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2011/03/31
お題「期末で多忙に付き本日はメモだけで勘弁してつかーせ」
色々とありましたが期末ですなあ。
○例によって市場メモ
昨日の国債買現先オペは貫禄の応札100億円という大いなる札割れとなっておりましたが、まあそんな感じでありますのでCPレートとかも低下してまさかの震災前水準状態に低下。まあ月曜のCP現先オペが札割れしてましたからそういう展開もありますわなあという所でしたけど。
その他金融の大手さんの新発3か月物CPレートが先週頭から毎日2bp位の勢いで低下という感じで進行しましてどう見ても震災前水準です本当にありがとうございましたというレートに低下するとは当座預金残高40兆円恐るべしという所ではございますが、そもそもCPよりもお洒落な展開になっているのはTBでして、期末要因とかもあるのですけれども3か月以内のTBについてはいい感じでスッカラカンモードとなってまして、多分ちゃんとしたロット(100とか500とか)買いに行こうとすると0.10%割れを買いに行かないと物出てこないんじゃないでしょうかという素敵な状態になっているものと思料される次第。
ま、日銀が資金供給攻撃で何とかできる所であります範囲に関しては震災による取引縮小の影響はだいぶ軽減されてきたという所(そらまあ震災直後はいつ停電になるか判らんとか交通機関がいつ止まるか判らんとかだったし、震災の翌週は結構頻繁に電話が通じにくくなっていたりしたから、取引がきちんと回らないリスクがあった訳で、取引そのものを控えるという動きがあったのは仕方ないですわな)かと思います。
で、まあ最近の動きになっている訳ですが、これが積極的にリスク取るようなリスクアペタイト復活によるものなのか、単に金が物理的に余って押し出されてきたという事なのかは正直言ってよー判らんあたくしなのでありました。
○これまたただのメモ(東電関連雑談)
昨日何気に話題になっていたのは引け際の東電株の動き。引け際までS安絶賛特別売り気配4000万株売り超過になっていたのが何か気配分さっくり買いが入ったでござるの巻だったとか。何か凄いニュースでもあったのかよと思ったのですが、特に引け後新たなネタも出ていませんでしたな。強いて言えばこの辺りのニュースでございましょうかね。
http://www.47news.jp/news/2011/03/post_20110330184601.html
東電に1兆9千億円融資 大手金融機関が緊急支援
みずほコーポレート銀行が早速昨日5000億円融資したとの事ですけれども、まあ2兆円規模の融資を期内に実行という話は先週から出ていた話ではございましたが、その後政治方面で余計な雑音を出す人たちがいたので確かにまあ普通に無担保融資がすんなり出るもんかいなという懸念もあったかもしれませんな。メガ4行3行(追記:みずほはCBだけの参加ですのでメガは3行の間違いでした)に信託、信金中金と揃い踏みでご登場という事でありまして、政府が何かすっかり浮き足立っている中で民間銀行の方が基幹インフラを支えましょうという動きをしているという時点で今の政治のテイタラクがよく示されているというものですなあという感じであります。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aQ8C1wqSdh.Q
自民:東電の事業継続で政府系金融活用に言及−災害対策提言(1)
まあさよですな。つーか普通に今回政策金融公庫の危機対応勘定発動スキームだと思うのですけれども、いつになったら出てくるのやらという感じで。
昨日東京新聞の特報面(ネットには出ないので引用不能)で東電の賠償がどうなるという話がありましたが、そこでみんなの党の渡辺代表が思いっきりドヤ顔で「フットワークのある政治家ならまず最初に東電の国有化を考える」とか、原発事故の収拾に全力を挙げるステージで何をお前は清算主義の話をしているんだというご発言をして頭がクラクラして参りました。
いやね、そういう話は当面の危機が収まってからすれば良いのでありまして、そらまあ株式市場はその辺りを意識して動くのは仕方ないですし、別にそれに対して変な気休めを言わなくても良いとは思いますが、何もそこに燃料を投下するような発言をドヤ顔でせんでも良いと思うのでありまして、何かこの人本当に金融担当大臣やっていたのかよとゆーか、金融担当大臣やってて何の勉強をしたのだと呆れる次第でございました。てかサブプライム問題が発生した以降に何故か日本の金融市場が妙に貰い事故状態になっていましたが、金融担当大臣この人だったよなあとか思うのでありまして、もうアホか馬鹿かと。
ということで当時の参考URLでも(^^)。
http://hongokucho.exblog.jp/9081324/
http://ensaigaisai.at.webry.info/200807/article_9.html
そういえばあたくしの書き物で引用するのブルームバーグにしていますけど、やはりこいつら毛唐資本だけに日本の危機は他人事的な発想があるんじゃねえのというようなニュースの書きっぷりが時折見られる(英文ニュースで先週酷いヘッドラインのニュースがあったが引用するのも業腹なので引用しない)のですが、昨日のこの記事なんかもそうですなあ。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=alK65DGd4fSE
東電株は3日連続ストップ安、原発や国有化懸念−賠償10兆円とも(1)
ここでネタにされているBOAメリルのレポートはあたくしも読んだのですけれども(ちゃんとしたリサーチレポートなので引用はしません)、当該レポートの趣旨ってここの記事にあるような危機煽り系では全く無くて、趣旨としては「解決に数年かかるような最悪シナリオだと賠償が増える可能性も」というような話で、極めて冷静な分析をしているレポートだったのですけれども、「最悪の場合」って所だけ切り取って報道するとかどう見てもブルームバーグのニュース報道姿勢ってこの状況を面白がって書いてるだろと思ってしまいますなあとゆー所ではありますな。URL紹介でブルームバーグ使うの止めようかなと思う今日この頃。
○これはまた凄い題名の講演で(フィラデルフィア連銀プロッサー総裁)
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2011/03-25-11_shadow-open-market-committee.pdf
題名見た瞬間に水道水盛大に吹いた(^^)。
ということでネタにしようと思ったら気がついたら時間が無いので明日に続くでござるの巻ですが、具体的にどういう出口政策を実施しようかという話をしております。で、その内容および手順ですが。
・出口政策の基本的なフレーム
(1)FF金利の引き上げおよびリザーブへの付利とディスカウントウィンドウを活用した金利コリドアによるFF金利のコントロール
(2)リザーブの「顕著な」縮小
(3)FEDの資産構成を「短期物」で「国債」中心の金融危機前の状態に戻す
(4)明示的なインフレターゲットの導入(失業率とのデュアルマンデートよりもより物価に重点を置くという意味)
・具体案
(1)利上げの実施とMBS償還再投資の停止
(2)(読んでいてイマイチ言いたい事が判らんかったが)利上げの追加によるバランスシートの縮小および保有資産の売却の検討
(3)資産の入れ替えを売却なども使って実施
という感じだったと思いますが、明日にでも続きを(汗)。
2011/03/30
お題「まあネタも無いので世間話でも」
ほうドル円82円台とな。
○末初現先オペ盛大に札割れとな
昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110329.htm
国債買現先 20,000 2011年3月31日 2011年4月1日
その結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110329.htm
国債買現先(3月31日スタート分) 604 604 0.100 0.100
2兆円のオファーに対して貫禄の600億円のオペ応札となりまして、末初の資金ニーズとかいう話ではありませんわなという素敵な状況に(^^)。
でまあ当座預金残高40兆円攻撃は引き続き継続しておりますのでコールレートの方もこの辺りの最近の実績をポチポチ叩くと判ると思うのですけれども、先週の水曜からコール加重平均は0.07%台に低下しております。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_m.htm
ただまあ現状ではディレクティブが0-0.10%となっておりますのでコールが0.07%になっても無問題というファンタスティックな状態になっておりますので別に下がって宜しいのですけれども、結果的には基金買入が拡大して量的緩和状態になるというのが一足先に来ましたよね、という状態になっておりますがな。
で、その量的緩和状態になってしまいますと、そもそも市場取引がシュリンクしやすくなる上に、今回の量的緩和状態においては預金ファシリティーという金利付きの量的緩和となっていますので、超過準備の保有コストが低くなっているっつーか市場取引するよりも預金ファシリティーに置いていた方がお得というお洒落な状態ですから、資金余っている人が預金ファシリティーの外側にいる人以外の場合は市場に資金を放出する必要がなくなります罠という傾向が更に強まりますな。
そーなりますと例えばGCで資金出しまひょかとなっても、預金ファシリティーを使うことが出来る人は純粋に資金運用の観点に立った場合は9bpだの9.5bpだのという資金を放出する意味が無い(オペ用担保のショートカバー以外でニーズが無くなる)ので市場取引そのものがヘロヘロになります。
・・・・・・・・となりますと市場機能がどうのこうのという論点からしますと現状ではまさに量的緩和の弊害状態ではあるのですけれども、まあ今回は震災非常時モードということでの対応でありますので、さすがに市場機能論がど〜のこ〜のという話が日銀から飛んでくるとは思えないのですけれども、ま〜現実問題として資金は対日銀でキャッチボール中になっていて、回っているという感じではないというのはその通り。
とは申しましても、じゃあ当座預金残高をホイホイ引いて通常運転に戻す事が出来るのかというとこれまた難しい面がありそうですし、何かこう足元の債券市場では特に長期から先の債券が日々頭重くてスティープっぽい動きをしているので、こーゆー時に下手に短期の所を引いて中短期金利を上昇させちゃうと債券市場全体の地合いを悪くしやすく、そうなって来ると日銀何やってるんだとか言われそうな悪寒が大変に強くするのでありまして、まー期初になってからの短国入札とかの動向やオペの札割れ具合とかを見ながら慎重に対処されることをあたくし的には願って止みません。つーかやはり震災前のように市場でバンバン回るということになるのは当分無理なんじゃないのと思ってますけどね。
○何でこう先の話が手前で出てくるのかね
昨日は読売新聞様がこのような報道を。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/business/20110329-567-OYT1T00042.html
東京電力の一時国有化案、政府内に浮上
2011年3月29日(火)03:03
そもそもは金曜の枝野官房長官の会見での賠償免責がどうのこうのという発言がきっかけなのですが、いやまあこの件はこの件で検討課題ではあると思うのですが、現状の東電周りの問題は福島原発をどうするかという話と、夏に向けての電力供給能力をどうするかという話、それから避難対象者の生活支援をどうするという話、そして補償をどうするとかいう話の具体的な内容が出るという辺りだと思うのですけれども、その具体的な話が出る前の時点で補償費用の負担問題だの国有化だのという話が出てくるというのは先走りにも程があると思うのですけど。何か「東電ケシカラン」という世間受け(いやまあケシカランのはケシカランですけどそういう話はまず喫緊の課題を片付けてからでしょという意味でありますので誤解なきように)方面に走ってしまうとは素敵な政治主導ですわと思ってしまいます。
何かね、先日来悪態ついている復興財源の話もそうなのですけれども(復興の話をする前に復旧の話が先じゃネーノとも思いますけど)、復興に対してやるべき事が何かという検討の前にいきなり財源論にワープするとか意味わかんないですし、政治方面が(統一地方選挙とかあって皆さんアピールしたいというのがあるのかもしれませんけど)妙に浮き足立って先の話が手前に出てくる状態になっているような気がするんですけどねえ。
という愚痴というか雑感でありました。
○久々に産経電波浴
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110317/fnc11031721570029-n1.htm
復興国債100兆円も可能 日本再生のチャンスに変えよ 編集委員 田村秀男
100兆円も可能とは大きく出ましたな。では以下『』内は上記URLから。
『日銀引き受けによる「復興国債」の発行は、場合によっては数十兆円規模でも十分可能だ。勤勉な日本国民が営々と築き上げてきた膨大な貯蓄が新規に創出される日銀資金を裏付けるので、円価値の信認を保てる。ちまちました規模でもたつくひまはない。』
『被災の規模や原子力発電依存のエネルギー・インフラの再構築を勘案すると、阪神・淡路大震災の復興対策をはるかに上回る財政資金需要が見込まれる。数兆円程度の規模に限定するなら日銀引き受けという非常手段をとる必要はない』
財政資金「需要」ってのが微妙に用語として違和感ありますが、まあ一応論者様も日銀引受は「非常手段」とはご認識のようで何よりです(^^)。
『例えば、戦後欧州復興のための「マーシャルプラン」の場合、米国が欧州の経済規模の2.2%を援助した。復興国債を10兆円発行しても日本の国内総生産(GDP)比でも2%強にとどまる。』
・・・・・・えーっと、第2次大戦で「本土が無傷だった」米国が欧州の復興、というのもありますけれども、米国の工業製品や農産物の巨大市場となる予定であり、軍事的な同盟国候補でもある欧州を国家戦略として支援しますというプランと比較する意味がよく判らない上に、「米国が欧州の経済規模の2.2%を援助」というのと復興国債のGDP比が2%強というのにどういう関連があって比較しておられるのかが低脳のあたくしには全く持って理解致しかねます。
『確かに、復興のためとはいえ、日銀がお札を発行して政府の財政資金を供給する政策はいかにも法外な非常手段だが、政府は国債の暴落懸念を引き起こさずに、100兆円を上限に国債の形で日銀から長期借り入れできるだけのゆとりがある。』
電波浴常連の皆様ですとお分かりと存じますが、この先生「お札を発行して」という表現が殊の外大好きのようでありますが、日銀が財政マネタイズするという事や、ただの市場への資金供給オペまで「お札を発行して」と表現するのは何なんでしょうかねえと不思議ではございますが、まあ何はともあれ100兆円の国債引受をしても国債が暴落しないという画期的な方法について先生のご高説を拝読したいものでございます。
『というのは、政府はこれまで国民の預貯金を100兆円借り上げて米国債を保有している。政府は必要なら、日銀に米国債を担保として差し出せばよい。米政府の了解は必要だが、米国債を売却する必要は全くないので、米金融市場の動揺を引き起こす恐れはない。米国の了解も取り付けられるはずだ。』(強調部分引用者)
・・・・・・??????????????
えーっとですな、「国民の預貯金を100兆円借り上げて米国債を保有している」とはどのような意味なのか不肖あたくし愚昧にして全く理解致しかねるのであります。まあ一億歩譲りますと、国民の預貯金を受け入れた銀行が国債を保有しており、その国債を原資として外国為替特別会計で米国債を保有している、という事なのではないかと無理無理解釈させていただきましょう。
ということで、そこの部分はまあ話が目出度く繋がったのでございますが、つまり政府が保有している米国債というのは、そもそも「借金した金で買ったもの」であるという事ではないかと思います。そうなりますと、田村秀男大先生様のやり方でファイナンスをするというのは「担保余力一杯一杯の全力住宅ローンで購入した住宅を担保に借金をしましょう」と言うのと同じ話で、その行為のどこがどうすると債務者の信用力の低下(=国債の暴落懸念)を起こさないのかが無知蒙昧のあたくしにとっては全く理解いたしかねるものであります。
つーかね、借金を例にするから例え話が穏当になるけどさ、この大先生の理論って「債権(または商品)を二重譲渡すれば金が倍額手に入りますよ」って言ってるのと意味は変わらないようにしか思えないという意味で何か物凄い行為の提案をしているようにしか読めないのですけれども、あたくしの理解ってどこか間違っておりますでしょうか??????
いやね、日銀の国債引受が未来永劫絶対ダメですよという話かというとあたくしも別にそうではないとは思っているのですが、「復興国債日銀引受」論を唱えている人たちの理屈が上記のようにあまりにも杜撰にも程がある上に、どっからどう見てもこの一発で済むとは思えないテイストを醸し出しており、歯止めが全然効きそうも無いという意味で全くもって信頼感が無い、というのがございますし、更に申し上げれば、やはり野放図な赤字国債乱発の歯止めとして市場消化というゲートウェイを一本かます(まあ財務省のこれまでの精緻な国債管理政策の成果もありまして、債券市場も何だかんだと言って消化能力がこれまた結構ありますけどね)というのは必要なんじゃないかな(財政インフレが起きて国民福祉的に誰も得しないでしょ)と思ってしまった今回の電波浴でございました。
2011/03/29
お題「今日は各種雑談とか雑感とかですいません」
今日は計画停電実施せずとの事ですが、世の中が安心して節電意欲が落ちてしまい、意外に電力消費が上がってしまうに百万ジンバブエドル。
○市場メモメモ
期末直前ということで相変わらず売買が低調な今日この頃でございますが、昨日は株価は下落するわ債券は弱いわドル円は円安に振れるわと、プチトリプル安ちっくな展開であたくしと致しましてはあまり気分のよろしいものではありませんでございました。
まー別に昨日の相場見て「トリプル安だ大変だ」という話でも無いっちゃあ無いのですけれども、どうも最近は株価が戻った方が何となく安心感が出るようでありまして、震災前の「株が上がれば債券安」という図式が必ずしも当てはまらないんじゃないの、というのも超目先的には感じられる今日この頃であります(まあ株が大きく戻るとそれはそれで債券の上値が重くなりますが)。
一方短期ちゃんの方は月末近辺ということでCP発行もそこそこありましたけれども、こちらのレートは更に落ち着いた感じでして、さすがに震災前のまんまという訳には参りませんが、水準としては震災前から1bp乗ったかというようなイメージの所まで戻ってきた感じです。また短国に関しては期末の残高調整やキャッシュ潰しのニーズもあって3か月以内のところは在庫がかなり無い状態となっておられるようで、この辺りに関しては日銀の資金大供給によって余った資金がこの辺の市場に回っていますなという所でござんしょ(ただし昨日も申し上げたように市場で資金が回っているのかというとそれは別問題)。昨日は基金短国買入と基金長国買入(長国と言っても残存1年から2年ですが)も実施されましたが、出来上がりベースのレートは短国で0.122/0.115、長国で0.201/0.200で、長国の方は2年ゾーンギリギリの所が入ったんでしょうなあというところですが、短国のほうはレートから見ると6か月ゾーン辺りまで入ってるかもな水準ですの。
つーことで何となく一頃のフリーズ状態からは改善しているとは思いますけれども、じゃあ市場の流動性が元に戻っているのかというとそこまで安心する話でも無いですし、まあ原発のニュースは相変わらずでありますし、ど〜も原発のニュースが出て株価が下がっているのを見ると相場見てても気分的にどよよ〜んとなるのでありまして、安心するにはまだ遠そうな感じではありますなあorz
○昨日の訂正であります(汗)
さて、昨日BOEの議事要旨ネタを書いたのですが、いつもよりも下調べ成分が不足していた事から(大汗)思いっきり勘違いした解釈をしていた部分がございましたので謹んでお詫びして訂正致したく。
箇所としては「賃金上昇とインフレ」の関係の所なのですが・・・・・
昨日こんなん書きました。
>『It was unlikely that any increase in inflation expectations would lead
to a sustained increase in inflation itself without also being associated
with a pickup in wage growth.』
>賃金の上昇を伴わない状況でインフレ期待が上昇するというのは不確かでしょとは確かにさいでございますわな。
・・・・・で、ここの部分でございますが、ちゃんと訳しますと、「賃金の上昇を伴わない場合、インフレ期待が上昇したとしても、インフレそのものの継続的上昇にはつながるかどうかは不確かである」という事でありまして、つまりは足元の物価上昇の継続がインフレ期待の上昇を招いたとしても、それが賃金の上昇を伴わない場合には継続的なインフレに繋がるかどうかが微妙、という話でありまして、昨日引用した1月以降の賃金改定の動向を更に確認していきたい、という議論に繋がるという話になると思われます。
つーことで、昨日のあたくしの解釈はインフレ期待とインフレがごっちゃになった説明になっておりましたので、謹んでお詫びして訂正すると共に、ご指摘いただきました読者様におかれましては誠に恐縮至極でございまして、改めて感謝を申し上げさせていただきたいと存じますです、はい。
○復興財源で今いきなり増税しちゃうの???
ブルームバーグニュースより。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920019&sid=aWSeFCOs1DqY
復興財源確保へ与野党内に増税論強まる−臨時に消費税引き上げ論も
『「一年だけの時限立法、復興だけに使う目的税として消費税を2%程度上げてはどうか。約5兆円の増収になる」−。大震災から2日後の13日、民主党税制改正プロジェクトチーム(PT)の中塚一宏副座長は自らのブログで震災復興税の創設を提唱した。』(上記URLより)
ついにニュースのソースが議員の個人ブログになるのかと思うと胸の熱い展開でもございますが、いやあの「1年だけ消費税引き上げ」とかやると事務対応で社会的に掛かるコストが面倒な事になるような気がするんで全くお勧めできないような気が直感的にするのですけれどもどうなんでしょうかねえ。
ただでなくさえ経済に下押し圧力が掛かって企業収益に下押し圧力が掛かりやすい状態なのに租税負担の上に事務負担によるコスト増まで押し付けるとか意味がさっぱり判らんでございますが、まあ記事の中身を読みますと実際には消費税じゃなくて他の税で実施するという話になると思うのですけれども、いずれにせよ今の時点で増税っつーのも何だかなあな感じはするのであります。
いやまあいずれ税収の引き上げで何とかするしか無い話ではあると思いますけれども、今いきなり増税という話になると景気への悪影響懸念とかでただでなくさえ原発関連で株価がアガランチ会長な地合いなのですから、株価がアガランチでマインドも悪化とかしそうな悪寒が。まあ正直言ってこういう時は株価が戻ってくれるとかなーり雰囲気が良くなると思う(世間様は兎も角少なくとも金融市場的には)のですけど、何かどうも暗い雰囲気になるのは控えた方が宜しいのではないかってえ気がしますけどねえ。
○だからと言って日銀引受をする必要があるとは思えないのだが・・・・
先週金曜ですがブルームバーグニュースから。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ahye07G6Aevs
与野党:復興財源で日銀に圧力、是清流の国債直接引き受け論浮上(1)
えーっと金曜は日銀引受論で月曜は増税論ってどっちなんですかと申し上げたい所ではございますけれども・・・・・・
『 「財源は日銀による20兆円の国債引き受けしかない。デフレの時に増税なんてできるわけがない」−。自民党の山本幸三衆院議員(元経済産業副大臣)は21日、ブルームバーグ・ニュースの電話インタビューで日銀引き受けの必要性を訴えた。』(上記URLより)
えーっと、復興財源を増税で賄うのが反対というのには同意なのですけれども、そもそも20兆円も財源必要なのか???というのが不思議でございますが、まあ20兆なら20兆でも良いですけど、通常の国債市中消化額から考えたらまあ20兆の増発が市場で受けられない訳じゃない(さすがに20兆だと需給にはそこそこ影響あるかもですけど)ですし、日銀引受をするとなると「市場が消化できないから日銀が引き受ける」という認識になって却って状況が悪化しますがねえ。
『こうした考え方に対し、山本氏は21日のインタビューで「日銀引き受けすれば円高対策にもなる。引き受けでインフレが懸念されるなら、それこそインフレターゲットと組み合わせて抑えればいい」と主張。』(上記URLより)
・・・・・えーっと、あからさまな財政マネタイズという強力な信認を落とす政策を実施している中で「私たちはインフレターゲットを実施するからそれを信じなさい」と言ってそれが信用されると考える方がおめでたいと思うのですけれども、何を考えているんでしょうかねえ。そんな器用なこと出来る訳無いじゃないと思うのですけれども、インフレターゲットで制御しろって結局日銀に丸投げにも程がある話で、政策論議として無責任にも程があると思いますがねえ。
でもって更に不思議なのはこの辺りの国会議員先生が国会に白川総裁を呼んで国債引受に関して説明を求めること。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aatwo3EPGHnk
日銀総裁:財政ファイナンスと取られると通貨の信認失う−国債購入
『3月25日(ブルームバーグ):日本銀行の白川方明総裁は25日午後、衆院財務金融委員会で、「どの中央銀行も、国債の買い入れが財政ファイナンスと受け取られると、通貨の信認が損なわれる」と述べた。』(上記URLより)
つーかさ、財政法で禁じられている事に関して日銀総裁を呼んで問い詰めたところで、逆に「日銀としてが国債引受が必要と考えている」とか総裁が発言したらそれこそ越権行為というか法の矩を越えた発言にも程がある訳で、そんな発言させようとするのが意味判らないんですけど。愛国無罪じゃないんだからさあ。
てかね、国債の日銀引受をどうするかという話って立法府マターであって、そんなに日銀引受やらせたいんでしたら議員立法でも何でも宜しいからちゃちゃっと国会で議決したら日銀は国会の議決どおりに引受を実施するだけの話だと思うのですが、どうも「引受でインフレが懸念されるならインフレターゲットをやればいい」などと仰せになっている所からしますと、この人たち責任を自分たちで取る気はサラサラ無くて、引受及びその後の展開に関して日銀に全部責任をおっかぶせる気がマンマンとしか思えませんな。
別にね、震災復興という明確な目的があって、かつ今後その発行が野放図に拡大する事が無い、という明確なビジョンが示されているのでしたらば、今の債券市場で単発10兆円(20兆円でも本質的な大問題が起きるとは思えないが少々インパクトあるかもしれませんな)程度の国債増発してもそれで長期金利が急上昇してエライコッチャとかなるとは到底思えない訳でして(逆に言えば復興名目で歯止め無く赤字国債の乱発が続くというような状態になったらオラシラネという事でもあります)、何で「増税か日銀引受か」という二項対立になるのかおじちゃんサパーリワカランチ会長でございまする。
あたくし的には子ども手当てだの高校無償化だのというのを削って予算組み替えを行った後、足りない分を国債増発で賄うすか無いんじゃないですか、と思うのですけれどもねえ。
・・・・・つーかね、不思議で仕方ないのですが、復興事業内容の話が出てくる前に何で財源話でこんなに盛り上がらないといけないのか(そもそも必要な事業がどの位あってその総額が幾らあるのか、という話から始まって財源との見合いで事業規模をどう調整するか、という話になるんじゃないの?????)と思う次第でありまして、まあそもそも復興国債日銀引受何ちゃらで話が妙にそっち方面で盛り上がったからだと思うのですが、何か不毛な二項対立ですなあと思う今日この頃でございまする。
で、先々週の産経電波浴でもやろうと思ったのですが、時間が無くなったのでまた明日(^^)。
2011/03/28
お題「市場雑感/物価上昇の中で景気下振れリスクを意識するBOE」
モーサテのゲストを見た瞬間にまた復興国債日銀引受かと思って公共放送の交通情報とお天気情報に注目材料を切り替えるあたくし。
#復興国債日銀引受に関してはまた改めて悪態を
○例によって市場雑談
金曜は基金買入枠拡大後の初のCP買切実施。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110325.htm
CP等買入(資産買入等基金) 3,000 2011年3月30日
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110325.htm
CP等買入(資産買入等基金) 5,860 3,000 0.043 0.056
出来上がりレートで言いますと平均レート0.156%で足切りレートが0.143%とゆーことで、まあ先週のCP発行レートから考えると妥当な水準かなあという感じではございます。
でまあそのCP市場ちゃんですけれども、金曜はスポットが29日ということで期末前の発行がまーそこそこあったのですけれども、発行レートの方は木曜から更に低下して震災前水準のちょっと上程度まで戻ったでござるの巻と誠に結構な傾向。一般債でもまあ短い所では高格付け物中心に買いも復活傾向にあるようで、とりあえず足元の供給大会および3月の国債償還の余剰資金、および日銀のCP関連のオペ実施も一応心理的に効いている・・・のかどうかは知らんですが、日銀も今回は市場機能でおじゃるとか言わないでマーケットの金詰まりが起きないように意識している、という姿勢を出しているというのはまー安心感を出す方向になっているかなあという所でしょうか。
あとまあとりあえず震災直後は何せ突発事態ですからどういう資金の動きが起きるかとかワケワカランというのもあったでしょうし、先々週はそれこそ株は大暴落するわ停電の影響がどうなるか判らんわというような状態でもありましたが、先週になって国債償還の資金が全部余剰となってきた事や、原発関連のニュースが落ち着いたような気がしてきた(気がするだけで野菜だの水道水だの海水だのという話が出たり、この週末は放射能漏れのロットがかなり大きいという話が出たりと碌なもんじゃないのですけれどもね)のもありましたが、まあ今回に関しては震災直後から日銀が金融市場の動揺というかシュリンクを止めるように迅速に動いたのは中々でございました。
つーてもまあ市場機能が戻っているのかと言いますと、単に足元では資金が絶賛大余剰になっているからというのもありますし、しかも間が悪いことに期末なので普通でもリスクを取る動きが無い訳ですから、こーゆー非常時に至っては益々リスクをとる人がいませんので、現実問題としては日銀のサポートが引くとエライコッチャになるんでしょうから別に元に戻っている訳ではないのですが、今後は期初になってどのくらいその辺の動きが戻ってくるのかですかな。
○BOE議事要旨から(続き)
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1103.pdf
・原油価格上昇の経済に与える影響について
『The international economy』のところでそういう話がありまして。
『There were several channels through which persistently higher oil prices
could affect the UK and global economies.』
ということで原油価格上昇の経済に与える影響に関してですけどね。
『First, dearer oil would add directly to consumer price inflation via
increases in the prices of fuel, energy and energy-intensive goods and
services, though whether that would lead to more generalised inflationary
pressure would depend on whether it caused employees to push for higher
pay increases.』
まずは原油価格の上昇が直接的に物価に影響を与えるという話ですな。
『Second, the downward adjustment to real incomes would be likely to depress
spending outside the oil-producing regions, dampening global growth and,
therefore, the prospects for UK exports.』
これは原油価格上昇が原油産出国と消費国の間の実質的な所得移転になるという論点で、その結論としてはグローバルの成長を阻害して英国の輸出の押し下げに繋がるという話。
『Third, volatile oil prices and persistent geopolitical tensions in oil-producing
regions added to the general sense of uncertainty over economic prospects,
and could adversely affect household and business confidence, as well as
discouraging the holding of risky assets among financial investors.』
原油価格の変動が大きかったり、産油国の政情不安が持続するという状況によって、経済の見通しに不確実性が高まり、その結果として家計や企業のコンフィデンスに悪影響を与え、リスク性資産への投資意欲に悪影響を与えますという話ですな。
『Finally, it was possible that higher oil prices would also be associated
with an adverse impact on global productive capacity, including in the
United Kingdom.』
原油価格の上昇はグローバルな生産能力に対してマイナスの影響を与えるとな。
ということで、どうも原油価格上昇は経済に対してマイナスと言う話が連呼(当たり前ちゃあ当たり前ですが)しておりますな。
・インフレ期待の上昇と賃金動向に関して
インフレに関する辺りではこの辺がほほうという感じでした。第23パラグラフから。
『It was unlikely that any increase in inflation expectations would lead
to a sustained increase in inflation itself without also being associated
with a pickup in wage growth.』
賃金の上昇を伴わない状況でインフレ期待が上昇するというのは不確かでしょとは確かにさいでございますわな。
『Whole-economy regular pay had increased by 2.3% in the three months to
December by comparison with a year earlier ? that growth rate had changed
little in recent months and remained below its pre-recession average. There
were some early indications that private sector wage settlements had increased
at the beginning of the year. But the coverage of the available data was
at this stage limited and heavily influenced by previously agreed multi-year
settlements, including those linked to actual inflation.』
ということで、英国の場合は1月に賃金改定があるようなのですが、現状ではその上昇程度とかはまだ一部しか見えていないようですな。
『It was likely that private sector settlements would increase during 2011,
in part reflecting a recovery in productivity, although they were likely
to stay significantly below the rate of inflation. Wage freezes in the
public sector were expected to weigh on pay growth in the economy as a
whole.』
ただまあ英国の賃金上昇は実際のインフレ率より低く、更に公的セクターにおける賃金上昇凍結が経済全体の賃金上昇率を高くしないでしょうという見通しになっています。
・・・・・ということですので、まあインフレ期待が賃金ルートから上昇していくという見通しになっていない、という事なのですが、よくよく考えてみたら実際のインフレ率よりも賃金上昇が低いという流れって国民厚生的にどうなのよという気もするのでありますけどどうなんでしょうかね。
・経済のダウンサイドリスクとアップサイドリスク
『The immediate policy decision』のところからですが、先日ネタにした以外の部分で経済のダウンサイドリスクとアップサイドリスクの部分を。
『Inflation had risen to well above the 2% target as a consequence of higher
energy and other commodity prices, increased VAT and the past depreciation
of sterling. The Committee’s judgment remained that inflation was likely
to fall back in the medium term, as the impact of those factors dissipated
and as a margin of spare economic capacity persisted. For some time, the
Committee had set monetary policy so as to balance substantial opposing
risks to that medium-term outlook for inflation.』
ということでまずダウンサイドから。
『The key downside risk was that continued weakness in activity, relative
to the supply capacity of the economy, could cause inflation to fall below
the target in the medium term, once the impact of the factors temporarily
raising it had faded.』
いつもの経済の余剰が経済のダウンサイドリスクになるという話ですな。
『It was too early to assess the extent to which activity had recovered
since the slowdown in growth at the end of 2010. Evidence from the latest
business surveys on output and employment prospects pointed to some recovery.』
でまあ4Qの経済が落ちているというのがやはりそのダウンサイドへの懸念を高めたという感じなんでしょうな。
『But it was unclear whether demand growth would be sufficient to erode
spare supply capacity as the economy underwent a necessary rebalancing
away from public and private consumption and towards net trade and investment.』
『On the one hand, there were some signs that the improvement in the net
trade position that had been expected following sterling’s depreciation
was becoming more apparent. But on the other, the most recent concurrent
indicators of consumer spending and sentiment had deteriorated sharply.
