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2010/06/30
お題「今日もまたまた市場雑談中心に雑談」
米国10年2.95%に2年0.6%ですかそうですか。
○市場雑談とか
・何だか良く判らんが米債が妙に走っている件について
いやまあ月曜の夜も別に大した事も無い(コアPCEデフレーターが落ち着いているとかいう後講釈を報道ベースではしてたけど、コアPCEデフレーター前年比+1.9%ってFRBの言う適正水準が+1.5〜+2.0だった筈だから落ち着いてはいるけれども債券を買うようなネタでも無い筈なんですけどね、タイミング的にそこで買われたみたいだけれども)のにいきなり米債が10年で3.02%まで低下しやがるから何がどうしたのよと思ったのですが、昨日は東京の午後から米債が走りやがりまして東京の後場に10年3%割れとかになるでござるの巻。
いやまあ後場に何で動くのかよー知らんですが(海外からの売買だとしたらおまいら朝早過ぎ^^)、東京昼休み時間の上海株の急落と円高進行から何かもう時空が歪んでいるのかというような感じで相場があちこちで走るのがオソロシスでして、まあ明確なこれと言う材料が無い中で米債がいい感じで走ったのが正直ワケワカランのですが、要するに相場がそっちに行きたがっていたという所なんでしょ。
#いやまあ足元の世界景気の回復が中国様次第というのはあるけど
で、まーこーゆー動きは後講釈をするのは別に適当にでっち上げる事はできるのですが、何かの材料というよりはこれは「米債が買われたがっている」という非科学的な状況なんでしょうかねえという気がする次第でありまして、それが単なる四半期末要因なのか、それとも今年に入ってからの上振れ気味の景気拡大で米国市場で景気楽観的な見方がワタクシたちが想像する以上に広がっていた反動が来ているのか、もうちょっと長い見方をした場合は一連の金融規制によって(特に預金受入機関の)商業銀行がリスク資産の購入に慎重になっている(貸出は相変わらず削減モードのようですし)から国債に恒常的に買いが来るのか、とかまー色々と考えられるのですが、こーゆー時は資金循環じゃないけれどもマネーのフローとかを見ないといかんのでしょうな。
と書いておきながらその結論はどうせどっかで本職の人がレポート書いていますからそれでも見てちょという恐ろしく手抜きな結論。
しかしまあ何ですな、米国経済って財政支援が切れたら踊り場入りなのは前から判っている話だと思ったのですが、何でこうまで反応するのかというと、何か季節性の要因とかが妙に加速しているのではないかという気がせんでもないが、よくわからんちんでございまする。
・期末越えになっているのにTIBORが動かない件について(笑)
インターネット経由のソースを探すのが面倒なのでソースは付けませんけれども昨日の全銀協TIBORリファレンスレート公表には微苦笑。
つまりですな、TIBORって2営業日スタートの各種期間のターム物金利を呈示する(オファーレートね)訳ですが、昨日の2営業日後と言えば7月1日になりますので、即ち3か月物TIBORが昨日から期末越えになる訳ですな。で、その昨日の3か月TIBORですが・・・・
日本円:0.39000%(前日0.39000%)
ユーロ円:0.38385%(前日0.38385%)
・・・・どう見ても同レートです本当にありがとうございましたorz
まあCPレートとかTBレート見ても(昨日は期末越えの3か月TB入札が0.12%乗せの足切りになったけど、それは恐らく別の要因によるものです)期末越えのプレミアムって何でしたっけ状態になっておりましたので、まあ動かないでしょうなあとは思っていたのですが、改めてこの結果を見せられると何だかなあ感が激しい勢いでやってきていい感じで脱力する所ではございまする。
・GCレートは無事低下
昨日は何か知らんがトモネ(つまり末初)の国債買現先なんぞを実施しましてちとビックリだったのですが、オペ攻撃が効いたのか元々資金が見えてきていた(月曜にT+1の所のGCは下がっていたので)のかは知らんですけど、いきなりレートがワープして前日の0.145%レベルからさっくり0.115%レベルに低下。
いやどちらかと言いますとトムスタートの共通担保を打つのかなあとか思っていたのですが、末初は下げたいけれども資金不足になる前にタームを打ち過ぎて当座預金残高が積み上がるのを避けたのか(2日以降に財政の揚げ超がポツポツ入るのですが、その前に打つと積み上がりっぱなしになってしまう)スポネを打って翌日にトモネとは面白い展開。まあ要するに必要以上にジャブジャブにはしたくないというのと、そうは言ってもあんまり四半期末でレートが跳ねるのもマズーという所なんでしょうかねえというバランスを取ったという所なのでしょう。
○金融庁から国債決済関連の話が
こんな行程表が出ている訳だが。
http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20100629-1.html
国債取引の決済リスク削減に関する工程表について
まあこの件に関しては日銀と金融庁が妙に熱心のようですが、書いてある話には微妙にツッコミどころというか何と言うか。
まず決済期間の短縮化ですけれども、アウトライトT+2にするのはまあ何とかなるでしょうけれども、T+1にするとなりますと、レポが実質T+0になるというのもありますし、同じ理由で資金管理もT+0になるわけで、そらまあ業者さんはそれでも対処できると思うのですが、そもそもベースがファンディングになっていない投資家サイドはそんな資金管理をするような業務フローにもなっていないしシステム手当もできていない訳でして、そうホイホイと参加できるものでもなし(つーか時差の関係上アウトライトT+1というのは海外から見たら実質T+0になると思うのですが、受渡とか大丈夫ですかね)。
決済リスク削減は判るのですが、資金管理とかの問題が今度は生じるのでありまして、その辺のバランスをよーく考えて推進して頂かないと部分最適が全体最適にならないというような制度デザインになり兼ねないので、ご当局の関連部署様におかれましては、決済リスク削減の1点でゴリゴリ特攻されるのではなく(いやまあそうじゃないとは思うのですが・・・・)バランスを考えて頂きたしという所でしょうか。
つーか、証券決済を短縮するという話になると、リテールの株式売買とか、投資信託の設定解約とかにも影響してくる話で、結構重い話になると思いますからね。
それからJGBCCの態勢強化に関してですが、確かにまあJGBCCに決済を集中するとネッティングとかの効率は良いと思うのですけれども、システムの頑健性という観点からすると何でもかんでも国債決済をJGBCCに集中させるよりは、カストディーの信託銀行などでも決済を行っているという状況になっていた方が、JGBCCに何か事故があった場合に全取引がいきなり止まるというようなトンデモナイ事態を起こさなくて済むのではないか(まあ日銀が止まったらしょうがないですけれども、日銀の場合はJGBCCなんぞと比較にならない位に強固に作ってありますから)と何となく思うのですけれども、違ってたらすいません。
○その他出ているペーパーについて
・日銀のこのレポートは面白そう
とりあえず斜め読みしただけ、というかこれは紹介するのが難しいのでURL置いとくわ。
中国の窓口指導の有効性と金融環境
― 日本の金融自由化とバブル期の経験を踏まえて ―
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev10j10.htm(要旨)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j10.pdf(本文)
窓口指導に関する考察が色々と書いてありまして中々面白いです。で、要旨の部分にもありますが、窓口指導の有効性に関する日本の経験からの考察部分(本文4ページ)を一応引用しておきますにゃ。
『(窓口指導の有効性:単独説と併用説)
日本銀行は、窓口指導を活用していた時期において、これを「独立の金融政策手段ではなく、公定歩合の変更その他一般的金融政策の補完手段」と位置付けていた。すなわち、窓口指導は、@公定歩合の変更など諸手段が市場に対して圧力として働くが、さらにこれを側面から補強するものである、A金融政策の補完的手段としての役割を果たすにすぎないのであるから、正統的な金融政策手段の強力な行使を伴うのでなければ、十分な効果は収められない、としてきた。』
つまり併用説ですな。
『もっとも、こうした日本銀行の窓口指導に対する見方――すなわち、窓口指導を他の政策手段と併せ用いるべきという「併用説」――の一方で、窓口指導はそれ自体単独で政策効果を持つという、「単独有効説」が学界を中心に指摘されることがあった。』
ふむふむ。
『いずれの見方に立つかは、金融政策の運営において極めて重要な分かれ目となり得る。併用説に立てば、金融引き締めを行う場合には各種金利の引き上げが必要となるが、単独有効説に立つ場合には、金利を据え置いたままでも、窓口指導の強化によって金融環境を引き締めることが可能になる。仮に単独有効説が正しい場合には、金利引き上げに伴う海外資本の国内流入を抑制しつつ、国内景気の過熱を窓口指導によって抑制することも可能となる。』
なるほど。
『いずれの説が正しいかについて、ここで深入りはしないが、おそらく、窓口指導単独での有効性は金融構造に依存し、時代の経過とともに単独での有効性は低下していったと考えるのが妥当であろう。』
確かにまあ銀行貸出ルート以外の与信チャネルが山のようにあったり、海外経由の抜け穴とかがあったら、単独での有効性っつーのはあまりないのでしょうなあとシロートの直感的には思う所ではございます。
まだ斜め読みしただけですが、結構オモロイので読んで味噌。
・金融庁からこんなのが
http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20100628-1.html
企業内容等の開示に関する内閣府令(案)等の公表について
その別紙っていうのがこちらなんですけれども。
http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20100628-1/01.pdf
『T.経緯
信用格付業者に対する規制の導入(本年4月1日施行)に伴い、指定格付機関制度を廃止し、信用格付業者制度に統合する予定です。同時に、格付の公的利用が投資者による格付への過度の依存を招いたとの問題意識を踏まえ、格付の公的利用のあり方について見直しを行う必要があります。』
・・・・・『格付の公的利用が投資者による格付への過度の依存を招いた』ってまるで投資家が悪いみたいな(いやまあ確かに問題は大有りですが)話ですが、そもそも(以下保身の為激しく自主規制^^)。
いやまあ見直しをする必要があるという認識に関しては同意する所であります(棒読み)。
2010/06/29
お題「市場雑談とかその他少々」
まだ6月なのに何でこう蒸し暑いんでしょう@東京地方
○末初のGCレートが高い件についてなど
昨日は久々にスポネ(つまり末初)の国債買現先が1兆円オファーされまして、結果は平均0.141%で足切り0.14%の按分74.2%となりましたが、0.14%ですかそうですかという状況でありまして、昨日も末初のGCレートは0.14以上の水準で推移してたようですな。
今の所ですけれども、月末の当座預金残高が19兆円弱となると思われます(今日オペを実施すると更に増える)し、そもそも今日の当座預金残高も19兆円弱ということで、おカネそのものはマクロ的に見て沢山ある筈なのですけれども、どうも例によって例の如く国債償還要因での余剰地合いの時の仕様になっておりますが、またまた四半期末お馴染みの資金偏在が生じているのですかねえという感じで、GCの金の回りが悪いでござるの巻となっています。
でまあそれに対してさすがに先週の資金余剰の所から当座預金残高はやや多目にしていますが、朝8時発表の準備預金残高予想数値を見ると週前半は12兆円台前半で推移で、後半になって12兆円台後半になって昨日は13兆円乗せということで、まあ一応供給は必要な分は行っている感じですが、そうは言っても別にまあ無理くりジャブジャブにする程でもありませんなあという感じ(さすがに昨日辺りからは多目になったようですけど)ではございます。ま〜「タームは抑えるけれども足元の需給は市場での調整に任せる」という日銀の現在のスタンスがそのまま市場に出たと言ってしまえばそれまでなのですけれども、5月は欧州金融問題に対応(またはお付き合い)してやたらジャブジャブにしてきたのとはちと違いますなあという所でしょうか。とりあえず5月は危機対応(のお付き合い)モードだったのであれは特殊事案とゆーことで、何も無ければ現状のような「足元だけは自然体でタームが跳ねなければそれでよし」という調節が続くと考えるのが妥当なのではないかと存じます。
で、ターム物金利の方ですけれども、3か月TBが暫く延々と0.115%割れという素敵な状況が続いて入札が毎度毎度そんな水準でしたが、先週の入札が0.115%を久々に上回る利回りになったという所ですが、そうは言ってもど〜せ上がって0.12%という所ではございますので、こちらは全体的に潰さないといけないキャッシュがうじゃうじゃあるという状態になっているのと整合的ですわなという感じです。
で、今後の見通しもへったくれも無いのですが、今月のオペ状況を見ておりますと、まあ普通に資金余剰月になると短いオペが減って、資金が偏在しやすくなる(特に国債償還要因の場合)ため、GCレートがやや上昇する場合もありますよってな事が見えてきたと思われますので、そうなりますと平均のGCレートは資金不足月なら0.11%台前半とかで見ても良いのかもしれませんけれども、余剰月だとその水準で見るのはちと無理がありそうですので、短国のレートに関しても若干は強含みになって(と言っても上がって0.12%だと思いますけど)も良いのかなあとは思う今日この頃。
#などと書くといきなりGCが下がったり短国が下がるのがドラめもんクオリティという事はキニシナイ!!
それから足元で3か月短国は発行が減額になってまして、ピークの1回5.7兆円から足元では1回5.1兆円と何気に減っておりまして、この分というのって実質的には資金供給になっているのと同じですから、ここもオペ残高を減らす方向に寄与しているんでしょうなあとも思われる部分でございます。減額分のロールオーバーが始まると少し需給バランスも変わってくるのかもしれませんけれども、いずれにせよ20兆円の固定金利オペで食われてしまった短期オペの打ち余地は少ないままなのが続くんでしょうなあという所で。
○フェイルチャージがどうのこうのの話
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j09.pdf
わが国フェイル慣行の更なる定着に向けた見直しについて
― 日証協WG最終報告を踏まえた市場慣行見直しの動き ―
内容は先般ご紹介した日証協のWGの最終報告(そういやパブコメ出そうかと思ったけど諸事多忙で出せませんでしたなorz)の内容紹介なので、まあツッコミどころってあんまり変わらないのですけれども。
で、微妙に勘違いされていそうな部分なのですが、この制度導入の目的って「国債の決済処理を円滑に行う」のが目的であって、別にチャージ制度があるからどんどんフェイルしますよという話では無い筈で(まあ3%のチャージを払ってホイホイとフェイルするアホウもいないと思うが)、ど〜もその辺が毎度この件の話になると妙に論点になるのもどうなのかと思われる所ではございます。
正直言って自己勘定の方はこの手の話って割と何とでもなると思われますし、フェイルになった場合に取引を回復する為の自己調達が可能な人にとってみればちゃんとチャージが取れる話というのは話が明確化して良いと思うのですけれども、他人勘定系統の人の場合、フェイルチャージをどの時点での受益者につけるのかとか、自己調達での取引再構築が事実上できないような状態(フェイルは基本モノが入らない(金が入らないのはデフォルトなので話が別レベル)という状態なので敢えて取引再構築をしなくても良いのですけれども、そのまま放置していると売るに売れないのでポジションの自由度が下がるという問題が、いやまあこっちが売り方でフェイルすれば良いのかもしれませんが・・・)でフェイル食らった時に本当に事務的に問題無いのか(たぶん決済事務的な問題は無い筈だが、計理上の処理とかが特に短期公社債投信の場合きちんと決めないとややこしい事が起きそうな予感)とか、まあその辺は気になる所ではありますけれども、それは他人勘定系の業界団体などの方で何とかしましょうねという所です。
従って、日銀様におかれましては「とにかく完成系がこれだから、それに沿ってやっていきやがれ」と銀行証券などのケツを叩くだけではなく、実際問題として制度をいじる場合に「日銀当座預金先以外の所も含めて」「実務に落とし込んだ場合に」どういうフリクションがあって、どういう所のボトルネックを解消しないといけないか、というのを前広に意見聴取を行うべきではなかろうかとは思うのですけれども、どうも証券決済系に関しては当座預金先だけ集めて出来上がりの完成系のべき論を進めようとするのにちと急なんじゃねえのという懸念はせんでもない。
いやまあケツ叩かないと動かないというのもその通りなので、一々全部聞いてられっかというのもありますけれども、去年いきなり証券決済の翌日化のニュースが出て腰を抜かした(さすがにT+2で再来年実施という落ち着きどころになったので良かったっすけど)ように、どうも何か知らんが妙にやる気満々モードなのが微妙に気になる所でございます。
ということで、決済関連につきましては超地味な話ではあるのですが、いざ走り出してみると色々な所に影響(うっかりすると価格形成にも影響)する話でもありますので、フロントの皆様におかれましては良く判らん別世界の話とか思わずにご興味を持たれる事を推奨致したく存じます。
○西村副総裁講演(というよりスピーチ)
何か英語の講演が出てただよ。
http://www.boj.or.jp/en/type/press/koen07/data/ko1006c.pdf
あんまり真面目に読んでないので後日真面目に読みますが、後半の方では「金融規制に関しては各国の状況に合わせたものにすべきであって、一つの規制ですべてを括るようなやり方は間違え」とか「金融規制を変な時に実施すると景気に悪影響」というような話をしていまして、昨今妙に金融規制のやる気満々モードになっているブンデスバンクじゃなかったECBの皆様に対する微妙なカウンターになっているのではないかという気もせんでも無い。
金融規制を一律に行うのがダメでしょという話はこの辺ね(改行はあたくしが適当に入れた)。講演の最後の方です。
『In order to prevent another global financial crisis of this magnitude,
we truly need a thorough and internationally harmonized overhaul of financial
regulations, as is currently being undertaken by various international
regulatory bodies. However, as mentioned before, proper consideration must
be given to the regional heterogeneity of banks’ business functions, especially
in the bank/non-bank spectrum.
The difference is not arbitrary but reflects real structural differences
between regions. In particular, it would be unrealistic to always assume
that “one size fits all”: We should not put carnivorous lions and herbivorous
elephants in the same cage. We should also follow a well-balanced approach
that properly recognizes the synergetic cross-effects of item-by-item regulations.
An appropriate criterion should be the combined effects of all item-by-item
regulations. Simply focusing on the “marginal effects” of individual
measures may be misleading, even though they have good individual rationale.』
んでもって金融規制を下手に行ったら景気の腰を折りますがな、という話はその後の最後の部分。
『At the same time, we should be aware of a possible trade-off between
the long-term benefits and short-term costs of stronger regulations. Such
regulations may indeed enhance financial stability and economic prosperity
in the long run, but the hasty implementation of stringent regulations
may hamper a fragile recovery, such as we find ourselves in now.』
とか警告してもアホウ規制を炸裂させるのがブンデスバンクの血でございます(−−)
2010/06/28
お題「BOEのお悩み」
ということで6月9、10日のBOE議事要旨から。
#予告しますが、今日は引用大会で結構長くなりますので・・・・
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1006.pdf
○今回のMinuteは比較的読みやすいです
BOEの議事要旨って速く出てくるのは大変結構なのですが、論点がホイホイと飛んでしまうので読みにくいったらありゃしないというのが難点なのですけれども、今回の議事要旨は中々読みやすいのでありました。
というのもですな、今回は(前回からそんな感じでしたが)量的緩和政策の効果に関する議論がすっかりスルーされておりまして、景気認識とインフレに関する議論に話が集中しているので、まー論点が割と集中していて読みやすい、というのがあるのですよ。ということでまあ一応全部読んでみましたが、引用とかすると長くなるので基本的にインフレに関する所を主に。
○金融市場と世界経済
最初がFinancial marketsで次がThe international economyになりますが、英国での環境はやはり厳しいようです。つまり、金融市場に関しては、緊張が継続しており、安全資産のイールドは低下し、銀行のファンディング環境やクレジットスプレッドは拡大という話になっています。また、世界経済に関しては「世界的な回復は継続しているが、その動きは一様では無い」ということで、ユーロエリアの回復が「財政と在庫サイクルによるもの」で先行き不透明で、米国に関しては民間需要は強いが住宅は弱い、アジアは力強い成長が続く、という認識を示しています。
金融市場に関する部分の最初の方から。
『3 The stresses in financial markets had been triggered by concerns among
market participants about the ability of some euro-area countries to achieve
necessary fiscal consolidation and had been only partially offset by the
announcement of a package of measures by the EU, IMF and ECB on 10 May.
The spread between yields on German government bonds and those of some
peripheral euro-area governments had remained elevated over the month.』
財政問題に端を発したユーロエリアの緊急施策はリスク回避を一部閉じる効果はあったものの、引き続き厳しい状況にありますよということで、以下市場状況に関して色々と説明がある(ドルを中心にしたファンディングとかOISの低下とか)のですが引用すると長くなるので割愛。
世界経済の冒頭。
『8 Heightened concerns in financial markets about sovereign indebtedness
had resulted in a renewed focus on faster fiscal consolidation among policymakers.
Additional measures to tighten fiscal policy had been announced in a number
of countries. This was likely to dampen prospects for demand growth in
key UK export markets, unless offset by other actions to raise demand.』
ここでは財政回復への各国の動きが英国の輸出先(ってEU)の需要回復を阻害して輸出が落ちる可能性について話をしているのが何気にチャーミング。
世界経済の話はさっき書いた通りですが、最後に英国の部分がありまして。
『12 As in the United Kingdom, headline inflation around the world had
been boosted over recent quarters by the impact of the increase in oil
prices. But, excluding food and energy, inflation had been falling in the
euro area and the United States, probably reflecting the downward pressure
on wages and prices from excess capacity. Oil prices had fallen during
the month, possibly reflecting the impact of recent financial market turbulence
on expected global demand. If sustained, these developments could lead
to lower headline inflation in due course.』
何で英国の話をしているのに途中からユーロエリアと米国のインフレの話になっているのかと言いますと、後の方で英国のインフレの見通しに関する議論でこの部分が一つのポイントになっているからなのですが、原油価格上昇で物価が上昇する中に英国も入っているが、一方でユーロエリアや米国では賃金や過剰生産力によって起きる価格低下圧力があり、その結果として食糧エネルギーを除く物価は下落しているという話をしているのですな。
○クレジットがタイトなのに耐久消費財の消費が強いのは不思議だそうな
Money, credit, demand and outputの所では、M4が弱いとか名目GDPが強いけれどもデフレーター上昇と一部VATの引き上げ(2008年12月に景気対策で15%に下げたものを17.5%に戻した)によるものだとか、実質GDPは引き続き緩やかに上昇(1Qで+0.3%)という話がございますが、消費の部分でここはほほーと思ったのでまあ比較的ど〜でも良い話ですが引用。
『19 Consumption was estimated to have fallen by 0.1% in the first quarter.
The weakness was likely to have reflected the impact of the snow in January,
the restoration of the standard rate of VAT to 17-1/2% at the start of
the year, and the declining impact of car scrappage schemes. Even after
allowing for the impact of the car scrappage schemes, the share of durables
spending within total consumption had remained higher than during previous
recessions. That was puzzling given that tight credit conditions and lower
income expectations could be expected to have acted as a particular drag
on durables spending. The retail sales data for April had pointed towards
a stronger profile for consumption in the second quarter.』
クレジット環境がタイトな中で耐久消費財の消費におけるシェアが高いのは何ででしょという話をしてますが、まあ謎という事で片付いているのですが、自動車買い替え減税措置の部分を除外しても上記の状況だそうで、確かにこれは謎ではございますな。
それはそれとして。
『20 A key determinant of the outlook for activity over the medium term
remained how public sector borrowing and private sector saving would evolve.
The Government had announced measures on 24 May to reduce public spending
by £6.2 billion within the 2010/11 financial year. More detailed tax and
spending plans would be unveiled in the Budget on 22 June. It was not clear
how private sector saving would respond to news in the Budget. That would
depend in part upon the extent to which the sharp rise already seen in
private sector saving had reflected anticipation of future fiscal consolidation.』
中期的な経済活動の見通しのキーになるのは、公的セクターの借入と民間の預金が拡大するかどうかとか書いているみたいですが、それから22日に出る予算に注目という事になっていましたが、ここでVAT引き上げのネタが出て益々インフレが加速しそうなところがチャーミングな訳ですが。
○で、物価ですが
Supply, costs and pricesの所ですが。まず現状はこんな感じでして。
『21 CPI inflation had picked up to 3.7% in April, mainly reflecting contributions
from clothing, food, beverages and tobacco. Following the usual pre-release
arrangements, an advance estimate for CPI of 3.4% in May had been provided
to the Governor ahead of publication. A detailed breakdown of the May data
was not yet available. Also in line with the pre-release arrangements,
the Governor informed the Committee that producer input prices had fallen
by 0.6% in May, in part reflecting the fall in sterling oil and commodity
prices. But they remained over 11% higher than a year earlier. Producer
output prices had risen by 0.3% in May, a slower rate of increase than
in the preceding two months.』
ということで、現状は被服、食品、飲料、タバコなどが寄与してCPIが3.7%上昇しているとか、生産投入物価とか産出物価とかの話もございますな。
『22 Despite having fallen in May, CPI inflation was likely to take several
more months to return to around the target, as downward pressure from
spare capacity was offset by the impact on the price level of the past
increases in oil prices and indirect taxes, and depreciation of sterling.
It remained likely that inflation would moderate later in 2010 as the impact
of those temporary factors wore off. But the pace at which it would do
so remained highly uncertain.』
足元の原油やVAT引き上げ、ポンド下落のなどCPI引き上げの一時的な要因が剥落した後は、今後は生産設備の過剰によって打ち消されて、ターゲット近辺に戻るでしょうという話をしているのですが、毎度毎度この予想が段々自信無さげになってきているのが誠にアレな所です。で、この次の部分がまた実にBOEの悩ましい所ですが、さすがにパラグラフが長いので途中で切りつつ。
『23 The outlook for inflation in the medium term would depend materially
upon the evolution of households’ and firms’ inflation expectations.
The most recent readings from the various household surveys indicated that
expectations for inflation one and two years ahead had risen markedly to
their highest since 2008. It was likely that these expectations measures
had been influenced by the recent outturns for inflation itself.』
ということで、中期的なインフレの見通しに関しては、家計と企業の中期的なインフレ期待の動向に大いに依存する。という話なのですが、そのインフレ期待は足元のインフレに影響されて、足元では各種統計によると家計と企業の中期的なインフレ期待が大きく上昇し、2008年以来最大の水準になっているという中々お洒落な状況になっているのですな。
『There was less clear-cut evidence from longer-term measures of inflation
expectations, which might matter more for underlying inflationary pressure.
