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2010/09/30

お題「期末だというのに短期市場ネタが無くその他の雑談を」

昨日は末初のGCが微妙に高かったりしましたが、まあそれは市場が荒れたというような規模の話でも無いのでやはり平穏な短期市場でしたねということで。

で、どうでもいいモーサテネタですが、「銀が投機の対象になる場合もあるんですか??」とかキャスターのアンちゃんが質問するのを聞いて、テレビに向けて「ハント兄弟」と突っ込んだあたくしは是川銀蔵の「相場師一代」の読みすぎです(^^)。


○短観雑談

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka1009.pdf

事前予想よりもマシだったような気もするのですが、債券市場の勢いは別に売り材料にしないというのが市場クオリティ。

・業況判断DIの達成度合い

前回はその前に引き続き全セクターでの改善が継続するという素晴らしい結果で、回復期によくあるパターンですなあという感じだったのですが、今回はどうなったかと申しますと・・・・


        (6月時点)      (9月時点)
        現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業   +1→+3       +8→▲1
製造業中堅企業  ▲6→▲8       +4→▲10
製造業中小企業 ▲18→▲19     ▲14→▲22

非製造業大企業   ▲5→▲4      +2→▲4
非製造業中堅企業 ▲13→▲14     ▲8→▲15
非製造業中小企業 ▲26→▲29    ▲21→▲29

・・・・・うーむ、ここのDIだけ見てると今回の短観も別に悪くは無いという気がするんだが。つまり先行き予測が下向きというのは12月以降ずーっと同じ、というか前回の景気回復期でも同じような傾向が見られた所でして、まあ今回ちと違うのは6月時点での先行きDIの予想がそんなに下になっていなかったのに対して、今回の予想は下になっているという所なのですが、全ての規模において6月のDIよりも改善しているという今回の結果を捕まえて悪いというのはちとどうなの、とその後の部分を見ないでまず最初に思うのですけど。単に足元の金融緩和観測ネタに引っ張られているだけなんジャネーノと。


・雇用判断DI

前回は「改善傾向継続。非製造業の改善がイマイチなのが微妙ですが、製造業は改善継続という所ですな」っつー感じでしたが、さて今回は。

        (6月時点)      (9月時点)
         現状→9月予測    現状→12月予測
製造業大企業  +10→+8      +9→+9
製造業中堅企業 +14→+11     +9→+10
製造業中小企業 +17→+13     +11→+12

非製造業大企業  +7→+3      +5→+3
非製造業中堅企業 +7→+4      +4→+2
非製造業中小企業 +10→+8     +7→+5

何と雇用判断に関しても改善(といってもまあ「過剰」超状況ではあるのですけれどもね)が継続しているのか。何か報道ベースでの話(新卒の就職がエライコッチャみたいな話とか雇用対策しないとエライコッチャみたいな話)と微妙に違うのはナンデヤネンという感じです。


・資金繰り判断DI

      (6月時点) (9月時点)
大企業    +13     +15
中堅企業   +6      +7
中小企業  ▲11      ▲10


・貸出態度判断DI

      (6月時点) (9月時点)
大企業    +7      +10
中堅企業   +5      +6
中小企業   ▲6      ▲4

うーむ、これもまた改善で金融環境が改善しているという話にも平仄があっておりますな。何かまあ本職の人が真面目に分析しているからそっちが正しいのでしょうけれども、いつも面白がって見ている所だけ拾うと実は別に悪くもないというか比較的良い結果ジャネーノという気がするのは気のせいでしょうか。


#で、証券業のDIというのが非常に毎度面白かったので、金融商品取引業という括りではなく証券業という括りで業況判断DI集計を復活させて頂きたく(^^)


○さすがにこれは如何なものかと

某経済新聞の本紙なんぞは基本的に見ないというかごく稀に誰かから見せてもらったりゴミ箱(というか資源回収箱)から拾って読む(直ぐ返還しますので念の為^^)のを仕様としているあたくしですが、昨日の市場面で日銀当座預金がどうのこうのという記事があったと聞いたので早速拝読(^^)。

以下、昨日(9/29)の日本経済新聞マーケット総合面記事より。

『金融市場の資金量の目安となる日銀当座預金の残高が9月の決算期末にピークを迎え、減少に向かう可能性が高まっている。』

・・・・えーっと、期末とか年末とかになると市場に資金を出さない人が増えるので日銀がオペレーションで資金を多めに出して、市場金利の跳ね上がりを抑制し、期末やら年末を通過すると期末前に資金を出していなかった人が市場に戻ってくるので多めに出す必要がなくなるのでして、期末に当座預金残高がピークになって期初に減るのは通常の現象なのですが何か???

『9月末は企業の決算期末とあって資金決済が集中し、金融市場での資金需要が増えやすい。介入などなくても、日銀はこの時期には例年、資金供給を増やすのが常だ。』

資金決済の集中が主な要因なのではないのは今しがた書いた通りです。

『たまたま当座預金が増える局面を利用し、市場に出回る介入資金を放置する「非不胎化介入」を演じて見せた面も強い。』

最初に「日銀は介入資金を吸収しない非不胎化介入を実施する事を決めた」とか報道して非不胎化の話を散々盛り上げたのは日経新聞の英語版記事だと思うのですが・・・・・

『緩和姿勢をアピールするため、市場などの「誤解」を利用した格好だ。』

・・・・ミスリード報道を散々やってたのはどこの誰でしたっけ?????

もうね、何と言うか手前らで好き勝手煽り報道したり金融緩和催促報道をしたり(今でもやってますが)とやりたい放題やって、自分らで話題にして盛り上げた「当座預金残高を直接リンクさせた非不胎化介入ネタ」という論点をミスリードしていた件について「市場の誤解を利用した」とか日銀を詐欺師みたいな報道するとかちょっとお前ら鏡を見てこいと思う次第でございます(それを言うなら市場の誤解を駆使する詐欺師呼ばわりされるべきはインチキロジックを駆使するバーナンキのFRBとかかつての福井の俊ちゃんなんすけどねえ^^)。日銀は先般の宮尾審議委員の会見にもありますように「不胎化とか非不胎化というベースでの物の考え方はない」というスタンスを最初から維持している訳でして、てめえらで勝手に実務的に意味の無い「非不胎化介入」ネタを散々盛り上げて後からこんな記事書くとか人間として恥ずかしくないのかねと思う朝のひとときなのでありました。


○ほんのちょっとだけ市場メモ

・いつの間にやら10年309回債がこの前の高値水準を回復している件について

まあその間に1か月ちょい時間が経過しているので、本当はロールダウン分を考慮しないといけないので単純比較するのも何なのですが、昨日も昨日で10年とか強くて309回はちゃっかり0.9%割れております。20年120回債というお洒落な銘柄もございますが、こちらはまだ入札時のレベル(平均落札価格は1.548%でしたな)を回復しておりませんで、売られて戻る間に10年は戻るが(というか先物はもっと戻ってますが^^)20年とかはまだ捕まった人がいるんでしょうなあと中々味わいのある展開。まあ20年でオリャオリャという人でも上手く逃げてれば兎も角、普通にソイヤソイヤやっていると120回債が捕まりの介になっているでしょうから、とりあえず10年なんですかね(^^)。


・金融緩和観測報道が出ているのに3MTBの落札結果は0.11%乗せな件について

昨日の3か月もの国庫短期証券の落札結果。

http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul220929.htm

(3)募入最低価格 99円96銭9厘5毛
(募入最高利回り)
(0.1113%)

(4)募入最低価格に 43.9065%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円96銭9厘6毛
(募入平均利回り )
(0.1109%)

足きりが0.1113%なのもさることながら、足きりの按分が4割も入っているとは割と入りましたなあという感じの入札でして、来週追加緩和がどうのこうのとか言って外野が盛り上がる中で、最も影響を受けてもおかしくない短期のキャッシュマーケットではこの結果というのも味わいがあるというものです。年末越えだから忌避するというという事でもないと思うのですがどうなんでしょ。

ま、既発の短国は買いが旺盛で、特に短い所はニーズありあり状態なのですけれども、まー外野の盛り上がりに対して肝心の短期方面は「まあそうは言いましても別に実際の金利が下がるかどうかは別ですからねえ」みたいな所なのでしょうかねえ、よー知らんけど。

#虫干しネタの整理が全然進まないですな、これはついに休日版炸裂かしら








2010/09/29

お題「いろんな講演がありましたので昔の虫干しから」

しかしまあ何ですな、ドル安対応で追加緩和しなきゃという話って結局「米国の景気が悪いから追加緩和しますよ」って事で冷静に考えるとトンチキではありますな(苦笑)。

で、為替介入だ非不胎化だ追加緩和だという話(どうでもいいが昨日の日経の記事も「日銀によるリーク」とか言われてコーヒー脳の先生が国会でまた追及するに100ドラクマ^^)をしているうちに色々な講演が行われまして、その間スルーしていたネタがゴロゴロあったりするので、期末なのに全然短期市場が荒れない事もありますので虫干し大会と参りたく候。

ということで超地味なのですが西村副総裁のユーロマネーなんちゃらでの講演、という事はつまり介入の日に行われた講演でおじゃる。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1009a.pdf
市場の安定性確保と利便性向上の取組み

というお題はいいのですが、現場労務者的に微妙にアレな部分がございまして、まああたくしの主観的独断的なツッコミをしながら読む訳ですが、あたくしのツッコミがトンチンカンでしょというツッコミ返しを頂きますと心からありがたく存じますので一つよろしくお願いいたしたく(^^)。


○金融市場の安定性が重要というのは深く同意

冒頭の部分から。

『金融資本市場の安定性は、ストレス時においても市場の流動性が維持されていることであり、それは金融機関や企業の経済活動を支えるうえで必要不可欠なものです。このことはしばしば人間の活動を支える血液循環にもたとえられます。血液の循環は、普段は当然のこととして意識に上ることはありません。資金の流動性、そしてそれを支える市場の流動性も、普段は空気のように存在してその存在を特に意識することはありません。血液循環と同じく、市場の流動性は、それが失われて初めてその重要性に気付くことになりがちなのです。』

まあ喩えのほうはいいとして、この「ストレス時に流動性維持」というのが効けばこれはまあ大変に結構な話でして、これはこれで同意です。まあこちとら90年代半ば以降に局地的に流動性がいきなりうんこになる(例えば急に非上場国債市場がうんこになってみたり、アジア系のサムライ債がうんこになったり、一般債市場がうんこになったりとかね)という事態で何度ヒーヒー言った事か(さすがに2回位痺れる目に合うとその後は学習効果が働きますが^^)ということでありましたなあと。

つーか、これは要するに「リーマンをいきなり法的にコカしたポール損は坊主になって詫びるべき」という事ですけど中銀の人は仕様としてそういうことは言わないのでまあそれはそれとして。

で、2008年の話になるのですが。


○2008年に「相対的に安定していた」という話よりも論点は別ではないかと思う

2008年の金融危機に関する説明に関しては禿げ上がるほど違和感があります。

『他方、この間のわが国の金融資本市場をみると、リーマン破綻直後は、国際的な金融資本市場混乱の影響を受け、同様に不安定化する動きがみられましたが、足もとまでの動きをみると、相対的には安定しています。』

そらあーた日本の金融機関がそもそも不良資産の直撃弾を激しく食らったわけじゃない(すこしは食らってましたが)もん。

『例えば、短期金融市場では、リーマン破綻後に金利の上昇圧力が高まりましたが、カウンターパーティ・リスクに対する警戒感は、主として外資系金融機関との取引に止まりました。このため、円のLIBOR-OISスプレッドをみると、米欧と同様に拡大はしましたが、その拡大幅は相対的に小幅に止まりました。さらに、足もとでは、日本銀行による金融緩和効果が徐々に浸透することで、短期金融市場の金利は、やや長めの金利も含めて、極めて低い水準に低下しています(図1、「円」を参照)。』

『また、企業の資金調達環境をみると、わが国においても、リーマン破綻後に発行体の財務内容の悪化や同時期の株価の大幅下落を背景に銀行や生保など主要な社債の投資家のリスク許容度が低下し、社債の発行環境は米欧の動きにつられるかたちで悪化しました。しかしながら、発行ウエイトの過半を占めているAA格以上の高格付社債についてみると、危機後においてもスプレッドの拡大幅はBBB格に比べてかなり小幅に止まりました。この点は、高格付銘柄においても社債スプレッドが大きく拡大した米欧とは異なっていたと考えています。 こうしてみると、敢えて誤解をおそれずにいえば、わが国の金融資本市場は、今回の金融危機に対して相対的には――あくまで相対的という条件付ではありますが――安定的であったと言ってよいでしょう。』

すいません、金融危機の時の記憶がもう抜けたんかいなという感じなんですが、日本の場合何が一番問題だったかと言いますと、CP市場の極端な悪化とレポ市場の金利上昇でして、前半の引用にあるように「カウンターパーティ・リスクに対する警戒感は、主として外資系金融機関との取引に止まりました」だけで済んでいた問題だったらばレポ市場におけるGCレートの上昇は一部に留まる筈ですが、実際問題としてはGCレポ取引金利が日銀の貸出ファシリティ金利(つまりロンバート金利)近くまで上昇するという事態になりましたし、CPに関してはそれこそ電力会社さんの3か月CPの発行レートまで0.9%台とかに上昇して、AA格のメーカーさんとかの3か月CPが普通に1%を上回ってみたり(ちなみにそのときの政策金利は0.5%でロンバートは0.75%)という事態になった訳ですよね。

で、先ほども申し上げましたように、直撃弾を派手に食らった訳ではない日本市場が相対的に安定的になるのは当然で、それよりも問題なのは、そんなのと関係ないはずのCP発行市場がいきなり無茶苦茶な動きになってしまった事に関して、その辺りの背景および波及メカニズム、ついでに再発しないためにはどういう風になる事がポイントなのかとかゆー所をご考察いただきたいと存じます次第。

まあ日銀の中の人は当然ながらこの辺りの面に関する考察をしておられると存じますけれども、当時CPとかレポレートがアホのように上昇して(そらまあポジショントークだけで言えばウハウハでしたが)さすがにこれは経済厚生的にどうなのよと連日悪態をついていた頃を思い出しますと、このCP市場とレポ市場の話を軽くスルーするのはちょっと違和感がござんすな。


○米欧における市場安定化の取り組みに関する雑感

『今回の金融危機の経験を経て、市場関係者の間では、市場のストレス時においても、金融資本市場の安定性が確保されていることの重要性を改めて強く認識しました。こうした認識のもと、内外の市場関係者の間で、市場安定化に向けた市場インフラ整備の取組みが進んでいます。』

ということで、最初に米欧の話があるんですけれども、まあこっちはツッコミというより雑感を少々。

『米欧においては、例えば、CDS取引を含む店頭デリバティブ取引について、市場の透明性やリスク評価の面で課題が認識され、清算集中など決済・清算に係る市場インフラ整備の検討が進んでいます。また、米国におけるフェイル慣行の見直しとレポ市場の改革を、目立つ取組みとして挙げることができます。』

まあそうですな。であたくし的な雑感なんすけどね。

取引集中に関してはまあ今は取引集中してセントラルクリアリングシステムみたいなものを作りましょうって各市場もここぞとばかりに誘致活動していると思いますが(^^)、店頭デリバティブって取引を定型化しないと取引所に取引を集中する意味が無いような気がするんですよね。つまり物凄いシロート丸出しの感想なんですけれども、取引をある程度定型化しないで清算集中だけやっても、取引集中によるリスクのネッティング効果があまり出でこなくて、結局のところ取引所が莫大なカウンターパーティーリスクを引き受ける結果になって却ってストレス時にややこしい事になるような気がするんですけれども、おじちゃん素人だから良くわかんない。まあそれに取引定型化しちゃうと今度は使い勝手が悪くなりますからにゃあ。

で、フェイル慣行の話はまあ日本の例で出てくるほうで軽く参ります。


○ということで日本の例ですが

『これに対し、わが国の国債市場やクレジット市場が相対的に安定していたことは、前に申し述べたとおりです。こうした背景には、今回の金融危機においては、90年代に金融危機を経験したわが国の金融システムが、米欧の金融システムに比べ相対的に頑健であったことが挙げられます。』

とか言われますと何か微妙にはあそうですか感が漂いますがそれはそれとして。

『また、国債の決済においても、DVP決済への移行により元本取りはぐれリスクは回避されました。さらに、国債の清算機関であるJGBCC(Japan Government Bond Clearing Corporation)が、セントラル・カウンターパーティとして、取引当事者の間に入って双方の債務を引き受け、資金・証券決済の履行を保証しました。それにより国債流通市場全体でみた決済リスクは抑制され、国債決済においてデフォルトが市場全体に連鎖的に広がる事態が回避されました。』

まあ途中では混乱しましたが最終的にはJGBCCがあって良かったねという感じでしたな。

『わが国の金融資本市場において、このように非常に深刻な事態が回避されたことは素直に歓迎すべきことではあります。がこれをもって、わが国の市場インフラが、危機時の市場安定性確保の観点からみて、米欧に比べて十分に整備されていたとは言えるわけではありません。むしろ、今回の金融危機においては、米欧とは異なるわが国固有の課題が改めて浮き彫りになりました。』

で、ここから急に話が我田引水っぽくなってくるのですけどね。

・フェイル慣行を定着させればC/Pリスクが軽減する訳ではないのですが

『具体的には、国債流通市場においては、フェイルが急増するもとで、既存のフェイル慣行が十分に機能せず、国債決済が大きく遅延しました。また、市場参加者の間では、フェイルするリスクを回避するため、新たなレポ取引そのものを手控える動きが広がりました。信用度の高い国債を担保とする有担保取引であるレポ取引は、無担保取引より安全・確実な資金調達手段として、危機時の流動性確保において大きな役割を果たすことが期待されていました。しかし現実には、フェイルの急増等に伴い混乱をきたし、国債レポ市場の流動性が低下しました。』

別にそれはフェイル慣行が機能してもしなくても同じ話で、カウンターパーティーリスクを強く意識するというのは、よーするにフェイルが解決する前に取引相手が飛んだ場合に未決済約定の取引の原状回復のコストが掛かるという話であって、フェイル慣行があってもなくても本質的には変わらない話では無かろうかと。どちらかというとフェイル慣行云々というのは平常取引時における下らないスクイーズだのに対する抑制とか、平常時における取引の円滑化に資する話であって、それは危機に対するデザインではなくて、通常の流通市場円滑化への整備という論点で語られるものではないかと思うのですけれども。

『こうした経験を踏まえて、市場関係者では、フェイル慣行の定着に向けた同慣行の見直しを始め、国債決済期間の短縮によるリスク管理強化などが課題として認識されています。』

ということで、未決済約定を削減するという観点からの証券決済期間の短縮というのはまあ危機対応のデザインとしては判るのですが、フェイル慣行の定着をしてもストレス時にはカウンターパーティーリスクの意識は高まって取引はシュリンクすると思うのですけれどもね。いやまあ決済期間を短縮する為にはフェイルに対する一定のルールあるいは慣行の定着をしないと決済期間短縮が回りませんね、という話からフェイル慣行の定着がどうのこうのというのなら判りますが、いきなり途中を飛ばして「フェイル慣行が定着すればカウンターパーティーリスクが軽減」というのは論議として如何なものかと。


・フェイル慣行云々は日証協WGだけでは正直荷が重いと思うが(中の人はご苦労様です)

『具体的には、フェイル慣行の定着に向けた見直しについて、日本証券業協会のワーキング・グループにおいて検討が行われ、本年11月より、フェイルチャージの導入などの見直しが実施される予定です。今回の見直しにより、これまでフェイルの容認に慎重であったと言われる最終投資家側で、フェイルについての理解が広く浸透し、実務上フェイルに対応可能な事務処理体制が整備されることが大変重要です。今後、フェイル慣行の定着が進み、平時の流動性のみならず、ストレス時においても市場の流動性を維持または早期に回復する環境が整備され、わが国レポ市場の安定性が強化されることを期待しています。』

現状ではフェイルに関する事務的負担を業者サイドが一方的に負担しているというか被っているような状況ですので、まあチャージがどうのこうのがこの状況の改善に繋がって頂きたいものではあるのですが、結局のところこの話って業者マターというよりは投資家マターの話であって、まあ正直本件に関して日証協がWG作ってどうのこうのっていうのはカワイソスと思いますです。

事務処理体制はもとより、投資家サイドの会計制度の問題もありますし、じゃあ事務的にフェイルに対応できるという話と、投資家がレポ市場への参加がより活発に出来るかという話はまたまた別問題でしょうし、何か上記のようにさらっと言われてしまうと微妙にこう違和感があるなあという感じです。つーか、さっきも申し上げたように、フェイル慣行が定着したからストレス時に市場の流動性に寄与するかというとそれは全く別問題だと思いますので、期待するところがピンボケじゃないのかと思いますけどね。


・国債決済期間の短縮も大事だがその前に短期金利の付く経済にしてください

『例えば、国債のアウトライト取引の場合、米国や英国では約定日の翌日に決済するT+1取引、ドイツでは2日後決済のT+2取引が主流であるのに対し、わが国では、約定日の3日後に決済するT+3取引が標準的な決済期間となっており、米欧より長めであるのが実情です。わが国の決済期間が長めであるのはレポ取引も同様です。そこで市場関係者の間では、国債のアウトライト、レポ取引について、未決済残高を抑制する観点から、決済期間短縮の実現に向けた方策が検討されています。』

つーことでT+1にしようというのがどうもご当局様のイメージっぽいのですが、T+1決済にするにはレポ(つまり資金とモノ)をT+0で回さないといけないのですが、それをするとなりますとリアルタイムの資金および債券ポジションの管理が必要という話になりますけれども、それは業者や決済がやたら多い銀行さんでは対応できる話かもしれませんが、純粋バイサイドでそもそもの資金が一般の皆様からの投資資金で対応している人たちはそんなリアルタイム管理なんぞする必要がないので(基本はバッチ処理でしょ、金はともかくモノの方は)T+0レポだのといわれましてもナンジャソリャ状態。まあ今の状況でT+0レポ対応となると業者さんやら銀行さんでも色々と設備投資が必要になる話だとおもいますが、この鼻くそのような低金利状態で短期資金市場で収益がろくすっぽ上がらないという悲しい状態になっているので、投資する銭をどこから算段してくるのよと存じます次第。

つまりですな、決済制度の改善は改善でやるのはまあよいのですが、そんな事よりも早いことデフレ脱却して短期金利の付くような状況にするほうにエネルギーを割いて頂きたく存じますがなとか身も蓋も無い事を言い出すあたくしなのでありました。


○時間がなくなったのであと少々雑談

・社債市場の活性化ねえ

『3. グローバル競争下での利便性向上に向けた取組み』といういかにもなお題のコーナーから。

『わが国の金融構造を改めてみますと、@企業の資金調達は銀行借入が中心で、米国などに比べて、社債市場の規模は小さいのが実情です。また、このことの裏返しでもありますが、A社債市場における発行体の構成をみると高格付の企業が中心で、投資家についても国内の銀行や生命保険会社が中心であるなど、市場参加者の拡がりが乏しい状況です。さらには、B社債の発行が活発でないもとで、社債流通市場が未整備であるといったことがわが国固有の課題として改めて認識されました。』(機種依存文字は原文ママで勘弁)

『このため、日本証券業協会の「社債市場の活性化に関する懇談会」においては、低格付社債を
含め、社債の発行や投資をしやすい環境を整備し、発行体や投資家のすそ野を拡大するための方策について検討が行われ、本年6月に報告書が公表されています。 』

報告書読んだ気がするが忘れた(汗)。

でね、まあ社債市場がどうのこうのの根本にあるのはローン対比で社債が有利じゃない、というかローンが有利という事でして、これって「ローン金利を上げろ」という主張になると思いますが、そもそも今の資金需要の無い状況では無理な話ですし、大体からしてあんさんがた「成長基盤強化のための資金供給」とかやっている訳でして、そらまあ問題意識として社債市場の活性化がどうのこうのというのは結構ですけれども、政策全体の中での整合性ってどうなのよと思いますけどね。

#つーか、日銀の社債買入が行われた時に「BBBも買え」だのという話が散々出ていたような市場状況で何が市場の活性化なんだかという気もしますしねえ

つまりですな、社債市場活性化の話はそれはそれでまあよいのですが、そんな事よりも早いことデフレ脱却して短期金利の付くような状況にするほうにエネルギーを割いて頂きたく存じますがなとか身も蓋も無い事を言い出すあたくしなのでありました。(あれ?)


・株式市場のインフラ強化ねえ

『この他、株式市場においても、アジアの新興国市場などとの競争が高まる中で、取引の利便性向上に向けた取組みがみられています。具体的には、東京証券取引所において、本年1月に、現物取引を行う新しい売買システム、アローヘッド(arrowhead)が導入されました。』

あ〜、あの大口取引優遇システムですね。

『このほか、東京証券取引所では、主要国では少ない立会い時間における昼休みの廃止など、取引時間の拡大について、市場関係者との意見交換を進めています。』

何かさ、債券先物のシステム変更2回見た時の印象もそうなんですけれども、東証のこの手の取り組みって過度にグローバルスタンダードとやらを意識しすぎで、日本市場が今までの歴史の中から生み出してきた値付けルールによる優位性とかに関する考察というかリスペクトというかが足りないんじゃないかと。板寄せなんて大量の売買をスムーズかつ透明かつ比較的公平に行う優れたシステムだと思うのですが(その他昔の人だったら一般投資家への公平性を担保する注意気配制度とかの話もあると思いますが^^)、とにかくグローバルスタンダードとやらに走り過ぎだと思うのですよねえ。まあシャチョーも国際派を自認するアンディー先生だけにそうなってしまうのかなあとは思うのですが。

と最後は西村副総裁の話と関係ない雑談になった事をお詫びいたしますが賠償はしません。








2010/09/28

お題「久々にBOEネタでどうでしょ」

何か期末の帳尻合わせのように総裁の講演だのペーパーだのがうじゃうじゃ出てきて期末のクソ忙しい中勘弁して欲しいのですけれども(苦笑)。

という事で(どういうことだ)BOE関連で9月のMPC議事要旨あたりから少々。なお期末なのに相場雑談が無い件は気にしないように(汗)。

BOE議事要旨9月8〜9日分はこちら。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1009.pdf

ちなみに8月4〜5日分はこちらですが、あたしゃ何となく読んだのですがネタにしなかったような気がする(汗)。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1008.pdf

主に9月Minuteをネタにするので以下引用は断りがなければ9月Minuteでござる。


○インフレに対するリスク判断

第23パラグラフ以降の『The immediate policy decision』以下の所をまずは最初に読む訳ですが、8月には割とサラサラと流していたインフレに関する部分がいきなり出てくるでござるの巻(ちなみに「Inflation, Inflation, Inflation」ってお題のスピーチが9月22日にSpencer Daleさんから出てるのですが中身はまだ読んでいない)。

『The Committee reviewed how the key risks to the medium-term outlook for inflation had changed over the month.』

ちなみに8月はインフレに関して「5月のインフレレポートよりも一時的に上昇」という評価をしていましたが、そんなに長いスペースを取っているわけではない。

『The first key risk was that the prolonged period of above-target inflation would lead inflation expectations to drift up, making it more costly to bring inflation back to target.』

足元のインフレ率が高い状態を継続することによってインフレ期待が高まってしまうリスクでございますわな。

『The second key risk was that private demand would not grow sufficiently quickly to replace the waning boost from the working out of the stock cycle and public spending, thus increasing the margin of spare capacity in the economy and causing inflation to fall materially below the target in the medium term.』

民間需要へのバトンタッチが出来ずに、生産力の余剰がインフレ率を押し下げてしまうリスクという下方のリスクですわな。

で、このリスクに対する評価ですが、最初のリスクに関しては「給与の伸びが抑制されている」「サーベイなどによると一般のインフレ期待は安定している」ということで、「この1か月でリスクに変化は無い」という結論になってますな。第24パラグラフです。

『In relation to the first risk, CPI inflation had remained unchanged at 3.1% during August, although pay growth measures had remained subdued. Most indicators of inflation expectations were broadly unchanged. Overall, the Committee judged that the upside risk to inflation expectations, and so the inflation outlook, remained but had not changed materially over the month.』

で、2番目のほうのリスクに関しては年後半の民間需要の見通しは概ねバランスしているという話のようですな。ということで第25パラグラフ。

『With regard to the second risk, developments over the month were on balance consistent with a reduction in growth prospects for the second half of 2010. In the latest vintage of ONS data, private sector final demand had been broadly flat during the first half of the year as a whole. Instead, growth had been accounted for by contributions from stockbuilding and public expenditure, both of which would fall back in due course. Some indicators also suggested that service sector output growth could weaken during the second half of the year. There had, however, been more promising information about the strength of consumption in the third quarter.』

ということで結論はリスクはバランスと言う事なのですが、んじゃあ何でこんな話がいきなり出てくるかといいマスト、物価に関する委員会の検討部分に該当する第19パラグラフの所にこんなのがあるんですよ。

『Near-term prospects for inflation remained unusually uncertain and sensitive to the impact of a number of factors whose impact was difficult to evaluate accurately.』

unusually uncertainってどっかで聞いた台詞ですが(^^)、この要因はその後に書いてありますけれども、VATの引き上げとか、小麦価格の上昇とか、ここまでのポンド安の影響とかエネルギー価格の影響とかを並べています。ちなみに8月MPC議事要旨でもまあこの辺に関してはああでもないこうでもないという話がありまして。