And it was possible that they presaged a more sustained period of weak
spending growth, perhaps as the impacts of the fiscal consolidation and
near-term above-target inflation on household finances became more readily
apparent. The net impact of these two forces on overall demand growth remained
a key uncertainty.』
で、まあポンド下落による輸出への好影響というのもありますが、一方で足元での物価上昇や財政再建による消費支出やセンチメントへの影響もあり、これらの影響がどちらに出てくるのかというのを見極めたいと。
一歩アップサイドの方ですが。
『On the upside, the period of elevated inflation could persist for longer
than the Committee expected. That might happen if the expected persistence
of inflation above the target in the near term caused expectations of higher
future inflation to become ingrained, leading businesses and households
to set higher prices and wages.』
こちらもいつもの話ですが、インフレの数値が高い状態が続き、インフレ期待の上昇や企業の価格設定や賃金の上昇などに繋がるとインフレが加速する話ですな。
『Inflation had risen to 4% in January, and would very likely rise further
over the coming months: there was a significant risk that inflation would
exceed 5% in the near term. How much of the increase in January related
to the pass-through of the increase in VAT was as yet unclear. Information
on inflation expectations from household surveys had been mixed on the
month, while measures derived from financial markets had changed little.
And, while there were some signs that private sector wage settlements had
picked up at the beginning of the year, they provided only very tentative
evidence of higher pay pressures.』
『Inflation might also persist above the target if externally generated
inflation pressures continued and were not offset by exchange rate movements,
or if there were further pass-through from the past depreciation of sterling.』
この辺は前月と同じ話をしていますが、現状では1月の賃金改定がそこまで大きくなっていないようですし、サーベイデータや市場データからのインフレ期待上昇はそこまででもなさそうな感じですな。
つーことで、物価は上昇基調なのですが、景気に関しては先行きの下振れリスクが拡大しているというイメージ(2月、3月と先行き見通しの話が徐々にダウンサイドリスク警戒になっている感じがします)となっていて、益々やることが難しくなっているBOEの政策はどうするんでしょという感じでありまする。
2011/03/25
お題「宮尾審議委員会見は慎重なトーン/市場雑談:短期ゾーンの雰囲気好転かな/FEDネタ少々」
東京ドームの4月野球はなくなりましたか。別に野球をやるなと言ってる訳ではなくて、野外で日中にやるなどの方法があるのに何で東京ドームでやらないかんのよ、というのが批判されるポイントだったのに何でああ読売は頑強に抵抗したんでしょ(だから別に野外の球場でデーゲームなら今日開幕だって良いとおもうのですけどねえ)。
○宮尾さんの会見はかなり言葉を注意して慎重ですな
宮尾審議委員の記者会見。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1103d.pdf
35分の会見の割には6ページしかないというのはかなり言葉に注意したということですかな、よく判らんが。
・大分県における今般の震災の影響について
『今回の震災の影響を受けて、短期的には生産活動が低下することが懸念されますが、ここ大分県でも大手の出先工場が多く立地しており、そうした先、あるいは地場下請け企業を含めて同様に生産活動が低下する可能性が高いといった声や、足許そうした動きが既にみられているといったご意見が聞かれました。あるいは、観光業で相当数のキャンセルが出ているといった話や、今後復興需要が見込まれる建設資材について、既に当地においても逼迫が若干みられるといった声が聞かれました。』
ほうほうなるほど。まあよく指摘されていますが、サプライチェーンの毀損が結構大きな問題になっているという問題と、マインドの悪化という話ですな。
・供給ショックに関して
『(問) 2点お伺いします。1点目は、今回の震災の影響で物流インフラがかなり打撃を受けたほか、東京電力の原子力発電所も今後使えなくなるのではないかとの懸念もあります。電力供給が経済活動のボトルネックになり、当面経済の下押しが危惧されることや、物資が逼迫することで、場合によっては企業・家計のインフレ期待が高まる可能性があるかどうか、ご所見をお伺いします。(2点目は後ほど引用します)』
『(答) 電力供給に関する懸念に関しましては、現在、関係各位が最善の努力を続けて復旧に当たっておられるところです。もちろん、被災地域を含め、広範囲で電力供給に対する懸念はあるわけですが、それが経済活動に悪い影響をもたらさないように最善の措置が鋭意検討され、対応が進めていかれると認識しています。
物資の逼迫については、先程の金融経済懇談会の中で、大分県においても既に建設資材の逼迫が若干観察されるとの指摘があったことを紹介しましたが、その影響についても細心の注意をもって点検していきたいと思います。』
という感じで、まあ確かに足元の状態で決め打ち出来ないですから「慎重に点検していく」っつー答えしかできませんわなという所ですが、今回の会見はこんな感じで「影響については注意深く点検します」系の応答が多かったので、そういう意味ではネタなし会見という感じでありましたorz
・今回の追加緩和に関して、更に今後の施策に関して
『(問) 再び震災関連の質問ですが、先行き1〜2か月ですと震災の影響が含まれない経済指標が多く、実際に震災の影響を含んだ経済指標が発表されるまでには暫く時間がかかると思います。一方で本日の挨拶の中でも述べられたとおり、景気の下振れや下押し、マインドの慎重化といった影響が懸念されます。こういう状況であればこそ、中央銀行として積極的な行動──資産の買入れの実施等──により、マインドの悪化を防ぐことができると指摘しておられますが、こうした中央銀行による早めの対応、政策の発動の必要性に関して、現状ではどのようにお考えでしょうか。』
『(答) ご質問にありますように、まさに中央銀行による早めの対応が必要であると考え、先週の金融政策決定会合では、通常の2日間の日程を1日に短縮して、5兆円の基金の増額を決定しました。企業や家計のマインド悪化が懸念され、短期的に生産活動の低下が見込まれる中で、人々のマインド悪化やリスク回避姿勢の高まりが経済に悪影響を及ぼすことを未然に防ぐという観点から、より一段の金融緩和の強化を決定したところです。こうした姿勢を示すことはきわめて重要かつ適切であると判断し、今回の措置を決定した次第です。』
では基金買入の社債とCPをバンバン実行してください、今日でも月曜でも良いですが、受渡ベースで期内に間に合う買入を前倒しで実施すると大変に宜しいかと思いますけど。
という悪態は兎も角として(^^)、これは中々良い質問。
『(問) 2点お伺いします。1つ目に、阪神・淡路大震災の際には、日本銀行が被災地の銀行に政策金利で貸出を行うという事例があったのですが、今後、同様の措置を実施する可能性があるのかという点についてお伺いします。(2点目は割愛)』
・・・・・これはまたマニアックな、と思って日銀のページを調べていたらこんなコーナーが。
http://www.boj.or.jp/finsys/msfs/
信用秩序維持に資するための資金供給
で、その一番下の辺りに復興支援貸出に関わるリリースがありますが、何故か肝心の当初の復興支援貸出に関するリリースはないのですが、こんなんありました(^^)。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_1996/giji96003.htm/
阪神・淡路大震災復興支援貸出の実行状況
『(答) まず1点目ですが、阪神・淡路大震災の際は、被災地の復興を目的に融資を行う民間金融機関の活動を支援するために、被災地域に営業店を有する金融機関のうち、希望する先に対して通常の日本銀行貸出とは別の枠組みを設けて貸出を実施しました。その措置は、被災地域の復興活動を着実に進めていくために、民間金融機関から復興資金の供給が円滑に行われることが重要となる局面におきまして、金融機関などからの要望を踏まえ、実施したものです。今回の東北地方太平洋沖地震におきましては、現在、金融機関の現金手当への対応などを含めて、金融機能の維持、あるいは資金決済の円滑の確保を図ることに全力を挙げて取り組んでいる最中です。今後、被災地域の復興活動を着実に進める観点から、とり得る政策対応についても真剣に検討していきたいと考えています。先行きの経済・物価動向に関して注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適切な措置をとっていきたいと考えています。』
まあ現状では復興云々の前に被災地における現送等の業務や、資金繰りの間接支援という話になるかと思いますが、確かに今後は復興支援貸出形式での金融機関向け貸出という話もありかも知れませんな。なるほどなるほど。
・国債引受に関して
さっき引用した質問の続きの所から。
『(問) (前半割愛)もう1点は、将来の復興財源に関して、日本銀行による国債引受けを巡る議論もありますが、これに対するご意見をお伺いします。』
『(答)2点目の、復興国債が発行された際の日本銀行の対応に関しましては、私からのコメントは差し控えたいと思います。そのうえで、中央銀行による国債引受けに関する一般論としてお答えしますと、この点の法的な取り扱いとして、欧州では明示的に禁止されているほか、新興国を含め世界の多くの国で、中央銀行による国債引受けは認められていません。わが国でも、財政法5条本則で、日本銀行による国債引受けを禁じています。これは、一旦中央銀行による国債引受けが始まると、初めは問題なくともやがて通貨増発に歯止めが効かなくなり、激しいインフレを招き、国民生活や経済活動に大きな打撃を与えるとの過去の歴史の教訓を踏まえたものと認識しています。』
さよですな。
『こうした基本原則が世界的に確立されている中で、日本銀行による国債引受けが万が一行われるということになると、通貨への信認自体を毀損することになります。通貨への信認は、わが国の金融経済にとってきわめて重要なインフラの一角をなすものと考えていますので、今後とも、国際的にも国内的にも、通貨への信認を維持して、金融面からのインフラをしっかりと維持することがきわめて重要だと考えています。』
まあそういう答えになりますかな。で、後の方で更に突っ込まれたときの答えがこれまた慎重なのは何とも(^^)。
『(問) 先程、万一、日本銀行によって国債の引受けが行われると、通貨の信認が毀損されるおそれがあるというお話をお伺いしました。一般論で結構なのですが、日本銀行による国債の引受けは財政法5条で禁止されていますが、同じ財政法の条項には、但し書きとして「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない」と明記されています。それを踏まえた上で、先程国債引受けは通貨の信認が毀損されるとおっしゃったわけですが、それは宮尾審議委員が国債引受けについては明確に反対されているという理解でよいのでしょうか。』
『(答) 復興国債に関するコメント、あるいは日本銀行による国債の引受けに関するコメントにつきましては、先程申し上げた通り、差し控えたいと考えております。あくまでも一般論として、財政法の本則で国債引受けが禁じられていることは、やはり重要な点かと思います。中央銀行として、通貨の信認を維持していくということはきわめて重要であると考えていることを重ねて申し上げたいと思います。』
まあ答えを避けましたということですね、わかります。
・ちょっとだけ脱線
で、ここは宮尾審議委員の質疑応答を読むコーナーなのであたくしの愚意見など余計だと仰せになるかもしれませんが敢えてあたくしの愚見を申し上げますと、先日も申し上げましたように、現在の市場環境で「単発10兆円の国債増発」が捌けないという状況では全くございません(多少金利が上昇するかも知れませんが)ので、そのような状況下で敢えて日銀引受を行うという必然性は無く、うっかり日銀引受やって海外勢辺りに絶好のアタックチャンスを与えて財政破綻シナリオを提供するリスクをわざわざ取る必要は乏しいのではないか、(ただでなくさえ財政のサステイナビリティがといわれる中でシンボリックな意味も大きい中央銀行引受を実施したら、市場金利が急上昇していくリスクがありますわなという話ですな)というのが市場の片隅でおこぼれを頂戴しながら生きておりますあたくしの市場参加者目線(だとあたくが勝手に思っているだけならスイマセン)な見方でありまする。
国債発行市場で大きな問題なく消化が可能と見られるものをわざわざ日銀引受で発行せよという議論に関しては、まあ率直に申し上げて論者の方々の目的が国債発行じゃなくて日銀に国債引受をやらせる事なんじゃないですかと反問させていただきたくなる訳ですよ。
増税で対応というのも復興前に景気が腰折れしちゃうリスクを背負ってまで勝負する意味が今の環境下であるとも思えませんから、復興財源に関しては予算の組み替えなども一部入れるも、とりあえずは赤字国債で出して、復興が軌道に乗って来た所から財政健全化に向けた取り組みをどうしましょ、という流れで対応するのが現実的な所なんじゃないですかねえと思うのでして、今すぐの増税も復興国債日銀引受もちょっとどうなのよと思う所ではございます(子ども手当てとか高校無償化とか何とか削減できないのかねえとも思いますが)。
○CP市場など落ち着くでござるの巻のようで
昨日の市場ちゃんですが、2年国債入札もまあ順調(ちょっと前場は押してみましたが、結局平均は前場引けのオファーサイドで決まってその後セカンダリーも順調)でしたし、1年ゾーンとかも日本相互証券さんの引けベースでも軒並み1毛強という状況となっておりまして(実力はもうちょっと強いと思うが)、震災明けの月曜にはFTQ的な買いで強くしたものをその後FTQじゃなくてキャッシュ選好の間違いではないでしょうか的な短期ゾーンズタボロモードにして一気に雰囲気を悪くした流れがやっと反転した感じを漂わせて世のため人のためには誠に結構な展開。
・・・・とは言いましても原発とか停電とか余震とかでコロッと変わるリスクは常にあるのですけど、まあそれはそれと致しまして。
んでもって前の日も書きましたけど、足元で資金動向が見えてきた感じの人たちが取りあえず短期部分の余資を単純に抱え込んで日銀当座預金に放り込むだけではない動き的なものも少々は出ているような気もせんでもないというテイストでありまして、昨日はスポットが28日スタートになりますのでそこそこCPの発行もあって、そのレートも前日に続いて低下傾向。一番雰囲気が悪かったのが概ね先週の水曜〜金曜あたり(CP入札は基本的に前場に行われるので、昼以降の相場変動は翌日以降に影響してくる)だったかなあと思いますが、その辺りから比較すると5bp以上は状況が改善しているイメージでござんして、まあ世のため人のためには大変に宜しい事ではないかという感じではございます。
ということで、超短期の所はややマシになってきているような感じ(まあそうは言いましてもリスクアペタイトが完全復活している訳ではないのでCPなどのクレジット物は震災前水準に戻っている訳ではない)ですし、短国に至っては業者のショートカバーでの出合いとは言え新発3か月で0.10%割れとか出合ったりする有様(いやまあそれは限界的な話で実際に投資家がそこまで買うのは特殊な事情が無いと進みませんけど)となっております罠。
ただまあ一方で例によって例の如く債券先物の売買高は低調ですし、中長期債の方は相変わらず流動性が低い的な相場展開を示しているようで、その辺り両方見ていると、温度差を思いっきり感じると同時に、さてこの温度差どっちに収斂されるのでしょ、というのも気になるところではございます。
○FOMC関連ざます
・バーナンキ議長が定例的に記者会見を実施とな
バーナンキが年に4回記者会見をするそうです。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110324a.htm
『Chairman Ben S. Bernanke will hold press briefings four times per year
to present the Federal Open Market Committee's current economic projections
and to provide additional context for the FOMC's policy decisions.』
ほうほう。
『In 2011, the Chairman's press briefings will be held at 2:15 p.m. following
FOMC decisions scheduled on April 27, June 22 and November 2. The briefings
will be broadcast live on the Federal Reserve's website. For these meetings,
the FOMC statement is expected to be released at around 12:30 p.m., one
hour and forty-five minutes earlier than for other FOMC meetings.』
今年は4月、6月、11月のFOMC後に説明大会ということですから、次回はQE2を今後どうするのか、その次は実際の今後の運営に関して、というような流れになりますかそうですか。
『The introduction of regular press briefings is intended to further enhance
the clarity and timeliness of the Federal Reserve's monetary policy communication.
The Federal Reserve will continue to review its communications practices
in the interest of ensuring accountability and increasing public understanding.』
まあ現状のように連銀幹部の皆様がフリーダム発言をする中でバーナンキ議長が会見するという事ですが、フリーダム発言も政策論議という意味では大事ではありますけれども、うまく仕切らないとノイズ増幅になる悪寒もしますのでお手並み拝見という所ですな。
・3月FOMC声明文ネタ
声明文が出た時に一応メモしましたが再度整理ね。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110315a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110126a.htm(前回)
今回の声明文の特徴としては「景気に関する部分を大幅に上方修正」「金融政策に関する部分は見事に同一文」というコントラストかなあなどと思うのですた。
ということで第1パラグラフと第2パラグラフだけネタにするのであった。
第1パラグラフ
『Information received since the Federal Open Market Committee met in January
suggests that the economic recovery is on a firmer footing, and overall
conditions in the labor market appear to be improving gradually. 』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in December
confirms that the economic recovery is continuing, though at a rate that
has been insufficient to bring about a significant improvement in labor
market conditions.』(前回)
回復のトーンを強めて、かつ労働市場の改善に関しても従来の「不十分な改善」からトーンを強めています罠。
『Household spending and business investment in equipment and software
continue to expand. However, investment in nonresidential structures is
still weak, and the housing sector continues to be depressed.』(今回)
『Growth in household spending picked up late last year, but remains constrained
by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight
credit. Business spending on equipment and software is rising, while investment
in nonresidential structures is still weak. Employers remain reluctant
to add to payrolls. The housing sector continues to be depressed.』(前回)
この辺の説明部分は前回対比あっさり味になっていますが、基本的には同じ話をしているように読めますがどうでしょ。
『Commodity prices have risen significantly since the summer, and concerns
about global supplies of crude oil have contributed to a sharp run-up in
oil prices in recent weeks. Nonetheless, longer-term inflation expectations
have remained stable, and measures of underlying inflation have been subdued.』(今回)
『Although commodity prices have risen, longer-term inflation expectations
have remained stable, and measures of underlying inflation have been trending
downward.』(前回)
逆に今回はインフレに関する説明が詳しくなりました。で、その中であたくしがほほーと思ったのは、従来「基調的なインフレが下方トレンドを継続している」という話をしていたのが、今回抜けた所ですかな。もちろん商品価格の上昇という部分を詳しく行っているのもポイント。
第2パラグラフ。
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster
maximum employment and price stability. Currently, the unemployment rate
remains elevated, and measures of underlying inflation continue to be somewhat
low, relative to levels that the Committee judges to be consistent, over
the longer run, with its dual mandate.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster
maximum employment and price stability. Currently, the unemployment rate
is elevated, and measures of underlying inflation are somewhat low, relative
to levels that the Committee judges to be consistent, over the longer run,
with its dual mandate.』(前回)
失業とか基調的インフレに関して前回と今回が使っている動詞が違う(前回がbe動詞だったのですが今回は「remain」とか「continue
to」になっていますわな)のが違いですかにゃ。
『The recent increases in the prices of energy and other commodities are
currently putting upward pressure on inflation. The Committee expects these
effects to be transitory, but it will pay close attention to the evolution
of inflation and inflation expectations. The Committee continues to anticipate
a gradual return to higher levels of resource utilization in a context
of price stability. 』(今回)
『Although the Committee anticipates a gradual return to higher levels
of resource utilization in a context of price stability, progress toward
its objectives has been disappointingly slow.』(前回)
今般のエネルギー等の価格上昇による影響が一時的ですよ、という話をしている部分が追加されましたが、今回はしらっと経済の改善に向けた動きが「disappointingly
slow」という部分が抜けたのであります。
・・・・・ということで、経済に関する部分がかなーり改善してましたな、というメモでした。
2011/03/24
お題「3MTB入札とか/宮尾審議委員講演/BOEの3月議事要旨クイックメモ」
あたくしは年寄りなので職業野球大好きさんですけれども、あの超越電気食い虫の東京ドームで野球やらんでも野外の球場で電光掲示板極力使わないで昼間に試合すれば良いじゃないかと思うのですけどね。駒沢公園の野球場使えば往年の東映フライヤーズとか胸の熱い展開が^^(今の球場は往年の東映が使っていた球場とは別)。まあ別によみうりランドのジャイアンツ球場でデーゲームだってエエンチャウノと思いますけどねえ・・・・・
○短期周りの市場雑感
昨日は即日オペ無しとなりました。まあ前日の朝一恒例の即日オペが応札1300億円しか無くて、更に一日終わってみたらコールの加重平均が0.084%と順調に低下していましたし、22日の国債大量償還によって資金は益々潤沢になったし、という所で朝からコールの気配7bp近辺とかでしたから即日スルーの巻。
でですな、その後のスポネ国債買現先オペもいい感じで札が少なくて、前日はしっかり入っていた応札(前日は2兆円のオファーに対して20598億円の応札)だったのですが、今日はあっさり味で9417億円の応札(なので札割れ)となりまして、こちらも資金が充足してきた感じを示すのでありました。
・・・・という事で、前日の2か月TB入札は0.12%乗せの水準でやっていた短国ちゃんなのですが、3か月TBの入札結果はご覧の通り。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul230323.htm
(3)募入最低価格 99円97銭0厘5毛
(募入最高利回り) (0.1183%)
(5)募入平均価格 99円97銭1厘6毛
(募入平均利回り ) (0.1139%)
・・・・・うーむ、これだと震災前の水準と変わらないのだが(^^)、などと思っていたら、やはり人によっては予想以上に強かった(まあ2社程どどーんと落札されて居たようですのでその人たちに取っては予想通りですが^^)という結果だったようで、セカンダリーではショートカバーも入って0.085%をマークしたとかいう報道がございましたわな、オソロシス。
昨日は前週までの資金動向読みにくい状況から、原発関連ニュースもやや落ち着きを取り戻した(と言いつつ昨日の午後に東京の水がどうしたこうしたという話が出てきましたが・・・)事や、22日の国債大量償還(およびオペ残高の拡大)によって目先の資金が見えてきて、今度は資金が余ってきましたなモードになった事などから、やっと資金運用というか資金潰しの動きが顕在化してきた、という所なのでしょうかね、よー知らんが。
それから、TBに関しては期末期初の関係上昨日の入札(発行日は来週月曜)が年度内最後の入札でして、短めの短国で期内の資金を潰すということになりますと、ロットで確保するタイミングが昨日の新発が最後という事になりますので、まあ資金使えますねという人の動きが出てきて、そもそも資金が無い訳でなく、リスク回避(株価だの為替だの原発問題だのに起因する)で固まっていたというのもありますので、凍っていた土がいきなり溶けて泥濘状態になってしまいましたなという後付講釈になるのでありました、って後付の話をしても意味は無いですかそうですか。
CP発行レートちゃんも同じような感じで低下したみたいで、情報ベンダーのニュースによると4bp低下とかいう話ですが、体感的には3bp前後下がったという感じではないかと思いますが、まあこの辺は色々とよーわからんすが、とにもかくにも買いが入ってレートが下がりました(と言いましてもこっちは震災前の水準から見たらまだまだレートは高い状態ではあります)という事で。
てな訳で、とりあえず昨日の市場状況(ただし短期周りの一部)を見ますと、震災後起きていた「皆さん揃ってまずは資金を抱え込み(「資金の買い溜め」と言った方が適切かな^^)」という動きが一巡し、とりあえず落ち着いて来たので出せるものは出しますか的な感じになってきているような気もしますが、さりとてGCが市場でバンバン出合っているとかいう訳でもない(今はそもそもGCで取らなくてもオペで取れているというのもありますけれども)ですし、まあこれは短期とは違いますけど、債券市場でも先物の出来高とかまだ少なめではございますので、平常運転からはまだ距離のある話だとは思いますが、とりあえず目先のストレスはやや緩和されたのではないでしょうか、と勝手に思っていますけれども実際どうなんでしょうかね。
○宮尾審議委員講演から
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110323a1.pdf
講演の頭の方から適当にピックアップしてみますね。
・震災の影響について(金融システム・金融市場)
『日本銀行も、地震発生直後に「災害対策本部」を立ち上げて日銀ネットの正常稼働を確認するなど、日本銀行自身の業務継続体制の確保を図っています。支店等を通じて、土日を問わず、被災地への現金供給を行うなどの対応を図ったほか(東北地方の支店・事務所を通じた関係地域への現金供給額は12(土)・13
日(日)が550 億円、14〜18 日が2,560 億円)、その後の電力供給を巡る計画停電に対しても、一部支店では自家発電を利用して業務を継続するなど、決済が滞ることのないよう万全を期しています。』
日銀が何で地方支店持っているんだとかいうような批判を時々見たりするのでありますけれども、日銀って別に金融政策やるだけが仕事なのではなく、それよりも何よりも決済システムや現送などの公共インフラ維持を行っている方に多くのリソースを割いている訳ですよね。つーか金融政策だの金融調節だのというような事をしている人の方がマイナーなんじゃないかという気がするんですけど。
『また、日銀ネットは、日本の決済の根幹をなすインフラとして、電力の安定供給の対象として頂いています。被災地においては、現金需要が見込まれるほか、傷んだ通貨の引き換えなど、さまざまな金融上のニーズが出てくるものと思いますので、日本銀行として、被災地の支援には全力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。こうした積極的な対応により、今後も、日銀ネットの運行や現金の供給体制を引き続き確実なものとし、わが国決済システム全体の安定に全力を尽くして参りたいと考えています。』
という事でまあインフラ産業としての日銀の話はさておきまして、金融市場に関する説明はこんな感じです。
『この間、金融市場の動向をみると、短期金融市場は、週明けの14 日(月)朝から資金の出し手が資金放出を控える動きが広がり、コール市場での取引が成立しない状況がみられたことから、昨年(2010
年)5 月以来の即日オペに踏み切るとともに、』
と、まあここまでは良いのですが・・・・・
『1 週間で82.4 兆円もの資金をオファーし(14 日:21.8 兆円、15日:20.0 兆円、16
日:13.8 兆円、17 日:15.6 兆円、18 日:11.15 兆円)、そのうち57.8 兆円を市場に供給しました(14
日:15.1 兆円、15 日:14.95 兆円、16 日:8.7 兆円、17 日:10.3 兆円、18
日:8.7 兆円)。』
いやあのそれ即日オペの分は累積カウントしたら過大評価になっちゃうから。
まあ「沢山供給しました」というのをアピールしたいのは判りますし、当座預金残高推移とかの話をしても説明しにくいと言うのは判るのですけれども、毎日のオファー額に関してその期間を無視して一緒くたに説明するのって説明としてはペテンの香りが漂うものでありまして、やはりメディアの方々を初めとして一般ピープルに説明する時に、そういうインパクト重視で説明がペテン的になるのはあまり宜しくないのではないかと存じますけどどうでしょうかねえ。
要はですな、ペテン説明で煙に巻く攻撃をやっていると、メディアなど受け手のリテラシーが向上しないので、肝心なときにミスリードな報道をされてしまって盛大なブーメランになるという惧れがある訳でございまして、やはりそこはあまりペテン成分にハッタリをかましたような話の持って行き方は避けたほうが無難ではないかと思いますけどねえ。
『この結果、オーバーナイト・コール市場は足元では比較的落ち着いて推移しています。』
まあここはさすがに素人さん向きだからこういう説明になるのかなあとはおもいますが、本当は追加緩和をCE的に実施したのですから、この先の市場に関連する話を市場動向として詳しく説明して、「これに対処するように追加緩和を行ったんです」という話をするのが吉のような気もせんでもない(相手によっては)。
『これに対し、CPや社債市場では、投資家のリスク回避姿勢が強く、CP・社債を引き受ける動きが細り、発行されたレートが大幅に上昇するなどの動きがみられました。足元でも、発行金利は高めで推移しておりますが、この背景として、地震の影響に加え、長引く被災原発の問題が少なからず影響しているとみられます。』
この後で株式市場などの動向の説明があって、その後に震災の経済に与える影響についての説明が入り、その次に今回の追加緩和の説明があるのですけれども、あたくしの理解では今回の追加緩和はより「信用緩和」の意味合いを持った政策対応と思っていまして、そういう意味では文脈として「震災によって起きている市場の動揺を抑制する」というのをもう少しアピールした方がより判り易いですし、そういう説明をすれば決定会合後の総裁会見で質問が出たような「規模がしょぼい」的な質問もあまり出ない(QEとして見たら5兆追加だとしょぼく見えるけれども、今回はCEなのですから、という事ね)のではなかったか何てこの辺を読んでいて思いました。
ということで最初から順番にといいつつあっさり順不同になりますが、今回の政策対応に関する説明部分から。
『以上のような状況を踏まえ、日本銀行としては、今回の地震が当面のわが国の経済・金融情勢に与える影響を点検し、金融政策運営方針を速やかに公表していくことが、国民心理の安定や金融資本市場の安定を確保する上で重要であると認識しました。(一部割愛)特に、企業マインドの悪化や金融市場におけるリスク回避姿勢の高まりが実体経済に悪影響を与えることを未然に防止することが、現在、最も適切な政策対応と考えられることから、リスク性資産を中心に資産買入れ等基金を5
兆円程度増額し、40 兆円程度とすることとしました。』
まあそうなんですが、この辺の説明はもうちょっとCEというのを前面に出すのも一つのやり方だったかも知れないな、と後講釈ながら思いましたです。
・震災の影響について(実体経済)
前後しますが震災の実体経済への影響に関しては、まあ当然ながらかなり厳しい認識を示しています。
『こうした中で、今後の影響について考えてみると、定性的ながら3点程度指摘することができると思います。』
『第一に、当面は、生産設備など供給面への被害の影響が大きく現われ、生産活動や物流を中心に、経済活動にマイナスの影響が及ぶとみられます。被災地域には自動車や電子デバイス関連などの部品・部材メーカーが数多く存在するため、一時的とはいえ、国内外のサプライチェーンの寸断が余儀なくされています。』
『第二に、先行きの不透明感が、家計や企業のマインド悪化を通じて、経済活動を下押しする惧れがあります。』
『そして第三に、中期的には、復興に向けた様々な需要が出てくるとみられますが、タイミングやどの程度の規模となるかは現時点で不確実であり、見通しにくいという点です。』
ということで、まあ厳しい見方です。
『現時点で、今回の地震の影響を定量的に把握することは困難ですが、巨大な津波を伴った過去最大規模の地震であり、ライフラインや物流インフラの復旧に時間を要しているのが実情です。そういった点を鑑みると、少なくとも供給面から経済活動が下押しされる程度は、たとえば16
年前の阪神・淡路大震災時に比べても大きく、場合によっては長期化する可能性には、十分注意しておく必要があると考えています。』
ちなみに、この後に震災前での情勢判断を中心に、ということで経済物価情勢と金融政策に関する説明があるのですが、その頭の部分で再度地震の影響についてこのようにコメントしています。
『わが国経済は、足元の踊り場から脱却し、やや長い目で見れば緩やかな回復を続けていくと判断してきました。一方で、今般の地震が日本経済へ及ぼす影響は、少なくとも短期的には、決して小さくないと予想されます。当初想定していた景気・物価見通しにどのような影響を及ぼすかについては、従来から指摘してきたリスク要因とともに、細心の注意をもって点検していく必要があります。』
ま、こんな感じですので先行き景気に関してはかなり厳しく見てます罠、という所ではないかと思います。
『以下では、主に震災前に検討を進めてきた情勢判断であることをお断りしたうえで、海外経済から順に見ていきたいと思います。』
ということでその辺から幾つかピックアップするだよ。
・国際商品価格の上昇の米国経済への影響、およびその持続性について
『そうした中、最近の国際商品市況の上昇が米国経済に及ぼす影響について、注意してみていく必要があります。マーケットが認識するインフレ期待は、昨年秋から上昇基調にあります。また、家計のインフレ期待も今年に入って上昇し、消費者コンフィデンスの直近の指標は下落に転じています。』
『国際商品市況は、もともと新興国による実需が旺盛な下、投機的な資金流入や中東情勢の混乱もあって、上昇ペースが加速してきました。今回の震災を契機に、世界的なリスク回避が強まっており、足元では軟調に推移していますが、一方で、新興国の高成長を背景とする実需がベースにあるとすれば、これまでの基調的な上昇・高止まり傾向の一部は持続する可能性もあると考えられます。商品市況の今後の動向と、それが米国はじめ世界のインフレ期待にどのように影響を及ぼしていくのか、注視していきたいと思います。』
ということで、引用したものの結局宮尾さんは「インフレの米国経済への下押し圧力」を気にしているのか「グローバルインフレによるインフレ期待の高まり」を気にしているのかが良く判らんのでまあここの文およびお暇な方は前後を読んでちょという所でありまする(なんという丸投げ)。
・新興国の金融引き締めの遅れは経済下方リスクとな
『こうした中で、アジア・新興国では、旺盛な内需に国際商品市況の上昇も加わり、インフレ懸念が強まりつつあります。加えて、内需拡大を持続させる観点では、物価上昇に見合った賃金の引き上げは不可欠であるため、これがさらにインフレ圧力を高める可能性があります。このため、各国では、高成長を持続するための環境を整えるべく、徐々に政策金利の引き上げを進めてきています。これまでの緩和的な政策運営―いわゆる「ビハインド・ザ・カーブ」―が長期化して高インフレが定着する場合には、景気にマイナスとなることから、未然に回避するためにも早め早めの対応が重要です。』
ということで、新興国のバブルは結局のところ下方リスクになるでしょう、という認識ですな。
・日本の場合は前向きの循環メカニズムが働きにくいのではという話
日本の(震災前までの)経済状況の説明をしている部分があるのですが、その最後の部分あたりから参ります。
『米国のように、企業部門の好調さが家計部門に波及していく経路がやや弱いように窺われます。』
ほうほう。
『その背景には、仮に輸出主導の景気回復を実現しても、国際商品市況の上昇等により輸入コストが上昇していれば、交易条件の悪化によって実質所得は流出する、その結果、GDP
は増えても国内総所得はそれほど増えない、というメカニズムが考えられます。』
具体的な数値部分は割愛しまして・・・・・
『このことは、マクロ経済的にみれば、経済のどこかの部門がこの損失を負担していることを意味します。2000
年代の景気回復期において、企業は、賃金を抑制して総労働費用を抑えてきました。賃金費用の削減は、企業部門の懸命な構造転換・スリム化の取組みを表すものであり、生産費用の削減は供給面から景気を上向かせる役割を果たし、物価上昇を抑制します。一方で、総労働費用・賃金の減少は家計所得の減少となることから、内需への波及を弱めることになります。したがって、この間の交易損失は、企業部門のスリム化を通じて、家計部門にしわ寄せをもたらすものと見ることができます。』
なるほど。
『輸出・生産を起点とした景気回復の背後に、以上のようなメカニズムが考えられるとすると、この傾向は、リーマン危機後の回復局面でも継続している様子が窺われます。』
つまり輸出主導で景気回復をしても家計に恩恵があまり回ってこないという事ですね(涙)。
『企業は、より厳しさを増すグローバルな競争環境や円高を背景に、生産の海外シフトを加速するなど、構造転換・成長力強化の取り組みをさらに進めており、その成果である企業収益を、国内での設備投資や雇用・賃金の形で振りむけることに慎重なスタンスを維持しているように見受けられます。足元までの国際商品市況の上昇基調が国内所得を抑制する下で、このようなメカニズムが引き続き働いている可能性が考えられます。』
何と言う希望のない話(家計部門的に)なのでございませうか。
という事で、宮尾さんの今回の講演であたくしが「ほほー」と思ったのはこの辺りの部分でございまして、いわゆる前向きの循環メカニズムが日本経済において効き難くなっているのではないか、という論点の説明はほうほうと思うと共に、つまり内需主導のような形で進まないと中々前向きの循環が回りにくい、という事にもつながるのでしょうなあという残念な結論になってくる話かと存じますです、はい。
・米国の金融緩和の効果に関して(日本の説明は普通なのでネタにしません)
金融政策に関する説明部分から。
『米国でも、リーマン危機以降、昨年11 月の大規模な資産購入プログラム(いわゆる量的緩和第2
段)まで、合計4 回にわたる非伝統的な金融緩和政策が実施されてきました。特に昨年11
月の6000 億ドルに及ぶ長期国債購入は、長期金利・借入コスト低下を通じた効果だけでなく、昨夏以降市場で見られた米国経済に対する過度に悲観的な見方、行き過ぎたリスク回避の傾向を是正し、市場参加者が要求するリスクプレミアムに持続的に働きかけて株価を上昇させる効果もあったのではと見られます。』
『また米国の場合には、ドルは世界の基軸通貨であることから、別のグローバルな効果波及経路も考えられます。すなわち、リーマン危機後の政策対応として、FRB
が事実上のゼロ金利政策にコミットした結果、新興国や資源国などドルと連動性の高い経済では米国の金融緩和を輸入することになり、それは海外での景気拡大をもたらすことになります。』
『米国のグローバル企業は、もともと製造業、非製造業問わず広く世界で事業を展開していることから、ドルと連動性の高い地域の景気拡大は、米企業の収益・成長期待を高め、それが米国の株価上昇をもたらし、個人消費の回復にもつながります。したがって、過去2
年以上続く米国の強力な金融緩和政策には、海外景気の拡大を経由した米国株価上昇によって自国景気を刺激する「国際的なスピルオーバー効果」も考えられるのです。』
ほほう。それからもう一つの政策波及ルートについて宮尾さんは指摘しています。
『以上、最近の日米の金融政策とその効果について考察してみましたが、共通して浮かび上がってくるのは、市場のマインドやコンフィデンスが過度に悲観方向に振れた際に、中央銀行の積極的なアクション・資産購入がそれを是正し、リスクプレミアムに持続的に働きかける効果があるのではという点です。』
まあどうなんでしょうかね、今後の研究課題っつー所なのでしょうか・・・・・
○BOE議事要旨が出たのでクイックメモ
毎度お馴染みのBOE
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1103.pdf
まあとりあえずざっと読んだのですが、今回は当然ながらインフレが進んでいる件についての話が延々とございました。特にインフレ期待の今後の変化とか、そうは言っても賃金とか上昇しないと基調的な物価は上昇しないんじゃネーノとか、まあそんな話があるのですが、詳しく読んでいないのでまたそれは後日。
で、今回もまた現状維持が5票、利上げが3票(0.5%上げ1票の0.25%上げ2票)に資産買入拡大1票となりまして、その顔ぶれも同じだったのですが、まあとりあえずクイックメモという事で今日は現状維持主張の人たちの意見の部分であります所の第31パラグラフから。
『Other members concluded that an increase in Bank Rate was not yet appropriate.
