として実施することとしていました(注)。しかしながら、LIBORの改革を巡り関係者の間で議論が行われている情勢であることに鑑み、実施日をいったん延期することが適当と判断しました。』


ということなのですが、何かわざわざLIBORに関する騒ぎを大きくしてどうすんのという感は拭えないお話でして、LIBORがそういう議論になっているというのであれば、OISでも何でも使って日銀がレートを決めて実施すれば良いだけの話じゃないかと思いますけど。つーかこれって成長基盤強化支援という日銀の建付け的に重要な施策のはずなのに、金利が決められない如きで半月以上先の話を延期するとかちょっとよく判りません。

つーか成長基盤強化をしたいんって話で実施するんですから別にまあサービスレートでも良い訳で、レートをFF誘導目標のレンジの上のレートの0.25%にしたっていいですし、ディスカウントウィンドウのレートにしたっていい訳で、何でここで「延期」という選択肢になるのでしょうかねえ・・・・

と思いつつ、ドル資金供給オペの3か月物金利って何で決めてたっけと思って見たら・・・・
http://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/ope_h/opetori13.htm/

『(B) 固定金利方式
ニューヨーク連邦準備銀行が貸付期間に応じたドル・オーバーナイト・インデックス・スワップ市場における実勢金利を勘案して指定する利率を貸付利率とする方式。 』

うむ、そういやNY連銀が決めたレート(ドルスワップのレート)を使ってましたな^^;





2012/08/09

お題「森本審議委員講演&会見/改めて3党合意のようですな/その他少々」

あたしゃ別にこの商品のユーザーではないのでどうでも良いですけど、この名称を変更するのは物凄い違和感が(海外で売るのに「マイルド」というのがマズイんだろうなあと思うのですけど、海外物だけ別の名前で売れば良いんじゃネーノと素人的に思うのですが)。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL080H2_Y2A800C1000000/
「マイルドセブン」、ブランド名を「メビウス」に
2012/8/8 14:20

#つーかメビウスってどこぞのPCにあったような気がするんだが・・・・・


○森本審議委員講演&会見から少々

まずは講演から
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120802a1.pdf

・講演は概ね執行部見解ベースですが

基本的に講演で示されている経済の見立ておよび景気見通しに関しては執行部見解のベースになっているのでそんなに変わった話をしている訳でも無いのですけれども、冒頭の所とかはふーんという感じです。つまりですな、

『まず、わが国の経済を左右する国際金融資本市場や海外経済の動向についてお話しさせて頂きます。』

って最初にありまして、まあそれ自体は普通の話ちゃあ普通の話なので森本さんがそこまで意識しているのかどうかはワカランチ会長ではあるのですが、内需が従来想定より堅調だから景気は今の所オンラインという話に対して、先行きに重要なのは海外要因、というのを強調しているのは、まあ海外が想定よりも今の所弱めに来ているという日銀見解と合わせますと「先行きは楽観してはいけません」という結論になる筈なんですよね。

先般の山口副総裁講演でも同じような感じで「日本経済の持続的な回復には輸出の拡大を起点とした循環メカニズムが働く必要がある」という指摘をしていまして、そういう文脈からややハト成分を感じたという事を申し上げたと思いますが、森本さんの今回の講演でもまずは海外要因の話をしておりまして(それはそれで現在の注目度からしたら当たり前ですけど)、同じように若干ハト的な物を感じる次第。


ということで海外の話ですが、まあ話自体はそんなに変わった話はしていませんけど折角なんでちょっとだけ引用。

『ギリシャでは新政権が発足し、6 月末の欧州首脳会議では、今後の成長戦略が謳われたことに加え、ESM を使った銀行への直接資本注入も視野に入れて、汎欧州の金融監督制度の創設を検討していくことなどで合意しました(図表2)。こうした合意を受け、スペインの金融システム不安と政府債務の増大の悪循環に歯止めが掛かるとの期待などから、市場は一旦落ち着きを取り戻しましたが、これも長続きはせず、同国の10 年物国債利回りは7%前後で推移しています。一方、銀行間の資金調達市場は、欧州中央銀行(ECB)による潤沢な資金供給等により、本年入り後は総じて安定した状態が続いています(図表3)。しかし、欧州の財政・経済構造改革や金融システム面の対応を巡る不確実性の解消には今暫く時間を要するものと思われます。欧州債務問題の展開には、これからも十分な注意が必要です。』

ということで、まあこれはそうですねという感じですな。何だかんだと言って欧州大騒ぎにはなるものの重大インシデントにならないのは銀行のファンディングが回っている所でして、こらまあ日本のかつての流れもそんな感じでしたが、とりあえずリクイディティーさえ回っていればソルベンシーがアレで飛ぶケースがあっても、ある程度の予見可能性がありますからして、市場参加者的にはいきなり不意打ちの闇討ち食らって大騒ぎ、という事にはならないっすよねとゆー事で(ソルベンシーが連鎖したらダメですけどね)。


海外経済情勢に関してもそんなに変わった話では無く。

『そうしたもとで、海外経済には緩やかながら改善の動きもみられていますが、全体としては減速した状態から脱していません(図表4)。』

では地域的にどうなのかという話ですが。

『地域別にみると、欧州経済については、輸出に持ち直しの動きがみられますが、域内需要の低迷を背景に停滞が続いています。周縁国を中心に、財政緊縮化への取組みや金融環境の悪化に伴う実体経済の下振れが、財政や金融機関の財務状況の一段の悪化に繋がるという悪循環に陥っています。(途中割愛)また、周縁国経済の悪化はコア国の企業マインドにも影響を及ぼしており、当面は欧州経済の停滞が続くとみられます。』

『次に米国経済は、基調としては緩やかな回復が続いています。個人消費は、ガソリン価格下落に伴う実質購買力の増加もあって底堅く推移し、住宅市場にも持ち直しの兆しが窺われます。また、設備投資は、足許、底堅い企業収益を背景に増加傾向にあります。ただ、企業マインドに弱めの動きがみられるほか、雇用者数の増勢はこのところ鈍化しています。さらに、バランスシート調整圧力が残る中で、欧州債務問題の影響や、来年初から予定されている財政支出削減や年末に期限切れとなる減税の取扱い等の、いわゆる「財政の崖」を巡る不確実性により、家計や企業は支出スタンスを積極化させ難いとみられます。これらの点を勘案すると、米国経済の回復は先行きも緩やかなものになるとみられます。』

『この間、新興国・資源国経済をみますと、成長ペースが鈍化した状態から脱していませんが、総じてみれば内需が堅調に推移するもとで高めの成長を維持しています。(途中思いっきり割愛)先行きは、ブラジル等その他新興国も含めて、インフレ率の低下に伴う実質購買力の回復や緩和的な金融環境のもと、成長率は次第に高まっていくものとみています。』

ということで、概ね執行部見解ペースと同じではないかと思います。


でまあ日本経済に関してですけど。

『日本経済は、リーマン・ショックからの回復途上において、東日本大震災により再び大きく落ち込んだ後、昨年秋口までは着実に持ち直してきましたが、その後は、海外経済減速や円高の影響等から、本年春先までは全体として横ばい圏内の動きとなりました(図表6)。このところは、復興関連需要や個人消費等の国内需要が堅調に推移しているほか、輸出にも持ち直しの動きがみられ、全体として緩やかに持ち直しつつあります(図表7)。』

『不確実性は大きいですが、6 月の日銀短観や地域経済報告でも確認されましたように、わが国経済の先行きは、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。こうした内外需要のもとで、生産・所得・支出の前向きな循環メカニズムが徐々に強まることから、2012 年度全体をみると、比較的高い成長率となることが予想されます。2013 年度については、復興需要による景気押し上げ効果が徐々に減衰していくことなどから、成長率は、2012 年度対比では幾分鈍化しますが、海外経済が全体として高めの成長を続けるもとで、堅調に推移するものと考えられます。』

という話なのですが、しかし前半の海外見通しって色々な置きを入れている中での強気見通しなのになんでこうなるんでしょというのが毎度の感想ではございます。

で、リスク要因は欧州債務問題、というのも同じですので面倒なので割愛。


・会見では執行部見解ベースだけでは無い部分もあったりする

でもって会見ですが
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1208a.pdf

『(答) 本日の懇談会では、石川県の各界を代表する方々から、当地経済の現状や今後取り組むべき課題のほか、私ども日本銀行の金融政策運営に対して、大変貴重なご意見・ご要望を数多く頂戴し、極めて有意義な意見交換ができたと感謝しています。ご出席頂いた各界の代表者の方々に改めてお礼を申し上げたいと思います。ご質問の懇談会の内容ですが、席上頂戴したご意見・ご要望を踏まえた私なりの印象を申し上げると、大きく3 点にまとめられます。』

普段は最初の所をあまりネタにしませんけど今回は森本さんのまとめがほほうという感じで。

『まず第1 に、製造業を中心に、欧州債務問題など海外経済減速や為替円高による影響を懸念されるご発言のほか、建設関連、個人消費関連サービスなどでは、価格競争が一段と激しさを増しており、中小・零細企業の業況は厳しいとのご指摘を頂戴したところです。』

ということで、こういう厳しい認識を一発目にカマすというのはまあ執行部見解ペースの講演のトーンとはまた微妙に違う感じがしましてほほーって所。

『中小・零細企業の金融の安定という観点では、行政でもファンドを創設するなど対応を進めておられますが、来年3 月の金融円滑化法の終了に伴う中小・零細企業への影響を懸念するご意見も多数頂戴しました。』

また延長になるんですかね。

『海外経済情勢をみると、欧州債務問題を巡り、不透明感の強い状態が続いています。また、欧州以外にも世界経済には不確実性が存在しているだけに、海外経済情勢および為替円高が及ぼす影響については、日本銀行として注意深くみていく必要があると認識しています。』

つーことで、この部分で為替円高という言葉が2回出るでござるの巻となっておりまして、先般の山口副総裁の講演後会見でも(広島での講演でしたからこちらも輸出産業が集積してますし)円高の悪影響についての指摘をしていまして、どこぞの麿のように円高は内需には好影響もとかいうような事実ではあるがノンキナトウサンな話をしない所が目に付くなあとか思っているあたくし。

『第3 は、私ども日本銀行の金融政策運営に対するご要望です。これからも経済物価情勢を丹念に点検しながら、適切な金融政策運営に努めていきたいと考えていますが、そのうえで現在の最大のリスクである欧州債務問題を始めとする海外経済減速への対応については、日本銀行としても注意深くみていく必要があるということを改めて切に認識しました。また、地域の実情をしっかり踏まえ金融政策運営に引き続きあたって欲しいとのご要望を数多くの方から頂戴しました。』

つーことで、この辺りもまあ講演よりはハト成分あるかなと思った所ですが、若干あたくしの深読みのし過ぎかもしれませんのでそこは一つよろしゅうに。


・円高に関連して更にこんな質問が

『(問) 先程の審議委員のお話では、為替円高について、日本銀行として特に注意する必要があるとのことでしたが、先月末よりは幾分か円安方向となっているものの、為替円高は徐々に進行していると思います。特にユーロに対して円高の状態となっていますが、こうした状況を踏まえて、以前よりさらに為替に注意しなければならないというお考えでしょうか。また、先日、山口副総裁が、為替円高が日本銀行のシナリオの大きなリスクになる場合、金融緩和を躊躇しないと発言されましたが、そうしたレベルになりつつあるのかどうか、森本審議委員のご見解をお伺いします。』

『(答) 為替については、申し上げるまでもなく、内外金利差や経常収支の状況など、様々な要因に左右されます。このところの為替円高は、特に欧州債務問題等を背景とした投資家のリスク回避姿勢が強まる中で、相対的に安全とみられている円が買われたことによる面が強いのではないかと認識しています。ただし、水準自体については、具体的にコメントすることは差し控えさせて頂きたいと思います。』

とまあここまでは執行部ベースでもこう来るコメントですが。

『いずれにしても、こうした為替円高は、海外経済の先行きを巡る不確実性が大きい今の局面においては、輸出や企業収益の減少、あるいは企業マインドの悪化などを通じて、日本経済にマイナスの影響を及ぼす可能性がありますので、これについては特に注意する必要があると思っています。これは従来からも注視してきたところですし、これからも丹念に経済・物価情勢を点検して、その影響をみていきたいと考えています。』

つーことで、山口副総裁ほどのサービス成分はありませんけれども、やはり為替円高の悪影響を強調しておりまして、ややハト成分という所でよろしいのではないかと認識します。


