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2012/03/30
お題「宮尾審議委員会見/その他雑談雑感」
ベイス中畑監督が「”相手に考えさせていくこと”が大事」と公共放送のインタビューでお話になっていて腰が抜けそうになったが、本人も笑いながら「私は緻密なんですよ、ゼッコーチョーとか言ってたけど」と言ってるので今シーズンに期待しておきます(^^)。
ということで今日からプロ野球開幕ですよ♪
○今一歩話が噛み合っていない質疑応答でしたな
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1203d.pdf
・どうも質問者の中におそらく1名だと思うのだが湯気立ててるのがいる
まあ宮尾さんの答え方も微妙なのですけどね。
まあこんな質問が最初の方にあったのですけどね。
『(問) 2点お伺いします。本日の冒頭挨拶で、金融緩和について、円高修正と株高にかなり効果があったと言及されていますが、前回3月の金融政策決定会合で、委員は追加緩和を提案されています。改めて、提案された理由をご説明下さい。(2点目割愛)』
『(答) 1つ目は、3月の金融政策決定会合での基金増額の提案理由に関するご質問です。私自身は、そのタイミングで基金の増額を実施することが適切であると判断して提案しました。その提案理由や議論の詳細については、議事要旨あるいは議事録の形で国民に公表されることになっていますので、来月公表される議事要旨をご覧頂きたいと思います。(2点目割愛)』
まあこの辺の質疑は良いとしまして、この後の方ではこんな質疑が。
『(問) 先程も質問がありましたが、3月の決定会合の中身は、この場では申し上げられないということですが、本日、委員が述べられている景気判断は――日本および海外の動向ですが――、3月に委員が考えられていたものと変化があるのかないのか、お伺いしたいと思います。』
『(答) 繰り返しになりますが、3月の金融政策決定会合の議論に関わってくるため、議事要旨をご覧頂ければと思います。』
・・・・・まあこの答えでどうも質問者が湯気ポッポ―になったような気がする次第で、この人と思われる方が続いて質問を。
『(問) 前回会合からまだ1ヶ月も経っておらず、その間、日本を含め、海外の経済動向に大きな変化があったように見受けられない気がします。本日公表されたものは、委員の正式な景気判断であると思いますが、そうすると、前回の会合で追加緩和を提案された理由がはっきりしません。先程から「議事要旨の公表を待って下さい」とおっしゃっていますが、ご自分の発言であれば、ある程度はお話しできる範囲でお話し頂くのが、それぞれの委員のアカウンタビリティだと思いますが、如何ですか。』
決定会合議事要旨で公表する前に勝手に公表するのはダメですって言ってるのにドヤ顔でアカウンタビリティとか言われましてもねえというか、大体からして良い答え欲しいんだったら「お前のアカウンタビリティー」とか喧嘩売ってどないしましねんと思うのですけれども、それだけ湯気ポッポ―にでもなられたのでしょうかねえ。
『(答) 繰り返しになりますが、金融政策決定会合の議論の内容に関わってくることですので、詳細については、議事要旨をお待ち頂ければと思います。』
・・・・・・・・・・・えーっとですな、まあ宮尾さんの答えにも微妙にどうかと思われる面があって、追加緩和提案の理由に関しては議事要旨見て下さいとなるのはまあ当然ちゃあ当然なのですが、景気見通しが3月から(どうせ質問するなら2月の追加緩和以降で、と聞くべきだと思います(=そうすると3月に追加緩和提案をした背景がある程度読める)けれども・・・・・)変わったかという質問に対しても「議事要旨読め」というのが何か微妙ですよね。
でまあ単にそれは宮尾さんの慣れの問題なのかも知れませんけれども、そもそも議事要旨見たって個別の委員の景気見通しについては分からないのでありまして、その分について議事要旨読めというのはちょっと異様な感じがするのですよ。
つまりですな、こんなの妄想の世界ではあるのですが、3月の決定会合が妙に時間が長く、決定事項が多いためのロジ問題だけでそこまで遅くなるわけがない(あれだけの大玉を打ち込んだ2月会合だって13時前に終了している)と言う事を考えますと、追加金融緩和に対する部分で揉めたのか、景気認識の部分で揉めたのか、何か揉めた背景があるのではないか、などと妄想するのでございました。まあ完全に妄想ですけれども。
でですね、昨日ネタにした宮尾さんの講演テキストを読みますと、ネタにした通りで景気に対する認識も金融緩和の波及効果に関してもやや強気なイメージになっていまして、その景気認識と追加金融緩和提案というロジックが確かに繋がらないわと思う(からまあ「講演だと追加緩和提案の背景が判らない」という質問をしたのも判らんでもないのですが、あれはもうちょっと聞き方を工夫して欲しかった)のですが、その辺りに関して何かがあったのかなあとか思うのでありましたです。それにしてもそれだけで14時回るのかとは思うけど。
・ちなみに足元の景気はシナリオ通りという話
さっき引用した最初の質問の後半ではこんな話をしてたのよ。
『(問)(前半は3月会合での追加緩和提案理由についてです)次に、景気に関する認識について――本日の挨拶でも触れられていますが――、米国もかなり景気が戻ってきているというご認識だと思いますが、今の国内景気については、横ばい圏内で推移し、2012年度前半から持ち直すとされています。この回復スピードは、日銀の想定よりも多少早くなっているのかどうか、ご認識をお聞かせ下さい。』
『(答)(前半割愛)2つ目の景気認識については、基本的に、これまで想定していたメインシナリオに概ね沿った動きであると認識していますが、冒頭挨拶でも触れた通り、いくつか変化点もあります。まず、欧州債務問題に伴う深刻な金融システム不安といったテールリスクが後退していること、2番目は、米国経済の改善に底堅さが窺われること、3番目に、わが国の金融環境の改善がみられること、といった変化点があります。一方、注意しなければならない点として、欧州経済の停滞がやや長期化するリスク、2番目は原油価格の動向、最後に、中国経済の足許における減速の動きが今後どうなるか、といった点があります。いずれにしても、大きな意味で、今のところメインシナリオに概ね沿った動きとみていますが、この点については、4月の展望レポートでしっかりと点検していきたいと思います。』
まあこの辺は3月の金融経済月報で示された認識と同じですな。
・物価安定の目途に関して
こういう質問の仕方は中々。
『(問) 2点お伺いします。まず、2月の決定会合の議事要旨をみると、「物価安定の目途」について、1%ではなく、もう少し高めの数字が議論されていた様子が窺われます。委員としては――どのような意見を出されたかは公表できないと思いますが――、1%よりも上の目標を掲げることのメリットとデメリットについて、どのようにお考えか、教えて下さい。公式見解としては、余り高い数字を掲げると、長期金利が上昇するリスクがあるということと思いますが、政府の方では、その点は、デフレ脱却できれば余り問題ではない、あるいは名目成長率が高くなればさほど問題ではないとして圧力を高めていると思いますが、この点についてご説明下さい。(2点目割愛)』
最後の政府云々が余計な気がするが。
『(答) まず1点目の「物価安定の目途」としての1%の妥当性についてですが、「物価安定の目途」を検討するに当たり、いくつかの検討項目があります。最初に、消費者物価指数の計測誤差、2つ目には、物価下落と景気悪化の悪循環が生じるリスクに備えた「のりしろ」、3番目に、家計や企業など国民の物価観、という3つの観点を踏まえて検討してきました。このうち、3番目の物価観に関してみると、わが国ではデフレに陥る前から海外主要国に比べて一貫してインフレ率は低い水準にあるため、そうした物価観から一気に高い物価上昇率を目指すという場合には、家計や企業が却って大きな不確実性に直面する可能性があるほか、長期金利の上昇が生じるリスクも考えられます。こうした事情を勘案して、政策委員会の決定として、当面、消費者物価上昇率でみて1%を目指すという決定をしました。これが未来永劫1%なのかというと、「物価安定の目途」については、今後、日本経済の構造変化がどのように進むかということも影響してきますので、そうした構造変化の進展等を見極めつつ、原則として、ほぼ1年ごとに点検していく方針です。』
ということで、この辺はまあ変わった話をしているというイメージ無し。
・基金国債買入と財政ファイナンス
まあ今回その質疑もやや多かったですけど、最後の方の質疑から。
『(問) まず、3月の決定会合で資産買入れ基金の増額を提案されていますが、間もなく4月上旬にも次の決定会合が開催されます。どのように臨まれるのかを教えて下さい。2点目として、先程、財政赤字をファイナンスすることが目的ではないとおっしゃった国債買入れの件ですが、基金の枠組みは、導入以来拡大の一途を辿っています。その意味で、何らかの歯止めが必要ではないか、という点についてお聞かせ下さい。』
『(答) まず、次回以降の金融政策決定会合に対しての構えですが、私どもが金融政策決定会合に臨む一貫した構えとして、将来の政策判断について、事前にコメントしたり、詳細を申し上げることは適当ではないと思っており、この点についてはコメントを差し控えさせて頂きたいと思います。毎回の金融政策決定会合では、それまでに利用可能となった経済物価情勢や金融環境など様々な情報を点検して、適切な判断を行っていくということで、次回会合以降も、そうした姿勢で臨んでいきたいと思います。』
まあこれはシャーナイとして。
『次に、基金での国債購入が拡大してきた中で歯止めが必要ないのかというご質問です。私どもの国債購入は、まず、資産買入れ等の基金を通じた国債の買入れは、現在、総額19兆円となっています。これは、デフレ脱却に向けた金融政策として実施するものです。これとは別に、経済成長に合わせて現金通貨を市場に供給する目的で実施している国債購入は年間21.6兆円です。これは、金融政策目的ではなく、満期まで保有するものであり、「日銀券ルール」という歯止めをしっかりかけて、それに基づいて管理しています。前者は金融政策目的で、後者は成長に合わせた現金通貨の供給のための国債購入であり、両者は異なる目的で区別して管理・決定されているものであることをご理解頂きたいと思います。』
これはこれでまあその通りなのですが、そういう説明をすると「じゃあ今まで何で輪番オペの拡大を金融政策決定会合で議決していたのか」というツッコミが来た時にどうするんでしょという気は少々します。もし銀行券云々という話であればそれは金融政策決定会合で決めるのではなく調節技術上の問題になりませんかねえとかいう話になるのですが、まあそうなったらなったで債券市場的には輪番が不定期不定額になると市場の攪乱要因に思いっきりなってしまうというデメリットが大きく、まああまりゴリゴリここのロジックを詰めない方が正しいのですけどね(ニヤニヤ)。
それよりも「デフレ脱却を確実にするまでの時限的措置」という説明を明確にした方が判りやすい(ドラギみたいな感じですわな)のではないかと思いますけどね。当然ながらこういう質問が続く。
『(問) 追加で質問します。冒頭挨拶では、財政赤字のファイナンスは基金についての言及でしたので、後者の成長通貨供給オペではなく、基金の歯止めをかける必要がないのかという点についてお答え頂きたい。』
『(答) 繰り返しになりますが、基金については金融政策として実施しています。成長通貨の供給目的で行う国債買入れは日銀券ルールに基づいて管理しているということです。』
ということで、これだと如何にも判りにくいので「物価安定の目途を達成するまでの時限的措置」という話で押した方が良いような気がするんですが、そう書きながらあたくしもじゃあそういう説明でどういうツッコミを受けるのかとか考えながら書いていて、ちょっとこの説明にも落とし穴がありそうな気がそこはかとなくする(予感だけ)。
・オモシロヘッドラインの背景
『(問) いくつか出た質問に関して、追加で2つ伺います。まず、先程、別の方の質問にもありましたが、「基金の歯止め」についてです。輪番オペで買っている国債には日銀券ルールがあることは分かりますが、基金についても歯止めが必要ではないかというのが質問の趣旨だと思います。輪番オペと基金の分を合わせると――基金は別ということですが――、結果的に、日銀券ルールの額に達してしまう可能性がある訳で、長期金利に影響する可能性はゼロではないと思います。基金の額について歯止めが必要ないのか、改めて確認させて下さい。(以下割愛)』
『(答) 繰り返しになりますが、1点目の基金による国債買入れは、金融政策です。金融政策ということは、最後まで持たない可能性も当然あるわけですので、状況に応じてフレキシブルに対応し得るものと思います。一方、経済成長に合わせて現金通貨を市場に供給する目的での国債購入は、満期まで保有する固定的なものです。これは、日銀券ルールに基づいて管理するという区分けをしています。(以下割愛)』
・・・・・・うーむ、これは宮尾さんも若干説明が雑で、一般論としてその通りだけれども、現在の金融経済情勢だと「今現に購入している分」が売却されるというのは中々考えにくいですよというのを付け加えないと、昨日ネタにしたようなブルームバーグのオモシロヘッドラインを打ち込まれるリスクがある罠と思いますけど、まあはっきり言ってこれはブルームバーグのヘッドラインの打ち方が恣意的というかミスリードを誘うような書き方だなあと思いました。
まあ他にもありましたが、こんな所で・・・・・・と言いつつ次の悪態ネタに質疑を一本残して置く。
○今さらソロスチャートかよ!!!!
ということで先ほどの宮尾審議委員会見ですが、その中で馬鹿質問が1件。
『(問) 2点お伺いします。(まあ前半の質問は良いのですけれども割愛しちゃいます)また、マネタリーベースが、3月にかけて、伸び率が急激に下がっています。こういう数字をもって、日銀が強力な金融緩和を推進してくれると期待している市場参加者その他は、「日銀はやる気が余りないのではないか」と思う可能性があります。この点についてご説明下さい。』
いやあのそんなの普通に金融調節とか資金需給とか判っている人は「やる気が余りない」とか言いませんからねえと思う次第。
『(答) (前半割愛)2点目は、マネタリーベースの変化についてのご質問ですが、この2月、3月では、当座預金の変動に伴った動きが一つの要因として考えられます。財政資金の変動等によって、当座預金が比較的大きく変動したので、その結果がマネタリーベースの短期的な動きに現れた可能性があると思います。いずれにせよ、そうした動きの要因も含め、マネタリーベースの動き、マネー指標の動きについても、注意深く点検していきたいと思います。』
大体からしてソロスチャートと言われるものって貨幣乗数が安定している時に成立する話で、予備的資金需要やらによる超過準備とか、量的緩和して超過準備が資金需給によってぶれるような状態になっている時には当然ながら当てはまり悪いだろと思う訳でして、まあソロスチャート持ち出しますと4月は当座預金残高が今の数値(ちなみに今日は34.4兆円の残高になる予定だが)から更に増えそう(お蔭で基金固定金利オペ6Mがまた札減ってカツカツの応札になっているのですが^^)な勢いでございますので、「日銀は4月は強力な金融緩和を推進してる」とか言うのかねと思うのでありますがどうなんでしょうかねえ(ニヤニヤ)。
まあ資金需給の事も理解しないで「4月になったら当座預金残高は15兆円水準、もしかしたら8兆円(=ほぼ所要準備並み)近くまで低下するかもしれない」(キリッ)とか馬鹿レポートを出すのが債券の何とかストだったりするので、まあそういう意味では「市場関係者」のうちその手の話をちゃんと把握していない人も多いとは思いますけどね。
と申しますのは、最近もどこぞのレポートで見たのですが、「株式市場や外為市場を牛耳り、大抵がソロスチャートの信奉者である大多数の外国人投資家から理解を得られるようにしないといけない」とか何とか抜かしている馬鹿レポートがあって腰を抜かす訳ですが、お前はそもそもソロスチャートで短期売買している投資家がいるのかと小一時間問い詰めたい訳で、単月の資金需給の振れによる動きで一々「緩和が足りない」とか言うとか頭大丈夫かというかお前ら早く引退して後進に道を譲れやドアホと思いますけどね。
まあ本職の何とかストでもそういう手合いが存在する、というくらいまあ金融政策ネタを実務のレベルまで落とした場合にアジビラ並みのへんてこレポートが横行するのは別に日本だけもなさそう(海外金融政策ネタを書いている海外レポートはたまにしか見ないですけれども、一部やはり変なのを見かける訳で)ではございますが、まーマニアックにも程がある世界なので理解されませんわなあとか思うのでございました。
#いかん変な悪態になってしまった
○どうでも良いがこれは微妙に?????
こんなのがあったんですが。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1MDTO07SXKX01.html
日銀の物価上昇1%達成でも真のデフレ脱却と言えず−渡辺努東大教授
更新日時: 2012/03/29 09:10 JST
『3月29日(ブルームバーグ):東京大学大学院の渡辺努教授はブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、真の物価は総務省の消費者物価指数(CPI)前年比上昇率より1ポイント以上低い可能性があるとし、日本銀行が目標として掲げる1%に達しても、デフレから脱していないという事態が起こり得ると述べた。』(上記URLより、以下同様)
はあそうですかという感じですが、この先を読んでいると微妙にアレ。
『渡辺教授は日銀出身で一橋大学教授を経て現職。インタビューは26日に行った。教授が現在取り組んでいるのは、総務省と異なるCPIの算出。同省は調査員をスーパーに派遣し、サンプル調査で集計する。これに対し渡辺教授らは、スーパーのレジにあるスキャン(データ読み取り機)で記録された全ての値段と数量を400店舗分ほど集めた上で、同省と異なる基準でサンプルを抽出する実験を行った。教授は「サンプル抽出の方法を少し変えることで、出てくる数字がどのくらい振れるのか、総務省の数字をどの程度幅を持って見る必要があるか評価しようとした」という。CPIは過去10−15年ほど毎年1%前後下落しているが、「抽出を変えると物価がより大幅に下がる傾向があり、一番大きいケースだと2%下落になる」という。』
・・・・・・・・・何かこの研究ネタ以前見たような見なかったような気がするのですが、POSデータ使って物価集計とかするとそらまあ閉店前の特売価格とか、客寄せ用の特売価格とかも含まれるから低めに出るわなという気がするんだが。
それにPOSの所だけやたら精緻にデータを取っても他の所はどうなのよとか思いますし、大体からして第2種兼業主夫であるところのあたくしの生活実感的にスーパーでの物価ってここ数年下がっている気がしないのですえけど、つーかここ数年は若干上昇してるだろ(前年比でみたら去年と今年では3月とと4月は下がるでしょうけど)と思うのですけどねえ。
『渡辺教授は「1%の根拠は何かをもっと明確にすべきだ。誤差と言っても、私たち以上に踏み込んだ研究をしている例は、私の知る限りない。日銀は何を根拠に、どの数字を見て、どの程度の誤差があるかという説明を一切していない」と語る。』
いやあのスーパーの価格うんぬんよりも多分家電製品のヘドニックが効きすぎている方を問題にした方が良いような気がするんですけど・・・・・・・
『渡辺教授が取り組むもう1つの研究は、金融政策が物価に与える影響。「スキャナーデータにより、これがベストと思えるようなCPIの指数を作った」と指摘。「スーパーだから毎日データが上がってくるので、金融政策の変更により、実際にスーパーの価格や販売数量が動いているかどうかをデイリー単位でみることができる」という。』
はあそうですか(棒読み)。
『渡辺教授はブルームバーグが日銀ウオッチャーを対象に行っている金融政策予測調査を活用。「政策変更が予想通りなら既に織り込み済みなので、スーパーの経営者も価格を変えることはないが、予想外の変更であれば価格付けが変わる可能性がある」と指摘。「何らかの金融緩和が行われ、しかもそれが予想外だった場合、物価が反応するという結果が暫定的ながら得られている」という。
えええええええええ!!!!!!それは相関あっても因果関係は「風が吹けば桶屋が儲かる」の世界じゃないかと思いますけど・・・・・・大体からしてスーパーで値付けする人間がブルームバーグの金融政策予測調査見てるかよと小一時間問い詰めたいですけれども、何かこのセンセイはインタビュー記事だけで判断するのも誠に恐縮ながら思い込みが激しそうな気がするので問い詰めると疲れそうなのでやっぱいいです(笑)
・・・・・・・ということで謎の記事でしたが一応メモ代わりに。そのうちちゃんと勉強したいです。
○1年3か月ぶりの読書室
都合1年3か月ぶりの読書室は相場の名作でござる(^^)。
・「赤いダイヤ(上下巻)」(梶山季之著、集英社文庫)
最近は中銀の出す講演などを読むだけでアップアップのあたくしですが、やはり古典名作を読んで正しく充電しないといけないと思いまして、この本諸般の事情で下巻だけ入手したのですが、急に思い立って某書店に出かけた時にもしやと思って調べたら店頭在庫があってめでたく査収(かつて角川文庫で出ていた筈ですが、1994年1月に集英社文庫から復刻で出ています。ちなみに書店で査収したのは2008年9月の第3刷^^)。
「赤いダイヤ事件」とか言っても何の事だかご存じない方が普通だと存じますが、題材としてはそのまあその当時を題材にした相場物語、というか金に絡んだ欲と野望の入り乱れる物語、という感じですか。まあとにかくお話としては非常に面白かったです。
ブローカー稼業で失敗し入水自殺をしようとした男が海で不思議な男に出会うのですが、その男は赤いダイヤで勝負する稀代の相場師だったのです・・・・という所から物語は始まるのでありますが、息をつかせぬテンポで物語の展開も迫力もあるので一気に読めてしまいました。確かにこれは不朽の名作です。
(追記:赤いダイヤって小豆(「あずき」ですが商品相場業界では「しょうず」と読むほうが多いと思います)の事です)
ISBN-978-4-08-748126-6 C0193 \762(上巻)
ISBN-978-4-08-748127-3 C0193 \800(下巻)
2012/03/29
お題「宮尾審議委員講演/末初メモ」
まずは宮尾審議委員講演から。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120328a1.pdf
○海外経済に関してはまあ普通の話
まあ欧州問題に関しては特段変わった話をしている訳でも無く、まとめのまとめはこんな感じです。
『また、より根本的には、欧州には、財政再建と同時に構造改革を進め、成長力を高めなければならないという重要な課題が残されています。財政再建を短期的にも進めざるを得ない中、これが景気をさらに悪化させるリスクを回避しつつ、如何にして民間活力を引き出し、経済成長を促していくか、難しい舵取りが続きます。全体として欧州経済はこれからしばらく停滞が続き、その後緩やかな回復軌道に戻っていくと見られますが、足もとユーロ圏諸国の間で競争力に格差が目立ち始めていることに鑑みると(図表4)、回復ペースは極めて緩慢なものになる可能性があります。経済の停滞が慢性化・長期化するリスクには、引き続き十分な注意が必要と認識しています』
リスクは急性から慢性になりましたということですね。
米国に関してはそんなに弱気では無さそう。
『米国経済については、足もと良好な経済指標が相次ぐなど、緩やかに回復しており、物価動向も消費者物価指数(除く食料・エネルギー)前年比でみて2%程度と安定しています(図表5、6)。米国経済については、家計のバランスシート調整が経済の重石となる状況が続いている一方、企業部門を起点とする景気回復のメカニズムが途切れることなく続いており、緩やかな改善のモメンタムは維持されている、というのが基本的な構図です。』
ほほう。
『今後の米国経済については、民間の調査機関等では2%台の緩やかな成長は実現可能との見方が多いようです。雇用が堅調に拡大し、家計の負債の対可処分所得比率も徐々に低下してきている中で(図表11)、住宅建設・販売件数が底打ち感を見せ始めていること等も勘案すると、家計のバランスシート調整の重石は、全体としては、徐々に軽くなってきており、景気下振れへの耐性も備わってきているように窺われます。』
ほうほうほう。
『そう申し上げた上で、米国経済を巡る足もとのリスクとして、原油価格の上昇に伴うガソリン価格の高騰を指摘しておきたいと思います(図表12、13)。今のところイラン情勢等の供給側の要因が大きく、価格高騰は一時的とみなされているようですし、米国においてはシェールガス開発の進展などによる天然ガス価格の低下などもみられているため、過度に心配する必要はないかもしれません。一方で、現状1
ガロン3.8ドル程度のガソリン価格が4ドルを超えてくれば、中低所得層の生活を中心に経済活動への悪影響が顕著となる可能性が相応にあり、状況を注視していく必要があります。』
ということで、バランスシート調整が長引くからfalse dawnですよ的な話が無いのがへーへーへーという感じでございます。
んでもって新興国。
『アジア新興国経済は、世界経済の牽引車であり、堅調な内需に支えられて今後徐々に回復していくことをメインシナリオとしていますが、一方で、欧州系金融機関の信用収縮の動きが貿易信用などへも波及し、足もとの減速を長引かせる可能性には注意が必要です。また、より長い目でみた世界経済の健全な発展の観点からは、経済成長と物価安定のバランスをいかに維持していくかが重要となります。』
ほう。
『この点、中国が、2012年の経済成長率の目標を2011年の8.0%から7.5%に引き下げたことは、短期的には景気刺激効果を弱めるとしても、経済のソフトランディングに向けた好ましい対応であると理解しています。いずれにせよ、今年は、中国指導部の新体制移行に伴う不確実性や経済政策の変化等にも注意深く目配りしていくことが必要と認識しております。』
まあ地方政府の目標をトータルすると二桁になるとかチャイナクオリティはありますけど(−−)、そんなに大きなリスク認識をしているような感じでは無かったりする。
○日本経済についてなのですが・・・・・・
読んでて「へ?」と思った部分がありましてですな。
『先行きのわが国経済については、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まり、また震災復興関連の需要が徐々に高まって行くにつれて、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかに回復していくという姿をメインシナリオとしています。その際、出来るだけ持続性を伴った改善であることが望まれます。』
まあこの辺は普通の話なのですが・・・・・・
『翻って、国内の民間設備投資の動向を確認しますと、リーマンショック後に大幅に落ち込んだ後、回復ペースは極めて緩やかでした。加えて、昨年後半の海外経済の減速や為替円高などが、製造業の設備投資をさらに下押しした可能性があります(図表22)。もっとも、内閣府の「平成23年度企業行動に関するアンケート調査」によれば、企業は今後3年間のわが国の実質成長率を1.5%程度、設備投資の伸びを4%程度とみており、全体としてみれば、企業の中長期の成長期待は維持されており、投資意欲も下振れていない様子が窺われます。』
はあそうですかという感じなのですが、成長力強化しましょう的な政策を打っている中で「成長期待は維持されており」とか言われると何か違和感が。
『また、同調査では、海外生産の比率も、足もと18%程度、5 年後の見通しでも22%程度となっており、国内と海外の生産比率のバランスも維持されております。さらに、リーマンショック後に投資が減価償却を下回る水準まで圧縮されたため更新投資が行われやすい環境にあるほか、震災で毀損した設備の建替えや耐震強化工事などの投資支出が加わることも期待できます。』
ほほう。
『このような状況を踏まえますと、企業のキャッシュフロー対比、あるいは減価償却費対比でみた国内設備投資は、本来もっと顕現化しても不思議ではなく、潜在的な需要は相応に蓄積されてきていると思われます。企業の投資意欲が失われていないにも拘らず実際の設備投資が手控えられてきたとすれば、おそらくそれは、株価低迷や為替円高、欧州債務問題等に起因する世界経済の減速、およびそれらに伴う先行きの不透明感等から、投資の意思決定が先送りされてきたためではないかと推察されます。』
『繰り返しになりますが、企業が付加価値を高める事業へ前向きに投資することは、経済の成長力を高め生産性を向上させる重要な原動力であり、デフレ脱却にも寄与します。この点、企業による投資支出が、成長期待に見合うペースで、国内外でバランス良く着実に増加していくかどうかが、わが国経済の持続的成長とデフレ脱却にとって極めて重要なポイントであることを指摘しておきたいと思います。』
となると、メインになるのは成長基盤強化よりも金融緩和の推進という話になるような気がしますが、まあそういう点で言えば宮尾審議委員は3月に資産買入基金の拡大を提案してるのだから講演の趣旨に沿っているちゃあ沿っているのですけれども、この後に出てくる金融緩和の政策メカニズムという観点からすると、成長基盤強化の施策を打っている背景説明と微妙に違いますなあと思うのでありました。
つまりですな、成長基盤強化を打ち込んでいる理由の中に「金融緩和して金融環境は改善できるけれども、企業や家計の成長期待が落ち込んでいることも要因の一つとなって、金融緩和効果が実体経済に中々波及しにくくなっている」「だから成長基盤強化の施策によって金融緩和効果の実体経済への波及メカニズムを強化しますお」という理屈があると存じますが、宮尾さんの説明のトーンはその辺りの波及経路に関しては執行部対比楽観的にみているような感じだなあと思いましたです。
・金融緩和強化に関してはまあ姿勢は積極的に見えます(当たり前だが)
『次に、上記決定に伴って、どのような経路でデフレ脱却がもたらされうるのか、その効果波及経路について考えてみたいと思います。』
つーことでその件ね。
『まずゼロ金利下における非伝統的な金融政策の効果波及経路については、実質的なゼロ金利を将来も続ける、あるいは資産購入を増額するなどにより一段の金融緩和が実施されると、金利を通じる経路やポートフォリオ調整を通じる経路の両面から、長めの金利やリスクプレミアムの低下をもたらします。そして、それが借入コスト、株価・為替レートを含む様々な資産価格、銀行貸出などに働きかけ、企業・家計の支出に影響を及ぼして、最終的には景気・物価にプラスの効果を及ぼしていくという経路が考えられます。』
でまあ先ほども申し上げましたように、執行部的な説明だとこの流れを「金融政策が金融環境に働きかける」→「金融環境が実体経済に働きかける」という風に考えて、その2番目のパスが中々効果的に回らないのはバブル崩壊以降の日本経済において成長基盤が弱まってしまっているから成長基盤強化をしないといけませんよというのというのと、そのように波及経路が毀損しているので、金融政策をじゃんじゃんやっても金融政策単体だと中々実体経済の働きかけが進んでいきませんですお困りましたおという話になる訳ですが、宮尾委員的にはその辺りをあまり主張しないという感じに見えましたですということです。繰り返しになりましたけど。
『こういった整理を踏まえて、2月の決定後の状況を振り返りますと、今後の積極的な金融政策運営に対する見通し(根拠を伴って形成される予想)を通じて、長めの金利や人々のリスクテイク意欲に働きかける形で、2年債金利の低下と円高の修正および株価上昇がみられました(図表24)。』
>今後の積極的な金融政策運営
キタコレという感じですが、2年債金利って0.12%が0.11%になっただけのような気もしますがまあいっか。
『当時の状況としては、政策決定の前から、グローバルなリスク回避姿勢の緩和や米国経済の改善、貿易収支の赤字等を背景に、円高修正・株高の流れが形成されてはいましたが、2月の決定もそういった動きを形成する一因になったとみられます。』
ほう。麿とはちと違いますの。
『明確化された強力な緩和姿勢と思い切った政策行動が、強いコミットメント・時間軸効果を速やかに発揮して、5年債金利などさらに長めのゾーンの金利低下にも波及し、また人々のリスクテイク意欲も高め(その結果、要求されるリスクプレミアムも低下し)、金融環境を改善する効果を高めた可能性が窺われます。』
>明確化された強力な緩和姿勢と思い切った政策行動が、強いコミットメント・時間軸効果を速やかに発揮
>明確化された強力な緩和姿勢と思い切った政策行動が、強いコミットメント・時間軸効果を速やかに発揮
>明確化された強力な緩和姿勢と思い切った政策行動が、強いコミットメント・時間軸効果を速やかに発揮
(;∀;)イイハナシダナー
ということで、まあ3月会合でも基金拡大を提案するのですからそらまあそうなのですけれども、この辺りに関しては緩和に関して強いトーンで話をしているという感じではございます。まあ5年の金利は一回下がったけど米国様の金利上昇をネタにして上昇した結果元に戻っちゃいましたけどね!!!
『先ほど、わが国では、株価低迷や円高の進行、世界経済の減速等によって、企業の投資支出が手控えられてきた可能性があることを指摘しました。今後、足もとまでの金融環境の改善傾向が、海外経済の改善等とともに続いていけば、それが起点となって、企業収益あるいは慎重な企業経営者のマインドも好転し、前向きな投資支出等が増え、同時に成長力・付加価値創造力が高まることが期待されます。』
まあこういう話の方が威勢が良いのでこれはこれで大事なのかも知れませんなあとか思いつつも、執行部的な説明とはちとトーンが違うなという印象なのは先ほどから同様でございまする。
『円高修正や株高の動きは、消費者心理の改善や外国人観光客の増加などにもつながり、国内需要を一層刺激する可能性もあります。そして、こうした動きは景気の持続的回復と物価の緩やかな上昇をもたらす方向に働くでしょう。先行きの不確実性についてはなお慎重にみる見方もあり、向かい風は続きますが、それでもいま申し上げた議論は、強力な金融緩和がデフレ脱却につながりうる1つの経路と考えられます。』
ほう。
『このように、強力な金融緩和がもたらす改善の波及経路が筋道をもって予想され、見通されるものだとすれば、足もとまでの金融環境の改善は決して短命に終わるものではなく、基礎的条件に沿った基調的・持続的な動きを反映している可能性があります。実際に観察される金融指標の動きには、さまざまな短期的要因と基調的要因の影響が混在しており、それらを明確に区別することは困難ですが、一段の緩和の強化が、望ましい基調的な動きを後押ししている可能性は排除できないと考えます。』
ということで、この辺に関しては麿理論とちょっと違うなあと思うのでありました。
・見せ方には注意が必要という話^^
『2月の政策決定では、1%の物価上昇率を目指し、それが見通せるようになるまで金融緩和を強力に推進するという形でコミットメント(約束)をより明確にしました。コミットメントをより明確化することは、金融政策運営に対する見通しの不確実性を低め、信認を一段と高めるという重要なメリットがあります。しかしだからといって「どんな犠牲を払っても1%の物価上昇だけを達成すればよい」といった政策運営をすれば、それはあまりに硬直的な運営であり、国民経済の健全な発展にとって望ましいものではないでしょう。デフレ脱却は最重要の課題であり、金融面からの後押しが必要ですが、そのためにも信認と柔軟性の両方を兼ね備えた政策運営が必要です。』
ほう。
『今後、積極的な金融緩和を推進していくなかで、必要となってくる柔軟性の一つは、潜在的な副作用に対する適切な目配りです。』
第二の柱キタコレBISビューキタコレ!とか思ってしまう訳ですが・・・・・・
『現在の「資産買入等の基金」の枠組みのもとで実施している国債購入は、デフレ脱却のために必要と判断して実施された金融政策であり、財政赤字をファイナンスする目的で行っているものではありません。一方で、巨額の財政赤字や政府債務残高の存在は、財政リスクを高めかねない大きな懸念材料です。景気回復や株価の上昇を伴わず、国債に対するリスクプレミアムだけが高まって金利が上昇することは、悪い金利上昇と言えます。こういった財政リスクの顕現化は何としても回避しなければなりません。』
ほうほうなるほど。
『そのため、まず、中長期的な財政規律を確保する必要があります。デフレ脱却に向けて中央銀行が積極的な資産購入・国債購入を実施しても、大元である財政規律が担保されていなければ、財政リスクの顕現化という「意図せざる帰結」の蓋然性を高めてしまうことになりかねません。』
ああその話ですかそうですかという事で、要するに「財政の中長期的なサステイナビリティ確保へ向けた動きをしないと金融緩和強化がどこかで中銀による財政ファイナンス扱いされて財政インフレになったら元も子もない」という極めて真っ当なお話をしているのですというのは把握しましたが、「潜在的な副作用に対する適切な目配り」とか言われるとちょうど先日の麿によるBISビューキタコレな講演(あれは海外向けにはイイハナシダナーではありますが、どう見てもお前それ日本の状況に合ってねえだろという感じで、風俗営業系のお店に行って嬢にこんな所で働いてちゃダメだとか説教するクソジジイかお前はと思ったのですがその辺の悪態ネタはまた整理して明日にでも^^)を真っ先に思い出す訳で、ちとここの部分は物の言い方を工夫した方が良かったんじゃないかと思います。
まあ幸いにして講演ヘッドラインではあまりこの部分が強調された感じでは無かったようですが、会見の方では見事に誘導尋問に引っかかったのかどうか知りませんが、ブルームバーグにこんなヘッドラインを打たれていましたな。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1IVTG0D9L3501.html
宮尾日銀委員:満期到来前に売却の可能性も−買い入れた長期国債(2)
更新日時: 2012/03/28 15:35 JST
『3月28日(ブルームバーグ):日本銀行の宮尾龍蔵審議委員は28日午後、千葉市内で会見し、日銀が資産買い入れ等基金の枠組みで買い入れた長期国債について「最後まで持たない可能性も当然ある」と述べ、満期が到来する前に売却する可能性に言及した。』(上記URLより)
とは言ったって基金で買った長期国債の償還は2年以内に来る訳ですからして、普通に考えて満期まで持つだろそれという話ですし、そもそもあんさん追加緩和提案しているのですから、タイムフレーム考えたら償還まで持ち切りになるだろ(基金で10年物とか20年物とか買ってる訳じゃないんだから・・・・・)と思うのでありまして、こういう時は「物価安定の目途が予想以上に早期に達成できるような状況ならば理屈の上では売却の可能性もあるが、現在の経済状況では満期まで保有することになるのではないか、そもそも私は追加で基金の拡大を提案しているのですし」とか何とか言って、上記のようなオモシロヘッドラインを打たれないように工夫することをお勧め致したい所でございます。
つーかブルームバーグも何考えてこういうヘッドライン打つんだかという感じですけどね。
あと講演は少々ありますが、まあそんなにこれという話は無いと思ったのでスルー。
○時間が無いのでメモだけ
・GCレートなど絶賛低下
火曜日が国債売買のレギュラー売買期内最終受渡日でしたが、火曜水曜と期内渡しの投資家の買いが来るわ現先でのキャッシュ潰し+保有国債残高の帳尻プレイが来るわとお約束の華麗な展開となってGCレートも華麗に低下。
スポネとかもそうですがトムとかT+0とか金余りんぐになっていて、しかも末初の所は当然ながらその手の「会計的理由による成行買い(または買現先)」攻撃の爆裂で現先玉とか見事な枯渇を示しておられるようでGCとかもだいぶ低下したようでござるの巻。あまりに下がり過ぎて資金の出し手が引いてしまってその後やや上昇したのはご愛嬌ですけれども。
つーことでこの調子では期初に入っても暫く金余りで現先レートとか低い状態が続くんだろうなあとか思いますが、まあ年末年始とかと違って期初の場合は普通に月の頭から入札大会になりますので、来週後半になるとちったあ是正されるかもとは思います。
ただまあ今年は何か知らんが期末のCP発行が妙に少ない気もする(ちゃんと集計してないのでアレですが多分今年はかなり少ない、つーか去年は震災の影響で予備的資金需要強かったので去年と比較するのもアレですが)わけで、潰さないといけないキャッシュが短期市場に絶賛滞留状態になっておられるのではないかと存じます次第でございまする。
おまけにFOMC以降の金利上昇の影響でカレント中心に投資家の買いが来てしまったのでレポがタイトになっているようで、まあ色々と今年の期末もてーへんでしたなという所でございまする。
2012/03/28
お題「ブラード総裁クオリティ炸裂の講演という趣味コーナーで勘弁である」
国会にインチキなんだかヘボなんだか知らんが例の投資顧問社長を呼んで追及とやらをすることに何の意味があるのか全く判らんのですが、そんなのは司法当局の仕事だろおまえら他にやる事あるだろアホか馬鹿かと。
で、話は違いますが早速公共放送のインフレフォビア煽りキタコレでして朝っぱらから「原油高騰で大変ですよ」キャンペーンをおっぱじめておるわけで、デフレ脱却議連とやらの皆様におかれましてはこういう報道でインフレフォビア煽るのを止めさせないといつまでもインフレ期待って高まらないと思いますよ(ニヤニヤ)。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120328/k10014014691000.html
○ブラード総裁の香港での講演はこれまたアレ
クレディスイス香港主催のコンファレンスでの講演ですがこれまた極端な内容。
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/Bullard_Hong_Kong_Credit_Suisse_23March2012_Final.pdf
Monetary Policy and the U.S. Economy in 20121
15th Annual Credit Suisse Asian Investment Conference
Hong Kong
March 23, 2012
・いきなり冒頭はこれ
『Macroeconomic prospects in the U.S. are looking somewhat brighter in
2012. This is providing the Federal Open Market Committee (FOMC) with an
opportunity to pause in its aggressive easing campaign, to allow the Committee
the chance to assess developments in the economy and observe the effectiveness
of recent policy actions. This opportunity to pause is quite important
because the Committee is taking a substantial, but calculated, risk with
the Federal Reserve balance sheet.』
米国経済は明るくなってきたので、FEDの従来より実施している積極的な金融政策を休止する(待つ?)機会を与えています。FOMCの金融政策はその大きなバランスシートの存在によって、計算可能だけれども大きなリスクを取っているので、この機会は重要です。
と、例によって例の如くいきなりキタコレという感じですが、ブラード総裁と言えばQE2どうのこうのの前に最も積極的に「米国は日本のようなデフレ均衡に陥るリスクがあり、そうならないようにする為には積極的な国債の購入が必要」という話をしていただけに、まあ言う事極端だなこのオッサンとは思うものの、以前大当たりした実績(と言うかなんというか・・・・)があるんだけにまあ気にはなります罠。
ちなみに、QE2を主張している時も「時間軸政策のような低金利の固定化政策は却ってデフレ均衡入りの可能性を高めるので良くない」という話をしていまして、そうなりますとまあ今の政策フレームワークの中では明示的な望ましいインフレ率の提示の方はウェルカムだけど、フォワードガイダンスに関しては不満という所でしょうなあと思われ。
で、FEDの実施した政策の説明をうだうだと行ったあとこういう話を。
『This litany illustrates the determination of the Committee and of Chairman
Bernanke to provide support to the U.S. economy in the face of one of the
largest macroeconomic disturbances in modern economic history. Indeed,
the policy has been successful in the sense that the U.S. has not slipped
into the scenario of a falling price level, which sometimes occurs after
shocks of this magnitude.』
つーことで、これらの金融政策は米国経済が経済のショックによって起きることの多い価格下落ショック入りとなる事を防ぐ意味で重要でした。と相変わらずの物価重視派でありまする。
『But now, with the Committee on pause, it may be a good time to take stock
of whether we may be at a turning point. Many of the further policy actions
the Committee might consider at this juncture would have effects extending
out for several years. As the U.S. economy continues to rebound and repair,
those policy actions may create an overcommitment to ultra-easy monetary
policy. The ultra-easy policy has been appropriate until now, but it will
not always be appropriate.』
キタコレという感じですな。米国経済が引き続きリバウンドし修復していく中において、現在の金融政策行動は「超金融緩和政策へのオーバーコミットメント」と招くと仰せであります。で、超金融緩和政策は「これまでは適切だったが、いつまでも適切であるとは限らない」とな。
つーことでQE2前にはハト丸出しだったのがいきなり最近はタカ振りに磨きがかかるという大変に素敵なオッサンなのがブラード総裁クオリティではあるのですけれども、まあ「物価に対してフォワードルッキング」という感じなのでしょうかねえブラード総裁って。
『The FOMC has often been criticized historically for overstaying policy
stances that might have made sense at one juncture but are no longer appropriate
as macroeconomic conditions change.』
更にダメ押しのように「FOMCは経済状況の変化に対応した政策変更が遅れる」と批判されることも多いとか(^^)。
『This occurs in part because of the lags in the effects of policy, the
difficulty in interpreting real-time data, much of which is subsequently
revised, and the sheer uncertainty of macroeconomic developments.』
まあさいですな。
『With numerous monetary policy actions still on the table, and others
still affecting the economy with a lag, it may be especially difficult
to remove policy accommodation at the appropriate pace and at the appropriate
time. One may want to approach such a situation with caution.』
・オークン則がどうのこうの
ということで本論に入るのですが、米国経済に関する明るい見通しの所はスルーして、労働市場の話の所を引用するだよ。『Okun’s
Guideline』という小見出しの所。
『Part of the improvement in the U.S. macroeconomic outlook has occurred
in labor markets. Unemployment has declined to 8.3 percent, and the latest
figures on growth in nonfarm payroll employment have been encouraging.』
『The unemployment declines have been viewed by some as a puzzle. In 2011,
a year of lackluster economic growth, U.S. unemployment declined fairly
substantially. This would seem to violate “Okun’s law,” which suggests
that economic growth has to be reasonably robust before the unemployment
rate will decline. This is, in fact, the source of some statements in financial
markets and elsewhere that the pace of economic growth in the U.S. is too
slow to meaningfully improve labor markets.』
つーことで2011年は経済成長が強くなかったのに失業率は顕著に低下していますが、これは「オークン則」からすると不思議ですよねという話です。
でね、何でこの話になるかと言いますと、昨日ネタにしたバーナンキ議長の労働市場に関する講演でも「今後の失業率の低下にはより力強い経済成長が必要」という話になって、だから緩和的な金融政策の継続が必要(とは言ってたがQE3の話していた訳でも無いのに何で株があんなに反応したんでしょ??)という話で、まあ物価に関しての話はあまり意見って割れないようなのですけれども、どうもFOMCの中でも労働市場に関しては意見が割れるようですな。
でまあ足元では金融緩和政策の継続云々という点については、デュアルマンデートの「雇用の最大化」の方がポイントになって緩和継続をしているので、ここでの見解の相違というのはまともに金融政策の時間軸に影響する話なので、まあ注目という感じではございまする。
とは言いましても、ブラード総裁の場合はそもそも今年の投票権がありませんので、その分お気楽に勝手な話が出来るという面はありそうですし、どうも最先端、というかやや極端な話をするのが好きな人という印象もありますので、その辺りからするとまあ話半分とは言いませんが、やや割り引いて見る必要はありそうですけどね。
つーことで続き。
『Yet labor markets have indeed improved, so what’s going on? Probably
the most important consideration is that-as in the film “Pirates of the
Caribbean”-Okun’s “law” is not so much a law but more like a “guideline.”』
普通オークン則に関しては「Okun’s law」と表現される(バーナンキ議長の先日の講演でもそうです)のですが敢えて「guideline」としていたのは・・・・・・
『Another consideration is that Okun’s guideline is not as linear as it
is often made out to be. A look at the time series of U.S. unemployment
since the mid-1980s indicates that recessions are definitely times when
unemployment increases sharply, while expansions are times when unemployment
declines slowly. In other words, the relationship between unemployment
and GDP growth is very sharp during downturns, but more muddled during
expansions. This might suggest that the nation does not need rapid growth
to see a reduction in unemployment-it only needs to see some positive growth.』
つーことで、結論としては「失業率の低下にそれほど力強い成長は必要ないのでは」という話ですな。
・生産ギャップの話
異例の低金利を長期間継続する、というFOMCの決定のもう一つの背景として、「生産ギャップが大きいのでインフレはそう簡単に上がらず、低金利政策の長期化が正当化される」というのがありますが、それに対して「いやそれは違う」という話をするのがブラードクオリティであります。
でまあその話の骨子は「生産ギャップが大きいと言うけれども、そもそもその計測の際に使う「通常の状態」に信用バブル時代の数値を含めるのはおかしい」という話でして、まあ以前もその話をしていたので概ねスルーしまして、結論の結論部分を。
『What should we do about this issue, since conventional metrics do not
make any allowance for the housing bubble? I suggest using available theory
to separate trend from cycle in an appropriate way. Absent that, I suggest
using a Hodrick-Prescott filter that removes trends and leaves business
cycle frequency movements in the data. Such a filter suggests that the
U.S. output gap today is much smaller than commonly believed.』
バブルの部分を除いて考えれば一般的に言われるほど米国に生産ギャップが今ある訳ではございませんとな。
『Dealing with the output gap issue is a delicate matter. The discussion
today has an eerie 1970s feel to it, in which many argued that the output
gap was large and that monetary policy had to remain very aggressive to
close the gap.』
生産ギャップの議論はデリケートな話で、今の状況は「金融政策は生産ギャップが小さくなるまで極めて積極的な金融政策をすべきである」と言われた1970年代を想起するとな。
『The result was a global inflation debacle that took several decades to
completely contain. Some say that if inflation increases, then we know
how to combat it. That is true, but the hard-learned lesson of the 1970s
was that if the inflation genie is let out of the bottle, it can be extremely
difficult to get it back into the bottle.』
その結果はグローバルインフレーションの大爆発であり、その後のインフレ鎮静化に数十年必要となりましたよ。インフレという大魔神が壺の中から飛び出すと(というとついハクション大魔王を思い出すので全然恐怖のイメージにならないのは昭和脳のあたくしだけですかそうですか)壺に戻すのが極めて困難ですと。
ということで、どうしてこうなったという位にタカ派のブラードクオリティではございますが、まあ今年投票権が無いのでその辺は割り引くとしても、なんちゅうか極端から極端に振れる人だなあという感じです。
・コミュニケーションポリシー
フォワードガイダンス文言に対する見解です。
『One important lesson from these projections is that the uncertainty surrounding
the future policy path is profound. Some policymakers thought it might
be necessary to raise interest rates within the next one or two years,
while others thought the increase could be postponed for many more years.
