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2010/11/30
お題「またまた相場メモ/QE2のFOMC議事要旨を読んでみた」
現状積み残しネタ(=読んだのにまだメモにしてない)は先週の総裁講演に中村審議委員の会見、前回の日銀会合の議事要旨にBOEの議事要旨とあって、これから読むのが総裁と西村副総裁の昨日の講演で、他に読んでおきたいのがダドリーのスピーチにコチャラコタの講演なのですけれどもあたしゃ頭が悪くて読むのに時間がかかるので読みきれません勘弁してください><;
○2年が0.2%乗せてみたり基金買入のレートが華麗に0.2%になったり
昨日の債券市場は何かさっぱり判らんのですが先物回りが一人旅のように堅調推移。長期ゾーンまでが比較的確りで超長期は妙に弱いのですけれども、まあそれはそれとして昨日も香ばしいというか何というかなテイストを醸し出していたのが2年ゾーンとかの短期ゾーンでございます。何せ昨日は一時0.21%が出合った(1毛5糸甘)というような素敵な展開になったらしいのですが、昨日は週末の厚め資金供給が継続した事に加え、基金買入での2年以内国債買切オペを1500億円実施致しまして、そちらの落札利回りは日銀の買入レートのベースで0.202%平均の0.201%足切りという素敵な結果。しかもこれって良く考えたら新発の299以外の銘柄でこのレートになっているのですから中々良い感じの遠投モードでございます。
恐らくその遠投モードの影響とかもあるのかなあとは思うのですが、ユーロ円金先は久々の順イールドが拡大していまして、足元のユーロ円TIBOR3か月金利よりも高い利回り(=値段は下落)となっておりまして、いろんなもののヘッジが打ち込まれており、そのヘッジ玉が大量に押し寄せて来るので、0.4%という絶対水準はどう見ても買いです本当にありがとうございましたという根来鉄砲衆が羽柴秀吉の大量の軍勢に圧倒されて絶賛大敗走となるの図というテイストも醸し出す金先市場というのも大変に物悲しい次第でございます。
まあそれはそれとして、1500億円ほどレーザービームで日銀にブツが投げ込まれた後暫くしたら13時の供給オペも引き続き厚めの供給を行ったのが好感されたのか、それとも連日の供給に加えて基金買入の国債購入を実施したのでやる気がちったあ有るのかということになったのか(基金買入の国債購入って実施要綱を決定した直後の11月8日に1回目を実施したのは良いのですが、その後は6か月掛けて購入というスケジュールをきっちり遵守するということで2度目が出ていないという状態でしたので・・・)はたまたさすがに時間軸から考えて0.20%乗ってたらさすがに負けはせんじゃろという事なのか存じませんが、若干買いも入って戻ったようで、2年カレントの引け値は0.200%となっておりました。
ただまあ相変わらず日銀の庭先である筈の1年ゾーンとかもうんこになっておりまして、来年11月償還の2年286回債は0.150%の引けとこれまた素敵なレート。今月は債券インデックスの年限長期化が0.16年程度と若干長めになりますので、それに対応してインデックス落ちの1年近辺債券の売りがどどーんと出ることが予想されるのですが、何せGCレポレートがこの前まで連日悪態をついた状態になっており、また中期以降の債券はまだ投げっぽい動きもあって(そろそろ止まると思うのですが)全般的に重いという状態になっておりますので、持っているのも中々しんどいという事で、それなら暫く持っていられるレベルまで甘くしておかないと厳しいっすという事でここまで甘くなったんでございましょうなあという所で。
とまあそんな状況ではございますが、とりあえず12月は年末(および外資系の決算月)という事もあるので厚めの資金供給をするのかなあと思わせてくれる動きになっているので、その辺りのスタンスが確認できましたらGCの目線も0.12辺りから0.105-11とかに下がってきて、徐々に短国のレートが落ち着けば先のほうにも波及してくるとは思うのですけれども、まあやっぱり年明けたら市場機能がどうのこうのスタンスになるリスクもありますし、そもそも連日悪態をついたように「包括緩和で長めの金利の引き下げを促す」というのが実際に日銀が出来るGCレポレートの低位安定をさせるという行為を伴わないというやるやる詐欺でしたねという認識がレポなどの方面で定着しつつあるんじぇネーノと思う(あたくしのお友達に聞いて回っているだけなので類は友を呼んでいる可能性が高い点には留意が必要です、為念^^)のでありまして、包括緩和実施当時に期待されたような2年くらいまでの金利がベタベタになって低位安定するでしょう、というのは(問題が日銀と市場のコミュニケーションの断絶に起因するものだけに)少々時間が掛かるのかもしれませんなあという所です。
でまあそんな中白川総裁は会見でこんな話をしておられるようで。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a81kh2YpRWyc
白川日銀総裁:長期金利上昇の背景に米長期金利の動向(Update2)
いやまあ長期金利は米国貰い事故の面は多々有ると思いますし、そもそも日銀の包括緩和で長期金利までコントロールするとは全くコメントしていませんでしたのでそちらは別に良い(実は良くない部分も有るけど今日はスルーしとく^^)のですが、2年金利の上昇に関しても長期金利と同じ文脈で話をするとか意味判らん。
『29日の債券市場では、新発2年債利回りが0.21%まで上昇、昨年12月1日以来の水準を更新した。日銀は包括緩和で長めの金利に働きかけることを政策的な狙いとして挙げているが、こうしたやや長めの金利の上昇は問題視していないのか、という質問も出た。』
『白川総裁は「金融市場は非常にグローバル化しているので、各国の国債金利も含めて、国際的な動きの中で変動を示している面がある」と指摘。「FRBの国債買い入れもそうだが、実際に買い入れを行った後、金利が上昇している。かといって、国債の買い入れの影響、効果がないということではなくて、この買い入れがある状況とない状況を比べてみれば、やはり金利の低下要因になっていると思う」と述べた。』(以上引用は上記ブルームバーグ記事)
長期金利はそれで良いのですけれども、実際問題として包括緩和実施後って短国の金利とか上昇してます(別に包括緩和直前に思惑で下がっただけではなくて、現実問題として足元で償還が来ている3か月物TBの入札時の平均落札利回りって11月22日償還の131回で0.1103%、11月29日償還の132回で0.1047%とかでして、その前からずーっと0.11%絡みだったのが足元では金利上昇して0.12%乗せとかになっているんですよねえ)し、それって海外市場がどうのこうのじゃないですよね。
つーかね、先般の包括緩和政策実施の時に物価安定の理解の明確化という事で実質的に時間軸政策の強化を行った筈で、その時間軸政策の強化とターム物金利の低下を促すという話って米国の金利がどうしたこうしたは関係ない筈の話でしょ(より長いところは別のファクターがあるが、時間軸を効かせに行ってる所は違うでしょ、という話)と思う次第でして、長期金利は兎も角、2年辺りの金利まで海外要因の一言で終了させるのはどうなんでございましょうかねえと思いますけどねえ。
#気がついたらまた悪態になっていました(−−;
ということで悪態がまた長くなったので(あたくしの粘着質振りを絶賛大公開してどうするんだという気がするがorz)FOMCの話がメインの筈がまたまたサブになってしまいましたとさ。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20101103.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20101103.pdf
○冒頭の金融調節部分から少々
最初の『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's Balance
Sheet』からで、2パラグラフ目(特にMinutesには番号が振られて居る訳ではなくて、あたくしが物は試しに便宜的に最初から通しで振っています。以下同様)の後半に長期国債の買入に関する案の説明がありましてですな。
『The Desk judged that if it continued reinvesting principal payments from
the Federal Reserve System's holdings of agency debt and agency MBS in
longer-term Treasury securities, then it could purchase additional longer-term
Treasury securities at a pace of about $75 billion per month while avoiding
disruptions in market functioning. The Manager indicated that implementing
a sizable increase in the System's holdings of Treasury securities most
effectively likely would entail a temporary relaxation of the 35 percent
per-issue limit on SOMA holdings under which the Desk had been operating;
whether, and to what extent, the System's holdings of some issues would
exceed 35 percent would depend on the specific securities that dealers
choose to offer at future auctions.』
証券購入に際して市場機能に混乱を与えないでどうのこうのってえ話をしているのですが、現実問題として長期金利ターゲットのような事をやる、というスタンスで、かつ前回の信用緩和政策のように、実質的に市場機能の代替を中央銀行が実施することによって市場機能不全状態を緩和し、機能回復を図る、というような物であれば話は全然別なのですが、実際に普通に機能して特に問題となるようなオーバーシュートが起きている訳でもない市場に対して「長期金利の低下を促す」というスタンスで中央銀行が入っていくという行為は、その行為そのものが市場機能に対する介入であって、市場機能に混乱を与えないでどうのこうの、という話っていうのは何となく観念の世界というか座学の世界というか、微妙に怪しげな話のような気がせんでもない。
まあ単純に「買い過ぎでスクイーズが掛かるような流れにするのはまずかろう」というような話かもしれませんけれども、MBSの金利低下だってかなりの部分力技の世界だったと思われますので、このロジックは気になる。
更に気になったのはこの次の部分。
『Finally, the Manager summarized the implications for the Federal Reserve's
balance sheet and income statement of alternative decisions that the Committee
might make about the size and maturity distribution of the SOMA's securities
holdings.』
ほほう。
『Participants discussed the Desk's tentative operational plans; they also
discussed the potential effects of an expansion of the System's holdings
of longer-term securities on financial markets and institutions and on
the economy, and the channels through which those effects could occur.』
おお!と思ったのですが、この部分はここで終了しておりまして、内容に関しては将来議事録が出た時にならないと読めないのでしょうな。残念無念(その後のいろいろな話のなかで一部片鱗らしきものは見えるのだが、連銀スタッフがどのように考えているのかは是非みてみたいっすね)。
○ポートフォリオリバランスおよび長期金利低下について
いつもはサラサラと流す(流さないとしんどいから^^)『Staff Review of the
Economic Situation』も今回は比較的真面目に読んでみたのですが・・・・・
第6パラグラフより。
『Real personal consumption expenditures (PCE) rose at a moderate rate
in the third quarter. Rising equity prices likely resulted in some further
improvement in net worth over the same period. 』
株高が実質個人消費支出の緩やかな上昇に寄与(この後「でもまあ伸びは悪い」とか「コンフィデンスが良くない」という話をしているのは念の為申し添えます)するという話をしていまして、ポートフォリオリバランス効果が個人消費に前向きな効果を与えるという話をしているのにほほーと思いました。
一方で次のパラグラフでは住宅市場の説明があるのですが・・・・
『Activity in the housing market remained exceptionally weak. Although
sales of new and existing homes turned up in August and September, the
still-low level of demand suggested that the payback for the earlier boost
to sales from the homebuyer tax credit had not yet faded.』
という現状認識でして、
『Moreover, despite further declines in mortgage interest rates in recent
months, other factors continued to restrain housing demand, including consumer
pessimism about the outlook for jobs and income, the depressed rate of
household formation, and tight underwriting standards for mortgages. 』
ということで、モーゲージ金利の最近の低下にもかかわらず、他のファクターで住宅の需要を抑制されていますよという指摘があったりします。ではモーゲージ金利の低下はどの辺りに効果がありますかという話はまた別のところであるのですが、この流れを見ると少なくともQE2実施前に期待で動いていた市場の効果っていうのは、長期金利が低下するパスよりも株価が上昇するパスの方が直接的というか素早く効いているんじゃないっすかねえという話ではございます。
なお、まあどうでも良いのですが、住宅市場抑制の要因について以下続きがありますので引用しておきますです。
『In addition, the moratoriums recently announced by some banks on the
sale of properties they had seized in foreclosures were likely to damp
home sales further in the near term. Starts of new single-family houses
rose somewhat in August and September, but the pace of construction was
still noticeably below the already-depressed level of the preceding year.
New homebuilding appeared to be weighed down by the backlog of unsold existing
homes and tight lending conditions for acquisition, development, and construction
loans.』
不良債権化した不動産の競売による供給増加も住宅市場抑制の要因になっているとかいう話をしているようです。
でですね、第19パラグラフになるのですが、『Staff Review of the Economic
Situation』の部分でモーゲージ金利に関する指摘をしているのですが、そちらではモーゲージ金利の低下でリファイナンスは活発に行われているけれども、新規住宅取得に向けた買入はそんなに増えてませんよという話をしていまして、よーするに長期金利低下による住宅市場への影響は、住宅市場そのものというよりはモーゲージローンのリファイナンス活動による効果の方が大きいという感じになるのではないかと思われる次第。
『Residential mortgage refinancing activity moved up in late September
and early October, from an already high level, as the average interest
rate on fixed-rate mortgages fell further over the intermeeting period.
In contrast, the level of applications for mortgages to purchase homes
remained anemic.』
というような所で時間が例によってなくなったので続きは明日なのですが、このあたりの連銀スタッフによる現状認識を見た場合、QE2の政策効果としてのパスは長期金利の低下よりもポートフォリオリバランスに重点を置いて説明した方が良いのではないかという気が思いっきりするのですが、足元では長期金利の話がメインっぽくなっているように見えるわけで、ミスコミュニケーションの元になりゃせんかと生温かく見守る次第でございまする。
2010/11/29
お題「中短期金利が絶賛上昇している件について/FOMC議事要旨から(予告メモ)」
週初はどうもエンジンが掛かりませんですぅ。
○短国だけではなく中期辺りまでヘロヘロです
先週金曜は先物とかも下げましたが中短期の下げが目立つ展開。朝からちと弱めだったのですが、日中に投げっぽい動きが出たのかどうか知りませんが、中期ゾーンがヘロヘロとなりまして、前日に入札が行われた2年新発の引けは0.195%になりまして、5年カレントに至っては0.460%の引けとなっちゃいまして、包括緩和を実施した筈なのに中短期の金利が随分と上昇しちゃいましたなあという動きになっておりまする。
でまあ短い所に関してもグダグダとなっておりまして、残存1年の2年286回債(2011年11月償還)の引けも前日比1毛甘の0.145%となりまして、ついこの前の2年債利回りというか包括緩和実施直後の3年債の利回り水準まで上昇しているでござるの巻。
えーっと、毎日申し上げておりますが、より長めの金利を引き下げて金融緩和効果を出す、と包括緩和実施時に思いっきり仰っていた筈ですが、その後の動きはしつこく申し上げておりますようにGCレポ市場の金利を低めに抑えるような動きをするでもなく、それよりも資金偏在に対応した厚め供給を行わない事によってGCレポレートを包括緩和実施前よりも高めの水準になるのを放置する攻撃となってしまい、まあ要するにGCレポ市場的に言えば資金供給を実質的に絞っている状態になっている弊害が徐々に後ろの方に波及して来ましたなあという感じで甚だ遺憾の極みでございます。
米国のQE2が金利の引き下げに効かずに米国の2年などの金利が上昇し、QE2追加の盛り上がりどころかQE2早期打ち切りネタまで出る(それは現状では有り得ないと思うが)次第で、その結果日本の追加緩和への期待というか思惑が絶賛撤収となってしまったというのは勿論あるのですけれども、国内債券市場で足元起きているのは、GCレートが微妙に上昇した水準で安定している事から3か月などの短国市場が崩れだし、1年ゾーンにも波及しているという現象でもありまして、今回の中短期金利の上昇に関してはGCレートを低位安定させないオペレーションをしている「ターム物金利引下げやるやる詐欺」にも責任の一翼が思いっきりあると思いますがどうですかねえ。
つまりですな、日銀による包括緩和実施で時間軸の実質強化のような説明をするわ「より長めの金利の引き下げを促す」とか言うわという政策の方向性が示された訳でして、追加として2年以下の国債の購入ということで、普通に考えますと「2年以下の国債金利を低位安定させるようにしますよ」という施策を打った訳でして、その日銀の説明を額面通りに受け止めれば当然の事ながら、2年はもとより中期ゾーンの5年辺りまでの金利が低位安定状態になるという話になる筈ですわな。
然るに、ターム物の金利を低下させるようなオペレーションは実施されずに却って金利上昇となり、徐々にその影響がボディーブローのように効いてきた事から3か月だの1年だのの金利が上昇してきたと思ったら2年などにも波及し、5年は5年で全然下げ止まらない状態になるとかトンチキ以外の何物でもない訳でございます。何せ包括緩和実施の翌日の引け利回りって2年カレントが0.110%で5年カレントが0.200%でして、まあ勢いでやっちまった部分はあるにせよ、そこからの利回り2倍上昇ですよ2倍。
まあここまで来ますと投げ回転(回転していないような気もするが)みたいになってしまって、地合いの悪さに拍車が掛かりますので、まあ誰かが強力に買ってくれれば別ですけれども、勢いがついちゃっているのがひじょーに遺憾な中短期ゾーンという所でありまする。
で、更に悪態を申し上げますと、足元の金利上昇傾向ですが、米国の金利上昇の貰い事故での金利上昇という面も勿論ありまして、その米国金利上昇というのはどう見てもFOMCが最近強調する「長期金利コントロール」的な発想に無理があって、そのチョンボによるものである、というのはその通りだと思うのですけれども、少なくともFRBは大真面目に長期金利のコントロールを実施しようとして(今のところ)失敗しているのであって、それは単に「出来ない事をやろうとしたら(今のところ)失敗している」という文脈でございますが、日銀の場合はGCレートを抑えつけようと思えば抑え付けられる能力があるのに、市場機能重視だか何だか存じませんけれども、包括緩和で示された「より長めの金利を低下させることによって金融緩和効果をもたらす」って内容に沿えばGCレートの抑え付けを行う筈なのに、GCレートが上昇しても特に資金供給を増やす訳でもなく、という動きを(先週末近辺になってやっと資金供給が増えて来ましたが)しておりまして、これは怠慢なのか詐欺なのかどちらか存じませんが、市場参加者的には見事に梯子外しやがってコノヤローという所ではなかろうかと存じます。
つまりね、もともとできない事をやれると言って(今のところ)失敗しているFRBは単に大口叩きの失敗なのですが、GCレート上昇を放置してターム物から1年とか2年とかの金利を上昇させてしまった日銀の場合はできる事をやっていない結果なのですからこっちの方が問題じゃないですかねえという悪態な訳です罠。
でね、まあ思惑が外れてポジションが逆に行っちゃいましたなあというのは世の中良くある話でそれはそれでいつもの市場の光景として生温かく眺めるものなのですけれども、何せ今回に関しては「包括緩和」で示された方向性に対して日々のオペレーションで(結果から見ますと)思いっきり梯子を外された格好になっているのが如何なものかと思うわけでして、こ〜ゆ〜のやってしまいますと市場が日銀の言う事を信用しなくなるというのが最大の問題では無いかと思うのですよね。最初から市場機能とやらを重視するからGCレートは0.10%近辺に抑え付けるようなオペレーションを実施する訳ではありませんというニュアンスの話でもすれば(そらまあ露骨には言えませんが)良い訳でございまして、これでは「包括緩和実施で示された話と実際にやっている事が違うじゃないか」という話になって、日銀と市場の対話にも問題となると思いますというのは先週も散々書きましたけどね。
何かね、これってコールを0.10%に引き下げて超過準備付利の0.10%と同じにした後の妙な市場機能重視的なコールレートの微妙な誘導という2008年から2009年の時と同じようなテイストを感じるのでありまして、何だかなあという感が思いっきりするのでありまする。
ということで月曜の朝から悪態でございましたが、金曜はさすがに資金供給のオペを厚めに実施してきまして、今日の当座預金残高がほぼ20兆円になるような資金供給オペを実施してきまして、GCレポレートの方も0.11%〜0.12%の水準に低下したようでございます。まあこの調子で厚めの供給を継続すればGCレートは低下するとは思いますし、その状況が継続的になれば短国のレートが落ち着いて後ろにも波及していくと思いますけれども、債券市場ちゃん的には一旦投資家の投げモードになってしまうと投げ回転を止めて傷が癒えるのには時間が掛かるというものでありまして、まあ金曜も申し上げましたように、「金利が上昇してから対処する」というのは時すでにお寿司状態になっているとしか申し上げようが無く、甚だ遺憾でございますです。それにGC落ち着いたらまた平壌運転に戻ってしまうのであれば結局同じ事の繰り返しになりますので、学習効果の出来た市場参加者は日々の受給で決まるGCレートは兎も角として、短国のレート形成の前提とするGCレートをそこまで下げないですから、その点で言えばそう簡単にターム物金利ベタベタということにはならないんじゃないですかねえ、と思うのであります。
以上、マニア向けの悪態大会で短期だのオペだのにご興味の無い方にはポカーンな話ばかりで申し訳ございませんでした。
○FOMC議事要旨から・・・・の積りでしたが時間が無いのでちょっとだけ
悪態をうだうだと書いていたらうだうだと長くなってしまうわ時間がなくなるわという素敵なことになってしまいましたので(どうもすいません)FOMC議事要旨からの話は明日以降。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20101103.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20101103.pdf
明日以降に書こうと思っているネタに関してあたくしのリマインダーも兼ねてここに箇条書きしておきまする(^^)。
・QE2の政策波及効果のロジックって金利引下げよりもポートフォリオリバランスルートの方が効果があるんじゃないかという気がする件について
えーっとですな、金利の引き下げによって住宅市場に対する効果があるのかというような話の部分を見ておりますと、モーゲージ金利の引き下げによる効果って既存のローンの借り換えが促進されるという話はあるけれども、新規の部分とかに対する効果ってあまり認められないみたいな話をしているんですよね〜というお話
・先行きの予想パスに関する問題
これはFOMCだけじゃなくて日銀もそうなのですが、将来見通しに関する部分って「適切な金融政策を実施した場合」という話になっているのですが、その適切な金融政策というのが各委員の裁量に任されていると思われまして、BOEのインフレーションレポートみたいに「今の政策が継続された場合」「市場に織り込まれた政策パスでの政策が実施された場合」みたいに紛れの無いような作り込みになっていないのってどうなのかと思いますけど、というお話。
・金利コントロールに関する話
そもそもインフレ期待を引き上げたいのか長期金利を下げたいのかが今回の議事要旨を見ていてても訳わかんない(両方を同時に実施するのは今のところは無理というのが結論になっていると思う)ですし、市場機能と金利コントロールっていう論点も気になる話ではありますな、というお話。
などがあるのですが、今日は時間がなくなってしまったのでネタ出しで勘弁なのでした(汗)。
2010/11/26
お題「毎日同じネタですが短国雑談/中村審議委員講演メモ」
2年国債入札もヘロヘロだったのですが、それよりも感謝祭前の米国市場での中期債とかユーロドル先物の豪快な暴落は何だったのかが気になりまする。つーか米国であれやられたら2年入札ぱっとせんわな・・・
○短国が相変わらずな件に関してなど
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aLRqXgfJ020w
日銀が資金供給オペを拡大、TB利回り上昇で−証券会社の調達圧力も
ということでブルームバーグ報道によりますと水曜日に入札が行われた新発3か月物は入札時に0.12%手前で寸止めとなったのですが、その翌日であります昨日は0.123%だの0.124%だの(刻みがやたら細かいのは短期市場の仕様なので勘弁)と利回り絶賛上昇。
昨日の資金供給オペの結果。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba101125.htm
短国買入のレートも上昇してますし、共通担保オペの落札平均利回りも特に短いタームに関しては強含みだしという所ですが、GCレートも(昨日の場合はレギュラーが月末でスポットは売れ残りモードの3か月新発短国発行日という要因はありますが)上昇傾向で0.13%だのその上だのというような水準を見に行くでござるの巻。
とまあそういうことで、一応気にしているのか気にしていないのか存じませんけれども、昨日の着地ベースでは当座預金残高を18兆円に乗せて来まして(元々の見込みだと18兆円ちょい割れ位)今日は18.3兆円くらいになる見込みになっておりますので、まあ上記URLにありますように一応資金供給拡大っちゃあ拡大なのですが・・・・・・
えーっとですな、そもそも無担保コール翌日物みたいに当日物取引だったら資金供給を拡大したらそれがビビットに市場金利に反応してくれるというメカニズムになるのですが、レポ取引は基本的に先日付取引ですから、先行きの見通しとか先行きの資金繰りとかを見ながらの取引になりますので、金利が上昇してから資金供給を拡大するのでは遅いんですよねって話は2008年のリーマンショック以降に発生したGC金利絶賛大上昇によるオープン金利上昇などの問題が起きた時に毎日のように悪態をついた筈なのですけれども、何が悲しゅうて同じ悪態をまた書かなきゃいかんのよという所でございまして、甚だ遺憾の極みでございます。
つまり、ちょっと落ち着くと直ぐに供給が絞り気味になって、GCレートが少々動いても気にしない供給をしている、と市場が一旦認識してしまうと、当然ながら価格形成がそれを前提としたものとなってしまいますし、先日付取引なので先の見通しをベースに動く関係上、金利上昇してから資金供給拡大してもその効果が出てくるまで数日のラグを伴う(従って低下するときも同じ理屈となるので、下げようとして資金を出すと途中で出し過ぎモードになってしまう)のでありまして、GCレートを低位安定させようというのであれば「金利が上昇してから供給を拡大する」のではなく、「そもそも金利が上昇しないように供給を行う」ようにしないといけないのでありまして、っていうのは2008年の時に学習効果として蓄積されていないのかと思う次第でありますが、まあGC上昇放置するスタンスなら別に関係ないのですが、気にするので資金供給拡大しましょうというのであれば、今の方式だと常に資金供給の拡大タイミングが時すでにお寿司状態になってしまうのですけどね。
これまた毎日悪態をついておりますように、包括緩和とやらで「より長めの金利を低下させることによって金融緩和効果をもたらす」と思いっきり声明文で表明しておりまして、そのために2年だのの国債の購入を新たに実施した訳ですが、当然ながらターム物金利を安定化させる為にはそのベースにあり、国債等債券取引業者のファンディングコストに影響を与えるGCレポレートを低位安定させなければいけない筈なのですが、このオペレーションのやり方は包括緩和の趣旨に沿っているのですかねえと小一時間問い詰めたいのですが。
で、ここで悪態の矛先がいきなりあらぬ方向に飛びますが(^^)、更にトサカに来るのはど〜でも良いタイミングで緩和しろ緩和しろ、緩和しても足りない足りないとかゆすりたかりのように散々煽っていた経済クオリティー新聞様あたりがこの辺りの事情をスルーしている所でありまして、あれだけ偉そうに金融政策のべき論だか何だかをぶち上げて日銀を追い込んだり、非不胎化介入がどうしたこうしたとか散々っぱら調節技術上の問題をミスリードするような論陣を張っていたくせに、肝心の短期金融市場動向に関して事後は何も見ないとか無知なのかやる気無いのか知りませんが、金融政策および短期金融市場関連の取材能力はどうなっているのかと小一時間でありますわな。株が上昇してドル安が止まっているからご機嫌なのかもしれませんが、その程度の認識で金融政策がどうのこうのとか社説や記事で書いて市場撹乱要因になるのは迷惑なんじゃヴォケと申し上げたくなる次第でありまして、誠に痛惜の念を禁じ得ません。
ということで、段々血圧が上昇気味の昨今でございますが(−−)、包括緩和で「長めの金利の低下を促す」とか言わなければ別にこんな悪態はつかない訳でございまして、つまり悪態の基本にあるのは「言行一致しないとは中央銀行のスタンスとして如何なものか」という所であるという点は念の為申し添えます。
○中村審議委員講演より、基本的には展望レポート通りですが
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1011c.pdf
わが国の金融政策と経済・物価情勢
従来景気認識に関して中村審議委員は比較的厳しい見方(=ハト派的)をしているという感じがするのでありますが、今回の講演では基本的な説明は展望レポートに沿って話をしています。ただまあ中身を見ると微妙にハト派かなあとか思ったのでその辺を少々。
講演の5ページからが日本経済の現状認識および先行き見通しに関する説明になるのですけれども、その中で本文6ページ目に先行き見通しの説明がありまして、2010年度後半の方は今更そんなに差が出る話ではないのですが、2011年度以降に関しての説明が微妙に展望レポートよりもトーンが低めかなあと思ったのはあたくしに中村審議委員=ハト派の認知バイアスが掛かっているせいなのかも知れませんので念の為(汗)。
『先行きにつきましては、2010 年度後半にかけて、個人消費が、耐久消費財に関する各種対策の効果や猛暑効果が剥落するため、一時的に弱い動きとなると思われます。輸出は、一時的に成長ペースが鈍化している海外経済の動向や、これまでの為替円高の影響もあり、増加ペースが緩やかなものに止まるとみられるほか、生産も、暫くの間、弱い動きを続けるものと思われます。鍵となるのは、反動減で低調となっている自動車生産の回復時期ですが、2011
年度の早い段階とみています。』
というのが今年度後半の話ですが、これはまあ今更大差の出る話ではなかろう。
『2011年度入り後以降、海外経済の成長率が新興国・資源国を中心に再び高まる中で、製造業では、輸出が増勢を取り戻すほか、生産も増加基調に復し、企業収益は回復を続けると考えられます。設備投資については、先々の輸出や生産の持ち直しに伴い、企業の設備過剰感が徐々に解消するとともに、持ち直し傾向が続くと見込まれます。非製造業についても、製造業の業績改善の影響が徐々に波及してきており、企業収益や設備投資は緩やかに持ち直していくと考えられます。個人消費も、これらに支えられる格好で、再び緩やかな持ち直し基調に復するとみています。』
いやまあ普通の話をしているっちゃあ普通の話をしているのですけれども、展望レポートではこの部分をどう説明しているかと申しますと以下のようになるのですな。
『2011 年度入り後は、円高の影響は残るものの、海外経済の成長率が再び高まることなどから、輸出が増加を続けるほか、企業収益が改善していくもとで、設備や雇用の過剰感も徐々に解消していくため、わが国経済は緩やかな回復経路に再び復していくと考えられる。2012
年度は、新興国・資源国を中心に海外経済が高めの成長を続けるもとで、輸出・生産から所得・支出への波及メカニズムが強まり、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる。』(10月展望レポートより)
いやまあ同じ話をしてるっちゃあ同じ話なのですが、中村さんは展望レポートで示された2012年度の「輸出・生産から所得・支出への波及メカニズム」という部分を華麗にスルーしているのにあたくしは「ほほう」と思った次第でございまして、いやまあ単にそんな先の話までしてもシャーナイナイと思って2012年度の話をしているのかも知れませんが、展望レポートの明らかに強気っぽいトーンに対して消極的違和感とでも言うものがあってその辺りを反映させた結果としてこの部分の話が展望レポートベースのトーンをちょっと落としたような言い方になっているのかなあとか勝手に妄想をしてみましたけど実際はどうでしょうかね。
ただまあ今回の講演に関しては景気認識および先行き見通しに関しての部分は小見出しが『2.「展望レポート」における経済・物価情勢の評価とリスク要因』となっておりますように、基本的には展望レポートのベースのお話をしていまして、中村審議委員の個人的見解を披露する講演になっている訳ではないので、今回はごく淡々とした内容かと思われます。
2010/11/25
お題「まあ今日も雑談でどうもすいません(と言いつつ引用大会で長い)」
サンクスギビング前に米国市場様は景気付けですかそうですか(^^)。
○3か月TBが華麗に0.12%に上昇している件についてとか
しかしまあ昨日もグチモードでしたが、最近の相場の動き、というか相場様の動きのバックグラウンドと申しますか、動かしている人が何をどう考えて動いているのかがさっぱりワカランチ会長なので非常に悩む今日この頃。ということでただのメモでサーセン。
昨日は3か月TBの入札。でまあ落札結果ですが足切りは0.1192%の刻みの所まで届きまして按分はほぼ2割となったのですが、前回の入札では弱めの所から堅調コースになったのですが、今回はイマイチさんだったようで、何か知らんが0.12%とか外すお方もいたようで、12投げるなら最初から札入れるなよとか好き勝手なグチを申したくなりますが、まあニーズがそんなに無いのならそうなんでしょという話になる次第ではございます。
でですな、色々と背景はあると思いますけど、やはり何と申しましても「ターム物金利を押し下げる」という話をしている筈の追加緩和決定以降の資金供給オペレーションがターム物金利を押し下げる、即ちGCレートを0.10%〜0.105%辺りでベタベタに押し付けてターム物金利を上げさせない、というような動きになっておりませんで、それよりもGCレートが振れるのを気にしないようなオペレーションをしている所でございまして、追加緩和(包括緩和)決定時に『短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するために、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促していくこととした。』という話は何処へ行ったのでしょう(そもそもその為にコールレートの下振れを容認するようにディレクティブを変更したんでしょ)という所でありますわな。
いやまあ為替の円高傾向も一服しているし、株価も戻ってきているから結構結構というのかも知れませんけれども、短期金融市場(と債券市場でも短い所をちゃんと見ている人)的にはまあキツイ言い方をすれば騙し討ち食らっているようなもんでして、市場との対話って意味でどうなんでしょと思いますけどねえ。それで市場機能がどうのこうのとか言われましてもヘソが茶を沸かす訳でしてね。
というのが悪態ですが、まあその他つらつらとテキトーに考えるのは9年10年が上がっても下がっても重いって何か敗戦処理でもしている人でもいるんですかねえとか、今日の2年債入札を控えて、ところで2年の居場所で適正なのってどの位なのよとか、まあそんな所でありますけれども、2年に関しては追加利下げの可能性が殆ど無いということになってしまいますと、足元金利を差っぴいた出来上がりのタームプレミアムが2だの3だのというレベルだとしんどいという事になるのかなあ、と量的緩和時代の2年もの金利の位置を見ながら思うのでございましたです、はい。
と、毎度毎度おれさまにっきというかグチというかただのメモでどうもすいません。
○バーナンキ議長の先週金曜の講演:為替調整による世界経済の持続的な成長ねえ
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101119a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101119a.pdf
今回の講演の多分メインテーマはPDFだと本文8ページ以降になるのですけれども、まあネタ的にはふーんという感じなのですが、金融政策的なインプリケーションとしてはそんなに直接的なものは無かったりしましてね。
世界経済の回復が新興国と先進国でそのペースに大きな違いがあるという話を最初にしていまして、その差異によって金融財政政策にも差異が出てきますよ、というのがマクラにありましてその次がワロタ。
『Notably, in recent months, some officials in emerging market economies
and elsewhere have argued that accommodative monetary policies in the advanced
economies, especially the United States, have been producing negative spillover
effects on their economies. In particular, they are concerned that advanced
economy policies are inducing excessive capital inflows to the emerging
market economies, inflows that in turn put unwelcome upward pressure on
emerging market currencies and threaten to create asset price bubbles.