・基金国債買入の下限撤廃に関して

『(問) 少し技術的な話になり恐縮ですが、昨日実施した資産買入等の基金を通じた長期国債買入れオペで札割れが発生しています。7 月の金融政策決定会合で、札割れ対策を打ち出したばかりですが、こうした札割れが長期国債の買入れを進めるにあたって支障となり、年末までに65 兆円、来年6 月末までに70 兆円という目標達成が難しくなるとみていらっしゃるか、教えて下さい。また、短期国債等の買入れについて、下限金利を撤廃されていますが、今後、長期国債の買入れについても、下限金利を撤廃するという選択肢についてどのようにお考えか、お聞かせ願います。』

『(答) 私どもは強力な金融緩和を推進するということで、資産買入等の基金について着実に買入れを進めていきたいと思っています。ご質問を頂いた長期国債の買入れは、昨日札割れが生じたわけですが、これについては従来から申し上げている通り、強力な金融緩和の効果が顕れている証左であると思っています。』

でまあこの続きが当然あるのですがその前に挟みますと(^^)、現在の包括緩和政策における資産買入等基金の位置づけが微妙に曖昧なのが調節を実施する現場に対する皺寄せになっている、というのがあって、そもそも包括緩和は「量」で勝負しているのか「金利」で勝負しているのかがさっぱりワカランチ会長というかコウモリ状態で曖昧にしているというのかというのがございますからねえというお話ですが、その点は森本さんも以下のように説明。

『ただ、そうは言いながらも、私どもとしては、金融緩和を着実に進めていくことが大事であると思っており、運用面でも色々工夫を加えながら、買入れをしっかりやっていくということで進めてきています。』

つまり、そもそも包括緩和の枠組みという中では金利(およびリスクプレミアム)に働きかけるという建付けになっていて、基本的には金利で勝負なのですけれども、実際問題としてはその買入基金の見せ方が量で勝負という形になっているので、こういう複雑骨折のような事が起きて、調節担当部署が色々とオモシロオペを実施しないといかんとゆー素敵な事態になっているのでございますけどね。

>運用面でも色々工夫を加えながら
>運用面でも色々工夫を加えながら
>運用面でも色々工夫を加えながら

・・・・・・・どう見ても調節担当部署にマルナゲータです本当にありがとうございました。

『この積み上げに支障はないのかという点については、昨日の結果はそういうことですが、この状況をよくみながら、市場で資金余剰感がある中で、どのような資金ニーズがあって、今後どのように動いていくかについて、もう少しみながら色々とやっていく必要があるのではないかと思っています。』

でですな、この後でちょっとだけメモ書きしておきますが、昨日の債券市場で2年カレント物の利回りがサクッと上昇しまして、0.095%とかの出合になっていたようでございまして、そんなこんなでこの辺の需給に変化が起きると下限撤廃に関して今月は様子見して粘る、というような話になるかもしれないなあとか思うのでありまして、この感じだと今月は下限撤廃スルーかもしれませんな。

まーただのテクニカルな問題だし、下限撤廃したからと言って金利が本当に低下するかと言えば、やはり超過準備付利金利というのが作用する、という方が大きいのでございまして、需給が極端に変わらなければ下限撤廃しても極端に市場が変わる訳では無いっすし、ちょうど海外中銀が様子見モードになっている時なので、テクニカルな変更如きでも大好感してくれるかもしれないとか思いますと(^^)、今回(というか今日ですが)下限撤廃してもエエンチャイマスカという無責任な見解があたくしの無責任見解。


つーことで森本審議委員ネタが遅くなりまして誠に申し訳ないm(__)m


○その他相場関連雑談

・3党合意の合意キター

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120808-OYT1T01187.htm
法案成立の暁、近いうちに信を問う…3党首合意

『野田首相(民主党代表)と自民党の谷垣総裁、公明党の山口代表は8日夜、国会内で会談し、社会保障・税一体改革関連法案の早期成立と、法案が成立した暁には、近いうちに国民に信を問うことで合意した。』(上記URLより)


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120809-00000014-mai-pol
<消費増税>10日成立、3党首合意 秋解散の見方強まる
毎日新聞 8月9日(木)2時31分配信

『野田佳彦首相は8日夜、自民党の谷垣禎一総裁と国会内で40分間会談し、消費増税を柱とする税と社会保障の一体改革関連法案について「(民主、自民、公明の)3党合意を踏まえて早期に成立を期す。成立した暁には近いうちに国民に信を問う」ことで合意した。自民党は法案成立の条件として衆院解散・総選挙の確約を求めていたが、谷垣氏は早期解散の確約と解釈して受け入れた。首相が政治生命を懸ける消費増税法案は10日に参院で可決、成立する見通しとなった。』(上記URLより)

野田さんと谷垣さんに公明党の山口さんも加わっていますからさすがにこれは秋までに解散総選挙でしょという事で、一体改革関連法案も通過という事で、不意打ち闇討ちモードの債券市場ビックリの0.80%乗せ(昨日の場中だと確か10年ベースで一番甘い所が0.805/0.810辺りでしたが、延々と話が進まないので結構な時間滞在してた感じ、引け近くに誰か買ったのかホイホイ戻って0.80割ってましたが)とかやっておりましたが、とりあえず昨日落着しないと今日が長崎原爆忌で金曜の後はお盆休み(&終戦の日)ですからスケジュール的にどうよとか懸念されてましたので、まずはほっと一息という感じでしょうか。

でまあ消費税関連法案もそうなのですが、特例公債法案の方もひとつよろしくお願いして頂きませんと、日本版フィスカルクリフというよりは日本版フィスカル孔明の罠(ネーミングセンスが無くてすいませんすいません)に勝手に引っかかるでござるの巻というアホウ現象になりますので・・・・・・・

かんべえ先生の見解を頂きたいなどとネットの片隅で申し上げた声が聞こえたかどうかは存じませんが、かんべえ先生のスケジュール感が示されているのでご参考までに。
http://tameike.net/comments.htm#new
(本日見ると8/8の部分になりますが、後日の場合は8/8の所をご覧ください)

『○10月下旬に臨時国会召集、特例公債法案を処理して解散、11月後半に選挙ですかねえ。タイミングがあまり早いと、エネルギー環境会議の「国民的議論」がリセットされちゃうという問題もあります。そういうこと、考えていないように見えちゃうのが民主党政権の危なっかしいところなんで、ご用心をなさいまし。』(上記URLの8月8日コメントです)


・2年カレントとかの市場雑談である

で、先ほどちょっと申し上げましたように、昨日は2年カレントが0.095%で業者間で出合っておりましたようで、その後もオファーが置いてあったりしたのがへーという感じでした。確か先週金曜のドラギのドリフターズコント状態で債券市場アヒャヒャヒャヒャの時には0.085%とか勢い余ってやってたような記憶がある訳で、どうしましたねんという所ではございます。

勝手にこじつけると、足元で欧州コア国の2年国債利回りのマイナスが若干緩んでいるというのもあったので、その影響もあるかなとか妄想したりもしますが、まあ単純に0.10%割れで大玉打ち込んでもビットが立つならいったん叩いてやれというのもあったのかもしれず、その辺は妄想の世界でございまする。

ただまあ何ですな、先ほどの話と同じ事になりますが、2年カレントの金利がやや上昇して需給が若干緩和されたような雰囲気という事になりますと、今回は基金国債買入の応札下限金利の撤廃を見送る攻撃になるかもしれないなあとは存じますけれども、いずれにせよこの辺のゾーンが0.10%台に乗るというような流れには中々なりにくい状況の下で買入残高はまだ積み上げないといけませんので、やはりどこかのタイミングで下限金利撤廃コースだとは思うのですけどね。

ちなみに3か月TBですけれども。

昨日の結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240808.htm
(3)募入最低価格 99円97銭5厘0毛 (募入最高利回り)(0.1002%)
(4)募入最低価格における案分比率 3.3520%
(5)募入平均価格 99円97銭5厘2毛 (募入平均利回り)(0.0994%)

先週の結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240802.htm
(3)募入最低価格 99円97銭5厘0毛 (募入最高利回り)(0.1002%)
(4)募入最低価格における案分比率 1.9115%
(5)募入平均価格 99円97銭5厘3毛 (募入平均利回り)(0.0990%)

ということで、按分比率の上昇と平均落札価格の低下という事で、まあ基金短国買入の下限撤廃で一瞬ウヒョーとなった部分はやや剥落して平常運転になっていますなという所でして、長い所に関しても下限撤廃引っ張って変に期待をさせた価格形成を続けさせるよりは、下限撤廃して普通に思惑を排した状態で需給のみで価格形成させた方が良いのではないかとゆー気も致しますです、はい。




2012/08/08

お題「各種小ネタ雑談と決定会合プレビュー雑談で勘弁」

毎日暑いので(謎)雑談系で勘弁。

○まあ色々と雑談である

・東証がまたシステム障害とな

http://jp.reuters.com/article/kyodoMainNews/idJP2012080701001967
東証で一時システム障害
2012年 08月 7日 14:08 JST

『東京証券取引所は7日、売買システムで障害が発生したため、東証株価指数(TOPIX)先物などすべてのデリバティブ(金融派生商品)の取引を午前9時22分から一時停止した。その後、システムは復旧し、取引も停止から約1時間半後の10時55分に再開した。現物株の取引に支障はなかった。』(上記URLより)

ということで40年国債入札の日にデリバティブシステム障害とか何やってるんだとゆー所でございますが、そのせいだけでは無いでしょうけれども、なんとな〜く買いにくい感じになって前場押しましたな、と思ったら入札は結構強くてほほうと思ったんですけど、その後政局ネタだか何だか知りませんが、先物とか超長期とか弱かったですな。

まあね、前場引け近くに何とか間に合わせたのはダメージコントロール的には良かったですねという所なのですが、東証からの障害に関する発表が板止まってから5分以上掛かってるのって何とかならんもんなのかという希ガス。いやまあメディア向け連絡とかはロジ的に時間が掛かるのは判らんでも無いが、昔(年寄りの言う昔なので悠久の昔ですけれども)だと債券先物の取引業者には東証との間に専用線電話が引いてあって、才取(だか市場部だか何だか忘れましたが)から電話掛かってくるとかゆーのがあったような気が記憶があるんだが最近はそういうの無いのかね。

確か今年これで2度目の「場中急に板が止まる」攻撃だったよーな気がしますけれども、高速回転売買対応とかの前に取引インフラとしてシステム障害の頻度を減らして頂きたい次第でございますけれどもね。


・武者先生ェ・・・・・・・・・・

http://www.musha.co.jp/4111
2012年8月2日
ストラテジーブレティン (76号) 量的緩和で為替主権を主張せよ

『このままでは日本の産業は他国に漁夫の利を奪われる。ここは通貨主権を主張すべき場面である。為替介入は為替操作国の仲間入りとなり非難を浴びる。徹底的な日銀の金融緩和、バランスシートの膨張によるベースマネーの増大が望まれる。』

まあそういう主張は主張として存在するのは判ります。

『世界の中央銀行は金利操作から量的金融緩和へと政策の軸を移してきた。日銀がそのトレンドの先頭を走るべきである。』

えーっと、ゼロ金利制約下での金融政策という意味では量的金融緩和をしていますが、最近の中央銀行のトレンドは「単純な量の拡大」ではなくて、「より長めの金利への働きかけ」とか「コミュニケーションポリシー」とか「銀行貸出チャネルへの直接的な働きかけ」という風になっているのでございますけれども、いつの時代の話をしておられるのでしょうか。

『巨額のETF、REITの買い入れによりベースマネーを増加させればよい。』

ベースマネーが有意に増加するようなETF、REITの購入って幾ら買えば良いのでしょうか、というかフィージビリティー何も考えないで政策提言とかおめでてーにも程があるわ。

『量的緩和によるリフレ政策は需要不足に悩む世界各国にとっても歓迎すべき政策である。円高デフレ終焉とともに資産価格の上昇が内需に大きな購買力を与える。日本経済の風景は激変するだろう。』

通貨膨張だけでリフレーションやっても有効需要増えないと思うのですが(財政併用するなら判るけど)、つーかベースマネーの拡大の話をしているのか資産価格ルートの話をしているのかどっちなんだよという感じですな。補論みたいなのが後にあって何となく説明はしていますけれども、資産価格ルートに効かせるだけの話ならベースマネー云々って後付で充分な話だと思いますけどねえ。

・・・・・・などと珍しくツッコんでみましたが、あまりツッコんでいると曲げ髪様のフォースが憑依する懸念がありますので、ツッコミはこの辺で勘弁(^-^)。


・物凄くどうでもいい悪態(一発ネタ)

今月頭に出ておりますが。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/base1207.pdf
マネタリーベース(2012年7月)