While the Barclays BASIX survey measure of households’ longer-term expectations
of inflation had risen, the Bank/NOP and Citigroup measures were little
changed. Measures of longer-term inflation expectations inferred from gilt
prices had edged down over the month. These measures had shown little clear
pattern over recent months and they remained somewhat higher than their
averages since 1997, although it was hard to know to what extent they had
been affected by the current condition of financial markets. Measures inferred
from derivatives contracts implied that market participants had continued
to place more weight on elevated inflation in the medium term than on deflation.』
より長期的なインフレ期待に関しては、あまりクリアカットなデータは無いという事のようですが、データとしてはロンガータームのインフレ期待は上昇しているという統計とあまり変わっていないという統計があるようですな。中々この辺が悩みの種でして、以下の政策決定の話になるのだ。
○で、本当に物価はこうなってくれるのでしょうか
The immediate policy decisionの所ですが、基本的には5月のインフレーションレポートに沿った景気回復であって、やや平均以下の回復ペースではあるけれども、在庫回復のサイクルでの回復なだけでは無いという話をしていますが、クソ長くなるのでその辺はスルー。
ついでに、この先のリスクに関する話もこれまた長いので、インフレ上昇の方だけ引用しますが、財政再建路線によって需要が全体に減るリスクがあるという話をしていますが、これまたスルーしてインフレ上昇の方についてですが、ここで色々と論点が。
『28 Second, this month’s data had brought into sharper relief the recent
resilience of inflation in the United Kingdom. Although CPI inflation had
fallen in May, near-term inflation prospects remained elevated. This followed
a period over recent years in which inflation had been above target for
a majority of the time. It was likely that inflation would take some time
to return to around the target. The near-term outlook for inflation might
be further affected by measures announced in the forthcoming Budget, including
possible changes to indirect taxes.』
『Against that background, there was a risk that inflation would have a
further tendency to remain above the target if the private sector’s expectations
of inflation over the medium term also rose.』
ということで、中期的なインフレ期待が高止まりするリスクがありまして・・・・
『That might necessitate tighter policy than would otherwise be the case.』
その場合は金融引き締めを余儀なくされるという指摘を。
『Survey-based measures of households’ short-term inflation expectations
had risen sharply on the month, but the evidence regarding longer-term
measures was more mixed.』
これはさっきの所と同じですが、足元のインフレ期待は大きく上昇しており、長期的なインフレ期待に関してはまちまちとな。
『It seemed unlikely that an increase in inflation expectations would raise
the medium-term outlook for inflation without also being associated with
a sustained rise in pay growth. While total pay growth had picked up, much
of this had reflected a contribution from bonus payments that was unlikely
to persist. Whole-economy regular pay growth had picked up by much less.』
ただ、賃金が継続的に上昇しない状況下において、このインフレ期待が上昇し続けるというのがあるのだろうか、というのは論点になるかと思います。つまり・・・・・
『29 The Committee’s central view remained that the substantial margin
of spare capacity was likely to persist for some time and would bear down
on inflation into the medium term.』
中期的に見た場合には、生産設備の大きな過剰がインフレ抑制効果として働くというのが引き続きの中心的なビューです。
『But there were considerable uncertainties about the margin of spare capacity
and the strength of its influence on inflation, and about the extent to
which continued above-target inflation would impinge upon the public’s
expectations in the medium term. The resilience of inflation had raised
the possibility that the impact of that spare capacity on inflation might
be weaker or operating more slowly than in the past.』
しかしながらそれにはかなりの不確実性があって、過去における例のようになるかどうかがやや不確実だったりするという見方のようですな。
『 For some members, the recent downward trends in inflation, excluding
energy and food, in the United States and euro area were evidence that
a substantial margin of spare capacity would cause inflation to fall back
in the United Kingdom as the impact of temporary factors wore off. Other
members were concerned by this divergence in inflation outturns.』
ということで、ここで意見が分かれているのですが、米国やユーロエリアでは経済の過剰生産力の大きさによって食品エネルギーを除いたインフレが低下しているという先程出ていた話を持ち出して、英国も同様になるだろうという話をしているのですけれども、他のメンバーはそのようにならない可能性について懸念しています。
○ということで利上げの提案が出ていた訳ですな
んでまあそんな訳で今後のリスクに関する意見は分かれた訳ですが、インフレの状況に関するリスクを見ている人と、それよりも金融市場の状況が経済に与えるダウンサイドリスクを見るべきだという意見がございます。で、結果として1名の委員が利上げを提案したのは金曜日に引用した通りです。リスク認識の所を引用。
『30 In the light of recent developments, there was a range of views among
Committee members about how the balance of risks to the outlook for inflation
in the medium term had changed since the time of the May Inflation Report.』
『For some members, there was little change in the overall balance of risks,
but the probability of inflation being either materially above or below
target in the medium term had increased.』
『For some other members, developments in inflation indicated that the
balance of risks had moved marginally to the upside.』
『Other members placed marginally more weight on developments in financial
markets and, for them, the balance of risks had shifted slightly to the
downside.』
とまあそういうことです。いやあ英国は景気のダウンサイドリスクもある中で物価だけは上昇してエライコッチャという状態でして、「うちはよそと違ってホンマモンの量的緩和政策をやっていますよフフン」というあの勢いはどこへという感じですわな、合掌。
#引用大会でどうもスイマセン
2010/06/25
お題「何か高値更新しているので色々と雑感」
事前には全然期待されてなかったサッカー日本代表が何と予選リーグ突破と超ポジティブサプライズでございますな♪
これでNY株安を無視して日本株が上がれば流石なのですが(^^)。
#問題はサッカー騒ぎで選挙のことがスルーされることで、今朝もサッカー以外のニュースを見るのが大変で遂に東京MXTVを見る破目に(笑)
○さて気がつけば絶賛高値更新中な訳ですが
いやまあ気が付くも付かないも無いのですけどね(汗)。
まあ元々「4−6月は金利上昇」という謎のジンクス(?)があって、その上3月短観は白川総裁が歓喜の景気認識上方修正モードになる強さだわ、出てくる経済指標は悪くは無いわということで、どうにもこうにも買うのもちょっとねえという感じになっていたというのは認めざるを得ませんで、それに対して欧州の金融問題がどうしたこうしたでちょっと金利が下がった訳ですが、足元では菅内閣になって財政再建路線とか、米国がいきなり2番底懸念とかいう話になってこの有様という所で、まあ金利が何となく下がるのはシャーナイナイとは思いますが、ふと気がつけば水準的にどうよという所になっておりますわな。
しかも火曜の後場あたりからは「金利があるものほど金利低下」という中々こう香ばしい状況になっておりまして、何ですかこれは踏みですかエイヤーのロング大勝負ですかという動きになっているのが落涙を禁じ得ませんが、まあ延々とじりじりとしか動かない変態相場だったので、ヒャッハー状態っぽくなってきたのは相場らしくて結構ではないでしょうか、と無責任発言。
という感想はどうでも良いのですが、足元何でこんなにヒャッハーになっているかというのを勝手に(あたしゃ人の懐具合は想像するしかないですからね)妄想しますと、要因としては(1)そもそも最初に書いたような感じで、ファンダメンタルズを見るとあまり積極的に買う気が起きなかったによって、時間の経過とともに投資家のロングが足りなくなってきた(ので買うパワーが増えた)、(2)欧州が危機対応でアホウにも程がある動きを繰り返しておりこいつら大丈夫かというのが足を引っ張っている、(3)米国が突如2番底懸念とか訳判らんことを言い出した、というような感じで、まあ何気に内部の需給要因がある(ちょうどこの時期は国債の四半期大量償還がありますし)中に外部要因が火をつけてヒャッハーとなってしまったという所でしょうなあ、で、更にこの外部要因に関して愚考してみるでござるの巻。
#正直言って今こそ発行年限をドカン(平均で1年ちょっとかなあ^^よー知らんがもっと伸ばせるもんなの??)と伸ばして頂けますと将来の為になるんじゃねえのかと思いますが(^^)
○どうもこう欧州の対応がアレな訳で
先日引用したECBのスマギ(と読むそうな)委員の講演がございましたけれども、あちらでは「金融政策が有効に作用するためには短期金融市場の中核になっているレポなどのファンディング機能が大事」という話をしているのですが、その話が何故か「その市場機能を安定的にさせる為には金融監督の強化によってレバレッジやらポートフォリオミスマッチの監督を行うべき」というような話になっている訳ですな。
まあ特に最近ECBの偉い人が色々と講演をしているようで(あまりに多いので全部読んでない、週末読めたら読む)すけれども、これがまたどうも「おまえそれは正論だが今そこで火がボーボー状態なのに言うな」というテイストを醸し出している訳でして、その上英国とドイツとフランス当局は「銀行税」とか金融システムが弱っている時にアホウにも程があることを言い出すしと、どうにもこうにも対応がアレとしか思えません。
こうなって参りますと欧州の銀行ストレステスト結果がどうのこうのというもんがそのうち(来月でしたっけ)出るという話になりますが、これが吉と出るか凶と出るかというのがヒジョーにアレな部分があってオソロシスという所でございます。
即ちですな、米国であの大甘前提の茶番出来レースとしか申し上げようが無いストレステストで市場が安定化したのは、別にストレステストの内容が評価されて安定化した訳ではなく(いやまあ評価されたことにはなっていると思いますが)、実際には背後に「で、駄目な所はコカしたりどっかに引き取らせたりするけど、システミックリスクになるような場合は当局がケツ持ちをする」という政策パッケージが背景にあって、TARPだの何だのを用意してFRBも流動性を出して短期金融市場の流動性枯渇させませんよという姿勢を出したから安定化したのでありまして、例えば日本においては過去公表不良債権額が毎期のように発表されて「これだけ引当しました」というような話をしても、常にケチをつけられていたように、当局の方で強力ケツ持ちスキーム(綺麗に言えば「金融システム問題を財政に付け替える措置」となる)を用意しないと、欧州のストレステスト発表って却ってヒャッハー状態を煽る懸念もありまして、まあこの辺りに関して欧州当局大丈夫ですかねという気もこれまたするのですけどね。
ところで、欧州ストレステスト絡みと言えばこんなんありましたが。
http://www.spainbusiness.jp/icex/cda/controller/pageGen/0,3346,4928839_36772709_36778639_4335041,00.html
サンタンデール、BBVA2行が欧州優良行に
スペインの場合は不良債権問題ってBSCHやBBVAの国際絶賛展開の大手行ではなくて貯蓄金融機関などの地域金融機関中心ですから、足元で地域金融機関がバタバタ潰れている米国と話は同じじゃねえのかという気もするのに、一方の米国での金融機関破綻祭りは問題にならないのに、そんなに大きくもないコルドバのCajaが飛んだからと言って大騒ぎとか訳判らんにも程がありますけれども、まあ不安モードの時と言うのはそういうもんでありますから、欧州当局におかれましては火消しに役に立たないくだらん正論を言ってないで火消しに何が重要かを考えて頂きたいものでございます。とこんな所で言っても意味が無いけどね(−−)。
○米国2番底懸念ってあまりに極端な変化でして
足元で住宅関連の指標が悪いということで、俄かに米国2番底懸念が盛り上がっておりまして、そんな中に昨日ご紹介したFOMC声明文が出たのがまた妙に背中を押す格好になって米国も何か10年トレジャリーが3.1%とかお洒落な展開になっている訳でございますが。
えーっとですな、そもそも米国(だけじゃなくて主要国どこでもそうなのだが)景気に関しては、危機対策で打ちこまれた各種財政措置が切れる頃なのですから、この夏に掛けて一旦踊り場入りするというのは元々のコンセンサスだった筈でございまして、足元住宅着工が弱く出るのは仕方ない話ジャマイカと傍目で見ていると思うのでありますが、どうも危機後の戻りが鋭角ターンだったのにすっかり気分を良くするのがメリケンクオリティというのが単純としか申し上げようが無いですわな。で、今度は急に2番底懸念とかおめでてーなという感じですが、ま〜過剰反応なんじゃネーノという気がとってもするのでござる。
だいたいですな、昨日も書きましたがFOMC声明文で「海外の展開の影響で金融環境が景気回復に対してless
supportiveになる」というコメントだって、そもそも前回のFOMCが4月28日でギリシャ問題が盛大に爆発する前なんですから(例の措置が出たのは5月になってから)、その位の文言が入るのは当たり前ですし、景気に関してだってそもそも「財政サポートが切れたら徐々に回復の勢いが弱くなるが、回復傾向は変わらない」というのは前からFEDの高官とか多分FOMC議事録とかにも出ていた話でありまして、それを踏まえて「景気の水準は上がっているけれども回復の角度は鈍化しました」みたいな表現を見てガックリするとか意味判らんとしか(以下悪態が続きそうなので自主規制^^)。
ま、足元ちょっと景気回復ヤッホーとやり過ぎたからという事なのでしょうが、それが2番底懸念まで行くのがメリケン恐るべしという所でしょうか(^^)。
○英国はこりゃ大変だわ
昨日の朝はFOMCステートメントだけではなくてBOEの議事要旨も出ているのでありました。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1006.pdf
まあまだ全部読んでないのですが、物価は上がるは景気は回復しているけどそんなに力強い訳でもないわ金融システムはうんこだわバランスシート調整は終わらないわというジョンブル野郎の皆様は如何お過ごしでしょうかと超斜め読みした訳ですが。
『33 The Governor invited the Committee to vote on the proposition that:
Bank Rate should be maintained at 0.5%;
The Bank of England should maintain the stock of asset purchases financed
by the issuance of central bank reserves at £200 billion.
Seven members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker,
Spencer Dale, Paul Fisher, David Miles and Adam Posen) voted in favour
of the proposition. Andrew Sentance voted against, preferring an increase
in Bank Rate of 25 basis points.』
ええええこの経済状況で25bp利上げ提案っすかああああああ。
・・・・と言いたい所ではございますが、確かに物価状況があの調子で、(まだ今回のMinute読んでないからアレですが)MPCの度に徐々にインフレ抑制の見通しが怪しくなっているという状況ですので、足元でインフレターゲットを上回って推移する物価情勢は「中長期的にはアンカーです」と詫び状書いてお茶を濁しきれないとなった場合には金融を締めないといけないという大変に香ばしい展開が待っている訳で、遅れるよりは今やっちまった方が良いというのも一つの考えではございます。という事になりますわな英国の現状は。
おまけに新政権がVATと17.5%から20.0%に引き上げとか抜かしている訳でして、んな事になったら益々above
target状態が長期化するざますわ奥様という事になる訳でございまして、そらまあ大変なので金融界の東京スポーツと勝手にあたくしが命名しているロンドンの赤い新聞はああでもないこうでもないと他国にケチ付けて放火報道を一生懸命したくなるわなと思う今日この頃でございました。
#Minute詳しくは週末に読んでみる所存
2010/06/24
お題「FOMC声明文」
本日も諸般の事情につきFOMC声明文一発ネタで勘弁(汗)。
前回の定例会合は4月28日でした(5月のは臨時会合)。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100623a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100428a.htm(前回)
○景気の現状認識に関して
あのですな、目の前のモーサテ様が「景気に対する慎重な表現」となっているのでそうなのかもしれませんし、あたくしは日銀文学は得意な積りですけれども英語は大学受験英語レベルしか無いのでよーわからんのですけど、これってそんなに景気認識下がっているとも思えんのですけど、こーゆーのは英語が得意な本石町日記先生に解釈をお願いしたいものです。
#以下引用文の後で「」付きの日本語で書いているのはあたくしのヘタクソ日本語解釈でございますので、ヘタクソだのアホウだのというご指摘(正しい解釈付きで^^)を頂きますと甚だ有難く存じます(^^)。
・総括判断と労働市場に関して
『Information received since the Federal Open Market Committee met in April
suggests that the economic recovery is proceeding and that the labor market
is improving gradually.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in March
suggests that economic activity has continued to strengthen and that the
labor market is beginning to improve.』(前回)
「経済活動が強まっている」→「景気回復が進行している」
「労働市場の改善が始まっている」→「労働市場は徐々に改善している」
ということなのですが、これって別に判断下げてなくて回復という見通しのオンラインじゃねえのかと思うのですけど、さっきから延々と目の前のモーサテ様に出ている方々が話をしているのを聞きますと、米国市場を見てる人達ってもしかして米国経済V字回復だぜヒャッハー!とでも思っていたのでしょうかという感じではございます。
急激な落ち込みからの戻りが一服したらその後はちっとペースがゆるくなるのって普通だし、もともとFOMCが毎度毎度指摘しているように、リソースのスラックがどうのこうのという問題もあるから、そんなにヒャッハー回復はせんじゃろうと思うんだが、やはり楽観ベースのメリケンクオリティはさっぱりワカランチ会長である。
#追記:その後色々な人が説明をしているのを聞いているのですが、どうもやはり力強い回復だぜ早期利上げだぜヒャッハー!!というのが米国様のコンセンサスだったのでしょうかね。それならまあこの話も判るのですが、別にこれがそんなに(この部分だけで言えば)慎重な話とも思えないとは思うのです。そもそも景気に慎重で利上げなんてまだまだですよってえ話はバーナンキさんもイエレンさんも議会証言や講演でずーっとしていると思うのですけど・・・・・・(おまけに物価も落ち着いているし)
んでもって総括判断の次の個別項目(労働市場の話も総括判断にありますけど)に関してもちょこちょこと表現の変化がございまする。
・家計に関して
『Household spending is increasing but remains constrained by high unemployment,
modest income growth, lower housing wealth, and tight credit.』(今回)
『Growth in household spending has picked up recently but remains constrained
by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight
credit. 』(前回)
家計消費に関する表現も「has picked up」から「increasing」になっていて、これもまあ回復のオンラインだと思うのですが、恐らく「pick
up」というのが表現として強いからどうのこうのっていうのでしょうかねえ。4月と6月だと最初に履いているゲタが違うでしょと思うのだが、後半の表現(家計消費が各種の要因で束縛されているという話)が同じだからちゅうことなんでしょうかねえ、良く判らんけど角度だけじゃなくて水準も重要だと思うのだが。
・企業支出に関して
『Business spending on equipment and software has risen significantly;
however, investment in nonresidential structures continues to be weak and
employers remain reluctant to add to payrolls.』(今回)
『Business spending on equipment and software has risen significantly;
however, investment in nonresidential structures is declining and employers
remain reluctant to add to payrolls. 』(前回)
企業の支出行動に関しては、建設関連(ですか?)への投資に関して「減少している」から「弱い状態が続いている」になっている以外は同じで、相変わらずここの表現は弱いです。
・住宅着工に関して
『Housing starts remain at a depressed level.』(今回)
『Housing starts have edged up but remain at a depressed level. 』(前回)
住宅着工に関しては判断を下げていますね。
・金融環境に関して(まあこの部分が大ネタね)
ということでここの部分が大ネタなのですが。
『Financial conditions have become less supportive of economic growth on
balance, largely reflecting developments abroad.』(今回)
『While bank lending continues to contract, financial market conditions
remain supportive of economic growth. 』(前回)
金融環境が従来「景気回復に対してサポートとなる」という表現だったのが、今回は「海外での変化を反映してサポートとなる力がやや弱まる」という表現になっていまして、欧州金融問題が米国の金融環境の足を引っ張る事を新たに入れました。
いやまあ普通に考えてこれ位入れるの当たり前だと思いますし、良く良く見るとこの部分って「金融環境」に関する話であって、別に欧州の金融問題が実体経済に反映した結果として米国の回復を阻害するという所まで踏み込んだ話でも何でもないのですが、どうもベンダー様がインターネット経由で報じている解説記事とか反応とかを見ていると、米国様におかれましては結構早期利上げがどうのこうのとか思ってたんですねえという感じで、それならまあ瞬間反応するわなという所でしょうか。
あと、金融環境に関して銀行貸出の部分は今回と前回は同じ表現です。一応追加。
『Bank lending has continued to contract in recent months. 』(今回)
・FOMCの先行き見通しに関して
『Nonetheless, the Committee anticipates a gradual return to higher levels
of resource utilization in a context of price stability, although the pace
of economic recovery is likely to be moderate for a time.』(今回)
『Although the pace of economic recovery is likely to be moderate for a
time, the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource
utilization in a context of price stability. 』(前回)
語順が変わっているのにどういう意味があるのか微妙なのですが、書いてあること自体は同じですな。「当面の景気回復パースは緩やかなものになるでしょう」という話です。
○何気にインフレの方を下げているような気がするんだが
続いて第2パラグラフ。
『Prices of energy and other commodities have declined somewhat in recent
months, and underlying inflation has trended lower. With substantial resource
slack continuing to restrain cost pressures and longer-term inflation expectations
stable, inflation is likely to be subdued for some time. 』(今回)
『With substantial resource slack continuing to restrain cost pressures
and longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to be
subdued for some time. 』(前回)
ということで、今回は前回の文章に加えて「エネルギーおよび商品価格がここ数か月幾分か下がっており、物価のトレンドも下がっている」という表現が追加されていまして、まあ確かに足元の物価動向がそうなっているのでこういう表現になるのでしょうけれども、きっちりとこの辺を入れているのがチャーミングかと。
○例の表現は変わらず、異例の政策に関する話は無事終了
もはや水戸黄門の印籠状態のこの表現は今回も不変です。第3パラグラフから。
『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate
at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions,
including low rates of resource utilization, subdued inflation trends,
and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally
low levels of the federal funds rate for an extended period.』(今回)
ここの表現は見事に今回も同じなので前回部分の引用は割愛します。念の為確認したい方は4月FOMC声明文を(^^)。
それから、今回何故かパラグラフ分けして書かれているのが次の部分なのですが、これまた前回と同じ表現です。これが第4パラグラフ。
『The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial
developments and will employ its policy tools as necessary to promote economic
recovery and price stability.』(今回)
で、今回ばっさり削られたのは以下の表現。前回声明文だと第4パラグラフ相当。
『In light of improved functioning of financial markets, the Federal Reserve
has closed all but one of the special liquidity facilities that it created
to support markets during the crisis. The only remaining such program,
the Term Asset-Backed Securities Loan Facility, is scheduled to close on
June 30 for loans backed by new-issue commercial mortgage-backed securities;
it closed on March 31 for loans backed by all other types of collateral.
』(前回)
何故か目の前でさっきやってたモーサテで解説してたどこぞの誰かさんは出口政策に関する話が無くなったのはサプライズとか言ってたのですが、それは単に予定通りに危機対応措置が終了して、まあある意味で通常の中での景気回復が死ぬほど遅くて失業が中々改善しない景気の悪い状態での金融政策運営になったからではないかと思う次第で、FRB的には無事に危機対応終了して良かったですね的な意味あいではないかと思うのですが、出口モードから追加緩和へとか謎の解説にちょっと耳を疑ってしまうあたくしなのでありました。いやまあこの先悪化すれば緩和したって別におかしくはないけど現状の表現でそこまでは読めないと思うのだが・・・・
○ホーニッグさんの反対理由も見事に同じ
第5パラグラフは票決の話でして、例によって例の如くホーニッグさんが反対したのですけれども、この理由が見事に前回と一言一句変わらずの巻。一応引用します。
『Thomas M. Hoenig, who believed that continuing to express the expectation
of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period
was no longer warranted because it could lead to a build-up of future imbalances
and increase risks to longer-run macroeconomic and financial stability,
while limiting the Committee’s flexibility to begin raising rates modestly.』(今回)
2010/06/23
お題「昨日の続きを少々/ニュースとか雑感」
諸般の事情により本日は簡単に(汗)。
○ニュース雑談
・銀行税ですかそうですか
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15947320100622
英政府が緊急予算案発表、VAT20%への引き上げなどが柱
[ロンドン 22日 ロイター]英連立政権は22日、付加価値税(VAT)率の20%への引き上げや銀行特別税導入を柱とする緊急予算案を発表した。厳しい緊縮財政策の導入により、過去最悪の水準に膨れ上がっている財政赤字を向こう5年でほぼ解消することを目指す。
この前(2008年12月でしたっけ)景気対策でVAT下げたと思ったら今度は引き上げとかもう迷走にも程がある状態な上に、銀行税ってあーた英国は金融の上がりで食っている国なのに大丈夫っすかねえという感じでございます。
しかも銀行税に関してはこんな話のようですが。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15945220100622
英・仏・独、協調して銀行への課税導入へ=ドイツ財務省
いやー、何か欧州の問題ってソブリンリスクがどーのこーのという話では無くて、流れとして「金融の縮小による実体経済への悪影響」のステージに向かっておりますなあ(だからこそダラダラ長期化しそうですが)というのがここでも表れていますなあという所で。
・また埋蔵金議論ですかそうですか
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010062201001285.html
刷新会議、全特別会計を仕分け 10月に第3弾
いやまあ別に良いんですけど、外為特会と国債整理基金に関する話をする時に刷新会議が深い考えなしにヘッドラインリスクになるようなおバカな話をしない事を強く希望します。
・まあ消費税に関してはとりあえず姿勢でよろしいんではないかと
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2010062202000067.html
首相 増税『早くて2、3年後』
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010062201001196.html
消費増税分の還付有力と枝野氏 低所得者の負担軽減策
まー何ですな、消費税に関してはこの経済情勢でいきなり上げたら景気に良くなさそうな気もしますんで、正直言って姿勢を見せるってえ奴で宜しいのではないかとは思います(ただしどこかで引き上げは必要でしょうけど)けれども、枝野さんの言う還付云々はコストが余計に掛かってあまり筋が宜しく無いような気がするんですがねえ。
とは言いましても、ど〜せ来年度予算の概算要求がどうのこうのという話になった場合には予算が組めませんなあという話になるんでしょうから、財政云々の話っていうのが債券市場のネタに復活するのは参院選後の夏以降という感じっすかねえ。
#ところで、この関連のせいか最近物価連動国債がいい感じで上昇しているようですな(^^)
○市場機能論が規制監督強化に繋がりそうな悪寒
昨日ご紹介したECBのLorenzo Bini Smaghi委員の講演の続きです。
http://www.ecb.int/press/key/date/2010/html/sp100614.en.html
『4. Collateralised finance and the transmission of monetary policy』ってところから。
『In some respects the transmission mechanism is weakened through the loss
of control over some financial aggregates - such as credit formation -
and the declining coherence between credit and money. In a world of shadow
banks the money multiplier might become a will-o’-the-wisp which central
banks find difficult to use as a steady instrument of policy.』
『The reserve basis - which in the inverted-pyramid representation of the
financial system sustains the creation of total leverage in the economy
- becomes an even thinner support for finance. As the famous “conundrum”
episode has demonstrated, a central bank’s intention to impose limits
on credit can be resisted and offset by an endogenous expansion in leverage.
While the base of the pyramid remains narrow, growing leverage can still
expand the whole edifice of finance. 』
つーことで、リザーブベースを積み上げても肝心の市場機能がぶっ壊れていると意味がなく、しかもその市場機能というのがレポなどの市場であるというお話ではございます。
『Regulation is an answer to the weakening of central bank controls over
the size of finance.』
『It will be especially important to extend regulatory oversight to those
market segments that, before the crisis, had escaped the attention of regulators.
The prime focus of attention here will be - once again - the shadow banking
system. Here, of course, there is an issue of relative scale. If we want
central bank control over leverage to be stronger in the future, shadow
banks need to be part of what we consider ‘banks’ tout court. In fact,
by 2007 the size of the official and shadow banking systems, measured by
the total amount of assets, had become essentially the same.』
とまあこんな話をしているのですが、どうもECB的には所謂BISビュー(というかブンデスバンク方式というか)をオフサイトモニタリングの世界でも突っ込みましょうという感じがプンプンするのですが、それって思いっきり金融の縮小に繋がりそうなのでどうなのかなあという気がせんでも無いのだが。
まあ流れとして金融監督の強化という話はあるのですが、ECBはその中でもガチガチの話をしだすんですなあというのは把握した訳ですが、銀行監督とかの話になりますと、日銀の金融システムレポートも必見だったりする(割には3月の金融システムレポートをネタにしてなかった気がする、汗)のでして、英国および欧州での銀行税がどうのこうのという話もありますけれども、どうも金融に関しては制度的なデレバレッジの動きが続いて景気の足を引っ張るんジャマイカというのはひじょーに気になるのでありまする。
#日本の場合金融システムレポートで書かれるのは「持ち合い株を減らしましょう」なのですが、まーそれがホイホイできれば苦労はしないのでして、日本的慣行に切り込むという話になるかと思料。まあそのうちそのネタも。
2010/06/22
お題「市場雑感/市場機能低下対応は中銀のテーマですな」
消費税の複数税率とか低所得者向けの還付とかするのであれば、やはりインボイス方式にすべきではないかと思うのですけど、何でそっちの話が出てこないんでしょうかねえ(いやまあ導入時にインボイス方式に商工業者から文句が出まくったというのは良く記憶してますけど^^)。
○例によって市場雑感
・人民元相場がどうしたこうした
えーっと、日曜の朝無駄に早起きしたら朝6時のニュースでトップだか2番目の扱いだったという人民元の価格変動容認ネタですが、ニュースを聞いた時に前回のイメージから「ドル安になって円が人民元につられて強くなってマズー(債券は金利が下がるからウマーではあるのだが、実は債券市場というのは金利が下がる(=価格が上がる)からと言っても参加者がウマーな訳では無いというのが債券市場以外の人から見て訳判らん所かと存じます^^)ってな事を考えて市場に臨んだ訳ですが。
・・・・おやま、株高じゃないですかという所ですが、冷静に考えたら前回人民元切り上げしたけど別に中国経済がコケるどころか益々建長寺な訳ですし、足元では中国のバブル懸念とかあったのですから「これは良い火消し」という事なのか、まあそれ以前の問題として近いうちに人民元の切り上げって話は織り込んでいたのでサプライズでも何でも無かったのか、正直何がどうなってあーゆーリアクションになったのか存じませんが(じゃあダラダラ書くなというツッコミは却下)、とりあえずは激震にならんで誠に結構という所です。
とりあえずこの調子でゆるゆるとやっていくという感じでしたら、為替市場経由で何か大騒ぎになるということも無さそうです(昨日ご紹介した決定会合議事要旨にあるように、日本の金融政策に対して影響が出るとすれば円高が進行して株安になって、昨年の新型オペ導入前後の数値を抜いた場合ですから)し、結局は本件によって中国経済がどうなるかって言うまあのんびりした話になると思いますので目先急にどうのこうのということにもならないのでしょうかなあという所で。
・財政払い超攻撃によって足元GCレート上昇
まあ何度も書いておりますので、「インターバンクの資金需給が財政要因(銀行券要因は財政要因ほど大きく振れない)で余剰になるとGCレポ市場の需給がタイトになって金利が下がり難くなる」というシステムについてはご理解頂いているとは存じますが、足元で見事にGCがサガランチ会長になっているので備忘メモメモ。
えーっとですな、6月は四半期の国債償還の山と、偶数月払いの年金定時払いによって月後半以降が財政絶賛大余剰地合いになる訳ですけれども、特に今回は新型オペ(固定3か月)の残高積み上がりによって足元の資金供給オペが打ちにくくなっているのが特徴的かと。
つまりですな、昨日の時点で(買入系を除く)資金供給オペの残高(ただしあたくしの手元集計ベースで、オペ落札の額面ベースです)が29.8兆円とかでして、今日が即日オペ無しの前提で29.0兆円になる訳ですが、その内訳を見ますとまず20兆円を固定金利オペが食っていますので、残り9兆円という事になりますが、1週間物でロールしている国債買現先が4000億円×5本で2兆円ですから、のこり7兆円しか無い訳ですな。
従来は固定3か月オペが無かったので、まあ足元の需給に対応する短いオペを適宜組み合わせながら足元でのGC金利が安定するようにオペが打てるわけですが、固定部分が20兆円とかございますと、まあこういう地合いになった場合に中々月末越えのオペが打ちにくいという状態になりまして、足元でも打ってるオペが殆ど月中で落ちるものだらけという素敵な状態になっております。
これまた従来ですと、足元GCが上昇する前にある程度月末越えとかのオペが打たれるので、その辺で取る人は取って来ますし、逆に足元GCが上昇しちゃいますと今度はオペ金利も連れて上昇しやすくなってしまいますので、その時には我慢してショートファンディングで繋いでいれば、そのうち長目のオペ金利が落ち着いて来るという流れがあったのですけれども、今回の場合、肝心のオペが打ちにくい状態になっている上に、GCレートの方は15日の手前の所から下がり難くなってしまったので、ショートファンディングも溜まってしまいますわなという所かとは存じます。
とは言いましても、(これまた毎度申し上げておりますように)3か月固定の金とかは出ているという事ですので、市場として金が無いわけでは無く、そっちに対応すると思われる3か月TBの金利は相変わらず0.115%辺りから一向に上昇しません。足元のGCレポレートはここ10日間程0.12%レベルで推移しているので見事な足元との逆鞘傾向なのですけれども、そっちはそっちで買いが入りますから、それこそ日銀の意図通りの市場推移ということだとは存じます。
という状況のメモメモであまり参考にならない話でどうもすいません。
○金融政策のトランスミッション・メカニズムに関するお話から
何気にここもとECBのボードメンバーが色々な話をしています。この前チェックした物は試しに1本(軽かったので)読んでみた訳ですが、どうもここもとECBでは各種金融政策の論点整理期間にでも入っているのか、その手のお題の講演がうじゃうじゃ並んでいます。リストはこの辺をご参考(これはボードメンバーの講演リスト)。
http://www.ecb.int/press/key/speaker/bm/html/index.en.html
で、お題に引かれて読んでみたのは6月14日のLorenzo Bini Smaghiさん(どう読めば良いのでしょうか)の講演でございます。
http://www.ecb.int/press/key/date/2010/html/sp100614.en.html
まあ最初と最後だけ読んでも内容としては「ふ〜ん」という感じだとは思いますけれども、あたくしが端的に勝手に纏めてしまいますと・・・
いわゆる証券化市場の発展に伴い、金融システムが従来的な預金貸出から、シャドウバンキングと言われる証券化市場に拡大し、ファイナンスの卸売みたいな形になりました。で、その証券化市場の拡大によって、ファンディングが預金からレポ市場などの市場調達へと変化しました。
このレポ市場は、担保証券の価格が急激に低下したり、流動性確保のニーズが高まった場合に、急激に市場機能を低下させ、結果として証券のファイヤーセールなどに繋がってしまう恐れが高く、今般ECBが実施した市場への介入策はこれらの市場機能確保の為のものであります。
ただし、中央銀行が市場機能を果たすという事が行き過ぎるとそれはそれで問題がありますよって話もしています。で、最後はソブリン債の発行が多いという問題に触れてます。
と、とりあえずヤケクソで相当端折ってみましたが、この中で「ほほー」と思った所をてきとーに引用してみます。
・ECBの証券買入に関する説明部分から
『Our enhanced credit support measures were taken to preserve the integrity
of the transmission mechanism of monetary policy at a time when banks showed
a tendency to withdraw in a disorderly way from their intermediation function.