』
まあ端的に言ってしまえば俺様が満を持して投入した長期国債購入政策に対して新興国の連中がバブルの輸出だふざけんなと抜かしやがって誠に遺憾の極みに存じますという事ですね、わかります(^^)。
で、その資本流入に関するデータを説明しながら、確かにまあ足元では債券や株式などの市場への資金流入は増えていますねというような話をしたあと、でもそれって成長期待の違いとかそういうことに起因する(ので先進国の金融緩和どうこうだけじゃないでしょ)という話をしているだわさ。
『To a large degree, these capital flows have been driven by perceived
return differentials that favor emerging markets, resulting from factors
such as stronger expected growth--both in the short term and in the longer
run--and higher interest rates, which reflect differences in policy settings
as well as other forces. As figures 6 and 7 show, even before the crisis,
fast-growing emerging market economies were attractive destinations for
cross-border investment.』
で、そこから先の説明がどうみても新興国の為替介入批判です本当にありがとうございましたという流れになっているのが味わいの深いところでありまする。
『However, beyond these fundamental factors, an important driver of the
rapid capital inflows to some emerging markets is incomplete adjustment
of exchange rates in those economies, which leads investors to anticipate
additional returns arising from expected exchange rate appreciation.』
>incomplete adjustment of exchange rates
>incomplete adjustment of exchange rates
>incomplete adjustment of exchange rates
『The exchange rate adjustment is incomplete, in part, because the authorities
in some emerging market economies have intervened in foreign exchange markets
to prevent or slow the appreciation of their currencies. The degree of
intervention is illustrated for selected emerging market economies in figure
8. 』
でまあその図8ってえのは何かと申しますと、
『The vertical axis of this graph shows the percent change in the real
effective exchange rate in the 12 months through September. The horizontal
axis shows the accumulation of foreign exchange reserves as a share of
GDP over the same period. 』
ということでして(図を貼り付けるスキルは無いので上記URL先に行って見てくんなまし)、GDPに対する外貨準備の増加率と実効為替レートの変動についての図なんですが。
『The graph also illustrates that some emerging market economies have intervened
at very high levels and others relatively little. Judging from the changes
in the real effective exchange rate, the emerging market economies that
have largely let market forces determine their exchange rates have seen
their competitiveness reduced relative to those emerging market economies
that have intervened more aggressively.』
しかしこれってドルペッグとか通貨バスケットペッグしている国まで捕まえて説明しているのも何だかなという感じではござる。しかも従来の話ではなく、最近の話をしているあたりが微妙に中国様に配慮してるんだかしてないんだか判らんですが、妙な味わいを感じるところでございます。
でまあそんな事象の説明および資本流入に関する別の論点(そもそも資本流入によって資本不足の新興国へのバランス調整をしているともいえませんかねえ的な話)をその続きでした後に、「世界経済の各国間の成長速度などの調整は完全に市場で決定された(つまり意図的な通貨安介入をしない)為替市場を使って行われるのが望ましい」的なお話が始まるのです。
『It is instructive to contrast this situation with what would happen in
an international system in which exchange rates were allowed to fully reflect
market fundamentals. In the current context, advanced economies would pursue
accommodative monetary policies as needed to foster recovery and to guard
against unwanted disinflation. At the same time, emerging market economies
would tighten their own monetary policies to the degree needed to prevent
overheating and inflation. The resulting increase in emerging market interest
rates relative to those in the advanced economies would naturally lead
to increased capital flows from advanced to emerging economies and, consequently,
to currency appreciation in emerging market economies. This currency appreciation
would in turn tend to reduce net exports and current account surpluses
in the emerging markets, thus helping cool these rapidly growing economies
while adding to demand in the advanced economies. Moreover, currency appreciation
would help shift a greater proportion of domestic output toward satisfying
domestic needs in emerging markets. The net result would be more balanced
and sustainable global economic growth.』
面倒なので(おいおい)1パラグラフまとめて引用しちゃいましたが、要するに現在のように国、地域ごとに経済成長のステージが違うときには、当然ながら金融政策が違ってくるのであって、その結果として新興国の為替が強くなる事は先進国と新興国の間の成長ステージのバランス調整に寄与し、結果として世界経済の持続可能性の高いバランスの取れた成長に寄与する、という話をしているように読めますな。
『Given these advantages of a system of market-determined exchange rates,
why have officials in many emerging markets leaned against appreciation
of their currencies toward levels more consistent with market fundamentals?』
このように為替市場による調整という結構なものがあるのに、何で新興国の連中は自国通貨上昇に文句を垂れるのでしょうかとバーナンキ様はご不満のようです(^^)。
『The principal answer is that currency undervaluation on the part of some
countries has been part of a long-term export-led strategy for growth and
development. This strategy, which allows a country's producers to operate
at a greater scale and to produce a more diverse set of products than domestic
demand alone might sustain, has been viewed as promoting economic growth
and, more broadly, as making an important contribution to the development
of a number of countries.』
新興国が引き続き輸出ドライブで成長をするために為替が安くあるべきだと考えているって認識、というかまあそらそうですが。
『However, increasingly over time, the strategy of currency undervaluation
has demonstrated important drawbacks, both for the world system and for
the countries using that strategy.』
で、何がケシカランかというと(1)通貨による調整をしないと新興国と先進国の成長速度のアンバランス状態での世界経済成長は持続可能じゃない(2)為替のフレキシビリティーを認めている国と認めていない国がある状態だと、世界経済の成長アンバランス状態の調整負担が為替のフレキシビリティーを認めている国に一方的に掛かる(3)いわゆる国際金融のトリレンマ問題という点になるのですけれども、量が多くなってきたので引用割愛。本文11ページから12ページになりますので念の為。
で、まあ為替の柔軟さを更に拡大する事によって、グローバルインバランスの調整を行うというような話が更に続くのですが、まあ大体似た趣旨の話が続き、更に米国でのインバランス調整の話をしているのですが本日はこの辺で。
○ところでこんなのが(白川総裁講演)
でですな、一方で白川総裁は香港でこんな講演を。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1011b.pdf(邦訳)
http://www.boj.or.jp/en/type/press/koen07/data/ko1011b.pdf(本文)
『先進国と新興国:異なる速度での景気回復』(本当のお題は『Advanced and
Emerging Economies-- Two-speed Recovery --』ってお題が既にこうバーナンキ講演(お題は『Rebalancing
the Global Recovery』)にぶつけたかのようなお題になっておりますので大変に興味深いのでありますが、昨日は本業多忙の為あまり読んでいる時間が無くて残念無念。
しかし邦訳のPDFの12ページ目(本文11ページ目)に何かお洒落な部分があるのですがこれは何ぞ(^^)。
『最初に、教科書的な基本原則を確認しますと、どの国の中央銀行も最終的に責任を有しているのは自国の物価と経済活動の安定に対してです。先進国であれ新興国であれ、中央銀行が自国の状況をみて金融緩和を強化したり、逆にその修正を図るのは当然かつ正当な行為です。為替レート変動との関連について言えば、自由な国際資本移動の下で、為替レートを固定すると、金融政策の自立性を失います。従って、もし新興国への資本流入が過熱を起こしているのであれば、為替レートの上昇を容認するか、国内の物価や経済活動に影響を与える程度に応じて、金融政策の引き締めを行えば良いというのが教科書に書かれている答えだと思います。』
さよですな。
『こうした原則は重要です。ただし、現在我々の手元にある教科書には、現在の経済における重要な現実―すなわち、ゼロ金利制約とバランスシート調整―は組み込まれていません。ゼロ金利制約に直面し、しかもバランスシート調整に晒されている経済主体が多い場合には、そうでない場合と比べて、金融緩和の効果は国内の主体を通じては発揮されにくくなり、むしろ、対外的なルート─資本流出や為替レートの下落─を通じて発揮されやすくなります。』
『資本が流入する新興国の側では、近年、金融資本市場の成長は目覚しいものがあるとはいえ、市場の規模は先進国市場に比べるとなお小さく、流動性も低いのが実情です。このため、現地通貨建ての株式・債券市場にアンカバーの資本が大量に流入すると、為替レートの上昇と証券価格の上昇が同時に発生する傾向があり、為替差益と証券のキャピタルゲインの両方を狙った投機的資金の流入が自己実現的に加速しやすくなります。』
『こうした過剰な資本流入によって国内の債券利回りが低下すると、国内の銀行貸出金利にも低下圧力がかかり、資産価格の上昇要因にもなります。為替レートの上昇を容認すれば資本流入を抑える効果は期待できますが、為替レート上昇によりインフレ圧力が抑えられ、物価が見かけ上安定していることを背景に低金利が長期化すると、国内景気の過熱やバブルを防げなくなることも考えられます。』
ふむふむ。
『このことは、為替レート上昇も万能薬でないことを示唆しています。』
(;∀;)イイハナシダナー
『いずれにせよ、新興国がバブルとその崩壊を経験することになると、その影響は先進国にも跳ね返ってきます。』
で、まあここで切っちゃうと若干フェアーじゃないのでもうちょっとだけ引用しますけど、長くなるので微妙なところで引用を割愛しますです。
『数年前、日本が量的緩和を実行していた頃、日本はアジア諸国から量的緩和がキャリー・トレードを促進しているとして、批判を受けることがありました。FRB
が先般、大規模な資産買い入れプログラムを実行して以降、同じような議論がより活発に展開されています。先進国、新興国それぞれの議論に言い分はありますが、グローバル化した経済の下では、我々全員が同じボートに乗っていることを意識する必要があります。クリアカットな答えはありませんが、私は金融政策の実行に際して、各国が以下のようなアプローチの意義について了解することが大事だと思います。』
『第 1 は、先進国、新興国ともに、自国の経済、物価の安定を達成するということの意味を深く考えた上で、政策を実行することです。中央銀行にとって自国経済の安定が目標であることはいつの時代も変わりはありませんが、経済、金融のグローバル化を踏まえると、自国の緩和的な金融政策や為替レートの柔軟性の欠如が海外に及ぼす影響と、それが再び自らに跳ね返ってくる相乗作用も意識した上で、自国の経済、物価の安定を図ることが重要になっています。』
で、第2以下を割愛するというのが微妙にアレなのですが、また後日こちらに関しては詳しく読もうと思いますです、はい。
2010/11/24
お題「市場雑感とかFOMC議事要旨のほんのちょっととかその他ネタ」
おじちゃんサパーリ判らんのだが、何で朝鮮半島でややこしい話が起きる中で日本円が強くならないといかんのでしょうか????
○例によって俺様メモ
どうも最近の相場様は訳わからん(いやまあ以前から訳判らないんですけどね)ので一応メモでも。
・金曜は訳判らん強さでしたが月曜は訳判らん弱さ
えーっとですな、金曜の債券市場って妙に堅調に推移してまして、しかも7年から10年が強い(超長期も強かった)とかどうした事ぞとか思っていたら月曜は月曜で寄りからいきなり30銭近く下でよってその後も親の敵のように9年とか10年が弱いというこれまた訳判らん展開。
いやまあ売りがあったんでしょうとか買いがあったんでしょうという話になるとは思うのですが、特にこの9年だの10年だのという所は板気配を見ていると動いた要因となっているそれなりの大口の買いとか売りとかがありそうなもんなのですけれども、何でそのタイミングでそのようなアクションがあるの??ってのが今いちワカランチ会長だったりするのでございまする。
で、今日は今日とて朝鮮半島情勢なのかアイルランドなのか知らんですけれども株は安いわ米債は強いわという事ですので、またお洒落な展開があるんでしょうなあ。よー知らんけどね。
・3か月TB入札
最近地味に重いのが短国。先週は1年、3か月、2か月と入札があって、1年が流れてあららだったのですが、3か月は長期債売った金が入ってきたような感じで入札そのものは水準弱めでしたけれども弱くしたので捌けたという感じ。ただ2か月の方は3か月買った人の買いがイマイチでこちらは入札弱いわセカンダリーもパッとしないわということで、この2か月の発行日になる25日スタートのGCレートも高めという残念な展開。
まーいつも発行されている3か月ですから、今日の方は一定の需要はあるでしょうということで、ど〜せ0.120%に上昇してくれば売れるのでしょうけれども、相も変わらずGCがサガランチ会長となっている中ですので、どうも短国のレートも下がらず、というか追加緩和実施前の水準よりもレートが上昇しているのはどういう事ぞという所でございます。
#そういや今日は朝鮮半島問題対応で即日オペでも実施するのかね、やる意味はないけどさ
○FOMC議事要旨(のほんの一部):政策波及ルートは金利低下・資産価格上昇・ドル安とな
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20101103.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20101103.pdf(PDF版)
Minuteだけは紙に打ち出したときにHTMLバージョンの方が読みやすい(PDFは1枚に2段組で書いてあるのでイマイチ使いにくい)ので、基本的にHTML版を読みつつという所です。
でね、真面目に読むのは週末(前に読めれば読むが)と言う事に致しまして、簡易バージョンで追加緩和政策に関する政策効果だのなんだのという話がありまして、まあそこを見たければ『Participants'
Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の最後のパラグラフを見るあるヨロシ。PDFだと8枚目になるみたいです。つーか今日はそこしか見てない(汗)。
『Participants generally agreed that the most likely economic outcome would
be a gradual pickup in growth with slow progress toward maximum employment.
They also generally expected that inflation would remain, for some time,
below levels the Committee considers most consistent, over the longer run,
with maximum employment and price stability.』
景気は緩やかな回復を続けるものの、物価上昇は暫くの間マンデートに示される水準を下回って推移するでしょうとな。
『However, participants held a range of views about the risks to that outlook.
Most saw the risks to growth as broadly balanced, but many saw the risks
as tilted to the downside. Similarly, a majority saw the risks to inflation
as balanced; some, however, saw downside risks predominating while a couple
saw inflation risks as tilted to the upside. 』
経済見通しのリスクに関しては、概ねバランスとしながらも多くの人がダウンサイドリスクに寄っているとし、インフレのリスクに関しては多数はバランスとするも、数名はダウンサイドリスクが拡大しているとし、2名はアップサイドにリスクが寄っているとしているという事ですか。
というのが経済に関する認識の部分でして、その次が金融政策に関する部分キタコレ。
『Participants also differed in their assessments of the likely benefits
and costs associated with a program of purchasing additional longer-term
securities in an effort to provide additional monetary stimulus, though
most saw the benefits as exceeding the costs in current circumstances.