『The Committee could not be sure of the extent to which inflation would moderate. Businesses’costs and prices depended on the degree of spare capacity, both within companies and in the labour market, and therefore in part on the strength of demand.』(これは8月MPC議事要旨第28パラグラフ)

この後要因に関してああでもないこうでもないと書いてあるのですが、それに関しての議論がさっきの部分という感じになっています。


○海外景気とか金利動向とか

第26パラグラフは海外経済の話ですが、手抜きで引用を割愛しますが、海外経済に関しては米国が弱いけどユーロは予想より強く、先行き見通しは上下共に不確実という話をしています。

で、第27パラグラフですが、世界的な金利低下に関して言及(これは最初の部分の金融市場の状況に関する委員会の検討部分でああでもないこうでもないという話をしていますが、欧州や米国の成長及びインフレの下方見直しによるものと、将来の政策金利パスの下方シフトという話をしています)してまして、また、足元で英国の金融機関のファンディング状況が改善している事が、英国におけるクレジット市場環境の改善に繋がるという「ほほー」な指摘も。

『International short and medium-term interest rates had declined substantially over the month. Those falls, insofar as they had reflected revised views about the future course of monetary policy, would be likely to stimulate activity at home and overseas. Moreover, the external financing raised by UK banks during August, and over the year as a whole, would contribute to the necessary restructuring of their balance sheets. That restructuring, which would take a long time to complete, was a pre-condition for an eventual normalisation in credit conditions.』


○景気に関するリスクは若干下方&量的緩和の「量」の話はいずこへ

第28パラグラフから。

『Committee members differed in their interpretation of these developments for the balance of risks to activity and so inflation in the medium term.』

ということですが、次にあるように多くのメンバー(なのかな)はリスクはあまり変化ないという話なのですが。

『A number of members thought there had been either a slight reduction or little change to this risk, with weaker news about the prospects for activity during 2010 H2 and the boost from lower market interest rates acting in opposite directions.』

ここでお洒落なのは、金融面からの景気への効果というパスに関連して「市場金利の低下」が景気押し上げに働くという話をしているのですが、えーっとBOE様の量的緩和で景気の押し上げってえ話を元々してませんでしたっけというのが味わいがあると思うのですよね。「我々の実施している政策は量的緩和政策で米国や日本のやっている政策と違うんですよ(キリッ)」としてわざわざ「Quantitative Easing Explained」なんてコーナーまで作ってQuantitativeの話をしていたはずなんですが、結局マネタリーの話ではなくて金利パスによる政策効果の話になっているのはもう何と申しますか大変に味わいのある話で、昨今ではFRBも市場金利の低下効果でどうのこうのという話をしていますが、結局そういうことになるんですよねというのは実にお洒落。

でですな、金利低下の要因が(一々引用しませんが)先ほどのように成長や物価の期待に関する部分に加えて「政策金利の将来のパスの下方シフト」によるものという話であれば、実は時間軸効果が一番効いているのではないかという話にもなるのでありまして、そうなると実は日銀のかつての量的緩和+時間軸が一番無難に効く政策だったんじゃねえのというような気がしてくるのですが気のせいでしょうかねえ(^^)。

で、話を戻して他のメンバー(複数だから数人?)は下方リスク拡大とな。

『Other members thought that recent developments indicated that the headwinds to a recovery in private sector demand in the United Kingdom and overseas were somewhat stronger than previously thought, and that the downside risks to activity had increased.』

おまけにそのうちの1名はこの下方リスク顕在化局面において足元の生産復元の反動が出るリスクを指摘と。

『One member was also concerned that the risk of an adverse hit to the supply capacity of the economy had increased in recent months. That would occur if a decline in growth during the second half of the year prompted companies, which had been holding on to underutilised resources in anticipation of a faster recovery in activity, to shed more labour and scrap more capital.』


○今後の金融政策のアクションに関連する部分をどう読むのか教えてエロイ人

ということで、インフレのリスクは上下あるという話(でも目先は上の方が現実的にありそうなリスク(VAT上げとか商品価格上昇とかポンド安の影響とか見えている話ですからね)で、生産余剰がインフレを抑制ってのは前からずーっと話をしていて全然そうならないという気がするんですが)なのですが、一方で上記にあるように景気に関しては下振れリスクの方が増えている感じになっていますが第29パラグラフの結論部分が微妙に謎なので英語とセントラルバンキングが得意な本石町日記先生教えて下さいませ(図々しいですかそうですか)。

『On balance, most members thought that the current level of Bank Rate and stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves remained appropriate to balance the risks to the inflation outlook in the medium term.』

ということで金融政策は現状維持(1名(Andrew Sentanceさん)がいつものように反対してますが)という話で殆どのメンバーが一致しているのですが。

『But both key risks were substantial, and these members stood ready to respond in either direction as the balance of risks evolved.』

上下のリスクはかなり大きく、そのリスクが顕在化した場合には適切な行動をどちらの方向にもとる必要があるという話ですわな。

『For some of those members, the probability that further action would become necessary to stimulate the economy and keep inflation on track to hit the target in the medium term had increased.』

ということで、委員の中では「将来の政策アクションは景気を刺激しつつインフレを中期的にターゲット水準に持っていく必要がある可能性が高まっている」とか何とか読めるのですが、さてこの「keep inflation on track to hit the target in the medium term」って所が、ここまでの議論の流れを見ると、「景気を刺激しながら物価上昇は抑制するという政策が必要になってきている」という風にあたくし的には読めてしまうのですが、そんな器用な政策をとるとなるとこれまた大変だなあとか思うのですが、これは本当はどう訳せばよいのか教えてエロイ人!!


で、後は余談ですけれども。

○資産価格の相互関連が高まっているという指摘

金融市場に関する検討部分の第6パラグラフに面白い指摘が。

『The Committee noted that asset price movements remained more highly correlated than usual, suggesting that market participants viewed individual asset returns as remaining unusually dependent upon global economic developments.』

資産価格が通常よりも相関していて、それは個別資産の価格が世界的な経済の状況に通常より影響されやすいという市場参加者の見方をしめしている事を示唆するとな。

『This heightened correlation had been associated with an increased incidence of short-lived, generalised asset price rallies and declines. The transitory nature of some of these changes provided grounds for being cautious about drawing firm signals from monthly financial market developments.』

ほほー。


○マネタリーと成長の関連は不確かとな

第13パラグラフから。前半は2Qの名目GDPが+1.7%とかGDPのレベルが金融危機前のピーク水準に回復したとかいう話がありますが、その後半部分が味わいがございまして。

『It remained unusually difficult to identify trends in nominal demand from the latest monetary aggregates, given higher-than-normal uncertainty about the seasonal pattern of some financial companies’ money holdings. Household money balances had continued to grow slowly, although there had been some pickup in the growth of private non-financial companies’ money balances.』

まあそもそも足元のマネー拡大に季節要因があったり一時的な要因らしきものがあったりするので計測しにくいっちゅうのもあるけれどもという話はしてますが、今回のMPCでも成長とか景気刺激に関連してマネーの量的な部分に関する効果という話はすっかりスルー(まあ実は8月MPCでも華麗にスルーしているのですけれども)しているのが中々こう味わいの深いものを感じる次第であります。

#と言う訳で完全にあたくしの趣味でBOEのネタでございましたとさ









2010/09/27

お題「宮尾審議委員会見とかその他少々とか」

株高速取引の規制論がどうのこうのとか出ているようですが、高速取引に対応して取引システムを変更した東証プギャーという感じでございますな。何でも世界に追随しようとして日本の誇る大口売買執行が効率的に実施できて流動性向上に寄与する板寄せの回数まで減らそうとする東証って正直アホジャネーノと思いますけどねえ。

という悪態はともかくまずは宮尾審議委員会見から。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1009c.pdf

○だから当座預金残高とリンクさせた質問をするなと

非不胎化介入がどうのこうのって質問を延々としているアホウが一匹(なのかどうか知らんが)おりましてですな、「非不胎化介入」というのが「自国通貨売り介入+金融緩和のセット」という意味で言うのならともかく、当座預金残高と直接にリンクする議論は1ミリも意味が無い訳で(ある程度以上の超過準備を恒常的に放置した場合には、銀行間翌日物金利は預金ファシリティ金利まで低下するので、政策誘導目標金利と預金ファシリティ金利の間に差がある場合は金利政策のディレクティブ違反になるという理屈です、何度も書いてるけど)すが、先般の介入後の非不胎化がどうのこうのという話ってどこからどう見ても当座預金残高に直接リンクさせた話が非常に多く、一般的にはそういう理解に相変わらずなっていますなという所でして、今回もこんなアホウな質問がありますので晒し上げ。

『(問) 今月15日に政府が円売り介入をしました。その後、日銀の金融政策も随分注目されたわけですが、当座預金の残高は15〜16日は15兆円程度でしたが、介入が行われた2日後の17日には17兆円、昨日21日は19.4兆円と顕著に増加しています。まず、1点目ですが、これは介入で放出された資金を日銀が吸収せずに放置する、いわゆる非不胎化を行っているのかどうかということです。』

いきなりこれですよorz

『2点目は、その質問へのお答え如何でもありますが、いま日銀が行っていることは、白川総裁も本日掲載の新聞のインタビューで「国民に対するメッセージ」というようなことを述べていますが、足もとで当座預金残高が増えているということは、事実上の金融緩和なのでしょうか。』

つまり例えば期末だとか大量税揚げな、インターバンクやレポ市場の資金需給が逼迫しやすい時に当座預金残高を増やすのは全部金融緩和だと仰りたい訳ですね。

『最後に3点目ですが、今後政府が再び介入する可能性は十分あると思われますが、介入が仮に行われた場合に、今回同様日銀はさらに当預残高を増やしていく考えがあるのでしょうか。』

まあ何というか頭の悪い質問ですが、宮尾さんの答え。

『(答) まず第1点目、為替介入後の動きですが、ご承知のとおり金融市場では、銀行券の受け払い、また様々な財政資金の動きを反映して、日々膨大な額の資金が供給されたり引き揚げられたりしています。為替介入によって供給された資金の動きも、こうした市場全体における資金の流れの一部をなすということになります。日本銀行がこれまで行っていることは、政策金利を0.1%まで引き下げているということ、つい先日の8月末に6か月物の固定金利オペを新たに導入して資金供給を大幅に拡大するといったことを通じて、強力な金融緩和を推進しているということです。その中で、介入資金も含む様々な資金の流れも利用しながら、金融市場に潤沢な資金供給を行っていく方針だということです。これをお答えとさせて頂きます。』

この「介入資金を利用しながら」というのはまあリップサービスなお答えですが、まあこうとでも答えるしか無いですわな。本当に言うなら「金融政策決定会合のディレクティブを百万回読んで資金需給と金融調節に関する実務的な部分の勉強をしてから出直してこい」という所でしょうが。

『2点目のご質問に関しても同様ですが、今申し上げたような政策を強力に推進していくことを通じて潤沢な資金供給を行っていく、そういうメッセージが総裁からも発せられているかと思いますが、そのようにご理解頂ければと思います。』

『3点目の今後政府の為替介入があればどうなるのかという点に関しましても、金融市場に潤沢な資金供給を行っていく、現在推進している強力な金融緩和を引き続き行っていくということです。』

質問者の頭が甚だ悪いので答えようが無いというのは判りますが、質問者は更に頭の悪い質問をするので引用は続く。

『(問) すみませんが、全くお答え頂いていないというふうに受け止めています。端的に、ここ数日当座預金残高が増えているのは日銀が非不胎化を行っているのかどうかという質問に改めてお答え頂きたいと思います。非不胎化か不胎化か分からないということも含めて、これはYESかNOかでお答え頂ける問題だと思います。また、もう1つの事実上の金融緩和の強化なのかどうかという点についても、市場がはっきり知りたがっているわけなので、明確にお答え頂きたいと思います。』

まあ介入直後だったら別ですが、一巡した時点でまだこんな質問をしているのは何というかもう勘弁してという感じですが、審議委員の記者会見というリソースをこのような下らない質問で浪費するのは大きく言えば国民的損失でもありますので、この手のアホウを排除する意味でも日銀記者クラブおよび日銀広報様におかれましては、BOE会見に倣いまして会見要旨に質問者の名前を入れた方が宜しいのではないかと斯様思うのですがどうでしょうかねえ。

『(答) 繰り返しのお答えになって恐縮ですが、私どもの政策決定として行っているのは、潤沢な資金供給を行っていくということであり、先月には6か月物の固定金利オペを新たに導入して金融緩和を一段と強化したわけです。そういうことですので、不胎化かあるいは非不胎化かということに関しては、先ほど申し上げましたとおり介入資金も含めた様々な資金の流れがある中で、それも利用しながら潤沢な資金供給、強力な金融緩和を推進していくということです。』

本当は「だから当座預金残高の一時的な増減で不胎化とか非不胎化とか議論するのは意味が無いから質問するなアホウ」と言いたい所でしょうが、まあ敢えてその辺は非不胎化介入っぽい演技をしている面もあるので話をきっちり出来ないというのもあるのが質疑応答に微妙なテイストを醸し出しております。

『(問) 今の1点目の質問に対するお答えについてですが、非不胎化か不胎化かは言えないということだと受け取ってよろしいのでしょうか。』

『(答) 私が申し上げているのは、非不胎化か不胎化かというような論点で私どもは考えているのではなく、強力な金融緩和を推進して市場に潤沢な資金供給を行っていくことに尽きる、ということです。』

当座預金残高推移と直接リンクした形で非不胎化とか不胎化という話をするのは論点としてずれとるという事で、もしこの質問者が質問をするのであれば、「円売り介入の効果を高める為に追加金融緩和を行い、政府・日銀が一体となって円高対策を行ってデフレ脱却を推進するという用意はあるのでしょうか」とでも質問すべきであって、日々のブレの範囲内にある当座預金残高を捕まえて緩和だ引き締めだとか言うのはとりあえずてめえは勉強してから会見に参加しやがれという感じで、可及的速やかに義務教育からやり直して頂きたく存じます次第です。


○米国経済の下振れリスク顕在化の判断は?

以下はまともな質問の引用を。

『(問) 本日の懇談会での挨拶でも、米国経済の低成長が長期化することを下振れリスクとして注視する必要があるという話がありましたが、どのような場面でリスクの顕在化を判断していくことになるのでしょうか。(後半割愛)』

『(答) 米国経済の、やや長い目で見た低成長のリスクをどのような場面で判断するかという質問ですが、足もと、今回お示したような指標等を分析した上で、こうしたリスクが高まっているという判断をしています。このリスクがどのような局面で顕在化するのかについては、今、事前にこのタイミングで申し上げることはできません。今後、入ってくる情報に基づいて、適切なかたちで判断していくということに尽きます。(後半割愛)』

まあここは特に答えが無いのはちょっと残念。雇用なのか物価なのかそれとも他の指標なのか何でも良いのですが、何かあるかなあと期待するところですけれども。


○量的緩和政策に関して

『(問) 今の質問とも関連します。必要な状況になれば適時適切に判断をするということですが、宮尾委員の就任記者会見で、量的緩和についての評価は明確になっていないというコメントがあったと思います。また、以前から言われている金融システム、流動性不安がある時には量的緩和やゼロ金利は効果があったということもお認めになっていたかと思いますが、委員の、政策オプションとしての量的緩和政策に対する評価、また先行きの選択肢に量的緩和政策が入るのか入らないのかについてお伺いいたします。』

『(答) 先行きの政策の選択肢に関する質問なので、今申し上げられることは、あらゆる手段を排除することなく選択肢に入れて、その効果・副作用を入念に点検していくということです。効果・副作用は、その時々の経済・物価の情勢によって変わってくるので、量的緩和政策に関する評価についても、かつての評価と現時点における評価は当然変わり得るものであると考えています。いずれにせよ、経済・物価情勢に応じて、効果・副作用を入念に精査・検討して金融政策を実施したいと考えています。』

「効果・副作用を入念に精査・検討」ってのが(実は他のところでもこのフレーズがあるのですが)まあ何ですが、「量的緩和政策に関する評価についても、かつての評価と現時点における評価は当然変わり得るものである」ということで、政策オプションとして別に排除する訳ではないという事ですな。


○長期国債買入増額に関して

『(問) 海江田経財相の就任会見で、日銀法改正と、長期国債買い入れ増額──これは銀行券ルールにつながる話でもありますが──について、前向きとも受け取れる発言がありましたが、この点について日銀としてどう対応すべきかについて委員の見解をお聞かせ下さい。』

まあ銀行券ルールは抵触しそうになったらまた考えれば良いという話のような気がせんでもないですが、まあそれはそれとして宮尾さんの答え。

『(答)(前半割愛)長期国債の買い入れ増額についても、おそらく今議論されている将来の政策の選択肢の一つかと思われますが、繰り返しになりますけれども、将来の政策オプションについては、予めどれかを排除する、あるいはどれかを念頭に置くということはせずに、全ての選択肢について効果・副作用を入念に検討した上で、適切に判断していくということになると思います。』

ということで、政策オプションとして無い訳ではないというのは判ります。


○全体的にはあんまりハトな話をしている訳でもなく中立的なのですが・・・・

宮尾さんの会見ですけれども、講演内容もそうなのですが、会見でも景気に関する見方は下振れリスク意識と言いつつもそんなに下を見ている感じもしないというイメージです。ただまあ量的緩和政策や長期国債買入増額に関しても排除しないというだけではなく、量的緩和に関しては「評価は変わり得る」というような言い方で、まあ含みを持たせるような言い方をしてまして、その辺りに関してはサービスなんだかやる気があるんだか知りませんが、木で鼻をくくったような対応はしていないのですなあという感じです。

つーことで、宮尾さんの場合はヘッドラインだけ見てタカかハトかとか考えてるとちょっと判断間違えるかもしれないなあという気がする人だというのは把握しました(^^)。


#質問まで引用したら長くなってしまってどうもすいません。


以下他の話題ですが、別件でブルームバーグとかロイターを見たらこんなニュースがあったので軽く悪態。

○だからもうちょっと物の言い方ちゅうのがあってだなあ(白川総裁)

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aFBNgrhjyW3A
白川日銀総裁:日銀法を強く擁護、インフレ目標より先進的(Update2)

『「現在の金融政策の枠組みはアカウンタビリティの向上というインフレーション・ターゲティングの長所を最大限取り込むと同時に、その欠点とみなされている部分に対応したものだ」と指摘。日銀としては望ましい金融政策運営の枠組みについては今後とも検討を行っていく方針だとしながらも、現在の枠組みは「より進化した枠組みであると自負している」と述べた。』(上記URLより)

・・・・・・いやまあ言いたい事は判りますし、単純なターゲッティングでは枠組みとして回らなくなっている(そういえばBOEの議事要旨が中々味わいがあったので明日にでも^^)のはその通りなのですが、とりあえずCPIが延々とマイナス推移してデフレ均衡状態になっている状態というのが目の前にあるのに先進的もへったくれも無い訳であって、そういうのを一般的には「引かれ物の小唄」と言うのではないかと。


発言のどうでもいい所を切り取るのが得意なロイターにかかるとこの有様。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17371620100926
国債買い入れ増は長期金利上昇につながるリスク=日銀総裁

・・・・・・また発言の中のどうでもいい所を切り取ってヘッドラインにするとかどうなんでしょと思いますが、一方で宮尾審議委員は上記にあるように長期国債買入増額も政策手段として排除しないという話をしている訳で、まあ麿のご趣味なのでしょうけれども、何も最初から国債買入増額を排除するような言い方をしなきゃ良いのにと思う訳ですよね。

結局のところ、国債買入増額の可能性だってある訳ですし、こうやってダメ出しをした後に「やっぱりやります」ってなっちゃうと、ダメ出しをしている時点でまず「日銀は緩和に消極的」という印象を与えて折角実施している金融緩和政策の効果を減殺することになりますし、「やっぱりやります」となった瞬間に今までの発言はナンダッタンダという事になって、信認問題になるのでありまして、そーゆー意味からもこの手の政策オプションに対するダメ出し発言は慎重に行うべきだと思うのですけれどもねえ。せめてメリットとデメリットを併記するような言い方をすれば良いと思うのに・・・・・


で、白川総裁と言えば金曜はあまりと言えばあまりな報道があったので悪態。

○幾らなんでも市場のポジショントークな根拠レスなルーマーを記事にするんなよ

またロイターか!という感じなんですけどね。
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPnTK044465520100924
東京外為市場・15時=ドル84円後半、介入観測で一時85.40円へ急伸

『さらに、この日の市場では介入観測に加え、白川日銀総裁が辞任するとの噂が広がり、ファンド勢を中心とするドル買い/円売りにつながったとの指摘もある。』(上記URLより)

ロイターの記事を見てブルームバーグが「ロイターがこう言っていた」報道をするのがチャーミング。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=asBPhnoOXIVY
ファンド勢がドル買い、日銀総裁辞職の可能性のうわさも−ロイター

いやまあウワサは良いんですけど、どう見たって上記のような講演を相変わらず空気を読まずにするような白川さんが総裁を自分から辞めるようなタマじゃないでしょ。日銀の組織を守るために自分の首が必要ってのなら別ですが、現状でうっかり辞めでもしようものなら逆に日銀を守れなくなるでしょうから、まあ普通に考えて辞任とか有り得ない位はロイターで取材やってるなら判るでしょとか思う訳ですし、大体からして債券市場だの短期金融市場じゃなくて為替市場で流れているウワサって所でガセ成分満載のポジショントーク(先月は何回臨時会合のデマが為替市場で流れたかと小一時間)なのは見え見えなのに、そういうルーマーを一々報道するとかロイターはちょっと市場に関わる報道を行うに当たっての姿勢に問題があると申し上げざるを得ませんわな。自分の所の報道で相場が動いたら勝ちとか間違った事を考えているのではないかと危惧される所ではございます。


ということで、何か月曜の朝から悪態大会になってしまいましたが、別に月曜からテンションが高い訳では全くございませんので念の為(^^)。








2010/09/24

お題「宮尾審議委員講演」

期末らしく色々なペーパーが出てたりしてますし、おまけに総裁や西村副総裁の講演も積み残している訳ですが(汗)、とりあえず宮尾さんの金融経済懇談会デビューなのでそちらから。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1009e.pdf

○海外経済に関して

現状認識の部分はスルー致しまして先行きの部分から。

『次に海外経済の先行きについて簡単に纏めますと、中国を中心とした新興国経済の景気減速が暫く続くとみられるほか、米国経済についても、そうした新興国経済の動きを背景とした輸出の減速や、財政による景気刺激効果の減衰から、足もとの減速傾向が続くものとみています。その後、2011年以降は、新興国経済の成長率が足もとの減速から再び高まるものとみられ、それに支えられる形で米欧経済も緩やかな回復が続くものとみています。』

というのはまあ展望レポートなどの話と同じですな。

『しかしながら、ここへ来て、下振れリスクに、より注意をしなければならない状況になってきていると考えています。その主な要因は、米国経済がやや長期の低成長に陥るリスクが高まっているということです。』

ほほう、米国が長期の低成長に陥るとな。で、具体的な説明は割愛してその結論部分。

『こうした一連の経済指標をみますと、米国の家計部門においては、住宅バブルの中で住宅を購入した人々が債務の返済に追われ、また失業者はなかなか職に就けず、その結果として消費に対して非常に慎重になっている姿が窺われます。また、こうした状況を眺め、企業部門も先行きの景気拡大に確信が持てないため、収益が改善しているにも拘らず雇用や更なる設備投資に踏み切れないでいる様子がみてとれます。そして、これが更に家計部門の消費行動の回復を遅らせるリスクが高まっているとみています。』

バランスシート調整と労働市場の調整によって低成長化するリスクとな。

『さらに、これまで米国経済の強みとされてきた部分にも変化が出てきている可能性があります。あまり注目されない指標かもしれませんが、私は米国の労働生産性の推移に着目しています。』

で、またその説明部分は割愛しますが、結論部分はこうなっています。

『これまで米国経済の強みは技術革新を生み出す力と、それを背景とした生産性の高さにあると認識されてきましたが、実際には、2009年の一時期を除くと、ここ数年にわたり、やや長い目でみた成長力が伸び悩んでいる可能性があるということです。こうした中で、8月の半ばには米国債の10年物金利が2%台半ばまで低下しましたが、これも一時的な景気減速を織り込んだというよりも、やや長い目でみた低成長とそれに伴う低インフレを織り込んだ動きという側面もあるのかもしれません。』

つーことで、構造的に米国経済が低成長型に陥るリスクがありますよというお話で、宮尾さんはこの米国経済の過剰調整の長期化リスクと構造変化のリスクの話を強調しています(というか先行きリスクの説明の部分は全部米国の話)というのが特徴的でございますな。


○日本経済に関して

『市場では、米国経済の先行きや欧州各国の財政・経済情勢を巡る懸念などを背景として、リスク回避的に円を買う動きが進んでいるほか、それを材料の一つとして、良好な企業収益見通しにもかかわらず株価が軟調な地合いにあります。こうした市場環境が継続すれば企業収益やマインド面に与える影響が小さくないわけで、その影響が懸念されるわけでありますが、現時点では、自律的回復のメカニズムは途切れていないものと判断されるところです。』

ほほう自律的回復のメカニズムとな。割とこの辺りに関しては(さっきの海外もそうですけど)展望レポートのベースを普通に話してますなあという感じで(まあ当たり前っちゃあ当たり前ですが)無難に纏めてますにゃ。

で、先行きですけれどもね。

『最後に、わが国の景気の先行きについてですが、先ほど申し上げた海外経済の一時的な減速と、国内の需要刺激策の効果の減衰などから一時的に改善の動きが弱まるものの、その後は、中国をはじめとする新興国経済の高成長を背景とした輸出の拡大、及び企業収益の改善を起点とした設備投資や個人消費の回復などを通じて自律的な回復過程を進んでいくものと思われます。』

ということで自律的な回復とな、という感じですがリスク要因に関してですが。

『こうしたシナリオの修正を余儀なくされるような下振れリスクとしては、先ほども申し上げた通り、米国経済が、やや長い目でみた低成長に陥るリスクが高まっている点が挙げられます。このリスクが顕在化した場合には、グローバル化が進展しているもとで世界経済全体の見通しが下振れし、それが輸出の減少などの形でわが国経済にも波及してくることになります。』

ほほう。

『こうした動きの中ではリスク回避志向が高まり易くなり、その結果として、企業の設備投資や新規事業に対する意欲、家計の消費意欲が抑制されるという、いわゆるマインドの悪化が起こり、経済の停滞が続くという状況に陥る可能性があります。』

という話をしているのですが、新興国に関しては結構楽観っぽいです。

『こうした下振れリスクの一方で、新興国経済が持つ成長力の力強さには目を見張るものがあります。足もとは中国経済の減速を主因に、周辺国にも景気減速感が一部で出てきていますが、その結果として、急激な経済の過熱がかえって成長の持続性を失わせることになるリスクが遠のいているとみることもできます。むしろ一定期間のスピード調整を経て、高めの成長がより長期間、安定して継続する可能性があります。』

その結果ですな。

『このことはアジアとの結びつきを強める日本経済の先行き見通しにとって上振れ要因となり、米国経済の低成長リスクが顕現化した場合でも、その影響を軽減してくれる可能性があります。』

という事のようなのですが、この辺りは結構楽観的ジャネーノとあたくし的には思う次第でして、米国がコケるような時に新興国が無事に順調成長っていうのもちと虫の良い話で、そーゆーデカップリングみたいなのは難しいんジャネーノと思うのですけどどうでしょうかねえ。

ということで、景気認識に関しては「下振れリスク」を意識しつつも、日本経済よりも米国の下振れの方がクローズアップされている感じで、何となく微妙っちゃあ微妙なテイストを醸し出しています。

とは言いましても、この講演(挨拶)の構成を見ると前半で延々と米国の下振れに関して構造的な面への考察を加えながら説明しているので、最後にしらっと「自律的回復でアジアと共にデカップリングですよ」という話をしてもあまり印象として目立たない(ベンダーのヘッドラインでもそんな感じだったかなあと思います)という感じでして、まあ見せ方を工夫してますなあと思うのでした(^^)。


○円高の影響に関する項目を設置しているのですが・・・・

経済見通しなどに関する部分で『(4)為替相場のわが国経済への影響』ってわざわざ項目を作っているのがチャーミングというものです。

『円高の影響については、改めて言うまでもありませんが、輸出企業を中心に収益の圧迫要因となり、現在も厳しい経営を余儀なくされている企業も少なくないものと思われます。また、こうした状況は、株価にも影響を与えていることから、わが国経済の下振れリスクの一つとして、実体経済への影響を注視しているところです。』

ほほう。

『一方、輸入企業にとってみれば、円高の進行は収益の押し上げ要因となります。また、海外企業の買収を通じて事業拡大などを考えている企業にとっては追い風となります。そうした意味では、バランスよくみることも重要ではないでしょうか。』

おや?

