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2011/11/30
お題「3MTB入札です/名古屋の総裁講演&会見」
これだけ順繰りにチャプター11逝きになる米国の航空業界にリースとかローンとかで与信する人って馬鹿なの?死ぬの?とつい思ってしまうのですが、あの破産祭り(これで大手全部チャプター11逝きになったんですよね)のシステムはおじちゃん素人なので正直よーワカランチ会長である。
○今日は3MTB入札であるという雑談
さて今日は6000億円増発(償還額から見ると9000億円増発)となる3か月TBの入札でございます。まあ正直言って今回の増発はある程度予想されていた話とはいえ、いきなり6000億円増発とは為替介入(しかもどう見ても無駄打ちのバシー海峡状態)の影響テラデカスという感じでありますし、ちょうど足元では財政問題が日本にも影響したかのような長期金利上昇(まあ実際は財政懸念とかで売られている訳では無くて単に諸々の要因で売られている中でちょうど「買わない理由」に使われているだけに過ぎないと思いますけど)という大変に素敵な状況になっておりますので、この際ちょっと金利上がって世の中少しはヒヤッとしろやとか思うのでございますが・・・・・・・
まあこれが世の中というのは皮肉に出来ているもんで、足元で債券が何となくやや売りというか売りに対して買いがイマイチさんという状態になっている結果なのか、それとも海外要因なのかはよーワカランチ会長ですけれども、まあともかく超足元の所には金が大量流入状態になっておりまして、GCレートは下がるわ(たぶん0.10%割れ)短国、特に年内償還とかの短い短国は絶賛売れ売れでこれまた0.10割り込む水準まで買い進まれる(つーか玉が無い)わと大変に素敵な状態になっておりまして、今日の3MTB入札は増発しても無問題モードと思われる、つーか下手したら前週の入札よりレート下がるかも知れませんなあというような雰囲気も醸し出すという状況。
いやまあ何ですな、別にまあどっちでも良いと言われてしまえばそれまでなんですけど、昨今の財政問題をめぐる政治家の皆様の能天気モードを見ている金利系の市場関係者の端くれと致しましては、もうちょっと日経あたりがネタにする位の金利上昇(そんなに派手に上がる必要も無いですけどね)でちったあ警鐘ならして欲しいっすけど世の中なかなか上手くいきませんなあ(笑)。
○名古屋での総裁講演と会見から少々(といいつつ引用増量企画)
総裁講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko111128b1.pdf
総裁会見
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1111e.pdf
まずは総裁講演から
・景気の先行き見通し関して
『もっとも、世界経済の牽引役を務めてきた新興国の高い成長ポテンシャルを踏まえると、適切な政策対応によりソフトランディングが図られるという条件付きではありますが、海外経済の成長率も新興国に支えられる形でいずれ再び高まっていくと考えられます。また、国内では震災復興関連の需要も徐々に顕在化していくと考えられます。このため、わが国経済は当面減速した後、緩やかな回復経路に復していくというのが現在の私共の中心的な見通しです。』
というのはまあ基本的に変わっていませんが、だんだんこの「新興国の成長」という見通しに留保条件が付くようになっているのは中々香ばしい感じでありまして、シナリオがどう見ても怪しくなっています本当にありがとうございましたという所でしょう。復興需要に関しても政府があの有様ですし・・・・・・
『このように日本経済はやや長い目でみて物価安定のもとでの持続的成長経路に復していくと考えていますが、こうした中心的な見通しには様々な不確実性があることは十分認識しています。』
「十分認識しています」とここの表現も強くなっているのは相手が名古屋の経済界ということでその辺を強調しておかないとタコ殴り状態になるでしょうというのもあると思いますが、まあリスク認識を強めているというのは把握した。
でまあ当然ながらその一番手は欧州債務問題なのですがその説明はスルーして結論。
『このように、欧州では、財政に対する信認の低下が金融システムの安定性に対する懸念を高め、それがさらに実体経済に影響を与えるという形で、財政、金融システム、実体経済の負の相乗作用が働き始めています。そして、このような欧州の経済・金融情勢は世界の他の地域の景気にも影響を与えています。』
という認識で何で新興国経済が今後高成長に復帰するのか良く判らんですがまあそれはそれとして。
『欧州のソブリン問題は夏場以降の円高の原因ともなっています。世界経済の不確実性が増大する中、グローバルな投資家はリスク回避姿勢を強めています。グローバルな金融危機はいつも外貨危機という形で顕在化します。この点、日本は後から申し上げるように中長期的にみて様々な難しい課題に直面しているとはいえ、経常収支が黒字であることや、そのことを反映して対外資産・負債のバランスが大幅な資産超過であることもあって、円は相対的に安全な資産と認識され、買われやすい地合いとなっています。』
はあそうですか。
・「追加緩和は円高対応」に表現が限りなく近くなっているのがこれまた香ばしい
で、その次の政策運営に関する部分ですが。
『日本銀行では、こうした海外経済の減速や円高進行の下、先行きのわが国の景気減速やそのリスクに対する警戒を強め、8月と10月の2度にわたって金融緩和の強化措置を講じました。』
とあるのですが、その次の章に『4.円高への対応』というのがありまして、そこではこのように表現しています。
『結論から申し上げますと、日本銀行は、海外経済の先行きを巡る不確実性が大きい現局面においては、円高が輸出や企業収益の減少、企業マインドの悪化などを通じ、景気の下振れ要因となる可能性には十分な注意が必要だと考えています。日本銀行が夏以降、2回にわたって金融緩和に踏み切ったのも、正にそうした判断に基づくものです。』
ということで、円高を金融政策と直接リンクするような言い方を避ける傾向にある白川総裁としては結構この講演では「円高対応」を強調するような表現になっているなあと思うのでありまして、まあ先ほども申し上げましたが講演の場所が円高絶賛直撃中と思われる名古屋ということで「円高対応していますお」とアピールする必要性があるっつー要因もあるとは思いますが、従来よりもちょっと「円高対応」を強く主張した感じになっているのが何か味わいがございます。
・そして金融政策の宣伝キタコレ
さっきの金融政策に関する話の続きですがね。
『日本銀行の金融政策については様々なご意見を頂くことが多いので、以下では現在の金融政策の枠組みに立ち返って少し詳しくお話をします。ご承知の方も多いと思いますが、日本銀行は昨年10月に採用した「包括的な金融緩和政策」という枠組みに基づく強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3つの措置を通じて、日本経済がデフレから脱却し、できるだけ早く物価安定の下での持続的成長経路に復帰するために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けています。』
>日本銀行の金融政策については様々なご意見を頂くことが多いので、
>日本銀行の金融政策については様々なご意見を頂くことが多いので、
>日本銀行の金融政策については様々なご意見を頂くことが多いので、
・・・・・・・・(^^)
でまあやってることの説明はスルーしてその次の緩和的環境の波及についての話がだいぶ泣けます。
『それでは、このような強力な金融緩和政策はどのようなルートで経済に影響を及ぼすのでしょうか。この点を議論する際には、金融政策の波及経路を2段階に分けて考えることが必要です。』
へえへえそうだっか。
『第1段階は、金融政策から金融環境への波及です。すなわち、企業や家計が借入を行う際の金利水準や資金の調達可能性が、どの程度緩和方向に変化しているかということです。第2段階は、金融環境から実体経済への波及経路です。すなわち、企業や家計が緩和した金融環境を活用して、投資や支出をどの程度増やしているかということです。』
でまあ皆様予想通りでしょうが(^^)、第1段階は緩和が進んでいるけど第2段階に進んでいませんがな、という話をするのでありまする。途中を割愛しまして。
『他方、先ほど申し上げた金融政策の効果波及の第2段階をみますと、残念ながら、極めて緩和的な金融環境にもかかわらず、民間の経済主体が投資や支出を積極的に増やしていくという動きには繋がっていません。日本銀行の、そして日本経済にとっての悩みは、正にこの点にあります。』
で、日銀は第1段階はちゃんとやっているお!という泣ける説明が続く(^^)。
『このような状況への対応の仕方として、日本銀行がもっと積極的に行動すれば、やがては経済活動が刺激される筈であるという考え方があり得ます。』
ほう。
『しかし、各種の金利、特に民間経済主体にとっての実際の資金調達金利をみると、わが国は先進国では最も低い水準となっていますし、足もとも緩和方向の動きが続いています。量的な指標という点で、中央銀行の供給する通貨であるマネタリーベースや、家計や企業が保有する通貨であるマネーストックの対名目GDP比率をみても、日本は米国やユーロ圏を大きく上回り、先進国で最大となっています。』
宣伝キタコレ。
『米国はリーマン・ショック後に資金供給量を大幅に増やしましたが、日本は金融危機をより早く経験したこともあって、そうした積極的な資金供給をいち早く行っています。そのため、日本銀行の積極姿勢が目立ちにくくなっているのかもしれませんが、マネタリーベースの対名目GDP比は、米国が現在到達している水準には既に2002年に到達し、ここ数年さらにこの水準が上がっているというのが客観的な事実です。』
まあそれより演技の仕方の問題のような気はするんですがね。ただまあバーナンキ議長みたいな演技も結局のところ効いているのか効いてないのかというと、毎度毎度その場では効いているように見えまして十分に効果を挙げているように見えますが、よくよく考えたらQE1やってQE2やった挙句にまた何かやるのか的な話になるというのはトータルで結果見た場合にどうなんでしょという気もせんでも無い。つーかQE何とかを何度もやっているとそのうち「あれ?」と幾ら物忘れの激しい市場関係者でも思うようになってくるのではという懸念がありまして、まあそうならないようにするのと、間違ってそうなってしまった場合というのが正念場なんじゃないですか、と思うのであります。
でまあ昨日引用して今日も続きをやる予定が段々時間が怪しくなってきている11月FOMC議事要旨で議論されているように「コミュニケーションポリシーの進化」を検討しているというのは、FRBもさすがにその辺りは先刻ご承知で、適当に目先を変えておかないと市場の期待コントロールが難しくなるという認識があるんじゃないかなあとも思うのでありました。
と話が逸れましたが後は会見から少々。
・財政バランスに関して
直近の国内長期金利上昇に関して。
『(答) いつも申し上げている通り、金融市場の日々の動きについては、コメントを差し控えたいと思います。先ほどの質問に対する答えと多少重複しますが、現在の国内の金融市場の動きは、当然ながらその背後にある国際金融資本市場の影響を受けます。そしてその国際金融資本市場は、欧州ソブリン問題を背景に緊張の高い状態が続いています。長期金利について、日々の動きを離れて──私がいつも強調していることですが──、市場参加者の予想は変化し得るものだということです。』
これは市場の中の人的には同意なのですが、中々市場の外の方々にはわかって頂けない部分ですな。
『わが国の現在の財政の状況は大変厳しいわけですから、わが国が財政バランスの改善に向けてしっかり取組みを行っていくことが大事だと思っており、そのような大きな取組みがなされることを期待しているということです。』
まあさいですな。
・欧州問題の波及に関して
という質問に対して。
『(答) ご指摘の通り欧州諸国の国債の金利は上昇傾向にあります。これがどのような形で実体経済に影響を及ぼすのかについては、先程少し詳しく申し上げたところですが、欧州経済への影響についてみると、金融市場の緊張が金融機関の貸出行動を通じて域内の経済活動を抑制するという方向に作用することが一番大きなルートであろうと思います。それから世界経済へは、今申し上げた欧州の経済の下押しに加えて、金融市場を通じる様々なルートを通じて影響していくということです。』
その上直近では資本規制の問題とか流動性規制の問題とかについて、欧州債務危機の影響で他の国の政策当局が強めようとするという動きが起きそうなのが問題のような気がするのです。
『どの程度深刻かということについては、なかなか数量的に評価することは難しいですが、私どもとして一番大事なことは、リーマン・ショックのような金融市場全体が大混乱するという事態は絶対に避けなければならないと思っています。そういう大きな条件が確保されるもとで、欧州の各国が、既に合意されている様々な取組みをしっかり進めていくことが必要だと思っています。
「今後、どのようになるのか」というご質問でしたが、私どもは政策当局者であり、評論家ではありませんので、そうした深刻な事態に陥らないように取組みをしっかり進めていく必要があると思っています。』
では金融政策の第2の波及経路につきましても・・・・・・(−−)
・欧州問題の新興国への波及に関して
『(答) 新興国といっても、地域・国によってかなり状況が違っていると思います。アジア、ラテンアメリカ、それから欧州の新興国の3つを取り上げても、違いがあると思います。丁寧に説明しようとすれば、それぞれの地域毎に説明しなければなりませんが、まず一括して結論を申し上げると、不確実性はまだ高いと思っています。』
ほほう。
『新興国の経済の減速の原因を考えてみると、1つは中央銀行が安定成長を実現するために行ってきた金融引締めの効果が出てきているということです。また、もう1つの理由としては、既往の国際商品市況の上昇に伴って国内のインフレ圧力が高まり、それが実質的な購買力を下げ、減速をもたらしているということです。そこに、今度は欧州経済、世界経済の減速が加わってきているわけです。』
なるほど。
『減速それ自体は、持続的な成長を確保する上では、必要なことですが、それが行き過ぎるかどうかという点については、現状では両方の可能性があると思います。行き過ぎて減速が強くなるという可能性もありますし、程良く減速する中で、新興国はまだ政策転換の余地がありますので、それを使って経済が成長するという可能性もあります。そういう意味では、両方の可能性を意識しながら経済を点検していきたいと思っています。』
そうっすかねえ。
『地域別にみた場合、先程申し上げた 3つの地域の中では、欧州の金融機関の影響を相対的に受けやすいのは欧州の新興国であると思いますので、欧州の新興国の動きと他の地域の新興国では、少し
ニュアンスが違うと思っています。』
いやあのたぶん金融機関の資産圧縮の動きがアジアとかラテンアメリカにも影響して来ると思うのでございますが・・・・・・・・
ということで、何かこの辺りの説明を見ると、現在の「新興国や資源国の高成長が復活して世界経済を牽引します」というシナリオがどう見ても楽観です本当にありがとうございましたという風情ではございますが、まあ日銀におかれましてもその辺は懸念している向きはあるでしょうし、とりあえずこの旗今は上げておくけど下げるタイミングが来たらあっさり下げそうな感じはするなあとか思うのでありました。
#すいませんすいませんFOMC議事要旨ネタ時間が無いので明日
2011/11/29
お題「少々雑談およびFOMC議事要旨より」
NY株は爆上げですが債券は何か夜見てた水準よりも低下して前週末(というか感謝祭前)比カワランチ会長とはどう解釈すべきなのでせうか???
しかしモーサテのコメントの人(株系の人と為替系の人)が今朝は2名続けて「ECBが金出せ」と言ってるんだがそれは筋違うがな(それをするというのは財政マネタイズでユーロという通貨そのものが崩壊する危険が高まるじゃろうよ)と思うのですけどねえ。財政出す話とマネタイズの話は峻別して欲しいんですけどねえ・・・・と思ったら今朝の某コメンテーター(名前を出すのは控える)はECBが国債大規模購入する量的緩和しろとか財政マネタイズと流動性供給の区別がついてねえ話をドヤ顔でしてやがるわorzorzorz
○まあ雑談雑感
・欧州の天地は複雑怪奇につき
昨日の債券市場ちゃんでは後場になるとIMFによる欧州債務問題対応がどうのこうのという件がやっぱりダメじゃん的なニュースに反応したのかどうか知らんですけれども、引け際にかけて上昇して先物は142円まで戻ったのですが、最後に下げた上にイブニングセッションになると米債が売られていた事もあるのかまた下げるとか中々不思議な展開。
このあたりは午後に出てたニュース(最初見たときは英文ヘッドラインだったような気がするが)。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aH6ssx3az4L8
IMF:イタリア救済プログラムの協議していない−日本も否定
『11月28日(ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)は、イタリア救済パッケージについて同国と協議していないと表明した。また、日本の当局者は主要7カ国(G7)の間でそのような協議はないと述べた。』(上記URLより)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=avD.PxGodxOY
日本政府高官:G7として議論してない−6000億ユーロのイタリア支援
『11月28日(ブルームバーグ):日本政府高官は28日、国際通貨基金(IMF)が6000億ユーロ(約62兆円)のイタリア支援を準備していると一部で報じられたことについて、主要7カ国(G7)としては議論していないと述べた。同高官は、日本としてもそういったことは聞いていないとし、イタリアがそれを望んでいるのかも不明だと語った。IMFのイタリア支援については同国紙スタンパが伝えた。』(上記URLより)
と思ったら人が寝てる間にこんなのが出てますが、そらまあ「可能性を完全に排除」はせんわなとは思いますが・・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aPNrEmL9Uzfw
ドイツ財務相:ユーロ共同債の議論は「安定同盟」の達成後に可能に
『11月28日(ブルームバーグ):ドイツのショイブレ財務相は28日、ユーロ共同債に関する議論は財政規律の強化が確実になってからだと発言し、可能性を完全に排除はしない考えを示唆した。』(上記URLより)
まあ何ですな、とにかく欧州関連のニュースは飛ばしなんだか本当なんだか良く判らないネタが飛び交って困る上に、まあ欧州発の報道については、その報道している機関がそもそも信用ある所なのかエエカゲンな所なのかというのもなかなか土地勘が無いもんで(英仏独ならまだしも、個人的にはイタリアとかさっぱりわからん)そもそも出ている報道が信頼に足る物なのかどうかがワカランので反応するのも困るという所でございまして大変に遺憾の極みでございますな、うんうん。
#つーか昨日のIMF融資ネタの元である「スタンパ」ってイタリアの新聞は信用に足るものなのかとか、イタリアに土地勘無いからさっぱりワカラン(汗)
でですな、何か知らんのですがここもとイブニングセッションになると妙に先物売り叩く人がいるように見えますし、まあそれ以前の問題として東証のアホウが無駄にシステム変更とかしやがったのも影響してるのか上げ下げが妙に先物主導みたいな形になっているような気がする次第で、全くもって東証のシステム変更ちゅうのは間が悪いわとか思うのでございますが、暫くこんな感じなんですかねえ。
・日銀赤字決算キタコレ
第127回事業年度(平成23年度)上半期財務諸表等について
http://www.boj.or.jp/about/account/zai1111a.htm/
財務諸表そのものは上記URLにリンクあるから見たい方はどうぞという感じでございますが、概況はリンク見なくても説明がございます。
『損益の状況
平成23年度上半期の損益の状況をみると、経常利益は、▲910億円の赤字(経常損失)となった。これは、為替円高に伴い外国為替関係損益が大幅損超となったことや、保有株式の減損に伴い金銭の信託(信託財産株式)運用損益が損超となったことを主因とするものである。』
保有株式減損処理キター。
『特別損益は、指数連動型上場投資信託取引損失引当金及び不動産投資信託取引損失引当金の積立てを行ったこと等から、▲433億円となった。』
基金買入のETFとJ−REITの引当キター。
『以上の結果、税引前当期剰余金は、▲1,344億円(税引前当期損失金)となり、法人税、住民税及び事業税を差し引いた後の当期剰余金は、▲1,362億円の赤字(当期損失金)となった。』
ということで当期損失になったのですが、昔の株式買入とか直近のETF買入の影響で赤字っておられますが、これはまあリスク性資産の買入やってるからシャーナイナイな所でありまして、まあ景気が良くなったら値段も上がるでしょうという事ですので、日銀様におかれましては国債買入じゃなくてETFの買入を拡大して頂きまして、「株価が回復しないと日銀の赤字が減らないお」という意識をぜひ共有していただきたく存じますな(ニヤニヤ)。
#つーか一部で言われてる外貨資産大規模購入するくらいならETF買うだろ常考とか思うんすけどねえ、大体からして外貨資産ってユーロ圏ではソブリンも怪しいのに何買いますねんと思うのですけど、関税抵当でも取るなら話は別だがどこの19世紀だよというところで(^^)
○11月1〜2日のFOMC議事要旨から少々
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20111102.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20111102.pdf
冒頭の『Monetary Policy Strategies and Communication』は今後のFEDのコミュニケーションポリシーを見るうえで示唆が多いので読むのだ。
『The staff gave a presentation on alternative monetary policy strategies,
and meeting participants discussed those alternatives as well as potential
approaches for enhancing the clarity of their public communications. No
decision was made at this meeting to change the Committee's policy strategy
or communications. 』
ということで、このコーナーは「金融政策のコミュニケーションポリシーを今後どうするのか」というお題であります。以下いくつかのテーマが出てきてpros&consについての話とかもあるので参考になります。昨日まで引用しておりました(大汗)バーナンキ議長の10月18日の講演でもファイナンシャルスタビリティーの話をする中で金融政策のコミュニケーションポリシーおよびそのツールについての話があって、まあそこでの論点と重なる部分もあるので読んでて「ほほう」と思うのでありました。
・明示的なインフレーションターゲットの設定について
『It was noted that many central banks around the world pursue an explicit
inflation objective, maintain flexibility to stabilize economic activity,
and seek to communicate their forecasts and policy plans as clearly as
possible. 』
『Many participants pointed to the merits of specifying an explicit longer-run
inflation goal, but it was noted that such a step could be misperceived
as placing greater weight on price stability than on maximum employment;
consequently, some suggested that a numerical inflation goal would need
to be set forth within a context that clearly underscored the Committee's
commitment to fostering both parts of its dual mandate.』
明示的なインフレーションターゲット(と言ってもバーナンキ議長講演で言う「フレキシブルターゲッティング」なのですけど)を設定する場合、FRBのデュアルマンデートという観点からした場合に、インフレ目標に傾斜した政策運営を行っていると誤解される惧れがあるという指摘があって、数名(some)の委員は「数値的なインフレ目標を設定する場合には、もう一つのマンデート(つまり雇用)に対しても何らかの目標を同時に設置すべきではないか」と指摘しているとのことで。
・FOMCが予想する将来の政策金利パスを示す件について
『More broadly, a majority of participants agreed that it could be beneficial
to formulate and publish a statement that would elucidate the Committee's
policy approach, and participants generally expressed interest in providing
additional information to the public about the likely future path of the
target federal funds rate. 』
フォワードガイダンスの話をしてるのかなとも思ったのですが、その先を読むとちと話が別。
『Chairman asked the subcommittee on communications to give consideration
to a possible statement of the Committee's longer-run goals and policy
strategy, and he also encouraged the subcommittee to explore potential
approaches for incorporating information about participants' assessments
of appropriate monetary policy into the Summary of Economic Projections.』
BOEがインフレーションレポートを作成する際に、「現在の政策金利の場合」というのと「市場が織り込む将来の政策金利パスの場合」というのはありますが、SEPで将来の予想政策金利パスを示すってのはどうも「検討課題」という事ですから、もしかしたらそのうちSEPで思いっきりその辺の「見通し」を示すってえ話になるのかも知れませんけれども、これはあたくし個人的な直感で申し上げますと、クレディビリティーの毀損のリスクがあるのであまりお勧めできない希ガス。
つまりですね、市場が勝手に織り込んでいるパスを使う分には別にそれが後日外れになっても別に出した人がどうこう言われることは無いと思いますが、SEPで示すようなスケールの期間における政策金利パスなんてうっかり「我々はこう思う」とか示しちゃうと、物が政策金利という後から誰でもすぐわかってしまう話ですから、後でそこと違う政策アクションをしないといけなくなった場合に、FEDの信認に傷が付く可能性があるんじゃないかと。
そもそもこんな話を出そうというのは、要するに政策金利パスを市場に織り込ませようとしている、という事ですけれども、まあ経済見通しだってそう簡単に当らないのに政策金利パスをマニピュレートしようというのはそらFEDの傲慢って奴じゃないのかねと思うのですけど、どうも(金融市場のレビュー部分でその話があるのですが)今回のFOMCでは「ツイストオペの効果により長期金利が低下した(ドヤ)」というレビューもしておりまして、何かFOMCメンバーは「市場金利はFRBがコントロール可能だわウェーハッハッハ」と言う意識になってるんじゃねえかとそれが気になるのでございました。
・フォワードガイダンスの「コンディショナルコミットメント」について
話が脇に逸れましたが続き。
『Committee participants shared their views regarding the potential merits
and pitfalls of making conditional commitments regarding the future course
of monetary policy.』
現在の金融政策に対する「コンディショナルコミットメント」についてのメリットと落とし穴について・・・・なのですが、この「コンディショナルコミットメント」というのは何ぞやという話でして、この先(今日は時間が無いので後回しでどうもすいません)で「フォワードガイダンスの先行き期間を更に長くする」という件についての話をしているので、これはいわゆる「条件付きコミットメント」という話になるのかなあとか思ったのですが、間違ってたらゴメンナサイなのでその辺ご指摘賜りますと誠にありがたく存じますので教えてジェネラル!
『As noted in the staff briefing, economic theory and model simulations
suggested that a policy strategy involving such commitments could foster
better macroeconomic outcomes than a discretionary approach of reoptimizing
policy at every meeting, so long as the public understood the central bank's
strategy and believed that policymakers would follow through on those commitments.
』
スタッフのブリーフィングによりますとこの「コンディショナルコミットメント」については経済理論やモデルによるとマクロ経済により良い結果を与えるでしょうという話ではあそうですか(棒)という感じなのですが、まあこの件に関しては先ほどああでもないこうでもないと申し上げたのと同じ理屈でそんなに話は簡単なものではなく、一旦見通しを外してしまった場合に「梯子を外された」形の金融市場がその後FEDの出す「コンディショナルコミットメント」を信用してくれるのかというリスクがあるので、あまりやり過ぎない方が良いと思うのですけどね。
『Some participants noted that conditional commitments might be particularly
helpful in providing additional accommodation and mitigating downside risks
when the policy rate is close to its effective lower bound, because a central
bank can commit to a shallower interest rate trajectory than investors
would expect if policymakers followed a purely discretionary approach.』
数名(Some)の委員はゼロ金利制約下において将来の金利パスへのコミットメントを行う事は追加的な緩和効果を与えると指摘してて、コミットメントの強化をしましょうという話をしているようで。
『However, many pointed out that the implementation of such a strategy
could pose substantial communication challenges and that the benefits would
be diminished if the strategy was not fully credible.』
多く(many)の委員は「ストラテジーが十分に信頼されていない場合にはそのメリットが消滅するというコミュニケーションポリシーとしての難問が起きる」とか何とか言ってまして、ここの部分をあまり強化し過ぎるのもどうかという話が出ていますので、この時点ではフォワードガイダンスの再強化(さっき書いたように期間の長期化とかではなくて何かの紐付けコミットメントかと思われます)というのは優先順位低いのかな(ただしこの後欧州大火災になっているので状況は変わっている可能性はありますが)という所ですな。
『Indeed, one participant suggested that additional purchases of longer-term
securities would be a clearer and more effective way to provide additional
monetary accommodation when the federal funds rate was near its lower bound.』
そんな事より長期債買おうぜ!という人が一人いるわけですがどう見てもシカゴ連銀エバンス総裁です本当にありがとうございました。
#ということで更に続くのですが今日は時間の関係でここで勘弁
2011/11/28
お題「雑談ネタ少々/米国の今後の金融監督や規制について注意が必要かと(バーナンキ講演ネタ)」
縁故大阪の引受金融機関におかれましてはご愁傷様としか申し上げようがございません選挙結果でございますが、政策が超越部分均衡の人たちへの人気の高さを見ますとまだまだ民主党政権如きでは懲りない、という事なのでしょうなあ。いやまあどうせ勝つわなあとか思ってましたが。
大阪府って橋本知事の下で借金減ってない所か増えているんですけどこれで大阪都構想とかやって財政が良くなるとは到底思えない中で大阪都構想って何の意味があるんでしょ、つーか大阪都を作ることに何の意味があるのかまるで判らんのだが大阪市民でも府民でもないからオラシラネ(こら)。
#そして公共放送によると早速みんなの党が大阪維新が国政進出の際には連携したいとか仰せのようでもう何だかねという感じでありますorzorz
つーことでね、この前も何か悪態書いたと思うのですけど、最近はもう部分均衡の究極みたいな政策ばっか出てきて全体のバランスを考えないネタばっかりやたらクローズアップされるのが問題だと思っているのですが、その遠因は小泉さんの郵政選挙にあると思っていまして、まあ当時から(過去の駄文読んで頂けりゃ判りますが)郵政選挙に対して否定的だった時にそこはかとなく感じていた弊害がドンドン拡大しているのが昨今の政治状況じゃないかねえとか思うのであります(小泉さんの部分均衡は多分に演技だったんですけど今の人たちはリアル部分均衡なんですよね・・・・・)。
などと柄にもない事を書いてしまいましたがまあそれはそれとして。
○ノルウェー輸出金融公社をS&Pは5ノッチ引き下げとな
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aTmRAva3G9Kg
S&P:ノルウェー輸出金融公社を格下げ、EMTNデフォルトか検討
『11月25日(ブルームバーグ):米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は25日、ノルウェー輸出金融公社(エクスポート・ファイナンス)を投資適格級の下から3番目となる「BBB+」に格下げし、一段の引き下げ方向で見直しを続けると表明した。事業縮小の決定と政府の支援引き揚げがユーロ市場ミッドタームノート(EMTN)プログラムの条件に対してデフォルト(債務不履行)に相当しないかを検討するという。』(上記URLより)
・・・・・・・あららららという感じですが、ノルウェー政府がマジでとぼけたら日本政府はマジで外交問題にすべきで北海油田とノルウェーの漁業権を差し押さえる位の勢いで頑張って貰わんとと思うのでありますが、まあそれ以前の問題としてノルウェー政府が輸出金融公社の問題について何か煮え切らないと判断されていることが格下げの背景にある訳でして、これって従来の「政府関係機関」に対しての信用判断に対しても影響が起こる話になってくると思うのでして、只でなくさえ欧州債務問題でソブリンに対する信用ってどうなのよというのが(ギリシャみたいなアレな国は兎も角として)それなりに中核国と言われるような国に延焼の雰囲気を醸し出している中で、じゃあお前「(クレジット的な意味での)安全資産」って何よという話にも発展する問題ではないかとか懸念する次第でありまして、いやまあ杞憂だと良いのですけどねえという所でございます。
○何か良く判らん事案ですな
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2011/2011/20111125-1.htm
セントラル短資証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
『セントラル短資証券株式会社(以下「当社」という。)の使用人は、当社が当社の顧客であるA社から平成22年6月15日に買い付けたB社発行の社債(以下「B社債」という。額面600百万円)に関する、職務上知ったA社の注文の動向を含む取引情報に基づき、自己の職務上の地位を利用して、C証券会社に開設していた当該使用人の配偶者名義の口座を利用して、同日、当該使用人は自己の計算によりB社債(額面600百万円)を買い付けた。』(上記URLより)
・・・・・・・・・何かここの説明を見ただけで「????」なんですけど、業者間売買でのブローキングにおいて買い側が「顧客口座を利用して購入」とか、そもそもA社って何で売ったのよとか(金曜の夜にブルームバーグニュースで本件の流れをもうちょっと細かく伝えてましたけど)何か意味判らん点の多い事案ですなあ、と思ったのでクリップしたまででありますが何とも不可思議。
○すっかり忘れていたのですが1か月前のバーナンキ講演の続き
The Effects of the Great Recession on Central Bank Doctrine and Practice
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.pdf
この講演の後半である『Financial Stability Policy』に行く前に他のネタ続出でスルーしていましたがもうだいぶ出遅れなので簡単に(追記があったらどこかの土日でこっそりアップしておきます)。
『Even as central banks were innovative in the operation of their monetary
policies, they were forced to be equally innovative in restoring and maintaining
financial stability.』
ということで、今次金融危機を経て「中央銀行としては金融の安定も物価の安定と等しく重要な政策である」という話をしていた続きにこのコーナーが来るのですが、まず最初にバーナンキ議長は「流動性供給」の重要性の説明をしています。
『Serving as a lender of last resort--standing ready in a crisis to lend
to solvent but illiquid financial institutions that have adequate collateral--is,
of course, a traditional function of central banks. Indeed, the need for
an institution that could serve this function was a primary motivation
for the creation of the Federal Reserve in 1913.』
ということでLLRに関する話をしていますけど、バーナンキ議長もここで言ってるようにLLRとしての中央銀行の供給する流動性の基本は「solvent
but illiquid」な金融機関に対する供給でありまして、そーゆー意味合いからすると(ここでの話とは関係ないですが)ECBはLLRとして周縁国国債を無限に買えとかいう議論はそもそも中央銀行のLLRとしての意味を取り違えた議論であるという話(財政のおかしい国のマネタイズしろというなら筋は通るが、そう言った瞬間に暴論なのが明らかになります罠という事で)ではございますな。
んでもってその後はdiscount windowの話とかをしておりまして、その次にはクレジット市場への介入の話になります。
『To help stabilize the financial system and facilitate the flow of credit
to households and businesses, the Federal Reserve responded to the dislocations
in funding and securitization markets by dramatically increasing the amount
of term funding that it provided to banks, establishing new lending facilities
for nonbanks, and providing funding to support the operation of key markets.』
つまり、整理すると連銀貸出のような制度はLLRとしての流動性供給、クレジット市場へのファンディング供給はクレジットチャネルの円滑化としての流動性供給という話でございますわな。で、また途中を飛ばしまして、
『One of the lessons of the crisis was that financial markets have become
so globalized that it may no longer be sufficient for central banks to
offer liquidity in their own currency; financial institutions may face
liquidity shortages in other currencies as well.』
今次金融危機での教訓の一つとして、マルチカレンシー(というか米国以外でのドル)での資金供給が必要である、という事が挙げられると指摘していまして、まあこれってまさに今も必要な話(つーかやってますが)ですにゃあとか思うのであります。で、その辺のスワップラインに関する説明をしていますがそこは割愛してその次へ。
『As lender of last resort, a central bank works to contain episodes of
financial instability; but recent events have shown the importance of anticipating
and defusing threats to financial stability before they can inflict damage
on the financial system and the economy. 』
ということで、原文ではbeforeがイタリックになって強調されていますが、金融の不均衡について、それが金融システムや経済に与える前に対処する必要があるという話をしていてキタコレとか思うのですけれども、じゃあ所謂BISビュー的な話が出るかと言いますとそういう訳では無くて、あくまでも金融監督によってそれを行うべきという話がFRB的な意味での「マクロプルーデンス政策」という話を以下行っています。つまりこの続きですけれども。
『Among these benefits are the facilitation of close and effective information
sharing between supervisors and the providers of backstop liquidity, especially
during crises; the ability to exploit the substantial overlap of expertise
in the making of monetary policy and financial stability policy; and the
usefulness of the information supervisors gather about economic and financial
conditions for monetary policy. Appreciation of these benefits is leading
to larger roles for central banks in financial supervision. 』
ということで、中銀の役割として金融監督の拡大が行われている事が金融不均衡の望ましくない拡大を抑制するという話をしています。以下は各国の事例なので割愛して最終章の『The
Integration of Monetary Policy and Financial Stability Policies』から少々。
『As I noted earlier, in the decades prior to the crisis, monetary policy
had come to be viewed as the principal function of central banks; their
role in preserving financial stability was not ignored, but it was downplayed
to some extent. The financial crisis has changed all that. Policies to
enhance financial stability and monetary policy are now seen as co-equal
responsibilities of central banks. How should these two critical functions
fit together?』
ということで、金融政策の中で経済物価の安定と金融の安定が同じように重要で中央銀行が責務を負うとして、さてその政策をどうやって同時に実施していくのでしょうか?という話なのですが、ちょっと途中を割愛してその結論らしき部分。
『An important debate for the future concerns the extent to which it is
useful for central banks to try to make a clear distinction between their
monetary and financial stability responsibilities, including designating
a separate set of policy tools for each objective. For example, throughout
the crisis the ECB has maintained its "separation principle"
under which it orients changes in its policy interest rate toward achieving
price stability and focuses its unconventional liquidity and balance sheet
measures toward addressing dysfunctional markets. The idea that policy
is more effective when separate tools are dedicated to separate objectives
is consistent with the principle known to economists as the Tinbergen rule.』
ティンバーゲンルールを持ち出していますが、まあ要するに「異なった目的に対しては目的別に政策を割り当てるべきである」という話でして、所謂BISビューとは違う話をしていますな、という所です。すなわち、
『A leading example is the question of whether monetary policy should "lean
against" movements in asset prices or credit aggregates in an effort
to promote financial stability. In my view, the issue is not whether central
bankers should ignore possible financial imbalances--they should not--but,
rather, what "the right tool for the job" is to respond to such
imbalances.』
「lean against」ってのはFEDビューVSBISビューという話の時に出てくる用語(BISビューが「leaning
against the wind」でFEDビューが「clean up the mess」です)でして、まあここでは「資産価格の望ましくない上昇に対して(マクロ経済に作用する形での)金融政策を割り当てるのは望ましくない」という話をしています。
まあ最後の方で一応バーナンキ議長は、
『However, the effectiveness of such targeted policies in practice is not
yet proven, so the possibility that monetary policy could be used directly
to support financial stability goals, at least on the margin, should not
be ruled out.』
という話をしていますが、どうも(まだネタにしてないけど)イエレン副議長の「financial
stability」でもそうなのですが、どうも「金融の不均衡」に対して監督政策を割り当てる、という話に傾斜している感じがありまして、そーゆー意味ではFRBについてはいわゆるBISビュー的な「早すぎる金融引き締め」的な動きというのをやるとは思えませんけれども、監督の方に力点を置くというのはこれはこれで金融の動きを委縮させる方向にやり過ぎとなりそうな悪寒もする(まあ米国の場合はそうなりそうになると金融業界が頑張って押し返すのが仕様ですけれどもどこまで出来るかな、と懸念される所ではあります)のでございまして、今後は金融政策だけではなく金融監督というか金融規制の方向性や、その中身に関してどのような市場への影響があるのか、という事にも注意する必要が高まっている、という事なのではないでしょうか。
という事で何となく纏まっためでたしめでたし(^^)。で、この金融監督だの市場規制だのに関する話はイエレン副議長が先々週講演をしていましたのでそのうち続きをやりますが、先週金曜に予告編やって本編やっていない11月頭のFOMC議事要旨もこれがまた中々だったりします、とネタを片付ける前にどんどん溜まっているのは仕様です(汗)。
2011/11/25
お題「日本の財政維持可能性ネタキタコレ/山口副総裁講演、欧州債務問題への指摘」
モーサテの兄ちゃんの話っぷりを聞いているとどうもテレひがし様におかれましては補完当座預金金利を下げるとマネーが回るようになると勘違いしているのではないかと思われるのですが、そんなことはかつてのゼロ金利超過準備状態の時に実証済みではないかと思いますけど(単に金利が無駄に下がって既に瀕死の短期金融市場が完全に壊滅するだけの話でメリットデメリットのバランスが悪すぎ)ねえ。
○昨日の訂正
昨日の書き物の中で短国(3MTB)の増発ネタを書きましたが、ちょっと間違いがありましたので訂正。10月までの発行額を1回4.7兆円と書きましたけれども、正しくは1回4.8兆円でございます。つまり足元では償還のロールで暫くの間3MTBは毎回9000億円の増発(1兆ではありません)という事になります。まあ大体似たようなもんですけれども思いっきり間違えていましたので謝罪致しまして謹んで訂正させていただきますm(__)m
○ノルウェー輸出金融公社関連
火曜日にMDYが豪快に格下げした表題の機関でございますが、同公社のウェブサイトを見ますと最初にいきなり18日のリリース(昨日引用した奴です)がでるようになりましたな。うんうん。
http://www.eksportfinans.no/
The Norwegian government is assuming responsibility for the export finance
scheme previously managed by Eksportfinans
『According to the press release from the Office of the Prime Minister
on November 18, 2011, a public entity will assume responsibility for the
government-supported export credit scheme that until now has been managed
by Eksportfinans. Eksportfinans has been asked to manage the scheme temporarily
until a permanent public sector solution is in place, by 1st July 2012
at the latest. Click here to read the full press release from Eksportfinans.