A functioning transmission mechanism is the pre-condition for the central
bank to be able to accomplish its mandate of maintaining price stability
in the medium term.』
『The same policy intention underlies our Securities Markets Programme,
which we started on 10 May this year. We intervene in euro area public
and private debt securities markets in order to ensure depth and liquidity
in those market segments which have proved dysfunctional. As government
securities are the basis for pricing all private debt instruments, our
action in the sovereign bond markets aims to create the orderly conditions
necessary for lenders to provide a steady flow of credit to the private
economy.』
ということで、各種オペレーションに加え、国債買入も「市場機能の回復の為」実施したという事です。まあ米国の国債買入とはちょっと違いました(米国では国債市場は普通に機能してた)わなということで。
『Overall, through its enhanced credit support measures, the ECB has replaced
ill-functioning segments of the financial market and acted as an “intermediary”
between banks with a liquidity deficit and banks with a liquidity surplus.
At the same time, and with a slightly longer-term perspective, the measures
have contributed to a more stable situation in various segments of the
financial markets during the crisis. For example, easier access to central
bank refinancing meant that banks could refinance their money market activities
more easily if needed. This, in turn, has reduced the risk of lending out
liquidity in the money market and thereby lowered the liquidity risk premia.』
ということで、市場機能回復という話は、最初は各種のファシリティーを作ったFRBが言いだしていましたが、ECBもすっかりこの説明をしているというところでして、まあ今般の金融危機で主要各国の金融政策対応のロジックとかが随分と似ている(まあ各国で同じような問題が生じたのだからある意味当たり前なのかもしれませんが)なあと思うのでありました。
で、その最後の所に「へ〜」と言う部分が。
『In crisis times, banks the world over learnt what Japanese banks learnt
back in the 1990s: that they could manage their liquidity requirements
- perhaps more comfortably and at lower cost - through central bank intermediation
rather than via their traditional money market activities. Central banks
- for their part - have seen that their collateralised lending has made
them key market makers at a time when markets were disappearing.』
ということで、日本のケースが何故か出ているのですが、90年代後半の危機では流動性拡大と利下げをしてましたなあと思いつつ、あれこんな理解でいいんだっけとちと微妙なテイストがせんでもない。
・中央銀行の市場機能代替が拡大し過ぎる場合の問題について
『First, the larger the intermediation offered by the central bank, the
smaller, ceteris paribus, the incentives are for banks to reduce liquidity
risk (for example, to reduce the maturity mismatch of assets and liabilities).
After all, they can turn to the central bank if they need to.』
ceteris paribusって辞書みたら「他の事情が同じならば」だそうです(^^)。で、中央銀行が市場機能を代替し過ぎると市場参加者が流動性リスクを無視してミスマッチポジションを拡大させてしまうという話ですわな。一応続きを引用。
『Of course, while central bank intermediation increases the incentives
for banks to take liquidity risk, it also increases the liquidity insurance
available to banks. That is, as long as a bank does not adjust its balance
sheet when the central bank offers more intermediation, its net liquidity
risk exposure may in fact decrease due to the increased liquidity risk
insurance provided by the central bank. But which effect is stronger: the
incentive or the insurance effect?』
もう一つの問題ですが。
『Second, larger central bank intermediation can crowd out market activities.
This might be perceived as a cost-reducing development by private banks.』
まあ日本の短期市場って中銀のオペ様に絶賛大依存状態になっているので、こういう指摘が当たっている面もあるし、1番目に指摘したような「ミスマッチポジションの野放図な拡大」は起きていないですから、その辺は自制が効いているとも言えますし、中々難しい論点ではございますが。
『If the central bank lends larger volumes in longer-term operations, this
might provide a boost to private lending at the same maturities: some banks
might consider offering funds in the term money market only if they themselves
can refinance such activities by participating in longer-term central bank
operations.』
という指摘をしていますが、それはまあ市場参加者が引き続き強欲豚状態になって中銀のオペレーションによる流動性確保に乗っかってガツガツと行動した場合にそうなるかも知れないですけれども、その辺はバランスシート制約とかを活用することによって管理ができるのではないかと思われます(というかその類の話もしてます)し、もう低金利が牛の反芻状態のように延々と続き、バランスシート制約がうるせえニホン的な市場感覚からすると、この指摘は「そうかいな?」
という気がせんでもない。
『This may make term money markets more liquid in the end. However, this
is not what the Japanese authorities observed in the first half of this
decade.』
ほほう。
#ということでちょっとだけ引用したら量は増量だわ時間は無くなるわなので終了
2010/06/21
お題「5月会合議事要旨を見るとリスクは上下に拡大」
人民元切り上げキター(・∀・)なんですが、はてさてどの位なのかね。
で、5月は2回決定会合が実施された訳だが、臨時会合の方はスワップ協定だのドル資金供給オペだのの件なのでスルーして定例会合の方から。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100521.pdf(5月定例会合)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100510.pdf(5月臨時会合)
で、定例会合の方から引用するだよ。
○新興国経済の認識を中心に
『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から新興国経済の部分に関して。
『新興国経済について、何人かの委員は、既に生産・所得・支出の好循環メカニズムが働き始めており、国際機関や市場の見方よりも強めの展開となっていると指摘した。』
好循環メカニズムとは要するに高度経済成長モードという事ですかそうですか。
『また、複数の委員は、一部の新興国において景気の過熱感が次第に強まってきていることを踏まえると、これらの国々において政策対応が後手に回っていないかどうか注意が必要との見方を示した。』
というリスクの説明もあるのですが、新興国に関しては明らかに上振れという認識なんだろうなあというのは「新興国経済が引っ張って世界経済を回復させる」というこの続きの部分とか。
『先進国経済について、大方の委員は、緩やかながらも改善の動きが続いていると指摘した。先進国経済の先行きについて、多くの委員は、回復に向けた動きが途切れる可能性は、これまでのところ小さいとの見方を述べた。その上で、これらの委員は、バランスシート調整の帰趨に加え、欧州諸国における財政状況を巡る動きが、金融市場や貿易面など様々なルートを通じて実体経済を下振れさせるリスクには、十分注意が必要との認識を示した。』
というのが金融問題に関する部分(あとでもうちょっと引用します)なのですけれども、この問題に関しては以下のような指摘をしています。
『この間、複数の委員は、今後の世界経済は、欧州経済における不確実性の高まりの影響を遮断して、新興国経済の高成長を起点とし、米国及びわが国経済の堅調な回復が継続するという好循環メカニズムを実現する一種の「デカップリング」が可能かどうかが鍵になると述べた。』
まあ要するに「欧州だけが死んでくれると何とかなるんですけど」という話だと思うのですけれども、その先の方で地域別の認識で中国経済に関する指摘をしているのですが、そちらではこうなっています。
『中国経済について、委員は、内需を中心に高めの成長を続けており、先行きも高い成長を維持する可能性が高いとの認識で一致した。』
ほほう。
『何人かの委員は、個人消費や固定資産投資が、依然高い伸びを続けており、内需の腰は強いとの見方を示した。ただし、複数の委員は、中国の輸出に占める欧州向けの割合は相応に大きく、欧州経済が下振れた場合、中国経済への悪影響は避けられないと述べた。』
とまあそんなことも書いてあるのですが、トータルで見た場合にこういう話になっているのが何と申しますか。
『わが国経済のリスク要因について、多くの委員は、基本的に展望レポートで指摘した点と同様であるが、リスクは上下両方に幾分拡大しているとの認識を示した。』
下が拡大なのは明らか(ギリシャが大火災モードになったのは連休明けですから)なのですが、上方リスクも拡大とな。で、上方リスク部分を引用します(下方の話はまた後で)。
『他方で、多くの委員は、最近の新興国・資源国の力強い成長は予想を上回り続けてきているものであり、上振れリスクとして一層の注意が必要であるとの認識を示した。』
うーん、データ的にもそうですし、その影響で企業マインド強くて今度の短観も強そうですし、確かにその通りかなあとは思うのですけどね〜。
『この点について、何人かの委員は、新興国・資源国における政策対応が後手に回り、景気が過熱した場合には、これらの国で経済・金融活動の急激な巻き戻しが発生する可能性があり、わが国経済にとって、却って下振れリスクとなりうると付言した。』
ということですが、まずは過熱の方が先に来る話なので、新興国の部分を結構上目線で見ているというのは良く把握した。
○では金融と経済の相互作用に関しては
さっき引用した金融市場問題に関してですけれども。
『米国経済について、委員は、緩やかに回復しているとの認識を共有した。』
という米国経済の認識に関しては基本的にそんなに悪い認識じゃない(個人消費やら設備投資やらが堅調で、住宅が弱くて雇用が中々戻らない、というFRBの認識と同じです、当たり前ですが)のですけれども、最後の所ではこの指摘をしています。
『米国経済の先行きについて、委員は、全体として回復傾向が続くとの認識を共有した。ただし、多くの委員は、家計の可処分所得が伸び悩み、バランスシート調整圧力も残存する中では、景気回復ペースは当面緩やかなものにとどまるとの見方を示した。』
ということで、米国に関してはバランスシート調整圧力の話ですな。で、ここで話がいきなりワープするのですが、金融市場現場労働者的な感覚だとどうしても足元の欧州市場の調整およびどう見ても緩やかに金融危機モードという日本の90年代後半のようなテイストを感じてしまう欧州の香りに対してひじょーにナーバスになるのですけれども、恐らく米国経済見通しが比較的確りなのと、新興国経済が比較的強く、ついでに企業マインドが悪くないというのを見ると日銀ちゃん的には強く見たくなってしまうっちゅう事なのでしょうかねえ、とふと思うのでありました。
ま、本邦の金融市場(特に金利系)現場労務者のうち、年寄りに類するあたくしのような人達って不良債権問題が兎に角長期間引っ張られて碌な事が無かった(いやまあ個人的状況で言えばそのネタで商売した人もいますけど)という素敵な記憶がまだまだ残ってますからねえ。
#まてよ、最近の若い衆はよー知らんのかその辺
と、話がそれましたが本命の欧州ちゃんに関して。まず基本的な認識は・・・
『ユーロエリア経済について、委員は、国ごとのばらつきを伴いながらも、持ち直しているとの見方を共有した。多くの委員が、ギリシャなどでは厳しい状況が続いているものの、ドイツやフランスを中心に、域外輸出・生産の増加による持ち直しの動きが続いているとの認識を示した。』
なのですが、
『この点、何人かの委員は、ギリシャ等の財政問題に端を発する欧州金融市場の緊張は、当局の対応もあって状況の一段の悪化がひとまず回避されており、景気持ち直しの動きを途切れさせる可能性は今のところ小さいとの見方を示した。』
という事ですが、この会合を実施していた5月20、21日の金融市場がヒャッハー状態になって、国内債券市場では20年超長期とかが2日で0.1%位金利が下がった(カレントの引値ベースでは2日で9毛5糸強)のがチャーミングなのですがそれは敢えてスルー。
『また、複数の委員は、現在特に財政問題が懸念されている国々の域内に占める経済規模が大きくないことを示した上で、地域全体の実体経済に与える影響が限定的にとどまる可能性を指摘した。』
そらそうですし、まあこの時点ではメインテーマが財政の維持可能性問題という感じでございましたが、その後は問題が金融機関の不良資産がどうしただの、短期のファンディングがどうしただの(まあECBのドルオペとか見るとそこまで深刻じゃなさそうですが)という金融機関問題に発展していると思われますので、この辺りの認識ってどう変化している(あるいは変化していない)のかは6月会合議事要旨を見たいと思います。
『もっとも、これらの委員を含む多くの委員は、ユーロエリア経済が、もともとバランスシート調整圧力や東欧諸国の過剰債務問題を抱え、景気回復のモメンタムが先進国の中でも弱い地域だけに、今後ギリシャ等が財政再建と経済改革に取り組む過程において、金融資本市場の緊張が更に高まった場合、様々なルートを通じて実体経済が下振れるリスクには注意する必要があるとの認識を示した。』
という事ですが、この辺りの認識がどうなるかという話ですな。ただまあ欧州の
場合って金融機関の資産圧縮って話になった時には米国のような過激な動きにならないであろうと想像されるだけに、逆にダラダラと続き、しかもデータとしてあんまり目立たないんジャマイカという気がせんでもないです。
ちなみに、ギリシャ問題が国内の金融環境に何か影響ありますかという議論も別の所にあるのですが、まあそちらは「今の所特に問題ない」という結論です。
『こうした議論を経て、委員は、ギリシャの財政問題に端を発する欧州金融市場の緊張感の高まりが、わが国の金融環境に与える影響は、これまでのところ株式市場など限定的であり、金融環境の緩和方向への動きは途切れていないとの認識で一致した。ただし、何人かの委員は、今後、欧州金融市場が一段と不安定化し、円高・株安が更に進展するような状況になれば、実体面、金融面の様々なルートから、わが国の金融環境が逼迫化する可能性には留意が必要と指摘した。』
ということで、円高と株安に直接繋がらない限りにおいては問題ありませんなっつー話ですので、まー相変わらずではございますが、日銀のケツに火がつくのは円高と株安という構造には変化がないという事ですわな。
○財政問題に関して
まずは欧州経済に関しての部分から。
『複数の委員は、いくつかの国が同時に財政引締めを実施した場合のフィスカル・ドラッグは予想以上に大きなものとなる可能性があると指摘した。これに対して、何人かの委員は、財政の維持可能性に対する市場の信認が回復し、金融市場が落ち着きを取り戻す効果の方が、より大きいとの見方を示した。』
いやーこの件に関しては正直難しいなあと思います。マインド面というのは非常に大事ではありますけれども、財政引き締めは現実問題として実弾が欠乏する話でござんすから、それが一国だけではなくて欧州域内のあちこちで実施ということになりますと、域内で色々と回している欧州圏内としてはやっぱりそっちのエライコッチャの方が問題になるような希ガス。
あとですな、さっきも書きましたように、この時点では市場の関心がソブリン財政の維持可能性問題でしたが、問題が金融機関の不良債権という話になった場合は、財政問題での信認回復とは話が別ということにもなりますし・・・・とは思いますけれどもどうなんでしょ。
で、ギリシャ問題に関連する話で本邦の財政に関する話が別の所に。
『何人かの委員は、今回のギリシャの財政問題から得られる教訓について、わが国とギリシャの経済・金融を巡る状況や制度が異なることを指摘した上で、@
市場は突然変化するものであることも念頭に置きながら、財政の維持可能性について市場から十分信頼を得られるような取り組みをしていくことが重要であること、A
中央銀行としては、物価安定のもとでの持続的な成長の実現に貢献するという金融政策運営の姿勢をしっかりと維持することが重要であること、を挙げた。』
まあ何ですな、1番目(機種依存文字は原文ママで勘弁)の話って金融市場の現場労務者的には当たり前にも程がある話ですし、同じ状態であっても市場のその時のマインドやらテーマやらで売り材料にも買い材料にもしてしまうのが、市場クオリティなのですけれども、この件に関しては市場現場労務者以外の人と話をすると中々通じてくれない(まあ仕方ないけどね)所でして、所謂「期待に働きかける政策」というのが絵で書いた場合には美しいのですけれども、実際に行うとなった場合に色々と難しい面があって、「正直言ってそりゃワークせん(効かない場合と効き過ぎてやり過ぎになる場合とがありますが)でしょ」というような提言が市場をご存じ無い方から堂々と出たりするのが残念な所ではございますなあと思いまする。まあ余談ですけど。
と、またまた話が脱線しましたが、まあ国内に関しては財政健全化路線が一応担保できるような政策が政府の方から出てくるのであれば、日銀が前向きに協力しましょっていう話はあってもおかしくは無いかなあとは思うのですけれどもねえ。
#まさか例の成長基盤強化だけで逃げきろうとか思ってませんかね(ニヤニヤ)
と言う事で、延々と引用しましたが、よーするに「マクロデータ重視だから仕方ないけど、景気の見通しを引き続き強くみているのね」というのが5月会合のインプリケーションだったという所でしょうか。しかし講演とか見ていると必ずしも全員が全員上下バランスとみている訳でもなさそうですから、バランスを上に見ている人と下に見ている人がいるのではないかとあたしゃ想像致しますがどうなんでしょうかね。
2010/06/18
お題「市場雑談/その市場も動かないので国会見物」
動かない訳では無くて、トレンドみたいなのが出ないって感じですかね。
#成長策を見て毎度思うのですが、外資系企業を誘致してどうのこうのってネタなんですが、国内企業向けに新規事業への優遇とか、規制緩和とかをする方が先なんじゃネーノと思うのですけどねえ・・・
○市場雑談
・オペ残とGCレートに関する雑考
今週に入って積み期間が変わったものの、GCレートちゃんは0.12%近辺をウロウロするという展開。まあ足元のGCが上昇しても先日も申し上げたようにタームの金利が上がるかと言えばこれがまた上がらないのでありまして、3か月のTBレートは0.115%程度で安定していますし、CPレートは低位安定してますしという状況ですから、まあ金融調節としては問題視するようなことでもないですわな。先日ご紹介した金融調節に関するレポートでも「タームの資金供給を潤沢に行いながらも、足元の資金に関しては市場の調整に任せる」と書いてありますので、まさしくその状況という事ですな。
で、当座預金残高水準は足元で15兆円半ばの水準で推移していますが、16日以降のGCレート(ってまだ新積み期間に入って2日ですけど)は存外下がりませんなあとなっております。今日の当座預金残高が日銀公表ベースの数字を積み上げて計算すると15.5兆円程度ですが、月曜の当座預金残高は今の所(東京短資さんの資金需給予想をベースにして計算すると)17兆円に乗るということで、21日の国債償還日には当座預金残高が積み上がる予定、という格好になります。
でもGCレートちゃんが下がらんという格好になっておりまして、そらナンデジャロという話ですが(以下の話は短期の人が読んでも「何をおめー当たり前の説明してるんじゃ」というレベルの話なので読み飛ばし推奨、たまには簡単な説明用の書き物をしたいので^^)、これはオペ残高の方が問題になるという話でございまする。
つまりですな、今月は15日と21日に資金余剰の山があって、そこの辺りで資金供給オペの残高が落ちるという構図になっていまして、14日に34.5兆円(あたくしの手元集計ベースで、日銀のオペ落札の額面ベースになりますので正確なつもりだが内容無保証^^)となっていたオペ残高が15日に32.3兆円に落ち(この間に当座預金残高は2兆円増えてます)、昨日(17日)のオペ残は31.2兆円。21日のオペ残は今の所28.6兆円ということで、資金余剰時期に合わせてオペ残高が急速に減少する訳でございますな(ちなみに財政揚げの6月2日のオペ残高は38.3兆円)。
でまあそれだけ資金供給オペの残高が落ちますとGC市場での要調達額が増えてくるという構図になりますので、ど〜してもGCレートが下がり難くなるという話。特に今月の場合は月末を越えるオペが(新型オペを除いて)ろくすっぽ打たれていないという状況になっているので、調達がショートファンディングになる傾向が強いでしょうから下がり難いでしょうなあと思われる所です。ただし、それがターム物の上昇に繋がらないのは、そもそも市場で運用しないといけない/潰さないといけない短期資金があほのようにあって、運用する金そのものはある(ので最終的に金が回らなくてレートが上昇ということは考え難い)というのと、7月以降財政資金が揚げ傾向になってくればまたオペが増えてくるので、とりあえず足元のオペ残高減少を暫く凌げば良いということなんじゃねえのとは思いますけどね。
#つまり、財政の大きな出入りがある時は当座預金残高だけ見てても良く判らんですよ、という短期市場では当たり前の話を延々としただけでございまして誠にあいすみません。たまには頭の中を整理しておきたかったもんで(汗)
で、まあ当面は無さそうですが、新型オペの増額をするという事になりますと、売出手形あるいは国債売現先等で資金を引かない限り、足元の資金需給調整がややこしくなりますなあというのも毎度お話している通りですなという所になろうかと思います。
・CPレートがやたらと低い件について
ここもと微妙にアレなのがCP市場ちゃんでして、運用資金が余っているせいなのは判るのですが、5月辺りには特別オペの残高が減って来たことも影響していたのか、若干銘柄間の差が出てみたり、短国とのレート逆転現象が解消されてみたりという感じだったのですが、5月末辺りからまたまたCPのレートが低下気味。
その他金融さんの3か月ものレートが下がってきましたなあとか思っているうちに、今度は中間期末越えのプレミアムが段々無くなってきまして、足元では銘柄間の較差も無くなってきたでござるの巻。具体的なレート水準については金融ファクシミリ新聞でも見てくんなまし(ただし金ファクさんの数値も市場推計ベースですので念の為)という所ですが、4月以降ちったあ普通に近づいて来たかなあと思ったのですが、またまた阿片窟状態っぽいテイストを醸し出しています。
特に足元での動きで何だかなあと思うのは、ここもとのCPレート下げ&銘柄間スプレッド潰しの状況に対して、一般債の短い所では金利が別に下がる訳でもなく、うっかりすると同期間のCPが政府保証債よりもレートが低いとか普通に起きているというのが微妙な所でございます。まあ足元での一般債の状況って4半期末での在庫圧縮モードとか、こっちはこっちでスプレッド及び金利水準からの外しが出るとか、そもそもCPと債券では買う人が違うし流動性も微妙に違うとか、一般債ではCPと違って一発でそんなにロットが捌けないとか、まあ色々な要因があるのは判るのですけれども、ど〜も足元でイマイチ整合性の取れない動きが起きているというのは違和感が。
まあ今申し上げたような各種要因でCPだけ低いという状態になっているのかとは思いますが、一般債市場との間での裁定が機能してませんなあというのは、やはりこれはマーケット阿片窟状態が続いたことによる短期金融市場の機能低下の一環ではないかと(こじつけ成分がございますが)思われる次第なのでございまする。
○国会会議録シリーズですが、もうちょっとマシな質問できないんですかねえ・・・
5月11日の衆議院決算行政委員会から。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/005817420100511003.htm
冒頭の民主党五十嵐文彦委員の質問が中々アレなのですが。
『○五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。
早速質問に入ります。
最初に、二十年度決算の歳入欠陥について伺いたいと思います。
二十年度決算の最大の問題は、御存じのとおり歳入欠陥でございます。リーマン・ショックというのは、二〇〇八年九月十五日の連邦裁判所破産申請というものが直接の事件でございますので、その影響で世界的な金融不安が起きたということでございます。時期的に見て補正予算で対応ができたはずでありますが、補正後なお最終的に二兆千六百十六億円もの税収不足を来した。その見込み違いを犯したのはなぜか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。』
というのが最初のテーマなのですが、そこで日銀納付金についての質問が出て、雨宮企画局長(現在は理事)が答弁していますが、この質疑はどう見ても無茶としか申し上げようが無い訳で。
『○五十嵐委員 実は、財政当局は、すべてこのような税収見積もりについてはかた目かた目に見積もるのが当然なんだろうと思いますね。この落ち込みについては、その額の大きさ、乖離の大きさからいって、やはり見込みとしては相当誤ったなという感じがいたします。また後ほど議論をいたします。
日銀納付金についても、四千六百五十七億円の見込み違いが起きております。年度途中に円安・ドル高から急激な円高に移行したせいだというふうには伺っておりますが、アメリカや欧州の金融機関がこのリーマン・ショックで受けた傷の深さを考えると、結果として、ユーロ安というもの、ドル安というものは当然予測ができたはずですから、これはなぜ四千六百五十七億円もの見込み違いになったのか、日銀当局からお伺いをしたいと思います。』
『○雨宮参考人 お答え申し上げます。
今御質問のありました予算の計上ということですと、私どもではございませんで、財政当局の方の見積もりでございますので、直接、見積もりの変更については私はお答えを申し上げる立場ではございませんが、私どもの日本銀行の収益、先生御案内のとおり、私ども銀行業で、調達した資金を運用してございますので、為替あるいは市況の変動等に大きな影響を受けるということでございます。
ただし、見積もりと実際の差につきましては、これは財政当局のお見積もりでございますので、ここでのお答えは差し控えさせていただきたいと存じます。』
雨宮さんの答えっぷりがいい感じでスルー気味に見えるのですが(^^)、実際はこの辺りを見るとhttp://www.boj.or.jp/type/release/teiki/kaikei/zaimu/zai0905a.htmありますように、金融機関から昔むかしに購入した株式の減損とかの関係という事でありまして、そもそも五十嵐さんの質問がいい感じで的を外しているのが判るかと存じます。
『○五十嵐委員 ただ、勝手に財務省だけが見積もるはずはないので、当然、日銀との間で、それはお仕事をされているわけですから、その業績の見通しを聞いた上で見積もるはずなんです。しかも、年度途中で起きたことであって、これは当初との見込み違いじゃないですから、四千六百五十七億円というのは。補正を終えてなおこれだけの差額が出た、見誤りが出たというのはやはり問題だと私は思います。
そもそも、二〇〇五年から六年にかけて、エール大のロバート・シラー教授、エコノミストのピーター・シフさん、それから、日本でも私どもがふだんいろいろ御教示をいただいています中前忠さんなどが、米国のサブプライムローンの破綻を早くから警告されていました。私どもは、その名前も知っておりましたし、その破綻の規模も約十兆ドル、一千兆円に上るのではないかという話を早くから聞いておりました。
そして、そうした状況の中にあって、日本の自動車メーカーなどが急激な設備投資や増産体制を日米双方でしいています。危険だという認識があってもおかしくなかったと思います。それは、民間のことですから、直接何かするということはないと思いますが、警戒をしてよろしかったと私は思います。それはなぜそういうことにならなかったのか、お伺いをしたいということです。』
・・・・・・こういうのを一般的には後出しじゃんけんというのでありまして、そんなもんまで一々全部考えてたら予算なんて全然組めないじゃないのよと思うのですが。
以下このネタが続くのですが割愛(−−メ)。
でですな、その続きのネタで、外貨準備の話をしているのですけど、そっちがまたどうかと思うのでして、質疑応答のちょっと先の方になる所を読んでみます。
『次に、アメリカの方の対応でございますけれども、アメリカの危機対応策というのは、資産担保証券融資制度、TALFといいますが、あと、官民共同投資ファンド、PPIP、これらをつくったり拡充したりするということが中心でありました。これは、連邦準備制度理事会、FRBが米国債を抱え込んで、バランスシートを肥大化させる中で乗り切ろうとしているというふうに判断をできると思います。今後、十年間に九兆ドル超、九百兆円弱の財政赤字の増大が予想されます。先ほど申しましたように十兆ドル近いロスがあったと思われるからでありますけれども、そうすると、長期的に見てドル安が進むと思いますが、どう思われますか。』
これは菅財務大臣(当時)向けの質問ですが、答えは割愛。
『○五十嵐委員 それは、短期的にはいろいろあるというのは当たり前のことでありますが、アメリカのロスが最終的には十兆ドルに達するだろうというその大きさから見て、あるいは今のアメリカの戦費調達等の財政事情から見て、長期的にはドル安が進むだろうというのは多分肯定をされるのではないかと思います。
そうすると、そのような中で、だからこそ、例えば中国の温家宝首相は、〇九年二月には米国債買い増し路線を見直すと受け取れる発言を行っています。そして実際に、昨年十月以降、十一月からことし二月まで、統計が出ている四カ月間連続で中国は米国債の保有残高を減らし続けております。合計六百八億ドルと承知をいたしておりますけれども、これは大変な額に上るわけですね。
一方、日本は、この間も一貫して保有残高をふやし続けております。長期的にドル安の懸念がある中で、これは放置をすれば大損をするリスクがあるということであります。保有米国債購入時の日本の平均レートは一ドル百二十円と聞いておりますが、もっと円安のレートだったのではないかなと思いますが、この点は確かめられますか。』
・・・・えーっと、さっきはドル安やユーロ安で日銀納付金が減ってケシカランという話をしていますが、外貨準備のドルを崩したら外貨準備の損は回避できるかもしれない(実際は市場が大爆発するから無理ですが)のですが、更にドル安が進んで日本の経済に大変な事になるのではないかと存じますが・・・・・つーかそもそも足元での米国債の保有残高増加って単に利払い分を再投資しているからなんじゃないですか?????