The confidence interval surrounding the date of the first interest rate
increase is so wide it has to be expressed in years.』
今のコミュニケーションポリシーで示される先行きの金融政策パスは意見が激しく割れていてヤヤコシヤではないかという論点についてですな。
『This very wide confidence interval may seem stunning, but I think in
a way it is not surprising. If we know one thing about the U.S. economy,
we know that it can behave in unpredictable ways. The amount of uncertainty
surrounding U.S. economic performance is profound, and attempts to project
macroeconomic outcomes more than 6 to 12 months into the future are unlikely
to meet with much success.』
まあそらそうで、経済の先行き予想だって難しいのに利上げ時期がいつとかの見解が思いっきり広いレンジになるのはシャーナイナイではないですかと仰せのようです。
『The amount of uncertainty attached to a projection of U.S. economic performance
into 2014 reinforces the idea that much will change between now and then,
and that policy will have to change as well to meet new macroeconomic conditions.』
まあそうですわな。
『The forecasts themselves by the individual members of the FOMC are a
step forward for Fed transparency. Chairman Bernanke has led the way toward
more and more transparency for the U.S. central bank. This is a definite
improvement in Fed communications.』
とは言えこれはこれで透明性向上の一つのステップと。
『However, despite this improvement, I believe the projections will have
to be differently at some point in the future. The notion of individual
forecasts for Committee members is not the most convenient method of conveying
information to interested observers. The forecasts as they stand are merely
projections of a few macroeconomic variables instead of a more fulsome
discussion of all aspects of the U.S. economy. The policy assessments are
for the policy rate only, in an environment where balance sheet policy
has taken center stage.』
つーことで、ブラード総裁は「現在の見せ方には改善の余地がある」ということで、政策金利見通しだけではなく、現状であればバランスシートポリシーを行っているのだがらバランスシートの量を示すとか、まあそんなやり方あるでしょと。
『I think the Committee should consider publishing a Monetary Policy Report
similar to those put together on a regular basis by other central banks.』
それより他の中銀が出している金融政策レポートみたいなのを出した方が良いのではとのお話。
『This would be a single report of the staff, containing a longer and more
comprehensive discussion of the state of the U.S. economy and the likely
direction going forward. The policy assumption should be the market expectation
at the time the report is put together. Such a report would allow commentary
on aspects of macroeconomic performance that are unlikely to ever be addressed
through a mechanism like the current Summary of Economic Projections.』
『The more fulsome discussion of macroeconomic developments that would
be part of a U.S. Monetary Policy Report would also help with another issue,
which is how the Committee might better convey how it might react in future
states of the world.』
『Since there are many such future states, it may be misleading to try
to delineate how the reaction might occur through the use of a few variables
or simple “thresholds.” Such a simple description would likely set up
an expectation that the Committee would act if a threshold was crossed,
when no such expectation was intended or desired by the Committee. A full
discussion in a report could lay out these nuances in a way that could
be better digested by markets.』
まあ最後の所はそらそうですなという話なのですが、経済の状況や金融政策に関する見通し説明などにおいて、現在のSEPのように幾つかの経済データを出す、という形にすると、FRBの金融政策が、SEPで示されているような「特定の経済データ」に依存して行動するという誤解を与えかねないので、経済と金融政策の見通しをより幅広い内容について示すべきである、という結論。
・・・・・・・・まあそれはそれで判るのですけれども、おっさんインフレターゲットはあれだけ大喜びしているのにコミュニケーションポリシーでは「より総合的な見通しを示すのが重要」となるのは何でですねんという気がする結論ではございました。
#という事で趣味のコーナーになりましてどうもすいません(しかも諸事情でアップ遅れるし)
2012/03/27
お題「これはまた麿節でござる/その他少々」
バーナンキ発言で肝心の債券市場が金利低下で反応してない(ように結果だけ見るとみえる)のが何ともまあお洒落な展開ですな。
○固定金利オペ拡大終了と(メモ)
メモだけ。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120326.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年3月28日 2012年10月1日
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120326.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(3月28日スタート分) 17,936 8,003 44.6
10月1日エンドとはこれまた珍妙な足(ロールの時のオファーが中間期末跨ぎになるとは・・・・)のオペでしたが、足元で金利入札落とし中なので無事(?)に札が集まって、これで大体固定金利オペ35兆円達成(一部札割れがあってちょっと欠けていますけどそれはまあ誤差の範囲内という感じでしょう)という事で。
だからどうしたと言われても困りますが、まあ今年度末までに拡大終了できて良かったですねという所でありまする。
○バーナンキ議長発言がどうのこうの(これまたメモ)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20120326a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20120326a.pdf
当然ながら起き抜けで全部読むのはあたくしのへぼい語学力ではアレでございますので最後のまとめ『Conclusion』の所だけ(中身は後で読む)。
『To sum up: A wide range of indicators suggests that the job market has
been improving, which is a welcome development indeed. Still, conditions
remain far from normal, as shown, for example, by the high level of long-term
unemployment and the fact that jobs and hours worked remain well below
pre-crisis peaks, even without adjusting for growth in the labor force.』
労働市場は改善しているものの状況は平常からは程遠く、例えば長期失業者は金融危機前のピーク水準であり、レーバーフォースの拡大も伴っていませんとな。
『Moreover, we cannot yet be sure that the recent pace of improvement in
the labor market will be sustained.』
現在の労働市場の改善ペースの持続性については確信が持てませんキタコレ。
『Notably, an examination of recent deviations from Okun's law suggests
that the recent decline in the unemployment rate may reflect, at least
in part, a reversal of the unusually large layoffs that occurred during
late 2008 and over 2009.』
で、ここでオークン則の話が出てくるのですが、実は先週金曜に毎度おなじみのセントルイス連銀ブラード総裁が香港でクレディスイス主催のコンファランスで「オークン則から考えて失業改善の為により高い経済成長が必要というのはミスリード。大体あれは「法則」じゃなくて単に経験則であって必ずしも線形で動くもんじゃねえ。とりあえず成長していれば失業率の改善は続く」という話をしていてこれはこれはという所なのですがまだネタにしてませんでしたすいませんすいません。
『To the extent that this reversal has been completed, further significant
improvements in the unemployment rate will likely require a more-rapid
expansion of production and demand from consumers and businesses, a process
that can be supported by continued accommodative policies.』
んでもってバーナンキ議長は(まあ普通に)オークン則に即して考えた場合の事を意識していると思われますが、今後の失業の顕著な改善に対して必要なのは、よりペースの速い生産や消費者や企業の需要拡大であり、それは今後も緩和的な政策を継続することによってサポートされるでしょう、という話をしておられるようで。
・・・・・・・うーむ、これで何で派手派手に反応するのか良く判らんが、FF先物とかに示されるようにもしかして米国市場ってワシらが傍で見ているよりも金融緩和政策終了の前倒しを意識してるのかね??それにしては債券市場が反応していないようにみえるのも変だが・・・・・・
以下はまあそんなに金融政策な話でも無くて、長期失業者の構造問題に関する話なのですが引用だけしておく。
『I also discussed long-term unemployment today, arguing that cyclical
rather than structural factors are likely the primary source of its substantial
increase during the recession. If this assessment is correct, then accommodative
policies to support the economic recovery will help address this problem
as well. We must watch long-term unemployment especially carefully, however.
Even if the primary cause of high long-term unemployment is insufficient
aggregate demand, if progress in reducing unemployment is too slow, the
long-term unemployed will see their skills and labor force attachment atrophy
further, possibly converting a cyclical problem into a structural one.』
『If this hypothesis is wrong and structural factors are in fact explaining
much of the increase in long-term unemployment, then the scope for countercyclical
policies to address this problem will be more limited. Even if that proves
to be the case, however, we should not conclude that nothing can be done.
If structural factors are the predominant explanation for the increase
in long-term unemployment, it will become even more important to take the
steps needed to ensure that workers are able to obtain the skills needed
to meet the demands of our rapidly changing economy.』
○麿節キタコレ
麿が講演をしておられるようで。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120326a1.pdf
セントラル・バンキング―― 危機前、危機の渦中、危機後 ――
というお題なのですが、今回何がキタコレと申しましても場所が『Federal Reserve
Board と International Journal of Central Bankingによる共催コンファレンスでの講演の邦訳』とありますようにFEDに乗り込んで(大げさ^^)FEDビュー破れたりという講演をしている事でして(^^)、海外に行くと急に生き生きと麿節全開になるとゆーのも不思議っちゃあ不思議な方ではございます(^^)。
・麿の「頼もう!」ですかそうですか(違)
冒頭から飛ばしておられます。『1.はじめに』から。
『世界的な金融危機とそれに先立つバブルは、中央銀行に多くの課題を突き付けている。』
さいですな。
『日本銀行は、先進国の中で戦後において最初にこの問題に直面した中央銀行であった。』
まあ自慢にもならんがな。
『日本の経験は海外の政策当局者や学界でも知的な関心を呼び、日本銀行は非常に実験的なものも含め多くの政策提言を受けてきた。』
どう見ても「お前ら他人事だと思って実験台みたいな無茶提言しやがってふざけるな」と仰せのようです(^^)。
『しかし、ごく少数の例外を除くと、バブル崩壊後の日本の低成長は、大胆な政策を迅速に実行することに失敗した日本に固有のエピソードとして簡単に片付けられることが多かった。』
そして次がこれである。
『ご記憶の方も多いと思うが、FRB の多くのエコノミストの共著による“Preventing
Deflation: Lessons from Japan’s Experience in the 1990s”と題する論文が、2002
年に公表されている。この論文は、金融政策の効果について、当時の私からみると、下記のように楽観的な見方を
提示していた(図表1)。』
『「我々の感覚では、金融緩和が資産価格の下支えや景気回復につながらなかったのは、下振れショックを十分にオフセットしなかったからであって、金融政策の波及メカニズムが棄損してしまったからではない。...1990年代前半の日本において、金融の脆弱性が、追加金融緩和の有効性を取り除いたわけではない。」』
FEDに乗り込んで麿節キターという感じで、麿が「頼もう!」と道場破りに出かけているような力強い姿を想像致します(ニヤニヤ)。
・麿のBISビューキタコレ
ちょっと進んで『2.危機前:金融的不均衡と金融政策』という所がこれまたキタコレである。
『最初に、金融危機前のフェーズを取り上げたい。ここで私が特に提起したいのは金融政策の役割についてである。』
ふむ。
『標準的な考え方に従えば、金融政策の変更を迫るトリガーは物価変動である。実際、どの中央銀行も先行きの物価上昇率を左右する要因として、需給ギャップや予想物価上昇率に多大な注意を払っていた。しかし、バブルの発生から金融危機に至る過程を振り返ってみた場合、事後的にみると、その後のマクロ経済を不安定化させることになった最も大きな不均衡は、物価上昇ではなく、金融的な不均衡――すなわち、資産価格の急激かつ大幅な上昇、信用やレバレッジ、期間ミスマッチの拡大――という形をとって現れていた。』
不均衡は必ず物価に出るという前提に基づく考え方を否定してまして、(ここでは露骨には言ってませんが)日銀はインフレターゲットだけやってりゃ良いんだよ裁量とかすんなヴォケというような見解も斬っていますな、うんうん。
『金融的不均衡は、最終的に金融機関や金融システムに大きなショックをもたらし、経済活動を急激かつ大幅に収縮させた。そうした急性期の症状は、危機発生後に採られた政府や中央銀行の積極的な政策措置で解消したが、バランスシートの修復に伴う低成長という、慢性症状は現在なお続いている。』
さいですな。
『明らかになったことは、バブル崩壊後に積極的な金融政策を実行しても経済活動の長期間にわたる低迷は回避できなかったということである。その意味で、政策の力点は、バブルの後始末ではなく、金融的不均衡への事前対応に置く必要がある。』
FEDビュー(と言われるもの)をFRBのコンファランスでケチョンケチョンにDisるとかこういうのを見ると麿って本当は相当に戦闘的な性格(まあそうじゃなきゃ日銀みたいな所で偉くなれないと思いますけど)なんですなあとか思いながら読んでいたのですがどうでしょうかねえ。
『金融的不均衡への事前対応という点では、「ティンバーゲンの原理」や「マンデルの割当て原則」に基づき、金融政策は物価安定に、規制・監督は金融的不均衡の是正に割り当てるべきという見方がある。しかし、そうした割り当て論が妥当するのは、物価の安定と金融システムの安定という政策目的が互いに独立な場合であろう。』
FEDは基本的にこの辺りの件については(あたくしがこれまで見た限りでは)主流になっているのは「ティンバーゲンの原理」を持ち出してくる方だと思う(だいたい地区連銀総裁やらFRBのボードメンバーの講演とかではそういう話をしているのがメジャー)ので、これまた道場破りモードになっておられるようでございますな。でその続き。
『一連の経験を経て明らかになったのは、二つの目的が独立ではないということである。物価が安定しマクロ経済環境が安定すると、経済主体のリスク認識は徐々に緩み、そのリスクテイク姿勢も変化していく。また、物価安定の下で低金利の持続予想が強まると、金融機関は「利回り追求」の行動を強め、レバレッジや、資産・負債の期間ミスマッチ、通貨のミスマッチを拡大させる(図表6)。こうした不均衡はある閾値を超えて拡大すると、金融システムを不安定化させ、ひいては実体経済や物価を不安定にすることになる。』
・金融不均衡への対応は意識を相当強くしないと難しいという話
更に続き。
『日本銀行を含め多くの中央銀行はこのような金融的不均衡に気付いていなかった訳ではなかった。中央銀行にとって厄介だったことは、不均衡が拡大する過程において、皮肉にも物価上昇率が上がらない、ないし低インフレが続いたという事実であった(図表7)。少なくとも、日本の場合は、高成長と低インフレが続く下で、後の時代の言葉で言う「ニューエコノミーの到来」という見方が利上げに対する強力な反対論として立ちはだかった。』
ふむふむ。
『低金利の持続は金融的不均衡を生みだす一つの要因であり、中央銀行が非対称的な金融政策の運営――すなわち、金融的不均衡が拡大しても物価が安定している限り政策対応しないが、バブル崩壊後には積極的に利下げを行うこと――に予めコミットすると、以下の経路を通じて、事態はより悪化する可能性がある。』
キター。
『第1の経路は、そうしたプット・オプション型の金融政策が金融機関の過度のリスクテイクを助長することである。第2の経路は、物価安定のみに焦点を当てた政策スタンスによって、マクロ経済環境が安定化すると、様々な経済主体の支出増加やリスクテイクを更に後押ししていくことである。』
『金融政策自身が高成長と低インフレをもたらしているにもかかわらず、見た目には、ニューエコノミーの到来と識別困難な状況になる。この点を十分意識せずに、中央銀行が緩和的な政策を継続すると、物価安定がみかけ上維持されたまま、民間部門の支出増加や金融的不均衡は増幅され、その分、バブル崩壊後のショックも大きくなる。「物価安定のパラドックス」とでも言うべき現象である。』
ということで第2の柱が重要という話ですかそうですか。
『もちろん、金融的不均衡は金融政策だけで起こる訳ではなく、発生のメカニズムは複雑である。この面では、規制・監督の果たすべき役割は大きい。また、その際、マクロプルーデンスの視点が重要なことについても異論はない。それでは、「割当て原則」に従って、金融的不均衡に対しては、規制・監督で対応すべきという議論については、どのように考えるべきだろうか。』
『私の答えは、適切な金融政策と規制・監督の両方ともが必要という単純なものである。低金利という水道の蛇口を開いたまま、ひたすらバケツから溢れ出る水を汲み続ける、すなわち、金融政策はそのままにして、マクロプルーデンス政策や規制だけで対応するというアプローチが有望であるとは思えない。』
どう見てもBISビューです本当にありがとうございました。
・金融政策の効果と限界とかその他
という辺りまでが今回の麿節の最大の見どころでございまして、まあ後は引用するのどうしようかなあという感じなのですが。
『3.危機の渦中:最後の貸し手の重要性』という所から少々。
『次に取り上げるのは、危機の渦中のフェーズである。このフェーズにおいて、中央銀行に求められる本質的な役割は「最後の貸し手」である。その重要性は歴史が証明しており、今回も、危機時における中央銀行の積極的な行動は経済活動の大きな落ち込みを防ぐ上で非常に効果があった。日本銀行の量的緩和政策、FRBの信用緩和政策、ECBの3年物LTRO、いずれもその有効性は本質的に「最後の貸し手」としての役割に根差している。「最後の貸し手」に関連して、ここで強調すべきは決済システム政策の重要性である(図表8)。』
ということで、決済システムというか決済機能の維持をしないと大変な事になりますよという話をしていまして、これはこれで確かにそうですなと思いつつ読むわけですが、この話って結局キリキリ詰めるとリーマンをいきなり法的整理に追い込んだ当局対応に対する嫌味にもなっているような希ガス。
『4.危機後:積極的な金融政策の効果と限界』から少々。
『最後に取り上げるのは、金融危機後のフェーズ、より具体的には、急性症状は終わったがバランスシート修復が続く慢性症状期の金融緩和政策の役割である(図表10)。金融緩和に当たっては、本来意図した便益と意図せざるコストに関する注意深い分析が不可欠である。バブル崩壊後の積極的な金融緩和政策はもちろん必要であるが、副作用や限界についても意識する必要がある。結論は国や時期によって異なり一義的な答えはないが、危機前の議論において十分な注意が払われていなかった側面として、以下の4点を指摘したい。』
キリッという感じですが、まあそう言ってる麿先生の所でどう見ても便益とコストの注意深い分析とかじゃなくてエイヤーで突っ込んだ追加金融緩和をしていたような気がしますがあれはいったいなんだったのでしょうか(ニヤニヤ)。
『第1は、バランスシート修復の重みである。』
ということで、バランスシート修正に時間が掛かる間に金融政策は時間稼ぎに過ぎないというような話で締めるのかと思えばさにあらず。
『金融緩和は、バランスシート修復に伴う痛みの緩和剤でしかない。しかも、この緩和剤は長く服用すれば、過剰債務の削減インセンティブを低下させ、最終的に必要なバランスシート修復の達成時期の遅れというコストを伴う側面もある。』
キタコレ。
『もちろん、低金利の効果はバランスシートの毀損していない経済主体にも及ぶ。そうした経済主体が現在の低金利を利用する形で、将来の需要を現在に繰り上げるならば、需要創出効果が期待できる。しかし、バランスシート調整が長期間にわたって続くと、低金利のもとでも、現在に繰り上げることのできる需要は次第に減ってくる。過剰債務の削減インセンティブの低下は、政府についても当てはまる。増加した政府債務の水準が持続可能でないとみられるようになると、欧州債務問題が示すように、物価安定と金融システム安定を脅かすことになる。』
まあ何だ、それはそれで正論だし海外向けの話という意味では仰る通りではございますが、日本向けの話じゃねえわなという感じがする訳でございまして、これをそのまま日本向けの話だという風にどうせ報道されてしまう訳で、そうなりますとまた無駄に変なコンフリクトが起きますなあ全くねえという風にも思うあたくしなのでございました(第2以下はめんどいので割愛)。
・最後の金融政策の課題も中々
『5.おわりに――今後の金融政策運営上の課題――』から少々。
『第1の課題は、金融政策運営の枠組みに関するものである。』
『この点については、先進国の中央銀行の間で、金融政策の枠組みの名称が異なっても、中長期の物価安定を目的として政策を遂行するということに関して、既にコンセンサスが得られている。また、物価上昇率の短期的な動向に過度に焦点を当てて政策を行うと、金融的不均衡の蓄積とその後の不可避な調整を通して、経済の振幅をより大きくしてしまう可能性があることも明らかになっている。』
『金融的不均衡に関する状況把握など、マクロプルーデンスの視点を金融政策運営に取り入れようと試みているのは、日本銀行だけではなかろう。しかし、今なお残る課題は、そうした望ましい政策の枠組みを、経済の安定と繁栄に不可欠な中央銀行の独立性の政治的基盤に組み入れていくことである。』
ほほう。
『特定の物価上昇率水準の達成について中央銀行に説明責任を負わせることは、比較的分かりやすいものである。この意味で、特定の物価上昇率水準に注目が集まることは、重要な経済政策の一部が専門家組織に委ねられることの代償といえる。これに対して、マクロプルーデンスの視点を金融政策運営に生かしていくという考え方は一般にはかなり分かりにくく――サイエンスというよりアートの側面が強く――、そうした政策運営のスタイルが民主主義社会においてどの程度受け入れられていくかが今後試されることになるだろう。』
まあそうです罠(第2の話は割愛)。
まあ日本の場合はそれ以前の問題で、一部では日銀法改正して日銀は執行機関で良いんだよ裁量的な政策なんていらねえんだよ的な議論をする人もいますけど、もしそういう風になったら政府、というよりは政治の方が金融政策の責任も取るというケツ持ちをすることになる、という当たり前の話に帰着すると思うのですが、そっちのケツ持ちをする気はサラサラ無くて、財政構造改革(ただ単に増税とかいうしょぼい話ではなくて、財政の長期的な維持可能性の確保という話だわさ)に着手すらできないというダメダメ連中の癖に日銀にあれだせこれだせと恫喝するのは一人前以上というのが跋扈するという状況であるというのが実にorzでありますな。いやまあ米国でもFRB廃止とかおつむのアレなのが大統領選挙指名レースに出てきたりするので似たような事なのかも知れませんがね。
#何故か最後はあたくしのどうでもよい悪態になってしまってどうもすいません
2012/03/26
お題「森本審議委員会見から/日銀次期審議委員候補にBNPパリバの河野龍太郎さんとな」
モーサテの日経新聞朝刊記事紹介コーナーで「原油高、家計にジワリ波及」という記事についておねいさんが「生活関連物資の価格上層は困りますねえ〜」みたいな話をしているのだが、決定会合の度に円高是正にデフレ脱却の為にと言いながら追加緩和クレクレ報道を煽るその口で何でそういう発言になるのかと小一時間問い詰めたいものでございます。
#解説の吉崎さんの「円高効果も無くなってますし」というのは軽い皮肉と見た(^^)
○森本審議委員会見もまあ景気慎重気味
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1203c.pdf
・電力供給懸念に関して
冒頭の「どういう話がありましたか」という質問に対しての部分から。
『こうした中、本日の議論全てを網羅することはできませんが、席上聞かれた話を整理して申し上げると、まず、「大半の地元企業にとっては、まだまだ高い水準にある円高、原油高、電力供給不足懸念等により引き続き厳しい状況にある」というお話や、「ビジネスのやり方を見直す時期に来ており、国内空洞化も懸念される」といった声、また、「事業再構築の必要があるが、海外戦略を企画・立案する人材がなかなか得られない、不足している」といった収益環境の厳しさや環境変化への対応の難しさを指摘する話が聞かれたところです。また、「金融円滑化法の下での企業再生支援の取組みの難しさ」についてもお話がありました。』
円高、原油高、電力供給不足懸念となという部分と、ビジネスのやり方を見直す云々の辺りがこらまたあちゃーって感じでして、まあ基調として森本審議委員は国内経済に関してやや厳しい見方、つーか構造的にちと問題含みみたいな認識を示しているなあという感じを受けましたがどうでしょうかね。
で、その電力に関しては原発停止による電力不足懸念のリスクに関して改めて質問されていまして、そちらではこのように。
『2点目の原発停止に伴う需給問題については、関電はご承知の通り原子力ウェイトが高いため、当地域においては非常に高い関心事項の1つだと思います。関電管内では、2月20日をもって、原子力発電が全て停止となり、これから、原発再開については安全性をしっかり確認した上で、政府をはじめ関係者間で協議されていくことになると思いますので、大変申し訳ありませんが、私からは具体的にコメントすることは差し控えさせて頂きたいと思います。』
そらまあ東電出身という立場ですから益々コメントできんわな。
『ただ、その上で当然ながら電力は、経済・生産活動に非常に大きな役割を果たしていますので、今年の夏をはじめ当面の電力需給の問題に加えて、仮に関西の電力供給が中長期的に不安定という状況になれば、当該地域での製造コストや投資という面での見直しもあり得ますし、兵庫県でも潜在的な経済活動水準が低下するリスクが浮上してくるのではないかと思っています。具体的には、当地への企業誘致・立地などにおいても影響を与えることも懸念されますので、十分に注意してみていく必要があると思っています。』
という話になりますわな。更に電力不足に関しては最後でも質問がありまして・・・・・・
『(問) 先ほどの2点目の質問について追加ですが、電力不足の件については、全国的な経済全体への下押し懸念についてどのようにご覧になっていらっしゃるのか。政治情勢のところはコメントが難しいと思いますが、今日の懇談でもお話が出たかも知れませんが、企業サイドからモノ自体がないことへの懸念が相当高まっていると思われますので、経済全体への下押し圧力としてはどのようにみているのか、改めてお伺いします。』
『(答) よく経済界の皆さんが「六重苦」――従来の「五重苦」に電力需給問題を加えて――とおっしゃいますが、エネルギーインフラが不安定になっていないか、というのは企業経営上大変大きな問題になっていると思います。』
全くですな。
『これが全国レベルでどういった状況になっていくのかということで、先ほど申し上げたように、原発の再開問題については安全第一、安全を十分に確認した上で、政府をはじめ関係者で色々協議されていくことになると思います。そのうえで、電力供給に関する不確実性であるとか、火力発電への依存度の高まり等を映じたコスト高という問題が生じる可能性があるとすると、輸出や生産だけではなく、経済活動全体に対してマイナスの影響が及びますし、中長期的にみても、その不安感が拭えないとすると、国内企業の競争力低下、あるいは生産設備の海外シフトといったことを招く可能性もありますので、私どもとしては十分に注視して参りたいと思っています。』
まあ日銀としては十分に注視するしかやる事無いのですが、また今年も夏に向けて節電大会と言う事に成ると、その前の街の人出と最近の人出というのを比較すりゃ東京の方だと直ぐ判ると思いますけど経済活動という意味ではまたまた下押し圧力ですわなあと思ったりするあたくしでございます。
・下振れ懸念に関連して
こんな質問も。
『(問) 本日の挨拶の内容をみると、特に欧州問題について――先日、ギリシャ問題については国債の償還が一段落したわけですが――、先行きについてはかなり強い懸念を持たれている印象を受けましたが、今後の欧州のリスクについてどのようにみていらっしゃいますか。(後半割愛)』
でまあ答えが微妙に長いのですけれども、ここまでの経緯に関する話の部分を割愛して該当部分の後半を引用。
『今後、与えられた時間を活かして、財政健全化策や競争力強化策を着実に実行することが求められますが、これらがどういう風に進んでいくのか、という面で不安定要因があると思っています。』
『ギリシャという個別国の財政改革に加えて、欧州債務問題の解決に不可欠である2つのポイントとして、1つはユーロ圏内部の財政ガバナンスの強化、もう1つはいわゆるファイヤーウォールの拡充といった大きな問題があろうかと思います。まず、1つ目の財政ガバナンス強化については、3月初のEU首脳会合で新たな財政協定が署名されるなど、一定の進展がみられています。一方、ファイヤーウォールの問題については、色々と検討される中で、決定が当初予定の3月初から3月末にずれ込んでいて、不透明感が払拭されていません。こうした状況において、関係者による粘り強い努力が、これから実を結んでいくことを期待したいと思っています。』
ふむふむ。
『もう1つ、欧州債務問題の世界経済への波及という意味で、いわゆるデレバレッジングの問題があり、これによる金融面からの下押し圧力が引き続き懸念材料として残っています。今のところ、これが大きな影響をもたらしているわけではありませんが、先行き、欧州金融機関の資金調達環境が悪化すれば、中東欧向け与信に加え、アジアなど他地域向けでも、プレゼンスの大きい貿易金融やプロジェクトファイナンスなどが削減される可能性があり、このような欧州債務問題に対する対応次第では、世界経済に大きな影響を与える可能性もあって、それが日本にも影響してくるおそれがあります。』
ということで、まあ普通の話ではあるのですが。
『このように、ひとまず緊張は和らいでいますが、色々な不安定要因を考えると、これらをこれからも注視していかなければならないと思っています。』
という風に締めている(この後別の質問に対する回答が続くので締めではないが)ので、まあ先行きの見方は慎重という印象を与える受け答えという所ではないでしょうか。
・宮尾委員の追加緩和提案に関して
という質問がありましてその答えの部分から。
『それから、前回、宮尾審議委員からの増額の提案に対して、他の8人の政策委員が反対したわけですが、これも繰り返しになって恐縮ですが、デフレからの脱却は、成長力強化への努力と金融面からの強力な下支えを通じて、実現されていくものだという基本的な考え方のもとで、当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の金融緩和措置を進めていこう、合わせて、この3月に成長力強化のために成長基盤強化支援にも取り組んでいくというパッケージで方針を打ち出したわけです。我々としてはデフレ脱却への動きを2つのパッケージで上手く起動して、デフレ脱却へ向かって進んでいくことを期待したわけです。これからも経済・物価情勢を丹念に点検しながら、適切な政策運営に努めていきたいというのが反対した意思です。』
ということで、まあ今回はこの前出した追加緩和の効果を見るという話のようです。
・物価安定の目途関連
上記と同じ質疑の中で目途の数値の見直しについてどうよという質問がありましてですな。
『2月に「中長期的な物価安定の目途」導入に当たって、議事要旨の中で「2%」あるいは「1〜2%」という記述があったと思いますが、色々な議論の上に、結果的に「中長期的な物価安定の目途」として「2%以下のプラスの領域で、当面1%を目途」として頑張っていこうという決定が結論になったわけです。この1%が低いのではないかなど色々なご意見があるわけですが、これを色々議論して結論に至った私どもの根拠とは(根拠の部分に関しては「物価安定の目途」公表文書と同じなので引用割愛)私どもが色々と議論した中において、「1%」とか「1〜2%」という議論があったわけです。』
『いわゆる「物価観」を取り上げると、緩やかなデフレに陥る前から海外主要国に比べて一貫して低い状態が続いています。また実際の消費者物価の上昇率をみても、バブル期(1986〜1990年)でも年平均で+1.3%に過ぎず、同期間、G7では同+3.4%ぐらいだったと思います。このように物価が安定していると、日本の家計や企業が考える物価上昇率は、やはり諸外国より幾分低いと判断されるのが通常の見方と思っています。そういう国民の物価観の下で、一気にこれまであまり経験していないような物価上昇率を目指そうとした場合には、家計や企業がかえって大きな不確実性に直面する可能性があり、思いがけない長期金利の上昇を招くおそれもないわけではありません。』
まあ長期金利上昇に関しては取ってつけたような言い訳のような気はしますが、バブル期でもCPIは最後の最後まで安定していた(最後の方に上昇した)という話はそうなんですよねえ。
『こうした色々な観点を踏まえて、当面1%を目指し、強力な金融緩和と成長力強化の支援のパッケージで、私どもとしてしっかり強いメッセージを出して頑張っていこうということになったわけです。今後についても色々な考え方が皆さんにある中で、これからの経済状況等が構造的に変化していくかといった、色々な視点を踏まえながら、原則として1年ごとに点検していくとの方針の中で、また議論していきたいと考えています。』
という事で、まあ森本審議委員の真意がどの辺にあるのか推測しにくい所ではございますけれども、何となく森本さんはそんなに上の数字をみている訳では無さそうという所でして、先ほどの追加緩和提案に対する回答も合わせると、追加緩和に関しての前のめり感はあまり感じない、という所かなあと思いましたがどうでしょうか。
○日銀次期審議委員候補関連である
まあ金曜は関連ネタが色々とあった訳ですのでかいつまんで少々(と言いつつちょっと長いかも)。
・これは日経新聞の粗相なのか他に意味でもあったのか
http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819591E0E0E2E3808DE0E0E2E1E0E2E3E09797E0E2E2E2
日銀審議委員に伊藤忠の渡辺氏 政府が調整
2012/3/23 2:00 情報元 日本経済新聞 電子版
『政府は22日、日銀審議委員に伊藤忠商事の渡辺康平相談役(62)を起用する方向で調整に入った。亀崎英敏(68)、中村清次(69)両審議委員が4月4日に任期を迎えるため、その後任の1人に充てる。衆参両院の同意を得たうえで任命する。(以下の記事は有料版になります)』(上記URLより)
・・・・・・まあ例によって例の如く日経本紙を購読していない(本当です)あたくしなので(つーか駄文書いていると朝刊読む暇はない^^)このニュース河野龍太郎さんのノミネートのニュース出てから気が付くというアホウな事態だったのはさておきまして(汗)。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1BFUN6JTSE801.html
自民・鶴保氏:渡辺氏の提示はあり得ない−日銀審議委員(訂正)
更新日時: 2012/03/23 11:20 JST
『3月23日(ブルームバーグ):鶴保庸介自民党参院議員(議院運営委員長)は23日午前、4月で期限が切れる日本銀行の審議委員2人の後任候補のひとりとして一部報道で伝えられた伊藤忠相談役の渡辺康平氏について、提示はあり得ないと述べた。その上で、残りの審議委員人事は来週中に提示があってほしいと語った。』(上記URLより)
ということで、前回の総裁人事で散々ゴタゴタした教訓だか何だか知りませんが、「日銀審議委員の人事に関して(なのか国会同意人事全般なのかは存じませんが)、国会提示前に候補者名が報道されるようなのは以ての外であって、そのような事が有った場合にはその人事の提示は行わない」というような話になっていた筈でございまして、まあ今回鶴保さんがこのように指摘したのはその辺りを踏まえての事となっているようです。
ちなみに渡邉康平さんと表記する方が正しいようですが、昨年の3月末まで取締役副会長でいらっしゃったようです。副会長時点での役員プロフィールが伊藤忠商事さんのサイトに載っていたのでその時のリンクと役員退任時のリリースのリンクを。
http://www.itochu.co.jp/ja/ir/doc/disclosure/files/2011/pdf/ITC110202_j.pdf
http://www.itochu.co.jp/ja/about/officer/watanabe.html
まあ何ですな、伊藤忠商事で副会長までお勤めになられた方からしたら罰ゲームにも程がある処遇でのお仕事で、まあ財界の方からしたら懲罰召集だろうにというのをよくぞお引き受け下さいましたという所だったのですが、今回の日経新聞の先走り報道で全ておじゃんになってしまいました罠。
まあ普通こういうの仮に聞いても上記のような事情があるんだから報道自粛するだろと思う次第でして、日経新聞がこの人事を潰そうという意図をもって書いたにしても、単にそういうのすっかり忘れて「スクープだ!!!」と喜び勇んで絶賛勇み足だとしても、まあいずれにせよこれは罪万死に値する行為でありまして、この記事書いた記者とデスクと整理部(になるのか?)は可及的速やかに豆腐の角に頭をぶつけて(以下罵倒文言が続くので自主規制)。
・しかし財界の候補が2名出なかったとはこれまたヒドス
でまあ残りの1名が河野龍太郎さんというのは既に皆様ご案内の通りで、河野さんに関しましての雑感その他は後で書きますが、今回の人事案のニュースを見て一番驚愕したのは「財界で日銀審議委員を引き受けて下さる方がそんなに居ないのかよ」という所でございます。
そらまあ資産は全部公開させられて株やら売買出来ない(信託して凍結モードにするかその前に全部売ってしまうかの2択)とか、通常の政策委員会がこれまたアホのように忙しく(通常の政策委員会が毎週実施されていてその決定事項とかも日銀のサイトに出てたりしますけど通常の日銀の業務執行に関する細かい話が多いんじゃなかったでしたっけ)こき使われるわ、好き勝手言い放題という訳にも行かないわ、おまけに国会に呼び出されたりして何だかんだと言われるわ。しかもそれこそ大企業の経営トップに近い位置にいる人が普通に受けている待遇から見たら半値以下(つーか3分の1以下とかでしょ)の年俸だわとか、そらまあ色々とアレな待遇ではございます。
さらに最近は政治家方面から難癖つけるのがいて叩かれまくるわとなれば、よほど金融政策に興味でもない限り普通は尻込みするわと思うのですが、それにしても今回1名の候補者が河野さんになったというのは、よーするに財界人で引き受け手がろくすっぽ居ないという事で、何だかそれも残念というか困ったもんだという感じではございます。河野さんがどうのこうの(駄洒落では無い^^)という以前に、あたくし第一報を見た時にそっちを先に思ったのでございますよ、はい。
・で、河野龍太郎さんとな
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1BEFE6KLVR601.html
日銀審議委員にBNPパリバの河野龍太郎氏提示−国会同意人事 (1)
更新日時: 2012/03/23 18:11 JST
河野さんと言えば「金融政策の理論と実践」(アラン・ブラインダー著、河野龍太郎、前田栄治訳、東洋経済新報社
ISBN4-492-65260-4 C3033たぶんもう絶版、初版は1999年12月30日)っつーのをあたくし昔購入した(のは良いのだが弟子の誰かに貸したまま行方不明なのでこれ読んだ身に覚えのある弟子は良い子だから返しに来なさい^^)のでお名前を存じ上げていたりしますし、まあ当然ながらBNPパリバに現在いらっしゃるのでレポートなどは拝読したりしとりますです、はい。
でですな、河野さんはまあ「リサーチ系」という感じで、そらまあ市場の中の人ではございますが、市場現場労務者的な感じとはまた対極にいらっしゃるという印象でございまして(あくまでもあたくしの印象なので違っていたら謹んで訂正しますが)、市場からノミネートされたというよりは総研みたいな所からノミネートされた的なイメージの方を感じますです、いやまあ別にそれは文句言ってる訳では無くてそういう感じですねえというだけの話ですけど。
んでもって河野さんのレポートではそのまあオペの細かい話だとか調節技術の話だとかというのに関しては基本的にスルーという感じだったと思いまして、同じ「証券会社のストラテジスト・エコノミスト」の範疇として以前いらっしゃった水野温氏元審議委員とはまあタイプが違うかなあという所でございます。まあ非伝統的政策を実施とか、危機対応とかの場合って結構この調節技術の細かい話とかのようなオペレーショナルな部分ってひじょーに重要な話になってくるのですが、まあそもそもエコノミスト・ストラテジストという範疇の人で調節技術の細かいマニアックな話に興味および土地勘のある方の方が珍しいのでまー普通ちゃあ普通なのですが、金融政策の技術論で執行部と対抗できるような人も居てほしいかな(ちなみに言うと昔の決定会合の議事録(議事要旨では無い)を見ると過去においては武富さんとか技術論になった時の発言内容が凄い^^)とは存じますけどにゃ。
まーレポートとか拝読する限りにおいて、普通にちゃんとした話を展開する方との印象がございますので、まあ無難な所に落ち着いたという感じではあるのですが、いわゆる市場の何とかストの皆様の中ではやや若い(つーか上の人が全然変わらないから昭和62年の河野さんが若い部類になるのですが)のでほほーという感じですな。
ちなみに、『河野氏は1964年生まれで愛媛県出身。1987年に横浜国立大学卒業後は大和投資顧問や第一生命経済研究所などの民間金融機関でエコノミストとしてキャリアを積み、2000年より現職。』(さっきのブルームバーグ記事より)ということですが、昭和62年住友銀行入行で、これで何と審議委員に住友2名(ってまあ河野さんを捕まえて住友銀行という人はいませんか^^)ですかそうですかというのもアレですが、亀崎審議委員が横浜国立大学出身でして、ついに審議委員に横国の系譜が出来ましたかという事で胸熱(違)。
・ところでこの人たちはいったい何をやっておられた&おられるのかしら
ちょっと前のニュースでネタにもしましたが。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M071551A74E901.html
民主・馬淵氏:次期日銀審議委員にリフレ派登用を−インタビュー(1)
更新日時: 2012/03/01 17:27 JST
何かこの時は物凄い鼻息でいろいろな提言(どう見てもただの金融政策に関する難癖と干渉にしか見えなかったか)をした上に『審議委員に望ましい人としては、これまでの研究会での議論で、「社長経験者、円高や世界経済の中で輸出を中心にやっている産業で痛みの分かる人」という意見が出たという。』(上記インタビュー記事より)とか何とかご人選をしたかのようなお話をしておられたようなのですが、そもそも新聞に記事出たから潰れちゃいましたが渡辺さんにしても商社の方ですから「輸出を中心にやってる産業」という訳でも無いですし、結局おまいら言うだけ番長で自分たちが審議委員候補としてふさわしい人(「やりたい」人ではありません)を探して来て説得するとかいうような最も大事だけど面倒かつ大変なプロセスは自分たちでやらないで文句だけ垂れる評論家かよという所で、まあ何だかなという感じです。
で、まあ何か反対している人もおいでのようですが、さっきの河野さん提示のニュース記事の真ん中辺りなんですけどね(URL再掲します)。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1BEFE6KLVR601.html
日銀審議委員にBNPパリバの河野龍太郎氏提示−国会同意人事 (1)
更新日時: 2012/03/23 18:11 JST
『河野氏は9日付の同記事で、日本経済が停滞しているのは、@少子高齢化に伴う働き手の減少でトレンド成長率そのものが低下しているA社会保障制度の持続可能性に対する疑念から現役世代が消費を抑制しているB財政赤字拡大で民間の貯蓄が食い潰され、設備投資が抑制されている−ことなど構造問題が主な原因であると指摘。その上で「日銀が政策目標として『物価安定』が与えられている以上、これらの構造問題や円高が引き起こすデフレ圧力を可能な限り吸収することは日銀の責務であるが、構造問題の解決そのものは金融政策で対応できるわけではない」としている。』(上記URL記事より、以下同様)
『安易な追加緩和は不適切』
『河野氏はさらに、「ゼロ金利政策や国債購入政策の長期化・固定化が、銀行行動を通じ、財政赤字のスムーズなファイナンスを可能にすることで、間接的だが、金融政策もトレンド成長率の回復を阻害している可能性がある」と指摘。「大きなデフレショックが訪れた際には金融政策で対応しなければならないが、そもそも政策を長期化・固定化させることの副作用は無視し得ないし、またショックが小さい場合、安易な追加緩和も不適切」とコメントしている。』
という話をしていまして、まあ追加緩和を安易に拡大するのはどうなのか、というような話をしているのですが、何故か山本幸三先生に掛かると・・・・・
『自民党の山本幸三衆院議員は河野氏について、ブルームバーグの取材に対し「量的緩和やインフレ目標政策に否定的な人だから、自民党は反対しなければいけない。参院で否決すべきである。いま日銀審議委員に必要な人材はリフレ派だ」と述べた。』
となるのですが、前半の河野さんの主張のまとめを読んでも「量的緩和やインフレ目標政策に否定的」とするのはちょっと乱暴な端折り方に見えます罠。
ちなみにまあ河野さんの2月20日のレポートとか引っ張り出して読んでみましたが、「積極的な金融緩和の継続に対する副作用が大きくなっている」という話はしていますが、じゃあ今の緩和政策を減らすのかという話をしているかと言うと、別に今すぐそうしろ的な話をして居る訳でも無く。『構造調整を先送りするための言い訳として追加緩和が要求されているように思われてならない。』という結語でレポートを締めているので、まあそういう意味では政治家先生には耳が痛いような気もしますがね(^^)。
現状「安易な追加緩和を野放図に拡大、固定化するな」という話と「量的緩和に否定的」というのは話の次元が合ってないだろと思う次第で、反対するにしてもあーた人の主張の一部を拡大解釈して反対というのも何ですなあと言う所ではございます。
#まあ積極追加緩和前のめり派が必要と言いたいんでしょうけれども
つーか「リフレ派が必要」なら中原伸之元審議委員の著書によりますと審議委員の打診をかつてされたものの「70歳まで大学教授をやっていたい」と言って審議委員をお断りされたとの事であらさられ、そうやってお断りはしながらも著書などでは日銀が極悪で社会の敵で死んで良しみたいな言説だけは熱心にしておられるという大変に立派なお方でいらっしゃられるどこぞの大学の先生の首に縄つけて引っ張ってこられたら良いのではないでしょうか。
『同党の財務金融部会長で「シャドウ・キャビネット(影の内閣)」財務相を務める西村康稔衆院議員も「反対の声が出ているので、慎重に検討したい」と語った。』
この方も何か以前日銀総裁の給与と財務事務次官の給与を比較して高いだの安いだのという話をするというようなアレなお方(これまた昨年の11月にネタにした訳ですが)ですが、何だか自民党もこの調子となると、民主党はもとよりダメでみんなの党は論外で大阪維新とかこっちに来んなと考えますと次の選挙投票する政党が益々あの辺とかその辺とかしか残らなくなって来てるんですけどねえ(吐息)と話が逸れましたが、まあ何なんでしょうねえという感じ。
・本職のレポートで電波浴とな
という事でまあ審議委員人事でひとしきり世間話一部悪態成分も無い訳では無いという感じでございますが、そんな金曜のひとときに本職のリサーチレポートで電波浴が出来るとは思わなかったのでご報告。
・・・・・・と申しましても、まあ本職の投資家向けレポートで別にインターネット上に展開されている訳でも無い(と思う)ので引用とかするのは控えますけれども、何かまあ凄いのよ。まあ趣旨は「日銀の追加緩和はそんなに続かない」という感じのお題で、まあそれだけ見たらふーんという感じなのですが、その中の説明が酷いのよこれが。
まずね、日銀の当座預金残高が震災直後の30兆円前後から今年の3月に入って25兆円程度に低下しているのが懸念材料(資産買入基金の増額を相殺して日銀の純資産の拡大ペースを鈍化させるとかいう話らしい)とかいう話をしているのですけれども、それ単に震災直後は予備的な資金需要が高まったという話とかの話だし、確かに3月2日〜19日は季節的な資金需給要因も相まって当座預金残高は25兆円程度で推移してましたが、その後21日時点で31.2兆円になっていますし、今日(26日)の見込みベースだと31.8兆円になっているわけで、3月23日付けのレポ―トで4日前の話を前提にされましてもアホか馬鹿かという感じなんですけどね、つーか株式レポートで4日も前の株価を前提にして「3月に入って株価は〜円に低下している(キリッ)」とか出したら誤認勧誘モノなんですけどねえ。
なお、そのお告げによりますと3月末にかけての季節的な追加資金供給によって一時的に残高が拡大しても(ちなみに足元では「追加資金供給」どころか金利入札オペ方式の供給オペのロールを打っていないので、その時点で状況認識能力の欠如を伺わせますが・・・・・)、4月から当座預金残高が減少して15兆円前後とか、もしかしたら8兆円前後まで日銀当座預金が低下する余地が残っているらしいとの事ですが、誠に残念なことにそれは物理的に有り得ません。詳しくは2月17日に東短リサーチの飯田上席研究員がレポート、というか淡々と資金需給とオペ推移の今後の予想をしたものをグラフでビジュアルに判りやすくしていますのでそちらにお問い合わせを(^^)。
しかも資産買入基金に関して2012年末以降拡張されないというのが前提になって、だから物価の安定の実現が難しいとかいう話もしているのですが、そもそも日銀は中長期的な物価安定の目途達成まで実質ゼロ金利政策と(FEDのフォワードガイダンスは金利政策だけですが日銀の場合はご丁寧というか馬鹿正直に)資産買入政策の継続を行うと表明している訳で、資産買入基金が拡張されないで保有資産がロールオーバーされないから物価の安定の実現が難しいとか、もはやお前は日銀の声明文を読んでいるのかと小一時間問い詰めたくなるような強力電波が発信されていて、過大出力で電波法に抵触するのではないか(嘘)というレベル。まあ確かに「第二の柱」に抵触するというようなケースだと途中で止める可能性もあるのですけど、別にそういうのを意識しているような書き振りにも見えませんしねえ。
#てな感じで特に調節に関する部分が大変にアレでツッコミどころ探しの試験問題向けの素材ですので資金部門の若手にでもテストさせたらどうでしょ(ニヤニヤ)
さらに電波浴をすると、どうもこちらの某会社様のレポート(って同じ人が執筆しているのですが)によりますと、日銀当座預金、マネタリーベース、M2いずれでも10兆円増やすとCPIが2年間で0.2%ポイント上昇するとかいうお説がかつて提唱されていたらしゅうございまして、そういやしばらく前にネタにした民主党の木内議員のアレの元ネタもこの辺だったんでしょうかねえ。
いやまあマネタリーベース云々は兎も角として、日銀当座預金がどうのこうのとかの話とか無知蒙昧のあたくしでも簡単にツッコめるような無茶な前提で論を立てるとか、中々強力電波でございまして、もしかしてこの方々は先ほどネタにしたセンセイ方の推薦でも貰って日銀審議委員狙いですかそうですかとか邪推したくなるような曲学阿世(というか曲学阿"政"という方が良いのかも知れませんが^^)な電波浴で先週の仕事の最後を締めくくるという誠に遺憾の極みではございました。
まあ電波浴したい人は金曜に出た各社のセルサイドレポートを丹念に探したら該当すると思われるレポートがどこかにあると思いますので自力で探してください。全然おすすめしないけど。
なお、そんなに当座預金残高「だけ」拡大したければ必殺技は一応調節技術的には思いつくものがございますが、それは技術的には意味があっても実体として誰得(というかあたくしのアイデアの場合オペ先が得してその他大勢が割を食うというオペ先のポジショントーク丸出しのアイデア、と書けば何だか判るでしょ?)な話なのでまあ何でしょうかねという感じですにゃ。
・・・・・・・ということで、いつの間にか審議委員人事の話が電波浴になっている所がドラめもんクオリティなのでありますた。
2012/03/23
お題「森本審議委員講演は微妙に特徴あるのかな?/資金循環統計関連の小ネタ」
早速インフレフォビアキタコレとかいうニュースを拾っていたら・・・・
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120322/k10013894061000.html
ガソリン価格 3年ぶり高水準
3月22日 16時19分
何か別のニュースを拾ってしまうあたくし。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120323/k10013910541000.html
政府 東電議決権3分の2保有へ
3月23日 6時8分
更にこんなのも拾ってしまいますた(^^)。
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/0322.html
WEB特集 うなぎが食べられなくなる?