www.eksportfinans.no/News/Nyhetsartikler/Staten overtar.aspx』
『The Company’s website has not been fully updated after this event, and
all information must be seen in light of this.』
で、何か投資家向け説明会を近く実施するようですが、まあそれは兎も角としてブルームバーグはこのような報道を。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920014&sid=awiyOjYitn2w
ノルウェー輸出金融公社:新たな資金調達は不要−債務返済で
『11月23日(ブルームバーグ):ノルウェー輸出金融公社(エクスポート・ファイナンス)は23日、事業縮小を進める間、既存債務の返済を目的とする新たな資金調達は必要ないと発表した。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは22日、同公社の格付けを7段階引き下げ、ジャンク級(投機的格付け)とした。オスロに本社を置く同公社は、「流動性の状況は良好だと考えている。全債務を確実に返済する意向だ。ローン債権の売却が必要になるとは見込んでいない」と述べた。ムーディーズは、同公社の発行体・優先債格付けを「Aa3」から「Ba1」に引き下げた。』(上記URLより)
ということで、まあさすがに手元流動性が潤沢で急にあばばばばーという事も無いですよという話は出ているようです。まあそもそも昨日も申し上げましたが、これまで政府関係機関扱いで資本市場でファンディングした(この前出た5年物サムライ債とかも普通にノルウェー政府関係機関扱いレートでの発行でしたし)機関の業務を政府が取り上げて(その間に色々あったにせよ)後は知らんがなというのはノルウェー政府の信用問題になるでしょという事だと思いますがどうなんでしょうね。
・・・・・・と思ったら厭債害債さんの所でこれまでの経緯に関する概要が説明されてますのでまあおまいら嫁と。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201111/article_8.html
ノルウェー輸出金融公社(Eksportfinans)
○S&PとかIMFとかが財政維持可能性に警告を
昨日は午後に連発して日本の財政維持可能性に関する話が出て、引けにかけて債券先物売られたと思ったらイブニングセッションで更に売られて142円50銭割れ水準まで下落してさあ盛り上がって参りました!!!!という感じで、今朝の日経朝刊あたりで鉦や太鼓で騒ぐのかと思ったら別にそういう話ではなかったっぽい(日経購読してないから実物見てないがモーサテの様子だと別にそ〜ゆ〜話じゃないんでしょ)っすな。
先に出たのはこっち。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=arIoRDZiAZ6s
S&Pの小川氏:格下げに近づいている可能性も−日本国債(2)
『11月24日(ブルームバーグ):米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の信用アナリスト、小川隆平氏(シンガポール在勤)は24日午後、ブルームバーグ・ニュースのインタビューで、日本の財政健全化の取り組みについて、「何も進まなければ、どんどん状態は悪くなる」とした上で、日本国債の格付けに関して「だから確かにダウングレードに近くなるというのはそうなのかもしれない」と述べた。一方で、小川氏は「今のところは悪化のペースは緩やか」とし、「今日1日すぐにどう動くという状態では今のところはない」との見方を示した。』(上記URLより)
・・・・・・・こうやって引用するとはあはあそうですかという感じですが、当然ながらヘッドラインに出ていたのは「日本の財政状況は日々悪化している」とか「ダウングレードに近づいている」というようなセンセーショナルな部分でありまして、まあ直接それに反応したのか、それとも別の要因(このニュース出る前から現物が全般的に売られ気味だったので)なのかというのは兎も角として、まあ先物ちゃん下落という感じでした。
いやまあこの話自体はそうですかねとか思うのですけれども、格付け会社のレーティングアクションって言ってみれば企業の決算発表みたいなもんじゃないのとか思うのでありまして、いちベンダーに対してホイホイとこういうフワフワとした話をするのって如何なものかという感じがする(出すなら正式に会社として公表して欲しい、という意味)のですけどね。しかもかつてと違って格付会社って監督官庁からの指定格付会社制度とかが出来ているんですから、あまり平場でこういう話(しかも何とでもとれるような言い方)をするのって開示という面からして如何なものかと思いますがね。
まあS&P的に言えば「いや指定されてるのは日本法人でシンガポールは別に日本の監督規制と関係ないですが何か?」と言うのでしょうけれども、何とも釈然としませんなあという所で。
後から出た(というか報道された)のはこちら。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ak124q.AM_Ro
IMF:日本国債利回り、突然の急上昇あり得る−悪循環に直面も(1)
『11月24日(ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)は23日にウェブサイトで公表した報告書で、日本の国債利回りが「突然急上昇」するリスクがあり、債務水準が維持不可能になる可能性があると指摘した。IMFは「より速いペースの成長による相殺効果がなければ、債務の動向は危険なほど悪化することがあり得る」とし、「維持可能性への信頼がいったん損なわれれば、当局は利回り上昇と市場の信頼低下という悪循環に直面する恐れがある」と説明。「金融システムの一段の脆弱(ぜいじゃく)化」についても警告した。』(上記URLより)
・・・・・・実物を見つけられなかったので何ともよくワカランチ会長ですけれども、何を言いたいのか良く判らんレポートっぽい気も。つーかIMFのこの手のレポートって結構トンチキな内容だったりする事もあったりなかったりという気がするんですが。
まあそれは兎も角として、第3次補正〜来年度予算という流れの中で、あまりにも政治方面から財政規律に関するユルユルというかもはやふんどし外れているんじゃないか位の声が高まるという状況に「おまいらちょっといい加減にしろやゴルァ」というのが出たちゅう所ではないかと思われる次第であります。また「財務省の陰謀」とか言い出す人が出るに1万ドラクマではございますが、しかしまあ最近の欧州債務問題のアレっぷりを目の当たりにされる中で何ぼなんでも日本の政治家連中が脳天気過ぎじゃないのかというのは別に財務省の陰謀でもなくても市場の中でおこぼれを食っている人であるあたくし的にもちょっとねえという感じがするのでありまして(じゃあ直ぐに増税するのが良いかというとそうではありませんので念のため)、何となくこういう流れになるの判るなあとは思うのでありました。
○改めて山口副総裁講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko111122a.pdf
内外の金融経済情勢と日本経済再生の課題
── JCIF国際金融セミナーにおける講演 ──
・世界経済に関して
『まず、リーマンショックの震源地となった米国では、依然として家計部門を中心にバランスシート調整が経済の重石となっており、景気回復のペースはごく緩やかなものにとどまっています。欧州をみますと、リーマンショックのあと緩やかに回復してきましたが、ギリシャなどの周縁国に始まったソブリン問題が深刻の度合いを強める中で、このところ成長率は明確に減速しています。』
明確に減速キタコレ。
『一方、これまで高い成長を実現してきた新興国や資源国の経済も、成長のペースが幾分鈍化しています。エネルギーや食料品価格の上昇によって、実質購買力が低下したことや、景気の過熱を抑制するために実施された金融引き締めの効果が現れているためです。これらに加えて、先進国経済の減速の影響も出ています。やや過熱気味であった新興国・資源国経済の成長スピードが低下すること自体は、物価安定のもとでの持続的成長を実現していく上で望ましい面もありますが、今のところインフレ圧力は十分に沈静化していません。』
減速しているけどインフレ圧力が続くとかダメダメじゃないですか・・・・・・
先行き見通しは展望レポート通りの願望レポート状態なので割愛(^^)。
・欧州ソブリン問題と経済の不均衡
今回の講演における世界経済に関する説明の本題はその次の『欧州ソブリン問題と金融経済の不均衡の蓄積』という部分以降の所である。
状況の説明部分は割愛しまして現状のまとめと考察部分を引用するだよ。
『現在、欧州において、リーマンショックのような急激な負の相乗作用が生じているわけではありませんが、財政、金融、実体経済の三者の間で、負の相乗作用が働き始めているとみています。』
負の相乗作用キタコレですが、まあこちらは既に政策決定会合などでも指摘されていますね、
で、この先が中々。
『欧州ソブリン問題の背後には、リーマンショックと本質的に共通した要因が存在しています。それは、2000年代半ばにおける緩和的な金融環境、資産価格の上昇、楽観的な成長期待などを背景に、金融や実体経済の不均衡が蓄積したことです。』
ほほう。
『米国では、証券化商品の拡大という「金融技術革新」を背景に、サブプライム・ローン等に関する金融機関や投資家のリスク認識がかなり甘くなりました。そのことが、金融緩和と住宅価格の上昇と相俟って、住宅ローンの大幅な拡大、家計部門を中心とする不均衡の蓄積につながり、結局、リーマンショックを惹き起すことになったというわけです。』
そうですな。
『一方、欧州周縁国等の場合は、「単一通貨ユーロ」の信認を背景に財政資金の調達が容易になったことに加え、将来の経済成長力や税収増に対する過度な期待もあって、財政規律が緩みがちとなりました。もちろん、この場合の不均衡拡大の主役は政府部門ですが、民間部門でも、緩和的な金融環境に支えられるかたちで、非効率な投資や過剰な雇用が行われ、生産性や対外競争力が低下しました。』
・・・・・・・!!!
『ユーロに加盟しているというだけで、政府も民間も、実力以上に低い金利で資金調達を行ない、支出を拡大し続けることは、もともと持続可能ではありません。いったん財政に対する信認が低下し、国債金利が高騰し、政府や民間の資金調達環境が厳しくなると、実体経済が落ち込み、これまでとは逆の回転が始まります。』
なるほど。まあそういうコンテクストで理解するとそうっすなという感じであります。
・・・・・まあ何ですな、あたくしのリアル知り合いならご存知かと思いますが、もうだいぶ前から「続々と貧乏国が加盟していくユーロ通貨が需給要因があるにせよどんどん強くなるのが訳わかんね」とかあたしゃ思ってはいた(でもそれ言ってたの5年以上前からずっとなので、その頃にショートしてたらとっくに爆死しておりますので自慢にも何にもならないというのは念のため申し添えます^^)のですが、まあこういう謎の不均衡というのはかなり溜まるからこそこういうお洒落な事態になるんでしょうなあとかふと思いましたです、はい。
・即効薬はありませんという当然だが身も蓋も無い指摘
次の『問題解決に向けて』って所から。
『問題を解決するための即効薬は、残念ながらありません。』
こらまた身も蓋も無いご指摘。
『不均衡の蓄積は、いわば長年の不摂生が招いた慢性病です。その治療には、時間をかけて体質改善していくことが必要となります。すなわち、財政規律を取り戻すとともに、経済成長力を高めていくことによって、借金を着実に返済し、将来再び借金をため込まないようにしていくことが、正常化への道です。』
全くその通りでございますが、何か長年の不摂生とか言われると自分の事かと思ってどうもすいませんとか謝ってしまうのは気のせいです。
『資金繰り支援や債務のリストラクチャリングなどの対応も重要ではありますが、いわば「時間を買う」政策であり、市場の信認を得るためには、将来に亘って債務を返済する能力があることを示す必要があります。』
さいですな。
『欧州ソブリン問題の解決の道筋をこのように踏まえると、欧州の実体経済や金融システムは、この先も暫く不安定な状態を続ける可能性が高いように思います。また、本日は詳しく触れませんが、米国についても、金融や経済の不均衡の後遺症を抱えているという点では、同様の性格を有していることに注意が必要です。』
・・・・・・中期的に見て先進国経済の成長力は高まりませんですかそうですかorz
ということで、まあその後に日本経済再生の為に成長力の強化が云々という話が続くのですけれども、その辺はまあ既に皆様ご案内の内容かと存じますので華麗にスルーして、昨日も引用しましたが財政に関する部分を再掲しておきますね。
『以上、日本経済の成長力強化の方向性についてお話ししてきましたが、これとも関連する重要な課題は、財政再建です。日本の政府債務残高は、他の先進国と比べても、非常に高い水準にあります。しかし、これまでのところ、金融資本市場に深刻な影響が及ぶ事態には発展していません。』
『もっとも、欧州ソブリン問題の例をみてもわかるとおり、一国の財政に対する市場の見方は突然に変化します。従来「安全資産」とみなされていた国債が、非連続的に「危険資産」に変わるリスクは常にあると言っても過言でないと思います。』
市場の人的には同感なのですが、この辺の話を経済お勉強系の人とすると「じゃあ具体的にどのような水準になると変化するのか」とか定量的なアプローチ突っ込まれて困るのですよね。いや正直言ってそういうのって「世の中(まあ市場と言っても良いのですが最終的には世の中である)の見方によってはその閾値は変化するので何とも」としか申し上げようがなくて、そうなると「それじゃ対策もへったくれもないじゃないか」という話になって終了しちゃうのが残念無念な所。定性的にどうのこうのって話っていうのは(それこそテールリスクって奴ですから)定量化し難いだけに実に扱い難い話ですわな、と思います。
#まあテールリスクが定量化できないからこそ経験値による何となく嫌な予感とかいうようなものを持っている年寄りの存在価値があるんですけどね(汗)
と、話がそれましたがその次。
『それだけに、市場が落ち着いているこの時期にこそ、財政再建に向けて着実に歩を進めていくべきであると考えます。先ほど申し上げたような取り組みによって日本経済の成長力を高めていくことは、税収の増加などを通じて財政赤字の削減につながります。また、日本の税制や社会保障制度が、少子高齢化に適応した持続可能なものへと改革されていけば、家計の将来不安が低減することなどを通じて、景気の自律回復力がサポートされ、中長期的な成長率の上昇につながる可能性も小さくありません。成長力の強化と財政再建を同時に進め、プラスの相乗作用が働くようにしていくことが大事だと思います。』
ということで、まあ当然の話っちゃあ当然の話ではあるのですが、昨今の欧州問題の爆発的な拡大とかを見ていると、市場に近い所にいる人的にはさすがにちょっと最近の日本の政治方面からの財政論議があまりにも増税拒否のトーンが強すぎな上に、何か金融財政政策に対してクレクレ的なトーンが強いという感じがする訳でございまして、日本でも財政の維持可能性という言葉が出てくるんじゃネーノという気がしてくるというのがあるんじゃないっすかねえとか思うのであります。
まあ増税反対の話をしている人たち的には逆に財務省サイドが経済を犠牲にしてでも増税推進のトーンを強めている、という風に見ていると思いますし、その懸念も一概に否定できないというのも確かですので、まあ要はもっとバランスのとれた議論が出て欲しいな、と思うのであります。
○予告編である
11月FOMC会合の議事要旨。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20111102.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20111102.htm
とりあえず冒頭の『Monetary Policy Strategies and Communication』というのを読んでみたのだが時間が無くなってしまった(段取りが悪くてすいません)ので予告編だけ。
えーっとですな、こちらの部分では今後のコミュニケーションポリシーという話をしておりまして、その中では明示的なインフレ目標の設定とか、SEPを更に充実させてFOMCの考える政策金利のパスを示すとか、声明文などで「conditional
commitments」を更に明確化するとか、最後には名目GDPターゲットや物価水準ターゲットの話まで出ています。
でまあメリットデメリットの話とかありまして、結局あまり確定的な話は無いのですけれども、最後の名目GDPターゲットと物価水準ターゲットに関しては「現在の環境での導入はチャレンジャー過ぎなので賢くないでしょう」という結論になっていましたな、うんうん。
『In light of the significant challenges associated with the adoption of
such frameworks, participants agreed that it would not be advisable to
make such a change under present circumstances.』
such frameworksっていうのは名目GDPターゲットや物価水準ターゲットに関する話でございます。ということでこの辺に関しては週明けにでも(汗)。
2011/11/24
お題「休み中にネタまとめそこなったので雑談で勘弁」
まあ月曜のようなもんということで勘弁。ところでドイツで国債入札札割れ祭りなんですって????
○3か月短国いきなり6000憶円増発とな
火曜日しらっと出た発表。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct231122.htm
国庫短期証券(第241回)の発行予定額等
4. 発行予定額 額面金額で5.7兆円程度
ちなみに今週の3か月短国ですが・・・・・
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/offer231122.htm
5.発行予定額 額面金額で5兆600億円程度
ということで、発行額は大体5.1兆円だったのですが、12月発行から5.1兆円から5.7兆円にジャンプアップでございます。ちなみに10月発行から従来の4.7兆円(4.8兆円です)から5.1兆円に増えたばっかりでございまして、目先はロールの度に1兆円(9000億円です)増発という中々素敵な事に。
短期国債ですので、基本的には国庫資金繰りとか外為特会の資金繰りの関係とかでこういう事になると思いますが、そらまああれだけ無駄玉の介入を連発していたら国庫資金繰り余裕なくなる罠というのと、ここもとの補正予算編成とかの間に余裕金を使った結果でしょうなと思われる次第でございまして、まあ買うもの無くてウゴカンチ会長になっている短期市場的には良い供給のような気もしますが、ど〜せ増発した分は日銀が資金供給しちゃいますので最終的には資金供給オペが増えることによってチャラになるのですが、まあ入札時に発行額が償還よりも多い内はちったあ需給が意識されるかもしれません。
#ちなみに火曜の3か月TB入札もまた毎度おなじみの結果でございましたとさ
○ノルウェー輸出金融公社ネタ
火曜の昼に出たニュース。
http://www.reuters.com/article/2011/11/22/markets-ratings-eksportfinans-idUSWNA411520111122
BRIEF-Moody's downgrades Eksportfinans to Ba1 from Aa3; on review for further downgrade
・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)・・・・7ノッチ・・・カクサゲダト??
ということで、何でノルウェーの何とか公社が問題かと言いますと、この公社この前5年のサムライ債出していたのもあるのですが(ちなみにその時のMDYの格付けはAa1)、まあそれよりもいわゆる日経リンクとかEBとかの売出債の箱として債券をせっせと発行してましたので(詳しい仕組みの話は面倒なので詳しい人に聞いてください)、日本国内でこちらさまの発行する債券という形になっているものがそれなりにありますよねって話で、そーゆー発行体の格付けがAA格からいきなり投資不適格ってナンジャソラという所で。
MDYの格下げに関するリリース
http://www.moodys.com/research/Moodys-downgrades-Eksportfinans-to-Ba1-from-Aa3-on-review-for--PR_231419
を読んでも、あたしゃそもそもの背景をイマイチ理解していないから発行体のページなどを見て回るのでありまして・・・・・・
ノルウェー輸出金融公社のサイト
http://www.eksportfinans.no/
よくよく見ますとノルウェー国旗と英国国旗があるのに加えて何故か日本国旗があるというのが中々シュールなのですが、それはまあ先ほどの背景があるから日本向けのページもちゃんと作っておきましょってな所でしょう。で、MDYが格下げを実施した背景説明で書いてある事情について同公社からのリリースが18日にこんな感じで出ていたようである。
http://www.eksportfinans.no/News/Nyhetsartikler/Staten%20overtar.aspx
The Norwegian government is assuming responsibility for the export finance
scheme previously managed by Eksportfinans
『According to the press release from the Office of the Prime Minister
published this morning, a public entity will assume responsibility for
the scheme offering subsidized fixed rate loans (CIRR loans), the so called
108 scheme. This scheme is today managed by Eksportfinans. The option to
choose market rates for CIRR qualifying loans instead of fixed rates will
also be continued under the new scheme.』
で、そこに「この発表に関するノルウェー首相府のお知らせはこちら」というのがあるのでそれもURLつけとくわ。
http://www.regjeringen.no/en/dep/smk/pressesenter/pressemeldinger/2011/staten-sikrer-finansiering-til-norsk-eks.html?id=663610
Government ensures credit financing for Norwegian exporters
あたしゃそもそもの成り立ちとか何となくしか理解してませんのであんまり信用されても困るのですが、どうも今まで政府機関扱いでバランスシート使ったビジネス(売出債の箱になるとかもその一環でしょ。これって単に発行体的には調達した資金をスワップとか掛けて鞘抜きしているだけだと思われますので・・・・)やってたのが、EUの資本規制とかの絡みでこれ以上ビジネス拡大するのがテラ問題という話になって「おまいら30年やってた輸出金融業務を政府直轄で実施するから後は今の業務を整理しなさい」という話になったという風に読んだのですが、リリースを読んで頭の中で日本語訳しただけなので正確性は無担保無保証投資不適格でありますので念のため申し添えます。
で、まあそういう経緯ですから18日の同公社のリリース(さっきのURL)では今後の流れおよびCEOのコメントとしてこんなのが。
『Eksportfinans has been asked to manage the scheme temporarily until a
permanent public sector solution is in place, by 1st July 2012 at the latest.
This means that new loans under the publicly subsidized export finance
scheme will be handled by the government after the transition period. Eksportfinans’
portfolio of existing loans will be managed by the company in the years
to come. The company will immediately commence preparations for a controlled
run-off, which will most likely take several years. 』
『”The company is well positioned for a controlled run-off that will protect
the value of the company’s assets. Eksportfinans is solvent and liquid,
and will be run down over a period of several years. We now ask for your
understanding that the company will need some time to process the news
before firm plans can be put in place”, states Chairman of the Board of
Directors, Geir Bergvoll.』
輸出金融業務としての公社は継続しませんので将来的には閉鎖の方向ですが、従来行っていた業務に関しては今後数年を掛けて閉店(新規業務を行わないで既存の貸出などが返済になる流れで閉店ということかと思われます)しますが、詳しい今後の計画に関しては現在策定中ですからちょっと待ってちょ。当公社は支払い能力も流動性も十分ですよ。と言っているように読めます。
つーかさ、良く判んないからあんまり無責任に言うのも何ですけど、従来政府関係機関扱い(政府と大手銀行出資の株式会社ですけど)でバランスシート使った業務やってた所に対して独占的に行わせていた業務をいきなり政府が取り上げたっていう話でいきなりそこの債権がコケるとかになったらそらノルウェー政府が国家ぐるみで詐欺やるようなもんじゃないかと思う訳で、普通に考えたら既存の業務閉鎖に伴っていきなり政府が知らんぷりとか起きないと思いますし、大体からして今後の計画今作っているって中でいきなり格下げとか何ぼ何でも先走り過ぎじゃないかと。
何か22日と23日にもリリース出ているのでURLだけ貼っておく。
http://www.eksportfinans.no/News/Nyhetsartikler/Owner_statement_Ba1.aspx
Statement from Eksportfinans' largest owners
http://www.eksportfinans.no/News/Nyhetsartikler/Investor%20informasjon.aspx
Information to investors in relation to the Norwegian Government taking
over the export financing scheme from Eksportfinans
こっちの下の方に『Assets and liabilities』というのがあって、同公社の現在の財務状況とかの公表がございますな。まあ詳しく読んでないのでノーコメント。
ちなみにS&Pは今のところAAクラスを維持している筈だったと思います(火曜の段階ではレーティングアクションしてなかった)し、まあ普通に考えてこれノルウェー政府の信用問題にならないように何らかの措置が行われるでしょと常識的に考えると想像できると思うのですが、先日もMDYはフランスの国債利回り上昇を受けて、急に格付けに警告を出す(債務負担の増大を懸念って時間軸おかしいだろとかあたくしが悪態をついた件ですな)とか、何か妙に先走り過ぎなアクションが多くて、まあおまいらイベントドリブンのヘッジファンド辺りからか(以下激しく自粛)という悪態でも付きたくなるようなアクションが続くのが気になります罠。
○自民党も野党生活が長くなって民主党化しているようですな
ゆかしメディアなんぞから引用するの甚だ遺憾なのですが他に見当たらなかったので。
http://money.jp.msn.com/news/yucasee/article.aspx?cp-documentid=5613574
日銀総裁の年収3440万円を減らせとの指摘
『22日の衆院財務金融委員会で、日銀総裁、日銀職員の年収が議題に上がり、総裁の年収3440万円(昨年実績)が、財務事務次官の2277万円と比較して高すぎないかとの指摘について、野田首相は「(決めるのは)ご自身で判断すること」と答弁した。西村康稔氏(自民党)の質問に答えた』(上記URLより)
・・・・・・えーっとですね、財務事務次官ってのは国家公務員としての身分保障があって、理屈の上では(ポストは兎も角として)国家公務員として定年まで勤務が可能(慣例上退職してますけど)な人ですが、日銀総裁って任期が切れたら自動的に首になるんですけれども、それを比較して高い安いとかアホか馬鹿かという感じですし、大体からしてそんな事を一々質問しているお前は歳費や通信費やそもそもお前の所属している政党の助成金とか全部返上でもしてるのかと小一時間問い詰めたい訳で、もう何ちゅうどうしようもない質問をしているのかと思うのですが、もっと絶望的なのはこの手の糞下らなく、かつ一般ピープルのルサンチマンに訴えかけるような話題を出してくるというのが野党時代の民主党クオリティそのものであるという事で、自民党も一緒になってこういう低レベルの話をするとかもうねえって感じです。
○雑談書いてたら時間が無くなったのでメモメモ
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko111122a.pdf
内外の金融経済情勢と日本経済再生の課題
── JCIF国際金融セミナーにおける講演 ──
この講演でも『5.財政再建の必要性』というコーナーがありまして、まあさすがに欧州の問題を受けましていつまでたっても何も進まない日本の状況に対して物申したしという感じになっていますなあという所です。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20111102.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
こちらなんですが、冒頭の所に『Monetary Policy Strategies and Communication』というのがありまして、今後の金融政策のコミュニケーションポリシーに関して、
『The Chairman asked the subcommittee on communications to give consideration
to a possible statement of the Committee's longer-run goals and policy
strategy, and he also encouraged the subcommittee to explore potential
approaches for incorporating information about participants' assessments
of appropriate monetary policy into the Summary of Economic Projections.』
というような指示みたいなのがあったようで、今後の金融政策として(欧州対応に関する話は兎も角として)コミュニケーションポリシーの充実という事で、Summary
of Economic Projectionsによるコミュニケーションの強化を考えているっぽいですが、何かだんだん日銀に似てきましたな(形式的には、の話ですが)と思うのは気のせいですかそうですか。
#雑談ばかりですいません
2011/11/22
お題「各種雑談とかPD懇&投資家懇雑談」
妙に暖かくなると思ったら急に冷えたりして体調管理に注意しませう。
○各種雑談や悪態である
・短国市場雑談
昨日の基金買入オペ結果はこの通り。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba111121.htm
国庫短期証券買入(資産買入等基金) 7,450 2,001 0.002 0.003 35.0
・・・・・つまりですな、1年までのTBに関して昨日は日銀様が一番お高い価格(低い利回り)で0.102%をお買い上げ毎度あり〜♪となっていた訳でございまして、短期市場のイールドカーブの潰れっぷりもここまで来やがったかという感じでございまする。まあ只でなくさえ短い所ってキャッシュ潰しの金が余っている上に日銀がジャンジャン買うのだからシャーナイナイですが。
国庫短期証券(第239回)の入札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul231121.htm
(3)募入最低価格 99円98銭3厘0毛
(募入最高利回り) (0.1017%)
(4)募入最低価格に 8.4964%
おける案分比率
(5)募入平均価格 99円98銭3厘2毛
(募入平均利回り ) (0.1005%)
ということで、2か月TBの入札は0.10%乗せという事で、こちらはこちらでまあ0.10%割れの短国を買い進むような海外資金様がそこまで金がジャブジャブある訳では無い(スワップなどから計算すると十分ワークする状況は続いているのですが、そもそも無限にその取引をすることができる訳では無いですから)という事で、そうなってみますと0.10%割れを買い進む人ってそんなにいない(超過準備付利の外側にいる人の金だけでは現在の発行量をカバーできませんからね)ので、まー金利はこうなります罠という感じ。
あと先日申し上げましたが、業態別当座預金残高を見てると都市銀行もブタ積み(付利されているからブタではないが)上等という感じになってきているように見えます。つまり短期市場最大級の最大の金持ち(もっとも金持ちなのは日銀ですけど^^)の都市銀行さんが0.10%割れのTBを(担保繰りや商品在庫繰りなどの都合以外の理由で)積み上げるインセンティブも最早薄いという事でしょうな(あとは決算絡みでのお家の事情位でしょ)。
それから、昨日はあまり動いてなかった(というか日中は戻ってて引け近くにまた押し込んでましたが)金先がTIBORの水準よりも微妙に安い(金利が高い)状況になっていた(売られたのは先週の木曜金曜とかだが)のですが、まあこれはLIBOR上昇→スワップの短いゾーン売られる→金先が売られるという流れでしたが、まあほほうという感じでしたな。
#一方でCPレートとか感極まった低金利なのはまあ良いとして、何がアレと言いまして発行体ごとのスプレッド差がろくすっぽ無い(ごく一部を除く)のが如何なものかという感じですけどね
・先物システム変更初日雑談
まあ何ですな、出来高は日中で合計13150枚になりましたので一応格好はついたと思いますが、前場とか明らかに警戒モードで売買手控え状態。まあ月曜だからシャーナイナイというのはございますが、大体からして最近の債券先物ってザラ場だと1分くらい値段がつかない(板が動かない)という素敵な事が多々ある取引の中で高速回転売買向けの取引対応とか意味あるのかという所でございますなあという感じです。
皆さん警戒モードで対処したせいか、前場の引けと後場の引けの板寄せタイムではどちらも直前の出来値と同じ価格で引け(前場引けは142円97銭、大引けは143円01銭でしたが、引け板寄せでの売買高は前場引け288枚で大引け364枚(ただしあたくしが板見てメモ取りながら手計算したベースですので正確性は担保致し兼ねます)とかで、そもそも引けでの取引枚数的に残念な売買高なのですけれどもね。
まあ初日は何となく普通で良かったですね(棒読み)という事ですか。
・・・・・・しかしまあ何ですな、そらまあ債券先物で高速回転売買とかやたらめったら注文を分割して(1枚×200件とかみたいな)発注している人もいるんですけれども、そもそも債券先物というのは「現物国債売買のヘッジ」の為に存在している訳でありまして、その現物国債の売買というのは基本的に店頭売買市場であって、投資家と業者(あるいは業者同士)の間で人間様が介在して人力売買をしているというのが通常の姿であり、そういう人たち的には別に高速回転売買取引などをする必要性は乏しいのであります。然るに、東証様におかれましては世界標準の美名の下に高速回転売買に便利な取引システムに変更するとか、おまいら債券先物取引の本来の存在意義を見失ってねえかと思うのですけどねえ。
・東証と言えばこれは吹いた
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920013&sid=a0ypCh21Y680
東証の企業価値は大証の1.7倍に、統合条件整う−きょうにも発表へ
『基本的な統合スキームは、12年秋に東証が大証の発行済株式数66.6%に対して株式公開買い付け(TOB)を実施し、子会社化。株主総会を経た上で、大証を存続会社として13年1月の合併を目指す。』(上記URLより)
いやまあ最初に聞いたのは公共放送ニュースでしたけど、非公開会社が自分より規模の小さい公開会社を子会社化してから子会社を存続会社にして合併ですかそうですか。
・・・・・・えーっと、東証のページにこういうのがあるんですけどね。
http://www.tse.or.jp/rules/listing/gappei.html
上場廃止基準:合併等による実質的存続性喪失に係る上場廃止基準
『合併等による実質的存続性喪失に係る上場廃止基準は、非上場会社が上場会社と合併等を行うことによって、新規上場審査を免れて実質的に上場を果たす、いわゆる、裏口上場を防止するための上場廃止基準です。』(上記URLより)
いやね、まさかこれを制定している東証自らがこの方法で上場企業になるとは思いませんでしたわwwwwwwwwwwww
あ、念のため申し上げますが、別に悪質とかいう話ではないですし、この手のパターンって最近でも普通にあるのですけれども、形式的にであっても裏口上場審査の対象になるような形を東証自らが実行するというのが何のギャグだという所でございまして、東証は取引所そのもので規制当局としての顔もあるのですから、規制当局としては通常の上場審査プロセスをきっちりと踏んで上場するという本来あるべきプロセスを踏んで欲しいなあと思うのはあたくしのしょうもない屁理屈小理屈ですかそうですか。
『上場会社が、非上場会社との合併、株式交換、事業の譲受等を行う旨の適時開示を行った場合、東証が実質的な存続会社は当該上場会社でないと判断したときは、当該合併等が実行された場合には「新規上場審査基準に準じた基準に適合しているかどうかの審査を受けるための猶予期間」に入る可能性がある旨、投資者に周知を図ります。』(上記URLより)
・・・・・・ふーん(棒読み)
・これは酷い
昨日はヤフーのトップとかにも出ていて、見た人から通報(^^)頂いたのですが。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-24258520111120
日銀買い入れETFの含み損、株価急落で400億円以上に増大か
2011年 11月 21日 07:57
『[東京 21日 ロイター] 日銀は、昨年から行っている株価指数連動型の上場投資信託(ETF)買い入れで、400億円以上の含み損を抱えている公算が大きい。今月末にも予定されている2011年度上期決算で実額が明らかになるが、評価損が出れば結果的に納税者負担となる。』(上記URLより)
・・・・・・・えーっと、そんなの買入実施する時に判り切ってた話で、金融緩和政策が効いて景気が回復すれば株価も上昇する筈だからモウマンタイの話なのですが、何をこの時期に鬼の首を取ったようにニュースネタにするのか全く意味が分かり兼ねますが何なんでしょうか。
つーかさ、ロイターが日銀の資産買入はケシカランという主張を従来からしているというなら話は別ですが、年がら年中追加緩和観測を煽ってあれ買えこれ買え緩和が足りないだのというようなネタで散々ニュース記事書いておいて、実際に政策が進む中の途中経過を切り取ってこういうニュース書くとか、もはや報道機関だの金融政策に対するスタンスだのとか言う以前に人間として恥ずかしくないのかと小一時間問い詰めたい訳ですがねえ。
んなもん景気が回復する前に別にETF売る訳じゃないですし、日銀だって資産買入するときに散々説明している話で、政策遂行中の途中経過でしかない株価が下落した一場面を切り取ってこういうニュース書くとかマッチポンプにも程があるわ。
・これもよく考えたらイミフな見解
時事通信にイチャモンではなくムーディーズの方ね。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011112100939
仏格付けに悪影響も=国債利回り高止まり−ムーディーズ
『【ロンドン時事】米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは21日付のリポートで、フランスの国債利回り上昇に言及し、「景気見通しが悪化する中、資金調達コストが長期間にわたって高止まればフランス政府が直面する財政面の課題が悪化し、信用格付けに悪影響を及ぼすだろう」との見解を示した。』(上記URLより)
・・・・・・・・まあ仰る事はその通りですけれども、その「長期間にわたって高止まり」って財政収支に顕著な影響をもたらすまでの期間を考えたら数週間とか数カ月とかじゃなくて1年とか2年とかそういうスパンの話ではないかと思うのですが、それをわざわざ市場が短期的に大きく動いているときにコメントするとか、どう見ても格付け会社のアリバイ工作にしか見えないのはあたくしの目が濁っているからですかそうですか。
・・・・・・うーむ、雑談のつもりが段々秋の悪態祭りになってしまったorz
○こらまた意見が割れる30年債の増発話
先週金曜に実施されたPD懇と投資家懇の議事要旨
PD懇議事要旨
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/c231118.html
投資家懇議事要旨
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbi/proceedings/outline/231118.html
PD懇の所にあります財務省の説明にありますように・・・・・
『いずれにせよ、現在のところ、来年度の発行計画について確たることを言える状況になく、本日の会合では、今後の様々な状況に的確に対応できるよう、増減可能な年限、その他要望事項等について、幅広く皆様のご意見を承りたい。』(PD懇、投資家懇共通である^^)
ということですが、先般の3次補正に伴う増発について中期ゾーン中心の増発という話になりましたので、来年度に関してはどう見ても超長期増発です本当にありがとうございましたという感じなのですが、PD懇の議事要旨見てると30年債の扱いが見事に意見真っ二つに割れているように見えますな。つーことでちょっとだけピックアップ。
超長期の後ろを増発しましょうという意見。
『来年度は、カレンダーベース市中発行額全体で2兆円〜2兆円強の増額を想定している。20年債までの各年限については毎月発行の下で安定している一方、30年債及び40年債については毎月発行でないにも拘らず不安定さが残ることから、次は30年債の育成が課題と考えている。具体的には、月の発行額を1,000億円程度減額した上で毎月発行とすることを提案する。併せて、40年債の発行月はポートフォリオ上の長期化ニーズがある5、8、11、2月とするとともに、当該月に実施される残存15-29年を対象とする流動性供給入札を1,000億円減額することが望ましい。これまで上記以外の月に1.3兆円消化してきたことを踏まえれば、2,000億円程度の増額は安定的に消化できるのではないか。なお、30年債を毎月発行とする場合、20年債については現状維持が望ましい。』
これもそんな感じですかな。さっきの人よりも(20年も増発なので)後ろに寄ってるかな。
『第3次補正予算に伴い増額した2年債及び5年債を除き、10年債から40年債までの全年限で月1,000億円程度の増額余地があり、仮に増額しても数bp程度の調整で済むと考えている。敢えて優先順位をつけるならば、今月の入札結果が強かった40年債を増額してはどうか。なお、40年債については、現行の利回りダッチ方式から価格コンベンショナル方式への移行も併せて提案する。30年債については、月の発行額を6,000億円に抑えた上で毎月発行とすることを提案する。』
一方で超長期の後ろは需給が不安定なので慎重にという意見。
『2年債から30年債までの各年限は月1,000億円の増額は可能と考えており、発行年限のバランスを考慮すると、20年債、10年債、2年債の順に増額を優先すべきと考える。その次に30年債及び5年債が検討対象と考えられる。この点、30年債については、仮に増額する場合であっても発行頻度は現状維持としてほしい。30年債及び40年債は需給が不安定である中、投資家層も重なることから、40年債入札が実施される月に30年債入札は実施すべきでないと考える。』
さっきの人もそうですが、30年と40年の入札を同月にするのは時期尚早という意見。
『30年債については、増額の有無に関わらず発行頻度は現状維持としてほしい。毎月発行とした場合には、40年債入札と重なることが懸念材料である。足元の環境に鑑みれば消化可能とは思うものの、今後のマーケット環境如何では厳しくなる可能性も考えられる。また、40年債については投資家の開拓途上にあると考えていることから、40年債入札に皺寄せが来ることは避けてほしい。』
・・・・・・てな感じで(これは議事要旨の最初の4人の意見を単に順に拾ってきただけですが)超長期ゾーンの増発において20年債の増発可能というのは(まあ足元でも20年カレントは需給良好ですし)コンセンサスなのですが、一方で30年以降のゾーンについては意見が割れている感じで、ざーっと読んでもどっちが優勢という感じでもなさそう(強いて言えば超長期の後ろを増やすの勘弁という方が多めに見えるけど)だなという感じですか、よー判らんけど。
投資家懇の場合はそもそも超長期の後ろに関してはうちのポートと関係ないですからという人もおいでですので、後ろの増発については超長期ゾーンを主に購入する投資家さんとみられる人以外ではあまり積極的ではない印象ですな。
どちらかと言うと投資家的にはイールドカーブが適当に立ってくれた方が投資するのにはフェーバーだと思うのですが、あまりそういう感じの話も見受けられないのがあたくし的には若干の意外感がございましたです、はい。
投資家懇より。
『超長期ゾーンについて、20年債は銀行等のニーズも高まっており、月1,000億円程度の増額であれば十分市場で吸収できると思われる。30年債については、基本的にポートフォリオ採用が進んでいるので、毎月発行にするのは問題ない。その場合は、発行総額を現状維持するように月の発行額を5,000億円に減額するのがよいのではないか。』