今年の3月に前年比マイナスだったと言って鬼の首を取ったように「日銀は引き締めをしている」とか言ってた連中ちょっと出て来なさい。まあ特にちょっと出てこいやゴルァと思うのは本職の何とかストみたいな方でありまして・・・・・・・・・


・政局キタコレ

あちゃー
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120807-00000125-mai-pol
<自民>8日午前までに解散確約を…拒否なら不信任・問責案
毎日新聞 8月7日(火)22時3分配信

『自民党は7日夜、谷垣禎一総裁ら幹部が党本部で協議し、自民党が衆院解散・総選挙の確約を求めているのに対し野田佳彦首相から8日午前までに回答がない場合、同日中に内閣不信任決議案と首相問責決議案を提出する方針を固めた。自民党は首相側から党首会談を申し入れてくれば応じる構えで、事態打開を図る期限を8日午前とする最後通告を突きつけた形だ。これに対し民主党は7日夜、自民、公明両党に8日午前の国対委員長会談を申し入れた。自民党幹部は「そこから幹事長会談、最終的に党首会談までいけるかが勝負だ」と語り、8日の攻防が最大のヤマ場になるとみる。党勢の低迷する民主党内は解散回避を求める声が支配的で、党幹部は「最終的に党首会談はやるしかないだろうが、解散の確約はできない」と強調する。』(上記URLより)

ということで急速に政局が盛り上がって参りましたという感じですが、大体からして3党合意しているのに延々と店晒しにしておまけに党内で増税反対とか抜かす馬鹿鳩のようなのがいる民主党もアレですし、とりあえず自民党も消費税法案通してから(本当は特例公債も通してよと思うが)不信任でも何でもせえと思うのですが、何が何やらという感じで素人のあたくしは良くワカランチ会長ですのでかんべえ先生の解説を・・・・と思ったら溜池通信は五輪モードでした(^^)。

まーそれは兎も角として、消費税関連法案が間違ってコケてしまいますと、そもそもそれは通るだろうという前提でシナリオを組んでおりました債券市場におかれましては急に闇討ちを食らうようなもん(まあ参議院の審議を妙に引っ張るなあとか思っていたのではありますが)でございまして、そらまあ昨日の後場みたいに下がる(つーても先物が前日比37銭下がったとかそういう話ですが)罠という所でございまして、お縄ショックとは違いますが、これはこれで誠にアチャーな展開ではございます事よという所で。

上記記事にもありますように、明日は長崎原爆忌ですので国会は基本お休みとなるそうなので、今日と金曜、つまり今週中は何処から何が飛び出すのかという感じで債券市場ちゃんも久々に昼寝モードから寝起きモードでしょうな。おそらく債券市場的には消費税関連法案が通るかどうかが一番の注目でしょうが。


○決定会合プレビュー

今日明日がMPMな訳ですが、おそらく債券市場的に「あるか、ないか」とされているのは基金国債買入オペの応札下限金利の撤廃の有無だと思いまして・・・・・・・

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120807.htm
米ドル資金供給(固定金利方式) 2012年8月9日 2012年8月16日 0.640
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年8月9日 2013年2月21日

・・・・・・・・・・うーむ、ここで基金国債買入を入れて盛大に札割れというのを前回に引き続いて2週連続で華麗に見せてくれると、「市場金利の低下によりご覧のように基金国債買入の札割れ未達が連発してますお」→「仕方がないので基金国債買入の応札下限金利を撤廃しますお」という絵が描きやすかった(まあ今日もチャンスはありますが^^)なあとか思ったのですけれども、1回の盛大札割れだけだと下限金利撤廃に踏み切るかは微妙。

でまあ微妙という評価が市場ちゃんのコンセンサスだと思うので(ただし債券市場的には撤廃!撤廃!とっとと撤廃!!というモードにはなっており、3年ゾーン以内の引値が既にそれを反映した状態になっている)、どっちとも言い難いのですけれども、この調子で1か月間延々と札割れが続くとそらまあ9月のMPMでは下限撤廃しないとマズーでしょとなります。でまあ債券市場としては既にこの下限撤廃を織り込んだ価格形成になっているので、市場は自己実現的に札割れ大会を継続する筈なのですが、その背景として海外(というか欧州コア国)の2年とかの金利が相変わらずマイナス(昨日ちょっと見たらドイツ2年国債がマイナス0.06%とかだったような)が継続していて、ベーシススワップだか何だかがワークして日本の2年とかの国債を0.10%割れで買って無問題という状況がある(ただしそもそもスワップでワークと言ってもカウンターパーティーリスクがあるから無限にはワークしない)ので、需給が超良好(短国の方が発行が多い分需給が悪くて金利が高いという珍現象状態)となっている、というのがありますがな。


つーことですので、日銀ちゃんとしては今月は欧州金利動向の様子見をして(スペイン等の国債、しかもショーターエンドを本格的にECBが買って、絶賛ダイバージェンス中の各国金利がコンバージョンする方向になればドイツ2年金利とかプラスに戻っても不思議ではないですよね、ただしECBは利下げの可能性もオオアリクイですけど^^)下限撤廃を粘るという選択肢もあるでしょうなあとは思いますが、どうせ下限撤廃してもそこまで市場金利が急低下する訳でもないでしょう(急低下してビットサイドが0.085%なり0.090%なりになったらさすがに手持ち国債を千億ロットで外して日銀当座預金に突っ込んで来る投資家が出てくるでしょ)と思いますし、大体からして市場環境が変われば超過準備付利金利の方が効いてくるでしょうから、まあ変に粘らないで撤廃したらと思いますけどね。

何でかと申しますと、12月末までの残高目標というのがある中で、9月MPMまで下限撤廃を引っ張ると、(今後も札割れ未達が続く事を前提にすると)後の方で買入頻度を引き上げないと行けなくなって、却って日銀の買入による市場関与度が高まってしまうというあまり望ましくない事になりますし、札割れが続くという話になると逆に「買入銘柄の年限をもっと長くした方が良い」とか言い出す向きが出てきて日銀的にどうなんですかねえという風になりゃせんかと思いますので、ここは素直にYOU市場金利の低下を容認しちゃいなよ!と存じますがどうでしょうかね。


で、あと注目は今回からフルメンバーですねという話なのですが、声明文での経済物価状況の認識がどうなりますかねというのが少々注目しているかなという所です。

特に今回の声明文の中ではあたくし的には為替市場に関する言及に何か変化があるかをちょっとだけ注目していまして(そんなに大きな変化は無いと思いますけど・・・)、

最近の政策委員の講演で(先週の森本審議委員講演&会見ネタをまだスルー状態ですいません明日ネタにします)山口副総裁、森本審議委員ともに為替に関する言及が従来よりもちょっと目立つかなあ(山口副総裁、森本審議委員共に会見の席上で「金融経済懇談会の席上で為替円高に対する影響についての指摘があった」というような趣旨の話を入れてますし)という感じですし、佐藤、木内両審議委員は就任会見の席上で為替ルートによる金融緩和政策の効果を指摘していましたので、まーその辺りに関する声明文の書きぶりに何か変化でも出ると美しいのですけどとか思うのでございました。

いずれにせよ、今回は展望レポートとかございませんので、大ネタが出るのは10月の展望レポートと言う事で、そんなに極端に変わった物が出るとは想定しておりませんけどね。




2012/08/07

お題「ECBドラギ総裁会見ネタの補足を少々やる積りが長くなってしまいましたとさ」

金曜の相場後講釈もアレだったのですが、ブルームバーグのNY市場相場後講釈解説が連日どうなのかと。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M8CLDI6K50Y701.html
米国債:反発、伊首相が政治的緊張による危機悪化リスク警告

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M8COCE6VDKIV01.html
米国株:3カ月ぶり高値−好決算やECB国債購入観測で

・・・・・・・・・欧州債務問題に関しての評価はどっちが正しいですねん(・・?)

#まあよーするに各市場が適当に「動きたい方に動いている」だけであって、無理矢理後講釈しようとするから市場によって説明が矛盾したりするんでしょうなあ、という所なんでしょうけどね


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M8BVC46S972B01.html
ドイツ政府、ドラギ総裁が表明したECBの国債購入を支持

ほほう。


○ECBドラギ総裁会見関連残りのネタを少々

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120802.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 2 August 2012


・非伝統的政策、国債買入以外のオプションについて

他のオプションって何があるのという質問があったのですが、それに対する答え。

『Draghi: The other options, there is no need to be specific, but if you go back to the various LTROs that we have conducted, there is also a discussion about the collateral framework that is foreseen in September. There is a list of various options, which you can actually find in our previous press conferences or in the ECB bulletin; that will be studied, explored, reviewed and possibly utilised if needed for a formal decision.』

ということで、具体的に名前が上がったのはLTROと担保政策でして、まあ資金供給に関しても何らかの策が出てくる可能性はあって、かつこっちの方がECB的には反対が少なさそうではございますな。つまりECBと日銀を比較すると判りやすいのですが、資産買入関連については日銀の方がECBよりも(つーか主要国中央銀行的に見ても)無茶しやがって的な事(買入資産の質という問題)をしますが、担保政策を見るとECBが無茶しやがって的な所(適格担保の質という問題)がありまして、どうも中銀ごとにその辺って拘る所が違いますねというのがありまして、どうもECBは資産買入になると色々とああだこうだと揉めるのですが、担保政策の方は割と簡単に緩和してくるって感じでございますので、意外にこっちの方がすんなり出てくるかもというイメージですがどうでございましょうかね。


・前回「非伝統的政策は議論しなかった」と言ったのは何だったんだというツッコミ

そらまあそういうのは入る罠。

『Question: When the ECB met last month you said there was not even a discussion of non-standard measures, and now you are unveiling these objectives and intentions. What happened in the last month? The crisis has had its ups and downs for the last two years. Was there anything specific that happened in the last month that frightened you?』

なお質問の後半は具体的な買入資産についての質問でしたがコメントは避けられたので引用割愛。

『Draghi: There was no specific instance that led to us having the discussion we had today. There was just a sense of worsening of the crisis and of the worsening consequences of the financial market fragmentation in the euro area. I would not point to one single episode but certainly one thing, if one really wants to, was the sudden increase in the shorter part of the yield curve for several countries in the euro area, which for people who know the markets is usually ominous. That was one sign but I would not point only to that symptom, since there were other symptoms of market fragmentation which tend to worsen the situation. So it is not really a reaction to a specific thing that as you said might have terrified us because we usually do not act on terror but on normal, cool analysis of facts. What was your other question?』

#最後の一文は後半の質問の聞き直しです

でまあ説明のポイントはこの「I would not point to one single episode but certainly one thing, if one really wants to, was the sudden increase in the shorter part of the yield curve for several countries in the euro area, which for people who know the markets is usually ominous.」つー所で、イールドカーブのショーターパート、つまり中短期ゾーンの金利が思いっきり上昇した事への言及ですわな。

昨日引用しましたように、ECBの今般導入方向になっている(まあドイツ様がヘソ曲げてゴネるのを収めるために時間が掛かるでしょうが導入するでしょ最終的には^^)国債買入は短期債を対象にするっていう話のベースになるのがこの辺の認識(あともう一か所あるのでそれは次で引用)でございまして、短期の流動性懸念に対応する、というのがECBの基本認識だという事でしょう。

んでもってそのECBの買いますよ攻撃によって早速スペインとかの2年とかの金利は低下していたようで誠に結構な訳ですが、短い所を安定化させると究極的にはイールドカーブの後ろも安定する、というのは日本の状況を見れば明らかでもあります(ただしソルベンシー不安があるのでそう簡単な話では無いとは思いますが)ので、ECBの「流動性不安に対応」というのは悪態つけば庭先論なのですけれども、まあ効果はそれなりに強いんじゃネーノとは思います。


・欧州市場の問題認識について

『Question: My first question concerns how you go about measuring the degree to which the premia reflect convertibility risks? Is it the case that you think it is several percentage points’ worth of the spreads that reflect these risks or is it something less significant than that? (2番目の質問は割愛)』

どの位のプレミアムがケシカラン部分になるのかという質問ですが。

『Draghi: Rather than respond to you on how we measure this risk premium, which is also a task of our committees, let me tell you that our greatest concern is financial market fragmentation rather than assessing exactly a figure. Let me go through the various symptoms of financial market fragmentation that we have reviewed today in our Governing Council discussion.』

ということで、リスクプレミアムの拡大の話をするよりも「let me tell you that our greatest concern is financial market fragmentation rather than assessing exactly a figure」という事で、ここではロンドン講演でも指摘していた「financial market fragmentation」についてここぞとばかりに具体例を説明しています。長いのですが興味深い話なので引用を。