While the recent information on the prospects for UK net trade had been
encouraging, it was not yet clear that the weakness in output growth seen
in the latter part of 2010 would prove temporary, particularly in light
of the latest indicators of a further weakening in consumer spending.』
やはり昨年4Qの経済指標の落ち込みを受けて、とりあえず経済がここから先更に落ち込むか、回復軌道に復するかを確認したいという事なんでしょうね。
『There remained differences of view between these members on the likelihood
of the upside risk associated with an increase in inflation expectations
materialising.』
ただ、インフレリスクの顕在化に関しては現状維持派の人でも遺憾が分かれると。
『Some thought that this risk remained limited, given that the near-term
outlook for inflation could be explained by reference to changes in energy
and other commodity prices, VAT and the sterling exchange rate. Others
thought that this risk had risen, given further upwards revisions to the
near-term outlook for inflation, and that the case for an increase in Bank
Rate had strengthened in recent months. Overall, the uncertainty created
by both developments in the oil market and the recent indicators of household
spending and confidence meant that there remained merit in waiting to see
how those factors evolved before altering the stance of monetary policy.』
ただまあこの辺りの問題が直ぐに顕在化するという訳でもないので、リスク認識はリスク認識としてまだ様子見をした方がメリットがあるでしょう、という事ですが、まあ上記のようなあたりをポイントとして注視しているという話っすね。
『The Committee would learn more over coming months about the effect of
the recent increase in the standard rate of VAT and, therefore, also about
the other forces affecting inflation.』
ということで、恐らくはもう少し様子を見る、という事になったのでしょうけれども、先般出た物価のデータが更に上昇でござるとなっているのでまあ中々大変ですなと思われます。詳しくはまた週末にでも詳しく読んで見ます、と自分にまた宿題をorz
2011/03/23
お題「まあだいたい雑談でおじゃる」
今日は雑談ネタばっかでありまする。
○計画停電夏は拡大ですかそうですか
http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2011032300002
計画停電、夏も不可避=より大規模の可能性−東電
まあ真冬じゃないのにこの状況ですから夏の計画停電拡大になっちゃうんでしょうなあとは漠然と思っておりましたが、これはまたorzな。あたくし数年前の猛暑(盆の辺りに連日昼35℃夜30℃とかだった時でしゅ)の年に家の冷房が故障したのですが、修理さぼっているうちに猛暑が到来しまして、まあ軽い気持ちで物は試しだと冷房なし生活をしたのですが以下省略。
#その後翌春に修理をお願いしたのは言うまでもありま千円
でまあこうなって来ますと復興需要でどうのこうのという話はあるにせよ、その復興に対して電力供給がボトルネックになってしまいますよねということになってきそうな悪寒がする訳でございます。まあ関東東北における電力供給制約という供給制約型の経済状況の変化が現状で起きていると考えた場合、阪神淡路大震災の時と同様に考えるというのもちと違うんじゃネーノという感じもしますので、シナリオをどう考えるかとかムツカシヤかなと存じます、はい。
○英国のインフレ加速とな
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a5OKlMUAkvVc
2月の英インフレ率:4.4%に上昇、予想以上−08年10月来の高水準 (1)
これはまたアチャーな状態。今後の金融政策運営が中々厳しいですなあとか思うのですが、こんな講演があるので題名に釣られて読んでみようかと思っておりまする。(と予告編をして自分に縛りをかける)
http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2011/021.htm
The MPC's Policy Dilemma
Speech by Charles Bean
本文はこちら。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/speeches/2011/speech479.pdf
今度ネタにしますです、はい。
○CP買現先オペ久々の実施とか
昨日の日銀オペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110322.htm
CP買現先 3,000 2011年3月24日 2011年4月6日
・・・・・ということでCP買現先オペ久々の登場でござるの巻であります。どの位久々かと申しますと、直近でCP買現先の残高があったのが昨年の4月28日のエンド物でありまして、スタート日で一番直近なのが昨年の3月29日スタート(なので3月25日オファー)という事で見事に1年振りのオファーと相成りました。
えーっとですな、まあ短期周りの方はご案内の通りだとは存じますが、何せ足元の状況は(今週になってやや改善傾向になっていますが)日銀がオペで資金供給してもその金が中々オペ先から外に染み出してこないという大変に遺憾な展開が続いておりまして、その結果としてあたくしの駄文でも日々同じような話が続くという壊れたレコード状態になっていた今日この頃なのでございまして、その状況を緩和すべく日銀のオペレーションで1年ぶりのCP買現先を実行したという話と推察しますが如何でしょうか?
で、その結果はこの通り。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110322.htm
CP買現先 4,590 2,860 0.140 0.164
左から順に、応札額、落札額、足切り利回り、平均利回り、となっておりますけれども、一応CP現先オペだって日銀担保適格銘柄を対象にしての資金供給オペの筈ですから、担保掛目の事を考えても平均0.164%はどうなのよという感じでございますなあという結果。
ま、CPの場合は在庫持っているのが基本的に銀行さんか短資さん(証券さんも持っているが基本あまり持たない)だと思う、というか圧倒的に銀行さんとこで持っていると思うのですが、まあその行内仕切りレートの問題とか、オペで入れた場合の資金は誰のものとか、いろいろと大人の事情があるのではという所ではあろうかと存じますが、それにしてもここまでレートが高い(共通担保オペに入れに行けば0.10%でファンディングが付くのですから)というのはナンデデスネンという事を推察するに、まあCPの在庫がちょっと多めになっているのでしょうなあという所が推測される所であります。
#というかそういう状況だからCP買現先を実施したのですが
でね、このCP買現先ですが、基本的に現先一本打った位でCP市場のファンディングが軽くなって業者(銀行ですが)がCP在庫を増やしたくなる、などというような甘い代物ではございません(筈なのに以前「CP買現先オペはCPレートを引き下げる効果があった」とかドヤ顔で日銀レビューが出たときにはさすがに如何なものかと思ったわけですがまあいっか)のでありますが、日銀が「CP市場の動向も注意していますよ」とアナウンスするという意味は無かったような有った様なという所でござんしょうかねえ。
つまりですね、先週月曜の追加緩和では「リスク性資産の買い入れを拡大」したように、今回の東北関東大地震後の市場においてまず喫緊に必要な「緩和」は「量的緩和」ではなくて「信用緩和」である、というのはあたくしここ数日しつこく申し上げている通りでございますが、日銀も今回の追加緩和においては「信用緩和」的な色彩の濃い動きをする事によって、市場の沈静化を図ろうとしている、という意味が昨日のCP買現先オペには含まれていると思われます。
ただまあ現先やっても本質的な意味でのリスクエクスポージャーが落ちる訳でもないというのが残念なところでありますので、ここは一発基金オペで追加したCP買入をバシバシと打って頂いて、期末に向けた過剰な金利の跳ね上がりを防止するとなおお洒落ではないか(昨日も書いたが、こういう時に「市場機能がどうのこうの」とか言っている場合ではないので買うならホイホイ買ってしまえばヨロシアルね)と思うのでありまする。
しかしまあ何ですな、この「包括緩和」ってのもコウモリというか鵺みたいな概念でありまして、基金買入における購入等となる対象資産によって、買入拡大の「追加金融緩和政策」が「量的緩和」なのか「信用緩和」なのかを使い分ける事ができるのねと思う次第でございまして、まあ何つーか都合よく出来ている概念ですわなあとか思いながらも、「基金の配分をいじることによって量的緩和にも信用緩和にもなる」というのはこら短期周りの人間とか趣味の日銀かんさつにっきでも書いている人ならば概念として理解できますが、一般ピープル(というか債券市場の人でも)には中々伝えにくい概念ですわなあと思うのでありました。
○更に短期ネタだが今日は即日オペがだいぶ減りましたな
さっきのオファーの所とか落札の所とか見ていただきたいのでありますが、昨日の日銀オペでは共通担保全店オペの即日スタート物が2兆円のオファーに対して応札額は1300億円ぽっちとなりまして(当然全額0.10%で落札)、その後もコールレートなどが落ち着いていた事もあってか、先週のような即日オペ乱打もなくそのままスルーしていきましたがコール平均は0.084%に低下。
特に今日は四半期20日お約束の国債大量償還日に当りまして、そのため国庫からの国債償還金要因によって財政は速報ベースで9兆1000億円の払い超となっておりましたが、まあこの国債償還金も入ってきましたので、短期金融市場に回せる金も出てきてもおかしくはない(ただし相も変わらず銀行セクターからはあんまり資金が出てこないようですが)というのと、元々この日にあったオペのエンドとかもジャンジャンロールしてしまったので業者のファンディングにもやや余裕が出てきたというような要因もあったと思いますけれども、そんなこんなでツンドラの永久凍土を思わせる資金の動きの悪さが徐々に改善に向かっているという所かと存じます。
それにしても昨日は速報ベースで日銀当座預金残高が何と41兆6200億円と空前の残高になってしまった訳ですが(実は今日の方が予想段階では当座預金残高が拡大する)、その結果準備預金の積みは絶賛大進捗して明日以降の残り積み所要積数を1日辺りの数字に直すと18300億円(ちなみに今積み期の所要は1日辺り52500億円)まで来ておりまして、今回の積み期間で絶賛大ブタ積み発生が確実視されておりますわな。
まあこの非常時にトン調節とかやっている場合ではありませんので別にこれはこれで当然の流れではあるのですけれども、逆にここまでジャブジャブにしてしまうと、引くのがまた難しいかと思われます。と申しますのは、何せこの市場にストレス掛かり状態というのはまだ続いている訳でして、そういう状況下において「市場機能重視」みたいな事を始めますとストレスがそのまま価格形成に反映し、その結果更に市場のストレスが自己実現的に拡大するというリスクがあるっつー状況でもある訳で、変に慌てて調節を引きだしますと、その暴れん坊将軍の市場に点火するリスクがあり、まあそんな事をこの非常時にやらかしたら打ち首獄門扱いになってしまいますから難しいですなあという事でありまする。
でありますので、どっかのベンダーで「日銀の資金供給が市場に安心感を」みたいなコメントを見たような気がするのですが、そらまあ日銀のオペ先の範囲内は適格担保の範囲内で資金が回ります罠という風情ではございまして、昨日は財政要因で資金がどどーんと出てきているからそらまあ即日オペのニーズが減りましたけど、肝心のオペ先の外側に資金が回らないと政策効果が発揮できませんので、そーゆー観点からすると市場のストレスが解消されるまでは頑張って供給をお願いしたいという所でございますわな。
じゃあ市場のストレスがどういう数字見てたら解消されたとか判るのかと言われますとこれまた難しい所でありますが、まあいずれにせよ当面はオペジャブジャブ攻撃を継続し、GC市場あたりで資金がもうちょっと動くようになる(銀行さんがGCの資金を出すようになる)と緊張感も緩和してくると見れば良いのかなあ、などとちょっと思ったのでありまする。
ちなみに、まあどうでも良いのですが、あたくしが手元で集計している(単にエクセルで計算させているだけ)オペ残高ですが、昨日は共通担保全店オペ297000億円、基金オペ(固定金利資金供給)228000億円、国債買現先オペ20000億円と、全部足すと60.5兆円という膨大な額に。これに成長基盤強化が入って各種の資産買入もあるのですから、まあ凄い額になってしまいましたですなあという所でしょうか。
○人のふんどしシリーズ
今回の震災に関連してはまあ色々とネットでイイカゲンな情報を流して悦に入っておられる方がいたり、まあ何なんでしょと思うと思うのですが、まあ個人的にはこんな辺りをお読みになられると吉かと存じます。
・「machineryの日々」さん
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-445.html
被災地支援について(追記あり)
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-446.html
被災地支援についての補足(追記あり)
・「what_a_dudeの日記」さん
http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20110318/p1
私の中で新聞というメディアは死につつある
・「dongfang99の日記」さん
http://d.hatena.ne.jp/dongfang99/20110318
無力感の日々
なお、震災とは別件(必ずしも別件ではないが)ですがこんなのも
・「常夏島日記」 さん
http://d.hatena.ne.jp/potato_gnocchi/20110314/p1
税金嫌いって付和雷同してる連中のアタマん中をのぞいて見たい
・切込隊長の所から
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2011/03/ikedanob-85e2.html
池田信夫、デマ発信地の軌跡 (ダイジェスト版 @ikedanob)
2011/03/22
お題「協調介入実施とな/市場雑感/産経の国債引受報道雑感」
週末の街頭では義援金(義捐金ってのは常用漢字じゃなかったですな)募金活動があちこちで見られましたが、まあそれはそれで別に否定しないけど、今の東京の状況だったら募金箱もってがなり立てるよりも郵便局や銀行などでの日本赤十字等への募金口座振込み用紙でも配った方が結果的に沢山集まると思いますがねえ。
#と思ったがそれでインチキ用紙配る輩が出そうだからやっぱりダメかなあ
まあそれはそれとして街頭見ててどうかと思うのは政党の幟並べて募金活動している区議会議員とかでさ、正直言って端からあたくしのような者が見ているとパフォーマンスに見えてしまうわけですよ。だって区議会議員とかが今罹災者の皆さんに対して出来る最大の貢献って、罹災者支援のため、例えば罹災者受入の為に区で何が出来るかとかを行政と共に検討して実行するといったような動きであって、募金集めはお前以外でもやる奴がいるでしょ(まあそれ以前の問題で街頭募金せんでも多くの人がいろいろな形で募金してると思いますしねえ)と思うのですがねえ。
○協調介入キタコレ
http://www.boj.or.jp/announcements/press/danwa/dan1103a.htm/
総裁談話
『日本銀行は、為替市場におけるG7各国との協調行動が、為替相場の安定的な形成に寄与することを強く期待している。
日本銀行としては、強力な金融緩和を推進するとともに、金融市場の安定を確保するため、今後とも、潤沢な資金供給を行っていく方針である。』
でもって野田財務大臣と白川総裁の会見は以下の通り。
http://www.mof.go.jp/kaiken/my20110318-1.htm
で、会見から。
『(問) 対象はドル・円ということでよろしいでしょうか。
(白川総裁) そうです。
(問) 日本国債の購入などについて、他のG7の国から対応するというような。
(野田大臣) そういう議論は今日はしておりません。今日はあくまで為替市場に対する対応です。』
ほうほうという感じでして、朝の9時から一気にドル円は79円台から81円台後半に上昇しまして、まあその後は海外時間でもBOEおよび欧州各国の中銀(ECBじゃなくてブンデスとかフランス中銀とかが個別に介入したのがちょっと驚きでしたが)の市場介入がありましたが、まあ欧州的にはリビアの方が金曜には大騒ぎだったかも知れません(金曜の日本時間に国連安保理で飛行禁止区域の決議をしてましたな)。
ここの会見(の一部)にありますように、介入の対象がドル円みたいなのですが、BOE辺りはどっちかと言えばインフレ抑制でポンド買い介入を堂々と出来ればオイシかったのではないかと思うのですが、介入は全部ドル円だったのかそれともユーロやポンド建もあったのかはよくワカランチ会長のようで。
http://www.mof.go.jp/kaiken/my20110318-2.htm
こちらは閣議後の野田財務大臣の会見。
『(問) その介入の対象の通貨ですが、先程ドル円というお話でしたが、これは欧州とかカナダも同様にドル円を対象にやっていただくという。
(答) 基本的にはドル円でありますが、場合によってはECBはユーロもやるかもしれません。これはあまり私が確定的に申し上げることではございません。』
だそうなので、英国とか欧州はポンドなりユーロでやったのかも知れませんな。
○金曜の相場備忘録、あるいは今求められる資金供給は「潤沢」よりも「きめ細かい」供給という話
金曜はと申しますと、朝の段階では木曜午後の海江田経産相のフルーツバスケット攻撃によって何かこう慌しい日になった翌日という事で前日までに戻ってきた人とかの流れが再び落ち込んできたのもありますし、何となく落ち着かない朝でしたが、G7で為替協調介入発動という事で、単独じゃなくて協調介入というのはさすがにインパクトありましたし、福島原発問題に関しても水曜辺りまでの「もう何か良く判らないけど大変みたいだよ」状態の話から、徐々に電源工事だの放水活動だのが進んでいる(関係者の皆様のご苦労に感謝であります)という話が増えてきた事もあって何となくその辺りも落ち着きを与えたのか株価の方が上昇傾向に。
ということで、まあ為替の無茶振りと株の底抜けが一旦落ち着いたという事によりまして、債券市場の方も金曜はあまり無茶振り相場にはならずという感じだったようですけれども、まーそうは言いましても先物売買高14377枚とか取引自体が多い訳でも無く、ちょっとした売買で値が飛ぶような感じのようで、まあ引き続きまだまだ通常モードに戻るには時間が掛かるという所では無いかと存じます次第。
現状では災害の様々な影響(被災地での銀行券需要という直接的な部分に加えて、計画停電や交通機関の減便などによって、直接的な被災地以外でも予備的な銀行券需要が高まる可能性があるとか)によってどのような感じで資金が出て行くのかとかというような事が読みにくい事もありますし、今後の災害復旧に向けた動向も読みにくいし、被災地以外でも停電等の影響によってあまり余計な取引をしないようにという意識がどうしても起きてしまう(鉄道の減便によって事務方の人員が不足してたり、早く帰宅させるように動いていたり、さらには木曜のように急に早く帰るようにというような事も起こりえるし)、更にまた間の悪い事に多くの日本企業の決算期末に当っている事もあって、取引そのものが普通にしていても低調になりやすい所ですので、どうしても取引が薄くなってしまいがちですわなという事で。
で、現状では日銀が絶賛資金供給オペレーションによってその辺りを補強しているのではございますが、結局のところ日銀が取引の間に入ってどうのこうのが出来るのはオペ先であり、オペの適格担保の範囲内の話でありますので、これは先週末も申し上げたように、日銀におかれましてはオペ先の所だけはなく、オペ対象の外側の市場動向とか、適格担保の外側(つまり無担保市場)の動向とかも注意して頂きたいと重ね重ね申し上げる次第でございますです、はい。
つまりね、さっきの小見出しの所で書いたんですけれども、「潤沢な資金供給」はそらまあ重要でありますけれども、何せ現状はそのオペ先から外に出る資金というのが依然としてあまり多くない状態になっている訳でして、それは別に個別金融機関がケチだからとか言うのではなく、色々な意味で不確実性が高まっている上に、余計なことに決算期末要因がぶつかって資金が市場でいい感じでグルグル回るという風になりにくくなっている訳ですよ。従って、短期市場への目配りという点で言えば、単に量を出せば良いという話でもなくて、やはり信用緩和的な政策、つまり今般実施を決定した社債やCPの買入追加を前倒しで実施して行くというような動きとかのような「きめ細かい」資金供給、というか信用緩和政策的な動きが必要となっていると思います。
まあこういう時に「市場機能論」とか言い出す馬鹿は居ないと思いますが、市場機能重視でとか寝ぼけた事を言っていますと、こういう時には市場が無駄に暴走するリスクがあり、そのリスクを増幅させるだけの悪影響しかないという物であることは、リーマンショック後の国内市場の動きを思い出せばお分かりの通りでありますし、そういう時には変な原則論が無意味である、というのは米国の実施した前提に無理のあるストレステストに関して皆がそのストレステストのインチキな前提条件(失業率とかの前提無茶だったですよね)を敢えてスルーする事によって当面の危機をスルーした事によっても示されていることではないかと存じます。
何か最後の方は判ったようなわからんような話でどうもすいません。
○復興国債報道に関して
金曜の朝のニュースで産経新聞が独自に産経クオリティを発揮したニュースがこちら。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110318/plc11031801100004-n1.htm
10兆円規模「復興国債」発行へ 全額日銀が引き受け
2011.3.18 01:10 (1/2ページ)
で、この記事は産経だけが書いていまして、その後主要閣僚から思いっきりダメ出しされていましたので、まあどう見ても飛ばしです本当にありがとうございましたという風情です罠。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aqKKBb1oNU04
与謝野氏:「あり得ない」、日銀の国債直接引き受け報道−震災復興(2)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=an5rOqbCTkBw
野田財務相:日銀の直接引き受けには慎重な検討必要−震災国債報道で
ちなみに野田財務相の発言は閣議後記者会見のものでして、こちらでも内容を確認する事ができます(質疑応答の最後の方にあります)。
http://www.mof.go.jp/kaiken/my20110318-2.htm
・・・・・・えーっと、そもそも単発10兆円増発でしたら10年までの各年限1000億円増発して残りを短国で出せば普通に捌けると思うのですけれども、それをわざわざ日銀引受にしないといけない理由が良く判らんですわな。しかも如何にも「どさくさに紛れて実施します」的な感じの記事内容でありまして、しかも産経だけが報道とか何でじゃろと思ったら、この記事が出た時間のちょっと前にいつもの編集委員がこんな主張をしているのでありました。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110317/fnc11031721570029-n1.htm
復興国債100兆円も可能 日本再生のチャンスに変えよ 編集委員 田村秀男
2011.3.17 21:56 (1/2ページ)
・・・・・また内容がツッコミ所多数で爆笑を禁じ得ないのですがそこはスルーしまして、産経新聞さまにおかれましては、自分のところの編集委員が「こうあるべき」と考えた事をあたかも既成事実のように報道することによって「報道による既成事実化を図った」という事はなかろうかと思いっきり想像したくなるのでありますが、まさかそのような報道機関としてあるまじき事をなさっておられるとは到底信じ難い所ではございますけれども、ちゃんと裏づけ調査して報道されているのであれば、他紙の追随とかもあるでしょうし、主要閣僚が全面否定するとかも無いような気が致しますがどうでございましょうか。
このような非常時において、報道機関としての確固たる立場を持っておられる機関が裏づけの乏しい情報で報道を行うというのは、流言蜚語によるパニックを煽るような事にも繋がりかねない(大正時代における関東大震災のように)訳であり、特にこのような時こそ報道の内容について真剣な精査が必要であると思われるのですが、然るに、自分たちの主張を既成事実のように飛ばし報道をする事によって自分たちの主張の実現を図ろうなどというのは、報道機関として、というより人間としてもはやあってはならない事でございますので、まさか産経新聞社様がそのような新聞社であるなどとは思いたくはございませんです、はい。
ちなみに、田村編集委員様の提言の方ですが、ツッコミ所が鬼のようにあって頭がかなりクラクラするのですが、今度ヒマなときにツッコミ力の勉強がてらツッコンでみようかと思います。
まあ普通に国債増発は不可避でしょうけれども、そこは緩和的な金融政策を続けることによって対応すれば、少々の「単発的な」国債増発は市場で消化できますし、今回の震災の影響が日本(だけではなく多分国外の製造業にも影響すると思われるのだが)の供給ショックに繋がっていく話でありますので、あまり詰めない形で「国債の中央銀行引受」という派手なことを行って供給ショックによる物価上昇に加えて長期金利上昇などを引き起こす事も無いと思いますがどうでしょうかねえ。
それから、もし「復興国債」というのを別名目で出すのであれば、それこそ個人向け国債でちょっと利率高くして途中換金の制限を厳しくするというような形(だけでなく商品性は色々と考えられますけど)で発行をすれば義援金は出さないけれども復興国債なら買うってえ人が出てくるんじゃないですかねえ、と思いますけどにゃあ。
まあ結論からしますと「こういう時に大して裏も取らない報道するのは場合によってはテロ行為に等しいのであって、スクープ狙いとかお馬鹿な事は止めて欲しいし、更にもし『記事を書くことによって自分たちの主張を既成事実化しよう』としているのであれば、最早報道機関というよりは人間としてあり得ない行為ですなあ」というのが金曜の記事およびその後の反応見たときの印象でありました。
まあこの記事に関しては記事内容がそもそも柔らか過ぎる上に、書いたのが産経一社だけで他社の追随無しという事で、どうせ飛ばしでしょとばかりに債券市場がすっかりスルー状態で全然反応していなかったのが産経新聞社涙目の展開とも言えましたけどね。
2011/03/18
お題「為替がぶっ飛んで一時エライコッチャでしたが/決定会合議事要旨から」
昨日の「急に大規模停電の可能性が来たので」攻撃での超越帰宅ラッシュに当った皆様(って出勤してた人の殆どですな)におかれましては誠にお疲れ様でありました。
#そういやあたくし義捐金(常用漢字で書くなら「義援金」の法が宜しいアルね)振込みしてきました。その位しか役に立てませんですからね、ちなみにゆうちょ銀行ですから振込というか振替ね(^^)
○ということで昨日の市場メモ
朝起きたら為替が79円台とかになっていて「福島原発問題の深刻化を受けて安全資産の円への買いが高まった」とオモシロ解説をする某経済クオリティ番組などがいましたなあとか昨日は書いたと思いますが、その後朝7時過ぎ位になってみるとドル円が77円とかイミフの展開になりまして、結局76円前半(ベンダーによって25銭という所と36銭という所がある位のカオスっぷり)まで行った後で反発して朝の8時40分ごろには79円台まで戻すという豪快なカオス状態。
えーっとですね、こんなのがリパトリのフローによるものの訳は無く、そもそも時間がシドニーだかウェリントンだかの板のスッカスカな中での話でありまして、どうせオプション引っ掛けて強制ロスカットさせようとかいうような動きが打ち込まれたという事なんでしょと思うのですが、あたしゃ為替の事はよー知らんけえ詳しい人に聞いてつかーせとゆー所でありまする。
#もちろん、材料が「日本の原発での放射能漏出」なので円を安全資産だと思って買っている訳ではございません
#ちなみに、この為替水準を見てどうせ介入するなら米国債なんて屁の役にも立たないものじゃなくて救援物資や燃料を兆円単位のドル建で買ったら凄いことになるのではないかなどと訳の判らん妄想をしていたあたくしは連日の相場とニュースで頭が沸いていますかそうですかorz
まあそんなこんなで株は下落スタートだわ債券はまたまた上昇スタートだわということになったのでありますが、140円35銭(+63銭)で寄り付いた後は基本的には売りに押される展開。イールドカーブ的には超長期債の大逆襲が今日も続くでござるの巻というような展開になったようで、先物が押し込む中で超長期ゾーンのビット確りの展開。
で、昨日については原発関連のニュースでは寄り前に米国のなんちゃらとかいう所が日本在留中の米国人向けに福島原発の半径50キロ圏内から退避を検討するようにとアナウンスしたとかしないとかいうのがマインドを冷やしやがるニュースでございましたが、場中のニュースではここ数日のように「何か片付いたと思ったらまた更に悪質っぽいネタが出てくる」みたいな負のスパイラルのようなニュースもあまり見当たらず(すいません、正直言って原発関連のニュースヘッドライン見るのがストレスなんでそんなにきちんとフォローはしてないですが、多分市場がどどーんと反応するようなネタは無かったと思います)とゆー感じでありまして、株価指数がグイグイ戻ってきた事やら、9501東京電力株式がようやく寄って大商いモードになっていたりして、何となく株価がまたまた底打ちチックな動きを示したりした事が影響したのか債券先物は上値妙に重い展開に。
まあ何ですな、足元での先物と他の現物の動きがグチャグチャなのは地震および原発問題を受けた動きで、こらまあリスクオフはリスクオフですけれども、それよりもポジションクローズの動きと言った方が適切なような気がします。一方で昨日も今日もフラットニングの展開となっている債券市場の長いところちゃんの動きなのですが、まあ大地震前に形成していたカーブに対してその後に先物がスーパー独歩高となった動きの反動というのもあると思います。
でですね、更にもうちょっと長いタームの話となりますと、日本の原発問題を機に海外でも原発のあり方が見直されるというようなモードになっているやに報道などでは見受けられる訳でありまして、世界各地で原発見直しという事になりますと、電力供給能力の低下によって生産や消費にブレーキを掛け、経済成長にもブレーキを掛けますよね、という話に発展する可能性があるでしょうから、そーゆー文脈から世界経済が停滞モードになって来るってな感じの絵を描いた場合に、今回の大地震の前にあった世界経済が緩和的な金融政策を背景に回復基調を高め、その中で物価も上昇傾向にというような従来の絵とは違った光景が見られる訳でして、そーゆーところを勘案するとああ長いところが買われるのね、というのもあるかも知れませんなあという所です。
#原発の代替エネルギーの開発が急務という事ですと救世主にイベルドローラ(http://www.iberdrola.es/←スペイン語のサイトだが英語ページもあるでよ。ちなみに本社所在地はスペインのバスク自治州ビスカヤ県ビルバオ市である^^)急浮上ということですね、わかります(かどうかは知らんがの)
もちろん、他のシナリオもあると思いますから、あくまでも一つの考え方、ということになるのかなあとは思っていますけどね。
さてさて、それはそれとして短い所なんですが、ご案内の通り日銀による絶賛資金供給に伴いまして、足元のGCレートは落ち着いて・・・・と申しますか、取引のカウンターパーティーが日銀になってしまっている状態となっておりますので、そもそも市場レートがどうのという話ではないですけれども、まあとりあえずオペ先は日銀にオペ玉を持って行けば0.10%でファンディングできますよね、という状態になっています。
それを反映したのか、はたまた毎度お馴染みの為替がらみなのかは存じませんが、水曜日に0.1436/0.1501というレベルの入札になっていた新発TB3か月物は買いが入って更に強くなって0.105%レベル近辺まで金利が低下。まあ0.105%という水準ですとオペ見合いで買うようなレートというのは少々無理があるので、何らかのキャッシュ潰しニーズかコストの安い円資金があったのかなあとかいう感じも致しますが、まあ短国も堅調でござるの巻。
ただまあ昨日も同じような事を書きましたが、引き続き少々微妙なテイストを醸し出しているのが2年以下とかのゾーンでありまして、昨日の2年カレントも上値重いですね状態だったと思われる次第。BBの引けは0.220%で前日より強くしていますけれども、場中は普通に引けオファーとかいう時間が結構長かったかと思われる所であります。
更に、CPとか社債とかの短い所のレートも、これはまあ足元で震災関連でキャッシュの需要(「資金需要」ではなくて物理的な銀行券需要とか、流動性確保のための解約等のニーズ)に対応した部分がどの位の規模になるのかというような所が中々読みにくい所でもある訳でして(現に資金需給予測のプロ中のプロにも程がある職人様がおいでと仄聞している日銀の金融市場局が日々公表している資金需給見込みの銀行券要因が今週に入って昨日までの間で常に予想以上に銀行券増発方向にぶれているのですよ)、そんなこんなで短期金融市場の中でも対日銀取引で最終のケツは回せてしまう人たち以外の部分においては、今般の大地震以降の影響が若干来ていますなという感じなのではないかと思われます。
で、今回金融市場に(少々、かな??)掛かっているストレスは、別にまあどこかが放漫経営したからとか皆がバブルに踊りまくった反動だとかいうのではなく、純粋に地震と言う自然災害によって起こされた(それ以降の原発問題の方が海外投資家などにはインパクトあったのかもしれませんが)ものでありますので、日銀におかれましては、これらインターバンクおよびレポ市場の外側にも十分な目配りをして、これまでのように「火が点くまで火消しをしないから火が広がって収拾に大変な苦労を要した」というようなトンチキな事が起こらないように万全を期し、更に必要な追加施策があるようでしたらちゃっちゃと実行(企業支援オペの復活とか1年以内の社債買入復活とか)したり、今般導入を決定した基金買入の増額分に関してより積極的に前倒しでの実行をして行くとかも念頭によーーーーーーーく注目して頂きたいものと存じますです、はい。
以上、微妙に表現を持って回ったり婉曲的にしている部分があるような気がしないでもないのですが、判る人にご理解頂ければ有り難い所ではあります。
○2月決定会合ですか、何か遠い遠い昔の話のような気がしますが
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110215.pdf
まあ正直経済見通しに関する話を今更読んでも何ですのでそっちの引用はしませんですが、一応何となく纏めると・・・・
・米国経済:もちろん先行き強めに見ていますが議論のトーンは割と警戒的・ユーロ圏:域内経済の2極化に伴う金融政策運営の難しさを指摘・中国経済:明らかにバブル警戒モード
という感じでして、国内経済に関しては物価の部分でやはりと申しますか、需給ギャップが相応に残る中で原材料価格の上昇を転嫁する動きがあるのではという指摘がございましたな。あと、商品価格の中ではリスク要因の意見の中でこんなのがありましたのでそれだけ引用。
『こうしたリスク要因に関する議論の中で、ある委員は、金融のグローバル化やインデックス取引の拡大を背景に、コモディティ市況や株価を含め、市場間の価格変動の相関が高まっていることなどを踏まえると、リスクを個々に評価するのではなく、それらが同時に顕現化し、その影響が相乗的に拡大する可能性も念頭に置いておく必要があると指摘した。』
なるほど。
でもって、まあ引用するのは『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の中にある包括緩和の効果に関する部分。
『委員は、包括的な金融緩和政策の効果についても議論を行った。』
ほうほう。
『多くの委員は、基金を通じた資産買入れの効果として、社債スプレッドの縮小や社債発行企業の裾野の拡がり、REIT市場における増資や投資法人債発行の活発化などを指摘した。』
社債スプレッドに関してはこの会合後になってきた所で決算益出しとか、中短期ゾーンでの大量発行があって(震災前の段階でも)特に短いゾーンで重めになっていましたけれども、まあ大量発行できていた、というのが効果です(キリッ)と言われてしまえばそうですねという所ですかな。
『ある委員は、今後とも、こうした効果と、資源配分の歪みや市場機能の低下といった副作用の両方を点検しつつ、政策を行っていく必要があると述べた。』
まあ副作用の話をする時代は昔の話ですな。
『このほか、何人かの委員は、日本の長期金利の上昇幅が他の先進国に比べて小幅にとどまっていることについて、時間軸の明確化が効果を発揮しているとの認識を示した。』
いやそうではなくて単に日本のインフレ期待と成長期待が全くもって盛り上がらないからだけだと思うのですけれども・・・
『もっとも、複数の委員は、2年債の利回りなどが上昇傾向にあることを指摘し、市場では、日本銀行による時間軸に対するコミットが弱いのではないか、との声も聞かれていると述べた。』
うーむ、ここは微妙。単に基調的な物価が思いのほか強いという話で動いている面とか、先行きの金利引下げ期待が無い(当時の事よ)状況下で短期金利から見た場合に絶対水準的に買えても、より長い金利との比較間で買いが少なくなっている、という見方もいえるので正直微妙。
『また、ある委員は、景気が回復していく過程では、日本銀行によるコミットメントの意味するところが、折に触れて試される状況が続くことになると指摘した。』
この指摘は全く仰るとおり。2003年の金利上昇過程では最終的にコミットメントの明確化を行うことになったのはご案内の通りでございます。
『こうした点に関し、多くの委員は、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利を継続していく方針であることを粘り強く説明し、時間軸に対する市場の理解と信認を確保していくことが重要との認識を示した。』
『ある委員は、現在の金利水準をいつまで続けるということではなく、時間軸政策の枠組みと、その背後にある経済、物価、金融情勢について丁寧に説明していくことが必要であると付け加えた。』
とまあそういう事ですわな。
2011/03/17
お題「市場メモと雑感/総裁会見」
商売柄仕方ないのですが、原発関係のニュースヘッドラインをこれでもかと出されるとストレスが掛かりますので、せめて家ではテレビでしたり顔して色々と解説する煽り報道番組だけは見るの止めないとしんどい今日この頃ですが、被災者の皆様や被災地での救援やインフラ維持、原発の事故被害拡大防止の為に日々尽力されていらっしゃる方々などなどの皆さまの事を思えば屁のような事で悩むというのも我ながら何ともorzであります。
・・・・・ちょっと待てモーサテ、「福島第一原発問題の解決が難航しているから『安全資産』としての円買いが入った」ってその後付解説は何ぼなんでも話が違うんじゃないのかよおおおおおおおお。ポジションのアンワインドの動きとかじゃねえのかああああああ????