』
キタキタ。で、この次に注目するあたくし。
『Most participants judged that a program of purchasing additional longer-term
securities would put downward pressure on longer-term interest rates and
boost asset prices; some observed that it could also lead to a reduction
in the foreign exchange value of the dollar.』
バーナンキ講演(先日ネタにしましたが後で続きを紹介します)では「米国はドル安政策を取っているわけではありません(キリッ)」「それよりも世界的な政策協調という観点から自国通貨安政策を続けている新興国、特に中国はケシカラン(キリッ)」などと仰せでありましたが、ここで思いっきりドル安に関して数名とは言え思いっきり言及しているのがチャーミングではございます。まあ黙ってればとも思いますが、こーゆーのをしらっと出すのは結構な事でございます。
ということですね、ここで長期国債の購入に関する直接的に期待する効果について言及があるのですが、思いっきり「長期金利の引き下げ」「資産価格の上昇」とあって、一部の委員からは「ドル安」というのもありますよ、という事になっておりますが、実際問題としてその後長期金利ってどうなっていまちゅかねえと思いますと大変に心温まる物を感じる次第でございまして、まあ勿論結果はこれからの話ではございますが、「長期金利コントロール」というのは資本市場が大きくなかった昔なら出来たのかもしれませんが、現在の米国金融市場の環境では難しいのではないでしょうかと思われる流れにはなっていますわな。
『Most expected these changes in financial conditions to help promote a
somewhat stronger recovery in output and employment while also helping
return inflation, over time, to levels consistent with the Committee's
mandate.』
ということで、この「長期金利の引き下げ」「資産価格の上昇」によって金融環境の緩和がもたらされ、それによってインフレを目標とするレベルへ引き上げることによって、生産や雇用のより強い回復をもたらす事を期待する、というのが政策波及効果のパスとして上げられているのですが、肝心の長期金利が以下同文。
『In addition, several participants argued that the stimulus provided by
additional securities purchases would help protect against further disinflation
and the small probability that the U.S. economy could fall into persistent
deflation--an outcome that they thought would be very costly. 』
数名のメンバーは追加の証券購入が更なるディスインフレの進展や、可能性は小さいもののデフレ入りする可能性を防ぐことになるでしょうと指摘としているのですが、その後に反対意見の論点がうだうだと書かれているのだ。
『Some participants, however, anticipated that additional purchases of
longer-term securities would have only a limited effect on the pace of
the recovery; they judged that the economy's slow growth largely reflected
the effects of factors that were not likely to respond to additional monetary
policy stimulus and thought that additional action would be warranted only
if the outlook worsened and the odds of deflation increased materially.』
数名(さっきはseveralでこっちはsomeなのでこっちの方が少数意見だと思われ)のメンバーは追加の長期国債購入が景気回復に対する効果が極めて限定的ではないかと予想していると言う事ですが、その人たちは景気の回復ペースが緩やかな事は追加の証券購入による政策効果によってもたらされるものとは別の要因で起こっているのであって(つーことは「長期金利を下げたり資産価格を上げたからと言っても実体経済の回復が必ずしも促進されるわけではない」ということでしょうな)、追加の金融緩和政策を実施する事が正当化されるのは、デフレ入りの可能性が顕著に高まった場合に限るのではないか、という事を指摘しているんですな、と読みましたがどうっすかね。
『Some participants noted concerns that additional expansion of the Federal
Reserve's balance sheet could put unwanted downward pressure on the dollar's
value in foreign exchange markets.』
さっきはドル安に関する効果の話をしている人がいる部分がありましたが、こちらでは別の人たちと思われますが、FEDのバランスシートの拡大が「望ましくないドル安圧力」となる事を懸念しているという話が。
『Several participants saw a risk that a further increase in the size of
the Federal Reserve's asset portfolio, with an accompanying increase in
the supply of excess reserves and in the monetary base, could cause an
undesirably large increase in inflation. However, it was noted that the
Committee had in place tools that would enable it to remove policy accommodation
quickly if necessary to avoid an undesirable increase in inflation.』
FOMCは各種のツールによって望ましくないインフレが起きた場合に緩和的な政策を引く事ができるという点は認識されているものの、FEDのバランスシートと超過準備の拡大が「望ましくないインフレの大きな拡大」をもたらすリスクを幾名かの(someより多い)メンバーが指摘しているという部分も「ほほー」という感じです。
ということで、正直言ってここのパラグラフしか読んでいないので(前後はざっくり斜め読みしたが)何なのですけれども、政策波及効果に関する話は雑だし、というから雑だからなのかも知れませんけれども、本当に大丈夫かという意見が出ていてその部分が結構なスペースを占めているのが目についたでございまする。
○先週金曜のバーナンキ議長講演ネタの続きをしようと思ったのですが
例によって例の如く時間がなくなってきた(事前に作れというツッコミは却下^^)のでほんのちょっとだけ。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101119a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101119a.pdf
月曜に紹介した部分が追加緩和政策の波及経路とかの話なので、金融政策マニア的な読みどころではあるのですが、その後に為替政策の話が出てきて、まあ講演そのものもそっちの話の方が多いってえ話をしたかと存じます。
でですな、そのメインイベントの部分をやりだすと結構長い(切り取る場所が難しい)ので、月曜に引用した部分の続きでも為替市場の話をしているので、その部分から引用。講演本文7ページ(PDF版ベース)から。
『The foreign exchange value of the dollar has fluctuated considerably
during the course of the crisis, driven by a range of factors.』
ということで、以下直近まで進行したドル安に関連して、新興国の皆様を中心に「米国がドルのデバリュエーション政策を取っているからだ」という批判が飛んでいる事を意識した話が続くのだ。
『A significant portion of these fluctuations has reflected changes in
investor risk aversion, with the dollar tending to appreciate when risk
aversion is high. In particular, much of the decline over the summer in
the foreign exchange value of the dollar reflected an unwinding of the
increase in the dollar’s value in the spring associated with the European
sovereign debt crisis. The dollar’s role as a safe haven during periods
of market stress stems in no small part from the underlying strength and
stability that the U.S. economy has exhibited over the years.』
主な理由は、ドルがリスク回避の安全資産として買われていた部分の巻き戻しですよ(だから今回の追加緩和のせいではないよ)という話をうだうだとしているように読めますがそれでよかですかね。
『Fully aware of the important role that the dollar plays in the international
monetary and financial system, the Committee believes that the best way
to continue to deliver the strong economic fundamentals that underpin the
value of the dollar, as well as to support the global recovery, is through
policies that lead to a resumption of robust growth in a context of price
stability in the United States.』
我々は米国ドルが国際通貨としての重要な役割を果たしていると言う事を完全に意識しておりますので、ドルの価値をしっかりと留めるために一番重要なことは米国の経済ファンダメンタルズを強い状態に維持して、それによって世界経済の回復をサポートしますよ、で、そのことは米国が物価安定の元で力強い成長の再開をもたらすような政策を実施する事によって達成されますよ。
などと逐語訳風の頭の悪い訳文にもなっていない訳文で誠に申し訳ありませんが、まあこういう事によって新興国などからの「米国はドル安政策を取ってケシカラン」という批判に対するお答えをしているのですが、その一方で上記のFOMC議事要旨のような議論がありまして、何ともうしますかはいはいワロスワロスという感じが非常にするのでございますけれども、この後の為替に関する話を見ますと、ここの部分はバーナンキ議長的には政治的ポーズというよりは大真面目に話をしていると思われますです、はい。
あと、あたくし的にはどうでもいいかなとは思いましたが、一応ヘッドラインとかにも出ているので、「金融政策だけでは限界があります」という話をしている部分を訳も何もつけずにベタ引用します。上記の部分の続きで、今回のバーナンキ講演における足元の金融政策に関する話はここまでとなります。
『In sum, on its current economic trajectory the United States runs the
risk of seeing millions of workers unemployed or underemployed for many
years. As a society, we should find that outcome unacceptable. Monetary
policy is working in support of both economic recovery and price stability,
but there are limits to what can be achieved by the central bank alone.』
『The Federal Reserve is nonpartisan and does not make recommendations
regarding specific tax and spending programs. However, in general terms,
a fiscal program that combines near-term measures to enhance growth with
strong, confidence-inducing steps to reduce longer-term structural deficits
would be an important complement to the policies of the Federal Reserve.』
ということで♪引用大会で恐縮でした。
2010/11/22
お題「金曜のバーナンキ講演がかなりシッチャカメッチャカな件に関して/その他雑談」
モーサテは「金融商品取引業者による断定的投資判断の提供」を厳しく罰する立場のトップをやっていた人が経済ニュース番組で「間違いない」「必ず言える」と発言するオープニングを放送するのをいい加減止めていただきたいのですが。
てな事で(どういうことだ)まずは雑談から。
○政治方面の雑談
・海江田さんもこんな程度だったのか・・・・
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101119/fnc1011191101007-n1.htm
子ども手当に課税 海江田経財相が提案、近く関係閣僚と協議
2010.11.19 11:01
一応それなりにマシな人だと思っていたのですが、先般の発言と言いこの提案といい、ワイドショーで貯蓄アドバイザーやってるのがお似合いだったのでしょうかねえという感じです。ネットでの反応みてて一番笑ったのは「子ども手当ての財源は子ども手当てです(キリッ」というのでしたが(^^)、そもそも子ども手当てって支払い方法から考えると課税対象にしたら徴税事務が大変なことになるんじゃないのかねと思うのですが。
http://www.city.meguro.tokyo.jp/kurashi/kosodate/josei/shoteate/kodomoteate/kodomoteatetetuzukihoho/index.html
子ども手当 手続きの方法(認定請求)
目黒区のサイトを引っ張り出したのは別に意味は無いのですが(あほー検索したら最初に引っ掛かってきたから)、要するに支給するのって各自治体経由になりますけれども、これを課税対象とするとなると一般の給与所得者で子ども手当てを受給している人は確定申告するか、各自治体が給与所得者の勤務先に支給額を通知して年末調整に間に合わせるのかという手続きにしないと課税所得の捕捉が出来ないと思うのですが、お茶の間相手に貯蓄とか投資とか税金とかの話をしていた筈の海江田先生その辺把握しておられるのでしょうかという疑問が非常に沸いてくるのだが。
#前年の課税税率で割り引くのであれば、その人が前年の地方税を納付した自治体で子ども手当てを受給するならそんなに手間は掛からないのかもしれないけれども、その場合は支給年の課税所得にするというのとは別の話になりますわなあ
ということでどうでもいいニュースですがどうでも良いツッコミをしたのでした。
では本題のバーナンキ講演(先週金曜日分)から。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101119a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101119a.pdf
○何かロジック構成がシッチャカメッチャカになって来ているのですが
とりあえずざざーっと全部読んでみましたが、最初は『The Two-Speed Global
Recovery』という小見出しで、まあ要するに世界経済の回復で新興国と先進国の回復速度とその水準に違いがありますねという話をしていまして、その次に米国経済の話をしています。
でもってその次が『Monetary Policy in the United States』ということでPDFファイル版だと本文4ページ辺りからになるのですが、ここでは今回の金融政策に関する波及経路やら効果やらについての話があってこれが中々どうなのかよという感じになっています。まあ具体的に言えば先日引用したカンサスシティ連銀ホーニッグ総裁のツッコミに対する答えに全然なってねええええという所でしょうか。まあ一番オモロイのはこの辺りになりますので、お時間の無い方は本分4ページから6ページまでを読むのが吉。
その後、「我々は必要なときには異例の緩和政策を終了するツールがあるんです(キリッ)」という話がございまして、その後今般の金融政策(で、その中で「今回の政策について量的緩和というのは適切ではない」というチャーミングなフレーズもあるのですが)における為替問題に対する話をしています。
で、その先が多分今回のスピーチのメインテーマになっているのですが、『Global
Policy Challenges and Tensions』っていう部分で新興国などの一部からの「FRBはバブルを輸出して通貨安政策をしてケシカラン」という指摘に反論しているのですが、まあ1行で言ってしまうと「新興国が自国通貨を今まで安く抑える政策をしているのが良くないのです(キリッ)」という事でして、途中から殆ど中国名指し状態なのが大変お洒落。
その次は実はもう斜め読み状態だったのですが『Improving the International
System』って所では世界経済のリバランスが自由な為替レートを通じて行われるというようなまあ美しい話をしているのですけれども、何か微妙感の漂う内容となっています。
という事で、まあバーナンキ議長的には後半を読んで欲しいのでしょうが、あたくしは前半から読むのでございます。
○経済に関わる前半部分はまあサラサラと
冒頭部分のここは・・・・
『Accordingly, the essential challenge for policymakers around the world
is to work together to achieve a mutually beneficial outcome--namely, a
robust global economic expansion that is balanced, sustainable, and less
prone to crises.』
なんつーかお前が言うな感が非常に高いのですが、後半部分では先ほど申し上げたように新興国、特に中国相手にいい感じでキレ気味な部分があって、中々香ばしい所ではございます。
まあそれは兎も角、米国経済に関してですが、金融政策のインプリケーションとしては、足元の経済状況に関して「望ましくない状況である」という点を明確に指摘したことでございますかな。まあ先日金融緩和措置を実施したのですからそれを正当化する話になるのは当たり前っちゃあ当たり前ですが、昨今QE2減額というような意見も出ている中ですので、この辺りはきっちりと指摘した、と言う事なのでしょう。
本文2ページ以降がその辺りになります。
『In the United States, the recession officially ended in mid-2009, and--as
shown infigure 3--real GDP growth was reasonably strong in the fourth quarter
of 2009 and the first quarter of this year. However, much of that growth
appears to have stemmed from transitory factors, including inventory adjustments
and fiscal stimulus.』
ということで回復はしているけれども、一時的な財政刺激と在庫回復によるものであるという話をして、まず最初にデュアルマンデートの失業に関連する指摘を。
『Since the second quarter of this year, GDP growth has moderated to around
2 percent at an annual rate, less than the Federal Reserve’s estimates
of U.S. potential growth and insufficient to meaningfully reduce unemployment.』
ということで、足元のGDP成長は失業率が減るのに不十分であると思いっきり指摘していますわな。
で、その後行数を使って失業率の高止まりの問題に関して説明しているのですが、その中で(久々に見ましたが)長期間の失業者に関する問題を指摘していまして失業が長期間になる事による弊害の説明をしているのが印象的ではありました。引用は割愛しますが。
その後は物価に関する部分でして、本文3ページからですが。
『Low rates of resource utilization in the United States are creating disinflationary
pressures.』
ということで、資源の利用が低いことがディスインフレの圧力になるという話をしていますが、ここの部分に関しては事実の指摘に留めて、毎度の決まり文句で締めています。上記部分の先を引用。
『As shown in figure 5, various measures of underlying inflation have been
trending downward and are currently around 1 percent, which is below the
rate of 2 percent or a bit less that most Federal Open Market Committee
(FOMC) participants judge as being most consistent with the Federal Reserve’s
policy objectives in the long run. With inflation expectations stable,
and with levels of resource slack expected to remain high, inflation trends
are expected to be quite subdued for some time.』
で、その次が米国の金融政策に関する部分ですわな。
○追加緩和実施の政策目的は実質金利の引き下げとな
各国の金融政策対応に関しては回復の速度が違うから対応が違ってきますと言う話をさらっとした後に米国金融政策の話になるのですが、最初の部分では追加緩和はリスク対応みたいな話をしているのかこれは??という感じの部分が。
『Let me address the case of the United States specifically. As I described,
the U.S. unemployment rate is high and, given the slow pace of economic
growth, likely to remain so for some time. Indeed, although I expect that
growth will pick up and unemployment will decline somewhat next year, we
cannot rule out the possibility that unemployment might rise further in
the near term, creating added risks for the recovery. Inflation has declined
noticeably since the business cycle peak, and further disinflation could
hinder the recovery.』
とまあこの辺を読むと追加緩和実施は今後の失業拡大や物価低下のリスクに対応して実施みたいな話をしているのですが、その次に「インフレ期待を引き上げて実質金利を下げる」というお話が始まるのだ。
『In particular, with shorter-term nominal interest rates close to zero,
declines in actual and expected inflation imply both higher realized and
expected real interest rates, creating further drags on growth.』
9月のFOMC議事要旨でも指摘されていた話ですな。
『The Federal Reserve’s policy target for the federal funds rate has been
near zero since December 2008, so another means of providing monetary accommodation
has been necessary since that time.』
短期名目金利の目標が下げられないから他の手段が必要と。
『Accordingly, the FOMC purchased Treasury and agencybacked securities
on a large scale from December 2008 through March 2010, a policy that appears
to have been quite successful in helping to stabilize the economy and support
the recovery during that period. Following up on this earlier success,
the Committee announced this month that it would purchase additional Treasury
securities. In taking that action, the Committee seeks to support the economic
recovery, promote a faster pace of job creation, and reduce the risk of
a further decline in inflation that would prove damaging to the recovery.』
えーっとですな、これって丁度あたくしが先日ご紹介したホーニッグ総裁がモロに指摘しているQE2の効果に関する疑問に対して完全スルー状態じゃないですかああああという所で、先日ホーニッグさんの講演をご紹介した時にあたしゃ当然ながらFOMCの主流派はホーニッグさんのツッコミに対応する(屁理屈でも何でも良いから)ロジック構成があるのかとか思っていたのですが、おそロシアなことに全然無いのかよという所です。
つまりね、上にある部分って「この前の国債およびMBSの買い入れが上手く効果を発揮したから今回も国債の買い入れを行って失業の低下や物価の上昇を促すんです(キリッ)」という話をしているとしか読めないのですけれども、(1)ホーニッグさんの指摘するように金融市場の状況が違う中で同じように効果が出るのか、前回は金融市場の機能不全解消をする事によって効果を出したのではないか、という点についてもスルーしていると共に、(2)そもそも前回の長期証券買い入れによって物価も上がらなかったし失業も下がらなかったんじゃないですか、というツッコミにも全然答えになっていないという訳ですな。
いやまあ気合の政策って奴だと言うのは判っておりますが(^^)、もうちょっと物の言い様ってのは無いのかなあと思うのでありました。
○資産購入政策の波及ルートは金利引き下げって言い切って平気なのかよ
んでその次。本文5ページの後半から始まります。
『Although securities purchases are a different tool for conducting monetary
policy than the more familiar approach of managing the overnight interest
rate, the goals and transmission mechanisms are very similar.』
長期資産購入は金利ルートで効果を出すとか思いっきり言い切って平気なのでしょうかと思うのですけれどもねえ。
『In particular, securities purchases by the central bank affect the economy
primarily by lowering interest rates on securities of longer maturities,
just as conventional monetary policy, by affecting the expected path of
short-term rates, also influences longer-term rates.』
と、思いっきり長期金利引下げの話をしているのですな。
『Lower longer-term rates in turn lead to more accommodative financial
conditions, which support household and business spending.』
いやまあそれはそうなんですが。
『As I noted, the evidence suggests that asset purchases can be an effective
tool; indeed, financial conditions eased notably in anticipation of the
Federal Reserve’s policy announcement.』
何かね、どさくさに紛れて前回の資産購入が上手く行っているという話をしていますけれども、金利ルートで効いているのはMBSの方であって、トレジャリーに関して本当に金利下がったのかよという話になると激しく怪しい(そもそも金利が下がったのはQE2期待への思惑が出だした頃であって、物価上昇率が下がりだしたから長期金利が下がったのではないかという気がするし)のですけれども。
で、足元QE2実施してから金利が絶賛上昇していますが、その件に関しては華麗にスルーして「金融環境はFRBの追加金融緩和が実施されるという予想によって更に緩和的になりました」という話をしているのはもう何かだいぶヤケクソの香りがするんですけどねえ。
○量的緩和と呼ぶのは不適切とな
ここはオモロス。
『Incidentally, in my view, the use of the term “quantitative easing”
to refer to the Federal Reserve’s policies is inappropriate.』
今回の政策内容と「量的緩和」と呼ぶのは適切ではありません!!!だそうで(^^)。
『Quantitative easing typically refers to policies that seek to have effects
by changing the quantity of bank reserves, a channel which seems relatively
weak, at least in the U.S. context.』
少なくとも米国では、という但し書きを入れるのは英国あたりに喧嘩を売っていると読まれると困るからという事なのかもしれませんが(^^)、銀行のリザーブを拡大する事の政策波及効果のチャネルは相対的に弱いとな(ニヤニヤ)。
いやあこれは何ともという感じですなあ(^^)。
○波及チャネルは長期金利低下とポートフォリオリバランスとな
ではどのような波及チャネルなのかと言いますと・・・・
『In contrast, securities purchases work by affecting the yields on the
acquired securities and, via substitution effects in investors’ portfolios,
on a wider range of assets.』
ということで、長期金利の低下と、いわゆるポートフォリオリバランス効果だという話をしているのですが、はてさてその経路がちゃんとワークするのか、もしワークしなかったらFRBはどうするのか、というようなことに関しては今後ともニヤニヤしながらヲチしていきたいと思います。
ということで、本日はこの講演に関して金融政策のロジックだのをヲチするマニアとして見た場合のメインイベント部分(バーナンキ議長的には後半がメインだと思う)のコア部分を引用したのでございます。まあこの後も「中央銀行単独では限界がある」みたいな部分もあったりしますが、それはまた後日。
2010/11/19
お題「10年1.1%乗せとか5年0.4%乗せとか/カンサスシティ連銀ホーニッグ総裁講演(その3)」
GM再上場でメデタスメデタスという話で、そらまあ死んだままよりは良い話でしょうけれども、1年半如きでこの流れだとただの壮大な希薄化だったような気がするのは年がら年中持ち株が希薄化されて株式投資がワークしない人の被害妄想ですかそうですかorz
ところでどうでも良いが「事業仕分けを仕分けする」とはマッチポンプのマッチポンプみたいなモンでしょうか。朝から吹いたわwwww
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20101119/k10015332531000.html
何か債券市場ちゃんが暴れているので今朝も俺様メモを少々。
○入札前に超長期強くしちゃうから
昨日の債券市場ですが、超長期の入札だというのに前場から先物とかは下げるのに超長期は下がらないという嫌がらせのような展開。10時半過ぎにセットアップの売りでも入ったかと思ったらいきなりそこでも先回り買いなのか嫌がらせの買いなのか事前ヘッジの戻しなのか知りませんが、まあ20年入札だというのに20年が強くなって業者のヘッジコストが禿しく悪化するという入札。
まーこうなりますとショートカバー分はシャーナイから上のほうに入れるけど、そうじゃない分の札は下の方に入れてしまうんじゃネーノとか思いつつ、あとは投資家のニーズがどの位見えているか次第ですなあとか思っていたのですが、落札結果は平均はまあ前場引けの板の所でしたが、テールはちゃっかり下になるでござるの巻。
でまあその後相場が押したと思ったら戻して、ほほーと思っていたらもう一発下げて10年1.10%出合いとかやってあらあら状態。その後また急に中期と先物が大復活したと思ったら引けに掛けて先物とか長いところとかがゲロゲロになるという動きで、何と申しますかこう相場様の方は普通の動きとゆーよりは投資家のプチ踏みプチ投げみたいな動きとかも入っているんでしょうなあというようなテイストを感じさせる動きでありました。
でまあ引けにニケーイ平均(の現物インデックスの方)が1万両を回復したら更に叩かれて安値引け・・・・って思ったら引け後更に売られてしまって場中は10年1.1%がとりあえず押し目買いも来て何となく粘っていたような感じでしたが、イブニングセッションであっさり抜けてしまったでござるの巻。
まあ何ですな、確かに先日の超長期1.97%だか1.98%だかの所で結構な買いがあって相場が戻ったというのはそーなんですけれども、それは水準がその位置にあったから買いがあったのであって、1.9%そこそこで同じように買いが来るのかよと考えると厳しかったんですねとは後からだったら何とでも言えますけれども、入札前に変に戻った上に、カーブ的にも数日の間に強くしてしまい、ついでに入札当日の前場にも強くしちゃった結果、業者が入札行くのが厳しくなっちゃいましたねという残念な結果。
まあ今月の入札スケジュールでは中長期国債の新規供給が昨日までで、次は来月頭の10年入札まで無いというのと、月末のボンドインデックスの長期化幅がやや長めの月に当たる(と思った)というのがあるので、20年国債入札から先は需給が好転する一方というイメージがありますので、その分余計な先回り買いみたいなのとかが入ってしまったという所なのでしょうかねえ、よー知らんけどさ。
○更に俺様メモでありますが2年とか5年とか
正直最近の動きってよーわからんですタイという(この前も書いたか^^)ところなんすけど、まあひじょーにざっくりと纏めろと言われると、「包括緩和とQE2相場で作ったポジションのアンワインド」ってえところになるんでしょうなあって感じなんすかね、よー知らんが。
で、そのアンワインドと言えば地味に金利が上昇しているのが2年とかその後ろとかの中短期ゾーン。特に3年とか4年とかは売りが嵩んで需給が悪いようなのですが、2年カレントの利回りも昨日は(引け値は0.155%でしたが)0.16%とかまで上昇する有様。
えーっとですな、ヤケクソ緩和実施の時にあたくしも「潤沢な資金供給を実施して、2年以内の国債金利を0.10%まで下げるような買入を行い、更に時間軸を強化したんですから、2年までの金利が最終的には0.10%に近づくと言う事ですなあ」などと申し上げた口です(10月6日とか7日あたりにそんな事を書いているあたくしなのでございます)ので人の事は言えないのですけれども(超大汗)、あの緩和政策に米国がQE2をこれから実施という流れで、追加緩和の追加緩和だってあり得るでしょうというイメージを持ってりゃそらまあそう考えます罠、と自分の言い訳をするあたくし。
然るに、GCレートは何故か0.11%どころか0.12%水準で推移のが放置されるわ、米国様のQE2が意外や意外に非難轟々となってQE2のおかわりどころか途中で終了するのではないか位の話になってしまい、米国の金融市場ではQE2期待で積み上げたポジションの巻き戻し相場となってしまうでござるの巻(QE2実施時のロジックからしたら普通におかわりになる筈なのですが・・・・)となるわという事で、話が違うがなという状況になっているわけです罠。
つまり、日銀も追加緩和のおかわりが来るのは必至という見方だったのが、おかわりは無さそうですなあとなったという事で、その変化でこれだけやってしまうのもまーシャーナイナイなのかも知れませんが、前提がコロリと変わると変わるもんですなあという所です。特に前回の量的緩和時にはコールが既にゼロ状態で延々と続いており、今回の追加緩和時はコールレートの下げ余地が一応あるというのが違うのでありまして、その分だけ先の金利は下がる余地があった分だけ期待で動いた分の戻しもありますわな、という所なんでしょうかね。どうも表現がうまくなくてスイマセンが。
5年もまあそんな訳で、追加緩和実施時には0.2-0.3ですかなどと申し上げていたのがアセアセにも程がありますが、だって追加緩和のおかわりがあるのと無いのじゃ話が違う(別に追加緩和のおかわりは完全に無くなった訳ではなくて、米国の流れがまた戻ったらあっさり戻るでしょ)のでシャーナイナイという事にしておきましょう(汗)。
ま、その流れで短国の方に資金が戻ってきたんで今日の2か月とかは普通に無難だと思いますし、GCもさすがに馬鹿上がりはしなくなったかなあとは思うのですが、当座預金残高17兆円に何でそう拘るような調節なのかいなというのは疑問ではございまする。まあその話はまたいずれ。
などと市場雑談を書いていたら時間がなくなったのですが昨日の続き。本当は最後までやる積りだったのですが積み残しそうな悪寒(汗)。
http://www.kansascityfed.org/speechbio/hoenigpdf/nabe-hoenig-10-12-10.pdf
○QE2のリスクその2:財政政策の領域に踏み込むことによるアカウンタビリティ問題
講演7ページ目から。
『Second, we risk undermining Federal Reserve independence.』
ということで、FRBの独立性を傷つけるリスクがありますがなという事ですが、まあこの論点はよく言われている話でして、そんなに変わった話をしている訳ではありませんが。
『QE2 actions approach fiscal policy actions. Purchasing private assets
or long-term Treasury securities shifts risk from investors to the Federal
Reserve and, ultimately, to U.S. taxpayers. It also encourages greater
attempts to influence what assets the Federal Reserve purchases. When the
Federal Reserve buys long-term securities - such as the $1.2 trillion in
mortgage backed securities it purchased during the financial crisis - it
favors some segments of the market over others.』
QE2は財政政策の領域であって、長期国債や民間債務の購入は投資家のリスクをFEDに付け替えるものであり、それは最終的には納税者に付け替えているのと同じ、という話と大量の資産購入は価格形成への介入になるという話ですかな。
『And when the Federal Reserve is a ready buyer of government debt, it
becomes a convenient source of cash for fiscal programs. During a crisis
this may be justified, but as a policy instrument during normal times it
is very dangerous precedent.』
更に、財政マネタイズ的な政策は危機の時点では正当化されるが、正常時に実施する事は危険だという歴史的な例もありますよとか言ってるようで、まあ基本的には財政政策に踏み込む問題の論点列挙という感じですにゃ。
○QE2のリスクその3:インフレを引き上げた後にちゃんと着地させられるのか、あるいは財政赤字とバランスシート
と言う話をしているように読んだのですが、それで理解合ってますよね???