『If you look at money markets, the share of cross-border money market loans has decreased: it was 60 % until mid-2011 and it is now 40 % and vice versa for the share of domestic money market loans. The non-domestic interbank deposits are at the lowest level since the beginning of 2008 for several countries. The increasing concentration of recourse to Eurosystem liquidity-providing operations in some countries is a further illustration of this segmentation.』

クロスボーダーの短期金融市場取引が激減していてその分国内取引に回帰しており、ユーロ圏内の市場が同一化ではなくて逆の各国ドメ化となっているというのと、それに伴うユーロシステム内の資金偏在(いわゆるTARGET2問題)を指摘しています。

『When you look at the sort of collateral banks present for their financing with the ECB, there is definitely a significant increase in domestic collateral. There is a high share of domestic use of collateral - of domestic bias or home bias - by investors, which in a sense also reflects the use of self-originated marketable assets as collateral. The share of cross-border use of collateral within the euro area stands at around 20% today compared with 50% in 2006.』

ECB資金供給オペへの担保内容もクロスボーダーものが減ってドメものになるホームバイアスが掛かっていますと。

『There is a big divergence in general collateral repo rates between euro area periphery and core sovereigns that started in late 2011. And I could go on with other signs of monetary fragmentation as far as bank funding is concerned, as far as sovereign bond markets are concerned, and so on and so forth.』

GCレポレートに関してもコア国と周縁国で大きな差があるという指摘をして、他にも色々と現象がありますよと。

『All the analysis is at your disposal if you are interested. That is what we have to overcome, we have to repair and we have to change.』

で、これらの「financial market fragmentation」を解消の方向に向かわせるのがECBのマンデートですよ、という話でして、そのマンデートを達成させるために「do whatever」であるというのがドラギ総裁がロンドン講演でお話をした真意です!という話なのでしょうが、だったらロンドンの講演でもうちょっと丁寧に説明しろやと思う所ではございますけどね。

いやまあ昨日引用した質疑応答吊し上げコーナーにありますようにスピーチを読むと確かに「”マンデート達成の為に”何でもします、びりーぶみー!」って話をしているのですが、んなもん丁寧に説明しなかったら全力で勘違いするぞなもしという所でありまして、まあ中央銀行のコミュニケーション戦略という文脈ではやっちまったなオイという所ではございます。つーか昨日も申し上げたようにロンドン講演なかりせば理事会の評価がそれなりに高くなったと思うのですけどね。

という話は兎も角、まあECBの注目は問題国の長期金利がどうのこうのというのではなく、短期ゾーンがアヒャヒャヒャヒャ状態になっている点や、ユーロシステム域内単一市場という理念に逆行するホームバイアス状態という事でしょう。

・・・・・・・しかしそうやってユーロシステム域内の短期金融市場の「fragmentation」を懸念しているのであれば、マネーマーケットの取引を抑制させる方向に絶大な効果を発揮する「リアルゼロ金利政策」というのは早急に是正した方が良い(まあ下げてしまったものを今更上げるのは難しい話でしょうが)と思うのですが、誰かECBにアドバイスしてやってくらはいと思いますけどにゃあ。


・なぜ短い所を買うのかという話

『Question:(前半割愛)The second question concerns your statement that you are going to target the short end of the yield curve. Since one would assume that if you target the long end, this might alleviate pressures for long-term loans in the countries you are targeting, why are you doing this?』

『Draghi:(前半割愛)As to the second question on why we are focusing on the short end of the yield curve, the main reason is that this falls squarely within the range of classical monetary policy instruments. The shorter the spectrum, the closer it is to money market operations. In the context of LTROs, maturities may extend to three years, of course, but in normal operations maturities like the ones we are operating on right now can go from six months to nine months to a year. Therefore, from this viewpoint, we wanted to stick to classical monetary policy.』

ここまで引用した話の総合みたいになりますが、短い所の金利を下げるというのは「伝統的な金利操作という金融政策により近い行為」という認識がベースにあるという話をしていますわな。

『Today I gave you a general overview and I also outlined the philosophy behind this decision for guidance given, but as far as the details and the analytics go, as I said before, we will have to wait for the relevant committees to carry out their work.』

だそうで。



・国債買入の発動条件について、“may undertake”とは何ぞやという話

これはまあ既に解説もあったと思いますけど引用を。

『Question: The decision on the bond purchases that the ECB may trigger is not really clear to me. Was the decision anonymous or not?』

『Draghi: It was not a decision. It was guidance; it was a determined guidance for the committees to design, as the statement says, the appropriate modalities for such policy measures. The voting was, as I said, unanimous with one reservation, with one position that reserved itself. I responded to this question before.』

ガイダンス云々のこの質疑は昨日引用したのの再掲です。話の流れ上引用しました。

『Question: Given the guidance you detail・・・』

『Draghi: It says “may undertake”. You see it is very important to read these words carefully.』

金曜の朝に寝起きでIntroductory statement読んだ時に非常に気になって書いた助動詞「may」の意味が今ここに明らかに!!!(大袈裟)

『It says: “the Governing Council may undertake outright open market operations of a size・・・..”.
So the Governing Council, under the necessary and sufficient conditions and within the context of its total independence of monetary policy operations, may decide to do certain things if these conditions are satisfied. This framework was endorsed by all Governing Council members with one exception.』

ということで、条件が満たされた時に買入を実行するでしょう、という意味で今回は買入の決定では無く、買入の方向についてのガイダンスを設けたというステータスな訳ですな。


で別の質問から。

『Question: Maybe I missed it, but could you say something about the time schedule? You said you would give an indication, but when will we see results?(以下の質問割愛)』

『Draghi: Well, the first question is, in a sense, easy to answer. The when is when governments have actually fulfilled the necessary conditions, namely have undertaken fiscal and structural reforms and applied to the EFSF with the right conditionality. At that point, we may act, if needed, along the lines that I have illustrated today.』

対象国の政府がEFSFの求める財政改革や構造改革の実施という必要条件を満たして、EFSFに支援要請をした時に行いますと。


・国債買入の狙いと限界について

国債買入の発動に関する別の質問でそんな話をしています。

『Question: About the timing, must the government move first? Must it activate the EFSF and the ESM in the bond market and only then the ECB may act? (後半割愛)』

『Draghi: The first point is very important because we want to repair monetary policy transmission channels and we clearly see a risk, and I mean the convertibility premium in some interest rates.』

ということで、国債買入の新プログラム(ってまだガイドライン段階ですが)の趣旨は金融政策のトランスミッションメカニズムの回復にある、ということで、先ほどあった「financial market fragmentation」を何とかしましょって話をしている訳で。

『But the Governing Council knows that monetary policy would not be enough to achieve these objectives unless there is also action by the governments. If there are substantial and continuing disequilibria and imbalances in current accounts, in fiscal deficits, in prices and in competitiveness, monetary policy cannot fill this vacuum of lack of action.』

ということで、最終的には各国政府が諸々の不均衡是正に向けての努力(財政改革と構造改革)を進めて行かないといけません、と金融政策の限界というか、各国の努力が必要というのを強調しているのもポイントであります。

『That is why conditionality is essential. But the counterparty in this conditionality is going to be the EFSF. Action by the governments at the euro area level is just as essential for repairing monetary policy transmission channels as is appropriate action on our side. That is the reason for having this conditionality.』

金融政策に限界があり、各国政府の努力が必要だからこそ、条件が達成される事が重要である。とまあそういう話で締めておりまして、まあこの辺は仰る通りですわなという所で、何でもかんでもホイホイお助けする訳では無い、といういつものECBクオリティでもありますなというところではございます。


つーことでちょっと補足の積りが思いのほか長くなってしまいましたが、まあ今回の質疑応答は中々見ごたえがありましたな(金融政策ロジック大好き人間的には、であって市場の価格がどうなるのよ的な論点で言えば大体昨日引用した部分と吊し上げ部分で十分な気はしますが)とゆー所ではございました。

#決定会合プレビューとか森本審議委員講演&会見とかその他いくつかネタがあった気がするのですが引用過多につき時間が無くなり華麗にスルーでどうもすいません




2012/08/06

お題「ドラギ総裁定例理事会後の会見が色々とアレな件について」

ド、ド、ドラギの大爆笑〜♪

・・・・・・・・・すいません言ってみたかっただけですm(__)m


○ということで会見ですが本日はQ&Aから

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120802.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 2 August 2012

ということでQ&Aなのだが、会見のテキストの字面を見た感じですと(Webcastの方は手抜きで見ていないので実際はよく判らんのだが)途中から吊し上げテイストが高まっていてそれに対するドラギ総裁の返事が中々アレで笑ってはいけないのだが読んでいて爆笑の発作が(^^)。

・マイナス金利は未踏の世界

最初の質疑は「利下げや預金ファシリティーのマイナス設定は検討しましたか」でございまして、それに関してはこのような答えを。

『Draghi: We have discussed possible reductions in interest rates, but the Governing Council in its entirety decided that this was not the time, and that’s it. On the negative deposit rates ? since many of you may be asking this question - I will say only that for us these are largely unchartered waters.』

マイナス金利については「largely unchartered waters」ということで海図の無い地であるという認識はしているようで、今回利下げする時にはさすがに何も考えずに預金ファシリティーマイナス攻撃はしないようで何より。


・ECBの国債買入の具体的な話について

でまあその次以降が具体的に国債買入するのにどうしますねんという話。

『Question: First of all, when you say that the question of seniority will be addressed - presumably because bond purchases are kind of counterproductive if it’s not addressed beforehand - will we see it being addressed before bond purchases, or is that a wrong assumption?

And the second question: there has been a lot of talk in the past few days about a grand master plan, the two-pronged approach, how to stabilise the bond markets; among other things, one of the ideas that has been floated again today in the Suddeutsche Zeitung is that there could be a secondary buying of bonds by the ECB, combined with the primary bond buying by the ESM, or the EFSF, which is a bit odd because the EFSF of course cannot buy Spain and Italy at the moment. Can you give us an idea of how much truth is in this story - or is it one of the fairy tales that markets and journalists sometimes love so much?』

ということでECB購入国債を優先扱いする(この前のギリシャ国債パターン)点はどうなのよ(最初の説明ではその点は考慮されるということでしたが)というのが最初の質問で、次の質問はEFSF/ESMは金融機関扱いじゃないからセカンダリーでの国債買入という訳にも行かないので、ECBがセカンダリーで買ってEFSF/ESMがプライマリーの引き受けをするとかになるんでしょうかという質問ですな。

『Draghi: Let me reread the related passage of my Introductory Statement, because that basically answers your question.』

というのが出てますが、今回の質疑応答って後になれば成る程この物言いが連発いたしまして、「その質問に対してはIntroductory Statementにございますように」という説明が段々(いやまあ同じような表現なのだが文脈見て勝手に妄想するに「Introductory Statementで説明しとるじゃろうがエエカゲンにせえよこのヴォケが」という感じになってきている(ような気がする)のが実にこう味わいの深いものでございます(^^)。

まあそれは兎も角ちゃんとした説明が続く。

『It says: “The adherence of governments to their commitments”, namely fiscal reforms, structural reforms and so on, “and the fulfilment by the EFSF/ESM of their role are necessary conditions” for some actions on the ECB’s side.』

という条件を満たすとは・・・・・・

『So, the first thing is that governments have to go to the EFSF, because, as I said several times, the ECB cannot replace governments, or cannot replace the action that other institutions have to take on the fiscal side. “The Governing Council, within its mandate to maintain price stability over the medium term and in observance of its independence in determining monetary policy” - which means that to go to the EFSF is a necessary condition, but not a sufficient one, because the monetary policy is independent - “may undertake outright open market operations of a size adequate to reach its objective. 』

つーことで、まずは各国政府がEFSF/ESMに行けと。ECBは政府の代わり(=財政ファイナンス)はしないという話とかしてますが、まあそれはそれとしてEFSF/ESMに逝くだけでは十分ではないようで、上にあるように財政と構造改革もちゃんとやらないとダメですよねという話も。

『In this context, the concerns of private investors about seniority will be addressed.” That gives you the answer to the question. I should add that “over the coming weeks, we will design the appropriate modalities for such policy measures”. So, many of the details will be worked out by the relevant committees within the ECB.』

詳しくはこれから数週間かけて決めますという話ですけど、次の質疑を見ますと・・・・・・・・

『Question: I have some questions on the bonds you might buy. Would you continue to sterilise all of those bonds? And also - you said that you would buy as much as needed to reach an objective. Would you actually publish that objective? Would you announce a cap?