ちなみに公共放送は「福島第一原発のトラブルを嫌気した米国株価の下落によるドル売り円買いの動きと、日本企業が海外に保有する資産を手元に戻して円に換える動きが強まるとの見方から」円高が進行した、と比較的丁寧な説明をしていました。
#下に書きましたけど、昨日の市場は株高で何となくほっとした感じもあったのですが、海外株安の円高進行とはまた今日もorzな展開ですか・・・
○20年入札と3か月TB入札
諸般の事情であまり詳しくは見ていないのですが、昨日の債券市場は前場は短国と20年のダブル入札を前に弱いスタート。と言いましても株式市場が戻り歩調になっている事から雰囲気も何となく良くなってきまして、といいましても超長期ゾーンは入札を前に寄付き直後はアホのように弱かったのですが、前場途中からやや20年の気配が復活気味。2.2クーポンで発行されたのも好材料という感じになりまして、まあこれは2.2%100円が止まり所になるでしょう、というのを意識してクーポンを設定したということなのでしょうなあという所でしたけれども、前場引けは先物68銭安に対して新発20年国債は2.125/2.130(20年ゾーンの気配としては4.5甘オファーとかのレベルかと)と先物対比では確り気味になりました。というか前日の先物周りだけ高いというカーブの修正が入ったとも言えますが。
後場の寄りは前場引けから若干強くなって始まりまして、落札結果の方はといえば平均100.97円=2.130%で足切り100.75円=2.146%と、前場引けの板と比べてみると強くは無いですが、前日までの地合いと足元の流動性の低下を勘案した場合に、20年ゾーンの1.1兆円の打ち込み(つーか発行ですけれども)でどの位まで流れちゃうのよという懸念もあったのでして、堅調な結果という評価で宜しかったかと存じます(つーかまた買占めかという感じもするんですけど)。
でまあ現物の気配も特に長い所の復活が顕著という形になりまして、引けてみますと先物56銭安に対して20年ゾーンが5糸強〜1毛強の引けという事になりまして、前日比でもそうですし、前場引け対比でも復活でござるの巻となっております(と言っても地震前のバランスから考えたらまだ思いっきりスティープしてますがまあそれはそれ)。
3か月TBちゃんの方はと言いますと、0.1436/0.1501と足切り水準が0.15%に乗ってしまいましたでござるの巻にはなりましたが、セカンダリーでは強くなりまして最後はたぶん0.135%近辺とかの水準ではないか(日本相互証券の引けは0.140%です)という感じになったようで、こちらもまあ踏みとどまりましたなあという感じです。
まあそんな感じで懸念されていたダブル入札は堅調な結果になりました事と、それはそれとしてやはり株価が上昇したのは相場の雰囲気を良くするかとゆー感じでありまして、イールドカーブ的には昨日の過激なオモシロカーブをややお返しするような感じになったのはチャーミングでございました。
ま、あたくし的にビミョーなのは2年とかの動きではございますが・・・・
○まあ無力参加者のたわごとなんですけどね
2年辺りの水準が地震前の水準、即ち追加緩和実施前の水準でもありますが、そこら辺まで戻ってしまっている所(つーか正確には微妙に甘い)とか、まあさっき書いた3か月TBに関しても入札堅調とか言いましても、よくよく考えてみればここもとでは金利が上がっても0.120%届くか届かないかという状況だった事を考えるとまだ甘いというのが何とも微妙なテイストを感じる所であります。
まあ背景に株価が急落しちゃったから決算益出しするとか、昨日の昼のあの放送見たら何か売りたくなっちゃうとゆーのもまあ判らんでも無いですけれども、そもそも日銀のオペ直接参加者の場合は資金繰りに関しては日銀の超越資金供給で賄えばよいですし、今回の地震での罹災地域でオペだのやっている人的余裕無しというような方々がキャッシュポジションを厚めにする為に売却するとかいうのは勿論当然の動きなのですが、あまりそういう災害の直接的影響が相対的に大きくない人が「決算対策!」とか言い出して中短期債市場にストレス掛けるっていうのはどうなんでしょとはちと思ってしまう所ではありますけどね。
つまりさ、日銀が超越的大量に資金供給してるのって、オペ先をお助けする為だけにある訳じゃなくて、そのオペ先が銀行なら個人や企業などへの資金供給を円滑に行う事が役割期待としてあるでしょうし、証券業者などならば金融市場の流動性を維持する事によって資金の円滑な流通に寄与する事が役割期待としてあるってえ事だと思うのよね。そらまあ非常時でストレスが掛かっているから市場のスプレッドとか貸出のスプレッドが開くとかいうのは止むを得ない話ではありますが、まあ市場安定化の役割期待がある中で市場安定化の逆になるような動きをわざわざやるような人がいたらそれはちょっと違うんじゃないのと思う所ではございます。
・・・・・って昨日は「原発問題があると市場にストレス掛かっても仕方ないですかな」とかいう話をお前はしてたじゃネーノと言われそうですが、まあちょっとそんな事を昨日の昼間は考えていたのですよ、という事で昨日の今日で微妙に話のニュアンス違いますなあってのも我ながら如何なものかと思いますし、所詮は無力参加者のたわごとですので、まあ別にどうでも良いっちゃあどうでも良いのではありますけどね。
#なお、この部分はabz2010さんの直近の2本前のエントリー『今は「市場メカニズム」の出番ではない』に触発されて纏まりも無く書いてみたのですが、その他の直近エントリーも中々興味深いのでトップページのリンクをつけさせて頂きます
→http://d.hatena.ne.jp/abz2010/
○1日遅れましたが総裁会見ネタ
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1103b.pdf
まあそんなに先行きの金融政策がどうのこうのっつー話は無いのですが、いくつかピックアップするざますだよ。
・大規模資金供給と追加緩和の実施は「信用緩和」的な発想です
『(問) 本日、即日オペ15兆円を含む大規模な資金供給を実行されました。金融市場の緊張度合いの観点から、このような資金供給の実行を決断された理由と金融市場の評価についてお伺いします。』
『(答) 先行きの不確実性が高い状況となったため、金融市場において市場参加者が予備的な資金需要を大きく増やし、金融機関が多くの資金を保有しようとする状況となりました。短期金融市場は全ての金融活動の出発点であり、経済活動にも通じます。従って、中央銀行としては、この金融市場の安定をしっかり確保し、資金面に関する不安を解消させることが非常に重要であると判断しました。』
『そうした判断の下、本日、即日資金供給オペを15兆円、先日付の資金供給オペを6.8兆円、合計21.8兆円となる過去最大規模の資金供給オペを実行しました。即日資金供給オペとしても、過去の最高金額は4.5兆円でしたが、今回は15兆円という、それを遥かに上回る規模で実施しました。このような潤沢な資金供給により短期金融市場の安定が確保されているということです。』
ということで、大量の資金供給は短期市場に掛かるストレスの回避のためですな。
『市場別にみた場合、国債市場では、今回の地震がわが国の経済に及ぼす影響の大きさが不透明であることなどから、安全資産である国債への資金逃避が進み、10年物国債の金利が1.3%から1.2%へ、2年物国債の金利が0.2%強から0.1%台へと、短中期から長期までのいずれの期間でも国債金利が低下しています。』
『一方、社債の流通市場あるいはCP市場をみると、社債金利の対国債スプレッドやCP金利の対短期国債スプレッドが幾分上昇していることに加えて、市場での取引が成立しにくい流動性の低い状態が続いており、潜在的なスプレッドの上昇圧力はこれまでよりも高くなっているとみています。』
『株式市場をみても、わが国経済や企業収益を巡る先行きの不透明感から株価は大きく下落し、本日の日経平均は昨年12月初以来の1万円割れになったことはご承知の通りです。』
と、当日(月曜日)の市場動向について触れ、
『以上、各市場についてみてきましたが、私どもとして、まず出発点の短期金融市場、それからCP、社債あるいは株式関連市場、そうした市場でリスク回避姿勢が強まることを防ぐことが非常に大事だと判断し、本日の措置に至りました。』
ということでして、今回の追加緩和措置の主眼は「CP、社債、株式市場などでの市場ストレスの緩和」にあるというのがここで明確に示されています。後の方の質疑応答にもある(引用は割愛します)のですけれども、いわゆるリスク性資産の買入にウェイトを置いたのもこの理由であり、つまり今回の追加緩和の趣旨は「外的なショックによって発生した市場ストレスの緩和」であるという点において、信用緩和(CE)的な政策として捉えるのが適切であるということになろうかと存じます。
それを「包括緩和」の枠組みの中で一緒くたに実施するのも後々話がややこしいことになるような気がせんでも無いですが、時あたかも非常時でございますので、まあその辺の所は「包括」緩和という包括の中で包んでしまって今直ぐ使える道具を出しました、という所なのでしょうな。
・決意表明部分
これは良い質疑応答。
『(問) 本日、大量の資金供給が行われ、札割れとなったにもかかわらず再度の供給をし、もう1度札割れが起きました。これは、金利の上昇を抑え込む、混乱を抑え込むという、断固たる決意の現れであると私は受け止めました。そういう理解でよろしいでしょうか。』
『(答) 短期金融市場で不安心理が広まると、各金融機関は資金を抱え込むことになるので、資金が市場の中で回らなくなるわけです。個々の金融機関においては、十分に資金を確保している先があっても、別の先では確保できないということも考えられます。すなわち、札割れとなっていても、金融市場の参加者の中には資金が十分ではないと感じる先もあります。このため、私どもとしては、札割れが起きても、市場の安定を確保するために必要であれば断固実行するという意味で、資金供給を行ったものです。』
・これは悪い質問
『(問) 2つ質問です。前代未聞の災害が起きている割には、買入れ額の規模感やリスク性資産の内訳が、ちょっと「しょぼい」というか、小さいような気がするのですが、どのように受止めているのか教えて下さい。また、復興に当たって、仮に、日銀の国債引受けの議論が国会で出てきた場合、総裁はどのようにお考えかお聞かせ下さい。』
短期市場のストレス緩和のためにオペ大量打ち込みをした上に、CE政策的な買入の拡大という内容を捕まえてしょぼいというのも何だかなあと思うのと、日銀の国債引受に関する質問が如何にも引っ掛け質問臭くて何だかなあという悪い質問にも程がある状況。
『(答) 今、「しょぼい」という言葉を使われましたが、私も含めて政策委員会メンバーの誰一人として、そうは思っていないということを、強く申し上げたいと思います。』
これは白川総裁珍しくお怒りの模様(^^)。
『我々は今回、リスク性資産の買入れを相当増やし、これまで資産買入総額が5兆円程度の中で1.5兆円であったものを、今回はさらに3.5兆円に増額しました。ご質問は、買入金額をご覧になってのことだと思いますが、本来は、保有対象となる金融資産にどれだけのリスクがあるのか、その民間のリスクをどれだけ中央銀行が肩代わりするのかというリスク量換算で評価すべきものです。』
『買入金額という量の多寡で話をすることは、あまり好ましくないと思っていますが、ご質問がありましたので敢えて申し上げます。以前の記者会見でも申し上げましたが、ETF・社債等は、保有に伴うリスク量が国債に比べてかなりの倍数になります。正確な倍数は、その時々のボラティリティ、すなわち価格の変動によって違ってきますから、今はその数字を申し上げませんが、国債とは異なって格段に大きくなります。従って、決して小さくありません。』
しかもご案内の通り金融市場に掛かったストレスの関係で更にリスク量は拡大している訳ですからね。
ただまあ確かにこの基金買入というのは説明的にシロートさんに(というかうっかりすると他市場のプロにも)難しい所でもある「箱」でもございますので、本当は「信用緩和政策(あるいは市場の機能不全を事前に防止するという予防的措置)」という風にして実施する方がクリアカットだったかもしれないなあとは思いますけれども、なにせ事態が昨日の今日という世界ですので、今回に関して言えば今ある「箱」を使う方が圧倒的に迅速対応できる訳で、そーゆー意味では包括緩和という箱が既にあったのは助かったという所でもあろうかと思います。
国債引受に関する質問部分に対する答えはまあこうとしか言いようが無いでしょうなと思われるのでありまして、まあ一応引用だけはしておきます。
『次に、国債引受については、現在、財政法によって国会の議決がない限り、できないこととなっています。日本銀行がどう考えるかという前に、引受は原則できないことになっています。何故、財政法で日本銀行の国債引受について厳しい制約をおいているのかについて、たち返って考える必要があると思います。一旦、中央銀行が国債の直接引受という道に踏み出すと、それが、中央銀行の物価コントロール能力に対する信認の低下に繋がって、その結果、激しいインフレになったというのが内外の経験です。そのような内外の経験に鑑みて、国会において引受を原則禁止するという規定を設けていると理解しています。』
『いずれにせよ、日本銀行が現に法律で与えられている手段を使って、物価安定のもとでの持続的な経済成長への復帰について全力を挙げていきたい、そのことだけを答えとして申し上げたいと思います。』
・リスクプレミアムの拡大防止とは
『(問) 資産買入れについて、今回、国債とリスク性資産の規模を逆転したということですが、これは民間企業の資金繰りを全面的に支援していく狙いという理解でよろしいでしょうか。』
『(答) 現時点で民間企業の資金繰りが窮迫しているという情報が入っているわけではありません。地震の発生前も民間企業の資金繰りは着実に改善に向かっており、特に大企業については、手許のキャッシュが豊かな状態にあると認識しています。リスク性資産の買入れは、資金繰りを円滑にするという効果もありますが、リスクプレミアムの拡大が様々な企業の経済活動に悪影響を及ぼすことを防ぐ方に主眼があります。』
ふーむ。ただまあこの会見が実施された月曜の午後以降の動向も日銀の関係各局は状況を確認しておられるかと存じます。
と言う訳でこんな感じで大したポイントも無くてどうもすいません・・・・
2011/03/16
お題「原発問題を受けて市場にストレスが/決定会合関連」
えーっと、本当はFOMCネタもやりたいのですが、そっちまで手を回している暇が微妙にございませんので昨日の市場のネタで勘弁でございます。
#あと、昨日ちょっと間違いがあったので訂正入れてます国債買現先を即日オペ扱いしてましたすいませんすいません
○とは言っても一応FOMC声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110315a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110126a.htm(前回)
激しく斜め読みだけしましたが、第1パラグラフでは景気の現状に対して、『economic
recovery is on a firmer footing, and overall conditions in the labor market
appear to be improving gradually.』という表現で、景気回復についての現状判断を引き上げ、労働市場に関しては1月に「顕著な改善」という表現だったのが、「緩やかに改善している」という形にややペースを下げる感じになりましたが、まあ1月に出た指標が強すぎでしたからこんなもんかと。
あと、基調的なインフレに関しての判断も上がっていまして、今回は『Nonetheless,
longer-term inflation expectations have remained stable, and measures of
underlying inflation have been subdued.』となっているのですが、この部分の内基調的なインフレ(後半部分)に関しては、前回までは「下方トレンドを辿っている」との表現でしたが、今回は「抑制されている」と、下方トレンド終了でござるの巻とこちらは中々結構な話になっておりますわな。
第2パラグラフではインフレに関して、足元の資源価格上昇の影響を、『The recent
increases in the prices of energy and other commodities are currently putting
upward pressure on inflation. The Committee expects these effects to be
transitory, but it will pay close attention to the evolution of inflation
and inflation expectations. 』としまして、資源価格上昇が現在物価上昇圧力として作用しているが、FOMCはこれらの影響は一時的であると認識している、という事でとりあえず一時的な影響としたものの、その次の文にありますように、今後のインフレおよびインフレ期待に与える影響を注意深く観察する、とございますので、全く気にしないってえ話でもないというのはまあバランスが取れていると思います。
で、金融政策決定内容に関しては第3パラグラフにありますように、今回の会合では現状の政策を継続するという決定だけで今後の政策に関する示唆は特に無かったです。4月に持ち越しという事になるんでしょうかね。
○この市場ストレスの解消は結局福島原発が落ち着かないと・・・・・
昨日の市場はまあ報道の通りでご存知かという感じですがメモメモ。
元々のベースとして福島原発の問題が継続しているというニュース(2号機の格納機が破損したとか何とか)が朝からあったのでまあ寄りから株下げ債券上げでスタートしたのですが、10時過ぎに原発関連のニュース(4号機で爆発音が起こったとか何とかだったっけ、もう何が何だか覚えてないけど)がまた流れた辺りから株が下がるわ債券が上がるわという流れになって参りました。
で、11時過ぎの菅総理の会見および枝野官房長官の会見で避難範囲は拡大するわ、漏洩した放射線が人体に直ちに影響のある大きな量だというような話が伝わり、公共放送の解説なんぞを聞いていると、その400ミリシーベルトという数値が巨大な数字であってもう本当に大変だというような状況という印象をどう見ても与える流れになっておりまして日経平均先物は現物の昼休み時間中に大暴落。会見前には第4号機の火災というような話が出てまして、その時点(11時10分ごろ)で8700円とかに下がっていたのですが、会見が終わって公共放送の解説を聞いてもう一度先物を見たら11時50分過ぎ位には8000円割れのレベルまで下落。
その後4号機の火災が鎮火したというニュースが入って12時15分頃には日経平均先物は8300円レベルに戻っていました。そのあと後場にも原発関連ニュース(もはや何が何だか覚えていない)とかで売りがもう一発来て先物は7800円安値(は12時45分過ぎでしたっけ)とかまで下がったりしてましてもうエライコッチャになりましたが、その後徐々に株式市場は戻りましたが、下落率でスターリン暴落を上回り、リーマンショックに次ぐ下落率になった(日経平均および旧ダウベース)のはご案内の通りですな。
・・・・・と、株の話をするのがメインではなくてですな、この間に債券市場ってどうなっていたのよという話をしますとですね、債券市場ってまあ前場は高寄りした後前場引けに掛けて株下げに呼応して債券上昇していた訳ですけれども、時間の経過と共に前日および当日の朝イチは堅調だった中短期が徐々に失速、というか2年は前日比レート気配が上昇とかになって来たのですな。
そして例の会見をやっている中で1年TBの入札時限を迎えた訳ですが、その落札結果は0.1853%/0.1953%という結果になりまして、前日の残存1年ゾーンの2年国債の引けが0.135%(それはそれでちょっと過大評価だと思うのだが)に対してまあ流れましたわという結果ですが、そもそもあの会見やっている中で札がちゃんと2倍以上入っている方がエライのかもしれませんな。
で、まあその落札結果ちゃんが出る前の後場寄り付きでは債券先物は前場の引けからギャップアップしてスタートして更に141円17銭の高値をマークとかしていたのですが、そうやって2年とか重いわ、1年TBの入札は流れるわと1年だの2年だの3年だのというゾーンの債券が換金売りっぽい感じにもなり、そもそも戻り売りが多い5年も売られて来ましたとか思っていたら10年も前日比レート上昇というような展開になり先物は前日比プラスではあったのですが、現物は殆どのゾーンで金利が上昇。しかもイブニングでは先物も下落していましたな。
今日入札実施予定の20年国債とかこの2日で債券先物が108銭上昇する中で6毛甘くなっていまして、まあ実弾がどうのこうのという訳でもなく甘くなっていると思われる節があるのがおそロシアな展開でございますが、この調子で今日の入札どうなっちゃうんでしょ。
まあ特に短い所に関しては昨日の動きは「マーケットにストレスが掛かっている」というテイストが出てきている次第でありまして、そのストレスを軽減するために日銀は昨日も渾身の資金供給は行っているのですが、何せ今回のストレスの根本にあるのは原発における放射能漏れとかの話ですから日銀一手でどうにか出来るかというとこれまたムツカシヤな所ではございます。何せ足元の動きに関して言えば、単に株が下がって急遽益出しをしているとかいう話ならまだ良いのですけれども、これが「質への逃避」から「資金化の動き」という展開を示しているように見える部分もありまして、マジでそういう動きだったらちとマズーではあるかなとは存じます。
月曜相場での「計画停電の影響で経済に悪影響」という時点では株は下がるけど債券は中短期なども買われていましたので、「景気に悪影響」的な認識になっていましたが、昨日の相場、特に原発の相次ぐ火災だの放射能だのというニュースヘッドラインがジャンジャン飛んでくる状態になった以降の相場のステージとはまあ違ってきたっていう感じを受けてしまったりする訳で、まだそれが本格的な訳では無いと思うのですけれども、中々こう日銀だけでどうしようもない世界の話ではございますなあとも思う次第であります。
まあこのストレスちゃんは、昨晩は東北地方で地震が起きたと思ったらその直後に静岡県東部で大きな地震があったりとか、今朝も余震があったりとか、余震の方も続いていますし(まあ昨日はそもそも朝5時台にも強めの地震がありましたけれども・・・・)、原発に関しては一々途中経過の説明を延々と報道してくれるのですが、結局どうなのかがワカランチ会長で、「もしかしたらこうなるかも」みたいな話がその間に解説されるというような流れでは市場が落ち着けというのが無理ですがなと思われる次第でして、厳しいもんがあるかと存じます次第です、とほほのほ。
これで円安に振れないのがある意味不思議ちゃんではございますが、まあ足元での動きっていうのは色々なところでポジションをクローズに向かっている所という事もまた言えるかと思いまして、為替という面で言えば外への投資が結構あったということに繋がるのではないかと存じます。
○金融経済月報:判断を上げながら先行きはヘッジクローズとな
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1103.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1102.pdf(前回)
まあ簡単に概要部分の比較だけ参ります。
・現状判断
『わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から脱しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から徐々に脱しつつある。』(前回)
上方修正、というよりは展望レポートのシナリオ通りの展開、という事なのでしょう。
『輸出や生産は、増加基調に復する動きがみられる。』(今回)
というのは前回と同じですが。
『設備投資は持ち直している。』(今回)
『設備投資は持ち直しつつある。』(前回)
と、こいつも上方修正。
『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでおり、個人消費には、持ち直しの動きがみられている。』(今回)
『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、一部の財に駆け込み需要の反動がみられる。』(前回)
と、個人消費も上方修正。
『住宅投資は持ち直しつつある。一方、公共投資は減少している。』(今回)
というのは前回と同じです。
・先行き見通し
『先行きについては、緩やかな回復経路に復していくと考えられる』(今回)『先行きについては、景気改善テンポの鈍化した状況から脱し、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)
ということで、そこだけは何となく確り目になっていますが・・・・・
『もっとも、今回の地震によって、わが国は、地理的にも広範囲な被害を受けており、当面、生産活動の低下が見込まれるほか、企業や家計のマインドの悪化も懸念される。』(今回)
まあその悪化が早速株価に出ているのですけどねorz
で、項目別見通しが何気にチャーミング。
『輸出は、海外経済の改善を背景に、基調的には緩やかに増加していくとみられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の改善を背景に、緩やかに増加していくとみられる。』(前回)
「基調的には」というのは日銀お得意のヘッジクローズでありまして、こういうのが出てくると一旦踊り場入りするか、下方修正になるかのどちらかというのが仕様になっている所でございますので、輸出の見通しが微妙にヘッジクローズ入りというのは先行き不透明感高まるという感じではないでしょうか。
『個人消費は、持ち直していくとみられる。』(今回)
『個人消費は、駆け込み需要の反動が薄まるにつれ、再び持ち直していくとみられる。』(前回)
まあ上方修正というほどでもないですかな。
『この間、設備投資は、企業収益が改善基調にあるもとで、持ち直しの動きを続けるとみられる。もっとも、設備過剰感が残ることなどから、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。』(今回)
とまあこちらも同じです。
『こうしたもとで、生産は、基調的にみると、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『こうしたもとで、生産は、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)
うげげげげ、生産にもヘッジクローズが追加されている、ということで、まあ追加で何らかの緩和があってもおかしくはないという所だとは思います。
・物価に関して
現状判断。
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで、下落幅は縮小を続けている。』(今回)
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(前回)
こちらは現象面の話だから上方っぽく見えますが、だから何といわれても困る(^^)。
先行き判断
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、小幅のプラスに転じていくとみられる。』(今回)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、基調的にみれば下落幅が縮小していくと予想される。』
(前回)
先行きに関しては、小幅のプラス、という予想そのものの上昇は実はまあ従来の見通しのトラック上にあるという話かと思いますが、前回声明文で指摘した「マクロ的な需給バランスが改善」という部分が抜けていまして、需給ギャップで勝負してこないということへの布石になるかなあとは思いますが、まあ現状の金融市場は先行きの出口の話ではないですからあまり今のところは影響なし、ですな。
#総裁会見は時間の都合でパスということで勘弁
2011/03/15
お題「相場メモと追加金融緩和に関して」
何かね、基本的にあまりテレビもネットも見ないのですけれども、為にするような話をして不安やら憤懣やらを煽っている向きがネットに散見されるようで甚だケシカランと思うのですけれども。
ところで、今日は鉄道がだいぶ動くようなのですが、鉄道が動く→人の動きが活発化する→電力使用量が跳ね上がる→計画停電増える→鉄道が止まる→帰宅難民増大、とかなると何の計画停電なのか意味が判らなくなるので勘弁して頂きたく存じます。
というか民放は輪番で停波しろと思いますしパチンコ屋とかゲーセンとか営業してるんじゃねえよと思うのですけどねえマッタクモウ。(後日追記:実は家庭の電力消費も洒落にならない多さなのだとその後気がつくの巻。高級住宅のオール電化の方も凄いのね)
○市場メモを判る範囲内で申し上げたく
昨日の債券市場と短期市場について超簡単にメモメモ。
債券市場は朝から当然のように上昇スタート(63銭高の139円83銭)だったのですが、この間戻り売りも結構あったようで徐々に上値は重くなったのですが、前場引けに掛けて余震の揺れやら原発の報道やらがあった辺りから切り返しだして、決定会合で追加緩和を協議っていうようなヘッドラインが出た所で更に上昇して寄付き直後の高値140円近辺まで上昇。
後場寄り付きは更に上昇して、高値140円29銭までマークしましたが、これまた戻りは売りの方が多くて徐々に押し戻される展開。決定会合の結果が出た後若干上下にぶれましたが、利下げとかまではなかったせいかそんなにぶれずでした。
イールドカーブは5年と先物がやたら強くて、2年も堅調ですが10年以降は重くて、後場途中に一瞬10年がかなり復活する場面もあったようですが結局は伸びきれず。イメージ的には先物〜10年〜20年でざっくり5毛ずつスティープする感じでしたが引けでは先物から10年は3毛スティープとなりました。
でまあ一応長いところに関しては保険会社さんたちの業態の支払いに向けた現金化が予想されるので云々という後付講釈もあるのかもしれませんけれども、実際に売りが出るのってそんな超長期よりも流動性の高い方に先に来ると考えるのが現実的ですし、そもそも昨日ってそんな売買ないでしょ、と思いますので、単純に投資家層が薄く、かつ通常でもマーケットの流動性が低めの当該ゾーンが叩かれやすかったというだけの話で、実際にフローがあってこうなったという訳では無いと思うのですけれどもどうなんでしょ、よー知らんが。
で、短期のほうはご案内の通りですが、朝イチの無担保コールの気配は0.12%位だったと思うのですが、即日オペ連発でござるの巻。まず朝イチ9時01分に共担即日7兆円という気合のオペ打ち込みがありまして、その後は9時30分に国債買現先即日(国債買現先は昨年の7月28日だか29日だかに残高がゼロになって以来の実施です)オペを3兆円打ち込んで、その後も10時30分に共坦即日5兆円、12時50分に共坦即日3兆円とオファー額都合18兆円の豪華供給を実施。
一応オペは全部札割れでしたが、それでも実行ベースで共坦即日が11兆2808億円、国債買現先が2兆3546億円で合計13兆6000億円を超える資金供給が実施されました。
翌日物以降スタートオペでも基金オペのロールは兎も角として、トムスタートの共坦オペ(ちなみに今日の共坦は全部全店)を3兆円実施しました。こちらは札が49733億円とこれまたがっつり入りました。
まあ今日は当然ながら皆さん資金の確保がまず第一ですので、とりあえずオペに入れるだけ入れて皆さん日銀から資金を確保。んでもってその資金が余ったら日銀当座預金に放り込んでお返しというのが尋常の姿となるのは当然の動きでありますので、まあ普通にこういう感じになるんだろうなあとは思いましたが、それにしても日銀もかなり気合でオペ打ちまくって不安心理の解消に努めたかと存じますし、まあ今日に関して言えば地震の直接的な被災に伴う資金需要だけではなく、関東地方の計画停電(どうでも良いがネパールに旅行した人から「ネパールでは計画停電ってのがあるんだよね〜」というお話を聞いたりしてたのですが)の影響で決済事務が円滑に回らないケースを想定したリスク回避の動きがあったかと思います。つーてもこの計画停電は当面続くようですから、その間はとりあえず日銀の強力な資金供給の継続が求められるかと思います。
決定会合の結果を受けて金先が押し込んだのは、その前に妙に利下げを織り込みに行って強くなった反動というチャーミングな動きによるものであったかと存じますです、はい。
まあマネーマーケットに関して言えば、日銀と直接取引をしている人で、担保がちゃんとあれば、流動性に関してはこういう非常事態発生時には日銀がきちんと面倒を見るというのが貫禄の日銀クオリティでありますので、そーゆー点では問題が起きない(ソルベンシーの問題で流動性危機が起きている訳ではないからですな)のですが、まあこういう時にやや問題が起きる可能性があるのは日銀との取引の外側にある参加者、即ち金融市場のプレーヤーで言えば保険会社さんとか投信さんとか年金さんとかになるかと思いますし、更に事業法人さんとかになる(個人の人たちに関しては基本的に銀行なりゆうちょさんがきっちり対応するのが日本クオリティ)かなあと思う訳で、その辺りを勘案した追加緩和が日銀から打たれたのはまあ中々。
そういや追記メモ:昨日のオペ残高(共通担保+基金共通担保+国債買現先)はあたくしの集計ベースだと55兆円に接近(549,791億円)53兆円近く(526,245億円)と相成っておりますな(訂正:3月15日夜)
○リスク資産買入を主にサポートした今回の追加緩和
今回の決定内容
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110314a.pdf
『(2)資産買入等の基金
企業マインドの悪化や金融市場におけるリスク回避姿勢の高まりが実体経済に悪影響を与えることを未然に防止する観点から、リスク性資産を中心に資産買入等の基金を5兆円程度増額し、40
兆円程度とする(注3)。』
『増額分の買入対象資産ごとの内訳は、以下のとおりとし、2012 年6月末を目途に増額を完了する。ただし、指数連動型上場投資信託、不動産投資信託については、日銀法上の認可取得を条件とする。
長期国債 :0.5 兆円程度
国庫短期証券:1.0 兆円程度
CP等 :1.5 兆円程度
社債等 :1.5 兆円程度
指数連動型上場投資信託:0.45 兆円程度(認可取得を条件とする)
不動産投資信託:0.05 兆円程度(同上)』
で、前回対比でそうなっているのか、と考えますと・・・・・
長期国債 :1.5兆円→2.0兆円
国庫短期証券:2.0兆円→3.0兆円
CP等 :0.5兆円→2.0兆円
社債等 :0.5兆円→2.0兆円
ETF:4500億円→9000億円
J−REIT:500億円→1000億円
ということで、非国債にウェイトが思いっきり掛かっている訳ですな。
これって即ち(会見でのヘッドラインにもそんなのがありましたが)日銀がリスク性資産の買入強化を行ってリスクプレミアムを下げていく、という意思を示したということですが、先ほどの小見出しの最後の方であたくしが申し上げましたように、短期金融市場のオペレーション実施でとりあえず「ソルベントだけど流動性が落ちている」日銀取引先の流動性確保を担保している訳ですが、その外側にいる人たちに対しても日銀が流動性供給を行う事によって、流動性低下によるリスクプレミアムの拡大を抑えたい、という意思を示したという事もいえるかと思います。
そーゆー意味では時宜を得た施策だとは思いますが、まーそこまでやるのがどうかという議論はあるかもしれませんが、今後の流れの中で保険業態さんのところでのファンディング需要が高まるケースを鑑み、何らかの流動性補完みたいなものが(超時限的な措置で良いので)出来ればなあとかも思う(まあ昨日の今日で案ができる訳ないですけど)所ではあったり無かったり。ま、こういう日の為に保険業界さん高収益叩き出しておられるのですけれども、債券市場の流動性が落ちた状態が続いた場合には(そうならないとは思うが)何らかの流動性補完みたいなものが臨時措置で出来ると良いのではないかなあとか思ってもみました。まーあっしの勝手な妄想ですが。
ちなみに須田さんが「拡大するのはリスク性資産だけで良い」という主張をして反対していますが、これが仮に「国債市場の流動性補完の為に臨時的に国債の買入を追加実施」とかだったらどういう意見になったのかはお聞きしたい所ではございますわな。
○声明文比較をすると物価の見通しが微妙に上昇していますな
今回声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110314a.pdf(再掲)
前回声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110215a.pdf
今回の声明文を主に引用しますね。
『1.東北地方太平洋沖地震の発生後、日本銀行は、金融市場および金融機関の業務遂行への影響を把握するとともに、金融機能の維持および資金決済の円滑を確保するために、万全の措置を講じてきている。また、適切な金融市場調節の実施を通じて弾力的な資金供給を行っている。』(今回)
『2.わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から脱しつつある。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続けている。先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、緩やかな回復経路に復していくという判断を維持した。消費者物価の前年比は、当面、小幅のプラスに転じていくと考えられる(注1)。もっとも、今回の地震によって、わが国は、地理的にも広範囲な被害を受けており、当面、生産活動の低下が見込まれるほか、企業や家計のマインドの悪化も懸念される。』(今回)
(注1)本年8月の基準改定に伴い、消費者物価指数の前年比は、下方改定される可能性が高い。
前回声明文ではこんな感じ。
『2.わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から徐々に脱しつつある。すなわち、世界経済の成長率は、新興国・資源国に牽引される形で再び高まってきており、その下で、輸出や生産は、増加基調に復する動きがみられる。設備投資は持ち直しつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は一部の財に駆け込み需要の反動がみられるが、住宅投資は持ち直しつつある。この間、金融環境をみると、引き続き、緩和の動きが強まっている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、基調的にみると下落幅が縮小を続けている。
3.先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、景気改善テンポの鈍化した状況から脱し、緩やかな回復経路に復していくとみられる。物価面では、引き続き、消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(前回)
という事で、細かい説明はいいんだよ!というのが今回の声明文でありますが、一応物価見通しは前回の見通しから上がっています、というかこれもまあ展望レポートの見通しにトラックした上方修正という事でしょう。
では、その上方修正があったから金融政策に出口政策方面のインプリケーションがあるかといいますと、あたくしがこの声明文を読む限り、どう見てもそんなのは全く無く、それよりも状況次第では追加緩和のおかわりを打ち込むという表明をしておりまして、まあそれをやるのかどうかは兎も角、少なくとも状況悪化に対しては機動的に対応するから安心しなさいというのを見せてはいるかと思われるところでございます。
つまりですな、
『もっとも、今回の地震によって、わが国は、地理的にも広範囲な被害を受けており、当面、生産活動の低下が見込まれるほか、企業や家計のマインドの悪化も懸念される。』(今回、再掲)
というのがある上に、最後の所に、
『日本銀行は、引き続き、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく方針である。』(今回)
とありますけど、これは前回の表現は・・・・
『今後とも、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、適切に政策対応を行っていく方針である。』(前回)
となっていて、「措置を講じる」という追加策を行うニュアンスっぽい言い方にしているのはそれなりに見せ方に工夫をしているのかな、とは思います。ちなみにこの部分英文だとこうなっています、
『The Bank will continue to carefully examine the outlook for economic
activity and prices, and, if judged necessary, take policy actions in an
appropriate manner.』(今回)
『The Bank will continue to carefully examine the outlook for economic
activity and prices, and take policy actions in an appropriate manner.』(前回)
まあif judged necessaryなら適切な措置を講じるってある意味当たり前なのですけれども、この文言が声明文にあったのって昨年の9月7日の声明文まで遡る訳ですが、その次の決定会合(10月頭)で包括緩和を実施してまして、まあそういう前例から考えると、今後も必要があれば追加緩和を実施する事になるという話で、そのトリガーとしてはやはり地震の影響が幅広く実体経済に下押し圧力をかけることが確認される、ということですから各種指標なのか、電力問題の長期化なのか、はたまた株価あたりなのかというのはよー知らんですが、まあ必要ならば突っ込む覚悟は十分です、という所なのではないでしょうか。
2011/03/14
お題「東北・関東大地震、その時の市場メモ/コチャラコタ総裁の『労働市場と金融政策』から」
今般の地震で犠牲になられました皆様のご冥福と罹災された皆様の一日も早い復旧を祈ります。こちらとしては義捐金くらいしかご協力できるものが無いと言う無力な人間でありますが・・・・
とりあえず節電協力で立会時間短縮に夜間取引無しで良いだろ、・・・と思ったのだがもしかして東証アローヘッドって半日立会に対応できないんでしたっけ????