『Third, rather than inflation rising to 2 or 3 percent, and demand rising
in a systematic fashion, we have no idea at what level inflation might
settle. It could remain where it is or inflation expectations could become
unanchored and perhaps increase to 4 or 5 percent.』
QE2で何が起きるわ判らんという話のようですが、これって昨日引用した「QE2のストラテジーが曖昧な問題」というのともイメージが繋がるのかもしれませんなあと思いましたが。
『Not knowing what the outcome might be makes quantitative easing a very
risky strategy. It amounts to attempting to fine-tune inflation expectations-a
variable we cannot precisely or accurately measure-over the next decade.』
『And why might inflation expectations become unanchored?』
で、そのインフレ期待がアンカーされない(のでファインチューニングに失敗するリスクがありますよという話)理由は、巨額の財政赤字とFEDのバランスシート拡大によるものだという話をしていますが、多分この点に関してはFOMCの主流派は「財政は再建方向だし、バランスシートを縮小するツールもあるし、それに現状の大きな財政赤字にFEDのバランスシート拡大でもインフレ期待はアンカーされているよね」という所だと思います。
『The budget deficit for 2011 is expected to be about $1 trillion. Even
if the Federal Reserve were to purchase only $500 billion-and this amount
in itself is a source of considerable uncertainty-that would appear to
monetize one-half of the 2011 budget deficit. In addition, the size of
the Federal Reserve’s balance sheet-now and over the next decade-will
influence inflation expectations. Expanding the balance sheet by another
$500 billion to $1 trillion over the next year, and perhaps keeping the
balance sheet at $3 trillion for the next several years, or increasing
it even further, risks undermining the public’s confidence in the Fed’s
commitment to long run price stability, a key element of its mandate.』
ただでなくさえ財政赤字は大きいわFEDのバランスシートは大きいわなのに、今後このように更に拡大しますよという数字を並べて、これは一般のインフレ期待に影響を与えるでしょう、という話をしている訳ですなこの部分は。
『While QE2 might work in clean theoretical models, I am less confident
it will work in the real world. Again, I will note that the FOMC has never
shown itself very good at fine-tuning exercises or in setting and managing
inflation and inflation expectations to achieve the desired results.』
QE2は机上ではワークするかもしれないけれども、私は実際にワークするかに対してあまり自信がありませんって、QE2机上の空論呼ばわりキタコレ。
『Given the likely size of actions and the time horizon over which QE2
would be in place, inflation expectations might very well increase beyond
targeted levels, soon followed by a rise in long-term Treasury rates, thereby
negating one of the textbook benefits of the policy.』
インフレ期待の引き上げに成功したとしても、その場合はインフレ期待が長期金利の上昇に即座に反映するので、その場合は経済にマイナスの効果を与えるでしょ、という指摘が最後にしらっと入っているのでありました。
と言うところで時間がなくなってしまいましたが(大汗)、以下は「それよりも正常化を進めるべきである」というホーニッグ総裁のホーニッグ節が更に続き、ゼロ金利長期化の弊害についてのホーニッグ節が続くと言う展開ですが、それはまあ後ほど引用するかもしれませんし、引用しないかもしれません(^^)。
2011/11/18
お題「ホーニッグ総裁のQE2論点整理(その2)とその他少々」
例によってその前に市場俺様メモ。
○市場俺様メモ
・3か月TB入札
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul221117.htm
(3)募入最低価格 99円96銭8厘5毛
(募入最高利回り)
(0.1173%)
(5)募入平均価格 99円96銭8厘7毛
(募入平均利回り )
(0.1166%)
前場引けのビットサイドでの決着となったようですが、さすがに0.115%越えということでセカンダリーでは平均落札価格はビットサイドになったようですので、金利水準自体はちょっと上昇したけれども投資家の買い水準も確認できましたねっていう結果なので、月曜の1年TB入札でげげげのげとなった流れでやや懸念もあったのですが、さすがに水準を訂正したら無事に消化できたでござるの巻という所でほっと一息。
まーそもそも足元では中長期債の売りが結構出ていた(ので債券市場が下げた)というのがありまして、その中長期債を売った人の資金がTB辺りに流れてきてもおかしくは無い、と言いますかGC市場に既に流入していた感じもありましたので、そーゆー意味では買いのニーズ自体は増えていたということでして、水準さえ訂正すれば無事消化できましたねってえ所なのでしょうか。
・20年入札前に20年が強くて先物が弱いとな
昨日の債券市場ですが、米国の債券市場が強かったので強いのかと思ったら寄りからあっさり前日引け近辺となってその後もイマイチぱっとせず。
その一方で超長期がやたら強くて先物前日比ちょっと安に対して2毛強とか翌日に超長期入札があるというのに先回り買いとかすんじゃねええええよと思うのですが、まーそんな感じで推移した後午後になったら何か知らんが相場様下落。輪番オペの結果がイマイチ宜しくなかったのが引き金っぽいのでありますが、やたら先物が叩かれる一方で最後にはちょっと調整しましたけれども先物142円割りそうな所で超長期前日比変わらず近辺とか妙に堅調な動きになったようで。
前日にあれだけ中期と先物が強かった(超長期も強かったけど)のに1日で先物ヘロヘロとかワケワカンネという所でございますが、それよりもこの調子だとカーブ的に踏み入札にされてしまいますので、せめて相場水準の方を前場に修正した方がよろしかバイと思うのですがどうなるんでしょうかねえ。そらまあ先回り買い以上にまだまだニーズがあるなら良いのですが。
とここまで俺様メモ。
以下昨日の続き。
http://www.kansascityfed.org/speechbio/hoenigpdf/nabe-hoenig-10-12-10.pdf
講演5ページの小見出しが『New Risks and QE2』でして、まあここからがホーニッグ総裁の本領発揮なのですが、まあこの論点整理はこれはこれで興味ありますので、だらだらと引用していこうかと。
『I believe there are legitimate reasons to be cautious when considering
this approach. A meaningful evaluation of QE2 must consider not simply
whether benefits actually exist but, if they do, how large they are and
whether they are larger than possible costs.』
QE2の効果だけではなくコストについても考えましょうという話が始まるのですが、まずはそのコストの前に効果に対するツッコミが入ります。
○長期国債の大量購入で長期金利が本当に下がるのか、効果があるのかという論点
まず最初の突っ込みはこの点でございまする。
『Based on recent research and the earlier program of purchasing long-term
securities-known as LSAP-I think the benefits are likely to be smaller
than the costs.』
前回の長期国債買入(LSAPですな)の効果に対する研究をベースにすると、QE2は効果よりもコストの方が大きいと思われますということです。で、そら何ですかという話ですが、5000億ドルの長期債購入は金利を10〜25bp引き下げただけに留まっており、その点での効果はどうなのよ、という論点です。以下引用。
『Some estimates suggest that purchasing $500 billion of long-term securities
might reduce interest rates by as little as 10 to 25 basis points. The
LSAP program was effective, in part, because we were in a crisis. Financial
markets were not functioning properly, or at all, during the depths of
the financial crisis. In such a situation, it is reasonable that central
bank purchases would be useful and effective. However, currently the markets
are far calmer than in the fall of 2008. The financial crisis has passed
and financial markets are operating more normally. One could argue, in
fact, that with markets mostly restored to pre-crisis functioning, the
effect of asset purchases could be even smaller than the 10 to 25 basis
point estimate.』
LSAPそのものには効果があったけれども、それは金融市場が不十分あるいは全く機能していないという状況下で、中央銀行が資産買入を行うという事が効果的で有効だったという事であり、現状の金融市場は危機モードを脱却しており、論者によってはそのような金融市場の状況では長期国債買入の金利引下げ効果は前回のLSAPよりも低くなるののではないかという人も居ますよと。
『I would also suggest that even if we achieved slightly lower interest
rates, the effect on economic activity is likely to be small. Interest
rates have systematically been brought down to unprecedented low levels
and kept there for an extended period. The economy’s response has been
positive but modest.』
で、更にホーニッグさんとしては、金利を若干引き下げる事に成功したとしても、それが経済活動に与える影響が大きくないのではないかという指摘をしている訳でございますな。既に金利は異例の低金利政策を「for
an extended period」継続している事によって低い水準にあり、金利引下げの効果は勿論プラスだろうが小さいのではないでしょうかっつー事ですな。
○長期国債の大量購入でポートフォリオリバランスが起きるのかという論点
ホーニッグ総裁は「経済の不確実性を高め、金融のインバランスが発生するリスクを高める」というような反対理由で低金利継続とか資産購入に対する反対をしているので、この論点で来るのですかそうですかという感じなのですが。
『In fact, right now the economy and banking system are awash in liquidity
with trillions of dollars lying idle or searching for places to be deployed
or, perhaps more recently, going into inflation hedges. Dumping another
trillion dollars into the system now will most likely mean they will follow
the same path into excess reserves, or government securities, or “safe”
asset purchases. The effect on equity prices is likely to be minor as well.』
長期国債の大量購入の資金は結局の所、主に超過準備や国債などの安全資産への購入に回り、株価への効果は相対的に小さいんじゃネーノということのようで、今回のQE2実施時に効果として期待されている「ポートフォリオリバランス効果」に対して懐疑的な見解であります。
まあこの点に関しては、日本の場合最初はポートフォリオリバランスは効かなかったのですけれども、不良資産問題がある程度片付いて政府のコミットメントが行われるようになった辺りからはもしかして効いていたのかも知れませんので、この辺りは微妙っちゃあ微妙な気がせんでもないですけど、確かにまあ目先的にこのポートフォリオリバランス効果ってどうなのよと言われるとホーニッグ総裁の主張の方がしっくり来るにはしっくり来るのは日本病ですかそうですか(^^)。
『There simply is no strong evidence the additional liquidity would be
particularly effective in spurring new investment,accelerating consumption,
or cushioning or accelerating the deleveraging that is hopefully winding
down.』
ということで、結論はFEDの国債購入がポートフォリオリバランスやら消費拡大やら、デレバレッジの動きに対するクッションの効果を出すかどうかに関する強いエビデンスは無いでしょ、という指摘をしています。
『If the purported benefits are small, what are the possible costs?』
ということで、効果が小さいでしょうという話をした後にコストの話になります。
○コストその1:QE2のターゲットが無い事による弊害
いきなりこの部分がゴシックになっておりましてですな(^^)。
『First, without clear terms and goals, quantitative easing becomes an
open-ended commitment that leads to maintaining the funds rate too low
and the Federal Reserve’s balance sheet too large. The result is a further
misallocation of resources, more imbalances and more volatility.』
明確なターゲット、例えば失業率が何%になったらとか、物価上昇率が何%になったからとか、10年金利が何%になったから、というような明確なゴールの無い状態でのQE2実施は、その政策がオープンエンドになってしまい、その結果としてFRBがFF金利を低すぎる水準に維持し、バランスシートを大きすぎる状態にする事によって、資源配分の不適正や大きなインバランスやボラティリティーの拡大をもたらしますという話です。
『There is no working framework that defines how a quantitative easing
program would be managed. How long would the program continue, and what
would be the ultimate size? Would purchases of long-term assets continue
until the unemployment rate is 9 percent or 8 percent or even less? Would
purchases continue until inflation rises to 2 percent or 3 percent or more?
Would the program aim to reduce the 10-year Treasury rate to 2? percent
or 2 percent or even less?』
『Without answers to these and other questions, QE2 becomes an open-ended
policy that introduces additional uncertainty into markets with few offsetting
benefits.』
で、その手の明確な出口の指針が無いと、一般的に市場や経済主体は緩和的な政策が非常に長く続くと考えることになるでしょうと。
『As central bank assets expand under quantitative easing, what will be
the exit strategy? In the midst of a financial crisis, we may not have
the luxury of thinking about the exit strategy. In current circumstances,
however, we must define an exit strategy if the objective is to raise inflation
but contain interest rate expectations. If history is any indication, without
an exit strategy the natural tendency will be to maintain an accommodative
policy for too long.』
そして、バーナンキ議長などFOMC主流派が主張する「FEDは適切な時に引き締めに転じる能力もそのツールもある」という点についても懐疑的でありまして。
『While I agree that the tools are available to reduce excess reserves
when that becomes appropriate, I do not believe that the Federal Reserve,
or anyone else, has the foresight to do it at the right time or right speed.
It may work in theory. In practice, however, the Federal Reserve doesn’t
have a good track record of withdrawing policy accommodation in a timely
manner.』
最後の一文、
>the Federal Reserve doesn’t have a good track record of withdrawing policy accommodation in a timely manner.
ってのは中々厳しい指摘で、つまりバーナンキ副議長時代にお前さん何やっていましたっけということだと思ったのはあたくしの読み方に問題がありますかそうですか(^^)。
という事で時間が無くなったのでコストその2以降は明日も続く(^^)。
2011/11/17
お題「ホーニッグカンサスシティ連銀総裁のQE2論点整理(今日はマクラ部分だけ)」
というネタの前に市場雑談と言うか俺様メモ。
○昨日の市場が良く動いたので俺様メモ
いやあ昨日はよー動きましたな。米国の金利が上昇してナンジャラホイと思ったら債券市場ちゃんは寄りから大下げ、というかユーロ円金先とか朝から期先が2ティックだの3ティックだの素敵な売られ方となっていまして、債券先物はいきなり50銭近く下げてスタートするわ5年は0.41%になるわ10年は1.09%になるわ20年は1.98%になるわと如何にも寄り前からぶん投げた人が居ますよと言わんばかりの動きに。
でまあその後は全力買いも入ったみたいですが、前場途中にはまた下げる場面とかあってどうなる事やらとか思っていたら後場に入って今度は債券先物は戻るわ金先は戻るわという動きでして、まあ寄り前の下げの時に中短期にも叩きが入ったもののそれが前場から後場寄り直後辺りに掛けて気合の買いで吸収されましたねえというのと、そもそも前場から超長期は下げる中で比較的堅調でしたので、こらまあ超長期方面にも水準到達でここまで我慢をしていた投資家さんの買いがありましたかそうですかという流れ。
また、先物も買戻しだか何だか知りませんが(買戻しにしては速報ベースの残った建玉が相変わらず高水準、ただし転売買戻し訂正でいきなり減る事もあるのですが)こちらも強いんですが、そもそもこの下げ過程の中で先物をしつこく叩いているような動きがあったので、先物の意識的なショートが溜まっているでしょうと思う所でもございまして、先物は戻る時は早いですなあという感じでしたので(先週金曜にも先物だけ大反発相場がありましたが)、中短期の堅調とあわせてまー買戻し的な買いが入ったんでしょうなあと思われまするですがな。
でですな、一方で10年辺りはイマイチでして、9年とか10年とか昨日の反発の中で5年超のカーブ上では一番弱いとゆー事でして、こっちは下げ過程での売りが影響しているっつーのと、戻り過程における買いが超長期と中期と債券先物という事でして、まあ中期は買うけれども10年買いを突っ込むほどまで元気ではないという所なのでしょうなあと言った感じでごんす。
先物も出来高多かったですし、当然ながら現物売買は活況だったようでございますし、金先まで派手に下げて上げていましたので、そーゆー意味では日銀のヤケクソ追加緩和と米国QE2絡みでのロングポジションの整理というか振り落としというかお掃除も進んだという事でしょうなあとか思うのですが、全ては現象を繋ぎあわせたあたくしの脳内妄想メーカーに基づく話ですので内容の正確性については保証致しかねます^^;
米国様次第の面はありますけど、その米国様では株は下がるわ債券は強いわという事ですので、まーとりあえず昨日の流れは正当化されるという感じですかねえ、とは思いますけど、何か折角新発超長期の2%クーポンの目が出てきたのに戻ってしまうとは残念な気は致しますですなあ。まあ1.9でも良しとしますかね。
ということでただの雑談でした。
○カンサスシティ連銀ホーニッグ総裁のQE2に関する論点整理(その1)
http://www.kansascityfed.org/speechbio/hoenigpdf/nabe-hoenig-10-12-10.pdf
10月12日の講演ですので、9月のFOMCの議事要旨が出てQE2ネタでクソ盛り上がり(インフレ期待を高めるために物価水準ターゲットや名目GDPターゲットも検討材料みたいな部分に大反応してましたわな)が始まる直前というか当日というタイミングでございましたわな。
で、最初に景気に対する認識があるのですが、当然っちゃあ当然なのですが、ホーニッグさんは景気に関しては「ペースは遅いものの回復傾向」が続いているという話をしています。ただし失業率に関してはホーニッグさんと言えども現状に関しては良くないという話をしています。本文3ページ目から。
『The issue is, of course, that while private jobs are being added within
the economy, it is not enough to bring unemployment down to where we all
would like to see it. Unemployment remains stubbornly high at 9.6 percent.』
失業率の水準は望ましいと考える水準に対して十分ではないとな。
『With such numbers, there is, understandably, a desire and considerable
pressure for the Federal Reserve to “do something, anything” to get the
economy back to full employment. And for many, including many economists,
this means having the Federal Reserve maintain its zero interest rate policy
or further still, engage in a second round of quantitative easing - now
called QE2. Some are even suggesting these actions are necessary for the
Federal Reserve to comply with its statutory mandate.』
このような状況においては、FRBに対して何かをしろというプレッシャーが掛かりますし、低金利の継続と新たな量的緩和、つまりQE2の実施がマンデート達成に必要だと考える人が多いでしょ、ってな話をしているように見えますな。
で、QE2の論点整理が始まる訳ですが、まずはQE2で期待されている政策波及経路とその効果に関する論点整理をしている項が次の小見出し『Interpreting
the Policy Mandate』という所でございます。
最初にFRBの法的に定められたマンデートについての話がありまして、その政策のゴールはあくまでも長期的なものであって、金融政策の効果が波及する期間や、その間の変化によるラグなどのこともあるので、短期的な目標を追求する事については慎重であるべきだ、という話をしております。
『The FOMC's policy mandate is defined in the Federal Reserve Act, which
requires that: "The Board of Governors of the Federal Reserve System
and the Federal Open Market Committee shall maintain long-run growth of
the monetary and credit aggregates commensurate with the economy's long-run
potential to increase production, so as to promote effectively the goals
of maximum employment, stable prices, and moderate long-term interest rates."』
ここの文をまとめて書いてあるのを久々に見たので思わず引用してしまった、今更の話で正直スマンカッタ。
『There is, within the Act, a clear recognition that our policy goals are
long-run in nature. In this way, the Act recognizes that monetary policy
works with long and variable lags. Thus, the FOMC should focus on fostering
maximum employment and stable prices in the timeframe that monetary policy
can legitimately affect - the future. The FOMC must be mindful of this
fact and be cautious in pursuing elusive short-term goals that have unintended
and sometimes disruptive effects.』
短期的な目標を追求しすぎると時に混乱を招くという話ですな。で、その次にQE2に関する政策経路についての話になりますが、基本的には(その時点で)一般的に認識されているのは「長期国債の追加購入」ですよね、という話をしまして(その部分の引用はスルー)、では長期国債の追加購入ってどうよという事で、長国買入の政策効果を論じています。本文4ページから。
『Proponents of QE2 argue that it would provide a near-term boost to the
economy by lowering long-term interest rates while raising inflation. These
benefits would arise from the purchase of U.S. Treasury securities, which
would lead to lower U.S. Treasury and corporate rates. These lower interest
rates would then stimulate consumer and business demand in several ways,
including encouraging mortgage refinancing that could lead to increased
consumer spending, boosting exports through a likely lower exchange rate,
and fostering higher equity prices, thereby creating additional wealth.
Such a move is said to be consistent with the FOMC’s September 21, 2010
announcement, which stated that it was “prepared to provide additional
accommodation if needed to support the economic recovery and to return
inflation, over time, to levels consistent with its mandate.”』
QE2の実施を支持する人の主張によると、QE2は長期金利の引き下げとインフレの引き上げによって景気を刺激するという論議をしており、米国財務省証券の買入によってそれが実施されるのですが、金利の引き下げの波及効果としては、金利低下による消費者や企業の消費需要拡大、為替レートの引き下げを通じての輸出拡大、モーゲージ金利の低下によるリファイナンスの進展や株価の上昇による消費支出拡大というような話がありますね、ってな指摘でありまして・・・・
『Such easing, it is hoped, would bring inflation back up to something
closer to 2 percent, a rate that many judge to be consistent with the Federal
Reserve’s mandate. In addition, higher inflation would increase demand
as consumers move purchases forward to avoid paying higher prices in the
future.
So, with these purported benefits, why would anyone disagree?』
ということで次の章からが『New Risks and QE2』というホーニッグ節爆発のコーナーになるのでありますが、肝心の本文に来る前に時間が無くなったので明日に続くのでございまする(いつもの事ですがどうもすいません)。