『ここで、「バランス」の観点から一つの事例をご紹介します。貿易に使用される決済通貨について通関統計を基に調べると、10年前の2000年下期と足もとの2010年上期とでは、輸出決済に使用されるドルのウェイトは52.4%から48.6%に小幅低下している一方、輸入決済については70%強で殆ど変化がありません。しかしながら、ドル建て決済の貿易額をみると、ネット輸入超額が大幅に拡大しています。これは、輸出額の大きい米国との取引が減少する一方、成長著しいアジアとの取引は輸出入ともに増加、中東地域等との間では輸入取引が大幅に増加しているためです。』

ほうほう。

『このようにドル建て輸入超額が拡大していることにより、以前と比べると円高によるマイナスの影響を受け難い決済・貿易構造になってきている可能性があります。』

ということで、項目を設置している割には実は「円高の影響は皆様が鉦や太鼓で大騒ぎするほどそんなに大きくないんですよ」という話になっているのが微妙なテイストを醸し出しております。円高のマインドに与える影響の話がしらーっとスルー気味なのが少々気になるのですけれどもねえ。


○金融政策に関してとあたくしの感想

金融政策に関しては基本的にそんなに変わった話をしている訳でもないので、まあ無難な内容です。

『もっとも、米国経済を中心に先行きを巡る不確実性が高まっている中で、わが国経済の下振れリスクに対する警戒を解くことは出来ません。日本銀行としては、わが国経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識しています。そうした認識のもと、これまでも強力な金融緩和の推進等を進めてきたわけでありますが、引続き先行きの経済・物価動向をより注意深く点検し、

必要と判断される場合には適時適切に対応して行く所存です。』

まあこうとしか言いようがありませんわな。で、成長基盤強化支援の資金供給に関する説明をしていますが、まあその辺は割愛と言う事で。


てな感じで読んでみたのですが、下振れ意識している割にはどちらかと言えばその下振れはフローの問題よりも構造問題に関して意識しているという感じでして、結論としてハトとかタカとか色をつけにくい感じがしますなあというのがあたくし的な印象でございましたです。

#積み残しネタだらけで恐縮ですが本日はまあサラサラとこんな感じで





2010/09/22

お題「FOMC声明文とかその他関連雑談」

ということで寝起きにヘロヘロとFOMCを読んでみたのでその辺から。

今回声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100921a.htm

前回声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100810a.htm

○物価の判断を下げてきたのがニュースだと思うのだが

正直モーサテの解説も怪しげで本当に米国市場の反応を正しく報道しているのかよー判らん(ってモーサテがアホとか言う気も若干ありますけれども、そもそも市場の中の人だって「自分の反応」は判っても本当に市場全体が何考えて反応しているのかとか判らないですからね)所でございますが、「追加緩和無し」とか「量的緩和の示唆」というよりも物価に関する文言を大きくいじってきたのがニュースじゃないのかなあと思ったら、さすがにモーサテの解説者も物価に関する部分がサプライズと言ってますな、あたくしと同じじゃの(^^)。

いやね、声明文でいじってくるとしたらあたしゃ労働市場の回復が遅れているというような感じで、景気判断の中で労働市場データの部分をクローズアップして来るのかなあと漠然と予想していたので、物価という直球ストレートを放り投げて来たのは「へ〜」という感じでございますわな。

では第1パラグラフから比較比較。


○景気判断は実はほとんど変わらず、企業投資行動を若干下げて銀行貸出を若干上げる

『Information received since the Federal Open Market Committee met in August indicates that the pace of recovery in output and employment has slowed in recent months. Household spending is increasing gradually, but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit.』(今回)

と言うところは前回と同じ。次の企業投資行動部分が若干判断下げ。

『Business spending on equipment and software is rising, though less rapidly than earlier in the year, while investment in nonresidential structures continues to be weak. Employers remain reluctant to add to payrolls.』(今回)

『Business spending on equipment and software is rising; however, investment in nonresidential structures continues to be weak and employers remain reluctant to add to payrolls. 』(前回)

設備とソフトウェアへの投資が拡大しているという部分の現状判断が若干下がっていますな。企業投資行動の他の部分には変化無し。

『Housing starts are at a depressed level. 』(今回)

ここは前回と同じ。

『Bank lending has continued to contract, but at a reduced rate in recent months. 』(今回)
『Bank lending has continued to contract. 』(前回)

銀行貸出の判断は引き上げています。

『The Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability, although the pace of economic recovery is likely to be modest in the near term.』(今回)

『Nonetheless, the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability, although the pace of economic recovery is likely to be more modest in the near term than had been anticipated.』(前回)

基本的に言ってる事は変わらんのですが、冒頭にあるNonethelessが抜けた意味とは何ぞやという話になるとネイティブじゃないあたくしはさっぱりワカランチ会長でございまする。今回は前回「予想よりも回復ペースが緩やかに」というのが抜けて、単に「緩やかに」という話になった部分だけが違うので、これは特に前回対比で判断をいじっている訳ではないという感じではないかと。


○景気判断は変わらないけれども物価判断を下げてくるとは直球投げてきたでござる

物価に関する第2パラグラフが問題でして、ここの部分って毎度毎度同じような話をしていたのに今回変えたというのはポイントだと思うのだけどね。

『Measures of underlying inflation are currently at levels somewhat below those the Committee judges most consistent, over the longer run, with its mandate to promote maximum employment and price stability. 』(今回)

「currently at levels somewhat below」キターーーー(・∀・)っと。

『With substantial resource slack continuing to restrain cost pressures and longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to remain subdued for some time before rising to levels the Committee considers consistent with its mandate.』(今回)

ということで、「before rising to levels the Committee considers consistent with its mandate」って文言が入ると文章のニュアンスが微妙になる気がするのですけれども、これって「適正と考える水準へ物価上昇率が戻るまでの間少々お時間が掛かります」とか何とかいう話になるのかいな。ただまあ先行きに関してはまだ「デフレ懸念」みたいな話には一応なっていないけれども、ニュアンスはニュアンスとして物価下落懸念という事になるんでしょうかねえ。

前回のはこんな感じです。

『Measures of underlying inflation have trended lower in recent quarters and, with substantial resource slack continuing to restrain cost pressures and longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to be subdued for some time. 』(前回)

つーことで、景気判断を変えない一方で物価判断を下げてくるという器用な事をやっておりますのが今回のまずは思いっきり目についたポイントではございます。


○FEDの保有証券の額をどうのこうのというのがまた復活ですな

第3パラグラフも読んでいて「ふーん」とおもったあたくし。

『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate for an extended period. 』(今回)

というのは前回と同じというか毎回同じと言うか(^^)。

『The Committee also will maintain its existing policy of reinvesting principal payments from its securities holdings.』(今回)

前回決定したMBS償還再投資に関するスタンスを維持して、FEDの保有証券の額を維持しますというのを今回入れました。まあ前回はその決定をしたから兎も角としまして、資産買入プログラムにおける買入が終了してから暫くの間この資産買入関連の文言がスルーされていたのですが、今回より保有証券に関する話が復活ということで、MBSの償還再投資をしたから入ったんですよっちゃあそれまでかも知れませんけれども、ふーんと思ったのでありまする。

しかし何度か書いてますけど(しつこいので)元々資産買入プログラムって市場機能がどうのこうのという話をしていて、最近だと対象商品の信用スプレッドや金利の低下を図るって話をしているのですが、MBSの償還再投資を財務省証券で行うってえのは対象商品の信用スプレッドや金利に関してどう作用するのかねと思いますとこの措置って何ざんしょという気はするざますがまあいっか。


○そんな訳で必要ならば追加緩和とな

第4パラグラフですが、前回の第4パラグラフは「景気サポートと物価安定に資するためにFOMCはMBS償還金を財務省証券に再投資します云々」という話になっていますので、前回分だと第5パラグラフに該当します。

『The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial developments and is prepared to provide additional accommodation if needed to support the economic recovery and to return inflation, over time, to levels consistent with its mandate. 』(今回)

『The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial developments and will employ its policy tools as necessary to promote economic recovery and price stability. 』(前回)

ということで、前回はまあ普通の文言でしたが、今回は「prepared to provide additional accommodation if needed 」キタコレというところでございます。で、何をするのかは当たり前ですが書いてありませんですが、まあ一般的に考えられるのはFEDの資産サイドを拡大するという話(つまり国債買入)でしょうかねえとは思いますけどよー判らん。


○ホーニッグ先生の反対理由が今回微妙に違うでござるの巻

どうでも良いっちゃあどうでも良いですけどマニア的には興味があるので(^^)。

『Voting against the policy was Thomas M. Hoenig, who judged that the economy continues to recover at a moderate pace. 』(今回)
『Voting against the policy was Thomas M. Hoenig, who judges that the economy is recovering modestly, as projected. 』(前回)

何となく今回の方が判断下げている気がするけど、これってどっちのほうが景気判断は上なのか教えて英語圏で生活した事のある人!!!

『Accordingly, he believed that continuing to express the expectation of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period was no longer warranted and will lead to future imbalances that undermine stable long-run growth. 』(今回)

『Accordingly, he believed that continuing to express the expectation of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period was no longer warranted and limits the Committee's ability to adjust policy when needed. 』(前回)

毎度おなじみの「for an extended period 」に対して、前回は「必要な時の政策手段を阻害する惧れ」という反対理由でしたが、今回は「将来における経済不均衡をもたらす」という反対理由になっています。じゃあそれがどういう事かと言いますとまあ良く判らんですけれども(おいおい)前回までは利上げを視野に入れた理由だったのが、今回は「将来の不均衡」という理由になっているので理由としては一歩後退(何のこっちゃ^^)ということでしょう。出口政策云々がああだこうだ言う前のホーニッグ先生の反対理由が「将来の不均衡」でしたので、そーゆー意味では多分反対理由が弱くなっていると思います(^^)。

『In addition, given economic and financial conditions, Mr. Hoenig did not believe that continuing to reinvest principal payments from its securities holdings was required to support the Committee’s policy objectives.』(今回)

『In addition, given economic and financial conditions, Mr. Hoenig did not believe that keeping constant the size of the Federal Reserve's holdings of longer-term securities at their current level was required to support a return to the Committee's policy objectives. 』(前回)

MBSの償還再投資でFEDのバランスシートを維持する事についても引き続き反対を継続していますな。ここの部分は文言的にはちょっと違いますが意味は同じと思われますです。


○ということでFOMC雑感と言うことですが

と引用しているだけで時間がなくなってきましたので(だったらもっと早く起きろというツッコミはしないのがオトナの対応というもんです^^)あとは雑感なんですけれども、今回のFOMC声明文でありゃーと思ったのは先ほども書いたように物価に関する判断を下げてきたところでして、おまけに言えば景気見通しは下げていないという割と器用な事をやっている事ですな。

従来は労働市場の回復の遅れが消費などに影響を与えて景気回復やら物価に悪影響みたいな話をしていたと思うのですが、労働市場に関する判断は特に下げず(と言っても元々あまり強くないのだが)ということで、こうなりますと今後は雇用関連指標よりも物価指標に注目という話になるんでしょうかね、よー判らんが。

でまあ景気判断じゃなくて物価というあるネタで突っ込んでくるので、先行きの追加緩和に関するオプションはやっぱり長期国債の買入拡大という話になるのでしょうかねえとは思いますし、逆に金利引下げ(まあここから下げるには準備預金の付利を下げるという事実上の下げみたいな話をするしかないですけど)に関してはブラードさんのペーパー(そういえば途中まで紹介してその後放置プレイでしたねすいません)じゃないですけれども、「物価上昇しない均衡状態」に嵌ってしまうというような感じでやりにくいような気もせんでもないけれども、気のせいだったらどうもすいません。

ただまあいずれにせよ、FRBは「やるやる詐欺」状態で期待を引っ張って(変に出尽くし感をだしちゃうと長期金利が上がってしまう可能性もありますし)何となく追加緩和期待で株式市場とかを支えて長期金利も上げさせないで、ドルも強くしませんよってなもんでしょうから、まあそれに対してドル円市場の円高を阻止しましょっていう日本はお付き合い大変ですなあという所で。

ま、介入はやりましたので、次は日銀に球があるという感じでしょうし、そらまあ介入と金融緩和をセットにした方が効果はあるでしょう(それを不胎化だの非不胎化だのという用語を持ち出すと日々の金融調節話とゴッチャになって、先般のように無駄に日々の誤差範囲内のオペに注目するという意味不明の話になるので、不胎化という用語を使うのは議論が無駄にループする元ということで使わんで欲しいと存じますがどうでしょうかねえ)というのはござんすが、何せ打つタマが僅少なところでございますので(米国が期待で引っ張っている間にタマを切らしたら試合終了ですから)、演技でもイカサマでもいいから日銀もちったあバーナンキを見習って狸芝居をして期待を引っ張って欲しいもんですが、何せ白川さんですからそれは無理でしょうというのが実に残念無念な所でございます。山口さんの方が狸成分が高そうな気がしますけどね(^^)。

あ、そうそう話は全然違いますが、副大臣人事を見ると菅さんは小沢さんと同じくで政策じゃなくて政局の人ですなあと思うのでして、菅さんで財政再建路線継続とか考えるのはちょっと甘い気がするんですけどね。それに野党だの小沢支持グループが補正大型組めと言っている訳ですから、経済コケた時のてめえの責任回避というポイントから考えた場合、当然ながら補正は大型になりやすくなる(それでコケたら「皆様の意見を取り入れた補正でしたが残念でしたねえ」で済むから)でしょうし、日銀だの財務省なんぞは当然のように売られるでしょと思いますし、特に日銀はまー叩かれ放題ジャマイカと思うんですけど、白川さんあの調子で大丈夫っすかねえというのは懸念するところでございまする。

ということで最後はどうでもいい雑感ですいませんでした。








2010/09/21

お題「市場メモと追い付かないネタ大会」

大本営発表でリセッションが終了していた宣言をしたら株式市場上昇とは大変に素晴らしいマーケットですなあ(棒読み)。

#経済財政と経済産業大臣を小沢支持(鳩山派)に渡すという時点でまあ菅さんが経済政策にやる気が無いのだけは良く判るわな

○超長期がスティープしたりGCが下がったりした件

金曜の長いところは連日のスティープニング。木曜は場中に為替が85円後半から前半に突っかけてみたり、株価が寄り天で微妙に弱そうな感じだったりして、おまけに中期債が妙に強かったりしたのでツイストスティープだったのですが、金曜は普通にベアスティープと相成りました。んでまあ火曜日の引けから比較すると、相場の位置そのものは先物が火曜の引けから74銭高(水曜に74銭上昇して木曜に14銭上昇して金曜に14銭下落)ということでまあ高いのですけれども、よくよく見ると水曜にフラットニングした分を2日でお返しして、火曜の引け対比で言うと超長期に向けてブルスティープしたでござるの巻と相成りました。いやまあそれで普通の反応ですわなという事で。

いやまあだから何なのと言われると困るのですが、水曜の超長期ブルフラットって何だったのよという所ですわな。まー何となくてきとーに考えてみると、非不胎化がどうのこうのとかゆー話で超長期がショート気味(物理的にショートなのと、U/Wという意味でのショートがいると思いますが)だった人が慌てて買い戻してしまい、ショートが駆逐されてしまったら今更1.8%割れの20年を買う人もいなくてフラットニングあっさり終了という所なのでしょうかねえ、よー知らんが。


で、超短い所ですけれども、水曜木曜はGCちゃんが高めで0.125%だの0.13%だのとやらかしていまして、短国のレートも久々に3か月2か月ともに新発の入札が0.11%台に乗ったりしていたのでして、金曜はあたくし「いつもの期末だと普通に当座預金残高を積んでくると思うのだが、今回は非不胎化がどうのこうのとか変に注目する人がいるからあんまり威勢良く当座預金残高積まないのではないか」(金曜はまだ非不胎化ネタが煩かったのでそういうはっきりした書き方はしなかったのですが、金曜になったらすっかり非不胎化のネタが減ってきたので今日は露骨に書く^^)って思ったりもしたのですが、あっさり味で21日スタートの共通担保オペを8000億円打ち込んで来まして当座預金残高を20兆円近く(夕方の需給見込みを見たら元々の予想から若干下振れしていて見込みは19.4兆円になっていましたが、17日対比2.3兆円の当座預金残高拡大)に持っていくオペレーションをしてきました。

つーことでオペでのファンディングも回り、ついでに為替介入での円資金がGCの買いに回りという事で、為替介入分と国債大量償還分に関する資金の読みにくさがあっさり解消しましてGCレートは0.11%レベルに低下したようでまあ予想外してどうもすいませんと言うところで。


しかしまあ何ですな、金曜のオペをあれだけ注目して非不胎化がどうのこうのとか言っていた皆様に置かれましては、本日は何と非不胎化した金曜対比で当座預金残高を2兆3000億円も引き上げて来たのですけれども、為替市場におかれましてはその点に対して1ミリも反応している気配が無かったのでございまして、誠に不思議きわまる話でございますなあ(ニヤニヤ)。

#また悪態になってしまった


○介入前後に講演が沢山あったのですが、まずは野田審議委員講演&会見から

すいません全然追い付いてないのにもう直ぐFOMCだわorz

野田審議委員講演
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1009b.pdf

野田審議委員会見
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1009b.pdf

まずは講演から。

・世界経済は結局新興国次第という話

まず講演の最初は『2.海外経済の現状と先行き』ということで海外経済の話をしているのですが、

『世界経済は、奇しくも2年前の今日のリーマン・ブラザーズの破綻を契機に大幅に悪化しましたが、翌年(2009年)後半以降、緩やかに回復を続けています。この回復の背景には、各国の財政面での景気刺激策と、一たん大きく縮小した在庫の適正水準への復元とがありますが、このところ、この2つの効果がともに減衰しており、回復のペースは鈍化しています。』

ということで、その小見出しを見ますと、

『(1)米国経済 〜バランスシート調整の重石と減速懸念〜』
『(2)欧州経済 〜域内格差と根深い財政再建問題〜』
『(3)アジア経済 〜ソフトランディングに向けた調整局面』

という感じであまりパッとしないのですが、米国のところでこのような感じの記述がございまして、まあ結局世界経済は結局新興国次第ですねという話に落ち着くのでござんしょうという所で。

『先行きについては、世界的に在庫復元が一巡することから、輸出の増勢が鈍化し、また、景気刺激策の効果が減衰(成長率に対しては一時的にマイナスに寄与)することもあって経済の回復ペースは、年内は一たんは減速するものとみられます。もっとも、輸出が新興国・資源国向けを中心に増加を続け、緩和的な金融環境が維持されるもとで、個人消費や設備投資も増加基調を維持すると考えられ、回復の流れそのものは崩れないものとみています。』

ということで、回復の流れは崩れないのですけれども、やはりこれも外需期待という所があるのですねえって感じですな。


・国内経済は自律的回復には至らず

日本経済と物価に関する部分が次に来るのですが、経済に関しては、

『(1)経済 〜緩やかに回復しつつも、自律的回復力はなお脆弱〜』

と思いっきりありますように、まあ現状に関しても持ち直しはしているものの、

『ただ、国内経済活動の水準を各種経済指標のレベルで確認してみますと、依然として直近のピークを下回る水準に止まっています(図表4)。こうしたもとで、設備や雇用になお過剰感を残しており、収益が顕著な改善をしている割には、企業は支出行動に慎重な姿勢をなかなか崩しておらず、こうしたことから、「民需の自律的な回復」がはっきりと展望できるまでには至っていません。』

という説明をしていまして、この辺りは白川総裁が妙に景気に強気だった時に示していた自律的回復の芽みたいな話とは思いっきり違うトーンで、まあ野田さんは景気回復に対して慎重スタンスですなあと思われます。


・リスクも海外で、特に海外経済の過剰の修正ということですな

先行きリスク要因に関する説明がその後に続くのですが、基本的には下向き警戒のトーンが強い内容になっています。

『わが国経済の回復は、海外経済の改善を起点としたものです。内需の自律的な回復が未だはっきりと展望できない状況のなかでは、海外経済の回復が滞れば、持続的な成長への経路が途切れかねないという意味において、海外経済の動向を最大のリスク要因として捉えています。』

ということで各国の話があるのですが、米国に関する説明がまあ仰るとおりですなあと。足元で米国経済のデータが下振れて急速に米国経済への警戒感が足元で高まっている件について指摘した後、野田さんはこのように話をしています。

『先ほども述べましたように米国はバランスシート調整の影響が続いていますが、楽観的に過ぎた部分とは、つまるところその調整圧力の大きさ、すなわち成長に対する重石の重さの評価にあると思います。』

『我々のバブル崩壊後の長く苦しかった経験と今次金融危機までに積み上がった過剰の大きさを重ね合わせて考えますと、今回の調整にも相当なコストと時間を要するものとかねてからみておりましたので、このところの動きは私にとっては想定の範囲内といえるものです。もっとも、雇用の改善が想定以上に遅れたり、住宅価格が再び下落することになれば、家計のバランスシート調整も遅れることになり、個人消費の抑圧を通じて企業部門への負のフィードバックも生じるといった下振れリスクの連環には注意が必要です。』

という事で、(まだ紹介してませんが)白川総裁も講演でこの辺に関しては同じような話をしてはいるのですが、何故か白川さんが話をしても何だかなあとなってしまうのは、その前に楽観話を自分でもしちゃっているからでしょうな、と話が脱線しましたが、基本的に野田さんは不良資産問題によるバランスシート調整の影響の大きさに関しては(銀行で当事者だったこともあり)かなり厳し目に見ているという感じが致します。


・こういう言い方が良いのではと思うのだが

今後の金融政策に関するところですけれども、まずは最初の方でこういう話をしましてですな。

『既にお話したとおり、経済の先行きに対する見通しには「不確か」がつきまとっています。今後、新たに得られる経済データや情報を注意深く点検したうえで、仮に下振れリスクが顕現化し、経済情勢の見通しが著しく悪化する蓋然性が高まり、デフレからの脱却までの道のりが不確かなものになったと判断される場合には、必要と判断される政策手段を迅速かつ果断に実行しなければならないと考えています。』

で、後のほうでしらっとこういう話をするのですな(ちなみに上記の部分と下記の部分は直接文章として繋がっては居ませんので念の為)。

『その際、留意すべきことは、一つは、政策の効果から実施に伴って発生する蓋然性のあるコストが控除されなければならないことは当然であり、それとともに、潜在的なリスクとその保全についても予め吟味されなければならないということです。もう一つは、こうした効果やコストなどの副作用は、経済・金融の状況はもとより、財政や制度面の違いや変化によって、異なったかたちで生じ得るものですから、絶えず今日的な観点から点検されなければならないということです。』

ここの部分を後にしらっと持って行き、ついでに前半部分は割と判りやすい言い方をしているのに、後半部分では微妙な言い方にしているという辺りが野田さんのプレゼンのきっちりとしたところでございまして、これが白川総裁にかかりますと前半と後半の語順がひっくり返る上に、「副作用に注意」の方は判りやすい言い方をして、「必要な場合には果断に実行」の方は微妙な表現をしちゃうという所でございまして(−−;)、まー見せ方って重要ですねという話ですな。


・会見で非不胎化がどうのこうのとしつこく聞いているお馬鹿さんがいるのだが

非不胎化介入がどうのこうのというのは現在の金利ターゲットを設定した金融調節体系においては議論として意味の無い話である、という事を経済担当の記者(というかこれ日銀担当の記者の悪寒がするんだが)がするという時点で如何なものかと思うのですが、会見ではその質問をウダウダとしつこくしているのがいて正直閉口。

最初の質問では完全に非不胎化の話をスルーして総裁談話の話をしていたのですが、更にアホウな質問をするのがいましてな。

『(問) 今の質問と重複しますが、本日の総裁談話の「強力な金融緩和を推進する中で、今後とも金融市場に潤沢な資金供給を行っていく」について、これはいわゆる介入の非不胎化、つまり介入でマーケットに入ってきた資金を大量にマーケットに残していくという非不胎化の方針を示されたものと見ていいのかどうかをお伺いできればと思います。』

『(答) 先程も申し上げたとおり、まだこのニュースを耳にして数時間も経っていないので、あくまでも個人的な意見ということでお聞き届けいただきたいと思います。先程申し上げたステートメント以上のものでもないし、それ以下のものでもないということに尽きるのですが、私なりに申し上げます。』

『介入資金は一時的には金融市場への資金の供給要因になるということは、ご指摘のとおりだと思います。したがって日本銀行としては、この介入資金の活用も視野に入れながら潤沢な資金供給を行っていくことになるのではないかと、個人的には、かつ現時点では考えています。』

『ただ、だからといって介入額が、そのまま日本銀行の当座預金残高の増加にストレートに結びつくと考えているわけでもないということも、申し上げておきたいと思います。これ以上のことは、現時点では申し上げる状況ではありません。』

・・・・前半でリップサービスをしつつも介入額に紐をつけた当座預金残高拡大という話はきっちりと否定するところが中々の達人。

しかし更にアホウな質問は続く。

『(問) 今のご発言を確認させて頂きたいのですが、これは2003年から2004年のように介入した金額がそのまま当座預金に積み上がるわけではないけれども、定性的な方向としては積み上がるという方向になるのではないかということを指しておられるという趣旨で良いのかが一点です。もう一点は、おそらくFBを発行することになると思うのですが、いずれ市場に消化された時には自動的に、オートマチックに不胎化になってしまうというのが白川総裁の持論ではないかと認識しています。そこで、実際にFBが発行された後に、どのようなマーケットに対するアドオンの資金供給になるのか、よくわからないところがあるので、その辺についてよろしければお話しを伺えればと思います。』

『(答) 先程の説明以上のものは申し上げられませんし、それが定性的にという意味がよく分かりませんので、そのご質問への回答は差し控えさせていただきます。それから、ご質問の中にFBとか、不胎化、非不胎化といった言葉が出ましたが、基本的に私どもの資金供給あるいは金融調節について、不胎化とか非不胎化というベースで議論をしていくつもりは私にはございません。』

『あくまでも、市場にどの程度の資金を供給するのか、その時点で潤沢なのかどうか、あるいは潤沢でないのかどうかということをその都度判断するということで、少なくとも私の頭の中には、不胎化とか非不胎化というベースでの物の考え方はないということです。先程追加でお答え申し上げた以上のものは、あくまで今のところということでお断りしたいと思いますけれども、考えておりません。』

・・・・・うーむ、何と言うパーフェクトな答弁(^^)。


というトンチキ問答だけ引用で申し訳ありませんが、最後のほうで「講演で不確実だの下振れだのという話をしているが、そんなに不確実ならば何で今追加緩和しないのか」という質問があったのは(;∀;)イイシツモンダナーと思いました。引用すると微妙に長くなるのですいませんが割愛、質疑の6ページから7ページです。









2010/09/17

お題「いろんな雑談をしているとネタが累積債務状態に(汗)」

昨日の訂正ですが、介入資金の不胎化は sterilize(スティリライズ)でございました。いやはや頭悪くてどうもすいませんm(__)m

でね、日本では早速「外国から介入批判が」とかニュースで言ってますけど、ガイトナーさんが中国の話だけするちゅう辺りを見ますと、財務省は今回の介入に関して相当十分に段取り組んでいたと思われますし、介入の実務面に関しても巷間言われている話の通りなら日銀も相当事前に準備しているように見えますし、まあ裏方の皆さんの努力がとっても良かったと思うんですよね。

しかし政治家の皆様に置かれましては、何かもうここぞとばかりに余計な発言を繰り返す訳で、政治主導とかバカジャネーノとしか思えないのでありますが。

#先週の土曜だか日曜だかにまるで戦時報道のように「当局ハ断固市場介入スベシ」と大キャンペーンを打った某経済新聞系の番組が「介入に欧米から批判」とか報道するのも何というかですなあ。当然ながらニュース番組でも「我々ハ鬼畜米欧ニヨル東亜新秩序ヘノ干渉ヲ断ジテ許サヌ」位の報道をするもんだと思ったんですが


○不胎化どうのこうのでオペがどうのこうのというのは不毛なんだって

昨日ああでもないこうでもないと書いているうちにすっかり悪態を飛ばしまくってしまいましたが、まあ昨日も引き続き不胎化どうのこうのの話が連発されていまして、シロートさんが言うのは仕方ねえなあと思うのですが、まあ何と申しますかという感じです。

何かどこぞの経済クオリティペーパーに(アホらしいので記事のURLは付けない)は「17日に即日吸収を行うかも注目されている」とかいうニュースがあってアホジャナイデスカと思うのですけれども、まあ昨日に関しても「共通担保の期落ち分をロールするか」という話が出てまして、いやまあオペの調整ってその介入分だけじゃなくて、他の銀行券要因とか財政要因(まあ振れが大きいのは財政要因)とかの事情によって変わる話でありまして、例えば21日なんて国債償還要因で3兆円以上の財政余剰が見込まれる訳で、その分でオペの期落ちを入れている分をロールするかしないかとかは最早介入資金どうのこうのとはまったく別の問題な訳でして、これ為替介入が16日に実施されていたら話がエライヤヤコシイことになっていましたなあと思います。

まあ積み最終日前後の関係とか、期末がそろそろですなあとか、まあその他諸々まで考えて為替介入のタイミングを図ったんですねえと考えると、まあ民主党代表選のタイミングも丁度良かったんですけど、事前作戦をかなり良く練ったタイミングでの介入投入という感じですわなあという所でございます。その辺あんまり細かく説明するのは野暮なので質問は御社の短期デスクまでどうぞ(^^)。