3月22日 20時25分
ということで(どういうことだ)まずは森本審議委員講演から。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120322a.pdf
○概ねこんな感じかと
・景気については微妙に弱めの話だが基本的には金融政策月報ベース
・ただ下振れリスク強調はちょっと目に付く
・物価に関してはまあ普通の話
・成長戦略の話や財政の話をけっこうきっちり行っている
・金融政策に関しては第2の柱の強調もしていてあまり追加緩和モードではない
という風に思った次第で、引用の前に思ったのですけど、どうも2月の金融政策決定会合議事要旨見ててもちょっと思ったのですが、政策委員会の中で今後の金融政策スタンスに関してより積極的な追加緩和をジャンジャンアピールしちゃいましょうというある意味現実派の俊ちゃんスキームっぽいタイプと、まあそうは言っても後先考えないで野放図に緩和(というか資産買入)拡大するのは如何なものかというタイプに割れている感じを受けたのですが、もしかしたらその辺今後の審議委員の講演とか発言とかを見るとその辺りに関してニュアンスが出てタイプ別分析みたいなのが出来るようになるかもしれないなあって妄想した次第。まあ考えすぎ鴨しれませんのでその辺はあまり気にしないで下さいませ。とりあえず忘れないようにメモしてみたという所で。
それでは簡単に引用を。
○景気や物価に関して
これまでの流れについての話とかありますが、まあ頭の部分はスルーして。
・海外経済
『こうしたもとで、海外経済は減速した状態から脱していません。わが国の輸出ウェイトで加重平均した海外経済の成長率をみると、リーマン・ショックからの回復局面の2010年には前年比+6.8%、2011年1〜3月期には前期比年率+6.5%と高い伸びを示していましたが、7〜9月期には+3%台に減速し、10〜12月期には+0.9%となっています。』
海外経済は減速した状態から脱していませんとな。で、欧州ですが。
『欧州経済をみると、昨年後半以降、各国の財政緊縮化への取組みや金融機関の貸出態度厳格化が、企業や家計のマインドを冷やしています。さらに、一部の国では、こうした実体経済の悪化が財政や金融機関の財務状況の一段の悪化に繋がるという悪循環に陥っており、停滞感を強めています。足許では、ドイツの景況感が改善するなど持ち直しの兆しもみられていますが、財政緊縮の影響が尾を引く中、欧州経済全体に前向きな循環が作動するには、なお時間を要すると思われます。』
まあ欧州はそうなりますなという所ですが、「前向きな循環が作動するには」という辺りが日銀っぽい言い方になってて森本さん(は東電出身)もすっかりこういう言い回しに慣れてきましたなあとか思うのですけれども(^^)。
『次に米国経済は、昨年夏から秋にかけて、国際金融資本市場の緊張や財政問題を受けて景況感が悪化しました。足許では、緩和的な金融環境のもとで、株価がリーマン・ショック後の高値圏で推移しているほか、雇用情勢の改善などから個人消費も底堅く推移していますが、家計のバランスシート調整圧力が根強く続く中、経済全体の回復は総じて緩やかなものとなっています。先行きも、こうしたバランスシート調整に加えて、財政問題が尾を引くとみられることから、回復ペースは引き続き緩やかなものに止まると思われます。』
ということで、まあ字面を見るとやや弱気っぽいニュアンスですが、話の大筋は金融経済月報ベースと同じような感じだと思います。
『この間、新興国・資源国経済をみると、欧州経済の減速などを受けて成長ペースが幾分鈍化してはいますが、総じてみれば旺盛な内需を背景に高めの成長を維持しています。』
ほう。
『このうち中国経済は、これまで高成長を続けてきましたが、輸出や不動産投資等の減速により、2011年の経済成長率は前年の伸び率を下回る+9.2%となりました。2012年については民間見通しでは+8%半ばへの減速が予測されています。ただ、安定成長に軸足を移すもとで伸び率が縮小するとは言え、所得水準の上昇や都市化を背景とする構造的な内需拡大の余地は大きく、高めの成長は続けていくとみています。』
『NIEs・ASEAN経済については、昨年後半は、インフレ率の高まりや先進国向け輸出の減少、さらにはタイの洪水の影響もあって減速しましたが、先行きは、洪水被害からの復旧に加えて緩和的な金融環境が経済活動を下支えすると考えられます。』
『また、新興国・資源国全体としてここへきてインフレ率が徐々に低下してきており、実質購買力の回復による消費下支えも期待できます。こうした新興国・資源国の成長が今後も世界経済を牽引していくものとみています。』
という話で、新興国に関してはちょうど先日ネタにした2月決定会合議事要旨での海外経済認識と大体同じ話をしていまして、概ね公式見解ペースという所でしょうか。
・先行きの下振れについて強調
『(5)先行きの見通しに対する不確実性』というのがその次にありましてですな。
『先程、申し上げましたように、わが国経済は新年度前半には緩やかな回復経路に復していくことを中心的な見通しとしていますが、全体として景気を下振れさせる方向の不確実性が高い状況にあります。』
という話を入れていまして、まあ足元で日銀の景気判断とか徐々に強含みになっている(水準的には弱いけど)ので、この辺の下振れリスク強調はほほーという感じです。
でまあ長くなるので引用しませんが、その下振れリスクに関しては、
『ここでは、実体経済に大きな影響を与え得るリスクとして、欧州債務問題の行方、イランに関する地政学リスクの高まりによる原油高騰の可能性、夏場の電力需給の不確実性の3点に触れたいと思います。』
ということです。ちなみに原油高騰に関しては実質購買力の低下やGDPの下押し圧力という話をしておりまして、さすがにまあ原油高騰でデフレ脱却だぜヒャッハーという話は出てきておりません、当たり前ですが(^^)。
・物価に関して
こちらはまあ普通の見通しです。
『企業物価指数の前年比をみると、ここ数か月、前年比プラス幅は徐々に縮小してきましたが、足許の国際商品市況の上昇を受けて2月はこうした傾向に歯止めがかかっており、先行きは強含んでいくとみられます。』
『次に生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比をみると、(一部割愛)昨年夏頃からは概ねゼロ近傍で推移しています。当面こうした動きが続くとみていますが、その後は、中長期的なインフレ予想が安定的に推移するとの想定のもと、需給ギャップの改善などを背景に、徐々にプラスに転じていくと考えています。』
ということでまあ普通の見通しですな。
○成長戦略とか財政再建とか
その次が『4.日本経済の中長期的な課題』という部分。
『ここで、現在のデフレの背景について確認しておきたいと思います。』ということで物価に関する長期的な話をしております。
『こうした物価動向の背景には、外需減退などの循環的な要因に加えて、わが国の人口動態に根差した構造的な内需の弱さも影響し、マクロ経済全体として需要が供給能力を下回る状態、つまり需給ギャップのマイナスの状態が長く続いていることがあります。わが国では、先進国に先駆けて高齢化が進み、15歳から64歳までの人口である生産年齢人口が減少に転じました。先行きは減少ペースが加速していく見込みで、国立社会保障・人口問題研究所の予測によれば1995年の8,727万人をピークに2060年には約半数の4,418万人まで減少するとしています。』
ほほう。
『わが国経済が、こうした構造的な縮小圧力のもとで持続的成長を実現するには、何とか成長力を高め、成長期待を引き上げることが不可欠です。このためには、(1)新しい需要を創出し、生産年齢人口が減少する中にあっても、国内の労働力を確保していくこと、(2)雇用創出効果の高い産業の生産性を高めていくことが必要になります。』
ということで、色々と話があるのですが、その辺は長くなるので割愛しますが、まあ労働生産性云々の部分に関してだけ引用しておきますだよ。
『1990年代以降20年間のわが国の労働生産性の伸び率は年平均1%程度に停滞していますが、これには労働生産性の伸び率が低いサービス業への就業者のシフトが影響しています。日本生産性本部のまとめによれば、この20年間の労働生産性は、製造業が年平均で2.5%と比較的高い伸びを続けているのに対し、雇用創出効果の高いサービス業は同1.0%程度に止まっています。そうした半面、就業構造の変化をみると、製造業の就業者が1990年代半ばから減少に転じる一方で、サービス業がこれを逆転し、足許では全産業の3割に達しています。』
ふーむ。
『とりわけ、高齢化の進展に伴って医療・介護などのシニア向けサービスの需要拡大が顕著で、こうした動きは今後も続くとみられます。独創的で付加価値の高いサービスの提供などにより、サービス業の労働生産性を高めていくことが、わが国の成長力強化の鍵になるのではないかと思います。そのうえで、さらなる潜在需要の掘り起こしで雇用を増やし、労働生産性も向上させていくという前向きの循環につなげていくことが大事だと考えています。』
とまあさらっとそういう話になっているのですが、どうもあたくしの頭が悪いせいか、「サービス業の労働生産性をどうやって高めるんじゃろ」というのが????ではございまする。
んでまあその先の方で財政再建の話がごじゃりますが、そんなに変な話をしている訳でも無く。
『欧州債務問題の例にあるように、財政健全化に向けた取組み姿勢にひとたび市場が疑義を持つと、こうした状況は非連続に変化する可能性があります。これからも社会保障費等の増加圧力がかかり続けますので、財政規律に対する信頼が維持されている間に、歳出・歳入の両面で財政の構造改革を進めていく必要があります。』
とまあ普通は普通ですが、足元の政治状況では歳出の話に全然ならず(本質的な所じゃない公務員給与削減だの何だのという話は熱心だが、肝心なのは社会保障でしょと思う訳で)、歳入の話ではまあ揉めまくりという状況は何ぞそれという感じですな。
○金融政策に関して
・第二の柱
『5.金融政策運営』という所で、『ここからは、金融政策運営についてお話しします。』となりましてまあ色々と説明しているのですが、時間軸政策の話をしている中で第二の柱にきっちり言及しているのがほほーという感じです。
『なお、消費者物価の動きとは別に、資産価格が上昇し、バブルが発生するようなことがあれば、結果として、長い目でみた経済・物価の安定が大きく損なわれる可能性があります。このため、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から問題が生じていないことを、強力な金融緩和を推進していく条件としています。』
まあこれ自体は決定事項として公表文書に織り込まれている訳ですけれども、第二の柱に関してちゃんと説明しているのはふーんという感じでありまする。
・基金買入の政策目的
『「資産買入等の基金」は、短期金利の低下余地が限界的となっているもとで、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促して、金融緩和を一段と強力に推進するために2010年10月に創設したものです。日本銀行のバランスシート上に基金を設けて、固定金利方式の資金供給に加えて、国債やCP、社債、さらにETFやJ-REITといった多様な金融資産を買入れています。』
ということで、これまた公式見解通りではございますが、「長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小」という話をしていますが、はてさて今後どうするんでしょうねえという感じであります。長めの市場金利ったって足元のGCから2年までが既に0.105%とか0.11%になっていますし、3年とかの金利もいい感じの潰れっぷり。まあ長期金利の低下を促すのは買入でやるよりも時間軸効かせた方が良いですし(というか買入で低下させるのは無理というのはFRBが身を切って実践しているようにしか思えないのですが、何故かそういう話になっていないのが不思議である)、リスクプレミアムは既に縮小してますからねえ。
・財政ファイナンスではないという話
はあそうですか(棒読み)という所ですが。
『このタイミングで基金の増額に踏み切ったのは、先行きの内外経済の不確実性がなお大きい中で、最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、日本経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものにするためです。』
ふーんという感じですが、森本さんの場合は下振れを強調している分だけまあなんとなく整合性が取れない事も無いなあという感じですね。
『国債の買入額を増額した結果、基金とは別に趨勢的な銀行券需要に対応して買入れている国債と合わせると、日本銀行は、本年末までの間、月間で3.3兆円、年率換算で約40兆円のペースで大規模に長期国債を買入れていくことになります。ただ、こうした大量の国債購入は、物価安定のもとでの持続的成長の実現のために行うものであり、言うまでもなく、財政ファイナンスを目的としたものではありません。』
おお、この話も強調という所でして、一方で物価目途に関して将来的に引き上げみたいな話をしておりませんで、前半の景気に関するトーンはやや弱めに見えるのですが、金融政策運営に関してはYOU緩和やっちゃいなYO!タイプではない話をしているのがほほーという感じでした。
○期末にレポート出過ぎです(笑)
最近日銀の新着情報を見るとお判りのように・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/whatsnew/index.htm/
何か妙に色々なペーパーやらレポートがバカスカ出ている事に気が付くかと思われますが、いやまあ期末だから今年度目標達成の帳尻モードというか駆け込みモードでバカスカ出ているというのは判るのですが、読む方といたしましてはこうバカスカ一度に出されますとしんどいので勘弁して頂きたく存じます次第。いやまあ世の中期末の帳尻モードで余計な仕事が(保身の為以下激しく自主規制)。
そんな中で月曜に出ていたこれはオモロス。
資金循環統計の特徴と拡充に向けた取り組み
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/rev12j05.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j05.pdf(図表含む本文)
日銀レビューシリーズですので量もお手頃で、ついでに申し上げるとハクション大魔王並みに数字が苦手のあたくしにとってはややこしい計算式が一切(!)出てこないというとても一般ピーポーに優しいブツでございます。
で、中身としては資金循環統計の読み方ガイドっぽくなっているのがまたチャーミングでございまして、資金循環統計ってそろそろ直近のが出る筈ですので、この日銀レビューを見ながら資金循環統計および参考図表をご覧になるのが吉ではないかと存じます。
一応「資金循環統計とは」という話の部分だけ引用しておきます。中身もオモロイのですけれどもそれは読んでちょ。
『資金循環統計とは』
『日本銀行が作成する資金循環統計は、わが国における家計、企業、金融機関といった部門毎の金融資産・負債の推移を、包括的に記録したものである。その特徴をまとめると、第一に、各部門における金融資産・負債の残高(ストック)と金融取引(フロー)の両面を捉えていることが挙げられる。第二に、資金循環統計は国民経済計算体系の国際基準に準拠して作成されていることから、諸外国と比較しながら、わが国における金融活動や金融構造の特徴を明らかにできる。第三に、わが国の資金循環統計は、主要国・地域と比べると取引項目や部門が細分化され(図表1)、より詳細な資金フローを把握できる。』
『もっとも、資金循環統計はすべての部門にまたがる資産・負債関係を詳細に記録しているため、一見すると、統計の見方や部門別の特徴がわかりにくいという指摘もある。このため、日本銀行では、統計の公表に際し、部門別の動向や足許の特徴をわかりやすく説明した「参考図表」を作成し、その充実を図ってきているほか、資金循環統計の解説や作成方法をホームページ上で公開するなど、統計の理解促進に向けた様々な取り組みを行ってきている。』
この参考図表がかなり面白いんですよね(^^)。
『こうした取り組みの一環として、本稿では、やや長めの視点を交え、わが国の資金循環の動向を紹介する。また、資金循環統計の整備・拡充に向けた取り組みについても述べる。国際的には、既存の統計データでは金融システムに潜むリスクを十分に把握できない(「データ・ギャップ」の存在)という問題意識が共有されており、日本銀行でも積極的に取り組んでいることを紹介する。』
ということで後は読んでくんなまし。
2012/03/22
お題「市場雑談とかオペ雑談とか何となく」
例によって例の如く某モーサテを見てたらNY市況の話をしているひとが住宅市場について「最近の長期金利上昇で低金利がいつまでも続かないと考える人たちが住宅購入を早めて市況が回復する可能性も」とか中々斬新な話で、それならQEとかツイストオペとかいらねえよと思いましたです、はい(^^)。
しかしまあこの調子では歳出の改革とか出来ませんわなあと思う次第。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120322/k10013884221000.html
民主 消費税修正案さらに見直しに
3月22日 4時0分
#どうでもいいがNHKニュースのサイトが一覧性悪くなって遺憾なのだが
○短国雑談
小見出しの部分でいきなり話が局地的であることを表明するあたくし(--)。
国庫短期証券(第268回)の入札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240321.htm
(3)募入最低価格 99円97銭4厘5毛
(募入最高利回り) (0.1023%)
(4)募入最低価格に 13.4380%
おける案分比率
(5)募入平均価格 99円97銭4厘6毛
(募入平均利回り ) (0.1019%)
ということで、ここの所3か月TB入札は7日が0.1027/0.1043、14日が0.1023/0.1023と来てて、今回は0.1019/0.1023となりましたのでまあ金利低下という所でありまする。
21日に国債の絶賛大償還がありまして、そこで資金需給的には日銀当座預金残高が拡大するので、まー当然ながらその分に対応するキャッシュ潰しのニーズが出てくるということで、先週から21日渡しでの短国の買いニーズとか多かったので今回の入札が前回よりも強くなったのはまあ当然ちゃあ当然ではございます。まあ今週は期末の関係で短国の入札が明日もありますので、見た目入札ラッシュなのですけれども、資金需給の関係もありますし、今週入札が嵩む分来週の短国入札がありませんので、まあ特段短国の需給に問題が起きるとは思えない、つーかこれから需給がタイトになる方向でしょという感じですからこんなもんかと。
ただまあ以前のように為替スワップ絡みの海外ニーズが多い訳では無いので、0.100%を割ってまで買う人の量がそんなに多い訳では無く、金利はまたまた0.100%に張り付きという感じになるんでしょうなあとゆー所で。
#うむ、当たり前の話になってしまった
○オペ雑談
昨日は3か月基金オペのロール(3Mはロールものだけですが)がありました(ドルオペ部分は割愛しまふ)。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120321.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年3月23日 2012年6月18日
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120321.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(3月23日スタート分) 33,697 8,013 23.8
・・・・・・・・これわwwwwという応札倍率になっていまして、21日の財政払い超8兆6000億円はどこぞにとかゆー話ですが、まあこれはこれでそういうもんですという雑談を(^^)。
えーっとですな、昨日の財政払い超によって日銀当座預金残高は238000億円→311900億円とどどーんと増えておりますが、財政要因による資金余剰要因に対応して金利入札オペによる資金供給を絞っていて、オペの期落ちをロールしない攻撃を日銀が行っておりまして、今週は金利入札オペの期落ちペースが大変なことに。
あたくしの手(というかエクセル)集計ベースなので間違ってたらゴミンナサイなのですけれども、先週の15日に91760億円あった金利入札オペなのですが、16日に83753億円、21日に61745億円、22日に51735億円、23日に33729億円と、今週1週間で都合5兆円ほど金利入札オペが減るというプレイが炸裂しておりまして、来週月曜には15718億円、28日には7710億円になってこの調子でオペのロールをしない4月3日に金利入札オペがゼロになってしまうという事で半月で9兆円金利入札オペが落ちるという誠にアレな流れになる次第。
まあロールするかしないかは金融市場局の調節課の味噌汁なのでその辺は市井のあたくしの知った事ではございませんけれども、足元では金利入札オペが全然ロールされないので、そらまあ仕方ないから3か月固定オペに札を入れないといかんですわなという話になる次第。財政払い超の金って国債の償還金でして、その金は債券ディーラーには普通入ってこない(別にポートじゃないから償還持ち切りとか資金とポジションの無駄遣いはしない)のでありますので、国債ディーラーの資金ポジション的には金利入札オペが落ちた分悪化しますわなという事でありまする(ただしさっき申し上げたように21日の財政払い超に向けた投資家の短国買いがあって短国の在庫ポジションが軽くなっているのでその分は好転している)。
でまあそれはそれとして、金利入札オペをこのまま全部期落ちさせてしまう攻撃をするのかどうかってのはちょっとあたくし的には注目しておりまして、まあ基金オペに資金供給を寄せてしまえば基金オペのニーズは高まると思いますのでまあ基金オペ残高を積むという変な目標を作ってしまった手前、日銀の運用的にはウハウハという感じもしますし、もしかしたら基金オペの増発も可能かもしれない(まあ目の子で5兆円)ですけれども、これはこれで金融調節という意味では大袈裟に言えばパラダイムシフトというかレジームチェンジというか。
つまりですな、基本的に日本の短期金融市場では(主に財政要因による)資金需給の繁閑が激しいので、その分に対応するためにきめ細かい金融調節を行い、短期市場金利の振れを抑えるというのが日銀の金融調節という感じ(旧法時代はシグナルオペみたいなのはありましたが、現在は一応そういうのは無い事になっている)でありまして、そのような細かい調節をやらない欧米の短期市場と比べて短期市場金利の誘導目標水準に対するブレが少ない、というのが基本中の基本にあった訳ですわな。
ところが、まあ基金の拡大をやり過ぎたという原因なので意図せざる結果なのではあるのでしょうが、これから基金の買入の方も増えていくという事になりますと、まあ自動的に金利入札オペがゼロになるというのは時間の問題ではあったのですけれども、結構早めに金利入札オペがゼロになりますと、上記の「きめ細かい調節」という枠組みから市場のお作法が変わってくるかもねとか思うのであります。
従来はきめ細かい調節による短期金利のスムージングとか、準備預金の積みでもそれなりに調整しながら準備預金を積んで行くとか、まあその手の「細かい」動きが短期金融市場のお作法っぽいのがある訳ですれども、そもそも金利入札オペ形式での資金需給の繁閑に合わせたきめ細かい資金需給調整オペをやらないとなってくると、その辺の需給調整は市場にやらせますという話になる訳ですな。そらまあこれから想定されるジャブジャブ状態の内はどうでも良いでしょうが、(いつになるのか知りませんが)金利正常化に向けた動きという時になった時にはその辺りのノウハウが短期金融市場から失われている可能性もあり、まーある意味外的ショックに弱い金利形成になりそうな気もするなあとか勝手に思うあたくしなのでありました。
#超マニアックな話で何が何やらというネタでどうもすいません
○更にどうでも良いのですが時間軸雑談
2月の決定で時間軸がどうのこうのというのがございましたけれども、
『(2)当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく。』(2月14日の決定会合声明文より)
という事で、ご丁寧に「金融資産の買入れ等の措置」とか書いてあるのですが、米国の時間軸って、
『In particular, the Committee decided today to keep the target range for
the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that
economic conditions--including low rates of resource utilization and a
subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant
exceptionally low levels for the federal funds rate at least through
late 2014.』(こちらは3月のFOMCステートメント)
ということで、時間軸はあくまでも「異例に低いFF金利」という事だけの話をしているのでして、先般ネタにした2月14日の決定会合議事要旨でFOMCの後出しじゃんけんをしましたですお!とか思いっきり表明していて、まあコミュニケーションポリシーとしてはグダグダだけども市場操作としては結果オーライとか思ったのですが、まあよくよく考えたら後出しジャンケンの宿命として、前の人よりもインパクト出さないといけないからという事で「資産買入」というのをご丁寧に加えてFRBよりも自分の手を(ある意味)縛っていますわなあと思うのでありまする。(米国はあくまでも「低金利」なので資産買入は別におかわりどころか残高維持をしなくても約束違反にならないが、日銀はこう書いた手前資産買入の残高を減らす訳にはいかないでしょ)
一方で米国様におかれましては足元の経済指標を受けて時間軸に対してのイメージに変化という話になっておりまして、まあ昨日ネタにしたシカゴ連銀エバンス総裁の指摘する「経済条件を示さないで時間だけで示す時間軸の弊害」みたいな話が出ている訳ですが、一部でネタになっているようなガイダンス文言の短期化みたいなのはちょっと出来ないなあと思うので、中々苦しいんじゃないかなあと思います。
いやまあガイダンス文言を手前に戻すというのもやってやれない事は無いでしょうけれども、それをやると同じ手が2度と使えなくなるという弊害がありまして、まあ2度と使わないという確信をもって突撃する覚悟なら良いでしょうが、将来の政策オプションを失わせるのはまあマズーでしょうし、大体からしてそれって従来の政策の否定になるのですが、逆さ絵のおじさんにおかれましては学者の癖にその辺無頓着な所があって、資産買入などに関してもその効果とかトランスミッションメカニズムとかの説明が割とコロコロと変わる(しかもその辺の政策ロジックがハチャメチャな点について何故か雨人は突っ込まない(あたくしが気が付いていないだけの可能性はありますが・・・・)というのがメリケンクオリティ)ので、平然とやってくる可能性も無いとは言えませんが、一旦伸ばした期日を短縮するとかよーやらんと思いますけどねえ。
で、この続きに日銀が次に緩和拡大するとして何がフィージブルかの雑談を書くつもりだったのですが、いざ書こうとしたら頭が整理されていない事に気が付くあたくしorzorz
#ということで今日はしょうもない雑談恐縮至極
2012/03/21
お題「タカ派(インフレ重視)とハト派(失業率重視)の地区連銀総裁2名から」
米債って何か大下げしたり大上げしたりで以前のウゴカンチ会長からまた元に戻ったんですかねえ。
○リッチモンド連銀ラッカー総裁のFOMC決定反対理由
毎度おなじみのラッカークオリティ。
http://www.richmondfed.org/press_room/press_releases/about_us/2012/fomc_dissenting_vote_20120316.cfm
March 16, 2012
Richmond Fed President Lacker Comments on FOMC Dissent
Richmond, Va.
11月はスワップラインに関しての反対でコメント(この時はプロッサー総裁の代打での票決参加)出していましたが、今回の反対理由は・・・・・・
『The Federal Open Market Committee released a statement following its
March 13, 2012, meeting stating that the Committee currently anticipates
that economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels
for the federal funds rate at least through late 2014. I dissented because
I do not believe economic conditions are likely to warrant an exceptionally
low federal funds rate for this length of time.』
今回は(FOMC声明文にもありましたように)ラッカー総裁は普通に直球ストレートでガイダンス文言の「現在の経済状況は2014年遅くまでの異例の低金利政策の維持を正当化すると想定する」という部分に対して「そら違うんじゃないですか」という思いっきり直球の反対で。
『The economy is expanding at a moderate pace, and inflation is close to
the Committee's 2 percent objective. As the expansion continues, the federal
funds rate will need to rise in order to prevent the emergence of inflationary
pressures.』
経済は緩やかに拡大していてインフレは2%近辺にいます。経済の拡大が継続するとインフレ圧力を予防する為にFFレートの引き上げが必要になるでしょうと。
『The forward guidance is intended to represent our best forecast of the
appropriate timing of changes in the Federal Funds rate, and my current
assessment is that an increase in interest rates is likely to be necessary
some time in 2013. "My views on the economy and monetary policy are
also available on Richmondfed.org."』
で、ラッカーさんの見立てだと2013年には利上げが必要になるのでフォワードガイダンスの2014年遅くまでというのには反対ですという事で、インフレ重視の直球ストレートな話ではございました。
○シカゴ連銀エバンス総裁のフォワードガイダンス論
http://www.chicagofed.org/webpages/publications/speeches/2012/03_16_12_frankfurt.cfm
http://www.chicagofed.org/digital_assets/publications/speeches/2012/03.16.12_frankfurt_print.pdf
Monetary Policy Communications and Forward Guidance
A speech delivered on March 16, 2012, at the International Research Forum
on Monetary Policy Seventh Conference in Frankfurt, Germany.
でまあエバンス総裁のフォワードガイダンスに関する話ですが、ここの所エバンス総裁が主張している「Forward
Guidance and Policy Commitment in an Explicit State-Contingent Policy」(途中の小見出しにもなっています)を主張していますので、まあその辺はいつもの話ではあるのですが。
冒頭の挨拶部分
『Thank you, Chris, for that generous introduction. And thanks to Matt,
Gunter, Chris and Thomas for organizing such a great conference. I always
enjoy being able to step back into the research world for a while-as things
are going these days, it falls in the category of rest and relaxation!
But another reason I enjoy doing so is that I, like most modern central
bankers around the world, feel strongly about guiding policy with good
theoretical and empirical economics. 』
シカゴ連銀というとリサーチ物がやたら沢山ある印象がございますが、エバンス総裁も元々シカゴ連銀のリサーチ部門のヘッドだったようなのでリサーチの話をするのはお好きなようでございますな。まあそれは兎も角として。
・非伝統的な金融政策はバランスシートポリシーとコミュニケーションポリシー
『The nonstandard policies emphasized by these lines of research have been
important elements in the Federal Reserve’s toolkit over the past four
years.』
という部分の前にまあ非伝統的政策の理論的背景ということでクルーグマンの「It’s
baaack」やらバーナンキ&ラインハートのペーパーの話とかあったのですが長くなるので割愛してまふ。
『The Federal Reserve engaged in two waves of large-scale asset purchases
(March 2009 and November 2010), and, more recently, extended the maturity
of the assets on our books (September 2011). In August 2011, we added a
particular type of forward guidance to our policy, first saying we would
likely keep rates low until mid-2013 and then, in January, indicating that
sub-par economic performance would likely warrant exceptionally low rates
until at least late 2014.』
というのはFOMCが最近やった非伝統的政策。
『Working to complement these efforts and to improve FOMC communications
more generally, we also added two major communications initiatives: A statement
of our monetary goals and long-run strategies, and publication of FOMC
participants’ projections for the federal funds rate.』
こちらは先般のデュアルマンデートの目標というか理解というかの話。
『I have strongly supported each of these developments, believing that
they improved transparency and also provided welcome further monetary accommodation
for the U.S. economy.』
改善された政策の透明性が望ましい更なる金融緩和効果を米国経済にもたらすと認識するので、これらの政策については大いに賛成です、という話なのですが、フォワードガイダンスは兎も角としてtransparencyの改善が追加緩和効果とは微妙に????な気もしますが、まあエバンス総裁はそのような認識のようです。
『However, as I have been talking about in public for some time, I think
there are additional tools we could use to deliver more effective policy
accommodation.』
エバンス総裁はより有効な金融政策の緩和をもたらすことのできるツールを提案ということで、これがまあ最近良く話をしている「物価による停止条件付き失業率コミットメント」なのですな。
・流動性の罠にある中銀にとって「予防的引き締め」は「セイレーンの歌」であると(^^)
ここの所面白いので小見出しつけてみた。
『In particular, I would like to see our forward guidance take a different
form-one that explicitly ties liftoff in the funds rate to observable economic
outcomes (You can think of this as a Ulysses-type forward guidance: We
tie ourselves to the mast to avoid the siren calls of premature tightening.)』
という事で、()内の所が中々お洒落なのですが、オデュッセウスがセイレーンの歌に惑わされないで船を進めるために船員に耳栓して自分はマストに体を縛りつけるとかいうギリシャ神話の譬えが出てまして、まあその先にどうのこうのという話をしていませんが、「予防的な金融引き締め(premature
tightening)」というのは中央銀行家にとってはセイレーンの歌のようなもので、それによって難破遭難しちゃうという中々良い譬えではないでしょうか(^^)。
ということでその続きですが。
『As I will talk about shortly, I believe such policy could provide more
clarity about our attitudes toward providing monetary accommodation-and
would be more in line with a structure I would have preferred to have seen
in our August 2011 and January 2012 actions. This policy also can be structured
in a way that would represent a balanced risk-management approach to achieving
the dual goals of maximum employment and stable prices that the United
States Congress has mandated to the Federal Reserve.』
でまあその後『Communications Enhancements』というお題の話がありますがその辺はとりあえず長くなるのでパス(一部面白そうな話もあるのですが・・・・)しまして。
・停止条件付時間軸に関連して
『Forward Guidance and Policy Commitment in an Explicit State-Contingent Policy』の所から。
具体的な提案に関しては毎度お話をしているのですが、その背景の所でまた「ゼロ金利制約に掛かったリクイディティートラップの際には「セイレーンの歌」に惑わされてはいけませんという話をしているのがお洒落。
『As we know from the work of Michael Woodford and Gauti Eggertsson, Ivan
Werning, Paul Krugman and others, the optimal policy response to a liquidity
trap may involve a commitment to keep policy rates quite low for a period
of time after the real equilibrium rate has risen enough so that the zero
lower bound is no longer binding. This is a strong form of forward guidance
akin to Ulysses tying himself to the mast to avoid changing his mind upon
hearing the siren’s seductive music.』
ただまあ実際にはその「均衡実質金利」などは直接観測できませんので、その代わりに「流動性の罠を十分に脱した事を確認できる」ための「トリガーとなる経済指標」を用いて金融緩和政策の継続を行うべきである、というのが背景にあるという事ですな。
『Of course, in the real world, we cannot observe the equilibrium real
rate, and so we cannot directly implement such a policy. We can capture
the spirit of these recommendations, however, by committing to keep policy
rates exceptionally low until certain observable economic triggers are
met that would be consistent with the economy being well past the liquidity
trap.』
でまあエバンス総裁はいつもの「失業率7%、ただし物価3%を超えない範囲で」という経済条件紐付けの時間軸政策を提唱しているのです(その辺りの話は長くなるので割愛)が、そこ見てるとちょっと微妙な部分もありまして・・・・・
『I would argue that this inflation-safeguard threshold needs to be well
above our current 2 percent inflation objective. This is consistent with
the theoretical work showing that extraction from a liquidity trap requires
the central bank, if necessary, to allow inflation to run higher than its
target over the medium term. My preferred inflation threshold is a forecast
of 3 percent over the medium term.』
まあその数値が2%より高くならないと変なのは仰る通りなのですが、「中期的に3%」というのはそこに恣意性が入らないかという気がするのでちょっとどうなのという気がするんですけどね。
『For a central bank like the Federal Reserve that has a statutory dual
mandate, this seems like a risk that we should be willing to accept. We
would suffer some net policy loss if the gains in employment did not occur.