で、これまた答えは割愛しまして質問の続き。
『○五十嵐委員 いや、百二十円というのは財務省当局の方から聞いた。私は、百三十八円ではないかなというふうに思っていたので、思ったより円高の水準での平均買い価格だなというふうに思っていたわけで、今お聞きしたところでございますが、まあ、それはいいです、技術的な話ですから。
そもそも、今の時代に過大な外貨準備を持つ必要はないというのが経済の世界では常識であります。せいぜい輸入月額の三カ月分、日本でいえば二十兆円程度で十分ではないか。百兆円の外貨準備を今、日本は持っておりますけれども、その多くを米国債で運用している。そのリスクは大変大きく、これは、いわゆる埋蔵金の中の一つ、埋蔵金どころか死蔵金であり、場合によっては時限爆弾になるわけであります。(以下も何を言ってるのか微妙にアレですが割愛)』
・・・・・えーっと、「経済の世界では常識」とか言われましてもそもそも何で外貨準備が発生しているかという論点を華麗に無視して言われましても困るのですかれども。
とまあそんな感じで微妙な話が続くのですが、読んでて頭が痛くなるので以下割愛ということで(^^)。
2010/06/17
お題「総裁会見とか月報とか」
まずは総裁会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1006c.pdf
○成長基盤強化支援に関する質問が多いですな
まあ当たり前なのですが、成長基盤強化支援政策に関する質問が多いのですけれども、まあ正直言ってそっちの質疑応答に関する部分ってマーケット的にはどうでも良い話なので、今回はそういう意味ではあまりオモロクナイ会見でもありました。
んでもって、まあ成長基盤強化に関する質疑を一応引用しますと・・・
今回の施策導入に関して金融機関とヒアリングした結果どうでしたかという質問に対しての回答を一部引用。(4ページ)
『その意味で、今回の措置は、こうした民間金融機関の現在行っている自主的な取り組みを尊重しつつ、資金供給面で工夫することによって後押ししていくもので、民間金融機関の姿勢に対して何か不満を持っているということではありません。逆に、私どもとしては、今回の民間金融機関との話し合いもそうでしたが、そうした対話を通じてお互いにどのようなところに問題があるのか、どのようなことを私どもが働きかけていかないといけないのかということについて認識を深めていくことも期待しています。』
つまりですな、まあ今回の措置自体が「日銀が政策金融に乗り出すんじゃ」という話でも何でもないという説明と、もうひとつの点としておまけではあるけど重要そうなのは、この施策導入をネタにして金融機関へのヒアリング、しかも市場部門だけじゃなくて融資関連部門へのヒアリングもできますので好都合、と言う効果もあるんでしょうなあというのは把握した。
今回の措置を通常の金融調節に影響を与えないメカニズムについての質問に対しての回答から。(引用箇所は8ページ)
『また、金融政策の遂行に支障を来たさないための配慮についてですが、まず、貸付の総額を3
兆円としました。日本銀行が、金融調節を行っていく上で、通常の金利政策上の理由以外の要因で大量にお金が日本銀行から出ていくと、その分調節が行いにくくなってくるからです。』
つまり金利押し下げ効果は考えていないという建付け。
『また、貸付期間を1年、借り換えを含めて最長4年とし、貸付の受付期間を約2年とし、四半期ごとに期日を定めて貸付実行を行うようにしました。成長基盤強化ですから、ある程度期間が長くなってきます。しかし、あまり長い期間に固定金利で資金を供給すると、金利政策上も影響が出てきます。従って、貸付期間1年で3回借り換え可能というかたちでバランスをとったわけです。それから、この措置を設けている期間を2011年度末までとしたことも金融政策上の配慮です。こうした配慮を行えば金融政策の運営上大きな支障はないと判断しました。』
昨日あたくしが書いた時に2011年末とか書きましたが、それはあたくしの読み間違えでした。どうもすいません。
で、こちらでは色々と説明していますが、まあ要するにこの措置は時間軸の強化でもなく、ターム物金利の押し下げでもなく、ついでに時限措置ですよということで、あくまでも通常の金融政策の外側の措置だという話をしていますわな。
○相変わらず景気の見方が政策委員会の中で一番強気なんじゃネーノ??
欧州の金融市場の不安定化に関する質問に対して。(7ページ)
『ご質問の金融市場ですが、周辺国全般のソブリンリスクの高まりを受けて、不安定な状態が続いていると認識しています。国債利回りや株価の変動が大きくなっているほか、これまで縮小傾向にあった社債スプレッドが拡大し、社債の発行も減少するなど企業の資金調達環境にも若干の影響が出ているとみています。こうした影響が、金融・貿易両面における緊密な結びつきのもとで、欧州域内に広がり、欧州経済の回復の力を弱めることがないかどうか注意深く見ていきたいと考えています。』
・・・・ほほう、「回復の力を弱めることがないかどうか」ですか。金融と経済の相互作用で悪化懸念というのを(根が心配性の)債券屋さんは見ているのではないかと思うのですが、あくまでも「ペースダウン」程度の懸念とな。
しかも他の質問ではこんな話も。(9ページ)
『いずれにせよ、欧州経済について今起きていることは下振れ方向のリスクですが、一方、世界経済全体を考えてみると、新興国はさらに強くなってきていると感じています。』
このご時世で「新興国はさらに強くなる」とかわざわざ言う事自体がもう麿は景気回復を確信しているでおじゃるというテイストを醸し出す訳でありまして、こーゆー時にそこまで相場張らんでもええんちゃうのかと思うのですけどねえ・・・・
『日本の実質輸出をみると、昨年度来、前期比10%のペースで増加していますが、足許の数字はさらにこれが幾分加速しており、アジア新興国を中心に伸びが加速していると感じています。世界経済全体では、先般のG20
の発表にもある通り、今のところ予想を上回って上振れています。本日の金融政策決定会合でもそうでしたが、私どもではこうした欧州の下振れ方向のリスクと新興国の上振れ方向の動きの両方をバランスよく見ていく必要があると議論したところです。』
他の審議委員の皆様におかれましては、そのバランスを下方向に注意というご認識だと思うのですけど・・・・・・
ということで、今回の会見ですが、基本的には延々と成長基盤強化の質問が多い中、しらっと白川総裁様が景気に強気という話が出ているのがチャーミングと申しますか、おいおいおいおいと申しますか、頼むからこんな所で相場を張らないでくれよと申しますかという感じでございまする。
まあ会見はそんな所で。
○金融経済月報から、微修正程度かな??
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1006.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1005.pdf(前回)
概要部分に関しては、声明文同様であまり変化はないです。
『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』
『輸出や生産は増加を続けている。そうしたもとで、設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、各種対策の効果もあって、耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。』
この辺りは声明文と同様ですが、雇用所得環境がどうしたこうしたという所の文言が今回復活したという形になっています。本文での表現に関しては後でご紹介します。
『先行きについては、景気は緩やかに回復していくと考えられる。』
『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。国内民間需要は、持ち直しを続けるものの、設備・雇用の過剰感が強いことなどから、当面、緩やかな持ち直しにとどまる可能性が高い。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』
ここは見事に5月と同じです。
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響が続く一方、既往の国際商品市況高の影響から、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』
ということですが、こちらもまた殆ど変化無し。変わっているのは国内企業物価の影響の所に「既往の」というのが入ったのと、消費者物価の所に「基調的にみると」というのが入っているのですが、これは現状追認系の話なので、特にこれで判断が上下したというものではないと思料されます。
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇傾向を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、基調的にみれば下落幅が縮小していくと予想される。』
で、ここも同じというまるっきりカワランチ会長モード全開です。
さて、金融環境ですが、これまた変わっていないと言うのも何かなあという感じです。
『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが続いている。』
以下長いので引用はスルーしちゃいますが、その中で前回と変わったのは、低格付け社債の発行状況に関しての部分です、つまり・・・・
『CP・社債市場では、総じてみれば、良好な発行環境が続いている。』(今回)
『CP・社債市場では良好な発行環境が続いており、低格付社債の発行環境にも改善の動きがみられている。』(前回)
ということですので、これはまあ低格付け社債の発行環境も改善し、良好というほどでもないでしょうが、それなりの環境になった(全部が良好だったら今回の文言の中に「総じてみれば」というヘッジクローズが入らない)という事でしょう。
あと、雇用所得環境に関する月報本文の方を比較してみますと・・・・・
『雇用・所得環境は、引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。』(今回)
『雇用・所得環境は、引き続き厳しい状況にあるものの、厳しさは幾分和らいでいる。』(前回)
『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にある。』(4月)
とまあこのような経過を辿っています。4月から5月の所では上方修正しているのは明白ですけれども、では前回と今回の比較ですが、前回は「厳しさは」という言い方になっているのが、今回はその「厳しさ」という文言ではなく「その程度は」という言いかたなって、「厳しい」という文言の登場回数が減っているという事を勘案致しますと、まあ気持ち上方修正(回復中という想定ラインに乗った動きとも言えますが)という所ではないでしょうか、とか読むのは深読みのし過ぎですかそうですか。
なお、今回の月報がヘッジクローズ満載という件について本石町日記さんがブログを更新(本石町日記様におかれましてはついったーじゃなくてブログの更新を是非勢い良くお願いしたいのですが^^)していましたので必読(^^)。
http://hongokucho.exblog.jp/13468194/
最近の日銀文学の傾向について=「つつある」とか…
○ドルオペ雑談
ECB様のドルオペ
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/index.en.html
下の方のNon-EURO operationsに傾注。
USD10007 OT 17/06/2010 24/06/2010 7 1.17 % 0 bn
・・・・また坊主ですかそうですか。
日銀のドルオペ(一昨日ですが)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba100615.htm
米ドル資金供給(固定金利方式) 3 3
(注1) オペの種類が、米ドル資金供給の場合、単位は100万米ドル。
ちょwwwww3百万ドルって3億円ですかそうですか。誰かが事務の練習の為に入れただけということですな。
まあドルLIBORが上がっただの何だのとか言っても別にECBで1週間1.17%を取るとか、日本で約2か月を1.23%を取るとかいう話ではない(ちなみにこの金利はOIS+100bpだったと思いますが)ということだと思うのですが、この手のオペを見ると逼迫しているようには見えませんが、まあ欧州ではファンディングがどうのこうのというか資金抱え込みモードになっているのでしょうな。
2010/06/16
お題「決定会合レビュー」
まあ市場ちゃんの反応は特に無かったんですけどね(^^)。
○景気認識の文言がまるで同じっす
まずは声明文。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100615.pdf(今回)
例によって前回と比較するのだ。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100521.pdf(前回)
・・・・と思ったのですが、今回の特徴は「前回と認識がまるで変わっていない」ということであります。で、その前回というのは、白川総裁の説明的に言えば「緩やかな回復というメインシナリオに沿った展開に乗っているだけですよ」という事にはなっていますが、5月24日の駄文でご紹介したように、内容そのものは結構あちこちで上方修正をしている、というモノでしたので、よーするに前回の上方修正状態をそのまま継続という内容なのですな。
と書くとそれで終了してしまいますので、一応中身を引用引用。
・現状認識ではこの前削除した雇用所得環境に関する文言が
『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』
『すなわち、新興国経済の高成長などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。そうしたもとで、設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、各種対策の効果もあって、耐久消費財を中心に持ち直している。』
で、ここの部分ですが、前回は「雇用・所得環境」に関する文言がばっさりと抜けていて「これはどうした事ぞ」という話をしたと思うのですが、今回は声明文上にこのくだりが復活です。
でですな、この場合は金融経済月報の本文の方をみないといかんのですが、月報本文を比較しますと、5月の金融経済月報の本文8ページ(PDFファイルだと10ページ)にはこのような記述があります。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1005.pdf
『雇用・所得環境は、引き続き厳しい状況にあるものの、厳しさは幾分和らいでいる。』(5月金融経済月報本文より)
で、4月の金融経済月報(同じく本文8ページ)ですけど。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1004.pdf
『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にある。』(4月金融経済月報本文より)
ということですので、今回の声明文での雇用所得環境の現状認識は5月の状況とほぼ横ばいというようなイメージかと思います。詳しくは金融経済月報を見て確認したいと思いますです、はい。
で、以下の部分ですが一応引用しますね。
『公共投資は減少している。この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』
この部分で前回と違うのは物価の認識に関して「基調的にみると」という文言が入っている所ですが、これは「高校授業料無償化の影響をスルーした場合に」という事ですのでまあ技術的な改変。
・・・・・で、いつもだと前回との比較を載せるのですが、今回は何せ文言の変更がまるで無いと言う素敵な状態になっています(とあたくしは思うのですけれども、違ってたらゴメンナサイ)ので比較は入れません。
・先行き認識も文言同じ
『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。』
『物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小していくと考えられる。』
まあこのあっさり味ぶりは先行きの回復に自信ありということなんでしょう。確かにここもと出てくる経済指標は総じて良い内容の物が揃っているので、そーゆー点から考えても先行き回復シナリオを引っ込めると言う訳にも行かないでしょうなあというのは判りますけどねえ・・・・
・リスク要因もこれまた同じ
『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。この点、一部欧州諸国における財政状況を巡る動きが、国際金融や世界経済に与える影響に注意する必要がある。』
相変わらず上振れも下振れも同じ。明日ネタにしますけど総裁会見では新興国の上振れについて言及してたみたいで、何か麿が偽りの夜明けまっしぐらでおじゃるという感じがするのは心配性ですかそうですか。
『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』
というのも変わらないので今回は前回と比較するのは割愛。
・おまけに決意表明部分も同じとな
『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』
で、その後に今回導入措置の説明がありますが、まあそこはテクニカルな話なので特に関係なく、ここの部分もまたまた同じ文言という感じです。
○ということで(声明文ベースで)下振れリスクが増えないとな
てな訳で今回の決定会合声明文は物の見事に内容が同じという結果になっていまして、報道ベースを見てますと総裁記者会見における景気認識も特に下振れリスクを増やすような話は無いように感じましたが、まあこれは今日出てくる会見要旨を見てまた判断しようかとは思います。
まー3月短観以来すっかりと景気回復モードになってますなあという感じがしますけれども、審議委員の皆様の講演とかを見てますと結構下振れリスクを意識していますし、大体からして欧州のソブリン問題って金融機関不良債権問題になってきて、しかもこの金融機関不良債権問題って日本の状況にも似た部分があって、米国のようにぶん投げてさっさと解決という流れにはならずに、ダラダラと引っ張りそうな構造の香りがする訳ですが、そういうのは(・∀・)キニシナイ!というのが白川総裁クオリティーでおじゃるという所でしょうか。
何かね、昨年の4月に「偽りの夜明けに注意」とか米国に乗り込んで行って話をした人が、いざてめえの話になると下振れリスクに注意しましょうねって他の審議委員までが話をする中で、堂々の景気回復全開モードになっているのではないかと思われても仕方ないような感じになっているのが、何と申しますか「人の振りみて我が振り直せ」というようなテイストが漂って来る今日この頃でありますことよという所ですわな。いやまあ杞憂なら結構なんですけどね(^^)。
で成長戦略ですが・・・・・・
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100615.pdf
の3ページ目以降と
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/mok1006b.pdf
「成長基盤強化を支援するための資金供給基本要領」の制定等について
にございます。声明文の方から大体引用します。
○理念は禅問答成分が高いですなあ
一応理屈は通ってはいますけどね。
『1.現在、日本経済が直面している最も重要な課題は、潜在成長率や生産性を引き上げていくことである。この点では、企業や金融機関などの民間経済主体の果たす役割が大きい。政策当局も、民間経済主体の革新的な経済活動を促す環境を整備するため、それぞれの立場で役割を果たすことが必要である。日本銀行としては、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長を実現する観点を踏まえつつ、こうした面でどのような貢献を果たし得るか検討してきた。その結果、本日、成長基盤強化に向けた民間金融機関の自主的な取り組みを金融面から支援するため、新たな資金供給の枠組みを時限措置として導入することとした(概要は別添の通り)。』
・・・・どう見ても禅問答です本当にありがとうございました。
『2.本資金供給は、民間金融機関による成長基盤強化に向けた融資・投資の取り組みに応じて、当該金融機関に対し、長期かつ低利の資金を適格な担保を裏付けとして供給するものである。本措置を利用する金融機関に対しては、生産性の向上や新たな需要の創出に資する事業などへの融資・投資を広げていく契機として、本資金供給を適切かつ効果的に活用することを期待している。』
後の概要に出ているのですが、これって貸金を担保に取ってくれるわけでは無くて、共通担保を担保に取るというのが何と申しますかという感じです。
『3.本資金供給の狙いは、金融機関が成長基盤強化に向けた取り組みを進めるうえでの「呼び水」となること、また、金融機関が自らの判断で行う多種多様な取り組みをできるだけ幅広く後押しすることにある。同時に、本資金供給の枠組みを決めるにあたっては、日本銀行自身が個別の企業や業種への資金配分に直接関与しないこと、ならびに資金供給の規模や期間の点で、金利政策や金融調節の円滑な遂行に支障を来たさないことに留意した。』
貸出金を担保に取らないで共通担保を取るという形式なので、そういう意味ではまあ貸金そのものは単なる「通常の資金供給オペの延長」でもありますので、個別企業や業種への直接関与じゃないですよ、という理屈になるのでしょう。でもまあ「成長分野」を列挙したり、「呼び水になること」と期待したりという話ですし、そもそも「成長基盤強化」と言っている時点でそれは何らかの配分が伴うものではないかという気がするのですけどねえ。
でですな、後半の部分にさらっと書いてあるのもまあポイントちゃあポイントでございまして、今回の資金供給が「ターム物金利を押し下げるような物にならないようにする」という事を意図してますよ、という話になりますので、つまりは供給額総額が後にありますように3兆円で、しかも1行辺りの貸出限度額が1500億円ぽっちになるという話になるのでしょうな。あんまりドバドバ出すとそれはそれでターム物金利押し下げ要因になっちゃいますからね。
『4.本資金供給については、本年8月末を目途に開始できるよう、準備を進める。日本銀行としては、本措置の実施を通じて、企業や金融機関などによる日本経済の成長に向けた取り組みが、一段と活発化することを期待している。また、成長基盤強化に資する金融市場の整備などに向けて、中央銀行として引き続き貢献していく方針である。』
だそうです。
○新施策は「ターム物金利に働きかける」気は無いというのは把握した
声明文4ページに『成長基盤強化を支援するための資金供給の概要』がございます。
・金融機関の申し込み受け付けベースじゃないのかよ!
いやまあ既にそういう話になっていたんでしょうけれども、あたくし的には当然ながらこれって金融機関からの申し込み受け付けベースで実行するもんだと思っていましたが、これは管理上面倒で死亡するからという面はあるのでしょうけれども、また微妙に使いにくくしてやがりますなあというイメージが。
『3.貸付期間、借り換え可能回数
・ 貸付期間は原則1年とし、3回まで借り換えを可能とする(最長4年)。
―― 新規貸付は、四半期に1回のペースで実施する予定。』
新規貸し付けは云々というところで「へ〜」と思った次第でありまして、しかも、
『5.貸付限度額
(1)貸付総額
・ 貸付総額の残高上限は3兆円
―― 1回当りの貸付総額は1兆円を限度とする。
(2)対象金融機関毎の貸付限度額
・ 対象金融機関毎の貸付残高の上限は 1,500 億円
・ 各対象金融機関は、1.の取り組み方針のもとで行った各四半期の融資・投資の実績額の範囲内で、借入れを行うことができる。』
ということですので、1回に1兆円で仮に20行が1500億円とか応札してくると何と按分比率が33.3%になってしまうというお洒落な結果になってしまうという話で、いやまあそんなに札が集まるとも思えないのですが、受け付けベースにしない所が微妙な物を感じます。
#単に申し込みベースだと事務が回らないという事だとは思うのですが
・で、1行あたり1500億円っていう件について
いやね、正直言って全体額はある程度決めるのかなあとは思ったのですが、そもそもこーゆー融資が出ると言う話になると、それこそ大手銀行さんという話になると思いますし、まあこの対象貸出っていうのは理念的には新規貸出を対象にということでしょうけれども、まあ既存の借換に関しても元が成長基盤関連の融資案件だったら話としてアリでしょという事になれば、まあそれなりに数字を出そうと思えば出せそうな話でもあるので、実績を出したいっていうのであれば1行ごとの限度額を設けるのもどうなのという気がせんでもない。
#そもそも金融機関の規模に関係なく応札限度が同じというのも何だかなという気がしますけれども、普通の市場取引じゃないこういう案件の場合は・・・
いやまあもうちょっとメガさんが色々とネタ出しして、メガさんだけで1兆円ちょっと位積み上げるような豪気な話になるのかなとちょっと期待してたあたくしが期待のし過ぎでしたな。
#実際には内容を詰める段階で恐らくこの手の話はあったでしょうから、まあ関係者的にはそんなに期待外れのものでも無いのでしょうけれどもね
まー確かに実施したらいきなりメガあたりからわさわさと案件が出てきたという話になりますと、「銀行優遇は如何なものか」とか「そんなら一般の貸金も金利下げろ」とか「そんなに出来るのなら今まで銀行は何やってたんだ」とか逆に言われかねない気もするので、そーゆー意味ではこのくらいの数字であまり派手でもなく、でも「3兆円」という総額は見せて、という辺りがバランスの取れた所なんでしょ。
・実際は共通担保ですからねえ
で、この資金が入ってウハウハなのかという話ですが、要項にありますように、本件って「共通担保オペで期間がクソ長いもの」という形でもありますので、この資金が入った分っていうのは共通担保の担保繰りに影響を与えますなという話になります。
もちろん、いまどきの銀行さんは普通は担保繰りに余裕がありますので、これを入れる為の担保が足りないですよということは無いと思います(全部入れても1500億円ですからね)けれども、まあ限界的な話をしますと、このオペに入れる為の担保繰りでじゃあ1年借りれるのだから1年TBを買いますかという話になった場合、そのTBのレートって0.13%程度なのですから、貸出の方は兎も角として、ファンディングレートと担保繰りで買ったものの利回り差で言えば3bpという話になって、限界的な部分でどの位コスト削減になるのかっていう話になると怪しさ抜群。
しかもですな、メガさんあたりなら兎も角、地域金融機関さんなんかになりますと、現状でも資金が余っていて超過準備のブタ積みちゃんがあると思われますのでありまして、何も手間暇かけて0.10%で金を借りてこなくてもよかですタイと言う話になるんジャマイカと思料されます。
もちろん、そういう作りになっているのは「この政策は金利政策やら流動性供給の一般的な金融政策ではありません」と言う事を担保するための措置だと思われますので、そこに突っ込んでもまあしょーがないと言えばしょーがないのですが、ターム物金利に働きかける気が1ミリも無いという趣旨だという点は良く覚えておかないと勘違いの元になるかと存じます。
正直、あたくし的にはもうちょっとそのあたりをファジーにしてどうとでも取れるような感じにするのかなあとも思っていましたので、その点では期待はずれの面がありましてどうもすいませんという所ですが、存外この辺りに関しては(理屈としてワケワカメな成分はだいぶありますが)「これは金融政策とは違いますよ」という所を強調したなあと思います。
とりあえず思いついたのはこの辺りまで。また会見要旨見ながら考えたいと思います。
2010/06/15
お題「金融調節に関する雑談で」
緊縮財政措置を取れば格下げ(ギリシャ)、財政悪化懸念で格下げ(かつて日本をA2まで格下げした理由は「現在の経済政策では政府の債務状況の悪化に歯止めがかけられない」でしたなあ)とは格付け会社の理屈が良く判りませんなあ(いやまあ長期的な経済推移の予想なんでしょうけど)。
○固定金利オペ残高が20兆円になりますな
昨日は共通担保固定金利オペがオファーされましてこれでめでたく(かどうか知らんが)固定オペが20兆円になる(のはスタート日になる明日ですけど)ということで3月の会合で決定した通りに残高が20兆円になりました。その一方で(固定オペのスタートを特オペの落ちにぶつけているのでそうなるのですが)同じく明日に特オペの残高が目出度くゼロになりますので、これで企業金融支援関連という名目で一昨年の12月から色々と実施した各種措置が一通り終了した格好になります。
とは言っても企業金融の臨時措置を解除した傍から固定金利オペを実施したり(そして更に拡充)、今日の決定会合では出るのであろう成長基盤強化の臨時貸出制度というのが実施されていまして、何かよくよく見れば問題はよりおおごとモードになっているような気がせんでも無い訳ですが(^^)。
でですな、ここからオペで何をやるのかという話ですが、固定金利オペを含めたオペ残がここの所35兆円程度で推移している(財政の不足のピークになった2日のオペ残が39兆円弱)のですけれども、固定金利オペをこれ以上増やすと足元の微調整ができなくなるので、(今は固定金利オペが20兆だけどこれを30兆円にするとベースで固まる部分が多くなり過ぎ)足元で吸収を打ちながら調整という事になるのでしょう。ただまあそれをやるとすぐに「引き締めするとはケシカラン」という実務上のテクニカルな調節技術の話と金融政策の話の区別がつかない人達(そこに日経あたりが含まれそうな所が誠に遺憾なのですが)が大騒ぎするでござるの巻となるんでしょうなあというのはこの前も書いた通り。
ただまあ、もしかするとここから先は仮に固定金利オペの拡大を実施する時には吸収オペもやる事になるのかなあというのは何となく金融市場レポートを見て思ったのですにゃ、という事で金融調節に関する日銀レポートネタ。
実は数日前に出ていたのですが(汗)。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron1006a.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron1006a.pdf(本文)
○足元の上下を放置してもタームは上がりません
んで概要(HTM)の方にこんな事が書いてありますが。
『12月には、やや長めの金利のさらなる低下を促すことを通じて金融緩和の一段の強化を図るため、新しい資金供給手段として固定金利方式の共通担保資金供給オペを導入した。3月には同オペによる資金供給額を大幅に増額し、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充した。この間、短期金融市場における市場機能の維持にも配慮する観点から、オペでは、長めのタームでの資金供給の割合を増やす一方で、日々の資金偏在については、市場で調整する余地を残す運営とした。』
長目のタームでの割合を「増やす」というよりは政策決定会合で勝手に「増やされた」だけのような気もしますが(^^)、まあ長目のタームの供給が増えた分の足元の微調節はあまりきっちりとファインチューンニング(というか押さえ付け)をしませんわなという所です。
つまり、今の状態でも本当にファインチューニングしましょって事になったら、吸収オペを交えながら資金供給をするとファインチューニングができるという事になるのですが、それをやってしまうと1から10まで全部日銀オペで運営という話になってしまうからそこまでの事はしませんよというのが現状の金融調節ですよという事なのでしょう。ちなみに足元では積み最終日(今日)に向けて足元のGCレートが若干上昇した(と言っても0.12%とか0.125%とかですが)のですが、タームのレポレートは全然反応せずということで、東京レポレート集計値を見ても足元のレートやら1週間物のレートは上昇してますけれども、1か月とか3か月のレートは微動だにしないというのは、まさしく上記のような調節に対する認識が市場にも浸透しているという事ではなかろうかと存じます。
○金融調節の概要のあたりはオモシロイですよ
本文(PDF)の方は中々良い読み物なのですが、短期金融市場に興味の無い人が読んでも眠気を誘うだけなのであまり万人にお勧めできるものでは無いですけれども、短期市場に興味がある方は一度熟読される事をお勧めします。中々過去の状況の良い整理です。
で、まあマニアには最初の日銀券要因と財政等要因(特に一般財政以外の部分)の辺りから実に面白いと思うのですが、まあ一般的に読むならその次の『2.金融市場調節運営』(本文6ページ、PDFファイルだと8ページ)からがお勧め。
『2009 年度中のわが国短期金融市場の動きを振り返ると、2008 年度末にかけては期末越えに対する警戒感が強い状況が続いていたが、2009
年度入り後は、日本銀行が潤沢な資金供給を続ける中、このような期末越えに対する警戒感は徐々に後退した。すなわち、四半期末越えのターム物レートやGCレポレートは、6月末や9月中間期末にかけて若干上昇したが、上昇幅は2008
年度に比べて限定的であった。』
年度末って警戒感が強いというよりは単に3月の国債償還に関わる資金余剰の山を越えるオペが不足してたのと、末初オペばっかり打って肝心のタームオペが少なく、23日(国債償還日)以降足元のGCが逼迫して、ウィーク物の現先オペの金利上昇からGC市場での資金不足(というか回らない状態)が顕在化したと言う所ではないかと思料されますがまあそれはともかく。
2009年度入り後は確かにまあ短期の金利はじりじりと低下という展開になりまして、GCはそこそこ振れる場面もありましたが、何せ短期市場の金余りモードが出てきているというのはやはり効きましたわな。企業金融特別オペの効果がジャンジャン出てきたのが(最初は2月の終わりくらいからCPレートの低下が始まりましたが)年度替わり後からで、5月の連休明け以降は暗黒時代(運用とかトレーディング的に言えばです)となってきましたなあという感じですな。
『12 月に金融緩和を一段と強化したあとについては、年末や年度末とも、ターム物レートやGCレポレートの上昇は、ほとんどみられなかった。また、CP・社債の発行環境をみると、低格付社債を除けば改善の動きが続き、良好なものとなった。ドルの資金調達環境も改善傾向が続いた。この間、コール市場では、資金余剰感が一段と強まった12
月以降、資金の出し手が外国金融機関等向けの資金放出を再開する動きが一部にはみられた。もっとも、全体としては、外国金融機関等に対するカウンターパーティリスクへの警戒感が完全には払拭されない中、コール・レポ・為替スワップ等の各市場の流動性は、長めのタームの取引を中心に低下した状況が続いた。』
なるほど。また最近はこの辺の状況に変化があるんでしょうかねえ。
で、その後はど〜ゆ〜オペを打ったかという話をしているのですが、これはまた中々興味深い記述があちこちに点在していて、何となく金融市場局的な気持ちのようなものを感じてしまったような気がせんでも無いのは深読みのし過ぎですかそうですか(^^)。
○09年度は補完当座預金が下限機能を維持しているという表現は・・・・
引用部分の続きから。
『こうした動向を受けて、2009 年度の金融市場調節は、2008 年度に続き、金融市場の安定確保に配慮し、市場の状況を踏まえた機動的な運営とした。この間、無担O/N
コールレートは、概ね「0.1%前後」で推移した。これは、潤沢な資金供給を受けて日銀当座預金残高や準備預金残高が高水準となるもとでも、補完当座預金制度の適用利率(0.1%)が無担O/N
コールレートの下限金利を画する機能がよく発揮されたことによる。こうしたことから、手形売出等の資金吸収は、2009
年度を通じて実施しなかった。』
と言う風に書いてあるのですが、さて最近はコールレートちゃんの方は安定的に0.09%近辺で推移してますし、今月に入ってからは0.09%割れという素敵な推移が続いたりしました(足もとちょっと上昇して9bp台回復)けれども、これはもしかして「預金ファシリティがコールの下限金利を画する機能を十分に発揮できていない」ということではないかとも言えそうな気がするのですが、はてさてどうされるのでございましょうかねえ(ニヤニヤ)。
○これは確かに仰る通り
で、その続き。
『また、補完貸付制度の利用は2008 年度に比べて少額となった。こうした点を含め、わが国短期金融市場は、総じて安定的に推移した。ただし、日本銀行の金融市場調節が市場取引を代替する状況が続いたとも言える。』
これは仰る通りというか、GCレポ市場の構造的な問題でもあるのですが、資金の出し手の中で一部の大手銀行の占める割合が高いので、結局の所市場での調節と言っても限界があって、日銀の金融市場調節が必要不可欠という状態には変わらないという所かと存じます。ちょっと前だったらECBなんてMROを週1で打ちこむ以外には金融調節らしきものをしないで市場が回っていた(今は見る影も無いですが)というのがまあ市場としては美しいのでしょうが、一度こういう状態になってしまうと中々難しいのかもしれませんね。
○出来上がりの0.08%台前半だと低下したという認識なんですね!