ただまあ何ですな、多分この辺りに関するツッコミはツッコミでQE2というか国債買入推進のバーナンキ議長をはじめとするFOMC主流派の方も考えているようで、先般の声明文でもそうですし、9月のFOMC議事要旨で読める議論でも長期金利がどうのこうのという話をあまり強調しないようになっていまして、特に9月の議事要旨では「短期的な期待インフレ率を引き上げる」というような論点も出ていた事から、逆にQE2ヒャッハー相場となって商品は上がるわトレジャリーの10年超のイールドカーブのスティープニングは始まるわ、「カレンシーウォー」だの「ダラーデバリュエーション」だのという言葉は踊るわという現象が起きていたのはご案内の通りであろうかと存じます次第でございまして、恐らく(前回の長期国債購入でもそうでしたが)長期金利の話は国債買入の進展次第ではどさくさに紛れてその話をフェードアウトするというバーナンキ先生得意の荒業が進行する可能性もあるでしょうな、と思うのでございました。
以下明日に続く。
2011/11/16
お題「さあ盛り上がってまいりました!」
この調子だと文化の日とその後の土日でせっせと読んだネタを出すタイミングを逸する悪寒がするのだが、ネタは後入先出として気がつけばネタが滞貨となるというのがあたくしの仕様です。
○QE2が面白い事になりつつある件について
足元では2年債の動きも興味津々ですので、ブルームバーグ様におかれましては米国2年債(TickerコードのGT2かCT2でよかです)の数字も入れていただくと有り難いのですが(まあモーサテで判りますけど)・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_americas.html
東京のだいたい朝6時の数字(上記URLより)
米国10年国債 2.924 0.133 97.453
米国30年国債 4.393 0.105 97.688
・・・・(つд⊂)
・・・・(;゚д゚)
昨日の夜見てた数字と何か随分違う気がするのだが・・・・
えーっと何だかまた金利が上昇しているのですけれども、これは一体全体何がどうなっているのでしょうかという所ですわな。いやまあQE2ヒャッハー相場でインフレ期待が上昇という事にすれば一応話としては通るのですけれども、単に勢いで上昇していると申しますか、その前のQE2盛り上がりの世界の中でトレジャリーロングの壮大なポジションが積み上がってしまった巻き戻しが起きてそれが雪崩みたくなっているという感じはしますが、実際のところはあたくしトレジャリーの専門家じゃないですからワカランチ会長。
でまあこの長期金利上昇ですが、先般ご紹介した9月のFOMC議事要旨(や他の連銀の偉い人の講演)の中でも「米国のモーゲージ金利が低下し、30年MBS金利がヒストリカルローまで低下したことによって、住宅ローンの借り換えが(可能な人は)進み、家計のバランスシート改善や消費回復に寄与している」という話になっておりまして、まあ大丈夫なんですかというのもありますし、QE2ヒャッハーで商品価格は上昇する中でしらっとドル高になっているのもお洒落な展開(まあドル全面高で日本的にはウッシッシですけれども)となっておりますわな。
という事で、市場金利だけ先にじゃんじゃん上昇して景気に悪影響を与えるわ肝心の物価はコストプッシュするものの景気が良くならないので結局企業のマージンで吸収する破目になるわというお洒落な展開が(なので行き先はデフレ均衡だったりするのですが)進展しつつある香ばしさに落涙を禁じ得ません。
ま、QE2ネタで引っ張りまくってポジションを無駄に積み上げさせたFRBの捌きにちょっと問題があったような気はする訳でして、前回の国債大量購入の時はまだ金融機関が飛ぶだの何だのという状況であって、危機の中でポジションアンワインドというか投げを止める為に国債購入のするする詐欺で投げモードになるのと止めさせていたけれども、AIGの問題などでガイトナーが立ち往生しそうになったのでFRBがお助け特攻したという流れでしたので、そーゆー意味では前回の国債購入やるやる詐欺(結局やりましたが)での引っ張りは無駄なポジションのつみ上がりが起きなかったとも言えるのですが、今回は何せ状況が金融危機とかでも何でもなく(物価と失業率はうんこですが)通常の取引が通常に行われている中だったのでちゃっかりポジションが積み上がって香ばしい展開になった、とか今勝手に考えてみたけどどうっすかね。
という事で、この流れだと「QE2やったけど何か金利上昇して景気は良くならないわ川下の物価は上がらないわ失業は改善しないわ」→「QE3催促相場」→「QE3やったけど(以下同文)」となるとか、最後はどこかで臨界点越えて爆発するとか、何かこうバーナンキ先生のお髭(先生の髭に粘着質ですかそうですか)が危機に瀕するような流れが起きそうですが大丈夫ですかねえ。
いやまあ「ポートフォリオリバランス」と「市場のインフレ期待(ホンマカイナという突っ込みはあるが)」というようなものは進展しているので、FRBとしては開き直るのかもしれませんけれども、これって本当の本当にFRBが想定していた流れなのかなあと思いますと、そうでは無いのではなかろうかっつー気がする次第でありまする。
いやまあ中長期債をあの勢いで買えばそのうちMKTに玉が無くなるからそうそう売りまくりって訳にも行かないような気もしますけれども、やはり「中央銀行が長期金利を力技で制御する」というのはあくまでも机の上の話なんですかねえ(もしやるならば会計制度などをいじって投資家のインセンティブ構造を変える方が話が簡単ですわな。そうなった場合に長期金利市場がインプライするものは変わってくると思いますけれどもね)という所ではなかろうかと存じます。
と、これだけ書いたら明日からQE2大勝利の展開になるかもしれないというのが市場様のおそロシアな所でございます、って最後の最後にヘッジクローズを入れるのに余念の無いあたくしはチキンにも程がありますかそうですかあっはっは(あほです)。
しかしこれは何と申しますか・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=avc.nSBjV83g
FRBに資産購入の中止を要請−23人のエコノミストらが公開状
そもそも失業率を直接どころか間接操作するのも大変なのにデュアルマンデートになっているという所の無理が低成長になって出てきましたっすかねえという所ですかな。
で、話は更に飛びましてこの辺りの論点も含めて、先日(って10月12日なんですけどね)カンサスシティ連銀のホーニッグ総裁(毎度FOMCで反対票を投入する人)がQE2に反対する論点を比較的コンパクトに説明した講演があって、これがまあ良い論点整理となっているのでそのうちご紹介するかも知れません。
○10年が1.05%なのもさることながら短国が・・・・
ということで日本の話に飛びますが、何か知らんが昨日は昨日でまたまた裁定ゾーンの真ん中あたりとか10年カレントとか売ってる人はいるわ、先物を叩く人いるわで引け後も米債が売られているのを見て1.05%を叩くわという素敵な展開に。
そんな中昨日は地味に1年短国の入札がありましたが、その結果は。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul221115.htm
(3)募入最低価格 99円87銭5厘
(募入最高利回り)
(0.1255%)
(5)募入平均価格 99円87銭8厘
(募入平均利回り )
(0.1224%)
・・・・・これはまた盛大に流れてしまいましたな。いやまあここもと前から微妙に嫌味や悪態書いておりますように、GCレートが全然下がらない状況を放置プレイ状態になっているオペレーションというのが(今回の積み期間の頭辺りから)継続されていまして、足元では(どうせどっかの銀行様が盛大に中長期債を外した分の資金が滞留しているだけだと思いますが)トモネのGCとかがいきなり盛大に低下しておりますが、そうは言ってもスポネとかレギュラーとかは0.11%アイザー位までしか下がっておらず、中々GCが0.11%割れ定着という流れにならんのですな。
というのがさすがに1か月も続くと0.11割れの短国を商品在庫で持っている業者的には0.10%のオペの担保にぶち込まない限りファンディングコストが保有利回り対比逆鞘確定(最近の金利入札式共通担保オペの落札利回りは0.11%から下がってくれません)という大変に素晴らしい状態が継続されると言う事になりますので、兵糧攻めを1か月も続けられたらこうなるわなという所でございまして、いつの間にやら短国ちゃんも3か月が0.115%とか昨日の新発が0.125%とか金利が上昇しやがっております。
そうなると(もうちょっと長い所は米国の短期先物金利の絶賛上昇の影響もあるのでしょうが)2年カレントの引けは昨日見たら0.150%まで上昇しているし、3年とか4年とかもうんこになっているし5年カレントに至っては昨日は0.3%台後半まで来ているでござるの巻。
いやまあ1から10までオペのせいではないのですが、ヤケクソ追加緩和を実施する時には「長めのターム物金利の低下を促し金融緩和効果を出す」という話をして、「潤沢な資金供給を行った場合に無担保コールレートがディレクティブ水準を一時的に大きく下回る可能性があるのでディレクティブの変更をする」という政策決定をした筈なのですが、足元で行われているオペレーションってその話と違うんじゃないですかねえと言う所でございまして、これ米国の金利上昇でドル高になって株高になっているから外野からは文句があまり出てこないみたいですけれども、金利市場的には話が違いますがなという所ではございます。
#この前も書きましたが、2008年のパターンから類推するに、基金等国債買入の残高が増えてきたら何となく当座預金残高を増やすと言う逆算のオペレーションをするのではないかというのがあたくしの予想だが、為替がドル高傾向継続中だと糊代確保で増やさない可能性もあるかもね
いやね、まあ金利が極限まで低下してウゴカンチ会長になったらこちとらメシの種が無くなるのでポジショントーク的には話が違っても実際の業務運営上は困らないっちゃあ困らないのですけれども、金融政策決定のアナウンスでやるという話をしていた事と実際の動きが整合性取れているように見えないというのは如何なものかという感じがします、つーか為替と株が逆に行き出したら(米国のヒャッハー相場が巻き戻したら可能性あるでしょ)この間の日本の(長期は米国のせいにすれば良いけど短期ターム物金利に関しては)どう落とし前つける積りなのか今から心配しているあたくしでございまして、まあそれはきっと杞憂なんでしょうけどねえ(棒読み)。
#何時の間にか悪態になってしまった
○日銀からペーパーが2本
・短観の統計のクセについて
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j20.pdf
短観の読み方 −主要項目の特徴とクセ−
中々面白かったでございます。各数値の傾向、特に「出てくる足元や先行きの判断DIがどのような引っ張られ方をするのか、その特徴はどの辺りにあるのか」というのはオモシロスなのですが、これある意味ノウハウの世界でもありますので、こういうのをタダで絶賛大公開(しかもあたくしのような無学な者でもわかるように)して頂くと言うのはアリガタヤであると同時にエコノミスト涙目という気もせんでもないですな(^^)。
ということで中身の紹介しないのは時間のせいでもあるのですが(笑)、まあ実際に読む方がオモロイと思いますのでという意味でもございますのでよろしゅうに。
・社債市場の発展がどうしたこうしたというペーパー
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j19.pdf
わが国における社債市場の活性化に向けて
この前日証協でやっていた(というか今でもやってる)日証協の「社債市場の活性化に関する懇談会」の報告レビューみたいな話で、日証協の出した報告の方は何となく読んでネタにするのを忘れたけど、こっちの方がコンパクトなので読むのが楽だったりします。
ただまあこの話ってつつくと色々と難しい話になると思うのです。つまりですな、『2.社債市場の現状』って所の最後にしらっとこんな話があるのですが・・・・(機種依存文字は原文ママで勘弁)
『@ 企業の資金需要が弱い中で、銀行間の貸出競争は厳しい状況にある。このため、銀行は、企業との中長期的な取引関係や他の取引を含む総合採算を勘案しながら、貸出条件を決定しており、企業の信用リスクに見合った貸出金利を設定できていない可能性がある。
A 社債の投資家は、開示情報のみを基に投資を行う一方、銀行は、企業の担保や資金繰り等の状況を含む詳細な情報を基に貸出を行っている。このため、銀行はリスクをきめ細かく評価し、貸出金利を低く設定している可能性がある。
B 企業が経営困難に陥った場合に銀行がどのような対応を取るのか、不確実性があるため、社債の投資家が要求するリスク・プレミアムが高くなっている可能性がある。
銀行等が貸出の際に適切なリスク・プレミアムを織り込んだ貸出金利を設定することは、効率的な資源配分の観点から、わが国の金融システムにとって重要な課題である。他方で、社債市場においても、@発行の機動性向上、A投資家保護の強化、B流通市場の拡大などを図るための方策が必要との指摘もある。』
ってこんな話をしらっとしているのですが、「じゃあ適切なリスク・プレミアムとやらを織り込んだら中小零細企業の債務負担はどうなるのでしょうか」とか「現状の開示やら企業会計やらをどういう風にする積りなんですか」とか「流通市場の拡大とか言いますけれども投資家の方での規制(開示義務含め)はどうする積りなんでしょうか」というような話をしだすとエライコッチャになる問題であって、何と申しますか外山局長のTIBOR発言みたいな地雷臭がプンプンする話ではございますわなあと思うわけよ。
どの位の地雷かと言うのを実証したければ、とりあえず亀井の静香ちゃんの所に言って「銀行等が貸出の際に適切なリスク・プレミアムを織り込んだ貸出金利を設定することは、効率的な資源配分の観点から、わが国の金融システムにとって重要な課題である」って演説して味噌♪
#また最後が悪態になってしまったorz
2010/11/15
お題「最近雑談ばかりでどうもすいません」
月曜はいつものように頭が動いていませんので(月曜以外もというツッコミは全力で却下します^^)雑談の類が多いのは仕様です。
○各種雑感
・相変わらずストーリーがうまく繋がらない件について
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920018&sid=adhkfbBQMNik
11月12日の海外株式・債券・為替・商品市場
・・・・読んでいて一つ一つの動きは「ほうほうなるほど」と思うのですけれども、全体を通して見ると結局何がどうなっているのかがサパーリ判らんですがなという動きだなあというのが足元の印象。中国の金融引き締め観測やらアイルランドの債務問題で動くなら米債が売られるというのが訳判らんですし、その一方で為替はドル強いとか難しいっす。
まーあんまり考えても仕方ない時というのはございますので、そーゆー時は下手に考えないのが吉なのかとは思うのですが(それかよ)特に米国の金利市場の動きはワケワカンネという所でありますな。どうもQE2のおかわりが来ないのではないかという事で積みあがったポジションの解消が進んでいるのでしょうが・・・
んでまあ話を国内に持って行きますと、債券市場の日々の動きに関してもそらまあどこのゾーンが売られただの買われただのという話はあるのですけれども、さてこの売買って何をどう考えて動いているのよというのを考えた場合にこれまた話が繋がらないのが不思議ちゃんな動きでして、「何でこのゾーン売られるの?この水準で売った人って売った分でどうしてるの??」とか考えた場合に訳判らんですがなという(まあやってる本人はご存知でしょうけれども)のが多くて、ってあたくしが単にマーケット見えていないだけだったら残念過ぎなので見えている偉い人教えてジェネラルなのでございまするが、どーもこう判りませんなあと頭の中に「???」マークが飛び交う今日この頃なのでありまする。
・もうこの素人内閣勘弁して欲しいんですけれども
金曜の夕方に急にドル円が円高に振れる場面がございました。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aviG1NUB9qdY
ユーロ1カ月半ぶり1.36ドル割れ、欧州債務懸念や株安−ドル81円台
『一方、ドル・円相場は1カ月ぶり高値圏となる1ドル=82円台半ば付近でもみ合っていたが、欧州市場に向けては海江田万里経済財政の発言などを受けてドル売り・円買いが強まり、2日ぶりに82円台を割り込んだ。』(上記URLより)
はてナンジャラホイと思ってよく見たらこんなニュースが。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=afzIFEqlkc8Y
海江田経財相:日本だけではどうすることもできず−円高(Update1)
・・・・・orz
でね、このインタビューの何がトンチキかと言いますとですな、
『デフレ対策については「政府と日銀が同じ方向を向いていることを市場に理解してもらうことが大切だ。日銀にはぎりぎりここまでできるということをやってもらいたい」と要請。』(上記URLより)
という事で(ブルームバーグの専用端末だとヘッドラインに思いっきり「日銀の更なるデフレ対策を要請」みたいな趣旨の文章があったと思う)日銀にデフレ対策でもっとやれという話をしているのですが、その一方でですね、
『足元の円高について「円高の影響はこれから効いてくる」としながらも、「日本だけではどうすることもできない」との認識を示した。』(上記URLより)
と言ってわざわざ為替を円高に振らせてしまいまして、これ足元で米国金利が上昇傾向でドル高モードになっている(のでNY市場で結局ドル高に戻って来ましたが)から良いようなもので、ついこの前の円高ヒャッハー場面でこんな発言をしたらガソリン担いで火の中に飛び込むようなもので縛り首もんですわな。
為替に関する話は、幸いにして誰も注目しなかった先日の菅首相の「米国がドル安政策を取っている」発言と言い、大体からしてこの内閣の閣僚が何か言うと碌な事にならない(そういや仙石さんの防衛ラインは延々と破られっ放しなのですけれども仙石さんは責任取らないんでしょうかねえ)ので永遠に黙って頂いたほうが宜しいかと存じます。
それからワロタのはこの部分でして・・・
『政府としては「国債に対してしっかりと国が減価させないメッセージが必要だ」と述べた。』(上記URLより)
えーっとですな、確か海江田センセイにおかれましては日銀にインフレ目標を設定しろという話も以前されていたと思いますし、同じ発言の中でデフレ対策で日銀は更に追加緩和やれと言わんばかりの話をしておられると思うのですが、通貨価値の方は秩序だった緩やかな減価を行えとするのに国債は減価させないというのはどうやって行うのかさっぱり判りませんですな。「国債に対してしっかりと国が減価させないメッセージ」って言ったらデフレを継続させるという話になりませんかねえ、あっはっは。
いやまあ財政規律の話をしたかったのかも知れませんけれども、それならそれで「財政再建も重要」程度の話をすればよいのであって、下手な言い方するくらいでしたら何も言わないほうが余程マシだと思うのですけどねえ。
ま、皆様スポットライトが当たって舞い上がって俺が俺がと目立ちたがるというのは人間心理として極めて良く判るのですけれども、まあおまいら黙ってろと申しますか、もう素人にやらせるの勘弁して下さいというか、素人なんだったらちゃんとした専門家(官僚)の意見を聞いて動けやという所でありまする。
○トリシェ総裁の会見(ちょっと前の奴)から少々
虫干しネタで恐縮至極。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2010/html/is101104.en.html
Introductory statement with Q&A
Jean-Claude Trichet, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 4 November 2010
(unicode使わないので一部フォント形式が変わっております)
ということで今更先々週の話ですが(汗)。
・ステートメント部分を少々
ステートメントの部分までやってるとキリが無いですし、まあ今更という所ですので、勝手にあたくしが箇条書きにしてみる。
・景気は引き続き回復しているが不確実性は拡大
・現状の金利は適正、金融環境は引き続き緩和的
・インフレ期待はアンカーされている
・経済のリスクは若干ダウンサイド、商品エネルギー価格上昇や金融市場動向がリスク
・一方でグローバルな貿易は予想されていたよりも強い拡大を示している
・物価のリスクは若干のアップサイド
・財政再建の必要性は「明らかな必要性がある」
死ぬほど端折っているので肝心なところが抜けていそうだがまあ勘弁してつかーせ。
・米国は通貨切り下げ政策を取っているわけではないと理解していますとな
でまあQ&Aなんですけれども(紙に打ち出すと実質9ページのうちほぼ7ページが質疑応答)特に欧州圏の財政問題に関する質疑が多くて、にわか勉強のあたくしには何かイマイチ良く判らん(訳でもないが前後の事情をきちんと把握していないので話を読んでいて理解するのに時間が掛かる)のでその辺は華麗にスルーしますが、ひたすら質問するサイドが「財政再建策についてどう思うか」とか「債務リストラクチャリング計画に関するドイツなどの主張についてどう思うか」というような質問が飛んで、それに対して「さっきも答えたがノーコメント」みたいな応答が延々と続いているように読めてしまいましたです。
あと、通貨に関する質問でもそんな感じなのですが、通貨戦争がどうのこうのという点に関しては明確に違いますよってえ話をしているのですな。
『Question: Just to go back to the US decision very briefly. Would you
still say that the US favours a strong dollar after the Fed decision yesterday?
It did push up the euro by 2 cents, so how would you describe that, I mean
does that qualify for a brutal move almost?』(2番目の質問は割愛)
『Trichet: On your first point, I never comment, as you know, on moves
on the market on a day-to-day basis or minute-by-minute basis. Second,
I have no indication that would change my trust in the fact that the Federal
Reserve Chairman and the Secretary of the Treasury, not to mention the
President of the United States, are not playing the strategy or tactics
of a weak dollar. I have no reason not to believe them, and again I trust
their statement that it is in the interest of the United States to have
a strong dollar, strong vis-a-vis the other major floating currencies,
including the euro. And I fully share this view.』
ということで、「米国は通貨安競争を仕掛けている訳ではない」という話をきっぱりと行っているのですが、これはある意味で牽制でもあるんでしょうなあとは思います。で、後の質問で(めんどいので引用しませんが)「じゃあ日々の動きは兎も角として最近の対ドルでのユーロ高についてどう思うか」と質問されたら「さっき話した以上の話は特にねえよ(超意訳)」という答えもございましたです。
ちなみにちと話はズレますが、米国のQE2のインフレへの影響に関する質問に対しては「ノーコメント(=これから状況の推移を見ていきます)」としていますが引用割愛。
・非伝統的政策の終了前にも利上げは可能という話
これはへーと思ったんですけどね。
『Question : (最初の質問は割愛)My second question relates to the repeated
warnings that we have heard in recent weeks against keeping interest rates
too low for too long. Are you ready to repeat that warning now and can
you explain what is behind these warnings? Would the ECB consider raising
interest rates before inflationary pressures actually call for such a move?
』
『Trichet: As regards your second question on interest rates, I can only
say once again that you know the extent to which we are never pre-committed.
Our doctrine is that we take decisions that are appropriate, taking into
account that we have to deliver price stability over the medium term. I
also said, and that it is very important, that there is no correlation
between non-standard measures on the one hand and our own interest rates
on the other. We can move interest rates without necessarily having totally
ended the non-standard measures. We have always made that point and I will
continue to do so. That said, taking everything into account, as we always
do, we consider the present interest rates to be appropriate.』
非伝統的政策が終了する前に利上げをする事が可能ですとは「ほほー」という感じですが、まあECBの場合は国債買入がそもそもマネー供給というよりはお助けオペでありますし、LTROとかMROの固定金利フルアロットメントというのはさっさと終わりにするのはそんなに技術的には難しくない話ですからそうなのかもしれませんな。
・EURIBOR上昇は市場機能が正常化してきている証拠だと
ホンマカイナという気がするのですが・・・・・
『Question : (最初の質問は割愛)And, second, a question with regards to
money market rates: the three-month EURIBOR is actually now above the ECB
benchmark rate of 1%. Aren’t you, on the other hand, discouraging interbank
lending if you continue to offer banks three-month loans at 1%?』
『Trichet: On your second point, we consider that the unlimited supply
of liquidity is there. As I also explained last time, the banks are asking
for all they need, because there is no limit, either on the main refinancing
operations, or for the one-month window, or for the three-month window.
So, because we did not change our rates (neither the MRO nor the deposit
rate was changed), what we have observed in the market is that the positioning
of EONIA, the very short-term rates, is dependent on the decisions of the
banks themselves. It is a kind of equilibrium which depends on what the
banks themselves are asking for, and you can see that it goes up and down
from time to time, very much depending on the demand from the banks themselves.
So, there is no particular signal there. The only important observation
I would make is that it shows that we are in a normalising process, and
that is an important element. But again, from our part, there was no signal
at all - no monetary policy signal. This normalising has been taking place
under our eyes, and we will see what happens later on. That is the observation
I would make, and I have to say that, for me, a normalising is something
positive. It also indicates that perhaps the EONIA means more today than
it meant before, because before perhaps only a very small fraction of the
institutions had access to this very low interest rate refinancing.』
長いのを思いっきりそのまま引用しちゃいましたが(汗)、どうも「だって今でもMROやディスカウントウィンドウはフルアロットメントで実行してるから問題ないっしょ」と言いつつ、EURIBORが上昇しているのは市場の正常化の進展でありポジティブですよという話をしているように読めてしまったのですが、しかしながらそれはマーケットにストレスが掛かっているという事なのではないのかっつー気もせんでも無いのですが、ユーロ市場のインターバンクまで詳しくないのでよー知らんですけど、読んでて何かちょっと違和感を受けた箇所でありました。
#とか書いたら実はあたくしが読み間違えだったらアホウですが
ということで、他にもネタがあるような気がする(というかある)のですが、時間と根性とあたくしの英語力(ECB関連の文書は普段あまり読む癖をつけていないので、正直言って英和辞典片手にヒーヒー読んでも字面は判るけど意味判らん状態なのでございます、勉強不足でどうもすいません。ちなみに脱線すると英語は学校の勉強だけのドメドメのあたくしの場合、BOEとかFOMCのMinuteとか読む速度上がるのに1年位掛かるというアホです)の問題がございますのでこの辺で勘弁。
2010/11/12
お題「10年1%乗せとな/虫干しネタとか雑談とか」
そろそろドルキャリーから円キャリーの時代になりまへんかねえ。
○取引所ネタの続きとかその他少々
・東証の昼休みは債券先物は無関係のようです
昨日東証の昼休み短縮の件で「短縮したら国債入札のタイムスケジュールがタイトになりまくるじゃねえか」という悪態を書いたのでございますが、昨日の金融ファクシミリ新聞の夕刊によりますと、今回の東証の昼休み短縮云々はエクイティ関連取引に関わる部分だけで、長期国債先物などの取引時間は現行のまま維持されるそうです。
東証のページを見ても何が何だか良く判らなかったのですが、東証に確認していただいた方など、多くの方から教えていただきまして誠にありがとうございました。東証の昼休み時間短縮については事情に詳しくない債券市場の参加者でも「債券先物も短縮で国債入札が毎日のようにあるのに債券市場死ねる」とか思っていた人が多かったと存じますので、とりあえずほっと一息という所でございますわな。
#「昼休み短縮」とだけ言われたら債券先物とかも対象だと思うのですが、まあ東証様におかれましては何せCBワラントの売買システムを債券先物に流用してシステム変更して使い勝手を悪くするという猛者でございますので・・・
いやね、ザラ場に入札やっても良いちゃあ良いのですけれども、突発事態のような事が(この前の11時1分発表の臨時政策委員会実施アナウンスのようなトンチキプレーですなあ)起きない限りにおいては、前場引けという形で一旦板寄せを行った後に、板を止めておいてから入札をしたほうが、応札直前まで相場がぶれるという事が無い分だけ応札がしやすくなると思いますから、現在のように大量の新発債を捌くのには良いと思います。応札しやすいと言う事は、リスクプレミアムが下がるという話になりまして、それは当然ながら発行条件に反映される訳で、国民負担の軽減に繋がる話ではないかと愚考しますがどうでしょ。
で、まあ落札結果発表までガンマショート状態となっております業者の立場からしますと落札結果発表をもうちょっと繰り上げて後場寄り前にした方が助かる・・・のかどうかはよー知らんです。あたくしは無力ヘタレちゃんなディーラーでしたから後場寄りから結果発表までのガンマショート状態は精神衛生上よろしく無かった(対顧ですからね)のですけれども、プロップでヒャッハーとかやる人にしてみたら収益チャンスでもありますからね。
・インターミーティング取引の金利先物に関して
東京金先(とは最近言わないのですがつい言ってしまう、今は「金融取」と言うんだと思いますが)では「無担保コールO/N金利先物」というのと「GCレポS/N金利先物」という上場商品がありまして、この取引最終日というのがそれぞれ「本取引所が指定する日本銀行金融政策決定会合最終日」、「本取引所が指定する日本銀行金融政策決定会合最終日の2営業日前」となっているんですな。