『発行年限については、運用上、負債の金利リスクを軽減していく観点から、超長期ゾーンの増額を希望する。優先順位から言うと、30年債について月の発行額を維持した上で、毎月発行を希望する。ただ、毎月発行が難しいということであれば、現状の年8回発行の中で最低月1,000億円程度の増額を希望する。次に、40年債の月の発行額の増額と残存15-29年ゾーンを対象とする流動性供給入札の増額を希望する。20年債はそれほど強い希望はない。』
『20年債若しくは30年債は月1,000億円程度の増額が可能であり、優先順位が高い。超長期ゾーンには生損保のニーズが引き続きある。10年債も幅広い投資家のニーズがあることから月1,000億円程度の増額は可能と考える。30年債については、安定消化の点から発行頻度は維持すべきと考える。』
『超長期ゾーンについては、30年債及び40年債は、投資家層が依然広がっていないことやボラティリティがやや高まる局面があることから、増額については慎重に検討した方がよい。この点、20年債の方が増額しやすいのではないか。流動性供給入札については現状維持としてほしい。30年債について、増額するのであれば一回当たりの発行額を増額し、入札頻度は維持する形で、慎重に発行額を増やしていく方がよいと思われる。』
まあ適当に拾ってみましたが、PD懇と比較すると超長期の後ろについての増発に関してはやや温度が低い感じがしましたが気のせいでしょうか???あたくし的には逆かと思ったのですが。
あと、まあ一々意見を引用しませんけど、まあ物価連動国債に関しては相変わらず評判が悪いようで実に残念。個人的には消費税増税がどうのこうのという話もある事ですし、物価連動国債の市場を育成するのに再チャレンジしてもいいかなとか思わない事も無いのですが、やはりセカンダリーマーケットが事実上機能していないという状況で、業者もマーケットメイクが事実上不能状態になっているという残念過ぎる流動性となっているようでございますので、発行再開に向けたハードルは高そうな感じですな。
#そうやっているうちに既発の物価連動国債がどんどん短くなってくるんですけどにゃ。
でまあPD懇にはこんな話もありまして、まあ財務省が直接言うと無駄な波風立ちますからこういう感じでよろしいのではないかと思いますお。長いから段落分けしますお。
『昨今の欧州の債務問題は深刻化かつ広がりを見せている。ファンダメンタルから考えるとイタリアとフランスはやりすぎではないかと個人的には考えているが、一方でマーケットに追い込まれていく形で金利が上昇して、特に債務残高の大きいイタリア等は財政赤字が発散するリスクが高まっている状況となっている。振り返って日本がどうかといえば、公的債務残高の対GDP比率が非常に高い水準にあって、ギリシャやイタリアほどではないにしても政治の基盤も弱いという状況ではあるが、足元のJGBの利回りが低いこともあって国債の増発に対する政治家の意識もどちらかといえば緩んでいるのではないかと危惧している。』
まあ緩みっぱなしでしょ。
『来年度の国債発行に絡んで、中期財政フレームの枠を遵守することが前提で進んでいるとは思うが、最近の国会の審議や与野党の話を聞いていると、これすら守ってもらえるかどうかやや懐疑的に思っている。日本がイタリアやフランスのように市場の標的にならないように、中期の財政再建に向けた強い意思表示が必要だと思っている。』
何せ財政マネタイズを堂々提唱する元首相がいるという国ですからorz
『復興増税はやや後退という形になったが、中期財政フレームの遵守が重要である。また、消費増税準備法案についてもこれから議論が進むことになるが、これはもともと自公政権のときに方向性が決まっているし、自民党は参院選のマニフェストにも挙げていたということを考えると、上げるのが当然だと見ている。衆院解散総選挙が視野に入る中で、どうしても増税に対するアレルギーが政治家にはあるので、こうした議論が難航するようであれば、やはり日本に対する不信感が強まるリスクがある。』
『特に国内で低い金利で調達できるという所が強みのひとつであり、それが評価されて日本の格付が比較的に安定しているので、投機的な形で海外からのJGB売りで金利が上昇するようなリスクが無いように、中期財政フレームの遵守や中期的な財政再建に向けた消費増税の確実な実施をぜひ政治にはお願いしたい。我々プライマリーディーラーも引き続き国債市場の安定化に向けて様々な提言をしたいと考えている。』
まあそういう意味では日本国債は国内消化ばっかで海外がろくすっぽ持っていない(ので別に海外投資家が売ってしまえとか言い出す事もない、何せ持っていないので・・・)というのが強みではあるのですが、その構造が続かなくなる時というのがキングオソロシスという話になるんですかね、よー判らんが。
2011/11/21
お題「ドラギECB総裁の初講演/東証システム変更雑感」
最後を(ファルケンボーグにライナー直撃のアクシデントの為)森福→攝津で締めるとは調子から考えたら順当ながらもちょっと予想外な展開でしたが、これで来年の馬原ってどうなるんでしょうかね、まあとにかく秋山監督オメ。
スペイン総選挙はこちら、開票早いですな。
http://resultados.elpais.com/elecciones/generales.html
「間違いない」「必ずこうなる」と元金融庁長官が断定的判断の提供もどきの発言をするオープニング画像が不愉快極まるのでモーサテの元金融庁長官のゲストコーナーを暫く見てなかったのですが、今日久々に見たらそのオープニングやってませんな。もしかして悪態が届いてくれたのかな????ってただの自意識過剰ですかそうですか(笑)。
○ECBドラギ新総裁の(総裁としての)一発目の講演である
http://www.ecb.int/press/key/date/2011/html/sp111118.en.html
Continuity, consistency and credibility
Introductory remarks by Mario Draghi, President of the ECB,
at the 21st Frankfurt European Banking Congress “The Big Shift”,Frankfurt
am Main, 18 November 2011
『As you know, this is the first time I’m speaking publicly as President
of the European Central Bank outside the ECB. I could not think of a more
appropriate occasion than the European Banking Congress in the ECB’s home
town.』
ということで総裁としての初講演でございますが、フランクフルトでのこちらの会議の今回のお題は新興国経済の拡大という意味で“The
Big Shift”というのがお題なのですが、今回の講演でのお題は『Continuity,
consistency and credibility』となっているのは実は新興国経済に関しての話ではなくてその前の話であったり致します(^^)。
『Before discussing the shift towards a much greater role of emerging economies,
which is the theme of today’s congress, let me elaborate on the current
situation in the euro area.』
てな訳で前半のお題は『I. The euro area situation and ECB monetary policy』という皆様ご注目の物でございますのでまあ前半部分を詳しく(つーか後半は読んだけどスルーの方向で)。
・ということでユーロ圏問題と金融政策について
『Activity is expected to weaken in most of the advanced economies. This
is the result of a weakening of various components of aggregate demand,
both domestic and foreign. And it is evident in ‘hard’ data as well as
survey data. In the euro area, downside risks to the economic outlook have
increased, and the weaker degree of activity will moderate price, cost
and wage pressures. This is why the ECB decided to reduce its key interest
rates by 25 basis points on 3 November, acting in full compliance with
its mandate to maintain price stability in the medium term.』
ということで、ECBが先般利下げをした背景として「多くの先進国で経済活動が弱まっており、国内及び海外の需要が減退していることが明確になりました。ユーロエリアではダウンサイドリスクが高まり、弱まった経済活動が物価やコスト、賃金の上昇圧力を緩やかなペースにすることが予想されるので」というこれはまあ金融政策変更時の会見で示されたお話ではございますな。
『We are aware of the current difficulties for banks due to the stress
on sovereign bonds, the tightness of funding markets and the scarcity of
eligible collateral. We are also aware of the problems of maturity mismatches
on balance sheets, the challenges to raise levels of capital and the cyclical
risks related to the downturn.』
ソブリン債に対するストレスによって銀行が直面する困難、ファンディング市場のタイトさや適格担保の不足について注意しており、更に金融機関のバランスシートのミスマッチ問題(って要するに長短ミスマッチということですから銀行のオーバーローン/オーバーインベストですな)や、資本増強への課題、経済の落ち込みによるシクリカルなリスクに注目しています。
『In the money market, we see rising spreads between secured and unsecured
segments, and a widening of repo prices between different types of collateral.
Interbank activity remains subdued and concentrated in the very short-term
maturities. This limited activity is reflected in increased recourse to
our liquidity-providing operations, as well as to our deposit facility.』
短期金融市場においては、我々は担保付と無担保の取引における金利差の拡大や、レポ市場における担保種類の違いによる金利差の拡大を注視しています。インターバンク市場の活動は抑制されており、ターム物取引から極めて短い期間の取引に集中するようになっています。この限定された活動は、我々の流動性供給プログラムへの依存や、預金ファシリティー利用の拡大に反映されています。
ということで、まあこの辺を読んでいてECBってかなりちゃんとマーケットウォッチしてるなと思ったのですが、まあそれだけかなりの緊張感があるんでしょうな、と思うのでした。
『So far, the ECB has taken several non-standard measures to ensure that
short-term funding does not represent a problem for euro area banks. The
most important non-standard measures are the fixed rate full allotment
procedures and the longer-term refinancing operations. We have also implemented
three additional US dollar operations, which cover the end of the year,
and we have launched a second covered bond purchasing programme.』
で、まあ短期市場問題が爆発しないように非伝統的手段を取りましたという話をしているのですが、ここでほほーと思うのは「もっとも重要な非伝統的金融政策は、固定金利でフルアロットメントで行われる資金供給(今やっているMRO)とより長い期間の資金供給(今やってるLTRO)である」という事でして、つまり国債買入ではなくてあくまでも流動性供給が重要である、と言ってる点ですな。その次に並べているのがUSドル資金供給、カバードボンド買入第2弾となっています。
・金融政策の3つの原則について:continuity, consistency, credibility
『Let me use this occasion to dwell a bit further on monetary policy in
the current environment. Three principles are of the essence: continuity,
consistency and credibility.』
3つの原則キタコレ。で、この3つの単語の訳語は後でも言い訳しますが、どういう風に訳していいのかイマイチさんにも程がありますので、読者様の中には英語にも日本語にも強い方が大勢おいでであると存じますので、皆様にツッコミを頂くのを待ちつつ下手くそな日本語訳をしてみるのであります(汗)。
『Continuity first and foremost refers to our primary objective of maintaining
price stability over the medium term.』
あたしゃ頭が悪いので適当に訳語をぶち込んでしまいますが、「論理的関連性」は最初かつ最も重要であり、中期的な物価安定を維持するという我々の第一の目的に関連している事です。とか何とか適当に訳してみたけど、まあ要するに第一に重要なのは金融政策は物価安定の維持とリンクした形じゃないとダメダメですよと言いたいんでしょうかね、と思いましたがどうでしょ。
『Consistency means to act in line with our primary objective and with
our strategy both in time and over time.』
「首尾一貫性」は我々の第一の目的および我々の戦略に沿った形で短期的および中期的な政策の実行をする事を意味します。ってまあ要するに物価安定の維持に沿った行動を一貫して実施するということで、米国で良くそういう議論がでますけれども、物価上昇の一時的な(ここでいう一時的というのは短期変動要因による一時的な物価上昇ではなく、もう少し長いタームの話)やむなしみたいな政策は排除するっちゅう事でしょうかね。
『Credibility implies that our monetary policy is successful in anchoring
inflation expectations over the medium and longer term. This is the major
contribution we can make in support of sustainable growth, employment creation
and financial stability. And we are making this contribution in full independence.』
「信頼性」は我々の金融政策が中長期的なインフレ期待をアンカーさせることに奏功するということを含みます。これは持続的な経済成長、雇用創出および金融の安定に対して我々がサポートできる重要な貢献であります。そして我々はこの貢献を完全に独立して行います。
『Gaining credibility is a long and laborious process. Maintaining it is
a permanent challenge. But losing credibility can happen quickly - and
history shows that regaining it has huge economic and social costs.』
信頼性を獲得するのは長く骨の折れるプロセスです。信頼性を維持するのは永続的な挑戦です。しかし信頼性を失うことは簡単に起きてしまいます-そして歴史は失った信頼を取り戻すのは極めて大きな経済的および社会的なコストを伴う事をしめしています。とこれまたイイハナシダナーというお話をしていまして、どこぞの国で財政マネタイズを安易に提唱する元首相は耳の穴かっぽじってよく聞けやゴルァと思うのであります。
『These three principles - continuity, consistency and credibility - are
at the root of the Governing Council’s outstanding record during the past
13 years in terms of price stability and anchoring inflation expectations.』
ということで物価安定とインフレ期待のアンカーが金融政策の重要な原則という話をしていまして、まあこれは前回の定例理事会後の会見で示された話と原則的に同じなのですが、改めてこの点を強調しているという所ですな。
・金融の安定は各国の経済政策も責務を負いますとキタコレ
んでその次。
『National economic policies are equally responsible for restoring and
maintaining financial stability. Solid public finances and structural reforms
- which lay the basis for competitiveness, sustainable growth and job creation
- are two of the essential elements.』
金融安定の維持と確保には各国の経済政策も等しく(というのは金融政策と等しく、ということでしょうな)責務を負っています。堅固な公的なファイナンスと構造改革-それらが競争力強化、持続的な成長や雇用創出をもたらす-は必須の要素です。
『But in the euro area there is a third essential element for financial
stability and that must be rooted in a much more robust economic governance
of the union going forward.』
そして第3の必須な要素は、今後のより力強いEUによる経済のガバナンスに根拠を置きますとな。
『In the first place now, it implies the urgent implementation of the European
Council and Summit decisions. We are more than one and a half years after
the summit that launched the EFSF as part of a financial support package
amounting to 750 billion euros or one trillion dollars; we are four months
after the summit that decided to make the full EFSF guarantee volume available;
and we are four weeks after the summit that agreed on leveraging of the
resources by a factor of up to four or five and that declared the EFSF
would be fully operational and that all its tools will be used in an effective
way to ensure financial stability in the euro area. Where is the implementation
of these long-standing decisions?』
ということで、まずはこれまでEUで決定してきた事を各国は遵守すべきという話をしておりまして、まあ要するにECBに何でもかんでも頼るのは甘え、という事でございますわな。
まあ何ですな、そらまあそうやと思う訳で「最後の貸し手」機能ってのは金融システムの維持とか金融安定化の問題としてワークさせるときに使われるものであって、中央銀行が政府に対して「最後の貸し手」をやるっていうのはそらあーたただの「財政マネタイズ」ですがなという事ですからして、それは中央銀行としての物価安定というマンデートに反する恐れが極めて高いのですから拒否だわなと思うのでございます。
で、後半は本来のセミナーのお題でありますところの『II. The shift towards
a much greater role of emerging economies』という小見出しで、これはこれでまあまあオモロイですけれども、特段変わった話でもないので割愛でおじゃる。
○東証って何で問題なく稼働しているものを変えるんですかねえ
http://www.tse.or.jp/news/38/111119_a.html
次期Tdex+システム及び第3次ToSTNeTシステムの稼動について
ということで今日から先物とかのシステムが変わって立会時間も変わるのですけれども、債券先物的には何か値付けとかが変わるという誰得(というか東証の自己満足にも程がある)変更が炸裂するのでありました。
債券以外も色々と変わるのですが、デリバティブ関連はこちらのページにああだこうだと説明があります。
http://www.tse.or.jp/rules/tdex_plus/index.html
Tdex+ −新しい先物・オプション取引市場
『1.Tdex+システム (先物・オプション取引システム)
Tdex+システムは、NYSE liffeが開発したLIFFE.CONNECTをベースとした世界最高水準の処理性能を誇る取引システムです。世界最高水準の処理性能を存分に生かしたTdex+システムの導入により、より円滑に先物・オプション取引を行うことが可能となります』
『4.世界標準の取引制度への統一
金融デリバティブ取引のグローバル化の流れは確実に進んでおり、国内の投資家の方々も海外取引所の上場商品を取引する一方、海外の投資家の方々による当取引所上場商品の取引も増えてきております。当取引所は、グローバルに活躍する国内外の投資者の方々の幅広いニーズを満たすことができるよう、次のとおり、取引制度の世界標準化を図っています。』
とか何とか思いっきり東証のドヤ顔が目に浮かびますが、確か東証って1998年に債券先物のシステム変更して値付けルールとかを「世界標準」とやらに変更したらそれまで使い勝手が良かった債券先物がいきなり役立たずになってしまって、大変にケシカラン事になったのですげ、よくよく見ると今回も色々と余計な事をしているようで誠に遺憾の極みでございますな。
http://www.tse.or.jp/rules/tdex_plus/Future_rule_changes_J.pdf
先物取引のTdex+移行に伴う制度上の変更点
こちらにああでもないこうでもないと書いてありまして、まあ詳しくは詳しい人に聞いていただきたく存じます次第ではございますが、ちょっとだけこら面倒ですなというのはこの辺ですかねえ。
『引けの板寄せを行うためのセッション(クロージング・オークション)を導入します。※先物取引のみ』
11時から11時2分まで(11時1分59秒になるんですか?良く判りませんが)が板寄せ時間になるという事ですが、これ引け直前と引けの間にタイムラグが発生する関係上引け直前と引けの間での値段が不連続になりやすくなるリスクがある(まあ実際はやってみないと判らないけど、その間に何か材料が出るかもしれんし)ので、引けの先物の値段が影響するような取引に先物売買が絡む場合(変な表現をしていて申し訳ございませんが判る人にはわかって頂けるものと思います)、取引がやりにくくなるなあとか思いますけどどうなんでしょ。
つまりですね、引けの板寄せって時に寄らない事があって、まあ大体の場合それに嵌るとロクな事にならないので、基本的に投資家の場合引けの成行ってやらないようにしている所も多いと思うのですけれども、こうなると引けないリスク覚悟で引けの板寄せタイムに成行入れに行く事になるんでしょうかね。
『成行注文に関する留意点
・ 反対側に注文がない場合、もしくは呼値可能値幅の上限(下限)まで買い上がり(売り下がり)した場合には、未執行注文は自動的に取り消されます。・
寄付き前及び引け前に成行注文を発注することはできません。』
これまた何だかなという感じでして、債券先物の場合成行で売り買いして直近出来値から20銭上か下までやったら残数の注文が勝手に自動取り消しになるので、つまりは板がスカスカになっているときに数百枚とかの売買を成行で入れて途中で自動取り消しになった場合ってどこまで何枚出来たかとか確認しないとポジションも把握できないという事ですので、先物委託出す人は注意しないとおそロシアな事になる訳ですな。まあ注文を分割すれば良いのですけれども、それをするのにはシステム発注が必要という事ですので、またまた大手参加者優遇な話ですが、何せ世界標準というのは小口零細市場参加者の保護という意識は一ミリも持ち合わせていないのですから致し方ありません。これで参加者の拡大とかアホか馬鹿かと思いますけどね。ええまあディーラー時代に先物の端末を手で叩いて発注していた零細参加者の僻みですけどね。
んでもって成行ですけれども、寄り前は入れられないという事ですから、クロス振る時どうすんねんと思います(たぶん寄り前に呼び値可能値幅の上限の買いと下限の売りを入れることになるような気がしますが良く判りません)し、更によくよく考えたら寄りの成行が入れられないとなると、債券先物の当限最終日にヘマ打って期せずして現受現渡をするトンマが発生するに1000イタリアリラ。
で、大引成行は板寄せタイムにしか注文入れられませんから、制限時間1分少々の間で発注ミスしないように注意しないといけない訳で、これまたアチャーな参加者が発生するに1万ドラクマという感じですか。
・・・・・・まあ他にもツッコミどころがありそうな変更(というか大有りなのですが詳しい話は詳しい人に聞いてくださいな、あたしゃそんなに詳しくなかですたい)ですが、そもそも変更の内容がリリースされて(どころか今日から開始ですが)から悪態つくのも証文の出し遅れと申しますか後出しじゃんけんにも程があるので、まああんまり偉そうに文句を垂れる筋合いでも無いのですけれども、従来普通に何の問題も無く取引されている物を何を好き好んで変更するのかという事で、しかもその点では1998年に思いっきり味噌をつけているのに何の反省も無くまたやるかという点に関しては東京証券取引所に対して呆れて物も言えません(散々言ってるが)という所でございますな。
2011/11/18
お題「総裁会見は海外経済に質疑が集中した結果トーンが弱く出ています」
今回の日本シリーズは内弁慶シリーズとか言ってた解説者の皆さんちょっと出てきなさいおじちゃん怒らないから、という感じですが、勝負事ってのは本当にワカランチ会長なもんですな。
#5点差ですから当然抑えるのですが馬原の厄落としが出来たのもホークス好材料
○総裁会見から
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1111d.pdf
・最初の説明部分でほほうと思う箇所が少々
冒頭の白川総裁の説明なんですけどね、まあ基本的には「今回はこのような判断をしましてこのような決定をしました」って話でして、声明文に示された認識と金融経済月報で示される予定の認識に関する話をするんですけれども、その中でほほーと思った箇所があったのでその辺りから。
リスク要因の部分ですけどね。
『もっとも、以上の中心的な見通しを巡っては、様々な不確実性が存在しています。(海外要因の不確実性に関する説明部分は声明文どおりなので割愛)なお、この不確実性そのものについて、その高まりを指摘するなど、委員間でも若干のニュアンスの差がありました。』
ということで、わざわざ「委員の間で不確実性の高まりをより意識する人がいた」というのを説明しているという事ですから、今回の決定そのものは全員一致であっても結構意見は割れているのではないかな、と思わせる所でありました。
そういや先日引用した中村審議委員の記者会見では中村さんが「下振れリスクは更に高まっている」という話をしていましたし、またまた審議委員と執行部でのズレみたいなのがあるのかもしれないなあとか思ったのは思い過ぎですかね。
あと、日銀の金融政策の宣伝(?)部分ですけれども。
『日本銀行は、資産買入等の基金の規模を累次にわたり大幅に増額し、そのもとで、金融資産の買入れ等を着実に進めています。足許の基金の残高は40兆円程度であり、基金の総額である55兆円程度に向けて、今後、さらに15兆円程度の残高を積み上げていきます。』
日銀は声明文の最後の部分で「私たちはこんなにやってるんですよ」というのを入れるようになってから暫く経ちますが、今回ちょっと違うのはわざわざ「足元の基金の残高」を言うようになった点。10月1回目(展望レポートと追加緩和のセットじゃなかった方です)の決定会合後の会見ではこの部分が、
『日本銀行は、8月の金融政策決定会合において、先行きの景気について「下振れリスクにより留意すべき情勢となっている」との判断に基づいて、「資産買入等の基金」を10兆円程度増額し、金融緩和を一段と強化しました。そのもとで、現在、金融資産の買入れ等を着実に進めています。』(これは10月7日の総裁定例会見より)
となっていまして、今回から基金オペの進捗状況についてのアピールまで加わったという事のようですが、これはこれで諸刃の剣みたいな面もあって、進捗が遅ければ遅いで批判されそう(意図的に進捗遅らせたらまあ批判の対象でしょうが、短期金融市場での金余りんぐ状態によって基金オペの札割れとかが頻発すると意図せざる進捗遅延が生じる恐れがありますから)ですし、進捗が早ければ「じゃあそろそろ追加緩和」とか言われそうですし、これ扱いが難しい希ガス。
『また、日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針を明らかにしています。中長期的な成長力強化という日本経済にとって最も重要な課題への対応を進めていくためには、民間企業や政府、さらには金融機関が、現在の極めて緩和的な金融環境を十分に活用しつつ、それぞれの役割に即した取組みを続けていくことが不可欠と考えています。日本銀行としては、こうした包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、さらには、金融市場の安定確保や成長基盤強化の支援を通じて、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するよう、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針です。』
後半の方で「日銀だけにクレクレ言うのは甘え」という話が入ったのはこれまた10月7日の会見との変化ではありますが、まあこちらは追加緩和と共に声明文に入るようになったので、ここ自体はサプライズではないですけれども念のため入れておきました。
・欧州債務問題の影響についての整理
『(問) 今回の景気判断で、日本の実体経済にも若干の減速、陰りがみられ、その要因は世界経済の減速である、というご説明だと思いますが、欧州の危機が日本の実体経済に影響を及ぼしつつある、そのパスはどのようなものか、どのように分析をされていらっしゃるのでしょうか。』
ということで。
『(答) 色々な整理の仕方が可能ですが、ルートという意味では、貿易チャネル、金融チャネル、為替チャネルがあると私自身は考えています。』
ほうほう。
『貿易チャネルは、欧州に対する輸出の減少として影響が出てくる面がありますが、日本は相対的には、欧州向けの輸出のウエイトが高くないので、直接欧州向けの輸出減というよりは、欧州の影響を受けてその他の地域、特に新興国経済が減速し、その影響が日本に出てくるルートということになります。』
『2つ目は、金融チャネルですが、世界全体の金融市場が不安定化し、金融機関が資金調達に不安感をもつと、貸出を抑制することになってきます。欧州では既にその影響が出ていますが、日本の場合は、金融機関の資金繰りは現在のところ非常に安定していますので、その影響は出ていません。しかし、もし将来、もっと大きな金融市場の混乱が生じると、もちろん日本の金融機関も無縁ではないので注意をしています。』
『3番目は、欧州を発端として、世界経済全体の不確実性が増大してくると、当然投資家は、リスクを出来るだけ取りたくない、外したいと考えます。現在の環境のもとでは、相対的に安全資産とみられている円が選好されやすく、円高を通じて日本経済に悪影響を与えてくるということになります。』
『このように、欧州の情勢は色々なルートで日本経済に既に影響を与えていますし、また今後も与え得るため、日本銀行として注意をしてみています。8月、および先般10月末の金融緩和の強化も、そうした判断に基づくものです。』
ということで、まあ順当な分類なのですが、金融チャネルに関しては総裁の指摘する資金調達絡みの直接的な要因もさることながら、より懸念される点としては金融機関の資本不足という問題から金融機関の資本増強によってクラウディングアウトみたいな現象が起きてしまい、民間非金融部門へのクレジット供給が阻害される、という方が懸念されるように思うのでございますが、その一方でバーゼル委員会はSIFIsに対して資本増強を求めたりしている訳でして、いやまあそれはそれで重要な話なのですがこのご時世でそれをやると景気の下押しにならんかね、とか思うのですけどその辺りに関する質疑が無いのは残念。
・欧州関連&先日のオランダでの講演に関する質疑
『(問) 2つ質問があります。1つは、先程の欧州関連の質問と重なるところがありますが、以前より、欧州ソブリン問題については、金融市場から実体経済への負の相乗効果が進展しつつあるとのご認識だったと思いますが、前回会合から今までの間で、負のスパイラルは、残念ながら若干進んでしまったというご認識かどうか、解説をお願いします。2点目は、先日、オランダで電話会議を通じて金融イノベーションについての講演をされたと思いますが、その中でご懸念を示されていたような金融のイノベーションとは、具体的には、今であればCDSのようなものを念頭に置かれているのか、解説をお願いします。』
あの講演で懸念していた金融イノベーションは主に「複雑なスキームを作ってリスクの所在をわざと曖昧にする」ようなスキームとかで、CDSはあまり念頭に置いてなかったように思えますけれどもまあ良いとしまして。
まず最初の質問の回答部分。
『(答) まず、欧州ソブリン問題に関連して、負の相乗作用が前回会合以降、強まったかどうかとのご質問です。負の相乗作用という抽象概念の性格上、なかなか定量化して、この3週間でどうかと正確に表現するのは難しいわけですが、そうした問題への人々の懸念が端的に表れるのは、金融市場の動きです。』
ほうほう。
『短期の資金市場における緊張度を表す指標、あるいは社債の信用スプレッド、ソブリン物の金利、ドイツ国債とのスプレッドなど、どの指標をみても、この3週間でいったん、良い方向で変化し、それからまた悪い方向に向かっていますが、この3週間全体では悪い方向に向かったことは客観的な事実であると思います。』
まあつまり悪化していると。
『ただこれは、マーケットの認識ですから、大事なことは財政、金融システム、実体経済の3者の相乗作用を断ち切る取組みということですが、この取組みは、ことの性格上少し時間のかかる話です。』
したがって負の相互作用に関してはリスクが高まっている、ということでしょうな、うんうん。
2点目について。
『それから2つ目の、金融のイノベーションに関する、オランダ中央銀行のコンファランスにおける、テレビ会議を通じて参加した講演のことです。まず、お答えから申し上げると、特定の商品を念頭に置いているわけではありません。』
まあそう言う罠。
『オランダ中央銀行のウェリンク前総裁が6月末に退任されたことを記念するコンファランスが開かれ、コンファランス全体のテーマが「金融イノベーションがもつ経済厚生上の効果」というものでした。多少、講演の中身の紹介になりますが、普通のイノベーションの場合は、当然に良いことである、成長力を高めていくものであるとして、イノベーション自体について善か悪かを議論することはありません。しかし、金融イノベーションについては、少なくともこういうテーマでコンファランスが開かれることに示されるように、中には経済の発展につながったものもあるが、経済に混乱をもたらしたものもあるのではないか、もしそうだとすれば、その問題についてどう考えるべきか、ということが論点になります。』
まあ結局イノベーションったって道具なのですから、大事なのは道具の使い方ですよね。
『サブプライムローン問題以降の金融市場の展開をみても、CDSあるいは再証券化商品が、バブルを拡大する過程、あるいは、金融危機の過程でそれを促進する役割を一部担ったことは否定できません。ただ、講演で繰り返し強調していることですが、特定の商品について、金融のイノベーションを否定するものではありません。多くの金融イノベーションは、経済の発展に貢献していますが、どういう場合にイノベーションが経済に貢献しないのか、そのことを考えていくと、金融イノベーションを行っている人の背後にある動機(インセンティブ)の問題に帰着します。経済の発展につながっていかないようなインセンティブを生み出さないようにしていくことが、私ども当局者としては大事であることを申し上げました。』
まあ何だ、それを当局者ができるという発想はどうなのかと思いますが。つーかその手のインセンティブが何も無いのにイノベーションが起きるというのはこと金融屋として考えた場合には難しい、つまりガチガチにインセンティブを抑えれば当然ながら何の進歩も起きません、って話になるような気がします。
『経営者については、新しい金融商品の販売を始める前に、これがどういう形で世の中の付加価値の創出につながっていくのかについてよく考えて、その上で、販売についてゴーサインを出す、出さないということが大事です。これらの積重ねによって、金融イノベーションの良い部分が、最大限発揮されていくのではないかということが、私の講演の趣旨です。』
まーそれは理想的には正しいけれども現実問題に置きなおすとちょっと無理ぽな気がするんざますけれどもにゃあ。
・リスクの高まりを指摘した人は多いとみた
先ほどの冒頭部分での「リスクの高まりの指摘」云々に関する質疑応答が2つ。
『(問) 先程の冒頭のご説明の中に、海外情勢を巡る不確実性そのものについて高まっていると指摘するなど、委員の間で若干ニュアンスの違いがあるとおっしゃいましたが、もう少し具体的にこの点についてご説明頂けますでしょうか。』
『(答) 直前に、欧州の負の相乗作用が前回会合以降に強まったのかというご質問がありました。前回、展望レポートを作成するとき、先々の金融経済情勢について、それぞれの想定のもとで見通しを立てているわけですが、この3週間の動きについて、よりリスクが高まったという認識をされる方も、基本的には変わっていないと認識をされる方もおり、そこにニュアンスの差があったと受け止めました。具体的に、どのように意見を表明されたかについては、議事要旨で発表していきたいと思います。』
ほうほう(^^)。議事要旨が楽しみですな。
『(問) この3週間で「よりリスクが高まった」という委員は、1人ではなく複数いらしたのですか。』
『(答) 全ての委員が、3週間前との対比で「リスクが高まった」とか「変わっていない」と意見表明しているわけではありません。そういう意味で、私が単数だ複数だと申し上げるのは適当ではないと思います。意見表明しなかった委員の中にも、「高まった」という委員があるいはいたかもしれません。ただ申し上げられることは、「高まった」と認識した方が、数として多かったわけではない、と受け止めているということです。』
そらまあ高まった人が多かったらまた追加緩和がどうのこうのみたいな話が持ち上がりますからそらそうですなとは思いますが、わざわざこう言ってるんですから少なくとも1人や2人ではないでしょうな、とは想定されますにゃ。
・先行きの回復見通しについて
『(問) 海外経済の見通しについて伺います。本日の発表文でも、当面は海外経済が減速してから、新興国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まるという趣旨のことが書いてあります。この点に関して、成長率が再び高まるタイミング・時期についてのイメージを教えて下さい。また、成長率が高まった時に、力強いものになるのか、それともまた下振れリスクをかなり大きく抱えながらの成長率の高まりになるのか、その辺のイメージも併せてお願いします。』
『(答) 新興国が足許の減速からいつ成長率が再び高まっていくか、そのタイミングについて、本日の議論で正確に「いつである」とされたわけではありません。時期というより、どういうメカニズムを考えているかについて申し上げます。新興国は、地域によって違いますが、インフレ圧力が高まり、あるいは地域によっては資産価格の上昇圧力も高まってきて、放置すると短期的には大きく成長率が上がり、その後反動で低下します。従って、ソフトランディングを図っていくことが大きな政策課題です。』
ほう。
『その面では、新興国は金利を上げていく、あるいは外生的要因を含めてですが、既往の国際商品市況の上昇によって実質購買力が下がってくるという要因から、今は経済が減速しています。高過ぎる成長率が巡航速度に調整されていくこと自体は、その先々の経済を考えると、もちろんプラス要因です。今、ソフトランディングがうまくいくかどうかについて、私自身不確実性があるとみており、決め打ちはせずにデータに則してみていくしかありませんが、筋道としては今ご説明したように考えています。』
つーかその前に上昇そのものが大丈夫なのですかという話もあるような気がする訳で、どうもこの「海外経済は新興国・資源国が引っ張って再度回復基調(キリッ)」というのに関してはだいぶ説明が怪しげになってきたなあという感じで、この辺もトーンは弱めですなあという感じはあります。
という感じで、まあ主に海外経済に関する質疑が中心となるのは当然ですが、その結果としてこれまた当たり前のように質疑応答のトーンがやや弱めになってしまう、というのが今回の総裁会見の印象ですな。
○決定会合関連のどうでも良い雑談
・共同通信今回は「現状維持」ヘッドライン(^^)
まあ最初はブルームバーグに共同が配信しているヘッドラインで確認しましたが、47NEWSのサイトでも今回はこのような見出し。
http://www.47news.jp/news/2011/11/post_20111116134000.html
日銀、景気判断を下方修正 金融政策は現状維持
・・・・・・散々悪態をついたのが聞こえたのかどうか存じませんが、「追加緩和見送り」というヘッドラインじゃなかったのはやっと改善しやがったかという所でございますな。なお、ブルームバーグに最初に出た時は、リードの後の本文(フラッシュニュースなので本文といっても一言コメントですが)には「金融政策現状維持」の後に「追加緩和は見送られた」と相変わらず書いているのが共同通信クオリティではあるのですが、ヘッドラインに載せなかっただけマシになったかなと。
つーかさ、別に産経あたりがトンチキな事を書いても「産経電波浴」とか言って笑っていれば良いのですけれども、共同の金融関連ニュースって地方ブロック紙がモロにそのまま転電して報道するので、変なバイアス掛けたオモシロヘッドラインとか出すのは止めて頂きたい訳ですよ。大仰に言えば「金融政策の透明性」に水を差す話でもあると思うのですからねえ。
・オリンパスの質問をした記者は誰だあ(ガラッ)!(海原雄山風に^^)
さっきの総裁記者会見なのですが、オリンパスの質問をしたアホウが2名(同一人物が2回聞いているのかもしれませんが)いまして、もうねアホかと馬鹿かと。
当然ながら想定問答が用意してあるので予定通りと思われる回答がありましたが、まあ正直な所「そんなの知らんがなヴォケ」と本当はお答えしたいのではないかと拝察されるところでございまして、んな質問してる場合かよとゆーか、貴重な資源の無駄使いになりますのでそのようなアホウは会見に参加されない事をお勧め致したく存じます。つーかその席どいて俺様に座らせろと(^^)。
2011/11/17
お題「雑談とか決定会合関連とか昨日の続きとか」
決定会合自体はまあ無風なのですが、相変わらず他市場の方々は期待ばっかしてるのようですが、日銀ってETF買ったりREIT買ったり他の中銀よりも踏み込んだ部分もある、という認識は無いんだろうなあ・・・・・・
#まあその辺りのアピールをあまり行わない日銀も日銀なんだが
○ということで今日は雑談から入る
・一点だけ見て政策を立案するんじゃねえよアホ政治家どもは
昨日の金融ファクシミリ新聞(なので記事URLとかは無い)朝刊のトップ記事は「金融取引税の検討浮上、円高対策で政府与党」ということで、円高対策で金融取引税というだいぶ意味不明な話がございました。
中の文言を読んでいますと、どうも「投機的取引を減らすために取引に税金を課す」というような趣旨のようですが、『同様な税として日本ではかつて、株価の下落要因として撤廃された有価証券取引税の例があるが、株価の下落要因として撤廃されいぇもその後の株価には好影響を及ぼさなかった例がある。』(11月16日金融ファクシミリ新聞朝刊より)となっていまして、まあここの記事を拝読していますと、この与党筋と思われる方は有取税復活で投機的取引が抑制されるってな事を考えているんでしょうな。
・・・・・・えーっとですな、昔の有取税復活とか言われますと、当時は債券売買の場合に売り方が3銭(業者の場合1銭)お支払(ただし割引短期国債は適用除外)だったのですが、こんなもん復活された日にはただでなくさえ金利が低くて運用利回りが上がらない中でコストが無駄に上昇、つーか中短期ゾーンあたりだと税金で運用利回りを吹っ飛ばしかねない話になりますがな。そらまあ今のご時世で3銭とかアホウな事は無いと思うのですけれども、それにしても当然ながら売買で余計なコストが掛かるという事になれば、売買が低調になるのは確実で、そうなった場合は必然的に債券市場の流動性が低下する訳で、国債の安定的な円滑な消化に支障を来す惧れがありますわな、という事くらい普通に気が付けアホと思うのですけれどもねえ。