But we certainly have experienced inflation rates near 3 percent in the
recent past and have weathered them well. Such an experience would not
be anything close to the debilitating higher inflation rates we saw in
the 1970s or 1980s. And 3 percent isn’t high enough to unhinge long-run
inflation expectations. Indeed, I think our new framework commitment to
a 2 percent long-run inflation goal would help anchor inflation expectations
if we undertook this policy strategy.』
ということで「中期的に3%」で無問題という話の背景を説明しているのですが、しかし「長期的なゴールで2%」という目標のようなものを置きながら「中期的に3%までの物価上昇を容認」という政策運営ってそれはインフレ期待のアンカーという意味では混乱を来すのではないか(エバンス総裁はI
think our new framework commitment to a 2 percent long-run inflation goal
would help anchor inflation expectations if we undertook this policy strategy.って言ってるけど)と思いますけどにゃ。
・カレンダーデートのガイダンスは経済条件を明示していない点が問題
最後に『Why I Prefer the State-Contingent Policy to Calendar-Date Guidance』という話がありますが、まあこれはそういう事が背景です。
『There has been much talk about the economic conditionality underlying
our calendar-year guidance-the phrase in our FOMC statement that says the
Committee “anticipates that economic conditions … are likely to warrant”
that precedes the late 2014 forward-guidance date. But those conditions
have not been spelled out.』
時期はあるが経済条件が書いてないですなと。
『Suppose as we move through next year that our projections for 2014 have
an unemployment rate above 7 percent and inflation close to 2 percent.
Some might argue then that the economic conditionality in the statement
has been met and we should begin to remove accommodation. To me, in the
absence of some new compelling evidence about the natural rate of unemployment
or an unhinging of inflation expectations, this would represent an unwarranted
tightening of policy. (Indeed, the mere chance that this may occur may
be diminishing the degree of accommodation in place today.)』
つーことで、たとえば来年になって2014年の経済見通しが「失業率7%でインフレが2%近辺」となった時に、金融政策の引き締めを行うかどうかという見方がややこしい事になるでしょ、という事ですな。エバンス総裁的には一部の緩和のレベルの引き下げの可能性は無い訳では無いが、引き締めは有り得ませんという話のようですね。
『The economic thresholds I am proposing put a higher and more predictable
standard on the removal of accommodation. 』
というのが結論なのですが、まあインフレ重視の人たちとは思いっきり対照的であるっつー所を鑑賞する為に引用してみましたが、今回読んでて一番のあたくし的ツボは「セイレーンの歌」の所ですな、うんうん。
#ということで完全に今日は趣味のコーナーでしたすいませんすいません
2012/03/19
お題「面白かったり残念だったりする2月決定会合議事要旨」
今朝(というか昨日のニュースみたいですが)一番ウケたニュースはこの盛大な「お前が言うな」でしょうなあ(^^)。
http://www.47news.jp/CN/201203/CN2012031801001838.html
アップルに6億円超請求 著作権侵害で中国作家団体
さて本日はいろいろな事を実施した2月決定会合議事要旨である。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120214.pdf
○景気認識は引き上げ
まあ今回の議事要旨は金融政策決定に関連する論議の部分が面白うてやがて悲しき日銀ウォッチかな(字余り)という風情でございますので景気認識部分は簡単に。
本文5ページ(PDFファイルだと7ページ)から始まる『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から少々。
・海外経済とか欧州債務問題とか
『国際金融資本市場について、委員は、ECBの3年物オペ等による大量の資金供給の効果が浸透する中、欧州系金融機関の資金調達環境は改善を続けており、これを背景に、欧州債務問題を巡る市場の緊張は、昨年末頃に比べると幾分和らいでいるとの見解で一致した。』
ということでああだこうだ書いてますが、金融資本市場に関しての結論は例によって例の如く『(抜本的な問題の解決には)依然として不確定要素が多く、市場の緊張が再び高まる可能性には十分注意する必要があるとの認識を共有した。』となってはおりますが、その後に関しては割と威勢が良い。
『海外経済について、委員は、欧州債務問題や新興国・資源国における既往の金融引き締めの影響などから減速しているものの、米国経済ではこのところ改善の動きがみられているとの認識で一致した。先行きについて、委員は、当面、ユーロエリア経済を中心に減速が続くものの、その後は、新興国・資源国に牽引されるかたちで、成長率は再び高まっていくとの見方を共有した。』
何をどうすると新興国・資源国に牽引されるのかという感じではありますが、米国経済に関する部分を読んでいてほーと思った箇所はこちら。
『(米国経済について)このうち何人かの委員は、企業部門の好調が家計部門へと及んでいく自律回復のメカニズムが働きつつある可能性を指摘した。』
ふーんという感じですが、新興国や資源国が強くなる見通しの件に関してですが。
『新興国・資源国経済について、委員は、既往の物価上昇による実質購買力低下や金融引き締めに加え、欧州経済の減速に伴う輸出減少の影響などから、全体として幾分減速しているとの見方を共有した。複数の委員は、NIEs、ASEAN経済は、引き続き欧州経済減速の影響を受けているものの、タイの洪水の影響が薄れてきているため、輸出は持ち直してきていると指摘した。』
ほう。
『先行きについて、委員は、インフレ率の低下に伴い、金融政策の緩和余地が拡大する中、家計の実質購買力の回復等により内需が堅調に推移し、再び成長率が高まっていくとの見解で一致した。何人かの委員は、幾つかの国でインフレ率の低下を受けて引き締めから緩和に転じている点に言及した。』
ということで、新興国のインフレの落ち着きで金融政策の緩和余地が出来ている点を指摘しているということですかそうですか。
○国内景気も明るい話ですが・・・・・・・
『景気の現状について、委員は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっているものの、内需は震災復興関連の需要もあって底堅い展開を辿っているとの見方で一致した。』
ということですが、項目別の話を見ますとこれまた景気の良い話の方が多い感じ。まあ金融経済月報がそうなのですから当然ですけど。
『ある委員は、12月の生産の実績が7か月振りに前月時点の見通しを上回ったことに触れ、生産活動の下押し圧力が和らいできているとみられると述べた。』
『別のある委員は、世界的なIT関連の在庫調整進捗が、情報関連の輸出や生産に前向きな影響を及ぼしているとの見方を示した。設備投資について、委員は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にあるとの認識で一致した。』
ほほう。
『何人かの委員は、企業収益の下振れやそれが株価持ち直しを遅らせる影響に留意する必要があると述べた。』
ここだけは景気の悪い話。
『複数の委員は、企業マインドを表す指標がやや改善していることを指摘した。個人消費について、委員は、震災後一旦抑制された需要の復元もあって、底堅く推移しているとの認識を共有した。』
ということで、全般的に明るい話になっていますがな。で、先行きですが。
『景気の先行きについて、委員は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくことなどから、緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有した。』
というのは声明文にある通り。
『そのうえで、委員は、欧州債務問題の今後の展開やその帰趨、電力需給の動向や円高の影響など、引き続き、景気の先行きを巡る不確実性が大きいとの見解で一致した。』
とまあ不確実性の話はしていますが、全体のトーンが強めになっている中で何で追加緩和をしたんでしょうかねえという疑問がここまでを読むと益々強くなる(ってゆーかこの辺までの認識は声明文や金融経済月報に書いてありましたが)のでありました。
○とりあえず物価の話が言い訳ですかそうですか
まあその次にこういうのを書いているので、一応政策のロジックとしての整合性を取ろうとしているというのは把握した。
『消費者物価( 除く生鮮食品)の前年比について、委員は、概ねゼロ% となっており、先行きは、当面、ゼロ%近傍で推移するとの見方で一致した。』
さいですな。
『そのうえで、複数の委員は、食料・エネルギーを除く消費者物価やGDPデフレータの下落が続いている点に留意する必要があると付言した。』
ほっほー。
『そのうちの一人の委員は、GDPデフレータと消費者物価指数の動きに乖離がみられる要因について、@
円高局面における輸出企業の価格設定行動、A 原材料高局面における輸入企業の価格設定行動、B
投資財等の著しい品質向上の影響、の3点に整理したうえで、物価情勢の判断に当たっては、消費者物価指数を中心としつつ幅広い指標を点検することが適当であると述べた。』
はあそうですかという所ですが、その後の金融面の動向の所にこれまた物価の話が。
『複数の委員は、家計や企業の短期的なインフレ予想がこのところ幾分低下していることに言及した。このうちの一人の委員は、こうした動きはインフレ率が中長期的にみて安定的な水準(
アンカー) に収束していくペースを遅くする方向に作用するので、十分な注意が必要であるとの見方を示した。』
・・・・・・・・ということで、まあ追加緩和する言い訳じゃなかった政策ロジックは何となく取り繕じゃなかった構築されているというのがこの部分であります。
○中長期的な物価安定の目途に関する部分から既にアレなテイストを醸し出す
とまあ景気認識に関する部分を引用しましたが、ここまではマクラみたいなもんで、この先の『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』(本文8ページより)がアレでござる。
・導入に至った経緯の部分からもうアレ
もうね、のっけからツッコミどころ満載のアレでございます。オモロイから改行してポイントを読みやすくしてみるつもり(機種依存文字は原文ママですのでマカーの皆様ご勘弁)。
『当面の金融政策運営を検討するに当たって、委員は、
@ 金融政策運営に関する情報発信については、かねてから、より良いあり方を模索する不断の検討が必要との認識が委員間で共有されてきたこと、
A そうした中、前回会合では、米国FRBにおいて情報発信のあり方を巡る検討が進められていることを踏まえ、何人かの委員から改めて、「中長期的な物価安定の理解」や、それに基づく時間軸の示し方について、検討していく必要があるとの問題提起があったこと、
B 実際に、米国FRBが物価安定に関する「長期的な目標(longer-run goal)」を示したことを契機に、中央銀行の物価安定に対する姿勢について関心が改めて高まっていること、
等を踏まえ、金融政策運営に関する情報発信のあり方について議論することにした。』
もうね、最初の部分でいきなり楽しいのですけれども、まあ@は置いといてAって何ですねんという話でして、「前回会合で話がありましたですお!」というのを(1月の決定会合議事要旨にも書いてありましたが)アピールしているところが日銀なりの宣伝だと思うのですが、それならお前らの方が率先して実施すりゃよかったじゃんという話でございまして、実に残念感溢れる話ですが・・・・・・・
直後のBを読みますと「FRBが実施した政策の結果を見て反応しましたですお」と思いっきり仰せでございまして、おまいらの金融政策決定変数はFOMCか!!と盛大にツッコミたくなるようなお話ですが、まあ逆に言えばこういう表現を思いっきり入れているのはある意味清々しいまでの開き直りっぷりとも言えまして(-_-メ)、とりあえずヤケクソモードになっていたというのが良く判る部分が冒頭から炸裂するのであります。
でですな、まあ確かに「FRBの出方を見てから施策を打ち込む」とやった上に、ちょうど米国の経済指標が強くてフォワードガイダンスってコミットメントじゃないよね的な状態になってきた事もありまして、市場タイミング的には大変に結構な結果とは相成りましたけれども、まあ金融政策ロジック的には見事なまでに政策変数外部依存的なものを見せてしまったという事で、コミュニケーションポリシーとしては誠に遺憾に存じますという事ですし、こうなりますと今のFRB(というかバーナンキ)がまさにそういう感じですけれども、「市場の尾を追う犬」に日銀もなってしまい、そうなりますと第2の柱もマクロプルーデンスもどこかへ飛んでしまいますなあ(一応この時の声明文などには第2の柱は入っていますしこの後にも出るには出ますが)という流れへと踏み出してきてませんかねえという感じがする訳で。
・物価安定の理解の変更点
『「中長期的な物価安定の理解」の位置付けについて、大方の委員は、日本銀行の政策姿勢が伝わり難いとの指摘が一部にあることに触れ、日本銀行が目指すべき中長期的に持続可能な物価安定と整合的な物価上昇率を「各政策委員の理解」として示していることが、その一因となっているとの認識を示した。』
別にアンダースタンディングでもパースペクティブでも判りにくい訳でも無いような気がするんですけど、中長期的なという概念入れたら理解でも目標でも大差ないような。
『これらの委員は、概念的定義、時間的視野、中心的指標といった、日本銀行の物価安定に関する基本的な考え方は変わらないが、これまで「各政策委員の理解」として示してきた物価上昇率を全政策委員の一致した見解である「日本銀行としての判断」というかたちで公表すれば、日本銀行が目指す物価の安定をより明確にできるのではないかと述べた。こうした意見を踏まえて、中長期的に持続可能な物価安定と整合的な物価上昇率として、政策委員全員で共有できる数値表現について検討することとなった。』
まあ日銀としての見解を示しました従来は政策委員の見解の集合体ではなくて機関決定という意味での理解でしたから違いますよという話ではあるのですが、そもそも従来の物価安定の理解だって公表文書として出ているものは議決事項(展望レポートでの見通しであれば議決はしているけれどもそもそも単なる数値分布なのでその分布の表現自体は一義的に決定する)なのですから、まあ何と申しますか象徴的な違いのような気もするんですけどねえ、まあいっか。
・で、その数値について
『具体的な数値表現を検討するに当たって、何人かの委員は、従来同様、@ 物価指数の計測誤差(バイアス)
、A 物価下落と景気悪化の悪循環への備え(のりしろ) 、B 家計や企業が物価の安定と考える状態(国民の物価観)
の3つの観点を踏まえる必要があると指摘した。』
まあこの辺は公表文書にもありましたな。
『このうちの一人の委員は、財政政策の発動余地が狭まっていること等を踏まえると、従来より厚めののりしろを確保する必要があるとの見解を示した一方、その他の委員は、3つの観点について、昨年4月の「中長期的な物価安定の理解」の点検時から大きな動きはないと考えられると述べた。』
厚めののりしろが必要とな(1名だけど)。
『多くの委員は、政策姿勢を明確に示すためには、ピンポイントの数値で示すことが望ましいが、日本経済の構造変化や国際的な経済環境などを巡り、先行きの不確実性が大きいことを踏まえると、ある程度幅を持って示しておく必要性も小さくないとの見解を示した。』
ふーんという感じですが、この先に出てくる話が色々とアレ。
・1%の数値は将来的には引き上げることになるでしょうとの事ですが
『何人かの委員は、現在の国民の物価観が低めであること等を勘案し、当面は、現在「中心」として示している物価上昇率1%を目指すとしても、より長い目でみた場合には、目指すべき物価上昇率は1%を上回る水準に高まる可能性があり、この機会を捉えて、こうした可能性を踏まえた表現に変更することが考えられるとの見解を示した。』
『このうち複数の委員は、「1〜2%」という表現も一案であると述べた。』
ほほうという感じですが、この後の方(結論部分)にもあるのですが、まあ1%の数値を中間目標的なイメージで考えるべきというようなニュアンスの人がそれなりにいるという感じではございますが、しかしそうなりますと時間軸ってどうなるんでしょうねえ、まあ今すぐにどうのこうのの話ではないから良いけどさ。
・どう見ても本末転倒です本当にありがとうございました
その次がアレ。
『また、ある委員は、為替相場が長期トレンドとして一方向に傾くことがないよう、長期的には主要国の多くと共通の物価上昇率を目指す必要があり、現状、それは「2%」であると述べた。』
というのを見た時にはさすがにのけぞりましたが、それってどこのカレンシーボードだよって感じでありまして、いやあのまず最初に考えるべきなのは「国民経済的に一番適切な物価水準はどこか」という話であって、まず最初に為替の話が来るとか、お気持ちは判るけどその理屈はどう見ても本末転倒です本当にありがとうございましたという所でありまして、これ誰の意見なのか思いっきり興味があります事ですよ(ニヤニヤ)。
『別の一人の委員は、わが国が直面している経済状況は海外主要国と異なることから、必ずしもこれらの国と同じ水準まで目指すべきことにはならないと述べた。』
『これに対し、何人かの委員は、従来の「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度」という表現を大きく変える必要はないと考えていると述べた。』
まあこちらの方がさすがに穏当なように思えますけどね。
・結論部分もまあ先行きの引き上げの可能性という感じですな
『こうした議論を経て、委員は、当面、目指すべき物価上昇率は「1%」とし、より長い目でみた場合には、中長期的に目指すべき物価上昇率が変わり得ることを踏まえ、「2%以下のプラスの領域にある」と幅を持って表現することが適当との見解で一致した。』
まあさっきの所およびこの辺を見ると1%が2%とかになる可能性もあるという話っすね。
・表現方法に関して
『多くの委員は、これまでの「理解」という言葉の語感からは、日本銀行が受け身的に経済物価情勢の改善を待っているかのような印象を受けがちであり、能動的に達成を目指す姿勢が伝わりづらいとの認識を示した。』
ほうほうそうですか(棒読み)。だって長期デフレの原因は構造問題とか言う麿がいる(その主張はそれはそれで正しい面もあると思いますけどね)んですもんねえ。
『また、何人かの委員は、@「目標」は、一定の物価上昇率を維持するために、短期的な物価の振れに対して機械的な政策運営を行う印象を与えがちである、A
「目標」や「定義」は、固定的・硬直的な語感があり、日本経済の構造変化や国際的な経済環境などを巡り、先行きの不確実性が大きい状況下では相応しくない、B
「目安」は、政策姿勢を示していく上では「理解」と同様、曖昧さが残る、と述べた。』
ふーん(棒読み)。
『こうした議論を経て、委員は、上述の中長期的に持続可能な物価安定と整合的な物価上昇率について、「中長期的な物価安定の目途」と呼ぶことが適当との見解で一致し、その英語表現については「The
price stability goal in the medium to long term」とすることが相応しいとの認識を共有した。』
もう英語だけで良いんじゃないですか(ニヤニヤ)。とここまでが物価安定の目途。
○時間軸政策では追加緩和余地を見せてますな
・追加緩和おかわりの姿勢について
『委員は、「中長期的な物価安定の目途」の導入と併せて、「日本銀行は、『中長期的な物価安定の理解』に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、」という時間軸の表現についても見直すことにより、政策姿勢の明確化を図ることが望ましいとの考え方を共有した。』
別に変える必要あったんかねという気はするのですが・・・・・・
『同時に、実質的なゼロ金利政策以外に実際に行ってきている政策措置も念頭に置きつつ、時間軸政策の対象となる政策運営に関する記述を「実質ゼロ金利政策を継続していく」から「実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」に置き換える方が、より正確かつ能動的な表現となり、日本銀行の政策姿勢が伝わり易くなるとの見解で一致した。』
まあやる気を見せたというのもあるけれども、資産買入を今後も継続または拡大するというのを示しましたということで・・・・・・
『何人かの委員は、見直し後の表現であれば、日本銀行として、今後も必要に応じて追加的な手段を講じていく姿勢にあることがより分かり易いとコメントした。このうちの一人の委員は、こうした見直しにより、時間軸政策の効果は強化されることになると述べた。』
追加緩和を今後も行うというニュアンスの重要性を何人かの委員が主張とな(^^)。
・FOMCにいちゃもんワロタ+α
『また、別のある委員は、時間軸政策の継続期間について、特定の時期で示す方法や、特定の指標等の公表値と紐付ける方法と比較して、現在日本銀行が採用している、経済物価情勢に関する政策当局の予想と紐付ける方法は、先行きの金融政策に関する期待の安定化を図るとともに、政策の信頼性を維持する観点から望ましいとの見方を示した。』
どう見てもFOMCディスりですという感じですが、特定の指標等の公表値と紐付けていないという話をしているのも注目な。あくまでも「中長期的な物価上昇率」についての「目途」ですから間違えないようにと言っても先般の総裁記者会見での質問を見てもそこを正確に把握してそうな記者は質問4本だかあったうちの1本だけだったように思えます。
・一応第2の柱は残る
『複数の委員は、今後の金融政策運営に当たっても、これまで同様、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、わが国経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないことを確認していくことが重要であり、このことについて、適切な情報発信に努めていく必要があると述べた。』
一応残っているのですけれども、まあそこまでの話を見ているとちょっと空しい感じもしますな。
○追加緩和の部分があまりにもグダグダすぎる点について
とまあここまでもオモロスですが、その次の部分がこれまた今回の白眉かも。
『委員は、こうした政策運営に関する情報発信のあり方の見直しに併せて、一段の金融緩和強化策を講じることが、日本銀行の政策姿勢の明確化を行動で裏付け、その効果を高める観点から望ましいという認識を共有した。』
ということですが・・・・・・・・
『複数の委員は、こうした政策の組み合わせにより、長めの金利や企業・家計等の意思決定に働きかけ、金融緩和の効果をさらに強めることが期待できると述べた。また、委員は、このタイミングで金融緩和の強化策を講じることは、先行きの内外経済の不確実性がなお大きい中で、最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、わが国経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものとする観点からも重要であるという考え方を共有した。こうした認識や考え方を踏まえて、具体的な金融緩和強化策についての議論が行われた。』
・・・・・・・・・えーっと、追加緩和しますお!というのは判るのですが、景気認識とか金融市場とか、どの辺りに対して問題があって、それに対してどのような経路で政策効果を出そうとして追加金融緩和政策を実施するというような話がろくすっぽ行われていないというか、そもそも何か気合みたいな話しか無くて、政策ロジックに関する意見の集約が行われているような気配が見当たらないのは気のせいでは無いように思えますが。
『まず、資産買入等の基金について、大方の委員は、日本銀行の政策姿勢の明確化を行動で裏付ける観点から、10兆円程度という思い切った規模の増額を行うことが適当との見解を示した。これらの委員は、買入れの対象については、現在の金融環境等を勘案すると、長期国債とすることが適当との認識を共有した。このうち複数の委員は、本年末までに増額を完了することが適当と述べた。』
・・・・・・・・・・こらまた何じゃそらという感じでして、まあさっきの所も気合みたいなのが先にありきの印象が強かったですが、この部分に至ってはどう見ても10兆円先にありきです本当にカムサハムニダという感じでございまして、その10兆円を実施するためという結論が先にあって、10兆円を積むためにフィージブルなのは長期国債(と言っても2年以内ですけど)の買入を拡大するのが適正、という風に話が進んでいるとしか思えん。
そらまあクレジットスプレッドとかは縮小してるし、ターム物金利は低下しきっているので、CP社債買入や短国買入、固定金利オペの拡大はフィージブルじゃないのは判りますし、ETFだと10兆も増やせないしREITなら猶更だから消去法で国債になるというのもまあ判るには判りますけれども、本来は「こういう効果を出したいから基金の拡大をこのような資産クラスで行って、その額を(まあ腰だめの数字であっても)考えてみたらこうなりました」という順に話が決まる筈なのに、今回はその辺が思いっきりグダグダになっていて、しかもその点を議事要旨で思いっきり出しているのがまあ清々しいっちゃあ清々しいですが・・・・・・
ただね、これだと結局の所追加金融緩和なりの金融政策変更を行うという際の政策変数というかトリガーも判らんですし、何をどう考えて追加緩和をこのように行ったのかというのも判らんですし、まあ金融政策のコミュニケーションポリシーとしては極めて訳ワカランチ会長になってしまいましたね、という所かと思いまして、その前の目途の部分でコミュニケーションポリシーの改善みたいな話をしているのは何ですねんという悪態をつきたくなる所ではございますな。
あとはおまけみたいなもんですが。
『何人かの委員は、今回10兆円程度の増額を行うとすると、趨勢的な銀行券需要見合いの買入れと合わせ、日本銀行による長期国債の買入れ全体としてみると、年率換算で約40兆円という大規模なものとなることに言及し、こうした買入れが財政ファイナンスを目的としたものでないことを明確に意識し、対外的にも説明していくことが重要との見解を示した。』
とか言いながら今後の追加金融緩和余地に関する話も前の方ではあった訳で、もはや意味が判りません(いやまあ追加金融緩和余地の話とこの話は別の人がしているんでしょうけど)。
『何人かの委員は、わが国経済のデフレからの脱却は、成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものであり、民間企業、金融機関、政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取り組みを続けていくことが重要であるとの見解を述べた。』
まあそうなんですけど日銀も率先して給与削減とかデフレ政策してますけどね!!!!
#ということで中盤以降ほぼ全部引用という引用大会で恐縮至極でした
2012/03/16
お題「金融経済月報も判断を微妙に引き上げ/その他雑談」
これって発電所立地の地元の収入が減る方向のような気がすんだが、そうなった場合に発電所の建設や維持に悪影響与えないのかなあ・・・・・
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120316/k10013760261000.html
発電コスト “広告・寄付金認めず”
3月16日 5時8分
○何となく雑談
・米債マーライオン動向とかの雑感
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0XXJM6S972A01.html
米国債:下げ止まる−10年債は4カ月ぶり高利回りから反転
更新日時: 2012/03/16 04:40 JST
『3月15日(ブルームバーグ):米国債相場は下げを消す展開。10年債利回りは約4カ月ぶり高水準から低下した。テクニカル指標で、国債が短期間に下げ過ぎていた可能性が示唆されたことが手掛かり。』(上記URLより)
・・・・・・・・・・・・??????というような理由になっておりまして、本当はどうなんですかねえという気もしますが、まあ経済指標は強いわ株価は上昇するわという中で引けでは前日比あまり変わらず近辺となったのはふーんという感じではございます。
でまあそれはそれで良いのですが、どう見ても最近の米国ミニマーライオン相場って「市場期待のコントロールの難しさ」を示しているのだと思います。
特に昨日の日本時間での米債の売られっぷり見てますと、2年が0.40%に乗ってみたり5年が1.10%に乗ってみたりと、どうも円債を見慣れているあたくしから致しますと金が落ちてるようにしか見えない水準に見えてしまうのですが(^^)、フォワードガイダンス文言の「2014年遅くまで低金利政策を継続」というのと全然整合しない(特に2年の)金利水準とか素敵なミスコミュニケーションという感じでございますわな。
まあ2年に関しては「長期債購入+資金吸収」というセットが行われた場合にGCや実効FFレートが上昇する事も織り込むとこうなるのかもしれませんけれども、いずれにせよ「長期金利をマニピュレート可能である」という理屈に基づいたFRBのコミュニケーションポリシーに無理が生じてきている、ということだと思われます。
結局ね、時間軸政策とかのようなもので市場金利をコントロールすると言っても、コントロールできるのは所詮は「政策金利の先行きが読める範囲内+少々」という期間の金利であって、期間内の政策金利の定積分みたいなイメージでブレークイーブンは何ぼですねんというような発想で金利の計算ができそうな所まで、という事なのでしょう。
長期金利のコントロールが出来る、というのはやはり幻想であって、FRBも一時長期金利コントロールしていたようには見えますが、それは逆に緩和政策やってもまだまだ景気回復しませんよねというような認識が続いている時だったからこその長期金利コントロールだったのではないかという風に思うのであります。
つーことで、まあ今後米国経済が調子よく回復するのであれば、益々コミュニケーションポリシーが難しくなって特に長期金利とかが本格的マーライオン相場とかもやってくれそうな風情ではございますが、まー現実的にはただの偽りの夜明け第3弾のような気もしますので、この程度の金利上昇でドヤ顔でコミュニケーション云々言うのもちょっと先走りではないかと存じますが(^^)、今のうちに言っておかないと(相場が戻って)言いそびれると困るので書いてみますた(−−)。
・引け際(引け後?)謎の超長期売り???
昨日の債券市場はまあ先物が親の敵のように売られておりましたが、その一方で超長期とか入札もあったのにその入札までもが堅調という、絵に描いたようなベアフラット相場になりやがる状態。
で、昨日中短期が強いですなあとか言ったのが何かの呪いになったのかどうか存じませんが、上がったり下がったりしているうちに5年の気配の方が10年の気配よりも弱くなるとかこちらも何かアレでございましたが、結局どこに実弾の売りが出ているとか今一歩ワカランチ会長(先物が売られているのだけは間違い無いですが^^)でしたがまあよー売ってましたな。
でですね、昨日の債券市場ちゃんの謎というかアレだったのは最後の最後にあった超長期の挙動でして、引け前15分辺りでは先物が前日比70銭とか下がっている中で10年が+3.5/+4.0とかの水準で20年が+1.5/+2.0の水準とか(しかも新発は1.80ビット)というようにやたら底堅くて栄耀栄華を誇っていたのでありますが、引け直前なのか直後なのかよー知りませんが最後の最後に急に20年とかの気配がゲロゲロになってしまい、終わってみれば引値ベースで10年カレントと20年どっちも5毛5糸甘(先物は85銭安)とかになりやがりました。引け前後の一瞬で2毛5糸気配が変わるとか、どう見ても売りが出ているのですが、誰の売りか存じませんが嫌がらせというか品の無い売り方してるなあと思いながら見るのでありました。
いやね、超長期入札が強くてその後売りが出てゲロゲロマーライオンというと超長期62回の入札(2003年のお話^^)を思い出すあたくしなのですが、まあ昨日に関しては「入札強かったけど誰も買わなくて相場崩壊」という話でもなさそうではございます(と言ってるけど本当にそうだったらオソロシス)けど、一瞬ちょっとびっくらこきました。まああの時は何せ絶対水準が0.8クーポンのオーバーパーでして、今回は別に最終投資家が全員ドン引きするような絶対水準ではありませんからだいぶ違いますけどね!
・消費税が予想通りの展開
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120316/k10013760341000.html
消費税率引き上げ 意見集約の行方は
3月16日 5時8分
『民主党の前原政策調査会長は、消費税率を引き上げるための法案について、16日、党内の意見集約を図りたいとしていますが、閣議決定への反対も根強く、執行部の中からも16日中の決着は避けるべきだという意見が強まっています。』
『15日までの議論では、経済状況によっては引き上げを見合わせることができるとした「景気弾力条項」について、政府が経済の成長戦略で掲げる名目3%を上回る経済成長率など、具体的な数値を明記するよう求める意見が相次ぎました。また、消費税率を10%に引き上げたあとの税制改革の方針を、法案の付則に「平成28年度をめどに必要な法制上の措置を講じることとする」と明記していることに対し、「将来の増税を示唆するような付則は容認できない」として、削除を求める意見も出されました。』(上記URLより)
・・・・・・・・・・・やはりこう来るかという感じですが、元の話だって別に今すぐ消費税引き上げやれという話でも無いのにこの揉めっぷりとか財政健全化やる気はないとしか思えませんなあ。
いやね、今日は米債がいったん止まった感じだから特にネタになりにくいですけれども、海外金利が上昇する中でこの辺のネタが復活すると時期的に期末の空白期間ですからねえとかいうのはあるんですけどね。
ただまあ足元の金利上昇って実はそんなに困っている人が少なさそうなイメージ(あくまでもイメージ)なので、そうそうオモシロ相場にはならないとは思いますけどね(相場は基本的に「皆が困る方向」に動くものです^^)。
○金融経済月報から少々
しょうもない能書き書いてたら時間が押して来たので簡単に。
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1203.pdf(3月)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1202.pdf(2月)
例によって概要部分の比較です。
・総括判断
『わが国の経済をみると、持ち直しに向けた動きもみられているが、なお横ばい圏内にある。』(今回)
『わが国の経済をみると、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)
キタコレ。で、個別項目ですが。
・海外経済
『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していない。』(今回)
『米国ではこのところ改善の動きがみられているが、欧州債務問題や新興国・資源国における既往の金融引き締めの影響などから、海外経済全体としては減速している。』(前回)
やたら長いですが、まあ表現的にはだいぶ改善してます罠。
・国内需要、個人消費
『国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にある。個人消費も、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増している。』(今回)
『国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にある。個人消費も、震災後一旦抑制された需要の復元もあって、底堅く推移している。』(前回)
エコカー減税関連の話が加わりましたがほぼ横ばい。
・住宅投資、公共投資
『また、住宅投資は持ち直し傾向にあり、公共投資は下げ止まっている。』(今回)
『また、住宅投資は持ち直し傾向にあり、公共投資も下げ止まっている。』(前回)
ご覧の通り同じですな。
・先行き見通し総括判断
『先行きのわが国経済は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)
ということで、「当面横ばい圏内」というのが「次第に横ばい圏内の動きを脱し」と上方修正されていまして、想定される横ばい圏内の期間が短くなっている訳ですな。
・輸出
『輸出は、海外経済の成長率が高まることなどから、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出や生産は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後、海外経済の成長率が高まることなどから、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)
ということで、こちらも横ばい圏内の期間が短期化されています。
・設備投資
『設備投資は、当面、海外経済減速などの影響は残るものの、被災した設備の修復・建替えもあって、基調的には緩やかな増加を続けると予想される。』(今回)
『設備投資は、当面、海外経済減速の影響などを受けつつも、被災した設備の修復・建替えもあって、基調的には緩やかな増加を続けると予想される。』(前回)
同じですな。
・住宅投資、公共投資
『住宅投資、公共投資は、復興関連需要の顕在化などから、徐々に増加していくと考えられる。』(今回)
『住宅投資、公共投資は、復興関連需要の顕在化などから、徐々に増加していくと考えられる。』(前回)
こちらも同じ。
・個人消費
『個人消費も、雇用環境が徐々に改善に向かうもとで、底堅く推移するとみられる。』(今回)
『個人消費も、雇用環境が徐々に改善に向かうもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。』(前回)
引き続き、というのが抜けて文章がすっきりしているのはまあ自信が高まっているという奴です。
・生産
前回のは先ほどの輸出の所にありましたのでそちらをご確認ください。
『こうした内外需要のもとで、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
こちらは横ばい圏内をすっ飛ばして緩やかに増加なので割と自信持って上方修正という感じでしょうかね。
・物価、金融環境は一部除いてほぼ同じ
ということで、現状認識と先行き見通しが引き上げとなっているという月報でありますが、物価と金融環境に関しては、国内企業物価の見通しについて『国際商品市況の動きなどを反映して、当面、強含むとみられる。』と引き上げになった以外は特段の変更(為替市場や株式市場への現状認識部分は相場の変化を反映して変わっていますがそれは特段のインプリケーションは無いのでキニシナイ)はありませんでした。
ということでまあ上方修正ですね、という結果でございました。
2012/03/15
お題「市場雑談/ニュースヘッドラインとのイメージ差がある総裁会見テキスト」
さあ米債マーライオン相場盛り上がってまいりました!!!!