一昨日はまあそこそこデカイ介入をしたようですが、そう毎日兆円単位で介入する訳でもないでしょうから、日々の介入分って通常の資金需給の誤差範囲内に収まるんですけど、一々注目するんでちゅかねえ為替市場の皆様は。そんなにオペに注目したいのであれば、6月末なんて当座預金残高が20兆円近くに拡大して(198900億円)まして、その次の日であります所の7月1日は当座預金残高が前日比2兆円落ちていました(179700億円)ですけれども、それに一々注目しておられましたっけ?という感じではございますわな。

つまり、その回収するのしないのとかいう日々の調節の部分はどうでも良い話であって、例えば利下げしろだの国債買入拡大しろだのという話をするならまだ話としてはマシでございますので、早いところ日々のオペがどうのこうのという不毛な話は止まって頂きたいものだと存じますです。



○相変わらず何を言ってるんだこの人たちは

でまあそれはそれとして、大変にこうアレだったのはいつもの人たち。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aOtQkOihQHhc
民主・大久保氏:介入の非不胎化の機関決定していない−日銀関係者

・・・・機関決定とかする訳無いでしょ。為替介入以外にも色々な財政要因があって資金需給がぶれるのに、その分だけ取り上げてどうこうするとか全く意味が無いし、そんな事を機関決定するのも意味が無いし出来ませんわなということで。

てかね、この人確かどこぞの外資系証券会社出身だったと思うのですが、昨今の介入に関する発言とかちょっと不勉強ぶりが酷すぎるんですが。まあ不勉強というよりは生兵法は怪我の元状態だとは思うのですが、てめえ一人で怪我する分には別にどうなろうとどうでも良いのですが、政権与党の金融ナントカ部会とかにいる人がこれというのは余りと言えば余りでして、てめえの生兵法で自爆する時に日本国を巻き込まないで頂きたいものだと切に願うのでございます。

まあ大久保さんもそうなんですが、もっとアレなのは財務副大臣でして。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aHOgyzAHjzuA
池田財務副大臣:日銀には非不胎化介入してもらっている(Update1)

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aXsd5nx.CV8A
池田財務副大臣:日銀は次の緩和策を鋭意検討−為替介入(Update1)

えーっと、「財金分離」の観点から武藤さんの総裁就任を拒否した政党のお方ですよねえ池田財務副大臣様は。まあ日銀人事を政争の道具に使った挙句に自分たちは露骨に中央銀行に政治干渉とか大変に首尾一貫しない素晴らしい政治姿勢でございまして、このような輩を国の舵取りを預ける信用に値する連中かと心の底から甚だ疑問に思うのでございますが、まあ池田副大臣の発言のヘッドラインも中々面白うございましたですわよ。ブルームバーグニュースからヘッドラインの一部を引用。

JBN 17:46 *池田氏:日銀は市場に出た資金を回収しないものと思っている

そら回収せんですがな。回収するの誰だか判ってないでしょこのバカチンは。

JBN 17:49 *池田財務副大臣:日銀も協力すると思っている−非不胎化介入
JBN 17:55 *池田財務副大臣:日銀は次の緩和策を鋭意検討されると思う

何かもっと引用しようと思ったのですが、いい加減血圧が上昇してきたので終了。


○きょうもしじょうおれさまにっき

昨日の債券市場はイールドカーブがツイストスティープしました。

いやまあ何ですな、一昨日の訳わからんブルフラットがどう見ても変態相場だった訳で、まあ結局のところはショートカバー的な超長期の買いだったんでしょうかねえというしか後講釈のしようが無いのですが、市場のマニアの一部では「日本の債券市場は為替介入の効果が無いと評価しているからブルフラットしているんだ!!!!!」という(もちろんギャグというかネタで)話題をしていたりいなかったりという所で(^^)。

んな訳で、まあ昨日の超長期売られ〜の中短期ド堅調(途中から先物とか上昇しちゃったから緩和されちゃいましたが、前日比安いところでは中期以下が下がらない下がらない)というのがポリシーミックスを解釈したら普通の反応になると思われる次第で、為替介入しつつどうせこの先財政も出すでしょうし、(介入だけじゃつまらんでしょ)一方で追加緩和はやるかどうかは兎も角として(打つなら米国が追加緩和打ち止めっぽくなって来る所で打ち込むと効きが良さそうに思えるんですが)まあ思惑は出るでしょうし、日銀も非不胎化の演技はするでしょうから(演技であっても皆が緩和と思えばとりあえず鰯の頭も信心からの巻で効くでしょ)と並べると、普通にスティープするっしょという所ですわな。

まあ水曜のフラットニング(まあブルもどうかと思うけど追加緩和の発想が先に来たらブルも有り)が変態だったということで(^^)。


あとですな、そのどさくさに紛れてGC方面に関しては21日の所からは国債償還要因で資金繰りが読みにくくなるのと資金の回りが悪くなるのとがあって、GCレートちゃん上昇気味。0.125とか0.13とかの水準っぽいのでございますけれども、まあ今回の期末に関しては上のほうで色々と書いたネタがありますので、逆の意味で目先当座預金残高の推移を慎重に扱わないとアホタレ報道機関がアホタレな報道をして全く無意味に注目されてしまいかねませんので、そーゆー意味からちょっとオペレーションやりにくいのではないかと懸念される所ではございますわな。

3Mや2Mの短国も久々の0.11%台に乗ってまして、期末要因も含めちょっと動くかなあという所ですかね。オペと当座預金がどうのこうのを暫くネタにしようとするお馬鹿さんがいるうちはねえ・・・・

ということで繰り返しだが早い所不毛な議論が終了して欲しいのですがね。



○極めてよい話をしているのだが結局こうなるのだからもう少し考えるべき

そういえば野田審議委員講演ネタをスルーしていますが、しょうがないので連休中に(たぶん)書きますよええということにしておいてくんなまし。

http://www.asahi.com/business/update/0916/TKY201009160143.html
「超低金利、将来バブル発生の恐れ」 日銀総裁が講演

この講演ってこちら↓なんですけど
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1009c.pdf

本当はこれも内容に関して読みますと中々のもんでして、特に『3.バブル崩壊後の経済情勢と政策対応に関する4つの類似点』のあたりとか非常に良い論点整理になっているのですけれども、悪態書いているうちに時間が無くなったので今日はパス。

で、その超低金利がどうのこうのって最後のほうの『5.今後の研究課題』って所にあるんですけどね。

『まず、伝統的金融政策についてですが、この面ではバブル崩壊後の積極的な金利引下げの有効性について、より深い研究が必要だと考えています。今回のバブル発生前は、積極的な金利引下げを行えば深刻な景気後退は回避できるという考えが支配的であったように思います。しかしながら、今回のグローバルな金融危機後の経済情勢の厳しい展開を前に、そうした楽観論は疑問を投げ掛けられています。』

『もちろん、積極的な利下げは、景気の落ち込みを緩和するために必要な政策措置です。そのうえで、以下のような超低金利環境に関する事実についても認識しておく必要があります。』

『第 1 に、短期金利水準が極端に縮小すると、インターバンク資金市場の円滑な機能が低下したり、金融機関の利鞘が低下したりします。その結果、金融機関における貸出インセンティブが低下し、金融緩和効果が減殺されることにつながります。』(ちなみにここの脚注がバーナンキ講演およびBOEとなっているのがチャーミング)

『第 2 に、低金利の持続は、景気の落ち込みを防ぐと同時に、バブル期に積み上がった過剰な債務の削減を遅らせる面も持ち合わせています。また、その過程で、経済全体の新陳代謝を遅らせる面があることも指摘しておきたいと思います。』(ここの脚注はBISとRajanね)

『第 3 は、低金利が将来にわたって継続するとの予想は、バブル発生の必要条件であることです。バブルは緩和的な金融政策だけで起きるものではありませんが、緩和的な金融政策が持続するという予想なしに発生することがないことも、同様に真実です。』

『いずれにせよ、バブル崩壊後の経済の生産性の動向は経済のパフォーマンスを規定する重要な要素です。経済を襲ったショックが大きくても一時的であり、従って自然利子率があまり低下していない場合には、低金利継続の政策コミットメントは異時点間の代替効果から一定の有効性を発揮します。しかし、そうでない場合には、政策コミットメントは、十分効果的なものとなりえません。』

『以上の留意点は、バブル崩壊後の積極的な金利引き下げの必要性を否定するものではもちろんありません。ここでの議論のポイントは、金融市場の行動経済学的なダイナミックスや実物要因によって生じる潜在成長率の動向にも十分な注意が必要であるということです。』

ということで、別に今の超低金利がバブルの発生を呼ぶとかいう話をしている訳でも何でもないのですが、ものには言い方ちゅうもんがありまして、特に日銀の場合はこういう話をすると当然のお約束として前半部分の「低金利の長期化がバブル発生をもたらす」部分だけを切り取られて報道されてしまう訳でありましてですな、これ市場が反応しなかったから良い様なもんですが、うっかり為替市場が反応とかしちゃったら為替介入をしている現場を後ろから砲撃しているのと同じような話になるのでありまして、もうちょっと白川総裁様におかれましては講演なりの内容での言い回しを考えたほうが良いのではないかと思われます。

上記の話だったら第2第3の論点は細かく書かないでおくとか、第1の論点の脚注部分をちゃんと「バーナンキ議長も言ってるように」とか書くとかの配慮が求められる訳でして、いやまあ全部通して読めば仰る話はその通りなのですけれども、一般的に報道されて市場が反応するのはその片言隻句であることが極めて多いという事に関する想像をもっと働かせるべきであり、麿大先生様に置かれましては慎重な配慮をお願いしたい所でございます。

#講演の詳しい話とかその他いろいろとネタがあるので連休はせっせと読みますかね










2010/09/16

お題「介入来ましたねえということで関連雑談(途中から悪態^^)を少々」

政権継続確定の翌日に介入というのは中々お洒落でしたね♪

#自画自賛しておくと、昨日一応あたくし「代表選終わったから介入を代表選に利用したと言われないので介入のハードル下がったんじゃネーノ」ってな趣旨のことを書いたんですけどあんまり褒めてくれないので臆面も無く自己申告しておきます(^^)


○市場俺様メモ

まあご案内の通り昨日は為替介入があったのですが、俺様メモということで時系列で整理しておきますと、10時半頃「中尾国際金融局長がユーロマネーのフォーラムでの講演を急遽取りやめ」とかいうヘッドラインが出て(ブルームバーグだと10時28分とかだったようで)その前後あたりからドル円が一気にドル高になって株は上昇して債券は急速に朝からの上昇を下げました。

で、後場の寄り直後に先物に成行の売りとかあって下がったのですけれども、その後は何か知らんけど相場切り返し。ドル円は85円近辺になるわ平均株価は9500円近辺になるわという素敵な相場の中で債券市場だけは介入に全く敬意を表しないというか財務省様の努力を嘲笑するかのようなブルフラットで終了の巻。

でね、まあ介入後の動きもそうなんですが、あたくし的に昨日情け無いというか悲しい思いをしたのは介入が入る前の寄り直後の動きでありまして、菅政権継続を受けて債券買いになるのはまあ良いんですけれども、超長期がアホのようにブルフラットして、前日に入札が行われた20年債が平均落札1.955%の足切り1.969%でやっておったのですが、その超長期新発は寄りから強くて1.8%割れ水準とか堂々の出合いになる次第でしたんですが・・・・・

えーっとね、お縄懸念は判らんでも無いのですが、絶対水準から言って1.9%台後半ってレベルから仮にお縄内閣が発足して超長期が幾ら売られるのよという風に思うのですよ。20年債のクーポン推移見りゃ判るように、やはり財政リスクがどうのこうのとか言いながら10年金利が1.4%だの1.5%だのとかやっているときでも20年って精々2.2%とかだった訳ですし、1.9%台後半の超長期がお縄内閣になって売られて何ぼなのよと。これがまあ火曜の入札が1.8%台とかでやっているんだったらお縄ネタで2%位まで売られても仕方ないから様子見ってえのは判るんですが、菅内閣継続になったからというネタで前日比10毛以上強い所を買ってくる意味が判らんというか何と言うか。買わなきゃいけない額の全部とは言わないですけれども、菅内閣発足受けて10毛上を慌てて買う位なら、1.95%よりも安くなってしまった(正直火曜の朝の段階で新発の止まり所は1.95%とか思ってたので入札前にせっせと調整しているのがビックリだったんですが)入札でちったあ必要分の半分でも入れて置かないのかねえと。

いやまあ何か昨日に関しましては、結局誰が買っているのか謎(10毛も強くするような威勢の良い買い主体っているのかよという意味で)らしいのでありますが、これが「恐怖のサラリーマン相場」のなす動きだったりしたらもうおじさんは情けないとしか申し上げようが無いんですけど、何つーかこう昨日の前場(の介入前)はブルフラット振りを見ておりまして大変に悲しい(別に自分の損益がどうのこうのではなく^^)思いをする朝のひとときでございました。

ま、介入後の後場の買いもさっぱりワカランチンでございますけれども、為替介入+金融緩和とかいう連想だったらイールドカーブってどっちかと言うとブルスティープとかツイストスティープするもんだと思うのですが、債券市場は華麗にブルフラット。

株式市場も為替市場(は介入されているのだから当たり前だが)も為替介入に敬意を表してちゃんと株高ドル高で推移しているというのに債券市場ってもう何と言うかチャーミングというか当局の努力をあざ笑って動くと言うか何ともこう誠に申し訳ございません(誰に??)という動きでございまして、落涙を禁じえないというものです。

いやあさすがにブルフラットはちょっと喧嘩売り過ぎじゃないのと思うのですけれどもねえ・・・・・・


○日銀が吸収オペをするかどうかを注目とか何を不毛な話を・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aGrCEUeHg50I
日銀:介入資金を吸収せず、非不胎化へ−日経英語ニュース

?????とか思って見ておりましたら、何か債券の何とかストさんたちのレポートが色々と出てきまして、「日銀が吸収オペを行うかどうか注目」とかいう話のものが来てたりしてたんですよね。

「ああインターバンク市場(というか短期金融市場)の実務知らないコメントですなあ」という感じで読んでおったのですが、どうもブルームバーグのニュースを見ると同じ金利系でも短期市場じゃない人はこういうコメントになるんだなあと甚だ残念感が漂うのでございます。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=abLTh3t2HJAc
債券は大幅高、日銀非不胎化介入の観測で−長期金利2週間ぶり低水準

まあそこにある債券市場関係者さんのコメントを見ると介入資金の吸収がどうのこうのとかいう話が連発しておりまして、まあ相変わらず短期金融市場ってえのは他の市場の人たちから理解されてませんわなあと残念感が漂うのでありますけれども、せめて金利系の何とかストの皆様は、何とかストという肩書きでメシを食っているんですから、同じ金利物であり、かつイールドカーブの起点を構成する短期金融市場に関する理解をしたコメントをして欲しいもんだというかお前らその席俺様に空けろ(^^)というところでございますな。

ま、昨日は総裁談話ということで
http://www.boj.or.jp/type/press/danwa/dan1009b.htm

『米国経済を中心に先行きを巡る不確実性が高まっており、為替相場や株価の不安定な動きが続くもとで、わが国経済の下振れリスクに注意が必要な情勢にある。

日本銀行は、為替市場における財務省の行動が、為替相場の安定的な形成に寄与することを強く期待している。

日本銀行としては、強力な金融緩和を推進する中で、今後とも金融市場に潤沢な資金供給を行っていく方針である。』

ってな話をしてたりするので、まあ非不胎化がどうのこうのという市場(除く短期金融市場。なお短期市場の人間で非不胎化かどうかが焦点とか言ってる人間は不勉強にも程があるので配置転換する事をお勧めします)の皆様の勝手な誤解を利用しちゃいましょという雰囲気もございますので、あまりその辺を丁寧に説明するのも野暮なのかもしれませんのでヒントだけ書いておきますね。わからん人は身近にいる短期のデスクの人間に聞いてくんなまし(^^)。

ヒント1:短期金融市場における金融調節で一定以上(資金繰りバッファーのために必要な超過準備額)を上回る超過準備の発生を恒常的に放置した場合、翌日物金利(コールとかFFとか)は預金ファシリティ金利まで低下する(預金ファシリティが無ければゼロに低下)。

ヒント2:現在の預金ファシリティ金利は誘導目標と同水準

#そもそものヒント1のメカニズムが判らない人は白川さんの書いた金融政策本の中に図で説明があるからそこを百万回読んでね♪

んーっとですね、昨日は短期のデスクの皆様に置かれましては、非不胎化がどうのこうのとか(英語で言うとスタビライズがどうのこうのとか言うそうですな17日追記:介入資金の不胎化は sterilize(スティリライズ)が正解です)のお問い合わせが来て答えるのが大変に七面倒だったようで誠にお疲れ様なのでありますが、「吸収オペをするのか注目」とかレポートを出すのは「私は現在の日銀の金融調節の実務を判っていません」と首から札をぶらさげているような物でありまして、上記のヒント1とヒント2から「吸収オペする訳無いんですけどねえ」という結論に達するのですよね。

まあ元々為替市場の人とかは金融政策がどうのこうのとか調節姿勢がどうのこうのとかエラソーに言う癖に肝心の実務面に関しては素晴らしく不勉強なので驚きませんけど、2日後のオペがどうのこうのとかコメントが出るのを短期市場の人は「いやあ相変わらずですなあ」と思っていたに違いないです。

http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPnTK043963520100915
〔金利ウオッチャー〕為替介入で不胎化めぐり気迷い、日銀調節スタンスを注視

『短期金融市場で、日銀の金融調節スタンスに関心が集まっている。政府・日銀が6年半ぶりとなる為替介入に踏み切ったことを受け、増加する円を相殺するかどうかの「不胎化」をめぐる気迷いがくすぶっている。』(上記URLより)

えーっと、短期市場では「吸収オペする訳ないじゃん」で結論は一致しておりまして、調節スタンスに全然関心集まってないのですが、ロイターの取材ソースが相当にクオリティが低いようで大変に残念な事でございます。もしかして脳内ソースから取材でもされているんじゃないですかって言いたくもなりますなあっはっは。

ヒントに更にヒントを加えるなら、日々の資金需給の振れが幾らあるのか理解していれば介入による需給のぶれなんぞ誤差の範囲内なんですがねえかとか、上記のロイターの記事だと「短国の発行額が増えて需給懸念」みたいな事言ってるけど、そもそも今年度入ってから短国の発行額が減った話はスルーですかそうですかとか、まあツッコミどころは多いのですが、いちいち説明するのは野暮なようですので(^^)自分で調べてくんなまし。



○その他介入関連雑感

何か介入額が最初の話だと1000億円とか2000億円とか言ってましたが、いつの間にか1兆だの1兆5000億円だのという話になって(今朝の公共放送では2兆円とか言ってました)、まるで釣った魚の大きさを話をする人や、武勇伝自慢のようなテイストを醸し出しているのがお洒落なのですが、最初の話だと今までの介入とは感じが違うみたいな話でしたよね。まあ月末以降になって平衡操作実施額がどうのこうのとか出ると思ったのでそれ見てから何か感想を申し上げるかも知れません。

#何か2兆円という数字が歩き出しているのはちとマズーな悪寒がするのだが・・・

あと、昨日はまあお祭りだったから色々と一般ニュースでもネタになっていましたし、久々のネタだから何か為替方面の人はアドレナリン出まくりだったと思うのですが、昨日の夜9時の公共放送ニュースで介入での値動きを見て「20年為替を見ていますがこんな値動き(あっという間に2円動く)は始めてです」とか言ってる人(しかもどこぞの銀行の何とかストさん)がいて、食ってるメシを吹きそうになってしまいました。えーっと1990年代って介入しなくても値が飛んだり平気でしてましたし、ドル売り介入やってた時なんて一晩で為替が3円とか普通に飛んだりしてたような記憶(追記:つーか本当は一晩で7円とか飛んでたときがあったような気がするんですけどね)があるんですけれども(^^)。いやまあアドレナリンが言わせたんでしょうとは思いますのでそんなにツッコム気は起きませんけどね(^^)。

まあそれは兎も角として。

・もうこうなったら記者会見そのものを禁止にするということで

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ail1TT1zaY30
仙谷長官:82円台が防衛線−円高の問題は看過できない(Update2)

『9月15日(ブルームバーグ):仙谷由人官房長官は15日午前の会見で、日本が同日円売りの為替市場介入に踏み切ったことについて「円高の問題は看過できない」と語った。その上で、82円が一つの防衛ラインかとの質問に対しては、「財務相のところでそういうふうにお考えになったんだろうと思う」と言明した。』

・・・・・orz

えーっとですな、どこの世界に自分から手札出してポーカーをするアホウがいるのかと小一時間問い詰めたい訳ですが、まあここまで来ると「82円が防衛ラインか」とか質問する記者も国益を損なう質問をしているのではないか(冗談ですよ)と言うところでございまして、もう記者会見とか禁止にしたほうが良いのではないかと存じます次第でございます。

とりあえず数字の話は全部ノーコメントにしておけと思うのですが、何回同じトンマなプレイをやれば学習するのかと存じます次第ですが、きっとこのあたりの人たちの脳味噌には学習機能が標準装備されていないのでしょうなあと思うと落涙を禁じ得ないところでございまする。


・このニュースはある意味凄い

まあ昨日は介入関連で色々と面白コメントや面白レポートを鑑賞したり、介入に1ミリも敬意を表しない債券市場の不思議展開を鑑賞したり(鑑賞だけかよというツッコミはしないように)という日でございましたが、爆笑のホームラン王なニュースはこちら。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aKrFIicXRz_8
日銀は月内の緊急会合を計画していない−ロイター通信

リンクはブルームバーグですが、ロイターが報道しているのをブルームバーグが報道しているので、ニュースを出しているのはまたもロイターさんでありまして、外山金融市場局長インタビュー記事で大変に素敵な報道を行っただけのクオリティではございますなあと毎度感心する次第です(最近ロイター記事からの引用が無いですねというのにはお気づきだと思いますが^^)。

以下URL先の記事から。

『9月15日(ブルームバーグ):日本銀行は月内に緊急会合を開く計画はないと、ロイター通信が報じた。日本政府・日銀は15日、外為市場での円売り介入に踏み切った。ロイターはまた、日銀が10月の会合で金融緩和する可能性があるとも報じた。日銀の考えについて知る複数の関係者の話を基に伝えた。関係者の名前は明示していない。

 ロイターはさらに、日銀は国債購入の拡大を最も可能性の高い選択肢として検討する公算があると報じている。』

「日銀の考えについて知る複数の関係者の話を基に」ってそれはまたどこぞの夕刊紙みたいなクオリティで大変に感服する次第でありますが、そもそも緊急会合を計画して開催するとか意味がさっぱり判らないニュースでございまして、あまりのハイブローぶりに記事のヘッドラインを(ブルームバーグで^^)見た瞬間に何が起きたのかさっぱりわからない状態になっておりました(^^)。

まあ皆さん祭りでアドレナリンが出まくってソイヤソイヤ状態なのかも知れませんけれども、一応市場関係のプロ向けの報道機関なんだから冷静に記事書いてくれよと思う所でございます。まあネタになるから良いけどさ。


ということで、俺様日記と悪態を書いていたら時間が無くなってしまったので、野田審議委員の講演ネタが翌日送りになってしまいました。どうもすいません。











2010/09/15

お題「民主党代表選とか虫干しネタとか」

何かモーサテ様が「菅政権継続で円高が急速に進行」と煽っているのですが、ドルユーロとかドルスイスとか見ると単にドルが下がっているだけのように見えるのですが気のせいでちゅかねえ。

正直、菅政権で円高進行なんて精々50銭くらいの話で、それより米国で債券が買われたのが効いているんじゃねえのと思いますけど・・・「菅政権で円高」って正直日本の自意識過剰だと思うのですけど・・・・・

#海外相場レビューで「ドル円相場は不安定になっています」(高安1円以内の値動きにしか見えませんでしたが・・・)って言った直後に「今日の相場は膠着すると思われます」とか言う今日のモーサテ為替コメンテーターの発言には激しく朝から吹いてしまいましたが、為替の人たち介入イベントが欲しいんだなあとは思いましたですよ(^^)

#さっき公共放送見てたらお縄先生の残念会みたいなのでポッポ先生が「お役に立てなかったことをお詫びしたい」などと挨拶してましたが、お詫びするのは代表選挙の話じゃなくて別の件ではないかと激しく思いました(−−)


○民主党代表選挙雑談

とりあえず「党員・サポーター票」の結果が物凄い大差になった時点で(・∀・)ニヤニヤという感じでございましたが、市場ちゃんの方は党員サポーター票の結果が大差になった時点で債券市場では現物が買われるし、先物は上昇するし、為替市場ではドル円が83円10銭位までドル安になる(その直前が83円半ば)いう感じでござんした。その後戻ったのですが夕方5時過ぎにまた83円05銭くらいやっていたでござるの巻。その後は知らんですけど(汗)。

ということで、まあ菅さんに反応してご祝儀(−−)円買いだわ債券高だわという反応は中々チャーミングでございましたが、まー昨日の時点でお友達な人たちと世間話をかましておりますと、「まあそうは言っても菅さんよりも米国市場でしょ米国市場」という実にこう実も蓋も無い話をしておりましてですな、正直財政がどうのとか為替介入がどうのというよりも目先は米国様市場様次第なだけじゃネーノという所で。

ま、あたくしの妄想になりますけれども、昨日何となく書いたように、菅さんって別に財政再建に対する信念があるとは到底思えないのでして、まードル円ベースで円高になったり株価がそれ見て下がったりしたらあっさりとケツがムズムズしてくるでしょうし、別に信念ある訳じゃ無かったらやっぱり財政出しますよという話になっても別に不思議ではなかったりするのであります。

更に為替介入に関しては、お縄先生の場合は介入がどうのこうのとか言ってた訳ですが、実際にじゃあその辺の現実性を考えて打ち込めるのかという面について言えばお縄先生は代表選の冒頭で普天間問題の話をしたと思ったら具体案について突っ込まれて翌日にいきなり日和るというお洒落な展開になっていたように、現実に直面すると腰砕けになる(お縄先生だってそもそも経済政策に定見やら信念やら無いっしょ。利益誘導の発想はあるでしょうが)可能性もあり、まあ実はお遍路さんでもお縄さんでもあまり変化無かったりするような希ガス。

ただですな、民主党代表選期間中に為替介入しちゃったら「介入を代表選の対策で政治利用した」とか言われる恐れもあったんじゃねえのと思う所でもございますので、政治的に言えば介入を(欧州や米国から何か言われたりするのを気にしないという根性があるのか知らんけど)やりやすくはなったんじゃネーノという気は思いっきりするんですけどどうでしょうかねえ。


金融政策に関してはまあこんな感じになるんでしょうなあ。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010091400878
日銀に一層の緩和圧力か=「期待」連発の菅氏勝利で

『菅直人首相が民主党代表選に勝利したことで、日銀に追加金融緩和を求める政府などからの圧力が一層強まりそうだ。菅氏は、8月27日に公表した円高に関する声明の中で、「日銀に対して機動的な金融政策の実施を期待する」と異例の表現で緩和を事実上要求するなど、金融政策への発言を積極化させているためだ。』

『声明の3日後、日銀は臨時の金融政策決定会合を開き、追加緩和に踏み切った。その後も緩和圧力はやまず、政府は今月10日にまとめた経済対策の中で、デフレからの脱却に向け「日銀に対しては、さらなる必要な政策対応を取ることを期待する」と表明。菅氏自身も円高に関連して、「国際的な場で明確なメッセージを出すべきだとの意見が政府や党の中にあることを日銀総裁も認識してほしい」と述べ、一層の緩和への期待をにじませた。』

『従来「金融政策は政府がいちいち指図するものではない」として日銀の独立性を尊重する姿勢を示していた小沢一郎前幹事長すら、14日の投開票前の演説では「日銀法改正やインフレ目標政策も視野に入れる」と表明。年末にかけて景気回復の鈍化が避けられない中で、日銀に対する政治からの風当たりは当面弱まりそうにない。(2010/09/14-18:37)』

・・・・記事丸引用になってどうもすいません。いやまあ「財金分離」とか言って武藤さんの総裁就任を拒否したり、「インフレターゲット論者だから」とか言って伊藤先生の副総裁就任を拒否した民主党の皆様の行動とは全く思えませんなあというような話はもう百万回位行っているのでそこはスルー致しますが(してない^^)、まー日銀もドラえもん(めもんではない^^)のポケットでも無いのにああだのこうだの言われてご苦労なこったという感じでございます。

ま、政権がとりあえず暫く持つ事が判明したので(お縄先生がどう出るか次第ではございますが)さすがに今度はちゃんとした政策対応をするという流れになってくるんじゃないかという期待を致しますが、とりあえず発言する度に円が売られるという華麗な芸風をお持ちの財務大臣様におかれましては、脳味噌を入れ替えるか人間そのものを入れ替えるかされた方が宜しいのではないかと存じます次第であります。


あと、市場メモなんですが、昨日は1年TBが0.12%に上昇したりして短い所のキャッシュは冴えなかったのに金先だけは場中からいい感じで強含みだったのは何でだったんでしょ。教えてエロイ人!!!