My second question is: do you think that this will be enough or do you think it might be wise to find a legal way to grant the ESM access to ECB liquidity operations? Perhaps, one last question ・・・』

つーことで、債券購入した時の不胎化についてと、買入行う際に目的をアナウンスするの?上限をアナウンスするの?という質問と、ESMに対してECBのオペレーション対象にした方が良いのではないかという点についてはどう考えているの?と盛りだくさんの質問ですが。

『Draghi: You have already asked four questions in one question.』

ワロタ。

『Let me say that this concept, the guidance that we have given to the committees of the ECB differs from the previous programme, because that is basically what your first question is about. We have explicit conditionality here - as a necessary condition, adherence by the governments, and by those governing the euro area, to their commitments.』

まず最初の点については、今回ECB理事会で与えられた「guidance(=この点は後で質疑が出ていたが、政策決定ではなくてガイダンスという不思議な位置づけで、これに対してドイツ連銀がreservationというのですから反対では無く留保した、という建付けのようです)」は前回のプログラムとは違いますという話。でまあ実施には「necessary condition」があるというのはさっきと同じ事ですがわざわざ強調している(この先でも何回も強調している)のがオサレ。

『Second, there is full transparency about the countries where this would be undertaken, and about the amounts. Third - and this is something I did not say in the Introductory Statement - this effort will be focused on the shorter part of the yield curve, which will introduce discipline also on the long part, but the effort as such will focus on the shorter part. It is an effort that, I would say, is very different from the previous Securities Market Programme (SMP) and one that falls squarely within our mandate. It will basically be carried out in the secondary market.』

2番目の十分な透明性というのはまあ当たり前の話ですが、3番目に関してはIntroductory Statementで説明していなかったこととして、買入の国債は「イールドカーブのより短い部分にフォーカスする」と短期ゾーンの買入中心になる点が、前回のSMPと異なるという事を説明しています。なお買入はセカンダリーマーケットでの買入ですな。

『And, as I have said, it does not violate the prohibition of monetary financing in any way. It falls squarely amongst the instruments of monetary policy. With respect to the rest of the issues you have raised, the Monetary Policy Committee, the Market Operations Committee and the Risk Management Committee will all work together and produce the details necessary for us to take an explicit formal decision.』

でまあしつこく財政ファイナンスはしませんという話をして、最後は「詳しくは今後金融政策決定会合やオペレーション会合やリスクマネージメント会合(というのがあるのか・・・・・)で詳細を決定して正式な決定を行います」という事ですが、まあここまでやたらと詳しく話をしているのですからそれなりのアウトラインはあるんでしょ。

『Then you have asked about the ESM’s banking licence. I must say that I am a little surprised by the amount of attention that this has received in recent press coverage, and in public opinion following a statement. After all, I have said at least twice that the present design of the ESM does not allow this. It is not up to us to issue a banking licence - this is a matter for the governments. What is up to us to decide is whether the ESM - even with a banking licence - can actually be a suitable counterparty that is eligible for central bank financing. And I have said at least twice - at a press conference, and on other occasions - that the current design of the ESM does not allow it to be recognised as a suitable counterparty. And we have a legal opinion of the ECB on this, which was issued the way back in March 2011 (http://www.ecb.int/ecb/legal/pdf/c_14020110511en00080011.pdf) and has, by the way, been published if I am not mistaken. You can always look at that. That is the ECB’s position on this. 』

ああだこうだと説明していますが、最終的には政府の決める事としながら、ECBとしてはESMの銀行ライセンス付与に関しては「ESMの今の設計は銀行ライセンス付与を前提にしていない」として、「仮に付与されてもECBのカウンターパートとして適切かどうかというのはまた検討する問題」として「現在のESMの設計は適切なカウンターパートではない」としています。


○ブンデスバンクの反対、というか留保について

もちょっと先の質疑から。

『Question: Mr Draghi, the measures you announced - do you have the full support of the Governing Council for that, and I am particularly interested in the position of the Bundesbank and Mr Weidmann.

You said that the size would be adequate - can you tell me if that means the purchases will be unlimited, or whether you will actually have a limit in mind?

Coming back to the sterilisation: I just want to clarify, do I understand you correctly that you are considering not sterilising the purchases?

And then I have a question on the ESM as well: you insist that in its current design the ESM cannot be a bank and access ECB refinancing operations. Do you then envisage a scenario where the ESM is changed into an institution that would actually be able to comply with what is required, and I am thinking about the EIB especially?』

ということで、ブンデスバンクの反応についての質問の他に先ほどのESMについての質問と不胎化の質問、あと買入には上限設けるのかという同じ質問ですな。

『Draghi: I will start with the last question. As I say, in the current design, in a sense that is what we have today. What we have today is a legal opinion by the ECB saying that no, it is not suitable as a counterparty.』

ESMの銀行免許云々とカウンターパートに関する質問はさっきと同じ。

『Regarding sterilisation, you should not assume that we are not going to sterilise or that we will sterilise - you have to understand, these operations are complex and they affect markets in a variety of ways. So the relevant committees will have to work and tell us exactly what is right and what is not right, so it’s too early to say whether they are going to be sterilised or not sterilised. Rest assured that we will be acting within our mandate, which is to preserve price stability in the medium term for the euro area. That must always be taken into account.』

不胎化するかどうかは色々と影響のある話でこれから考えますとな。

『Third point, regarding whether it’s unlimited or limited - we don’t know!』

ワロタ。

『Basically, the Introductory Statement - and I am really grateful to the Governing Council for this - endorses the remarks that I made in London about the size of these measures, which need to be adequate to reach their objectives.』

適切な量を購入しますとしか申し上げようがございませんとな。

『And fourth, the endorsement to do whatever it takes - again, to use the same words - whatever it takes to preserve the euro as a stable currency has been unanimous.』

「ユーロを守るためにあらゆる行動をとるという点では全員の見解が一致しています(キリッ)」とかいう時点で何ゆうとりますねんこのオッサンという感じですが・・・・・・

『 But, it’s clear and it’s known that Mr Weidmann and the Bundesbank - although we are here in a personal capacity and we should never forget that - have their reservations about programmes that envisage buying bonds, so the idea is now we have given guidance, the Monetary Policy Committee, the Risk Management Committee and the Market Operations Committee will work on this guidance and then we’ll take a final decision where the votes will be counted. But so far that’s the situation; I think that’s a fair representation of our discussion today.』

ということで、ブンデスバンクちゃんは「reservations about programmes」って事で、よーは反対したという事なのでしょうが、留保しましたので今後検討で、今回はガイダンスみたいな所で話を落としたという事なんでしょう。

というのは別の質疑の中でこういうのがありましてね。

『Question: The decision on the bond purchases that the ECB may trigger is not really clear to me. Was the decision anonymous or not?』

『Draghi: It was not a decision. It was guidance; it was a determined guidance for the committees to design, as the statement says, the appropriate modalities for such policy measures. The voting was, as I said, unanimous with one reservation, with one position that reserved itself. I responded to this question before.』

ということで、「決定ではないがガイダンス」で「これからデザインをするというガイダンスを決定しましたが、1名(ドイツ連銀のバイトマン総裁)が留保して残りが全員賛成」という何とも不思議な建付けではございます。

でまあもう少し具体的な質疑とか、色々とその他の話もあるのですが、本日は時間の都合上その辺をスルーしましてロンドン講演との整合性に関する吊し上げを鑑賞しましょう(^^)。


○ロンドン講演との整合性について

まあしかし何ですな、今回はロンドンの講演がなければ「ECBが国債買入に向けて動いた」と評価されたような気がするんですが、「びりーぶみー」をしたお蔭ですっかりズッコケ状態と申しますかドリフターズのコント状態になってしまった訳で、まああのタイミングで何か言わないとマズーだったというのはあるかも知れませんが、どう見てもコミュニケーション失敗でござるの巻となっておりまして、ECBのトンチキ振りは何とかならんのかという感じではあります。


でまあロンドン講演との整合性については何度も質問されていて中々香ばしいのですが、後になればなるほど質疑応答が喧嘩腰になっているように見えるのがクソワロタとしか申し上げようがない。

最初は質疑の前半部分(紙に打ち出すと一般的には実質9ページ中4ページ目のケツ辺り)です。

『Question: The markets don’t seem to be very impressed. So when you said last week, you’ll do whatever・・・.』

『Draghi: The market is impressed or was impressed, or is not impressed or is being impressed - I didn’t understand your question・・・』

『Question: ・・・ does not seem to be very impressed.』

『Draghi: Oh, does not seem to be very impressed ・・・』

『Question: So, when you said last week you would do whatever it takes to save the euro, what exactly did you have in mind?

And you mentioned earlier that you did discuss other options, could you maybe say what else you discussed?』

で、総裁の答え。

『Draghi: “Whatever it takes” means two things: it means the list of measures, all the measures that are required, and it means that their size ought to be adequate to reach their objectives. And so the various committees will now review the various non-standard policy options. And then we will meet and we will decide what to do.』

色々な適切な手段を取り、適切な規模の措置を行うというのが「Whatever it takes」の意味とな。

『But not one country has yet asked the EFSF to intervene, so as regards the question “are you ready to act now?”, even if we were ready to act now, there would not be the grounds for doing so. What we have expressed now is strong guidance about strong measures, and the details will be completed in the coming weeks.』

でまあ直ぐには実施しないけど今後数週間で施策のディテールを決めますと。


もーちょっと後の質問ではこんなのが。

『Question: (前半割愛)My second question is: were the other members of the Governing Council aware that you would make the remarks you did last week about taking whatever action it takes before you made them?』

他のメンバーにロンドン講演の根回しはしてたのか???

『Draghi: (前半割愛)As far as my remarks in London are concerned, there is not one word of these remarks that had not been discussed in the previous Governing Council meetings. So there was not one word of these remarks that surprised my colleagues.』

理事会のメンバーも同じ気持ちです(キリッ)ですかそうですか(棒読み)。

んでもって質疑も進んで8ページ目になるのですが、こちらでは中々アレな質問、というよりはどう見ても悪態が。

『Question: Mr Draghi, I have the slight feeling that you are backtracking somewhat today from your words in London.』

おめーロンドンの講演からどう見ても後退してるじゃねえかヴォケ、とは言ってませんがどう見てもそういう趣旨だわさ(^^)。

『After you made the speech in London, there was a storm all over Europe, in the media and in the markets. Was there any criticism from the ECB Council today of the timing of your words in London, because today you said it would be some weeks before the committees have worked out the details? Was it necessary to make that speech at that time in London?』

ワロタとしか言いようがないが、その後のドラギ総裁の答えが更にワロスワロス。

『Draghi: Have you read the speech?』

いきなり最初の一文でカフェオレ吹いた。

『Had you read it, you would have seen that there is no reference whatsoever to a bond buying programme.』

そらそうだがこれは酷い(^^)。

『And there was no criticism whatsoever in the Governing Council meeting. I can’t influence what the media write, as you very well know. And you would certainly not want me to tell you what to write. Read the speech. The speech does not say anything about timing, bond buying programmes, shorter term - there is none of that.』

・・・・・・・いやいやいやいや。

『Certainly, the tone was strong in that speech.』

さすがに言い過ぎたと思ったのか「トーンは強かった」とフォロー(^^)。

『The stance behind it was an affirmation that the euro area is a strong place in the world and that the euro is a strong currency, which is irreversible. That is the substance, the zest of the speech I gave in London. And of course everything we do will be within our mandate, but we will do everything that is required to reach the objectives. This was clearly stated in London, and that had some consequences because, after all, people read into it what they wanted.』

はあそうですか(棒読み)。

『Today we are not backtracking, in fact. There was an endorsement by the Governing Council of the speech, and certainly of the tone of the speech, and you will find this endorsement in the Introductory Statement. You will actually see that similar wording is used for certain things.』

我々はユーロを守るために必要なあらゆる手段を取ります(キリッ)と言った結果このような事になりましたので決して後退している訳ではありませんとか中々の香ばしさである。

でまあ最後にも殆ど嫌がらせのような質問が(^^)。

『Question: Mr President, I have to come back to your remarks in London last week. I am a bit surprised. If I understand you correctly, you are arguing that markets and the media have misinterpreted your remarks there, at least to a certain extent. I am surprised that you say this because, if you are going to make these remarks in London - not anywhere, but in London - shouldn’t you expect the markets to interpret your remarks exactly in the way they did, and wouldn’t it perhaps have been appropriate then to have been a bit more careful there?』

どう見ても嫌味です本当にありがとうございました。

『Draghi: No, it wouldn’t. Actually, I like these remarks very much. And, as you know, they came out very well. And they were not misinterpreted. Markets simply took their actions based on their expectations following these remarks. That is what happened. And these expectations are what they are. And today we had a meeting, we discussed, and we have given guidance which will probably concretise certain decisions that will be taken. So, absolutely not. I am actually quite happy about these remarks. 』

ということで質疑応答の締めが「I am actually quite happy about these remarks.」かよという所でございますが、どう見ても吊し上げです本当にありがとうございました。