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_americas.html
米国10年国債 2.270 0.144 97.609
米国30年国債 3.407 0.141 94.719
(東京朝6時近辺の数字です)
○市場雑談
・米債(ミニ)マーライオンキタコレ
ということでFOMCの経済見通し引き上げを受けてなのかどうかは知らんのですけれども米債マーライオン相場キタコレなのですが、昨日のFOMC声明文に関しても、よくよく考えると「景気の現状認識」の引き上げは結構あちこちにありますけれども、先行きの回復に関してはそんなにバリバリの強気になっている訳でも無い(速度が若干変わっているが)ですし、フォワードガイダンスの文言は変わらず、という状態で、そこまで売るか????という気もするので何かそれ以外の要因があるんじゃないかとゆーイメージがございますがどうなんでしょうかねえ。
物価に関して燃料関連の上昇に言及しているのもありますけれども、でもまあその燃料価格上昇って実質購買力の悪化に繋がるという話をしていた筈だからそんなに債券売りの話になるとも思えないのですし、どちらかというと所謂「政治的配慮」っぽい香りもするんですけどねえ。
などと思いつつもまあ米債が軽めにマーライオンとなっておられる訳ですが、こりゃまたバーナンキ先生としては困ったちゃんになってきたなあとは思うのでございまする。何だかんだ言っても米国市場は長期金利が上がられると困るというスタンスでやっている筈ですので、ここで先走って金利が上昇されるとどうするんでしょうねえ、謎の不胎化QEとかどうするんですかねえという感じですが、QE3期待剥落だけでこれだけ売るのかというのも????ですので、米債マーライオン相場の進展について生暖かく見守りたいと存じます。
・久々の1%越えですなあ
ということで円債ちゃんも昨日は金利上昇。ここもとは米債売られても貫録のサガランチ会長でナンジャソラな日本債券市場ちゃんでしたが、朝から先物売られて下がって0.990%〜0.995%辺りで10年カレントの投資家買い絶賛到来となりましたが、後場になるともう一発売られて14時10分過ぎとかに1%台乗せて一旦抵抗したものの引け際もう一発下がって終了。
と、10年を基準に書きましたが、まあそれより売られていたの先物ちゃんでございまして、引値ベースだと10年カレント3.5毛甘VSチーペスト5.5毛甘とかでございまして、まあやや大きめに下がる時のお約束のようなもんですが、先物がホイホイ下がっていまして、まあ今年に入って50銭とかの値幅つけて下がるの初めて(20銭程度なら何回か)なので比較対象が難しいのですが、ただまあ20銭程度下がった日などと比べると先物(または先物回りの現物なのかも知りませんがよー判らん)の相対的売られ感が強かったような気がしますけどどうなんでしょ>詳しい人
まあ一方で中短期は(強力時間軸に追加緩和の目もあるのですから当たり前ですけれども)貫録の安定感で5年カレントの引けが2毛甘でしたので5年7年が3毛5糸スティープニングですかそうですかという風情。
まあだから何なのと言われると困るのですがとりあえずメモメモ。
・短期国債春の大感謝安売り祭り終了のお知らせ
国庫短期証券(第265回)の入札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240314.htm
(3)募入最低価格 99円97銭4厘5毛
(募入最高利回り)(0.1023%)
(4)募入最低価格に 25.7502%
おける案分比率
(5)募入平均価格 99円97銭4厘5毛
(募入平均利回り )(0.1023%)
・・・・・・ということですが、こちらの債券の発行日は来週月曜であります19日なのですが、その翌営業日の21日には国債の絶賛大償還祭りがございます(上田八木短資さんの資金需給日足予想だと21日の財政は89000億円の払い超(←この予想には発行分でのマイナスが含まれますので念のため)となっています)ので、まあその資金の入ったお方は直ぐに運用するかどうかは兎も角として、運用のニーズが高まるでござるの巻。
つーことで、この先にニーズが見え見えであるというのも勘案しますと在庫取っておいた方が吉という判断が普通に働くので、最低落札が流れる事もなく、というか0.1023%の按分が薄くなるという平常運転クオリティーに戻って来るような落札結果に。
まあ当然ながらセカンダリーの販売も順調なようで、たぶん居場所は0.100%とかいう所で、まあすっかりキャッシュ潰しのお金が来ましたよモードとなってしまいまして、そらまあ資金需給考えたら想定通りにも程があるのであまり驚かないのですけれども、どちらかというと約定ベースで21日になった所でどどーんと買いが来るようなイメージもありましたもんで、ちょっと早目かなあとか思うのですけれども、まー時間の問題ではございましたのでシャーナイナイという事ですな。
てなわけで、短期国債大安売り(と言っても0.105%では買えないと思いますのでそれを大安売りというのかと言われるとかなり大袈裟なのですが^^)祭りは終了の巻となった訳ですが、さてそうなってきますとまた基金短国買入とか基金固定オペとかの札の入り方にも影響してくるんでしょうなあとニヤニヤするあたくしなのでございました。
つーてもまあ足元では0.10%割れを突っ込んで買う人のニーズという訳では無いので、そんなに過激な話にはならないと思いますけれども、期末なので期末特有のニーズとかどうなってくるんでしょうね。
○ヘッドラインほどのイメージでは無い総裁会見テキスト
という小見出しにしてみましたが、こう書くと何か白川総裁の方がとばっちりという感じでして、情報ベンダーのヘッドラインの打ち方が片思いのおまわりさんこの人ですモードになっているのが要因であるのでして、そーゆー意味では情報ベンダーちゃんと報道しろやヴォケという感じではあるのですけどねえ。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1203b.pdf
・前回の追加緩和とパッケージとな
冒頭説明部分から。
『こうした基本認識のもとで、日本銀行は、先月、政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化しました。デフレ脱却に必要なもう1つの柱である成長力強化については、かねて日本銀行として取り組んでいる成長基盤強化を支援するための資金供給──長いので、以後「成長支援資金供給」と呼びますが――、この成長支援資金供給について、円貨および外貨の両面で拡充し、貸付額の総額を、これまでの3兆5,000億円から5兆5,000億円に2兆円増加させることを決定しました。先程申し上げた通り、前回の金融政策姿勢の明確化、金融緩和の一段の強化と、今回の成長力強化の支援は、パッケージとして打ち出しているものです。具体的な措置は、以下の4点です。』
前回とのパッケージにしては随分と決定会合に時間が掛かりましたなあとかいう悪態は置くとしまして(^^)、当然ながら質問が出る訳で。
『(問) 本日の決定内容の柱である、成長基盤強化の関連ですが、先月の金融緩和とパッケージであるとおっしゃった意味、また、その中の、小口、米ドルあるいは期間2年の延長という対応に込められた狙いを、ご説明下さい。』
例によって回答がやたら長いので一部だけ、特則の話については引用割愛します。
『(答) 先程も申し上げましたが、わが国経済は、現在、急速な高齢化のもとで、趨勢的な成長率の低下という長期的・構造的な課題に直面しています。デフレという現象も、成長率が低下するもとで将来の成長期待をなかなか持てない、その結果、支出が本格的に増えないということの反映です。そういう意味では、デフレという問題は、成長力低下の裏返しの現象です。』
いつもの説明キター。
『私どもとしては、先程申し上げた通り、成長力強化の取組みと、金融面での下支え、この両方が相俟って、デフレから脱却していくと考えています。日本銀行として成長力強化という面で果たせる役割はそう大きなものではありませんが、日本銀行が持っている手段を使って、少しでも成長力の強化に貢献できる道を模索した結果、2年前に成長基盤強化を支援する資金供給を導入しました。この措置は、そもそも成長力強化が重要であるというメッセージ、これを送ることを通じて、世の中全体としての取組みを少しでも後押ししたいということ、それから、金融面でこの資金供給の持つ利点を活かす形で、金融機関の具体的な取組みを後押ししていくというものでした。』
メッセージとか言ってまあ一応サービスしているちゃあサービスしてますか、前から言ってるには言ってますけど。で、途中をスルーしまして。
『また2年の期間延長についてですが、こうした取組みを粘り強く進めて行くためには、もちろん永遠の課題、ずっと続く課題ではありますが、1年は少し短いということで、2年の期間延長を行いました。』
そういや2年延長してましたな。途中で出口モードになっても継続ということになるのかなあ???(今の所どうでも良いが)
・成長基盤強化に関連して
これは良い質問。
『(問) 2点お伺いします。成長基盤融資については、2010年6月から色々な批判等もあったかと思います。場合によっては、金利の引下げ競争につながるとか、中央銀行としての役割を逸脱しているという声もあったかと思います。そこで、今回、2年間の延長、さらに拡充を決められたこの施策の分析と総括――どういった効果があったのか――を教えて下さい。もう1点、米ドル特則ですが、わが国経済の成長に資する外貨建て投融資について、具体的にどういうものを想定されているのか。場合によっては、国内の雇用を脅かすような企業の海外進出といったものも外貨建て投融資につながるかと思うのですが、この辺のバランスを教えて下さい。』
これがまた答えがクソ長いのですけれどもかいつまんで。
『(答) まず、成長基盤強化について、一部の金融機関から、ご指摘のような懸念が示されていたことは事実です。もっとも、この措置に対する理解が浸透するにつれて、そうした懸念の声は以前ほど強くなくなってきていると認識しています。』
はあそうですか、まあ応札は続いているからそう言ってしまえばそうですけど。
『今回、小口特則を導入したわけですが、「小口」の世界は、金額当たりの手間やコストが相対的に大きいことを踏まえると、金利引下げ競争という形ではなく、個々の金融機関が独自の目利き力や特徴を発揮しやすい分野であると考えています。』
・・・・・・・・・・・?????????何か良くワカランチ会長なのですが、そもそも日本の金融機関って現状でファンディングに制約の無い状態というか預金超過で貸出先が無くて困っている中でもあるので、何かまあこの辺りの話ってどうも日銀の説明が腑に落ちないような感覚があるのですが。
で、効果について。
『それから、この効果をどう評価するかです。私どもが、この制度を始めた時から繰り返し申し上げていることは、これは「呼び水」であるということです。いつも強調していることですが、デフレから脱却するためには――これだけ金融が緩和されているわけですから――、この金融環境を最大限活かしていく、成長力を強化していくことが不可欠です。私どもとしては、日本経済が直面している最大の問題は、この成長力の強化であるというメッセージを送り続けているつもりです。』
ほほう。
『その際、日本銀行として、自分たちもできることは最大限やるという姿勢をみせない限り、これは単なる言葉で、力を持たないと思います。』
と、ここだけ切り取るとやる気満々発言にも見えますが・・・・・・
『そういう意味で、この制度を始めた2年前と現在を比べた場合、少しずつ成長力強化が重要であるという認識がやはり高まってきており、私はこれが最大の効果だと思っています。』
まあ何ですな、麿的にはそれなりにサービスフレーズを散りばめているとは思うのですけれども、この結論を意地悪く読むと「デフレ脱却のためには成長力強化が重要という我々の理屈がやっと広まってきました!!!」と言っているようにも見えるという代物でございまして(-_-メ)、まあ微妙な流れですなあ(ニヤニヤニヤ)。
『当初は、確かにご批判もありましたが、現実に、色々な金融機関の経営者の方から、「日本銀行がこういう施策を打ち出したことを契機に、改めてこの問題に取り組む態勢を作りました。その結果、色々な反応も出ています」という声も聞いています。』
ヒント:ヨイショ
でまあ米ドル特則の話については引用しようかと思いましたが、麿先生も発言の最後で仰っているように、何かまあフワフワした話なので引用しても何ですなあという感じです。
『今、抽象的に申し上げましたが、これをどういう形で実現していくのかについては、今後、十分に意見交換をし、具体案を詰めていきたいと考えています。』
・追加緩和の効果について
これまた良い質問。
『(問) 先月打ち出された包括緩和の延長の金融緩和強化について、改めて確認させて下さい。総裁としては、どういった経路で、先般の追加緩和がデフレ脱却に資するとお考えなのか、つまり、長めの金利を下げることに主に働きかけるということなのか、為替市場を通じてなのか、もしくは実質成長率やインフレ期待に働きかけることを主眼においているのか、そのあたりをもう少し詳しく教えて下さい。』
『(答) 先般の措置の中で、まず「中長期的な物価安定の目途」についてですが、これは、日本銀行という組織にとっての目指すべき物価安定の数字を明らかにしたものです。こうした数字が明らかになることによって、人々の将来の物価に対する予想がしっかり数字にアンカーされていくということを期待しています。それから資産の買入れについては、現在、国債やリスク性の資産を買い入れています。これはいずれも、買入れを行うことによって金利の低下を促していくものです。金利の低下の効果が、色々な形で経済全体に染み出していくということです。そういう意味では、基本は、今回のケースではあくまでも中短期金利を下げていく、そしてそのことが経済・金融全体に染み渡っていくことを期待している、ということです。』
つまり、目途についてはインフレ期待に働きかける、資産買入基金については中短期金利(中長期金利ではない事に注意)の引き下げに働きかける、ということですね判ります。
・複数ニュースベンダーのヘッドラインとちょっと違うイメージが
一昨日のブルームバーグニュースから引用。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0T71U1A1I4H01.html
白川総裁:足元の円安・株高、日銀の政策姿勢も一因に−会見 (2)
あたくしが聞いたりした限りではこのヘッドラインはブルームバーグの他にクイックも打っていたようでして、このヘッドラインだけを見ると「白川総裁が追加金融緩和によって円安株高が進んだという認識を示した」→「円安株高の為に金融緩和を更におかわりする姿勢を示した」とかいうような発想になったのかどうか知らんですが、まあ会見報道のトーンが麿積極的という感じでしたので報道ヘッドラインが出る中で円安モードアゲインという感じになったのですけどね。
該当部分の総裁発言を引用するとこうなります。
『(問) 前回会合で、事実上のインフレ目標を導入されましたが、現時点で、その政策決定をどのように評価しているか教えて下さい。また今回、成長基盤融資制度の拡充を決められましたが、物価上昇率1%の上昇に向けて、今後も様々な施策を次々と打っていかないといけないという認識なのか、それとも打てる施策はだいぶ打ち切ったという認識なのか、総裁のご認識を教えて下さい。』
『(答) 前回、日本銀行は「中長期的な物価安定の目途」を発表し、併せて金融緩和の強化を決定しました。その後の経済の動きについては、先程申し上げた通りですが、金融資本市場の動きをみると、国債利回りは中短期ゾーンを中心に低下しています。』
で、該当部分はこの次。
『こうしたもとで、為替相場は、国際金融資本市場における緊張緩和や、米国経済の改善を示す動きもあって、円安方向の動きとなっています。株価も、グローバルな投資家のリスク回避姿勢が弱まる流れの中で、上昇しています。私どもの政策姿勢も、こうした金融市場の動きを形成する1つの要因だったと思っていますが、基本的には先程申し上げたような大きな環境の変化、世界経済の色々な変化ということが、金融市場における価格形成に影響していると考えています。(以下別の論点につき引用割愛)』
どう見ても「追加緩和効果で円安株高」というようなニュアンスではございませんで、確かに発言の一部だけ切り取ると先ほどのブルームバーグ(やクイック)のヘッドラインのようになるのですが、前後の文脈を読むとそこまで「金融緩和したから円安株高になったぜヒャッハー」という感じではないですよね。
・・・・・・・ということで、発言の一部を切り取ってバイアス掛けた報道するのって何なのと思います。市場の人たちの皆が皆総裁会見発言要旨のテキストを最初から最後まで3回くらい読むようなマニア暇人な訳では無い訳で、特に為替とか株とか、あまり日常的に金融政策について細かく見ている訳では無いという人にとっては、やはり情報ベンダーの報道というのが印象に残って金融政策に関する中央銀行の発信として把握する訳でございますからして、てめえらの勝手なバイアス掛けて変な報道するんじゃねえよヴォケどもがお前ら日比谷焼打ち時代から体質が変わってねえのかアホウとか思うのでございます(まあブルームバーグニュースは日露戦争どころかベトナム戦争時代にも存在してない筈ですが^^)。
こーゆーベンダーの売らんかな体質がまた中銀と市場のミスコミュニケーションの原因を作りかねない、という点において、こういう「発言の一部を切り取ったヘッドライン」というのは大袈裟に言えば国益に反すると思うのですけどねえ。
なお、念のため申し添えますと、時事通信(時事メイン)はこの部分だけ切り取ったヘッドラインは打っていない(発言全体で報道)でして、共同通信とロイターは未確認というか無確認でございます(確認したら追記するかも^^)。
・見ててちょっとアレだなと思った件
ミスリードと言えば・・・・・・・ということで、質問の中で物価目途1%の数値に関する言及があったのが4本あるのですけどね(1本はさっきの質問)。
『(問) 2月の政策決定会合で「物価安定の目途」を導入した際、総裁は、これは日本銀行の政策姿勢を明確化したもので、これにより日本銀行の金融政策の考え方が変わるものではないと言われました。一方、3月の国会答弁では、デフレ脱却に向けて日本銀行は能動的に行動していくと話されています。マーケットでは、この発言を受けて、日本銀行は物価上昇率が1%になるまでどんどん金融緩和をしていくのではないかという期待感も高まっています。総裁として、金融政策に対する考え方を変えたのか、それとも従来通りなのか、その辺をもう少し明確にご説明下さい。』
折角だから応答も引用するだよ。
『(答) 日本銀行が、デフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長を実現していくことが極めて重要な課題と考えていることは、再三申し上げている通りです。この点について考え方が変わったということはありません。一貫して、こうした課題が重要であると思っています。ただ、そうした日本銀行の姿勢が必ずしも明確に伝わっていないというご批判があったことも事実です。そうした部分について、私どもは最大限解消する努力をしたわけですが、私どものデフレ脱却に対する基本的な構えは一貫して真剣です。前回会合で「物価安定の目途」を発表した際、私どもの構えを具体的に示すものとして、基金の増額を行ったということです。』
今までも積極的でしたという話をしてますけどまあそれははあそうですか(棒読み)という感じですがそこは良いとしてその次の質問。
『(問) 2点質問します。1点目は、この1か月間で金融市場はかなり変動し、為替は円安になり、日本株は上昇しました。日本銀行は1%――英語ではゴールと呼んでいますが――に向かって金融政策をやるとのことですが、こうした外部環境の変化は、ゴールの方向に向けた変化とご認識されているか、お聞かせ下さい。』
・・・・・・・ということで、ちょうど質問が続いたのですが、どうもこの辺の記者の質問を見ていますと、既に中長期的な物価安定の目途に関する数値が「中長期的な数値」であることを失念して足元の物価上昇率1%目標みたいなイメージをして質問しているのではないかというイヤーな悪寒がするのですけれども・・・・・・・・・
なお、もう1つの質問はちゃんと把握しているような感じでした。質問だけ引用。
『(問) 2点お伺いします。1点目は、基本的なことですが、緩やかな回復経路に復していくと考えられるということですが、それでも物価上昇率1%がみえるまで、日本銀行として一段の緩和政策を採っていくという理解でよろしいでしょうか。』
まあこれは良い質問でしたが、回答の方はこんな感じで微妙にはぐらかされています。
『(答) 1点目の物価についてですが、私どもが金融政策を運営していく上では、先行きを展望して、物価安定のもとでの持続的な経済成長の経路に向かっていっているかどうかが、非常に大事なポイントだと思います。デフレの原因が、先程申し上げた日本経済の構造的な成長力の低下にあるわけですから、短期的にこの目的に到達するわけではありません。しかし、そうした方向に経済が向かっているかどうか、これが基本的な判断の大事な点だと思っています。いずれにせよ、望ましい物価の状況が実現するためには、関係者の様々な努力が必要だと思います。』
蒟蒻問答の香りが・・・・・・・
・この質問をしたのは誰だ!!!!(ガラッ)
どうでもいいがこの質問は何だ????
『(問) 2点質問します。(前半割愛)2点目は、米国の景気回復について情勢判断でご指摘になっていますが、米国ではシェールガスの開発が非常に活発化し、液化天然ガスの価格が大幅に下がるほどになっており、一部では、エネルギー革命の兆しではないかとの指摘もあるようです。総裁は、シェールガスの開発がアメリカの経済構造を変えるほどのインパクトがあるとみておられるのかどうか、見解をお聞かせ下さい。』
ちなみに答え(の該当部分)はこうです。
『2点目のシェールガスについては、シェールガスの開発を巡り、米国で色々な議論が高まっていることは十分認識しています。ただ、私はシェールガス問題の専門家ではありませんので、関心は大いに持ってはいますが、ご質問に十分説得的に答えるだけの材料を持ち合わせているわけではありません。』
何なんでしょこの質問者(割愛した1点目の方はまあ良いとして)。
#予想外に引用祭りになってしまったorz
2012/03/14
お題「FOMC声明文ネタ/日銀決定会合レビューと関連雑談」
人がFOMC声明文印刷して読んでいる側からこんなのがリリースされておる。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/20120313a.htm
Federal Reserve announces summary results of latest round of bank stress tests
しかしここまで読んでいる時間もなさそうなのでURLだけ貼っておく(汗)。
#どうでもいいですけど、モーサテでコメントしてる雨人と思われるBNPパリバの人のQE3見通し話を聞いていると「我々はFOMCよりも景気見通しは強気で、インフレについては高めに見ているのですが、だからこそQE3が必要」とか仰っていて、さすがに同時通訳の人が間違えるとも思えませんので、「お前は何を言っているんだ」と思わず画面に向かって盛大に突っ込んでしまったあたくしがおりますた
ということでまずはFOMC声明文を簡単に。
○FOMC声明文は景気見通し絶賛引上げとな
毎年恒例の偽りの夜明けキター(・∀・)という風情でございますな。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120313a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120125a.htm(前回)
・景気の現状判断がエライ上がっております(第1パラグラフ)
総括判断
『Information received since the Federal Open Market Committee met in January
suggests that the economy has been expanding moderately.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in December
suggests that the economy has been expanding moderately, notwithstanding
some slowing in global growth.』(前回)
総括判断から「世界経済成長がやや減速しているにも関わらず」というのが抜けキタコレ。
労働市場
『Labor market conditions have improved further; the unemployment rate
has declined notably in recent months but remains elevated.』(今回)
『While indicators point to some further improvement in overall labor market
conditions, the unemployment rate remains elevated.』(前回)
失業率が依然としてお高いですというのは変わらないのですが、労働環境に関しては「指標が更なる改善をやや示している」となっていたのが「更に改善している」とすっきりした表現になっていまして、こういう「表現シンプル化系」は見方に自信を深めている事の表れであるのは日本語でも英語でも同じです(^^)。
家計消費、企業支出、住宅市場
『Household spending and business fixed investment have continued to advance.
The housing sector remains depressed.』(今回)
『Household spending has continued to advance, but growth in business fixed
investment has slowed, and the housing sector remains depressed.』(前回)
家計支出が拡大しているというのは前回と同じ、企業支出に関しては「成長が減速している」から「拡大」に引き上げています。住宅市場が抑圧されているのは相変わらずです。
物価
『Inflation has been subdued in recent months, although prices of crude
oil and gasoline have increased lately. Longer-term inflation expectations
have remained stable.』(今回)
『Inflation has been subdued in recent months, and longer-term inflation
expectations have remained stable.』(前回)
物価については「原油とガソリン価格の上昇」について言及しているのがチャーミング。
・先行き見通しも引き上げ(第2パラグラフ)
最初の毎度の文言
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster
maximum employment and price stability. 』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster
maximum employment and price stability. 』(前回)
まあここはどうでも良いが同じである。
総括判断
『The Committee expects moderate economic growth over coming quarters and
consequently anticipates that the unemployment rate will decline gradually
toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual
mandate. 』(今回)
『The Committee expects economic growth over coming quarters to be modest
and consequently anticipates that the unemployment rate will decline only
gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with
its dual mandate.』(前回)
ということで、従来の今後数四半期に渡っての成長見通しは「控えめ(to be modest)」から「穏やかな(moderate)」(ちなみに訳語はあたくし愛用のデイリーコンサイス英和辞典という高校生かお前はと突っ込まれそうな辞書から拾ってみましたお)に引き上げになっています。
国際金融市場動向
『Strains in global financial markets have eased, though they continue
to pose significant downside risks to the economic outlook.』(今回)
『Strains in global financial markets continue to pose significant downside
risks to the economic outlook.』(前回)
国際金融市場の緊張が経済見通しに顕著な下振れリスクを与えているというのは変わらないのですが、その緊張について今回は緩和されたと思いっきり上方修正。
物価
『The recent increase in oil and gasoline prices will push up inflation
temporarily, but the Committee anticipates that subsequently inflation
will run at or below the rate that it judges most consistent with its dual
mandate.』(今回)
『The Committee also anticipates that over coming quarters, inflation will
run at levels at or below those consistent with the Committee's dual mandate.』(前回)
ここでも「最近の石油とガソリン価格の上昇」について言及しているものの、物価の見通しに関しては「その後は」ということで、デュアルマンデートで適切と見られる水準またはそれ以下に低下すると見込んでいるという見方は変化無いですが、まあ表現的には足元での物価上昇の見通しに言及しておりまして、若干上がっているという感じですな。
・第3パラグラフ以下はほぼ変化なし
ということで、今回の見どころは(市場でもそうだと思いますが)あたくし的にも結構意外感のあった景気の強気な現状判断および先行き見通しの上げです。物価上昇に関しての言及もほほーという感じですが、1月のハト派満開のバーナンキ議長の会見は何だったんだという気がする次第でございます。
つーことで第3パラグラフ以下はほぼ変化ないです。変わっているのは1か所だけですが、この部分はマニア的にはある意味重要なのでクリップクリップ。
第3パラグラフの冒頭から。
『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation,
over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee
expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy.
』(今回)
『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation,
over time, is at levels consistent with the dual mandate, the Committee
expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy.
』(前回)
従来の「at levels consistent with the dual mandate」という表現が「at the
rate most consistent with its dual mandate」と変化しておりまして、これは1月FOMCで打ち出された「デュアルマンデートで示された長期的な望ましい水準に関する新たな説明」の変化に対応したものでして、そういう意味からすると「中長期的な望ましい物価水準(=PCEデフレータ総合で前年比+2.0%)の明確化」を受けての表現変更ですなという所です。
以下、前回と文言が同じなのが続くので引用だけ(第3パラグラフの頭から引用しますので最初だけ重複になります)。
『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation,
over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee
expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy.
In particular, the Committee decided today to keep the target range for
the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that
economic conditions--including low rates of resource utilization and a
subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant
exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late
2014.』(今回)
『The Committee also decided to continue its program to extend the average
maturity of its holdings of securities as announced in September. The Committee
is maintaining its existing policies of reinvesting principal payments
from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities
in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury
securities at auction. The Committee will regularly review the size and
composition of its securities holdings and is prepared to adjust those
holdings as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context
of price stability.』(今回)
この2パラは先ほど申し上げた部分以外は全く前回との変化がございません。
・ラッカー総裁の反対理由もまあ同じ(第5パラグラフ)
票決に関して。
『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman;
William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Dennis P. Lockhart;
Sandra Pianalto; Sarah Bloom Raskin; Daniel K. Tarullo; John C. Williams;
and Janet L. Yellen. Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who
does not anticipate that economic conditions are likely to warrant exceptionally
low levels of the federal funds rate through late 2014.』(今回)
『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman;
William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Dennis P. Lockhart;
Sandra Pianalto; Sarah Bloom Raskin; Daniel K. Tarullo; John C. Williams;
and Janet L. Yellen. Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who
preferred to omit the description of the time period over which economic
conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal
funds rate.』(前回)
反対理由はフォワードガイダンス文言の設置がケシカランという話で趣旨は同じですな。
○決定会合ネタは色々あるのですがまずは冷静に(?)声明文比較
声明文の体裁が毎回変わっているので直近3回分のURLを付けるアルね。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120313a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214a.pdf(2月)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120124a.pdf(1月)
・成長基盤強化支援措置拡充の為に・・・・・・
今回はいつも最後にある「デフレ脱却の為に成長力強化が必要」という話を冒頭に持ってきていますが、これはまあ成長基盤強化支援措置の拡充を行うという今回の決定会合結果に整合的になるように作ったためでしょうな。
『わが国経済は、現在、急速な高齢化のもとで、趨勢的な成長率の低下という長期的・構造的な課題に直面している。この課題への取り組みは、わが国経済の新たな経済成長の基礎を築いていくうえで不可欠である。デフレからの脱却は、こうした成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。以上を念頭に、民間企業、金融機関、そして政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取り組みを続けていくことが、重要である。』(今回)
冒頭にこの文言が入りましたが、文言自体は2月声明文と同じ(なので2月分の引用は割愛します)です。
・前回は金融緩和で今回は成長基盤強化ですかそうですか、で措置の内容
まあ単に期限が終わって枠も一杯まで使って前回の新規分が按分になってしまうという事ですから、そらまあ成長基盤強化貸出の延長と増額というのはロジックとしてそうですなという所でして、まあ絵としてはソツなくまとめてみましたでござるの巻と言った風情でしょうか。
『こうした認識のもとで、日本銀行は、2月に政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化した。これに続き、本日の政策委員会・金融政策決定会合においては、以下の通り、成長基盤強化を支援するための資金供給(以下、成長支援資金供給)を拡充することを決定した。円貨、外貨両面での拡充により、貸付額の総額は、3兆5千億円から5兆5千億円に2兆円増加する。』(今回)
で、その内容としては期限の延長および枠の拡大だけではなく、新しい施策も入っていますという話ではございます。
『(1)成長支援資金供給(本則)では対象としていない小口の投融資を対象に、新たに5千億円の貸付枠(小口特則)を導入する(別紙1)。』
別紙1ではこのようにあります。
『成長支援資金供給における小口投融資を対象とした新たな貸付枠の概要
1.対象とする投融資
わが国経済の成長に資すると認められる、1件当たり100万円以上1,000万円未満の投融資。金額以外の要件は本則(注1)と同じ。
(途中は従来の本則と同様の話になるので引用割愛)
8.貸付受付期限
2014 年3月末(新規貸付の最終実行期限は同年6月末)。』(別紙1より)
ということで、今回は本則に加えて小口対象を入れていまして、成長基盤強化に加えて中小企業支援チックな雰囲気も持たせましたという事ですけど、実際問題としてはこの100万円以上1000万円未満の投融資に紐付けで管理とかめんどくさくてカナワンチ会長ではないかとも思われまして、なんちゅうか従来以上に微妙なテイストを醸し出すのですけれども、まあ銀行企画部門とかはこういうのにもせっせと応じたりしたがりそうですから(これが証券会社だとあまりその辺の「ご配慮」がないのが証券会社クオリティ)、札そのものは集まるのでしょう。わざわざ紐付けで0.10%のファンディングが付きますよとか宣伝されると銀行も有難迷惑な気も。
『(2)成長に資する外貨建て投融資を対象に、日本銀行が保有する米ドル資金を用いて、新たに1兆円の貸付枠(米ドル特則)を導入する(骨子素案、別紙2)。本特則については、議長は、執行部に対し、次回の金融政策決定会合までに具体的な検討を行い、報告するよう指示した。』
こちらは議長指示ということで、次回の決定会合時に続きがあるでしょうという話ですが、別紙2はこのようになっています。
『成長を支援するための米ドル資金供給の骨子素案
1.対象とする投融資
わが国経済の成長に資すると認められる、1年以上の外貨建て投融資。各対象先金融機関は、成長に向けた取り組みと対象とする投融資の関係が明確になるよう、取り組み方針を策定し、日本銀行の確認を受ける。
2.対象先金融機関
成長支援資金供給の対象先金融機関のうち、ニューヨーク連邦準備銀行に米ドル口座を保有する先および同行に口座を保有する先へ米ドル決済を委託している先。
3.資金供給方式
米ドル資金の有担保貸し付け(注)。
4.貸付期間
1年とし、3回の借り換えを可能とする(最長4年)。
5.貸付利率
市場金利。
6.貸付総額
日本銀行が保有する米ドル資金のうち、1兆円相当。』(別紙2より)
ということで、これはまあ基本的には昨年財務省が「緊急円高対策パッケージ」だか何だか既に名前を忘れていますが(大汗)、その時に導入した「対外直接投資への呼び水としての外貨準備を活用した貸出制度」の日銀バージョンという事で、それが本当にドル安是正に効くのかというと????な所はございますが、日銀の保有する外貨の有効活用ができて良かったですね(棒読み)という所ですか。
円高対策(になってるのかどうか知らんが)に成長基盤強化ネタを突っ込むとか中々涙ぐましい努力をしているのでありました。
あとは本則とABL特則という従来からあるオペに関して、枠が一杯になってしまった本則に関しては期間延長と枠の拡大のセット販売、ABL特則は相変わらず残高は伸び悩んでおりますので、枠の拡大はしてもシャーナイナイという事で枠拡大スルーですかそうですか(^^)。という訳で該当箇所は以下の通り。
『(3)2010年6月に導入した成長支援資金供給(本則)について、新規貸付の受付期限を2014年3月末まで2年延長するとともに、貸付枠を3兆円から3兆5千億円に5千億円増額する。
(4)2011年6月に導入した出資や動産・債権担保融資(いわゆる「ABL」)などを対象とした成長支援資金供給(ABL特則)について、現行5千億円の貸付枠のもとで、新規貸付の受付期限を2014
年3月末まで2年延長する。』
・声明文の景気に関する文言は上方修正多し
体裁がここのところ毎回変わっているので比較する順番がややこしいのですが、今回の声明文の語順に沿って比較します。
海外経済
『海外経済をみると、全体としてなお減速した状態から脱していないが、米国経済にこのところ改善の動きがみられているほか、欧州経済も停滞感の強まりに歯止めがかかっている。国際金融資本市場も幾分落ち着きを取り戻してきている。』(今回)
『わが国経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっている。』(2月)
ということで、海外経済に関しては「減速」で、まあ今回も減速の判断自体は変わっていないのですが、状況に関して改善という話になっていますな。
現状総括判断
『わが国の経済は、持ち直しに向けた動きもみられているが、なお横ばい圏内にある。』(今回)
『わが国経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっている。』(2月)
ということで、横ばいは横ばいなのですが、先ほどの部分と相まってやはりやや上方修正チックな香りがするようになっていますな、ここだけ見ると前回とあまり変わらないが。
国内需要
個別項目の話が2月声明文には無かったので、1月との比較です。
『国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にあるほか、個人消費についても、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増している。』(今回)
『すなわち、国内需要をみると、設備投資は緩やかな増加基調にあるほか、個人消費についても底堅く推移している。』(1月)
個人消費が政策効果でという但し書き付きながら「底堅さを増している」と上方修正。
輸出・生産
『一方、輸出や生産は、海外経済の減速や円高の影響などから、引き続き横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『一方、輸出や生産は、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響も残るもとで、横ばい圏内の動きとなっている。』(1月)
こちらは変わらず。
金融環境・物価
これは2月と比較。
『この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『一方、わが国の金融環境については、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(2月)
ということでこちらも同じ。
先行き見通し
『先行きのわが国経済については、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。実際、このところ、生産や公共投資などにも先行きの持ち直しをうかがわせる動きがみられ始めている』(今回)
『わが国経済の先行きについては、欧州債務問題の今後の展開やその帰趨、電力需給の動向や円高の影響など、引き続き不確実性が大きい。もっとも、最近では、欧州債務問題を巡る国際金融資本市場の緊張は、昨年末頃に比べると幾分和らいでいる。米国経済では、バランスシート調整の重石はあるものの、このところ改善の動きがみられている。わが国についても、内需は震災復興関連の需要もあって底堅い展開を辿っている。』(2月)
『先行きのわが国経済は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(1月)
まあ何だ、随分明るくなってますな。
先行きの物価に関しては毎度同じなので今回分だけ。
『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)
リスク要因
これは1月と比較。
『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開や国際商品市況の動向、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。』(今回)
『景気のリスク要因をみると、欧州ソブリン問題は、欧州経済のみならず国際金融資本市場への影響などを通じて、世界経済の下振れをもたらす可能性がある。米国経済については、このところ一部に底堅い動きもみられているが、バランスシートの調整圧力は引き続き経済の重石となっている。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。海外金融経済情勢を巡る以上の不確実性が、わが国経済に与える影響について、引き続き注視していく必要がある。物価面では、国際商品市況の先行きについては、地政学リスクの影響を含めて、不確実性が大きい。また、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(1月)
これはワーディング的に1月と同じような書き方をすると声明文全体の分量が長くなり過ぎるので短くしている、というのはあるのでしょうけれども、まあ一々具体的に書いていた部分がシンプルになった(実際問題として言ってることは同じなのですけれそも)のと、そこまでのトーンが明るめになっている事のセットによりまして、内容的に明るくなってますよねという感じがします。
最後の所に一応
中長期的な物価安定の目途がどうのこうのの話は2月と同じなのですが、最後にこの一文が入っているのはまあ今回の政策打ち込みに対応しているものです。
『併せて、本日拡充を決定した成長支援資金供給を通じて、わが国経済の成長支援にも取り組んでいく。』(今回)
○決定会合関連雑談:時間がなげえよ
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2012/index.htm/
金融市場調節方針に関する公表文 2012年
『2012年 3月13日 当面の金融政策運営および成長基盤強化支援の拡充等について(14時07分公表)』
ということで今回の決定会合終了は14時7分と結構長かったです。
で、皆様ご案内のように、それだけ遅くなるという事は何か期待以上の物が出てくるのではないかという思惑が高まる(政策変更の時に遅くなる、というのが仕様なので)わけで、為替市場では円安が進行(と言っても30銭かそこらですが)し、平均株価は上昇(1万円に届いたり届かなかったりとかだったような希ガス)し、債券先物は瞬間芸ですが何か妙な上昇をしたりもしたという動きがありましたが、まあ結果はそもそもの予想の範囲内(ドル何とかとか小口特則とか面白いネタもありましたが)で、まあスパイスとして宮尾審議委員の追加緩和提案があって否決されましたという話でした罠。
で、その結果どういう話になったかというとこんな感じ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0SNWO0UQVI901.html
円が反発、日銀追加緩和見送りで買い圧力−対ドルで一時81円台
『3月13日(ブルームバーグ):午後の東京外国為替市場では円が反発している。日本銀行はこの日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定。一部で追加緩和期待が出ていたため、失望感から円を買い戻す動きが出ている。更新日時:
2012/03/13 14:51 JST 』(上記URLより)
つまりまあそういう事で、変に決定会合の時間が長くなってしまったので無用に思惑を生んでしまい、その結果失望とか言われましても困りますがなとは言いたいでしょうが、市場が(特に海外とか外野で)妙な期待をしていた向きもあっただけに、今回の時間の伸びっぷりはちと罪作りでしたな。
もしこの決定が13時前とか遅くとも13時の第1四半期(?)辺りに出ていれば、予想通りですねで終了で、もしかしたら宮尾審議委員の緩和提案をもうちょっと評価するような動きになったかも知れませんが、先に過大な期待をして余計なものを織り込んでしまった為にその反動が起きましたねという結果。
まあ何ですな、今回は決定事項が多かったのでロジ的に時間が掛かったんだろうなあというのは判るのですが、前回の決定会合であれだけのネタを打ち込んでも決定会合の結果発表が12時43分であった事を勘案しますと、ちょっと時間が掛かり過ぎ。ロジ的にチョンボがあって遅れたとかはまあ無いでしょうけれども、ロジに改善の余地があるのであれば改善して頂きたいものです。
いやまあ何かで議論が揉めたんでしょうねえとは思うのですが、ちょっと議事の段取り的にどうだったのかなというように思える訳でして、決定会合終了時間によってこういう変な思惑を呼ぶ、というのもちょっとどうかと思いますので、公表時間は一定にする方がやはり宜しいのではないかというのがこういう事案がある度に思うんですけどねえ。勿論議論を尽くすのが大事だというのも判るのですが・・・・・・・・・
○決定会合関連雑談:片思いはほどほどに
さっきのニュース再掲
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0SNWO0UQVI901.html
円が反発、日銀追加緩和見送りで買い圧力−対ドルで一時81円台
『3月13日(ブルームバーグ):午後の東京外国為替市場では円が反発している。日本銀行はこの日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定。一部で追加緩和期待が出ていたため、失望感から円を買い戻す動きが出ている。更新日時:
2012/03/13 14:51 JST 』(上記URLより)
ちなみに為替市場ニュースですがその後更新された時にはこうなっています。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0T7DW0YHQ0X01.html
円反発、日銀追加緩和見送りに失望−対ドル一時2営業日ぶり81円台
『3月13日(ブルームバーグ):東京外国為替市場では円が反発。日本銀行がこの日開いた金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定したことを受け、一部で出ていた追加緩和期待の反動から円を買う動きが強まった。更新日時:
2012/03/13 16:12 JST 』(上記URLより)
「失望」のヘッドラインは同じですが、記事内容的には「追加緩和期待の反動から」という言い方に変わっていまして、表現がやや穏当に(^^)。
・・・・・・・しかしまあ何ですな、昨日の何とかストの皆さんのレポート見てますと、結構多くの人が「追加緩和見送りに失望」という上記の最初の方の記事トーンみたいな感じのが出ていて、何かまあ見苦しいっつーかお前らクレクレ前提で何の話をしているんだ大体金融政策が物価に効くまでのラグ考えたら2か月連続利上げするのかねという風に思う(あたくしは昨日も申し上げたように、経済が下向きに成らない限りにおいては中長期的見通しの更新(=展望レポート)のタイミングでの追加緩和(のようなもの)がスマートでしょFRBだってそうしてるんですしと思いますが)のですが、すっかりまあクレクレモードなのがはいはいワロスワロスという感じ。
まあ昨日に関しては決定会合が妙に長引いてしまったので、変に期待した(あたくしも「基金オペの期間延長と買入額増加をセットにするのか」とか「6か月固定オペを基金国債買入に振り替えるのか」とかいろいろと妄想を逞しくしておりましたので同じですけど^^)結果空振りっぽい感じだったのでその反動で日銀に文句を言いたくなったという気持ちも分からんでは無いですが(^^)、このクレクレ前提報道やクレクレ前提コメントを見ていますと、「片思いの女の子に勝手に思いをつのらせたのに、相手にされなかったので逆切れして怒り出すキモい男」みたいな感じが致しまして、それが嵩じるとおまわりさんこいつですという事に成りかねませんので片思いは程ほどにという所でしょうか、あっはっは。
○決定会合雑談:政治圧力はこっそり掛けるものではないでしょうか
いやまあそもそも政治圧力自体がどうかとは思いますというのは念の為申し添えますが。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0TF761A74E901.html
民主デフレ脱却議連の金子氏:日銀の追加緩和見送りは「大変残念」
『3月13日(ブルームバーグ):民主党の金子洋一参院議員は13日、日本銀行が同日の金融政策決定会合で追加の金融緩和を見送ったことについて「大変残念だ」との認識を示した。ブルームバーグ・ニュースの取材で語った。金子氏は民主党の有志議員でつくる「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」(デフレ脱却議連)の事務局長。同氏の決定会合に関する発言は以下の通り:
(途中割愛)
「民主党内の有志で3月2日、西村副総裁に金融緩和を2カ月連続でやってくれと申し入れたが、聞き入れてもらえなかったのは大変残念だ」
(以下割愛)』(上記URLより)
・・・・・・えーっとですな、こんなに財政が真っ赤っ赤の国で中央銀行が政権与党の圧力で金融緩和を実施するというのが大宣伝されると、そらまあ経常収支が基調的に黒でいるような目先いきなり何か影響するかというと影響しないかもしれませんけれども、当然ながら将来的にギリシャモードのリスクを抱えるような話でありまして、まあ中銀がヤケクソにでもならない限りそんな露骨に政治圧力掛けたら却って金融緩和しにくくなるわヴォケという事にこの人たちは気が付かない
のでしょうか。
なんつーかね、国の為に本当に金融緩和が必要と思うのなら、上記のような露骨な政治圧力を掛けるのではなくて、もっとスマート(というかこっそり裏でという事ですが^^)なやり方というのがあると思うのでございまして、たとえば小泉首相なんかはそういう話をしなかったですよねとか思うのでして、もうちょっとやり方工夫しろと思うのですが、それでは自分の手柄にならないからこういう風にパフォーマンス込みでやっちゃうんでしょとか邪推したくなるあたくしなのでございます。
○決定会合関連雑談:宮尾委員の緩和提案
決定会合声明文脚注より。
『(注1) 本日の金融政策決定会合では、宮尾委員より、資産買入等の基金を5兆円程度増額し、70
兆円程度とする議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:宮尾委員、反対:白川委員、山口委員、西村委員、中村委員、亀崎委員、森本委員、白井委員、石田委員)。』
ということですが、何をどう提案したのかは議事要旨を見るとして、まあ宮尾さんは前も一人で緩和提案したりしてたので、鉄砲玉キャラになってきている感じではございますけれども(^^)、どういうロジックで緩和提案したのか、その内容とかも含めて興味がございます。
まあしかし今回はこの緩和提案があったので、「まあそうは言っても先行きどこかで追加緩和あるでしょ」という認識になったの(かどうか知らんが)債券市場は結局若干のブルフラットとなっていたのがチャーミングでした。決定会合の時間が長引いて変な期待とその反動が起きた分のクッションに結果的にはなった感じですにゃ。
しかし、昨日の何とかストの方々のレポートを見ておりますと「これで追加緩和が遠のいた」的なコメントも散見されて、まあ昨日の決定会合の時間が妙に伸びて妙に期待を高めたことによって何とかストの皆さんもちょっとトサカに来ていたのかもしれませんね!!!!