○ほとんど粘着質状態でバーナンキのジャクソンホール講演のネタを引っ張る

しつこくてどうもすいませんm(__)m

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100827a.pdf

昨日は「FRBの資産買入の政策効果」の部分に関して引用致しまして、結構驚きの「ポートフォリオリバランス効果」炸裂というのが「えー」という話をしたのですが、この波及に関する量の効果に関する説明も中々素敵なので昨日の続き(本文9ページ)から引用を粘着質で続けるのだ。

『The logic of the portfolio balance channel implies that the degree of accommodation delivered by the Federal Reserve’s securities purchase program is determined primarily by the quantity and mix of securities the central bank holds or is anticipated to hold at a point in time (the “stock view”), rather than by the current pace of new purchases (the “flow view”).』

この点に関してはだいぶ前にご紹介した(http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugeneral10-01.html#seisakugeneral100414の前後に過去ログがございます)コーンFRB副議長(当時)の講演で詳細な説明がございましたが、コーンさんもそうでしたが、どうもstock viewを支持しているようで、その話が次にございます。

『In support of the stock view, the cessation of the Federal Reserve’s purchases of agency securities at the end of the first quarter of this year seems to have had only negligible effects on longer-term rates and spreads.』

買入を停止してもMBSのスプレッドがほとんど拡大しなかったのは、買入のフローが効いているのではなく、買入の相対としてのストックが効いているという話ですな。

『The Federal Reserve did not hold the size of its securities portfolio precisely constant after it ended its agency purchase program earlier this year. Instead, consistent with the Committee’s goal of ultimately returning the portfolio to one consisting primarily of Treasury securities, we adopted a policy of re-investing maturing Treasuries in similar securities while allowing agency securities to run off as payments of principal were received.』

MBSの償還分をトレジャリーに乗り換えるというこの前のFOMC議事要旨(FOMCの方が実施されたのは前ですが)にもありましたが、こちらでもしらっと「FRBのゴールは保有する資産をトレジャリーのみに持っていくこと」という話をしているのがチャーミングなのですが、MBSのポートフォリオリバランスをストックビューで考えているというのであれば、緩和継続したかったらMBSを買うべきですし、トレジャリーを買った場合にはそのストックってトレジャリー市場から見たら相対的に意味のある数字とも思えないので、そもそも意味無くないですか????というツッコミをしたくなる部分ではございます。

『To date, we have realized about $140 billion of repayments of principal on our holdings of agency debt and MBS, most of it prior to the end of the purchase program. Continued repayments at this pace, together with the policy of not re-investing the proceeds, were expected to lead to a slight reduction in policy accommodation over time.』

ここで「保有MBSの償還は金融緩和状態の若干の低下に繋がると予想」という話をしているのがストックビューに基づくものではなさそうというのがこの次に出てくる理屈。

『However, more recently, as the pace of economic growth has slowed somewhat, longer-term interest rates have fallen and mortgage refinancing activity has picked up. Increased refinancing has in turn led the Fed’s holding of agency MBS to run off more quickly than previously anticipated. Although mortgage prepayment rates are difficult to predict, under the assumption that mortgage rates remain near current levels, we estimated that an additional $400 billion or so of MBS and agency debt currently in the Fed’s portfolio could be repaid by the end of 2011.』

という市場状況(金利が下がっているから予想よりもMBSの償還が早まるという話)の状態でさてどうするのという話ですが・・・・

『At their most recent meeting, FOMC participants observed that allowing the Federal Reserve’s balance sheet to shrink in this way at a time when the outlook had weakened somewhat was inconsistent with the Committee’s intention to provide the monetary accommodation necessary to support the recovery.』

なんかいつの間にか話がマネタリーベースっぽい論点に摩り替わっているのがチャーミング。

『Moreover, a bad dynamic could come into at play: Any further weakening of the economy that resulted in lower longer-term interest rates and a still-faster pace of mortgage refinancing would likely lead in turn to an even more-rapid runoff of MBS from the Fed’s balance sheet. Thus, a weakening of the economy might act indirectly to increase the pace of passive policy tightening--a perverse outcome.』

景気悪化の見方が高まって行くと市場金利が低下して、MBSの償還ペースが更に速まるので更なるタイトニング要因になるとのことですかそうですか。

『In response to these concerns, the FOMC agreed to stabilize the quantity of securities held by the Federal Reserve by re-investing payments of principal on agency securities into longer-term Treasury securities.』

ここの理屈がさっぱり訳わからん。そもそも資産買入の目的や波及ルートについて話をする時点では「資産買入は金利低下」という話をしている訳で、「金利低下によってMBSの償還が進むことによる引き締め効果を防ぐために長期国債を買う」という話とのつながりが複雑骨折しているように思えるんですが。MBS買うのなら話は判るけど。

『In response to these concerns, the FOMC agreed to stabilize the quantity of securities held by the Federal Reserve by re-investing payments of principal on agency securities into longer-term Treasury securities.』

ストックビューの話をしていた筈なのに保有資産構成変えたらそれはそれで緩和あるいは引き締め効果になるんじゃないんでちゅかねえ、という気がするんですが・・・・・

『We decided to reinvest in Treasury securities rather than agency securities because the Federal Reserve already owns a very large share of available agency securities, suggesting that reinvestment in Treasury securities might be more effective in reducing longer-term interest rates and improving financial conditions with less chance of adverse effects on market functioning.』

『Also, as I already noted, reinvestment in Treasury securities is more consistent with the Committee’s longer-term objective of a portfolio made up principally of Treasury securities. We do not rule out changing the reinvestment strategy if circumstances warrant, however.』

で、エージェンシー債じゃなくてトレジャリー買う理由は上記のようなのですが、金利を下げるという話をここでもしてて、お前ちょっと上で「長期金利低下でMBSの償還が加速した場合にタイトニングになるのを防ぐ」という話をしているのに、こっちでは長期金利を低下させるって何かどこがどう理屈として繋がっているのかさっぱり判らんのでありますが。

『By agreeing to keep constant the size of the Federal Reserve’s securities portfolio, the Committee avoided an undesirable passive tightening of policy that might otherwise have occurred. The decision also underscored the Committee’s intent to maintain accommodative financial conditions as needed to support the recovery. We will continue to monitor economic developments closely and to evaluate whether additional monetary easing would be beneficial.』

ということで、いつの間にやら話がFEDのバランスシートの大きさの話という量的緩和チックな説明になっておりまして、この資産買入に関するバーナンキさんの説明って通して読むと一体全体どの波及ルートでどういう効果を狙っているのかがはっきり言って論理もへったくれもあったもんじゃないんじゃネーノと思うのでありまして、そういう意味からも昨日も申し上げましたように、案外資産買入拡大のハードルは高いんじゃないのかなあと思ってしまいます。ロジックの整合性的には。

『In particular, the Committee is prepared to provide additional monetary accommodation through unconventional measures if it proves necessary, especially if the outlook were to deteriorate significantly. The issue at this stage is not whether we have the tools to help support economic activity and guard against disinflation. We do. As I will discuss next, the issue is instead whether, at any given juncture, the benefits of each tool, in terms of additional stimulus, outweigh the associated costs or risks of using the tool.』

この部分はまあ講演の次の部分になります「3つの追加緩和政策オプションに関する説明」の前振りになるのですが、そっちは先般来の虫干しネタシリーズでご紹介しました通りでございまする。






2010/09/14

お題「民主党代表選ですかそうですか/虫干しネタ」

しかし昨日も蒸し暑かったですなあ@東京

○ということで民主党代表選ですが(といいつつ相場雑談系)

報道では菅さん優勢って話になっていますが、市場的にはあまりどっちとか決め打ちしている感じは見受けられないなあと思います。で、結果が出るのが午後4時とかになるので今日の日中取引には間に合わないので今日はにゃんともとゆー中で超長期入札。

でもまあ何か足元では超長期1.9%近辺水準ですから何とかなるんじゃないですかと変なフラグを立ててみる訳ですが(笑)、何でそんなことを勝手に妄想するかと言いますと・・・・

昨日はともかく先週になってからってどちらかと言うと中期がヘロヘロになっている方が市場ネタとしては注目ちゅう感じになっておりまして、まあ決算がらみのお家の事情系の動きがウェイト高かったのではないかと思われますけれども、中期が売られるとど〜もこう相場的には気分が宜しくない訳でございますが、一方で超長期ってどうよとなりますと、まあ足元でそんなに過激な売り買いがぶつかってどうのこうのというのは一旦落ち着いた感じがするんですよね。単なる気のせいかも知れませんし、中期の決算がらみの売買が目立つから超長期が目立たないだけかもしれません(昨日はやっぱり弱かったりしてますし)だけなので、正直判らんっすけどね。

ということで、事前に警戒しているときはそこまで無茶な結果にはならないの法則(前日まで磐石と思ってた5年国債入札の方がコケル訳でして^^)が発動してくれるとは思うのですが、この前の30年とか流動性供給入札みたいに事前に煽る変な人が出なければ特に問題無さそうな希ガス。


という超長期入札の妄想話(内容が頓珍漢であっても無責任でありますので念の為^^)は兎も角としまして、民主党代表選挙の結果に関する金融政策への影響はどうよという話を考えてみると、ざっくりこんな感じかなあというのをちょろっと書いてみる。

小沢さんの場合:小沢さんの場合は今いろいろと話をしている件がどうも実現性という点でどうなのよという所が多々あるのが微妙なのですけれども、基本的には「財政は出します」「為替介入しちゃうよ」という感じになりますので、そうなった場合に日銀方面に掛かるプレッシャーは「輪番を拡大しやがれ」という方向性になるものではないかと思料。

菅さんの場合:一応「菅さんなら財政再建路線」的なお話もあるのですけれども、そもそも菅さんがそんなに信念持って財政再建がどうのこうのという話をしている訳ではなく、足元の円高を見ながらのドタバタを見れば判りますように、菅さんは本質的には「目の前の材料で右往左往して対症療法をするだけ」というお人であると読めますので(鳩山内閣の時に「何の対策も用意せずにデフレ宣言」という斜め上の技を繰り出した人ですし、先般消費税がどうのこうのという話をしてたのって、欧州のソブリン危機見てビックリしたのと、選挙に向けて政権担当能力をアピールしたかったんでしょと思うのですが・・・)、先般の選挙を財政再建ネタで負けたという意識が菅さんにありそうな中で本当に財政再建路線をやってくれるかはかなーり怪しいと思いますけど。で、日銀には「何だかよく判らないけれども何かやりやがれ」系のプレッシャーになりそうな悪寒。


ということで、金融政策への影響というよりは「日銀に掛かるプレッシャーの方向性を妄想」というオチになってしまいましたが(^^)、まあ小沢さんなら輪番拡大でしょというのは予想がつきますが、菅さんの場合はどうでしょうね。足元の円高を気にしていると言う事は、「日米金利差の縮小を阻止しろ」という話になるので、利下げ方向の話になるんですかね。まあ足元で政策金利下げても別に長期金利がどうなるかは知らんけどね。

まあこの政権は何を言い出すかさっぱり予想がつかない人たちでもありますので、その辺りは決め打ちが難しいっすから出たとこ勝負な所が多くて困りますな。

#ところでお縄先生によりますと「首相になったらポッポちゃんも要職に」とのことですが、ここでまさかのポッポ外務大臣とかになったらテラオソロシス


○相変わらずジャクソンホールのネタで引っ張るのだが

虫干しネタでどうもすいません。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100827a.pdf

本文8ページ以降が「金融危機前後からのFRBの政策に関する説明」部分になるのですけれども、そこで各種政策の効果について説明していて、これがまた微妙なテイストを出しています。

まずは利下げと擬似時間軸(ガイダンス文言)に関して。

『Notably, since December 2008, the FOMC has held its target for the federal funds rate in a range of 0 to 25 basis points. Moreover, since March 2009, the Committee has consistently stated its expectation that economic conditions are likely to warrant exceptionally low policy rates for an extended period. Partially in response to FOMC communications, futures markets quotes suggest that investors are not anticipating significant policy tightening by the Federal Reserve for quite some time. Market expectations for continued accommodative policy have in turn helped reduce interest rates on a range of short- and medium-term financial instruments to quite low levels, indeed not far above the zero lower bound on nominal interest rates in many cases.』

えーっと、つまり利下げと「extended period」の文言が時間軸効果(とは書いてませんが要するにそういうことよね)を出して中期などの金利の引き下げにも繋がりましたと。

で、資産買入に関しては「市場機能」と「長期金利引下げ」のパスの話をするのだ。

『The FOMC has also acted to improve market functioning and to push longer-term interest rates lower through its large-scale purchases of agency debt, agency mortgage-backed securities (MBS), and longer-term Treasury securities, of which the Federal Reserve currently holds more than $2 trillion.』

いやまあ確かに買入のアナウンスをしたときにFRBは「金融環境を改善させる為に」という説明で特攻されたのですけれども、肝心の長期金利はアナウンス時点で10年で2.5%まで低下したものの、その後4%近くまで上昇しちゃった話は完全スルーですかそうですか。

『The channels through which the Fed’s purchases affect longer-term interest rates and financial conditions more generally have been subject to debate.』

まあそらそうだわな。で、バーナンキ先生はこのように仰せです。

『I see the evidence as most favorable to the view that such purchases work primarily through the so-called portfolio balance channel, which holds that once short-term interest rates have reached zero, the Federal Reserve’s purchases of longer-term securities affect financial conditions by changing the quantity and mix of financial assets held by the public.』

ゼロ金利におけるFEDの資産買入によって、民間金融機関が他の資産を購入するようになる、というポートフォリオリバランス効果のチャネルを強調しているのですけれども、「ゼロ金利下におけるポートフォリオリバランス効果」ってのは買入単体だけでは効果はかなり怪しんじゃないかと思われる(バランスシート制約があったらリバランスは起きないでしょうし、投資するに値するものがなければ同じでしょうし)所でして、それってかつての日銀でもそんな事例があった気がするんですが。

『Specifically, the Fed’s strategy relies on the presumption that different financial assets are not perfect substitutes in investors’ portfolios, so that changes in the net supply of an asset available to investors affect its yield and those of broadly similar assets.』

うーん、その説明は怪しいと思う。

『Thus, our purchases of Treasury, agency debt, and agency MBS likely both reduced the yields on those securities and also pushed investors into holding other assets with similar characteristics, such as credit risk and duration.』

資産買入の後長期金利そのものは上昇したという件を華麗にスルーしているのが何とも。

『For example, some investors who sold MBS to the Fed may have replaced them in their portfolios with longer-term, high-quality corporate bonds, depressing the yields on those assets as well.』

という事で、「金利引下げ」「ポートフォリオリバランス効果」という話を資産買入の効果としてしているのですが、そもそもそれってちょっとどころではなくインチキっぽい感じがしますし、更に申し上げますと、今後の国債買入増額という話になった場合に、「足元でこれ以上金利を下げる効果があるのかね」(この講演でもそうですし、FOMC議事要旨にもあるのですが、30年MBS金利は歴史的な低水準にあるという認識)とか、「ポートフォリオリバランスがこれ以上起きるのかね」という論点に立った場合に、国債買入の増額を行う論理的な必然性に乏しいような気がするんですよね。

ということで、この辺りとか先日のFOMC議事要旨みてると、FRBの国債買入拡大って結構ハードル高いんじゃないの(ただしバーナンキは狸なので急に従来のロジックを放棄して買入を行う可能性はあるが)という感じは致しますです、はい。

#まだ続きがあるかもしれない(^^)









2010/09/13

お題「決定会合議事要旨より少々/その他雑談」

名寄せが週末で終了とは随分早い事ですが、これで後から実は借名口座があったりしたらファンタスティックな事になるのですが、預金保険機構大丈夫っすかねえ・・・・

#ペニーオークションってこの前東京新聞の生活欄で思いっきり注意喚起の記事が出てたんですけれどもモーサテが話題にするのってどうなのよ(最後に苦情の話を一言コメントしてますけど)


○8月決定会合議事要旨から少々

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100810.pdf

・先行きリスクの認識が声明文のトーンよりも下向きだった件について

景気見通しのところでは、先行きの下振れリスクに関する意見がちらほら出ていたのですが、声明文のトーンに今一歩反映されていませんでしたなあ、というのが今回の議事要旨の感想だったりするのであります。結局緊急会合とか謎の事をする破目になった訳でして、んなら定例の時点でもうちょっと下振れの声明文を出しておけばよかったじゃないのよと思いますが、まあ白川総裁の会見の流れをみておりますと、ここの時点では「麿は追加緩和したくないでおじゃる」だったというのが声明文のトーンに影響を与えてしまったんじゃネーノという気がするのでありました。

ちょっとだけ引用しますが例えば米国経済に関して。

『何人かの委員は、わが国のバブル崩壊後の経験から、厳しいバランスシート調整に直面する米国経済について、もともとかなり慎重な見方をしており、米国経済の現在の姿は、こうした見方に概ね沿ったものとなっているとの認識を示した。ただし、これらの委員も含め、多くの委員は、回復テンポの減速を示す指標がみられ、市場では米国景気の先行きに不透明感も出ていることには留意が必要と述べた。』

というような感じでして、先行きリスク要因に関しましてもこのような話になっておりまして。

『他方、下振れリスクとして、委員は、一部欧州諸国のソブリン・リスクを巡る動きや米国経済を巡る市場の不透明感の台頭などが、為替などの国際金融資本市場の動きを通じて、内外の経済に影響を与える可能性があるとの認識を共有した。』

『欧州のソブリン・リスクの影響について、複数の委員は、ストレステストの結果公表を受けて欧州金融システムに対する不透明感は幾分和らいだものの、財政問題そのものが解決されたわけではないとの認識を示した。』

『米国経済について、複数の委員は、回復の遅れを示唆する指標がみられていると指摘した上で、下振れリスクを以前よりも強く意識していると述べた。』

ということで欧州はともかくとして、米国経済と為替市場動向に関する指摘があるわけですけれども、決定会合の声明文ではリスク要因に関わる部分の言及ってこんな感じでした訳で。

『一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。この点、一部欧州諸国における財政・金融状況を巡る動きなどが、国際金融資本市場の動きを通じて内外の経済に与える影響に注意する必要がある。』(当該決定会合の声明文より)

つーことでですな、この議事要旨でのトーンが声明文にもうちょっと反映させておけば今回の謎のドタバタに関してもうちょっと違っていたのではないかと思いますと実にこう残念感が漂うものでございます。


・金融面の動向のところから少々

長期金利の低下に関して。

『最近の長期金利の低下について、何人かの委員は、直近で金利が1%を下回る水準まで低下した2002年から2003年頃と比較した評価を、金融機関行動の観点などから行った。これらの委員は、当時と比べると、金融機関の収益や自己資本の状況が改善している点や、リスク管理が高度化している点が、異なっていることを指摘した。』

たぶんリスク管理は表面上高度化してるかもしれません(笑)が、金融機関行動の本質は変わっていないと思います(−−;)。ただまあ2003年の超絶金利低下の時は金融機関は後ろから刃物か鉄砲で脅されて収益を上げないといけないと言う状態でございましたので、その辺が違うちゃあ違いますが、たぶん上記の「金融機関の収益や自己資本の状況が改善している点」というのはそれを美しい表現で指摘しているのでしょうなあと思いながら微苦笑するのでありました。

『これらの委員も含め、委員は、長期金利の動向に関しては、予断を持たず、金融機関の有価証券投資の動向などを、引き続き、注意深くみていく必要があると指摘した。』

別に気にせんでええんちゃいますかねえ(^^)。


貸出条件が緩和している件に関して。

『企業からみた金融機関の貸出態度や企業の資金繰りについて、委員は、緩和方向の動きが続いているとの見解で一致した。複数の委員は、企業からの資金需要が弱いことを背景に、貸出残高の前年割れが続く中、貸出条件が緩和されていると述べた。』

これはそうらしいですな、うんうん。


為替と企業生産の海外移転に関して。

『最近の為替動向について、多くの委員は、円高が輸出や企業収益の下押し要因になりうると述べた。また、多くの委員は、円高やそれに伴う株安が、企業や家計のマインドに与える影響にも、注意が必要であると指摘した。ある委員は、足もとの円高水準が持続するリスクが高まっているとの見方を示した。』

なんつーかこういう話をしているのに、何で声明文でそのトーンが出ないのよと・・・・

『何人かの委員は、円高が生産拠点の海外移転を加速させる可能性があると述べた。この点に関して、ある委員は、生産拠点の海外移転が進んでいる背景としては、円高よりも、新興国の高成長の方が大きいとの見方を示した。』

まあ為替は加速させる要因になるとは思いますが、やはり本質的には日本の成長期待が低くて、一方で新興国が高成長をしているから、という風に思いますけどねえ、とか書くと日銀の成長基盤強化貸出制度のロジックに見事に嵌ってしまいますかそうですか(^^)。

という事で、まあ8月の議事要旨を見ますと、「何で声明文のトーンをもっと下げておかなかったんですかねえ」という感じですな。結果論ちゃあ結果論ですけどね。


○なおも期末がらみの動きは続く・・・のかねえ(市場メモ)

金曜は5年国債入札が行われました。

で、まあ前日時点では皆さん「まあ下がったら買いが来るでしょ」というような楽勝イメージの入札だったと思うのですが、あにはからんや入札がテール5銭も流れやがって一旦戻しかけたものの、引けに掛けて中短期から先物が全般的に弱含みという素敵な展開。結構なんだかなあと思ったのは、短期ゾーンでして、2年とか3年とかがヘロヘロで、またまた2年カレントが0.145%(引けは0.14でしたが)とかに弱含むの巻というのはねえ。

いやまあこの前まで地獄の一丁目みたいな話をしていた米国様が、今度は急に「やはり回復」みたいな話になり(というような雨公の極端さ加減には大概呆れてしまいますが)ふと見れば米国の金利が金曜の東京朝の時点で10年2.75%だのとかまで上昇してましたので、「米国の追加緩和観測後退」→「日本の追加緩和観測後退」とか、「米国の追加緩和観測後退」→「ドル高」とかいうような流れになったというのもあって、何となく手が止まってしまったちゅうところで5年国債入札が低調になるというのは判るのですが、それにしても2年とかまで売られるというのがさっぱりワカランチ会長な次第でございまする。

それから、金曜はスクイーズ状態になりかかっていた5年90回が益々モノが出てきて91回債への入替でもあったのか(まあ89と90にやたら買いが来て強くなっているところにヘロヘロ入札で安いのが供給されたからというのはあると思いますが)89とのスプレッドが急速に解消モードになっているのも味わいがある話で、まあ期末特有の投資家行動やら、期末で業者がやや引き気味とか(これ9月だから業者サイドは大した事無くて投資家の動きが目立ちますけれども、12月は外資ちゃんの決算が集中するので業者の方が目立ったりする)いうのが色々と影響しているのかなあという感じもしますし、只の気のせいかもしれません(^^)。

まあ今回は何せ明日民主党代表選挙があるので、いい感じで「様子見」をする言い訳もあったりするのがまた話を面白くしているのかも知れませんな(^^)。


○ただの雑談コーナー

・何だかなあ・・・・

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100910-OYT1T00897.htm
関係閣僚「カチン」、日銀総裁に集中砲火

『会議では直嶋経産相が、「G8やG20などの国際的な場で、為替に対する問題提起を強いメッセージとして発するべきだ」と、口火を切った。これに対し、白川総裁は「国際的な場での問題提起は重要だ」としながらも、「必要な場合には適切に対処する」と応じた。』(上記記事より)

だからその為替に対する問題提起とやらは政治主導とやらをやっているお前らの仕事だろうがお前の頭には脳味噌入っているのかこのアホタレが!!

などと思う今日この頃ではございますが、まあ一々トサカに来ておりますと血圧が上昇して健康に良くないですし、一人前のオトナとしてあまりアホだの馬鹿だのという発言をするのも良くないので思うだけに留めて、精々選挙での投票行動に反映させるだけにしようかと感じる今日この頃(^^)。


・これはまた・・・・

某大先生のツイッターから
http://twitter.com/HeizoTakenaka/status/24104796554

『(前半割愛)与党の中で亀井氏だけが正論を吐いているというのは、なんとも不思議な光景だ。』10:36 PM Sep 10th webから (上記ツイートより)

日本振興銀行のペイオフ発動となった日に亀井先生をヨイショする発言という所に実にこう侘び寂びの世界と申しますか、奥の深い味わいを感じると申しますか、大変にアレなものを感じたのはあたくしだけでしょうか。

てか先生って「財政政策じゃなくて金融政策」って言ってませんでしたっけ???













2010/09/10

お題「今日も今日とて世間話ばっかで恐縮ですが」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100910/t10013898191000.html
日本振興銀行 破たん処理へ

ペイオフ発動キターーーーー(・∀・)ーーーーー!!!!!!!!

#6時台前半の公共放送では全国ニュース(天気予報やスポーツも含む)時間帯でこのネタを扱わず、関東地方のニュースでも全然ネタになっていませんでしたな。6時半からのニュースで2番目のニュース、7時は最初のニュースでした


○ということで振興銀行破綻とな

まあこの銀行は銀行と言いつつ肝心の決済業務をやっていないに等しいので別に潰れても決済システムに影響を与えて金融システムにリスクを与えるという事にはならないでしょうし、まあ平日にいきなりコカしても一般ピープルの日常生活を直撃する訳でもなくとゆー所っすから、まあそれはそれで「ほほー」ってなもんですが(というかね、内国為替業務をやらない銀行を「銀行」と呼ぶべきなのかというのって非常に疑問なのだが)、何せペイオフ第1号ですから色々と実務のテストケースとなるのでしょうなあ。

まあそのうち閉鎖されるのではないかと思われるので、無くなる前にこちらのページでも鑑賞しておきましょう(^^)。

http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/07_/index.html
週刊!木村剛 powered by ココログ: 07. 銀行はどこへ行く? バックナンバー

先入先出法よろしく(違)先に逝ってしまわれたのが振興銀行とは恐るべしという所でございますな。

http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2004/04/post_10.html
2004.04.21
祝!日本振興銀行開業と「投資戦略の発想法」10万部突破

大体からして手前の会社が開業するのに「祝!」とかつけるのって日本語の用法として如何なものかと思います(「感謝」とか「ありがとうございます」と書くもんだと思うのだが・・・)がそれは兎も角として、まあこちらにございますところの、

『本店一店主義を貫きローコストで運営する分、高めの預金金利でお客さまにお返しをするという経営方針です。いずれにしても1000万円までですから、元本と利息がすべて預金保険でカバーされるというところがミソです。』

というのを身を切って実践していただけるとは思いませんでした(のではなく、http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/fsa04.html#fsa050105てな感じでかつてもあたくし悪態ついてましたけどね)が、確か「金融維新」とか何とか言う本で「銀行経営者は預金を個人保証すべし」(創立時は落合社長に個人保証させるという構想があったけど直前でコケました)とか仰っておられましたので、当然ながら木村先生におかれましては丸裸になってペイオフに伴う国民負担を減らすべくご尽力賜り、経営責任とやらを取っていただける物と心から期待致したく存じます。

しかし何ですな、

『ということで、拙著「投資戦略の発想法」(講談社)で主張している年間生活費2年分にあたる「生活防衛資金」は、日本振興銀行の定期預金で蓄えていただけると幸いです。』

というのを真に受けたら生活防衛資金がペイオフ手続きによって暫く払い戻しができなくなったでござるの巻となりました預金者様におかれましては誠に残念としか申し上げようがございませんが、今回のペイオフは「初回だから色々と段取りとか決まってない」という面と、「そもそも規模が極めて小さいからそんなに名寄せとかややこしくないでしょう」という面がありますが、ペイオフの手続きに実際にどの位時間が掛かるものなのかという時間的な目安が付く最初のケースになると思いますので、まあ「預金保険の範囲内だから安全」と言っても「ペイオフ食らったら実際に引き出せるまでどの位の時間が掛かるのか」という事務的な問題に一般預金者が気が付いたりしてくれる(かどうか知らんが)ケースになるかなあ何て思う朝のひと時でした。

早速切込隊長がエントリー上げてますな(^^)。
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2010/09/post-3097.html


○昨日の国会では珍質問が色々出たようですな

昨日は最近にしては珍しくおとなしめの相場でした(しかし昨日といい一昨日といい、引け近くに超長期を売ってくる人はどういう発想なのでしょうか????引け味を悪くしたいのかただのヤレヤレ売りを引けに近いところでやりたいだけの人なのか、超長期売りポジションをコツコツ作りに行ってるのかさっぱり判りませんなあ・・・・)だったようで、まあ話題というかお笑いネタというかでは参議院財政金融委員会の閉会中審議が中々の珍獣観察シリーズだったみたいですな。会議録出たらみておかないと。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aK0CSmyfHDO8
日銀総裁:マイナス金利は理論的に面白いが実務的に難しい(Update2)

・マイナス金利ねえ・・・・

『日銀の政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標は現在0.1%。民主党の大久保勉氏は、円高を阻止するために、金融機関が資金を保有する日銀の当座預金に手数料を課すことで、マイナスの金利を実現できないかと質問した。』

・・・・えーっと意味ワカンネ。

法定準備まで含めた当座預金残高にマイナス金利を賦課するって単なる銀行(や証券など日銀当座預金保有者全て)への御用金召し上げ以外の何物でもありませんで、その御用金召し上げを回避するためには銀行は預金を受け入れないインセンティブが生じますので、預金金利がマイナスになるか、それとも預金受け入れを拒否するかという話になると思いますけど。預金金利マイナスって政治的に可能なのでしょうか。

で、そうなりますと皆様が物凄い勢いで現金を保有して現金決済をするようになると思いますので、死ぬほど不便になるというのは兎も角として、銀行券発行残高だけはアホのように伸びて、輪番が増やせるという事ですね、わかります(んなこたあ考えてないでしょ^^)。

超過準備にマイナス金利を賦課する場合は、全ての金融機関に超過準備を持たないインセンティブが生じますので、資金決済のバッファーとして一定量の残高が必要な事を勘案すると、法定準備預金が少ない金融機関は苦しいのう苦しいのうという事になりますけれども、まあそれ以前の問題として、資金供給オペレーションに対して応札をする人が極端にすくなくなり、結果として現状のような超過準備保有が減るということでベースマネーだか何だかが減ることになると思うのですけれども。

えーっとですな、マイナス金利をやるなら準備預金などの吸収方向で実施するのは実務上無理がありまして、もしやりたいのであれば資金供給方向でマイナスを実施するようになりそうな気がするんです。まあただの補助金状態になっちゃいますけど。

まあ何ですな、理論的にはマイナス金利って面白いのですが、こちらのヘッドラインにありますように、実務的には色々と難しいものがございますし、ならゼロ金利という話ですが、これはまあ実際にやっておりましたから出来るのは出来ますけれども、ジャクソンホールのバーナンキ講演じゃないですけれども、それによって下がる中長期金利による経済効果対比でどうなのよ、という話になるんでしょうなあという所で。


・これはまた大きく出ますな白川さん

同じ上記URLより。

『国債引き受けについては「現在、先進国ではもとより、世界の多くの中央銀行による国債引き受けは禁止されている。そういう中で日銀が国債引き受けを行うことは、世界の多くの国が採用している基本的なルールを踏み外すというメッセージを送ることになる」と述べた。』

『さらに、「最初は国債を引き受けても問題がないように見えるかもしれないが、多くの経験を見てみても、最初はそうであっても、どこかで歯止めがかからなくなる。これが人間の社会の現実だ」と指摘。その上で「その弱さを自覚するがゆえに、あらかじめ引き受けを禁止するというルールを作っており、これが人類の英知だ」と語った。』

言いたい事は判るが「人類の英知」はこれまた大きく出ましたな。どうせ吊るし上げ大会になるんだからもうちょっと低姿勢でもエエンジャネエノという気もするけど、アホウな質問が沢山出てトサカに来たんですかね(^^)。


・事前リーク???