#その他のポイントについては後日簡単にですが、基本的には大体この辺りですかね



2012/08/03

お題「ECBドラギ総裁の梯子外しプレイキタコレ、というか無駄に期待を盛り上げすぎたんですけどね」

毎日暑いですのう・・・・・・(-_-メ)

○ECBである

金利は変更なし。

http://www.ecb.int/press/pr/date/2012/html/pr120802.en.html
2 August 2012 - Monetary policy decisions

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.75%, 1.50% and 0.00% respectively.』

利下げカードはそらまああと1回しか切れないでしょうから(ヤケを起こせば0.25%まで下げて2回ですかね)温存する罠と思われるのですが。

『The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』

ということで非伝統的政策に関する話が出る(筈の)欧州時間14時半の会見である。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120802.en.html
Introductory statement to the press conference
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 2 August 2012

『Ladies and gentlemen, the Vice-President and I are very pleased to welcome you to our press conference. We will now report on the outcome of today’s meeting of the Governing Council, which was also attended by the Commission Vice-President, Mr Rehn.』

EUのレーン副委員長(つーんでしたっけ)も同席キタコレ。


『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged, following the decrease of 25 basis points in July.』

今回は金利の変更はありません。

『As we said a month ago, inflation should decline further in the course of 2012 and be below 2% again in 2013.』

ここのインフレに関する文言ですけれども、この2か月の推移はこうなっています。

『Inflationary pressure over the policy-relevant horizon has been dampened further as some of the previously identified downside risks to the euro area growth outlook have materialised. 』(7月定例理事会後会見より)

『While inflation rates are likely to stay above 2% for the remainder of 2012, over the policy-relevant horizon we expect price developments to remain in line with price stability.』(6月定例理事会後会見より)

つーことで、インフレに関する説明は6月までの「物価安定に沿った推移をするでしょう」ではなく、7月(は利下げしたのですから当たり前)の「物価上昇圧力は更に弱まっておりダウンサイドリスクが顕在化している」というのに近い方の表現になっていまして、「前月にも申し上げたように、インフレは2012年に渡って低下し、2013年には再び2%を下回る見込みである」という話ですから、まあ物価という面で言えば追加の金融緩和というか利下げをするというのが方向性(やるかどうかは兎も角として)として示されているという事を意味しますな。

『Consistent with this picture, the underlying pace of monetary expansion remains subdued. Inflation expectations for the euro area economy continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term.』

マネタリーの伸びとかインフレ期待の話は毎度同じです。

『At the same time, economic growth in the euro area remains weak, with the ongoing tensions in financial markets and heightened uncertainty weighing on confidence and sentiment. A further intensification of financial market tensions has the potential to affect the balance of risks for both growth and inflation on the downside.』

ということでユーロ圏経済の伸びが弱いというのは毎度の話ですが、金融市場の緊張の更なる高まりが成長とインフレに対してのリスクバランスに下方圧力を掛けるという一文が7月理事会後の会見に加わっていますな。まあ足元の金融市場状況を見たら当たり前なのですが、この辺りの認識はよーは「金融市場の緊張が物価下落圧力へのリスクを高めるから何とかした方が吉」というロジックになるので、まあこの辺の文言的には追加で何かやるという話の正当化ロジックではございますな。

ちなみに7月の当該部分。

『At the same time, economic growth in the euro area continues to remain weak, with heightened uncertainty weighing on confidence and sentiment.』(7月定例理事会後会見より)


で、次がSMPがどうなるかという話ですが・・・・・・・

『The Governing Council extensively discussed the policy options to address the severe malfunctioning in the price formation process in the bond markets of euro area countries.』

委員会は、ユーロ圏国債券市場の価格形成機能が深刻な機能不全状態にある事に対応するための政策オプションについて広範囲にわたって議論しました。

『Exceptionally high risk premia are observed in government bond prices in several countries and financial fragmentation hinders the effective working of monetary policy. Risk premia that are related to fears of the reversibility of the euro are unacceptable, and they need to be addressed in a fundamental manner. The euro is irreversible.』

異例なまでの高いリスクプレミアムが複数のユーロ圏国債について観測され、金融市場が分断化された状態は(ってfinancial fragmentationつーのこの前の講演でも強調してましたな)金融政策が有効に機能する妨害となります。ユーロが空中分解することへの懸念から起きるリスクプレミアムは容認できません、市場の懸念はファンダメンタルズに基づいて形成されるべき(この部分の訳は怪しいけど要するに「今のリスクプレミアムはファンダメンタルズに基づいていないのでケシカラン」という事を言いたいんだろうとは把握した)であります。ユーロは後戻りできません。

・・・・・・とまあ威勢の良い話をしておりますが。

『In order to create the fundamental conditions for such risk premia to disappear, policy-makers in the euro area need to push ahead with fiscal consolidation, structural reform and European institution-building with great determination.』

・・・・・・えーっと、それは確かに今やっておりますがそんな話を聞きに来た訳ではございませんのですけどねえ。

『As implementation takes time and financial markets often only adjust once success becomes clearly visible, governments must stand ready to activate the EFSF/ESM in the bond market when exceptional financial market circumstances and risks to financial stability exist - with strict and effective conditionality in line with the established guidelines.』

>implementation takes time and financial markets often only adjust once success becomes clearly visible
>implementation takes time and financial markets often only adjust once success becomes clearly visible
>implementation takes time and financial markets often only adjust once success becomes clearly visible

ちょwwwwおまwwwwwwその時間を金融市場が待ってられないって暴れているからつい今しがたオッサンが言ってた「A further intensification of financial market tensions has the potential to affect the balance of risks for both growth and inflation on the downside.」の図になっとるんじゃろうが。

ということで、この前決定したガイドラインに従ってEFSF/ESMの金融市場における活動を活発化できるように各国政府は準備を進める必要がありますとかそんなのは判っとるんじゃヴォケ。


『The adherence of governments to their commitments and the fulfilment by the EFSF/ESM of their role are necessary conditions.』

各国政府のコミットメントへの執着と、EFSF/ESMの役割の達成は必要な条件です(キリッ)。

・・・・・・いやあのそれは良いのですが先日の「びりーぶみー」の話は????

『The Governing Council, within its mandate to maintain price stability over the medium term and in observance of its independence in determining monetary policy, may undertake outright open market operations of a size adequate to reach its objective.』

おいおいmay undertakeかよという事ですが、要はファンダメンタルズ以上に無駄に拡大した南欧諸国国債のリスクプレミアムを縮小して金融市場分断状態になっているのを是正するために、債券市場でその辺の国債を購入する「かもしれません」というお話で。

『In this context, the concerns of private investors about seniority will be addressed. Furthermore, the Governing Council may consider undertaking further non-standard monetary policy measures according to what is required to repair monetary policy transmission. Over the coming weeks, we will design the appropriate modalities for such policy measures.』

この観点から、民間投資家が懸念するECB等の債務優先問題も扱われるべきである(って要は流通市場でECBが購入した各国国債のいざとなった時の優先劣後関係を一般投資家と差をつけたら意味が無いって事でしょ)。更に理事会は金融政策のトランスミッションメカニズムを回復する為に必要な非伝統的政策の実施に向けて考慮する「かもしれません」。今後数週間で、我々はそれらの政策に関して適切な仕組みをデザインするでしょう。

・・・・・・つーことで、今回は華麗にゼロ回答な上に、非伝統的政策のデザインとかの部分では「will」って言ってるのに買入とかの部分に関しては「may」と助動詞が微妙に弱いのが気になります。

で、この後は経済物価分析になって、最後の部分でもいつもの話しかしておりません。

『While significant progress has been achieved with fiscal consolidation over recent years, further decisive and urgent steps need to be taken to improve competitiveness. From 2009 to 2011, euro area countries, on average, reduced the deficit-to-GDP ratio by 2.3 percentage points, and the primary deficit improved by about 2-1/2 percentage points. Fiscal adjustment in the euro area is continuing in 2012, and it is indeed crucial that efforts are maintained to restore sound fiscal positions.』

この辺までが財政健全化の話、以下が構造改革の話。

『At the same time, structural reforms are as essential as fiscal consolidation efforts and the measures to repair the financial sector. Some progress has also been made in this area. For example, unit labour costs and current account developments have started to undergo a correction process in most of the countries strongly affected by the crisis. However, further reform measures need to be implemented swiftly and decisively. Product market reforms to foster competitiveness and the creation of efficient and flexible labour markets are preconditions for the unwinding of existing imbalances and the achievement of robust, sustainable growth. It is now crucial that Member States implement their country-specific recommendations with determination.』

『We are now at your disposal for questions.』

ということで、質疑応答に関してはテキストが出るのがどうせ日本時間の今晩になりますので、あたくしの週末の宿題となるのでありました(^^)。


まあこれだけだとシャーナイナイなのでブルームバーグニュースとかロイターとかから。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M84SOP6TTDT901.html
ECB総裁:政府と協調し国債購入の意向−危機対応の新ページ

『8月2日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は2日、ECBが欧州の救済基金とともに債券市場に強力に介入する意向を示唆した。ドイツ連邦銀行(中銀)の慎重姿勢にもかかわらず、危機対応を強化する考えだ。』(上記URLより)


http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE87106F20120802?sp=true
ユーロが下落、ECBが迅速な措置見送り失望売り=NY市場
2012年 08月 3日 06:49 JST

『ドラギECB総裁は理事会後の会見で、近いうちに行動することを示唆しなかった。流通市場におけるイタリア、スペイン国債の買い入れに向け準備を進めていると明言する一方、ユーロ圏政府がまず救済基金を利用することが前提になると述べるなど、ECBの買い入れに条件を付ける考えを表明。ECBによる市場介入は、当該国が要請し厳格な条件および監督を受け入れることが必要になると述べた。また、今回の決定に際して、理事会メンバーのバイトマン独連銀総裁が国債買い入れに関し留保する考えを表明したことを明らかにし、行動に向けて最終採決をとる前に同連銀を説得する必要があると説明した。』(上記URLより)

・・・・・・・うむ、Q&Aをせっせと読めという事のようですが、しかしまあドラギ総裁のステートメントの部分だけを額面で捕えると「準備しています」的な威勢の良い発言はしているものの、肝心な所の助動詞が「may」だったりしてますし、上記のURL記事にもあるように会見では(ECB提供の会見Webcastをちゃんと聞けば良いのですがそこまでの時間と脳味噌の余裕がが無いorz)ブンデスバンクが文句垂れてるとか有るようで、まあ要するに今回ちゃんと纏められなかったという事でしょうし、大体からして前回の会見の時に「非伝統的政策について議論は無かった」という話をしている中で、今回いきなり何かの政策が出るというのは余程の根回しが入らないとロジ的にも厳しいでしょという所ですがな。

つーことで、まあ何かやる方向なのはやる方向なのでしょうが、ドラギの「びりーぶみー」が無駄に市場の期待を高めてしまいましたので、この後始末どうしてくれるという感じでございまして、まあ暫くはECBの動きに注目ですな。


おまけ:日本時間朝7時過ぎにECBのサイトをリロードしたら

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120802.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)

Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 2 August 2012

>Introductory statement to the press conference (with Q&A)
>Introductory statement to the press conference (with Q&A)
>Introductory statement to the press conference (with Q&A)

・・・・・・・・・・・・orz

もう2時間前に出していただければ超越斜め読みしたのに・・・・・という感じですが、さすがにネタにするのは無理なのでやはり運が良くて土日にネタにするかどうか(ぐうたらのあたくしなので多分月曜のネタなのですが↓にありますように森本審議委員講演ネタもあるので気が向いたら更新するかもしれません(キリッ))ですの。



○その他少々

・森本審議委員講演ネタまで間に合わないので勘弁

森本審議委員講演である。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/ko120802a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120802a1.pdf

・・・・・・・しかし今朝はECBネタ(しかも高々4パラグラフ分)で時間を費やしたので本日はパス。


・3か月短国入札

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240802.htm

(3)募入最低価格 99円97銭5厘0毛 (募入最高利回り)(0.1002%)
(4)募入最低価格における案分比率 1.9115%
(5)募入平均価格 99円97銭5厘3毛 (募入平均利回り )(0.0990%)

・・・・・・・どう見ても2年国債とインバートです本当にありがとうございました。


・ブンデスバンクでこんなのが

http://www.bundesbank.de/Redaktion/EN/Standardartikel/Press/Interviews/2012_07_27_weidmann_bundesbankmagazin.html
55 years for stability

Interview with Jens Weidmann, President of the Deutsche Bundesbank, and Helmut Schlesinger, former Bundesbank President, published in the staff magazine of the Bundesbank on 27 July 2012.