ということで、「投機的取引の抑制」という一点にだけ注目して有取税みたいな話に突っ込んで行くという発想は危険極まりなく、何かの政策を実施という話になった場合に何でおまいら全体的なバランスとか考えないのと小一時間問い詰めたいのでございますが、まーその典型が枝野某みたいなものとか思うと非常に遺憾でありますな。
・・・・もしかしてこの「金融取引税で円高対策」というのは、もしかして「国債の円滑消化を困難にして国債大暴落させて信用不安を起こして円も暴落させよう」という高度な狙いがあるんでしょうかね、たぶんその時は悲惨な事になっていると思いますけどねえwwwwww
・まだ言ってるのか・・・・・
15日のニュースでWireが共同でブルームバーグニュース(ネットではない方)が配信していたのですが、肝心の共同のサイト(47NEWS)とかを見ても該当記事がヒットしないので記事手打ちベースで恐縮ですが。
『日銀対応を要求、復興債で超党派議連』(11月15日ブルームバーグニュースより、18時14分配信で元のワイヤーは共同通信)という記事なのですが、15日に例の「増税によらない復興財源を求める会」様がまたまた復興債の日銀買取を要求したそうな。
でまあ相変わらずの中川秀直さんとか小沢鋭仁さんとかに加えて安倍元首相も議連の決定の場におられたようで(しかし初回200人以上署名だかを集めていた筈ですが、15日の会合は約30人が出席だそうですな、記事によりますと)、相変わらずやってますなあとか思うのですけれども。
でですね、いやまあご主張はご主張で勝手にどうぞとは思うのですけれども、時あたかも欧州債務問題が爆発している中でして、そういうご時世の中で「中央銀行による財政マネタイズ」という「将来の財政大爆発のリスク」を想定させるような提言を「元首相」という肩書の人間が言っちゃうとかいう自体がもうセンス無さすぎだと思うのですけど。まあ日本国債に関して言えば海外投資家がしこたま持っている訳でも無いですから別に興味ない、というのが正直な所なので助かっている面があるのではないかと存じます。
これが海外投資家が日本国債バカスカ持っているという状況だと「中央銀行による財政マネタイズ」というネタ一発でも状況次第では市場があばばばばーになるリスクもある訳で、あばばばばー市場になった場合のコストというのはそれはそれで大きい訳で、おそらくはいや円安になるからいいじゃんとかゆーよーなのんびりした話をしてる場合ではないと思うのですよね。
まあ何だ、別に日銀買わなくても復興債の消化に困る訳でも無いですし、そういう話は今せんでも良かろうと思いますけどねえ。市場が消化できないという時になって初めて日銀に国債市場の介入をさせるとかいう話になるんじゃないですかねえ。
ということで、まあこれもまたバランスの欠く話だなと思うのでした。
・業態別当座預金残高(メモ)
計数が出たのでフォロー。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/jcabs.pdf
今月の超過準備はどこで増えたかと思ってみてましたが、平残ベースを見ると外銀が前月比1兆円増えているのですが、都銀も1.5兆円増えているのねという点がふーんという感じでございました。
・JCR貫録の1ノッチのみ格下げ@東京電力
事業法人格付け関連のリリース一覧はこちら。
http://www.jcr.co.jp/rat_corp/index.php
11年11月16日 東京電力のモニター(ネガティブ)を継続し、#A+→#A/ネガティブに格下げ、CPをJ-1に据置
http://www.jcr.co.jp/release/pdf/11d0662TEP.pdf
先日の緊急特別事業計画の認可と、それに伴う賠償金支払いに向けた支援機構への支援要請とその実行を受けて格付けを1ノッチ下げてきました。ネガティブはついていますが、とりあえずA格維持ということで、JCR素晴らしいと存じます。まあそもそもこの会社既に普通の事業会社じゃねえだろというステージですしねえ。
・欧州わけわからん(メモ)
昨日は日本時間の夕方にはイタ国債が2円位いきなり上昇して、よくよく見たらブルームバーグニュースが「匿名の市場関係者2名」のコメントとして「今日はECBがいつもより多くイタリア国債を買っています」という海老一染之助染太郎ニュースが出てましたが、日本時間の夜8時過ぎたら大失速して結局7%とかワケワカラン。
などと雑談が長くなりましたが決定会合ネタは今回正直少々である。
○決定会合声明文はトーンが弱めになっています
声明文比較である。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k111116a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k111027a.pdf(前回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k111007a.pdf(前々回)
・現状認識では個人消費を微妙に上げるも輸出や生産を下げる
『わが国の経済は、持ち直しの動きが続いているものの、海外経済の減速の影響などから、そのペースは緩やかになっている。』(今回)
『日本経済は、供給面の制約が解消されてきている中で、持ち直しの動きが続いている。』(前回)
ということで、今回は海外経済の減速の影響ということで総括判断を下げていますが、まあもともと前々回の時点でも海外経済の先行き見通しとしては『先行きについて、海外経済は、当面減速するものの』(前々回)としていましたので、そういう意味ではこれはメインシナリオの想定範囲内、という事ではないかと思います。
『すなわち、国内需要をみると、設備投資は緩やかに増加しているほか、個人消費についても底堅く推移している。一方、輸出や生産は、震災後に減少した海外在庫の復元もあって増加を続けているが、海外経済の減速の影響などから、そのペースは緩やかになっている。』(今回)
『すなわち、生産や輸出は、震災による落ち込みからの回復過程に比べてペースは緩やかになっているが、増加を続けている。こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加しているほか、個人消費についても、全体としては持ち直している。』(前々回)
ここは前々回と比較してみましたが、個人消費が「持ち直し」から「底堅く推移」と強くなっていまして、その一方で輸出や生産は引き下げという形になっています。
・国際金融市場の緊張についての言及キタコレ
今回の声明文ではこの部分が入りました。
『この間、国際金融資本市場の緊張度は引き続き高いものの、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。』(今回)
従来はこの前半部分が無かったのですが、ついにこの点についての言及キタコレであります。
・先行き見通しは「当面の減速要因」が増える
『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響を受けるとみられる。もっとも、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きについて、海外経済は、当面減速するものの、基調的には、新興国を中心に底堅く推移すると考えられる。そうしたもとで輸出が緩やかな増加基調をたどることや、資本ストックの復元に向けた国内需要が顕現化してくることなどから、わが国経済は、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前々回)
ということで、先行きの中長期的な部分に関する後段は同じような話をしていますので、メインシナリオに変化はないのですが、当面の減速要因に円高とタイの洪水が加わってトーンそのものは弱めになってきましたな。
・リスク要因で欧州ソブリンに加えて米国バランスシート問題もより強調
『景気のリスク要因をみると、欧州ソブリン問題は、欧州経済のみならず国際金融資本市場への影響などを通じて、世界経済の下振れをもたらす可能性がある。米国経済については、バランスシート調整の影響などから、減速が長引く可能性がある。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。海外金融経済情勢を巡る以上の不確実性が、わが国経済に与える影響について、引き続き注視していく必要がある。』(今回)
『景気のリスク要因をみると、欧州のソブリン問題の帰趨や、バランスシート調整が米国経済に与える影響について、引き続き注意が必要である。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。こうした海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響については、引き続き、丹念に点検していく必要がある。』(前々回)
本当は展望レポートと比較するのが筋のような気もしますが、まあ手抜きで前々回の声明文と比較しますと、欧州ソブリン問題に関する説明が長くなり、更に「国際金融資本市場への影響」による経済の下振れ、という従来からリスク要因として指摘されていた金融市場と実体経済の負の相互作用に言及しているのと、米国のバランスシート問題に関しても「米国経済の減速が長引く可能性」に言及するという事で、このリスク要因をかなり下方向にシフトしましたという感じです。
あとまあオモロイなと思ったのはリスク要因について前々回は「丹念に点検していく必要がある」だったのが「引き続き注視していく必要がある」と内容が昇格(?)した感じですな。
ということで、リスク要因を中心に弱めのトーンという感じでした。
○バーナンキ議長講演(だいぶ前の奴)ネタの続き
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.pdf
昨日の続きから。
・今次金融危機の結果金融政策のコンセンサスに何の変化が起きたか?
というまあ本論開始である。
『To what extent, if at all, has the pre-crisis consensus framework for
monetary policy been changed by recent events?』
で、それに対して。
『In part because they recognized the benefits of continuity and familiarity
during a period of upheaval, central banks generally retained their established
approaches to monetary policy during the crisis; and, in many respects,
the existing frameworks proved effective.』
従来の中期的観点からのフレキシブルインフレーションターゲッティング的なアプローチは勿論今次金融危機でもその有用性が発揮されました、ということでこの後うだうだと説明しているのですが引用だけしておく。
『Notably, well-anchored longer-term inflation expectations moderated both
inflation and deflation risks, as price-setters and market participants
remained confident in the ability of central banks to keep inflation near
target in the medium term.』
『The medium-term focus of flexible inflation targeting also offered central
banks latitude to cushion the effects of the financial shocks on output
and employment in the face of transitory swings in inflation. In particular,
they were able to avoid significant policy tightening in mid-2008 and early
2011, when sharp increases in commodity prices temporarily drove headline
inflation rates above target levels.』
『Finally, for central banks with policy rates near the zero lower bound,
influencing the public's expectations about future policy actions became
a critical tool, as I will discuss further shortly. The commitment to a
policy framework that is transparent about objectives and forecasts was
helpful, in many instances, in managing those expectations and thus in
making monetary policy both more predictable and more effective during
the past few years than it might otherwise have been.』
最後のところでは金利政策がゼロ金利制約に陥った場合でも、将来の金融政策に対する期待に影響する事によって(=ガイダンス文言の利用でしてこの話は後の政策ツールの部分でも出てくる)効果を発揮したというような話をしておりますな。
で、ここまでがマクラで本論はこの次。
『However, the recent experience did raise at least one important question
about the flexible inflation-targeting framework--namely, that although
that framework had helped produce a long period of macroeconomic stability,
it ultimately, by itself, was not enough to ensure financial stability.』
今次金融危機における経験は、フレキシブルインフレーションターゲッティングによるアプローチは、マクロ経済の長期的な安定には寄与したものの、「financial
stability」を確保するには不十分だったのではないか、という論点を提示していると考えますと。
『Some observers have argued that this failure should lead to modifications,
or even a replacement, of the inflation targeting approach. For example,
since financial excesses tend to develop over a relatively longer time
frame and can have significant effects on inflation when they ultimately
unwind, it has been suggested that monetary policy should be conducted
with reference to a longer horizon to take appropriate account of financial
stability concerns.』
その点から考えた場合に、フレキシブルインフレーションターゲッティングのアプローチを変更すべきという意見もある、ということで、ここの脚注にはBOEのBean委員の講演を挙げていますので一応引用しておく。
『2. For example, Charles Bean of the Bank of England has suggested that
"taking on board the possible risks posed by cumulating financial
imbalances may require a shift in the rhetoric of inflation targeters towards
the longer term." See page 70 of Charles Bean (2003), "Asset
Prices, Financial Imbalances and Monetary Policy: Are Inflation Targets
Enough? " in Asset Prices and Monetary Policy, proceedings of a conference
sponsored by the Reserve Bank of Australia (New South Wales, Australia:
RBA, Aug. 18-19), pp. 48-76.』
で、その点に関してのバーナンキ議長の見解は以下の通りであります。
『My guess is that the current framework for monetary policy--with innovations,
no doubt, to further improve the ability of central banks to communicate
with the public--will remain the standard approach, as its benefits in
terms of macroeconomic stabilization have been demonstrated.』
コミュニケーションポリシーの進化によって対応ということのようで。
『However, central banks are also heeding the broader lesson, that the
maintenance of financial stability is an equally critical responsibility.
Central banks certainly did not ignore issues of financial stability in
the decades before the recent crisis, but financial stability policy was
often viewed as the junior partner to monetary policy.』
『One of the most important legacies of the crisis will be the restoration
of financial stability policy to co-equal status with monetary policy.』
マクロ経済の安定だけではなくて「financial stability」も重要である(キリッ)という話ではありまして、まあそれはその通りではあるのですが、んなこたあ日銀が既に散々経験してその手の事に関しても色々と先駆けた事をしているような気がするのでこの辺りの話(というか今回の講演全体がそうなのですが)で日銀の政策枠組みとかに関する言及がオマケ程度というのも何だかなあという感じはしますが、まあやはりかつて日銀をケチョンケチョンに言ってたのに政策の枠組みという面では日銀のアプローチと似てきている、という状況になっている事にかんして微妙にアレなものがあるのでしょうか、とつい思ってしまうのはあたくしの心が濁っているからですかそうですか。
ただまあ「中央銀行はマクロ経済の安定を図るのと同じくらいに「financial stability」を重要視しないといけない」と逆さ絵おじさんをして言わしてめているというのはまあこれはこれで結構踏み込んだ感じかなとは思います。
○更に講演の続きで「金融政策の道具について」のお話
次の章が『Monetary Policy Tools』でありますが、まず最初にゼロ金利制約に達した場合のアプローチとしてバーナンキ議長は「フォワードガイダンス」と「バランスシート政策」の2点を提示していまして、そういう意味ではいつの間にやら時間軸+量的緩和みたいなアプローチになっているという何という福井俊彦状態、といいたいのですが、後で出てきますようにバランスシート政策が金利アプローチになっているという時点で、バーナンキ議長の政策の枠組みの切り分けに自体に無理があるように思えるのですけどねえ。
『While central banks may have left their monetary policy frameworks largely
unchanged through the Great Recession, they have considerably widened their
set of tools for implementing those frameworks. Following the crisis and
the downturn in the global economy that started in 2008, central banks
responded with a forceful application of their usual policy tools, most
prominently sharp reductions in short-term interest rates. Then, as policy
rates approached the zero lower bound, central banks began to employ an
increasingly wide range of less conventional tools, including forward policy
guidance and operations to alter the scale and composition of their balance
sheets.』
・フォワードガイダンスの具体的事例に前の日銀の時間軸が無いのが謎なのですが・・・・・
で、まずはフォワードガイダンスって実は金融危機前からありましたね、という話が続く。
『Forward guidance about the future path of policy rates, already used
before the crisis, took on greater importance as policy rates neared zero.』
ときたら普通は日本の時間軸第3弾をネタにするような気がするのですが、もしかしたら日本の時間軸第3弾に見られる「外生的な経済データに対するがっちりとした紐付け」アプローチをFEDは取っていない(のであたくしは以前よりFEDの時間軸は時間軸もどきであってなんちゃって時間軸である、常々申し上げていますが)のでオミットしたのでしょうか・・・・・
『A prominent example was the Bank of Canada's commitment in April 2009
to keep its policy rate unchanged at 1/4percent until the end of the second
quarter of 2010, depending on the outlook for inflation. This commitment
was successful in clarifying for market participants the bank's views on
the likely path of policy rates and appears to have helped reduce longer-term
interest rates, thus providing additional policy accommodation.』
『In 2010, the Bank of Japan, which faced ongoing deflation in consumer
prices, also used conditional forward guidance, saying that "The Bank
will maintain the virtually zero interest rate policy until it judges,
on the basis of the ‘understanding of medium- to long-term price stability,'
that price stability is in sight, on condition that no problem will be
identified in examining risk factors, including the accumulation of financial
imbalances."』
前半はカナダの事例、後半は現在の日銀の事例ですが、確かにロジック的にギリギリと詰めると現在の日銀の「物価安定の理解」による時間軸設定というのは「経済見通しによって物価安定の理解が達成されると判断するまで(しかも金融のインバランスが拡大しない限りにおいて、という留保条件付き)」となっていて、福井総裁時代の2003年10月に示された(まあその前段階の2001年3月時点でも表現は微妙ながら同じ話をしていましたけど)「量的緩和政策の時間軸コミットメント」のような「外生的な経済データに紐付け」状態ではない、ともいえる訳でして、そう考えるとバーナンキ議長的には「外生的な経済データの特定数値に紐付けする」というアプローチはフォワードガイダンスとも微妙に違うという事を示唆しているのかもしれませんな、とふと思いました。
・フォワードガイダンスの別法
『Some central banks provide forward guidance directly by releasing forecasts
or projections of their policy rate. This practice had already been adopted
by the Reserve Bank of New Zealand (in 1997), the Norges Bank (in 2005),
and the Swedish Riksbank (in 2007).』
経済状況がどうのこうの、ではなくて、金融政策の見通しまたは計画を公表する、というアプローチもある訳で、NZ中銀やノルウェー、スエーデンなどで実施されましたと。
『Each of these central banks used those projections during the financial
crisis to indicate that they were likely to keep rates at low levels for
at least a year. 』
・FRBはこんなんしてますという部分。
まあここは言うまでもありませんので引用だけ。
『n the United States, the FOMC introduced language in its March 2009 statement
indicating that it anticipated rates to remain at low levels for an "extended
period," and at its August 2011 meeting the Committee elaborated by
indicating that it anticipated rates would remain low at least through
mid-2013. The FOMC continues to explore ways to further increase transparency
about its forecasts and policy plans.』
・バランスシート政策のゴールは「金利政策だ」というのはどうかと思うが
その次がバランスシート政策に関して。
『In addition to forward guidance about short-term rates, a number of central
banks have also used changes in the size and composition of their balance
sheets as tools of monetary policy. In particular, the Federal Reserve
has both greatly increased its holdings of longer-term Treasury securities
and broadened its portfolio to include agency debt and agency mortgage-backed
securities.』
さよですな。
『Its goal in doing so was to provide additional monetary accommodation
by putting downward pressure on longer-term Treasury and agency yields
while inducing investors to shift their portfolios toward alternative assets
such as corporate bonds and equities.』
で、この政策のゴールは、長期国債金利や長期のエージェンシー債金利を引き下げることによって経済に刺激的な効果を与えると共に、投資家のポートフォリオリバランス効果を期待する、ということのようですが、それは中々矛盾をはらんでいるような気もしますけどね。
『These actions also served to improve the functioning of some stressed
financial markets, especially in 2008 and 2009, through the provision of
market liquidity. 』
あと、バランスシート政策には「金融市場のストレスを解消する」というのもありますと。
で、その次が各国の取り組みに関してですが、今次金融危機前のケースについての例ですな。
『Other central banks have also used their balance sheets more actively
than before the crisis, with some differences in their motivations and
emphasis, in part reflecting differing financial structures across countries.』
でまあそれは各国の金融構造などの違いにもよりますよ、という話で以下具体例。
『For example, the Bank of England has used large-scale purchases of medium-
and long-term government securities as its preferred tool for providing
additional stimulus; it expanded the size of its asset purchase program
earlier this month out of concern about possible slowing of domestic and
global economic growth.』
『The Bank of Japan has acquired a wide range of assets, including government
and corporate bonds, commercial paper, exchange-traded equity funds, and
equity issued by real estate investment corporations.』
『The ECB purchased privately issued covered bonds between July 2009 and
June 2010 to improve liquidity in a key market segment; it recently announced
plans to resume such purchases in November. The ECB has also bought the
sovereign bonds of some vulnerable euro-area countries, "to ensure
depth and liquidity in those market segments which are dysfunctional,"
although the monetary effects of these purchases have been sterilized through
offsetting operations. 』
・バランスシート政策とフォワードガイダンス政策の比較
『In most cases, the use of balance sheet policies for macroeconomic stabilization
purposes has reflected the constraints on more-conventional policies as
short-term nominal interest rates reach very low levels. In more normal
times, when short-term policy rates are not constrained, I expect that
balance sheet policies will be rarely used. By contrast, forward guidance
and other forms of communication about policy can be valuable even when
the zero lower bound is not relevant, and I expect to see increasing use
of such tools in the future.』
バランスシート政策は主にゼロ金利制約の中でのマクロ経済の安定に用いられることが多いですが、フォワードガイダンスやその他のコミュニケーションポリシーはそれ以外の場合でも使えるので、コミュニケーションポリシーの今後の進化によってより改善した政策ツールになるのでは、とかなんとかいう話をしているようですな。
つまりまあ今後もコミュニケーションポリシーの進化的な動きはFEDから出てくるんでしょうなと思うのでありました。
以下続きは次の章に続くのですが今日はこの辺で勘弁。
2011/11/16
お題「市場雑感と昨日のバーナンキ講演ネタ続き」
急に暖かくなったり寒くなったりで疲れますな。
○市場雑感
・欧州ェ・・・・・
ほほう。
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_europe.html
フランス10年国債 3.661 0.259 96.535
イタリア10年国債 7.052 0.376 84.620
ドイツ10年国債 1.777 -0.000 104.190
ここにはスペイン国債の数字が出てませんが、スペイン国債も売られていましたが、何かこの辺の記事見ると欧州は燃えているか状態になっているような気がするんだが(ただし記事はスペイン語なので字面で何となく把握しただけだが)。
#なお、URLがクソ長くてブラウザのレイアウト壊す可能性がありますのでニュースのリンクはこちらということで
なお、スペインは日曜に総選挙です。野党PP大勝利の見通しですが。
まあスペインは兎も角として、ECBがどうしますかというのは中々微妙でして、従来のロジックを相変わらず繰り返しているのですが、これって最早「金融市場の混乱対応」という形での国債買入を拡大しても問題ないんじゃないかなと思うのですけれども、どうも政策当局者から出てくるのは「ECBにクレクレ言うのは甘え」という厳しい話が多いのはちょっと大丈夫かよと思うのであります。
こういう時は打つ手が遅れるとあっという間に金融市場の機能不全が起きて急速にエライコッチャになるものでありまして、リーマンショック後の金融市場状態になる訳でして、日本だって利下げしてるのにレポレートがロンバート金利に張り付きCPレートが上昇というような素敵な事が起きたような市場の流動性の蒸発みたいなのが起きるのでもうちょっと政策当局も配慮した方が良いと思うのですけどねえ。
・3か月TBとか交付税特別会計借入金入札とか
国庫短期証券(第238回)の入札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul231115.htm
(3)募入最低価格 99円97銭2厘5毛
(募入最高利回り) (0.1024%)
(4)募入最低価格に 30.7047%
おける案分比率
(5)募入平均価格 99円97銭2厘6毛
(募入平均利回り ) (0.1020%)
ということで、しばらく前に3週連続で同じレートだった入札と同じ結果に戻るでござるの巻。先週は為替介入資金がどどーんと出た関係なのか海外のドル調達圧力の関係なのかよーしらんですけれども、オフショアのGCとかが思いっきり低下した煽りを受けて3か月TBの入札が0.10%割れの水準になりました。で、日銀当座預金残高の方は相変わらずの高水準で推移しているのですが、その後短期市場に金が死ぬほどあるのかというとこれがまた当座預金としての残高はあるのに、資金が回っている感が無く、GCレートも0.10%挟みに上昇するわ、先週の3M短国も0.10%割れを買い進むほどの買いも無く、となりまして落ち着きどころ(?)に落ち着いてくるのでありました。
まあ何ですな、当座預金残高に示されるように金はどこかにある筈ですが、その金がマワランチ会長という状態になっているのは、まあ金を出し過ぎると却って金の周りが悪くなるでござるの巻、というパターンになってきたかなあという感じでございますな。まあ余った金がそのまま固定されてしまっている状態ではあるのですが、じゃあどういう風になっているのかは確か今日出るはずの業態別当座預金残高の状況を見たいと思います。
交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金の入札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result111115.htm
(3)募入最高利率 0.140%
(4)募入最高利率における案分比率 43.0340%
(5)募入平均利率 0.135%
こちらはまた0.140%かよとか思ったのですが、事前の予想ではもうちょっと流れるかもという話だったようですので、ちょっと突っ込んだ人がいたのかなという感じのようざます。まあレート的にはこの辺りからちょっと色が付いたような水準の方が買いたい(正確には貸したい)人が増えてくるようなのでまあこれはこんなものなのかもしれませんが、先週ネタにしましたので一応フォローということで。
○ということでバーナンキ講演ネタである
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.pdf
しかし今朝は布団の妖術に嵌ってしまって寝起きが悪かったので決定会合ネタをやるべき明日以降にもなだれ込む予定(虫干しネタだから前日中にやっとけという意見はあるのですがorz)。
でまあ昨日申し上げましたように、この講演では金融政策のフレームワークとして、「Financial
Stability」の重要性を力説していますが、ただまあその辺りに関しては従来のいわゆるFEDビューは引っ込めたものの、じゃあBISビューに寄ったのかというとそんな話ではサラサラ無いという感じでしょうか。
とりあえず今日は第1章の『The Monetary Policy Framework』からサラサラと。
・従来の金融政策のフレームワークのコンセンサスについて
『During the two decades preceding the crisis, central bankers and academics
achieved a substantial degree of consensus on the intellectual and institutional
framework for monetary policy. This consensus policy framework was characterized
by a strong commitment to medium-term price stability and a high degree
of transparency about central banks' policy objectives and economic forecasts.』
従来(今次金融危機前)の金融政策のフレームワークとしては「中期的な物価安定へのコミットメントと中央銀行の政策目的および経済見通しに対する高い透明性」でしたと。
『The adoption of this approach helped central banks anchor longer-term
inflation expectations, which in turn increased the effective scope of
monetary policy to stabilize output and employment in the short run. This
broad framework is often called flexible inflation targeting, as it combines
commitment to a medium-run inflation objective with the flexibility to
respond to economic shocks as needed to moderate deviations of output from
its potential, or "full employment," level. The combination of
short-run policy flexibility with the discipline imposed by the medium-term
inflation target has also been characterized as a framework of "constrained
discretion." 』
でまあそれが長期的なインフレ期待を安定させ、生産や雇用の安定に対して有益な効果をもたらす、というのが政策の波及効果である、ということですが、そのために中央銀行は「フレキシブルインフレーションターゲッティング」という政策を実施していました、という話ですな。つまり機械的なターゲットではなくそこは経済のショックなどにはそれはそれで対応する、というやり方です。
・世界でもそういうのを採用している、という話をしているのですが・・・・・・
で、その続き。
『Many central banks in both advanced and emerging market economies consider
themselves to be inflation targeters, prominent examples including those
in Australia, Brazil, Canada, Mexico, New Zealand, Norway, Sweden, and
the United Kingdom.』
これらはインフレーションターゲット政策を明言している国。
『Although they differ somewhat in the details of their policy strategies,
policy tools, and communication practices, today virtually all inflation-targeting
central banks interpret their mandate flexibly--that is, they treat the
stabilization of employment and output in the short term as an important
policy objective even as they seek to hit their inflation targets over
the medium term.』
でまあこれらの国でも行っているのは事実上のフレキシブルインフレーションターゲッティングを行っていますよという話ですな。
『Several other major central banks, such as the European Central Bank
(ECB) and the Swiss National Bank, do not label themselves as inflation
targeters; however, they have incorporated key features of that framework,
including a numerical definition of price stability, a central role for
communications about the economic outlook, and a willingness to accommodate
short-run economic stabilization objectives so long as these objectives
do not jeopardize the primary goal of price stability.』
ECBやスイス中銀では、明示的なインフレーションターゲッティングというラべリングはしていませんが、政策のキーとなるフレームワークには「物価安定に関する数値的な定義」「経済見通しの見通しを示すというコミュニケーションポリシーツール」「物価安定を阻害しない限りにおいて短期的な経済の安定を促す」というものが含まれています。とお話をしています。
・・・・・・でね、まあそれは良いのですけれども、そうであれば日銀もECBと同じ(つーかECBよりよっぽどハト的だと思うのだが)ような感じだし何でここで日銀を入れないのと思うのですが、何かやっぱり逆さ絵のおじさんはどこか引っ掛かる所でもあるんでしょうかねえとか思うのは変な裏読みのし過ぎですかそうですか。
・でまあFEDに関してですが
『How does the Federal Reserve fit into this range of policy frameworks?