で、その後は具体的にどういう時にどういうオペを打ったのかという説明が詳しく書いてありまして、マニア必見の物ではございますが、その辺は華麗にスルーしまして、読んでて「おお!」と思った所をば。
本文12ページ。
『年末日である12 月30 日には、市場参加者の大半が既に資金調達に目処をつけていたことから、無担O/N
コールレートは0.094%となった。』
ふむふむそうですな(そういえば「年末年始のプレミアムを織り込んでいない価格形成になっている12月〜1月タームのOIS利回りは低い」という面白レポート(OISの値付けは実際のオーバーナイトレートを使うのですから、末初プレミアムが事前になんぼついていても、当日には下がってしまうという考察がすっぽり抜けているという事は素人ですな)を出している人がいましたなあというのを思い出した)。
本文13ページ。
『年度末日である3月31 日には、市場参加者の大半が既に資金調達に目処をつけていたことから、無担O/N
コールレートは大きく低下し0.082%となった。』
つまり、0.082%は「大きく低下」だが、0.094%はちょっと下がった程度の認識という事になるのですね。では6月の頭から延々と0.09%割れ水準で推移していますが、もしかして四捨五入して0.09%になっていればコールの水準としてはディレクティブの0.10%からはそれほど逸脱していないという認識でいるという事になるのでしょうか????
という事をたった一言の文言を見ただけでつらつらと考えてしまうあたくしの方が粘着質ですかそうですか(^^)。
なお、こちらのレポートは色々と読むと実に面白い(ただしマニア限定^^)です。特に短期金融市場に関してはそらまあ日銀の金融市場局が色々と把握できる話が極めて多いですから、内容も詳細なのは当然ちゃあ当然なのですが、マニアとしては実に楽しいレポートでございます。また気が向いたら(またはネタが無かったら)ご紹介するかもしれませんが、興味のあるかたは読むのが吉と思うんじゃがの〜。
2010/06/14
お題「これは質疑応答の方がオモロイ(トリシェ総裁会見)」
ということで月曜につきヒマネタ状態ですいません。
http://www.ecb.int/press/pressconf/2010/html/is100610.en.html
○まずは経済の基本的な認識に関して
前半は説明部分でして、まあこれはこれで読む所はあるのですが、この会見は後半の質疑応答の方がおもろいのでサラサラと。
・基本的な景気認識は「金融市場の緊張の中でも」変化無し
まあそういうしか無い面はありますけれども、大騒ぎの震源地の割に平然としているようにも見える所がにゃんとも。
『Based on its regular economic and monetary analyses, the Governing Council
decided to leave the key ECB interest rates unchanged. The current rates
remain appropriate. Taking into account all the new information which has
become available since our meeting on 6 May 2010, we continue to expect
price developments to remain moderate over the policy-relevant medium-term
horizon. Global inflationary pressures may persist, while domestic price
pressures are expected to remain low.』
現在の金利水準が適正で、物価に関しては安定しており、インフレ期待に関してもアンカーされているというのはいつも通りの話です。
『The latest information has also confirmed that the economic recovery
in the euro area continued in the first half of 2010, but quarterly growth
rates are likely to be rather uneven. Looking ahead, we expect the euro
area economy to grow at a moderate pace, in an environment of continued
tensions in some financial market segments and of unusually high uncertainty.』
金融市場の緊張や先行きの不確実性の中でもユーロエリアの経済は緩やかに拡大とな。
『Our monetary analysis confirms that inflationary pressures over the medium
term remain contained, as suggested by weak money and credit growth. Overall,
we expect price stability to be maintained over the medium term, thereby
supporting the purchasing power of euro area households. Inflation expectations
remain firmly anchored in line with our aim of keeping inflation rates
below, but close to, 2% over the medium term. The firm anchoring of inflation
expectations remains of the essence. 』
インフレ率およびインフレ期待はアンカーされていますという話。ちなみにECBとは全然違いますが、BOEの場合は資源価格上昇とポンド安がモロに響いて消費者物価がターゲットを堂々の上振れで詫び状を書いていますけれども、今回のMPCではその辺りに関する議論がどうなっているのかが非常に気になる所であります。まあMPCの結果自体は先週出てましたが、毎度お馴染みのあっさり味の声明文しか出ませんので、3週間後位に出る(かなり雑な)議事要旨を楽しみにしております。どうせ「中期的にはインフレ期待はアンカー」で話を済ませてしまうのではないかとは思いますけれども、MPC議事要旨みていると段々その「中期的なインフレ期待アンカー」が怪しくなっておりまして、どう見てもスタグフレーションです本当にありがとうございましたという状態なのですよねえ。
・先行きリスクはバランスと言いますが・・・・・
と、余計な話が長くなりましたが、個別項目については「EUの見通しと我々の見通しは整合的」という話が多うございまして、リスクに関してはバランス、インフレのリスクもバランスとなっていますが、正直景気のリスクがバランスという説明の意味が判らん。
『In the Governing Council’s assessment, the risks to the economic outlook
are broadly balanced, in an environment of unusually high uncertainty.』
『On the upside, the global economy and foreign trade may recover more
strongly than projected, thereby further supporting euro area exports.』
『On the downside, concerns remain relating to renewed tensions in some
financial market segments and related confidence effects. In addition,
a stronger or more protracted than expected negative feedback loop between
the real economy and the financial sector, renewed increases in oil and
other commodity prices, and protectionist pressures, as well as the possibility
of a disorderly correction of global imbalances, may weigh on the downside.』
どう見てもダウンサイドリスクが多いですし、そもそも今回増えているダウンサイドリスクがあるというのにリスクバランスがbroadly
balancedとはこれ如何にという感じです。
・財政問題と構造改革問題
財政健全化に関するEU各国の動きを歓迎するという話と、構造改革が重要という話をしているのですが、構造改革の中では銀行の財務リストラの話と賃金引き下げの話を重要視しているのが「ほー」という感じ。
財政問題ですが。
『As regards fiscal policies, the Governing Council welcomes the recent
decision by euro area countries to formally establish a European Financial
Stability Facility. This needs to be accompanied by decisive action at
the level of governments. It is essential that all countries stick to their
commitments to correct high budget deficits and government debt and reduce
fiscal vulnerability. To this end, the concrete adjustment measures needed
to achieve the budgetary targets should be fully specified.』
めんどいので以下引用割愛ですが(^^)、まあ財政問題の解決が重要とな。
構造改革ですけど。
『For all euro area countries, structural reforms leading to higher growth
and employment are crucial to support a sustainable recovery. Existing
competitiveness problems, as well as domestic and external imbalances,
need to be urgently addressed by the countries concerned. To that end,
wage-bargaining should allow wages to adjust appropriately to the competitiveness
and unemployment situation. Likewise, measures that increase price flexibility
and non-price competitiveness are essential.』
こりゃ何ですかと思ったら、(引用は割愛しますが)後の質疑応答の中で「ユニットレーバーコストを下げることが国際競争力強化の為に重要」という話をしているので、その流れだと思われます。
『Finally, an appropriate restructuring of the banking sector should play
an important role. Sound balance sheets, effective risk management and
transparent, robust business models are key to strengthening banks’ resilience
to shocks and to ensuring adequate access to finance, thereby laying the
foundations for sustainable growth, job creation and financial stability.』
ということで銀行の財務リストラの重要性というのが構造改革のもう一本でした。
#サラサラとって言う割には長くなってしまいました
○国債買入措置の突如の決定はQKKですかそうですか
で、Q&Aですが、最初からいきなり「お前は何で急に意見を変えたのか」から始まるのが実にこう心温まるものがございます。で、それに対する長い答えですが(^^)。
『As regards your first question as you know, I have had a number of occasions
to explain why we embarked on the Securities Markets Programme, not only
in the communique and also in speeches and interviews, but I repeat the
reason.』
何回も説明しとるだろうがヴォケと言う事ですかそうですか(その前に「質問は一人二つまでなのに三つ質問するんじゃねえ」というのがあるのですよね^^)。
『The Securities Markets Programme is designed to ensure the effective
functioning of the monetary policy transmission mechanism by helping to
resolve a malfunctioning of some segments of the euro area debt securities
market. This malfunctioning became very acute in the afternoon of the Thursday
following our Governing Council meeting on 6 May and during all of Friday,
7 May.』
「急に危機が来たので」国債買入を決定したと言う事ですが、そもそもQKKになったのはおまいが「国債買入なんぞ全然考えてませんよフフン」と決定会合後の会見で話をしたのが直接の引き金になったのではなかったのかと小一時間問い詰めたい。
『This was not only observed by us, by market participants or by financial
institutions in Europe, it was observed the world over as a major event
that was threatening the functioning not only of the European economy and
market but also of the global financial markets and the global economy.
And that is the reason why, as you know, not only were a number of decisions
taken by us and by others, but there was also international support through
a communique of the G7 and a communique of the G20.』
だそうで、話を大きくしてそもそもテメーが引き金引いたのは華麗にスルー。
『A second important element of this decision was that we did not change
the monetary policy stance, just as we have not changed the monetary policy
stance today.』
次のポイントは「金融政策スタンスは変えていない、買入で出した流動性は引く」という部分ですが、これはまあ説明部分の引用を割愛。
『This is my third point: Finally, I would say that as far as we are concerned,
as you heard me say a moment ago, we are inflexibly attached to price stability.
We have the best track record on price stability over 11-1/2 years that
you can find in Europe ? including among the legacy currencies ? since
the Second World War. You also know how proud I am, together with all the
members of the Governing Council, that our inflation expectations are exceptionally
well-anchored in comparison with all comparable currencies and comparable
economies. So this is something which is of the utmost importance. 』
最後のポイントみたいなのが謎なのですが、インフレ制御に今までも成功しているし、今後もインフレの制御が重要ですという話をしているんですな。この話がこの後もやたら出ますし、先般引用したルモンド紙でのインタビューでもやたら強調されていますが、まさか英仏海峡の向こう側を意識してるのでは無い・・・ですよね(^^)。
○国債買入の明細に関しては教えませんよ/売出手形の検討について
国債買入の明細を教えてという質問と、流動性吸収に関して売出手形のようなもの(質問ではdebt
certificates)を発行する計画はあるかという質問に対して。
『On your first question, as you know, we are withdrawing the liquidity
that we are injecting, and each week you can see what we are doing. We
don’t give any additional information. But you could see that the first
week we withdrew approximately 16.5 billion euros, the second week 10,
the third week 5.5, then 6.5. So you have this information. We withdraw
exactly the level of liquidity that we inject. No other indication.』
ということで明細は教えないよというスタンス。
『As regards your second question, we are looking at all possible instruments,
but there is absolutely nothing immediate in this domain.』
ということで、現状ではまだ特に具体的にどうこうという話では無いですが可能性が無い訳ではないと。
ちなみに、後の方で更に「明細を出す事は市場参加者および一般向けにも重要かつ必要ではないか」と突っ込まれましたが、同じようなゼロ回答を繰り返すのみでした。
○国債買入の効果が出ていないのではないかという質問に対して
これは質問も引用しますね。
『Question: On the bond purchases: we have seen spreads in some countries
widening, which has led some people in the market to question the ECB’s
commitment to the purchases, given that there does appear to be some discordance
on the board about the effectiveness of them.』
一部の国ではスプレッドが拡大しているのだが、これは国債買入の効果が出てないちゅうことではないかというツッコミ。
『Trichet: On your first question: again, there is one decision, one institution,
one currency ? and I already responded to a similar question. We are pursuing
the exact objective that I mentioned earlier. We are not changing the monetary
policy stance and we are helping to restore the appropriate functioning
of a number of markets that were disrupted, and that were hampering the
monetary policy transmission.』
・・・・・・全然答えになってNeeeeeeeeeee!!!
で、この時は2番目の質問(インフレに関する質問)に対して延々と答えて誤魔化すトリシェ総裁様なのでありました。
○1年物LTRO終了後には新しい流動性を供給するのでしょうか
これは意地の悪い質問。
『Question: You said in your Introductory Statement that overall liquidity
provision will be adjusted as appropriate. Does that mean that you are
considering additional liquidity operations, especially in light of the
expiry of the 442 billion one-year loans?
And also, once these loans are being paid back, do you expect banks to
compensate for that by the upcoming three-month tender or do you expect
the liquidity conditions to tighten significantly? 』
んでもってその答えですが、前半があんまり説明になっていない禅問答的な話ですが、後半は「とりあえず3か月物のLTROをフルアロットメント方式で出してますがな」という決定した話の説明をするだけで、(トリシェ総裁の今回の会見は特にそうなのですが)先の話を全然しないというのがトリシェクオリティ。
『Trichet: Let me only say that, when we say “as appropriate”, we really
mean “according to the market situation” and with the inflexible needle
in our compass aimed at delivering price stability, which ? again ? is
our major asset. In all circumstances, also when we face major difficulties,
I believe it to have been extremely important that the anchoring of inflation
expectations could work against inflation, but also ? in the period we
experienced after the collapse of Lehman Brothers ? against the materialisation
of inflationary risks. So, a solid anchoring is something that is absolutely
of the essence for us.』
ここまでが禅問答。
『Now that having been said let me tell you that the Governing Council
decided today to adopt a fixed rate tender procedure with full allotment
in the regular three-month longer-term refinancing operations to be allotted
on 28 July, 25 August and 29 September 2010, i.e. for a full quarter. So,
this is a decision taken by the Governing Council today. It is a response
also to your second question, it seems to me.』
だそうです。
○ユーロ安に関しては論評を避ける
これはまあ当然ちゃあ当然の措置ではありましょう。「ユーロ下落は経済成長を引き上げる理由になりますか」という質問に関してはこのように説明。
『As regards your third question on the exchange rate of the euro with
the US dollar or vis-a-vis other currencies, I will only say that the euro
is a very credible currency, with an exceptional track record in preserving
price stability, and that this capacity to preserve its value over time
in an very credible way is a major asset for domestic and external investors.』
で、他の質問では「ここもとのユーロは貿易加重ベースで11%下落と、2000年の下落と同じ程度だが、この動きはファンダメンタルズを反映しているのか市場が暴走しているのか」という質問がありまして、それに対してもこのような返事を。
『As regards your first question I have already responded on the issue
of the foreign exchange market. The euro is credible, keeps its value and
is a major asset for external and domestic investors. I have no other comment.』
○質問で演説する人がいますな(^^)
銀行規制に関しての質問ですが、質問で延々と演説しているのが何とも。
『Question: At the last press conference, Mr Trichet, you might remember,
I asked you a question on the separation of banking activities.』
前回もその質問をした人のようで(^^)。
『So I was very happy to see that in the Financial Stability Review of
the ECB there is one chapter dedicated to the issue. It is called “Separating
banking and securities business: Glass-Steagall revisited”. Then I read
it and I was disappointed because basically you reject it on the basis
of two arguments, one of which I consider ideological and the other one
is technical.』
グラススティーガル法的な考えに関する考察があって喜んで読んだらダメ出し状態の内容だったのでがっかりしたよと言うことですかそうですか。
『So the ideological argument is that this is not in the European tradition of universal banking.』
ユニバーサルバンキングは欧州の伝統としてダメ出ししてますが・・・・
『Well, traditions can be changed. Before Glass-Steagall was introduced
this was also the tradition in the United States. And before firewalls
were eliminated in Europe in about 1995 or 1996, so more than ten years
ago, we had this tradition.』
そんなに「伝統」というものかとまずはツッコミ。
『So, the technical argument which you are making in the report is that
separation of banking activities between commercial banks and investment
banks might disturb the functionality of the market and might also hamper
the integration of the markets.』
商業銀行と投資銀行の機能分離は市場に混乱をもたらすとダメ出ししてますが・・・・
『Now you said a few minutes ago that the markets are not perfectly functioning
now, which I think is an understatement. Therefore, the main point which
is missed here is that through a separation the issue of protection is
clear.』
別に今だって市場機能がちゃんと動いてないじゃねえかとツッコミ。
『Governments can protect deposit-taking banks and commercial banks and
the rest is not protected. So, we have all these toxic assets, we have
an open-ended guarantee for quadrillions now. How are we going to solve
this?』
政府は貯蓄金融機関と銀行を保護できるが、それ以外を保護しようとした莫大な政府支出が必要になるではないかという話ですな。
で、延々と引用しましたが、ここまでが質問者の質問、というより演説でして、その答えがいい感じで突き放しているのが味わい深いものがございます。
『Trichet: I know your position because you expressed it last time, and
I have already said that one can defend that position. This is a debate
that has been going on in the United States for a very long period of time.
The position of the ECB, which you reflected very well, is that this is
not something that we consider urgent or even appropriate in our present
situation. But I do not deny that you are entitled to your opinion. You
have your opinion, we have ours.』
・・・・・・・(;∀;)イイコタエダナー
#ということで引用大会で大増量恐縮至極でしたが、質疑応答は面白かったです
2010/06/11
お題「日銀新施策の雑感(妄想成分入り)/バーナンキ議会証言」
○ニュース雑談
・この場合は支持率上昇ではないかと(^^)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010061001000523.html
亀井郵政改革相が辞任、連立維持 民主の廃案方針に抗議
何で記事の写真が亀井さんじゃなくて枝野さんなのかイミフなのですけれども(^^)、折角だから連立から叩きだして頂きますと更に支持率上がるんじゃないですかねえ(ニヤニヤ)。後任が自見さんだと元郵政大臣ですなあという所で、いやまあ郵政問題も大事ではあるとは思いますが、金融行政の方もちゃんと見て頂きたいのですけどねえ。
・盛り上がって参りました!
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010061001001106.html
振興銀行の刑事告発検討、金融庁 検査忌避容疑で
まあ何せこちらの銀行様におかれましては設立の前には「銀行経営者は預金を個人保証する位でないといけない」という勢いでしたが、
http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2004/02/post_3.html
設立後は「預金は預金保険で全額保護されるのがミソです」という素晴らしい宣伝をする有様という所が実に心温まる有様で、まあ設立当初は随分と悪態を並べた覚えがありますが、
http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2004/04/post_10.html
まあよー知らんけど色々とアレな状況のようで誠にアレでございますが、今後の推移をワクテカしながら生温くヲチしたいと存じます。
という雑談はともかく。
○日銀の施策は来週出るのかな???
記事の引用元が全部東京新聞なのは仕様です(^^)。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010061001000579.html
日銀、成長強化へ2〜3兆円供給 14日から政策決定会合
これは共同通信の転電記事ですけど。
『日銀は14日から2日間の日程で金融政策決定会合を開き、日本経済の成長基盤強化に向けた新貸出制度の詳細を決める。環境など成長分野の事業を手掛ける企業に投融資する民間銀行に対し、総額で2兆〜3兆円の資金を供給する方向で調整している。7〜8月に制度を開始する見通しだ。』(上記URLより)
この前は「総額5兆円」という報道もありまして「そんなにあるのかよ!」と思ったのですけれども、2〜3兆円でもそら結構ありますなあというイメージですが、「環境など成長分野の事業を手掛ける企業に投融資する」というのをもうちょっと幅広に捉えれば(前も書きましたが)電力やら原油元売りなんかでも入ってしまいそうですから、そこそこ数字を作る事はできるんでしょう。
で、市場の中の人的な興味は成長分野がどうのこうのという話よりも、これが市場金利に影響を与えるかってえ話ではありまして、まあ0.1%の金が2兆だか3兆だか(恐らくはメガバンク中心に)供給されますという事なので、それはそれで市場の運用資金余り状況に燃料追加ではありますが、額的にそんなに巨大という程でも無いと思いますので、マネーフロー的に(5兆だの10兆とかにでもなればインパクトありそうですが)そんなに金利押し下げの話になるとも思えません(そもそもこの施策は市場金利押し下げを意図してないし)。
でですな、本件に関しては日銀的には「ぶち上げたは良いけど全然実績ない」という状況だと日銀マズーだと思うんですよ。つまり、以前の企業金融関連臨時措置は「市場が正常化したら使われなくなるべき」という建付けの物だったし、本来的な意義からもそれがあるべき姿なので、「作ったは良いけど使われない」という使わずの宝刀で問題無かった訳ですが、今回は「成長基盤強化」という前向きな施策になっているので、前向きな施策を作ったのは良いけど使われないのは良く無いという事ですわな。
そして一方の金融機関的には(めでたくうるせえ大臣が辞任して下さいましたが)融資そのものはしたい状態なのに借りて欲しいような資金需要が無いという状態だというのに、やたらと「貸し渋りはケシカラン」とか言われる(正直、貸し渋りとか10年近く前の話だろうがと思うのだが)次第で、こちらも日銀様の「成長基盤強化」というお題目が渡りに船にも程がある話で、これに協力して実績を積み上げれば、「ご覧の通り当行は成長分野への資金需要にお応えしています!!!」とアピールする事が出来る訳ですなというのは以前もお話した通り。
てなわけで目出度く額がそれなりに集まるのですが、実はもう一つ考えているというか妄想しているのは、本施策の導入によってTIBORが下がるかどうかという点でありまして、上記のようにマネーフロー的にはこの程度の事で市場金利が下がる程の量的なインパクトは無いと思うのですが、何せTIBORはリファレンスバンクのご申告を集計したものでありますので、もし「日銀の成長基盤強化策の導入によってTIBORが低下した」となると話が美しいですなあなどという阿吽の呼吸があったりすると(←かなり妄想成分入り)現在のTIBOR金利が下がるというような美しい展開も無くは無いかなとは思わないでもない(←超憶測につき当たり外れに全く責任を取る気もありませんので外れても謝罪も賠償もしません^^)という所でしょうか(まあここから下がって0.35%を切るかどうか程度でさすがに0.3%割るとかしたら銀行の首が絞まるだけの話なので第一勘0.3%台前半、よー知らんが。
○バーナンキ議長の議会証言からメモメモ
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100609a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100609a.pdf(PDF版)
景気に対して強気の見通しとかベンダーが言ってたので本当はどうなのかを斜め読みしてみた(PDF版で本文が6ページということでそんなに量は無い)。
・確かに景気に関しては「回復の経路に乗っている」という話のようで
PDF版では本文1ページの冒頭部分から。
『The recovery in economic activity that began in the second half of last
year has continued at a moderate pace so far this year. Moreover, the economy--supported
by stimulative monetary policy and the concerted efforts of policymakers
to stabilize the financial system--appears to be on track to continue to
expand through this year and next.』
appears to be on track to continue to expandと来ましたかそうですか。
『The latest economic projections of Federal Reserve Governors and Reserve
Bank presidents, which were made near the end of April, anticipate that
real gross domestic product (GDP) will grow in the neighborhood of 3-1/2
percent over the course of 2010 as a whole and at a somewhat faster pace
next year. This pace of growth, were it to be realized, would probably
be associated with only a slow reduction in the unemployment rate over
time. In this environment, inflation is likely to remain subdued.』
失業率の改善が緩やかに進み、インフレーションは抑制されるでしょうという話ですので、その間も金融緩和政策は継続されますよという話になる訳ですな。
・今後の景気動向に関するサポート材料と抑制要因
その次には景気のサポート材料と抑制要因の話がありますが、サポート要因の部分では「財政政策効果による成長は減るものの、経済指標から観測される所では、民間最終需要が経済活動を支えるでしょう」という話をしています。また、個人消費に関しては「雇用と所得の緩やかな改善、消費者信頼感の大きな改善、クレジット環境の若干の改善」によって今後も拡大するでしょうという話になっています。で、企業部門に関しては「企業のバランスシートの健全化、借り入れコストが比較的低いこと、景気回復の持続性に対する信頼感、ヴィンテージ設備の更新ニーズ、売上見通しの改善」によって企業の投資活動もサポートされるでしょうという話になってますな。長くなるので引用は割愛しますが1ページ目から2ページ目です。
一方で成長抑制要因もあるというのをこんな表現で示してます。
『At the same time, significant restraints on the pace of the recovery remain.』
で、その中身としては住宅セクター、商業不動産、連邦政府および地方政府のこれ以上の財政支出に関する財政的制約と言う辺りを挙げています。また、労働市場に関しては改善しているものの、下値不安解消的な状況という感じのようですな。
・インフレは抑制されているということで
で、本文3ページですが。
『On the inflation front, recent data continue to show a subdued rate of
increase in consumer prices.』
ということで、インフレ期待が抑制されているという話をしていますが、長期的なインフレ期待の抑制はサーベイデータにもあらわれているが、米国財務省証券価格にもあらわれているように見えますという話をして、その中で「ただこれは欧州市場の混乱によるものでもある」という話をして、その次の欧州問題に続けています。
『To date, long-run inflation expectations have been stable, with most
survey-based measures remaining within the narrow ranges that have prevailed
for the past few years. Measures based on nominal and indexed Treasury
yields have decreased somewhat of late, but at least part of these declines
reflect market responses to changes in the financial situation in Europe,
to which I now turn.』
・欧州問題に関してはそんなに突拍子もない話をしている訳ではない
まあ欧州問題に関しては一般的な話をしていて、この間に米国債の利回りが低下した事に関しては『primarily
as a result of safe-haven flows that boosted the demand for Treasury securities.』という説明(当たり前だが)してますな。
で、これはまあその通りだなあと思った部分。
『More generally, our ongoing international cooperation sends an important
signal to global financial markets that we will take the actions necessary
to ensure stability and continued economic recovery.』
国際的な協力体制を示す事によって決意を示す事にもなりますよと言う事ですな。
『The actions taken by European leaders represent a firm commitment to
resolve the prevailing stresses and restore market confidence and stability.