んでまあ先般は定例の決定会合の日程を変更すると言う新手のプレイが日銀ちゃんから炸裂したのでありますが、まあ上場商品ですから当たり前ちゃあ当たり前ではございますが、今回の決定会合日程変更によって取引最終日に変化は無し、というのが結論になります。そらまあ自分の建玉の最終売買日がいきなり動いたらエライコッチャやがなという所でございますので変更しないのが当然でしょうけど。
基本的には当該限月の取引開始日以降は取引最終日を変更しない、ということになっているようでございます。
で、今回この件であまり騒ぎにならなかったのは実はこの先物取引が絶賛閑古鳥大合唱状態になっているからだったりするのが惜しいのですけれども(−−)。
という事で、2本とも読者の皆様から教えていただきましてというネタで人のふんどしにも程がありまして誠に恐縮至極でございますが、色々と情報頂きまして大変に勉強になりました。ありがとうございました。
○10年1%ですかそうですか(途中から米国金融市場雑感だが)
昨日の5年入札。前場は中期とか比較的堅調に推移させやがったせいで惜しくも0.3%クーポンのリオープン。0.4クーポンが業者ショート気味で0.3クーポンが業者ロング気味でしたので、0.4のショートカバーは進むものの0.3はいらない子状態になってしまいまして、入札そのものはまあ事前予想のどんぴしゃ状態だったと思うのですが、不明札少なくて業者中心っぽい内容だわ、セカンダリーの販売がそんなに盛り上がらないわとかやっておりましたら、前場から弱かった超長期に引っ張られたのかどうか知らんですが引けに掛けて10年310回債も1%と。
何せ追加ヤケクソ緩和によって普通はブル転しますので、それこそ昨日も申し上げましたように例えば5年は金利上がって精々0.3%でしょとかもう10年1%割れが定着傾向になるんでしょうなあとかいうイメージになる訳でして、そーゆー意味では何と申しますかナンジャコリャという所でございますが、ブル転しちゃってロングに入るタイミングが皆さん早くなったでしょうからその辺も影響しちゃったのかも知れませんな、よー知らんが。
まーしかし何ですな、QE2で米国金利が低位安定してドル安圧力が高まってそうなると日銀も追加緩和の追加緩和をしないと済まなくなるでしょうなあというような認識だったのですが、QE2のヒャッハー相場によって米国様に置かれましては金利先物市場で国債買入の期限来た所でいきなり利上げを織り込むかの如き動きになるとか斜め上にも程がある展開になってしまったのは正直ビックリですし、話の前提が変わってしまうがなという所ですわな。
つまりですな、先般のFOMC声明文を見ますと、ケシカランと言っているのは物価水準と失業率の推移であって、資産購入の絶賛拡大によって企図しているのは何かと言いますと。
『To promote a stronger pace of economic recovery and to help ensure that
inflation, over time, is at levels consistent with its mandate, the Committee
decided today to expand its holdings of securities. 』
ということで、望ましい水準への物価上昇を促すという事になっておりますので、足元のCPIなりPCEデフレーターなりがある程度改善しないと資産買入って止められないんじゃないの〜とは思うのですけれども、市場の方が勝手に期待インフレを盛り上げて長期金利(ただし10年まではFRBの力技で抑え付け状態になるのでしょうが)が上昇したり、金利先物市場が利下げではなく利上げサイクルを織り込みに行く、という話になると「中長期的な期待インフレ率の引き上げが具現化された」とも言えてしまう訳で、昨日も申し上げましたけれども金融政策の影響がリアルの物価に反映される前に「市場のインプライする期待インフレ率だけ上昇」となってしまった場合にはFRBはややこしい事になるのでしょうし、その場合って「いやそうは言っても資産買入引っ張るでしょ」という見方と「資産買入終了してFF引き上げに行くのでは」という見方がガチンコ対決になりそうですな。そしてそうなりますと短期金利のターム物上昇でめでたく日米金利差問題が解消されるという話になるのですけれども・・・・
ただ、足元で斜め上の展開になっているのは「QE2やるやる詐欺状態の引っ張りすぎ」によってポジションが大量に積みあがったものの巻き戻しが来ているからだとは思われますけれども、バーナンキ先生におかれましては(確かWSJだったと思いますが)どこぞの寄稿で「株価が上昇して期待形成に成功してFRB大勝利」とか喜んでいる場合なのかという点に関しては非常に怪しいなあと思うのでありまする。
#と、いつの間にか米国市場雑感になってしまった(大汗)
○きゃあ虫干しネタ書いてる時間が無い(予告編および召還呪文)
先週の祝日とかに読んだネタとかこの前の週末に読んだネタとかがなぜかちゃぶ台に積読状態になっていて、あたくしのノートパソコンの隣に積み上がっているのは甚だ遺憾の極みでございます。無計画でどうもすいません。
ということで予告編と、日銀ペーパーでも読みたいのがあるのに積読になっているのがあって召還呪文も唱えておきます(超大汗)。
・ヤケクソ緩和決定の会合議事要旨
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g101005.pdf
正直言ってここの議論内容から「大胆な(またはヤケクソの)追加緩和実施」となるロジックが判らんというか話がワープしすぎだとう、と本文9ページ前後を見て思うのでありました。その他ツッコミどころは幾つかございまする。
・ECBトリシェ総裁のMPC後の記者会見
http://www.ecb.int/press/pressconf/2010/html/is101104.en.html
久々に真面目に読んだのですが、米国金融政策(要するに通貨戦争&緩和競争)の質問とユーロ圏の政府債務リストラクチャリング関連の質問に集中していて、延々と「それはお答えしません」「更にお伺いしますが」の無限ループになっているのはオモロスでした。で、米国の金融政策に関してどう見ても嫌味成分が入った言い方をしているように読んでしまうのはあたくしの性格が悪いからですかそうですか。
・決済システムがどうしたこうした
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/bis1011a.htm
BIS支払・決済システム委員会による報告書「クリアリング産業の市場構造変動:金融の安定性へのインプリケーション」の公表について
クリアリングに関する話には個人的には興味のある分野なのでございますがこれから読む、と思う(おいおい)。誰か読んで解説してくれると助かるのだが(手抜きな本音)。
・労働市場がどうしたこうした
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron1010c.pdf
正社員の企業間移動と賃金カーブに関する事実と考察
― 日本的雇用慣行は崩れたか? ―
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j18.pdf
わが国の労働力率の動向に関する一考察
ちょっと前のWPとレビューシリーズで面白そうな気がするのだが読んでいないのでそのうち読みたい(段々手抜き成分が高まる)んですけど、hamachan先生のご解説を賜りたく存じます(ますます手抜き)。
#最後は単なる自分用ToDoリストになってしまいましてどうもすいません
2010/11/11
お題「虫干しネタが積み上がっているのですが各種雑談で勘弁」
そういえば東証が昼休みを短縮するそうですが、国債入札とか日銀のオペとかの事をどうせ何も考えてないでしょうと思う次第でございまして、国債入札のタイムスケジュールが益々タイトになりますなあと遺憾の意を禁じ得ません。(11月12日追記:東証の昼休み短縮は株式およびCBワラントなどで、国債売買に関しては従来どおりとの事でした)
つーかさ、立会時間を長くしたら取引が増える訳でもないでしょと思うわけで、かつて昼休み2時間だった時の方が東京市場は活発だったと思いますけどねえ。そんな事よりも一般の個人投資家(セミプロじゃなくて資産形成とか言って買うような人ね)が株式投資をする気をなくさせるアホのような大量希薄化の乱発をどうにかした方が市場の活性化に繋がるんじゃないでしょうかねえ・・・
という悪態は兎も角として虫干しネタは虫食いさせて雑感恐縮。
○GCとか短国とか5年入札とか雑感
・一昨日と同じネタだが5年国債入札
今日は5年入札ちゃんでございますが、追加緩和実施直後の10月6日に5年カレントが0.200%の引値となっておったのですが、昨日の5年カレントの引け(償還は一緒ですが今のカレントは10月6日のカレントとクーポンが違います。まあ利回りベースでは大差ないので勘弁)は何と0.350%となっておりまして、ふと気がつけば0.15%も上昇してやがるでござるの巻で久々に3か月日本円TIBOR(と比較する事に何の意味があるかと言われると意味は無いと思いますけど)の利回りを上回ってしまいました。
一昨日も書きましたけれども、追加緩和で時間軸の強化となりましたし、あの時点では米国次第では更に追加緩和の追加緩和みたいなイメージも強かった訳でして、普通に時間軸強化と更なる追加緩和の可能性というセットを勘案すればもう5年って磐石で0.20-0.30でしょというイメージで、0.30%になったら全力買いが入ります罠とゆー話だったのですが、うっかりすると0.4%クーポンが出てもおかしくない勢い(今日は米債反発したけど為替はドル高でどっちになるのでございますかねえ??)という全くの予想外展開にも程がある状況に。
という所までは一昨日の繰り返しみたいなもんですが、今日は5年国債の入札ちゃんでありまして、まあここで買ってやろうという人たちが買いを我慢しているんでしょうかねえとは思うものの、押し目買いらしい押し目買いが無いままにズルズルと下がるというこの動きは正直よーわからん所ではございます。まあ普通に考えた場合は入札で買いを確認して一旦ズルズル状態は終了って事になると思うのですが、どうも最近の動きは普通じゃないですからねえ。
・ここもとと同じネタだがGCとか短国とか
昨日は3か月TBの入札があったんですけれども、落札結果はこの通り。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul221110.htm
(3)募入最低価格 99円97銭0厘0毛
(募入最高利回り) (0.1117%)
(5)募入平均価格 99円97銭0厘1毛
(募入平均利回り )(0.1113%)
・・・・平均利回り0.11%乗せキタコレ。
そらまあ足元のGCレートが中々下がらなくて、先週末にやっと0.11%近辺まで下がったと思ったら昨日辺りからまた上昇して0.12%水準に戻っていたりする訳で、短国を商品在庫として持っている債券ディーラーの在庫ファイナンスのコストが利回り対比厳しい状況が延々と続いていれば(固定金利オペで業者の在庫ファイナンスが充足できればその限りではないと思いますが、現状ではそういう状況でもなさそうですし)そらまあ0.11%割れの国債を在庫で持っているのは厳しいですわなあという所で、3か月TBちゃんも0.11%に乗りましたわなあという所でございます。
で、これまたいつもの雑感と言うか悪態になるのですが、GCレートが微妙に高い水準で推移しているのを放置プレイで当座預金残高を17兆円近辺で回していて、しかもその数値が「9月15日の介入実施直前の当座預金残高水準の15兆円+介入の2兆円」を意識してるんじゃないですかねえという水準なのが何とも香ばしい所でございまして、不毛な非不胎化介入論議を意識しているのは良いのですけれども「長めのターム物金利の一段の低下を促す」んじゃ無かったんでしたっけという悪態を申し上げたくなる次第なのですけれども、どうも為替市場の水準と株価の水準が変調にならないと経済クオリティペーパー様を始めとする外野の皆様は何も言わないのが仕様のようでありますので、念の為悪態を申し上げておきますです、はい。
・金先が順イールドっぽくなっている件について
これまた一昨日の雑談の続き
昨日の夕方6時くらい(エエカゲンな取り方ですいません)のユーロ円金先ですが、2010年12月限から順に各コントラクトを利回りに引きなおすと0.330%、0.325%、0.325%、0.330%、0.335%というような数値になっておりまして、微妙ちゃああ微妙程度の変化ではございますが、順イールドっぽくなっているのがチャーミング。
足元で米国様の短期物の先物とかが素敵な動きをしていて、QE2ちゃんが炸裂した先週木曜の高値(金利で言えば低いという意味)からここもと物凄い勢いで期先のコントラクトが売られて、どう見ても来年3Q(つまり国債買入終了と共に)に利上げです本当にありがとうございましたという価格形成になっていまして、米国ちゅうのは何と言うデジタルな反応をするんじゃこいつらアホじゃねえかと言う大変に素敵な展開になっているのが何となく影響しているのかなあとも思われますが、追加緩和の追加緩和期待で金先がどうのこうのというのは何処へやらという所でございます。
#先日の総裁会見では「TIBORなどのターム物金利が包括緩和の影響で低下しています(キリッ)」と麿は仰せでございましたがね(ニヤニヤ)
まー金先に関しては米国のアホウ展開というかある意味神展開となっている動きの貰い事故みたいな面もあるかとは思いますが、足元でGCレートがもうちょっと低くて短国が0.11%割れで0.10%接近とかやっていたら雰囲気はちと違っているのではないかという気も思いっきりする所ではございまして、何だかなあ感はするのでございます。
○金融市場だけ先に走り出しましたなあ
ふむふむなるほど。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=a7fq9jGKR9pQ
米国債:下げ幅縮小、NY連銀の購入額発表で−30年債入札は不調
『30年債は同年限の入札を嫌気し、下落する場面もあった。米財務省が実施した160億ドル規模の30年債入札で、最高落札利回りは4.32%と、市場予想の4.288%を上回った。応札倍率は2.31倍と、2009年11月以来の低水準。』(ブルームバーグニュースさんの上記URLより)
いやあ30年4.3%とか実に香ばしい展開でございますが(さっきブルームバーグのインターネットページを確認したら30年は前日比0.01%金利低下して4.238%のようですな)、結局前回の国債大量購入と同じパターンになりつつあるように見えるのが素敵な所でございます。
まーFRBとしては「30年金利の上昇は期待インフレ率の上昇によるものですから良い金利上昇」ってな形で正当化しちゃうのかもしれませんけれども、先ほど申し上げた短期物の先物の極端な振れっぷりとか(何ぼなんでもあの動きはおかしいと思うが)、国債購入絶賛拡大実施→QE2ヒャッハー相場で商品市場フィーバー→インフレ期待で長期金利上昇というような大変に素敵な速さで市場が反応しているわけでして(当たり前ちゃあ当たり前ですが)、金融政策が実体経済に効く速度と、期待で動く金融市場の速度とのギャップによって、期待した効果と違う結果が出てくるのではないかというような懸念が益々してくるのでありまして、バーナンキ大先生が髭を剃ってお詫びするのか、議会証言かどこかの講演辺りで髭を毟られるというような神展開になる悪寒も益々高まるのでございます。
何にせよちょっと捌きが難しくなりました罠>FRB
#ということで虫干しネタを虫食いさせてしょーもない雑感に走ってどうもスイマセン
2010/11/10
お題「遅れ遅れで恐縮ですが金曜の総裁会見から」
米債が素敵な状態になっているような気がしますが虫干しネタで。
5日の総裁会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1011a.pdf
○冒頭の説明部分にしらっとチャーミングな話が
基本的には最初の説明部分っていうのは声明文や金融経済月報の概要部分とモロ被りになるので華麗にスルーするのですけれども、今回は思いっきり引っ掛かる部分が2箇所ございましてですな。
・TIBORに言及とな
『次に、金融環境をみると、緩和方向の動きが続いています。 TIBORなどのターム物金利は弱含んで推移しています。また、社債流通利回りの対国債スプレッドが総じて緩やかな低下基調を辿る中、企業の資金調達コストは低下傾向が続いています。CP・社債市場では、引き続き良好な発行環境が続いています。企業の資金繰りについても、総じてみれば、改善の動きが続いています。』
>TIBORなどのターム物金利は弱含んで推移しています
>TIBORなどのターム物金利は弱含んで推移しています
>TIBORなどのターム物金利は弱含んで推移しています
んでもってTIBORちゃんなのですが、日本円TIBOR3か月物金利がヤケクソ緩和実施前の0.360%から0.340%に低下してそこで止まると言う形になっておりまして、いやまあ弱含んで推移していますっていうのはその通りっちゃあその通りなのですが、単にヤケクソ緩和に敬意を表して2つだけ下げてみました感の方が強いのですけれども。
というのもあるのですが、わざわざTIBORを名指ししたのが背景として何なんですかというのが気になる訳でございまして、先般大変に不評を買ったどこぞの金融市場局長インタビューと同じ文脈だと嫌ですなあという所でございます。ただまあもっと背景は単純だったりする気もしましてですな、短期国債の流通利回りとか2年辺りの国債利回りに関しては、ヤケクソ緩和を実施する前から低かったので、今般のヤケクソ緩和の実施以降に金利が低下したと言うのも無く、その一方でとりあえずTIBORレートが低下したので「このように緩和政策の効果が出ていますよ」という話をしたくてTIBORを出しただけ、というごく単純な話なのかもしれませんのですが・・・・
まあいずれにせよ、TIBORに関しては微妙な部分が色々とありますので、不用意に踏むと地雷化するリスクがあり、あんまり安易に「TIBORなどのターム物金利」とか言及しない方が良いとは思いますがね。勿論何らかの意図があるならまあ良いのですけど。
・リスクはバランスとな
『こうした経済・物価を巡るリスク要因は、概ね上下両方向にバランスしていると判断しています。』
えーっと、下振れリスクに注意が必要だから追加緩和をしたんじゃなかったでしたっけという気がするのですが、追加緩和の具体的な実施が行われる前にもうリスク認識をバランスに戻しちゃって良いのでせうか。
○買入の規模がどうしたとかETFは5年国債の13倍のリスク量があるとか
で、その次の質疑応答はワロタ訳ですが、質問は例によって「米国と比べて規模が小さいのではないか」というものなのですが。
『このうち、資産買入れの部分の5兆円には、ETFやJ−REITという、保有に伴うリスク量が国債に比べて格段に大きな資産が含まれています。また、昨日も別途の場で申し上げましたが、今回のFRBの買入れ国債の中心、これは期間5〜6年ですが、リスク量を計算してみると、例えば
ETF、J−REITは、米国の5年国債の約13倍に相当するという計算になります。』
13倍になります(キリッ)という説明ですが、5000億円を13倍しても6.5兆円にしかならないのでやっぱり少ないとか言われるのではないかと思うのですが(^^)、途中を割愛して更に額の話が。
『そう申し上げた上で、日本銀行が行っている長期国債の買入れは、現在、期間を特定せずに年間21.6兆円のペースで行っており、これはGDPの4%強に相当します。今回、FOMCが決定した来年第2四半期末までの買入金額は、同じくGDP対比4%です。私自身は国債の量でもって比較することが適当だとは思いませんが、今、規模についてのお尋ねだったので敢えてお答えするとそういうことです。』
てな話で何かコドモの喧嘩みたいな話になっているのがアレですが、まあ勿論白川総裁的には単純規模の話は本意ではない訳でして、この質疑応答部分でもこのような話をしています。
『いずれにせよ、表面的な資産買入金額のみによって、金融緩和の程度を推し量ることは適当ではないと思います。金融政策の効果は、いわば使っている道具の大きさで評価されるという面もあるとは思いますが、最終的にはその道具を用いて達成しようとしている金利水準や信用スプレッドの水準によって測られるべきものです。』
まあこれは正論は正論なのですが、そこの所のプレゼンをもうちょっとこう上手く出来ないのかなあと思いますし、日銀が何回説明してもその説明を捻じ曲げるメディアの皆様(全員ではないですが)がウジャウジャいるのも困ったもんだわとは思う次第ではございますので、道は遠いと言った所なのでしょうか。
他の質問で「緩和競争ではないですか」ってのがあってそれに対する答えから。
『2つ目の、日米が競争しているというご質問ですが、これも全くそのようなことはありません。これは、新聞紙上で拝見すると、「量」でもって日本銀行の金融緩和の積極性を量るという議論が現実に多い、あるいはそれに対するご質問があったのでお答えしているだけであって、私の方からはこのような議論はあまりしたくないと思っています。これが重要であればもちろん強調しますが、私自身はそのような議論が重要だとは思っていません。』
まあ実態は兎も角として、一応緩和合戦ではないですよという話をしていますが、その中で先ほどと同じように「量の話ばかりするのは勘弁」という話をしているので、まーこの点に関しては相当不機嫌ゲージが上がっているのでしょうなあ。
と申しますか、まあさすがにこの点に関してはあたくしも「量ばかり見ないで質を見ないといかんでしょ」と思うのですけれどもね。
○金融政策のフィードバックがどうしたこうした
これは良い論点と思いつつ引用しますが、「FOMCの追加緩和決定後にさっそく株価や商品市況が上昇していますがどうでしょうか」という質問部分に対する答えから引用。
『それから、2つ目のご質問ですが、これは大局的に問題を捉えてみると、先進国と新興国で成長スピードに違いがある、あるいは成長ポテンシャルに違いがある中で、先進国とりわけ米国で大規模な金融緩和が行われた場合に、世界の金融市場でどのようなことが起こるかという問題だと思います。』
ほほう。
『先進国の金融緩和の影響が新興国で出る、あるいは商品市況も含めて金融市場に大きな影響を与えるという問題意識は私どもも持っています。各国の中央銀行は、自らが置かれた経済状況の中で、自国の物価と経済の安定を図ることが責務です。いつの時代であっても、このことが変わることはもちろんないわけですが、近年、自国の金融政策が他に波及し、それがまた自分の経済に戻ってくる、フィードバックという可能性を以前よりも意識する必要が、次の2つの理由から高まっているように思います。』
『1つは言うまでもなく、経済、金融のグローバル化が進んでいるという事実です。もう1つは、現在、日本も含めた先進国ではゼロ金利になり、加えて米国ではバブル崩壊後のバランスシート調整、あるいは金融仲介機能が十分には働きにくいという状況にあります。その分、金融緩和が自国の中ではなくて他に波及していくことになります。波及していく先の中には為替レートもありますし、商品市況もあると思います。それだけに、先程申し上げた自国の経済・物価の安定を図ることの意味をより深く考えていく必要があるという環境に入って来ていると思います。』
『私自身は、そうした問題意識を強く持っており、国際会議等の場でもそれを度々発言しています。BIS等の国際会議等の場で、各国は──先進国、新興国もそうですが──、意見交換を行い、どのような影響が相互に及ぶのかを考え、その上で各国の中央銀行が最終的に自国の経済・物価の安定をしっかり図っていくことが大事だと思います。』
どう見てもバーナンキ先生への嫌味です本当にありがとうございました(^^)。
・・・・というのはさておき、まあこの辺りの論点は重要な気がするんですけどね。まあそう簡単にコケるような事ではないですけれども、米国の金融政策が明らかに「ポートフォリオリバランス狙い」を標榜している訳ですが、それって身も蓋も無い言い方をすれば「バブルの後始末を別のバブルで何とかする」という発想になり兼ねない訳でして、それを延々とやっていくと管理通貨制度の土台に行き着くリスクだってあるんじゃネーノ(という発想で金価格とか上昇してるんでしょ)という話になると個人的にはちょっとだけ気にしている所でして、米国様におかれましてもその辺の自制心が欲しいなあとか思ったりもするので、この論点に関しても共感する部分もあったりします。
ただまあこれがまたプレゼン的に難しい所でもあるのですが、日銀がこの手の話をすると、どうしても「緩和のやる気を感じない」「デフレ推奨みたいな話をしてる」という文脈で捉えられてそういう報道をされがちと言う点も留意すべきではないかと思いまして、まー難しい話ですわな、と思います。
更に最後の方の質疑でマクロ政策の国際協調に関する質問があって、それに対する白川総裁の答えがこんな感じ。
『また、マクロ経済政策の協調についてですが、協調のための協調ではなく、各国の当局者がお互いのフィードバックも意識しながら、自国の経済の安定にしっかり責任を持っていくという基本思想が大事だと思っています。そう申し上げた上で、この前のG20でも合意され、今、G20諸国が取り組んでいることとして、「相互評価(mutual
assessment)の枠組み」があります。これは、誰かが個別国の政策に対して注文を付けるというアプローチではなく、お互いに持続可能な経済成長の実現という観点から評価をし合っていくという枠組みを、微妙なバランスをうまく保ちながら作っていこうということだと思います。そうした取り組みにもG20諸国が努力しているということを申し上げたいと思います。』
米国へのイヤミ成分が入っているような気がするのはきっと気のせいでしょう(^^)。
○副作用の言及を一々することはないのではという論点
これは良い質問。
『(問) お聞きしたことに対して、あまりお答え頂いていないようなので、もう一度シンプルにお聞きします。1つ目の疑問は、大胆な金融緩和に踏み切りながら、副作用のことを毎回強調されるのは、金融緩和の効果を減殺するのではないかということです。先程、リスクバランスが概ねバランスしているとおっしゃいました。これは、裏を返せば、しばらくは静観するということではないかと思いますが、特に海外からは、日本銀行の金融政策はまだまだ少ないのではないかと、また政治家、与党、野党含めてそのような声があります。その中で副作用を強調することは、緩和の効果を殺してしまうのではないかという疑問です。(2つ目は割愛)』
『(答) 最初の質問は、副作用について言及することが効果を減殺するのではないかという問いですが、先程明確に申し上げました通り、一方的に効果だけを言う、あるいは一方的に副作用だけを言うことは不誠実だと思っています。効果を減殺していることは、全くないと思っています。(2つ目は割愛)』
実はこの質疑、同じ質問の2度目だったのですが、最初の答えが微妙に質問の意図と違っていました。ただまあそこの中ではこんな話をしてました。
『どのような政策もそうですが、仮に、効果だけがあって一切副作用・コストがないという政策があれば、もちろんそのような政策が一番良いわけです。しかし、効果と副作用、効果とコストは常に表裏の関係にあると思います。こうした点について熟慮を重ねた上で必要な政策を行っていくことが中央銀行に求められる基本的な姿勢だと思います。一方的に効果だけ、あるいは副作用だけしか考慮しないのはフェアではありませんし、最終的に通貨の発行権限を有している中央銀行として、そうした態度は無責任だと思います。』
ということで、まあそれは全くの正論ではあり、白川総裁の誠実な部分ではあると思うのですが、馬鹿正直にも程があるとも言えるのではないかと存じますけどねえ。
やはりこれもまたプレゼンの問題になると思いますが、先般のようにヤケクソ気味にどどーんと追加緩和を打ち込みましたっていうのは「必要と判断したから」打った訳でございまして、その際にはやはりその政策の効果、メリット、狙いとする所をプレゼンすればよい話で、副作用がどうのこうのというのは別の講演とか、それこそ緩和政策の効果が出てきた辺りからのんびりお話をすれば良いのではないか、というのが質問者の質問の趣旨だとあたくし勝手に解釈したのですけれどもそうですよね???
で、そのプレゼン方法というか見せ方というかの点に関してはインチキ俊ちゃんを見習えとは言いませんけれども(白川さんには無理でしょうし)、やはりもうちょっと工夫すべき点があるのではないかと思うのですけれども、白川さんのこの調子だと当分改善し無さそうですわなあとトホホ感が漂うのであります。
という事で本日は虫干しネタでどうもすいません。5年の金利が何か昨日も上昇していましたねえという話はパスの方向で。
2010/11/09
お題「虫干しネタシリーズ、って単にフォローが追い付かないだけですが」
決定会合の日程が詰まるとフォローが追い付きません><;
○展望レポートから少々
基本的見解のところからちょっとだけですけれども。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor1010b.pdf
・構成が変わって最初にこんなのが入ったインプリケーションは
『見通しを示すに先立ち、若干の留意点を述べる。第1に、日本経済の見通しは、経済・金融のグローバル化を反映して、海外経済や国際金融資本市場の動向に相当程度左右される。第2に、景気・物価見通しと金融政策の関係を評価する上では、金融環境の評価が鍵を握る。このため、本展望レポートでは、海外経済の見通しや国際金融資本市場の動向を最初にやや詳しく記述し、その後、わが国の金融環境の評価をまとめて記述することとした。』
この前もちょっと書きましたが、単に担当が変わると書きっぷりが変わるという話で済むものなのか、それともヘッジクローズというか何かの確認あるいは強調の為に書いたのかというのが微妙に良く判らん所でございます。ということでこの「1.はじめに」というのが入った点についての政策インプリケーションはワカランチ会長なのですけれども、まあそういう点にちょっと何でじゃろって思いますので一応書いてみました。
・先行き見通しが強い気がするんですけれども
海外経済に関してですが。
『先行きの海外経済は、当面、減速していくものの、回復基調そのものは途切れず、2011
年以降は、新興国・資源国経済の高成長が続く中で、成長率が再び高まっていく姿が想定される。世界経済全体の成長率は、2010
年に続き、2011 年、2012 年も、高い成長率を記録した金融危機前の10 年間の平均を上回って推移する見込みである。』
何か強いですなあと思うのですが、この部分に脚注があるのがチャーミング。
『因みに、IMFが10 月に発表した世界経済の成長見通しをみると、2010 年は、大幅な経済の落ち込みからの回復局面となった年前半の高い伸びが寄与するかたちで、4.8%と高い成長率となり、2011
年、2012 年の成長率は、それぞれ4.2%、4.5%となっている。なお、金融危機前の10
年間(1998〜2007 年)の平均の成長率は、4.0%となっている。』
都合の良いときだけIMFの話を引っ張ってくるというのはまあ世の中良くある事でございます罠(^^)。
『米国経済については、新興国・資源国向けを中心に輸出が増加を続けるほか、緩和的な金融環境が維持されるもとで、個人消費や設備投資が緩やかな回復を続けるため、2011
年以降、成長率は再び高まってくると見込まれる。ただし、そのペースは、バランスシート調整の影響が続く中、過去の景気回復局面に比べて緩やかなものに止まると考えられる。』
結局新興国経済次第という事ですが、今回の展望レポートでお茶目なのは、この海外経済の先行き見通しの地域別見通しに関して最初に新興国・資源国経済の話が出てくる事でして、いつものパターンだと海外経済に関する話をするときは米国、欧州と来てから新興国・資源国という話になっておった訳ですが(前回もそうですな)今回は明るい話が先に来るという辺りがまあお気持ちが出ているという所なのでしょうか、よー知らんが(^^)。
・波及メカニズムキタコレ
今回の経済見通しのメインシナリオを読んでいてキタコレというのはこの辺りでございましょうかね「4.わが国の経済・物価の中心的な見通し」のところから。
『2011 年度入り後は、円高の影響は残るものの、海外経済の成長率が再び高まることなどから、輸出が増加を続けるほか、企業収益が改善していくもとで、設備や雇用の過剰感も徐々に解消していくため、わが国経済は緩やかな回復経路に再び復していくと考えられる。』
とまあここまでは良いとして。
『2012 年度は、新興国・資源国を中心に海外経済が高めの成長を続けるもとで、輸出・生産から所得・支出への波及メカニズムが強まり、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる。』
どう見ても前向きの循環メカニズムです本当にありがとうございました。
いやまあ4月の展望レポートでも2011年度になると前向きの循環メカニズムが働いてくるのではないですかねえという説明があるにはあるのですけれども。
『新興国・資源国の力強い成長を背景に輸出は増加を続けるほか、企業収益の回復に伴い設備投資も持ち直す可能性が高い。また、企業活動が活発化するにつれて、雇用・所得環境の改善も次第に明確化していくため、個人消費や住宅投資の伸び率は高まっていくと考えられる。これらを踏まえると、2010
年度のわが国の成長率は、潜在成長率を上回る水準となると見込まれ、2011 年度には更に高まる見通しである。』(4月の展望レポートより)
ということで、まあこの時も前向きの循環メカニズムっぽい話をしているので、そーゆー意味では特にサプライズではないっちゃあサプライズではないのですけれども、今回は前向きの循環メカニズム的なのを思いっきり前面に出して来たのがほほーという感じです。そんなに自信があるのか、単に景気付けなのか、それとも上向きの願望なのかは存じませんけれども、妙に強いなあという印象を与える部分でございました。
・新興国については景気拡大継続への自信度が上昇しているような気がする
上振れ、下振れ要因に関する話ですが、新興国の部分は先行きの拡大継続見通しへの自信度が上昇しているように見えます。
『第2に、新興国・資源国経済の動向である。これらの国の経済は、一時的に幾分減速しつつも、内需を中心に高めの成長を維持する公算が高い。こうした中、先進国における大規模な金融緩和の継続と、その長期化予想は、新興国・資源国経済に対する資本流入を加速する可能性がある。その結果、これらの国の景気が一段と強まれば、輸出の増加を通じて、わが国経済が上振れる可能性がある。』
同じ部分を前回の展望レポートと比較する。
『第1に、新興国・資源国経済の動向である。新興国・資源国では、自律的な成長力の強さに加え、これまでの拡張的なマクロ経済政策の効果などから、内需を中心に力強い成長が続いている。また、国際金融資本市場の改善や先進国における大規模な金融緩和の継続は、これらの国に対する資本流入を促し、この面からも実体経済を後押ししているとみられる。これら新興国・資源国の成長を背景に、国際商品市況も上昇基調にある。こうした新興国・資源国経済が想定以上に強まった場合、輸出の増加を通じて、わが国経済は上振れることになる。』(4月の展望レポートより)