The Federal Reserve is accountable to the Congress for two objectives--maximum
employment and price stability, on an equal footing--and it does not have
a formal, numerical inflation target. But, as a practical matter, the Federal
Reserve's policy framework has many of the elements of flexible inflation
targeting. In particular, like flexible inflation targeters, the Federal
Open Market Committee (FOMC) is committed to stabilizing inflation over
the medium run while retaining the flexibility to help offset cyclical
fluctuations in economic activity and employment.』
デュアルマンデートの中で数値的なターゲットはありませんが、いわゆるフレキシブルインフレーションターゲット状態ですよという話をしていますわな。
『Also, like the formal inflation targeters, over time the Federal Reserve
has become much more transparent about its outlook, objectives, and policy
strategy. For example, since early 2009, the Federal Reserve's "Summary
of Economic Projections" has included the FOMC's longer-run projections,
which represent Committee participants' assessments of the rates to which
economic growth, unemployment, and inflation will converge over time.』
経済見通しに関してはSEPを出していますという話ですな。
『These projections are conditioned on the assumptions of appropriate monetary
policy and no further shocks to the economy; consequently, the longer-run
projections for inflation in particular can be interpreted as indicating
the rate of inflation that FOMC participants judge to be most consistent,
over time, with the Federal Reserve's mandate to foster maximum employment
and stable prices. 』
『These longer-run inflation projections are thus analogous to targets
although, importantly, they represent the Committee participants' individual
assessments of the mandate-consistent inflation rate, not a formal inflation
goal of the Committee as a whole.』
で、これはSEPの中でも書いてありますが(従来から書いてある)、SEPで示される「longer-run
projections」というのがFRBメンバーの現在考えている「インフレ、GDP、物価」に関する長期的な「望ましい水準」となっているという説明ですのでSEP出るときは注目しましょうねという事ですな。
でですな、ここに脚注がありまして・・・・・・・・
『1. In a similar vein, since 2006 the Bank of Japan has provided the range
of individual policy board members' understanding of the inflation rate
consistent with price stability. That understanding is reviewed annually.』
ということで、日本銀行の「中長期的な物価安定の理解」というのを2006年から示しています、というのが脚注にしらっとあるのがチャーミングでありますが、だったらさっきの所で何で日銀の事例を出さないのよ逆さ絵おじさんと思ったのですけどね(^^)。
・・・・・・で、肝心の部分をやろうとしたら布団の妖術のせいで時間が無くなったので明日で勘弁。まあそんなにこの講演長くないし、もともとバーナンキ議長の講演テキストは読みやすく出来ていますし、まあそれ以前の問題としてだいぶ前のですから既にご案内の方も多いかと存じますけれども、これは良い論点が並んでいると思いますのでまだ続きます。
2011/11/15
お題「例によって後入先出で昨日リリースされた白川総裁講演から」
次世代RTGS対応(第2期対応)の実施当日における日本銀行当座預金決済の状況
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel111114a.pdf
『一部取引先金融機関等において、障害が発生』というのが気になるがまあ無事に済んだようでなにより。
日銀の金融緩和が足りないから円高が止まらないとかまたどこぞの株屋がモーサテで話をしているが、じゃあ具体的に何をどうすれば円高が止まってそのトランスミッションメカニズムがどうなるのかとか説明してみろやと思うのだが。そんなに言うなら欧州の金融緩和なんて(日銀の緩和が足りないという理屈なら)全然足りてねえけど絶賛ユーロ安だろゴルァという感じでございまして、無駄玉打ちまくりの介入の方がよっぽど酷いだろうよと思いますがねえ。
#納得するまで介入するんじゃなかったでしたっけガソリンプール大臣さん
ま、もちろん日銀の場合は見せ方(ハッタリとも言うが)が上手くないというのはありまして、メディアがどうも日銀の説明をちゃんと解説しないのでちゃんと伝わらないというのもあるかなとは思いますが、一応金融という意味ではプロのはずの為替屋や株屋があの調子で金融政策の理解(というか適当極まる知見)というのは日本だけではなく各国金融政策当局の悩みであり、誤解を適当に利用したりするというのもあるのかなあ、などと朝から悪態と共に前置きが長くなるでござるの巻でございました。
まあ日本の債券市場ちゃんは海外市場がどう暴れても抜群の安定感を誇っていまして、昨日の後場とか先物の値段が全然動かない(カーブは動いていたが)とか憤死しそうな状態でしたので、まあ今日も今日とて人様の講演ネタですが、バーナンキ議長の論点豊富な講演の続きの前に今日は白川総裁の直近の講演がイイハナシダナー(ただし最後に妙なオチがあるのが麿クオリティだがそれは最後まで読んでちょ)だったのでそれからで勘弁でござる。
○これはイイハナシダナー
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko111114a.pdf
金融イノベーションの光と影
── オランダ中央銀行主催「金融イノベーションがもつ経済厚生上の効果」に関するコンファレンスにおける講演の邦訳(テレビ会議により参加)
──
題名見た瞬間にこれは面白そうと思ったのですが予想通りでした(^^)。まあとりあえずおまいら全部読めという感じですが、それではあたくしの駄文のネタにならないのでまあ適当に(と言いつつ講演を半分以上引用したのですが、笑)引用である。
・なるほど
最初の部分から。
『セントラル・バンカーは ―― あるいはもっと広く政策当局者は、と言ってもよいかも知れませんが
―― イノベーションを好むものです。イノベーションは成長を促進し、生産性を高める鍵となるものです。これなくしては、我々の経済は生産要素の投入量に比例する形でしか成長できないことになります。イノベーションの重要性は、特に先進国において高まっています。なぜならば、人口の高齢化が進み、労働力の急速な増加が望めない現状において、先進国が今後も経済成長を実現していくためには、イノベーションを通じて生産性を引き上げるという道しか残されていないからです。』
これはこれでその通りの話なのですが、ここを読んでいてふと思ったどうでも良い話として、なるほどそういう発想様式だから特に問題なく動いているような市場の改革とかをしたがって愚にもつかないシステム変更をするどこぞの取引所があったり、しょうもない企画仕事みたいなのを次々と生み出す企画(以下保身のため自主規制)。
『この意味で、イノベーションとは、我々が本質的に望ましいと考えるものだと言えます。しかし、我々は本日、「金融イノベーションがもつ経済厚生上の効果(welfare
effects of financial innovation)」を議論するために、このコンファレンスに参加しています。こうしたテーマ設定の下で議論をすることができるという事実は、金融イノベーションと称されるものが、実は必ずしも常に経済厚生を改善させる訳ではないということを暗示しているようにも思われます。』
まあ後の話にありますように、証券化の話とかが出てきまして、それが別に一概に悪いという話ではないのは当然ですが、では問題になるような事になったのは何故でしょ?という話ですな。
『特に、「イノベーション」の前に「金融」という言葉を付け加える場合、我々がその得失について改めて考えることの意味とは何でしょうか?
その考案者たちが「イノベーション」と呼ぶ金融業の変化(developments)が、時として必ずしも好意的には評価することができないものであるのはなぜでしょうか?』
金融とは全然話が違いますが、難しく考えるとややこしい事になるますが、身の周りに置き換えてみた場合のカイカクとかカイゼンだった場合、そのカイカクとかカイゼンとかが自己目的化するとか、考案者の仕事のための仕事だったりした場合(あるいはそう理解された場合)に、そこら中から文句タラタラという話になるとか考えると、話の筋は違いますが何となくそうなのかなあと勝手にイメージしてみましたが、イメージを具体化するのは保身のため自主規制(^^)。
『また、社会全体に恩恵をもたらすようなイノベーションを促すという観点からみた場合、中央銀行にとってのインプリケーションとは何でしょうか?15
分という限られた時間の中で、これらの問いに対する明確な回答を用意することは難しいことですが、本日は私なりの考えを申し述べたいと思います。』
・技術ドリブンか様式ドリブンか
『2.金融業のイノベーションを誘導するものは何か?』という所から少々。
『イノベーションとは、顧客のニーズにより良く応えるために、ビジネスの方法を変えることを意味しています。それは絶えざる適応のプロセスであり、その過程で生じる変化は漸進的(
incremental )、あるいは非連続(discontinuous)な性格をもっています。こうした点では、金融業も例外ではありません。』
ということで、イノベーションの具体例の話ですが、最初は技術革新による例ですな。
『それ以来、金融業におけるイノベーションは今日まで続いています。銀行が取り扱う書類の量は減少し、取引記録はコンピューター・システムで集中管理されるようになりました。ATM
の出現は、それまで人手によって行われていた作業の大部分を不要なものとし、我々の財布の中では、各種のプラスチック製のカードが銀行券や硬貨以上に重要な意味をもつようになっています。こうした変化は、従来と同等、あるいは従来よりも優れた金融サービスを、顧客がより低いコストで享受することを可能にするものであり、言葉の通常の意味において、まさにイノベーションと呼ぶに相応しいものです。従って、この種のイノベーションの経済厚生上の効果について、我々が疑念をもつことは殆どないと言ってもよいでしょう。』
まあ書類って減ったかという気もしますが(^^)、技術革新によるイノベーションについては仰る通りで。
『むしろ我々が懸念するのは、銀行業の中でも「ロケット・サイエンス」と称される側面と結び付いたタイプのイノベーションです。』
キタコレ。
『ここではデリバティブ取引を例にとって考えてみましょう。1990 年代の初頭、各国の中央銀行が初めてデリバティブ取引に関心を向けるようになった際、多くの専門家は「デリバティブ取引とは、リスクを分解し、それらのリスクを引き受ける意思と能力のある主体に低コストで移転することを可能ならしめるもの」と説明していました。』
『経済主体のリスク選好が多種多様であることを踏まえれば、デリバティブ取引を通じて実現されるリスクの再配分は、経済厚生を高めるものと考えられた訳です。さらに、こうして効率的なリスク再配分が可能となる結果、金融システム全体もショックに対する耐性を高めるという点が強調されました。概念的に考える限り、こうした立論は理解できるものですが、実際には想像を超えるような失敗例も発生しています。』
『このような点を踏まえると、「全ての金融イノベーションが同じような働きをする訳ではない」という考え方にも与したくなります。イノベーションの中には、問題なく受け入れることができるものがある一方で、当局による慎重な監視や規制、さらには全面的な禁止に服すべきものもあるということかも知れません。』
ということで・・・・・
『この問題を考えるに当たっての1つのアプローチは、「何がイノベーションを誘導しているのか」という点に着目するものです。イノベーションについては、技術誘導型(technology-driven)のイノベーションと、様式誘導型(modality-driven)のイノベーションに分けて考えることができるように思います。』
ほうほう。
『技術誘導型のイノベーションは、新しい技術の応用によってビジネスの方法が改良される際に現れるものです。銀行のATM
は、その代表的な事例と言えるでしょう。一方、様式誘導型のイノベーションは、ビジネスのプロセス自体を再編成することを通じて、その改善を図るものと位置付けられます。例えば、デリバティブ取引がなくても金融リスクを移転することは可能ですが、デリバティブ取引を利用すれば、リスクの移転をより効率的に行うことができるようになります。技術誘導型のイノベーションと様式誘導型のイノベーションは、相互に重なり合う側面もありますが、イノベーションの意義を考えるに際しては、両者を分けて考えることにも、一定の意味があると思います。』
なるほどなるほど。
『一般的には、様式誘導型のイノベーションより、技術誘導型のイノベーションの方が受入れやすいという面があるように思われますが、だからといって、様式誘導型のイノベーションが本質的に好ましくないということではありません。経済厚生を高めるという点では、様式誘導型のイノベーションも技術誘導型のイノベーションと同様に有効な場合があるでしょうし、利用の仕方を誤れば、どのようなイノベーションであれ、有害なものになりかねないリスクを孕んでいます。』
一々ごもっともである。
『もっとも、そうしたリスクを否定することはできないものの、そもそも革新的な商品やサービスであれば、それに満足する顧客の方が不満をもつ顧客よりも遥かに多いと考えられますし、買い手責任(caveat
emptor)に立脚した議論を展開することも可能です。あるいはまた、リスクが顕在化した場合でも、「単に不運に見舞われただけだ」という解釈もあり得るでしょう。』
・イノベーションをする際のインセンティブ構造に着目すべきである、という話
で、その続き。
『しかし、我々はこうした議論をすんなり受け入れることができるでしょうか?仮にこの問いに対する答が「YES」であれば、我々に求められることは、幾ばくかの監視強化の努力と、金融教育面の改善に留まりそうです。しかし、本日この場に集まっておられる皆さんが、こうした考え方で満足されるとは、私には思えません。』
『現代の金融業には、金融技術の誤用や悪用を誘発しかねないような、インセンティブ構造上の問題点はないのでしょうか?仮にそうした誤用などがないとしても、一握りの専門家しか理解できないような複雑な金融商品を生み出し、イノベーションという名の下にリスクの所在を曖昧にするインセンティブが存在しているという現実を前に、我々は手を拱いていてよいのでしょうか?これまで我々は、あまりにも多くの「100
年に一度の事象」に遭遇してはいないでしょうか?』
何というイイハナシダナー(;∀;)(皮肉じゃなくて真面目な意味で^^)ということで、次の小見出し『3.誰がイノベーションの恩恵を受けるのか?』になるのです。
『ここまで、私はイノベーションの目的については、敢えて明言することを避けてきましたが、そもそも金融機関はなぜイノベーションを行うのでしょうか?「イノベーションはビジネスの方法を改善する」と言われますが、具体的には何を改善するのでしょうか?』
ということで金融機関の金融仲介機能という基本的な部分に関する話を説明していますが、まあその辺はスルー致しまして。
『こうした見方に立って考えると、金融業のこれまでの変遷の中で、我々が必ずしも好意的に評価できないような事例があったことの理由も、改めて理解することができるようになります。つまり、金融機関が提供する商品やサービスが、金融仲介や決済の円滑化という本来の機能に根ざしていない場合に、問題が発生すると考えられます。金融機関が顧客の、あるいは、広く社会全体のニーズを見失うと、せっかくのイノベーションも価値を失うばかりか、時には有害なものにさえなりかねません。』
つまりさっき思いついた下らない例えに直せば金融機関という部分をおまいらの会社の企画部門と読み替えてみるとだな、つまりは(以下猛烈な勢いで自主規制)。
『この点、技術誘導型のイノベーションは、新しい技術を考案する段階で顧客のニーズを考慮に入れることが多いため、社会的にも有用である蓋然性が高いと考えられます。これに対し、様式誘導型のイノベーションは(後述する証券化が典型例ですが)既存のビジネスを切り出して分解するケースがあり、そこでは、ややもすれば顧客の存在を忘れがちになる可能性が潜んでいるのではないでしょうか。』
キタコレ(・∀・)
『例えば、「証券化」と総称される金融イノベーションは、今回の危機を引き起こす一端になったという汚名を着せられています。しかし、もともと証券化は、貸し手のリスク選好(許容度)と借り手のリスク・プロファイルの間に存在するギャップを埋めることに主眼があり、理念的に考えれば、有益な機能を担うと言えるものです。』
確かに仰せのとおりである。
『証券化がこうした機能を正しく発揮するためのおそらく唯一の条件は、これをアレンジする投資銀行が、証券化商品の全てのトランシェについて買い手を見つける必要があるという点です。』
この点に関してはあたしゃ「金融機関の金融仲介機能」という文脈で証券化を考えた場合に左様でございますなとは思いますが、ただまあ金融機関のバランスシートのスリム化とかそっちの観点からは別の意見がありそうに思える所でして、証券化ビジネスの人たちの見解を聞いてみたく存じます次第ですがまあ先に続きます。
『この点に照らしてみると、今次危機において大きな経済的苦痛をもたらす結果となった再証券化商品の中には、疑問を持たざるを得ないものがあるのも事実です。なぜならば、そうした商品には、売れ残った証券化商品のトランシェ、投資銀行が買い手を見つけることができず、自らのバランスシートに抱え込むことも躊躇せざるを得ないようなトランシェが含まれているからです。』
『「金融イノベーションは金融仲介を通じて社会厚生を高めるもの」という点を踏まえると、イノベーションの功罪を考えるに当たっては、それが金融仲介とどのような関わりを持っているかという点が、議論の出発点になるべきではないでしょうか。このことは、特に様式誘導型のイノベーションの是非を考える際に、重要な意味をもってくると思われます。』
・中央銀行の対応について
『4.望ましくない結果にいかに対応すべきか?』という小見出しの部分になる。
『しかし、幸か不幸か、今や金融の世界は高度に複雑化しており、1つ2つの簡単なテストによって、小麦(有益なイノベーション)と籾殻(有害なイノベーション)を選り分けることは不可能となっています。この点に関連する最も難しい問題の1つは、ある種の金融商品なり金融取引が「公共財(public
good)」を提供している ―― すなわち、流動性や価格発見機能の向上を通じて市場機能を高めている
―― と称される場合に、我々はどのように対処すべきかという問題です。』
でまあ具体例もまあなるほどこういう論点があるのかと思ったので引用するだよ。
『例えば、株式市場で話題になっている高頻度取引(high-frequency trading)を例にとってみると、ここでは取引の大半がネットアウトされるため、実質的な金融仲介は行われていないと考えられます。従って、高頻度取引によって取引の執行速度が増しても、社会的な有用性は乏しいと論じることも不可能ではありません。』
ドヤ顔でアローズ導入している東証が憤死しそうな論点(^^)。
『他方、高頻度取引が小刻みな取引を繰り返すことで市場の価格発見機能が向上し、市場参加者にも便益が及ぶという議論を展開することもできるでしょう。株式市場が貯蓄主体と資本を必要とする企業との間で直接的な仲介機能を果たしていないからといって、株式市場自体の有用性を疑う人はいません。』
そらそうですな。
『株式市場にバイ・アンド・ホールド型の長期投資家しかいないとしたら、市場の流動性、すなわち、迅速な取引機会の提供(supply
of immediacy)は著しく制約されることになります。株式市場で活発な売買が行われているという事実によって、企業の資本調達活動が後押しされている面がある訳です。』
日本債券市場ェ・・・などと言ってはいけません^^;ってまあ具体的例に関する論点でもまあ色々あるのね、と思いつつでは政策当局はどうするのかという話ですが。
『難しい問題ではありますが、金融機関のリスクのある行動を承知しつつも、最善の対応策が簡単には見つからないことを理由に、政策当局者がこれを黙過するとすれば、こうした態度は許されないでしょう。そうした場合、我々は次善ないし次々善の解決策を見出す努力をしなければなりません。』
なるほど。
『個々のイノベーションがもつ経済厚生上の効果については、見識ある論者であればあるほど多様な意見が存在し、見解の一致は期待し難いものです。そうであれば、むしろ金融業における様々な変化
―― 特に様式誘導型のイノベーション ―― の背後にあるインセンティブ上の問題を考察することこそが有益かも知れません。というのは、しばしば観察されることですが、様式誘導型のイノベーションには、金融業に課される各種の規制や税制、あるいは会計基準の抜け道を探すことを目的に考案されるという側面があるためです。ルールに対する潜脱を意図して考案されるこの種のイノベーションには、経済に蓄積される過大なリスクを覆い隠し、いずれは深刻な結果をもたらす可能性が潜んでいますが、この点は今回の危機から得られる教訓の1つでもあります。』
うーむ。まあここでも指摘されているように、じゃあ証券化を行わなかったらバランスシート制約によって金融仲介機能が拡大できませんでしたねというような言い方だって出来る訳でございまして、この辺りに関しては中々一筋縄ではいかない論点ではないかと思われますがどうでしょうかね。
・ということでまとめは「金融業のインセンティブを把握する事」のようである
『冒頭で申し上げたように、イノベーションは経済成長の鍵となるものです。この点は金融イノベーションも同様ですが、金融イノベーションの場合は、「他の経済主体の活動をサポートする限りにおいては」という前提条件が加わることを忘れてはなりません。』
ほう。
『市場経済の「見えざる手」は、金融業の利益と社会全体の利益を合致させる方向に作用し得るものですが、今回の危機で明らかになったように、金融機関のインセンティブが歪められている(improperly
aligned)と、「見えざる手」が本来の機能を発揮できなくなるケースが発生します。』
ふむふむ。
『それだけに、金融機関の経営陣には、自社の職員やトレーダーが新しい金融イノベーションに基づく商品を提案してきた際に、その商品が経済全体にどのような形で付加価値を生み出すのか、金融仲介をどのように容易化するのかという点について、思いを巡らせ、そのうえで販売の是非に関する判断を行うことが求められます。』
いや申し訳ないがそれを金融機関に求めるのは無理だと思う、正直言って(-_-メ)
『他方、中央銀行には金融業のインセンティブ構造を正確に把握することが求められますし、金融機関の行動インセンティブが歪められ、その結果、社会全体の利益を損なうような様式誘導型のイノベーションが生み出されていないかという点にも、注意を払うことが必要となります。』
さいですな。
・そしてどさくさに紛れてしらっとこんな事を・・・・・
で、その次にしらっとこんな話が。
『そうした努力を通じて、我々は特定の政策措置が意図せざる形で社会厚生を損なうという事態――
例えば、極端な金融緩和政策を長期間に亘って継続するとか、「最後の貸し手機能」に代表されるセーフティ・ネットを必要以上に広範に提供するといった事態
―― を回避することができるのではないでしょうか。』
全体的にはイイハナシダナーが続くのですがどさくさに紛れてこれはwwwww
でまあ後は最後のご挨拶なので割愛ですが、『今次危機を受けた銀行規制の強化に伴って、新たなリスクの芽が伝統的な銀行部門からシャドー・バンキング部門へ移転していないかという問題は、今後の課題の1つと言えるでしょう。』というくだりは何かまた妙な規制の強化の香りが銀行&証券業界以外の金融業界にも降ってきそうな悪寒が致しまして、最後の最後の部分でちょっとこうアレな部分がある講演なのでございました。
#ということで結局講演を6割がた引用するという暴挙をしてしまいました大変すいませんすいません
2011/11/14
お題「月曜につき(?)虫干しネタで」
今日から内国為替大口RTGS開始である。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel111113a.pdf
○今さらですが10月1回目の決定会合議事要旨よりメモ
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g111007.pdf
まあこの次の決定会合で追加緩和が出て展望レポートも出たので今更というかおまけ程度という感じですがメモと雑感。
・海外経済に関して
『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。
『国際金融資本市場について、委員は、欧州ソブリン・リスク問題に対する懸念や世界経済の先行きに対する不透明感から、投資家のリスク回避姿勢が一段と強まっており、緊張の高まった状況が続いているとの認識を共有した。また、投資家の強い安全資産選好を反映して、米国やドイツの国債、あるいは円など、安全とみなされている資産・通貨には、資金が集まりやすくなっているとの見方で一致した。』
ということでソブリンリスクに関してですが。
『ソブリン・リスク問題について、多くの委員は、ギリシャの財政再建や構造改革への取り組みが難航する中、欧州諸国の国債を多く保有する欧州系金融機関の財務の健全性に対する懸念が高まっているとの認識を示した。また、欧州金融安定ファシリティの機能拡充や規模拡大に向けた対応に時間を要していることもあって、欧州の金融システム全体に対する不安心理が強まっていると指摘した。』
てな感じで問題は拡大中という話になっています。で、地域別ですけれども・・・・
米国経済
『米国経済について、委員は、回復を続けているものの、そのテンポはごく緩やかなものにとどまっているとの認識を共有した。多くの委員は、個人消費の伸び悩みの背景として、住宅市場の低迷、雇用環境の改善ペースの鈍化、株価下落を受けた消費者コンフィデンスの悪化などを指摘した。』
『先行きについて、委員は、バランスシート調整圧力が引き続き経済の重石となっているもとで、財政面や金融面からの景気梃子入れ余地が限定的なことから、当面、景気回復は緩やかなペースにとどまるとの見方を共有した。』
まあこの辺は最近ずっとこんな感じ。
ユーロエリア
『ユーロエリア経済について、委員は、横ばい圏内の動きとなっているとの認識を共有した。多くの委員は、海外経済の減速を受けた輸出の伸び悩みに加えて、家計のマインド悪化に伴う個人消費の弱含みなどから、これまで欧州経済を牽引してきたドイツなど主要国においても、成長が鈍化していることを指摘した。こうした状況について、これらの委員は、ソブリン・リスク問題の影響が、マインドの悪化を通じて、実体経済にも及んできているとの見方を示した。』
どう見ても金融と経済の負の相互作用です本当にありがとうございました。
新興国
『新興国・資源国経済について、委員は、輸出の減少や既往の金融引き締めの影響から、成長テンポが鈍化してきているが、堅調な需要を背景に、総じて高めの成長を維持しているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、基本的には、新興国・資源国は高めの成長で世界経済を牽引していくとみられるが、物価安定と成長を両立することができるか、なお不透明感が高いとの認識を共有した。』
ふ〜んという感じですが。
『また、何人かの委員は、投資家がリスク回避の一環として新興国から資金を引き揚げる動きをみせている点について、こうした動きが拡がることになれば、新興国の経済活動を金融面から下押す可能性があると指摘した。』
ほほう。
『ある委員は、中国においては、やや長い目でみて、地方からの低賃金労働者の供給余地が乏しくなるなど、構造的な転換点が到来しつつあり、潜在成長力が低下する可能性にも留意が必要であると述べた。』
なるほど。ということで結論としては・・・・・
『以上の議論を経て、@ 欧州では、ソブリン・リスク問題の影響の深刻化を受けて、財政と金融システム、実体経済の負の相乗作用が強まっていくリスクがあること、A
米国では、雇用の改善テンポが依然として緩慢なうえ、家計のバランスシート調整や住宅市場の調整が長引くもとで、景気は上方に弾みにくく、下方に振れやすい状況が続くと考えられること、B
新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高いこと、など、海外経済の先行きには引き続き留意が必要との見方で一致した。』
という話になって、まあこの辺を見ていますと「海外情勢を理由に追加緩和してきてもおかしくはないですなあ」という風に読めたりする(少なくともそういう施策を実施するための布石を打ったような形になっている)のでして、この前もちょっと申し上げましたが、この議事要旨を次回の決定会合の実施前に公表するような段取りにしておくと「次回の決定会合に関するインプリケーションを提示」という意味合いからした場合の「コミュニケーションツール」としての利便性が高まるのではないか、と思うのです(が制度上たぶんそれは簡単に変更できないというのと、議事要旨をまとめるのもこれまた大変というのがあるんですよね、事務局の皆さん?)。
・景気の先行きに留保条件付きまくりとな
で、日本の景気に関してですが現状は飛ばして先行き見通し。
『景気の先行きについて、委員は、海外経済は、当面減速するものの、基調的には底堅く推移すると考えられること、そうしたもとで、輸出は、緩やかな増加基調を辿ること、資本ストックの復元に向けた国内需要が顕現化してくることなどから、わが国経済は緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有した。』
ということで、まあ声明文を見たときに受けた「降参モード」と同じですけれども、海外経済への警戒モードというか、欧州の「負の相互作用」の指摘をしていましたので、更にこの辺りの印象が弱くなるという感じではないかと思います。
で、下振れリスクがこれがまた説明が長いのよ。
『景気の先行きを巡るリスクについて、委員は、海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響に、引き続き最も注意が必要であるとの見方で一致した。』
ほうほう。
『多くの委員は、欧州のソブリン・リスク問題が世界経済全体を下押しする中で、輸出が下振れるリスクが高まっているとの認識を示した。このうち、複数の委員は、とりわけ自動車や情報関連の海外需要の下振れには注意が必要であると付け加えた。何人かの委員は、これまでの円高が、輸出や企業収益の悪化をもたらすだけでなく、企業や家計のマインド悪化を通じて、より広範な影響をもたらす可能性に注意が必要であると指摘した。』
と、一部の委員の指摘はかなり厳しめ。
『このうちの一人の委員は、円高の定着が一因となって、基幹工場や研究開発拠点の海外シフトが加速するようなことがあれば、産業空洞化をもたらすとともに、わが国の成長期待が低下する惧れがあると述べた。別の一人の委員は、最近、円高を活かした海外企業の買収例が急増していることは、わが国の潜在成長力を高めるものとして、積極的に評価できる面もあると述べた。この間、複数の委員は、電力供給制約の影響も引き続き意識しておく必要があると指摘した。こうした議論を踏まえて、委員は、わが国経済を巡る不確実性は引き続き高く、下振れリスクを意識する必要があるとの認識を共有した。』
一部に前向きの指摘もありますがイマイチ感はぬぐえず。つーか展望レポートの時には為替円高のメリットっぽい話はスルーされてましたな。
・ということで追加緩和の可能性について
『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。
『当面の金融政策運営について、委員は、8月に一段と強化した金融緩和措置のもとで金融資産の買入れを着実に進め、その効果の波及を確認していくことが適当であるとの認識を共有した。』
『そのうえで、何人かの委員は、欧州ソブリン・リスク問題の拡がりに起因する国際金融資本市場の不安定化等を背景に、前回会合よりも経済・物価の下振れリスクは幾分高まっているのではないかと述べた。何人かの委員は、今後、必要に応じて適切な措置を講じていくことが重要であるとの見解を示した。このうちの一人の委員は、事態の展開によっては、先行き更なる金融緩和が必要となる可能性もあるとの認識は、前回会合から変わっていないと付け加えた。』
ということでですね、この部分とかを見てますと、先ほどおよび先日も申し上げましたように、この決定会合議事要旨が10月後半の決定会合前に公表されていたら、展望レポートの時点で下方修正するついでに何か追加緩和のようなものが出る可能性ももうちょっと指摘できたような気もせんでも無い、すなわちいつもの「押し込まれ感」が緩和できていたんじゃないかなあと思うのであります。
つーかさ、日本の場合現状では財政問題がどうのこうのとか言うのって(口では兎も角として)別に真剣に市場のテーマになっている訳じゃないから昨今のような決定会合の度に政治圧力っぽい動きが出ても「ふ〜ん」で済んでいる面があるんですけど、将来のどこかの時点で市場が財政のサステイナビリティーがどうのこうのとか急に言い出す時に「日本の中央銀行は政治当局による押し込みに弱いので最終的には財政マネタイズ懸念」みたいな認識が高まる恐れはありますなあという感じはしますがなという事で。
#政権だって不安定にも程がありますし
ちなみに、そんなときってのは大体国債の消化の構造に変化が生じた後の話ですからして、日本の場合ですとまずは年金が払い超になってからご相談、ってそれ自体はもうそんなに時間が無いんですけどね。
○FRBの最近の新たな注目論点は「Financial Stability Policy」
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.htm(HTML)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20111018a.pdf(PDF)
The Effects of the Great Recession on Central Bank Doctrine and Practice
ちと今日は時間がアレなのでとりあえずざっとだけメモ書きで詳しくは後ほどでございますけれども、この講演自体は10月18日で既に一か月前のネタと化しておりまして誠に遺憾ではごさいますが、お題にあるように「今次経済危機によって中央銀行の政策に対するドクトリンにどういう影響があったか」というお話をしていまして、中々重要な論点が含まれていてオモロイので一読推奨です。
でまあ冒頭の部分にこのような話があります。
『In particular, the crisis has already influenced the theory and practice
of modern central banking and no doubt will continue to do so.』
ほほう、今次危機は中央銀行のセオリーや行動に影響を与えましたと。
『Although it is too early to know the full implications of recent events
for central bank doctrine and operations, I thought it would be worthwhile
today to highlight and put into context some of the changes, as well as
the continuities, that are already evident.』
もちろん全てのインプリケーションが纏まっている訳では無いですが、これらの変化に関しての論点を一旦整理するのは重要だと思われますと。
『My remarks will focus on how central banks responded to recent challenges
related to the conduct of both monetary policy and the promotion of financial
stability and how, as a result of that experience, the analysis and execution
of these two key functions may change.』
ということで、大事な論点としてここで「the promotion of financial stability」というのが出ているのが大事だというお話ですが、引用しながらやっていくのはまた後日にします(汗)。ただまあ最初に一応申し上げますと、金融政策のフレームワークという最初の小見出しの部分の最後にこのような話がありましてですな、
『My guess is that the current framework for monetary policy--with innovations,
no doubt, to further improve the ability of central banks to communicate
with the public--will remain the standard approach, as its benefits in
terms of macroeconomic stabilization have been demonstrated.』
というマクロ経済の安定におけるコミュニケーションポリシーの一層の進歩という話をしていますが、その次にあるのが「financial
stability」の話であります。
『However, central banks are also heeding the broader lesson, that the
maintenance of financial stability is an equally critical responsibility.』
「financial stability is an equally critical responsibility」キタコレという感じでして、(これは後日引用予定の部分に何となくそれらしい箇所がありますが)従来の「金融政策はマクロ経済(要するに物価安定)の注目をすれば良くて、バブル崩壊などのような経済のショックは積極的な金融政策で対応すればOK」というFEDビューと言われるものに関してはさすがに引っ込めざるを得なくなったという事でしょう。ただしいわゆる予防的な対処という意味でのBISビューと言われるものに傾斜したかというとそういう訳でも無く、マクロプルーデンスっぽい話はあるのですけれども、規制監督の方の説明もあるかな、という感じではございます。
『Central banks certainly did not ignore issues of financial stability
in the decades before the recent crisis, but financial stability policy
was often viewed as the junior partner to monetary policy. One of the most
important legacies of the crisis will be the restoration of financial stability
policy to co-equal status with monetary policy.』
ということで、従来やや脇におかれがちであった「financial stability policy」が今次の危機によって金融政策と同様のステータスで重要であるという事を再認識したというのが教訓である、という話をしています。ちなみにイエレン副議長が直近で「Pursuing
Financial Stability at the Federal Reserve」という講演をしていますな。まだ読んでないけど。
つーことで、まあFRBも今回の危機によって「financial stability policy」の観点が重要という話になっている、という点に関しては、足元の状況での金融政策という点ではまあそんなに影響はないですが、先行き金融正常化という話になって来た場合に、従来のFRBクオリティーを前提にして考えると読みを誤る可能性がありますなあ、という話になろうかと思います。
詳しくは明日以降に。
2011/11/11
お題「順番が逆ですが中村審議委員の会見を先に注目してみたり」
その前に昨日の訂正とか雑談とか。
○昨日の訂正とか雑談とか
・社債買入関連
えーっとですな、昨日は社債オペが札割れしやがりましたねという話を致しましたが、金融ファクシミリ新聞の報道などによりますと(ということですのでURLなどはお示しできませんので悪しからず)社債買入についてはオペ買入適格の銘柄の中で限度額いっぱいになるものが段々増えてきていて、そろそろ札割れするんじゃネーノという観測もあったそうですな。
でまあ札割れするのは良いのですが、前回実施した社債買入の場合は、そもそも買入レートが「市場が落ち着いたら応札が非常に少なくなるくらいの水準」というのに設定してまして、それはつまり「市場でのスプレッド拡大を鎮静化させる」という目的なので、いずれ応札が減ってきても問題ありません、ということで、後半は札割れ大会状態になっていても無問題(というか政策目的が達成されたという事なのでめでたしめでたしである)だったのですが、今回の場合は「社債市場のリスクプレミアムを潰す」という目的で買入の数量目標があるという中なので、そもそも買うものが無くて札入らないってのも何だかなあという感じがしますな。どうするんでしょ??