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aQtAgh0Y_6L0
西村日銀副総裁:情報管理は厳正、リーク一切ない−緩和策の事前報道

『9月9日(ブルームバーグ):日本銀行の西村清彦副総裁は9日午前の参院経済産業委員会で、先に日銀が金融政策決定会合で決めた追加緩和策について時事通信が事前に報道していたとの指摘に対し、政策内容が同会合前に決まっていることはないとした上で、情報管理には厳正に注意し、リークは一切ないと述べた。松田公太議員(みんな)に対する答弁。』

こっちのほうもさっぱり判らんのですが、時事通信が事前に報道って何のニュースよという感じでして、今回の追加緩和云々の流れって日経が観測報道だか何だか知らんですけれども報道先行で物凄い勢いで煽って、その煽りに為替市場とかが思いっきり乗って市場と報道で日銀を散々っぱらから追い詰めて実施したという風にしか思えない流れだと存じますが、「事前リーク」ってあーた状況認識が真逆にも程がありますがな。

そもそも事前リークがどうのこうのというのであれば時事じゃなくて日経の方でしょとも思うのですが、どうも松田先生さまにおかれましては、「日銀は事前リークを駆使してメディアに恩を売って翼賛報道をさせていてケシカラン」というご認識のようだと想像されるのですが、今般の流れって思いっきり報道が日銀を追い詰めた挙句に「対応が足りない」とか散々ぶっ叩いているとしか思えないのですけれども、ご質問された松田先生の頭の中はコーヒー豆か何かで出来ておられるのでしょうか??????

#大体からして、「6か月のオペを10兆円追加で入れて、3か月のオペはそのまま」という内容はどこの報道機関も予想していなかったんですけどねえ・・・・・・

つーかね、そんなこと組織的かつ恒常的にやってたらいつかバレた時のリスクの方が圧倒的にでかいから普通やらないと思うのですけどねえ。


ということで、中々他にも何かオモシロヘッドラインが散見されていたのですけれども、ニュースソースを引っ張ってこれなかったのと時間が無くなって来ましたので悪態もこの辺で。


○昨日引用した総裁会見で引用し忘れた部分

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1009a.pdf

この部分のご紹介を忘れましたが、しらっと白川さんこんな事を言っててチャーミング(^^)。

『(問) 前回会合後もいくつか重要な米国経済の指標が出ましたが、米国経済の動向とデフレ懸念について、どのようにみているかお伺いします。』

『(答)(経済動向の部分割愛)デフレ懸念については、FRBのバランスシートが大幅に拡大する中で、コアインフレ率の低下傾向が続いており、エコノミストの間ではデフレリスクの高まりを指摘する声も聞かれます。もっとも、将来のインフレ動向を左右する大きな鍵を握るのは、中長期の予想インフレ率です。この点に関して、例えばインフレ連動債の対国債スプレッドの動きをみると、市場参加者による予想インフレ率は幾分低下しているようにも窺われますが、家計やエコノミストを対象にしたインフレ予想に関するサーベイ調査なども踏まえ、総合的に判断すると、中長期的なインフレ予想はなおアンカーされているとみられます。FRBも、現状、デフレに陥るリスクは小さいと判断していますが、引き続き、米国の金融経済動向については注意深く見守っていきたいと考えています。』

・・・・・ドサクサに紛れて「FRBのバランスシートが大幅に拡大する中で、コアインフレ率の低下傾向が続いており」と、バランスシートを拡大させたからといって即効でインフレ率の低下が止まらないですよ〜♪という話をしらっとしているのがとーってもチャーミングだなあと思った次第です。

いやまあそれだけの話ですが(^^)。










2010/09/09

お題「月報は下方修正/総裁会見雑感」

最近の為替の人たちは長期金利まで見て「日米金利差」で円高ドル安とか真面目に話をしているようですが、別に長期金利差を見てオープンでリアルに投資してる奴がいるとも思えないのに何でそういう理屈になるんですかね。

というか「2年の金利差が無くなったので、最近はより長い5年や10年の金利差縮小に注目しています」って単にそれ結論が先にあってドル売り円買いをする理由(というか言い訳というかエクスキューズというか)にしてるだけじゃネーノかと思うのだが・・・

と、昨日に続いて今日のモーサテでも「日米金利差縮小」と言ってる為替の専門家(昨日とは別人)とやらのコメントを聞いて朝から頭痛がしてきたので寄りから悪態でした。

#ところでどうでも良いが、石原幹事長に小池総務会長って何か非常にこの何だか感というかもうちょっと地味でもバランスの取れた人を起用しろよと思うのですけど>自民党


○市場メモ

というかもうややこしくてメモを書くのも難儀なのだが、昨日の相場も何かよー判らんけれども決算前特有のお家の事情的な売買みたいなもんとその余波によって変なノイズが入るので訳判らん。

超長期ゾーンに関して言えば、寄り前から30年3毛強(だったかな)テイクンとかワケワカランチ会長な動きから前場途中に売りでも出たのか弱くなり、入札はまあ弱かったけれども30年2%アンダーだったからさすがに戻る、でも14時くらいから徐々に怪しさ満載の雰囲気になり、14時半以降には急に超長期がコケたのでという格好になって、30年とかも結局新発の最低落札レベル近辺での引け値(引け後は引け甘だったので実力はもっと甘いっしょ)となり、前場引け(は先物14銭高)に対して大引け(は先物23銭高)の超長期ゾーンのバランスは大いに悪化という残念無念な動きに。結局なんでそういう動きになるのかさっぱり判らんですし、そもそも昨日の後場に超長期売る理由が良く判らん(やれやれ売りなのでしょうか???)のですが、いやホントさっぱり判らん動きでしたっすよ。

一方の中期ちゃんですが、5年90回を買占めみたいな事をしているような動きが相変わらずあるのはまあスクイーズとか下品な事する人は国債流通市場における円滑な流通を阻害する国賊行為であり天罰が下って地獄に落ちるべきであると思いますけれどもそれは兎も角として、火曜の前場途中までうんこ状態だった中短期ゾーンがその後素晴らしい勢いで復活してて、結局90回買えないもんだから89回も堅調になるというビューテホーな展開。昨日も超長期とかが売られたりする中でもやたら強くて、まあこれまた決算絡みの動きの余波が入ってるんじゃネーノという感じですな。

いやまあ美しい言い方をすれば、「日銀の追加緩和示唆と民主党代表選候補者の円高対応姿勢を評価すると中短期の金利は下がりやすいし、超長期の金利は上がりやすい」とかこじつける事は可能なのですが、どっからどう見てもそんな事考えて動いているとは思えない(強いて言えば2年とかの金利が下がってきたのは「追加緩和示唆(のようなもの)で冷静になった参加者が2年を0.15%近辺まで売り込む必要がないという事に気がついたので戻った」とはこじつけられそうですけれども・・・)ので、まあ何なんでしょうねこの相場ちゅう所で。

しかし債券とは違いますが、野田財務大臣が出てきて「断固たる措置を取る」という発言をする度にドル円が円高に振れるのは、様式美の世界になって参りまして、このまま日本の伝統芸能として認識されるのではないかというような勢いになっておりますな。余計な事言わなきゃいいのに・・・・・

あ、短期ですか??いやまあ3か月TBはいつものレートでしたけど、GCが10に下がるわけでもないのに0.11%割れを延々と続けるというのもどうなんすかね。まあバンクと海外の買いが続くのなら延々と続くんでしょうけれども。


○金融経済月報を見ると結構見通しが下がっているように見える

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1009.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1008.pdf(前回)

・現状判断部分はあまり変わらん

『わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』(前

余計な修飾部分がなくなったので上方修正に見えてしまうが、まあ実際問題としては全体が下げているので、この部分は上方修正じゃあないんでしょうな。ただしヲチャー的には瞬間上方修正と思ってしまうという話は昨日申し上げた通りでございまする。

『輸出や生産は、一頃に比べ増加ペースが鈍化しているが、増加を続けている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けており、とくに最近では猛暑の影響や耐久消費財の駆け込み需要がみられる。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。』(今回)

『輸出や生産は増加を続けている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けている。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。』(前回)

めんどいのでまとめて引用しましたが、輸出、生産の増加ペース鈍化というのと、個人消費の猛暑効果+駆け込み需要に関しての言及が入っています。昨日引用した声明文と同じですわな。


・先行きが結構下がっている

『先行きについては、景気は改善の動きが一時的に弱まるものの、緩やかに回復していくと考えられる。』(今回)
『先行きについては、景気は緩やかに回復していくと考えられる。』(前回)

ヘッジクローズキターーーーーーーーー(・∀・)。

『輸出は、海外経済の改善が続くもとで、当面そのペースは緩やかながら、増加を続けるとみられる。企業収益が改善基調にあるもとで、設備投資は徐々に持ち直しの動きがはっきりしていくとみられる。もっとも、設備過剰感が残ることなどから、当面、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。個人消費は、猛暑効果の剥落やエコカー補助の終了などから一時的に弱めとなる可能性が高いが、均してみれば持ち直し基調を続けるとみられる。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。そうしたもとで、生産は、耐久消費財を中心に一時的に弱めの動きとなるものの、均してみれば増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。国内民間需要は、持ち直しを続けるものの、設備・雇用の過剰感が残ることや、各種対策の効果が薄れていくことなどから、当面、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』(前回)

えーっとですな、あえてこの部分を項目別に分けずに全部まとめて引用してみましたが、前回と今回の違いで一番目立つのは「文章の長さ」でございまして、基本的に文章が長くなるというのは色々とヘッジクローズやら何やらが入るという事でもございまして、文章が短い時には見通しがシンプルという事でもありますので、これ即ち先行きの見通しが不透明というか自信度が下がっている訳でして、先行きの回復シナリオを下げてきているちゅうことですな、うんうん。

で、需要項目別に見てみると、輸出は「当面そのペースは緩やかながら」と入って若干下げ、設備投資は「徐々に持ち直しの動きがはっきりしていくとみられる」とこいつはやや上げ、あと今回2度出てきていますが「均してみれば〜基調を続ける」のはこれまたヘッジクローズ入りですのでやや下げと言う事で、個人消費と生産は下げですな。これは政策効果の剥落分は兎も角として、その先の回復見通しに関してのヘッジクローズが入ったという感じですかね。

で、物価と金融環境ですけれども、こちらについては国内企業物価の現状分析で「弱含み」と下げになったのと、ターム物金利の現状分析で「弱含み」と金利が下がっていますねという話をしている以外は内容に変化は無いので面倒なので引用割愛。


○総裁会見雑感

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1009a.pdf

時節柄円高の質問ばっかでうんざりという感じですが。

『(問) 本日の公表文の中で、「適時・適切に政策対応を行っていく方針である」との表現がありますが、これは、今後更なる金融緩和の余地があるということなのでしょうか。』

『(答) 前回の臨時会合後の記者会見で、私は経済の下振れリスクの方により注意する必要があると申し上げました。その上で、適時・適切に対応をするという金融政策の構えを申し上げましたが、日本銀行の金融政策に対する基本的な姿勢を正しく理解して頂くために、今回、公表文でもその旨を明らかにした方がいいと判断したわけです。従いまして、趣旨は公表文に書いてあることに尽きますが、「先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく」、この文言以上でも以下でもないと思います。』

いやまあこれでも白川さんとしてはサービスした積りなのでしょうが、「先行きの見通しが著しく悪化した場合には金融緩和を行うのは当然です」みたいな話でもすりゃあ良いと思うのですけど、中々その辺って難しいんでしょうなあと言うところで、本石町日記さんのブログの最新エントリーでもこんな指摘が。

http://hongokucho.exblog.jp/13948723/
金融政策決定会合&会見の雑感

・総裁会見

「必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく」の説明が苦しい。これは、FRBを意識した市場との対話の一環なのだが、根がマジメなので、それが緩和であるとは言いにくい。市場期待を操るには、ある意味、悪人でないと務まらないので、今後も苦しい局面が続くように思う。

下のエントリーで、内田さんがFRBの機動的対応を指摘されていたが、市場関係者の立場では、「適当にうまく言えばいいのに」と私も思うのだけれど、日銀はこの適当というのが苦手。例外は、言語的な才能があった福井さんなのだが、あれは個人芸なので、真似はできない。また、下手なのに真似すると、ろくな事にもならないであろう。(上記エントリーより引用)

・・・・まあそうなのかも知れませんね。となると報道機関のお祭りバイアスと言うか金融政策に関する報道をもうちょっとこう落ち着いたものというか内容を伝えるような物にしてほしいもんだと思います。

つまり、最後の質疑にあるんですけどね。

『(問) 先週の追加緩和策にもかかわらず、市場では急激な円高が続いたり、与党からも日銀の対応は不十分ではないかという声も挙がっています。こうした声があるということは、景気の下振れリスクに対応しようとしている日銀のメッセージがきちんと伝わっていないのではないかとも考えられますが、どうお考えでしょうか。』

『(答) 日本銀行の情報発信を私が評価するというよりも、日本銀行としては、日本銀行が考えていることが正確に伝わるように今後とも努力をしていきたいと思っています。』

本当は「お前らちゃんと勉強して報道しやがれ」と言いたいんでしょうなあと思うのはあたくしだけですかそうですか。

何でかと言いますと、例えばこんな質問が今回の会見で飛んでいたのですが。

『(問 )2点伺います。(前半割愛)2点目は、そうした事態になった場合に、日本銀行はどのような政策メニューを考え得るのかを伺います。バーナンキ議長は、やるかどうかはわからないが4つメニューがあると講演していますが、日本銀行は、今まで仮のメニューは公表していないと思います。その点について、スタンスを含めて教えて下さい。』

えーっとですな、バーナンキは確かに4つのメニューの話はしましたが、メリットとデメリットの話を延々と並べるわ、そのうち2つは思いっきりダメ出しするわという話でして、まあ流し読みしたりベンダーのフラッシュだけ見てますと如何にもバーナンキが4つのオプションを時と場合によって打つべく用意しているように見えますけれども、先日まで引用しておりましたジャクソンホール講演(がその4つのメニューね)のテキストを読みますと別に今すぐ発動するわけでもないですし、そもそも内2つはケチョンケチョンにダメ出ししているので、メニューに載っていないと思うのでありまして、まあ何だかなあという質問ではございます。ちなみに白川さんの答えはこんな感じ。

『また、2 つ目の質問については、以前にも申し上げていますが、政策を考える際に、予め特定の手段を念頭に置いたり、あるいは逆に排除するということはありません。常に様々な政策の選択肢を検討しています。そうした選択肢のメリット・デメリットを点検し、比較考量した上で、最も適切な政策を採用していくのが、私どもの基本スタンスです。今ここで政策のメニューを列挙はしませんが、どのような政策メニューが有り得るのか、そのメリット・デメリットは何であるのかを、しっかりと点検していきたいと思っています。』

まあ何ですな、日銀の場合は「企業金融特別オペ」とか「成長基盤強化貸出制度」とか画期的というか想像の斜め上を行くというか、事前にメニューを出さないほうが良さそうな政策が出てくると言う事もございますので(って何か褒めてんだかけなしてるんだか判らんモノの書き方ですが^^)中々出せないというところでもあろうかと思いますです。

まあメリットデメリットに関してああでもないこうでもないという話をバーナンキがしてもそこはスルーされるのに、恐らく日銀がその話をすると、報道機関の皆様におかれましては直ぐに説明の片方だけを切り取られて報道し、その報道を見た人たちが「日銀は緩和政策に対して消極的でケシカラン」とか「日銀は常に引き締めバイアスがあってケシカラン」とか物凄い勢いで難癖をつけてくるに500エスクードと言ったところでございますので、その辺りに関してはまー正直時間の掛かる話としか思えない所が残念なところでございます。

・・・ということで、政策インプリケーションはあまり無いような気がするけど、一応月報とか見たら見通し下げてるからまあ追加緩和(演技も含む)は排除してないでしょ、と読むのが普通だと思いますけど、米国が緩和のやるやる詐欺を継続するうちは日銀もやるやる詐欺でタマを残しておかないとっつー感じはしますわな。

どちらにしても民主党代表選挙結果によってまた前提が変わってくる可能性もありますし、まー決め打ちしてもシャーナイというところで。













2010/09/08

お題「債券市場は反応したというのに為替市場は全然関係ないとな(決定会合レビュー)」

さて今度はユーロ安のターンですかそうですか。しかし決定会合の後に日銀と関係ないネタで円高に振らされるとか日銀のツキの無さには落涙を禁じえませんなあ。

しかし為替市場の注目が「30年国債入札」で「日米長期金利差の縮小に注目した動きでドル安円高に」って大真面目に言われますとさすがに頭が痛くなるのですが。いやまあコメントしている方は「経済的に意味のある話じゃないけど、市場がネタにしてるだけですよん」って話をしてるのでしょうけれども、一般ピープル(というか半可通の政治家や学者様)が「じゃあ円高対策で長期金利を下げるようにしろ」とかアホな事を言い出し兼ねないのでコメントもうちょっと考えてほしいもんですなあ、とモーサテ見て思うのでした。


○追加緩和を示唆なのですかねえ

決定会合結果
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100907.pdf(今回)

前回の臨時会合と前回の定例会合の声明文はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100830.pdf(前回の臨時)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100810.pdf(前回の定例)

とりあえず声明文を比較してみる。

・現状判断

『わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』(前回定例)

臨時会合の声明文はコンパクト版なので前回の定例と比較してみましたけれども、「海外経済の改善を起点として」というのが抜けているのでありまして、これって普段から日銀文学の鑑賞に勤しんでいるマニア的には第一感として「上方修正」と思うのですけれどもね。即ち、「海外経済の改善を起点として」というヘッジクローズのような物が抜けるという事で自律的な回復の経路に乗ってきているんじゃネーノというイメージになってしまったりする訳でござんすが、実際のところ後のほうのリスク要因で米国経済の先行き不確実性の高まりというのが入っているので、結局どうなのかがサパーリ判らんという部分でもあります。ただまあヲチャー的にはこの部分を単独で切り出すと「上方修正」と読んでしまいますなあというところで。

・現状判断の個別需要項目

『すなわち、輸出や生産は、一頃に比べ増加ペースが鈍化しているが、増加を続けている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けており、とくに最近では猛暑の影響や耐久消費財の駆け込み需要がみられる。公共投資は減少している。』(今回)

『すなわち、新興国経済の高成長や世界的な情報関連財需要の拡大などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けている。公共投資は減少している。』(前回定例)

輸出と生産に関しては判断を引き下げ、その他は変化無く、足元の個人消費に関しては猛暑と駆け込み需要要因が発生しているという話ですので、全体としては判断がちと下がった(上がった方は一時的要因を挙げているだけで基調的な部分の文言に変化が無いから)というところですわな。

・金融環境の現状判断

『この間、金融環境をみると、緩和方向の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(今回)

これは前回と変化はありません。


・先行き見通し

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小していくと考えられる。』(今回)

はいはい前回と同じ前回と同じ。


・リスク要因

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある。』(今回)

しぶとく残っていますなあ(前回と同じ)。

『一方で、米国経済を中心とする先行きを巡る不確実性の高まりと、これを背景とした為替相場や株価の不安定な動きが続くもとで、わが国経済の下振れリスクに注意が必要である。』(今回)

『この間、米国経済を中心に、先行きを巡る不確実性がこれまで以上に高まっており、為替相場や株価は不安定な動きを続けている。こうしたもとで、日本銀行としては、わが国の経済・物価見通しの下振れリスクに、より注意していくことが必要と判断した。』(前回臨時)

『一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。この点、一部欧州諸国における財政・金融状況を巡る動きなどが、国際金融資本市場の動きを通じて内外の経済に与える影響に注意する必要がある。』(前回定例)

ということで、前回の臨時会合からの変化はなく(まあ先週ですから当たり前ですが)というところです。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

物価の部分は変化ないっす。


・毎度お馴染みの決意表明部分

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。そのために、強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援を図ってきており、こうした中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく。日本銀行は、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく方針である。』(今回)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。こうした認識のもと、強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援を図ってきた。日本銀行としては、今後とも、中央銀行として最大限の貢献を粘り強く続けていく方針である。』(前回臨時)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(前回定例)

ということでですな、前回の定例会合以降の変遷としては、まず前回の臨時会合で「強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援を図ってきた」(キリッ)というのを入れたのですが、今回は更にサービスフレーズが入りまして、それが「先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく方針である」というのですわな。

まあよく見たら別に当たり前の話をしているだけ(必要と判断されたときに適時適切に対応するのは当たり前ですよね^^)なのですが、まあやっとサービスフレーズ入れやがったかとゆー感じでありますな。


○で、サービスフレーズが入ったのは良いのですが・・・・・

決定会合結果が出た時には「ふ〜ん」でスルーしていたのですが、よくよく見ればサービスフレーズがありましたよということで、フラッシュで『追加金融緩和の可能性を示唆=日銀』(共同通信のフラッシュをブルームバーグが配信した分を引用)というのが出た辺りからユーロ円金先が戻ってきたり、債券先物とかが戻ってみたり、前場うんこ状態だった中期ゾーン(5年89回なんて先物前日比高いのに5糸甘オファーとかナンジャソリャ状態)が復帰してきたりとゆー事で、一応決定会合結果に敬意を表したような気がせんでもないという動き。

#単に中期の外しが一巡して絶対水準的に0.4%接近の5年は買いじゃろという買いが入っただけではないかというツッコミはしないように(^^)

てな訳で、債券市場は(結果的には)決定会合結果に敬意を表したような動きをしていたのですが、折角情報ベンダーが「日銀が追加緩和を示唆」と報じているというのに、為替市場では全然円安に振れず、というか円高方向になってまして、これはいかなる事ぞとゆー所ですが、例のユーロ圏ストレステストのインチキがどうのこうのという話からユーロが売られてみたり、米債が買われてみたりという動きがございまして、為替市場ちゃんの方はそっちに反応してたという次第な訳ですな。

#そう考えると今日の30年国債入札なんて為替的にはどうでもいいんじゃないのと思うのですが、日本の方は材料にしないんでしょ結局・・・・・

まあ実は円債が強くなったのも決定会合のサービスフレーズじゃなくて米債が強かったりユーロがヘロヘロだったりしてた方が要因じゃないのという気も思いっきりするのですが(^^)、まあまあそれはそれと致しまして、決定会合で折角サービスフレーズを入れたというのに肝心の為替市場が1ミリも反応しないとは残念としか申し上げようがございませんですなあ。

しかもちょうどユーロ問題がネタになってまた円高進行するという涙の出るような間の悪さに更なる残念感を覚えるものでございまする、ナムナム。

話は違いますがそういやこんなのも。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=anDz1LxIgKx0
民主・海江田氏:小沢氏は「非常に厳しい」−インタビュー(Update2)

『小沢氏が次の民主党代表になるとの観測が後退したのを受けて7日の債券相場は反発。』

・・・・いやあそれネタとしては面白いですけれども、まだまだ全然固まってないでしょうし、それに菅さんが勝っても従来の財政再建路線が頓挫するリスクはあると思うのですけどねえ(苦笑)。


○その他関連雑談

・狸への道は遠い

つーことでサービスフレーズが出たのですが、会見でサービスフレーズについて質問された白川総裁は「必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく方針である。これ以上でもこれ以下でもない」と発言したようで(ベンダーで見たりしましたし、今朝のモーサテでもその部分が放映されていました)して、折角サービスフレーズ入れているんだからもうちょっと威勢の良い物の言い方ちゅうのがあるだろうにと思ったあたくし。

いやまあ毎度毎度俊ちゃんを引き合いに出すのも何なんですけれども、適当にサービス発言を繰り返してなんちゃって緩和拡大を続け、まあ譲れない線は譲らなかったという俊ちゃんと比較すると、そらまあご本人のキャラクターだから仕方ないですけれども、もうちょっと工夫ができんもんかなあと思うのでありましたです、はい。


・で、追加緩和の条件ってどうなのよ

再掲する訳ですが。

『日本銀行は、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく方針である。』

ちなみに英語版ではこうです。

『The Bank will carefully examine the outlook for economic activity and prices, and, if judged necessary, take policy actions in a timely and appropriate manner.』

ふむふむ、ところでこの「必要と判断される場合」ですが、何がトリガーなのとか雑談してた訳ですが、この判断の部分ですけど「判断『される』」という受動態(英語も受動態)なのですから、きっとこれは誰かが判断して日銀がそれに引きずられるんだよ!!!という与太話になりまして、じゃあ誰が判断するのかというと市場なのか政治なのかという所でしょうか(^^)。

・・・という訳ではなくて、実際はこの受動態表現はいつもこういう表現になっていますし、別に日銀だけの言葉遣い方法じゃないですので誤解の無いように申し伝えます(^^)。


・これは中々

権丈先生の勿凝学問の最新版がいつもよりも量が多くて読み応え十分。
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/korunakare328.pdf

・・・・ちょうど目の前の公共放送で「お金はあるんです」と力説するトンチキが「50兆、80兆とかあるんです」とか言ってまして、国の財政赤字の話に対して「余裕があるんです」という説明を山岡なにがしがしているのですが、しまいに「日本には対外債権がたくさんあるんです」「貿易収支は黒字なんです」とか言い出す始末。それって民間の資産なんすけど。

きっと山岡なにがしさんに置かれましては、最終的には民間資産を全部強制収用して財政問題を解決しようとしているんですね!!!!オソロシス

しかも今度は国のバランスシートに関してグロスとネットの話をごちゃごちゃにして説明しているし、この山岡なにがしというのは義務教育からやり直したほうが宜しいのではないかと思うのですが、こんなのが政権与党の副代表なんですよねえ・・・・・とほほのほ。











2010/09/07

お題「市場雑談と虫干しネタで(またまたジャクソンホール)」

モーサテの滝井キャスター、単に言わされているだけだと思うのですけれども、為替のコメンテーターに向けて「今日は日銀の政策決定会合ですが政策変更はあるでしょうか??」と質問したので朝から盛大に吹いてしまいました。ノートPCに水は禁物なので注意♪

#話は違うが「カンリョー主導」がいかんみたいだが、ど素人がテキトーに引っ掻き回した民主党様の言う「政治主導」の結果が普天間問題のテイタラクなんじゃネーノと思うのですが、そんなに官僚が悪の権化なんですかねえ・・・・・

○何か知らんが中期がコケるとな(市場メモというか俺様備忘録)

昨日の債券市場ちゃんですが、雇用統計が予想より悪くなかった(と言っても内容は悪いと思うのですが)事を受けた米債安の影響だか何だか知らんですが、まあ先物が30銭くらい弱く寄りついておったんですが、何と朝から中期が弱いという素敵な展開。