ということで、新興国に関しては「足元幾分減速しているけれども、逆に過熱の懸念も下がっていますよね」という感じになっているように見えます。上振れの部分が「上振れることになる」→「上振れる可能性がある」とトーンを下げているのですな。
『一方、これらの国における経済・金融活動に行き過ぎが生じれば、景気の過熱や、その後の急激な巻き戻しにより、資源価格や資産価格、および実体経済面での大幅な変動が発生するリスクもある。』
ここの部分の前回はこうです。
『ただし、これらの国については、今後のマクロ経済政策運営次第では、景気が過熱するリスクも小さくない。この場合、わが国の輸出がさらに上振れる一方、資源価格の上昇に伴う交易条件の悪化が、わが国の国内民間需要に対する下押し要因となる可能性もある。また、新興国や資源国における行き過ぎた経済・金融活動の急激な巻き戻しが発生する場合、資産価格の大幅な下落や実体経済面での深い調整が発生するリスクもある。』(4月の展望レポートより)
つーことで、ここの話が前回対比あっさり味になっておりますが、今回は新興国の金融引き締め傾向に関する話をしておりまして。
『こうした中、多くの新興国・資源国は金融緩和策の修正を進めているが、これは、短期的にはこれらの経済の下振れ要因となるものの、景気拡大の持続性というより長期的な観点からは、わが国を含めた世界経済にとってプラス方向に作用すると考えられる。』
という前向きな話をしておりますが、はてさて実際問題としてどうなるのかっつーのは神の味噌汁という所でございましょう。で、他にも何かネタがあるような気もせんでもないですがまあこんな所で。
でですな、この辺りの「先進国の金融政策が新興国に影響を与えて、それがフィードバックされる」という論点に関しては先日の総裁会見で詳しく話をしていまして、中々こう良い話っぽいのでそのネタも早いうち(たぶん明日)に参ります所存です。
以下その他少々。
○各種雑感
・市場雑談ですが・・・・
えーっとですな、当座預金残高17兆円攻撃を続けていたらやっと準備預金の進捗が進んできたのかどうか知りませんが、GCレートちゃんの方はようやく資金の出しが増えてきて0.11-0.115%とかの水準に低下して来ましたが、まあ今回の積み期間はGCレートが妙に高止まりましたな。
で、別にまあそれが直接影響している訳ではないのでしょうけれども、GCのレートが高止まりすると3か月とかの短国のレートが下がらなくなり、というか若干上昇モードになって0.11%オファーとかのレベルになっているのですが、それが心理的に圧迫しているのか、単に買わない言い訳に使われているだけなのかはサパーリ判りませんが、5年カレント物の金利がしらっと上昇。
いやまあ木曜に5年入札があるから買いの手が鈍るというのはあるとは思うのですけれども、この前のヤケクソ追加緩和によって時間軸は強化されるわ、コールの一時的な下振れは容認するわ、「長めのターム物金利の低下を促す」とか言われるわという流れからして、「5年は0.20-0.30のレンジですなあ」ってなイメージが市場の皆様に置かれましても作られたのではないかと思うのですが(あたくしもそんな事書いたと思う)、ふと気が付けば5年カレントが0.32%オファーとかに上昇しとるのよ。
一頃TIBOR3か月が5年金利の下限ってなイメージがあったのですが、追加緩和期待とかでそのラインをぶち抜けた後はすっかりTIBORよりも低い水準が定着していたのですが、そんなこんなでTIBOR3か月のレートに5年カレント国債の金利が再接近しているのがチャーミング(日本円TIBOR3か月は0.34%とかだったと思う)な訳です。
でですな、そもそも時間軸強化だの長めの市場金利抑制(2年国債の買入もまさにそうですわな)だのという追加緩和がありますから中期ゾーン辺りまでの金利が低位安定してその辺りが頭鉄板裏目無しという認識の下にその先の金利がどうなのよとゆー話をしている筈ですので、ここで5年カレント金利が何か特に抵抗もせずにダラダラと上昇して0.3%台に乗っても更にダラダラというのはちょっと話の前提が変わっちゃいますよねという所で、まあ裏目千両というようなテイストを感じるのでございます。
何かユーロ円金先のカーブを見てもフラットになってきてますし、追加緩和の追加緩和が実施される観測というか盛り上がりというかテンションの低下が背景にあるのか、単なる入札前の一時的な需給なのか(まあ入札で流れがあっさり変わるかもしれませんからねえ)はよー知らんですが、この辺りの動きを足元のGCレートやら短国レートの動向と絡めてこじつける(もしかしたらこじつけじゃないかも知れませんけどね^^)と、GCレートを高止まりさせるような調節やった結果市場金利が結局下がらないのって追加緩和実施で言ってた話と整合性が取れませんよねえとか言われ兼ねないと思いますけどどうなんでしょうかねえ(ってあたくしが率先して言ってますかそうですか^^)。
#なお、最後のパラグラフの最後の部分はこじつけ成分がかなり入っている点につきましては大事な話ですので念の為もう一度申し添えます(^^)
・この発言って問題になってないから良いようなものの・・・・
この前(先週木曜日)こんな発言見たんですけどね。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a5NkFeuuVYGo
菅首相:米のドル安政策によって新興国の通貨が上昇している−答弁
えーっとですな、先般の白川総裁での会見もそうですし、その前のECB定例理事会後のトリシェ総裁での会見でもそうなのですが(どっちも明日以降ネタにしますです)、日米欧では一応「自分の所で意図的な通貨安政策を取っている訳ではありませんし、お互いにもそんなことしてませんから、通貨安競争とか全然違いますがな」という風に話を持っていっている(実際問題は別にして)と思うのですけれども、日本のプライムミニスター様がこういう発言をしちゃあいかんでしょ・・・・・
いやまあ問題になってないようなのが救いっちゃあ救いですが、逆に言えば国際金融に関して言えばニポーンのプライムミニスター様の発言はスルー扱いというのも悲しいですなあという所で。
・更にどうでも良いですが夏草や兵どもが夢のあとって雑談
いやまあ暫く前に気が付いてたのですが、木村剛先生のブログが閉鎖されておられるようですなあ。色々とネタにして引用したのリンク切れになっちゃいますなあ。あっしのサイトのメンテが面倒じゃねえか(苦笑)。
http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/(エラー画面になります)
「1000万円までの預金を高金利で受け付けていますので元本利息が預金保険でカバーされているのがポイントです」ってな迷言の宝庫で実に心の温まるブログだったのですが、ブログごと閉鎖とは残念な事であります(棒読み)。
しかしまあ何ですな、この手の「制度ただ乗り」を防ぐという意味においてはペイオフ制度で保護するのって元本だけにする方が良いんじゃねえのかという気がせんでもないのだが、ってとっくの昔に誰かが言ってそうですな(汗)。
2010/11/08
お題「金融政策決定会合声明文をば」
何気にネタが積み上がっている上に、まだ読んでおきたいネタもあるという状況ですが、恐らく月後半に向けてネタが切れると思われるのが困りますな。まあネタというのは来るときに一気に来るもんです。
#ということで他にもネタがあるのですが、月曜日なので頭の稼動に時間が掛かるため(日本シリーズのせいではありません、たぶん^^)決定会合声明文からで勘弁。
今回の決定会合はFOMCの結果で為替が円高にならなかったし、株価は上昇したしっつー事で予想通り何もなしという事になりました次第。いつもの日銀の間の悪さが炸裂しないで良かったですね(棒読み)という所でございますが。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101105.pdf(今回声明文)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101005.pdf(10月5日声明文)
○リスクがしらっとバランスに変わっていますな
いきなりリスク要因の所に入りますが、今日出る予定の総裁会見でも出てくると思うのですけれども、リスクがしらっとバランスに変化しているのがお洒落ですなという所です。10月5日の声明文は通常の声明文とちょっと書きぶりが違っているので単純比較がしにくいのですけれども、ヤケクソ緩和を決定した時の声明文に関してリスク認識に関する部分を引用して比較するとこんな感じです。
『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米国経済を中心とする不確実性の強い状況が続くもとで、景気の下振れリスクにも注意が必要である。』(今回)
『また、米国経済を中心とする不確実性の強い状況が続くもとで、景気の下振れリスクには、なお注意が必要である。』(10月5日分)
でもって9月の声明文もついでに出してみるとこうなるのだ。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100907.pdf(9月7日声明文)
『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある。一方で、米国経済を中心とする先行きを巡る不確実性の高まりと、これを背景とした為替相場や株価の不安定な動きが続くもとで、わが国経済の下振れリスクに注意が必要である。』(これは9月7日分)
為替市場や株価に対する言及が今回抜けていますが、10月5日会合の議事要旨(まだネタにしてませんが、汗)では為替円高というのを連発していましたので、まあ円高に関する懸念自体は変わっていないと思われるのですが、今回の声明文では株価だの為替だのという所への言及は声明文ベースでは外れましたなあというのがチャーミング。で、これまた今日出てからですけれども、先ほど申し上げたように総裁会見でも「リスクはバランス」という話になっています。
展望レポートが妙に強めに見えるというのもありましたけれども、今回のヤケクソ緩和に関しては緩和政策の効果によって下振れリスクが減りましてめでたくリスクはバランスしますよ(キリッ)という話になっているようでござんして、そらまあそれでも良いのですけれども自画自賛の香りもするところではございますな。
でね、まあ自画自賛の方は兎も角として、このスキームの落とし穴とあたくしが思う点は、逆に「リスク認識が高まった場合にはまたまた追加緩和しないといけませんなあ」というのがある訳でして、つまりは今般のヤケクソ緩和が効くのに時間が掛かったり、あるいは効きが悪かったりという風になった場合に、どこまで「リスクはバランス」「緩和政策の効果がこれから出るから大丈夫」という話を押し通せるのかというのが気になる所ではありまする。前回のヤケクソ緩和がリスク意識の下方シフトと改善見通しにおける必要な時間の長期化によるものだったので、時間の経過と共に(まあ無事に回復すれば無問題ですが)徐々にロジックが苦しくなる悪寒も。
○景気の現状認識は下げてますな
ということで順番を元に戻して景気認識に関する部分。
『わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、海外経済の減速や為替円高による企業マインド面への影響などを背景に、改善の動きが弱まっている。』(10月5日分)
えーっと、一服感なのでこれは下がったという所ですな。
『すなわち、輸出や生産は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、耐久消費財に駆け込み需要の反動がみられる。』(今回)
『輸出や生産は、このところ増加ペースが鈍化している。企業収益や企業の業況感は引き続き改善しており、設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けている。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。』(10月5日の金融経済月報から)
10月5日会合では個別項目に関する部分は声明文に盛り込まれなかったので、金融経済月報(http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1010.pdf)の概要部分から切り取って参りました。
輸出と生産に関しての判断が下げ(横ばいに低下)設備投資と雇用・所得は変化なく、個人消費に関しては駆け込み需要の反動に関してという話でこれまた下げ。
○金融環境と物価環境に関しては変化なし
『この間、金融環境をみると、緩和方向の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和方向の動きが続いている。』(10月5日の金融経済月報から)
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響が続く中、既往の国際商品市況の反落や為替円高の影響などから、弱含みとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(10月5日の金融経済月報から)
基本的に変化は無さそう。
○先行き見通しにはヘッジクローズが入りましてですな
『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、景気改善テンポの鈍化した状況がしばらく続いた後、世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから、緩やかな回復経路に復していくとみられる。』(今回)
『先行きについては、景気は改善の動きが一時的に弱まるものの、その後は、緩やかに回復していくと考えられる。』(10月5日の金融経済月報から)
『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。』(9月7日声明文から)
ということで、3発比較してみるとまあ判り易そうな感じですが、景気の回復への流れが10月、11月となるにつれ足元での足踏み傾向という認識が更に強くなって来ましたですねというのがございますし、今回の部分を9月7日と比較すると更に判り易いのは「世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから」というヘッジクローズがきっちり入っている所がまあ下げという感じではございます。
○先行きの物価見通しに関する部分でのリスク認識があっさり味に
『物価面では、引き続き、消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の下落幅は縮小傾向を維持しているものの、今後、景気の下振れなど実体経済活動の動きが物価面に影響を与える可能性には、注意が必要である。』(10月5日の声明文から)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、既往の為替円高の影響が残ることから、当面、弱含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、基調的にみれば下落幅が縮小していくと予想される。』(10月5日の金融経済月報から)
『物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小していくと考えられる。』(9月7日声明文から)
ということで、これまた4つもまとめて比較するのですけれども(汗)、今回は物価に関する先行き見通しがしらっとあっさり味になっているのが少々気になる所でございまする。金融経済月報では詳しい話をするのかも知れませんので、そこを見て改めて考えてみたいとは思います。足元物価指標の推移がそんなに悪くない(といってもマイナスはマイナスですけれども)のでちょっと見方が改善しているのではないかという気が致しますです。となると中長期的な物価安定の理解に鑑みてどうしたこうしたとゆー話にも微妙な影響が出てくる話なので、これはまあ今日出る月報を再確認という所ですわな。
#ということでネタがつみ上がり状態でどうもすいませんm(__)m
2010/11/05
お題「市場雑談など」
ECBとBOEは政策変更なしのようですが、ECBの記者説明を読む気力は無いのでURLだけ置いておきます(手抜き)。
http://www.ecb.int/press/pr/date/2010/html/pr101104.en.html(ECB声明文)
http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2010/084.htm(BOE声明文)
http://www.ecb.int/press/pressconf/2010/html/is101104.en.html(ECBの記者説明)
#岩田規久夫先生予想通りに日米インフレ期待の数字でBEIを持ち出してきているのですが、日本の物価連動国債市場は既に数年間機能していませんし、米国でもリーマンショック以降は物価連動国債市場の流動性が怪しくなっているのですけれども・・・・・・@モーサテ
#あらら、英国って足元延々とインフレターゲットから外れているのに何でインフレターゲット通りになっているという説明なんですか???
ということで、岩菊先生の説明はまあ予想の範囲内の話でございましたが、結局国債買え以外の話も無く最後は気合の世界の話になっておりますのも予想の範囲内でしたな。
○米国様におかれましては何か経済効果出る前に市場だけ走る悪寒が
いやまあ常にこの手の話ばっかりするのが仕様のあたくしですがね(^^)。
さて、米国は今日も今日とてカーブのスティープが進行というか手前だけブルスティープと言うかって事で、まあとりあえず流動性相場と言うか金融相場モードをやっているというのは把握したってえ感じですか。
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_americas.html
米国10年国債 2.487 -0.081 101.188
米国30年国債 4.065 0.027 96.734
(東京の朝6時ごろの数字でござる)
今回の決定って10年くらいまでのトレジャリーに関して言えば市場の流通量を思いっきり買い上げる攻撃になるようですので、力技攻撃と言う事で10年の金利が低下しておられるようでございますが、その一方で30年国債の金利は正直にサガランチ会長。まあ流動性相場で株は上昇するわ金価格は上昇するわとリスク資産の価格が上昇し、おまけにまたドル安も進行してますから債券の長いところが売られるのはシャーナイナイという所でございますかな。
でまあ今回は「マンデート達成の為に必要な水準になるまで」資産買入を継続するという威勢の良い話をしていますので、長いところが金利上昇すると言っても力技で10年くらいまでの国債を買う攻撃をしていますので、そこまでの金利は需給要因の大勝利により低下というのが前回の資産買入と違うチャーミングなところではございます。
つーてもですな、国際商品価格は上昇するわドルは下がるわという流れを思いっきり作ってしまったので米国様におかれましては輸入サイドを中心に川上の物価上昇圧力が高まるのが必至という所かと存じますが、その川上の物価上昇圧力が消費者物価に跳ねるのか、それとも川下まで波及しないで中間部分でのマージン圧縮で吸収して企業業績の悪化に跳ねるのかというのも興味津々ですし、足元の30年債の金利がとりあえず上昇と言うほどの上昇はしていませんけれども、ここから上昇した場合に(10年とかの金利が力技攻撃で下がり続けたらさすがに後ろの金利がそんなに上昇しないと思いますけれども)米国の住宅市場(と家計のバランスシート調整の進捗が)大丈夫なのかとかも興味津々だったりするのです。
まあ行き着く先はコストプッシュのスタグフレーションになるか、それとも期待インフレは上昇したり川上の物価が上昇する中で企業収益なり住宅市場なりがコケてリアルの物価が上昇する前に副作用の方が先に出てくるとか、どうもこう碌でもない事ばかり考えるのはあたくしの根性に問題があるのでございますが、はてさてバーナンキ先生はどう捌いて行くのか生温かく見守って生きたいと存じます。
とりあえず足元では商品とかの価格が上昇して金融相場モードになるのでございましょうけれども、その後どうなるのかというのはよーわからん世界で頭の体操の世界でござんすにゃ。というか頭の体操をダラダラここで書いただけなのでしてどうもすいませんm(__)m
○GCが上昇したりコールが0.104%になっている件について
昨日の無担保コール翌日物金利(速報)。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/mp101104.htm
<平均> 0.104 %
<最高> 0.150 %
<最低> 0.080 %
さて、先般の包括緩和(もうちょっと言い方があると思うのですが・・・例えば「ダブル緩和(量的緩和と信用緩和のセットという意味で^^)」とかどうでしょうかねえ^^)によって決定されたディレクティブは以下の通り。
『(1)金利誘導目標の変更(全員一致(注1))
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す(注2)(公表後直ちに実施)。』(10月5日会合声明文より)
ということでございまして、更に総裁会見では、
『日本銀行が潤沢な資金供給を行っている結果、今でも無担保コールレート・オーバーナイト物が、誘導目標水準の0.1%を幾分下回ることが生じていますが、今後、資産買入等の基金を通じて、一層潤沢な資金供給を行うと、日によっては、これがより大きく下回る可能性が高まることも予想されます。資産買入等の基金を通じて、長めの市場金利の低下やリスク・プレミアムの縮小を図ろうという目的を達成するためには、そうしたオーバーナイト金利の一時的な振れを明示的に許容する方が効果的であると判断しました。』(10月5日会見より)
という話をしてた筈なのですが、足元ではGCレポレートも(東京レポレートのS/N取引の数字辺りを見ていただくと大体の目安になるのですけれども)ずーっと強含み状態になっていまして、昨日ちょっと足元のGCが下がってくれたようなのですけれども、ここもと延々と0.12%だの0.13%だのというような水準で取引されてたり、T/Nとかが逼迫すると更にその上のレートになってみたりというような動きが散見される訳でございまして、まあ要するにGCレポの金利が下がりにくくなっているのですわな。
でまあ何でそうなっているのかと見ますと、今積み期間では準備預金の残り所要を見ていると準備預金の進捗が遅く、まあ当座預金残高が若干抑え気味になっているのもあるのですが、恐らくはGCなどに資金を出したがらない(事務コストと事務リスクを考えたらスタッフが少ない金融機関(ってつまり外銀とかですな)だったらGCで12bp出すのと超過準備で10bpの比較したら超過準備を選ぶ人がいても全く不思議ではない)金融機関の所に超過準備が滞留して資金の流れが悪くなっているのでGCレートが上昇しやすくなっている、というのもあるのでしょうな。
更に言えば、全体の準備預金積み進捗がやや遅れているという事は大手銀行さんのところでの準備預金積み操作が従来よりも遅めになっているという事だと思われますので、それはつまりGC市場の主要な資金出し手さんの大手銀行さんの所で資金がそんなに余っていないという事になるのではと思います、よー知らんけど。
ということで、何を申し上げたいかと言いますと、足元GCが12bpだのという状況が結構続いているのですけれども、その辺りに関しては意図してやっているのか意図しないでやっているのか知りませんけど、上の方で引用した総裁会見での説明と整合性取れているんですかねえという話なのです罠。
即ち、GCレートが12bpだのという状況が(瞬間跳ねるのはまあ良いとして)それなりに続くと言う事になると、現状での金利水準からすると1年以内の国債持っていると逆鞘になってしまうので、債券ディーラーとしてはそうそう長く持っている訳にも行きませんし、投資家と言えどもファンディングコストという概念はある人が多いので、ベースの金利水準が包括緩和前よりも(極めて微妙ではございますが)レートが上昇しちゃってますよねという状態が続くのは、上記総裁会見にあります「長めの市場金利の低下」と話が合ってないように思えるんですけどどうなんでしょうかねえと言う所です。
しかも昨日に至ってはコールの加重平均が0.104%になっちまいまして、いやまあディレクティブは「0〜0.1%程度」と「程度」というヘッジクローズも入っていますので0.104%だからディレクティブの範囲内の世界ちゃあ世界なのですが、期末でも年末でも税揚げでもない日で0.104%ですかそうですかと言うところで益々2008年の頃に日々調節に悪態をついていた頃を思い出させる今日この頃なのでございまして、微妙なテイストを醸し出している次第です。
#なお、昨日は財政要因の払いが多いので資金需給的には余剰日ですけれども、財政要因で余剰の時の方が資金繰りのブレが大きいのでコールが上がりやすくなるというのはあるにはありますので念の為申し添えます。
何かね、資産買入が始まってから当座預金残高を増やすというような事を考えているのかなあという気がするんですけれども、そんなのんびりした話しててエエノジャロウカノウという気がする訳でして、何かそのあたりに2008年を思い出す今日この頃だったりするという訳なんですけど、判る人に判っていただければという雑談というか雑感と言うか悪態なのでございました。
#などという雑感を書いていたら時間がなくなってしまったので本日は何が何だか訳の判らない雑談だけになってしまって恐縮至極でありまする。なお、書くと言ってた決定会合議事要旨のネタが無いのは気のせいです(大汗)
2010/11/04
お題「FOMCで30年金利スティープですかそうですか」
早起きするつもりでしたが30分程度しか早起きできませんでしたorz
#今後米国の長期債買入が48兆円で日銀の買入がこれに対して少ないのでこれからも円高が進行するとか言ってる人は、米国が長期債購入する前に日銀が恒常的に長期債買入を行っている時に何で円安が進行し続けなかったのかの合理的な説明をすべきだと思いますねえ、モーサテのコメンテーターさん(−−)
とついまた悪態を書いてしまったがそれは兎も角声明文声明文(^^)。
今回の声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20101103a.htm
前回の声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100921a.htm
○物価水準と失業率の水準がマンデートより悪いのが追加緩和の理由
まず声明文を前回と比較して斜め読みした感想ですが、今回の追加緩和に際して景気認識については全体的な認識こそ下げたものの、個別の需要項目などに関する認識には変化がありませんでした。つまり今回の追加緩和は「景気認識が下がったから追加緩和」でも「リスク認識が下がったから追加緩和」でもなくて、純粋に「物価と雇用というFRBのマンデートとされるものの水準が悪いので追加緩和」という話ですな。
いやまあ直球ストレートっちゃあ直球ストレートなのですけれども、景気認識に基本的な変化が無くて物価水準と失業率の水準の改善が遅いから緩和というのも時間的な整合性としてどうなのという気もしますし、一方で言えば日銀的には微妙に痛い緩和でもございますわな。まあ今回あんまり景気認識を下げないで包括緩和とやらを実施したのでFRBが追加緩和を決定した理由が日銀に対する強烈な嫌味になるというのは嫌味成分がだいぶ減ったなあとは思いますけれども(^^)。
ということで駆け足で前回声明文との比較をしつつ。
○景気認識は良くみると殆ど変わっていない:第1パラグラフ
『Information received since the Federal Open Market Committee met in September
confirms that the pace of recovery in output and employment continues to
be slow. 』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in August
indicates that the pace of recovery in output and employment has slowed
in recent months.』(前回)
生産と雇用の回復の遅れをコンファームしました、とこの部分が下がっています。
ところが、この後の部分がこれまた殆ど変わっておりませんのでベタ引用。
『Household spending is increasing gradually, but remains constrained by
high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight
credit. Business spending on equipment and software is rising, though less
rapidly than earlier in the year, while investment in nonresidential structures
continues to be weak. Employers remain reluctant to add to payrolls. 』(今回)
家計支出、企業の設備投資、賃金に関する部分などは前回と同じです。
『Housing starts continue to be depressed.』(今回)
『Housing starts are at a depressed level. 』(前回)
住宅着工は引き続き低水準にあると若干下げています。で、この後に変化がございましてですな。
『Longer-term inflation expectations have remained stable, but measures
of underlying inflation have trended lower in recent quarters. 』(今回)
物価に関する話とインフレ期待に関する話は第2パラグラフにあったのですが、今回第1パラグラフに移っています。第2パラグラフが今回大きく変化してまして、物価水準と失業率の水準がケシカランという話をしていますので、現状認識に関する部分を前に持っていったのだと思われます。
『Bank lending has continued to contract, but at a reduced rate in recent
months. The Committee anticipates a gradual return to higher levels of
resource utilization in a context of price stability, although the pace
of economic recovery is likely to be modest in the near term. 』(前回)
前回まではこの部分はこういう話をしてまして、しらっと抜けたのが銀行貸出に関する部分。物価の見通しに関する部分は今回変化しましたので第2パラグラフの比較も含めてという話かと存じますです。
○物価水準と失業率水準が悪く、回復のペースはdisappointingとな:第2パラグラフ
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster
maximum employment and price stability. Currently, the unemployment rate
is elevated, and measures of underlying inflation are somewhat low, relative
to levels that the Committee judges to be consistent, over the longer run,
with its dual mandate. 』(今回)
わざわざ最初に「FOMCは法的に定めたれた使命によりまして、雇用の最大化と物価の安定を追求しています」と当たり前の話を入れているのはまあ決意表明みたいなもんでしょうか。我々の意思が強いんですよ(キリッ)って所っすな。
で、現状のレベルに関する部分ですが、物価に関する記述に加えて失業率に関する記述が入りましたな。前回の該当部分は第2パラグラフの先頭になります。
『Measures of underlying inflation are currently at levels somewhat below
those the Committee judges most consistent, over the longer run, with its
mandate to promote maximum employment and price stability. 』(前回)
で、先行き見通しですが。
『Although the Committee anticipates a gradual return to higher levels
of resource utilization in a context of price stability, progress toward
its objectives has been disappointingly slow. 』(今回)
今回の追加緩和に至る決定の元になったのはここですよ、と言う事だと思うのですけれども、「progress
toward its objectives has been disappointingly slow」ということで、FOMCのマンデートに向けての回復が失望的な程に遅いとはキタコレという感じでございますが、まあ景気認識そのものが変わっていないので、今回の追加緩和をするにあたってはこの辺りの話を強調するという格好にするわなという所でもございます。前回までの声明文はこうなっていました。
『With substantial resource slack continuing to restrain cost pressures
and longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to remain
subdued for some time before rising to levels the Committee considers consistent
with its mandate.』(前回)
ということで、ここのトーンが大きく変わっていますので、まあ今回の決定はこの辺に関する認識の変化が理由ですよ、と読むのが自然ではないかと存じます。
○より強い景気回復と望ましい水準への物価上昇を促す為と来ましたか:第3パラグラフ
第3パラグラフは追加緩和政策に関する文章です。
『To promote a stronger pace of economic recovery and to help ensure that