#いつもだと朝のドラめもんですが輪番停電の可能性を鑑み夜にサイトはアップであります(ノーパソなので消費電力は低い筈)。
まあ空調とか控えて残業も控えてあと放送局も深夜番組とか無しで良いでしょ、つーか公共放送1波と民放も輪番で1波だけ放送にしておけと。
えーっとですね、でまあ今これ書いてるのイレギュラーで日曜の夜なんですけどね、明日から輪番停電は良いのですけど、明日の朝6時半からの停電するって話の詳細が夜20時半過ぎによく判らないとか正直勘弁ですよ。
つーかね、あたしゃこの週末殆どテレビとかPCとかつけなかった(見ると無力感が益々深まってくるだけなので)のですが、何か改めてテレビを見てると情報が全般的に小出しになっていてこれじゃ却って不安増幅しねえかって思うのでありました。
あと、今年の夏はもう全員アロハスタイルで仕事だな。PCの熱暴走には注意しないとorz
(月曜追記分)えーっと、全然無計画の計画停電で朝になって鉄道止まりまくりとか勘弁して下さいな。しかも停電の影響がいろいろとあるの朝になって判るとか。せめて日曜の午前中に発表してくれれば対処のしようもあるというのに・・・・・・
○地震発生時の相場ですが
最初縦揺れが長時間来て「これは凄く大きいぞ」とか言ってたら横揺れが凄い勢いで来まして、その揺れが続く中で債券先物がドンドン上昇。株も下がっておりましたが、その揺れが徐々に収まるに連れて先物の価格も下落していきましたが、良く良く考えて見たらこんな大地震で円債買いなのかよという気が思いっきりする中でBBは現物の売買止めるわ、そもそも専用回線以外の電話が繋がらなくなるわと大変な事になる中でとりあえず15時を迎えました。
ブルームバーグのメールはさすがにクローズなシステムなだけに繋がっていましたし、インターネット経由のメールも比較的無事でしたが、電話線も怪しい中でBBの引けは16時15分頃にちゃんと出まして(先物から何となくカーブを引いてみましたという感じでしたが)、まあ良く頑張ってプライス出ましたと感心する次第。
株式市場は当然の如く下落しましたがイブニングセッションは10000円割れとかやってましたがその後は若干戻っていました。為替は地震の時には円安に振れていましたけれども・・・・・
しかし海外市場で「レパトリの思惑」で円高になって米債が売られるとは何と言う反応と思ってしまいましたです。日本売りにならないというのは日本の今まで蓄積した力がどんだけあるんだよという所であります。
○コチャラコタ総裁の「労働市場と金融政策」に関する講演はQEの現状維持を示唆(か?)
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4627(概要)
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_slides_March3_2011.pdf(スライドショー)
・・・・・ということでスライドショーまで含めて読んで見たのですが、結局これがまた内容が高級(のように見える)でワカランチ会長という泣ける状態でありまする。なお、基本的に引用は概要(Executive
Summary)の方から参ります。
どうも今回の講演のキーワードの一つ目が『nominal rigidities 』という奴でして、
『In the 1970s, the United States experienced high inflation and high unemployment
simultaneously. That experience made clear that accommodative monetary
policy may not always be an appropriate response to high unemployment.
In the intervening thirty years, macroeconomists have engaged in a careful
reconsideration of the exact role of monetary policy.』
で、まあここの一部だけ切り取ると「緩和的な金融政策は高失業率下における金融政策として必ずしも適切ではない」という事になるのですが、別に今回はこういう話をしている訳では有りません。
と言いますのもその次に・・・・・
『In this speech and the accompanying notes, I ask two questions. First, what can policymakers learn about the current level of u* from the aggregate data on unemployment and vacancies? Second, what other data can be useful in informing policymakers about the current level of u*?
』
『The main conclusion of this research is that the primary role for monetary
policy is to offset the impact of what economists term nominal rigidities
- that is, the sluggish adjustment of prices and inflation expectations
to shocks.』
ということで、名目的硬直性とか言うようですが、何かよー判らんですが、金融政策は価格やインフレ期待などがショック(上方下方共に、という事だと思います)に対して調整するのが遅れる、というのが名目的硬直性という事らしい(すいませんあたくし経済学専攻してないもんでよく判らないです)ですけど、それによる経済のインパクトを抑えるのが金融政策の第一の目標である、という話をしているようです。スライドショーでも何となくそんな感じの話がありました。
で、それが労働市場とどういう話になっていくのかというのがその後。
『With that conclusion in mind, my slides define the natural rate of unemployment
to be the unemployment rate u* that would prevail in the absence of any
nominal rigidities. To offset nominal rigidities, monetary policy accommodation
should track the gap between the observed unemployment rate and u*. The
challenge for monetary policymakers is that u* changes over time and is
unobservable.』
その名目的硬直性とやらが無い時の自然失業率を測定する事によって、現実の失業率が自然失業率とどのように乖離しているかを見る事ができて、その結果として名目的硬直性がどういう状態にあるのかが判るので、それに対応した金融政策を実施する事ができる。即ち、金融緩和は自然失業率と実際の失業率の間のギャップを埋めるような度合いで行えばよいという事のようですな。
ただまあ最後の文にありますが、その自然失業率がそもそも時間の経過と共に変化しうるものであり、直接観測できるものではない、というのが金融政策運営上の課題になるというお話をしています。
『In this speech and the accompanying notes, I ask two questions. First,
what can policymakers learn about the current level of u* from the aggregate
data on unemployment and vacancies? Second, what other data can be useful
in informing policymakers about the current level of u*?』
ということで、ではそもそも自然失業率を算出できるのかねという話になるようで。
『In answering the first question, I apply the canonical Diamond-Mortensen-Pissarides
model (for which the three won the Nobel Prize in Economic Science in 2010)
to the aggregate data on unemployment and vacancies. I find that the model
and data do not provide a definitive measure of u*. Unemployment insurance
benefits have increased since December 2007. Firms expect higher taxes
and higher input prices. It is possible that these changes in labor market
conditions may have been sufficiently large to generate a big increase
in u* in the past three years.』
もはや訳の判らん世界です(汗)。この辺の話はスライドショーを見た方が良かったりします。
『However, it is also possible that low job creation is largely attributable
to nominal rigidities that are generating low demand. In this case, u*
will have changed little since December 2007. In the notes that accompany
the slides, I show that the resulting possible range for u* is large: from
as low as 5.9% to as high as 8.9%.』
で、結論としてはその自然失業率は5.9%から8.9%の間とな。
『In terms of the second question about auxiliary information sources,
I proceed more heuristically. The basic intuition is that u* is low if
high unemployment is being generated by low demand. Hence, I look for information
about the current level of demand. I find that business surveys and the
current data on inflation both point to u* being low relative to the current
unemployment rate.』
ということで、上記のレンジではあまりにも広すぎで他の補助的データで計測するとどうなのよ、という話なのですが、結論は自然失業率が現在の失業率よりも低いという事になるようで。
『I conclude that the current accommodative stance of monetary policy is
appropriate. However, the Federal Open Market Committee will need to remain
vigilant to the possibility of changes in the gap between the unemployment
rate and u*. 』
結論としては「現状の緩和的な環境は適切」という話になりまして、まあ現状でこの話をしていると言うことはQE2の縮小という話はコチャラコタ総裁からは出てこないでしょうなあ、というのが結論だと思います。
#さて、出勤できるのかね
2011/03/11
お題「セントルイス連銀ブラード総裁の量的緩和論/その他」
また後出しじゃんけんですか帝王趣味の老害さんは。まあ老害さんの弟子を自認している横滑り狙いさんがこれでプギャー状態になったのはワロスワロス。
○BOEは金利据え置き(メモ)
詳細(=議事要旨)は後日出るので今回は結果だけ。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2011/023.htm
News Release
Bank of England Maintains Bank Rate at 0.5% and the Size of the Asset Purchase
Programme at £200 Billion
まあ2月の議事要旨を先日ネタに致しましたが、4QのGDPが委員会の予想よりも悪かったという事実が重くて、景気の先行きが微妙になっている中で利上げするのかという話はできません罠、というのは2月の議論から見て予想される所だったと思われまして、今回の決定は市場予想通りという感じだったようですわな。
では今後はどうなるかと言いますと、基本的には景気の上向きが確認(=4Qの落ち込みが一時的であると確認)されれば普通に利上げする(でも利上げサイクルに入る訳ではない)でしょうし、一段のポンド安進行が起きた場合にはポンド下落を何らかの手段で止めたくなるでしょうから、やるやる詐欺スキームで何かやるのかもしれませんな、と思ってまふ。
それはそれとして2月24日に実施されたセントルイス連銀ブラード総裁の量的緩和政策に関する講演から少々。
http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=915
FEBRUARY 24
St. Louis Fed’s Bullard Discusses Quantitative Easing, Global Inflation,
and Commodity Standards
講演に関してはこちらのページに要旨があって、中のPDFバージョンはスライドショー形式になっています。スライドショーなので結局のところ要旨を見てもまあそんなに変わらんかったです、というか要旨部分を読んだ後にスライドショー見たら結局のところ要旨見るだけで十分だったということに気がつきましたので、皆様におかれましてはまあ上記URL先の要旨だけよんでおけばヨロシアル。
○ブラードさんと言えば量的緩和が必要という話を真っ先に平場でした人だけに
あたくしだいぶ後からヒーヒー言いながらブラードさんのペーパーを読みましたけれども、昨年のQE2導入前に「時間軸政策を採用するとデフレ均衡に陥るリスクが高まるので量的緩和政策を導入すべし」という趣旨のペーパーを出して話題になった訳ですな。URLにあるように出たの7月28日でござるある訳ですよ。
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/SevenFacesFinalJul28.pdf
Seven Faces of "The Peril"
このときの文章に関しましては昨年の8月16、24、25日に泣きながらヘタクソ解釈をしておりますのであたくしのヘタクソ解釈でよければ過去ログをどうぞですぅ。
・・・・とまあそういう人が量的緩和政策の話をしているので読んでみた訳ですが、基本的にブラードさんの今回の講演ではそんなに斬新な話がでているわけでもないですけれども論点は面白いです。あと、講演のお題にある「Commodity
Standards」っていうのは「なんかの商品本位制」みたいな意味でして、そういう文脈で「本位制よりもインフレーションターゲットの方が良い」という話をしているのですが、この部分は今後の政策運営として話をしているのか、はたまた一般論で話をしているのかは文脈では微妙に判らなかったですので、このペーパーだけで「量的緩和の次の政策としてインフレターゲット導入を主張」という風に読むのがちょいと微妙な気もせんでもないであります。
あ、それからそれから、肝心の事書き忘れましたが、ブラード総裁はQE2の今後について「経済状況が改善しているので、今後はQE2の規模を減らすかどうかという議論をするのが自然な姿」とあっさり味で出口政策の話をしているというのもありまして、その話が出てから最後にコモディティースタンダードのネタがあるので、今後の金融政策として意識しているのか単に本位制議論に釘をさしているのか、というのがちょっと判らんかったということでありまする。
『In his presentation, “Quantitative Easing, Global Inflation, and Commodity
Standards,” Bullard first explained how the Fed’s second round of quantitative
easing was a substitute for ordinary monetary policy easing, concluding
that quantitative easing “is an effective tool when the policy rate is
near zero.” He then examined whether U.S. monetary policy analysis should
focus on a global output gap rather than the U.S. output gap. Finally,
Bullard briefly discussed the merits of commodity standards and inflation
targeting, stating that “inflation targeting is a better choice in the
current environment.”』
ということで論点をいくつか拾ってみます。
○量的緩和政策はゼロ金利制約の下では伝統的金融政策に似ているという話
『Regarding the motivation for QE2, Bullard highlighted the disinflationary
trend in 2010 and added that the “Japanese experience with mild deflation
and a near-zero nominal interest rate has been poor.” Given the near-zero
policy rate environment, Bullard said that “asset purchases can substitute
for ordinary (interest-rate targeting) monetary policy.”』
そこにある日本の経験がどうのこうのというのが前回ネタにした講演にありました「ゼロ金利と望ましくないインフレ率の均衡状態」というものでありまして、QE2の実施は「ディスインフレ的な圧力に対して実行したもので、これは通常の金利ターゲット政策の代替として機能した」という説明になっているのですが、前回の講演で話していた論議と微妙に違っているような気がせんでもない所でありますが、今回はスライドショー形式で細かい話が読み取れないので判断保留。
『Bullard stated that ahead of the November FOMC meeting, the policy change
had been largely priced into markets, and the financial market effects
were conventional. In particular, he said, “real interest rates declined,
inflation expectations rose, the dollar depreciated, and equity prices
rose.” Bullard added, “These are the ‘classic’ financial market effects
one might observe when the Fed eases monetary policy in ordinary times.”
Bullard concluded that “quantitative easing has been an effective tool,
even while the policy rate is near zero.”』
量的緩和政策を実施するというアナウンスによる市場の反応は伝統的金利操作による金融緩和によってもたらされるものと同じものであって、その効果としては「実質金利の低下」「インフレ期待の上昇」「ドルの下落」「株価の上昇」を挙げています。つまり量的緩和は金利がゼロの下では伝統的政策と同様の効果を上げるツールとして機能した、という結論になっています。
まあここではやはりブラードさんも「実質金利の低下」と名目金利の低下には触れない所がコチャラコタ総裁と同じでして、まあ効果を主張するのならどう見てもこちらの方がスマートという事でしょう。
○今後は量的緩和を減らすとかいう話が「自然な議論」でしょとの指摘
で、その続き。
『Since QE2 was announced, the economic outlook has improved, Bullard noted.
“The natural debate now,” he said, “is whether to complete the program,
or to taper off to a somewhat lower level of asset purchases.”』
ほほう(^^)。
○グローバルインフレに関して:グローバルな生産ギャップの影響を考慮という話
次のお題は『Global Inflation: Should the U.S. Consider Global Output Gaps?』というものでして、ここの論点が面白かったです。
『Bullard noted that some critics suggest the Fed is encouraging global
inflation, which may imply that the Fed is not appropriately weighing global
conditions. He noted that “the Fed is charged with controlling U.S. inflation,
but perhaps global inflation will drive U.S. prices higher or cause other
problems.”』
ということで、「米国のQE2政策がグローバルインフレーションを引き起こしている」という毎度お馴染みの批判に対しての反論を述べているのですが、その中でブラード総裁が指摘する興味深い論点として、その最後の文にあるように、「グローバルインフレが米国の物価を必要以上に上昇させたりその他の悪影響を与える事が有り得ます」ということで、こんな話をしています。
『Bullard highlighted the different recovery speeds and inflation trends
of advanced and emerging economies.』
いわゆる「two-speed-recovery」という各国の中銀の方々が指摘する話でもあり、グローバルインバランスの話でもありますが・・・・・
『During the global recovery, advanced economies have experienced moderate
growth and a deflationary trend, while emerging economies have experienced
strong growth and an inflationary trend. “Inflation is a threat especially
for countries with quasi-fixed exchange rates with the dollar,” he said,
noting that “those countries are choosing to import U.S. monetary policy
to some extent.”』
その回復力の違いによって先進国のデフレーショナリーなトレンドと新興国のインフレーショナリーなトレンドが発生しているのですが、その中でブラードさんは「インフレは準固定な為替政策(=ドルペッグ的な政策、ということですから中国とかも含まれるのでしょう)を取っている国にとって最も脅威である、なぜならこれらの国は為替政策によって米国の緩和政策を幾分か取り入れているからです」と指摘していてまあその通りですなという感じです。
と、為替政策の話をした後はグローバルな生産ギャップの話。
『Much monetary policy analysis focuses on the U.S. output gap, Bullard
noted. He then posed the question of whether the U.S. should focus on a
“global output gap.”』
『He raised the possibility that a global output gap might give a better
indication of global conditions and cited studies that suggest it might
give a better indication of future U.S. inflation.』
米国国内だけの生産ギャップよりも、グローバルな生産ギャップを見た方が米国の将来のインフレを予測する時に有効ではないかという話ですな。
『“U.S. policymakers often say the U.S. output gap is large; this is interpreted
as putting downward pressure on U.S. inflation,” Bullard said. In contrast,
“the global output gap is probably much narrower or even positive; this
would then be interpreted as putting upward pressure on inflation.”』
つまり海外のインフレが米国のインフレに影響を与える可能性を考えると、米国の生産ギャップが大きいからインフレ圧力を下げるという議論だけしているのは片手落ちになる可能性がある、という事を指摘していると思われます。
でね、まあここを読んでて「ほほー」と思った訳ですが、この前ネタにしたBOEの議事要旨でも「経済の余剰生産力がインフレ押し下げに寄与する程度は各種の要因によって異なってくる」という議論がありましたし、一方で日銀でも前回の決定会合の声明文で「需給ギャップ」に関する文言を削除(ただし月報では文言は残りますが)していまして、各国の中銀も「国内の生産ギャップだけを見ているとインフレトレンドを読み間違える可能性がある」という点を意識しているのではないかなあと思った次第でございます。
『Bullard said that his past criticisms of gap-based analyses of inflation
dynamics still apply. For example, he noted that “empirical relationships
between gaps and inflation are shaky.” “Still,” he concluded, “the
idea of ‘global output gaps’ is one way to frame the recent criticism
of the Fed and promote fruitful debate.”』
「経験的なギャップとインフレーションの関係は揺らぎやすい」とブラードさんは指摘しておりますが、グローバルギャップの議論に関してもこれからの論議が必要という話のようですな。
○商品本位制よりもインフレターゲット
『Commodity Standards and Inflation Targeting』というお題の所から少々。
『Although commodity standards were last discussed when U.S. inflation
was high and variable, Bullard noted that today, inflation is quite low.
He added, “Tying the currency to commodities when commodity prices are
highly variable is questionable.”』
そらそうやとしか申し上げようが無いですが、米国では商品本位みたいな意見も出てたりするのねという方がへーと思いましたが。
『While a commodity standard forces accountability on the central bank,
“it did not always work because governments sometimes changed the rate
between the commodity and the currency,” Bullard said. “Inflation targeting
is another way to force more accountability to the central bank and anchor
longer-term expectations. Make the central bank say what it intends to
do,” he said, “and hold the central bank accountable for achieving the
goal.”』
いわゆる商品本位制は必ずしもワークする訳ではなく(政府が本位通貨の比率をいじってくる可能性がある為)それよりもインフレターゲットの方が良い、という話をしていますが・・・・
『“Inflation targeting,” Bullard concluded, “is the appropriate modern
alternative to historical commodity standards.”』
というまとめになっていて、まあ別にブラード総裁は今後の政策フレームとしてインフレターゲットを設けるという話をしている訳ではなさそうに読めますがどうでしょうかね。
ということで、まあ足元の政策インプリケーションとちと違う話が多いですが、この中で足元の政策インプリケーションを読みますと、「経済が改善しているので今後の政策論議の中でQE2の縮小の話がでるのは自然」「米国内の大きな生産ギャップだけではなくてグローバルなギャップを見る必要があるのではないか」というような部分ではないかと思われまして、ブラードさんのイメージとしては出口模索的なイメージであり、物価に関して先行きは上向きの見方になっている、という所ではないかと存じます。
2011/03/10
お題「白川総裁のドイツでの講演から」
白川総裁のドイツでの講演から。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110309a.pdf
通貨管理におけるイノベーションと挑戦の150年
本当は英語版ですので本ちゃんはこちらですが面倒なので日本語訳で勘弁。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2011/data/ko110309a.pdf
150 Years of Innovation and Challenges in Monetary Control
○中央銀行の役割がどうしたこうした
例によって例の如く白川総裁はこういうところでは中々格調の高い話をしているのでありますが、今回は講演のお題にありますように通貨管理という表現で金融政策に関する話をしています。でまあ前半の中央銀行の役割がどうのこうのというのも中々面白いのですが、そこはサラサラと引用するだけにしておきたく存じます。
『2.通貨の管理における4つのイノベーション』というのが冒頭の小見出しになります。
『人類の経済活動の中で、通貨の発明自体が極めて大きなイノベーションですが、その通貨を管理するという面でも、人類は様々なイノベーションを実現してきました。以下では、近代において、私が特に重要と考える4つの通貨管理のイノベーションについて説明することから話を始めようと思います。』
で、その4つというのは・・・・
『中央銀行という組織の発明』
『中央銀行が創設されることにより、金の発見といった偶然的な要因に左右されずに通貨を能動的に管理することが可能となり、また金融市場での取引を通じて通貨を体系的に管理する仕組みが可能となりました。』
ほほう。
『「最後の貸し手」の発明』
『この著書(引用者追記:『ロンバート街』)の中で、バジョットは、金融システムの動揺を防ぐため、「中央銀行は危機時において、懲罰的な金利で、しかし無制限に貸出を行うべし」という「最後の貸し手」の行動原理、いわゆるバジョット・ルールを定式化しました。バジョット・ルールの実際の適用の仕方は金融市場の変化に合わせて修正が図られていますが、今回のグローバル金融危機の際も、欧州中央銀行や日本銀行を含め、各国中央銀行は市場に対し「最後の貸し手」として積極的に資金を供給し、それによって金融システムの崩壊を防ぎました。「最後の貸し手」としての原理が打ち立てられたことの意義はまことに大きいものがあります。』
まあ何だかんだ申しましても中央銀行が一番活躍するのってこの件だと思う。金融市場現場労働者的に言えば。
『金融政策の発明』
はて??