中期が弱いとゆーのはよーするに投資家の売りが出ておる訳でして、しかもドカンと売りが出ると言えばもう業態的にはあの辺のお方とゆーところでございますので、何をお考えなのかは売った人じゃないとよー判りませんけれども、エクスポージャーを落としに逝っているとか、益出しするのにこのゾーンしか無いとか、まあその手のお家の事情的な残念感溢れる展開でございまして、実に香ばしい動きに。

でもって超長期とかは割と確りしてました(結局取引終盤にはだいぶコケて言うほど強くはならなかったが)ので、そらまあ1.8%台後半になってきたし買いが来るざんしょというのと、さすがに売りの人も売るものが無くなって来た(なお、下がりすぎてしまって「売ると売却損が出るので売れない」という状態なだけの可能性はありますが^^)のでしょうなあとは思う所でして、昨日の下げは中期ゾーンと先物が引っ張っていたようで何だかなという感じで。

5年カレントが0.3%台後半になってきて2年カレントが0.15%に接近してきましたというところなのですが、それって6月の終わり頃とか7月の頭辺りの水準で、追加緩和とかいうような話はさっぱり無いけれども時間軸は効いているというような状況だと思いますので、何かそう考えますと随分時間が戻った感じですが、そこまで急に金融政策だの外部環境に変化があったのかよと思いますと微妙な気はするんですけどね。いやまあそこまでの上げがやり過ぎと言われればそれまでなんですけれども、別に親の敵のように売らなくてもという感は。

あとですな、期末というのもあるのでしょうが、同償還の5年89回と5年90回の価格形成が益々無茶になっていまして、クーポンが高い方の89回が90回対比で引値ベースで1.5毛甘く(先週末の引けは1毛スプレッド)なっていまして(実際はもっと差があると思う)、89回債は益出しだか決算調整だか何だか知りませんが売りが出る一方で90回債はアホのように買う人がいて、またスクイーズとかやっとるんかいなと実に見苦しい動きに。全くもう何だかなというところですが、下がっている相場で期末前とかになると益出ししながら新発の買いとかゆーのが目立つという毎度の動きになって誠に遺憾でございます。

まあ何ですな、話はそれますけれども、フェイル慣行の定着に向けて(なのかどうか忘れたが)チャージが導入とかされる訳ですが、こーゆーどう見ても意図的に買占めやっているとしか思えない行為(いやまあ特定の誰かが買占めしていると断言していませんので念の為^^)に関しても何とかならんのかねえと思いますけどねえ。国債市場特別参加者って流通市場に対する義務もあったと思うんですけどねえ・・・・


○超今更ですがバーナンキの追加緩和オプションに関する考察(ジャクソンホール講演)

先々週のネタですいません。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100827a.pdf

先日(先週の金曜)に長期資産の追加買入に関しての考察部分を引用しましたが、昨日引用したFOMC議事要旨にありますように、この長期資産買入に関してはマネタリーの効果の話をしているのか金利の話をしているのかの説明が微妙で、どうも金利を下げる話をしている所が「おいおい大丈夫か」という所なのでござんしたが、他の政策オプションに関しては基本的にダメ出ししているので、そのダメ出し理由をサラサラと読んで見ませう。

・ガイダンス文言の変更は大幅な見通しの変更が行われた場合に実行という事か

本文14ページ以降。

『A second policy option for the FOMC would be to ease financial conditions through its communication, for example, by modifying its post-meeting statement.』

ガイダンス文言の変更はどうよという話になるのだ。

『As I noted, the statement currently reflects the FOMC’s anticipation that exceptionally low rates will be warranted “for an extended period,” contingent on economic conditions. A step the Committee could consider, if conditions called for it, would be to modify the language in the statement to communicate to investors that it anticipates keeping the target for the federal funds rate low for a longer period than is currently priced in markets. Such a change would presumably lower longer-term rates by an amount related to the revision in policy expectations.』

毎度おなじみのガイダンス文言の変更により、市場の金融政策に関する期待を変化させて長期金利を下げてみたり(ってここでも長期金利の話をしているのってどうなのよと思います)というような話をしています。で、その後この手の事をやっている(いた)カナダやBOEや日銀の事例を紹介していますが、FRB的には別に現状で問題ないという認識を示しています。

『A potential drawback of using the FOMC’s post-meeting statement to influence market expectations is that, at least without a more comprehensive framework in place, it may be difficult to convey the Committee’s policy intentions with sufficient precision and conditionality. The Committee will continue to actively review its communication strategy, with the goal of communicating its outlook and policy intentions as clearly as possible.』

現状のガイダンス文言が問題なくワークしており、かつ米国の現状を見た場合に、特定の経済指標などのようなものをフォーカスして条件をつけた形での金融政策の継続のようなコミットメントを行うのは難しいです。先行き見通しに大きな変化が無い限りは現状を続け、必要になった場合はまた変更する、という風に脳内意訳しましたけどどうでしょう。


・超過準備付利金利下げは「FF市場が機能不全になるのでダメ」という話

日銀歓喜、というよりは「今頃気がつきやがったかこのケチャップ野郎」というのが本音なのかもしれませんが(^^)、本文15ページから。

『A third option for further monetary policy easing is to lower the rate of interest that the Fed pays banks on the reserves they hold with the Federal Reserve System. Inside the Fed this rate is known as the IOER rate, the “interest on excess reserves” rate. The IOER rate, currently set at 25 basis points, could be reduced to, say, 10 basis points or even to zero.』

超過準備付利金利引下げで市中金利は下がるという効果がありますが、という話をしてその後がダメ出しコーナー。

『However, under current circumstances, the effect of reducing the IOER rate on financial conditions in isolation would likely be relatively small. The federal funds rate is currently averaging between 15 and 20 basis points and would almost certainly remain positive after the reduction in the IOER rate. Cutting the IOER rate even to zero would be unlikely therefore to reduce the federal funds rate by more than 10 to 15 basis points. The effect on longer-term rates would probably be even less, although that effect would depend in part on the signal that market participants took from the action about the likely future course of policy.』

実効FF金利が現状で15−20bpで、これを下げて長期金利に(またここで長期金利の話をしている)どの程度影響があるかといえば大した影響は無いという説明でございますな。

『Moreover, such an action could disrupt some key financial markets and institutions.』

更に、ということで市場機能論キタコレ。

『Importantly for the Fed’s purposes, a further reduction in very short-term interest rates could lead short-term money markets such as the federal funds market to become much less liquid, as near-zero returns might induce many participants and market-makers to exit.』

短期市場関係者歓喜の展開(^^)。

『In normal times the Fed relies heavily on a well-functioning federal funds market to implement monetary policy, so we would want to be careful not to do permanent damage to that market.』

日本の事案からやっと学んだかという感じですな、と前回のゼロ金利(量的緩和)時代に長期債方面に出稼ぎに行っていたあたくし(いや別にどっちが本籍と言うのは無いのだが^^)としては思うのでありました。


・インフレ目標数値の引き上げに関してはもうモロにダメ出し

『A rather different type of policy option, which has been proposed by a number of economists, would have the Committee increase its medium-term inflation goals above levels consistent with price stability.』

IMFのブランシャールさんのペーパーで一時話題になってまして、鬼の首を取ったようにネタになっていた時期もありましたが、バーナンキ先生華麗にダメ出し。

『I see no support for this option on the FOMC.』

これは(^^)。

『Conceivably, such a step might make sense in a situation in which a prolonged period of deflation had greatly weakened the confidence of the public in the ability of the central bank to achieve price stability, so that drastic measures were required to shift expectations. Also, in such a situation, higher inflation for a time, by compensating for the prior period of deflation, could help return the price level to what was expected by people who signed long-term contracts, such as debt contracts, before the deflation began.』

以下、そこそこ詳しく説明しているのですけれども、コーン前副議長がブランシャールさんのペーパーが出たちょっと後くらいの講演(だいぶ前にご紹介したと思いますが)で丁寧にダメ出しをしておりまして、そのロジックとほぼ同じでござんすので、引用は割愛します。


○しかしFRBの長期金利コントロールと言う説明大丈夫か

さてまあ昨日引用したFOMC議事要旨にしてもそうですし、(順序的にはこっちの方が早いのですが)ジャクソンホールでの講演もそうなのですが、足元でFRBの政策ロジックがどうみても「長期金利のコントロール」みたいな話になっているのがオソロシスなところでございます。

まあど〜せ狸のバーナンキ先生ですから、都合が悪くなったらまた別のロジックを持ち出して長期金利コントロールの話を無かった事にしてしまうのでしょうけれども(^^)、そもそも論として金融緩和効果が景気の押し上げに繋がったり、インフレ期待の引き上げに繋がったりした場合というのは長期金利なんぞ平気で上昇するのであって、そーゆー意味で金融緩和の効果だの波及ルートだのを「長期金利」に置くのは非常に危ない橋のような気がするんですよね。もしかしたらMBS買入と同じように長期国債の買入をどんどん行えば需給がタイトになるから大丈夫とか思っているのかもしれませんが、そもそもの市場規模が違いますし、長期国債の買入拡大が財政マネタイズだという話になったら長期金利は更に上昇しちゃいますので、そう話は簡単ではないと思うのですよね。

それこそ、足元ちょっと米債金利上昇(たいして上昇してないが)してますけれども、これがもうちょっと上昇して10年3%とかになったときに国債買入期待(というか催促)になってきたりしたらどうするんでしょうねえ、と今後の展開を眺めたいと思います。


そーいえば話はワープしますが、昨日引用しましたFOMC議事要旨なんですけど、引用しながらサラサラ流しましたが、この部分ってどさくさに紛れてしらっとお洒落な事を言ってるんですよね、ってゆーのを読者様から指摘されましたので再掲(^^)。

『Most members judged, in light of current conditions in the MBS market and the Committee's desire to normalize the composition of the Federal Reserve's portfolio, that it would be better to reinvest in longer-term Treasury securities than in MBS. While reinvesting in Treasury securities was seen as preferable given current market conditions, reinvesting in MBS might become desirable if conditions were to change.』(8月FOMC議事要旨より、昨日の再掲)

これね、どさくさに紛れて「Committee's desire to normalize the composition of the Federal Reserve's portfolio」などと仰せでして、よーするに信用緩和なんぞやりたくありませんなああっはっはと仰せのようでございますが(^^)、同じ趣旨の話を日銀が行ったら十字砲火を浴びて大変なことになるでしょうなあと思うと、実に味わいが深いものを感じます。とゆーか米国の緩和を見習って中小企業向け債権20兆円買って量的緩和とかいう訳のわからん提言をしておられるどこぞの方はこの部分に関してのご意見を頂きたいものでございますなあという感じで(^^)。









2010/09/06

お題「FOMCの量的緩和が量的緩和じゃない件について/市場メモ」

まずは市場メモより。

○流動性供給入札があった訳ですが

金曜は流動性供給入札と輪番があったのですが、超長期に買いでもあったのかどうか知りませんが前場から超長期が妙に堅調。まあ水準が下がって下げ渋るとかいうのなら金利水準が上昇したからとゆーことで判らんでも無いのですが、金曜の場合は何故か超長期が前日比強い所が買われてしまうという素敵な展開に。前場引けてみたら先物1銭安に対して20年ゾーンが2毛強/1毛5糸強とか大変に素敵な状況に。まあ強いところまで買うのはそらまあ投資家さんの買いでもあったんでしょうねという事なんでしょうけれども、流動性供給入札で3000億円の供給があるのにそんなに強くするもんなんですかいなと????と思っていたわけですよ(本当)。

で、結果はこの通り。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/nyusatu/2010/resul037.htm

平均6糸甘の足切り7毛3糸甘ってどんだけ流れてるのよという所で、前場強かった超長期は華麗に大失速するわ、結果出た瞬間の債券先物は豪快に下がるわという大変にお洒落な結果になりました。

えーっとですな、確かにここ暫くの間って超長期ゾーンでそれなりのロットをマーケットインパクトを低く投資家が買おうとすると国債入札か流動性供給入札でしか無かったという状況が続いてましたので、入札が強い→投資家のニーズが強いですね→更に強含みというような感じで、「入札で投資家の強いニーズを確認して更に強くなる」という流れがあって、入札のたびに煽って行く様な動きがあったんですよね。

しかしですな、金曜の場合ってその前週からの超長期売りによって超長期の需給が悪くなっている所でありまして、そらまあ売った投資家もそのうちまた買うのかもしれませんけれども、たぶん昨日の今日でいきなり気合入った買いもあるわけ無く、まあ水準がやっと戻ってきたから押し目買いという人が買いを入れてくる状況であって、これまでの状況と背景が違うんでネーノと思っておったので、あたくし的には????だったという所なんでござんすけど、一つ覚えで煽ったこたあさすがに無いとは思いますけど何とも言い難い金曜の市場ちゃんでございました。


○FOMC議事要旨を読んでみたのですが国債買入が「金利低下」とな

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20100810.htm(HTM版)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20100810.pdf(PDF版)

・まずはFEDスタッフの景気見通しに関して

景気見通しに関する部分に関する議論を読んでてどっかで見た事あるなあと思ったのですが、ジャクソンホールでのバーナンキ講演での経済に関する部分(って紹介してませんが、汗)と被っているなという感じであります。

『Staff Economic Outlook』ということで、FEDのスタッフによる景気見通し部分を引用しますと。

『In the economic forecast prepared for the August FOMC meeting, the staff lowered its projection for the increase in real economic activity during the second half of 2010 but continued to anticipate a moderate strengthening of the expansion in 2011. 』

ということで本年後半の見通しを下げたけれども、来年の見通しは引き続き緩やかに回復を継続すると言う事で。

『The softer tone of incoming economic data suggested that the pace of the expansion would be slower over the near term than previously projected. Financial conditions, however, became somewhat more supportive of economic growth. Interest rates on Treasury securities, corporate bonds, and mortgages moved down further over the intermeeting period; the dollar reversed its April to June appreciation; and equity prices edged higher. Over the medium term, the recovery in economic activity was expected to receive support from accommodative monetary policy, further improvement in financial conditions, and greater household and business confidence. 』

つーことで、足元の経済データが弱くて経済の拡大ペースは予想よりも弱いけれども、金融環境は幾分か景気回復の後押しになってきており、その内容としては長期金利が低下してたり、ドルが低下している事など(ユーロ圏のストレステスト結果を受けて環境が改善しているという認識になっているのでそれもあると思いますが)。今後の中期的な見通しとしては、緩和的な金融政策の継続やら、今後の更なる金融環境の改善や家計や企業のコンフィデンスが高まる事によって経済活動の拡大が予想されますと。

『Over the forecast period, the increase in real GDP was projected to be sufficient to slowly reduce economic slack, although resource slack was still anticipated to remain quite elevated at the end of 2011.』

じゃあそのresource slackの影響で物価はどうなりますかという事ですが。

『Overall inflation was projected to remain subdued over the next year and a half. The staff's forecasts for headline and core inflation in 2010 were revised up slightly in response to the higher prices of oil and other commodities and the depreciation of the dollar. Even so, the wide margin of economic slack was projected to contribute to some slowing in core inflation in 2011, though the extent of that slowing would be tempered by stable inflation expectations. 』

基本的な見方には変わりはないですな。うんうん。


・FOMCの景気見通しについて

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から。

『In their discussion of the economic situation and outlook, meeting participants generally characterized the economic information received during the intermeeting period as indicating a slowing in the pace of recovery in output and employment in recent months.』

つーことで、ここ数か月のデータは回復のペースが減速していることを示す、てな話でして以下現状認識の話が続くのですけれども、その結論の部分ですけれども。

『Thus, while they saw growth as likely to be more modest in the near term, participants continued to anticipate that growth would pick up in 2011.』

見通しは下がったものの回復は回復と。

で、更に項目別にいろいろな話をしていまして、これがまた色々と面白いのですが、引用しているとキリがないのとそもそもこの部分前座なので(汗)途中を全部端折って結論のパラグラフをば。

『Weighing the available information, participants again expected the recovery to continue and to gather strength in 2011. Nonetheless, most saw the incoming data as indicating that the economy was operating farther below its potential than they had thought, that the pace of recovery had slowed in recent months, and that growth would be more modest during the second half of 2010 than they had anticipated at the time of the Committee's June meeting.』

『Some policymakers whose forecasts for growth had been in the low end of the range of participants' earlier projections viewed the recent data as consistent with their earlier forecasts for a weak recovery. A few participants, observing that month-to-month data releases are noisy and subject to revision, did not see the recent data as clearly indicating a change in the outlook.』

『Many policymakers judged that downside risks to the U.S. recovery had become somewhat larger; a few saw the incoming data as suggesting a greater risk that private demand for goods and services might not grow enough to offset waning fiscal stimulus and a smaller impetus from inventory restocking. In contrast, most saw a reduced risk of financial turmoil in Europe and attendant spillovers to U.S. financial markets.』

ということで(だいぶ手抜き)ダウンサイドリスクが拡大という話にはなっているのですけれども、最初の所にありますように、メインの回復シナリオそのものは変えて居ない訳で、じゃあそれで追加緩和が直ぐにあるのかというとそらどうなのよという感じはしますけれどもねえ。

『Policymakers generally saw the inflation outlook as little changed. They observed that a range of measures continued to indicate subdued underlying inflation and that growth in wages and compensation remained quite moderate. Many said they expected underlying inflation to stay, for some time, below levels they judged most consistent with the dual mandate to promote maximum employment and price stability.』

で、以下ですが「デフレのリスクは極めて小さいがディスインフレのリスクは拡大」という判じ物のような話が。

『Participants viewed the risk of deflation as quite small, but a number judged that the risk of further disinflation had increased somewhat despite the stability of longer-run inflation expectations. One noted that survey measures of longer-run inflation expectations had remained positive in Japan throughout that country's bout of deflation. A few saw the continuation of exceptionally accommodative monetary policy in the United States as posing some upside risk to inflation expectations and actual inflation in the medium run.』

どさくさに紛れて「サーベイによる長期的なインフレ期待がずっとプラスになっている日本でもデフレになっとりますがな」という話が入っているのがチャーミング。


・んでもって肝心の政策決定のところですけれども

前座が長くなってしまいましたが、『Committee Policy Action』の所が今回面白かったので引用大会は更に続く。

『In their discussion of monetary policy for the period ahead, Committee members agreed that it would be appropriate to maintain the target range of 0 to 1/4 percent for the federal funds rate. Members still saw the economic expansion continuing, and most believed that inflation was likely to stabilize near recent low readings in coming quarters and then gradually rise toward levels they consider more consistent with the Committee's dual mandate for maximum employment and price stability.』

つーことで今回はメインシナリオに変化はないのよね。

『Nonetheless, members generally judged that the economic outlook had softened somewhat more than they had anticipated, particularly for the near term, and some saw increased downside risks to the outlook for both growth and inflation. Some members expressed a concern that in this context any further adverse shocks could have disproportionate effects, resulting in a significant slowing in growth going forward.』

ただまあ先行き見通しに関しては景気見通しを下げて成長とインフレに関するダウンサイドリスクの認識を引き下げたと。

『While no member saw an appreciable risk of deflation, some judged that the risk of further near-term disinflation had increased somewhat. More broadly, members generally saw both employment and inflation as likely to fall short of levels consistent with the dual mandate for longer than had been anticipated. 』

まあ物価に関する部分が下振れに関する所では注目されてくるのではないかとあたくしめは勝手に想像するのですがどうでしょう。


・国債の買入はマネーの拡大ではなくて金利政策という無理筋の議論

『Against this backdrop, the Committee discussed the implications for financial conditions and the economic outlook of continuing its policy of not reinvesting principal repayments received on MBS or maturing agency debt.』

ということでMBSの償還金を再投資しない場合のインプリケーションについてという話をしているのだが、これがどう見ても無理筋っぽい議論になっている、というのが実は本日のお題だったりします(前振りが長いですかそうですか)。

『The decline in mortgage rates since spring was generating increased mortgage refinancing activity that would accelerate repayments of principal on MBS held in the SOMA. Private investors would have to hold more longer-term securities as the Federal Reserve's holdings ran off, making longer-term interest rates somewhat higher than they would be otherwise.』

MBSの償還によって資金が吸収されるので、その分他の長期証券の買い余力がなくなり、結果として金利が上昇する、というポートフォリオリバランス効果的な話をしています。これって先日ご紹介した(途中ですが)ジャクソンホールでのバーナンキ講演でも同じネタを振っているのですが、どうもFOMC的には資産買入に関して「ポートフォリオリバランス効果」「金利の低下」的なロジックで通そうとしているのでしょうなあと思われます。

『Most members thought that the resulting tightening of financial conditions would be inappropriate, given the economic outlook.』

ふーん。

『However, members noted that the magnitude of the tightening was uncertain, and a few thought that the economic effects of reinvesting principal from agency debt and MBS likely would be quite small.』

さすがに話が無理筋なのを認識しているのか、この「引き締め効果」に関してどの程度あるのかは不確実で、数名は「この再投資に関する効果は極めて小さいんじゃネーノ」と指摘していると言う所にFOMCメンバーの良心を感じたのはあたくしだけでしょうか???

『Most members judged, in light of current conditions in the MBS market and the Committee's desire to normalize the composition of the Federal Reserve's portfolio, that it would be better to reinvest in longer-term Treasury securities than in MBS. While reinvesting in Treasury securities was seen as preferable given current market conditions, reinvesting in MBS might become desirable if conditions were to change.』

MBSの市場状況と、FRBのバランスシートの内容改善という観点からすると、MBS償還金の再投資はMBSではなく長期財務省証券で行うのが適切ということのようですな、MBSの購入はMBS市場の環境が変化した場合に行うかもと。

『A few members worried that reinvesting principal from agency debt and MBS in Treasury securities could send an inappropriate signal to investors about the Committee's readiness to resume large-scale asset purchases.』

数名のメンバーはこの決定が間違ったシグナルを市場に送る事を懸念とな。

『Another member argued that reinvesting repayments of principal from agency debt and MBS, thereby postponing a reduction in the size of the Federal Reserve's balance sheet, was likely to complicate the eventual exit from the period of exceptionally accommodative monetary policy and could have adverse macroeconomic consequences in future years.』

再投資を行う事によって将来の出口政策が困難になる事を懸念する人もいるとな。


・ということで何とマネタリーではなく金利政策で再投資の実施とな

『All but one member concluded that it would be appropriate to begin reinvesting principal received from agency debt and MBS held in the SOMA by purchasing longer-term Treasury securities in order to keep constant the face value of securities held in the SOMA and thus avoid the upward pressure on longer-term interest rates that might result if those holdings were allowed to decline.』

もうすっかり「FRBの次の一手は量的緩和」という話になっていますし、まあ長期国債の買入拡大って普通はマネタリーを拡大するというルートの話になると思うのですが、たぶん無理筋としか思えませんけれども、FOMCでは長期資産の買入に関して「長期金利への影響」を考えて実施するというロジックで突っ込んでいく模様。

ですから、FOMCの先般の措置が「量的緩和」なのか「量的中立」なのかという話もございましたが、実はFOMC的なロジックは量の維持は金利上昇を抑制するというそれってどうなのという方向、つまりマネタリーの話は兎も角として長期金利に注目という建付けにしちゃっているんですな。

いやまあそれって建付けとしてそういうロジックを出すけれども、また実際の話は別でしょという事になるのかもしれませんが、長期金利は中央銀行がコントロールしようと思って市場で買入をするということになると、それこそ無茶苦茶な量を買わないといけなくなるような気がしますので、あまりこの「金利ルート」の話をすると自分のロジックが後で首を絞めてきそうな気がするんですが。そもそも景気が回復してインフレ期待が盛り上がれば中銀が少々長期国債を買っても長期金利は平気で上昇するんですから・・・・・


と、まあマニアのあたくしは思うのですが、きっと狸のバーナンキ先生は「細けぇこたあいいんだよ!」という所なんでしょうかね。以下おまけですが更に見通しが悪化したら追加緩和しろとか、そうは言っても引き続き出口ツールの検討を続けるべきであるという意見があるのでそこまで引用するあるよ。

『Several members emphasized that in addition to continuing to develop and test instruments to facilitate an eventual exit from the period of unusually accommodative monetary policy, the Committee would need to consider steps it could take to provide additional policy stimulus if the outlook were to weaken appreciably further.』

あと、毎度のガイダンス文言は変化させる必要がないという話もあったので引用。

『Given the softer tone of recent data and the more modest near-term outlook, members agreed that some changes to the statement's characterization of the economic and financial situation were necessary.』

以下はホーニッグさんの反対理由の話ですが、まあそれはいつもの通りなので割愛。










2010/09/03

お題「市場メモ/バーナンキの長期資産買入拡大に関する説明(今更のジャクソンホールネタ)」

○市場メモ

昨日の債券市場ですが、朝から何かまたまた超長期が弱くてあっさリ1.8%レベルになった(なんだかもう超長期があまりにも派手に動くので段々場中の居所が良く判らなくなって来ましたが)と思ったらその後謎の買いで戻りまして、ナンジャソリャと思っていたら今度は輪番オペが無かったという所でまた売られるでござるの巻。

何か昨日は前場にやたら債券先物の出合いがあったんで、それなりに売買があったんだろうなあと想像されましたが、その間に超長期の気配が結構飛んでいたような気がします。後場になると一転して静かな展開になったみたいですが、引け際また長い所がヘニャヘニャになって先物30銭安の142円21銭に対して10年新発は5毛甘の1.110%(この前までの既発債ベースだと4毛違うので1.070%になります)で20年カレントは7毛5糸甘の1.825%とこれまた香ばしい展開に。

何せ先週火曜日に入札やった時には平均落札価格100円78銭だった新発超長期120回債(1.6クーポンね)が1週間ちょっとで1.825%ということで、価格にして4円の下落ですよ4円(^^)。ちなみに水曜の引けが1.515%だったので、高値からは4円以上の下げなのですけれども、木曜以降に変わったのはお縄先生と考えますとお縄効果恐るべしと言うことになってしまいかねないのがオソロシス。まあ昨日も何となく申し上げましたが、お縄先生で超長期売りみたいなテーマで一丁やってみますか的な動きなのか、それともそもそもの負債デュレーションを勘案した場合に買う必要も無いのに、「超長期の方が値上がり幅は大きい上に、元の利回りが高いから期間収益も確保できる素晴らしい債券」とか調子に乗って買っていた人たちが相場を降り出したのが「俺も俺も」状態になっているだけなのかは存じませんが、まあ因果関係はともかくとしてお縄効果とか言われてもシャーナイですな(^^)。


ところで、短い所なんですが、GCはまあ落ち着いてきて0.105%レベルになっていますけれども、今回の流れで「ほほー」と思っているのは、この間短国のレートがろくすっぽ上昇しないことです。まあ利下げ期待(というかヘッジというか)で0.103%だのというようなレベルに金利が下がったのは良いとして、やっぱり目先利下げは無さそうですね、という状況になっても足元GCレベルでは間尺に合わない水準できっちり買いが入っていまして、GCレベルとの差で持ちにくいという人以外の買いがそこそこ増えてきているんですかねえという感じでございます。長い所から退避資金が来ている、というだけではちょっと説明できなさそうな気が。まあ良く判らんですけど、短期のところは資金余剰感が益々強まっているのではないでしょうかねえ。


○バーナンキの追加緩和オプションに関する説明(今更のジャクソンホール)

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100827a.pdf

順序からすると前の方の話を先にしたような気もせんでもないのですが、本文12ページ以降の『Policy Options for Further Easing』の所から。

『Notwithstanding the fact that the policy rate is near its zero lower bound, the Federal Reserve retains a number of tools and strategies for providing additional stimulus. I will focus here on three that have been part of recent staff analyses and discussion at FOMC meetings: (1) conducting additional purchases of longer-term securities, (2) modifying the Committee’s communication, and (3) reducing the interest paid on excess reserves. I will also comment on a fourth strategy, proposed by several economists--namely, that the FOMC increase its inflation goals.』

つーことで、追加緩和オプションとしてFOMCで検討されているものとして、(1)長期資産の追加購入(2)政策ガイダンス文言の変更などのようなコミュニケーションの変更(3)超過準備に対する付利金利の引き下げ、というのをあげて、それに加えて(4)インフレ目標の数値引き上げ、という話をしていますというのは先日もちょっと書いたとおりで。

で、長期資産の追加購入に関しての説明を引用しようかなあという事で。

『A first option for providing additional monetary accommodation, if necessary, is to expand the Federal Reserve’s holdings of longer-term securities.』

『As I noted earlier, the evidence suggests that the Fed’s earlier program of purchases was effective in bringing down term premiums and lowering the costs of borrowing in a number of private credit markets. I regard the program (which was significantly expanded in March 2009) as having made an important contribution to the economic stabilization and recovery that began in the spring of 2009.Likewise, the FOMC’s recent decision to stabilize the Federal Reserve’s securities holdings should promote financial conditions supportive of recovery.』

ここの効果に関する説明部分は引用する前のほうにある(話の順序からして最後の部分を引用してるのだから当たり前なのですが、汗)んですけど、資産買入の目的と効果に対して「金利の引き下げ」という話をしているのですが、実際問題としてその金利の引き下げというのは、ここにもありますように「リスクプレミアム」の引き下げには繋がると思う(即ち、市場機能がおかしくなって価格発見機能が崩壊している為に余計についてしまったリスクプレミアムの引き下げによってMBSなどの金利を低下させるということ)のですが、市場機能が普通に回っているときに長期資産の買入を行っても、2009年の3月後半以降の米債相場のように、政策効果による景気回復期待などから長期金利そのものは上昇しても全くおかしくないのでありまして、追加でトレジャリーの購入をするというときに「金利ルート」での説明はロジック的に苦しいと思うのですけどね。

『I believe that additional purchases of longer-term securities, should the FOMC choose to undertake them, would be effective in further easing financial conditions.』

とは言え、金利ルートの説明だとそれは微妙に苦しいと思います。ここから先はいつの間にやら「FEDのバランスシート拡大の効果」という話に微妙に変わっているのがチャーミングで、量的緩和政策と信用緩和政策を意図的なのか意図的じゃないのか(たぶん意図的でしょう)混同させながら話をしているので、この定量的な効果に関する考察が微妙に抜けたままで話を進めているなあと思うのですよね。

『However, the expected benefits of additional stimulus from further expanding the Fed’s balance sheet would have to be weighed against potential risks and costs.』

まあ当たり前ちゃあ当たり前ですが、「このような政策には効果もあるけれども、潜在的なリスクやコストもあります」って言う話をバーナンキさんがするとは(^^)。「ケチャップを買え」だの言ってた「ヘリコプター・ベン」様とは到底思えないですなあと申しますか、まあ所詮は人の国に対する政策提言なんてそんなもんという事がヒシヒシと感じられて、実に味わいの深い(不快、とも言うが)一節でございますなあ・・・・・

で、以下リスクの説明。


『One risk of further balance sheet expansion arises from the fact that, lacking much experience with this option, we do not have very precise knowledge of the quantitative effect of changes in our holdings on financial conditions. 』

長期資産購入の定量的効果については経験が少ないので良く判らんとな。

『In particular, the impact of securities purchases may depend to some extent on the state of financial markets and the economy; for example, such purchases seem likely to have their largest effects during periods of economic and financial stress, when markets are less liquid and term premiums are unusually high. The possibility that securities purchases would be most effective at times when they are most needed can be viewed as a positive feature of this tool. However, uncertainty about the quantitative effect of securities purchases increases the difficulty of calibrating and communicating policy responses.』

ということで、ここでさっきの点を説明していますけれども、長期資産の買入効果は対象となる市場の市場機能が低下し、流動性が低下してストレスに晒されている時に大きな効果を発揮するかれども、そうじゃないときにさてどうなのよという指摘もしていますな。

『Another concern associated with additional securities purchases is that substantial further expansions of the balance sheet could reduce public confidence in the Fed’s ability to execute a smooth exit from its accommodative policies at the appropriate time.Even if unjustified, such a reduction in confidence might lead to an undesired increase in inflation expectations. (Of course, if inflation expectations were too low, or even negative, an increase in inflation expectations could become a benefit.) 』

これは以前から指摘されている話で、バランス拡大によってFEDの出口政策が困難になるという見方が広がった場合に、望ましくない結果になるでしょうという話。

『To mitigate this concern, the Federal Reserve has expended considerable effort in developing a suite of tools to ensure that the exit from highly accommodative policies can be smoothly accomplished when appropriate, and FOMC participants have spoken publicly about these tools on numerous occasions.』

それを避けるために色々なツールを用意してますし、その点は大丈夫よと。

『Indeed, by providing maximum clarity to the public about the methods by which the FOMC will exit its highly accommodative policy stance--and thereby helping to anchor inflation expectations--the Committee increases its own flexibility to use securities purchases to provide additional accommodation, should conditions warrant.』

とまあここまで丸引用したところで(手抜きにも程がありますかそうですか)時間が無くなったので他の手段に関しては週明けに。

しかし何ですな、大事なことなので2度書きますが(^^)、ケチャップを買えといっていたヘリコプター・ベン大先生が「このような政策には効果だけではなくコストとリスクがあります」とか仰せになるとは何と言うか実に味わいのあるものです事よという感じです(^^)。










2010/09/02

お題「民主党代表選雑談とかその他少々」

ジャクソンホールはどうしたという突っ込みはしないように(汗)。

○これってお縄先生効果なのですか??