・欧州蜃気楼
と書いて元ネタ(PC98時代のシミュレーションゲームですが^^)が分かる人は年寄りです、という話は兎も角として(^^)。
昨日もまあ夕方は欧州債券市場ちゃんの数字を見るともなく見ておったのでございますが、イタリア10年国債の日中の動きとか見てると20銭(銭という単位じゃないですが・・・・・^^)とか50銭とか平気でホイホイと動くような感じでの値段の飛び方になっておりまして、こりゃまあ流動性無いです罠という大変に素敵な市場。
でですな、イタ公はそういう感じで推移していたのですが、その間に更にワンダホーな動きをしていたのはフランス国債ちゃん。いやまあここの所そういう動きで、水曜もそんな感じでしたけれども、昨日はまた欧州時間の寄り付きからフランス国債いい感じで売られて、10年国債で一時2円(だから円というのは単位が変なのですがつい書いてしまう)安とかやってたと記憶しておりまして、「次はフランスじゃああああ」というような風情になっているのがオソロシス。
で、欧州債券市場直近概況。
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_europe.html
左から、利回り、前日比利回り変化、価格
フランス10年国債 3.446 0.267 98.290
イタリア10年国債 6.860 -0.346 85.768
ドイツ10年国債 1.774 0.057 104.227
イタリア1年国債入札が何かとりあえず通過した事もあってイタリア国債の利回りは結局低下した(まあその前にも一回ダダ売られした後に謎の急速切り返しをしていましたが)のですが、今日も今日とておフランス様とドイツの利回り変化幅が妙な数字でございますわなorz
てかね、何かこの動きってあたくしの勝手な妄想成分が多分に入っていますけれども・・・・・・
「ヘッジでどうするとか言ってる場合じゃないから現物売ってエクスポージャー落とすお!」
↓
「でもイタリア国債は流動性がスカスカで業者がレートロクに出さないお!!」
↓
「だからイタリアの代わりにフランスを売るお!!!!」
というような動きになってるんじゃないか(いやまあ当然ですがそれが全部のわけはございませんとは思ってますので念のため)とか妄想をたくましくする今日この頃でありますが、こういう時には厭債害債さんの所できっとエントリーが上がっているだろうと思ったら期待に違わず示唆の深いエントリーがございましたので読みましょう、と最後は人のふんどしでありました。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201111/article_4.html
イタリア国債
○中村審議委員の何故か会見の方から先に
後入先出をやっておりますと在庫が段々陳腐化していくのが難点ですな。つーか先週以前のネタはもうさすがに前過ぎるのでどこかのタイミングで別途書いておきますわorz
一昨日の中村審議委員の講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/ko111109a.htm/
記者会見
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1111c.pdf
でまあ中村審議委員は会見が中々味わいがある、というのがこれまでの傾向なのですが、今回も会見の方が味わいがあるのでちょっと順番変えて先に会見から。
・景気への見方は慎重さを増す
まあ講演の方でもそんな感じでしたけれども。
『(問) 輸出についてお伺いします。先程も指摘されていましたが、先行きに関してユーロ経済の減速が続くと、新興国からの輸出も減るかと思いますが、そうなってくると日本の輸出にも影響してきます。10月末の展望レポートでは、生産と輸出に関しては増加基調が続く可能性が高いという見方をされていたかと思います。本日の挨拶の中でも、輸出に関しては増加ペースといいますか、持ち直しが頭打ちとなる可能性がある、と言われています。前回の会合からそんなに大きく変わったのか分かりませんが、輸出の見方が若干慎重化したというか、シビアに変わったというように理解をしていますが、その辺りについての中村委員のご意見はどのようなものですか。』
『(答) 輸出に関しては、震災後の生産制約により、一時的に日本製品のシェアが下がりましたが、それを回復するための需要や、海外における在庫復元の動きが足許みられています。また、その先は、内外の実需がどういう推移を辿るかが、ポイントになると思います。このことは、10月末の展望レポートでも述べられていたと思いますし、そのこと自体は大きく変わっていないと思います。』
と最初は「大きく変わっていない」という話ですが。
『欧米経済につきましても、いずれも非常に緩やかな回復で、新興国、資源国の経済の持ち直しにつれて回復していくとのシナリオ自体は、それほど大きくは変わっていないと思います。しかし、昨今の欧州の情勢は、一部では解決に向かっているところもありますし、一部では混迷を深めているところもあり、予断を許さない状況だと思います。こうしたことは、マインド面、あるいは金融市場を通して、色々な下押し圧力になります。また、タイの問題も加わり、敢えて言えば、前回から変わらないというよりも、若干、心持ち下の方かなと感じていますが、基本的なシナリオは、10月末とそれほど変わっていないと思っています。』
ということで、まあ「変わっていない」という言葉を連発はしているのですが、その辺は政策委員会でこの前決めたばっかりの展望レポートの線を堅持するという配慮に基づく話で、おそらく中村審議委員の本音的には「心持ち下の方」という方なのではないかと思われるように見えますがどうでしょうかね。
・タイ洪水&欧州問題
タイ洪水と欧州問題に関する質問に対する答えですが長いので分けながら。
『(答) まず、タイの洪水の問題からお答えします。タイの洪水の被害は、現在もまだ拡大を続けており、タイ当局による被害予想額も日を追うごとに拡大しています。最終的にどの程度の被害が生じるかについて、現時点で判断することは難しいと思います。浸水などにより、相応の生産設備が毀損されたことから、タイ政府や中央銀行は、当面の経済見通しを引き下げています。タイは、東南アジアの自動車産業で中心的な役割を果たしているほか、ハードディスク装置など、一部のIT関連財の生産の集積地となっています。このため、これらの生産減少の影響はサプライチェーンの障害を通じて、他のアジア諸国などに波及する可能性があり、先行きについては、不確実性が高いと考えています。
今回の水害により、日系企業の現地生産設備にも被害が拡がっており、タイの日系企業の活動が長期間ストップした場合、ウェイトの高い自動車や一部の電気機械などにおいて、連結ベースでみた企業業績に相応の影響が出てくるとみられます。わが国の生産・輸出の面においても、部品の調達難から既に自動車等で生産を抑制する動きが出ていますが、一方で、日本国内での代替生産や、資本財の復旧需要など、わが国の輸出や生産を押し上げる要因もあり、全体としてどのような影響を受けるのか、今後の動向を注意深くみていきたいと思っております。』
まあ個別企業の業績に影響というのは確実ですね、というのは把握した。
『次に、欧州危機については、当初はギリシャの債務問題でしたが、今やユーロ圏全体を巻き込んだ、欧州債務危機に発展しています。金融資本市場では、リスク回避姿勢が急速に強まるとともに、緊張感が強い状態が続いています。背景には、国債の信認低下、金融システムの信用力低下、実体経済に対する下押し圧力の高まりという負の相乗効果が働き始めていることがあります。』
負の相乗効果キタコレ。
『10月末に開催された欧州サミットでは、欧州各国の政府債務や金融システムに対する潜在的な不安感を払拭するために、いわゆる包括戦略の合意がなされました。しかし、その後のギリシャ国内の政治の混乱や、カンヌサミットでの討議でも明らかなように、包括支援策や当該国の財政再建策の詳細、およびその実行性については不確実性が高く、市場の信頼感を回復するかどうか予断を許しません。いずれにせよ、包括戦略の合意だけで、欧州の財政・金融問題が解決するわけではなく、各国政府関係者が、今回の合意に基づいて必要な取組みを着実に進めていくことはもちろんですが、財政再建、経済改革への信認を取り戻すべく、成長を生み出す経済改革を進め、財政健全化の道筋を立てていくことが重要だと思います。こうした観点から、欧州債務危機は、長期化の可能性が高いと思われます。』
ということで、結局の所欧州問題は各国の財政政策に帰着する話ですというのは仰る通りでございまして、ECBがお助けとかIMFがお助けとかだけで片が付く問題ではないでしょと思うのでありまする。で、中村審議委員は「欧州債務危機は長期化の可能性が高い」と思いっきり指摘していまして、そーゆー辺りからしますと中村審議委員は展望レポート(政策委員会の大勢見通し)よりもやや景気について弱めに見ているんじゃないかな、と思われます。
『欧州債務問題のわが国経済に与える影響については、貿易を通じたルートと、金融資本市場を通じたルート、為替市場を通じたルートの3つのルートに則して考えていく必要があります。』
ほう。
『まず、貿易を通じたルートについては、わが国の欧州向けの輸出は、輸出全体の1割程度に過ぎないため、直接的な影響は限定的と考えられます。しかし、米国や新興国経済への輸出の減少を通じる間接的な影響には注意が必要です。』
『次に、金融資本市場を通じたルートについては、日本の金融環境は、企業や金融機関のバランスシートの健全性や日本銀行の強力な金融緩和の推進などから緩和の動きが続いており、米欧の状況とはかなり異なっています。』
『最後に、為替市場を通じたルートについては、円相場の動向や、その経済・物価への影響には注意が必要です。日本銀行としては、関係当局が欧州債務問題の解決に向けてしっかりと取り組むことを強く期待するとともに、この問題がわが国経済や金融システムに及ぼし得る影響について、今後とも十分に注意してみていきたいと思います。』
なるほど。
・日本の財政政策について
これはよい質疑応答。
『(問) 挨拶の中で、「現在1%前後で推移している長期金利が、何らかの切っ掛けで上昇に転じ、金利負担が著しく財政を圧迫する事態も想定外とは言えません」とおっしゃっていますが、この点について、「何らかの切っ掛け」について何かお考えがあっておっしゃっているのでしょうか。また、財政再建に対する具体策をしっかりやっていくべきだということもおっしゃっています。政府は既に財政運営戦略を発表されていますが、それよりももっと踏み込んだものを実行すべきというお考えなのでしょうか。』
『(答) 後段の財政再建については、政府は既にいくつも施策を打ち出しており、これらを具体的に実行に移していくことが大事だと思います。こうした施策の実行には時間がかかることですし、景気動向もみながらトータルで考えないといけないことですが、みんなで合意されたことをアクションに移していくことが大事だということです。』
つまり施策を出すだけ出して実行となるとスタックする政治ふざけるなという事ですね、わかります。
『次に、長期金利の問題については、挨拶でも触れましたように、10年以上2%を超えることがなく、足許は1%程度ですが、一般論として、このレベルがずっとこれからも続くという保証はありません。また、挨拶でもお話したように、資金余剰があって、なかなか資金需要が生じず、また、日本の個人の金融資産がまだたくさんあるということですが、これから高齢化に伴って、いつまでも今のレベルが維持出来る訳ではありません。金融機関にしても、もっと他に有利な運用先があればそちらに回るなど、需給は変わるわけですから、今のレベルを前提とし続けることは、やはり保証の限りではないことです。』
これはそのとーりでして、年金財政が本格的に払い超になるまであとわずかだった筈ですがな。
『それに、欧州の例をみても、経済情勢の変化により、急激に金利が上昇することがあるわけですから、基本的には10年債で1%前後というのは、歴史的にも非常に低位なレベルであり、これがずっと続くことは考え難いということを述べたということです。「何らかの切っ掛け」について、具体的な考えがあってということではありません。』
そらまあ「何らかの切っ掛け」が事前に判るようなものであれば急激な変化とか生じない訳でして、(厭債害債さんもご指摘のように)プライマリーバランス黒(という事になっている)のイタリアが一気にあの有様になる訳でございまして、市場というのは(自分でその市場の中の人であるのに言うのも何ですが)オソロシスですなあと思うのであります。
つーか、これはまあ講演の方でもそうなのですが、従来より中村審議委員は長期的な財政健全化に向けた取り組みの重要性を強調していましたが、今回の講演および会見ではその点についてのトーンが高まっておりまして、これは欧州債務危機問題を受けてのトーンの強まりかなとは思いますが、一方で先般の追加金融緩和でまた押し込みだけしやがってお前ら政治は日銀に押し込むばかりでてめえら何もしないじゃないかふざけるなとかいう思いがあったりするのかもしれませんなあとか勝手に妄想するあたくしでございました。
2011/11/10
お題「虫干しネタをやろうと思ったら今日も雑談になったでござるの巻」
何かまたまた米債が10年2%割れのようでございますが。
○オペとか短国入札とか交付税特別会計入札とか
・社債買入オペ札割れとな
昨日のオペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba111109.htm
社債等買入(資産買入等基金) 1,441 1,441 0.000 0.018
足切りが0.000(出来上がり0.100%)で???と思ったら何のことはありません札割れしてやがりますが、日銀の基金系のオペで札割れって今回が初だったような気がする(ちゃんと確認していないのですが)次第でございますが、基金系のオペでの札割れってのもなかなか味わいがあるものでございまして、まあ社債買入の場合は残存2年切ってくる銘柄がまた対象に入ってきますし、12月償還の社債銘柄って多いと思うので、今後も延々と札割れ続くってえ程ではないと存じます。
でもまあ日銀としては基金オペに関しては「数値目標」があるので、オペ札割れというのはこれは目標未達への道という大変に素敵な事態への布石になり得ますので、はてさてどうすんでしょという所ですな、うんうん。
まあこのレート見て「じゃあ俺も社債買入に参加じゃああ」というのが増えてくるでしょうから次回も札割れって事にはならないとは思うのですけれども、まあ社債にしろCPにしろ日銀買入やり過ぎでありまして、だからリスク性資産の購入するならETFじゃろといういつものあたくしの話に我田引水となるのでした。
・交付税特別会計入札が連発で金利上昇とな
昨日も交付税特会の借入金入札があったのですが、ここ3回の推移がこうなっているのでありますが。
10月26日入札分
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result111026.htm
平均0.113%/足切り0.120%
11月2日入札分
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result111102.htm
平均0.118%/足切り0.123%
11月9日入札分
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result111109.htm
平均0.126%/足切り0.140%
ご案内の通り、為替介入後に日銀が謎の資金供給オペ乱れ打ちの実施をして当座預金残高をやたら高水準にした事もあって(次に書きますが)短国入札はまたまた0.10%割れとかになっちゃいました(まあ入札はやっちまった感もあるようですが)とかやっている中でここのレートだけじり高というのは如何にも妙。つーか6か月物の国向けの貸出なのに2年国債レートのような足切りとか流れすぎだろという感じです。
・・・・・でまあ何でそうなったのかは札をたくさん入れている人たちに聞かないとワカランチ会長ではございますが、実は当座預金残高の水準は高いけどそんなに金が無いのか、単に事務手間めんどいから(短国買う方が事務手間は圧倒的に楽でしょうからね)とか、転売できないからアセット圧縮しようとしても直ぐに圧縮できないのを嫌っているのかとか、まー色々と妄想は膨らむのですけれども、これまた「足切り0.140%」というのを見て普段あまり応札しない人がここぞとばかりに応札してきて無難な結果になるに1000イタリアリラ。
ただまあ次回も甘かったら何か???ではございまする。
・3M短国入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul231109.htm
(3)募入最低価格 99円97銭3厘5毛
(募入最高利回り)(0.0987%)
(4)募入最低価格に 95.5025%
おける案分比率
(5)募入平均価格 99円97銭3厘6毛
(募入平均利回り)(0.0983%)
へえへえそうだっかという結果ではございますが、ただまあ0.10%を割る短国を買うニーズって国内だと投信(短期公社債投信)くらいしかないと思うご時世の中、海外の買いだけで0.10%割れ恒常的にってのもどうなのかという気はしますし、当座預金残高は確かにつみあがっていますけれども、資金供給オペの残高が積みあがってきた結果のもんではなくて為替介入によるものですから、直接債券ディーラーの所に金がどどーんと入ってきたわけではない(まあ最終的には介入で出た分の円資金が短国とかGCとかの買いに回ってくるから業者にも回りますけど)ので今後10割れを延々と維持できるのかはどうなんでしょうね。上記のように(ただの特殊要因かも知れませんけど)交付税特会借入のレートが変に上昇したりしてるように、何か微妙にアレなのもありますし、そんなにガシガシ突っ込む雰囲気でも無いような気が。
ただまあまた為替絡みとかドル調達絡みでの要因も欧州要因でおかわりが出るなら話は別なんでしょうけどね。
○イタリアキタコレですが保身的な動きが問題を加速させるという話
まあ昨日の(日本時間の)夕方以降はイタ公の国債があれよあれよという間に素敵な暴落状態だったわけですが。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aV2Kf4yqiO0I
欧州債:イタリア5年債利回り7.5%超−首相辞意表明やLCH変更
・・・・・・ちょwwwwおまwwwww昨日はこういう相場後講釈してたやんけ。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ajlHpftGayW8
NY外為:ユーロ上昇、伊首相の辞意表明で債務問題解決を期待 (1)
『11月8日(ブルームバーグ):ニューヨーク外国為替市場ではユーロが対ドルで上昇した。イタリアのナポリターノ大統領は、ベルルスコーニ首相が財政緊縮法案の可決後に辞任することで同意したと発表。これに反応した。』(上記URLより)
ということでワロスワロスという感じですが、まあそもそも前日の海外市場でベル様が辞任したのを好感するのもどうかという感じでしたがそれはそれで、最初に引用した記事でも実際にイタリア国債の急落のトリガー引いたのはこっちだという説明がありましたな(つまり日本語記事のヘッドライン書いている人がトンチキなのでは疑惑が)。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aiiYdUeZPBRU
LCH:イタリア債の取引コスト引き上げ、価格に重し(1)
『11月9日(ブルームバーグ):決済機関LCHクリアネットは、顧客がイタリア国債や証券を取引する際のコストを引き上げた。LCHのフランス部門がウェブサイトに掲載した8日付の文書によると、年限7−10年のイタリア債の取引で顧客に求める預金の比率(デポジットファクター)は11.65%と、10月7日に発表された6.65%から引き上げられた。新比率は9日の取引終了時のポジションに適用される。』(上記URLより)
・・・・・・ということで、決済機関としては自分の所の庭先掃除の観点からすると当然の行動ではあるのですが、どう見てもその行動が危機を拡大しているというありがちなパターンで、もうアホかと馬鹿かとと言った風情の行動。まあ民間のサンピン市場参加者がそういうのやるのはシャーナイナイと思いますが、仮にも決済機関という公的な所が危機を煽るようなプロシクリカルな動きをしてどうすんだ阿呆と思う次第でございます。
つーことで、こういうのが始まるとプロシクリカルというかバンドワゴンというか、まあそんな感じで一気に祭りになってしまいがちなので、関係当局におかれましてはもうちょっと後先を考えた対応を願いたいものであります、と偉そうに申しておりますが、後先考えない対応が得意なのは民主党政権も同じなので、日本に金融問題とかソブリン問題とかが延焼しないように心から願うものでございます。延焼したら馬鹿閣僚が馬鹿発言してプロシクリカルに危機を急拡大させるに1万イタリアリラ。
そういや昨日はMoody'sが物凄い勢いで金融機関とか新興国とかの格付けを下げていましたな。いやまあ過去格下げが遅れてという反省もあるのでしょうが、こうやって金融市場で火がボーボーの時に物凄い勢いで格下げとか「保身格下げ」にしか見えない訳で、こういうのもまたプロシクリカリティーの拡大に繋がるんじゃないかと思いますですよ。関連ヘッドラインでも引用しようと思ったけどあまりに多いのでパスしますが、ブルームバーグかロイターで「ムーディーズ」関連のニュース検索したら昨日は威勢よく格下げしてまっせ。
○どうでも良い雑談
・オリンパス関連のニュースに悪態
火曜日のニュースですが。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920014&sid=a7pFOd0pA2OI
民主: 10日にオリンパス問題など集中議論−企業統治WTも設置
『11月8日(ブルームバーグ):民主党は8日、財務金融部門会議の役員会を開き、オリンパスや大王製紙の経営問題を10日の同会議で集中議論することを決めた。金融庁や東京証券取引所の担当者にも出席を求める。また、企業統治の課題全般を話し合う「資本市場・企業統治改革ワーキングチーム(WT)」を設置する方針も決定した。同会議座長の大久保勉政調副会長が8日、明らかにした。』(上記URLより)
・・・・・・・民主党の皆さんって「悪者」がはっきりしている案件に関しては随分と動きが素早いですなあとしか申し上げようがない訳で、いやまあ確かにオリンパスの飛ばし問題ってアチャーな話ではありますが、それは捜査当局なり利害関係者なりが色々と処理していく話であって、民主党が党の部会でああだこうだ言う話ですかって思うのであります。
つーかね、そんなリソースあるんだったらお前ら震災の復興復旧をどうするのかとか、東電の賠償範囲をどうするのかとか、除染をどうするのかとか、原発と代替エネルギーの問題をどうするのかとか、色々と重要な案件がある筈で、そっちに力を注げやゴルァと思うのでございますけれども、何かこうニュース的に旬な素材で叩く対象が明らかで誰からも文句が出無さそう、つまり注目集めて人気を得るには絶好の素材とあらば優先順位は兎も角として飛びつくというのが民主党の壊滅的なクオリティーではございますなあと思うのでありました。いやあの自民党も最近はその傾向があるように見えますけど、ここまで露骨なのはちょっと浅ましいと思うのはあたくしの目が曇っているからですかそうですか。
これまた火曜日の朝のテレビニュースであちこちが報道してましたが
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111109/t10013829131000.html
オリンパスに海外の厳しい論調 11月9日 6時29分
・・・・・・海外が批判していますって話になると鬼の首を取ったように報道するのも何だかなと思うのですが、さてどういう報道になっていたかと申しますと。
『このうち、イギリスの新聞「フィナンシャル・タイムズ」は、8日の電子版で、「世界中の投資家は公表された企業の財務にこれまでとは違った目を向けなければならない。何が真実で誰が公正な立場にあるのだろうか?」として、オリンパスだけでなく監査法人も含めて厳しく批判しています。』
えーっとすいません、欧州ソブリン問題の発端ってギリシャの財政状況の粉飾発覚だったような気がするんですけど、イタリアも何か一時その手の話なかったでしたっけ??
『アメリカの新聞「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、オリンパスが行った損失隠しの手法について、「飛ばし」という日本語をそのまま使って詳しく解説し、「1990年代初頭にバブル崩壊による損失を隠すために利用された悪名高い手法が思い出される」と伝えています。』
まるで日本人だけで飛ばしをしていたかのような話ですなあ(棒読み)という所ですが、まあそんな事よりお前らサブプライムローンってのもう忘れたのかという感じですな。
そらまあ今回の事案はアチャー案件ではありますが、お前が言うな的な風情を感じるのはあたくしの目が曇っているからですかそうですか。
・東証大証統合ねえ
http://mainichi.jp/select/biz/news/20111109k0000m020133000c.html
東証大証統合:新社名は「日本取引所」 月内にも発表
・・・・・・・なんちゅうセンスの無いネーミングという感じですが、そんな事よりも東証と大証が統合した結果売買システムが相変わらずのアホーシステムになったらどうなのよという感じがせんでもない。
いやね、あたくし現在の本業は債券金利屋さんですからあまり詳しく見ている訳では無いのですけれども、東証1部の売買代金とか見てると、株価水準がへっぽこな要因があるにせよ、延々と1兆円割れが続いているとかどうなのよという気がするんですが。
あの東証新システムという高速回転売買様御用達の売買システムを突っ込んで機関投資家を徹底的に優遇した結果、ディーラー(とかデイトレとか)の売買を駆逐しちゃって、機関投資家がヘロヘロになった途端に売買代金が落ち込んでいるのではないか、という気がせんでも無い(実際のところは株式のディーラーさんに聞かないといかんのだが)のでございまして、東証の「参加者の多様化」というのが、単に「国内だけではなく海外の機関投資家の売買を取ってくる」という発想にしか見えない(昔の呼び値ルールとかは基本的に小口投資家保護の観点でしたからね)という弊害が出ているのではないかと勝手に妄想してます。実際はどうなんでしょ教えてジェネラル!
・・・・・・などと雑談してたら肝心の虫干しネタがorzorzorz
2011/11/09
お題「追加緩和決定の総裁会見はロジカルハラスメント質疑が見ものである(相当遅れましたが・・・)」
虫干しネタで恐縮至極でございますが、まあ欧州ネタ以外では国内債券市場ちゃん相変わらず息をしてるんだかしてないんだかワカランチ会長でイマイチネタに乏しいので勘弁ということで。
○決定会合後の総裁会見から:ロジックが益々苦しくなってまいりました
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1110c.pdf
・まあ円高に関する質問が冒頭なのはそうですなという感じですが
最初の質問が想定通りのこれですな。
『(問) 足許、歴史的な円高水準が続いていますが、このタイミングでの追加緩和の背景には、この歴史的な円高の水準の影響を強く意識した結果という理解でよろしいでしょうか。』
『(答) 今回の金融緩和は、先程申し上げた経済・物価情勢を踏まえて、決定したものです。もちろん、為替の円高は、経済・物価の見通しに影響を与える1つの要因ですが、これだけではありません。欧州の経済情勢、欧州のソブリン問題が日本の経済に与える影響などを勘案しました。8月の緩和では、先々のリスクを相当程度、前広に織り込んで緩和を決定しましたが、そうしたリスクの一部が既に顕在化してきている上、先々の経済を考えた場合に、下振れリスクをより意識したほうが良いと考え、今回、緩和を決定しました。』
ということで、まあいつもの事ですが円高のせいだけではありません、という事なのですが、先日(ってだいぶ前ですが)ご紹介した展望レポートを見ると確かに下振れリスクの指摘は満載なのですが、一方で先行きの見通しが単に後ずれしただけという結果になっておりまして、いやあのそれで一々追加緩和するのですかってな話になりますと、まーロジック的にだんだん「円高で緩和という訳ではありません」というのが苦しくなります罠と思われるのですが。
・しかし下振れリスク対応ならリスク性資産の購入の方が筋のような気もすんだが
次の質問はこんなのでした。
『(問) 基金増額の規模について、今回、10兆円という提案が委員の中からあったようですが、結果的に5兆円という規模になりました。また、買入れの対象を長期国債にした理由と狙いについて、少し詳しくご説明頂けますか。』
『(答) 先程の説明とかなり重なりますが、今回、買入基金の増額を行う前に、枠の余裕が10兆円ありました。そのもとで買入れを行っているわけですが、今回、先程申し上げたような経済・物価情勢のもとで、私どもとしては金融緩和の強化が必要であるとして、さらに5兆円を上乗せしたということです。昨年10月に包括緩和を始めた時に、リスク性資産を含めて幅広い資産を買って、長めの金利に働きかける、あるいはリスクプレミアムに働きかけることを行ってきました。現在の金融環境をみると、CP、社債の市場は非常に円滑に回っています。従って、このリスク性資産を強く意識して緩和を行わないといけないという情勢ではありません。従って、リスクフリーの金利である長期国債金利に働きかけて、それを通じて、満遍なく緩和の効果を及ぼしていくことが適当だと判断しました。』
まあ何ですな、確かにCP、社債に関しては既に日銀の買入が民業圧迫状態になっているのはその通りですが、ETFはどうした????と思う訳でございますし、そもそもそれを言い出したら中長期の金利だって十分低水準にある(まあ確かに上昇するとマズーであるので買入強化という理屈は成り立つが)と思いますし、基本的な景気の先行き見通しに変化が無いのであれば短期金利操作という伝統的政策の近傍ともいえる「長期金利への働きかけ」よりはETFの買入のような非伝統的政策の方が話が通っているんじゃないのでしょうか??というまあ言ってるあたくしも屁理屈を捏ね繰り回していますが(^^)、どうなんでしょうね、とは思います。
#まあとりあえず円高だし外野がうるさいから一番副作用のなさそうなのを実施する、という文脈で実施というのであれば2年国債オンリーというのは理に叶っていますが^^
・これはロジカルハラスメント質問(^^)
この質問はワロタ。
『(問) 今回決めた基金の5兆円増額が、今回の展望レポートで示された、今年度、来年度と下方修正になっている見通しについて、例えば、経済成長率をどのくらい押し上げるものなのか、その効果について総裁のお考えをお答え下さい。また、今回、長期国債の買入れが増額対象になるわけですが、これがマクロ経済へどのように影響していくのか、もう少し分かりやすくご説明下さい。』
どう見ても嫌がらせ質問です本当にありがとうございました。
『(答) 1問目と2問目を、まとめてお答えしたいと思います。現在の包括緩和のもとで、長めの金利に働きかける、あるいはリスクプレミアムに働きかけることを通じて、全体としていわゆる金融環境――英語でファイナンシャル・コンディションズと呼びますが――、に働きかけて、それを通じて実体経済に対してプラスの影響をもたらしていこうというのが、基本的な考えです。』
はいはい。
『今回、残存1〜2年の国債に限定して買入れるということは、このゾーンの長期金利をその分引き下げる、働きかけるという効果があるわけです。そのことが、そのゾーンに隣接したゾーンの金利にも影響を与えていくということです。それからさらに、民間企業の資金調達コストは、リスクフリー金利に信用スプレットが乗るわけですが、ベースとなる金利が下がることによって、それが企業にも均霑していくということです。これがコストを通ずる効果ですが、もう1つ、現在のように不確実性が高い局面で、日本銀行が経済の下振れリスクに配慮して金融緩和措置を採ったということそれ自体が、やはり安心感に繋がっていくと考えています。』
いや多分下振れリスクに配慮じゃなくて円高で外野がうるさく押し込んできて・・・と世間は思っていると存じますけれども。もし下振れリスク配慮だったら直前に出てたさくらレポートとか何であんなに堅調な内容なのよと思うのですけれどもねえ(ニヤニヤ)。
『量的な形でその効果をうまく検証できないかというお尋ねです。もちろん可能であればそうしたいわけですが、FRBのQE2についてもそうであるように、なかなか定量的な評価をしにくいと思っています。』
最近はFRBが時間軸効果だの言い出す始末ですからすっかりFRBを引っ張り出して説明する技を繰り出すようになってきましたな。
『もちろんQE2についても、いわゆるイベントスタディ、つまり政策措置を発表したその日の金利の変化幅から効果を推測するという方法で若干の定量的な評価結果も出されています。ただこれは、その日のいわば瞬間的な効果だけを取り上げたものですから、少し長い目でみて、どれくらいの効果があるかを測ったものではありません。それから、ましてや金利の低下が実体経済にどれくらい影響を与えるかについては、今のところ私の知る限り、しっかりとした分析はないように思います。もちろんある程度データがまとまってくれば、そういう分析も可能かと思います。そういう意味で、私どもとしては定量的にはなかなか示しにくいところはありますが、先程申し上げたルートを通じて経済を下支えする効果はあると考えています。』
まあ結局これはこう言うしかないですな、うんうん。正直でよろしい。
・更にロジハラは続く
次の質問。
『(問) 2点お伺いします。1点目は、来週、FRBがFOMCの開催を予定しており、市場でも金融緩和観測が出ていますが、このことが今回の政策決定に影響を与えたのでしょうか。2点目は、今回の資産買入れは、2年物を中心としたゾーンに働きかける狙いがあるという話がありました。以前、総裁が2年物の日米金利差と為替相場の連関性が比較的高いという趣旨の発言をされましたが、今回の措置が為替相場に働きかける影響を考慮したのかについて、お伺いします。』
「以前このようにお話になっていましたがその点に即しましてご説明ください」というのが日銀(というかこれは政府とか他の中央銀行とかもそうだと思いますが)からしたら一番アチャーな質問なのですけれども、まあ一方でどこぞの電波浴推奨新聞での日曜経済教室(そういや最近読んでなくて電波浴が不足しているので毒成分が足りないなあと突如おもったあたくし)のように、以前の話どころか一本の話の中でも整合性が取れないような話が平気で横行するのが金融政策とか金融市場を巡る言説を見てて頭が痛くなる所ですが、と関係ない悪態ですかそうですか。
『(答) 次回のFOMCでどのような金融政策上の決定がなされるのかについては、もちろんコメントすることは不適切ですが、どの国の中央銀行も世界経済全体の状況をみて自国の金融政策を決定しているわけです。その意味で、各中央銀行がみている対象は当然同じですので、ある意味で、FRBも――日本銀行の行った金融政策に影響を受けているという言い方が良いかどうか分かりませんが
――、基本的に同じデータ・情報をみているわけです。その意味で、日本銀行の金融政策は、FRBがみている金融経済情勢も含め、入念に点検しているということです。』
まあここまではそういう答えだわなという部分。で、この先が2年金利の話。
『2年物金利については、この席で何回か申し上げたことが2点あります。1点目は、日本の場合、企業の借入れの平均期間は米国と違い随分短いということです。米国の場合、企業は社債による調達が多いですし、住宅ローンについても固定金利30年という長い期間での借入れが多いわけです。従って、より長い金利に働きかけることが、米国経済を考えれば合理的な判断です。一方、日本の場合、統計上の制約があるので細かな部分までは分かりませんが、3年以下のゾーンの借入れが多いということです。』
じゃあなんで3年にしないのかというツッコミは後で飛んでいるのでお楽しみに(^^)。
『2点目は、いつもそうだと言うつもりはありませんが、最近、為替の面でも、分析結果からみれば、2年物の内外金利差との相関が相対的に高いということです。ただ、先程、別の記者のご質問に答えた通り、為替相場を規定する大きな要因は、現在は安全資産選好、つまり世界経済全体を巡る不確実性が大きいということであると感じています。』
こういう所って白川総裁は(元々の緩和決定がロジック的にアレなので仕方ないのですけれども)かなーり苦しいロジックの中でもロジックが中々破綻しないというのがある意味凄いなあと感心する所でありまして、つまり「今回は2年債の買入を拡大しましたが、別に直接的な為替対策でやった訳ではありませんよ、だって足元の円高の理由は2年債の金利差ではないですから、それよりも企業の借入金利などの金融環境の緩和によって下振れリスクを回避するための施策なんですよ」というのが今回の追加緩和措置の背景説明となる、ということで、まー見事なまでに話の整合性が取れているのがオソロシス。
これが俊ちゃんだと大体どこかでロジックに整合性が無くてあたくしの悪態の格好のツッコミネタになるのですが、さすが貫録の麿という感じでございまして恐るべしであります、ってまあ才能の無駄遣いのような気もしますが・・・・・
・ところで今回は何で5兆なんですか?というロジハラ質問が続く
更に次の質問。
『(問) 総裁は、8月に10兆円の基金増額を実施した段階で、相当前広にリスクを織り込んで追加緩和を行ったと言われました。今回、5兆円追加したわけですが、8月と今回を比較して、どのような点が大きく変わったのかについてご説明下さい。』
前回のお話との整合性ツッコミの続きがキタコレ。
『(答) 8月の情勢と現在の情勢を比較して、何か大きな変化があったと思っているわけではありません。8月の段階で織り込んだリスクが、現実に顕在化してきているということです。ただ、問題となっている欧州の情勢について、8月の決定会合の段階から今日に至るまでのプロセスを考えてみると、やはりさらに厳しさを増してきたというのが、ごく直近までの変化だと思います。欧米の金融市場はやや緊張感を高めている一方、今のところ日本の金融市場は非常に安定していますが、先々の下振れリスクを考えた場合、ここでもう一段の追加緩和を行った方が良いという判断になりました。』
ということでプリエンティブな対応を主張しておりますが、前広に実施したのに更に前広に追加実施というのもまあ何ですな、大体からして基金増額した分の執行が全部終わっている訳でも無いのですが、とかあまり意地悪に突っ込んでも何ですのでそういうツッコミはしないという事かとは存じますが(^^)。
話はずれますけど、まーこういうロジック的に突っ込んで行く質問って先日ネタにしたECBの会見とかでも割とありますが、その一方で米国の場合はその辺寛容ですなあとか思うのですが、これはまあそこまでの実績とか、結果良ければすべてよし的な考えなのかつらつらと考えますと、その辺って研究(?)課題にならないかなとか思うのでありました(^^)。
・この質問もワロタ
なお次の質問。
『(問) 質問が重なってしまうかも知れませんが、そもそも論ですが、宮尾委員が本日、10兆円の増額を提案されて否決されています。しかしながら、本日増額を決定した金額は、例えば2兆円でも3兆円でもなく、10兆円でもなく、なぜ5兆円だったのでしょうか。合理的な説明をお願いします。』
ニヤニヤ。
『(答) 多分、同じように、FRBのバーナンキ議長に、QE2は、6,000億ドルですが、なぜ5,000億ドルではないのか、なぜ7,000億ドルではないのか、と聞いた場合に、正確に6,000億ドルと、ピッタリと方程式で答えられるものではないと思います。ただ、従来、日本銀行は、増額する時に5兆円の刻みで行いました。8月の段階では、先々相当リスクが高まるということで、それを思い切って10兆円にしたということです。今回もリスク認識としては引き続き厳しいものを持っていますが、前回増額した枠のもとでこれからまだまだ買入れを進めていくという段階ですから、そういう意味で5兆円にしたということであって、なぜ4兆円ではないのか、なぜ6兆円ではないのか、というのは、なかなか表現するのが難しいところです。』
さすがにこれは気合ですとしか答えようがないのですが、それでも何か理屈を繰り出す所が麿クオリティで落涙を禁じ得ません。
・3年を買わない理由はスルーですかそうですか
『(問) 2点伺います。買入基金では、国債の年限を残存2年以下と限っていますが、その理由と、年限をもう少し延ばしても良いのではないかとの意見もあると思いますが、総裁のご意見をお聞かせ願います。また、展望レポートで2013年度の物価見通しを示されていますが、日銀が考える物価安定の理解と比べての評価をお聞かせ下さい。』
ということで後半の方は兎も角として前半の方ですが。
『(答) 期限についてのご質問は、先程のご質問でお答えしたことに尽きます。(以下後半の質問の答えなので割愛)』
・・・・・ということで、まあその点に関してはゴリゴリ突っ込まれると答えに困る部分もあるのでスルーしたという風情ですな。
つーかですな、「企業金融がどうのこうの」「住宅ローンなどの金利がどうのこうの」というような論点をあまり出していきますと、じゃあTIBOR下げさせればエエンちゃいますかという地雷な論点に繋がる可能性がある訳でございまして、TIBOR云々と言えば前の金融市場局長がロイターで面白インタビューを行って短期市場の一部に局地的な騒動を起こしていましたなあというのを懐かしく思い出すのであります次第でありまして、まあこの辺りの論点ってあまり明快化してゴリゴリやると、じゃあ結局金融政策でそれができるのかねという話になってくるネタでもありますので、あまり突っ込まない方が吉、ということなのでしょうし、だからこそ白川総裁もここの論点については細々とは話をしないんでしょうな、というのは把握しました。
#本当は今日は10月前半の決定会合議事要旨もやる予定だったのですが、引用コピペしてたら時間と量を思いのほか食ってしまったので涙をのんで翌日に持ち越しである、サーセン
2011/11/08
お題「虫干しネタをやらないうちに欧州雑談とかになるあたくしorz」
えーっと、この前折角空気読んでPD懇と投資家懇で3次補正分の増発を中期債中心で実施するという話をしたのは何だったんでしょ。いやまあ来年度の本予算関連の国債発行計画で調整すれば良い話ではありますが。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111107-OYT1T01217.htm
復興債「25年」で償還、民自公が合意へ
○欧州雑談関連
いやあギリシャでお笑い劇場をやっているうちにイラチの市場ちゃんがイタリアに本格的に放火してきたでござるの巻という風情ですかそうですか。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aGbusp1cOYEY
欧州債:イタリア債下落、利回り過去最高−債務問題と景気減速を懸念
昨日の日本時間の夕方に6.6%とかになっておられたイタ公の国債様でございますが、まあ政治がらみで解決に時間が掛かるので市場様がイライラして延焼祭りを開始しましたという事でございますが、まあECBも国債の買入に関しては昨日ネタにしたドラギ総裁の会見のように「まあそれは正論だが火がボーボーとなりかけの時にどうなのよ」というようなスタンスを堅持しているように見えますから、炎上しやすい罠という事で。
昨日(あまりにながくなるので)つい引用をスルーしましたがイタリア国債に関する質疑もあったんですよね、先週のドラギ総裁の会見には、ということでそれを引用。
http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is111103.en.html
『Question: Mr Draghi, a question about Italy, which is at the forefront
of the current situation. Despite the ECB’s intervention, yields on ten-year
Italian bonds are substantially higher than 6%, with an inversion of the
yield curve. Is this of concern to the ECB? Did you analyse this particular
situation in your meetings today and yesterday?』
ということでイタリア国債市場についてどう思いますか理事会で検討しましたかと。
『Draghi: No, we have not really been focusing on this and similar situations
in our discussions today and yesterday. However, it is clear that - as
I have said many times - the responsibility for maintaining financial stability
and orderly financial conditions lies first and foremost with national
economic policies. It is really pointless to think that sovereign bond
rates could be stably brought down for a protracted period of time by external
interventions. The main pillar of this is the national economic policy
response, which is made up of two components: first, put your public finance
in order and, second, undertake structural reforms. In doing so, competitiveness
is enhanced, thereby fostering growth and job creation.』
特に理事会でイタリア国債にフォーカスしてお話したわけではございませんがなという話ですが、その次にありますように「何度も申し上げていますが、各国の金融の安定や、秩序ある金融環境を維持する責務は各国の経済政策にある事は明白です」という話を思いっきりしておりまして、いやまあそれは正論なのですが、そもそも各国が財政制約に置かれる中で今のような状況になっている時に中央銀行が放置プレイとも取られそうなスタンスを見せるっちゅうのも火に油を注ぎやすいわなとは思います。その後もまあ同じような話をしてて「ソブリン債の金利を買い支えで低下させる事ができる考えてはいけません」とか続き、結局の所は各国の財政当局と政治の努力が必要ですとまあそれはそれで正論なのですがねえという話が続くのがECBクオリティ。