という所で何となく関連雑談を書いてみました。総裁会見も論点がありそうなので続きは明日。
2012/03/13
お題「決定会合プレビュー雑談の続きである(海外ネタ書く時間が無くなったorz)」
昨日の東京市場の株価指数が殆ど寄り天井だったのは朝早々(だと思います、前場見たらこのコメントが出ていた)にお告げがあったからだという説に1万ドラクマ。
http://www.musha.co.jp/3699
○これは酷い
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0R2C46KLVR501.html
石田内閣府副大臣:今回の日銀決定会合で追加緩和はない(2)
『3月12日(ブルームバーグ):石田勝之内閣府副大臣(国家戦略、経済財政担当)は12日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、日本銀行が12、13の両日に開く政策決定会合では、2月に発表した金融緩和の効果を注視する姿勢で、追加緩和には踏み切らないとの見通しを示した。』(上記URL記事より、以下同様)
えーっと、内閣府副大臣ということは・・・・・・
『石田氏は1955年1月生まれの57歳。衆院埼玉2区選出で現在4期目。昨年9月の野田佳彦政権発足に伴って副大臣に就任する前は、民主党の有志議員で作る「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」(デフレ脱却議連)の中心メンバーの1人として日銀に金融緩和を求める論陣を張ってきた。2月の日銀会合には政府側のオブザーバーとして出席している。』
あのー、金融政策決定会合に(オブザーバーだけど)出席しうる立場にある人間が決定会合1日目に決定会合の見通しの話をするとか何考えてるんでしょうか??日銀の政策委員の皆さんは「ブラックアウトルール」を順守(ただし国会に呼び出すアホウがいるので金融政策に関する話を国会ではさせられるが)しておりまして、そらまあ政府側にはその手の明文化されたルールは無いのかも知れません(公表されているのは見たことないっすな、情報管理に関する内規とかはあるかもしれないけど)けれども、普通に考えて「金融政策決定会合に出席しうる立場の人間」が「決定会合当日に結果の見通しについてコメントする」とか有り得ないと思うんですがねえ。
まあね、この石田さんというお方はきっと金融政策の枢要に近いお立場になってご指名でやってきたブルームバーグニュースの単独インタビュー(ですよね?)に対してご機嫌も麗しく舞い上がってドヤ顔で取材に応じられたのかとか勝手に邪推致しますけれども、そんな調子でペラペラ喋られますと何つーかこの政権の情報管理とか大丈夫かよとか思ってしまいます罠。
ついでに申し上げますと、この副大臣様におかれましては「デフレ脱却議連」にご参加のようですが、確かデフレ脱却議連およびその周囲の皆様って「日銀は事前に金融政策の動向をリークしてメディア操縦をしてケシカラン」とか良く仰っておられたと存じますが、このように金融政策決定会合に出席しうるお立場の議連のお方がホイホイとまさにその日から始まる決定会合についてコメントしてしまうというのを思いっきり見せつけられますと、あれは筋論で批判していたのではなくて、「自分たちが政策決定過程に加わってその暁には権力を誇示するためにリークをするのだが、お前らのリークはケシカラン」という話だったのですねえさすがですなあとかこれまた邪推したくなってしまうお話ではございます。
大体からして内閣府の副大臣で金融政策決定会合に出席しうるような人をブラックアウト期間中にインタビューで読んで金融政策決定会合に関して話をさせるブルームバーグニュースも大概に如何なものかと思う訳で、お前らブラックアウトルールとか知らない訳ないだろと思うのでございまして、仮にコメントが出ても報道しないとかいう良識は働きませんかそうですかそりゃ自分の所の報道が売れる方が国益よりも大事ですからねえと思うのでありました。
などとのっけから悪態ですいませんすいません。
○追加緩和の物理的にフィージブルなメニューを愚考してみる
まあ先週一瞬微妙に外野が盛り上がっておりましたと言いますか、あの金融政策に関する為替市場とか株式市場の無責任お祭りチックなコメントとか何だかなあとか思うのですけれども、よくよく見ておりますと金利方面の何とかストの皆様におかれましても、どう見ても「目立ってナンボ」とばかりにフカシ予想をする向きも散見される今日この頃であります。
まあ何ですな、昨今の世知辛い世相を反映致しまして、まあ色々と目立ってウケを取っておかないと色々とアレだというのもあるのかも知れませんが、本職の皆様におかれましては本職らしくフカシとかするのご勘弁頂きたいと思うのでありまして、大体からしてメディアも最近は目立ってナンボ的な報道をする(のがロイターだったのですが最近はブルームバーグまでその傾向が見受けられるのが困るのですけれども何とかして下さいな)ので、そういうフカシを大々的に取り上げて、上記の副大臣インタビューに見られるように政治家の皆様におかれましても目立ってナンボということでそういうのに乗っかるみたいなバンドワゴン効果爆裂みたいな拡大再生産モードになっているのは非常に遺憾としか申し上げようがない、つーか金融政策に関する冷静な議論ができねえだろと思うので、フカシばっかりしてる人は可及的速やかに引退してあたくしにその席空けろ(違)と思う所でございます(^^)。
・・・・・・・などと肝心の話の前にまた悪態を書いてしまいましたがorz
まず今回決定会合で追加緩和どうのこうのという話ですが、成長基盤強化オペに関しては直近のオペでも新規分の申し込みが按分に掛かるという結果になっておりますし、成長基盤強化は物価安定の達成に向けた施策の一環という事ですから、まあこれは延長でしょう、というのは全員織り込み済みでしょ。
じゃあ他の施策あるかと言いますと、まあ普通に考えると先月に実施した追加策を実行している途中ですし、そもそも金融政策が物価に対して影響を与えるという話になりますとそれは1か月やそこらでホイホイ効果がでるものではないですからして、追加緩和のおかわりとかするのって理屈として変だろとか思うのでございますけれども、まあ確かに何か急に自棄を起こしてやる可能性が無い訳では無いとは思いますけどね。
ただまあ2か月連続で実施とか、いわゆる危機対応での流動性供給でもやっているのなら兎も角としてそんな状況でもないし、欧州問題は一段落してるし米国経済は足元の指標はとりあえず順調っぽいですし、国内の経済指標もそんなに悪くないしという中で実施すると、それこそ市場が毎月のようにクレクレ催促というか最早恫喝状態になって、怖い人の黒塗りの車にでもぶつけた状態になってしまい、結果的に政策の大盤振る舞いのし過ぎとなるリスクがありますわな。
つーことで、まあ普通に考えて展望レポートのタイミングで「先行きの見通しを考えた場合に物価安定の目途の達成まで時間が掛かりそうなので緩和の強化を行います」というのが筋として通っている、つーかFRBはSEPの改定タイミングを狙ってガイダンス文言の延長を行ったわけですし、まあそういう風にするのが筋ちゅうもんでしょうな。それが4月なのか10月なのかは兎も角(まあ本来ですと見通し対象期間が延びる10月の方が良さそうですけど、そうも言ってられないのなら4月とかですかねえ、まあ状況次第でしょうけれども)として、そのタイミングで何か行うというのはスマートな話でしょうな。
では何をやりますかという話なのですが、ご案内の通りで固定金利オペに関しては6か月物が毎回札割れとなって残高が増えにくくなる所か減りそうな勢いになっていまして、明らかに長い資金供給(買入も含め)の打ち過ぎで物理的にこれ以上の拡大は困難になっているのでフィージブルではない(3か月を拡大しても結果は同じで資金余剰時期に札割れ連発になりそう)と思われます。
CPに関しては発行自体はやや増えたようなので札割れ云々は回避しそうですが、これもまあ落札レート見るとどう見ても限界。社債に関しても同様(札割れ回避の為に残存1年以内もオッケーにするという可能性はあるかも知れませんが)。REITは市場規模的にもう無理でしょうし、ETFはあたくし的にはお勧めなのですけれども、あまり「量」が稼げないのでアピールが(誰に対してのアピールかという論点はありますが敢えてスルー^^)弱い。
つーことで、まあ普通に国債系の拡大という話にならざるを得ないと思いますけれども、現在の「月に1兆5000億円」という買入が始まったばかりの中で今後どういう影響が出てくるのかがイマイチ読みにくい(6か月固定オペの札割れ連発という結果を見るに既に影響が出ているような気もしますが)中でいきなり拡大するとその後どうなるのやらというのが結構アレ。
でまあ何ですな、買入拡大すると同時に買入実施期間の延長というのはあって、月1.5兆円を半年拡大すると9兆円の拡大が出来るので、切りの良い所でおまけして10兆円の拡大(残り1兆は短国でも何でも)とかしておくと、「量の拡大」に加えて「時間軸の延長」っぽくなるのでまあ見栄え良さそうな気がします(が、そうなった時の中短期債券市場のレート形成はあまり見たくない・・・・)。
あと、買入対象銘柄の年限拡大の方ですが、これは買入が物理的に限界に達しそうな状態が見えてきたらやはり実施せざるを得ない話かなとも思いますので、この際財務省様におかれましては2年国債の絶賛大増発でもしていただけると誠に恐縮至極に存じます。え?償還の山が出来る上に平均残存年限が短くなるだろヴォケでございますか、こら失礼いたしました(^^)。
まああまり長いの買うのも何ですけれども、以前より「企業の借入金の年限が3年程度」などというような話もあるように、3年くらいまでの金利に影響を与える(一応基金オペは長めの金利に影響を与えるのと、クレジット等のリスクプレミアムを縮小させるのが直接的な政策目的ですので念の為)という名目のもとに3年まで延長というのはどこかのタイミングでこれはまあ好むと好まざるに関わらず物理的制約で実施せざるを得なくなるかと存じます。
んでもってこの3年を4年なり5年なりにする(4年とか半端な所まで伸ばすなら新発のある5年まで伸ばした方が単に買入の事だけ考えたらやりやすい)とどうかという話ですが、まあ正直申し上げまして金融正常化の過程で中短期国債金利または短期市場金利が跳ねるのも辞さずという話であれば、5年位まで伸ばしても何とかなるのかもしれませんが、あまりその辺まで伸ばしてしまいますと、流動性吸収の際に無理気味のオペレーションを実施しないと行けなくなる可能性がありますわな。恐らくは短期で無理無理の吸収オペを打つ&供給オペが足りないという形になって、GCレートなどの短期市場金利が跳ねやすくなるという風になるのか、それとも基金で買った5年国債(その時は残存2年とか3年とかでしょうけれども)の売り切りオペを実施することになって中期ゾーンの金利がやたら跳ねるとか、まあそういう感じになり得るので、調節技術的に言えばあまり長いのを買い過ぎるのもイクナイと思います。
ただまあ今回ある意味ラッキーなのは、FRBが人柱状態になるというのが明白な事でございまして、FRBはどこかのタイミングで出口政策という話になる(物価がサガランチ会長になるとそもそも足元の物価がターゲット越えなのでBOEくらいに開き直らないと大変でしょうな)でしょうが、その時には買いまくった長期債の落とし前をどうつけるのかという点で色々と大変だと思われますので、その辺を参考にできるのはラッキーかなとか思います。どう見てもFRBの方が大変そうですし・・・・・・・・・
#とかうだうだしょうもない雑考を書いていたら虫干しネタ書きそこなったわorzorzorz
2012/03/12
お題「ECBドラギ総裁会見とかその他雑談」
その後トーンダウンしたみたいですが、これはポルポトもビックリの原始共産主義の私有財産禁止ですなあ。遺産全部没収したら個人所有の土地建物は全部国有になっちゃいますねえ。土地価格大暴落しそうですし、どうせ生前贈与もがっぽり税金取るんでしょうし、世帯主が不慮の事故とかで急死したらいきなり家族は路頭に迷うとか凄い話ですなあ。
http://www.47news.jp/CN/201203/CN2012030901002327.html
維新の会、遺産全額徴収も検討 「国家元首は天皇」明記
2012/03/10 01:29 【共同通信】
『資産を残さない「一生涯使い切り型人生モデル」を提唱、消費を促す税制に転換し、経済活性化を図る狙い。』(上記URLより)
いやそれ経済活性化じゃなくて経済破滅だろ常識的に考えて。つーか案の1つとして出たんでしょうけれども、そもそもこういうのが「案」としても出てくるとか誰がそんな入れ知恵してるんだよ・・・・・・・・・
まあ大阪だけでやってくれ。こっち来んな。
というネタは兎も角として月曜ですので雑談系です。
○トーンが早速タカ気味になっている貫録のクオリティ
http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120308.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 8 March 2012
冒頭の所は金曜に引用したのでその先の方を。
・非伝統的政策は「異例の条件の時に」行うものキタコレ
『Over recent months, a wide range of additional non-standard monetary
policy measures has been implemented by the Eurosystem. These measures,
including in particular two three-year longer-term refinancing operations,
were decided upon against the background of exceptional circumstances in
the last quarter of 2011.』
3年LTROなどの非伝統的政策は「exceptional circumstances」という背景を受けて決定されたものですキタコレ。
『The first impact of these measures has been positive. Together with fiscal
consolidation and stepped-up structural reforms in several euro area countries,
as well as progress towards a stronger euro area economic governance framework,
they have contributed to a significant improvement in the financial environment
over recent months.』
でまあその政策はポジティブな反応を起こしているということで、金融環境が顕著に改善しましたというのはまあそうですなという事で。
『We expect that the three-year longer-term refinancing operations will
provide further support for the ongoing stabilisation in financial markets
and, in particular, for lending activity in the euro area.』
融資活動の安定化にも寄与したと仰せですがそうなんすか??
『All our non-standard monetary policy measures are temporary in nature.
Furthermore, all the necessary tools to address potential upside risks
to medium-term price stability are fully available.』
で、毎度のようにこれらの非伝統的政策は一時的な措置ですという話をした上に、止めのように「中期的な物価安定に対するアップサイドリスクに対応する金融政策ツールも用意できています」とかいきなりそう来るかという話をしていてどう見てもインフレタカ派です本当にありがとうございましたという感じですな。ECBクオリティオソロシス。
・経済のサポート要因と悪化要因
経済のアセスメントに関して。
『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the
economic analysis. Real GDP contracted by 0.3% in the euro area in the
fourth quarter of 2011. According to recent survey data, there are signs
of a stabilisation in economic activity, albeit still at a low level. Looking
ahead, we expect the euro area economy to recover gradually in the course
of this year.』
つーことで見通しはまあ基本的に変わらないのですが。
『The outlook for economic activity should be supported by foreign demand,
the very low short-term interest rates in the euro area, and all the measures
taken to foster the proper functioning of the euro area financial sector.』
サポート要員は海外の需要と低金利とユーロエリアの金融セクターの機能回復に向けた各種政策とな。
『However, the remaining tensions in euro area sovereign debt markets and
their impact on credit conditions, as well as the process of balance sheet
adjustment in the financial and non-financial sectors, are expected to
continue to dampen the underlying growth momentum.』
悪化要因は周縁国ソブリン問題の金融市場やクレジット環境への影響や、バランスシート調整圧力ですというのですからどう見ても悪化要因の方が確実性が高いような気もしますが。
・経済見通しは引き下げ
『This assessment is also reflected in the March 2012 ECB staff macroeconomic
projections for the euro area, which foresee annual real GDP growth in
a range between -0.5% and 0.3% in 2012 and between 0.0% and 2.2% in 2013.
Compared with the December 2011 Eurosystem staff macroeconomic projections,
the ranges have been shifted slightly downwards.』
ということで、昨年12月と比較して見通しレンジ(はいいのですが、2013年のレンジがえらい広くてもはや予想になってねえという気がするが)が若干下がったそうな。
『This outlook remains subject to downside risks. They notably relate to
a renewed intensification of tensions in euro area debt markets and their
potential spillover to the euro area real economy. Downside risks also
relate to further increases in commodity prices. 』
ダウンサイドリスクに周縁国ソブリン問題とコモディティー価格の一層の上昇を挙げています。
・物価見通しは引き上げ
『Euro area annual HICP inflation was 2.7% in February 2012, according
to Eurostat’s flash estimate, slightly up from 2.6% in January. Looking
ahead, inflation is now likely to stay above 2% in 2012, mainly owing to
recent increases in energy prices, as well as recently announced increases
in indirect taxes.』
2012年中まで2%超の物価(HICP指数)の上昇は継続するという予想になっていて、エネルギー価格と直近アナウンスされた間接税増税の影響によると。
『On the basis of current futures prices for commodities, annual inflation
rates should fall again to below 2% in early 2013.』
で、2013年の頭になると2%割れになりますよという見通しになっていますが、現時点で既に今年の末までは2%超継続と言っている時点でまあこれがBOEやFRBだと「なのでまあ物価が高めなのはネグって緩和継続するお!」と読めるのですが、ECBの場合物価タカ派なので3%台とかに上昇した時に何を言い出すかワカランチ会長なのがアレ。
『Looking further ahead, in an environment of modest growth in the euro
area and well-anchored long-term inflation expectations, underlying price
pressures should remain limited.』
まあ一応こう言ってますので、現状水準程度の上振れは放置プレーになるんでしょうけれども。
『The March 2012 ECB staff macroeconomic projections for the euro area
foresee annual HICP inflation in a range between 2.1% and 2.7% in 2012
and between 0.9% and 2.3% in 2013. In comparison with the December 2011
Eurosystem staff macroeconomic projections, the ranges for HICP inflation
have been shifted upwards, notably the range for 2012.』
2013年の物価予想は0.9%〜2.3%ってこれまたエライ広いレンジですが、まあそれは兎も角として、レンジの中心は1%台前半とかになりますので、これだけ見ているとまあ金融緩和政策を継続しますという話にはなっているので、そーゆー意味で言えば冒頭でインフレタカ派っぽい話をしているのとこの辺の予想のトーン(ちなみにそちらにあるように2012年の見通しを中心に引き上げています)
に差があるのをどう評価していいのか正直良く判らん。
『Risks to projected HICP inflation rates in the coming years are seen
to be still broadly balanced, with upside risks in the near term mainly
stemming from higher than expected oil prices and indirect tax increases.
However, downside risks continue to exist owing to weaker than expected
developments in economic activity.』
リスクはバランスとなっていますが、まあ経済の下振れリスクが物価の下押し圧力に働くでしょうという見通しを出しているので、この辺りを読んでいるとそんなにインフレタカ派的な話にはなっておらず、ECBスタッフの見通しと冒頭のドラギ総裁の説明に妙な温度差がありますなというのが説明部分の感想です。
#質疑応答はまた後日で勘弁
○3か月固定オペ札割れせずとな
木曜と金曜に基金資金供給オペ3か月物が実施されたのですがね。
3月8日の結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120308.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(3月12日スタート分) 10,680 8,006 75.0
3月9日の結果(該当部分のみ)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120309.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(3月13日スタート分) 12,990 8,009 61.7
ということで、先週は前半に3か月基金オペが全取となるという大変にお洒落な事になって、1か月経たずして基金65兆円の積み上げが技術的な限界を露呈しましたねという話をしたのですが、8日と9日のオペに関しては無事に札が入ったでござるの巻。まあ先日の札割れ寸前から全取という流れを受けまして、かどうかは存じませんが(^^)、オペの1社当たりの応札限度額が拡大されたり、金利入札オペのロールを行わなかったりとまあそういう動きもありまして無事に札が入って良かったですね(棒読み)という所でございまする。
ただまあ6か月オペは札割れ連発ですし、基金オペに関してはご丁寧な事に各オペ毎に幾ら実施しますという話をしている手前、この6か月オペどうしますねんという気はするのですが、まあこの際6か月TBでも増発したらどうでしょうか(^^)、って多分増発しても札が入るかどうか分からないけど。
まあ何ですな、国債買入の方はまだ何とかなるにしても、6か月の基金オペという今となっては一番中途半端でニーズの無い年限ものをどうするのかはムツカシヤという所で、それを国債買入に振ったら振ったで、今度は2年ゾーンまでのモノが段々怪しくなってくるような気もしますし(6か月→2年を追加緩和と強弁するのは可能でしょうけれども)、大体からして今のペースをもっと上げるとかさすがにどうよという感じもしますわな。
ま、何はともあれ決定会合直前の3か月基金オペが札割れとかにならなくてよかったですねという事で。
○その他雑談
・決定会合プレビューのような雑談のような
まあ何ですな、妙に外野が追加緩和がどうのこうのとか言ってまして、今朝のモーサテの為替コメンテーターも「追加緩和や追加緩和を強く示唆する話が無いと失望」とか、おまえらこの前のバーナンキ議会証言もそうだけど、ロジックとか何も理解しないで勝手に自分たちで期待して盛り上がって失望するんじゃねえよヴォケとか思うのでございますが、これがまさに「クレクレは甘え」と申しますか、毎度申し上げておりますように、アラン・ブラインダー元FRB副議長の言う「市場の尾を追う犬」となる中央銀行という困った状態になっているという所ではあろうかと存じます。
まあ何ですな、プレビューもへったくれも無いのですが、いやまあ今回何か追加やったって別に良いのですけれども、金融政策の効果にタイムラグがあるのにそう毎月何かやれやれ言うとか頭おかしいんじゃネーノとか思いますけれども、まあ中の人を随分とさせていただいておりますあたくしが言うのも何ですが、市場というのはそういうもんでございまして、雰囲気で追い込んで行くとか得意技でございますのでまーこうなりますわな。
今回はとりあえず予想してもシャーナイので予想はしませんけど、債券市場などの金利市場以外がアホのように盛り上がっているのがどうもねえという感じで、それこそ今朝のモーサテの為替コメンテーター(というか電話で話していた人)が「海外投機筋はここへ来て日本の追加緩和期待で円売りポジションを拡大させているので追加金融緩和または先行きの緩和を強く示唆する話が無いと失望で巻き戻しもあるでしょう」(正確には覚えていないが大体そういう話をしていた)とかお前は誰の為を思って追加緩和期待のコメントをしているんだとか思うのでありますがねえ。マッタクモウ。
・どうでもいい話だが武者先生とか北浜先生とか
まあシカゴの先物(6月限は配当落ち分があるんですよね)を見ると今日はまたまたインデックスは1万円乗せスタートっぽいのでちょっと安心していますが・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE82805920120309
株価こうみる:壮大な上昇相場、年末1万3000円回復=武者氏
2012年 03月 9日 17:42 JST
まあこれは17:42ですが、金曜はQUICKでも大先生は同じコメントをしておられまして、そっちが出たのは14時過ぎという大変に絶妙なタイミングで、引けに掛けて以下省略。
ここへ来てついこの前まで慎重だった北ハマー先生も楽観しておられるようですので、大変にガクガクブルブルなのですが、
http://blog.livedoor.jp/orion3/archives/51893230.html
『しかし先週末の東証1部出来高は34億株に達し、目先買いのエルギーを大分吐き出しているため、用心するに越したことはなく、新規買いには慎重な上にも慎重でありたいものです。』(上記ボログURLより)
との事でもあります。つーか最近北ハマー先生はボログと顔本で微妙に両建てするようになっていて非常にお告げが解読しにくいというか、両建てするなら北ハマー先生の存在意義がアレなのですけれどもねえ・・・・・・・・・
などと雑談シリーズでございました。
2012/03/09
お題「不胎化QEですと??/その他色々と小ネタで」
ギリシャの債務交換の話はコロコロと話の流れが変わってワケワカンネ。
○不胎化したらQのEにならんじゃろ
昨日の朝出ていたのですがイマイチ何が何だか分からなかったので敢えてスルーしたニュース。引用先は毎度のブルームバーグですがニュースの出元はWSJのようで。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0J8CN6K50XW01.html
FRBが「不胎化」QE検討、新たな措置必要な場合−WSJ
『3月8日(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)の当局者は、景気てこ入れへ新たな措置が必要と数カ月先に判断される場合に備え、将来のインフレに対する懸念を抑える形で債券購入を行う新たな種類のプログラムを検討している。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が事情に詳しい関係者の話として伝えた。』(上記URL先記事より、以下同様)
事情に詳しい関係者の話キタコレという感じですが、何かこの手のネタが毎度WSJ経由でお漏らしとなるのって、どう見ても「先に市場の反応をみてみたい」という地均しにしか見えなくて、何ちゅうか非常にケシカランというか遺憾極まりないというか、こういうのやって何が政策の透明性だよアホか馬鹿かと残念感漂うのでございます。
#日銀の政策決定が事前に出る事を口を極めて罵っておられる皆様におかれましては当然FRBも口を極めて罵るんでしょうね!!!!
『同紙によると、この「不胎化」量的緩和(QE)では、FRBの長期債購入で供給された資金に対し、リバースレポを実施することで実質的に縛りをかける。QEが将来のインフレにつながるとの懸念を和らげることが目的という。』
そもそも長期債購入した資金を吸収して「量を増やさない」のであればそれはQEじゃないだろという事で、不胎化QEとはこらまたネーミングセンスとして最悪だろという感じで、あーた販売用資料でこんな書き方したら誤認勧誘と指摘されても不思議じゃなさそうなレベルじゃネーノと思いますけどねえ。
という話は兎も角として、何か意味があるのか無いのかワカランチ会長な案で、そもそもまあ本当の話なのか分からない中でああだこうだ言うのも何ですけど、ちょっと雑考してみた。
・すっかり「量的緩和」から金利コントロールにフレームが変化してますなあ
そもそも何でそんな話になるのかと言えば、ツイストオペやってる売りのタマが無くなって来る中で長期債購入をするのにこういうのをするのでしょうけれども、こうやって「量を増やさない」というのに拘るのに意味があるのかという感じであります。まあFRBの理屈によりますとFEDのバランスシートの構成を変化させることによって資産市場の価格形成に影響を与え、政策効果が働くという事になっていますので、バランスシート政策の一環っちゃあ一環なのですけど、別にブタ積みさせておけばいいじゃんと思うのですけどねえ。どうせFF金利目標は0〜25bpにしているんだし、じゃぶじゃぶに出している(実効レートで言えば米国オーバーナイトのレポ金利は0.1近辺で推移している筈)んですからここで引く意味がわかんね(つーかまあ判るけど)。
でもって、今回は長期債の購入を拡大して長期金利を下げることによって政策効果を出したいという話かと思いますが、まあ需給に手を突っ込むことによって景況感が改善した際の金利上昇はある程度抑えられるとは思いますけれども、そーは言っても物価上昇とかになった時に長期金利の上昇をそう簡単に抑え込む事ができるような市場規模ではない(昔のアコードだの長期金利抑制政策だのが効いたのはそもそも金融市場規模が全然違うから)と思うのですが、どうもバーナンキ議長におかれましては「中央銀行は長期金利をマニュピレート可能」と思っている節がありまして、そらまあ緩和継続モードのときは良いのですけれども、出口政策の時に中々おそロシアな事になりそうで誠に心配なところではございます。
まあ何ですな、この前のバーナンキ議会証言であたくし一番のけぞったのは「フォワードガイダンスで示す政策金利引き上げ時期が市場予想よりも先の期間になった場合には市場金利に影響を与えて効果を出す」云々という部分でございました(2014年遅く、というガイダンス文言がSEPの金利予想分布から見て不自然に設定された理由がFF金利先物を見て決まったと思いっきり言ってるようなもんですからねえ)が、QE2実施直前にNY連銀が「ところでおまいら国債買入幾らを予想してるんだ」というオモシロアンケートを実施したりというのもありましたように、どうも今回出てきている(本当なのかフカシなのか知りませんけど)謎のオペレーションに関しても何かどうも「市場の尾を追う犬(byブラインダー元FRB副議長)」とバーナンキ議長がなってしまい、その「市場の尾を追う」蟻地獄モードに入っているのではないかと思われて誠に遺憾な所です。
・短期金利は上がるかどうか良く判らん
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0JTAT6S974101.html
米FRBの不胎化QE、短期金利の上昇招く恐れ−RBC
『3月7日(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレを抑制しながら景気を刺激する新たなプログラムを検討中だと報じられたことについて、RBCキャピタル・マーケッツの米金利戦略責任者マイケル・クロハティ氏は、短期金利押し上げにつながると警告した。』(上記URLより、以下同様)
クロハティというお名前をクロマティーと空目するのは年寄りの証拠です(^^)。
『クロハティ氏はインタビューで、FRBが維持している低金利の恩恵の多くを相殺することになりかねないと分析。「この政策を実行すれば、かなり大きなゆがみが生じ、FRBが望まない幾つもの問題が発生するだろう。利益よりも害の方が大きいのではないか」と語った。同氏は7日の顧客向けリポートで、将来の資産購入を不胎化するこの動きについて、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標0−0.25%を上回る最大0.27%の水準までレポ金利を押し上げるとの見通しを示した。』
まあ米国短期金融市場の状況にそんなに土地勘が無いのでアレでございますが、現状では(先ほども申し上げたように)翌日物レポ金利が0.10%近辺(ちなみにブルームバーグのTickerコードRPGT01Dで見た数字なので参照するもの間違えていたらスイマセンです、ただまあ現在の市場状況からするといずれにせよ付利金利よりもレポや実効FFレートが低い筈です)ということで、市場の実効金利が準備預金および超過準備の付利金利よりも結構低いという状態になっておりまして、相当のジャブジャブ状態になっているものと思料されますので、少々の吸収をしても実効レートがいきなり跳ねるイメージは無いのですが、まあ物にも程度というのがありますので、そらまあジャンジャン長期債購入してその分引いたらどこかで短期金利が上昇するかもねと思います。
しかしまあ何ですな、吸収するのは良いのですが、どうやって吸収しますねんと思うのですよ。リバースレポでもターム預金ファシリティーでも道具自体はあるのですけれども、指値方式で実施したら25bpよりも上で指値しないと誰も応札しないでしょうし(準備預金対象外までリバースオペの対象を拡大するという事を米国はやっていたと思うので、準備預金対象外の投資家が幅広く応札という可能性はあるけど)、金利入札方式にしても準備預金対象機関からすると25bp以下での応札する意味ないですし、はてさてどうなるんだろと思いますけどね。
まあいずれにせよ、これやり過ぎると長短の資金供給のバランスが狂う、というか短期の資金吸収が変な影響を与えて実効FFレートなどに影響を与えそうなお話ではありますな、という風に思いますけど、何かそこまでして長期金利操縦したいのかねという感じです。もしかしたらバーナンキ議長が俊ちゃん化している事を踏まえると「とりあえず次にやった振り緩和をしないといけないからどうしましょ」という一環での目くらましなのかもしれませんけどね。
○まあ後で読む
ECB、BOEとも金利据え置き
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/024.aspx
News Release - Bank of England maintains Bank Rate at 0.5% and the size
of the Asset Purchase Programme at £325 billion
http://www.ecb.int/press/pr/date/2012/html/pr120308.en.html
8 March 2012 - Monetary policy decisions
『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the
interest rate on the main refinancing operations and the interest rates
on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged
at 1.00%, 1.75% and 0.25% respectively.』
は良いのですが、ECBのドラギ総裁の会見が少々アレだったようですな。
http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120308.en.html
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 8 March 2012
冒頭の第2パラグラフだけ引用(第1パラはただのご挨拶)。
『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep
the key ECB interest rates unchanged. The information that has become available
since the beginning of February has confirmed our previous assessment of
the outlook for economic activity. Available survey indicators confirm
signs of a stabilisation in the euro area economy. However, the economic
outlook is still subject to downside risks. Owing to rises in energy prices
and indirect taxes, inflation rates are now likely to stay above 2% in
2012, with upside risks prevailing. Nevertheless, we expect price developments
to remain in line with price stability over the policy-relevant horizon.
The underlying pace of monetary expansion remains subdued, consistent with
contained inflationary pressures over the medium term.』
>inflation rates are now likely to stay above 2% in 2012, with upside risks prevailing.
あらあらという感じでございますが、はてさてこれってどうなのよという所ではございます。ギリシャ危機当面の問題回避で早速ドラギ総裁の中の人がトリシェかティートマイヤーにでも変わりましたかねえという感じですけど、経済認識の全文とかQ&Aとか見ないと何とも言えないので判断保留して週末読む。
○各種雑談である
・もはや何をどうツッコんでよいのか判らない記事
反原発モードが嵩じて反電力企業モードとなってひきつけ起こしてるんじゃないかと思われるような新聞の記事から。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2012030802000038.html
東電1兆円支援 主要取引銀了承 2012年3月8日 朝刊
『メガバンクなど東京電力の主要取引銀行が、東電が要請していた総額一兆七百億円の金融支援を受け入れることが七日、固まった。ただ、融資の実行は、東電がまとめた電気料金の値上げや原子力発電所の再稼働が盛り込まれた資金計画案が実施され、収支が安定することを条件にした。銀行側は「資金計画をもとに了承した」と説明しているが、融資を回収するために値上げや再稼働を東電に求めたことになる。』(上記URLより)
・・・・・・・・・もはや何をどうツッコんで良いのか判らないのですが、銀行の融資の原資は別に銀行の手金じゃなくて預金者の皆様のお金なんですけど、そのお金を貸し出す時に回収の可能性が良く判らんというような先に突っ込んで良い訳ないと思うのですけど反電力会社が嵩じてお前は何を言ってるんだ状態になっておられますな。
まあ何ですな、こういう煽り報道やってるメディアがあちこちに存在するから冷静な議論が出来ない訳で、全く困ったもんだと思う所でございまする。
・とりあえずこの人は「裏を取る」という習慣を身に着けた方が良いと思います
昨日爆笑の発作を禁じ得なかったニュース。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE82704S20120308
緩和継続が大事、日銀の国債買い入れは積極性欠く=前原氏
2012年 03月 8日 16:39 JST
『[東京 8日 ロイター] 民主党の前原誠司政調会長は8日の定例記者会見で、日銀の金融政策について、2月の追加緩和は一定の評価をするが、やり続けることが大事だとの認識を強調。2月会合では資産買い入れ基金が増額されたものの、「国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない」と述べ、日銀の取り組みは不十分だとの見方を示した。』
>国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない
>国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない
>国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない
>国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない
>国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない
・・・・・・・・・えーっとですね、日銀のホームページでちょっと確認すれば、基金国債買入を10日に5000億円のペースで行っていて、12月末での残高目標達成に向けて着実に購入を行っていますし、この5000億円という額は(当たり前ですが)追加緩和実施前の購入ペースから見たら物凄いハイペースになっているのですけれども、何をどう見ると「国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない」となるのでしょうか????
そういや以前あたくし悪態つきましたが、2月28日のモーサテで為替市場の電話コメントをしてる人が「日銀は国債の買入枠を拡大したが購入ペースが拡大したわけではない(キリッ)」とか言ってたという事案がありましたが、もしかして前ナントカさんにおかれましてはモーサテのコメントを聞いたか又聞きしたかして、それをそのまま鵜呑みにしておられるのでございましょうかという位の盛大な事実誤認。
つーかですな、こんなの先ほども申し上げた通り、容易に入手できる公表資料で直ぐに裏が取れる話なのですが、どうもこの前ナントカさんは「情報の裏を取る」という習慣が無いようでございまして、偽メール事件の教訓を1ミリも生かしていないという反省とか成長とかをしないお方でありますことよと思う訳で、これでは亡くなられた永田さんも浮かばれませんわなあと存じます次第。
ま、かつてはあたくしもこの方に期待していた時期もありました事を深い反省と共にカミングアウトしておきたいと存じます。いやもう何なのこの学習効果の無い人はと思いますし、そもそも民主党(最近は民主党だけではなさそうだが)の皆様にはまともな知恵袋ついてないのかよと思う次第でございます。まあ政策新人類(笑)系の議員の皆様は自分の主張に都合の良い話は聞くけど不都合な真実は無視する的なアレなのがあって、それが嵩じるとこのようなアホウ丸出しになる、という感じのような気もしますけどね。
・一方でこれは凄い
これまたネットで話題になっていましたので既にご案内と存じますが。
http://yuasamakoto.blogspot.com/2012/03/blog-post_07.html
2012年3月7日水曜日
【お知らせ】内閣府参与辞任について(19:30改訂、確定版)
内閣府参与辞任のご報告
(19:30改訂、確定版)
2012年3月7日 湯浅 誠
でまあこちらの中身はかなーり長文なのですが、中々イイハナシダナー(皮肉ではなく真面目に)な事が延々と並んでおります。でまあマジで長いので昼休みにでもお読みになる事をお勧めしますが・・・・・
権丈先生は
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/
次の文章の「税と財政の規模について」を読んでおくように。
内閣府参与辞任のご報告(←実際のページはリンクになっています)
ということで権丈先生的読みポイントを示していまして、hamachan先生も湯浅さんの文書についてhamachan先生的読みポイントおよび解説をブログで行っていますので、まあ先にhamachan先生のブログを読んでちょという感じですな。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-3bac.html
湯浅誠氏がさらに深めた保守と中庸の感覚
まあ中身はあたくしがどうこう言うのも蛇足っぽいですけれども、単なる活動家としての立場から、内閣府参与として政策決定の一端に携わることによって見えて来たことに関して説明しているくだりは中々読ませてくれます。
で、それに対して「脱藩官僚」の皆様がああだこうだ言ってる政策提言とやらに、お前それフィージビリティーも利害調整も何も考えてないだろというような物が散見されるというのって何なんでしょうかねえとか思ってしまった昨日のひとときでございましたとさ。
2012/03/08
お題「金融規制改革に関する西村副総裁講演から」
ちと出遅れましたが良い講演(目先の金融政策とはあまり関係ないけど)なのでネタに(^^)。
○西村副総裁講演:金融規制改革の論点
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/ko120306a.htm/
ユーロ圏危機から何を学ぶべきか?−規制改革の視点を踏まえて−
在米外国銀行協会年次コンファランスにおけるスピーチの抄訳
日本銀行副総裁 西村 清彦
2012年3月5日
ということで、本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120306a1.pdf(日本語訳)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko120306a1.pdf(本チャンの講演は英語)
・規制の枠組みとかいう話ですが何気に盛大な米国disの展開に
『本日の講演では、金融の安定と経済の活動にとって適切な規制の枠組みを如何に構築し実施していくのか?という観点で、現下のユーロ圏危機を検証したいと思います。具体的には2つのポイントがあります。』
ということで。
『1つ目のポイントは、統合の度合いを高めている金融の世界においては、規制の変更が、時として、意図せざる大きな影響を海外に与えることがあるという点です。ある国の規制緩和によって、自国の金融機関のみならず、海外の金融機関までもが過度なリスクテイクを行うかもしれませんし、その影響は、自国金融機関以上に外国金融機関において大きなものとなることもあります。』
米国の金融規制やら規制緩和やらの影響の話キタコレ。
『2つ目のポイントは、規制の有効性が、導入時点における経済情勢に本質的に依存しているということです。このため、(別の時期では)「正しい」政策が「間違った」時期に実施されてしまう可能性は無視できません。同様に、政策の「正しい」順序についても、経済情勢に依存しています。』
これはまたイイハナシダナーですな。
『次の第2節では、まず、投資銀行に対するレバレッジ規制の緩和を中心とした米国の規制変更が、欧州系金融機関の行動に与えた影響について説明したいと思います。規制当局がこうした影響が出ることを意図していたということでは決してないでしょう。これは、規制が国境を越えて意図せざる影響を与えるという古典的な例なのです。また、規制変更のタイミングが望ましいものではなかったことも紹介したいと思います。すなわち、規制緩和は、欧州と米国の金融機関が、利回りを追求し、リスクを取り始めた――後に過度なリスクテイクであったことが判明するのですが――まさにその時期に行われたのです。』
ほうほう。
『第3節では、現下のユーロ圏危機から何を学ぶべきかを検討し、それを踏まえたうえで、現在の規制改革に関する諸論点を分析したいと思います。まず、速やかに“平時”に戻るだろうという希望的観測には浸るべきではないことを指摘したいと思います。』
>速やかに“平時”に戻るだろうという希望的観測には浸るべきではない
>速やかに“平時”に戻るだろうという希望的観測には浸るべきではない
>速やかに“平時”に戻るだろうという希望的観測には浸るべきではない
ほー。
『すなわち、先進国においては、高齢化という困難な環境下で、長く厳しいバランスシート調整に直面する可能性が高いのです。この点に注意しますと、銀行が――レバレッジを拡大する過程ではなく――デレバレッジングする過程においては、適切な順序で規制改革を行うことが必要であるということも指摘いたします。』
キタコレ。
『そして最後に、ドッド=フランク法によって導入される「ボルカー・ルール」が海外に与える問題についても触れたいと思います。これは、規制が国境を越えて意図せざる影響を与えるもう一つの例です。ここで、意図せざる甚大な副作用を一部の国にもたらすことを回避するためには、適切な形で規制が実施されることがポイントとなるのです。』
ということで、この流れはどう見ても「米国規制当局の何も考えてない規制いじりで世界が迷惑しとんじゃヴォケ」という話をしておられるということですね、わかります(^^)。
・ユーロ危機について、2004年というポイント
その背景という話がああだこうだとあるのですが、そのうちから一部引用。
『リーマン危機の数年前、とりわけ2004年以降、欧州系金融機関は、利回り追求の動きを加速させ、バランスシートを拡大させました。図表1は、ドイツ、フランス、イタリア、スペインの資産規模を2004年水準を100として描いたものです。ドイツ以外の欧州系金融機関の資産規模が顕著に拡大していることが分かります。』
図表は上記URLを見てちょ。
『ここで、ユーロという壮大な実験が極めて重要な役割を果たしました。EU の金融サービス関連指令の下、金融市場および金融ビジネス全般で単一の市場が形成されました。国債の利回りは顕著に収斂しており――今から振り返れば持続不可能であったということなのですが――金融市場におけるリスク・プレミアムが低下しました(図表2)。さらに、伝統的に間接金融が支配的であった欧州において資本市場が発達する中で、課題も生じていました。ファンド・ビジネスも欧州において拡大しており、資産運用ファンドの純資産は2004年頃を境に大きく拡大しています(図表3)。』
なるほど。
『欧州系金融機関は、自国を含むユーロ圏域内向けのみならず、域外向けの債権も増加させました。たとえば、スペインはラテンアメリカ向け、フランスは米国向けの債権が増大しています。BIS(国際決済銀行)が集計する国際与信統計によれば、欧州系金融機関は、伝統的にクロスボーダー与信分野でのプレゼンスが大きいのですが、特に2004年以降、規模・シェアの両面で拡大を続けました(図表4)。ユーロ圏域外の資産規模を国別にみると、スペインとフランスが顕著に増加しており(図表5)、ドイツでさえも目立って増加していることが分かります。』
ということで2004年とは何ぞやという話なのですが・・・・・・
『欧州系金融機関のリスクテイク行動の歴史を振り返ると、その全てが2004年頃に加速していることは注目に値します。しかし、ユーロ圏においては、こうしたリスクテイク行動の加速を十分に説明するような出来事や規制変更は見当たりません。では、2004年に何があったのでしょうか?』
『実は、2004年は、米国の金融市場の転換点でもあります。2004年以降、米国投資銀行のバランスシートが急拡大しているのです(図表6)。同様に、SPV(special
purpose vehicles)―― “親”会社である商業銀行のバランスシートにはのりませんが、事実上のサポートがあるとみなされます――の資産規模は、投資銀行以上に急激に拡大しました。SPV
は、後で述べるような良好な資金調達環境の下で、証券化商品への投資を含め資産を膨らませていったのです。こうしたSPV
の規模拡大は、投資銀行の「積極行動主義」と相まって、いわゆるシャドーバンキングの規模を飛躍的に拡大させました。』
ほっほー。
『こうしたリスクテイク活動の顕著な拡大の一因として、当時の「大いなる安定(Great
Moderation)」という一見良好な金融環境があると説明されていました。新興国からの巨額の資金流入によって、当時、米国の金利は低下していました。中国は、2001年にWTO
に加盟した後、経常収支の黒字が拡大し、米国の経常収支赤字をファイナンスする上で、重要な役割を果たしました。中国からの証券投資の多くは、米国の国債やエージェンシー債に向かい(図表7)、米国市場の金利とボラティリティの低下に寄与したのです(図表8)。2004年以降のボラティリティの持続的な低下は著しいものであり、リスクが低減したとの認識を醸成するのに一役買った可能性が高いのですが、これが、後に過大であったことが判明するようなリスクテイクを助長したと考えられます。』
図表が多くてそっちも面白いので講演の本文読むのお勧めです。で、ここの部分だけ見ているといわゆるグレートモデレーションがバブルを生んだというような話に聞こえますが西村副総裁はさにあらずという話を続けるのでありました。
『しかし、いわゆる「貯蓄の過剰供給」の議論では、ちょうど2004年にリスクテイクが加速した理由を説明することはできません。貯蓄は2004年よりもかなり前から過剰に供給されていたからです。では、2004年には何が起こったのでしょうか?この問いに対する答えは、米国における2004年の規制変更でしょう。』
ということで、規制変更が影響を与えますという話ですが、まあ確かに金融市場の労務者であります所のあたくしと致しましては確かに色々な部分での価格形成で規制とか会計ルールとかが物凄い勢いで影響を与えるというのは良く判ります。
つまり「緩和的な金融政策の長期化」はそれ単体でバブルのような事象を起こす訳では無く、その他の金融などを巡る規制や制度設計によって起こされるというような話をしているとも言えそうですが、まあその辺りあたくしも腑に落ちる所ではございます。
『2004年に、米国投資銀行に対するネット・キャピタル・ルールが緩和されました(いわゆるベア・スターンズ特例)。具体的には、資本額50億ドル以上の投資銀行は、標準的なネット・キャピタル・ルールの適用除外を受けることによって、レバレッジを高められるようになりました。この規制緩和は、2000年代初頭に経営環境が悪化する中で、レバレッジの拡大によって収益性を高めようとしていた金融界からの要請に応えたものという面もありました。また、金融機関のリスク管理の精緻化――当時はこうみられていました――も規制緩和の理由として挙げられていました。』
『さらに、2004年には、ファニーメイとフレディーマックに関する規制変更によって、それらが保有する米国住宅ローン債権が減少し、民間RMBSという巨大な収益機会が生まれました。そして、多くの商業銀行がこの機会を捉えてSPVを組成しました。2004年以降に金融経済環境が大幅に改善する中で、これら2つの規制変更によって、今から振り返れば過剰なリスクテイクが助長されたのです(前掲図表6)。』
という事で、背景説明部分(の後半になります、前半はユーロ圏という通貨統合に関する説明ですが引用割愛しました)の規制に関する部分が面白かったので引用しておきましたです、はい。
『欧州の金融機関が自国での収益機会が減少する中で、米国市場における一見収益性が高そうな新たな投資機会を活用しようとしたために、欧州から米国への証券投資が拡大しました。なお、欧州系投資家と中国系投資家では明確な違いが存在しています。すわなち、中国系が米国債を中心とする安全資産に投資をした一方、欧州系はクレジット商品への投資を行ったのです(図表9)。』
ふーん。
『欧州系によるこうしたリスク資産への投資が、多少なりとも米国信用バブルの発生の要因となったとの主張が散見されますが、これなどは、まさに、2004年の規制変更が一因となって大量に組成された証券化商品を、欧州系金融機関が購入したという意味で、規制が意図せざる結果をもたらしたのだといえるでしょう。』
『欧州系金融機関は、米国市場における過度のリスクテイクによって、経済ショックに対して3つの脆弱性を抱えることになりました。』
『第一の脆弱性は、レガシーアセットに対するエクスポージャが大きいことです。欧州系金融機関は、サブプライムローン関連のような質の悪い資産のかなりの部分を保有していましたし、現在でもなお、レガシーアセットの処理に苦戦しています。』
『二つ目は、ドル資金の多くを市場調達に依存していることです。欧州系金融機関は、日米と比べて貸出/預金比率が高いという特徴を持っていました。このため、バランスシートを拡大していく過程で、市場調達資金への依存度が高まっていきました。例えば、フランス系金融機関の資金調達構造を見てみますと、居住者預金以外による調達が占める割合が2004年以降上昇しています(図表10)。これが、米国MMFのような機関投資家がユーロ圏のリスクへの懸念を高める中で、深刻な問題をもたらしました。』
『三つ目の脆弱性は、ソブリンリスクです。ユーロ圏には、一つの通貨圏に多数のソブリン(主権国家)が存在します。全てのソブリンに対して同じリスクウェイトを適用することは徐々に難しくなってきています。なお、第一の脆弱性は、米国や他の国にも共通ですが、第二と第三の脆弱性はユーロ圏に固有のものであることには注意が必要でしょう。』
というところでございまする。
・早急な規制強化は良くないという話
で、その後は「今回の危機の教訓について」というようなお話になりますが、早急な規制強化イクナイ!って話をしているのですな。
『次に、現下のユーロ圏危機から我々は何を学ぶべきか、金融規制の観点から考察するとともに、現在の規制改革を巡る論点について考えてみたいと思います。』
キタコレ。
『2008年のリーマン危機後の世界的な金融規制改革の主眼は、言うまでもなく危機の「再発防止」にありました。実際に、いくつかの先進国は、米国のドッド=フランク法にみられるように、金融機関の過剰なリスクテイクを防止することを狙った、新たな規制の枠組みを導入しようとしています。』
さいですな。
『先程も述べたとおり、2004年以降の米国金融市場の状況は、緩い規制がいかに問題を引き起こし、苦い結果を招いたかを示しました。この点において私としても、このような昨今の規制改革の根拠となる考え方は十分に理解するものです。その一方で、規制改革を巡る国際的な議論は、時に、「新しい規制の枠組みは、短い危機の時期を経た後速やかに訪れるはずの『平時』の中で導入できるだろう」といった、迅速な平時への復帰を前提とした希望的な観測に基づいていた部分もあったように思えます。』
>迅速な平時への復帰を前提とした希望的な観測
>迅速な平時への復帰を前提とした希望的な観測
>迅速な平時への復帰を前提とした希望的な観測
・・・・・・・・(^^)。
『90年代の金融危機の後、問題の長期化を経験した日本銀行は、事あるごとにこのような楽観的な見方に警鐘を発してきました。すなわち、金融危機に由来する下方圧力は持続する恐れがあり、危機後に観察される回復の兆しは「偽りの夜明け」かもしれないと述べてきました。』
ちなみにこちらの部分はテキスト原文はこうなっています。単に「false dawn」を引用したいからだけなのですが(^^)。
『The Bank warned that downward pressure stemming from financial crises
is likely to be persistent, and any signs of recovery observed shortly
after the crisis could be a “false dawn.”』
『我々はまた、とりわけ危機の影響が残っている間、銀行部門のデレバレッジングとバランスシート調整のリスクに最大限の注意を払うべきであるとも強調してきました。実際、日本の金融危機後、我々が直面してきた政策課題は、銀行によるレバレッジングや過剰なリスクテイクではなく、むしろデレバレッジングや信用仲介の機能不全でした。』
『加えて、我々はこの課題に、「金利ゼロ制約」や財政収支の悪化など、マクロ政策が大きな制約を抱えるもとで取り組まなければなりませんでした。残念なことに、リーマン危機後の世界経済の動向は、概ね我々が懸念していた経路を辿っているように思えます。さらに、多くの先進国において、このような金融面に由来する調整圧力が、人口動態に由来する構造的な調整圧力に重なる形となっていることを指摘しておきたいと思います。』
ということで、まあ日銀としてはバランスシート調整の影響が長引くという認識を強く持っている、というか他の中銀が楽観的になるのも如何な物かという話をしているようにも見えますな、うんうん。
で、途中をすっ飛ばして現状認識の結論部分ですが。
『結果的には、新たな金融規制の枠組みの殆どが、期待されたような「危機後の平時」ではなく、ストレスのかかった状況で導入されようとしていることを認識する必要があります。』
ということで、現在の金融規制改革のやり過ぎを懸念する話に繋がります。
・こういう時は「手順」が重要であるという論点
いや全く仰る通りですという話が更に続く。
『このような現在の困難な経済・金融環境の下では、「最善の危機防止策は、必ずしも最善の危機対応策とは限らない」ということを念頭に置く必要があります。』
>「最善の危機防止策は、必ずしも最善の危機対応策とは限らない」
>「最善の危機防止策は、必ずしも最善の危機対応策とは限らない」
>「最善の危機防止策は、必ずしも最善の危機対応策とは限らない」
ちなみに英文ではここ『Finding ourselves in such a difficult economic and
financial environment, we should bear in mind that the best “prevention”
may not be the best “response” to a crisis.』となっていまふ。
『公的資本注入や無制限の預金保険がモラルハザードを生じさせ得ることは勿論ですが、これらの方策が目前の危機を封じ込めるために必要な場合もあります。同様に、自己資本の増強は中期的に銀行のソルベンシー確保に寄与するものですが、ストレス下での資本負担の増加は、資本制約、銀行貸出の減少、景気後退という負のフィードバックを通じ、深刻なクレジットクランチに繋がるデレバレッジングが急速に進むリスクもあります。』
で、手順が重要という論点。
『金融安定のために「どのような」政策手段があり得るかを考えることは、知的に刺激的な作業です。しかし、実務の観点からより重要なのは、それぞれの政策手段を「いつ」使うかです。いかに個々の政策手段が平時において有効であっても、これら政策手段の実施の順番を間違えれば、むしろストレス下での負のフィードバックのリスクが高まってしまいます。特に目前の「危機対応」がなお強く求められる局面で「危機予防」のための策を導入するような状況では、政策のアナウンスメントの順序を誤ることによるミスコミュニケーションにも、十分注意しなければなりません。』
全く同意であります。
『現下のユーロ圏危機を踏まえれば、自己資本規制の強化を見据えた欧州の銀行が、新たな規制環境に対しどのような行動をとっていくのかを慎重にみていく必要があります。もちろん、先程述べたような、危機に先立つ欧州の銀行のレバレッジングを踏まえれば、秩序立った緩やかなデレバレッジングであれば、これは規制強化の「意図した影響」と捉えられるべきものと言えます。もっとも、ユーロ圏危機の世界経済への影響を判断する上で、欧州の各銀行が、各母国内でのさまざまなプレッシャーのもとで、海外でのデレバレッジングを強めるのか、それはどの程度か、を評価することが必要となります。こうしたアセスメントは、まさに「マクロ・プルーデンス」に要請されるものでもあります。』
ほうマクロプルーデンスとな。
・いわゆるボルカールールに関して
『このように、我々はなお脆弱な経済・金融環境の下で新たな規制を導入するという課題に取り組んでいます。こうした課題の困難さを示す身近な典型例として、ドッド=フランク法の規定する、いわゆる「ボルカー・ルール」についても、若干申し述べたいと思います。』
キターーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーー!