>Helmut Schlesinger
>Helmut Schlesinger
>Helmut Schlesinger

・・・・・・・・・おお!ブンデスバンクのシュレジンガー元総裁!!!!!ということで内容は見事なブンデスバンククオリティですが、昔の話をしているので「Konrad Adenauer」だの「Helmut Kohl」だのマニアが喜びそうな文言が飛び出して参りますのでもうちょっと精読したらネタにするかもしれませんししないかも知れません(^^)。




2012/08/02

お題「例によって寝起きでFOMC/基金国債買入でウヒョー」

今日はSEPが無いですし政策変更も無いのでそこまでしんどくないですにゃあ(^^)。ま、しかしモーサテの見出しにブルームバーグ日本版(ネット版)の見出しも「FOMC追加緩和見送り」とかまさにクレクレの極みですなあ

#と思ったらモーサテのNY株式堀古さんがFOMC声明文評価で割と冷静なコメント(と思うのは単にあたくしの読んだ感想と同じなのでなのですが^^)を冒頭でしておりまして、折角のゲストの立場が無くなるような展開にwktkである

#ゲスト氏「強い意志を示しています」「次回FOMC待たずに行動する」と堀古さんに対抗したのかこれまた極端な・・・・・・・(^^)

・・・・・・うむ、為替相場電話コメントの人はまた「特に変わっていないので失望ドル高」となっていまして、どうも市場の反応の方が冷静で何とかストの反応の方がクレクレモードなのでしょうか(最初の雨人コメントなんぞ次回FOMCで大規模QE3とかゆうとったで)、中々面白いですの。


という事でモーサテの感想を書いている場合ではなくFOMC声明文を読書である。


○FOMC声明文:追加緩和示唆のサービスフレーズは入れているけれども先行き見通し不変とな

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120801a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120620a.htm(前回)

・第1パラグラフ(現状認識):景気の総合的な現状認識を「幾分減速」に引き下げる

『Information received since the Federal Open Market Committee met in June suggests that economic activity decelerated somewhat over the first half of this year.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in April suggests that the economy has been expanding moderately this year.』(前回)

ということで一発目にカマしておりますが(^^)、ご覧の通りで景気の現状判断を「今年は経済が緩やかに拡大してきています」から「今年前半に渡って経済活動が幾分か減速しています」に下方修正でござるの巻。

しかしその次の需要項目別の部分とインフレの部分は実はあまり変化していないので
あった。

『Growth in employment has been slow in recent months, and the unemployment rate remains elevated. 』(今回)
『However, growth in employment has slowed in recent months, and the unemployment rate remains elevated. 』(前回)

雇用については伸びがスローというのは同じですが、前回はslowという動詞の現在完了形になっていたのが、今回はbe slowの現在完了形になっていますので、スローになっている状態が継続しているという意味で若干の下げ。「失業率が高い状態が続いている」というのは不変。

『Business fixed investment has continued to advance. Household spending has been rising at a somewhat slower pace than earlier in the year. Despite some further signs of improvement, the housing sector remains depressed. 』(今回)

『Business fixed investment has continued to advance. Household spending appears to be rising at a somewhat slower pace than earlier in the year. Despite some signs of improvement, the housing sector remains depressed.』(前回)

企業の支出に関しては「appears to be rising at a somewhat slower pace」だったのが「has been rising at a somewhat slower pace」になっているのですが、もはや何が何だか判りません><;が、幾分か遅いペースというのに掛かっている文章なので、「幾分か遅いペースになっているのが明らかになってきている」というのが「幾分か遅いペースになってきています」ってな感じになっていますので、これって一応下がってるのかね。まあ非常に微妙な変化ですけど。住宅市場に関しての表現は同じですな。


『Inflation has declined since earlier this year, mainly reflecting lower prices of crude oil and gasoline, and longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)
『Inflation has declined, mainly reflecting lower prices of crude oil and gasoline, and longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

物価に関しては「年初から低下している」というのが入りましたが、その他の表現について変化は無く、長期的なインフレ期待も安定しているという認識は同じです(というかここが変わったらオソロシスなのですが^^)。


・第2パラグラフ(先行き見通し):どう見ても全文一致です本当にありがとうございました

面白いから敢えて両方並べてみるぞなもし(^^)。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects economic growth to remain moderate over coming quarters and then to pick up very gradually. Consequently, the Committee anticipates that the unemployment rate will decline only slowly toward levels that it judges to be consistent with its dual mandate. Furthermore, strains in global financial markets continue to pose significant downside risks to the economic outlook. The Committee anticipates that inflation over the medium term will run at or below the rate that it judges most consistent with its dual mandate.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects economic growth to remain moderate over coming quarters and then to pick up very gradually. Consequently, the Committee anticipates that the unemployment rate will decline only slowly toward levels that it judges to be consistent with its dual mandate. Furthermore, strains in global financial markets continue to pose significant downside risks to the economic outlook. The Committee anticipates that inflation over the medium term will run at or below the rate that it judges most consistent with its dual mandate.』(前回)

ということでご覧の通りの全文一致。

まず最初の一文はおまじないの文言見たいなもんでいつも不変なのですが、その後の先行き見通しに関しても「The Committee expects economic growth to remain moderate over coming quarters and then to pick up very gradually.」とゆーことで当面の数四半期は経済成長が緩やかで、その後徐々に持ち上がって行きますという毎度の見通しには変化が無いですがな。でまあ失業の改善ペースとかリスク認識も同じと見通し何も変わってませんという攻撃。


・第3パラグラフ(金融政策・金利政策部分):どう見ても全文一致です本当に(ry

さすがにもう一回やるのは何なので(^^)、本当に全文一致している事は上記URL先に逝ってご確認下さりませ。

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy. In particular, the Committee decided today to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014.』(今回)

つーことで全文一致なのですが、FF誘導金利に変化が無く、ガイダンス文言にも変化なし。

まあ何ですな、前回のガイダンス文言変更を1年位引っ張ったという実績がある中で、今回ガイダンス文言を半年で変更して半年延長するというのは、いかにもバタバタ感というかやっつけ感が漂うので、さすがにちと格好悪いとゆーのもありますし、まあそれ以前の問題としてそもそも第2パラグラフで示した先行き見通しが変わっていない中でいきなり半年延長というのも整合性としてどうよというのもあるかなとか思いますが、まあこの辺に関してはMinuteが出た所で議論がどうなっていたかを鑑賞したいものだと思うのであります。


・第4パラグラフ(金融政策・金利以外の残り全部):追加緩和示唆キタコレ

前回はツイストオペ延長があったのでここの文言は単純に比較しにくいのは勘弁。

まずは資産買入部分。

『The Committee also decided to continue through the end of the year its program to extend the average maturity of its holdings of securities as announced in June, and it is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities. 』(今回)

『The Committee also decided to continue through the end of the year its program to extend the average maturity of its holdings of securities. Specifically, the Committee intends to purchase Treasury securities with remaining maturities of 6 years to 30 years at the current pace and to sell or redeem an equal amount of Treasury securities with remaining maturities of approximately 3 years or less. This continuation of the maturity extension program should put downward pressure on longer-term interest rates and help to make broader financial conditions more accommodative. The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities. 』(前回)

前回は実施した政策についての説明部分があるのでクソ長くなっておりますが、今回は見ての通りで「6月に実施を決定したMEPを予定通り12月まで実施しますお」というのと、「これまで通りにエージェンシー債およびエージェンシーモーゲージ債の償還分をエージェンシーモーゲージ債に再投資するのを継続しますお」という事を淡々と述べるの巻。


んでもってサービスフレーズキタコレなのはこの先。

『The Committee will closely monitor incoming information on economic and financial developments and will provide additional accommodation as needed to promote a stronger economic recovery and sustained improvement in labor market conditions in a context of price stability. 』(今回)

『The Committee is prepared to take further action as appropriate to promote a stronger economic recovery and sustained improvement in labor market conditions in a context of price stability.』(前回)

サービスフレーズキタコレという感じでございまして(^^)(^^)(^^)、前回の文章は「FOMCは物価安定の下でより力強い経済の回復と、持続的な労働市場の改善をもたらす為に適切となる更なる行動をとる準備がある(キリッ)」という内容でしたが、今回の文章は「FOMCは注意深く今後の経済情勢や金融市場情勢を観察し、物価安定の下でより力強い経済の回復と持続的な労働市場の改善をもたらす為に必要な適切な追加緩和政策を取るでしょう(キリッ)」となりましたぞなもし。

つまりですな、前回は「is prepared to take further action to promote〜」という言い方だったのが今回は「will provide additional accommodation as needed to promote〜」という言い方になって、基本的には「追加緩和実施」を強調する形になっておりまして、まあ決意表明なのかサービスフレーズなのかというとこれがまた微妙に見えますが、まーこうやって期待を引っ張ってとりあえず様子見しようというのは判りました。

まー何ですな、政策ロジックという話で言えば、9月と12月のFOMCはSEPの公表と逆さ絵おじさんの記者会見がセット(10月は今回同様FOMC会合のみパターン)になっているので、9月のFOMCで経済物価情勢見通しの下方修正が行われて追加で何か出るとか、まあそういう感じにするのが絵としては綺麗ですからそうするのですかねえとか思うのですが、こうやって追加緩和期待で引っ張って相場をとりあえず持たせて置くというプレイをすると、先々になると段々市場のクレクレが激しくなってくるので、こういうのも政策コストが掛かっていないかというとやはり掛かっているというモノなんでしょうなあとか思います。

ただまあ何ですな、「in a context of price stability」というのは当たり前のように入る表現でそらまあこれが無いと困りますが(^^)、FOMCの6月議事要旨を見ておりますと少数意見ですけれども相変わらず物価に関しても下のリスクを見る人だけじゃなくて上のリスクを見る人もいますし、そんなに大規模なQEとかって突っ込めないと思うのですけれどもねえとか思う次第。

次回はSEP出すのと同時にSEPの見せ方の手直しをするのかなあとかも思う(6月のFOMC見た感想ですが)のですが、これを緩和もどきとして出すとか、まあ色々とネタが厳しくなっているので、こんな感じでFOMCも期待引っ張りながら出し物は小出し攻撃というテイストが高まって参りましたなあという感じが致します。

#というのは単なるあたくしの感想ですので投資は自己責任で(^^)


○基金国債買入でウヒョー

#加藤一二三九段ではありません(^^)

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120801.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 5,000 2012年8月3日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 2,000 2012年8月3日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年8月3日 2013年2月19日

でもってそのオペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120801.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 3,594 3,594 0.000 0.000
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 964 964 0.000 0.000
共通担保資金供給(資産買入等基金)(8月3日スタート分) 3,083 3,083

・・・・・・・ということで基金国債買入でございますが、月曜に入札があってアチャーな強さだった2年新発、というのは昨日申し上げた通りですが、その2年ゾーンでありますところ(念の為付け加えますと、31日に入札が行われた2年新発債は発行日が8月15日ですので足元では基金国債買入対象外となります)の1年以上2年以下どころか、2年超3年以下の所も札割れと相成りまして、これはまた残念な結果。

でまあ落札結果出るのは昼休みタイムなのですが、この結果を受けまして2年新発債は前場の0.095/0.100の気配から0.090/0.095の気配に貫録の出世となりまして、そらまあこの結果出されると「基金国債買入の買入下限金利の0.10%も撤廃がすっかり視野に入ってきましたなあ的な話になりやがりまして、その結果なのか、それとも業者の総意で買入下限金利撤廃しなはれ状態なのかはよー知りませんが(^^)、2年ゾーンとかの国債の日本相互証券引け利回りも0.095%に低下するの巻で債券市場様におかれましても前場は超長期の方が強くて中期は上値重そうにしていた筈が、引値分布見ると中短期ゾーンの方が相対的に強くなっているという所でした。

ちなみに日本相互証券さんの引け利回りを拝読いたしますと、5年債で言えば75回債から94回債、償還で言うと2013年9月償還から2015年12月償還まで(つまり1年以上の基金国債買入に突っ込める償還年限にあたる銘柄&その3か月先まで)が軒並み前日比利回り低下して何と何と0.095%の引値となりました(10年債だと253回〜273回で、償還は2013/09〜2015/09)。

いやまあこれで益々買入下限金利撤廃の思惑が高まり、そうなると札もハイランチ会長になり、自己実現バンドワゴン状態で益々札が入らないとかお洒落な展開になってくるのですけれども、さて日本銀行様におかれましてはどうするのやらという所ですが、まあ買入年限を5年とかまでにするよりは市場金利低下容認の方がスマート(というよりまだマシというのが正しいか)な希ガス。買入もそうなると新発の供給がある2年の方がメインになると思いますし。