つまりですな、昨日引用したQ&Aの最初の所にありますように、まあ要するにECBは「流動性の供給に関してはジャンジャンやるし必要ならば利下げもしますが、ソルベンシーの問題に関しては中央銀行がどうにかする話じゃありませんので各国頑張りなさい」という話をしている訳で、まあ正論は正論という所ではございますが以下同文という事ですな。
昨日引用した債券買入プログラムの3原則に沿って考えた場合、まあイタ国債の金利が勝手に上昇という中では「金融政策のトランスミッションメカニズムが効きにくくなる」という状況でもありますので、そういう文脈から考えるとまあイタリア国債の買入はしませんがなという話でもないとは思うのですが、一方で「買入は無限ではない」という大原則もあるので、どっちに軸足を置くのかによってまあ見え方も違ってくるんでしょうけど。
○そんな中で資本増強ですかそうですか
既報ではございますが。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel111107d.htm/
バーゼル銀行監督委員会による「グローバルにシステム上重要な銀行に対する評価手法と追加的な損失吸収力の要件に関する規則文書」の公表について
日本銀行仮訳はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/data/rel111107d.pdf
『バーゼル銀行監督委員会(以下「バーゼル委」)は、本日、グローバルにシステム上重要な銀行(G-SIBs)に関する規則を公表した。本日の公表文書である、グローバルにシステム上重要な銀行:評価方法及び追加的な損失吸収力の要件は、バーゼル委のG-SIBs特定のための枠組み、G-SIBsが保有すべき追加的損失吸収力の規模及び本要件の段階的実施の枠組みについて規定している。』
ということでそちらに関するリリースはこっちです。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel111107e.htm/
金融安定理事会による「システム上重要な金融機関(SIFIs)に対処するための政策手段」の公表について
日本銀行仮訳はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/data/rel111107e.pdf
『4. 「大きすぎて潰せない」問題に対処するためには、多面的かつ統合的な政策が求められる。このため、我々は以下で構成される政策措置に合意した。
@)破綻金融機関を当局が秩序ある形で、納税者を損失のリスクに晒すことなく処理することを可能にするために全ての国内破綻処理制度が有するべき責任・手段及び権限を定める、我々の国内破綻処理制度の改革における参照となる新しい国際基準(「FSB
実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」)。
A)グローバルにシステム上重要な金融機関(G-SIFIs)について、破綻処理の実行可能性の評価、再建・破綻処理計画の策定、及びG-SIFIs母国当局とホスト当局の危機への備えを高め、危機における協力方法を明確にするための金融機関ごとのクロスボーダー協力取極めの策定を行う、との要件
B)グローバルにシステム上重要と決定された銀行について、その倒産の影響度合いに応じてリスク資産対比で1%から2.5%(及びシステム上の重要性の程度を更に増す意欲を抑制するための3.5%の空バケット)の普通株で満たすべき追加的な損失吸収力を保有する、との要件
C)監督当局の責務、資源及び権限の強化と、リスクマネジメント機能、データ集積能力、リスクガバナンス及び内部統制についての監督上のより高い期待などを通じた、全てのシステム上重要な金融機関のより密度が高く実効的な監督
2012年初頭には、破綻が生じた場合の伝播リスクを抑制するため、核となる金融市場インフラについての強化された国際基準が最終化される。』
いやまあそれはそうなんですけれども、この状況下で金融機関の資本増強がどうのこうのという話をしだすというのは日本の金融危機の時の状況を思い出さざるを得ません罠と存じます次第なのでございます。しかも日本の金融危機の時と違って世界的にアレな状態になっている中でどこからその資本増強の金が出てくるんですかという気がするのですけど。まあ日本がこの期に海外の金融機関を買うというようなお洒落な話にでもなるなら結構な話ですが。
既報ですが俺様備忘録のため対象金融機関のリストの部分も引用して置くだよ。
『(別添) グローバルにシステム上重要な金融機関(破綻処理関係の要件を2012年末までに満たす必要があるもの1)
Bank of America
Bank of China
Bank of New York Mellon
Banque Populaire CdE
Barclays
BNP Paribas
Citigroup
Commerzbank
Credit Suisse
Deutsche Bank
Dexia
Goldman Sachs Group
Credit Agricole
HSBC
ING Bank
JP Morgan Chase
Lloyds Banking Group
Mitsubishi UFJ FG
Mizuho FG
Morgan Stanley
Nordea
Royal Bank of Scotland
Santander
Societe Generale
State Street
Sumitomo Mitsui FG
UBS
Unicredit Group
Wells Fargo
1 この当初のリストは、2009年末のデータを使用し、BCBSの文書「グローバルにシステム上重要な銀行に対する評価手法と追加的な損失吸収力の要件」において定められた手法に基づいている。G-SIFIsのリストは毎年更新され、各年の11月に公表される。したがって、リストは固定的ではない
− 毎年参入や退出の可能性があり、G-SIFIsの数も変動し得る。BCBSの手法は、銀行システムの変化やシステム上の重要性の測定における進歩を捕捉するため、3年ごとに見直される。現在のリストは、グローバルなシステム上重要な銀行グループを含むものである。将来のリストは、銀行グループ以外のG-SIFIsも含み得る。2012年11月より、グローバルなシステム上重要な銀行グループの公表リスト上には、追加的な損失吸収力の要件が仮に発効していたとすれば各グループが達成を求められるであろう追加的な損失吸収力の水準に応じたバケットの割り当てが示されることとなる。追加的な損失吸収力の要件は、まず、2014年11月にグローバルにシステム上重要であると特定される銀行に対して、その時点で割り当てられるバケットを用いて、2016年から適用が開始される。』
ということで、リスト見ると何か無駄に数が多い気もするのですが、脚注にあるようにこのリストは流動的のようで(つーか雲丹クレジットとか資本増強とかの話よりもイタリア国債がどうなるのかという方が喫緊の課題のような気がしますが)ございますが、まあソブリン問題が金融問題に拡大する中で金融機関の資本増強が重要というのは正論なのですけれども以下同文という感じでしょうか。
○ということですっかり虫干しネタ状態になっていますのでリストだけメモメモ書きで
・決定会合後の総裁会見に関して
質疑応答に関してですが、一番オモロカッタのはロジック的に答えにくい質問を突っ込んでくる人がいたという所ですな、「5兆円増額した場合の効果は具体的にたとえば成長率をどの位押し上げるのですか」みたいな質問は白川総裁向けには嫌らしい質問じゃないかと。
#まあ俊ちゃんだったら平然と「腰だめの数字ですが何か?」と返してきそうですけれども
・10月頭の金融政策決定会合議事要旨
議事要旨見ると結構追加緩和の可能性が高かったんですね、という話が読み取れるのですけれども、これ制度的に仕方ないのですが、決定会合議事要旨が次の会合の前に出てくれるようになる(つまり決定会合の議事要旨の承認を決定会合で議決するのではなく通常の政策委員会で議決できるようになる)と、次回の決定会合前にインプリケーションが示されますし、更に言えば今回の追加緩和に関しても外野的に見た場合の「押し込まれた感」が緩和される(いやまあ押し込まれているのは押し込まれているんでしょうけれども)ように思えるのですがどうでしょうかね。
・その後の総裁講演と白井審議委員講演
総裁の講演はいつもどおりなのですが円高に関する話があれという感じ。白井審議委員の講演は欧州債務問題に関して何か独自の視点で面白い話でもあるかと思ったのですが、そんなに変わった話がある訳でも無かったので個人的には少々拍子抜けという感じが致します。
というのが虫干ししないといけないネタリストですすいませんすいません。
2011/11/07
お題「ECB定例理事会会見ネタの続き(前のネタはどーしたというツッコミはしないように)」
http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is111103.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
つーことで質疑応答付ですが、第1パラグラフだけ金曜にネタにしましたけれども、その続きを少々。
○総裁変わって初回なので説明部分ももうちょっと読んでみるお
・流動性供給の実施は行いますよと
第2パラグラフではこんな話を。
『The provision of liquidity and the allotment modes for refinancing operations
will continue to ensure that euro area banks are not constrained on the
liquidity side. All the non-standard monetary policy measures taken during
the period of acute financial market tensions are, by construction, temporary
in nature.』
ということで、リクイデティーの枯渇によって金融市場が制約を受けることに関しては避けなければいけませんね、という話をしていまして、利下げと共に流動性の供給に関してはきっちり行いますよ、という話もしてますな。
・ユーロエリア経済に関して
んでまあその先が経済分析。
『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the
economic analysis. Real GDP growth in the euro area, which slowed in the
second quarter of 2011 to 0.2% quarter on quarter, is expected to be very
moderate in the second half of this year. There are signs that previously
identified downside risks have been materialising, as reflected in unfavourable
evidence from survey data.』
足元でのGDPの悪化は、これまでの間に出ていた良くないサーベイデータの数字に示されていた下方リスクの顕在化が起こったサインであると。
『Looking forward, a number of factors seem to be dampening the underlying
growth momentum in the euro area, including a moderation in the pace of
global demand and unfavourable effects on overall financing conditions
and on confidence resulting from ongoing tensions in a number of euro area
sovereign debt markets.』
先行きも世界経済の減速とユーロ圏のソブリン問題による金融環境の悪化が基調的な成長に悪影響を与えると思われます。
『At the same time, we continue to expect euro area economic activity to
benefit from continued positive economic growth in the emerging market
economies, as well as from the low short-term interest rates and the various
measures taken to support the functioning of the financial sector.』
でも同時にユーロ圏の低金利政策および金融セクターの機能が維持されることによって、ユーロ圏経済は新興国の継続する経済成長による恩恵を受けることができるでしょう、という事で先進国はどこもかしこも新興国経済の成長頼みですかそうですか。
『In the Governing Council’s assessment, the downside risks to the economic
outlook for the euro area are confirmed in an environment of particularly
high uncertainty.』
キタコレ。
『Downside risks notably relate to a further intensification of the tensions
in some segments of the financial markets in the euro area and at the global
level, as well as to the potential for these pressures to further spill
over into the euro area real economy.』
金融市場の悪化のスピルオーバー効果キタコレ。
『They also relate to the impact of the still high energy prices, protectionist
pressures and the possibility of a disorderly correction of global imbalances.』
エネルギー価格の高止まりやリスク回避姿勢、グローバルインバランスの修正などもリスクと。
・物価に関して
『With regard to price developments, euro area annual HICP inflation was
3.0% in October according to Eurostat’s flash estimate, unchanged from
September. Inflation rates have been at elevated levels since the end of
last year, mainly driven by higher energy and other commodity prices.』
足元の物価上昇は主にエネルギーや商品価格の上昇によるものですと。
『Looking ahead, they are likely to stay above 2% for some months to come,
before falling below 2% in the course of 2012. Inflation rates are expected
to remain in line with price stability over the policy-relevant horizon.
This pattern reflects the expectation that, in an environment of weaker
euro area and global growth, price, cost and wage pressures in the euro
area should also moderate.』
でもその後はユーロ圏の経済が弱く、更に世界経済の減速する中で、ユーロ圏の価格や賃金などの上方圧力は緩和される結果として物価上昇率は低下するという予想ですな。
『The Governing Council continues to view the risks to the medium-term
outlook for price developments as broadly balanced, taking also into account
today’s decision.』
リスクはおおむねバランスと。
『On the upside, the main risks relate to the possibility of increases
in indirect taxes and administered prices, owing to the need for fiscal
consolidation in the coming years. In the current environment, however,
inflationary pressure should abate. The main downside risks relate to the
impact of weaker than expected growth in the euro area and globally. In
fact, if sustained, sluggish economic growth has the potential to reduce
medium-term inflationary pressure in the euro area.』
物価の上方リスクは財政健全化に伴う間接税の引き上げとか公共料金(ですかこれ)の引き上げとかですが足元の環境では上方圧力は緩和されており、下方リスクはユーロ圏および世界経済の成長がより減速すること、ということで、まあバランスとか言いながらも下方リスクの方が強い感じでして、弱い経済成長が続いた場合には中期的な物価低下圧力になるとしていますな。
つーことで、見通しはだいぶ下がっています。
・そして金融機関の自己資本充実に言及とな
ちょっと飛ばしてその後。
『The overall size of monetary financial institutions’ balance sheets
remained broadly unchanged over the past few months. The soundness of bank
balance sheets will be a key factor in reducing potential negative feedback
loop effects related to tensions in financial markets, thereby facilitating
an appropriate provision of credit to the economy over time.』
金融機関のバランスシートの健全性を保つことが金融市場の経済に対するネガティブフィードバックを抑える重要な要因で、それによって金融機関による適切な信用供与が経済に行われることができますよ。
『We therefore welcome the agreement of the European Council to proceed
with the increase in the capital position of banks to 9% of core Tier 1
by the end of June 2012. We also fully support the call to national supervisors
to ensure that banks' recapitalisation plans do not lead to excessive deleveraging.』
ということで、欧州委員会が2012年6月末までに銀行のコアTier1資本を9%にするように同意した事を歓迎しますし、銀行の資本増強によって過度なデレバレッジが起きないようにサポートします、との仰せなのですが、まあ確かに先ほどの方で流動性供給については万全の体制を取りますという話をしていますし、こちらもサポートするとは言ってますけれども、やはりこれはこれでちょっと景気の足引っ張るんじゃネーノという感じがします。
・最後に「構造改革」について
財政政策面についての話(まあ話ったって「各国は財政健全化を進めてちょ」という話でECBが何かをするという話ではない)の後に構造改革の話が。
『It is crucial that fiscal consolidation and structural reforms go hand
in hand to strengthen confidence, growth prospects and job creation.』
構造改革が必要とな。
『The Governing Council therefore calls upon all euro area governments
to accelerate, urgently, the implementation of substantial and comprehensive
structural reforms. This will help the euro area countries to strengthen
competitiveness, increase the flexibility of their economies and enhance
their longer-term growth potential.』
『In this respect, labour market reforms are essential and should focus
on measures to remove rigidities and to enhance wage flexibility, so that
wages and working conditions can be tailored to the specific needs of firms.
More generally, in these demanding times, moderation is of the essence
in terms of both profit margins and wages.』
『These measures should be accompanied by structural reforms that increase
competition in product markets, particularly in services - including the
liberalisation of closed professions - and, where appropriate, the privatisation
of services currently provided by the public sector.』
ほっほー。
『At the same time, the Governing Council stresses that it is absolutely
imperative that euro area national authorities rapidly adopt and implement
the measures announced and recommended in the Euro Summit statement of
26 October 2011.』
ということで、まあ総裁変わって最初なのでちと細々読んでみましたが、まあちょうど総裁が変わったというのもあって、ここぞとばかりに景気重視色を強めているなあという感じがします。
○ECB定例理事会後の質疑応答に関して少々メモ
その続きが質疑応答でして、まあ何となく読んでみたのですが、トリシェ総裁も会見の時に記者に文句垂れている場面がございましたが、ドラギ総裁もいい感じで沸点があまり高くはなさそうな感じがせんでもないな、というのもあります。
沸点の話の前に最初の2つの質疑を。
『Question: President Draghi, welcome to Frankfurt. I have a few questions
about today’s rate decision, which came as a bit of a surprise. Was the
decision unanimous? And can you explain the reasoning behind it, because
if the economy needs it and there are very few upside risks to inflation
left, why did you not cut by 50 basis points, or are you going to do that
next month?』
『Draghi: Lots of questions, in one short question. But, yes, the decision
was unanimous. Second, why did we do it? I think I did say why in the statement,
but the points are basically the following: first of all, we observed a
weakening of various components of aggregate demand, mainly consumption
and foreign demand. We observed a worsening, both in hard data and survey
data - worsening Purchasing Managers’ Indices (PMIs), especially in manufacturing,
in new orders growth, etc. We have also had two or three Consensus forecasts
- we have the Eurobarometer and Consensus Economics showing that the likelihood
of the weakening of the economic situation has gone up. We have concluded
that the present situation would have a dampening effect on wages, prices
and costs, so that our decision today is expected to maintain price stability
in the medium term.』
今回の決定は全員一致ですというのと、利下げの背景に関しての景気、物価に関する説明をしていますけれども、主に消費と海外の需要が弱まっている点を注目し、それから製造業PMIなどの悪化や、コンセンサス調査などの悪化に注目した結果、現在の経済状況は賃金や物価などに悪影響を与えると見られるので利下げを実施しました、というお話ですな。
『Question: Can you tell us if you can envisage a time frame for when the
Securities Markets Programme (SMP) will stop and if its continuation is
conditional on the countries or if it is, at least, a factor that the countries
adopt the measures that they are asked to take, that they have committed
to take? I am referring, in particular, to a letter that you yourself were
a co-signatory to, together with Mr Trichet, in the summer for Italy.』
『Draghi: The Securities Markets Programme (SMP) always has had, and was
meant to have - as it has been stated since the very beginning - three
characteristics. First of all, it is temporary. Second, it is limited in
its amount and, third, it is justified on the basis of restoring the functioning
of monetary policy transmission channels. So we should keep this in mind
because this in a sense answers all the questions that one might have.
The relationship with conditionality should be viewed from this perspective.
We want our monetary policy to function. And I think that is where the
main justification for the SMP lies.』
資産買入プログラムに関する質疑応答ですが、ドラギ総裁はSMPに関して(1)一時的なものである、(2)買入量は限定的なものである、(3)金融政策のトランスミッションチャネルが機能するために行われるという目的のもとに正当化されるものである、という3点を打ち出しております、まあ従来通りではありますが。
つまり、この資産買入プログラムは「金融市場の機能不全によって金融緩和政策の効果が阻害されるのを防ぐために実施する」という意味合いによって実施される流動性供給プログラム的な扱いとなっている、という原則は維持しておりまして、そーゆー点ではまあECBが買入やってお助けオペする訳ではないですよ、と思いっきり仰せのようです。
で、まあ以下はこの話の発展系の話が多いのですが、ECBの場合はタカとハトと両方から質問が来るようで、最初の質問のように「何でもっと利下げしなかったのか」という質問が出ると思えば「ドイツ企業とかの動きを見ていると物価の上方リスクが下がったとは思えませんけど」という質問が出てみたりというような形で、どこかの中央銀行みたいに全部同じ方向で質問が飛んでくるようなのと違うのがオモシロスであります。
ということでこんな質疑応答も。ずっと先の方ですが。
『Question: And a second question if I may: there are more and more concerns
about the balance sheet of the ECB. Some economists say the SMP, but also
the credit you give to Greek banks, might cause significant write-downs,
especially if Greece fails. As an economist, would you say the Eurosystem
can operate on a negative equity capital basis?』
で、ECBのバランスシートに対するどうのこうのというこの質問に対して。
『Draghi: There is a strange “schizoid” attitude because some people
say that our balance sheet is at risk, while others say we should expand
our balance sheet to help everybody.』
schizoidって精神分裂症とかいう意味ね。
『In point of fact our balance sheet is not at risk and many things have
been decided at the last European Council which made the Greek debt and
the Greek counterparties compliant with our requirements. Our requirements
for collateral are 1) that counterparties should be sound, and 2) that
collateral should be adequate. There have been measures to recapitalise
the banks, there have been measures of credit enhancement, and there have
been measures giving guarantees for term funding. And there have been other
measures that are reassuring as far as the ECB balance sheet is concerned.』
まあこの辺はECBはバランスシートの健全性についての説明ですが、この質疑の前にも「記者の質問に質問で返す」という技を炸裂させてみたりしてて、これはECBの仕様なのかもしれませんけれども、記者にいきなり切り返すというのが初回から出るというのが中々アレであると思いました(^^)。
あと、この質疑応答もワロタ。
『Question: One question for President Draghi and one question for Vice-President
Constancio. I am a bit surprised by your somewhat “legalistic” answer
on Greece and that is not in the Treaty. If you have senior euro zone politicians
talking about Greece potentially leaving the euro zone, is not it up the
ECB to consider how this, if it is supposed to happen, can be done technically
and whether it can be done technically or not?
And for Vice-President Constancio: you have seen in your time here at the
ECB President Trichet in the chair where President Draghi is sitting now
and you have seen President Draghi today. What is the difference in style
and substance in the two leaderships?』
まあ1番目の方はどうでも良いのですが。
『Draghi: If I can comment, the second question is much better than the
first! (1番目の質問の答え部分全部省略します。まあ要するに「ユーロの理念に則るのが大事だからギリシャの脱退とか有り得ません」という話をしています)』
『Constancio: On substance, it is the same. Do not forget that President
Draghi has been a member of the Governing Council for many years, so he
is totally embedded in the approach of the Governing Council over the years
and you see also the continuity of analysis in the initial statement and
in his answers. Let me remind you that, last month, President Trichet said
that the possibility of a rate cut was discussed in the meeting, so the
decisions today are not something that are out of line with the continuity
of analysis and, as the President explained, the indicators since then
have only aggravated and justified today’s decisions. So, I would say
no differences on substance. On style, there is the same approach of taking
the opinions and inputs of everyone. That is also to say, that there are,
as always, personal differences. But I will perhaps protect myself by saying
that it is too soon to tell! Just one meeting, just one observation!』
そもそも利下げに関して前回も議論してましたので唐突な訳ではないですし、ドラギ総裁も前からメンバーでしたからスタイルの違いと言われましても何ですが、ただまあ個人的キャラという面に関してはまだ1回の会合ですからコメントしにくいですなあ(笑)という感じでしょうな。
『Draghi: I would just like to add one thing. I think your question also
has a deeper angle than just pure personalities, and the answer to your
question is really that continuity, credibility and consistency are of
the essence in the way we carry out our jobs.』
コンスタンシオ副総裁のコメントで終了しても良い所にわざわざドラギ総裁出てきてこんなコメントを付け加えるのが何というかまあそういうキャラクターなんですかね、というお話であります。初回だから張り切っているのかも知れませんけれども、ちょっと沸点が低めの気もするのでありますがどうでしょうかね。
しかしまあ何ですな、「ECBになってブンデスバンクの原則が打ち捨てられたと批判されていますがどう思いますか」というような質問も飛んでくる所がまあ初回の会見らしい所であります(^^)。
『Question: Your predecessor Mr Trichet was criticised by many Germans
for throwing the Bundesbank principle overboard, and a lot of Germans are
fearfully asking themselves if you stand in the tradition of the Bundesbank.
Perhaps you can give these Germans an answer. Secondly, did Mr Trichet
give you any advice for today’s meeting and, if so, have you followed
it?』
『Draghi: No, Mr Trichet did not give me any specific advice for today’s
meeting, but he gave me the comfort of his example, of his being a role
model. I had the privilege to work with him for many years. On the first
question, I have great admiration for the tradition of the Bundesbank.
I was in the Treasury in Italy in the 1990s and we had many opportunities
to work with Hans Tietmeyer and Helmut Schlesinger, so I developed a very
great admiration for this institution throughout these years. As for the
future, let me do my work and we will have periodic checks as to whether
I am in sync with this tradition or deviating from it.』
ティートマイヤーとかシュレジンガーとかテラナツカシス。
2011/11/04
お題「ネタが後入先出状態で恐縮でありますが」
日本の為替介入の話をするときに実質為替レートの話をしているのに、人民元の話の時には名目レートの話しかしていないモーサテのコメンテーター様のご都合ダブスタぶりに朝からコーヒー噴いたわwwwww
#つーか「実質では円高じゃないから他国が冷淡なのは仕方ありません」ってのを容認したら他国の皺寄せをデフレで受けますってのを容認するって話じゃねえの??
○ネタ消化の前にオペレーション雑談
水曜のオペですが「吸収を行わず」とか「非不胎化」とかもうアホかというヘッドラインが相変わらず並ぶのもアレなのですが、最近毎度毎度見ていて腹が立つのは共同通信のヘッドラインでして、まあ水曜も「吸収行わず非不胎化」とか書いていて、共同通信の報道をあちこちが転電するという事を考えると全くもって遺憾の極み(今回じゃないけど決定会合では「現状維持」としないで「追加緩和見送り」とか報道するし)でして、勝手に変なバイアス入れて報道するんじゃねえという悪態はまあ割愛すると致しまして。
水曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of111102.htm
国債買入(資産買入等基金) 2,500 2011年11月8日
米ドル資金供給(固定金利方式) 2011年11月4日 2011年11月10日 1.100
米ドル資金供給(固定金利方式) 2011年11月4日 2012年1月26日 1.100
共通担保資金供給(全店)<金利入札方式> 8,000 2011年11月7日 2011年11月24日
共通担保資金供給(全店)<金利入札方式> 8,000 2011年11月7日 2011年12月6日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2011年11月7日 2012年5月10日
ドルオペは兎も角として共通担保3連発(うち1本は基金オペ固定金利6か月)とかこらまた何でまたそんなに威勢よくオペオファーしますねんという所でございまして、元々介入要因で財政が大幅払い超になって当座預金残高が持ち上がるというのにオペの資金供給を威勢よくやる必要って本当は無い筈なのですが、外野が非不胎化だの何だのやかましいもんだからその辺を慮って景気よくオペオファーですかそうですか。
・・・・・・まあ別にそれはそれでも良いんですけれども、調節実務と金融緩和を混同した非不胎化論に乗っかるようなオペをあまりこれ見よがしに実施すると、将来金利誘導政策に復帰した時に為替介入が行われた場合に、絶対にロクな事にならないですから(金利誘導政策を実施する中では「テクニカルに資金需給の調整を行うための吸収」が必要になるので)あまり市場(というか短期金融市場や債券市場の中で普通の知能を持っている人は理解しているのですがそれ以外の市場の人ですな)の誤解に乗っかるようなオペレーションをこれ見よがしに実施するのはちょっとどうなのかという気がするんですけどね。もうちょっとナチュラルで良いんじゃないですかねえ。
そして水曜のオペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba111102.htm
米ドル資金供給(固定金利方式)(11月10日エンド分) 2 2
米ドル資金供給(固定金利方式)(1月26日エンド分) 100 100
国債買入(資産買入等基金) 9,391 2,501 0.034 0.035 79.8
共通担保資金供給(全店)<金利入札方式>(11月24日エンド分) 4,250 4,250 0.100 0.100
共通担保資金供給(全店)<金利入札方式>(12月6日エンド分) 9,450 8,006 0.100 0.100 84.7
共通担保資金供給(資産買入等基金)(11月7日スタート分) 10,190 8,005 78.6
・・・・・・・米ドル供給オペに応札だ・・・・と???
ただまあロットがロットですので、物は試しに取ってみたという事なのでしょうけれども延々とこのオペ応札ゼロが続いていましたので、ちょっと不穏っちゃあ不穏ではございますなあという所で。
○ECB利下げとな
http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr111103.en.html
『The interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem
will be decreased by 25 basis points to 1.25%, starting from the operation
to be settled on 9 November 2011.
The interest rate on the marginal lending facility will be decreased by
25 basis points to 2.00%, with effect from 9 November 2011.