『最初にはっきり申し上げたいのは、ボルカー・ルールの背景にある基本的な考え方については、私も大いに賛同しているということです。既に申し述べた通り、近年の金融危機の大きな背景の一つは、いわゆる「originate-to-distribute」型のビジネスモデルに基づく一部金融機関の投機的行動でした。このような認識を踏まえ、ドッド=フランク法は、金融界に対し、自らのビジネスモデルを真剣に検証し、必要であれば修正することを求めるものといえます。』
『同時に、ユーロ圏危機が続く下では、各国の政策当局者は新たなルールを導入する際、これがもたらし得る「意図せざる影響」については、特に現在の局面において海外ソブリン債市場に及ぼす影響という側面からも、十分に注意することが求められます。加えて、中央銀行にとって、ソブリン債市場は金融政策の主要なトランスミッション・メカニズムの中核であり、その流動性の問題には留意することが求められます。』
イイハナシダナー(;∀;)
『ボルカー・ルールは、銀行による、短期の利得獲得を狙った自己勘定でのトレーディングを制限することを狙いとしています。しかしながら、どのように関連規則が書かれ、どのように運用されるかによって、このルールは、マーケットメイク活動や市場流動性に重大な影響を及ぼし得ます。現時点での規制案によれば、米国債および多くの米国エージェンシー債はこのルールの適用から除外されています。このことは、明らかに米国当局が、これらの債券の円滑な取引の確保、およびそのためのマーケットメイク活動の重要性を、十分認識しておられることを示しているように思います。』
『市場の流動性は、言うまでもなく、米国債以外の国債にとっても重要です。しかしながら、現状の規制案は、日本やカナダ、欧州諸国などの国債は適用除外としていません。したがって、仮にボルカー・ルールが字句通り厳格に施行されれば、海外ソブリン債市場の流動性を損なう可能性もあると考えられます。』
つまりボルカールールは金融モンロー主義みたいな規制で逝って良しということですねわかります。
『もう一つの問題として、短期の為替スワップが、現状の規制案ではボルカー・ルールの適用対象となり得ることも挙げられます。このことは、為替スワップを通じた金融機関の外貨流動性調達が、より困難となるリスクを孕んでいます。このことも、とりわけ外貨流動性の調達環境が世界的にタイト化している状況では、多くの金融機関にとっての関心事となり得ます。』
さいですな。
『規制案は、マーケットメイク活動やその他の重要な金融活動について、いくつかの適用除外規定を設けることで対応を試みているように思います。しかしながら、これらの適用除外規定は、厳格かつ複雑な条件のもとで適用され、また、しばしば解釈の余地を残すものとなっているように思えます。この結果、市場参加者の一部は、ボルカー・ルールがどのようにソブリン債市場や資金調達環境に影響を及ぼすのかについて、不確実性を払拭しきれていないように伺われます。』
と、結構いい感じでdisっておりますのうという所です。簡単に済ませるつもりでしたが、意外に引用大会になってしまいまして誠に恐縮至極でありますが、図表も面白いので講演テキストを是非ご覧くださいませm(__)m
#ロックハート総裁講演ネタがまた先送りになってしまいましたorzorzorz
2012/03/07
お題「資産等買入基金オペの調節技術的な件に関する各種雑談」
昨日予告したネタがあるわ、西村副総裁の講演はあるわで、盛りだくさんの予定だったのですが、基金オペに関する雑談をああでもないこうでもないと書いていたらダラダラと分量は増えるわ時間は無くなるわとなりまして誠に申し訳ございません。
つーか以下マニア向け雑談ですので、その辺お含み置き下さい。マニアすぎて内容が????の場合は近くの席にいる短期デスクの人間に聞いてちょ。
○基金3か月固定金利オペにも早くも限界ががががが(と関連雑談)
昨日駄文で申し上げましたが、基金オペの3か月物の方が札割れ寸前ですなあとか言ってたら早速にも昨日の基金3か月オペがこの有様。
昨日のオペオファー(のうち基金オペ部分だけ引用)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120306.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年3月8日 2012年6月8日
んでもってその結果(のうち基金オペ部分だけ)。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120306.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(3月8日スタート分) 8,200 8,200
・・・・・・・全取はいいとして8000億円のオファーに対して8200億円も落札させるとかこらまたどうしたんですか(別に按分でも良いじゃんとか思う訳よ)とか思って、残高稼ぎに涙ぐましい努力でもしているのかなあでも3か月後にロールになるから今頑張ってもシャーナイナイなんだけどなあとか思って「?????」感溢れていた昨日のあたくし。
ところがですな、これはまた不覚にもあたくしその存在をすっかり見事に失念しておりまして、人から教えて貰った(教えてくれたネタ元様の許諾済^^)のですが、オペの按分だの全取だのに関する基準が1998年の6月に出ていたのですな。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_1998/mok9806a.htm/
マーケット・オペレーションにかかる透明性の向上について
1998年 6月12日
日本銀行
この時ってその直前のレポオペ導入の際に、従来の日銀のオペ対応実績とかからすると何か微妙ですなという先が多く採用されて一部で物議を醸した(レポ取引に関する取組を重視したので、当時の資金構造からレポ必要なかったのであまりやって無かったという所が外されたというのが実態なのですが、従来のオペ先分布からするとちょっと顔ぶれが違っていたとかまあそんな感じでしたな)件を引っ張っていたとか、まあ透明性向上というか裁量行政的な物を減らしましょう的な流れが当時あって、その中でこういうのが出たと記憶しているが、何せ14年も前の話なので記憶違いだったらスイマセン。
まあそんな背景は兎も角として、こちらの(別添1)にあります『オペレーション結果の開示について』に今回の謎の8200億円全取の理由が書いてありまして、単に通常のルール通りに実行しただけという話でした。正直マニア以外にとってはどうでも良い話ですが(ってお前の話はいつもそうだというツッコミはしないように^^)、マニアのみ向けにオモロイので引用。
『2.落札総額の決定方法の公表
○ 各オペの落札総額は、原則として以下の方法により決定します。
(1) 特定の応札レートにおける応札累計額がオファー額の上下200億円以内に含まれる場合は、当該レートにおける応札累計額の全額を落札(全取り)します。但し、a)オファー額の上下200億円以内に複数の応札レートが存在する場合は、オファー額に対してより近接した応札レートにおける応札累計額の全額を落札(全取り)するほか、b)オファー額の上下200億円以内においてオファー額を挟んだ等距離に2つの応札レートが存在する場合は、オペの応札者が不利を被ることがないよう、オファー額よりも大きい応札累計額の全額を落札(全取り)します。
(2) 特定の応札レートにおける応札累計額がオファー額に対して200億円超となる場合は、当該レートにおける応札額を按分して落札総額を決定します。
― 但し、CPオペについては、券面構成の制約が存在するため、通常の方法で按分額を算出した後、その範囲内で、入札時に連絡を受けた券面で構成可能な10億円単位の最大額を当該レートでの落札額とします(この場合、公表する按分比率は券面構成を勘案する前の比率とします)。
(3) 応札総額がオファー額に対して200億円を上回る未達を来した場合は、原則として応札総額総てを落札(全取り)します。
○ なお、このようにして決定された全取りレートまたは按分レートが、その他の応札レートや市場実勢レートから著しく乖離している場合、日本銀行は上記(1)〜(3)の原則に対する極く例外的な対応として、これを排除すべく落札総額を調整することがあります。但し、その場合、日本銀行は排除した応札レートを併せて公表します。』
いやあこんなの有りましたっけ位の話で、見つけてきたマニアの方におかれましては、そのマニア振りに頭が下がりますが、なるほどこちらにある通りの扱いですわなあという所です。
つまり、今回の8200億円全取攻撃というのは、上記の(1)の事例に該当しまして、かつこのオペはそもそもレートが指値なので、応札レートという概念が存在しませんから、そのまま「当該レートにおける応札累計額の全額を落札します」という事になったという訳で、別に足元で固定金利オペの6カ月物が連続札割れ劇場となり、固定金利のオペ残高を維持しようと涙ぐましい努力をしている訳ではありませんでした、というオチでした(^^)。
しかしまあ何ですな、ルール通りに淡々とやっただけなのですが、今回の200億円ルール(とでも言うのか??)にぴったり嵌る事案が発生するタイミングがちょうど春のオペ札割れ祭りが始まろうかという所であって、結果を最初に見た市場(のごく一部の)関係者の皆様におきましては「残高維持に必死だなwwwww」とか第一感で印象を受けてしまうような結果になる、というまあ普通にやっているだけなのになぜか芸のようになってしまうという毎度おなじみの「間の悪さ」って所に日銀の非常に残念というかオモシロというか皮肉というか、まあそういう芸風が表れておりまして実に香ばしいものを感じます(^^)。
なお、どうでも良いのですが、上記説明文の中で(1)の後半部分がどういうシチュエーションを想定していたのかが今となっては良くワカランチ会長ですが、当時を知っている人(いやまああたくしも知っているのですが、汗)誰か覚えていたら後学の為に教えて下さいお願いしますお願いしますm(__)m
○調節技術上のネックがこんなに早く来るとは・・・・・・・
まあそんなマニアネタは兎も角として、問題となるのは小見出しの方でございます。
まあ先日来の流れからしてまあ3か月固定オペの札割れも近くなっていますかねというようなイメージはあった訳ですが、正直申し上げてこんなに早い時期に固定金利オペの札割れ(まだ3か月は割れてませんが)モードになってくるとは思ってませんでして、21日の国債償還の後、しばらくしてから(というのは、国債償還で金が入ってくるのは債券ディーラーではなくて投資家なので、そこの金がレポ市場や短国市場や債券市場に回ってくるまでに一定のタイムラグがあって、その間は「当座預金残高は高水準だけどレポ市場での資金繰りはタイト」という状態になるから)徐々に固定オペのニーズが落ちてきて、まあ4月か5月にアチャー状態になるんでしょとか思っていたのであります。
しかし足元で当座預金残高水準がそれほど高くない時期なのに6か月は兎も角として、3か月物の固定オペまで札割れしそうな勢いになるというのはかなーり早いなという印象でして、基金オペの今の枠組み上で65兆円を積み上げるという事に関して、調節技術上の問題に早くもぶち当たる(そもそもどこかで問題が出るだろうなという認識は短期市場の人なら普通は持っているのですがその時期が異常に前倒しになっているなあという事ですな)の図と(何せ1か月経っていない)なっておりまして、はてさて今の枠組みではオペ残高を宣言通りに積み上げるのが難しいという中、65兆円の公約達成に向けてどうするんでしょうねという所で、誠にムツカシヤな状態になっているかと思われます。
固定金利オペの場合、大体按分がこのくらいになるでしょうというような予想の元でオペに応札するという関係上、按分率が高まる(応札が減る)となってくると、「期せずして余計に落札するのを避ける」という行動をオペ参加者が全員で行う事になりますので、ある時点を閾値として急速に応札が減ってくるという傾向になります。で、全取札割れ恒常化となると当然ながら必要最低限しか応札してこないので恒常化が長引く(その間に資金需給が変化すれば変わるけど、どう見ても買入を拡大する中で資金需給は緩むことはあってもタイトにはならない)という結果に。
大体からしてですな、3か月固定だけで24本だか25本だかの8000億円のオペが回っている訳でして、たとえば業者がファンディングのベース部分で3か月の固定を使うとしても、ベースで要る金が例えば5000億円としても1回に200億も入れれば十分という話(期日を分散しておかないと担保繰りで死ぬから期日分散は必須)ですし、まあ大手さんでもそのベース部分精々1兆あるかないかでしょとか考えると、じゃあ他に銀行さんがどのくらいニーズあるんですかと言うと、3か月なり6か月から先のイールドカーブがモロ潰れしている中で運用サイド的な発想でこの「固定金利0.10%でのファンディング」に経済的なメリットがあまりある訳でもないっつー所ですな。
これつまり昨日もちょっと書きましたが、資金供給オペ(買入含む)の長短のバランスがおかしくなってしまっているという事の表れなのですが、とはいえ包括緩和や基金買入の政策目的からすると、この長短のバランスを直して短いオペを増やして固定オペを廃止するという訳にも行きません(長めの金利に働きかけるという政策目的の逆だから)ですし、まあ現状がそもそも政策目的をある程度達成した結果として生じている歪みのようなもんですから、まあシャーナイナイな所でもございます。
今は固定金利オペの札割れで済んでいますが、この調子で進んで行くとそのうち国債やら短国の玉の吸い上げによって基金買入オペも札割れするんじゃネーノという大変にアレな事になってくる恐れありとか思うのでございます。つーかまあ前からその話はありましたが、足元の(追記:編集時に消し漏れた部分です)
つーことで、65兆円というのがフィージブルでは無かったですねという風に言ってしまえばそれでおしマイケルという訳にも参りませんので、65兆円をぶち上げた手前どうにかしないととあたくしも無い知恵を絞って人と雑談(知恵を絞ってとか申してますが、まあ雑談という所に外野の無責任ぶりが出ていて誠に恐縮ではございますが^^)すると色々とネタが。
まず最初に思いつくのは「資産買入のレートのフロア撤廃」ですが、まあ0.09%で買入を実施してその金を日銀当座預金で0.10%で付利というのも何ですな(ただし付利は超過準備部分につき、法定準備部分にはつかない)という話ですが、じゃあと言って当座預金付利金利を下げると、単にレート水準がパラレルシフトして同じ事が起きるだけな上に、ここまで積み上げてきた固定金利オペで供給を受けていた分が大損になってしまうのでこれはこれでどうかという感じ。
で、「固定金利オペの短縮化」が本当は一番フィージブルな気がするのですが、それは先ほど申し上げた理由からやりにくく、もしやるならLTRO方式にして「6か月物でフルアロットメント実施、途中1か月ごとに期限前返済を容認」とかして、期間は6か月だけど実際は1か月物としても使えるというような事をするとお互いウマーかなあとか思ったのですが、この問題点は固定金利オペの残高積み上げに対して不確実性が生じるので、残高目標を設定しているのに能動的なコントロールが出来ないというのはちと困る。つーかそもそも札が集まるのかどうかも怪しいけど。
となってきますと、やっぱり買入銘柄の対象拡大で、現在は1〜2年としているものの拡大となりますと、そらまあ短い方に拡大するのは先ほどと同様に変なので長い方向になりますわなあというような想像が起きやすいですねえという所ではございますが、はてさてどうなる事やら・・・・・・・・・・・
まあ他に何かやり方ないかなとか考えるのもマニア向けの思考実験としてはオモシロスではあります(ただし思考実験の中で必ずフィージビリティーを考慮に入れるのがマニアの矜持(?)です^^)ので、まあ妄想してみますがな。
#などとマニア雑談をしてたら量と時間がががががが。しょうもない雑談にお付き合い頂きまして誠にありがとうございましたm(__)m
2012/03/06
お題「ニュース雑談とかオペ雑談とかアトランタ連銀総裁講演予告編とか」
何か最近雑談に悪態成分が多いような気がするのは気のせいです。
○オペ雑談である
昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120305.htm
落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120305.htm
で、そのうち3か月固定の基金オペの結果はこの通り。
共通担保資金供給(資産買入等基金)(3月7日スタート分) 8,910 8,004 89.8
応札8910億円キターという事で、これはまた応札が低調にも程がある状態。
えーっとですね、先般来6カ月の固定金利オペの方も新規分だけでなく既存のロールオーバー分も札割れ連発となっておりましたが、ついに3か月固定オペについても(今の3か月物は全てロールオーバー)札割れ寸前まで追い込まれるという大変に素敵な状態になって参りました。
で、これは以前より指摘しておりますが、基金固定金利オペに関しても残高には目標というかコミットメントをしているのが資産買入等基金の建付けとなっておりまして、この辺のオペが未達が続くとなりますとこれはテラヤバスな話。
何せ今回の資産買入等基金に関してはこの基金の額を今年の末までに幾らにします(キリッ)って宣言しておっぱじめた手前、オペ札割れが連発して固定金利オペの残高維持ができなくなるというのはコミットメント違反になります罠。
まあ「金利を下げるという目的は達成できているので無問題」というような屁理屈を繰り出してくる可能性はあるのですが、たぶんあれだけ「買入量」の宣伝をしてしまってますし、大体からして金融緩和の「積極性」をアピールした結果として(今のところは)各市場がやっと望ましい反応を示している訳であって、ここで「やっぱりこの前言った残高は無理でした(テヘッ)」とか言ってしまうとその前に折角麿が珍しくも吹っ切れてやる気元気井脇になった成果が一朝にして台無しになるという大変に素敵な事になってしまい兼ねませんわなあと思うので、さすがに残高必達に向けて何らかの努力をしないといけませんねえという事になろうかと思います。
つーか、その辺って日銀のご近所さんである短期金融市場では「金利を下げるという目的は達成できているので無問題」という理屈は通るかもしれませんけれども、おそらく為替市場や株式市場からは激怒激怒大激怒な反応を示すと思われますので、折角始めた積極的な緩和姿勢とやらは継続して頂かないといけませんわなという話でありまする。
しかしまあ何ですな、これはこの前ちょっと書きましたが、先週水曜日に初の期末越えオペを実施した時に・・・・・
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120229.htm
共通担保資金供給(本店)<金利入札方式> 10,000 2012年3月2日 2012年3月23日
共通担保資金供給(全店)<金利入札方式> 10,000 2012年3月2日 2012年4月4日
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120229.htm
共通担保資金供給(本店)<金利入札方式>(3月2日スタート分) 22,610 10,006 0.100 0.100 44.3
共通担保資金供給(全店)<金利入札方式>(3月2日スタート分) 7,710 7,710 0.100 0.100
期末越えの資金供給の初回だというのに期末越えの資金供給は札割れとなり、期内の資金供給は応札2倍という珍現象にも程がある状態でして、まあ単純に言ってしまえば「各種長期オペのやり過ぎで短期市場における資金供給オペのバランスが狂った」という話ではございまして、現在も足元のGCは0.105近辺から中々緩まない(さすがに月末近辺に短いオペが連発で打たれたのでGCはちったあ軽くなったみたいですが)中で3か月のオペは札割れとなるとか、明らかに資金供給(買入も含む)のバランスが長い資金に寄り過ぎてバランスを崩しているという感じ。
つまりまあフィージビリティーの問題にぶち当たり中という事でして、まあ実務的に言えば固定金利オペを全部1か月物に引き直すとかすればだいぶ楽になると思うのですけれども、残念ながらそれは「金融緩和を推進」的な方向の逆になる(期間を短い方に寄せるのは「より長めの金利の引き下げを促す」という触れ込みに逆行しますよねという意味)ので、よーできませんなあ、さてどうするんでしょ???
そういや輪番がどさくさに紛れて(どうも2月17日オファー分からみたいだが)出来上がり0.10%未満の応札を切るようになっているようで、基金国債買入オペ未達対策に必死だなという感じではございますが、国債増発してくれるか、FEDがまさかの金融正常化前倒しでもしてくんないとフィージビリティー的にアレという感じではございます。
○ニュース雑談
・外準の引当を崩したらFBを償還(正確には発行減かな??)しないとねえ
ニュースヘッドラインを見て腰が砕けたニュース。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0EDSE0UQVI901.html
五十嵐財務副大臣:外貨準備売却すれば円高になる−慎重姿勢示す (1)
『3月5日(ブルームバーグ):五十嵐文彦財務副大臣は5日午後の衆院予算委員会第3分科会で、外国為替資金特別会計が運用している外貨準備を売却し、一般会計に繰り入れた場合は「円高になる。慎重に考えざるを得ない」との認識をあらためて示した。橋本勉氏(民主)に対する答弁。五十嵐氏は「外貨資産を1ドル=81円で換算すれば実質的に16兆円の債務超過。積立金を取り崩せば、さらに債務超過が拡大する」と指摘。積立金の取り崩しについても「政府短期証券により調達した資金を一般会計の財源として使うことは財政制度の根幹に触れる」と否定的な考えを明確にした。』(上記URLより)
という事で、昨日は国会でまたまたアホウ質疑が展開されていたようでございますな。
まあ外準を売却したら円高になりますよねという件もそうなのですが、よりアチャーなのは(詳しく国会質疑を聞いていないので聞いた人からの又聞きおよび記事解読ベースで恐縮ですが)外準での引当のようなものが過剰になっている分を一般会計に使うというような主張の方。
えーっとですね、それって五十嵐財務副大臣(ちなみに国会での質疑応答などでの報道を見てると五十嵐さんって答弁内容が安定していてガソリンプールよりは安心感があるんですけどねえ)がお話しているように、特別会計の目的外流用に繋がる話でして、まあ要するに裏口赤国発行みたいな話にも繋がります罠という風に思うのであります。そもそも引当が過大だというのであればその分FB償還すれば(たぶん正確にはFBの発行が減るという話になるのではないかという気がするがどうも特別会計のキャッシュフローに関しては腰を据えて勉強しないと良く判らんところがある)と思うのだが。
引当が多いならその分該当する特別会計の規模を縮小する方向に話を進めないとそもそもおまいらが言ってる事業仕訳だの特別会計改革だのの方向に話がすすまねえんじゃネーノとか思いますけれども、それ以前の問題として、五十嵐さんが言うように特別会計の目的外流用で一般会計にドンドン使っちゃえという発想って、設備投資資金と言って借り入れてきた資金を思いっきり運転資金に流用するようなもん、つーか誤差を押して言えば自動車ローンで金借りて買った車を右から左に売り飛ばして(実際は割賦販売で買った車の場合車検証に乗ってる所有者は自動車ディーラーでしたっけ?まあ色々とややこしいのですがそこはちょっと置いてちょ)飲み食いに使ってしまうようなイメージで、まあ極端な言い方を致しますとどこの取り込み詐欺だよ盗人だよという話じゃないかと思うのですけどねえ。
なんか休眠預金接収の話もそうなのですが、どうもこの手の発想が全般的に盗人ちっくな香りがするのは気のせいですかそうですか。
・汗は人が流し手柄は我々ですかそうですか
東京新聞では先週、公共放送では昨日出てた奴なんですがその後の続報が無いようなので。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012030202000040.html
がれき処理促進へ議連 民主、発起人50人程度
2012年3月2日 朝刊
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120305/k10013476431000.html
がれき処理推進 議員連盟発足へ
3月5日 5時50分
しかしまあ民主党の皆様って議連作るの好きですねえとか思いましたが、今回のネタは震災からの復興復旧ネタという所で、震災のがれき受け入れに関する話ですかそうですかと思ってニュースとか見てたんですけど、こちらの記事にもありますれどもね。
しかしよく記事をみたら・・・・・
『発起人は五十人程度で、六日に設立総会を開く。各自治体や広域組合の焼却施設の処理能力を調査してから、それぞれの地域選出議員らが、市町村長や知事に受け入れを働き掛ける。』(上記東京新聞記事のURLから)
『自治体側から放射性物質による汚染を懸念する声が出た場合は、環境省の専門家らを同行させて説明する。』(同じく上記東京新聞記事のURLから)
とありまして、更に公共放送のニュースでも同じ事を言ってまして・・・・・・
『高木氏らは、環境省に対し、がれきに含まれる放射性物質の詳細な情報を全国の自治体に積極的に提供するよう求めるとともに、各議員の地元自治体などに対し、焼却施設の処理能力に応じて、がれきを受け入れるよう働きかけていくことにしています。』(上記NHKニュース記事のURLから)
・・・・・・えーっと、つまり地方自治体の処理能力から自動的に割り当てて議員様が首長に押し付けようということですかね。しかも説明は環境省の役人が行うという事のようですが、本当にがれき処理を促進したいならまず最大のネックになっている地元の有権者をおまいらが説得するもんじゃないの????文句言われそうな事は役人と自治体任せでがれき処理をしましたってアピールだけしようって事ですかそうですか。
がれき処理問題って最大(というか唯一最大というか)のネックが受け入れ側の地元住民の反対であって、そこをどうクリアにするのかというのが重大な話ではないかと思います訳で、その地元住民の説得という一番重要な話をするのが「がれき処理推進議連」なんじゃないんですかねえ。まずてめえらの選挙区で地元の反対する有権者の皆様の説得をして、がれき処理受け入れの実績を作って、その実績を基に他の地域の反対する住民の皆様を説得して回るというキャラバンでもやるというのであれば高く評価しますが、上記の記事を読んでいるとどう見てもそうじゃなくてさっき書いたように「仕事は環境省の役人と自治体だけど手柄は俺様にも寄越せ」という浅ましい議連に見えてしまいますよねえ。
ま、もちろんこれは新聞等の記事という一面だけを切り取った報道によってあたくしが誤解しているだけであって、当然ながら議連の皆様におかれましては、一番大変な地元の有権者の皆様の説得という有権者ウケしなさそうな大変な事を一緒にするんですよね!!!!!!!!!!
・・・・・と思わないとやってらんねえわというニュースではございましたとさ。
○人のふんどし雑談
最近読んでなるほどと思った人のブログエントリーを3本。
dongfang99さん
http://d.hatena.ne.jp/dongfang99/20120304
2012-03-04 現代日本の「テレビ政治」
マリナリさん
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-505.html
納得できない「誠意」
2012年03月04日 (日)
非国民通信さん
http://blog.goo.ne.jp/rebellion_2006/e/d148b21f2bd4ff6bff3cdbb4dff3304d
こういう場面でこそ、毅然とした対応が求められるというもの
2012-03-04 23:02:17
まあ特にああだこうだ付け加える話ではないっすけどね(^^)。
しかし非国民通信さんの所にあった東京都副知事の中部電力から電力購入云々の話って、それによって東電の値上げを中部地区に輸出するという事に結果的には繋がる話になる訳で、原発事故の処理費用や賠償費用のツケが結局の所全国に回ってしまうという東電管内以外の人たちから見たら何とも釈然としないであろう事に加担するという話で、何だかなあとかあたくしも思っておりましたです、はい。
つーかさ、
『原発事故後は公務員を超える最大公約数的なバッシング対象と化した東京電力への当てつけ的に中部電力へ電力供給を打診した猪瀬副知事ですが、何とも身勝手な要求ではないでしょうか。そもそも西日本の電力需給だって大変なのですから、そこから電気を買うことは西日本に対する圧迫にも繋がります。東と西で電気を奪い合うような状態になってはいけないでしょう。』(非国民通信さんのエントリーURLより)
というのに全面的に同意。どんな俺様ジャイアンなんだよこの副知事。
○などとうだうだ書いていたら時間が無くなったので予告編のみ
どこの番宣だよという感じですが、うだうだと書いていたら思わぬ時間を消費してしまったのでそうなったでござまするすいませんすいません。
http://www.frbatlanta.org/news/speeches/120301_lockhart.cfm
Monetary Policy and the Credit Channel
Dennis P. Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta
ということで、このネタですけれども、まとめだけ見ているとそんなにタカ派に見えませんが、最後にタカ派(つーか物価重視派)クオリティが出てくるのがお洒落なのと、そういや物価重視派の地区連銀総裁って「インフレーションターゲッティング導入」って話をするなあ(明日ネタにしますがロックハート総裁もそうですし、セントルイス連銀のブラード総裁も物価重視派で、同様にインフレーションターゲッティング導入という言い方をする所かセントルイス連銀のサイトではご丁寧にもインフレーションターゲッティングの特設コーナーまで用意してある^^)という事を思いましたです、はい。
『Key points』って所だけ引用。
『・ Federal Reserve Bank of Atlanta President Dennis Lockhart believes
the current stance of monetary policy is a sober response to the reality
of economic conditions, both actual and projected.
・ Lockhart says the pace of economic recovery has been inconsistent, with
sporadic growth periods, in part because of problems with the transmission
mechanism of monetary policy.
・ Lockhart believes banks today are facing challenges, including issues
related to the supply and demand of credit. Business and consumer loan
demand has been soft, and banks are using tighter underwriting standards.
New data show loan demand is beginning to pick up.
・ Lockhart believes given the circumstances of the economy, the benefits
of low rate policy outweigh the costs at present.』
ということで、これだけ見ていると別にタカには見えないのであれ?っと思って講演読んだらやっぱり最後にタカクオリティが出ているのでありまして、まあ今の地区連銀総裁でタカと言われている人でも真正タカというよりは物価上昇懸念派といった方が正しいという感じなのかなあとか思うのでありました。
続きは明日。
2012/03/05
お題「バーナンキ議会証言で反応とかいうのもよくワカランチ会長」
まあ月曜なので雑談モードでもさもさと。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20120229a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20120229a.pdf
経済見通しのパートと金融政策のパートになっております。紙に出すとPDFで8ページなのでそんなに重くはない。
○経済見通しに関しては先行き明るそうで明るくない
前半の経済見通しのパートですけれども、各項目別の話が「最近こんなところが良いですよ!!!!」→「でもやっぱり問題もあるんですよねえ」という風な構成が続いているのが議会向け証言っぽいテイストを醸し出しておりまして何ともいい味でありますが、まずは最初の全体認識部分から。
『The recovery of the U.S. economy continues, but the pace of expansion
has been uneven and modest by historical standards. After minimal gains
in the first half of last year, real gross domestic product (GDP) increased
at a 2-1/4 percent annual rate in the second half. The limited information
available for 2012 is consistent with growth proceeding, in coming quarters,
at a pace close to or somewhat above the pace that was registered during
the second half of last year.』
つーことで、2012年は向こう数四半期の間今年後半並みかあるいは若干強めのペースで拡大するでしょう、というのが結論で、まあ別に明るくも暗くも無いという感じになっています。
・労働市場
次が労働市場でして、最初のパラグラフの冒頭からいきなり景気の良い話(^^)。
『We have seen some positive developments in the labor market.』
「some positive developments」キター!!
『Private payroll employment has increased by 165,000 jobs per month on
average since the middle of last year, and nearly 260,000 new private-sector
jobs were added in January. The job gains in recent months have been relatively
widespread across industries. In the public sector, by contrast, layoffs
by state and local governments have continued. The unemployment rate hovered
around 9 percent for much of last year but has moved down appreciably since
September, reaching 8.3 percent in January. New claims for unemployment
insurance benefits have also moderated.』
雇用を増やす産業が広がっているだのと景気の良い話ですな。
『The decline in the unemployment rate over the past year has been somewhat
more rapid than might have been expected, given that the economy appears
to have been growing during that time frame at or below its longer-term
trend; continued improvement in the job market is likely to require stronger
growth in final demand and production.』
失業率の低下速度は予想よりもやや速い、と威勢の良い話まだ続きますなあと思ってよくよくその先を見ると、経済が長期トレンドよりも弱めの成長をしているので、今後の失業率の改善については生産や最終需要のより力強い拡大が必要になるとか段々威勢が悪くなるの巻。
『Notwithstanding the better recent data, the job market remains far from
normal: The unemployment rate remains elevated, long-term unemployment
is still near record levels, and the number of persons working part time
for economic reasons is very high.』
で、結局いつもの失業率は高くて、長期失業者は多く、経済的理由でパートタイムの仕事をしている人は多い、という毎度おなじみの話で締めています。
・家計、住宅、生産
この辺もまあああでもないこうでもないと書いてありまして、これまた威勢の良い話が頭に来てその後残念な話という構成になっているのが議会証言クオリティーになります。めんどいので各需要項目の「明るい部分」と「残念な部分」の分量比を鑑賞すべく引用だけするという手抜きバージョンです。前半が明るくて後半が残念という分量でも確認してくんなまし(クソ長くなるので訳は割愛)。
家計に関して
『Household spending advanced moderately in the second half of last year,
boosted by a fourth-quarter surge in motor vehicle purchases that was facilitated
by an easing of constraints on supply related to the earthquake in Japan.