If markets continue to stabilize, then the effects of the crisis on economic
growth in the United States seem likely to be modest.』
という部分が昨日のモーサテ辺りでは「欧州問題の影響は限定的とバーナンキ議長が発言」とか言ってたような気がしますが、これを見る限り「安定化策が効を奏したら米国への影響は小さい」という当たり前の話をしているだけのような気がしますが、そこはまあ常にポジティブ思考なメリケンクオリティなんでしょうかね(^^)。実際は「今後の動向は十分に注意」と言ってるんですけどね。
・で、最後は財政問題
『Ongoing developments in Europe point to the importance of maintaining
sound government finances.』
ということで財政問題の話になるのですが、まあいつもの話をしています。で、バーナンキ議長(だけじゃなくて他のFRB高官も含めて)が指摘しているのは、今後の人口構成の変化(要するに高齢化)による財政支出の恒常的な拡大に対する懸念であります。
『Among the primary forces putting upward pressure on the deficit is the
aging of the U.S. population, as the number of persons expected to be working
and paying taxes into various programs is rising more slowly than the number
of persons projected to receive benefits. Notably, this year about 5 individuals
are between the ages of 20 and 64 for each person aged 65 or older. By
the time most of the baby boomers have retired in 2030, this ratio is projected
to have declined to around 3. In addition, government expenditures on health
care for both retirees and non-retirees have continued to rise rapidly
as increases in the costs of care have exceeded increases in incomes.』
正直こういう心配をしている余裕がある米国ウラヤマシスという所なのかなあと権丈先生のページをみていると思う今日この頃でございます。
#メモの割に長くなってしまいましたな
2010/06/10
お題「改めて長期国債買入の雑談」
米国市場までユーロの外国為替レートを見ながら動いているようなのでネタ無し。
#来週の会合のプレビューを考え中なのですが、頭の中が纏まらないので華麗にスルー
○バーナンキ議長の先般の東京での講演では良く見りゃ話がグダグダ
まあ以前にネタにした話ですが。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.pdf(PDF版)
何日かに分けてバラバラに紹介したからまとめなおそうと思ったのですけど、長期国債の買入に関して言ってる事が支離滅裂状態になってやせんかと思うのですよ。
PDF版で言えば本文1ページ目。
『In the United States, we lowered the federal funds rate target to a range
of 0 to 1/4 percent to help mitigate the economic downturn; we expanded
the scale, scope, and maturity of our lending to provide needed liquidity
to financial institutions and to address dislocations in financial markets;
we jointly established currency swap lines with foreign central banks (including
the Bank of Japan) to ensure the global availability of dollar funding;
and we purchased a large quantity of longer-term securities to help improve
the functioning of financial markets and support economic recovery.』
ということで、最初の所ではFRBが長期国債を購入したのは「金融市場の機能を改善させて経済の回復をサポートする」という話をしています。
ところが本文7ページ目ではこんな話になっておりましてですな。
『Rarely employed outside of Japan before the crisis, central banks in
a number of advanced economies have undertaken variants of quantitative
easing in recent years as conventional policies have reached their limits.
In the United States, the Federal Reserve has purchased both Treasury securities
and securities guaranteed by government-sponsored enterprises.』
こっちでは「名目ゼロ金利制約に達した後の金融政策としての量的緩和政策として長期国債の購入を行いました」という話をしてて、さっきと話が違うじゃねえかという事に成ります。しかもその後(同じページ)で量的緩和政策の効果に関してこのような話をしておりますわな。
『Because the effects of quantitative easing on growth and inflation are
qualitatively similar to those of more conventional monetary policies,
the same concerns about the potentially adverse effects of short-term political
influence on these decisions apply.』
量的緩和政策は伝統的な金融政策(=金利引き下げ)と同様に成長やインフレに影響を与えるという話をしている訳でして、自分の所の政策に関する説明が同じ講演の中で話が違ってくるという素敵な状態になっているように見えるのは学者様とも思えない状態でございまする。まあこういうのを見てもバーナンキさんが狸政治家状態になっているんですなあという所ではありますが、良く良く考えたらこりゃどういう事やという感じでございます。
○話がワープしていると思われる部分をコーン副議長の講演で繋いでみる
・・・・とツッコムだけでは芸が無いので、この話の飛躍部分をどうやって埋めるかという理屈を考えてみるあたくしでして、そのヒントはコーン副議長の3月24日の講演(4月の半ばにネタにしました)にありそうな気がする。
ということで先般のコーン副議長の講演。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf
FRBの長期国債買入について「金利を引き下げる為」という説明をしているのをご紹介しました。つまりここでの話はバーナンキ議長の話を違いますがなという事になるのですが、その前の部分から読んで理屈を無理矢理通してみようというのが今回の企画なのだ(^^)。
『The Federal Reserve and other central banks reacted to the deepening
crisis in the fall of 2008 not only by opening new liquidity facilities,
but also by reducing policy interest rates to close to zero. Such rapid
and aggressive responses were expected to cushion the effects of the shock
on the economy by reducing the cost of borrowing for households and businesses,
thereby encouraging them to keep spending.』
『In addition, the Federal Reserve and a number of other central banks
have provided more guidance than usual about the likely future path of
interest rates to help financial markets form more accurate expectations
about policy in a highly uncertain economic and financial environment.
In particular, we were concerned that market participants would not fully
appreciate for how long we anticipated keeping interest rates low. If they
hadn’t, intermediate- and longer-term rates would have declined by less,
reducing the stimulative effect of the very low policy rates.』
『Given the severity of the downturn, it became clear that lowering short-term
policy rates alone would not be sufficient. We needed to go further to
ease financial conditions and encourage spending. Thus, to reduce longer-term
interest rates, like those on mortgages, we purchased large quantities
of longer-term securities, specifically Treasury securities, agency mortgage-backed
securities, and agency debt.』
つまりですな、金利引き下げの効果が市場機能の不全によって浸透しないとマズーなので、「金融市場の機能改善を行う」事によって「金利を引き下げる」為に長期資産の購入を行いましたよという理屈になる訳ですな。で、金利引き下げの効果を出す為である、という事からすると、この政策は伝統的な金融政策と同じ事を狙っている、って理屈にならんことも無いという所ですわな。
○つまり量的緩和は量では無くて金利に働きかけるという事なのかなあ????
・・・・とまあ書いてみましたが、やはり理屈に無理矢理感は拭えないと思われる所でありまして、その時点で確かにMBSのような市場はイカレポンチになっていたと思われるので、そっちの方の買入には「市場機能回復」「金利引き下げ」という理屈も判るのですが、長期国債市場に関しては何の機能不全も無かった訳でして、その長期国債市場に介入したのはFRB的には結局何をどう考えて突っ込んだんだという話になるとやはり答えが難しい所ですわな。
それから、上の方にありますように、バーナンキ議長は長期資産の購入を量的緩和政策のカテゴリーに入れてインフレへの効果をという話をしていますが、現状のFRBのコンセンサスは「大量の長期資産購入が直接的にインフレに影響を与えているかどうかは不明」という辺りではないかと思われる訳で、コーン副議長の講演でも、
『Central banks have lots of experience guiding the economy by adjusting
short-term policy rates and influencing expectations about future policy
rates, and the underlying theory and practice behind those actions are
well understood. However, the economic effects of purchasing large volumes
of longer-term assets, and the accompanying expansion of the reserve base
in the banking system, are much less well understood.』
『So my second homework assignment for monetary policymakers and other
interested economists is to study the effects of such balance sheet expansion;
better understanding will help our successors if, unfortunately, they should
find themselves in a similar position, and it will help us as we unwind
the unusual actions we took.』
ということで(あたくしのヘタクソ訳付きのは4月16日前後の過去ログをごらんください)、資産買入によってもたらされた民間銀行のリザーブ拡大の効果に関しては検証途上という所ですし、そもそもリザーブ拡大したからインフレ期待が盛り上がったかというと米国でそんな雰囲気も無いですし、まあこの辺りを考えますと、バーナンキさんは「量的緩和政策」という表現を使っていますが、実際の所は「実際の企業や家計のファンディングコストの引き下げ」ルートによる景気の影響というのを考えているのではないかとゆー話になりますわな。
てなことを考えますと、現在の拡大したリザーブに関してはあくまでも資産買入政策の副生成物であって、現状の環境下ではその超過リザーブ自身が単独でインフレに影響を与える訳では無いので、超過準備の吸収に関して急ぐ必要は無いという理屈になっている、という事になりますので、まあ何となく無理矢理成分がありますけれども一応理屈は通っているという話になりますわな。
そう考えますと、日銀が12月以降に実施した各種施策に関しても、これは企業や家計のファンディングコストの引き下げを図っていると言えばそうも言えそうな施策(ターム物金利が低位安定すれば銀行貸出金利が下がる)ですし、それ以前の企業金融支援の各種措置はモロにその措置でありましたので、そういう論点で言えば何とバーナンキのFRBが実施した「量的緩和政策(バーナンキの東京講演ベースでの意味ね)」は日銀が現在までに実施している施策と同じ方向を見ているという何だか判ったような判らないような結論になるのですな。書いてる本人も自分で自分の文章に煙に巻かれそうですが(^^)。
と、謎理屈を最後に展開しましたが、つまりこの理屈を推し進めていきますと、日銀が国債の買入を更に増やすのは(発行銀行券残高が増えてくれば話は別ですが)あまり政策的に意味が無いという話になりそう(あくまでもこの理屈上という事であって、実際の話はまた別問題)なので、理屈重視の白川総裁的には中々ハードルが高いという結論になりそうですわな。という当たり前の結論を出すために色々と話をああでもないこうでもないと捻ってみました(^^)。
#ほとんど雑談でどうもすいませんでしたm(__)m
2010/06/09
お題「何せ海外に振り回されるもんで雑談ばっかになりますな」
海外市場、というより外国為替市場というかユーロ市場によってオーバーナイトで動くのはコマッタモンデス。ということで今日も雑談小ネタばっかで恐縮ですが。
#ところで財政問題で閣内不一致みたいなのでこの際亀(以下自主規制^^)
○市場雑談
・そう言えば間もなく企業金融特別オペが残高無くなります
いやまあ別にどうでも良い話ではありますが、特オペちゃんの残高が今日の時点で8700億円になるのですが、これが残った最後の分でございまして、来週水曜日(16日)に目出度く残高ゼロになります。
で、固定金利の新オペちゃんの方はと言えばこちらはめでたく19.2兆円まで残高が増えてきました(24本分です)ので、まあとりあえず一連の企業金融関連の臨時措置はめでたくフェードアウトと言う事で誠に慶賀の念に堪えませんが、結局の所固定金利オペちゃんを実施したり、挙句の果てには成長基盤強化の謎貸出まで始まりますので、何が何だったんでしょうという気は思いっきりしないでも無いのですが、日銀様の理屈的には「あれはCP市場や社債市場の機能不全対策の臨時措置で今度のはターム物金利への働きかけと、成長戦略の一貫の臨時措置だから話は全然別」という事になるのですから、まあそういう事として理解して置けばよろしいのかと存じます(棒読み)。
まあいつの間にやら残高が目出度く無くなって良かったですねという所ですが、とりあえず特オペ無くなってCPレートとTBレートの恒常的な逆転現象が無くなったのは一応「市場機能回復」という所ではございます。ただしCPの発行そのものが減り気味(特に投資家が買いたくなるような高格付けのメーカーさんとか公益系さんとか)なのと運用資金のような物が余っている状態なので、別にスプレッドが拡大するまでもなく、相変わらず銘柄間スプレッドもあんまり無いという素敵な状態にあるのは変わらないですけどね。
・コールに悪態付いたら何か急に加重平均が10bpに乗った件について
昨日のコールレート速報
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/mp100608.htm
足元でGCが上がった訳でも無いのですが、はて何でこれは急に0.10%に乗ったんざましょ???教えてエロい人!(追記@6月13日:これは大手国内証券会社が数千億ストレステストと称してコールを0.12%〜0.13%で取ったからだそうです)
・珍しく対内対外証券投資統計でも
http://www.mof.go.jp/shoutou/montha1005.htm
非居住者の短期債投資がネットで4.3兆円増えてますな。今年の1月にネットで1.5兆円、去年の2月にネットで2.1兆円増えているというのが割と大きい増加なのですが、昨年の5月は特に動いていないので別に5月要因というのは無さそう(ただし今年の3月は3.4兆円の減少になっているので何かの季節要因があるかもしれません)ですが、5月といえばギリシャが地雷を豪快に踏んで春のユーロ祭りが開催された訳ですが(今も絶賛開催中ですけど)、この間に日本の短期国債が買われましたというのは何かそれだけ見ると「ユーロからの退避資金が来ましたでござるの巻」に見えますなあという所です。
じゃあ本当はどうなのかというのは微妙で、何か単に3月に落ちた分の復元が来た為に底上げされているだけなのかも知れませんが、こればっかりはまあ判りませんわな、と全然結論になっていない結論でした。
では今日の3か月TB入札はどうなのよという話ですが、ここもとの短国相場ちゃんではその手の「短期国債というモノを買います」的な動きはさすがに一服という感じですが、その一方で足元潰すべきキャッシュはアホ程あるので、その潰すべきキャッシュの買い出動レベルと思われる水準までは中々上昇せず(できれば0.12%以上キボンヌだと思うのだが、それを言ってると一生買えないので0.115%って事になるんですかね。6か月だと0.12%ですけど)ということで、今日も今日とて横ばいになるんでしょ、よー知らんがの。
・ところで30年国債入札の前場買ったのは何だったんですか??
昨日は30年国債入札。前場の引けとか見ないで単純に前日の引けと当日の引けを見るだけですと「ちょっと強めだけどまあこんなもんですかなあ」という落札結果に見えないことも無いのですが、実際は前場に謎の買いで超長期ゾーンを強くして、落札はやや流れて引けになったらベアスティープとなり、前場引けと大引けの間で超長期ゾーンのバランスが3毛も悪化しやがるというケシカラン入札になっておりました。得したのは財務省だけというしょうもない結果に。
で、この前場の買いが先回り買いなのか煽り攻撃なのか嫌がらせなのかさっぱり判らないのですが、実にはた迷惑な動きではございまして、まあ相場的には何となくインチキ成分が増えてきたというような所なのでしょうか。量的緩和時代にも時々こういうしょうもない前場の嫌がらせ買いみたいなのがありましたが、久々にやらかしましたなあという感じで、まあそのまま強い所を入札で全部買うという根性あるなら別に良いのですが、全然そうじゃないというのなら他の参加者に迷惑にも程があるので、可及的速やかに切腹して地獄の火の中に投げ込まれるべきものであると思う次第であります。というのをメモに残しておきますです、はい。
○ドイツはアホですかという点に関する雑感メモ
一昨日の話で恐縮ですが(昨日書くの忘れた)。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aUAw_ufn2QZc
独憲法裁判所:EU支援策への独参加の差し止め検討−シュピーゲル誌
まあ一昨日はこのニュースでGLOBEXでダウとかS&P先物が売られてたりしてた訳ですけれども、なんつーかおまいらユーロ導入によって自国通貨を安めにする事ができて輸出産業恩恵ウハウハで儲けている癖に何を今更言ってるんじゃという所で、ジャガイモの食い過ぎで脳味噌がジャガイモになっているのではないかと懸念される所でございます。
理屈は全然違いますけれども、国際金本位制度で英国が還流する黒字をバンバン対外投資して金本位制度を維持するのと、現状のユーロ圏でのドイツの果たすべき役割が似ているのではないかなあとイメージ的に思う(勝手に思っているだけで多分的外れていると思うので、どこがどう外れているのか頭の良い方にご教授賜りたいと存じます)のですが、どうもドイツはその点の考察というか国民への周知が足りないのではないかという気がします。
じゃあどうやって単一通貨圏内での地域格差の是正をするのかという論点になりますと、地方交付税交付金みたいな制度を作る訳にはいかない(というか無理)ですし、そもそも論としてドイツに何か輸出できるものが沢山あるという位なら自分の所が輸出主体で稼げるのでありまして、そうじゃない状態でどうやって不均衡是正するのかはムツカシヤですわな。
通常だと為替が調整する形になるのですが、不均衡の是正に為替が使えないと言う事になると、その不均衡ってどっかに皺寄せがくる筈なのですが、さてこの場合どういう形になるんでしょ。例えば国際金本位制度ですと「国内の物価を国際物価に皺寄せする機構」(というのは受け売りでして、元ネタは中村隆英著「昭和恐慌と経済政策」(講談社学術文庫)です)だそうですが、ユーロ圏内ではどういう事になるんでしょ。
#というのを今頃になって悩むのでは話が遅過ぎというツッコミはお受け致しますので、教えてエライ人!
○証券決済改革関連メモ
日経の記事が有料会員向けになってやがるので又引用状態。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aYWcYoi5SLLM
国債決済2日に短縮、2012年めど金融業界・日銀・金融庁−日経
日銀様と金融庁様が御熱心なのは結構なのですし、まあT+2にするのは大きな弊害は無いかとは思いますし、決済リスク削減そのものは正論なのですけれども、こんな低金利で決済関連の投資をする収益が捻出できない時にシステム投資の負荷がかかりそうな事をやるんですかいなと思う次第。まあその辺を勘案して2012年前半という事になっているのでしょうけれども(2012年になってもまだ今の金利水準だったら悲しいがありそうですなあ)。
で、これ国債決済だけ短縮するのか、他の証券決済も短縮するのかが記事だけだと良く判らん(まあWGがあると思うからそこに聞けば良いのだが)のですけれども、機関投資家間の方は何とかなると思うのですが、証券決済の期間短縮という話になった場合にリテール部門とか投信とかの決済が短くなるという話になりますと、そっちの方が実は負荷が大きいんじゃないかなあという気がしますが、どうせまた例によって例の如く日銀ネット参加者という言ってみれば証券決済関連のおエリート部門様を集めて話をしているのでしょうから(付いていけない雑魚はカストディーサービスを使えというのは一つの考え方として大いにある話なので別にそれを全否定する気は無いが)、まあ精々リテール方面の方も気にしてあげて下さいねという所でしょうか。
一時いきなりT+1決済という話が報道されて物凄い勢いでビックリしましたが、さすがにそれは無理(T+0のレポ取引ってGCは資金の出し手限定でSCでT+0対応ができる人が一部の大手と専業信託という状態ですからねえ)ということで現実的な話になったのはまあ歓迎という事にしておきます(棒読み)。
ま、出来ましたらご当局の皆様におかれましては、理念先行のべき論で無理無理突っ走る事のないように願いたいものでございます。
○その他超雑談
雑談と超雑談しか無いというツッコミは全力で却下
・テラワロス
まあ昨日世間で話題になっていましたので今更ですが、折角のネタなのでクリップしておきます。
http://jp.reuters.com/article/companyNews/idJPJAPAN-15719320100608
米金融危機調査委員会、ゴールドマンに召喚状
『FCICのビル・トマス副委員長は、ゴールドマンがFCICの処理能力が限られていることを知りながら、大量の書類を提出したと主張。今月4日に召喚状を送付したことを明らかにした。FCICのフィル・アンジェリデス委員長によると、ゴールドマンは5テラバイトの記録を提出。1テラバイト当たり5億ページ分のデジタル情報が含まれているという。』
・・・・これがほんとのテラワロス。
・何かずれてるんだよなあ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100607-00000044-mai-pol
<自民党>岩国哲人氏が政調会顧問に
この人って無茶苦茶な質問主意書を出してみたり、国会で訳判らん質問してみたりということで、政界引退して良かったよかったと思ってたんですけどね。
で、その質問主意書ですが、これなんか係争中の案件への介入じゃないかと言われそうなものでして。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a160068.htm
2004年にこの件に関してあたくしがネタにしたのでその時の駄文を再掲(^^)。
>何なんでしょうこの人は???と思って岩國氏のWebを見たら、このセンセイはかつてモルガンスタンレー投資銀行に77年から84年まで勤務していたようですな。という事はこのセンセイは国会の質問主意書という場、すなわち国政調査権を利用して知人の係争中の案件に関して圧力を掛けているのではないかっていう穿った見方をしたくなる訳ですよ。あたくしのような性格が斜めになった人間に言わせますと。
>ちなみに、話は横に逸れますが、この係争案件は別にモルガンスタンレーと関係ない話なのにわざわざ「世界でも有数の金融機関である」云々と持ち出す質問者の脳内はどういう構造になっているのか実に不思議です。まぁ自分のWebの自己紹介で臆面もなく「銀座支店長栄転の辞令を返上し」とか「世界最大の投資銀行、メリル・リンチ社へ」などと書く精神構造だから仕方無いのかも知れませんが。
(2004年9月1日に書いたあたくしの駄文より)
自民党応援している積りなのですが、どうも出てくる行動がピンボケなんだよなあ・・・・・
2010/06/08
お題「まあ今日も小ネタが並ぶのですが」
真面目に考察すると大ネタなのかもしれませんが・・・・
○見た目覆面利下げでも話題にならないですな
昨日は当座預金残高が連日の15兆円割れという調節になっているのですが、コールレートの方は0.086%となりました。先週は月曜の0.089%から延々と0.08%台後半で推移して、4日は0.091%になりましたけれども、昨日もまた0.09%割れ。まーそれ以前の問題として5月に入ってからのコールレートって恒常的に「下を四捨五入すると0.09%状態」が続いている(そうじゃ無かったのは14日の0.102%の時だけ)のですが、0.09%割れが定着という感じになって参りましたので、こらまあディレクティブがちがちに運用していた時期から考えれば覆面利下げみたいなもん・・・・の筈なのですが、あたくしがこうやって場末でうだうだ申し上げておりますだけで、世の中であまり話題にもなっている節が無い(一部あたくしの仲間内では話題にしてますが、笑)のが残念な所。
えーっと、どう残念なのかと申しますと、よーするに無担保コールの金利水準が覆面利下げだろうとど〜でも良いというのが現状の金融市場の有様という所だという話ですわな。別にどうでもいいちゃあどうでもいい話ですがね(汗)。
元々無担保コール市場で都銀が取ると(平均が0.10%乗せてた時でも)0.10%を普通に割っているような時が多々あったので、そーゆー意味で実質的にどの位レートが下がったのかって良く判らん節がありまして(まあ都銀の人は知っているでしょうけれども)、もしかしたらその辺があまり変化無いから話題にならないのかも知れませんし、それ以前の問題として無担保コール市場の金利よりも短国などの全体的な金利水準という意味ではGCレポレートの水準と安定性の方が重要なのでコールの実効レートはそんなに問題じゃないという事なのかもしれませんし、まあ正直良く判らないのですが、一昨年のいつぞやにコールで0.08%のビットとかに成った時に売出手形で資金をさっくり引いたようなオペレーションをやってた時から比較すると随分と変わった観がありますな。
で、まあこの調子でコールの実効レートが0.09%割れが続くという状態になっているのを特にディレクティブ的に問題無いという話なのでありますと、それは実質的には金利付きの量的緩和状態というか、FRB状態で預金ファシリティのフロア機能が今一歩効いていない(本当に効かなくなると米国のようなカオス状態になるがそこまでの話にはならないですね、短期国債は0.10%から下には下がらないですし)状態というか、まあそういう状況になるのですが、その辺政策委員会ではキニシナイ!ということなんでしょうかねえ。まあ細かい話でどうでもいいと言われればそれまでですが(大汗)。
○これはまたアレなインタビュー
http://www.ecb.int/press/key/date/2010/html/sp100531_1.en.html
Interview with Le Monde
先月末に行われたトリシェ総裁のルモンド紙でのインタビューがECBのサイトにも載っていた訳ですが、内容はまあ正直どうでも良いのですが、質問が中々直球だったり無理筋だったりしてテラオモシロス。
何せ最初の質問が。
『Is the euro in danger?』
ってテラ内角ストレートwww
『The euro is a very credible currency which keeps its value. Since its
introduction 11-1/2 years ago, average annual inflation has been below
but close to 2%, in line with our definition of price stability. The euro’s
capacity to maintain its value is absolutely essential for the confidence
of investors both inside and outside the euro area. 』(「11と2分の1」の所だけ表記を機種依存文字から改変しました)
とまあこんな感じの答えが続くのですが、中々こう直球質問が多くて答えるのも大変ですなという感じです。
『Economists have underlined the positive impact on growth of a lower euro. Do you share this view?』
という質問がありましてですな、
『As I just said, the euro is a credible currency which inspires confidence.
Confidence is the most important ingredient for the consolidation of Europe’s
economic recovery.』
まあそう答えるしか無いのでしょうが、本当はユーロ安で財政再建のサポートをしないといけませんなあとは思いっきり考えていると推測されるので、そーゆー点では明確な答えをしてない(通貨の信認が重要という本来の質問の意味を微妙にずらして答える方式を取っている^^)のはまーそーゆー事なのでしょうなと。
あと、これを読んでてカフェオレ吹きそうになったのはこの質問。
『Sometimes, one imagines a sort of Anglo-Saxon plot against the euro. What do you think of this?』
・・・・・さすがおフランス様としか言いようがありません(^^)。
で、この質問の答えですが、話を変えて「通貨統合だけではなくFiscalな部分でのunionみたいなもの(統合なのか強力な監督なのかは兎も角として)が必要」という答えをしているのは中々。
『No, one should be wary of any conspiracy theories.』
まあそれは当たり前や。でも「何でもコミンテルンの陰謀」とか言い出すようなのが空軍のとても偉い位置にいたという国が極東のどこかの島国にあったりするので、まあ人の事は笑えないのですが(吐息)。
『I simply believe that some international investors struggle to understand
Europe and its decision-making mechanisms. They have difficulty in gauging
the historical size of the European construction and in anticipating the
capacity of Europeans to take decisions that are just as important as those
taken a few days ago. Having said that, one should not be complacent: we
have some very serious problems and we need to draw some serious lessons.
The supervision of fiscal policies, of developments in competitiveness
in the euro area economies and of structural reforms needs to be radically
improved. We are a monetary union. We now need the equivalent of a fiscal
union in terms of monitoring and supervising the implementation of policies
on public finances.』
ということで、その「the equivalent of a fiscal union」に関しての質問が発展するのですが、めんどいので質問だけ引用するという暴挙に。
『Can this be achieved by creating new institutions? 』
thisってのは「the equivalent of a fiscal union」の事ですな。
『Would you like to be able to inspect Member States’ budgets prior to
their adoption by national parliaments as the Commission proposes to do?』
『Can non-democratically elected bodies grant themselves a supranational inspection right? 』
ということで、参加各国の財政を縛る話に関してEUがホイホイしゃしゃり出てくる件に関してはツッコミが飛ぶんだなあというのは把握した。なお中身は上記URLを読んで味噌という所でございますが、トリシェ総裁はその手の「the
equivalent of a fiscal union」的なものができることに関しては「我々はそのように進んで行くことができるだろう」っぽい話をしていまして、まあEU的にはそういう流れにしたいのですかねえ(参加各国の国内的な考えは別にして)という事なのかなあと思いました。
で、最後に(実際は最後の質疑では無いが)国債買入の件に関して。
『When the ECB decided on 9 May to purchase government bonds that had found
no takers in the market - a decision criticised notably by the President
of the Deutsche Bundesbank - did it endanger its independence? Does it
run the risk of becoming a kind of "bad bank"?』
なんちゅうストレートな質問wwww
『As you know, I never comment on what my colleagues have said. On the
basis of our decision, which was taken by the Governing Council with an
overwhelming majority, I would like to emphasise the following points.』
『First, we are totally independent of governments and pressure groups
of any kind. It is not by chance that we have guaranteed price stability,
but by taking decisions which have pleased neither governments nor lobby
groups.』
別に政府やら特定のロビー活動の影響ではないとな。
『Second, our mandate is price stability. From 1999 to the present we have
delivered average annual inflation of 1.98% for 330 million European citizens.