『かつての金本位制の下では、通貨量は金の保有量に制約されており、物価や経済活動水準に能動的に影響を与えることはできませんでした。この意味で、中央銀行が金融政策を展開する余地は限られており、実際、バジョットの著作には金融政策は登場しません。本格的な金融政策は、管理通貨制度に移行してから始まりました。今日では、適切な金融政策は、マクロ経済の安定に貢献し得る政策手段のひとつになっています。』
なるほど。。。。
『中央銀行の独立性という概念の登場』
キタコレ。
『例えば、第一次世界大戦後の国際的な経済ならびに金融システムの再建を目指して1922
年にジェノアで開かれた国際経済会議では、同会議の通貨に関する決議事項において、「銀行、特に発券銀行は、政治的中立を維持すべきである」と提唱されています。この中央銀行の独立性という考え方が定着する上で、ドイツの国民やその支持を受けたドイツ連邦銀行の貢献が非常に大きいことは言うまでもありません。』
『第二次世界大戦直後の8年間という困難な時期に日本銀行総裁を務めた一萬田尚登は、若き日に日本銀行のベルリン駐在として、第一次世界大戦直後のハイパー・インフレーションを終息させた「レンテン・マルクの奇跡」に立ち会いました(図表4)。そのときの経験は、日本の戦後の金融政策運営にも活かされたと言われています。』
ライヒスバンクとか一萬田尚登さんとかブンデスバンカー炸裂の香りが(^^)。いやまあこの講演ドイツで実施してるのですけどね。
で、最後におまけのように書いてあるのがマネーサプライターゲットとかインフレターゲットの話で、これがまた微妙にチャーミング。
『日本銀行はマネーサプライ・ターゲティングを採用しませんでしたが、1970年代から80
年代前半にかけて、ドイツ連邦銀行を含め、多くの先進国中央銀行で採用されました。しかし、その後、金融の技術革新を背景にマネーサプライと物価上昇率や経済活動との安定的関係が崩れるようになると、マネーサプライ・ターゲティングは有効に機能しなくなり、放棄されるに至りました。カナダ銀行のブーエ総裁は「我々がマネーサプライを捨てたのではなく、マネーサプライが我々を捨てた」という有名な言葉を残していますが、技術革新という環境の変化が通貨管理の具体的手法を変えたと言えます。』
ほほう。
『1980 年代後半以降、多くの国の中央銀行で―ただし、FRB、欧州中央銀行、日本銀行は除かれますが―採用されたのが、インフレーション・ターゲティングです。この手法は、インフレを抑制し、あるいは低下したインフレ率を定着させる上で効果を発揮しました。しかし、この枠組みあるいはその背後にある一般物価の安定を重視する考え方も現在、新たな挑戦に晒されているようにみえます。』
キタコレ。
『2000 年代半ばにかけて、物価安定という基準からすると、何ら問題のないと思われた良好な経済状態が長く続いていたにもかかわらず、大規模な信用バブルが発生し、その後、グローバル金融危機が発生しました。そして、現在、少なからぬ先進国はバブル崩壊に伴う厳しいバランスシート調整を経験しています。こうした事態の展開は、インフレーション・ターゲティングや金融政策運営の仕方にも微妙な影響を与えています。』
白川総裁の場合はドヤ顔で話をするという雰囲気の無いお方ですし、あたくしのような下衆とは違いますのでBOEプギャーとかFEDビュープギャーなどとはもしかしたら腹の中でも思わないのかもしれませんが、まあ何となくそんな事を感じてしまう下衆下根のあたくしなのでありました(^^)。
『勿論こう言ったからといって、私はマネーサプライ・ターゲティングやインフレーション・ターゲティングに意味がないと主張している訳では決してありません。私が申し上げたいことは、過去の歴史は、「最後の貸し手」であれ、金融政策であれ、環境の変化に合わせて通貨管理の具体的な手法を常に見直していく、すなわち、イノベーションが必要であることを示唆しているということです。』
ということで、プギャーだの麿が正しかったでおじゃるとかいうような話ではなく、「自分たちが今行っている事、行おうとしている事が最も適切な手段なのかどうかを常に謙虚に見直す事を続けるべき」という謙虚な姿勢を表明している訳ですが、これが多分狸とかポーズじゃなくて恐らく素でこう考えていると思われるのが白川総裁クオリティ。
#なのになんで実際の金融政策になると妙に強気の話とか打ち込んでくるのかが微妙ですが
○サブプライム後の金融政策を「LLR」と「ゼロ金利制約下の追加緩和」に分ける
この整理は重要な論点であります。FRBでもコチャラコタ総裁とかはこういう分け方で説明をしていたりしましたが、バーナンキ議長の議会証言とかではこの辺りを微妙に曖昧にして説明しているような気がせんでもないですが、まあFRBも資産買入とそれ以外の貸出プログラムを分けて説明する傾向にありますので、この分類はそういうことになるんでしょうなあと。
『非伝統的な政策という言葉で思い浮かべる内容は論者によって異なりますが、金融危機の真っ只中でとられ「最後の貸し手」を強く意識した金融システムの安定を目的とした措置と、危機が収束した後の平常時にマクロ経済の安定化を目的としてとった金融政策とに分けてお話します。』
この分け方は判り易い。
『まず、前者ですが、今回、主要国中央銀行のとった行動は、本質的に、バジョットの強調した「最後の貸し手」としての原則に沿った行動と言えます。しかし、当然のことながら、21
世紀の金融システムは、バジョットの生きた19 世紀のそれと、全く同じではありません。世界の中央銀行は、バジョットの想定していなかった新たな挑戦に直面し、様々な工夫を行いました。』
『スティグマの解消』
『第1の挑戦は、いわゆる「スティグマ」の解消です。危機に際しては流動性の積極的な供給が不可欠ですが、金融機関は、流動性供給を受けたという事実が明らかになると、そのことによって信用が低下したとみられるのではないかと警戒し、緊急時でも流動性供給を受けることを躊躇し、なんとしても市場で調達しようとしがちです。そうした金融機関の集合的な行動の結果として、流動性不足はさらに悪化し、金利水準も上昇します。』
でまあその結果としてFRBはTAFを導入しましたね、という話になっていますが、ちょうどあたくしが(全然別の文脈ですが)ネタにしたばかりの件でしたが、まさにこういう市場のロジックを理解している方が外部登用の審議委員に欲しい訳ですよ、特に市場にストレスが掛かるような時には。
『市場流動性の枯渇への対応』
『第2の挑戦は、市場流動性の枯渇への対応です。』
『市場取引の相手方の信用力に対する警戒感、すなわちカウンターパーティー・リスクが極度に高まると、取引相手が市場からいなくなる「市場流動性の枯渇」という事態へと発展しやすくなります。資産の投売りが広がって市場価格の急落が始まれば、資産の評価損によって多くの金融機関の自己資本が毀損され、ソルベンシーの問題へと発展する可能性もあります。』
つーことで何をしましたかという話ですが。
『そのような事態を防ぐためには、伝統的な「最後の貸し手」の手法による流動性供給だけでは十分ではありません。お互いに疑心暗鬼になっている市場参加者の間に立って、誰かが安心できるカウンターパーティーになる必要が生じます。危機において、その役割を果たしたのが中央銀行でした。』
ですな。
『外貨流動性の供給』
『第3の挑戦は、外貨流動性の供給です。』
これはドル資金供給の話ですが引用割愛。
とまあここまでがLLR的な動きとしての対応で、資産買入は同じ「非伝統的金融政策」であっても、これは別の対応である、と分類しています。FRBはQE1実施の時にその辺りの説明を微妙に曖昧にしながら突っ込んで行きましたが、まあ最近は(先ほど申し上げたように)FRB高官もこういう感じでの分類をしていますなあという所でございますです。
『非伝統的金融政策』
『今回の危機後、主要国中央銀行は、マクロ経済の安定化を目的とした非伝統的金融政策も実行しています。これは、短期金利のゼロ制約の下で、経済を安定的な回復軌道に乗せるため、いかにして緩和効果を創り出すかという課題への挑戦です。』
なるほど。
『例えば、FRB が2010 年秋に決定した国債買入れの増額は、長期国債を大規模に買い入れることにより、民間部門の金利リスクを吸収し、長期金利の低下を狙ったものです。日本銀行が2010
年秋に決定した「包括的な金融緩和政策」も、非伝統的な措置を数多く盛り込んだ政策です。特に、金融政策としてのオペレーションの対象を、国債だけでなく、CP、社債、上場株式投信、不動産投資信託にまで拡張した点で、極めて異例性が強い措置です。日本銀行の買入れは、短期金利の低下余地が限界的となっている下で、各種リスク・プレミアムの縮小を通じて経済活動を刺激することを目的としています。』
まあQE2にしろ包括緩和にしろ、導入の時に「長期金利の引き下げ」「リスクプレミアムの縮小」という話をしてまして、この部分に関して言えば名目を下げるのか実質を下げるのかという論点があって、特に市場規模がでかくて他の要因での決定力の方が大きい中長期金利市場に関してはどう見てもお前話が違うだろというような結果になっているのが少々微妙な所であります。
まあ包括緩和での「長めの市場金利の引き下げ」というのは正直言ってFRBのQE2導入前の「長期金利下げるぞコノヤロー攻撃」に煽られてしまった面が多々あるような感じですので、そーゆー意味では同情の余地もあるのですが、そもそも話を突っ込んだ時に日銀の場合は「2年までの国債を買いまっせ」と何となく市場的にも「そうか2年だったら日銀の庭先のちょっと前くらいだから行けるのかも」とか思われてしまう所が微妙だったかなとか思います。FRBの長期金利云々に関しては、雨公どもはマジで長期金利引き下げとか思ってたかもしれません(つーかそういうプライスアクションしていましたし)が、まあ傍観者的には「長期金利のコントロールとかQE1でも出来なかったのに土台無理じゃろ」という感じだっただけにね(^^)。
話が逸れましたなorz
○中央銀行は本来流動性の供給を行うべきであるという話
日本の金融危機(90年代後半)の施策の話もありますがそこはスルーして最後の方から。
『第1の挑戦課題は政府と中央銀行の役割分担という問題です。危機時に「最後の貸し手」として行動する際、中央銀行は、直面している問題が流動性に関するものなのか、金融機関のソルベンシーに関するものなのかを判断しなければなりません。』
で、ソルベンシーの救済となると財政政策になっちゃいますよね、という話をして、そのまとめの部分がもう全く仰る通りという結論なので耳をかっぽじって聞くべし。
『中央銀行に独立性が与えられているのは、基本的には、その使命が流動性の供給だからです。個別の資源・資金配分に関与する度合いが強まるほど、そうした政策措置は準財政政策の色彩を帯びますが、民主主義社会において財政政策は議会において決定されるべきものです。しかし、一方で、経済や金融の安定を維持するために、何らかの危機に対応して機動的に行動することも必要です。この問題について普遍的に妥当する正解があるようには思えません。日本銀行について言えば、この難しい問題について、経済情勢の厳しさや切迫度、中央銀行の法律的な枠組み、社会の許容度等を踏まえて重い決断をしてきたと思います。』
○そして最後にBISビュー節が炸裂するのであった
まあドイツでの講演ですし(え?)。
『そのような難しい挑戦課題を考えるにつけ、何よりも、そうした状況に陥らないように予防措置をとることが重要という、自明なことを言わざるを得ません。この点では、金融政策の果たすべき役割について深く問い直すことが不可欠です。』
どう見てもBISビューです本当にありがとうございました。
『過去20 年間、金融政策はバブルにどのように対応すべきかというテーマほど、議論されたテーマはなかったように感じています。グローバル金融危機以前の正統的な考え方は、一言で言うと、バブルに金融政策は対応すべきではなく、バブルが崩壊した後に中央銀行が積極的な政策対応をとれば解決できる、というものでした。この文脈では、日本の「失われた10
年」は、日本の政策対応の遅れが主因であるとして簡単に片付けられていました。』
『しかし、米国の住宅バブルが崩壊して既に5年目に入ったにもかかわらず、この間、米国の実質GDP
がほとんど拡大していない事実に直面して、そうした楽観的な見方を支持する論者はほとんどいないと思います。』
・・・・・・・・・(^^)
『過去 20 年間の経験から得られる第1の教訓は、「物価の安定は重要ではあるが、それだけでは経済の安定を意味しない」ということです。』
『バブルは低金利の持続予想だけでは起きませんが、それなしに起きないことも事実です。物価安定は重要ですが、足許の物価上昇率の動きだけに過度に焦点が当たると、物価安定の究極の目標である経済の安定から見て重要な金融システムの安定を阻害することにもなりかねません。』
来ましたな。
『第2の教訓は、金融政策がファイン・チューニングの方向に振れ過ぎることの危険性です。もちろん、ファイン・チューニングができれば理想的ですが、金融政策にはそれ以上に中長期での金融経済の安定確保という重要な役割があるように思います。』
そしてECBの二つの柱と日銀の二つの柱の比較が出るのであった。
『この点、金融政策運営を考えてみますと、欧州中央銀行と日本銀行のアプローチは似ているように感じています。欧州中央銀行は、経済分析(economic
analysis)で、経済・金融動向に焦点をあてつつ、短期から中期の物価の決定要因について評価し、マネタリー分析(monetary
analysis)で、マネーの面から中・長期的な物価動向を評価し、これらをクロスチェックするというtwo
pillar approach を採用しています。』
『日本銀行の金融政策の枠組みは「2つの柱(perspective)」による政策運営ですが、第1の柱では、先行き1年から2年の経済・物価情勢について、最も蓋然性が高いと判断される見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長の経路を辿っているかという観点から点検が行われます。第2の柱では、より長期的な視点を踏まえつつ、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現するとの観点から、発生の確率は必ずしも大きくないものの、発生した場合には経済・物価に大きな影響を与える可能性のあるリスク要因も点検しています。様々な情報から金融面の不均衡についても点検する習慣(practice)を組み込んでいるという点で、日本銀行と欧州中央銀行の金融政策の枠組みには共通点があります。』
そしてその後はマクロプルーデンスの話と白川総裁絶好調。
『金融政策上どのような枠組みを採用するにせよ、日本の経験や今次グローバル金融危機に示されるように、確率は小さいが起きれば非常に大きな影響を及ぼすリスク、すなわちテール・リスクへの備えは、今後ますます重要になっていくと考えられます。これらの課題はマクロ・プルーデンス政策という名前の下で議論がなされています。そのためには、まず、リスクの的確な把握が不可欠です。この点、欧州では本年1月、欧州システミック・リスク理事会が始まりました。』
さらには予防的措置が重要と益々快調な白川総裁。
『そうした分析面の努力と同時に、社会として問われているのは、予防的措置をとることの是非であるように思います。この点では、独立性とマンデートの明確化は、マクロ・プルーデンス政策を運営するための大前提ですが、それだけで必要な政策がとられると考えるのは楽観的です。たとえ経済環境が良好に見えたとしても、バブルが起こるとその後のコストは極めて高くつくので、あえて「パンチボール」を持ち去ることが必要という考え方が、社会全体として受け入れられるかどうかが重要な鍵を握っています。』
まあその考えは雨公には絶対に受け入れられないと思いますし、もう一つの俺様国家でありますところの中華人民共和国もそういう考えはしなさそうな気がするのが実にこうアレな所ではないのか、と思うあたくしなのでありました。
#引用手抜き大会で恐縮至極
2011/03/09
お題「須田さんの後任に白井早由里さん/BOE議事要旨の続き」
最近は相場様の方がどうも期末モードで只で無くさえワカランチなところが更にワカランチ会長となっているので市場雑談はスルー気味(涙)。
○まあお手並み拝見としか申し上げようがございませんが
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aGSuKc63vbYc
政府:日銀審議委員に白井慶大教授の起用を提示−須田委員の後任
瞬間誰だか判らなかった(世間に疎くてすいません)のですが検索かけたら「ああモーサテに良く出てくるあの方ですかそうですか」と判ったでござるの巻である。
http://www.paw.hi-ho.ne.jp/~sshirai/
白井先生のホームページ
・・・・・で、著書とか拝読した訳ではございませんので何とも申し上げようが無い所ではありますが、キャリア的に金融実務には全く触れていないお方と見えますし、ご専門も金融政策関連ではなさそうな感じが見受けられます。また、あたくしのかなりイイカゲンな記憶ベースですけれども、モーサテでお話しているのを聞いた範囲では欧州問題の話とかお詳しいようですがECBの対応がどうのこうのという話になると概略的な話になっているなあと思われますがどうなんでしょ。
てな事を勘案しますと、グローバルインバランスがどうのこうのというような議論においては白井先生の大活躍が期待される所なのですけれども、金融政策に関しての話になった場合に関してはこれからの成長に期待という話になってしまいますなあと思われる次第。
んでもって、それってど〜ゆ〜事かと申しますと、政策委員会での金融政策の議論が更に執行部ペースになってしまうのではないかというのが正直言って懸念される所な訳なのよあたしゃ。
特にですね、足元って主要国の中央銀行が非伝統的金融政策を導入している状況なんですけど、金利の上げ下げの世界とまた違った金融政策を導入という中では、そもそもが伝統的な金融政策のトランスミッションメカニズムが効くかどうか怪しく、非伝統的政策に関してはそもそもそのメカニズムがどういう形になっているのかが不確実で(何だか判らんけど効いているとか効いていないとかそういう世界ですわな、各国中銀の中での議論や中銀の人の講演読んでてもそうなっていますよね。で、そういう状況においては、金融政策をどうするのかという話って言うのは金融調節の世界まで話を下ろして検討をする必要があると思うのですよね。
つまりですな、例を挙げますとFRBが突っ込んだ新型の貸出プログラムがありましたが、教科書的に言えば貸出ファシリティ(FEDの場合はディスカウントウィンドウ)が有れば「支払能力はあるけれども流動性が無い」という金融機関の資金繰りに問題は生じないという話でしたけれども、実際に市場参加者として風評問題だのの影響があって使えませんでした、という事で貸出プログラムを作った訳ですが、そーゆー非常に細かい話が非伝統的政策を実施するにあたって重要だと思うのですよ。
あとですね、まあ一旦リーマンショック以降の危機モード終了とは申しましても、別に今後その手の問題が発生しない訳でもないのでして、そーゆー時にはやはり金融調節実務的な技術論が重要になってくる所があると思うのですよ。現にこれまで公開されている金融システム不安のある中での金融政策決定会合議事録においては、各審議委員の皆様が調節の細かいところまで突っ込んで詳しい議論をしているのが読めると思うのですよね。
然るに、その辺りの動きが全部執行部ペースになってしまうとですな、どうも足元までの金融調節のパフォーマンスが少々如何なものかと思う部分がある訳でございますよね。つまり(まあ詳しくは当時の悪態を読んでいただきたいですが)リーマンショック後の短期金融市場、というかレポ市場における金利上昇の影響を軽く見たのか毎度お馴染みの市場機能論だったのか知りませんが、GCレポレートがコール誘導目標から乖離して上昇するのを放置した結果CPレートなどが絶賛上昇してしまい、結局12月会合でより強力な施策として企業支援特別オペを実施してCPや社債の買入を実施する流れになってしまいましたよねとか、包括緩和実施後にこれまたGCレートが徐々に上昇するのを自然体でスルーした結果1年とか2年とかの金利が上昇して、その後12月になった所でオペ乱発をして冷やさないといけなくなりましたよねとか、まあどうも危機対応(包括緩和は危機対応ではないが)モードになった時に市場の暴れを事前に抑えるのではなくて暴れてから火消しするから火消しコストが高くつくという傾向にあるように見えるのがあたくしの懸念。(←文が長すぎ)
今後は危機対応というよりは出口モードの話が数年のスパンでは出てくると思う(というか出るような経済状況になって下さいお願いします)のですが、これまた非伝統的政策からの出口がどうのこうのという話になってくると金融調節の技術論に掛かる部分も大事になりますし、更に言えば市場との対話も重要になってくると思うのですが、マクロ経済で大所高所からの話もそらまあ大事なのですが、市場のロジックを全然把握しないで市場との対話に突っ込まれましてもミスコミュニケーションの元となるだけでありますので、その辺りに関しては(別に出口がそんな早くに無いでしょうから勉強する時間はあると思いますので)今後の成長に期待するところ大でございます、というかそうなってくれないと困るのですが。
そして、どうも市場との対話という面において執行部ペースだけで回すとどうも先走った地ならしみたいなのをおっぱじめそうですよねというのは昨今出ている日銀レビューシリーズなどで思うのであります。俊ちゃんの時はそうは言っても俊ちゃんが大狸でしたので、実際に地ならし可能という状況になるまでは思いっきり猫かぶっていて、その後一気に突っ込んだ訳ですが、白川さんはそういう狸芸が出来ない人のようで、すぐに「この正直者!」というような発言をするので(最近少しおとなしいですが、ちょっと目を離すと直ぐに麿節が出るのが麿クオリティーですから)、市場との対話という観点からも政策委員会での議論をしていただけるような存在が必要だと思うのですよね。
まあ前任は10年やっていますから比較するのは酷ですが、前任の(というかまだやってますが)須田さんはご案内の通り(上記URLの記事の中でも言及されていますが)執行部ペースの流れに対して(内容の是非は兎も角)色々と論議を巻き起こしていたと思われます。それに今回は関係ないですけれども、6月に任期の切れる野田審議委員も先日の講演および会見に見られますように、執行部ペースでの流れに対して色々と注文を付けているなあと思われる所でありますので、須田さんと野田さんが退任してそ〜ゆ〜議論が無くなって来ると色々と齟齬が生じてきそうな悪寒がするので、そういう意味でも白井先生におかれましては大所高所の話だけではなく、細かい市場の話に興味を持って頂きたく存じます次第です。
#なお、議論が面白くなくなると日銀ヲチがつまらなくなるというのもあります(^^)
○BOE議事要旨より(続き)、今後の上下要因に関する話とか政策の話とか
『The February GDP growth and inflation projections』の所から。
第24パラグラフより。
『The Committee reached its policy decision in the light of its projections
to be published in the Inflation Report on Wednesday 16 February. Expansionary
monetary policy, combined with further growth in global demand and the
past depreciation of sterling, should ensure that the recovery in the United
Kingdom was maintained. But the continuing fiscal consolidation and squeeze
on households’purchasing power was likely to act as a brake. Abstracting
from the effects of snow, growth around the turn of the year appeared likely
to have been somewhat weaker than expected at the time of the November
Inflation Report.』
景気回復を促進する要因は(1)緩和的な金融政策(2)将来の世界的な需要の拡大(3)これまでの英国ポンド安、抑制要因としては(1)財政健全化に向けた動き(2)家計購買力の減退、との事のようですな。で、昨日引用しましたが足元の景気動向は11月のインフレーションレポートでの予想よりも大雪要因を差し引いてもやや弱いという状態。
で、先行きの見通しに関しては(引用割愛しますが)『remained highly uncertain』としていまして、民間需要に関して上下のリスク要因を並べています。その結果としてMPCメンバーの見通し分布は上下に広がっている、という話になっていますがその結果はインフレーションレポートのファンチャートの通りであります。
第27パラグラフより。
『Inflation was likely to pick up to between 4% and 5% in the near term,
and to remain well above the 2% target throughout 2011, boosted by the
increase in VAT, higher energy and import prices, and some rebuilding of
companies’ margins. The projection for the first half of the forecast
period was markedly higher than in November, due largely to the recent
increases in the prices of commodities and other imported goods and services.
During 2012, inflation was likely to fall back as those effects waned and
the downward pressure on wages and prices from the margin of spare capacity
persisted. The extent of that fall was likely to be moderated by companies
continuing to rebuild their margins and some upward drift in inflation
expectations.』
ということでインフレ見通しですが、目先に関しては4%〜5%という落涙を禁じ得ない数値の予想になっていまして、2011年中も2%ターゲットを大きく上回った状態が続くとなっています。で、各種要因がどうのこうのという部分があって、2012年の間には徐々にこれらの要因が外れてターゲット近辺に戻るという予想。しかしながら、企業のマージン確保の動きはインフレ期待が上昇した場合には継続しますねとやはり上方リスクという感じでしょうか。
で、中期的なインフレ予想はこれまた『highly uncertain』となっていまして、その中で経済の余剰生産力に影響を与える要因も列挙しています。第28パラグラフから。
『The prospects for inflation in the medium term were highly uncertain.
Continued strong global growth might lead to further upward pressure on
commodity and other import prices. The degree of spare capacity and its
impact on inflation would depend on: the strength of demand; the impact
of the recession on potential productivity; the performance of the labour
market; and the sensitivity of wages to labour market slack. The profile
for domestically generated inflation would also depend on the extent and
pace of any rebuilding of companies’ margins. And inflation would be higher,
the more that elevated outturns caused expectations of inflation to rise
and that fed through into wage and price setting.』
ということで、真ん中の辺りにありますように、spare capacityの影響によってインフレが低下していくという従来のBOEのロジックに対して見直しも必要かも知れませんねという話になっておりまして(そらまあ足元でドンドンインフレ進行しているのですから致し方ない面もありますが)、この辺りは物価の見通しに関する根本的なロジック部分ですので、今後どういう評価になるのか注目したいです。
で、この議事要旨出た直後にちょっとだけ『The immediate policy decision』の所をネタにしましたけれども、金融政策決定の所に関して。
第31パラグラフと第32パラグラフに「インフレの今後の2つの重要なリスク」が示されています。
『As had been the case for some time, there were two key risks to this
broad profile. The first was that weak growth and persistent spare capacity
might cause inflation to fall to well below the target in the medium term.
The main news about this risk over the past month had been the fourth-quarter
contraction of GDP. Even after making allowance for the probable impact
of the adverse weather conditions, growth had slowed during the second
half of 2010. That apparent weakness could prove temporary, but could also
be an early signal of a worsening outlook for growth and hence medium-term
inflation. Monthly indicators for January gave conflicting signals: business
activity surveys had generally been upbeat, but consumer confidence had
declined sharply.』
下方リスクとして従来の「経済の余剰生産力がインフレをターゲット以下に押し下げるリスクがある」という話がありますが、1月議事要旨と違うのは今回は4QGDPの数値が悪く、その結果としてこのリスクが高まっているという認識になっている事ですな。
『The second risk was that the period of elevated inflation would persist
for longer than the Committee expected. That could occur if externally
generated inflation pressures continued and were not offset by exchange
rate movements. One possibility was that the recent further increases in
commodity prices, which in many cases had been associated with strong growth
in emerging market economies, would continue. Committee members differed
in the comfort they drew from the profile of commodity futures prices when
assessing the likelihood of that outcome. Second, it was also possible
that accommodative monetary policies in emerging market countries could
result in higher inflation in those countries. That too could influence
UK prices unless offset by exchange rate movements. A third possibility
was that there might be further pass through from the past depreciation
of sterling.』
やたら長いですが、MPCの予想よりもインフレが長く続くことが上方リスク要因としてございます。で、それはどうなったら起きるかという話が延々とありますが、基本的には「ここまでに起きたインフレが継続し、それが為替市場の動き(つまり英国ポンド上昇)によって相殺されない場合」という事でありますが、ではそれが起きる可能性としては何があるかとい話をしてますな。(1)新興国の需要が継続して拡大して商品価格が更に上昇すること(2)新興国の緩和的な金融政策(昨日引用しましたが要するに中国ですかねえ)が新興国のインフレを加速させること(3)これまでのポンド安の影響が更に物価に上乗せされること、というような話ですな。
で、まあ利上げ提案があった件はスルーしまして(前に引用したから)、利上げに賛成しなかった人の議論内容が第37パラグラフにありましてですな。
『Of those members not favouring a rise in Bank Rate, some thought that
the case for an increase had nevertheless grown in strength. The Inflation
Report projections implied that inflation was roughly as likely to be above
or below target in the medium term, and those projections had been conditioned
on a path for market interest rates which assumed an increase in Bank Rate
around the middle of the year. Given the potentially disruptive impact
of reversing any immediate change in Bank Rate, there was merit in waiting
to see indicators of how the economy performed at the start of the year
to help assess whether or not the decline in GDP in the fourth quarter
presaged sustained economic weakness. A rise at this juncture could damage
household and consumer confidence, which remained fragile.』
前半の部分にありますように、そもそも市場がインプライする政策金利のパスを前提にした予想をした結果が2月インフレーションレポートですので、まあそういう意味では利上げへのハードルは下がっているようですが、まあ足元では若干弱い指標も出ていますし、早期に利上げしてまだまだ脆弱なコンフィデンスに悪影響を与えるのも如何なものかという感じでしょうか。
となりますと、まあ1Qのトレンドが見えてくるようになるとか、1月分の指標がことごとく良好とかでないと中々利上げはしにくいと思うのですが、問題はここまでの議論にもありますように、ポンド安がインフレをもたらした面もこれまたありますので、ECBが利上げしてポンドの為替レートが安くなってしまうとインフレ加速要因になってしまいますから、ECBが4月に利上げした場合には追随せざるを得なくなるかも知れないなあという所でしょうかね。
以上、趣味のコーナーでありました。
2011/03/08
お題「明後日はBOEのMPCですので趣味のBOEネタで」
以前本が出ているなあと思いながらも結局買うのを忘れていた財務総合政策研究所刊行のフィナンシャル・レビューの詳細がついにネットに出ているので盛大に釣られてみたいのだが各章の見出ししかまだ読んでいません(すいません)。
http://www.mof.go.jp/f-review/fr99.htm
で、本日は趣味ネタですいません。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1102.pdf
○まあ端的にまとめますとですな
2月はインフレーションレポートもありまして、まあそっちはこれまた量が多いので思わずスルー気味なのですが(おいおい)、その前振りとなるお話をしているのでまあここら辺を読んでおけばヨロシアルと勝手に規定して読んでみた訳ですな。
で、各項目に関するあたくしの超簡単まとめは以下のような感じ。
・金融市場
利上げ予想が拡大している。英国の金融環境そのものは改善している。
・世界経済
世界経済は拡大している。グローバルインフレに関する考察を行っています。
・マネー、信用、需要、生産
4QGDPの落ち込みについての考察で意見が分かれています。幾つかの可能性があるという事で、一時的なものなのか先行きの落ち込みを示唆するのかという両面から考察しています。基本的には経済見通しが下がっています。
・供給、コスト、物価
インフレの現状についての考察が延々と続きます。インフレ期待の拡大に関する話と、経済の余剰生産力に関する考察がありますが、こちらは基本的に物価見通しが上がっています。
・2月インフレレポートに関して
上記にあるように、経済見通しを引き下げてインフレ見通しを引き上げています。
・金融政策決定に関して
先日ネタにしたような気がしますが、利上げ主張3名に買入拡大1名となっています。先行きのリスクに関しては例によって(1)余剰生産力がインフレを押し下げる圧力、(2)物価が高い状態がMPCの予想より長く続き、インフレ期待の高まりからインフレサイクルに入ること、を「キーリスク」としています。で、そのどちらに関してもリスクは拡大しているという困った状態な訳ですな。
まあそんな感じで、今回は経済見通しを微妙に下げて物価見通しを上げているという大変にチャーミングな状態になっているのですが、そういう中で金融政策判断はこれまたキャットウォーク状態ですわなあとか思うのでありまする。
・・・・・と、これだけ書くと話が終わってしまいますが(汗)、幾つかのネタを引用致したく。
○グローバルインフレの一因に中国が寄与しているアルねという話
『The international economy』の所ですが、殆ど物価というかグローバルインフレに関する話をしているのですが・・・・・
第9パラグラフから。
『The rebound in world demand had been associated with a notable pickup
in global inflation, with the IMF’s measure of global CPI inflation rising
from just over 1% in mid-2009 to almost 4% by the end of 2010. This was
close to the post-2000 average, but masked considerable heterogeneity,
with inflation in excess of 6% in a number of emerging market countries
being offset by lower inflation in the United Kingdom’s main trading partners,
the euro area and the United States.』
世界的にはインフレが上昇しているが、地域で見ると新興国での上昇率と先進国での上昇率が異なる、という話ですが、この件は先の方でも似たような話が出てきてほほうと思ったりするのです。
第10パラグラフから。
『Much of the rise in global inflation had reflected a rise in commodity
prices, many of which had increased by around 50% since the middle of 2010.
Temporary supply reductions were likely to have contributed to the increase
in the price of some commodities, most obviously agricultural commodities.