The interest rate on the deposit facility will be decreased by 25 basis
points to 0.50%, with effect from 9 November 2011.』
コリドアの幅は変えずに全部25bp下げとなりましたとな。
http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is111103.en.html
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 3 November 2011
『Based on its regular economic and monetary analyses, the Governing Council
decided to reduce the key ECB interest rates by 25 basis points. While
inflation has remained elevated and is likely to stay above 2% for some
months to come, inflation rates are expected to decline further in the
course of 2012 to below 2%.』
インフレは目先2%超になるがその後2012年の間に2%以下に低下するとの見通し、と言わないと利下げが正当化できないというのはありますが、いきなりハト炸裂という感じでほほうという感じですが、まあ欧州も物価そのものは上昇している印象が個人的にはあるのでこれはこれで今後は大変だなあという感じはせんでもない。
『At the same time, the underlying pace of monetary expansion continues
to be moderate. After today’s decision, inflation should remain in line
with price stability over the policy-relevant horizon.』
基調的なマネタリーの拡大もモデレートになっているので中長期的な物価安定は今回の利下げによっても保たれますと。
『Owing to their unfavourable effects on financing conditions and confidence,
the ongoing tensions in financial markets are likely to dampen the pace
of economic growth in the euro area in the second half of this year and
beyond. The economic outlook continues to be subject to particularly high
uncertainty and intensified downside risks.』
つーことで欧州債務問題による金融市場の悪化が経済の先行きに悪影響および下振れリスクを与えていますと。
『Some of these risks have been materialising, which makes a significant
downward revision to forecasts and projections for average real GDP growth
in 2012 very likely.』
これらのリスクが顕在化しており、来年の実質GDPの見通しを大幅に引き下げる可能性が「very
likely」ですと。
『In such an environment, price, cost and wage pressures in the euro area
should also moderate; today’s decision takes this into account. Overall,
it remains essential for monetary policy to maintain price stability over
the medium term, thereby ensuring a firm anchoring of inflation expectations
in the euro area in line with our aim of maintaining inflation rates below,
but close to, 2% over the medium term.』
したがって利下げしても物価の上昇圧力は抑えられますとゆー話をしておりますが、まあ今回に関しては明らかに金融市場の混乱とコンフィデンスの悪化に伴う対応という事で、物価云々に関しては後付理屈
『Such anchoring is a prerequisite for monetary policy to make its contribution
towards supporting economic growth and job creation in the euro area.』
つーことで総裁変わったらいきなり利下げで結局の所トリシェは逆噴射利上げをしただけでしたねという話ですかそうですかという事ですが、会見詳細は後日やるかもしれませんがたぶんやらないでしょう(汗)。
○FOMC声明文比較
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20111102a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110921a.htm(前回)
・第1パラグラフ:現状の景気判断が上がっていますな
『Information received since the Federal Open Market Committee met in September
indicates that economic growth strengthened somewhat in the third quarter,
reflecting in part a reversal of the temporary factors that had weighed
on growth earlier in the year.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in August
indicates that economic growth remains slow.』(前回)
一時的な下押し要因の剥落により経済成長は3Qで若干強くなっているとな。
『Nonetheless, recent indicators point to continuing weakness in overall
labor market conditions, and the unemployment rate remains elevated. Household
spending has increased at a somewhat faster pace in recent months.』(今回)
『Recent indicators point to continuing weakness in overall labor market
conditions, and the unemployment rate remains elevated. Household spending
has been increasing at only a modest pace in recent months despite some
recovery in sales of motor vehicles as supply-chain disruptions eased.』(前回)
ただし労働市場に関する認識は引き続き厳しいのでNonethelessというのが入っているようですけれども、一方で家計の支出に関してはその増加ペースに関して「at
a somewhat faster pace」となっていてこちらは上方修正。
『Business investment in equipment and software has continued to expand,
but investment in nonresidential structures is still weak, and the housing
sector remains depressed.』(今回)
『Investment in nonresidential structures is still weak, and the housing
sector remains depressed. However, business investment in equipment and
software continues to expand.』(前回)
企業の投資に関する話ですが、設備とソフトウェアに関する投資の部分について今回何故か「has
continued to」と時制が変わっているのに何の意味があるのかが頭が悪いので良く判らないのですが、今回語順が変わっていて、前回は「景気の悪い話、However景気の良い話」だったのが今回は「景気の良い話、but景気の悪い話」となりまして、メインが景気の良い話の方になっていますのでこれも微妙に上げという感じがしますがどうでしょうかね。
『Inflation appears to have moderated since earlier in the year as prices
of energy and some commodities have declined from their peaks. Longer-term
inflation expectations have remained stable.』(今回)
『Inflation appears to have moderated since earlier in the year as prices
of energy and some commodities have declined from their peaks. Longer-term
inflation expectations have remained stable. 』(前回)
ご覧のとおりでインフレに関する見方は変わっていません。
・第2パラグラフ:でも先行きの回復ペースは鈍化とな
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster
maximum employment and price stability. The Committee continues to expect
a moderate pace of economic growth over coming quarters and consequently
anticipates that the unemployment rate will decline only gradually toward
levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster
maximum employment and price stability. The Committee continues to expect
some pickup in the pace of recovery over coming quarters but anticipates
that the unemployment rate will decline only gradually toward levels that
the Committee judges to be consistent with its dual mandate.』(前回)
経済成長のペースに関して今回の「moderate pace」と前回の「some pickup」のどっちが強いのよという事ですが、その後の所にある接続詞が今回が「and」で前回が「but」となっていまして、後の文章は「失業率はデュアルマンデートで目標とする望ましいレベルに低下する為には極めて緩やかなペースになると予想する」となっているので、つまりは今回の「moderate
pace」の方が判断としては弱いという事になります。
・・・・・まあ何ですな、これって「一時的な落ち込み要因が剥落した分で若干回復のペースが拡大したものの、今後はその分の寄与が無くなるから回復ペースは従来の緩やかな水準に戻っちゃいますね」というどこの日銀だよという感じですが、まあそういう事なんでしょ。
『Moreover, there are significant downside risks to the economic outlook,
including strains in global financial markets. The Committee also anticipates
that inflation will settle, over coming quarters, at levels at or below
those consistent with the Committee's dual mandate as the effects of past
energy and other commodity price increases dissipate further. However,
the Committee will continue to pay close attention to the evolution of
inflation and inflation expectations.』(今回)
めんどいので前回分の引用をスルーしますが、ダウンサイドリスクの話とインフレ見通しに関する話についてのこの部分は前回分と一言一句変わりませんです。
・第3パラグラフ以降:まあ今回はそんなに変わっていない
前回はFEDのバランスシートの構成変更に関する決定がありましたのでここは前回比較というのはちとアレでございますけれども、今回の声明文を拝読。
『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation,
over time, is at levels consistent with the dual mandate, the Committee
decided today to continue its program to extend the average maturity of
its holdings of securities as announced in September. The Committee is
maintaining its existing policies of reinvesting principal payments from
its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency
mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities
at auction. The Committee will regularly review the size and composition
of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as
appropriate.』(今回)
ということで、まあ文言自体は基本的にそんなに変わらず、前回の決定した施策を実行しますよという話である。
『The Committee also decided to keep the target range for the federal funds
rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that economic conditions--including
low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over
the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the
federal funds rate at least through mid-2013.』(今回)
このガイダンス文言も前回と同じなのですが、よくよく考えてみますとケツが変わらないというのは時間軸が短くなることを意味しておりまして、次回のFOMCが12月になりますけれども、そろそろここのケツの日程変えた方が良いんじゃないかという気がするんですけどねえ。SEP(経済物価の見通し)では1年時間軸が伸びた格好になっている(これまた日銀の展望レポートと似ていて思わずウケた)のですけどね。
『The Committee will continue to assess the economic outlook in light of
incoming information and is prepared to employ its tools to promote a stronger
economic recovery in a context of price stability.』(今回)
前回はここに『The Committee discussed the range of policy tools available
to promote a stronger economic recovery in a context of price stability.』というのがあったのですが、何故か抜けていて「???」と思ったのですが、まあ会見の方では(会見は動画はみれますけれども、フルテキストになっていないのでめんどい)追加緩和ツールについて言及しているので、別に追加の用意はありますよ、という話は継続なんですな。
『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman;
William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Richard W. Fisher;
Narayana Kocherlakota; Charles I. Plosser; Sarah Bloom Raskin; Daniel K.
Tarullo; and Janet L. Yellen. Voting against the action was Charles L.
Evans, who supported additional policy accommodation at this time.』(今回)
前回の追加緩和に反対した3名は今回は現状維持に賛成する一方で、従来より失業率の高止まりを政策判断に対してより重視すべきであるという主張をしているシカゴ連銀のエバンス総裁は今回「追加緩和が必要である」と主張して反対しています。
・SEP(経済物価見通し)に関して
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20111102.pdf
Economic Projections of Federal Reserve Board Members and Federal Reserve Bank Presidents, November 2011
Advance release of table 1 of the Summary of Economic Projections to be released with the FOMC minutes
ということで、SEPの詳しいのはMinutesで示されますが、その表紙みたいな部分が今回公表されています。でまあ数字はそこにある通りですけれども、基本的に前回の見通しの足が1年先に伸びているという感じでして、要するに先行き見通しを1年後寄せさせたという感じになっています。ただし足元に関しては物価の見通しが上がっていますが、先行きに関しては上昇していませんので単にこれは現状の数値を見て直したという話になろうかと思います(詳しい数字はコピペめんどいので上記URL先をご参照)。
あと、この見通しに関しては「長期的に望ましいとするレンジ」も示されていまして、そこのチャートの中の「longer-run」の数字がそうなんでしょという所でして、2ページ目にファンチャートがあって、3ページ目に説明がありまして、その中にこんなのがあります。
『The longer-run projections, which are shown on the far right side of
the charts, are the rates of growth, unemployment, and inflation to which
a policymaker expects the economy to converge over time-maybe in five or
six years-in the absence of further shocks and under appropriate monetary
policy. Because appropriate monetary policy, by definition, is aimed at
achieving the Federal Reserve’s dual mandate of maximum employment and
price stability in the longer run, policymakers’ longer-run projections
for economic growth and unemployment may be interpreted, respectively,
as estimates of the economy’s normal or trend rate of growth and its normal
unemployment rate over the longer run. Similarly, the longer-run projections
of inflation are for the rate of inflation that each policymaker judges
to be most consistent with the Federal Reserve’s dual mandate in the longer
term.』
つーことですので、まあ言ってみれば日銀の中長期的な物価安定の理解と同じようなもんですが、FEDの場合は物価だけじゃなくて失業率がデュアルマンデートですから入るのは当然として、実質GDPも入っているんですね、という所でございます。
2011/11/02
お題「各種雑談&相変わらず遅れていますが展望レポート関連」
休んでいた影響でいろいろとネタが押しておりますが早急にキャッチアップする所存ですのでご勘弁。
○ギリシャがどうしたこうしたという単なるメモ
まあ単なるメモですが。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a_d1ci_rZV7Q
ギリシャ国民投票の「ギャンブル」、ユーロ圏は仰天−収束さらに遠のく
『11月1日(ブルームバーグ):5日前にやっと取りまとめられた救済策について国民投票を実施しようというギリシャの「ギャンブル」に、ユーロ圏諸国は不意を突かれた。債務危機の収束にまた障害が増えた。』(上記URLより)
・・・・・・いやあの何ですかこれという感じでございますが、まあギリシャクオリティですので致し方ない所ですが、もはやこれは訳ワカランチ会長でございますな。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aNcb5GH8W2XA
欧州債:イタリア債が下落、独債とのスプレッド拡大−ギリシャ懸念で
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=a4sQRIR660bM
サルコジ仏大統領:前週合意の計画が「唯一」の解決策−ギリシャ問題
まあそらそうなるわという感じですが、これが共通通貨じゃなかったらとっくの昔にドラクマが超越大暴落して国内で自国通貨が実質通用しなくなってハードカレンシーを持っていない一般ピープルが塗炭の苦しみモードになるので、こんな状況にはならんでしょという所だと思うのですが、そもそも市場の考える解決への速度と政治問題化した場合のこの手の話の解決の速度のギャップがある上に、そもそも独自通貨じゃないのでその点での緊迫感が微妙に無いというのが話をややこしくしています罠と思うのでございました。
正直これはどうなるのかさっぱりわからんがなという事で。
○顧客資産の分別問題キタコレ
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=apLO4Hr9A_d0
米MFグローバル、顧客資産を自己勘定と区別せず−CME(1)
『11月1日(ブルームバーグ):先物市場運営で最大手の米CMEグループは、破産法の適用を申請したブローカー・ディーラーの持ち株会社MFグローバル・ホールディングスについて、顧客資産を自己勘定から区別する規定を順守していなかったと指摘した。監督当局はMFグローバルの破産法適用申請を受けて、同社を調査している。』(上記URLより)
・・・・・・・うーむ、この問題って色々と影響しそうですなあ。何となく雑感が無い訳でも無いですけれども、そもそもこの手のブローカーの顧客資産の勘定分離の問題に関して、米国の法令とかその運用とかがどうなっているのかとか不勉強にしてイマイチ判っていない(つーか米国の信託法に関してもうろ覚えですしorz)ので何なのですけれども、これ「規制当局は何やっていたんだ」とか「オーディターは何やっていたんだ」というような話にどう見ても発展しそうで、そうなるとまた色々とこの手の顧客資産の管理に関わる分野でああだこうだという話になるんでしょうな。
そうなるとまた規制がどうだの何だのとか来るのもどうなのという話になりますが、更にその煽りが海を越えてやってきて、いやあのその辺って日本は普通にちゃんとやっているんですけど系の事に関して当局様からアレ出せコレ出せ(しかもショートノーティスで)とかやってきて雑用が爆発的に増えるに1万ドラクマ。
○介入が8兆円ですかそうですかというのとそれに関する雑感
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jp111102.htm
日銀当座預金増減要因と金融調節 (11月2日<水>分)
財政等要因(受超=マイナス) 76,800
・・・・・・・ということでまあ介入額が8兆とかあったんですねというのが分かった訳ですが、8兆介入するなら何故80円超にもっていかないとゆー気がする訳ですし、8兆も玉打ち込む位ならETFを1兆買った方がよっぽど効くんじゃネーノと思うのですけれども、まあそれは兎も角として。
東京新聞(中日新聞)の社説なのですが書いている人がどこぞのウォッチマンじゃね???と思うような文章でございますがそれは兎も角。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011110102000034.html
【社説】円売り介入 もっとマネーを増やせ 2011年11月1日
『日銀は通常、政府が円売り介入で日銀に指示して市場に放出させた円資金を後日、国債の売りオペなどで吸収している。「吸収しなければ政府が金融緩和する形になるからだ」というのが日銀の言い分だが、それではせっかくの介入効果が消えてしまう。』(上記URLより)
いやあのそういう説明はたぶん日銀はしてないと思いますが。つーかそもそも放出した資金を吸収するのは政府であって(その分最終的には国庫短期証券の発行が増えるから)日銀が実施しているのは一時的な資金需給のブレを均す為のオペですから非不胎化とか不胎化とかいう話は上記のような日銀が吸収云々という文脈では意味が無いですからって何回書いているんだか(金融緩和しろという意味で話をするならばそれはそれで別の話で、今申し上げたように最終的に資金を吸収するのは外国為替特別会計の方ですという事ね)。
つまりね、日銀が調整するのは、介入によって出る円資金のタイミングと最終的な外為特別会計資金繰りの帳尻を合わせるための国債発行による資金吸収タイミングの足ずれの調整であって、(現状では関係ないですけれども)金利ターゲットで金融政策を実施している状態の下では超過準備をある程度以上に大量放置した状態を恒常的に実施した場合に、金利ターゲット政策で目標にしている短期市場金利が預金ファシリティーの水準まで自動的に低下し、預金ファシリティーを利用できない主体まで資金が余るとゼロに向けて金利が自動的に低下してしまい、金利ターゲット政策の意味が無くなるからテクニカルに吸収している(したがって現状のようにターゲットが0−0.1%とかになっている分には放置上等なので今回のように放置する)だけの話なんですけどね(大体からして日銀の吸収オペなんて実施しなくなって幾星霜という感じなんですけど)。というのを何度書いてるんだか、という感じです。
しかもそれを言うなら今回は資金の吸収実施しませんし、つい先日国債の買入拡大を決定したばっかりでして、そういう意味では日銀は資金供給を拡大したのであって、日銀はお前に言われるまでもなく既に実施しているがなとゆー所で、中日新聞社は何見て物言っているんだとしか申し上げようがございませんよって、今日からのクライマックスシリーズでは東京ヤクルトスワローズ様の大勝利を祈念せざるを得ない所でございます(違)。
まあこの手のネタは散々見慣れているので今さら驚かないのですけれども、(具体例の提示は避けますが)今回は足元で書き物のネタが無いのか、それとも直近でインスティトゥーショナル何とかとかいう所のアナリストランキング投票が行われている最中だからキャッチ―な見出しを付けてウケ狙いのレポートを書くインセンティブでも生じているのかどうか存じませんが、ちゃんとしたプロの何とかスト様のお書きになる機関投資家向けレポートで非不胎化がどうのこうのだとか、何かその手の素っ頓狂な物件が散見されるのが何だかなあという所でございまして、ちょっとお前らその席どけやという所でございます。
○などと悪態を書いていたら時間が無くなってきたのですが展望レポート比較の続きの要点だけ
この後「総裁定例会見」「31日の総裁講演」「31日の総裁会見」「10月前半の議事要旨」とネタが続く上に今晩はFOMCでありますし、それ以前にあたくしが休んでいる間にFEDの高官があちこちで講演している訳でございまして、ネタが鬼のようにスタックしておりますが、幸いにも何だか知らないけれども明日は国民の祝日のようでございますし、週末もあるので必死に追いかけて、もしかしたら適当に休みのうちにネタ投下(消化という方が正しい)せにゃいかんがなという所で、今から明日は何時に起きてどういう時間の使い方しようという感じですが(苦笑)。
えーっとですな、昨日は展望レポートの先行き見通しの基本的な部分の所で終了しちゃいましたが、その先ってどうなのよという話ですな。文章引用して引用というのは時間の関係で華麗にスルーします(後でやります)ので箇条書きメモで。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1110a.pdf
・円高の影響に関して
これがまた今回「あれれ?」と思ったのは円高による企業行動の影響に関して妙にポジティブな話をしている所です。まあ確かに全部が全部ネガティブな訳でも無いですがな、というのはあると思いますが、今回その点が妙に明るい話をしているのが気になりました。展望レポートの基本的見解の本文8ページにありますのでご覧あれ。
・物価見通しに関して
ああでもないこうでもないとは書いてありますが、基本的に今回見通しは下げていないというのがこれまた微妙。先行き下振れリスクがあってしかもGDPの見通しそのものは下がっているというのに、物価の見通しに関しては下げたのはCPI基準改定によるテクニカルな低下部分だけで、それって何か整合性取れてるんですかというのはやや???な感じです。
・上振れ、下振れ要因に関して
前回と今回を比較するとこうなっています。
(前回の上振れ、下振れ要因)
1.震災の直接的な影響
2.成長期待などの低下(主に震災の影響による)
3.海外経済
4.グローバルインフレ
(今回の上振れ、下振れ要因)
1.欧州債務問題
2.海外経済
3.復興需要の不確実性
4.成長期待などの低下(震災の影響+円高の影響)
ということで、リスク要因は思いっきり下になっているのですが、その中で実に(;∀;)イイハナシダナーなのは3.の所でしょう。そこだけは引用しておくわ。
『第3に、復興需要に関する不確実性がある。被災地では、自動車や家電製品をはじめとした耐久消費財の買い替え需要が、すでにある程度顕在化している。また、瓦礫の処理や仮設住宅の建設など、復興に向けた様々な活動も進められている。しかし、インフラ、企業設備、住宅建設など、各種資本ストックの復元は、民間需要、公的需要とも、現時点では限定的な規模にとどまっている。』
『これらの復興需要については、今後、街づくりの全体像も含めて復興計画が具体性を増し、補正予算等が執行されていく中で、徐々に本格化していくと考えられる。ただし、復興需要の規模やタイミング、またその景気刺激効果については、復興計画が具体化していくスピードや、民間需要の好循環を生み出す地域経済の将来展望を描けるかどうかなど、いくつかの要因に依存するため、引き続き幅をもってみておく必要がある。』
つまり政府に文句を言いたい訳ですねわかりますわかります。
・物価の不透明要因
まあこれに関しては「震災の直接的な影響」という部分が外れ、リスク要因的には下振れリスクが高まったという感じですが、その一方で輸入物価に関しては従来の国際商品価格がどうのこうのの話が上方リスクだけじゃなくなったかと思ったら、今度は新興国の基礎的な需要が経済成長により高まるという話が出てきて、中々往生際が悪い(違うか)なという味わいがするのでございます。
・第1の柱、第2の柱
まあ基本的にあまり変わっていないのがチャーミングですが、第2の柱の部分ではこんな事を。
『景気については、バランスシート調整が米国経済に与える影響には引き続き注意が必要である。また、欧州のソブリン問題については、今後、財政と金融システム、実体経済の負の相乗作用が、強まっていくことにならないかどうか、注視していく必要がある。』
しかしですな、既に現状認識部分で「負の相乗作用が起きている」というのを示しているのにこれを第2の柱で済ませていいもんなの????
『新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。』
なのにメインのシナリオはこの地域が引っ張って世界経済は成長に復するんですよね・・・・
『こうした海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響については、丹念に点検していく必要がある。』
ということのようですな。
・最後にも政府に注文を(^^)
最後の所が泣いた。
『日本経済が直面している問題は、リーマン・ショック後の大幅な需要の落ち込みからの回復という短期・循環的な問題にはとどまらない。より根源的には、中長期的な成長期待の低下という、長期的・構造的な要因が重要である。』
ほほう。
『すなわち、わが国経済は、これまでも、急速な高齢化や労働生産性の伸び悩みなどを背景とした経済成長率の趨勢的な低下という基本的な課題に直面してきた。加えて、日本経済は、震災からの復旧・復興という新たな課題にも直面している。対GDP比で先進国中最大の政府債務を抱えるもとで、市場からの信認を確保し続けていくため、中期的な財政健全化への展望を明確にする必要にも迫られている。』
仰る通りです。
『こうした課題を克服し、先行き、新たな経済発展の基礎を築いていくためには、日本経済が置かれている以上の状況を正しく認識しつつ、政府、中央銀行、金融機関、民間企業とも、中長期的に持続可能な成長力の強化に向けて、それぞれの役割に即した取り組みを続けていくことが重要である。』
つまり日銀にクレクレばかり言ってないでお前らもちゃんとやれやゴルァということですねわかります。
・しかし最後の見通し数字が強い(弱くない、という意味で)ですよね・・・・・・
まあ見通し数値に関しては単純に4月の見通しの時間軸が伸びている(後ずれさせている)という感じで、何かこの展望レポートって冒頭の辺りを読んでいると結構警戒的なトーンで弱めなのに、先行き見通しの所になってくるとだんだん平常運転モードになってきて、最後の見通し数字になると単純に後ずれモードになっているだけという感じになっているのが何だかなあという感じがします。
#引用とかに関してはどこかで追記メモ形式で実施しておきますね
2011/11/01
お題「お休みで出遅れているうちにネタが投入されるでござるの巻」
ほほう。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=as_bYSVoF9LE
米MFグローバル、破産法適用を申請−欧州ソブリン債投資が裏目 (2)
○為替介入でしたが
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=asoU.0VFEUCw
円急落、政府が今年3回目の介入−早朝には75円35銭の最高値更新
『10月31日(ブルームバーグ):東京外国為替市場では円が急落。早朝に円が対ドルで戦後最高値を更新したことを受け、政府・日本銀行は今年3回目となる円売り介入を実施し、円は一時1ドル=79円台半ばまで約4円も値下がりした。市場は一段の円の押し下げを狙って、当局が円売り介入を続けるかどうかに注目している。』(上記URLより)
ということで昨日は為替介入があったのですが、どうせやるなら何で日銀の追加緩和と一緒にやらなかったのかがイミフな所ではあるのですが、ただまあこれはある意味作戦みたいなもんで、追加緩和と介入を常にセットにしてしまうとタイミングが市場に丸わかりになってしまいますから今回はわざと先に「日銀だけ緩和させて梯子外しをした振りをする」という作戦でドル売りを溜めておいてから介入を打ち込んだという事だろうなあと思います、というか思いたい所でありまして、まさか単に日銀に追加緩和打たせてもドル安円高が止まらなかったので後から玉を逐次投入したとかだったら残念過ぎ。
つーかですな、どうせ打ち込むなら79円台とか中途半端な所じゃなくて何で81円とか位まで打ち込まないのかと思うのですが、79円20銭あたりまでで止めちゃうもんだから結局その後押し込まれている訳で、何か上手いんだか下手なんだか良くワカランチ会長な介入ではございます。
それにしても為替介入で4円飛んだのに債券先物が10銭ちょいしか動かないとか先生!債券市場ちゃんが息をしていないの!!状態は如何なものかと思うのですけれどもこれはきっとあたくしの休み明けに配慮して債券市場ちゃんが動かないであたくしのリハビリに協力したからに違いありません(いや違う)。
しかしまあ何ですな、為替介入したことだしまた追加緩和みたいな与太が昨日も飛んでいたような気がしましたが、そもそも(昨日も申し上げましたが)76円とか77円とかで1か月以上延々と推移している中でその為替が75円台になったからと言って何でそこまでこの世の終わりみたいに大騒ぎするのかが良く判らんですし(そんなに困るならもっと前から話が出るもんじゃないですかねえ)、元々高値圏で推移しているのですからちょっと動けば最高値更新になるのを捕まえて毎日毎日「戦後最高値更新です大変です大変です」とかセルゲイ・ブブカの棒高跳び(歳がばれますかそうですか)かお前らとゆー所で、その度に追加緩和してたら基金買入何兆になるんだよとゆー感じでございますなマッタクモウ。
なお、このニュースの意味が良く判らんので誰か教えてちょ。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=a1LtFgRW82MY
米国債:上昇、日本の為替介入で買い−イタリア債下落も支援材料
『10月31日(ブルームバーグ):米国債相場は上昇。30年債利回りはほぼ1カ月ぶりの大幅な低下となった。日本政府・日銀が円高に歯止めをかけるため円売り・ドル買い介入を実施したことが買いを誘った。』(上記URLより)
・・・・・・・・何で為替介入で米債が高くなるの?????
という悪態は兎も角、今回の追加緩和に関しては展望レポートが味わいがあるのでそれを読んでみた訳でって今さら何を言うとかゆーツッコミはご勘弁の程を。
○ということで展望レポートだがこれがまた何か話の流れが変である
達人は背景説明を含めた全文をちゃんと読むべきでありますが、手抜きで基本的見解の部分だけの比較でござる。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1110a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1104a.pdf(前回)
と言いましてもこれ全部で文章部分だけで15ページありますので、逐次比較とかしておりますと分量がなんぼになりますねんでございますので、その辺は適宜サラサラと。
・まず頭の部分で欧州債務問題の「負の相乗作用」を指摘している訳で
章立ては毎度「海外情勢」→「国内金融環境」→「今後の見通し」→「リスク要因」の順序なのですが、まず最初に注目されるのは海外情勢部分のお題目であります。
『2.国際金融資本市場および海外経済』(今回)
『2.海外経済および国際金融資本市場』(前回)
・・・・・まあこれだけで既に話の流れが読めるという感じだと思いますが(^^)、今回はその欧州債務問題の状況について色々と説明する部分が冒頭に来まして、その状況のまとめとして欧州債務問題の現状についてこのように指摘しています。
『このように、欧州では、財政、金融システムおよび実体経済の三者の間に負の相乗作用が働き始めており、金融情勢や実体経済の先行きに関する不確実性が高まっている。』
負の相乗作用キタコレという所ですな。
・では海外経済の現状判断の地域別展開ですが
『以上を踏まえつつ、海外経済の動きをみると、新興国・資源国に牽引される形で高い成長を続けてきたが、本年春以降、先進国を中心に、成長ペースが鈍化している。』
ということで地域別展開部分を比較してみる。
米国
『地域別にみると、米国経済については、ガソリン価格の上昇や日本の震災の影響など、一時的な要因が春ごろの減速に寄与した面もあるが、基調的にみても、家計の過剰債務や住宅市場の調整が長引き、雇用の改善も緩慢なもとで、回復のペースはごく緩やかなものにとどまっている。』(今回)
『地域別にみると、米国経済は、2010 年秋以降、金融緩和や減税措置延長などの財政刺激策などもあって、先行きの回復傾向の持続性に対する懸念は後退している。』(前回)
回復傾向の持続性の懸念が後退したものの、そのペースは結局の所ごく緩やかという事ですので、これ修正方向としては微妙ですけれども、ただまあ前回よりはトーンダウンっぽい書き方にはなっていますね。
欧州
『欧州経済は、輸出が好調なドイツなどを中心に、全体として緩やかに回復してきたが、ソブリン問題を背景とした金融環境や企業・家計マインドの悪化などから、減速が明確になっている。』(今回)
『欧州経済は、輸出が伸びているドイツなど一部の国と、ソブリン問題を背景とした緊縮財政の影響から低調な動きが続く域内周縁国の間で、景気回復ペースの格差が顕著となっているが、全体としてみると、緩やかに回復している。』(前回)
どう見ても下方修正です本当にありがとうございました。
新興国
『一方、新興国・資源国経済では、物価上昇による実質購買力の低下や金融引き締めの効果に加え、先進国経済の減速の影響などから、幾分減速しているが、生産・所得・支出の自律的な好循環が基本的に保たれているもとで、総じて高めの成長が続いている。このため、多くの新興国・資源国では、インフレ圧力は十分に沈静化していない。』(今回)
『この間、新興国・資源国経済は、旺盛な内需や海外からの資本流入のもとで高成長が続いている。』(前回)
まあだいたいこういう感じで文章量が長くなるのは自信度が下がっている証拠ですな。
・で、海外の先行き見通しですが
『海外経済の先行きに関する中心的な見通しとしては、当面は、国際金融資本市場の緊張が残る中、先進国を中心に減速した状態が続くとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で、再び成長率を高めていくと考えられる。このため、見通し期間中について平均的にみれば、高めの海外経済成長率を想定することができる。』(今回)
『先行きの海外経済については、新興国・資源国経済の高成長に牽引され、回復を続けることが想定される。世界経済全体の成長率は、2010
年に続き、2011 年、2012 年も、高い成長率を記録した金融危機前の10 年間の平均を上回って推移する見込みである。』(前回)
・・・・・・これね、まあ一応ヘッジクローズが入ったりして下方修正は下方修正なのですけれども、基本的な見通しは結局のところ『高めの海外経済成長率を想定することができる』となっているのが非常に謎というか無理があるんじゃないのという感じがするのですよね。
ちなみに、地域別展開を見るとこうなるだわさ。
『米国経済については、緩和的な金融環境が経済の下支えに働くと考えられるものの、バランスシート調整の圧力が根強く残る中、成長のペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。』(今回)
『米国経済については、新興国・資源国向けを中心に輸出が増加基調をたどるほか、緩和的な金融環境を背景に、個人消費や設備投資が引き続き緩やかに増加するため、回復を続けると考えられる。』(前回)
『欧州経済についても、ソブリン問題の影響が当面実体経済に作用し、景気回復の動きは抑制されたものになると考えられる。』(今回)
『欧州経済については、輸出の増加が徐々に内需に波及し、中心国と周縁国の格差を伴いながらも、全体として緩やかな回復が続くとみられる。』(前回)
『この間、新興国・資源国経済は、多くの国で、当面は幾分減速した状態で推移するとみられるが、その後は、インフレ圧力の低下に伴って、家計の実質購買力が回復することなどから、高めの成長を実現していく可能性が高い。』(今回)
『新興国・資源国経済は、インフレ懸念の高まりを背景に、金融引き締めの動きが続くとみられるが、旺盛な内需や海外からの資本流入が続くもとで、高めの成長を維持する公算が高い。このうち、中国経済は、所得水準の向上や都市化の進展を背景として、個人消費や住宅投資、各種のインフラ投資が増加基調をたどるため、高成長を維持すると考えられる。NIEs・ASEAN
諸国の経済は、輸出に加え、設備投資や個人消費などの国内民需も増加が続くと見込まれるため、景気は拡大基調をたどると予想される。』(前回)
めんどいので一気に引用だけしましたが、全部下げている上に新興国経済って確かその「インフレ圧力の低下」がちゃんとできるのかよという話を以前から決定会合声明文の中でもリスク認識として入れているような気がするんです訳で、何かまあ正直言って新興国の見通しも微妙にどうなのって感じがしますよね。更に今回はこんなヘッジクローズも。
『ただし、こうした見通しについては、経済にきわめて大きな影響を及ぼしかねない金融市場のショックは、回避されることを前提にしている。そうした前提を裏付ける政策当局の姿勢として、10
月央にパリで開催されたG20 の声明では、銀行システムや金融市場の安定を保つために必要な全ての行動を取ることに引き続きコミットしている旨、明記されている。』(今回)
いやでもあんさんさっき「負の相乗作用」って話になっていたと思うんですけど・・・・・
・国内金融環境に関しては日銀の緩和効果のアピールと欧州との違いの強調
国内金融環境の部分ですけれども、まあ国内の金融環境は緩和されていますねというのは当然なのですけれども、この中でいろいろと日銀のアピールが行われているのが悲しいですな。
『国際金融資本市場が不安定な中にあって、以上述べたわが国の金融環境と、米欧の金融環境との間には、際立った違いがみられる。例えば、銀行間取引の緊張度を表すLIBOR−OISスプレッドは、米ドルとユーロについては夏場以降拡大しているが、円については安定している。社債の信用スプレッドも、米欧では上昇が目立っている一方、わが国では上述の通り低水準で安定している。』
ニポーンのOISって最近取引ってあるの???という気もしますがまあそれは兎も角としまして日本の金融環境は緩和であることは仰せのとおり。で、その理由について説明するのですが、第4の部分に泣いた。
『第4に、日本銀行が、市場に対して潤沢に資金を供給していることや、包括的な金融緩和政策のもとで、CP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J―REIT)といったリスク性資産の買入れを行っていることも、金融環境の緩和に寄与していると考えられる。』
ほうほうそうですかという感じですが、リスク性資産の買入を行って金融環境の緩和に寄与するんだったら今回の追加緩和でもリスク性資産の購入を行った方が良かったんじゃないですかねえとかツッコミを入れてはいけませんですかそうですか。まあ一応日銀の理屈としては「既に金融環境は緩和的なので追加緩和でリスク性資産の購入を行うのではなく、2年などの金利の低位安定の方が効果がある」というのが繰り出されると思いますが。
・で、海外下げているのに何で先行き見通しがほとんど下がらないの????
次が先行き見通しなのですが・・・・・・・
『そのことを念頭に置いて、先行きを展望すると、わが国経済は、当面海外経済の減速や円高の影響を受けるものの、その後は海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『今後の経済の見通しは、電力を始めとする様々な供給面の制約が、いつどの程度のペースで解消していくかに大きく依存する。そのうえで、先行きを展望すると、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状況が続くと考えられる。(途中長いので割愛)秋口以降は、サプライチェーンの再構築も一段と進むとみられることから、電力の需給逼迫が改善に向かうもとで、供給面の制約は和らいでいくと見込まれる。そうした状況になれば、海外経済の改善が輸出や生産の増加につながり、わが国経済の回復を支える原動力として、再びはっきりと作用してくる。さらに、震災によって毀損した資本ストックの復元に向けた動きも、次第にわが国経済を押し上げる方向で寄与してくるものと考えられる。』(前回)
ということで、前回は何せ震災の影響がどうなるかという話が多く(展望レポートの中でも前回はその部分に多くの説明を割いています)、ちょっとその部分が長いのですけれども、結局の所従来からの基本的な見通しが今回実は変わっておらず、まあ単にその時間軸が1年程度先に延びただけ、という風になっているのが何だかなあ感があるのですけれ
ども。
いやね、別に見通し変えないなら変えないでも良いのですけれども、それならば何かここまでこれでもかとばかりに(ここにもあるように日本成長の最大のドライブ役であると思われる)海外経済の現状判断を下げているのかというのが謎でありまして、何か微妙に話の整合性がアレな気がする。
『すなわち、2011 年度下期は、輸出や生産を中心に、海外経済減速や円高の影響を受けるとみられる一方、資本ストック等の復元に向けた復興需要が、公共投資、民間設備投資、住宅投資、さらには耐久消費財の消費といった様々な面で、徐々に顕在化してくると考えられる。2012
年度は、復興需要が年度を通じて寄与することに加え、海外経済の成長率が緩やかに高まり、輸出・生産を起点とする所得・支出への波及メカニズムが働くため、比較的高い成長率となることが予想される。2013
年度については、復興需要の押し上げ寄与が徐々に減衰していくことなどから、成長率は、2012
年度対比では鈍化するものの、新興国・資源国を中心とする堅調な海外需要のもとで、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる。』(今回)
『以上のような動きを背景に、わが国経済は、2011 年度前半は、下押し圧力が強い状態が続いた後、年度後半にかけては、輸出や生産がはっきりとした増加に転じるもとで、年度前半からの反動もあって、景気回復テンポが高まる可能性が高い。2012
年度入り後は、輸出・生産を起点とする所得・支出への波及メカニズムの働きがはっきりし始めるとともに、資本ストックの復元に向けた需要の増加も続くため、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる。』(前回)
・・・・・・つまり「潜在成長率を上回る成長が続く」が前回(半年前)と比較して1年ほど伸びましたね、というのが基本的な見通しです。単にこれ時間軸が伸びただけで見通しそのものはあまり変わっていない、というのが実にこうアレな結果でございます。
と、ここまでやったら時間が無くなってしまったので以下明日に続きますが、中々この後も味わいのある話をしていてオモロイのですけれども、肝心の結論の部分が何でそう強いのよ(下げていないのよ、という意味でふ)というのが微妙にアレな所であったりします、という話は明日も続きます。