We are unswervingly committed to price stability.』
ECBの物価安定という目標に変化は無いとな。
『Third, we re-absorb all of the liquidity that is injected through our
interventions. We are not printing money and there is no change to monetary
policy.』
プリンティングマネーをしているのではないですよと。
『Fourth, the aim of our interventions is to enable certain markets to
function more normally, in order to ensure the correct transmission of
our monetary policy, which is unchanged.』
国債買入は金融市場の正常化を図り、金融政策の波及効果を機能させるための物であり、金融政策のスタンスそのものには変化が無いですよ、と言ってますな。
『Fifth, we have taken note of the decision by governments not only to
strictly comply with their undertakings to reduce deficits, but also, on
the part of a number of them, to step up their budgetary consolidation
efforts. For us, this is absolutely of the essence.』
国債買入によって財政削減の為のサポートになるとか何とか言ってるようですな。
ということで、前からそうなのですが、国債買入は量的緩和でも財政マネタイズでもありませんというのをやたらめったら強調するのはここでも同じですな。うーむ。
○どう見ても御用金調達です(でした)本当にありがとうございました
時々拝読しております経済学者(という言い方で宜しいのでしょうか??)の安田洋祐先生のブログで日本経済学会の話がありました。
http://blog.livedoor.jp/yagena/archives/50662132.html
いやまあ何がなにやらという話(あたくしの頭が悪いのが原因で安田先生のせいではありません、為念^^)ですが、最後の所で紹介されていた研究(と言っても安田先生の紹介文だけですけど)を見て「ほほう」と思った次第。
『最後に、発表(ポスター・セッション)には顔を出せなかったものの、報告資料を頂いた東大の鶴岡さんの研究について:
「Auction Versus Negotiation in Issuing Treasury Securities: Evidence from
Japanese Government Bond Auction」(東京大学大学院 鶴岡昌徳)
日本の国債落札に関する価格データを用いて、交渉(シンジケート団との交渉による売却)と89年より導入されたオークション方式との違いを分析した実証研究。意外なことに、交渉の方がオークションよりも落札価格が“高く”なることが示されている。』(上記ブログより引用)
まあ確かにネゴシエーションとオークションでネゴシエーションの方が高くつくというのは一般的に考えると逆の結果にも程がありますわな(紹介文の最後の方にも記述があります)。
・・・ではあるのですが、証券会社でも銀行の資金証券部門にでも一本電話で問い合わせていただければ「それはオークションとネゴシエーションの違いではなく、単に大蔵省のスタンスの違いによるものです」という答えが1秒で返ってくると思うのですよ。ただまあこーゆー研究によって「過去の国債引受シンジケート団方式での国債消化は御用金調達レートでのやり方だったんですね」というのが「学術的にも示された」いう意味では現場労務者的にはオモロイ話です(^^)が、正直言って証券会社の国債関連部署にいたらそんな結論当たり前過ぎて知らない方が素人にも程がある(とか偉そうに言ってみたものの、最近の若人は知らないかな^^)話でもありまする。
つーかロクイチ国債の話とか、国債大量発行の話とかの歴史を見て頂きますと、昔は国債消化が御用金調達方式でも回っていたのが、その発行が大量になっていくにつれ、どうやって真面目にちゃんと消化するかという事を考える中、それから金融自由化によって自由金利になる(1989年の時ってまだ一般的な預金金利は規制金利(大口預金だかスーパーMMC以上が自由金利)で日銀の政策委員会で決まってたと思うのだが)中、という状況でバカスカ発行額が増えていく国債をどう消化していくかを色々と試行錯誤しながらというのがここまでの歴史でありまして、そっちの制度デザインに関しての考察が研究対象としてはオモシロイと思うのですが、中々それは定量的に数式使ってどうのこうのという研究対象にならないから先生的には面白くないのかなあとも思ったりして。
折角ですから、同じ理屈で「制度のデザインをどうすべきか」という観点から日本でのプライマリーディーラー制度導入前と導入後の違いを実証分析して頂きたいと思うのですが、そういうのってネタになりませんかねえ、あたしゃ無学なので良く判らんが。
2010/06/07
お題「須田審議委員会見/その他雑談」
まずは須田さんの会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1006a.pdf
○下振れリスクの中にしらっと円高ネタが
冒頭の質問で「どういう意見がありましたか」というのがあったのですけれども、その答えの最初にしらっと円高の話が。
『(答)本日の懇談では、「経済指標は数字の上では戻ってきているが、円高などもあって景況感は依然として厳しい」とか、「人口減少のペースが速く、小売業への打撃が大きい」、「有効求人倍率は全国より高めだが、正規労働者の比率が低いなど内容が良くない」といった厳しい声が聞かれました。』
・・・・いやまあ指摘しているのは参加者さんですから須田さんではないのですが、わざわざここで円高の話が出ているのが何気にお洒落な所ではないかと思うあたくし。つまり、何のかんの言いましても昨年12月以来の金融政策での動きってゆーのは為替市場やら株式市場(まあ主に為替市場でしょ)の期待に働きかけて何とか円高株安を回避しましょうっていうのが一連の流れな訳でして、その点からしますと足元のユーロ安が円全面高になってしまうと今までの努力が見事に水の泡になるので円高懸念ってえ所ではないかと。
その点では菅さんが円安のイメージを持たれているのはオイシイのですけれども、何せ現状では主要国が(表立っては言わないけれども)自国通貨安で外需(というか新興国の成長)ドライブで景気を何とかしようとしている最中ですので、日本だけ原則論でおじゃるとか言ってたら円独歩高で単なるババ掴みになってしまうので、まあ円安期待が外れた時の方がオソロシスな気もせんでもないです。
○下振れリスクではないが銀行のコア収益が減っている件について
『(問) 和歌山県を含め、現在の地域金融機関の経営についてどのようにみているかお聞かせ下さい。』
答えの最初の所は吹きましたが。
『(答) 現時点において、和歌山県の金融機関で2009年度決算発表を終えているのは1行のみですので、個別金融機関の経営やその評価については、コメントを差し控えさせて頂きます。』
まあそれはともかく。
『和歌山県を含む近畿地区における地域銀行の2009年度決算をみると、2008年度の赤字から黒字に転換しました。このような収益改善の背景には、2008年度に大幅な損失を計上した有価証券関係損益が益超に転化する中で、信用コストの発生も全体としてみれば落ち着いた動きとなったことが挙げられます。』
それは良い話なのですが。
『ただし、貸出金利回りの低下に伴う預貸金利鞘の縮小などから、銀行の本業としての利益を表すコア業務純益はむしろ悪化しており、安定的な収益基盤の確立という点では、なお大きな課題が残っていると認識しています。』
という事で、まあ厳しいということですな。システミックリスクという論点で言えば(この先の部分で須田さんが指摘していますが)まあ特に問題があるとは思えない状況ですが、コア純益が悪化していると言う事は将来に向けて問題が発生しつつありますなという事でもありますにゃという話ですか。そう言えば金融システムレポート関連は何気に注目してますので、そっちの話も(レポート出たら)ネタにしないといけませんね。
○新型オペの拡大には引き続き反対と
最後の質問で新型オペに関する見解を求められていますが。
『(答) 私自身は、3月17日の金融政策決定会合において固定金利オペの拡充に対して反対票を投じたわけですが、これは以下のような理由から、措置を講ずることのメリットよりもコストが大きいと判断したためです。』
決定会合議事要旨にもありましたが重要な論点ですので改めて引用(^^)。
『第1に、足許の各種経済指標は概ね想定どおりに推移しており、追加の緩和措置を講じる明確な理由が見当たらなかったことです。すなわち、メインシナリオとリスク評価に特段の変更がない中での政策変更は、現行の金融政策運営の枠組みと整合的ではなく、市場との対話に支障を来たすおそれがあったためです。』
『第2に、日本銀行の金融政策は、あくまで金利水準を目安にしているにもかかわらず、特定のオペ資金供給量が金融緩和の度合いを示すとの誤解を招くおそれがあったためです。』
『第3に、いったん市場が政策を織り込めば、それに従わざるを得ないとの見方が強まるおそれがあったためです。そうなれば、観測記事や投機的な動きが増え、適切なコミュニケーションや政策判断が困難になるリスクがありました。』
いやもうこれは原則論として仰る通り。ただあの措置自体は実際のところ「ターム物金利の誘導」じゃなくて「為替市場への期待に作用」な所を、まさか表向きそういう訳にはいかない(そういうのと言っていいのはSNBみたいな小国だけでございますけれども、SNBのアレだって相当評判は悪いと思われます)ので、まあ実施しましたよという所でしょうな。
更に話が脱線して須田さん会見と関係ない話になりますが、まあ何だかんだと言っても為替市場ちゃんが勘違いしてくれる効果もありますので、本来的に言えば売出手形などを実施して引きながら固定オペを増やして、更に短い普通のオペも継続すればコールとGCをバランスよく推移させることができる(先週はコール9bp割れが連発しておいおいと言う感じだったのだが)のですが、テクニカルな資金吸収を捕まえて引締めとか言い出すお馬鹿さんが多いのでそれが出来ないというのが困りますわなあと思いますです。
それはともかく。
『以上の点に加え、ターム物金利が既に十分低い水準まで低下していた中にあって、追加措置の効果や金融機関の収益ならびに市場機能に与える影響についても、より慎重な検討が必要との判断もありました。こうした判断は、基本的に現在も変わっていません。私がこの政策に反対した状況は、依然として続いていると解釈しています。』
まあ金利村の事情だけで言えば須田さんのおっしゃる通りではございます。
○これは中々面白い質疑応答
物価に関する質疑応答があたくし的にはウケました。
『(問) 本日の挨拶で話した潜在成長率とデフレに関して伺います。もともと須田委員は、物価安定については、プラスだが比較的低い水準を主張されていたと思います。実際、本年4月30日開催の金融政策決定会合の議事要旨にも、「1%よりゼロ%に近いプラスが中心」、「中心値である1%を過度に強調するのは望ましくないのではないか」といった発言があります。本日の発言が、日本の物価が長年比較的低位で安定していることが問題であるとの趣旨であれば、これと須田委員の物価安定に関する主張とは矛盾するのではないかと思われますが、これらの整合性についてどのように考えられているのでしょうか。』
『また、デフレの根本的な原因について、最近、日本銀行の方々が潜在成長率の低下であると発言されていますが、潜在成長率が高くなれば、それだけ高い成長をしなければ物価は抑制されるのではないかと思うのですが、この点のご説明をお願いします。』
・・・・・・・(;∀;)イイシツモンダナー
『(答) まず、「中長期的な物価安定の理解」については、金融政策決定会合において個々人の物価に対する数値を総合的にみたうえで判断すべきであると思っていますので、現時点では、消費者物価指数の前年比2%以下のプラスの領域としか考えていません。1%を強調すべきではないというのは、この領域で考えているとの意味であり、これまでの発言において矛盾したことを言っているとは思っていません。』
いい感じで華麗にスルーしているようにしか見えんのだが。
『2つ目の質問についてですが、潜在成長率が実際に高まるには時間を要する一方で、期待成長率が高まれば、人々は恒常所得が増えると想定し、その時点で需要が高まってくるため、需要が供給を上回ることを通じて物価に上昇圧力がかかることになります。本日話したことは、逆に潜在成長率がどんどん下がっていくなかで人々が恒常所得が減っていくと想定すると、供給サイドの減少以上に需要が減少し、需給ギャップが悪化していくということです。潜在成長率が上昇するということは、将来に対する消費や投資を行っていくということで、物価にプラスの圧力がかかると捉えています。』
何か判ったような判らんような説明で、言いくるめられているような気がする・・・と思ったら尚もツッコミが続くのだ。
『(問) 一つ目の物価に関する質問について、須田委員は矛盾していないと答えましたが、本日の挨拶内容によれば、日本の物価が90年代後半以降、物価が低く抑えられてきたことが問題であるとのことならば、やはり須田委員が主張されている中長期的な物価の理解として「1%よりゼロ%に近いプラス」が良いとの考えと矛盾するように思われますが、いかがでしょうか。』
・・・・・・・(;∀;)イイシツモンダナー
『(答) 本日の挨拶で90年代後半について言及しているのは、物価がマイナスになったことについて説明しているつもりです。リーマン・ショックが発生した時に、日本の物価だけが大きくマイナスとなったことについては、90年代後半以降、日本のインフレ率が相対的に低かったことが原因であるという事実のみを述べたかったのであり、インフレ率が低かったことの良し悪しについて踏み込んでいるわけではありません。』
・・・・・・えーっと最早何が何だか良く判らん。ということで、見事な質疑応答(というか質問)の引用でした。
以下その他少々小ネタで。
○G20の所でちょっと気になったのはこの辺りね
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1006b.pdf
の2ページ目。
『【問】 米国のガイトナー財務長官がG20各国に宛てた書簡の中で、世界経済の回復には日本と欧州の経常黒字国の内需を拡大する必要があると述べている旨が報じられています。これについて、どのようにお考えでしょうか。』
つまり、「おまいら自国通貨安政策取るんじゃねえよ」と言ってるという事ですかな。何と申しますか「お前が言うな」ってえ感じはしますが。
○今度はハンガリーですかそうですか
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-15685520100604
ハンガリー、ギリシャのような危機に陥るリスク=首相報道官
2010年 06月 5日 08:43 JST
・・・・・また前政権のせいにするという攻撃ですが、そういう事をすると結局自分の首が締まると言うのをギリシャが身をもって示している筈なのですが、何かの対策を用意しているのでしょうかね。まあハンガリーの場合はユーロじゃないですからいざとなったら通貨切り下げ攻撃とリストラクチャリングで何とかしちゃうんでしょうけれども・・・・・・
○こっそりこの行方に注目
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15690520100606
欧州の銀行のストレステストは近く終了=ECB総裁
2010年 06月 6日 11:23 JST
ストレステストと言えば嘘八百にも程がある前提条件で堂々のストレステストをした挙句、後になってみると「極めて厳格なストレステストを実施して市場の不安を解消した」とかしゃあしゃあと言ってるどっかの国の当局の皆様がおいでなのですが、さてこの欧州の(どうせお手盛りの甘々前提になる)ストレステストに関して米国が何を言い出すかは楽しみですな。まあ普通の神経だと自分らのインチキストレステストについてインチキと誰も言わないままスルーしちゃったのを思いだしてECBのにも文句は言わない筈ですが・・・・・
○ところで日銀のオペ減額
昨日は1週間物の国債買現先オペと短国買入を減額。まあ足元ではGCも落ち着いていますし、コールは兎に角先週は9bp割れが連発とかで、ディレクティブの遵守が怪しくなる今日この頃なのであります(いやまあ8bpが『無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.1%前後で推移するよう促す。』の「0.1%前後」だと言い張れば良いのですけれども、従来はそういう調節じゃ無かったですよね)ので、まーそりゃオペ減らしますわなという所なので、単なる備忘メモでした。
それよりも今月の注目は年金の払いと国債の四半期償還がぶつかる四半期末ということで、月後半のGCやらSCやらの動きがどうなるかという事ですので、まあそっち次第ですな。イマイチ使えるオペ(固定オペは期間が長すぎなのと一回で入る額が相変わらず少ないので使えない)が少なく、足が短い供給が多いのがちょっとどうかなあとは思いますが。
2010/06/04
お題「須田審議委員は下振れ意識/その他雑談」
あたくしがコドモの頃は「虫歯予防デー」と言えば歯磨きがどうしたとかうるさかったのですが、最近はどうなんでしょ?
○菅総理で円安株高債券(だいたい)高とな
昨日の市場ですが、為替は何だか円安に振れ、株価はNY株が上昇してたり円安だったりで強く、債券市場ちゃんはと言えば先物とか10年はちょっと安かったですけど、長い所と中短期が強くて、何気に5年がまた0.4%に近くなっているのもそうですし、2年とかも強くなっているのが恐るべし。
為替→菅さんが就任時に円安の話をしたから
株価→海外株高&円安と財政再建路線(??)
債券→財政再建路線および金融緩和政策長期化
という風に後付け理屈では言える(実際の所は知らんが)んでしょうかなあとは思うのですが、何気に「円安株高債券高」って日本的には超理想的な展開になっておりまして(^^)、菅さんってそんなに金融市場の評価高かったっけ????とゆー感じはしますけれども、これはテラオモシロスという所でございますわな。
ま、増税して景気回復というのは何ぼ何でもさすがに如何なものかと思うのだが、政府の再配分機能ってゆーのもやり過ぎちゃうと全体の生産性を下げるという事も勘案しますと(何も無しのレッセフェールは有り得ないが)、まあその辺りをどう整理していくかという話は今後重要になるでしょうという話だとは思います。
#だから本当は事業仕分けみたいなのがあっても然るべきだが、ただの天下り糾弾会&素人による無茶苦茶なぶった切りの政治ショーになっているだけなのであれは無駄にも程がある
それはともかくとして、何か知らんが菅さんの登場(しないかもしれないけど)で金融市場が実にこういい方向に進んでいるのが何のギャグかという所ですが不思議ちゃんな相場展開ではございます。国家戦略担当相の時とか、財務大臣就任時のインパクトが印象となって残っているから、何となく各市場が都合のよいように解釈しているだけなのではないかという気はせんでもないが。
対抗馬の人はさっぱり判らんが、旧日本新党に松下政経塾という時点であたくし的にはいきなりネガティブなんですがね。この色々と難問山積の状態なのに最初の政策が衆議院定数削減とかいうどうでもいい話という時点でこの人は「脳内お花畑政策メーカー」の香りがプンプン漂うのですが勘違いだったらゴメンナサイ。
で、須田審議委員講演から。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1006a.pdf
相変わらず長いっす。
○足元では欧州発の下振れリスクに注意
まず日本の金融市場動向に関しての部分から。
『この間、企業金融を取り巻く環境をみますと、企業のキャッシュインフローが改善し、企業の外部資金への需要が低迷を続ける下で、CPや社債市場では、格付けの低い銘柄にまで発行スプレッドの縮小傾向が拡がっています。日本銀行では、こうした企業金融の改善を受けて、リーマンショック後に導入した異例の措置、すなわち、CP・社債の買入れを昨年12
月末に、企業金融支援特別オペを本年3月末に、それぞれ完了しました。それに伴う影響は特に窺われていませんが、足もとでは、株価や為替が不安定化する中、リスク回避の動きによる影響を注視しています。』
まあどうなんでしょ。基本的に言えば日本の投資家がそんなに欧州にエクスポージャーを大量に持っている訳ではないですから無問題という話になるのですが、実際問題としては欧州のデレバレッジが起きると、その流れから日本も全くの無縁という訳にも行かないでしょう。ただ、足元は昨日もうだうだ書きましたように急性ショック症状の発生は回避できているので、それよりも時間をかけながら徐々にデレバレッジの流れが効いてくる方が懸念されますかな、という所です。
『以上のように、国際金融資本市場では、このところ不透明感が窺われていますが、経済指標には景気回復に向けた裾野の拡がりを示唆するものが増えており、日本銀行では、5月20日、21日に開催した金融政策決定会合において、景気の現状判断を、4月6日、7日の会合の「持ち直しを続けている」から、「緩やかに回復しつつある」に、一歩前進させました。ただし、繰り返しになりますが、国際金融資本市場が足もと不安定化しており、それが今後実体経済にどのような影響を及ぼしてくるのか、留意すべき状況にあります。以下では、まず、景気の現状判断について各項目の動きをみた後、先行きに対する見通しと、それに関するリスクについて詳しく述べたいと思います。』
でまあ詳しく説明しているのですが、やたら詳しいので引用は華麗にスルー(^^)。
で終了しちゃうと何ですが、輸出に関しては新興国については強いとしつつも、米国に関しては足元の数字は良いものの、バランスシート調整の影響を指摘していますわな。
『(引用者追記:米国の事です)しかしながら、失業率が高止まり、平均失業期間が既往ピークを更新する中、クレジットカード向け貸出のタイト化も続いており、家計のバランスシート調整圧力が消費回復の足取りを重くしている姿に、変わりはありません。住宅市場でも、住宅価格指数の回復がもたつく中で、延滞率の上昇や差し押さえ件数の増加が続いています。こうした下で、企業部門の回復が家計部門に波及するペースは、引き続き緩やかなものに止まっています。』
で、ユーロエリアはどう見てもうんこという話もしてますが、まあ当然と言うところですが、リスク要因の中でも思いっきり最初にこの点を挙げています。
『こうしたリスク要因を背景に、足もと不確実性が高まっており、現在では下振れリスクの方を意識しています。』
『第一に、国際金融資本市場の動向です。現在、国際金融資本市場を不安定化させている要因として、欧州周辺国における財政問題、欧州金融機関のバランスシート問題、ドイツの空売り規制など米欧の金融規制を巡る動き、中国の引き締め観測が挙げられます。いずれも重要なチェック項目ですが、中でも、PIIGSをはじめとする欧州周辺国の財政問題を特に注視しています。』
『冒頭でもご説明しましたが、欧州周辺国における財政問題は、ユーロという単一通貨圏における経済システム上の困難を背景としており、解決までに長い時間と厳しい財政再建による痛みを伴う可能性があります。そのため、各国株価や為替相場が大幅に不安定化しており、その結果、欧州だけでなくわが国でも、家計や企業のマインド悪化を通じて、消費や設備投資に悪影響を及ぼす可能性があります。また、財政問題を抱える欧州周辺国では、今後、厳しい財政再建策を実施する予定ですが、その結果、ユーロ圏経済が下振れることになれば、わが国の輸出にも少なからず影響が出てくることになります。さらに、欧州金融機関の損失発生を通じて、欧州金融市場の脆弱性が他国へ伝播するリスクも意識しておく必要があります。』
ということで論点が全部出てますが、まあそういう事でしょうな。
○景気の前向き循環メカニズム(またの名をダム論)に関して
日本経済および物価の先行き見通しに関して。
『以上のように、わが国経済は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつあります。また、先行きに関しましては、「各種対策の効果は薄れてくるものの、新興国・資源国が高成長を維持することに加え、国内民間需要の自律的回復力も徐々に高まってくるとみられることから、わが国経済は回復傾向を辿る」とみています。』
と、ここまでは展望レポート通りですが。
『なお、こうした見通しが実現していくためには、生産・所得・支出の循環メカニズムを通じて、企業部門の回復が家計部門へ波及していくことが重要です。しかしながら、2002年以降の景気回復局面での経験に照らせば、その波及ペースは緩やかなものに止まる可能性が高いとみています。』
どう見てもダム論に懐疑的です本当にカムサハムニダ。
『加えて、欧州周辺国の財政問題を背景とする国際金融資本市場の不安定化により、先行きの不確実性も高まっています。こうしたリスク要因については、後ほど詳しく述べることとし、以下では、主な項目ごとに、先行きの見通しをみていきます。』
で、その項目別の話はスルーしますが、海外経済の回復に関してはさっき引用した米国のバランスシート調整の影響を強めに見ており、その分見通しが厳し目になっている点が注目かと思います。
○潜在成長率を引き上げていくことがデフレ克服に重要だそうで
という話が後半のメインテーマになっているのですが、まあそーゆー難しい話はあたくしのような無学モノにおきましては何かこう判じ物のような話でよー判らんのでこれまた華麗にスルーしますが、まあその為に日銀が成長基盤強化の施策を行いますよってえ話をしています。
で、それは良いのですが、そのコーナーの最後にチャーミングな話題が。
『(政策当局に対する信認の重要性)』
・・・・これはキタキタ。
『以上のことから、物価安定の下での持続的な成長を実現していくためにも、潜在成長率を引き上げていくことが、極めて重要な課題と言えます。』
『金利に低下余地が限られる中で、即効性の高い財政支出を躊躇すべきでないとの意見も聞かれます。しかし、安易な財政支出の拡大は、既に巨額の公的債務残高を抱えるわが国では、財政政策に対する信認を低下させてしまう可能性があります。』
『また、ギリシャ問題をきっかけに、財政の持続可能性に対する関心が高まる中、将来の税負担増や、年金の受け取りなどに対する不安感に繋がれば、かえって消費を抑制させることにもなりかねません。そうなれば、マクロ的な需給バランスの悪化を通じて、デフレ圧力を高めてしまうことにもなります。』
『さらに、財政政策に対する信認が低下すれば、金利が上昇することによって利払い費が増加するほか、国債を保有する金融機関のバランスシートにも悪影響を及ぼし、金融面から景気の下押しに繋がるリスクも高まります。』
ふむふむ。
『信認が重要である点は、中央銀行も同様です。』
キターーーーーー(・∀・)ーーーーーーー
『信認が重要である点は、中央銀行も同様です。ファイナンス面から財政支出の拡大余地が乏しくなったからといって、中央銀行がファイナンスをする、或いはそうした疑念が生じると、中央銀行が独立して物価安定のために金融政策を運営していくという信認は失われ、金利が上昇することになります10。』
で、この10というのは何かと言いますと脚注でして・・・・
『10 Ben S. Bernanke, “Central Bank Independence, Transparency, and Accountability”,
25 May 2010,Institute for monetary and Economics Studies International
Conference, Bank of Japan. をご参照ください。』
バーナンキを引用してくる所が実にチャーミングでありますな、ニヤニヤ。
で、その後はこんな説明が。
『政府の予算制約に照らして考えてみましょう。政府の予算を考えますと、財政赤字はその分国債の発行増加に繋がりますので、それを実質化した上で将来にわたって積み上げますと、政府の異時点間の予算制約式が得られます。
国債発行残高/物価水準=財政余剰の割引現在価値(実質ベース)
上式から、政府が財政支出を拡大させると、その分だけ財政余剰の割引現在価値が低下します。そのとき、金利水準を所与としますと、国債発行残高の実質価値の低下、つまり物価の上昇が生じなければ辻褄が合いません。ただし、仮にこうした手法によってデフレ状態を脱却出来たとしても、政府が財政赤字を積み上げ、それをインフレによって消化を図るのではないか、という不安が残るため、今後、中央銀行がいくら物価安定にコミットしても、信認を保つことは難しくなります。。そして、結局は経済・物価の不安定化に繋がってしまいます。』
・・・・何か巧みに言いくるめられている気がしないでもないが、じゃあ緊縮財政しながらもっと金融緩和するというケースの場合はどうなるんでしょうかな。まあ良く判らん。
○ということでとりあえず景気先行きには慎重ということで
まあ最後の所は「財政出せ」とか「財政ファイナンスしろ」という話に対しての反論にバーナンキの直近の講演を出してくるなどのチャーミングな部分がございますけれども、それはそれとして、景気に関する前半部分では、欧州の金融問題が実体経済に負のフィードバックを与えるという金融ルートに関して懸念しているというのは良く伝わりました。ただし追加緩和に関しては消極的っぽいなあといのが最後の所で伝わって参ります。
『今日、経済・物価情勢がメインシナリオにほぼ沿って推移し、先行き消費者物価の前年比がプラスの領域に戻っていくことが展望できる中にあっては、経済全体の生産性を引き上げ、潜在成長率を高めていくために力を注いでいくことが、デフレ脱却のみならず、財政赤字問題の改善のためにも、望ましい方向性であると考えています。』
つまり追加緩和はしないで成長戦略基盤強化の施策がどうのこうのという方で済ますということですね、わかります。
2010/06/03
お題「色々と雑感ばかりですいませんが」
議席4位しか無い超弱小政党の社会民主連合の議員だった人がいつの間にやら総理大臣筆頭候補とはわらしべ長者みたいですな。
○ECBのドル供給オペ
ECBのオペレーションに関するページはこちらですが。
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/index.en.html
昨日の1週間のドル供給オペ結果はこちら。
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/USD10005_all.en.html
Currency: USD
Fixed Rate: 1.21 %
で、その後に本来はTot Amount Allottedなどの項目が出てくるはずなのですけれども、その下が華麗に空欄というのは要するに応札無しということでござんして、めでたく今回もろくすっぽ札が入らない(というか初回と同様に坊主なのだが)入札と相成りました。
元々OIS+100bpというのが高いんジャマイカとゆーのもありますし、ヘアカットだの何だのと言われたら普通にドルユーロの直先スワップで調達しちゃるわいという所だと思われますが、つまりこれは1週間程度の期間に関しての欧州市場でのドル調達はまあ回っている(普通に回っているのかどうかは知らんが)という事の表れだと勝手に解釈致したく存じますので、まあ良かったですなという話っす。
とりあえず足元で急速に金が詰まるというような事は無いのでしょうけれども、そうは言っても無担保のラインを削減とか、リスク圧縮とかの流れが変わるとも思えませんので、問題は長引くとは思うのですけど、まあ時間があればそれなりに対処の方法もあるので、リーマンショックみたいな急性症状にはならないで済む・・・のかなあという感じです。
○5月の日銀購入国債
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei1005.htm
手元のエクセルでヘコヘコ集計しているので正確さは担保致しかねますが(といきなりヘッジクローズ^^)、5月の買入では残存2年以内の買入額が8934億円ということでちょっと多目ですねという感じです。
そらまあ5月相場って基本的に金利低下方向でしたから国債買入オペの性格上短いのが入り易くなるので普通っちゃあ普通の結果ですが、まあとりあえず買入半分弱が残存2年以内というのは引き続きという所です。
で、先月の今頃は「購入国債の平均残存期間ベースで分析すべきですな」と書いた覚えがあるのですが、例によって例の如くそういう分析をしないまま翌月が来てしまったのがドラめもんクオリティでございます。ど〜もすいませんm(__)m
#本職の人がたぶん分析してると思いますので
○床屋政談的雑談
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aajb8TISjagE
菅財務相、財政再建路線の旗振り役に−鳩山退陣表明で後継に浮上
やっと辞めやがったかという感じのぽっぽちゃんですけれども、最後の最後まで俺は悪くない国民が理解しないとか、どういう精神構造をしているのか頭を割って調べてみたくなるようなお方ですが(まあ空なのかもしれませんけどね)、無能な善人で働き者というのがこれだけの破壊力があるとは思いませんでした。
まあ菅さんは経済にそんなに興味ないかも知れないですけど、叩き上げ系でここまで来ているのですから、まあ勘は悪く無いでしょうし(カイワレとかお遍路とか自爆属性があるのが懸念されますが)、最近の政策新人類系にありがちな「現実的に落とし込む事を全然考えていない脳内政策メーカー」でもないでしょう(同じ文脈であたくしは金融業界的には評判が良いという話のみんなの党に関しても「実装技術が全く無い製造会社」みたいなイメージしか持っていないので、基本的に物凄くネガティブな評価をしている訳だが)。
とは思ってますが、いざ政権についてみたら全然当初予想と違ってましたというのがここもと延々と続いているので正直期待値は下げておく(−−)。
でまあ市場予想的に言えば、菅財務大臣が後継総理ということでしたら、まあ普通に財政再建路線の堅持という予想になりますので、財政再建しつつ金融緩和は延々と継続という話になるでしょう。ただしその財政再建なのですけれども、来年度予算を編成する頃になると「そもそも前の政権公約実施で出来る訳ねえじゃん」的な現実に戻るような気がしますが(^^)、とりあえずそれまでは「財政再建路線ネタ」でやっていくのかなあという感じですかね。
まあ本来は財政再建路線やりながら円安路線ができると大変に結構なのでございますが、円安路線ったって露骨に実施したら(お前らだって自国通貨安路線で景気回復目指しているだろうにと思うのですが)他の主要国から苦情が出てくるのは必定ですので、そこは上手い事やって下さいねと思う次第であります。何か財務大臣就任時の為替水準発言のイメージをネタに為替市場が反応とか後講釈になっていましたが(ホンマカイナと言う気がするけど)、まあその辺りのイメージをてきとーに何とか使ってくんなましと言った所でしょうか。
このどさくさで郵政法案が廃案になってついでに国民新党を追い出したりすると無茶苦茶オモシロイ展開になるのですが、それはまあ無理でしょうな。
#良く考えたらギャグで亀井首相にしたら超円安になりませんかね、日本売りになるような気もするので超越的諸刃の剣ですが(笑)
まあ菅さんの財務大臣の方の後釜は野田さんが持ちあがるちゅう感じで宜しいのではないかと思いますけど。菅さんは最初のうちは「何の対策も用意しないでデフレ宣言」というような馬鹿かアホかという感じでしたが、ここもとの発言がどんどん普通になってきているので、お得意の自爆属性を出さなければそこそこやってくれるのじゃないかなあ、と一応期待だけはしておきます。
○日銀謎政策に関して
東京新聞ですが元ネタは共同通信ですな。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010060201000829.html
日銀、新貸出制度で数兆円供給へ デフレ克服に、7月にも
『日銀が、日本経済の成長基盤強化に向けて検討中の新たな貸出制度で、貸付総額を数兆円規模とする方向で調整に入ったことが2日、分かった。14、15日の金融政策決定会合で詳細を正式に決め、早ければ7月にも実施する。』
まあ金融機関に色々とヒアリングして、大体このくらいの額になるでしょうみたいな話をしているんだなあというのは判るのですが、そもそも論で言えば今回の貸出制度って最初に「幾らにする」という話があるのではなくて、成長基盤強化への融資がこのくらいあるから貸付額が後付けで決まるってえ話なんじゃないのかなあと思うのだが。何かこの記事の書きっぷりを見ると予算消化みたいなテイストを感じちゃいますわな。
『本格的な景気回復やデフレ克服のためには、環境やエネルギーなど成長分野への思い切った資金供給が必要と判断。銀行などの民間金融機関が新制度を活用することで、こうした分野への投資や融資拡大につなげる。』
一方、白川総裁は先日の講演で『この仕組みは、時限を区切って金融機関の自主的な取り組みを資金面で支援するものであって、日本銀行自身が個別産業や個別企業への資金配分に関わるものではありません』(5月31日の日本記者クラブでの講演より)と言っている訳で、共同通信が曲解しているのか日銀の説明がヘボいのかは知らんですが、白川さんの出している理屈と世間の理解の乖離が入口の時点から起きているというのが落涙を禁じ得ません。(まあそもそも成長基盤融資の話を最初にした時に白川総裁が想定される成長分野の質問に具体的な答えをしているので、その時点で訳判らん状態に成っているのだが)
しかしあたくし的にビックリなのは「数兆円規模」という所でして、そんなにその手の貸出とかあるのかよというのが結構な驚き。いやまあエネルギー分野への融資ということで、それこそ東京電力さんとか電源開発さんとか新日本石油さんとか(思いついた順に並べただけで他意はありません、為念)の設備資金融資を「成長基盤強化関連融資」と言ってしまえばそれこそ結構な額は稼げるとは思うのですけれども、そういう大企業さんは社債市場でもCP市場でも低利で潤沢に調達ができるのでありまして、そこで銀行へのファイナンスを付ける必要があるんかいなというのは微妙ではございますわなあ。
いずれにしても数兆円程度の話で、しかも金が入ってくるのがそもそも金余りで運用に困っている銀行という事になる(たぶん運用難の金融機関としては「急に押し売りが来たので」位のイメージではないかと思料^^)ので、市場金利に対する影響は無いに等しいんじゃねえのとは思います。ただまあ金融機関的には小うるさいどこぞの大臣が「銀行は貸出をしろ」だの何だの言いますので、本件に協力して色々と成長基盤強化融資の実績をでっち・・じゃなかった積み上げるのは、やかましい外野からの圧力を避けると言う点でもオイシイ話ではありますし、何かこう予定調和的に数兆円の数字とかが積み上がるんでしょうなあ、よー知らんけどね!!