But in other cases, such as energy and metals, demand increases were likely
to have been important. Some commodity prices could rise further if the
global economy continued to grow robustly. Especially at risk were commodities
for which there were constraints on production or storage capacity. Where
available, however, commodity futures prices for delivery in the medium
term were generally no higher than current spot prices.』
一部の商品では一時的な供給の減少によって(農産品とかですかな)価格が上昇している面もあるが、基本的には需要の拡大が寄与しており、これらの価格上昇は世界経済の拡大が続けば更に価格上昇するでしょう、という話をしています。それから最後の文の所で昨日ネタにしました商品価格に関する日銀レポートにありました、現物価格と先物価格の逆鞘現象についても言及していますな。
第11パラグラフから。
『The depreciation of sterling had led to substantial increases in UK import
prices. More recently, rises in global prices, particularly reflecting
higher commodity prices, had added further upward pressure. Accommodative
monetary policy in some emerging market economies, particularly where the
authorities had been reluctant to permit their exchange rates to appreciate,
was likely to have contributed both to the rise in commodity prices and
perhaps also to the rise in global prices more generally.』
英国ポンドの下落が輸入価格の顕著な上昇に寄与しているという話と、最近は更に世界的に商品価格の上昇によって世界的に価格上昇圧力が高まっているという話をしています。
で、その後半になります「Accommodative monetary policy in some emerging
market economies〜」以下の部分ですが、まあ極めて簡潔にこの部分を意訳すると「中国が緩和的な金融政策とドルペッグによる通貨安政策を採っているからグローバルインフレが拡大しているアルよ!」ということです罠。
・・・・ということで、まあ先進国的には全般的にこういう論調が高まっているものと見られる次第でありまして、徐々にグローバルインバランスは先進国VS中国の罵り合いの様相を呈しつつあるのではないかと懸念される所でもありまする。
○4QGDPの落ち込みに関して
『Money, credit, demand and output』の所から。
まあこのMPC議事要旨読みも1年以上になってきまして(確か1年半くらいかなあ)、漸く過去の書きっぷりとのイメージ比較とかが出来るようになったのでありますが、この部分ってかつてはマネーの話が最初にあって、マネーの動向についてああでもないこうでもないと書いてあるのが仕様だったんですよ。
ところが、まあある意味当たり前ちゃあ当たり前なのですが、最近はGDPの話とか経済の需給動向とかの話が最初に来るようになりまして、今回に関して言えばマネーの話って第18パラグラフの半分程度というこのコーナーの最後の部分に申し訳程度についているという感じになっています。まあ注目材料は完全にシフトしたなあという感じを受ける訳です。
で、こちらは引用すると長くなるので割愛しますが、話の筋はこんな感じです。
・4QのGDPの落ち込みは12月の大雪の影響を加味してもやや大きい
・その理由は3つほど考えられるが、(1)データの統計上の振れの問題(1月のCIPS/Markit活動指数が強かった事から何らかのデータ要因があったのではないか)、(2)年末に成長が一時的に落ち込んだ(元々大雪の影響が無くても落ち込むとONSは予想している)という一時的要因という見方の一方で、(3)この結果はより長い期間に渡る経済の停滞を示す可能性がある、という見方を紹介しています。
○インフレに関しては苦しい説明が続く
『Supply, costs and prices』のところは要するに物価上昇の話が延々と続くのでありますが、先行きの見通しは当然ながら上昇していまして中々泣けますので第19パラグラフを引用するだよ。
『Twelve-month CPI inflation had risen to 3.7% in December, up from 3.3%
in the previous month. In line with the usual pre-release arrangements,
an advance estimate for twelve-month CPI inflation in January of 4.0% had
been provided to the Governor. A detailed breakdown was not available but
it seemed likely that increased petrol, furniture and household goods,
catering, and alcohol prices had contributed to the rise. More generally,
it was difficult to identify how much of the VAT increase had been passed
through in January, complicating the interpretation of month-by-month developments
in CPI inflation around the turn of the year. The near-term outlook for
inflation had risen markedly relative to the November Inflation Report
following further rises in commodity and other import prices.』
近いタームのインフレ見通しは11月インフレレポート作成時と比較して顕著に上昇しましたとは泣けます。
第20パラグラフから。
『The available measures of inflation expectations were imperfect and had
to be interpreted with care. Surveys of near-term household inflation expectations
had risen in recent months, but that was consistent with the change in
the Committee’s own expectation for near-term inflation. Evidence from
firms was more limited, but was also consistent with some increase in their
near-term expectations. Some of the survey measures of longer-term household
inflation expectations had picked up in recent months. Medium-term inflation
expectations derived from financial markets had shown no discernible trend
over the past year as a whole. Lack of liquidity obscured the signal from
shorter-term financial market measures, but three to five-year measures
had moved in line with the longer-horizon measures which the Committee
regularly monitored. Overall, there was little evidence that medium-term
inflation expectations had risen above a level consistent with the inflation
target. That said, financial market measures of uncertainty about medium-term
inflation had been elevated for some time.』
引用が長くてすいませんが、要するに期待インフレ率の推移に関してああでもないこうでもないと話をしているのですが、家計の長期的な期待インフレが引きあがっているが、企業のそれはそこまで大きくなく、更に金融市場から算出される3年から5年程度の期待インフレ率の推移はインフレターゲットのレベルから逸脱していないという話をしておりまして、まあとりあえず長期的なインフレ期待の顕著な上昇はまだ見られていませんという話をしているのでしょう。
ただまあこれだけああでもないこうでもないと書いてあると言うことは、その間に相当「いややっぱまずいんじゃネーノ」的な議論が続いていたのでしょうなあという感じです。
経済の余剰生産力の影響に関する考察に関しては同じコーナーの第22パラグラフから。
『Evidence about the scale of spare capacity remained mixed. Survey measures
of capacity utilisation continued to point to a relatively limited amount
of spare capacity and, consistent with this, surveys also suggested that
some companies intended to invest to expand their capacity. But the level
of labour productivity remained well below pre-recession trends, consistent
with a greater degree of spare capacity than implied by the surveys.』
一部のサーベイでは余剰生産力の影響が小さく、企業によっては生産拡大への投資を行っている向きもあるが、労働生産性などから見た場合には経済の余剰生産力が依然として大きいことを示しています、ということで、従来からの「先行き物価が戻りますよ」の根拠になっている部分に関しては今回は思いっきり「mixed」という表現になっていますな。
で、今後の注目は1月の年次賃金改定という話が第23パラグラフに。
『Earnings growth had remained subdued. Whole economy AWE regular pay had
increased by 2.3% in the three months to November compared with a year
earlier, and remained below its pre-recession average. The start of each
year was an important period for pay settlements. The Bank’s Agents’
annual survey of pay intentions suggested that settlements might rise modestly
in 2011. In part that could reflect a recovery in productivity. Trends
in earnings over the year would depend also on the contributions of bonuses
and regular pay drift.』
○例によって時間切れ
誠に恐縮ではございますが、この先のインフレレポートの話と、政策決定に関する話は時間と量の都合で華麗に明日送りとさせて頂きたく存じますすいませんすいません。
でですな、まあ今回のMPC議事要旨を見ますと、景気見通しに関して4QGDPの下げを結構気にしているという感じを受けた訳でありまして、そう考えると4Qの落ち込みが一時的なものかという点を見極めてからじゃないと動きにくいかなとも思われる次第でありまして、そーなると順当に5月という話なのかもしれませんけれども、実際問題として物価の上昇が継続しているというのもありまして、政策判断は難しいと思われます。既にご案内のように、センタンス委員は2月MPCで従来の25bp利上げから50bp利上げに主張を変化させているように、まあ物価と言う面で見た場合にはかなりマズーな状況になっている訳ですから・・・・・・
ということで今日も今日とて完全に趣味のコーナーでどうもすいませんでした。
2011/03/07
お題「野田審議委員のフリーダム会見/これはまた微妙なタイミングでのレポート」
今回と言い永田メール問題と言い前原さん脇が甘すぎですわな。
○野田審議委員のフリーダム会見
やはりフリーダム会見でありました(^^)。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1103a.pdf
・物価に対する見方が厳しいですな
CPI改定に関する質問の中から。
『(問)(前半割愛)デフレ克服という最大の課題の中で、物価が基準改定により下がるので、より一層デフレ克服が難しくなるという理解なのか、ここのところをもう少し詳しくお聞かせ下さい。』
『(答) 挨拶の中で述べたことが、若干ないし若干以上舌足らずだったかもしれませんが、基本的には、前から申し上げていますとおり、物価をみるにあたっては、物価の前年比の水準というものが一つの大きな要素であることは否定しません。しかし、それと並んで、いわゆる物価の基調的なトレンド、さらにはその背後にある物価を形成するメカニズムがどうかというところも重視しているわけです。』
『従って、そういったものを一つの物価指標だけではなく、総合的に捉えて、わが国の物価情勢がデフレの状況からどういう方向に向かっているのか、あるいはどの程度改善しているのかというところをみていくということが、これまで私どもがご説明してきたところだと考えています。』
と、この辺までは日銀執行部と同じ話をしているのですが・・・・・・
『ただ、その中で基準改定が現実に5年に1回あって、その統計の数字が上方バイアスを持っているという事実に鑑みれば、そこのところは私どもが今申し上げた物価をいくつかの点でみる中でも、一つの重要な、見失ってはならない、あるいは無視してはならない要素であるというしっかりした認識を持っているということです。それ以上でもなければ、それ以下でもないということです。』
これは何ぞ??と思ったら続いて質問が。
『(問) 今のお答えは良く分からないのですが、物価の前年比が下方修正されるとして、その幅は発表されるまでわからないのですが、下方修正されるということで実体は変わらないにしても、より真実に近い数字になるということなので、もしかしたらデフレが今よりも深刻であるということを意味するかもしれない、そういう可能性があると思うのです。そうなると、金融政策に対する意味合い、金融政策運営にあたりしっかり念頭に置く必要があると言われているので、どういう方向を念頭に置くかということでいえば、今の超金融緩和、超低金利政策をより長く続けざるを得ない、続けるべきだという方向、あるいは、デフレがもっとひどいということになれば、より金融緩和をする方向のバイアスが高まるということを意味するのでしょうか。逆に、にわかには考えにくいですが、超低金利政策を早く脱する方向にバイアスがかかるということなのでしょうか。もう一度お答え下さい。』
『(答) 今、お話になった「より真実に近くなる」ということを、率直かつ真剣に捉えているということです。』
これはキタキタキタ!!!
ということで、まあ先日は総裁の定例会見でも「(高校授業料無償化要因などを除いた)基調的な物価はほぼゼロ近辺まで戻っている」というように、執行部サイドからは物価が基調的にゼロ近辺まで戻っているという話が多く出るようになって参りましたけれども、どう見ても野田さんのこの発言は総裁やら執行部ベースに対して釘を挿しに来ましたという感じでございまして実に素敵でありまする(^^)。
『ただ、それでもって、より今の緩和政策が長く続くのか、―― その「より」というのは何と比べてかということだと思いますが
――、厳密に先行きの線を描いて、物価とコンシステントにきちっと対応させて考えれば、ご指摘のような、何がしか、──
何がしかというのは改定の程度が全くわかりませんので、あるいは限りなくゼロに近いかも知れませんので、そこは何とも申し上げられませんが
──、そこは私どもとしては、幅の不確実性も含めて、この時点ではしっかりと認識しておかなければならないと申し上げているわけです。』
さっきのもそうですがこの辺は禅問答テイスト。
『それでもって、緩和の状況が変わるかどうかということについては、全くノーだということですし、緩和から脱するということが水平線の彼方に視野に入っているのかと聞かれれば、それは全くないというようにお答えしたいと思います。』
緩和脱却の展望は全く無いキタコレ。
・・・・・ということで、物価に対しての厳しい見方をしていると同時に、どう見ても執行部に向けたブチカマシというテイストの高い会見でありまして、退任が近くなってくると民間の審議委員さんって皆さん揃いも揃ってフリーダム発言が多くなるのですが、野田さんもその例に漏れずという所で心温まるのであります。
まあ野田さんの場合は投票行動とかで最初から結構主張してた感じはありますので、打鐘から先行して最後まで逃げ切りと言った所でございましょうか(違)。
・景気に対しては比較的強めの見方だったりします
景気踊り場脱却はいつでしょうという質疑から。
『(答) 踊り場からの脱却の条件、あるいはいつ頃かというご質問ですが、条件として、これがこうなれば踊り場から脱したという判断の基準があるというわけでは決してありません。これは総合的に捉えなければならないと思っています。』
とまあこれは良いとして。
『私どもが常々申し上げているのは、事後的にどうだというのは、別の人が判断すれば良いわけで、私どもが最も重要としているのは、先行きがどうなるのかという判断であり、これについてはある程度幅をもって見なければなりません。』
この部分なんですけどね、いやまあどういう言い方しながらこの発言したかにもよるのですけれども、読みようによっては「事後的な話なんぞ関係無いわボケ」とか言ってるようにも見えますがどうだったんでしょ(^^)。
『ただ、今間違いなく言えることは、踊り場から脱却しつつあり、それを裏付けるような経済指標・データ、あるいは様々な情報が、かなり多くみられているということは言えると思います。ただ、それがいつかと言われると、なかなかお答えするのは難しいのですが、期待を持って言えば、数カ月も脱しつつある状態が続くというのは必ずしも自然なことではないと思っています。』
結構強気なのね。で、その「数か月」とは2〜3か月なのか6〜7か月なのかという質問に対しての答えはこの通り。
『(答) 今は3月ですが、私どもがバックワードに見ている指標は、単月ベースでは12月や1月の統計です。それで方向感、あるいはモメンタムの強さ等をみているわけですから、そういった意味では、今言われた数カ月という中でも、幅があるうちの長い方ではないとだけお答えしておきたいと思います。』
でですな、その次の質問でこんなのがあったのよね。
『(問) 今日の午前中の講演の中で、日銀としては、機動的にかつ適切な政策を、万が一、デフレ脱却の不確実性や、経済、物価の安定性が損なわれた時に実行していく思いだと言われましたが、これは、最近、野田審議委員の方で、危機あるいはダウンサイドリスクが少しずつ明確になってきたということを意味するのでしょうか。』
『(答) 全く意味しません。先程お答えしたように、今そういうリスクが水平線の彼方にもみられるかというと、少なくとも私の視野には、金融政策と結びつける意味において、リスクが顕現化しているというようには全くみていません。』
・・・・・という事は即ち、講演での必要ならば追加緩和発言と言うのは野田さん的に言えば「リスク認識が下方にシフトしたから」なのではなくて「執行部へのブチカマシ」を意図したものであって、それはつまり野田さんが中で認識している状況として、執行部が足元の物価指標の改善と経済指標の改善を受けて出口政策に対して徐々に前のめりになってきているのではないか、という風に懸念しているという事の表れなのではないかなあ、などと勝手に妄想してみたのですが如何でしょうか野田さん(^^)。
・その他少々、特に政策インプリケーションがあるわけではないが
成長基盤強化オペに関して
『あくまで、この成長基盤強化の措置だけでもって、わが国の経済あるいは成長基盤を強化できるというような大それたことは少しも考えていないわけで、それを「呼び水」というように申し上げているわけです。その「呼び水」の量としてどの程度が相応しいのか、あるいは相応しかったのかという点については、その効果そのものもさることながら、副作用というものも何がしか私の耳にも届いていないわけではありません。そういったところをもう少し時間をかけて比較考量、吟味したい、その「呼び水」効果に対する評価も含めてですが、時間をもう少し頂戴したいというのが、現時点での正直な感想です。』
『成長基盤に関する副作用ですが、記者の方が口の端に乗せられた銀行間、特に地域金融機関の間での競争の激化、もう少し言えば金利競争の激化ということを耳にしていることは否定致しません。ただ、それ自体が、長い目で見て副作用なのかどうかというのは、その競争の中で成長企業を切磋琢磨して発見する、見つける努力を競うという意味では、それをもって直ちに副作用と断ずるのもいかがなものか、そこまで確信をもって言えるのかどうか、ということもあります。こうしたところも含めて、今後もう少し時間をかけて、検証、議論、さらには金融機関の皆様方のご意見も詳しく聴取する機会を持ちたいというのが個人的な意見です。』
特に後半部分の「その競争の中で成長企業を切磋琢磨して発見する、見つける努力を競うという意味では、それをもって直ちに副作用と断ずるのもいかがなものか」ってのは前向きなバンカーらしい表現ですなあと思った次第。
熊本県経済に関して
この部分は「へ〜」と思いながら読んだでござる。
『県経済は、新興国向け輸出の増加を背景にIT関連で高水準の生産が続いているほか、短観調査における設備投資も4年振りに増加する計画になるなど、緩やかな回復を続けているとみています。特に近年、県内でウエイトを高めている誘致企業が輸出競争力の強い製品群を生み出していること、あるいは高成長を続けている東アジアに近いという地理的な優位性から、当地の景気が緩やかに回復していることが確認できたところです。わが国全体と比べても、どちらかというと堅調に推移しているのではないかとみた次第です。』
ということで野田さんの会見はページ数は少な目でしたが興味深く読めましたです、はい。
○これはまた微妙なタイミングで微妙なレポートが
日銀レビューシリーズである。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/rev11j02.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/data/rev11j02.pdf(本文)
最近の国際商品市況上昇の背景
― 世界的に緩和した金融環境とコモディティの金融商品化の影響 ―
でまあ中身は面白いので皆さん読んでちょという感じでありますが、日銀レビューなので内容自体は思いっきりコンパクトになっていますが、何気にネタにしようと思って赤ペン片手に読んでいたらそこらじゅう線と文字が書き込まれてしまうという代物になりますので、内容紹介しているうちにうっかりすると殆ど全文引用状態になる惧れがございますので(^^)、内容は華麗にスルーの所存(おいおい)。
本文の『はじめに』の所から少々引用。
『国際商品市況の上昇に伴うインフレ圧力の高まりに対して、中央銀行がどの程度積極的に政策対応をすべきであろうか。その判断は、国際商品市況の上昇の原因や持続性をどう評価するかにまず依存する。』
『しかし、最近の商品市況の上昇は、コモディティの需給逼迫というファンダメンタルズ、投機要因、地政学リスクなどが複合的に影響しており、いずれが主因であるかに関してコンセンサスが得られていない。』
さいざんすな。
『例えば、新興国の政策当局からは、米国をはじめとする先進国の低金利政策の継続が、投機資金のコモディティ市場への流入を後押ししているという見方が聞かれる。一方、米欧当局からは、新興国の高成長に伴うコモディティの実需増加が主因であるという見方がしばしば聞かれる。前者の立場に立てば、新興国の金融引き締めだけでは、インフレ抑制に限界的な効果しか得られないことになるが、後者の見方に立てば、新興国が十分に金融を引き締めればインフレ圧力を抑制できることになる。』
なるほど。
『こうした二つの見方のうち、いずれが適切であるか評価することは難しいが、コモディティの需給というファンダメンタルズにせよ、あるいは投機要因にせよ、いずれにしても世界的に緩和した金融環境が影響していると考えられる。』
金融緩和影響キタコレ。
『また、近年、金融投資家によるコモディティの先物投資が大幅に増加するなど、「コモディティの金融商品化(Financialization
of Commodities)」が進む中で、ファンダメンタルズの動きが増幅されて、国際商品市況の変動につながっている側面もある。以下では、これらの点について、整理する。』
・・・・・で、その内容に関してですが、どういう話の流れかというのだけ書いておくだよ。
(1)需給要因
需給要因の中では商品そのものとしての需給がどのように逼迫しているかという点を新興国の成長という観点から分析して、その上で最近の商品価格上昇をグローバルGDPギャップとの乖離を指摘して、投資対象としてのコモディティ要因の分析を行っています。
(2)金融緩和要因
引き続き上記のグローバルGDPギャップからの話で、グローバルGDPギャップのマイナス拡大という金融緩和要因の話がある(という話の中で「中国の金融引き締めが足りないのが要因の一つ」という風に言っているとしか思えない部分があるのがチャーミングなのですが)のと、投機的な先高期待の話を先物市場価格が逆鞘となっている事から分析しています。
えーっと、話が逸れて恐縮ですが、「バックワーデーション」とか「コンタンゴ」とか言われますと何が何やらでございまして、「順鞘」「逆鞘」と言う昔から使われていた用語を使っていただきますとあたくし理解できるのでありますが、とか言うのはジジイの証拠ですかそうですかorz
(3)金融商品化要因
金融商品化が進んでいるというのを商品ごとの価格推移の変化によって説明し、その背景に取引所のインフラ整備やETFなどの商品の拡大があるという話をしています。
という事で、興味を持たれた方は是非ご覧あれという所です。ちなみにあたくしは久々に商品の本でも読んでやろうと思って梶山季之さんの「赤いダイヤ」を買おうと思ったら行った書店では在庫無しの為トボトボと帰宅したのはここだけの話です(相場関連の名作と言われるのはだいぶ読んだ積りですが、恥ずかしながらこれはまだ読んでいない)。
・・・・勉強の方向性が違いますかそうですか(汗)。
2011/03/04
お題「ECBキタコレ/野田審議委員講演」
ECBのは寝起きで読んだので超手抜き引用なのはお許しを。あ、そこの貴方、昨日の夜10時前に結果が出てた筈だよって突っ込みをしないように(^^)。
○ECBアナウンスとトリシェ総裁の会見
http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr110303.en.html
3 March 2011 - Monetary policy decisions
MROおよび預金ファシリティ、貸出ファシリティの金利は同じとな。
http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr110303_2.en.html
3 March 2011 - ECB announces details of refinancing operations with settlement from 13 April to 12 July 2011
『The Governing Council of the European Central Bank (ECB) has today decided
to continue conducting its main refinancing operations (MROs) as fixed
rate tender procedures with full allotment for as long as necessary, and
at least until the end of the sixth maintenance period of 2011 on 12 July
2011. This procedure will also remain in use for the Eurosystem’s special-term
refinancing operations with a maturity of one maintenance period, which
will continue to be conducted for as long as needed, and at least until
the end of the second quarter of 2011. The fixed rate in these special-term
refinancing operations will be the same as the MRO rate prevailing at the
time.』
『Furthermore, the Governing Council has decided to conduct the three-month
longer-term refinancing operations (LTROs) to be allotted on 27 April,
25 May and 29 June 2011 as fixed rate tender procedures with full allotment.
The rates in these three-month operations will be fixed at the average
rate of the MROs over the life of the respective LTRO.』
MROの固定金利+フルアロットメント攻撃は7月12日実施のオペまで継続で、LTROも同様だけど金利は期間に対応するMROの平均金利ってのも継続ということのようでござるが、もともとユーロシステムの短期金融市場はだいぶ不勉強なのであまり余計なことは書かない(汗)。
http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is110303.en.html
Introductory statement to the press conference
冒頭の第2パラグラフ(最初はご挨拶)でキタコレという事で。
『Based on its regular economic and monetary analyses, the Governing Council
decided to leave the key ECB interest rates unchanged. The information
which has become available since our meeting on 3 February 2011 indicates
a rise in inflation, largely reflecting higher commodity prices. 』
金利は据え置きましたは良いとしてインフレが上昇と指摘とな。
『The economic analysis indicates that risks to the outlook for price developments
are on the upside, while the underlying pace of monetary expansion remains
moderate.』
基調的なマネタリーの拡大が緩やかなペースの元で景気と物価のリスクはアップサイドとな。
『Recent economic data confirm that the underlying momentum of economic
activity in the euro area remains positive; however, uncertainty remains
elevated. The current very accommodative stance of monetary policy lends
considerable support to economic activity. It is essential that the recent
rise in inflation does not give rise to broad-based inflationary pressures
over the medium term.』
とは言えこの辺では現在の緩和的な金融政策の効用を説明していますし、中期的に見た場合に全般的なインフレ圧力に繋がっているという訳ではないとも説明しているように見えますが。
『Strong vigilance is warranted with a view to containing upside risks
to price stability. Overall, the Governing Council remains prepared to
act in a firm and timely manner to ensure that upside risks to price stability
over the medium term do not materialise. The continued firm anchoring of
inflation expectations is of the essence.』
「Strong vigilance」キタコレ。この文言が来ると利上げ近いですよのお知らせというのがECBの伝統芸能でありまして、「物価安定に対する継続している上方リスクの観点から強力な警戒が正当化されます」(何と言うヘタクソな訳orz)というお告げではありますし、更に最後の文では「prepared
to act in a firm and timely manner」と仰せと。
・・・・・・という事でブルームバーグニュースより。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ahD8_hJERkFc
トリシェECB総裁:4月利上げの可能性示唆、「強い警戒」に言及 (2)
だそうでありまして、インフレ警戒モードキタコレとなりました次第で、BOEが先かと思っていたのですが、この調子ですとECBが先を越しそうというお洒落な事態に。Weber辞任ネタがあったからタカ後退だと思ったのですけど、やはりトリシェはトリシェだったということでございますかね。
○野田審議委員講演:そろそろ任期終わりますな
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110303a1.pdf
野田さんは決定会合の投票行動を見ていますと政策ロジックをきっちりと通す事を一貫して主張していたように見えまして、その点では特徴のある委員であると思います。それから、景気に関して言えば特に欧米不良債権問題以降の流れにおいて、日本のバランスシート問題の解決段階において銀行(野田さんは第一銀行→第一勧銀→みずほ)にいて解消の大変さをみていたという事があるかと思いますが、バランスシート調整に時間が掛かるという話を強調して基本的にハト寄りの主張で、こちらも特徴のある話が多かったと思います。
ということで、傍観者的ヲチャー的に申し上げますと、退任されるのは残念と言った所ではありますが、後任はどなたになるんですかねえ。銀行出身の審議委員って武富さん(興銀)→中原(眞)さん(東京三菱で旧東銀)→野田(みずほで旧一勧)さんという流れだったような気がしますが、後任の方にも銀行から見た政策論議とか、更にはバンカーらしく筋を通す(何せ日銀の場合大人の事情によって突如豹変してロジック崩壊するのが仕様ですから)というような議論を期待したいものであります。
・・・ってここまでの流れを今見たら審議委員の方って旧特銀で来ている(厳密に言えば野田さんは第一入行で勧銀入行じゃないから違うけど)のかと思うとマニア的に微妙なテイストを感じますな(謎)。
などという雑談は兎も角。
最初の方は日銀のシナリオに沿って説明をしているのでその辺はスルーして。
・野田さんの見る上振れ下振れ要因
『以上申し上げてきたことは、現時点で相対的に蓋然性が高いとみている見通しです。こうした見通しに対して上振れまたは下振れ要因として、私が特に注意している点についてお話します。』
『イ.新興国経済に関して』
『まず、新興国経済にかかる上振れ・下振れ要因です。先進国とはっきりとした較差がついた新興国の成長力の高さを背景に、より高い投資リターンを求めて、新興国への資本流入が基調的に続いています(図表6)。こうした資本流入の動きは、先進国各国における大規模な金融緩和の継続や、一部の新興国における自国通貨高を回避するための固定的な為替制度によって増幅されていると考えられます。』
『これにより新興国経済が一だんと拡大することは、主に貿易の拡大を通じてわが国を含む先進国経済にとって当面の間は少なからずプラスに働きます。一方、これらの国は引続き緩和的な政策を続けており、ビハインド・ザ・カーブとなっている――後手に回っている――可能性があります。』
ということで、基本的に政策委員会の話と同じではありますが・・・・・
『こうした状況が続けば、経済が過熱しかねず、その場合、その後それを修正していく際に急激な巻き戻しが発生し、実体経済面の大きな収縮につながるという可能性があります。』
最後の部分での「新興国のバブル崩壊リスク」部分に関してはかなり厳しい表現になっていまして、新興国バブルを相当警戒している風に読んだのですがどうでしょうかね。
『ロ.国際商品市況に関して』
前半でコモディティ価格上昇の背景について説明していますが、その部分はスルーでござるの巻。
『国際商品市況が新興国における需要の拡大といったファンダメンタルズからますます乖離して上昇が続く場合には、先進国、新興国を問わず資源輸入国では、実質購買力の低下を通じて消費支出が抑制されます。最終商品への価格転嫁が困難な場合には、企業にとって収益の圧迫要因となり、結果として、雇用・賃金環境の悪化を通じて消費へ負の連鎖が生じます。』
どう見ても経済への悪影響警戒です本当にありがとうございました(^^)。
『ハ.先進国経済に関して』
『三つ目は、先進国経済に関してです。まず米国経済については、先ほどもふれましたが、バランスシート調整という重石を抱えており、その解消には時間を要しますから、上方に弾みにくく下方に振れやすいという状況が続くと考えています。私は個人的には、米国の成長見通しについて一貫して慎重な見方をしてきたところですが、昨年以降、市場の成長見通しは大きく振れてきました。こうした見方の差は、バランスシート問題の解消についての時間軸に対する見方の差に起因すると考えています。』
バランスシート問題の解消に関する認識が・・・・というような発言をした場合に、銀行出身の野田さんの発言だと更に重みを感じます罠、ということで米国経済に関しては野田さんは従来から極めて慎重な見方をしていますが、この点に関しては引き続き同様の見方をしています。
『第二に、多くの先進国に共通のリスクとして、公的債務残高が大きく増加していることが挙げられます。』
(;∀;)イイハナシダナー
『財政の持続可能性に対する市場の信認が低下すると、金融システムとの間の相乗作用により、実体経済に負の影響が及びます。欧州周縁国では、既に一部で顕現化しており、金融資本市場は緊張が続いています。もっともこれまでのところは、欧州金融安定基金(EFSF)の拡充など、支援制度に一定の枠組みが整いつつあり、他地域への波及は抑えられています。』
まあEFSFで支援してもそれって問題の先送りというか付け替えに過ぎないのですけどね、とは野田さんは仰っていませんが、まー当然ながらそういうご認識はあるでしょうな。
で、その後日本経済の成長についての話も(;∀;)イイハナシダナーなのですが目先の政策インプリケーションがどうのこうのという話ではないので華麗にスルー(汗)。
・必要ならば追加緩和キタコレ
『5.金融政策運営』の『(2)今後の金融政策とコミュニケーション』部分から。
『先行きの金融政策運営については、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復するために、先ほどお話した措置を今後も着実に実行していくことが肝要であると考えています。』
というのは当然ですが・・・・・・
『そのうえで、今後も新たに得られる経済データや情報を注意深く点検し、仮に経済・物価情勢の見通しが著しく悪化する蓋然性が高まったり、デフレからの脱却への道のりが不確かなものになったと判断する場合には、機動性をもって適切な政策を実行していく所存です。』
・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー
何かすっかり市場ちゃん的にも「追加緩和無し」モードになり、更に日銀執行部ベースから出てくる話も、まあ前のめりでは無いにせよ、基本的に次の方向は追加緩和というよりは出口に向けてみたいな感じになっている今日この頃でありまして、そういう状況下で敢えてこのような発言をかます(別に「今後の経済情勢を慎重に点検しつつ必要な場合は適切な対応を機動的に行う」でも問題なさそうな部分なのに、という意味です)というのは、まあこれは野田さんの景気先行き警戒スタンスというのもありますが、包括緩和実施して更に追加みたいな話を最初はしていたのに最近すっかり内外情勢の好転によってトーンダウンどころか明るい話をおっぱじめている日銀や、市場に対して何かをぶちかましたというような感じが思いっきりするのはあたくしの邪推ですかそうですか。
いや、こんな発言を拝読致しますと更に野田さんにはもう1期継続して頂きたいものだとか思うのでありますけれども、どうもベンダーのニュース見ていると会見でもいい感じのぶちかまし発言があったように見えたので、会見要旨を見たいと思いますです、はい。
ということで野田審議委員ネタの続きに乞うご期待(^^)。
2011/03/03
お題「雑談大会/バーナンキ議長議会証言の続き、インフレのアップサイドリスクに言及とな」
東京地方の気温の乱高下に勘弁である。
○昨日の雑談関連の雑談(人のふんどしシリーズ)その他少々
えーっとですな、昨日のみんなの党予算案関連で労働保険特別会計の積立金に関するbewaadさんのエントリーへのリンクアドレスを微妙に間違っていましたので訂正します(変なところで切っていた)。昨日のリンクは直しておきます。
http://d.hatena.ne.jp/bewaad/20080817
厚生労働省「埋蔵金」5兆円のデタラメ
でもって、what_a_dudeさんの「what_a_dudeの日記」のエントリーは昨日追記が入っておりますので、再度URLを置いときますね。
http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20110301
みんなの党の予算w案
『とりあえず補助費などの費目を細かに上げていって、字面で何をどうやって2割削るのかを明らかにしないと、特別会計コミで200兆あるからその1割20兆円はすぐに出る、といってた鳩山と同じですよ。』(上記エントリーより)
まあ良く考えたら最初に民主党も「財源は埋蔵金」とか言ってたのですから、そーゆー意味では根っ子が同じなのではと思ったりもするのですがね。
また、本件に関しては色々と興味深い考察をしているエントリーがございますので勝手に人のふんどしでエントリーのリンクを張るあたくし(勝手に張ってすいませんです、いつも勉強させて頂いております)。
dongfang99さんの「dongfang99の日記」のとこから
http://d.hatena.ne.jp/dongfang99/20110225
みんなの党の緊縮財政予算案
『何がトンデモかといえば、予算の下で膨大な人間が生きている(だからこそ簡単に減らせない)という現実に向き合おうとせず、計算ソフトを使って辻褄が合えばそれでOKという、ヴェーバーも生きていたら卒倒するような超官僚主義的精神である。実際みんなの党は、政策理念を真正面から問うことから逃げて、公務員の給与水準がどうのこうのとか、官僚の手口がどうのこうのとか、「官僚的」なことばかり言っている。財務官僚を激しく攻撃している政党自身が、その精神においてより徹底した財務官僚であることがよくわかる。』(上記エントリーより)
いやまあ財務官僚さんって別にその帳尻合えばそれでOKというだけの方々では無いとは思いますし、官僚さんのお仕事って物凄く地味な関係者間の利害調整とかが非常に大変だとは思いますが、dongfang99さんはここでの「官僚」をステレオタイプ的な意味で敢えて使っておられるのかとは存じますが、それはそれとして『予算の下で膨大な人間が生きている(だからこそ簡単に減らせない)』というのにはマリアナ海溝よりも深く同意。
『しかし、やはり最も憤りを感じるのは、こういう明らかに餓死者や自殺者が激増しそうな政策をちゃんと批判しようともせず、(一方は世論迎合のため、他方は視野狭窄な政策論のために)放置して風見鶏を決め込んでいる専門家たちである。』
民主党のマニフェストの時も思いましたが、どう見ても現実問題としてそれ無理じゃろというような話をスルーしてた時も思いましたけど、この調子でその場その場で適当にウケの良い話をしてマジョリティー獲得しちゃえばこっちのもんという政治手法が恒常化すると憲政の危機ではありますな(だからあたくし郵政解散には批判的だったというのは大昔から駄文をご覧になっておられた方にはご案内の通り)、という話は(この予算案ネタとは違いますが)権丈先生の説明および権丈先生が紹介している自民党谷垣総裁の代表質問を読むべし。
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/korunakare363.pdf
勿凝学問 363
憲政史上最大の確信犯的公約違反とその後遺症
で、話を戻しましてみんなの党の予算案関連ではこんなエントリーもあってなるほどと思いながら読んだあたくし(とまたまた勝手にリンク)。
abz2010さんの「カンタンな答 - 難しい問題には常に簡単な、しかし間違った答が存在する」のとこから
http://d.hatena.ne.jp/abz2010/20110228
みんなの党の予算修正案にみる 新自由主義とリフレ政策の関係
この趣旨はなるほどと感心。
そういえば中原伸之元審議委員って金融緩和と同時に財政赤字縮小に対して強烈に主張していて(みんなの党の予算案みたいな無茶は言いませんけれども)だいぶ前のどこぞの講演会(というかセミナー)で「本来的に言えば財政均衡(PB均衡ではない)を目指して財政改革を行い、それまでの期間は金融緩和(当時聞いた時は「量的緩和政策の継続」でありました)を日銀は継続すべきだ」という趣旨の発言をしておられたのって、市場関係者であの時のセミナー見に行った方ご記憶にありますよね、ね、ね(さすがにもう書いて良いと思うから書く)。あ、別に中原伸之さんが新自由主義的な考えをお持ちかどうかというのは存じませんので念の為なのですが、財政収支均衡までの間金融緩和でサポートというのはまあそれはそれで一つの筋は通っている話ではありますにゃという事で。
さて、人のふんどしと申しますと(何と言う手抜き)先日名古屋ダブル首長選挙の結果に関してご紹介したマシナリさんの「machineryの日々」で訂正と補足のエントリーが上がっていましたのでこれまた勝手にリンクを張っておきます(すいません)。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-442.html
負担の押し付け合い
・・・・という感じで久々に一大人のふんどしコーナーですっかり薩摩守忠度にも程がありますが(って無賃乗車を「さつまのかみ」っていうのとっくに死語ですかそうですか)、そう言えば一昨日のニュースでこんなのがあったのをメモするの忘れてた。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ayCjE3UiHTjo
民主:山岡氏ら「日銀あり方議連」を設立、法改正問題含め議論へ(1)
・・・・・お前らは日銀のあり方を考える前にお前らのあり方を考えろと小一時間ではございますが、更に講演したのがみんなの党の政策ブレーン様であの素敵な予算案の策定に寄与されたのではないかと思われる(労働保険特別会計の埋蔵金話ってモロに先生の持ちネタですから)のが素敵ではありますな、うんうん。
○3か月TB入札が0.120%に乗ったと思ったら早速反発した件について
昨日の3か月TB入札結果。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul230302.htm
(3)募入最低価格 99円97銭0厘0毛
(募入最高利回り) (0.1203%)
(4)募入最低価格に 12.6461%
おける案分比率
(5)募入平均価格 99円97銭0厘4毛
(募入平均利回り )(0.1187%)
・・・・・あらま0.120%乗せ。という事ですが、入札前の前場引けではWIで0.119%の出合いがバカスカあったらしいので、まあ0.120%まで届いたのねという感じなのであります。まあ足元で短めの短国に何だか良くわかんないけど売りがあって、やや引き気味での入札になったという事なのでしょうが、その一方で足元ではGCのレートも別に上昇するでもなく、というか低下気味になっていますし、昨日実施された基金共通担保3か月物のオペは按分率が30.8%と月曜の24.7%からさっくり上昇致しまして、そーゆー意味では短期のオープン系市場の資金需給ってどっちかと言えば金が余り気味じゃネーノと思う所でした(ってちなみに基金オペのオファーは短国入札の後ですので、ちょっと今の説明にはインチキ成分が入っているのにはご留意ありたし)ので、0.120%まで届くとはねえって感じだったのですが・・・・・
落札結果出た後は平均落札レベルもあっさり買いになって結局昨日の新発の引けは0.115%レベルとゆー感じのようでやんすので、入札でちょっと引いた業者のカバーも入ったのかな言った所でございますけれども、まあ新発は何のかんの言ってニーズがあって、それは足元で新発3Mに対するニーズがありますよねという所なのでしょうけれども、まあその場合短い所に売りが出ていて妙にそちらが重くなってて、3Mまでのイールド形成がフラット気味になっているという不思議展開になっているのがワケワカランチ会長ではありまする。
まーこの時期ですので色々とお家の事情的なものもありまして話がヤヤコシになるというのもありますけれども、背景がサパーリ判らん所ではございます。何となく妄想は出来るのですが妄想の範囲内を出ないのでパス。
○昨日のバーナンキ議会証言ネタ続きである
経済見通しのところを見ないと意味無しにも程があるので(汗)。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20110301a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20110301a.pdf
『The Economic Outlook』の第4パラグラフから。
『While indicators of spending and production have been encouraging on
balance, the job market has improved only slowly. Following the loss of
about 8-3/4 million jobs from early 2008 through 2009, private-sector employment
expanded by only a little more than 1 million during 2010, a gain barely
sufficient to accommodate the inflow of recent graduates and other entrants
to the labor force.』
消費や生産の改善は全般的に良いものの労働市場の改善は遅いとな。
『We do see some grounds for optimism about the job market over the next
few quarters, including notable declines in the unemployment rate in December
and January, a drop in new claims for unemployment insurance, and an improvement
in firms' hiring plans. Even so, if the rate of economic growth remains
moderate, as projected, it could be several years before the unemployment
rate has returned to a more normal level.』
先行きに関してはやや楽観するものの正常な状態に戻るには「several years」掛かるといつもの話である。
『Indeed, FOMC participants generally see the unemployment rate still in
the range of 7-1/2 to 8 percent at the end of 2012. Until we see a sustained
period of stronger job creation, we cannot consider the recovery to be
truly established.』
まあ大体従来どおりの話(ってここで急に従来と違う話をされても困るが)ですな。
で、第6パラグラフから第9パラグラフ(が最後)までがインフレネタなのですが、その中で商品価格上昇関連の話が第8と第9パラグラフにあります(その前まではいつもの話)。
『Although overall inflation is low, since summer we have seen significant
increases in some highly visible prices, including those of gasoline and
other commodities. Notably, in the past few weeks, concerns about unrest
in the Middle East and North Africa and the possible effects on global
oil supplies have led oil and gasoline prices to rise further. More broadly,
the increases in commodity prices in recent months have largely reflected
rising global demand for raw materials, particularly in some fast-growing
emerging market economies, coupled with constraints on global supply in
some cases.』
商品価格の上昇は直近ではMENA地域の問題、より広い観点では新興国などの急成長に伴う世界的な原材料需要の拡大と、一部にはそれに対する世界的な生産拡大の遅れによるものとな。
『Commodity prices have risen significantly in terms of all major currencies,
suggesting that changes in the foreign exchange value of the dollar are
unlikely to have been an important driver of the increases seen in recent
months.』
商品価格の上昇は米ドル建てだけではなく全ての主要通貨対比で観測されており、したがって最近数か月で見られる商品価格の上昇が主にドル安によってもたらされたと言った考え方は適切ではない。と「QE2のせいで商品価格が上昇しやがった」批判に対して反論しているのでありますが、毎度毎度あたくし申し上げておりますように、QE2の効果に「ポートフォリオリバランス効果」を挙げて「株価が上昇しましたよ凄いでしょう」という話をしているのに商品価格の上昇はうちのせいでは無いという話をするのは少々虫が良すぎるのではないかと存じますがね。
第9パラグラフから。
『The rate of pass-through from commodity price increases to broad indexes
of U.S. consumer prices has been quite low in recent decades, partly reflecting
the relatively small weight of materials inputs in total production costs
as well as the stability of longer-term inflation expectations. Currently,
the cost pressures from higher commodity prices are also being offset by
the stability in unit labor costs.』
商品価格上昇の消費者物価に対する影響についての話をしていますが、全体の生産に対する投入原材料価格のウェイトが相対的に低いこと、長期的なインフレ期待が安定していることなどでその影響は小さく、足元でのより高い商品価格上昇は単位労働コストの安定によっても相殺されていると仰せで。
『Thus, the most likely outcome is that the recent rise in commodity prices
will lead to, at most, a temporary and relatively modest increase in U.S.