応札下限利回りに関しては特段MPMで決めるような話でも無いのですが、この前基金国庫短期証券買入の下限利回り撤廃をMPM決定事項として公表したので、まあMPMマターになるんでしょうかね。

いずれにせよ、既に昨日の日本相互証券引値でも示されましたように、基金国債買入の買入下限利回りが撤廃されようなもんなら需給関係から言って3年の金利がGCレートや3か月TBに対してインバートするというお洒落な展開になる可能性も(つーか既に昨日の時点で引値はGCに対してインバートしていますが)ありますがなという所で、何とも香ばしい展開になって参りました!!!という所でございましょうか。

#で、今晩はBOEとECBですな、ワクワクテカテカ





2012/08/01

お題「2年国債入札とか社債市場活性化懇談会とかの雑談です」

今晩からは毎日金融政策ネタ投下でwktkである^^;

○2年国債入札ェ・・・・・・・

昨日の2年国債入札オファー
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2012/offer028.htm

落札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2012/resul028.htm

6. 価格競争入札について

(1)応募額 29兆2,935億円
(2)募入決定額 2兆4,749億円
(3)募入最低価格 100円00銭5厘 (募入最高利回り)(0.097%)
(4)募入最低価格における案分比率 28.1375%  
(5)募入平均価格 100円00銭6厘 (募入平均利回り) (0.096%)

・・・・・・・・・・・orz

いやあのですな、まあ昨日確かに0.10割れたらアレですなあとは申し上げましたが、何ぼなんでも2兆7000億円分がまるまる10割れだわ、まあ間違って上(100.005)で切れても按分多いでしょとか思っていたのですけれども、上記のような結果になるとはそらあーた何ぼなんでも調子に乗り過ぎじゃネーノとか思うのですけどはてさてどうなんでしょうね。

つまりですね、0.10%割れでの日銀様の購入が見えている短国だって買い進まれている訳でも無いのに、3か月どころか2年ですよ2年、何で2年の方を0.10%割れ突っ込んで行きますねんという話でありますな。どこぞの銀行さんでも買ってますのかねとかだとこれはまたウヒョーという感じなのですが、まあ例によって例の如くご購入遊ばされた業者様と不明玉様(不明は金融ファクシミリ新聞によりますと6232億円でまあ通常運転)に聞かないとワカランチ会長ではございますが、しかし3か月TBが突き進まない中で2年を買ってくるというのもイメージが湧かないですの。

考えられるのは当然ながら超過準備付利の外側の人たちという事なのですが、投資信託で2年国債をしこたま買わないと行けないような建付けの商品って(公募物では)見たことないですし、年金はそもそもこのゾーンでわざわざ新発国債買うニーズあるとも思えず、生損保も同様とゆーことで、残りは海外投資家様という所。確かにドイツとかの2年国債金利がマイナスだから連想でそーゆー話になるのも判らんでは無いですけど、そもそも2兆7000億円も海外だけでニーズがあるとは思えないですし、海外が買いに来るなら先に短国がもっと祭りになるじゃろと思うので、結局の所「実需の買い」という視点から考えた場合何が何だかよく判らん強さではございました。

#可能性があるとすれば「割引国債はダメだが利付国債は買う」とかいうような仕切りになっているポートがお家の事情で3か月TBよりも2年国債を優先するって動きかなあと思うのですけれども、今時そういうのってどうなんでしょうねえ

ただまあ何ですな、こうやって2年新発の金利が思いっきり0.10%を割りました(結局0.095/0.100の気配で日本相互証券の引けは0.095になっていたと思いますけど)となりますと、早速日経新聞様(日経新聞はかねてから申し上げておりますように拙宅では購読しておりませんので見ないで言うのですが)やら、どこぞの何とかストの皆様におかれましては「基金国債買入の購入が進まない事が懸念→基金国債買入の買入下限利回り撤廃の思惑」という煽りネタを投入するチャンス来々軒とばかりにネタを今朝から投入しているに1万ドラクマという所でございまして、0.20%を割って以来すっかりウゴカンチ会長になっております5年金利なんぞも益々ウゴカンチ会長というかアガランチ会長になるのは必至という所でしょうかねえ。いやはや何とも。

あともう一つ考えているのは、MPMの後最初に行われた3か月TB入札であります所の7月19日オファーのTB296回の再来という動きでして、あの時も不明玉が2.5兆円も出まして「これは買い手が目線を変えたのかあああ」と正直慌てたのですけれども、結局その後のTB入札も穏当な水準で推移し、あの入札は何だったねんという結果になったっつーのがございます。でまあ今回は基金買入下限金利撤廃ネタとかで盛り上げたり、まあ現実に下限金利撤廃になったら0.095%位で日銀に放り込めるし、撤廃にならなくてもどうせ100円には無限のビットが入っているでしょうから逝かれも屁のようなもんとか諸々考えて宝くじ感覚で突っ込んでいるのかも知れないなあと。

しかもこの債券の場合、発行日が8月15日ですので、暫くの間は在庫ファイナンスで逆ザヤのGC調達の心配をすることが無いので、キャリーでマイナスで首が締まるという事もないのがお洒落でして、その間にMPM一回ありますし、ここで「0.10%は入らないんじゃとっとと買入下限撤廃しやがれゴルァ!」とアピって置きますとMPMでさてどうしましょという話が進みやすくなるがなというのもあるので、まあ煽り上等と考えますとそれはそれで可能性あるかなとも思ったり思わなかったり(^^)(^^)(^^)。


ちなみに話はそれますが、「買入対象銘柄の年限長期化」と「買入下限金利の撤廃」というのはある意味トレードオフの関係にございまして、つまりは「基金買入の残高目標を達成するため」という観点で見た場合、別に両方やる必要は1ミリも無い訳でございまして、「超過準備付利金利(0.10%)割れの国債買入をやらない代わりにより長めの国債も買う」VS「対象年限の市場金利が超過準備付利金利割れとなっていることを容認する代わりに対象年限の国債の購入余地を高める」という2者択一の世界でございますので、両方が実施みたいな話をしているコメンテーターがいましたら(いないと思うが)基本的に素人認定するのが吉。

んでもってどっちをやるかと考えた場合、まあ短期国債ゾーンで既に実施したのを見ますととりあえず後者の下限金利撤廃の方がまあ先に来る(ただしその前にオペの札の入り方を見ていき、札割れ連発でどうしようも無いという風になるかどうかを見極めるのが先ですが)のでしょうなあとは思います(非伝統的政策はスムーズな出口設計というのも重要という視点を日銀は持っている筈なので、より長い物を買うくらいなら市場金利の低下容認を選択するでしょと思う)ので、その辺は今後の基金国債買入オペの入り具合を見て行きたいとおもいますです、はい。

#まあいずれの選択肢を取るにせよ、債券市場のインプリケーションという意味では中短期金利が今の水準で益々ウゴカンチ会長になるという話(5年とかはここからもうちょっと下がるのかね)っつー所でしょうかね。何か0.20%を割るとウゴカンチ会長化しますなあ・・・・・・

なお、短期国債と違うのは日銀の買入規模がこのゾーンの流動玉の供給具合に比べて多い事でして、毎週3か月TBが5.7兆円発行されている(その上1年と2か月と6か月が3本あわせて月に8.5兆円発行ですぞなもし)という市場での9.5兆円の買入というのと、元々発行された中長期国債の残骸も色々とあります(ここで市中残高を全銘柄集計したら格好良いのですけれども、そんなマメさはあたくしには存在しないのでここの細かい話はスルーで勘弁)けれども、新発で出てくるのって2年国債の月2.7兆円という市場で24兆円(来年6月末には29兆円)の買入残高達成というのはインパクト的にどうなんでしょうねという感じはします。

#厳密に論議を展開しようとすると、国債買入の方がいったん買うと暫く残高に残るのに対し、短国の買いは現状の環境で考えると殆ど3か月で入ってくるのでターンオーバーが多いとか、色々と置きをしながら市場インパクトをシミュレーションしないといけませんので、まあヒマなお方は計算したらどうっすかね^^



○こんなん出てました

あたくし不覚にも昨日の金融ファクシミリ新聞で知ったのですが(汗)

http://www.jsda.or.jp/katsudou/kaigi/chousa/shasai_kon/index.html
新着情報 
社債市場の活性化に関する懇談会 報告書「社債市場の活性化に向けた取組み」を掲載しました。(平成24年7月30日)

『本協会では、平成21年7月1日、我が国社債市場の活性化を図るため、「社債市場の活性化に関する懇談会」(座長:福井俊彦 キヤノングローバル戦略研究所理事長。以下「懇談会」といいます。)を設置し、我が国社債市場が抱える課題を整理するとともに、一層効率的で、透明性と流動性の高い社債市場の実現のための取組みについて検討してきております。平成22年6月22日には、懇談会において、報告書「社債市場の活性化に向けて」が取りまとめられております。』

ふむふむ。

『懇談会では、同報告書で指摘された社債市場の活性化の実現に向けた4つの重点的な取組みについて、それぞれ部会を設置し検討を進め、平成24年7月30日、各部会の検討結果・取組みにつきまして、報告書「社債市場の活性化に向けた取組み」が取りまとめられております。このページでは、懇談会や部会で取りまとめた報告書及び懇談会等における検討状況などを公開しております。』

ということで報告はこちら(PDFで69ページ組です)。

http://www.jsda.or.jp/katsudou/kaigi/chousa/shasai_kon/files/120730_bukaihoukoku.pdf
社債市場の活性化に向けた取組み(「社債市場の活性化に関する懇談会 部会」報告)

巻頭言より。

『社債市場の活性化に関する懇談会(以下「懇談会」という。)では、平成22 年6月22 日、我が国社債市場の現状、課題を整理し、社債市場の活性化に向けた具体的な取組みを提示した報告書「社債市場の活性化に向けて」を取りまとめた。この具体的な取組みを検討するため、次の4つの取組みごとに部会を設置し、平成22 年6月から同24 年6月まで、合計58 回にわたり会議を重ね検討が行われた。本報告書は、その検討結果を取りまとめたものである。』

ということで、この4つの部会は以下の通り。

(1) 第1部会(証券会社の引受審査の見直し等)
(2) 第2部会(コベナンツの付与及び情報開示等)
(3) 第3部会(社債管理のあり方等)
(4) 第4部会(社債の価格情報インフラの整備等)

・・・・・・・ということで、こちらの中身をざっくり斜め読みをしたのですが、第4部会の辺りはやたらと具体的な話があって、日証協が社債取引価格事例を公表(証券保管振替決済機構に対してが出している決済指図の内容を証券会社が報告する)とか、公社債売買参考統計値の公表時間を遅らせてより価格提供の精度を上げるとか、その手の話がてんこ盛りで市場の中の人的には目先一番影響がありそうでございますので、精読してパブコメするのが吉ではないかと思ったりするのですけど(^^)、それは兎も角。

第2部会とか第3部会の所ってのが市場の建付けという意味では重い部分になると思う訳で、社債市場におけるより信用力の低い(投資適格格付未満の発行体がイメージされると思います)発行体が社債市場に参加する為にどうしたら良いかというような観点での議論が進んだんでしょうなあと思いつつも、一方で銀行様におかれましてはそーゆー所って社債市場的に投資適格未満であっても融資先としたら大優良お取引様であったりするので、市場の活性化が自分の首を絞める面もありますし、まあもっと壮大な話をすれば「直接金融なのか間接金融なのか」という所になってくるので、まーこの辺って関係者の見ていく方向性が一定じゃないから大変だろうなあと思います。つーかだからこそ具体的な細かい話という前の段階の報告になっているんでしょうけれども。

具体的にど〜のこ〜のの部分は時間と量とあたくしの読み込み不足の関係で(おいおい)割愛しますが、これはまあ後日ネタにするかもしれませんししないかもしれません(またこれだ)。


○決定会合議事録キタコレ

これぞ議事録。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2002/gjrk.htm/
金融政策決定会合議事録等(2002年1月〜6月開催分)
2012年7月31日
日本銀行

本日、以下の資料を公表しました。
金融政策決定会合議事録等(2002年1月〜6月開催分)
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2002/index.htm/

でまあ一番オモロスなのは当然ながら2月28日の長国買入拡大(この時はそのほかに年度末に向けた一層潤沢な資金供給というようなお題目とか、ロンバートのお助け金利適用期間拡大(1週間から全営業日に拡大、ただし年度末跨ぎの積み期間まで)とか適格担保拡大の検討とかも出ていて一応「流動性対策」っぽい雰囲気を出していた)の時の議事録なのですが、これをネタにするには壮絶なタイプ打ちをしないといけないので、これまた暇があった時にやるかもしれないしやらないかもしれないという事で。