あたくし前にも書いたと思うのですが、どうせなら設備投資関連の制度融資とか保証協会付融資とかのような中小零細向け融資を特別に担保として取れるようにした方がエエンチャウノとゆー気がしますが、事務的に回らない(証書貸付債権を担保に出す時の法律的な問題もあります)んでしょうなあとも思いますけど・・・・
#ということで今日はただの雑感雑談ばかりでどうもすいません
2010/06/02
お題「総裁講演とかその他少々」
○短国発行がまた減額とな
先週出てたのですがうっかり入札前になって気がつくあたくし(汗)。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillauct/auct220526.htm
今日入札が行われる3か月TBですけど発行予定額が5.1兆円ということで、2か月連続での減額となりました。ということで、償還が5.7兆円あってロールの発行が5.1兆円ですから6000億円の減額ロールとなります。まあ税収が見込みより上に振れる見込みですという話に対応してますねという事でしょうな。
ここの所(ここ1年ほどは増えてません、念の為)ずーっと増額増額で来てたので、足元で減額になるというのは世の中的に言えばイイハナシダナーという事になるのでしょうけれども、どちらかと言いますと足元キャッシュが余って運用難なんすけどという流れですので、微妙に有難迷惑とか言うと図々しいですかそうですか(^^)。
でまあ何ですな、とりあえず短国の発行が減って来ている(3か月以外は特に変わらないと思うのだが)という中でございますので、このドサクサに紛れて日銀におかれましては短国買入を減らす(頻度を減らすアルヨロシ)事によって共通担保オペ(固定物じゃ無い方)の打ち込み余地を増やして頂きますと割とみんなハッピーだと思う(ただしポジショントーク成分入りですので念の為)のですがどうでしょうか??
短期国債買入に関しては、まあ他の資金供給オペが打てる状態で、かつ短国そのものの需給が悪くなければ別にそんなに無理くり打ち込む必要って無いんじゃないかなあと思う次第でして、それよりも足元の共通担保オペを切れ目なく打った方がGCレートが安定するので、短国が増額する流れとか、(リーマンショックの時みたいに)足元のレポ金利が別の要因で上昇した時でも無ければそんなに打たなくてもと思いますです、はい。
○白川総裁講演より:成長戦略謎政策導入の理屈展開
月曜日の日本記者クラブでの講演ですが
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1005b.pdf
まあお話は大所高所の話でございますので、債券市場的にど〜のこ〜のという話でも無いですし、政策インプリケーションとしての話は従来から白川さんが「追加緩和はしたくないですが何か?」というのをしているのであまり追加情報も無くという所ですわな。
ということでまずは経済の直面する問題という部分から。
『ここまで、先行き2年程度を展望した日本経済の見通しについてお話してきましたが、こうした短期的な見通しと並んで重要なことは日本経済の中長期的な成長経路です。現在、日本経済の将来に対し悲観的な見方がしばしば聞かれますが、これは多くの人が、わが国の中長期的な成長力に自信をもてないと感じていることに相当程度帰着するように思います。実際、日本経済の成長率は趨勢的に低下傾向にあります。私は現在、日本経済が直面している最大の課題は、潜在成長率の低下やその背後にある人口減少や生産性の低迷であると思っています。わが国のデフレも、成長期待の低下という日本経済が抱える根源的な問題が、集約的に現れた現象ということができます。そこで次に、日本経済の成長力というテーマに話を移したいと思います。』
ということで、もうすっかりこの辺もお馴染みになってしまいましたが、デフレの問題がいつの間にか大所高所の問題になっている点に関しては、まあ確かにそれはおっしゃる通りとも言えますし、マネー現象の話を大所高所の話で済ませて肝心の緩和をしないとはケシカランとも言えるでしょうな。あたしゃ無学ですからよー判りませんが。
でもって、まあ成長戦略がどうのこうのという話を延々としているのですが、その中で「金融機関の役割が重要」という話をしてますな。
『イノベーションや生産性の向上に関し、ここでもうひとつ強調したいことは、金融機関の果たす役割が大きいということです。シュンペーターは、企業家に資金を提供し、イノベーションへの取り組みを支える経済主体として、「銀行家」の役割を強調しました。わが国でも、戦後長らく、企業に対して長期のリスクマネーを提供し、多くの成長企業を育ててきたのは、主として、銀行を中心とする金融機関でした。最近では、銀行がこうした業務をより戦略的に位置付け、独自の技術開発や海外展開に取り組む企業、あるいは、成長分野として期待される環境・エネルギー、医療・介護事業などに対する融資や経営支援を積極的に行う動きもみられています。』
『勿論、企業にリスクマネーを提供していくためには、多様な金融市場と投資家が存在することが重要です。しかしながら、わが国では、資本市場のウエイトが相対的に小さいほか、ベンチャー企業の育成という点でも、米国などに比べて見劣りするのが実情です。現在、こうした分野でも関係者による様々な努力が続けられていますが、わが国の場合、イノベーションの推進役として、金融機関が中心的な役割を果たしていくという姿は、当面、変わらないと思います。』
・・・・なるほど、だから成長戦略支援の貸出制度を設けるということですか。
ということで、取り敢えず何でこういう制度を設けたのですかという質問に対してはこーゆー理屈(理論と言うか理屈ですわなこりゃ)が華麗に展開されるという事のようでして、あたくしとしては「なるほど仰る通りでござんすね(棒読み)」と申し上げるしか無いのですが、どーなんすかね。
ということで成長戦略支援何とかかんとかは・・・・
『本日ご説明してきたように、現在のわが国にとって最も重要な課題は潜在成長力の向上であり、そのためにはイノベーションの促進が不可欠です。また、その際、民間金融機関の果たす役割も重要です。これらの点を踏まえうえで、(原文ママ)日本銀行では、先ほど申し述べたような金融緩和政策や金融市場安定化の措置に加え、日本経済の成長基盤強化のための資金供給の仕組みを導入することを決定しました。』
という理屈になるそうな。
『現在、その詳細について、金融機関とも意見交換を重ねながら検討を行っていますが、基本的には、成長基盤強化に資する融資や投資を行う金融機関に対し、その実績に基づき、日本銀行が資金を供給することを考えています。その際、金融機関による取り組みを支援するために、政策金利と同水準、今であれば0.1%という低金利で、1年を超える利用が可能なかたちで、長めの資金の貸付を行うことを考えています。』
具体策は6月か7月には出るんでしょ。
『勿論、成長力の強化という課題は基本的には民間の努力によって達成されるものであり、そうした民間の努力を政府が制度面でサポートするという性格のものであることは、日本銀行としても十分に認識しています。そのことを明確に認識した上で、わが国が成長期待の低下という課題に直面し、これが、現在の物価下落の問題に大きな影響を与えているという現実を踏まえ、中央銀行として有する機能を使い、日本経済の成長基盤の強化を金融面から支援していくことにも意味があると判断しました。このことは、日本銀行法に謳われた「物価安定を通じて国民経済の健全な発展に資する」という、金融政策の使命にも合致していると思っています。』
デフレに手をこまねいている訳ではないですという事でもあるようですが、さて・・・
『その際、我々としては、以下の2点に注意を払っています。第1は、この仕組みは、時限を区切って金融機関の自主的な取り組みを資金面で支援するものであって、日本銀行自身が個別産業や個別企業への資金配分に関わるものではありません。第2に、将来の金融政策運営の障害となるようなものにしないことです。中央銀行のバランスシートの健全性を維持することは当然ですし、貸付総額を設けるなど、金利政策の制約とならないように運営する方針です。』
でも「成長基盤強化に資する融資や投資を行う」事に対しての低利融資を実施するという段階で個別産業の資金配分を意図しているでしょと思うのでありまして、日銀が直接貸出を行ったり、傾斜生産方式のような割り当てをしている訳ではないでしょうけれども、逆に個別産業などへの資金配分をしなかったら成長基盤強化にならないのですから、その理屈はどうかと思います。で、第2の論点ですが、テンポラリーで金利政策の制約にならない程度のオペレーションを実施して、それこそデフレ脱却に向けた効果がどの程度あるのですかという点も謎としか申し上げようが無いですわな。
いやまあ「物価安定の理解」の下で延々とデフレ継続という見通しを出さざるを得ない状況で、そもそも論として成長力が弱いから何とかしましょうという話は判らんことも無いのですが、何かこう理屈を色々と展開しているうちに本件を実施する事になっちゃいました感が強いのは気のせいですかそうですか。
○白川総裁講演と会見より:出口は当然無いけど追加緩和もハードル高そう
講演での金融緩和政策継続に関してはこの通り。
『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要との認識の下、強力な金融緩和政策を継続してきています。政策金利は、実質的にゼロといえる0.1%に引き下げています。また、昨年12
月には、長めの短期金利の更なる低下を促すため、固定金利で期間3か月の資金を供給するという新たなオペレーションを導入しました。これら一連の措置により、市場金利や貸出金利は現在も低下傾向が続いています。日本銀行としては、国内民間需要の自律的な回復を後押ししていくため、引き続き、極めて緩和的な金融環境を維持していく方針です。』
まあそらそうですなという事ですが、では追加緩和の目はあるかと言うと会見記事を見ますと中々これが総裁的にはハードル高い(ただし様式美の世界によって追い込まれる目は大いにあると思いますが)と思われますな。
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK041324020100531
UPDATE2: 中央銀行がバランスシートを拡大してもインフレ率は低下している=白川日銀総裁
[東京 31日 ロイター] 白川方明日銀総裁は31日、都内の日本記者クラブで講演し、日銀がインフレ目標を導入する可能性についての質問に対して「短期の物価上昇率だけにくぎづけになると、結果的に経済は不安定になる」、「日銀が採用している枠組みは、インフレ目標の長所を取りこみ、短所を克服したもの」と説明した。日銀に対しデフレ克服のためにインフレ目標の採用とともにバランスシートの拡大を求める意見に対して、欧米の事例を挙げ、中央銀行のバランスシートが拡大してもインフレ率は着実に低下している、と指摘した。(上記URLより)
どう見ても追加緩和拒否です本当にカムサハムニダ。
しかしまあこの理屈もアレなのですが、『(欧米では)中央銀行のバランスシートが拡大してもインフレ率は着実に低下している』というのであれば、逆に「じゃあ打てる手は少ないとか言わないで、バランスシート拡大もやってみたら良いじゃないですか、インフレ率が上昇しないんだったらやっても害が少ないでしょ」というツッコミが来たらどうするのか(大体の切り返し理屈の想像はできるが)って思うのでありまして、中々この辺の説明は難しいですなあ(棒読み)という感じです。
恐らく勝手に想像すると、「欧米の中央銀行のバランスシート拡大は、インフレ率の拡大を目指して実施した物ではなく、金融市場の機能不全に対応して実施した物でありまして、金融仲介機能が損なわれた状態だと金融緩和効果が効かなくなるのでバランスシートを拡大させたものです。一方日本では金融仲介機能は特に損なわれたという状態ではなく、その中でバランスシートを拡大すると言う事は、金融市場への介入になるので、却って金融仲介機能を損ねる結果になります」という話をするんじゃねえのかと思うのですが(さすがに年がら年じゅう各国中銀の出す物を見ているとこの程度の理屈はアホのあたくしでも思いつく)、何せ報道ベースになりますと(専門通信社ですら)上記のように端折りまくってしまいますので、(まあそもそも日経や通信社でちゃんと判っている人が何人いるのやらという気はするが)表に出てくる話となるとコミュニケーションギャップ状態になるんでしょうなと思いました。
あとね、もうひとつ思うのですけれども、「日銀が採用している枠組みは、インフレ目標の長所を取りこみ、短所を克服したもの」って話をいつもしているのですが、いやまあガチガチに物価上昇率だけにフォーカスした目標値ではなくて、最近の中央銀行の流れって「長期のスパンで見た場合の物価安定」を意識した形になっている(あのBOEが最近のMPC議事要旨を見ると物価の数値に関して「より長期的にはアンカー」というのを呪文のように唱えているのが心温まる訳で)というのはその通りなのですが、そーゆー話をしていると、「そんなに立派な物を導入しているのに肝心のデフレ脱却ができていないとはどういうことか」と言われるだけなのではないかと思うのでありまして、何か別に俊ちゃんになれとは申しませんけど、もーちょっと言いようというのがあるんジャマイカという気がせんでもないですな。
ま、いずれにせよ白川さん的には追加緩和もインフレ目標値導入も無いという話ではございますが、先行きに関しては様式美の世界が待っているような気がするんですけどね〜。
2010/06/01
お題「諸般の事情に付き小ネタ雑談で恐縮至極」
初心に戻られてまた最初から同じ事されても困るのですが・・・・>鳩ぽっぽ
○GCレートが上がった後下がった件
えーっと、すっかり書かないでいるうちに上がって下がってしまって誠に遺憾なのでございますが、5月末と今日明日の財政不足に関する部分でGCレートが上昇したでござるの巻だったので、今更ですがメモとして(俺様備忘録ですから^^)残して置くのだ。
まずは5月末の受け渡しの所でGCレポ市場への資金の出が悪くなってきて、レギュラーが末となる26日の所でT+3が0.13%水準に上昇して、27日には久々にスポネの買現先が1兆円実施されまして概ね0.13%の落札(足切り0.12%の按分は極薄)とゆーことで、足元のGCが上昇したのでレギュラーの所も上昇という感じになって0.135%レベルと。
で、その末のお金ちゃんの方は28日の午後になってやっと出て来たようで、金曜の午後からレートの方は落ちついた訳でして、昨日はレギュラーで0.115%水準という感じ(手前はもうちょっと低い)ということでまあ低下しましたねという所です。この間、当座預金残高水準は31日に向けてオペ増やしたりした事から31日で18.1兆円となりましたが、実際にGCの出し手の金繰りが見えてきた時点にならないと金が出てこないという問題もありますし、そもそも18.1兆円の当座預金残高というのは全体的にあるにしても、その金が偏在した結果、GCの資金放出する人達の所に無いという事になるとやっぱりGCレートは上がっちゃいますねという流れということですわな。
一方で(すっかりネタに成らなくなっていますが^^)コールレートの方はもう延々と0.1%割れが定着(先月の積み最終日の最後の最後に謎の取り上がりがあったのはナンダッタンデショウカ)しているのでありますが、まあ足元のオペの打ち方とか見ていますと、基本的にGCレートがあまり跳ね上がるってそれが定常化するのは避ける(そうなるとターム物の金利が上昇してしまうので、金融政策の中にある「ターム物金利の抑制」が達成できなくなるから)という流れ(ただし無理に金利を押し付ける訳では無いので瞬間的要因での少々の上昇はアリ)となっているようですが、この場合って実は当座預金残高よりもオペ残高の方がGC市場の需給に効いてくるんじゃねえのかという感じがせんでもないですし、債券業者の在庫および資金繰りの状況は単純に当座預金残高だけで測れる物でもなさそうなので、まあオペレーションも難しいですなあと思うのでありました。
と、判ったような判らんような雑感メモを延々と書いているのですが、今月は15日と21日に財政払いの山(年金と国債償還)がありますので、そこに向けてオペ残が減ってくるのが普通のオペレーションになるのですけれども、オペ残が減るとその分GC市場での要調達額が世の中トータルで増えるので、本当はオペ残減らさないで淡々とロールして頂きたいのですが、そうなると今度は当預が余り過ぎになってしまうので中々難しいでしょうな。
ただ、他の要因もあるのでしょうが、ここもと当座預金残高が16兆円や17兆円とかで推移していてもGCレートがそんなにだだ下がりしなくなっていますので、もしかして固定オペが他のオペを圧迫する関係およびフルアロットメントの企業金融オペが無くなった要因で当座預金残高をやや増やしてもGCレートが下がらなくなったのかなあなどとも思いつつ足元の計数を眺めている今日この頃でもあります。
#と、最初から最後までマニアネタで何の話だか判ってくれる人が極めて少ないのではないかと存じます(すいません)
○虫干しネタ雑談
いや実は暫く前に読んだのですがネタにするの忘れてました。
5月7日と10日に実施された(何故土日挟み)BOEのMPCから。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1005.pdf
いやまあ読書用としては結構面白かったのですが、じゃあ政策インプリケーションが何かありますのんと言われますとちと困るのでありまして、とりあえず「BOEの金融政策は動くに動けない状態になっていて大変にご愁傷様でございます」という感じでございます、ナムナム。
まずざっと読んだ感想としては・・・・
・欧州金融危機の影響を注視(丁度スワップラインをやってる時ね)
・インフレは上振れ、英国ポンドの下げと原油価格の上昇が要因だが、企業の価格設定にも上昇圧力が掛かっている
・経済指標は割と良い、ただしドライブは米国とアジア(中国など)
・財政問題への言及(まあ欧州がアレですからね)
というのが目に付いたのですが、下押し要因がここから出てくるという中で物価が上振れているので緩和の拡大はしにくいし、かといってとてもとても利上げとかする状況にも無いですし、まあ大変にエライコッチャですなあというのは良く把握した。
つーことでまずはインフレーションレポート(12日に出た)の元となる見通しの議論の部分と言う事で第23パラグラフから。
『23 The Committee reached its policy decision in light of its projections
to be published in the Inflation Report on Wednesday 12 May. The considerable
stimulus stemming from the highly accommodative monetary policy stance,
together with a projected expansion of world demand and the past depreciation
of sterling, was expected to underpin the emerging recovery in economic
activity.』
ここまでの超緩和的な無金融政策スタンスと、世界経済の需要拡大および英国ポンドの下落によって英国景気も回復基調という話をしているのですが・・・・
『But the pace of that recovery would be dampened by several factors: the
need for a substantial fiscal tightening at home and abroad; needed further
strengthening in the balance sheet of the UK banking sector; and the private
sector’s desire for higher savings in an environment of increased uncertainty.』
ということで、先行きの景気抑制要因として、「世界的な財政均衡化への圧力」「英国銀行セクターの財務リストラ圧力」「経済の拡大する不確実性に起因する民間セクターの貯蓄拡大」を挙げていますわな。でまあ後者2つは英国要因ではございますが、最初の「世界的な財政均衡化への圧力」を先行きの景気抑制要因ということできっちりと上げているのがまあ当然ちゃあ当然ですが、傾注ですな。
で、次のパラグラフでは「経済の回復の力強さに関しては不確実」という話をしていまして、金融緩和の効果が測り難いという話をしているのがチャーミング。
『24 The strength of the recovery remained uncertain. It was difficult
to assess with precision the impact of the unprecedented loosening in monetary
policy. 』
で、何でそんな話をしているかと言いますと(話がそれて恐縮ですが)、経済の現状認識の議論の中の第14パラグラフにこんな記述があるのですよ。
『14 Nominal demand had risen at close to its ten-year average rate in
2009 H2, reflecting above-average increases in the GDP deflator and below-average
growth in real activity. Despite the unfavourable mix, this was encouraging
in that one of the objectives of the asset purchase programme had been
to arrest the collapse in nominal spending that had occurred around the
end of 2008. The latest indicators suggested that nominal demand growth
had continued during the first half of 2010.』
で、その『this was encouraging in that one of the objectives of the asset
purchase programme had been to arrest the collapse in nominal spending
that had occurred around the end of 2008.』というのが何かこうアレでございまして、資産買入(BOEの場合は国債購入をして「うちは量的緩和ですから」と思いっきり銘打った訳だが)の目的に「名目消費の極端な落ち込みを阻止する」というのがあったのかよ!!!というのにちとビックリいたしまいたですたい。
で、話を戻しますと、英国景気回復は結局の所ユーロ圏次第の所が大きいですねというような話をして、景気の先行きに関してはメインの「回復基調」は変えないものの、リスク認識でのダウンサイドリスクの拡大を示しています。
『25 As in its February projections, the Committee judged that the recovery
in economic activity was likely to gather strength over the next year or
so. But the downside risks to growth in the near term had increased somewhat,
reflecting the heightened market concerns about the prospects for fiscal
consolidation in a number of euro-area countries.』
当然ながらその要因はユーロ問題ですわな。
で、まあ延々と引用するのも何ですので以下スルーしますが、先行きに関して「需要が金融危機前の水準に戻るのは相応の時間を要する」という話もしていまして、まあ中々慎重な見方(当たり前っちゃあ当たり前ですが)をしている中で、インフレの先行き見通しについて「近いタームのインフレ見通しは上昇し、年内のインフレはターゲット以上で推移」「ただしより長いタームでのインフレ見通しは変わらない」としつつ、「インフレがモデレートになる程度については不確実性が高い」という指摘をしていまして、中々こう金融政策が難しいですねという所かと思います(第27、28パラグラフになりますが引用割愛)。
で、さっきサラッと流しましたが、「国債買入で量的緩和をしています、うちは他の中銀とは違うんですよフフン」と言ってた資産買入プログラムの件に関してMPCの度毎にどんどん話がフェードアウトしてきて、効果とか目的の話がすっかりスルーされているのがジョンブルクオリティですなあという風に思うのでありました。
○読んでおこうと思いつつ多忙で読めないものシリーズ(備忘録)
まあ備忘録ということで。
・白川総裁講演
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1005b.pdf
日本経済とイノベーション
── 日本記者クラブにおける講演 ──
→いやまあ実は読んだのですが斜め読み。最近白川さんの講演やら会見が連発で満腹
・トリシェ先生が何かお話のようです
http://www.ecb.int/press/key/date/2010/html/sp100531_2.en.html
The ECB’s response to the recent tensions in financial markets
→ウィーンでの講演
http://www.ecb.int/press/key/date/2010/html/sp100531_1.en.html
Interview with Le Monde
→ルモンド紙のインタビュー記事のようで
・ポーセンさんの講演
http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2010/045.htm
The Realities and Relevance of Japan's Great Recession
本文はこちら
http://www.bankofengland.co.uk/publications/speeches/2010/speech434.pdf
THE REALITIES AND RELEVANCE OF JAPAN’S GREAT RECESSION
NEITHER RAN NOR RASHOMON
→最初「RAN」と「RASHOMON」(本当はどっちも斜字体で表示されてます、テキストファイルの関係で普通の字体になっちゃいましたが)が黒澤映画の題名なのに気がつかずに英和辞典を引いたのはここだけの話です(赤恥)
最初の方だけ何となく読んだが、「小泉・竹中・福井のリーダーシップによる政策転換で日本経済が回復した」という点に関しては「何かそうなのかねえ」と眉につばをつけながら読む感じがするんだが(だって途中までの金融行政って強烈シバキアゲだったじゃないのよと思うし、そのシバキアゲをお前ら英国はやっとるのかと小一時間問い詰めたいのだが)、まあ長いのでヒマな時に読んでみる。