consumer price inflation--an outlook consistent with the projections of
both FOMC participants and most private forecasters. That said, sustained
rises in the prices of oil or other commodities would represent a threat
both to economic growth and to overall price stability, particularly if
they were to cause inflation expectations to become less well anchored.』
この商品価格上昇が一時的で相対的に緩やかであれば現在のFOMCや民間の見通し(CPIは緩やかにしか上昇しない)と合致する動きになるでしょうが、原油やその他の商品価格上昇が持続的になった場合には、経済活動に悪影響を与えると同時に、物価の安定性にも悪影響を与えます。特にその価格上昇によって現在十分にアンカーされているインフレ期待のアンカーが弱まった場合には物価安定に悪影響をもたらすでしょう。
という事で、まあ一応インフレに関してはリスクシナリオとしてのアップサイドリスクに言及しているのですね。というのは把握したが、昨日引用したように金融政策に関する話ではその辺りのリスクに対応してどうのこうのというトーンは読めなかったような気もするだわさ。
『We will continue to monitor these developments closely and are prepared
to respond as necessary to best support the ongoing recovery in a context
of price stability. 』
つまり、物価上昇のアップサイドに繋がるリスクシナリオ、特にインフレ期待の上昇に関しては今後十分に注意して、先行き問題があったときには対応しますって言ってるのですから、こちらの方ではQE2終了どころか先行きの出口政策とかバランスシート縮小の示唆もしているのでございますな。
なのでまあ昨日読んだ後半の意味が判った感じがするのですが、要するに前半の経済見通しでインフレのアップサイドリスクに関して言及して(議会対策の面もあるでしょうが)いる分、後半は従来どおりの資産買入プログラムの重要性についての言及を行ってバランスを取ったという感じなのでしょうな。
2011/03/02
お題「バーナンキ議会証言クイックメモ/その他雑談」
PC起動時に変な画面が出て一瞬焦ったが再起動したら無事だった件orz
○バーナンキ議会証言を金融政策の所だけ斜め読みしてみました
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20110301a.htm
もしかしたら景気見通しを斜め読みした方が良かったかなという感じでございまして、金融政策に関しては毎度同じ話をしておりましたが、斜め読みした手前俺様メモ代わりに記録しておきます。
『Monetary Policy』から。
『As I noted earlier, the pace of recovery slowed last spring--to a rate
that, if sustained, would have been insufficient to make meaningful progress
against unemployment. With job creation stalling, concerns about the sustainability
of the recovery increased. At the same time, inflation--already at very
low levels--continued to drift downward, and market-based measures of inflation
compensation moved lower as investors appeared to become more concerned
about the possibility of deflation, or falling prices.』
ということで、デュアルマンデートの双方ともに改善をしたり下振れリスクが無くなって来たりしているという認識を示しながらも、ここまでの改善はまだ十分な改善に至るまでではない、と金融政策の最初の部分でまずはきっちりとこの部分をかましています。というかここにこうあるのですから景気見通しに関しては(読んでないけど)景気は回復して下振れリスクは少なくなったものの、デュアルマンデートに関する部分については改善ペースが遅いです、という話をしたのでしょうなあと想像できますにゃ。
『Under such conditions, the Federal Reserve would normally ease monetary
policy by reducing the target for its short-term policy interest rate,
the federal funds rate. However, the target range for the federal funds
rate has been near zero since December 2008, and the Federal Reserve has
indicated that economic conditions are likely to warrant an exceptionally
low target rate for an extended period. Consequently, another means of
providing monetary accommodation has been necessary since that time. In
particular, over the past two years the Federal Reserve has eased monetary
conditions by purchasing longer-term Treasury securities, agency debt,
and agency mortgage-backed securities (MBS) on the open market. The largest
program of purchases, which lasted from December 2008 through March 2010,
appears to have contributed to an improvement in financial conditions and
a strengthening of the recovery. Notably, the substantial expansion of
the program announced in March 2009 was followed by financial and economic
stabilization and a significant pickup in the growth of economic activity
in the second half of that year.』
文章は長いですが、要約しますとQE1完了までのお話であります(要約しすぎ)。
『In August 2010, in response to the already-mentioned concerns about the
sustainability of the recovery and the continuing declines in inflation
to very low levels, the FOMC authorized a policy of reinvesting principal
payments on our holdings of agency debt and agency MBS into longer-term
Treasury securities. By reinvesting agency securities, rather than allowing
them to continue to run off as our previous policy had dictated, the FOMC
ensured that a high level of monetary accommodation would be maintained.
Over subsequent weeks, Federal Reserve officials noted in public remarks
that we were considering providing additional monetary accommodation through
further asset purchases. In November, the Committee announced that it intended
to purchase an additional $600 billion in longer-term Treasury securities
by the middle of this year.』
で、去年の8月に景気の先行き不透明および物価の下振れリスクに対応してMBSの償還再投資の実施および国債買入の復活検討のアナウンスを行いまして、その後QE2(ちなみにバーナンキなどの執行部は基本的にQE2という言葉は使ってません)の実施をしましたよ、というのがここの文章の要約である。
『Large-scale purchases of longer-term securities are a less familiar means
of providing monetary policy stimulus than reducing the federal funds rate,
but the two approaches affect the economy in similar ways. Conventional
monetary policy easing works by lowering market expectations for the future
path of short-term interest rates, which, in turn, reduces the current
level of longer-term interest rates and contributes to both lower borrowing
costs and higher asset prices. This easing in financial conditions bolsters
household and business spending and thus increases economic activity.』
ここはパラグラフを途中で切りますが、長期国債の大量購入という非伝統的金融政策は、金利操作という伝統的金融政策と似ているアプローチですといういつもの説明をしているのですが、まず最初に金利操作に関する効果の話をしていまして、その中で「金利の引き下げ」効果の中に「先行きの金利パスに関する期待に変化を与えることによって長期金利の引き下げを行う」というこの前の議会証言でも話していた事(なので今回のを読んで重複になるなあorzとか思いながらメモにしているのですが^^)なのですな。で、この前同じ事書いたと思いますが、それは単純な金利操作では無くて「時間軸政策」に関する部分の効果であって、その場合はコミットメントを伴う話になるのではないかと思うのですよね。
まあその部分が従来から実施している声明文での文言(for an extended periodとかfor
some timeとか文言をいじる奴)だという話だと思うのですけれども、単純な金利操作単体をconventionalな金融政策扱いするもんじゃないのかねとゆー気がするんですが、これって中央銀行の世界的には一般的な理解なのでしょうか???何か違和感があるんですけどね。
『By comparison, the Federal Reserve's purchases of longer-term securities,
by lowering term premiums, put downward pressure directly on longer-term
interest rates. By easing conditions in credit and financial markets, these
actions encourage spending by households and businesses through essentially
the same channels as conventional monetary policy.』
実際は金利上昇したじゃネーノという突っ込みに対する説明は次のパラグラフに(^^)。
『A wide range of market indicators supports the view that the Federal
Reserve's recent actions have been effective. For example, since August,
when we announced our policy of reinvesting principal payments on agency
debt and agency MBS and indicated that we were considering more securities
purchases, equity prices have risen significantly, volatility in the equity
market has fallen, corporate bond spreads have narrowed, and inflation
compensation as measured in the market for inflation-indexed securities
has risen to historically more normal levels.』
長期国債買入やるお!とアナウンスしたら株価は大きく上昇するわ市場のボラは下がるわ社債のスプレッドは縮小するわ物価連動債市場で計測される市場のインフレ期待は従来の正常レベルに上昇するわもうウハウハですよ皆様!との事です。
が、それは「国債買入やるお!」とアナウンスした効果であっても買入の定量的な効果と違うんではないかという疑問は物凄い勢いでするのですがねえ、というのはいつもあたくしが書いておりますのでまあ読みなれておられるかと存じますが。
『Yields on 5- to 10-year nominal Treasury securities initially declined
markedly as markets priced in prospective Fed purchases; these yields subsequently
rose, however, as investors became more optimistic about economic growth
and as traders scaled back their expectations of future securities purchases.』
これまたこの前の議会証言と同じ説明をしていますが、買入やるぞなもしという話があった時は金利が下がりましたけど、その後経済状況が改善してFEDの買入が減るのではないかという期待が市場参加者に広がったので金利が上昇したとあくまでも買入の金利に与える効果をポジティブ(低下方向)に説明しているのですが、これまたこの前も書きましたように実質金利とかで勝負した方が良いと思うのだが。
大体からして景気や物価の先行きがマズーだから長期金利が下がるのであって、買入効果の力技で金利そのものを押し下げるというのは、FEDがCEを実施した時のように、市場の流動性リスクプレミアムが非常に大きくなっていて、そのプレミアム部分を下げるとそれだけで名目の金利がどどーんと下がるというような状況で無い限りは、今の市場規模の中で買入で名目金利に効果を与えるというのは中々難しいのではないか、というのが、QE1とQE2だったり、日銀の包括緩和による2年債購入が示した結果なのではないかと思うのですけれどもどうなんでしょうかねえ。
なので、FEDがここに拘って説明を続ける意味が良く判らんのですが、何でここまで名目金利がどうのこうのの話に固執するんでしょうかというの誰か教えてちょ。
『All of these developments are what one would expect to see when monetary
policy becomes more accommodative, whether through conventional or less
conventional means.』
などと場末であたくしがうじうじと申すまでも無く、「これらは金融環境が緩和的になったという効果です(キリッ)」と流す逆さ絵おじさんクオリティ。
『Interestingly, these market responses are almost identical to those that
occurred during the earlier episode of policy easing, notably in the months
following our March 2009 announcement. In addition, as I already noted,
most forecasters see the economic outlook as having improved since our
actions in August; downside risks to the recovery have receded, and the
risk of deflation has become negligible. Of course, it is too early to
make any firm judgment about how much of the recent improvement in the
outlook can be attributed to monetary policy, but these developments are
consistent with it having had a beneficial effect.』
ここではまあこれらの効果の宣伝ですが、デフレ入りのリスクは無視できる(negligible)ようになったと仰せなのですから、逆さ絵おじさんとしてはドヤ顔状態という所なのでございましょうか。
まあ何ですな、QE2批判とかもあるから頑張って宣伝しないといけないという面があるので同情を禁じ得ない部分は多々ありまして大変だなあとは思いますが、このロジックで説明していると金利の部分でややこしい事になるような気もせんでもないなあと思います。
最後のパラグラフは「先行きは以前から申し上げておりますように常に政策の見直しを行います、ああそれから我々は必要になったら緩和政策を引く事は簡単にできますよ(キリッ)」という説明を(特に後半を)延々と行っているのでした(^^)。
『My colleagues and I continue to regularly review the asset purchase program
in light of incoming information, and we will adjust it as needed to promote
the achievement of our mandate from the Congress of maximum employment
and stable prices.』
『We also continue to plan for the eventual exit from unusually accommodative
monetary policies and the normalization of the Federal Reserve's balance
sheet. We have all the tools we need to achieve a smooth and effective
exit at the appropriate time. Currently, because the Federal Reserve's
asset purchases are settled through the banking system, depository institutions
hold a very high level of reserve balances with the Federal Reserve. Even
if bank reserves remain high, however, our ability to pay interest on reserve
balances will allow us to put upward pressure on short-term market interest
rates and thus to tighten monetary policy when required. Moreover, we have
developed and tested additional tools that will allow us to drain or immobilize
bank reserves to the extent needed to tighten the relationship between
the interest rate paid on reserves and other short-term interest rates.
If necessary, the Federal Reserve can also drain reserves by ceasing the
reinvestment of principal payments on the securities it holds or by selling
some of those securities in the open market.』
(キリッ)の部分長過ぎ。
『The FOMC remains unwaveringly committed to price stability and, in particular,
to achieving a rate of inflation in the medium term that is consistent
with the Federal Reserve's mandate.』
ということで、当該部分全引用という手抜きにも程があるメモでありましたが、基本的に前回の議会証言と金融政策に関する部分に変化は無く、更に冒頭の部分や、途中での書きっぷりを見ますと、先行きの金融政策というかQE2のおかわりがあるかどうかという点についてはdata-dependentですよという話であって、特に決め打ちをさせるような話ではないですな、という所でしょう。
ただ、基本的に言えば「デュアルマンデートに対して現在の回復速度が十分ではない」という話をしている事からして、一部のタカ派先生の言うような「国債買入の縮減」や「バランスシートの縮減」というのをするという感じではなく、更に国債買入プログラムの有効性に関して今回もこれでもかと(やや無理気味の説明も含めて)行っている事を勘案しますと、少なくともバランスシートの維持は必要で、どちらかといえば買入ペースを落としながらも拡大をしたいというニュアンスを感じましたがどうでしょうかね。
#ということでメモとかいいつつ引用大会で長くなってしまいました
○雑感である
・こんなんサルベージしただよ
ちょっと調べ物で昔のWP見てたらこんなのを見つけました。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2000/kwp00j07.htm/
「調整インフレ」による政府債務の負担軽減は可能か?
-- 債務の実質価値減少 対 利払い負担増加のシミュレーション分析 --
本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2000/data/kwp00j07.pdf
htmlのページに要旨がありまして、そこから引用しますとこんな感じです。
『シミュレーション結果によると、インフレ・ショックによって期待インフレ率が上昇しても、名目金利がそれに見合って上昇しなければ、言い換えれば、フィッシャー効果が作用しなければ、利払い費の負担増加は限定的なものに止まるため、インフレがもたらす政府債務の実質的な負担軽減効果は大きい。』
ほうほう。
『しかし、フィッシャー効果が作用する下では、利払い費の負担増加は限定的なものには止まらず、インフレによる債務残高の実質的な減少効果を概ね相殺し得るほどのインパクトを持つ。』
さよですな。
『さらに、ゼロ金利およびゼロ・インフレの状態に対してインフレ・ショックを与えた場合には、期待インフレ率に上乗せする形で名目金利にプレミアムが要求される可能性があり、この場合には、インフレによる債務残高の実質的な減少効果を上回る利払い負担が生じる惧れもある。』
ということで、その辺のシミュレーションを行っているのですが、これ2000年4月に書かれたものでありまして、それから11年経過して政府債務状況が更に悪化しているという大変に素敵な状況である事を勘案しながら読みますと中々こう心が温まるものを感じるのであります。
・一昨日ネタにしたみんなの党の予算修正案とやらの件
みんなの党が大公開されておいでです。
http://www.your-party.jp/activity/2011/03/01/20110228_yosan_f.pdf
恒久財源を持って充てるべき減税を政府保有株式売却だの特別会計の準備金取り崩しで賄うという大変に画期的な内容ですが、ツッコミを入れている人がいますのでそちらでもご参照あれ。「what_a_dudeの日記」さんです。
http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20110301/p1
みんなの党の予算w案
ちなみに、労働保険特別会計の積立金に関するツッコミはだいぶ前にbewaadさんもしておられましたのでご参照ありたし(と完全に人のふんどしモード)。
http://d.hatena.ne.jp/bewaad/20080817
厚生労働省「埋蔵金」5兆円のデタラメ
で、人のふんどしだけだと何ですのであたくしも読んでて「??」と思ったのですけれども、国債整理基金への定率繰り入れ廃止して10兆とか出てくるのは良いのですけれども、それって後年度の償還財源を食い潰している話だから国債償還に充てるのなら意味が判るのですけれども、充てないなら単なる赤字拡大になるのではないかと思うのですけれどもどうなんでしょうかねえ。
なお、衆議院予算案通過に伴い党首様のご見解がこちらに
http://www.your-party.jp/news/party-opinion/000650/
>マニフェスト詐欺が確定した「嘘つき予算」である。
・・・・・・ふ〜ん(棒)
2011/03/01
お題「本日も微妙にタイミング的に遅れたネタで恐縮至極」
諸般の事情につき以下同文m(__)m
○グローバルインバランス
G20に合わせてフランス中銀が「Financial Stability Review」というのを出しまして、それに各国中銀が寄稿していまして、その邦訳が18日に出ておりましたが他の中銀のも一緒に見ようとか思って思わずスルーしていたのでありますが、その時の講演の邦訳が先週金曜に出ましておりまして、あまりパスしている場合でも無いので講演の方から少々。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110224a.pdf
グローバル・インバランスと経常収支不均衡
―― フランス銀行「Financial Stability Review」公表イベントにおける講演の邦訳 ――
講演よりもやや詳しい説明が寄稿文のほうにありますが本日はお家の事情で手抜きの為講演からでご勘弁。
『まず、フランス銀行「Financial Stability Review(FSR)」の「グローバル・インバランスと金融の安定」に関する特集号に寄稿する機会をいただいたことについて、ノワイエ総裁とフランス銀行に対してお礼を申し上げます。また、本日の公表イベントのパネルに参加させていただき誠に光栄です。』
後でURL置いておきますが、各国中銀から寄稿なり講演がありますが、最近の中銀のテーマはグローバルインバランスにとなっておりますわな。で、そのURLの中にありますけれども、トリシェ総裁が講演のお題を『Intellectual
challenges to financial stability analysis in the era of macroprudential
oversight』とマクロプルーデンスの観点というのもありまして(中身は読んでいませんすいませんすいません)これはこれはと思うのでありまする。
『グローバル・インバランスは非常に複雑かつ難しいテーマであり、数多くの論点が含まれています。正直に申し上げまして、FSRの全170ページを読んでいるわけではありませんが、昨日、パリに向けた飛行機の中で、いくつかの論文を読みながら、その論点の多様性に強い印象を受けました。G20諸国の中央銀行総裁が寄稿した論文はそれぞれ独特の視点が含まれており、これは、本テーマの多面性を反映したものです。』
さすがは趣味がセントラルバンキングであるところの貫禄の白川さんクオリティですが、170ページの半分以上を読んでいるに100ユーロ(^-^)。
『私は、日本の過去の経験や、今回の世界的な金融危機から得られた教訓を踏まえつつ、経常収支をグローバル・インバランスの持続性を測る指標として活用することに焦点を当ててお話したいと思います。』
寄稿文の方ではもう少し色々な論点がありますが、今日は手抜きに付き講演の方から。
・不均衡は持続不可能になったときに問題になる
『2.日本の経験』から。
『1980年代に日本の経常黒字と貿易黒字は急増し、80年代半ばには、通貨を増価させ、黒字を削減するよう強い対外的な圧力を受けていました。1985年のプラザ合意以降、協調介入を通じて急速な円高が進んだほか、金融政策を含むマクロ経済政策は、国内需要を喚起する方向に向かっていました。経常黒字は80年代末までには減少しましたが、日本は、バブルの破裂への対応という重い課題を背負うことになりました。』
『私は決して、対外的な圧力と経常黒字の圧縮に焦点をあてたことが、バブルを引き起こしたと主張しているわけではありません。しかし、それらは、経済が過熱している可能性の兆候を示している時に、当局が速やかに行動しにくい環境を作り出す一因にはなりました。経常収支の計数それ自体は、経済政策に影響を与える持続不可能な不均衡の発生について情報を提供していませんでした。』
この辺に関しては実は寄稿文の方に詳しい話があるのですが(じゃあ寄稿文をネタにしろというツッコミはしないように)、持続可能な不均衡と持続不可能な不均衡という物があって、その不均衡が発生している背景を良く吟味する事が重要という事になるのですけれども。
『こうした議論は、今回のグローバルな金融危機にも当てはまります。米国の経常赤字が増大するとともにエマージング諸国の外貨準備が積み上がる状況に着目して、2000年代中頃になると、ドルの急落と米国長期金利の急騰を通じた無秩序な調整が突然生じるのではないかとの懸念が高まりました。しかしながら、周知の通り、実際には全く異なる展開となりました。金融危機発生当初、市場参加者のリスク回避姿勢が極度に高まり、世界的に「質への逃避」が発生し、米国国債への需要の増大によって米国長期金利は大幅に低下し、ドルは大半の通貨に対して上昇しました。』
というのが最近の事案で、米国の経常赤字増大と新興国の外貨準備積み上がりという不均衡が持続可能なのか不可能なのかという議論もこれまた最初に言われていた流れと違って展開しているということです罠。
『すると、次の論点として、「持続困難なグローバル・インバランスに繋がり得る不均衡や歪みをどうすれば見極めることができるか」、「経常収支では十分に把握できない如何なる情報に着目する必要があるのか」が浮上してきます。重視すべき点として以下の二つが挙げられます。』
『第一点は、経済への過度なレバレッジの積み上がりです。』
『日本と米国ともに、危機に先立って民間部門の債務残高が長期トレンドから大きく乖離しました。(途中割愛しますがミクロ的な観点が必要という話をしています)もう一つ重要な要素として、信用がどのような仕組みを通じて供与されるかという点があります。両国ともシャドーバンクは信用ブームを支える重要な役割を果たしました。』
『第二点は、グロスの資本フローです。』
『経常収支と表裏一体の関係にあるネットの資本フロー―― これは資本収支に対応しますが
―― に関する情報は、その他のデータで補う必要があります。近年のユーロ圏の動向がよい例です。(ユーロ圏ではドル調達→米国非金融セクターに運用という「グロスが大きいけれどもネットが小さい」というフローがあったという説明をしています)』
ということで、今そこに発生しているインバランスの持続可能性に関する検討が常に必要であるという話でありまして、思いっきりマクロプルーデンスの観点バリバリの白川総裁クオリティが炸裂する渾身の講演(というか更に渾身なのは寄稿文ですが)であります。
・過去の教訓
『3.過去の教訓』から。
『決して網羅的なものではありませんが、ここで、現在および過去の経験から得られる教訓として三つの点を指摘したいと思います。』
ふむふむ。
『第一に、経常収支のトレンドは、貯蓄・投資バランスの長期トレンドを反映したものであり、経済の発展段階や人口動態に強く左右されます。こうしたトレンドの中で、経常黒字や赤字は経済主体の自発的な選択の結果として生じるものであるため、その存在自体が問題であるとはみなすべきではありません。経常収支不均衡は、それが持続困難なものとなった場合にはじめて問題を引き起こすものです。』
『第二に、経常収支の構造的な側面と景気循環に伴い変動する側面を見分けることは決して容易な作業ではありません。マクロ経済政策や為替政策を通じて構造的な要素の調整を試みることは、経済を不安定化させる金融面の不均衡の蓄積を助長しかねません。経常収支そのものに焦点を当てた政策運営は、むしろ副作用が大きくなります。』
この辺りは寄稿文における日本の経験の話(経常黒字拡大からプラザ合意などの話)で詳述しておりますので読んで味噌。
『第三に、中央銀行やその他の政策当局は多様な指標を用いて持続困難な不均衡が生じているかどうかを評価する必要があります。こうした指標には、資産価格、レバレッジ、グロスの資本フロー、そしてリスクに対する市場の価格付けや金融機関のリスク・プロファイルに関する情報などが含まれます。経常収支に関するデータだけでは、全体像の一部分しか見えてきません。』
つまりどういう事かと言いますと。
『かつて、国境を越えた財やサービスの移動が国際経済上の相互関係の大半を占めていた時には、経常収支や貿易収支のデータをみることによって、対外不均衡の拡大しつつある状況を比較的容易に把握することができました。しかし、グローバルな資本フローは、巨額になるとともに、国境を跨いで動く速さも加速しています。グローバル・インバランスの評価の在り方もこうした環境変化に応じた見直しが必要になっています。』
あたくしが小僧の頃はまだ貿易統計で為替市場が動いていたりしてた記憶が辛うじてあるのですよね、今では貿易統計を毎回材料にするとか無いと思いますけど(^^)。
・中国をdisするの巻
『4.変化する環境』の所では、まず世界経済の環境が変化しているという話をしながら中国の為替政策にきっちりと注文を付けているのが白川さんクオリティ。
『もう一つの基本的な変化は、エマージング諸国のプレゼンスの拡大です。エマージング諸国が世界の経済成長を牽引しており、それに伴い国際社会における同諸国の責任も重くなってきています。例えば、主たるエマージング諸国の為替レートが硬直的となっている場合の世界経済への影響が従来よりも大きくなっていることを認識する必要があります。』
どう見ても中国です本当にありがとうございました。
『国内産業の秩序だった構造調整という視点からは、固定相場制から柔軟な為替制度への緩やかな移行と、自国通貨の増価ペースを調整していくことが正当化されるかもしれません。しかし、緩やかにしか進まない為替調整は、同時に、金融政策を含む国内マクロ経済政策の柔軟な運営を阻害するほか、調整コストを他国へ輸出する性質を持っていることをエマージング諸国の政策当局者は認識する必要があります。』
つまり中国が小国であればその辺は問題が小さいけれども、足元の経済規模において実質ドルペッグみたいな政策を実施しているのは近隣窮乏化政策の実施に他ならないと思いっきり仰せであります罠。
『もし他の諸国が自国通貨高を抑制する類似の施策を講じると、柔軟な為替制度を採る地域がより大きな影響を受ける可能性もあります。』
という話をしつつ、
『第三の特徴点は、景気回復のペースが異なっている点です。』
という文脈で、
『伝統的な金利チャネルや信用チャネルを通じた金融緩和効果は平時のようには効いていないため、制約要因が働いていないエマージング諸国への資本流入が活発化しています。』
という事で、資本流入はQE2のせいではありませんとヤケクソ気味に開き直り気味となっておられるFRBにもチクリという感じですが、前半の中国向けの話はバーナンキが言っても「お前が言うな」で片付けられますが白川さんならまあ説得力ありますわな。
・最後の政策当局者の課題というのはイイハナナシダナーではあるのだが・・・・
『5.政策当局者の課題』から。
『マクロ経済政策を組み立てるにあたっては、自国経済の安定を確保することが伝統的に強調されてきました。しかし、グローバル化の深化に伴い、個別国の政策対応を単純に積み上げた結果が世界全体にとって最適な政策になるとは限らなくなってきています。』
『ある国の政策の効果が国境を越えて対外的に波及すること(spillover effects)や、経済や金融の相互連関を通じて影響が自国へ回帰してくることを分析することもこれまでになく重要になっています。』
『大規模な資本流入や硬直的な為替制度から発生し得る金融面の不均衡への対応を検討するにあたっては、経済的にも政治的にも、全ての国のニーズを満足させる簡単な方策など存在しないことを認識しなければなりません。しかし、世界経済が運命共同体であること(we
are all in the same boat)を踏まえますと、各国がそれぞれ異なる方向に進みだすと合成の誤謬が生じる危険性を高めることになります。われわれの経済政策を導いてくれる機械的ないし自動的な仕組みは存在しません。』
というのはイイハナシダナーではあるのですが、ではこれをどのように国際協調として進めていくかという話は中々困難な事ではあるのでしょうな。
『冒頭で、各総裁方からの寄稿には多様な視点が提示されていると述べました。同時に中央銀行界からの共通のメッセージも込められています。すなわち、政策当局者間の協力は必須であり、さらに強化される必要があるという点です。地道な取り組みではありますが、政策当局者は、世界経済が海図なき航海を続けるにあたり、互いの経験から謙虚に学びながら、丁寧かつ建設的な対話を続けることが不可欠です。』
・ちなみにFRBとECBとBOEのサイトから
日銀の寄稿文
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110218a1.pdf(邦訳)
http://www.banque-france.fr/gb/publications/telechar/rsf/2011/etude14_rsf_1102.pdf(寄稿文)
多分上記URLにあるように、フランス中銀のサイトを見に行くと色々な寄稿文が読めそう。
FRB(バーナンキ講演)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110218a.htm
Global Imbalances: Links to Economic and Financial Stability
ECB(トリシェ講演)
http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2011/html/sp110218.en.html
Intellectual challenges to financial stability analysis in the era of macroprudential oversight
BOE(寄稿文)
http://www.bankofengland.co.uk/publications/speeches/2011/speech473.pdf
Global imbalances:the perspective of the Bank of England
・更におまけなのだが
野田大臣のG20後の会見から
http://www.mof.go.jp/kaiken/my20110219.htm
『野田大臣) あくまで、何回もそれぞれの国の人も確認的に言っていましたけれども、対外不均衡是正が目的であると。そのための議論であるということは、お互いに再確認をしながら進んだつもりです。指標のところだと、うっかりすると対外不均衡是正というのを忘れてしまう。例えば、国内の不均衡だけが注目を浴びるような指標にもなりかねないので、何のために指標を使うのかということは行きつ戻りつ対外不均衡是正のためのだという議論はできたと思います。』
・・・・・・対外不均衡是正そのものを目的化してしまうとそれは白川さんの講演テキストにある話の真逆になってしまうのですが大臣状況把握しておられるのでしょうか?????