』
『However, the fundamentals that support spending continue to be weak:
Real household income and wealth were flat in 2011, and access to credit
remained restricted for many potential borrowers. Consumer sentiment, which
dropped sharply last summer, has since rebounded but remains relatively
low.』
住宅に関して
『In the housing sector, affordability has increased dramatically as a
result of the decline in house prices and historically low interest rates
on conventional mortgages.』
『Unfortunately, many potential buyers lack the down payment and credit
history required to qualify for loans; others are reluctant to buy a house
now because of concerns about their income, employment prospects, and the
future path of home prices. On the supply side of the market, about 30
percent of recent home sales have consisted of foreclosed or distressed
properties, and home vacancy rates remain high, putting downward pressure
on house prices.』
で、住宅は最後の最後に明るい話を入れているのがちょっとだけ違いますが、まあ最後に明るい話をして締めないと残念なくらいにお先真っ暗なんでしょうなあ。
『More-positive signs include a pickup in construction in the multifamily
sector and recent increases in homebuilder sentiment.』
生産に関して
『Manufacturing production has increased 15 percent since the trough of
the recession and has posted solid gains since the middle of last year,
supported by the recovery in motor vehicle supply chains and ongoing increases
in business investment and exports. Real business spending for equipment
and software rose at an annual rate of about 12 percent over the second
half of 2011, a bit faster than in the first half of the year.』
『But real export growth, while remaining solid, slowed somewhat over the
same period as foreign economic activity decelerated, particularly in Europe.』
先行きに怪しげな雰囲気というのがまあちとアレですけれども、生産に関してはまあ強い話をしているなという所です。
・経済見通しおよびSEPについて
SEPの話やら、先行き見通しやらリスク要因やらの話が続きますが、先般のSEPで2012年の見通しを下げた件についての話があります。
『These forecasts were considerably lower than the projections they made
last June. A number of factors have played a role in this reassessment.』
下げた理由は以下の通り。
『First, the annual revisions to the national income and product accounts
released last summer indicated that the recovery had been somewhat slower
than previously estimated. In addition, fiscal and financial strains in
Europe have weighed on financial conditions and global economic growth,
and problems in U.S. housing and mortgage markets have continued to hold
down not only construction and related industries, but also household wealth
and confidence.』
(1)国民所得などの統計がリバイスダウンされた要因、(2)欧州問題の影響、(3)米国の住宅やモーゲージ市場が建設業や関連産業だけではなく、家計資産やコンフィデンスにも影響を与えている、という3点ですけれども、これどう見てもFRBが直接なんかできるとしたら(3)となりますよねとか考えますと、まあモーゲージ市場に何らかの施策を打ち込んでいく可能性は思いっきりありますよね、と思うのは深読みのし過ぎですかねえ。
2012年以降の基本的見通しはまあ従来通り。
『Looking beyond 2012, FOMC participants expect that economic activity
will pick up gradually as these headwinds fade, supported by a continuation
of the highly accommodative stance for monetary policy.』
『With output growth in 2012 projected to remain close to its longer-run
trend, participants did not anticipate further substantial declines in
the unemployment rate over the course of this year. Looking beyond this
year, FOMC participants expect the unemployment rate to continue to edge
down only slowly toward levels consistent with the Committee's statutory
mandate.』
んでもって、足元の生産や最終需要に関する経済指標と雇用指標のシグナルが違うので要確認という部分が「ふーん」と思いましたのでそこを引用。
『In light of the somewhat different signals received recently from the
labor market than from indicators of final demand and production, however,
it will be especially important to evaluate incoming information to assess
the underlying pace of economic recovery.』
○インフレに関して:言及しているのは総合指数ですな
インフレに関しての話もまあ従来通りですが、総合指数について言及しているのはポイントちゃあポイント。まあ既にあたくし何度も申し上げていますけれども、相変わらず「米国のコアインフレは食品エネルギーを除くので日本もコアコアで政策を」みたいな話が横行している(コアコアを無視して良いという話では無くて、あくまでも色々な物価を示すものを総合的に判断して中長期的な物価のトレンドを見る。という話ですので念の為)のでしつこく引用。
昨年の推移の説明。
『As I discussed in my July testimony, inflation picked up during the early
part of 2011. A surge in the prices of oil and other commodities, along
with supply disruptions associated with the disaster in Japan that put
upward pressure on motor vehicle prices, pushed overall inflation to an
annual rate of more than 3 percent over the first half of last year.』
「overall inflation」ですよね。
『As we had expected, however, these factors proved transitory, and inflation
moderated to an annual rate of 1-1/2 percent during the second half of
the year--close to its average pace in the preceding two years.』
で、先行き見通しは以下の通り。
『In the projections made in January, the Committee anticipated that, over
coming quarters, inflation will run at or below the 2 percent level we
judge most consistent with our statutory mandate. Specifically, the central
tendency of participants' forecasts for inflation in 2012 ranged from 1.4
to 1.8 percent, about unchanged from the projections made last June.7 Looking
farther ahead, participants expected the subdued level of inflation to
persist beyond this year.』
ただまあガソリン価格に関しては注意と。つーかガソリン価格がどうのこうの言うてる時点でコアインフレの話じゃないですよねという感じですが、
『Since these projections were made, gasoline prices have moved up, primarily
reflecting higher global oil prices--a development that is likely to push
up inflation temporarily while reducing consumers' purchasing power. We
will continue to monitor energy markets carefully.』
長期的な期待インフレ率は抑制されて安定している。
『Longer-term inflation expectations, as measured by surveys and financial
market indicators, appear consistent with the view that inflation will
remain subdued.』
なお、物価指数に関しては脚注にPCEを使いますよとありますので念の為。
『6. Inflation is measured using the price index for personal consumption expenditures.』
○金融政策について
という事で経済見通しに関する話が今回の講演テキスト8ページのうちほぼ5ページとなっていまして、残りが金融政策という時点でまあ新しい話は無いですなという所ではございますが、金融政策のパートから少々。
・追加金融緩和はフォワードガイダンスとFEDの資産構成の変更
『Against this backdrop of restrained growth, persistent downside risks
to the outlook for real activity, and moderating inflation, the Committee
took several steps to provide additional monetary accommodation during
the second half of 2011 and early 2012.』
ということで、最近どのような緩和をしているかという事ですが。
『These steps included changes to the forward rate guidance included in
the Committee's post-meeting statements and adjustments to the Federal
Reserve's holdings of Treasury and agency securities.』
ということで、例のデュアルマンデートの理解は追加緩和には含めてません。まあ説明の時にも「新しい政策ではありません、従来の政策をよりわかりやすく説明したものです」と言ってるんですからそうですけど。
・フォワードガイダンスは「市場予想よりも長めに出す」事に意味があるとかワロタ
『The target range for the federal funds rate remains at 0 to 1/4 percent,
and the forward guidance language in the FOMC policy statement provides
an indication of how long the Committee expects that target range to be
appropriate. In August, the Committee clarified the forward guidance language,
noting that economic conditions--including low rates of resource utilization
and a subdued outlook for inflation over the medium run--were likely to
warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through
the middle of 2013.』
さいですな。で、アレな文言はその次に。
『By providing a longer time horizon than had previously been expected
by the public, the statement tended to put downward pressure on longer-term
interest rates.』
ちょwwwwwwwwww
・・・・・・えーっとですな、だから前回は「2014年の遅い時期まで」にフォワードガイダンス文言を持って行ったという事なんですかそうですか(その時点でのFF先物とかを見ると2014年の前半までが実質ゼロ金利政策という感じになっていたから)。何かそれってペテンの香りがフォワードガイダンスから漂ってくるんですが。
『At the January 2012 FOMC meeting, the Committee amended the forward guidance
further, extending the horizon over which it expects economic conditions
to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate to at least
through late 2014.』
・FEDの資産構成ポリシーについて
フォワードガイダンスの次が資産構成という順になっておりまして、まあ資産内容をどうのこうのという施策よりも時間軸政策がメインになりつつある(仮にMBS買うにしてもQE3というよりはCEのイメージになるんでしょうな)という所ですにゃ。
『In addition to the adjustments made to the forward guidance, the Committee
modified its policies regarding the Federal Reserve's holdings of securities.』
In addition toとな(^^)。
『In September, the Committee put in place a maturity extension program
that combines purchases of longer-term Treasury securities with sales of
shorter-term Treasury securities. The objective of this program is to lengthen
the average maturity of our securities holdings without generating a significant
change in the size of our balance sheet.』
さようですな。
『Removing longer-term securities from the market should put downward pressure
on longer-term interest rates and help make financial market conditions
more supportive of economic growth than they otherwise would have been.』
何かまあこの理屈はこの理屈でいいんですけれども、需給に影響を与えて長期金利を下げるというロジックは、何らかの事情で金利が上昇した時に更に買入の拡大をしないといけない可能性があります(望ましい金利上昇ならトボけるでしょうけれども)ので、まあロジックとしては危険な部類だと思います。
『To help support conditions in mortgage markets, the Committee also decided
at its September meeting to reinvest principal received from its holdings
of agency debt and agency mortgage-backed securities (MBS) in agency MBS,
rather than continuing to reinvest those proceeds in longer-term Treasury
securities as had been the practice since August 2010. The Committee reviews
the size and composition of its securities holdings regularly and is prepared
to adjust those holdings as appropriate to promote a stronger economic
recovery in the context of price stability.』
この辺はMBSに関してですな。
○最後にデュアルマンデートの理解に関して
『Before concluding, I would like to say a few words about the statement
of longer-run goals and policy strategy that the FOMC issued at the conclusion
of its January meeting.』
ということで最後にこの件。
『The statement reaffirms our commitment to our statutory objectives, given
to us by the Congress, of price stability and maximum employment. Its purpose
is to provide additional transparency and increase the effectiveness of
monetary policy. The statement does not imply a change in how the Committee
conducts policy.』
まあ毎回言ってますけれども、従来の延長線上という話をしてますが、まあ要するにこれまで行っていたあれやこれやという政策の透明性に関するバーナンキ議長の行ってきた取り組みの集大成みたいなもんですよね。
で、この後の説明部分に関してはデュアルマンデートの理解に関する公表文書での話と同じなので今さら感もありますので割愛。「長期的なインフレは第一に金融政策で決定される」とか「長期的な望ましい失業率水準に関する固定的な目標数値を設定するのは全ての中央銀行にとってフィージブルではない」とかいういつもの話もございました(^^)。
んでその最後の所に何とも微妙な表現が。
『As I noted a moment ago, the level of maximum employment in an economy
is subject to change; for instance, it can be affected by shifts in the
structure of the economy and by a range of economic policies. If at some
stage the Committee estimated that the maximum level of employment had
increased, for example, we would adjust monetary policy accordingly.』
ここのところの最後の文が微妙だと思ったのですが・・・・・・
いやね、つまり「If at some stage the Committee estimated that the maximum
level of employment had increased,」という「employment」が就業者なのか失業率なのかによってこれ結果が真逆になる話で、あたくしの英語力の問題なのかもしれませんが、これだと先行きの金融政策の時間軸が伸びるのか縮むのかどっちのケースの話をしているのかがワカランので誰か教えてジェネラル。
でまあ最後もまた同じ話で、「足元ではインフレが抑制されていて失業が高いので緩和的な金融政策を続けます」「デュアルマンデートなのでアプローチはバランスを取ってやっていきますよ」という話ですが一応引用しますね。
『The dual objectives of price stability and maximum employment are generally
complementary. Indeed, at present, with the unemployment rate elevated
and the inflation outlook subdued, the Committee judges that sustaining
a highly accommodative stance for monetary policy is consistent with promoting
both objectives.』
『However, in cases where these objectives are not complementary, the Committee
follows a balanced approach in promoting them, taking into account the
magnitudes of the deviations of inflation and employment from levels judged
to be consistent with the dual mandate, as well as the potentially different
time horizons over which employment and inflation are projected to return
to such levels.』
#引用大会で恐縮至極でした
2012/03/02
お題「やはり亀崎さんはハトですな/金融政策関連雑感ともうしますか」
LCCクオリティーに慣れていない、というか理解できそうもない客層相手にLCCがチケットを売るというのはわざわざ自分のレピュテーションを下げにいくようなもんじゃねえのかと思うのですけど大丈夫かね。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120302/t10013423281000.html
ご参考
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120301/k10013415301000.html
○ニュースメモをその前に
・原子力損害賠償支援機構負担金の話
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120302/k10013423111000.html
原発賠償 年間1630億円拠出へ
3月2日 6時32分
『東京電力を含む全国の原子力事業者は、政府との間で、福島第一原子力発電所の事故への賠償を支援する原子力損害賠償支援機構に対し、1年間に総額で1630億円を負担金として拠出する方向で最終的な調整を進めていることが明らかになりました。』(上記URLより)
年間1630億円っすか。
・AIJ関連
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120301/k10013402661000.html
AIJに運用委託 一部企業基金公表
3月1日 12時35分
まあ誠にお気の毒としか申し上げようがございませんが、何ぼなんでも半分をこんなわけわかんない運用に突っ込むとかちょっとねえ・・・・・・という感じはしますが、それに関連してこのニュースには腰が砕けた。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120301/k10013411351000.html
日商“投資運用会社 国が監視を”
3月1日 17時46分
『今回の問題について、岡村会頭は、「非常に驚いている。規模の小さい企業などで作る組合などが、運用を委託していたケースが多く、そういう組合がAIJの運用状況や経営の実態を把握できていなかったことが、一番のポイントだ」と述べました。そのうえで、岡村会頭は、「年金の運用を委託している組合が、投資運用会社の経営に立ち入って運用状況などをチェックできる能力があるかというと非常に難しい。国が投資運用会社をどう監視していくか考えざるを得ない」と述べ、再発を防ぐため、国が投資運用会社の運用状況を監視するなどの対応をとる必要があるという考えを示しました。』(上記URLより)
・・・・・・・いやそうじゃなくて「内容の分からない物には投資しちゃだめ」っていう投資する時の基本を抑えれば良いという話で、こうなる側から「セイフガー」とかいうのに「規制緩和が重要」「官僚主導はケシカラン」とかいう(岡村さんが普段そう仰せなのかは存じませんが)のってお前は何を言ってるんだ(AA略)としか思えんのですけどねえ。
○亀崎審議委員記者会見から少々
まあやはりハト気味であるなあと思いましたというのが感想でございます。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1203a.pdf
・足元の数値は良いけれどもそんなに明るい話はしていない
こういう質疑がありましてですな。
『(問) 原油価格が今後、リスク要因ということですが、足許の全体の景気をみると、今朝発表された日本の鉱工業生産指数の前月比が、1月が+2.0%、2月の予測指数が+1.7%、3月も+1.7%となっており、少し上向きになっているようにみえます。日銀の景気判断である「横ばい圏内の動き」との見解と違和感がありますが、やや上向きになってきたというご認識はお持ちでしょうか。』
『(答) 現在、景気は横ばい圏内の動きであるとみています。』
いきなり全否定キタコレ(^^)。
『個人消費は底堅く推移しており、設備投資もややしっかりとした動きでありますが、海外経済の減速や円高で、輸出がかなりマイナスのインパクトを与えている状況です。ただ、生産の数字がプラスに出てきたということは、明るい兆しであると思います。こうした動きは、我々が考えていたシナリオ、すなわち、個人消費は底堅く推移する中で、海外経済の減速等による輸出、生産の落ち込みが、新興国・資源国の成長に牽引されて徐々に回復し、加えて、震災復興関連需要の強まりとも相まって、春先以降は緩やかに回復していくのではないかとみておりましたが、それを裏付ける一面であるとみています。』
ということで、足元の数値が良いから先行きの自信ありという感じではないですな。そらまあ欧米経済に関して全然強気で見ていないのですから当たり前ですけど。
また、冒頭の説明部分で「デフレ」「円高」を連呼していたのがほほうという感じで、冒頭説明部分の一部を引用。
『一方、当地の景気については、元気な動きもみられていますが、デフレが大きな問題であるとの話が多く聞かれました。特に雇用情勢を中心に厳しい状況が続いています。デフレの進行によって、売上げの拡大が期待できず、中小・零細企業を中心に厳しさを増しているとの声が聞かれました。デフレの長期化、円高による市場競争力の低下、産業の空洞化の進展などが、雇用の減少につながっているというお話を伺いました。』
『一方で、日本銀行が2月14日に決定した金融政策については、「良い効果がある」、「デフレ脱却に向けた日本銀行の決意を示すものとして評価したい」という声が聞かれました。また、日本銀行の金融政策に関する丁寧な説明や情報提供を引き続きお願いしたいという要望も頂きました。こうした中で、やはり現在の一番の課題は、根深いデフレからの脱却である、というご意見を伺いました。』
何かデフレと不景気がごっちゃになっているような気もしますけど、まあデフレと円高の話が多いという話を審議委員が強調しているというのはまあハト的な話ではあるなあと思うのでございました。
・電力に関して
『(問) 2点お伺いしたいと思います。1点目は、九州も原発への依存度が高いので、今年の夏に向けて電力不足が懸念されていますが、輸出や生産への影響をどのように捉えていますか。(2点目は割愛)』
『(答) 1点目の原子力発電所の問題ですが、現在、定期点検中の原発の運転再開については、不確実性が高い状況です。この問題が日本経済に与える影響ですが、日本には原発が54基ある中で、現在、動いているのは2基だけです。これらも春頃に定期点検に入ると、全部ストップすることになります。仮に定期点検後の再稼働が難しい場合には、計画停電や電力の使用制限、これを回避するための省エネ促進等による需要抑制、あるいは電力会社等による供給力の積み増しがなされなければなりません。ただ、これらはいずれも簡単に実現する施策ではありません。またコストの問題もあります。』
『特に、現在、イラン情勢を巡る地政学リスクもあり、原油価格が強含んでいるため、火力発電のコストは高まってきています。昨年から本年にかけての貿易収支の赤字も、石油やLNGの輸入が増えたことが大きな要因となっています。再生可能エネルギーについては、まだ発電効率が高くないため、設備の設置費用も含めてコスト高です。原発を継続するにしても安全強化のためのコストが必要になるでしょう。』
ということで・・・・・・・
『仮に電力料金が引き上げられる場合には、実質購買力の低下や企業の収益悪化につながる可能性があり、これは景気の下振れ要因です。』
まあ当然ながらこういう認識ですので、電力料金が上昇して一時的に物価が上昇したという現象だけでいきなり金融正常化とかするって話はございません、という事でよろしゅうございますな。ただまあこの電力料金の上昇による物価上昇がホームメードインフレの引き金となって持続的な物価上昇とかいう話になれば別でしょう。
つーことで、まあ結局の所諸々の要因を総合的に勘案してどうよという話ですわな。
『さらに、やや長い目でみると、電力不足への懸念、コストの増加といった要因が生産設備の海外シフトや国内企業の競争力低下を招く可能性もあります。ひいては日本経済の中長期的な成長力の低下につながりかねません。』
ということで、まあ懸念しておりますという事でございます。
・貿易収支、経常収支
講演での内容に沿っていますが折角ですので再掲。
『それから、2点目の経常収支ですが、最近の貿易収支や経常収支の状況をみると、2011年の貿易収支は1.6兆円の赤字と、1963年の600億円以来、48年振りの赤字となっていますが、この背景としては、輸出が震災による供給面の制約から大幅に減少したこと、輸入が代替品需要から中間財などで増加したことが挙げられます。また、原発停止に伴う火力発電需要の高まりから、LNGと原油の輸入が増加したこともあります。加えて、秋以降の海外経済の減速や円高、タイの洪水が輸出の足を引っ張りましたので、これらが貿易収支の下押し要因となったとみています。』
『このように、様々な要因が複合的に作用していると考えていますが、今申し上げた中で、震災に伴う供給制約やタイの洪水の影響は一時的なものであり、本年の輸出には影響しないと考えています。先程も申し上げたように、1月の貿易収支は赤字が1.5兆円となりました。これは、月単位でみて1979年以降の最大の赤字となっています。通常2月のアジアの春節が今年は1月にずれ込んだといった特殊要因も輸出の落ち込みに影響したとみています。』
『経常収支ですが、2011年に確かに減少しましたが、黒字は維持しています。これは、対外資産からの利子・配当などを背景に所得収支が大幅な黒字となっているためです。日本は約250兆円に上る対外純資産を保有しています。このため、所得収支については、黒字は維持されていく可能性が高いとみています。従って、貿易収支の赤字が急速に拡大していかない限り、経常収支の黒字トレンドは、当分の間、変わらないものとみています。』
まあそんなことで。
○日銀レビューシリーズから(というかただのメモ)
日銀レビューシリーズというのはそこらの本読んでいるよりも面白いので誠によろしゅうございますですな。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/rev12j03.htm/
為替スワップを利用した米ドル資金の調達コストの動向について
本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j03.pdf
最初のhtmにある「要旨」だけ引用するざます。
『要旨
昨年夏以降、欧州系金融機関の米ドル資金繰りに対する懸念が高まる中、国際金融市場では為替スワップによって自国通貨を米ドルに交換する取引のコスト(ドル転コスト)が注目された。そこで、本稿では、金利裁定の考え方に基づいてドル転コストを分析し、その変動要因を探ってみた。』
ほほう。
『その結果、ユーロ投ドル転コスト(ユーロを米ドルに交換するコスト)は、(1)昨年7月中旬から10月末にかけては、ユーロや米ドルの資金市場における緊張感の高まりを背景に上昇していたが、(2)11月入り後は、そうした要因だけでは説明できない水準まで大きく上昇し、為替スワップ市場の米ドル需給が逼迫した状態にあったこと、(3)その後は、主要国中央銀行による米ドル資金供給オペの拡充措置が講じられる下、年末を無難に通過したこともあって、ユーロ投ドル転コストは低下に転じており、為替スワップ市場の緊張状態も緩和方向にあることがわかった。』
そうですかそうですか。ということで、本文はまあ超斜め読み(本当にざっと字面を眺めただけ)しか読んでおりませんが、基本的な解説になっているので頭の整理にはよろしいかと思いました(つーても熟読して無いので勘弁)。
○何かねえというニュースに突っ込んでみる
昨日は何か民主党の研究会が
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M06V586TTDS601.html
民主・円高対応研究会が金融政策に関する提言を前原氏に提出
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M06WOU6TTDSE01.html
民主円高対応研究会:物価目標は2%超に設定を−提言
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M06X6W6TTDS101.html
民主研究会:日銀は3月の決定会合で本格的緩和の実施を−提言
で、そのまとめが馬淵さんのインタビュー記事とな。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M071551A74E901.html
民主・馬淵氏:次期日銀審議委員にリフレ派登用を−インタビュー(1)
まあ一連の記事を見て色々と思いましたので軽く悪態を。
・「円高対策」如きの為に「欧米よりも高い水準の物価目標」というバランスについて
まず最初のツッコミ所としては、「円高・欧州危機等対応研究会」っていうまあ個別事象の対応に何でまた欧米の水準よりも高水準の物価目標数値を出すという話になるのかという所でございますわな。
別に円高対策だったら他にも色々な方法があると思うのですが、円高と欧州危機対応を全部金融政策でやるという話で、いきなり欧米の中銀が出しているよりも高水準の物価目標数値を出すって、そらまあ購買力平価がどうのこうのという話を持ち出せば自国通貨建てのインフレ率が高い国の通貨が長期的には安くなるという理屈になるから、円高対策にはなると思いますが、それって円高対策になるのは兎も角として、その物価目標数値を出す事が国民厚生的にどうなんですかという全体のバランス感がさっぱり見えてこない所ですわな。なんっつーか近所のドブさらいをするのにユンボ持ち出してくるようなイメージがするんですがね。
何かね、円高対策で物価目標数値を欧米よりも高くしましょうとか、どうも目的に対して割り当てる手段があまりにも部分最適しか考えていませんよねという感じですけどねえ。物価目標数値を高めに置く事が経済全体をいた結果として購買力平価がどうのこうので円安になるというのならまだしも、目的と手段が逆じゃねえのという所ですわな。
・・・・・まあこちらの皆様におかれましては、円高対策は口実として使っているだけだとは思うのですけれども、何っつーか「復興支援」と言えば何でも通せるとばかりに火事場泥棒のような施策を打ち出してくる人たちとか、更には子供をダシにして自分の政治的主張を通そうとするアレな人たちとか、そういう方々と同じような香りを感じる訳でございまして、何だかなあという所ではございますわな。
・2%超なら2%超でも良いけど最後まで貫徹してくれないと困りますよねという話
でですね、まあ2%超なら2%超でも良いのですが、つーかそんなのは政治家の皆様が責任を持って日銀法改正でも何でもして頂ければ、普通に日銀はそれに向けて無理筋の政策(=物価は上がるかもしれないけれどもそれは国民厚生的にどうよというような政策とかですわな)でも何でも打つべく努力する(無理筋でも何でもいいからとにかく物価上げろ!とミッションが出ればそうしますがな)とは思いますけど、問題はそれが実現しそうになった時になった時に選挙民の皆様が物凄い勢いで「物価上昇で生活が大変なのに低金利で庶民の暮らしが大変」とか言い出した結果として、政治家の皆様が手のひら返しをするのが最悪中の最悪の展開でございますよね。
そしてその時には本来そのミッションを与えた政治が責任と批判を受けるべきなのに、「何でもいいから物価上げろ」とミッションを与えられて「しょーがねーなーじゃあ無茶やりますかねえ」と無理筋政策を打ち込んだ日銀に対して批判が来るという豪快な梯子外しが起きるというのが目に浮かんでくる訳でして、まあそういう政治的な問題をすべてクリアして下さいね、その場の円高対策だけで欧米よりも高い物価目標水準出すとかあまり軽く考えないで下さいねという所でございます。
まあそうじゃなくて実際に物価が上がってまたまた日銀法改正とかになった日には「この国では物価安定目標がコロコロ変わる」という事になりますので、中長期的な期待インフレ率の安定もへったくれも無くなって、それこそ国民厚生的にどうしようも無いカオスが訪れる訳でありまして、いきなり欧米よりも高い物価目標数値を置くというのはメリットとリスクのバランスとして、リスクを軽視し過ぎじゃネーノという感じがするんですけどねえ。あんまり「試しにやってみるか」というようなレベルで済ませられない物だと思うので。
・次回決定会合で本格的緩和の実施をとかこれはまた随分な
しかしまあ何ですな、『民主研究会:日銀は3月の決定会合で本格的緩和の実施を−提言
』ってお前ら野党の時に散々っぱら「与党が金融政策に干渉してケシカラン財金分離だ」とか言いまくっていた事と整合性どう取るつもりだとか思いますが、まあこの人たちはそれこそ権丈先生が最近も仰っておられるように、政権奪取の為に嘘でもなんでもついて選挙に臨んだ正統性に欠ける人たちなのですからそういう批判は屁とも思わないのでしょうなあと存じます次第で、面の皮の厚さに呆れ果てる次第ではございます。
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/
なお、何度も引用してて今さら耳タコだとは思いますが、かつて本石町日記さんが予想していた民主党の日銀に対するスタンスがここまで見事に当たるとは実に卓見であると存じます次第で。
http://hongokucho.exblog.jp/6974947/
民主党はワンボイス主義を=金融政策論議で考える党戦略
『特に、日銀を与党に抑圧された存在とみなす戦略は、仮に与党になれば日銀を抑圧するのが見え見えで、薄っぺらな感じである。』(上記URLより)
まあそれ以前の問題として「本格的緩和」って何をどうしますねんという感じではあるのですけど。この前アナウンスした追加緩和を今実施中で、さてフィージビリティー大丈夫かという話もあったりする状況なんですけどねえ。いやまあ追加緩和って何をどうするのかイマイチ見えない(馬淵さんのインタビューの方に何となくあった)ところでして、民主党政権の得意技として「アイデアはあるけれども実装技術が無いから出来上がった物が使い物にならない」という、出来の悪い製造業者みたいな事をあちこちで行った挙句に何もかもぶちこわしとなる、というのがございますけれども、金融政策の提言は提言で結構ですが、実装技術の無い人たちが適当な聞きかじりの生兵法で何かをおっぱじめると碌なことにならんので勘弁して頂きたいと存じます次第。
つーかさ、最近金融関連でああだこうだ言ってる議員先生方って生兵法は怪我の元を地で行くような向きが多く(その意味であたくしは渡辺喜美金融担当大臣の時にさんざん悪態ついていた次第で)何だかなあという感じでございます。まあ今の自見金融担当大臣は割と安心して見てるんですけどね。
・該当者いるのかね
馬淵さんのインタビュー見てて思ったんですけどね。
『馬淵氏は後任人事について「インフレ目標政策導入に強い決意を持つ」「リフレ政策をしっかりと腹に持っている」人物が任命されるべきだとの見解を示した。』
『審議委員に望ましい人としては、これまでの研究会での議論で、「社長経験者、円高や世界経済の中で輸出を中心にやっている産業で痛みの分かる人」という意見が出たという。』(上記ブルームバーグ記事中の馬淵氏インタビュー記事より)
・・・・・・・・まあ該当者がどんな人なのか判りませんけど、そもそもそれなりの企業の社長クラスやってた人からしたら日銀の審議委員なんて罰ゲームみたいな待遇で散々こき使われるポストなんですけどねえ。その手のクラスの人たちからしてみたら社会奉仕精神でもないと大変だと思いますけどにゃあ。
○これは酷い出来の記事発見
ちょっと最近ロイター日本語版の記事レベルの劣化が凄まじいんですけど・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK074560220120229
再送:〔BOJウオッチャー〕金融緩和は物価引き上げ秘めた能動的政策、総裁が踏み込んだ見解
2012年 03月 1日 08:01 JST
いやね、どこをどう突っ込んでよいのやらという感じなのですけど・・・・・・
『[東京 29日 ロイター] 日銀の白川方明総裁は29日午後の衆議院財務金融委員会で、山本幸三委員(自民)の質問に対して、日銀の金融政策は、「物価上昇率を引き上げるという要素を内に秘めた能動的な政策だ」と説明、「景気が良くなっていっても物価上昇率1%が見通せない時は、ゼロ金利を続け、資産買い入れを行っていくことを約束するものだ」と明言した。』(上記URLより)
『従来、日銀は円高や株安など景気の下振れリスクが高まるときに追加緩和してきた。このため14日の会合後の記者会見でロイターは、今後は景気の下振れリスクがなくても物価を引き上げるために追加緩和するのか、と白川総裁に質問したが、明確な回答は得られなかった。これに対して、きょうの衆院答弁で初めて公式な見解を示したとみられる。』(上記URLより)
えーっと、そもそものツッコミ所は前半部分と後半部分(途中部分割愛していますが、趣旨は損なわないような割愛になっております点はURL先の記事をご確認ください)で話がちゃんと繋がっていない事であります。つまり、白川総裁は今般の発言では「ゼロ金利を続け、資産買入を行っていく」とは言ってますが、それは現在の政策継続をするというだけの話であって追加緩和するという話とはこれまた別でしょと思うのですよ。いやまあ資産買入を「継続する」というのが「追加緩和」扱いとされるのでしたら、この際輪番オペも半年ごとに「今後半年間で国債買入を10.6兆円実施します」ってアナウンスすれば半年ごとに追加緩和実施って報道されて日銀ウハウハですよ!!!!!
でまあそれはそれとして、もっと肝心なアレなのは「初めて公式な見解を示した」とか仰っている事でありまして、17日の日本記者クラブでの白川総裁の講演テキストをお前はどう読んでいたのかと小一時間問い詰めたいですし、そもそもそれ以前の問題としてですな・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1202b.pdf
の13ページに上記記事に該当する質疑応答がありますが。
『(問) これまで日本銀行は、景気見通しが下振れた時に追加緩和を実施することが多かったと思います。今回、「中長期的な物価安定の目途」により日本銀行の意思を明確化したということは、極端な例ですが、非常にファンダメンタルズが良くても物価が上がらないというような時でも、緩和する時には緩和する、という意味合いがあるのかご説明下さい。』
『(答) (冒頭割愛)そうした状況の中で、今、内外で少し明るい動きが出てきていることを考えると、この明るい動きを何とか確かなものにしていくことを考えることは、先程申し上げた標準シナリオの実現可能性を高めていくものだと思います。そうした考え方で、今回の措置を採りました。過去の金融政策について振り返ってみた場合、今申し上げたような考え方の意味合いを込めながら金融緩和を行ったことも、何回かあったように思います。もちろん、一般的には景気が悪くなっていく時に金融緩和を強化するというのがオーソドックスですが、今申し上げたような形で、より確かなものにするという思想でやったことも無いわけではありません。それから、今回、「中長期的な物価安定の目途」を出すという形で私どもの姿勢を示す時に、言葉だけでも目的を達成できるのではないかという議論もありますが、言葉と併せて政策的な行動を採った方が、言葉にもより重みが出てきて、金融緩和の効果も高まってくると判断したわけです。』(以上、上記URLにある2月14日の総裁定例記者会見より)
・・・・・・・・いやあのここ読んだら普通に「景気が悪くなっていくから緩和という訳ではなくて、景気を押し上げるという意味合いで緩和を行う事もありますよ」って発言しているようにしか読めないのですが、ロイターの記者さんは日本語がお分かりにならないのでしょうかねえ。
更にそもそも論を出しますと、この質問者の質問って「中長期的な物価安定」と「足元の物価数値の推移」の話を分けないでいる時点で悪い質問でして、「足元での物価数値はまだ目標に行って無い状況でも、経済のファンダメンタルズが非常に良ければ、常識的に考えてそれは中長期的な物価安定という観点から行けば物価が目標(でも目途でもいいけど)数値を上回って上昇するだろう(=だから追加で緩和とかよーせんわな)」というのが普通ですよね。
まあ記事でこんなの書いてるくらいですから上記の質問したのロイターのこの記事を書いた人なのですかねえとか勝手に想像しちゃうわけですが、今申し上げたように、質問者が足元の物価数値が低い上昇を意識して質問しているかのような物言いをしていたらそらまあ答え難い罠と思うのでありまして、その中で白川さんは結構積極的に発言したのが上記記者会見での質疑応答だと思うのですよね。
これが質問者が「中長期的に物価上昇の見通しが中々立たない状況が長期化する、という見通しの元では、足元で景気がやや上向きであっても追加緩和を行う事がありますか?」と質問すれば「その場合は追加緩和も選択肢に入るでしょう、と申しますか今回がまさにそれですよ」というような答えが返ってくると思われる次第ですわな。
つまりですな、結局の所金融関連とかで専門記者とやらを張っている筈のロイターさんですら、この物価に関するどうのこうのに関して「中長期的な話」と「足元での推移の話」を明らかに混同したような報道をしたりしている訳でありまして(質問しているのは誰だか判りませんけど)、そんな中で「ターゲット」という文言を使ったらそらまあ短期的な足元の推移に関して金融政策の上げ下げで調整しますと世間様が誤解するだろうからその用語は使いたくありませんとか麿が言うわなと思う次第でございます。
つーかさ、そこらのタブロイド新聞じゃないんだからロイターさんとかがもっとちゃんとこういう辺りを整理して世間一般の理解を深めるような報道をすべきであると思うのでございますよね。
さっきの政治家先生の場合はどうせまあ選挙民の皆様に受ければ良し的な所があって、金融政策なんてそもそも力を入れて勉強するような件でも無いでしょうから、今はたまたま「デフレ」「円高対策」という選挙民受けするネタに金融政策が使えるから使ってみました的な軽薄な面が出てしまうのはある程度シャーナイナイではあると思うのですよ。で、そういう所に対して(特に専門性があったり、クオリティーペーパーとして自認しているような)メディアの皆様が、きちんとした(というのはセンセーショナルだったりいい加減だったりするような受ければ勝ち報道ではないきちんとした)報道をすることによって世の中の理解を深めるという機能を担って頂きたいと思うのでありまして、そういう意味ではやはり経済記事での日経とかも含めてロイターのような専門性が高いと目されているメディアにはきちんとして頂きたい物だと思うのでありますよ。
つーかね、そういう機能が果たせない専業メディアとかマジで要らないというか弊害垂れ流し状態なんですけどねえ、全くもって困ったものでございます。
と、途中から悪態大会になってまた読者を減らしそうな勢いのあたくしでしたorzorz
2012/03/01
お題「亀崎審議委員講演メモ/LTROやら何やらのメモ/各種雑談」
3年LTROですけれども、欧州時間では応札が多かった事をネタにしてユーロが売られましたとかいう講釈をされていたような気がするのですが、朝になってみたらモーサテ様はLTROの結果を好感してという話になっていてマジでさっぱりワカランチ会長です><;
○ということで一応LTROのメモ
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M05H8S6K50Y901.html
ECBの3年物オペ2回目、5295億ユーロ応札−過去最大の供給に
つーことでECBのサイトの方をメモしておきませう。落札結果ですけど。
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/20120034_all.en.html
Longer Term Refinancing Op.-Allotment
Reference Number: 20120034
Transaction Type: REVERSE_TRANSACTION
Operation Type: LIQUIDITY_PROVIDING
Procedure: STANDARD_TENDER
Tender Date: 29/02/2012 11:15:00
Start Date: 01/03/2012
Maturity Date: 26/02/2015
Duration (days): 1092
Auction Type: FIXED_RATE
Tot Amount Allotted: 529530.81 mn
Tot Bid Amount: 529530.81 mn
Tot Number of Bidders: 800
ちなみに前回の3年LTROはこちら。
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/20110149_all.en.html
Reference Number: 20110149
Transaction Type: REVERSE_TRANSACTION
Operation Type: LIQUIDITY_PROVIDING
Procedure: STANDARD_TENDER
Tender Date: 21/12/2011 11:15:00
Start Date: 22/12/2011
Maturity Date: 29/01/2015
Duration (days): 1134
Auction Type: FIXED_RATE
Tot Amount Allotted: 489190.75 mn
Tot Bid Amount: 489190.75 mn
Tot Number of Bidders: 523
まあ前半はオペのオファーの方で結果は『Tot Amount Allotted:』以降になりますけれども、前回よりも応札増えてるわ応札者数は増えてるわという事で、これをどう評価するのか正直よー判らんですけれども、とりあえず適格担保拡大して中小金融機関のアクセスを拡大しました(キリッ)という施策の目的は達成できたものかと思われます。まあこれが「何だまだまだ金が要るんじゃネーノ」という解釈になるのか、「3年間のファンディングを付けて流動性リスクを下げちゃいましたよ凄いですねえ」という解釈になるのか(まあ両方ともその通りなのかもしれませんが)良く判らんでございまする。
ちなみに、3年間の低利資金供給ではあるのですが、レート自体は「期中のMROの平均金利」でございますので、途中で利上げをしたらそのまんまスライドでこの借入金利上昇しちゃいますから、これでリスクフリー方面の金利が下がるのかというとそれはそれで別問題であるというのだけは念の為注意しておきませう。
○3か月TB入札とか資金供給オペとか
昨日の落札結果。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240229.htm
(3)募入最低価格 99円97銭4厘0毛
(募入最高利回り)(0.1043%)
(4)募入最低価格に 8.3368%
おける案分比率
(5)募入平均価格 99円97銭4厘1毛
(募入平均利回り )(0.1039%)
・・・・・・ということで昨日は「按分厚めになるかも」などと申し上げたら大外れになってしまいましてどこの北禿先生だよという風情でございますが、ええまあ今回は前回よりも平均が0.01銭下がっていますのでそういう意味では一応あたっていなくもないという事でニュアンスを把握して頂ければとか言い訳してますが(汗)、まーよーするに99.9745にちょっとだけ入れて99.9740にドカーンと応札した人が多かった為にこんな感じになったという事で、さすがにこの下(0.106%レベル)に金利上昇とか無理無理無理という所だったっつー事ですな。
とりあえず21日の大量償還以降は金が余って来る筈なので、まあ短国のレートがこんな感じになっているのも今のうちだとは思いますけどにゃ。
でもって昨日の資金供給オペ
オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120229.htm
共通担保資金供給(本店)<金利入札方式> 10,000 2012年3月2日 2012年3月23日
共通担保資金供給(全店)<金利入札方式> 10,000 2012年3月2日 2012年4月4日
落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120229.htm
共通担保資金供給(本店)<金利入札方式>(3月2日スタート分) 22,610 10,006 0.100 0.100 44.3
共通担保資金供給(全店)<金利入札方式>(3月2日スタート分) 7,710 7,710 0.100 0.100
つーことで昨日は金利入札オペ2本実施されたのですが、3月23日足の本店は2倍の応札が入り期末越えの4月4日足の全店は札割れという結果になりました。まあふーんという感じですが、3月21日に国債償還による財政要因から金が余ってくるでしょうから、別に期末越えを意識して気にする必要がなく、まあとりあえずGCがややタイト目になっている所だけ取っておけば良いかという話になるんでしょうかねえ、良く判らんけど。
ま、ちょっと対照的な結果だったのでメモ。何かあたくしが見落としている要因がありそうな気もするので詳しい人教えてジェネラル。
○バーナンキ議会証言は後で読む
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20120229a.htm
Chairman Ben S. Bernanke Semiannual Monetary Policy Report to the Congress
Before the Committee on Financial Services, U.S. House of Representatives, Washington, D.C.
February 29, 2012
ということですが、さすがに今朝はここまで手が回らないので後で読む(キリッ)宣言で勘弁。
反応はこうだったようで。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M067QO6VDKHT01.html
米国債:下落、FRB議長の議会証言で追加緩和期待が弱まる
『2月29日(ブルームバーグ):米国債相場は下落。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の議会証言を受け、金融当局による追加の国債購入を通じた量的緩和拡大の見通しが弱まったことが背景。』(上記URLより、以下同様)
ほほう。
『ジェフリーズ・グループの国債エコノミスト、トーマス・サイモンズ氏(ニューヨーク在勤)は「バーナンキ議長が言及しなかったということで市場が反応している」と指摘。「バーナンキ議長は量的緩和第3弾(QE3)についてもっと明示的に語るだろうとの期待があった」と述べた。』
・・・・・・・・えーっと、足元の経済指標が強めに出ている中で明示的にQE3の話が出るとか思う方がちょっと理解に苦しむのですが、つーかFOMCのMinuteを見たら追加緩和の必要性を示唆する人が減ってるんだからそこでいきなりQE3示唆とか何ぼバーナンキ議長がハト派でもせんでしょ、つーかこんな所で勝負してもしょうがないと思うのですけれども、どーしてそういう反応になるんだか米債市場もイミワカンネ。つーかクレクレは甘えという奴ですな、うんうん。
○その他ニュース雑談
・引き下げデモクラシー炸裂でござるの巻
http://www.asahi.com/politics/update/0229/TKY201202290157.html
国家公務員給与カット法案が成立 参院で可決
『参院本会議で29日、国家公務員の給与を新年度から2年間、平均7.8%減らす法案が可決、成立した。削減される人件費約5800億円は、東日本大震災の復興財源となる。2年間は人事院勧告(人勧)を実施のうえで、削減幅を上積みする。今年度については、平均0.23%減らす人勧に従い、去年4月にさかのぼって引き下げる。』(上記URLより)
・・・・・・いやあ何かさ、給与の問題って「震災復興」とは全く筋の違う話で、こういう筋違いのロジックで政策を実施するというのは全くもって遺憾にも程がある訳ですがな。この前も「震災復興」を持ち出して長期不活動預貯金の接収の話が出てましたけれども、お前ら震災復興を錦の御旗にすれば何やっても良いとか勘違いしてるんじゃねえかふざけるなというところで、ニーメラー師の詩(何度も引用していますが)を思い出すのである。
てか(この記事だと詳細が書いてませんが)本省課長補佐級係長級で7.77%削減ってちと削減キツくねえかって思うのですが、実動部隊で散々こき使われている階層が補佐と係長クラスで、補佐はまだしも係長とかそんなに給与高くないと思うのですけれどもねえ。よー知らんがの(俸給表見れば判りますかそうですか)。
てかさ、これ民主自民公明が賛成したそうでございますが、おまえらこういうデフレ要因になるようなネタを打ち込んでいる側から日銀総裁を連日国会に呼んで毎日毎日インフレ目標ガーとかデフレ脱却ガーとか同じ話をしている訳ですが、そっちとの整合性はどうなのよとか小一時間問い詰めてみたい所ではございますがな。
#あ、公務員給与のあり方を考えるなという話ではありませんので念の為。
○などと雑談で時間を潰しましたが亀崎審議委員講演から少々
最初のうちハト派全開で独自色が出てた感じだったのですが、最近は執行部ペースの話が多くなっているという審議委員パターンとしては通常の逆(任期の最後になってくると段々フリーダム化してくるのがよくあるパターン、最初から最後までフリーダムな人もいますけど^^)の亀崎審議委員講演テキストから少々。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120229a1.pdf
特段変わった話があるという感じでもございませんが、亀崎さんの講演は関連資料の図表とかが妙に詳しいのでこれはこれでオモシロスではございます。ただまあ図表を引用するスキルはあたくしには無い(それにまあ図表モロ引用はちょっとアレですから)のでそれは上記URL先を見てちょというところです。
・世界経済に関して
『こうした中、世界経済は減速しています。わが国が直面する海外経済の成長率は、前期比年率で昨年の1〜3
月の+6.5%から、4〜6 月は+3.0%へと減速した後、7〜9 月には+3.8%と幾分加速しましたが、10〜12
月期は再び+0.9%へと減速しています(図表1(1))。先行きについては、欧州債務問題が一段落するにはまだ暫く時間がかかるとみられるほか、米国経済も家計のバランスシート問題が個人消費の足枷となって力強い成長は期待しにくい状況です。』
そうですかダメですか。
『家計のバランスシート問題の解決には、住宅価格が底を打って更に上昇に転じることで住宅ローンの額が住宅の価値を上回る「ネガティブ・エクイティ」の状況が解消されるか、もしくは雇用所得環境の改善により家計の債務返済能力が回復するかの少なくとも何れかが必要となります。しかしながら、過剰債務の調整には相当な時間がかかるというのが日本のバブル後の経験です。』
さいですな。
『このように、先進国経済が全体として伸び悩む中で、私は、新興国・資源国経済を中心に世界経済が成長するシナリオを描いています。この点で、新興国・資源国経済にかかる期待は大きい訳ですが、様々な不確定要素がある中で新興国・資源国が世界経済の成長をどこまで牽引できるかに注目しています。』
ただまあこの先に新興国がどうのこうのという話は無くて、その前の所に、
『また、投資家のリスク回避姿勢の強まりや欧州の銀行によるディレバレッジングの影響は、地理的に近接する中東欧諸国に加え、貿易金融等を通じて関係を有するアジア等でも一部みられています。』
というのがしらっと入っているだけですので、見通しが奈辺にあるのか存じませんが、あまり先行きを楽観視していなさそうな感じは致します。たぶん新興国の楽観的な見通しみたいな執行部ベースの見通しの話はしたくなかったんでしょ、と勝手に妄想。
・財政維持可能性に向けた取り組みについて
国内経済の話の中にいきなりこのネタキターという所で、亀崎さんの個人的趣味でこうなっているのか、それとも日銀として「こっちだって姿勢を転換してるんだから政府与党サイドにも物申さないと」という雰囲気になっているのかは存じませんが、ほーと思うのでありました。
『こうした中、財政健全化に向けた取り組みも、わが国が抱える大きな課題の一つです。』
従来、政策委員の方々が講演などでこのネタに触れるときは日本経済の将来的な課題というような文脈でネタ振りをしていたことが多いと思うのですが、今回はいきなり日本経済の現状と先行き見通しに関する所で出てきているのがチャーミングだと思いました。
『リスクが顕在化している欧州債務問題は、わが国にとって決して対岸の火事ではありません。日本の財政状況を他国と比較してみると、プライマリーバランスでみればスペインやポルトガルと同程度に悪化しているほか、政府債務残高はグロスでみるか、政府が保有する金融資産と相殺したネットベースでみるかによらず極めて大きい状況です(図表2(1))。』
まあ今のところは対岸の火事ではありますが、そうは言いましても貿易収支の赤字がどうのこうのとか言うのが出てくるとまああまり居心地は良くはござーませんわな。
『各国の国債の保有者別内訳をみると、日本は欧米諸国に比べて海外投資家の保有比率が低いので安心であるとの楽観的な見方もあります(図表2(2))。実際、日本では現状、国債価格の低下(長期金利の上昇)が生じているわけではありません。しかしながら、欧州債務問題からの教訓は、一旦財政への信認が低下すれば国債も安全資産と認識されなくなるおそれがあるということです。日本国債についても、これまで安定的に消化されてきたのだから、これからも心配ないと考えることは適切ではありません。日本国債に対する信認も、非連続的に変化し得ると思います。政府の試算では、わが国の財政は今後も厳しい状況が続く見込みです。こうした状況を改善するためには、成長戦略の着実な実行による成長率の引き上げや、社会保障制度や税制の見直しなど、中長期的に財政バランスを維持できると人々が思えるように財政の健全化に向けた道筋を確固としたものにし、これに沿って着実に取り組んでいくことが不可欠であると考えます。』
まあそらそうでしょうな。
・経常収支、貿易収支
その次に経常収支や貿易収支のお話が。
『この間、国際収支統計によれば、2011 年の貿易収支は▲1.6 兆円となり、1963年以来48年振りの赤字となりました(図表3(1))。この背景として3点ほど申し上げます。』
ほほう。
『第1に、輸出が震災に伴う供給面の制約から大幅に減少し、輸入が代替品需要から中間財などで増加したためです。第2に、原発停止に伴う火力発電需要の高まりから、原油や天然ガス等の原燃料輸入が増加したためです。第3に、秋以降の海外経済の減速や円高、タイの洪水なども貿易収支の下押し要因となっています。』
ほう。
『このように昨年の貿易収支の赤字には様々な要因が複合的に作用していると考えますが、このうち、震災に伴う供給制約やタイ洪水の影響については一時的なもので今年以降の輸出入には影響を与えないと考えています。』
『こうした中、先頃発表された貿易統計速報によれば、1月の日本の貿易収支は▲1.5
兆円となり、1979年以降で最大の赤字額となりました(図表3(2))。これには、今年はアジア地域の春節が2月から1月へとずれたことによる輸出の落ち込みという特殊要因が大きく影響しているとみています。』
なるほど。
『この貿易収支に、国際間のサービス取引にかかる費用の受取および支払を計上するサービス収支、海外からの利子・配当金等の受取・支払等を計上する所得収支、政府の食料援助など無償資金協力や国際分担金などを計上する経常移転収支の3項目を加えたものが経常収支です。2011年の経常収支については、貿易収支の赤字を主因に大幅に減少しましたが、黒字を維持しています(前掲図表3(1))。これは、これまでの直接投資や証券投資からの利子や配当などの増加によって、所得収支が大幅な黒字となっているためです。』
『先行きについても、約250 兆円にのぼる対外純資産が存在するもとで、所得収支の黒字が維持されていく可能性が高いと考えます。したがって、貿易収支の赤字が急速に拡大していかない限り、経常収支の黒字トレンドは、当分の間、変わらないものとみています。』
ということで、あと金融政策の話とか、成長戦略の話とかもあるのですが、そんなに変わった話をしている訳でも無いので、本命は記者会見という所ですな。