昨日の債券市場も何かまあ威勢良く動いておりまして、暫く前の何だか今日もじり高みたいな困った市場とは別の意味で困った市場になっておりまして実にアレでございます。

で昨日ですけれども、寄りから何か弱めだったのは前日が月末でインデックス長期化向けの買いにぶつける為に最後に無理無理持ち上げた節があるのでその分剥落したのかなあとか思ったのですが、まあ10年国債入札に向けて下げてましたわな。何か超長期が重そうなのがよー判らんけどあらまあって感じでしたが。

で、10年国債入札の札入れ終了して後場寄りからいきなりドカンと先物が下落。いやまあ入札が思ったよりもニーズが無くて入札がうんこになるんじゃないですかという事のようですが、ちょうど昼休みに小沢さんの政見に関する報道がありましてですな。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=auWnT05co3Jw
小沢氏:円高対策で市場介入に言及、子ども手当満額支給も(Update2)

昼休み時間に出ていたのは「子供手当て満額支給」「為替介入」とか「日米は対等の関係でどうのこうの」とかいうようなヘッドライン(ブルームバーグによります)でしたが、まあそれを受けたのかどうか知りませんが、後場に入って暫くはドル円が何となくドル高に振れて平均株価もちょっと上昇してたのでこじつけるとお縄先生効果ともいえたりします(えー)。

というかですね、昨日書き忘れましたけど、一昨日の債券市場でも小沢さんが「菅首相と(手打ちに向けて)会う予定は無い」と発言したというヘッドラインが出た瞬間先物が6銭だか7銭だか売られまして、デイチャート見るとそこだけいきなり垂直下げ(というほどの値幅ではないが)していまして、何ちゅうかここへ来て「お縄先生効果」というネタで相場を手掛けようとしている人がどこかにいるなあという感がひしひしとする今日この頃。

でまあ入札はあまり強くなかったのですが、それほど悲惨なものでも無く、1.05%レベル(償還が3か月長くなって発行日の関係もあって既発から4毛甘くなっているので10年金利の水準がずれたように見えるのは要注意^^)という所で買いも入ったようですが、引けに掛けて何かよー判りませんがまた超長期とか弱くなって終了とな。まあ何だかよー知らんけど前日のブルフラット(何か途中からブルフラットして最後に更に強くしてたのでインチキっぽい感じはあったけど)はナンダッタンダという感じっすな。

ま、本当にそうなのかはヒジョーに怪しい(昨日あたくしが悪態ついた財務副大臣じゃないですけれども、自分が矢面に立って責任もって動く気も無いのに威勢の良い事を言う(介入も選択肢とか言う暇があったら理解を求めに渡米しろとよって感じでが、ど〜せそれは事務をやるカンリョーの仕事だと思ってるんでしょうなあ)のは民主党の皆様の得意技なので、お縄先生といえどもその例外では無いと思われるのですが・・・)のですが、足元では一種のギャグだと思ってた「お縄先生でバラマキ財政復活どころかバラマキの凶悪化」というのが真面目に絵として認識されてきとるんかいなという夏の終わりに何の怪談だよというところでございますが、まあそんな感じで。


○えーっと「証券化して財源」って誰がそんな下らん知恵つけてるのよ

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=axmqYvlEe19Q
小沢氏:国の資産のうち200兆円くらいは証券化できる考え方もある

『9月1日(ブルームバーグ):民主党の小沢一郎前幹事長は1日午後、代表選立候補に伴う菅直人首相との共同会見を行い、政策実行の財源について「600兆円の国の資産のうち200兆円くらいは証券化できる考えもある」と指摘した。』(上記URLより)

えーっとすいません、それって国有資産売却と同じなのですが、国有資産を売却した分で国債の償却(やら発行減額)をしなかったら、ネットで言えば赤字国債を発行して財源にするのと同じなんですけれども、この先生は200兆円も新規赤字国債発行する気なんでしょうか???

まあ恐らくは「国有資産だって言ったって例えば国会議事堂の土地建物とか売れないでしょ」という意味で「証券化する」という話だと思うのですが、それって足元で証券化することによって資金が出るかもしれませんが、例えばそれを不動産証券化商品にした場合って、その証券化商品には利息をつけてやらないと誰も買わないのでありまして、国会議事堂の賃料の支払いが永久に発生する訳ですから結局の所「将来の賃料払いをする事によって足元でキャッシュを入れる」という事で、赤字国債発行よりも下手したらタチが悪いと思うのですが。

だったらまだストレートに売却し(て折角ですから国会議事堂と議員宿舎を竹島にでも移転させたら如何でしょうかwww)た方がまだ筋の良い話で、証券化なんかしたら仲介する業者(投資銀行か不動産金融屋なのか知りませんが)に口銭が無駄に落ちるし、その後も管理だ何だと言って口銭が落ちる話なので、まあギョーカイ人としてはウハウハな話ですが、いち国民として考えた場合にはどうもねえという感じで、入れ知恵してるのどこの誰だと申し上げたくなりますな。


しかしまあ他にも何かこうアレなヘッドラインがございまして。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a1invHOI1Ewk
小沢氏:政治家が自らの責任で予算決定できる体制つくる−共同会見

えーっとすいません、予算って国会で審議して承認されないと実際に決定しないのでして、現行法の下では「政治家が自らの責任で予算を決定している」のですけれども、これはどういう意味で仰っているのでしょうか???もしかして従来は予算審議に対して責任感も何も持っておられずに党利党略の為のみに自民党政権の予算審議の妨害をしたりしておられた。という事なのでしょうか????しかも政治主導とか言って「陳情は幹事長の所で一本化します」とか今年度予算の策定の時に話をしてましたと記憶しておりますが?????

「自らの責任で予算決定」という文言に「俺様の言う事を聞く人間に(以下自主規制)」というのを感じてしまうのはうわなにをするくぁwせdrftg

#悪態もほどほどに>自分


○6か月オペが実行されましたが

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of100901.htm

落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba100901.htm

6か月ものオペの按分比率は26.2%ですが、月曜に実施された3か月の固定金利オペの按分比率は22.2%とゆーことで3か月ものオペより6か月ものオペの方がニーズが少ないとはこれいかなる事ぞということですな(^^)。

まあ1秒で言えば「利下げの可能性も残っているからより長い期間のオペだと利下げに当たってマズーの確率が上がるから」という事なのですけれども、「より長い期間の低金利の資金供給」ということで実施した固定金利オペの皮肉っちゃあ皮肉な所。

つまりですな。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0912a.pdf

の別紙『「共通担保資金供給オペレーション基本要領」中一部改正』(PDFの2ページ目)の中にありますように、固定金利オペに関しては・・・・

『ロ.固定金利方式

貸付日における誘導目標金利(本行が金融市場調節方針において誘導目標として定める無担保コールレート(オーバーナイト物)の水準をいう。)を貸付利率とする方式。』

という事で、これって貸付日の金利で固定なのですけれども、まあこういう風にしておかないと、先行きに金利上昇が見込まれるような時に「ターム物金利の抑制効果」が発揮できないという事を勘案して決定したという事なのではないかと思われます。つまり、固定金利だけど途中で政策金利にスライドするというのだとそもそもそれって固定金利かよというツッコミもさることながら、利上げが予想されたときにメリットの無いオペになってしまうので、つまりは近い将来の利上げ観測が起きた時に、このオペに応札するメリットが無いという事になるでしょうから。

しかし、現在のように先行きの政策金利低下の可能性がある、と市場が認識する(今は目先急に下がらないでしょと思いますが)ようになった場合、貸付日のレートで固定という形になってしまいますと、利下げを本気で100%織込みに行った場合に応札が堂々の札割れになるというのが確実でありまして、これはこれで中々面白いというものです。この際折角ですから固定金利オペを1か月ものから6か月ものまで作って「市場の織り込む利下げ確率」について按分具合から逆算してみたらどうでしょうか(冗談ですので念の為^^)。

あと、更に余談になりますが、このオペの要綱があるうちはオーバーナイト金利の誘導目標水準をバンドにするのって無理ですな。固定金利オペのレートをどこに置くのかが決まらないですから(^^)。

で、そういや固定金利と言えば企業金融支援特別オペというのもありましたが、あの時には何でそういうこと考えなかったのかなあと思ったら・・・・・

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/mok0812c.pdf

の別紙1『企業金融支援特別オペレーション基本要領』の『6.貸付利率および利息の徴収』(PDFの3ページ目)の中にありますように、

『(1)貸付利率は、本行が金融市場調節方針において誘導目標として定める無担保コールレート(オーバーナイト物)の水準の貸付期間中における平均値とする。』

と、こちらは平均値になっているのですな。いやまあオペとしての建て付けが違います(このオペは「CP市場などの金利低下」を企図したものだがら)ので違う作りになるのは当然ちゃあ当然なのですが、ふーんと思ってしまいました。


○そういやTIBORが低下してますな、とか

何か知らんがTIBORが低下。まあ「ターム物金利の低下を促す」ってったって既に債券系の金利はこれ以上低下できない所まで低下しているのでありまして(相変わらず昨日の3か月TB入札も落札結果発表後は0.105%で取引されていたみたいですしねえ)、下がる余地のある「ターム物金利」といえばTIBORさんでありまする。で、2日のTIBORちゃんですが・・・・

日本円TIBOR:0.36154%(前日0.36846%)
ユーロ円TIBOR:0.35538%(前日0.36308%)

という事で良い感じで下がっているのですが、よくよく見ますと1日とか2日とかに大手のリファレンス銀行さんが続々と0.38%→0.36%みたいな感じで威勢良く呈示レートを下げているのですが、まあやっと空気を読んだかという所でしょうか。

#まあ蒸し返すようだが、外山局長のTIBOR発言報道が無かったら正直言って逆にもっと早くTIBOR下がっていたんじゃねえのと思うのだが・・・・・

どの辺まで呈示レート下げる積りなのかは存じませんけれども、まーこの辺の動きを見てるのか見てないのか知らんですが、ユーロ円金先も堅調でございますわな、うんうん。


あと、企画局からこのようなペーパーが。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j13.pdf
「成長基盤強化を支援するための資金供給」について

・・・・・うーむ、何と言う美しいペーパー(棒読み)。






2010/09/01

お題「総裁会見とかその他少々」

FOMC議事録も読みたいがさすがに今日は勘弁。ブルームバーグの記事はこちら。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=a.I9q.L5icbM

どういう誤ったシグナルなのか読みたいが時間が無いので遅くても今週末には読むだよ(キリッ)。


○その前に悪態系雑談

・昨日の日経新聞

あたしゃご案内の通り日経読まないのですが、まあ普通に皆さん読んでいるので金利村の話題になっていたのは日経の1面での経済金融部長の論説のようなもの。「危機感、世界に伝わらない」というお題で「小出し対応はケシカラン」とか批判している訳なのですけれども、臨時会合実施だの何だのと散々っぱら報道で煽って日銀を散々追い込んで市場に織り込みさせたのはどこの誰だと小一時間問い詰めたい所であります。というかてめえらで煽り報道やって、その煽り報道どおりに日銀が動いても「足りない」とか言い出すとかイクラちゃんにも劣る駄々っ子かと(イクラちゃんだってカツオ君あたりが上手い説明をすると収まると言うのに^^)。

・在金分離の観点で武藤総裁に反対した党の人がこういう話をするのですね

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a3WMw4e.JuQ0
池田財務副大臣:非不胎化介入も必要、断固たる措置(Update1)

非不胎化介入の件って相変わらず理解してないんですねえ(自動的に国庫短期証券が発行されるのですけど・・・・)というのもさる事ながら。

『池田財務副大臣は、国会議員や民間エコノミスト、有識者らでつくる「デフレ脱却国民会議」の公開シンポジウムで語った。同副大臣は「与えられた権能、選択肢は排除しない」とも述べた。さらに「過去の介入がうまくいったのは、各国の容認、理解に加えて日銀の協力があったからだ」と説明した。』(上記URLより)

だからその各国の容認を取り付けてくるのが「財務副大臣」のお前の仕事でシンポジウムだか何だかで威勢の良い事ほざいている暇があったらお前は全身全霊をささげて米国や欧州の当局と協議しやがれと小一時間問い詰めたい所ですが、その小一時間も勿体無いので問い詰めはしません(^^)。しかしまあ物の見事に財務副大臣としての認識ねえだろこの(自粛)は。

それからですな、結局出来ないのなら下手なこと言わない方が良い訳で、断固とした措置がどうのこうのと言い続けて結局本当は何も出来ないのですという話になったら「この政策当局は言うだけ大将で何もできないからドンドン攻略しよう」という感じになってきますし、しかも「断固たる措置」だの折に触れて言うもんだから、適当にその度に相場がちょっとだけ戻りをつけるので、ポジションの良いガス抜きが出来てドル売り円買い相場の息が長くなっちゃうんですよね。もうどこの頭岡椎太郎さんという感じっすな。

そして「在金分離」で武藤総裁就任に反対した民主党様だけの事はあるなあと落涙を禁じえなかったのはこの続き。

『池田副大臣はさらに、円高の流れを止める手段の一つとして「ゼロ金利の選択肢の可能性もあるべきだ」と指摘、日銀の対応に注文をつけた形となった。』

えーっと、以前福井総裁時代に0.5%への利上げを行うかという時に、自民党の中川秀直さんあたりが文句言ったときにも批判していた民主党さん、そして「財金分離」とか言って武藤総裁就任に反対した民主党さんなのですが、党の人どころか「財務副大臣」というポストにある方が日銀の「具体的な政策手段」に対してご発言ですかそうですか。

野田財務大臣などが今般の追加緩和(のようなもの)に対して色々と発言をしているのと整合性が取れないというのもありますし、そもそもお前らの言ってた財金分離と全然違うし、「財務副大臣」が日銀の具体的政策手段に圧力とか意味ワカンネ。自民党政権時代もまあそれらしい発言してる人はいましたけど、それは党の人が発言しているだけで、内閣の人はそういう発言はしないという嗜みはあったんですけど、この政党はどうなっとるんだと。

まあそれ以前の問題として、この先生ジャクソンホールでのバーナンキ議長の講演で「ゼロ金利にしてFF市場(日本で言えば無担保コール市場)を壊してしまうと政策遂行上大きな問題が生じる」という話をしている事もチェックしていないのでしょうかねえ(ニヤニヤ)。

で、何回か引用していまして恐縮ですが、本石町日記さんの3年前の指摘が相変わらず見事な予言の書になっている訳で。

http://hongokucho.exblog.jp/6974947/

『民主党の経済(特に金融系)戦略は、個人的には政府系金融機関(含む郵政)などの主張(国営のまま縮小)は支持できるが、金融政策については@独自のポリシーがない(与党に抑圧された日銀という対抗戦略のみ)Aトンデモ系の利上げ論が横行−しているという印象だ。特に、日銀を与党に抑圧された存在とみなす戦略は、仮に与党になれば日銀を抑圧するのが見え見えで、薄っぺらな感じである。』(上記URLより、強調は引用者による)

以上悪態終了(^^)。


で、総裁会見ですけれども。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1008b.pdf

○米国は緩和維持で日本は追加緩和だという説明はある意味そうだがやっぱり違うと思う

まあ当然なのですが、米国の追加緩和(をしているような)姿勢と、日銀の追加緩和(のようなもの)に対する(一応やっているのにやっているように見えない)姿勢の比較感に関する質疑が多うございまして。

例えば4ページ。

『FRBの追加緩和ですが、FRBの金融緩和の姿勢・方針について解説し、その上でお答えしたいと思います。FRBが8 月10 日のFOMCで行った決定は、リーマン破綻後の証券買入れにより保有することになったエージェンシー債やモーケージ証券の償還がこのところ増加しており、それを放置すると金融引き締めとなることを回避するために、償還資金見合いで長めの国債を買入れることにより、証券の保有残高を維持するというものです。金融の引き締めが生じてしまうことを回避することが目的であると、バーナンキ議長が今回の講演でも言っていますが、言い換えると、金融緩和を継続することを表明したものです。今回、ジャクソンホールでの講演では、経済が大幅に悪化した場合には追加的な緩和措置を採る用意があることを発言されました。これは、「大幅に悪化した場合には」ということです。』

明日以降ジャクソンホールの講演ネタやりますが(すいません)、まあこの話も微妙に従来のFRBの説明と整合性が取れてなくて、買入の時にはこの施策を「量的緩和ではない」と言ってて、しかも「金利を下げる」「市場機能を回復させる」というのを目的及び波及経路としている(講演でもその話をしている)のに、残高維持に当たっては「定量的な部分」に着目して緩和維持という説明をするというのもバーナンキ先生インチキじゃないのと思うのですが、まあここでは白川さんはFRBの説明を基にして話してますな。

というのは兎も角として、FRBの決定が「緩和維持」であることはその通りと言えばその通り。

『今回、8 月の決定会合と本日の臨時会合で日本銀行の採った措置についてですが、まず8 月の会合では、FRB同様、金融緩和を維持することを決定しました。それから、先々の政策について、日本銀行は、毎回の決定会合の公表文において、中央銀行として最大限の貢献を粘り強く続けていくことを明確に示しています。言い換えると、経済・物価動向や金融情勢の変化などによって、必要と判断される場合には、適時適切な対応を行っていくということであり、この点でもFRBの金融政策運営と同じと理解しています。違いは、FRBの方は現在、追加緩和の措置を採っているわけではないということです。』

っていう説明は瞬間を切り取るとその通りではあるのですが、それが激しく空しく響くのは何故かということを考えないといかんわけで。

つまりですな、米国の場合はそれまでが力強い景気回復ヤッホーで出口政策模索ですよとやっていたのが、8月FOMCで折れちゃったという「それまでの方向性とこれからの方向性」の変化があった訳でして、それに対して日銀の場合は牛の涎の如くダラダラと同じ状況が続いているという相対感がある(でまあ今回追加緩和のようなものを実施しましたけれども、その前から散々事前報道する馬鹿野郎がいて、金融政策に関して何かその勝手に期待を膨らませる他市場の人たちがいたので、ある意味今回も方向性として「あら残念」となってしまった訳で、事前に煽って肝心の政策効果を先に全部以上先食いさせる結果になったどこぞの経済(悪態につき自主規制))というのもありますし、白川総裁が毎度毎度(それはそれで正確かつ正直に話をするので一面では良い話なのですが)超原則論しか披露しないで、バーナンキ議長のような福井の俊ちゃんもビックリのインチキプレゼンをしないという面もあろうかと。

つまり「方向性が変わらない(まあ物価マイナスだから変えようが無いが)」というところと、「インチキプレゼンをしない」からという所が日米の違いであって、現象面を切り取ってみた場合にどうなのよという話をしても残念ですが空しく響くのではないかと思います。

まあでもこの点は難しい訳で、じゃあインチキプレゼンで良いのかといえば、やはり本来はインチキではなくちゃんとした話をすべきであるとあたくしもさすがに思うのですが、何せ総裁会見にやってきて福井総裁(当時)が大ファンであります所の阪神タイガースの快進撃に関して質問するアホウが報道機関にいる(今その人は国会議員だったような気がしますがorz)ような状況でありますので、まあインチキ、といいますかハッタリも必要なところではないかと。特に平時だったら兎も角、色々と経済が難しいときですので、ある種のハッタリ(インチキインチキというと何なので途中からハッタリに変更^^)もこういう状況下では必要とされるのではないかと。


○日本の方が元々先行きを下に見ていたんです(キリッ)

今回の会見では「何かしょーもないタイミングで追加緩和(のようなもの)をやらされました」という腹いせなのかどうか知りませんが、「ジャクソンホールに行ってきたらこんな話がありました(キリッ)」ってのが目立ちますな。

えーっと、人間として正直で非常によろしいのですが、どうせ追加緩和(のようなもの)を実施したのですから、こういうときにはもっと嬉々として「ほらほら追加打ち込んだですぜエッヘッヘ」みたいな会見をして「やる気」みたいなのを見せる(少なくとも俊ちゃんは当座預金残高を拡大する時には「こんな追加緩和をやっているんですよ、どうです、凄いでしょう!」ってプレゼンをしていた訳で)べきではないかと思うのですけれども、今回の(キリッ)シリーズはこんな感じですかね。

『もう1 つは、ジャクソンホールでの議論は1 年に1 回行いますので、この1 年間の変化を改めて皆が確認して、その上で今自分達がどういうことを考えているのかを深く考察するよい機会になっています。(途中長いので割愛)一方、先進国の政策金利は実質ゼロ、財政赤字も非常に高い数字で、政策対応余地も大きくはないという状況です。それだけに、本格回復軌道に乗るにはまだ時間がかかると、会議の参加者が実感していたように思います。』

『バブル崩壊後の経済調整の厳しさを身を持って体験してきた当事者である私どもとしては、こうした事態を将来予測に織り込んでいます。ただ、そうした事態を体験していない人からすると、調整には時間がかかるということを、改めて重く受け止めているように思いました。会場の内外で、日本に関する質問を改めて多く受けました。それも、先程申し上げたような問題意識を反映しているのだと思いました。』

ふーん。


○バーナンキがこんな事を言ってますよ(キリッ)

バーナンキ講演に関する話もありましてですね。

『今回、ジャクソンホールでのバーナンキ議長講演の冒頭で、現在経済が直面している様々な問題について、金融政策だけで解決するわけではないと述べられ、その上で、中央銀行として金融政策で対応できる部分について一生懸命考えていく、対応していく必要があるという趣旨のことを述べておられます。私もそういう意味では、バーナンキ議長と同じような認識を持っています。』

とかいうのがあったり、

『ジャクソンホールでのバーナンキ議長講演でも、短期金利をこれ以上引き下げると、多くの金融機関が短期金融市場から退出し、市場の流動性が大きく低下するとした上で、追加的な金利引き下げが、市場の機能を長期にわたって損ない、適切な金融政策を阻害する惧れがあると指摘されています。私は、かねてよりこうした問題の重要性について指摘していますけれども、当初はこのような問題についてあまり多くの理解があったわけではありませんので、ジャクソンホールでバーナンキ議長の講演を聴きながら、ある種の感慨を覚えました。』

感慨を覚えましたというよりも(キリッ)って感じですなあ(^^)。


○しかしこうなるなら7月時点で先行きリスクバランスに関する見方をだなあ・・・・

先日引用した日銀決定会合7月議事要旨の中で、先行きリスクバランスに関して「数名の委員はリスクはバランスしていると指摘」というのがあって「他の人はどうなの?」と思ったってえ話をしたと思うのですが、後付けになってしまいますが、こうなって見ると7月時点でもうちょっと手のうちようがあったのではないかと思うのですけどねえ。

『4 月末の展望レポート公表時に、上下のリスクは概ねバランスしていると申し上げました。その後、毎回の決定会合でリスクバランスの点検を行っていますが、概ねバランスしているけれども、その中で少しずつ下振れリスクを意識する委員が、あるいはその程度が増しているなという感じでした。今回の臨時会合では、もちろん委員によって若干ニュアンスの差はありますが、上振れリスクよりも下振れリスクについてより注意する必要があるという方向に傾きました。その結果、今回、前倒し的に金融緩和措置を行ったということです。』

「下振れリスクを意識する委員が、あるいはその程度が増しているなという感じでした。」って言いますけど、こういうのって追加緩和(のようなもの)をしてから言ってもしょーがないわけでして、その間ってずーっと白川さん「リスクはバランス」って言ってたでしょと思うのでして、結局こうなるならもっと早いうちから「リスクを警戒する必要がある」というような話をしてれば(話をするだけで何もしなくても)もうちょっと前後の反応が違ってくるんじゃないかと。今回の流れだと「市場と政府に差し込まれてポッキリ折れました」としか見られないわけで、その前から「下振れリスクを意識して」みたいな話をしておく方が(どうせやるなら)よろしいのではと。

ただまあ「下振れリスク意識」というだけで聞き分けなしモードのイクラちゃんになる人たちがそこかしこに居るというのも日本的な問題だったりするのでその辺の加減は非常に難しそうですが、少なくとも今の「途中まで原則論」→「最後にいきなりポッキリ折れる」というのは如何にも印象が悪いので何とかならんもんですかねえ。


○苦しいのう苦しいのう

何でわざわざ出張を1日短くして帰国して臨時会合したのよという質問に対しての部分から。

『もし、この臨時会合があまりに頻繁に開かれますと、金融市場参加者からみた場合、先行きの金融政策について安定的な期待形成が難しくなる可能性があります。市場が、毎日のように「今日決定会合が行われるかもしれない」と思う状況では、安定的な市場の価格形成が損なわれたり、市場に混乱を与えたりしてしまいます。そういう意味で、私どもとしてはできるだけ本会合の開催により政策決定を行いたいと思っています。』

ほうほうそうですか(棒読み)。

『その上で、臨時会合を開催すべき状況かどうかをその都度判断することになります。今回は、前回会合以降の米国の様々な経済指標、その後の円高の動き、株価の動きなどを総合的にみながら、徐々に臨時会合の必要性への認識が高まっていったということです。また、ジャクソンホールで海外の当局者と意見交換をし、その上で判断したいという思いもありました。結果として、今回の臨時会合開催は、私にとってはベストのタイミングであったと考えています。』

ほうほうそうですか(棒読み)。

いやまあ特に申し上げることはございませんがね、苦しいのう苦しいのう。