inflation, over time, is at levels consistent with its mandate, the Committee
decided today to expand its holdings of securities. 』(今回)
ここに失業率に関する言及が無いのはお洒落というかチャーミングでありまして、そらまあバーナンキ講演とかでも確かその辺の指摘はあったと思いますが、金融政策で直接的に失業率をどうこう出来るものでは無いという認識に立っている筈でございますから、ここでの追加緩和の目的の中に失業率の話が無いのは当然ちゃあ当然ですが、何気にチャーミングですなあと思いましたです。なお、バーナンキ講演によりますと物価のほうは金融政策で動かせますよと言ってますので、まあこういう言い方になりますわなとゆーことで。
○買入額が微妙に少ないような気がするんだが:第3パラグラフ
『The Committee will maintain its existing policy of reinvesting principal
payments from its securities holdings. In addition, the Committee intends
to purchase a further $600 billion of longer-term Treasury securities by
the end of the second quarter of 2011, a pace of about $75 billion per
month.』(今回)
6000億ドルの購入という話だと多いように見えますが、よくよく見ると期間がオープンエンドでは無くて、かつ月割りすると750億ドルという事で、月1000億ドルがコンセンサスじゃ無かったのかなあと思ってたのでちょっと少なめのような気がするざます。総額を多めに見せるためにエンドを半年後ではなくて「来年の6月末」という事にして総額を6000億ドルと多めに見せるというのは中々お洒落。
『The Committee will regularly review the pace of its securities purchases
and the overall size of the asset-purchase program in light of incoming
information and will adjust the program as needed to best foster maximum
employment and price stability. 』(今回)
今後のペースや規模は状況に応じて見直しますよという話は前回の資産買入プログラムを突っ込んだ際にも同じ文言が入っていまして、まあお約束の文章ちゃあお約束の文章でございます。前回は買入プログラム導入当初には「必要があれば追加緩和も示唆ですよ!」という認識だったのが、経済状況と金融環境が改善されて出口の意識を市場ちゃんがするようになった時には「必要があれば出口って意味ですよねえ」という認識になったという中々便利な文言でありまする。
ただ今回に関しては、追加緩和決定の理由が物価と失業率というそうホイホイと改善するようなものではないですから、どちらかといえば「期限が来ても延長ですかねえ」とか「効かないようなら額が増えるんですかねえ」というような認識を市場ちゃんがするのでしょうなあと思われる次第。
○30年債が売られていらっしゃると思えば:第3パラグラフおまけ
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_americas.html
東京4日朝6時半頃にリロードした時の数値はこんな感じでした。
米国10年国債 2.570 -0.016 100.469
米国30年国債 4.040 0.113 97.156
米国30年債がまた4%台になって益々カーブがスティープしているのですが大丈夫なのでございましょうかねえ・・・・・30年MBS金利の歴史的な低水準が住宅ローン借り換えによる家計のパランスシート改善やら消費刺激やら住宅市場へのサポートやらになっているのでは無かったでしたっけと思うのが微妙なのでありますが・・・・・
何でじゃろと思ったらこういう事のようで。
http://www.newyorkfed.org/markets/opolicy/operating_policy_101103.html
Statement Regarding Purchases of Treasury Securities
『The Desk plans to distribute these purchases across the following eight
maturity sectors based on the approximate weights below:』(NY連銀の上記URLより)
ということですが、図をコピペするのは苦手なのでそれはURL先をご覧頂くとしまして、今回は10年超のゾーンも買うという事にしたのですが、その買う量がそんなに多くないから期待はずれってえ所だったのでしょうかねえと存じますですが、よー知らんので詳しくは本職の人に聞いて下さい。
○FFレートについては現状維持で「for an extended period」も同じと:第4パラグラフ
『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate
at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions,
including low rates of resource utilization, subdued inflation trends,
and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally
low levels for the federal funds rate for an extended period. 』(今回)
前回はこの部分に償還再投資の話が入っていますが、それは今回は前のパラグラフに移動しているだけですので、ここの文言に関しては前回と同様ということで宜しいかと。
○今後も状況を注視して必要な措置を取る云々も同じです:第5パラグラフ
『The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial
developments and will employ its policy tools as necessary to support the
economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels
consistent with its mandate.』(今回)
ここは前回と同じです。
○ホーニッグさんの反対理由:第7パラグラフ
もはやお約束となっているホーニッグさんの反対ですが。
『Voting against the policy was Thomas M. Hoenig. Mr. Hoenig believed the
risks of additional securities purchases outweighed the benefits. Mr. Hoenig
also was concerned that this continued high level of monetary accommodation
increased the risks of future financial imbalances and, over time, would
cause an increase in long-term inflation expectations that could destabilize
the economy.』(今回)
追加の資産買入は効用よりもリスクの方が大きく、かつ将来に渡る金融の不均衡を発生させ、更に長期的なインフレ期待を引き上げることによって経済の安定を損ねる、というのが理由となっています。
でですな、先日ホーニッグさんが講演してて、追加緩和に関するリスクに関する話をしてましたので、その辺も読んでおかなければ(前後してコチャラコタさんとかの講演もあったり、ロックハートさんやらラッカーさんの講演要旨みたいなのが出てたりしているので実は宿題が山のように溜まっているのだ、汗)と思うのであります(一応ホーニッグさんのはリスクに関する話の部分だけは斜め読みしたが)。
前回の理由はこんな感じです。
『Voting against the policy was Thomas M. Hoenig, who judged that the economy
continues to recover at a moderate pace. Accordingly, he believed that
continuing to express the expectation of exceptionally low levels of the
federal funds rate for an extended period was no longer warranted and will
lead to future imbalances that undermine stable long-run growth. In addition,
given economic and financial conditions, Mr. Hoenig did not believe that
continuing to reinvest principal payments from its securities holdings
was required to support the Committee’s policy objectives.』(前回)
決定事項が前回と今回は違うので反対理由が微妙に違いますが、基本的には「メリットデメリットを比較した場合にメリットが少ない」というのと「将来に渡る金融の不均衡を発生させる」というのは同じでございますな。
○その他のネタメモ
お約束のように(^^)FOMC声明文で時間が無くなりましたのでネタメモ。
・ヤケクソ緩和を決定した回の決定会合議事要旨
ネタというか突っ込みどころが割と多いと思う
・展望レポート基本的見解
改めて読んだのですが4月よりも願望成分が増えているような気が・・・・
・市場雑談
GCレートがまたまた上昇しているのですが、包括緩和で長めの市場金利を引き下げるという金融政策決定会合でのお話と整合性がどうなのよという悪態を書こうかなあと手くすね引きながらその他データ(とはどういう意味かというのは判る人だけ判って頂ければ・・・ヒントは進捗率^^)を鋭意確認していたりしてなかったりという所でございます。
2010/11/02
お題「展望レポート関連の雑談(あまり真面目な考察ではなくてスイマセン)」
モーサテのCM(特に早い時間)と言えば近未來通信とか微妙なフラグのテイストを感じるのですが、最近パチンコ機械屋さんがCMを打ち出したような気がする訳でありまして・・・・ニヤニヤ
#モーサテでやってるサンリオの為替リスク管理方法がシンプルな王道にも程がありまして実に素晴らしい(嫌味ではなく真面目にね)
FOMC待ちでございますので雑談で勘弁(理由になってねえええ)
○昨日書き忘れた決定会合前倒しネタ
えーっとですな、昨日うだうだと書いているときに超うっかり書き忘れたのでございますがね、今回の決定会合前倒し攻撃って良く良く考えたらOISのインターミーティング取引の前提条件がいきなりワープしてしまうという大変に素敵な話になるのですが、これってどういう話になるざますのでしょうか??元々決めた足でやるのか、それとも決済日がずれるのかとか、OIS取引なんぞやった事がございませんのでよー知らんですけれども、やはりレギュラーミーティングを動かすと言うのはそれに伴うデリバティブ取引とかにも影響しますなあと思います。
まあ全然騒ぎになっていない所をみますと、そもそも論として本邦の場合には足元でのOIS取引自体がどーでもいい状態になっているということなのかとは思いますけれども(^^)、大体からして(最近あまり言わなくなりましたが)一頃「OIS取引拡大で市場の政策金利の予想パスを知る」みたいな感じで妙に日銀様がOIS取引に肩入れして、わざわざインターミーティング取引を先のほうまで出来るようにという配慮もあって、かなーり先のほうまで通常会合の日程を発表するという動きがあった訳ですから、うっかりすると政策変更しちゃうかもよ的なイメージまで起こすような形での通常会合日程の変更というのは今までと違いますなあとニヤニヤする次第。
いやね、まあ政策効果(通常日程の変更が政策効果っつーのも市場が勝手に勘違いするプラシーボ効果にも程があるんでアホーな話ではありますが)の方がOIS市場のインターミーティング取引がどうのこうのなどというような問題よりも遥かに重要であると言ってしまえばそれまでなのですが、今回の措置ってやっぱり奇策は奇策だと思いますので、そうホイホイやるもんでもないかと思ったりしましたです、はい。
○展望レポートは構成が微妙に変わっておりまして・・・(まあ雑考だ)
めんどいので基本的見解だけですけれども。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor1010a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor1004a.pdf(前回=4月)
いきなり冒頭部分から書き方が違うので比較のしようが難しいざます。
『1.はじめに
今回の展望レポート(「経済・物価情勢の展望(2010 年10 月)」)では、2012
年度までの日本経済の見通しを示す。見通しを示すに先立ち、若干の留意点を述べる。』(今回)
ということで、構成がちと違うのであります。前回の冒頭部分はこうです。
『わが国も含めた世界経済は、金融危機に起因する急激な落ち込みから脱出し、昨年後半以降は回復基調を辿っている。もっとも、世界経済は、危機以前の状態に戻る過程にあるわけではない。この間、世界経済の構造に大きな変化が生じていることや、よりバランスの取れた持続的成長に向けて各国が新たな課題に直面していることも、明らかになってきている。』(前回)
で、新興国経済の比重が高まっているだの、先進国での財政サステイナビリティーに関する注目だのという話がさらっと続き、そのあとに(経済情勢の見通し)という項目が入って先行き見通しが出てきます。
ところが今回に関しては、上にありますように「先に留意点」ということで、「日本経済の今後の動向は海外経済に左右される所が大きい」という点を指摘しまして、それから「金融環境の評価が重要」という指摘が来るのよね。
『第1に、日本経済の見通しは、経済・金融のグローバル化を反映して、海外経済や国際金融資本市場の動向に相当程度左右される。第2に、景気・物価見通しと金融政策の関係を評価する上では、金融環境の評価が鍵を握る。このため、本展望レポートでは、海外経済の見通しや国際金融資本市場の動向を最初にやや詳しく記述し、その後、わが国の金融環境の評価をまとめて記述することとした。』(今回分より、先ほど引用した冒頭の続きです)
で、当然ながらこの先に海外経済の見通しなどがああでもないこうでもないと続きまして、ページで言えば本文4ページ目(PDFファイルでも同じ)になってやっと『4.わが国の経済・物価の中心的な見通し』というのになるのでありますな。その一方で前回4月の展望レポートでは、先ほど引用した冒頭部分の直ぐ後、ページでは本文2ページ目に(経済情勢の見通し)というのがあります。
ええまあ展望レポートを書く中のメンバー構成が変わっているからだと言ってしまえばそれまでの話かも知れませんが、こういうどうでも良い所も気になるあたくしと致しましては、見通し(即ちこのレポートの結論)に入る前にああでもないこうでもないという文章が入ってくるというというのは、まあ良くある「困ったときの言い訳先行」みたいなテイストを感じるのでございまして(^^)、よーするに先行き見通しに関する部分にそこまで自信が無いのではございませんでしょうかなどとついつい裏読みをしてしまうのですけれども、性格が悪すぎですかそうですか(大汗)。
ま、それは兎も角として、こちらの基本的見解の部分で『第2に、景気・物価見通しと金融政策の関係を評価する上では、金融環境の評価が鍵を握る。』と振りかぶっているので、では金融環境の評価ってどうよと思ってその部分を読むわけですが。
『わが国の金融環境をみると、緩和方向の動きが続いている。すなわち、短期金融市場では、日本銀行が実質ゼロ金利政策など強力な金融緩和を推進する中、コールレートが極めて低い水準で推移しているほか、ターム物レートが低下し、イールド・カーブは一段とフラット化している。また、CPや中高格付社債の発行金利は低位で安定し、貸出金利も低下傾向が続くなど、企業の資金調達コストは既往最低の水準まで低下してきている。企業からみた金融機関の貸出態度も、改善の動きが続いている。』
『一方、資金需要面をみると、収益の回復に伴いキャッシュフローが増加していることもあって、企業の外部資金に対する需要は引き続き弱い。このため、銀行貸出など、民間部門の資金調達残高は前年比でみて減少を続けている。』
金融経済月報での認識と似たようなもんですな。
『こうした中、企業の資金繰りをみると、大企業と中小・零細企業とでは幾分異なるが、全体としてみると、改善の動きが着実に続いている。先行きについても、わが国金融システムが全体として安定性を維持する中、企業収益の回復に伴い、金融緩和効果は強まる方向にあると考えられる。今後、日本銀行による強力な金融緩和政策の効果が一段と浸透していくにつれて、わが国の金融環境はさらに改善し、それが国内民間需要の自律的回復に向けた動きを後押ししていくものと期待される。』
という話になっているのですが、あたくしが勝手に段落わけした最初の部分にありますように、金融市場ルートの金融環境緩和ってかなーり限界的な所まで来ているように思える次第でありまして、まあだからこそ今回の社債買入(正直言ってこれが一番市場的には効くと思う)にありますように、「2年以内のBBB格社債のスプレッドを気合で詰めたるわコノヤロー」というような市場に手を突っ込んでやるわいな攻撃になるのでしょうし、更には昨日引用した総裁会見にあるように、「TIBOR下げやがれコノヤロー」的な最早金融政策というよりは古き悪しき時代の窓口指導じゃネーノ的な世界になってくるんじゃなかろうかと思う次第。
#と考えますと、金融政策でどうのこうのというよりはプルーデンスとか自己資本規制とかの方向での金融環境改善という話になるのではないかと
でですね、まあそういう状況でありまして、そもそも金融市場ルートでのアプローチでは金融環境は散々緩和状態になっていると思われる中で、緩和効果が一段と強まるためには結局は経済状況の改善が必要であり、その経済状況改善は海外経済次第、ということになりますと、今回の展望レポートで「今回の包括緩和の効果も含めて検討しました」というのってよーするに「海外経済が拡大するという前提をおきますと包括緩和の効果が時間の経過と共に高まるんです(キリッ)」という話で、ベースとして「海外経済の順調な進展」というのがありますなあという事になっちゃいますよねえと思うのです。
いやまあだからどうしたと言われますと困りますが、上記の説明文を見ていますと、「包括緩和の効果」と言っても押し上げ効果に作用するのはあくまでも改善した場合における実質的な緩和効果の強まりというアプローチは変わっていないのですねえというそんだけの話ですが(汗)。
○せっかくですからFOMCプレビュー
まあここもと散々書きましたので何ですが、足元でのFRBの課題は先般公表されてCNBC辺りでは「プリンティングマネーで商品やゴールド高だぜヒャッハー」と雨公達が大騒ぎでござるの巻となった9月FOMC議事要旨にありますように、「短期の政策金利はゼロ金利制約にあるので、短期のインフレ期待を引き上げて実質短期金利の引き下げにより追加緩和効果を出し」、さらに「デフレの罠に一旦嵌ると日本のように脱出困難になるので、そこには間違っても近寄らないようにする」というのと、「30年MBS金利が歴史的な低水準にあることによって、住宅市場のサポートや家計のバランスシート改善の促進に寄与しており、長期金利や長期物の証券化商品の金利を低位安定させる必要がある」というのを同時に実施しないといけません罠。
つーことで、まあ今のところFRBは何だかんだと言いましても神様扱いになっておりまして、まあ何かやるとそれなりに意図する方向に市場ちゃんが反応してくれているという状態にあります(どっかの日本銀行のように仏様扱いとなっていると何をやっても中々笛吹けど踊らなかったりしますからねえ)ので、とりあえず「国債買入拡大して長期金利は上昇させず」というのは何とかなるとは思いますけれども、まあこればっかりは蓋を開けてみないとわかりませんな。
で、普通に思いつくのは、30年MBSがどうのこうのという事を勘案して買入国債は30年トレジャリーまで含めて「インフレ期待を引き上げながらも市場介入で金利を上げませんよヘッヘー」攻撃をしつつ、ガイダンス文言か物価認識に関する文言をいじって足元の物価水準は「極めて」望ましくないですよという話をする、という位でしょうかねえ。額は正直判らないのですけれども、前回ドカンと買入アナウンスしたら、10年金利で3.1%だったのが2.5%まで下がったと思ったらその後華麗に上昇して、1か月ちょっと経ったら3.9%まで上昇という大変に素敵な結果になったってえ点は考慮に入れてくると思いますけどどうなんでしょうかね。
という極めて普通のプレビューでどうもすいません。リスクは(1)そもそもFOMCのコンセンサスがどう見ても取れていない事(全然追い付かないのですけれども、連銀の偉い人の話が百家争鳴にも程があると思います)、(2)先般のNY連銀実施の謎アンケートに見られるように、市場とのミスコミュニケーションが起こるリスクが出てきたような気がする事、という感じでしょうかねえ。よー知らんがの。
#ということで雑談大会でどうもすいません
2010/11/01
お題「何気に味わいのある総裁会見から少々^^」
決定会合の内容も微妙な味わいがありましたが、総裁会見も微妙な味が。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1010d.pdf
○会合前倒しに関して
最初の説明の所で次回通常会合前倒しに関してこのように説明をしていますわな。
『日本銀行としては、今後、速やかに買入れを実施する方針ですが、ETFおよびJ−REITについても、買入れを早期に開始できるよう基本要領の審議・決定等を行うため、次回会合の開催予定日を、11
月15 日および16 日から、11 月4 日および5 日に変更することとしました。もちろん、この会合では、通常の金融政策運営方針等に関する議論も行います。』
でもってそういう説明でスルーするわけにも行きませんので、「FOMCシフトでございますか」という質問が当然ながら出たのですが、それに対しての説明はまあ無難なものの言い方に。
『(答) 他国の金融政策について、私の立場でコメントするのはあまり適切ではないと思います。いずれにせよ、金融政策決定会合では、前回の決定会合以降、新たに判明する様々なデータ、様々な動きをもとに、将来の経済・物価情勢を点検するわけです。これは、今回のFOMCの動きに限らず、毎回の決定会合で行うことです。その上で、最も適切な政策を決定していくという考え方自体は変わっていません。繰り返しになりますが、今回日程を繰り上げたのは、もっぱら、ETF、J−REITの買入れを急ぎたいためです。』
ということで、まあスケジュール的に年内にETFとJ−REITの買入を開始したいというのはそらまあその通りだと思うのですし、まさかここでFOMCシフトと明言する訳にも行かないでしょう。まあ市場が勝手に勘違いするのはそれはそれで良いという事でしょうか。
・・・・・ただですな、同時に出た展望レポートの内容が強いですよねという話を金曜にしたと思うのですが、「景気が悪化した場合には資産買入を拡大しますか」という質問が出ていまして、それに対する答えがちと微妙。
『その中で資産の買入れについては、現在はまだ買入れ自体が始まっていない状況で、目下、実務的な準備を鋭意進めています。ただ、私どもとしてはこの方法が最善であると判断したものの、一方で効果と同時に副作用も指摘されています。効果と副作用を入念に点検した上で効果が勝ると判断し、かつ先行きの経済・物価の見通しが従来の想定に比べて大きく変わってきた場合には、もちろん増額することも有力な選択肢になると思っています。ただ、いずれにせよ、現在はまだそこに至る前の段階にあり、私どもとしてはこれを円滑に早くスタートさせたいという思いです。』
えーっとですな、つまりFOMCを受けて円高が進行した場合に資産買入を拡大という話をする場合は「先行きの経済・物価の見通しが従来の想定に比べて大きく変わった」という認識をするという意味でございましょうが、つまり1週間で見通しが大きく変更するという中々お洒落な事をしないと行けないように読めてしまうのですけれども大丈夫でしょうか????????
つーことで、追加緩和のハードル上げてどうするという感じでございますわな。何せ決定会合を前倒しした以上、FOMCの結果でそれこそドル安祭りになってドル円が79円だの78円だのになった日には、何らかの追加緩和(と世の中が受け取ってくれる施策)を実施しないと今度は自分で追加緩和措置実施の期待を上げた分だけ批判も増える訳でありまして、というか絞首刑モンになりゃあせんですかねえという所でもあります(まあ大規模介入でもしてくれるのなら追加緩和せんでもエエかも知れませんけれども)。
まあね、基本的には「FOMCではそんなに大波乱は無いでしょう」という事になるかとは思いますし、その場合ってFOMCシフトをしたように見える決定会合の日程変更によって「何かあったら追加緩和するんだからおめーら円高アタックしたら踏み上げさせたるでヘッヘー」というのを見せているのですから、無料で円高アタック抑制の効果があるという施策(施策と言えるのか知らんが)なのですから、そーゆー意味では極めて賢い策のようにも見えますわな。
しかしですな、ここで日銀様の芸術的な「間の悪さ」が炸裂した場合には、FOMCの結果が出た後にドル安だか円高だか知りませんが、アタッカー登場で「さてどうするどうする」とやってきまして、はてさてハードルを上げてしまった日銀ちゃんはどういう屁理屈(もはや屁理屈の世界になるでしょ)を繰り出してくるのかお楽しみという落涙を禁じ得ない展開を悪寒する今日この頃でございます。
まあ纏めますと今回の「決定会合シフト」なのですが、強めの展望レポートとか、先ほど引用した総裁発言などとセットになってしまいますと、特にFOMC後の為替市場が波乱にならなきゃ良い(もしかするとFOMCで長期金利がどどーんと下がるというFED的に美味しい展開になった方が日銀的にはヤバイような気が致します)のですが、なった場合の方が却って捌きが難しいという奥の深い話でもあろうかと言う事ですな、うんうん。
○書き方の順序とかを気にするあたくしが気にした部分(^^)
いやまあどうでも良いっちゃあどうでも良いのですけどね。
『こうした中心的な見通しに対する実体経済面での上振れ・下振れ要因としては、4
点を挙げました。第1 に先進国経済の動向、第2 に新興国・資源国経済の動向、第3
に企業や家計のマインドの動き、第4 に企業の中長期的な成長期待の動向です。』
ということですが、前回(4月)の展望レポートでは、この要因が「1.新興国・資源国経済の動向、2.先進国経済の動向、3.国際金融面での様々な動き、4.企業の中長期的な成長期待の動向」という風になっていまして、まあ国際金融面に関してはギリシャだの何だのという話が一旦落ち着いたので引っ込んだのは判りますし、その替わりに「マインドの動き」というのが入ったのでニュアンスとしては弱くなったですかなという所かと。
更に前回の場合はいきなり最初が上振れ要因の「新興国・資源国経済の動向」でしたけれども、さすがに今回はそれを2番目に下げて先鋒は下振れ要因になっておりますので、そーゆー意味でもリスク要因としての認識は下方にシフトしたなあと思うのでございますわな。
ところが、総裁の説明ではこういう話をしているのがまあ本音が出てるのか何だか存じませんがチャーミングでありまして・・・・
『次に、第2 の柱に基づきリスク要因を点検しますと、景気面では、新興国・資源国の経済の強まりなど、上振れ要因がある一方で、米国経済を中心とする不確実性の強い状況が続くもとで、景気の下振れリスクにも注意が必要です。』
上振れ要因が先に来るわ、下振れリスク「にも」注意が必要ですとか、実は総裁様はまだ日本の景気ってそんなにコケるリスクは小さいと思っているのでは無いかと勝手に憶測しているのは妄想にも程がありますかそうですか(^^)。
なお、展望レポートを見ると「結局のところ新興国・資源国が成長続けてくれないと世界経済の回復は厳しくて、従って日本もしんどいですねえ」という内容になっているというのは念の為申し添えますです。
○政策効果の織込みに関して
『前者の「包括緩和」の効果如何ということですが、先程、定性的なメカニズムを説明しました。多くの委員は、そうした定性的なメカニズムに基づいて、各委員なりに政策効果を織り込んでいると思います。私自身も、そうした作業を行っていますが、これを正確にいくらであるとは、なかなか申し上げ難いものです。ただ、メカニズムは、そうしたものを想定しているということです。』
結局のところこれって政策効果を織り込んでいるのか織り込んでいないのか良く判らんという話になると思うのですけれども、こういうのって決めの問題だと思いますので、ある程度統一した方が現実的じゃないかと思ったりもします。
『また、物価について申し上げますと、今回、時間軸を明確にしたわけです。この時間軸の政策だけで予想物価上昇についてアンカー機能が発揮できるわけではないですが、中長期的な物価安定の理解に基づく時間軸を明確化することによって、何がしか、従来よりはアンカー機能が高まっているという感じがいたします。』
それから、物価に関しても結構な幅があって、例えば昨年10月に出した2011年度の見通しって大勢見通しベースで実質GDPが+1.6〜+2.4に対してコアCPIが−0.7〜−0.4なのですが、今回って2012年度の実質GDPが+2.0〜+2.4に対してコアCPIが+0.2〜+0.8と幅が広くなっている次第で、実質GDP予想の推定潜在成長率からの乖離の関係なのかも知れませんけれども、こりゃまた随分と幅がでましたなあと思うのですが、この辺ってどうなんでしょうかね。
ま、緩和効果を織り込んでこうなりますよ!!!!!という威勢の良い話をするのもそれはそれで景気は気からという面もあるから良いのかも知れませんが、ちょっと今回の「政策効果の織込み」に関しては従来と違うのでどうなのよという気はする。
○リスクプレミアムの引き下げとは社債のスプレッドを潰すという事で
いやまあそうであるのは今般の措置を見れば明らかですが、総裁会見でも明言されたので、社債投資家涙目(瞬間は儲かるけれども、投資家的にはリターン減るから涙目なのよ)。
『まず、今回のCP・社債の買入れの際の基準を、前回、別の目的で買入れた際に比べますと、1ノッチ格付け基準を下げています。つまり、よりリスク性の高い資産を買入れるということです。金融政策の効果の波及メカニズムの中で、民間の経済主体が資金調達を行い、様々な投資活動や生産活動を行っていきます。その際のコストを概念的に言い表すと、国債の金利にリスクプレミアムが上乗せされているわけです。その上乗せ金利を日本銀行の買入れによって縮小することができれば、その分調達コストが下がってくるわけです。金利の上乗せ幅は、格付けが低い先ほど大きいわけですから、そうしたものほどリスクプレミアムの引下げ効果が潜在的に大きいということになります。』
市場機能論は何処へお出掛けになられてしまったのでしょうかという投資家涙目の発言。
○より長めの金利に働きかけるとはTIBORを下げろという事ですか
更に銀行も涙目の発言がでておりますた!!!!
『短期国債あるいは残存期間1〜2 年の国債というゾーンについては、金利水準自体が、以前からの強力な金融緩和の結果としてかなり低い水準になっていますから、そこから限界的な低下幅がそう大きなものではないという意味でのご質問だろうと思いますが、それでもまだ低下する余地はあるわけです。』
いやまあ0.5bpを「余地ある」と言われますとそれはまあ余地はありますけれども・・・・
『そのゾーンの金利が低下すると、民間企業に対して貸出す際の基準となる金利が下がってくるわけですから、最終的には、民間経済主体にも波及していくことになります。』
これは銀行涙目の展開。いやまあ市場機能とか適正な貸出スプレッドだとか銀行の基礎的収益力がどうのこうのとか言うような話は当面日銀様におかれましては行わない方が宜しいかと存じますなあという感じです。
○中国は通貨高政策か金融引き締めを実施しろという事のようです
段々日本の金融政策と違う話になってきましたが(^^)、チャーミングなので引用。
『一方、新興国の為替制度が伸縮性を欠いている場合には、単に貿易面で影響が出てくるだけではなく、そうした為替制度は、結局はその国の経済の持続的、安定的な発展を損なう危険があります。これは、かつて日本のニクソンショック以降の経験をみてもそうですが、経済の基本的なファンダメンタルズが変わってきている中で、無理な為替相場を維持した場合には、当該国のみならず、世界経済にも影響を与えていく。今、ますますそういう相互依存関係を意識しないといけなくなっているという一般的な認識を申し上げたのであり、特定の国を念頭に置いた話ではありません。』
どう見ても中国の話です本当にありがとうございました(^^)。
○物価水準ターゲットに壮大なダメ出しを(^^)
この辺は白川さんらしいなあと思います。「物価水準ターゲットに関してどう思いますか」という直球の質問に正面から打ち返します(^^)。
『確かに、物価上昇率が低くなりすぎた時に、将来、通常の目標物価上昇率より高い物価上昇率を一時的に許容することによって、経済の回復を手繰り寄せるという効果は、理屈の上では考えられると思います。』
『ただ、問題はインフレーションターゲティングであれ、物価水準ターゲットであれ、一般の国民の方々とうまくコミュニケーションしないといけないという点にあり、一般の国民の方々からみると、あるのは単に物価上昇率だけです。従って、今の物価上昇率が、恒常的に高い物価上昇率を容認したものなのか、あるいは、一時的に物価水準ターゲットを実現するために高いものにしたのか、区別がなかなかつき難いわけです。』
『これが物価水準ターゲットの最大の難点として挙げられています。その意味で、純粋に理論的な魅力があることは理解できますが、これを真剣に政策のオプションとして考えていこうという人は、そう多くはないと私は受けとめています。』
まあこれはコーン前FRB副議長やバーナンキ議長も指摘している部分でして、白川総裁もこの点では直球打ち返し攻撃しますなあという所でございました。